新米クソ雑魚提督の艦これ日記 (タケノコ軍曹)
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初日 その1

※書こうと思った経緯
艦これ始めました→メンテです(^o^)→その鬱憤を小説書いて晴らそう。以上


「着任初日」

 

 

 

 

 

艦隊娘を率いて、深海棲艦 という侵略者?を撃退するお仕事-【提督】になりました。

 

ただ、なった経緯が提督の偉い人、元帥さんに街中で「ティンときた!君、提督にならないか?」と誘われ、ハイハイ承諾、ホイホイついて行ったら何か提督になっていました。この国の未来が心配です。

 

さて、お天道様に胸を張って歩ける立派な職業に就職できたのは良いのですが、その仕事上いつ死んでしまうか分からないので、私が提督として生きてきた証を残すためにこれから日記を書いていこうと思います。

 

 

 

 

 

 まず、提督になった初めての業務は最初の艦むすを決める事でした。(といっても偉い人が「好きなの選んで」といって持ってきた五枚の写真の中から選ぶだけでしたが……)

 

艦むすさん達は大変美人揃いでこの時の私は少し浮かれていました。

 

 

 

―――――ですが、写真を見るとどの娘も幼い容姿……要はおっぱい小さいロリ娘。

 

 

 「え?こんな小さい娘が戦えるんですか?!」とお偉いさんに聞けば、「お前よりは戦えるからはよ選べやボケ」とキッパリ言われました。自信なくしました。

 

 しかし、私はド素人提督。どの娘が良いのか分かりません。なので最初に目についた『電』という娘にしました。

 

 そして10分も立たないうちに駆逐艦『電』ちゃんが部屋に―――なんでここダンボールしか無いんだろう?―――やって来ました。

 

