ハイスクールEvolution (アイリエッタ・ゼロス)
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プロローグ

「(....つまらない人生だった)」

 俺の名前は兵藤 誠二。俺は今、この状況に絶望していた。

 俺の目の前には下半身が蛇の形をした男がいた。そして、俺の腹には

 巨大な穴が出来ており、そこから大量の血が流れていた。

 

「(....本当に、ふざけた人生だな)」

 俺には兄とも呼べないような兄が一人いた。その兄のせいで、俺の人生は

 めちゃくちゃになってしまった。友人は一人を除いてできないし、兄の起こした

 面倒ごとは全て俺に返ってくるし、女子からも侮蔑の視線を送られるのもザラにあった。

 そして、遂には両親までもが俺を疑い始めた。そんな現状が嫌になって家出をしたのだが、

 俺は急に目の前にいる存在に襲われて死にかけていた。

 

「クヒヒ! 人間のガキの肉はさぞかし柔らかい。じっくりと味わってやろうか!」

 そう言いながら男は俺に腕を伸ばしてきた。

 

「(ここで死ぬのか....ごめんな◼️◼️◼️ちゃん。あの時の約束、守ってやれそうにない....)」

 俺はたった一人の友人である少女に謝罪しながら目を閉じて死を覚悟した。

 だが、いつまで経っても蛇の男の腕が俺を掴むことはなかった。

 

「(....? 一体何が起きて....)」

 俺が恐る恐る目を開くと、目の前は謎の虹色の空間だった。

 

『おいおい、まだ若いのに人生諦めてんじゃねぇよボウズ』

 すると、突如後ろから笑うような声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、そこには

 赤い色をしたスライムらしきものがいた。

 

「....何だ、お前は」

『俺か? 俺の名はエボルト! あらゆる惑星を喰らう地球外生命体だ! 

 ....ま、今はこんな姿になっているがな』

「....それで、その地球外生命体が死にかけの俺に何の用だ」

『なぁに、お前に力をやろうと思ってな、兵藤 誠二。この状況を打破できる力をな』

 そう言うと、スライムからカラフルなベルトと赤紫と灰色のボトルが出てきた。

 

『お前は良いのか? 人生をこんなところで終わらせて? この世界には、お前の知らない

 未知のことが山ほどある。それを知らずに死んで、お前は満足か?』

「....」

『それに、お前が死んでもお前の兄はのうのうと生きるぞ』

「っ!」

 スライムの言葉に、俺の中にある何かが切れた。

 

『良いのか? このまま無様に死んで? こんなつまらないまま死ぬなんて俺はゴメンだぜ?』

「....確かに、お前の言う通りだな」

 そう言いながら、俺はベルトを手に取った。

 

「コレがあれば、この状況はどうにかなるんだな?」

『勿論だ。....いや、それだけじゃない。お前のやりたい事や、叶えたい願いのほとんどは

 全て叶うだろう! 旅をしたい、美味いものを食べたい、普通の生活がしたい、

 約束を果たしたい、兄に復讐がしたい....』

「そうか....だったら、俺の人生は少し面白くなりそうだな」

『くっくっく....! これだから人間というのは面白い! さぁ、今こそ俺に人間の可能性

 という物を見せてみろ!』

 スライムはそう叫ぶと、俺の身体の中に入ってきた。すると、周りの景色はさっき俺が

 蛇の男に刺された場所に戻ってきていた。そして、俺の目の前には男の腕が迫っていた。

 俺はその腕に手を翳すと、男は身体ごと吹っ飛んでいった。

 

「ぐほっ....!? な、何が起こって....」

「へぇ....凄い力だ。それに傷も治ってる」

 俺は自分が刺された所を撫でながらそう呟いた。

 

『(当たり前だ。俺の細胞をお前の中に移植したからなぁ)』

 すると、急に頭の中にエボルトの声が聞こえてきた。

 

『(さて、新しいお前という存在の門出を祝おうじゃないか! そのベルトを腰にかざせ)』

 俺は言われるままにベルトを腰にかざした。

 

エボルドライバー!

 

 すると、ベルトは音声が流れて自動的に腰に巻かれた。

 

『(次にボトルのキャップを前に合わせてベルトに挿し込め)』

「わかった」

 俺はボトルのキャップを前に合わせてベルトに挿し込んだ。

 

コブラ! ライダーシステム! エボリューション!

 

 ベルトからは軽快な音楽が流れ出した。

 

『(後はそのレバーを回したら完了だ。精々、俺を楽しませてくれよ?)』

「あぁ....」

 その言葉を聞き、俺はゆっくりとレバーを回し始めた。すると、俺の前後にプラモランナー

 らしきものが現れた。そして....

 

Are you ready?

 

「....変身」

 俺がそう言うと、前後のプラモランナーが俺に重なり姿を変えた。

 

コブラ....コブラ....エボルコブラ! フッハッハッハッハッ!

 

『これが、エボルトが言った力か....』

「っ! 姿を変えたところで!」

 蛇の男は俺に向かって腹に穴を開けた槍を投げてきた。それを俺は手を向けただけで真横に

 弾き飛ばした。

 

「何ぃ!?」

『スゲェな....』

 俺は純粋にこの力に感心していた。

 

「ガ、ガキの分際で!」

 蛇の男は俺に突進してきたが、俺はその男を指一本で止めた。

 

「なっ!?」

『吹っ飛べ』

 そう呟き、俺は男を蹴り上げた。男の腹はめり込み、口から大量の血を流していた。

 

「な、何で人間のガキに、悪魔であるこの俺が....!」

『知るか』

『(誠二、必殺技で終わらせてしまえ)』

『必殺技?』

『(レバーを何回か回せば使える)』

『わかった』

 そう言われ、俺はレバーを回した。すると、右脚にエネルギーが溜まり始めた。

 

「お、おい待て! やめてくれ! もう人間には手を出さない! だから殺すのは....!」

『そんな事、俺には関係ない。お前は俺にとって目障りな存在だ。だから、ここで死ね』

 

Ready go! エボルテックフィニッシュ! Ciao〜!

