恋姫と錬金術師 (black5)
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欠片の断片

 

 

 

 

二つの物語が交差するとき新たな外史が生まれる

そして運命の悪戯によって会う事が出来なかったモノ、会う事が無かったモノ、交わるはずの無い

二つの物語の歯車が動き出す

 

 

 

飲食店が立ち並ぶ屋台街でイスに座り店主と話をしている二人。この暑い中、赤いコートに金髪の

三つ編み、手には白い手袋の小柄の男性、名前はエドワード・エルリック。もう一人はフルプレー

トに身を包んだ大柄な男性、額には20センチほどの角が生えてる。名前をアルフォンス・エル

リック。二人は兄弟、見た目とは反してアルフォンスの方が弟だ。食事をしているのは赤いコート

を着ている兄のエドワード。鎧の男性であるアルフォンスは店主から情報を仕入れている最中のよ

うだ。

 

 

 

「さっきから街中で演説している人が居ますけど、宗教勧誘かなんかですか?」

 

 

「あぁ、あれは太平道の大賢良師って方の代理人だそうだ」

 

 

赤いバンダナを頭に巻いて口ひげを生やした店主がそう答える

 

 

「太平道の大賢良師?なんだそりゃ?」

 

 

興味を持ったのか食事をしていた兄のエドワードの方が横から問いかける

 

 

「いや・・・俺に取ってはアンタ達のほうがなんだこりゃ?って感じなんだか、あんた等大道芸人

かなんかかい?」

 

 

二人の容姿の差が気になる、この国でフルプレートはまずお目にかかることはない。そんなやり取

りにエドワードは口から食事を吹き出し答えた

 

 

「あのなぁおっちゃん!俺達のどこが大道芸人に見えるって言うんだよ!」

 

 

「いや、どう見たってそうとしか・・・あんたらここいらじゃ見ない顔だからな、旅行か何かかい

?」

 

 

「んー探し物をちょっとね、ところでさっきの代理人はなに?」

 

 

「張角様を知らんのかい?」

 

 

 

「「誰?」」

 

二人揃ってそう答えた

 

 

 

「奇跡の業、太平道の大賢良師、張角様さ!数年前にこの街に現れて人々に神の道を解いてくださ

った素晴らしい方さ!そりゃもうすごいのなんの、ありゃ本当に奇跡、神の御業さね!って聞いて

ねぇーなボウズ」

 

 

「うん。興味ないし。」

 

 

机に顎を乗せダルそうに答えるエドワード

 

 

「ごちそーさん!んじゃアル!行くか!」

 

 

食事を終えアルフォンスに声をかけイスから立ち上がる二人。すると身長が大きい弟の頭がカウンタ

ーの上の棚にあたって壁に飾ってあった装飾品が落ち音を立てて壊れた。店主が叫び二人に苦言し

 

「あぁ!!ちょっと!!困るよお客さん!だいたいそんな鎧姿で歩いてるから・・・」

 

 

アルフォンスが直ぐに壊れた装飾品を一か所に集め始めて地面に模様を描き始めた

 

 

「すいませんすぐに直しますから」

 

 

「直すからって・・・どうすんだよ・・・」

 

 

ため息を付きながらアルフォンスのやることをカウンター越しにあきれた様子で眺める店主

 

 

 

「まぁ見てなって」

 

 

「よし!そんじゃいきまーす」

 

 

 

その掛け声と共に先ほどアルフォンスが書いていた模様から雷のような光が走り小さく爆発音なようなものが聞こえた

 

 

それをみた店主は思わず声を上げる

 

 

「っな!こりゃ驚いた・・・あんた【奇跡の業】が使えるのかい!?」

 

 

「なんだそりゃ?俺達は錬金術師だ!エルリック兄弟と言えば結構名が通ってるんだけどね」

 

 

「エルリック・・・エルリック兄弟っていや兄の方がたしか、国家錬金術師の”鋼の錬金術師”エドワード・エルリック!!いやぁーあんたが噂の天才錬金術師か!なるほどこんな鎧を着ているからふたつ名が”鋼”なのか」

 

 

 

今のやり取りを見ていた住人が一斉にアルフォンスに駆け寄り声をかける。

 

 

「あの・・・ボクじゃなくてあっちが兄です」

 

 

「へ?」

 

「あっちのちっこいのが?」

 

 

住人からそんな声が聞こえてきた!

 

 

「誰が豆つぶドちびか!!!!!」

 

 

ちゃぶ台返しをする仕草をしながら怒りをあらわにするエドワード

 

 

「ボクはアルフォンス・エルリックです」

 

 

「そしてオレが!”鋼の錬金術師”エドワード・エルリックだ!」

 

 

怒りが収まらないエドワードは中指を立ててそう自己紹介をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーっ!大きな鎧が歩いて動いているのですよ!稟ちゃん!稟ちゃん!これ!面白いですよぉ~

こっちにきて一緒に見ましょうよ!」

 

 

通りの反対側から少女の声が響いた

 

 

「こら!風!勝手に歩き回らないの!それに初対面の方に対して無礼な物言いは止めなさい。そこの方本当に申し訳な・・・って!デカッ!」

 

 

稟と呼ばれた女性は髪を後ろアップで纏め眼鏡姿。少女に注意をしながら近寄って来るがアルフォンスの姿を発見すると自然と声が漏れていた

 

 

「ほらほら!稟ちゃん!これ!面白いでしょ!?」

 

 

風と呼ばれた少女は金髪のウェーブがかかった綺麗な長髪。手にはアメを持ち何故か頭には人形が乗っている

 

興味深々なようでアルフォンスの周りをクルクルと回って確かめている

 

 

 

「ねぇねぇ!星ちゃんもそうおもいませんかぁ~?」

 

 

 

星と呼ばれた女性は自分が呼ばれたことに ん? と首を傾げ近寄ってきた。

ショートカットの髪に一遍だけ髪を纏めた長髪が目立つ、手には二股に分かれた槍を持つ

 

 

 

「ふむ・・・これはこれは!立派な鎧ですな!今まで旅をして来たがこれは中々」

 

 

星もアゴに手をかけふむふむと言いながらアルフォンスの周りをウロウロしながら値踏みをしていた

 

 

 

 

「え・・・えっと・・・!あはは・・・」

 

 

二人の女性に驚きながらも笑うことしかできないアルフォンス

 

 

 

「なんだなんだ!うちの弟をコレ扱いしないでもらえますか?オチビさん?」

 

 

 

「自分だって対して変わらないくらいのチビじゃねーか!」

 

 

少女とは違う声どこからともなく響いた

 

 

 

「こらこら!宝譿!事実であっても言葉にしてはいけないこともあるのですよぉ?」

 

 

 

宝譿(ほうけい)と呼ばれたのは風と言う少女の頭に乗っている人形である

その人形に向かって注意をしたのだ。それを聞いたエドワードは・・・

 

 

 

 

 

「なんだと!コノヤロ!!誰がウルトラミジンコドチビか!!頭の上の人形で腹話術してんじゃねーよ!!」

 

 

 

少女に指を向け地団太を踏みながら文句を言うのだった

 

 

 

「うるとら?・・・って、そこまで自虐的にならないでもいいでしょうに、それにしても見慣れない格好の方々ですね?旅の途中でしょうか?風もいい加減にしてください」

 

 

稟がそう言うとアルフォンスの周りをウロウロしていた風が稟の所へ戻ってきた

 

 

 

 

「おうおう!兄ちゃん!威勢が良いじゃねぇーか!俺様とやろーってのか?」

 

 

風の頭からエドワードに向かって宝譿が喧嘩を売る形になる

 

 

 

 

「すいません。バカ兄で!僕達は、ずっとずっと西の国から来ました。」

 

 

 

風・・・いや宝譿とエドワードの口喧嘩をしている横からアルフォンスが入ってくる

 

 

 

 

 

「西から!?私達にはまだまだ未開の国、っは!自己紹介が遅れました。私、郭嘉と申します、あちらの連れは人形が乗っているのが程昱で槍を持っている方が趙雲と言います。私達も旅の途中、もし良ければ西の国の事を聞かせてもらえないでしょうか?」

 

 

 

自己紹介をする稟に疑問を持った二人。その疑問に対してエドワードが質問をした

 

 

 

「ん?あんた達が呼び合っている名前と今聞いた名前が違うようだが?たしかそのチビの事を風って・・・」

 

 

 

そう名前をつぶやいた瞬間、風は驚きの声を上げる

 

「っひあ!?」

 

 

「貴様!!」

 

 

 

その瞬間音もなくエドワードの目の前に突き立てられたのは星の二股の槍の尖端だった

 

 

「っっな!!」

 

 

「お主・・・どこの世間知らずの貴族かは知らんが、いきなり人の真名を呼ぶとはどう言う了見だ!!」

 

 

 

先ほどは落ち着いていた星が余裕のない怒りでエドワードを睨みつける

 

 

 

「って・・・訂正・・・してください!」

 

 

悲しそうな顔をしながらエドワードへと風が問いかけた

 

 

 

 

「っな・・・なんなんだ!?」

 

 

「訂正してください!!」

 

 

こんどは稟がエドワードへと告げると泣きそうになりながら風が稟へと近寄る

 

 

(なんなんだこの子達、さっきまでは普通に話をしていたのに、名前一つ呼んだだけでこんなにも殺気だっているんだ)

 

「わ、分かった!訂正する!訂正するから!!」

 

 

 

 

「・・・結構」

 

 

エドワードの訂正に対して槍を下す星すると風も安心したかのようにため息をついた

 

 

「はぁーーーーーいきなり真名で呼ぶなんでびっくりしちゃいましたよぉ」

 

 

 

 

「ま、真名?でもあんた達、その名で呼び合ってたんじゃ・・・」

 

 

 

エドワードの問いに対し稟が答える

 

 

 

「真名と言うものは己が認めた者のみが呼んでいい名前です。相手の真名を知っていてもそれを口にしたら殺されてもしかたないのですよ?」

 

 

 

「・・・んだそれ!所見殺し過ぎるだろ!!と、とりあえずは呼んだらダメな名前って言うのは分かった。」

 

 

 

「先ほど伝えている名前であれば呼んでも構いませんので次からはそちらでお呼びください」

 

 

眼鏡のズレを直しながら稟は事務的に説明する

 

 

 

「兄さん・・・他国の文化だから仕方ないよ!みなさんも兄が失礼なことをしたみたいですいませんでした」

 

 

 

アルフォンスが三人の前へと進み頭を下げて謝罪する

 

 

「・・・異国の者ならとは言え、今から入るこの国では気を付けた方がいい」

 

 

槍の構えを解き星が二人へと助言した。

 

 

 

 

「了解っと!ってかこの国の人達なら少し話を聞かせてくれないか?」

 

 

 

エドワードは今から入る国の知識をこの女性3人から聞こうと考えていた

(こんな真名一つでホイホイ殺されてたまるかってんだ・・・)

 

 

「そうですね!私も西の国には興味がありますので少しお話をさせて頂きたいと思います!」

 

 

 

「はいはーい!じゃあじゃあ!お兄さんお姉さん達!うちの宿に泊まってかないかい?」

 

 

 

いきなり腰を叩かれたエドワードは声のする方へと振り返るとそこには1人の女の子が立っていた

 

 

「話をするのにも場所は必要でしょ?だったらうちの宿使ってよ!!んでわ!5名様ごあんなーい!!おとーさん!お客さん!金づる!!」

 

 

 

「って人の話を聞けよ!!金ヅルってなんだよ!!」

 

 

エドワードの服つかまれて女の子に引っ張られて行く。その後ろを4人は苦笑いをしながらついていくのだった

 

 

 

 



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欠片の断片その2

章の投稿ズレを変更しました。


欠片の断片その2

 

 

「ようこそ!私はその子、タオの父ででチェンと申します。本日はうちの宿にお泊りいただきありがとうな」

 

 

 