 実際に会うと本当小学三年生位にしか見えません。でも、この娘私より何百倍も強いんだろうな~……。筋トレしよう。

 

~~~~~~~~~

 

 

 着任の挨拶も穏やかに済み、その後サポート役の艦娘『大淀』さんから仕事内容チュートリアルを学んだ後、彼女から「早速、艦娘を出撃させてみましょう」と言われました。

 

 「え?、まだ電ちゃん一人だけ何だけど、大丈夫?」と聞けば、「大丈夫です!大破状態で出撃なんて愚かな事しない限りは。」と返されました。

 

どうも彼女の話を聞けば『戦闘中に大破しても、その戦闘中はいくら被弾しようと轟沈はしない。但し、大破状態で出撃や次の戦闘に行って被弾すれば轟沈する』ということらしいです。

 

………え?どういこと??無限食いしばりでも発動してるの?

 

 しかし、その疑問を大淀さんにぶつけても彼女は「それが艦娘です!」と返され、「アッハイ」というしかない私。もう仕方ないので彼女の言葉を信じて電ちゃんを出撃させました。

 

 艦娘が出撃した後の提督の仕事は、作戦の成功と無事を祈って椅子を温めるだけです。

 

出撃した娘の様子は部屋のスクリーンで見れるので「撤退か追撃」を決める大事な仕事なんですが、実際に働くのは艦娘達なわけで……。

 せめて撤退の見極めだけは間違えないようにしましょう。それが私達提督が出来ることですからと、決心をここに書いておく。

 

 

 

――――あと、この映像はどうやって撮っているんだろう?と大淀さんに聞いたら「艦娘の装備についている小型カメラ、そして最新技術を導入して作られたドローンです」と返されました。……すごいねドローン。因みに一つだけでも私の給料より高いそうです。




一番書きたいことは私がプレイ中にあった事、思ったことなんですが、そこまで行くのに後何話かかるんでしょうね……(遠い目)。せめて3日目以降からは書けたら良いなと思います。


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初日 その2

※どうでもいい設定
この『提督さん』は、日記を常に書いている。
―――――理由?寝る前に書くと飽きてしなくなるから。


 

 

 

《午後4時》

 

 

 

 電ちゃんの仕事の様子をスクリーンで見ながら真っ先に頭に思い浮かんだことは「はじめてのお○かい」でした。

 だって、仕方ないでしょう?容姿がまんま小学生なんですから。

(しかし、あの番組て子供が卵か祝のケーキ買った時はほぼ確実に袋落としてグチャッとなっちゃう思い出しか無いですよね?)

 

 そういうわけで私はどきどきハラハラしながら見ていた時でした。

 突然、画面からアラーム音が!ああ、あの時は本当に心臓に悪かったです。あと、耳が痛かった。

 一体何事かと隣で待機している大淀さんに聞けば、敵艦を発見したのでこれから交戦するとのこと。え?もう戦うんですか?

 

「初日だから鎮守府の周りを一周グルっとクルージングして終わるんじゃ無いんですか?」と聞くと、「敵はこちらの都合なんて知ったことないですよ。」と言われてそりゃそうだなあと思いました。

 

そして、数秒たった後でしょうか。画面越しに敵艦の姿が見えてきました。

 

 

「敵、深海棲艦駆逐イ級です。数は1。十分勝てますよ提督。」

 

 

 敵艦「駆逐イ級」

 確か電ちゃんを出撃させる前に見た資料によれば『ドラ○エのスライムみたいなもんやで。一番弱いで。もしこれ単騎に負けるようなら……辞 め た ら、提 督~?』と書かれていた。

 煽りがムカつくとか、私はド○クエ派じゃなくてマリ○RPG派だからそっちで例えてくれよとか色々思ったが、まあとにかく電ちゃん一人でも十分勝てる相手でホッとしました。

 

 「交戦に入ります。」

 

 ……いや、でもあれどう見てもスラ○ムじゃなくてマ○オのキラーを凶悪にしたものにしか見えません。この作戦終了後に資料の訂正の文を書いて送ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

《午後4時30分》

 

 

 戦闘が終わりました。

 

 結果はこちら側の勝利です。――――が、相手は轟沈、こっちは大破。辛勝です。辛 勝 です。

 え……?序盤ですよ?

 『俺達の戦いはこれからだ!!』の一歩も踏み出してませんよ!

 

 「資料の言うとおりに私提督辞めたほうが良いんですか?!答えてくださいよ、大淀さん!」と隣の彼女に聞く私。

恐らく、いや間違いなくその時の私の姿は無様以外の何物でもなかったでしょう。

 

そんな私に彼女は優しく……いや、優しくなかったですね。だって、あんな細腕なのに片手一本で私を立たせた後、「任務中の提督は狼狽えてはいけません!」と叱咤ですもん。

私、Mじゃないんで……。美人からの叱咤激賞されて覚醒する主人公属性持ってないクソ雑魚提督なんで……いくら美人でも心折れそうでしたよ。

 

 まあ、おかげで十分頭を冷やすことができましたし、自分はクソ雑魚でも提督。

椅子を温めるだけしかしていないくせに……現場の電ちゃんはもっとつらいはずなのに。泣き言を言う暇なんて無い。

 

 

「すいません、少し、どころのレベルじゃない位動揺してしまって。……あと、ありがとうございました。おかげで頭が冷えました。」

 

 

と、謝ると彼女は「いえ、こちらも差し出がましいことを言って申し訳ありません。……あと、提督辞めたほうが良い?と弱気になる気持ちはわかりますが、大丈夫です。  他の提督さんの中には"も っ と ひ ど い ”人達が結構いますので。

提督は上は言い過ぎだとしても中の中……いや中の上です。これから次第でもっと上を十分狙えます!」

 

 

……あと、私の評価が結構良くてうれしい。が、私より酷い人ってどんな人なのでしょうか?興味本位で聞く私。

 

 

 

 

「……ひどい人はさっきの状況で切腹したり、リスカしだしたり、酒に逃げたり、セルフ去s―――女性に当たる様な方は提督候補から外されるのでそこは安心できるのですが、代わりに自罰、自傷癖持ちの方が―――」

 

 

 

 何 で そ ん な 人 達 を 提 督 に し た の ? 馬 鹿 な の ?

 

 

 

 

 

《午後4時50分》

 

 

大分冷静になれました。

 

しかし、冷静に考える余裕が出来ると、この国の防衛に不安ががあがあああ――――よし、考えるのはやめましょう。そういうことは上の人が何とかしてくれるはず。

 

それよりも早く電ちゃんに撤退指示を出さなくてはいけません。

 

 

 机の上に置いてある無線機で電ちゃんに撤退の指示を出すと、彼女は「電、撤退するのです!」という意外と元気な声で指示に素直に従ってくれました。やはり良い子だな~。

 

 

 さて、電ちゃんが帰ってくる間にちょっと大淀さんに相談しましょう。内容は勿論先の戦闘のこと、そして反省&改善案です。

――――無理そうなら他の提督さんを探してもらいましょう。流石にあんな良い子を無駄死にさせる位なら……ね?

 

 

 

 

 

 

 

《午後5時30分》

 

 

…………えぇ~…・…???

うーん?先程のことを大淀さんに相談しましたが、予想の斜め上行く返答を頂きました。

……ちょっと、どう書こうか悩む。

 やはり、この手帳が後の誰かが見て役に、立つかどうか……立つと良いな~でも多分恐らく立たないんだろうな~と思うが、ちょっとは先達(この時点では無能ド素人もいいとこだが)らしく、ボイスレコーダ(彼女には勿論許可貰いましたよ。)大淀さんのありがたい言葉を此処に書いておきましょう。

 

(以下、彼女の発言まんま)

 

 

 『提督。先程の戦闘、少し動揺しすぎた点はマイナスですが、着任まもなく自分の艦を大切に思う心遣い素晴らしいと思います。――で す が、良いですか提督?大事なことなのでちゃんと録音したものを寝る前にでも確認しておいて下さい。

 駆逐艦は艦種の中では特に装甲が柔く、そして練度が足りていない娘はですね――――中 破 & 大 破 前提で運用して下さい。

 寧ろ※夜戦こそが駆逐艦の本領発揮出来る場。

(※その戦闘の延長死合。延長した時=ほぼ夜だから夜戦。そしてなぜか夜戦直前に大破したなら艦は轟沈しない。……艦娘て不思議ですね……。何かの神様の加護でも頂いているのでしょうか?)

 

 勿論その後は大破状態なら進撃せずに撤退することを推奨しますが、この先、帰投した艦娘の中破、大破なんて何百、何千回でも見るんです。なので慣れて下さい。

 

―――――――本当に慣れて下さい。慣れずに潰れた提督が本当多いんですから。

……きついこと言いましたけど、私、貴方の事期待してるんですよ?だから、何かあったら一人で抱え込まずに私や明石さん(※大淀さんと一緒に配属になった艦娘です。……美人だけど何かマッド臭がするんですよね~……。)、他の娘にも相談して下さいね?』 

 

 

 

 

 うーん。

 最後部分は寝る前に後でリピートするとして(本人の前では絶対に言えませんが、男はやっぱり美人に弱いですな!)、中破大破前提で作戦を指揮しろとは……。

 

 

 

 

 ――――よし。先ずは帰ってきた電ちゃんに労いの言葉を掛けて来ましょう(または心に棚をつくとも言う)。




一旦、ここで切ります。予定より長くなったな……。あれ?今回で一日目終わるはずだったのに……。


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初日 その3

今回で初日の話は終わりたかったのですが、一話2000字以上はモチベが持たない事に気づき途中で切りました。すいません。多分、次回で初日終わります。


《午後5時35分》

 

 

電ちゃんが帰ってきました。……凄くボロボロです。

武装は勿論は衣服も所々破けて素肌が―――やべえ、憲兵さんがいたら言い逃れが出来ないレベルの事案にしか見えない。

とにかく早く入渠させて休んでもらわなければ。

 あと、このあと直ぐに電ちゃんには謝りました。大淀さんにはああは言われましたが、もっと私が事前に艦むすさん達のことをもっと知っていれば、もっと良い装備を明石さんに作ってもらったりして無傷は無理でも小破・中破位には抑えられていたと思います。

……まあ多分、いや間違いなく今回の事は大淀さん予想していたでしょう。

 もし、今回の事が無かったら、調子に乗ってイケイケドンドンイキリ提督になっていたかもしれないですし、そうなったらいつか取り返しのつかない事態になっていたことでしょう。

 そうならないように、今回の出撃で釘を刺したかった、そうですよね大淀さん!

 

――――ですけど、もし私が大淀さんが言っていた「残念な提督」の内の一人だったらどうしていたんですか?と聞いたら、いい笑顔でポッケからガラス容器――――注射を見せてきました。……え?錯乱したらそれぶっ刺してたの?

 

 

 

《午後5時45分》

 

 

 此処からは付添の方が大淀さんから明石さんに変わりました。

 明石さんは髪がピンクという派手めな色なのですがそれがよく似合っている美人さんです。いや本当彼女たちは美人ばかりで――――芸能人になったらアイドル事務所いくつか潰れそう。

 

 それで、今から艦むすを直す(治す?どっちだ?)【入渠】、次に艦むすの建造(建造……?)したり装備の開発を行う工廠をして今日のお仕事が終わります。

 

 では、電ちゃんを連れて入渠へ、行きます!!

 

 

 

 

《午後6時》

 

 

入渠しに来ました。

 

―――――風 呂 や な い か い ! ! ? ?

 

 えぇ……?もっと、こう色んな機会や設備とかを想像していたのですが、実際は銭湯の大浴場でした。……ああ、湯気で帳面がふやけてインクが滲む~。書きづらい~。明石さんの説明をしっかり書き留めたいのに……次のは防水仕様のお高めのヤツにしよう……。

 

 それで、明石さんの説明をまとめると

 ①装備類は妖精さんが直す(時間はそんなに掛からない)。

 ②艦むす本人の怪我はこの[謎の成分が入ったお湯〕に入って直す(※それこそ轟沈してない限りもとに戻せるそうで。只の人間にも効くのでしょうか?)そして、こっちは艦むすの艦種・状態で長さが変わる。(短いので数分。長いので数時間。)

 ③私がこれから寝泊まりする部屋はさっきいた部屋の直ぐ隣、最低限のキッチン、足がそこまで伸ばせない広さの3点ユニットバス+7畳間の洋室の1k。 以上

 

 

……最後いる?あと、トイレと風呂は別々が良かったな……。というか、艦むすさん達がここでゆっくりしている時に私は部屋の狭い浴槽で縮こまって体を洗うとか想像したら悲しくない?でも、寮暮らしとしては破格ではないだろうか?

――え、所属艦むす達が住む寮に比べたら物置だって?HAHAHA、そりゃ彼女たちと椅子を温めるだけの提督を一緒の待遇にしたら駄目ですよ。HAHAHA――――でも物置って良い方は無いですよ、明石さん……。

 

 そんなことは置いといて、話は良く分かったので早く電ちゃんを入れてやって下さい。

いつまでも彼女をボロボロの姿のままにしとくわけには行きませんから。そう思い、風呂―――いや入渠を後にしようとしたのですが明石さんに止められました。

 

「提督!今回は【これ】の説明も兼ねて、【これ】を実際に使ってみましょう。」と彼女は私の目の前にバケツ(※何か青く光っているんですけど?!)を差し出して――――え?本当になにこれ?

 

 不思議そうな目で見ている私は隣にいる電ちゃんに「これ何か分かる?」と聞くと、電ちゃんは「司令官さん!これは高速修復材なのです。私達に使うとあっというまに怪我が治るのです!」と答えてくれました。

(う~ん、やっぱ彼女たちには直すより治すが合うな。)

 

――――その時の明石さんが「私に聞けよ!」て顔をしてたのを今日までは多分忘れません。

 

 それで、その高速修復材はどう使うんですか?と明石さんに聞くと、彼女は「フフン。これはですね―――」とドヤ顔しながらバケツの中身を電ちゃんにぶっかけた。 ……隣 に い る 私 に も  か か っ た! ?

 

 勿論、「冷たいのです!」と言った彼女はずぶ濡れでした。

 え~……?体罰なの?ちょっと!憲兵さんに見つかったらと取り調べまったなしなんですけど?!ねえ!?

あと、隣にいる私にもおもいっきりかかったんですけど!!大丈夫だよね、これ!!??と驚いていると、不思議なことが起こりました。

 

なんと、さっきバケツの中に入っていた液体をぶっかけられた電ちゃんの怪我がみるみるうちに治っていくではないですか。

そしてじわじわと靴下がヌメってくる嫌な感覚が来る。まるで雨の時に水玉の中を通気性バツギュンな靴で歩いた時のような―――明石さん!!何か一瞬で服が乾くドライヤー持ってない!!??

 

 

「―――――――と、高速――いやもうバケツでいいや。バケツを使う事によって入渠をかなり早める事が出来ます。とても便利……なんですが。一人治すのに一つのバケツを消費しちゃいます。なのでご利用は計画的にですよ、提 督?」

 

 とドヤ顔で語る明石さん。

しかし、絵面は一昔前のドラマで見た、女子生徒の陰湿なイジメにしか見えないんですがそれは良いんですか?

あと……早く着替えたい。

 

 というより、精神上やりたくないのでもっと穏便な方法は無いんですか?と聞けば

「ん~ん。入渠に使うお湯に混ぜてから入っても、効果は一緒ですけど……、大体バケツ使うときって風呂に入る時間さえ惜しいと思うんですよね~。だから、この使用方法が一番合理的だと思います。」と、答えが返ってきました。

 

 成程、言われてみれば確かにそうです。

もし、使う時になったら抵抗はありますがその時は心を鬼になれるか自信はないですが提督の大事な仕事としてやりましょう。

 

 

――――ですが、一つ言わせて下さい。

 

『この後の仕事は、工廠の説明して終わり。そして電ちゃんは明日に備えてぐっすりとお休みしてもらう予定。

―――ゆっくり入渠して貰っても良かったなら、湯に混ぜるやり方じゃいかんかったのか?バケツはぶっかける必要あった?もっと丁寧にそっとかけれなかったのですか?』

 

そう質問して返ってきた答えはこれです。

 

 

「………ノリと勢いでやっちゃったぜ☆」

 

 

―――はあ~、 キ レ そ う。

 

 

 

《午後6時20分》

 

 

【仏の顔は三度まで】ということわざがあります。

とても自愛に満ちた仏様でも、三回も無礼を働いたら流石に怒ります。そして、私は聖人君子でもなんでも無い只の一般人。

今回はおちゃめで許しましょう。電ちゃんも怒っていなかったですし。

―――おめぇ、明日電ちゃんが風引いたら代わりに 出 ろ よ。

 

 こんなアホな理由で今日仕事は出来ませんとか、上に連絡したく無いよ、私は。

 

「え~!着任初日で風邪引くまで遊ぶくらい仲良くなれるとか、君すごいね!!」とか褒めてもらえるわけない。もし、褒めてもらえたら本当この国の国防に泣きますわ、本当に。

 

あの後、電ちゃんには風引かないように入渠を再びしてから明日に備えて休むよう伝えました。これで電ちゃんの今日の仕事は終わりです。……私も仕事終わりにしたい。服は別に良いが靴がビシャビシャで気持ち悪いよお……。

 

そして今私達がいる場所は入渠という名の銭湯とは真逆の、どこからどう見ても製造工場な場所―――【工廠】、此処で艦むすの建造及び装備の開発を行う所です。

 

そして来て早速ですが、明石さんに「新しい艦むすを建造しましょう!」と言われたので資材投入しちゃいました。やっぱ戦いは数だよ兄貴!!

 

しかし、あれですね……。もっとこう、熟練の職人さん達を想像していたのですが、実際は妖精さん(???)に資材渡したら勝手に建造してくれるなんてお手がる過ぎじゃあないんですか?まあ、その代わりどなたが来てくれるかは運任せなんですがね。

 

あと、資材なんですが別に此処で書く必要はないと思いますが《燃料/弾薬/鋼/ポーキ》の4つで、最低値で駆逐、ちょっと増やして軽巡、燃料・鋼を多めにで重巡・戦艦、ポーキ多めで空母が出る確率が高くなるそうです。……出る時は出るけど、出ない時はとことん出ない。そして失敗しても使った資材は返ってこない。ご利用は計画的にエトセトラエトセトラ……。

 

あと、建造の残り時間でどの艦種か大体は予想がつくそうで…建造時間1:00。これはほぼ軽巡みたいです。

正直、初手に重巡・戦艦来てもらっても、提督なりたてなので資材は支給分――ええ、かなり少ないですね。来たら途方に暮れるしかなかったことを想像すれば、今回は運が良いですね。……明石さんが「提督!燃料と鋼総資材の半分ぶち込んで戦艦造りましょう!!」て言ってましたが無視して最低限の資材を妖精さんに渡して正解でした。

 

では、建造終了まで明石さんに艦むすさん達のことを色々質問してきます。

 

 

 

《午後7時10分》

 

建造終了まで残り10分になりました。その間に明石さんに聞いた話ですが、私は前に「戦いは数だよ兄貴!」と書きましたが、どうも提督一人が保有できる艦むすの数に制限があるらしく、優秀で信用がおける方でしたら100以上良いそうなんですが、私の様な成り立てクソ雑魚提督は16前後みたいです。……いや、16でも多くない?勿論、成果出せば保有数は増えるようです。

 

なんでも、昔はそこら辺緩かったみたいで狙った娘じゃ無かったりダブったりで艦むすの在庫問題が―――

艦 む す の 在 庫 ?? ?? ? ?

 

……もしかして最初渡された艦むすさんって在庫sy―――やめやめやめ。せっかく来てもらった彼女に失礼だ。さっさと忘れよう、そうしよう。

 

 

話を戻して、その持て余してる艦むすさん達と必要としている提督さん達の仲介をするなりして問題は解決したのですが、流石に懲りたのか艦むすの保有に制限が掛けられたそうです。

 

 

……でも、建造出来る艦てランダムですよね?運が悪くて残り15枠同じ艦とかなったら困るんですけど?と思いましたが、明石さんは「そこは大丈夫です。―――まあ、建造出来たら分かりますよ。」と答えてくれました。

うーん?分からんがあと10分、待ってみましょう。




艦これ、2-4で詰まってます……


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初日 終わり

※途中で文体が変わります


《午後7時20分》

 

建造終わりました……が、何だこれ?

艦娘さんはいなくて、あるのは艦の艦装部分?

一先ず明石さんから説明を聞かねば。

 

 

《午後7時半》

 

明石さんから話を聞きました。

 

要約すると

①建造して出来あがるのは艦装部分のみ。女の子はついてこない。

 

②残念ながら望んでいない艦だった場合、出来た艦装を解体するなり、近代化改修(※要は強化。限界がある。更に強くなるには練度を上げて改造する必要がある)の資材に出来る。

 

③運良く望んだ艦だった場合、妖精さんに頼んで艦装に命を吹き込んで(妖精さんはゴールドエクスペリエンスか何かだろうか?)艦娘へ進化(?)させよう!これで新たな艦娘が提督のもとに。

……進化後のクーリングオフは受け付けておりません。一度その娘を受け入れたら面倒は最後まで見ましょう。

 

以上

 

 

成程。確かに、艦装だけだったら解体してもそんなに心傷まないので、艦娘さんたちの数の整理をしっかり出来る。

それに、このやり方でしたら艦娘の厳選が十分できます(さすがに、残り枠が全部同じ艦娘とか私の様なド素人じゃあ詰みますわ。)。偉い人はやれば出来るから偉いんですね。……もっと早く考えてればな~と思うのは流石に難癖レベルでしょうけど、やはりちょっとは思っちゃいますね。

 

 

まあ、何はともあれどんな艦娘か分かりませんが、今は少しでも戦力が欲しいので早速艦装を艦娘にして貰いましょう!

 

 

……え?明石さん、何で解体を勧めてくるんですか?

 

 

《午後7時40分》

 

出来上がった艦の名前を教えてもらいました。

 

   軽巡洋艦『川内』

 

何か問題でもあるのでしょうか?そう思った私は艦の資料(※大本宮が提供している情報サイト。)をネットで見ました。

 

 

 

『軽巡洋艦『川内』――――川内型軽巡洋艦の三姉妹の長女やで。姉妹の中では防御と対空がお高いんや。間違いなく着任間もないルーキー共にはお勧め……の筈なんやけど、何でか提督達の間では評番悪いんやな……。何でやろうな?』

 

 

…………何でやろうな?じゃないがな。肝心な所が分かんないんじゃあ意味ないでしょう!?

 

仕方がないので明石さんにどうしてお勧めしないのか聞くと、

「いや、優秀なんですよ彼女。……でも、ちょっと、いや一つだけ欠点がありまして、それが提督の大きな負担になるようで……」という返事が返ってきました。

 

―――――何だ、そんなことですか。

要はあれでしょう?性格がきついとかそういうのでしょう?確かに私のメンタルはクソ雑魚ナメクジですよ。

ですけどね!そんな私にもプライドがあるんですよ。

女の子があんなにボロボロになって戦っているのに、私だけのうのうと椅子を温めるだけの仕事して平気でいられるかってんですよ。

少しでも艦娘さん達の負担が減るなら、被害が私だけで済むなら何でもしますよ。

 

それが提督ってもんでしょう―――そうだろう 明 石  !!??と説得を試みた私。

そんな私の熱意に負けた明石さんは「吐いたツバ飲まさんかんな!!」と言い、妖精さんに川内さんを呼び出すようGOサインを出すと、目の前の艦装が光はじめ―――うを!?まぶし!!?

 

光が収まると、そこに一人の少女がいました。

 

 

――――髪はセミロングでツーサイドアップ。柿色のセーラー服を着て活発そうな美少女―――ええい、此処で書くの面倒くさい!!気になったらググって下さい。とにかく美少女なのは間違いないです。

 

 

正直ちょっと見惚れてた私。そんな私に彼女は笑顔を向けながら

 

「川内参上!これからよろしく!!」と挨拶してくれました。

 

……ん????どこらへんが問題なのか、さっぱり分かりません。普通に良い娘じゃないの?なのに明石さんの方を見ると「可哀想」な目で見ている。

 

まあ、何にせよこれで戦力が増えた訳です。一先ず、今日はこれで仕事を終えてぐっすり寝ます。

 

 

                           本日の仕事終わり

                            明日も頑張ろう

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

場所は移って作戦室

 

そこにいるのは一組の男女――――そうクソ雑魚提督とその補佐艦【大淀】である。

 

「ふ~、やっと一日が終わった。」

 

提督は「う~んんん」と声を出して手を上に上げるストレッチをする。

初日なのか思っていたより緊張していたようで、特に肩と腰が凝っている感じがする。……運動不足の部分も何割かはあるだろうが。

 

そんな提督に大淀は「提督、お疲れさまです。」と労りの言葉を掛ける。……モゲロ。

 

 

「いやいや、ただ椅子に座っていただけですよ。本当にお疲れ様なのは電ちゃんですよ。」

 

謙遜……いや提督本人としては只の事実なのだが、大淀からすればこの提督の評価は中々である。

 

作戦立案からのS勝利、艦の訓練、補給物資の調達、エトセトラエトセトラ……それを一人で出来る完璧提督も確かにいる。

というより、この男が提督になる1ヶ月前にそんな完璧提督が着任し、現在期待のルーキーとして活躍している。

そんな提督と比べれば、大淀の目の前の男はダメダメだろう。

そもそも、昨日までは軍とは一切関係ない一般人だったのだ。それらの提督と比べれる方が間違っている。

 

 

しかし、大淀からすれば 「そ れ が ど う し た?」しか思わなかった。

一人では何も出来ない?なら誰かが補佐をすればいいだけではないか?

―――逆に、そう最初から何でも出来る提督は……可愛げがないというか、何というか、ほらあれ、「だめな子ほど可愛い」という言葉があるから。出来ない提督はこれから出来るようになっていけばいいから。寧ろ、成長の過程が見れる分お得だから。

 

 

といっても、此処の提督が幾ら経験を積もうとも、他の出来る提督どころかこれから入ってくるであろう有望株な新提督にも戦術やら何やらでは勝てるようになれるとは思えない。

分かるのだ。貰った勲章でメンコが出来る様な提督にはオーラというか何というかとにかく凄い何かが感じられる――――実際、遠目で見た先の期待のルーキー提督にも「(こやつ、出来るな……!!)」と思う何かがあった――――一方、こちらのクソ雑魚提督に大淀は「少し真面目が取り柄の新人」位しか感じられない。

(期待のルーキーがアムロならこっちは良くてコンスコンさんだ。三分立たずでズタボロにされる位持っている素質に差がある。)

同じ時期に入ってきた分、よく比べられるだろうから苦労するだろう。

 

 

―――――だからこそ支えがいがある。

確かに提督としての才能は低いだろう。しかし、艦娘達が提督に求めるのは指揮とかの才能ではなくやり甲斐だ。

そしてこの大淀、勲章ジャラジャラしながら「いや、別に大したものじゃないよ?他の人でも出来たよ、うん。」とドヤっている者よりも、艦娘達とのコミュや作戦・資材やら何やらで一人では首が回らなくなって「大淀エモン、助けて~」と泣きついてくる方が良いのだ。

 

 

――――長々と書いたが、艦娘にも一人ひとり意思がある。

「優秀な提督の下で戦える事に喜びを持つ」娘がいれば、「この人は私が支えないと駄目なんだ」と思う娘もいるのだ。

そして、此処の大淀は後者の少しくらいダメな所がある提督が好きな艦娘だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、コーヒーを淹れますね。」

 

「あ、それだったら私が――――」

 

「いえ、これも秘書艦の務めですから。」

 

 

話を戻して、彼女は初めての仕事で疲れている提督を労ろうと思い席を立ち、部屋に備え付けてあるコーヒーメイカーでコーヒーを淹れてもってきた。

―――容器はインサートカップ。着任したばかりだから仕方ない。時間が取れたら容器をいくつか買いに行こうと、提督が砂糖とミルクを多めに入れたものを啜りながら考えていた時だった。

 

 

「提督。着任してからずっと何か書いていたようですが―――」

 

「え、日記ですけど?」

 

「―――え?」

 

「日記ですよ。自分に何かあった時に何か残したくて。」

 

「それ、普通寝る前に書くものですよ。」

 

「いや~……それだと3日坊主で飽きちゃいそうで。

そして、書いている時に気づいたのですが、私日記書くの思っていたより速かったんですよ。――――会話の合間に1ページ埋めれるくらいには。まさか私にこんな才能があったなんて……。」

 

「それは、良かったですね。(……凄くいらない。でも何か少し嬉しそうだから言いづらい。)」

 

 

大事なことをメモ取っている割には少し書きすぎなのではないか?と思うくらい終始ペンを動かすのを止めなかったので少し不思議だったが、まさか日記とはこの大淀の目を持ってしても見抜けなかった。

 

 

「(日記ですか……。ちょっと見たいですね。)」

 

 

何故人は友だちの部屋に入るとベッドの下を漁くるのと同じくらいの高確率で日記を見ようとするのか?

その好奇心と原動力は何処からくるのかは分からんが、とにもかくにも此処の大淀はクソ雑魚提督の日記が見たくなった。

 

 

 

「提督……その、日記ですが少し見ても宜しいでしょうか?」

 

「―――え、嫌ですよ?」

 

「ほ、ほら、提督。まだ書き始めですから、被害は軽微ですよ?」

 

「どういう理屈なの……?」

 

 

その後も抵抗を続けること数分、勝者は当然大淀。舌先三寸・口八丁で簡単に丸め込まれてしまう。

クソ雑魚提督は交渉事もクソ雑魚であった。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

パラ、パラとページがめくる音―――――と言っても初日だ、数ページしかないので直ぐ終わるだろう。

 

読みながら思ったことは、意外と中身は面白い人なんだなということと、

 

 

 

「(美人って……、うわ、結構恥ずかしい……。)」

 

 

提督が自分の容姿を褒めている文章を見て恥ずかしい―――知らない優男に会話で褒められてもスルー出来る自信はあるが、意外と好印象の男でしかも真面目で不器用そうな男が書いた嘘偽り無い本音の文章は思った以上にキた。

(そしてクソ雑魚提督は顔を手で隠して「うわー、うわー」と小さくうめき声を上げながら羞恥心と戦っていた。……じゃあ、書かなきゃ良いのに。)

 

 

そして、ペラッとページを捲ると、次は入渠での出来事――――――これに大淀は後日明石を呼び出そうと決めた。

最後に、建造での出来事――――

 

「(そういえば、予定通りなら初の建造をやってもらったんですけど―――――――!!?)」

 

―――ピタッと手が止まる。

「ふー」と深呼吸、コーヒーを少し含み、メガネを拭く。そしてもう一度手帳に視線を戻すが、書いている内容は―――【川内】という二文字は見間違いでなかった。

 

 

 

「―――――提督。工廠で【川内】を建造しちゃったんですか……?」

 

「……あ!それ!それですよそれ!聞こうと思って忘れてましたよ。明石さんに言われたんですが、どうして川内さんは駄目なんですか?」

 

 

「……あ~、それは……ですね……。彼女はちょっと―――」

 

 

提督の疑問に大淀は目を泳がせながら、言いにくそうにしていた時―――「バンッ!!」と勢い良く扉が開かれ―――

 

 

「提督!!ちょっと良い?」

 

 

――――件の娘【川内】が入ってきた。

 

 

「あ、川内さん。どうしたんですか?」

 

来たばかりで何か足りなものでもあったのだろうか?

鎮守府内にある売店で買えるものなら経費、最悪ツケで買えるが、無いなら車走らせて2時間先のスーパーに行かなければならない。……領収書落ちないなら、もしかして自分が自腹を切らなければいけないのか?と、考えて顔を青くする所持金野口さん4枚、小銭は最近の自販機には対応しなくなった硬貨2枚と少しの甲斐性無し提督。

一方、大淀は突然の来訪者の顔を見て頭を抱える。

 

 

「あのさ!私と提督、こうして出会えたのも何かの縁だと思えない?」

 

「……あ~、何か物足りないと思っていたら、初勤務祝のパーティするの忘れてた……。」

 

 

そうだよそうだよ、こういうのは上の―――この場合は彼女たちを預かっている提督である自分が仕切らなければいけないじゃあないか。これから一緒にやっていく仲間達の交流の場(と言っても今は片手で数えられる人数しかいないが……)を設けるのも提督の役目だろう。と、反省する提督。だが、大淀が頭を抱えている理由・そして川内が部屋を訪れた目的はそれではない。

 

 

「川内さん。交流の場は作ります。……が、今日は止めましょう。一緒に祝いたい娘がもうお布団でスヤ―してるでしょうし。」

 

「ううん!違うよ提督!パーティはしたいよ、本当だよ!―――でも、それよりも先ずはしなければならない事があるでしょう?」

 

 

はて?何かあっただろうか?首をかしげる提督、そしてますます頭を抱える大淀。

川内はそんな二人を見ながらとてもいい笑顔で口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と提督の出会いを祝して―――――そう、【 夜 戦 】だね!!」

 

「そうか、夜戦………うん?」

 

 

 

 

 

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軽巡洋艦川内型長女【川内】

 

彼女の戦闘能力は高い―――というより川内型と呼ばれる彼女たち三姉妹は優秀な艦娘だ。

三女は色モn、ゲフンゲフン。ちょっとキャラが濃ゆいが戦闘では頼れる武闘派であり、次女に至っては……一部どころか大部分の重巡洋艦の娘たちのお鉢を奪う強さである。

そして、長女の川内もそれに漏れず、特に防御面は軽巡随一の為生存率がダントツで高い。

 

これだけ聞けば「お、ええやん。なんぼや?」と言いたくなるだろう。

だが、しかし、彼女には提督、だけでなく他の艦娘達を悩ませる欠点がある。

 

 

 

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「夜戦……?今から?」

 

「今でしょう!!」

 

「……え~……?せめて日が登ってからが―――」

 

「今夜はいい夜だね~、絶好の夜戦日よりだよ~……。」

 

「ねえ、ちょっと聞いて下さいよ?」

 

 

 

 

 

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『       夜    戦    馬    鹿      』

 

それが彼女の欠点である。

 

どんな時も夜戦、寝る前に夜戦、家族が風邪を引いたら願掛けの夜戦、夜戦夜戦夜戦夜戦………

 

その被害にあった提督達は夜型に体を変えるか、休み時間の合間合間で十分な睡眠を取る能力を身につけなければならない。――――出来なければ連日徹夜で精神が「カミーユ・ビダン」になることだろう。

 

 

 

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「あのですね?まだ戦える人たちは貴女含め二人だけなんですよ?夜戦したいならちゃんと艦隊を組んで行かないと―――」

 

「やだやだやだやだやーーーーーだーーーーーー!!!夜戦するんだああああーーーー!!!!」

 

「こいつ……!?見た目は年頃の娘さんなのに、最近の幼稚園児さえしないような駄々コネを……!」

 

 

 

 

 

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じゃあ何とかして夜戦を諦めさせればいいではないか?

答えは「NO!」

 

夜戦するために生を受け、夜戦のために己の武を磨き、そして夜戦に生涯を捧げた彼女から夜戦を取り上げることをしてはいけない。

 

――――もし、取り上げたら士気がガタ落ちになり、戦闘力は夜戦を取り上げる前と比べると10%も発揮できなくなってしまうのだ。

 

だから、もし彼女と一緒に戦うことになった提督は提督である限り彼女の夜戦に付き合わなければならないのだ。

 

 

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「………ああ。分かったよ!!連れていけば良いんだろう!!」

 

 

「提督!?」

 

突然開き直った提督に大淀は驚くと同時に「お前……消えるのか?」という目で見る。

 

 

 

「連れってやるよ!!私が、お前を、夜戦に連れってやるよ!!」

 

「提督!!」

 

何故急にオ○ガになるのか分からんが、とにかく夜戦が出来る、それが分かった川内の目が輝く。

 

 

 

「川内!!出撃準備だ!!40秒で支度しろ!!」

 

「うん!了解!!」

 

「但し、中破判定受けたらそこで撤退で終わりだからな!!絶対だぞ、ふりじゃないからな!!」

 

「分かってるって。―――じゃあ、ちょっと準備してくるね!」

 

 

まるで飼い主にスペアリブでも貰った大型犬だ。尻尾があったら思いっきり振っていることだろうと思うくらいに元気満々な川内は外に飛び出し、そして残ったのは

 

 

 

「………提督、コーヒー入れ直しましょうか?」

 

「……うん。思いっきり濃ゆいので。」

 

「……あのう、提督私も一緒に―――」

 

「いや、明日私がミスした時のフォローをして欲しいからもう休んで。……大丈夫大丈夫。あの娘が大破進撃をやらかさないように監視するだけだから、ね?」

 

「―――――――了解しました。では提督、お疲れさまでした。明日もよろしくお願いします。」

 

「うん、お休みなさい。」

 

 

「パタンッ」と扉が閉じられた音がした後、残ったのは冷静になって頭を抱える雑魚提督一人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

〈深夜4時30分〉

 

 

 

……夜戦、言うだけある。

 

返ってきた彼女は寧ろ出撃する前より元気だった……

 

眠い……

 

提督……やってけるかな……?

 

とにかく……今は……寝よう……二時間ちょっとだけど……・寝よう……

 

おやすみ……な      さ     い   … …  

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――




川内さんは建造で初めて来てから家のエースです。
なので出すのは決めていました。


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二日目 その1

〈AM6:30〉

 

眠い……

凄く眠い……

結局あの後、川内が満足するまで夜戦に付き合った―――――意味深な方じゃ無いですよ。

やったらパワハラですよパワハラ。訴えられて負けるよ、私。

日没後の海で銃撃戦(魚雷も添えて)を朝4時過ぎまでやってましたよ、あの夜戦バカ。

……入渠に行こうとする去り際に「最初だし、肩慣らしでこんなもんで良いか!」て言ってたけど、疲れで聞こえた幻聴だよね?

 

……大淀さんとのミーティングが7時からだし、購買で缶コーヒーと何か腹の足しになるものを買って行きましょう。

……その前にシャワー浴びよう。昨日帰ってくるなり布団にそのままダイブして寝たからちょっと臭う。

 

 

 

〈AM7:25〉

 

あの後作戦室に入ったのが6時50分前だったが、大淀さんは既に仕事に入っていた。……私が起きた時間よりも前にだ。

―――やべえよやべよ。だらしない奴って思われてない?いや、今日の最初の会話は「提督、昨日はお疲れさまでした。」だったから、多分怒っていない。怒っていたらもっと遠回しに嫌味言われる……筈。

でもでも、私別に遅刻してないし~、寧ろ10分早めに来たし~……あ~、駄目だ。一応、大淀さんより私のほうが立場は上、常識的に考えて私が一番乗りしてなければいかんでしょう?

―――――――よし、明日から6時前には此処に入ろう。一先ず、今回の汚名は仕事で返上しよう!

……汚名挽回にならなければいいけど……。

 

 

〈AM7:40〉

 

電ちゃんと川内が出勤しました。――――川内、何でお前、そんな元気ハツラツなの?艦娘って凄いな~……いや、ひょっとして私の体力不足か?

 

それは時間が空いた合間合間で筋トレすることにして、出勤して早速だが出動して貰うことにした。

場所は昨日電ちゃんが行った所で、ついでに上からの指令も同時に消化しよう。

(依頼内容:敵艦隊を撃破せよ―――デイリー任務という毎日くるものの一つらしい。とにかく一回どんな敵艦隊でも良いので(極端に言えば敵駆逐イ級一体だけでも良い)と交戦して勝利する事が達成条件とか。)……報告書の書き方分かんねえ……。大淀さんに教えてもらわなくては。

 

最初の内はこういうデイリー任務をコツコツと達成していって、その合間合間に艦隊の練度や艦娘の建造、装備の新調・改造を行っていくのが主なお仕事内容ですね。

 