 

 その音に合わせるように、俺は男を蹴り飛ばした。男が吹っ飛んだ所は大爆発し、その姿は

 チリ一つとして残らず消滅していた。

 

『(ククク....はっはっはっは! やはり人間は面白い! 俺の勘もまだまだ捨てたもん

 じゃない!)』

 エボルトは俺の頭の中で大笑いしていた。

 

『(どうだ? 今の気分は?)』

『わからねぇ....だが、少なくとも前よりは満たされているのは間違いない』

『(そうか! ならば俺も、お前に力をやっただけの事はある!)』

『....感謝するぞ、エボルト』

『(礼には及ばない! ....さて、ひとまずここから退散するぞ。サイレンが近づいている)』

『そうだな....』

 そう言って、俺は急いでその場から離れた。



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無限の龍神との出会い

 エボルトと出会って一年近くが経った。俺は顔と名前を変えて、“石動 創二”として生きていた。

 そして、この一年、俺は呑気に世界中を回りながら悪魔を狩っていた。その途中に、エボルトは

 死んだ人間の身体を奪って人間の肉体を手に入れていた。

 そして、日本に戻ってきた俺達は“nascita“というカフェを開いて、そこを拠点として

 のんびりと生きていた。時に地下で武器を作り、時にスマッシュを作ってボトルの成分を

 回収したりと本当にのんびりとした生活をしていた。

 そんなある日....

 

「創二、看板を中に入れてきてくれ」

「わかった」

 店じまいで片付けをしていた時、エボルトにそう言われて店の外に俺は出て看板を

 片付けていると、急に背後から気配を感じた。気になって背後を見ると、黒髪ロングの

 ゴスロリ幼女がいた。その幼女は俺の顔を見ると近づいてきた。

 

「やっと見つけた」

「....誰だ、お前は?」

「我、オーフィス。お前をずっと探していた、ボトルで変身する人間」

「....何で知ってんだよ」はぁ

 俺はこの幼女が変身する事を知っているのに驚いた。

 

「で、お前は俺に何か用か?」

「我、お前に助けを求める。我に、手を貸して欲しい」

「....まぁ、話しは中で聞こう。とりあえず店に入れ」

「分かった」

 そう言って、俺はオーフィスという幼女を店の中に入れた。

 

「おぉ、終わったか....って、そこの幼女は?」

「何か俺に用があるんだと」

「そうか。てっきり誘拐したのかと....」

「....ぶっ飛ばすぞ。オーフィス、そこに座ってろ」

 オーフィスにそう言った俺は看板を直して冷蔵庫からジュースを取り出してオーフィスの

 前に置いた。

 

「....これ、何?」

「....? ジュースって飲み物だが、知らないのか?」

「知らない。これ、どうやって飲む?」

「ここをこうしてだな....」

 俺はジュースのプルタブを開けてやった。

 

「これで飲めるぞ」

「わかった。....美味しい。我、これ気に入った」

 ジュースを一口飲んだオーフィスは気に入ったのか、足をパタパタさせていた。

 

「そうか。....で、助けってどういう事だ?」

「我、次元の狭間で生まれたドラゴン。次元の狭間で静寂を得たかったけど、同じ場所で

 生まれたドラゴンに負けて追い出された。故に、我は静寂を得たい」

「静寂ねぇ....」

 隣で聞いていたエボルトはつまらなさそうにそう呟いた。

 

「我、グレートレッド、倒したい。でも我、一人では無理。故に、力を借りたい」

「....別に貸してやるのは良いが、その後お前はどうするんだ?」

「....? そんな事、我、考えた事がない」

「....お前って、ずっと一人だったのか?」

 俺が気になってオーフィスに聞くと、オーフィスは肯定したように顔を縦に振った。

 

「....そうか。だったら、しばらくここで暮らす気はないか?」

「え?」

「お前はずっと一人だったんだろう? 一人だと、面白いことや楽しいことは知る事が

 できないからな。....だから、ここで俺達と暮らしてみる気はないか?」

 ジュースを飲んだ時、オーフィスの表情は殆ど変わらなかったが、オーフィスの言葉に

 喜びの感情があったのを俺は気づいていた。

 

「まぁ無理にとは言わないが....今すぐにでも静寂が欲しいなら手を貸してやるよ」

 そう言うと、オーフィスは少し考え込んだ。そして....

 

「分かった。我、お前と暮らす。静寂の事は、考える」

「そうか。....俺は石動 創二だ。これからよろしくな、オーフィス」

「俺は石動 惣一、又の名をエボルトだ。よろしく〜」

「創二、惣一....よろしく」

「じゃ、飯でも作るか。オーフィスはそこでゆっくりしていてくれ」

「分かった」

「行くぞエボルト」

 オーフィスにそう言って、俺はエボルトとキッチンに向かった。

 

 〜〜〜〜

 

「にしても、どうしてあんな事を言ったんだ?」

 キッチンで料理をしていると、エボルトはそう聞いてきた。

 

「....一人ってのは寂しいもんだからな。だから放って置けなかっただけだ」

「ほぉ〜....敵を倒す時に容赦がないような奴が言う事とは到底思えねぇな」

「うるさい。俺はやりたいようにやるんだよ。我慢して生きるのは、あの時に終わった」

「....くっくっく、それもそうだったな! まぁ、面倒は見てやれよ」

「....言われなくても分かっている。ていうか、つまみ食いしてないで

 さっさとテーブルに運べ」

 俺はつまみ食いしていた手を叩いた。

 

「へいへい」

 エボルトは諦めたようにそう言って料理をテーブルに運んでいった。

 

「(....全く、自分でもらしくないことをしたもんだ)」

 そんな事を思いながら、俺は目の前のフライパンに集中した。

 

 

 

 



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新しい家族

 オーフィスが来て一年近くが経った。この一年間で、オーフィスは様々な

 感情を知り、少しずつだが表情に出てくるようになった。そして、自分で考えて

 行動するようになり、今では店の手伝いまでしてくれるようになった。

 

「オーフィス、買い出しに行くぞ」

「分かった」

 ある日、俺はオーフィスと食材の買い出しに行った。その帰り道....