エドワードの服を引っ張り連れてこられた宿の入り口で5人を迎えてくれたのは屈強な体の男性だった

 

 

 

「ホコリっぽくて悪いが炭鉱の給料が少ないんで店と二束のワラジってわけよ」

 

 

「何言ってんだ親方!その少ない給料を困っている奴にすぐ分けちまうくせによう!」

 

 

「うるせいな!文句あるなら酒代のツケをさっさと払いやがれ!!」

 

 

 

チェンは宿のほかにも炭鉱で働き、現場監督のような職についている。昼間の仕事が終わり夫婦で経営する宿の手伝いを夜に行っていた

 

その宿の一階は酒場となっており、炭鉱で働く部下を招き入れ、安く提供していた。そんなやり取りを見ていた5人の下にチェンの妻である女性が声をかけた

 

 

 

「1泊2食の5人分ね!」

 

 

「おいボウズ!うちは高けぇぞ!」

 

 

「ご心配なく、結構持ってるから、んでいくら?」

 

 

酒を持ったチェンが5人をテーブルへと案内し答えた

 

 

「50万!」

 

 

 

「ぼったくりもいいトコじゃねーか!!ひとケタ違うじゃねーか!!」

 

 

「だから、うちは高けぇって言ったろ?滅多に来ない外の国の観光客にはしっかり金を落としてってもらわねぇとな」

 

 

 

「あんまりカッカすんなよ!兄ちゃんそんなに怒ってると伸びるものも伸びねーぞ!」

 

 

店主とエドワードのやり取りを見ていた風・・・宝譿が口を挟んだ

 

 

 

 

「ブッコロス!!」

 

「ちょっと兄さんやめなよ」

 

 

「止めなさい!風!本当に申し訳ない。」

 

 

 

アルフォンスがエドワードをたしなめ稟は風を制しする

 

 

「冗談じゃない!他あたるわ!」

 

 

席を立ち宿を出ていこうとするエドワードの頭を店主であるチェンは鷲掴みにし無理矢理に座らせた

 

 

「逃がすかよ金づる!!」

 

「諦めてよお兄ちゃん!他所に行ってもこことそんなに変わらないよ?」

 

 

タオがエドワードへと告げる

 

 

 

「マジかよ・・・全然足りねぇーじゃないか!こうなったら錬金術でこの石ころを金に変えてやろうか!」

 

「やめてよ!金の錬成は国家錬金法で禁止されてるんでしょ!」

 

「バレなきゃ良いんだよ!バレなきゃ!フフフフフっ」

 

「兄さんあくどいよ」

 

 

そんな二人のやり取りをみていたタオが突然声を上げる

 

 

「お兄ちゃん錬金術師ってなーに?」

 

 

 

 

「あの~さっきから錬金術ってなんなんでしょうか?学的手法を用いて物質的に内服薬の丹を得ようとする外丹術ものなのでしょうか?もしくわ気を整える呼吸法や瞑想等の身体操作で、体内の丹田において仙丹を練ることにより仙人を目指す内丹術・・・」

 

 

 

稟は先ほどから二人の話を聞きたくてうずうずしているがチェンとエドワードのやり取りで全然口を挟めなかったが意を決し問うた

 

 

 

 

「えっと・・・郭嘉さんだっけ?錬金術ってのはな、無制限になんでも出せる便利な術だと思われてるんだが実際にはきちんと法則があって、おおざっぱに言えば質量保存の法則と自然摂理の法則だな!術師の中には四大元素や三原質を引き合いに出す人もいるけど」

 

 

 

「ふむ。まったくわからん。」

 

酒を飲みながら沈黙していた星

 

 

「質量が一の物からは同じく一の物しか、水の性質の物からは同じく水属性の物しか錬成できないってこと」

 

 

アルフォンスが星に対し補足をした

 

 

 

「つまり錬金術の基本は【等価交換】何かを得ようとするならそれと同等の代価が必要って事だ!」

 

 

 

「もぐもぐ・・・なら、その話を聞く限りでは、石を金に変えることも、物を生み出すことも簡単なんでしょうねぇ~」

 

 

食事をしながら風がそう言うと

 

 

 

「金を錬成するのは法で禁止されている」

 

 

「・・・そうか!」

 

 

エドワードの言葉をもとに思考していた稟がつぶやく

 

 

 

「何かわかったのか稟?」

 

 

「はい!きっと金を錬成すると貨幣価値の暴落・・・経済混乱を防ぐための法ではないでしょうか?確か・・・呉の抱朴子と言う方の本に書かれていたんですか」

 

 

「ちなみに貴金属も含まれる。その辺の石ころ全部が金になりゃ錬金術師は金持ちだ」

 

 

 

 

 

錬金術とはなにか?聞けばわかるのか?稟はこの話を仮説を立てながら推理をしていく、ブツブツ呟きながら考えていると宿のドアが壊され、二人の供を連れて一人の武将がやってきた

 

 

 

 

「ったく!相変わらず汚い店ですこと!チェンさん」

 

 

「これはこれは袁紹様!こんなむさ苦しいところへようこそ」

 

 

皮肉たっぷりに袁紹と呼ばれる武将へとあいさつをするチェン

 

 

 

「ふん!御託はいいですわ!それより、このところ献上品を滞納してるようですけど、貴方の所に限らず街全体に言えるようですけども・・・」

 

 

「すいませんぇどうにも稼ぎが少ないもんで、こうやって昼も夜も働いてるってわけなんですが」

 

 

「へぇ~そうですの?そのくせまだ酒をたしなむだけの生活の余裕はありますのね?でわもう少し献上品を増やしても良いと言うことですわね」

 

 

 

「っな!ふざけんじゃねーぞ!クルクル頭!雑巾で顔でも拭いて出直せ!」

 

 

 

 

袁紹の言葉に我慢が出来ない従業員達は立ち上がり詰め寄ったすると

 

 

 

 

「めんどくせぇーな、悪いけど大人しくしてなよっと!!」

 

 

袁紹が連れてきた供の一人に文醜と呼ばれる大剣を装備した武将が立ち上がった二人を軽々と投げ飛ばした

 

 

 

「見せしめですわ!猪々子さん殺ってしまいなさい」

 

 

「はーい!麗羽様~!ごめんね、楽に逝かせてあげるからね」

 

 

 

剣を取り出し倒れた男性へと振りかぶる、もう駄目だと言うとき、間合いにエドワードが右手で大剣を防いだ。鈍い金属音が響き猪々子が驚いた表情をする

 

 

 

「なんですの!?その小僧は・・・あなたには関係ありませんでしょ?下がってなさい!」

 

 

「いやー袁紹様が見えてるってんで挨拶しとこーかなっと!ほれ!これ見てみ?」

 

 

エドワードはそう言うとコートの裏から一通の手紙を袁紹へと差し出した

 

 

 

 

「これが・・・なんですの?こ!これは!!後漢の第12代皇帝霊帝様の勅書!!」

 

 

 

 

「「「な!」」」

 

 

袁紹の言葉に反応したのは、風、稟、星の三人だった

 

 

 

 

「なぜ、エドワードさんは霊帝様の勅書をお持ちになられているのかしら・・・」

 

「はぁ~人は見かけに寄らないとはこのことですねぇ~」

 

 

 

稟はあり得ないと言う顔で、手紙とエドワード見つめている、風も驚いた様子でじっと手紙を見ていた

 

 

しかし星とアルフォンスはだけは冷静に状況を確かめているのだった

 

 

 

「麗羽様~なんなんですこのガキ?」

 

 

麗羽とは袁紹の真名で、その真名を呼べるということはこの文醜も認められた者の1人

 

そしてもう一人の供がようやく口を開いた

 

 

「文ちゃん!この勅書がわからないの?勅書ってのは霊帝様による直々の手紙の事だよ!」

 

 

文ちゃんと呼んだ武将は顔良。こちらも袁紹の部下である、真名は斗詩。

 

 

 

 

「マジっすか?そんなに偉いんですかあのちっこいのが?」

 

 

「これは、好機ですわ!ここで印象を良くしていれば皇帝にコネを作れるかもしれませんわ!」

 

 

 

 

ニヤリと笑みを浮かべ袁紹はエドワードの差し出す手紙を受け取ったのだった」



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欠片の断片その3

 

 

 

 

「部下が失礼いたしました!えどわーどさん!私は濮陽の令に任命しております!袁本初と申します。こうして出会えたのも何かの縁!さぁさぁ~こんな汚い所にいらっしゃらないで、こんな田舎ではありますが私が使っております立派な宿へご案内差し上げますわ」

 

 

エドワードからの手紙を受け取り、封を開けることなく懐へとしまい込み、両手を広げながら歓迎の言葉を袁紹は伝えた

 

 

 

「そんじゃお願いしますかね!ここじゃうるさい奴等がたくさんいて落ち着かないんでね」

 

 

「え?ちょっと兄さん!?」

 

 

「えぇさぁさぁ!参りましょう!それとチェンさん!献上品はしっかりと用意して頂きます。でわ!斗詩さん猪々子さん行きますわよ」

 

 

「はーい!行こうぜ斗詩」

 

「うん文ちゃん!でわ失礼しました。」

 

 

麗羽を先頭にエドワード、猪々子、斗詩と出て行き、取り残された人々は口々に不満を言い合っている

 

 

「きぃぃ!!!ムカツク!あのクルクル頭!!本当に頭にきます!」

 

「タオやめなさい!聞かれたらお前まで切られてしまう」

 

「お父さん・・・でも!」

 

 

そんなやりとりを他所に郭嘉達は今見た光景を話し合っていた

 

 

 

 

「なぜ、エドワードさんは劉弁様の勅書をお持ちになられているのかしら・・・霊帝様とどのようなつながりが?」

 

「ですねぇー人は見かけに寄らないとはこのことですけど・・・」

 

 

 

そこで星が誰にも聞こえない声で(本物ならばな・・・)と呟いた横でアルフォンスは頭を抱えて悩むしかなかった

 

 

 

 

それからエドワードは袁紹の屋敷へと案内され食事の用意をすると強引にテーブルへと着かされた

 

 

「さぁさぁ、遠慮なさらずにどんどん召し上がってくださいまし!」

 

 

「ここの屋敷の方はずいぶんと豪華な食事をされているのですね!街はあんな状態なのに」

 

 

「いやですわ!お恥ずかしい話なんですけども、献上品の徴収がままなりませんので困っております。オマケに先ほどのような無礼を働く民も少なからずおりまして・・・お恥ずかしい限りですわ」

 

 

「献上品の義務を怠っておきながら権利ばかり主張すると言うわけですね?」

 

 

「その通りですわ!さすがエドワード様!話が分かるお方です事!この世は義務あっての権利ですから・・・っというわけでえどわーど様!この世の理としてこちらを受け取ってくださいまし」

 

 

袁紹は席を立ち、エドワードが食事をする席とは別の場所のテーブルへと金が入った袋を置いた

 

 

「えどわーど様は霊帝様からの勅使をお持ちということで、都の上の方々達に顔がきくと思われますわ。これはほんの気持ちですけども」

 

 

「これは・・・いわゆる【ワイロ】と言うやつでは?」

 

 

「いえいえ・・・気持ち・・・ですわ!えどわーどさんもなにかと入用でしょうから、少し出助けができればと思いまして!私は一生をこんな田舎の役員程度で終わりたくはないのですわ。お分かりいただけますでしょうか?」

 

 

 

それから袁紹に無理矢理に金の入った袋を渡され斗詩に部屋へと案内された。

 

 

「えどわーど様ごゆっくりおやすみくださいませ。何かありました、そちらの鈴を鳴らしてください。屋敷の使用人がすぐに参りますので。でわ」

 

 

 

 

 

 

斗詩は案内を終え麗羽と猪々子が待つ部屋へと向かった

 

 

 

「麗羽様ただいま戻りました。ちゃんとお部屋まで案内しましたよ!」

 

 

