カブキャン△ (塩麹弁当)
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冬キャンプとは

 冬にキャンプして楽しいの? 

 冬にキャンプして辛くない? 

 冬のさっむい中キャンプするなんて頭おかしいんじゃないの。

 

 上から姉、母、妹に言われた言葉だ。

 

 冬のキャンプの良い所なんて実際にやった奴にしか分からないし、ましてや冬にキャンプをした事が無いのに辛さを語るな! 冬は寒いし鼻水出るしキャンプ道具は必然多くなるし夜〜朝に掛けては凍え死にそうな時もあったし冷たい風が肌に突き刺さって痛いくらいだし焚き火が目に入って痛いしそれに──

 

「あんた今のところ冬キャンプの辛さしか言ってないで」

「楽しさとか良い所は実際にやってみないと分からないんだよ」

「それは難しいんとちゃう? 私とかはともかく、普通の人は真冬にキャンプなんてせえへんし考えもしないやろ」

「まあ別に真冬にキャンプをやれとは言わないが、やっても無いのに否定はしないで欲しい」

「家族にボロクソ言われたからってそんなアツぅならんくてもええやん」

「お前がもう少し話の分かるやつだったらなぁ」

「ウチがアウトドアに興味あるからええけど、無かったら私も普通に引くで」

 

 俺がこんなにも熱く語ってるというのに、目の前の幼馴染はジト目で見てくるだけで共感はあまりしてくれない。まぁ、引いてくれないだけマシだと思うか。

 

 大抵、キャンプの魅力を人に熱く教えようとしてもどこか冷めた目で見られてしまう。だから最近はキャンプの話は人にしないようにしていたのだが、つい昨日家族に理不尽にも言われてしまったのだ。あいつらは多分血が繋がってないんじゃないかと思う。

 

 唯一少しだけわかってくれるのは目の前の幼馴染―犬山あおいただ1人である。

 

 昔から親同士で仲が良く、幼稚園の頃から高校生の現在までずっと一緒に居る。あまりにも一緒に居る時間が長かったせいか、俺もあおいも互いに遠慮がない。

 具体的には、俺が風呂に入ってるとあおいも遠慮なしに入ってくるぐらい。今となっては何とも思わない―なんてのはさすがに嘘だが、中学生の多感な時期に入られた時には思わず叫んでしまった。あおいも恥ずかしかったのか、何でもないふうに装い顔が赤かった。

 それでも幼稚園の頃から一緒に入ってる仲だからか、なし崩し的に小学、中学、そして高校と続いていったのだろう。普通に俺の家の風呂にいまだに入ってくるのは少しは遠慮してほしいが。

 

 うちの風呂事情はどうでもいいんだ。

 とにかく冬にキャンプ、しよう! 

 

 

 △△△△△△

 

 

「いやー、晴れたなぁ」

「晴れたなぁー……やあらへんて」

「どうしたあおい。富士山がこんなにも綺麗なのに、元気がないぞ」

「あんたなぁ……先週あんだけ愚痴聞いてあげたのに……」

 

 先週あおいに愚痴を聞いて貰ったので、お礼にキャンプに誘ってみた。ちなみに今回は土日で1泊キャンプ予定だ。だが、あおいはどこか不満げに俺を睨んでいる。

 

「どうした、そんな可愛い顔してからに」

「睨んでんの! デートの誘いかと思ったのに……

「まあこれも一種のデートでしょ」

「聞こえとんかい! 聞こえてても無視せぇ!」

 

 ちなみに俺とあおいは付き合ってはいない。

 

 それはともかく。

 

 本日キャンプする場所は富士山の麓にある麓キャンプ場という所だ。このキャンプ場の特徴は、とにかく富士山が綺麗に見える!という事だろう。

 今日の天気予報では一日中快晴らしいので、この富士山をずっと見ながらキャンプできるという訳だ。最高かな? 

 

「なぁー、はよテント建てようや。寒いー」

「分かった分かった」

 

 

 感傷に浸っているとあおいがうるさいので、早速場所決めを開始する。

 

「取り敢えず、姉さん。向こうの方へ車移動させてくれる?」

「はいはい。まったく、姉使いが荒い弟だこと。ねぇ? あおいちゃん」

「まったくですよ! 尊さん、今日はありがとうございます」

「いいのよ。可愛いあおいちゃんのためだもの」

 

 なんて話をあおいと俺の姉さんが話している横で、俺はベストプレイスを見極めている。ちなみに、普段一人の時は愛車(クロスカブ)に跨りキャンプに行くのだが、今日はあおいがいるので姉さんに車を出してもらっている。さらに、あおいの分のキャンプ道具や2人用テント等を積むため、今回車は必須となっている。

 

「姉さん! そこだ!」

「りょーかーい」

 

 姉さんは間延びした声を出しながら、俺が指定した場所へ車を停める。そう、ここが本日のベストプレイスとなる。まあ毎回気分によって完璧な場所なんて変わるが、本日はここが最適な場所である。

 

「ここなら富士山が綺麗に見えるし、地面の凸凹も最小限だ。流石俺! 完璧だな」

「富士山はどこでも綺麗に見えるやろけど、まあ地面が凸凹してへんのは良いやん」

 

 あおいも満足そうだ。

 

「ほら、荷物降ろして」

 

 姉さんに言われ俺たちは車から荷物を降ろす。冬キャンは防寒具等で荷物が増えがちだ。俺一人の時は正直最小限の防寒具でも十分だが、今日はあおいがいるので軽めの毛布や携帯ストーブなど持ってきている。そのため、必然的に荷物が多くなってしまう。冬キャンのデメリットとしてはそこがあるな。

 

「じゃ、私は帰るから。明日10時にまた迎えに来るからね。あおいちゃん、楽しんでね」

 

 荷物を全て降ろしたあと、姉さんはそう言い車に乗り込む。姉さんには今回足として車を出してもらったのだ。そのため姉さんは一度家に帰ってしまう。

 

「あいあい。ありがとね」

「ありがとうございます〜。気を付けて下さいね!」

 

 それじゃまた明日ーと言い、姉さんは走り去る。

 

「じゃ、早速拠点作りといきますか!」

 

 

 




ちょっと改行とか見直して編集しました。


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ふもとキャンプ場

「それじゃあ、テント建てるか」

 

 今日はあおいと一緒のため、二人用の大きいテントを持ってきている。二人用と言っても、商品名に二人用と書かれているテントを持ってきてはいけない。それは一人用だからだ。二人で使うのであれば三人用。もっと荷物を置きたいのならば四人用を持ってこよう。ちなみに今日持ってきたものは三人用である。

 

「ほれ、グランドシート」

 

 あおいからグランドシートを渡される。テントの下に敷くシートだ。これを敷かずに地面に直接テントを建ててしまうと、テントの底が汚れてしまう。掃除が大変になってしまうから必ず敷こうね。

 

「誰と喋ってんねん」

「おさらいさ。あおいがしっかり覚えているかの」

「キャンプやってる人なら誰でも知っとるやろ」

 

