狂気に飲み込まれた者達へ (Lea♪)
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プロローグ

よってらっしゃい見てらっしゃい、これから始まるのはプロローグ、とある姉妹が学園に入る前のお話でございます、そしてこれを読む人たちに大きな謎と、底知れぬ興奮を与えるお話でもあります。


窓がガタガタと揺れる、外の吹雪がそれほど強いためその揺れはしばらく止まらないだろう、と思った。そして作業中にそんなことを考えた自分は疲れているのだと判断した私は椅子から立ち上がり、少し伸びをする。ふと、目に映った鏡にはモデルのような男が映っていた。自分で言うのもなんだが白髪に紫の目、長身に眼鏡というどこかの俳優かと思わせるほど整った顔立ちとスタイルを私は持っている、と思う。妹達が事あるごとに容姿を褒めてくるので最近は兄に気を遣っているのではないかと疑ってしまうほどだ。そんな妹達も私からするとかなり可愛い部類だと思っている、少々身内贔屓が入っているのは否めないが両親がかなりの美男美女であるからだろうか、その子供である自分と妹達もその血を色濃く引き継いでおりかなりの美男美女になっていた。頭を休憩させるために妹達の可愛さについて考えながらそこに住む住人ですらも広いと思うような屋敷をぶらぶらと歩く。生まれてからずっと住んでいる屋敷ではあるが未だにその全貌を把握できていない、というものの、何年かに一度両親が研究のために屋敷を改修して部屋を増築したり地下室のようなものを作るため今はどのくらい広いのかなどは考えたくもない。そんな広大な屋敷ではあるが他の者はすでに寝静まっており、私の足音と時計の針の音のみが静かに聞こえていた。私はこの静寂がひどく心地よくていつまでもそれに浸っていたい、と思ったが作業の途中ということもあり、渋々自分のデスクへと戻った。そして私は自分の作業を続けながら両親の帰りを待つ。室内にはキーボードをたたく音と時計の針の音だけが鳴り響いていた。

「...遅いな、二人共」

自分の作業が終わり時計を確認すると既に11時を回っている、私の両親は同じ会社に通っているため帰りはいつも一緒に帰ってくる、さらに言うと何かしらを研究する機関にいるらしくいつも帰りが遅い。そんな両親がいつもなら既に帰ってきているはずの時間を過ぎても帰ってこないために私は少し怪訝に思った。それからしばらくするとドアのチャイムが鳴る。ようやく帰ってきたかと思い私は玄関のドアを開ける。しかし、そこにはーーー

「やあ、初めまして」

ーーー見慣れない女が立っていた。防寒をした白い服に吹雪の中でも輝いて見える長い銀髪、顔もかなり整っており街中を歩いていたら百人中百人が振り向くだろう、と思わせるほどの美貌であった。当然、両親から誰かが来るという話も聞いてはいないし吹雪の中でも一切肩に雪がかかっていない女はひどく不気味に見えた、そのためそうそうと帰ってもらおうと思い

「...誰だ、こんな時間に」「おや、つれないねぇ」「御託はいい、帰れ」

そう言って扉を閉めようとしたが、

「君の両親、死んじゃったよ」

その言葉でドアを閉じようとする手をピタリと止めた。いや、止めるしか無かった。

「...何だって?」「あれ、聞こえなかった?君の両親は死んだんだって」

驚愕の目でその女を見つめる。有り得ない、馬鹿馬鹿しい、と笑い飛ばすのは簡単だ、だが今の私にはその女が一切冗談を言っているという風には見えなかった。いや、女の雰囲気がそうさせなかったというほうが正しいのかもしれない。

「なぜ...」「うん?」「なぜ、両親は亡くなったんだ」「あぁ、理由ね」

そう言うとクスッと笑ってその女、いや、彼女はこういった。

「彼らは私たちに近づきすぎた、だから消された。それだけのことさ」

その言葉を聞いて私は一瞬どういうことか訳が分からなかった。だが、「私たち」つまり目の前の者が両親を殺した犯人だと分かると躊躇わず腰に掛けていた銃を引き抜き彼女に向けて構えた。

「おや、判断が早いね」「黙れ、お前が両親を殺したんだろう」「ん?あぁ確かに、そういうとらえ方もできるか...ちょっと言い方が悪かったみたいだね、正確には私たちの中の一部が行動をした、というだけであって私自身は関与してないよ」「...どういうことだ」

どうやら何かしら入り組んだ事情があるのかもしれないと思った私は殺した本人ではないという彼女の言葉を一旦は信じることにして銃を下ろし腰へと戻す。その様子を見て満足したのか彼女は話し出す。

「長ったらしい話は苦手だから簡単に話すと私たちは君たち人間の言う神、という存在なんだよ」「...いきなりそう言われてもはいそうですかとはならないぞ...」「そうだよね~。ま、とりあえずそんなもんだと思ってくれていればいいよ、んであなたの両親を殺したのはその中の神の一柱...だと思う」「「だと思う」?えらく曖昧な言い様だな」「仕方がないよ、君の両親を殺したのは神本人ではなくてその神を信仰している異形の生物、私たちからは下級生物って言われてる子がやったんだよ、だから黒幕が誰なのかっていうのは分からないの~」「なるほどな」

