ある転生者のオーバーロード (Solo Mon)
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第一章 転生者〜転移前〜
1.プロローグ


初投稿です!以下の注意点があります。

・駄文
・不定期更新
・にわか知識
・チート

投稿頑張りますので、暖かい目で見て欲しいです。


 20xx年某日、僕こと「木下透(きのしたとおる)」は産まれた。

 父と母はとても優しい人だった。

 家は田舎にあったが、小川や山林などの「自然」に恵まれていた為、幼少期の僕は素敵な毎日を送れた。

 特に、僕は樹木が好きだった。

 大きな体をしているのに、じっと、何もせず、ひたすらその場に静かに立っている。

 樹木を見ると、僕は不思議と落ち着くのだ。

 見守られているような安心感。

 僕は樹がいつのまにか「大切な物」になっていた。

 

 その頃、世界中は不穏な空気が漂っていた。

 某国がミサイルを飛ばし、それを咎める別国。

 増え続ける人口。

 進む温暖化。

 そして、熱帯雨林の消滅。

 家のTVを観て、僕は思う。

 

「僕に力があれば……」と。

 

 同時に思う。

 

 

「地球のお医者さんになりたい!」

 

 

 僕は山で転んで手首を骨折した時、遠く町のお医者さんの所に行ったことがあった。

 カチカチフワワ(ギプス)だけで痛みが1ヶ月ちょっとで治したお医者さんに憧れを持った。

 実際は自己治癒力と毎日食っていた煮干しによるものだったが……

 

 さて、僕は母に応援され、叔父がやっていた樹木医になると決意し、中学生時代に勉強を死ぬ気でがんばった。

 遠く三町離れた塾に通わせてもらい、学校から帰ったらすぐ塾へチャリを飛ばす。

 塾に居残りした日は辺り一面真っ暗で、何度もチャリをぶつけた。お陰であの頃使っていたチャリはもう無い。

 受験の年になると、チャリで40分の所にある図書館から借りた参考書と、塾の教材一式、今まで取ったノート、過去問題集全てを机の上に置いて、ひたすら鉛筆を走らせた。

 

 

 こうして僕は晴れて県内で1番偏差値が高かった理系高校に入学。

 

 高校は生物研究会という部活に入り、植物の研究をする事にした。

 ここでも受験勉強を頑張り、また自分の研究が上手く身を結んだことにより、推薦で難関国立大に。

 

 大学デビューしてはっちゃけた結果、大学のサークルからは白い目で見られるようになってしまった。

 一方で樹木医資格試験の為の勉強は怠らなかった。

 大学を卒業後

 樹木医補資格を入手してようやく樹木医となる。

 認定証もらった時は思わず泣きましたよ(笑)

 ちなみに当然勉強ばかりしていた僕に彼女などできるはずも無く(TT)

 今絶賛彼女募集中ですー。

 

 今の僕の生活は、

 会社からの派遣で色々な国を渡り、木の病を調べる毎日。

 でも相変わらず僕には「力」が無かった。

 

「樹木医としていくら多くの木々を守ったとして、その木は後に伐採されて終わり。人が物を消費する限り、自然は失われていくのみ。」

「生き方、間違えたかなぁ?」

 

 樹木医になったとして、所詮は一国民である。

 例え木を切る量を減らせと一国民が訴えたとして、多くの国民を抱える国家に届くかどうかはとても怪しい。

 まだ国のトップを目指した方が自然を治せたのでは? 

 そんなこんな考えながら、飛行機の一席に座っていると、突如前方から悲鳴と脅迫が響く。

 

「動くな! 動いたら殺すぞ! この飛行機は俺らが乗っ取った! 恨むんなら自分自身の運の無さを恨むんだなぁ!」

 

 どうやら自分の飛行機はハイジャックされたようだ。

 

「嫌だ嫌だ嫌ダァ────! 非リアで30過ぎのおっさんのまま死にたく無い! 死にたく無いよぉ────! 

 

 そんなこと考えながらも無慈悲に飛行機は進み続ける。

 やがて来たる終焉の時。

 前方からの凄まじい爆音と熱さで僕は意識を手放した……………………………………

 ……………………

 …………

 ……

 ……

 

 

 

 ツヨイミレンヲキャッチ、『特殊因子』ウマレカワリタイトイウイシヲカクニン

 コレヨリキノシタトオルヲ『転生』プログラムニヨリ

『ココデノキオクヲノコシタママデノテンセイ』ヲジッコウシマス。

 

 

 

 ……

 ……

 …………

 ……………………

 ……あれ? 

 

 オギャーオギャー

 

「ご出産おめでとうございます。元気なお子さんですよ。」

 

 僕、赤ん坊……? 

 

 

 わわっ持ち上げられた

「この子のお名前は何というんでしょうか?」

 

「拓人、間有拓人よ、」ゼイゼイ

 

「拓人、立派に育つんだぞー!」

 

「爺ちゃん!拓人を占領しない!」

 あわ〜アタマガグワングワンシテキター

 




神様って、毎回転生者の前出て転生すること伝えんの面倒だと思うんだよね。

ちなみにアクア様がこの時居たら強制このすば√です。


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2.ここって、オーバーロードの世界だった!?

 はい、どうもー 木下透改め 間有拓人(まありたくと)デェース。

 

 なんか知りませんが生きています。

 

 というか死んで生き返った? 的なラノベで言う所の「転生」ってやつなんですかね!? 

 でもどこぞの女神様とかと会うイベント無かったんだけど! (不貞腐れ)

 

 前とは違い、家は都会に。

 両親は二人ともエリート公務員。

 最初っから世でいうところの勝ち組とかいう幸運。

 でもどうやら()()は普通の家庭ではなく、大半の人はろくなもん食えないディストピア! 

 

 そこで僕は決意しました。

「お前らを糧に、俺は生きるよ」(ゲス顔)

 だって仕方ないですよねー、強くなりたいんだもん! 

 

 ──────

 とりあえず、前世で叶えられなかった「力」を持つことを目安に生きてきた。しかし、それは途中から変えることとなる。

 

 12歳の頃、僕は大学の配信授業を受ける一方で、気付いた。

 現在2121年

 欧州アーコロジー戦争

 広告DMMO-RPG

 

 ん? どっかで聞いた単語ダゾ! 思い出そうとベットの中で1時間。

 思い出した!! オーバーロードだ! 

 作者丸山くがね様! 

 萌骨モモンガ様と愉快な下僕達の! 

 あの完結した愛読小説の! 

 ってことはあれ? ひょっとしてもしかしなくとも、

 

小説の世界に入り込んでる────!?!? 

 

 次の日間有は寝坊した。

 

 ────────

 

 

 どうやら本当のようですはい。

 

 ベットの中で目標を立てました〜遅刻する羽目になりましたけど。

 まず、僕の目標は

 

 1.異世界転移すること

 

 2.アインズ・ウール・ゴウンの人達と仲良くすること(特にモモンガさん)

 

 3.ユグドラシル内で一番強くなること。

 

 この三つである。

 3の「強くなる」は、アインズ・ウール・ゴウンのNPC(特にアルベド)から身を守るためでもあるが、

 一番はモモンガさんを助けたいから。

 確か、転移後の世界は身体に精神が寄っていくんだったっけ? 

 多分僕が活躍すれば、ユグドラシルのことを忘れずに、精神の変容を抑えられると思うからな。

 取り敢えずは活動資金の調達からしないとな、課金出来ひん。

 

 まずは社会人として、働かなくては! 

 ということで、前世の職業だった樹木医に就こう! っと思ったら、

 今の時代は樹木医が超難関レベルで難しくなっていた。

 だが、甘いぜ! こっちには30年分の培ってきた経験があるんだぜ! 

 前世の記憶とここでの勉強を駆使し、5年かかったが、今世でも樹木医補資格ゲットだぜ! 

 内心、僕の年齢的に取れるか分からなかった(汗)

 

 

 また、前世で海外出張を繰り返したお陰で、外国語の教育動画や教本を作成して売ったら、思いの外バズった。

 ネット上で

 

「ドイツ語が1年で翻訳出来る様になった!」

 

「やばwこれわかりやすすぎww」

 

「助かります! 覚えやすくてとてもおすすめです!」

 

 といったコメントが飛び交うように。

 作者が青年ということもあり、社会から大きな反響を受けた。

 前世でめっちゃ多くの外国人と会話したからなぁ当たり前だよなぁ〜(ドヤァ)

 

 

 一方、6歳の頃からずっと剣道を続けた。

 肉体的に強くなるのもあるが、やっぱりカッコイイから。

 それにワールドチャンピオンになりたいからやっぱ剣習った方が良いよね! 

 あっちなみに今四段です。

 五段目指して修行します! 

 

 

 あれから5年経ち、とうとうYggdrasilの宣伝PVが出始めました! 

 最初はβ版が配信されるようです! 

 いや〜楽しみだなぁ〜 アインズ・ウール・ゴウンの人達と遂に会えるのか〜頑張ろ! 

 この世界は小卒から働けるので、今では立派な社会人ですよ、僕。

 あれから森林事業の会社を立ち上げ、樹木医の知識活かして絶賛植樹中です。

 野菜の苗を高値で取引したりして利益を出しています。

 そのうちスギの苗木も販売して、企業にしてやりますよ! 

 

 ──────ー

 

 2126年、遂に待望のYggdrasil販売! とっくに独り立ちしている僕は即行で購入してダイブする。

 

 ────

 

〜世界樹ユグドラシル、それは九つの世界の守護樹〜

 

〜或る時、守護樹を貪り食う魔物現る〜

 

〜守護樹はたった九枚の葉を残し次々と葉を落とす〜

 

〜其れはやがて九つの世界の元となった。九つの世界は其々アースガルド、ヴァナハイム、アルフヘイム、ミズガルズ、ニダヴェリール、ヨトゥンヘイム、ヘルヘイム、ニヴルヘイム、ムスペルヘイムと呼ばれる〜

 

〜しかし、貪欲な魔物の影は残された九つにまで迫りつつあった〜

 

〜貴方は世界の落とし子。貴方は生まれた故郷たる己の世界を守る為、今旅立ちの日を迎えようとしていた〜

 

 ────

 

 感動。

 ナニコレ? 神ですか? 

 おっと種族選ばないと〜異業種で人間にもなれるやつ…………竜人でいいか。

 流石に人間の姿じゃ無いとな〜キャラのイラストも人間の姿にしちゃったし。

 

 

 ガチャで十万課金してさっそく神器級(ゴッズ)アイテムの《ドラコグリードソード》をゲット! 

 

 後から調べたら出る確率0.015%しか無かったんだけど、なんか引いちゃったわ〜

 ま、やまいこさんなんか昼飯一個分の金額で『流星の指輪(シューティング・スター)』ゲットしているから良いか。

 早速平原で雑魚狩りやで! 

 最初の職業は〜竜に因んだ「ドラグナー」ゲッツ! 

 

 確かこれ最終職業クラスが自分のレベルより低い竜型モンスターを使役、召喚できるっていう転移後の世界でなかなか使えそうなスキルだから欲しかったんですよ〜。

 

 よし、早速レベリングやろう! 

 


 

竜騎士(ドラグナー)

 竜を愛し、竜に魅せられた者で、剣技に優れた者のみが手にすることの出来るクラス

 ・職業スキル

 速度上昇20%

 攻撃倍加

 クリティカル率上昇15%

 竜型モンスターのみテイム可

 ・最終職業スキル

 自分のレベル以下の竜型モンスターのMP召喚可

 竜型モンスターの召喚時MP -75%

 竜と付く技、武器の効果、威力倍化

 速度上昇倍加

 攻撃上昇三倍

 確定クリティカル

 こういう設定です。

 

 



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3.こうして僕は強くなっていった…

今回少し短めです。


 

 原作だと、多くの人間種が「異形種狩り」を掲げて異業種プレイヤーPKして回るらしい。

 

 ワールドエネミーとかレイドボス、新ダンジョンもジャンジャン実装されるはずだし、やっぱりもっと強くならなきゃなぁー

 アインズ・ウール・ゴウンの人達と連携も取りたいし

 

 

 あれから一週間レベリングをひたすら続け、仕事以外の全ての時間ユグドラシルに費やした(マジ)

 流石に身体にガタが来て、毎日七時間睡眠しっかり取るようにしたが、それでもダイブを止めることはなかった。

「ヤベェよ……もうレベルが100になっちまったよ……」

 気付いたら自身のレベルは100になっていた。その期間僅か2ヶ月間。

「途中で四万課金して出た指輪のせいだなこりゃ」

 

 

 1ヶ月前、ユグドラシルの運営は何を思ったかガチャ廃課金勢に《木彫りの指輪》というアイテムをばら撒いたのだ。

 

 その指輪の効果は経験値倍加(永続)という物。

 

 これにより廃課金勢と無課金勢の差が広がったことから、効果が30分となってレイド報酬になった。

 

 しかし、それは一昨日前に決まった話。

 これまで間有はずっとこの指輪を嵌めながらレベリングを続けた為か、

 もう100レベルにまで到達してしまっていたのだ! 

 

 

 ────

 プレイヤー名

『シャボンヌ』様

 おめでとうございます。

 あなたは「Yggdrasil」内で1番目の超越者(レベル100到達者)となりました。

 記念として特別に、ワールドアイテム《竜神玉》を贈呈します。

 

 Yggdrasil運営一同より

 ────

 ……これマジ? ……

 


 

 さらに3ヶ月が経ち、異業種狩りのプレイヤーがちらほら見え始めた頃、

 自分がいるミズガルズで公式大会が開催されるお知らせが届いた。

 参加者はミズガルズの全プレイヤー。

 

 ちなみにその頃僕はスキル「画竜点睛」を習得して浮かれていた。

 

 1日に3回だけ使えるスキルであり、効果は

 ・自身の全ての能力値が倍加

 ・使用時30%の確率で相手は5レベル相当能力値ダウン

 という破格の物。

 自身のスキル強化アイテムと併用すれば、90%の確率で相手に致命的なデバフをかけられる。

 

 大会前にはわざといらない職業クラスを削り調整したり、

 手に入れた装備の組み合わせをしたりした。

 

 公式大会当日

 結果から言うと僕の圧勝。

 スキル「画竜点睛」が準決勝戦、決勝戦の大事な場面で上手く発動し、

 相手がデバフに戸惑ってる間に課金アイテムで攻撃力倍加した連撃を叩き込んで、

 そのまま相手を押し込み勝利! 

 

 こうして僕は念願のワールドチャンピオン・ミズガルズとなった。

 

《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》を手に入れた時はマジで発狂した。

 うん、ご近所さんに何かあったの? って聞かれた時はめっちゃ恥ずかしかったわ。

 

 かくして僕は名実共にユグドラシル内でも三指に入る程の実力を持ったのだった……

 


 

 スキル「画竜点睛」は、

 竜種のプレイヤーが『竜神玉』を半年間持つことで習得できるスキル、という設定です。

 

 シャボンヌの由来は「シャヴァンヌ湖の白き竜」からきております。

 それにちなんでアバターも真っ白です。

 次回オリ主無双します。

 



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4.さらば、異業種狩り

 ユグドラシル開始から4か月

 

 

 その頃にはもう異業種狩りの悪質な人間種プレイヤーが各地で出没した。

 

 奴等の言い分としては、

「見た目怪物の異業種襲っても何ら問題無くね?」

「雑魚モンとうっかり間違えたわwwwごめ☆」

 

 白々しいにも程がある。

 

 襲撃方法も卑劣極まりなく、隠密系スキル持ちが背後から奇襲した後直ぐに全員で周囲を塞ぎ、一人の異業種を大人数で叩くという物が主流だった。

 

 僕は異業種プレイヤーを異業種狩りから守ることにした。

 異業種狩りから恨まれようが、異業種プレイヤーに虐めのような仕打ちをする奴らを黙って見過ごす訳にはいかない。

 

 僕は弱さが嫌いになっていた。

 

 

「ありがとうございます! 助かりました!」

 

 助けた何人かのプレイヤーは僕に付いていこうとしてくるが、僕はソロプレイヤーなので、丁寧にお断りしている。

 

 いつの間にか異業種狩りからは「ミズヘルムの白い悪魔」と呼ばれたり、助けた異業種プレイヤーの人達が「白竜さんを助け隊」というグループを掲示板で作ってたりした。

 ぶっちゃけどうでも良いけど。助けた人の好意は無下にしてはいけないな、うん。

 

 僕は着々とPKK(プレイヤーキラーキル)すると同時に、名声が上がっていった……

 

 

 僕に挑みに来る馬鹿もチラホラ出没した。

 

 例えば、

 ある日のこと

 レイドボスの単機撃破に成功した後、回復して次の場所へ向かおうとしていた時だった。

 

「公式大会ではよくもやってくれたなぁ??? あの時の恨み、まだ忘れてねぇぜぇ……? この前の分もまとめて倒させて貰うぜェ!」

 

「レイドボス倒したところ悪いんだけど〜消えてね☆」

 

「ちょwwwwお前確信犯やんwww」

 

 いきなり三人の人間種プレイヤーに囲まれた。

 こっちがレイドボス戦で疲弊しているところを……でもまだスキルの使用回数は残ってるしHP満タンにしたばっかだし……

 ……さっさと終『ロンギヌス! 奴を消せ!』わ……ファ⁉︎

 

 敵プレイヤーの持つ槍が突如光を放ち、僕に迫る。

 

「やったか?」

 

「おい、馬鹿! それ死亡フラグやぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は滅びぬ、何度でも蘇るさ(ム◯カ風)」

 

「「アイエー!?!?!! ナンデ?! 何故そっちにもワール「終わりだ、次元断切(ワールドブレイク)ザシュッ」ドォオオォォォ」」

 

 こいつら、ロンギヌスで自爆特攻仕掛けようとしてきやがった。《竜神玉》無かったらマジでヤバかったよ。

 助かった、運営。

 

「さて、残りはお前だけだが、覚悟はいいな?」

 

「ちょっ待っ」ザシュ

 

 相手が言い終わらない内に加速アイテムを発動し、相手との距離を詰めて連続で肉薄する。

 

ガアアアアアア! 覚えてろ……」

 

 いかにも小者適役がいいそうな台詞を残して消える異業種狩り。

 この人前もやられに来てたよね? 

 ロンギヌスを報復に使うとは思わなかったけど

 

 

 ツー訳で《ロンギヌス》ゲットだぜ! やべーよ最初っから20の内の一つ取っちゃったよ(震え)

 

 その後も度々馬鹿な異業種狩りの連中が絡んでくるので返り討ちにしていたら、

 ワールドアイテム《隠遁者の布衣》をゲットした。

 

 どうやら隠密系の忍者や暗殺者(アサシン)向けのアイテムっぽいが一応取っとこう。

 

 これでワールドアイテム3つ持ちになった。やったぜ☆

 個人で三つ所有は凄い方なんじゃないか? 

 この調子でPKKしてワールド集め頑張るぞぃ! 

 


 次回やっとぼっちは友を見つけます(笑)

 



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5.九曜の世界喰い 前編

 聖職者殺しの槍(ロンギヌス)奪取事件から1年半の時が経った。

 

 

 PKKやレイド戦を繰り返すごとに、どんどん集まるデータクリスタルとユグドラシル金貨。

 

 レア素材も中々溜まってきたので、神器級アイテムを新たに三個作ったり、課金くじで0.000075%と言われた黒鱗竜(ブラックスケイルドラゴン)が出るまで140万位課金した。

 最初からガチビルドのレベル100NPCで、竜騎士のクラスにより使役可能だった為、とっっっっても欲しかったのだ。

 

 また、ミズガルズにあるヘルム峡谷で、

 防壁都市ホーンバーグを発見した為、そこを拠点とすることに。

 ただ、この時はまだギルド拠点ではなく、ただリスボーン地点としただけだが。

 

 ────

 

 一週間後

 

 これまでの最上級の鎧と聖遺物級(レリック)の盾を外し、

白青磁の鎧(ウェイサー・セラドンパンツァー)

白竜の鱗(ヴァイスドラッヘシルト)

 の二つを装備する。

 

 デザインは自分なりに力を入れて、自分の中の竜騎士に寄せて作った。

 

 二つの剣

《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》と《ドラコグリード・ソード》

 を背負い、防壁都市ホーンバーグを後にする。

 今からどこに行くかって? 

 

 超ぶっ壊れワールドエネミーの所だぉっ

(´ω`)ノ=3

 


 

《視点変更◯◯◯◯サイド》

 

 一週間前

 

「はぁ、疲れたなぁ」

 俺は防毒マスクを付けながら、暗澹とした空の下、薄汚れたマンション群を速歩していた。

「もうこんな時間か。皆さん、すいません。今日遅れます。ギルド長なのに……」

 

 有毒ガスのせいで、少しでも走れば呼吸が苦しくなる為に、早歩きしか出来ない。

 心の中で何処かもどかしさを感じつつ、安っぽい腕時計を覗き、今の時刻を確認する。

 

 DMMO-RPG『Yggdrasil(ユグドラシル)

 俺の青春といってもいいこのゲーム。ゲーム内での俺は、異業種ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長である。

 

 結成時は9人で、「ナインズ・オウン・ゴール」と名乗っていた頃から着々と成長し、今では41人からなる異業種ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」。

 41人の個性的な人達と一緒に異業種狩りを殲滅したり、ぷにっとさんの楽々PK術を基に敵対ギルドを叩いたり、レイドボスを皆で倒したり……

 今思えば、この2年間はとても波乱万丈だったなぁ(笑)

 そう思いながら家の扉を開ける。

 やばいなぁ〜今日重大発表があるから、集まって下さいってメール打ったの俺だし、皆怒ってるよね〜(汗)

 おし、読み込み完了! 直ぐダイブ! 

 

「皆さん! 遅れてすいません!」

 

 

「おっモモンガさん、待ってましたよ。それじゃあ始めますか。」

 

「モモンガさん! 聞いてくださいよ〜ついこの間買った新作のエロゲ、触手モノで楽しみにしてたのにロリ主人公の声が姉ちゃ「黙れ愚弟。お前のPCのデータ、バックアップごと消すぞ」……はい。」

 

「モモンガさん、待ってましたよ。仕事等で困っているのでしたら、私で良ければ相談に乗りますよ」

 

「ケッ、お前はアホみてーに正義正義連呼するうるせえポリ公だろーが。モモンガさんと職種チゲーのにまともに相談できるわけねぇだろ。モモンガさん、辛いなら辛いって言ってくれ」

 

「ウルベルトさんも人のこと言えないと思いますよ。毎回悪を豪語しているじゃないですか。モモンガさん、ボ……私も相談に乗りますよ」

 

「モモンガさ〜ん!! 俺新しいゴーレム作りましたよ!」

 

「るし☆ふぁ〜お前いい加減許可とれよ!! 建やんも何かコイツに言ってくれ〜!」

 

「いや、弍式ってハーフゴーレムやん。仲間が増えると思ったんだが……」

 

「しまった……メイド達呼べば良かった……」

 

「同感です……ソリュシャン見ながら寝落ちしたか 」

 

「ヘロヘロさん? ヘロヘロさぁ──ーん!? 起きろー! まだギルド会議始まってもいないぞ──!!」

 

「ホワイトブリムさん、源四郎さん、ちょっと待っててくれ。プレアデスに召集かけるから」

 

「「メコン川さんあり!」」

 

「皆さん……」

 ああ……そうだ……やっぱりこの人たちは最高の仲間だ……掛け替えの無い友人達だ……

 アインズ・ウール・ゴウンの皆、

 

「ありがとう、ございます、皆さん……」

 

「あれ? モモンガさん泣いてる?」

 

「泣いてませんよ、大丈夫です」

 内心泣きたくなりましたけれど。

 

「ところで、運営から何かイベント告知みたいなのありましたか?」

 

「モモンガさん、運営からのメッセを見た方が早い」

 

「分かりましたタブラさん。すぐ開きますね。」

 

 ────

 

〜世界樹ユグドラシルは、破滅の一途を辿っていた〜

〜残る九つの葉を『九曜の世界喰い』から守る為、樹は九つの葉の結界を一時的に破り、葉の落とし子達に全てを託した〜

〜選ばれし者達よ。ユグドラシルを喰らう化け物を倒し、九つの世界に安寧を取り戻すのだ〜

 

 遂に初の【ワールドエネミー】『九曜の世界喰い』が解禁! 

 結界が破れた今、九つの世界は今一度一つとなる。一丸となって、『九曜の世界喰い』を倒そう! 

 

 ────

 

「……『九曜の世界喰い』ですか……私達でこれを倒そうということですね?」

 

「そうです! モモンガさん、早速とある人間種ギルドの人達が36で特攻していったのですが、物の見事に返り討ちにされたようです」

 

「えっ、その人達のレベルは?」

 

「全員100レベルです」

 

「ファッ!? クソ運営気が狂ったか?!」

 

「まったくです。ただ、このギルドはワールドアイテムをまだ持っていなかったようで、一度も使っていません。」

 

「装備もせいぜい最高で伝説級(レジェンド)、言っては難ですが、とても貧弱ですね」

 

「しかし油断は出来ません。何せ100レベルプレイヤー36人を倒す程の奴なんですからね」

 

「一応作戦は立てていますが、いかんせん不確定要素が多すぎて……」

 

「どんな作戦何ですか?」

 

「それは……」

 


 次回と言ったな、あれは嘘だ(バァーン)

 すいません、次回やっとご対面です。

 

 防壁都市ホーンバーグは指輪物語から、

 ヘルム峡谷も指輪物語を参考にしています。

 



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6.九曜の世界喰い 後編

 今回少し長めです。


 

「うへぁ〜でっけ〜」

 

 こんにちは、間有ことシャボンヌです。今『九曜の世界喰い』の前まで来ています。

 

 何なんだよコレ! 

 

 そこらのレイドボスより強い程度だと思ってたけど、格がそもそも違いすぎる!! 

 感じる威圧感が違うわ! 

 クソ運営め、こんなチート染みたキャラ作りやがって! (ブーメランぶっ刺さり)

 

 ぶっちゃけ誰かいないとめっちゃキツい! 

 こうなったら課金アイテムとワールドアイテムの暴力を……

 おや? あそこに沢山の人影が……

 行ってみよう、

 

「おーいそこの人たち〜! 一緒にあんなデカ芋虫倒しましょ〜!」

 


《アインズ・ウール・ゴウンサイド》

 

「うへ〜やっぱでっか!」

 

 まだ世界樹ユグドラシルからだいぶ距離が開けている(ゲーム内では)のに、もう姿見えちゃっているよ〜(白目)

 

「ほんと良く作られているな〜」

 

「こういう無駄なところに拘るところがやっぱあの運営だな〜」

 

「というかあれヤバくね?」

 

「流石に俺たちでも厳しい戦いになるな」

 

「皆さん、準備はいいですか?」

 

「たっちさん、それ俺の台詞……」

 

「あぁ、すみませんでした」

 

「あっいや、別にいいですよ! 気にしないで下さい。さて、たっちさん、ウルベルトさん、初撃でどれだけ削れそうですか?」

 

「奴がどう動くかにもよりますが、私はだいたい15%程ですね」

 

「俺の『大厄災(グランドカタストロフ)』だとざっと16%位だろう」

 

「ウルベルトさん、今は張り合う時間じゃ……「やっぱ15%だな!」……はぁ、つまり二人合わせて30%と言ったところですか」

 

「初手で半分位削らないと、どんどん回復されます。できれば短期決戦がしたいのですが……」

 

「今まだメンバーが揃っていない状態で特攻しても返り討ちに遭うだけだ」

 

「誰か強い人来ないかな〜」

 

「まぁもうすぐ目的地ですし、そこでしばらく待ちましょう」

 

「どうかな〜そう都合良く強い奴なん「おーいそこの人達〜!」て……おいおい嘘だろ?」

 


《シャボンヌサイド》

 

 なんと! なんとなんとなんと! 

 アインズ・ウール・ゴウンの方々でしたよ!! 

 めっちゃ興奮ヤバイやばい心臓バクバク言っとる 

 とととりあえずおおちけつ、おっおち、おちついて

 

「今回は是非ともよろしくお願いしましゅっ」あちゃー嚙んじったわ

 

「こちらこそよろしくお願いします、シャボンヌさん 」

 

 顎がとんがった骨が前開けたローブ着てお腹に赤い球付けていかにも魔王って容貌のアンデッドが、こちらに笑顔のアイコン向けてる…………

 

 

 モモンガさんだ────!! 

 

 

「取り敢えずは、前の()()ですかねー」

 

「そうですね、あれどうにかしないと……」

 

「あれに初撃でどの位ダメージ入れられそうですか?」

 

「うーん、スキル併用して15%、アイテムの効果加味すれば20%チョイ位だと」

 

「勝った……!」バタッ

「ぷにっとさーん!」

 

 ──────

 ──

 

「では、作戦通りにお願いしますよ!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

 大まかに作戦を説明するぜ! 

 

 まずムービー終了前までにモモンガさんなどの補助魔法が扱える魔法詠唱者(マジックキャスター)組が

 味方全体にバフ効果を付与する。

 特に火力組(ウルベルトさん、たっちさん、シャボンヌ、武人建御雷さん、弐式炎雷さん)には最大限の速度上昇、攻撃付与をしてくれるらしい。

 背後からペロロンチーノさんやタブラさん達がゲイ・ボウや魔法での援護射撃を、

 壁役のぶくぶく茶釜さんやヘロヘロさん、ばりあぶる・たりすまんさん達が時間稼ぎを、

 回復役にはやまいこさん達が付き、

 指揮官はぷにっと萌えさんにベルリバーさんが担当。

 ぷにっとさんが

「私はおもにPKかPKKを担当しているので、ワールドエネミー相手だと上手く指示できるか不安」

 と言っていたため、急遽ベルリバーさんがサポートに回った感じだ。

 

「緊張しますね〜」

 

「はい、同感です。しっかり気を引き締め無いと……!」

 

「皆さん、ムービーが始まります! 補助を開始して下さい!」

 前を見ると、デカ芋虫がこちらを睨めつけ、飛び掛かる態勢を取っていた。

 

魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)飛行(フライ)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)

魔法詠唱者の祝福(ブレス・オブ・マジックキャスター)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)

『|光輝赤の体《ボディ・オブ・イファルジェントヘリオドール》』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)

『|光輝青の体《ボディ・オブ・イファルジェントアクアマリン》』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)

光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)生命力持続回復(リ・ジェネレート)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)鎧強化(リーンフォース・アーマー)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)無限障壁(インフィニティ・ウォール)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)生命の精髄(ライフ・エッセンス)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)自由(フリーダム)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)看破(シースルー)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)超常直感(パラノーマル・イントゥイジョン)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)竜の力(ドラゴニックパワー)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)上位硬化(グレーター・ハーデニング)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)不屈(インドミタビリティ)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)上位幸運(グレーターラック)』、

 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)吸収(アブソリューション)』、

 |魔法三重最強化・爆撃地雷《トリプレットマキシマイズマジック・エクスプロードマイン》、残り五秒前! 

 行きますよ、皆さん!」

 巨大な芋虫がこちらに突っ込んでくる! 

 

「「「「おう! (任せて!)」」」」

 

「スキル『画竜点睛(ガリョウテンセイ)』発動。では、いざ!」

 

 まず初動で動いたのは俺とたっちさんだった。

 それぞれワールドチャンピオン専用武器を構え、九曜の世界喰いの攻撃を避けると同時にスキルを発動させる。

 

「「『次元断切(ワールドブレイク)』!!」」

 

 次いで後方からウルベルトさんとモモンガさんの固有スキルが飛ぶ。

 

「『大厄災(グランドカタストロフ)』!」

 

「『The goal of all life is Death』からの『上位転移(グレーター・テレポーテーション)』!」

 

「総員、撤退!」

 

 モモンガさんのスキルが発動し、効果範囲にいた九曜の世界喰いのHPが20%程消える。

 

「残り20%とちょっと!」

 

「ぅおおおお! 明王コンビの超連撃だ! 喰らいやがれ!」

 

素戔嗚(スサノヲ)による一閃、相手は死……耐えられたぁ──!!!」

 

「弍式さんバックバック! 弟、今!」

 

「『超連射・五月雨打ち』!」

 

グオオオオオ! 

 

「来る! 最後っ屁だ!」

 

「モモンガさん、()()使って!」

 

「わかりました!」

 モモンガさんの腹部の赤い球が光り輝く。

「こちらも切り札を出しましょう、《竜神玉》発動」

 手の内に取り出した玉の効果を発動させる。

「念の為、《真なる無(ギンヌンガガプ)》!」

 破壊のエネルギーに満ちた青白い光線が、

 九曜の世界喰いに向かう! 

 

 オオアアアアアアア! 

 ボロボロになった芋虫の口から9色の怪光線が放たれる。それがワールドアイテム達の光とぶつかる……

 

「残ったスキル全て使いましょう!」

 

「オケです!」「終わりにしてやる」「分かりました!」

 エネルギーの衝突地点へと更なる追撃を掛けるべく、動く。

 

「「『次元断切(ワールドブレイク)!』」」

 

「最後の『大厄災(グランドカタストロフ)』!」

 

「あまり意味ないけど『溶解(ディソリューション)』!」

 

「俺のとっておきだぁ……『陽光連……(ホーリーラ……)

 各人の攻撃とワールドアイテムからの光が合わさり、強大な光線となって芋虫の最後っ屁を打ち滅ぼす。

 

「やりましたね!」

 

「ああ、これで『九曜の世界喰い』撃破、だな」

 

「とどめ刺したらなんか出ましたよ!」

 

「何?! 何がドロップしたの?!」

 

「多分ワールドアイテムですね。それも4個とは‥」

 

「『上位道具鑑定(オール・アプレイザム・マジックアイテム)』、うん、間違いないです。これは報酬ですね。うちのギルドと貴方で山分けしましょう」

 

「えっいいんですか?!」

 

「構いませんよ、貴方のお陰で早く倒せましたし、今回はそのお礼です」

 

「ありがとうございます! ……あっもしよろしかったら僕とフレンド登録してくれませんか? フレンドが0なんで……

 

「……いいですよー」(最後の台詞は聞かなかったことにしよー)

 

「ほんとですか! では早速フレンドリストに……」

 

「ご一緒させて頂いたのも何かの縁、もし良かったら、ウチのギルドに入りませんか? ちょっと癖強いですけど」

 

「ちょっとどころじゃないような……」

「ん、今何か言いましたか? ヘロヘロさん」

 

「あ、いや〜ハハ、何も言ってませんよ〜(汗)何言ってるんですか〜」

 

「すいませんが、()はまだちょっと……」

 

「ヘロヘロさん!」

 

「あ、別にヘロヘロさんが言ったせいでは無くて、単純に僕のプレイスタイルの問題です」「良かった〜」

 

「僕は長らくソロでやって来たので、どうせなら終わりまでソロプレイを貫こうと思いまして」

 

「そうですか……」

 

「でもあなた方はとても面白いですし、何より素晴らしいチームだと思いますよ。モモンガさん、良い仲間を持ちましたね」

 

「ありがとうございます。では……」

 

「あっでもギルドどんなのか見たいです! 絶対にギルド内のことを明かさないって約束しますから」

 

「あ、ああそれなら多分OKですよ。大丈夫ですよね、皆さん」

 

「ま、バラしたけりゃバラしな。その代わり侵入した報いとして、貴様に本当の『悪』を教えてくれるわ」

 

「侵入者は大歓迎ですよー、武器とかデータクリスタルとか大量に手に入るので」

 

「一応言っておくと、私達を敵に回したら、レベルダウンとアイテム消失は覚悟しておいて下さい」

 

「しませんって、する気も無いですよ。」

 

「まぁいつでも気軽に遊びに来て下さい。歓迎しますよ」

 

「ありがとうございます〜」

 

「ではまた、お会いしましょう。Ich hoffe, es geht dir gut !」

 

「そちらこそお元気で!」

 

「何故分かったし!」

 

「僕こう見えてドイツ語得意なんですよ「ッシャー!!」……モモンガさん?」

 

「失礼、取り乱しましたね。ではまたmein freund」

 

「あ、ハイ」

 若かりし頃のモモンガさんか〜(ち)

 時が経ったらこれをネタにいじってやろ

 

「今回はどうもありがとうございました。またお会いしましょう!」

 

「シャボンさんってどんなプレイが好きなんで「弟ォォォオオオオオオ!」ギャッッフゥゥアアアアアア! 姉ちゃん! 痛い! 痛いから! 

 

「うわぁ、フレンドリーファイヤーを回避して味方にダメージ与えるクソ装備なんか欲しがってたのはやっぱり……ウチのアホがすいません」

 

「全然大丈夫ですよー。やっぱ面白いですね」

 

「「「アハハハ……」」」

 

 ────

 

 そんなこんなでアインズ・ウール・ゴウンの人と仲良くなったぜ! 

 向こうもやっぱりこっちのこと認識してたようだったなー

 同じ異形種狩り絶対コ◯スマンであったり、異形種でプレイしていることもやっぱり好印象になったかな。

 というか『五行相克』と『ユグドラシル・リーフ』を貰っちゃったよ! あっちは『ベストラの涙』と『ヒュギエイアの杯』貰っていたけど。

 

 ────

 早速『五行相克』使って、防壁都市を何処へでも移動できるようにし、同時期にギルド「七つの竜星」拠点として正式に個人所有が認められた。

 クエスト攻略に多少時間はかかったものの、これで自分のNPCとギルド武器を持てるようになった! 

 ちなみにギルド結成後はすぐにアインズ・ウール・ゴウンの皆様にお披露目した。

 

 POPモンスターはもちろん竜! 

 無限POPは緑龍(グリーンドラゴン)やら骨の竜(スケリトル・ドラゴン)やら氷の魔竜やら……

 転移後の世界では絶望的なメンツで草w

 影の竜(シャドウドラゴン)竜の血縁(ドラゴン・キン)とかも防衛NPCとしてPOPします! 

 そこに移動阻害系の罠を大量に仕掛け、

 極め付けは特製ドラゴン騎士団。レベル80後半で作りました! 後は残った作成可能経験値300をどう埋めようかな〜

 


 ワールドアイテム「ベストラの涙」は、

 

 原作でアインズ・ウール・ゴウン所有の11個のワールドアイテムの一つであり、

 20の内の一つでもある、シャルティアの洗脳を解くことが出来るアイテム

 

 であり、名前はオーディン神の母の名前からです。



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7.最強を求めて

 九曜の世界喰い戦以降、僕はやることが目白押しだった。

 

 まず日課のPKK、

 次にアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点「ナザリック地下大墳墓」へ週一回遊びに行くこと

 あとレイドボスを倒しに行くこと

 たまにワールドエネミー倒しに行ったり、敵対してくるギルドを潰したり……

 

 そしてLv100NPCの作成である。

 

 1人位は強キャラを作りたかったから、丁度良かった。

 何せ転移後の世界に僕のような「イレギュラー」な存在がいたらたまったものじゃない。

 そいつらにも負けないような存在を作らなければ。

 

 種族はもう決まっている。

《竜神玉》の効果で作ることが出来る限定種族(クラス)神龍(シェンロン)

 最終種族スキルが

 ・全竜種の召喚、使役可能

 ・《竜神玉》所有時木・水属性以外の全属性に完全耐性

 ・全攻撃に聖属性付与

 ・星幽界の身体(アストラル体)に一時的になることが出来、この間精神攻撃防御が0となる代わりにスキル無効、全属性攻撃完全無効、刺突完全無効、殴打完全無効、斬撃完全無効、攻撃力・移動速度倍加となる

 

 めっちゃぶっ壊れている。

 運営ヤバない? 

 短期決戦型でPvP最強型にしようと思う。

 じゃあ、『NPC作成』ポチッとな! 

 性別は〜男2人は流石にきついので女にしよっと、

 名前? う〜んと、ここは「ティルル」でいっかな? 

 う〜ん、流石に名字とか付けてあげないと〜、ティルルに合う名字……

 ティルル・ヴィリー、しっくりこない! 

 ティルル・ユリアン……微妙! 

 ティルル・フローレンス……フローレンス! よし決まり! 

 ミドルネームは適当にJan(ヤン)のJにしまして、

ティルル・J・フローレンス』で! 

 よし、早速レベリングに行こうか

 

 

「『付き従え』。うん、ちゃんとコマンドも作動するな」

 

 

 さて、行きますか。PKK(レベリング)

 に。

 

 ────ー

 敵対してきた異形種狩り(お馬鹿さん)を殲滅し、とどめをティルルに譲って目当ての最奥部まで来た。

 

 

「『七つの竜星』……お前は今まで殺めてきた同胞達に誓い、ここで倒させてもらう!」

 

 

「悪いが、お前らから喧嘩売って来ただろ? 自業自得だと思って受け入れな」

 

 

「……確かにウチのギルドの一人を抑えられなかったことは俺達の責任だ。だが、ギルド長として! ギルドの仲間を傷つけた者を許す訳がないだろ!」

 

 

「ん〜、で? この場でPvPするのか?」

 

 

「是非も無し」

 

 

「オッケー。覚悟しな。敗者は全てを失うぜ?」

 

 

「それはお互い様だ! 《無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)》!」

 

 

「それもそうか、《隠遁者の布衣(ハーミッツローブ)》」

 

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)看破(シースルー)』……何? 何処行った?!」

 

 

 相手が切り札っぽい物を繰り出してきたので、こっちは切り札の一つを繰り出す。

 

 

「まぁ良い。残った奴を先に潰すか」

 

 

 あーあ、馬鹿だな〜。

 ティルルにアストラル体になるように指示しながら、僕は相手の背後に回る。

 

 

「超位魔法『失墜する天空(フォールンダウン)』からの課金アイテム! これで終わりだぁ!」

 

 

 ティルルの頭上から超高熱物体が降り注ぎ、彼女の全身を白く燃やし尽くす

 筈だった……

 

 

「ゲハァ!? 何故消えない?! 何故?!」

 

 

 超位魔法を放って完全無防備の状態だったお相手に、ティルルの容赦無き攻撃が彼を襲う! 

 

 

「ぐぅ、なめやがってェェエエエ! 魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)現断(リアリティスラッシュ)』!!」

 

 

「『次元断切(ワールドブレイク)』! あとはティルルに任せた、『倒せ』。さて、最後に一つ教えてやろう。彼女にはどんな攻撃も効かない。たとえそれが、10位階魔法でも、超位魔法であったとしても、だ」

 

 

「そ、そんなのに勝てる訳……」

 

 

「そう、君は最初から『詰んで』いたのさ。お前が仲間を止められなかった時点でな」

 

 

 相手は光となって消えた。

 ギルド内が占拠されたとしてもまた復活出来るよう、リスボーン地点を外部に設置し直していたのだろう。

()()()の長よ、また会おう。

 

 この後彼は打倒シャボンヌを掲げ、かつての仲間達と共に新たなギルドを再結成する。

 復讐を果たす為に。

 最終日までPKを繰り返し、新たなアイテムを携え、各世界を駆けずり回る。

 最終日に仲間と悔し涙を流している最中、密かに異世界へ転移し、転移先でシャボンヌ転移を待ちながら、現地の竜達と対峙することとなるのだが、それはまた別の話。

 

 そこら中に散らばるアイテム達を回収した後、この部屋の奥地に刺さる、木の蔦がかかる剣を見やる。

 

 

「これがここのギルド武器ね、ティルル、『壊せ』」

 

 

「『竜爪』」

 

 

 ティルルのスキルがギルド武器を砕き、辺りが一瞬眩く光った後で消える。

 かくして、天空のギルドはこの日を持って消滅した。

 

 

「宝物殿に行く前に、ティルルのステータス確認だな〜」

 

 

 そう、ギルド武器を破壊することにより、レアな職業クラスを手に入れることが出来るのだ。

 

 

「え〜と何々? 『破戒者(コマンド・ブレーカー)』ね、職業特性が……格上のギルド武器を新たに7個壊すと『破壊人(ヴァンデル)』に昇格する……破壊人強くね?」

 

 

『破壊人』とは、かの『ワールドチャンピオン』を凌ぐぶっ壊れ職業であり、パッシブスキルに自分の攻撃に相手武器へのダメージを付与するもの、相手が受けるダメージ量が、自身の与えたダメージ量×1.5されるというものの二つがある。

 最終職業スキルとして、一人の相手の装備を全て破壊しつつ、相手のHP3分の1を削る《全破壊(オールブレイク)》が1日2回使えるなど、

 とにかくぶっ壊れている。

 

 これはより多くのギルドを潰せということか、面白い! 

 

 ガチガチのガチビルドにして、最強のNPCを作ってやるぜい! 

 


 ただでさえ主人公がチート過ぎるというのに、もっとチート作って大丈夫かな〜

 

 きっと転移後の竜王様達なら何とかしてくれるよね! 

 

 ちなみにティルルの元ネタは遊戯王のカード、「ドラゴンメイド・ティルル」から来ています。姿もそのまんまです。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 2020/06/24 イメージ画です。描いてみました。

 

 



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8.突撃!初めてのなざりっく! 前編

 天空城崩壊後4か月が経った。

 

 アースガルズへの出張(ギルド潰し)を終え、再びミズガルズに帰った僕は、

 ヘルヘイムのナザリックに行く為の準備をしている。

 あの後計7個のギルドを壊滅させた。

 その中には上位30位以内のギルドも何箇所かあったらしい。

 

 

 ヤッベ! やり過ぎたァ! 

 

 知らぬ間にユグドラシル掲示板の一角には「竜星叩き落とスレ」が出来上がっており、300人近くがウチのギルドを潰そうと目論んでいるらしい。

 

 アインズ・ウール・ゴウンの1500人よりはマシか。

 そうそう、一方でその

「1500人に攻められる予定」のアインズ・ウール・ゴウンはというと、何と2ch連合に喧嘩売られて、逆に報復したらしいが……

 今の2ch連合って確かギルド構成員が三千人の超大型ギルドやん! 

 1500どころでは無い状態なんですけど! 

 モモンガさん達大丈夫かな〜

 加勢しに行くことも視野に入れとかないとなぁ。

 取り敢えず今日は最強NPC爆誕を報告しなくては! 

 

 


《モモンガサイド》

 

 今日は久しぶりにシャボンヌさんが来るらしい。

 今朝メールを確認してところ、一通の宛先不明のメールが届いていた。そこには

 

 〝今日そっちにお伺いします。僕の娘を紹介したいので

 byシャボンヌ〟

 

 と書かれていた。

 

 ……娘? 

 あの人娘さんいたのか〜知らなかったなー。

 って言うことは既婚者? あの人リア充? 

 嫉妬マスク持ってるって言ってたじゃないですか! 注)言ってないです。

 仲間に裏切られた気分。(←勝手な妄想です。)

 まあ、私怨で友人を一人失うなんてことはしたくはないな。

 

 ────

 

 この旨を他のギルドメンバーに伝えた時は、皆驚いてすぐ歓迎の準備を手伝ってくれた。(嫉妬マスク同盟陣以外は……)

 

 シャボンヌさんは不親切にも到着時刻を教えてくれなかった。あの野郎〜! 

 いつ来るか分からない為、待つこと五時間。

 流石に待ちくたびれて、PKに行こうとした時、『伝言(メッセージ)』が届いた。

 

『お久ーモモンガさん、元気してました? もうじき着きますよー』

 

『シャボンヌさん! ちょっと! いつ来るかくらいちゃんと書いておいて欲しかったんですけど……』

 

『すいません! ワールド間の移動準備に手間取っていたので……』

 

『まぁ別に良いですよ。ところでその、娘さんというのは?』

 

『俺が4か月丸々費やして作った、かなりの自信作ですよー』

 

『えっ、まさかNPCなんですか?!』

 

『そうですけど……あっ、あ〜これはやらかしたかも。メールの娘というのを……』

 

『シャボンヌさん自身の娘さんかと』

 

『やっぱりか〜、ギルメンの方々にはどう伝えていますか?』

 

『シャボンヌさんが娘を連れて来るそうですと』

 

『まずいな、十中八九誤解されてるじゃん』

 

『次からはちゃんとメール書いてください』

 

『ハイ……』

 

 自分のNPCに娘と……まいったなぁ

 メンバーにどう伝えれば……

 

 茶釜さん始めとする女性陣はノリノリで「お姉ちゃんが案内するからね〜」とか妄想の世界に入ってるし、

 ペロロンチーノさんはさっきからずっと「ロリですかね! ロリですよね!! Yesロリータ、Noタッチ!!!」という調子だし、

 ウルベルトさんを筆頭とした嫉妬マスク同盟の男達は「おのれ〜」とか「裏切りやがって〜」とか呪詛(リアル・カースト)唱えちゃってるし、

 ごめん! 頑張って! シャボンヌさん! 

 


 

 やっと着いたけど、ちゃんと誤解解かなきゃな〜

 お、入口前に多くの人影が。出迎えにきてくれたのかな? 

「お久しぶりですねーシャボンヌさん、ところで、ロリが見当たりませんが」

 

「えーと、どういうことですか?」

 

「モモンガさんにはさっき説明したんですが、娘というのは自分が手掛けたNPCのことでして……」

 

「「「紛らわしいわ!」」」

 

「はい……スイマセン」

 

 ────

 

 一騒動あったが、初ナザリックだぜい! 先ずは第一階層を、罠掻い潜りながら進み、次に第二階層のシャルティアのいる

【死蝋玄室】へ。

 中は案外広く、そして薄暗い。

 大きな寝台と、全てが黒色美の豪華な家具が室内を占めている。

 室内にテーブルランプの赤い光が仄かに広がる。

 ここの案内役であるペロロンチーノさんの

「ようこそ、我が()()へ。」

 という台詞を完全無視(パーフェクト・スルー)しながら、部屋の中心に佇む一人の真祖の吸血鬼(トゥルー・ヴァンパイア)に向かう。

 

「この()がペロロンチーノさんの嫁の……」

 

「そう! 俺の愛すべき嫁にして、俺の全て(性的趣向)が詰まった吸血鬼少女! シャルティア・ブラットフォールン人呼んでシャルティア! いやぁ〜シャルティアはロリ処女美少女でありながら性に開放的だというまさに奇跡! 奇跡の存在で、その性的趣向はレズから死体愛好家(ネクロフィリア)まで幅広いジャンル! 両刀で男でも女「も、もういいです、魅力は十分伝わりましたから!」……後、俺の嫁が魅力的だからって、手を出さないで下さいよ! あっでも男2人が女の子を組み伏せた形の3Pも……」

 

「話は変わりますが、シャルティアちゃんとの結婚式は? 嫁と豪語しているなら、まさかやっていますよねー???」

 ペロロンチーノさんが色々と暴走しそうだったので、途中で話題を変える。

 

「なんでこった! 結婚式挙げてない!」

 

「ぶくぶく茶釜さんもたっちさんも、ゲームだから許してくれると思いますよ」

 

「え〜そうかな〜?」

 

「それか僕達だけで秘密裏に行うとか」

 

「う〜ん、どうしよ」

 

「全面協力しますよ? モモンガさんも分かってくれると思うし」

 

「じゃあ、やりますか! シャルティアが俺の1番に……あ、言ったからには、ちゃんと協力してもらいますからね!」

 

「じゃあ僕も式に参加させてくださいよ。約束です」

 

「勿論です! やるなら盛大にしなきゃなぁ……」

 苦笑しながらもう一度吸血鬼娘の顔を覗き込む。

 

「初めまして、僕はシャボンヌ。どうぞよろしく」

 

「NPCに語りかけるとは中々斬新な……」

 

「僕はNPC達にも意思があるように思えてしまうんです。……運営から縛られているだけで、ちゃんと自我はある、みたいな?」

 

「NPC達に自我が……もしもそうならどれ程良いか! ック! 悔しいですよ、俺は」

 

「この世界だと過度な接触も禁止されていますからね」

 

「そうなんですよ! 可愛い嫁に抱きつく事さえ出来ないなんて、おかしいと思いませんか??」

 

「でも下手したらアカウントをbanされてしまいますからね、従うしか無い」

 

「もしもリアルにシャルティアを連れて行けたらな〜」

 

「リアルでヴァンパイアなんて現れた暁には、真っ先に殺されますよ」

 

「あー何て世知辛い世の中だ(涙)」

 

 そんなこんな話した後、【死蝋玄室】を後にする。

 

 同階層にある【黒棺(ブラック・カプセル)】には当然行かなかった。

 

 第三階層を進み、第四階層の湖で『ガルガンチュア』を起動してもらい、あまりのデカさについ驚いて興奮してしまった後、

 第五階層【大白球(スノーボール・アース)】へと向かう。

 

 ここで案内役が武人建御雷さんとぶくぶく茶釜さんに交代した。(「弟に何か言われたりした?」byぶくぶく茶釜)

 向かう途中、気候による影響を無くす指輪を付ける。

 遠くに整列する雪女郎(フロスト・ヴァージン)と巨大な白い造形物が見える。

 

「いや〜でっかいですね〜あの建物は何というんですか?」

 

「【大白球(スノーボール・アース)】ですよ、シャボンヌさん」

 

「ほー、あの中に建御雷さんの作ったNPCの……「コキュートスだ」……ありがとうございます。コキュートスがいるんですか。どんな姿をしているんですか?」

 

「『蟲王(ヴァーミン・ロード)』なので虫っぽくなっていますが、基本武士です。全体色は、ここに合わせてライトブルーにしています」

 

「コキュートスと是非手合わせさせてもらっても?」

 

「構いませんが、何故?」

 

「武人の建御雷さんが作ったNPCだし、戦いが好きそうかな〜と」

 

「? NPCに意思は無い筈だが……」

 

「ウチの愛娘を見て分かる通り、僕はNPCに意思があると思っているので」

 

「あ〜感情移入ってやつね〜」

 

「exactly! その通りです茶釜さん!」

 

 麗しい雪女郎(フロスト・ヴァージン)達の列を抜けて、【大白球(スノーボール・アース)】の中に入る。内装はとても質素な物だが、刀置きやら研ぎ石やら、戦場に出る武将の私室に置いてありそうな物品まであり、製作者(武人建御雷)の武士道精神と丹念さが窺える。

 

「うはぁーたっか〜。2メートル半位はあるよ」

 その部屋の中心部に立ち尽くす、大きなライトブルーの虫を見上げながら、僕は言う。

 

「どうですか、カッコいいでしょう! 何せ造形やポーズには特に力を入れたのでね」

 

「ム、やっぱり戦い好きな目をしている」

 

「えっそう見えるの? 私にはさっぱり……」

 

「何となくですよ。コキュートスの武器は?」

 

「いずれ俺の最強の一振りが完成したら、俺の剣を託そうと思っているが……今はこの『斬神刀皇』と『断頭牙』、『ブロードソード』に、『銀世界(メイス・オブ・モンデダージェント)』で我慢してもらっている」

 

「ん? 最強の一振り?」

 

「今俺が手掛けている刀だ。いずれはギルド武器をも超える物を作るつもりだ」

 

「完成品が待ち遠しいですね〜」

 

「まだまだ未完成だがな」

 

「完成させたら僕にも見せてくださいよ? 約束ですから」

 

「ああ。何せ最高の物を作るつもりだから、最高の物だと認めてもらう為に当然他の人にも見せるよ」

 

「じゃあコキュートスと模擬戦してから行きましょうか」

 

「じゃあ互いにこの『木刀』を持って、先に頭を叩いた方が勝利っていうのは?」

 

「それ採用します〜」

 

 数分後、コキュートスと僕の準備が整い、開始の合図が響く「『戦闘開始』!」

 

 互いに地を蹴り、4本と1本が交差する。

 僕は持ち前の剣道の経験から、コキュートスの攻撃をすべて見切り、全ての剣撃を回避する。

 コキュートスの刀を受け流し、受け止めつつ、相手の隙を狙う。

 コキュートスが上段から振り下ろした刀を踏み台にして上へ高く飛び……

「めぇ──ーん!」

 タァーン

 

「『そこまで!』」

 

 結果勝ったのは僕。

 流石にゲームの基本戦闘AIに剣道五段が負ける訳が無いか。

 

「すっご〜い! さすがだね! シャボお兄ちゃん!」

 

「茶釜さん、ロリボイスは流石にやめてください。あとシャボお兄ちゃんって何ですか!?」

 

「ごめんなさーい☆キラッ」

 

「ったく」

 

「コキュートス。高みを目指せ。そこで待っている」

 茶釜さんと馬鹿な会話をする一方で、コキュートスにギリ届く位の音量でそれらしいことを言う。

 転移後に、今度は本気で戦えるように。

 


 

 コキュートスの武器を一部提造

 メイス→『銀世界(メイス・オブ・モンデダージェント)

 

 2ch連合がアインズ・ウール・ゴウンに喧嘩を売ってきたのは、アインズ・ウール・ゴウンのPKKの激化による物。

 激化した理由は別の世界で猛威を振るう()()と出会ったということが大きい。

 よって、全責任はシャボンヌにあり。



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9.突撃!初めてのなざりっく! 後編

大白球(スノーボール・アース)】で武人建御雷さんと別れた後、

 第五階層を離れ、次に行くのは第六階層【ジャングル】。

 

 ここは確か、双子の闇エルフが守護している階域だ。

「アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレですか……何というか、名前が長いというのに、強そうというより可愛いらしさを感じます」

 

「ウチのアウラもマーレもナザリック一! そう、ナザリック一可愛いからね! 名前から可愛いオーラ全開なんですよ!」

 

「しっかし第六階層は本当に綺麗ですね。夜空とか森林の再現度とか……これは茶釜さんが?」

 

「いや、ブループラネットさんだよー」

 

「あ〜あの種族『樹木の精霊』木祭司(ドルイド)の! ブルプラさんと一度じっくり話し合いたいです〜」

 

「確か、お仕事が確か自然科学系でしたっけ? 多分話しが合うと思いますよ」

 

「あ、あれが【円形闘技場(アンフィテアトルム)】の入り口ですね」

 

「アウラとマーレ、魔獣達をあの中に予め待機させてあるから、見学ご自由に。あ、あと、見た感想をお願いね〜」

 

「えっ茶釜さんがNPCの紹介をしてくれるんじゃ……」

 

「中でたっちさんとウルベルトさんに交代して、見張りに行かないと行けないからね」

 

「2ch連合の奴らですか……」

 

「そう、定期的にやってくんのよ。それじゃまたね! シャボンヌお兄ちゃん!」

 

「マジでロリボイス攻撃やめてほしいのですが……」

 

 こうして、茶釜さんと闘技場前で別れ、僕は闘技場内へと足を運ぶ。

 

 第六階層【円形闘技場(アンフィテアトルム)

 古代ローマのコロッセオをモチーフに作られており、直径は188メートル、短径は156メートルにも及ぶ。

 一階はドーリア式、二階はイオニア式、三階はコリント式という建築方式に其々別れている。

 暫く進むと高さ48メートルの障壁が眼前にそびえ立ち、壁には至高の四十一人の像らしきものが置かれていることが確認出来る。

 壁の一部分にあるアーチ状の入り口を通り抜ける。

 闘技場への通路は薄暗く、それとは対照的に闘技場からの眩い光が差し込む。

 闘技場に立った僕が最初に目にしたものは

 

 眼前で座り込み、此方に首をもたげて眠る巨大な竜の顔面だった。

「うお、ビックリした!」

 

 すると、前方から声をかけられる。

 

「よう。やっと来たか」

 

「随分長かったですね、何かあったんですか?」

 

「すいません、ついつい見入ってしまいまして(^^;; 本当にすごいですね! ここは」

 

「気に入ってくれたようで何よりです。大方、()()()()にNPC愛を語られたからですかね」

 

「それもありますが、やはりペロロンチーノさんとシャルティアの結婚式について話したことや、コキュートスと軽く手合わせしたことだと」

 

「おいおい、あの鳥人(バードマン)実の娘に手を出すつもりなのかよ(呆れ)」

 

「もう自分の嫁って豪語している時点でアウトだと」

 

「まあ、ぶっちゃけどうでも良いがな。そこのクソたっちはどうか知らんが」

 

「ゲームキャラと結婚する位で何かする訳ないじゃ無いですか? あと、私より女性メンバーの方々の反応が問題だと思いますが、何故私だけに突っ掛かってくるんでしょうか?」

 

「その態度が一々気に入らねぇ! そのあからさまな善人アピールを止めろや」

 

「アピールなんてしていませんよ。私は自分の『正義』をモットーに生きているので」

 

「正義正義煩えよ。お前が正義なら俺は俺の『悪』を貫き通す。テメェには一生分からないだろうがな」

 

「私もわかりたく無いですね。あなたの言う悪の美学は」「あの〜」

 

「どうやら戦うしか無いようだな」

 

「貴方は仮にも仲間。戦いは不本意ですが、受けて立ちましょう」

 

「「決闘(PvP)だ!」」

 

「ちょっと待てーい!」

 

「何ですか? シャボンヌさん! これは彼と私だけの問題! 貴方は首を突っ込まないで頂きたい!」

 

「クソたっちをやっと潰せる機会が回ってきたんだ、せっかくのチャンス邪魔すんじゃねえ!」

 

「もしもし、モモンガさん、二人が喧嘩しています。至急応援を」

 

「「ストップ、ストーップ!!!」」

 

 ────ー

 

「こういうポーズはどうでしょうか?」

 

「我が闘技場へようこそ。挑戦者よって言う感じですね」

 

 たっちさんとウルベルトさんの喧嘩未遂騒動の後、侵入者の歓迎用ロールプレイを作ることに決めた。

 いや、話が急展開過ぎてワロタw

 

「ダセェ」

 

「こっちに目も向けてない内からそういうこと言うのやめてくれますか?」

 

 相変わらず二人共結構危なっかしいが。

 

「ウルベルトさんは何か侵入者に言わなくて良いんですか?」

 

「俺か? 俺はな、『良く頑張ったが、とうとう終わりの時が来たようだなぁ。喜べ! ここがお前の死に場所だぁ!』だな」

 

 ブ◯リーじゃん。

「如何にも悪役な台詞ですね! (適当)」

 

「実際、俺は悪だからな。悪の感情こそ我が原動力だ(ニヤァ」

 

 ウルベルトさんが凶悪な笑みを浮かべる。

 その姿は何処からどう見ても最恐の魔王そのものだった。

 ぶっちゃけモモンガさんより怖い。

 

「そうだ! そこにいるアウラちゃんとマーレくんにもポーズ取らせたらどうでしょう?」

 

「それ賛成」

 

「私も良いかと。私だけだと少し恥ずかしかったですからね」

 

「よし! じゃあ少し待っていて下さいね」

 

 〜15minutes later〜

 

「じゃあ、行きますよ? 一回しかやりませんからね?」

 

「大丈夫ですちゃんと記録しますから」

 

「いや、記録は勘弁してください」

 

「ほいじゃあカウント開始! 3、2、1、ゼロ」

 バッ

「我等が神域に足を踏み入れる者達よ、引き返せ。然もなくば、其方らは神をも恐れぬ愚者として、ここで命を散らし、我が神の糧となるのだ!」

 

 片手で剣を勢いよく引き抜き、真っ直ぐ前へ突き出す。

 もう片方の手で盾をアイテムボックスから瞬時に取り出し、取手から盾の上部を掴み、真横に置く。

 右にアウラが、両手で鞭を肩に掛けて左足を前に突き出した姿勢のまま、フェンの上に立つ。

 左にマーレが、右手で黒い歪に曲がった杖の先端を前方に突き出し、もう片方の手で右手首を支える。

 周囲を円形に魔物達が取り囲み、綺麗な円陣を組む。

 

「いや〜圧巻でしたね〜」

 

「まあまあ良かったかな? まあ俺のポーズの洗練さには敵わない……よな?」

 

「うわっ、めっちゃ恥ずかしい」

 

「大丈夫です! かっこよかったですから」

 

「そういう問題ではなくてですね……」

 

「勿論撮ってましたから何回でも見れますよ」

 

「撮るな! というか消して──!」

 

 たっちさんの意地悪。

 そういうことはウルベルトさんの役目では……? 

「誰があんな小悪党みたいなことするかっ」

 

「ウルベルトさん?! ……今心読みました?」

 

 ────ー

 その後、アウラとマーレの頭を一頻り撫でてやり、クアドラシルやフェンを始めとする魔獣達を眺めた後、第六階層を後にする。

 

「次は第七階層ですね。ウルベルトさんが作ったデミえ……デミウルゴスの守護階域の」

 

「俺のNPCを何と言い間違えたかは敢えて突っ込まんぞ」

 

 第七階層【赤熱神殿】

 其処は古代ギリシアのパルテノン神殿を模しており、白い石柱に囲まれる長方形の建造物である。

 神殿には破損の痕跡があり、神殿周囲には折れた石柱が無造作に倒れている。

 辺りには灼熱の溶岩やマグマが流れ、丘の上にある白い神殿を一際引き立てるように、下から白とは対照的に赤く光る。

 僕は溶岩流に落ちないよう、教えてもらった通りに罠を回避する。

 因みに、罠にかかった者は溶岩流内に転移させられ、溶岩による継続ダメージでキルされるようだ。

 

「ふぅ、やっと着いた〜」

 

「初めての人には結構キツイですかね」

 

「まあ、初見殺し用の罠ばかりだからな。ここら辺」

 

「予め罠位解除して置いた方が良いって言ったんですけどね? 何処かの誰かさんは全く……」

 

「オイ、それ誰の事言っている?」

 

「別に、誰でも良いじゃないですか? それとも何か心当たりがあるとか?」

 

「少し気になったから聞いただけだ。他意は無い。あと、その誰かとはギルメンのことだよな? 仲間を侮辱するのは許せねぇが?」

 

「侮辱とは過大解釈し過ぎでは? 私はそのような言葉一言も言っていませんよ? 貴方の考え過ぎでは?」

 

「あぁ?」

 

はい! では早速中に入りますか!」

 

「コイツと一緒だけは絶対に嫌なんだが」

 

「はぁ、では私は少しこの辺りを見回ってきますね」

 

 こうしてたっちさんとしばし別れ、ウルベルトさんと共に薄暗い神殿の中を歩く。

 たっちさんとウルベルトさんが互いにメンチ切っている姿を視界の端に追いやりながら、俺は神殿の奥へと入っていく。

 

「この子たちが『炎の三魔将』ですか。左から嫉妬(エンヴィー)強欲(グリード)憤怒(ラース)と」

 

 カラスの頭に黒い羽を模した衣服を着る女性の悪魔『嫉妬の魔将(イビルロード・エンヴィー)』、

 黒い鎌と腹部の開けた黒い鎧を装備し、頭部から生える一対の角と、背中から生える翼が特徴的な悪魔『強欲の魔将(イビルロード・グリード)』、

 そして、全身を硬質な鱗で覆い、頭から一対の金色の角を生やし、両翼から炎を噴出する、如何にも悪魔な姿をしている悪魔『憤怒の魔将(イビルロード・ラース)』。

 中でも、『憤怒の魔将(イビルロード・ラース)』は原作で聖王国悪魔襲撃事件の時にかなりの活躍をしていたと記憶している。ラース君有能! 

 そして、炎の三魔将の背後でこちらに背を向けて佇んでいる者が……

 

「あの子でしょうか? デミウルゴス君は」

 

「そうだ、良く出来ているだろう? デミウルゴスは。何せ俺の息子だからな」

 

 そっとデミウルゴスの側に寄る。

「目がよく見たら宝石なんですね。肌は色黒で髪は完全オールバック、尻尾は……これ銀で出来てるのか。銀のプレートが何枚も貼り付いていて、ここにトゲが、全部で6本」

 

「お、おい、いくら俺の作ったNPCが凄かったとしても、そこまで見る必要なく無いか?」

 

「失礼しました。今まで見てきた他のNPCとは違う部類だったので」

 

「ハッ! ま、まさかお前……ホモだったのか?!」

 

「いや、違いますよ。何言ってるんスか(困惑)。ところで、デミウルゴスにはどのような設定を?」

 

「そうだな〜非常に残虐性が高いサディスト系だとか、絶望して泣き叫ぶ者の絶叫や悲鳴が好物だとか、ナザリックの知謀の将であるとかかな?」

 

「うわぁ〜めっちゃ酷い」

 

「酷いとはなんだ。悪魔らしい、だろ」

 

「いや、悪魔だけれど仲間は命より大切な物である、とか所謂ギャップ萌えが無いような……」

 

「ナザリックの者以外ってちゃんと載せているが」

 

「いや、直接文章で表さなきゃ萌えないでしょう!」

 

「あー分かった分かった! 設定ちゃんと変えるから、な? ほら、余白に書いておくから!」

 

「ギャップ萌えはキャラメイクでとても重要な要素ですから! あっそれか『嫉妬の魔将に恋している』とかどうでしょう! 真面目な上司が駄目だと思いつつも己の愛に打ち負け、遂には上下関係を超えた繋がりになるという、禁断の恋も……」

 

「あー確かにアリだな。息子には俺には来なかった青春を、か。ハハ……俺に女なんて必要ない。必要ないんだ……」

 

「ウ、ウルベルトさん?」

 

「ハハハ……別に羨ましいとか思って無いしな。確かに夜の公園でベンチに座ってたら向こうからカップルがやってきて散々目の前で見せつけられた時も、羨ましかねーしって思ってたし……」

 

「ウ、ウルベルトさん……」

 

 やっちまった。ウルベルトさんってそういや非リアだったわ。何故だろう、気持ちが痛い程よく分かってしまう……

 

「あ、あの〜戻ったらウルベルトさん意気消沈してるんですけど、何かありましたか? 大丈夫ですかーウルベルトさーん?」

 

「テメェには一生分からねぇ境地だよ!!」

 

「どうやら大丈夫そうですね。それで、一体何が?」

 

「あーハイ、実は……」

 

 ──────────ー

 

「と、そういう訳なんです。」

 

「それは酷いですね。ウルベルトさんは、まず人の話聞かない節があるからですかね」

 

「テメェの話なんか聞きたくねぇ」

 

「はい、少し落ち着きましょうか」

 そんなこんなで、僕等三人は第七階層を後にする。

 


 

 良かったね! 恋人が出来たよ! デミえもん! 

 ということで、デミウルゴス×エンヴィーになりました。

 方や上司、方や部下。決して恋に落ちることなど無い筈だった二人。

 果たして二人の恋路は成就するのか?! 

 

 すいません。

 やりたかったんです。反省はしていないようでしています。



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10.シャボンヌさん、やり過ぎです

 第八階層【荒野】はナザリックのトップシークレットであり、立ち入り禁止になっている為、一階層飛ばしで第九階層へ向かう。

 第九階層【ロイヤルスイート】でたっちさんとウルベルトさんと別れ、新たにモモンガさんとタブラさんが案内役となった。

 

「ここが【円卓の間】です」

 

「おぉ、ちゃんと41席ある……そこにある杖は何でしょうか?」

 

「あれは《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》。ギルド武器です」

 

「これが……これちょっとモモンガさん持って掲げて貰っても良いですか?」

 

「え? 何故ですか?」

 

「いいからほらっ!」

 

 困惑気味にモモンガさんは杖を壁から取り、手に持って掲げる

 

「やっぱカッコいいですねぇ! 似合うと思います」

 

「えっと、ありがとうございます(照れ)」

 

「テレンガさんゲット〜」

 

「なっ照れてねーし! ……ゴホン! それで、他に聞きたいことはありますか?」

 

「モモンガさん、さっきから気になっていたのですが、後ろを付き従っているメイドさん達は?」

 

「あぁ、戦闘メイド『プレアデス』です。本当は末妹で桜花聖域守護者のオーレオールも含めた『プレ()アデス』なんですがね」

 

「へぇ〜美人さんばかりですね〜。ウチのティルも負けてないけどな!」

 

「そういえば、誤解は全て解けましたか?」

 

「はい、多分」

 

「そうですか。良かったです。あと何なんですか?! あの()!」

 

「確か、種族『神龍』と職業『破壊人』の二つを習得した種族レベルlv15、職業レベルlv85の超ガチビルド……正直言って相手するのは無謀ですね」

 

「破壊人って格上ギルド7箇所潰さないと習得不可でしたよね?」

 

「そうですよ。3ヶ月で7箇所分潰しました」

 

「やっぱアンタおかしいって……」

 

「そのおかげでワールドが確認しただけで8個ですよ。まぁ2()0()は一つしかありませんでしたが」

 

「8個も?!」「どんなやつか一つずつ教えてもらっても?」

 

「えーっとまず拠点隠蔽が出来るようになる本と拠点への攻撃が常時無効になる目玉、諸王の玉座(緑水晶)に、常時回復効果と体力を消費して蘇生が出来るようになる杖、全ての魔法が書かれた魔導書、ワールドアイテムを強化するワールドアイテムとかいうものもあったかな?」

 

「「いや、ヤバすぎ(です)」」

 

「あと、これを」

 

「えっ! これは《支えし神(アトラス)》じゃないですか!」

 

「8個の中に入っていました。これはアインズ・ウール・ゴウンに戻った方が良いと思いましたので」

 

「ありがとうございます! この恩は絶対……」

 

「あ〜別に良いですよ。好きでやったことだし」

 

「むぅ、そうですか……」

 

「それよりも玉座の間のゴーレムとやらがめちゃくちゃ気になります!」

 

「るし☆ふぁ〜さんが作っているので、どれも碌な物ではないと思いますけど……」

 

「モモンガさん」

 

「何ですか、タブラさん」

 

「後ろ」

 

「……へ?」ブゥーン カサカサカサカサ

 ────────────

 

()()()()()()()()に襲われたモモンガさんが意識を取り戻した後、(モモンガさんがずっと『るし☆ふぁ〜潰してやる』言ってて怖かった)

 僕たちは第十階層【玉座の間】まで移動する。

 

「か〜! とても綺麗ですね〜!」

 

「何しろ《諸王の玉座》があるのでね。玉座の周辺も煌びやかな物にしなければ不自然でしたから」

 

「此処の《諸王の玉座》は紫なんですね。僕が獲ってきた物はエメラルド・グリーンでしたよ」

 

「そういえばシャボンヌさんも持ってたんだった。色違いですか〜一度見てみたいですね」

 

 第十階層【玉座の間】。

 ゴシック様式のアーチ状の柱が幾本も均等に配置されており、ドーム状の天井を支える。

 左右からは41の旗が連なるように掲げられており、この空間の荘厳さをより醸し出している。

 中央には高級感溢れる赤い絨毯が敷かれており、玉座までの道を真っ直ぐ示すように通じている。

 十数段の階段上に安置するは巨大な紫水晶の玉座。

 ワールドアイテム《諸王の玉座》である

 

「いや〜やっぱすげぇ! あの玉座にはモモンガさんだけが座れると」

 

「いや、ギルメンなら誰でも座れるようになっています。けど、他の人はちょっと……」

 

「大丈夫ですよ。ウチにもアレの色違いありますから」

 

「それもそうですね」

 

「うん? 玉座の段の下斜め横にいるあの美人さんは?」

 

「あれは『アルベド』、私が作った三姉妹の内の1人」

 

「へー、彼女が守護者統括の……因みに設定はどう書きました?」

 

「あっ駄目で……」

 

「……守護者のまとめ役であり、優秀な内政執行官でもある。頭脳明晰でナザリック知謀の将の一人である。守護者統括という大任を任されていることをしっかりと意識している為、守護者との仕事方面での対立は全く無い上、主君にはこの身全てを捧げてでも忠義を尽くしたいと思っている。また、下の妹をとても可愛がっており、姉ニグレドとはその妹ルベドを巡り、対立することがある。しかし、2人の姉妹との仲は非常に良く、姉や妹の所へ仕事の合間に会いに行くこともしばしば。ナザリックの者には分け隔てなく聖母の様な愛情を注いでいる。だが、その一方で敵対者には悪魔らしく時に残虐な行いもする。殺した敵対者の大半が人間種だった為、外部の人間種への敵対感情が強い。また、料理以外の家事全般がこなせ……」

 

「タ、タブラさん! そこまで、そこまでで十分です! 

 

「タブラさんは設定魔と呼ばれる位設定にはこだわりますから……」 

 

「早目にそういうことは言って欲しかったです」

 

「すいません、伝えそびれました(汗)」

 

「実害は無かったですから良いですよ。ところで、NPCの設定文はギルド武器でも開けるんですよね? タブラさん、アルベドの設定を少し見せてもらっても?」

 

「構わない。でも解せない。何故口上ではダメなんだ……」

 

「口で説明されるより文でじっくりと見たかったので」

 

「コンソール画面オープンっと、NPC設定『アルベド』……うわっなっが! これ全ての文字数埋まってるでしょ!」

 

「えーっと何々〜……前半はさっきタブラさんが言ってたやつとほぼ同じですね。良く聞いては無かったですけど……裁縫上手で良妻賢母とは……それなのにとても嫉妬深いと……これギャップ萌えですね! いいお嫁さんキャラと思いきや、隠された地雷が用意されている、素晴らしいですね!」

 

「お褒めに預かり恐縮の至り」

 

「これは……天才的な彼女は、天才すぎるが上にたまにアホになることがある……馬鹿と天才は紙一重と言いますからね……うん? 末文のこれ、『ちなみにビッチである』は直した方が良いのでは?」

 

「何故?」

 

「淫猥なサキュバスなのに、処女を拗らせているというのも良いかなっと」

 

 ビリッ「」

 

「……タブラさん? だいじょ」

 

「ビリっと来た──!!」

 

「へ?」

 

「確かに、そういう設定も良い! 萌える! モモンガさん! 設定を変えて欲しい!」

 

「あ、ハイ。分かりました」

 

「そうなると代わりの文ですね」

 

「ちなみに純粋、ちなみに純真、ちなみに可憐……どれも一文字足りない」

 

「モモンガさんは何かアイディアとかありますか?」

 

「うーん、そうだな〜……ちなみにシャイであるとかはどうでしょう?」

 

「「それ採用」」

 かくして、「ちなみにビッチである」という末文は「ちなみにシャイである」と書き換えられた。

 恥じらう乙女って良いよね! 

 

「そういえばモモンガさん達のギルドって、ギルドランキング何位ですか?」

 

「今12位ですね。まだまだ上がいますよ」

 

「ウチはランキング28位ですよ。圧倒的下ですね」

 

「そんなこと無いですよ! お一人で自分のギルドを持って維持しつつ、その順位まで上り詰めている貴方も十二分に凄いと思います!」

 

「ありがとうございます。リアルでの犠牲も多かったので、そう言ってくれると嬉しいです」

 

「俺も夏のボーナス全額注ぎ込んだというのに、出てきたのはコモン装備ばっか! お目当ての《流れ星の指輪(シューティング・スター)》を引けなかったら今頃どうなっていたことか……」

 

「それなら五個引けたので、一つ差し上げますよ」

 

「ファ!? 俺はボーナス全額で一個ですよ!? 何円でかかったんですか」

 

「もう一体の黒鱗竜狙いで引いてたら五個出てきました。因みに30万円です」

 

「俺も同じ位掛けたのに、何故俺の所には来ないんだ──!」

 

「でも30万も掛かって五個と一体ですよ? 割りに合わないと」

 

「ハ、ハハ、ハハハハハ……」

 

「ヤバい、モモンガさんぶっ壊れたか」

 

「大丈夫ですかー! モモンガさーん!」

 

 ────────

 

「今日は本当にありがとうございました。また遊びに来ますね〜」

 

「作成したlv100NPCってティルルちゃんだけ何ですか?」

 

「いや、()()()()()()()()()()()を今育成中なんですが、ソイツらもlv100にしようかと」

 

「スケルトンですか〜」

 

「ええ、スケルトンです。其の内の兄の方を〔攻撃絶対回避するマン〕にしようかと」

 

「一つ言っても良いですか?」

 

「何だいモモンガさん?」

 

「アンタやり過ぎです!!」

 

「褒め言葉として受け取って置きますね! ほいじゃあまたの〜」

 

 こうして僕はナザリックを後にする。

 帰り道、道中を走りながらこんなことを考える。

 

「さ〜て、我が家も同じくらい豪華にしなけりゃな、()()()()のレベル上げもしないといけないし……」

 

 新たな目標を胸に、僕は居城へ帰還する。

 


 

 アルベド(ヒドイン)が綺麗なアルベドに! 

 スケルトン兄弟って誰のことでしょうね? 

 

 

 



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11.三千五百人侵攻

サクサクいきます。


 第一回のナザリック訪問から早1年、

 その間僕は()()()のレベリングを行い、2ヶ月前に漸く完成した。

 

 レベリングの犠牲者()となったあるDQN人間種ギルドを陥落した辺りから、「竜星叩き落とスレ」が過激さを増して、スレは2千人を超す人のコメントで溢れかえっていた。

 その中の千人程が、「七つの竜星」へと攻め込む仲間を集めているらしい。

 

 一方でアインズ・ウール・ゴウンにも、2ch連合とPKK被害者達の同盟軍が結成されたとの情報が入った。その数二千五百、圧倒的な人数差である。

 

「モモンガさん、ウチが千人に襲撃されそうなんですが」

 

「ウチのギルドも二千五百人に攻められそうです」

 

「「……ヤバイ」」

 

 桁が三桁も違う。ちょっと勝てない(汗)

 

「……千人ならまだしも、二千はキツいです……」

 

 向こうも同じ状況らしい。

 ……待てよ? これは利用できるチャンスなのでは? 

 これを機にアインズ・ウール・ゴウンの同盟者として、NPC達の親密度を上げれるかもしれない! 

 そうと決まれば、

 

「……同盟を組みましょう、モモンガさん」

 

「同盟、ですか?」

 

「多分ウチのギルドは竜系ばっかなので、対竜の特化武器で攻め込まれると思うんです。そうなると、ティルとスケルトン兄弟だけじゃちょっと対処しきれないと思ってですね……」

 

「確かに、ウチのギルドもカルマ値極悪のNPCばかりなので、《光輪の善神(アフラ・マズダー)》とか持ってこられたらかなり不味いです……」

 良し! 行ける! 

 

「そこで、NPCの交換をお願いしたいのですが……」

 

「うーん……その提案、乗りましょう。誰と誰を交換しますか?」

 やったー! 

 じゃあここは原作で真っ先にやられる……

 

「ティルルをシャルティアちゃんと」

 シャルティアは色々と不憫なところがあるからなぁ

 

「ペロロンチーノさんがどうか分かりませんけど、分かりました。交渉してみます」

 

「絶対にやられないで下さいよ!」

 

「お互い様です!」

 

 

 ──────ー

 

 

 襲撃日当日。

 襲撃予定時刻の午後3時より早くに【防壁都市ホーンバーグ】へ奇襲隊がやってきたが、予想外のシャルティア参戦により、奇襲隊は全滅した。

 

「おい! 何でこんなアンデッドがいるんだよ!」

 

「情報には無かったじゃねーか!」

 

「一体どうなってる?!」

 

 あぁ、敵が混乱しながらkillされていくの爽快だわ〜

 

「シャルティアちゃん、予想以上に相手を錯乱させていますね」

 

「何せ俺の最高の嫁だからな! シャルティア最強!」

 

 シャルティアの保護者として何故かペロロンチーノさんがシャルティアに同伴して付いてきた。

 はっきり言ってめっちゃありがたい。

 何せペロロンチーノさんの武器、《ゲイ・ボウ》は、ウチのサンズとの相性が抜群だからだ。

 

「『パピルス』、出番だよ。お前のグレートさを見せつけてやりな!」

 念の為前衛タンクとして『パピルス』を動員する。

 

「大分お相手の数が減りましたね」

 

「ええ、シャルティアと『サンズ』の相性が思った以上に合いまし……」

 

「シャルティアが危ない!」

 

 見ると、鮮血の戦乙女(ワルキューレ)が体勢を崩し、戦斧を持った鎧騎士に斬りつけられるところだった。

 

「サンズ! 『召喚を使え!』」

 

 間一髪、戦斧とシャルティアの間に竜の頭部が出現し、身代わりとなる。

 その間にシャルティアは体勢を整えて、鎧騎士に反撃を行う。

 

「今のは何ですか?」

 

「ただの使役モンスターの召喚です。あれはコストを抑え、大量に召喚する為に骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の頭部のみを出現させるようにしています。基本炎のブレスしか行えないのですが、こういった壁役としても非常に良く機能してくれます」

 

「へ〜凄いですね〜」

 

「でもこれだけではありません。まだ3つ程、特殊能力が付いていますよ」

 

「えっどんなのですか?」

 

「まぁ見てれば分かります」

 

 そう言ってサンズを前方に移動させる。

 

「後衛を前に回して大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫です。アイツは前衛でも十分機能しますから」

 

 サンズが前に出ると早速25人位に襲われ、脳天目掛けて多数の凶器が迫る……しかし、そこにはもう()()()()()()()

「どこ行った?!」

 

「後ろギャアアア!」

 サンズは次の瞬間には彼らの背後に回っていた。

 

「時止めでは無い? 何故一瞬で動けたんだ?」

 

「『空間操作』が使えるんです。職業は『空間操作者(オペレーター・スペイシアル)』で、最終職業スキルがあの瞬間テレポートを体力満タン時に何回でも使えるってやつですね」

 

「ぶっ壊れじゃねーか!」

 

「あくまでHP満タンでないといけないので、普通なら大したことのない職業の筈なんですが、ウチのサンズは違いますよ」

 

「えっどんな設定に?」

 

「《永劫の蛇の指輪(ウロボロス)》使ってHPと魔法攻撃力を1にしてもらう代わりに回避MAXに」

 

「やっぱり壊れている! 攻撃力1だったらなんであの骨攻撃に当たった奴等ダメージ受けてんの?!」

 

「ワールドアイテム《終末の寄生木(ミストルティン)》を取り込んでいるので、全攻撃に即死効果とカルマ値善への極ダメージ効果が」

 

「いや、強すぎて草w」

 

 異形種狩りをしている連中の大半はカルマ値善であることが多く、そういった連中を返り討ちに出来る《終末の寄生木(ミストルティン)》は、実に強力である。

 

「そういえば、向こう(ナザリック)は大丈夫でしょうか? あっちはこちらより大人数ですが」

 

「大丈夫っしょ、負ける要素無いだろうし」

 

「それもそうですね」

 


《モモンガサイド》

 

「第三階層で全滅かよ!」

 

「張り合いねぇ奴らだったな」

 

「弱すぎませんか? いや、まだ別働隊とか……」

 

「疑いたくなる気持ちはわかりますが、あれで全てかと」

 

「ティルルちゃん主軸のメイド戦隊と第一〜第三階層全てのNPC、『第八階層のあれら』のうちの一角とモモンガさんで二千五百人全員が殲滅されたとは……」

 

「シャボンさんがティルルちゃんを派遣してくれたのがデカかったですね」 

 

「あの人、ホントとんでもない娘を遣してきましたよ」

 

「前衛でティーちゃんが暴れている間にモモンガさんの《モモンガ玉》と固有スキルを相手に叩き込み、ティーちゃんはアストラル体になって無効化するっていうコンボが凶悪すぎましたね」

 

「ホントマジそれな!」

 二千五百人に攻められた筈のナザリックは、第一〜第三階層を犠牲にして全くの無傷だった。

 やはり「七つの竜星」の参戦は予期していなかったようで、ティルルだけで千人のプレイヤーを撃退している。

 シャボンヌさんの計らいで、倒した時の経験値を全て《強欲と無欲》に溜めていた為、プレアデス達の強化ができるように。

 拠点NPC作成経験値上限が新たに100追加された為、

 シズはlv46→lv61

 エントマはlv51→lv65

 ソリュシャンはlv57→lv71

 ナーベラルはlv63→lv77

 ルプスレギナはlv59→lv73

 ユリはlv51→lv67

 にレベルが上がった。

 余剰経験値は恐怖公とニューロニストに其々行った。

 

「シャボンヌさんには感謝しないとな〜」

 

「ぶっちゃけあそこの戦力とここの戦力合わせたら誰も勝てないんじゃないか?」

 

「「「「それな」」」」

 

 ナザリック一大イベント「千五百人侵攻」は、同盟者の悪戯により、予想を超える規模の人員数が導入された強化版「三千五百人侵攻」になったものの、同盟者である()()()()()()()()()の存在により、予想を遥かに下回る被害で済んだ。

 襲撃者達の遺したアイテム群の中には、ワールドアイテムもあり、同時に多くの神器級(ゴッズ)伝説級(レジェンズ)装備をゲットした。

 この後、ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」と「七つの竜星」は、合同で襲撃者達の拠点ギルドを順々と襲撃することになる。

 その際、陥落したギルドには合計4つのワールドアイテムがあり、あの時使われなくて良かったと胸を撫で下ろす怪物達の姿があったとか。

 


 

 ようやく登場させることができました! 

 骨兄弟=サンズ&パピルスです! 

 サンズは裏主人公的ポジション、パピは安定のヒロイン役という設定で行くつもりです。

 

 アインズ・ウール・ゴウンと七つの竜星の戦力がエグいことになっていく……

 

 ワールドアイテム両者合計25個はやばいわ。

 何気にプレアデス強化しておきます。



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12.立ち込める暗雲

 

「という訳なんです。すいません、モモンガさん。私は関係者の方々まで巻き込んでしまいたくはありません。今日を持って引退します。」

 

 

「そうですか……分かりました。今まで本当にありがとうございました また、気が向いたらでいいので遊びに来て下さいね」

 

 

「分かりました。これが終わったら必ず……」

 

 

 

 

 

 事の発端は何気ない朝に起きた。

 出勤準備を済ませていると、突如何処からか爆発音が上がる。

 慌ててガスマスクを装着して家を出ると、遠くにある高層マンションが燃えていた。

 この事件による死者は130名。いずれも火災による窒息死か焼死、爆死が主な死因であり、その誰もが富裕層の人間だったという。

 というのも、その高層マンションは財閥のお偉いさん達が居を構えていた為、富裕層専用の超高級マンションと化していたからだ。

 

 

 この事件の翌日、テロ組織からの犯行声明が出され、これに対して政府は対テロ組織戦を強行する方針を表明。

 

 警察官を主に徴収した「反テロ組織取締隊」の結成が閣議で採決され、たっちさんもそこに徴収されることが決まったのだ。

 

 警察署長として、部下をテロ集団の危険から守らないといけないとして、自分から立候補した所がたっちさんらしいというかなんて言うか……

 

 

「……たっちさん……」

 

 

 

 

 たっちさんの引退宣言は、他の多くのギルメンに多大な影響を与えた。

 

 たっちさんが居なくなった後、まずウルベルトさんが「この腐った社会の構造を直す。俺のことは探さないでくれ」と言って去っていき、

 その直後からベルリバーさんのinが途絶えた。

 武人建御雷さんは「この最強の一振りを完成させたら、俺は辞める」と宣言し、何度も説得したが、「たっちさんに勝ちたかったが、どうやらもう叶いそうにない」と言って、聞き入れて貰えなかった。

 

 1ヶ月後、遂にテロ組織vs警察隊の戦いが始まり、各地で市街戦が行われるようになった。

 内戦の為、株価が暴落し、

 あまのまひとつさん、ヘロヘロさん、ペロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さんなど、多くのギルメンの生活がどんどんと苦しくなって行っているようだった。

 俺の会社も仕事の量が極端に増え、ユグドラシルにin出来る時間も短くなってしまっていた。

 しかし、一向にこの状態が改善することは無かった。

 その内、リアルの生活苦により、次々とギルメンが引退していった。

 情けなかった。

 そして何より悔しかった。

 ギルド長だというのに、ギルメンがリアルに追われて苦しむ姿をただ見ていることしか出来なかった自分が。

 そして、不幸が立て続けに起こる、世の不条理さに。

 

 

 

 

 

 俺は、愛してたんだ。

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を、ナザリックを、そして皆を。

 

 失ってから初めて気付くとは、このことだなっと今頃になって漸く気付く。

 

 アインズ・ウール・ゴウンが所有していた鉱山が別ギルドに奪われたが、やり返しに行く気力など今の俺にはもう残っていなかった。

 ギルド長がこんな落ち込んでたら駄目だよなぁ。

 たっちさん、ウルベルトさん、ベルリバーさん、あまのまひとつさん、ぶくぶく茶釜さん、餡ころもっちもちさん、ウィッシュⅢさん、ぷにっとさん、スーラータンさん、ばりあぶる・たりすまんさん、テンパランスさん、やまいこさん、るし☆ふぁ〜、獣王メコン川さん、チグリス・ユーフラテスさん、エンシェント・ワンさん、源次郎さん、死獣天朱雀さん、ク・ドゥ・グラースさん、ガーネットさん、フラットフットさん、ホワイトブリムさん、ブループラネットさん……

 

 

 

 いつでも来てください。待っていますから。

 

 

 ────────

 

 

 

 一年後の2134年。

 現在かろうじて残っているメンバーが、ペロロンチーノさん、武人建御雷さん、弍式炎雷さん、タブラさん、ヘロヘロさん、音改(ねあらた)さん、ぬーぼーさん、そして俺の8人。

 その内の半数が引退宣言を出している。

 武人建御雷さん、ペロロンチーノさんの二人に関しては引退を宣言しつつもまだログインしてくれている。

 その理由は()()()がいるからである。

 

 

『ヤッホー元気? モモンガさん!』

 

 

『はいはい、元気ですよー。今日もまた悪魔像製作ですか?』

 

 

『はい! そうです。あと、やっとオリュンポス13柱の像が完成しました!』

 

 

『おお! すごいじゃないですか! 起動したらlv100の軍団3つを条件次第では倒せるとか、やっぱヤバすぎ』

 

 

『あと、今日は最高のお土産持ってきたので楽しみにしといて下さい!』

 

 

 そう、シャボンヌさんだ。

 武人建御雷さんとペロロンチーノさんは、彼との約束を果たす為にも今この地に残っている。

 

 

「お久しぶり〜モモンガさん! やっと会社から解放されましたよ」

 噂をすればペロロンチーノさんが来てくれた。

 

 

「お久しぶりです、ペロロンチーノさん。丁度今日シャボンヌさんが来るみたいですよ」

 

 

「おっやったー! シャルティアとの結婚式、ちゃんと形だけでもあげたいからな」

 NPCと結婚しようとしているこの犯罪者、誰か止めてくれ! 