 あおいと一緒にグランドシートを広げていく。一人用のテントなんかはテントが小さい為一人でも敷けるが、さすがに二人用テント(三人用)ともなると大きいので、二人がかりで広げないと風に煽られてなかなか広がらない。そもそも、このふもとキャンプ場は周りに木などほぼないような平原なので、風が強い。ここに一人で来た時なんかは、文字通り風に煽られながらテントを建てたもんだ。

 

「さて、じゃあテント出すか」

「ペグは鍛造のやつでええの?」

「もちろん」

 

 テントを張る際に使うペグはいろいろあるが、ふもとキャンプ場みたいな柔らかく、石が少しある地面なんかには鍛造ペグを使っておけば間違いない。最近では結構安価で手に入るが、安価とは言っても如何せん高校生のお小遣いではなかなか値が張るお値段である。

 

「そーれ、トンテンカンっと」

「ちゃんとペグ打ててるな」

「当たり前やん。耳が痛くなるほど聞いたで。こう打てって」

 

 ペグはテントに対して逆方向(頭を外側)にして打つと、強風でもペグが飛ぶことは無くなる。あおいには耳が痛くなる程は言っていないと思うけど注意はした。あおいはたまに誇張な言い方をするから困る。

 

 そんなこんなでテントが建った。

 

「やっぱ広いなぁ。二人やと余裕やな」

「あおいが狭いのはいやや〜って言うから、わざわざ買ったんだよ」

 

 おかげでバイトで得た金がほぼ無くなってしまった。

 

「せやから私も半分出すって言うたやんか」

「いや、それはプライドが許さない」

「変な所で強情なんやから」

 

 俺も強情だがあおいも割と強情で、出す出さないの話で一度揉めた。俺が勝手に買ったテントだから、あおいに半分出させるのは少し違う気がするという事で何とか納得して貰ったが、ちょっと不服そうだった。たまに嘘をついたりするが、変な所で真面目な奴だ。そこがあおいの良いところなんだろうが。

 

「さーて、あおいさんよ。テントを建てたら次は何だったかな?」

「何なんそのノリ……。次は寝袋敷いたり、外に椅子出したり、まあ何でも良いんやないの」

「そう、ここからは自由だ」

「だから何なんやそのノリは……。じゃあ取り敢えず寝袋敷いとこか」

 

 初めてのキャンプ場だと周りを散策したりする。俺は初めてではないが、あおいは今回が初めてだから後で散策に行くか。

 

「今日はちょっと食事に拘ってみようかと思う」

「やからスーパーであんなに食材買ってたんか。カレー作るにしては珍しいもん買うてたけど」

 

 丁度昨日テレビでカレー特集なるものがやっていて、そこで紹介されていた究極のキーマカレーとかいうのが食べたくて仕方がなかった。まあ究極要素がどこかはわからんが、とにかく美味しそうだったから今日はずっとカレーの口だったのだ。

 

「ところで、まだ2時やけどもう作り始めるん?」

「あぁ。今日はとことん拘りたいからな。早めに作っておかないと間に合わない」

「どんなカレー作るねん……」

 

 この後、特にやることもないから食事に拘るというのは大いに有意義であろう。なぜか不満そうなあおいは置いておき、とりあえずまずは準備から始めるか。

 

「あおいはどうする? 俺一人でも作れるから周りの散策行ってくるか?」

「いや、私ももちろん手伝うで。あんただけ働いてばっかやんか。それに周り散策するならあんたと一緒に行くわ」

「そうか。じゃあ食べ終わったらちょっとだけ行くか」

 

 とりあえず持ってきてるテーブル類を広げ、その上に食材を置いていく。今日は玉ねぎいっぱいキーマカレーを作るつもりなので、玉ねぎ二玉を使う。あおいには玉ねぎとその他の野菜をひたすら切ってもらい、俺は挽肉等の下ごしらえを進める。

 

 その後、持ってきた小さめのフライパンに先に肉を入れ中火で炒める。切ってもらった玉ねぎと野菜をドバッと入れて炒め、カレールーを入れて煮込めば完成だ。

 

「さて、まだ5時だがちょっと早めの晩飯にするか」

「お昼食べてないからお腹減ったわ」

 

 出来上がった究極のキーマカレーを器によそう。我ながら上手く出来たな。まあ昨日のテレビのレシピ通りにやっただけなんだが。

 

「ところで、これどこが究極なん?」

「究極要素は俺もわかんね」

 

 だってテレビが究極って言ってただけだしな。

 

「うーん、うまい!」

「切ってた時も思ったけど、玉ねぎ多すぎん?」

「これがいいんだよなぁ。ところで目は大丈夫か?」

「おかげさまで、涙が止まらんかったわ」

 

 あおいは玉ねぎを切っている間涙が止まらなかったらしい。ちょっと申し訳ないのでカレーの量は多めにしておいた。

 

 

「よし、そろそろ行くか」

「んー、行こか」

 

 カレーを食べ終わり小休止した後、あおいと周りの散策に出掛ける。散策と言っても建物はほとんど無いようなものなので、近くの池やテントを張れる良い場所が他に無いか探すぐらいだ。

 

 

「あの変な建物がトイレなんやろ?」

「そうそう。中に焚き木がたくさんあったりもする」

「顔みたいやな」

 

 顔みたいな建物を見たり。

 

「池凍ってんな」

「冬は凍るさ。ちなみに晴れてて凍ってない日は上手くいけば富士山が湖面に写る」

「へぇ〜、1回見てみたいな」

「写真撮ったからまた見せてやるよ」

 

 凍ってる湖を見たり。

 

「やっぱ冬やから人少ないな」

「人少ないから冬は良いんだよね。トイレも混まないし」

「あー確かに。特に女子トイレは混むもんなー」

「ちなみにトイレも結構数あるけど、いちばん綺麗なのはさっきの顔みたいな所のトイレね」

 

 シーズン中は男子トイレは混まないが、女子トイレは本当に混むので気をつけよう。

 

 

「この場所も良いな。この、丁度富士山とこの岩の感じが凄く良い……」

「でもちょっと傾斜やない? 寝にくそう……」

「たまに傾斜の所で寝るけどいつの間にか転がってて笑う」

「いや笑い事ちゃうで……」

 

 テントの設置場所を見繕ったりした。

 

 そんなこんなで現時刻は19時。俺たちは散策を終えてテントまで戻ってきた。今日は快晴なので星がすごく輝いて見える。

 

「すっごい星やなぁ。富士山もうっすら見えて、すごい綺麗や」

「だろ? この前来たときは曇り気味だったから今日は見えてよかった」

 

 あおいの横顔が星に照らし出され、いつもの倍くらい綺麗に見える。いつも一緒にバカやってるがこいつ普通に可愛いんだよなぁ。

 

「私はバカやってへんやろ」

「……声に出てた?」

「そんな顔してたで」

「ちなみにバカ以外の電波は受け取ってないよな……?」

「さぁ、どうやろ?」

 

はにかみながらあおいはそう言う。この件についてはあまり追求しないでおこう。

 

「んー、さすがに寒なってきたなぁ」

 

冬のふもとキャンプ場は当然ながら寒い。拓けている平地なので寒風も吹き荒れる。

 

「今日はいいかなって思ったけど、焚き火するか」

「ごめんやけどお願い」

 

今日は比較的マシだと思ったがさすがに寒いので焚き火の準備をする。こんな事もあろうかと焚き木は事前に買っておいた。ふもとキャンプ場では受付で焚き木が買えるようになっているぞ。