 

「....?」

 nascitaに向かって歩いていると、急にオーフィスが立ち止まった。

 

「オーフィス? どうかしたのか?」

「....こっち」

 オーフィスは、急に裏路地に入っていった。そして、裏路地のある場所で止まると、

 手を裏路地にかざした、その瞬間、裏路地の空間が歪み、空間が割れた。

 空間が割れた先には、五人の悪魔が着物を着たのネコミミの女性を襲っていた。

 

「な、何だお前ら!?」

「俺達の結界を破壊した!?」

 男達は、急に現れた俺達に驚いていた。

 

「あぁー、悪魔の連中ども。寄ってたかって一人の女性を襲うのはどうかと思うぞ」

「はっ! 人間風情が悪魔に口答えしてんじゃねぇよ!」

 俺の言葉にキレたのか、一人の悪魔は炎を俺に飛ばしてきた。だが、その炎を俺は

 トランスチームガンで消滅させた。

 

「なっ!?」

「おいオーフィス、あのネコミミ助けるぞ」

「分かった。....悪魔達は?」

「皆殺しだ。今のはムカついた」

「了解。来て、クローズドラゴン」

 オーフィスがそう言うと、何処からかクローズドラゴンが飛んでき、オーフィスの手の中で

 ガジェットモードになった。そして、俺は黒いボトルを、オーフィスはビルドドライバーと

 青いボトルを取り出してベルトを腰にかざした。そして、俺達はボトルを振って

 スチームガンとクローズドラゴンに挿し込んだ。

 

wake up! クローズドラゴン!

ウルフ....

 オーフィスはレバーを回し、俺はスチームガンを首の横に持っていった。

 

Are you ready?

 

「変身....」

「蒸血」

 その言葉とともに、オーフィスはプラモランナーが重なり、俺は黒い煙に包まれた。

 

Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!

ミスト・マッチ....ウ・ウッ・ウルフ....ウルフ....ファイヤー!

 オーフィスは紺色をベースとし、黒い炎の装飾が刻まれた姿、“仮面ライダークローズ”になり、

 俺は赤を基調とし、ところどころに黒い線が入った姿、“ブラッディウルフ”に変身した。

 

「セ、神器(セイクリッド・ギア)だと!?」

『神器なんてものじゃねぇ。....ていうか、しゃべっている暇がよくあるな』

 俺はそう言って一瞬で距離を詰めて男の一人の頭を掴んで地面に叩きつけた。

 

「ガハッ....!?」

『まずは一人』

 俺はそう呟き、反対の手で男の首を斬り裂いた。すると、男は絶命した。

 

「う、嘘だろ!?」

「ひ、怯むんじゃねぇ! 相手は所詮ガキ....」

 リーダー格の男がそう叫んでいると、その男の身体はいつのまにか粉々に刻まれていた。

 

『油断大敵....』

 粉々に刻んだのはオーフィスで、オーフィスの手にはビートクローザーが握られていた。

 

「う、うわぁぁぁぁ!?」

「か、勝てるわけねぇ!」

「逃げるぞ!」

 そう言って残っていた男どもは羽根を生やして逃げようとしたが....

 

『....逃がさない』

 オーフィスはロックフルボトルをビートクローザーにセットし、グリップを三回引いた。

 

スペシャルチューン! ヒッパレー! ヒッパレー! ヒッパレー!

 

『えい....』

 オーフィスはビートクローザーから現れた鎖を巧みに操り、逃げようとした三人を縛って

 地面に叩きつけた。

 

『ナイスオーフィス。じゃ、これで終わりだな』

 俺はボトルが挿さったスチームガンを男達向けて引き金を引いた。

 

『Ciao』

 

スチームブレイク! ウルフ!

 

 スチームガンの銃口からは巨大な狼が現れ、悪魔達を喰い始めた。そして、この場には

 悪魔どもの姿は完全に消滅した。

 

『雑魚しかいなかったか....まぁ良いか』

 俺は襲われていた女性に近づいた。

 

『アンタ大丈夫か?』

「き、君は一体....」

『ただの人間と地球外生命体のハーフだ。ま、詳しい話しは場所を変えるぞ。アンタの傷の

 手当てをしないといけないからな。オーフィス』

『わかった』

 オーフィスが俺の隣に立つと、俺はスチームガンから煙を出した。

 

 

 〜〜〜〜

 nascita地下

 

 煙が晴れると、俺達はnascitaの地下にワープしていた。

 

「なっ!? ここは一体....」

『俺の自宅兼基地だ』

 そう言いながら、俺は変身を解除した。

 

「俺は石動 創二。元々兵藤 誠二だった人間だ。そして、隣にいるのがオーフィス。

 俺の家族でドラゴンだ」

「オ、オーフィスって無限の龍神の....」

「そう呼ばれていた。でも、今の我は、ただのオーフィス。よろしく....」

 オーフィスはそう言いながら白いボトルを持ってきた。

 

「創二、これ」

「ありがとな」

 俺はそのボトルをスチームガンに挿し込み、銃口を女性に向けた。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「動くなよ」

 

フルボトル! スチームアタック!

 

 俺が引き金を引くと、ピンク色の煙が女性を覆った。すると、女性にあった傷は全て治り、

 服の破れも直っていた。

 

「まぁこんなもんか」

「嘘....! 傷が....! 一体何をしたの?」

「このボトルの力で怪我を治したんだよ。....さてと、アンタ名前は?」

「わ、私は黒歌」

「黒歌か。お前、何で襲われていたんだ?」

「っ!」

 俺がそう聞くと、黒歌は苦い表情になった。

 

「別に言いたくなかったら言わなくて良い。無理に聞こうとは思ってないからな」

 そう言うと、黒歌は少し考え込み....