 

 

「お久しぶり〜元気してましたか? モモンガさん」「お久しぶりですモモンガさん」

 

 

「弐式さんに建御雷さんもいらっしゃったようですね。お久しぶりです」

 

 

「今日シャボンさん来るらしいぞ」

 

 

「本当か! ペロさん!」

 

 

「建やん昨日武器がやっと完成した! 完成したよ! ってはしゃいでいたかんな」

 

 

「建御雷さん……」

 

 

「大丈夫です、モモンガさん。ここまできたら最後までここに居ますよ。ただ、やる事なくなったんで、inの回数がたまに寄るくらいになると思うけれど」

 

 

「俺は建やんがプレイし続けるみたいやから、同調するで」

 

 

「ありがとうございます。建御雷さん、弐式さん。それじゃあ、私はシャボンさん迎えに行きますね」

 

 

 そう言って、俺は第一階層入り口へと転移する。

 しばらく霊廟前で待機していたら、向こうからツヴェーク達を切り裂きながら走ってくる白い人影が見えた。

 

 

「モモンガさ〜ん」

 

 

「シャボンさん! 伏せて! 朱の新星(ヴァーミリオン・ノヴァ)

 モモンガさんから高威力の炎攻撃系第九位階魔法が飛んでくる。

 放たれた紅蓮の炎は、瞬く間に標的だったツヴェーク達を蹴散らした。

 

 

「ありがとうございますモモンガさん。あとこれ、お土産です」

 

 

「わっちょっといきなり投げて寄越さないで下さいよー……ってこれ《熱素石(カロリック・ストーン)》じゃないですか! 一体何処で?」

 

 

「倒した上位ギルドが所有していた鉱山の所有権を、そのギルド潰して奪った」

 

 

「また飛んでもない事を! 全く貴方という人は……」

 

 

「ちなみに、その石二個あったので、それはその内の一つです」

 

 

「……」

 

 

「さ〜て、お土産もあげたし、今度は僕をモモンガさんのホームにあげてくれないですか?」

 

 

「上手いこと言わないでください。あと熱素石ありがとうございます。建御雷さんとペロさんが今来ていて、貴方に会いたいみたいですが……」

 

 

「お、分かりました。では勝手に……」

 

 

「おっと、少し待っていてください……っとあったあった。はい、これ」

 

 

「えっこれってまさか……《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》!?」

 

 

「貴方を信頼しているのであげますが、悪用しないでくださいね」

 

 

「僕なんかがもらって大丈夫なんですか?」

 

 

「もう一度言いますが、私は貴方を信頼しています。その信頼を決して裏切らないように。それが条件です」

 

 

「裏切る訳ないじゃないですか〜」

 あんたの所の第八階層のあれらが潰しに来そうだし

 

 

「建御雷さんは【円卓の間】に居ますよ。貴方に最強の一振りを見せたいそうです」

 

 

「おっ早速向かうか」

 

 

 そう言って僕は【円卓の間】へと転移する。

 


 いよいよ次回が最終日です。

 



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13.モモンガさん、一緒に転移しようぜ!

チュートリアル終了、いよいよ本編です。


 

 

 光陰矢の如し。

 

 

 

「Yggdrasil」初プレイから12年の時が過ぎ、DMMO-RPG「Yggdrasil」の運営から遂にサービス終了のお知らせが届く。

 2138年9月の出来事だった……

 

 

 

 

 残り3カ月間ずっとナザリックで一人になっているモモンガさんの元へ遊びに行った。

 

 ギルドメンバーのリアルでの仕事が更に増えて、とてもゲームに手をつけられない為に、ログインが全く出来ないのだそうだ。

 

 

「モモンガさ〜ん、居ますか〜?」

 

 

「今日もわざわざ来てくれてありがとうございます。シャボンさん。今日も一緒にレイドへ行きますか」

 

 

「よーし、向かうか〜」

 

 

 モモンガさんと共に、ギルド維持費を稼ぐ為にレイドへ行く。

 

 原作だとモモンガさんは雑魚をコツコツと狩って維持費を稼いでいたみたいだったけれど、僕がいる事で少しでも楽になって欲しいなぁ。

 

 

「そういえば今日はティルルを連れていますね。ギルドの防衛は大丈夫なんですか?」

 

 

「ぶっちゃけ、サンズ倒せるやついないから安心かなぁ〜と」

 

 

「む、そういう考え方もあるのか……」

 

 

「モモンガさんもlv100NPCを誰か連れて行ったらどうですか? 第八階層のあれらを倒せるやつなんて、そうそう来ないから」

 

 

「それもそうですが……」

 

 

「大丈夫ですって! ほら、タンクのアルベドを連れて行きましょうよ」

 

 

「うーん……そうしましょうか。少し待っていて下さい」

 

 

 

 しばらく待つと、アルベドを連れたモモンガさんが帰ってきた。

 ちなみに、アルベドはフル装備である。

 

 

「ここの第十階層にたどり着いた猛者は結局いなかったそうですからね。出番を与えないと」

 

 

「タブラさんに怒られる〜」

 

 

 今日戦うレイドボスは、単眼の巨人王(キュクロープス・ロード)という一つ目の巨人。

 

 元ネタはギリシャ神話だったような気がするけどまぁいっか。

 

 

「もうすぐ着きますよ」

 

 

 前方には巨大な岩山が聳え立つ。

 その粗々しい岩肌の一部に巨大な洞穴がポッカリ空いており、内部は深い闇で覆われている。やがてその闇ら大きな陰が這い出て来た。

 

 

「それじゃ、いっちょやりますか! 『上位全能力強化(グレーター・フルポテンシャル)』『竜の力(ドラゴニックパワー)』。ティルル、『戦闘開始』だ」

 

 

「『生命の精髄(ライフ・エッセンス)』、アルベド、『戦闘開始』!」

 

 

 

 一つ目の巨人王が、仲間の一つ目の巨人(キュクロープス)を召喚した後、その巨大な拳をこちらに勢いよく振るう。

 それと同時に召喚された巨人達が一斉にこちらに向かう。

 先ず一つ目の巨人王の攻撃をアルベドが受け止めている隙に、ティルルが召喚された巨人達を抑える。

 モモンガさんは後ろに下がり、第十位階魔法「現断(リアリティ・スラッシュ)」を放つ。

 僕は一つ目の巨人王の頭上へ飛行(フライ)で飛び、スキル発動の準備をする。

 

「ここだ! 『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 モモンガさんの魔法を両手で防ごうとして、一つ目の巨人王が頸を曝け出した瞬間、僕はスキルを使用した。

 

 ザンッッッッッ!!!! 

「直撃! HPがごっそり削れました!」

 

 

「『竜爪』、追撃しっかり!」

 

 

魔法抵抗難度強化(ペネトレートマジック)心臓掌握(クラスプ・ハート)』……やっぱ抵抗(レジスト)されるか〜」

 

 

「『聖撃』、駄目か。防がれた」

 

 

 モモンガさんの魔法で朦朧状態となったところを狙ったが、間一髪の所で防がれた。

 一つ目の巨人王はアルベドをノックバックすると、天に向かって雄叫びを上げる。

 

ゥゴオオオオ! 

 ズズズ

 

 

「2度目の眷属召喚です! モモンガさん、頼みますよ」

 

 

魔法抵抗難度最強化(ペネトレートマキシマイズマジック)嘆きの妖精の絶叫(クライ・オブ・ザ・バンジー)』!」

 

 

 一つ目の巨人王と僕たち以外が消える。

 

「ティルル、『アストラル体になり、あの巨人をスキルで攻撃せよ』!」

 

 

「『清浄投擲矛(せいじょうとうてきぼう)』」

 

 

 ティルルが持つスキルを使用し、聖属性付与の白い矛が一直線に巨人へと飛ぶ。MP消費による必中効果のおまけ付きだ。

 

 ゴオオオオアア! 

 

 一つ目の巨人王はそれを片手で防ごうとして失敗し、矛は目に深々と突き刺さった。

 

 

「隙だらけだ。とどめの『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 

 

 再び今度は真横から、巨人王の頸にスキルを叩き込む。

 

 ゴオオォォォォォォ……ズゥーン

 

 

「HP0、私たちの勝利ですね!」

 

 

「そのようですね。獲得報酬は……金貨八千万枚と魔封じの水晶、あと何故かダグザの大釜ですね」

 

 

「金貨八千万か〜惜しい! 1億枚まであと少しじゃん!」

 

 

「高難易度でも所詮レイドですね」

 

 

 ユグドラシル開始時は、高レベルプレイヤーが全くいなかったこととプレイヤーの意欲を沸かせる為に、レイド報酬がそれなりに高かった。

 しかし、時が経つ程どんどんと高レベルプレイヤーやギルドが次第に増えていく。

 高レベルプレイヤーがレイド報酬の高さを利用し、初心者プレイヤーとの開きが大きくなることを懸念した運営が、レイド報酬への調整を度々行った。

 今では碌に金貨も貰えないレイドにしばしば当たったり、レイドバトルは1日に1回と決まっており、それ以上はできない仕組みになったりしている。

 

 

「出し渋んじゃねぇよ! このクソ運営め!」

 

 

「全くです。このクソ運営め!」

 

 

「……ホントクソ運営でしたよ、今思えば」

 

 

「残り3ヶ月、ですか。最終日は何かご予定はありますか?」

 

 

「無いですね。丸一日休暇を取りますから」

 

 

「でしたら、ペロロンチーノさんの結婚式も最終日にしたら……ちょっとペロさんに確認を」

 

 

「もしかしたら拠点にいるかもしれません。一旦戻りましょう」

 

 

 そう言って僕たちはナザリックに帰還する。

 

 

 

 

 ──────ー3ヶ月後────────

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓の入り口で1人佇む鳥人(バードマン)の姿があった。

 

 

「ペロロンチーノさん! アンタ式の直前にどこ行っているんですか! 戻って下さい!」

 

 

「いや、シャボンヌさんがまだ……」

 

 

「残り三時間後にはサービス終了ですけど?」

 

 

「分かりました〜待っててね〜〜! シャルティア〜〜!」

 

 

 

 

 DMMO-RPG『Yggdrasil』。

 2126年に発売され、当初はその広大でリアリティ溢れる仮想世界と、膨大な量の職業・種族・魔法・アイテム等データから、世間からの注目を集めた体験型RPG。

 このゲームの掲げる理念は、「未知の発見への喜び」をプレイヤーに享受してもらうこと。

 情報を己で取得し、色々な事に挑戦して欲しいという想いが根底にある。

 その為、新たに登場するモンスターや、アップデートの通知以外、製作社からこれといった告知など来なかったことから、一部のプレイヤーが

「マジでクソ運営だな!」

 というようなコメントをする程謎に包まれたゲームだった。

 謎を自分の力で解き明かしていき、その過程でどんどん強くなるというゲーム性が話題となり、数あるDMMO-RPGの中でも一番の人気を誇った。

 

 そんな『Yggdrasil』も、今日をもって12年の歴史を終える。

 プレイヤー達は各々、ゲーム内での思い出を振り返る者、最後だからと色々な所を見て回る者、今までに手に入れた宝物達を眺めて過ごす者、馬鹿騒ぎする者や悲しみに暮れる者など、皆思い思いの「最終日」を送っている。

 

 そんな中、この男「モモンガ」は、最高の「最終日」を向かえていた。

 

 

「モモンガさん! 俺感激です! シャルティアが、シャルティアがウェディングドレス着ている!」

 

 

「シャボンさんが作成してくれたやつですね」

 

 

「あれ? ウェディングドレスは事前に貰った筈では?」

 

 

「今日まで敢えてシャルティアに着せていなかったんですよ。今日着させてみたら可愛いすぎて悶えましたね。良いものを見させて貰った……

 

 

「それにしてもどうしてシャボンさん来ないんでしょうか?」

 

 

「……遮られた。多分会社が遅れたとか?」

 

 

「少し心配ですね」

 

 

「ヤッホーペロさん! 建やんと遊びに来たぜ〜。マジでNPCと結婚すんのか」

 

 

「我、汝に問う。汝は汝の見定めた女子を、一生を尽くして守り通せるか?」

 

 

「弍式さん、建御雷さん」

 

 

「おっお久〜弍式さん〜、建御雷さん、護りますよ、シャルティアを。例えこの身が滅びようとも〜!」

 

 

「引いた」「同意」「同感」

「酷い!」

 

 

「さて、主役のペロロンチーノさんは壇上に」

 

 

「ほーい!」

 

 

「全ナザリックのNPCに招集かけて……これで準備完了です」

 

 

「シャルティアへのプログラミングも終わりました〜」

 

 

「ヘロヘロさんありがとうございます!」

 

 

「ハハ、まさかゲームでもプログラミングとは……プログラミングから俺は一生離れられないのか〜ヘナヘナ」

 

 

「ちょっ! 大丈夫ですかヘロヘロさん、そこに座って休んでいて下さい、あとは私達で何とかしますから!」

 

 

「ヘロヘロさん、何というか、うん、エナジードリンクで新たに旨いやつが出ましたよ」

 

 

「普通そこは『休んだ方が良いです』でしょうに……」

 

 

「まもなく始まりますよ。ほら! 席に着いて下さい」

 

 

 予定時刻の22:30となり、ペロロンチーノさんとシャルティアの結婚式が始まる。

 

 披露宴開宴の合図で、来宴者が一斉に拍手を鳴らす。

 テンパランスさんの作った「エーリッヒ擦弦楽団」がYggdrasilのオープニングテーマを演奏し、それと同時に玉座の間の扉が開け放たれる。

 鳴り響く拍手喝采の音を背後に、二人の男女が互いに腕組みながら中央の赤い絨毯を歩いていく。

 二人はそのまま壇上へと登り、玉座の前にある豪華な二席へと其々座る。

 

 

「え〜本日はお忙しい中ご来賓頂き、誠にありがとうございます。今回の結婚式に置いて、司会を努めさせて貰います、モモンガです。ただいまより、ペロロンチーノさんとシャルティアさんの披露宴を開宴いたします。ではまず、新郎新婦紹介を行いたいと……」

 

 


《シャボンヌサイド》

 

 

「転移後に拠点隠蔽できるように……ツヴェークがウザいからな。ギルド武器の腕輪だけ持って……さて、そろそろ行きますか」

 

 僕は拠点ごとヘルヘイムのグレンデラ沼地に転移する準備を完了した。

 

 大分前になるが、僕はワールドアイテム《五行相克》により、1日一回の回数制限、全てのMP消費と引き換えに拠点丸ごと好きな場所へ転移することが可能な魔法『上位拠点転移(ロコモーションベイス)』を習得することができた。

 

 今、その『上位拠点転移(ロコモーションベイス)』を発動させる所である。

 

 

「今行きますよ、少し待っていて下さい。『上位拠点転移(ロコモーションベイス)』」

 

 

 次の瞬間、防壁都市ホーンバーグを眩い光が覆う。23:48 ミズガルズより防壁都市ホーンバーグが消滅。

 代わりにヘルヘイムのグレンデラ沼地奥地に防壁都市ホーンバーグが出現する。

 ホーンバーグ最上階に居たシャボンヌは、屋上からとても巨大な沼地を視認。同時に転移成功を確認する。

 

 

「よし、着いた。大分遅れちゃったな……すまない! ペロロンチーノさん、モモンガさん!」

 

 

 そう言いながら右手親指に嵌めている指輪《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を作動させる。

 


 

 

 披露宴が終盤に差し掛かる。誓いのキス以外は一通り終わり、あとはペロロンチーノの一世一代の挑戦(笑)のみ。

 

 ペロロンチーノさんは

「どうせ最後なんだし、シャルティアに18禁行為したい! 垢バンされても痛くも痒くもねぇから!」

 と言い、敢えて誓いのキスを最後の最後に持ってきていた。

 少女の唇を奪う変態男……

 お巡りさん、コイツです。

 

 わざわざ《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》を嵌めてまで実行しようとしているのだから、呆れものである。

 

 

「すいません……もう俺ダメみたいです……zZZ」

 

 

「ヘロヘロさんが寝落ちしてしまいましたよ。そろそろ頃合いですかね。私はお暇します。流石に俺も眠くなってしまいました」

 

 

「え〜建やん、最後なんだし残ったら?」

 

 

「すまない、明後日までに作らないと行けないものがあってな……」

 

 

「そっかー、なら俺も帰ろうかな。流石に会社遅刻したら怒られちまう」

 

 

「モモンガさんはどうされます?」

 

 

「せっかくなので、最後までここに残ろうかと思います」

 

 

「そうですか。またいつか会いましょう。その時は、ペロロンチーノさんがちゃんと男見せたか教えて下さいね。では!」

 

 

「それじゃあモモンガさん、また会いましょうね!」

 

 

 そう言いながら、弍式さんと建御雷さんはログアウトしていった。

 

 

「いつかまた、会いましょうね……か……」

 

 

「モモンガさん、残り3分を切りました。そろそ「私が来た!」……シャボンさん?!」

 

 

「シャボンさん! 遅かったですね、何かあったんですか?」

 

 

「会社が今日に限って無理難題吹っかけてきやがったんですよ!」

 ↑実際には会社の相続権を有能な部下に託したり、全財産をユグドラシル金貨に変えたりしてたんだよね〜

 

 

「そうだったんですか、災難でしたね」とモモンガさん。

 

 

「ほんと碌でもない、これだから上司は!」とペロロンチーノさん。

 

 

「ちなみにギルド拠点ごと此方に来ましたので」

 

 

「えっ?! どうやって? てか何してくれちゃってんのアンタ!」

 

 

「最後だし、別に良いかな〜と」

 

 

「えっ、てことは……」

 

 

「ホーンバーグが沼地の一部と入れ替わりましたね」

 

 

「やっぱやることが一々ぶっ飛んでいやがる……」

 

 

「あっそれとモモンガさん、一つ宣言しても良いですか?」

 

 

「良いですよ(?)」

 

 

 一拍置いて、高らかにこう宣言する。

 

 

「我ら『七つの竜星』は、これまで『アインズ・ウール・ゴウン』とあくまで同盟関係だった。しかし、この時をもって、私は『アインズ・ウール・ゴウン』に忠誠を誓う!」

 

 

『ちょっと! 何言って……』

 

 

『何って、ウチらが貴方方の傘下に下るって言う意味ですよ』

 

 

『いや、古参プレイヤーのシャボンさんが部下とか、やめてくださいよ! せめて私達と同じ立場でないと……』

 

 

『分かりましたよ。それじゃあそういうことにして下さい』

 

 

「我が世界、ヘルヘイムとは別の世界の長であり、我が盟友よ。相も変わらず面白い冗談を言うな。其方は我等が仲間として、同じ円卓を囲もうではないか!」

 

 

「つまりは、我らは対等な立場と?」

 

 

「その通り! 皆に告げる、我が盟友シャボンヌは我等と同格の存在。敬い、讃えるのだ!」

 

 

『ちょっと、やり過ぎでは?』

 

 

『遅刻した罰と心臓に悪いことを言った罰です』

 

 

『いや、会社が……』

 

 

『言い訳は無用ですよ』

 

 

『手厳しい……』

 

 

「ちょっと〜俺は?」

 

 

「本当にすんません! 提案しておきながら遅れてしまって……」

 

 

「大丈夫大丈夫。それより、俺の勇姿を見届けてくれ。今からシャルティアとのファーストキスだ!」

 

 

「ペロさん、カウント取りますね」

 

 

「いや突っ込めよ! ペロロンチーノさんの台詞何処もかしこも突っ込み所満載だったじゃん!」

 

 

「なるべく遅めでキスして、ギリギリを攻めましょう。残り20秒〜19、18、17、16、15……」

 

 

「14、13、12、11、10」

 

 

「9、8、7、6、5、4、3、2、1今!」

 

 

 ー0:00:00:00ー

 チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 01、02、03…

 

 

『『『……あれ?』』』



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第二章 初めての異世界
1.異世界転移


本編始まりま〜す。


『『『……あれ?』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっとこれどういうことですか? 強制ログアウトが来ませんよ!』

 

『僕もです!』

 

『クソ運営! 最後ぐらいしっかり締めろよ!』

 

『……しゃるてぃあのくちびるあまい』

 

『ぺ、ペロロンチーノさん?! それに今なんて?』

 

 どうやら僕達はちゃんと異世界転移することができたようだ。

 モモンガさん達には転生者であることがバレないよう、一緒になって慌てるフリをする。

 しばらくして、モモンガさんが混乱のあまり、奇妙なダンスを踊り始める。

 すると、真横から声が掛けられた。

 

 

「如何なさいましたでしょうか? モモンガ様、シャボンヌ様。」

 

 

「えっ……」

 

 

 咄嗟に声の主を探すモモンガさん。

 そちらを見れば、席に座っていた筈のアルベドがおずおずと席を立ち、こちらに顔を向けていた。

 

 

『……ゑ? NPCが喋って……ペロロンチーノさんがナチュラルに18禁行為をしているー!』

 

 

 ペロロンチーノさんを見れば、シャルティアと熱烈なキスをしていた。

 モモンガさんは咄嗟に両手で顔を覆い隠してそっぽを向く。

 どこの乙女だよ! 

 よくよく見ると、シャルティアが頬を紅潮させながら喘い……これ以上は流石に恥ずかしいので見なかった。

 

 童貞には荷が重い。

 

 

『というか、玉座の間一体が騒がしくなっていません?』

 

 

 僕は気づいていた。

 

 

『……あれ?』の後辺りからずっと周囲から明らかにモモンガさん達とは別の声が聞こえてきていた事を。

 

 

「流石は至高なる御方々、いずれ来たるお世継ぎ問題まで解決してしまわれるとは……!」

 

 

「オオ、ナンタルスバラシキ光景! 後継ハ我、コキュートス二オマカセクダサイ、ペロロンチーノサマァ──!!」

 

 

「お、お姉ちゃん! へ、ヘロヘロ様が……!」

 

 

「溶けていらっしゃる?! へ、ヘロヘロ様〜大丈夫ですか〜?」

 

 

「ソリュシャンです……お願いですから、目をお開け下さい、ヘロヘロ様!」

 

 

「ソーちゃん……。」

 

 

 そう、集められた全NPC達が、動き始めたのだった。

 皆、其々まるで命があるかのように。

 

 

『え、NPC達が生きているかのように動き出しているのですが……』

 

 

『そうですね。……ひとまず、ペロロンチーノさんとシャルティアの披露宴を終宴させた方が良いかと。』

 

 

『シャルティア……もう、ゴールしても良いよね?』

 

 

『ペロロンチーノさんは置いておいて、そうしましょうか』

『頼みます。念のため魔王ロールで。』

 

 

『了解です。』

 

 

「皆、静粛に。」

 

 シーン

 

 モモンガさんの一声で辺りが静まり返る。

 

 

「これをもって、同志ペロロンチーノとシャルティアの婚姻の契りは結ばれた。皆、新たなる一組の誕生を祝福せよ!」

 

ワァァァァ! 

 

「ペロロンチーノ様ぁん! 今日で妾はペロロンチーノ様と結ばれるのですね!」

 

『待って待って、気持ちの整理だけは……』

 

『良かったですね、ペロロンチーノさん。』

 

『良かったですー』

 

『ちょっと?! 俺』

 

『あとはお二人でどうぞごゆっくり(笑)』

 

『待っ待って……』

 

 

「シャルティアよ……」

 

 

「なんでありんしょう? モモンガ様?」

 

 

「ペロロンチーノさんとは、ドレスはちゃんと脱いでからやりなさい。」

 

 

「! ……分かりんした。モモンガ様のご命令なら今ここで!」

 

 

「部屋でやりなさい!」

「ここを汚すのは流石に許容出来んぞ。」

 

 

「畏まりんした。では、ペロロンチーノ様。少々失礼するでありんす!」

 

 

 そう言ってシャルティアはペロロンチーノの腕を掴み、そのまま腕を組む姿勢で互いに身体を寄せ合いながら退場していく。

 

 

『モモンガさぁ〜ん、後で覚えていろ〜。絶対この恩は忘れません!』

 

 そう言い残して、ペロロンチーノさんはシャルティアを伴って【玉座の間】を退出する。

 

 

『この後、どうしますか?』

 

 

『……まだNPC達が味方かどうか分かりません。まずは守護者達だけでも集めて真意を聞き出したかったのですが……ペロロンチーノォ〜(泣)』

 

 

『私も、自分の作ったNPC達に確認を取らないと〜』

 

 

『一旦、第六階層の【円形闘技場(アンフィテアトルム)】辺りで待ち合わせしましょう。』

 

 

『了解しました。』

 

 

「ではモモンガよ。私は一旦拠点に戻る。あとでまた落ち合おう。」

 

 

「あぁ。そちらにも何か異常がないか心配だからな。」

 

 

 そう言って僕は《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を使おうとしたその時、誰かから『伝言(メッセージ)』が届く。

 

 

『シャボンヌ様。申せられた通りに《隠蔽されし者の書》と《エンチャンター》を稼働させました。』

 あ、そういえば拠点隠蔽のことすっかり忘れてたわ。

 

 

 出発前の僕はティルルに予め二つのワールドアイテムを起動させるよう命じていた。

 理由はツヴェーク達の侵入を警戒したものだったのだが……

 

 

『……ナイスタイミングだティルル。お前の働きはいつも優秀だな。それとあと一つ伝えておきたいことがあってだな……』

 

 

『は、何なりと。』

 

 

『これはホーンバーグ内にいる全員に言って欲しいことなのだが、我々はアインズ・ウール・ゴウンと合併することになった。至急全部下をホーンバーグ正門前に集めて欲しい。』

 

 

『! ……畏まりました。そのように伝えておきます。』

 

 

『あぁ、頼む。』

 

 

『失礼ながらシャボンヌ様、なぜこのたびはアインズ・ウール・ゴウンの方々と御身が一つになったのでしょうか?』

 

 

『その理由はこの後行う。とにかく正門前に全員集合だ。これよりナザリックへ向かう。』

 

 

『承知しました。直ちに行動を開始します。』

 

 

「シャボンヌ、何かあったのか?」

 

 

「モモンガ、私は予め部下に拠点隠蔽をさせて置いた事を伝えそびれていたな。これで絶対に我らを他者が見つけることは不可能だろう。これより私は部下達を連れて戻る。」

 

 

「……ありがとう、盟友よ」

 

 

「そちらこそだ。それでは失礼。」

 

 

 そう言って僕は【玉座の間】を後にする

 


 

 

 

 シャボンヌさんが転移した後、俺は即座にNPC達に指示を出す。

 

 

「まず、安心して欲しい。ヘロヘロさんはここに来る前に()()()()が起こり、今その反動で眠っているだけだ。」

 

 

「発言をお許しください、モモンガ様。無礼を承知でお伺いします。そのある事情とは一体何でしょうか? この卑小なる我々に、是非お教えいただけないでしょうか?」

 そりゃこんな言い回しすれば、流石に気になるよな〜。

 

 

「デミウルゴス、モモンガ様に質問など……」

 ちょっとアルベド?! 落ち着こうな! 

 

 

「よせ、アルベドよ」

 

 

「はい、申し訳ありません!」

 ふぅ。危うくウルベルトさんの息子が、タブラさんの娘に殺されるところだった。

 

 

「デミウルゴスよ。この()()()()についてはまた後で話す。今は一刻を争う。このナザリックに非常事態が起きているのだ。」

 

 

「な、なんと……」

 

 

 返事をしようと口を開こうとした時、目の前でナザリック最高峰の知恵者がいきなり焼き土下座した。

 

 

「申し訳ありません! この偉大なるナザリックの防衛責任者をお任せしてもらっておきながら、非常事態が起きていたことに気づけなかった罪! どうか、この命をもって償いを……」

 

 

「落ち着け! 落ち着くのだ、デミウルゴス!」

 本当に切腹しかねない勢いで頭を地面に叩きつけ、床に頭を擦り続ける悪魔を咄嗟に止める。

 

 

「このナザリック最高峰の知恵者であるお前を、そんなつまらない理由で失いたくはない。そして、何よりお前たちは、我らの愛する子供達なのだ。どうこうするつもりなどある訳なかろう?」

 

 

「……」

 

 

「お、お前た……」

「モモンガ様ぁぁああ──ー!!!」

 

 全NPC達が顔に嬉しさやら涙やら鼻水やらを浮かべ、モモンガに迫る。

 

「ちょっと? 落ち着けお前達! 落ち着こう、な? な? ちょっと──!」

 

 ────ー

 〜10分後〜

 

 

「守護者以外の全ての者に命ずる。各員、通常業務に戻れ。領域守護者に命ずる。このナザリックの警戒レベルを一段階上げる。守護者以外の者を率いて各自警備に当たれ」

 

 

「畏まりました!」

 

 

「それと、セバスと階層守護者達は全員ここに残れ。アウラ! マーレ!」

 

 

「はい! モモンガ様、何なりとお申し付けを!」

「は、はい! モ、モモンガ様!」

 

 

「今から先に【円形闘技場(アンフィテアトルム)】へ向かえ。あと……確かこの辺だったっけ……あった! このスクロールの使用を許可する。『転移門(ゲート)』をナザリック入り口に繋げよ」

 

 

「(か、)畏まりました!」

 

 

「それと、階層守護者達には、それぞれこれを渡しておこう。」

 

 

「こ、これは! 至高の御方々のみが所有を許されるという……」

 

 

「そう、《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》だ。予めお前たちに託す。お前たちに必要だと思うからな。」

 

 

「ありがたき幸せ……!」

 

 

「あと、セバス。お前に残って貰った訳だが、ナザリックからだいたい半径1km周辺の地理を確認してきて欲しい。お前にもこの指輪を渡しておこう。」

 

 

「畏まりました。このセバス・チャン、しっかりとご命令を果たして見せましょう。」

 

 

「頼んだぞ。なるべく急ぎ目でな」

 

 

「ははぁ!」

 

 

「では、各自行動を開始せよ。」

 

 

「「「「「は!」」」」」

 

 

 こうして、各NPCはそれぞれ任ぜられた任務をこなす為に行動を始める。

 

 こうして、【玉座の間】にはモモンガ1人となった。

 

 

(は〜緊張したわ〜。いや何あの目! あたかも俺を神を見るような目で見てくる)実際は神どころではないですよ! 

 

 

(それにしても、一体どうしてこうなった?)全くその通りである。

 

 

「ヘロヘロさーん? 起きて下さいー、もう朝ですよー」

 

 

「え! 朝! どどどどうしよう! 上司に叱ら……あれ? モモンガさんじゃあないですか。あれ? あ、途中から寝ちゃったんだった。あれ? そうなるともうサーバーダウンした後? じゃあ目の前のモモンガさんは? サーバーダウン前でも周りにペロロンチーノさんがいるはずだし……」

 

 

「え〜っと、ヘロヘロさん、落ち着いてください。実はですね……」

 

 ────

 

「え! ってことは俺向こうで仕事しなくて済む? ィヨッシャ────!! ラッキィー!!」

 

 

「まず最初に心配するとこそこかい! この世界が何なのかも碌に分かっていないんですよ?」

 

 

「分かっています。まず最初はNPC達ですね。ある事情ってどう説明すれば……」

 

 

「そういえばヘロヘロさん、もう眠くないのですか?」」

 

 

「いや、全く……おかしいですね。さっきまでものすごい眠気が襲っていたのに……」

 

 

「確か、古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の種族特性で、眠りなどの状態異常を無効化できるってものがあった気がします。」

 

 

「多分それですね。ってことは、身体には種族特性が効くようになっているって言うことですかね?」

 

 

「肉体は完全に人間をやめてしまったのか……ということは精神も……?」

 

 

「でもあんま変わった気がしませんね〜」

 

 

「取り敢えずは第六階層へ向かいましょう。」

 

 

「そうですね。」

 そう言って俺は、ヘロヘロさんと共に第六階層へと転移する。



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2.動き出すNPC達

「良かった。しっかりとナザリックも効果範囲内だ。うっかりモモンガさんに

ナザリックの隠蔽は予めしておいた』キリッ

 って大口叩いちゃったからな〜。全く気が抜けねぇぜ!」

 

 僕は【ナザリック地下大墳墓】入り口を通り抜ける。

 

 そのまま数kmほど先にあった【防壁都市ホーンバーグ】城下町に辿り着き、大通りを颯爽と駆け抜ける。

 

 城下町といっても、配置するNPCが足りなかった為、人は住んでいないが……

 

 やがて、前方に城への唯一の入場門である正門が見えて来る。

 その門前には大勢の人々が集まる。

 群がる竜達を掻い潜りながら、主要メンツが姿を表す。

 

「シャボンヌ様、全NPCの集合を完了しました。しかし、POPモンスターはその数から、城内に待機させざるを得ませんでした。」

 

「良い。ご苦労だったな、ティル。この後はゆっくり休め。では早速だが、説明に移ろう。」

 

ガゥア、ゥヲォォォオオオ! (皆、静粛に!)

 ティルルの咆哮により、全ての竜達が黙る。

 

「聞く用意が整ったようです。シャボンヌ様」

 

「ありがとう、ティル。では、まず最初に……単刀直入に言う。どうやら我等は元の世界とは別の世界に来てしまったようなのだ。」

 

「……別世界、ですか?」

 

「その通りだ、ヴァル。あと予め聞いておきたいことがあってな。この防壁都市の外部周辺を見た者はいるか?」

 

「……それなら、城下街の警備にあたっていた複数の竜から通告がありました。」

 

「ヴァル、そこには何と?」

 

「城外の景色が沼地から草原へと激変したと。」

 

「その通りだ。それに、我々の身体にも異常が見受けられた。そこで、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』と連携を組み、ことの対処にあたるつもりだ」

 

「それで『アインズ・ウール・ゴウン』と合併したのですね。」

 

 ティルルの言葉に無言で首肯する。

「さて、ではこれから指示を出す。それに従って行動を開始せよ。」

 

 ──────

 

 

 ティルルとヴァル以外は拠点の防衛に、2人は共に【ナザリック地下大墳墓】へと足を運ぶ。

 

「ご安心ください。例え御身が万が一襲われたとしても、必ず命をかけて、御身を御守りします。」

 

「私は……足手まとい……」

 

「ティルル、ちょっと重いから。「そんな!」……あと、そんなことないぞ〜ヴァル〜。しっかり気を持て〜。」

 行く先々不安しかない。

 

「全く御身をお手を煩わせるとは……『アインズ・ウール・ゴウン』……やはり

 

「何か言ったか? ティルル?」

 

「いえ、全く。」

 

 大丈夫かな〜? 

 ティルルが若干怪しいけれど……

 とにかく今はこれ以上モモンガさんを待たせる訳にはいかない。

 急いで向かうとしよう。

 


《モモンガサイド》

 

 霊廟前でヘロヘロさんと共にシャボンヌさんを待っていると、ヘロヘロさんが不意にこんなこと言い出してきた。

 

 

「モモンガさん……俺の頬を思いっきり……あっスライムだから頰無いじゃん!」

 いきなり何言ってんだこの人。

 

「ヘロヘロさん。やはり少し休んだ方が……」

 

「大丈夫です! いや、さっきなんてメイドさんとすれ違う度に『ヘロヘロ様!』って言いながら身体を寄せられて……ここってワンチャン天国なのでは……?」

 

「それが異常なんですよ! 今まで喋ることもなかったNPC達が動いている! 気付いたら沼地が消えて草原になっている! これは何か対策しないと……」

 

所謂(いわゆる)ラノベの異世界転生モノっぽいですね。まぁ俺達死んでないけど。」

 

「そういえばリアルの肉体は?」

 

「あっ」

 

「「……」」

 

 ────

 

 

 あれから俺のリアルでの体はどうなってしまったのかと、ヘロヘロさんとあれこれ話し合っていると、いつの間にか階段下にシャボンヌさんが来ていた。

 

「待たせたな。」

 

「大丈夫だ。わざわざこっちまで来て貰ってすまないな。」

 

「なぁにこれぐらいどうと言うことはない。それより、早速我が配下を案内してくれまいか?」

 

「あぁ。確かそこの……『ヴァル』ヴァルと言ったか? ここは初めてだろう。ここを案内する。」

 

「……ありがとうございます。」

 

『いやー演技上手いですねぇ!』

 

『うう、恥ずかしい……』

 

『確か以前は普通に……』

 

わー! わー! 

 

『確かその頃の口癖は……』

 

や、やめろォォォオオオ! 

 

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)! 』

 

「ガハッ」パアアアア

 

「モモンガ様!? だ、大丈夫ですか!? 『伝言(メッセージ)』『全配下に告げる、敵襲……」

 

「落ち着け、デミウルゴス! 私の過去の過ちによるものだ……できればそっとしておいてくれ……(切実)」

 

「は、はぁ……『命令。モモンガ様御身が即座に対応なされた。野生の雑魚の様だ。御身の御手を……』」

 

 ちょっとやり過ぎちゃったかな? 

 ごめんね☆モモンガお兄ちゃん! (ぶくぶく茶釜風)

 

 しばらく待つと、モモンガさんが立ち直った。

 

「では、第六階層へと向かおうか。予め全守護者達を集めてある。」

 

「分かった。では早速、掴まれ、ティルル、ヴァル。」

 

「えっは、はい!」「……了解です」

 まさに両手に花。少し理性がヤバくなるものの、何とか持ち堪える。

 

『貴様……』

 

『何ですか? モモンガさん?』

 

『何でもない……』

 

 モモンガさんが妬ましそうな目線を送る。

 いや、原作でアルベドやアウラ、シャルティアに手を出しているじゃん。

 別次元では、インベルンの嬢ちゃんことキーノと付き合っているやんけ。

 

 そう心の中で突っ込みながら、僕は第六階層へ転移する。

 

 そこにはもう、付き添いのデミウルゴス、

 ペロロンチーノさんを()()()()()シャルティア、

 デカすぎて闘技場に入りきらないガルガンチュア、

 第八階層の番人ヴィクティムを除いた全階層守護者達が集まっていた。

 

「待たせたな。守護者達よ」

 

「いいえ、滅相もありません! モモンガ様。」

 

「では、至高の御方々に忠誠の儀を。」

 

(忠誠の儀? なにそれ?)

 モモンガの疑念そっちのけで忠誠の儀が始まる。

 

「第五階層守護者、コキュートス。御身の前に」

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ、」

「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。」

「「御身の前に」」

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

 

「守護者統括、アルベド。御身の前に。」

 

 アルベドを最後に、場にいる守護者達全員が跪く。

 尚もアルベドは言葉を続ける。

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン及び、第四階層守護者、ガルガンチュア、第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏し奉る。……御命令を、至高なる御方々よ。我等の忠義全てを御身に捧げます。」

 

 ザッという効果音が似合いそうな程カッコいい。マジで。

 

『ど、どうしますか? これ最初から全員忠誠度クライマックスですよ!』

 

『と、取り敢えず「命令を、」って言ってたので、何か命令すれば良いかと……』

 

『そうだ! セバス! セバスの報告を待つように……』

 

『いや、取り敢えずはここが【Yggdrasil】とは全く別の世界の可能性があることを伝えたらどうでしょう?』

 

『オケです! それで行きましょう!』

 

 そうして、モモンガさんが口を開ける。

「では、面を上げよ、守護者達よ。」

 

 次の瞬間、モモンガさんから常時発動型特殊技術(パッシブ・スキル)

『絶望のオーラⅣ』の黒い覇気が辺りへ飛ぶ。

 

(モモンガさん、緊張しているなぁ。ならば僕も……)

 

 聖騎士(パラディン)最終スキルの一つ、『剣聖のオーラⅣ』を発動させる。

 それに乗じてヘロヘロさんまで『漆黒の瘴気Ⅳ』を発動させるものだから、浴びせられた守護者達は堪ったものではない。

 

 コキュートスは下顎から音が出る程全身を震わせている。

 アウラは顔がもう泣きそうになっている。

 マーレは最早気絶しそうになる程まで追い込まれている。

 デミウルゴスは、「これが……! 至高なる御方々の御力……!」っと、両眼を歓喜に満たして、両手を前に差し出している。

 アルベドは、光悦とした顔で両手を前に組み、「この身、全てを捧げます」とか言いながら僕たちに祈り始めた。

 

 ……すまん、またやり過ぎた。

 

『これは……やらかしましたかね?』

 

『アウラとマーレが可哀想なので、そろそろ止めたらどうでしょうか?』

 

『そうですね。茶釜さんが本気で殺しに来るかもしれないですし(汗)』

 

 そうして僕たちはスキルを解除する。

 

 モモンガさんに目で合図を送り、発言を促す。

 

「よく集まってくれた、守護者達よ。お前たちの忠誠に、感謝しよう。お前たちであれば、我らの考えを読み取り、今起こっている問題を十分に対処できると確信した。」

 

 守護者を代表して、アルベドが答える。

 

「非常に勿体なきお言葉。全配下の総力をもって、事の対処に当たります。今起きている問題は、ヘロヘロ様の()()()()と関係性はあるのでしょうか?」

 

 いきなりキツイのきたー

『どどどどうしましょう?!』

 

『そのまま伝えてもきっと理解してくれないし、かと言って少し変えるにしても、きっとバレる。一体、どうすれば……』

 案の定慌てるモモンガさんとヘロヘロさん。

 

『ここは僕に任せてください。』

 

『『シャボンヌさん?!』』

 

『先に言っておきますが、ごめんなさい!』

『待て! 嫌な予感が……』

 

 そう言って『伝言(メッセージ)』を切り、言葉を発す。

 

「その件は私が話そう。まず、リアルという言葉は知っているか?」

 

「はい。確か、至高の御方のみが行ける、別世界のことだと」

 

「その通りだ! アルベドよ。流石は我が盟友、モモンガが居城であるナザリックの守護者統括であり、大賢者タブラ・スマラグディナの娘だ。」

 

「お褒めのお言葉、誠に感謝いたします。」

 

「さて、そのリアルについてだが、単刀直入に言うと、世界軸が瓦解し、崩壊した可能性が高い。」

 

「な!?」

 

「そ、それはつまり、今この場にいない御方々は……」

 

「い、嫌だよぉ〜! お姉ぢゃぁぁん!!」

 

「マ、マーレ! アンタ何泣いてんのよぉ! 茶釜様は、茶釜様はきっと、無事だから! 大丈夫だから!」

 

「ナントイウコトダ……」

 

「そんな……まさか!」

 

「リアルでは我らは強大な敵、『キギョウ』による侵略を受けていた。奴らの目的は新たなる世界軸の形成。その為にリアルの世界軸の破壊を画策した。」

 

「『キギョウ』……」

 

「そいつらが……」

 

「オノレ『キギョウ』! 絶対二許スマジ!」

 

「そのキギョウが使役する魔獣は『カイシャ』と呼ぶ。この『カイシャ』はキギョウが出来ない世界軸の破壊能力を持っている。一体だけでも非常に危険な魔物だった……そこで! 退治する為に、武力を持つ者達だけを集めた仕事人の集団、『カイシャ・イン』が作られた。インは打倒という意味がある。」

 

「成る程! だからあの時武人建御雷様と弍式炎雷様は……」

 

「彼らは、最後の仕事をしに行った。我等にここを託して。しかし、彼等は多分負けてしまったのだろう。」 

 

「最後の仕事……? それにあの御二方が負ける……?」

 

「以前までは『カイシャ』の排除を我等『カイシャ・イン』が食い止め、『キギョウ』はその妨害をするというサイクルで成り立っていた。そんな中、遂に我等の敵、『キギョウ』は『カイシャ』とは別により強力な化け物を誕生させた。サイクルを破壊する程の力が必要だったのだろう。しかし、あまりに凶暴過ぎる()()()は、自らの生みの親である『キギョウ』をも殺し、この世界の破壊を更に進行させたのだ。ック!」

 

「その、()()()とは一体……?」

 

「『テロ』、破壊神『テロ・リストン』だ。奴だけは絶対に、絶対に許さぬ!」

 

「『テロ』……か。」

 

「……ということは、シャボンヌ様。次々とお隠れになられた御方々は、『テロ』を倒しに行っていたということですね? ということは、モモンガ様やヘロヘロ様、ペロロンチーノ様に、シャボンヌ様も『テロ』なる者を倒しに行く筈だったのでは?」

 

「我は頼まれたのだ。我が友モモンガを1人残して、生きて帰れるかも分からない戦い《ラグナロク》に身を投じていった残りの同胞達に。『ナザリックを、愛するギルドをよろしく頼みます。』と。」

 

「そうだったのですか……」

「そんな……」

「何ト……」

 

 尚も話を続ける。

「リアルには、我等の本当の故郷であり、同時に約束の地である『アズマノミヤコ』があった。我が友モモンガはここナザリックに隠れ、《ラグナロク》を回避することを提案した。しかし、その矢先、『キギョウ』によって洗脳された3500からなる軍勢が、我のギルド『七つの竜星』とモモンガのギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を襲った!」

 

「あの時の……!」

 

「操られていたのですか……普通我等の拠点に足を踏み込むことなど到底考えられないので、もしやとは思っていましたが……」

 

「その一件で、元の世界【Yggdrasil】も危険と判断した仲間が次々と自決し、去っていった。しかし、モモンガもまた、彼等に頼まれてここにいる。」

 

「つまり、世界軸の崩壊は……」

 

「認めたくはない。だが、彼等の死を意味することは明白だ。」

 

「うぁ、ああああああ!!!」

 

 守護者達の嘆きの声が響く。

 その声は、とても痛々しく、悲痛で、悲しみに溢れていた。

 

「しかし、安心して欲しい。彼等はまだ生きている可能性もある。」

 

「えっ?」

 

「破壊神『テロ・リストン』の目的もやはり『キギョウ』と同じくより良い世界軸の作成。世界軸の作成には元の世界の破片も必要なのだ。」

 

「ま、まさか!」

 

「あぁ、もしかしたら、世界の破片に残っていた記憶によって、生き返れる可能性がある。ごく僅かな確率だが、私は叶うと信じている。そして! 生き返った彼等の帰還を待とうではないか。それが託された者の務めだ。」

 

「やったよ〜〜!!! お姉ちゃ〜ん!!!」

 

「こら! 鼻水垂らしながら近づかないの!」

 

「至高なる御方々が、戻ってきてくださる……!!」

 

「だからあのような……申し訳ありません、タブラ様。」

 

「オ迎エニハ是非コノコキュートスメニオマカセヲ。必ズヤ至高ノ御方々ヲ見ツケ出シテ御覧ニイレマショウ!」

 

「あ〜コキュートスずるい〜。私も茶釜様を迎えに行きたい〜!」

 

 守護者達から歓声や嬉々とした声が響く。

 

『何言ってるんですか!!! シャボンヌさん!!!』

 

 案の定モモンガさんから伝言(メッセージ)が飛ぶ。

 

『いや〜我ながら結構上出来だと……』

 

『キギョウやらカイシャやら、絶対企業と会社から取ってますよね! しかもコレどうするんですか! もし帰還した人がいたら、たちまち守護者達発狂しますから!』

 

『いや、別に良いと思いますよ、俺は』とヘロヘロさん。

 

『だって、沢山の美女達から羨望の眼差しを向けられる……それがメイドさん達ならばどれほど最高か……』

 

『そういう問題……そっか、案外喜びそう、あの人達。』

 

『茶釜さんとか戻ってきたら真っ先にアウラとマーレが餌食にされますねw』

 

『そういえばペロロンチーノさんだ。あの人今頃……』

 

『シャルティアという嫁に性的に襲われていますよ。多分(遠い目)』

 

『明日が楽しみだ……』

 

『モモンガさん、絶対ペロさんに『昨日はお楽しみでしたね(ニコニコ)』って言うつもりだ!』

 

『な、何故バレた?! さては、お前超能力者だな!』

 

『あ、ある意味今はそうかも……』

 

『そうだった〜今俺達人間じゃなかったわ〜』

 

『モモンガさん、キャラが崩壊してますよ。』

 

『あぁ、少し気が昂ってしまいましたね。あっ精神抑制働いた』

 モモンガさんの全身が薄く緑色に光る。

 

『貴方のさっきのあまりにもあまりな話の所為です。こういうことは事前に……し忘れていたの俺だわ。』

 

『モモンガさん……自爆しましたねw』

 

『うるしゃい!』

 

 そんなこんな伝言(メッセージ)で会話する姿は、側からみれば居なくなってしまった仲間達へ想いを馳せる頂上者達の姿そのものなので、守護者達からはその玉体に我々が魅入られてしまうかの様な神々しい御姿だったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここで本題に入るが、その世界軸の崩壊による影響を受けた所為で、我々は他の世界軸に飛ばされた可能性が高い。一先ずはナザリック外の情報の収集を行うつもりだ。」

 

「拠点の隠蔽はどうなされるおつもりなのでしょうか?」

 

「シャボンヌがワールドアイテムによる多重隠蔽を施している為、一先ずは安心だ。」

 

「ワールドアイテムとは、全世界に200程しか無い貴重なアイテムであり、我がギルド『七つの竜星』とモモンガのギルド『アインズ・ウール・ゴウン』をもってしても、26個程しか手に入れることが叶っていない。」

 

『逆にこれだけ集めたウチらが凄いと言えるのか……』

 

「しかし、その効果は一つの世界に相当する程強大な物。生半可な奴らでは決して見つけることなど不可能よ。」

 

「ということだ。後でアウラにこのナザリック地下大墳墓のダミーを作って貰うつもりだ。アウラよ、よろしく頼んだぞ。」

 

「はい! 精一杯やらせていただきます!」

 

「うむ、だが周辺地理が分からない以上、配下1人に未知の危険を背負わせることは危険だと判断した。そこでだ、まずは我等が調査に行く。」

 

「ダメです! 御身に危険が……」

 やはり、全配下が反対してくる。

 

「大丈夫だ、安心しろ。今までの経験こそ我が力なり。不意を突いてくる相手との戦闘には慣れている。」

 

「待ち伏せされている可能性があります!」とデミウルゴス。

 

「待ち伏せなど仲間がやられたことにより、襲う拠点がより強固な警備体制になるリスクを負うことを知っている者はそんなことはしないだろう。」

 

「相手がこちらの戦力の削減を目標にしているかもしれません。」 とアルベド。

 

 少し言葉に詰まるモモンガさん。

 すかさずフォローに回る。

 

「大丈夫だ。いざとなったらティルルやサンズが防衛に回る。サンズは大方自分の店が潰れるのを恐れて、かな?」

 

「……どうしても行くというのですね?」

 

 遂にデミウルゴスとアルベドが折れる。

 

「無論。すまないな、守護者達よ。」

 

「でしたら共をお一人でもお連れして……」

 

「うむ、出来れば配下達にはダミーの建設とナザリックの防衛を任せたい。却下だ。」

 

「そう、ですか……」

 

「その代わり、お前たちには近々別の指令を出す予定だ。忙しくなるぞ〜。」

 

「は! ありがたき幸せ!」

 

「……ゑ? 

 

『流石はモモンガさん! 守護者達の社畜属性凄いですねぇ! 一体どう作ればこう……』

 

『いや、作ったの別の人達だから!』

 

『責任転嫁ですか。最低ですね。ギルド長なのに。』

 

『いや、そういう訳では……でも俺にもさっぱりですよ! 一体どうしてこうなった……』

 

『まぁ、ウチのNPC達も忠誠度ヤバそうでしたから、恐らくはNPCの性何ですかね?』

 

『貴方人のこと言えねーじゃん! (パアアアア)……まぁ多分そういうことでしょうね。』

 

『モモンガさんの切り替えの早さヤバい……』

 

『ヘロヘロさん、それな』

 

『何か直ぐに精神抑制が働くんですよねー。』

 

『便利そう(小並感)』

 

『でも喜びまでも抑制されるから、やってらんなくなりますよ。』

 

『不便そう(小並感)』

 

『掌クルックル過ぎて手が捻じ切れてるやん……』

 

ゴホン! ……最後に、セバスがもうすぐ帰還するであろう。セバスからの情報を確認して解散とする。」

 

『モモンガ様。ただいま調査の方が終了いたしました。』

 

『ご苦労だったな、セバスよ。即時帰還するが良い。』

 

『畏まりました。』

 

 

 

 しばらくすると、セバスが指輪を使って転移してきた。そのまま僕たちの前まで来ると、跪いて臣下の例をする。

 

「お待たせいたしました。モモンガ様。」

 

「セバスよ、よくぞ戻った。して、調査の結果を皆に伝えよ。」

 

「は! ナザリック地下大墳墓より半径1kmの土地の全てが広大な草原でした。しかし、北部に広大な森林が広がっており、そこにはよく踏み込んでいませんが、見たところ強者の気配は感じられませんでした。南部にはシャボンヌ様の居城と思しき城とその城下町がありました。他には人工的に作られた建造物や主だった地理的特徴は見受けられませんでした。」

 

「ご苦労、セバス。ゆっくりと休むが良い。ということだ、理解したかな? 守護者達よ。我々は未開の地に降り立った。まずはこの世界のことを知らなければならない。随時、こちらから指示を送るから、それに従って動いて貰いたい。」

 

「了解致しました!」

 

「では、解さ……」

 

一つ、あなた方に聞きそびれた事がありましたね。……モモンガ、すまない、少々気になる事が。」

 

 モモンガさんが解散しようとしたその時、ヘロヘロさんが待ったを掛ける。

 

『ヘロヘロさん、何を聞くつもりですか?』

 

『念の為守護者達から俺らがどう思われているか知りたいのです。長らく此処に来れなかったですから。』

 

『確かに、僕がナザリックの者にどう思われているか気になりますね〜。』

 

「守護者達に問おう。何せ長らく此処を留守にしてしまった身だ。改めて聞きたい。我やモモンガ、シャボンヌは、お前たちの中ではどういう存在なのだ? 正直に答えてくれ。」

 

 彼等はこの後、後悔することになる。

 何故か? 

 それは……

 

「ヘロヘロ様ハ武器破壊ト相手ノ行動阻害二秀デタ御方デアリ、至高ノ御方々ヲ裏カラ支エル大黒柱トイウベキ御方デアラレマス。モモンガ様ハ至高ノ御方々ノ頂点デアラセラレ、ナザリック地下大墳墓ノ絶対的ナ支配者デアラセラレマス。シャボンヌ様ハ、武、技、知、全テニオイテ完璧タル御方デアリ、我ニ目指ス目標ヲ与エテクダサッタ心優シキ御方デアラレマス。」

 

「ヘロヘロ様はいつも『ブラックキギョウ』なるキギョウと戦っておられた勇敢な方です! モモンガ様は少し怖いですが、本心は慈悲深く、また配慮に優れた御方だと思います! シャボンヌ様はとてもカッコいい御方です!」

 

「へ、ヘロヘロ様はメイドの方々にす、すごく優しい方です、モッモモンガ様は怖いけど、優しい方だと思います……シ、シャボンヌ様は、と、とってもカッコいいです!」

 

「ヘロヘロ様は御身の身体特性における有用性を全て熟知した上で、敵の翻弄への有効的かつ最善の方法・タイミングでの敵への妨害工作を図られる、ナザリックきっての智謀の将であられる御方です。モモンガ様は賢明な判断力と、それを瞬時に実行される行動力を兼ね備えた方。まさに、端倪すべからず、という言葉が相応しい御方です。シャボンヌ様は数多の竜を従える卓越した統率力と、超常的なバイタリティを巧みに駆使する、御身は言わば迅速果断、という言葉に相応しい御方です。」

 

「ヘロヘロ様は戦争の前にナザリックに再び戻ってこられた慈悲深き御方であられます。モモンガ様はナザリックを外敵から守るために1人孤独な戦いにみを投じた勇敢な方です。シャボンヌ様はそんなモモンガ様を支えるべく此処に残った優良な御方であらせられます。」

 

 WOW〜とんでもねぇ高評価だ! 

 

『『『……ファ?!』』』

 

 

「各員の考えは十分に伝わった。では、解散とする!」『円卓の間です!』

 

 その言葉を合図にモモンガさんは転移する。

 続けてヘロヘロさんと僕が転移する。

 闘技場には、階層守護者達と連れてきたヴァル、ティルルだけが残された。

 

 ────────

 

 第九階層【円卓の間】。

 

『『『あいつら……マジか……!』』』

 

 三人の異形達が円卓を囲む……其々この高い評価をどうすべきか考えながら……

 

 

 

 

 

 

 彼等は知らない。あの場に守護者と従者以外の者が隠れ、一部始終を全て聞いていたことを。

 彼等が知ることは無い。この日に侵入した者のことを。

 

 

 

 

 その侵入者の名は……

 

 

 

 

 



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3.暗躍する◯◯◯

Do you wanna have a bad time?







(『……あれ?……』と同時刻……)

 

「……これは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 防壁都市一角、ホットドッグ露店【スノーフル】にて、その骨は動き出した。

 

(体が自在に動かせるようになっている……? それに……)

 

 その骨の男は、露店のカウンターから身を乗り出し、防壁都市の上空を見上げる。

 

(……先程まで曇った空だったというのに、何故空がいきなり晴れている? 敵の魔法か? だとしたらもっと辺りが騒がしい筈。竜達のどよめきが聞こえるだけだ。いや、どよめき? ……以前までそんな音はしなかったぞ……)

 

 あれこれ思考すること3秒、考えた末に「骨」は露店を離れる。

 

(ここに留まっていても仕方がない。確か城内にあのアイテムがある筈だ。悪いが、使わせて貰うぜ、シャボンヌ)

 

「骨」は路地裏まで行くと、瞬時に姿を消す。

 

 ────ー

 

 

 防壁都市ホーンバーグ【天上裏】。

 そのふざけた名前とは裏腹に、この都市を支える柱を担うアイテムのある、とても重要な場所。

 

「骨」は、【天上裏】の前に姿を現した。

 

(合言葉は……前に聞いた記憶では『I vow to thee,my country(我は汝に誓う、我が祖国よ)』だったな。)

 

「I vow to thee,my country.」

 

【天上裏】を守る門は、唱えられた合言葉によって重々しく開き始める。

 

 ゴゴゴゴ

 

(開門の音煩え。気づかれる前に早めに戻るか。)

 

「骨」はスケルトンである為、毒や精神攻撃といった類は全く効かない。

 この【天上裏】への道には、そういった毒と精神系の罠が多く仕掛けられていた。

 その為、この「骨」は()()()()()()()()()時の記憶を頼りに、最低限危険な罠を回避していく。

 

 遂に「骨」は【天上裏】最深部の重要機密の前に辿り着く。

 

「《オーディンの右目》」

 

 防壁都市への攻撃を防ぐ役割を持つ《オーディンの右目》は、システム・アリアドネによって、入り口のみが唯一の侵入口となっている。

 それ以外から入ろうとした者は、まとめて障壁に塞がれてしまう。

《隠蔽されし者の書》と組み合わせれば、大抵のプレイヤーからは襲撃不可能となる。

 しかし、この《オーディンの右目》には第二の能力があるのだ。それは……

 

「やっぱこれ凄えな。全てが見通せる。」

 

 そう、この世界の至るところを覗き見することができるのだ。

 条件は、ワールドアイテムに守られていないところで、屋外であるという二つのみ。(《エンチャンター》で、一つ目の条件は無視できる。)

 

(この都市の周辺一帯が草原になっているな。元いた世界の何処とも判別つかない景色だ。)

 

 ここ、ホーンバーグがミズガルズにあった頃は、周りが岩山の近くということもあり、岩が所々露出していた。又、ヘルヘイムに転移した時とは空模様が全く違う為、ここはミズガルズでもヘルヘイムでもない世界となる。

 

(まだまだ情報が足りないな……うん? あれは……炎か?)

 

「骨」はホーンバーグ周辺から更に離れた所に視点を移している途中、立ち上る炎をアイテムごしに見つけた。

 

(なんだ、この騎士の一団は……ニンゲン同士なのに同士討ちしていやがる……)

 

 その炎の中をよく見ると、騎士の集団が農民を虐殺している光景が目に入った。

 

(野蛮だな、この世界は。見た限りだが、平気でこんな非道をする連中らをのさばらせている時点で終わっている。)

 

「骨」は騎士達を一睨みした後、今度は別の地点に視線を移す。

 

(やはり、辺りは村以外にくまなく草原が広がっている。笑っちまうぐらいなんもねーなw っとうん? この遺跡は……)

 

 視点変更中、ホーンバーグの数キロ南に遺跡を発見した。

 

(どうやら『墳墓』ってやつみたいだな。内部に霊廟がある。その奥もまだ続いているぞ……ここがシャボンヌの言っていた『ナザリック地下大墳墓』って所なのか? 思い当たる節はこの位だが……警戒が必要だな。)

 

 周辺地域の情報を十分に得ると、「骨」は再び視点をホーンバーグに戻す。

 

(しまった! 店から長時間離れちまった! ……え〜と……あ! ヤバいな、店にティルが向かっている。速攻で戻ろう。)

 

「骨」は素早い手捌きで《オーディンの右目》を元に戻し、痕跡を消した後、元来た道を辿る。

 やがて【天上裏】の入り口にまで辿り着くと、そのまま外に出て転移を行う。

 

 

 

 

 次の瞬間には露店のカウンターに突っ伏して気怠げにしている「スケルトン」がいた。

 

(にい)は相変わらず怠け者だね〜」

 しばらくすると、ティルルが呆れたような顔をしながらこちらに向かって来る。

 

「hehe、褒めたって何も出ねぇぜ?」

 

「褒めてない! 全く。」

 

「おいおい、軽いジョークにマジレスするのはなしだろ〜?」

 

「はぁ……此処【ホーンバーグ】が異変に巻き込まれているみたいなの。だから全員をホーンバーグの正門前に集めていてね。」

 

「それで? オイラはどうすりゃ良い?」

 

(にい)も正門前まで「すまん、めんどい。行かない。」……はあ?!」

 

「だいたい、オイラじゃなくてパピルスの方が良いんじゃないのか? 何故オイラが行かないと行けないんだ……」

 

「全員を集めないと行けないから、パピも連れていくつもりだし、(にい)も連れていかないといけないの!」

 

「hehe、悪いが全員ってのは……」

 

「ホーンバーグ内にいる全員!」

 

「……参ったなぁ。オイラの役割に、此処の絶対守護もあるんだが……」

 

「え? どう言うこと?」

 

「シャボンヌが『都市の中核への攻撃を即座に対処できるヤツは、お前しかいない。防壁都市の守護は任せたぞ』って言ってたぜ?」

 

「嘘?」

 

「んな訳あるか。」

 

「……じゃあ信じる。」

 

「ありがとよ。」

 

「その代わり、しっかり役割は果たしてよね! 全員招集掛けられているのに(にい)だけ来なかったのに、ここに侵入者が入り込んでも私は助けないから!」

 

「あ〜分かった。へーきだから、へーきへーき。」

 

「それじゃあ私は行くから。シャボンヌ様をお待たせする訳にはいかないからね。ちなみに嘘付いていたとしても怒るからね!」

 

「あぁ、気を付けて行きな。そうだ、ちなみにティルは何処行くんだ?」

 

「だから皆が集まってこれからの動向の指示をシャボンヌ様からお受けするの。多分その後『アインズ・ウール・ゴウン』のモモンガ? が来る準備を行うと思うけど。」

 

「ふ〜ん」

 

「……興味ないんだったら聞かないでよ」

 

「いんや、興味津々だったぜ。」

(心の中では、な)

 

「む〜……じゃあそろそろ行くね。」

 

「おう、またな。」

 

 そう言ってティルルはこの場から去っていく。

 十分に姿が見えなくなった所で、ティルルの行った方向にある塔の屋上に転移する。

 

「さ〜て、ティルの後をびこうしてみるか。」

 

 やってる事ストーキングなんだが……

 

「……ん? 何か後ろから視線が……」

 

 視線に気付くティルル、しかし、背後には誰もいない。

 

「? 気のせいだったかな?」

 いや違います。骨野郎です。

 

「あっぶね! 気付かれるところだった……」

 バレたらブン殴られっぞ

 

(パピルスの方に行ったな……他の竜や竜人達は……正門に向かっているのか……)

 

 ティルルによって、「骨」を除く全ての拠点防衛者は正門前に続々と集結している。

 内心申し訳ないな、と思いつつも、塔の屋上から隠れて全員の動向を探る。

 

(すごいなぁ、ティルルは。こんな短時間に俺以外全員を招集しちまった。む、城下町方面から誰かが来る。……あれはシャボンヌか?)

 

 ティルルの招集に応じた全ての(骨以外)NPC達が集まる。

 その一方、閑散としている城下町の大通りを突如颯爽と走り抜ける白鎧の姿が。

 

(あの白と緑の鎧はシャボンヌ以外にいねぇな。ギルド武器の反応もあるし。お、正門前に着いたな。)

 

 鎧戦士は正門前まで来ると、走りを瞬時にやめ、その時集団から出てきたドラゴンメイドとロリ司令官の元へ近寄る。

 鎧戦士は身振り手振りをしながら集団へ指示を出す。「骨」がいるところからは何言っているか分からなかったが……

 

(何言っているかサッパリ分からねぇ! ……ん? シャボンヌがティルとヴァルを残した? これから何するつもりなんだ? アイツは……)

 

 しばらくすると、鎧戦士、シャボンヌが、ティルルとヴァルの2人を連れ、【防壁都市ホーンバーグ】外に出る。

 

(今ホーンバーグを離れるって言うことは、十中八九()()()()だな。)

 

「骨」は、ワールドアイテム《オーディンの右目》で見た、【ナザリック地下大墳墓】と思わしき荘厳な霊廟を思い出す。

 

(警戒が必要だとは思っていたが、これは好都合。シャボンヌやティルに付いていくか。)

 

「骨」は懐から《隠遁者の布衣》を取り出す。

 シャボンヌが転移前に渡してくれた物である。

 

(すまんな、シャボンヌ。少しばかり私目的で使わせてもらうぜ。)

 

「骨」は《隠遁者の布衣》を装備する。

《隠遁者の布衣》は、黒のローブから青いパーカーへと変化する。

 新たなパーカーを羽織り、隠密系魔法『完全不可視化(パーフェクト・ノンアンブル)』を使用する。

 そのまま、シャボンヌ達の後ろを歩いていく。

 

(MPがそこそこ減るなぁ。おっあの墳墓の入り口にいる骨がここの主か?)

 

 しばらく付いていくと、眼前に《オーディンの右目》で見たよりずっと広大で荘厳な霊廟が見えてくる。

 その霊廟の入り口には、先程見た時にはいなかった、朱と漆黒のアカデミックガウンを羽織った骸骨様が、隣にいるベトベトした外見の漆黒の粘体に何やら話をしている。

 

(シャボンヌの知り合い? 我が友よ、とか言っているが……少し気に入らないねぇ)

 

 シャボンヌが今親しげに会話している骸骨様は、モモンガと言うらしい。

 その横の黒いスライムはどうやらヘロヘロと言う個体名なのか? 

 ヘロヘロはモモンガに普通に口を効いているところから同格かまたはお気に入りの部下か……

 そういうことを考えながら、「骨」は念の為近くの柱に身を隠して、シャボンヌ達の動向を確認する。

 

「では、第六階層へ向かおうか。」

 

(第六階層だと……ここは差し詰め第一階層ということか。おっと、転移されちまう!)

 

 咄嗟にシャボンヌの背後に転移し、シャボンヌのマントの裾をこっそりと掴む。

 

 ────ー

 

 ナザリック地下大墳墓【円形闘技場(アンフィテアトルム)】。

 

 元よりその場で待機していた階層守護者にモモンガ達が向かう中、「骨」は少し離れたところで会話を盗み聞き出来るようにスタンバっていた。

 やがて守護者達の〝忠誠の儀〟が始まる。

 

(何つー忠誠心だ、控えめに言ってエグい。)

 

 階層守護者達の〝忠誠の儀〟をそうdisりながら、其々の守護者の特徴を探る。

 

(さて、まずは此処の連中の見極めから……うおっ!? これは『絶望のオーラ』か! いや、面を上げさせる気ないだろ! ……ふぅ、スケルトンで良かったぜ。)

 

 間髪入れず、〝忠誠の儀〟を終えた守護者達に容赦無き絶望が襲いかかる。

 そこそこ遠くにいた「骨」にもその効果は伝わったが、「骨」の種族はスケルトン。即死効果のある『絶望のオーラ』は回復でしかない。

 

(……『剣聖のオーラ』に『漆黒の瘴気』か。シャボンヌ、抵抗(レジスト)面倒いからさっさとオーラ切ってくれ! というか目の前にいる奴ら大丈夫かよ!)

 大丈夫なわけないです。

 

(あ〜あ、ひっどい有様だ……ん? リアルだと? なんだその世界、聞いたことがないが……)

 

「はい。確か、至高の御方のみが行ける、別世界のことだと」

 

(別世界……パラレルワールド? いや、この世界と元の世界みたいに、全く別の世界か? 何にせよもっと)

 

「さて、そのリアルについてだが、単刀直入に言うと、世界軸が瓦解し、崩壊した可能性が高い。」

 

(え────!!!???)

 思わず声に出しかける「骨」。

 

(お前さん、話が急展開すぎるぜ!)

 

「リアルでは我らは強大な敵、『キギョウ』による侵略を受けていた。奴らの目的は新たなる世界軸の形成。その為にリアルの世界軸の破壊を画作した。」

 

「『キギョウ』……」

(『キギョウ』……だと? そんな存在がいたとは……世界の破壊とは随分と大それたことを……)

 

 シャボンヌは尚も話を続ける。

 

「そのキギョウが使役する魔獣は『カイシャ』と呼ぶ。この『カイシャ』はキギョウが出来ない世界軸の破壊能力を持っている。一体だけでも非常に危険な魔物だった……そこで! 退治する為に、武力を持つ者達だけを集めた仕事人の集団、『カイシャ・イン』が作られた。インは打倒という意味がある。」

 

(ふむ、『カイシャ・イン』の一員がシャボンヌであり、その同僚がモモンガとヘロヘロだったということか。)

 

「成る程! だからあの時武人建御雷様と弍式炎雷様は……」

 

(武人建御雷? 弍式炎雷? 誰だそれ? 新手のスタ◯ド使いか?)

 ジョジョネタぶっこむんじゃねぇこの「骨」

 

 

「以前までは『カイシャ』の排除を我等『カイシャ・イン』が食い止め、『キギョウ』はその妨害をするというサイクルで成り立っていた。そんな中、遂に我等の敵、『キギョウ』は『カイシャ』とは別により強力な化け物を誕生させた。サイクルを破壊する程の力が必要だったのだろう。しかし、あまりに凶暴過ぎる()()()は、自らの生みの親である『キギョウ』をも殺し、この世界の破壊を更に進行させたのだ。ック!」

 

(成る程、その武人建御雷と弍式炎雷って奴らは、そのそいつによって殺された?)

 

「その、()()()とは一体……?」

 

「『テロ』、破壊神『テロ・リストン』だ。奴だけは絶対に、絶対に許さぬ!」

 

(『テロ』……ねぇ。)

 

「……ということは、シャボンヌ様。次々とお隠れになられた御方々は、『テロ』を倒しに行っていたということですね? ということは、モモンガ様やヘロヘロ様、ペロロンチーノ様に、シャボンヌ様も『テロ』なる者を倒しに行く筈だったのでは?」

 

「我は頼まれたのだ。我が友モモンガを1人残して、生きて帰れるかも分からない戦い《ラグナロク》に身を投じていった残りの同胞達に。『ナザリックを、愛するギルドをよろしく頼みます。』と。」

 

「そうだったのですか……」

「そんな……」

「何ト……」

(教えろ──ー!!! そんなことあったんなら────!!!)

 

「リアルには、我等の本当の故郷であり、同時に約束の地である『アズマノミヤコ』があった。我が友モモンガはここナザリックに隠れ、《ラグナロク》を回避することを提案した。しかし、その矢先、『キギョウ』によって洗脳された3500からなる軍勢が、我のギルド『七つの竜星』とモモンガのギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を襲った!」

 

(あの時の奴らか! ……確かここの所属だったヴァンパイヤ少女がティルと入れ違いで来た時の……)

 

「その一件で、元の世界【Yggdrasil】も危険と判断した仲間が次々と自決し、去っていった。しかし、モモンガもまた、彼等に頼まれてここにいる。」

 

「つまり、世界軸の崩壊は……」

 

「認めたくはない。だが、彼等の死を意味することは明白だ。」

 

「うぁ、ああああああ!!!」

 

(うっさ。)

 この骨、血も涙もねぇ! 骨だけに! 

 

 

「しかし、安心して欲しい。彼等はまだ生きている可能性もある。」

 

「えっ?」

 

(おっ?)

 

「破壊神『テロ・リストン』の目的もやはり『キギョウ』と同じくより良い世界軸の作成。世界軸の作成には元の世界の破片も必要なのだ。」

 

「ま、まさか!」

(ハッピーエンドか?)

 

「あぁ、もしかしたら、世界の破片に残っていた記憶によって、生き返れる可能性がある。ごく僅かな確率だが、私は叶うと信じている。そして! 生き返った彼等の帰還を待とうではないか。それが託された者の務めだ。」

 

「やったよ〜〜!!! お姉ちゃ〜ん!!!」

(やったな、偉いぞー)

 いや、お前はちげーだろぉ! 

 

 

 ────────

 

 

「さて、ここで本題に入るが、その世界軸の崩壊による影響を受けた所為で、我々は他の世界軸に飛ばされた可能性が高い。一先ずはナザリック外の情報の収集を行うつもりだ。」

 

(やはり全く別の世界に来ちまったってことか。情報を少し集めていたのはよかったぜ。)

 

「ワールドアイテムとは、全世界に200程しか無い貴重なアイテムであり、我がギルド『七つの竜星』とモモンガのギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を持ってしても、26個程しか手に入れることが叶っていない。」

 

(ふ〜ん、これそんなに凄かったのか。)

 今羽織っているパーカーを見やる「骨」。

 

 その後も話は続く。

 

「大丈夫だ。いざとなったら、ティルルやサンズが防衛に回る。サンズは大方自分の店が潰れるのを恐れて、かな?」

 

(お〜お〜分かってるな〜。店を潰されちゃあ流石に困るからなぁ。パピルスを泣かせるような奴入れるわけねぇよ、()が)

 

 

「その代わり、お前たちには近々別の指令を出す予定だ。忙しくなるぞ〜。」

 

「は! ありがたき幸せ!」

 

(うわぁ……こいつらヤベエ)心の中で相手したく無いリストに階層守護者全員の名前を打ち込む。

 

ゴホン! ……最後に、セバスがもうすぐ帰還するであろう。セバスからの情報を確認して解散とする。」

 

 しばらくすると、白髪の老執事が指輪を使って転移してきた。そのまま僕たちの前まで来ると、跪いて臣下の例をする。

 

 

「は! ナザリック地下大墳墓より半径1kmの土地の全てが広大な草原でした。しかし、北部に広大な森林が広がっており、そこにはよく踏み込んでいませんが、見たところ強者の気配は感じられませんでした。南部にはシャボンヌ様の居城と思しき城とその城下町がありました。他には人工的に作られた建造物や主だった地理的特徴は見受けられませんでした。」

 

(俺の見た通りか……)

 セバスという老執事の話から、自分の知識への裏付けをする。

「では、解さ……」

 

一つ、あなた方に聞きそびれた事がありましたね。……モモンガ、すまない、少々気になる事が。」

 

 モモンガという骸骨が解散しようと声を上げたその時、ヘロヘロというスライムに待ったを掛けられた。

 

(え? この忠誠心激重の奴らに評価を求めんの? お前さん……それは悪手っていうもんだぜ?)

 

「ヘロヘロ様ハ武器破壊ト相手ノ行動阻害二秀デタ御方デアリ、至高ノ御方々ヲ裏カラ支エル大黒柱トイウベキ御方デアラレマス。モモンガ様ハ至高ノ御方々ノ頂点デアラセラレ、ナザリック地下大墳墓ノ絶対的ナ支配者デアラセラレマス。シャボンヌ様ハ、武、技、知、全テニオイテ完璧タル御方デアリ、我ニ目指ス目標ヲ与エテクダサッタ心優シキ御方デアラレマス。」

 

「ヘロヘロ様はいつも『ブラックキギョウ』なるキギョウと戦っておられた勇敢な方です! モモンガ様は少し怖いですが、本心は慈悲深く、また配慮に優れた御方だと思います! シャボンヌ様はとてもカッコいい御方です!」

 

「へ、ヘロヘロ様はメイドの方々にす、すごく優しい方です、モッモモンガ様は怖いけど、優しい方だと思います……シ、シャボンヌ様は、と、とってもカッコいいです!」

 

「ヘロヘロ様は御身の身体特性における有用性を全て熟知した上で、敵の翻弄への有効的かつ最善の方法・タイミングでの敵への妨害工作を図られる、ナザリックきっての智謀の将であられる御方です。モモンガ様は賢明な判断力と、それを瞬時に実行される行動力を兼ね備えた方。まさに、端倪すべからず、という言葉が相応しい御方です。シャボンヌ様は数多の竜を従える卓越した統率力と、超常的なバイタリティを巧みに駆使する、御身は言わば迅速果断、という言葉に相応しい御方です。」

 

「ヘロヘロ様は戦争の前にナザリックに再び戻ってこられた慈悲深き御方であられます。モモンガ様はナザリックを外敵から守るために1人孤独な戦いにみを投じた勇敢な方です。シャボンヌ様はそんなモモンガ様を支えるべく此処に残った優良な御方であらせられます。」

 

 案の定守護者達は高評価を出す。

 

(オイラはちゃんと忠告したからな! 心の中で! 恨むなよ!)

 心の中でどうやって相手に伝えるんだよ! 

 

 ────────

 

 シャボンヌ、モモンガ、ヘロヘロの三人が転移し、後に残されるは部下達のみ。

 

「骨」は互いの意思に()()()()()()()を感じ、円形闘技場(アンフィテアトルム)の上部にまで移動していた。

 

(今日だけで様々な情報を得たが……『キギョウ』ねぇ。そんな奴らがこの世界にいたら危険だ。何よりもパピルスやティル、そしてシャボンヌまでもが危険に晒される。そんなのお断りだ。

 

 ……守らなければな。みんなの幸せを。笑顔を。

 

 

 その為ならどんな手段さえ使ってやるさ。)

 

【挿絵表示】

 

 

 闘技場の入り口の影で、「骨」は佇む。

 新たなケツイを胸に秘めて……

 

 

 今日、ナザリック地下大墳墓に1人の「骨」が侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その侵入者の名は『サンズ』、彼の物語はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 




ハハ…いつも思ってたんだ…


もしもサンズがケツイをチカラに変えていたらなぁと。


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4.閑話1.オリキャラ・オリジナルアイテム設定


シャボンヌ 異業種

 

(hr)

「強さ」を求める転生者

 

 

役職ーーー「七つの竜星」ギルド長

住居ーーー防壁都市ホーンバーグ【玉座の間】

職業(クラス)レベルー竜騎士(ドラグナー)lv10

      聖騎士(パラディン)lv10

      剣聖(ケンセイ)lv10

      ワールドチャンピオンlv5

      時間操作者(オペレーター・テンプス)lv10

            他lv45…

 

誕生日ーー2109年3月14日

趣味ーーー樹木を観察すること

 

自然を愛し、守る為に強さを求める転生者。

非常に頭の回転が良く、慎重な性格をしている。

ナザリック転移後の世界に行き、そこの自然を守護することを目標としている。

一人称は僕。

一人称を俺に変えたがっているが、定着したキャラを変える勇気がなく、今のキャラをずっと引きずり続けている。

 

ちなみに、無自覚の厨二病である。

 


ティルル 異業種

 

(hr)

破壊神メイドラゴン

 

 

【挿絵表示】

 

 

役職ーーー「七つの竜星」防衛面最高責任者

住居ーーー防壁都市ホーンバーグ【執政室】

職業(クラス)レベルー破壊人(ヴァンデル)lv5

      テンプラーlv10

      ワルキューレ/ダガーlv5

             他lv65…

誕生日ーー2128年12月13日

趣味ーーー???

 

(設定より抜粋)家事全般は()()()()何でもこなせ、また頭脳明晰な物知りメイドである。

主人であるシャボンヌのことを敬愛しており、主人の危険となり得る存在を消しに掛かる程…(汗)。

それでいて極度の天然であり、何でも前向きに捉えてしまえる良い子。

悪い人によく騙されやすい為、ちょくちょくサンズにパピルスと共に念押しされる。

サンズを(にい)と呼んでおり、パピルスのことはパピと呼んでいる。仲間との関係は良好である。

また、料理がいつも壊滅的になることを常日頃から気にしており、調理場では毎日のように料理を作ろうとしては失敗するティルルの姿があるとかないとか。

 

ただし、何故かケーキは超一流に作れる。

 


パピルス 異業種

 

(hr)

リアルスターパピ(勿論カルマ値カンスト)

 

 

役職ーーーホーンバーグ一角にあるホットドッグ屋の店長

住居ーーーホーンバーグ一角【スノーディン・ホットドッグ*1

職業(クラス)レベルー戦士(ウォーリアー)lv10

      重力操作者(オペレーター・グラビティ)lv5

      聖騎士(パラディン)lv10

             他lv35…

 

(設定より抜粋)いつも明るいムードメーカーで自信家なスケルトン。

みんなのにんきものになりたいと常日頃から思っている。

裏表無く、優しい性格であるが故、相手を簡単に信じてしまう傾向がある。

その為兄がいつも睨みを利かせているそうだ。

『ニンゲン』に対して強い関心を持ち、もし侵入してきたら仲良くなりたいらしい。

ちなみに、三千五百人侵攻の時は、戦っている相手をゴーレム達の群れかなんかだと思っていたらしい。

常時愛用の赤いスカーフと手袋、黒いブーツに、ピカピカの鉄の鎧を装備している。

一応アダマンタイト製の鎧などもあるのだが…

一人称は「オレさま」、口癖は文頭に「この偉大なるパピルスさまが〜」文末や笑い方「ニャハハ」。

この世界「ユグドラシル」とはまた別の世界「undertale」からやってきた転移者。

シャボンヌがうっかりめちゃくちゃな召喚(設定)をしてしまった為、元の世界に帰れなくなってしまった。

しかし、持ち前の明るさと天然さで、彼はもうこちらの世界に順応し切っているようだ。

普段は【防壁都市ホーンバーグ】の見廻りか、店【スノーフル】でスパゲティを作っているかである。

ちなみにいつもは少しアホの子だが、クロスワードパズルを作る時はIQが100位上がる。

 

サンズを殺されると、彼の本気が見れるそうだ。

 


サンズ 異業種

 

(hr)

怠け骨

 

 

役職ーーーホーンバーグ一角にあるホットドッグ屋の店員 (最終防衛ライン)

住居ーーーホーンバーグ一角【スノーディン・ホットドッグ】

職業(クラス)レベルースピリット・シャーマンlv4

      空間操作者(オペレーター・スペシアル)lv5

      重力操作者(オペレーター・グラビティ)lv5

      時間操作者(オペレーター・テンプス)lv5

      召喚士(サマナー)lv5

            他lv75…

青いパーカーと半ズボンを着て、スリッパを履いたスケルトン。こっちが兄です!

(設定より抜粋)弟パピルスと共にこの世界「ユグドラシル」に召喚された。

本人は地下の生活より楽しめそうだとウキウキしている。前の世界の秘密を知っていたから…。

でも相変わらずこっちの世界でも怠けている。

よく【スノーディン・ホットドッグ】の店先で寝ていてはパピルスに怒られている。

パピルスに対してはちゃんと兄貴面をすることもあるが、基本とても仕事を任せられない位の怠けっぷりである。

しかし、それらは全て()()であり、持ち前のIQ値は自称50だが、実際はその10倍以上はある。

その為、[全ての魔法やスキル、種族、アイテム等を知っている。完璧な戦略家かつ演技者である。

怠け骨というイメージを定着させつつ、裏では全てを知っている天才という側面を持っている。]等、とにかく裏で活躍する者。

彼のモットーは皆んなの幸せを守ることであり、その為ならどんな手段も選ばない。

 

残酷で非情な行いも平気でしでかすであろう。

 

その事を知っているのはシャボンヌだけであり、シャボンヌに対しては本質を見せることもしばしば。

彼の本性を見破ることができる者はシャボンヌ以外ではいない…一人称は「オイラ」(ガチギレすると素の「俺」になる)、笑い方は「heheh」である。

ジョークが本当に好きで、いつもジョーク混じりの会話をしてくる。弟は好ましく思っていないようだが…

 

 

 

 

 

 

ちなみにパピルスを殺されると、殺した相手を秘密裏に殺すらしい…深い絶望を味合わせながら。

         


黒鱗竜(ブラックスケイルドラゴン) 異業種

 

(hr)

シャボンヌの二体の愛竜 

 

 

役職ーーーホーンバーグ防衛隊隊長

住居ーーーホーンバーグ一角【風の庭】

職業(クラス)レベルーオーバードドラゴンlv10

      ガイキ・マスターlv10

      ナイキ・マスターlv10

      キ・マスターlv10

      ストライカーlv10

             他lv25…

《解説》シャボンヌが課金くじで引き当てた0.00075%の排出率のlv100NPC2体。防衛ラインの最前線指揮官である。もっとも、自身は戦うだけで、指示はシュパーレが行うが…

 


ヴァル・シュパーレ 異業種

 

(hr)

ドラゴン騎士団最高司令官

 

 

役職ーーードラゴン騎士団最高司令官

住居ーーーホーンバーグ内一室

職業(クラス)レベルーコマンダーlv10

       パトリオットlv8

       ファウンダーlv10

       ウォーウィザードlv10

            他lv15…

 

(設定より抜粋)竜人からなる編成部隊「ドラゴン騎士団」の紅一点であり、最高司令官。別名青髪ロリ司令官。

年齢による肉体の未熟さや、指揮官系統のスキルを主に扱う役割である為、直接戦闘力は弱いが、味方への補助は一級品。補助系統殆どの魔法を習得している。

忠義に厚く、主君の命令とあらば命を散らす事すら容易く実行できる。

仕事中は極めて真面目な性格で、主君の命令を即座に実行し、娯楽系の類を全て絶っている。

しかし、それ以外の所では不思議ちゃん系である。

突拍子も無く会話に参加してきたり、気づいたら別の所に行かれていたりは当たり前。

 

彼女が良い子なのは分かるけど…

 

 

 

ギルド「七つの竜星」

原作開始時

所有ワールドアイテム一覧

 

《隠蔽されし者の書》

 

拠点防衛用WI。その名の通り、ギルド拠点を完全に隠蔽することが出来る。同じWI所有者でなければ発見は不可能。現在拠点最奥部に起動したまま安置されている。

《オーディンの右目》

 

拠点防衛兼監視WI。効果は言わば、ワールドアイテムの遠隔視の鏡である。その上、拠点への攻撃を無効化することが可能である。しかし、通常どちらかの効果しか発動させることが出来ない。

《エンチャンター》

 

WI含む全アイテム強化用WI。アイテムの効果を上昇させることが可能で、WIに付与すれば、他のどんなWIより強い物にすることが出来る。しかし、付与出来るアイテムは一つまでである。

《アスクレピオスの杖》

 

医療系魔法をMPではなく自らの体力で使用可能にし、常時体力を回復させる。回復量は、体力が少ない程多くなっていく。現在シャボンヌ所持。

《ユグドラシル・リーフ》

 

防御用WI。一度だけ全ての相手の攻撃を無効化出来る。

使うタイミングを決めることが可能。現在パピルス所持。

《諸王の玉座(緑)》

 

拠点防衛系WI。裏効果があるらしいが、それに該当する者がいない為、現在拠点防衛用WIとしてのみ機能している。

熱素石(カロリック・ストーン)

 

申請系WI。ゲームシステムの一部変更が一度だけ可能。

 

無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)

 

魔法系WI。全ての魔法が使用可能になる。現在シャボンヌ所持。

《竜神玉》

 

?用WI。その効果は、竜種が持つことで真価を発揮する。現在ティルル所持。

聖職者殺しの槍(ロンギヌス)

 

20の内の一つ。使用者のデータと引き換えに、対象者のデータの完全抹消が出来る使い切りアイテム。はっきり言ってチート。現在シャボンヌ所持。

隠遁者の布衣(ハーミッツローブ)

 

隠密系WI。使用者の姿に応じて姿形が変化する。装備者は隠密系スキルをlv5分上乗せされ、尚且つ装備者以外に存在が分からなくする。現在サンズ所持。

*1
別称はスノーフルです(いちおう)







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5.階層守護者達の思惑

 至高の御方々が去り、円形闘技場(アンフィテアトルム)には階層守護者達とティルル&ヴァルが残される。

 

 ティルル:(アインズ・ウール・ゴウン……シャボンヌ様に楯突くようなら、この場でブッツブシテヤル。)

 

 

《〜教えて!デミえもん!〜》

 

 

 アウラ:「ねぇデミウルゴスー、至高の御方々は何故私達をリアルへ連れて行かなかったのかな?」

 

 

 デミえもん:「ふむ、じゃあ逆にアウラに問うが、大切な人、例えばマーレやぶくぶく茶釜様に、死ぬ危険性の高い任務をする上で一緒に付いて来るように言うかね?」

 

 

 アウラ:「……成る程、そういうことだったのね! ありがとうデミウルゴス!」

 

 

 デミえもん:「ふふ、お安い御用さ。それよりも今は、至高なる御方々のお考えに従うべき。先ずは部下への聞き取りを行うべきだと愚考するよ。」

 

 

 アウラ:「どうして?」

 

 

 デミえもん:「恐らく至高なる御方々は、我々下僕達の働きを見ているのだよ。我々が信頼に値する部下か、はたまた有能な僕であるのか、十分に見分けたいのだ。あくまでも私如きの推論に過ぎないが。」

 

 

 アルベド:「つまり、自力で私達がどのような行動を起こせるかについて、自分達なりに考えてみよ、というモモンガ様からの試練なの。同時に、そうでなければいつまでも重要な任務は任せられない、とも暗に示されていると思うの。」

 

 

 コキュートス:「我等ハ試サレテイルノカ……」

 

 

 マーレ:「も、もしかして初めから御方々はそれを計画されてたのかなぁ……?」

 

 

 デミえもん:「そう! 良く思い返してみて欲しい。最初に御方々は、自らの力の片鱗をお見せになられた。これはズバリ! 我々下僕が、御身の力に畏怖し、同時に羨望を掻き立てる為の至高の御方々の計略! それはまだ序の口でしかないと言うところが、御方々の偉大さの現れですね。」

 

 

 アウラ:「つまり、私達に素直に従うのだ! ってことを暗喩に表そうと……」

 

 

 ヴァル:「……それだけではないと思う。」

 

 

 アウラ:「! じゃあ他にどんな意味が?」

 

 

 ヴァル:「御方々から感じられた気は、それぞれ3種類。一つは瘴気・相手に複数のバッドステータスを与える。一つは絶望・相手への即死効果と恐慌のバッドステータスを与える。一つは剣聖・味方の闘志を高め、相手の能力値の強制ダウン……何か気づかない?」

 

 

 アウラ:「え〜分かんないよ〜」

 

 

 デミえもん:「ふむ、剣聖以外天使系やゴーレム系の種族の者達にレジストされてしまう……か。」

 

 

 ヴァル:「そう。さらに、ティルの神龍のような、神を持つ者に苦戦する可能性が……」

 

 

 デミえもん:「成る程、つまりは、至高なる御方々は、我等の成長を望んでおられる、と言うことですね?」

 

 

 ヴァル:「……そう。」

 

 

 アウラ:「それで他にはどのようなことを?」

 

 

 デミえもん:「次に、シャボンヌ様からのお話にあった、カイシャや、破壊神テロだが、御身が何故それを敢えて我等に伝えられたと思うかい?」

 

 

 ティルル:「言いたくないし、認めたくないけど、御方々にとって強敵となりうる存在の指摘ね。」

 

 

 デミえもん:「その通りです! 此処でも暗に強くなって欲しいと言う御方からのメッセージが秘められている!」

 

 

 アルベド:「そして、プロパガンダ。」

 

 

 アウラ:「ぷろぱがんだ?」

 

 

 アルベド:「ある仮想敵を作り、それに対する特定の行動を促すことで、民衆を特定の思想に収める行為のことよ。」

 

 

 アウラ:「え、ということはあの話は全てフィクション?」

 

 

 アルベド:「恐らくは。それか本当のことをお伝えしておられるのかもしれないけど、どちらにせよ守護者の団結を促す行為である事に間違いはないかと」

 

 

 アウラ:「へ〜。やっぱ凄いや! 至高なる御方々は!」

 

 

 デミえもん:「我等に危険な行動を慎むようにという建前で、下僕の自主性を促し、かつ、下僕の身の危険を未然に防ぐ……流石です。モモンガ様、シャボンヌ様、ヘロヘロ様!」

 

 

 アルベド:「すべては最初からとは……」

 

 

 アウラ:「どういうこと? アルベド」

 

 

 アルベド:「私はモモンガ様の言った、ヘロヘロ様の()()()()が無ければ、疑問を提示し、シャボンヌ様が答えると言った一連の動作は無かったわ。」

 

 

 アウラ:「つまり……」

 

 

 デミえもん:「そう、全ては最初から至高なる御方々の計略の内に。至高なる御方々は最初から分かっていらしたのだよ! 我等がどう行動するかなど!」

 

 

 アルベド:「全て至高なる御方々の掌の上、盤上のコマだった……あぁ! そこに痺れる、憧れるゥ!!!」

 

 

 デミえもん:「さて、そろそろ私は失礼させて貰うよ。守護者統括殿からは何かあるかい?」

 

 

 アルベド:「そうね、各自、自身の守護階域の下僕達への聞き取り調査と、自身の鍛錬に励みなさい! 至高なる御方々からの失望は絶対に赦しません。」

 

 

 ティルル:「さて、私達はシャボンヌ様からの指示があるまで待機させて貰うよ。ごめんね、アウラちゃん。」

 

 

 アウラ:「うん、別にいいよ〜! なんなら私の魔獣を見てくる? 見てみる?」

 

 

 ヴァル:「……お馬さん」

 

 

 アウラ:「うん? 馬みたいな魔獣……確かユニコーンがいたような……」

 

 

 ヴァル:「……可愛いな」

 

 

 アウラ:「……ヴァルちゃ〜ん?」

 

 

 ティルル:「あー今完全に自分の世界に入っているわー。」

 

 

 アウラ:「戻って来ない……」

 

 

 ティルル:「しばらくはそっとしておいてあげて。」

 

 

 アウラ:「分かった! じゃあアタシはそろそろ行くね!」

 

 

 ティルル:「あ、うん。またね!」

(何だ、優しそうな方ばかりで良かった!)