「ご苦労様ですわ!あの方には気分良く帰っていただかなければなりません。ところで猪々子さん、さっきの話を斗詩さんにも伝えてくださる?」

 

 

「はーい!とし~さっきのチェンの店なんだけどな、最近、ふおんぶんし?が集まって不平を騒ぎ立ててるようなんだよ」

 

 

「まったく私の完璧なやり方になんの不満があるのでしょうか!?あの方々は前々から何かと反抗的ですわ!もうめんどうですわね!あの店、焼き払ってしまいましょうか」

 

 

 

麗羽は二人にそう命令するとおーほっほっほと高笑いをしながら自室へと戻っていった

 

命令された二人は武器を取り夜の暗闇を抜けチェンの店へと向かい建物に火をつけるのであった

 

 

 

夜が明け弟の様子を見てくると言いチェンの宿へと向かったエドワード。そこには焼け落ちたチェンの店と外で消化作業をしていたであろう人々を見つけた

 

 

「ひどい・・・何もここまでしなくても」

 

 

「稟ちゃん、昨日の夜、袁紹さんの部下達がこの店の周りをうろうろしてる姿を見たという人が」

 

 

「私がもう少し早めに気づいて居れば、火を消すこともできただろうに!店主・・・すまん」

 

 

趙雲は酒を飲んでいた時にその場に居たチェンの部下達と意気投合し別の場所へと飲みに行っていたその

後、帰るときに宿の場所が明るいことに気づき皆を起こし消化を試みていた

 

 

「ねぇ・・・エドワードさん。お父さんが宿をやっていたのはこの街をすくいかたったからなんだ。貴方は国の偉い錬金術師なんでしょ!?ならこの崩れた建物を直してお父さんを・・・街を救って見せてよ!」

 

 

タオはエドワードの前へと進み、悔しさから涙を流し、両手を力いっぱい握りしめながら見つめていた

 

 

 

 

「・・・だめだ」

 

 

そんなタオの言葉にもエドワードは一言、否定するだけだった

 

 

「なんで!?なんでなの!?いいじゃない!!減るもんじゃないし!!」

 

 

「錬金術の基本は【等価交換】あんたらに金をくれてやる義理も義務も俺には無い。ここで俺が建物を直してもまた焼かれたらどうする?金を出して助けても献上品で持っていかれたら終わりだ。お前らのその場しのぎに使われたらこっちはたまったもんじゃない。そんなに困っているんならこの街を出れば良い。」

 

 

 

そんな冷たい言葉を口にするエドワード。その前で泣きじゃくるタオの頭にチェンは優しく手を置きエドワードへと喋りかけた

 

 

「エドワードさんには分からないかもしれないが、この街が俺達の家で、棺桶なんですよ」

 

 

 

すると苦虫を噛み締めたような顔になるとエドワードはどこかへと歩いて行った。その後ろをアルフォンスはついて行きながら喋りかける

 

 

「ねぇ兄さん!どこ行くのさ!ちょっと待ってよ!・・・本当にあの人達を放っておく気?」

 

 

 

アルフォンスの問いかけにも答えず歩き続けるエドワード。少し歩いたところで石の山が放置されている場所へとたどり着き口を開いた

 

 

「なぁーアル!この石山どれくらいの量あると思う?」

 

 

「1トンから2トンくらいあるんじゃないかな?」

 

 

「よし!アル!今からちょーっと法に触れることするけどお前!見てない振りしろよ?」

 

 

「っへ?それって共犯者になれってこと?」

 

 

「ダメか?」

 

 

そういうやり取りがあり、石山の前でエドワードは胸の前で手のひらを合わせた。そしてその手を地面へと着けた。

 

 

すると石山の周辺を錬成陣が発動しその石山すべてが金の塊へと変わったのであった

 

 

 

「返事を聞く前に結局やってるじゃんかよ」

 

 

あきれたアルフォンス。その横でエドワードが頭の後ろで手を組みニヤニヤしながら

 

 

「なーに!バレなきゃ良いんだよ!バレなきゃ!」

 

 

「やれやれ・・・悪い兄を持つと本当に苦労するよ」

 

 

二人のやり取りだけがあった。それから二人はその塊を荷馬車へと乗せ袁紹の屋敷へと向かうのであった



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欠片の断片その4終章

 

袁紹の屋敷・応接室

 

 

「・・・あの・・・エドワード様?これはいったい・・・」

 

 

「すっげぇ!!これ全部本物の金かよ!斗詩も見てみろよ!!」

 

 

 

部屋の半分以上を埋め尽くし外にもまだまだ残っている金塊の山。その山を見て狼狽える袁紹と興奮している猪々子

 

 

 

 

「これじゃぁ足りませんかね?」

 

 

「め・・・めっそうもありませんわ!(これだけあればこんな田舎さっさとおさらばして都で高官達にワイロを渡して・・・それから・・・それから)」

 

 

 

すでに洛陽へと思いをはせる袁紹。三公という役職を輩出した家でも金はあっても困らない。

 

 

 

「それと袁紹様の事は霊帝様や上の役職の知人にきちんと話を通しておきましょう」

 

 

「あぁ・・・えどわーど様!なんとも頼もしいお言葉」

 

 

そう言って袁紹はエドワードと握手を交わした

 

 

 

 

「しかしですね。金の錬成はわが国では違法となりまして、バレないように一応、【こちらの町の領主の座は無償で穏便に譲渡した】と念書を書いてもらえるとありがたいですね」

 

 

 

「えぇ!全然、全然構いませんわ!では!早速手続きをさせていただきましょう!斗詩さん!念書の準備を」

 

 

「分かりました。麗羽様」

 

 

部屋を出て行き、譲渡の為の念書を書き最後に袁紹の印を貰いエドワードへと渡した

 

 

 

 

金を運ぶ為に一緒に来ていたアルフォンスはこのやり取りをあきれるように部屋の隅見ていた

 

 

 

 

 

街の広場で騒ぎ立てる一同が居た

 

 

「なんで!?なんで止めるのお父さん!止めたって私はやるよ!」

 

 

タオだ、それにチェンの部下の人達も手には武器になりそうなものをそれぞれ持っていた

 

 

「なんでもだ!殴り込みなんてやるんじゃない!それをやれば相手の思うつぼなんだ。わかってくれ」

 

 

 

「えぇ!さすがにここまでされているのを見ては私も我慢がなりません」

 

 

「珍しいですねぇ~稟ちゃんがこんなに怒るなんて、まぁ私と稟ちゃんの策があればバレないように行動したら楽勝なんですよ」

 

 

「風!私を忘れては困る!策は無くとも槍捌きだけは自信があるぞ」

 

 

稟、風、星とこの3人も街の人達と一緒に袁紹の屋敷へと殴り込みに行きそうな気配を出していた。

 

 

 

そんな広場へ扇子で仰ぎながら満面の笑みを浮かべエドワードがやってきた

 

 

 

 

「あなた・・・何しにきたんですか?風!行きますよ!」

 

 

「あぁ!稟ちゃん!・・・お兄さん、良くノコノコと皆さんの前に顔を出すことができましたねぇ?」

 

 

「何しに来たの!?」

 

 

稟は怒りを隠さず、風は皮肉を込め、タオはにらみつけていた

 

 

 

「あら?あらら?良いのかな~この街の領主に向かってその言い草はないんじゃないか?」

 

 

「お主・・・なにを言っているんだ?」

 

 

エドワードの言葉に星がイラッとした表情で返した

 

 

その星の顔の前に右手にもった紙切れをエドワードは突き出した

 

 

「これは!?」

 

 

「この街の、通行・運営・販売・その他全商用の権利書だ」

 

 

「なぜそんなものをお主が持っているのだ!・・・ぬっ‼名義がえどわーど殿になっている」

 

 

 

「なんと!・・・ってことはまさか!」

 

 

星の言葉に思わず風が声を上げる

 

 

 

「ふっふっふ!そう!すなわち、今現在!この街は俺の物ってことだ!!っとは言っても俺達は今からこの関所を通って漢へと入る旅人だ、こんな権利書ただ邪魔になるだけだしなぁ」

 

 

 

 

にやにやとチェンへと近づき右手に持った権利書をひらひらと振る

 

 

「エドワードさんあなたは!・・・この街の人に売りつけようというのですか?」

 

 

「お兄さん・・・かなりの悪党ですねぇ~」

 

 

「お主・・・いくらで売るつもりだ!」

 

 

稟、風、星もチェンの傍へと寄ってきた

 

 

 

「そうだな・・・めちゃくちゃ高かったからな~。何かを得ようとすればそれなりの代価をはらってもらわなきゃな!なんて言ったって高級紙に金の箔押し、さらに保管箱は翡翠を細かく砕いたものでさりげなくかつ豪華にデザインされている!うん~これは職人技だな!まぁ!素人の目からしての見積だけどこれ全部ひっくるめて関所の門が開くまでのさんトコで門が開くまで毎日2食2人分の料金ってのが妥当かな?」

 

 

 

一同

 

「っへ!?」

 

 

そんな声を上げずにはいられない対価と共にチェンが思わず大きい笑い声を出した

 

 

「は・・・ははは!!確かに!高い!わかりました・・・買いましょう!」

 

 

「よし。んじゃ!契約成立って事であんたに売った!」

 

 

チェンとエドワードは握手を交わしそれを見ていた稟、風、星がほっとしたようにつぶやいた

 

 

「っふ!やりますね!エドワード殿」

 

「おぉ!たしかに!等価交換ですねぇ~」

 

「ふむ・・・双方が納得したのなら良いのではないか」

 

 

 

 

新しい領主に変わったことで街人達は大いに喜んだ。そんな広場へと息せき掛けてきた麗羽と猪々子、斗詩の姿があった

 

 

 

「はぁはぁ・・・えどわーど様!これは一体どういうことですの!?」

 

 

「これはこれは!袁紹様、ちょうど今、こちらの権利書をチェンさんに売った所ですよ」

 

 

「んなんですってぇ!!!!」

 

 

「っちょ!麗羽様言葉使いが・・・」

 

「斗詩!あなたは少し黙ってなさい!そんなことよりあなた様に頂いた金の山!あれが全部石くれになってしまいましたわ!どう言うことか説明してくださいまし!」

 

 

 

「兄さん・・・いつ戻したの?」

 

 

アルフォンスはエドワードへと耳打ちする

 

 

 

「さっき、権利書を貰った後にちょろっとな。それと袁紹様!金の山とはなんのことですか?

 

 

「なんですって!とぼけないでくださいまし!この権利書と金の山を私の屋敷で引き換えたではございませんの!これでは詐欺ですわ!!」

 

 

 

「あれ?袁紹様!こちらの権利書は無償で譲り受けたはずなんですけね?ほら!念書もここにありますし」

 

 

 

「きぃぃぃぃ!!!!!この取引は無効!無効ですわ!猪々子さん斗詩さん!あの権利書を取り返すのですわ!」

 

 

「はいよっと!行くぞ~斗詩!なぁ!その権利書こっちに渡してくれよ!」

 

「まったく麗羽様ったら・・・自分で勝手に取引しておいて」

 

 

そう言いながらもは背丈ほどある大剣を肩に担ぎ、斗詩は金属でできたハンマーのような武器を構えた

 

 

 

 

 

「力ずくで個人の資産を取り上げようとは頂けませんね!」

 

 

稟がすかさずチェンの前へと出て

 

 

 

「これは頂けませんねぇ~これって職権乱用ってやつなんじゃないですかぁ?」

 

その横に風もならぶ

 

 

 

「えぇぃ!うるさいですわ!貴方達ケガしたくなければお退きなさい!」

 

 

 

「だったら私が出張ろう!武人として双方の相手になってやろう」

 

 

星が槍を構え身構える

 

 

 

それを猪々子は喜々として楽しいんで居る

 

 

「お!やっぱこうでなくっちゃな!あんた・・・強いな!でもあたいのほうがもっと強い事を証明してやんよ!」

 

 

「もう・・・文ちゃん!って・・・こうなったら話聞いてくれないんだから・・・」

 

 

猪々子とは対照的に斗詩は冷静に判断する

 

 

 

二人をよそにエドワードとアルフォンスは袁紹の下へと向かった

 

 

 

「ここで騒ぎを大きくして霊帝様に話が届いたら袁紹様?あなたは一生、ここの領主以下になっちまうけどそれでもかまわないのか?」

 

 

エドワードはニコリと笑いながら袁紹に向かってほほ笑みかける。その言葉に袁家の名にドロを塗る行為を察した袁紹は怒りながら帰っていった

 

 

 

「覚えてらっしゃいまし!この借りはいずれ必ず返させていただきますわ!行きますわよ!二人とも!!」

 

 

「えぇ!?戦わないんですか?麗羽様!!ってあぁ・・・行っちゃった!しゃーねーな!んじゃ行くか斗詩」

 

 

「でわみなさん!失礼しました!っちょ待ってくださいよ麗羽様!文ちゃん!」

 

 

 

 

 

袁紹達が居なくなるのを見届けて広場に喧騒が戻ってきた

 

 

「よっしゃ!!酒だ酒!!酒をもってこーい!!あはははは!!」

 

 

チェンの掛け声と共にみんなで袁紹の統治から免れた人々は歓喜に満ち溢れた!