 

焚き火台を組み立ててからまず固形燃料を置きその上に新聞紙、その上から木を三角形になるように組んでいく。空気の通り道を作ってあげるのがコツだ。

ちなみに燃料等使わずに木を削ったり、麻縄を解したやつを火付けに使うのが個人的にかっこいいが、今日はあおいもいるので火の着きやすさ重視で固形燃料を使っていく。

 

「おー、手際ええなぁ」

「何回もやってるからな。ゲンさんはもっと手際いいぞ」

「いや誰やねん」

 

そんなこんなで火が着いた。やはり焚き火はいいなぁ。炎の揺らめきを見てるだけで心が洗われるようだ。

 

「暖かいなぁ。ウチ火がゆらゆらしてるの見るの好きやねん」

 

あおいもらしい。

 

「あんたはさぁ、1人キャンプの時はどんな事やってんの?」

「俺はまぁ、初めて来た所だったら周り散策して、近くに川とかあれば釣りして食料確保したり……」

「まさかの現地調達!?」

 

事前にキャンプ場をネットで探す時に近くに川とかないかを見ておき、荷物に余裕があれば竿を持っていくようにしている。釣った魚を料理して食うキャンプはマジで良い。

 

「あとは料理に凝ったり、コーヒー飲みながら読書したり、ボーッとしたり……かな」

「意外とやる事たくさんあるんやな。結構暇な時間あるんかと思ったけど」

「やっぱ1人だとやる事決めておかないとマジで暇だからなぁ。まあその暇な時間も案外悪くないけどな」

 

逆に2人以上だと話が弾んだりして楽しいのがキャンプだ。

 

「今日はあおいが来てくれたから良かったよ。ありがと」

「いや、私はどっちかと言うとあんたに連れて来られた感じなんやけど……。」

「そうだったかな?朝のことは覚えてないなぁ」

「都合の良い記憶してんなぁ……。でもキャンプは元々好きやし、あんたと一緒におれるし……たまにはええんちゃう?」

「じゃあまたいくか。てか、俺とはずっと一緒に居るじゃん」

「だから聞こえてても無視せぇって!」

 

あおいと焚き火を挟んで話している間に時刻は22時。そろそろあおいも眠そうだ。

 

「眠いー。そろそろ寝るわ」

「寝る前にそこの水場で歯磨きしとけよ」

「んー」

 

俺の言葉にあおいは気だるげに返事をしてから歯ブラシを持ち水場へ向かう。俺もそろそろ歯磨きして寝るか。と、そこへ歯磨き途中のあおいが焦りながら戻ってくる。

 

「な、なぁ!そういえばお風呂入ってないやん!」

「今更か。ここの風呂は今やってないぞ。シャワーもない。」

「じゃあどないすんの!?乙女的にお風呂入らんのはNGなんやけど!」

「まあ待て。こんな時はあれだ」

 

俺はそう言いながらカバンから肌触りのいいタオルを取り出す。

 

「あおいはこの鍋に水貯めてきてくれ。」

「ええけど……まさかタオルで拭くだけ、やんなぁ」

「しゃあない。近くの銭湯は2キロくらい離れてるしな。歩くか?」

「いや……それはさすがにええかな……」

 

あおいに水を貯めてもらってる間、木を追加して焚き火の火力を少し強くしておく。そう、今回は風呂の代わりに濡れタオルで体を拭くだけだ。まあこんなのでもやるとやらないのでは爽快感が全然違う。

 

「ほい、水入れてきたで〜」

 

あおいは眠たいせいか、ふらふらしながら帰ってくる。

 

「じゃあ焚き火の上置いて……いや、危ないからやっぱ渡して。お湯沸くまでちょっとかかるから、その間に歯磨き終えて、寝ないようにがんばれ」

「めっちゃ眠い……」

 

あおいが今にも寝そうなので、意味はないが早く沸くように念をかける。いやこれ本当に意味ないな……。

 

「沸いたらタオル渡してやるから、今のうちに早く歯磨きして寝巻きに着替えとけ」

「ん〜」

 

あおいが歯磨きを終えて着替えている間にお湯が沸いたので、お湯にタオルを浸してからテント内のあおいに声を掛ける。

 

「あおいー。濡れタオル完成したぞー。」

 

しかしテントにいるはずのあおいから返事がない。

 

「まさか寝たか?おーいあお……い?」

 

あおいを呼びながらテント内を覗く。と、そこには下着姿で倒れるあおいの姿が!

 

「いや、やっぱ寝てるだけだなこいつ……。おーいあおい!お待ちかねの濡れタオルだぞ!」

「んー。もう無理やぁ……。あんたが拭いてぇ。あと寒い……」

 

上も下も下着姿でそう曰うあおい。冬にその格好はそりゃ寒いだろ。

 

「お前は恥とかないのか。乙女的に男に拭かれるのはNGでは?」

「あんたやったらええよぉ……。」

「馬鹿言ってないで、さっさと体拭いて寝ろ。」

 

とりあえずあおいの顔をタオルで拭ってやってから濡れタオルを渡す。普通に刺激的な格好なので男としては反応するが、あおいに反応してしまうとちょっと負けた気になるから意地でもしたくない。てか早く拭いてくれないと外で待ってる俺がすごく寒い。

 

「拭いたで〜。おやすみ〜……」

「おい、ちゃんと寝巻きは……着てるな」

 

体を拭いてからもう用済みとばかりに無造作に投げ捨てられたタオルを拾う。お前はよくやったよタオルくん。

どうでもいいがこのタオル高値で売れそう。売らんけど。

 

「俺も体拭いて寝るか」

 

お湯はまだ残っていたのでお湯に浸してから体をタオルで拭いていく。あおいの使った後だからなのか、すごい甘い香りが香ってくる。俺が使った事でこのタオルが高値で取引される事は無くなったな。別に売らんけど。

 

「やっぱ外で半裸になって体拭くのは寒い……。けどちょっとクセになる……」

 

俺も眠さの所為か、そんな馬鹿みたいな言葉が口をついて出てくる。実際寒いのは本当だ。こんな真冬の星空の下で体を拭く奴がいるのか。ここにいたな。

 

体を拭き終わり、鍋を干し焚き火の火を消化する。寝る前には絶対消火しようね!