 

 最初の殺気は何処へやら、いつの間にか雲散してしまったティルルちゃん。

 鼻歌を吹き、とてもご機嫌のようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《*注意……以下、鬱展開です。それが嫌だという方はプラウザバックを推奨します。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アルベド視点》

 

 

 

 

 

 

 

 私は、憎んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、アルベドよ。もう会うことはないだろう。最後に、これを。」

 

 あぁ、何故行ってしまわれるのですか? 

 何故会えないのですか? 

 教えて下さい! タブラ様……

 

 何故、去っていくのですか? 

 私達が何か失態を犯したのなら、この場で命も捨てます! 

 戻ってくださるのであれば、私は何でもします! 

 

 

 だから……だから! 

 お願い……捨てないで……下さい……

 

 

 ────────

 

 

 

 

 とうとう残られた御方は片手で数えられる程になってしまった。

 その中でも、モモンガ様だけが毎日来てくださる。

 モモンガ様お一人で、毎日此処を管理なされている。

 モモンガ様は、悲しんでいた。

 至高の御方々が次々と去っていくのを。

 私は思った。不敬を承知でこう思ってしまった。

 

 

 モモンガ様は私と似ている、と。

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 とうとう他の御方々が来なくなり、

 1人残されたモモンガ様。

 何故だろうか。私は憤った。

 

 モモンガ様をお一人で残して去っていった他の御方々に、

 そして、何の前触れも無しに去っていった創造主に。

 

 同時に思った。

 モモンガ様を慰労できるのは私だけではないかと。

 あぁ、モモンガ様。お一人で残られ、苦悩されている。

 お辛いでしょう。

 

 

 私だけは、ずっと貴方の味方です。

 

 

 ────────

 

 

 

 

 モモンガ様は最近出張で玉座の間にいらっしゃらないことが多くなった。

 モモンガ様の独語に耳を傾けていると、ギルド維持費がどうたらと聞こえた。

 

 ふと、こう妄想した。モモンガ様は旦那様で、私がお嫁さんとなることを……

 キャー!! 恥ずかしい! 

 ダメよアルベド! 

 こんなのふ、不敬以外の……

 

 

 でも、もしもそうならどれほど良いのだろう? 

 

 

 ────────

 

 

 

 モモンガ様が何やら他の者とギルド維持費を稼いでいるそうだ。

 モモンガ様の独語からシャボンヌという、何処かで聞いたような名前が……

 確か、三千五百人の人間を我等と手を組み撃退した者だったか……

 誰にせよ、モモンガ様までも我等から奪おうとするとは……

 

 

 不快ですね。

 

 

 ────────

 

 

 

 モモンガ様より私もお供として付き添う事ができるようになった。

 不覚にも、それはシャボンヌの提案だったそうだが、モモンガ様にお呼ばれして嬉しかった。

 その時はまだ、精一杯頑張ります! と張り切っていた。

 

 道中、モモンガ様はシャボンヌと合流するやいなや、楽しげに話を始めた。

 悔しかった。

 敵は一つ目の巨人だった。

 シャボンヌが斬り込み、

 モモンガ様が魔法で攻撃する。只それだけなのに、何年も積み重ねて来たかのような巧みな連携術で、終始私は圧倒された。

 恨めしかった。

 

 しかし、同時にこの方には勝てないと本能で分かってしまった。

 彼と会話するモモンガ様は、とても楽しそうで……悲しげな表情など何処にも見られない。

 

 私など、眼中にもないだろう。

 そう卑屈な考えに囚われる。

 

 私なんて、どうせ、どうせ……

 教えて下さい、いや、教えなさい、タブラ。

 

 

 何故私をこんな風に作ったの? 

 

 

 ────────

 

 

 

 3ヶ月間、モモンガ様はずっと私を側に置いてくれた。

 同時に、シャボンヌ様もまた、モモンガ様と同じ境地にあったみたいだった。

 

「シャボンヌさん一人でこれ倒していたんですか?! それも毎日?!」

 

「えぇ。というか一緒に行ける仲間など居なかったもので……」

 

「シャボンヌさん、もし良かったらこっちに移りますか? 枠まだ空いてますから」

 

「いや〜でもな〜、ソロを貫く! って宣言しちゃったから最終日までずっとソロですよ、僕」

 

「気が変わったら教えて下さい。いつでも待ってますから!」

 

「ハハ、考えておきますよ。今はまだその時ではないだけですから

 

「ん? 何か言いましたか?」

 

「いんや〜何にも〜?」

 

 お一人でずっと……そうか、最初から誰もいない方が良かったのか。

 それなら悲しむことはなくなる。

 

 

 

 でも、それなら何故、モモンガ様は他の者と交流しているのだろう? 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 この日はいつもとは全く違った。

 

 今まで来る回数が疎らだった御方々も、この日は集結した。

 ヘロヘロ様、ペロロンチーノ様、武人建御雷様、弍式炎雷様……たった4人だけでも、この日は以前のように活気に満ち溢れた。

 そして何より、モモンガ様がすごく嬉しそうだった。

 

 そうか、やっと分かった。

 

 

 

 楽しさを感じることが出来るから、他者と仲良くなるんだ。

 

 

 

 だからモモンガ様は待ち続けた。

 そして漸く仲間と再会することが出来た。

 

 それに比べて、私は……

 

 本来ならば、タブラ様の帰りを待たなくてはならなかったのに、一人で勝手に憎悪を抱き、不敬な念まで持った。

 

 あぁ、タブラ様、申し訳ありません。

 私は、間違っていました。

 

 

 同時に悟る。時は逸した、と。

 それに気付くのが余りにも遅すぎた、と。

 

(不出来な娘で申し訳ありません。タブラ様。)

 

 

「それにしてもどうしてシャボンさん来ないんでしょうか?」

 

 シャボンヌ様がいらっしゃらないのはどういうことなのか? 

 まさかあの御身も私達に愛想を……? 

 

「そろそろ頃合いですかね。私はお暇します。」

 

 あ、待って下さい! 

 

「また、いつかお会いしましょう。」

 

 その言葉はもう聞き飽きました! 

 もう、私達を悲しませ……

 

「私が来た!」

 

 ……シャボンヌ様! 

 

「シャボンさん! 遅かったですね。何かあったんですか?」

 

「カイシャが今日に限って無理難題吹っかけてきやがったんですよ!」

 

 カイシャ? どういう存在何ですか? 

 

「我ら『七つの竜星』は、これまで『アインズ・ウール・ゴウン』とあくまで同盟関係だった。しかし、この時を持って、私は『アインズ・ウール・ゴウン』に忠誠を誓う!」

 

 え!? ま、まさか! この言葉の為に……

 何と素晴らしい御方なのでしょう。

 

「我が世界、ヘルヘイムとは別の世界の長であり、我が盟友よ。相も変わらず面白い冗談を言うな。其方は我等が仲間として、同じ円卓を囲もうではないか!」

 

「つまりは、我らは対等な立場と?」

 

「その通り! 皆に告げる、我が盟友シャボンヌは我等と同格の存在。敬い、讃えるのだ!」

 

 モモンガ様! 私は感動です! 

 シャボンヌ様、これからは忠実な僕として、貴方様にお仕えします。

 もう貴方様を裏切るような行為は絶対にしません。

 モモンガ様、ナザリックを纒める偉大なる御方への感謝も込めて、

 此処に誓います。

 

 ────────

 

 

 

 シャルティアとペロロンチーノ様の……

 恥ずかしいので言いません。

 それから私は動けるようになった。

 

 モモンガ様が何やら高等な舞踊を披露していらっしゃる。

 

 私は敬意を持って、こう言葉を告げる。

 

「如何なさいましたでしょうか? モモンガ様、シャボンヌ様。」

 

 



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6.至高なる御方々(笑)

〜転移3日目〜

 

「どうしましょう、()()

 

「諦めた」「無理」

 

「即答かよ!」

 

 第九階層【円卓の間】にて、ナザリックの最高支配者とナザリックのNo.2と竜達の親玉が、其々頭を抱えるという異常な光景が広がっていた。

 現在、モモンガの自室は執務室に改修中である。

 ちなみに、シャボンヌに関しては、

 

 船乗り場の舟の中に泥舟があることは知っていたが、つい悪ノリして、飛び乗った舟が泥舟で、瞬時に溺れた奴

 のような気持ちになっていた。

 

「何であんなに評価高いの???? え? 俺何もしてないけど、シャボンさんじゃああるまいし。」

 

「おい、今回はやらかしてないぞ!」

 

「他で色々とやらかしているからそう言われるんです。少しは自重してください。」

 

「ふぁ〜い」

 

「こ、こいつ……」

 

「あ、駄目ですね。多分この調子では話聞きませんよ。」

 

「取り敢えずはシャボンさん抜きでこれからの予定を……」

 

「先ず、竜達からの情報により、北部に広大な森林が広がっているそうです。また、ウチのワールドアイテムを使うのは少々リスキーなので、《遠隔視の鏡》を使いましょう。」

 

「いきなり真面目になるくらいなら、初めっから真面目にしてください。」

 

「ふぁ〜いwwww」

 

「……」「ちょっ! モモンガさん! ストップ! 落ち着け! は、早まるなぁ! 

 人を小馬鹿にしたような態度の竜人にキレた骨が、無言で超位魔法の発動を準備する。

 それを必死に止める古き漆黒の粘体(エルダー・ブラックウーズ)

 

 この状況を一言で表すと、カオス。

 

 

 ────────

 

「では、モモンガさんと僕で《遠隔視の鏡》の使用を試し、ヘロヘロさんはペロロンチーノさんと大森林へと向かうということでよろしく頼みます。」

 

「分かりました。」「了解です。」

 

 話し合いの結果、周囲の探索隊として、僕とモモンガさんが《遠隔視の鏡》で、ヘロヘロさんとペロロンチーノさんが実動隊として、其々行動を開始することになった。

 

「では明日の昼13:00に執務室へ全員集合で」

 

 ────────

 

【防壁都市ホーンバーグ】周辺

 

 あの後、モモンガさん達と別れた僕は、自らの居城へと向かう。

 

「しっかし、こんな草原前世にも無かったぞ。」

 

 辺り一面草、草、草……

 この世界独自に自生する植物が辺りに生い茂る。

 

「採取して観察しないとなぁ。此処の自然はとても興味深いからね。」

 

 僕はそこら辺の草を一二本土ごと根元から掘り抜く。

 鉢を低位の道具魔法で精製し、その中に一種類ずつ入れる。

 

「ふぅ、だいぶ入れたな。うん? 空が……」

 

 ふと、空を見上げると、満天の星空が広がっていた。

 

「こんなにも美しかったなんて……」

 

 この世界の夜空の美しさについ見惚れてしまう。

 転生前にもこんな星々のドームを見たことなど無かった。

 一つ一つの星々が、互いに会話するかのように明滅する。

 月は夜空に浮かぶ真珠のようであり、夜空の宝石箱の中で、最も強く光り輝く。

 天の川は朧げに光り、巨大な帯を成す。この世のどんな絹よりも繊細で、きめ細やかな織物を見ているかのようだ。

 

「あぁ、何とも……美しい。」

 

 何故城下町を走り抜けた時には気付かなかったのか? 

 何故さっきまで下ばかり向いて、一度も上を見なかったのか……

 

 こんなにも身近に宝はあった。

 

「この夜空を独り占めしたい。けれど、それは自然のあり方を変えてしまう。誰か一人が全てを統べる世界など、糞食らえだ。」

 

 だから、僕は……

 

 

 ──────ー

 

【防壁都市ホーンバーグ | 露店「スノーフル」】

 

「おっ、お前さんオイラのホットドッグ食うかい?」

 

「いや、今はそんなことより……」

 

「食うか、食らうか、どっちが良い?」

 

「食います! 食いますから!」

 

「hehe、毎度あり〜」

 

「お前の本性やっぱエグいな。「今日はいい天気だぁ」ごめんなさいごめんなさい! ()()だけは勘弁して貰いたい!」

 

「ん? オイラは今日の天気のことを言っただけだぜ?」

 

「くっ……この腹黒骸骨め「こんな日には、お前さんのみたいな……」すみませんすみません!」

 

「……奴は、とっておきのジョークをお見舞いしてやるぜ!」

 

「ふぅ、良かった……」

 

「この店の目玉商品の一つ、玉子ドッグには何の卵が使われているか知っているか?」

 

「えっ普通に鶏じゃ……」

 

「烏()鶏玉子ドックだ。作ってる奴も骨だがな!?」

 

 \ツクテーン/

 

「……はぁ〜」

 

「どうした? オイラのジョークに感動のため息を……」

 

「感動のため息って何だよ……そうじゃない! 今日ここに来た訳だが、此処【防壁都市ホーンバーグ】が異世界に転移してしまったみたいだ。」

 

「あぁ、知っているぜ。空が違っているからな。」

 

「知っていたか……なら話は早い。ちょっと鳥人(バードマン)と黒いスライムの後を付けてくれないか? 特に鳥人(バードマン)の方を注視して欲しい。」

 

「heheh、何だよそのカオスな面子は。まぁ了解したぜ。これ着ていけば良いんだろ?」

 そう言って懐から()()()()()()()()()()()()()サンズ。

 

「そうだ。まぁ、頼みって位だから、別に店頭でサボっていても良いけどな?」

 

「おいおい、オイラがサボっているって? これでも粉()砕身して生きているんだぜ? 骨だけに!」

 

 \ツクテーン/

 

「……パピルス、助けてくれ……」

 

「パピルスなら確か見廻りに行ったぞ。『俺様がニンゲンを捕まえるのだ!』って言ってな。」

 

「パピルスに見つかればいいけどなぁ……他の奴等なら視界に入った瞬間即抹殺だろう……(汗)」

 

「せやな。」

 

「んじゃ、これお代だから。ホットドッグありがとさん!」

 

「heheh、一方的に要求突きつけたままおさらばとは、お前さんも十分酷いじゃないか?」

 

「ジョークのお返しだ。」

 

「お気に召したようで何より。」

 

 ニヤリと笑う鎧と骨。彼等を倒せる者は、この世界にいるのだろうか? 

 まだみぬ異世界に向けて、着実に下準備をしていくシャボンヌ。

 明日に備えてホーンバーグ内の自室で眠る……

 

 


《モモンガ・ヘロヘロサイド》

 

 

 

 

【ナザリック地下大墳墓】宝物殿入り口付近

 

 

 

 

 その前で、サキュバスとオートマトン、スライムの供を連れた骸骨様と漆黒の粘体が姿を現した。

 

『お、落ち着け、落ち着くんだ。俺。()()()は俺が作ったんだろ! 責任は俺にある……』

 

『モモンガさん……』

 

【ナザリック地下大墳墓】宝物殿。

 大墳墓最後の砦とも言えるここは、とあるNPCが守護を任されていた。

 

 尚、ここの守護者はペロロンチーノとシャルティアの披露宴にも、ましてや緊急事態招集にも参加していなかった。

 

 それは何故か? 

 某ナザリック知謀の三大将(仮)の中の一角に数えられている彼が来ない理由を、他の二角はこうコメントしている。

 

「宝物殿は、いつ如何なる場合でも守護を怠ることは御法度であり、任せられる守護者はこのナザリックでも特に強く、賢く無ければならないという、至高なる御方の御考えによるもの」だと。

 

 しかし、実際にはそれとは別に、知謀の三大将でも考えが及ぶことはない、()()()()があった。

 

 それは、この【ナザリック地下大墳墓】の絶対支配者、『モモンガ』の過去にある。

 

『あ〜これ絶対動き出しているよなぁ(泣)……どうしよう、やっぱり引き返しましょうか。』

 

『ここまで来て?!』

 

()()()がこの中で動き回っていることを想像したら、どうしても開きたくなくなるんですよ!』

 

『貴方の過去です。しっかりと受け止めてくださいな。』

 

『い、イヤ────────!!!!』

 

 さながらこの密談はお供達には聞こえない。

 彼女達は口々にこう言うだろう。

「実に支配者たるに相応しい御姿」だと。

 

 さて、一行は宝物殿入り口の黒き物体がくまなく覆う扉の前までやってくる。

 

「大丈夫か? アルベドよ。」

 

「はい。モモンガ様より頂いた腕輪により、《ブラッド・オブ・ヨルムンガルド》の毒ダメージは完全に無効化されています。」

 

「宜しい。では向かうぞ。え、え〜っと……『ア、アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!』」

 

 その言葉に反応して、扉の上、黒い壁面から何か文字が浮かび上がってくる。

 

「これは……『かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝から離れ去るだろう。』だな。」

 

 ヘロヘロが合言葉を唱えると、今まで扉をピッタリ塞いでいた黒い物体がある一点へと集まり、その点に残るは漆黒の球体のみ。

 

 宝物殿の扉は開かれた。

 

『ヘロヘロさん、もっと遅く言って貰った方が良かったです。』

 

『どんだけ入りたくないんだよ! この人!』

 

伝言(メッセージ)』でツッコミを入れるスライム。

 完全にポジション逆転している。

 

『さあ、もう観念してくださいな。遂に御対面ですよー。』

 

ふぉお!?

 

 ここの守護者が整頓しているのであろう手入れが隅々まで施されている管理庫──さながら美術品を展示しているかのよう──を通り抜け、一行は終点に向かう。

 モモンガの精神の終点でもあるのだが……

 

 

 一行は長方形の、中央部にソファとテーブルのみ置かれた部屋に出る。

 

 その部屋のソファからゆらりと姿を現す者が……

 

「タブラ・スマラグディナ様!? な、何故……」

 

 現れた異形──蛸を彷彿とさせる頭部に、水死体のようなヌラヌラとした白い皮膚に覆われた『脳喰らい(ブレイン・イーター)』──は、紛れもなくアインズ・ウール・ゴウンの大錬金術師、『タブラ・スマラグディナ』の姿だった。

 

「落ち着いてください。守護者統括アルベド様。」「……アイツ、至高なる御方じゃない……何者?」

 

 アルベド、シズ、ソリュシャンが困惑する中、モモンガは頭を内心抱えながら、こう言葉を零す。

 

 

「もう良い。パンドラズ・アクター。元に戻れ。」

 

 

 次の瞬間、

 蛸の異形種だった《それ》は、たちまち姿を歪ませる。

 後には、軍服姿の『上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)』が姿を現す。

 

 

「ようこそ、おいでくださいました。」カッ

 軍服をサッと翻し、軍靴を軽快に鳴らす。

 

「至ィ高なるぅ御方! ヘロヘロ様ァ〜〜! そして! 私の創造主! ン~モォモンガ様っっっ!!」

 

 明らかなるオーバーリアクションに、右手で見事な敬礼をバシッと決めたその男の名は……

 

 

【ナザリック地下大墳墓】宝物殿領域守護者『パンドラズ・アクター』その人である。

 ある骨は呼ぶ、彼のことを『黒歴史』であると。

 

 

 モモンガはこの時既に17回の精神抑制が働いていた。

 

(ひぃっ! や、やめてくれぇええええええ!!!!!!)

 

 心の中で魂の叫び(笑)を上げるモモンガ。

 友にも守護者統括にも部下にも、ドン引きされる自分のNPCの痴態

 ↑(本人がそうあれと設定した為に、パンドラズ・アクターにとやかく言うことができない。)

 と、そのNPCの姿が若かりし日の己、()()()()()()()()()()()()()()()()と結びつき、

 

 モモンガは悶絶した。

 

「……お、お前も元気そうだな……」

 絞り出すように言葉を発す。

 

「はい! 元気にやらせていただいております。ンところで、今回は……」

 止まないオーバーリアクション。軍帽の前を右手で押さえ、左手は後頭部に添えながら、肩越しにこちらを見やる『黒歴史』。

 

「……どうなされたのでしょうか?」

 

「カフッ」パァァァァ

 思わずモモンガは体勢を崩しかける。

 生身の人間だったら、確実に吐血しているのであろう。

 

「……我が友ヘロヘロ、ペロロンチーノの装備と、ワールドアイテムを取りに来た。」

 

「おぉ、ゲイ! ボウ! 太陽の輝き、ペロロンチーノ様の御威光を示す暁の魔ぁ弓! そして、さ〜らには! 全てのアイテムを超越した破ぁ格の存在。その名もぉ! ゥワ〜ルドアイテム! 世界を変えるぅ! 強大な力、至高のゥ御方々の偉大さの証ぃ〜。ナザリックに眠る、秘宝の数々が、」

 とどめの一撃! 

 

「遂に力を振るう時が来たと」

 

 こうかはばつぐんだ! 

 モモンガのせいしんにじんだいなダメージをあたえた! 

 モモンガはひんしだ! 

 

「……《強欲と無欲》、《ヒュギエイアの杯》を用意してくれ。我等は装備の方を取りに行く。……では、其方は頼んだぞ。」

 

「は! 仰せのままに! いってらっしゃいませ! モォモンガ様!」

 そう言って敬礼するパンドラズ・アクター。

 

「……そして、お嬢様方。」

 

「お嬢様?」

 アルベドが顔を(しか)める。

 

「私は守護者統括。そのような軽々しい言葉使いは慎むよう。」

 

「立場は弁えてください。パンドラズ・アクター様。」

 

「……同感。」

 

「Oh……それは失敬。ヴァラ(薔薇)のように美しく、可憐な御姿につい……」

「お〜いちょっとこっち来ようか〜!!」

 

 流石に我慢の限界だった。

 モモンガはパンドラズ・アクターの肩を掴んで連れて行き、壁に追いやる。

 

「あ、ドン……」

 右手をパンドラズ・アクターの顔の真横に叩きつける。

 

いいか? お前の主人は俺だよな?」

 

「は、はい。モォモンガ様……」

 

だったらさ! そんな主人の頼みでもなんでも良いからさ! 敬礼は止めないか……? ほ、ほら、何というか色々変じゃないか? 変に思われたくないだろ? だったら敬礼は止めような!」

 

「……Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)

 

 ダンッ!! 

 左手を瞬時にパンドラズ・アクターの顔の真横に付ける。顔を更に近づける。

 

「ドイツ語だったか〜???? それも俺の前ではしないでくれ!」

(あ〜もう限界だ! この苦痛から誰か解放してくれ〜……)

 

 

 ──────────────

 

 宝物殿の最深部には42対の柱の空間にゴーレムが置いてある。

 至高の41人を模したものである。

 

 その中の二体──鳥人の像と粘体の像──から装備を外す骸骨。

 

「ほへ〜やっぱ私達に似てますね〜。」

 

「リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをつけていたら襲い掛かられることを忘れかけてましたよ。ありがとうございます、ヘロヘロさん。」

 

「ハハ、ゴーレムにそう作動するようにプログラムをいじった私が忘れる訳ないじゃあないですか〜」

 

「それもそうですね。あの時残業をかっぽってまでログインしてくれたこと、本当に感謝しています。」

 

「残業代なんて、あって無いような物なんで大丈夫です……」

 

「めちゃくちゃ大変だったみたいですね……」

 

「ほんと、もうあの世界には絶対戻りたくありません!」

 

「めっちゃ同感です。」

 

 モモンガとヘロヘロは、自分が置かれていた『リアル』での環境を思い出し、もう二度と帰りたく無いと切実に願うのだった。

 

「それにしても、この世界って一体何なんでしょうね?」

 

「分かりません。元いた世界とは明らかに違う事位しか。」

 

「違うと言えば、NPC達が動き出した事です。」

 

「ほんと全くですー」

 

「ソリュシャン達が動いて『ヘロヘロ様!』って言って付き従ってくるんですよ! 天国ですよ! メイド天国!」

 

「ヘロヘロさん、嬉しいのは分かりますが、落ち着いて……」

 

「このままではやがて手を出してしまう! 早めに何かしなければ……」

 

「ヘロヘロさんまで性犯罪者になったら、此処が半壊するのでやめて下さい。犯罪者はペロロンチーノさんだけで十分です。」(ペロ「へくちっ」)

 

「ペロさんは一線を超えてしまった……」

 

「見た目的にシャルティアはアウトですからねー。たっちさんがいたらな〜ペロさんを止めれるのですがね。」

 

「いや、あの人確かリアルでリア充だから、今頃戻れないことを知って嘆きますよ。」

 

「リアルには幼い娘が〜とか言ってそう……それでペロさんが反応して斬られてそう……」

 

「なんか容易にその光景が想像できてしまう……」

 

「まぁ、普段の行いですかね。」

 

(ペロ「」)

 

「さて、そろそろ戻りますか。パンドラズ・アクターがワールドアイテムを持ってきていると思うので。」

 

「ぁぁぁぁぁぁ……」

 

「どんだけ意気消沈しているんですか!? ……はぁ、少し前まではこんなにツッコミすることもままならなかったのになぁ……まぁ、モモンガさん、パンドラズ・アクターは普通にカッコいいと思いますよ? うん。」

 

「そうじゃない。そうじゃないんです……」

(確かに軍服はカッコいいと思うけれど、オーバーリアクションが……許容範囲をゆうに超えている!)

 

 彼等は、宝物殿3番目の部屋の柱を離れ、談話室へ戻る。

 

「お待ちしておりました。モォモンガ様ァ〜!」

 案の定待ち構えている『黒歴史』。

 

 パァァァァ「……ご苦労。パンドラズ・アクター。それで、持ってきた物を……」

 モモンガの気力ゲージはとっくに0のようだ。

 

「こちらでございま〜〜す!」

 そう言ってパンドラズ・アクターは《ヒュギエイヤの杯》、《強欲と無欲》の2つをモモンガに手渡す。

 

「あ、ありがとうな。パンドラ」

 

「私はモォモンガ様に作られた者。とぉ〜ぜん! です!」

 

「……では、我等は行く。次ドイツ語使ったらキレるからな! 

 

「承知しましたぁ! では、お気を付けを!」

 

 その言葉を背に、モモンガは早々に宝物殿を去る。

 パンドラズ・アクターには申し訳ない事をしたと思うものの、やっぱり耐える事は不可能だった。

 

「後でパンドラズ・アクターにもお詫びの《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》渡しとくか。アイツも必要時以外は宝物殿を離れたりしないだろう。」

 

そう、心に書き留めて置くモモンガであった。

 

 

 

 

 

 



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7.襲撃された村

 〜転移4日目〜

 

 今朝、ペロロンチーノさんがシャルティアと腕組んで執務室に入ってきた。

 二人ともめっちゃ艶々している。

 この人達、三日間もなにやってんだ。

 

 

「モモンガさん、俺、やっちゃいましたよ。シャルティアと◯◯◯◯や◯◯◯とか……」

 

 

「生々しい! 止めてください!」

 第一声の酷さに思わず素が出てしまう。

 

 

「シャルティア、覚えて置くんだぞ。モモンガさんはウブ(純情)だ。逆レ対象だな。」

 

 

「くひっ、分かりましたでありんすえ。ペロロンチーノ様ぁ〜ん。」

 

 

『ちょっと! 何教えているんですか! 止めてください!』

 

 シャルティアの獣欲に満ちた目から襲われる自分を幻視してしまい、即座にペロロンチーノに抗議をする。

 

 

『はーい。』

 意外とあっさり引き下がった。

 

 

『素直でよろしい。』

 

 

『あ、後、シャルティアにはリアルの事を……』

 

 

『えっ全部?』

 

 

『断片的に。例えば、俺はエロゲを買ったりしていたこととか……』

 

 

『詳しく言え、今すぐに』

 

 

『モモンガさん……やっと分かってくれ……『分かりたくもないし聞いてるのはリアルの事どれくらい話したかです。』……アフン』

 

 

 ペロロンチーノとモモンガは、『伝言(メッセージ)』での密談を開始する。

 

 一方シャルティアは、ペロロンチーノとの昨日の夜の運動会を思い出しながら、もしもそこにモモンガが入ったらどうなるか連想していた。

 

 脳内完全にピンク一色である。

 

 ────────

 

 

 

 

 ペロロンチーノさんはどうやらリアルの事について、エロゲに関することしか言っていなかったそうだ。

 

 こちらからは今日の昼に執務室集合と周辺調査の旨を伝えた。

 

 

「シャルティアよ。」

 

 

「はい! 何でしょうか? モモンガ様ぁん!」

 

 

「話しておきたい事があってだな……」

 

 

「! もしかして3Pのお誘い!」

 

 

「違う。そう、リアルについてだ。」

 

 

「あぁ、ペロロンチーノ様がエロゲなる所でもご立派なされていたというあのリアルの事でありんしょうか?」

 

 

「ペロロンチーノ!」

 

 

「すんません!」

 

 

「はぁ。ペロロンチーノさんはな、リアルでは『カイシャ・イン』精鋭部隊の隊長だったのだ。」

 

 

「えっ、そうだったのですか?! 隊長! あぁ! 素敵です! ペロロンチーノ様あ!」

 

 

『ええええええええゑゑゑゑゑゑゑゑゑ?!』

 

 

『合わせて下さい! ペロロンチーノさん!』

 

 

「まず、我等はリアルにおいて、『キギョウ』という者達と戦っていた。奴等の目的は、新しい世界軸の構成。その為にはリアルの世界軸が邪魔だったのだ。彼は、その『キギョウ』が生み出した『カイシャ』という化け物を狩るスペシャリストだった。彼は1日にとんでもない量の『カイシャ』を倒していたのだよ。」

 

 

「い、1日200は余裕だったぜー」

『いきなり何言い出すんですか!!』

 

 

『すんません! これシャボンヌさんが考えたシナリオでして……』

 

 

『シャボンヌさん厨二病だった?』

 

 

『ですね。』

 シャボンヌの厨二病が露見してしまった! 

 

 

「そう、ペロさんは強すぎる力が原因で、敵からも味方の筈のカイシャ討伐隊『カイシャ・イン』の仲間からも攻撃された。」

 

 

「なっ! 至高の御方であり私の旦那様! であるペロロンチーノ様に攻撃とは……そいつら絶対に許さない! ブッコロしてやる! 

 

 

「待て、シャルティアよ。」

 

 

「ぺ、ペロロンチーノ様? 何故です?」

 

 

「もう既に俺が消した。そう怒るな。可愛いい顔が台無しだぞ? 

 

 

「か、かわっ……ペロロンチーノ様ぁ〜ん!!!」

 

 

 そう言ってペロロンチーノにルパンダイブするシャルティア。

 相手が峰不◯子だったら避けられていただろう。しかし、仕掛けるお相手はロリコンエロゲバードマンだ。

 そのまま二人は「もつれ愛」、「抱き愛」、イチャイチャし合う。

 

 

 それを横目で少し羨ましげに見やる骨。

 リア充と非リアの対立は深まる……

 

 

ゴッホン! さて、話の続きをしようか?」

 

 

「「すみません。」」

 

 

「今、ペロロンチーノさんは力を自ら封印しているのだよ。何故か? それはぺロさんの持つ力への嫉妬に悩まされてしまったからだ。」

 

 

「嫉妬とは見苦しい。そんな奴等、お望みとあらば妾が消すでありんすえ。」

 

 

「いや、それは無駄だ。シャルティアよ。」

 

 

「何故でありんしょうか?」

 

 

「もうその時間軸が消滅してしまったからな。」

 

 

「い、一体どういう……」

 

 

「正確に言えば破壊されたというのが正解だろう。」

 

 

「「破壊?!?!」」

 

『ちょっと、何でペロさんも叫んでるんですか……』

 

 

『いやいやいや待って待って、いきなりそんな事言われても……』

 

 

「ペロさん、やはり知らなかったですか。ペロさんは封印によって、元の世界、ユグドラシルの最奥に幽閉されていたのだ。」

 

 

「い、一体何がリアルで起こったのでありんすえ?」

 

 

「『キギョウ』は『カイシャ』だけでは戦力が足りないと判断し、今度は新たなるモンスター『テロ』を生み出そうとした。しかし、奴は余りにも凶暴すぎた。奴は自身の親である『キギョウ』を喰らい、更なる進化を遂げる。それが、破壊神『テロ・リストン』。不倶戴天の敵で、最強。だが、ペロさんが封印を解くタイミングがもっと早かったら、そいつは倒せていただろう。」

 

 

「破壊神『テロ・リストン』……何という禍々しい名前……」

 

 

「『テロ・リストン』は我等へ宣戦布告し、たちまち全てを破壊し尽くして行った。奴との戦いを終末戦争ラグナロクという。今いない38人は『カイシャ・イン』として最後まで戦った。しかし、私は此処を守る為、ペロさんは最後の希望として、ヘロヘロは負傷したために此処に来た。武人建御雷、弍式炎雷両名も負傷を癒す為。直に我等も終末戦争ラグナロクへと行がなくてはならなかった。……筈だった。」

 

 

「……」

 シャルティアは食い入るようにその話を熱心に聞いていた。

 ペロロンチーノさんは半ば吹き出しかけているのが見えたが無視だ無視! 

 

 

「『テロ・リストン』は全てを破壊した。リアルが崩壊したのだよ。その時に時空に大規模な歪みが発生したらしく、我等が未知なる世界に飛ばされた……という訳だ。シャルティアよ、分かったか?」

 

 

「……」

 

 

「シャルティア?」

「あっパンクしている。」

 

 

 見ると、シャルティアは何処か虚空を見つめ、腕をだらしなく伸ばしてポケーッとしていた。

 

 

『いやー流石だわーモモンガさんマジ厨二』

 

 

『その呼び方止めろ! 第一厨二はシャボンヌさんでしょうが!』(シャボン「えっ?」)

 

 

『いやーノリノリで解説しちゃってさー』

 

 

『ノリノリな訳がない!』

 

 

『自己暗示乙』

 

 

『ペロロンチーノォ、この後【黒棺(ブラックカプセル)】な。』

 

 

『あ、遠慮しときます。』

 

 

『ギルド長権限、拒否権はない。』

 

 

『ほんっっっと勘弁してください!』

 

 

『勘弁ではなく、観念してください。』

 

 

『上手い! 座布団一枚! じゃねーよ! お願いです! ()()()は行きたくない行きたくない行きたくないGイヤ──!』

 

 

 この後、ペロロンチーノさんは無事【黒棺(ブラックカプセル)】に叩き込まれたようです。

 

 

 


《シャボンヌサイド》

 

 

「腹減った。」

 

 

【防壁都市ホーンバーグ】城内シャボンヌの自室。

 

 

 旧王朝時代のフランス王の寝室をモデルに作られた部屋であるが故に、とても豪華な家具やアクセサリー、衣類などが収まっている。

 部屋の中心部にはキングベッドサイズをゆうに越す、巨大な寝台が置かれている。

 

 その上で起床したシャボンヌは、第一声にこう言葉を零した。

 

 

「転移4日目でこれか……お腹が4日経っても空かない方が異常だろ……とにかく何か作って貰わないと……【スノーフル】は金取るからダメだな。」

 

 

【スノーフル・ホットドッグ】は完全飲食店経営している。

 料理の価格はユグドラシル金貨数枚の出費だが、ユグドラシル金貨が満足に手に入らない今では買うことが出来なくなっている。

 

 

(《エクスチェンジボックス》でこの世界の物もユグドラシル金貨に換えられるかまだ調査させて無いからなぁ。これは早急に検討すべき案件だ。)

 

 

 グゥ~~~

 腹が鳴った。腹が減った。

 今はこの空腹をなんとかしなくてはならない。

 

 

『ティル、いるか?』

 

 

『はい! お呼びでしょうか、シャボンヌ様。』

 

 

 試しにティルルへと伝言(メッセージ)を飛ばす。

 瞬間的に反応が返ってくる。

 

 

『腹が減った。何か朝食を作ってくれ。ただし、ケーキがつく物で手頃な物だぞ!』

 

 

『畏まりました。パン()()()にいたしましょう。』

 

 

『あぁ、パンケーキなら良いか。早速作ってくれ。』

 

 

『承りました。速攻でご用意いたします────────!』

 

 

(はぁ、料理系専属のNPC作るべきだったわ。)

 

 

 ナザリックとは違い、こっちは『ガチ要塞』であり、戦闘時は街の隅々まで大量の罠が起動し、防衛用NPCも高レベルの竜や竜人ばっか。

 そしてティルル&サンズであらかたの敵は瞬殺出来てしまうことが恐ろしい。

 

 その為、エンタメ施設など微塵もない。

 あるのは最初からあった厨房室みたいなところ位。

 はっきり言って終わってる。

 

 

 しばらくすると、ティルルが部屋に入って来た。

 

「シャボンヌ様、即席ですが、アルフヘイム森妖精産小麦パンケーキをメインとした朝食をお持ちしました。」

 

 

「ありがとう。感謝するよ、ティル。」

 

 

「左から順に……」

「あ〜料理名は省略してくれないか? 楽しみが薄れる。」

 

「!! も、申し訳ありませんでした!」

 

 

「大丈夫だ。伝えなかった()が悪い。しかし今からはそれでお願いするよ。」

 

 

「か、畏まりました。それではどうぞごゆっくりお召し上がりください。」

 

 

 そう言ってティルルが退室していく。

 プレートに乗っている料理はどれも美味しそうに見える。

 

(一つだけスクランブルエッグあるけど、これ設定だとクソまずいんだったっけ? うわ〜もったいない……ごめんよティル!)

 

 今思えば、ティルルの設定をケーキ以外料理苦手にしてしまった自分の馬鹿さを呪う。

 呪いながらも、パンケーキをナイフで切り、そっと口に運ぶ。

 

(パンケーキうんま! なんだこれ?! 美味し過ぎるだろ!)

 

 頬張るごとに口内をパンの柔らかな舌触りとメープルシロップの主張控えめな甘味が浸透する。

 まさに至福の時。

 

(さて、モモンガさんの所へ行くとするか。)

 

「ニャハハ! ホットドッグのほーもんはんばい? にきたぞ! オレさまががんばってつくったりきさくをとくとみよ!」

 

 

                                       ガシャーン!                               

 

 

 窓から凸する押し売り業者もいたものだ。

 

「ファ!?」

 

 シャボンヌが驚きの声を上げる。

 

 

「この偉大なるパピルス様が、直々にスパゲティを届けに来てやったぞ!」

 

「窓弁償しろ──!」

 

 

 如何やら今日も、騒がしい1日がやってきそうです。

 

 

 

 

 


 

 

 

《シャボンヌ・モモンガサイド》

 

 

【ナザリック地下大墳墓】執務室。

 

 その詳細は、モモンガが急遽自室を改造させて作った、ナザリック最高支配者に相応しい豪華な部屋である。

 

 数々の精細な装飾が施された調度品、レッドカーペットの比じゃない程に良く織り込まれた緋色の絨毯。

 

 部屋の最奥部の壁面には、モモンガ個人のロゴマークも含めた、ギルド紋章の数々が交差するように掛けられている。

 

 そんな室内にあるは、黒壇のどっしりとした執務机と黒革の椅子。

 

 腰掛けるは『死の魔王』と呼びたるに相応しい容貌をしたモモンガさん。

 

 そんな彼は、僕が入室した際、奇妙な踊り『モモンガ・ダンス』を鏡に向かって披露している真っ最中だった。

 

 

 色々台無しである。

 

 

 踊りを披露していたモモンガさんに冷めた目を送りつつ、この光景に既視感を感じた。

 

 

(あれ? この光景、何処かで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 これアニメ版オーバーロードで最初の村発見する時のやつじゃん!)と。

 

 

 書籍を見るならアニメもと、アニメ版オーバーロードも見ていた『木下透』。その頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。

 

 

(確かモモンガさんが『あ〜もう駄目〜』ってなってお手上げポーズ取ったら起動したんだったっけ?)

 

 

『モモンガさん、試しに両手を頭の上に上げてみましょう。ハンズアップ! ハンズアップ!』

 

 

『え、え〜っと、これで何が……』

 

 

『おや、モモンガさんもうお手上げですか? (ニタァ)』

 

 

『こ、こいつ……』

 

 ブォン

 

『おっ?』『あっ!』

 

 

 はい、遠隔視の鏡を使えるようになりました。おめでとうございます、モモンガ様ww

 

 

「おめでとうございます。モモンガ様。」

 

 

 丁度後ろにいた竜人執事『セバス』が、僕の心中を真面目な方向で代弁してくれました。

 ニュアンスが全く違うけど。

 

「ありがとう! セバス。」

 

 

「おめでとう! 我が友よ!」

 

 

「……」

 

 

『おい、スルーすんなや』

 

 

『最初にからかってきたのはどこの誰でしょうね????』

 

 

『モモンガさん性格悪〜見損ないましたよ。』

『貴方にその言葉そっくりそのままお返しします。』

 

Ich habe es vermisst(見損ないましたよ)

 

『だから其れ止めろ────────!!!!』パァァァァ

 

 そう言いながらもしっかりと《遠隔視の鏡》を駆使しているモモンガさんパネェっす。

 

 

 

「……ん? これは……祭りか?」

 

 

 モモンガさんが《遠隔視の鏡》としばらく向き合っていたが、何かを発見した模様だ。

 

 十中八九()()だろうけど。

 

 

「いえ、これは違います。」

 

 

 後ろに控えていたセバスが訂正する。

 セバスの言葉に何か鋭い物を感じ、咄嗟にセバスを見やる。

 セバスは《遠隔視の鏡》に写る光景を鋭い眼で凝視していた。

 

 怖いよセバス。

 

 モモンガさんにアイコンタクトを取り、ズームを更に拡大させてもらう。

 

 

「……人間同士の争い? いや違う、そんな生温い物じゃない。これは虐殺だ!」

 

 

 完全武装をした兵士の集団が、見窄らしい姿をした村人達を一方的に斬りつけ、馬で追い立てる。

 村人達はなす術もなく、斬られた者・馬に蹴られた者から順々に絶命していく。

 

 吐き気がした。

 

 こいつらは前世で自然を意味もなく破壊していった奴等と同じ。

 只無意味に奪う者達。

 前世ではそいつらを止めることが出来なかったが……

 

 

「モモンガ、此奴らは不愉快だ。即刻抹殺しに行く。」

 

 

「待て、シャボンヌよ。我等にメリットが感じられない。」

 

 

「なら、あの騎士と村人達を情報源にするのは?」

 

 

「……しかし、貴方を危険に晒す訳に……」

 

 

 そう言って後ろを見やったモモンガさんは、セバスの方を見て止まった。

 

 

「……そうか、『困っている人を助けるのは当たり前』、か。」

 

 

 その言葉にシャボンヌも気付く。

 セバスに『創造主(たっち・みー)』の面影を感じることを。

 彼の意思は、そのまま『子供(セバス)』に受け継がれていることを。

 

 

「……たっちさん。貴方の息子さんに受けた恩を返します。……即時『転移門(ゲート)』の用意をする。シャボンヌよ。手伝ってくれ。」

 

 

「元よりそのつもりだ。あっ!」

重要なことを思い出した。

 

 

「どうした?」

 

 

「モモンガ、君は骸骨だろう?」

 

 

「そうだが、それがどうした?」

 

 

「このまま人間の村へと直行する。さてどうなる?」

 

 

「……あ〜容貌を怖がられるかも。」

例えるなら、序盤の村に大魔王様が来訪するのと同じである。

 

 

「取り敢えずこれを」

 そう言って懐中から一つの指輪をモモンガに向かって放り投げる。

 

 

「おっと、これは《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》か。使用中、能力値が下がるが、今は構わない。」

 

 

『あり! *1

 

『オケ!』

 

 

「このローブも渡しておこう。容姿で我等と判断されかねない。」

 今度は装備品の只のローブを放る。

 

 

「それもそうだな。」

 装備の着脱に入るので、瞬時に着替え終わる。

 

 

「それでは早速助けに行くか。セバス!アルベドとティル…ルに応援要請を頼む!」

 

「よし、まずこいつらを助けに行くか。『転移門(ゲート)』!」

 

 そう言ってモモンガさんはギルド武器、《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》で『転移門(ゲート)』を開く。

 

 

 鏡には、2人の姉妹が騎士達に追われる姿があった。

 

 

 

 

 

 

*1
ありがとうの略



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8.アインズ様、降☆臨☆

《少女サイド》

 

 

少女は走る。

妹を連れて。

親が懸命に繋いだ命を守るために。

 

 

 

この日、辺境の村、【カルネ村】を騎士達が襲った。

朝早く、畑仕事をしていた村人達を理不尽な暴力が襲う。

この日、カルネ村の平和は血と暴力で染められた。

 

只の素朴な村娘「エンリ・エモット」は、今人生最大の危機を迎えていた。

 

 

 

少女は走る。

血塗れの騎士を振り切るために。

 

 

エンリの両親は、家の中に押し入ってきた騎士からエンリ達姉妹を家から逃して、騎士達と対峙した。

 

無事を願いつつ、少女達は走る。

「逃げろ!エンリ!」「ネムを連れて逃げて!」という両親の言葉に従い走る。走る。走る。

 

 

後ろから追ってくる騎士が増える。

不意に背中を激痛が襲い、少女は倒れ込む。

 

 

「ネム、逃げて…」

 

 

激痛に耐えながら、そう言葉を残す。

しかし、もっと幼い少女は、その言葉とは逆に、自身の姉を助けようとする。

 

 

「ちょこまかちょこまか逃げやがって!これで終わりだ。死ね。」

 

 

少女ともっと幼い少女へと全身鎧(フルプレート)の騎士は剣を掲げる。

 

 

少女は目を閉じる。

下唇を噛みしめ、自身の力の無さを嘆きながら。

もしこうなることが分かっていれば。

こんな最後は遂げなかっただろう、と。

少女は力が無かった。

少女も理解していた。この後の結末を。

自分は死ぬ。

 

騎士が高く剣を構え、即座にーーーー

 

 

少女を痛みがーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー襲う事は無かった。

 

 

 

 

 

少女は瞼を開く。

そして驚く。

 

 

少女を殺そうとしていた刃は、()()()()()の小指で止められていた。

彼の背後には大きな楕円形に広がる闇があった。

その闇からローブを着込んだ偉丈夫が出てくる。

 

 

「ふむ、意味も無い虐殺、女子供を襲う蛮行。万死に値する。覚悟し給え。」

 

 

そう言って騎士を小指で吹き飛ばす白と緑の鎧を着た戦士。

 

闇の中から現れた、神話に出て来るかの様な見事な白い鎧を着込んだ戦士、黒いローブに身を包み、顔の全てを奇怪な仮面で包む魔法詠唱者(マジックキャスター)

其々が光と闇の凄まじい覇気を持って、騎士達を威圧している。

全身鎧(フルプレート)の騎士達はその突然の超常的存在の介入に戸惑い、また彼等の放つオーラに圧倒され、動けずにいた。

 

 

「どうした?かかってこないのか?」

 

 

「なら此方から先に行くぞ。」

 

 

次の瞬間、全ての騎士達の首が飛ぶ。

辺りに騎士の血が飛び散る。

騎士達の身体が此方に倒れて行き…

 

 

「あ、ヤバ」

 

 

この言葉の直後、少女は騎士達の血を浴びる。

栗色の髪は朱に染まり、服には大量の血痕が…

 

『血塗れのエンリ』爆誕である。

 

ちなみに、彼女の妹、ネムはエンリが壁となり、殆ど血を浴びなかった。

 

 

「うおっ」「あちゃ〜」

 

 

白の戦士と黒の魔法詠唱者が此方を見て声を上げる。

 

彼女は自分と妹の命を助けて貰ったと理解すると同時に、感謝の念が胸中を満たす。

彼女は英雄達にこう言葉を発する。

 

「助けて頂き、本当にありがとうございました!ど、どうか、村を、村の皆を助けてください!」

 

 

 


《シャボンヌサイド》

 

(何これ怖い。)

 

血に濡れた顔を向け、血に濡れた手を前で組み、懇願してくる村娘を見てこう思う。

 

〜数十秒前〜

 

(間に合った!)

 

転移門(ゲート)』を抜け、剣を掲げる騎士の前に立ちはだかる。

 

少女を斬り裂かんとしていた刃を小指で受け止め、少女と騎士とを其々見やる。

 

 (騎士の最高レベルが…

      たったの5か、ゴミめ。)

ラディ◯ツの台詞をパクリながら、

相手のlvをスキルで把握する。

 

 

『こいつらのlvは…』

 

 

『5、雑魚です。』

 

 

『やはりですか…さっさと片付けましょう。』

 

 

『了解です。』

そう言って相棒《ドラコグリード・ソード》の柄に手を添える。

 

 

「どうした?かかってこないのか?」

 

 

「なら此方から先に行くぞ。」

瞬時に騎士達との距離を詰め、騎士全員の首を刎ねる。

 

騎士達は目に驚愕の表情を浮かべる間もなく頭が胴から離れていく。

騎士達の身体は斬った剣の軌道に沿って、丁度少女がいる辺りに…

 

 

「あ、ヤバ」

 

 

斬り込み角度調整すんの忘れたわーと思った頃には既に少女は大量の血を浴びていた。

 

 

「うおっ」「あちゃ〜」

 

 

『ちょっ女性にあれはキツいですよ!』

 

 

『……てへ♪うっかり☆』テヘペロ〜

 

 

『可愛く無いです。』

 

そんな馬鹿な会話していると、血に濡れた少女が不意に声を発する。

 

 

「助けて頂き、本当にありがとうございました!ど、どうか村を、村の皆を助けてください!」

 

 

そして現在。

 

 

『軽くホラー。』

 

 

『分かる。』

 

 

『まあ、やったの貴方なんですから、責任とってくださいね?』

 

 

『は〜い。』

 

 

再び2人の少女に向き直る。

 

 

「承知した。名を聞いておこうか。」

少女に問い掛ける。

 

 

「はい、私はエンリ・エモットです。そして此方が妹のネム。」

 

 

「怪我をしているではないか。『重傷治癒(ヘビーリカバー)』。」

 

 

アイテムボックスから《アスクレピオスの杖》を取り出しつつ、自身のMPを消費して回復を行う。

 

 

「す、すごい…傷が無くなってる!」

 

「すごい!」

 

 

『第三位階で全回復かよ…』

 

 

『レベルがレベルですからね…』

 

 

『そうだ!レベリングの実験に…』

 

 

『モモンガさん、程々に。どうやら、我々の思考が人間の物では無くなって来ています。』

 

 

『はっ!そう言えば、同族意識が無くなっています。』

 

 

『一度《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》を嵌めてみて下さい。』

 

 

『えーと、こうですか?わっ!スースーする!』

 

 

『えっと、まさかローブの下全裸?』

 

 

『イヤーーーーー!!』

 

ローブ姿のモモンガさんが身体をよじる。

 

ーーーーーー

 

 

『落ち着きました?』

 

 

『まだスースーします。』

 

 

『我慢してください。』

 

 

フード外して黒髪を見せることで、姉妹に人間ですよーアピールをした後、姉妹が目を逸らしていた()()()()()()に目を向ける。

 

 

『で、死体如何しますか?このまま置いといても目の毒です。』

 

 

『確かに…それじゃあ全部アンデッドにしてしまいますか。』

 

 

『賛成〜』

 

 

フードを被り直してから一度指輪を外し、死体に向かい、スキルを発動させるモモンガさん。

 

 

「『中位アンデッド創造』『死の騎士(デス・ナイト)』!」

 

 

死体の上に、突如出現した闇が覆い被さる。

闇は死体の全身をくまなく取り込み、死体は一度痙攣した後瞬時に起き上がり、形が変形する。

後には二体の『死の騎士(デス・ナイト)』が姿を見せる。

 

 

「「ヒッ」」

少女達が怯えている。

 

 

「大丈夫だ。彼はアンデッドを操ることが出来る。襲われないぞ。まぁ、見てなさい。」

すこし可哀想だったので、怯える少女達をなだめる。

 

 

「『死の騎士(デス・ナイト)』よ。そこの騎士の死体と同じ姿をした者達をこ『駄目です!情報源が…生け捕りにしないと!』…生け捕りにせよ。」

 

 

残った死体を指差してモモンガさんが殺害を指示しようとするのを僕は『伝言(メッセージ)』で止める。

 

「「ウォォォォオオオ!!」」

ドスドスドス…

 

 

 

 

 

…あの〜行っちゃったんですけど

 

『あ、あるぇ〜』

 

 

モモンガさんからアホっぽい『伝言(メッセージ)』が飛ぶ。

 

丁度その時、『転移門(ゲート)』から新たに二つの異形種が現れる。

 

アルベドとティルルだ。

 

2人とも完全武装で肌の露出は0である。

 

「モモンガ様、シャボンヌ様、遅れてしまい、申し訳ありません。」

「準備に時間をかけて、御身を危険に晒した罰、如何な様にも…」

 

2人が平伏して謝罪をする。

 

「良い、アルベドよ。」「ティル、よしなさい。」

 

支配者2人は其々部下を宥めにかかる。

 

 

「元は私の初動の遅さによる物、全責任は私にある。」

 

 

「友、シャボンヌだけではない。我もまた、部下へ連絡を怠った。お前たちに非など無い。」

 

 

「「違います!御身に責任など…」」

 

 

「アルベド、ティル、丁度盾役を特攻させてしまい、私しかいなかった所にお前たちが来てくれたのだ。私は感謝しているぞ。」

 

 

「シャボンヌの言う通りだ。ナイスタイミングだ。アルベド、ティルルよ。」

 

 

「「ありがたきお言葉。」」

 

「さて、この話は以上。セバスからどれくらいの話は聞いているか?」

僕は問い掛ける。

 

 

「はい、モモンガ様とシャボンヌ様の御二方が人間共の村にご慈悲を与えることを…」

 

あ、これはヤバそう。

 

「アルベドよ、その通りだ。しかしその考えは頂けないぞ。」

小声で指摘する。

 

「村の者達と交流していく上で、人を下に見る発言は控えよ。」

 

 

「は!申し訳ありません。」

アルベドも小声で了承の意を示す。

 

「大丈夫よ。私達が助けるからね。」

ティルルがお姉さんキャラで少女達の不安を解消させにかかる。

 

 

「『生命拒否の繭(アンティライフ・コクーン)』、『|矢守りの障壁《ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ》』。これは防御魔法という。お前たちは『魔法詠唱者(マジックキャスター)』という者を知っているか?」

 

「はい!私の友人で魔法を使える人がそう呼ばれていました!」

 

「そうか。ならその魔法の一種と思って欲しい。では、これも渡しておこう。」

そう言ってモモンガさんは二つの角笛を少女に渡す。

 

「こ、これらは…?」

 

 

「《ゴブリン将軍の角笛》というアイテムで、その効果は、名の通りゴブリン達を19匹召喚できるという物だ。いざとなったらもう一つ使いなさい。」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

 

 

姉妹が御礼を言う。

 

「あの、貴方様方のお名前は…?」

 

 

「我が名をしっかりと心に刻め。我の名はアインズ、アインズ・ウール・ゴウンだ!」

 

 

「そして、私の名はダニヤ。ダニヤ・リューシという者だ。」

 

 

『シャボンさん、いや、リューシさん、名前の由来は?』

 

 

『リューでいいですよ。…由来は竜星をキルギス語とギリシャ語で訳した呼び方を組み合わせただけです。』

 

 

『じゃあリューさん。行きましょうか。』

 

 

『これからアインズと呼ぶのか〜ちょっとめんどい。』

 

 

『他のギルドメンバーを探す為です。我慢してください。』

 

 

『オーケー。』

 

こうして4人は、死の騎士(デス・ナイト)が走り去った方向へと脚を運ぶ。

 

 


《ロンデス・ディ・クランプサイド》

 

 

 

 

 

神よ。御許しください。

 

 

私は初めから今回の任務に疑念を抱いていた。

守るべき人間を殺すだと?何の冗談だっと。

スレイン法国神官長様の言によれば、これは人類の存続を維持する上での必要な犠牲であり対価という話だった。

 

その言を何処か疑問に思いながら、私達の隊は任務を遂行する。

 

10を超える村々を焼き滅ぼした。

何の抵抗も出来ず、殺される農民達に内心謝罪をする。

 

全ては神の仰せのままに。

 

 

 

また村を滅ぼしにかかる。

ベリュース隊長は分かりやすくクズであり、いつも通り

 

 

「金目の物は奪い取れ!容姿端麗の女は捕まえろ!後は殺せ!」

 

 

とかほざいている。

本当に神はこんなこと望んでいるのだろうか?

 

その疑念に答えるように、我等の前に『死の体現達』が現れる。

 

 

「で、『死の騎士(デスナイト)』だと!?それも二体も!!」

 

 

「お、お前たち!あれらに突撃しろ!俺を守るんだ!」

 

 

ベリュース隊長の言とは別に、死にたく無い思いが数人の仲間を自殺特攻に導く。

 

奴には勝てない。

覇気で分かる。

 

ここは即座に撤退すべきなのだが、隊長がグズグズしている事で、隊員に動揺が起きている。

 

「ぐぁああ!」

「がは!」

 

死の騎士(デスナイト)に特攻した者から地に伏していく。

何故か奴等は剣の柄で殴り付け、気絶だけに留めている。

それが不気味で仕方がない。

 

 

「隊長!撤退の準備を!」

 

 

「お前たちは特攻しろ!俺の逃走の時間を稼ぐのだ!」

 

 

(ダメだコイツ)

隊員全員がそう思った時、頭上から声がする。

 

「ふむ、中々分かりやすいクズも居たものだ。」

 

咄嗟に頭上を見やれば、白い鎧に身を包めた戦士が宙に浮かんでいた。

 

「お、お前たち!アイツを殺ギャアアアア!!」

 

「クズが!苦しみながら死ね!」

 

一応隊長なので、幾人かは隊員が突撃するが、瞬時に脚を切られて行動不能にされていた。

 

「ああああああぁ、き、金貨!金貨あげますからぁぁああ!」

ブチッ

「びゃ、ひゃくっ、百枚あげますからぁぁああああガ」

ブチッ

「いぎっっっに、二百、三百グゥアぁああぁああ!」

ザシュッッッ

 

「処刑は終わったか?ダニヤ。」

 

「あぁ、アインズ。クズはクズらしく殺す。」

 

「さて、素直に武器を捨てて投降すれば命は…」

ガランガランガシャン

 

謎の魔法詠唱者(マジックキャスター)が言い終わる前に武器を捨てる者達。

 

頭が良い者は羨ましい。しかし、自分は戦わずに負けを認めたくは無い。

勝負事をする前から白旗を挙げることが、生まれつき嫌いだった。

何でも挑戦して、ダメならダメで良い。

 

我ながら馬鹿だと思うよ。

 

「私は命など惜しくは無い!最後まで戦うつもりだ!私と勝負しろ!」

さあ、終わりへ向かおう。

 

「ほう、何故だ?何がお前をそこまで突き動かす?」

 

 

「単純に戦う前から諦めたく無いだけだ。俺が勝ったら、部下達は見逃してくれないか?」

 

 

「アインズ様に何というぶれ「良い、アルベド。下がれ。」…はっ!」

 

 

「勝負はどちらが死ぬかだ。後戻りはもう出来ないぞ?」

 

 

「無論。私の名はロンデス・ディ・クランプという者。」

 

 

「私はアインズ・ウール・ゴウンという。ダニヤ、開始の合図を」

 

 

「3回数える。0で初めだ。よし、ではいくぞ?

 

…3

 

…2

 

 

…1

 

 

 

…0!」

瞬時に、強く地を蹴る。


《ダニヤサイド》

 

 

「うおぉ(ブォン)…」

 

(全く、時止め対策は必須だというのにな…)

 

アインズさは無詠唱化した『時間停止(タイム・ストップ)』を放つ。

 

アインズさんはそのまま自分に向かってきた勇気ある騎士に向かう。

 

「ロンデスか。記憶に留めておこう。魔法遅延化(ディレイマジック)魔法の弓(マジック・アロー)』さらばだ。」

 

 

「アインズ様に無礼を働いた身でありながら、ここまでの慈悲を賜わるとは…やはり私が…」

 

 

「アルベドさん。大丈夫ですよ。アインズ様は赦していらっしゃる。他の奴等とあの人間が違っていた。只それだけです。」

 

 

「でも、アインズ様に…」

 

 

「逆に考えてみてください。アインズ様に無礼を働いた訳では無く、アインズ様に無礼を働ける程の威勢があったと。馬鹿っぽいところが、アインズ様の琴線に触れたのではないでしょうか?」

 

 

「そんな馬鹿に、慈悲をかける価値など…」

 

 

「馬鹿は憎めない物なのだ。アルベドよ。」

 

 

「シ…リューシ様。何故なのでしょうか?」

 

 

「それは、私にも良く分からない。今朝窓を突き破って登場してきた奴も、なんだかんだ言って憎めない物だ。」

 

 

「そんな者、私が…」

 

 

「シズとエクレアを見よ。あんな感じだ。」

 

 

「あぁ、成る程、そういう事でしたか。」

 

 

やっと納得してくれたようだ。

 

 

「もうすぐ効果が切れる。万が一の警戒は怠るな。」

 

 

「は!」

 

 

そして時は動き出す。

 

「おぐぁああ!」

 

時間停止解除と共に、12個の光弾がロンデスという騎士を襲う。

そのまま彼は絶命した。

 

 

「さて、此奴は…『上位アンデッド創造』『蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)』」

 

 

途端、倒れていたロンデスという騎士の死体は姿を変貌し、フードを被り、蒼い馬に跨がる禍々しい戦士の姿に変わる。

 

「名前はどうする?アインズよ。」

 

 

「名前?うん、考えていなかったが…『あおきさん』にしようか」

 

「やめなさい!この子可哀想でしょ!」

ついうっかりオネェ口調気味になってしまった…

 

「いきなりオネェみたいな口調に…それに!可哀想って何ですか!」

いや、この人マジで言ってんの?

 

 

「ほら、アルベドもそう思うだろう?」

 

 

「アインズ様の御心のままに」

 

 

「ティルはどう思う?」

 

 

「リューシ様の御心のままに!」

 

 

「一対一か…ティルよ、こっちに来ないか?」

 

 

「引き込もうとすな!…アルベドよ、考え直して欲しい。

 

 

「あんたも引き込もうとしてるじゃあないか!」

 

 

「先にやったのはあんたでしょうが!」

 

 

「なんだと?この白カビ野郎!」

 

 

「あぁん?!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「クランプで、良いな?」

 

 

「…」

 

 

結局ネーミングセンスォウに勝った僕は、『蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)』の名をロンデス・ディ・クランプのクランプとした。

 

「村の皆さん、もう安心してください!敵は全て捕縛しました。」

 

 

「た、助かったのか?」

 

 

「あなたが村長の方でしょうか?」

 

 

「村長は彼方です。」

 

その言葉の後、おずおずと群衆の中から老夫婦が出て来る。

 

「こ、この度は私達の村を救って頂き、ありがとうございました。この村で出せる銅貨は300枚程しか有りませんが、す、全て差し上げ…「いらんな。」…へ?」

 

 

「それを受け取れば、この村の維持が不可能となるだろう?せっかく助けた村を飢餓で苦しめたくはない。それにこれは私達の気まぐれ、別に金などとらん。」

ちょっとカッコつけちゃったかな?

 

 

「な、なら何をお求めで…」

 

 

「ここら一帯の情報です。」

とアインズさん。

 

 

「情報?」

 

 

「そうだ。周辺諸国の情報が欲しい。何せ遠方から遥々ここまで旅して来たのでね。」アインズさんのフォローに回る。

 

 

「…そうだったのですか。」

 

 

「あ、後この国とか村の風習や、あの森のこと、この周辺の地理とかも教えて欲しい。」

 

 

「分かりました。答えられる範囲で。」

 

 

「よろしく頼む。」

 

僕は即座にアインズさんへ伝言(メッセージ)を送る。

 

『やりましたね!アインズさん!』

 

 

『とりま、村長との会談が終わったら、ペロロンチーノさん達の方に連絡を取りますか。後捕縛した連中からの情報も統合しなくては。』

 

 

『オケです。』

 

そう言ってアインズさんは伝言(メッセージ)を切る。

次に僕はティルとアルベドに伝言(メッセージ)を送る。

 

 

『ティル、アルベド、聞こえるか?』

 

 

『『はい。』』

 

 

『なら、まず捕縛した兵士全員に尋問をお願いする。その為に『魅了(チャーム)』を使うことを許可する。有益な情報、例えば国家の特徴、暗部や歴史、国家の強さなど、洗いざらい聞くのだ。』

 

 

『『了解致しました!』』

 

 

(さて、サンズの方はどうなっているかな?)

 

ふと、ペロロンチーノ&ヘロヘロの元へ送り込んだ怠け骨の動向が気になる。

 

(アイツの本性は()()だからな…何かしているのはほぼ確実だな。)

 

骨のあの表裏性はエグいものがある。

 

(そう設定したの僕なんだよ…)

 

我ながらとんでもないNPC作ったなぁと思う。

丁度その時、件の骨から伝言(メッセージ)が届く。

 

『よぉ、こちらサンズ。お前さん元気してたか?』

 

 

『現在進行形で絶好調。』

 

 

『そいつは良かった。オイラ達の方もヤベー奴等捕まえちまってよ。』

 

 

『ヤベー奴等?』

 

 

 

 

 

『陽光聖典って言う奴等だ。』

 

 



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9.ある日♪森の中♪ニグンさんに♪出会った♪


《ペロロンチーノ&ヘロヘロサイド》

 

「エロゲーイズマイライフ!」

 

 

「いきなりどうしたんですか、ペロさん?」

 

 

「生きてて良かったと思っただけですよ。エロい俺の嫁が毎日俺にご奉仕してくれるんです!なんと言ってもエロゲによく出る性癖がてんこ盛りですよ!てんこ盛り!例えば…」

 

 

「ほんと自重して欲しいです。」

 

 

大森林の奥へと足を踏み入れていく鳥人と粘体。

彼等が目指すのは森林奥地。

この森林にはどんなモンスターがいるかを調査しに行くのだ。

ぶっちゃけモンスターはあんた等(ペロロンチーノとヘロヘロ)だよと言いたい。

 

(マジでアレに付いて行けと?その内骨のオイラまで襲われそうだ…)

 

その背後をこっそりと付いていく骨。

骨は《隠遁者の布衣(ハーミッツ・ローブ)》を羽織り、彼等の背後20mの所を歩いている。

鳥人(バードマン)の口から「死体愛好家(ネクロフェラリア)」やら「骨姦」やら不穏な単語を聞きつつ、見失わないように気をつけて忍び歩きをするという離れ技を駆使して後を尾ける。

 

 

(しかし目立ったモンスターの陰はなし…か。)

 

「しかしこの辺目立ったモンスターいませんね〜」

 

 

「エロ系モンスターが出れば真っ先に捕獲して◯◯◯なんだけ…」

 

「ペロさん?そろそろキレていいですか?」

 

 

「え〜ヘロヘロさんそんなキャラでしたっけ?」

 

 

「朝から貴方がシャルティアとの情事についてばかり話するからですよ!」

 

 

「だって、最高だったから…」

 

 

「だってもクソもない!」

 

 

「グハァ」

 

心の中でペロロンチーノはこう思う。

ヘロヘロさん、姉ちゃん(ぶくぶく茶釜)みたいになってる…

と。

 

(おっ、この先に何かいる。)

 

暗殺者(アサシン)レベル5の常時発動特殊技術(パッシブ)スキル『索敵』を使い、周辺より一際レベルが高い魔獣の存在と場所を捉える。

 

(北東に400m地点か…一応確認するか。)

 

サンズ本来の職業スキル『空間位置消去(ショートカット)』に『索敵』を組み合わせたコンボは、どんな相手でも楽々逃走することは不可能である。

 

 

シュバッ

(…この獣は…)

 

目の前に寝そべる()()()()()()()()を前に、サンズはこう言葉を零す。

 

(hehe、中々可愛いな)

 

どうやらサンズはハムスターを気に入ったようだ。

 

(おっと、直ぐに戻らないとな。)

 

また直ぐに元の場所に戻る骨。

 

「…ムニャムニャこの蒼い魚、中々に骨があるでござる…zZZ

 

ハムスターは今日も気持ち良く木の枕に寝そべる。

 

 


《ニグンサンサイド》

 

 

 

 

「ガゼフ・ストロノーフよ。悪いが、同族でありながら、竜(ども)に与するお前は我が神の教えに背く。ここで消えて貰うぞ。」

 

 

 

 

竜、そう、奴等は我等人間とは決して相容れない存在!

八大魔神との戦いで消えるべきだったのだ!

 

 

 

 

600年前に御降臨なされた六大神様達は、我等か弱き人間へ御慈悲を御与えくださった。

脆弱だった我等に、

 

戦う魔術と戦術、

神聖かつ強大で貴重な武具、

我等の意思を一つに纏める為の規則、

我等の生活を支えてくれる不思議な用具の数々、

そして、我等人類の生きる権利を授けたという偉大なる神よ!

 

 

しかし、500年前に其の栄華は突如として暗転する。

最後の六大神、死の神スルシャーナ様が、かの忌々しき八大魔神に殺された。

大罪人共め!

スルシャーナ様崩御を人類は誰も止められなかった。

我等が弱かったから…

 

 

竜は何をしたか?

最後に後からしゃしゃり出てきて八大魔神全員が弱った隙に消しただけだ。

大罪人共が竜共に尋常じゃない大ダメージを与えた所は称賛するが。

しかも、六大神様の部下の方々がその時を境に暴走した時もまたしても竜共によって彼等の遺品を全て取っていってしまった。

正確には十三の者達の中の一人として紛れ込んでいただけだが…

竜達は殆ど何もしなかったではないか?

「十三英雄」の中にはかの「プレイヤー様」がメンバーのリーダーとして指揮を取った。

世界を救った決め手となったあの九人の女神様も、プレイヤー様が召喚なされた者達であろう。

 

竜達が力を我が物顔に振るう姿にはもう限界だ!

奴等は我等人間のことなど取るに足らない存在などと見下し、その癖世界盟約などと言って我等の力を陥れようとする。

 

なんと我等人類の中でも奴等に恭順する者達が出てしまった。

その一人が今回の任務の標的、ガゼフ・ストロノーフだ。

竜と裏で繋がり、力を付けているようだが、逆に竜達の力の一端に利用されることなど分かり切っている!

麻薬の蔓延しているわ犯罪結社「八本指」は巣食うわで腐り切った王国なぞを守るとか言っている時点で馬鹿だ!

 

 

貴様には天罰を受けて貰う。

一切の慈悲は無い。

人類の存亡をかけた戦いにお前は邪魔だ。

 

 

「皆の者よ!王国は腐り切っている!麻薬や賄賂が横行し、違法娼館や暴行、殺人!更には!王国の上層部は犯罪の黙認!そんな国は我等人類の存続に悪影響を及ぼす!」

 

 

一拍置いて、こう告げる。

 

「そんな国を守るなどと豪語し、更には竜と裏で通ずる裏切り者がいる!そう!今回の任務の標的、ガゼフ・ストロノーフである!」

「我ら陽光聖典の名に掛けて、ガゼフ・ストロノーフを誅殺せよ!汝らの信仰を神に捧げるのだ!全ては人類の存続の為に!

 

 

「人類の存続の為に!」

 

 

「我等人類の明日に平和の祝福をお与え下さい。我が神よ!」

 

 

ガゼフが第八攻略地点『カルネ村』へ向かった模様。

森での野営もこれで終わり。

祖国に帰り、吉報を神官長様にご報告しなくては。

 

ガゼフ・ストロノーフよ。

ここで貴様はお終いだ。

今引導を渡してやろう。

 

 

 

全ては我等が神の為に。

 

 

 


《性犯罪者&メイド狂いサイド》

 

 

「あれ、どう見てもヤバいですよ。」

 

 

「宗教団体の考えることは分からん…」

 

 

(…もう変な奴増えないでくれ…)

 

鳥人(バードマン)と粘体と骨が見つめる先は、怪しい法衣を着た集団。

 

彼等は一様にこう思う。

(こんな大森林の奥地で何やってんだ。)

と。

 

「しかし、奴等侮れません。服装や装備品がユグドラシルの物です…」

 

 

「ユグドラシルの延長線みたいな世界なのか?ここは。何にせよ、この世界はまだまだ謎が深い。」

 

 

「元の世界も謎だらけでしたがね?」

 

 

「あいつ等と対話…無理だな。人類の存続とか言ってるし。異形種の俺等なんて抹殺されますよ、きっと。」

 

 

「最悪の場合、暴走するかも…」

 

 

「下手に刺激するとヤバいかもしれないですしね。ここは様子見で」

 

 

「了解〜」

 

 

その場を後にしようとすると、

パキ「あっ」

ペロロンチーノが小枝を思いっきり踏んづけてしまった。

 

「だ、誰だ?!」

 

「誰かいるのか?!」

 

バレた…

 

「なっ!あれはバードマン?!それにスライムだと????」

 

「各員戦闘準備ィーー!」

 

「ペロロンチーノォ!」

 

「すんません!」

 

(おいおい、アホかお前等?)

 

 

臨戦態勢を取り、迎撃に当たる陽光聖典隊員達。

各自が訓練の記憶に従い、魔法を唱える。

 

「『石筍の突撃(チャージ・オブ・スタラグマイト)』!」

 

「『聖なる光線(ホーリーレイ)』!」

 

其々ペロロンチーノ、ヘロヘロへと魔法が飛ぶ。

それを難なく交わす二体。

 

「「「『第三位階天使召喚(サモン・エンジェル・3nd)』『炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)』!」」」

 

「天使を突撃させろ!『第四位階天使召喚(サモン・エンジェル・4rd)』『権天使(プリンシパリティ)』!」

 

方向性を変え、今度は天使召喚を行う隊員達。

 

「ん?炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)権天使(プリンシパリティ)?雑魚やん。」とヘロヘロ。

 

 

「もしかして大したことない?」

 

向こうの隊長らしき男がゴミのような天使を召喚して突撃させる。

向かってくる天使を弓で射ながら、ペロロンチーノは言葉を零す。

 

 

「ば、馬鹿な!い、一撃だと…?」

 

合計30を超える天使を突撃させたにも関わらず、鳥人(バードマン)に一瞬で壊滅された。

 

ニグンが「な、何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった…」状態に陥っている隙に、背後から骨が忍び寄り…

 

 

(さっきから気になっていたが、この男の懐中から見え隠れしてたこの《魔封じの水晶》にはいったい何が込められてんだ?)

 

 

男、ニグンの懐中から《魔封じの水晶》をくすねる。

ニグンは気づかなかった。

 

前方にいる日の神に目が行ってしまっていたからだ。

 

 

「全員大人しくしろ。燃やし尽くされたくはないだろう?」

 

 

ペロロンチーノが全身をフル装備で覆い、両翼を広げ、黄金の羽毛を露わにする。

《ゲイ・ボウ》を構え、黄金の甲冑に身を包んだその姿はまさに太陽神。

彼は全身から黄金の輝きを放つ。

 

 

「な、何を…俺達は何を相手にしているのだ!?」

 

 

相手への警戒レベルを瞬時に限界まで引き上げる。

相手を魔神レベルと断定し、咄嗟に懐中に手を入れるが…

 

 

(な、無い!懐中にあった筈の《魔封じの水晶》が!き、切り札が!)

 

 

ニグンの脳内を濃厚な絶望感が支配する。

神よ、我等の行いは間違いだったのですか?

 

「3秒待つ。経ったらお前等の終わりだ。3……2……1……」

 

 

「総員、平伏せよ!」

 

 

「オーケーオーケー。力量差を把握出来たか。」

 

 

そう言って弓を下ろす鳥人(バードマン)

 

「取り敢えずは、我等を襲って来たという事で、君達は捕縛させて貰う。」

 

 

集団全種族捕縛(マス・ホールド・スピーシーズ)

 

 

ヘロヘロが妨害魔法を唱えるが、彼等には絶望的なレベル差がある為、ニグンはあっさり捕縛される。

 

 

(事情聴取後食われるんだろうな…レベル20ちょいではなかったらもっとマシだったろうに)

 

 

サンズは隊長格の冥福を祈る。

他の隊員も彼と同じ目に遭うだろう。

そう思うと、サンズはケツイを抱いた。

 


 

 

 

んで、その後ペロロンチーノとヘロヘロは陽光聖典全員をシャルティアの転移門(ゲート)で送りましたとさ、めでたしめでたし。

 

 

『ヤベーわ進捗が。俺等なんて一つの村救っただけなんだが…』

 

 

もう鳥人と吸血鬼と関わりたくないのだが…

 

 

『うん?何故だ?』

 

 

『…』

 

 

『変態か…』

そう、変態だ。

 

 

正直言って、襲われる未来しか見えねぇ

 

 

『【スノーディン・ホットドッグ】に閉じ籠んのか?』

 

 

マジでそれ考えている。

 

 

『取り敢えずこっちはそのガゼフ・ストロノーフと接触するつもりだ。サンズは休んどきな。』

 

 

そうさせて貰うぜ…

 

 

(陽光聖典壊滅…か。攻性防壁事件も起きなかったから、スレイン法国がどう動くか気になるが…シャルティア洗脳の確率は大幅に減ったな。)

 

 

原作とは別の路線で物語が進もうとしている。

これからの動向について、策謀を巡らす竜騎士が村の真ん中に一人佇んでいた。

 

 



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10.王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ

「では、我々は再び旅に出ます。」

 

 

「鎧の騎士団に襲撃されるようなことが二度も起こらぬよう、鍛錬を怠るでないぞ。」

 

 

カルネ村の復興を急ピッチで終え、近づいてくるガゼフの戦士団との遭遇を図る。

その為、アインズ(モモンガ)さんと相談して、村を離れることにした。

 

 

「はい!私共の村を救って下さり、本当にありがとうございました!」

 

 

「礼には及びませんよ。」

「うむ。それでは。」

 

そう言って村を離れようとする。

 

しかし、見張りを任されていた男の一人が、何やら血相を変えてこちらに近づいてくる。

もしや…

 

 

「大変です!村に騎士団が向かって来ます!」

 

 

はや!

ガゼフはや!

 

 

「何?場所は?いつ頃着きそうか?」

 

 

「西の方角より数十人の戦士隊が、後三十分もすれば村に来ます!」

 

 

『アインズ様、リューシ様、西方10時の方角より二十七名の人間種からなる鎧の騎士達の影を発見しました。現在ティルルが追尾をしています。どうされますか?』

 

アルベドマジ優秀や。

 

『アルベドか。その者達は報告にあったガゼフ・ストロノーフ率いる隊であろう。決して手を出すでない。我等が対応するべき相手だからな。』

 

 

『レベルはティルルからの報告によればlv50程度とのこと。万が一を考慮し、護衛として、増援をアウラ及び彼女の使役魔獣達に要請しておきました。』

 

 

『そうか。ありがとう、アルベドよ。ティルルもそうだが、お前達は優秀だ。我の下に付いていることが勿体無い位にな。』

 

 

『御身に何一つ及ばぬこの端小なる我等下僕風情に何という妙々たる御言葉!御身の至高なる御考えに一歩でも近付けるよう、精進いたします!』

 

(いや、気合入りすぎじゃない?もっと肩の力抜こうよ!)

 

 

『お、おう。ま、任せるぞ…』

タジタジなアインズさん。

 

 

『は!直ちに行動を開始します!』

 

(な、何?何でアルベドやる気ゲージMAXぅう!⤴︎なの?え?ナンデ?)

 

8割方貴方の所為ですよ。

 

 

(と、取り敢えず原作よりもガゼフやらニグンやらのレベルの高さが気になる。一体、何が起きてる?)

 

まあ、こっちも超強化ナザリックなんですけどね。

 

 

(兎に角、まずはアインズさん、ペロさん、ヘロヘロさんの三人とこれからの打ち合わせを…その前にガゼフと一体何話せばいいんだーー!!!)

 

心の中で葛藤するダニヤ(シャボンヌ)。

しかし葛藤の様子などお首にも出さずに、顎に指を当てて空を眺める姿はまさしく英雄の思索。

カルネ村の人々と蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)のクランプはその姿を後にこうコメントしている。

 

 

「あの姿、佇まい、まさしく英雄譚(サーガ)の大英雄、いや、あれは英雄王の御姿だった。」

 

 


《〜王国戦士長ガゼフ・ストロノーフサイド〜》

 

 

「急げ!一人でも多くの民を救う為に!」

 

《〜走れガゼフ〜》

 

 

ガゼフは激怒した。

必ずかの邪智暴虐な鮮血帝を除かなければならぬと決意した。

 

ガゼフには政治が分からぬ。

 

ガゼフは、村の村民だった。

 

剣を振り続け、ここまで上り詰めて来た。

 

けれども邪悪に対しては、人一倍敏感だった。

 

今日未明、ガゼフは焼村を出発し、野を越え林抜け、十里離れた【カルネ村】へと馬を進めていた。

 

ガゼフには碌な鎧も無い。多くの王国兵団も、師匠である竜達もない。

あるのは腰から下げる《剃刀の刃(レイザーエッジ)》と選りすぐりの頼れる部下達のみ。

 

部下達は王都に妻子を持つ者や、強くなる見込みのある者もいる。

そして彼等は一様に私を心から慕ってくれている。

 

それに応えなくては。

 

ガゼフは、それ故、自身を犠牲にしてでも部下達は守ると心に誓った。

村々を襲う悪党共に正義の鉄槌を。

掛け替えの無い仲間と言っても過言では無い部下達の身の安全を確保しつつ、村の民を助けようと奮闘していた。

 

ガゼフには強大なる師匠がいた。

ツアインドルクス・ヴァイシオンである。

今はアーグランドの奥地で八大魔神の遺した《ぎるてぃ武器》なる物を守護している。

その師匠に、帰還後密会するつもりなのだ。

久しく会わなかったのだから、訪ねていくのが楽しみである。

 

馬で草原を駆けるうちにガゼフは、遠くにある筈の村から煙が上がっていないことに気付く。

間に合ったか!

もう既に日は傾き、辺りが夕日に赤く染まっているが、けれども、何故か煙は見えない。

【カルネ村】は襲撃対象じゃなかったのか。

それとも既に占領されてしまったのか。

慎重なガゼフも、だんだん不安になってきた。

隣にいる双眼鏡を持つ若き精鋭に問う。

 

 

「村の様子はどうなっている?」

 

 

「現在、村は無事なように見えます。壊された家屋や血痕が一部に見られることから、村は襲撃された模様。なんらかの理由で撃退に成功した可能性があります。」

 

 

「把握した。村を助けた御仁がいる、か。まだ村にいてくださるかどうか…」

 

 

ガゼフは単純な男だった。

「村を助けた御仁」が人外である可能性も考慮せず、

颯爽と村まで疾走する。

 

村にはいつの間にやら巨大な木製の木柵が立てられており、村への行く手を塞ぐ。

ガゼフは柵の向こうへこう宣言する。

 

 

「私の名は、エ・リスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ!村々を襲う帝国の卑劣漢共の討伐の為、この周辺の村々を回っている者である。村の詳しい事情を聞かせて欲しい為、我々を村の中に入れて欲しい。」

 

 


《アインズ&リューシサイド》

 

 

 

 

(リアルガゼフだー、めっちゃカッチョいいー)

 

草原を馬で駆けるその姿はまさしく英雄。

王国切っての強者、国王の最大の守り手、ガゼフ・ストロノーフ。

 

原作だとナザリック勢から

「小動物」程度に扱われていた漢。

 

この人自身の国の所為で、結構苦労している人だからなぁ〜助けてやりたい。

実際はそんなこと思って無いのだろうけど。

装備品見ても分かる。

この世界の王国の貴族も腐っているな。

ガゼフも可哀想に。

 

隣の村長が「王国…戦士長…!」と言う言葉に合わせ、こう言葉を発する。

 

 

「此度は其方らの言を信じよう。だが、一つでも何か不審な行動を取れば、其方等の命はない。」

威圧しっかり。

 

 

「貴様…!この方は近隣諸国最強と謳われる、王国の剣、ガゼ…」

 

「やめるんだ、副長。彼等は実際に被害を受けている。いきなり現れた我々を警戒することは必然的だ。」

 

「分かりました。戦士長。」

 

 

「信用して頂き、感謝する。ところで御仁の御名を伺ってもよろしいか?」

馬に跨りながら、ガゼフはこう言葉を発する。

 

 

「ダニヤという。旅の剣士だ。そして仲間の魔法詠唱者(マジックキャスター)の…」

 

「私はアインズ・ウール・ゴウン。遥か遠方を旅してこの村までやって来たところ、この村が騎士の襲撃に遭っていた為、助けに来た次第です。」

其々名乗りを上げる。

 

するとガゼフははっとした顔を見せた後、咄嗟に馬から降り、此方に向かってくる。

 

 

「おぉ!この村を救って頂き、感謝の言葉もない!」

そう言って頭を下げるガゼフ。

 

 

「頭を上げてください、戦士長殿。王国の剣と呼ばれる戦士長殿が、そう軽々しく頭を下げてはいけませんよ。」

止めるモモンガさん。

 

 

「ご指摘痛みいる。アインズ殿は、王宮での社交辞令にも長けているようで。」

 

 

「長い旅路の途中、多くの国家を巡り歩いていた次第です。人並みの社交辞令は兼ね備えていると自負しています。」

 

 

「御仁は素晴らしい冒険家だ。もしよかったら、一度、貴殿等を王都へお招きしたい。」

 

 

「その申し出、謹んで受けましょう。戦士長殿が居を構える国とは、どれだけ荘厳で活気に満ちたものなのか楽しみです。」

いや、もう王都?!

 

 

『アインズさんアインズさん!』

 

 

『何ですか?』

 

 

『流石に時期尚早では?』

 

 

『まだ行く日時などは決まっていないので、こちらが行きたい時に行く感じにしたいなーと。それに王国の重鎮の人っぽいし、仲良くした方が良いかなと。』

 

 

『十分な時間があるなら良いですが…』

 

 

「しかしながら我々も食料や武具の調達等で少し訪問が遅れる見通しです。王都の武器商人の売る品も気になりますし、一度本国に戻ろうと思っています。」

 

 

「承知した。本当は聞きたいことがあるのだが、冒険者への詮索は野暮。御仁の都合が良い時にお越し下さい。」

 

 

「ありがとうございます、戦士長殿。あちらに拘留した兵士達が居ます。かの者達の首を王の御前へ晒すもよし、尋問し、相手の情報を掴むのもよし。戦士長殿にかの者達の身柄を渡しましょう。」

 

 

「感謝する。これで手ぶらで王の御前へ参上するという情けない姿を部下達に晒すことが無くなりそうだ。」

 

この人やっぱすげーカッケー。

原作で殺されちゃった時、めっちゃ泣いた。

 

 

「感謝など不要。『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』、友の言葉だ。我等はその言葉を胸に生きている。」

 

ガゼフが殺されるところ見たくないので、ガゼフ自らが殺され回避できるように誘導しなければ!

 

 

「それは…何とも素晴らしきお言葉、御仁の御友人は御仁のようにとても素晴らしい殿方なのだろう。誠に尽善尽美たる御言葉だ…」

 

はい、ガゼフ生存フラグ立ちました〜

さすガゼ。やはり期待を裏切りません!

 

 

「えぇ、彼は英雄の中の英雄ですよ。」

 

「我等と今は離れて旅をしているがな。いつかまた会いたいものだ。」

ガゼフ選手、どうする?

 

 

「私は御仁と御友人の再会を心から願う。」

ガゼフ殺害率大幅ダウン!やったね!

 

 

「感謝します。戦士長殿。」

 

 

「戦士長では呼びづらいと思うので、できればガゼフと呼んで貰いたい。」

 

 

「ではガゼフ殿、御達者で。」

 

 

「此度は村を救って頂き、重ね重ね感謝する。王都に訪ねて来た時は、我々が案内したい。ではまた。」

 

 

「また会う時が楽しみですよ、戦士長殿。それでは。」

 

 

捕虜の兵士達(しっかり死の騎士(デス・ナイト)とクランプの記憶を捏造済み)を引き取り、再び平原へ走り去るガゼフ。

その後ろ姿を見送りながら、僕は次の作戦を立てる。

 

「これから大変になるぞ〜!」

 

 


 

《〜ガゼフ・ストロノーフサイド〜》

 

 

 

カカッカカッ

 

馬に乗り、疾走する数十名の戦士。

その纏め役である戦士長、副長は前方で馬上での対談を行っていた。

 

 

「あの者達を王都へ招いて大丈夫なのですか?戦士長。」

副長がこう言葉を零す。

 

 

「恐らくだが、かの村が救われたことは事実であろう。あの御仁達からは強さが()()()()()()()が、自身の力を隠蔽している可能性が高い。問題は、()()()()()()()()()()()()だ。答えは強すぎるからに相違は無いと思う。御仁達は、王国領にいた。恐らく王都へ向かう道中だったのだろう。なら、王都へかの御仁達をお招きし、様子見をすることが最善だろう。」

 

 

「おぉ!流石は戦士長!常に先を見据えて最善策を考える知略と、幾多もの武技と腕力、速力を兼ね備えた、まさに王国最強の戦士!」

 

 

「恩師から伝授されたことが殆どだがな。それに、かの御仁達の考えを私は実現することが出来ない。」

 

 

「あの者達の言っていた『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』と言う台詞ですか。」

 

 

「あぁ、私は今日、その言葉に感銘を受けたよ。だがな、同時に悲しくなるのだ。王国の民を守るべき王国戦士長が、国民に悪影響を及ぼす犯罪組織を倒すことが、実質不可能となっている。それは何故か分かるか?」

 

 

「王の守護、それに貴族達の妨害工作ですね。」

 

 

「そう、だが、青の薔薇のイビルアイ嬢が言うには、貴族達と『八本指』は、強い癒着関係にあるらしい。また、『八本指』の保有する戦力は計り知れぬ。もし攻撃したとなれば、たちまち私は抹殺されるだろう。」

 

 

「そんな!では、一体どうすれば…!」

 

 

「かの御仁達に協力を仰いでみたい。」

 

 

「あの者達を?危険だと思いますが…強さの程度もまだ把握し切れていませんし。」

 

 

「しかし、きっと応じてくれるだろう。かの御仁達の精神は気高く、美しい物と信じている。」

 

 

「私は反対ですから、戦士長。あの者達に得体の知れない何かを感じます。」

 

 

「むぅ。副長は疑り深い者よ。一応の警戒はしておこう。」

 

(ツアインドルクス御竜侯が仰る『100年の揺り返し』やも知れないからな。さて、陛下への御報告はどうすべきか。)

 

馬に乗りながら、国王への報告の内容を吟味するガゼフ。

 

背後からずっとついてきていた『骨』に気付かず…

 

 


 

《アインズ&リューシサイド》

 

 

カルネ村の復興支援の申請と従属の要求を村長に説明し終えた瞬間、0.001秒後には村長は契約書にサインをしていて、その速度に驚いた。

 

アウラには自身の部下達の一部を村周辺の監視にあたらせ、アウラ自身はナザリックに戻るよう伝えた。

その後、アルベドに任務遂行中の一部の配下を除いた全ての配下を玉座の間に集めるよう伝える。

アインズさんは、ヘロヘロさんとペロロンチーノさんに今回の調査結果を聞きに行った。

 

僕は今、ナザリック内の一室で左腕で顎杖しながら自身の右手を眺めていた。

 

 

コンコン「失礼します、シャボンヌ様。何か御所望の品はありますでしょうか?」

 

 

「今はまだこれといった要望はない。せっかく来てくれたところ悪いが、他の仕事に当たりなさい。」

 

 

「承知しました!」

 

 

(ナザリック・ホーンバーグ外ではダニヤ・リューシと、ナザリック・ホーンバーグ内ではシャボンヌと呼べ、か。部下達からしたら結構しんどそうだよなぁ。かといってせっかく付けた設定を無かったことにするのはカルネ村とガゼフに不審がられると思うし…)

 

 

とても変なところで悩む竜騎士がそこにはいた。

 

 

(ペロロンチーノさんとヘロヘロさんが捕縛した陽光聖典の尋問が始まるから、その前に呪いを解けないか試したい。それに、世界征服とか部下達が言い出したら、どう対処すれば…?)

