ありふれてしまった秘封俱楽部 (名もなき提督)
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ーーー1ーーー

 おれは死んだ。はずだった。

 

 なぜわかるかって?簡単のことだよ友よ。

 

 上半身と

 

 下半身が

 

 

 きれいに胴体で別れたからさ。

 

 どっかの人外な悪平等なインフレ院さんよろしくきれいに分かれたよ。いや~人間

 

で、だよ。今さ、ハ〇メルンやな〇うよろしくテンプレの真っ白の場所?空間?に気が付いたらいた。

 

な、なにを言ってるか分かれねぇと思うが俺も何をされたかわからねぇ時間停止とかスキマとかそんなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 

 とりあえずポルポル君ムーブをやって満足した。

 

『私は神です。今あなたの頭の中に話しかけています』

 

「こいつ!?直接脳内に!?」

 

まあ、こんなくそ茶番はよしましょうや。

 

「意外とノリがいいんですね。」

 

「ハハ!こんなことになってるのにテンションの一つ二つおかしくしないとやってられねえって。で邪神様が何用で?」

 

どうせ愉悦とか何となくとか暇つぶしなんでしょう?

 

「出会って早々邪神呼ばわりとは・・・・・何用か?か、簡単だ。お前を転生させるのだ。」

 

「へえなんでまた?」

 

「暇を持て余した神々の遊びみたいなものだ。」

 

「やっぱり邪神じゃねぇか!!理由は!?いや言わなくてもわかるぞさすがに!!暇すぎて「あ、京都に行こう」のノリでなんとなく思いついたからって理由だろ!!?」

 

「まあ、なんとなくなのは認めよう。さて一応王道にのっとって聞こうじゃないか。転生させるから何か特典を言うがよい。」

 

「・・・いらない。そんなのものなんて要らない。」

 

「えーいいんだよ時間停止でも完全催眠とかどんなチートもありなんだよ。夢でしょ。そうやって無双とかしちゃうの人間ってさ非力だからそういうのほしくないの?」

 

「無双するだけ面倒。絶対地雷か何かある。某クゥトゥルーなSAN値直葬ものとかティンな猟犬とか出てくるにきまってる。」

 

何かに縛られるのは性に合わないから仕方ない。力を持つだけ無駄だからな。

 

「すごい偏見だね!?・・・へえ、まあいいや。君に行ってもらう世界は『ありふれた職業で世界最強』の世界だ。と言ってもまあ上下に分かれた君は原作知識なんて持ってないから楽しませてもらうよ。」

 

「はいはい、愉悦乙。どうせなら楽しめずに終わるとイイネ。せいぜい勝手に楽しんで部屋の隅っこでどっかのニャルラトホテプとかに煽られておぜってろ。」

 

「っふ。」

 

めんどくさいなぁ。さっさとやってくれよ。」

 

「途中から漏れてるぞ。」

 

「失礼、噛みました。」

 

「いいや違う。絶対わざとだ。」

 

「垣間見た!」

 

「我の神々しさをか!!」

 

「しゅららぎさんごっこはこのくらいでやめましょうか。」

 

「茶番による文字数稼ぎも終えたところでさらばだ----。」

 

ボッシュートしてんじゃねぇ!!

 

 

 

 

 

『よき来世を■■■■■■・■■■』

 



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ーーー2ーーー

『キングクリムゾン!!』

 

生まれてから三年間の時をぶっ飛ばした!!

 

 ハイ、画面の向こうの皆=さん。転生者です。

若干のメタ発言が入りましたがあの仮称『邪神=サン』によって転生してから三年がたっていろいろ身の回りのことがわかりました。

転生してからの名前が『マエリベリー・ハーン』でした。はい、あのマエリベリー・ハーンです。しっかりと生まれた時から『結界の境目を見る程度の能力』もありました。

元男の身としては前世で相棒を使わずに終わってしまったのが残念であるがまあ、広く浅くそして好きなものには深くで『東方Project』にはまっていた身としては警戒せざるを得ないけどメリーかわいい(脳死)

とまああの邪神のおかげ(せい)でこの体になってしまったけどまあ不満はないね。親は資産家で不便はないし日本語は前世のおかげで元から問題ないしさらに英語とかも普通にしゃべれるからね。

能力があるのは不安だけど今はとりあえず困ったことはない。

 

友達?え?友達って本のことでしょ?(ボッチ脳)

 

ほ、本はいいぞ~特に心理学とか精神系の本とか面白いよ~

 

 

・・・・・ハイ、ボッチです。

 

____________

________

_____

 

は~い。将来の秘封俱楽部の片割れであるマエリベリー・ハーンことメリーで~す。

 

 

・・・・・はあ

 

あれからさらに時間がたって日本でいうところの小学校三年生の年齢になりました。

自家の場所はヨーロッパのどこかってことはわかったけどそれ以上は特に(わかって)ないです。

今は、日本に行くための準備をしてます。え?なんで急に日本に行くのかですって?私の方が知りたいです。

 

あれから大した友達も作れませんでした。

体と精神って引っ張られるっていうけど若干ひっぱられたけど結局能力とかで回りから浮いちゃってたから友達とか作れなかったのよ。グスン。

 

周りと違うのは仕方ない。しかも、もしこの能力が暴走でもしたら目にも当てられないからやっぱり人との付き合いは最低限にすべきだと思ってるからね。

 