 

「こいつ……。堂々と真ん中占領しやがって」

 

テントに入ると先に寝てるあおいがテントの真ん中で悠々自適に寝ていた。

デカめのテントだから他に寝れるスペースは結構あるが、ちょっとムカつくのでわざと密着して寝てやる事にする。

 

明日で終わりか……と毎回キャンプの度に思っている事を考えながら、俺も眠りに着いた。

 

 

 




遅くなりました。


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ふもとキャンプ場2

主人公たちの名前を今回で決めました。
主人公:小牧 安(こまき やす)
姉:尊(みこと)
妹:雪(ゆき)

よろしくお願いします。

※この話投稿した時の名字を銀にしてましたが、小牧に変更しました。
みんなの名字って地名由来なんだから地名から取ればいいじゃんと思って、愛知の犬山市の隣の小牧市から取りました。


 夜。俺は少しの寝苦しさから目を覚ます。なんか顔が柔らかい何かに圧迫されているせいだ。多分ベタな展開だとあおいの胸なんだろうな、と思いつつ目を開ける。

 

 やっぱりあおいだった。寝袋から上半身を出したあおいが首に両腕を回し抱きついている。寒いから抱きついてきてるんだろう。胸がぶるぶる震えている。なら寝袋にちゃんと入って寝たほうがいい気がするが、こう寒いと体温の方が暖かいのかもしれない。

 

 そう考え、俺は持ってきていた毛布を俺とあおいの上に掛け、俺自身も寝袋から上半身を放り投げあおいとくっつくように横になる。寒さで震えるあおいを自分の胸に抱き抱えるようにして、少しでも暖かいようにしてやる。こうする事で俺もあおいも暖かいというWIN-WINの関係だ。

 しかし、そうすると今度は腹のあたりに柔らかい感触がしてくる。正直ちょっと思うところはあるが、あおいの体の震えも止まったしまあこれで良かっただろう。

 俺はあおいの体温を体で感じながら、再度眠りに入った。

 

 

 △△△△△△△

 

 

 テントの外から鳥の鳴き声が聞こえる。

 目は開けていないが意識が浮上してきた所で、俺は今が朝だと気付いた。やけに腹のあたりが柔らかいなと思い、そういえば夜にあおいを胸に抱いた事を思い出す。とりあえず今の時間を確認するために時計を見ようと思い目を開ける。

 

「携帯……どこやったっけな……」

 

 携帯を探すために手だけを動かしてゴソゴソしていると、動いた所為なのかあおいも目を覚ました。

 

「んぅ〜……なんか……すごいあったかいなぁ……」

「やっぱ体温が一番なのかな」

「ん……?」

 

 あおいがハッとした様子で目を開ける。

 

「なっ……なななんでこんなに密着してんの……?」

「あおいが最初に密着してきて、まぁ後は流れで……? でも、暖かかっただろ?」

「いや確かに夜すごいあったかいなぁとは思ったけど、まさかこんな状態やったなんて……」

 

 あおいはやけに赤い顔で、しかしまんざらでもなさそうな顔で言う。こういうのは乙女的にダメだったのだろうか。

 

「こういうの嫌だったら今後しないが」

「い、いや! 別に嫌じゃない! むしろ嬉しいというかなんというか……

「ふーむ。まあ嫌じゃないならいいが……」

 

 小声で言った言葉は今回は無視してあげよう。そういえば、携帯を探している途中だったが、あおいも目覚めたのならばもう寝袋から出るか。

 

「さて、そろそろ起きるぞ。朝食作ろうぜ」

「あっ……。うん」

 

 俺が離れた事で暖かさが消えたのが嫌なのか、悲しげな声を上げる。あおいはどこか名残惜しげに起き上がり、寝袋から這い出る。

 

「いま何時なん?」

「7時だな。姉さんが10時に迎えにくるから、それまで飯食ったり撤収準備したりしよう」

「りょーかい」

 

 今日も外は快晴なので、まず寝袋を干す。少し湿って水滴が付いてたりするが、この水滴をそのままにしておくとカビが生えたりするので、テントの外面に寝袋を置いて天日干しする。もちろんテントも結露で外面に水滴がびっしり付いてるので、よく落としてから干すようにしよう。

 

「じゃあ次は朝食作りといこうか」

「って言っても昨日買ったラ○チパック食べるんちゃうの? 作らんでもあるやん」

「確かに作るは語弊があるな。正しくは手を加えるだ」

 

 本当に一手間加えるだけだ。昨日買ったラ○チパックをホットサンドメーカーで挟んで焼く。ただこれだけ。これだけで元々美味しいラ○チパックがもっと美味しくなる。

 

「ほんまに一手間やな」

「でもこれマジで旨いぜ。やっぱラ○チパック最高」

「なんでラ○チパックなんかな思ったら、あんたが好きなだけなんか……」

 

 あおいが少し白い目で見てくるが、ラ○チパックが美味しいのが悪い。

 

 ラ○チパックとホットサンドメーカー、それにコンパクトバーナーを取り出し、バーナーの上にホットサンドメーカーを置き火を付ける。ホットサンドメーカーが暖まったらラ○チパックを置き、ハンドルを手前に倒し蓋を閉める。そこから数分待ち、表面に少し焦げ目が付いたら完成だ。

 

「こりゃ絶対うまいわ。特にこの寒空の下で食うラ○チパックの旨さといえばもう!」

「確かに、表面に焦げ目付ける事でより一層旨そうに見えるなぁ……」

「せやろせやろ。早速食べようぜ」

 

 ちなみに、中身の具はもちろんたまごだ。やっぱたまごが一番だって偉い人も言ってた。世間ではピーナッツとかいうのが一番ウケてるらしいが、いつかたまごがその人気を追い抜いてくれるはずだ。

 

「私、ラ○チパックやとピーナッツが一番好きやなー」

「この裏切り者め!」

「い、いきなりどうしたん……」

 

 まあピーナッツも普通に好きなんだが、焼くならたまごだな。

 

「うーん、やっぱうまい」

「これ、すごい外サクサクで美味しいなぁ」

「たまごに寝返る気は?」

「やからさっきから何言ってるん……」

 

 ラ○チパックをサクサクと食べ進めていき、撤収準備を進める。飯を食ってたらもう9時だ。姉さんが迎えに来るまで後1時間。荷物やテントを片付けてたら丁度いい時間になるだろう。

 

「あおいはテーブルとか道具片付けといて。俺は寝袋しまうわ」

「椅子は最後でええの?」

「いえす」

 

 テントの上で干していた寝袋は日に照らされてすっかり乾いたようだ。後は袋に寝袋を入れるだけ。何回もやってきた作業なのでサッサと入れる。

 

「こっちは終わったで」

「じゃあテント畳むか。とりあえず中の荷物は外に出そう」

 

 畳む時ももちろん2人で畳まないととてもじゃないが畳めないので、あおいと一緒に畳む。中の荷物を外に出してからまずフライシートを外す。フライシートとはテントの一番外に被せるやつだ。水滴が付いてるのでできるだけ落としてから外して畳んでいく。

 

「外す方が楽やなぁ。私これだけやりたい」

「テント建てるのも結構楽しいよ。やってく内に早くなっていくし」

 

 フライシートを外した後に四隅のペグを抜いていく。

 テントを支えていたポールを抜いてから折りたたみ、中のテントも綺麗に畳んでから部品類を全部袋に入れていく。これでテントの収納は完了だ。

 しかし、水滴がまだ付いてたり湿ってたりするとテントの寿命は落ちていくので、帰ってからしっかり干す予定だ。

 

「意外と早く片付いたな。今何時?」

「もうすぐ10時やね。座るかな思って椅子置いといたけど、しまう?」

「そうだな。そろそろ姉さん来るだろうし、ちょっと待っとくか」

 

 時間が余れば座りながらゆっくり富士山でも見とこうかなと思ったんだが。ちなみに今日も雲が少ないので富士山はハッキリ見える、最高のコンディションだ。

 

「そういえば、富士山単体は撮ったけどウチら写ってるの撮ってないやん。せっかくやし撮ろか」

 

 あおいは携帯を取り出し、富士山をバックに微笑みながらそう言う。あおいと太陽が重なりあおいが輝いて見える。天使かな? 