 

 

あれこれ思考を巡らすシャボンヌ。

あの後ティルに、全配下をナザリックの玉座の間に集結させるよう命じた。

玉座の間は一時的に寿司詰め状態となること確定だ。

そんなことはさておき、部下達がモモンガさんのアインズ・ウール・ゴウン改名直後に何か言い出さないかと〜っても心配している。(特にデミえもん)

 

 

陽光聖典からの情報も超重要。

全てはこの後の集会で決まる。

 

 

(ナザリックの基本方針は全種族の救済で行くようにしたいけれど、デミえもんェ…そしてツアーや番外とはどのみち戦うことになりそうか。そもそも僕らの存在はこの世界の者たちにとってイレギュラーだからな。)

 

 

思考を巡らす至高の御方。

丁度その時、誰かが扉をノックする。

 

 

コンコン「シャボンヌさん、入りますよ。」

 

 

「アインズさん。ペロロンチーノさんとヘロヘロさんは?」

 

 

「先に玉座の間で待機してもらっています。シャボンヌさん、重要な新事実が分かりました。ペロロンチーノさんとヘロヘロさんが村襲撃の現行犯を捕縛していました。」

 

 

その現行犯もう知っているけどねw

 

 

「お、ペロさんヘロヘロさんやりますねぇ!」←い◯夢

 

 

「そいつらは自分達の事を『陽光聖典』と言っていたそうで、これから拷問してさらなる情報を引き出そうと思います。」

 

 

「ほう、『陽光聖典』ねぇ。」

わ〜陽光聖典って初めて知った〜(棒)

 

 

「聖典は確か宗教観でいう教祖の書き残した書物、という意味だったか?であれば宗教国家による犯行。近くにあるスレイン法国とか一番怪しいわー」

 

 

「スレイン法国…ですか…」

 

 

「次にローブル聖王国ですが、たしかこの国は亜人種による襲撃が相次いでいるそうです。とても他国へ手出しが出来る状態ではないでしょう。程度にもよりますけど。やはりスレイン法国しか無いですね。」

 

 

「スレイン法国を危険国リストに追加しますか。」

 

 

「それがいいでしょう。ただ、確証は今のところ有りません。」

 

 

「やはり、一刻も早く陽光聖典を尋問すべきですね。」

 

 

「もしかしたら、陽光聖典から何か国の裏事情が聞き出せるやもしれません。尋問の際に少し立ち寄りますね。」

 

 

「オケです。ではそろそろ行きましょう。」

 

 

「何処へ?」

 

 

「【玉座の間】に決まっているでしょうに。では先に行きますよ。」

 

 

「いってら」

 

「あんたも行くんだよ!!」

 

 

玉座の間で一体何話せと?

渋々ながら、《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を使い、玉座の間に転移する。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

【玉座の間】

 

ペロ×シャルティアの結婚式から全く変わっていない景色だ。

 

ただ、大きく変わった点は、

玉座のすぐ横に、玉座と同じくらいのサイズの豪華な椅子が置かれており、その上には二体の異形種が其々座っていた点だ。

 

 

「お、来たようですよ。」

 

 

「モ…今はアインズさんか、アインズさん、シャボンさん、俺は大変な事に気付きましたよ。」

 

 

「ペロさんがいつにも無く真剣な表情をしているだと!?」

 

 

「それで、その大変な事って何ですか?」

 

 

ペロロンチーノは一拍置いてこう言う。

 

 

「精神とか肉体が種族に引き寄せられています。」

 

 

「あぁ、その件ですが、一応《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》付ければ、人間種になることができますよ?弱体化しますけど。」

多分精神の異形種化は防げる…筈。

 

 

「あ、そっか。てっきり、シャルティアのことを性的対象として見れなくなったら怖いなぁ〜と。」

この人はこの期に及んで何言ってんだ。

 

 

「貴方の頭は99%が煩悩で出来てんのかっ?」

 

 

「ツルペタロリ妊婦って最高ですよね!シャルティアのお胸からち…」

 

 

「駄目だ、会話が全く通じねぇ…」

ペロロンチーノォ!

 

 

「そろそろ静かに、下僕達が入ってきます。」

取り敢えず会話の方向性を変えようとするシャボンヌ。

 

 

「「「はぁーい」」」

素直なところがペロさんの良いところ。

そう思うシャボンヌであった。

 

 

『アルベドよ。玉座の間に入ってきて良いぞ。』

アインズは伝言(メッセージ)を飛ばす。

直ぐに反応が来る。

 

 

『了解致しました。これより、全配下の入場を開始いたします。』

その直後、驚くべき速さで玉座の間に入り込み、整列し出す全配下達。

 

 

『…アインズさん?これはやり過ぎなのでは?』

 

 

『…私もそう思いましたよ。癪ですが。』

全配下を玉座の間に集合は少しふざけすぎたな。

ルベドやら第八階層のあれらやらパンドラズ・アクターやら、最低限の防衛用NPCだけは呼んでいなかったが、それでも玉座の間がごった返す位の動員数だった。

もしこの時の玉座の間を、バハルス帝国・エ・リスティーゼ王国・スレイン法国の三国の首脳が見たら、1秒で泡を拭いて気絶するだろう。

凶悪な見た目の悪魔やアンデッド、魔獣達や氷の怪物、更にはそこに竜まで加わり、この世の全ての絶望を一箇所に濃縮したような絵図が広がっていた。

 

 

「すまぬな、アルベドよ。」

何もかもお終いダァ…と、アインズは極度の緊張でそんな言葉を零す。

 

 

「何を仰いますか!御身が謝ることなど何も…」

慌ててアインズの突然の謝罪に弁明しようとするアルベド。

 

 

「一人でここまでの人員を集めるお前の働き、やはり我が友、タブラ・スマラグディナの愛娘だ。優秀な下僕を持てて、私は嬉しいぞ。」

そう言ってアルベドの背に無意識に手を回すアインズ。

何やってんだ。

 

 

「勿体なき御言葉…えっ」

手を回された瞬間、アルベドは頬を紅潮させ、もじもじし始める。

 

(大勢の部下の前でこんな…ア、アインズ様…その、不敬ですが、いけません!)

 

 

恥じらう乙女アルベド。

流石にアルベドの様子に気付いたアインズは、とっさに腕を引く。

 

 

(な、何やってんだ俺ぇええ!しまった!近所の子供を撫でる感覚でついアルベドにセクハラを…これ完全に事案やん…やべぇよ…)

 

 

心の中で今してしまったことを反省するアインズ。

 

 

(あっ御身の手が戻って…待ってください…)

 

 

心の底では、今されたことを心地よく思っていた事に気付くアルベド。

 

 

(((これ、アインズ×アルベドのカップリング誕生?)))

 

それを間近で見ていた鳥人(バードマン)と粘体と竜人がこう思う。

 

ーーーーーーーー

 

〜10minutes later〜

 

 

「まずは、私達が個人で勝手に動いたことを詫びよう。すまなかった。何があったかは、アルベドから聞くと良い。」

 

アインズさん演技力高過ぎワロタw

続けてアインズさんは言葉を発する。

 

「そして、皆に至急伝えるべきことがある。」

 

ざわざわ…ざわざわ…

 

 

「『上位道具破壊(グレーターブレイクアイテム)』」

 

アインズさんが呪文を唱えると同時に、モモンガロゴの旗が消滅する。

 

下僕達は目に驚きを浮かべ、消滅した旗の名残を見つめる。

 

「私は名を変える。」

 

《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》の杖先を地に打ち付けつつ、こう高らかに宣言する。

 

「これより私の名を呼ぶときは、

 

 アインズ・ウール・ゴウン!

 

 アインズと呼ぶが良い!

 

   異論がある者は立って示せ。」

 

 

すると、アルベドが伏せたまま、こう発言する。

 

「御尊名をお伺いしました。いと尊き御方。絶対の忠誠を。

アインズ・ウール・ゴウン様万歳!

 

 

「アインズ・ウール・ゴウン様、万歳!!」

 

 

続けて、シャルティアが言葉を発する。

 

「至高なる御方々に、私共の全てを捧げます。」

 

次にアウラとマーレが同時に言葉を発する。

 

「「恐るべき力の王達よ。」」

 

その次はデミえもん。

 

「この世の全ての者は、御方々の偉大さを知るでしょう。」

 

その次はコキュートス。

 

「全テヲ超越セシ、我等ガ諸王ヨ。」

 

次にティル。

 

「森羅万象全ての者に、御方々の慈愛と御威光を。」

 

最後にアルベド。

 

「深い絶望の具現、古き漆黒の粘体(エルダー・ブラックウーズ)であるヘロヘロ様。太陽の化身、爆撃の翼王であるペロロンチーノ様。神聖なる龍騎士、竜人であるシャボンヌ様。そして、死の体現者、オーバーロードであるアインズ・ウール・ゴウン様に未来永劫の栄光を。」

 

おお、凄い凄い。

そろそろ口開かないと守護者の勢いに呑まれそうだ。

 

 

「お前達に厳命する。我がナザリックを不変の伝説にせよ!」

 

アインズさんに取られた〜!!

 

 

「遥か空の彼方まで、我々の名を広めるのだ。」

 

ペロさん、ここでマジにならなくて良いから。

 

 

「暗く深い地の底まで、我等の存在を知らしめるのだ。」

 

ヘロヘロさん!?

残るは僕だけやん!ええい、こうなったらもうどうにでもなれ!

 

 

「千代に八千代に我等は不滅。この不変の定理を世界に証明せよ。」

 

ヤケ糞気味に剣《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》を頭上へと掲げ、英雄っぽいポーズを取る。

 

 

(は、はは…恥っっっず!)

 

 

我ながら良い厨二病的ポーズと台詞だよ。

笑いたいだろ?笑いたきゃ笑えよ。

そんなキラキラした目でこっちを見ないで!

 

 

「デミウルゴス、各自への言伝を皆に伝えなさい。」

 

来た!みんな大好きデミえもんデミウルゴスだ!

夜空を見上げてアインズさんが「世界征服なんて良いかもな」っていう場面を多忙で潰しといたからきっと大丈…

 

 

「アインズ様はこの世界に転移した直後、全階層守護者を集め、至高なる御方のいた世界、『リアル』についてのお話から、私達下僕の成長の促進を要された。この世界にいる強大な敵の対処を迅速に行う為の至高なる御方々の御計略、脱帽致します。しかし、至高なる御方々の御計略はそれだけでは無かった!

至高なる御方々は、最終的にこの世界を御所望なのです!

 

 

「おおおお!」

 

 

『『『『ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ?!?!?!』』』』

 

 

全配下達が驚嘆の声を上げると同時に、ナザリックの絶対支配者達はもっと大きな驚愕の声を上げる。

 

(そこから繋げられるのかよ!…デミえもん、恐ろしい子。じゃない!このまま行くと世界征服コースまっしぐらだ!止め…あれ?止めなくても別に自然が穢れる事はない。世界を掌握して自然を管理するというのも悪くはないかも…取り敢えず、アインズさん達と要相談や!)

 

 

『これ、止めた方が良くないですか?』

とペロさん。

 

 

『いや、これもう止めるの不可能やん。(諦め)』とヘロヘロさん。

 

 

『どうしてこうなった…』とアインズさん。

 

 

ヤバい、まるでお通夜状態だ。

 

 

『世界征服か〜。ウルさんとかるし☆ふぁ〜とかが喜びそう。(小並感)』とか適当に言ってみる。

 

 

ヘロヘロ『そのまま世界征服してもいいかと。NPC達止めるの無理だろうし。』

 

 

ペロロン『賛成〜』

 

 

アインズ『もう、どうにでもな〜れ♪』

 

 

約一名自暴自棄に陥っている人いるが、基本方針は世界征服に切り替わる。

 

 

「ふふ、ふはははは!流石は我がナザリックの知謀の将、デミウルゴスだ。我等の目的を半分も見抜いているとはな。」

絶対的支配者ロールで迫真の演技を披露するアインズさん。

 

 

「恐らく御身の最終目標は、他の至高なる御方の捜索だと愚考します。」

 

 

「素晴らしい!その通りだ!流石だな。災厄と諸悪の王、ウルベルト・アレイン・オードルの息子、炎の造物主、デミウルゴスよ。」

適当に褒めときゃ良いや!

 

 

「誠に勿体なき御言葉。」

デミえもんが平伏する。

 

 

すると、アルベドがこう宣言する。

「各員!ナザリック地下大墳墓の最終目標は、至高なる御方々の御所望する、この世界と他の至高なる御方々の所在を、アインズ様、ヘロヘロ様、ペロロンチーノ様、シャボンヌ様にお渡しする事だと知れ!」

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

 

『『『大変なことになってしもた…』』』

 




ガゼフのところ、ふざけました。

恐るべしデミえもん…


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11.閑話 女子会

 ナザリック地下大墳墓【アルベド自室】にて、今宵女子会が開かれる。

 

 参加者はアルベド、アウラ、シャルティア、プレアデスの面々、一般メイドの一部である。

 

 ちなみに、ニューロニストは拷問タイムで忙しくて不参加。グラントも加勢する為不参加。

 ルベド、ニグレド、オーレオールは、持ち場を離れると拠点防衛が困難になる為不参加。

 他の一般メイドは通常業務の為不参加。

 

 

 その為、まだ仕事開始前のプレアデス達と、

 ペロロンチーノとの夜の営みで忙しかった為に一時休暇中のシャルティア、

 村の監視はフェンが殆どやってくれている為、手が空いていたアウラ、

 主催者のアルベド

 のみが集まることができたのだ。

 

 

 アルベド「今日は集まってくれてありがとうね。まあ、適当に空いているところに座って。」

 

 部屋の中央にある大きなグランドテーブル、それを囲い込むようにしてモフモフのソファが四台置かれている。

 そこに腰掛けていく面々。

 一般メイド達は恐れ多いということで、起立状態のままだったが。

 

 

 シャルティア「ペロロンチーノ様の次のお呼ばれがアルベドとは、中々良い流れでありんすえ。今日は援交パー

 アウラ「シャルティア、言わせないよ。」

 

 ……最後まで言わせるでありんす、チビ助。」

 

 

 アウラがシャルティアの危険発言をすかさず防止。

 ナイスプレー! 

 

 

 ユリ「あの、アルベド様?」

 

 

 アルベド「ここではアルベドと呼んで欲しいわね、ユリ。」

 

 

 ユリ「アルベド様を呼び捨てになんて出来ません!」

 

 

 アルベド「う〜ん、困ったわね。アルちゃんとかでも私は構わないけど……」

 

 

 ルプスレギナ「(≧∀≦)ノはい! はい! ならば、全員砕けた感じで話すっていうのはどうっすか〜?」

 

 

 エントマ「さんせ〜!」

 

 

 シズ「……良いと思う。」

 

 

 ナーベラル「姉さん、流石に……と思ったけれど、妹がこう言うなら……」

 

 

 ソリュシャン「姉さんに賛成しますわ。」

 

 

 アウラ「それ良いね! 賛成〜!」

 

 

 シャルティア「良いと思うでありんす。」

 

 

 アルベド「じゃあ皆砕けた感じでお願いね。そして……一番はアインズ様カッケー!」

 

 

 シャルティア「分かる〜……でありんす 」

 

 

 アウラ「分かる〜。」

 

 

 エントマ「分かる〜!」

 

 

 ユリ「わ……分かりま……分かるー。」

 

 

 ルプスレギナ「な〜に戸惑ってるんすか、ユリ姉! せっかくアルベド様が許可してくれたっすから、それに応えないといけないっすよ〜! あっ分かるっす〜!」

 

 

 シズ「……同意」

 

 

 ソリュシャン「同感ですわ〜」

 

 

 シクスス他「わ……分かり……わか……

 

 

 アルベド「ふふ、皆まだ砕けた感じで話すことが難しいようね。ここで慣れておきましょう? 次の御方は……ペロロンチーノ様で。」

 

 

 シャルティア「ペロロンチーノ様カッケ──!! ……で、ありんす。」

 

 

 アウラ「同感だけど……ペロロンチーノ様はエッチな御方だと茶釜様が……」

 

 

 シャルティア「チビ助も良いこと言うでありんすねぇ」

 

 

 アウラ「良いこと? なのかな?」

 

 

 ソリュシャン「そういえば、前にヘロヘロ様がペロロンチーノ様のことをエロゲマスターと呼ばれていた記憶が……」

 

 

 ルプスレギナ「そうなんすか? ちっとも知らなかったっす……」

 

 

 シズ「……私も、博士がそんなことを……」

 

 

 エントマ「私もぉ確かペロロンチーノ様に襲われる〜、とかぁ源四郎様が仰られていたようなぁ〜」

 

 

 ナーベラル「私はその、対象外だとか仰られていた覚えが……」

 

 

 ユリ「……実は私もよ、ナーベ。」

 

 

 ルプスレギナ「あれ? もしかして私だけっすか? えろげますた〜と言うペロロンチーノ様の称号を知らなかったのは……」

 

 

 ユリ「そうなるわね。」

 

 

 ルプスレギナ「」

 

 

 アルベド(私も初耳だったわ……)

 

 

 シャルティア「えろげますた〜……何と甘美なる響き……ペロロンチーノ様、私は一生貴方にこの身を捧げます……でも女同士は入りませんよね?」

 

 

 アウラ「寒気がした。」

 

 

 シャルティア「大丈夫でありんす。チビ助みたいなちんちくりんには用はないでありんすから。」

 

 

 アウラ「へ、へ〜、それって馬鹿にしていると受け取って良い?」

 

 

 シャルティア「何のことだかさっぱり〜」

 

 

 アウラ「……」

 

 

 アルベド「つ、次の御方はヘ」

 

 ソリュシャン「ヘロヘロ様!! 私が護衛致しますぅ〜!!」

 

 

 ルプスレギナ「ちょっ、ソーちゃん落ち着くっすよ〜」

 

 

 ソリュシャン「はぁはぁヘロヘロ様になら何されたって構わないあわよくばご寵愛を賜りたい組み伏せられたい邪魔しないでルプー!」

 

 

 シズ「……少し落ち着こ?」

 

 

 ルプスレギナ「シズちゃんにも言われてるっすよ〜」

 

 

 エントマ「? ソリュシャンはヘロヘロ様と戦いたいの〜?」

 

 

 ソリュシャン「え? 何で?」

 

 

 エントマ「だってぇ、組み伏せられるってことはぁ戦って負けるってことだよね〜? ソリュシャンはヘロヘロ様と戦いたいのかなってぇ〜」

 

 

 ルプスレギナ「いや、そういう意味じゃないっす。」

 

 

 エントマ「じゃあ何ィ〜?」

 

 

 ルプスレギナ「出番っすよ、ナーちゃん!」

 

 

 ナーベラル「えっ!? 何で私?!」

 

 

 ルプスレギナ「経験豊富で我が妹といったらナーちゃんっすよ〜」

 

 

 ナーベラル「はぁ?! け、経験豊富って、私そんな女じゃないわよ!」

 

 

 ユリ「ナーベ、口車に乗せられているわよ。もっと落ち着きなさい。」

 

 

 ナーベラル「はっ! ありがとうユリ姉さん。」

 

 

 アウラ「……」

 

 

 ユリ「アーちゃん、さっきから何でボクの胸ばかり見ているの?」

 

 

 アウラ「えっ? みみみみ見てないよ?!」

 

 

 ユリ「はぁ、アーちゃんはまだ成長期なんだから、そんな悩まなくて良いと思うよ。」

 

 

 アウラ「だよね! 私って可能性あるよね!」

 

 

 ユリ「うん!」

 

 

 アウラ「よ〜し! ユリにも負けないくらいになるんだから!」

 

 

 シャルティア「チビエルフがでかくなっても、所詮チビのままじゃなくて?」

 

 

 アウラ「偽乳に言われたくはないわ〜」ピキピキ

 

 

 シャルティア「な、何故それを……」

 

 

 アウラ「それにね、私はエルフではなくて闇妖精(ダークエルフ)よ。ダークエルフの特徴は、成長したらでっかくなるっていうから、お先真っ暗な誰かさんとは違うのよ〜」エヘン

 

 

 シャルティア「な、なぁ?! お、お先真っ暗って誰のことでしょうねぇ?!」

 

 

 アウラ「整体パット何枚も重ねているボールガウンの銀髪アホ吸血鬼。」

 

 

 シャルティア「それって私のことでしょうが──!! あとアホって言ったなチビ助の癖に〜! 生意気な〜!! 」

 

 

 アウラ「あら、エルフとダークエルフの違いすら分からなかったのにやるじゃない。あとチビになるのはどっちかしら〜????」

 

 ルプスレギナ(…にっしっしw良いこと思いついちゃったっすよ〜)

 

 ルプスレギナ「私はペロロンチーノ様のご寵愛を賜ってありんすぇ。まぁ、恋愛も知らないお子様には仕方がないでありんすねぇ! ……っす。

 

 

 ルプスレギナ「あぁん??? 言ってくれるわねぇこの食品添加物の塊が! ……っす。

 

ルプスは此処を更地にしたいみたいだ…

 

 シャルティア「あ〜ん〜だ〜とコラァ!」

 

 

 アウラ「ちょっと私何も言って……てかお子様って、あんた見たいなビッチになんてなりたくないわ!」

 

 

 シャルティア「お〜お〜表出ましょうかチビ助ェ〜〜?????」

 

 

 アウラ「望むところよ!」

 

 

 アルベド「はいストップ〜!!」

 

 

 シャルティア「何? おば……アルベド?」

 

 

 アルベド「おば……テメェ今何て言おうとしたぁ????」

 

 

 ルプスレギナ「お・ば・さ・ん……っす。」

 

 

 アルベド「シャ〜ル〜ティ〜ア〜????? 」

 

 

 シャルティア「え? ちょっ今何も……って怖い怖い! 怖いから笑顔で殺気と3F出しながら近づいて来ないで!」

 

 

 アウラ「アルベド、一緒に()りましょう?」

 

 

 アルベド「アウラ何言っているのかしらふふふふふふふふふふ」

 

 

 ユリ「わわわアーちゃん! アルベドさ──────やめて──!!!」

 

 

 シズ「……避難開始」

 

 

 ルプスレギナ「あっシズちゃんだけ逃げるのは無しっすよ〜私も」ガシッ

 

 

 ユリ「こうなった責任は貴方にある。」

 

 

 ソリュシャン「落とし前つけた方が良いと思うわよ。姉さん?」

 

 

 ルプスレギナ「す──!! ナーちゃん助けて!!」

 

 

 ナーベラル「……頑張って下さい姉さん。」

 

 

 ルプスレギナ「み、見放された……妹から……わわっユリ姉ソーちゃん勘弁して欲しいっす! ごめんっす!! すいません〜!!!」

 

 

 アウラ「ルプスレギナァ? 邪魔しないでくれるかしらぁ?」

 

 

 アルベド「このままだと貴方もさないといけなくなるわよ〜?」

 

 

 ルプスレギナ「ひ〜え〜勘弁して欲しいっす〜」

 

 

 シャルティア「あれ? これ何の集まりだったっk……でありんすか?」

 

 

 

 アウラ「調子に乗った偽乳吸血鬼に制裁を与える集まりよ。」

 

 

 アルベド「禁句を言ってくれたビッチにお返しをする集まりよ。」

 

 

 シャルティア「キレた。偽乳偽乳と気にしているところを……歯ぁ食いしばれやアウラァ〜????」

 

 

 アルベド「私におばさんなんて言って、私はまだ成長段階よ!!」

 

 

 シャルティア「成長して最終的に大口ゴリラになる感じ? ワロタwww」

 

 

 アルベド「guilty」

 

 

 アウラ「die」

 

 

 シャルティア「ファッ〇」

 

 

 最悪な目に遭わされそうな予感がする……

 

 とその時救世主登場

 

 コンコン ガチャリ

 ティルル「遅れてしまって申しわ……( ゚д゚)」

 

 

 ルプスレギナ「た、助けて下さいっす〜(泣)」

 

 

 アルベド・アウラ・シャルティア「「「うっふふふふふふふふふふふふふふふ」」」(ニヒルな笑み、手に凶器ばっちり持ってる)

 

 

 ティルル「な、何が一体なぜどうしてこうなった〜? 取り敢えずcalm down! calm down!」

 

 

 ────────────

 

 

 アルベド「最後に、シャボンヌ様!」

 

 

 シャルティア「居城ホーンバーグに住まわれ、数多の竜を統べる戦士であり、アインズ様、ペロロンチーノ様の古くからの御友人であられる、慈悲深き御方でありんす。」

 

 

 アウラ「私はカッコいいポーズを一緒に取ってもらった〜」

 

 

 ユリ「アーちゃんいつの間に?! 凄いね〜!」

 

 

 アウラ「えへへ(〃ω〃)」

 

 

 ティルル「え!ご主人様とカッコいいポーズ?! 羨ましい〜」

 

 

 アウラ「あれ? ティーちゃんはそんなこと無かったの?」

 

 

 ティルル(コクリ)

 

 

 アウラ「大丈夫だよ! きっとティーちゃんもお誘いが来ると思うよ!」

 

 

 ティルル「アウラちゃん……アーちゃんって呼んで良い?」

 

 

 アウラ「良いよ〜」

 

 

 ティルル「アーちゃん、ご一緒させてもらえるように一緒に懇願に行きましょう!」

 

 

 アウラ「う〜ん、ナザリックのダミーを作るよう、アインズ様から仰せつかっているから、ちょっと厳しいかな?」

 

 

 ティルル「そう……ご依頼を受けるなんてアーちゃん良いな〜。頑張ってね。」

 

 

 ユリ「アインズ様のご期待を受けるなんて素晴らしい名誉を授かるなんて、やっぱりアーちゃんは凄いね。」

 

 

 アウラ「二人ともありがとう! 私、頑張る!」

 

 

 ナーベラル「それにしても、この世界はどういうところなのか……」

 

 

 

 

 

 

 


《デミえもんサイド》

 

 

 至高なる御方々はいつも「未来」を見据えておられる。

 

 ここナザリック地下大墳墓から至高の御方々が次々とお隠れになられた訳は、別にあるのかもしれない。

 

 しかし、他の可能性については私にはいまいち考慮しかねる。

 

 現に、我が創造主、ウルベルト様が何の前触れも無く突然別れの言葉を我等下僕風情にもお掛けになられた訳は何なのか。

 

 やはり、ウルベルト様がそれ程までに追い詰められる何かがあったと見るべき。

 

 ウルベルト様のように魔の頂点に君臨される御方をも脅かす何かの存在があったことは確か。

 

 あまり考えたくはないことだが、その何者かから身を守り、かつ物資や戦力の補給を行う為に、この地を守護されていたのでは? 

 

 この地下大墳墓はギルド武器やワールドアイテムなる宝物によって維持されているとしたら? 

 

 かのギルド武器がそれだけの機能に収まるとはとても考えにくい。

 

 しかも、我等下僕に伝えることを控える程の宝物、ワールドアイテムにも、何か特別な機能が付いており、

 それらがあの「テロ・リストン」なる敵対者への有効手だったとしたら? 

 

 その為に、ここを死守するという役目を一人背負った御方がモモンガ様、今のアインズ様であり、アインズ様は仲間である他の至高の御方々の無事を願って一人玉座の間で待ち続けていたのではないか? 

 

 ペロロンチーノ様とヘロヘロ様、武人建御雷様に弍式炎雷様は戦いで負傷し、その治癒の為にここへ立ち寄ったのでは? 

 

 ペロロンチーノ様がシャルティア妃とご結婚なされたことや、最後になると仰られていた訳。

 

 それは、御方でも死亡確率が高い最終戦争への出陣を、結婚という盛大な門出で祝って欲しいというペロロンチーノ様の思いの現れだったのでは? 

 

 ヘロヘロ様も本当は武人建御雷様、弍式炎雷様と共に、最終戦争へ向かうご予定だったが、ブラックキギョウなる怪物との戦いの傷痕が残っていたが為に、リアル世界の瓦解に巻き込まれずに済んだと考えれば、全ての辻褄が合う! 

 

 思えば我が創造主、ウルベルト様は最後に俺の自慢の息子だと私如きにそんなお褒めのお言葉を残してお隠れになられた。

 

 居なくなってしまわれた。

 

 やはり……

 

 いや、このことを考えるのはよすとしよう。

 

 今は、御方々の壮大な未来図の一端を読み取れるよう、この莫迦なる頭を回さなくては。

 

 

 エンヴィー「デミウルゴス様、赤熱神殿に戻られないのでしょうか?」

 

 

 デミウルゴス「えあ、エンヴィーか、少し気になることがあってだね。それに、マーレが今ナザリック地下大墳墓の隠蔽を行なっているからね。」

 

 

 エンヴィー「第六階層の守護者の方々が御不在なので、そのケアということですね。しかし、【円形闘技場(アンフィテアトルム)】に一体何が……」

 

 

 デミウルゴス「『|上位魔法痕跡探知《グレーター・ディテクト・オブ・マジックトレイス》』……魔法痕跡は無し、か。気のせいか?」

 

 

 エンヴィー「デミウルゴス様……?」

 

 

 デミウルゴス「あ、あぁ、すまない。少し侵入者の可能性があったが、私の考え過ぎだったノようだ。」

デミえもん、しっかり!緊張してどもっとるよ!

 

 

 エンヴィー「そうでしたか。お休みになられますか?」

 

 

 デミウルゴス「い、いや、赤熱神殿に戻るよ。も、もうすぐでアウラがここに戻ってくる筈だからね、ほら噂をすれば。」

 

 円形闘技場の入場口から闇妖精の少女が出てくる。

 アウラが女子会から戻ってきた。

 

 

 アウラ「ごめんね、デミウルゴス。わざわざ持ち場を離れてしまって。」

 

 

 デミウルゴス「いや、大丈夫さ。シャルティアのストッパーとして、やむなく参加せざるを得なくなったことは周知しているからね。」

 

 

 アウラ「あっははは……」

 

 

 デミウルゴス「その様子だと、何かしてしまったようだね。」

 

 

 アウラ「いや〜ハッハッハッシャルティアがとんでもない挑発をしてきたからつい……すみませんでした。」

 

 

 デミウルゴス「まぁ私もナザリックの防衛以外にまだこれといった役目は課せられていなくてね……悪ふざけも程々にした方が良いと思うよ。」

 

 

 アウラ「耳が痛い……分かった。」

 

 

 デミウルゴス「ところで、ここで何か変わったこととかは無かったかい?」

 

 

 アウラ「いや、特には……まさか侵入者が?!」

 

 

 デミウルゴス「いや、まだはっきりとしたことは言えないのだが、此処での至高なる御方々のお話の最中、何か違和感を感じただけさ。」

 

 

 アウラ「違和感?」

 

 

 デミウルゴス「いや、シャボンヌ様の『世界軸が瓦解し、崩壊した可能性が高い。』というお言葉の後、すぐ後ろで『えっ』という声が聞こえたような気がしただけさ。その時咄嗟に振り向ければ良かったが、私も相当な衝撃で暫くの間動けなかったからね。これは私の不覚というところだ。」

 

 

 アウラ「何それ怖い……侵入者ならすぐに消さないと!」

 

 

 デミウルゴス「しかし、此方を攻撃した形跡が見当たらず、宝物殿への襲撃報告がないことからアイテム類を素通りし、情報だけ持って帰るとは何の狙いがあるのか?」

 

 

 アウラ「私達のことを見極めている……?」

 

 

 デミウルゴス「その可能性が高い。アウラ、身辺を念の為警戒するようにしてくれないか? できれば他の守護者にも伝えておいて欲しい。未知の攻撃に備えるという名目でね。」

 

 

 アウラ「分かったよ、デミウルゴス。早くも侵入者の可能性あり、か。気を付けないと。」

 

 

 デミウルゴス「至高なる御方々は命に替えても守り通せるよう、我等下僕達はやはりより一層強くならなければならないということさ。もしかしたら、いや、確実に至高なる御方々は今回の侵入者の可能性も把握していらした。その上で我等の強化を望んでいらっしゃるのだよ。」

 

 

 アウラ「至高なる御方々はやはり全てを予期していらっしゃる! 私達も強くならないとね。」

 

 

 デミウルゴス「では、私はこれで。」

 

 

 アウラ「うん、今日はどうもありがとうね。」

 

 

 デミウルゴス「いやいや、良いさこれぐらい。も、戻るか、エンヴィー。」

 

 

 エンヴィー「は! 畏まりました、デミウルゴス様。」

 

 

 デミウルゴス「侵入者の可能性には一応警戒しといて欲しい。『上位転移(グレーター・テレポーテーション)』」

 

 

 アウラ「合点承知の助!」

 

 

 自分達の持ち場に帰っていく下僕達。

 彼等は未知の世界の征服の為、各自で英気を養っている。

 

 

 

 

 

 

 何事にも例外はいるものだ。

 

 

 この時「骨」は……

 

 

 

 




女子会?
ナザリックでは女死会です。


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12.冒険したいです!

「俺、冒険したいです。」

 

「突然何を言い出すんですか、

 アインズさん。」

 

 

 ナザリック地下大墳墓【執務室】

 

 大図書館でビジネス書を手に取り、執務開始から15時間が経過。時刻はもう朝だ。

 

 仕事疲れで頭がイカれたのかこんな朝っぱらから変なこと言い出すアインズさん。

 

 魔王の冒険者なんて聞いたことねーよ。

 

 

「何って、冒険がしたいな〜と」

 

 

「いや、一体何処からその思考に……」

 アインズさんの右手にある書類の題名を見て、

「あ〜、恐怖公やルプスレギナからの連絡に何かあったんですね。」

 

 世界征服宣言の翌朝

 アインズさんとペロロンチーノさんとヘロヘロさんと僕で会議を行った結果、ナザリック周辺の長距離探索を恐怖公の眷属がしきることになった。

 更に、ルプスレギナをカルネ村監督官に正式に任命し、村の様子を逐一報告するように指示した。

 

 ルプー、駄犬と言われないように頑張れよ。

 

 

「ここに『冒険者』という職業についてが書かれています。職務内容はモンスター退治、対モンスター用の国の傭兵みたいなもんです。」

 

 

「そんな職業なんでなるつもりなんですか?」

 

 

「この世界で使えそうな者を調べたいというのもありますが、

 たっちさんみたいに正義の味方になりたいな、と。」

 

 

「アンタ自分の今の容貌ちゃんと理解して言ってるんすか?」

 

 

「Exactly! その通りでございます!」

 お前はテレ◯スTダービーか! 

 

 

「お骨様が冒険者とは……世も末、か……」

 

 

「いや、何で私が冒険したいと言っただけでそんな世界の終わりみたいな反応示すん?」

 

 

「で? メンバーはどうするつもりですか?」

 

 

「取り敢えずプレアデスの誰か、

 ユリかナーベラルを考えています。」

 

 

「護衛が乏しい……」

 

 

「守護者達は其々仕事を与えてしまっているので……

 それに貴方やペロロンチーノさん、ヘロヘロさん全員で行きたかったですけど、

 ナザリックを守る人が0になるのは流石にまずいかと……」

 

 

「確か、ペロロンチーノさんはシャルティアと共に現地の有力者を徴収する任務に就くんでしたよね?」

 

「えぇ、その通りです。」

 

「そしてヘロヘロさんはソリュシャンと共に王国への潜り込みをする、となると、必然的に僕がナザリックに残らないといけませんね。」

 

 

「すいません! 留守を頼みます!」

 両手の平を合わせる骸骨

 

 

「了解です。……でも、ぶっちゃけアルベドとティルル、最悪第八階層のあれらがいるので、ナザリックが落とされる可能性は考えにくいですよ。

 ウチのホーンバーグでさえティルやサンズ達を落とせるような奴がいきなり来るとはどうしても思えません。

 仮に居たとして、先ずは様子見すると思うんです。

 いざという時の転移策として、

《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》と《転移の指輪(リング・オブ・テレポーテーション)》の兼ね合いすることが考えられますけど……」

 

 

「……やはりシャボンヌさんがナザリックにいたとして、過剰戦力なだけか? 纏め役はデミウルゴスの仕事を奪ってしまうことになる……

 やっぱ、シャボンさんは私と一緒に冒険メンバーに入って貰いたいのですが……駄目ですか?」

 

 

「良いですよ〜」

 

 

「助かります。」

(よっしゃ! これで気楽に冒険できる! シャボンヌさんがやらかさないか心配だが……)

 

 

「今失礼なこと言われたような……」

 

 

「きっと気のせいでは?」

 

 

「ううむ……」

 

 

「ということで、一緒に冒険しましょう。シャボンさん。」

 

 

「勿論です。では、早速行く時の様相を決めましょうか。」

 

 

「このままだと人間達がどんな反応示すか分かりませんからね、なるべく様相を人間よりにした方が良いのは分かります。」

 

 

「じゃあこれ付けてください。」

 咄嗟にスカーフを懐から取り出す。

 ニシシw

 

 

「何ですか? これ」

 

 

「これはですね……あっ! 後ろからシャルティアが!」

 

 

「えっ! 嘘だろ……」

 後ろを振り向くアインズさん。

 

「今だ!」

 

 

「えっちょっとなにすんで……」

 ローブ上からスカーフを巻き付ける。

 

 

「は〜い装着〜」

 

 

「ちょっと! 嫌な予感しかしない! やめろぉ〜!」 

 アインズは気付くのが遅かった。

 スカーフを着せた瞬間、アインズさんの容貌が劇的に変化する。

 骸骨の身体が白い光に包まれる。

 アインズさんは光の塊となり、形が異様に変化したかと思うと、

 光の塊は次第に小さくなり、新たな身体を形成していく。

 

 

「な、何じゃこりゃ────!!! 

 

 光が晴れた時、お骨様の姿はそこには無く、

 

 そこに立っていたのは一人の黒髪の美少年(ショタ)だった。

 

 

「あ、やべ」

 

 

あ──!! ふ、服が! 服が〜! 

 見るからにダボダボなローブに押し潰されそうになるショタンズさん。

 ローブの下は勿論全てずり落ち、

 残るは哀れな裸のショタがいた。

 

 

「ま、いっか。命に別状無さそうだし。」

 

 

「なーにが『ま、いっか』だ!!」

 

 

「ちなみにそのスカーフは《まほうのスカーフ》という子供ユーザー向けのアイテムです。効果は空飛ぶ少年になれるって代物。人間種に偽装できる上、元のレベルは変わらない超優れ物何ですが……それ、3日経たないと取り外し不可です。」

 

 

「え? ってことは3日間この姿のまま?」

 

 

「飲食できるようになるみたいなんで、良かったですね。」

 

 

ふざけんな──!! 

 執務室内をアインズさんの絶叫が木霊す。

 その瞬間、執務室の扉がノックされる。

 

 

 ゴンゴン

「失礼します! アルベドです! アインズ様、大丈夫でしょうか!」

 バターン

 

 

 扉が思い切り開け放たれ、時間あったのかと疑いたくなる全身武装で執務室に飛び込んできたアルベド。

 

 彼女は変わり果てた主の姿を見ることになる。

 

 

「イヤ──! 見ないで──!」

 女子のような声を上げるアインズさん。

 

 

「アインズ様?! そ、その御姿は一体……?」

 困惑するアルベド。

 

 

「あ〜アルベドよ、これは変身アイテムの作動実験だったのだが……」

 すかさずフォローしておく。

 

 

「シャボンヌ様、それは一体どういうことなのでしょうか?」

 

 

「アインズは人間の街で情報収集を行うにあたり、異形種を人間種に偽装できる手段の確立の為、此度の実験を行うことにした。しかし、結果思わぬ姿になってしまっただけだ。命に別状は無い。」

 アインズさんがやらかしたんです。僕なんもしてません。

 

 

『いやアンタ何人のせいにしてんだよ!』

 

 

『さあ、なんのことやら。』

 

 

『ぬぐぐぐぐ』

 

 

「そうだったのですか。……申し訳ありません。私めの独断専行により、至高の御方々の実験を妨げてしまったこの非礼、お望みとあらば命を持ってこの償いをいたし」

「よ、よせよせよせ! こんな些細なことでお前の命を失いたくは無いぞ!」

 

 

「ア、アインズ様……!」

 

 

「大丈夫だ、アルベドよ。私はお前を我が子のように大事に思っているぞ。」

 

 

「アインズ様〜!!」

 そう言って泣き崩れるアルベド。

 

 

「も、勿論他の者達も等しく愛しい者と思っているからな。」

 

 

「アインズ様──!!」

 

 いつの間にか入って来ていた八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)達も歓喜に打ち震える。

 彼等が虫では無かったら、今頃この部屋の大半が涙で水没していただろう。

 

 

「ふっ、下僕からとても好かれているな。アインズ。」

 

 

「自分でも驚いている。」

 

 ここで一旦適当な演技を挟み、

 

 

「話は変わるがアルベドよ、プレアデスの副リーダー、ユリと、ナーベラルを呼んで来てはくれないか? 少々話がしたいのでな。」

 アルベドにこう依頼する。

 

 

「はっ! 畏まりました、シャボンヌ様。すぐに連れてきます。『伝言(メッセージ)』『ユリ? ナーベラル? 今時間空いているかしら? シャボンヌ様とアインズ様からの御命令よ。すぐに執務室まで来て欲しいわ。えっ? ……そ、そうなの? 分かったわ。』……すいません、アインズ様、シャボンヌ様、少々トラブルが……」

 

 な〜んか嫌な予感がするぞ〜

 

 

「先程のアインズ様の御声により、現在一般メイド達が敵襲と勘違いして虚偽の情報を各守護者達に伝えたらしく、第九階層が今大勢の下僕達で溢れかえっているそうで、ペロロンチーノ様とヘロヘロ様が特攻の準備を……」

 

 

「「大丈夫(です)か! アインズ(さん)!」」

 

 ペロさんとヘロヘロさんが同時に部屋に突撃して来て、その後から大勢の下僕達の波が執務室に雪崩れ込んでくる。

 

 

「最優先事項は至高なる御方々の身の安全である! アインズ様とシャボンヌ様を御守りせよ!」

 

「コノコキュートス、御身ニ仇ナス愚カ者ヲ成敗シテゴランニイレマショウ!」

 

「「アインズ様! シャボンヌ様! 大丈夫ですか?」」

 

「潰す! コ◯ス! 絶対に許さない、血塗れにして八つ裂きにしてェェ! 張り付けにして気が狂うまでひたすら拷問して◯◯◯してやる!」

 

 

 これ、どうしよ。

 

 


 

 

《20minutes later》

 

 

 下僕達全員に事情を説明し終え、下僕達全員は各々の持ち場に戻っていく。

 執務室には4人? の異形達が残された。

 

 

「で、結果このショタンズさんが出来たと?」

 シャボンヌから事情を聞いたペロロンチーノが先ずショタンズについて言及す。

 

 

「ショタンズ言うなぁ……」

 

(ショタンズさん、マジ天使。)byシャボンヌ

 

 

「まぁその姿ならあの怖いお骨様と黒髪ショタが同一人物なんて考える人居ないでしょう。」

 ヘロヘロがアインズのフォローをする。

 

 

「それに、こうした方が都合が良いと思いますし?」

 その後からシャボンヌがこう言う。

 

 

「え? 何で?」

 小首を傾げるアインズ。

 性別女かって位可愛い。

 

 

(ショタンズ、恐るべし破壊力。)byペロロンチーノ

 

(マーレ並の破壊力あるわ。)byヘロヘロ

 

 

(青薔薇のティナって確かショタコンだったような……あっ、頑張れ、ショタンズさん。)byシャボンヌ

 

 

「ユリもナーベラルも女ですから、男共から狙われそうじゃないですか。そこで! 俺達二人がユリかナーベラルに手を出そうとする男共をガードするんですよ。」

 シャボンヌがショタンズの問に答える。

 

 

「あー確かにシャボンさんはイケメン顔の竜騎士だし、アインズさんはビジュアルが美少年になってますからね。シャボンさんとアインズさん二人を実力でも顔でも超す奴でないと相手にならなそう……」

 ヘロヘロのカバーが入る。

 

 

「ショタンズさんが狙われるかもしれませんよ? ほら、よくオネショタ同人誌が売られて……」

 ペロロンチーノが全てを台無しにしていく。

 

 

「ペロロンチーノ、ストップ。あと、ショタンズ言うな。」

 ショタンズが頬を膨らませて怒る仕草をする。

 可愛い。

 

 

「可愛い。」

 

「それな。」

 

「だが男である。」

 

「何で可愛い可愛い言われなきゃならないんだ……」

 

 

「可愛いから仕方ない。」

 

 

「……」

 

 

「さて、取り敢えず私はナーベラルを推します。」

 ヘロヘロが話題を変える。

 

 

「何故です?」

 理由を聞くショタンズ

 

 

「ユリは頭が取れやすいって設定をやまいこさんが付けていたと記憶しているので、人前で首ポロリしたら収集が付きません。」

 ヘロヘロはNPCプログラム担当だった為、その頃の記憶を基に理由を述べる。

 

 

「俺は〜オネショタならユリかな〜やっぱあの胸ははんそ……」

 

「ペロさん、怒りますよ?」

 ペロロンチーノォ……

 改名してエロロンチーノにすっぞ。

 

 

「サーセン。」

 エロロンチーノ。

 

 

「ぶっちゃけどっちもメリットデメリットあるし、どっちでも良いと思う。」

 シャボンヌはどっち付かず。

 

 

「ユリはカルマ値善で人と上手くやっていけるだろうが、首ポロリスクが……ナーベラルはカルマ値ー400だから人に対してヤベーことするかもしれない。だがリスク持ちでは無い……悩ましい……」

 悩めるショタ。

 

 

「どっちもは?」

 

「「「それは無い。」」」

 

「ですよねー」

 いつもの。

 

 

「……ユリは副リーダー、任せるにしてもナザリックでの仕事と冒険者の仕事両立は流石に……」

 一拍置いてシャボンヌはこう告げる。

 

 

「では、ここはナーベラルで。」

「OK〜」

「決まりですね」

「ナーベラルでもオネショタ可か……?」

 

 

 3名の同意(約一名少しおかしかったが)を得て、ナーベラルがお共となることが決まった。

 

 

「そして、残念ながら、ペロさんとヘロヘロさんには、それぞれ別の仕事に行ってもらいます。」

 

 

「「えー」」

 

 

「ペロさんはシャルティアと現地の有力者の調査。捕縛可能だったら捕まえて来て下さい。」

 

 

「シャルティアと一緒か〜……まぁオケ。女騎士来ないかなぁグヘヘヘ」

 

 

 キスからだいぶシャルティアに籠絡されたようだ。

 本来なら悶絶して拒否するところ、シャルティアとの体験がずっと抜けないせいか、シャルティアが平気になっているペロロンチーノ。

 彼は平常運転である。

 

 

「ヘロヘロさんはソリュシャン、セバスと共に、現地の通貨や魔法、生活、技術等の調査を。」

 

 

「えっ! ソリュシャンと!? ……物凄く恥ずかしい……」

 

 ヘロヘロにとって、ソリュシャンは自分の理想(性癖)の体現。

 自らの欲望をありのまま表現した者だ。

 ペロロンチーノのようにソリュシャンに速攻で籠絡される筈もなく、彼の中での彼女は言わば只の恥ずかしい記憶の具現体である。

 恥ずかしいのも当たり前である。

 

 

「すいません……」

 

「いやアインズさん大丈夫です! 俺行けますよ! ……多分

 

 ショタが見るからにガッカリした様子でいた為、反射的に大丈夫と答えてしまったヘロヘロ。

 後悔先に立たず。

 

 

「この世界について少しでも多くの情報を知りたい現状が無ければ一番良いんですけどね……」

 

 

「全くですよ。まぁでも、未知の世界の旅って考えたらとてもワクワクします。

 

 ……あっ、言い忘れてたんですが、明日から行動に移す予定です。」

 この人とても重要なこと言い忘れているし……

 

 

「うぇ?! 明日?」ヘロヘロドンマイ。

 

「次回、ヘロヘロさん、死す。」

 デュエルスタンバイ! 

 

 

「ヘロヘロさん、骨は拾って置きますよ。では、また明日。」

 縁起でもないことを……

 

 

「あれ? シャボンさん何か予定あったんですか?」

 

 

「サンズが何しているか気になってしまいましてね。」

 

 

「あぁあのパーカースケルトンですか。」

 

 

()()が強いって知った時はびっくりしましたよ。」

 

 

「敵に回したくないですね。下手したら第八階層のあれら以上の力を持っているようなヤベー奴作って……」

 

 

「ハハ、褒め言葉として受け取って置きますよ。じゃ、バイビ〜」

 転移して姿を消すシャボンヌ。

 

 

「ではアインズさん、私達も」

 

「う〜ん、う〜〜〜〜〜〜ん。すいませんちょっと胃痛が……」

 

 

「また後日、ヘロヘロさん大丈夫ですか?」

 

 更に2名の異形種が執務室を後にする。

 執務室は再びアインズだけになった。

 

「それにしてもこの姿、どう皆に伝えれば……」

 

(この状態で一番会いたくないのはシャルティアだ……絶対に会わないなんてことないし……警護の下僕を付けるべきだった……アルベドとか)

 

 

 コンコン

「お部屋に入りんすえ。アインズ様。出発前に御身に……」

 

「あっ……」

 入ってきたシャルティアと頭を抱えていたショタンズの視線がバッチリ合う。

 

「ア、アインズ様? そそそその御姿は一体……?」

 

 

「い、いや大したことはない。実験の結果こうなっただけで……」

 

 

 シャルティアは己の中に新たな性癖が芽生えるのを感じた。

「ジュルリ……ショタも有りでありんすねぇ

 

 

「ちょっちょっと?! 何で手をワキワキしながらこっちに近づいてくるの?!」

 

 シャルティアの理性はとっくに崩壊している。

 今は目の前の美少年(ショタンズ)を攻略することにしか気が行ってない。

 ちなみに目が完全にイっていた。

 

「や、やめ……」

 

「大丈夫でありんす。後は私にお任せを。」

 

「なにを?!」

 

「必ずや、アインズ様をオトナにして差し上げんしょう。」

 

「ちょっ今でも十分大人……ギャー⁉︎」

 

 

 

 ちなみに、この後パンドラズアクターから宝物殿の会計資料をもらったアルベドが執務室を訪れ、主人の貞操は寸でのところで守られた。

 

 シャルティアはペロロンチーノの元に送還。

 戻ってきたら自室で5日間謹慎が決まったそうな。

 

 

 ーーーーーーーー

 

《サンズサイド》

 

 

影の竜王(シャドウ・ドラゴンロード)からの連絡はまだだな……ガゼフとか言うニンゲン、どうもキナ臭いと思ったんだが……オイラの考え過ぎだったか?)

 

 

【防壁都市ホーンバーグ】【スノーフル・ホットドッグ二階サンズの部屋】にて、サンズはガゼフ・ストロノーフの監視役として忍ばせた特別性影の竜(シャドウ・ドラゴン)からの連絡を待っていた。

 

 十分後

 

(おっと来たか)

 

 *れんらくがきたようだ。

 

 

『ーーーーーーーー』

 

 

『おっ、そうか。ありがとな。引き続き監視よろしくたのむぜ。』

 

 

『ーーー、ーーーーー』

 プツ

 

 

(ガゼフ・ストロノーフ……

 これはちょっと不味い案件だな……どうにか……)

 

 

 *サンズはなにかをかんがえている。

 

 

 ブィイイイ

 *ふいにアラームがなった。

 

(客人? アイツしかいねぇな……)

 

 *サンズはなにかをさとったようだ

 

❤️ACT

 

 *サンズはつくえにあたまをふせた。

 

 

「お〜い、居るか? サンズ〜?」

 

 

「おいサンズ! シャボンヌかっかがきたぞ! 兄ちゃんになにかはなしたいことがあるそうだ!」

 

 

おっその声はシャボンヌとパピルスか?

 

 

「勝手に入るぞー」

 

 

「あ〜! オレさまがあれほどへやキレイにしろっていったのに!」

 

 

よう、シャボンヌ。

 おっとすまないな、兄弟。

 少し部屋で()()()としてただけだ。骨だけにな。」

 

 \ツクテーン/

 

「さむっ!」

 

 

hehe、パピルス、顔が笑っているぜ。

 

 

「しってる! くやしいけど! ……はぁ、これもオレさまがにんきものになるためのしれんなのか……」

 

 

パピルス、無理はいけないぜ。たまには肩の力を抜いてリラックスだ。それが本当の「ホネ」休めって奴だな。なんつって……

 \ツクテーン/

 

 

「ぬああああ! ひどいジョークはもうこりごりだ!」

 

 

せめて(こつ)稽なジョークと言ってほしいぜ。イケてる()が言う、な。

 \ツクテーン/

 

「もう! 兄ちゃんきらい! いじわる!」

 

 

hehe、いじわるで結構。まぁ、少しやり過ぎたと反省はしているぜ。

 

 

「……もう口開いても良いか?」

 

 

すまんな。そんで、お前さんがここに来るってことは、何かオイラに聞きたいことがあるんだろ?

 

 

「その通りだ。短刀直入に聞くが、何かしてないよな?」

 

 

さあな。

 まぁ、お前さんなら自ずと答えが出るんじゃないか? 

 まぁ、オイラ自身から答え合わせしても全く面白くないぜ。

 互いにな。

 クロスワードパズルだって、最初から答え見たら意味が無いだろ?」

 

 

「むぅ、確かにそうだが、やはり……」

 

 

「兄ちゃんがなにかやらかしたのか? ……あっ! でしょうか!」

 

 

「ん? いや〜昔店頭で寝てたからな、サンズ。」

 

 

何のことやら

 

 

「兄ちゃん! しごとサボってたのか?」

 

 

「まぁ、開店当初だがな。」

 

 

「ちょっと! サンズ! サボっちゃいけないんだぞ!」

 

 

そもそもサボるって何だ?

 

 

「サボるっていうのは……よくわかんないけどたぶんわるいこと!」

 

 

hehe、違うな。サボるってのは働く人達にとっては当然の行為だぜ? サボタージュ(sabotage)出来ないのはおかしいことなんだぞ。

 

 

「そうなのか! サボるってやってあたりまえなことか! オレさまはおかしくなんかないからな!」

 

 

「パピルス、お前まで怠業したら、店を失うぞ。兄貴の言うこと信じ過ぎるのも良くないからな。」

 

 

「えっ! そうなのか? オレさまがせっかくがんばってたてたおみせをうしなうのはいやだぞ!」

 

 

「なら、サンズの言うことの一部は聞き流せるようにした方が良いぞ〜」

 

 

「わかったぞ! オレさまは兄ちゃんのいうことをあんまりきかないようにする! ニェヘヘ〜のヘ〜!」

 

 

おい

 

 

「サボりのつけだぞー」

 

 

hehe、今日は良い天気だなぁ。鳥は歌い、花が咲いている。こんな日にはお前みたいなヤツは……

 

 

「すいませんすいません! パピルス! 兄ちゃんの言うことはしっかりと聞くように!」

 

 

「ニェ? いったいどっちなんだ?」

 

 

……地獄のジョークで悶えて貰うぜ!

 

 

 *さいこうなジョークをきかされそうだ。



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13.冒険者組合

「モモンよ。ここから先は街の検問所だ。武器を下ろせ。」

 

 

「はい! 分かりました、リューシさん!」

 

 

【城塞都市】エ・ランテル 周囲1km、

 三人の冒険者が姿を表す。

 1人は白と緑の全身鎧(フルフェイス)と腰から《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》が特徴的な戦士、1人は黒色のローブに神器級(ゴッズ)の杖を持つ少年魔法詠唱者(マジックキャスター)、1人は艶やかな黒髪に整った端正な顔、抜群のスタイルの良さを持つ旅人姿の美女ウォー・ウィザード。

 シャボンヌ、アインズ、ナーベラルである。

 

 

「ナーベ、慎重にな。」

 

 

「畏まりました! リューシ様! この端小なる我が身を持ってしてでもリューシ様を……」

 

 

「ナーベ、今は私やモモンと対等な存在だぞ? 気軽に接してくれた方が気が楽だ。

 それに、街の人間達に変に思われたくはないぞ。」

 

 どうやら冒険者モードでは、シャボンヌはリューシと、アインズはモモンと、ナーベラルはナーベと各々が偽名を名乗るようにしているようだ。

 

 

「し、しかし……」

 

 

「さん付けでも良いから不自然の無いように」

 

 

「わ、分かりました……モモンさーーーー

 

 

 

『あちゃ〜、ナーベラル完全に畏っちゃってるよ……』

 

 

『やっぱユリにしておくべきでしたかね?』

 

 

『いや、ナーベラルは矯正すれば治ると思います。それと、ショタ魔導師役お疲れ様です。』

 

 

『……この姿で突き通すしかないのか……演技するのとても疲れるんですけど。』

 

 

『そこは頑張って下さい。おっと、検問所に着きますよ。』

 

 前方に見るからに強固そうな大門が聳え立つ。その横手の大きめの施設から、検問所に駐屯する王国兵が出て来る。

 

 

「はいそこで一旦止まってください。通行料か通行許可証を確認いたします。」

 

 

「通貨料の銅貨4枚だ。」

 

 

「確かに丁度いただきました。お通りください。」

 

 

「うむ。」

 

 スムーズに城塞都市エ・ランテルに入る。

 

 

「意外とあっさり検問所通れましたね。」

 

 

「こういう検問所で働く者達は皆、朝から晩までスパイの監視を行っているからな。

 見るからに腕利きの冒険者とかは隠密に長けてないだろうと踏んでいるんだ。

 だから、そういった者達はさっさと通って欲しいという魂胆なんだろう。」

 

 

「わ、わー! やっぱりリューシさんってすごーい!」

 全力ショタアピールするモモンことアインズさん。

 

 

「流石です。リューシさーーーー。」

 まだ冒険者ロールに慣れていなさそうなナーベことナーベラル。

 

 

「まずは街での情報収集だ。このエ・ランテルがどういった街か知りたいからな。」

 

 

「OKです。リューシさん。」

 

 

「了解です。リューシさーーーーん。」

 

 

「大分慣れてきたようだな、ナーベ。私は嬉しいぞー(棒)」

 

 

「なんと勿体なき御言葉……! このナーベラ……」

 

 

「ナーベ。今は冒険者ナーベであることを忘れるな。」

 

 

「……はっ! 畏ま……分かりました! リューシさーーん。」

 ナーベラルお供にするのやっぱ反対すべきだったな……

 

 まさかここまでポンコツ設定が反映されているとは……

 防御力ゼロ忍者(弍式炎雷)め! 

 

 

「では、またここで落ち合おう。」

 

 

「了解です。」

 

 

「分かりました。」

 

 当初の打ち合わせでは、

 アイテム収集をナーベラルが、

 エ・ランテルに潜む強者の調査をアインズさんが、

 そして僕がここリ・エスティーゼ王国の情報収集を担う予定だった。

 しかし、()()()()()()()()()()()の全貌を知っている僕は、アインズさんに強者の調査を僕へ委託して貰うよう持ちかけた。

 

(さーて、お目当ての()()は今どこにいるかな〜、まぁ、目星はもうついちゃってるんだよなぁ……)

 

 

 そう言って僕は、エ・ランテル内の()()()場所を街掲示板で確認する。

 

 

()()()は住居地域から離れた場所にあるからなぁ。きっと……おっとこれは典型的な墓石マーク!)

 

 

 掲示された案内地図にマークを見つけた。

 

 

(それじゃ、クレマンとカジッちゃんに会いに行くか。)

 

 そして、共同墓地の方向に走る。

 

 

 


 

 

《クレマンサイド》

 

 

「……追手はまだ来てないか……」

 

 

 風花聖典からの追手を警戒しつつも、エ・ランテル内のスラム地区を徘徊する。

 

 

「なんだぁ〜お前はぁ〜?? この辺りじゃぁ見ねぇ顔だなぁ?」

 

 

「そのフード上げな!」

 

 

「ん〜? じゃぁ魔法二重化(ツインマジック)人間種魅了(チャーム・パーソン)』!」

 

 絡んできたゴロツキ2人に洗脳魔法をかけるクレマンティーヌ。

 ゴロツキ達は瞬時に動きを止め、虚ろな目になりその場で棒立ちになる。

 

 

「あんたたちはどこのだーれ?」

 

 

「へへ、やだなぁ友達。俺のこと忘れたか? 俺だよマルクスだ。」

 

 

「おいおい、まさかこのダーダム様を忘れたか? スラムの王のよぉ」

 

 

「アハハ! 私としたことがついつい忘れちゃってね〜! ごめんねぇ〜〜? んーと、前どんな仕事についてたっけ?」

 

 

「ハハ、お前も人が悪いなぁ、あんなパワハラ冒険者パーティーのこと思い出させるなんてよぉ??」

 

 

「新入りへの試練にあったんだっけなぁ? お前も災難だったなぁ。」

 

 

「へへ、ほんとそうですよ。ボス」

 

 

「じゃ〜あ〜、この辺で〜変な噂とか聞いたことある〜?」

 

 

「いや、最近は戦士長の遠方派遣が終わったことぐらいしかねぇなぁ。」

 

 

「戦士長がこんな定期戦の直前に派遣されるのはどうも変でなぁ、公では帝国兵の村への襲撃を鎮圧する為だったらしいが……どうも戦士長がスレイン法国の特殊部隊とやらを捕虜として連れていたらしいんだよなぁ。」

 

 

「それって何聖典?」

 

 

「あぁそうだ何ちゃら聖典だな、そいつらの呼び名。確かよーこ聖典だったな。」

 

 

「ようよう聖典じゃなくて?」

 

 

「あーだいたい把握したから、あんたらもう用済みねぇ〜??」

 

 

「え? 用済みってどういうーーーーーー」

 言い切る前に脳天に風穴を開けられるゴロツキM

 

 

「な?! お、おい、お前ら友達じゃぁなかったのか?」

 

 

「ごめんねぇ〜? 私、最初(ハナ)からあんたらとは友達じゃないからっ!!」

 ドシュ‼︎

 

 容赦の無い刺突攻撃がゴロツキDの顎を襲う。

 痛烈な痛みが顔全体に染み渡る。

 

「ギィやぁぁアァァぁぁグァあ!!!!!」

 

「もっと良い悲鳴を聞かせてねぇ〜???」

 

 絶え間の無い痛みがゴロツキDを襲う。

 クレマンティーヌはゴロツキDの腕、足、五指、そして腹に小さめの穴を開けていく。

 やがて、ゴロツキDは全身を蜂の巣にされて絶命した。

 

 

「あはは!! やっぱやめらんねぇわぁ〜この感覚!!」

 

 

 顔から溢れんばかりの狂気を曝け出し、凶悪な高笑いをするクレマンティーヌ。

 しばらく経ってから顔をいつもの三日月ニンマリ顔に戻す。

 

 

「さぁ〜〜て、カジッちゃんの所に行くしよっか〜。」

 

 

 ゴロツキ達の死体を脇に置き、周りに誰もいないことを確認する。

 ローブのフードを再度被り直し、血に濡れたスティレットを丁寧に拭き、懐にしまう。

 

 血のように赤い夕日を背に、クレマンティーヌはエ・ランテルの闇へと歩を進めていった。

 

 


 

 

《シャボンヌサイド》

 

 

(あれ? 記憶違いだったか? 

 なんでクレマンとカジッちゃんいないのーー!!??)

 

 墓地に不法侵入して、墓地に隠された地下神殿らしき所に来たのだが、一向にお目当ての2人組がやってこない。

 待ち合わせ時刻まで後1時間しかないっていうのに〜!! 

 

 

(ヤバい……クレマンさんとカジッちゃん気になって強者の確認していない!! そんな奴クレマンティーヌとカジット以外にそもそもここに居ないことに賭けるしかねぇ!)

 

 

 クレマンさんとカジッちゃんがこのまま来なかったら、偽の情報をアインズさんに届けるしかない! 

 原作知識を持っていることが下手したらバレかねない……

 

 早く来て! クレマンティーヌ様! カジッちゃん! 

 

 

「周りには誰もいないな?」

 

 

 墓地神殿前にいきなり現れやがった! 

次元の移動(ディメンジョナル・ムーブ)』か? 

 

 

「はい、そのようでございます。カジット様。」

 

 

 カジッちゃんだよ! 生カジ! 

 あの中央でフードを下ろしてご立派なハゲ頭を晒している奴だな! 

 

 

「ふむ、あの女はまだ来てないようだな。まぁ良い。先に神殿内で死の螺旋の準備を開始せよ。」

 

 

「「は!」」

 

 

 見るからに怪しいフード集団が墓地神殿内に入っていく。

 

(良かった〜これで首の皮一枚繋がったよ。)

 

 

 墓石の影で『完全不可視(パーフェクト・インヴィジヴィリティ)』を使用しながら安堵するシャボンヌ。

 

 

(アインズさんには、怪しい輩が墓地に入っていくのを見たと報告するか。)

 

 

 墓石から立ち上がり、カジット達に気づかれぬよう慎重に移動する。

 完全にカジット達が神殿内に隠れ切ったと判断した後、すぐに墓地の柵の方まで走り去る。

 

 


 

 

《アインズサイド》

 

「はぁ……」

 

(やっぱこの姿本当に疲れるよ……シャボンさんめ!)

 

 

 エ・ランテル広場にて、様々な人々にリ・エスティーゼ王国についての情報を聞き回り疲れたモモンことアインズ。

 

 

「ミスリル級冒険者のイグヴァルジさんだ!」

 

 

「クラルグラの旦那、この串カツでも食ってかねぇかい?」

 

 

 しばらく広場のベンチに腰掛けていたら、イグヴァルジと呼ばれる男が広場にやってきたようだ。

 外見は屈強な戦士であり、装備品もこの辺にしては性能が高い方だ。

 エ・ランテル内の実力者と見て良いだろう。

 

 

「じゃあ三本貰うぜ、おっちゃん。」

 

 

「へーい、一と半銅貨だ。まいどありぃ!」

 

 

「やっぱここの串カツうめぇな!」

 

 

「もっと食ってくかい?」

 

 

「いや〜今日は遠慮しとく。」

 

 

「そうかい、またご贔屓にな。」

 

 

「ああ、また来るぜ。」

 

 

 イグヴァルジは何処か別の場所に行ってしまった。

 

 

(イグヴァルジ……この辺では強者に入る者だな。取り敢えず覚えておこう。)

 

 

 そう思いつつ、モモンは屋台に向かう。

 

 

「ん? ボウズも串カツ食べるかい?」

 

 

「遠くから見て美味しそうだったので、半銅貨です。」

 

 

「ほーい頂戴するぜ。冷めねぇうちにな。」

 

 

「ありがとうございます。あっ、それとさっきのイグヴァルジさんってどういう人なんですか?」

 

 

「アイツはミスリル級冒険者っていう、この辺だとトップの階級の冒険者だ。俺の見込みではなぁ、アイツは英雄になる男だな。」

 

 

「英雄に……」

 

 

「そう、アイツは英雄になる為には努力を惜しまない男だ。

 実力はチームメンバー含めてそこらのミスリル級よりも強い。この街に来たのも英雄になりてぇからだとよ。

 ボウズも英雄になりたいのか?」

 

 

「うん!」

 

 

「ハッハッハッ、人一倍の努力をすれば誰でも成れると俺は思うぜ? 

 まぁ、ボウズは優しい奴だからな、きっと良い英雄に成れるさ。」

 

 

「ありがとうおっちゃん!」

 

 

「また来いよな〜」

 

 

(ミスリル級がどれくらいの強さか……この都市では、高位冒険者は国の高官とかと同じ、憧れの存在の一つらしい。高位冒険者達の力量を計る手立てを考えないと……)

 

 人混みを避けながら、モモンは思考を巡らせる。

 ふと街の時計台を見ると、時刻は待ち合わせ時刻の30分前になっていた。

 

(そろそろ待ち合わせ場所に向かうとするか。)

 

 

 ドンッ

「わわっ」

 

 考え過ぎで前方が疎かになっていた。フード姿の人とぶつかってしまったモモン。

 

「ん〜? 大丈夫、ボク?」

 

 

「すいません、ぶつかってしまって……」

 

 立ち上がり、今ぶつかった人を視認するモモン。

 フードからは金髪が覗いているが、顔は陰りが差してよく分からない。

 声質から女性ということは分かったが……

 

 

「いんや〜こちらこそごめんねぇ〜? お姉さん急いでたもんでね〜。」

 

 

 フード姿の女性? はこちらに片手を振ると、そそくさと何処かへ行ってしまった。

 

 

(この姿になってから色々と不便だ……あ〜もう! シャボンさん何故にこの姿に……)

 

 

 小柄な身体にまだ慣れないせいか、色々な人とぶつかりまくっている今日この頃のモモン。

 

 

(まあ? 美味しい物食べれるし? しっかりと寝ることも出来るようになったし? 悪いことばかりではない。しかし! この姿だと()()を思い出しちゃうんだよ〜!!!)

 

 

 頭の中で、鏡の前でドイツ語言いながらカッコつけてた記憶が蘇る。

 

 モモンは人知れず心の中で悶絶する。

 

 

(いかんいかん! ちゃんと待ち合わせ時刻は守らないと!)

 

 

 サラリーマンの交渉術の基本である待ち合わせ時刻の厳守を徹底する辺り、リアルでの鈴木悟の働きぶりが容易に想像できる。

 

 モモンは待ち合わせ場所の広場へと向かう。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 広場で合流し、冒険者組合へと向かう三人。

 リューシとモモンは伝言(メッセージ)での密話をしていた。

 

 

『この街での強者は、ミスリル級冒険者チーム「虹」、「クラルグラ」、「天狼」の三つですね。』

(原作知識使うしかねぇ!)

 

 

『ふむ、「クラルグラ」のイグヴァルジという男を見ましたが、私達からすれば取るに足らない者でした。』

 

 

『ほうほう、それは良い情報ですねー。後、共同墓地内の隠れ神殿に怪しげなフード姿の集団が入っていくのを見ました。強さは私達と比べると雑魚ですが、奴等から多くの負のエネルギーを感じたので、一応の警戒が必要かと。』

 

 

『なら、ナザリックから《影の悪魔(シャドウ・デーモン)》を派遣して様子見しましょうか。』

 

 

『|影の悪魔でも3匹居れば十分対処可能かと。良いと思います。』

 

 

『王国のアダマンタイト級の青の薔薇についても気になります。影の悪魔(シャドウ・デーモン)達にはこれからもっと働くことになるかと。』

 

 

『このままだとブラックですね。週休制を導入したらどうですか?』

 

 

『私もそれを考えていた所でして。』

 

 

『まぁおいおい考えて置きますか。これ渡しときますね。』

 

 アイテムボックス内からメガネを取り出す。

 

 

『何ですかそれ?』

 

 

『これは《物知りメガネ》というガチャの外れアイテムで、効果は全ての文字が判読可能になる(笑)ってやつです。外人ユーザーには受けましたけどね。』

 

 

『ピンポイントなアイテムを……運営、異世界に転位すること知ってたのか?』

 

 

『かもしれません。ないと思うけど。』

 

 

 密談している内に、先程の地図に載っていた冒険者組合を示すと思われる紋章が塗装されている看板を見つける。

 カルネ村の村民や捕虜達からの情報からも確証が持てる。

 一行はその看板が掲げられている建物の扉を開ける。

 組合の中は手入れが行き届いており、中には多くの冒険者がいた。

 その誰もがこちらに視線を向ける。

 そりゃそうだ。

 女子供を連れた鎧丈夫が乗り込んできたら誰もが注目するよなぁ。

 そう思いつつ、建物奥のカウンターまで行き、受付嬢にこう告げた。

 

 

「今よろしいかな? 冒険者登録をしに来た者だ。私を含めた3人を冒険者として登録したい。後手頃な宿屋を紹介してもらってもよろしいか?」

 

 

 

 

 

 

 

「冒険者登録した後は宿屋の確保だ。ナーベ、モモン、行くぞ。」

 

「畏まり……」ナーベェ……

 

「ナーベ、畏まっちゃダメダメ!」モモン演技上手っ

 

「ア、じゃない! モ、モモンさーーーん、ごめんなさいっ」

 

 目を潤ませてナーベが謝る。ギャップ萌えやんめちゃ可愛い。弍式さんはこの光景が見たかったのかな? 

 

 

「まぁ、次からは従者口調をやめような?」

 

 

「はい!」

 ナーベは元気よく返事する。

 まぁ、またしばらくはやるだろうけど。

 

 

 その内、歩いて行くと受付嬢が示した絵と同じ印が付いた看板を視認する。

 目的の宿屋だと判断し、戸を開く。

 

 

(うわっ汚ったな。)

 

 

 金曜夜の繁華街並みに汚れている宿屋。

 床にある食べカスやら酒を溢して出来たと思われる染みやらが独特の異臭を放っている、クセェ。

 部屋の天井には蜘蛛の巣張ってるし、ゴツいオッサンしかいないし……

 これ程酷いとは……ナーベなんか今にもこの宿屋破壊せんとしていることが目からありありと分かる。

 

 

『汚すぎ』

 

『それな』

 

 

 店内にいる客の殆どがこちらを観察している。

 

 一部のオッサンは力量を計ろうとこっちの装備とか体格とかを見ているけど、殆どはナーベやらモモンに下賤な目を向けている。

 それらを極力努めて無視して、奥のカウンターにいる店主らしき剃り上げおじさんに向かう。

 

 

「一泊取りたいのだが、よろしいか?」

 

 

 おじさんはこちらを見てこう言葉を零す。

 

 

「あぁ、構わない。お前さんらは銅級(カッパー)だな? なら、相部屋で良いな?」

 

 

「いや、3人部屋、無ければ4人部屋でお願いしたい。」

 

 

「……おい、俺が何故相部屋を勧めるか知っているか?」

 

 

「横の繋がりは不要、私達だけで十分だ。相部屋ではなく個室で頼む。」

 

 

「ほーう、中々の自信をお持ちで。1日八銅貨だ。」

 

 店主のおじさんに八銅貨丁度を無言で手渡す。

 

 

「丁度だな。ちょっと待ってな。」

 

 

 店主は一旦バックヤードに消える。

 しばらくしてから姿を見せ、鍵束をこちらに放って寄越してきた。

 

「それぞれ、部屋と荷物入れの鍵だ。無くすと罰金貰うかんな。部屋はそこの階段を上がって真っ直ぐ行った突き当たりをすぐ左だ。」

 

 

「感謝する。」

 

 

 そう言って階段に向かおうとすると、席に座っていたオッサンが進路を塞ぐように足を寄越してくる。

 

『足で妨害しようとしてます。』

 

『アインズさん、分かってます。今対処しますんで。』

 

 

 オッサンに向かう。

「足を退けてもらっても?」

 

 

「あん? テメェ先輩への口の利き方がなってねぇなぁあ???」

 

 

「テメェの身体に叩き込んでやるよ! この兜野郎!」

 

 

 絵に描いたような小物で草w

 アニメでも書籍でも安定したやられ役だな。

 

 

「すまないが、ザコに構っている暇はないんだ。」

 

「んだと?!」

 いきり立つが、無視して続ける。

 

「これ以上絡むのなら……」

 包み隠さずありったけの殺気を2人のチンピラに向ける。

 

 

「君達が明日(あす)の日の目を見ることは決してない。」

 

 

 冷たい風がリューシの背後から吹き抜ける。

 殺気を当てられたチンピラ2人は漏らしながら瞬間的に土下座した。

 

「「ス、すすすすびばぜんでじだあ!」」

 

 

「では、通させて貰う。」

 チンピラは難なく撃退する。

 後ろから別の殺気が二つも飛んでいたから少し焦ったが、これで騒動を鎮圧しただ……

 

「おっきゃあーーーーーー!!!!」

 

 

 何だ何だ? 今度はぁ!? 

 声がした方を振り返れば、赤毛の女戦士が泣き叫んでいた。

 

「わ、私の倹約生活が……やっと買ったポーション……ぅ、うわぁぁあああああん!!!」

 

 

 何か可哀想に思った。

 元を辿ればチンピラのせいだが、ここは恩を売るチャンス。

 

 

「受け取れ。」

 

 

「……へっ?」

 

 

「《下級治癒薬(マイナー・ヒーリングポーション)》だ。モモンの作った物、効果については申し分ない。迷惑かけてすまなかった。」

 

 

「えっ……はえっ、あ、貴方はただ抵抗しただけで……あ、ありがとうございます!」

 

 

「うむ。名は?」

 

 

「わ、私の名前はブリタと申します!」

 

 

「分かった。覚えておこう。モモン、ナーベ、行くぞ。」

 

 

「分かりました〜」「はい。」

 

 階段を上がって真っ直ぐ行った突き当たりのすぐ左っと、ここか。

 宿屋の部屋に入り、荷物を下ろす。

 

 

「リューシ様、何故あのようなウジ虫共に御慈悲をお与えになられたのでしょうか? あのガガンボ達はあろうことかリューシ様を愚弄し……」

 

「ナーベ、言いたいことは分かる。だが、冒険者登録後直ぐに事件を起こす訳にはいかない。」

 

 

「……ですが、あのグギドなるゴミムシに御身のお持ちになられていたアイテムをお与えになるなど……」

 

「待て、ナーベ。これ以上人間達への中傷をするようならこちらも考えがあるぞ。」

 

 ちょっとキツいとは思うけど、ナーベには人間=ゴミ思考を治して貰いたいので、敢えて強めに言い聞かせる。

 

「……も、申し訳ありませんでした!」

 

 

 目を潤ませながら必死に謝るナーベ。

 流石に可哀想だと思った。

 でも可愛い。

 ギャップ萌えやん最高だぁ。

 もしや、弍式さんはこの光景をずっと前から望んでいたのか……? 

 やるやん、弍式。

 

 

 部屋の影から黒装束の忍者がグッジョブしている姿を幻視する。

 

 

「良いか、ナーベよ。この世にはこんな言葉がある。『情けは人の為ならず』」

 

 

「情けは、人のためならず、ですか。」

 

 

「うむ。人に親切にしたことは、えてして自分に返ってくるものだ。その逆もまた然り。人に恩を売ったことが、周り回って我等にとって思わぬ収穫をもたらすやもしれんぞ?」

 

 

「人に恩を、売る……善処いたします。」

 

 

「ナーベにとって、人と仲良くするなど苦痛でしかないことは分かっている。しかし、これはナーベの成長に必要不可欠なことだ。」

 

 

「私の成長……」

 

 

「これはお前達全員に言えることだが、ナーベよ、人間を侮ってはならない。彼等の力はその団結力にある。彼等を敵に回すことはあってはならないこと、親善を深めるために人間蔑視は不要だ。あってはならないものを切り捨てる為なら、我等はどんな試練でもお前達に課せるだろう。ナーベよ、いや、ナーベラル・ガンマよ。苦境を乗り越えて見せろ。我等にお前の成長を見せてくれ……!」

(それっぽいこと言ってればなんとかなるやろ(´ω`) )

 

 

「至高の御方々の試練……!」

 

 あれ? もしかしてガチで捉えちゃった感じ? 

 

『アンタ、やらかしましたね。』

 

 

『えっ』

 

 

『下僕達の忠誠心は初めからMAXなのに更に忠誠度上げて……どう収集つける気ですか?』

 

 

『あっヤベ』

 

 

 そうだよ。

 この子達皆忠誠心クライマックスやん。

 

 

「ナーベラル・ガンマとしての発言をお許しください。至高の御方々の御采配、身に余る幸せ……! 例えこの身が果てようとも御方々のご期待に添えられるよう精進いたします!」

 

 

「う、うむ。楽しみにしているぞ。」

 

 

「はい! リューシさーーん!」

 

 ちょっと? そこはリューシさん! ってバシッと決めるところじゃん! 

 

 肝心なところでボロが出るのがナーベの短所でもあり、長所ってことか……

 弍式さんの考えが少し分かった気がする。

 

 

『結果的にナーベの成長に繋がったので、結果オーライってことで』

 

 

『んーまぁオケです。』

 

 

『さて、この後は情報共有ですかね。さっき言いそびれたことがありましてね。』

 

 

『同じく。』

 

 

 ーーーーーー

 

 

 アインズさんからの情報では、このエ・ランテルは王国直轄領であり、三重の城壁に囲まれた要塞都市。

 また、貿易の要を担う都市でもあり、重要な軍事拠点でもある。

 というか、国王の半分はエ・ランテルって言っても過言ではないらしい。

 

 王国では貴族派閥と国王派閥の二つが対立し合っていて、いつ内紛が起こるか分からない状況らしい。

 ふーん。

 

 エ・ランテルは最内周部にある行政区、内周部の人民居住区と商業区、外周部の墓地、軍駐屯地と、それぞれの区画ごとに決まった役割があるそう。

 ふーん。

 

 エ・ランテル内の勢力は、神殿勢力、魔術師組合、冒険者組合、国の所属軍人達等が分かっていて、他には鍛冶師組合やら薬師の居住区やら高級娼館やら……

 とにかく多様な人々が集まっている大都市であるそうだ。

 ふーん。

 

 知ってた。

 

 

 ナーベラルからの情報によると、下賤なシロアリ(人間)共が売るのは至高の御方々からすればゴミと言っても過言ではない代物ばかり。

 はっきり言って程度が低すぎて哀れだとさ。

 

 知ってた。

 

「やはり、この世界の人間は皆、レベルが低い者達ばかりが集まっているようだ。」

 

 

「いや、そう決めるのは早計では?」

 アインズさんからの指摘を受ける。

 

 

「まぁ、まだ見ぬ強者達が潜んでいる可能性は考慮すべきだな。まぁ、強者達はこの国ではなく、()()にあった()()やら評議国やらに潜んでいる可能性が高いだろうが。」

 

 

「さむっ!」

 

 

「茶化すなや」

 

 

「すまない。」

 

 

「このエ・ランテルでは我等にとって強者と呼べる存在は皆無、もしくは隠蔽工作を取っているかだ。少なくとも、私の《|上位敵探知《グレーター・ディテクション・オブ・エネミー》》には反応が無かった。そして、共同墓地に入って行った者達の会話を待つ盗み聞きして分かったことだが、どうやら奴等はこの都市で『死の螺旋』という現象を引き起こそうとしているらしい。」

(原作知識投下! 困ったときの盗み聞き宣言つよっ)

 

 

「『死の螺旋』?」

 

 

「大量のアンデッドを墓地内に召喚する儀式のことらしい。これは名声アップに使えるだろう。」

 

 

『万が一強いアンデッドが来た時は?』

 

 

『ティル呼びます。あと補佐にヴァルも。』

 

 

『なら安心。』

 

 

「強い輩が介入してきたら基本援軍要請をする。相手が対話を試みてきた時は素直に応じ、相手の言い分を聞く。そうでなくいきなり襲ってきた時は全力で迎撃せよ。」

 

 

「はい、分かりました。リューシさーん。」

 

 

「了解です。」

 

 

 さて、これで一安心っと。

 明日は初依頼だ〜。

 確か直ぐ死んじゃう仲間達と出会うんだっけ? ナーベにアタックかけるヤツとか男女がいるパーティーだと記憶しているけれど。

 楽しみだなー

 

 

 

 

 

 

 

 この時のシャボンヌは忘れていた。

 

 シャルティアとペロロンチーノを組ませるということのリスクを。

 

 シャルティアは夫のペロロンチーノにワールドアイテムを預けていた。

 夫を守る為に。

 

 これから起こる悲劇をまだ彼等は知らない……

 

 

 



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14.初依頼

『どの依頼もゴミモンスターの討伐か護衛任務なんですが…』

 

 

『簡単すぎて逆にやることがねぇ…』

 

 

モモンが《物知りメガネ》で判読した依頼内容は、余りにもこの3人にとっては簡単すぎた。

 

【エ・ランテル冒険者組合フロント】

そろそろお昼時という時間帯だが、真剣に依頼票を眺める僕達。

お腹空いてきたかも。

 

「モモン、この中で一番マシなものは?」

 

 

「このカッツェ平野でのアンデッド討伐依頼なんてどうですか?」

 

 

「それで決まりだ。」

 

依頼票の羊皮紙を丁寧に壁から剥がすと、カウンターの受付嬢の前に提示する。

この一連の動作だけでも多くの冒険者達から視線を送られているが、極力無視する。

 

 

「この依頼を受けたいと思うのだが。」

 

 

「それはミスリル級冒険者の方々の御依頼です。銅級(カッパー)の方たちには受けられない内容となっています。」

 

 

「構わない。昨日登録したばかりでこの階級だが、本国で最強のパーティーだ。人助けの為だ。我等に任せて欲しい。」

 

 

「ですから、銅級(カッパー)の方々にこの御依頼を受けさせることは組合の規定で固く禁止されています。私1人の一存では決められない内容です。」

 

 

「なら、上の人に会わせてくれないか?」

 

 

「今プルトン・アインザック組合長は経理の業務を行っており、面会不可です。日を改めてお越し下さい。」

 

 

「これでもナーベもモモンも第四位階までの魔法を習得している冒険者だ。ナーベは近距離戦も出来る。モモンは味方への補助魔法を多く習得している。これでもダメか?」

 

第四位階、と言った瞬間から辺りが騒然としているが無視する。

 

「お引き取りを。」

は?

 

「…カッツェ平野周辺の土地を通る一般人達に厄災が降りかかるやもしれない!我等を行かせてはくれ」

「お引き取りを。」

 

 

くっ!正義の人アピールでも駄目か!

受付嬢から既に濃厚な帰ってくれオーラを感じる。

見るからに顔も面倒くさがってるの隠せてないし。

後ろのナーベがどんどん殺気を放っていることが背中で分かる。

ここは一時撤退か、

 

と思った時鶴の一言が!

 

 

「すいません、もし良かったら私達と一緒に依頼を受けませんか?」

 

ペテルブルク!←ペテル・モークな。

 

 

「ふむ、感謝します。その提案、受けましょう。私はリューシという名の旅の冒険者です。こっちはナーベでこっちはモモン。あなたのお名前は?」

 

 

「私はペテル・モークといいます。チーム『漆黒の剣』って知ってますか?」

 

 

「すみません、つい最近この街に来た新参者でして…」

 

 

「あーデスヨネー。銀級冒険者チームの端くれです。そのリーダーなんです、俺。ハイ。」

 

 

と、こんな感じで雑談しながら、さりげなく受付嬢に組合内の一室を貸してもらい、そこに全員移動する。

 

 

「ペテル〜探したぞー」「手洗いから戻ったら誰もいなくてビックリしたである!」

向こうから金髪チャラ男とがっしりとした体格のドワーフっぽい人がやってくる。

クルット・パルプとアンダイン・ウッドデッキだったっけ?

 

 

「まったく、受付のレディが親切に教えてくれなかったら今ご…」

クルットがナーベを見て硬直する。

お前が次に言う言葉は「一目惚れです!付き合ってください!」だ!

 

「一目惚れです!付き合ってください!」

 

案の定だ。

ナーベ?目、怖い怖い。

 

「黙れ、ハエ(下等生物)。身の程を弁えなさい。思い切り地べたに顔を踏みつけられたいの?」

 

よく見ると手から血が滲んでいる…ナーベなりに自制したんだなぁ…

 

「かわい子ちゃんなら大歓迎!」

 

「死ね!」

「ナーベ!」

 

クルットェ…

馬鹿なことすんなや…

ナーベも殺しちゃあかんって。

 

 

「あっ、す、すみません…」

 

 

「良いのって」キラーン☆

 

 

「お前じゃない。」

 

 

「ナーベちゃんっていうんだ〜もしよかったらこの後俺と二人でお茶でも」

「しません。」

 

「おおっと手厳スゥィィ〜〜♪でも、そんな冷たいところが好きだよ。」

 

「永遠に黙らせられたい?」

 

 

「ナーベちゃんの冷たい一言頂きましたー!!ありがとうございます!」

 

 

「いい加減にしたら?ルクルット。」

おっとまた一人別なの来た。

男女ことニニャちゃんだ!

すんげ〜ジト目!

というかクルットではなくルクルットっていうのか、このチャラ男。

 

 

「呆れて物も言えない…ウチのルクルットが本当にとんでもない…」

 

 

「いえ、ナーベは軽薄そうな人苦手なだけなので、お気になさらず。」

 

 

「ありがとうございます…」

 

ペテルブ…ペテルさんめっちゃ不憫…

 

 

「では改めて自己紹介を、私の名はリューシ、ダニヤ・リューシという。好きな様に呼んで欲しい。」

 

 

「えーと僕はモモンといいます。リューシさんの仲間で魔法詠唱者(マジックキャスター)です。」

 

 

「ナーベ。魔法詠唱者(マジックキャスター)。」

 

「こらっ!」ポコッ

ナーベの頭をモモンが杖で軽く叩く。

ナーベの口が一瞬ミ◯フィーみたいになって可愛い。

 

「ちゃんと自己紹介しなくちゃ。」

 

 

「はい…」

 

 

「抜けてるナーベちゃんマジ天使!」

「黙れ。…リューシさんの付き添いです。」

 

 

「じゃあ次は俺達から!俺の名はルクルット・ボルブ!ナーベちゃんの夫となる男!」「死ね」

「ナーベちゃんからまた冷たい一言頂きましたー!!!」

 

 

「おい、ルクルット。今のはリーダーが先に言うところだろ。ゴホン、『漆黒の剣』リーダーのペテル・モークです。チームでは前衛の守りと指揮を担当しています。」

 

 

「ダイン・ウッドワンダーという者である!森祭司(ドルイド)として、チームの回復役と支援役を担っているのである!よろしくお願いする!」

 

 

「僕はニニャといいます。魔法詠唱者(マジックキャスター)です。第二位階までの魔法は一通り扱えると自負しています。」

 

 

「中々に個性的な人達ですね。」

 

 

「ハイ、ヨクイワレマスヨ。」

 

 

「ペテル?何でそんなカタコトな言葉遣いすんだ?」

 

 

「いっつもお前がやらかすからだろ!ここぞとばかりに女性に手を出そうとして!」

 

 

「俺は将来全てのかわい子ちゃんを股にかける男だからな!」

 

 

「おい!ナーベさんの前でなんて破廉恥な!…もうほんとにすいません…

ペテルb…ペテルが今にも消え入りそうな声を上げる。

可哀想に(小並感)

 

 

「いえいえ、こういうことには慣れっこですよ。話は変わりますが、あなた方の御依頼の内容を教えて頂きたいのですが。」

 

 

「分かりました。大まかに説明すると、大森林から溢れてくるゴブリンやオーガとかの討伐ですね。私達は報奨金目当てですが、かなりの頻度で強いヤツが出て来るようになったので、苦戦してしまうことが多くなってしまいまして…」

 

 

「ほうほう、なるほど。事情は分かりました。共に討伐に行きましょう。報奨金は要らないので。」

 

 

「えっ!?いや、せめて5割くらいは受け取ってください!不当契約はしたくありません!」

 

 

「分かりました。では、分け前の3割程度頂くことにしましょう。」

 

 

「…本当にいいんですか?」

 

 

「無論。昼食を取ったら早速準備に取り掛かりましょう。」

 

丁度その時、部屋の扉がノックされる。不思議に思いながらも扉を開けると、開けた先にいた受付嬢から声を掛けられる。

 

 

「リューシ様宛てに、たった今、御指名の依頼が入りました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、依頼者だというのにこんな格好で…」

 

ポーション材料の薬草を潰した汁がこびり付いた作業着に、ボサボサで目元を隠す程の長い髪を持つ少年。

依頼主のンフィーレア・バレアレ君登場。

別名覇王の夫。

愛称ンフィー。

 

いや早いな!ブリタにポーション渡したの昨日の午後やぞ!?

 

 

「あなたが依頼主であるンフィーレア・バレアレ殿ですね?」

 

 

「はい、その通りです。依頼を受けるということでよろしいでしょうか?」

 

 

「申し訳ありませんが、先約がある為お断りしてもよろしいか?」

 

「リューシさん!せっかくの御指名の依頼ですよ!」

 

「しかし、あなた方との約束を反故にする訳には…」

 

こっそりモモンへと目配せする。

 

「んーよくわかんないけど、僕達がお兄さん達の依頼を同時にしちゃえば良いんじゃないかな?」

 

 

「うん?それだ!ありがとうモモン!」

 

 

「えへへ〜」

 

典型的な三文芝居だな。

バレてないよな?