日本が今から楽しみね!日本のサブカルチャーは素晴らしいものばっかりだから楽しみね!最近は速読の技術が高くなっちゃったからすぐ読み終わっちゃってつまらなくてね。

今は違うけど元日本人としてはお米が楽しみね。

 

 

アディオス!我が家

 

 

__________________

______________

___________

 

ドーモ、読者=サン。ボッチナボッチナ、メリーです。

 

小学校もボッチ道まっしぐらで中学にも入ってしまいました。別にそれはどうでもいいんだけど同じクラスに『天之河光輝』とか無駄にキラキラしたご都合解釈全開の人間がいるんだけどね、はっきり言って気持ちが悪かったわ。これ以上は語りたくはないわね。幼馴染の『八重樫雫』さんはよく白髪が出ないようで感心したわ、最悪な意味で。

 

 

こんなくだらない情報なんて要らないのよ。同じクラスではないけど他のクラスに『宇佐美蓮子』がいたわ。

同じ蓮子だけどはっきり言って名前とかが同じ名だけで『東方Project』の蓮子と同じように能力を持ってるとは限らないから接触する気なんてないけどね。まず原作や二次だと大学での出会いだったようだけど『東方Project』の世界ではなくて『ありふれた職業で世界最強』の世界らしいし期待なんてしてないわ。

 

あのキラキラ君に絡まれないうちにさっさと帰りましょ。



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ーーー3ーーー

中学二年の夏です。

中学二年に上がるときに親が向こうの家に帰るといわれて私にどうするか聞かれたのよ。まあこっちの方がなんやかんやで居心地がよくって残ることにしたのよ。

私は今とある人物と待ち合わせています。かかわらないで置いたのに中学一年の夏ちょうど一年前に関係を持ってしまったのよね。

まあその人物は毎回毎回待ち合わせのたびに遅刻をしてくる遅刻常習犯なのよ。

 

勘のいいひとならここまで言えばわかるでしょ。

 

「ごめーん。ちょっと遅れちゃった。」

 

私は本を閉じて

 

「4分32秒の遅刻よ。遅刻しないと死ぬ病気にでもかかってるの?」

 

ジト目を向ける。

 

「まあこの私の頭脳を休めるには常人と同じ睡眠時間では足りないのだから仕方ない!」

 

「胸を張って言うことじゃないでしょ。」

 

「そんなに怒らないでよ。私のメリー。」

 

「いつから私はあなたのものになったのかしら“蓮子”?」

 

そう、私が関わらなくてもいいと思っていた人物、『宇佐見蓮子』その人だ。

 蓮子との出会いは私との根競べみたいなものだったのよね。周りから浮きながらかかわらないようにする私と周りから浮きながら我が道を行く蓮子。どっちに軍配があるかって言ったらねぇ?

 

「で、今日は何で呼んだのかしら?」

 

「これよこれ!」

 

蓮子が鞄の中から一枚の写真を取り出す。

 

「これは・・・墓地?しかも桜が咲いてるだなんて。いつ撮られたものなの?」

 

「さすがメリー、そこに気づくだなんてさすがね。いつ撮られたかって?丁度一週間前の2時30分に撮影されたものよ。」

 

 ついに始まったのね。私たちの年齢自体はあってないけどそれは些末な問題ね。蓮台野にて冥界への結界を暴くのだろう。

蓮子も『東方Project』の蓮子と同じみたいで『星を見ただけで今の時間がわかり、月を見ただけで今いる場所がわかる程度の能力』を持っていた。

まあ、私が彼女と一緒に行動する理由?宇佐見蓮子だから?ちがう。彼女だからね。

なんか惚れた話みたいになってるわね。

 

「で、いつ行くの?まあ、蓮子のことだからなんとなくわかるけど。明日とか言うんじゃないわよね?」

 

「よくお分かりで明日って思いっきり言おうと思ってました。」

 

「明日は予定は特にないから大丈夫よ」

 

「さっすがメリー!私の嫁ね!!」

 

「大声でそんなこと言わないでくれる?れ・ん・こ?」

 

半眼全開で見つめる。

 

「ア、スイマセン。」

 

棒読み感がとっても強いわね。

 

「さ!気を取り直して今日は夏の課題を終わらせておいちゃいましょう!そうしたら、秘封俱楽部の活動開始よ!」

 

ま、楽しいからいいんだけどね♪

 

 



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ーーー4ーーー

また時間が飛んだわ。

え?何度も飛ばしすぎだって?仕方ないでしょ?作者にもいろいろあるみたいなんだし、深くは触れないで上げましょ。

まあそのうち、この時間が飛んだ間のことについても番外編なり幕間に書こうとしてるらしいわよ。

 

ま、こんな下らないメタの世界は置いておいて今は高校二年生になったわね。あれから、いろいろな境界を暴いてきたわ。最近だと月にまで言ったものね。

高校二年になるまで嬉しかったことはあれから蓮子と一緒のクラスで居続けられたことね。で、気分が悪くなること・・・と言ってももうどうでもいいって感じなんだけどキラキラ君とまた一緒になってしまったことね。雫さんは胃薬が必要になるんじゃないかしら。

 

なぜこんなことを語ってるのかというと

 

 

・・・・・ナァアニアレェ?