 

 

 

 

それから三日が立ち、袁紹も居なくなり、漢へと入る国境の門が開いた

 

 

 

「街を救ってくれて本当にありがとう!なんと礼を言って良いのか・・・」

 

 

チェンがエドワードの前で深く頭を下げた

 

 

「いいっていいって!それにまた来るからその時に世話になるんでよろしくな」

 

 

 

「それにしてもなぜ、エドワードさんは霊帝様の勅使をお持ちなんです?相当な地位でなければそのようなものは受け取れないはずなんですが

 

 

稟の疑問に星が答えた

 

 

 

「あぁ!あれは真っ赤な偽物であろうて」

 

 

一同

「っは!?」

 

 

 

「なーに簡単な事よ。勅使なんて見たこともないのが多いだろうし、もし分かったとしても細かい部分なんてわからないと思ったら案の定、袁紹の奴は気付かなかっただろに」

 

 

 

 

「やっぱり、お兄さんは悪党なのですよぉ。でも風はそんなお兄さんに興味をもちましたぁ!また会う機会があればお話ししましょうね」

 

 

 

「でわ!エド殿、私達はもう少しこの街に残って西の国の知識を調べたいと思います。大陸に入り旅の目的が果たせますよう、心より願っております。」

 

 

 

「あぁ!ありがとうな。ねーちゃん達もしっかり勉強しろよ!んでもって立派な軍師とやらになってくれよな!」

 

 

 

「えぇ!まだどこかで会える日をお待ちしております」

 

 

「んじゃアル!大陸へと入るぞ!」

 

 

「はいはい・・・じゃあ、郭嘉さん、程昱さん、趙雲さんたくさんの情報ありがとうございました!いつかまた会える日を!」

 

 

 

 

 

そう言ってエドワードとアルフォンスは関所へと向かった。その後ろをタオが手を振りながら別れを告げた

 

 

「ありがとう!!エド~アル~!!また絶対来てよね~!私待ってるから!!!!!」

 

 

 

 

 

 

関所へくると二人は門番に止められた

 

 

「はーい!兄ちゃん達、国境を越えるための通行書!出してくれるかな!」

 

 

 

「っん?」

 

 

「だから~通行書!ここは国境なんだから通行手形が必要でしょう!さぁ出して!」

 

 

 

「兄さん・・・まさか」

 

 

「タオの宿に泊まったときに部屋の引き出しに置いたままだった!」

 

 

「ちょ!馬鹿兄!なにやってんのさ!もう宿は燃えちゃってるんだよ!」

 

 

 

 

「ないの?通行書ないの?」

 

 

後ろからまだか?早くしろよと聞こえてくれる中エドワードは笑うしかなかった

 

 

 

 

「えへへ~♪」

 

 

 

「えへへ~♪じゃないんだよ!ほら無いなら帰んな」

 

 

文字通り門前払いを食らいこれから大陸に向けて過酷な砂漠越えをする羽目になる2人でした




 これにて導入終了となります。次から大陸、砂漠編になります。
いろいろ補完しなきゃならないところもありますが、後々出していきたいと思います


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砂漠の出会い

「しっかしあちーなーもうどんだけ歩いたかわかんねーよ」

 

「仕方ないだろ!兄さんが通行所燃やしちゃうから」

 

「俺じゃねーよ!あの袁紹とか言うクルクル頭のねーちゃんのせいなんだよ!!」

 

 

見渡す限りの砂の真ん中で赤いコートと鉄の鎧の二人が文句を言いながら歩いていた。

 

関所から通常のルートを通って入れば1日弱で着く場所を彼らは通行所を燃やした為、不法入国を余儀なくされた。

 

関所が合った場所から北上し涼州と益州の国境付近を歩いていた。

 

 

 

「それにしてもよーこうも暑いと腕も足も焼けちまうぜ!どっかに川か湖でもないものか・・・」

 

「僕はこの体だから全然平気なんだけど兄さんの場合は付け根が熱を持っちゃうからね・・・」

 

 

そんなやり取りをしていると後方から砂塵を起こし馬に乗ってくる三人の少女の姿があった

 

 

「アル・・・あんな速さで馬って走れんのか?」

 

「凄いねあの人達!!こんな足場の悪いところであれだけのスピードを出せるなんて・・・」

 

 

 

そうこうしているうちに馬に乗った三人はエルリック兄弟の目の前まで来ていたそして馬上から話しかける

 

 

「私の名前は馬岱!あんた達が最近ここをうろうろしている賊なの!?さっさと答えて!」

 

「ちょ・・・ちょっと蒲公英(たんぽぽ)様!いきなり過ぎますって!まずは話を聞いてみないと」

 

「馬休は黙ってて!あの賊達はさっさと処理しておかないと近隣の村が迷惑しちゃうんだよ!」

 

「まぁまぁ!蒲公英様も少しは落ち着いてくださいよぉ!」

 

「もう!馬鉄じゃあ!あんたに任せた!」

 

「えぇ!私ですか!こういうのは鶸(るお)ちゃんが得意だよ!ねぇ鶸ちゃん!」

 

 

 

せわしなく三人の間でのやりとりを唖然として見ている兄弟を馬休、真名は鶸が質問をしてきた

 

 

「えっとですね!貴方たちにいくつか質問があります!嘘偽りなく答えてください!」

 

「・・・お、おう」

 

 

エドワードがそう答える

 

 

「まず名前は?」

 

「エドワード・エルリック、あっちが弟でアルフォンスだ」

 

「この国の者ではないな?出身はどこ?」

 

「ここから西にあるリゼンブールって村だ」

 

「なんの目的があってここ涼州にやってきた」

 

「う・・・さ、探し物があって華陀って医者を探している」

 

「・・・探し物?それは何?」

 

「賢者の石と呼ばれている物だ・・・」

 

 

質問は終わったのか、鶸は馬を進め馬岱の所へと行き話しかけた

 

 

 

「蒲公英様、この二人は情報から推測するに此度の賊達とは違うと思われます。恰好や特徴とも全然一致しませんので」

 

「そう、でも翠ねー様に合わせた方が良いと思うな。それにここに居たらあんた達死んじゃうよ?」

 

「じゃあ、近くの村まで来て詳しいこと話してもらおうかぁ?」

 

馬鉄は馬をエドワードへと近付けた

 

 

「まぁ・・・確かにいくら歩いても砂だらけで死んじまう・・・アルここはおとなしくついていこう」

 

「そうだね!えっと・・・馬鉄さん?よろしくお願いします」

 

「うんうん!素直なことは良いことだよ!それにしてもでっかい鎧だね~」

 

 

「鶸、蒼!あんた達は二人を村へ!私は翠ねー様を呼んでくるから!逃がさないでよね!」

 

 

 

 

二人に連れられてきた村は、お世辞にも栄えていると言う雰囲気では無かった。

 

戸は壊れていて柵もボロボロ、家畜の牛や馬だって痩せ細っている。その村の村長さんの家へと案内された

 

 

「さて!蒲公英様が馬超様を連れてくるまではすこし時間がかかります。それまで少し休んでてください」

 

「逃げようなんて考えないでね?その時は・・・切っちゃうから」

 

席へと案内した鶸と先ほどまではのほほんとしていた馬鉄の殺気に兄弟は驚いた

 

 

「あのねーちゃんもヤバいな。おとなしそうな顔しといて隙がまったくないな」

 

「逃げてもあの馬の速さじゃ直ぐ捕まっちゃうからね。ここは穏便にすまそうよ」

 

 

 

重い空気の中、話が始まった。

 

とは言っても本格的な話が始まるのは馬超が来てからになるので話を始めたのはエドワードからだった

 

 

「なぁ、ここは大陸の涼州って所なんだよな?実は俺達、江東の建業って場所へ行きたいんだがここからだとどれくらいかかるか教えてくれないか?」

 

 

「建業へ?ここからだと私達の馬を使っても相当な日数がかかるわね。歩きで行くとなると無謀ね・・・いくつもの関所と山を越える必要があるわ」

 

 

村長が馬休と馬鉄にだけお茶を持ってきた。それで喉を潤しながら鶸は話を続けた

 

「建業もそうだけど、今現在、少しやっかいな事が起こっていて、ダダでさえめんどくさいのにそんな所まで何しに行くのかしら?」

 

「めんどくさいことってさっき言っていた賊のことですか?」

 

 

アルフォンスが鶸へと質問を返す

 

 

「えぇ、その賊を捕まえるために私達は動いているの、さっき会った場所で変な格好をした二人組が居ると聞いて行ってみればあなた達だったってわけ」

 

 

「その賊の特徴とかって分かってるんですか?」

 

 

アルフォンスの言葉に蒼が殺気を出しながら答えた

 

 

「黄巾賊・・・黄色い布を身にまとった奴等」

 

 

普段おとなしいはずの馬鉄がここまで怒りをあらわにする様にこの大陸では今、黄巾党と呼ばれる者達が問題になっていた

 

 

怒りを殺せないまま、湯飲みの中を覗き込んでいる馬鉄、すると部屋の扉が開かれた

 

「いやー参っちまったぜ。あっちこっちで黄巾賊増えちまって馬を休ませる時間が全然ねぇーじゃねぇーか!っよ!二人ともお疲れさん!」

 

 

軽いノリで扉を開け入ってきた者は馬超であった



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砂漠の出会いその2

 

 

「いやぁーしかし蒲公英から聞いていた通りでっけぇ鎧だな~」

 

アルフォンスの周りを値踏みするように回る馬超。いつものことなのでアルフォンスはあはは・・・と苦笑いをする

 

 

「でだ!肝心な話を今からするんだが、お前らなんであんな場所を歩いていた?商人でもない。ましてやここの民でもない。ってことは・・・」

 

 

「・・・えっと・・・ですね」

 

「不法入国だ!」

 

 

バツの悪そうに言いよどむアルフォンスを横にエドワードははっきりとそう言い切った

 

 

「っは!やっぱりな!西の国境から入ってきやがったな!で?理由は?場合によっちゃーあたしが手形を発行してやる」

 

 

「っちょ!良いのですか?馬騰様に怒られませんか?」

 

「鶸?大丈夫だ!母様にはあたしから理由を話すよ。で?どうなんだ?」

 

 

「国境の街で袁紹ってやつに燃やされた。再発行するのに時間と金がかかる!それまで待つことが出来なかったから不法入国した」

 

 

「・・・袁紹ってあの袁紹かよ・・・そりゃ災難だったな。まぁ・・・あれだ!不幸中の幸いって思え!そんな理由なら構わんだろう。本当かどうかはしっかり調べてからだけどな。それまであたし達を手伝え!それが交換条件だ」