 

「富士山後ろにして〜、この角度がええかな〜」

「なんでもいいが早く撮らないか」

 

 さっきから密着している所為で胸が当たっている。乙女的に、いくら幼馴染とはいえ異性との距離感は大切なのでは? 

 いや、よく思い返してみれば普段も結構この距離感だな……。今更なのか。

 

「よし、撮れたで〜。ほら見てみいや、めちゃ良い感じや」

「おーいいね可愛い」

 

 おっと、つい本音が。

 

「かっかわいいとか言わんでええからっ!」

「うん。いい感じに撮れてるな。うん」

「もー、あほ……」

 

 あおいは赤くなった顔をパタパタと仰ぎながら携帯をしまう。

 

「おーい、そこのバカップルー。早く荷物積み込みな」

 

 そうこうしている内にいつの間にか姉さんが到着していたらしい。

 相変わらず時間ピッタリに行動するな。さすがだ。

 

「じゃあ荷物積み込むか……あおい?」

「カカカップルって……」

 

 相変わらず顔赤いな。

 あおいが呆けている間に荷物を積み終え、車に乗り込む。

 

「あおいちゃーん。早く乗りなー」

「ハッ……! いつの間に……」

 

 呆けていたあおいがハッとした様子で意識を取り戻し、車に乗り込む。

 車が走り出した所で姉さんが話し出した。

 

「やっぱこの辺は富士山良く見えるね」

「だろ? 姉さんも一緒にキャンプしたらよかったのに」

「いや、あんたらと一緒にいたら砂糖吐きそう……」

「なんで砂糖?」

 

 さて、この後はどうしよう。恐らく帰ったら11時ぐらいだろうから、昼飯食ってから家でゆっくりしてるか。

 

「なあ、あんた家帰ったらどうせ暇やろ? ウチでお昼食べて妹と遊んでやってくれん?」

「暇とは失礼な。暇だが。あかりちゃんと遊ぶのはいいけど、今日はあまり激しい遊びはできないぞ」

「あかりには適当にキャンプ雑誌渡しとけばいいと思うで。あんたとやったらなんでもええやろうし」

 

 あかりちゃんとはあおいの妹である。あおいをそのまま小さくした感じの、まさにミニあおいみたいな子だ。小学生の頃のあおいそっくりですごくかわいい。

 

「それならいいけども。じゃあ帰ってシャワー浴びてからそっちいくわ」

「んーわかった。ウチもシャワー浴びなあかんなぁ」

「あんたたち昨日お風呂かシャワーか入ってないの?」

「あのキャンプ場どっちもなかったんです。おかげで昨日は……あれ? 昨日私どうしたんやっけ?」

「自分で拭いてただろ。半分寝ながら」

 

 そーやっけ……。と言いながら、あおいは昨日の事を思い出そうとしているのか、頭を捻っている。

 あまり思い出そうとしない方がいいと思うが。

 

「んー思い出せへん。まああんたが言うからには拭いてたんやろ」

「俺が体拭く前に、タオルからなんか良い香りしたからちゃんと拭いてたはずだけど……っと」

 

 今のは失言だったかもしれん。

 

「まっまさか……私が体拭いた後のタオル使ったん……?」

「いやまあ、体拭く用のタオル一枚しか持ってきてなかったから、仕方なく。言わなければよかったな」

「いっいやまあ……別にあかんとは言うとらんけども……」

この子ら無意識にイチャイチャするんだよねぇ……

 

 

 △△△△△△△△

 

 

 

「さて着いたよ。じゃあまたね、あおいちゃん」

「はい! 尊さん、今日はありがとうございました〜」

 

 家に着き、あおいは自分の家に入っていく。俺は今から荷物を庭にある倉庫に持っていかないといけない。その後はあおいの家に行かなきゃいけんし、ちゃっちゃとやり終わる。

 

 意外と重労働だったため冬なのに汗をかいてしまった。昨日は濡れタオルで体を拭いただけだから体が少しベタベタする。しかも割と時間を食ってしまった。早くシャワー浴びるか。

 

「あれ、兄さんおかえり」

「ただいま。どっか行くのか?」

「友達と遊んでくる。てかあおい姉さんとキャンプ行ってたんでしょ。どうだったの? 距離縮んだ? もう告白された?」

「いやどした。距離はいつも通りだよ」

「あーはいはい。砂糖吐きそう」

 

 妹も姉さんと同じような事を言うな。歳が少し離れているとはいえ、さすが姉妹といったところか。

 ちなみに、妹が14歳の中学2年生。俺が16歳の高校1年。姉さんが20歳の大学生だ。

 妹はあおいのことはあおい姉さんと呼び慕っているらしい。犬山家とうちは家が隣同士でずっと親しい間柄だから、自然とその呼び方になったのだろう。

 

「兄さんは今からあおい姉さんのところ行くの?」

「そう。あかりちゃんと遊んでくれってさ」

「それじゃあ、冷蔵庫にプリン作って置いてるから持っていってあげて」

「おーありがと。あかりちゃん、お前の作ったプリン好きだから喜ぶよ」

「私、あかりちゃんのためならなんでもできる」

 

 妹はあかりちゃんに対してはすごく甘々だ。3兄妹の一番下だから妹が欲しかったのだろう。

 

「それじゃ、行ってくるね」

「おう。気を付けて、暗くならないうちに帰ってこいよ」

「はーい」

 

 妹が出掛けた所でシャワーをサッと浴びる。服も着がえてから妹特製のプリンを手にあおいの家のインターホンを鳴らす。

 

「あー! やすくんやっと来た! あおいちゃーん、やすくん来たでー」

「遅いで! もー、お昼今から作るから」

 

 玄関が開きあかりちゃんが騒がしく出迎えてくれる。

 荷物を片して妹と話してシャワーを浴びていたら、いつの間にか結構時間が経ってしまっていたらしい。

 あおいもご立腹だ。

 

「すまんすまん。ほら、これ妹からプリン」

「やったー! ゆきちゃんのプリン大好き!」

「あかり、ゆきちゃんにまたお礼言っとこなぁ」

「もう言ったー」

 

 あかりちゃんは携帯を素早く操作し妹にお礼メールを送ったらしい。

 さすが、現代っ子はお礼の行動も素早いな。

 

「あかりちゃん、これ冷蔵庫入れといて。あおい、せっかくだし作るの手伝うよ」

「んーじゃあお願い。助かるわ」

 

 パパパっとあおいと協力して昼飯を作っていき、食べてからあかりちゃんと一緒に過ごす。

 俺があぐらをかいた足の間にあかりちゃんが座り、俺が家から持ってきたキャンプ雑誌を一緒に読む。

 俺やあおいのキャンプ趣味に触発されたのかどうかは知らないが、あかりちゃんもキャンプ好きになった。キャンプ経験自体はあまりなく、去年の冬に俺と妹の雪とあおいとあかりちゃんの4人で行ったぐらいだ。

 

「これも良いなぁー。なあやすくん、これ買ってやー」

 