 

ゴホン!ちょっとキャラがぶれたわね。失敬失敬。

 

まあ、簡単に言うとキラキラ君にずっと別のところに通じている境界が付きまとっているのよ。すきを見て弄ってはいるけど今までのとは毛色が違うみたいなのよね。

ひとまず蓮子が来るまでは大人しくしておくのが吉ね。

 

人がさっきより集まり始めたみたいね。蓮子は・・・・・・・うん、遅刻常習犯だし気にしたら負けね。

 

あ、南雲君が来たみたいね。相も変わらず絡まれてるみたいね。キモオタではないと思うんだけど。普通にいい人なんだけどねぇ。まあ別ベクトルでは私たちの方がヤバいのだけどね。

 

チャイムが鳴「セ―――フ!!」アウトね」

 

まああのキラキラ君だと文句を言いたそうにしていてもHRがあるから骨底に来れないのよね。まあそれを見越してのこの時間なんでしょうけどね?

とりあえず授業の最中にでも相談しないとね。

 

 

《以下筆談による会話》

 

“蓮子、よくわからないんだけどあのキラキラ君(天之河)の後ろに境界がずっと追っているのだけど”

 

“それ本当?どうだった?”

 

“どうにかして弄ってみようかと思ったけど弄れそうになかったわ。それに今までとはまた違う感じの境界みたいなのよ。つながってる先が私の『夢』の世界とはまた違った例えるなら『異』世界ね。見た目もいつもと違うし”

 

“なるほどね。さらなる未知がある以上そこに行かない道理はないしそれにそれだけ強い干渉力があるならもしかしたらメリーの能力に準ずる力があるかもしれないわね”

 

“で、我らが秘封俱楽部の会長さんはどうするつもりなの?”

 

“決まってるじゃない。どれだけ危険があろうともそこに進むのが私よ。変化の薄い平穏なんてこの私が求めてるとでも?”

 

“はいはい。蓮子がその程度で止まるなんて思ってないわよ”

 

 

 

そして、お昼に私たちはこの世界から消えた。



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ーーー5ーーー

世界を越える。

言葉にすると簡単だけど普通じゃ経験するようなものではない。

 

まさか、教室内にいた全員が巻き込まれるとは思ってもいなかったわね。

突然こんなところに連れられた所為か混乱してるみたいね。常識的に考えるとあり得ないことが起こったから当然だけどね

 

こんな風に考えてるはいるもののしっかりと周りの観察はやめてないわ。

巨大な壁画があるけどどこか胡散臭い雰囲気を出してるのよね。それに何かの祭殿の上にいるみたいね。周りには祈りをささげてるように三十人ほど装飾過多なおそらく神事にかかわるような衣装をまとった人たちがいる。

 

しかし、その中におかしなヒト。いえ、存在がいた。教会とかにいるようなシスターのような見た目をしてるけど『結界の境目を見る程度の能力』(仮)を持つ私から言わせてみれば明らかに人間じゃないわね。今まで会ってきた妖怪とかとも違うけど人間と比べたらそっちの方が近いわね。

 

蓮子の方も考えてるみたいね。まあ頭の出来で言ったら前世とかそういうの抜きで私以上に優れてるからね。普通にこの世界の仕組みが見えているといっても過言じゃないレベルね。そんな蓮子も違和感を感じてるみたいね。

錫杖をシャラシャラならし鳴らしながら眼光の強い(おそらく)最高司祭が近づいてくる。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりまするイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ。」

 

イシュタルねぇ・・・メソポタミアの我が儘女神様と同じ名前を関してるなんて皮肉なのか、何かの因果か、ただの偶然か。警戒するには値すると思うわね。

と、言うより。

 

「ねぇ、蓮子」

 

「何?メリー?」

 

「錫杖ってちょっと世界観違くない」

 

「メリー。今気にするところはそこじゃないとはっきり言えるわ。」

 

え!?

 

「まあ、メリーの天然さ加減はいつも通りなのはわかったからさっさと行きましょ。」

 

ひ、ひどい。あ、待って

 

 

____________

________

_____

 

 

私たちはイシュタルさん(一応さん付けをしておく)に案内されて会議室のお湯な部屋に案内された。途中、混乱してるせいかGDGDしたけどキラキラ君のかりちゅま...ゲフンゲフン!カリスマMAXで扇動もとい説得してたわね。

 

上座の方はキラキラ君を中心とした四人と愛子先生が座ってそれに続いて座ってたわね。私?もちろん下座の方で蓮子の隣に座ってるわよ。

ついでに言うと男子の夢をかなえたかのようなメイドさんが来たけど女子たちから絶対零度のまなざしを受けてるけど、明らかにハニトラ用ね。幻想郷の時を操る『完璧で瀟洒な従者』のようとまではいわないけどもう少し気を付けるべきね。粗が多すぎるわね。従者としては三流以下ね。まあ、比較対象がおかしいだけだと思うけど。

後、香織さん?南雲君が隣にいるだけで目の敵にされると困るんだけど。蓮子も対抗意識をもって「メリーは私のものよ!」オーラ出さないでくれる?