 

 

馬超は笑顔でエドワードへと手を差し出した。鶸は頭に手を当て困ったときの癖が出ていた。蒲公英はいつのまにか蒼の横で一緒にお茶を飲んでいた

 

 

 

「兄さん・・・どうする?」

 

「手伝う条件はなんだ?その条件とやらを聞きたい。それを聞いてからでも遅くないだろ?」

 

 

エドワードは握手をせずに馬超を見つめた。その態度が気に入らなかったのか蒲公英がエドワードへと武器である槍を向けた

 

 

 

「お前!自分が今の状況を分かってるの?」

 

「だからと言って武力で人を納得させてなんになる?」

 

 

エドワードは組んでる腕を解くと目の前で両手を合わせ蒲公英の槍へと触れたすると・・・

 

 

「なぁぁぁっぁぁぁぁl!!!!!!ってなにこれ!!あたしの大事な武器がぁ!!」

 

 

 

エドワードが槍へ触ると鋭利は切っ先は丸くなり〆のように取っ手も曲がってしまった

 

 

「っな!?これは驚いた!」

 

馬超は驚き蒲公英の武器を取った。

 

 

「ちょっとあんた!なんてことしてくれてんのよ!直しなさいよ!」

 

「もう・・・兄さんたら、わざわざ刺激しなくても・・・ごめんなさい馬岱さん!僕が直しますね」

 

 

アルフォンスは馬超から武器を借り地面に置くと錬成陣を書いた。手を合わせ錬成陣へと触れた

 

 

「も・・・戻った!ははっ!武器が戻った!」

 

鶸も蒼も驚きを隠せず、ただただ蒲公英がもつ武器を不思議そうに見ていた

 

 

「あんたら太平道信者か?答えろ」

 

 

馬超からとてつもない殺気が部屋に溢れた。身内である馬岱達も馬超から距離を取りたくなるほどの殺気が放たれた

 

 

「そのチカラは仙術か?太平道の教祖・張角も使う業と聞いている・・・お前達も黄巾党なのか?」

 

 

「っち、違います!僕達は錬金術と言って構築式に乗っ取って・・・」

 

 

「うるさい!黙れ!あたしはバカだからよ!難しい話は嫌いなんだ!ただ敵なのかそうじゃないのか聞いているんだ!」

 

 

馬超の怒りに耐え切れず蒼は鶸へとくっつき蒲公英も止めるに止められず焦っていた

 

 

「敵じゃない!これだけははっきり言える!それに今あんたが言った事が本当ならその張角って奴が俺達が探している物を知っているかもしれない」

 

 

まっすぐと馬超の目を見てエドワードはそう言った。馬超も嘘はないだろうと思い殺気を抑えた

 

「・・・そうか悪いな!敵でないなら安心してくれてもいい。手伝ってほしいのはその太平道の奴等から守って欲しい奴がいる、それを呑んでくれるのなら手形は作ってやる」

 

 

「守って欲しい人?」

 

 

アルフォンスが掻かないはずの汗を拭い殺気から解放された安心感で跪きながら問いかける

 

「ある人物を洛陽へと送らなくてはならないんだが、あたし達は賊の襲撃にあっている村を助けなきゃならない。それで護衛を頼みたいんだ」

 

 

 

「その人達ってのは?」

 

 

「董卓と皇甫嵩だ」



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砂漠の出会いその3

「っな!?本気なの翠ねー様!月(ゆえ)さんと楼杏(ろうあん)さんが!」

 

蒲公英が叫んだのは真名

月は董卓の真名で楼杏は皇甫嵩の真名であった

董卓は農耕に従事していたが羌(きょう)族ら異民族の居住地を放浪し顔役らすべてと交流しまとめ上げた

 

皇甫嵩は真面目で慈悲深く、人々から心服された、霊帝からじきじきに公車へと丁寧に招かれたことを機に仕官した

それによって同郷である董卓も招かれた

 

 

「あぁ!あの二人は霊帝様にお声をかけていただいたんだ。こんな涼州の田舎でくすぶっているよりも都へでて働いた方がここに居るよりは何倍も民が救われる」

 

 

翠はこぶしを握り締めて自分に力が無いことを痛感していた。村が黄巾党によって滅ぼされる・

報告を受けて村に向かうが辿り着いた時にはもう虐殺は終わっているのだ

 

 

「月はあぁ見えて腕が立つ!涼州の民だから馬にも乗れる!楼杏はあの人望がある!すぐに二人とも上の階級へと行けるだろうさ。だからあの二人を都へと連れて行ってくれないか?」

 

 

苦笑いをしながら翠はエドワードへともう一度頼んだ

 

 

「兄さん・・・」

 

「・・・わかった。でも一度二人に会うことは可能か?人となりは自分の目で確かめたい。俺達は道は知らないけれど護衛にならなってやるよ」

 

 

「・・・あぁ!じゃあすぐに連れて行く。蒲公英、鶸、蒼!支度しな。エドワードは蒲公英の馬に一緒に乗ってくれ。後ろの鎧は荷車を用意しよう」

 

「えぇ!翠ねー様なんで私がこいつを乗せないといけないの!」

 

「うるさい!あたしが決めたんだ!文句言っている暇があるならさっさと馬連れてこい!」

 

 

こうしてエルリック兄弟と馬姉妹は董卓と楼杏が待つ村へと向かった

その道中・・・

 

 

「っち!なんど見ても気分が沈んじまうな・・・」

 

「あれが被害にあった村ですか?」

 

アルフォンスが荷台に腰掛けながら村があった場所を見て翠へと問いかけた

 

「あぁ、被害にあったのは最近なんだ、助けに行った時には数人しか助けられなかった。夜中に奇襲をかけてきやがったんだ」

 

 

翠はもっている手綱をさらに強く握りしめた

この時代、盗賊は腐るほど居る、戦争も起きる、食料を求めて難民も来る。

都や街に比べて村には軍隊や警備隊など居ない

 

あったとしても自警団が主である

村によっては自警団すらない場所も存在していた

 

 

そんな村を黄巾党は襲い略奪し虐殺していた

 

「その黄巾党って奴等の特徴ってのはなんなんだ?」

 

 

「狂った宗教団体さ!その天辺に張角ってのが居る!自分のことを大賢良師って公言している。こいつがどんな病気でも直せるんだと!噂じゃ南華老仙と言う仙人に『済民要術』という天書を授かり、妖術を覚え治病を行い太平道を広めたらしい。それを村々で奇跡を施すもんだから、今の漢王朝に不満を持っている連中が張角こそ天子に相応しいと役所の門などに「甲子」の二文字を書いて信者を呼びかけたんだ」

 

 

今分かっているだけでも数万の信者が張角を筆頭にその姉妹でもある、張宝(ちょうほう)と張梁(ちょうりょう)に心酔しきっていた

 

 

その三姉妹が黄色い手布を髪にゆわえていた為、信徒の証として黄色い布を巻くことで太平道の信者だとわかるようになっていた

黄色い布を身に着けていたのでその信者、賊達を総称して黄巾党と呼ぶことになったと翠は聞かせてくれた

 

 

「楼杏達が賊を撃ったあとにその布をみたらこんな文字が書かれていたみたいでな」

 

 

 

【蒼天己死、黄天當天、歳在甲子、天下大吉】

 

蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉

 

 

 

甲子革令と呼ばれこの年は徳を備えた人に天命が下される「革令」の年、すなわち変乱の多い年とされた

 

 

それを張角が率先して漢王朝に対し神に成り代わろうとしていたのだ

 

 

「黄巾党はすごい勢いで増え続けている、最近じゃ荊州・揚州で兵を集めさせていたってのも情報が入ってるんだ、だからここも時期に暴動が起きるかもしれない。だからその前にあの二人を都へ連れて行きたいんだよ」

 

 

「っは傲慢だな!その張角ってのは!どこかの神話にあったなぁ~確か【太陽に近づきすぎた英雄は蝋で固めた翼をもがれて地に落とされた】ってな」

 

 

「あたし達が仰ぐのは天子様だけだ!あんな宗教が治める国に未来はないからな・・・」

 

 

「翠ねーさん、村が見えてきましたよ!」

 

エドワードと翠の話を固唾を飲みながら聞いていた鶸が遠目ながら村が見えたことを告げた

 

「よし!話は終わりだが、これで黄巾党がどういう宗教かわかっただろう!こんな奴らにまけらんねぇからな!」

 

「その張角ってのがうさんくさい奴ってのは分かった。しかし規模がでかすぎると思うんだが大丈夫なのか?」

 

 

翠は話は打ち切るが、黄巾党の規模のでかさにエドワードが追及した

 

「あぁ、楼杏が都に行けば軍を預からせて貰えるらしいからな、それにほかの諸侯達も自分の領地を黄巾党に荒らされたくないからな、次々に兵をあげて自分の領地周辺くらいは守ってるさ」

 

 

「そっか、しかしその張角ってのに会ってみたいよな!そのどんな病気も直すってのがいまいちわからねぇ。」

 

 

エドワードが蒲公英の後ろに掴まりながら、ん~と考察してると村の方から若い女性が3人歩いてきた

 

 

「ねぇ~ちぃちゃーん!それおねーちゃんにもちょーだいよー」

 

「駄目よ!さっき自分の分食べてたじゃない!これは私のなの!!」

 

「天和姉さんもちぃ姉さんもいい加減にして!そろそろ本当にまずい事になりそうだから、急いで荊州に行かなきゃならないんだから!」

 

 

「だって~れんほーちゃん!おねーちゃん全然おなかいっぱいじゃないんだもん!」

 

 

若い三姉妹が食べ物について騒ぎながら横を通りすぎて行った

見た感じは若い姉妹で荷物を持っていることから旅人か大道芸人ではないかと思われる

 

そんな姉妹を気にすることなく村へと進むと二人の女性が出迎えてくれた

 

 

「お疲れ様!馬超さん!」

 

「あらあら!これは随分大人数でのご帰還ね」

 

 

みんなを出迎えてくれたのは

人形みたいに可愛らしく大人しそうな董卓と

目つきは鋭いがどことなく優しそうな楼杏の姿であった



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砂漠の出会いその4

「まぁ!本当にデカイ鎧が歩いていますね!月さんの2倍くらいないかしら?」

 

「もう、楼杏さん!そんな事を言っては相手の方に失礼になりますよ!」

 

 

アルフォンスが荷台から立ち上がり二人へと会釈をした。立ち上がった姿を見た楼杏は月に対して冗談を言って見せた

 

 

「えっと・・・翠さん、この方々が私達の護衛をしてくださるのかしら?見たところ異国の方のようですけれど?」

 

「あぁ、楼杏さん、すまないがこの二人に頼む事にした。仙術みたいな奴なんだっけか?れんきんじゅつ?ってのを使うらしい」

 

 

 

するとエドワードがおもむろに楼杏へと近づく

 

 

「あんた達も武将なのか?失礼を承知で言わせてもらうが、見た感じ全然強そうには見えないんだが・・・」

 

「そうですね、腕にはそれなりに自信は有るつもりですけれど、私の場合は人を使った武力が得意ですね。ただの力くらべをすると私よりは月さん、となりの董卓さんの方が私より強いわよ?」

 

 

楼杏に振られた月は恥ずかしそうに袖で赤くなった顔を隠した

 

 

「マジかよ・・・うちの整備士のウィンリィの方が強そう・・・」

 

「兄さん・・・それ絶対に本人の前で言わないでね・・・殺されちゃうよ・・・」

 

 

「さて、鶸、蒼、蒲公英、お前達は母様の所に戻って、部隊の編成に加わってくれ。あたしもこれが終わったらすぐに向かうから」

 

「わかりました」

「はーい」

「あー疲れた!早く帰って馬も休ませなきゃ」

 

 

それぞれ返事をし去って行く3人。それを見送りながら話ができる場所へと移動した

 