 

「....私が、はぐれ悪魔だからにゃん」

 黒歌はそう言って少しずつ話し始めた。

 黒歌は少し前まで悪魔の眷属だったのだが、妹の力を無理矢理覚醒させようとした

 主人を殺したため、はぐれ悪魔という存在になり悪魔達に襲われていたらしい。

 

「なるほどな....」

 すると、話し終わった黒歌は立ち上がり階段の方に向かった。

 

「何処に行く」

「....ここを出るの。ここにいたら、あなたにも迷惑がかかるにゃん」

「行くあてはあるのか?」

「....っ」

 俺の言葉に、黒歌は視線を逸らした。

 

「....ねぇんだったら、ここに住むか?」

「えっ?」

「行くあてもないんだったらここに住め。衣食住は揃ってるぞ」

「....な、何でそんな事を言えるの? 私達は偶然出会っただけなのに....

 それに私がいれば悪魔達がまた襲ってくるにゃん」

 黒歌はあり得ないといった表情でそう言ってきた。

 

「深い理由はねぇ。ただ、お前をこのまま行かせるとダメな気がしただけだ。

 それに来たところで全部返り討ちにしてやるよ」

「そんな理由で....」

「そんな理由だよ、俺が物事を決める時は。その方が人生面白くなるって

 気づいたからな」

「....っ!」

「さ、どうする? 住むんだったら俺達も妹探しを手伝ってやるよ。

 できる範囲でだけどな」

「我も、協力する」

 俺とオーフィスの言葉に黒歌は....

 

「良いの? 私なんかがいて? 沢山迷惑をかけるにゃん....」

 黒歌は心配そうにそう言ってきた。

 

「気にすんな。そんな事、俺らは一々気にしねぇよ」

「そう....それに、我、女子会してみたい」

「じょ、女子会....」

「(お前がそんな事を言うとは思ってなかったぞオーフィス....)」

 オーフィスの思いもよらない発言に、俺は一瞬思考が停止した。

 

「そ、そこまで言ってくれるなら、少しの間お世話になっても良いかにゃん?」

「あぁ。ようこそ黒歌。カフェnascitaへ」

 ここに、俺の新しい家族が増えた瞬間だった。

 



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未来の花嫁(エボルト)

「いやぁ、買った買った! これでしばらくは大丈夫だな!」

 俺は今、店を創二達に任せて一人ブラジルに来ていた。何故ブラジルに来ていたかと

 言うと、店で新たに出すコーヒーの豆を買いに来たためだ。

 

「(にしても、店も随分とデカくなったもんだ)」

 オーフィスが来て三年、黒歌が来て二年近くが経った。

 黒歌はオーフィスと同じく店の手伝いをよくしてくれた。ただし、身バレを防ぐために、

 俺の力で家の地下にいる時以外は顔を変えているが....

 そして、黒歌は創二が俺の力を使い悪魔から妖怪に戻っていた。

 そのせいか、黒歌は随分と創二に懐き、最近は毎日オーフィスと創二の取り合いをしていた。

 創二はその争いに困惑しているが、俺はその様子を見て毎日大笑いしていた。

 

「(さて、アイツらに土産を買ってやるか)」

 そんな事を考えながら曲がり角を曲がった時、俺は一人の女とぶつかった。

 

「うおっと!?」

「っ!」

 俺は何とか踏み止まったが、女の方は尻餅をついていた。その時、俺は女の姿を見て

 不思議に思った。夏だというのに女は黒いフード付きのマントを着ており、顔を隠すほど

 フードを深く被っていた。

 

「すみません....!」

 女は俺に一言謝罪すると。逃げるようにこの場から走っていった。すると、女が来た

 方向から十人ぐらいの男の集団が走ってきた。

 

「くそっ! 何処に行った!」

「まだ近くには居るはずだ!」

「絶対にあの女を逃がすな!」

 そう言って、男達は女が走っていった方に向かっていった。

 

「騒がしいもんだな....」

 そんな事を呟きながら、俺は土産を買いに行こうとした時、手に違和感を感じた。

 不思議に思って俺は手を見てみると、俺の手には真っ赤な血が付いていた。しかも、

 この手はさっきの女に当たった場所だった。

 

「はぁ〜....どうっすかねぇ」

 そんな事を呟きながらも、俺の歩く方向は男達の方に向いていた。

 

 

 〜〜〜〜

 ? side

 

「(っ、行き止まり....)」

 私は追ってから逃げるために路地裏に入ったが、そこは行き止まりだった。

 

「(早く逃げないと....!)」

 そう思い、私は急いで来た道を戻ろうとしたが....

 

「見つけたぞ! グレイフィア・ルキフグス!」

 私が来た道は、既に追っ手によって塞がれていた。

 

「(っ、しまった....!)」

「どうやら貴様もここまでのようだな」

「この裏切り者め! 大人しくここで死んでもらうぞ!」

「っ、誰がこんな所で....!」

 私がそう言うと、追っ手の何人かが私に攻撃を仕掛けてきた。私は避けようとしたが、

 今までの蓄積した疲労のせいで上手く避けれずに攻撃を受けてしまった。

 

「ぐっ....!?」

 私はその場で膝をつき、動く事が出来なくなってしまった。

 

「ここで終わりだな」

「だがどうする? 殺すには惜しい身体だぞ?」

「それもそうだな....」

「なら連れ帰って性処理道具にしようぜ!」

「良いなそれ!」

 そう言って男達は下劣な笑みを浮かべながら私に近づいてきた。

 

「(こんなところで、終わるんですね....)」

 私はこの状況に絶望して目を閉じて涙を流した。だが、その時....