一先ず、後二、三人艦娘さんの建造を行って艦隊の補充をしなければ。

「近海の警備」さえ満足に出来ないようでは……ねえ?ただの給料泥棒になってしまいますからね……。

 

 

 

 

〈AM8:30〉

 

出動した二人が帰ってきました。

 

――――川内強い……。昨日の苦労はナニ?駆逐イ級撃破どころか奥の軽巡ホ級とかいうワンランク上の敵さんも二人がかりの魚雷戦で撃沈。見事S勝利。―――――こっち明日までかかると思って計画立ててたんですけど!?全部ぱあですよ。

いや、良いことですけどね。

仕方ないのでもう今日は二人はお休み。来たばかりで色々と足りないものがあるでしょうし、買い物に行って良い許可を出しました。――――車は憲兵さんに頼んで出してもらいました。使い走りで申し訳ないと詫びましたが、

憲兵さんは「これも仕事の内です。――――なので、私達の知らないところで勝手に外出させたりさせないで下さい。」と報連相の徹底を釘刺されちゃいました。

やはり今の国防の要である艦娘さん達はとても大事なんですね。……なら在庫問題とか起こすなよ(※とても小さく書かれている。)

大淀さんも行ってきたら?と聞いたら「いえ、私は此処に来るまでに既に必要なものは買い揃えていますので」とキリッとかっこよく返されました。

 

……あ、そうだ。明石さんの所に行って新たな艦娘さんを建造して貰おう。

どうも、もっと先の海に行くには数を揃えないとキツイって、提督用の掲示板で書かれていましたからね。

―――そもそもまだ二隻。一艦隊が6編成だと考えると、あと4つも枠を埋めなければいけません。

今日で埋めれるかな?やっぱ明日まで掛かるかな?誰でも良いならともかく、これから一緒にやっていく艦娘ですからね……贅沢言える身分ではないですが少しは厳選しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと、今日はもう休みって川内に言いましたが、彼女外出する際に「じゃあ提督、今夜またね♪」と言ったが、まさか今日も夜戦するつもりじゃあ無いですよね?(震え声)




軽巡は枠は出すの決めていますが、重巡はどうしよう……?
最初に出た重巡は「加古」だったと思いますが、全然育てていないのでキャラ把握していないんですよね。多分、他の娘になると思います。


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二日目 その2 上

下は早ければ明日投下します。



〈AM9:30〉

 

明石さんの所に来ました。

 

「新しい艦娘を建造したい」と頼むと、「はい、この明石、提督の為に一肌二肌脱いじゃいましょう!」と心地よく引き受けてくれました。

――――美人の無償の好意程信用できないものは無い。ちょっと様子見しましょう。

 

〈AM9:40〉

 

どうやって建造・開発をするかは前回書きましたので省きますが、投入する資材の量はモニターで見れるんですよ。

―――400/30/600/30……ふーん。

 

 

てめえ!それ戦艦のレシピやろうが!!?

 

そういえば彼女は昨日から戦艦を勧めしてきました。

何でですか!?何でそんなに戦艦推すんですか?!と問いただすと、

 

「いやあ~、やっぱちまちま投入するよりドバっとブッパした方がロマンがありますよ!ロマン!!」

 

明石てめえ!!

……ちょっと分かるけど、今戦艦の方に来てもらっても持て余すだけでしょうが!!駆逐か巡洋艦で良いの!!と説得。

余裕が出来たら頼むから、今は低コストレシピで回してと頼むと渋々了承してくれました。

 

一応確認してみると――――30/30/30/30 掲示板で確認すると駆逐・軽巡が来やすいみたいです。しかし、なんか投げやりでやる気が感じられない……。そんなに戦艦建造したかったん?

 

まあ、明石……もうさんは良いや。私の胃に優しくない人に敬意はいらん……。とにかく彼女の事は放っておくとして、建造時間は1時間……軽巡かな?

 

その間時間つぶしに何か無いかな~、無いなら寝ようかな~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「提督、暇つぶしに良いものがありますよ?」

 

 

明石に話を振られ、提督は日記を書く手を止める。

 

 

「暇つぶし?」

 

「そ!一時間程度の暇つぶし。」

 

 

そう言って明石は提督にゲームパッド――――PSのヤツだ(何やかんやでPS2のコントローラーが一番しっくりくると思う)――――を手渡す。

 

 

「TVゲーム……?」

 

「協力プレイ出来るやつですよ?」

 

 

そう言うと提督の横に座って2P用のコントローラーを握る。

そしてテーブル上に置いてあるリモコンを操作すると、上から大画面のテレビが降りて来た。

 

 

「うわ……。明らかに私の給料では買えないやつだ……。」

 

「普段はこれで妖精さん達がアニメとか見てるんですよ。」

 

「妖精さんのご機嫌取りのためと考えれば――――やだ、安すぎ……!」

 

 

妖精さんのお仕事

・艦娘の建造、装備の開発

・今はないが小型戦闘機等のパイロット

・帰り道の安全確保の為の羅針盤操作

 

他にも多々あり、妖精さんがいないと詰むのが今の状況である。

時代が時代なら人身御供も已む無し、なので機嫌を損ねるわけにいかない。そう考えたら、超大型テレビ一つなど安すぎる。

 

 

 

―――――さて、そんな妖精さんの為のテレビを少し借りてするゲームは何なのか?

 

 

「(もしかして、提督の育成を目的とした大本宮製のゲームではないだろうか……!)」

 

もしかしたら、もしかしたら明石がまだ右も左も分からない雑魚提督の為に、ゲームしながら提督に必要な知識等を学べる進○ゼミの様なものではないだろうか?

そう考えれば勤務中なのにTVゲームを勧めてきた理由がつく。―――じゃなければ、おめえマジで只のサボりだぞ?

 

――――そして映像が流れ始める。

 

――――重厚な音、そして主砲の発射音、カッコいい発音で流れるタイトル!

 

                        

 

 

 

          『メ タ ル ス ○ ッ グ !!!!!』

 

 

 

 

 

「(あ、違うなこれ。本当只の暇つぶしだわ、これ。

だって、メタルス○ッグってデカデカとタイトル出てるもん。戦艦じゃなくて戦車だもん。)」

 

 

良かったな、提督。勤務中にゲームなんてめったに出来ない経験だぞ?

だが、しかし待って欲しい。会社のパソコンでアダルトサイト見るよりは全然ましなのでは?……フォローになってないな、うん。

 

 

 

「何でメタルメタル○ラッグ(初代)?」

 

「面白いじゃないですか?メタルス○ッグ。」

 

「面白いけどさ~……、そうだけどさ~……。」

 

 

スタートボタンを押し、二人プレイーモードを押し、1Pの金髪軍人を操作するのは提督、2Pのハンサムを操作するのは明石。

 

 

 

「何か、こう、提督の為のゲームとか無かったんですか?」

 

「ありましたよ。」

 

「あるならそれでよかったのでは?あ、最強武器のショットガンだ。」

 

 

さぼりならさぼりで良いや、と開き直った提督は明石と一緒にゲームを進める。

昔、したのはバッティングセンターに置いてあったレバガチャタイプのアーケード版だったが、開幕で速攻死亡なんてミスはしなかった。それどころかゲームしながら会話だって出来るくらいには余裕があった。まあ、まだ一面だし……。

 

 

 

「……大本宮製の艦娘達との恋愛シュミレーションゲームなんですよ。……あ、手榴弾取らないで!」

 

「え?なんですかそれ?」

 

「『ドキドキ艦むすメモリアル~提督に恋して良いですか?~』ていうやつなんですがね……」

 

「色々と冒険しすぎでしょう、それ。」

 

 

凄く気になるが、メタルス○ッグにも言えることだが、横スクロールアクションゲーム系は2面から難しくなってくるせいで先程と比べて提督は会話に集中できなくたってきた。

逆に、明石はまだまだ余裕があるようで、提督が取ろうとした武器を横取りしてゲームの敵を順調に倒していく。

 

 

「主人公は新人の提督で、ヒロインは建造した艦娘達。

彼女らと共に深海棲艦と戦いながら絆を深め、ヒロインの一人とケッコンカッコカリを目指しましょう!というシュミュレーションゲームです。」

 

「(ケッコンカッコカリ……?)タイトルはともかく中々面白そうなんですが?」

 

「ただ、ヒロインのグラが何故か3Dポリゴン。しかも初代バー○ャファイターよりもグラフィックのクオリティが低いんですよね……。」」

 

「割ってしまえ、そんな悍まし物。」

 

 

「当然売れる筈もなく、大量の在庫を抱えた大本宮は当時の提督達に個人用、布教用、鑑賞用の最低三枚を買うように強制してきたそうですよ。その時は私まだ建造されていませんでしたから知りませんでしたけど、相当荒れたそうですよ。」

 

「コンビニ、スーパーの恵方巻を連想させるな、それ……。」

 

 

あれって一本2000円超えするんですよね。そんな金があるなら自宅で作るなり、スーパーで普通に売っている物を買ったほうがマシって考える人が多くいるのも仕方ないことです。――――ただ、恵方巻はまあ美味しいんですが、ゲームの方は致死毒何で比較出来ないと思います。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

そして時間が少し経ち―――時間にして10分、ステージは三面の半ばに入った所だった。

 

少し手こずるようだがまだ余裕がある明石とは逆に、提督の方は少しずつミスが目立ち始めた。

ステージが難しくなって冷静さが少しずつ失いつつある――――否。その逆である。

時間が経って少しずつ冷静になると、考えてしまうのだ。

 

 

「(私、こんな所でゲームしてて良いのだろうか……?)」

 

 

自分よりも前に一ヶ月前に提督になった同僚がいることを今朝知った。

―――大本宮発行の、購読者層は提督と艦娘の朝刊でだ。

 

作戦室に置いてあった新聞によると、その期待の新人は最初の建造ガチャで戦艦を引き、普通だったら燃料等で詰むはずが上のものと直接交渉し資材を引き出し、その後戦果を着々と上げている期待の新人として紹介されていた。

 

その時は「は~、凄いな~」位にしか思わなかったが、改めて冷静になって考えると今サボっている自分とその新人さんを含め前線を維持している立派な提督たちをどうしても比べてしまう。

 

 

「(私には件の提督の様な交渉術も、そして士気能力も無い。今朝だって燃料と弾薬の計算ミスってたのを大淀さんに訂正して貰った位だ。そんな私がこうしてサボってて良いのだろうか?出来ないなら出来ない分、仕事に時間を割いた方が良いのではないのか……?)」

 

 

もし、この提督の心を大淀が聞いたらこう言うだろう。「計算ミスの原因は川内の夜戦に付き合った寝不足のせいです」と。

ただ、その件の期待の新人とほぼ同時期な分、やはり比べてしまうのだろう。

そのせいでプレイに集中出来ずにいた。

 

そんな提督を明石はちらっと目をやり、直ぐに視線を戻してゲームを続ける。

まだまだいける明石。しかし、提督の方はプレイが雑になってきたせいで残りライフは減っていく。

そんな提督に明石はため息一つついて、口を開いた。

 

 

「提督。もしかして『こんな所でゲームしてて本当に良いのか?』て思ってません?」

 

「…………」

 

 

1Pキャラが凡ミスし、ライフが一つまた減った。

 

 

「提督って凄く分かりやすいですよね。いい意味で言えば裏表が無い。悪く言えば腹芸が下手くそですね。」

 

「…………」

 

「そんな提督に私から一つアドバイスです。――――――『出来る人にやらせとけばいい』ですよ。」

 

「……良いんですか、それ?」

 

「そういう人たちは戦果を積極的に欲しがる人たちが多いので、逆に喜ばれますよ。

――――これから長い付き合いで深海棲艦と戦っていくというのに出来ないことを無理して頑張って、戦時中でもないのに精神すり減らして、そしていざ戦いの最中に倒れられたら何の意味もなくなりますよ?」

 

 

真面目なのは良いことだが、それで台無しになったら元も子もないという明石。

分かってはいる。分かってはいるのだ、この提督も。

しかし、やはりどうしても不安になるのだ。

 

勤勉さは美徳というが、この提督の場合は日本の社会人に多く見られる働いていないと不安になる只の社畜精神である。

 

 

「そう、ですけど……。やっぱり、何かしなくちゃいけないんじゃあないか?ってやっぱ思うんですよね……」

 

「今日しなければいけない仕事あるんですか?」

 

「建造して最低限の艦隊を編成すること、そしてその報告だけですけど……」

 

「立派に仕事こなしてるじゃないですか。

――――もし大規模な作戦が始まったら無理をしなくちゃいけない時があるんですから、平時中位はリラックスしましょうよ。

褒められる事こそすれ、避難されるいわれは無いはずですよ。」

 

「そうかな……そうかも……。」

 

 

明石の言葉に少しだけ救われたのか、提督の操作ミスは少し減ったかのように見える。

やはり悩みというのは一人で考えるとドツボにハマるもの。

ちゃんと言ってくれる人がいる此処に配属されて自分は幸運なんだなと提督は思う。

 

 

「そんな提督に出来る仕事を教えちゃいましょう。」

 

「あるなら教えて下さ、いっと……ちょっとまずい。手榴弾切れた。」

 

「そこの箱壊せば出たはずですよ。で、仕事なんですが――――『今やっているこれ』です。」

 

「―――はあ?TVゲームが仕事って――――あ!」

 

 

ミスって最後の残機を失ってしまう。此処からは明石の一人プレー―――は少し虚しいと思ったのか、彼女は一度電源を落として再起動させる。

 

 

「まだ……建造までに時間は十分ありますね。……説明付きでもう一周やりません?」

 

「オプションで残機を最大、代わりに難易度一つあげで行きましょう。」

 

「それは、良いですね。」

 

 

 

          〈建造終了時間:残り40分〉





日記風では自分の書きたいものの限界ががが
→仕方ないので普通に書いてみる
→地文が増えた分文字数が増える
→このままだと1万字超えると気づくと

というわけで泣く泣く分割して投稿しました。許して下さい、続きは早めに投稿しますから!


あと、やはり日記風の文章が書くのは楽なので、普段はいつもの。
仕事休みなど時間が空いたときとかは地の文が入り混じった話と分けて書いていくのが一番モチベ保てるんじゃないかな~?と思っています。


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二日目 その2 下

――――――カチカチカチカチ

 

 

コントローラーのボタンをせわしなく押す提督と明石。

少し慣れてきたのだろう、提督の操作も最初と比べ中々上達している様に思える。

 

 

「―――それで、さっきの提督の大事な仕事なんですが、それより提督。【キラ付け】って知ってますか?――――やっぱ初代はショットガンが最強です、ねっと。」

 

「―――ですから、ショットガン全部取らないでっていってるじゃあない、か!……【キラ付け】って何ですか?」

 

 

メタルス○ッグ(初代)のステージも5面。

ラスト一歩前のステージに入っていった。まだ建造までに時間は余裕がある。

しかし、焦りは禁物だ。焦ったら無駄になる。最悪、ボムの抱え落ちして死ぬことは避けなければいけない。それはアクションシューティングゲームで最も恥ずべき行為である。

 

 

「漫画とかであるじゃないですか。絶対絶命のピンチ!だがそこで仲間とヒロインの応援で覚醒して大逆転的なテンプレ。」

 

「其処は王道と言いなさい。―――まあ、ありますね。それが?」

 

「別に漫画だけに限った話じゃあないですよ。例えば、何気に寄ったお店で食べたお昼ご飯が美味しかったら午後も頑張ろうと思えるし、実際いつもと違って作業が捗った。そんな経験ありませんでした?」

 

「ありますね。」

 

「さっきいった2つの例の共通点ですが、『幸福感や達成感などのプラスの感情で満たされている』時の方が人は自分が思っているよりも力が出るのです。――――そして艦娘はそれが人以上に影響が現れる。これを私達は【キラ付け】と呼んでいます。」

 

 

その話を聞いて、提督は朝のことを思い出す。

ほぼ同じ睡眠時間なのに、昨日の夜から日が昇り始めるまで夜戦をした川内は出撃する前と比べ元気が有り余っているように思えた。まさか、あれが【キラ付け】なのだろうか?

 

 

「このキラ付けが非常ーーに大事で、キラ付けする前と後ではその艦娘の戦闘能力がド素人さんが見ても分かる位に変わります。」

 

「ガン○ムで例えて!」

 

「只のザクがシャ○専用ザクになるくらいに変わります。」

 

「そいつは凄えや。」

 

 

そしてこの【キラ付け】。要は艦娘たちが絶好調な時に雰囲気が輝いて見える事から付けられた。

主な付けるやり方としては戦いでMVPを取らせたり、強敵との戦いで完全勝利のS勝利を取ったりエトセトラエトセトラ。

とにかく彼女たちの気持ちがプラスに向いている時に付けやすいと言われている。

 

 

「あと、『好きこそ物の上手なれ』という言葉があるのですが、キラ付けついている娘は付いてない子よりも練度が高くなるのが早いって言われてます。」

 

「――――つまり、提督の大事な仕事ってのは『彼女たちのご機嫌取り』なんですね?」

 

「正解!……と言いたいですが、言い方が少し悪いですよ?其処は一緒に遊ぶくらいに仲良くなるで行きましょうよ……。」

 

 

実際、ビジネスライクなお付き合いな鎮守府よりも、和気藹々な家族の様な付き合い方の鎮守府の方が団結力も練度も高い傾向にある。

なので明石がいった『提督のお仕事』とは『時間を作って艦娘達とコミュを取れ』ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――カチカチカチ

 

暫しの無言。しかし、悪くない。

実際、操作もさっきからミスをしていない。

 

 

「明石、あのーです、ねー……」

 

「はい?」

 

「あー、そのう―――――――アドバイスのお陰で結構前向きになれたからさあ、あーそのう……ありが、とう?」

 

「ぶふぁッ!!」

 

 

訂正、早速明石がミスをした。残り残機0である。

 

 

「ちょっと、いきなりデレないでくださいよ!!驚いたじゃないですか!?」

 

「本当に助かったから感謝の言葉を言っただけなのにデレた扱いか……。難しいな、言葉って……。」

 

「あー、もう。ちょっとこの空気変えるために今度は提督の話をしてくださいよ、もう~……」

 

 

ちょっと顔が赤いぞ明石!意外と異性耐性ないぞ明石!!開発キチと純情乙女のギャップでも狙っているんか明石!!!

……普段からそれくらい可愛げがあればそこの提督も含めて色んな男にモテるだろうに……

 

 

「私の話?」

 

「提督になる前に何をしていたとか、色々あるでしょう?」

 

「提督になる前は……ちょっと大きい企業の社員食堂で働いていました。」

 

「……へ~、コックさんだったんですか?」

 

「そんなたいそれたモンじゃあないよ。子供の頃から料理が好きで、そして他は全然だめだったけど料理だけは他の人より少し才能があって、そして技術を学べる機会と時間がたくさんあった――――そして親のコネ。」

 

「途中まで良かったのに!?……そんな人がどうして提督に?」

 

「いや~、実は1ヶ月前に失業しちゃいまして。暫くは貯蓄と失業手当で食いつぶしながら就職先探していたところだったから渡りに船でしたよHAHAHA!!」

 

 

「真面目一筋だと思っていたが、この人意外と楽観的なのか?」と明石は思いながらコントローラーを握り直し、スタートボタンを押しゲームを再開する。

 

 

 

 

「もう……何かやらかしたんですか?」

 

「私ではなくて、そこの会社員がね……。わざわざ食堂でね修羅場起こしましてね。その会社員の人の同僚に刺されちゃったんですよね……。しかも、私の目の前で。」

 

「え~……」

 

「もともとコスト削減のため前から考えられていたそうなんですが、それがきっかけで食堂が閉鎖されちゃいまして、お役目御免ってことで。

一応、会社が他の仕事を紹介していたのですが……目の前で人ぶっ刺されてる所見ちゃって、ちょっと働く気起きなかったんで断ってしまいました。」

 

「うわ~……」

 

「しかし、まさかね~。――――――食堂で一緒に働いていたおばちゃんから噂には聞いてましたが『男同士のオフィスラブ』からの刃物持ち出しの修羅場とかないわ……」

 

「ブフォ!?」

 

 

    明石、残機0、GAME OVER!

 

 

 

「何だって!?」

 

「ですから男同士の修羅場――――その人達にしか分からない耽美な世界だったんでしょう。私にはさっぱり分かりません。」

 

「分からなくて良いですよ!!」

 

「別に男の修羅場何か今に始まったことじゃあないですがね……。――――例えば江戸時代の刃物沙汰の大部分は男同士の修羅場が大部分を占めてたらしいですよ。」

 

「うわ、自国の性事情にショック!!」

 

「あと、その男性社員、社長含め上の方々と夜の街に消えた所何度も見たそうで……あ、勿論その人達全員男ですよ。」

 

「ダブルショック!!!??」

 

「……もしかしたら、私はその会社からさっさと離れたかったから、仕事の斡旋を無視してスタコロサッサ逃げ出したのかもしれませんね……。」

 

「――――!!――――!??」

 

 

「もっと早くやめろ!」とツッコミを入れようと思ったが、もしそうしていたら目の前の男は提督になっていなかったかもしれないわけで……。何やかんやでこの提督を気に入り始めた明石としては色々言いたいことがあるが言えないジレンマに陥っていた。

 

 

 

「――――で、どうしますか 明石?もう時間的にはギリギリですけ――――」

 

「も う 一 回 !!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

場所は少し変わって。

 

部屋全体が海の中のように青いだけで、そこには特に何もなかった――――中央にある兵器―――『艦装』を覗いて。

 

その艦装から推測される艦の名は、軽巡洋艦『那珂』。川内型の末っ子である。

 

そして、その艦装の周りをふわふわと小人達が集まり、会話を始めた。

 

 

 

―――――――で、もう出来たのにあいつらゲームに夢中で取りに来ないんですけど?

 

―――――――こっちも仕事があるから邪魔なんだけど。早く、解体か娘を顕在させるか決めて欲しいよね?

 

―――――――……此処の鎮守府でこの娘見てないよな?

 

―――――――あの提督、駆け出しで今は1艦でも戦力欲しがってたよ!

 

―――――――じゃあ、こっちで顕在させとく?

 

―――――――「「「そうしよう!!」」」

 

 

すると艦装が光輝き、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ~!!よろしくね~!!……あれ?提督は?」

 

 

 

その部屋に一人だけぽつんと立っている娘がいた。

 

艦娘の名は川内型「那珂」。川内型三姉妹の末っ子である。

 

 

「ねえ~!!ちょっと!!歓迎のあいさつとかは~!?というより提督は何処~!」

 

 

ちょっと泣きそうになっている那珂ちゃん。そんな時に外から声が聞こえ、部屋から出る。

そして声のしている方向を見ると――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしゃあああああああ!!!!ノーコンティニューでクリアしてやったぜええええ!!!」

 

「最高難易度でだぜええええええええ!!!!」

 

 

 

 

 

―――――那珂ちゃんそっちのけでゲームクリアに歓喜している二人がいた。

 

 

 

「ちょっと!!何やってんの!!??」

 

「――――え?どなた?」

 

「提督。彼女は確かあの川内の一番下の妹の那珂ちゃんですよ。どうして此処に……。」

 

「まさか、妖精さん達が勝手に顕在を……?」

 

「そ ん な こ と よ り !!那珂ちゃんほったらかして何してるの!

あなたが那珂ちゃんの提督さんでしょ!?もっと、こう……那珂ちゃんを大事にしようよ!?」

 

「でもよお、那珂ちゃん……。――――メタルスラッ○グだぜ?」

 

「知らないよ!?」

 

「でもよお、那珂ちゃん……。――最高難易度ノーコンティニュだぜ?」

 

「あんたは黙っとれ!!」

 

 

 

こうして、クソ雑魚無能提督は悩みが消え、更に新たな頼れる仲間「那珂」が加わった。

頑張れ提督!君達の戦いはこれからだ!!

 

 

「でもよお、那珂ちゃん……。――――実は本音言うと初代じゃなくて最高傑作の3したかったんだ……。」

 

「もう良いよ、それ!!」

 

 

―――あ、因みに最終回じゃないです。というより、まだ全然始まっていません。




那珂ちゃんはうちの川内に続くエースです。
万能キャラなので困ったら那珂ちゃん入れてます。


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二日目 その3

今日でいっきに二人登場人物が増えます。
なので、少し長いです。……途中で切れば良かったかな(汗


〈12:00 PM〉

 

建造してきたのは軽巡洋艦「那珂」ちゃんでした。なんと、あの川内の一番下の妹です。

実は那珂ちゃんが建造している間に明石とTVゲームをしていて思いもよらず夢中になってしまい、気づいたのは那珂ちゃんが建造し終わる時間を大分過ぎてた模様。

しびれを切らした妖精さんが独断で顕在化を決めたわけですが、いや~ナイスな判断です。

 

明石と一緒に――――一人で逃げようとしましたが逃しませんよ。おめえも道連れじゃ……!―――正座して那珂ちゃんの説教を聞いた後、彼女から「それで、提督。那珂ちゃんのこの鎮守府のアイドルとしての最初の仕事は何かな?」と話を振ってきたので、こいつは丁度いいと思い、考えていた事を伝えました。

 

 

 

 

 

 

 

「貴女の最初で、そしてこれからメインになる仕事は「君の一番上の姉である川内の面倒を見る」ことですよ(にっこり)」

 

 

そして私の言葉を聞いて嬉しい―――くは無かったな。何かアイドル?らしくキラキラ振りまいていた雰囲気が一瞬で消えて、更に目のハイライトが暗くなった様に見えました。

 

「え……、那珂ちゃんアイドルなんだよ……?アイドルの夜ふかしは厳禁なんだよ……?」と言ってきましたが……

 

―――これも私の健康な生活の為。許せ……!

……偶に付き合うのは良いんですが、頻繁に付き合わされたら過労で死にますよ。

だから、そうならないためにも君はストッパーか、駄目だったら川内が中破以上の怪我をした際には無理矢理にでも連れ帰ってきて欲しい。そうすれば私も安心して寝れる。

 

川内が満足できる、私も満足できる―――win-winだなと言うと「那珂ちゃんはlose-loseじゃん!?」と泣き叫んだ。

う~ん、姉妹なのにそんなに嫌なのか?

 

そのあと那珂ちゃんに「せめて……せめて【神通】姉さんをどうか、どうか……。最悪物理で止めてもらうから……。」と縋ってきましたが……これ完全に運なんですよ……。

 

「今日は出来るだけ建造を回すけど、あとはもう神様にでも祈っていて。」と言って、部屋に備え付けられている通信機で憲兵さんを呼び出して「先に川内達が行っているけど……まだ時間はあるから一先ず必要なものとか買ってきなさい。」と言い、彼らに連れて行ってもらいました。

 

引きづられて行く那珂ちゃんは「タスケテ……タスケテクレメンス……」とつぶやいていたが……私の方も他人事じゃないから、負担が減るならもう一人のお姉さんである【神通】さんにぜひ来てもらいたいものです……(遠い目)

 

 

 

 

〈12:15 PM〉

 

那珂ちゃんにああ言った手前、出来るだけ努力はしなければいけません。

なので、軽巡が出やすいレシピで回しました。250/30/200/30、ちょっとお高めですが、昨日の最初の任務達成祝でちょっと多めの資材を貰えたので、一回くらいは十分回せます。……でなかったら、次からまた最低値ですが。

 

そして回したわけなんですが……建造時間1:30。

 

 

「明石、これ何や?」 

 

「重巡、ですかねぇ……?」

 

 

ま、まあ、火力は欲しかったですし、うん。まだ本日二回目だからまだまだ回せますから、きっと来ますよ……多分。

 

出来上がるまでに建造報告のレポートを提出&お昼ごはんを済ませましょう。

 

 

 

〈12:45 PM〉

レポート提出終わり。ご飯、ご飯~。

……と喜ぶのもつかの間、冷蔵庫、冷や飯と卵だけ……。後で購買で買い物をするとして、チャーハンで良いか……。豆腐と挽肉があったら此処に麻婆豆腐もつけるのに……。

 

 

〈1:30PM〉

 

建造終了まで後少しなので戻ってきました。そして何か整備している明石を発見。

何をしているのか尋ねると、「『旗艦』の整備です」と返ってきた。……旗艦?

 

彼女が言うには、『旗艦』―――提督が乗る船で、つい最近まではこれに乗って艦隊の指揮をしていたそうだが、魔改造ドローンの登場で普段は使う人はあんまりいなくなってしまった。

しかし、上からの招集命令とかで行かなければならない時の足代わりや、一部の現場で実際に指揮しないと満足出来ない提督もいるっちゃあいるのでいつでも使えるように定期的なメンテを各鎮守府でしているそうだ。

 

しかし、あれですな。見た目は艦なんだが大きさはクルージング用の船よりちょっと大きい程度。……10分の1スケールの模型かな?パーフェクトグレートの上ってありましたっけ?

 

こんな艦が出たら真っ先に狙われない?大丈夫なの?と思ったが、彼女の話からこの『旗艦』は妖精さん製のオーパーツだと言うことが分かりました。以下まとめ

 

 

・操縦はプロの妖精さん。直ぐに戦闘海域から離脱をしてくれるぞ。

 

・大和の主砲をまともに食らっても大 丈 夫 !。

 

・と言うよりも、出撃する際に出撃艦隊のリーダーとリンクする事によって、そのリーダ艦がダメージを負わない限り『旗艦』は謎のバリアーで守られてほぼ無敵だ!実際凄い!―――リンク先のリーダーが轟沈したら?許容範囲外のダメージを食らったら?う~ん、そうね~……、助けが来なかったら艦とともにするしかないんじゃないでしょうか?

 

・燃料等は艦むすに比べれば無いも同然。超低燃費。

 

 

・明石「どうだ、提督?『旗艦』に乗って出撃したくなっただろう?」

私「わ〰、凄いね。じゃあドローン飛ばすわ。」

明石「待てや!」

 

 

以上。

 

 

 

凄い技術だということは分かりましたが、普段はドローンで良くないですか?

まあ、いざって時の為に整備してもらってるのは本当にありがたいですが。

 

それよりももう少しで新しい艦むすさんが来るのでお出迎えしましょう。

 

 

 

〈14:00PM〉

 

「吾輩が利根である!吾輩が艦隊に加わる以上、もう索敵の心配はないぞ!」

 

え~、というわけで重巡の利根が仲間に加わりました。

さんづけ?……したら「トネさんっておばあちゃんみたいで嫌じゃ!さんはいらんぞ!!」と言われたので利根で。

 

――――ハイ、じゃあ次行ってみよう!!

 

次からは最低値で回して行く。というわけで早速資材投入!時間は1:00!!

 

軽巡来ましたね!後は祈るだけです。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」

 

日記帳を閉じ、建造が終わる時間まで少し寝ようかと思っていたときであった。

利根が先程大きなあくびをしていた提督に話しかけてきた。

 

 

「暇ではありませんよ。これから私は一時間ほど瞼を閉じて心を落ち着かせる仕事がありますので。」

 

「つまり暇なんじゃな?」

 

 

昨日の徹夜の疲れが今になって出てきた提督は、ちょっと寝たいのでのらりくらりと交わそうとする。

が、駄目。言い訳があまりにも下手すぎた。

 

 

「提督よ、戦闘は兵站や準備こそ一番重要なのだぞ?―――というわけで、装備の開発をしようぞ。」

 

「『開発』ですか?」

 

 

一番手っ取り早く強くなるにはやはり装備の質を上げるのが良い。

提督は装備の開発は利根に言われるまでもなくする予定だった。ただ、先ずは人数を揃えることを優先していただけである。

 

 

 

「因みに、利根は装備は何が欲しいんです?」

 

「欲しいというより、先ずは全艦に主砲2つ装備は最低限しておかんと戦いに心もとないぞ?」

 

 

「(川内、あいつ昨日主砲一本で夜戦行ったよな……)」よくもまあそんな装備で嬉々として夜戦出来るものだと改めて川内の夜戦キチぷりに呆れた。

 

 

「でも、建造するのが優先ですから……回せても資材の関係で5回ってところですかね?」

 

「5回もあれば十分じゃ。吾輩に任せておけ!」

 

 

「(開発も運なんだがな……)」と心の中で呟くと、開発資材等を妖精さんに渡した。

そして待つこと5,6分、出来上がったのは『20.3cm連装砲』―――主に重巡洋艦が装備する中口径主砲であった。

 

 

「やったぞ!」利根は歓喜の声を上げると直ぐに艦装に装備させる。やはり片側だけより左右両方に主砲を装備した方が見栄えのバランスも、そして火力も良いものである。

 

 

「では提督、あと4回回すのじゃ!」

 

「え?もう装備それで良くないですか?」

 

「馬鹿者!他の娘の分もじゃ!ほら、はようやれ!」

 

 

あと4回は余裕はあるが、今は資材等は建造に回したいのだ。何か会った時様に取っておきたいと思う。が、その一方で利根の言い分も一理あるとも思っている。

目の前の利根の姿―――主砲2つ装備している彼女の姿は装備一つだけよりも強そう(小並感)。

やはり装備は大事、ならば他の娘の分も主砲等を開発するべきだろう。

 

 

「じゃあ、今は小か中口径主砲が足りてないので回しましょうか?」

 

「そう、その意気じゃ!」

 

 

そして資材を妖精さんに渡すこと5,6分。出来上がったのは『20.3cm連装砲』―――先程出たのと同じであった。

「物欲センサーか……」と呟く提督。

今日はもう止めたほうが良いのかもしれない。

昔買ったカードゲームで欲しい物が手に入らなかった時、なけなしの金集めてもう1パック買った事が子供の頃両手両足の指全部合わせても足りないくらいあったが、そのどれもが手に入れられなかった事を提督は思い出す。出ない時は本当に出ないのだ。こういう時は止める方が良い。

 

 

 

「ええい!!こうなったら3連続開発じゃ!!回せ回せ!」

 

 

しかし、それも利根の三連ガチャで終わった。止める隙も無く三回分の資材が投入されてしまった。

 

 

「………………えぇー……(困惑)。」

 

「何を呆けておる!勝負はノリと勢いがある方が勝つのじゃ!我輩達がドーンと構えておればきっと出るに決まっておる!!」

 

「どこからそんな自信が……」

 

「吾輩を誰だと思っている!利根じゃぞ!筑摩の姉ぞ?」

 

「私を誰だと思っている?駆け出し雑魚提督やぞ?貴女のことも妹さんの事も詳しくは知らんがな……」

 

 

「それより無駄になったらどうするんです?」「だ・か・ら!大丈夫だと言うとるじゃろうが!」と言い合う二人。

提督が取り消しを幾ら願おうと、一度投入した資材は戻ってこないし、時間は無情にも過ぎていく。悲しいな。

 

 

 

 

そして3回目の開発。結果は――――『20.3cm連装砲』!

 

続く4回目――――『20.3cm連装砲』!!

 

泣きのラスト5回目――――『20.3cm連装砲』!!!

 

 

 

 

 

 

「「………」」

 

 

あんまりな結果に無言になる二人。

そんな空気を知らない第三者―――さっきまで近くで『旗艦』の整備をやっていた明石がやってきた。

 

 

整備で暑かったのだろう。上の制服を脱いでタンクトップシャツ姿の彼女は汗だくも相まって艶めかしい。

そして制服姿では分かりづらかったが胸元の想像以上の戦闘力にはゴウランガ!実際、豊満。

そんな童貞を殺す無防備な格好など当の明石は気にもせずに話しかけてきた。

 

 

「あれ?提督、装備の『開発』をしてるんですか?」

 

「あー、うん。そうねー、そうだったよー。」

 

 

必死に目を(何処とは言わぬが)逸しながら話す提督は良く言えば紳士、悪く言えば童貞感丸出しであった。そんな提督の様子に明石は気づいていない。

 

 

 

「でしたら一緒につれている艦娘はちゃんと選んだほうが良いですよ?」

 

「………何だって?」

 

 

――――装備の開発は完全な運では無かったのか?と言うより、連れている艦娘で変わるのか?

 

「だって、妖精さんは提督と一緒にいる娘を見て「こいつの装備を作ればいいのか。」て判断してますよ。

例えば、連れている娘が駆逐艦だったら大口径主砲なんて作っても重すぎて扱えませんから候補から外れますし、逆に戦艦や重巡系の娘だったら小・中口径の主砲載せるとか無駄ですから作りません。

なのでどの装備を開発してほしいなら一緒につれてくる娘をしっかり選ばないといけませんよ?」

 

 

「じゃあ、後もう少しで建造終わりますから、その間開発頑張ってくださいね~」と言って去る明石。

残ったのは哀れな男と女だけであった。

 

 

 

 

「………」

 

ジ~と利根の方を見る提督。その利根は冷や汗をダラダラ流しながらサッと目を反らす。

 

 

 

「わ、吾輩が悪かったと言いたいのか……?(震え声)」

 

「いや、私も知らなかったですから一方的に悪いとは言いませんが……。―――――しかし、せっかく作ったこれはどうするんですか?」

 

 

提督が指差した先にあるのは『20.3cm連装砲』が4つもある。……いや、マジでこれどうするんでしょうか?

 

 

 

「……ほ、他の重巡洋艦を建造す――――」

 

「そんな資材無いですよ……。」

 

「……吾輩がローテーションで使い回――――」

 

「勿体ない使い方しないで下さいよ……。」

 

「「………」」

 

 

押し黙る二人――――情けなさで顔が真っ赤かな利根(そりゃあ、自信満々で言ったくせに結果がこれじゃあ恥ずかしいでしょうね。)と少し途方にくれている提督。

 

それから5分ほど―――――隣の部屋から『建造終了』のブザー音が鳴るまでそうしていたのであった。

 

 

ブザー音で提督が我に返ったのと同時にヒョコッと現れた明石。格好は先程のままだ。

 

 

「提督、建造終わりましたが……」

 

「神通さん、来た?」

 

「いえ、残念ながら…・…。」

 

「そう、ですか……。」

 

「妖精さんに顕在して貰います?まだこちらにはいない艦種ですが?」

 

「じゃあ、顕在してもらいましょう。今は人を揃えないと……」

 

 

「分かりました!」と返事が返ってきて数分後に、建造を行う隣の部屋から一人の背が低い少女が出てきた

 

 

 

     「クマは球磨だクマー。よろしくだクマー。」

 

 

建造で来たのは球磨型一番艦『球磨』であった。

球磨型の長女であり、性能はかなり高い。

(第2改装案がある他の艦娘を除けばがつくが……。それでも全部の性能が負けているわけではなく、一部では第2改装した艦娘よりも性能が上な部分もある。その頼りがいのある高性能さで長い間お世話になることだろう。)

 

 

「………」

 

新たに来てくれた娘に提督は歓迎の―――いや、少し様子がおかしい。

ジ~と球磨を観察―――先程無駄に作り上げた『20.3cm連装砲』も一緒に視界に入れながら観察する。

 

 

――――そして、漫画だったら頭に豆電球がついていることだろう。しかし、当の本人には碌でもない事を思いついた。

 

 

 

 

 

「……何だクマ?どうかしたかク――「利根、少しあの娘を取り押さえて!」「了解じゃ!!」――――うわ!!?何をするクマー!?―――――「明石!改装準備」「わーかりましたー!」――――ちょっ、何装備を勝手外してるんだクマ!?ちょ、ちょっとそんな大きいもの……ヤメロー!ショッカーぶっ飛ばすクマーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

―――――――――

――――――

 

 

 

 

「――――うおおおう……。お、重いクマー……」

 

そしてものの1分も満たない時間。

軽巡洋艦なのに、持参してきた『14cm単装砲』を外され代わりに『20.3cm連装砲』を2つ装備させられた球磨の姿が!

――――そしてその主砲で腹を殴られ悶絶している雑魚提督の姿が……。

 

 

 

「いきなりで悪かったと思ってます……。」

 

「悪かったと思っているなら、先ずはそんなことした経緯を三行以内に教えろクマー……!」

 