 

「でわ、護衛を務めてくれると言うことで改めてご挨拶を!私の名前は皇甫嵩、字は義真と申します。」

 

「わ、私は董卓、字は仲穎(ちゅうえい)と申します。よろしくお願いします」

 

「俺はエドワード・エルリック」

 

「僕はアルフォンス・エルリックと言います。弟です」

 

 

お・・・弟・・・逆じゃなくて?と言わんばかりの空気が女性陣の間に流れた

 

 

「んんっ!で!こっから洛陽までってどれくらいかかるんだ!?」

 

少し怒り気味のエドワードが話を進めた。その陰で偉いよ兄さん!とアルフォンスが心の中で呟いた

 

 

「何もなければ、歩きで遅くても20日くらい、馬だとその半分くらいかな」

 

翠が腕を組み首を傾げ、道のりを思い出すかのように答えた

 

 

「大陸のデカさ舐めてたね兄さん・・・」

 

「あぁ・・・ここじゃ鉄道とかも無い見たいだしな」

 

 

はぁ~とため息を吐き、どうしたもんかと悩むエドワード

 

 

「今回の護衛は無事に洛陽にまで付ければいいわ。もし道中でなにかあった場合私達を見捨てて貰っても構わない」

 

 

楼杏が不意にそうエルリック兄弟につげた

 

「この国の問題を他国の方々、ましてや子供のお二人にまで迷惑をかけるわけにはいきませんから。ね!月さん」

 

「そうですね!それで構わないです!」

 

 

月と楼杏の問いに対して翠が声を上げた

 

「おいおい!そりゃないぜ?二人には絶対に洛陽へと行ってもらわなきゃ困るんだよ!」

 

 

「自己責任って事で自分の身は自分で守れます!それに私達だってそれなりに強いのは翠ちゃんだって分かってるはずよ?」

 

「わかっては居るんだが、保険て事でこの二人を護衛に着けたんだ、それに報酬として手形を渡す約束もしちまったしな」

 

 

「あら?翠ちゃんは手形をエサにこの二人を護衛にと雇ったのですね・・・」

 

 

楼杏から不穏は空気が流れるがすぐに収まる。翠が誤ったからだ

その空気は前に翠から出た殺気と同じような体を締め付けて動けなくなるほどの物だった

 

 

「・・・この人もやばい奴かよ」

 

ボソっとエドワードが小さな声で漏らした

 

 

「今回は正規の順路は使わず楼杏さんの地元の住民達がしかわからない場所から洛陽へと向かう予定ですので安心できるかと思いますよ」

 

穏やかな笑顔で武とは無縁そうな月がそう答える

 

 

「楼杏が使う道ってことは安心して良いと思うぜ。ほら、先にこれ渡しとくな!今度は無くすなよ?」

 

馬超から渡された手形は木製で出来ておりいくつかの署名が彫られていた。

 

 

「ありがとうございます!馬超さん」

 

 

アルフォンスが二人分受け取り腰のカバンへと詰めた

 

 

「道のりは楼杏が案内できるだろうし、馬車も用意させてある。今日はもう日が暮れちまうから休んで、明朝から出発すりゃ良い!二人を頼んだ!」

 

 

腰を上げお尻をはたきながら翠が立ち上がり、エドワードへと手を伸ばした

 

 

「等価交換だな!わかった!任せろ!とは正直言えないが、頑張ってみるよ!な?アル」

 

「うん!董卓さん皇甫嵩さんよろしくお願いします」

 

 

エドワードは翠の手を握り返し、その手を翠は引っ張って立たせた

その後ろでアルフォンスが二人に対し頭を下げて改めて敬意を表す

 

 

「じゃあ明日は早いからさっさとご飯食べて寝ちゃいましょう!月さん手伝ってくれるかしら?」

 

「はい、喜んで」

 

 

こうして翌日出発することになったエルリック兄弟。ご飯を食べて部屋へと案内されアルフォンスとこれからの事を相談した

ゴザを引き雑魚寝をしながらつぶやく

 

 

「ねぇ兄さん。あの馬超さんって人凄いね・・・かなり強いよ。うちの先生かそれ以上じゃないかな」

 

「馬超だけじゃなくあの皇甫嵩って人も見た目に反してかなりデキるな。武将って呼ばれる人達はみんなあーなのかね?」

 

「でも董卓さんはいかにも令嬢って感じの女性だったけど皇甫嵩さんが言うには私より強いって・・・」

 

「わっかんねー!あのお人形さんみたいな感じでどう戦うのか見当もつかねーよ。でも取り合えず手掛かりは掴めたな」

 

「黄巾党?」

 

「あぁ!どんな病気も直すってそんなことまず無理だろう?もしかしたらなんだが賢者の石を使ってる可能性があるな」

 

 

 

錬金術における至高の物質。卑金属を金に変え、癒すことのできない病や傷をも瞬く間に治す神の物質とされる。無数の名前を持ち、形状についても諸説がある。

 

 

薬として飲めば不老不死を得るとされた。またあらゆる病とけがを癒す万能薬・エリクサーの正体ともされる。

因みに、賢者の石そのものが欲に駆られた人間を誑かす悪魔であるという話もある。

色は赤。これは錬金術において赤は完全を表す色と言われており、賢者の石もまた作成プロセスを経て赤になれば完成と言われていた。

 

 

「もしこれが本物ならやっと、お前をもとの体に戻してやれるからな」

 

「うん。その時は兄さんも一緒にだからね」

 

「あぁ!もちろんだ」

 

 

その後も大陸についての話をしながらいつしか眠りに着くエドワードであった。



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三姉妹の旅立ち

 

荊州へ向かう道を3人の女性が明かりも無しに早足で歩いていく。月明かりが照らし目が慣れていれば見える程度の道を

 

 

今、大陸で問題を起こしている黄巾党。その長を務めるは長女の張角、自らを天公将軍となのり奇跡の業を見せ信仰を集めている。真名を天和(てんほう)

 

 

次女である張宝は地公将軍をなのり、張角にかわって黄巾党の兵達の指揮をとっている。真名は地和(ちーほう)

 

 

三女である張梁、彼女もまた人公将軍を自ら名乗り黄巾党の指揮を取っている。真名を人和(れんほう)

 

 

 

そんな三人は今大急ぎで荊州へと急いでいた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・急いで姉さん達!早く荊州へ行って兵を纏めないと・・・」

 

先頭で言を発するは三女の人和

荷物を雑に扱い息を切らしながら先へと進む

 

「ま・・・待ってよ!人和!休憩・・・ちょっとだけ休憩・・・」

 

「そうだよ!人和ちゃん!そんなに急いだって疲れるだけだよ・・・」

 

 

急ぎ荊州へと向かう人和とは相反して、次女の地和と長女の天和が休憩を要求していた。

 

 

「姉さん達!今回は本当にまずいのよ!さっき居た場所で斥候から聞いた話なんだけど、私達を討伐するために朝廷が兵を集めているの!」

 

「っは!あのボンクラ天子!今頃になってようやく兵を集めだしたの?本当に物事の是非を判断する力がなく、愚かなことね!だから御しやすいのかしら?」

 

地和は天子である霊帝を暗愚と罵った。姉妹だけとは言え、ほかの人に聞かれれば当然問題となる発言であるが、その霊帝に対して喧嘩を売っているのが黄巾党であった

 

 

「で?朝廷はいつ動くの?」

 

「多分20日後には先遣隊が来ると思う。それまでに荊州で集まている兵を本隊へと合流したいのよ!彼らはほとんどが農民とは言え数のチカラで圧倒できるわ。天和姉さんは本隊と合流したら【業】を使って武器や盾を作ってほしいの!今のままじゃあ全然足りないから!」

 

 

「うん!それは良いんだけど、この指輪って本当になんなんだろうね?あの南華老仙って名乗っていた【若い男の子】は何で私達にこんなチカラを授けてくれたのかな?」

 

天和は右手の人差し指につけてある指輪を月へとかざす。月明かりで指輪にはめられている宝石は赤く輝いていた

 

「べっつになんでもいいわよ!これさえあれば朝廷だろうが軍隊だろうが全然怖くないもん!あんな天子なんて、さっさと殺しちゃって私達が皇帝を名乗ればいいのよ!」

 

「地和姉さん・・・皇帝には興味はないけれど、霊帝には不満はある。それの改善と私達の夢の為にも、今の時代は荒れすぎている。それを収めるのが目的」

 

人和が言った私達の夢とは、3姉妹が大陸の村々で歌謡祭を開くことである。三姉妹は歌うことが幼いころから好きだった。それを月日を重ね、年月を追う毎に大きくなっていった。

 

そんな中、夢をつかむために旅に出た3人は大道芸人として行く先々の村で歌い踊り、その見返りとしておひねりを貰い旅の資金へとしていた。

 

 

 

 

 

 

だが後漢の情勢は厳しく、貧困と富裕層との差が大きく開いていた。民達は働けど働けど年貢としてほぼすべてが朝廷へと献上されていた。それが先の袁紹である。

それを行く先々で目にし肌で感じていた三姉妹は、そんな朝廷にたいして不満をもつ同士を募り始める

 

 

もっと安心した生活を望みませんか?もっと安定した職業を望みませんか?もっと安寧な暮らしを望みませんか?と

 

 

それに賛同するものは少なからず居たのだが声を上げて天子に喧嘩を売ることは、民衆は望まなかった。

 

 

何度も何度も村を渡り歩き、歌い踊り人を集め勧誘をするが成果はほとんどあがらなかった。そんなある日、次の村へ向かっている途中の山道で南華老仙と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ人和ちゃん、いつになったらお姉ちゃん達についてきてくれる人達ってできるかな?もう・・・何度目になるんだろう。話は聞いてくれるけど、みんなうつむいていなくなっちゃうよ」

 

「天和姉さん・・・でも!少しずつ繰り返して行けば、きっと村人達も分かってくれると思うわ」

 

 

休憩中なのか山道の途中にある場所で座りながら木を背もたれにして足を延ばし天和が本音を漏らす。その言葉に人和は根気よくやれば信者は増えるから!と姉を気遣っていた

 

 

「でも、いい加減、そろそろ成果が欲しいのも事実よね。こんなに頑張って勧誘しても、不満はあるけれど、誰も武器を取ろうとはしない」

 

天和の横で同じ木を背もたれにしながら地和も愚痴をこぼした

 

 

 

「それは・・・」

 

 

「実績でしょうかね!あなた達に必要なのは!」

 

 

突然、姉妹の目の前に白い法服(ローブ)を羽織った男が現れた。

 

「っな!なんですか、貴方は!」

 

人和は現れた男を前に護身用である小刀を取り出し構える。座ってた、天和と地和は慌てて男から距離を取り、二人とも武器を構えた。すると男は笑いながらフードを外し答えた

 

 

 

「まぁまぁ!落ち着きなさい、私はあなた達へご支援させていただきたくついてまいりました。村々でのあなた方の演説は本当に心に響くものがありました。今の暮らしをもっと豊かに生活を安定して子供達が安心して暮らせる世界を作りたいと言う言葉に、感服したのですよ」

 

 

男はそう言うと膝をつき、臣下が主へと敬意を表すように礼を示した。

 

 

「貴方は私達とともに協力してくれるというわけですか?」

 

 

男への警戒は解かず武器を構えたまま人和は問いかけた

 

 

「えぇ!今日はこれをあなた達に献上致したく参りました。これさえあれば、貴方たちの夢は大きく前進することでしょう」

 

 

男は腰につけているカバンから小さな箱を取り出し、フタを開けて人和の前へと差し出した。その中には指輪が入っており赤く光る宝石がついていた

 

 

「・・・綺麗」

 

思わず天和が言葉を漏らした

 

 

 

「この指輪がなんだと言うのですか?これを売って金に換えろと?」

 

人和は一瞬ではあるが指輪に見惚れてしまった。しかし怪しい男が差し出したものをすぐに受け取ることはできない。その様子を地和が見て、話を進める

 