 

「お〜っと、ちょっと待てよ」

 私の目の前から陽気な声が聞こえてきた。私は目を開くと、そこには私がさっき

 ぶつかった男性がいた。

 

「な、何だテメェは!」

「何処から現れた!?」

「何処からって、上だよ上」

 男性は上を指差しながらそう言った。

 

「ま、そんな事はどうでも良いか。お前等、女性には優しくしろって習わなかったのか?」

「人間風情が....! 悪魔である俺達に口答えをするか!」

「悪魔ねぇ....そんな雑魚みたいな見た目でか?」

 男性は追っ手の悪魔達を挑発するような事を言った。

 

「に、人間の分際で!」

 それに反応した悪魔は男性に向かって攻撃をした。

 

「っ、逃げ....!」

 私は男性に逃げてと言おうとしたが、男性は逃げずに、片手から赤い衝撃波を放って

 悪魔の攻撃をかき消した。

 

「「「「なっ!?」」」」

「嘘っ....!」

 その状況に、私と追っ手は驚いた。

 

「フッフッフ....! ハッハッハッハ! 良いねぇその表情! 人間と思って見下していただろ? 

 甘いねぇ。実に甘い!」

「な、何なんだお前は! 悪魔の攻撃を防ぐ人間などいるはずが....!」

「そもそも人間と思っているのが間違いなんだよ。俺は人間じゃあない!」

 男性はそう言うと、私に紙袋を渡してきた。

 

「悪いがコレ頼むぞ」

「えっ....?」

「さぁて悪魔ども。少し俺と遊ぼうじゃないか」

 そう言うと、男性の手にカラフルなベルトの様なものが現れた。

 

エボルドライバー!

コブラ! ライダーシステム! エボリューション!

 

 そして、男性がボトルの様なものをベルトに挿し込んでレバーを回すと、交響曲の様な

 音楽が流れながらプラモランナーの様なものが現れた。そして....

 

Are you ready?

 

「変身」

 男性がそう言った瞬間、ランナーは重なり、男性の姿は異形に変わった。

 

コブラ....コブラ....エボルコブラ! フッハッハッハッハッ!

 

 〜〜〜〜

 エボルトside

 

「な、何だその姿は!?」

「貴様、神器持ちか!」

『神器ってのは何かは知らねぇが、コレをそんな物と一緒にするな』

 俺はそう言いながら悪魔どもを挑発した。

 

『さ、来るなら来い。先攻は譲ってやるぜ?』

「な、舐めやがって!!」

 悪魔の一人は俺の挑発にキレ、拳を炎に纏わせて殴りかかってきた。俺はそれを

 片手一本で止めてやった。

 

「なっ!?」

『はぁ....ハザードレベル0.5か。これじゃあ使い物にもならねぇな』

 俺はそう呟き、殴りかかってきた悪魔の中に毒を注入した。

 

「っ! グホッ....!?」

 すると悪魔は苦しみ出し、身体全体に毒が回りその場で消滅した。

 

「なっ!?」

「き、貴様! 一体何をした!」

『話すわけねぇだろ? それよりも、死ぬ覚悟はできたか?』

 そう言いながら、俺は黒いボトルを振ってベルトに挿し込んだ。

 

機関砲! ライダーシステム! クリエーション!

 

 そして、俺がベルトのレバーを回すとホークガトリンガーが現れた。

 

『さて、どうせお前らもハザードレベル1以下だろうし、一気に終わらせてやるよ』

 そう言い、俺はホークガトリンガーのマガジンを回し始めた。

 

Ten! Twenty! Thirty! Forty! Fifty! Sixty! Seventy! Eighty! Ninety! One Hundred! フルバレット!

 

『Ciao〜』

 俺はホークガトリンガーの銃口を悪魔どもに向けて引き金を引いた。銃口からは百発の

 エネルギー体の鷹が悪魔どもに襲いかかった。

 

「ぐわぁぁ!?」

「な、何故だぁぁ!?」

 悪魔どもは醜い断末魔を上げながら爆発して、この世から消滅した。

 

『ふぃ〜、呆気ねぇ連中だ』

 俺は消滅した場所を眺めると、後ろにいる女に話しかけた。

 

『よぉ、さっきぶりだな』

「あ、あなたは一体....」

『俺の名はエボルト。地球外生命体だ』

 そう言いながら、俺はトランスチームガンを取り出した。

 

『ま、詳しい話しはここから離れてからだ』

 そう言って、俺はトランスチームガンから煙を出してここから離れた。

 

 

 〜〜〜〜

 nascita

 

「っ!? ここは....」

『俺の家だ』

 女は場所が急に変わったことに驚いていた。そして、俺は変身を解除した。

 

「ついてこい。怪我を治してやる」

 俺がそう言って地下に行くと、女は少し不安そうにだが俺の後をついてきた。

 そして、俺はボトルを置いている部屋に入ったのだが....

 

「黒歌ぁ! 青コウラ投げんじゃねぇ!」

「にゃはは! これで一位は貰った....」

「えい」

「にゃぁぁ!? オーフィス何で赤コウラ持ってるにゃん!」

「知らない....」

 部屋では三人がマリ◯カートをやって大騒ぎしていた。

 

「おーい。お前ら帰ってきたぞ」

「あ、エボルト」

「おかえり....」

「おかえり。後ろにいる悪魔の女はどうしたんだ?」

 創二は後ろにいる女に気づいてそう言ってきた。

 

「まぁ色々あってな。ドクターフルボトルは何処だ?」

「ドクター? 確かこの辺に....」

 創二はボトルを置いている所からボトルを探して俺に投げてきた。

 

「ほれ」

「サンキュ」

「あ、あとアンタ。傷治したら風呂にでも入りな。黒歌、お前の服貸してやれ」

「はいはーい」

「オーフィス、お前も風呂沸かしてきてくれ」

「わかった」

 創二がそう言うと、二人はそれぞれ動き出した。そして創二も上に上がって行った。

 

「....とりあえず、傷を治すか」

「は、はい....」

 

 〜〜〜〜

 

「で、あの悪魔の女はどうしたんだ?」

 俺が女の傷を治して風呂場に案内し上に上がると、コーヒーを作っている創二に

 そう聞かれた。

 

「まぁ、ちょっと色々あってな。その時に助けてやったんだよ」

「へぇ....意外だな」

 創二は俺の言葉を不思議そうにそう言った。すると、地下に行くための冷蔵庫が開き、

 黒歌の服を着た女と、黒歌とオーフィスが出てきた。

 