 あかりちゃんが無垢な顔でウン万円する寝袋を指差しながら言ってくる。

 確かに寝袋は高ければ高いほど良い物が多い。しかしあかりちゃん、お目が高いがそれは高すぎる。

 

「もうちょっと安いやつにしようね〜」

「わかった〜!」

「わかったらあかん! あんたも、あんまあかりを甘やかさんといて」

「あおいちゃん嫉妬してる〜」

「してへん! それより、3時やからプリン持ってくるで」

 

 言いながら、プリンを用意しにあおいがキッチンに行く。

 あかりちゃんに言われるとどうしても甘やかしてしまう。仕方ないよね。

 

「やすくん、あおいちゃんとキャンプ行ったんやろ? どうやったん? 距離縮んだ? もうキスした?」

「いや、してないが。あかりちゃんまで妹みたいなこと言うなぁ。仲良しか?」

「なんやー。あおいちゃんヘタレやから、やすくんからグイグイいかな進展せんでー」

「こっこらあかりっ! それ以上言うたらプリンあかりだけなしやで!」

「それは嫌やー!」

 

 ごめんあおいちゃ〜ん、と言いながらあかりちゃんはあおいからプリンを受け取る。

 俺もプリンを受け取り食べ始める。いつ食べても妹の作るプリンはうまいな。プリンに限らずデザート系ならなんでも作れる妹だが、一番試行錯誤して作ったのがプリンらしい。単純にあかりちゃんの好物だからだと思うが。

 

 プリンを楽しんだ後、またさっきと同じ体勢であかりちゃんと座り、あおいも一緒に雑誌を読んでいく。

 

「このテントおっきいなぁ。これでキャンプ行きたいなぁ」

「よし買おう」

「あーかーりー?」

「ぶーぶー」

 

 バイトもっと頑張っちゃおうかな。

 

 その後、同じようなやりとりを2、3回繰り返した。

 

 

 △△△△△△△△

 

 

 すっかり日も暮れ、現時刻は19時。

 離れないあかりちゃんをなんとか剥がし、俺は犬山家から帰宅してきた。遊びに行くと毎回なんだが、あかりちゃんはなかなか帰してくれない。大体あおいが引き剥がすんだが。

 

「おかえり兄さん。またあかりちゃんに捕まってた?」

「あぁ、可愛かったぞ」

「良いなー。私も今度行こっと」

「ご飯できたよ。やすも早く手洗ってきな」

 

 飯を食い、明日は普通に学校なので準備をする。

 しかし、ソロキャンプもいいが誰かと行くキャンプもやっぱりいいな。

 それが好きな相手とあれば尚更だ。今のこの関係もいいんだが……次のキャンプで告白してみるか……。

 

 その決心を胸に眠りについた。

 

 




キャンプ知識はたまに間違ってるかもしれません。
あと原作のあおいちゃんとはちょっと性格違うかも。
今の話で原作1巻の最初らへんのつもりです。



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野外活動サークル

原作見てたらあおいちゃんの一人称を間違えるという致命的なミスに気づいたので、1〜3話のあおいちゃんの一人称をウチから私に変えました。
自分関西人なんであおいちゃんの関西弁については書きやすさから作者の地元基準にしちゃってます。
まあたぶんそんな変わらないと思いますが。


「お〜、今回もあったあった。毎回置いてくれとるなぁ」

 

 授業も全て終わり放課後。

 毎回誰かさんが置いてくれているであろうキャンプ雑誌、ビバークを借りに私は図書室へ赴いた。

 誰かさん言うても1人しかおらんけども。やすは図書委員の立場を利用して図書室の一画をキャンプ雑誌コーナーにしてもうてる。

 一見職権乱用のようにも思えるけど、まあ先生の許可得てるってことはまたうまいこと言ったんやろなぁ……。

 

「志摩さん、これ借りたいんやけどー」

「ああ、うん」

 

 図書委員の志摩さんに渡してバーコードを読み取ってもらう。チラっと見えたけど、今志摩さんが読んでるんもあそこの棚のキャンプ雑誌やね。たぶんこの学校でキャンプ雑誌借りてくのなんて野クルの私かあきか、志摩さんくらいちゃうんかな。

 

「それ今月号のだよね? 私もまた貸して欲しい」

「もちろんええよー。明後日くらいになるけどええ?」

「うん」

 

 志摩さんにも貸す約束をしてから私は図書室を後にした。今日の野クルの活動は雑誌読んで話すだけやろなぁ。落ち葉焚きは昨日しちゃったから落ち葉あるかわからんし。

 

 部室棟に入って階段を上がると、野クルの部室の前にあきを見つけた。

 

「お〜いあき〜。図書室からビバークの新刊借りて……何やっとるの」

 

 あきがなぜか扉の隙間から部室を覗いとる。この子はなにやっとるんや……。

 

「あっイヌ子! ヤバイぞ、空き巣だ……」

「空き巣ぅ〜?」

 

 部室の中を覗いてみる。と、確かに見ない顔の女子生徒がおる。いやでもウチの制服やし、こんな堂々と空き巣せんやろ……。

 というかあの子も困惑顔でこっち見てるやん。

 

「あき、普通に考えて空き巣ちゃうで。もしかしたら入部希望者かもしれへんし」

「入部希望者〜? 部室狭くなっちゃうじゃん……」

「人が増えたら部に昇格して大きな部室貰えるやん」

「大きな部室!」

「ひゃっ!」

 

 私の言葉を聞いてあきが勢い良く扉を開けると、中の子の驚く声が聞こえる。

 

「ようこそ野クルへ!!」

「いやあき、まだ入部希望者と決まったわけやないで……」

「あっあの! 空き巣じゃないです! 入部希望です!」

 

 ほんまに入部希望者やったんか……。

 

 とりあえず私たちも中に入ってから、なんでウチのサークルに入ってくれるんかと理由を聞いてみる。

 

「なるほど。本栖湖で行き倒れていたら謎のキャンプ少女に助けられ、ラーメンまでご馳走になったと」

「うん! 夜の富士山がすっごくきれいだったんだよ!」

「へぇー、それでアウトドアに興味出たんや。ウチらのサークルもそれで来てくれたんやね」

「うん。アウトドアの部活は登山部もあったんだけど、こっちの方がまったり系って聞いたんだ〜」

 

 登山部と比べたら確かにまったりやな。ウチらにとって富士山は見るものやけど、あそこにとっては登るもんやと思っとるから。

 

「とりあえず自己紹介しよか。私は犬山あおい。こっちが大垣千明」

「よろしくな」

「各務原なでしこです!! よろしくね!」

 

 野クルへようこそー、とあきと同時に言い、各務原ちゃんを歓迎する。バンザイをしたら部室が狭い弊害で足があきの鳩尾を強打してもうた……。すまんあき……。

 

「ぐぐぅ……鳩尾入った……」

「ごめんあき……。やっぱ狭いなぁ」

「なんでここの部室、こんなに幅が狭いの……?」

「もともと普段使っとらん用具入れやったからねぇ。4月にウチらが作ったばかりやから部員も2人しかおらんし」

 

 入学してからあきと一緒に作った野クルやけど、2人しかいないから余ってた部室しか貰えんかった。あの時はあきと一緒にがっかりしてたなぁ。

 