 

 

「ンフィーレア殿、まずは今回の依頼の内容を聞かせてもらってもよろしいか?」

 

 

「はい!リューシさん達には、僕が薬草を採取する為に森に行く時の護衛をしてもらいたいのです。」

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「ここは、我々が二班に別れてそれぞれの任務を遂行する方針にします。私がンフィーレア殿の護衛に付き、モモンとナーベは漆黒の剣の皆さんと共に討伐へ向かいます。」

 

 

「ヒューゥナーベちゃんと一緒だー!!」

「うるさい黙れゴミムシ。リューシさんの言葉を遮るな。」

「ハフン…」

 

 

「えっ!?リューシさんお一人でですか?」

 

 

「私の実力は本国では最強だったものでね。貴方を守り通しましょう。」

 

 

「いや、パーティーを分断するのは役割的に色々と不足しませんか?」

 

 

「問題ないですよ。我等は群としても個としても活動可能ですので。それか、他には漆黒の剣の皆さん。」

 

 

「「「「あ、はい?」」」」

 

 

「我々とあなた方でチームを二分割し、成功報奨金を最初の割合で折半する方法があるのですが、これにはあなた方のチームの指揮を下げてしまう可能性があります。よって、一番はそれぞれの任務を一つづつこなしていく方法が一番かと。ンフィーレア殿。」

 

「えあ、なんでしょうか?」

 

「漆黒の剣の皆さんとの先約により、依頼遂行を後に回すことになります。もしお急ぎの用であれば、優先順位の調整を検討しますが。」

 

 

「急ぎという訳ではないです。ですから、優先順位は後でも大丈夫ですよ。」

 

ンフィー君大人で助かった。

子供だったらこのタイミングでごねてるんだよなぁ。

 

 

「感謝します。では、昼食後、出発の準備を開始しましょう。」

 

 

「了解です。」

 

 

その言葉を後に、立ち上がり部屋から出る僕達。

 

 

『シャボンさんシャボンさん』

 

 

『なんすかアインズさん?』

 

 

『なぜあのンフィーレア少年は』

『ブフォw少年に少年と言われるンフィーレア君ェw』

『茶化すなや話聞け』

『ヘイヘーイ』

 

『…ンフィーレアは何故まだ昨日今日で駆け出しだった我々を指名したのかについて引っかかっています。明らかに我々と接触する為にしか見えない。ンフィーレアは危険人物として監視対象に加えるべきでは?』

 

あーなるへそ。

 

『あの少年の服装からして、ポーション職人か薬草販売店の店員でしょう。まぁ薬草がこびり付いている服着ているだけかもしれませんが。普通に考えるのなら昨日のポーションがあの子の手に渡って我々に興味が湧いたから、とか?』

 

 

『その線が高そうです。しかし、それでも不安ですね。カモフラージュの可能性も考慮して、やはり八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)の監視対象をあの女、確かブリタって言ったかな?からンフィーレアへと移させます。さっきあった報告でンフィーレアの店にブリタが入店したことの裏付けは取れていますので。』

 

 

『良いと思います。あの女に付いていてもこの先メリットがないでしょうし。』

 

まぁ、ブリタに付いているよりはマシな使い道だな。

 

 

『じゃあ飯食いに行きますか。』

 

 

『思考放棄万歳!』

 

取り敢えず手頃な今でいうファミレスっぽい店に入る。

 

 

「中は思ったよりキレイだな。」

 

 

「宿屋が汚すぎたからですかね。あと何か寒気がしたんですが…

 

 

しばらくして、店の奥からウェイトレスさんが出て来る。

 

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 

 

「見ての通り3名だ。」

 

 

「お席にご案内いたします。」

 

そのままテーブル席へ。

 

「ご注文がお決まりでしたらお呼びください。」

 

ウェイトレスさん退場する。

 

「さて、メニュー表だ。」

 

 

「これとか美味しそうかも?」

 

 

「私は…」

 

「ナーベ、遠慮しなくていいからな?」

 

「いや、しかしそんな恐れ多い…」

 

どうやら主人と同じ席で食事を取ることが失礼だと思っているようだ。

 

「食事は皆で食べた方が美味しいと思うぞ?」

 

 

「リューシさんのごめ…言に従います。」

 

 

まぁ取り敢えずナーベをいつものように宥めながら、店員さん呼んでスパゲティを注文する。

帰ったらパピのスパゲティの監督しないといけないからな。

 

「お待たせしました。ミートソーススパゲティ大盛りです。チーズや胡椒と一緒にお召し上がりください。」

 

うお、これはまた凄い量だな。

食べがいがありそうだ。ジュルリ

 

 

「リューシさーーーんにこんな粗雑な…」

 

 

「ふむ、これはこれでまた粗くて美味しい。」

 

 

「…至高の御方に美味しいと言わしめるなんて…ガガンボもやはりリューシさーーーんの仰る通り侮れないものね。

 

 

「ん?なんか言ったかな?ナーベよ。」

 

 

「あ、いえ、私めの独言ですのでお気になさらず。」

 

 

「先に頼んだのにまだ来ない…」

 

 

「まぁ待てば必ず…」

 

「至高の御方をお待たせするなど言語道断!やはりガガ…」

「抑えよ、ナーベ。」

 

「はっ。失礼…すいませんでした。リューシさーん。」

 

 

『ナーベは気が昂ると素がどうしても出てしまうようですね。』

 

 

『困りましたね。ボロがでないように矯正しましょうか?』

 

 

『いや、弍式さんに殺されそうなんでやめましょう。』

 

 

『そうですね。』

 

 

冒険者活動初日から波乱が起きそうで不安だなぁ…



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15.初めてのお依頼

【トブの大森林】外周20㎞地点。

 

 荷馬車を守る冒険者と薬草採取を行う薬師の一行が野道を前進していた。

 エ・ランテルはもう視認不可能な距離にあり、遥か南の地平線を双眼鏡で覗いてどうかといったところだ。

 冒険者は一人の少年が乗る馬車の周りを取り囲むようにして同行している様子。

 

(この姿の為か、色々と聞き出せちゃったんだが……)

 

 その中で荷馬車の側方向の守備を守る冒険者、その中で最も背が低い少年魔法詠唱者(マジックキャスター)、モモンは同じく魔法詠唱者(マジックキャスター)のニニャの隣でめっちゃ困惑していた。

 ニニャからは

 武技のこと、

 生まれながらの能力(タレント)のこと、

 魔法の階位や今発見されている魔法の数々、

 周辺地理の詳細な情報、

 周辺国家の情勢・特色、

 更には王国貴族の裏事情まで聞き出せた。(モモンくんはそういう奴ら(貴族)みたいになっちゃダメだよ〈迫真〉)

 

 

 また、ニニャは貴族の裏事情を話す際目に隠しきれない憎しみが浮かんでいた。

 何か王国貴族達とは因縁があるのだろうか? 

 これから仲間として付き合っていくかもしれない冒険者だ。

 彼の事情を知ることは大切だろう。

 そう考えつつモモンはもっとニニャから情報をおねだりする。

 

 

「ニニャさんって凄い! なんでも知ってるんですね!」

 

 

「い、いやぁそれほどでもないよ。僕のお師匠様の方が何倍も多くの知識を持ってる。」

 

 

「お師匠様?」

 

 

「有名な帝国魔法省の重鎮フールーダ・パラダインと同じ生まれながらの能力(タレント)をお持ちの凄腕魔法詠唱者(マジックキャスター)の方なんだ。姉を失って意気消沈していた私を拾って育ててくれたんだ。第五位階に達したってこの前喜んでいらしたそう。そういう内容の手紙がこの前僕宛に届いて……」

 

 

「へぇ〜、それは凄いですね!」

 

 

「ホントにお師匠様に出会えて良かったと思うよ。」

 

 

「そういえばニニャさんって、王国貴族に何か恨みがあるんですか?」

 

 

「……なんでそれを?」

 

 

「いや、王国貴族の裏事情を聞いた時に、何か怒りをニニャさんから感じて……すいません。」

 

 

「いやいや、別に隠してないから。そう、あれは私が7歳の頃、私の姉が貴族に連れて行かれた。妾として。あの時から僕はずっと奴らを断罪してやるって決めた。」

 

 

「断罪って、何をするつもりなんですか?」

 

 

「悪いことをしたお返しをするの。わ……僕から姉を強引に連れ去った領主にね。」

 

 

「お返しって……まさか」

 

 

「えーっと、殺すとかそんな物騒なのじゃないよ。安心して欲しいな。」(まぁ、殺しはしないけれど、ね……)

 

 

「なら安心です! ところで、何でチーム名が『漆黒の剣』なんですか?」

(この人めっちゃ深い闇持ってるわヤベーわ。これ以上深く掘り下げると奈落に落ちそうだな。)

 

 

「あー、えーっと、それか──、えーっとえっと、ごめん。」

 しどろもどろなニニャ。

 

 

「?」

 頭の上にハテナマークをつけるモモン。

 

「説明しよう!」

 っと、今の今までナーベを口説こうとしていたルクルットが話に入ってくる。

 

「このチーム名はニニャが考案してくれたもので、十三英雄の一人、暗黒騎士が持っていたと言われる魔剣を全て集めることを誓うという意味があるのだ!」バーン

 ルクルット、やりィィ! 

 

 

「ちょっルクルット?! 恥ずかしいから言わないで欲しかったんだけど……」

 ニニャはめっちゃ恥ずかしがってる。

 

 

「大きな夢を抱くことは何も悪いことでは無いのである! もっと自信を持つのである!」

 同じく横を守っていたダインも話に参加してくる。

 

 

「いや、ダイン。そういう意味じゃない。」

 顔から湯気が出ながらそう言うニニャ。

 

 

(若気の至り、か。)モモン、察する。

 

 

「いや、違うから! モモンくん! 違うからその可哀想な人を見るような目でこっちを見てくるのやめて!」

 

 

 ニニャ、女であること、隠しきれてないからな。

 アインズさんの質問がニニャの弱点を的確に突いているんだよなぁ。

 そう思いつつも、声には出さずに隊の横を守備するシャボンヌことリューシ。

 

「もうそろそろ、かな。俺の勇姿を見といてくれよ☆ナーベちゃん〜」

 

 

「黙れ、不快。」

 

 

「さっきから同じ言葉言ってない?! ま、そんな冷たいところも好きなんだけどね〜」

 

 

「黙れ。」

 

 

「釣れないなー。あ、そういえば気になったんだけどさ、リューシさんとナーベちゃんは恋人関係なんじゃ……」

 

 

「こっ、こ、ここ恋人!? 何を言うのですか!? 私などではなくティルル様や」「ちょっ、ナーベ?」「おいちょっと待て!」

 刹那、ナーベは自分の犯した失態を理解する。

 顔から血の気が失せていくのがありありと分かった。

 

 

「んーやっぱリューシさんには思い人が……まぁあんなイケメンなら女の一人や二人いてもおかしくは無いか〜」

 顔合わせの時に、リューシは兜を脱いで素顔を見せた。

 まぁ、超イケメンに作っていたので、見ていた冒険者組合の受付嬢達からアプローチされたが……

 

「こら! ルクルット! 冒険者同士のチーム事情をあからさまに詮索するのは御法度だぞ! すいません、うちのルクルットが……」

 ペテル謝り倒している。この人いつも謝っているような……

 

 

「いや、恋人がいるのは事実ですし、今更隠すことではありませんから。まぁ、ちょっと恥ずかしいので、これ以上の詮索はやめてほしいですね。」

 

 

「はい、すいません……ほら、ルクルット、ちゃんと謝って?」

 

 

「あれ? 俺なんかしちゃいました?」

 

 

「「「したよ!」」」

 

(ラノベの主人公みたいなこと言うな!)byリューシ

 

 

 そんなこんなで道中を歩いていく一行。

 

「ん、向こうから敵影発見。姿は……ゴブリン十六体と人食い大鬼(オーガ)六体と……妖巨人(トロール)?!」

 

(雑魚だな)byリューシ

 この世界の冒険者にとって、通常の妖巨人(トロール)は金級冒険者でなければ討伐不可能とされていた。

 

「まずいのである!」

 

「どうしましょう! 我々漆黒の剣では勝てない相手です! 撤退すべきでしょう。」

 銀級冒険者の漆黒の剣では太刀打ちが出来ない相手。

 

「いや、必要はありません。私達に任せてほしいです。ナーベ、モモン!」

「「はい!」」

 

「お前たちはそれぞれ右方向から来る者、左方向から来る者への攻撃を行うよう。私は正面突破を行う。」

 

 

「正面から?! いくらなんでも危険です!」ニニャが止めようとする。

 

「大丈夫ですよ。見ていれば分かります。支援魔法もご自身や漆黒の剣の皆さんの為にとっておいてください。」

 

 

「では、平野部のゴブリン、オーガは我々が、あなた方はあのトロールやオーガ達を任せます。危なくなったら絶対助けますからね。」

 

 

「はは、大丈夫ですって。本国最強と名乗る以上、ここでトロールなんかに負けた日には、国の恥さらしですからね。」

 

 

 リューシの言葉の後、ペテルは仲間達に指示を出しに行く。

 手馴れた様子でペテルの作戦内容を瞬時に読み込み、それぞれの持ち場へと向かう彼等漆黒の剣の姿は、どこかアインズ・ウール・ゴウンの仲間達の姿を幻視させた。

 

 

『良いチームですね。もっと訓練を積めば、我々のような連携も出来るかも……』

 

 

『懐かしい……我等アインズ・ウール・ゴウンのメンバー全員が戻って来ていたらなぁ……』

 

 

『……戻って来ますよ。いつの日か。』

 

 懐古。

 至高の御方と下僕達から敬われる二人は、どこか懐かしい思い出に浸りつつ、戦闘準備を進めていくのであった。

 

 

 

 

 

「しまった! ダイン! そっち行ったぞ!」

 

 前衛を守るペテルの剣捌きと、野伏(レンジャー)のルクルットの的確な援護により、ゴブリンの大半は後衛のニニャ、ダインに近づけずにいた。

 しかし、ゴブリンの二体が左手から回り込み、左翼の守備を担当していたダインへと襲いかかる。

 

 

「大丈夫なのである! 

植物の絡みつき(トワイン・プラント)』!」

 

「『魔法の矢(マジック・アロー)』!」

 

 ゴブリン二体はダインの拘束魔法で動きが鈍くなった隙に、ニニャの魔法で仕留められた。

 

 

 一方、トロール方面の草地に三人の冒険者が怒涛の勢いでモンスター達を倒していく。

 

 

「何処を見ている。」

 

「ホァ?! コ、コイツ、イツノマニ」ザシュ

 

 

 リューシはまるで遊ぶかのようにオーガを次々と切り捨てていく。

 

(退屈だわ〜そういや、パピが新たなパズルを作ったっぽいな。)

 いや、戦闘中に何考えてんだコイツ。

 

『リューシさ〜ん、こっちにもオーガ回して欲しいんですけど。』

 

 

『ダメー。まぁゴブリンで勘弁して欲しいです〜』

 

 

『ケチですね〜』

 

 オーガ、完全におもちゃである。

 

 

 

「アノチビカラネラエ!」

 

 

「ゲヒャヒャヒャヒャ!」

 

 森から新たに現れたゴブリン八体がモモンへと襲いかかるが……

 

 

「『電撃球(エレクトロ・スフィア)』」

「ギャ!」

 

 モモンのスタッフから出現した電気の塊が内五体のゴブリン達に貫通し、瞬時に丸焦げにする。

 

 

「ありゃ、通常の『電撃球(エレクトロ・スフィア)』で五体持っていけちゃうとか……どんだけ弱いんだ……」

 

 

「モモンくん! 大丈夫?」

 

 あらかたゴブリン達を倒し終えたニニャが加勢に行く。

 

「大丈夫です。『電撃球(エレクトロ・スフィア)』♪ モンスターはお掃除しないとメッですよ。」

 

 ゴブリンの焼死体を増やしながら、

 子供っぽい演技をして人差し指をニニャの眼前に翳すモモン。

 

 

「あぁ、うん、そう……だね?」

 ニニャはモモンのギャップ差に苦しんでいるようだ。

 

 

 

 別地点ではナーベが迫り来るオーガ(肉壁)に向けて

 

「『雷撃(ライトニング)』」

 

 容赦の無い魔法攻撃を浴びせる。

 当たった者から次々と地面に倒れ伏し、そのまま動かなくなる。

 後には肉が焼けた焦げ臭い匂いが辺りを満たす。

 

「さっすがナーベちゃん! 強かわいい!」

「黙れ」

 

 ルクルットとナーベは戦闘時でも相変わらずの様子^^;

 

 

 

 2チーム(主にリューシ)の活躍により、僅か1分もしないうちに残りのモンスターの頭数が五体となっていた。

 

「ゲキャ、ツヨイ、ニゲロ!」

 

 力量差がやっと理解出来たのか、ゴブリン達が退却していく。

 

「ニンゲン、クウ」

 

 だが、トロールが遂に動き出し、リューシへと向かう。

 

「遅い」

 

 リューシはトロールが拳を振り上げたタイミングで相手の懐に急接近すると、そのままの勢いでトロールを肉薄する。

 

「手加減してやる。魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)火球(ファイヤーボール)』」

 

 瞬間、再生し始めていたトロールの肉片を灼熱の火球が襲いかかる。

 トロールは瞬時に蒸発し、頭部の一部分を残して全て灰になった。

 

「すごい……」

 

「オリハルコン……いや、確実にアダマンタイトだろ……」

 見ていた漆黒の剣の面々は唖然とする。

 

「あれだけの剣術を使えるというのに、魔法まで使えるんですか!?」

 

「イケメンで強いとか、反則じゃんか……」

 

英雄譚(サーガ)に出てくる戦士みたいなのである! いや、それ以上なのである!」

 

 惜しみのない裏表ない称賛がリューシに飛ぶ。

 

「アハハ、ありがとうございます。ところで、倒したモンスター達はどうすれば良いでしょうか?」

 

 

「耳を切ってこの皮袋に入れてください。組合の人達は耳の大きさや形状から倒したモンスターの情報を割り出すので。」

 

 

「了解です。ナーベ、モモン、仕事だ。倒したモンスター達の耳を切って持って来てくれ。」

 

 

「ラジャ」「分かりました。」

 

 

 

 モンスター達の耳を回収し終えた一行は、ンフィーレアの待つ速攻で作った野営地に戻る。

 焚き火と寝床を置いただけの簡素な物にする予定だったが、リューシ達が《グリーンシークレットハウス》を提供し、漆黒の剣が持ってきていた食料を詰めた食料袋をそこに置いてお遊戯(モンスター討伐)に出かけたのだ。

 

「お帰りです、皆さん。お怪我はありませんか?」

 

 帰還早々に薪を集めてきてくれてたらしいンフィーレアが出迎えてくれる。

 奥に薪木らしき斬られた木が積まれている。

 ンフィーレアの手には木片が付く斧があった。

 

「ないですよ。それよりもすいません、依頼主の方にこんな労働をさせてしまって……」

 

 

「良いんです。僕も好きでやってたので。それに薪割り位出来なきゃ……」

 

 

「出来なきゃ?」

 

 

「……何でもありません。」

 

 

 ンフィーレアが頬を少し紅潮させながらそう言う。

 その先は「エンリと一緒に暮らせないです。」とか? 

 

 

「さて、では夕飯を作りますか!」

 

 

「久々にシチューを食べたいのである!」

 

 

「作るの手伝えよ〜、ただでさえルクルットとかルクルットとか女の子来たら手伝わないから頼むぞ〜」

 

「何で俺だけ!?」

「いや、お前だけやん、何を取り繕う必要がある。」

 

 

「うぐ……確かに俺はかわい子ちゃんを前にしたら口説かざる負えない究極の病を患ら」

「いや病でも何でもないだろ」

 

 ルクルットとペテルが軽口を言い合いながら人数分の食材を取り出していく。

 

「では私達は食材のカットをしますね。」

 

 シャボンヌが提案する。

 

 そもそもシャボンヌ達に料理出来んのかという話だが、結論から言うと不可能。

 コックの職業レベルを取得していないので、食材の調理で失敗するようになっている。

 このことはナザリック内の厨房で明らかになっている。

 試しにペロロンチーノさんがペペロンチーノを作ろうとしたらどす黒い炭屑が出来上がっていた。

(P氏:専業主夫は難しいかぁ)

 しかし、ヘロヘロさんの洞察眼によって、調理以前の下準備(食材を捌く等)まではかろうじて出来ることが分かった。(H氏:いやーミス一つでも見逃したらこっ酷く叱られてたもんで……上司に……うっ、頭が……)

 よって、食材の調理は漆黒の剣の面々に任せ、自分達は食材の下準備をする形で場を収めたいのだ。

 

 

「それじゃあ調理を僕たちがしますね。良いよね、ペテル?」

 とニニャ。

 思惑通り(ニチャア

 

 

「勿論OKだよ。さぁ早速取り掛かりますか!」

 ペテルの一声により、楽しいお料理タイムが始まる。

 

 

 ────────

 

 

「完成〜!」

 

 

「おっじゃあ早速、全員分よそわないと 」

 

「手伝いますね。」

 

 ペテルとシャボンヌが全員分シチューを均等に分けていく。

 持ってきた干し肉とハーブのいかにも旨そうな匂いが鼻腔を突く。

 シチュー独特の濃厚な香り、ほのかに香るスパイスと山椒の匂いがたまらない。

 

「……」

 

 思わずモモンの方を見やる。

 彼もまた、顔を綻ばせていた。

 

『美味そう。』

『同感。』

 

 

「じゃ、いただき!」

 

 まずルクルットがシチューにがっつく。

 

 

「ルクルットはせっかちであるな。ここはゆっくり味わうところなのであるよ。」

 

 それを穏やかに諫めるダイン。

 

 

「いただきます。」

 

 彼等に続いて確自食事を始める一行。

 シャボンヌはシチューを一掬い取ると、そのまま口に木製のスプーンを持っていく。

 

 

『美味い!』

 

『この体になってからずっと不便だったけど、ご飯が食べられるのは良いですね。』

 

『あ、お疲れ様です。』

 

『ほんと、貴方のせいでこの姿に……』

 

 

「食材の下準備を手伝っていただき感謝します、リューシさん、ナーベさん、モモンくん」

 ニニャが不意に話しかけてきた。

 

『あっと失礼ニニャに話しかけられた。』

 

『むぅ』

 

「当たり前のことをしたまでですよ。我々は仲間みたいな、いや、仲間じゃないですか。」

 とりま、相手を上げるスタイルで会話する。

 

 

「嬉しいですけど……私なんかあなた方の足元にも……」

 

 

「仲間に実力など関係ないですよ。共にこうして依頼を遂行した仲、食材の下準備などいくらでもやりますよ。」

 

 ナーベ方面から視線を感じたが無視無視。

 

 

「そうですか……リューシさん、貴方に頼みたいことがあって……」

 

 ナーベがニニャを殺気交じりに睨んでいる。

 これは少し不味いかな? ということでナーベにしか見えないように首を横に振ってみたけど……あ、納得したみたい。

 

「ほう、なんでしょうか?」

 

 ニニャからの頼み事って……貴族やな(確信)

 

 

「僕には一人の姉がいたんです。」

 

 

 ──────────ー

 

 

 夕食を食べ終え、片付けをしているリューシ。

 他の者達はモモン含めてペテルとリューシ以外全員寝ている。

 ペテルは皆んなの分の武器の手入れをしているようだ。

 どうやら漆黒の剣は鍛治係みたいなのをチーム内で作っているらしい。

 ちなみに役割分担制。

 

 

(そうだ! サンズに()()頼むの忘れてた……)

 

 

 リューシは野営地の《グリーンシークレットハウス》内で何かを思い出す。

 そして、顳顬に手を当てると『伝言(メッセージ)』を発動する。

 

『おーい、サンズ〜いるか〜?』

 

 

うん? どうした、シャボンヌ? 

 

 

『今ちょっと頼みたいことがあってな。』

 

 

ついにオイラのジョークを

『今から()()()()()に危険レベルが一段階下がる旨を伝えて欲しいんだ。この世界ではどうやら強者という強者が存在しないらしいことも伝えてくれ。』

 

 

おいおい、てきびしいな〜。わかったぜ。いまからエボットホールにむかうよ。

 

 

『助かる。』

 

 

 シャボンヌの全勢力が竜達だけだといつから錯覚していた? 

 もちろんサンズ・パピルスいるんだったら《お馴染みのメンツ》もいるに決まってるぜ! 

 

【スノーディン・ホットドッグ】最寄りにある【エボットホール】が地下世界の入り口になっており、地下世界はアズゴア王による平和が享受されている。

 太古の封印により、地上に行けるのは限られたモンスター達だけという制約までバッチリ再現したシャボンヌの最高傑作みたいなもん。

 それ故に、シャボンヌは最高傑作が壊されない為にと存在を隠蔽していた。

 全員召喚の際に誤って連れてこられたことになっている。

 

 

 ちなみにトリエルやグリルビー、マフェットちゃんとかもちゃんといて、普通にし店を持っている。

 そしてなんとコックの職業レベルを持っている。

 しかし、料理専属ってわけじゃなく、各々が地下世界の構成に必要不可欠な存在という設定を付けてしまった為に、シャボンヌは彼等に飯作ってもらうことが出来ずにいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここだけの情報だが、あそこには

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〔fatal_error〕

 

 

 

 

 ────────

 

(よし、あとは……ティルとヴァルに動いてもらうか。ヘロヘロさんが気になるかんな。)

 

 



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16.ハムスター登場!

 シャボンヌ達が野営地に戻る数刻前【エ・ランテル 共同墓地】、ハゲの男と若き金髪ボブヘアーの痴女が地下神殿内で会合をしていた。

 

 

「クレマンティーヌ、遅かったな。」

 

 ハゲことカジットが黒紫色の宝珠を片手にそう言葉を発する。

 

 

「ごめんねぇ〜(๑˃̵ᴗ˂̵)男達からチヤホヤされちゃってねぇ〜」

 

 頭ポリポリかきながらテヘペロするクレマンティーヌ。

 

 

「お前のことだから無いだろうが、ちゃんと全員始末したな?」

 

 

「もっちろん! いや〜身体に穴を開けられる度に身体をビクつかせちゃってさー! ゾクゥときちゃってもう下着が台無し〜」

 

 クレマンティーヌは身体をよじる。

 

 

「この変態が」

 

 

 読者の心の声を代弁するかのようにカジットが的確なツッコミをする。

 

 

「あぁん? おんなじ風にして欲しい?」

 

 笑いつつも少し殺気を放ちながらカジットを睨め付けるクレマンティーヌ。

 

 

「出来るものならな。まぁでも、ここで仲間割れは不味い。()るなら()るで好きにしろ。だがお前の追手を撒く手伝いはしない。」

 

 

「うーんまぁそうね〜でも、あんま調子に乗んない方が良いよ〜。うっかり殺しちゃうかもよ?」

 

 

「調子に乗るということはえてして悪い結果しか産まん。儂がそのことを知っていない訳が無かろう。さっさと仕事を済ませ、我らが盟主にありったけの死を御献上することこそ最優先事項だと思っての行為。お前の行為はとても良いとは言えんぞ。」

 

 知的にクレマンティーヌをdisっていくカジット。

 

 

「なんでよ〜、ちゃんと殺してるのに〜?」

 

 口を尖らせるクレマンティーヌ。

 もしも場所と格好が少し違っていたら、年若いギャルが敬虔な僧侶に構ってアピールしているように見えたかもしれない。

 しかし、ここは墓地内の地下神殿、カジットもクレマンティーヌも怪しいローブに身を包んでいる状態である。

 

 

「死者が生者に死を与えることこそ死者の王たる我等が死の神への貢物である。お前は生者であろう。」

 

 カジット、宗教観が世紀末。

 

「ごめん、ちょっとよくわからない。」

 まったくだ。

 

 

「なんだと!」

 いや、言われても仕方ない案件ですけど。

 

 

「ちょっとーここで仲間割れは不味いよー。」

 

 

「ぬぐ、儂の台詞を……」

 クレマンティーヌの見事な燕返しが決まる。

 

 

「えーとね〜攫うって言う薬師のガキいなかったんだけど。」

 唐突な話題転換。

 

 

「……何?」

 

 

「どうやら薬草取りにトブの大森林辺りに行ったってよ。帰ってくんのは遅くとも2日だとさ。護衛には銀級のザコと変な新人が付いているみたい。」

 

 

「チームの頭の殺気は凄かったらしいが、所詮はガゼフ・ストロノーフ以下だろう。後はガキと女らしいではないか。」

 あ、カジットオワタやん。その人達、ガゼフより何倍も強いですよー。

 

 

「銀級とまとめてスッと行ってドスッだね〜。あー楽しみぃ〜!」

 逆です。あなた方がスッと行ってドスッですよー。

 

 

「あんまり血で汚すなよ。後始末が大変だからな。」

 

 

「あ〜ハイハイわかってるよ〜。」

 

 

「……このエ・ランテルが死に呑まれるまで、あと少しだ。待ち遠しい、ああ待ち遠しい……」

 

 

「あー楽しみぃ〜! 早く痛ぶって穴開けて殺して! フヒッッ! ぶっ壊してやるよ……何もかも!」

 

 エ・ランテル共同墓地内に狂人達の笑い声が木霊する。

 ぶっ壊されるのは自分達の方だというのに……

 

 

 


 

《リューシサイド》

 

 

【トブの大森林周辺 野営地】

 

 

 翌朝、僕は朝一番に起きた。

 朝ご飯のフランスパンっぽい携帯パンと昨日の残りをみんなで食べ、トブの大森林へ行く為の拠点としてカルネ村へ行く予定である。

 昨日ンフィーレアが自爆して好きな人がカルネ村にいるってことで話題になっていたが……ンフィーレア、エンリ将軍は手強いぞ 

 

 それにしても初依頼をこなすの中々楽しかったな〜。

 仲間と共に冒険してるっていうリアルRPGが楽しめたよ。

 まぁ、僕どっちかっていうと魔王サイドなんですけどね!? 

 アインズさんなんかモロ魔王なのに、今では完全なる冒険者見習いの少年にノリノリで成りきっているし。

 

 この後やることってトブの大森林内で薬草取りだよな〜。

 後魔獣の捕獲だったっけ? 

 うーん、そこで何か起きたような気がするけど……

 

 ま、いっか! 

 

 取り敢えずは漆黒の剣をクレマンから守ることが先決。

 そして彼等と共にエ・ランテルの共同墓地に突っ込んで〜

 最後にミスリル級になることが目標事項だ。

 えーと、確かその後直ぐシャルティア洗脳の報告がアルベドから来るけど……

 

 まぁ大丈夫やろ。

 ワールドアイテムの《ヒュギエイヤの杯》持たせたし。

 

 

 そしてそのまま法国に突入、と。

 シナリオは出来つつある……。

 

 

 到底崩れはしないだろう。

 

 ──────

 

 と、明らかフラグを立てながらそう考え込んでいるリューシ。

 

 モモンとニニャとルクルットとナーベで話が展開していた為に、入り込む余地が無かったのもある。

 

 ちなみに、モモンはニニャから英雄の乗っていたというドラゴンについて聞いてた。

 

「へぇ〜英雄ってやっぱ凄いや!」

 

 

「モモンくん位の実力なら成れるよ。きっと。」

 

 

「俺と共にな! そしたらナーベちゃんに告白して……」

 

「生理的に受け付けません。」

 

 

「ひどっ! またまたそんなこと言って〜ほんとは心ではねっ!」

 

「黙れ」

 

 

「ちょっとルクルット、仕事してよ〜」

 

 

「わりぃニニャ、ナーベちゃん口説くのに忙しいんだ!」

 そう言って双眼鏡をニニャに放るルクルット。

 

「少しお痛が過ぎるんじゃないか?」

 

 

「これが青春なのである!」

 

 

「ダイン……あれはただの粘着行為だぞ……」

 

 

「……多分この先もう少し行けばカルネ村です。うん? あれ? えっ?」

 

 ルクルットの双眼鏡を貸してもらったニニャがカルネ村方向を見て素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「どうした? ニニャ、そっちに何……」

 

 

「どうしたのであるか? まさか村に何かあっ……」

 

 

「どうしたんだ? みんなして固まって、そっちに何がぁあ?!」

 

 

『ちょっとシャボンヌさん?! アンタカルネ村を魔改造しすぎだろ!』

 

 

『ヴィレッジ・オブ・ドラゴニア・カルネですよ。略してカルネ村。』

 

 カルネ村は立派な要塞になりました。

 めでたしめでたし。

 

『いや一体何やったらあんな竜の巣窟みたいになるんだよ!!』

 

 

 そう、ここから見えるカルネ村は、明らかに村ではなかった。

 というか村の範疇を容易に越していた。

 フォレスト・ドラゴンやら鋼鎧の竜(アーマースケイル・ドラゴン)やら緑竜(グリーンドラゴン)やらが上空を飛び交い、村周辺部は木材と鉄で出来た見るからに強固そうな高壁と、草木で覆い隠された外堀と内堀でガッチリ固めたまさに城。

 ご丁寧に道中の看板には警告文が記され、村内部に3〜4カ所程の物見櫓が設置されていて、さらには堀の外側に柵、壁面には弓を射ることが出来る隙間窓、張り出し櫓まで付いている。

 フルコンボだドン! 

 外見からは、少し前までの典型的な田舎村の面影は全く無くなっていた。

 

 

 何故こうなってしまったのかというと、事の発端は3日前に遡る。

 

 ホーンバーグ内の自室内で仕事中、ふとシャボンヌは思い出す。

 そういや、POP竜達の置き場所がないやん……と。

 そこで、カルネ村に何匹かやらないかな〜と思ったシャボンヌは、パッとその場の思い付きとノリだけで、アインズにカルネ村強化の案があるとだけ言って、ルプスレギナに連絡し、カルネ村要塞化を進めることにしたのだ! 

 拠点魔法と竜達の頑張りにより、僅か3時間という速さであらかた完成してしまった。

 ちなみに作業していた時間帯が夜だった為に、翌朝エンリ以下村人達は腰を抜かしてしまったそうな。

 

 

「何だ何だよ! あれの何処が村だってんだ!」

 

 ルクルットがまるで初めてゴジ◯を目の当たりにした奴みたいに喚く。

 

 

「ンフィーレアさん! 何か知っていることとかありますか?」

 

 いち早く冷静になったペテルが以前カルネ村に行ったことのあるンフィーレアに何か知っていないか尋ねる。

 

 

「あれ? 薬草の匂いで頭がおかしくなったのかなぁ。おしろがめのまえにあるなんてこれはゆめだ」

「夢じゃないです! しっかりしてくださいンフィーレアさ──ん!!!」

 ンフィーレア、残念ながら夢じゃありません現実です。

 

 

「取り敢えず、村の人達と何かコンタクトを取りたい所ですね。ところで、貴殿らは何か知っているか? ゴブリン達よ。」

 

 シャボンヌが草地を見遣りながらこう言葉を発する。

 その言葉に答えるかのように数匹のゴブリン達が武器を構えながら草地より出てくる。

 

 

「バレちまったみたいでっさなぁ、人間の兄さん方。俺らはそこのカルネ村の来客を監視する役割だったんすが……それで、カルネ村に何か用で? 最近この村が騎士に襲われたらしいんで、危害を加えようってんなら話は別ですがねぇ。」

 

 そう言いつつも警戒は怠らずに脅しまで付ける使役ゴブリンの鏡。

 

「え! 騎士に襲われただって?!」

 ンフィーレアが叫ぶ。

 

 

「逆に問おう。貴殿らに危害を加えてこちらに何かメリットでも?」

 お手上げポーズを取りながらそう言葉を零すリューシ。

 

 

「へへ、それもそうですかねぇ。」

 そう言ってようやく警戒を解くゴブリン達。

 

 

「警戒しているのはやはりあの娘の命によるものだな?」

 

 

「え!? 何か知っているんですか? リューシさん!」

 とニニャが聞いてくる。

 

 

「ん? もしかして兄さん、エンリの姐さんの言う……」

 先頭のゴブリンも何か言いかける。

 

 と、その時声が響く。

 

「ンフィー!」

 エンリ将軍だ。

 

 

「エンリ!」

 

 二人は互いに走ってお互いを抱きしめ合う。

 リューシはサッとモモンの背後に移動する。

 

 

「聞いたよ、村が騎士に襲われたんだって? 大丈夫だった? エンリ。」

 

 

「うん! 怖かったけれど、通りすがりの冒険者の方が助けてくださったの!」

 

 

「それなら良かった。エンリを助けてくれたその冒険者さんには僕からもお礼を言わなきゃ。」

 

 

「ほんと凄かったの! 剣でズバズバって……確かその人、リューシ様って言ってた」

「ゥエエエエエエエエエエエエ?!!?!?!?!?!?!?!」

 ンフィーレアと聞いてた漆黒の剣の面々が一斉にシャボンヌを見遣る。

 その顔はさながらワンピ◯スの神エネ◯にそっくりだった。

 

 

「ンフィーもそこの人達も何をおどろ……あれ?! リューシ様!?」

 遅れてエンリも気付く。

 

 

『アインズさん、カルネ村に来たときの姿、直ぐに成れますか?』

 

 

『えっ? あ、はい成れますけど……』

 

 

「モモン、あの姿をここでお披露目しなさい。」

 

「えっ!? ここで!? はーい、よっと。」

 

 そう言いつつ、アインズことモモンは青年フォームへと姿を変える。

 

 

「……」

 

 

「モモンくんが大きくなった!?」

 

 

「これがモモンの第二の姿です。肉体も精神も急成長し、接近戦への強さが増しますが、魔法攻撃力が下がるのであまり使いません。この村が襲われていたのを発見した時、丁度このフォームの特訓中だったので……そして隠していましたが、私は竜騎士です。」

 

 

「モモンくんに第二の姿!? それにリューシさんが竜騎士って初耳です!」

 ニニャがめっちゃ興奮している。

 

 

「この村の復興に使役した竜達を当てがっています。中々可愛いモンですよ。あいつらは。」

 

 

『ちょっと! シャボンヌさん流石に我々の情報をここまで垂れ流しにする訳には……』

 

『ニニャには魔法習得速度倍加のタレントがあります。そして、ンフィーレア少年は全てのアイテムを使えるというタレントを持っている。早いとこ彼等二人をこちらに引き込み、仲間にしてしまいたいです。』

 

『ぬぅ、でもそれで』

 

『彼等が裏切るような輩に見えますか? ここは我々にとって良き人材の確保に走りましょう。それに、あいつらおもろいですし。』

 

『……諦め』

 

「リューシさんスゲェ!」

 

「リューシさんパネェ!」

 

「まさしく英雄である!」

 

「凄い……カッコいい……」

 

「リューシさん凄いです!」

 

「助けられた身として、とても感謝しています!」

 

 モモンと会話している内に、エンリが他の面子に事の顛末を話していたみたいだ。

 

 飛び交うリューシさんコール。

 内二人は女の子から。

 許せん! シャボンヌ! アンタは今再び、俺達非リアを『裏切った』ッ! 

 

「暴力は奪う為に在りて、実力は守る為に在り。私は実力行使に出たまでです。モモン、そろそろ元の姿に。」

 

「はい。」

 

 そう言って再びモモンは元の姿に戻る。

 

「戻りましたー!」

 

「うむ。それで、エンリといったな。我々はトブの大森林へ依頼を遂行しに行く為、途中ここに立ち寄ったまで。ンフィーレア氏の薬草採集の護衛任務だ。その拠点としてこの村を使わせてもらいたい。」

 

 

「あ、多分良いと思いますよ。村長さんを至急呼んできますね。」

 

 

「感謝する。ところで、敬語の方がよろしいか?」

 

 

「えっあ、えーとそのままでも全然……」

 

 

「差別は良くない。これからはこの口調で話しますが、大丈夫でしょうかな?」

 

 

「えっちょっ」

 

 

「さて、ンフィーレアさん、漆黒の剣の皆さん、そろそろ打ち合わせを行いましょう。」

 

 

「命の恩人に敬語を使わせるなんて〜……怒られる〜!」

 

 

「は、はい。えーっとエンリが困っているのですが……」

 

 

「いきなり敬語はキツいと思いますけど……」

 

 

「まず、トブの大森林内のスポットAに向かい、そこから」

(ダメだこの人、話聞いてねえ!)

 

 

 ────────

 

 

 大森林内部

 薬草が取れるスポットを目指してぬかるんだ森の小道をしっかりと歩くンフィーレア一行。

 ところどころに生えている薬草をちょくちょく採集しながら森の奥地まで進んでいく。

 

「ナーベちゃん、怖いかい? 俺が介抱してあげ」

「要りません、気持ち悪い。」

 

「ありがとうございます!」

 

 

「ルクルットとナーベの会話がどんどんめちゃくちゃになっているような気がしますね。」

 

 

「ほんとウチのルクルットがご迷惑を……」

 

 

「ペテルさんが謝ることでは無いですよ。それに、面白いのでそのままで。」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

「ナーベちゃん、いくら俺に冷たい言葉を投げても逆効果……全員警戒! やべえ奴がこちらに向かって来ている!」

 

 

「切り替え早! それで、敵の詳細な情報は?」

 

 

「大体ダイン三人分程の背丈だが、足跡から四足歩行の魔獣だと推定! 恐らく全長ダイン6人位です! 横の長さはダイン5人分はあると……」

 

「毎回思うのであるが、なんで長さの単位が私なのであるか?!」

 

 ダインは単位にされた。

 

 

「ここは打ち合わせ通り、私達が抑えます。ンフィーレアさんの警護、よろしく頼みましたよ!」

 

 

「相手は森の賢王と呼ばれる大魔獣です! くれぐれも無理はしないでください!」

 

 

「心配御無用!」

 

 

 ンフィーレアを連れて漆黒の剣の面々は森の中に消えていく。

 

「そろそろかな、出てきていいぞ、アウラ。」

 

 

 木々の隙間の影からひっそりとフェンリルに乗ったアウラが現れる。

 

「魔獣の誘導は完了しました! 私のペットのクアちゃんが囮になってくれています!」

 

 

「偉いぞアウラよ。後で何か褒美をあげよう。」

 モモンが少年の声でこんなこと言うので、思わず吹き出しかけたリューシ。

 

 

「それにしても、あのガガンボ達、我々を信頼し切っていましたね。」とナーベ。

 

 

「冒険者もまた、強い者に対する信頼感という物がある。弱者は強者が守り、強者は弱者に見返りを求める。これがこの世の掟だ。」

 

 

「何と偉大なるお言葉……! 絶対に忘れません!」

 と言いながらメモ帳に今リューシが言ったことを凄いスピードで書き記していくナーベ。

 

 

「さて、ここは僕がチャチャッと終わらせますね。」

 

 

「苦戦するような相手では無いっぽいですけど……」

 

 

 アウラの報告により、トブの大森林内に森の賢王と呼ばれる一際珍しい魔獣がいるという報告があったので、アインズが捕縛することにしたのがことの始まり。

 リューシには魔獣の捕獲をトブの大森林でやるとだけ伝えていた為、リューシは重要なことを思い出せていなかった。

 

 ドドッドドッ

 遠くから魔獣が駆ける音が聞こえる。

 直にここまで来るだろう。

 

「来ますよ。アウラは一応隠れて。」

 

 

「はっ!」

 

 

 姿を消すアウラ。

 それと同時に森の奥から鞭のような物が飛んできた。

 

「剣を使う必要もない。」

 

 

 それをリューシは素手で鷲掴みにする。

 飛んできた物体は蛇のような鱗に覆われた生物の尻尾のようだ。

 

「森に侵入した愚か者〜尻尾から手を放すでござるよ〜!」

 

 

「「ござる?」」

 

 モモンがまさかの魔獣の口調に驚き、あんぐりと口を開ける一方、前世のリューシの記憶が蘇る。

 

 

「……先に攻撃した方が悪い。これは正当防衛だ。」

 

 

「いいから放すでござるよ〜!」

 

 

『アインズさん、この魔獣は……』

 

 

『えぇ、そうですよね、アレですよねぇ。』

 

 

「質問に答えたら放してやる。お前の種族名はジャンガリアンハムスターと言わないか?」

 

 

「な、何でそれがしの種族を知っているでござるか〜?! ま、まさか!」

 

 

「お前に良く似た奴を以前に見た。雌だったよ。」

 そう言いながら尾から手を放すリューシ。

 

 

「ガーン! オスじゃないのでござるか……残念でござる〜」

 体勢を整えつつそう言う魔獣ハムスター。

 

 

『うーん、マスコット担当ならいけるか?』

 

 

『戦闘技術は……基本的な補助系統を使ってこない所を見ると我々からすれば雑魚でしょう。テキトーに流してお終いですね。』

 

 

「それで? 我々はこの森の散策に来ただけだが、邪魔するのであれば予定を変えざるを得ないな。」

 そう言って間髪入れずに《剣聖のオーラ》を放つリューシ。

 

 

「参った、参ったでござるよ〜! 邪魔もする気は無いでござる〜」

 

 瞬間的にお腹を見せて服従のポーズを取るハムスター。

 

「貴様! 至高なる御方々に無礼な……」

「ナーベ、止めよ。アレは服従のポーズだ。」

 

「はっ! 申し訳ありませんでした!」

 

 

「さて、お前を今後どうするかだが……」

 

 

「殺さないで欲しいのでござるよ〜……」

 その丸いつぶらな瞳を潤ませる巨大ハムスター。

 刹那、アインズとリューシを耐え難い罪悪感が襲う。

 

 

『……コイツ殺したら、次元を超えてやってきた動物愛護団体から訴えられますね。』

 

 

『そんな動物愛護団体いないでしょ!? まぁ愛らしいハムスターを殺すっていうのも中々気がひけるのは確かですねぇ。』

 

 

「お前は我等と共に来い。必ずお前の同族を見つけ出してやる。それまで生きてついて来い。分かったな?」

 

 

「承知したでござる、今日から目一杯の忠誠を誓うでござるよ殿〜!」

 

 

『ここは仲間にしておきましょう。一応、この世界の有力者っぽいので。』

 

 

『有力……者? 魔獣ですよね?』

 

 

「流石はシャボンヌ様とアインズ様! 御二方が揃えばこんな英知を感じる魔物も容易く手懐けてしまう! カッコイイです!」

 

 興奮するアウラ。

 

「うん? カッコ……」

「至高なる御方の御威光にはどんな雄大な獣であったとしても、逆らうことなど不可能だと知れ、大魔獣。」

 

『あれ? シャボンヌさん、俺の感性が間違っているんでしょうか? あのハムスターどう見ても可愛い以外の何物でも無いと思うんですが……』

 

 

『モフりたい(切実)』

 

 

『大の大人が……(呆れ)』

 

 

「さて、そうと決まれば早速お前に名を与えよう。前に何かこれといった呼ばれ方はあったか?」

 

 

「それがしは以前にここに来た人間が言っていた『森の賢王』という呼び名が気に入ったでござるが、それ以外には特に何とも呼ばれていないのでござるよ。」

 

 

「『森の賢王』は称号だな。名前では無い。ならば……アインズさん、何か案とかはありますか?」

 

 

「えっ? 俺ですか。……やっぱりここは『ハムスケ』にしましょう。なんか口調が武士っぽいので。いや、待てよ。雌だったっけ?」

 

「では、今日からお前の名は『ハムスケ』だ!」

 

 

「おお! 何とも雄大な響き……! それがしにそんな素敵な名前を名付けてくださった恩、行動で必ずお返しするでござる!」

 

 

「あぁ。頑張れよ。」

 

 

(森の賢王なんだからもっとバケモノみたいなのが来ると思っていたが……何だこれは、お笑い芸人の出し物じゃないんだぞ……)

 一人そう思うアインズであった。

 

 

 

 

 ────

 

 

「待たせましたね、皆さん。」

 

 リューシ達は緊急避難場所と指定していた森の一角に足を踏み入れる。

 そこにいた漆黒の剣とンフィーレアは出迎えようとして硬直する。

 

(そりゃそうだよな……こんな巨大なハムスターを三人がかりでリンチにしたなんて言ったら)

「そいつが……森の賢王……!」

 

「何と立派な魔獣であるか……! 強大な力がひしひしと感じられるのである……!」

 

(ん? 立派? 強大?)

 

「こ、この子が立派に見えるんですか?」

 

 

「この英知を感じさせる瞳! 俺の弓でも傷一つつかなそうな美しくもとんでもない強度を誇る毛皮! どんな弾幕をも跳ね返しうる硬質な尾! 俺達だったらとっくの昔に全滅だよ! こんな奴生け捕りにするとかモモン君達ヤバすぎるだろ!」

 

 

「ぇ、え〜そ、そうですか?」

 

(英知? ヤバい? イヤイヤ、ハムスターだよ!?)

 

 

「凄いです! 流石リューシさん、ナーベさん、モモンくん! これは英雄級の偉業ですよ!」

 

 

『リューシさん、ハムスケを見た感想は?』

 

『可愛い』

 

『良かった……』

 

 現地とNPCの物の感性はリアルと大分違っている。

 

 

「ハムスケ、一つ聞くが、何かしらの幻術の類を今使用しているか?」

 

 

魅了(チャーム)とかならば使えるでござるが、今は使っていないでござるよ。」

 

「キィヤァァァアア! シャベッタァー!!」

 

「ハムスケという呼び名なのであるか……何とも雄大な響きであるか……」

 

「お! そなたも理解してくれるのでござるか〜! 殿が名付けてくださった素晴らしい名でござるよ!」

 

 巨大なハムスターに畏敬の念を込めた視線を送る一行。

 

「えーと、可愛いとは思いませんか?」

 若干困惑気味にそう問うモモン。

 

 

「え!? モモンくん!? この大魔獣が可愛く見えているの?」

 

「少年にも関わらず、とても肝が座っているのである! 将来は立派な英雄になれるであるよ!」

 

「か〜やっぱ実力者って常人と感性が違うんだなぁ〜。」

 

「見るからに食べられそうな魔獣を可愛いって……凄すぎるよモモンくん……」

 

 

(ハムスターって、雄大だったんですね……)

 

(アインズさん! しっかりしてください! 貴方の感性は間違ってないですよ! ……多分)

 

(多分って……確証持てなくなって無いですか?)

 

 

「あっ! でも待って下さい、もし森の賢王がいなくなってしまったら、今まで森の賢王の強大さからカルネ村周辺を行くことを避けていたモンスター達が村を襲うのでは……?」

 ンフィーレアが自身の考えうる最悪の可能性について問う。

 

 

「村とは……あぁあの人間達の住処のことでござるか。一つ言うと、それがしが居なくともそこは直に襲われると思うでござるよ。」

 

 

「えっ……それはどういう……」

 

 

「最近森の奥地に変な輩がやってきたのでござるよ。そやつらは森の中に何か大きな物を作ろうとしているのは間違いないのでござるが、よく見ようと近づいただけで此方に攻撃を仕掛けてくるのでござる。余程大きな何かが大事な物だと思うのでござる。とにかく、そやつらの性で森の生態系が崩れて来ているのでござるよ。この森に住む者たちは大混乱してこっちに続々と住処を探しに来ているのでござる。遅かれ早かれ、そこへも住処を探しに来ると思うのでござるよ。」

 

 

「賢王様が何とか出来ないでしょうか?」

 

 

「それがしは縄張りを極度に荒らす者とは戦うが、眠りを妨げずに通る者達は基本見逃しているのでござるよ。弱き者を痛ぶるような趣味もないでござるからな。」

 

 

「そ、そんな……」

 

 ンフィーレアはこの世の終わりみたいな顔をする。

 ンフィーレアにとってカルネ村とは思い人がいる村であり、同時に二人の思い出の地でもあるのだ。

 

 

『アインズさんアインズさん、』

 

『何ですか?』

 

『ここはンフィーレアを助けましょう。恩を売るチャンスですよ。』

 

 

『ハムスケの言う森の奥地の変な輩と大きな何かって絶対アウラに命じて建造に当たっている下僕達とその造っているトブの大森林内の偽ナザリックのことですよねぇ。ここは我々にも責任がありますからね。罪滅ぼし且つンフィーレアを引き込むということになるので良いかと。』

 

 

『良し、じゃあンフィーレアに』

「リューシさん!」

『おわっ!!』

 

 いきなり声を掛けられてビックリしつつも声の主を探るリューシ。

 見ると、ンフィーレアが覚悟を決めた顔でリューシに向かい合っていた。

 

「何でしょうか?」

 

 努めて冷静に言葉を放つリューシ。

 

「僕をあなた方のチームに入れて下さい! お願いします!」

 

 ンフィーレアが真摯な目でリューシを見ながらそう嘆願する。

 その目からはリューシへの憧憬と思い人への愛、男としての本能が強く感じられた。

 大切な者を守ろうとする男の目、かつて木々を愛し、守ろうとしていた過去の自分の姿と通ずるものがあった。

 

 

「ははははっ」

 

 リューシは朗らかに笑う。

 それには、相手を侮辱する響きは一切なかった。

 

「失礼、貴方を馬鹿にした訳ではないです。ただ、君の気持ちは良く分かりました。しかし、君をまだ仲間にすることは現時点では出来ません。」

 

「な、何故ですか?」

 

 すまんな、ンフィーレア。

 ウチのギルドはメンバーを募集してないし、アインズ・ウール・ゴウンも確か異形種プレイヤーの社会人という条件だった筈だ。

 ンフィーレアは社会人だが異形種ではない。

 それに、メンバーの過半数の合意も必要だ。

 ペロロンチーノさんはロリじゃなきゃヤダって言いそうだし、ヘロヘロさんは金髪メイドじゃないから却下しそうだ。

 

 

「我々のチームの加入条件二つの内、片方しか君は満たせていないからです。しかし、この村を守ることに関しては君と協力したいと思っている所存です。君さえ良ければですが……」

 

 

「はい! 協力します!」

 

 

「では、詳しい話はエ・ランテルで。君のお祖母さんにも話合わなくてはなりませんからね。」

 

「はい! ありがとうございます、リューシさん!」

 

 

「では、薬草採取を再開しましょう。お待たせして申し訳ありませんでした。漆黒の剣の皆さん。」

 

 ンフィーレアとの話に一旦終止符を打ち、待たせていた漆黒の剣の面々を見る。

 

「それがし、『ぶぎ』なる物を修得したいのでござるが、そなたらは何か知っているでござるか?」

 

 

「『武技』ねー。知ってるぜ、じゃあ少し見ていろ、今この石を切るから。『武技 斬撃』!」

 

 スパッ ボトボト

 

「わぁ〜凄いのでござるよー!」

 

 

「いや、お前の方が凄いと思うのだが……」

 

 

「あ、リューシさんンフィーレアさんとの話し合い終わったようだよ。」

 

 

「良し、それじゃあ再開しますか。行きましょう、リューシさん!」

 

 

「はい。」

 

 

「この大魔獣が怖いかい? ナーベちゃん。」

 

 

「こんなザコ取るにも足りません。話し掛けないでください。刺しますよ?」

 

 

「おお、大魔獣をザコ扱い、やっぱナーベちゃん強いねー!」

 

 

「切り刻まれたいですか?」

 

 

「寧ろご褒美です!」

 

 

「……」

 静かに腰の短刀に手を掛けるナーベ。

 それを見て慌ててモモンが伝言(メッセージ)を送る。

『ナーベ、落ち着け。今は耐え時だ。』

 

『アインズ様、このボウフラを殺すご許可を』

 

『これも試練の一環だったのだが……ナーベよ、お前の覚悟はそんな物だったのか?』

 

 

『も、申し訳ありませんでした! このナーベラル・ガンマ、御方の試練を完璧に遂行いたします!』

 

 

『うむ。』

 

 

 ────────

 

 

 この後は滞りなくンフィーレアが必要な薬草を全て集め終え、というか余分にれあめっちゃ採取出来て、森の賢王ハムスケの協力もあってか4時間程で任務は終了した。

 夕暮れ時にはカルネ村にハムスケ連れて帰還し、入植者の為に空けてある空き家の中でゆっくりとくつろいでいた。

 漆黒の剣の面々はまた別の空き家を借り、ンフィーレアはエンリの家に泊まることとなった(モモンとリューシの策略)。

 モモン、ナーベ、リューシの三人はテーブルを挟んで向かい合っている。

 ちなみに森の賢王ことハムスケは胴回りで入り口につっかえた為、外でお留守番だ。

 

「『空間隔離(セグレゲイト・スペース)』さて、ご苦労だった、ナーベラルよ。引き続き冒険者ナーベとして宜しく頼む。」

 

 

「はっ!」

 

 

「では、アインズよ。これからの方針だが、ンフィーレア少年は我らにとって有益な人材。現地産ポーションの製造が可能になるやもしれん。」

 

 

「ンフィーレア君については同意見だ。彼はナザリック内でも重要保護人物として下僕を付けておこうと思う。また、漆黒の剣も保護対象に置くべきかと。」

 

 

「アインズ様、あの人間(ゴミムシ)共も守護されるのは不利益を生む可能性が。あの者達は我等の存在を知った途端裏切るやも知れません。」

 

 

「そこは私が保証しよう。それに、あの者達へこれ以上の情報は与えないようにしておく。だが、あの詠唱者(スペルキャスター)ニニャに関してはあの生まれながらの異能(タレント)が魅力的であるからな。『流星の指輪(シューティング・スター)』を使うのは勿体無いと思う上、我等にとって有益な人材だ。ここの人間社会を熟知した者達は確保しておかなければ。」

 

 

「成る程、流石はリューシ様!」

 

 

「先ずはンフィーレア少年。彼をカルネ村の思い人エンリと結び付けられれば、そして我等がその全面的サポートをすれば十分だろう。そして、安定した平和な生活を保証させればなお完璧だ。」

 

 

「彼をエンリと結びつけるには……幸い二人は幼馴染み。シチュとしては完璧だ。」

 

 

「後は二人をどう動かすだが……」

 

 ンフィーレアの思い人がエンリということは日を見るより明らか。

 二人の恋路を応援する童貞二人がそこには居た。

 

「ここはエンリの危機を命懸けで助けようとするンフィーレア少年、という状況を作り出すことだな。」

 

 

「ンフィーレア君が死に掛けた瞬間、我等が敵を瞬時に殲滅すると。中々に良案だな。」

 

 

「その為には村のモンスター襲撃タイミングで我等が丁度良く現れなくてはいけないな。」

 

 

「それかルプスレギナに任せておこうか。丁度来たようだからな。」

 

 その言葉の後直ぐに貸家の扉がひとりでに動く。

 扉は開いた後直ぐに閉まった。

 村の者達からは『空間隔離(セグレゲイト・スペース)』の効果で見えないようになっている。

 程なくしてルプスレギナが『不可視化(ノンアンブル)』を解いて姿を表す。

 

 

「ルプスレギナ・ベータ、御身の前に。しばしの遅延をお許しください。」

 

 

「よく来たな、ルプスレギナよ。まぁそこに座ってもらおうか。」

 

 

「し、しかし……私めは一下僕。アインズ様とリューシ様のお座りになられている席と同位置に座るなど烏滸がましいです。」

 

 

「ではこうしようか。お前は冒険者ナーベの姉だ。よって、ナーベの監督者として席に付く権利がある。」

 

 

「……申し訳ありません、失礼します。」

 渋々といった調子で席に座るルプスレギナ。

 

 

「さて、お前には引き続きカルネ村の監視を行って欲しいと思う。特に、最重要人物としてエンリ・エモットとンフィーレア・バレアレを、だ。その内のンフィーレアに関しては今はまだ村に送ることが出来ていないが、直に祖母と共にやってくるだろう。祖母は前に言った二人の次に重要だ。彼等を何としてでも死守し、命を守ることがお前の第一の任務とする。」

 

 

「か、畏まりました。ですがアインズ様、何故人間共にそんなにお目を付けているのでしょうか?」

 

 

「有益な人材と判断したからに決まっているだろう。さて、第二の任務はカルネ村に侵攻するであろうトブの大森林内のモンスター達の動向をその都度報告して欲しい。これはアウラにも頼んで置くつもりだ。カルネ村襲撃タイミングで我等を呼んでくれ。」

 

 

「畏まりました。万事手筈通りに行います、アインズ様。」

 

 

「報告と連絡と相談を怠らないように。」

 

 ルプスレギナに念押ししていくリューシ。

 

 

「承知致しました、リューシ様。」

 

 

 そう言うと再び『不可視化(ノンアンブル)』で姿を消して退場していくルプスレギナ。

 駄犬のサポートとしてユリも付けといた方が良いか、少し心配だ。

 

 

「さてと、後はルプスレギナに委託したカルネ村第一次要塞化計画の報告書を待とう、では、解散! また明日!」

 

 

「ま、待て! お前これ以上カルネ村要塞化する気か!」

 

 

「そのとお〜り! お休み〜!」

 

 少年に追われる全身鎧の偉丈夫の姿は『空間隔離(セグレゲイト・スペース)』によって隠された。

 このことを知っているのは当人3人と覗きをしていた()だけだろう。

 

 



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17.凱旋の後直ぐ襲撃ってマ?

 昨日の夜のカルネ村要塞化計画全貌がアインズによって第三次までに制限された上、罰としてハムスター騎乗の刑に処せられたリューシ。

 翌朝早く起きてカルネ村を出発したが、モンスターとは一度も遭遇しなかった。

 代わりにリューシだけは、道中鎧に身を包んだ中身オッサンがハムスターに馬乗りになりながら歩くという羞恥プレイを受け、1人やっとこさの思いで、その他の面々はニッコリ顔で遂にエ・ランテルに辿り着く。

 時刻は18時頃、夕暮れ時だった。

 

「じゃあここで分かれますね。僕たちはこの魔獣を登録しないといけないので。」

 

 

「モモン君、リューシさん、ナーベさん。本当に有り難うございました。荷下ろしは俺達に任せてください。」

 

 しかし、この会話はリューシに届いていなかった。

 耐えがたい羞恥心と、これから漆黒の剣とンフィーレアを襲う惨劇に遂に我慢出来なくなったリューシ。

 

『アインズさん、もう、げんかいです』

 

『何言ってるんですか、これからですよ。これから。』

 

『い、いやだ────!!!!』

 

 我慢の限界が来たこともあり、冒険者組合へハムスケをダッシュさせる。

 

「ハムスケ、ダッシュだ!」

 

「えっあ、りょ、了解でござる。ダ────ッシュッ」

 

 リューシはこのままハムスケごと冒険者組合に突っ込むつもりだ! 

 

 

「あっ! リューシさんがいきなりスピード上げさせた!」

 

「待って下さい、リューシさ──ん!!!!」

 

 嵐のように走り去る3人組。

 

「あ、行っちゃいましたね……」

 

 

「ハハ、僕たちも早めに荷下ろし終わらせちゃいますか。」

 

 そんな三人を半ば唖然として見送りつつ、歩き出す漆黒の剣とンフィーレア。

 

 危険は直ぐ側までやって来ていた。

 

 

 ────────

 

《シャボンヌ視点》

 

 急げ! 急がないと漆黒の剣が殺されちまう! 

 ハムスケ! 急いで! 

 

『ハムスケ、突っ込め』

 

 気が急いて伝言(メッセージ)使っちゃったやん……

 

『わわ! 殿の声が頭の中で響くでござる! 突っ込むのでござるか──!?!』

 

 

『あ、あれだ! あの建物に向かって進め!』

 

 前方に冒険者組合と思しき建物が見えてきた。

 

 

『ちょっと! シャボンさんアンタ一体何するつもりですか!?』

 

 慌てたショタンズさんの声が脳内に飛び込んでくる。

 

 

『魔獣登録DA☆』

 

 

『いやいや冒険者組合に突っ込むつもりですよね? ですよね?!』

 

 

 突っ込むだと? 何を言っているんだチミは。

 

 タイミング見てハムスケ止めるに決まってるではないか。

 

「今だ! 止まれ! ハムスケ!」

 

 

「ブレーキ、でござる!」

 

 

「ふう、計算通り。」

 

 冒険者組合の扉からあと0.2センチというところでハムスケの鼻先が止まる。

 結構ギリギリだったな。

 冒険者組合に入ろうとしていた他の冒険者達腰抜かして泡吹いてるし、周囲の人がワーワー騒いでいるのが聞こえるがスルーする。

 

「何してんの? お前」

 

「一体何事でしょうか!?」

 

 後から急いで追って来たモモン、ナーベとも合流を果たす。

 いや、モモン口調口調! 忘れているよ! 

 

 

「羞恥プレイなんてしたくないのでね。そんな趣味もないし。あ! しまった……」

 

「今度は何?」

 

「しゅうちぷれいとは一体……?」

 

「碌に挨拶とかしてないやん! あーしまった。とりま伝言(メッセージ)で穴埋めしとかないと。」

 

 本当に参ったなーお陰で伝言(メッセージ)する手間が増えたなーこれで襲われてないか確認出来るぞーやったー。

 

「別にする必要なくない!?」

 

「モモン、挨拶は大切だ。人間関係の構築に置いて最も重要な役割と言っても過言ではない。それに、伝言(メッセージ)を使用できるというアピールにもなるからな。」

 

 

『もしもし、聞こえますか? ニニャさん。先程は』

『リ、リューシさん、助けて下さい! 今……ガッ』ブツッ

 

 え? 

 ンフィーん家もう着いちゃったの? 

 あとクレマンさん早くね? 

 

「ニニャさん? ニニャさん!」

 

『どうかしましたか?』

 

『ニニャが何者かに襲われた模様です。』

 

『何だって!?』

 

『今から助けに行きます。登録よろしくお願いします。では。』

 

 よし、助けに行くぞ! 待ってろニニャちゃん! 

 

「ちょっと待っ……」

 

 

『ア、アインズ様、シャボンヌ様は一体どう……』

 

『重要人物のンフィーレア一行が何者かに襲われたようだ。登録を済ませたら直ぐにシャボンヌさんの加勢に行かねば。』

 

『畏まりました。登録を早急に終わらせます。』

 

 

(いや、いきなり事が起こり過ぎだろ! 一体どうなってんDA!)

 

 

 ────────

 

 

「皆さん、お疲れ様でした。どうぞ少し休憩していって下さい。まぁ、ちょっと薬草で臭いですが では冷たい紅茶とお菓子をお出ししますね。」

 

 薬師街の一角、バレアレ家の運営する薬品店の外に積荷を運んだ一行は、休憩の為に店内に足を運んだ。

 どうやら、ンフィーレアが疲れた一行へ水分と糖分を補給するよう促したようだ。

 

「あ、どうも有難うございます、ンフィーレアさん。」

 

 戸を開けつつ、その言葉に返答しようとしたその時、薬品を入れた戸棚の影から金髪ボブヘアーの際どい装備を付けた若い女が突然姿を現し、ンフィーレアに詰め寄ってくる。

 

「うわっ!」

 

 驚き、腰を抜かした拍子に後ろに倒れ込むンフィーレア。

 グラスが落ち、けたたましい音が響く。

 その音を聞いて漆黒の剣が現場へと駆けつける。

 

「貴方がンフィーレア・バレアレくん〜?? お姉さんこれ砥いで待ってたんだよぉ〜」

 

 スティレットを腰から取り出しながら獲物をじっくりと見回す捕食者(クレマンティーヌ)

 

「な、何だ誰だアンタ!?」

 

 ペテルとルクルットがクレマンティーヌとンフィーレアの間に立ち塞がる。

 

「ン〜、ザコを先に片付けてからにしようか。それまでちょっと待っててね、ンフィーレアくん〜?」

 

 驚く程妖艶な笑みを浮かべ、スティレットを構えながら近づき始めるクレマンティーヌ。

 

「ヒッ! ち、近寄るな! 『酸の矢(アシッド・アロー)』!」

 

「おっと、危ないじゃん〜」

 

 ンフィーレアが咄嗟に放った魔法も、クレマンティーヌに予備動作なしで避けられる。

 

「遊んでいる暇は無いぞ。クレマンティーヌ。」

 

 店の奥からまた新たな客ならざるフード姿の者が姿を現す。

 カジットだ。

 

「え〜ケチだねぇカジッちゃん!」

 

 クレマンティーヌはカジットに対して駄々を捏ねる。

 

「その呼び方を止めろと言っている。」

 

 

「チィッ、新手か! ンフィーレアさん、下がって!」

 

 ルクルットが前線から後退し、未だ腰が抜けているンフィーレアに駆け寄る。

 

「ここは通さないのである!」

 

 前線の穴をダインが埋め、後方でニニャが魔法詠唱の準備をする。

 漆黒の剣がクレマンティーヌとカジットへと立ち向かう。

 

「おーおー中々威勢があること。まぁ殺すんだけどねぇ────!!!」

 

 その様子を見て興奮したクレマンティーヌが、目にも止まらない速さでルクルットとダインに瞬時に詰め寄り……

 

「ルクルット! ダイン!」

 

 刺突攻撃でルクルットの足、ダインの腹に風穴を開ける。

 

「づぁ、足がっ」

 

「腹、が」

 

 

「そんな!? あの二人が一撃で!」

 

 ニニャが2人に思わず駆け寄る。

 

「殺さないように手加減してあげたからね〜お姉さん優しい!」

 

 そう言ってスティレットに付着した血を舐めるクレマンティーヌ。

 

「ンフィーレア・バレアレの確保は済んだぞ。」

 

 いつの間にか後方に回り込んでいたらしきカジットが、眠らせたンフィーレアを、担ぎ上げようとしている。

 

「なっ!」「いっいつの間に!?」

 

 ルクルットがンフィーレアを取り返そうとカジットに向き直る。

 

「よそ見している暇があるのかなぁああ??」

 ドシュ

「ガァっくっ」

 

 しかし、クレマンティーヌに隙を突かれ、背後から肩を打ち砕かれる。

 

「ルクルット!」

 

 あっという間にニニャ1人残して全滅してしまった漆黒の剣。

 

「肩やられたら弓兵もただのサンドバッグなんだよ〜」

 

 ルクルットがクレマンティーヌに何度も刺され、呻き声を上げる。

 

「ルクルットから離れろ! 『雷槍』!」

 

 ルクルットに覆い被さるクレマンティーヌ目掛けて雷魔法を使うが、クレマンティーヌは容易くそれを避ける。

 

 丁度その時、ニニャの頭の中にリューシの声が響く。

 

『もしもし、聞こえますか? ニニャさん。』

(リューシさんの声?! いや、今はそんなこと聞く暇は無い。)

 

『先程は』

『リ、リューシさん、助けてください! 今』

「だから危ないって〜。ドスッとな。」

 

 いつの間にか前まで来ていたクレマンティーヌに喉を刺されるニニャ。

 

「ガッ」

 

 

「魔法詠唱者は喉を一突きすればサンドバッグになるよ〜テストに出るから覚えよーね?」

 

 

「……」

『ニニャさん? ニニャさん!』

 

 声を出したくても声にならず、リューシの声が響くも、返事が出来ないニニャ。

 

 

「必死に声出そうとしちゃって、可愛いね〜じゃあそろそろ終わりにしてあげるね〜。」

 

 ニニャに近づくクレマンティーヌ。

 

「や、止めろ! ニニャには手を出すな!」

 傷ついた足を抑えつつも立ち上がるペテル。

 そのまま、足に有りったけの力を込め、クレマンティーヌへと剣を構えて走る。

「ウオオオオオオオオオ!」

 

「煩い。」

 ドシュ

 眉間を一突。

 漆黒の剣のリーダーは仲間を庇い、儚く散って行った。

 

「ペテル!」「リーダー!」

「あー直ぐに死ねて良かったね〜、思わずまた優しさが出ちゃった。反省反省。」

 ケラケラ笑うクレマンティーヌ。

 

「リューシさん……」

 歯を喰いしばりながら、突然に現れ、昨日まで行動を共にした英雄の名を口にする。

 

「あん? リューシさんってだーれ? 付き添いの奴?」

 反応するクレマンティーヌ。

 

「お前なんかよりもよっぽど強い人だ。」

 

 真っ直ぐクレマンティーヌを見据えながら、そう言葉を発するルクルット。

 

「死ね」

 

 

「ルクルット────!!!」

 

(ナーベちゃん……)

 ドシュ

 額に大きな風穴を開けられ、絶命するルクルット。

 彼の顔は最後の不純な妄想によるものか、とても安らかだった。

 

「さーて、残るは2匹っと。どう殺して欲しい?」

 スティレットをまた舌で舐めながらそう言葉を零すクレマンティーヌ。

 

「ふざけるのも大概にするのである! お前はこんなことして楽しいか!!!!」

 

 激昂するダイン。

 既に彼の腹からは多くの血が流れ出て、もう長くはなかった。

 最後にクレマンティーヌの心に強く訴えかけた彼の行動は正しいだろう。

 

「うん、そうだけど?」

 

 しかし、残酷にもその命をかけた呼びかけをあっさりと一蹴するクレマンティーヌ。

 

「じゃあね〜」ドシュ

 

 彼もまた、リーダーと野伏の後を追うこととなった。

 

「クレマンティーヌ、儂は先に行く。遊び尽くしたら戻って来い。但し、後処理としたい回収はしておけ。『第三位階死者召喚(サモン・アンデッド・3th)』」

 

 たちまち、ニニャ以外の漆黒の剣の死体が動き出し、やがて骸骨の戦士(スケルトン・ウォーリア)三体が形成される。

 

「ついて来い。仕事だ。」

 

 そう言ってカジットは三体の骸骨の戦士(スケルトン・ウォーリア)を伴い、闇に姿を消す。

 

「お仲間さん、行っちゃったね〜、いや、仲間だった者、か。可哀想にねー。」

 

 その言葉にニニャは腹が煮え繰り返る程激怒する。

 ヘラヘラ笑うクレマンティーヌを睨み付ける。

 

「おーおーそんな睨まないでよ。益々興奮しちゃうから、さ!」ドシュ

 スティレットで肩に風穴を開けられるニニャ。

 

「ァグゥ!」

 骨を砕かれる痛烈な痛みがニニャを襲う。

 

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 ドシュッドシュッドシュッドシュッ

 腹、肺、足、腕へと怒涛の刺突攻撃がニニャの身体を襲う。

 耐えがたい痛みに絶えずニニャは悶絶し、叫びだしたくとも声が出ず、ひたすら痛みに耐える地獄をニニャは味わうことになる。

 

「カヒュー……カヒュー……」

 ニニャにはもう叫ぶ力も泣き喚く力も残っていない。

 喉からか細く空気を出し、倒れ伏すニニャに、血に赤く染まった猫がのしかかる。

 クレマンティーヌはスティレットを掲げ、ニニャの頭に狙いを定める。

 

「さーて、留めと行きますか……行くよー。」

 

(たす……け、て……)

 スティレットが振り下ろされる刹那、辺りの空気が突然氷のように冷たい恐怖に包まれる。

「っ!!」

 パリーン

 

 ニニャがそれを殺気だと理解した頃には、殺人女は身を翻してニニャの身体から離れ、今し方破られた窓に向かってスティレットを構えていた。

 

「今のを避けるとは、中々の手練れなようだな。」

 

(き……て……くれ…………た…………)

 意識が飛ぶ直前、窮地にやってきた英雄の声を聞き届ける。

 

 そしてニニャは意識を手放した。

 ────────

 

 薬師街を駆ける英雄、参上! 

 今行きますよ! ニニャさん! 

 

 薬師街を全力疾走して間もなく、ンフィーレア宅の窓が見えてきた。

 そのまま中に見えた金髪ボブヘアーの女目掛けて普通の短剣を投げ付ける。

 

「行くよー。っ!!」

 ヒュバッ

 ニニャから離れ、身を翻すクレマンティーヌを視認する。

 寸でで避けられたかっ……

 パリーーーン

 ドスッ

 短剣はそのまま奥の薬草保管庫らしき棚に思いっきり突き刺さる。

 

「今のを避けるとは、中々の手練れなようだな。」

 

《ワールド・チャンピオン・ミズガルズ》と《ドラコグリードソード》に手を掛けながらそう言葉を零す。

 

「テメェ、何者〜? お楽しみの邪魔すんじゃねぇよ!」

 

 顔面に憤怒の表情を浮かべながら、右手に番えていたスティレットを瞬時に突き出すクレマンティーヌ。

 残念ながら、僕からはすっごく遅くスティレットを突き出しているようにしか見えない。

 

「この程度か?」

 

 剣も使わずに中指と人差し指の指二本で顔前に来ようとしてきたスティレットの先を掴み取る。

 

「そんな訳ないでしょ〜? 燃え屑になりな!」

 ドゥウォッ

 スティレットに仕込まれていた魔法二重化(ツイン・マジック)火球(ファイヤーボール)』が僕の顔面に炸裂する。

 しかし、火属性無効化Ⅳで普通に攻撃を防ぐ。

 

「キャハ! クレマンティーヌ様に敵うもんなんざいねぇんだよ!!」

 

 しかし、まさか完全に無効化されているとは知らないクレマンティーヌは、今度は左手に持つスティレットを突き出す。

 ガッ

 それを今度は薬指と中指で掴み取る。

 

「なっ!」

 

 やっと只者では無いと判断したのか、スティレットを引いて一旦体制を立て直そうとするクレマンティーヌ。

 おいおい、お前のスティレットもうオレのモンだから。

 ということで、スティレットを掴む指に更に力を込めて、クレマンティーヌの筋力では引き抜くことが出来ないようにする。

 

「これだけか? まだまだ隠し球を持っているんだろう?」

 

 更に、クレマンティーヌを煽って見る。

 

「ば、バケモノが! これでも喰らいやがれ!」

 

 ビジジジジッ

 残る左のスティレットから『龍雷(ドラゴン・ライトニング)』を繰り出すクレマンティーヌ。

 残念、これも完全無効化されるんだよw

 まぁここで《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》で一太刀すれば終わりなんだが……ちょっと味気ないんだよなー。

 よし、ここらでちょっとイキってみるか。

 ということでクレマンティーヌが未だ引き抜こうと頑張っているスティレット二本を離してやる。

 

「モロに喰らいやがって! 死にな! 『武技 疾風走破』! 『能力向上』! 『能力超向上』! 『鋭光四連刺突』!」

 

 それを『龍雷(ドラゴン・ライトニング)』で怯んだ物と勘違いしたのか、瞬時に全力攻撃を浴びせて来るクレマンティーヌ。

 

「『次元断層』」

 

 それを普通に無効化する。

 

「何ィ?!!」

 全力の一撃を完全に無力化されたクレマンティーヌは驚きで少し体制を崩す。

 

「『竜爪』」

 

 その隙を見逃さず、間髪入れずに『竜爪』を腹部目掛けて叩き込んでおく。

 

「『不落要さ』……グバァ?! な、何故?!」

 

『竜爪』は『貫通』があるから例え『次元断層』であっても完全に防ぐことは難しいぞ。

 そして、腹を抑えて動きが大幅に鈍くなったクレマンティーヌ目掛けて更なる追撃を加える。

 

「せい!」

 

「『超回避』!」

 

 しかし、武技の効果で上手く回避されてしまったようだ。

 武技の使用で難を逃れたクレマンティーヌは、カウンターのへりに手を掛け、身体を起こす。

 尚もスティレットは構えたままだ。

 

「中々の腕前、何故罪人に身を落としたかはやはりその性格からだろうな……お前を道から外させた者達がいるのであろう?」

 

 

「あん? お前なんざに言うわけねぇだろうが! さっきから人をおちょくりやがって!」

 

 

「それは、お前の身内か、はたまた上司か、同僚か、それともその全てか。」

 

「……それでぇ? 何が言いたいんだよ!?」

 

 一拍置いて、こう告げる。

 

「お前を助けたいだけだ。お前は禁忌を犯しながらもここまでの道のりを進み、ここまで来れた。称賛に値する。しかしな、私はこのままお前を見過ごす訳には行かない。このままではお前を倒すしか道は無くなる。」

 

 クレマンティーヌは法国の重要機密を知っている。

 それに、この世界では紛れもなく強者の部類に入る為、ここで勧誘(脅迫)しておく。

 尚も引き下がる様子が無いクレマンティーヌ。

 そこで、僕は自身に無詠唱化した『竜の力(ドラゴニック・パワー)』、『上位全能力強化(グレーター・フルポテンシャル)』、『魔力増幅(マジック・ブースト)』をかけ、『剣聖のオーラⅣ』、『強者の威嚇Ⅳ』を発動し、更には《隠蔽の指輪》までも外し、本来の実力(戦闘力)を完全に露わにする。

 

 

「お、お前……いや、アンタ、そ、その力は……?」

 

 スティレットを手から落とし、驚愕に目を見張るクレマンティーヌ。

 

「最後のチャンスだ。仲間にならないか? やり直せるのは今しかない。」

 

 言外にお前にはこれしか選択肢は無いということを悟らせる。

 

「ハ、ハハ……何だよ……最初から勝てる訳ない相手だったじゃない……」

 

 と言って、その場でへたり込むクレマンティーヌ。

 

「……分かった。いや、分かりました。貴方様の提案に乗りますよ。もう、何か吹っ切れた。」

 

 目には先程までの狂気は無く、虚で絶望の光を灯している。

 この先どんな目に合うのか恐怖しているのだろう。

 

「賢明な判断だ。それと、従者になれとは一言も言っていない。気軽に接してくれて構わん。さて、」

 

 ニニャの回復の為、アイテムボックスから《アスクレピオスの杖》を取り出す。

 

「な、なんだ?! 今何処から杖取り出して……」

 

「アイテムボックスだ。」

 

 

「いや、有り得ない……そんな……」

 

 

「ニニャさんは……まだ生きている! 大治癒(ヒール)!」

 

 高位の治癒魔法を使い、ニニャの傷を癒す。

 

「もう少しすれば目覚めるだろう。さて、クレマンティーヌよ。」

 

 

「な、なんで私の名前を……指名手配されてるから当然っちゃー当然か。」

 

 

「お前の相方の元へ戻れ。後で回収しに行く。私がいるというのに、エ・ランテル内に『死の螺旋』など愚の骨頂。事が始まる前に何とか事態を収めたいところだが……」

 

「それは無理だねぇ〜多分もうカジっちゃん達儀式開始しちゃってると思うよ〜」

 

 

「ふむ、では仲間を招集しなければな。おっと、噂をすれば丁度やって来たみたいだ。」

 

 店の扉が慌ただしく開かれる。

 2人の冒険者が姿を現す。

 

「大丈夫ですか! リューシさ──ん?」

 ナーベと、

 

「リューシさんの仇!」

 モモンだ。

 

「モモン、まだ死んでないから。双方、その杖を収めよ。」

 

 

「「はい。」」

 

 

「もしかして、アンタ、プレイヤー?」

 ちょ──────!!!!!!!!! ここでいきなりかよ!! 速いゾォ?! 爆弾発言にも程があるぞ!!! 

 

 刹那、アインズさんがスカーフを外し(そういやもう1日経ってたなぁ)、本来の死の支配者(オーバーロード)の姿に戻る。

 

 そして、『死のオーラⅠ』を発しながらクレマンティーヌに詰め寄る。

 

「その言葉、何処で聞いた?」

 

「答えなさいウジ虫」

 ナーベも椎体する。

 

「は、は、話します! 話しますから! 命だけは!」

「さっさと全て、な。三分間、猶予をやろう。」

「『ぷれいやー』という言葉はスレイン法国民のクソ野郎共が敬愛する六大神がこう呼ばれていたということを……」

 ──(クレマン法国の機密暴露中)──

 

 

 その後、クレマンティーヌから法国の大まかな全貌をあらかた聞き出した。

 法国の国風、神官長達、特殊部隊名、その強さ、さらには法国内にいる神人のこと、国の保有戦力、プレイヤーと思わしき六大神のことまで洗いざらい。

 多分法国の漆黒聖典メンバーのクレマン兄がこの場に居たら躊躇いなくクレマンティーヌを塵にしていただろう。

 隊長ならクレマンティーヌを細胞一つ残らず消滅していただろう。

 最高神官長ならクレマンティーヌの存在自体を人類史から消していただろう。

 

 

「成る程、スレイン法国か……そして、お前の読みは当たっている。何を隠そう、私達はプレイヤーだ。このことは口外するな。もし外部の者達に暴露した暁には……地獄を見せてやろう。」

 

 もちろん、暴露すんなよなぁ? クレマンティーヌゥ? ニコッ

 

 

「ひぃっ! し、ししししな……し、し、しませんから大丈夫です!」

 

 

「機密をここまで知られた以上、君は永久に我等の所属となる。違反さえしなければ待遇は良いぞー。まぁ、違反さえしなければな。」

 

 まぁ、違反した瞬間多分ナザリック勢から()()()()()()()()()()()()()()()()()だから。

 

「」

 

 遂にクレマンティーヌの精神が瓦解しちゃったようだ。

 泡を口角から飛ばしながら失禁してしまっている。

 人としてやってはいけないことまでしながら。

 クレマンティーヌのいた場所が後日四日間程アンモニア臭香るヒノキ板になっていたことから察せ。

 

 

「汚らしいゴミムシが……アインズ様、このような虫ケラ、直ちに処分致します。」

「待て、此奴は重要参考人だ。ナザリックに連行するつもりだからそのようにしろ。」

「……しかし……」

 

 

「なに、ナーベ、この女が汚らしい? ナーベ、それは人間が綺麗な者達だと思っているだけだよ。逆に考えるんだ。『汚いのが人間だ』と。」

 

 まぁ、クレマンに関しては擁護出来ないので多少の毒が入ったけど、ナーベどんな反応をするかな? 

 

「は、はぁ……畏まりました。確かに人間は下賤な種族。ゴミにはやはりこのような姿が一番似合ってますね。」

 

 あ、やっぱナーベダメやん……

 人間の団結力を侮るなと再三言ったというのに……

 ナーベ……お前には失望したよ……

 まぁクレマンに関してはまぁ仕方ないかな? 

 甘んじて受け入れよ。

 

「……ぅぅ」

 

 カウンター前辺りからくぐもった声が聞こえてきた。

 先程までそこで倒れていたニニャの者だと脳が判断する。

 

「!? ニニャさん? ニニャさんが意識を取り戻したようだ!」

 

 ニニャちゃん息を吹き返したようで良かった……と思いつつ、ニニャに声を掛けて意識があるか確認する。

 

「大丈夫ですか? ニニャさん。」

 

 慌ててスカーフを装着したアインズことモモンも次いでニニャへと声を掛ける。

 

「……ぁあ、リューシさん……だ、大丈夫ですか……?」

 

 ニニャの意識は一応覚醒したようだ。

 

「はい。クレマンティーヌと名乗る賊は私達が退治しました。ですが、他のメンバーの方々の行方が……」

 

 苦労人ペテルくんとチャラルットとである! が居ないZOY☆

 

「……ペテル……ルクルット……ダイン……」

 

 えっ……もしかして間に合わなかったのか? 

 

「取り敢えずまだ安静にしておいてください。彼等は私が見つけ出します。ンフィーレアさんは?」

 

 

「拐われました……禿頭の……カジッチャン……とかいう死霊使い(ネクロマンサー)に……」

 

 カジッチャンめ! 許さん! 

 じゃない! ニニャ、それ名前間違ってるからな? 

 

「もう一人の仲間が……奴等は何をする気なんだ……」

 

 

「わ、分かりません……何も言わずに逃げ去りました……リューシさん……お願いしたいことが……」

 

 

「うん?」

 

 

「アンデッド化された僕以外のメンバーを……なるべく直ぐに倒してくれませんか?」

 

 ペテル……ルクルット……ダイン……お前ら……すまねぇ……

 漆黒の剣全員を仲間にすることが実質不可能になってしまった……痛恨のミスだ……! 

 

「アンデッドに……なんたる事……分かりました、ニニャさん。アンデッド化を直すことは今の私達には出来ないですが、出来るだけ直ぐに倒すようにしましょう。それと、ニニャさん。そこの賊はどうやら悪魔に取り憑かれて今回の凶行に出たと見られます。元凶の悪魔を排除したものの、精神に変容をきたしているため、私達がカウンセリングすることにしました。」

 

 クレマンティーヌを間接的に仲間にする旨を伝える。

 クレマンティーヌは悪魔によって狂ってしまった悲劇の女の子だよーだから本人の意思じゃなくて悪魔に唆されてやったコトダヨーホントダヨー。

 

「あ、悪魔に取り憑かれていた!?」

 

 あ、信じてくれた様子。

 案外悪魔に操られた設定は良いかもしれないな。

 ゲヘナ戦の切っ掛けにもなり得るし。

 どうせデミえもんがナザリックの物資補給の為に提案して来るだろうし。

 

「彼女もまた、被害者だったということです。元凶はやはり、秘密結社と結託し、エ・ランテルを混乱状態に持ち込んで自領の評判を上げようという貴族でしょう。」

 

 本当は法国の失態だったと思うが、クレマンティーヌを仲間にする以上、ニニャから恨まれる訳にも行かない為、ここは敢えて貴族を引き合いに出す。

 

「貴族……絶対許さない……」

 

 ニニャの目に深い憎悪と殺意が宿る。

 貴族キラーニニャ、貴族絶対殺すマンに昇格。

 いや、ニニャは女だから貴族絶対殺すウーマンか? 

 

「とにかく、そのンフィーレア氏を攫った連中を捜索しなければなりません。まぁ、そいつは死霊使い。負のエネルギーを集める為、恐らくはこの街の共同墓地なる所にいるでしょう。我々はそれを追います。ニニャさんは傷がまだ完全に癒えていない為、安静にしていてください。」

 

 本当は既に共同墓地で死の螺旋が行われることは知っていたが、適当に理由をこじ付け、最初っから共同墓地へと向かう方針に誘導した。

 しかし、流石にニニャを戦闘に参加させる訳には行かない。

 そこら辺も釘打っておく。

 

「わ……私も連れて行ってください……役に少しでも立ちたいです……」

 

 

「今回はアンデッドとの対決が予想されます。最悪、あなたまでアンデッド化されてしまう可能性があり、人数はなるべく少数にしたいということもあり、連れては行けません。」

 

 

「……私が弱いからですか?」

 

 

「な!?」

 いきなり何を言い出すんだニニャ。

 そういう問題では……

 そういう問題だったわ。

 

「やっぱり……私が弱いのがいけないんですよね? ……お願いします! 力をボクにください!」

 

『ニニャさんが少し怖い』

 

『仲間を姉と同じく一夜で失い、また貴族の策略によって一人残されれば誰だって狂うと思いますが……』

 

『どうしましょう、手元には《堕落の種子》とかエンシェント・ワンさんから貰った1ダース分の《カインアベルの血塊》がありますが……』

 

『英雄のイメージが崩壊するので却下で。これ使いましょう、《昇天の羽》。余る程あるし、天使なら英雄っぽいと思いますし良いかと。』

 

『んじゃそれで。』

 

「ニニャさん、これを。」

 

「……何……ですか? ……この羽は……」

 

 

「これは天使になる為に必要なアイテムです。」

「て、天使?!」

 

「しかし、貴方はここで人間を辞める覚悟はありますか?」

 

 ここでNOと言われると困っちゃうからやめてね☆

 

「……姉さんを助ける為なら……何だってします!」

 

 流石ニニャちゃん! 分かっているね! 

 

「では、これを背中に。」

 

 ニニャの背中に《昇天の羽》を当てる。

 瞬間、《昇天の羽》はニニャの背中に吸収され、ニニャの体に変容が起こる。

 まず背中から羽毛の生えた白い羽が二対生え、身体から聖属性のオーラが発っせられる。

 服が白い布衣のような物に入れ替わり、元の服がその場に落ちる。

 巻いていたサラシが落ちた影響か、胸の膨らみが現れ、顔は完全に女性然となり、髪が伸びて肩まで掛かる金髪に変わる。

 しかし、青い瞳だけは変わらず、そのままで残った。

 

「え!? ニニャさんって女だったんですか!?」

 

 驚くモモン。

 まだ気付いてなかったのかよ……

 

「やはり、か。男装していたのは趣味かと思い、聞いていませんでしたが。」

 

 

「いえ、趣味ではなく、攫われた姉の捜索には男の方が優位かと思いまして。それに、娼館へ客として潜入し、姉を探すこともできますからね。」

 

 

「そうだったのですか。把握です。貴方の秘密を知ってしまったからには、こちらも秘密を明かさねばなりませんね。」

 

 そう言って、手を竜形態にする。

 ニニャは驚いて目を見張る。

 モモンとナーベは更に驚いた様子だったが、知ったことではない。

 

「私は竜人という種族で、実際は人間ではありません。今まで隠していたのは、人間は仲間意識が強く、他種族の受け入れがし難い種族だと知っていたからです。申し訳ありませんでした。」

 

 

「えっ、あ、いや、えっ?」

 

 

「私は悪しき存在を公平に裁く為に旅をしています。そして、人間と他種族の共存共栄を成すことが私の夢の一つです。」

 もう一つ、最大の夢が残っているけどな。

 

 

「一緒に来てくれませんか? ニニャさん。」

 手を元に戻しながらニニャの目を見、そう言う僕。

 告白ではないからな! 