「・利根が2回目でやめればいいのを三連ガチャ開発した。

・結果、20.3連装砲が4つも余って困っていた。

・そんな時に貴女が来たから軽巡の娘でも扱えるか試したかった。」

 

「…………今回はそれで許してやるクマ。だけどクマ!クマだって女の子何だからいきなりあんな事されたらびっくりするクマ!」

 

「説明したら断られそうで、つい……」

 

「確かにこれは重くて嫌だクマ……。だけど、必要なことなら断るわけないクマ!今度はちゃんと説明しろクマー!!」

 

「はい、おっしゃる通りで……。」

 

 

流石長女だ。あっさり許す器の大きさに雑魚提督は平服するしかなかった。

そんな提督を他所に、明石は球磨から装備後の調子の確認を行う。―――利根?先程から提督の横で正座させられているよ?

 

 

「どうです?扱えそうですか?」「使えないことはないクマ。ただ、重い分照準がちょっとズレそうだクマ。」「やはり2つ装備はバランスが悪いですね。メインは14cm単装砲で、20。3cmはサブで行きましょう。」「それだったらまあ、行けそうだクマー。」

 

 

 

そんな会話をしている他所で、利根暇なのか隣で未だ平伏している提督に小声で話しかけてくる。

 

 

「のう……提督よ。あの球磨の主砲の装備の仕方、ちょっとカッコ良いと思わんか?」

 

 

そんな事を言われる球磨の姿は『20.3cm連装砲』を両手で構えて持てない為か、明石の急ピッチで仕上げた補助器で両肩で構えて撃てる様にされている。

 

 

「まあ、最終決戦用ガンダムみたいでかっこいいと思いますけ――――「提督!反省してんのか、クマー!」―――アッハイ。ちゃんとしてますよ。」

 

 

人の話の横でおしゃべりは実際シツレイ!怒られても仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

―――――そしてこの後、提督は球磨に後でホールケーキ一つまるごと奢ることで許された。

……が、球磨としては購買で自腹切ってこいというつもりだったのだが、この提督指揮官等の才能は無いが料理だけは出来るのだ。

「分かりました!今から自分焼いて持ってきます!一時間30分程待ってて下さい!!」と言って出ていった提督の背を見送りながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………女子力、高くないクマ?」

 

呆れ果てた球磨はもう怒る気分ではなくなっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あのう?……吾輩、いつまで正座をしていれば良いのか、のう……?」



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二日目 その4

〈15:45〉

 

やらかしました。

何をやらかしたのかはちょっと書きたくないので書きませんが、あの後利根と球磨さんが私達の艦隊に加わりました。

そしてやらかした詫びとしてケーキをご馳走することを約束しました。

なあに、これでも料理とお菓子作りは得意なんです。

購買で買ってきた材料と、持ってきたオーブン等の使い慣れた機器があればウェディングケーキレベルじゃあなければイケルイケル!…………作るなら、明石にもっと大きなオーブン作ってもらわないと難しい。

 

―――はい、というわけで出来ました。苺のシンプル直径30cmのホールケーキ!一人で食べたら一般女性顔真っ青もののカロリーと糖質ですが、そこは艦むすさんなので大丈夫でしょう、多分。

 

………あれ?何か重要な事を忘れているよう――――――

 

 

 

〈16:00〉

 

やらかしました(本日二度目)

 

ケーキ作りに集中していて肝心の建造してませんでした。

急いで戻るとなんと明石が最低値で回してくれてました。これには私もにっこり。お礼についでに作った10cmサイズのケーキをあげました。「うわぁ……、店で出せるレベルで少し引くわ……」と言ってきましたが褒めたいの?貶したいの?

 

そしてメインのケーキはさっきから部屋で利根とTVゲームをしている球磨さんに渡しました。

「球磨の提督は女子力高いクマねー……」と呆れられたので「肝心の提督としての才能は同期の人たちと比べるとミソッカスですけどねHAHAHA!」と言ったら「そこは球磨達がフォローすれば良いから早く仕事に慣れろクマー」て言われちゃいました。

あら〰?この球磨さん見た目の可愛らしさとは裏腹にイケメンですぞ。

 

――――そして利根は「吾輩の分は何処じゃ!?」と言いやがったであります。

「あ?ねえよんなもん。」と言ったら拗ねた。……おめえは私と同じ加害者側だろ……?

仕方ないので後で食べようと思った余ったスポンジの切れ端と残りの材料で作った『ケーキのトライフル』を上げたら

 

 

「え~……吾輩も球磨や明石の様なケーキが!!モンブランが食べた~い~!!」

 

 

 

この野郎……!思い出したら腹が立って――――おおっといけないいけない。モンブラン一つでやる気になってくれるなら実際安い。そこで私は「なら次の出撃で活躍したら幾らでも作ってあげますよ。」と言ったら「約束じゃからな!!絶対だぞ!嘘だったら泣くぞ!」と。別に破る理由が無いから約束は守りますけど。それにしても、その時はさらっと流しましたが利根、あいつ遠回しにモンブラン作れって言ってません?

 

後、時間つぶしに彼女たちがしていたゲームは「メタルス○ッグ2」でした。え?何流行ってるのメタル○ラッグ?

 

そして出来上がった艦装(約1時間半)は駆逐艦3隻でした。駆逐艦は建造時間約30分なので3人建造できたのは別に可怪しいことではないのですが……、そうか、神通さん来ませんでしたか……。これはもう悪いですけど那珂ちゃんには諦めて貰うしかないですね。差し入れにエナドリを支給してあげましょう。うーん、ブラックて言われても文句言えない……。

 

では早速彼女たちに顕在して貰いましょう。

 

 

 

〈18:15PM〉

 

 

     「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

     「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ。」

 

     「雷よ!かみなりじゃないわ!そこのところもよろしく頼むわね!」

 

 

来たのは電ちゃんの姉妹艦3人――――建造報告したら「第六駆逐隊結成ボーナス」で臨時報酬として資材等を中々良い量を貰えることになりました。何か知らんが兎に角良し!

 

そして建造も一時ストップ。物欲センサー働いている時は止めたほうが良いという考えと、あと妖精さんにも少し休憩して貰いたかったので。建造は〈17:30〉から再開し、時間は1:00。予測としては軽巡ですが……はてさて誰が来るのやら。

あと、彼女たち3人にちゃん付けで呼んだのですが3人ともいらないと言われたのでこれから彼女たち三人は呼び捨てですね。……ちゃん付け、恥ずかしいのでしょうか?

 

そんな彼女たちですが今は鎮守府の客間で、帰ってきた電ちゃんと一緒にわいわいやっています。

――――残りの二人は、那珂ちゃんは帰ってきて早早何か準備し始めてからその後は知りません。

川内?あいつなら「提督!!今夜の夜戦も張り切っちゃうから!!夜戦までの間ちょっと訓練してくるね!」と言って買ってきた荷物部屋に放り投げて訓練所に行きました。……ああ。やっぱり今夜もあいつ夜戦するのか。

 

話を戻して駆逐艦組。いや~……、見ているだけで微笑ましいですね。そうは思いませんか、憲兵さん?

「提督さん……暁型のお触りは犯罪ですぜ?」と忠告してきたけど、何?私赤い人の親戚かなんかだと思われているんですか?微笑ましい気持ちも吹っ飛んで心に少し傷がついたんですけど?

 

それよりも時代も姿も全然違いますがこうやって再開出来たのです。今は彼女たち四人で話したいことが沢山あるでしょうから、差し入れを渡してクールに去りました。差し入れはジュースに、りんご等の果物をを砂糖で煮詰めたやつを生地に包んで焼いた『ビローグ』を出しました。

 

響は「ハラショー。これは良い。凄く良い……。」と喜びました。まあ、ビローグはロシアの伝統料理の一つなのもあるでしょう。可愛い。

暁は「子供扱いしないでよ!」と言ったが明らかに食べたそうな表情だったので「これは立派なレディー達の間で流行っているデザートですよ?」と言ったら「なら私も食べるわ!」と言って食べてくれました。う~ん、背伸びしたいお年頃何でしょうかね?こっちも可愛い。

そして電ちゃんは「司令官さん!ありがとうなのです!!」と満面の笑顔で感謝されました。う~ん凄く可愛い。

最後に雷は「今度は私が作ってあげる!だから司令官はもっと私に頼ってもいいのよ!!」と。……すまないが私は赤い人の親族ではないので。……でも、食費に困ったら―――いやいやいや、流石に頼ったら色々と終わりそうな気がする。まあ、兎にも角にも可愛い。

 

 

――――――そして、憲兵=サン。私が部屋から出て艦の建造作業に戻りに行こうとした際、「提督=サン。本当にロリコンじゃあ無いですよね?」と聞いてきたこと許さんからな。何で子供の微笑ましい姿に癒やされていたのに水を差すかな、もう。



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二日目 終わり 上

―――パタンッ。

 

(二日目にして最早ルーチンワークになっている様な気がする)日記を提督は書くのを止め帳面を閉じる。

そして今日あった出来事を振り返り……人増えたなと思った。それもその筈、昨日は自分入れて5人(※憲兵さん等は除く)だったのが今日一日でその倍である。まだまだ練度や装備等色々あるが一応形にはなった……と思う、思いたい。

 

「(装備か……。どうしようかな……。)」

 

艦娘さん達本人の力量等は大丈夫だろうと提督は思う。確かに今は他の先に活躍している艦娘さん達には経験等で負けてはいるが、提督から見て自分の所の娘達は大丈夫だと思う何かを感じられる。きっと、そう遠くないうちに他の艦娘さん達に勝てる……かどうかは知らんが(他の所の娘だって努力はしてるだろう)いい勝負してくれることだろう。

……最もド素人から見た評価だから信用できないと言われればそれまでだが。

 

ならば、手っ取り早く戦力を上げる方法としてはやはり装備の質を上げることだろう。

―――が、開発はほぼ運任せ(※連れている艦娘である程度は限定できるが)、そしてこの提督は運があまり良くない。

当たり付きアイス100個食べたら当たるのは1,2回位、しかも最低の当たり(1等が商品券プレゼントだったら、6等は5本集めたら1本交換なアイスを想像して欲しい。)

今度開発回す時は連れている娘に回させた方が良いのかもしれない。

 

色々と考えなければいけないことが沢山だが、今は出来ることに集中しようと思い、明石がいるだろう『工廠』場へと足を向ける。

現在建造中の艦娘がそろそろ来るからだ。

 

 

「お!提督だクマー。どこ行くんだクマ?」

 

「おお、提督よ!丁度よい、吾輩に茶を奢る権利をやるぞ!」

 

 

行く途中の渡り廊下で球磨と利根に出会う。

「はあ~……」とため息を吐くと近くの自販機からお茶とジュースを1本づつ買いそれぞれ渡した。

 

 

「もうそろそろ新しい娘が来るので出迎えに行く途中です。――――それと、利根。ジュース位奢るのは構いはしませんが、あなた達の給料と比べたら駆け出し提督の私の給料は遥かに少ないんですよ。寧ろ、これからは貴女が奢ってくださいよ。」

 

「ははは!提督、お主冗談が過ぎるぞ?本当は結構貰っておるんじゃろ?」

 

 

冗談だと思って笑っている利根に、提督は手持ちのバックから支給されているタブレットを取り出しデータを開いて見せる。

「これが私の雇用契約の内容ですよ。」と言って見せられた物を見た利根、とその横で覗き見する球磨の二人。

 

 

 

「……ちょっと少なくないクマ?」「……マジか。……マジじゃった……。」と絶句した二人は哀れんだ目で提督を見る。そんな二人の反応に「人は明日生きるのに必要な小銭とパンツがあれば生きられるんです。それに比べたら恵まれている方ですよ私は。」と返す。実際、食費以外は只なのだ。手取りがほぼ丸々自由に使えると考えれば其処まで酷い労働環境ではない筈だ。

 

 

「いや、提督って高級取りじゃなかったのかの?こんな給料では後続が尻込みせんか?」

 

「広報に使っている情報はもっと上の方のです。何の戦果もまだ出していない私の様な駆け出しは実際はこんなものですよ。」

 

 

野球で例えるなら元帥クラスの上の方々が一軍、ベテランや最近話題のほぼ同じ時期に着任した期待の新人提督さんが二軍、そして此処の提督のような駆け出しは草野球。其れ位年収に差があるのだ。

 

 

「……あ~……うん。ま、まあほら我輩に任せれば直ぐに昇進させてやるから大船に乗った気持ちでおればいいぞ!」

 

「こいつの言葉に全面的に同意はできないクマが、地道に評価を稼いで昇進すればマシになるクマ。」

 

 

「(う~ん、本当に対して気にしていないんですがね……)」と思った提督であったが二人のフォローを無碍にしなくても良いのではと思い口に出すことはしなかった。

 

 

「その話はどっかに放り捨てて、それよりも我輩らも新人の面を見たいから一緒に行くぞー!」

 

「何か勝手にクマも行く流れになっているのに困惑だクマ。……まあ、暇だから一緒に行ってやるクマ。」

 

 

 

 

そうして、提督のお供に二人が加わり再び歩を進めると、今度は前方から川内の姿を見つける。川内の方も提督たちを見つけたのか走ってきた。……その姿に球磨は「おかしいクマ……。何かあいつの姿が大型犬とかぶって見えるクマ……」とポツリと零した。

 

 

「提督~!……と、そっちの二人は、新しい仲間?」「利根じゃ!」「クマは球磨だクマー。」と簡単な挨拶をした後、川内は提督の方を振り返る。

 

 

 

「それより提督、那珂見なかった?」

 

「いや、見てませんけど?」

 

「一緒に夜戦の訓練をしようと思ったのにな~……。」

 

 

「ちぇ~」と可愛くふくれっ面になった川内を見て、「(本当、夜戦除けば美少女なんですけどね……)」と残念そうに、しかし夜戦に全く興味が無い彼女もそれはそれでせっかくの個性を捨てたせいで魅力が落ちるのではと思わないわけではない。

 

「それじゃあ提督!今夜も夜戦頑張ろうね!またね~!」と走って去っていく川内の後ろ姿を見送り、再び歩きだす三人。そして後少しで目的地に着こうとした時に、ふと提督が「そういえば……」と二人に話を振り出した。

 

 

 

「川内に球磨さん、それに利根って長女なんですよね?やっぱり妹さんに会いたいですか?」

 

「会いたくないと言ったら嘘になるクマ~。でも、あの娘達はちゃんと立派にやっていけると信じているからそこまで心配はしてないから今直ぐ会いたいとは特に考えていないクマ。」

 

「筑摩は吾輩がいないと駄目じゃからな~。と言うわけで提督、早めに建造頼むぞ!」

 

 

 

う~ん。同じ姉枠なのにこの違い。ともあれ、両者とも妹を大事に思っている事だけは共通していた。

「これは神通さんだけでなく二人の妹さん達も考慮に入れるべきでしょうね……」とやることが増えて少し途方に暮れる提督に「我輩たちのことより、お主はどうなんじゃ?」と利根が聞いてきた。

 

 

「私?私は姉と兄がいますがどちらとも仲はあまり良くないのでどうでも良いですよ。」

 

「……お、おう。そうか。」

 

 

―――が、予想外な答えが帰ってきて面を食らう。

「あれ?吾輩地雷踏んじゃった?」と心配そうな面の彼女に「気にしないで下さい。正直私も言われるまで自分に兄弟いたことをすっかり忘れていましたから。」と言葉を掛け、その答えに「ええ~……。最近の若者は意外とドライなんかの~?」と利根は呆れた。

 

 

「私の家庭事情なんて、この先特に語る必要がある機会など無いでしょうからポイで。それより、建造は大まかには厳選できるようですが、後はもう完全に運なんです。ただ、出来れば二人とも妹さんと再開できれば良いと私は思ってますよ。」

 

 

何やかんやで知らない、そんなに仲は良くない艦娘さん達だらけよりも気安い仲の娘が居てくれたほうが馴染みやすいと思う。これから長くやっていくのだからギスギスよりも和やかな空気でやっていきたい。そういった場のつくりも提督の仕事だと思う。

 

「(まあ、今は新しく来てくれた娘を歓迎しましょう)」提督はそう思いながら工廠場の入り口扉を開いたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――そして、目に飛び込んだ光景に絶句した。

 

そこに有るのは何処から持ってきたんだと突っ込みたくなる「結構大きめの仏壇」、「サカキが挿されている花瓶」、「節分でもないのに何故かある柊の枝に挿された鰯の頭」エトセトラエトセトラ……

とにかく、神頼みに関係がある道具やお供え門がそこら中に置かれていた。

 

 

「………那珂、ちゃん……?」

 

 

そして、建造部屋の扉近くで仏壇の前で祓い串を一心不乱に振っている那珂ちゃんの姿が!しかも巫女服だ!

 

 

「あ、提督!丁度良かった。あれ、何とかしてくださいよ!」

 

「待て待て!何とかする以前に理解が追いつかない……!」

 

 

そりゃあ、部屋に入った自称アイドルが巫女服着た自称アイドルがお供え物を周りにおいて祈祷を捧げていたら混乱するだろう。だがしかし、艦娘は一応提督の部下なのだ(給料上司より高いけど)。部下の行動に対して責任と、そしてそれが相応しくない行動だったら止めてやらねばならない。

 

 

「あいつは何をやっているんですか?」

 

「何って、神頼みでしょう?」

 

「色々とおかしいですが、そんなに追い詰められていたんですか、あの娘?」

 

 

だが、気持ちは分かる。昨日……というより今日の朝だが寝れたのはたった数時間。それがこの先ずっと続くとか考えると目眩と吐き気が止まらない。それを何とか、『川内に夜戦そのものをさせない』は無理だとしても、『もしかしたら週に2,3回に抑えられる』なら藁に縋る気持ちになる。―――それはそれとして『よく仏壇持ち込めたな~……』と呆れるし、明石と妖精さんたちの作業の邪魔になるから撤去するが。

 

 

「那珂ちゃーんー!気持ちは分かるが他の人の邪魔になってますよー!!あと、仏壇とその巫女服何処から持ってきたのー!?可愛いし似合ってるけど必死過ぎて恐いから着替えなさいー!」と言いながら那珂を止めようとしたときだった。

「ビー!ビー!」と扉近くに備え付けられているブザーが鳴る。どうやら建造が丁度終わったようだ。

 

思わず持っていた祓串を落とし、扉の方を見る那珂。

提督は明石の方に目をやり、それを察した彼女は部屋に入っていく。そして静寂に包まれること1分かそこら―――だが、彼女たちが感じた体感時間はもっと長かったことだろう。其れ位場が緊張に包まれていた。

 

 

 

「……何で球磨達は新しい娘を迎えに来ただけなのに、奥さんの出産の無事を祈る控室の旦那さんの様な気分を味合わせられているんだクマ?」

 

「さあ?何でじゃろうな~……?」

 

 

(一部を除いて)緊張した空気がこのまま続くのかと思われていたが、それも扉が開かれたことで終わる。

 

扉から出てきたのは二人の女性。一人は入っていった明石、そしてもうひとりは――――

 

 

    

 

 

 

 

 

      「軽巡洋艦、神通です。どうか、よろしくお願いいたします。」

 

 

―――――念願の神通であった。

 

 

「……まじかよ。お、おい!那珂ちゃん、来たよ!来てくれたよ、君のお姉さんが――――那珂ちゃん?」

 

 

あんなに待ち望んでいた姉が来たのだから提督以上に喜んで良いものを、何故か俯いたまま微動だにしないし静かである。

不思議に思い肩を揺さぶると―――ゆっくりとそのまま倒れ伏した。

 

 

「――――那珂ちゃん!?」

 

 

慌てて駆け寄る神通。必死に呼びかけるが反応が無い。

「はいはい、どいてどいて。」と言いながら、明石が那珂を診る。

 

 

「………気絶してますね、これ。」

 

「気絶って……。芸人真っ青なリアクション芸、この娘はバラドルになりたいのでしょうか……?」

 

 

どうやら嬉しさやら驚きやらで思考が完全停止してしまったらしい。

ホッとする神通、呆れてる明石、「(キャラが濃ゆくてバラドル以外アイドルになる道が見えません……(泣))」と心で涙を流す提督。

 

 

 

「で?どうすれば良いんですか?寝かせとけば良いですか?」

 

「入渠させたほうが早いですよ(※注意 気絶している一般人を浴槽に叩き込むのは大変危険なので止めましょう。これは彼女たち艦娘だから出来る荒治療です!)。

――――というわけで、入渠させる為に那珂ちゃんをお風呂に入れてく来ますから、お姉さんの神通さん一緒に着いてきてくれます?」

 

「は、はい!分かりました。」

 

 

「それとも提督は那珂ちゃんの裸に興味が「はよ行け」アッハイ。」とやり取りをちょっとしたあとに部屋を出ていく二人。

 

 

出ていった後、暫くしてから球磨が口を開く。

 

 

「……何だか、暫くは妹達の顔を見たくなくなったクマ……。」

 

「いや、あれは例外中の例外じゃろう?―――この気まずい空気、どうするんじゃ提督?」

 

 

少し妹に対する認識が変わってしまった球磨。そして早うこの空気をどうにかしろと提督に訴える利根。

そして提督は腕を組んで目を閉じ、暫く「う~ん……」と考えて、ふっと目を開き―――

 

 

 

 

 

「そうだ。3人でマリ○パーティして大人しく待ってましょう。」

 

―――心に棚を置くことに決めたのであった。

 

そして蛇足だが、明石の持っているカセットにマ○パは無かったので仕方なくいたス○をし、提督はサイコロファンブルばかりしまくってドベであった。




次回で二日目(多分)終わり

そして次回は神通さんのターン。


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二日目 終わり 中

すいません!終わりませんでした!(予定より長くなってしまった……)
次回こそは二日目終わります。

あと、仕事がちょっと立て込んでて、投稿するの遅れてすいませんでした!!


――――コトンッ

 

テーブルの上にお茶と茶菓子(羊羹)が置かれる。

テーブルに向かい合って座るのは二人の男女、提督と神通である。

 

 

「私達の鎮守府へよく来てくれました、歓迎します。……いや、本当に。あ、お茶と羊羹をどうぞ。」

 

「はい、ありがとうございます。……いただきます。」

 

 

場所は客間……は今使われているので提督の部屋……は流石に外聞が悪いのでその直ぐ隣の作戦室。

あの後気絶した那珂を入渠の浴槽に放り投げて正気を取り戻させ、現在彼女には工廠場の片付けをさせている。

そして、今現在この部屋にいる提督、神通以外は先程此処で作業をしていた大淀含め各々自由にするよう言っている。

 

さて話を戻して、神通は提督に一言お礼を言ってから出された羊羹を菓子切で一口サイズに切り、ハムっと口に入れた。

 

 

「……!美味しい……!」

 

 

甘さはくどくなく、しかししっかりと餡この甘さが口いっぱいに広がる。ただ上等な小豆と砂糖を使っただけではこうはいかない。材料を無駄にしない確かな職人の技術で作られている事が分かる一品であった。

 

 

「この羊羹本当に美味しいです……。」

 

「本当!それは良かったです。―――作った甲斐がありました!」

 

「提督が作ったんですか……!?」

 

 

お菓子職人は提督だった……!!事実に驚く。

 

 

「まさか購買にあんな上等な小豆が売っているとは思わなくて、別の物作るついでについ作ってしましました。」

 

「小豆から……!?」

 

 

何故提督をやっているのだろうか?いや、もしかしたら神通が提督と思っているだけで、目の前にいる男性はもしかしたら提督じゃ無くてお手伝いさんなのではと思い始める。

 

 

「いや〰しかし神通さんが来てくれて本当に嬉しい。」

 

「え、そんな―――」

 

「いや~、実は昨日から提督になったんですが。」

 

 

提督だったー!!そうだよね?だって、ちゃんと提督の制服着てるもんね?他の艦娘も提督って言ってたもんね!と心の中が愉快な事に成りつつ、疑った事を恥ずかしがる神通。そんな彼女の様子に気づく間もなく、提督は話を続ける。

 

 

「さて、来て早々申し訳ないのですが頼みたい仕事があります。」

 

「―――川内姉さんの事ですね……。」

 

「もう、那珂ちゃんに話聞きました?」

 

 

さっきまでおどおどしていたのに、仕事と聞くや纏っていた雰囲気が一瞬で変わった事に提督は驚いた。これが、あの武神と言われた神通の顔。何と頼りがいのある人よ。那珂ちゃんが一心不乱に来てくれる事を願っただけはある。

 

 

「提督……。残念ながら、姉さんの夜戦に対する思いを止めさせる事は私は出来ません……。なぜなら、姉さんにとって夜戦とは生きがいです……。夜戦の為に己を磨き、その日の夜戦で勝利を収めても慢心せずに次の夜戦を求め更に己を磨く。

辛くは無いのか?飽きないのか?そもそもそんな事を続けて何か得れるのか?そう思うかも知れませんが、本人からすれば夜戦をする時が一番生きている実感を得れるのです…・…。それを知っているからこそ、私は姉さんから夜戦を止めろとは言えない―――いえ、言いたくないです……。」

 

「う~ん……生きがいと言いますが、因みに川内から夜戦を取ったらどうなると思います?」

 

「ただの美少女に成り果てます……。」

 

「そいつは大変だ。」

 

 

キャラが薄い娘など次の日には知らない内にフェードアウトしていてもおかしくない。特に末ッ子が個性が強すぎる……!

 

 

「それを聞いたら夜戦を止めろなど言えませんね……。」

 

「―――ですが。夜戦を完全に止めさせることは無理でも、週に2回に抑える事は出来ます……。」

 

「え、本当に?」

 

 

諦めかけた提督だったが、そこは神通。那珂ちゃんが阿呆なことをやらかしてまで来てほしいと願った救世主である。

 

 

「誰かが夜戦の訓練を一緒にやれば良いんです……。そして、次の日は夜戦の模擬戦を組んで、次の日は本番。これを回すだけでいけると、思います……。勿論、訓練の相手は私と那珂ちゃんが努めます。模擬戦は皆に手伝ってもらわなければいけませんが、艦隊の質を上げるメリットを考えると毎日……はしなくても、週に2,3回位は訓練に組んだ方がよろしいかと思います。」

 

「じゃあ、やりましょう。」

 

「……提督?」

 

 

提案した自分が言うのも何だが即決はどうかと思った神通であったが、「提督になったのは昨日から」「それまでは軍のことなど分からない一般人」「艦隊揃えた後は何をしたら良いか全く分からない」などなど、最後には「という事でこれからの訓練のカリキュラム等の作成を手伝って、いやもう貴女が主導で組んで!」と頭下げてお願いされてしまう。このままでは土下座までしてしまうかもしれない―――いや、間違いなくするであろう、そういった勢いがある。

流石に自分の提督に頭下げられるだけでも困ってるのに、土下座までされたら……考えるだけで頭が痛い、そう考えた神通は提督の頼みを聞きて、この後30分程訓練のカリキュラムの作成を手伝った。

流石に30分では細かいところまでは無理だったが、それでも基本的な週の訓練のルーチンを組むことが出来てこれに提督はニッコリ。

そんな提督を見て「大丈夫かな……」と神通は少し不安になるも、目の前で喜ぶ提督―――まるで夏休みが終わる前日に宿題を親に手伝って貰ってヒイヒイ言いながらも、無事に終わって燥ぐ小学生のようであった。そんな提督を見て神通は何か言おうと思ったが、そんな気も失せてしまった。

 

彼女は一度ため息をついて「もう、仕方がないですね……、これから頑張りましょう、提督。」と微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ちょっとイイ話で終わらせようとしているが、要は少しだめな子ぐらいが可愛いというやつで、つまりこの神通も本人は気づいてはいないがダメンズ好きなだけである。

だがしかし安心して欲しい。大淀が「駄目な所も可愛い」に対し、神通は「駄目な所を叩き直したい」という系だ。やったなこれで個性を分けられるぞ。……まあ、だから何だという話だが。

 

 

 

――――――――――――――――

――――――――――

――――――

 

 

 

そして時間が少し経ち、「それじゃあ、今日はこの辺でお開きにして、明日から宜しくおねがいします。」と提督がお開きにしようとした時であった。バタバタバタと外の廊下から慌ただしく誰かがこの部屋に向かって走って来る音が聞こえ始める。

 

その足音を聞いて、提督は「あ……そういえばそうだったな……」と何かを思い出したのかさっきまで座っていたソファに座り直して手で支えるかのような形で頭を抱える。そんな提督を見て神通は「だ、大丈夫……?」と心配するのとほぼ同時に、部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

 

「提督ーーーー!!!夜戦行こう、夜戦!!!!」

 

 

夜戦バカ(川内)である。「そういえば夜戦行く気満々だったな……」と思い出し、提督は頭を抑えながら話しかけた。

 

 

「川内、夜戦に行ってもいいですけど、昨日遅くまでやったから早めに切り上げてくれますよね?」

 

「えー?せっかく皆が揃ったんだから思いっきりしたいよ!―――那珂もそう思うよね?」

 

 

そう言って川内は那珂――――川内の片腕に借りてきた猫のように大人しく抱えられている……いや、小言で「タスケテ……タスケテクレメンス……」と呟いている。そんなに行くのが嫌なのか……そりゃあ嫌ですよね~―――に同意を求める。

 

 

「ほら!那珂も行きたいって!」

 

「イキタクナイ。ヨフカシハオハダノテキ。ネサセロ。」

 

「ね!」

 

「もう少し妹さんの声を聞いてあげてよ……。」

 

 

悲しいかな、妹は姉の頼みを断る事ができない。古事記にも書いてある。提督は「これはいくら言っても無駄だろうな」と諦め、こめかみを強く抑えながら出撃の許可をする。さあ、今日も徹夜だ。大淀さんに連絡を取っておこう。と思い、部屋に備え付けてある通信機を手に取る。

 

 

「失礼します。提督、少しお話が。」

 

 

しかし、丁度件の人物が部屋に入ってきた為、受話器をもとに戻して大淀の話に耳を傾けるのであった。

―――少し、嫌な予感を感じながら。逆は全く無いくせにこういった嫌な予感はよく当たるのだこの提督は。

 

 

「何かありました?」

 

「そのう……今夜の出撃の件何ですが……。」

 

「天候が荒れそうとか―――「じゃないです。」そっかー……中止になりませんか……そっかー……。」

 

「私が話すより本人から話を聞いた方が良いかと。」

 

 

そして、大淀は扉の外で「どうぞ入って下さい。」と言うと、「失礼しまーす!」と大声で元気よく言って一人の女性が入ってくる。――――明石である。しかも、何か凄くドヤ顔している。ムフー!て言ってる。やり遂げたぜ、褒めろ!って顔をしている。嫌な予感ビンビン物である。

 

 

「提督!作業終わりました!」

 

 

作業。この言葉を聞いて思い起こされるのは……そう言えば何か整備していたな。確か、『旗艦』―――それを提督が思い出した瞬間、彼の頭に最悪の光景が現れる。

 

旗艦=提督が乗る船=提督も一緒に出撃出来る。

こいつにA「夜戦を皆でやったら楽しいだろうな~と呑気に考えている長女」、B「自分だけ不幸とかふざけんな!回避不可ならせめて誰か道連れにしてやる!な末ッ子」、C「其処に夜食を取りながら帰りを待つだけの男がおるじゃろう?」のABC3つの条件を加えて考えられる未来を予想しろ。

 

 

『答:暗く冷たい夜の海へようこそ♡』

 

 

 

「まあ、待って下さい明石。良いですか?よく聞いて下さい。

私はこれから徹夜の為に苦目のコーヒーを淹れます。ええ、結構良い豆でしてね。愛用のミルで粗挽きで挽いたやつ。自分で言うのもなんですが中々いい味ですよ。だから話は一旦置いて休憩しましょう、ね?」

 

 

全力で回避しようと、提督は話を逸らそうと下手な話術で何とか試みる。

 

 

「良いですね。―――それは後でいただくとして、さっき『旗艦』の整備が終わったんですよ。」

 

 

が、駄目。話を逸らすのが本当クソ雑魚過ぎる。もう少しうまくやれなかったのだろうか?ほら、見ろ。さっきの彼女の口から出た『旗艦』という単語に二人ほど反応を示したぞ。

 

 

「まあまあまあ、そう焦らないで。それよりもお菓子どうです?余った材料で作ったアップルパイ冷蔵庫で冷やしていたんですよ。だから話は一旦置いて下さい。―――いや、置け。」

 

 

余裕が無くなってきたのか口調が少し荒くなっていく提督。

そりゃあ、実戦の雰囲気を肌で感じたことが無いのに夜―――敵さんの姿も良く見えない、どこから砲弾、魚雷が来るか分からない所に放り出されそうになったらそうなるだろう。

「彼女達の為に出来るだけのことはやろう。」その言葉に嘘偽りはない。

が、かと言って非常事態ならまだしも、平時でわざわざ危険地帯に行きたいとは絶対に思わないのだ。あと、少しでも休みたいという気持ちもある。

 

 

「良いですね!あ、そうそう。提督料理が人より出来るって言ってたじゃないですか~。だから、艦内に付けましたよ、キッチン。これなら沖に出ても料理出来ますね!」

 

「少しは察してくれよ!!」

 

 

ワザとか?と言いたくなる位最悪なタイミングの報告に頭を抱える提督。だが、しかし……。その選択は誤りであった。

――――頭を抱える暇があれば逃げるべきであった。

 

突然、提督の腕に柔らかな感触が当たる。

 

 

「提督も夜戦行くの!!―――やったーー!!じゃあ、早く行こう!!今日は一段と張り切っちゃうんだからね!!」

 

 

川内が腕を組んできた。柔らかな感触が腕から伝わる―――が、平時ならまだしも今はそれを嬉しがる余裕がない。寧ろ蛇が餌を逃さない様に絡みついている様に錯覚してしまう。

 

 

「は、離して―――」

 

 

振りほどこうとする提督であったが、今度はもう片側から腕を組まれる。

 

 

「な、那珂ちゃん!?」

 

 

那珂である。那珂が提督のもう片方の腕を組んで……いや、そんな色っぽい話ではない。

痛いのだ。腕の血管がキュッと締まるくらい強く絞められているせいで腕の感覚が少し無くなってきている。

これは好意ではない、殺意だ。こいつは私を殺しに来ている。そう思わせる気迫を提督は那珂から感じた。

 

 

「な、那珂ちゃん……!腕を、腕を離して――」

 

「提督も那珂ちゃんと一緒に沼に落ちろ!!」

 

「何言っているんだおめえ……?」

 

 

死なば諸共。提督が随伴した所で戦力になるわけでもない逆に邪魔になる可能性だってある。根本的な解決にはなりはしない――――が、合理的かどうかで物事がすべて決まるなら争いなど起こりはしない。

「感情を処理できない者はゴミだ」と偉そうに言った人も結局は感情に振り回された訳で、結局はそれが正しい、最良な案だろうが感情によってはそれとは真逆の行動を取ってしまう位大事なものなのだ。

 

―――要は「提督も一緒に那珂ちゃんと同じ気持ちになれ!!」と彼女は言いたいわけだ。提督としては溜まったものではない。

 

 

「ドローンがあるでしょう!態々艦に私が乗らなくても良いじゃないですか!?」

 

「いや、提督。試運転って意味では整備したものとしては是非乗っていただきたいんですが?」

 

「明石!その話は昼間で良いでしょう、昼間でさあ!!―――大淀さん!大淀さん、助けて!!」

 

「はい、そこまで!!」

 

 

大の大人の男性が若い女性に押さえつけられて泣きそうになっている。一体これは何なのだろうか?大淀は頭を抱えたくなったがこのまま見捨てるわけにもいかない。仕方ないので助け舟を出すのであった。

 

 

「提督と一緒に夜戦に行きたいのは分かりましたが、無理強いは流石に見過ごせません!」

 

 

ビシッと決めた大淀に、川内はブーたれ、那珂は「じゃああんたが那珂ちゃんの代わりに行ってくれるの?」とキレ芸をし、明石は「えー!せっかく提督の為に専用のキッチン設置したんでうから試運転行きましょうよ~」と駄々をこね、そして提督は「お、大淀ぉお……」と感動して泣く。ついでに好感度が大幅に上がった。チョロすぎる。

 

 

一応場を落ち着つかせた大淀はため息を一度吐いて、そして少し考える。

 

 

「(提督が着任してからまだ二日目。それなのに艦娘達との壁が殆どない……。もしかしたら―――)」

 

 

もしかしたら私の提督って隠された才能が――と期待した眼差しを向ける。

……うん。勘違いだわ。ただちょっかい出しやすい雰囲気を醸し出しているだけだわ。だって、どう見ても目の前の提督が艦娘たちに凛々しく、一人前の指揮官として戦場に立っている姿が想像できない。代わりに、この先艦娘達から無茶振り、振り回されていく姿は簡単に想像できてしまう。

 

 

「(ま、まあ、そういった提督がいても良いでしょう、はい。)」

 

 

自由とはそういうものだ。指揮官としてどうなのかと思わずにはいられないが、指揮も駄目な癖に艦娘たちとの仲も最悪に比べれば十分恵まれているのだ、と大淀は自分に言い聞かせるのであった。

 

 

 



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二日目 終わり 下

―――――――――――

 

―――――――

 

―――

 

 

その後、川内たちは一旦部屋から出ていった。出ていく際、川内が明石に「提督と一緒に夜戦に行く上手い方法ない?」と聞訪ねていたのが聞こえた。

……どうやっても提督を夜戦に連れていきたいようである。

 

連れて行って何の役に立つのか?「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する」しか今の所指示できそうにないクソ雑魚提督だ。が、指揮能力等はお察しでも、彼女らのモチベを上げるのには役に立つのかも知れない。少なくとも、一人は「提督に自分の戦っている姿を見てもらいたい。それも一番自身がある夜戦で」という、何か飼い犬が飼い主に構って欲しい理由である。

そしてもう一人は「那珂ちゃんと一緒に地獄に落ちよう」という、道連れ欲しさを一切隠そうとしない清々しい理由である。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、提督。夜戦、行かないんですか……?」

 

「え?話をぶり返すんですか?」

 

 

よーし今日はこれでお開きだ―――とはいかないが、一先ずは問題は落ち着いたと思ったらこれである。

今まで蚊帳の外で提督が出したお茶と追加の茶菓子をちゃっかり頂いていた神通は場が落ち着くのをのんびりと待っていた。

 

 

「ですが提督……。夜戦がどういったものかを知るには、実戦の空気を味わうのが一番です……。」

 

「ドローンじゃ駄目なんですか?」

 

 

魔改造されたドローンは最早肉眼で見るより良く見え、そして広く戦場を見れる。態々直接行かなくてもドローンで良いのではないか?と聞くと、神通は首を横に軽く振る。

 

 

「カメラ越しだけでは実際の戦場がどういうものなの分かりづらいと思います。戦場は視覚だけ頼って勝利し続けられるほど甘くはありません。実戦の空気、音……それ以外にも実際に経験しなければ得られないことが多々あるはずです。その得たものがきっと提督にとって得難いものになる、と思います。だから、提督にも出来る限りは旗艦に乗ってもらい実戦を見て欲しいです……。」

 

 

凄く真面目な回答。これには提督は黙るしかない。姉の方は夜戦大好き大型犬、妹は芸人気質のバラドルなのに……。本当に同じ姉妹なのだろうか?―――いや、逆に彼女らの抑え役としてこう真面目気質になったのだろう。

 

「(しかし、これは逆に困ったことになったぞ……)」と提督は思う。

もっとふざけた理由なら反論できたが、こうまで言われると行きたくないことには変わりはないが「あれ?行かないとまずくない?」と思ってしまう。実際、そこの提督はさっきまでは此処から出たくない~の一点張りだったのに、今は行くかどうかで心が揺れている。内容はさておき、人の言葉で意思があっさり揺らぐのは詐欺に引っかかりやすいタイプなのでもっと自分の意思を強く持ってほしいものである。

そんな悩んでいる提督に、彼女は更に話を続ける。

 

 

「――――それと、実戦にはただ見ているだけには無い重要なものが一つあります。」

 

「重要なもの?それは一体。」

 

「それは―――――『痛み』です。」

 

「『痛み』……―――――うん?」

 

 

もっと為になる(と提督は思っている)話が聞けると思っていたが、何かおかしな方向に話が行こうとし始めた。

 

 

「自分の技量が上がった、と実感出来るのはどんな時だと思われますか?」

 

「も、物事が自分が考えた通りにうまくいった時かな~……。」

 