「あ、あの、お風呂までわざわざありがとうございます....」

「気にすんな気にすんな。とりあえずここに座りな」

 俺はカウンターの椅子を引いて女をそこに座らせた。すると、創二がコーヒーを女の

 前に置いた。

 

「砂糖はいるか?」

「い、いえ....い、いただきます」

 女はコーヒーを一口飲んだ。女はコーヒーを飲むと、少し緊張がほぐれたような

 表情に変わった。

 

「....美味しい」

「そうか。....それで、アンタは一体何者なんだ?」

「....私はグレイフィア・ルキフグス。旧魔王派の悪魔だった者です」

「「旧魔王派?」」

 その言葉に、俺と創二は首を傾げた。

 

「旧魔王派とは、冥界において初代魔王であった者達の末裔と、彼等の思想に賛成した者達で

 構成された派閥のことです」

「旧魔王派は、現魔王達と、敵対関係にある」

 オーフィスが付け加えるようにそう言った。

 

「へぇ」

「じゃあ何でお前は同じ派閥の悪魔に追われてたんだ?」

 あの悪魔達が裏切り者と言っているのを思い出して俺はそう聞いた。

 

「それは、私が旧魔王派を裏切ったからなんです」

「裏切った?」

「はい。私は、彼等の思想には賛成していなかったんです。そして、彼等の行き過ぎた

 行動に耐えられず、彼等を裏切って逃げていたんです」

「で、偶然俺と会ったのか」

「はい。助けていただき、本当にありがとうございます」

 グレイフィアは礼儀正しく、綺麗に頭を下げた。

 

「気にすんなって。で、お前はこれからどうするんだ?」

「それは....」

 俺がそう聞くと、グレイフィアの表情は曇っていった。そんな様子を見て、俺は一つ提案した。

 

「行き場がないなら、ここに住むか?」

「えっ....?」

「ここだったら安全だし、衣食住は揃ってるぜ?」

「で、ですが! それはご迷惑では....」

「別に俺は気にしないぞ」

「私も特に気にしないにゃん」

「我も」

 三人はグレイフィアの言葉に被せるようにそう言ってきた。

 

「だとよ。言っておくが俺も気にしてねぇからな」

「....っ!」

「さ、どうする? 俺達はお前を歓迎するぜ、グレイフィア」

「本当に、よろしいのですか....?」

 グレイフィアは心配そうに聞いてきた。

 

「おう」

「....で、ではお願いします」

「っ! そうか! だったらこれからよろしくなグレイフィア。俺の名はエボルト。

 地球外生命体、言うなれば宇宙人だ。この姿の時は石動 惣一と呼んでくれ」

「俺は石動 創二。元兵藤 誠二という名前だった人間と地球外生命体のハーフだ。

 よろしくなグレイフィア」

「私は黒歌。元SS級のはぐれ悪魔だった妖怪にゃん。これからよろしくにゃん。

 一応石動 黒夜っていう名前も持ってるにゃん」

「我、オーフィス。ドラゴン。石動 龍奈という名前。よろしく」

 俺の自己紹介に続くように、三人もそれぞれ自己紹介をした。

 

「はい。皆さん、よろしくお願いします」

 これが、俺の将来の嫁との出会いになるとは、この時の俺達は知る由もなかった。

 

 

 

 



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キャラ設定

 石動 創二(旧 兵藤 誠二)

 兵藤 一誠の双子の弟だった少年。現在は石動 創二として新たな人生を送っている

 既に人間を辞めており、エボルトと同じ地球外生命体の力を持っている。

 性格は冷静で、基本的に誰にでも優しい。ただし、気に入らない者に対しては

 目上であってもかなり辛辣な態度をとる。

 自分の元兄である兵藤 一誠への復讐を目的としており、様々な下準備を行なっている。

 nascitaでは厨房担当で、新作のメニューも全て自分で考えている。

 家族である四人のことはとても大事にしている。

 

 エボルト(人間態 石動 惣一)

 あらゆる惑星を喰らってきた地球外生命体。創二に力を渡し人間の可能性を観測

 することを目的としている。

 この世界に来てから酒にハマり、暇があれば世界中を回っている。

 nascitaでは店長であるが、レジ打ちをさせられている。

 快楽主義者で、面白そうなことに目がない。

 

 オーフィス(石動 龍奈)

 無限の龍神と呼ばれていた少女。静寂を求めて創二に協力を申し出たが、

 今では静寂に興味がなく、創二達と一緒に暮らすことに喜びを感じている。

 創二と暮らすようになってからゲームにハマった。

 特に何かしようという目的はなく、純粋な善意で創二の手伝いをしている。

 nascitaでは接客担当で、オーフィス目当ての客も多い。

 創二には好意を持っているが、その感情をまだ自分では理解していない。

 

 黒歌(石動 黒夜)

 元はぐれ悪魔の少女。現在は創二の力で悪魔ではなく妖怪に戻り、

 石動 黒夜としてnascitaで暮らしている。

 行方不明の妹と再び一緒に暮らす事を願っており、たまに冥界に行って

 妹の行方を追っている。

 nascitaではオーフィスと同じく接客担当で、黒歌目当ての客も多い。

 創二に好意を抱いており、ほぼ毎日オーフィスと取り合いをしている。

 

 グレイフィア・ルキフグス(石動 銀華)

 元旧魔王派に所属していた悪魔。エボルトに救われてからnascitaで石動 銀華として

 暮らしている。

 旧魔王派を全滅させる事を目的にしており、時折冥界に赴き情報を集めている。

 nascitaでは接客と厨房を任されている。

 エボルトに好意を抱いており、時折創二達に相談している。

 世界で唯一、エボルトのコーヒーを気に入っている。

 

 

 ビルドドライバー

 仮面ライダーに変身するためのベルト

 創二、オーフィスが所持している

 

 クローズドラゴン

 オーフィスがクローズに変身するために使うドラゴン型のメカ

 オーフィスのお目付役兼ペット

 