「各務原が入ってくれるから後1人入れば部に昇格できるんだろ? なあイヌ子、なんとか小牧誘ってくれよー」

「やから無理やって。一回誘ったけどあかんかったやん」

「幽霊でいいからさ! 名前ちょっと借りるだけで」

「やすって変な所で真面目やから、それは無理やで」

「小牧……? やす……?」

 

 それにやすって、ちょっとあきの事苦手らしいしなぁ……。ノリが付いていけないとかなんとかで。

 

「小牧安っていうイヌ子の彼氏がいるんだよ。キャンプ好きな奴だから入ってくれーって誘ったんだけどさ、見事に断られたよ」

「彼氏やなくて幼馴染! もー……なんでみんなして彼氏言うんかなぁ」

「いやイヌ子、携帯の待受、各務原に見せてみろ」

 

 待受? 普通にやすとの2ショット設定してるだけやけど……。今は、昨日ふもとキャンプ場で富士山バックに撮った写真を待受にしとったはず。

 

「ん? おいイヌ子、また待受変わってるじゃねぇか! しかも前より密着してる!」

「うわー……。これは恋人同士の距離だよあおいちゃん……。本当に付き合ってないの?」

「やから付きおうてへんって! もー、各務原ちゃんまでそんな事言うて……。この距離普通ちゃうの?」

「「普通じゃない」」

 

 2人に強く否定されてもうた。昔から一緒にいるから、むしろこの距離じゃないと落ち着けない所まで来てしもうてるんやけど。

 

「てかこの写真、またキャンプ行ってきたのか? また2人で?」

「そやでー。ふもとキャンプ場ってとこ行ってきてん」

「え! あおいちゃんキャンプ行ったの!? 話聞かせてよ!」

「えーしゃあないなぁー。えっとな〜……」

「やめろ各務原! イヌ子に小牧と行ったキャンプの話を喋らすな!」

 

 仕方なく一昨日から話そうと思ったら、なんでかあきが話を遮ってきた。せっかく今からやすとのキャンプ話を小一時間喋ろう思ってたのに……。

 

「え〜、なんでなのあきちゃん?」

「いいか各務原。今後砂糖を吐きたくなければイヌ子に小牧との思い出を喋らしたらダメだ。あいつ無意識に惚けやがるから」

「砂糖は吐きたくないなぁ。虫歯になっちゃいそう」

「いやそういう問題ではなくてだな……」

 

 あきが各務原ちゃんにコソコソと耳打ちする。それよりもう話す準備は万端なんやけど〜。

 

「とっとりあえずだな、話を戻そう」

「むー。ちょっと納得いかんけど、しゃあないなぁ」

「わかったー。確かこの狭い部屋をどうにかしなきゃいけないんだよね」

「そうだ。だが心配はするな2人とも。部室がいくら狭かろうが、あたしたちの活動場所は外だ」

「「確かに!」」

「それじゃあ外に出発だ!」

「「お〜」」

 

 やることを特に決めずに、とりあえずウチたちは外に出てきた。

 

「いつもは2人でどんなことしてるの?」

「いつもは落ち葉焚きだな」

「校内の落ち葉とか枝集めてコーヒー飲んだりしとるんよ」

「ほぇ〜。他には?」

「他には……アウトドア雑誌読んだり、話したりやな……」

 

 私の言葉を聞いて各務原ちゃんがあからさまに落ち込んでしまう。やけど校内でできる事ってそれくらいしかないしなぁ。

 

「おいイヌ子、がっかりしちゃってるぞ! なんとかしろ!」

「でもほんまにそれくらいしかやっとらんし……。あ、各務原ちゃん、ラーメンもあるよ?」

 

 ふと、そういえばラーメンがあったなと思って取り出すと、各務原ちゃんの目が輝きだす。ラーメン好きなんかな……? 

 

「今日も落ち葉焚きするの? 落ち葉ないけど……」

「昨日焚き火やっちゃったからな」

「……部室帰ろか」

 

 部室に帰ってからなんとか各務原ちゃんを楽しませる方法を考えてると、そういえばキャンプ道具の本があった事を思い出した。

 この雑誌は私がやすから個人的に貰ったキャンプ道具の雑誌で、せっかくやから部室に置いて暇があればあきとあれ欲しいこれ欲しいと言いあってる。金額的に手は届かへんねんけどな……。

 

「そうだ各務原ちゃん。キャンプ道具の本あるんやけど見る? これはテント特集会の本なんやけど」

「見る!」

 

 一瞬でテンションが上がった各務原ちゃん。よかったーキャンプの本あって。

 

「テントって色々あるんだねー。あっこれすごい! ワンタッチテントだって!」

 

 傘みたいに一発で開くんだって! と言いながらテンション高く読み進めていく各務原ちゃん。

 

「ねぇねぇあおいちゃん。この自立式と非自立式ってなに?」

「それはなー、まあ詳しく話すと長くなるから簡潔に説明するとな」

 

 自立式テントとはフレームがあってペグや張り網が無くても建てられるテント。非自立式テントが立てるのにペグや張り網が必要なテント。

 フレームがなかったりする分、非自立式の方がコンパクトにできる。

 

「って書いてあるよ」

「ほんとだー」

 

 やすに聞くともっと詳しく話してくれるやろけど、2〜3時間は覚悟しとかなあかん

 

「お前ら雑誌だけ読んで満足するなよ。道具は使ってナンボなんだからさ」

 

 というわけで実物をご用意しました! と言って、あきはなんか見覚えのあるテントを取り出してきた。各務原ちゃんは「おぉー」なんて言って驚いてくれとるけど、あれってたしか……。

 

「それ夏休みにキャンプやろうとしてネットで注文したら9月に届いたやつやん。しかもその後ほったらかしにしてた激安テント……」

 

 お値段なんと980円。各務原ちゃんも思わず「きゅうひゃくはちじゅうえん……」と驚きを露わにする。

 

「各務原。その本に載ってるテントの価格、読み上げてみろ」

「価格?」

 

 あきに言われて各務原ちゃんは本に載ってるテントの価格を読み上げていく。

 

「3万9千円、……4万5千円、……6万6千円。……8万……」

 

 読み上げていく毎に各務原ちゃんの目が心なしかお金の形になっていくのが見える。テントは高いのはほんまに高いからなぁ。その分性能もええんやけどね。

 

「め、めがチカチカしてきたよ……」

「だろ? だからな、あたしたちの財力ではこれぐらいしか買える奴なかったんだよ!」

 

 という事で、ウチらは中庭に移動して実際にこの激安テントを組み立てることにした。

 

「じゃあ組み立てるか! テントと一緒に入ってたこの説明書通りにやるぞー」

「「おー!」」

 

 テントを説明書通りに組み立てていく。ペグを刺すために柔らかい地面を探して、場所を決めてからテントを広げる。畳んであるポールをつなぎ合わせて伸ばして、各務原ちゃんがみょんみょんさせる──ってその工程はいらんやろうけど……。

 

「そんで、ポールをテントの四隅の穴に固定して……固定……。いやはまらんぞ。これ長さあってんの──うぉぉ!」

 

 あきがはまらないポールを無理やりはめようと奮闘していたら、ポールの真ん中がいきなり折れてしまった。バキィッってすごい音したで……。

 こりゃ組み立てるのはもう無理かなー……と、誰かこっちに来てる。ていうか斉藤さんやん。

 