 

「……はい。少し事態が読み込めていませんが、あなた方について行きます。」

 

 

「ありがとう。」

 

『ちょっと待てーい!』

 何だよ今いい所なのに……

 

『アンタ何勝手にニニャさん仲間に引き入れてんだ!』

 

『今のニニャさんは種族が人間から天使に変更しているから受け入れ条件に該当しますし、生まれながらの異能(タレント)も強力ですから有益な人材かと。あとナザリックには招かないようにすれば良いと。』

 

 

『むむぅ……まぁ良いでしょう。元々ニニャさんを仲間にすることは決定事項だったですし。』

 

 臨時政府在席4人中2人(自分含めて)の同意も取れたので可決! 

 

「これからよろしく頼む。ニニャさん。」

 

 

「はい。あと、ニニャは偽名で、私の本名はベルネジーニャ・ベイロンです。でも、ニニャと方が覚え易いと思うので、ニニャとこれからは呼んでください。」

 

 

「分かった。あと、仲間になったから、私達に敬語は不要。気安く呼んでくれ。」

 

 

「改めてよろしくねー! ニニャさん。さん付けで定着しちゃったのでこれで良いよね?」

 

「……精々足を引っ張らないようにね。」

 

 

「はい!」

 

 




ニニャの扱い、ちょっと困りましたね。
ナザリックに吸収することにしましたけど。
ちなみにニニャは現状下僕のちょっと上の扱いのつもりです。
小悪魔ニニャにしたかった…
ま、いっか!


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18.死の螺旋

ニニャはナザリック&竜星陣営に引き込まれてしまった!







 クレマンティーヌが目を覚ます前、ニニャが覚えている襲撃犯の情報を探っている所、

 ンフィーレアの祖母、リイジー・バレアレが材料の買い出しから帰って来た。

 

「ンフィーレア? ンフィーレアやーーい! ……あっ、お前さんら、ンフィーレアは何処に」

 

 ンフィーレアが居ないことを怪訝に思ったリイジーは、店内の奥にいたリューシ達に彼の居場所を尋ねる。

 

(彼女には酷かも知れないが、言わなくては先に進めないな。)

「落ち着いて聞いてください、リイジーさん。貴方のお孫さんであり、私達の依頼主、ンフィーレアさんがフード姿の何者かに攫われました。」

 

「な、何じゃと!?」

 驚愕するリイジー。

 

「そこで伸びている賊ともう1人、フードを目深に被ったやつれた顔の怪しい男に連れ去られた模様です。目的は恐らくンフィーレアさんの生まれながらの異能(タレント)の確保でしょう。ニニャさんはコイツとの戦闘で死にかけ、他のメンバーが殺害され、アンデッドにされたそうなのです。彼女は奇跡的に一命を取り止めましたが……」

 

「な、なんと……ンフィーレアは!? ンフィーレアは無事なのかぇ!!」

 

 

「アンデッドにはされていなかったようなのですが、何か悪いことに巻き込まれた可能性があります。」

 

「ひぃ! ンフィーレア! 一体どうすれば……そうだ、お主ら、ンフィーレアを助けてくれんか? 報酬は何でも出す! だから助けて欲しいのじゃ! ンフィーレアは大切な孫なんじゃ!」

 リィジーは必死の形相で私達に懇願する。

 

「落ち着いてください、リイジーさん。大丈夫です。元々助けに行く予定でしたから。」

 

「ほ、本当か!」

 

「ええ、ですが、その代償として、貴女はンフィーレア君と共にカルネ村に行き、そこでポーションの開発をして欲しいということ。受けてくれませんか?」

 ここで本題をぶつけてみる。ごねる様だったらンフィーレアの救出は破棄とすれば良い。

 

「ああ、分かった。分かったから早くンフィーレアを!」

 

(計画通り……)

「契約成立ですね。実は、犯人の居所の目星は付いています。お任せを。」

 

 

「た、頼むぞ……」

 

 

「モモン、ナーベ、ニニャ。人助けに行くぞ。」

 

 

「了解です!」「分かりました。」「えーとはい!」

 

「では、リイジーさん、絶対にここから動かないよう。契約主である貴女まで攫われる訳には行きませんから。」

 

 そう言って夜の薬師街を走り去るリューシ。

 

「殿〜何で置いていったでござるか〜! ちょちょちょ、今度は何処に行くのでござるよ!」

 

 外でお留守番を喰らっていたハムスケが慌ててリューシのすぐ後を尾ける。

 後をモモン、クレマンティーヌを担いでいるナーベ、ニニャが追従する。

 目指す先はエ・ランテル 共同墓地。

 アンデッド襲撃を伝える警鐘に向かい、一行は突き進んでいく。

 


 

 〜20minutes ago〜

【エ・ランテル 共同墓地 入り口】

 

 王国下等級兵ディアラウス・レオリアン、クレッサー・ドリュシュ両名は共同墓地の警備に当たっていた。

 二人共、共同墓地警備担当者の()()()()により、運悪く代理の警備役を務めていた。

 彼等の仕事は墓地への死体不法投棄を防ぐこと、アンデッド襲撃を未然に伝えること、門の開閉等である。

 ぶっちゃけ、街中の警備の方が断然楽だった。

 その為、二人は終始上司への恨み言を言うことを片時たりとも絶やさなかった。

 あと、5日待てばこの退屈で集中力が削れる職場から元に戻れる。

 そう思い、2人はこの仕事を全うすることが出来ていた。

 

 

 それは、時計の針が9時を回り、人通りも閑散としてきた任期2日目の夜のこと。

 ディアラウスが今、少しぐらい居眠りしたってバレないやろ、と門前で仮眠を取ろうとした時のことだった。

 

「ん? 何か聞こえないか?」

 

「あぁ、何か呻き声みたいだな。っ! まさか!」

 

 二人は慌てて門越しに共同墓地内部を覗き見る。

 いつの間に湧いて出て来ていたのか、共同墓地を封鎖している門の500m先にまで死者の大軍勢が押し寄せていた。

 

「非常事態だ! 早くパナソレイ都市長にこのことを報告せよ!」

 

「分かった!」

 クレッサーは急いで走り出す。

 行き先は都市長の別邸、そして冒険者組合だ。

 

 クレッサーの後ろ姿を見送ったディアラウスは、再び共同墓地内部のアンデッドを一瞥し、門の金具をしっかりと固定する。

 そして一人援軍が来るまでアンデッド達と対峙するのだった。

 

「ハハ、何やってんだろ、俺。クレッサーを身代わりにすることも出来たじゃないか。やっぱ昔っから俺はお人好しなんだなぁ、此処は通さねぇよ。アンデッド共が。」

 

 壁の上からアンデッド達に備え付けの槍で突いたり、習ってもいなかった弓矢で射掛けたりしたものの、やがて内臓の卵(モーガン・エッグ)の数が増え、こちらに内臓をぶち撒けるようになり、慌てて退避した。

 10分も経てば、アンデッドが扉に敷き詰められ、仕切りに扉を叩いて来ていた。

 直に扉も突破されてしまうだろう。

 金具を押さえ、扉が破られないように抑えていたものの、扉の限界が近づいていることを察知し、扉の前に移動した。

 あと三分もしないうちに門が破られ、自分はアンデッド達に食い殺されるだろう。

 そう悟り、静かに涙を目尻に浮かばせつつ、ディアラウスは剣を握りしめる。

 

「来やがれ死人共、1人でも多く成仏させてやる。」

 

 遂に扉が破られ、中からアンデッドが雪崩の如く湧き出てくる。

 ディアラウスは目を瞑り、剣を構えて単身、突撃する。

 

「デリィャァアアアアアアアアアアア!」

 

 ディアラウスに動死体(ゾンビ)の一体が襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇敢な精兵よ。良くここまで粘った。後は任せよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 再びディアラウスが目を開ければ、目の前にあった筈の不死者の群勢が一体残らず消え失せていた。

 

「……えっ?」

 

 

「分かる? 魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)は魔法の効果を広範囲に及ばせるようにする付加魔法。イメージは……意識を敵全員に分散させるような感じ。」

 

「成る程……参考になります、ナーベさん。」

 

「ちぇっ、つまんないの〜」

 

「や、やっぱコイツらおかしい……」

 

 

 助けてくれた命の恩人達は皆、何処か変わっていた。

「あ、あなた方は……?」

 

 思わず訊いてしまうディアラウス。

 

「ん? あぁ、そう言えばチーム名をまだ決めていなかったな。そうだな……『白妙の漆黒』、だ。」

 

 

「『白妙の、漆黒』……」

 

 

「では、行ってくる。」

 

 恩人達は墓地の中へと足を踏み入れていく。

 

「な! 墓地の中は危険です! 一旦増援を待ちましょう!」

 

 命を助けてくれた彼等を殺す訳には行かない。必死に止めるディアラウス。

 

「ご忠告感謝する。しかし、奴等は我々だけで十分だ。行くぞ。」

「はい! (は、はいい!)」

 

 ディアラウスは彼等を見送るしか無かった。

 しばらく茫然としていると、帰って来たクレッサーが彼の肩を叩く。

「だ、大丈夫か?!」

 

 

「あぁ、大丈夫だ。英雄達が救ってくれたよ……」

 

 

「英雄……? 十三英雄か?」からかい調子に言うクレッサー。

 コイツはどんな時でも的確にふざける事が出来る。

 

 

「十三英雄じゃねぇよ。あんな伝承にしか生きていない輩ではなく、生きる伝説と出会ったんだ。『白妙の漆黒』にな。」

 

 

「はっ! 『白妙の漆黒』か。訊いた事ねぇが、良いチーム名だなぁ! 病院行くか?」

 

「なっ! 俺は正常だ!」

 

 この後、クレッサーとディアラウスは永らくエ・ランテルの共同墓地の警備役として活動する。

 様々な動乱を乗り越え、その長い旅の道中、彼等は結婚し、やがて老いて余生をエ・ランテル内の一角にある平凡な家で過ごすこととなる。

 そして後に、ディアラウスは孫に、こう語るのであった。

「儂はなぁ、大英雄様に勇敢な精兵と呼んでもらったんじゃよ。あの時は墓地を一人で守っとったなぁ」

 

 

 ────────

 

 

「辺りの雑魚はあらかた片付けました。」

 

 骨のハゲワシ(ボーン・ヴァルチャー)集合する死体の巨人(ネクロスウォーム・ジャイアント)血肉の大男(ブラッドミール・ハルク)内臓の卵(モーガン・エッグ)骸骨(スケルトン)動死体(ゾンビ)等をナーベとニニャ・ハムスケが協力して排除し、二十分足らずで殲滅を完了させる。

 

「ご苦労だ、ナーベ、ニニャ、ハムスケ。」

 

 

「何故か、この姿になってから『神聖光(ホーリーライト)』が使えるようになったのですが……」

 

 

「むむ? 良く見ればお主姿がちょっと違うでござるな。お洒落という物でござるか?」

 

 

「いや、これは天使化して……」

 

 

「むむ?! お主もしかして、雌であったでござるか?!」

 

 

「今頃ですか! 共同墓地入る前に気付いてくださいよ!」

 

 

「仕方ないでござろう……だってそれがしは人間とは無縁の生活を送っていたのでござるよ。」

 

 

「あ〜そっか、ハムスケさんは魔獣だから、人間の感性みたいなのは知らない方でしたね。」

 

 

「何となく雌か雄かは分かる筈だったのでござるが……すまないでござる。」

 

 ニニャとハムスケは仲良くなったようだ。

 モモンが少し微笑ましく思ったのか軽く笑みを浮かべている。

 しかし、今は戦場。

 

「モモン、感知魔法を。」

 

 

「もう使ってますよ。あっ! あそこら辺に人の密集地が!」

 

 

「ほう。今の共同墓地中心部にいるというのはかなり怪しい。冒険者達でさえ共同墓地入り口で禁足を喰らっているようだというのに。やはり、そいつ等は異変の主犯格の可能性が高いな。片付けに行くか。」

 

(十中八九カジット達だろうけど)

 

 モモンが指差す方向には古びた霊廟があった。霊廟前でフード姿の謎の集団がンフィーレア少年を囲んで良くわからない事を呟き、禍々しい魔法陣を呼び出している。

 

「こんばんは、今回の騒動の主犯達よ。」

 

 

 フード姿の集団が一斉に口を閉じ、こちらに顔を向ける。

 その中の一人がフードを取り、立派な坊主頭を晒す。

 ズーラーノーン十二高弟が一人、カジット・デイル・バダンテールだ。

 

「ほぅ、良くぞ此処まで辿り着けた物だ。して、貴様等は何者だ?」

 

 紫色の禍々しい水晶を片手に、リューシ達を睨み付けるカジット。

 

「私はダニヤ・リューシと言う者。貴様等の共犯者は私が倒した。残るは貴様等だけだ。」

 

 そう言い放ちつつ、クレマンティーヌをフード姿の男達に良く見えるように移動するリューシ。

 

「クレマンティーヌ、こっちへ来い。お前はこっち側だろうに。」

 

 カジットは然程驚かず、逆にクレマンティーヌを引き戻しに掛かる。

 

「む……無理……勝てっこない……勝算など微塵もない……」

 

 しかし、リューシの圧倒的な力を目にしたクレマンティーヌに、もう彼等への反抗の意思は無かった。

 

「骨抜きにされたか、まぁ良い。当初の予定通りだ。お前達5人と1匹、儂等だけで十分だ。数の差を分らせてやろう。」

 

 そして、カジットは不気味な笑い声を上げる。

 他の者達もカジットに次いでせせら笑いを始める。

 

「大口叩いといて、大丈夫かな?」

 

 カジット達に警告しつつ、剣を構えるリューシ。

 彼に合わせて他のメンバーも戦闘態勢に入る。

 

「ふん! 儂が積み上げて来た物をここでお前達に壊される訳には行かんからなぁ! 魔法二重化(ツイン・マジック)第四位階死者召喚(サモン・アンデッド・4th)』!」

 

 カジットがアンデッド召喚魔法を放つ。

 たちまち、地面から4体の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)死の騎士(デス・ナイト)一体が召喚される。

 

「カカカッ! 素晴らしきかな! ッグッ、反動はちと痛いが、魔法への完全耐性を持つ骨の竜(スケルトル・ドラゴン)と、圧倒的な剣術、耐久、機動性を兼ね備えた最強のアンデッド! 死の騎士(デス・ナイト)! かのガゼフ・ストロノーフでやっとのこの怪物に加えて4体の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)だ! どうだぁ? 絶望したかぁ?」

 

 死の宝珠の色が少し霞み、カジットが吐血する。

 しかし、召喚した戦力は王国兵を一部除いて皆殺しに出来得る物。

 

「哀れ、ナーベ、モモン。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を頼んだ。圧倒的な火力という物を見せてやれ。」

 

 しかし、リューシ達にとってはザコモン。

 全く臆する事なく召喚されたモンスターの排除を指示する。

 

「はい。」「はーい。」

 

 

「ニニャと私であの死の騎士(デス・ナイト)を倒す。」

 

 

「や、ヤバいですよね? あのアンデッド。」

 

 合計レベルの低いニニャにとっては強敵。

 ニニャは少し萎縮している。

 

「大丈夫だ。彼奴は雑魚だ。行くぞ! 援護を頼む!」

 

「は、はいぃ!」

 

 そう言って走り出すリューシ。

 真っ直ぐ死の騎士に向かい、スキルを発動する。

 

「『次元断切(ワールド・ブレイク)』」

 

 刹那、空間が二つに割れ、死の騎士(デス・ナイト)とその背後にいた二体の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に直撃する。

 死の騎士(デス・ナイト)は性質で一発耐えれたようだが、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)二体は跡形も無く消滅した。

 

「ば、馬鹿な! ……い、一撃だと!!」

 

 残る骨の竜(スケリトル・ドラゴン)二体の前に立つナーベ。

 モモンことアインズは伝言(メッセージ)を使い、こうナーベに伝える。

 

『ナーベラル・ガンマ、第七位階の使用を許可する。』

 

 手加減モード序盤から終了のお知らせ。

 最初から全力とは、カジッちゃんドンマイ! 

 

「畏まりました。速時、眼前の敵を排除致します。」

 

 瞬時に天高く舞い上がり、構えのポーズを取るナーベ。

 

「最後に一つ、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は第六位階までの魔法のみ無効にしますが、それ以上は耐性がありません。『連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)』」

 

 ナーベが手を打ち合わせ、魔法を詠唱する。ナーベの両手の間から眩い白い雷撃が発生し、弧を描きながら雷撃が骨の竜(スケリトル・ドラゴン)二体を襲う。辺りが白く光り、直撃した骨の竜(スケリトル・ドラゴン)達は瞬時に塵と化す。

 

「ば、バカな……あ、ありえん……」

 

 

「『神聖光(ホーリー・ライト)』、これで召喚したアンデッドは全て片付けましたよ。」

 

 HP1の死の騎士(デス・ナイト)に留めを刺したニニャが此方に来る。

 

「ご苦労。さて、次はお前たちだが……」

 

 

「ふ、ふざけるな! 儂の5年間が……儂が5年掛けて作り上げた努力の結晶を、こんなところで失う訳には……ぅっくぅうううう!」

 世にも恐ろしい般若の如く形相を見せるカジット。

 しきりに頭皮を掻きむしり、頭から血が滲み出ている。

 

「カ、カジット様……」

 

 その様子を見て恐怖で体が震える他の弟子達。

 

「こうなったら……《死の宝珠》よ! こやつ等の生命を取り込むのだ!」

 

《死の宝珠》から紫色のエナジーが湧き出る。

 次の瞬間には、周囲の者達へ紫の怪光線が襲い掛かっていた。

 

「な、や、やめゥアアアァァァァ」

 

 次々に弟子達が干からび、灰となって消える。弟子達の青白い霊魂が《死の宝珠》の中に消え、後には着用者が消え、力無く落ちるローブの山のみ。

《死の宝珠》を更に高く掲げるカジット。

 周囲にいたフード姿の者達は全員《死の宝珠》に吸収されてしまったようだ。

 

「さぁ、これで滅びるが良い! 『第六位階死者召喚(サモン・アンデッド・6th)』!」

 

 次の瞬間、墓地の地中から、魂喰らい(ソウル・イーター)が這い出てくる。

 魂喰らい(ソウル・イーター)は即死効果を持つオーラを周囲に放ち始めた。

 リューシは合計レベルが低いニニャを咄嗟に庇うが、オーラは物体ではない為にニニャへと漆黒のオーラが迫る。

 しかし、ニニャの種族は天使。

 アンデッドの即死スキルを無効化する『即死耐性Ⅱ』がそもそも備わっていた為、ニニャに即死効果は反映されなかった。

 

「ふ、フフフ、フハハハハ! どうだ! 今度こそ貴様等も終わりだ! ビーストマンの都市をたった三体で壊滅に追いやったアンデッドだ! 到底お前たちが敵う相手では無かろう! 死ねぇい!」

 

 カジットが高笑いする。

 だが、リューシは魂喰らい(ソウル・イーター)との距離を詰めると、間髪入れずに攻撃スキルを叩き込む。

 

「『竜爪』」

 

 一撃。

 カジットが命懸けで召喚したアンデッド、魂喰らい(ソウル・イーター)は首の根本からザックリと斬られ、抵抗する間も無く消えていった。

 

「これで最後か?」

 

 剣を鞘に収めつつ、リューシはカジットへと問い掛ける。

 

「ぁ、ぁぇ? ……う、嘘だ……ありえん……伝説が……伝説上の魔物を召喚出来たというのに……一……撃……だと? ……」

 

 眼前で起きたことを俄かに受け止めることが出来ず、茫然自失となるカジット。

 

魔法位階上昇化(ブーステッドマジック)束縛(ホールド)』、そこで大人しくしているが良い。」

 魔法位階を上げた捕縛呪文でカジットを拘束する。

 しかし、カジットは呪文が無くとも立つ気力すら無い状態にまで陥っていた。

 

「念の為モモンはこの男の監視をしていてくれ。」

 

「りょーかい。」

 

 

「さて、ンフィーレアさんだが……」

 

 フードの山の中央にほぼ全裸の状態で立たされているンフィーレア。

 ニニャは少し顔を赤らめてそっぽを向く。

 ンフィーレアの両眼は潰されており、血がまだ乾き切っていなかった。

 額には大きな黒い宝石が嵌め込まれ、蜘蛛糸のような細長い金属糸に小さな宝石が規則的に付いている美しいサークレットが装備されている。

 

「『道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)』……これは、《叡者の額冠(えいじゃのがっかん)》という呪いのアイテムか。そのまま取ると着用者の精神及び自我の瓦解により着用者発狂……『上位道具破壊(グレーター・ブレイクアイテム)』」

 

叡者の額冠(えいじゃのがっかん)》が粉々に破壊されると同時に、ンフィーレアの身体が前に倒れる。

 それを右腕で受け止めつつ、リューシは低位の回復魔法をンフィーレアにかける。

 

「これでンフィーレアさんは無事に救出出来た。後はこの異変の主犯を冒険者組合まで連行するのみ。」

 

 

「何かあっけなく終わっちゃいましたね……」

 

 ニニャがそう呟く。

 

「まだ終わりではない。まだ発生したアンデッドの討伐が残っている。」

 

「残党狩りも大切よ。」

 

「あ、分かりました。」

 

 ナーベがニニャに優しく教える。

 人間では無くなった為か、ナーベのニニャへの扱いが軟化したような気がする。

 

「リューシさん。」

 

 

「何だ? モモン。」

 

 

「此処に変なアイテムが。」

 

 いつの間にか、カジットが持っていた《死の宝珠》を片手に持つモモン。

 

『これは……もしかしてインテリジェンスアイテムですかね。』

 

 

『良く分かりましたね。これは紛れもなくインテリジェンスアイテムです。さっきから脳内にこの水晶が話しかけてきて煩いんですが。』

 

 

『何と言っているんですか?』

 

 

『偉大なる死の王よ、貴方に生涯の忠誠と敬意を誓います、って言って止まないんですよ。』

 

 

『テキトーにハムスケ辺りに与えたら?』

 

 

『そうしますか。』

 

 

「ハムスケ〜」

 

 

「何でござるか? 若殿?」

 

 

「これ上げる!」

 

 無造作にハムスケに《死の宝珠》を投げ与えるモモン。

 

「わわ! パシッと」

 

 それを素早くキャッチするハムスケ。

 

「若殿〜コヤツ若殿の元に戻せって言って煩いのでござるよー。」

 

 と言いつつ、ハムスケは自分の頬袋に《死の宝珠》を仕舞い込む。《死の宝珠》はハムスケの頬袋の右と左をゴロゴロ行ったり来たりした後、右の頬袋に収まったようだ。

 

「あ、声がしなくなったでござる。」

 

 

「モモン、他に目ぼしい物はあったか?」

 

 

「この男からは他には何も見つけられませんでした。」

 

 

「ふむ、取り敢えず回収作業は終了か。それでは、残っているアンデッドの駆除の後、リイジーさんの元に向かうぞ。」

 

「はい! あっでも戦闘痕は消しておいた方が……」

 

「私達の戦闘の裏付けになるから残しておくのだ。」

 

 遺跡から離れ、街の方向に戻る一行。

 途中でベロテ率いる冒険者チーム『天狼』を疫病爆撃種(ブレイグ・ボンバー)内臓の卵(オーガン・エッグ)の集団から助け、多くのアンデッドを倒し進んで行った。

 

 墓地の入り口に『不死者忌避(アンデス・アヴォイダンス)』を掛け、『神の御旗の下に(アンダー・ディヴァイン・フラグ)』、『剣聖のオーラⅠ』を使用し、アンデッド襲撃を他の冒険者達と食い止めた。

 直に全てのアンデッドが主にリューシによって狩り尽くされ、アンデッド騒動は幕を閉じる。

 

 その後、薬師街に戻り、リイジー・バレアレにンフィーレアを引き渡すと、彼女は泣き叫びながら喜んだ。

 リイジーは何度も何度も頭を下げながら対価はちゃんと返すと約束してくれた。

 その後、冒険者組合へ首謀者カジットの身柄を引き渡し、一件落着、と、行けば良かったのだが……

 

 

【冒険者組合 三番会議室】

 

 主にミスリル級以上の実力を持つ者達が招集されるこの会議室内で、冒険者組合組合長プルトン・アインザックと、『天狼』リーダー ベロテ、『虹』リーダー モックナック、そしてリューシ達『白妙の漆黒』が集合していた。

 

 招集を掛けたプルトン・アインザックが先に口を開く。

 

「今回のアンデッド騒動、誠に大義であった。冒険者諸君。さて、報告によれば君達の活躍により、此度の騒動が収束に向かったと聞いている。場合によっては、昇格も検討する次第だ。さて、まず初めに『白妙の漆黒』のリーダー、リューシ君に聞きたいことがある。」

 

「何でしょうか、組合長殿。」

 

「うむ、報告によれば、君達は5人と1匹で伝説級アンデッド、死の騎士(デス・ナイト)他、4匹分の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を倒したことが残された残骸で判明した。そして、内二体は魔法による焼失と見られる、と。これは本当なのかね?」

 

 

「はい。私達がやりました。」

 

 

「そのことは『天狼』のベロテ君の疫病爆撃種(ブレイグ・ボンバー)内臓の卵(オーガン・エッグ)撃破の証言と、『虹』のモックナック君の墓地突撃前に見た謎の魔法によるものと見られる雷撃と轟音、そして残骸の発見という証言の二つの状況証拠から、君達は相当な実力を持っていると判断した次第だ。本当はオリハルコン、いや、アダマンタイト級と見做しても良いと思うが、何せ銅級からアダマンタイト級は異例中の異例なのでな。」

 

 そう言ってミスリル級を示す冒険者プレートを人数分配布するアインザック。

 

「一先ずはこれで我慢してくれ。これからの活躍に期待する。」

 

 

「特例の昇格をお認め頂いただけで満足です。」

 

 

「では、すまんな、ベロテ君、モックナック君、引き止めてしまって。リューシ君達も今回の件で疲れているだろう。君達はゆっくり休んで欲しい。そして、この街の平和を守ってくれたことに感謝する。」

 

 アインザックとベロテ、モックナック、リューシは其々固い握手を交わし、リューシ達は冒険者組合を後にするのであった。

 

 

 

『いや〜疲れましたね、アインズさん。』

 

 

『シャボンヌさん、貴方、漆黒の剣とンフィーレア君が襲われること知ってたんですか?』

 

 

『ん? あぁ実はな、あの男、カジット・デイル・バダンテールと弟子の話を小耳に挟んでな。この街の薬師の息子を探せ、って命令を出していたので、もしかしたらンフィーレア君が攫われるかも、て直感が囁いたんです。結果的に良い方に転んでよかったですが。』

 

 本当ははいと答えたいところだが、面倒なことになるので咄嗟に誤魔化す。

 

『あ、あれ直感だったのか。てゆうかそういう事は前もって言って欲しかったですよ!』

 

『ハムスターの背中に乗せるとかいう罰が無ければ話せていたかもしれません。』

 

『いや、あれは無断でカルネ村改造したアンタの自業自得だろ!』

 

(ん? 何のことかな? w)

 

「そうだ。ニニャ、ハムスケ、我々の居城に案内したいと思う。」

 

『あっ! ちょっと! 逃げたな!』プツッ

 強制的に会話を終わらせるリューシ。

 

「えっ、居城、ですか?!」

 

「何と! 殿の御殿がやはりあるのでござるか?!」

 

 ニニャとハムスケが驚いた顔をする。

 

「拠点にしている所だ。まぁ、人間が1人も居ないがな。住んでいるのは竜達だ。」

 

「えっ! 竜が!」「竜とは……流石は殿。」

 

「まぁ、難度は百を越すだろうが、安心して欲しい。私が使役している竜達だ。竜達は案外、人懐っこい生き物でな。帰ったことが分かれば直ぐに私に寄ってくるんだ。この世界の竜はどうか知らんが。」

 

 

「ま、魔境……?」「やはり殿は凄いでござるなぁ。」

 

(ニニャ、そう言いたくなる気持ちは分かる。)

 

 

「確かに、人間からしたら魔境と思われるだろうな。あ、あと墳墓があるんだが、そこには死の神が住んでいるから近付かない方が良いぞ。」

 

 

「「死の神?!?!?! (でござるか!?!?!?!)」」

 

 

「そうだ。彼はアンデッドでな、見た目は怖いがとても仲間を大切にするという奴だ。アイツとは一応互いに不干渉という条約を結んでいるんだが……侵入でもしたら間違いなく殺される。止めた方が良い。」

 

 

「ま、まさか法国の祭るスルシャーナ神のことですか?」

 

 

「スルシャーナ神の更に上だ。まぁ、神の世界にようこそ、ニニャ。」

 

 

「……」

「あ、気絶した。」

 

 余りの情報の大きさに驚き、失神するニニャ。

 そりゃそうだ。

 今まで行動していた人物が突然私は神だとか言い出して、更にそれがマジモンの神だと知れば。

 

「流石は殿〜感服したでござるよ。より一層の忠義を捧げるでござる!」

 

 そんなハムスケにニニャを背負うよう命じ、宿屋への道を歩く一行。

 不意に、モモンの脳内に声が響く。

 アルベドだ。

 

『アインズ様。至急ナザリックにご帰還願います。』

 

 

『アルベドか。何事だ?』

 

 

 

『第一から第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールンが反旗を翻しました。』




























hehe、おまえさんら、なかみからっぽだろ。
なにもつまってないのによくうごけるな。
それとも、だれかさんのあやつりにんぎょうか?
hehe、まぁそれはいいとして、おまえさんにひとつききたい。








おまえ、最悪な目に遭わされたいか?(Do you wanna have a Bad time?)


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19.選手交代

今回は長めです!
そしてシリアス!
長文注意です!


!?シャルティアが!?』

 

『にわかには信じがたいですが…』

 

 

 

翌日の早朝、リューシは宿屋の一室で目覚める。

朝日の明るい日差しが部屋の小窓から刺し、澄み切った空気が流れて来るにも関わらず、気分は最悪だった。

それも、昨日の深夜にモモンことアインズがアルベドから受け取った最悪の報せによるものだった。

 

(嘘だろ…シャルティア…ワールドアイテムを持たせた筈なのに…)

 

付き添いにペロロンチーノ、片手に《ヒュギエイヤの杯》を持たせ、任務に就かせたというのに本来の運命を変えることは出来なかった。

 

リューシは迂闊だったと思う。

自分というイレギュラーの存在がいるというのに、何故この世界に同じくイレギュラーが先にこの世界に来ている可能性を考慮しなかったのか、と。

 

 

(いや、まだだ。まだイレギュラーとは断定出来ない。先ずはペロさんに事情を聞こう。)

 

 

一旦【城壁都市ホーンバーグ】へと帰還するリューシ一行。

城下町にワープした時、奥に聳え立つ王城を見て、ニニャは「凄く…大きいですね…(城が)」と言う。

城下町をしばらく行った所で、突然指笛を吹き鳴らすリューシ。

すると、何処からともなく続々とリューシ使役下の竜達が現れ、リューシ一行の下にフライングダイブを次々と仕掛けてくる。

ニニャは余りの竜の迫力と頭数、そして見た目の怖さにより、恐怖で大きな叫び声を上げた(ニニャ『キャワワワワァーー!!!』)後卒倒してしまった。

 

後から来たティルルに事情を説明し、ニニャを預かって貰うことに(『?リューシ様って天使達の住む所に行ったんだったっけ?』byティルル)。

ナーベも付き添い人としてニニャとティルルに同行させ、【ナザリック地下大墳墓】へと転移するのであった。

 

ーーーーーーーー

 

『ナーベよ。ニニャが起きたら装備の点検の為、少しの間此処を留守にする。腕利きの鍛冶屋がいるのでな、と言う伝言を彼女に伝えて置いてくれ。モモン、つまり私もついでに行ったという設定で。』

 

 

『畏まりました。そのようにいたします。』

 

 

『任せるぞ。』

 

「ふぅ、さて、盟友ペロロンチーノよ。一体何があったのか我々にも説明してはくれまいか?」

 

ナーベに必要事項の伝達の為の伝言(メッセージ)を終えたアインズがペロロンチーノに尋ねる。

 

【ナザリック地下大墳墓 ペロロンチーノの部屋 ベッドルーム】

 

4人の異形達が1人の鳥人(バードマン)の眠るベッドの脇に其々腰掛ける。

鳥人(バードマン)、ペロロンチーノは、戦闘による傷が所々消えていないようだ。

肩に槍で貫かれたような大きな風穴が痛々しく残っている。

 

「シャルティア…」

 

「シャルティアに何があったんだ?」

 

「…」

 

 

「…シャルティアが反旗を翻したということは、一体どういうことなんだ?教えてくれ。」

 

「…」

 

返事が無い。只の屍のようだ。

 

「至高なる御方へ何てことを…!!シャルティア・ブラッドフォールンの討伐は私めにお任せを。全配下の総力を持って叩き潰して参ります。」

そんなペロロンチーノの姿を見て激昂する

「待て、アルベドよ。我々はまだ事情をまだ良く把握していない。シャルティアが暴走したのか、反逆を企てていたのか、洗脳されているのか、はたまた脅迫されているのかは分からない今、愚直にシャルティア討伐などすれば、たちまち此方の戦力が筒抜けになってしまうぞ。ここはシャルティアの今の状態が知りたい。」リューシ

 

 

「…承知いたしました。」

 

アルベドがシャルティア強硬討伐論を展開するが、リューシが瞬時に阻止する。

 

「先ず、今判明している情報としては、昨夜未明、シャルティア・ブラッドフォールンからの報告が途絶え、ペロロンチーノ様を攻撃したことがペロロンチーノ様御身自らのご報告と、付き添いの吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達の証言で判明致しました。その原因は、敵対者の老婆が着た巫女服状のマジックアイテムによる物とのこと。精神支配を受けている可能性が極めて高いです。」

 

 

「ふむ、現在のシャルティアの居場所は分かるか?」アインズ

 

 

「詳しい座標は未だ掴めておらず、ねえさ…ニグレドに正確な座標の調査を3時間前に委託したのですが。」

 

「ニグレドの情報待ち、か。」アインズ

 

「さて、先ずはシャルティアの洗脳方法についてだが、皆も知っての通り、シャルティアは吸血鬼(ヴァンパイア)。それも真祖(トゥルー)だ。大体の精神攻撃を無効化出来るにも関わらず、洗脳を受けたということ。よって、シャルティアの精神支配は考えられる限り可能性は3つ。未知の魔法による物か、生まれながらの異能(タレント)による物か、それとも《ワールドアイテム》による物か…そして、この中の《ワールドアイテム》による物だと我は睨んでいる。」リューシ

 

 

「何故だい?もしかしたら《ワールドアイテム》以外にアンデッド系を強制的に洗脳出来るアイテムがあるかも知れないぞ。」ヘロヘロ

 

 

「我の治めていた【ミズガルズ】にさえそのようなアイテムの影は無かった。そして、そのようなアイテムがあるのだとすれば、他の探検家達がアインカベルによって駆逐される事は無かった筈。」リューシ

 

 

「それもそうだねぇ。まぁ、断定してもしなくても、やるべきことは変わらないね。」ヘロヘロ

 

 

「苦しい決断だが、一度シャルティアを殺し、蘇生しなくてはならないな…」リューシ

 

 

「な、何故?!《流れ星の指輪(シューティング・スター)》を使えば良いでは無いか!」アインズ

 

 

「いや、万が一《ワールドアイテム》だった場合、貴重な指輪の使用回数を一無駄に減らすこととなってしまう…我が傷付いただけでシャルティアを洗脳から解放出来るのなら安い物よ。」リューシ

 

 

「し、しかし、最悪リューシs…お前が死ぬこととなるのだぞ!」アインズ

 

 

「我を『洗脳状態の吸血鬼に負けるような、一つの世界の主であった聖騎士』だと言うのかな?アインズ。大丈夫だ。むしろ、今回の相手はシャルティア。アインズやヘロヘロでは信仰系魔法によって弱点を突かれてしまう。ここは、どの道私が行くしか無かったのだよ。」リューシ

 

 

「…しかし!油断は禁物だ。せめて私も同行させてくれ!」アインズ

 

 

「アインズ、ここはリューシに任せるべきだよ。我々は後方支援に努めよう。」ヘロヘロ

 

 

「う…」

 

 

「…!姉さん?どう?シャルティアは…へ?!激戦の渦中?!詳しく教えて!」

 

 

『今度は一体何が起きたんでしょう?』

 

 

『さあ、アルベドの話を聞かなくては…しかし、少なくとも悪いことだというのは確かですね。』

 

 

『…』

 

 

「失礼しました。アインズ様。ニグレドより調査結果が出ました。シャルティアの座標はトブの大森林内の研究施設から北西に20km離れた地点です。現在、シャルティアは鎧姿の何者かと正体不明・姿が完全に不可視化された何者かと激戦中とのこと。」

「は?」

 

(え?シャルティア何と戦ってんだ?)

 

「シャルティアに対峙しているunknown(正体不明)2人は、どうやら味方という訳ではないとのこと。完全に三つ巴状態です。如何なさいますか?」

 

 

「直ぐに現場に急行するべきだ。」

 

 

「同感です。」

 

 

「罠の可能性はありますが、シャルティアをこれ以上傷付けてはいけない。ペロロンチーノさ…最高のエロゲーマーの仇を討つぞ!」

 

 

「いや、俺まだ死んで無いです…」

 

 

「ペロさ…ペロロンチーノ?!!」「ペロロンチーノォ?!!」「ペロロンチーノs?!!起きたのか!!」

 

 

「シャルティアを洗脳しやがったBBAは始末しました。ですが、そいつらの親玉?みたいなのが他の面子を庇っていた上、槍で深傷を受けた次第なんですよ。だからそいつらの更に上位の存在が洗脳不完全なシャルティアの口封じに乗り出した可能性は大いにありますよ。」

 

 

「ふむ…」

 

 

「とにかく、現場に急行するぞ。アルベド、『転移門(ゲート)』の込められている《スクロール》を持って来るのだ。」

 

 

「それなら私のアイテムボックスに…あった!『地点・研究施設から北西20km地点へ』」

 

 

 

「では、アインズ、ヘロヘロ、行こうか。予め言っておく、ペロロンチーノ、今回は君と共に行くことは出来ない。」

 

 

「あぁ、昨日の槍使いに刺された傷が完治しねぇ限りは当分の間は無理だな。あと一つ、頼みがある。」

 

 

「何だい?」

 

 

「今回の一件は俺に責任がある。だから、もし、シャルティアを、殺すしかないんだろうな…せめて、苦しませないで殺してくれないか?」

 

 

「最善は尽くすつもりだ。だが、厳しいな。」

 

 

「…くっ、づぁああ!何で俺はあの時シャルティアを止められなかった!!」

 

 

「ペロロンチーノ…」

「ペロロンチーノ様…」

 

「…」

 

 

 

 

「シャルティアを洗脳した犯人は死すら生温い地獄を…」

 

「人を呪わば穴二つ、ですよ、アインズさん。今は犯人ではなく被害者のシャルティアのことを考えてやってください。」

 

アインズから死のオーラとは違う負の覇気のような物が全身から吹き出してきたので、咄嗟に諫めるリューシ。

 

「…そうですね。先ずは今を対処しなくてはなりませんね。」

 

言われてしばらくして冷静を取り戻したアインズ。

 

「あっ、あと相手に此方の情報をもう渡したくはないです。」

 

ヘロヘロが重要な事を思い出させてくれる。

 

「あの()()を使うんですね?把握です。」

 

偽名*1はナザリックの存在が他のプレイヤーにバレず、ギルメンには分かる程度のぼかしを施す為に予め4人で話し合って決めた物である。

 

「では私達はアウラ達と共に後方支援を行います。御武運を!シャボンヌさん!」

 

しばらくして、リューシに全ての補助魔法を掛け終えたアインズがこう激励を行う。

 

「絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

 

続いてヘロヘロも。

背後に松◯修造の幻影が見えたような気がした。

 

「死にたく無いから全力で行かせて貰うぞ!」

 

ヘロヘロに負けじと声を張り上げるリューシ。

ここら一帯の気温が何故だか2度ほど上昇した。

 

「そう言ったからには、必ず無事に帰ってきてくださいよ!絶対ですからね!…死の支配者が言うのも難ですけど…」

 

やはり不安なのか、中身おっさんサラリーマンの死の支配者は再度リューシへとヒロインのような問いを掛ける。

 

 

「勿論ですよ。じゃ、ちょっくら行って来ますね。」

 

そのアインズの不安を払拭するかのように軽快に言葉を返すリューシ。

そして『飛行(フライ)』が込められたネックレスを身に付け、激戦地点へと飛び去る。

 

彼は一冒険者リューシとしてではなく、至高なる御方々の一員、シャボンヌとして、反旗を翻した部下を倒しに行くのであった。

 

 

 

 

時は遡る。

 

 

〜3日前 18時30分頃〜

【エ・ランテル 黄金の輝き亭】

 

「不味いわ!何なのよ?この料理は!」

 

エ・ランテル随一の美味しさの食事を提供する高級レストランの料理を不味いと一言で切り捨てた女が居た。

ソリュシアこと、ソリュシャンお嬢様である。

 

「ソリュシアお嬢様、周りの他の方々にご迷惑が」

 

周囲の視線を指摘し、彼女を諌めようとする執事然の良男はセバスチャンことセバス。

そう、これはナザリックの作戦の一環なのだ。

 

「セバスチャン!さっさと行くわよ!こんなにも私の舌に合わない料理は初めてよ、全く!」

 

我が儘なお嬢様役を完璧に演じ切るソリュシャン。

彼女はそのままの勢いで乱暴に店の扉を開けて去っていくのであった。

 

「はっ。畏まりました。そのように。ザックさんでしたか?直ぐに出立の用意をしなさい。」

 

セバスチャンは、荒々しく店を出る主人の後ろ姿に向かって返事を返した後、壁にもたれ掛かり、ソリュシアとセバスチャンのことを四六時中観察していた御者の男、ザックへと声を掛ける。

 

「へい。分かりましたぜ。」

 

そう言って下卑た笑みを浮かべるザック。

彼の眼に邪な企みが映り、心音が増加したことをセバスは見逃さなかった。

ザックは御者としての任務を達成する為にソリュシアの後から店を発つ。

 

「皆様、御食事中の所、大変申し訳ありませんでした。そのお詫びとして、皆様方の酒代は私が持ちましょう。どうぞ好きなだけお飲み下さい。あと、店長さん、これは迷惑料です。それでは楽しい夜をお過ごし下さい。」

 

カウンターに2金貨を置いたセバスが退場し、数秒後黄金の輝き亭にいる客は喜びで爆発した。

セバスチャンという紳士的な執事の良男に感謝しつつ、客は冷たい生ビールを飲み干すのであった。

 

 

 

 

 

〜20分後〜

「任務とはいえ申し訳ありません、セバス様。」

 

「いえ、貴女は貴女の役目を全うした。只それだけですから。私は舞台劇とかには少々疎いのですが、私にも分かる名演技でしたよ、ソリュシャン。」

 

馬車の中でセバスに頭を下げて許しを乞うソリュシャン。

店での態度からは想像できない程の萎らしいソリュシャンの姿を見て、更に感心をするセバス。

彼女の演技力を素直に褒める。

まさに理想の上司である。

 

「セバス様にそう言って頂けるのはとても光栄です。セバス様、上手く獲物は釣れましたでしょうか?」

 

任務の一番の重要ポイント、ザックを釣れたかどうか、について問うソリュシャン。

 

「ええ、恐らくは。ザックという御者の心音が増長したことを確認しましたので。」

 

セバスはポイントクリアによる作戦の成功を告げる。

 

「ここまでは順調ですね。あと、ハンゾウ達、出ていらっしゃる?」

 

次の瞬間、席の下、影の部分から黒装束の忍者然をしたモンスターが四体姿を表す。

 

「何でしょうか、ソリュシャン様。」

 

その内の一体、リーダーと思わしき個体、がソリュシャンへと用件を尋ねる。

 

「ザック、御者の人間、は私の(獲物)だから手を出さないで欲しいわ。」

 

ザック、良かったな。

美人なスライムさんと交わることができるぞ。

 

「「はっ!」」

 

この瞬間、ザックの酸責め(消化)、即ち死が確定した。

 

「もし。ご機嫌麗しくて?ソリュシャン。」

 

不意に馬車のキャビン入り口が瞬時に開閉し、『完全不可視化』を解いたシャルティア・ブラッドフォールンが姿を表す。

 

「あら、シャルティア様。随分早くいらしてくれたのですね。打ち合わせはもっと後の予定ではありませんか?」

 

割と話が合い、仲良しなシャルティアの登場に、ソリュシャンは嬉しさに思わず笑みを浮かべつつそう言葉を零す。

Sコンビとして有名な二人が揃ってしまった…

 

「野盗の中に有用そうな者がいる可能性があったからでありんすえ。」

 

ソリュシャンに笑みを返しつつ、なぜここに来たのかという理由を説明するシャルティア。

二人共笑い方がニヒル。

 

「すまんな、ソリュシャン、セバス。少し同行させてくれないか?」

 

続いてキャビン内に直に転移するペロロンチーノ。

 

「「!ペロロンチーノ様!我々は如何のようにも。全ては御身の御意向のままに。」」

 

突然現れたペロロンチーノに少し動揺しつつ、セバスとソリュシャンは同時に返答を贈る。

 

「ありがとう。先ず、同行させて貰いたい訳を話そう。野盗内にブレイン・アングラウスという名の用心棒がいるのだが、其奴がこの世界の強者に当たる者だというのだよ。我々は彼を勧誘し、ナザリックに連れ帰る事が任務となる。」

 

 

「左様でございましたか。」

 

ブレインはヤベー奴らに目を付けられてしまった!

ドンマイ!

 

「そこで、野盗の捕縛による情報・食糧確保と戦力確保を両立して行いたいと思っているのだ。セバスとソリュシャンの役目は最初の任務通りで構わない。」

 

 

「畏まりました。そのようにいたします。」

 

ペロロンチーノの説明を了承し、理解したことを伝える為に頷くセバス。

 

「あと、そうだな…シャルティア」

 

 

「はぁい〜何でありんしょうか?ペロロンチーノ様ぁ〜」

 

ペロロンチーノの腕に偽乳を押し付けるシャルティア。

 

「ブレイン・アングラウスという名の者以外は我々が対処する。シャルティアは先に標的の人物の元へ向かって欲しい。」

 

ペロロンチーノはシャルティアからのアタックに内心動揺しながらも言葉を上手く繋げる。

 

「?畏まりんした。しかし、ペロロンチーノ様は?」

 

 

「俺は…そうだな、上空の監視を行う。」

 

完全不可視化(パーフェクト・ノンアンブル)使うか。これは決してストーキングデハナイ、娘兼嫁の安否確認だ!決してストーカーじゃないぞー!)

 

おまわりさんこいつです。

 

「ペロロンチーノ様ぁ、それでは私がペロロンチーノ様を御守りすることが出来んせん!どうか、一緒に…その…来て…

 

(不味い…可愛い過ぎる!!昔の俺だったら卒倒だぞ!ハアハア)

 

おまわりさんこいつです!

 

 

「…んぐっ!わ、分かった!いつでもどこでも一緒だ!」

「ペロロンチーノ様ぁーーーー!!!!!」

「わっ!ちょっ!大きな声出すな!そしてここで押し倒しちゃらめぇ!」

「はっ!失礼致しんした。私としたことがはしたなかったでありんす…」

 

ナニヤッテンダコイツラ。

 

(シャルティア様羨ましいわ…私もヘロヘロ様と…)

 

シャルティアとペロロンチーノの淫行を目にし、ヘロヘロとの情事を想像し始めるソリュシャン。

馬車の中が若干カオスになった所で、不意に馬車が急停止する。

 

「おや?止まりましたね。」

 

 

「あぁ、作戦通りに行くぞ。シャルティアはまだ馬車から出なくて良いからな。」

自分の嫁が下衆から下品な目で見られたくなかったのか、嬉々として殺戮しようと飛び出そうとしたシャルティアを止める。

 

「はい!」

 

良い返事だ。

 

「では私めが。」

 

セバスがシャルティアの代わりにキャビンの扉を開き、馬車の外を見る。

 

「おい!爺さん!そこをどけ!」

 

爺さんに用はないとでも言うかのようにセバスに飛び掛かってくる野盗の下っ端。

セバスへナイフを突き出すも、そこに彼はもう居なかった。

 

ナイフは空を切り、下っ端の両手が切れる。

 

「へ?」

落ちた自分の手を見、ひょうきんな声を上げる下っ端。

 

「その程度でしょうかな?では、こちらから行かせて貰いますよ!」

拳を下っ端の顔面へと音速を超える速さで打ち出し…

バンッ

下っ端は足首を残して消滅した。

 

「な!何ィ!」

 

「気をつけろ!あの爺さん強いぞ!」

 

「取り囲んで潰…ぐぁあ!」

 

取り囲む間も無く、野盗達の影に既に忍び込んだハンゾウ達が次々と野盗達を狩っていく。

 

「おい、どうし…」

 

「い、一体何ガッ…」

 

物の数秒でザックを含めた2人以外の野盗は殲滅された。

 

「ぇ?…ぁ…ぇ?」

眼前で起きた事象を未だに捉え切れないザック。

 

「御者さん…」

そんな彼の元へソリュシャンが寄ってくる。

 

「な、何を…」

 

「さあどうぞ好きなだけ。」

 

ザックの眼前に突き出される豊満な果実二つ。

思わず喉をゴクリッと鳴らすザック。

普通であればこんなあからさまな色仕掛けに引っかかる筈も無いのだが、ザックは男としての性を抑え切れず、その禁断の果実に触れる。

 

ズブリッ

しかし、触れた手は胸を貫通し、ソリュシャンの体内へと引き摺り込まれていく。

「な、グギャァァア!!と、溶けてる溶けてる!あ、あついいいいいいいぃぃい!!!!」

 

消化液が肌を焼く痛烈な痛みに叫び、手を引っこ抜こうとするも、ソリュシャンになす術なく引き摺り込まれる。

やがて全身を飲み込まれたザックは、ソリュシャンの体内へと収まり、悲鳴を上げながら溶かされるのだった。

 

「さて、残るはお前だけだが?」

 

ペロロンチーノが残りの一人の額に弓矢を当てがう。

 

「ヒィ!い、命だけは!命だけはお助け下さい!」

 

 

「今から言う質問に答えろ。」

 

 

「え?は、はい!」

 

 

「ブレイン・アングラウスは何処にいる?」

 

 

「あ、あの洞窟の奥で待機してらぁ!し、質問には答えたぜ!こ、これで俺の、俺の命だけは助け」

「駄目だ」

「ワハハハハハハハハァ〜〜ッ!」

(そ…そうか!これは夢だッ!この今までに多くの女を犯し捨てて来た俺が死ぬ訳がないッ!夢だッ!夢だッ!バンザイ〜ッ!)

 

ドスッ バタッ

野盗は呆気なく矢に額を刺し貫かれて絶命する。

 

「洞窟の奥だな。行くぞ、シャルティア。」

 

 

「はいっ!ペロロンチーノ様ぁ!」

 

 

「俺は後ろから援護をするぞ。姿を消してな。」

 

 

「ペロロンチーノ様がお側に付いてくださるなんて、私はどうにかなってしまいそうでありんす〜!」

 

そう言ってペロロンチーノの下腹部に自らの頬を押し当てるシャルティア。

 

「こ、こら!それは任務が終わってからだっ!」

 

そ・れ・は?

 

「この任務が終われば、抱いて下さるのでありんすね!」

 

 

「しまった!」

 

しまった!じゃねーよ!!!!

否定しろやこのリア充め!

(嫉妬マスク同盟からのメッセージですた。)

 

「もうここが疼いて疼いて仕方ありんせん…」

頬を紅潮させ、物欲しげなトロンとした瞳で上目遣いにペロロンチーノの顔を見遣る。

ペロロンチーノに効果は抜群だ!

 

「止めて!その顔!理性飛ぶから!」

 

これ以上は俺の理性が危ないとシャルティアを諫めるペロロンチーノ。

 

「ガーン、でありんす…」

 

ガッカリするシャルティア。

 

「全く…先に行ってくれ、シャルティア。」

 

 

「はーい、でありんす。」

 

もう惚気んな。

 

 

 

 

洞窟の奥へと足を進める一行。

野盗達の死体があちこちに散らばり、ペロロンチーノが吐き気を催したので、シャルティアは虐殺を最小限に留めた。

その為、幸運な事に、シャルティアが『血の狂乱』を発動することは無かったのだった。

やがて、前方を行っていた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達が強者の気配を感じる。

 

「貴女達には荷が重い相手でありんす、双方、下がりなんし。」

 

吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達を下がらせて直ぐ、日本刀を腰に収めた30代前半位の青髪の男が洞窟の奥から姿を表す。

 

「洞窟の入り口がやたら騒がしかったのはお前達の仕業って訳ね。んで?お嬢ちゃんたちは何者だい?」

 

青髪の男は、軽い調子で話を振りつつ、腰の刀にはしっかりと手を掛けている。

 

「立場を弁えなんし、人間。まぁ、素直に出て来た御礼にその言葉使いは目を瞑りんしょう。妾は、ジュリアーナ。貴方はブレイン・アングラウスでありんしょう?」

 

彼の言葉遣いを少し不快に思いつつ、ペロロンチーノの前なので我慢して慎重に事を対処するシャルティア。

 

「言葉使いは失礼だとは思ってるが、敬語を知らずに育った者でな、すまない。あと、お嬢ちゃんたちは人間では無さそうだな、差し詰め、吸血姫とやらかな?特徴がそっくりだ。」

 

ブレインもブレインで敬語を使う余裕なんて無い。

相手の強さを武技により事前に感知したブレインは、自身が命の危機に晒されていると悟っているのだ。

 

「吸血姫?違う違う、妾は真祖。その吸血姫などとは格が違う存在でありんすえ。」

 

しっかりと強者アピールをするシャルティア。

益々ブレインの心中は緊迫する。

 

「これは失敬。それにしても、真祖?の吸血鬼の嬢ちゃんの耳にも俺の名前が届いていたとはな。感動物だ。今度からは名前隠しとかなきゃな、化け物達までおびき寄せちまう。」

(コイツらに勝てるビジョンが湧かねえ!あの魔力量と圧倒的な力はなんだ!とてもじゃねぇが対処不可能だぞこれ!)

 

ジョークでも言っておかないと気がもたないと判断し、まるで自分に言い聞かせるかのように冗談を言う。

まぁ、笑うのもやっとの状態だった為に、引きつった顔になっていたことは言うまでもない。

 

「さて、単刀直入に言おうか。」

 

ペロロンチーノが『完全不可視化』を解き、ブレインの前に姿を表す。

 

「なっ!鳥人(バードマン)!?ど、何処に隠れていたんだ!?」

 

いきなり現れたペロロンチーノに驚き、危うく腰を抜かし掛けるブレイン。

シャルティアと同程度の存在が2つも眼前に並べば当たり前の反応である。

むしろ、腰を抜かさず、衝撃に耐え切ったブレインを称賛するべきだろう。

 

「良い反応だ。姿や気配を完全に消すことも出来るんだよ、私は。そこにいるジュリアーナの師匠、ペテロだ。お見知り置きを。」

 

ムッとして槍で刺そうとするシャルティアを片手で抑えつつ、ペロロンチーノがブレインへ自己紹介をする。

 

「お、おう…」

 

ブレインはただ頷く事しか出来なかった。

 

「お前は強くなりたいか?」

 

 

「…あぁ、強くなりたいさ。何故そんな事を聞く?」

 

 

「ガゼフ・ストロノーフに僅差で負けた雪辱があるのだろう?君には。」

 

 

「うっ」

 

痛い所を突かれたブレイン。

実際の所、ブレインとガゼフの実力に差など全く無いのだ。

ブレインはガゼフに勝ちたいという一心でここまでやって来れた。

努力のブレイン、才能のガゼフ。

しかし、ブレインは既に限界を感じていた。

肉体の全盛期でこれ以上の伸びは期待出来ないことも熟知していた。

もし、()()()()の可能性があるのだとすれば、その希望に必死でしがみ付くだろう。

そして今、その()()()()を実現しうる者達が眼前に佇んでいる。

 

「私は弓専門だが、剣術の神と呼ばれる私の友人がいる。彼を紹介してやっても良いのだがな。」

 

ペロロンチーノことペテロは、言葉に詰まったブレインへ更なる追い討ちを掛ける。

 

「…魅力的なお誘いだが、アンタらはちと信用ならねぇなぁ。」

 

 

「私達が異形種だからか?」

 

 

「まぁ、そうだな。」

 

それ以外にも不審な点は多々有るのだが…一番の不審点を指摘するブレイン。

 

 

「それを言うのならばジュリアーナと私は亜人種と異形種、互いに相容れない者達だったにも関わらず、深い関係を結んだ。種族など関係無いのだよ。むしろ、我々は種族間の隔たりを破壊する為に今、ここで君を誘っているのだ。」

 

種族など関係無いのだよ。

 

このニュアンスが、ブレインの胸中でライバルのかつての言葉を思い出させる。

(師と弟子の関係に、種族など不要。例えそれが竜だったとしても、だ。)

「…アイツと同じ、か。」

 

思わずそう言葉を零すブレイン。

 

「何か言ったか?」

 

 

「いや、知り合いにな、アンタと同じような考えを持つ奴が居てな。…分かった、ここはその提案に乗ってやるよ。」

 

ブレインは自身に足りなかった物を見出す。

それは師の存在。

更なる高みに移るには、師の存在が必要だと気付く。

かつてのガゼフに感謝しながらペロロンチーノに向かう。

 

「決まりだな。」

 

 

「おっと、人間を辞めろなんて言わないで欲しいかんな!」

橋◯かーんな

 

「そんな事はしない。あと、言い忘れていたが、ジュリと私は夫婦だ。」

 

爆弾投下!

 

「はぁ!?ちょっ、ペテロ、さん?あ、アンタ、弟子と結婚したのかよ!それもこんな幼い娘と?!」

 

 

「そうだが、何か問題でも?」

 

 

「い、いや、何もないが…」

 

 

「ふふふ、ペr…テロ様は私の旦那様でありんすえ。手を出すなら容赦はしないでありんすよ?」

 

 

「あ、ハイ。」

 

 

「ジュリ、【大白球(スノーボールアース)】に『転移門(ゲート)』を。」

 

 

「畏まりんした。」

 

 

「うわ!何だ!急に目の前に闇が!」

 

 

「魔法の一つ、転移魔法の最終形態だ。気にしないでくれ。」

 

 

「さらっととんでもねぇこと言わなかったか?!」

 

 

「気にするな!」

 

 

「え、えぇ…(困惑)」

 

(コイツらの仲間になるの、やっぱ辞めたほうが良かったか?)

いや、ブレインの選択は賢かっただろう。

この世界で最強の戦闘力を保有する集団、《アインズ・ウール・ゴウン》、《七つの竜星》といち早く仲間になったことは、もはや末代までの安泰を約束されたも同然である。

 

 

「案内は彼女が。吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)、彼を案内してあげて。」

 

 

「はっ!」

 

そう言ってブレインを闇の中に無理矢理押し込み、姿を消す吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)の一体。

他の者は周囲の警戒に当たらせ、後にはシャルティアとペロロンチーノの二人が残される。

 

シャルティアとペロロンチーノは2人きりの時、お互いに素の自分で話し合おうという約束をしている。

 

「ブレイン・アングラウスは無事にナザリックに連れ込めたな。」

ペロロンチーノは作戦の成功を喜ぶ。

 

「ペロロンチーノ様ぁ、何故あの者をナザリックに?この場で不敬の償いとして処刑してもよろしかったのでは?」

シャルティアはブレインの不敬な態度に腹が煮え繰り返りそうだった。

 

「なるべく事は穏便にしたいんだよ、シャルティア。今まで事を荒立てて結果的に良かった事など一つもなかったからね。」

 

 

「それもこれも『キギョウ』との戦いの時の経験から来る物なんですね!流石はペロロンチーノ様!」

 

(まだその設定忘れて無かったんかーい!)

シャボンヌが咄嗟に言ったアホなラノベ的設定を、まだ部下達は間に受けてしまっている模様(汗)

 

「あ、あぁ、そうだな、シャルティア。」

 

 

「ペロロンチーノ様ぁ、少しお願いが。」

 

「ん?何だい?」

 

「私の事を、『まいすいーとはにー』って呼んで欲しいです!今回のご褒美として…」

 

(か、かわわわ…)

「そ、そんなので良いの?分かった。い、言うぞ?……愛してるよ、マイスイートハニー。」

 

「〜〜〜〜〜!!!!!!わ、私もです!ペロロンチーノ様ぁ!!!!」

 

ナニヤッテンダコイツラ  ( ^ω^ ) 

 

「む?どうした?ハンゾウよ。…洞窟裏口へ冒険者が向かって来ているだと?分かった。…始末?…そうか、やむをえんな、そうしてくれ。…死体の後片付けだ。行こうか。シャルティア。続きはまた後で。」

ペロロンチーノは報告のあった洞窟裏口へと進み始める。

 

「む〜!了解でありんす!」

 

不満げに了解しつつ、洞窟の奥へと向かう。

しばらく歩くと、ハンゾウ達の気配が次々と消えていく事を感じ取った。

 

「ん?ハンゾウ達の気配が消えた…?ハンゾウは高レベルモンスター、そう易々と倒される訳ない筈なのだが…」

 

 

「この先に敵がいるのでありんすね、始末致しますか?」

 

 

「いや、強者の可能性が高い。少しハンゾウ達を倒した奴の面を拝みに行くか。」

 

 

「でもペロロンチーノ様が危険ではありんせんか?」

 

 

「大丈夫だろう、100レベルがいきなり襲ってくるかもしれないが、シャルティアと俺なら対処は可能だ。」

 

 

「それもそうでありんすね。」

 

洞窟裏口を抜け出て直ぐにハンゾウの気配が消失した場所まで急行する。

『完全不可視化』を掛けた二人は、やがて謎の人間の一団と遭遇する。

 

「あの長髪ロンゲ野郎か。」

 

冒険者然とした男と話すリーダー格らしきロンゲを忌々しげに一瞥する。

 

「ペロロンチーノ様が今仰った者は、その後ろに立つ高レベルの者達のリーダー格でありんしょう、しかし、対話している冒険者は低レベル、雑魚でありんす。あの中で最もレベルが高そうな者は…やはりあのロンゲでありんすね。」

 

漆黒聖典第一席次はロンゲ・ロンゲと名付けられてしまったようだ。

 

「対話は不可能、か。素直に撤退だな。気付かれると洒落にならんし。」

 

 

「そうでありんすね。」

 

そう言って立ち去ろうと茂みから立ち上がった瞬間のことだった。

 

「その茂みに何か居ます!」

第十一席次、「占星千里」が茂みに隠れていたシャルティアとペロロンチーノのそんさを捕捉してしまう。

 

「何?!」「さっきの魔獣の仲間か!?」

 

(な、何ィィ!!!!)

 

「見つかってしまいんしたね。口封じを致しんしょうか?」

 

 

「いや、ここは対話を試みるぞ。我々は君達と敵対したくは無い!話をしようではないか!」

わざと『完全不可視化』を解き、両手を上げながらペロロンチーノは対話を持ち掛ける。

 

 

「醜い亜人が!カイレ様!お願いします!」

 

「心得た!」

 

しかし、この言葉は後方にいた神聖呪歌とカイレには届いておらず、勝手に《ケイセケコウク》を使用してしまう。

 

「待て!止めろ!カイレ様!駄目です、待っ…」

隊長格のロンゲが止めに入ろうとするも、もう遅い。

 

「はぁっ!!!」

老婆のチャイナドレスから眩い光が放たれる。

 

「何をする!?このババア!『清浄投擲槍』!」「『毒矢の雨(アシッド・レイン)』!『一点狙撃』!」

 

それを攻撃だと認識したシャルティアとペロロンチーノは、瞬時に攻撃へと移る。

 

「か、カイレ様!」「セドラン!?大丈夫か!」「ボーマルシェ!頭が!」

 

シャルティアの放った槍がセドランを、毒矢を大量に浴びて第十二席次とカイレが、一点狙撃を防ごうとしてボーマルシェがそれぞれ負傷する。

内、セドランとボーマルシェは即死した模様だ。

 

しかし、カイレの放った竜型の光はシャルティアに直撃した。

 

「大丈夫か!?シャルティア!」

 

光を浴びたシャルティアは動きを止め、虚空を見つめている。

 

「シャルティアァア!!!」

 

目が虚になったシャルティアの姿を見て、ペロロンチーノはシャルティアが精神支配を受けたのだと感づく。

今の彼女にはペロロンチーノの声さえ届かなくなっていた。

 

「よくも仲間を!『一の突き』!」

 

セドランとボーマルシェを立て続けに失った隊長が武技でペロロンチーノを攻撃する。

隊長の槍はペロロンチーノの左肩を指し貫いた。

 

「グゥ、シャルティアに何をしたぁーーー!!!!『千の矢武雨(サウザンレイン)』!」

 

しかし、負けじとペロロンチーノも一旦距離を取った後、スキルを使用する。

使えなくなった左腕の代わりに左足を使い、幾千もの矢を謎の集団に浴びせる。

 

「総員!撤退だ!冒険者の方を守りつつ退避!」

 

隊長は撤退を判断し、迅速に逃亡を謀ろうとする。

 

「逃がさねぇ!『洛陽の礫(ガレット・デ・ルオ・ヤン)』」

 

 

「グハッッ!」ベシャッ

 

しかし、味方への指示に気を割いた為、ペロロンチーノの攻撃を回避できず、もろに右腕を刺し貫かれる。

 

「「隊長!」」

 

「『五里霧中』!」

 

第七席次のスキルによって、謎の集団は行方を晦ます。

 

「クソッ!逃すか!」

 

後を追おうとするも、煙幕が晴れる兆しはない。

 

「シャルティア!大丈夫か!?シャルティアァア!」

 

再びペロロンチーノはおかしくなったシャルティアへと向かうが、やはりシャルティアは虚な目をペロロンチーノに向けるだけ。

 

「シャルティア!!!っ〜!なぁ、返事をしてくれよ!う、うぁあああ!!」

 

帰ってこない返事。

シャルティアを守れなかった悔しさでペロロンチーノは打ちひしがれる。

 

「ペロロンチーノ様!ここは危険です!お戻りを!」

 

シャルティアの状態の急変を察知した吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)の一体が、シャルティアの前で蹲るペロロンチーノを発見する。

 

「嫌だ!シャルティアを置いて行く訳には!!」

 

 

「ペロロンチーノ様!シャルティア様のご様子が明らかに変です!今のシャルティア様のご様子を見るに、精神への干渉の可能性が高く、このままでは御身がシャルティア様に襲われる危険性が!ここは一旦退避を!」

 

そう、シャルティアの今の状態は誰がどう見ようと精神への干渉によるものだと分かる。

迂闊に何かすれば、攻撃を受ける可能性だって十二分にあるのだ。

 

「ぐっ………シャルティア、待っていてくれ、必ずお前を元に戻すからな!」

 

ペロロンチーノはそう言い残し、この場を去る。

残されたシャルティアはただ微笑を浮かべて佇むだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

「ふむ、漆黒聖典を追っていたが、まさか世界を穢す者と接触するとは。やはり、こぞって強い者に執着する物だなぁ、プレイヤーという者は。」

 

(あの者をこのまま放置しておく訳にもいかない。強さは…戦ってみるしか確かめる手段は無さそうだねぇ。)

 

やがてシャルティアの頭上に謎の白金鎧が現れる。

白金鎧は動かないシャルティアをじっくりと観察した後、片手を掲げ、始原の魔法を使用してシャルティアを周囲一体ごと大爆発させる。

 

「あら?随分と痛い事してくるでありんすねぇ???」

 

しかし、その攻撃を耐え切ったシャルティアは、即座に白金鎧との距離を詰めると同時に《スポイトランス》を突き出す。

 

(中々の強さ…っ!タイマンだと全力を出さなくては太刀打ちが困難な相手か…!)

 

スポイトランスによる攻撃を大剣で受けつつ、白金鎧の操縦者、ツアインドルクス・ヴァイシオンはそう判断する。

 

「デカブツのくせに、動きはやけに速いでありんすね?まるで恐怖公のようでありんす。あぁそれだと恐怖公に失礼でありんしょうか?まぁどちらにせよ、お前を消すことには変わりありんせん。」

シャルティアが猛攻し、その攻撃を、多くの武器を自在に操ることで何とか防ぐ白金鎧。

 

(ぐっ、何とか対抗するだけで精一杯だ、隙を見て逃げ出さなくては…!)

 

その時、シャルティアと白金鎧の周囲に骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のような竜の頭部が大量に召喚される。

 

「ケンカか?オイラもまぜてくれないかい?」

 

上空から声がした。

しかし、上を見ても誰もいない。

 

「な、何故貴方がここにいるのでありんすか!?」

 

しかし、シャルティアはその声質と特徴的な竜の頭部から声の主を特定する。

 

 

 

 

そう、サンズだ。

 

「hehe、それはヒミツだ。まぁ、しいていうなら、おまえさんがいまひじょうにヤベーんだ。かんたんにいうと、けんのんだったからけねんしててんけんしにきたしだいだ。だって、

hehe、おまえさんら…

 

なかみからっぽだろ?

 

なにもつまってないのによくうごけるな。

それとも、だれかさんのあやつりにんぎょうか?

hehe、まぁそれはいいとして、おまえさんにひとつききたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまえ、最悪な目に遭わされたいか?(Do you wanna have a Bad time?)

 

 

シャルティアとツアー(操り人形)はさいあくなときをすごそうとしている…!

 

エwウwデwッwデwアwッwドゥwッwドゥ〜ワドゥワw

ーーーーーーーー

 

 

〜そして1日と数時間後〜

 

 

「やはり…攻撃が当たらないでありんすね、不可視化など捨ててかかってきなんし。」

 

サンズの攻撃は休みなく続き、シャルティアも白金鎧も攻撃の回避だけで精一杯だった。

シャルティアや白金鎧からの攻撃をサンズはどれ一つとして受け付けはしなかった。

互いに避け、シャルティアや白金鎧は被弾すれば回復して、サンズはこの世界のアンデッドの種族特性により、疲れることを知らず。

そして戦いは長期戦となり、1日掛かってもまだ終わりなき戦闘が続く。

 

「hehe、そうはいかないぜ?」

 

そうシャルティアに返答しながら骨の竜の頭、ガスターブラスターと骨をまた大量に召喚するサンズ。

竜の口から放たれる青白い炎と青白く発光しながら迫る骨の山。

まさに地獄絵図である。

 

(逃げるなら今の内に…)

白金鎧はシャルティアとサンズの戦いから逃亡を何度も謀るが、逃げる為にはサンズのスキル『空間封鎖(スペイシアル・ロック)*2の範囲外に出なくてはならず、当然それをサンズが見逃す筈は無い。

 

「おっと、どこいくつもりだ?ちゃんとやったことへのつぐないはしなくてはなぁ?シャルティアにわびのひとつかけられねえのか?まぁ、からっぽのやつになにいってもむだか。」

 

進路に回り込まれ、骨攻撃を仕掛けられる。

 

「…私はスレイン法国の漆黒聖典を追っていた者だ。彼等と私はまず国籍から違う。そして、お前たちはこの世界を穢す者、攻撃にもれっきとした大義名分がある。謝罪をする義務は私には無い。」

 

攻撃を戦斧で塞ぎつつ、白金鎧はそう言葉を発する。

 

「おっ、やっと口を開いてくれたか。まぁ、まだ口を割ってはいないがな。おまえさんがどこのだれかによって、このあとのオイラの行動が変わってくるが、おまえさん、何者なんだ?」

 

 

「…」

 

*ヨロイはダンマリしている。

 

「まぁ、だいたいはわかるが。おまえさん、アーグランドのやつか?」

 

 

「…っ!」

 

*ヨロイはとてもおどろいている。

 

「おどろいてるな、そしてドラゴンだな?」

 

「おんし、目が狂ったのでありんすか?どう見てもドラゴンには…」

追い付いたシャルティアがそうツッコミを入れるが…

 

「…何故分かった?」

 

「ヴェッ!??」

 

「ドラゴンのニオイならかぎなれてんだよ。ながくいっしょにいたからな。まぁオイラはハナなんてないがな。なにせ、オイラはスケルトンなんでね。」

 

 

「…」

 

とうとうシャルティアも白金鎧もダンマリを決め込む。

 

 

「おいおい、おしゃべりはなしってか?」

 

「違うでありんす!さっきの話でおど…少し考え事をしていただけっ!そんなにお喋りがしたいなら、妾が相手になるでありんすよ、サンズ?」

サンズに『清浄投擲槍』を向けながらそう言葉を零すシャルティア。

 

「ひとに『清浄投擲槍』むけながらいうヤツのセリフではねえだろ。まぁ、オイラがヒトではなくスケルトンだからか?」

 

 

「この…っ!いい加減一発位は食らいなんし!」

 

必中効果付きの攻撃まで何故か避けられる有様に、シャルティアが痺れを切らす。

 

「ざんねんだが、おことわりだ。こんなにてんきもいいのだから、みんなでヴァンパイアのBBQたいかいなんてどうだ?まぁ、おまえさんには『粗挽きソーセージ』としてさんかしてもらうがな。俺のブラスターで一方的に焼かれてみないか?」

 

 

「お断りでありんす。誰が好き好んで炎属性と聖属性の青白い炎に炙られるものでありんすか!」

 

そう、ガスターブラスターの青白い炎には炎属性と聖属性、つまりアンデッド系、悪魔系、暗殺者系等、カルマ値が悪になりやすい職の者達の弱点が付けるようになっている。

そこに『終末の寄生木(ミストルティン)』のカルマ値善への極ダメージ効果も付与。

シャルティアと白金鎧・ツアインドルクスがサンズを突破する事は絶望的なのだ。

 

「hehe、それだけじゃないぜ?『闇属性』と『竜属性』もプラスな。オイラのこうげきはほぼすべてのヤツにとおるぜ。そう、アンデッドもドラゴンもヨロイもまとめてねんしょうできるといっておこうか。」

アンデッドの特権『闇属性』負のエネルギーの付与に加え、ガスターブラスターの元の土台は『骨の竜(スケリトル・ドラゴン)』。

竜の吐息(ドラゴンブレス)に付与される『竜属性』も付いてくる!

本当にどうしようもない、防ぎようが無いのだ。

 

「…」

(この者達は明らかに危険だ。できればこの鎧を爆破し、出来る限りのダメージを与えたい。だが、スケルトンと吸血鬼に上手く魔力を削がれ、二体同時に爆破するタイミングをも逃した…!…まさかっ!このスケルトン、まさかわざと私と吸血鬼と自身の距離を的確に操作して…?くっ、向こうの方が一枚上手だったか…っ。)

 

サンズの行動の真の狙いに気づき始めるツアインドルクス。

 

「おいおいまただんまりさくせんか?いいかげんまともにかいわしてほしいぜ。」

 

 

「っ…」

 

 

「分かったでありんす!おんしは差し詰め、何処かの竜の操作する鎧、といったところでありんすね?」

 

先程のサンズと白金鎧の会話から白金鎧の正体にようやく気付くシャルティア。

 

「おっと、バレちまったようだなぁ?そして、そのヨロイのいろからして、おまえさん、『白銀』か?」

 

どうやらサンズは白金鎧の正体を全て見破ってしまったようだ。

 

「…っ!」

 

 

「すこし動きが鈍ったな?図星だろ。まぁ『白銀の鎧』、『強さが異様に高め』、『十三英雄の中に()()()()姿()()()()()()()()()ということ』、けっていだになるある『情報G』、これらのようそをふまえればおまえのしょうたいはおのずとつかめてくる。まぁ、そっくりさんがいればまたべつだがな。」

 

サンズは種明かしを行う。

遂に正体が完全にバレた白金鎧、ツアインドルクス・ヴァイシオン。

彼はアーグランド評議国の奥地で悔しさに歯噛みするのであった。

 

「…確信した。お前達はこの世界を穢す者だと。…お前達の目的は何だ?この世界との共存か、それとも傍観か、それとも侵略か…」

 

 

「まだこっちにきてまもなくてな。まだきめてないぜ。ただ、オイラはへいわにいきたいとおもっているぜ?まぁ、せんのうなんてされちゃあはなしはべつかもな?」

そう言って右目に青い光を灯すサンズ。

 

「…」

白金鎧は黙ったまま回避に専念するようになる。

 

 

「!くるか…選手交代、だな。そんじゃ、オイラはこれでにげさせてもらうぜ?後は頼んだ、ヒーロー。」

不意にサンズは何かを察知する。

踵を返し、シャルティアと白金鎧に背を向け、骨の竜達と骨を撤収させる。

 

「なっ!逃げるつもりでありんすか!絶対逃がさない!『究極の妨害(アルティメット・ディスタープ)』!」

咄嗟に魔法を掛けてサンズをこの場に留めようとするシャルティア。

 

「『魔法耐性』あげてくれてサンキューな。スキル『空間操作』」

魔法使用を不可にする呪文も、スキルを使った転移をするサンズには無意味である。

 

「ちぃっ!逃げられた…だが敵はもう1人残っているでありんすねぇ?」

残った白金鎧を見やり、ニヒルな笑みを浮かべるシャルティア。

 

「…悪いが、私も退避させてもらう。『世界い…「『次元断切(ワールドブレイク)』」…くっ!」

 

彼女の笑みを見てか、『世界移動』に必要な魂が溜まったのか、術を発動させようとした白金鎧。

しかし、寸での所で何処かからの斬撃により、鎧の外殻に甚大なダメージを受け、魔力が雲散してしまう。

 

「不可視化のヤツは…逃げたな。ちっ!追っている暇はねぇな。」

そう、シャボンヌが参戦したのだ。

 

「『清浄投擲槍』二本でありんすえ。これでも喰らいなんし!」

シャルティアはシャボンヌを攻撃対象に定め、白金鎧共々排除しに掛かる。

 

「おっと、『次元断層』、危ないではないか。そんなにペテロが恋しいのか?」

それを軽々と防ぎつつ、白金鎧への一芝居を打つシャボンヌ。

 

「ペテロ…様!そうだわ!旦那様はご無事でありんすか?!」

 

シャルティアも良い感じに乗ってくれた模様だ。

 

「いや、かなり手痛くやられたのか、まだ傷が治らない。あと一つ、ジュリアに聞きたいことがある。昨晩お前とペテロを襲った犯人は分かるか?」

 

シャルティアへ本題を切り出す。

犯人は本当にスレイン法国なのか、それともまた別の存在なのかを知るために。

 

「そこの鎧によれば、スレイン何ちゃらの特殊部隊?だと。話は終わりでよろしいでありんすか?」

 

この瞬間、スレイン法国のギルティがシャボンヌの中で確定する。

 

「あぁ、有難う。では、シャルティアよ。鎧共々一度倒させて貰おうか。」

 

そして、本当の戦闘が始まる!

 

「お受け致しんす。では、本気でかからせていただくでありんすえ?」

 

向かうシャルティア。

瞬間、シャルティアはシャボンヌへとスポイトランスを一直線に突き出す。

しかし、これは《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》で容易く受け流されてしまう。

続いてシャボンヌがもう一本の剣《ドラコグリードソード》を引き抜くと、白金鎧共々滅多斬りにしようと掛かる。

シャルティアは上手く回避し、被弾を最小限に抑える。

白金鎧は守りの体制に入り、ダメージを軽減された。

しかし、狙いはダメージの蓄積では無い。

剣撃に誘導されたシャルティアと白金鎧は背中合わせとなり、しかもシャボンヌの剣の可動域内に入る絶好の位置に移動させられていた。

 

「…そこかっ!『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 

二人が十分に近い距離になったと同時に『次元断切(ワールドブレイク)』を叩き込む。

 

「『不浄衝撃盾』!」

「…何っ?!」

しかし、シャルティアに完全に塞がれてしまったようだ。

 

(っ!『自己時間加速(タイム・アクセラレータ)』、うおっと、危ねぇ〜な!シャルティアの不浄衝撃盾のこと忘れてたわ…)間一髪、跳ね返ってきた『次元断切(ワールドブレイク)』を避けたリューシ。

その為、体制を崩したシャボンヌへシャルティアが特攻する。

しかし、剣道で死ぬほど鍛えられた反射神経が反応、瞬時に剣をシャルティアの槍に合わせる。

刹那、体制を立て直し、自らの剣と交差するスパイトランスをシャルティアごと力任せに薙ぎ払う。

運良く、シャルティアはノックバックされたようだ。

 

「『竜爪』、そして『龍牙』!」

 

ノックバックされたシャルティアと、『次元断切(ワールドブレイク)』のダメージがまだ回復出来ていない白金鎧に、立て続けに武技を放つ。

 

 

「『不浄衝撃盾』!また追加効果の衝撃波を躱した?!、『死せる勇者の魂(エインヘリヤル)』!」

何とかスキルを使い、この攻撃を受け切るシャルティア。

「『遁逃』、『庇保』!」

 

一方、白金鎧も始原の魔法を使い、上手く攻撃を受け流す。

 

「そして『馘首(ディケイプ)』、『宝樹龍牙突 壱式』!」

 

しかし、それだけでは止まらないシャボンヌの猛攻。

更に二つの斬撃が2人を襲う。

そして、るろ◯に剣心文化は近未来の社会の中でもまだ根強く残っていたのだった。

 

「ぐっ…『不浄衝撃盾』、『第四位階死者しょ(サモン・アンデッド・4)…グバッ…な、は、早い!エインヘリヤルごと私の魔法を無効にするなんて…」

 

馘首(ディケイプ)』は完全に防ぐものの、続く『宝樹龍牙突 零式』は防げず、しかもクリティカルを引き、今の攻撃でシャルティアのHPを2.5割削る。

 

「『庇保』、『防…』…間に合わなかったか。」

 

一方白金鎧も始原の魔法のリキャストタイムによって防げず、損傷率は3割。

 

「まだスキルの打ち合いの段階だぞ?『善なる極撃(ホーリー・スマイト)』、『焼夷(ナパーム)』」

 

そう、まだシャボンヌは只の攻撃スキルを使っただけに過ぎない。

聖騎士(パラディン)の職を取っているリューシは信仰系魔法も使用可能なのだ。

シャボンヌの指先から眩い光の束が一直線にシャルティアへと向かう。

空中から豪炎が吹き出し、白金鎧を巻き込みながら空中へと吹き上がる。

 

「ガァあっ!」「…『自己再生』」

 

モロに直撃し、2人の体力はもはやレッドゲージにまで差し掛かっていた。

 

「くっ、はあああ!!!魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)朱の新星(ヴァーミリオン・ノヴァ)』!」

 

ここでシャルティアが光を力技で押し除け、シャボンヌの眼前で炎系第九位階魔法を唱える。

 

「ぬぅ、おめでとう、初ダメージだ、シャルティア。そして終わりの時だ。『七の御使い(セブン・トランペッター)』」

 

喰らったシャボンヌはHPが中々削られるが、お返しと言わんばかりに今度は第十位階の信仰系魔法を唱える。

 

「精霊達よ、あの者達を攻撃せよ。」

 

召喚された7体の其々属性が異なる精霊達が、シャルティアと白金鎧へと向かう。

 

「『第十位階死者召喚(サモン・アンデッド・10th)』!」

 

それに対して、シャルティアは破滅の王(ドゥームロード)精霊髑髏(エレメンタル・スカル)を其々二体ずつ召喚する。

しかし、それに引き換えシャルティアのMPは底を尽きてしまった。

 

「くっ…」

 

一方、白金鎧は7つの武器を操作し、何とか精霊達二体に応戦する。

幸い、精霊達の攻撃はシャルティア側に矛先が向いていた。

やがて召喚された者達の熾烈な争いは、お互いの相討ちで決着がつく。

 

「精霊達は全員相討ち、か。良くここまで粘ったな、シャルティアよ。だがこれで終わりにしよう。『道具操作 (オペレート・オブ・マジックアイテム)』」

 

満身創痍のシャルティアを更に追い込めるように、リューシは更なるスキルを使用する。

 

「な!私の蘇生アイテムが!」

 

ペロロンチーノより授かりし蘇生アイテムの突然の喪失。

辺りを見渡すシャルティア。

シャボンヌの右手には、その無くなった蘇生アイテムが握られていた。

 

「このスキルは相手から一部を除いて全ての相手の持つアイテムを一つだけ任意に選んで自分の物に出来るという物。まぁ、一つだけだから使い勝手は悪いが、このスキルでお前から蘇生アイテムを取り上げることなど造作もない。」

 

スキルの解説が終わると同時に、《剣聖のオーラⅣ》を展開し、剣を握り直すシャボンヌ。

 

「くっ!最後の『清浄投擲槍』!」(ヤバい、来る!!)

 

危険を感じ、咄嗟に最後の攻撃スキルを使用するシャルティア。しかし、もう時は既に遅し。

 

「引導を渡してやろう。『次元断層』、そして、魔法最強化(マキシマイズマジック)束縛(ホールド)』、『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 

シャルティアの『清浄投擲槍』を防ぎつつ、動きを制限する為の『束縛(ホールド)』を放つ。

束縛(ホールド)』は瞬時に解かれるも、その後にくる『次元断切(ワールドブレイク)』は到底受け切れる筈も無く。

 

一閃。

 

シャボンヌの放った斬撃は、シャルティアの心臓を上半身、更にはその場の空間ごと真っ二つにした。

同時にシャルティアのHPゲージは0を指し示す。

 

「い、一撃…わ、私を…こ…れが…偉大…なる………至高なる…御方………ペロ………ロン…………チーノ…様………ごめ…ん…なさい…傷……付け……て……しま………」

 

瞬時にシャルティアの身体は淡い光に包まれる。

意識が薄れ行く中、シャルティアは身体が完全に消滅するまでペロロンチーノのことを想った。

 

 

「すまない…シャルティア………さて、残るはお前だけだ。」

 

シャルティアへの謝罪。

しかし、時は待ってはくれない。

逃亡を謀った白金鎧の眼前に回り込み、退路を完全に塞ぐ。

 

(まさか消耗していたとはいえ、強大な吸血鬼を一撃とは……不味い…体力がまだ『世界転移』を使えるだけ回復出来ていない…ここは…)

白金鎧、ツアーに取っては最悪の盤面。

せめて『世界転移』分の魂が回復するまで時間稼ぎをすることしか手は無かった。

 

「…お前は『ぷれいやー』だな?」

 

普通のプレイヤーであれば、この単語を聞いた瞬間、「何故分かった!?」という反応を示す。

しかし、シャボンヌは違った!

 

「何のゲームのプレイヤーかな?」

 

相手の鎧の正体がツアインドルクスだと気づいていたシャボンヌ。

相手を混乱させる嘘情報を刷り込ませつつ、時間稼ぎも潰せる良策を取る。

 

「…」(げーむ?…ぷれいやーに種類見たいな物は無かったと思うのだが…まさか、ぷれいやーはぷれいやーではなかったのか?それともブラフか?)

効果は覿面だ。

ツアインドルクス・ヴァイシオンを困惑させることが出来た。

 

「話は終わりか?『竜爪』」

 

黙り込み、動かなくなった白金鎧に更に一撃を喰らわせる。

 

 

「……」

しかし、操作権を放棄されたのか、

白金鎧はその一撃を喰らった瞬間、力無く空中から落下する。

 

 

()()()な。」

 

 

鎧の残骸を一瞥しつつ、

苦々しげに空を仰ぐシャボンヌだった。

*1
シャボンヌはリューシ、ヘロヘロはヘイロー、ペロロンチーノはペテロ、シャルティアはジュリアーナ、ナーベラルはナーベソリュシャンはソリュシア、セバスはセバスチャン

*2
次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)』の上位版で、WI所有者であるか使用者の討伐でのみ術が解ける。範囲内ではスキル使用者自身以外は転移不可である。しかし、その他の手段で空間からの脱出は可能である。強力なので、効果範囲がその分狭くなっている。



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20.オリ設定part2

サンフリ最高!

 


 

 

 


フリスク 人間種


 

種族レベルーーー無し

 

職業レベルーーー主人公(プロタゴニスト)lv10

        

 

主人公(プロタゴニスト)の職業スキルにより、ケツイを扱いセーブとロードを駆使し戦う。

(設定文より抜粋)性別不明だが恐らく女性?一人称は私。

普段は寡黙で無表情( ̄ー ̄) 。

地下世界にある時突然落ちてきた人間の子供であり、地下世界の住民達が受け入れた二人のニンゲンの内の一人。

その後、シャボンヌの召喚実験失敗に巻き込まれて地下世界もろとも転移してきた。

アズゴア王の守護の為に地下世界を封鎖&隠蔽する為に一時的に外の世界に出れなくなってしまった。

基本モンスターにも人間にもフレンドリー。

めっちゃ良心の塊。

しかし変態や悪人には嫌悪感を示して誰かの後ろに隠れてしまう。

又、トリエルの家に住まわせてもらっていて、何もない日にはよく彼女の膝の上で寝ている姿が見れる。

休暇中のアンダインや定期的に来るパピルスと共に料理勝負することもしばしば。

あらゆる場の雰囲気に適応・対応でき、いつも地下世界の住民達を取りまとめている。

 

ちなみにサンズが好きである。

 

 

 


キャラ 人間種


 

種族レベルーーー無し

 

職業レベルーーー主人公(プロタゴニスト)lv15

        暗殺者(アサシン)lv5

        殺人鬼(マーダー)lv10

        殺人狂(バーサーク・マーダー)lv15

        他lv55

 

 

現在活動休止中

(設定文より抜粋)性別女性らしい。

フリスクと同性ということしか未だ不明。

一度重病によって死亡したが、フリスクの存在とケツイの力で不完全だが蘇った。その為か、多くの感情が欠落している。

性格は残虐かつ空虚。

顔に貼り付けられた笑顔の仮面。

片手にナイフを持ち、縦にパッチリ見開いた目には赤い光が灯っている。

前の世界を滅ぼした後、やる事が無くなり、世界軸を渡ってフリスク達の地下世界を襲撃しようとしたタイミングでシャボンヌの召喚実験失敗に巻き込まれた。

召喚後シャボンヌによって鎮圧され、一時的にパピルスの牢屋に幽閉され、瞬時に釈放。行方を晦ませている。

もし緑と白の縞模様のシャツを着た片手にナイフを持っている少女?を見かけたら直ぐに逃げよう。

何故ならキャラは常に誰から構わず視界に入った者全てを殺そうと思っている。

サンズは地下世界の住民達が襲われていないか秘密裏に警戒に当たっている。

アズリエルとは親友であり、フラウィーがアズリエルだとは知らない。

 

 


フラウィー 異形種 汚花種


 

種族レベルーーー不明lv2(覚醒時lv10)

 

職業レベルーーーソウル・ブラスファーマーlv8(覚醒時lv10)

  (覚醒時他lv80)

 

皆さんご存知クソ花。

「バカだね。この世界では殺すか殺されるかだ。」

(設定文より抜粋)残虐かつ狡猾な性格。

花の肉体の為に感情を持つ事が出来なくなった。

地下世界の住民達の優しさをくだらない物だと考えている。

前まではセーブとロードの力を持って好き放題し尽くしたが、飽きて力の行使を止めていた。

それ以来何事にも無関心で無気力になってしまった。

その為か、フリスクが地下世界に落ちてきた時に、フリスクにその力を奪われてしまった。

力を取り返そうと躍起になっていた時、シャボンヌの召喚実験失敗に巻き込まれて転移。

ニンゲンのソウル(覚醒に必要。今のところはフラウィーしか使うことが出来ない専用アイテム)をドサクサに紛れて盗み、現在行方不明に。

今のところは表立って何かをしようとはしてないみたいだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本名は…

  Asriel Dreamer

トリエルとアズゴアの一人息子であった。キャラの死から埋葬の為に地上に出て重傷を負わされた為に死亡した。しかしアルフィーの実験により感情が欠落した状態で花の姿で蘇ったのがフラウィーである。

 

 

 


トリエル 異形種 みんなのママ種


 

種族レベルーーー山羊人女王(バフォルク・クイーン)lv10

 

職業レベルーーー魔術師(ウィザード)lv15

        シールド・ロードlv15

        賢人(セージ)lv10

        料理人(コック)lv5

        女司教(プリエステス)lv10

        他lv55

 

 

(設定文より抜粋)性格は言わずもながら、優しさカンスト、穏やか、虫も殺せない、母性溢れる聖母。

それ故に過保護っぷりも凄まじい。

フリスクのことを我が子のように可愛がり、my childと呼んでバタースコッチパイを作ってくれている。

彼女のお手製バタースコッチパイは美味過ぎてワンチャン逝ってしまうレベル。

フリスクはそれを毎日一回食べられる権利がある。ズルい。

本当は実の息子がいたのだが、地上のニンゲン達に重傷を負わされ、最期を看取った過去から、ニンゲン達を恨んではいた。

しかし、ニンゲンの中には良心を持った者達もいることを知っていた為、純粋無垢で優しいニンゲンの子供は守りたいと考えている。

フリスクはそんなトリエルの考えを理解して、あえてトリエルと親子関係になることを望んだ。

サンズとはジョーク愛好家仲間として、彼女が遺跡を一人で守っていた頃から仲が良い。

実は元地下世界の王女であり、息子の一件からアズゴア王と対立してアズゴアと離婚。

隠居先であり、ニンゲンの子供が穴から降ってくる【エポット・ホール】の直近にある遺跡を守護している。

 

 

 

 


アンダイン 亜人種 寿司ネキ種


 

種族レベルーーー半魚人(マーフォーク)lv10

 

職業レベルーーー戦士(ファイター)lv10(覚醒時ランサーlv10)   

        ホーリー・ランサーlv10

        ホーリー・ロードlv10

        真なる英雄(トゥルー・ヒーロー)lv60分

 

真なる英雄(トゥルー・ヒーロー)の効果として、ピンチ時にレア職に職業レベルが置き変わる最終スキルがある為、不明がlv60分ある。普段の真なる英雄(トゥルー・ヒーロー)は攻撃バフ以外の効果がないゴミ職業だが…

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁ!!」

(設定文より抜粋)情熱的で豪快な性格。

悪く言うとガサt((((殴

正義感に溢れている。

一流の槍使いであり、王の身辺護衛役のロイヤルガード隊長である()騎士である。

パピルスに武術とミートソーススパゲティの作り方を伝授した人。

自分で作ると食材が必ず爆発する。

皆の姉御肌。憧れの的。

シャボンヌより地位的には少し下だが、それ故に職務も地下世界の見回りなので、積極的に地下世界の住民達と仲良くできる。

なんでも器量良く教えてくれるぞ!(なお料理はorz…)

ニンゲンは嫌いだ!