 

「さて、あなた方におかれましてはさぞ混乱されていることでしょう。一から説明させていただきますのでな、まずは私の話を最後までお聞きくだされ。」

 

曰く、この世界はトータスと言い三つの種族、個人的見解も含めると三つのヒト種が、人間族、亜人族、魔人族、北の人間族、南の魔人族、東の森林の亜人族らしい。

曰く、人間族と魔人族は何百年も戦争してるらしい。魔人族の方が種族的に若干上らしいが数の優位性で拮抗してたらしい。

曰く、魔人族が魔物を使役し始めて均衡が崩れかけてるとかなんとか

 

魔物は動物などが魔力を取り込んで変質した異形のことらしい。

 

「あなた方を召還したのはエヒト様です。われわれ人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を作られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族が滅ぶと。それを回避するためにあなた方をよばれた。この世界よりも上位の世界の人間であるあなた方は、この世界の人間よりも優れた力を有しているのです。」

 

世界に上位もくそもあるのかしら?それに“人間族”が崇めるこの言葉も重要ね、きっと。

唯一神と聞いてどっかの社長が出てきて脳内で「ブゥエヘッへっへっへ!!」と高笑いしてる私は悪くないと思う。

 

「あなた方にはぜひその力を発揮し、エヒト様の御意思の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」

 

・・・なし崩しに協力させる気が丸見えなんだけど。後で蓮子とのすり合わせは確実に必要ね。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

愛子先生ゑ・・・

周りもそんな憐みの目で見ないであげなよぉ。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場にいるほとんどの人間が絶望の顔に染まっていく。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

愛子先生はそんな事実を突きつけられて脱力してしまったようだ。私だって夢の世界であんなことになった最初のうちは精神的にきつかったもの。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

まあ、望んできたわけじゃないものからしてみたらそうなるわよね。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

などと、犯人は証言しております。力があってもそれ相応の意思がともわなければ空っぽの伽藍洞と何ら変わらないのにねぇ。

それでも、気力を失せてしまった人をどうにかするのは評価に値するけどね。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫……」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織……」

 

周りもそれにつられて賛同していくけど私たちは戦争しに来たわけじゃないから下手にここで動く気にはなれないし、あそこでどっかの新世界の神にでもなりたそうな顔をしてるイシュタルさんが危険そうなのよね・・・



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ーーー6ーーー

 戦争に参加することを決められてしまったが常識的に考えると日本で平和ボケした一般高校生たちにいきなり戦えというのは無理な話。様々なオカルトにかかわってきた私たちも逃げるので精いっぱいなのだから。

 

しかし、それを考慮しないほど愚かではなかったようでハイリヒ王国で受け入れの準備が整っているらしい。

 

外に連れ出されそこにある台座に巨大な魔方陣が刻まれていて、それに興味をそそられたのか生徒たちが集まっているのは仕方ないでしょう。蓮子だって興味を向けてるんだもの。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

詠唱で魔法陣を起動したようで台座がロープウェイのようにスライド移動していくさまをみて生徒たちが興奮がさらに高くなっているのを私はあきれてみるしかなかった。

だって、機械とか物理法則に従ったものか魔法、神秘という過程を経ての差だということには目を向けないのだろう、未知というのは興味と同時に恐怖の象徴でもあるというのに。

 

………………………………

 

王宮につくと真っすぐに玉座に案内されグロイ物・・・もとい気持ちの悪い吐き気のするものを見せられた。

 

イシュタルさんに対してこの国の国王だと思われる人が“立ち上がってキスをした”。と言っても実際には手に付くか付かないかだろうけど見せられたこっちからしてみれば気分のいいものではない。

この国と教会側の上下関係を見せられつつこの国の王子?であろう人物の視線は香織さんに寄せられていた。

 

そのあとは晩餐会が開かれて向こうの世界じゃゲテモノ料理と言っても過言じゃないものを食したけど普通においしかった。

 

あと、さっき香織さんに熱い視線を送っていた人物はやっぱりこの国の王子様でランデル殿下がずっと香織さんに話しかけていたけどかなわない恋というのを見るのは儚いものね。たとえどうにかなっても茨の道ね。

それから王宮での衣食住が保証されている有無やこれからの教育や訓練における教官たちの紹介なども行われ一人一部屋案内され今、私は蓮子の部屋に来ている。

 

「現状把握でもしましょうか、蓮子?」

 

「ええ、そうねメリーじゃあ何処からする?」

 

「そうね・・・私の『眼』で見て危険そうな存在がいたわね。」

 

「・・・もしかしてあの無機質すぎるシスターさん?」

 

「蓮子も気づいてたの?明らか人間と違う境界だったわ。人外のそれに近かったわね。」

 

「メリーが言うなら確実ね。まだそこまで調べられてないけどあの壁画がこの国の宗教を表しているなら違和感しかないわね。」

 

「へえ、どうして?」

 

「私も詳しく調べたわけじゃないけど地球の宗教で一神教とかだと他に神とかはいなくても何かしらの眷属がいるはずなのよ。まあ、例えばキリスト教をはじめとする宗教の神、つまるところヤハウェにだって天使といった眷属がいるのにもかかわらず宗教の大本山であるあそこに祭ってあるが一つしかないのは明らかにおかしいってことね。」

 

「なるほど。神としてその在り方がおかしいってことね。それに補足をつけるなら眷属がいるあるいは本当に人間族を守る気があるなら先に眷属とかをよこすはずってこと?」

 

「そ、それに“人間族の神”っていうのもおかしい話なのよ。」

 

「・・・ああ、なるほど。確かこの世界を創造したのがエヒトなのになぜ人間族だけの味方をしてるのか?あるいはもし何かしらの要因があったとしても態々よその世界から人間を連れてくるのか?そういうことね?」

 

「さすがメリーね、これで気が付くなんて。さらに魔人族にも崇める神がいる可能性を考えて、さっきの話とも考えると人間族と魔人族を裏から手引きして弄ぶ愉快犯だとも考えられるわ。そんな存在であれば態々私たちのような戦争や戦いの一つも知らない一般ピーポーがこの世界に召喚された理由が証明されるってことね。まあ、あくまでも仮説による推論の領域をまだ出えないけど確率が最も高いのは間違いないわ。」