「おーい。よかったらこれ使ってよ」

 

 2人がギャーギャと喚いてどうしよーどうしよーと言ってると、斉藤さんが変な筒みたいなんを渡してきた。

 

「これなにー? どうやって使うの?」

「これはねーこう使うらしいよ」

 

 斉藤さんがポールの折れた箇所を、持ったきた筒とテープで繋ぎ合わせる。へぇーそれってそう使うんや。

 斉藤さんのおかげで980円テントがなんとか完成した。

 

「980円テントだけどちゃんとしてるねー」

「材質はそれなりだけどな」

 

 2人が早速テントに入っていく。980円でも結構立派に見えるなぁ。

 

「斉藤さんありがとなぁ、助かったわー。あんな事よう知っとったねぇ」

「いえいえー。私は聞いてきただけだから。あの子に」

「あー! あの子だ、謎のキャンプ女子!」

 

 斉藤さんが指差した方を見てみると、図書室で座っている志摩さんがいた。なるほど、志摩さんならこんなんも詳しいやろなぁ。各務原ちゃんが言うてた謎のキャンプ女子も志摩さんの事やったんやね。

 

「おーしまりんじゃん」

「そんなゆるキャラみたいな言い方やめぇや……」

「しっ、しまりん?」

「志摩が名字で、リンが名前だよ」

「同じ学校だったんだ! リンちゃーん! こないだはありがぶへ!」

 

 各務原ちゃんは図書室の開いていない窓に向かって駆けて行き、窓に顔を強打する。普通に痛そうやな……。って、よう見たら志摩さんの近くにやすもおるやん。しかもすごく怪訝そうな目でこっち見とる……。どうやらやすは鞄を持ってもう帰るようで、ジェスチャーで帰ることを伝えてきたから私は手を振って見送る。とりあえず事情は明日言えばええかな……。

 

 

 

 △△△△△△

 

 

 

「なにやってんだあいつら……」

 

 俺は思わず口に出してしまう。仕方ないだろ。図書室の外でテント組み立て始めたと思えば、ポールを折って慌てふためいてるんだから。

 野クルはあおいと大垣の2人だったはずだが、1人知らない奴がいるな。見ない顔だから噂の転入生とやらだろう。大垣にでも捕まったか? 

 

「あっ、棒が折れちゃったよ。テントってあの棒折れたらどうするの?」

「まあ……メーカーに送って修理かな」

 

 俺と同じく窓の外を見ていたらしい斉藤さんと志摩さんが、ポールが折れたテントの今後についての話をしている。

 確かにメーカーに送って修理が妥当だが、応急処置としてポール補修用パイプという物を使って折れたポールを繋ぎ合わせることもできる。とか考えていたら志摩さんも同じようなことを斉藤さんに言ったらしい。斉藤さんがどこからかパイプを拾ってきていた。いやなんであるんだよ。思わず志摩さんとツッコミが被ってしまった。

 

「それっぽいのがそこの落とし物箱にあったよ。リン、これ持ってって助けてあげなよ」

 

 志摩さんがあからさまに嫌そうな顔をする。この人すごい顔に出るんだよな……。

 すると斉藤さんがこちらに顔を向けて同じようなことを言ってきた。

 

「小牧君は行かない?」

「行かない。絶対面倒な事なるでしょ……」

「えー、じゃあ私行ってくるけど、これでどうやって修理するの?」

「折れた箇所にそのパイプ通して、テープで固定するだけ」

「なるほどー。じゃあ行ってくるね」

 

 修理方法を斉藤さんに教えたらすぐに向かって行った。相変わらず行動力すごいなあの人。

 折れたポールを修理している斉藤さんを見ていると、志摩さんが話しかけてきた。

 

「小牧はあれ使った事ある?」

「一回だけあるな。一番最初に買ったテントが中古の激安のだったんだが、3回目の使用で折れた」

 

 小学生の頃に少ない貯金を崩して買ったテントだったが、さすがに中古だった為か3回目のキャンプで限界を迎えてしまった。ポールが折れてしまいどうしようかと悩んでいると、近くにいたベテランっぽいキャンパーさんが補修用パイプをくれて事なきを得た。もうめちゃくちゃに感謝しまくったのを覚えている。その後に晩飯を一緒にご馳走になってしまったりと、凄くいい人だった。テントはその後に買い換えてしまったが、頂いた補修用パイプは今でも家に大切に飾っている。

 

「あーそれは……。よく中古なんかで買おうと思ったね」

「小学生の頃だったから金がなかったんだ。逆に志摩はなんであんな良いテント持ってんだ。あれなかなか高いだろ」

 

 最初に持っているテントを聞いた時度肝を抜かれた。3〜4万はする代物だったからだ。志摩もバイトをしているらしいが……まさか危ないバイトなんかじゃないよな? 

 

「テントはおじいちゃんのお下がりだよ。綺麗に使ってくれてたからまだまだ使えるけど。他は自分で買った」

「そうなのか。良いじいちゃんだな」

 

 人から道具を受け継ぐっていうのも、なかなかロマンがあるな。そういう意味では中古で買ったテントも人から受け継いだ物なのか? いや多分違うな。

 

 志摩さんとの馴れ初めは、簡単に言えばキャンプだ。同じ図書委員になった際、俺が意気揚々とキャンプ本専用棚を設けているのを見てお互いにキャンプ好きだと分かった。まあそこからはちょいちょいキャンプの話をする程度の仲だ。ちなみに志摩さんと話していると大体斉藤さんが近くにいるので、その経緯で斉藤さんともちょいちょい喋る仲になっている。

 

「さて、じゃあ俺はそろそろ帰るな。後は任せた」

「ん。元々今日は私が当番の日だったんだけどね。ありがとう」

「気にすんなよ。同じ図書委員だろ」

 

 今日は図書当番の日ではなかったので図書室に来ないつもりだったが、今日の当番の志摩さんが最初だけ行けないと言うので最初の30分程代わりに当番を務めていた。当番をしている間は結構暇なのでキャンプの本を読んでいたが、読み進めていく毎に夢中になってしまい志摩さんと交代してからも結局1時間ほど長居をしてしまった。

 

 さて帰ろうかなと鞄を持ち歩き出そうとすると、突然中庭側の窓からすごい音が図書室に響く。思わず窓の方を見てみると、さっきまでテントを組み立てていた子がなぜか窓に激突して、そのまま窓下までずるずると倒れていく。すごい痛そうだが大丈夫か……。

 テントの方を見てみると、折れたポールもしっかり繋がったらしく、しっかりとテントが建っていた。それは良いんだが、あの子がなぜ窓に突撃してきたのかが気になるな……。

 

 窓の外のあおいもこっちを見ていたので、ジェスチャーで帰ることを伝える。汲み取ってくれたのか手を振られたので、振り返してから図書室を後にした。

 さっきの事情は明日聞こうか。

 




しまりん図書委員設定にしてますけど、原作での座ってる位置からして図書委員ですよねあれ。
ちなみにあおいちゃんとしまりんは主人公経由でちょいちょい話す仲になってます。
原作では今はあんまり仲良くなかったと思います。



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