「いいえ。……自分が成長したと実感出来るのは『失敗しなくなった』時です。1万回やって1万全部成功出来る位自信が持てた時、人は一番己の成長を実感出来るのです。」

 

「そ、そうかな……そうかも……。」

 

「では、失敗を0に近づけるにはどうしたら良いでしょうか?―――そこでさっきお話した『痛み』が関わってくるのです。主砲を外す、敵の攻撃を避けるのを失敗する、索敵を失敗する等々……どれも失敗すれば手痛いしっぺ返しを貰ってしまします。痛いのは誰だって嫌です。故に己の止めに必死で自身の技量を磨こうとするのです。ただ、画面の前で大人しく見ているだけではそうはなれません。提督、痛みです。痛みこそ誰もが忌避するものであり、最も人を成長させてくれるものなのです。

勿論実戦だけではありません。これから行っていく訓練も、この神通含め、骨が折れようが血の小便が出ようが容赦一切しません。―――大丈夫です!実戦でやらかした時より酷いものなんて無いですから、それを避けるために皆全力で訓練に打ち込んでくれる筈です。……ええ、まあ……、何が言いたいかというと――――」

 

 

――――その時の事を提督は忘れることは無いだろう。

安牌かと思われていた次女。実際、お気遣いが出来る大和撫子の様な大人しめの美少女だと思ったし、平時はそうなのだろう。しかし、どうも戦いに関すること――――特に訓練になると人が変わるようで。もし此処に彼女の姉がいたら「あいつ、鍛錬の話になると早口になるよね~」と言うことだろう。

 

 

「かのミヤモトマサシ先生曰く――――『痛くなければ覚えませぬ』です……。」

 

「言ったのはフジキゲンノスケ先生だよ馬鹿野郎。」

 

 

長女は夜戦バカ、三女はバラドル、そして次女は『シグルイ』。提督はまとも枠だと思っていた前の自分を殴りたいと頭を抱え、そして新しい胃痛枠に対し敬意を払うことを止めた。当方に迎撃の用意あり。阿呆なことを言うようだったら、反撃で殺されようが鉄拳制裁する覚悟完了である。

 

 

「それと、訓練は行います。―――が、追い込むのは止めなさい。」

 

「―――!?」

 

「何だその顔は?させるわけ無えでしょうが。昔ならいざ知らず、今の御時世、駆逐艦の娘達にDV紛いの訓練なんてしたら私の首が憲兵さんの手で物理的に飛ぶわ。寧ろ、私が全面的にGOサイン出すと思っていたことに驚きですよ。」

 

「わ、分かりました……。訓練は、限界一歩手前で「神通?」……あれ?何か提督から壁を感じますけど、気の所為ですよね?――――少し余裕を持って終わるようにしますから、冷たい目―――『養豚所の豚を見るような目』でこちらを見ないで下さい……。」

 

 

ああ、やっぱり次女だけ安牌なんて無かったよ。これからこの三姉妹達に振り回されるのだろうか?その時、果たして自分ごときが手綱をしっかり握れるのだろうか?この先の事を考えると頭とお腹が痛くなってきた提督であった。

 

 

 

 

 

 

「あのう……。それで、提督。夜戦行かないのですか?」

 

「行きたくなると思ったのですか?」

 

「―――!?」

 

「その顏、気に入ったんですか?―――どうやったらさっきの話で行きたくなると思えるんだ……。」

 

 

シグルイで天然とか、もしかしなくてもこの娘が一番問題児なのではないだろうか?提督はますます頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

――――――

 

 

 

 

 

 

「兎に角、夜戦に私が着いていくかどうかは後日「提督!!」―――よおし!川内!!私のこと少しでも好きなら何も言わずに回れ右して大人しく寝なさい!!」

 

 

もう疲れた、寝たい……。そうだ!彼女らのことはバックレて寝ちまおう。流石に勝手に出撃はせんやろ。と考えていた時の件の夜戦バカが扉を勢いよく開けて入ってきた。

 

 

「それより、提督!」

 

「え?私嫌われてんの?」

 

「姉さんがマイペースなだけですから気にしないほうが……」

 

 

結構心にキてよろける提督とそれを支える神通の二人を他所に、川内はズカズカと提督の目の前にやって来る。何かいい案でも思いついたのかと身構える提督。一方の川内は部屋から出ていった後に明石から貰ったアドバイスを思い出す。

 

 

 

――――――――――――――――――――

――――――――――

――――――

 

 

 

 

『プレゼントで媚を売―――好感度を稼いだらどうですか?』

 

 

 

―――――

―――――――――

――――――――――――――――

 

 

好みの異性からのプレゼントは誰だって弱いのだ。ちょっとした我儘だって許してしまうものだ。

なのでアドバイスを貰った川内は早速購買に行き、「これだ!」と思った物を買ってきたのだ。

 

 

「提督!これ、あげるから頑張ろうね!!」

 

 

そう言って差し出された物を見ると

 

 

"夜戦打破~ガラナエキス従来品の3倍!!これで夜戦を乗り切れ!!~”

 

 

とどっかで見た栄養ドリンクのパチもんな物が何十本も入った袋を渡された。

一本手にとって栄養成分を見てみると、自分が知っているやつとは比べ物にならない成分が入っていた。本当に飲んで大丈夫なのだろうか?安心信頼の第本宮プロデュースと書かれているのが余計不安を煽る。国産と表示されているもので口に入れるのを此処まで躊躇してしまうのは初めてであった。

 

はて?……これはパワハラではないのか?

 

要は『これ飲んで早う残業こなせや』と強制しているのではないか?そう思いこれを渡してきた川内を提督は見るが――――いい笑顔だ、感動的だな。だが(提督の心の癒やしとしては)無意味だ。悪気が欠片も感じられない、完全な善意であることが感じられる。間違いなく、彼女はこいつを飲んで夜戦をキメれば元気になると本気で思っているのだろう。

 

それが出来るのは君たち艦娘達だけで、一般人である提督にはその様な機能はついていないのだ。

しいて言うなら、徹夜しているといきなり頭と目が冴え始める「徹夜ハイ」と呼ばれるランナーズハイの親戚みたいなのがあるが、あれは寿命を削って元気を前借りしているだけだから違うのだ。

 

しかし、それを説明したからと言って目の前で散歩に行きたそうな犬みたいな目でこちらを見ている彼女に夜戦を止めさせられる様説得出来るのだろうか?……無理である。そんなこと出来るくらいなら昨日の時点で止められていただろう。

 

自分には出来ない。なので仲間に頼ろう。そう思って、川内と一緒に部屋に入ってきた明石を見る。

――――が、目をサッと逸らされた。この野郎……!

 

こうなったら此処で一番頼れる大淀さん、君に決めた!……と、助けを乞う視線を向けた。

 

 

「提督。――――明日の午後から私が代わりに努めますので頑張って下さい。」

 

 

遠回しに行けと言われた。助けてよと視線に力を入れるが、「彼女を顕在化させた貴方の責任です」と視線で訴え返してきてぐうの音も出ない。寧ろ、午後から休みを取れるように配慮してくれているだけでも上等だろう。

 

(勘弁してくれよ……)と部屋のソファにもたれ掛かり頭を抱える提督であったが、自分が座ったすぐ後に向かい側のソファに誰かがドサッと乱暴に座る音がしてそちらを見る。

 

那珂だ。自称艦隊のアイドルが、アイドルがしてはいけない、堅気の者では絶対出せない眼光でこっちを睨んできている。

その視線から「提督、私達はこんな所では止まれない。連れってくれるんだろう、夜戦に」と言ってきているかのような幻聴が聞こえ始めてきた。

 

もう他に逃げれる手段は無いのか?と藁にもすがる思いを込めた視線を目の前の那珂に向けると、彼女は目を据えたまま指をクイクイと、「寄越せ」というジェスチャーを見せる。

何なのか一瞬分からなかったが、自分が手に持っている物を思い出してすぐに分かった。―――そして、最早逃げられる状況でないことを察した。

 

―――ドサッと自分の横に誰かが座った。誰だと思いそっちに視線をやると神通であった。彼女は菩薩様の様な優しい表情で「提督が行く所には、この神通何処へでもお供します」と言った。――――それに対して提督は「いや君のお姉さんを物理で良いから止めてくれない?」と思ったが、彼女でさえもう夜戦止めるのは諦めたのだろうと、思わず「ハハッ……」と乾いた笑いを漏らしてしまった。

 

 

 

……袋から三本、川内から差し入れとして渡された栄養ドリンクを取り出す。一本は自分、ニ本目は那珂へ、最後の一本は神通の前へ置く。そして三人同時に手に取り、同時に蓋を開け、提督が乾杯の合図代わりに一度瓶を高く掲げ、それに追随する形で二人も瓶を上げる。

 

そして提督は一度二人を見ると、二人共首を縦にふる。どうやら覚悟はとうの昔に決まっていたようだった。それを見て提督も覚悟を決めたのか、何が入っているのか詳しく知らない……そもそも人間用なのか疑問に残る栄養ドリンクを一気に飲み干す。それに合わせて二人も飲む。

 

飲んだ瞬間、最初に感じられたのは苦い、まるでインスタントコーヒーの豆を直に食っているかのような味、その直ぐ後には舌に痛みが。唐辛子か?いや、これはハバネロだ。痛い、痛い。目も鼻も痛い。目も頭も覚めるが、これはキツイ。堪らず、飲み終わった直後に咽るが、今度は体が熱く感じられる。スッポンにマムシの血は間違いなく入っているだろうが、絶対他にも何か入っている事がわかる。

 

「フー」と一度大きく深呼吸し、(他の二人も同じことをしている事からこれは艦娘にもキツイんだなと分かり余計不安になった)提督は瓶を割れない程度に思いっきりテーブルに置くと、スッと立ち上がり――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしゃあああ夜戦行くぞテメーらあああ!!!私に付いて来い!!!」

 

 

―――――ヤケになって、部屋から出ていった。

 

そして彼の後を「止まるんじゃねえぞー!!」と言いながら那珂が付いていき、「私の持ってきた主砲は那珂ちゃんに渡してください。私には代わりのものを―――え?20.3cm砲しか無い?良いじゃないですかそれで。それを二本担いで出ますので急いで下さい。」と明石に早口で言うと急いで提督の後を追う神通。

 

残った者たちはその光景に数秒呆けていたが、ハッと我に返り「ちょっと!お姉ちゃん置いていくな~!!待ってよ~!」と急いで川内は追いかける。

 

「……まあ、結果オーライってやつなんですよね……?」と思うことにした大淀はふとさっきまで提督が座っていたソファを見る。其処には提督が最早ライフワークとかした日記帳があった。どうやら勢いよく立ち上がった際にポロッと溢れたのだろう。

 

大淀はそれを拾い、届けようと――――しようと思ったが、「あ!手が滑りました(棒)!」と言いいながら帳面を落とす。丁度ページが開くようにしながら。

 

「あー、これは不可抗力、不可抗力ですよ~……」と言いながら、拾う振りして一番新しく書かれたページを覗き見る。それを明石は白い目で見ていたが、それを無視して大淀は文章に目を通す。

 

 

 

 

 

==============================

 

 

〈PM 8:30〉

 

今日は一緒に戦ってくれる娘達が沢山来てくれた。

自称アイドルの那珂ちゃん、胃痛枠な利根、特徴的な語尾以外常識人な球磨さん、電ちゃんの姉妹艦である雷、暁、響、そして神通さん。幸先が良い。彼女たちにはこれから苦労をかけると思うが、私も出来るだけの事はしていくから一緒に頑張ってこの鎮守府を盛り上げていきたい。なにはともあれ、今は今日の事を素直に祝おう。

そして、明日は今日より良い日になっていると良いな~。

 

 

==============================

 

 

 

読み終わった大淀は目頭が熱くなった。感動からではない。哀れ過ぎて涙が出てきたのだ。きっと、これを書いた提督が約三十分後の自分の境遇を知っていたこんなこと書かなかっただろう。そして、苦労をかけると書いてあるが、寧ろ彼女らにこの先ずっと振り回されるのは提督ご自身である。それが分かって、大淀は提督のために涙を流した。

 

 

「お労しや、提督上……」

 

「ええから早う帳面届けてこいや。」

 

 

そんな同僚に白い目を向けながら明石は大淀の尻を蹴り飛ばした。

 

「ちょ、ちょっと何してるんですか!」と抗議するが、「いや、あんたの方が何やってんの?」と呆れている明石に何も言い返せない大淀は「し、失礼します」と顔を真っ赤にして部屋を出ていった。

 

 

そして残されたのは明石だけになった。

一人っきりになった明石は「あれとこれでしょう?そしてあれも引っ張り出さなきゃあなあ~、あ~忙しい忙しい」と呟きながら部屋を後にしようとする際、ポツリと独り言を漏らした。

 

 

「まだ二日目なのに、本当に退屈しないわ。良いこと何だけどね~……。

――――旗艦の冷蔵庫にブルーマウンテンのコーヒー豆でも入れといてあげましょうか……」

 

ため息を一度吐いて部屋を出ていく。向かう先は改装場。彼女らの装備の変更等を行わなければ行けないから。

だが、その前に提督の為にお高いコーヒー豆とその他諸々を買いに購買へと寄る明石であった。




連休のうちに後何話か投稿できるかな?


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三日目……じゃなくてまだ二日目だった

今日のワイの艦隊
出撃。が、ステージ間違った。
最初の戦い、勝利したがほぼ大破。勿論撤退。
MVP加賀「良い作戦指揮でした。こんな艦隊なら、また一緒に出撃したいものですね(煽り)」
ワイ「(#^ω^)ピキピキ」


〈PM 9:00〉

 

今、私は旗艦の前に立っています。

数時間前に見たものと比べて、何か機銃とか主砲とか追加されて物騒になっているんですが。

……え?私戦闘には参加できませんよ?とその事を明石に伝えたら「海の脅威は深海棲艦だけでは無いですよ?」と返されました。まあ、そりゃあそうですよ。

そしてこれら装備は乗艦する妖精さんがやってくれるそうなので、実質私のお仕事は椅子を温めるだけで……やっぱり私要らないじゃないか!あと、帳面を大淀さんが届けてくれて助かりましたが……見られていませんよね?いや、まあ既に一回見られているから今さらなんですけど。

 

川内たちが装備のおめかしのため時間に少し余裕があるので、子供っぽいですが旗艦の中を探検してみましょう。

 

 

〈PM 9:10〉

 

中に入ると出迎えてくれたのは妖精さんたちでした。

機銃と主砲を扱う妖精さんがそれぞれ一人ずつ。周囲の警戒担当の妖精さんが一人。そして、何か峠で豆腐運んでそうな老け顔な妖精さんが一人(勿論運転手でした)。計4人?いや匹?……人でいいか。しかし、運転役の妖精さん……凄い安心感があります。一先ず、お近づきの印にお菓子を上げたら大変喜んでくれました。妖精さんには甘いものが良い、と。。

 

肝心の艦の中だが、最初に思ったことは思った以上に広いということだ。

妖精さんたちが作業を行うスペースだが、要の妖精さんが小さいこともあってかスペースが小さい。妖精さんと比べると大きい舵輪だが、普通のものと比べて子供が乗って遊ぶあの子供用車のハンドルくらいしか無い。そのおかげか残りのスペースはほぼ私が自由に使っていいスペースです。先ずキッチン。簡易キッチンと言っていたが凝った料理もお菓子も作るのに十分過ぎる設備が備えられており、冷蔵庫の中を見たら材料が完備でした。誰がしてくれたのやらと思っていたら、運転手の妖精さんがプラカードを見せてきました。内容は『明石の嬢ちゃんに感謝しとけ』と書かれていました。……何だか彼女には来てから一番お世話になっているな……。後日ちゃんとお礼しなくては。

 

更に、畳に布団、シャワー室……あ、浴槽もある。しかも部屋のやつより広くて上等だ!トイレもウォシュレット完備で備え付けられている。パソコンから本部からの指令をその場で受取出来る。甲板に出て簡易テーブルとベンチを出して外でお洒落なご飯も出来る。更に備え付けられているサーバーからはキンキンに冷えたラムネが飲み放題。間違いなく私の部屋よりも良い。――――――――――もう、僕此処に住むのおおおお!!!!

 

 

……と、少し取り乱しましたが、多分それをしたらアカンのでしょう。だって、此処に住み込むようになったらその分出撃に随伴しろと言われたら……ねえ?それを断って我が物顔で此処に住み込むには、面の皮をもっと厚くしなくてはいけません。と言うより、寧ろそれ狙いで此処まで快適な空間にしたのだろうな、明石が。彼女、どうもドローンより旗艦のデータの方が欲しそうでしたし。

 

――――お?どうやら彼女たちの準備が出来たみたいですし降りましょう。

 

 

 

〈PM 9:30〉

 

 

あの後、ちょっとした挨拶を済ませて直ぐに出撃しました。特に大したイベントも無いですし、あってたまるか。

しいて言うなら2つ。1つは、三人の戦闘衣装見て川内は14cm主砲一本に魚雷を発射するランチャー61cm三連装魚雷。那珂ちゃんは14cmの主砲二本に対し、神通は――――20cm連装砲を2つ。気合の入りが違いました。「え?重くない?」と聞いたら少しだけ重いですが、扱えないことは無いとのこと。

 

それにやはり14cmと比べると火力の差が……。正直、重くて命中率が幾らか下がろうがそれでもこちらを採用するメリットがある、だそうで。……ただ、一番いいのは15.2cm主砲が一番良いそうなので今度からはそれを狙って開発しましょう。それまでは中継ぎとして苦労をかけることになりますが。

 

そして2つ目は、見送りに来た大淀さんと明石が餞別をくれたことでしょうか。明石からは何とお高いコーヒー豆を。ブルーマウンテンですよブルーマウンテン!……高くて飲むのが勿体ないですが、飲まないのが一番失礼なので航海中に飲むことにします。

 

 

そして大淀さんからはお守り代わりにという事で……ロケットランチャー渡されました。どうして……?

彼女曰く「深海棲艦に制海権を奪われてから長い長い時間が経ちました。そのせいか、はたまたは長い間人の手が入らなかったおかげか分かりませんが、海の生態系が大きく変化しました。」

 

深海棲艦が出てからこの海は大きく変化したそうです。現代っ子の私には分かりませんが、艦娘さん達が出てくるまでは魚を取るのが文字通りの命がけであり、輸入関係全て全滅だったそうで。今でこそ少しお高い程度まで戻っているようですが、昔はそれはそれは酷いものだったそうで。そういったせいもあり人の手が届かなくなった海、特に沖や深海は独自の生態系を形成するようになったそうな。…深海棲艦が出たのが約一世紀程で、そんな短期間で生態系が変わるのは可怪しいと思いますが。

それは頭の良い専門家の人たちが答えを出してくれると信じているので、私は心に棚を置いてそこらへんに放り投げておきますけど。

 

ただ、まあ生態系が狂ってっしまっているというのは知っています。

確か、三ヶ月前でしたっけ?陸からそんな離れていない所でシーラカンスが網に引っかかったんでしたっけ?

それ以外にもリュウグウノツカイがゴンズイ玉形成したり、私でも……いや子供さえそれは可怪しいやろう?と思われることが起きているのが今の現状です。

一般社会で知られているのがこのレベルなら、これから私達が向かう所にはどんな事が起きているのでしょうか?

―――他人事ならワクワクなのですが、当事者となるとドキドキです。行きたくねえ……。

 

だから護身用としてロケットランチャーと簡易マニュアルを渡されたのですが……。

普通のでは駄目なのですか?と訪ねたら「人相手だったらそれで十分なんですが……」と。私、B級映画に使う映像撮りに行くんですか?

勿論、主力は彼女たちで、保険は旗艦に設置されている兵器。これを使うときなど大淀さんも本気では考慮してはいないのだろう……多分。あくまでお守り代わり、無いよりはあったほうが安心。使わないことが一番いいのは間違いない。

 

―――でもそれならショットガンが良い。化け物相手にはショットガンて相場が決まっていると言ったら「は?」と言われました。ちょっとキレてましたね、あれ。どうやら彼女はバイオ派らしい。バイオのロケランは最終兵器ですもんね。分かります。ですが私はメタ●スラッグ派なのです。ショットガンこそが至高なのです。

 

 

 

〈PM 10:00〉

 

 

どうやら彼女たちが敵艦隊を発見したようです。後、数分もしない内に接敵するらしいです。私には全然見えませんが、兎も角索敵の重要性が良く分かりました。これはテレビ画面の前で大人しく見ていたら分からないことだったでしょう。だからといって随伴はもう今回キリにしてほしい。

さて、無事戦闘が終わることを祈って大人しく椅子を温めておきましょう。作戦は「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する」要は行き当たりばったりしか今の私には出せませんから。

あと、ロケットランチャーは弾頭抜いて倉庫にポイしました。ド素人元一般人が使えるわけないでしょう、こんなもの。

 

 

 

〈PM 11:10〉

 

 

戦いは4連戦続き、つい先程終わったようです。

 

遠く離れた画面越しに見る戦闘と、爆音が良く聞こえる実際の戦場は別物でした。そして肝心の彼女らですが、肉眼ではよく見えないので旗艦に設置してあるスコープ(自動で対象を追ってくれる優れもの)で見ました。

 

夜戦に自信満々な川内は敵艦の攻撃を華麗に避けながら敵艦を沈め、那珂ちゃんは出撃するまでのヘタレっぷりを何処にやったのか。敵の弾幕を恐れずに近づき、ほぼゼロ距離射撃で沈めていく。

そして、鬼やら武神と言われている神通に至っては遠くの敵には主砲の連撃を浴びせて着実に沈ませ、敵が接近してしきたら魚雷を直接相手に叩きつけて爆発四散させていく。

まだ建造したてでこれです。この先練度を上げて、改修を繰り返していけばどれ程の強さになるのやら。

 

4戦目は大きな盾を2つ持ったル級と呼ばれる敵戦艦がいましたが、彼女らの夜戦連撃によりあっさり沈み無事終了。これなら一度帰って補給したら、もっと沖の方に出て探索範囲を広げてみても良いかも知れない、と館内にある通信機で鎮守府にいる大淀さんに連絡したらOKサインが出ました。……一番良いのは川内がこれで今日満足してくれる事でしょうが、無理でしょうな……。昨日は朝4時過ぎまでしてたし、今日は姉妹揃って嬉しいのか昨日よりも士気が高いですし。ともあれ、彼女達の方は問題が無いので一安心です。――――こっちは問題が大アリですが。

 

戦いが始まると直ぐに旗艦は戦いに巻き込まれない&戦況が見えるという位置取りを維持していました。ですが、敵の撃った魚雷が何発か此方に流れて来たのが爆発して水柱を上げました。

 

『塗装版が少し削られただけ。狼狽えるな』と運転手の妖精さんがプラカードを見せてきました通り、艦内の揺れはそこまでありませんでしたし、『あの位のだったら直撃しても装甲が凹みもしやしないさ』と二枚目のプラカードに書かれた位には、この旗艦は敵艦に対しての迎撃能力は皆無ですが代わりにとにかく頑丈です。と言うより、その説明を事前に明石に聞いていないなら乗っていません。

 

 

―――戦場の緊張した雰囲気

 

―――直ぐ近くで上がる水柱に爆発音

 

―――揺れる艦内

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして戦闘が終わった後に気づく、股らへんがほんのり湿って温かい

 

 

 

 

……………ええ、そうです。初めての戦場で私は漏らしてしまいました。

通信機から神通から「大丈夫でしたか、提督?」と心配されたので、「小便漏らしてしまいました、やっちゃったぜテヘ♪」と恥ずかしさ紛らわすために茶目っ気で報告しました。すると、彼女からは「初めての戦場で緊張し過ぎたのでしょう。次からは大丈夫ですよ。」とフォローしてくれました。優しさで泣きそう……。

そしてそれを聞いた川内が「どんまいだよ、提督!新兵が誰しも通る事だから恥じることなんてないよ!!」と言ってくれた。

川内ぃ……お前、人を労れたんだな……。

 

そして那珂ちゃんは「………提督、ナプキンなら部屋にあるけど要る?要るなら帰ってから渡すけど?」と、フォローしているのでしょうが丁寧にお断りさせていただいた。……そう言えば男性用のナプキンってあったような……。いや、次は大丈夫ですよ、多分。

 

そういうわけで、私の初めての出撃は股間のダムの大破以外は特に問題なく終わりました。一先ず、濡れたズボンとパンツを洗濯機にドーン。後は戻る道中の間にシャワーと着替えを済ませておきましょう。………・はあ~泣きそう。いや泣いた。



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三日目 その1

ある日の我が艦隊の演習風景

不知火「弱いのね」
(相手)武蔵改二miss

ワイ「(;^ω^)」
不知火「不知火に何か落ち度でも?(震え声)」


〈AM 0:10〉

 

一度戻って補給してまた出撃。やっぱりこの位では満足してくれませんでした。ハハッ……(乾いた笑い)。

道中の敵はあら方片付けたので、先程進んだところまで彼女たちの艦装に使われる燃料節約のために旗艦の甲板に乗ってもらって周りの警戒をしてもらいながら先程の最後の戦闘があった所まで戻りました。さて、ここからは私達にとっては未知のエリア。気を引き締めて行きましょう。

……しかし、ズボン洗濯中だから代わりに黒のジーパンを穿いてますが、白色の提督制服と合ってまないのが気になります。明日、予備の制服を申し込んどきましょう。……経費で落ちますかな?

 

 

〈AM 0:40〉

 

進むこと三十分。人の手から離れた其処は鎮守府近海と比べて不気味であった。

音も風の音と並くらいで静かなのですが、それが逆に不安を煽る。まるで世界に一人ぼっちで取り残されたかのような……いや旗艦の横に並んで並走している川内達と妖精さん達がいますから一人ぼっちではないですけど。

……そういえばこういった状況に似た映画がありましたね、海に取り残されるやつ。あの状況になったら誰でも絶対発狂しますよ。

 

「静かですね……姉さん。」「ああ。敵さん、戦力を軒並み上の方に回してるのかもな。」と、通信機越しから聞こえる神通と川内の会話から彼女たちも暇で仕方がないのでしょう。私だってすること無くてこうして日記をつける位しか……。これは沖に出たのは失敗だったのかも知れません。

 

やることが無いので台所に立って何か作りましょうか……。そういえば、晩飯まだ―――――

 

 

 

―――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

 

 

『―――――――――――!!!!』

 

突然アラーム音が艦内に響き渡った。びっくりして提督は使っていたシャーペンを落としてしまう。

 

一体何事だと思い彼は動揺を抑えながら(傍から見ればバレバレな位に抑えられていないが、喚き散らすだけしかしないのに比べれば少しはマシになったと思われる)妖精さんに尋ねると『此方に向かってくる大型の反応あり』と書かれたプラカードを見せられた。

 

 

「そんな!!周りに敵影は―――」

 

『下からだ。―――落ち着け、まだ距離は十分ある。速さも余裕で離せる。』

 

 

潜水艦型の深海棲艦。まさかちょっと遠出した先に出会うとは……!こんな所まで深海棲艦の手が伸びていることに提督は戦慄した。初めては済ませたおかげか、数時間前と比べたら漏らさない程度には余裕ができているがまだまだ駆け出し。恐いものは恐い、が泣き言は言ってられない早く指揮を取らなくてはと思い行動を開始する。

 

 

「直ぐに離脱を――え?既にやっている?。じゃ、じゃあ川内達に連絡を―――自分達が気づく前に気づいて行動している?アッハイ。大人しく椅子温めておきますね……。」

 

 

が、駆け出しド素人の出番など無かった。すごすごと椅子に座り直し拗ねる提督であった。

 

 

=================================

 

 

一方、此方は川内達三姉妹。

先に気づいた彼女らは警戒態勢を維持しつつ、迎撃は捨て旗艦の護衛に専念する事にした。何故か?

 

 

「対潜装備持ってきてないどころか、開発さえしてないじゃん……。」

 

「提督も私達と同じく着任したばかりですからねぇ……。これはもう仕方ないですよ、那珂ちゃん。」

 

「持ってたとしても、暗くて墨ぶち撒けたかのような水の中にいるやつを狙って当てる自信はないよ。」

 

 

答えは、対潜水艦型にはそれ用の装備が必要なこと、それに加えて夜戦での潜水艦を撃破するのは大変難しい為である。

なので此処での正しい行動はさっさと尻尾巻いてスタコラサッサなわけなのだが……。

 

 

「ていうかさ……何か、違和感感じない?」

 

「川内姉さんもですか?実は私もです。」

 

 

敵意は確かに感じる。―――感じられるが、深海棲艦特有の「絶対に此処で沈めてやる……!」という悪意が感じられない。もし、彼奴らならばこちらを見つけ次第に先制雷撃をしてくる筈。それではそれ以外の艦種ではないのか?と考えるだろうが、水中から奇襲攻撃してくる深海棲艦は潜水艦型以外は知らないし、もしそうだったとしても―――

 

 

「あれれ~?まだ距離縮めてきてる?」

 

 

幾ら何でも近づきすぎている。もう、十分射程距離に入っているだろうに一向に撃ってこないのは可怪しい。

 

 

「一先ず回避に専念するよ、神通、那珂!あっちが態々近づいてくれるなら……姿見えたと同時に弾丸と魚雷をくれてやる!二人共遅れないで!!」

 

「「了解!」」

 

 

水中から出てくれるなら殺り様はある。出待ち戦法を取ることにした川内達は可能なら此処で、無理そうなら逃げる時間稼ぎに魚雷をばら撒いて時間を稼ぐ事にした。速度を少し緩め、しかし一瞬でその場から離脱出来る様に準備しながら水の上を走り続ける。そして――――

 

 

「――――!!来るよ!二人共回避ー!!」

 

「了解!!」「了か―――あれ?想像以上に大きくない、これ?「那珂!」いや、これ棲艦じゃなくて―――」

 

 

真下から飛び出してくる気配を察知して水面を蹴って避ける川内と神通。しかし、那珂は少し遅れたせいでもろにドデカイ水飛沫に巻き込まれてしまった。

「那珂ーーー!!!」と妹を呼ぶ長女の声も飛沫音でかき消されてしまった。

 

 

 

=========================

 

 

同じ頃、艦内にいる提督は窓から見えてしまった。

 

 

「な、なんじゃありゃあああ!!!????」

 

 

大きな飛沫を上げながらその中心から出てきたもの。

それは大きかった。10mは超えていると思われるくらいに大きかった。そしてその大きさに相応しい、見るだけで背筋がぞっとする鋭利な牙。――――そして、提督はこいつを知っている。

 

水飛沫を上げて5~6m程跳ねるそいつの姿をはっきりと捉えた提督は、その名を叫ばずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョー●だあれーーーー!!?」

 

 

そう、●ョーズ――――でかい鮫(shark)である、大きなホオジロザメが跳んでいた。

サメ映画界の金字塔にして、世界中に鮫の恐ろしさを広げたジョ●ズが映画の中から飛び出してきた……わけでは無いが、しかし、実際にあの映画で出てくる鮫が現実にいたらこんな感じなのだろうと思われる。そんな鮫に今襲われているのはかなり恐いだろう。実際、数時間前にお漏らし耐性を手に入れていなかったら提督はこの場で漏らしていただろう。

 

 

「ええい……・!!とにかく逃げましょう!川内達にも連絡を――――那珂ちゃん?」

 

 

窓から見ると、川内と神通の姿は確認できたが、那珂がいない。まさか!と嫌な予感が提督の頭を過ぎった時であった。

 

 

 

『―――――――――――!!!!』

 

 

巨大鮫の方から突然の爆発音。相当の激痛だったのか堪らず暴れだす鮫。鮫の方を提督は思わず見ると、鮫の大きな背びれに掴みながら主砲を構えている那珂の姿が見えた。

 

 

「ごめんね~。魚は那珂ちゃんのファンクラブに入れないんだ。生まれ変わって出直してね。チャオ♪」

 

 

そう言って、鮫の頭に向けて弾を撃ち込む。基は軍艦用のだ、ジョー●だろうがM●Gだろうが耐えられるはずもなく、頭の半分が吹き飛ぶ。そして止めに鮫の背を蹴って離れる間際に魚雷を口の中に投げ入れた。跳んだ那珂がそのまま姉たちのもとに着地すると同時に鮫は爆発四散。当たり一面に鮫の巨大な亡骸と飛び散った肉片、そして大量の血が海を染める。

 

 

「ただいま~。」

 

「おかえりなさい、那珂ちゃん。……・怪我はない?」

 

「おかえり。しかし、こんなでかい鮫見たの初めてで一瞬呆気に取られたよ。私もまだまだだね~……。」

 

 

姉妹仲良く談笑する三人。それに近づく旗艦から提督が甲板に姿を見せる。

 

 

「お~い!大丈夫ですか~!!」

 

「那珂ちゃん、余裕だったけど~、服に鮫の血が掛かって臭うからシャワーと洗濯機かして!!」

 

「良いですけど、それなら早く艦に乗り込んで下さい!血の匂いで他の鮫が寄ってきますから早く此処から離れますよ。」

 

 

艦を側まで寄せ、梯子を下ろす。川内と神通にも乗るかどうか聞いたら、艦の護衛しなきゃいけないから良いという答えが返ってきたので鮫の血で汚れている那珂だけ艦に入る。

 

 

「だが、よく一人で勝てましたね。」

 

「いや、提督さあ……。私達、海の勢力圏カーストぶっちぎりのトップに立っている奴らと戦うのがお仕事なのに、デカイだけの魚に今更遅れを取るわけ無いじゃん。」

 

「……そう言われればそうですね。」

 

 

よくよく考えたら、あれは対峙する側はほぼ一般人だから脅威に感じるわけで、一般人ではなくスーパーマンの類だったら只の出落ち要因でしか無いのだ。改めて艦娘の強さを再認識する提督であった。

 

 

「しかし、人の手から離れた海がこうまで変わっているとは……。普通の生活してた時は知りませんでした。」

 

「深海棲艦達が現れてからは海上調査も禄に出来なそうだからね~。提督、服乾くまで替えのもの貸して~。」

 

「男物ですけど、構わないならどうぞ好きに使って下さい。」

 

 

提督の許可を貰い中に入ろうとする。しかし、先程爆殺した鮫の亡骸の方からバシャバシャと水が激しく打たれる音が聞こえそちらの方に視線を向け、提督も釣られてそちらを見る。

 

 

「もう他の鮫が寄ってきましたか。」

 

 

風と波の音に混じって肉が食いちぎられる音が聞こえてきたので早く此処から離れたい提督、そして川内達。彼女たちも深海棲艦相手でないと何しに夜戦に来たのか分からないので早めに移動したかった。

 

 

「ほら、早く離れないと寄ってきた鮫がこっちに―――――」

 

 

その時、初めて提督は鮫に食らいつく者達を見て、表情が固まる。そんな提督を見て何だろうと思い三人もそっちの方を見て固まった。

 

巨大サメに食らいつく鮫――――ではない。好き好んで捕食シーンなど見るものではないのでちらっと見ただけで済ませたが、よく見ると死骸に群がっているのは鮫ではなかった。鮫にしては小さく、鱗が煌めいていた。

 

 

「……あれサンマか……!?」

 

「サバと鰯も混ざっていますね……」

 

 

鮫ではなく青魚の群れであった。普段鮫などから食われている奴らが今度は逆に食っている。肉を食いちぎる歯など何処にあるのか?と思うかも知れないがとにかく死骸に群がっていた。

 

獲物に群がるピラニアを連想させる魚達。魚は何でも食うとは言うが此処まで肉食めいた光景は生み出さないだろう、多分。

 

 

「わけがわからねえ!!わけが分からねえよ!!」

 

 

巨大サメの直ぐ次がピラニアめいた青魚の群れ。数日前までは只の一般ピーポーだった提督はとうとうSAN値が大幅に減って一時的狂気に陥ってしまう。

 

 

「ああ、提督があんまりな光景に混乱しちゃいました!!」

 

「いや、無理ないでしょ。那珂ちゃんだっていまいち実感がわかない。」

 

「早く提督を此処から離すよ、皆!!急いで!」

 

 

そんな提督を彼女たちはさっさと艦内に押し込めてさっそうと離脱した。

……去り際に、提督は魚たちが「恐いか人間どもよ!!」という幻聴が聞こえた。

 

 

 

===========================

 

 

あれから暫く―――と言っても10数分程

現在時刻は〈AM 1:00〉を過ぎようとしていた。

 

あの後、駆逐イ級2隻に遭遇するも直ぐに撃沈。その時のことを、川内は「まさか深海共見てホッとするとは思わなかった……。」と後日遠い目で語ったがそれは置いておく。

 

巨大サメにその鮫に群がる魚……鮫に群がる魚?……まあ、いい。とにかくそんな今までの常識が2連続で壊されたのだ。只でさえメンタルクソ雑魚ナメクジなのに……心の負担は相当なものだろう。

 

艦内の提督の椅子に俯いて座っている提督を見て、「もう、今夜は帰ろうか。」と夜戦の中断を提案した、川内が。あの川内が。

 

 

 

「……さ……い」

 

「え?何か言いましたか、提督?」

 

 

心配する神通だったが、その提督がブツブツなにか言っていたので思わず聞き返した。すると、提督は彼女の心配を他所に立ち上がり、顔をキッと険しくしながら叫びだす。

 

 

 

「許さないぞ……絶対に許さないぞ―――――深海棲艦共!!!」

 

「ええ~……。」

 

 

 

自分達の提督が突然責任転換し始めて困惑する神通であったが、提督は構わず叫び続ける。

 

 

「巨大なサメが出て来たのも、ピラニアじみた魚たちも、全部深海共のせいだ!」

 

「いや~、どうですかね~……?」

 

「そして私が寝不足なのも、給料が低いのも何もかも全部深海共のせいだーーー!!」

 

「いや、それは完全な言いがかり「そうだよ提督!全部あいつらのせいだよ!!」姉さん!?」

 

 

流石にそれはちょっと……と思い止めようとする神通。しかし、拾の姉が便乗してきたせいでそれが出来ない。

 

 

「深海棲艦ぜってえ許さねえ……!よおし……これから索敵&殲滅に入りますよ皆さん!!―――安全第一で!!」

 

「(あ、根っこは変わらず小心者で安心しました……。)」

 

 

「許さねえ。深海棲艦ぜってえ許さねえー!」と言って夜戦の続行を決めた提督は、軽い夜食づくりに入る。勿論、妖精さん達の分もだ。その後を「ゆるさねー、ゆるさねー」と言って川内が手伝いに行く。実は三姉妹どころか現在鎮守府に要る艦娘の中では一番料理が上手い。大本宮もそう言っている。

 

「え~……何、これ、どうしたら良いの?」と途方にくれ始めた神通は那珂の方に助けを求める。が、その那珂は首を横にしてお手上げポーズで匙を投げていた。

 

 

「那珂ちゃんが思うに提督はさ~、もう深海棲艦が全ての元凶だと思わないと心を保てないんだと思うよ。だって、那珂ちゃんも鮫までは耐えれたけど、肉食お魚さんたちにはこう、まいったね、本当……。まあ、お日様が昇る頃には頭も心も大分落ち着くと思うから神通姉さんも乗ってあげたら良いんじゃない?」

 

 

「あれを……?」

 

「あれを。」

 

 

あれと指差した方には「許さねえ、殲滅だー!」と言いながら鮮やかな手さばきで軽めの一品を色々作っている。そして川内は「ゆるさねーゆるさねー」とちょっと笑いながら夜食に丁度いいおにぎりを握っていた。

 

 

「じゃ、那珂ちゃんはシャワー浴びてくるから姉さん後はよろしく~。」

 

「え、待って那珂ちゃん!」

 

 

一人にしないでと言おうとするもそれを言い切る前にさっさとシャワー室に入っていく妹を、捨てられた子犬のように見送る神通であったが、急にゾクッと背筋が冷たくなる。誰?と思いその悪寒の基を辿ると姉の川内であった。川内が提督が見える角度では可愛い表情で、しかし神通からすれば笑顔は笑顔なのだがこちらを見る目が全く笑っていない。そんな姉は神通の方に顔を向けると、口パクで何かを神通に伝える。

 

 

 

『お ま え も や れ 』

 

 

……あれを?やれって?いや~自分そんなキャラじゃあ無いですしお寿司と思い苦笑いしながら首を横にフル。が、姉は許してくれない。さっさとやれと甲板の方を指差す。

次女も所詮長女からしたら妹。姉の言うことには逆らえないのだ。古事記にも書いてある。

 

数秒間、ううっと呻きながらもしかし最後は諦めが着いたのか、若干顔を赤らめながらトボトボと艦から出ていき甲板の上に立って叫んだ。

 

 

 

「ゆ、ゆぐさねえ!!深海棲艦絶対ゆぐさねえ!!」

 

 

――――――めっちゃ恥ずかしかったそうだ。




海なら鮫出さなきゃと思った。ピラニアは……知りません。
そして三日目はほぼ夜戦で終わると思いますのでメインで出るのは川内三姉妹だと思います。
(筆が滑ったら知らん。)


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三日目 その2

ある日の我が艦隊の演習で

相手ビスマルク(単艦ケッコンカリ済みLV130超え)「(;^ω^)」
ワイ「すまんな。そして経験値ありがとな(*´ω`*)」


ハイパー北上様「([∩∩])<死にたいようだな」


演習で勝ちたきゃ、北上様入れとけば意外とどうとでもなるよね!


〈AM1:30〉

 

深海棲艦ぜってえ許さねえ……。