一区切りがついたのか彼女が話を止めたので私は顎に手を当てて少し考えに耽る。それに気付いたのか、彼女は私の考えが纏まるまでしばらく外の壁に腰を掛けていた。しばらくして何となく彼女の言っていることを理解した私は顔を上げ彼女のほうを向く、それを待っていたかのように彼女は話を再び始めた。

「そろそろ理解できたかな?」「ああ、なんとなくだがな、それとアンタが犯人ではないことも」「おお、良かった良かった」「それで、アンタは両親の死を伝えるためにここまで来たのか?」「まっさかー、私がそんな面倒なことだけのために来るわけないでしょ?」「ではなぜ...」

私がそういうと彼女は白髪の彼に

「復讐、したいとは思わない?」

"悪魔の契約"を投げかけた。

「復、讐?」「そう復讐、君の両親を殺した者にね」「いやしかし、俺はただの人間、しかも相手は神だろう?一体どうやって...」「私が手を貸すよ」

私は驚いて彼女を見つめる。

「何...?」「聞こえなかった?私が手を貸してあげると言っているんだよ」「...どういう風の吹き回しだ、仮にも同じ神同士だろう」「神、と言っても馬が合わないとかそういうのはあるよ、しかもそれぞれが勝手に動いてるしねー」「そういうもんなのか」「そういうもんさ、でどうする?」

彼女は手を指し伸ばし再び私に問いかける

「ちなみに言っておくけど、この手を取ったら君は人外ともいえる力を手に入れる代わりに二度と平和な暮らしはできないよ、これから味わうはずであった幸せな生活も、君らが青春とかいう物も全て捨ててもらう」

当たり前だ、そんなことは百も承知ではあった、だがいざ面と向かって言われるとどこか躊躇してしまう自分がいる。そして鼻で笑う、両親が殺され、復讐をしようと息巻いていたはずなのに最後の最後で尻込みをしてしまっている自分に。

彼女から問いかけられて一体どれくらいの時間がたったのだろうか、おそらく一分も満たない時間ではあったはずだが私にとっては何十分にも感じられるような、そんな長い時間であった。そして私は決断をし彼女をしっかりと見つめる、そこに心の揺れはない。

「...いい顔をするようになったね、聞くまでもないけどもう一度問わせてもらうよ」「ああ」「私の手を取ったら君にはすべてを捨ててもらう、それでもいいんだね」「ああ」

私はそう言って差し出された手を取る、すると私の利き手である右腕に謎の印が刻まれる、それはどことなく彼女と同じ雰囲気をまとっているような気がした。

「これは...?」「私からの些細な贈り物、これから先、君は私と契約したせいで数多くの異形の者から狙われることになると思うからねー、これはちょっとした魔除けのようなものさ」「なるほどな、それでこれからどうすればいい?」「そーだね~、とりあえず私の家までついてきてくれる?そこで一通り君に神、神話生物に対抗する術を与えるよ」「分かった」

一通りの荷造りをし終え、いまだに安らかな寝息を立てる姉妹と家政婦の人に心の中で別れの言葉を言い、私は彼女の言葉通りにそのあとをついていく、何かしらの力を使っているのか外に出ても私と彼女の周りだけは吹雪が止み、静寂が訪れていた

「これは君の始まりでもあり私の始まりでもある、どれだけ長く厳しい道になるかは私にもわからない、けれど君は頑張るしかないんだ、その復讐のために、そして...君の愛する者を、守るために」「ああ、その通りだ、私は両親を殺した神を殺す、そしてその行く手を阻む者も全て蹴散らす、そして...妹達を両親と同じ目に合わせないように、守り抜く」「うんうん♪中々いい目をするようになったあじゃないかあ、改めてこれからよろしくね、私の契約者さん♪」

歩きを止め振り返り笑顔でこちらを見てくる彼女、私もそれに笑顔で

「こちらこそ、これからよろしくお願いするよ、ええっと...」

そう応えようとしたが彼女から名前を聞いていないことに気付いて言いよどむ、それに気づいたのか彼女は

「私の人間の名前はアナスタシア、気軽にアナとでも呼んでくれよ契約者クン♪」「ああ、分かった。改めてよろしく。アナ」

彼女の名前を呼び挨拶をする。それで満足だったのだろう、前を向き歩みを始めるアナに対して私はふと疑問に思ったことを聞いた。

「そういえばアナ」「なあに?」「さっき君は「人間の名前は」と言っただろう、あれはどういう意味なんだ?」

アナは歩きながら答える。

「あぁ、それね、こっちの世界では真名を使うと他の神に警戒されちゃうから人間の名前を使っているんだよ、普段は誰にも言わないけど...まあ、君は私の契約者だし教えてあげるよ」

そう言って彼女は歩みを止め再びこちらに振り向いた、その笑顔は酷く綺麗でもあり、邪悪でもあり、すべてが見えているかのような透き通った眼で、こちらを見つめて笑顔で答える。

「私は「××の神」、「××××混沌」、「××する神」とも呼ばれる×にして一の神」

       私は   ーーーーー××××××××ーーー




ご覧なられた皆々様、それぞれ思うことは違うでしょうがこれはまだプロローグ、本編に入る前のさわりのようなものでございます、次回からはとある姉妹が学園に入るお話。
その学園の名はミスカトニック学園、彼女らはそこで楽しい青春と呼べる日々を過ごせるのか、それとも....


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