 

「相当悪質な神ね。どっかの混沌の邪神とかの方がよっぽどかまし・・・・ではないわね。あれあれでたちが悪いものでしょうしね。他にもまずいでしょう?」

 

「ここの宗教と国の上下関係はかなり危険なのはわかってるよメリー。宗教が権力に取りつかれたものよりたちが悪すぎる。神による鶴の一声でここまでのことになるのはある意味で大半が狂信者である裏付けにもなるわ。それに宗教を利用したものじゃない戦争ってのは一番厄介よね。地球じゃあどこかしらで落としどころがつけれたけど完全に利害度外視の戦争は」

 

「相手を完全に消すまで終わらない。」

 

「そうなるわね。まあ幸い私たちは一言も“参加する”なんて言ってないからタイミングを見図ってこっそり離脱するのが現状の目標ね。その前に情報収集が最優先になるでしょうけどね。」

 

「すぐに戦場に放り出すとかじゃないから時間があるから落ち着いて行動できるうちに行動するに限るわ。」

 

「そうね。じゃあメリー!」

 

「な、何よ?」

 

「私たちのいつものあいをかくにんすr“ガスッ!”いったぁーメリーの愛が重い。」

 

ふざけたことを言い始めたので叩いておく。

 

「そんなこといままで一度もしたことなんてないでしょ?ねぇ蓮子?」

 

「だからここで初めて「蓮子?」いえ、滅相もございません。ほんの冗談です!!」

 

ちょっとかわいそうだから一つ提案というか妥協案を出しましょう。

 

「別に一緒に寝るぐらいだったらいいわよ。」

 

「さっすが私のメリー。話が分かる~。さ、ハリー!Hurry!!」

 

「はいはい。」

 

こうして異世界生活初日はこうして幕を閉じた。

 



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ーーー7ーーー

翌日、メイドとかに若干勘違いされながら訓練や座学がはじまった。

十二センチ×七センチほどのステータスプレートなるものが配られた。一瞬「ギフトカード!」「お中元?」「お歳暮?」「お年玉?」とどっかの問題児たちのノリが口から出そうになったけど乗ってくれそうな人がいなさそうなので口の中でとどめたわ。

そして、勇者御一行の目付、教育係として騎士団長であるメルド・ロギンスという人が付いた。そんな人が大丈夫かと思ったら曰く「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」とか言っていたので副団長の人には健闘を祈っておくわ。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

ここまでフランクらしく気軽に話せそうで少しばっかし気が楽になったわ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

地球でいうところの聖遺物とかオーパーツのようなものかしら?

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

促されるまま針を指に刺して血を一滴おとす。

 

 

===============================

 

マエリベリー・ハーン(■■■) 17歳 女 レベル:1

 

天職:魔術師(■■■■)

 

筋力:5

 

体力:35

 

耐性:40

 

敏捷:20

 

魔力:200

 

魔耐:90

 

技能:全属性適正・全属性耐性・魔力操作・言語理解

 

===============================

 

魔術師?まさか『魔術師メリー』から来てるとかないわよね?それにステータスプレートが紫を基本としてるのはいいんだけどね、魔法陣があった方に『スキマ』のようなものが柄としてあるのがとっても不穏なんだけど・・・

 

「蓮子はどうだった?」

 

「ふふん、どーよ」

 

自慢げに見せてくる。

蓮子のステータスプレートは予想通り白と黒の二色だったわ。

 

===============================

 

宇佐見蓮子 17歳 女 レベル:1

 

天職:解明者

 

筋力:15

 

体力:40

 

耐性:50

 

敏捷:45

 

魔力:40

 

魔耐:40

 

技能:解析・瞬光・短剣術・全属性適正・魔力操作・言語理解

 

===============================

 

「・・・能力に関しては表示されてないわね。」

 

「それは思ったけどむしろ出なくて助かったわね。下手にそんなものが出てきたら逆にひと悶着どころじゃすまないわ。」

 

面倒ごとを増やすよりはましってことね。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

魔術師は一応戦闘職でいいのかしら?

 

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

ステータスの値は低い方ではないわね。(筋力値から目をそらしつつ)南雲君の顔色がよくないわね。まさかがありそうね。

 

============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==============================

 

まさしくチートや勇者にふさわしいわね。(何処からかブーメランが飛んだ気がしたけど目をそらす。)

魔力量では勝ってるけどはっきり言って張り合う気はないからどうでもいいわ。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

照れることか?確かに人間族で強者の一角であるメルドさんでさえ300近くなのだから分からなくはないけど。

 

あ、南雲君が近づいて行ったわね。

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

フォローにならないフォローを・・・

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

くだらないことを・・・それに前線で戦うだけが戦争じゃないでしょうに

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

メルドさんがあまりい顔をしてないわね。それにさっきの南雲君の顔色からしてステータスもよくないのでしょうね。

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

いや肉壁にはどんな存在でもなれるでしょう。やっぱり前線で無理やり戦わせる気だったのね。

 

「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」

 

愛子先生が、怒ってる。きっとしっかりとしたフォローを・・・

 

「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」

 

愛子先生のステータスプレートを見た瞬間灰色に染まって崩れ去っていく様子が幻視できるわね。

とどめを刺したことに気が付かない愛子先生ゑ・・・

 



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ーーー8ーーー

 召喚されてから二週間、私たちは情報収集に勤しんでいた。

 現在、王立図書館の一角に私たちはいる。

 