 

「で?それがなんの役にたつのかしら?」

 

 

「はい!これはですね!あなた達三姉妹の実績を作れるものと申し上げました。これは如意宝珠と言いまして錬丹術などに使われる物でございます。ほかの国では呼び名は交わり仏舎利や霊薬、賢者の石などと呼ばれている代物にございます」

 

 

 

男はそういうと小箱の中に入っている3つの指輪から1つを手にし、今から実演をして見せると言ってきた

 

 

「言うより、ご自身の目でご確認いただいた方が確かだと思われますので一度私の方で実演させてもらいます。そうですね・・・こんなのは如何でしょうか?」

 

 

男は指輪をはめると神に祈るように胸の前で手を合わせた。すると赤い雷のような光が走る。両手を開いていくと右手と左手の間から物質が飛び出してきた

 

 

「これは拡声器ともうします。こちらを使ってもらえますか?」

 

 

拡声器と言われたものを天和へと渡した

 

 

「ちょ!姉さん!そんな物騒なもの軽々しく受け取らないでよ!!」

 

 

天和はきょとんとした顔で言われるがまま男から受け取った。それを地和に咎められる

 

 

「えっと・・・これはどう使えば?」

 

 

「こちらの突起を押していただいて喋ってもらえますか?」

 

「こう?・・・数え役萬☆姉妹です」

 

 

 

 

 

すると拡声器から普段は出せないであろう声が、大音量にて吐き出された。その音に驚いた天和は手に持っていたものを地面へと落とした

 

 

「なに・・・これ・・・」

 

 

腰が抜けて立てない天和のそばに落ちている拡声器を男が拾い上げ、説明をした

 

 

「こちらは、ご自身の声を、今感じてもらった通り、大きくできるものにございます。あなた方は演説をされていますが、声が聞こえるのは前列の方にいる方だけなのですよ。こちらをお使い頂けましたら後方まで声が届きます。あなた方の歌う事にも役に立つものかとお思いですが如何でしょうか?」

 

 

 

説明が終わると男は拾い上げたものをもう一度、天和へと差し出した

 

 

「・・・たしかに凄いわね・・・これがあれば私達の夢も、演説で民を集めるのも楽に、確実に効率が良くなるわ。でもこれを私達に与えてあなたには何の得があるのかしら?」

 

 

人和は今だ警戒はとかず・・・否!解けずに居た。得体もしれぬものを作り出し、それを私達に使えと言ってきた。見返りはなに?無名の私達に与えて何の得があるのか。

 

混乱する人和は冷や汗を流しながら男を見つめる

 

 

「別に見返りが欲しくてこんなことをするわけではございません。私はあなた達の賛同者なのですよ!この国は腐っているし、官僚たちは腐敗している。そんな連中に意を唱える方々をお待ちしていたのです」

 

 

行業しくまた礼を見せた

 

 

「申し遅れましたが私は南華老仙と申します。このチカラは正しく使っていただけるのでしたら大いなる希望を、悪しき事に使えば天罰が下りますので、くれぐれも使い道を間違えぬようお願いいたします」

 

 

男は自らを南華老仙と紹介した、手から指輪を外し木箱へと戻すと、木箱を天和へと渡した

 

 

 

 

「これさえあれば、貴方達は大きく前進することができます。この国をどうかお助けください」

 

「人和ちゃん・・・」

 

「人和・・・」

 

 

どうするの?どうしたらいい?という目で天和も地和も人和をみつめる

 

 

「わかったわ!今私達は確かに実績もチカラも持ちえない!この指輪はありがたく使わせてもらいたいと思います。そこでこの指輪の使い方を教えてください」

 

 

警戒していた人和はここでやっと、刀を下し警戒を解いた。いや、本当は今すぐにでも立ち去りたかった。でもチカラが無いのは事実、今この男が見せたのは奇跡である。これを私達が使うことが出来れば・・・

 

 

「えっと、南華老仙さん!この指輪はどんなことができるの?」

 

 

人和が警戒を解いたことにより天和が小箱を手に持ち指輪を眺めながら南華老仙へと聞いた。

 

 

南華老仙は当然であるかのように呟いたのだった

 

 

「なんでも・・・ですよ!」



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三姉妹の旅立ち2

「なんでもできます!と言いたいのですが少しだけできないことがあります。」

 

 

南華老仙は左手で頬をかきながら困ったような表情で言葉を付け足した

 

 

「まずお渡ししましたそちらの指輪、如意宝珠から同じものを作ることはできません。そして死人を生き返らせること、こちらもできません。それ以外でしたら何でもできます!先ほど私がお見せしましたように無から有を作り出せること。石を金に換えること。物質の変化や病気の治療なども可能です」

 

 

三姉妹の周りを歩きながら説明をする南華老仙

 

 

「すっごーい!これがあれば私達の夢もすぐに叶えることができるよ!」

 

 

 

天和は嬉しくなり、さっそく指輪を左手の薬指に嵌めて月にかざした

 

 

月明かりに照らされて指輪に嵌った宝石は赤く輝く

 

 

「ねぇねぇ!早速試してみても良い!ちぃーねぇ!舞台衣装が欲しい!あとねぇ!あとねぇ!」

 

 

なんでもできると聞いて地和も、天和と同じく指輪を手に取りはしゃいでいた

 

 

「姉さん達、少し落ち着いて!いろいろ、やりたいだろうけど話を聞いて!」

 

 

人和は冷静に状況を確かめていた

 

 

「南華老仙さんはどこまで私達三姉妹の事を支援してくれるのかしら?」

 

 

「そうですね、そちらの指輪をお渡しした後はあなた達の事を村々で吹聴して賛同者を増やす活動でもしましょうか?張角様は凄い人だ!どんな病を治癒し、無から金を作り出せる!この国にとってはならない人!!などは如何でしょうか?」

 

 

そんなことできない・・・と言おうとした人和だったが、今受け取った指輪は不可能を可能に変えるチカラを持った物である。

 

「そう、公言して村を回りあなた達の奇跡を見た村人達はどう思われるでしょうか?」

 

 

間違いなく仙術や妖術の類だと思われるであろう。しかしその奇跡を見てしまえば、実際に目の前で金を出してしまえば・・・

 

 

「・・・私達のチカラとして人を集めることが出来る」

 

「さようでございます!人々は歓喜するはずですよ!奇跡だ!神だと敬い奉ることでしょう!そうなれば自然と人は集まります。ん~そうですね、人がすがれる場所を作ってしまえば良いのですよ!あなた達が神として信仰の対象になってしまえば!」

 

「宗教を作れと言いたいのかしら?」

 

「はい!それが人の心をまとめ上げるのに適しているかと!あなた達のその装飾や髪飾りの黄色を主軸とした黄巾党なるものは如何でしょうか?あと長女で在らせられます張角様に至っては大賢良師を名乗られるとよろしいのではないでしょうか?」

 

 

三姉妹はそれぞれ黄色いリボンを身に着けていた。天和は髪留めに、地和は右手首に、人和は胸元に。それを御旗に信者を集める。後に信者達が崇拝し一目で黄巾党であると分からせるための目印となった

 

「えーお姉ちゃん、大賢良師ってそんな堅苦しいの嫌だよ!全然可愛くないし!」

 

「いえ!ねーさんそれを名乗りましょう!歌うときは天和でそれ以外は大賢良師で通せば大丈夫よ!」

 

「れんほーちゃんがそう言うんだったら、ん!まぁ・・・いっか!」

 

 

難しい顔で否定した天和は人和の答えですんなりと受け入れたのであった

 

 

「でわ!信者1人目と致しまして私からお願いがございます!張角様」

 

「ん?なーに?」

 

「どうかこの国をお救いください!腐敗した洛陽を罰し、大陸に安寧を」

 

「そう・・・だね!南華老仙さんがくれたこの指輪で人数を集めて天子様をやっつけよー!!」

 

 

おー!と右手を掲げ笑顔で答える天和

 

「そのお言葉を頂けて幸いであります。たくさんの人々が救われることでしょう!でしたら私はこれから洛陽へと向かいこちらの立て札と書き文を巻いてきます」

 

 

南華老仙が見せた立て札と文は黄巾党のあの一文となっていた

 

 

 

甲子

 

 

蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉

 

 

 

 

「でわ!必ず人を増やして参りますのでお三方もどうがご無事で!」

 

 

そういうと南華老仙は姿が掻き消えるかのように夜の森へと消えて行った

 

 

それから指輪を手に入れた三姉妹は、村々で巡業しながら人を集め演説をし指輪のチカラで奇跡を見せながら信者を増やしていった。

 

ある時は壊れた建物を直し

 

ある時は流行り病で困っている村を助け

 

また別の村では金を出し豪遊した

 

 

人々はそれぞれ口にする

 

 

役満姉妹は天の使い!

 

三姉妹は天に代わりてあまねく世人を救う方

 

仙人が顕現し民を纏め統率してくれる

 

 

 

彼女等の奇跡を見た村人達はそのチカラに心酔し崇拝していた。

 

村で起こった出来事は口伝えにどんどん広まっていった

 

 

 

どれほどの月日が経った頃か数十万人の信者を8つの州で獲得するに至った

 

 

規模はデカくなり黄巾党としての活動は三姉妹が夢見ていたものから大きく逸れ始めていた

 

 

大陸に安寧をもたらすものから、大陸にとって害悪なものへと変わってしまっていたのだ

 

 

 

膨れ上がった信徒は数の暴力で村々を襲い始めた

 

暴力、略奪、凌辱、黄巾党の末端に至っては何を信仰し何の目的で活動しているのかさえ分からなかった為の事

 

 

張角、真名は天和、彼女も大きく変わっていった

 

 

始めは大陸に平和をもたらすために活動していたのだが、人と金、チカラに権力と集まった

 

彼女はいつしか表面的には善道をもって天下を教化していたが、内部では結託して黄天の世を作ろうと画策していた

 

人身御供を捧げて天を祭り、一斉に蜂起して州郡の役所を焼き払い、長官を殺害し集落を略奪した。張角は天公将軍と称した。

 

 

 

 

 

それが数十万規模で起こっているために、朝廷で問題視され、各地から討伐隊を指揮するための武将が招集されることになった

 

 

董卓に皇甫嵩達もその役割をこなすために洛陽へと呼ばれたのである

 

 

黄巾の乱と呼ばれる戦いから始まりさまざまな武将達がまざりあい大きく動きだすこととなる



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洛陽へ

 

エドワード、アルフォンス、董卓に皇甫嵩は森の中を馬車に乗りながら進んでいた

 

「見渡せど見渡せど森なんだが本当にこの道であってるのか?」

 

馬車の荷台に寝転がりながら愚痴るエドワード

 

「もう!兄さんは同じことばっかり何回言うのさ!」

 

「だってよー!こうも木ばっかりだと本当に洛陽へ進んでいるのかわかんねーじゃねーか!」

 

 

4人は出発した村から数日経った場所を洛陽へと向かっている

始めは見る景色が変わるたびに驚いていた二人で在ったが進むにつれて道は細くなり馬車がギリギリ通れるほどの場所だった

 

「大丈夫ですよ!エドワードさん!この辺には分かりにくいですがちゃんと目印があるんです!岩の形だったり切られた木の幹の数であったり」

 

董卓は目印になる場所を指刺しながらそう答えた

 

 

「ふふ!若い子達にはつまらないでしょうけどもう少しの我慢ですよ!」

 

手綱を握る皇甫嵩も目印は分かっているために道を間違えることはなかった

 

「もう少しで川が見えてくると思いますので、そこで少し休憩しましょうか!」

 

「お!頼むよ!皇甫嵩さん!馬車とか乗りなれてないもんだから尻が痛い・・・」

 

「ったく・・・ダメ兄・・・」

 

「あぁ!?なんだアル!てめぇ!!」

 

 