 スクラッシュドライバー

 仮面ライダーに変身するためのベルト

 好戦的になり、力を制御しないと暴走する可能性がある

 黒歌、グレイフィアが所持している

 

 エボルドライバー

 仮面ライダーに変身するためのベルト

 創二、エボルトが所持している

 

 トランスチームガン

 ブラッドスターク、ブラッディウルフに変身するための銃

 創二、エボルトが所持している

 

 ウルフロストフルボトル

 創二がブラッディウルフに変身するためのボトル

 創二の怒り、孤独といった負の感情で作られた

 

 

 ブラッディウルフ

 創二が変身した姿

 防御を捨て、攻撃とスピードに特化しており、悪魔を一撃で捻り潰す力を持っている

 武器はスチームガンのみで、基本的に素手での戦闘を主流としている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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旧校舎のディアボロス
高校二年の復讐者


「「待てーーーー!!」」

「「「うぉぉぉぉぉ!?」」」

「....またか」

 グレイフィアが来てから二年が経ち、俺は高二になった。

 俺が入学した高校には、偶然にも元愚兄が入学していた。そして、そんな愚兄は

 毎日のように取り巻きを連れて覗きなどをして女子達に追いかけられていた。

 そして今、俺が帰ろうと思った時にもそんな状況になっていた。

 

「い、石動君! お願い! そのバカ達を止めて!」

 すると、追いかけていた剣道部の女子の一人が俺にそう言ってきた。

 

「....仕方ねぇな」はぁ

 俺は小さなため息を一つつき、まず持っていたカバンをメガネをかけた男の顔面に

 向かって投げた。カバンは命中し、男はその場で気絶した。それに驚いた丸刈りの男の

 頭を掴んで壁に投げつけた。

 

「元浜!? 松田!?」

「....終わりだ」

 そして、最後に愚兄の顔面に向かって回し蹴りを放った。

 

「グホッ....!?」

 愚兄は醜い断末魔を上げて気絶した。

 

「....はぁ。こんなもんで良いか?」

「ありがとう石動君!」

「お陰で助かったよ!」

「気にすんな。後のことは任せるぞ」

 そう言って、俺はカバンを持って靴を履き替えて学校を出た。その時、学校の門の前に

 この学園とは違う制服を着た女子高生がいた。

 

「(この気配....堕天使か)」

 俺は女子高生から感じた小さな気配でその正体がわかった。その女子高生の姿をした

 堕天使は誰かを待っているようだった。

 

「(....ま、俺には関係ないか)」

 そう思い、俺はまっすぐ家に向かって帰った。

 

 〜〜〜〜

 nascita

 

「ただいま」

「あ、創二! おかえりなのじゃ!」

「九重....来てたのか」

 俺が店に入ると、妖怪の総大将九尾の姫である八坂の娘、九重が手を振ってきた。

 九重とは一年前に京都に行った際、悪魔に絡まれているのを助けた時に出会い、

 今では時折店に遊びに来るほど仲良くなった。九重以外にも、妖怪の連中とは

 随分と仲良くなり、影の協力者として色々と手を貸してくれていた。

 

「今日はどうした?」

「これを創二に渡しに来たのじゃ!」

 そう言って、九重は一つの巻き物を渡してきた。

 

「....そうか。ありがとな九重」

「ど、どういたしましてなのじゃ。そ、そうだ創二! 今度はいつ京都に

 遊びに来るのじゃ?」

「そうだな....月末は暇だからその時に行こうと思ってるぞ」

「そ、そうか! じゃあ母上にそう伝えておくのじゃ!」

「あぁ....」

「(出来る事なら、八坂には伝えて欲しくないんだが....)」

 八坂は俺が遊びに行くと毎回宴会を開いてくれるのだが、その時に八坂は俺に

 酒を飲ませようとしてくるのだ。

 

「(俺はまだ未成年だってのに....)」はぁ

 俺は月末のことを考えると頭が痛くなってきた。

 

「それじゃあ、用も済んだから私は帰るのじゃ」

「一人で帰れるか?」

「付き人がいるから大丈夫じゃ」

「そうか。気をつけて帰れよ」

 そう言うと、九重は手を振って店を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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堕天使との対峙

 次の日

 

 朝学校に着くと、何やら教室が騒がしかった。

 

「あ、おはよう石動君!」

「おはよう」

 自分の席に荷物を置くと、席の近い二人が話しかけてきた。

 

「おう、村山に片瀬。....これ、何の騒ぎだ?」

 俺は二人に騒ぎの理由を聞いてみた。

 

「何か、変態兵藤に彼女ができたんだって」

「アイツに?」

「うん。それを変態兵藤は学校中に言い回ってこんなに大騒ぎになってるの」

「へぇ....」

「(あんな男に彼女ねぇ....)」

 そんな事を考えていると、この騒ぎの根源が教室に帰ってきた。そして、クズ兄は

 俺の姿を見ると近づいてきた近づいてきた。

 

「へっへーん! どうだ石動! 俺にも彼女ができたぞ!」

 そう言って、クズ兄は携帯の写真を見せてきた。そこには、昨日門の前にいた

 女子高生の姿をした堕天使が写っていた。

 

「(昨日の女か....)」

「そうか」

 俺はクズ兄の言葉を適当に流して自分の携帯を見た。

 

「そ、それだけかよ! ちょっとは妬むとかないのかよ!」

「ない」

「そ、即答かよ....だ、だったら見てろ! 週明けに俺と夕麻ちゃんの

 ラブラブ写真を見せてやるからな!」

 クズ兄はそう言うと、俺から離れていった。

 

「(そんな写真が撮れるわけねぇのに....滑稽だな)」

 

 〜〜〜〜

 更に次の日

 

「堕天使と知らずに呑気なもんだな....」

 俺はクズ兄と堕天使のデートを監視していた。そして、俺は今公園の

 木の陰に身を潜めていた。すると、この公園一帯に結界が張られた。

 

「(人払いか....それにあの堕天使、力を溜めてるのか)」

 俺は堕天使から力を溜めているのと、濃密な殺気を感じた。そして、女はボンテージの

 ような服装に変わり、光の槍を作り出した。

 

「(今ここで殺されるのは困るんだよな....)」

 そう思いながら、俺はトランスチームガンを取り出しウルフロストボトルを挿し込んだ。

 

ウルフ....