「魔人族側の神も同じように亜人族を差別してるとか魔人族側の神と人間族側の神が同一の存在である可能性をより濃厚にしてるわね。神に愛されてないとか作っておいて無責任すぎるわね、本当だったらの話だけど。」

 

「向こうじゃ、神はすべてを愛している。とか言われてるのにこっちじゃそうもいかないのね。私たちの目的はそこじゃないでしょ、蓮子?」

 

「まあ、本来の目的である“メリーの能力の制御法、あるいは似たような力”これを探すためのものだからそこまで気にもしてないし、それに関してはある程度めどが立ってるからいいとしてそっちよりも今は図書館の端の方で埃をかぶってたこの本とかが興味深いわね。要約してしまえば神に逆らった眷属である“反逆者”がいた。でも神エヒト様はそれを簡単につぶした。神スゲー。の話だけど着眼点はそこじゃないわ。」

 

「反逆者。つまるところ革命を起こそうとして失敗したものがいた。そういうことでしょ?」

 

「そう、さらに補足するなら迷宮の数は七つ、そして反逆者の代表格も七人。あまりにも出来すぎていて怖いわ。」

 

「それってもしかして?」

 

「恐らく考えてる通りよ。迷宮は今は神の試練とか言われてるけど実際は七人の反逆者が自分たちの力または意思あるいはその両方を後世に託すために作った可能性の方が高いはずよ。」

 

「なかなかに皮肉が効いてるじゃない。そこに付け加えるならその力は神代魔法の可能性があってそこの中に境界に干渉し得る魔法がある。そう言いたいのよね?」

 

「そうそう、だから確実に一つは迷宮に行く必要があるわ。まあ、迷宮っていうだけあるから何かしら帰るための出口があるはずだからそこをメリーの能力を使えば裏口からこんにちわができるものね。」

 

「正面切って攻略する理由もないものね。」

 

ズル?度々危険をとしてオカルトでもないものを暴きに行くほど蓮子も馬鹿じゃ・・・ないわよね?それに今回は明確に目的があるわけだし、うん、大丈夫ね、きっと。

 

________________________

_____________

________

 

 訓練用の施設に時間ぎりぎりで来ると、飽きずに子悪党組が南雲君をいじめてたわ。

 付け加えると突撃っ子(白崎さん)が特攻してキラキラ君が苦労人(八重樫さん)を苦しめてたわ。

 

 あ、あと最後に言うと

 

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

だそうです。



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ーーー9ーーー

 

「--------」

 

「-----------------」

 

・・・・あなたは・・・・

 

「-------------------」

 

今なんて?

待って!今なんて!?

 

____________________

____________

________

 

「・・・今のは・・・」

 

 あの不気味な目の空間にあの姿は・・・・・・・まさかね。きっと気のせいよ。

 

「でも・・・・なんて言ってたのかしら?」

 

「ん」

 

 ん?昨日は別のベッドで寝たはずなのに隣に蓮子がいた。

 まったくいつの間に入ってきたのよ。

 

「こら、蓮子起きなさい。いつまでも人のベッドで寝てない。」

 

「んぁ?メリー?なんで私のベッドに?」

 

「違う。あなたが、私のベッドで寝てるの。」

 

「・・・ああ、そういえばそうだったわね。」

 

「まったく、早く準備しなさい。今日は迷宮に行く日でしょ?」

 

「いつものんびりしてるメリーに言われても説得力がなぁ・・・」

 

む、それはさすがに言いすぎだと思うわ。

 

「そんなムスッとしないの。」

 

「ふぁにふるの」

 

急にほっぺたをムニムニしないでー!!

 

_________________

___________

______

 

オルクス大迷宮のの正面広場に集まっているけど

 

「これだとまるでお祭りか何かみたいね。」

 

「まあ、活気がないよりはいいんじゃない?」

 

「まあそれはそうだけど・・・」

 

 人が生き死にする場所でこれはね・・・

 

 私たちはメルドさんの後をカルガモよろしく後を追っていった。

 

______________

__________

_______

 

 迷宮の中は、打って変わって静かであった。

 一応、迷宮と言われているだけあってか整備がある程度されていた。

 

 そんな中ぞろぞろ進んでいるわけだけど・・・

 

「なんだろう。このゲームとかの初期のダンジョン感覚すぎじゃない?仮にも大迷宮と呼ばれるものじゃ・・・」

 

「まあ、確かに軽い気がするけどいきなり初見殺しよりましじゃない?」

 

 そういわれちゃうとそうなんだけど・・・

 

 そう考えてると灰色の毛玉が壁から湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 ラットマン、あのエイトパックを見ると

 

「ボディビルダー?」

 

「それを言うならどちらかと言えばス〇パーサ〇ヤ人4の方じゃない?それにネズミの獣人というにはちょっと違うし、キメラ的な何かだったとしてもネズミとゴリラかしら?」

 

 雑談に花を咲かせていると高火力の魔法を無駄打ちしてメルドさんに叱られているのが目に入った。

 

 

 

 順調に階層を下って二十層にたどり着いている。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 ここまで、そこまで仰々しい真似はやっていない。まあ蓮子の珍発言というものはいくつも出てきた。けど、どうしても危機感を持てない。よっぽどか妖怪とかそういった類の物の方が恐ろしかった。なんというか獣とかの延長線のものを見てる気にしかならない。

 

 あ、南雲君と白崎さんがラブコメしてる。

 

「私たちが言えたことじゃないけど余裕そうね。」

 