巨大サメに襲われたり、青魚がピラニアになっていたり、寝不足だったりエトセトラエトセトラ……。

ともかくその元凶は全て深海棲艦達のせいだったのです。

提督としての使命に目覚めた私は彼女たちと共に彼奴らを殲滅するのです。――――安全第一に!ぶっちゃけ、怒りはあるが自分と彼女たちの命を掛けてまでやる気は無い、一切ないです!全ては、私の精神安定の為に……。

 

一先ず、軽い夜食を皆で食べて腹ごしらえ(腹4分目位。これ以上は作戦が終わってからにしないとキツイ。)を終えたので腹ごなしに軽く夜戦したいですね。……じゃないと何しに来たのかわからなくなる。

 

 

〈AM1:50〉

 

進行途中で大型の何かにぶつけられる。

何だと思い確認してもらうと「ジンベイザメ」でした。今の世界最大の鮫です。……さっきの鮫の方がデカかったな。

鮫と言われると凶暴なイメージを想像するでしょうが、実際人を積極的に襲う危険な鮫は存在が確認されている全種類の鮫でも極一部です。そしてジンベイザメは鮫の中でも温厚で、ダイバーたちが近くで一緒に泳ぐ映像が結構あるのがその証拠でしょう。ただ、その巨体にぶつかるだけで大怪我で済んだら御の字、下手しなくても死ぬので不用意に近づいたり刺激を与えはいけません。あと、温厚と書きましたがどちらかと言うと臆病な正確なので艦にぶつかるやいなや艦からはなれていきました。いや~しかし珍しいものを見れ……そうでもないか。さっきの鮫の方が凄かった(小並感)。

 

 

〈AM 2:00〉

 

また艦にぶつかる音が。しかも今度は複数。何だと思い確認してもらうとネズミザメ(別名モウカザメ)と呼ばれる鮫でした。―――また鮫か。

というか、生息域がバラバラなんですが此処の海域だけ色々な鮫がいるのは何でなんでしょうか?―――いや、考えるまでもなかったですね。この海域は既に十中八九深海棲艦達が作り上げた鮫の楽園なんでしょう(お目々グルグル)。

――――彼、彼女らはサメ好きなのでしょうか?サメ映画でも渡したら大人しくなりませんかね?……・無理か……。

あと、ネズミザメて名前ですけど体長は三㍍超えるものが出るくらいには大きいので名前詐欺ですね~。ですが完全な名前詐欺というわけでもなく、目と鼻が鼠に似ている?……言われて見ればそうかもと思うかも知れませんが、言われなきゃ分かんねえわ、これ。

乗っている艦は対深海棲艦の攻撃に余裕で耐えられる装甲なので、幾らサメたちがぶつけてこようが噛みつこうが無駄無駄無駄なのでほっといて先に進みましょう。―――船などの自分よりも大きいものに攻撃してくるのか?と疑問に思いましたが、鯖がジョーズの肉に群がるんだ別におかしくないでしょう。

 

 

〈AM 2:15〉

 

いい加減敵艦の1つ2つ会っても良くない?と思いながら走行していると甲板に何かが叩きつけられた様なベチ―んという大きな音が聞こえました。何でしょうか?まさか敵艦の流れ弾が?と思い、扉を少しだけ開けて恐る恐る見ると(顔は出さないこと。下手すれば出した瞬間ズドンだから状況がわかるまで出すなと妖精さんに警告されました。)、自分よりも大きな生物が甲板をベチンベチンと跳ねていました。――――はい、鮫です。またか。

細長くて綺麗―――アオザメと言われる鮫で、そのシャープな体型のおかげで鮫の中で一番速く泳ぐことが出来る他、水面から飛び出して大きくジャンプする特徴があると言われています。

だからといって甲板に乗ってくるのは可怪しい話ですが、もっとおかしな話を体験したのですから別におかしな話では無いですね!

 

ですが、アオザメは人を襲う危険な鮫の一つ。このまま居座られると外に出られません。まあ、陸に上がってしまったら放っとけば死んじゃうのがエラ呼吸種族の悲しい所。

……でも、鮫は体の成分に尿素を多く含んでいるためか臭いのに、死んでから時間が立てば更に匂いがひどくなってしまう。かといって死んだと思っていたら実はまだ生きていましたガブリは恐い。出来ればさっさと絞めて処理したい、が恐いものは恐い。さあ、どうしようか?と鮫から一定の距離を意識しながら鮫に近づき―――そして私は後悔しました。

 

ちゃんと距離は取ったつもりでした。しかし、実際は足らなかった、いやそもそも艦の中から出るべきではありませんでした。それに気づいたのは全て終わった後でした。

 

ビターンとアオザメが最後の悪あがきに飛び上がったのです。もう、此処の海に住む物たちに常識を当てはめていては命が足りませんね。ですが、私はついさっきあんなことやこんなことを経験したばかり。十分距離は取ってある……つもりでした。

 

上の方から声が聞こえ、思わずそっちの方を見ると、その声の主は川内でした。

どうやら彼女はアオザメが出てきてから急いでこっちにこっちに来ていたようですが、サメの最後の抵抗に対し思いっきり水上を蹴って飛んできたそうで。

 

「提督!!危ないー!!」と言いながら鮫に全体重―――普通の人が持とうとするだけでギックリ腰しそうな重さの艦装の重量を載せたジャンピングスタンピング。鮫は爆発四散。臓物やら色々なものが飛び散りながら――――私が着ていた真っ白い提督の上着を真っ赤に染め上げました。

 

「提督!!大丈夫――――。」と彼女は私を見て言葉を途中で切ると冷やさせをダラダラ流し始めました。そして気まずそうに「あ〰、提督……ごめんね?」と謝る彼女でしたが、私の身を案じた行動だと分かっていますので感謝はすれど怒ってはいないです。というより、此処で怒って本当に危ない時に躊躇わられたら今度こそ死んでしまいます。

問題なのは、この上着普段着……使おうと思えば使えますが気分下がりそうですが、人前には使えそうにありません。

流石にしみ抜きするには骨が折れるどころではない。漂白剤でどれだけ落ちるでしょうか?

 

 

〈AM2:20〉

 

また鮫です。ヨゴレといわれている種類の――――

 

 

〈AM2:21〉

 

イタチザメです。危険な鮫で有名な―――

 

 

〈AM2:25〉

 

ニタリです。尾が長いのでオナガザメ科の――――

 

 

〈AM2:27〉

 

メガマウスです。――――メガマウス!?超激レアじゃ――――

 

 

 

【以下似たような話が続く】

 

 

 

 

――――

 

――――――

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

時刻は〈AM2:40〉 場所:艦内

 

 

「川内。私提督やめてフカヒレで食っていこうと思うんだ。」

 

「何 い っ て ん の ? ? ?」

 

 

「お父さん明日からユーチューバ」みたいに言われてもそりゃあ困るでしょうよ……。

あの後―――川内がやらかした後。本当に怒っていない提督であったが、当の川内は申し訳なく思っていたのか何か詫びをしたかった。此処で断って拗れるよりも何かしてもらった方が良いと考えた提督は先程川内がトドメを指したアオザメの下処理の手伝いを頼んだ。

 

「え?食べるの?」と聞く川内であったが、それに対して提督は「鮫は寄生虫、匂い、厚い皮等を適切に処理すれば美味しい」と返答した。なので頭と内臓を取り除き、適当な大きさに切断した物を艦内に持ち込んで、これらの下処理を二人で行った。その間残りの二人は艦の護衛についてもらっていた……のだが、肝心の敵艦は出ず、代わりに艦のモニターに出てくるのは鮫ばかり。

 

 

―――一体此処に何しに来たのか?

 

――――サメの間引きするために提督になったのか?

 

――――あと眠い。凄く眠い。

 

――――そもそもこれ艦これの二次創作と言って良いのか?ジャンルを艦これからその他にすべきなのでは?

 

 

とにかく何かもう提督は限界だった。ただでさえ一般人以下のメンタルしかないのにジョーズやらそれに群がるピラニアもどきな青魚群。そして鮫、鮫、サメサメサメサメ……。最初に戦った深海棲艦との戦いのほうがやりがいがあった。漏らしたけど。

 

 

「いや~……。日時と場所がハードラックでダンスっちまっただけだから。ほら、初日で出撃した夜戦の時は敵艦とドンパチ結構やってたじゃん?あれが本来の夜戦だから。鮫とか訳がわからないのと戦うわけじゃあないからね?」

 

「じゃあ、今日のは何なんですか?」

 

「さあ~……。あたしが聞きたいかな~。」

 

 

艦娘たちは戦時中、自分たちが軍艦だった頃の記憶?が微かに残っている。なので同じ娘がいて、姿は似ていても性格や纏う雰囲気等は違うし個々の人格がある。が、軍艦の頃の記憶は共通してある。その記憶+自分達の提督とともに深海棲艦と戦うという新たな使命を持った彼女たちが艦娘なのだ。

 

―――――そして、川内は昔の頃の記憶を幾らたどっても、鮫と死闘を繰り広げた記憶など一切なかった。此処何十年の内に海に一体何があったのだろうか?

 

 

「ほら、提督元気だして。今日頑張ってくれたら抱き枕代わりにしていいからさ~―――神通を。」

 

『姉さん!!?』

 

 

少しでも元気づけようと妹を差し出す長女。妹は姉のおもちゃ。古事記にも書いてある。

通信機越しに姉に勝手に売られた次女は当然驚く。彼女自身はメンタルクソザコ小心者だが真面目で誠実?かどうかは知らないが出来るだけ自分の所の艦娘の為に出来ることはやろうと、実際こうして夜の海に着いて来てくれた提督の事を好ましく思っている。が、男女間での好きではない。LOVEではなくLIKEである。

出会ってまだ一日も経っていないのにLOVEになる方が一目惚れでもない限りおかしいのである。

 

 

「それより低反発枕の方が欲しいです……。」

 

『提督にとって私は枕以下なんですか!!?』

 

 

が、あっさり断られるとそれはそれとして女のプライドが傷つく。乙女心というのは複雑なのだ。

 

しかし、これはこれで困ったと川内は思った。

着いてから3日しか経ってないが、何やかんやで自分の都合に付き合ってくれる提督を川内は気に入り始めている、というより意外とノリが良いことと艦娘の事を優先的に考えてくれる人物だと最初の日に分かってから既に気に入っている。

なので、願うならこの先も長い付き合いを望んでいるのに、まだ3日なのに潰すなど言語道断。それくらいならもう帰って休んでもらった方がマシであると、あの三度の飯より夜戦が大好きな川内は考えていた。

……最も、それ言うなら最初から連れてくるなという話しなのだが。

 

フォローさせてもらうなら、深海棲艦だけだったら大丈夫であった。メンタルクソ雑魚でも目の前の彼は提督。彼奴らと戦う覚悟くらいは出来て……漏らした分位は出来た。少なくとも、途中で投げ出すような事はしないだろう、多分。

 

問題なのはそれ以外―――まあ殆ど鮫なんだが。肝心の敵は出ないかわりに鮫やら肉食青魚ばかり襲ってくる。一体何のために提督になったのか分からなくなってきたのだ。

 

 

「(せめて、何か私達に関係があるものがやってきてくれたらやる気出ると思うんだけど……。)」

 

 

もうこの際駆逐級一隻でも良いから来てくんないかな~なんて不謹慎な事を川内が考え始めていた時、通信機から連絡が入る。連絡してきたのは那珂で、内容は「前方からこっちに何か来ている」というものであった。

 

願いが通じたのかと思い、川内は戦闘準備を始める。その際にチラッと提督を見ると先程まで処理し終わったものを急いで冷蔵庫に入れて提督用の椅子に座りなおす。どうやら提督としてのやる気が少し戻ったようだ。ただ、また鮫だったらもう今日は立ち直れないかもしれない。なので鮫だったらもう今日は帰ろう、そう思って艦から出ようとしたが、それを妖精さんが止める。

 

一体何なのだ?と思い川内は彼らを見ると、彼らは一斉に通信装置の方を指差した。見るとランプが点滅している。

――――どうやら今此方に来ている相手は少なくとも鮫でないらしい。だって鮫には通信機を使って会話を試みる手段はないからだ。

 

 

 

 

 

……なんでこんな当たり前の事説明してるんだろう。そりゃあ、最近の鮫は空飛んだり首はやしたり何でもありだが通信機使って喋ってくる鮫などいないのだ。近い内に出るかもしれんが少なくとも今の我々はそんな鮫など知らん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に言わせてもらえば、この通信機を使って連絡を取り合うのは彼女たちと同じ側にいる存在―――別の鎮守府の提督だ。

自分以外の提督と話せば、彼も少しは元気出るだろうと思い、通信の許可を進言。直ぐにOKの言葉帰ってきたので通信を開始する。

 

 

 

『【ジ――、ジ、ジジジジ―――】あ!あ~、そこの船に乗っているやつ聞こえるか~?』

 

 

最初の方で少しノイズがはしった後に聞こえてきたのは男の声。しかも渋い。間違いなく此処の提督より年は上だ。

 

 

「此方【――――】!聞こえてます。失礼ですが、貴方の所属とお名前を教えていただいても宜しいでしょうか?」

 

『此方は【――――】。【―――(※クソザコ提督が勤務している所からそう離れていない所)】鎮守府所属、一緒にいる艦娘は叢雲一人。あと、俺のことは『サタデー』と呼んでくれ。』

 

「は……?」

 

『見れば察する。というより、お前新人だな。本名で名乗ってもこっちの世界では覚えてもらえんぞ?早い内にボケ始めた上の奴らにも印象に残りやすい二つ名でも考えとけ。苦労するぞ。』

 

「わ、分かりました!」

 

『それより、少し話をしたいからそっちに行っても大丈夫か?駄目なら、回れ右するが―――「超大丈夫です!」―――お、おう。何かあったか知らんがそれならそっち行くわ。』

 

 

着いてから初めて出会う先輩提督なのもあるが、とにかく今は人恋しいクソザコ提督はサタデー提督が少し引くくらい嬉々として歓迎の意思を示した。

これがクソ雑魚提督が着任して初めて自分以外の提督との出会いであった。




長くなりそうなので、中途半端ですが切ります。


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三日目 その3

我が艦隊の華々しい戦果


一ヶ月前
ワイ「(゚∀゚)7-3で海外艦が手に入るチャンスやって!よし、足柄、羽黒おめえらの出番だ!!」

現在
ワイ「(´・ω・`)80周回以上回ったのに、海外艦一人だけしか手に入らなかったンゴ……。」


代わりに海防艦がぽこじゃか出たけど、そうじゃない。結局、この手のゲームに限らず最強の敵は物欲センサー何だな……。


――――――――――――――――――

 

――――――――

 

――――――――

 

 

 

「よお。俺がサタデーだ。宜しくな新人。」

 

 

そして待つこと数分。クソ雑魚提督が乗っている艦よりも年季が入った旗艦の甲板に先輩ことサタデー提督が姿を表した。

 

 

「……ああ、成程。サタデーですね……うん。」

 

 

サタデー提督の姿は高い身長にガッチリした体格。(そう言えば描写が一切無かった)クソ雑魚提督も結構高めの身長に、元料理関係の仕事についていた事もあり中々鍛えられた体をしているがそれを一回り大きくした、まさに戦う男のマッスルだった。

 

だが、それよりも気になるのは頭―――何とアフロなのだ。ただのアフロではない。五歳児位の子供なら余裕で埋もれる位のご立派なアフロだ。ああ!そのアフロにサタデー提督は手をツッコミ何かを取り出した。―――帽子だ。提督の帽子だ。と言っても、流石に入らないのか帽子ではなくサンバイザーに改造されているが……何で漫画みたいな取り出し方してるんだろう?

 

気になるところはアフロだけではない。提督が着る真っ白い軍服だが、それも改造されていて胸元が大きくはだけているし、一応軍服の面影はあるがほぼ見た目はスーツ―――サラリーマンが着ているようなものではなく、夜の街で見られる様なスーツだ。

 

 

 

「夜のディスコなんかのステージでフィーバーしてそうな姿ですね……。」

 

「本当は、もっと分かりやすい『アフロ』とかにしようとしてたんだがな。相棒に止められて……」

 

「当たり前でしょう!あんたは良くても私達は『アフロ』の艦娘とか言われるのよ。恥ずかしいわ!」

 

 

サタデー提督の不満そうな言葉に彼の横にいる艦娘―――叢雲(ツンデレぽい見た目している。あと、ウサギ耳を連想させるものが頭についている)が怒る。そんなにアフロが嫌なのだろうか?……うん、嫌だ。

 

 

「それで、そこの新人提督!」

 

「さ、サー!イエスサー!」

 

「普通にやりなさい、普通に!あと、相手が女ならサーじゃなくてマム!!……で?何であんたは提督用の軍服着ずにそんな私服なわけ?」

 

「ズボンは小便漏らして今乾燥中であります!!」

 

 

今日の出来事で少しはメンタルがつよくなったのか、それとも心が荒んで捻くれたのか。どっちでも構わんが今の彼には小便漏らしたことなど、オスのサメの生殖器が2つあるとか位どうでも良いことなのだ。

そもそも、今現在体験している海の生態系に比べれば、小便漏らしたことくらい何だというのだ。糞漏らさなかっただけでも褒めろよ!……は流石に言いすぎだろうが、今の現状は彼が開き直らせるには十分すぎた。

 

 

「……初陣?」

 

「戦場についてきたのは初めてです。」

 

「そ。ならしょうがないか。」

 

 

あら?意外とあっさり話を終わらせてくれたぞ。もっと根掘り葉掘り聞かれるか、笑われるかと思っていたのに拍子抜けである。

 

 

「別に戦場で漏らす位で笑わないわよ。―――ま、実戦についてくる度胸は褒めてあげるわ。」

 

「(やだぁ……。凄く淑女だ……)」

 

 

彼は優しさに飢えていた。それはまさしくちょっと優しくされるだけで落ちるチョロインそのものであった。

 

といっても、パーティーメンバー:提督(巻き添え一号)、夜戦馬鹿(胃痛1)、シグルイ(胃痛2)、バラドル(巻き添え二号)。さっさとルイー●の酒場でメンバー入れ替えをしたくなるような面子だから少しは分かる。

 

そんな男の心情は放っておいて、その淑女である叢雲は新人提督をジロジロ見てくる。

 

 

「でもそれならせめて上だけでも着ときなさい。今のあなたは……こいつ(サタデー提督)よりはましだけど、提督に見えないわ。」

 

 

叢雲から見たクソ雑魚提督の姿は、顔はそこそこ整っている。少なくとも、相手がよっぽど特殊性癖持ちでなければ第一印象で悪く思われることは無いだろう。そして、体格だが元民間人にしては結構鍛えられている(※料理人は体力勝負なのだ。)ところもプラス点だ。

 

ただ、提督だと証明するものを一切身につけていないせいで――――頭は帽子でなくバンダナ、上は黒のタンクトップ(※サメの解体&処理のため)、下はジーパン、そして真っ赤なエプロン。提督というより漁師……いや、この世情で単艦だと密猟者にしか見えなかった。

 

 

「上も汚れて洗濯中です。」

 

「あら?上も着られないくらい汚すなんて器用な―――」

 

「返り血で真っ赤かです。」

 

「何事!?」

 

 

下と比べて上が大惨事すぎる。もう帰ったら雑巾にして再利用するか、逆に完全に赤色に染めてそういった服として着るしか無いだろう。申請してから何日位して新しいやつがくるのでしょうか?と質問する雑魚提督に、「え~……。何?初陣で漏らした直後に直接自分で始末しに行ったの?最近の子こわいわね……」と勘違いを始める叢雲。

 

そんな二人を傍目に、サタデー提督は川内達に「……一先ず、どっちでもいいから中に入らないか?」と提案。

話が脱線しすぎてあれなので、彼女達は自分たちの提督が乗っている旗艦で話し合う事にしたのであった。

 

 

――――――――――

 

――――――――――

 

――――――――――

 

 

 

 

《場所:クソ雑魚提督旗艦》

 

 

一先ず誤解を解いて――――「それならそう言いなさいよ!びっくりしたじゃない!」と可愛く怒られた新人提督。

そんな彼は放っておいて、少し視点をサタデー提督に回してみようと思う。

 

 

サタデー提督が新人クソ雑魚提督の艦に入ると真っ先に思ったことは「(……え。俺の乗っているやつより快適じゃね?)」であった。

 

キッチン、「お風呂」て掛札が下がっているドア、広い茶の間。

自分のところ―――いや、普通の旗艦は簡易ベッドに、シャワー(※ジムとかで見れるコインシャワー位の狭さ)、後は4人ぐらいで囲んで話し合う位の大きさしか無いテーブルとパイプ椅子。

 

この格差に愕然とする一方、この構造を立案、実行した者―――十中八九そこの提督の所の明石だろうが。そいつに「思い切ったことをしたな」と感心した。

 

――――スペースが小さいのだ、操縦席や通信機などで本来だったら大分取っている場所が。

妖精さん達が動かすのに最低限のものしか取り付けていない。他の旗艦にはいざとなったら自分で動かす為の舵輪、逐一戦況報告&指示が出来る充実した通信設備、そして作戦立案&指示する為の大型モニター(※妖精さん製)等々。

それらが此処にはないor最低限のもの(※妖精さん達が扱うには十分だが、提督自身が指揮官として何かする為のものが無い。)しか取り付けてない。

 

全部が全部全く同じというわけではないにしろ、少なくとも此処まで艦娘と妖精さん頼み―――良く言えば信頼の証、悪く……ではなく率直に言ってしまえばただの丸投げだ。

 

「お前は大人しく椅子に座っとけ」と言われているようなもので、それは指揮官としての才能が無いと判断されたと同義。艦むす、妖精さんたちから舐められている―――――と、いうわけではない。

確かに指揮官としての仕事を新人提督に求めていないのは間違いないだろう。

だがしかし、この新人さんと艦娘達の関係が上手くいっていないかというとそれは違うように思える。

 

というのも、どうでもいいと思われてたらもっと適当にするはずだからだ。それどころか、もう改装工事などせず当初作られたものをまんま出せばいい。

 

艦内をみた時一番目についたのはキッチンだ。

自分の所なんて、カップ麺のお湯を沸かす用の小さいガスコンロしかないのに、此処にはご立派な料理ができる位には設備が整っている(※流石にレストランのキッチン程スペースは取っていないが……)。これから推測するに、新人君は料理好き、もしくは前職がコックだったのではないだろうか?どっちでも良いが、此処で重要なことは此処の設備はこの新人君のためだけに改装されたということだ。

 

他にも奥の方に見える風呂場。

 

 

「ほ~!中々良いんじゃないの~!」

 

 

と、サタデー提督は下手なリアクションしながらドアを少し開けて覗いてみる。

 

……予想していた浴槽より良かったんだが?ま、まあ良い。と自分の所と思わず比べて泣きそうになったが、これで確信できた。

この新人提督は艦娘たちから嫌われていない―――いや、寧ろ好かれているのだろう。まだ3日目だというのに良好な関係を築いているのがこれで分かった。

 

 

「(嫌いな相手のために、此処までそいつの事を考えて改装できるはずがねえし……。それに―――)」

 

 

チラッと、新人君と彼が連れている艦娘達―――川内三姉妹を見る。

 

 

 

「じゃあ、川内。私はサタデー提督と叢雲さんに出す茶請け準備するから、飲み物の方をお願い。」

 

「コーヒーで良い?」

 

「……そう言えば明石から良い豆貰っていたな。うん、じゃあコーヒーお願い。器具はそこの棚にあるから。」

 

「はーい。」

 

「提督~。那珂ちゃんもなにか手伝おうっか?」

 

「じゃあ、お客さん達の相手をお願い。あと、10分位で焼き上がるからそれまでね。」

 

「余裕、余裕!那珂ちゃんにまっかせて!」

 

「提督。私は何を?」

 

「……那珂ちゃんが滑ったりしたときのフォローをお願い(小声」

 

「クスッ。……はい、了解しました。」

 

 

 

―――3日だ。

着任してからまだ3日。しかし、新人提督とその艦娘達の関係は良好であった。

一年経ってもただの指揮官とその部下なドライな関係をしている提督も多々いる中でこれは素直に凄いと思えた。

 

 

「(同期の天才くんに比べれば、と上の奴らが比較対象に見てたが……。こいつはこいつで当たりかもしれんな……。)」

 

 

少なくとも、彼の艦娘たちから見れば十分当たりであろう。

 

 

「(少なくともこいつの艦娘達のモチベは十分で、それを維持できているのはこいつのおかげだ。―――よし、決めたぜ。こいつらにも俺達の今日の仕事を手伝って貰おう。)」

 

 

そう心のなかで決めたサタデー提督は、川内が飲み物を持ってくる間に、仕事を手伝ってもらった時の報酬をどうしようか考えることにしたのであった。――――勿論もし依頼を受けてくれたら、これからの期待分を込めて報酬に色を出すつもりである。

 

――――ただ、懸念すべきことは「話聞くだけで断られる可能性が十分にある」様な仕事内容だということであった。

……別に悪いことではない。寧ろ人々を海の脅威から守る大事な仕事内容には違いない。ただ、凄くしょうもないというか情けないというか、そんな仕事内容なのだが、それは後で分かることだろう。



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三日目 その4


これいる?な艦隊日記

一週間前

わい「ウォースパイト様良いな~。せや!大型建造や!」(※この時点でまだ大型建造3回。それも全部まゆるな貧乏+クソ運)

金剛改二「Hey、提督!大型建造だって?いつ行う?わーたしも同行するねー!」

わい「金剛院……!」※ウォー様建造したいなら金剛改二か改二丙を旗艦にする必要があるってWikiに書いてた。

明石「大型建造する時は云々―――」

わい「倍プッシュだあああ!!※資材20投入。」金剛「Come onねー!!」















武蔵「フッ、随分待たせたよだな……!大和型戦艦二番艦、武蔵いざ―――」

わい「待ってないよ。」※お高い紅茶を初めて淹れながら。

武蔵「え?」

金剛改二「オーマイガーねー!!」



いや、持ってないし。強いけど……。何だ、宝玉欲しいのに天鱗がでた時みたいなこの気持ちは。


「はい、コーヒ持ってきたよ!サタデー提督のはブラックで良かったんだよね?」

 

「おう。ありがとよ。」

 

 

席について5分もかからない内に、川内がコーヒーを入れて持ってくる。

 

面倒くさがりでズボラなサタデー提督がいつも飲んでいるのはお湯を入れて混ぜるだけで飲めるインスタントコーヒー。

しかも、少しお高い(一本700円。40杯分のやつ)のではなく、量が多いやつ(一本400円。200杯分)だ。

 

そんないつものんでいる物とは明らかに違う事が分かる香りの良さ―――絶対飲んだら美味いことが直感でわかる位に上等過ぎるものが出てきて「(俺、これ飲んでいつも飲んでるやつに戻れるかな?)」と考えてしまった。

 

 

「ブラックとか、苦いだけじゃない?」

 

 

横に座っている相棒の叢雲が無粋な事を言ってくる。

コーヒー本来の味を楽しむのに砂糖やミルクなど要らない。違いが分かる男は黙ってブラックで飲むものだ。安いやつばっかり飲んでるけど。

 

――――……ただ、コーヒーの本場であるブラジルや、ドイツを始めとした欧州諸国、というよりコーヒーをブラックで飲むのは日本含む限られた国なわけでして。それから言わせてもらえば砂糖等で味を調整して飲むのがコーヒーの本来の味なのではないだろうか?

 

昭和の刑事ドラマか何かに影響されているに違いない男、サタデー提督の変なこだわりにちょっと呆れている叢雲の視線を無視して先ず一口飲んでみる。

 

 

「………・苦くない?が、薄いわけでなくしっかりコーヒーの味がして美味い。」

 

 

口に少し含み、舌で転がすように味わうと、思ったとおり、しかし想像以上に美味いコーヒであった。

「新しくて良いコーヒー豆は苦くないんだよ。」とドヤ顔で語る川内であったが、豆だけではこの味は出ない。コーヒーを淹れた者の腕も十分素晴らしいことが分かる。ますます安いインスタントに戻れるか自信がなくなってきた。

 

この仕事終えたら少し値が張るコーヒーメイカー部屋に導入しようか?でもあれ掃除とか面倒くさくない?知らんけど。なんて事を考えていたら叢雲の分のコーヒーが出来たようだ。

 

 

「はい。カプチーノお待ち!自信作だよ!」

 

 

カプチーノか……。ふっ、まるで乙女だな。謎の大人目線でドヤるサタデー提督。

「○はコーヒーをブラックで飲める立派なレディよ!」と無理して飲んでそうな駆逐艦の子を想像したが、その子と同レベルな事をしている彼は30後半になっているのに子供の心を忘れていないようだ。……だからどうした?というしかないが。

どうせミルクの泡がぷわぷわしているだけなのにキャーとか可愛いとかインスタ映えるとか燥ぐのだろう。ふふっ、可愛いものだ。そう思い、横にいる叢雲に微笑ましい視線を向けると

 

 

「……叢雲。」

 

「何?」

 

「それは何だ?」

 

「はあ?知らないの?マキアートよ、マキアート!」

 

 

カプチーノの上に乗っかている泡で書かれた絵―――デフォルメされた叢雲の顔が書かれたマキアートが見えた。

 

 

「へえ~。よく作れたわね、これ。」「えへへ。うまいっしょ?」などと女子会を始める二人。肩身が狭くなるアフロのおっさん。

 

 

 

 

 

 

「は~いはいはい!那珂ちゃんにも頂戴!」

 

「川内姉さん、私も……。」

 

「そういうと思って用意しているよ。」

 

 

前の席で那珂と神通にカプチーノ―――それぞれにデフォルメされた似顔絵が描かれているものが出される。そして更に賑やかになる女子会。ますます肩身が狭くなるおっさん。

 

―――自分のコーヒを見る。そこには黒しか無かった。

―――叢雲のカプチーノを見る。お客人に味だけでなく目でも楽しませる一手間が掛かっている。

 

……良いなー……と、羨ましくなったが、このおっさんはクソ雑魚提督とは違って旗艦に乗って、砲弾が飛び交う戦場で冷静に指揮が出来る度胸は持っているが、わいわいと賑やかな女子会に入れる勇気は持っていない。勿論、女子の溜り場になっているカフェとかで一人で入ってパフェを頼むなど無理である。(逆に、クソザコ提督なら平気どころか女子会トークに参加できるが)

今更「やっぱ俺もそっちにして」など言えるはずがない。

 

 

 

「なに?ひょっとして、あんたもこれが欲しいの~?」

 

 

ニヤニヤして自分の似顔絵が描かれたマキアートを見せつけてくる叢雲にイラッとして、「馬鹿野郎。そんな子供の飲み物飲んだら胸焼けするわ」と素っ気なく返すが内心は欲しい、すっごく欲しいサタデー提督はクソ雑魚提督が戻ってくるまで、直ぐ近くで女子会ワイワイの中で肩身の狭いまま、ブラックコーヒーをチビチビ飲むのであった。

 

 

――――――――――

 

―――――――――

 

――――――――――

 

 

【女子会始まってから10分後】

 

 

「お待たせしました。アップルパイです。」

 

 

おっさんが肩身を狭くしてから約10分程。クソ雑魚提督が焼き上がったばかりのアップルパイを持ってくる。これを見て目を輝かせる女性たち。一方、さっきまで肩身が狭かったおっさんはアップルパイを見て表情には出していないが心のなかでは少し落胆した。

 

というのも、このおっさん洋菓子はそんなに好きではない。こう書くと甘いもの全般苦手と思われるがそうでなく、洋菓子などの甘ったるいものが苦手で、団子などの和菓子系は好きなのだ。

 

 

「(だが、新しく出来た後輩がせっかく作ってくれたんだ。手つけないなんて恥ずかしいこと出来ねえよな……)」

 

 

年長者としてのプライドが突っぱねるという事を許さなかったサタデー提督は、クソザコ提督が二口サイズ位に切り分けたものを掴み、「あ、やっぱ無理」と思ったら直ぐにコーヒーで流せるように構えながらパクっと一口――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………うっま!」

 

 

身構えていたのが直ぐにアホらしく思えた。それくらい美味かった。

 

まず、予想していたあまったるい砂糖の味が来るものだと思っていたが、実際に来たのはリンゴの爽やかな甘味……まあ、食レポ書いて話脱線するのもどうかと思うので詳細は省くが、とにもかくにも甘いものが苦手な人でも積極的に食べたくなるような美味さであった。間違いなく、ケーキ屋さんで売っているやつより、いやお高いレストランで最期に出されるデザートよりも絶対美味いとサタデー提督は確信している。

 

 

「(それに……)」

 

「これあんたが作ったの!!凄く美味しい!!」

 

「それね~、生地の方に※※※を練り込んでリンゴは△△△で~。」

 

チラッと見ると、クソザコ提督が女子たちの間へ―――そう、同じ男であるサタデー提督と違って難なく、どころかは女子会の中心にいた。

 

 

「(艦娘の貞操感は自分の所の提督以外の異性に対しては昔でいう大和撫子以上に厳しい筈。下心があって近づくものに容赦しない筈なら、こいつは――――)」

 

 

 

「―――生クリームにこれを加えて、こうすれば……ほら。カプチーノの泡が立体的に固まって。これを形を整えて、チョコパウダーをかけて、チョチョイのちょいっとすれば……。」

 

「うわ、すっご!!サタデー提督の立体マキアートじゃん!!?」

 

「アフロ部分があいつのと完璧じゃない!!やばいわよ!!?」

 

 

 

 

間違いない。こいつ、男なのに女子力がこの場にいる誰よりも高い!!糞!!自分の所の艦娘と仲良くしているのに嫉妬さえわかないわけだよ!!だってこの新人提督の今の雰囲気、女子会の中にいる女子だもん。見た目むさいのに、誰よりも女子力持っているもん。

 

それが分かったサタデー提督はこのままでは更に肩身が狭くなることを察したのか話を切り出す。

 

 

「あ、サタデー提督。これ、お土産用のアップルパイです。オーブン200℃で40分程焼けば出来ますので。皆で後で食べてください。」

 

「お気遣いレベルが良妻賢母!!!???」

 

 

くそっ!強敵だ!素人と思って油断していた。このままでは女子会をズルズルやって、そのままお開きで終わりになりかねない。流石にそれでは何しに来たのか分からないので「あーーー!ゴホンゴホン!!仕事の話をしても良いか?」と話を無理やり切り上げた。(尚、サタデー提督の為に何か簡単なお菓子のレシピを教えて貰いたかった叢雲は凄く不機嫌であった。)

 

 

*********************************

 

 

さてさて、ちょっとした女子会が終わってホッとしたおっさんが早速本題について話を始めた。

 

 

「あー、お前たちにちょっと手伝って貰いたい仕事がある。勿論、報酬は出す。そうだな~……」

 

 

ふと、自分が駆け出しだった頃を思い出した。重巡の建造に成功して浮かれて出撃した際、その時までは接敵した事がなかった敵艦に出会い―――開幕爆撃を食らって大破撤退した思い出。

 

 

「『空母』の艦装をお前に譲ろう。この先戦闘機飛ばせる味方がいるのといないとでは難易度がダンチだぞ。」

 

「え?良いんですか?」

 

「俺らの所の空母は『飛龍』で間に合っているから良いんだよ。」

 

 

※『飛龍』を手に入れるのに資材を大量投入したのに出なくて、仕方なく出撃したらドロップであっさり出てもやもやした人。僕と握手!!

 

 

「まあ、最もそれも俺からの依頼を受けてくれたらの話だがな。」

 

 

断るには魅力過ぎる提案だ。実際問題、昨日のクソザコ提督の建造……はまあ文句はない結果だったが、装備開発の方はクソだった。(原因の一つは一人の艦娘のせいだが)そんなクソ運で果たして欲しい艦娘―――しかも空母だ。正規空母レベルとなると戦艦と同じくらいの資材を投入する必要があることから、まだまだ駆け出しで資材が乏しい中で数撃ちゃ当たる戦法など取れようはずもなく。

 

 

「……受けましょう。」

 

「その言葉を聞きたかった。」

 

 

断るという選択肢は、クソザコ提督には既になかった。

 

 

 

「受ける前に聞くべきでしたが、仕事って何をすれば良いんでしょうか?」

 

「そうだな……。少なくともお天様に顔向けできなくなる様な後ろめたい仕事では無いことは誓っておこう。そして仕事の難しさも其処までではない。――――ただ、海の平穏を守るための大事な仕事だ。手を抜くことも、慢心することも許さん。」

 

 

そういったサタデー提督の雰囲気は正しく歴戦の戦士の風格があった。先程まで、女子高生に人気の喫茶店のカウンター席で気まずそうに一人で食事を取っている中年サラリーマンの様な哀愁を漂わせていた人物とは思えなかった。

 

 

「手を抜いたり慢心できるほどの実力も経験も無いです!」

 

「……色々言いたいが、兎にも角にも俺の言葉をしっかり受け止めたようだな。―――良いだろう!今から俺達は海の平穏と、そして毎日美味しい魚を下ろしてくれる漁師のおっちゃん達の飯の種を守るため、そして何より俺達提督としての職務を全うするために!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――いざ、往かん!サメ退治に(・・・・)!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませーん!明日のご飯の仕込みがあるので今日はもう帰ります!」「提督の手伝いするから、今日の夜戦は終わり!!閉廷!解散!!じゃあね!!」「あ!ドラマの予約忘れてたから、那珂ちゃん今日帰るね。」「サタデー提督……最後の締めにぶぶ漬けを用意しました。どうぞ。」

 

「君たち本当に出会ってから3日も経ってないの?嘘でしょ?」

 

 

深海棲艦達と戦う使命を持った提督とその艦娘たちが何が悲しくて鮫と弄れなければならぬのか?ちょっと前に散々鮫は堪能した4人はサタデー提督の要請に当然お断り。例え報酬が良くても引けないプライドというものがあったのだ。

 

 

「そんなに鮫を見たいなら近くのレンタルビデオ屋さんに行けば色んな鮫を見れますよ。」

 

「いや、俺パニック物だったら鮫よりゾンビ物の方が好きというか、サメ自体が好きじゃないんだよ。だから、今回来た上からの依頼だって本当は断りたかったが、断ったら断ったで後味悪くなりそうだったから仕方なくな……。そんな時にだ。こんな海の機嫌が悪い中夜戦に性を出している勤勉な新人君を発見してな……。

――――――そうだ、こ い つ 巻 き 込 ん で や ろ  と思ったわけだ。」

 

「F○ck!頼れる先輩だと思ったら中々いい性格してやがります……!!」

 

 

「付き合いきれるか!私は帰らせてもらう!」と死亡フラグみたいなセリフを言うクソ雑魚提督にアフロのおっさんが「おいおい。やるって言ったじゃないか?」と言って引き止める。凄くムカつく顔であった。

 

 

「鮫を始末するのが私達の仕事なんですか?」

 

「違うな。海の平穏を守るのが俺達の仕事だ。」

 

「現在進行系で海の平穏がレ○プされてますよ。守れていないじゃないですか。……私達行きませんからね。報酬とか無しで良いですから。とにかくもう鮫は一杯一杯なんですよ。」

 

「そうか……。それなら仕方がないな。」

 

 

おろ?鮫関連だとは知らなかったとはいえ受けた依頼を一方的に破ったのだ。「黙れ小僧!」と怒られる位は覚悟していたのだがあっさり引き下がって拍子抜けである。まあ、それならそれでこちらが助かるのだが。

 

 

「だが、頼れる先輩として一つ助言をさせて欲しい。」

 

「ちょっとまって下さい。その前に鎮守府にいる大淀さんに連絡しますから。」

 

 

流石に一切無視しての放置は後味が悪いので一応連絡をする。

後は海上警備隊か腕っぷしに自慢が有る漁師さん、そして鮫ハンターさん達などの専門家に放り投げよう。道中の護衛なら引き受けてもいい、というより深海棲艦からの脅威から船を守る護衛の仕事は提督たちの仕事なのだ。喜んで引き受けるつもりである。とにもかくにも鮫に直接関わり合いになりたくなかった。

 

 

「なあに。助言と言っても至極当たり前のことだ。―――依頼を受ける時は内容をちゃんと確認してからにしろ。」

 

「はい。今度からそうしま―――て、おっと!」

 

 

そうして通信機の受話器を取ろうとして――――船が突然大きく揺れ、落としてしまった。

波が激しくなったのか?いや、違う。これは何か大きな物体にぶつけられたかのような揺れであった。(尚、茶菓子とお茶は那珂ちゃんがしっかりキャッチして無事である。)

 

 

『提督!敵から攻撃を受けてます!!(※妖精さんのプラカード)』

 

「誰も気づけなかったんですか!?センサーは?」

 

 

急いでセンサーの確認をするも反応なし。なのに船の揺れは収まらない。一体どういうことだ?と困惑する提督に対し、一方のアフロは冷静であった。長年やってきた貫禄……というのも有るだろうが、それにしたって冷静すぎた。

 

 

「無駄だ。俺達が追っていたやつは特殊でな。レーダには反応しないステルス性能を持っている。」

 

「ステルス性能を持った鮫って、存在意義が分かりません!あなた達は一体何を追って―――」

 

 

サタデー提督を追及しようとしたその時突如船内のアラームが鳴り響く。

 

 

「今更反応するんですか!!?」

 

『いや別案件。高速で此方に近づいてくる物体が。――――速い。あと数秒で―――』

 

 

何か伝えようとした妖精さんだがそれよりも早く、突如艦の扉が勢いよく開かれた。

 

 

 