そんな兄弟のやり取りを董卓と皇甫嵩は笑いながら見つめていた

 

それから数刻が経ち川へとやってきた4人は馬も休ませるべく、しばしの休憩を取る

 

 

「はぁ~!!水が冷たくて旨い!!」

 

「エドワードさんはその手袋外さないんですね?」

 

川へと顔を突っ込み水を飲むエドワードを見て皇甫嵩が訪ねた

 

エドワードは赤いコート、両手には白い手袋を嵌めていた。

食事の時も外さずに居たことが不思議になった皇甫嵩は前から気になっていたのだ

 

 

「あぁ・・・これは、人様に見せられるような手じゃないからな・・・」

 

「・・・そうでしたか、ごめんなさい!不躾なことを聞いてしまったわね」

 

「いや、構わないよ」

 

 

皇甫嵩は昔に怪我をした傷跡や火傷などを想像してそれ以上は聞くことをやめる

 

 

 

「さて、この川まで来たって事は洛陽まではあと2日ほどかしら、この旅もあと少しね!」

 

革袋に水を入れ終わった皇甫嵩が川岸から立ち上がり董卓の隣へと移動し手渡した

 

 

「そうですね!黄巾党や賊を警戒していましたが何事もなく洛陽へと着けそうですね」

 

 

董卓は水を受け取るとそれを飲み喉の渇きを潤した。黄巾党の討伐!それが董卓と皇甫嵩が洛陽へと行きやらなければならない!目的であった

 

 

「そうね!霊帝様にお会いしてから討伐編成の準備と確認。やることはたくさんあるわ」

 

「これから向かう洛陽って所がこの国の中心なんですよね?」

 

皇甫嵩へとアルフォンスが問う

 

「えぇ!天子様と崇める霊帝様が住まわれる場所。洛陽!黄巾党はここを狙っているわね」

 

「俺達もその霊帝様って人に会う事ってできるかな?」

 

「ん~難しいと思うわね!霊帝様に仕える方々がそれを是とはしないと思うわ!特に何進(かしん)さんや趙忠さんあたりは絶対に許さないでしょうね」

 

 

何進遂高、漢の大将軍を名乗っている

もとは市井の肉屋だったが、妹が宮中に入ったことをきっかけに、武官として取り立てられた。酷薄で権力欲が強く、保身を第一に考える性格

 

 

趙忠

十常侍のひとり。霊帝(空丹に「我が母」とまで言われ寵愛されている宦官。

霊帝が可愛らしくて仕方が無く、全身全霊をかけて甘やかしている。

 

 

どちらも私腹を肥やすことに夢中になっているが賄賂や圧政で裏から握りつぶしている

 

 

「この二人がいる限りは難しいかもしれないわね」

 

皇甫嵩は腕を組み、ため息を付いた

 

 

「お会いできるかわかりませんが、お二人が望まれるのでしたらお礼として私が掛け合ってみましょうか?」

 

董卓は兄弟にそう告げる

 

「大丈夫なのか?」

 

「霊帝様はお優しい方なので、お二人に興味を持たれたらお会いになられるかもしれません。異国の方と大きな鎧!もしかすればあの霊帝様でも興味を持たれるかもしれませんから」

 

 

霊帝は幼いころより趙忠に言われるがまま、行動をしていた為、自分で考えることを放棄していた。しかし珍しい物や興味をそそるものに対しては自分から行動をしていた

 

 

「だったらお願いできますか?霊帝様って人にも聞きたいことがあるからさ」

 

 

「あまり期待はしないで頂戴ね!でも、私達に出来ることがあれば協力するから!言って頂戴!」

 

皇甫嵩は立ち上がり馬を呼び寄せ、手綱を付けなおした

 

「そろそろ出発しましょうか!このまま進んで洛陽の北から入りましょう!」

 

 

4人は洛陽へと進み、東西南北とある入り口の方を選んだ

 

しかしそこに居るのは北部尉として北の門の警備隊長をしてる曹操が守る場所であり、洛陽に暮らす民から一番恐れられている所であった



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北門の鬼

洛陽の北門前

 

 

1台の豪華な馬車が洛陽へと入るべく急いでいた。豪華な仕様の煌びやかな馬車で護衛が2人居た

 

「はぁー、この時期にまさか朝廷に呼び出されるとは思いもしませんでしたね~」

 

御者台から声をかけてきたのは袁紹の部下である顔良であった

 

「ったくよーせっかく、あたいが黄巾党をぶっ潰して回ってるって時に!楽しみ取られちまったよ!」

 

横から面白くなさそうに答えたのはこちらも袁紹の部下である文醜であった

 

「うるさいですわ!霊帝様も黄巾党の討伐の事で私をお呼びになったに違いありませんわ!」

 

馬車の中から金髪くるくるの袁紹が顔をのぞかせた

 

「斥候の話によりますと他の州の県令や武将、武官達も集められているみたいですし、この私が呼ばれたのも当然と言えば当然なんですわ!おーっほっほっほ!」

 

「麗羽様、門が見えてきました。なにか立て札がありますけど・・・なんだろう・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

北部城内 夜中禁足 門中沈々 下馬禁刀 騒者打擲

 

夜中は出歩くな 門の中では静かに 馬を降り武器を抜くのは厳禁 騒がしいものは罰する

 

 

曹操が北部位になったときに掲げた札であった

 

 

「なんか、馬車を降りろと書いてありましたね?」

 

「降りろですって?っは!構いませんわ!斗詩さん!そのまま進んでしまいなさい」

 

「え?でも・・・」

 

「良いんじゃねーか?斗詩!そのままいっちまえよ!ほらほら」

 

文醜は馬の手綱を持ち早足で進ませてしまった。すると門の警備兵達が槍を構え馬車を止めた

 

「お待ちください!この北門を通られる場合はいかなる人物でも下馬をお願いしています。どうかお降りください」

 

 

「なぜですの?この袁家の者が民草達と同じようにわざわざ歩いて門を通れと、そうおっしゃるのかしら?」

 

「・・・はい。お願いいたします」

 

「私は霊帝様に呼ばれて洛陽へとやってきたのに遅れてしまっては、貴方たちの首を差し出しても許されませんわ」

 

「ですが、いかなる方のどのような理由であってもこの禁令を厳守せよと言われておりますゆえ」

 

「あなた達では話になりませんわ!この門の責任者をお呼びなさい!その方と話を付けますわ!」

 

袁紹は馬車を降り、腰に帯刀していた武器を取り出し、門の近くに掛けられている立て札を切って捨てた

 

 

「あら?その必要はないわ!私が責任者ですもの!」

 

 

門の中から現れたのは曹操であった。位の高い服を着て秘書官を後ろにつれて袁紹の前までやってきた

 

 

 

「あらあらあらあら!誰かと思えは華琳さんじゃありませんか!まさか鬼の北部尉と言われて恐れられている方があなただったのですわね?」

 

「麗羽は相変わらずね!あなた、文字も読めなくなったとは本当に残念ね!袁家の名に泥を塗ってしまっているわよ?」

 

 

呆れたように。っふん!と袁紹を一瞥し部下の前へと歩を進める曹操

 

「さぁ、あなた達、捕捉なさい」

 

「っは!」

 

兵達は二人で袁紹を捉え打擲台へと連れて行った

 

 

「っく!放しなさい!!汚い手で私に触らないで!斗詩さん!猪々子さん!助けなさい!」

 

「すいません麗羽様・・・私達も武器取られちゃいまして・・・」

 

「・・・あたい等が動いたら麗羽様の首が飛んじゃいますよ・・・」

 

「きぃ!!役立たずですわね!って華琳さん!なんですのその鉄の棒は!!」

 

 

台に固定された三人は打擲台へとうつ伏せに寝かされ口には猿轡(さるぐつわ)をされた

 

兵が三人へと注意していた

 

「どうかお気をたしかにもち、こちらはくわえたままにお願いします」

 

 

「さて、秘書官!この者達の罪はいかなるものかしら?」

 

「っは!下馬されなかった事と器物破損、武力解決しようとの3打が妥当かと」

 

 

「そう、なら一人1打耐えなさい!それをもって罰にしてあげる!麗羽、行くわよ?」

 

曹操は金棒を振り上げ躊躇なく袁紹の背中へと鉄の塊を振り下ろした。

 

「っっは・・・!」

 

背中へと重い衝撃が走る。肺の中の空気はすべて抜け、痛みは骨に内蔵まで届いた。

骨は折れることは無かったが痛みで全身が震えだした

 

「次はあなたね」

 

曹操は同じように顔良、文醜へと金棒を振り下ろした

 

「さて、罪も終わったからあなた達もう行って良いわよ。これに懲りたならもう同じことはしないで頂戴。めんどくさいのよ」

 

金棒を兵へと渡しその場を去って行く曹操

 

 

「麗・・・羽様っ大丈夫ですか?麗羽様?麗羽様!?」

 

「大丈夫だよ斗詩。気絶してるだけだ。それにしてもあの曹操、なんの躊躇もなくやりやがったな!いつか絶対後悔させてやる」

 

「よ、よかった!麗羽様を取り合えず馬車に乗せて宿に向かいましょう」

 

気絶した袁紹を抱えて馬車へと移動し、宿へと向かうその数刻後

 

 

 

「はぁーやっと洛陽につきましたね!」

 

んーっと背筋を伸ばしながら皇甫嵩は馬を歩ませている。座りっぱなしのために体がこわばるのだ

 

「立て札?なになに・・・馬車を降りて門を通られよ、従わなければ打擲・・・新しい北部尉さんは過激な方なのね」

 

「では、ここから歩きになりますね」

 

 

董卓が降りる支度をして後ろに乗るエルリック兄弟へと声をかけた

 

「あーやっと街か!すげぇよな!この城壁たけぇ!」

 

「うん!あ!見て兄さん!あそこ」

 

アルフォンスが指を指した場所は城壁の上にある兵舎だった。そこに通る旅人を見つめる一人の女性の姿があった。

 

 

曹操は木簡を読みながらも常に周りを見ていた。それゆへ、アルフォンスが指を自分に向けていた事を気づいた

 

「あれは・・・なかなか面白いわね!」

 

城壁を降りて門の前まで来た曹操。その横を馬車を降りた4人が通りすぎて行った

 

「・・・後ろの異国の子供?と全身を包む鎧・・・ふふっ!これから、楽しくなりそうね」

 

 

宿へと向かった4人は翌日、朝廷へと入る

 

皇甫嵩と董卓は謁見の間へと通されたが護衛の二人は別の部屋で待機していた所、部屋に2人の女性が入ってきた

 

 

「この部屋で待ってろってよ!斗詩!茶!茶入れてくれ!」

 

「もう・・・文ちゃん!麗羽様の事が心配じゃないの!あんな青ざめた顔で霊帝様の前に出るなんて」

 

文醜と顔良である。部屋へ入った所、先客が居たようでそちらに目を向けると

 

 

「って!!あの鎧に金髪!いつかのクソガキじゃねーか!!」

 

 

扉から騒がしく入ってくる女性を見たエドワードは思わず嫌な顔になってしまう

 

「っげ・・・袁紹の・・・」

 

 

「お前のせいであのあと県令にめちゃくちゃ怒られたんだからな!」

 

 

指をエドワードへと刺し、地団太を踏みながら怒りをぶつける文醜

 

「こっちだってな!!お前達に宿を燃やされたせいで通行所なくなっちまったんだよ!!」

 

イスの上に立ち机に右足を立てながらエドワードも文醜へと怒りをぶつける

 

 

「砂漠越え!?あほか!!あれが無ければ益州に簡単に行けたんだよ!!」

 

「うっせ!あたい達だってあんなことがなければこの戦いもやらなくてよかったんだよ!!」

 

「っは!だったら袁紹もこの黄巾党討伐に呼ばれてんのかよ!」

 

エドワードと文醜の口喧嘩を顔良とアルフォンスはだまって呆れたように見ているだけであった



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