「何メリー?私たちもやる?」

 

「やるわけないでしょ。」

 

 何を言ってるの・・・まったく。

 

 

 二十層の一番奥にたどり着くとそこは鍾乳洞のようなものが壁から飛び出ていたり、溶けたりしたような地形があった。

 

「うーん。物理的にはこんな風には絶対できないわね。人為的かそれとも魔的な何かが関わってるのかもね。」

 

 など感想を漏らしてる相棒がいるし。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

と、メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

 けど、境目の見える私からしてみれば隠れてすらないわ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 勇者組が健闘してるけど地形のせいでうまく攻撃に移れないようね。

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 無駄にうるさい咆哮がロックマウントの口から発せられた。

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 固有魔法の“威圧の咆哮”らしいけど距離が足りないせいかもしくはもっと恐ろしいものを体験しすぎたせいかは分からないけど私たちには特に効果がないようね。

 

「「ル、ルパンダイブ!?」」

 

 ある意味じゃあもっとも衝撃的なものだったわ。

 

「こらこら、戦闘中に何やってる!」

 

 メルド団長がカバーに入った、さすがメルド団長ね。さすメルってやつね。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 何をする気なのかしら?まあ明らかにまともなことじゃないでしょう。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 あちゃー。あのキラキラ君は無駄打ちという言葉を知らないのかしら?

 それに私たちをここに生き埋めにでもしたいか?

 

 当然のごとく叱られてるわね。まあ当然だけど。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉を聞いて壁の方を見たらグランツ鉱石と呼ばれるものがあった。

が、私の眼にははっきりとその境界が見えていた。

 

 まずい、早くこの部屋から出ないと。他は?連れ出す?無理に決まってる。

 

「蓮子」

 

「どうしたのメリー?」

 

「この部屋からさっさと出るわよ。」

 

「・・・わかった。」

 

察してくれてよかったわ。だてに長いこと親友なんてやってないわね。

 

「素敵……」

 

などと見とれてるけど。それトラップなのよ。まあ言ったらどうやって見分けたかって話になるからさっさとここからおさらばするだけ。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 壁を登ってるらしいけどこっちはもう出る寸前。態々戦うために危険に身を投じたりしない。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 トラップが発動しても問題ない圏内に来れた。これなら発動しても逃げれるわ。

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

 残念ね、薄情と言われるかもしれないけど私だって死にたくはないし死の可能性に突っ込むほど愚かじゃないわ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

じゃお言葉に甘えて出させていただきます。

部屋の中に光が満ちた次の瞬間、中にいたみんなは消えていた。

 

「・・・どうする蓮子?」

 

「う~ん少し待ってみる?」

 

「・・・そう」

 

もっと他の言葉とかもかかるかと思ったけど。

 

「メリー」

 

「!な、なに?」

 

「私だってさすがにそのくらいの分別はつけるわ。」

 

「え?」

 

「メリーに対して薄情とかそんな風に言うつもりはない、そういってるのよ。」

 

「え?」

 

「確かに私以外だったら文句を言うかもしれないでしょうけど、メリーの一番の親友であり理解者であるあなたのことがわかってないとでも?私がそのぐらいの天秤を図れないとでも?」

 

遠回しにそこらの有象無象よりもあなたと言われてしまった。

 

「べ、別に蓮子にそんな風に言われるつもりはありませんけど?」

 

つい、私が心配していたことを突かれてツンケンしてしまう。

 

「あれ~どうしたのメリー?そんなにほっぺたを膨れませて?」

 

「膨らませてない!」

 

あ~やめなさいほっぺをツンツンするのは。

 

 

はあ、何気に支えられてるわね、私。



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ーーー10ーーー

「で、どうするの?」

 

「え~とひとまず待つ?」

 

「それもそうね。」

 

 はっきり言うとあそこにおそらく転移先とつながってるであろう場所が見えてるけどね。

 

「言い訳はどうしましょう?」

 

「別に偶然でゴリ押せばいいでしょ?」

 

 いやゴリおして・・・まあ確かにいちいち言うより偶然で押し通した方がいいとは思うけど

 

「で、待ってる間は何するの?あなたの嫌いな退屈ではあるけど。」

 

「いや~そうでもない。」

 

「へぇ、蓮子がねぇ。明日は槍でも降るのかしら?」

 

「え!?そこまで信用ないの!?私」

 

「冗談よ冗談。」

 

 

_____________

__________

______

 

 

あれから雑談をしつつ一回だけ出てきたロックマウントを片付けていると壁に変化が現れた。

 

「帰ってきたの?」

 

「戻ったのか!」

 

「帰れた……帰れたよぉ……」

 

トラップに巻き込まれたみんなが戻ってきた。

 

「メルドさんいったい何があったんですか?」

 

 しらじらしい?こう見えても演技はうまい方だと思ってるわ。例えば胡散臭く見せたり・・・いえこれは絶対やっちゃいけない方面の演技ね。

 

「ああ、お前たちか。巻き込まれなくてよかった。詳しいことは後で話す。お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」

 

 そのあとは無事に地上に出たけどいったい何があったのかしら。南雲君がいないということはそういうことでしょうけど。

 

 

________________

___________

________

 

「南雲君がね・・・」

 

「彼がね・・・」

 

 どこか引っかかるのよね。

 

「でも、なぜだか彼が死んだ気はしないのよね。」

 

「どうして?」

 