「提督!!来たよ!!!」

 

 

現れたのは少女……ひと目見て思ったのは凄い格好だであった。

駆逐艦『島風』。速さが全艦娘中トップクラスの娘であり、今の所大規模改造の実例は挙げられていないが幸運艦『雪風』同様改二相当の性能を持つ駆逐艦である。尚、雪風は最近改二が実現されたようで阿呆みたいに強くなっている模様。島風の改二まだですか?

 

 

「おう、来たか島風。他の皆は?」

 

「すぐに来るよ。それよりも早く追撃かけないとせっかく連れてきた鮫が―――あ……!」

 

 

他の提督とその艦娘がいることを思い出した島風であったが時既に遅し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連れてきたって……どういことかな?ちょっとお姉さんに説明してくんない?」

 

 

いつの間にか島風の後ろに立っている川内が彼女の肩に手をポンと乗せる。そう乗せる。乗せただけである。―――なのに、島風は動くことが出来なかった。それも当然。川内が彼女に掛けた技は骨子術と呼ばれる小さな力で相手の身動きを封じる技である。幾ら練度や改造回数に差があろうが関係ない。現に今技を掛けられている島風は早く離れなければと思っていても、その瞬間に痛みが体中を走るだけで肝心の体は動かせなかった。

 

 

「はいはいはい!!島風は一切悪くないから其処までにしてくれ。―――悪いのは俺さ。」

 

 

態とらしいお手上げポーズをしながら、サタデー提督は片腕を動かして制服の胸ポケットから黒い小さな通信機を取り出す。

 

 

 

「依頼を話した際、了承を取れたらこっちにおびき寄せろと命令しておいたんだ。そう、悪いのは俺だ。――――だが、俺は謝らない。なぜならお前たちだったらこの依頼を無事達成できると信じているからだ。」

 

「ナニイテンダアンタ!!ヒドォオジョクッテルトヴッドバスゾ!!」

 

 

結構キレているのか滑舌がボトボトなクソ雑魚提督。その言葉をスルーして、「はっはっは!じゃあ、俺達は先に行ってるからすぐ来いよ!」と言って出ていくサタデー提督と、「そのう……ごめん。あと、アップルパイとコーヒーごちそうさま。」と申し訳無さそうな表情で出撃する叢雲。

 

 

「……や っ て く れ た 喃 。」

 

 

そんな彼らを恨めしく睨む神通。それも当然である。三姉妹の中では提督の現在の心情を一番お労しいと嘆いていたのは他ならぬ彼女であり、それなのに更に負担を掛けさせる所業にご立腹である。

 

 

「神通……さん?」

 

「提督……ご安心ください。この神通、直ぐに提督の心の負担となっているものを消してしまいましょう。ですので少しご辛抱を。」

 

 

そして外に出ていく神通。そしてそれに続くように那珂が出ていく。出る際に「提督、終わったら美味しい朝食たべて元気だそうね☆じゃあ、那珂ちゃん!お仕事言ってきま~す!!」と、提督をいたわる言葉を残して。

 

 

 

「あー……。提督。―――さっさと終わらせて帰ろうか?」

 

「……うん。」

 

 

続けて「じゃあ行ってくるね」と言って、川内も出ていった。もう、流石に夜戦夜戦!なんて言える空気ではなかったし、何より川内自身も鮫はもう辟易としてた。そもそも艦これは艦娘たちが深海棲艦と戦うお話です。鮫と戦うB級映画ではありません。

 

 

そして残るはクソ雑魚提督とサタデー提督の所の艦娘の島風(と妖精さん達)だけとなった。

 

そろり、そろりとこっそり出ていこうとする島風であったが、「待ちなさい」とクソザコ提督に呼び止められる。

 

 

「あのう……。後であたしたちの提督に言っとくから……そのう、ごめn」

 

「はい、これ。」

 

 

怒られると思っていた島風だったが、当の提督は15センチ位の長方形の箱をラッピングしたものを渡すだけで怒ろうとはしなかった。

 

 

「……これ?」

 

「リンゴのお菓子ですよ。時間がなかったので見栄えが少し悪いですが味は保証しますよ。……急とは言えお客さんを手ぶらで返す恥ずかしい事は出来ませんから。」

 

「……怒ってないの?」

 

「サタデー提督に思うことはありますが、貴女に対しては特に何も。」

 

 

何やかんやお人好しなのだこの提督は。数日で自分の所の艦娘に好かれるにはそれ相当の理由があるのだ。但し、頼れる先輩提督に対しては別だ。「いつかあのアフロをキューティクルなストレートヘアーにしてやる」位には恨みを持っている。

 

 

「――――ありがとう!あなた優しいのね!」

 

 

ちゃんとお礼を言えるいい子だな~とボケ~と思いながら、出撃した島風の背を見送った時には艦内で(妖精さんを除けば)一人になった。少し寂しい……いや、それでもおっさんは要らんな。もしかして他の提督もこんな感じなのだろうか?そんな事を考えながら、ちょっと痛くなりだした胃を擦りながら、「今日だけで胃壁をだいぶ削るとか、続けられるのかこの仕事……」とぼやきながら、外の様子をモニターに写すように妖精さんに頼むのであった。




あれ?何か当初より文章量が増えたぞ(震え声)※当初4000字 完成時7000字超え

次の投下も多分遅くなります。
……勲章稼ぎしなきゃ。(今になって1,2、3ー5攻略、月初めのゲージ回復してから一切してないことに気づいた。)あと、12月入ったら仕事忙しくなりそうだから。あと、別の短編小説の続きの執筆等色々。

まあ、12月の半ばまでにはどうにか……。あまり期待しないで待ってて下さい(震え声)


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三日目 終わり

どこまで続く?提督日記


ワイ「……長門?ああ、都市伝説か。」

金剛(改二)「NOーー!提督~!!だから戦艦レシピ回すのもうやめようって言ったヨーー!!」

武蔵(まだ改なのに既に切り札扱いのエース)「と言うより、それする位ならウォースパイトのリベンジしたら良かったんじゃないか?」

金剛「もう、失った時間も資源も戻ってこないネ……。もう、気持ち切り替えて、出た子をさっさと近代改修に使わないと枠がパンパンね。そう、この――――霧島&扶桑合計12体をネ!!」

ワシントン(改。既にエース。というかめっちゃ強いねこの娘!?)「………イベント限定の娘取りにいった方がよかったんじゃないの?」


ネルソンさんとか何周しても出ないんですけど???


――――太陽が眩しい。

 

痛い位に眩しい。海に反射されている分が加わって更に眩しい。

 

いつもの彼であったなら手で光を遮るだろうが、今は不思議とそうしたくなかった。

 

 

「太陽というのはこうも美しかったのか……」

 

 

暖房器具には及ばない……それこそダニ等を殺菌するのに長時間掛かりそうな温度だが、今はその暖かさがささくれた心を暖かく癒やしてくれている……ような気がする。

 

あー、このまま寝てしまいたいと思ってしまうお日様日和であったが、「提督~!早く早く!」と呼ぶ声がそうさせてくれない。

 

仕方ないな。と苦笑しながら……しかし、その顔に不快な感情は一切無く、寧ろ優しい笑みさえ浮かんでいた。

 

 

声がする場所……旗艦の甲板の中央に目をやると、其処には既に川内三姉妹がテーブルと椅子を並べていた。

 

 

「提督~!テーブル配置終わったよ~!」

 

「じゃあ、今から料理持ってきます。」

 

 

川内からの返事を受け取り、クソザコ提督は先程焼き上がったばかりのピザ――魚貝たっぷりのペスカトーレで直径約40cmの大きさ。少し大きく思えるが大丈夫だと思う。残ったらその時は提督の昼飯が一品増えるだけである。

 

テーブルの上に置かれた朝食―――大きめのピザと、サラダにオニオンスープ。エビの素揚げのオーロラソースかけエクセトラエクセトラ……。そんな「ぼくがかんがえたさいきょうのもーにんぐ」みたいな朝から少々ヘヴィーなメニューがテーブル一杯に置かれ、それを美少女……うん、皮は間違いなく美少女三人が囲んでいることで華を添えている。

 

更に風景も絶景であった。

周りは障害物一切ない青い海。更に夜明けという野外においてこれほど最高の時はない。町中のような排気ガスのせいで濁った空気はなく、あるのは潮の匂いが香る澄み切った空気――――くうううきいいいが美味いいいい!!!と社会に疲れ果てたものなら狂喜して叫びたくなるような正しく最高のモーニングタイムだ。

 

そんな絶景&至高の時間を独占するのは何と贅沢なのだろうか?

まるで、先程までの死闘が嘘のようなそんな優しい、そして穏やかな時間が四人の心を癒やすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮫との戦闘はだって?カットだよ!!

普通に考えて軍艦の擬人化の艦娘さんたちがB級映画に出そうなモンスター鮫に負けるわけ無いでしょうが!?

それとも鮫との戦闘の描写を見たい人いるんですか!?他の提督さんたちは艦娘さん達とイチャコラしているのに、此処の提督は鮫と戯れていたよ!誰得だよ!!ていうかもう鮫はいいよ!!今回の話書くだけでサメの参考資料読みまくって疲れたよ!

何か強いイメージあったけど実際はシャチの餌どころかイルカに負けるよ、サメは!!知ってびっくりだったよ!!

 

 

 

 

 

――――――

 

――――――

 

―――――

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、まさかサメはサメでも秘密裏に改造された『メカシャーク』なんてものが出るとは思わなかったね、提督。」

 

「そうですね……。ステルス機能だけでもびっくりなのに、更に飛行能力まであるとは。一番びっくりだったのはそれが深海棲艦を倒す切り札として作られた決戦兵器だという、開発者の頭を心配する代物だったことですかね……。」

 

「結局……深海棲艦には有効打になるどころか襲いやすい民間船を積極的に攻撃する―――改造されても所詮は只の畜生でしたね……。」

 

「……幾ら掛かったんだろう?というか、あれってひょっとして税金でつk「那珂。考えたらやんなるからだめだよ。イイネ?」アッハイ。」

 

 

 

と和やかな(?)時間が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

*******************************

 

 

 

 

……どんな戦いだったのかは需要があったら語られるかも―――いや、語られんわ。いい加減にしないとこれが艦これだと忘れられそうだわ。

 

 

 

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が、そんな平穏というのは短いもので。台の上に乗っている料理があらかた片付きはじめた頃、先程まで穏やかな表情でいたクソ雑魚提督の表情がふっと消え、代わりに苦虫を潰したような表情になる。

 

 

「どうしたの、提督?」

 

「あ、いや、なんでも無い、です。なんでも、うん……。」

 

 

どうみてもなにか言いたそうな顔をしているクソ雑魚提督に怪訝そうな目で見る川内。それに釣られて残りの二人も提督に視線を向けると、黙っているのが耐えられなくなったのか「何てことは無いんだが―――」と前置きをしてからぽつりぽつりと話しはじめた。

 

 

「いや~……、本当に今日は色々あったな~って……」

 

「あったね~……。」

 

 

まず始めに初めての実戦を体験―――正確にはこの時までは今日でなく昨日だが、初めての実戦でお漏らししてしまった。あの時は恥ずかしくて部屋に籠もりたかったのだが、今思えばあの時までが一番最高潮だった事に泣けてくる。

 

登りきった後は下るだけ。ユニ〇〇○ル会場じゃないのにジョーズ体験させられ、彼○島に出てきても違和感がない肉食青魚の群れに遭遇したり、後はサメ、鮫、サメサメサメ、鮫肌エトセトラエトセトラ―――――

 

 

 

「だけど、得たものも多かったと思うんだ。」

 

 

実戦の空気(最初だけで後は鮫相手という、いやまあ只の元一般人であるクソザコ提督からすれば緊張感はあるっちゃああったが)を味あったし、頼りになる……よりも厄介ごと持ってきそうな先輩提督とのコネが出来た。

 

何より、川内・神通・那珂三人との仲を深めることが出来た。提督として、個人の友人としてこれに変わる報酬は無いだろう。

 

 

「「「提督……。」」』

 

「それに加えて、報酬は空母の娘さんを呼べる艦装一つ。ここまでやってケチつけたらバチが当たりますよ。」

 

 

本当に濃い一日だった。

 

鮫に始まり、鮫に終わる。自分たちは何のために、何をするために此処にいるのか?やりがいに存在意義等色々見失いかけたけど……いや、もう大分見失っていたけど、心にだいぶ傷負ったけど終わりよければ良しの寛容の精神でいこう、いかなければ明日からまともに笑えなくなる。

 

と言うより、もう思い出したくも考えたくもない。

 

―――確かに、三人と絆を深めることは出来ただろう。だが、別に鮫でなくても良かったのではないか?もっと別のことでも――それこそ夜戦バカが好きそうな深海棲艦との、夜戦特有の暗闇の中で一気に近づいて最大火力を叩き込むようなそんな戦いとか、物騒とは真逆の日常でのやり取りの積み重ねで築くのも良い、と言うよりそれが良い関係を築く王道ではないのだろうか?考えれば考えるほど、自分たちの時間は何だったのかと嫌になってくる。

 

 

 

「……提督?本当は、愚痴とか不満を吐き出したいんじゃあないの?」

 

「いやいやいや。あるわけないじゃないですか?」

 

 

どうやら表情に出ていたようだ。いかんいかん。下の者を心配させるような表情を上の者がしてはいけない。そんな当たり前の事さえ常に出来ない様では一人前の提督になるのはまだまだ遠いなと反省するクソ雑魚提督。

 

……待遇面や給与面を比較すると、本当に自分は彼女達の上司なのだろうかと思ってしまうが、それは心の棚に放り投げておこう。そうしないと泣いてしまう位には提督はメンタル雑魚なのだ。

 

 

 

「……吐き出せる時に吐き出さないと辛いよ~?」

 

「いや、だからないですって。」

 

 

さっさと寝て忘れたい思い出だらけの一日だったが、いつか遠くない未来に―――半年後くらいには「あの時は大変だったな~」と話のネタにできるくらいになっていることだろう、多分。兎にも角にも鮫とおっさんは当分見たくも関わり合いにもなりたくない。――その点提督は最高だな!憲兵さん除けば周りは美少女だらけだぜ!そもそも心の傷を負う切っ掛けがその美少女の一人だと言うのに目を瞑れれば。

 

 

 

「本当に、大丈夫ですか……?」

 

「心配しすぎですって。―――ほら!さっさと残った料理を片付けて早く帰りましょう。」

 

 

不謹慎だが自分を心配してくれている者達がいることにクソ雑魚提督は少しうれしく思った。しかも、心配してくれているのは3人の美少女……美少女(強弁)!

 

本当に色々あった一日だったが、彼女らの労りで全て報われた気がする。

 

 

……気がするだけかもしれんが、兎にも角にも終わったこと。鍋を一日中振るえる位の体力はあるが、それでも一般人よりは出来上がっているだけで本職の軍人さんとかと比べると弱い弱い。

やはり本気で鍛え直さないとこの先やっていけそうにない。今でさえ艦むす達におんぶ抱っこbabyで恥ずかしいし、改善できるところはやっていこうと決心する提督。―――だがしかし、人並み以上に体力はあるのなら体つくりよりも指揮官としての能力を上げることのほうが先決なのではないだろうか?日本在住の何処かのボブは訝しんだ。

 

 

 

 

「(あ~……、本当疲れてますわ~……。油断するとポロッと弱音吐きそうになるくらいに……。)」

 

 

 

本当に色々あった。時間にしてまだ12時間も経っていないというのに人生で一番濃い時間ではなかっただろうか?

少しだけ目を閉じると今日あったことが鮮明に思い出される。

 

 

 

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―――深海棲艦との実戦。とても恐かった。この歳で小便漏らしたことは恥ずかしい経験だが、雀の涙程度だが艦むすさん達の気持ちが分かった気がする。……だからといって完全に理解するために常に出撃に随伴など全力で断りたいが。豆腐メンタルには一度の随伴でも心臓に悪すぎる。

 

 

―――明石から貰ったお高いコーヒー豆。美味しかった(小並感)。というより、女子力高い娘さん多くない?これでもう少し大人しかったら……いや、そしたらせっかくの個性が……、でもその分が私の胃にダイレクトアタックしてきそうな予感が……いや、でも、なあ……?

 

 

―――真っ暗で静かな海。そんな中でれいのBGMが幻聴で聞こえてきたと思ったら現れるジョーズ―――

 

 

 

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「う、う~ん?」

 

「どうしたん?那珂ちゃんに言ってみ?」

 

「いや、別に、何でもないですよ。」

 

 

 

 

――――いかんいかん。もっと別なことを思い出さなければ泣きそうになる。自分は提督自分は提督自分は提督―――よし!

 

 

 

たった半日にもみたない時間だったが、それは彼の自己意義やら何やらを揺るがすには十分すぎる経験であった。まあ、着任早々体張ってこなした仕事が鮫狩りである。少しでも油断すると忘れそうになるが、提督は艦娘を率いて深海棲艦から海を奪還することが使命である。決して鮫ハンターとかではないのである。

 

 

 

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――――提督だと実感できる出来事……川内達との共同作業―――水族館でも滅多に見ることが出来ない種類の鮫達との戦い&解体……提督の仕事か、これが?

 

 

――――他には……そう。他の所の艦娘達との出会い。―――とアフロのダンサー。

 

――――先輩艦娘からの色々なアドバイスを貰った。――――アフロが胸元開けて偉そうだった。

 

――――お菓子の作り方とか色々と熱心に聞かれたのでついついお喋りしてしまった。ちょっとした企業秘密というか隠し味やら簡単なテクニック等も話してしまったが……楽しかったから良いか!――――その女子会の隅っこでハードボイルドな雰囲気を無理に出そうとしてたアフロ。

 

――――超B級化け物鮫との接敵―――それに巻き込んだ主犯のアフロのクソ悪い笑顔

 

 

 

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「アフロ、消すか……(ボソっ)」

 

「提督……???」

 

 

 

あー……駄目だ駄目だ。色々と思うことが、 思うことが(・・・・・) あるがあれでも先輩―――しかもかなりの実力者なのだろう。連れてきていた艦娘達の練度の高さからそれがわかる。この先世話になることもあるだろうし、実際「月に1回位は戦闘演習で扱いてやろう」と約束もしてくれたのだ。右も左もまだ分からないクソ雑魚提督にとって大変ありがたい先輩なのは間違いないだろう。

 

……ただ、理性はそう言っても本能の方はそれらのメリットを捨てでも縁切りしろ!と言ってくる。何かこの先色々なことに巻き込んでくるかもという嫌な予感ががががが。

 

 

――――駄目だ!!鬱になるような事を考えるな!!そして諦めるな!!辛い記憶ばっかり目に行って大事な(?)思い出・経験を無駄にしようとしているのではないだろうな!?

 

 

 

必死に自分に言い聞かせるクソ雑魚提督。認めたくないのだ。得たものが今日の苦労+厄介な御縁に比べたら……など考えただけで目頭が熱くなる。これ以上かっこ悪いとこを彼女たちに見せたくないという意地で涙を堪える。

泣くのは鎮守府に戻って布団かぶって泣けるだろう。だから今は得たもの、感じたもエクセトラエクセトラ……。とにかく提督・艦むす両者の成長になれるものを此処にいる皆と共有しなければ―――惨め過ぎる。瞼を強く閉じ、気合を入れ直してさあ!ラストバトルのB級鮫との戦いの記憶の海へ―――例えあたり一面鮫しか見えなくても、一粒の真珠くらいはあると信じて潜るのだ!

 

 

 

 

 

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『見ろ、新人。あれが『メカシャーク』。艦むす無しで深海棲艦人類の手だけで倒す為に、ホオジロザメを遺伝子操作やらドーピングで強靭・巨大化させたやつを素体に作り上げたサイボーグ鮫だ。』『目論見うまく言っても艦むすさんたちから鮫に人類の生殺与奪権が移っただけになりませんか?』

 

 

 

『うわあ!!提督、下がって!何かミサイル撃ってきたよ!』『気をつけろ!渡された資料によると、あれは一本一本があいつの体内から作られたシャークミサイルだ。深海棲艦にはまるっきり有効打にならなかったらしいが、生身の俺たちがくらえば致命傷だぞ!』『ちょっと待て。何か聞き捨てならない事言いませんでした?じゃあ目の前のあれの存在理由てなに?ねえ?!』

 

 

『―――っ!!提督、敵が!!鮫が、飛びました!!??』『少しだけだが飛行能力も携わっているって資料に書いてあるな。』『……制空権取られたから戦闘機も碌に飛ばせない現在、あんなの只の的なのでは?』『さあ?飛ばしたかったんじゃね?』

 

 

 

『そう言えば何でセンサー反応しなかったんでしょう?』『資料によればステルス機能が搭載されているみたいだな。ただ、深海棲艦には何故か全くの効果なしで、俺達のセンサーは素通りするようだな。』『関係者全員鮫の餌になる仕事を紹介してあげましょうよ。』『まあ、おかげで俺は新人君を巻き込む事ができたわけだ。流石にこれは自分たちだけでやっていたら寂しさで頭がおかしくなっていたな、はっはっははっは!』『はっはっはっは!こやつめ。……憶えてろよ。』

 

 

 

『よおし!!装甲破壊されたな!!鬱憤ばらしだ!最後は俺が決めさせてもらうぜ!!』『うわ、サタデー提督がチェンソー持って鮫の頭に切りかかったよ!!那珂ちゃん、びっくりだよ!』『……あのまま食われねえかな。』『提督???』

 

 

 

『まさか、最後はお前さんの撃ったロケットランチャーが決め手になるとはな……。』『………』『仕留め損なって逃げられると思ったが……鮫のやつ、最後の最後に最後っ屁かまそうとしやがって』『…………』『だが、俺達には敵わんと思ったのか、弱いと思ったお前に矛先を変えたのが運の尽きだったてわけか。』『…………(ブチッ)』『ふっ、やるじゃないか。こいつは特上の色をつけた報酬を『前払いにテメエ殴らせろや!!危うく船ごと食われかけたわボケぇ!!』ぶぼお!!??』『て、提督ーーーー!!!????』

 

 

 

 

 

 

 

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「ごめんなさい……やっぱつれえわ。」

 

「言えたじゃん。」

 

 

 

碌な思い出が無かった。とうとう涙を堪えられなかった。クソ雑魚提督だけではない。川内も泣きはしなかったが思い出したのかゲンナリしている。それもそうだ。望んだ夜戦が出来なかったから。今度からは鮫がいないことを確認して出撃しよう。そう決めた。

 

 

 

「そりゃあ、辛かったよね……」

 

 

これが少し前までは民間人で、着任してまだ三日目の駆け出しに任せる仕事か、これが?メンタルボロボロな自分の提督に掛ける言葉がこれっぽっちしか思いつかない事に、もう天を仰ぐしかなかった。

 

 

「聞けてよかったです、提督。」

 

 

神通は決心した。次あった時は厄介事持ち込んでくる前にあのアフロを焼き尽くしてやると。

 

 

 

 

とにもかくにもこうして提督たちの初めての本格的な生モノの夜戦は終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日目

 

AM7:00

 

 

「提督!お疲れさまです!!初めての夜戦はどうでしたか?」

 

 

「え?『大淀さん……私の提督ネーム『クソ雑魚提督』というのはどうでしょうか?』って何言ってるんですか?」

 

 

「分かりました。明日はお休みにしましょう。疲れてるんですよ、もう寝ましょう。大丈夫です!後の事は皆でやっておきますので。……はい!おやすみなさい、良い夢を。」

 

 

 

 

 

――――ツカツカツカ。ガチャ。prrrrr!prrrrrr!

 

 

 

 

「川内、神通、那珂以下3名。今直ぐ作戦室に来なさい。さっき淹れたコーヒーがぬるくならない内に。」




Q遅くなった理由
Aイベント海域堀りと鮫のせい

もう一話入れるはずだったが、途中で鮫書くのが辛くなったので一回全部消しちゃった。
もう、当分鮫は良いかな……。


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四日目

ネタが尽き始めたぞ!提督日記!

わい「イカれた我が艦隊のメンバーを紹介するぜ!!」

わい「3日でポーキを三分の一食い散らかした女―――赤城(改二)!!」

赤城「え?バケツのお替り良いんですか!」

わい「後から編成に組み込んだ為か赤城よりも少ないが、それでもポーキとバケツを食いまくった女―――加賀!!」

加賀「この席は譲れません(待受BGMは加賀岬)」

わい「殴り合いは任せろ!霧島!!」

霧島「代わりに装甲、耐久は戦艦の中では脆いですけどね。では、提督、鋼とバケツ貰っていきますね。」

わい「そして~!今では我が艦隊のエース!!そのステで高速戦艦なのが悪い。赤疲労でも戦えますか?ワシントン!!!」

ワシントン「休ませろ!!!!」

わい「ハードラックとダンスっちまったのか、今回目も当てられないバケツを食べる羽目になった―――妙高四姉妹!!」

(代表)足柄「分かってるなら、空母系ドロップしにくいのは分かるけど、対空最後まで近代化しなさいよ!!」


わい「こいつらのおかげで昨日4-5の勲章取ってきたぜ!!ふー!皆、拍手ーーーー!!!」














わい「もう……何も見たくねえ……(それぞれ資源2万きって、バケツ70以上使った惨状)」

ワシントン「だから、勲章取りはこまめにやりなさいよ!!!」


他の人はこんな阿呆なことやってないとは思うが、勲章取りは早めにやっとこうね(白目)。


AM:6:00

 

 

昨日、色々と―――う、頭が……!兎にも角にも色々あったせいで午前様で帰れる+今日お休みを貰った訳ですが……何もやることがない。

 

帰った後にバタンキューで寝たが午後4時位で完全に目が覚め、その後暇を潰すために購買で材料を買い込んで仕込みをして、また寝て、そして起きて二時間くらい自重筋トレ&ストレッチ&有酸素運動(鎮守府周りでランニング)とかやって、風呂入ってまた寝て、そして今に至る。

 

うーん……暇だ。仕方ないので提督の勉強をしよう。えー、まずは基本の陣形から。

 

 

 

AM:7:00

 

陣形は叩き込めた。……と言っても、覚える陣形の種類は少ない。―――問題は状況に応じて的確に指示ができるかだが……私が指示するより彼女たちに任せたほうが良いような……他の提督さんたちはこれに加えて、自分で作戦立案や攻撃指示とかするんでしょう?自信無くすな~……。

 

……朝飯食べよう(涙)。

 

 

AM:7:30

 

時間を持て余す……。他の皆はお仕事頑張っている中、自分は行儀悪く椅子にどかっと座って欠伸などして良いのだろうか?そう不安な気持ちを紛らわすために作戦室に向かった。

 

―――が、既に書類関係のチェックは全て終わっており、後は上からの任務と近海の警備で本日の勤務は終了だそうで……。

あれ?ひょっとしてもしなくても私が居ないほうが仕事は捗るのでしょうか?

 

……よし!見捨てられないように今日は艦むすさん達にゴマすりに行こう。すごく情けなく思えるが……いや実際凄く情けないが今私が出来ることなんてこれだけだし。というわけで、最初は明石の所に行こうと思います。何やかんやで此処じゃあ彼女が一番相談しやすい。……ただ、目を離すと何かやらかしそう筆頭なんだよね~……。

 

 

 

AM:7:40

 

工廠現場に来たんですが……何だこれ?

 

 

 

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「あれ?提督、今日は非番じゃなかったんですか?」

 

「暇でブラブラしていただけですよ。それより、これは?」

 

「 ドラム缶 です。」

 

「まんまドラム缶ですか……」

 

 

 部屋に入って出迎えてくれたのはドラム缶でした。しかも一つだけではなく、2,3……8個もある。一体何なのだこれは?ドラム缶です。何でドラム缶がこんなにあるのか聞きたいクソ雑魚提督であったが兎にも角にも通行の邪魔になっているドラム缶をどかすことにした。なあに、軍人さんほどではないがそこそこ鍛えているのだ。流石に中身が入っていたら無理だが、空のドラム缶くらい軽々と運べる。そう、この提督は己のボディは結構いい仕上がりなのだ。

 

 代わりに反比例するかのようにメンタル面はクソ雑魚だが、この提督として経験や実績を作っていけば改善されていくだろう、筈、したら良いな……と、精神面は置いておいていま大事なのは肉体面な方であり、ちょっと自身がある我が身のボディを鼓舞して―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だこれは!?重いぞ!?」

 

「そりゃあ、艦むす用に作られてますからね。市販品のドラム缶と比べ頑丈に作られた結果重くなってますよ。」

 

 

 やっぱりカッコイところを見せることは無かった。

 とは言え、この特別製のドラム缶、空の状態でもボディビルダーの人でも結構持ち上げるのに苦労するだろうそのくらいの重さ だ。体力は一般より上程度では持てなくても仕方ない。―――駆逐艦の娘たちはこれに中身が入った状態で2つ、大規模改造後なら3つ持てるが。

 

 

「こんなにたくさんのドラム缶何に使うんですか?」

 

「神通さんが訓練で使うみたいですよ。」

 

 

せっせ、せっせ―――持ち上げることを早々に諦めた提督は押してドラム缶を動かすことにした。通行の邪魔もあるがこうもドラム缶がバラバラにおいてあると見栄えが悪い。「提督、こっちに置いてください。」と明石の指示する場所へとドラム缶を移動させていく。……何か都合よく動かされているような気がした提督だがさっさと忘れることにした。

 

 

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「……と、これで全部ですか。」

 

「お疲れさまです提督。はい、コーヒー――安物の缶コーヒーですけどどうぞ。」

 

 

 時間にして30分程度だろう。結構重くて腕が疲れ……肉体よりも精神面の方が疲れた。だって、ドラム缶押すだけなんだもん。お礼を言ってから貰った缶コーヒーをその場で開けて一気に飲み干してやっと一息ついた。

 

 

 

「そう言えば……一昨日―――神通さんと訓練の内容について話し合ったんですが……。」

 

「一昨日って……それ(訓練)来たばっかりの人と話すもんですか?」

 

「いやあ……本人が凄く乗り気で。実際、戦闘訓練とか指導できる人が居てくれたら本当にありがたいですしその場でお願いしたんですけどね……。」

 

「……?何か思うことでも?」

 

 

 神通の提案した訓練内容には提督が確認を行った筈である。確か今日昼頃から本格的……ではないが軽く緩い訓練(※神通視点)が行われる予定なのに今更訓練内容に口だすとなるとあっちは良い顔しないのではないか?

 

 

「いや今更訓練内容に口出すつもりなんて更々無いです。」

 

「はあ……?では一体何を?」

 

「……射撃訓練は分かりますよ?当たらなければ意味が無いですからね。回避訓練とかも大事ですね。―――でも、腕立てとか錘付きマラソンとかの筋トレは正直いります?」

 

「ああ……それですか。」

 

 

 男の自分より華奢だろうがそこは艦むす。小学生にしか見えない駆逐艦の娘達でさえ大の男―――しかもその上位に位置する肉多面高スペックな軍人相手でも腕相撲なんてしたら下手したら男の腕が折れる惨事になりかねない位にスペック差が酷いのだ。はっきり言って艦むすは生まれてきた時から既に体の方は十分出来上がっているのだ。

 

 それなのに今更基礎トレ―――内容を思い出しても軍人さんが普段行っている訓練より少しきついと思うような量ではあったが……。はっきり言って機関銃やらロケットランチャーなどがおもちゃに思えてしまうような主砲や魚雷、後はまだ此処の鎮守府では開発してないが電探などなど。それを軽々と担いで戦う彼女らには物足りなくないのか?と、やるなら地上最強の生物がいる世界の武闘家達がやってるレベルじゃあないとあまり意味がなくないか?とクソザコ提督は疑問に思っていた。……昨日の昼ふっと思ってから。考えることは良いことだが、出来れば訓練内容の話し合いを神通としている時にしていれば花丸をあげれてたんだが……。

 

 

「まあ、ちょっと覚えるのに面倒な用語とかを沢山憶える必要があるので詳しい説明はあえてしません。ただ、無駄にはならない事は保証しますよ。」

 

「う~ん……。でもな~……やっぱ提督としてはそういった事も知っておくべきだと―――「え?大学受験レベルの勉強をみっちりしたいんだって?」よ~し!昼飯と、皆のおやつの仕込み始めますか~!!」

 

 

流石にそこまでの時間を割くほど暇では無い。

 

 

「それで良いんですよ。……正直提督が憶えてもこの先役に立つか?と言われたら無駄としか。ただ、う~ん?そうですね……。人と一緒で艦むすも2,3日の内の数時間は思いっきり体を動かした方が調子が良くなる位に思ってくれれば良いですよ。」

 

 

――――そして、この設定が回収される日が来るかは誰も知らない。

 

 

 

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PM13:00

 

昼ごはん(チーズにローストビーフを挟んで焼いたホットサンドにトマトと大豆たっぷりのスープ。美味しゅうございました。)を食べ、皆のおやつ―――今日は団子串(みたらし、あんこ、ずんだ!……飽きが来ないようあと2つくらい考えるか?)!後は焼いて塗るだけ。お茶っ葉準備良し!居ないと思うが和菓子が苦手な子のために、売店から買っておいた(本当は自分のおやつにする予定なので団子を皆食べてくれたら良いのだが……)シュークリームの準備よし!!お茶っ葉、ある!良し!!!甘いものの苦手?カエレ!!!……柿ピー用意しておくか。兎にも角にも準備終わり!ガハハ!勝ったな!!

 

 

 

 

 

 

 

―――――平穏、だと……!?いや、これが本来の休みの姿なんだ。初日から一昨日までがおかしかったんです。

 

というわけで後は時間までのんびりしましょう。いや~、平穏て尊いものだったんですね~。明日からまた仕事再開だけど、今日の様に平穏だったら良いよね。ね~?ハム○郎。

 

 

 

 

四日目終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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クソ雑魚提督が身の丈に合わない望みに胸を膨らませていた頃。

 

時間にしてPM2時頃――――昼飯が12時位と考えればお腹もそこそこそこそこ落ち着いた時間。鎮守府の運動場―――結構広いグラウンドだが、他の鎮守府にも同じ様にあることを考えると税金どれくらいかかっているんだろうかと考えちゃうな。まあ、それは一昨日考えればいいとして、その運動場にクソ雑魚提督が率いる艦むす達が鬼教官神通の指導の下、訓練の活動をしていた。……因みに任務は大淀の指示により午前様で全部終わった。提督要らないんじゃね?いや、彼女たちのモチベには必要だから(震え声)。

 

青空のもと行われている訓練風景はどの娘達も華があり、金を払ってでも見たいと思う輩が出てもおかしくはないだろう。

 

そんな状況で、これまた綺麗な華として役割をこなしている乙女―――神通が渋い表情で見ていた。

 

 

「……駆逐艦の子たち、少し訓練に身が入ってないですね……。」

 

 

別に不真面目という訳ではない。寧ろ逆だ。軽巡の川内達、重巡の利根と比べ駆逐艦レベルは体格、馬力エトセトラエトセトラ……やはりどうしても低いのだ(……まあ、一部は駆逐の皮を被った何かもいるが)。しかし、周りは簡単に訓練をやり遂げているのに自分は……そう思うと焦りがうまれて本来の能力が発揮できないのだろう。歩幅が小さい足で彼女らに付いていこうとして無理をした結果さっきからよく転ぶなどの失敗をしまくっている。(要はやる気が空回りしているわけだ。)

 

 

 

 

「焦ったら逆に効率が悪化するのに……。」

 

「いやいやいや……。周りの奴らが自分たちより出来ておれば焦るなと言われても無理じゃろう?」

 

「利根さん……。あのう、もしかしなくても訓練の教官役、私では役者不足でしょうか?」

 

 

どうしようか悩む神通に利根は口を挟む。……関係ない話だが、利根さんて姑ぽくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、お前さんはようやっとる。……反省すべきなのは吾輩じゃ……。」

 

「え……?」

 

 

悪いところを指摘してもらえると思っていたら、責任は自分にある発言に呆気にとられる。飄々としている様に見えて本当は責任感が自分より強いのかもしれない。これが重巡艦娘の貫禄か……。素直に感服する神通。

 

 

 

 

 

「今の鎮守府では唯一の重巡艦である吾輩が、もっと皆を引っ張っていかなければいけんというのにこの体たらく。……吾輩は自分が情けない……。」

 

「いえ……!利根さんは自分の役目を果たしています。誇るところはあれど、負い目を感じる必要はありません!」

 

「いや、吾輩もそう思っとるんじゃがな。」

 

「はあ?」

 

 

すぐさま手のひらを返す神通。ちょっとキレてますねこれは。……そして利根はおそらく昨日真○丸のBDを明石にでも借りたのだろう。

 

 

「そう怖い顔するな。ちょっとしたお茶目ではないか。―――じゃがな。吾輩に負い目が無いの同様、このままただ見守っても童共のミスは止まらん。寧ろ増えていくだろうよ。」

 

「(少しは負い目感じて欲しかったな……)ではどうすればいいと?」

 

「おるではないか。指揮系等色々光るものが無いが、我輩たちをやる気にさせる才能と能力は見どころがある男がの~。」

 

「……提督は今日は休みです。」

 

「そこを何とか頼み込むんじゃ。ほら思い出せ。まだ知り合って数日だが、あやつの人となりはかなりのお人好しよ。」

 

「そんな提督の懐の広さにつけ込むような真似を……!」

 

「なんじゃケチ臭いのう。」

 

 

昨日見た提督は本当に心が参っていた。正直今日くらいは心穏やかに過ごしてほしいのが神通の本音であった。が、それに利根は「本当に提督の事を思うのであれば、一日も早く我輩達が立派にやっている姿を見せるべきではないか?」と色々と屁理屈を言って反対の意思を折っていく。どうやら舌戦では神通の完敗のようである。

 

 

「―――よ~し、こうしよう。始めて直ぐに効果が見られないようだったら止める。逆に上手く言ったら続行。これで良いじゃろう?」

 

「(代案何も思いかないし)分かりました……。但し!良い効果が見られなかったら速攻中止、そして大前提として提督に同意してもらうこと。提督が嫌だと言ったら無理強いしないこと!良いですね!?」

 

「何じゃそんなもんでいいのか?ガハハ!勝ったな!あの者、我輩たちの為といえば二つ返事で受けてくれる筈じゃ!」

 

「まだ決まったわけでは―――」

 

「受けてくれるにこのカシオミニをかけてもいいぞ?―――じゃ!ちょっと呼んでくる!」

 

 

言うやいなやスタコラサッサと走り去って行く利根の後ろ姿に、「あいつ、絶対ジュースかアイス買い食いしてくるな。」とジト目で見送る神通であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――――快晴でした。

 

蝉のなく声……が聞こえるにはまだまだ早いのか、風は少し冷たい。が、降り注ぐ陽の光は程よい明るさと暖かさだ。こんな日にお昼寝したらどれだけ癒やされるだろうか?

 

 

 

「提督!!頑張って!!」

 

「―――――――」

 

 

先の方で姉の川内の声が聞こえてくる。目をやると提督の直ぐ近くで励ましてるのが見えた。本当に気に入ってるんだ。

 

 

 

「司令官さ~ん!頑張れなのです!!」

 

「頑張れ、司令官。」

 

「よ~し!私達も負けられないわ!みんな!やるわよ!!」

 

「ちょっと、雷!私がそれ言おうとしたのに~!!」

 

 

 

忌々し……驚くことに、利根の作戦がうまく言ったのか駆逐艦の子たちのさっきまで失敗続きで気落ちしていたのがもとに戻っている――――どころか、訓練始める前よりも元気ではないだろうか?

 

 