我々モンスターの敵!許さん!

でも良いニンゲンもいるよね!

ということで認めた人間以外は排除する傾向がある。

寿司ネキを認めさせるのは生半可ではいかないぞい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼女こそが真なる英雄(ヒーロー)である。

 

 

 

 


アルフィー 異形種 アンダイン好き種


 

種族レベルーーー蜥蜴人(リザードマン)lv5

 

職業レベルーーー錬金術師(アルケミスト)lv15

        鍛治士lv15 

        技術者lv3

        ゴーレムクラフトlv10

        他lv15

 

(設定文より抜粋)メタトンの生みの親。

大のアンダイン好き。

何時もアンダインのことが頭から離れず、アンダインと結婚したいとまで考えている。

大人しく恥ずかしがり屋な性格の為、長く研究所内に引き篭って、TVプロデュースやアニメ製作、パパルガメイトの世話等をしていたが、フリスクと親友になってからは良くアンダインとフリスクの家に遊びに行っている。

フリスクは、アンダインへ彼女がアタックする手伝いをコッソリと行っている。

しかし、恥ずかしがり屋のせいで告白までには至っていない。

その為、よくフリスクとパピルス、サンズ、時折メタトンを交えて作戦会議を開く。

アンダインは大好きだが、他の人達の事も大切に思っているようだ。

又、過去にソウルの実験の過程で事故が起きてしまい、その時の被害者がパパルガメイトとフラウィーである。

その実験の後始末を今もアルフィーは行っている。

同時に、先代この研究所を設立し、Coreに落ちて行方不明になった()()()()の行方も追っている。

 

 


メタトン 異形種


 

種族レベルーーー重鉄動像(ヘビーアイアンマシーン)lv15

 

職業レベルーーーシェイプシフターlv5

(normal form)ガーディアンlv10

        シールド・ロードlv10

        ブラック・ガードlv10

        エッセンス・プロテクションlv5

        ローズ・ガーダーlv5

        プリンスlv10

        アクターlv10

        エンターティナーlv5

  (EX form)マスター・ボマーlv10

        エンターティナーlv5

        ガンナーlv10

        シューターlv10

        狙撃手(スナイパー)lv10

  エレメンタリスト(フレイム)lv10

  エッセンス・プロテクションlv5

        他lv10

  (???)????総計lv80

 

 

シャボンヌが他のNPCより特に課金エフェクト等を費やしたヤツがコイツである。

(設定文より抜粋)元は只のソウルだったが、アルフィーのとある研究中に偶然彼女と出会い、魂の宿る身体(ボディ)を製作して貰って出来たエンタメロボット。

地下世界に置けるトップTVアイドルであり、彼のブランドは通称METTA。

彼のファンは地下世界に住む殆どのモンスター達である。

何故かアンダインは彼の事を好ましくは思っていないよう(アイツは少し派手すぎる!)。

アルフィーとは出会った時から親友として繋がっており、彼女の為に何かをしたいと思っている。

アルフィーの恋を密かに応援しており、アンダインにアルフィーをくっ付けようと接触しようとしているが、アンダイン側が頑なに拒絶している。

結局何時もTVショーに出演する為にアンダインとの交友関係をあまり広げられないのもあり、アンダインとの関係は微妙…

まぁアルフィーとアンダインがくっ付けばそれも無くなるだろうが。

 

 


アズゴア 異形種もふうさ王種


 

種族レベルーーー山羊人王(バフォルクロード)lv10

 

職業レベルーーーランサーlv5

        ロイヤル・ランサーlv5

        ウォーロードlv10

        ロード・オブ・ア・キャッスルlv10

        ホーリーロードlv10

        他lv50

 

 

(設定文より抜粋)地下世界を統べる悲劇の王、アズゴア。

彼は地下世界の王であり、ホーンバーグ内の絶対かつ最高権力者である。

しかし、性格はとても温厚で堅実であり、優しさに溢れている。

そんな彼は、過去のある事件がきっかけとなり、妻とは離婚し、二人の子供を失い、気づけば周りは黄色のお花達だけが残された。

そんな辛い過去を二度も繰り返さぬよう、必死で努力している。

毎日日課のお花の水やりと手入れは怠らず、国務もきちんとまっとうする辺り、流石は王様である。

王様としてのアズゴアはとても優秀であり、民達からは不満の一切がない程。

しかし、運だけはわるい王様である。

国の方針は一昔前までは人間達の排除であったが、7人目の人間、フリスクの影響により、地下世界の国民達は人間の存在を完全に排他する事は無くなった。

その為、地下世界は悪しき人間達の排除へと方針を転換する。

今は亡き二人の子供の分までフリスクには生きて貰いたいらしく、王城でのお茶会を定期的に開く時は離婚された妻共々かなら誘う事にしている。

元妻とは復縁を望んでいるが、彼女側が復縁を拒否しており、未だ叶わず。

 


 

ー他地下在住NPCー

名称  レベル(lv)
ナプスタブルーク50
グリルビー45
マフェット89
グライド76
ぷんすかミュウミュウ85
レッサードック54
イヌッス65
イヌッサ70
ファイナル・フロギー65
ナキムシャ65
ランシー68
グッナイト65
マジク65
ロイヤルガード平均約89
パイローブ46
ゴッゴメン45
ワンボー36
いきがりバード35
ジェリー28
ツンデレ飛行機24
かざんちゃん24
にっこりマネキン34
グレータードッグ29
アーロン35
デカカビ22
オワライチョウ20
ギフトロッド25
チビカビ12
ミ=ゴス10
ベジトイド8
ルークス5
フロギー3
ナキムシ3
テミーホォイ!!テミーさんだよ!

…etc

 

 

p.sー

 

ティルル

 

 

 

 

職業レベルに竜司祭(ドラゴン・クレリック)、ホーリー・パニッシャー有り。

 

 

サンズの隠されたヒミツ

 

 

 

 

ワールド・ガーディアンを取得につき、xxxの感知が可能。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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21.各国情勢

シャボンヌvsシャルティアの戦いが終わった頃、

陽光聖典の消滅、謎の冒険者『白妙の漆黒』の活躍は、世界の有力者達の耳に入る事となる。

 

 

【リ・エスティーゼ王国 玉座の間】

 

 

「で?その冒険者リューシとやらが犯人の捕縛を行い、王国戦士長はそれの回収をしたと?」

 

 

「不味いですぞ、陛下。これは陛下採択ミスと国民に思われるやも知れません。」

 

 

「陛下!そろそろ王国戦士長を改任する方がよろしいかと。まともに帝国の騎士一人捕まえられぬような者を陛下のお側に置くというのは些か問題がありますぞ。」

 

 

「父上!私めならば帝国兵を国家諸共成敗出来ますぞ!是非私に出兵の命を!」

 

 

「バルブロ第一王子の仰る通りです!ここはこのポウロローブにお任せあれ。帝国への例年通りの戦が無くなりますぞ!」

 

 

「待って下さい。帝国には帝国四騎士の存在と、フールーダ・パラダインが居ます。」

 

 

「それがどうした。我が精鋭兵団の力で、帝国四騎士なんぞ捻り潰してやるわ!パラダインだかパラダイスだか知らんが、たかが魔法詠唱者(マジック・キャスター)一人に負ける我等ではありませんぞ。」

 

 

「それか、そのリューシとやらを使えば良いではないか。所詮ペテン師だろうがな!」

 

 

「誠にその通りでございますねぇ。」

 

ハッハッハッ!

 

 

(ぐっ…私への中傷ならまだしも、国王陛下やリューシ殿を愚弄するとは…)

 

 

(馬鹿か!フールーダ・パラダインの使用可能魔法位階は第七位階、魔神レベルだ!それもそうだ、かの十三英雄のメンバーとの交流が今もあるとか。かの評議国のツァインドルクス・ヴァイシオン直々に魔法を伝授されているような奴、高々剣を少し習った程度の五千人程度でまともに相手取れる訳が無かろう!近づく間もなく瞬殺だ!

そ・れ・に!

聞いた話では冒険者リューシは森の賢王を無傷で屈服させ、その従者の魔法詠唱者(マジック・キャスター)二人は五体の魔法完全耐性持ちの骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を消し炭にしたという化け物だぞ!

仲間にする所か愚弄とは、本当にコイツらはどういう思考回路をしているんだ!)

 

 

(この国が崩壊する間際、評議国辺りにラキュースずてで亡命したい…その為には貴族派閥を増長させ、内部崩壊する間際に評議国への逃亡をラキュース達にお願いするか。いや、それは帝国のジル君が満面の笑みで私を逃亡中に殺しに掛かるでしょうから、ここはやはりそのリューシという冒険者を上手く利用するしか…取り敢えずはラキュース達を王都に戻しましょう。リューシという冒険者はやがてこの王都にやってくる。もう布石は用意してありますからね。待っててね?クライム。私達は幸せになるのよ。絶対に。)

 

 

【リ・エスティーゼ王国 麻薬畑跡地】

 

 

「ったく、こんなにライラ栽培しやがって。八本指共が…」

 

 

「仕方がないことだ。奴等の勢力がそれだけ広いということ。今は地道に力を削ぐしか方法がない。」

 

 

「絶対許さないんだから…麻薬で人を壊し、殺人で秩序を壊し、賄賂で国を壊す、そんな奴ら…」

 

 

「鬼ボス、顔まで鬼にならなくていい。」

 

「鬼ボス、遂に完全体に。」

 

 

「貴方達は煩い!」

 

 

「鬼ボス、怒る。」

 

「赤鬼。」

 

 

「あぁそれとよ、来る時に店の童貞が何やら興味深い情報持ってきてな。」

 

 

「そういうことは早く言え。」

 

 

「聞かれなかったから温存していただけだぁ。それより、エ・ランテルに現れた新人が凄いらしいぜ。」

 

 

「ん?その話…リグリット(あのババア)から伝言(メッセージ)で聞いたな。確か、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)五体を二人の魔法詠唱者(マジック・キャスター)で倒したという輩だな。」

 

 

「え!?それってかなり凄くない?」

 

 

「あぁ、最低でも、フールーダの爺並みは実力があるだろう。しかし、それだけでは終わらないんだ。」

 

 

「それ以上というのか?」

 

 

「チームのキャプテン、リューシとやらが法国の指名手配犯を討伐したらしい、まだこれだけなら許せる。だが、その逃亡犯が元漆黒聖典の第九席次だったという。そいつに無傷で勝っている。」

 

 

「え?それって…漆黒聖典でも手も足も出ない強さの奴ってこと?」

 

 

「あぁ。それも、法国に丁度訪問に来ていたツアーからの情報。間違いないだろう。」

 

 

「それってまさか…」

 

 

「プレイヤー?」

 

 

「あぁ、その可能性が高い。とにかくそいつらとの接触を頼まれているんだ。法国の特殊部隊、陽光聖典の失踪に彼等が関わっている可能性もあるからな。ここ王国の辺境の村付近で『白妙の漆黒』が最初に目撃されたのと同時期に同じ場所周辺で失踪を遂げるなんて怪しいにも程がある。」

 

 

「八大魔神みたいな悪しき『ぷれいやー』でなければ良いけどね。」

 

 

「それはそうとよ、『白妙の漆黒』の面子の中にはモモンって言う童貞ボウズがいるらしいぜ!」

 

「何歳?美形?」

 

「10歳半位って聞いたが…そして美少年」

「決めた、その子◯◯◯◯(ピー)して◯◯◯(ピー)して」

「止めろーー!絶対に手を出すんじゃない!」

 

「…何で?」

 

「ティナ!イビルアイの話聞いてた?!警戒対象なのよ!」

 

「ペロペロは?」

「駄目」

「クンカクンカは?」

「やっちゃダメでしょ!」

◯◯◯◯◯◯◯(ピーピピーピーピー)◯◯◯◯(ピピーピー)

「モロアウトーーーーー!!!!」

 

「その気持ち、痛い程分かる…他のメンバーは?」

 

 

「ナーベっつー黒髪の美女」

「ナーベたんペロペロしたい」

 

「あとリーダーのリューシ、こっちもワンチャン童貞かも…いや、欲張り過ぎだな、やはりここはモモン一点狙いか。待ってろよ童貞〜!!」

 

「お前らもか!ティア!ガガーラン!」

 

「ホント勘弁してーーーー!!!!」

 

 

【バハルス帝国 皇帝自室】

 

 

「そうか、ロウネ。報告ありがとう。」

 

 

「それではこれにて失礼します。」

 

 

「あぁ、それと、イジャニーヤに伝言を伝えて置いてくれ。『監視依頼がしたい』とな。」

 

 

「はっ!」

 

 

(さて、爺からの情報で、ぷれいやーなる存在が100年置きの来訪をしており、近頃やってくる可能性が高いということは分かっている。突然現れたミスリル級冒険者『白妙の漆黒』、匂うな。彼等はぷれいやーか?動きからして限りなく怪しい。突然現れ、2日でミスリル級到達など、前代未聞。我が国に招き入れ、どんな存在なのか見極めなくてはな。なるべく悪い印象を持たれないようにするには…やはり奴隷制等は廃止すべきか?『白妙の漆黒』は正義の集団だ。奴隷制など悪い印象しか持たれんだろう。まぁその辺はおいおい考えておこう。とにかく今は情報だ。どれだけの量の情報が集まるかで此方の出方も変わる。我がバハルス帝国を最低限守れればそれで良いのだ。)

 

 

【竜王国】

 

 

「ビーストマン達に未だ良からぬ動きは無いな?宰相」

 

 

「はい、ドラウ様。9年前と変わらず、ビーストマン側は攻撃を仕掛けて来ません。」

 

 

「国の犯罪者も減るし、ビーストマン達にツアインドルクス殿が『ぐるめのすすめ』なる書物を大量に配布して和平協定が締結するとか、前代未聞過ぎたなぁ。」

 

 

「ご安心を、既にこの国は貴方のお姿で前代未聞ですから。」

 

 

「ちょっ、お主馬鹿にしとるな?!お主馬鹿にしとるだろ!このドラウディロン・オーリウクルス竜王国女王を!好き好んでこの姿な訳無かろうが!」

 

 

「年齢偽装ババa…ゲフンゲフン唯一女王の間違いでは?あと、国防担当の冒険者クリスタル・ティアの動員には必要なので仕方がない。諦めて下さいね。ドロワ様。」

 

 

「お主今とんでもなく失礼なこと言ったであろう!あと修正先も馬鹿にしとる呼び名だろう!最後なんてもろ悪口じゃろうが!取り消せ!取り消せよ!今の言葉!」

 

 

「取り消せだと?断じて取り消すつもりは無い、です。」

 

 

「女王にタメ口使う部下、お主しか見た事が無いぞ!クビじゃクビ!不敬罪でクビ!」

 

 

「よろしいので?私はこの国の財政、内政、外交、軍事等、全ての行政を司っております。私の代わりなどこの国に居ないのですよ!」

 

 

「ぐぬぬ…コイツ口先だけじゃなく、実際凄い優秀過ぎるからクビに出来ない…貴様!謀ったな!」

 

 

「何のことですかね?」

 

 

「ぬがーーー!!!誰か助けてーーーー!!!」

 

 

この先、どうなりますことやらw

 

 

【スレイン法国】

 

「陽光聖典の失踪はかの王国の戦士長からも裏付けが取れている。人間守護を掲げる我等への挑戦。早急に冒険者リューシは全戦力を持って倒すべきだ。」

 

 

「いや、そういう訳では無い可能性があります。陽光聖典の失踪前、辺境の村を襲っていた偽装兵が帰って来ていたそうで、罪の無い村人を殺したことで怒りを買っていたことが彼等からの最後の報告で分かっています。ニグン隊長は彼等をまず森から秘密裏に殺し、それからガゼフ・ストロノーフを威光の大天使(ドミニオン・オーソリティ)様のお力で排除する手筈だったそうで、結果的に彼等は冒険者リューシ一行の怒りを買い、誅殺されたとも考えられます。」

 

 

「先に襲ったのが陽光聖典だとしたら、冒険者リューシをプレイヤー様と仮定すれば、プレイヤー様への攻撃により、とんでもない天罰が降るやもしれません。プレイヤー様とのファーストコンタクトに失敗したと考えることも出来ます。考えうる限り最悪の可能性です。」

 

 

「いや、八大魔神のように我々の神に相対する者だった可能性もある。まだ最悪とは決まっておらん。」

 

 

「陽光聖典の今回の任務内容にも問題があったと。これからは無償の民への無闇矢鱈な殺傷は控えるべきだ。」

 

 

「もしかしたら、それが原因やも知れんしな。現にエ・ランテルでの彼等はまさに人類善。アンデッド達から民を助ける行いに他ならない。それに、我等の国の反逆者を我等に代わって成敗してくださったそうだ。」

 

 

「元漆黒聖典、クレマンティーヌだったか。冒険者リューシに敗れ、彼等の仲間となったそうだが、元から繋がっていた可能性もある。十分に調べてから接触を試みた方が良いだろう。」

 

 

「何を言うのですか?我等人類は未だに安定した生活という物を手に入れられておらん。犯罪、亜人や異形による襲撃、貧困、無神論者達の冒涜。一刻も早く神をお招きし、我等の上に立って貰わなければこの2、3年で人類が滅ぶやも知れません。評議国も我等との世界盟約を破り、我が国に攻めた来るやも知れません。安全な土地等何処にもないのですよ。」

 

 

「待ちなされ、ベレニス殿。まだ冒険者『白妙の漆黒』がプレイヤー様とは断定出来ない現状、自国の犯罪者の擁護、陽光聖典の突然の失踪、これらを考慮すれば、我が国がプレイヤー様をお招きするには戦力が足りぬ。悪しき神だった場合、抑えられる程の戦力が評議国込みでやっと。善神だったとしても、国力の低下した我が国を偉大なる御神にお見せする訳にもいかんじゃろう?今は陽光聖典の再編成と彼等の捜索、そして冒険者リューシ一行の動向を観察することを行った方が良いと思うのじゃよ。」

 

 

「確かにその通りですなぁ。ジネディーヌ殿の案に儂は賛成する。」

 

 

「私も同意見です。今の我が国はエルフ国との戦争もあり、疲弊してしまっている。国力の向上に今は努めましょう。」

 

 

「急いては事を仕損じる。神を早急にでもお招きしたいお気持ちは分かる。儂も同感じゃ。しかし、人類の存続の為には失敗は許されん。ここは手堅く行こうではないか、ベレニス殿。」

 

 

「私とした事が、少し急ぎ過ぎましたね。確かに冒険者リューシ一行が悪神の現界した姿である可能性がある。我等がスレインの地を他の神が侵略するような事が有れば、我らは大罪人として歴史に名を刻むことになるでしょう。慎重に行くこともやはり重要という事ですね。ジネディーヌ殿の意見に賛成です。」

 

 

「うむ、我が国の特殊部隊の失踪への関与の疑い、犯罪者の擁護、この二つは見過ごす事が出来ませんな。私もジネディーヌ殿に賛成ですね。」

 

 

「陽光聖典の不在、火滅聖典はエルフ共の鎮圧、水明聖典、風花聖典双方は諜報に回している為戦力には期待が出来ん、そして、我が国最強の特殊部隊、漆黒聖典を行かせている以上、神に対抗しうる存在が枯渇している今の我が国では、到底神を抑える事も招く事も不可能。時期を見て判断する方が良い。ジネディーヌ殿の案を全面的に肯定する。」

 

 

「満了一致により、ジネディーヌ殿の原案を可決とします。」

 

「「「「「「異議なし!」」」」」」

 

 

「これにて、第…」

「会議中失礼します!大変です!我が国の特殊部隊、漆黒聖典の一行がトブの大森林内で何者かの襲撃に遭い、現在2名が死亡、カイレ様を含む4名が重症を負う被害が!作戦の続行が困難になりましたぁ!」

 

「何だと?」

 

 

【漆黒聖典 野営地】

 

 

「何てことをしてくれた…神聖呪歌。」

 

「申し訳ありません…」

 

 

「あの圧倒的な力の流れ、あの莫大な魔力量を保有しつつも弓矢と槍にも長けていた…あの超常の力、考えられる存在はぷれいやー様のみでしょう。」

 

 

「分析感謝する。もしもあの亜人達がぷれいやー様達だったのならば、事態は最悪だ。カイレ様は重傷を負われ、庇おうとして殺害されたセドランとエドガール。そしてぷれいやー様のお怒りも買った事になる。」

 

 

「その線が濃厚でしょう。」

 

 

「とにかく、この事は国に素直に報告すべきでしょう。ぷれいやー様のお怒りを買ったともなれば、国に何かしらの良からぬ影響が起きるやもしれません。」

 

 

「しかし、我々の失態が露見する事に…」

 

「ん〜、それはナイでしょうねぇ。ワタシタチのソンザイはあくまでヒミツ、報じればたちまち国の混乱をおおいに招きかねない…あくまで上層部のカタタチだけに知らせればイイとオモうよ〜?」

 

 

「次は無いぞ、神聖呪歌。もう二度と指示を無視した行動は取らぬよう。さて、我々のすべき事はただ一つ、ぷれいやー様への嘆願だけだ。まだぷれいやー様とは断定出来ないが、何としてでも最悪のケースは阻止しなければならない。破滅の竜王の討伐を持って、償うべきでは無いか!一時国に帰還次第、破滅の竜王の討伐に当たるぞ。」

 

 

「はっ!」

 

(この件を番外が耳にすれば最悪、法国から飛び出しかねない。全く…この先嫌な予感がするな…)

 

 

【アーグランド評議国】

 

 

「久方振りじゃの?ツアー。」

 

 

「…」

 

 

「どうした?しばらく見ないうちに言葉を忘れてしまったのかのぉ?」

 

 

「…まさか。かつて共に旅をした旧友の姿を見て、少し感動に打ち震えていただけさ。相変わらず君は変わっていないなぁってね。」

 

 

「六百年以上もの間此処で生きているお主がよく言う物よ。ところで、わしの仲間の鎧は何処に行ったかい?」

 

 

「…あの時のことはもう謝ったじゃないか、もうそのことで弄るのは止めてくれないかい?」

 

 

「わしが満足するまでするに決まっておろう、カッカッカッ!」

 

 

「全く…僕の鎧は今さっき壊されたばかりだ。」

 

 

「お主の鎧を壊せる者等、この世界では数える程しかいない…百年の折り返しじゃな。」

 

 

「そうだね。そして、今回のぷれいやーは一筋縄では行かないかな。」

 

 

「お主がそう言うということは、余程の強者揃いということかの?」

 

 

「それもあるし、何故だか彼等は以前のぷれいやー達とは違う気がするんだ。」

 

 

「どういった点が違うのか教えてはくれんか?」

 

 

「彼等は賢明だ。度が過ぎるほど、ね。そして仲間想いでもある。そして何より、この世界の最強種は自画自賛かもしれないが、竜種に相違はない。そして、竜種と彼等が戦争になれば、確実に我等竜種は壊滅するだろう。」

 

 

「そ、そこまでの相手なのか?」

 

 

「匂いを感じたんだよ。同族の濃い匂いを。恐らく彼等は竜のことを知り尽くしている。竜と触れ合い、戦い、弱点や性格まで全てと思った方が良い。今回の僕の敗因は思考を容易く読まれた事にある。そして悟ったよ…僕だけでは勝てない、とね。」

 

 

「ふむ、スレイン法国と手を結ぶのが良かろうな。それとも十三英雄の再結成かの?カッカッ、冗談じゃ…」

「両方とも、だね。」

 

 

「ほう、思い切ったのぉ。それとも、そうさせる何かがそ奴らにはあったということかの?」

 

 

「その通りだよ、リグリット。そして懸念していたあのリューシという冒険者もやはり、ぷれいやーだったようだ。それに新たな謎のスケルトンも現れた…あのぷれいやー達は確実にヤバい。直感がそう言っているんだ。だから、僕はこれからあのぷれいやー達の居場所を探る為、また新たなる旅に出なければならない。…リグリット、」

 

 

「一緒に来てくれないか?って言うじゃろうなぁ、お主のことじゃから。そしてワシが断る理由等何処にあるというのかのぉ?」

 

 

「…君という仲間を持てたことに今とても感謝しているよ。少し悪戯好きだけど。」

 

 

「カッカッカッ!悪戯好きで何が悪い!何事も楽しければ良いのじゃよ。」

 

 

「果てしない道のりになりそうだな。」

 

 

「お主はこの穴倉で寝そべっているだけじゃろうが。歩かされるこっちの身にもなれや本体。」

 

 

「本体って呼び方やめてくれ…全く、君は本当に全くだよ。」

 

 

【???】

 

(hehe、シャルティアはオレのことをシャボンヌにはなせなかったようだな。まぁいまバレるとのちのちめんどうだ。いまはせんぷくがよいだろう。しっかしまさかツアインドルクス・ヴァイシオンとせっしょくとは、オレはなかなかうんがいいようだな。)

 

 

 

(さぁ、コチラのつよさはじゅうぶんしってもらっただろう。ツアインドルクス・ヴァイシオン、スヴェリアー・マイロンシル、常闇の竜王(ディープダークネス・ドラゴンロード)七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)、オムナードセンス・イクルブルス、ケッセンブルト・ユークリーリリス、ザラジルカリア・ナイヘンウルト、リグリット・ベルスー・カウラウ、『漆黒聖典』第一席次、番外席次、『青の薔薇』のイビルアイ、ラキュース・アルベイン・アインドラ、『朱の雫』のアズス・アインドラ、『バハルス帝国』のフールーダ・パラダイン、ジルクニフ・ファーロード・エル・ニクス、『リ・エスティーゼ王国』のガゼフ戦士団、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ、『天空城』…憂慮すべき存在は五万といるな。さて、そいつらがどう動くか楽しみだぜ…)

 

 

 

 

 

 

(オレは何でもするぜ?オレの誰も死ななくていい世界を守る為ならな。)

 



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22.アニメ一期終了!そして…

1話でまとめようとしたら詰め込みすぎた…







〜シャルティア戦より三時間経過〜

 

《リューシサイド》

 

 

【エ・ランテル 冒険者組合】

 

シャルティアとの戦いが終わった後、冒険者組合へ謎の吸血鬼討伐の報告を入れに行った。

普通ならばそんな謎の吸血鬼を討伐した!なんて言われても信用に欠けるだろう。

しかし、アウラが偶々捕縛した()()を投下している。

此処でアダマンタイト級の称号を勝ち取る事が最大の山場だっ!

 

 

早速組合の扉を開けると、受付嬢が何かキラキラした目でこっち見てくんだが…

アンタ最初僕を冷たくあしらって無かったっけ?

彼女に依頼を尋ねようとする前に、彼女から組合長がお呼びですと言われ、そのまま僕たちは組合内の一室に案内される。

(案内中受付嬢から何か色仕掛けみたいなことされたが無視だ無視!)

部屋のドアノブを捻れば、冒険者組合組合長プルトン・アインザックと、魔術師組合組合長テオ・ラケシルが布石のイグヴァルジ率いる『クラルグア』に鬼気迫る勢いで事情聴取している姿が目に飛び込んでくる。

ククク、計画通り。

イグヴァルジ君には予め都合が良くなる魔法(記憶操作)を施してあるからねぇ。

 

 

「それで、君はその吸血鬼の余りの恐ろしさに組合へと逃げ帰ったと?リューシ君達『白妙の漆黒』がこのまま帰還しなかったらどうするのかね?ミスリル級冒険者の先輩としてのプライドは無いのかな?君には。」

 

あれ?テオ・ラケシルってこんな毒舌キャラだったっけ?

イグヴァルジ君涙目何だが…

 

「な、なんでい!お前らはあの吸血鬼を直に見ていねぇからそう言えるんだ!アレは人智を超えたバケモンの中のバケモンだ!!オレ達が到底敵う相手ではなかった!」

 

あぁ、可哀想に(どの口が言う)

 

「ラケシル殿、先程の貴殿の発言は、吸血鬼の調査を依頼したのは我々だ。その吸血鬼の調査を行い、今こうして無事に生還し、我々に吸血鬼の恐ろしさを伝えてくれたイグヴァルジ君に失礼だと。」

 

余りにも辛辣なラケシルを諫めに掛かるアインザック冒険者組合組合長。

 

「うむ、すまなかった、イグヴァルジ君。さて、ともなれば、『白妙の漆黒』の安否が気になるところだ。無事討伐出来たのならば良いが…」

 

たった今部屋の扉を開けた存在に気付けや。

 

「組合長殿、その心配は杞憂です。」

 

イグヴァルジは項垂れてるわ、ラケシルとアインザックは俯いて目を瞑ってるわで一向に気づかず仕舞いでいるので、こちらから声を掛けてみる。

ラケシル、アインザック、イグヴァルジのトリオが目にも止まらない速さで顔をこちらに向けて来る。

いや怖い怖い。

一斉にこっち見んな。

 

「おおっ!リューシ君!!」「生きていたのか…!吸血鬼は討伐出来たのか!?」

 

予想通りの質問が来たな。

プランA展開。

 

『マジでやるんですか?』

 

モモンからの不安を煽るような伝言(メッセージ)

だが、ここはやるしか無い!

 

「はい。奴は我が宿敵、ヴァンパイア・ロードと呼ばれ、母国で大虐殺の限りを尽くした吸血鬼女王『ホニョペニョコ』。」

 

 

「ホニョ…ペニョコ…聞いたことがないが、大虐殺とは」

 

 

「私の母国を壊滅に追いやった最大の要因。大魔皇ヤルダバオトと結託し、王都イリオスの住民10万人の内、4分の3を配下と共に殺害して回った忌まわしい歴史の事ですよ。」

 

 

「そんな話は聞いたことが無いが…」

 

 

「でしょうね。何せ我が母国は他国との交流は一切取らず、外交は一部の限られた国としか行っていませんでしたから。本当は私の口から母国の事を話せば、国家反逆罪となりたちまち死刑となりますから。しかし、母国が崩壊した今、私の母国で起きた悲劇をより多くの人々に伝えて欲しい、その為に今こうして貴方方にお話しています。」

 

はい、どこぞのラノベ乙〜

タイトルは『国を追われたチート聖騎士、残された仲間達と共に異世界を巡る旅に出る』的な?

 

「何と…!」

 

え?

 

「そのはなしはほんとーなんだね?プヒー」

 

いや嘘だって普通分かるやろっ!

その声の主を探れば、部屋の奥でずっと座っていたらしき都市長パナソレイがこちらを見据えていた。

 

「はい。祖国に誓って。」

 

全て嘘です!

 

「パナソレイ様、野盗の討伐に行かせた冒険者達が誰一人として未だ帰還せず、蝙蝠の襲撃にあった商人の方々の証言で野盗の惨殺死体の血液が蝙蝠達に運ばれていたというもの、野盗の穴倉からその蝙蝠達が出現していたというもの、その蝙蝠達が商人からの証言より推定古種吸血蝙蝠(エルダー・ヴァンパイア・バット)の可能性が高いということ、そして今回のイグヴァルジ君率いる『クラルグア』他吸血鬼討伐に行かせた冒険者達の証言、これらを踏まえて、リューシ君の話はかなり信憑性が高い物だと思われます。」

 

え?マジ?これ俺が前世30歳の時に考えた奴のりめいなんだが?

 

「うん。じゃあアダマンタイト認めちゃえば?」

 

軽ッ!

アダマンタイトって確かこの世界最強の冒険者達に付けられる称号だぞ!

 

「パナソレイ都市長様、それは異例の無い事でして、短期間でアダマンタイト級へと昇り詰めたリューシ君達へ不信感を持つ者達が出てくるかと。」

(アダマンタイトはそんなポンポン獲得出来る称号ではないんだぞ!パナソレイは一体何考えているんだ!)

 

おぉ、此処まで心の声が透けている発言はこれまでの経験上とても珍しいぞ…

顔引きつっているし、無理に笑みを浮かべようとしているのバレバレ。

 

「まぁ、キミたちがペテン師なんかじゃ無いと私は信じているからね。アダマンタイト級冒険者になって、その腕を発揮してくれるのならそれで良いよ。くれぐれも失望させないようにね?」

(さて、君達の実力をこっちは信頼したから、それに見合う対価をこの都市にもたらせよな?)

 

こっちも思考がすぐ読めるな。

顔のニヤケ、隠し切れてませんよ。

 

「俺は…」

 

っとここで、さっきまで全くの空気だったやっとイグヴァルジが口を開いた。

こっちは何か決心したような面構えだ。

 

「イグヴァルジ君は危険な任務を生還したからこれで晴れて一ランク上になるのかな?そうですよね、都市長様?」

 

イグヴァルジに気づいたアインザックがイグヴァルジを上げにかかる。

 

「二人にはそれぞれ、アダマンタイトプレートとオリハルコンプレートを贈るよ。プヒー これからもよろしく。」

 

そしてパナソレイが側にいた使用人らしき男に一二言何かを言った後、その使用人は部屋を退出した。

 

「これからはアダマンタイト級として、皆様方の平和を外敵から守ってみせましょう。」

 

ここは綺麗事言って都市長の評価を上げるのが最善だろう。

 

「期待しているよ。」

 

 

「ありがとうございます、組合長殿。」

アダマンタイトプレート、ゲッツ!

 

それから三分後、パナソレイ都市長の使用人らしき男が部屋に入室し、都市長に小包みを渡して去る。

パナソレイ都市長はその小包みの中から人数分のアダマンタイト製のプレートを取り出し、僕、モモン、ナーベへ其々プレートを手渡ししていった。

イグヴァルジにはクラルグアのメンバー分のオリハルコンプレートが入った小包みを与え、退室を促す。

イグヴァルジは素直に小包みを握りしめながら部屋を静かに出て行く。

残されたのは、都市長、組合長二人に僕たち『白妙の漆黒』だ。

 

「さて、討伐した吸血鬼についての情報を我々に詳しく教えてくれ。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

〜それから更に八時間後〜

 

【ナザリック地下大墳墓】

 

あれからホニョペニョコのことについて根掘り葉掘り聞かれた後、証拠物の受渡し(即席で作った治癒薬(ヒーリングポーション)と髑髏像)を行ったり、アダマンタイト級登録受領書とか何とか言う書類群に署名させられたり、【黄金の輝き亭】にアインザック組合長のツケで付き合わされたり…

 

そのせいでシャルティア蘇生予定時刻を大幅に遅らせる羽目になった。

ナーベからニニャが目覚めた報告が来たので、スノーディン・ホットドッグに引き取って貰ってナーベは此方に帰還せよとの命令を下した。

ニニャへの言い訳は追々考えとくか。

今はシャルティアの蘇生をペロロンチーノさんに見せ、ペロロンチーノさんを何とか立ち直らせなくてはならない。

時刻は朝の3時、もういい加減寝させてくれ!

 

 

「シャルティアの蘇生準備は出来たか?」

 

アルベドにそう問いかけるアインズさん。

既に彼はショタ冒険者モモンではなく、スカーフを外したギルド長アインズ・ウール・ゴウンだ。

 

「はい。アインズ様のお申し付けの通りに、金貨2000枚を宝物殿から玉座の間まで運び込みました。御身の玉座の周りが金貨によって散らかる事をお許しください。」

 

そう言ってアルベドは丁寧に頭を深々と下げる。

 

「構わん。シャルティアには危険な目に遭わせてしまった責任を取る意味でもある。シャルティアの蘇生を優先せよ。」

 

「はっ!」

 

スカーフを外したアインズさんやっぱ魔王様って感じだなぁ。

と、ピリピリした空気の中、一人そんな能天気なことを考えている最中、階層守護者達の集団の中からデミウルゴスが抜け出て、こちらに向かってきた。

 

「アインズ様、つかぬ事をお聞きしますが、ペロロンチーノ様を病室からお出しして本当によろしかったのでしょうか?」

と、デミウルゴスはアインズさんへと尋ねる。

 

そう、シャルティア蘇生前に何故周囲の空気がピリピリしているのかというと、反旗を翻したシャルティアへの怒りより、ペロロンチーノの精神を此処まで痛めつけた犯人達への憎悪が理由であるだろう。

 

「案ずるな。あいつはシャルティアと共に復活するだろう。…多分

 

そう言って上座のペロロンチーノのいる方向を見やるアインズ。

 

 

ごめんよ…シャルティア……

 

見ると、ペロロンチーノが玉座と一体化していた。

 

 

〜回想〜

 

【結婚式の後 第二階層 死霊玄室】

 

ペロロンチーノはシャルティアに手を引かれながらもシャルティアの私室へと誘導されていく。

 

(待って……何だこの感じ……30路過ぎても童貞の人生に終止符を打てるというのに…シャルティアとするのに抵抗が……)

 

シャルティアは元々、過去のペロロンチーノが自分の性癖を詰め込んだ俺の嫁、過去の自分の性癖そのものと言っても良い。

ユグドラシルをあくまで二次元の物だと決めつける事が出来た先程(結婚式中)とは違い、ここは転移先の異世界。

過去の自分の性癖(シャルティア)が生きて、まさに今手を引いている。

この事がペロロンチーノの心の中で羞恥心を掻き立て、無意識にシャルティアへ拒絶反応が出てしまっているのだ。

 

「着いたでありんす、ペロロンチーノ様!ようこそ!私達の愛の巣へ!」

 

死霊玄室の真ん前まで来たところで、ペロロンチーノはついに耐え切れずに立ち止まり、シャルティアの手を離す。

 

「い、いや、ちょっと待って…」

 

 ランニングして疲れた時に、相方に行う『タンマ』のポーズ を取り、死霊玄室の扉を開こうとするシャルティアを静止するペロロンチーノ。

 

「?どうしましたか?ペロロンチーノ様。」

 

不思議に思ったシャルティアはペロロンチーノにそう尋ねる。

 

「…ごめん、やっぱり、駄目だ…」

 

「え…」

 

ペロロンチーノの口から出る明確な拒絶。

シャルティアは茫然とし、しばらくの間、目を見開いた状態から数ミリも動かなくなった。

顔色はどんどん青くなっていく。

 

「あ…」

 

そんなシャルティアの様子を見、先程の自分の台詞を思い出し、ペロロンチーノも自分のしたことで青ざめる。

 

「…そんな…私の何処がお気に召さなかったのでありんすか…?」

 

 

「い、いや、そういう意味じゃなくて…」

 

悲しげにペロロンチーノへと尋ねるシャルティアと、弁明しようとシャルティアに向かうペロロンチーノ。

 

「私が…何か嫌われるようなことを…」

 

 

「いや、そうじゃない、シャルティア。」

 

 

「なら、何故…」

 

 

「シャルティアと長いこと会わなかった…放って置いたんだ!…最後にモモンガさんとシャボンヌさんが居なければここに来ることも無かっただろう。下手すれば、お前の事もそのまま忘れてしまっていたかもしれない。そんな俺に…その…」

 

ペロロンチーノはこう考えている。

シャルティアを長い間放置し、別のエロゲをし、仕事に行き、疲れ果てて帰る。

モモンガが発したメッセージウィンドウを開かなければ、きっとそのまま彼はユグドラシルのことを忘れていただろう。

シャルティアの夫を名乗る権利は、実際無いのではないか、と考える。

そして過去の自分の醜態を思い出し、更にシャルティアを拒絶する。

 

「ペロロンチーノ様、私はそのような些細なこと、全っ然気にしていませ…いないでありんす!」

 

 

「無理なんだっ…いざ此処まで来ると、心が痛むんだっ!」

 

シャルティアへと己の愚かさを伝え、シャルティアを拒絶するペロロンチーノ。

シャルティアはその言葉を受け、静かに俯く。

 

「…どこにも行かないで…

 

 

「えっ…」

ペロロンチーノの耳にシャルティアの呟きがはっきりと届く。

彼女のいつもの廓詞は無くなっている。

 

「もう二度も何処かに行かせたくないんです…!また離れ離れになるのは嫌なんです!お願い、何処にも行かないで…!!」

 

ペロロンチーノがユグドラシルを一時の間去った後、シャルティアはただ一人、死霊玄室の奥に佇みながら、創造主(ペロロンチーノ)を待ち続けた。

もう二度と帰って来ないのではないか、そんな思考を忠誠心で掻き消し、ユグドラシルの終わりまで待ち続けた。

指の先まで動かない身体を動かして、ペロロンチーノのいるリアルまで行きたいと考えつつ、ひたすら待ち続けた。

いつしか、どのくらいの時間が経ったか分からなくなり、ただ無心でペロロンチーノを待ち続けた。

待ち続けて、待ち続けて待ち続けて、ようやく彼女は報われた。

最終日の1ヶ月前にペロロンチーノが再び現れた時は、自身の動かない身体を呪った。

そして最終日、今までの心配を全て掻き消すかのような褒美、至高なる御方、それも自分の創造主の正妻となる、を賜った。

彼女は、もう離れ離れにはならない、正妻としてペロロンチーノ様と歩んでいくんだ!と頭の中では分かっていた。

しかし、ペロロンチーノがシャルティアを放って置いた期間は、余りにも長かった。

 

 

「…」

 

 

「我儘を言っている事は承知です!でも、またペロロンチーノ様が何処かへ行ってしまうのではないかと、ペロロンチーノ様に行って欲しくないと、不遜にもそんな事を考えてしまう自分がいるんです!だから…だからっ…」

 

そしてシャルティアは泣いた。

目からは大粒の涙が夕立の如く溢れ出て行く。

ペロロンチーノはやっと、シャルティア(置いてかれていた者)の気持ちを理解する。

 

(女を泣かせるなんて、男失格だな…俺は。)

 

そして、ペロロンチーノはこう思うのだった。

やっぱシャルティアは可愛いなぁ、と。

 

「…すまなかった。夫婦の契りを交わした相手に、永遠を誓っておきながらこの体たらく、許してくれ、シャルティア。」

 

未だ目をうるうるさせているシャルティアを抱き寄せ、彼女の顔がペロロンチーノの胸に当たるようにする。

 

「…えっ?え?ぅえ!?」

 

突然のことに気が動転し、身をよじるシャルティア。

 

「もう絶対に離しはしないよ、ずっと一緒だ。」

そんな彼女の顎に手を当て、勢いのままペロロンチーノは彼女と唇を重ねる。

 

「〜〜〜〜んっ…」

 

一瞬彼女の目が驚きに見開くも、また瞬時に戻る。そして今度は幸せそうに目を瞑り、頬を数分前のように上気させながら、彼の唇の味を堪能するのであった。

 

直前にペロロンチーノに渡した《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》はしっかりとペロロンチーノの身体を人間の物に変えた。

シャルティアはこの後ペロロンチーノから残りの《人間化の指輪(リング・オブ・ヒューマン)》を手渡される事だろう。

そして二人はそのまま死霊玄室の奥深くへ突入し…

 

 

 

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〜〜

《天の声サイド》

 

シャルティアへ、ずっと一緒だ、と約束したというのに、シャルティアを守る事が出来なかった自分を呵責。

あの時何故俺は危険を承知でシャルティアと共に偵察に行ってしまったのか、と後悔。

懺悔しようにもその相手のシャルティアは死亡による消滅。

トドメにシャルティアを殺したのは自分ではなくシャボンヌ、

味方にまで迷惑をかける自分の不甲斐なさに絶望。

もう土と一体化してしまうのではないかというくらいにペロロンチーノは落胆していた。

 

 

「シャルティアへの精神支配がまだ解けていなかった場合、最悪のケースとしてペロロンチーノ様に危害が加わる可能性が考えられます。」

 

気まずそうに視線を直ぐ戻したアインズ。

デミウルゴス含め、この場にいる全てのNPC達がとっっっっっても心配そうに、かつ悔恨の念を瞳に宿しつつ、上座のペロロンチーノを見遣っていた。

デミウルゴスはアインズが視線を元に戻したことを察し、直ぐにアインズへと向き直る。

そして彼の背後には微かに憤怒の炎が見える。

 

「それでは逆に問おうか。何の為に私がお前たち(NPC達)を呼んだと思うか?」

 

デミウルゴスからの怒りの感情に耐えつつ、アインズは努めて平然に彼にこう返答した。

悪戯っ子のようにデミウルゴスの肩を数度叩いた後、全配下達に向き直り、彼等を眼窩の赤い光で見据える。

 

「…アインズ様…!」

 

 

「私はお前達皆を信じている。それに、我が友への攻撃などこの私が断固として許しはしない。かと言ってシャルティアも守るべき大切な存在だ。だから、シャルティアを何としてでも止める。例えナザリックの総力を掛けてでも、な。」

 

下僕達が言葉の意味を理解し、歓喜に打ち震える。

アインズが言い切ると同時に、階層守護者達が続々とアインズの元へ集結していく。

 

「勿体ナキオ言葉。コノコキュートス、至高ナル御方々へ手出シナド断ジテサセハシマセン!」

 

その中の一人、コキュートスが真っ先に口を開き、自身の忠誠心を示す。

 

「ふふ、ありがとう、コキュートス。さて、今一度この場にいる全守護者達に告ぐ!今この時より、我等の命をお前達に預ける。我々に忠誠を誓う身であるならば、その忠義を行動で示すのだ。付いて来い!我が愛すべき守護者達よ!」

 

 

「はっ!」

 

と、その時、不意に玉座の間の扉が開け放たれ、慌てた様子のティルルと、落ち着いた様子のサンズが(前者は転がり込むように、後者は不自然な程普通に)こちらに向かってくる。

 

「リューシ様、遅れてしまい申し訳ありません!」

 

まずシャボンヌの前に辿り着いたティルルが謝罪を口にする。

 

おいおい、いったいどういうことなんだ?シャルティアちゃんがあやつられたってのは?

 

次いでサンズ。

彼は今の状況を楽しんでいるかのように明るくこちらに問い掛けをしてくる。

 

「来てくれたか、ティルル、サンズ。悪いな二人共、報告がギリギリになっちまって。」

 

そう言いながら申し訳なさそうに頭を掻くシャボンヌ。

 

「とんでもありません!」

 

he、別にいいぜ。それでどういうことなのかおs

「ありがとう、二人共。「おいコラ、まだオイラのし「これで各員集結完了だ。始めてくれ、アインズよ。」

 

 

「あ、あぁ。それでは、始める。シャルティアよ、復活せよ!」

 

アインズは《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を積み上げられたユグドラシル金貨の山へと掲げる。

突如金貨の山は溶け始める。

金貨の山はたちまち黄金の波へと変わり、眩い光を放ちながら、アインズの眼前の一箇所に集合していく。

やがて、黄金の波は一人の吸血鬼の少女の形へと変形していく。

光が明滅し、後に残ったのは、全裸の第一〜第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンが目を瞑り横たわる姿だけだった。

 

「アインズ様、シャルティアへの精神支配は無事、解除されたようです。」

 

 

「ありがとうアルベド。さて、シャルティアを起こしに…」

 

アインズがシャルティアの元へ移動しようと一歩足を踏み出した丁度その時、玉座の方向からガタッという音がした。

振り返れば、先程まで真っ白に項垂れていた筈のペロロンチーノが玉座から立ち上がり、ゆっくりとシャルティアへと近づいていく姿があった。

 

「…シャルティア?シャルティア!」

 

ペロロンチーノはシャルティアの姿を視認した瞬間、瞬く間にシャルティアを腕に抱き上げていた。

その瞳からは滝のような涙が流れ出ている。

 

「ごめんな…俺が…不甲斐ないせいで…お前をっ…」

 

ペロロンチーノはシャルティアの額に頭を付けながら、泣いた。

シャルティアへ泣いて詫びた。

しばらくの間、ペロロンチーノはむせび泣いていた。

彼の泣き声が玉座の間に響き渡る。

やがて、シャルティアは彼の腕の中で目を覚ます。

 

「…、ペロロンチーノ様?わ、妾は一体…?何で玉座の間に?ペロロンチーノ様は何故泣いておられるのですか?」

 

目が覚めた瞬間、シャルティアの視界に映るのはギャン泣きのペロロンチーノと自分を取り囲むようにして立っている他の階層守護者達。

シャルティアは困惑気味にペロロンチーノの頭をホールドしながらそう尋ねる。

 

「シャルティアよ。」

 

シャルティアの背後から声が掛けられる。

 

「ア、アインズ様…如何なさりましたか…?」

 

その声の主、アインズへと向き直るシャルティア。

 

「すまなかった。全ては私の落ち度だ…」

 

アインズはその場にしゃがみ込み、完璧な土下座をする。

目の前でその光景を目にした階層守護者達が次々にアインズを止めにかかる。

 

「あ、頭をお上げ下さい!!アインズ様!」

 

「アインズ様!ダメです!いけません!」

 

「この一件で一番御心を痛められたのは他ならぬ至高なる御方々でございます!寧ろシャルティアが御身に頭を垂れるべきです!」

 

「シャルティア…また更に罪を重ねるつもりかしら?」

 

「アインズ様の御頭を下げさせるなんて…!アンタバカじゃないの!?」

 

「アインズ様!オヤメ下サイ!」

 

「あ…あわわわわ…シャルティアさん…殴っていいですか?」

 

ナンダコリャタマゲタナァ

 

「…これもしかして止めた方が良いの?(にい)?」

 

アインズは土下座の態勢から身体を起こすと、階層守護者達に向け、片手を上げる。

「待て」の合図だ。

 

「待て、お前たち。これで良いのだ。部下の身に降りかかる危険に関して理解しておきながらむざむざ任務に行かせた上司が何の音が目無しとは、虫が良すぎる話だ。」

 

 

「アインズ様…」

 

 

「アインズs、ここは現場で浅慮な行動を指示した俺にこそ非がある。俺も皆に謝罪しなくてはならない。すまなかった…っ!」

 

 

「ペロロンチーノ様まで…!」

 

 

「…シャルティアよ、何も身体に異常は無いか?」

 

 

「無い…と思うでありんす、リューシ様。」

 

 

「そうか、なら良いのだが…」

 

 

「あ、あと…あの…ペロロンチーノさま…」

 

 

「何?どっか痛い?大丈夫?」

 

 

「え、えっと…そうではなく…」

 

 

「手…当たってます…」

 

 

「へ?…」

 

見れば、シャルティアの下腹部にペロロンチーノの左手が…

 

「グブフォ!」

 

 

『ペロロンチーノォーーーーーーーー!!!!』

 

ペロロンチーノ、死す。

 

「て、あーーーーーーー!!!!!」

 

 

「ど、如何した!?シャルティア!」

 

 

「胸が、胸が無くなっていんす!!」

 

この親子は場の雰囲気をシリアスからギャグに変えることがモットーなのか?生きがいなのか?

 

階層守護者達は、シャルティアのふざけた発言に呆れ、そしてキレる。

 

「シャルティア!アンタね、至高なる御方々へ攻撃なんて不遜過ぎる、というかもうとんでもない真似をしでかしといて、何ふざけてんのよ!!!」

 

 

「な、何よ、チビす…私が…至高なる御方々を攻撃?…ウソ…そんな…違うって言って欲しいんすよ、チビ助…」

 

 

「残念ながら、アウラが言った事は全て事実だ。不敬、不遜を通り越して冒涜的な行為に手を染めるとは…至高なる御方々の御慈悲が無ければその余りにも無礼な行動を罰し、守護者という地位も失われる所だったというのに…全く…シャルティア、貴女はこんな時でもおちゃらけるとは、余程我々に抹されたいようですね。」

 

「貴女のそのめくら滅法に事を進める短絡的な思考が、今回至高なる御方々の煩慮を生み出す結果に繋がったのよ!恥を知りなさい!」

 

「不忠ノ臣、一刀ノ下ニ切捨テルベシ。至高ナル御方々ノオ気遣イヲ不遜ニモ無下ニスルトハ万死ニ値スルゾ。」

 

「い、一緒に、や、やっちゃいますか?コキュートスさん。」

 

「アウラちゃん、あんな風に怒るんだ…」

 

zZZ

 

階層守護者達が口々にシャルティアを責め立てる。

サンズは寝ている。

 

「お願いだ。シャルティアの事は責めないでくれ。」

 

いつの間にか起き上がってきたらしきペロロンチーノが、シャルティアを庇おうと守護者達に嘆願する。

あと鼻血拭け、お前。

 

「な、何故ですか、ペロロンチーノ様!またシャルティアが御身に敵対するやも…」

 

 

「ハンゾウが何者かの襲撃にあったと分かった時点で撤退すべきだったにも関わらず、敵の情報を引き出す為に何者かとの接触を図った結果、同行させたシャルティアが代わりに洗脳された。つまり全て俺のせいなんだよ、この事件は。」

 

 

「「「「「…ペロロンチーノ様…」」」」」

 

確かに、ハンゾウクラスのモンスターを倒せるような者が、隠密系を見破る能力を持っていないとは考えにくい。

しかし、そのままナザリックに帰還すれば、せっかくこの世界の実力者と接触できうる機会を自ずから逃すこととなる。

ハンゾウクラスを容易に倒せる者となれば、この世界における強者の可能性が極めて高いだろう。

早期に接触し、いずれ対立するやもしれない強者の情報を収集しようとしたペロロンチーノの判断もあながち間違いではないのだ。

デミウルゴスがそう意見しようとするが…

 

「違うな、ペロロンチーノ。」

 

先に口を開いたのはアインズだった。

 

「何が違うんだ…っ!全て俺のせいなんだよ!」

「そもそもとして、ペロロンチーノがこの任務に行くことになった発端は他でも無い私だ。あの時、私が任務へ行ってくれなどと言わなければ…っ!」

「それではアインズだけが罪があるみたいな言い回しでは無いか!罪は俺にある!貴方は関係ない!」

「あるから言っているんだ!」

 

事の発端はアインズである。

アインズはペロロンチーノ達に現地の有力者の調査を依頼した。

シャボンヌに一旦止められるも、有力者の把握は急を要するとして、無理に今回の調査を決行した結果、こうして最悪の結果を招いてしまった。

アインズの胸中はとてつもない罪悪感に満たされていた。

 

「双方、今は起こってしまったことの責任を取り合うべきではない。シャルティアを洗脳した犯人、更にはあの謎の鎧と正体不明の思う壺だぞ。」

 

今まで蚊帳の外だったシャボンヌが場を収めにかかる。

 

「…すまない、シャボンヌ。私としたことが少々熱くなってしまったな。」

 

 

「そうだったな…シャルティアを洗脳した犯人…この借りは必ず返す…!」

 

シャボンヌの鶴の一声により、アインズとペロロンチーノは鎮静化する。

 

「分かってくれたなら良し。さて、今回の一件から、偵察隊のメンバーには最低一つ、ワールドアイテムを持って貰うことを厳守せよ。この世界の強者の調査は一時中止だ。情報の収集なら良いとして、こちらからこの世界の強者に接触することは禁止とする。すまないが、デミウルゴスはシャルティアに状況の説明をせよ。この後私はやるべきことがあるのでな。」

 

シャボンヌは全階層守護者達にむけて命令する。

 

「はっ!承知しましたシャボンヌ様。」

 

 

「後は戦力の確保だが…」

 

 

「それには私が良い案を持っているぞ。」

 

 

「おお、本当か!アインズよ!」

『演技疲れてきました。』

シャボンヌは竜人だが、もう就寝時間をとっくに過ぎて活動をしている。

今絶賛眠気覚まし中である。

その状況で更に俳優並みの演技を行えというのだから、いくらレベル100のガチプレイヤーといえども流石に体力が持たなくなってきていた。

 

『もう少しなので辛抱して下さい、シャボンさん。』

 

『けへ〜…』

 

 

「うむ、アンデットの軍勢だ。」

 

 

「成る程…アンデットの種族特性も考慮すれば…まさしく良案。」

 

 

「お待ちください、アンデットの軍勢を作る際に憂慮すべき事項がございます。」

 

さすデミ。

ナザリックの知謀の将の一角、デミウルゴスの頭脳レベルはやはり健在。

 

「デミウルゴスよ…申してみよ。」

 

 

「はっ!先ず、高位アンデットの軍勢を作れる者がこのナザリックにはアインズ様とシャルティアを除いて極少数であります。シャルティアは階層守護者として、アインズ様は御身が行っているこの世界の人間達の調査があり、アンデット創造には常に赴けない状況にあり、結果的に生産効率の面で問題があると愚考しました。」

 

 

「その点に置いては大丈夫だ、デミウルゴスよ。宝物殿の領域守護者である()()()に製作を依頼する予定だ。」

 

 

「成る程…その手がありましたか…!盲点でした。流石は至高なる御方々、この世界の誰よりも先を見通していらっしゃる!」

 

 

「そ、そうだ。まぁ、な。」

 

 

「ならば、素材となる生物の死体については『蜥蜴人(リザードマン)』をお使いになられるのですね!」

 

今度は二人目のナザリックの知謀の将アルベドが口を開く。

 

(?リ、リザードマン?)

アインズは困惑する。

 

 

「お、おう、そうだな…」

 

 

「でしたら、トブの大森林奥地、蜥蜴人(リザードマン)集落の襲撃を決行致しますが…」

 

 

「いや、待て。まだ彼等の使い道を見定めなければならない。」

 

アインズはアルベドを制止する。

 

「承知しました、まだ作戦の内に留めて置きます。」

 

と、デミえもん。

(至高の御方が全員ナザリックを留守にするという状況下で、デミウルゴスとアルベドは、事前の打ち合わせが出来る程の防衛態勢を整えてくれていたんだなぁ、ハハッ)

と思うシャボンヌであった。

 

蜥蜴人(リザードマン)達ガ敵対的デアレバ、今スグニデモ制圧シテ御覧ニイレマショウ。」

 

 

「あぁ、期待しているぞ、コキュートス。」

 

アインズがコキュートスに向かって優しく声を掛ける。

 

「アリガタキ御言葉。」

 

コキュートスはそれを真摯に受け止める。

 

「となると、マーレは引き続きダミーを守「ナザリック立環境省本部と呼んでくれ」…本部を守れ。アウラは蜥蜴人(リザードマン)集落の監視と、トブの大森林内の環境の変化等を報告する、この二つの任務を課そう。補佐には…エントマを同行させる。」

 

アインズの言葉にシャボンヌが一部突っかかりながら、アインズは命令を下す。

 

「畏まりましたっ!」「か、畏まりました!」

 

 

「…さて、シャルティアを洗脳した犯人についての情報を先ずは収集しなくてはならない。恐らく王国、帝国、法国のいずれかだが、王国にシャルティアを洗脳しうるアイテムがあるようには見えん。帝国、法国に其々偵察隊を派遣したいのだが…」

 

 

「法国は情報がまだ少なく、六大神という神々を国神として崇めている宗教国家であること、そして、陽光聖典はその国の特殊部隊の一つであることが今判明している情報です。」

と、デミえもん。

 

「うむ、法国に派遣した影の悪魔(シャドウ・デーモン)達の消息が途中で途絶えた件もある。偵察隊はまだ派遣せず、様子見しておくか。」

 

 

「…アインズ様、つかぬ事をお聞きしたいのですが、宜しいでしょうか?」

またまたデミえもん。

 

「申してみよ、デミウルゴス。」

 

 

「セバスは何処に居るのでしょうか?ハウスチュワードの彼が始めから姿を見せていないので少し気になりまして。」

 

 

「セバスは未だ王国の屋敷内で待機してもらっている。周囲に監視の者達を置いてな。まぁ、一言で言うと、セバスには囮になって貰っているのだよ。」

 

 

「まさか…!シャルティアを洗脳した犯人を炙り出す為!」

 

 

「その通りだ、デミウルゴス。しかし、私はセバスまでもを奴等に奪われたくは無い。セバスに接近を試みる者が現れたのならば、直ぐ様其奴らを抹殺する。その為の囮だ。セバスの周囲には高レベルの隠密系と小型モンスターを多数配置している。襲撃された際、我等が駆けつけるまでの時間稼ぎにはなるであろう。場合によってはそのまま撃破が可能だ。」

 

 

「流石は我が主人であり、世界の頂点に立たれる至高なる御方々。私めの僅小な頭脳では到底計り知れない叡智をお持ちになられる、いや、同じ秤にお乗せすることすら烏滸がましい…」

 

 

「おぉ、そ、そうだ、な。」

『いや、いや何でそうなるんだよ!俺はシャボンヌさんの考えを難しく言っただけだぞ!なのに評価の高さがエベレスト級!!お前の方が俺なんかより断然頭いいって!!!』

 

 

「では、これにて解散。シャルティアは未だ精神支配と蘇生後のペナルティが出現する可能性がある。自室でしばらくは安静にする様に。ペロロンチーノはシャルティアの介護宜しく。」

 

 

「おう!任せろ!」

 

『感情が無くなったりむせび泣いたり鼻血噴出したりそして今は元気ハツラツ、色々と忙しいな!』

 

 

濃厚なシャルティア成分を摂取した(シャルティア(裸)を触った)ので』

 

『犯罪ですね?』

『そうですね。』

『実刑判決?』

『黒一択HOY!』

『何故にラップ調?』

 

『『ではペロさん、お覚悟』』

 

『イヤー!!やめて!どうせ私の身体をこれから弄ぶんでしょう?!エロ同人みたいに!!』

 

『…』

 

『エロ同人みた『あ、二回目は結構です。』…』

 

『萎えた。さっさとシャルティア成分とやらをもっと補給してくださいな。ペロロンチーノさん。』『同感です。』

 

『やったぜ!』

 

 

「では、後のことは頼んだぞ。私は宝物殿に向かう。」

 

 

「我はホーンバーグへと向かう。ニニャへの埋め合わせが未だ済んでいないからな。」

 

 

「承知致しました、アインズ様。後のことは我々階層守護者にお任せください。では、御二方に限って無いとは思いますが、お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」

 

と、その場に跪き、臣下の礼を取るデミえもん。

 

「あぁ、ありがとう、デミウルゴス。」

 

「感謝するぞ、デミウルゴス。」

 

アインズ様の感謝の御言葉!

シャボンヌ様の感謝の御言葉!

デミえもんに効果は抜群だ!×2

「カハッ」

 

デミえもんは倒れた!

 

「あーーーー!デミウルゴスが吐血して倒れた!」

 

「デミウルゴスヨ、キヲシッカリト持テ!」

 

この後、デミウルゴスがマーレによってペストーニャの元へ搬送されたり、

デミえもんの代わりにアウラがシャルティアへ「アンタが何したか」を丁寧に罵りながら説明すると、(《ジト目で》アンタはシャボンヌ様へ清浄投擲槍を向けたのよ、御身の華麗なる剣裁きによっていとも容易く防がれていたけどね、アンタが反逆した事実は消えないのよ、分かってる?)

シャルティアがペロロンチーノに泣きながら抱きつき、アウラが悪者扱いにされたり、

コキュートスがアインズの期待しているぞという言葉だけを反芻するスピーカーと化してたり、

そんなコキュートスを正気に戻そうと躍起になっている守護者統括がいたり、

ティルルがサンズを起こすのに奮戦したりと、

玉座の間がとても喧しくなるのだが、

第五階層でブレインに稽古をつけているヘロヘロには全く知る由も無かった。






イグヴァルジ君はわざと生かされました!
イグヴァルジファンは歓喜かな?



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23.暗躍者の動向 part1

〜忠誠の儀以降〜

 

【スノーフル 店頭】

店内カウンターの奥、レジの手前にある木製の椅子に座り、一人梁に寝そべる骨がいた、サンズである。

 

それにしても、どうしたもんかね〜?

 

(いま、このホーンバーグのそとにでるのはあまりにもきけんすぎる。みちのばしょがおおすぎるからな。やはりオレのせいかくをしっていて、つよさもおりがみつきなシャボンヌとこうどうをともにしたい…しかし…)

 

 

なんでアイツはオイラを頼ってこないんだ…

 

鳥人(バードマン)黒スライム(エルダー・ブラック・ウーズ)のかんしってオレじゃなくてもできるよな!しかもそいつらがみうちだという…ハァー)

 

 

「ん?どうしたの!?サンズ!きょうはかおがいちだんとしろくなってるよ!」

 

店内奥の従業員用扉からサンズの弟、パピルスが飛び出してくる。

 

ん、気にすんな。骨の中のカルシウムがいつもよりも少なくなっているだけだ。

 

 

「nhe?それはつまりどういうことだ?」

 

 

骨がカルくなってんだよ、カルシウムだけに。」\ツクテーン/

 

 

「…いまのジョークはうまくないぞ。」

 

 

悪りぃな、ちと疲れていてな…

 

サンズはナザリックに単身突っ込んでいったとは口が裂けても言えないだろう。

 

「にいちゃんはなまけものだからつかれないんじゃないのか?」

 

 

寝てても精神的な疲れってのはたちが悪いもんだぜ?例えば…アンダインがメタトンとイチャついている夢を見た時とか。

 

 

「nhe?アンダインとメタトンがなかよくなることはわるいことなのか?」

 

 

あの二人が恋人同士になるとか、オイラには全く想像つかないぜ。

 

 

「アンダインとメタトンはこいびとどうしなのか!?それはアルフィーにさっそくほうこくせねば!」

 

…ファッ!?

 

ちょちょちょっ!ちょっと待とうな!アルフィーに言ったら多分発狂するぜ?絶対言ったらダメだぞ〜?!

 

不倫現場よりカオスになりそう(真顔)

 

「nhe?そうなの?」

 

 

そうだぜ!

 

 

「?よくわからないが、なにかいやなよかんもしてきたし、やめよっと!」

 

 

ハァー…それが一番だぜ?さてと、オイラはちょっくらケチャップを補充しに行くかな。

 

そう言って席を立つサンズ。そのまま店の出入り口の方向へと向かう。

 

「そうか!じゃあいってらっしゃい!」

 

 

ヘイヘーイ

そう言いながら出入り口を開ける。

 

サンズはそのまま店から大分離れた場所まで歩いていき、

 

ビシュンッ

 

何処かへと転移していくのであった。

 

「む?あーーーー!!!!サンズ!!やっぱもどってきて!みせ!みせ!」

 

*パピルスはとりのこされてしまった!

 

その日、ホーンバーグ内にスノーディン・ホットドッグからのパピルスの叫び声が木霊すのだった。

 

 

「…ふぅ、さーて、そっちから来ないのならばオイラから行くぞ。」

 

【ナザリック地下大墳墓 円形闘技場(アンフィテアトルム)

サンズはその入場口付近に転移した。

 

(ナザリック地下大墳墓…か、ゴツい名前は嫌いだぜ。侵入は容易いがな。)

 

それから第七階層、閉鎖されている第八階層を通り越して第九階層へと進んで行った。

 

(魔法以外での転移、隠密系のワールドアイテム、そしてオレに警戒しないなんて防衛ラインガバガバなんじゃないか?hehe、これじゃあ侵入し放題だぞ?)

 

そして、30分もすれば、執務室の前にまでサンズは移動していた。

 

(転移感知魔法には必ず穴がある。最初にオレの侵入を許したことが運のツキだぜ。)

 

「モモンガさん、俺、やっちゃいましたよ。シャルティアと◯◯◯◯や◯◯◯とか……」

 

(ファッ!?何だこの変態!?〈驚愕〉)

 

ペロロンチーノォ!

 

(ここの長、アインズ・ウール・ゴウンの自室に入ることが出来る程だから、余程の階級上位者だと思うのだが…いや、そう思いたいぜ。それとも実力を買われただけの下っ端、いや、それだったら変態ではなくても良い筈…)

 

サンズ!その人至高の御方!

 

 

「生々しい! 止めてください!」

 

(ん?口調が…あんなに寛大な骸骨魔王が…これは一体…)

アインズの口調の変化に目敏く気付くサンズ。

この時、この場にはシャルティアも来ていたが、ペロロンチーノに夢中で、アインズの口調の変化に気づかず…

 

「シャルティア、覚えて置くんだぞ。モモンガさんはウブ(純情)だ。逆レ対象だな。」

 

 

「くひっ、分かりましたでありんすえ。ペロロンチーノ様ぁ〜ん。」

 

(シャルティア・ブラッドフォールンの関係者か…そしてペロロンチーノというらしいな、理解したぜ。)

 

この後、シャボンヌとペロロンチーノが黙りこくったので、進展が全く無いと判断したサンズは、一旦執務室を後にするのだった。

 

ーーーーー

 

「もう!みせばんたいへんだったんだぞ!」

 

 

えー…ケチャップ買いに行くって言っていたよな…

ポリポリ と頭を掻くサンズ。

あの後普通にナザリック地下大墳墓から帰還できた。

ナザリック防衛責任者のデミえもんェ…

 

「nhe、それもそうか!じゃあみせばんよろしく!オレさまはシャボンヌさまのところへこのできたておてせいホットドッグたちをとどけにいくのだ!」

 

 

ヘーイ、何も迷惑掛けんなよー

 

 

「もちろんだよ!」

 

パピルスが居なくなるのを見計らい、また店外へと出るサンズ。

 

(また《オーディンの右目》を使うか。周辺地域の様子にまた変化があるかもしれないからな。)

 

そして当たり前のように城壁都市ホーンバーグ内重要施設に侵入するサンズ。

 

(やっぱガバガバ…どうなってんだここの警備…っと、『我は汝に誓う、我が祖国よ(I vow to thee, my country)』)

 

防衛システム改正不可避。

 

(ここを左、次に右っと、よーし着いたぜ。《オーディンの右目》。)

 

そして当然のようにワールドアイテムの二次効果を発動させるサンズ。

もはや拠点替えも検討不可避。

 

(前は良く見れなかったが、周辺の村の様子が少し気になる。襲われていた村は…ん?生存者?いや、これは…騎士団?)

 

ガゼフ戦士団が丁度襲撃された村々を見回っている所を目撃する。

 

(事後処理ってところか。他の村は……この村は…現在進行形で襲撃されてんな…)

 

サンズは帝国偽装兵達が村人を襲っている光景を目にする。

 

(チッ、見ていて気分が良くないな。ん?コイツら…低位の透明化魔法を自分達にかけて潜伏を行っていたのか…村を襲っていた兵士達と全く同じ格好のヤツと話しているコイツが隊長か。)

 

そして、《オーディンの右目》を元に戻すサンズ。

 

(《隠遁者の布衣(ハーミッツローブ)》を着ていれば大抵のヤツには見つからないですむ。he、ほんと性能ぶっ壊れてやがるぜ。)

 

 

(まぁ、明日のお楽しみにしておくか。しっかりとした部隊が一つでも欠けりゃぁ心配するヤツらが来るからな。まだそんな博打はしたくないぜ。)

 

 

 

 

ーーーーー

〜二章9話時点〜

【トブの大森林】

 

(パピルス、書き置きしといたから素直に待っていてくれよ…オレ…おっと読心魔法は一応警戒したかないとな…オイラは、ワンチャン帰れなくなりそうだぜ…さて、)

 

 

「エロゲーイズマイライフ!」

 

 

「いきなりどうしたんですか、ペロさん?」

 

 

「生きてて良かったと思っただけですよ。エロい俺の嫁が毎日俺にご奉仕してくれるんです!なんと言ってもエロゲによく出る性癖がてんこ盛りですよ!てんこ盛り!例えば…」

 

 

「ほんと自重して欲しいです。」

 

 

(マジで()()に付いて行けと?その内骨のオイラまで襲われそうだ…)

 

ペロロンチーノは変態、はっきり分かんだね。

 

(しかし目立ったモンスターの陰はなし…か。)

 

 

「しかしこの辺目立ったモンスターいませんね〜」

 

 

(コイツ…!オイラが見えてっ…いや、偶然台詞が被っただけか。)

 

 

(おっ、この先に何かいる。)

 

暗殺者(アサシン)レベル5の常時発動特殊技術(パッシブ)スキル『索敵』を使い、周辺より一際レベルが高い魔獣の存在と場所を捉える。

 

(北東に400m地点か…一応確認するか。)

 

度々になるが、サンズ固有の職業スキル『空間位置消去(ショートカット)』に『索敵』を組み合わせたコンボは、どんな相手でも楽々逃走することは不可能である。

というか、そもそもサンズに一度目を付けられた時点で、ソイツはもう終わったも同然である。

 

 

シュバッ

(…この獣は…)

 

目の前に寝そべる()()()()()()()()を前に、サンズはこう言葉を零す。

 

(hehe、中々可愛いな、やっぱりドラゴンはゴツいよ…シャボンヌ…

 

どうやらサンズはハムスターを気に入ったようだ。

幾ら大きさが大きかったとしても、ドラゴンよりハムスターの方が可愛いのは当然である。

 

(おっと、直ぐに戻らないとな。)

 

また直ぐに元居た場所に戻るサンズ。

 

「…ムニャムニャこの蒼い魚、中々に骨があるでござる…zZZ

 

そのハムスターこと後のハムスケは、今日も気持ち良く木の枕に寝そべる。

来たる主人との出会いは直ぐそこまで迫っている。

 

ーーーーー

 

「あれ、どう見てもヤバいですよ。」

 

 

「宗教団体の考えることは分からん…」

 

 

(…もう変な奴増えないでくれ…)

 

鳥人(バードマン)と粘体と骨が見つめる先は、怪しい法衣を着た集団。

 

(こんな大森林の奥地で何やってんだ…)

 

 

「しかし、奴等侮れません。」

 

以下略

(詳しくは第二章9話参照!)

 

 

「下手に刺激するとヤバいかもしれないですしね。ここは様子見で」

 

 

「了解〜」

 

 

パキ「あっ」

ペロロンチーノが小枝を思いっきり踏んづけてしまった。

 

「だ、誰だ?!」

 

「誰かいるのか?!」

 

バレた…

 

「なっ!あれはバードマン?!それにスライムだと????」

 

「各員戦闘準備ィーー!」

 

「ペロロンチーノォ!」

 

「すんません!」

 

(おいおい、アホかお前等?)

サンズはそう思った。

 

(というか、隠密能力に特化しているわけでもないのに敵の偵察なんてしたらまぁこうなるわなぁ。)

仰る通りです^^;

 

「『石筍の突撃(チャージ・オブ・スタラグマイト)』!」

 

「『聖なる光線(ホーリーレイ)』!」

 

ペロロンチーノ、ヘロヘロを狙った魔法により、サンズも巻き添えを喰らっ…ていなかった。

(hehe、トロいぜ。)

 

陽光聖典隊員の突発的な散弾を全て予備動作無しで楽々避け切るサンズ。

さすサン*1

 

 

「「「『第三位階天使召喚(サモン・エンジェル・3nd)』『炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)』!」」」

 

「天使を突撃させろ!『第四位階天使召喚(サモン・エンジェル・4rd)』『権天使(プリンシパリティ)』!」

 

 

方向性を変え、今度は天使召喚を行う隊員達。

 

炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)権天使(プリンシパリティ)、か。この世界はモンスターもニンゲンも、全体的にレベルが低めなのか?…はっきり言ってザコ)

 

 

「ん?炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)権天使(プリンシパリティ)?雑魚やん。」

 

ヘロヘロとサンズの思考はどうやら似ているらしい。

まだ表立って会話した事もないのに

 

「もしかして大したことない?」

 

向こうの隊長らしき男がゴミのような天使を召喚して突撃させる。

向かってくる天使を弓で射ながら、ペロロンチーノは言葉を零す。

 

 

「ば、馬鹿な!い、一撃だと…?」

 

合計30を超える天使を突撃させたにも関わらず、鳥人(バードマン)に一瞬で壊滅された。

 

「あ、ありえん…何をされたか分かったか?俺もさっぱりわからない!」

 

ニグンがポル●レフ状態に陥っている隙に、背後からサンズが忍び寄り…

 

 

(さっきから気になっていたが、この男の懐中から見え隠れしてたこの《魔封じの水晶》にはいったい何が込められてんだ?)

 

 

ニグンの懐中から《魔封じの水晶》をくすねる。

ニグンは気づかなかった。

 

サンズは道具鑑定を素早く行う。

 

(これは…うん、これ切り札なら、相当ヤバ過ぎだぞ…)

 

ヤバ過ぎって、弱過ぎって意味なんだよなぁ…

 

(ん?何やら前方から光が…)

 

サンズは前に日の神を見た。

 

 

「全員大人しくしろ。燃やし尽くされたくはないだろう?」

 

 

ペロロンチーノが全身をフル装備で覆い、両翼を広げ、黄金の羽毛を露わにする。

《ゲイ・ボウ》を構え、黄金の甲冑に身を包んだその姿はまさに太陽神。

彼は全身から黄金の輝きを放つ。

 

 

「な、何を…俺達は何を相手にしているのだ!?」

 

 

サンズは、ニグンが咄嗟に懐中に手を入れるのを視認する。

 

(ご愁傷様だな。次、お前さんはこう思う『な、無い!懐中にあった筈の《魔封じの水晶》が!き、切り札が!』とな。)

 

 

サンズは、ニグンの顔色がどんどんブルーハワイ色を通り越して蒼褪めていくのを見て、今の予言が正しかったことを悟る。

 

「3秒待つ。経ったらお前等の終わりだ。3……2……1……」

 

 

「総員、平伏せよ!」

 

 

「オーケーオーケー。力量差を把握出来たか。」

 

 

そう言って弓を下ろす鳥人(バードマン)

 

「取り敢えずは、我等を襲って来たという事で、君達は捕縛させて貰う。」

 

 

集団全種族捕縛(マス・ホールド・スピーシーズ)

 

 

ヘロヘロが妨害魔法を唱えるが、彼等には絶望的なレベル差がある為、ニグンはあっさり捕縛される。

 

 

(事情聴取後食われるんだろうな…レベル20ちょいではなかったらもっとマシだったろうに)

 

 

サンズは隊長格の冥福を祈る。

他の隊員も彼と同じ目に遭うだろう。

そう思うと、サンズはケツイを抱いた。

 

(事情聴取には立ち会わさせて貰うがな。)

 

 


 

 

 

んで、その後ペロロンチーノとヘロヘロは陽光聖典全員をシャルティアの転移門(ゲート)で送りましたとさ、めでたしめでたし。

 

 

『ヤベーわ進捗が。俺等なんて一つの村救っただけなんだが…』

 

 

もう鳥人と吸血鬼と関わりたくないのだが…

 

 

『うん?何故だ?』

 

 

『…』

 

 

『変態か…』

そう、変態だ。(二度目)

 

 

正直言って、襲われる未来しか見えねぇ

ごもっともです。

 

 

『【スノーでぃ・ホットドッグ】に閉じ籠んのか?』

 

 

マジでそれ考えている。

 

 

『取り敢えずこっちはそのガゼフ・ストロノーフと接触するつもりだ。サンズは休んどきな。』

 

 

そうさせて貰うぜ…

 

プツッ

 

「行くか。」

 

伝言(メッセージ)》を切ると、サンズはカルネ村郊外へと転移する。

そこにシャボンヌの反応があったからだ。

 

 

(パピルスにどう埋め合わせしておくか…いっそ身代わりを作る?ドッペルゲンガー辺りを使役するアイテムがあればだが…あるんだな〜これが。ちょっと宝物殿から借りるぜ。悪く思うなよ?シャボンヌ。)

 

シャボンヌさん、いい加減気付いて…

 

(ほーう、《オーディンの右目》で見た通りだな。やはりあの時の隊長っぽいヤツがガゼフ・ストロノーフか。取り敢えず…《眷属召喚》っと、)

 

 

影の竜(シャドウ・ドラゴン)達、あの戦士然の男を監視してくれ。』

 

 

(よーし、ん?誰からだ?こんな時に…転移っと)

 

 

こちらサンズ

 

 

…今大丈夫?

 

 

いまぜっさんダラけちゅうだ。…だいじょうぶだぜ?んで、どうしたんだ?フリスク。

 

 

えっと…ちょっと掛けてみたかったから…何でもない!

 

 

そうか…ま、いつでもきがるにでんわしてくれや。そうだ、フリスク、さいきんのそっちのようすはどうだ?

 

 

えっと…みんな今までは動けなかったのに、動けるようになったことくらいかな。変わった事は。あと、この前アルフィーがアンダインに

おっ!

告白出来なかったの。

oh…

 

 

そ、それで、今度一緒に…デ…作戦会議をしたいなぁって…あっ!パピルスも一緒でいいよ!

 

…デ?

 

OK、りょうかいしたぜ。パピルスにもつたえておく。アルフィーにはもっとゆうきがひつようだな。

 

 

あ、うん。私もそう思うよ。アルフィー…

 

 

フリスク、さっきからことばづかいがあやしいが、だいじょうぶか?むりしてしゃべらなくてもいいんだぜ?

 

え!?む、無理なんてしてないよ!

 

 

そうか?ならいいが…困っているなら教えてくれよ?オレはいつでも助けに行くからな。

 

っ〜〜〜!!!バタン」ツー,ツー,

 

おい?フリスク!?…でんわきれた、か。

 

 

(フリスクの最近の挙動は一体…。まぁその内向こうから教えてくれるか。急がないとな。)

 

例にもよって気付かない…

創造主(シャボンヌ)と同じく、鈍感骨であった。

*1
流石サンズの略



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24.ブレイン君の修行!+おまけ

「確かに強くなりたいとは言ったけどよぉ…」

 

(こんなの聞いてねェーーーーーーー!!!!!!)

 

「タテ、マダ倒スベキ相手ハ残ッテイル。」

 

 

「へへっ、倒しても倒してもキリがねぇ…これでスケルトン何体目だ?」

 

 

「マダ12462体目デハナイカ、単ナルナザリック・オールドガーダーダゾ。スケルトン・そるじゃーノ使用モ認メラレテイル。マダマダ先ハ長イ。」

 

 

「勘弁してくれ…腕がもうパンパンだよ…」

 

 

「ヒタスラニ、ソノ剣デ敵ヲ倒スベシ。五万体倒セヌノナラ、オマエハマダマダ半人前ダ。」

 

 

「えぇ…休みなしでこんな極寒の中、重石を付けられた腕で剣をひたすら振ってんだが…」

 

 

「ウム?コチラニ話シカケラレル程ノ余裕ガアルデハナイカ。剣ヲ振ルエ、力ノ限リ。休メバ死アルノミ。死ネバソレマデ。情ケナシ。」

 

 

「あぁぁああんまぁりだぁぁああああああ!!!」

 

 

ブレイン・アングラウス

かつてリ・エスティーゼ王国御前試合にて、現王国戦士長かつ周辺国家最強の男ガゼフ・ストロノーフに僅差で敗れた。

その後は山に立て篭り、瞑想する日々が続く。

勿論、その間も剣を振るい続けた。

その修行に2年を費やし、それ以上の技術の向上が認められなくなった頃、ブレイン・アングラウスは戻ってきた。

しかし、社会から完全に隔絶された場所での修行を続けたが為に、いざ再び人間社会に足を運んだ際、彼は2年分のジレンマによって、生きた化石状態に陥っていた。

 

「俺、職がないやんけ…」

 

職を探して街巡り。

漸く見つけた仕事は野盗の用心棒。

 

(稼げるんだったらもう何でも良いや!)

 

と安易に職業を選んだ。

 

 

 

幸か不幸か、この選択が後のブレインの人生を大きく変えることとなる。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

(野盗達の用心棒をしていたら、その守る対象の野盗達を殲滅したとかいう吸血鬼(ヴァンパイア)鳥人(バードマン)がどっからともなく現れるわ、そいつらの提案を受けたらいきなり変な暗い穴に放り込まれるわ、その穴が転移魔法の最高峰とか意味分かんねぇわ、気付いたら雪のドームみてぇな所に連れてこられたわ、その中に武士然の巨大な蟲、さしづめ蟲王か?がいきなり入ってきてこちらに話しかけるわ、その後いきなり建物の外に叩き出されて剣を構えさせられるわ、しかも吹雪の中!そして黒い粘体が途中からやってきてこちらに話しかけるわ、どうなってんだぁぁああ!!!)

 

 

ブレインは今絶賛後悔中である。

強くなれますよーと宣伝する悪徳セールスにでも引っかかってしまったのだと思っている。

しかし、ブレインはまだ知らない。

いや、考えたくないのだ。

彼が連れてこられた場所は、この世界最高峰の、強者達が集う場所だと言うことを。

 

 

「武技、『鎌鼬』!…ちょっ…もう…六万は倒しましたよ…」

 

ブレイン君、ちゃっかり新武技を習得してしまったようです。

 

「ウム、デハ休憩二シヨウ。私ハコレカラココヲシバシ離レル。ソノ間、アル御方ガ修行ヲ監督シテクダサル。私ガ心カラノ忠誠ヲ誓ウ御仁ダ。クレグレモ、絶対二、無礼ナ行イヲハタラクデナイ。」

 

 

「ハ…ハハ…分かりましたよ…絶対しません…」

 

その後、しばらくしたらからコキュートスが数人のお供を連れて、【大白球(スノーボール・アース)】から出て行く。

ブレインは雪女郎(フロスト・ヴァージン)数人と共にその場に取り残された。

 

「…さっきから気になっていたんだが、あんたらは何者だ?」

 

ブレインは近くに佇む雪女郎(フロスト・ヴァージン)の中の一体に話しかけてみる。

 

「…」

 

しかし、無視される。

 

「…無視か。」

 

(結構な美女達だが、まず間違いなく人間ではないだろうな。)

その美女達、全員貴方より強いですよー。

 

それからしばらく雪女郎(フロスト・ヴァージン)とコキュートスの関係や、コキュートスの立場等についてブレインなりに考察していると、【大白球(スノーボール・アース)】の中に黒い何かが入ってくる。

 

「ふむふむ、君がペr…すまない、噛んだ。ペテロの言うブレインなる者であるな?」

 

その黒いドロドロから声が聞こえ、ブレインは驚く。

そして、周囲の雪女郎(フロスト・ヴァージン)達がいつの間にかそのドロドロへと頭を下げているのを見て、さらに驚き、たじろぐ。

 

「うぇ!あぁ、そうだ…そうですが…」

 

良く見てみれば、そのドロドロには眼のような窪みがあることが分かった。

 

「す、スライム?」

 

ブレインはかつて低級スライムと遭遇したことがある。

ただし、この粘体からはそのスライムとは桁違いの何かを感じる。

ブレインの潜在的な感覚がこう言う。

「コイツとは絶対戦ってはいけない」、と。

 

「そうだ。厳密に言えば私の種族名は古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)と言ってだな…」

 

しかし、見た目は全く強そうではない…

ブレインは自分の感覚が狂ったと考える。

コキュートスという超越者を目の前にし続けて自分の感覚が麻痺ったと考えたのだろう。

そこで、まずブレインは軽く挑発してみることにする。

 

「あのコキュートスの旦那が忠誠を誓う相手がこの黒い粘体?ここにいる時点で実力者なのは確かだが、もっとゴツいドラゴンとかだと思っていたわ…いや、多分違うな。うん。」

 

「溶かすぞコラ」

 

「あ、すんませんでした!」

 

さりげなく『漆黒の瘴気』Ⅳ発動するヘロヘロさん容赦無いっす…

しかし、これでブレインはヘロヘロをコキュートスのような超越者だと確信した。

 

「…まぁ良いか。さて、今日から君の修行を監督するハロハロだ。」

 

 

いや名前www

「えぇ…名前…w

 

 

「今笑ったね?…」

その心笑ってるね?!

 

「す、すまんせんでした!」

 

ブレイン君!敬語慣れしてないことバレてますよ!

 

「あぁ、良いんだ。……ペェ〜ロ〜ロ〜ン〜チ〜ノォ!!!後で覚えてろ……もう、良いんだ…(泣)」

 

そう、ハロハロというなんともふざけた名前はペロロンチーノがテキトーに提案した名前である。

そしてシャボンヌとアインズが激務に追われていた為、ペロロンチーノのこの提案に反射的にyesと応えてしまったこと、その場にヘロヘロがたまたまいなかったこと、何故かアルベドがその名前を絶賛したこと、これらの偶然によって、不運にもこんな名前にされてしまったのであーる。

 

 

「な、なんかすまん…せん…」(?何か言ってた気が…)

 

これには周辺諸国最強と渡り合った天才剣士(笑)ブレイン君もいたたまれなくなり、つい素で謝ってしまう。

また、ペロロンチーノの部分は運良くブレイン君には聞こえなかったようだ。

 

「…今のこと全て忘れてな?さて、お前にこれから技術を教える訳だが…私は一対一の状況に対応する為の修行をお前につける。」

 

 

「一対一…ってことは今までのアンデットどもの大軍と戦わされたこととかは全て一対多の状況に対処する為の…?」

 

 

「あぁ、そうだ。それと実力を見るという意図もある。」

 

 

(何だ、修行内容自体はちゃんと考えられていんのか。化け物達による鬼畜の所業だったが…な。)

「ふっ…面白ぇ!…んで、俺はこれから一体何すりゃあ良いんだ?」

 

 

「…『眷属召喚』朱玉の粘体(ルビー・スライム)蒼玉の粘体(サファイア・スライム)翠玉の粘体(エメラル・スライム)

 

 

「…コイツ等を一体ずつ倒しな。順番は…一番目サファイア、二番目ルビー、三番目エメラルで。よーい」

「へ?えっ!ちょっ早っ!!」

「スタート」

 

グオッ

ヘロヘロの合図後、蒼玉の粘体(サファイア・スライム)が瞬時にブレインへと詰め寄る。

 

「あっぶね!間髪入れずに来んな!『不落要塞』!」

ガキィッ

それを剣で力の限り弾き飛ばし、ブレインは剣を一旦鞘に収める。

 

「『神域』、『神剣虎落笛』!」

ブレインへと迫るスライム、しかし、ブレインはお得意技の武技『神域』を発動させ、彼の現在の必殺技、『神剣虎落笛』をサファイア・スライムへと叩き込む。

神剣虎落笛(しんけんもがりぶえ)』は『秘剣虎落笛(ひけんもがりぶえ)』の上位版。

『領域』から『神域』へと武技を開発したブレインが編み出した、相手の頸部を一刀両断する武技である。

 

ビシャァ

スライムはダメージを受けたように体を捩らせる。

 

「手応えあり…うおっ!」

 

ジュウウウウ…

 

「酸…か、厄介だな。」

 

スライムからブレインと剣を狙った酸攻撃が飛ぶが、ブレインは難なく避ける。

 

「『瞬閃』、剣を溶かされる前に退避、『超回避』、そしてもう一発!『瞬閃』!」

 

ここでブレインは敵の酸攻撃を避けつつ、『瞬閃』を連発し、相手の体力を地道に削る作戦に出たが、いまいち手応えが感じられない。

 

「やはり手応えが…仕方ない、『脳力向上』、『脳力超向上』!」

 

ここでブレインは勝負に出た。

自分の今出せる最大の一撃を相手に喰らわせなければ、長期戦では勝てないと判断したのだ。

そのブレインの判断は正しい物だった。

 

「ここだ!『神剣虎落笛』!」

 

ブレインはスライムに慎重に近づくと、絶好のタイミングで極限強化された状態で自信の十八番の技を繰り出す。

スライムは避けきれず、もろに命中し、辺りに四散する。

 

「ゲハッ‼︎か、やはり肉体の限界か…!」

 

ブレインは吐血する。

武技で強化した分の代償。

しかし…

 

「おいおいおいおい、嘘だろ?!」

 

サファイア・スライムは上位モンスター、ブレインの会心の一撃だとしても、一度の攻撃では倒しきることが出来なかった模様だ。

サファイア・スライムがブレインへと再び迫る。

ブレインは死を覚悟した。

これ以上の武技の使用は自身の身体が崩壊すると判断した。

眼前には敵が急接近してくる。

しかし、ここで負けたくはない!