「口ではうまく説明できないのだけどどこかの吸血鬼風に言うと『彼はまだここで死ぬ場所じゃない、そう運命が言っている』これが一番しっくりくるわね。」

 

 蓮子が何かを考えてるようだけどあ私から言えるのは感覚的なものでしかない。ま、それをしっかりと言葉にしてくれるからいいんだけど、蓮子が。

 

「まあ、メリーがそういうならそうじゃない?でも落ちた先はきっとかなりの危険地帯だろうし食料もないから奇跡の一つでも起きない限り生存は絶望的だけどね。」

 

「でも今の状態って『シュレディンガーの猫』じゃない?」

 

「確かにそうね。まあ蓋じゃないけどね。」

 

「ねえ、そろそろ雑談をやめない?」

 

「はいはい分かりました、お嬢様っと。」

 

「あら?時間を守れない従者はいらないわよ?」

 

「まあひどい。茶番はここまでにしましょう?」

 

「そうね、南雲君には悪いけどこれを利用しない手はないわ。準備を進めて整い次第、勇者組からの離脱した方がいいわ。私たちが仮称神に目をつけられてない可能性はゼロじゃないはずだから。」

 

「はあ、これからの気が重いわ。」

 

「ま、頑張るしかない。」

 

______________

__________

_______

 

 あれから、王都に戻ってからは特に忙しかった。必要なものを周りに気づかれずに集めるのは苦労した、特に苦労した。

 

 準備が整った私たちは白崎さんの寝てる部屋に向かってるわ。まあ言ってしまえばひとまずの別れの挨拶ってところかしら?

 

 

 ノックをしてはいると

 

「あら?」

 

「え、蓮子にメリー?どうしてここに?」

 

 八重樫さんが不思議なものを見たように言ってくる。ちょっと傷つくなぁ。

 

「簡単に言うと」

 

「お別れの挨拶ね。」

 

人のセリフを・・・

 

「え?どういうこと?」

 

―どこまで説明すべき?―

 

―離れる理由と能力ぐらいでいいんじゃない?あんまり言いすぎて危険にさらすのもあんまりだし―

 

 アイコンタクト終了。

 

「まず前提の話からしましょうか?落ち着いて聞いてね。」

 

「え、ええ?」

 

「私たちはオカルト関係で活動してる、ここはいい?」

 

「まあ学校でも有名だったから、それはね。」

 

「じゃあ、私たちにはちょっと特殊な眼を持ってるの私のは「『結界の境目を見る程度の能力』そしてこの私は『星を見ただけで今の時間がわかり、月を見ただけで今いる場所がわかる程度の能力』をもってるの」

 

 また人のセリフを・・・

 

「そこまで話したいなら蓮子が説明しなさいよ。」

 

「ごめんって。まあここからは私が引き継いでゴホン。困惑するだろうけどひとまず後にしてもらうわ。その眼を使って私たちは日本に眠る神秘を暴く活動をしてる。そこまではよかったのよ。」

 

「よかった?」

 

「そこなのよ重要なのは。メリーの眼、というよりその大本であろう力が強くなって制御がきいてないの。」

 

「待って?境目を見るその能力が強くなってるってどういうこと?」

 

 まあそうよね。あくまでも(仮)でしかないのよね。

 

「あ~ちょっと説明不足だったわね。あくまでも実際に分かっていた範囲のことだったものだから仕方ないわね。今はその範疇じゃすまないっていうのが正しいのよ。現状、境界を操る領域に足を踏み入れてしまっていて制御ができてない上にメリーが無意識に時折謎の言葉を発していたりするようになってるの。」

 

「それのどこか問題でも?」

 

「問題だらけよ!現状のメリーは妖怪とかと同じレベルまでに達してる。それが境界という強力な力を操り始めて制御のきいてないメリーがもしも『人間と妖怪の境界』を誤って踏み外してしまう可能性すらあるの。」

 

「待って待って。さっきから妖怪とかがいる前提で話してるけどいるの?本当に?」

 

「「ええ」」

 

 八重樫さんが引き攣った顔見せてる。珍しいこともあるわね。

 

「信じるの?」

 

「ま、まあそう考えた方が腑に落ちることがあるもの。こっちに来た時落ち着いてたのも魔物とかを見て動揺してる様子が見られなかったもの。・・・ねえもしかして」

 

「たぶん想像してる通りだと思うわ。私たちは「わかったうえでこっちの世界に来た」

 

「!!・・・私からは特に言うことはないわ。」

 

「・・・もっと言うかと思ってたわ。」

 

 一回ぐらい胸ぐらをつかまれると思ってたのに。

 

「私だってわからないほど愚かじゃない「光輝と違って?」そうそう光輝と違って・・・おい。」

 

「「事実でしょ」」

 

「無駄に息があって・・・まあ、たとえ言われたとしても何をとち狂ったかぐらいにしか思わないだろうから責められないって言いたいの。」

 

「「さすが苦労人」」

 

「はあ」

 

遠い目をして・・・ああ、おいたわしや。この年齢でこの貫録をは・・・

 

「ま、私たちから言えることはここまでね。」

 

「私たちがいなくなったらまた苦労するかもだけど、ごめんね。」

 

「じゃあやめて欲しいわ。」

 

まあ、頑張れ。そうだ

 

「後、南雲君は多分生きてると思うわ。」

 

「え!?どうして?」

 

「しいて言うなら『運命がそういっている』ってところかしら吸血鬼風に言うなら。ま、私の本分じゃないけどね。」

 

そういうと私たちは部屋を出て王城からその実を消した。



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