……しかし、今日は本当にいい天気だ。提督もこういった日にお昼寝したら心癒されるだろうな~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で?何で提督は那珂ちゃん達と一緒に訓練混ざってるの?きつくない?」

 

「何でやろうな!?皆のためって言葉に二つ返事しただけなんだけどな!?どういうことかな!!説明して欲しいよなあ!!?」

 

 

 

――――嗚呼、心癒してもらいたかったな~……。

 

 

 

 

 

 

現在の状況を簡単に説明すると。ドラム缶(艦むす用のハーフサイズ。中身は入っていなくてもそれでも一般に売られているドラム缶より重い)を背負ってグランドを走らされている提督の姿が其処にはあった。……嫌なら断れ?それが出来たらクソ雑魚提督ではないのである。身内だからといって内容を碌に聞かずに二つ返事で引き受けるのが悪い。

 

 

 

「待ってくれ……!これが皆の訓練のモチベに何が関係あるんだ!?」

 

「ふむ。提督の疑問ももっともじゃ。よいじゃろう。説明してやろう。」

 

「じゃあ、ちょっとドラム缶おろして「駄目じゃ。走りながら聞けい!」アッハイ。」

 

 

 

既に腕はプルプル、汗をダラダラと流しながらもドラム缶を背負って走る姿は逞しいと褒めるべきか、何で真面目に走ってんだ馬鹿かこいつ?と呆れるべきか。そんな提督の横を並走して――――腕を組んで十傑集走りする位には余裕そうに走る利根の姿が。

 

 

そしてその利根の姿に、「あいつだけは訓練の量倍にしてやろう」と神通は決めたが、この時の利根はそんな事も知らずに提督の質問に偉そうに答えるのであった。

 

 

 

「吾輩、実は昨日テレビで子供の運動会の特集を見てな。」

 

「あー、私のころは秋でしたけど、今はこの時期にやるところが多いんですっけ?」

 

「そこでな、子供達が一生懸命何かしているのを見て朗らかな表情で応援する親を見てな!」

 

「ん?」

 

 

 

あの時は親に見られて恥ずかしかったな……といっそのこと来てくれなかった方が良かったと思っていた。

 

が、社会人として働くようになって、時間を割くのがどれだけ大変なのか分かった。

 

 

―――父さん、母さん。貴方達の子供は全然ダメダメで情けない野郎だけど、提督として頑張ってる……これ提督の仕事か?まあ、とにかく頑張ってるよ。

 

 

少しだけ心が強くなった気がした提督であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供が四苦八苦している姿を愉悦するのを見て、『自分より弱い者が頑張ってると元気が出る』という人の心を学んだのじゃーーー!!」

 

「どうやったら親心をそう捻れきった捉え方できるの???」

 

 

 

――――父さん、母さん!僕、提督やっていく自信が無いです!!

 

 

一歩進んだら二歩下がる。提督のメンタルが強くなって、クソザコ提督から抜け出すのは何時になることやら。

 

 

そんな皆から励まされながら、もしくは阿呆なやり取りしながら訓練活動に参加させられている提督を見ているだけしか出来ない神通。

 

 

そんな彼女に近づいた球磨がジト目で―――呆れたような表情で言葉を投げかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめえ……提督に何させてるんだクマ?」

 

「ちゃ……・ちゃうんや(震え声)。」

 

 

本当は食べ物で釣るくらいだと思ってた神通だったが、実際はこれである。気まずそうに球磨の視線から目を背けるしか出来なかった。

 

 

 

 

――――その後だが、訓練終えた提督はとてもではないが動ける状態ではなかったので(申し訳無さそうな表情の)神通に背負われて部屋に戻っていった。

 

あと、用意していた団子は川内が上手に焼いて提督の代わりに振る舞った。

 

―――そして、今回の提督の訓練参加が好評だったのか、駆逐艦の子達を筆頭に提督はまた参加をお願いされる。

 

そしてそれをを断る度胸がないせいで、週4,5で入れられた結果、一ヶ月経つまでは産まれたばかりの子鹿のような生活をすることになる事を、ヒイヒイと這いながらシャワーを浴びに浴室に向かっているクソ雑魚提督は知る由も無かった。

 

 

 

四日目。今度こそ本当に終わり。



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とんで30日目 振り返り話 仲間編その1

わい「ふへへへへ……」

武蔵「……何かあったのか?」

金剛「司令部要員の存在をさっきまで知らなかったみたいデース……。」


……まじで泣きたい。


え~、久しぶりに日記を書きます。

 

……仕方ないんや。何でか知らないけど艦娘さん達の訓練に参加させられるようになって、つい最近までペン持つ気力が湧かなかったんや。

 

ただ、やっと体が慣れてきたのか、キツイと言えばキツイ、体中の筋肉は常に痛いが始めた当初と比べると大分体が出来てきたようだ。証拠に、こうやってまたペンを持って日記を書くことが出来ている。

 

――――基本裏方勤務の艦むすさん達の提督なのに必要なのか?と考えると頭痛がする。

 

ま、まあ……、それは置いといて。最後に書いてから今の今まで起きたことでも簡単にだが書いていこうと思います。

 

 

えー、まず。球磨の妹 軽巡【木曾】 が来てくれました。カッコいいです。

 

 

 

 

 

 

 

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「木曾だ。お前に最高の勝利を与えてやる。」

 

―――なんてすごい自信に満ち溢れた言葉だ。素面で言うなんてなかなかできんぜよ……。

 

何回回しても出てくる艦装はすでに来ている娘たちのものばかり。同じ娘を呼んでも混乱しそうだし、しかも今の此処は駆け出し弱小鎮守府。保有艦の制限がある中、同じ艦の娘さんを呼んでも正直扱いに困る。なので、同じのが来た際は使える装備は貰って、近代化改修に使わせてもらっているのだが……全然違う艦むす来ないんですけど!?何か5回回したら3回は川内くるんですけど!?と、クソザコ提督が物欲センサーに連敗記録更新している時に彼女はやってきたのだ。明石に速攻GOサインですよこれは。

 

 

「で、木曾さんは―――。」

 

「おっと、提督。さん付けなんて余所余所しいぜ。これから俺の命を預ける大将なんだ。もっとどうどうと呼び捨てで呼びな!」

 

 

―――やだ……イケメン……(トゥンク)

 

ときめくなクソ雑魚提督の心。揺れるなクソ雑魚提督の心。……これ以上男として情けない姿を見せるんじゃあない。

 

 

「そうだ。交流会……ていうほどのもんじゃあ無いが、せっかく出会えたんだ。提督、俺に聞きたいことがあるなら何でも聞いてくれよ。」

 

「何でもいいんですか?」

 

「ああ。その代わり俺からも聞くからよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――じゃあ、木曾は語尾に『~キソー』てつけないんですか?」

 

「なんだあ……てめえ……。」

 

 

 

木曾キレた……!!バッドコミュニケーション―――が、クソザコ提督は素知らぬ顔である。この一ヶ月近くでメンタル面が改善されてこの位どうとも思わなくなったのだ!……と言えればカッコいい(?)のだが、実際はそうでなく、本人は煽り一切なしの質問だ。そんな悪意一切無しの間抜け面に毒気が抜かれたのか、ハッ叩いてやろうかと思ったがギリギリで止めた。

 

 

「……貴方のお姉さんは語尾に『~クマ』てつけるので、球磨型の艦むすさん達はそういう特徴があるものかと思ったのですが、違ったのですか?」

 

「―――て、球磨の姉さん此処に来てんのかよ。」

 

「ええ、来てますよ。……助かってます。本当に、ええ。」

 

「お、おお……。」

 

 

実際、球磨が居なかったらこの提督の胃は既に爆発四散していることだろう。球磨の他には胃に優しいのは大淀、那珂、夜戦キメてない川内位だろう。駆逐艦sはの子供特有の元気の良さには時々振り回されて疲れる時がある。

 

が、これは可愛いもので。明石とは一番気安い間柄だが勝手に開発して資源資材消費するし、利根は利根だし。

 

 

「ということは、語尾に特徴があるのは球磨だけですか……。どんな面白……個性的なのがくるものかと少し期待してたんですけどね……。」

 

「―――いや、多摩が語尾つけてたな。」

 

 

まあ、10人いたら1人くらいは違うかもしれんが、少なくとも木曾の記憶の中にある多摩は語尾が特徴的な娘であった。

 

 

「多摩……語尾に「~タマ」て言うんですか?」

 

「どんな語尾だよ。……「~タマ」じゃなくて「~にゃ」て言ってたな。」

 

「にゃ?」

 

「にゃ。」

 

 

ボーイッシュ美少女が時たま見せるあざとさ。良いと思います。そして提督の方はキモいと思いました。

 

 

 

「あと、好きなものは鰹節で、こたつがあったらいつも丸くなって中に籠もってたな。猫じゃないですと言いながら猫じゃらしに反応したり―――」

 

 

ちょっと属性濃ゆくない?何?軽巡型て個性無いと生きれないの?と軽巡型に風評被害が被って……いや、実際濃ゆいか。

 

 

「やれやれ。そんな個性―――今で言えばキャラ付けて言うんだっけ?兎にも角にも俺はそういうのはどうかなと前々から思ってたぜ。」

 

「木曾はそういうことしないんですか?」

 

「馬鹿野郎。そんな自分に無理して見せても痛々しいだけだぜ。そんな事しなくても、俺のことはこれからの行動と結果を見てお前が判断しな。―――ま、期待を裏切るような真似はさせねえさ。」

 

 

凄く……男前です……。

 

少なくとも其処にいるクソ雑魚よりも間違いなく格好いい。……いや外面は中々良いんですよ。ただ、メンタル面が雑魚で……。一方、木曾の方は外、内面共に超格好いい。勝てる要素ないやん。比べること自体が烏滸がましかった。

 

 

「でも、私は可愛いと思いますよ、球磨の語尾つけ。」

 

「ははははは!俺から見ればあざとさ見せるの失敗してる様にしか思えないぜ。だって、あの語尾で俺ら姉妹で一番勇ましいからな!俺は姐さんにはもっと格好いいやつが良いと思うぜ!」

 

「へ~。」

 

「……ま、良いんじゃねえか?提督が好きなら、姐さんも気分いいだろうぜ。俺がどうこう言うつもりはないぜ。」

 

 

兎にも角にも木曾とはいい関係を築けそうだ。木曾もさっきのやり取りからそう感じたのか表情が柔らかい。最初のバッドコミュニケーションでどうなるかと思ったが結果見れば良い出会いだったようだ。

 

 

 

 

~木曾との出会いの回想終わり~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――痛々しいキャラ付けと申したクマか?」

 

 

―――まあ、この提督の所に来た艦むすだ。綺麗に終わる筈もなかった。

 

 

 

「……あ、姐さん。いつから其処に。」

 

「多摩の話題が出てきた頃だクマ。……球磨の喋り方だけど、これが素なんだクマ。木曾~、誤解させてたみたいで済まなかったクマ。」

 

「い、いや……。それは、そのう……。」

 

「それはそれとして、せっかくまた会えたんだクマ。ちょっと向こうで話すクマ。」

 

 

さっきまで格好いい雰囲気はどこへやら。今の姿は悪いことしたのを母ちゃんに見つかった子供のようであった。見ても分かるくらいに顔は青ざめ、冷や汗だらだら。視線はあっちらこっちら―――時たま提督に助けを求めるような視線を向ける。勿論、そんな視線を向けられても困るし、何もしてやれない。

 

 

「提督~。木曾、ちょっと借りていくクマ~。」

 

「終わったら来てくださいよ~?二人のコーヒーとケーキ用意して待ってますからね。」

 

「いつもありがとうクマ。―――ほら、木曾。さっさと来るクマ。」

 

「ま、待ってくれ。俺たちはちょっとした行き違いを――。というか、提督見てないで助けてくれ!」

 

 

そんな事言われても……。そもそもそんな度胸、このクソ雑魚提督にあったらもう少し那珂ちゃんの立場は良い筈である。妹は姉に逆らえないのだ。此処の鎮守府に来て提督は学んだのだ。

 

そして、誰が好き好んで百合の間に挟まって勇○郎にボコボコにされるガイアになる気など提督には無い。なので、提督にそんな見捨てられた子犬の様に助けを求めても無駄無駄無駄。

 

隣の部屋に連れ込まれた木曾の姿を提督は無事(?)に見送った後、今朝作ったケーキを自室の冷蔵庫から取ってこなきゃと思い工廠室を後にした。




飛ばした理由?話が進まないから以外特に無いです


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とんで30日目 振り返り話 仲間編その2


ワシントン「あら!大和!奇遇ね!どこに行くの?お花見……。良いわね!……ねえ、そのう私も、一緒に行っていい?……!!Thanks!!」










わい「……だれもいない虚空に向かって何いってんだ?」

武蔵「此処の鎮守府には大和はまだ来ていない筈だが(汗)」

金剛「提督が酷使しすぎたせいネー。」



期間限定作戦近いんだから大規模建造できるわけ無いだろう!!ごめんなさいね!!


提督として着任してから間もない頃。

 

球磨には妹さんと此処で一緒に働けるよう約束をしてました。なので、木曾が来てくれたおかげでその約束を果たせてホッとしまたんですよ。……まあ、あと3人妹さんいるんですけどね。出来れば全員呼べれば良いんですが、人数制限もそうですけど一番の悩みは私のクソ運なんですよね……。全然来ねえ……。

 

他の妹さんどころか、新人さん一切来ない。何か5回中4回は川内の三姉妹さんの誰かの艦装が来る。どういうことなの……?

まあ、そんなクソ運なんですけど実は木曾が来てから4日後位に新しい艦むすさんを呼ぶことに成功してるんですよ。

 

 

************************

 

 

 

「はじめまして。利根型二番艦、筑摩と申します。」

 

「利根型?二番艦?」

 

「……?はいそうですけど、何か気になることでもあったのでしょうか?」

 

「いや……二番艦ということは妹さんでしょう?姉じゃないとか嘘でしょう……?」

 

「???」

 

 

出会い頭、中々……いや結構失礼であった。もう大分此処の鎮守府に慣れてきたのか擦れたのかはどっちでも良いが、下心一切無しとは言え人の容姿(+中身)を比較するのは大変失礼。……まあ、気持ちは分かるが。

 

 

しかし、いつまでも人をジロジロ見るのは失礼、更にあっちは挨拶したのに提督は挨拶を返していないのだ。物凄く失礼である。「いやあ~筑摩さん。よく来てくれました。私此処の鎮守府の提督で―――」と返そうとしたとき、廊下からドタドタドタと誰かが此方に向かって走ってきているようだ。

 

緊急の用事がない時は廊下は走るなよと一言注意してやらねばと思い扉に近づく提督。

 

 

―――そして勢いよく開かれて顔を思い切りぶつける提督。「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーー!」と汚い泣き声を上げる提督。どれだけ鍛えようと目玉、玉々、そして鼻骨は無理だって刃○で習っていただろうに……。突然の事に咄嗟にガードしろと言われても難しいかもしれんが、大の男の大人のガチ泣きなど何処に需要があるというのか?さっさと泣き止んでほしいものである。

 

 

「お~い、提督よ~。おるか~?」

 

「と、利根姉さん!!?」

 

「ん……お?筑摩……?―――筑摩だーーー!!」

 

 

それはおいといて、痛みに悶える提督を視界に一切入れ無いくらいに妹と再開出来たのが嬉しかったのだろう。まるで大きなわんこが大好きなご主人さまに抱きつくように勢いよくその豊満な胸に飛び込んだ。―――姉の威厳とか良いのか?と思ってしまうがそう表現するのが一番しっくりするから仕方ない。

 

 

「はははは!!待っておったぞ筑摩!!一緒に戦えて吾輩は嬉しいぞ!!」

 

「私もよ、利根姉さん。―――でも、先ずは提督さんに言わなければいけないことがあるんじゃないかな?」

 

 

百合の合間に挟まる真似をしたら勇○郎に【が、ガイア!!??】される。森羅万象、どの世界・時代においても変わらぬ真実であり、クソザコ提督もそれが分かっているので邪魔は出来なかった。鼻が痛くてんな事に気をやれなかっただけともいうが。

 

 

「提督か……。あやつも幸せもんじゃのう。なんたって吾輩とお前さんがおれば、索敵の心配をしなくて良くなるからのう!!これほど心強いことはあろうか?いやない。そうじゃろう、筑摩!」

 

「今提督さんの最大の敵は利根姉さんよ?索敵失敗してるわよ、利根姉さん?」

 

 

「お前さん一体何を言ってるんだ?」と惚けた表情の利根であったが、筑摩の視線が気になってふと後ろに目をやって初めて提督の姿を発見し目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督……―――お主何やっとんじゃ?地べたに座り込んで。行儀が悪いぞ!」

 

「そうですね。行儀が悪いですね。でも、お鼻がね痛くて痛くて仕方ないの。―――冷やしたいからちょっと廊下の自販機で冷たいもの買ってきなさい。」

 

 

姉に再び会えたことは嬉しいが、さっきのやり取りで提督の今この鎮守府における立場というか、役目と言うか……。ぶっちゃけ振り回されてるよね~。……どうしよう。考えるまでもなく姉が上官に迷惑をかけていることに胃が少しだけ痛くなった気がした筑摩であった。

 

 

 

――――――――

 

――――――

 

―――――――

 

 

 

「そう言えば利根姉さん。提督さんを呼んでいたようですけど~……なにか用事があったんじゃないですか?」

 

 

あの後加害者である利根は被害者提督に示談金として、自販機から買ってきたばかりの冷えたコーラ缶を支払った。ぶつけられた鼻に当てて冷やしている提督を他所に姉妹の会話を楽しんでいた二人であったが、何か姉は提督に用事があって来たのではないのだろうかと思い出した。良かった。このまま姉妹の女子会で楽しんで――お開きとかなったら提督がぶつけられ損で哀れで仕方なくなる所であった。……まあ別にいっか!野郎が泣こうが女の子が笑顔なら!

 

 

「おー……そうじゃったそうじゃった。実は提督に相談事があってのう……。」

 

 

そういってツカツカと提督に近寄り―――コーラ缶を取り上げ勢いよく飲み始める。酷い!100円の缶ジュースさえ買うのに渋る位の手取りしか貰えてない提督にそれはあんまりである。

 

 

 

「ケプ……。――――実は提督に今日のおやつで頼みたいことがあったんじゃ。」

 

「なに、今日のおやついらないですって?」

 

「利根姉さん。提督さん怒ってますよ。ほら、早く謝って。」

 

 

 

流石のこれに一般よりも大分温厚な方の提督も怒りがちょっと有頂天になった。皆のおやつを作るまでこの怒りが収まる事を知らない。

 

 

 

「わ、分かった。謝るからおやつ抜きだけは……!」

 

「利根姉さん、泣くほどおやつが大事なの?」

 

 

メンタル面、提督としての指揮能力は未だクソ雑魚だがこの提督、料理だけは本当に上手いのである。

 

 

 

「別に泣かないまでも……じゃあ、反省した利根は次何をすれば良いか分かりますよね?」

 

「反省して、これからは真○丸見るのやめて直○を見ることにする……。」

 

「真○丸見終わってんじゃねえか……。お前さんが、ぶつけた、私の鼻を冷やす物を取ってこいってことでしょうが此処は!!」

 

「いひゃい!!いヒャいのじゃ!!は、はながのびる!!ま、まじでひゃめんか!!」

 

 

わからない子には鉄拳制裁……なんて出来る筈もなく。だからといってなあなあで済ませるつもりもない。

(もし、これがどうでも良い他人であったなら「そういうやつなんだ」と思って対応すればいいだけだが、何やかんやで絆されていっているのだろう。提督にとって目の前の困ったちゃんは既に身内であり、身内だからこそ怒らないといけない時は怒るのだ。)

 

提督は利根の鼻を指で挟んで引っ張って同じ痛みを与え、それに必死に抵抗する利根だがびくともしない。着任当初のboyだったら難なく抵抗判定成功からの反撃というコンボが出来たろうが、残念だったな!半日で軍人が音をあげる神通ブートキャンプもとい艦むす達の訓練に、いないのといるのとではやる気が全然違うということで結局参加させられることになってしまった提督のbodyは出来あがってきているのだ。

 

そりゃあ、艦装出されて本気で抵抗されたら赤子の手をひねるより簡単に鎮圧されるが、流石の利根もこんな阿呆なことで(しかも自分が悪い)本気だすはずもなし。それでもそこらの軍人が束になっても勝てないくらいの差があるはずだが……殆どの生物にとって弱点である鼻を押さえつけて大人しくさせるくらいには今の提督には造作もないのだ。いや~神通さんは提督をどうしたいのか分からなくなってきたな!

 

 

「(パッ!)まあ、鼻の痛みはもうこれで良いでしょう。いい加減話が進まないのもどうかと思いますし。それで?利根は私が作るおやつに何か不満でも?」

 

「う、うむ。いや、不満は無いんじゃがな……。―――さっきテレビに写ったばーむくーへんなるものを食べたいのじゃ!」

 

「今からバームクーヘン!?」

 

 

お手軽なやつは比較的(それでもド素人は無理)簡単だが……。テレビで見たと言ってるから利根が食べたいやつはあの専用の機械で何回も何回もくるくる回してつくる本格的なものだろう。

 

 

 

「駄目!もう今日のおやつは出来て冷蔵庫に入れてます!!」

 

「分かっておる、分かっておる。提督が吾輩たちのために今日はろーるけーきを作ってくれていることは吾輩もよく分かっておる。」

 

「いや、大学芋ですよ。勝手に捏造しないでください。」

 

 

薩摩芋が安く手に入ったのだ。そして提督だって偶にはお手軽なもので済ませたいのだ。

 

 

 

「提督よ……。大学芋とか、そんな手を抜いたものよりのう……?」

 

「大学芋、貴女が思っているより大変なんですよ?」

 

 

特に使った鍋を洗うのが一番大変。冷凍のやつで良くない?馬鹿野郎。あれ美味しいけどちょっとしか入ってないんやぞ。

 

 

「才能と技術、経験。お前さんの料理の腕は贔屓目なしで凄いと思っておる。じゃから吾輩としてはそれをもっと振る舞ってほしい。―――そしてもっと美味いものを食わせるのじゃ!!」

 

「図々しいと怒れば良いのか、腕を褒められて喜べば良いのかこれはどっちが正しいんでしょうか―――」

 

「まあ、肝心の指揮能力他、お上が求めておる提督として才能は相変わらずクソ雑魚じゃがな。」

 

「上げて叩き落とすのやめてくれません?分かってるけど、泣いている提督が貴女の目前にいるんですよ?」

 

 

提督とは艦娘たちをカリスマで従え、眼を見張る指揮等の能力で彼女たちを動かし深海棲艦から勝利をもぎ取る英雄である。それらの才能がない提督がどうなるか、喜べ目の前の彼を見ればよく知る事ができるぞ。ただの艦娘達の玩具だ。―――まあ、無能な働き者よりかはマシだし、出来ることは全部やって彼女たちを支えている所は立派だと思うし、他のビジネス関係しか築けていない提督たちよりか遥かにいい関係だと思うよ、うん。そう思っておかないと辛いぞクソ雑魚提督。

 

 

 

 

 

「話を戻してじゃ。おやつというのは午後からの士気を左右する大事なものじゃ。」

 

「利根姉さん、それはちょっと大げさな。おやつどころか1食抜いた位で戦意が落ちる程私達は弱く―――」

 

「黙れ小童が!!」

 

「ええー……?」

 

 

軍艦だったらいざしらず。今の彼女たちは艦娘―――そう、女の子である。美味いもの食べれるなら食べるし、逆に期待していた美味しいおやつを取り上げられたら拗ねる。

 

 

 

「だかのう……。ばーむか、ろーるか。うん、提督、お主の悩み分かるぞ。」

 

「大学芋……。」

 

「そこでじゃ!ここは一つ運試しで決めようぞ!!」

 

 

 

提督の言葉を一切合切無視した利根は、二枚の細長い紙―――先っぽにそれぞれ赤と青の丸が書かれたやつを取り出した。

 

 

 

「赤を引いたらばーむ。青を引いたらろーる。恨みっこなしの一発勝負でどうじゃ?」

 

 

 

「恨みも何も作るの私じゃないですか……」と呆れたように不満を漏らす提督であったが、ズイっと有無を言わさず出してくる紙切れを前に嫌々そうな顔で、しかしどちらか引かなければ進まない。仕方無しに自分から見て右側の方を引き抜こうと力を込めた。

 

 

 

「……利根。指離してくれないと抜けないんですが?」

 

「…………。」

 

 

くじを抜こうとしたが利根が指を離してくれなくて抜けない。ちょっと苛ついて力込めて無理に引き抜こうとするも、ビリっと小さな音が自分の指近くから聞こえてきたのでそれも出来ない。

 

何時までも離そうとしない利根に、「結局運試しと言っていたが、本当は食べたいものなど決まっていたんだな……」と、心のなかで呆れながら、「でも今日のおやつは大学芋だから。意味、無いけど……」と少し可哀想―――いやこれっぽちも可哀想と思わねえわ。そんなぶっきらぼうな気持ちでもう一枚の方を引っ張った。

 

 

 

 

「……利根。離しなさい。」

 

「………。」

 

 

 

いくら引いても離そうとしない利根に痺れを切らした提督は、ならばと思い筑摩に視線を向ける。「君がやれ。」そんなあったばかりの彼女にアイコンタクトを送るのは普通はちょっと厳しいとこだが、何かが共感したのだろう―――しいていうなら振り回され属性というのか。

 

ともあれ、提督の言いたいことを視線で理解した筑摩は提督と入れ替わり、今度は彼女が代わりに引っ張ることになった。一体、自分の何が悪かったのか?それとも久方ぶりの姉妹の再開―――軍艦としての記憶を持っているだけで、個人個人は別人のような、それとも魂かなんかに刻み込まれているのかわからんが―――に構いたいのかは知らんが、ともあれこれで話を進めれるな。まあ何言っても大学芋だが。

 

さてさて、さっさと利根をあしらって……はちょっと可哀想だと思った提督。仕方なし、大学芋に一品をつけよう。―――購買の駄菓子コーナーで安売りされていたところを多めに買ったポン菓子で良いか!と思いながら、くじを選んで今まさに引こうとしている筑摩を見守りながら―――

 

 

「利根姉さん、指離して!」

 

「―――――!」

 

 

まるでお気に入りの玩具を必死に取られまいとする大型犬みたいだ。休みの日のよく晴れた日に、広い公園でたまに見かけたなこんな光景と提督が懐かしんでいたが、人よりも力がある艦娘が二人がかりで引っ張るのだ。引っ張られているのが特別なものならまだしもただの紙だ。10秒も経たずにビリっと破れてしまった。

 

 

「利根姉さん……。一体何がしたいんですか……?」

 

 

筑摩には姉の気持ちが分からなかった。提督は利根の気持ちも考えもわかりたくなかった。今日の夕飯はなんにしようかしら?

 

 

「何がしたいじゃと?―――それは吾輩のセリフじゃ。」

 

「……え?」

 

「筑摩よ……。お前さんは、一日の気分を左右する大事なことを、運まかせで決めていいと本気で思っておるのか?」

 

「それは利根姉さんが―――」

 

「筑摩、吾輩は……悲しいぞ。」

 

「え……、え~……?」

 

 

真○丸ごっこをする利根に対し、「姉さんが始めたんじゃないの?」と困惑する筑摩。そんな彼女たちのやりとりに微笑ましい視線を向ける提督……いや、向けてないわ。「はよう、要件言えや」、そんなに親しくない者でも見たら分かるくらい分かりやすい表情だ。おやつの準備しなくちゃいけないのにこんな所で道草食わせるんじゃない、というかお菓子の材料代……提督の自腹何だけど!良いじゃん、もう大学芋で!

 

 

「良いか、筑摩と提督よ。」

 

「はよ言えや。」

 

「……何か怒ってない?ま、まあ良い。ともかく!吾輩が言いたいことはじゃな。ばーむ、ろーる、どちらを選んでも『あ~……やっぱあっちが良かったな……』と後悔するに決まっておる。じゃからな!」

 

 

つかつかとホワイトボードの所まで歩いていき、黒マジックで何か文字を書きなぐり、締めにバンッとボードを叩いた。

 

 

 

 

「此処は第三の選択――――パンケーキでどうじゃあ!!???」

 

「あんた結局パンケーキ食べたかっただけじゃあねえか!?」

 

 

 

パンケーキ食べたい。それを言うだけなのに、此処まで振り回されなきゃいかんのか?提督の胃と喉は無事ではないが、今日も鎮守府は平和であった。

 

 

 

 

「あいすくりーむとラムネも付けるんじゃあ!!」

 

「駄々こねるのやめて、利根姉さん!私、恥ずかしい!!」

 

 

 

平和であった(白目)

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

――――――――

 

――――――――

 

 

 

おまけ

 

 

 

「あれ、パンケーキじゃん?提督~、今日のおやつ大学芋じゃなかったの?いや、あたし提督の作るパンケーキ好きだから嬉しいけどさ。」

 

「あ、あ~……。いや、大学芋もあるんだ。あと、メロンソーダも用意してあります。」

 

「え!何か今日良いことでもあったの提督?太っ腹じゃん。」

 

「いや~……。まあ、そのう……子供の駄々こねには勝てんな~と……。」

 

「???」

 

 

 

終わり




遅れた理由
・ジョンストン堀り
・作戦までの準備
・春はすぐ眠くなる


まあ、そのう、なんだ。ごめんなさいorz


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とんだな……30日目 仲間編 その…これ本編じゃないですね 前編

最後に投稿したのが5月……?どう書いてったけ……?(痴呆)


 何か筑摩さんに初めて出会った事を思い出してたはずが、殆ど利根が出張ってたような……。ま、まあ良いでしょう。

 

それよりも新しく来てくれた最後の仲間。一ヶ月もあって3人目増えただけかよと思っちゃうかもしれませんが、仕方ないじゃないですか。建造できた艦装、筑摩さん以降新しいの来てくれなくて喚ばずに全部近代化改修に使っちゃったんですよ!しかも、駆け出し貧乏鎮守府ですからそうポンポンと建造できるわけもなく……。

 

そんな我が貧乏くじ運なし鎮守府ですが……な、ななな、なんと!先輩提督―――サタデー提督が空母艦娘さんの艦装を送ってくれたのです。

 

 

 

 

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「提督!艦むすの艦装が送られてきましたよ!!」

「へ……?え、何で?」

「ええっと、送り主は……『サタデー提督』さんからですね。」

「ああ……、そういえばそんな約束してましたね……。」

 

 サメ……あの夜のことは思い出さないようにしていたため、クソ雑魚提督はサタデー提督からの報酬の事をすっかり忘れてしまっていたのだ。いっそのこと報酬とか良いからあの日を無かったことにしたいくらいだ。そんな阿呆な事を考えていたクソ雑魚提督の渋った表情(※果物で酸っぱいやつに当たったときのような顔)に、「もっと嬉しそうな表情してくださいよ~」と女―――明石が困った顔で言う。

 

「提督に起きた悲しい事故なんぞ、新しい艦娘さんには関係ないんですからね。来たらまずは笑顔で出迎えましょう!」

「それはそうなんですが……少し待って貰えますか?今私の頭の中を鮫が泳いでいて笑顔がつくれないんですよ。」

「鮫をぶっ○す映画でも見てさっさとふっきてくださいよ、もう……。」

 

あの惨劇(?)の夜からクソ雑魚提督は鮫が嫌になっていた。あの時獲った鮫の肉は捨てる―――などという罰当たりはせずに勿論ちゃんと頂いた。艦娘たちだけでなく、厨房の人、売店の従業員、憲兵さんたち……鎮守府にいる人達に片っ端から振る舞った。兎にも角にも冷蔵庫に入れときたくなかった。鮫特有のアンモニア臭を嗅ぐだけでトラウマを刺激されるからだ。

―――結果、クソザコ提督の作る飯はめちゃんこ美味いことが広まり、艦むすさんだけでなく鎮守府勤務の人たちからねだられるようになってしまったが、それはどうでもいいことである。……いや、憲兵お前さんたちは駄目やろう?

 

「さっき届いたものを確認したんですが、な、ななな、なんと!」

「なんと?」

「空母です。しかも正規空母―――の上の上!一航戦【赤城】の艦装です!!」

「なんとおおおお!!!??」

 

一航戦【赤城】。特に軍事オタクでもなかった提督でも知っているビックネームな空母である。決して鮫を引換券に変えて譲ってもらえる艦むすでは無い。

 

「……ちょっと太っ腹過ぎませんかね?」

「期待されているってことじゃないですかね~?」

「本心で言ってるんですか?」

「…………テヘ♪」

「ハハハ。こやつめ。」

 

最早指揮官としての能力はさじを投げられてしまった位には分かっているつもりだが、着任間もない頃に比べれば少しはまともになったのだ。……ただ不測、重要な戦いの時は指揮系統は旗艦に全て丸投げしているが。

 

「まあまあ。私的には大破状態では絶対進軍させないだけでも提督として花丸ですよ。」

「そんな大前提な、至極当たり前のことで褒められてもね……。」

「(結構いるんだよな~……)」

 

「いや、多分大丈夫だろう」と進撃して轟沈、からの心病んで(提督or人生)辞めていくケースが今なお頻繁に起こっているのだ。その点考えれば明石のクソザコ提督への高評価も納得はできるだろう。……身内贔屓で大分甘いが。

 

「という訳で早速赤城さんを呼びましょうよ~。」

「まあ、待ってください。ちょっと片付けますから。」

「待つのは良いんですけど……提督、こんなところ(・・・・・・)で何をしているんですか?」

 

こんなところ───明石がそういうのも無理はない。実の所、彼女らが会話していた場所だが屋内ではなく、外……船着き場である。艦むすさん達は専用のカタパルト(?)から出撃、帰還するので提督がこんなところに来るのは来客をお出迎えするくらいなもの。───なのだが……。

 

「妖精さん製の簡易キッチンは持ち運び楽なだけでなく、お片付け簡単で良いですね~。」

「いや、あんたなに出店出してんですか?」

 

そこにあったのは運動会とかで使われる日除け用のテント───「たこ焼き」「東京カステラ」「箸巻き」とかの文字がデカデカと縫われてたらお祭りでよく見る店である。訝しむ、というより呆れた目で見てくる明石に「まあまあ、これでも食べてください。余り物ですから冷めてますけど。」と言って適当な英語が羅列されている紙に包まれたものを差し出した。

 

「これは……バーガーですか?」

 

包を開くと出てきたのはバーガー───パティの代わりにフィッシュフライを濃厚ソースとタルタルソース、トマトとチーズが挟んである。余り物だから出来たてではないのが残念だが、それでも見た目匂いどれも食欲を刺激してくる。幸いな事に、明石は今日朝食はドリンクタイプの栄養ゼリーだけだった。もし、朝食がっつり取っていたら食欲なぞ湧かなかっただろう。早速一口、男と比べると小さな口かぶり付く。料理を美味しそうに食べる美少女の姿はいとをかしである。

 

「───!美味しい!!凄く美味しいですよ提督さん!!パンズも凄く美味しいですけど、この魚のフライ……このソースとの相性の良さ、良いですね~!!」

「ああ、それサメ肉なんだ。」

「また鮫ですか!!??」

 

すまない、また鮫なんだ。

 

「いや……私だって本当は見るのも嫌ですよ。でもですね?鮫の料理で飯を食ってたものとしては素材を捨てるわけにはいかないんですよ。」

「それで出店……あれ?鎮守府で全部振る舞った筈では?」

「木曽が大量に釣ってきまして……。」

「責任もって全部食わせましょうよ。」

 

とはいうが、鮫は一匹一匹が比較的大きいから全部食えというのは酷な話ではある。なので少しでも冷蔵庫のスペースを開けるために、暇な時はこうして鎮守府外でも調理したサメ肉を配っているクソザコ提督であった。

 

「それより早く片付けて赤城さん迎えましょうよ。」

「ええ、そうですね。」

 

最悪、サメ肉はフライにしたやつをいっきに揚げて、それを食堂とかで無料提供したら処理は出来る。ただ、出来れば料理全般に言えることだが特に揚げ物は出来たて───は無理でもせめて油がベチャっとなる前に食べてほしいものである。───すいません~!コンビニのホットスナックって何時に行けば出来たて食べれるんですか?夜行って一つ余ってたから買ったら後悔したよ。そんなどうでもいい話は置いておいて場面を戻そう。

 

出店のテントをパッパと片付け、残ったのはキャスター付きの簡易キッチン、そしてテーブルと椅子───折りたたみタイプのやつだ。片付けるのに一分もかからないだろうそれらに手をつけようとしたときであった。

 

「待った!そこの店主!」

 

動かした手を止め、声のした方を振り向く。其処にいたのは一人の長身の女性。

黄金色の髪、碧眼……日本では滅多に、いや海外に行こうが見れんだろう美女が其処にいた。

 

 

 

 

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一瞬見惚れてしまい呆けた間抜け面を晒すクソ雑魚提督。容姿が阿呆みたいに高い娘たちで目が肥えていたとはいえ、金髪碧眼の王道外国美人が心の準備もせずに突然現れたらこうもなろう。

 

とはいえ、それも一瞬。少なくとも、すぐ隣にいる明石が気付けない位だ。この鎮守府に来てから毎日美少女と顔合わせしているおかげで一般人と比べ少しは耐性が付いたようである。

 

「て、提督……!?あの人───艦娘は【ネルソン】ですよ!うわあ……私生で初めて見ちゃいましたよ。」

「【ネルソン】……。有名人なんですか……?」

 

まるで大御所の芸能人に出会ったファンみたいな反応をしている明石、一方「サメ映画で真っ先に食われてそう」位しか分からない提督は明石にこっそりと尋ねた。

 

「ネルソンて言えばビッグ7ですよ、ビッグ7。此処日本で言えば戦艦【長門】がその一人だと言えば凄さが分かりますよね?」

「そいつは凄いですね……。サイン、欲しいですね……。」

 

戦艦長門と言えば日本を代表する艦の一隻。「日本を象徴する戦艦は大和!!」という人がいれば「いやいや、長門だろう!」と意見が割れるくらい有名な戦艦だ。そんな長門と並ぶと言われれば、正直日本艦しかよく知らないクソ雑魚提督の低能な脳みそでもどれだけ凄い戦艦なのか察することだろう。

 

「サインか!良いぞ!」

 

さすがビッグ7だ。懐も何もかも大きい。あのネルソンからサインを貰えることになり、明石はホームランボールを取った観客の様に喜んだ。サラサラっと(ネルソンが持参していた色紙に……なぜ持っているのか?おそらくビックセブンだからだろう)サインを書いてもらった明石。じゃあ今度は自分もと思い嬉々とした表情のクソザコ提督にもサインを書いて渡そうとするネルソンであったがふっと何か思い出したのだろう。漫画なら此処で頭にはてなマークがついてそうな不思議そうな目をしながら明石に問いかけた。

 

「む?そう言えば何故明石がこんな所にいるのだ?お前たちは基本部屋から出てこないのではないか?」

「それ……。そっちの鎮守府の私が唯の引きこもりなだけなのでは?あとこんな所にいる理由は、此方の私達の提督を呼びに来たからですよ。」

「ほう……。貴様が此処の提督か。……ふむ。」

 

さっきまであまり関心が無さそうなのが一変。興味深そうな目でクソ雑魚提督をみやるネルソンの視線に何処か居心地の悪さを感じる。そりゃあこんな美人の強そうな眼力で見られたら大抵の男はタジタジですよ。

 

「余の提督には及ばないが中々良い面構えだ。」

「ど、どうも……。」

「だが!何処か優柔不断そうな男の面だ!具体的には己の艦むすに指揮系統ぶん投げるようなそんな面だ!!」

「そんなことも初対面で分かるんですか!?」

「当然だ!!何故なら余はビックセブンだからな!!」

「凄いや!ビックセブン!!サイン下さい!!」

 

「いや、そこは少しは悔しがるとこですよ提督……」と呆れた目で見やる明石をよそに、キラキラした尊敬の眼差しで見る提督。が、ネルソンはそんな提督にお手上げポーズで首を横に振った。

 

「駄目だ!貴様はメジャーリーガーのホームランボールを躊躇いなくオークションに出しそうな面をしている。」

「それは言いがかりでは!?」

「いいや……。余はそれを実際にやった男を知っておる。そやつの名は『サタデー提督』と言ってな。余のアドミラルの戦友なのだが、そやつと貴様は何処か似た顔の相を感じる。」

「名誉毀損ですよ!?訴えて勝ちますよ!!?」

「二人共そろそろ話を戻してくれませんかね?───ねえ!?」

 

話が脱線し始めて思わず止めにはいる明石。そんな明石に思うところがあったのだろうか「うむ、すまぬ」と素直に謝るネルソン。言いたいことがあるがビックセブンが謝罪したのだ。駆け出しの雑魚提督にこれ以上何かいう度胸などありはしなかった。

 




中途半端なところで切ってすいませんorz


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