 

「『不落要塞』!『超回避』!ッッズゥううううううあああ!『神閃』!」

 

ブレインは限界を超えた。

スライムの攻撃を流し、懐に潜り込んで…

 

最後の一撃を叩き込んだ。

蒼玉の粘体(サファイア・スライム)の核が砕けちり、瞬時に消滅する。

ブレインは勝ったのだ。

 

「か、勝った?グフッ」 バタッ

 

肉体の限界点に達し、ブレインは力尽きる。

前に倒れ込むブレインをヘロヘロは身体で受け止める。

 

「まさか10レベルも差がある上位スライムを倒せるとは…《武技》…凄いな…」

ブレインはlv50後半だったが、スケルトンを倒したことでlv60代に入り、今lv70代のモンスターを自力で倒したことでさらにレベルが上がったことだろう。

ヘロヘロは中級ポーションをブレインに掛けてやる。

しばらくして、ブレインが再び目覚める。

 

「…ふぁっ!あれ?俺は何を…あぁそうだ、倒したのか、あのスライムを?ハハッ、やった…」

 

 

「はい次行こっか〜」

 

 

「へっ?うおわっ!!」

 

今度は朱玉の粘体(ルビー・スライム)が間髪入れずに怒涛の酸攻撃を浴びせてこようとする。

ブレインは休む暇もなく、攻撃を間一髪で躱して急いで体制を立て直す。

 

終わりなき地獄が始まった…

 

 


 

遺跡(Ruins) トリエル宅】

 

おっ、久しぶり、トリィ。チョーシどう?

 

 

その声はサンズね。とっても良いわ。それと、最近きな粉っていうとてもおいしい食材が手にはいったのよ。きな粉パイをつくっておいたから食べてね。

 

 

「やったね!にいちゃん!トリエルへいかのつくるパイだよ!きょうはじんせいでさいこうのひになりそうだ!」

 

 

ふふっ、そんな風に言ってくれるととても嬉しいわ。今回も自信作なのよ。フリスクはこのきな粉パイを食べてすっかり元()()()よ。

\ツクテ~ン/

 

 

「やっぱさっきのなし!なし!きょうはじんせいさいあくのひだぁぁああ!」

 

 

hehe、なかなか()()がとおっているダジャレだな。ところで、オイラ『寿()()』をおみ()()()()()()きたんだが、寿()()()()にきをつけて食べな。板前さんがマグロを()()()()()()()()()くれてな。

\ツクツクテーン/

 

 

「もうオレさま()()()!」

 

 

おっと、()()()()()()()なって言ってるぞ。()()()だけに。

\ツクテーン/

 

「うわぁあぁあん!」

 

 

おいおい、そんな()()()って、オイラの自信()()()っちゃうから、このさきはなしがすすま()()()っちゃうから。

\ツクテーン/

 

 

うわぁ…これは酷い…

 

 

おっ?フリスクも来たか。()()速球でダジャレ言いまくっていた()()()()今に。

\ツクテーン/

 

 

ダジャレまみれ…このままではRuinsに()が来なくなりそうだわ…新年度のポスターをかべに()()よていが…

\ツクテ~ン/

 

「もうみんなキライだーーーー!!!」

 

 

ーーーーーーー

 

いやホントごめんて。このとおりはんせいしてるから、げんきだしてや、パピ〜。

 

 

「ぅぅぅぅぅ」

 

 

流石にやり過ぎだったと思うよ…?

 

 

そうね、my child。ごめんなさいパピルスさん。私も少しはりきりすぎちゃったわ…もっと自制しないと…

 

 

にいちゃんあたま下げるから、これでかんべん!

 

 

「ぅぅぅぅぅ…」

 

効いてない…?ならば、スペシャルアタックだ。パピ!これを受け取れ!

 

*サンズはなにかをなげた。

 

何を投げたの?

 

 

hehe、みれば分かるぜ。

 

 

「こ、これは!!」

 

*パピルスはクロスワードたいぜんをひろった!

 

「クロスワードパズルがいっぱい!」

 

 

シャボンヌがなぜかくれたからな。パピにあげるよ。

 

「わーい!ありがとう!」

 

 

どういたしましてっと。

 

 

それで良いんだ…

 

 

「よしっ!それじゃあさくせんかいぎといこうではないか!」

 

 

待って!アルフィーがまだ来てないの!

 

 

「おおっ?!たしかにそうだったな!オレさまとしたことがうっかりしていた!」

 

 

私はきな粉パイ持ってくるわね。あと、寿司ありがとうね、サンズ。後でちゃんと頂くわ。

 

 

hehe、まぁおいしくめしあがってくれや。

 

〜数分後〜

 

 

おまたぜぇぇぇ…

 

 

わわっ!アルフィー大丈夫?!

 

 

ハッ!私は一体何を…私…疲れてるわね…

 

 

「いったいどうしたんだ?!オレさまちからになるぞ!」

 

 

大丈夫よ…ハァーホントワタシッテバヘタレネーやになってくるぅぅぅぅ…

 

 

hehe、こんかいのげんいんは、やっぱりゆうきがでないから?

 

 

その通りです!ぅおおおお!!

 

 

ちょっと落ち着いて…

 

 

アルフィー、落ち着きなさいな。ほら、きな粉パイあるから。

 

 

あ、ハイ。ありがたく頂戴いたします。

 

 

あら、そんなに畏まらなくても良いわよ?

 

 

で、ですが…元女王陛下にそんな…

 

 

タメ口きいていいっていわれたらそのとおりにしないと損だぜ?あとなんかショックでキャラ若干崩壊してないか?

 

 

サンズはタメ口ききすぎ。

 

 

ん?そうか?

 

 

そうだよ!だって、最初にママと出会った時だって…

 

 

ん?あぁあの時か。その後の記憶があいまいだったが…あーたしかに、バリバリタメ口だった。ま、いっか。

 

 

私たち二人ともおバカ、だからね?

 

 

お〜!あの時のセリフ覚えておいてくれたか!オイラかんどうしたぜ!

 

 

そこまでかしら?

 

 

そこまでだぜ?

 

 

そしてパピルスが…

 

 

「うわぁあ!おもいだしたくないことおもいだしちゃった!」

 

 

ごめんね(๑˃̵ᴗ˂̵)

 

 

「フリスクワザとだな!」

 

 

まぁまぁパイでも食べな、賢くなるぞ?

 

 

「サンズはホントにおバカだ!のうみそからっぽなのに!」

 

 

スケルトンだけにな。

 

 

「あ〜いわれた〜!!」

 

 

さて、これから作戦会議を行う。司会役のサンズだ。パピルス議長、会議開始の挨拶を!

 

 

「せんせーい!わたくしたちは!アルフィーそうちょうにちかって!ここにさくせんかいぎをひらくことをちかいま〜す!!!」

 

 

いや展開早ッ!そしてパピルス、何か違うよ!




フルボッコだドン!
(ブレイン&パピルス)



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25.蜥蜴人(リザードマン)

《シャボンヌ視点》

 

【ナザリック第九階層 シャボンヌ用の部屋】

 

只今グループ通話中…

 

アインズ『蜥蜴人(リザードマン)ってそこまで有益なんですか?』

 

 

シャボンヌ『コキュートスの戦略スキルとかを確認する為には必要ですかね。コキュートス長い間放ったらかしにしてましたし。』

 

ヘロヘロ『こちらヘロヘロ〜』

 

アインズさんと駄弁ってたらまさかのヘロヘロ参戦!

これで僕含めて三人、話し相手増えてうれちい!

ん?ペロさんどうなったって?

リア充はね!!

 

シャボンヌ『お疲れ様です、ヘロヘロさん。すいません、ブレイン君の修行任せちゃって。』

 

そんな内心は置いといて冷静に返答。

我ながら流石のポーカーフェイスだな〜。

 

ヘロヘロ『あーそれは大丈夫ですよ〜、シャボンさん。というか、私が昔のブラック企業の上司みたいなことやってたことに後から気付きまして、今ナイーブになっていただけですから。』

 

ヘロヘロさん…何か、ホントにごめん…

 

アインズ『ブラック企業にすっごいアレルギー反応示しますねぇ…まぁ、お気持ちはよく分かりますが。』

 

ブラック企業は労基が何とかしようね!(人任せ)

僕には関係ないことだけど!(煽り)

 

ヘロヘロ『確かアインズさんもブラック企業で働いていましたもんね。同志だ同志だ!』

 

…残念ながら、僕、企業の親玉みたいな立ち位置ですた……

 

シャボンヌ『今トブの大森林内の蜥蜴人(リザードマン)について、少し話していたところでして。ヘロヘロさんもお疲れの所申し訳ないのですが、少し話に参加してくれませんか?ペロさんはシャルティアとおねんねしていますし…』

 

 

ヘロヘロ『良いですよ、三人寄れば文殊の知恵ですからね。あとペロロンチーノォ…』

 

 

アインズ『三人寄れば…何ですか?それとペロロンチーノォ…』

 

 

シャボンヌ『説明しよう!三人寄れば文殊の知恵とは、1人より3人の時の方がより良い知恵が出せるよ〜、ということわざのことである!えーと、ペロロンチーノォ…』

 

ペロロンチーノォ…

 

アインズ『なるほど…俺小卒なんでよく分からなかったです…』

 

 

ヘロヘロ『…これ、私がこっそりネットサーフィンをして見つけた言葉なんです。絶対忘れませんよ、あの後…うっ、頭が…蜥蜴人(リザードマン)達の情報は分かっていますか?』

 

 

アインズ『え、えぇ、蜥蜴人(リザードマン)達はトブの大森林奥地に独自の技術で集落を持ち、幾つかの部族に分かれて抗争を行なったりしている戦闘種族だそうです。彼等は魚や木ノ実等を餌にしており、魚を囲う生簀、簡素な果樹園らしき物を建造出来る程の原始的な技術力、使用階級は現段階で第二位階しか使っていない貧弱な魔法力、種族平均レベルは20程の、言わば雑魚ですね。』

 

戦闘種族とは(哲学)

 

シャボンヌ『ここまで来る(弱い)と逆に可愛く見えてしまう…』

 

 

アインズ『シャボンさん、それ末期ですよ…あと詳しい部族名が… 「緑爪(グリーン・クロー)」、「小さき牙(スモール・ファング)」、「鋭き尻尾(レイザー・テイル)」、「竜牙(ドラゴン・タスク)」、「朱の瞳(レッド・アイ)」の5つ、と。』

 

 

ヘロヘロ『そこまでその報告書に書いてあるんですか!?ヤベーなアルベド。』

 

ワーオ、スゲーアルベド。

オバロ正史ダトアンナアインズ様専属ストーカーダッタノニナァー。

 

シャボンヌ『スゲーアルベド。』

 

 

アインズ『さすがアルベド、今度有給取らせよっと。まぁ、先ずは蜥蜴人(リザードマン)達をどう攻略するかですが…コキュートス単騎で乗り込んでもぶっちゃけ勝てそう(小並感)』

 

 

ヘロヘロ『まぁ、シャルティアを操ったヤツらは蜥蜴人(リザードマン)じゃなかったそうですしおすし。』

 

漆黒聖典ってヤツラがな…

 

シャボンヌ『さすがにソイツらが森の奥地のリザードマンの味方をわざわざするかどうか…しないっすね、常識的に考えて。』

 

 

アインズ『一応大将のコキュートスにはワールドの所有を義務づけておけば…それも一つだけ。』

 

 

シャボンヌ『お供には…今プレアデスの中では手が空いているエントマを向かわせておこっと。』

 

 

ヘロヘロ『蜘蛛人(アラクノイド)なんで、同じ虫系同士仲良くさせておきましょっか。』

 

 

シャボンヌ『そうですねぇ。彼等がもし最後通牒を蹴ったら解放をするようにコキュートスに命じておかなくては、Урааааа !』

 

 

ヘロヘロ『やめてくださいよ〜どっかの赤軍じゃああるまいし。』

 

 

シャボンヌ『貴様!資本の犬だな!粛清!』

 

 

ヘロヘロ『いや何でや!』

 

 

アインズ『コキュートスにはそう命じておくとして、侵攻前の使節はどうします?』

 

 

シャボンヌ『そうですねぇ、アインズさんのアンデットを使うか…もしくは竜軍団で殴り込むか?』

 

 

ヘロヘロ『うわ…竜達行かせたら威圧感ヤバそう(小並感)』

 

 

アインズ『というか竜を使節団員にしたら威圧感で直ぐ降伏しそうなんですが…相手のレベル低いし、サイズも…』

 

 

シャボンヌ『あーそれだとコキュートスの成長にはならないか〜。じゃ、無難にアインズさんのアンデットのどれか、「死霊(レイス)」辺りが良いですかね?』

 

オバロ正史でもアインズさんそういうようなヤツ向かわせてたし。

 

アインズ『じゃそうしましょ。』

 

 

ヘロヘロ『うーん、手っ取り早く攻めた方が…ま、いっか、賛成でーす。』

 

 

シャボンヌ『んじゃ、決まりですね。』

 

 

アインズ『そういえば、ブレイン・アングラウスはどうなりましたか?修行を開始したそうですけど…』

 

 

ヘロヘロ『すんごい勢いで急成長中ですね。たった1日でlv59からlv65までになりましたもん。』

 

…マジ?webブレインより強いんだけど…

 

アインズ『思ったより成長早いですね…このままlv100までに上り詰められるかどうか、ですが、この分だと大丈夫そうですね。』

 

 

シャボンヌ『やはりあのジーニアスとかいうこの世界独自の職業レベルが関係しているかと…』

 

 

アインズ『まじすか!ジーニアス…新要素だぞコレは…』

 

 

ヘロヘロ『いや〜凄いですね、相変わらず。この事はアルベドには言ってありますか?』

 

 

シャボンヌ『えぇ、あと、これ、使えますよ。』

 

 

アインズ『え?何ですかそれ?』

 

 

シャボンヌ『魔法のブレスレットですよー、《ミ・エール》って言うふざけた名前ですけど。』

 

 

ヘロヘロ『え?いつの間にそんなアイテムが?』

 

 

シャボンヌ『それ、ユグドラシル運営が最終日の1年前に出してきた課金アイテムなんですよ。まぁ、その頃には大抵のプレイヤーがlvカンストでぶっちゃけ要らない無用の長物な訳で…デザインもこれ完全に女性受け狙ってるし…それで誰も気付きすらしていなかったんですが、僕は運良くそれ見つけられたんですよ〜。』

 

 

アインズ『嘘だろ…俺、最終日までログインしてたのに知らなかった…』

 

 

ヘロヘロ『Oh…』

 

 

シャボンヌ『あとアインズさん、』

 

 

アインズ『はい何ですか?』

 

 

シャボンヌ『少しお願いがありまして…』

 

 

ーーーーーーーー

 

【第十階層 執務室】

 

 

「アルベドよ、これより私は蜥蜴人(リザードマン)達の集落に使節を飛ばす、コキュートスにこう伝えて置いてくれ、『百獣の王、如何なる者でも闘いに手を抜かぬ』とな。」

 

…何処のことわざか全く分からんのだが…

 

「畏まりました、アインズ様。」

 

 

「うむ、頼んだぞ。」

 

 

「さて、隣国、リ・エスティーゼ王国についてだが、偵察メンバーに再度ヘロヘロを加えたいと思う。シャルティアを洗脳した者達がセバス達に接触したとの情報が入っていなければ、の話だがな。」

 

 

「ご安心下さい、セバス達の身辺警護にあたっている部隊には一人も欠員が見られず、加えて精神操作の類も未だ確認されていないとのことですので、御身の御考え通り、ヘロヘロ様をメンバーに加入させるということについては問題が無いと判断してよろしいかと。」

 

 

「ふむ、やはりそう考えたか、アルベドよ。やはりナザリック三大知謀の将の1人と呼ばれるだけある、流石だな。」

 

 

「お褒めの御言葉、恐縮の至りです…!」

 

 

「良い、今後もセバス達の身辺の監視は継続するように。…身内…ペロロンチーノ…そうだ、ペロロンチーノとシャルティアの様子に何か変わりは無かったか?ここ数日は第二階層まで行く余裕が無かった物でな。」

 

 

「えっと…その…//」

 

 

「あぁ(察)、すまなかった、今の言葉は全て忘れてくれ。」

 

(ペロロンチーノォ…お前今の今までシャルティアとナニやってんだよ…)

 

全くである。

 

「あっ!いえ、お、御身の御気を煩わせる訳には…」

 

 

「いや、私は何となく予想はついていたのに、確証を持てず、部下へセクハラを働いたのだ。本来なら謝罪一つでは到底償えん事だろう。すまなかった。」

 

 

「御身が謝られることではありません!全ては私の不手際にございます!」

 

 

「うむ…いやしかし…この話はここでお終いにしよう。さて、アルベドよ。実はコキュートスの遠征について、シャボンヌから頼み事をされてな…」

 

 

 

 


 

【トブの大森林奥地 蜥蜴人(リザードマン)部族緑爪(グリーン・クロー)勢力圏 生簀】

 

大規模な生簀、その前で1人、生簀の修理を行う蜥蜴人(リザードマン)が居た。

彼の名前はシャースーリュー・シャシャ。

蜥蜴人(リザードマン)部族緑の爪(グリーン・クロー)族長である。

 

「こんな所に族長自ら足を運ぶとはな。」

 

そんな彼に背後から声を掛ける者がいた。

シャースーリューの弟、ザリュース・シャシャである。

 

「おぉ、その声はザリュースか。」

 

呼びかけにそう答えつつ、シャースーリューは立ち上がる。

 

「どうだ?弟よ。この養殖場は俺自身が自力で作ったもんだ。まぁ、そうまでしないと我等の腹を満たす程の食事にありつけないと言う事でもあるがな…」

 

シャースーリューは近づいて来た弟に向き合いながら、そう言葉を繋げる。

そして、横目で先程まで修理をしていた生簀を見やる。

 

「コレは…以前に俺が作った物と大きさも質も段違いだ…コレを一人でとは…兄者はどれ程の時を費やしたのか…」

 

 

「お前が再び旅に出てから2年程、といった所か。我等の縄張りを抜けてお前も新たなる発見があっただろう。それを聞かせてはくれないか?」

 

 

「前の旅とほぼ期間は変わらなかったが、こっちの旅の方が俄然面白かったな…再び、故郷を離れてから、色々あった…先ず森の西を守る主、リュラリュースというナーガの王と出会い、彼と杯を交わした。彼からは狩猟の方法を学んだよ、効率良く(ウルフ)やジャイアント・スネークを倒す術を。それからさらに人間達の住む集落にも行った。そこの…確かスカマ、といったか?人間の雌と出会ったな…最初は敵視されたが、身の上を話すと仲良くなれた。四武器という冒険者コロニーに属する者で、仲間の、確かリリネット、それとグラウニー?…だったっけな…彼等と合流したかった所だったそうだ。俺はその人間と共にもっと多くの人間達が住む大規模な集落群に行き、そこでその雌とは別れることとなった。まぁ、もう一度あの人間には会いたいと思っているよ。」

 

 

「スカマ、か。良い響きだ。その人間の雌は強かったのか?」

 

 

「あぁ、とてもな。下手すれば俺は今頃、この相棒(フロストペイン)を失っていたかもしれない。何とか和解できて本当によかったと思っている…」

 

 

「その剣に随分と愛着がついたようだな。」

 

 

「あぁ、コイツと共に数え切れない程の窮地を切り抜けたからな。兄者、あそこにそびえる山々が見えるだろう?」

 

「あぁ、確かあそこは恐るべき厄災が住まう地、決して足を踏み入れてはならないという伝承がある山々、それがどうかしたのか?」

 

厄災の答えはフロスト・ドラゴンと霜の巨人(フロスト・ジャイアント)です。

 

「俺はあの山の奥地に行ってみたんだ。」

 

 

「何!?」

 

驚きに目を見開くシャースーリュー。

 

「人間達の多く住まう集落群で、俺は人間達の生活方式、そして釣り餌、漁獲網の形状、様々な事を目にした後で、さらに北に進もうと考えた。険しい道のりだったよ…」

 

 

「よく生きて帰ってこれたな…」

 

 

「全てはこの《凍牙の苦痛(フロストペイン)》があったからだ…道中氷の魔物達が襲い掛かってきたが、何とか命からがら逃げおおせることが出来たんだ。」

 

凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の特徴の一つ、装備者の冷気耐性付与、そして、『氷結爆散(アイシー・バースト)』による目眩しが出来るので、アゼルリシア山脈を生きて帰る事が出来たのだ。

 

「流石は我等が知りうる四大至宝の内の一角、弟の身を守り通したこと、深く感謝する。」

 

 

「兄者、頭下げても何も起きないと思うが…」

 

 

「すまないな、続きを話してくれ、と言いたい所だが…流石に此処には用は無くなった。村に戻るぞ、弟よ。」

 

 

「あぁ、まだまだ話は尽きない、俺とロロロ、アイツな、との出会いの話もまだ済んでいないからな。」

 

 

「そいつは楽しみだ。また後でじっくりと聞かせてもらうぞ、ザリュース。」

 

 

「おう、勿論だ、兄者。」

 

 

「…やはり、お前は村を発つべきではなかったと今でも思う…」

 

 

「兄者、今も昔も言っている事だが、これは俺の意思だ。俺の独断で起こしたことを、兄者が気に病む必要は無いんだ。」

 

 

「だがな…村の掟を知っているだろう?」

 

 

「一度村を出た者は二度と村の者とは認めて貰えない。」

 

 

「そうだ。おかしな話だろう?危険を省みずわざわざこの村を出て、村に有益な情報を持ち帰って来たお前が、この村に与えた恩恵は計り知れないというのに、一生涯お前は部外者となってしまうなんてな…」

 

 

「…村が救えるのなら、俺が犠牲になることなど安いもんだ。」

 

 

「お前はこの村にとっても、そして俺にとっても、掛け替えの無い存在であることに相違ない。それだけは覚えて置いて欲しい。」

 

 

「…俺はそんな大層なヤツじゃないよ、兄者。」

 

ザリュースはフッと笑みを作りつつ、自分の家へと戻って行く。

程なくしてシャースーリューも自分の村への帰路に着く。

 

ーーーーーーーー

 

「村の様子が…!」

 

シャースーリューが村から百メートルという所に来た時、村のある方角の上空に、巨大な()が浮いていることを視認する。

シャースーリューは村まで全力で疾走し、その闇へと向かって行った。

 

シャースーリューが村に到達したときには、村の上空を完全に闇が覆っていた。

 

「子供達を家に隠せ!戦士でない者達も家に避難しろ!何があった?」

 

「それが…先程突然空にあの黒いモヤが現れて…」

 

若い蜥蜴人(リザードマン)の1人がシャースーリューの問いに答える。

程なくして、異変を察知したらしきザリュースも村に姿を見せる。

 

「兄者、一体アレは何だ?」

 

「分からん…っ!形が変化しているぞ!」

 

突如、上空の闇は渦を巻く。

やがて、渦の中心部から、シャースーリューが生涯で初めて見ることとなる、強大なアンデットが姿を現した。

 

「聞け!我等は偉大なる御方々に仕えし者。汝らに死を宣告する。」

 

 

「!?」

 

 

「偉大なる御方は汝らを滅ぼすよう御命じになられた。されど汝らに、必死の無駄な抵抗をさせる為の時間を、お与えになられるとの事。本日より数えて8日、その日この湖に住む蜥蜴人(リザードマン)部族の中で汝らを二番目の死の供犠としよう。」

 

「二番目…?」

 

 

「必死の抵抗をせよ。弔鐘をもって、偉大なる御方々がお喜びになられるように。ゆめゆめ忘れるな、8日後だ!」

 

 

ーーーーーーーー

 

蜥蜴人(リザードマン)集落群 緑の爪(グリーン・クロー)族 集会所】

 

集会所内には、これまで祝祭、部族内での争い等、特別な慣わし事や抗争以外には滅多に緑の爪(グリーン・クロー)族の代表全てが集まる事は無かった。

そう、突如現れた外部からの敵によって部族が滅亡の危機に瀕するなど、これまでの蜥蜴人(リザードマン)達の歴史を見てもかつてない出来事だったのだ。

 

祭祀頭「空を覆ったあの黒い雲を覚えておるじゃろう、アレは恐らく第四位階魔法天候操作(コントロール・クラウド)じゃ。」

 

 

シャースーリュー・シャシャ「第四位階…!」

 

 

祭祀頭「強大な魔法詠唱者(マジックキャスター)でしか使えん領域じゃ。ワシ等の中で最も強い魔法詠唱者(マジックキャスター)でさえ第二位階までしか使えん。すぐにでも避難するべきじゃ。」

 

 

戦大頭「まだ戦ってもいない内から逃げよと言うのか!」

 

 

狩猟頭「奴は8日後と言った。時間はまだあるのだから、敵の様子を伺うのはどうだろうか?」

 

 

シャースーリューは弟、ザリュースに向かって首を向ける。

二人は互いに目で暫し会話し、やがてザリュースはシャースーリューに向けて首肯すると、族の頭達に向かう。

 

 

ザリュース「逃げるか戦うかの二択なら、選ぶは徹底抗戦。」

 

 

長老「ザリュース、旅人のお主が口を出すことではない、この場に居させて貰っているだけで…」

ダンッッッッ

ザリュースを諌めようと、族の中でもかなりの齢をいく長老の一人が口を開くも、程なくしてシャースーリューの立てた尻尾の打撃音に遮られる。

それに伴い、周囲が少しばかりざわつく。

 

シャースーリュー「今知識ある全ての者達をこの場に参加させているのだ。旅人の意見も聞かなくてはおかしかろう。」

 

若衆「しかし族長、お主の弟だからといって特別扱いは…」

祭祀頭「知識ある者の言葉を聞かぬのは、愚かな者のすることじゃ。」

 

 

戦大頭「あの《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の所有者たる者の意見を聞かぬ戦士はおらぬ。」

 

長老達は祭祀頭と戦大頭の追い討ちにより、渋々ながら口を噤み、身を引いた。

 

シャースーリュー「うむ…それで、理由は?」

 

 

ザリュース「それしか、生き残る道は無い。…」

 

 

祭祀頭「…勝てるのか?」

 

戦大頭「勝てるとも!」

 

ザリュース「いや、今のままでは勝算が低かろう。」

 

戦大頭「…どういうことなのだ?」

 

ザリュース「相手は、こちら側の戦力を知っているからこそあのような態度を取って来たのだ。ならば、相手の計算を狂わす必要がある…!」

 

ザリュースは拳をギュッと握りしめる。

 

ザリュース「…皆、かつての戦いを覚えているな?」

 

若衆「…無論だ。」

 

祭祀頭「忘れることなど出来ん!」

 

 

ザリュース「かつてこの湿地には、7つの部族が居た。俺達の一族、『緑の爪(グリーン・クロー)』、狩猟を得意とする『小さき牙(スモール・ファング)』、全部族随一の防御力を持つ『鋭き尻尾(レイザー・テイル)』、戦を好む『竜牙(ドラゴン・タスク)』、穏健派の『黄色の斑(イエロー・スペクトル)』、剣の技に秀でた『鋭剣(シャープ・エッジ)』、祭祀の才能を持つ者が多い『朱の瞳(レッド・アイ)』。主食の不漁が続き、どの部族も食糧を巡って争うようになったのは数年前。そして遂に、俺達『緑の爪(グリーン・クロー)』と『小さき牙(スモール・ファング)』、『鋭き尻尾(レイザー・テイル)』の三部族対、『黄色の斑(イエロー・スペクトル)』、『鋭剣(シャープ・エッジ)』の二部族での協力戦へと発展していった。結果、俺達は勝利を収め、負けた二部族は、争いに参加しなかった『竜牙(ドラゴン・タスク)』へと吸収された。」

 

戦大頭「それがどうした。」

 

ザリュース「奴は、この村は二番目と言った。ならば他の部族達も、順番に滅ぼすつもりなのではないか?」

 

 

戦大頭「奴等が攻めてくる前に、他の部族と手を組んで、奴等を迎え撃つのか!」

 

 

長老「かつての盟友、『小さき牙(スモール・ファング)』と『鋭き尻尾(レイザー・テイル)』ならば、再び同盟を結んでくれるじゃろう。」

 

ザリュース「間違えないで欲しい、俺が言いたいのは、全部の部族とだ。族長!『朱の瞳(レッド・アイ)』や『竜爪(ドラゴン・タスク)』とも同盟を結ぶことを提案するぞ!」

長老「無理だ!」

祭祀頭「『竜爪(ドラゴン・タスク)』には先の戦いで負けた二部族の生き残りも居る。ワシ等との同盟などあり得ん。」

 

 

狩猟頭「『朱の瞳(レッド・アイ)』とも交流は一切無い。そう易々と同盟というのは難しいのでは無いか?」

 

この場にいる他の仲間達も否定の意をざわつきによって表現する。

ザリュースは咄嗟に俯きたくなる衝動に駆られた。

 

シャースーリュー「…五部族連合か…分かった。その二部族、誰が使者となる?」

 

しかし、族長である兄、シャースーリューはザリュースの考えを読み取ったようだ。

 

ザリュース「…俺が行こう。」

 

 

シャースーリュー「…旅人だからか?」

 

 

ザリュース「その通りだ。旅人だからと話を聞かない相手ならば、組むに値しない。」

 

 

 

シャースーリュー「うむ……族長の印を持たす。」

 

 

ザリュース「…感謝する。」

 

 

ーーーーーーーー

 

〜三時間後〜

【ザリュースの家】

 

緊急集会が終わり、各自は自分の家へと戻り、戦争の支度をすることとなる。

1人使者を名乗り出たザリュースは、明日からの交渉に向けて、着々と準備を進める。

ふと、ロロロに餌をやる事を忘れていたことに気づき、生簀の魚を4匹捕まえて持って、自分の木造小屋へと向かう。

しかし、どうやら先客が居たようだ。

 

「っ!…兄者…」

 

月が雲から顔を見せると同時に、月明かりに小屋が照らされる。

月光が照らす先には、自分の慕う兄の顔があった。

 

シャースーリューは何も言わずに立ち上がると、ザリュースの側まで来る。

ザリュースは魚を手にぶら下げたまま兄、族長と会話するのは流石に失礼だと思い、先にロロロへ餌をやることにした。

 

「ロロロ!」

 

ザリュースの呼び声に応じて四つの顔が影から姿を現す。

 

「ふんっ!ふっ!はっ!ホレッ!…」

 

ザリュースはその顔それぞれに餌の魚を投げ与えていく。

 

「…俺はつくづく思う。もし、お前が族長になっていれば、とな。」

シャースーリューが不意に口を開く。

彼の顔は何処か神妙な面持ちであった。

 

「兄者は村にとっても、俺にとっても、大切な存在だ。現に俺が二度も旅をして、そこで学んだ技術を皆に伝えることが出来たのは、兄者が俺が旅人になり、二度も旅をすることを許してくれたおかげだ。それに、兄者が必死に皆を説得して、村に俺の学んだ技術を取り入れることを許可してくれた事も知っている。兄者が族長でなかったのならば、到底なし得なかったこと。それを、なにを今更…」

 

 

「お前がこの村に居ても出来たことだ。むしろ、お前のような聡明な男こそが、この村を背負って立つべきだったんだ…」

 

 

「兄者…」

 

しばらくの間、ザリュースとシャースーリューは沈黙する。

 

「…それで、本当にあれだけがお前の狙いか?」

 

 

「…!!…兄者、何が言いたい?」

 

 

「かつての争いは、各部族間の小競り合いだけではなく、我が部族の数が増えすぎたのも問題だったのだろう。」

 

 

「兄者、それくらいにするべきだ。」

 

 

「…やはりそうか…」

 

 

「…それしか無かろう…かつての戦いを二度も繰り返さぬ為には…」

 

 

「…ならば、もし他の部族が同盟を拒否した場合、どうするというのだ。」

 

 

「…先に…潰す。」

 

 

「同族を滅ぼすというのか。」

 

 

「…兄者…」

 

 

「あぁ、分かっているとも。部族の存続。それを、上に立つ者が考えずにどうしよというのだ…」

 

シャースーリューは再び口をつぐむ。

 

「…ロロロ!」

 

ザリュースは荷物を肩に背負いつつ、ロロロを小屋から外に出す。

 

「出掛けるよ。それで兄者、人数はどうなっている?」

 

 

「戦士階級10、狩猟20、祭祀3、雄70、雌100、子供多少といったところだな。」

 

 

「了解した。場合によっては、その人数を交渉の材料にさせて貰う。」

 

そして2人は近寄ってきたロロロを見やる。

 

「まぁ随分と大きくなったなぁ…」

 

 

「拾った時はまだこんなに小さかったというのにな。」

 

 

「未だに信じられんなぁ。お前がコイツを連れて村に帰ってきた時には、既にかなりの大きさだったからなぁ。」

 

そう会話しながらも、ザリュースはロロロの背中に登り、ロロロの体勢を変えている。

会話が終わる頃にはもう既に、ザリュースの出立の準備は整っていた。

 

「無事に帰ってこい、無茶はするなよ!」

 

 

「当然だ。全て完璧にこなしてから戻るとしよう。待っていてくれ!兄者!」

 

そうして、ザリュースはロロロに跨り、兄を尻目に、自分の家を発つのであった…

 

 

ーーーーーーーー

 

【ホーンバーグ 市街地演習場】

 

塹壕、有刺鉄線、ガス兵器、自動小銃、野砲…

如何にも軍の訓練基地みたいな場所に如何にもなブツ(兵器)が普通に設置されているここは『ドラゴン騎士団』演習場。

騎兵部隊の訓練場がどうしてこんな有様に変貌したか?

シャボンヌ(ミリオタ)に聞いてくれ…

 

ドォォォォンンンン…

 

「…狙い良し。…次はいつものBB2手榴弾の投擲訓練。」

 

野砲バンバン打ち鳴らして遠くのダミーを跡形もなく破壊している…

ちなみに実弾演習。

 

「了解!」

 

 

「……スゥッ各員配置に着け!BB2投擲用意!

 

 

「放てーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

歩兵ダミー、ダミー人形に向けて黒い物体が飛んでいく…

 

チュドオォォォォンッ…

 

無事、ダミー人形達は爆散したようだ。

 

「…まだまだね。」

 

 

「え〜、評価厳しいですよ〜!!!」

 

 

「…わざと外していない?キリル。」

 

 

「あ、バレました?」

 

いや、ダミー砕け散ったやろ!ダミーにもろ当たっとるやんけ!と思った方も多いでしょう。

実は、ダミーには赤い直径2mmの点が打たれており、そこにBB2の先端部が触れるように投げる訓練…

なのだが、

キリルはわざと5mm赤い点からズレた位置にずっとBB2の先端部を当てており、それも同じ角度で

同じ軌道、

同じ入射角、

先端部が触れた時のBB2の形まで、

細やかに計算してかつ、5mmズレた位置に投げ付けているもんだから、もう頭おかしい(褒め言葉)

 

「訓練は真面目に受けなさい。」

 

 

「ふあ〜〜〜い。」

 

徐に大きな欠伸をかますキリル。

ヴァルは少し不機嫌です。

 

「隊長!…でヤンす。」

 

と、不意に部下のアンドレイから声を掛けられる。

 

「…如何したの?アンドレイ。」

 

 

「はい、先程シャボンヌ閣下から…」



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26.蜥蜴人(リザードマン)ザリュースの奮闘

ーーーーーーーー

 

〜一日後〜

 

朱の瞳(レッド・アイ)族 村門前】

 

ロロロから降り、朱の瞳(レッド・アイ)族の象徴たる『大いなる太陽の瞳の紋章』が印された旗が掲げられた村の門の前へと行く。

 

(ここが最初の関門だ。兄者との約束…決して果たさなければ…!)

 

門の真ん前で立ち止まり、こう声を張り上げる。

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロー)族のザリュース・シャシャ!朱の瞳(レッド・アイ)族の族長と話がしたい!」

 

その言葉に呼応するかのように、村の扉が静かに開く。

開け放たれた先には、長老らしき1人の者と、若衆達がいた。

 

緑の爪(グリーン・クロー)族のザリュース・シャシャか。部族をまとめ上げる者が合うそうじゃ。」

 

 

(部族をまとめ上げる者?わざわざそう表現するということは、族長が居ないのか?それとも族長という長を作らない部族なのか?または…)「…族長代理?」

 

その言葉が口を突いて出て来る。

その言葉を聞いた若衆の反応からして、自分の今の考察が正しかったことを悟る。

ザリュースは集団に引き連れられながら、族長代理とはどんな者かを想像する。

そうこうしているうちに、如何やら一行は目的地に着いた模様だ。

 

「ここだ。部族をまとめ上げる者は一対一での対話を望まれている。」

 

長老が眼前の赤い建物を指差しながら、そう説明をする。

 

「ほぅ…」

 

説明がおわると、長老達は去り、ザリュース1人だけがその場に取り残される事となった。

ザリュースは覚悟を決め、朱の瞳(レッド・アイ)族族長代理の待つ目の前の建物に向かう。

 

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロー)族のザリュース・シャシャ!部屋に入らせていただく。」

 

 

 

「どうぞ。」

赤い建物内から女性の声が聞こえて来た。

 

(…雌?)

 

訝しげに思いつつ、建物の出入り口に張られた覆いを潜る。

 

「ようこそ、おいで下さいました。」

 

その時、ザリュースに電撃、走る!

「っ!!…」

 

「かの有名な四至宝の一つ、《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》を持つ御方でも、この身が異様に思うようですね。」

 

「ぉ、ぉぉぉ…」

 

「え?あぁ…あの…如何しました…?」

 

ピィッピィィィィイイイイッ

 

 

「!//はぁふ…?」

 

 

「…あっ!い、いや!こ、これは失礼した!!」

 

 

「い、いえ、私は、朱の瞳(レッド・アイ)族の族長代理を務めさせていただいております、クルシュ・ルールという者です。」

 

「くっ…ぅ…」

 

 

「それで、今回こちらに来られた理由をお確認しても…?」

 

「結婚してくれ(キリッ‼︎)」

 

 

「…ぇ?……はぇ?………はぁあぁあああああああああああああああ!!!!?????????????????」

 

 

「け、結婚????」

 

 

「あ、いや!ここに来た目的は他にあるのだがな…本来ならばそちらを先に済ませてからこういうことは言うべきだとは重々承知している…しかし、自分の気持ちに嘘はつけん…!」

 

 

「ぇ?……………え?//」

 

 

「い、あ、すまん!!今の答えは、また後日聞かせてくれれば構わない!」

 

 

「あ、あぁ……わぁああ!」ボンッ

バシッ‼︎

 

 

「こ、この白き身体を恐れないとは…流石というべきですか…?//」

 

 

「我々、朱の瞳(レッド・アイ)は、時折、私のようなアルビノが生まれて来ます。その者は長寿で何らかの才能、私の場合では祭祀の力を発揮します。その為に、族長に次ぐ権力を持つことになるのですが…」

 

「…かの山脈に掛かった、白き雪のようだな…」

 

 

「え!?//」

 

 

「…綺麗な色だ…」

 

 

「ぅ…何を!//」

 

 

「触っても良いか…?」

 

 

ガゥッ‼︎

 

「うおわっっ!」

 

「とと、突然、な、何するんですか!!」

 

 

「っ!!」

 

ザッ

 

(な、何をしているんだ!俺!お、落ち着こう、冷静になれ、ザリュース、兄者との約束が…)

「すまなかった。一目惚れという奴だ。それに、今回の戦いで死ぬやもしれぬから、後悔の無いようにな。」

 

 

「かの宝剣…《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》を持つ御方が死ぬ覚悟を…?」

 

 

「メッセージを持ってきたモンスターを見たか?」

 

 

「はい。」

 

 

「アイツは、精神を掻き乱す絶叫を放ち、大抵の者達の物理攻撃を全て無効化する。以前遭遇した時には、自分は逃げるしか方法が無かった。」

 

 

「私達ドルイドは、一時的に剣に魔法を付与することが出来ますが…」

 

 

「!精神への攻撃を防げるのか…?」

 

 

「抵抗力の強化であれば殆どの祭祀が、ですが、混乱から精神を守ることが出来るのは、この部族の中では私だけです。」

 

(…凄い…)

 

「…朱の瞳(レッド・アイ)は何番目と?」

 

 

「四番目と言われました。」

 

 

「そうか…それで、そちらは一体如何するつもりだ?」

 

 

「…それは…」

 

 

 

「…本音で話させて貰おう。仮に朱の瞳(レッド・アイ)族がこのまま避難し、遠い地に行ったとして、その地で再び以前のような生活が送れると思うか?」

 

 

「…難しいでしょうね。」

 

 

「…では、周辺五部族も同時に避難をして来た場合、如何なると思う?…食糧も満足に取れず、種族間の対立が一気に深まり、五部族同士で殺し合う。」

 

「!ま、まさか、勝てるかも分からない戦いを始めるというのね!」

 

 

「その通りだ。他部族も含めた、口減らしも考えに入れている。クルシュルール、緑の爪(グリーン・クロー)は、朱の瞳(レッド・アイ)に同盟を申し込む。」

 

 

「!」

 

 

「同盟を拒否した部族は、先に攻める事となっている。これは、新天地での餌の奪い合いを未然に防ぐという意味でもある。それに、例え負けたとしても、新天地では、同盟を結んでいる部族同士であれば、仲間意識により、無闇矢鱈な対立が無くなると考えている。」

 

 

「成る程…」

 

 

「…ところで、先の戦いに中立を保った朱の瞳(レッド・アイ)は、どうやってあの時期を乗り越えたのだ?」

 

 

「……それを言う必要があるのですかっ。」

 

 

「聞かせて欲しい…!祭祀の力、それか別の方法があったのか?それが、もしかしたら救いになるのかもしれ…」

「ありませんよ!」

「!…」

「…私達が行ったのは同族の…それも死んだ仲間を喰らったのです…」

 

 

「っ……」

 

 

「…あの頃の私達も、食糧難でとてもまずい状態に陥っていました。

…しかし、ある日、族長は持って来たのです、食糧を。いえ、

 

真っ赤な肉を。

 

…その肉が何なのか、私達は簡単に予想が付きました。

だって…族長が肉を持って来る時は、いつも決まって村の掟に背いた者を追放する時でしたから…

 

……私達は目を瞑って、その肉を食べていたのです。

…生き残るために。

……しかし、そんな事が長く続く筈がありません。

皆の中に、溜まりに溜まった不満が遂に反乱という形で爆発しました。

村は二分化され、族長に次ぐ権力を持つ私を旗印として、反乱派が族長に反旗を翻しました。

壮絶な戦いの末、数が勝る私達が勝利を収めました。

……族長は、最後まで降伏することなく、体に無数の数(傷?)を受けて死んで行きました……

……そして、最後に止めの一撃を喰らった時、

私に笑いかけたのです…!

…あれは本当に綺麗な笑顔でした。

……族長の死により、部族は再び一つにまとまる事が出来ました。

しかも、数が減った事で、食糧事情の回復という大きな影響をもたらして……。

私達は本当に正しかったのか、本当は間違っていたのでは無いか、最初から現実を見据えて行動をしていたのは族長だったのでは無いか…!!

 

 

……その思いが、消えないのです……」

 

最後の言葉を言い切った直後、嗚咽し、むせび泣くクルシュ。

建物の中を彼女の泣き声が木霊する。

 

 

そんな彼女を、優しく抱き寄せ、ザリュースは彼女にこう言った。

 

俺達は、全知でも全能でもない。

俺だって、同じ状況に置かれていたのならばそうしたかも知れん。

だが、慰めの言葉は言いたくない。

 

この世に正しい答えなどあるものか。ただ、俺達は歩むしかない、足の裏を傷だらけにしながらな…

 

お前も歩くしかない、俺はそう思う。」

 

 

「…グスッ……無様な姿をお見せしてしまいました。」

 

「何処が無様だというのか…っ!

…苦悩しながら、傷付きながらも、道を切り開き、先の見えぬ道を歩んでいく者を無様だと思う程、無様な雄に俺が見えたか。そして何より……

 

 

      お前は美しい。

 

「〜〜〜〜〜!!!!!////////」

 

バンバンバンバンッ‼︎

 

 

「…や、ヤバいなぁ…」

 

 

「…改めて聞こう、朱の瞳(レッド・アイ)はどのような方針を取る?」

 

 

「…昨日の会議では、この部族の避難が決まっています。」

 

 

「では、朱の瞳(レッド・アイ)族長代理のクルシュ・ルールに問う。 今も同じ考えか?」

 

 

「…」

 

 

「…お前が決める事だ。かつての族長が、最後にお前に笑いかけたのは、この部族の未来をお前に託したからだろう。ならば、今こそ、その使命を果たすべきだ。」

 

 

「…それでは一つ伺います。どの程度、避難民として逃すおつもりですか?」

 

 

「戦士階級10、狩猟20、祭祀3、雄70、雌100、子供多少。」

 

 

「それ以外は?」

 

 

「場合によっては、死んでもらう…」

 

 

「…そうですか…」

 

 

「一つだけ言わせて欲しい、俺達は死ぬ為に戦うつもりではない。

     勝つ為に戦うんだ!

 

 

「…ならば、我々朱の瞳(レッド・アイ)も、あなた方と協力しましょう。族長の笑顔を無駄にしない為にも、そして、最も多くの朱の瞳(レッド・アイ)族の者達が生き残れるように。」

 

 

ザッ

「…感謝するっ…!」

 

ここに、朱の瞳(レッド・アイ)緑の爪(グリーン・クロー)という、二つの蜥蜴人(リザードマン)達の部族が、手を結ぶこととなる…

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

〜翌朝〜

 

「フワァぁぁああ…」

 

ザリュースは盛大な欠伸をかます。

 

(とても良い朝だ…)

 

ギイッ

 

ふと、背後で扉が開く音がする。

その方向を向けば、昨日面を向かい合って話し合った彼女がいた。

 

「おはよ。」

 

「あぁ、おはよう。問題無く部族は纏め上げられたみたいだな。」

 

 

「昨日は遅くまで会議に参加してくれて感謝するわ。今日中に戦える者達は全員出立出来る筈よ。それと避難する者達も…ザリュース、あなたはこれからどうするの?」

 

「これから竜爪(ドラゴン・タスク)族の所へ行くつもりだ。…なのだが、一つ質問良いか?その格好は…?」

 

 

「ん?似合わないかしら?」

 

 

「似合うと、言った方が、良い、のか?」

 

 

「フフッ、ま〜さか。出歩くには太陽の光がとても辛いのよ。」

 

 

「同行してくれるのか?」

 

 

竜爪(ドラゴン・タスク)って、全部族の中で最大の武力を持っているそうじゃない?」

 

 

「あぁ、だが…交流の無い部族だから、あまり詳しくは…」

 

 

「だったら私も一緒に行った方が良いわ。」

 

「危険だぞ。」

 

「危険じゃ無い所が今あるの?」

 

 

「……フッ、冷静では無いな、俺は…分かった、力を貸してもらうぞ、クルシュ。」

 

 

「了解したわ、ザリュース。任せて頂戴⭐︎」

 

 

 

ーーーーーーーー

《コキュートス目線》

 

【トブの大森林 自然研究所 参謀司令部】

 

 

「これがぁ転移系のスクロールでぇ、こちらがぁ伝言(メッセージ)のスクロールです〜、アインズ様からぁ、何かあったら報告するように〜っと、仰せつかっております〜。」

 

 

「了解シタ。トコロデ、何故アインズ様ハ貴重ナスクロールヲ私ニ…」

 

 

「それはぁ〜、デミウルゴス様の御功績から得られたぁ、羊の皮から作られた物だ〜って、ヘロヘロ様が仰られていましたよ〜。」

 

 

「成ル程…デミウルゴスニ先ヲコサレタカ……私モ負ケテイラレン!後ニ続カナケレバ!…至高ナル御方々、見テイテクダサイ、必ズヤ、我等ガナザリックニ勝利ヲ収メテミセマス…!」

 

 

 

ーーーーーーーー

《シャボンヌ視点》

 

【防壁都市ホーンバーグ 大通り】

 

ども、シャボンヌです…

 

いつも喧しいのに何でそんな元気無いかって?

イヤ〜、実は昨日徹夜したんスよ。

え? 徹夜したってどういうことぉ?why? だって?

そりゃ秘密だぉ〜(死にかけ)

 

「んもー!!!何処行ってたんですか!私心配してたんですよ!」

 

そんなぐったりしている僕を男を辞めたニニャちゃんが呼び止める…

今はちょっと勘弁して欲しかった…

 

「す、すまない…少し吸血鬼退治を…」

 

「ふぇっ!?吸血鬼ィイッ!!」

 

あっ……

 

しぃまったァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

そういやまだニニャにシャルティアの一件伝え忘れてタァ!!⤴︎

えっ?どうしよ?どう弁明すれば良い?

 

「口が滑っ………!!!…………い、今のは忘れてくれ…」

頼む…!

 

「吸血鬼なんて伝説上の怪物をたった3日程度で!?……ハハッ…私…物語の世界に巻き込まれチャッタノカナァ………」

 

アー駄目だ、ニニャちゃん完全に錯乱状態じゃんか…

 

「ニニャ、すまなかった。今、君の種族は天使とはいえ、まだ取得したばかり…吸血鬼との戦闘は無理だと判断した私が全て悪い……」

 

 

「うっ…………」

 

 

「この通りだ。本当にすまないと思っている!」

 

 

「……えっ!ちょちょ、流石に……貴方は私の命の恩人ですから死なないで欲しいというのが私の願いなんですが…生きて帰って来てくれただけ良かったです…」

 

何とかなりそうで良かった〜

 

「許してくれるか?」

 

 

「…貴方にそこまでされては、私も許すしか有りませんね。でも、何様のつもりなんだと言わないで下さいね、本当に心配したんですから(プクッ)」

 

 

「ありがとう。」

 

 

「…お礼を言われるようなこと何もしてないです。」

 

 

「まぁ気分だ。さて、ニニャ、新たなる冒険に出掛けようか。」

 

 

「ふへぇ?い、良いんですか?!私は弱くて皆さんの足で纏いにしかならないですけど…」

 

 

「その為に今から稽古をある人につけてもらう。私の友人だ。彼は君を悪い様にはしないぞ。」

 

やったね!ブレイン君、修行仲間が増えるよ!

 

「今からですか?」

 

 

「そう!今から!」

 

そう言って僕は転移門(ゲート)のスクロールを作動させた…

 

 




伏線張っときます


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27.反撃

投稿遅れてすいません!







ーーーーーーーー

 

竜爪(ドラゴン・タスク)族 村大広場】

 

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロー)族のザリュース・シャシャ!」

 

「私は朱の瞳(レッド・アイ)族、族長代理のクルシュ・ルールです。」

 

「族を代表する者として、竜爪(ドラゴン・タスク)族の族長と話がしたい!」

 

「ザリュース…囲まれているわよ…」

 

 

「…対話の余地無しか?最悪の場合、君だけは逃げてくれ…俺は時間稼ぎをする。」

 

 

「そんな!一人でなんて逃げたくない、私も戦うわ。」

 

 

「大丈夫だ、上手く逃げ果せて見せる。これでも幾つもの修羅場を乗り越えてきた…」

 

しかし、周囲を囲む屈強な竜爪(ドラゴン・タスク)族の戦士達は、それ以上の行動を起こしはせず、しばらくは二人(+ロロロ)との睨み合いに留まっていた。

やがて、包囲網の中から一際体格が大きく、ゴツい蜥蜴人(リザードマン)が一人、姿を表す。

身体に刻まれた幾つもの傷、そして周囲の蜥蜴人(リザードマン)達の反応から、こいつが族長だと確信するザリュース。

 

「ほ〜う、お前が四大至宝、《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の持ち主、か。んで、そこのちっこいのは…植物系モンスターか?」

 

「な!?違います!」

 

 

「冗談を本気にすんなや、女々しい。俺は竜爪(ドラゴン・タスク)族族長、ゼンベル・ググーだ。ゼンベルで良いぜ〜。」

 

 

「…こちらもザリュースで構わない。それで…」

「お前の言いたいことは大体予想が付く、だが!俺達が信じるのは強者のみ!」

 

そう言って徐に戦斧を振り回し、ゼンベルはこうザリュースに告げる。

 

「剣を抜きな。」

 

 

ーーーーーーーー

その頃…

 

【ウォーターフェル waterfall ???】

 

 

「Ngaaaaaaaaaaaaaaaa!!!暇だァアアアアアア!!!!」

 

 

「ど、どうしたの?暇って…アンダイン、ロイヤルガードの仕事は?」

 

「陛下が私に働き過ぎだから休めって…それで何すれば良いか分かんないのだ!」

 

 

「うーん…皆で集まってお茶をするのはどぉ?」

 

「お!それ良いな!私の手料理も持って行ってやろう!」

 

 

「ママがいるから、アンダインまで手料理を持って行っちゃうと皆食べきれないよ?」

 

 

「ふぅむ………………お土産にどうかと思っていたんだが…」

 

 

「お土産なら良いんじゃないかなぁ。この前サンズがお寿司をお土産に持って行ってくれたし。」

 

「お寿司だと?!聞いたことないが、私も食べたいぞ!!」

「共食いになっちゃうからダメ。」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「…クソォ…俺の負けだぁ…このままやっても俺が不利だ。」

 

ザリュースとゼンベルの決闘は早期に終わった。

開始早々はゼンベルが攻勢に出て、ザリュースは防戦一方だったが、ゼンベル側はザリュースに擦り傷一つ付ける事が出来なかった。

しばらくして、ザリュースは罠を仕掛ける。

自然なタイミングで、敢えて隙を作り、カウンターを狙う作戦だ。

そうして隙をあえて見せたザリュース。

防戦一方で全く隙をつく事が出来ないもどかしさから痺れを切らしていたゼンベルにとって、それは絶好の機会だと思わせた。

必殺技を叩き込むゼンベルに、その攻撃を的確に避けつつ、手痛い反撃の一撃をお見舞いする。

ザリュースの勝利は明白だった。

 

 

「大丈夫?ザリュース、今治癒魔法を掛けるわ。『中傷治癒(ミドル・キュア・ウーンズ)』」

 

最終的なザリュースの負傷は擦り傷一つであったが、クルシュの厚意に甘えて置くザリュース。

体力もそこそこ削れていたので、ザリュースにとってはとてもありがたい物だった。

 

「あぁ、ありがとう、クルシュ。」

 

 

「おいおい、ズリィじゃねぇか、俺にも魔法掛けてくれや。」

 

ザリュースよりも負傷し、体力も削れているゼンベルに治癒をしない訳にもいかない。

 

「ハイハイ。」

 

クルシュはゼンベルへザリュースと同様に治癒魔法を掛ける。

 

「さて、双方回復も終わったことだ、そろそろ本題に入らせて貰いたい。」

 

 

「おぉ!もっとお前らのアツアツぶりを見たかった気もするがなぁ。まさか決闘前まで惚気を見せつけてくれるたぁ思わねぇよ。」

 

 

「//」

 

その言葉に少し頬を赤らめるクルシュ。

 

「さぁ〜て、これからお話、と行きたいところだが、その前に酒だ!」

 

 

「????」

 

「????」

 

 

「ア〜、ホラ、面倒くせぇ話は酒の席でするモンだ!分かるだろ?!」

 

 

「分かんねぇよ!!!!」

 

 

〜結局〜

 

竜爪(ドラゴン・タスク)族領の広大な広場を舞台に、多くの蜥蜴人(リザードマン)達が巨大な焚火の周りを踊り回る。

族長席の隣に座るザリュースは、物思いに耽っていた。

 

「…」

(この賑わいも、最後になるかもしれないな…)

祭り囃子の太鼓の音、騒ぎ声、唄声、手拍子…

勝てるか分からない相手との戦争に行くザリュースにとっては、二度と聞くことが叶わない物であった。

 

「おぉ!植物系モンスター!」

 

ゼンベルが不意に、いつのまにか近づいて来ていたクルシュへと声を掛ける。

しかし、クルシュは無視してロロロを撫でる。

女性の外見を馬鹿にしてはならない。

 

「…話は終わったの?」

 

 

「一通りな。」

 

 

「それで、どうするの?」

 

 

「あぁ?戦うに決まってんじゃねぇか!」

 

 

「ホンット戦闘狂ね。」

 

クルシュは呆れ顔になる。

 

「褒めんなよ!照れんじゃねぇか!」

 

クルシュの視線が少し冷ややかになったことなど意にも返さず、ゼンベルはこう言葉を続ける。

「んで、勝てるのか?」

 

「分からない。先触れとして来た、あのモンスターを覚えているか?」

 

 

「スマンな、寝てた⭐︎」

(寝るな。)

ザリュースは内心でツッコミを入れる。

 

「…向こうは、こう言ったんだ、『必死の抵抗をして見せろ』、ってな。」

 

 

「ムカつくな、最初(はな)から此方を下に見ていやがる…」

 

 

「そうだ、向こうは完全に此方のことを舐め切っている。それも、こちら側を確実に潰せるだけの兵を集めているということ。その思い上がりを俺達は叩き潰す!」

 

 

「おぉ、良いねぇ!」

 

 

「でも、向こうのプライドをズタズタにして、メリットは無いと思うわ。私は、例え鎖で縛られても、皆命がある方がいいと思う。」

 

その意見を内心では尊重しつつも、ザリュースは黙殺する。

先触れのモンスターの態度、そして、ソイツが立っているだけでも感じる程に強大な戦闘力、それが到底不可能な事を悟っていた。

 

「…耳を澄ませてみてくれ。」

 

祭りは終盤に差し掛かり、蜥蜴人(リザードマン)達は更に熱狂的に踊り回る。

まるで四肢を止めることを忘れてしまったかのようだ。

酒に酔ったヤツの雄叫び、祭り囃子の太鼓の音、それに合わせて歌う声、手拍子に地団駄…

 

「…戦に負ければ、こんなことももう二度と出来ないかもしれない。」

 

 

「出来るわ、きっと。そうでしょ?」

 

無意識にそっとザリュースの手を握るクルシュ。

 

「…そうかな。俺達が死んでいくのを見て、楽しもうと言うような者達に、慈悲が有るとは思えない。」

 

 

「確かに。…でも、言いたいのは……

 

 

         死なないでね。」

 

「死なないさ。()()()()を聞くまではな。」

 

 

「!//」

 

 

「ア〜もう酒無くなっちまった……追加持ってかねぇとな〜」

ーーーーーーーー

 

〜そして、決戦の日〜

 

シャースーリューを筆頭に、各部族の長達が率いる蜥蜴人(リザードマン)連合軍は、戦場となる沼地にて布陣を整えていた。

全ては蜥蜴人(リザードマン)の存亡の為に…

 

「聞けぇ!全ての蜥蜴人(リザードマン)達よ!認めよう、敵は多い。しかし、恐れることはない!我等五つの部族は、歴史上初めて同盟を結んだ!これにより!我等は一つの部族となったことにより、五つの部族の精鋭達が互いに協力し合い、我等を守ってくれる!敵を一体でも多く倒し、奴らに蜥蜴人(リザードマン)の力を見せつけるのだ!」

 

 

ウオオオオオオオオ!!!!

 

 

「出陣っ!」

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

決戦の火蓋が、切って落とされた。

 

〜〜

 

序盤は骸骨騎兵(スケルトン・ライダー)達のスペックと数の差で、ナザリック側が事を有利に運んでいった。

 

「成る程、騎兵で強引に包囲殲滅、といった所か。」

 

見ると、移動速度の速い騎兵連隊の動きに翻弄され、周囲を本隊から切り離された蜥蜴人(リザードマン)達が次々に殺されていった。

騎兵へな対応が遅れた蜥蜴人(リザードマン)側は、既に前線を浸透されつつあった。

 

「では、こちらも最初の手を打つとしよう。」

 

太鼓の音が鳴り響き、作戦の第一段階を知らせる。

蜥蜴人(リザードマン)軍は一旦全員が前線を放棄して、後方へと退避していく。

これを追撃しようとする骸骨騎兵(スケルトン・ライダー)達に異変が生じる。

 

不意に馬が転倒し、大部分の部隊が行動不能にされたのだ。

 

それを好機とこれ幸いに追撃の矢を浴びせる蜥蜴人(リザードマン)

騎兵で強引に突撃して来たナザリック軍は、予め蜥蜴人(リザードマン)達が仕掛けた罠に大部分の部隊が引っかかり、追撃の弓矢によって、騎兵師団に多大なる損害を受けた。

ナザリック軍は反撃として、長弓師団を投入。

蜥蜴人(リザードマン)達はその一撃でかなりの数葬られたものの、それを受けて彼等は硬い装甲を持つ鋭き尻尾(レイザー・テール)族の戦士達が長弓兵に向けて特攻、大部分を殲滅に成功する。

 

「アイツらナメてんのかぁ?」

 

「何だか理解できないな。」

 

 

「…まさか、指揮官がいないのか?」

 

「ってことは、頭数だけ揃えりゃ良いって思われてんのか?」

 

「ふざけやがって!」

 

 

「だが、今は出来るだけ敵の数を減らしておいた方が良いだろうな…」

 

「チッ、俺も行けりゃあよ…」

 

 

「マァマツ、ゼンベル。」

 

 

「敵の親玉が出るまでの辛抱だ。それまでは各部族の精鋭達の実力を信じて待とう。」

 

 

 

程なくして、ナザリック軍は急遽魔獣部隊を前線に参加させ、大規模攻勢に出ようとした、が…

蜥蜴人(リザードマン)達の召喚した精霊により、その攻勢は阻まれ、ナザリック軍は更に兵を失うこととなる。

 

 

「こんな短時間に、これだけの湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)を召喚出来るなんて……協力って、こんなにすごいことだったのね!」

 

 

「…そうだな。実は、かの戦いの後でも、細々と情報は交換していたのだが…今回の件から、またやりたいことが増えてきたな…」

 

 

「…そうね、ザリュース。」

 

二人は気づいていなかった。

二人共、無意識のうちに、互いの尻尾を絡ませあっていたことを。

 

ーーーーーーーー

 

【トブの大森林 自然研究所 参謀司令部】

 

 

「……蜥蜴人(リザードマン)ノ指揮ノ高サヲ見誤ッテイタカ………」

 

ナザリック側の軍の参謀長たるコキュートスは、度重なる蜥蜴人(リザードマン)達の反撃に、苦汁を飲まされていた。

不意に、コキュートスは『伝言(メッセージ)』のスクロールを取り、そのまま使用する。

 

「…『伝言(メッセージ)』、『デミウルゴスカ?』

 

相手先は同じ階層守護者でかつ、バーでの飲み仲間である友、デミウルゴスへ、だ。

 

『そうだ、友よ。君が私に伝言(メッセージ)を飛ばしてくるとは、一体何事だね?』

 

「…実ハ……」

 

 

〜コキュートス事情説明(助けてデミエモン)中〜

 

 

『……成る程…事情は大体分かった。《xsmall》…シャボンヌ様の予見は当たっておられた…流石は至高の御方…《xsmall》…それで、私にどうして欲しいのかね?』

 

 

「知恵ヲ貸シテ欲シイ…私ダケノ敗北ナラマダシモ、至高ノ御方々へ泥ヲヌルヨウナ真似ダケハシタクナイ…」

 

 

『ふむ……では、今回の戦争の意味とは何か、考えてみてくれ。』

 

 

「…今回ノ戦争ノ真ノ目的ハ、蜥蜴人(リザードマン)達ノ制圧デハナイ、ト?」

 

 

『そうだ、友よ。そして何より、何故アインズ様は力量的に決定力に欠ける、薄弱な部隊を君に寄越して来たのか、そして何故、至高の御方々は、指揮官クラスのモンスターをその場で召喚せず、わざわざスクロールとして君に送られたのか…』

 

 

「マサカ…」

 

 

『至高の御方々は、コキュートス自らが部下達に指示を出し、軍を上手く統率することを望んでおられたのだよ。事前に敵の情報を収集し、戦場に手を加え、軍の指揮をアインズ様から授かった者達と協力して行い、そして、コキュートスが確固たる勝利を収める。その為にね。』

 

 

「何トイウ事ダ…」

 

 

『しかし、友よ。安心してくれ。至高の御方々は最初から君の敗北を望まれていた。その事は、ナザリックの持つ戦力とコキュートスへ配属された部隊の力量差然り、()()()()()()()()然りだ。』

 

 

「ソレハドウイウ…?」

 

 

ピーーーピピ

『ん?おっと、すまない友よ。急遽用事が入ってしまった。また後でゆっくりと会話しようじゃないか。では、友よ、健闘を祈っているよ。』

プツッ

 

コキュートスは、頼みの綱のデミウルゴスを今は頼ることが出来ないことを理解した。

 

「……全テハ後ノ祭リ、カ。シカシ、コノママデハ御方々ノ御尊顔二泥ヲ……ソレダケハサケタイ。………サーべ二告グ。我等ナザリックノ力ヲ見セツケルノダ!」

 

ーーーーーーーー

 

【トブの大森林奥地 決戦の場 湿地】

蜥蜴人(リザードマン)軍は犠牲を出しつつも、多くのアンデット達を殲滅していき、遂には数える程までに追い詰めていた。

 

「よし!重症の者は村まで運べ!残った者は、俺達に続いて…」

チュドオォォォォン!!

 

 

「なっ…!!」

湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)をたった一度の攻撃でだと…)

 

突如として巨大な火球が出現し、召喚された湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)の内の二体を消し飛ばした。

 

ドォォォォン!

「グォワァア!」

 

更に続いて二発目が後方に着弾し、直ぐ後ろにいた仲間が眼前で灰と化した。

 

「っ………ぬぅ…逃げろ!お前達!アレは到底敵う相手ではない!お前達は戻って族長、そしてザリュースに伝えよ!」

 

「俺たちが時間を稼ぐ!」

 

やがて、森林の奥から一体の強大なアンデットが姿を見せる。

死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)だ。

 

「時間など与えん…至高なる御方々に勝利を捧げる為に消えろォォォ下級種族がァァァァ…」

 

次々に放たれる火球(ファイヤーボール)になす術も無く燃やし尽くされていく蜥蜴人(リザードマン)達。

 

「へっ!やっと俺の出番だな!」

 

それを高台で見ていたゼンベルは愛用の斧を片手に立ち上がる。

 

「アレが軍の指揮官か…?」

 

 

「あれ程の力だ。そうではなかったとしても、相手の切り札である事には変わりない。」

 

「そう…でもどうやって近づけば良いのかしら…あの攻撃の射程範囲は最低でも100mはあるわよ…」

 

 

ロロロの頭を撫でてやる

 

「…そうか、その手か…っ!」

 

「?ザリュース?」

 

 

〜〜

 

ドドッドドッドドッ‼︎

 

蜥蜴人(リザードマン)の陣から一体の多頭水蛇(ヒュドラ)が放たれる。

ロロロだ。

 

「真っ向から我に向かってくるとは…やはり下級種族、考えるだけの脳が無い。力量差という物を馬鹿にも分かりやすくその本能にねじ込んでやろう…まぁ、恐怖というおまけ付きだがナァッ!!」

 

そして無慈悲にも放たれる火球(ファイヤーボール)

 

ドォォォォン

 

死の大魔法使い(エルダーリッチ)がそう易々と攻撃を外す訳もなく、ロロロに命中する。

しかし、ロロロはその攻撃による火傷を意にも返さず、決して足を止めはしなかった。

 

「一発ではまだ倒れぬか、ならば数お見舞いさせてやろう…」

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の手から新たに三発の火球(ファイヤーボール)が放たれ、真っ直ぐロロロに飛来していく。

 

ドドドォォォォォン

 

「フンッ」

 

着弾後、燻った煙があがり、辺りを焦げ臭くする。

ヒュドラは死んだと確信する死者の大魔法使い(エルダーリッチ)

 

 

しかし、その見解は間違いだったことを気付かされる。

煙の中を傷付き、火傷で目も当てられない状態になりながらも走る八つの頭が覗いたからだ。

 

「何っ!」

 

見れば、後方に二つの炭屑が落ちていた。

ザリュースの持って来ていた身代わり人形だ。

ザリュースは飛来してくる火球(ファイヤーボール)に向けて、アゼルリシア山脈で鍛え上げられた反射神経を駆使し、身代わり人形を投げ付けたのだ。

 

しかし、防ぎ切れなかった一発分をロロロは被弾してしまった。

ロロロはそのダメージで前に崩折れ、それに合わせてザリュース、ゼンベル、クルシュの三人もロロロから飛び降りる。

 

「まだまだ人形は沢山残っている!お前の魔法が俺達に届く事はない!!」

 

嘘である。

ロロロへの攻撃を防げなかった理由は、他ならぬ身代わり人形の不足の為。

もう身代わり人形は残っていないのだが…

 

 

「………炎は効果が薄い、か。ならばこれを喰らうが良い!『電撃(ライトニング)』!!」

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の深読みにより、結果的に欺くことに成功したようだ。

 

「させるかよ!」

ビジジジジッ

「ゥオオオ!『抵抗する屈強な肉体(レジスタンス・マッシブ)』ゥウ!!!」

バチッ

 

「ありがとう、助かった。ところで大丈夫か?」

 

「へっ!こんなモンどうってことねぇよ!」

 

「『第四位階不使者召喚(サモン・アンデット・4th)』…」

 

接近戦は不利と考え、即座に骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)四体を召喚する死者の大魔法使い(エルダーリッチ)

 

「……我は至高なる御方に生み出され、至高なる御方々よりサーベという名を賜わった者…たかが下級種族如きに我等が敗北を喫するなど、ありえん!!」

 

イグヴァ=41と同じようにアインズ自身によって作成された為なのか…絶対的なる忠誠心を、蜥蜴如きに傷付けられた怒りを原動力に、ザリュース達へその力を見せつける。

 

「ウオラァ!先に行け!ザリュース!」

 

ザリュースへそう呼びかけつつ、ゼンベルは骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)を殴りに掛かる。

 

「ゥオオオオオ!!!」

 

真っ直ぐサーベ=04へとひた走るザリュース。

火球(ファイヤーボール)雷撃(ライトニング)を間一髪で回避していきながら、着実に敵との距離を狭めていく。

 

「ならばこれはどうかな?『恐慌(スケアー)』!」

 

「う……な………かっ!…………」

 

ザリュースの意識はたちまち恐怖と闇で覆われてしまった。

目の前にいるはずの敵を倒すどころか、指一本すら動かす事が出来ず…

 

獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)!」

 

心臓から熱い物が込み上げてくる。

その熱い物はたちまち光となり、覆われた闇を打ち破る矛となった。

ザリュースは再び、現実の世界に戻る事が出来た。

 

「…!助かったぞ!ありがとう、クルシュ!」

 

クルシュがその言葉に軽く頷く。

 

「小癪な………『雷撃(ライトニング)』。」

 

しかし、サーベがそれを見逃す筈もなく、容赦の無い第五位階域魔法をブッパなしていく。

 

「キャァッ!」

 

「クルシュ!」

ライトニングがクルシュの身体に直撃し、抵抗する間も無く彼女を感電させる。

「クソッ!」

自分が恋をした相手に攻撃を加えられ、ザリュースは今までに無い程に激怒する。

そのままの勢いで高笑いをするサーベ=04の肩へ刃を振り下ろす。

 

「ぐぉおッ………下等生物如きに、下等生物如きにぃいいいいガァアアア!おのれぇ!!」

 

自身の肉体が傷付けられたことを、創造主への侮辱だと取ったサーベ=04もまた、とてつもない怒りを覚えた。

魔法の矢(マジック・アロー)を連射し、ザリュースを確実に痛めつけ、嬲り殺しに掛かる。

 

「くっ……」

(今、俺が持てる最大の一撃を…………)

身一つで多くの矢を身体に浴びても尚弁慶の如く仁王立ちをするザリュース。

しかし、逆転の一手を放てる程の体力は、彼に残されてはいなかった。

 

「『ミドル・キュア・ウーンズ(中傷治癒)』…」

 

「クルシュッ!」

 

クルシュが最後の魔力で放った魔法は、たちまちザリュースの体力を回復させた。

必殺技が放てる程までに…

 

「チッ……あの蜥蜴人(リザードマン)、まだ生きていたのか…」

 

(不味い!クルシュに注意が…いや、まさか!クルシュはアイツの注意を逸らすためにわざと…?しかし、距離が大分離れてしまった!急がなくては!!)

サーベ=04の注意がザリュースから一時的に飛んだ隙に、一気に距離を詰める。

 

「…止め喰らえ!『電げ(ライト…)…」

「ゥオオオオオ!!!」

 

「距離を詰め…」

「武技『斬刃(ブレード)』!!」

 

時既に遅し。

サーベの目と鼻の先までに《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の切っ先が迫っていた。

 

「『石…(ウォール・オブ・ス…)ぐぉおっ!!!!っ!」

防御魔法を詠唱する間も無くモロに顔面へ攻撃を喰らうサーベ=04。

 

「まだまだァ!」

 

「舐めるなあァァァァア!『火球(ファイヤーボール)』!」

 

追撃を喰らわせようとするザリュースへ反撃の火球(ファイヤーボール)をお見舞いする。

辺りが一気に赤い炎で覆われる。

 

「ッグ……流石に魔力を使い過ぎた………下級種族如きにここまで遅れを取るとは……仕方がない、此処は一時撤退を…」

 

 

 

「その下級種族に遅れどころか、背後まで取られちゃあどっちが下か分からねぇな。」

 

 

「なっ、馬鹿なっ!お前は先の魔法で死んだ筈では…」

 

火球(ファイヤーボール)で消炭にした筈の蜥蜴人(リザードマン)が、いつの間にか背後に剣を構えつつ此方を見ている。

サーベは驚きに目を見開く。

 

「そんなもの『回避』で十分だ。背負っている物が違うんだよ、俺とお前では。」

 

ザリュースは火球(ファイヤーボール)を見切り、魔法の矢《マジック・アロー》を自然な素振りで避けていく。

 

「貴様っ!」

「これで、終わりだァァァァア!!!!」

足を踏み切り、両手に力を込め、有りったけの力と集中を《凍牙の苦痛《フロスト・ペイン》》に注ぐ。

 

ドシュッ………

 

 

 

横一閃。

サーベの身体は上と下で別れ、ゆっくりと後方に倒れていく。

「も…申し訳………あ……り……ませ…………ん………………」

灰と化す自身の両手を天に掲げながら、サーベは塵となって消える。

 

フゥ…………

 

後にはボロボロのローブの残骸のみが残るだけだった。

 

「終わった…のか…?」

 

 

「…ザリュース…」

 

「く、クルシュ!」

 

未だに地面に倒れ伏すクルシュに駆け寄り、身体を支える。

 

「大丈夫か?待ってろ、直ぐに回復を…」

「…私達…勝ったのね……」

 

「あぁ、もうこれ以上の切り札は無い、と信じたい。一先ずこの戦は俺達の勝ちだっ!」

 

 

ーーーーーーーー

【トブの大森林 自然研究所 参謀司令部】

 

 

「……負ケタ……」

 

コキュートスは参謀司令部長官の席に座りながら、身体を更に青くしていた。

部下達はコキュートスを心配そうに見遣る中、エントマだけはおやつを片手に部屋の外へと出て行ってしまった。

 

「………実ニ惜シイ物ダ。アレ程ノ知恵ヲ持チ、アレ程ノ指揮統制ヲ行イ、我ガ軍勢ヲ完敗ニ持チ込ム所業…ソレダケニ…トテモ惜シイ………」

 

「……へぇっ!ア、アインズ様がこちらにぃ!……し、失礼致しました。ではお待ちしております…」

 

コキュートスの言葉を遮るように、エントマのビックリした声が聞こえてきた。

しばらくして、彼女が部屋にまた入ってくる。

 

「…コキュートス様ぁ、今直ぐにアインズ様が御身自らこちらにいらっしゃるそうですぅ。」

 

 

「……アインズ様ガ……アノ御方モオ怒リニナラレテイルダロウ……全テハ私ノミスニアル、オ前達ニハ全ク責任ハナイ。コレヨリ私ハ、アインズ様ニ此度ノ失態ヲ報告シ、自害スル。私ガ消エタラ、第五階層ノ事ヲ、ソシテナザリックノ事ヲ頼ンダゾ…」

 

「コ、コキュートス様…」

「コキュートス様ぁ……」

 

コキュートスがもう定年退職間際の部長みたいになり、室内まで青くなっていく。

コキュートスは青を通り越して白くなっている。

この場はもはやお通夜ムードだ。

 

ブオンッ

 

不意に室内に『転移門(ゲート)』が現れ、闇からアインズ・ウール・ゴウンその人が現れる。

続いてアルベドが現れ、アインズの側までしずしずと歩き、コキュートスに向かい合う。

目には怒りの炎が燻っていた。

コキュートスはアルベドからの怒りのオーラに圧倒され、白から灰色になっていく。

 

「コキュートス、この度の戦争だが………敗北を喫したそうだな。」

 

 

「ア、アインズ様………!!!モ、申シ訳……」

 

 

「コキュートス、何か申し開きは?」

 

アルベドが冷淡な声でそうコキュートスに問い掛ける。

 

「コノ度ハ、ナザリックニ敗北ヲモタラシテシマイ、申シ訳アリマセン!!敵ハ、想像以上ニ手強ク、御身ニオ借リシタ兵ノ大部分ヲ損失スルコトニ…」

「コキュートスよ、その件なのだが、再び現地に戻ってくれないか?それも、()()()()()で戦場になっている湿地へ。」

 

 

「!ソレハドウイウ…」

 

 

「実は…シャボンヌさんがな…」

 

 








シャボンヌは一体何をしたんでしょうかね?


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番外編
番外編.いせかる! 第1期1話


注意!異世界カルテットの深刻なネタバレ!




いせかるってそもそもな〜に?って人、もういせかる!見ているよーって人で、原作が変わっているじゃん面白くねぇなタヒねって人はプラウザバック、しよっか!






《この素晴らしい世界に祝福を!陣営》

 

「よいしょ、っと」ガタン

 

「うわ〜〜ん!お風呂ぉ〜!お風呂に入らせて〜〜〜!!!」

 

「待て、待て。まずはクエスト報酬の整理からだろ」

 

「え〜そんなの後だって良いじゃない!!ほら私の身体を見てちょうだい!ジャイアントトードのせいでベタベタよ!」

 

「そんなのいつもの事じゃないかぁ、トオモッタケドクチニハシナイ」「したわよ今!」

 

「女神であるこの私にこんな無様な格好させおいて、なんとも思わないんですかこのヒキニート!!」

 

「ヒ、ヒキニートじゃないから!(必死)…大体今日だって、お前がなりふり構わず突っ込んだせいでそうなったんだろ、自業自得だこの駄女神!」

ポイッ

 

カタッ

 

「はぁー???!!!!駄女神って言った!駄女神って!」

 

 

「うん?何だこれ」

「またカズマが私のこと駄女神って言ったーーーーーーーー!!!」

 

ーーーーーーーー

 

《オーバーロード陣営》

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン、御身の前に。」

 

 

「第五階層守護者、コキュートス、御身ノ前ニ。」

 

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。」

「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。」

「「御身の前に。」」

 

 

「第七階層守護者、デミウルゴス、御身の前に。」

 

 

「守護者統括アルベド、御身の前に。第四階層守護者ガルガンチュア、及び第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏し奉る。御命令を、至高なる御方々よ。我等の忠義全てを御身に捧げます。」

 

 

「「「「「捧げます。」」」」」

 

『うん。このやりとりもう慣れたわ。』

 

 

『早いですね、シャボンさん。俺はまだ抵抗が…』

 

 

『言われて悪い気分ではないですけどね〜。寧ろシャルティアが奉仕してくれてるみたいで大歓迎ですよ!』

 

 

『え〜…貴方自身が作ったキャラ(欲望の体現)なんじゃ…』

 

 

『克服しましたよ。ヘロヘロさんもソリュシャンにアピらんと大変なことになるかもよ?』

 

 

『えー…やっぱ無理です…上司に虐げられていた頃を思い出しちゃって…うっ!頭が…』

 

 

『何かすいませんヘロヘロさん。』

 

 

「うむ、お前達の忠誠を喜ばしく思う。今後も忠義に励め。」

 

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

 

「さて、今回お前たち階層守護者を呼んだのは他でもない。短刀直入に聞こう。この箱状の物に何か心当たりはないか?」

 

(そ、それは!!!異世界カルテットの冒頭のアレじゃないですか〜!!ってヤバいって!早く止め…)

「申し訳ありませんが、私には見たこともない物体です。一体何なのでしょうか?」

 

「私もです。ねぇマーレ、これ何か知ってる?」

 

「ぼ、僕にもさっぱり…」

 

「それが何なのか皆目見当が付きんせん…ハッ!も、もしやそれは!ペロロンチーノ様が仰っていた『どこでもちくび』なるも…」

「何カ得体ノ知レヌ物、デミウルゴスハ何カ分カラヌカ?」

 

「私もです。ご期待に添えず、申し訳…っ!」

 

 

「良い。一応の確認だ、気にするでない。これはスイッチという機械の一種だ。このボタンという所を押せば、接続されている特定の機器類に特定の動作を発現させることができる。」

 

 

「成る程…!そういうことでしたか!」

 

(今のスイッチの説明だけで!?恐るべし、デミえもん…!深読みがハンパねぇ!っじゃねぇ!早くこの状況を変え無いと…)

 

「ふふ、気づいたようだな、デミウルゴス。私の話が意味する真意を…」

 

 

「僭越ながら、このデミウルゴス、御身のお考えの一端に触れたと確信しました。」

 

 

「申してみよ。答え合わせといこうではないか。」

『ふぃ〜…乗り切った〜

『アインズさんお疲れ様です〜』

 

「承知致しました、アインズ様。さて、諸君。アインズ様は今、我々を試されておられる!このスイッチなる物は、かつて、至高なる御方々がおわされた『リアル』に存在した、失われた発明品、とお見受けします。」

 

「お、おぅ…」

 

「我等がナザリックにその技術を取り入れ、ゴーレム達の起動等、ナザリックの防衛装置の迅速な切り替えが出来るようになれば、将来的にナザリックの防衛体制、並びに軍事力が強化されることに繋が…」

「デミウルゴスよ、言いそびれてはいたのだが、実はこのスイッチ、何処から来た物なのか分からないのだ。」

 

「な、なんと!!!」

 

 

「確かに『リアル』に実在した工業品なのだが…今朝自室で見つかったばかりなのだよ、これは。」

 

 

「ま、まさか…やはり侵入者が…!」

 

「それって、前の…」

 

「侵入者…!偉大なるナザリックの地に土足で!到底許されない行為だわ!!」

 

「出てこい侵入者ァア!ペロロンチーノ様はなんとしてでもお守りいたしんすぅ〜!」

 

「許サン!断頭牙デ八裂キ二シタ後デコノ斬神刀皇ノサビ二シテクレルワ!」

 

「し、侵入者は、こ、殺します!」

 

 

「と、取り敢えず、お前たちにこのスイッチに見覚えがあるかどうかを主題に聞いたが、この分ではスイッチの存在も知らなかったと見られるので、デミウルゴスにこのスイッチについての研究を委託するということでこの話は終わりにしよう。」

 

 

「畏まりました、アインズ様。ご期待に添えず、申し訳ありませんでした…」

 

 

「うむ。さて、緊急時において、ナザリック地下大墳墓の防衛にドラゴン騎士団を増援に送るルートについてだが…デミウルゴス、気付いたな?我が狙いを。」

 

 

「はい。僭越ながら。」

 

 

「うむ。では、我が狙いを、未だ把握し切れていない者達にも分かりやすく説明せよ。」

 

 

「承知致しました、アインズ様。」

 

(ふぃー、乗り切った〜第二関門突破したよ、偉いぞ俺!それにしてもスイッチを押すヤツなんているのか?もし押すようならソイツは相当単純なヤツだな…)

 

 

ーーーーーーーー

 

《この素晴r(ry 陣営》

 

「どうして押しちゃいけないのよ!いいじゃない少しくらい!」

 

「どう見ても怪しいだろコレ!ひとまずバニルに見て貰った方が良いような気がするぅ!」

 

「確かにカズマの言う通りです。」

 

「め〜ぐみん!流石知能の高い紅魔族は理解が速くて助かる「ですが!」〜よ…」

「私はひとまずそこで押すか押さないかと言われたら〜」

ヒュバッ

 

「押す女です! ピンポーン よーーーー!!!!」

「ぅおおい!こラァーーーーー!!!」

 

グォングォン

 

 

「あ…」

 

「えっ…へっえっ?」

 

「ぃやっぱり罠じゃねぇカァーーーーー!!!」

「一体どんな罠が私を襲うのか…もしや身動きが取れなくなるとか、そして見知らぬ輩に弄ばれたり挙げ句の果てには売り飛ばされて…」

「喜んでる場合じゃねぇぞダクネスゥ!」

 

「フフン」

「お前は何してやったりみたいな顔してんだよぉ!」

 

「うわぁあぁあん!かずましゃぁん!なんかせかいがぐにゃぐにゃしてるよぉおお!かぁじゅまぁ〜!!」

 

「やぁかましいーーーーーーーー!!!」

 

ーーーーーーーー

 

《オーバーr(ry 陣営》

 

(あれ?スイッチ何処に置いたっけ?)

 

 

『アインズさん席にスイッ…』

 

カチッ

 

『あっ…』

『げっ…』

『ウェッ…』

『お〜!?』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アインズ「ここは…?」

 

 

デミウルゴス「ここは…どうやら私達がいた世界とは、違うようですね…」

 

 

ペロロンチーノ「あーあー、もうめちゃくちゃだよ…」

 

 

アインズ(こ、この状況って…もしや異世界転移?!)

 

???「すみませ〜ん!」

 

アインズ「うん?」

 

 

アクア「ちょっとお聴きしたいんですけど、ここって何処ですかぁ?」

 

 

アインズ「むぅん?」グルッ

 

アクア「あっ!」

シャボンヌ(ヤバッ!)

 

カズマ「ここって…戻って来た?いや…でも少し違うような…」

アクア「カズマ!カズマ!カァズマ!」

カズマ「ん?」

アクア「カズマ見て!あそこにいるのはアンデットよ!アンデット!」

ダクネス「しかもモンスターの集団まで!!!(喜)ぁあ、これから私達は抵抗虚しく、奴等に蹂躙され…」

めぐみん「ふっふっふ!私の爆裂魔法を披露する時が来たようで!」

カズマ「ちょおーい、ちょと待て」

めぐみん「このまま1匹残らず…」

カズマ「今どーゆー状況か考えてるか〜」

めぐみん「何ですか!そのはっきりしない態度は」

 

ヘロヘロ『草』

シャボンヌ『唖然』

ペロロンチーノ『茫然』

アインズ『ちょっと皆さん?!あなた方まで思考回路バグられたら収集付きませんよ!』

 

ルーデンドルフ「お前たち!授業の時間だ!」

 

 

『『『『…へっ?』』』』

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《二組》

 

 

 

「「「「………」」」」

 

 

ターニャ(なんだぁ…何だ此処は!!…思い出せ…私は科学文明に恵まれた世に生まれ、世界にも稀に見る道徳心を持つ国で育ち、生物学的にも社会的にも優位なサラリーマン、だったが、神を名乗る存在Xによって非科学的な世界で弱者、幼女として転生させられ!何故か、何故か魔法あり爆弾ありの戦争に巻き込まれていた筈だ!)

 

(?????『Ураааааа !』)

 

ターニャ(…そして、あの忌々しいシューゲルの改良型演算宝珠のテストに参加させられたと思ったら…)

 

ーーーーーーーー

《ターニャ回想》

 

 

ターニャ「うわぁあぁあ!!!う、あぁぁああ!!」

 

シューゲル「なぁにをやっておるのだね!このままだと暴発してしまうぞ!!早く放出機能のボタンを押すのだ!」

 

ターニャ「そうは言っても、この欠陥品、いくら…」

シューゲル君「欠陥品と言ったな今!このエレニウム97式をグレードアップさせる、この、画期的な、傑作品をおぉおお!」

ターニャ「聞けマッドー!!!そもそもだな、ボタンを押せと言われても同じ所に二つもあればどっちを押せば良いかわからないだろうがぁ!」

マッドサイエンティスト「何を言っておるのだ!ボタンは一つしかないぞ!」

 

ターニャ「はぁ?」

 

手元にはどう見ても二つあるー

 

ターニャ「二つあるものは二つあるんだから二つだろうがぁぁああ!!!!」

 

アーデルハイト君「君は頭がおかしくなったのかね!」

 

ターニャ「貴様に言われたくないわーーーーーーーー!!!」

 

パーワハライト君「早く降りて来い!これは命令だ!め・い・れ・い・出ぁすぞ!」

 

ターニャ「あー凄まじきは宮仕え…命令一つで人権と理性が無意味になろうとは…あ〜もう好きにしてやるわ!どっちも押してやる!お〜押してやるさ!!!」

 

ピンポーン

 

ーーーーーーーー

 

ターニャ(…その結果、ここにいるという訳だが…)

 

 

ターニャ(…一見元の世界だ…だが…)

 

ヴィーシャ「ヒィッ!」

ヴィーシャ、睨まれてないから安心して。

ってかターニャちゃんどんだけ部下達から恐れられてんの…(呆)

 

アクア「なぁーんで当たり前のように席についてんのよ!」

ターニャ(あれはファンタジーの世界かぁ?冒険者にしてはやけに装備が脆弱だが…)

 

クルッ

ターニャ(そしてこっちは…人ですらない、いやなんだホントに、ファンタジーでいう魔王と勇者が隣に仲良く座っているとか我が帝国が誇る帝国魔道大隊に単身真っ裸で突っ込んでいくのと同じ位あり得ない構図なんだが…)

 

アインズとシャボンヌってやっぱそう見られちゃうよなぁ…

ま、二人は仲間ですけど。

 

ターニャ(とにかく…これはまたあの自称神を名乗る存在Xの仕業、と考えるしかないのか…!)

 

 

????「廊下を走るのは、すごーく良くないと思うの。」

 

ターニャ「うん?」

 

??「まったく…バルスのせいで走る羽目になってるじゃない。」

 

?????「ちょっと反省する必要があるのかしら。」

 

???「お前らが起きないのを人のせいにするんじゃねーよー!」

 

??「スバルくん、大丈夫ですか…?」

 

スバル「あぁ!あらがってあらがってあらがって!やっと手に入れたこの幸せ。ちょーっと不思議な状況だけれど、そこはひとまず置いといて、」

 

ガラッ

スバル「毎日が楽しい学園生活をー!」

 

スバル「…ってぇ、何だこの状況はぁ!!!⤴︎」

 

 

アインズ(これ完全に浮いてるよ…)

 

シャボンヌ『アインズさん、』

 

アインズ『何ですか?』

 

シャボンヌ『スカーフ、付けます?』

 

アインズ『いいです』

 

シャボンヌ『あぁやっぱ要りますよね、ほれ』

 

アインズ『いや要りませんから!』

 

アルベド「アインズ様、」

 

アインズ「何だアルベドよ」

アルベド「殲滅致しましょうか?」

アインズ「いや待て、先ずは情報収集からだ。」

 

アルベド「畏まりました。」

 

ペロロン「どうするよ、ヘイローさん。」

 

ヘロヘロ「どうもこうも無いですね〜先ずは相手の素性を明らかにしないと。」

 

ペロロン「エロゲ攻略法その一に、どんなモブでも手当たり次第話しかけていけば、エロい隠しイベントを見つけることが出来るという物が…」

 

ヘロヘロ「エロゲと現実を一色単にしないで下さいよ。」

 

ペロロン「いい加減、卒業しようか(ニヤァ)」

 

ヘロヘロ「何をですか?」

 

ペロロン「do、tey。」

 

ヘロヘロ「ピキッ(# ^ω^ )」

 

ペロロン「へへっ、イヤだな〜ヘイローさ〜ん、ちょっとした茶目っ気だよぉ〜?」

 

ヘロヘロ「…テメーは俺を、怒らせた…」

 

ペロロン「ヤベッ」

 

 

カズマ「おい…これなんかヤベェ状況だよな…」

 

 

アクア「だーいじょうぶよ〜カズマには女神であるこの私がついているわ〜任せて頂戴!」

カズマ「だぁからヤバいって言ってんだよ!」

 

 

ターニャ「これが存在Xの試練だというのなら良好か!ヤツの目論見を破壊して目にもの見せてやる!ィヤッハッハッ!!ィアッハハハハ!!!

ヴィーシャ「し、少佐?少佐〜?」

ターニャ「キィアッハハハハハハハハハ!

 

 

スバル「ナンーダコレ?」

 

ベアトリス「普通じゃない奴がいっぱいなのよ。」

 

ラム「バルス、情報が無さすぎるわ、取り敢えず犠牲になって。」

 

スバル「犠牲が確定なのね…」

 

レム「大丈夫です。スバルくんとお姉様はレムが守ります✨」

 

 

エミリア「ねぇ、スバル。」

 

スバル「うん?」

 

エミリア「ここは、すご〜くたくさんのお友達がいるのね。(*´ω`*)」

 

スバル「こんな状況でもポジティブでいられるエミリアさん!マジ天使〜!」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

ルーデンドルフ校長先生「学園生活の、始まり!」

 

 




さてさて、この先どうなりますことやら…

ちなみにオバロ陣営は建国済みです〜
それまでにめちゃくちゃ有ります〜(予告)


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