 

「蒸血」

 

ミスト・マッチ....ウ・ウッ・ウルフ....ウルフ....ファイヤー!

 俺はブラッディウルフに姿を変え、堕天使の女に一瞬で近づき光の槍を破壊した。

 

「何っ!?」

『悪いがその男は俺の獲物だ。今ここで殺されるのは困るんだよ』

 そう言って、俺は堕天使の女と対峙した。

 

「あなた、一体何者よ!」

『ただの復讐者だ。それ以上でも、それ以下でもない』

 そう言い放ち、俺は堕天使に殴りかかった。堕天使の女はそれを腕でガードした。

 

「っ!?」

 俺は軽く殴ったが、堕天使の女は威力に驚いた表情をしていた。

 

『(ハザードレベル1.9か....ここで殺すのは惜しいな)』

 俺は堕天使の女に触れた時にハザードレベルを計った。そして、俺はすぐに堕天使から

 距離を取った。

 

「このっ....!」

 堕天使の女は光の槍を投げて来ようとしたが、急にその槍を消した。

 

『(急にどうした....?)』

 俺がそう考えていると、突如赤い魔法陣のようなものが現れた。

 

「あの紋章はグレモリー家ね....そこの狼の鎧男! 今回は見逃してあげるわ! でも、

 次邪魔をしたらタダじゃおかないわよ!」

 そう言うと、堕天使の女は結界を解除して飛び去っていった。そして、それと同時に

 魔法陣からは赤髪の女が現れた。

 

『(リアス・グレモリー....)』

 その女は俺の通っている学園の三年、リアス・グレモリーだった。

 

「私を呼んだのはあなたね。....それと、そこにいるあなたは一体何者かしら?」

 グレモリーは俺の姿に警戒しながらそう聞いてきた。

 

『悪魔のお前に話す事はない』

 そう言いながら、俺はトランスチームガンを取り出しグレモリーに向けた。

 

「っ!」

『さらばだ』

 そして俺は銃口を引き、煙紛れて姿を消した。

 

 〜〜〜〜

 nascita

 

 俺はnascitaに帰ると実験室に入った。そして、俺は実験室にいたエボルトと話をしていた。

 

「で、何か面白いものでも見つけたのか?」

「あぁ。ハザードレベル1.9の堕天使を見つけた。それと、もしかしたらクズ兄が

 悪魔に転生するかもしれない」

 すると、エボルトは悪い笑みを浮かべた。

 

「そうか! なら、ようやく始まるなかもな、お前の復讐が」

「あぁ。....お前にも協力してもらうぞ」

「分かっている。じゃ、俺はその堕天使と接触を試みるか。1.9ならスマッシュにすれば

 新しいボトルが手に入るだろう」

「頼んだぞ」

「了解」

 

 

 



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グレモリー眷属と妹?

お久しぶりです


「お、おい石動! お前は俺の彼女の夕麻ちゃんの事覚えてるよな!」

 週明け、教室に入ったかと思うと急にクズ兄が俺に近づいてそう叫んできた。

 

「....何の事だ。そもそもお前に彼女がいる事自体初耳なんだが」

「そ、そんな....」

「(この聞き方からするに、他の人間は覚えていないのか)」

 俺は大体の事情を察し、記憶が無いフリをした。クズ兄は落ち込んだように

 俺から離れて教室を出ていった。そんな事よりも、俺はある事に気付いていた。

 

「(....悪魔になったか。これで、ようやく始める事が出来るな)」

 クズ兄が悪魔になっている事に気付き、俺は笑みを浮かべた。

 

「石動君、何か良い事でもあったの?」

 すると、隣にいた片瀬がそう聞いてきた。

 

「まぁな」

「そうなんだ。どんな良い事があったの?」

「....それは秘密だ」

「えぇ〜」

「悪いな」

 そんな事を話しながら、俺は授業の用意を始めた。

 

 

 〜次の日の夜〜

 

『この辺か』

「あぁ。九重の巻き物を見る限りこの辺にいるはずだ」

 俺は今、スタークと一緒にとある廃工場にいた。何故こんな所にいるかというと、

 ここにとあるはぐれ悪魔がいるため、そいつで実験をするためだ。

 すると、工場の奥から上半身は裸の女、下半身は節足動物みたいな悪魔が出てきた。

 

「(絵を見る感じコイツだな)」

 九重に貰った巻き物の絵を見て俺はそう思った。

 

「この匂いは旨いのかな? 不味いのかな? 分からないけど人間とは違っ....」

『話しが長い』

 スタークはそう言うと、腕から針の様なものをはぐれ悪魔に突き刺した。すると、はぐれ悪魔は

 叫び声を上げながら“スマッシュ”へと姿を変えた。

 

『じゃ、俺は帰るぞ創二。帰ってドラマ見たいんだよ』

「へいへい」

 そう言って、スタークは煙に包まれて消えた。それを見送り、俺はビルドドライバーを

 腰にかざした。

 

「さぁ、実験を始めようか」

 俺は赤と青のフルボトルを振りベルトに挿し込んだ。

 

ラビット! タンク! ベストマッチ!

 

 そして、俺がレバーを回すと前後にプラモランナーが現れた。

 

Are you ready?

 

「変身」

 そう言うと、プラモランナーが俺に重なった。

 

鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!

 そして、俺の姿は“仮面ライダービルド”になった。

 

『....さっさと終わらせて帰るか』

 そう呟きながら、俺はドリルクラッシャーを片手にスマッシュに向かって歩いて行った。

 スマッシュになったはぐれ悪魔はただ暴走したように攻撃してきた。俺はその攻撃を

 ドリルクラッシャーで受け流しながら近づいていき、タンク側の脚ではぐれ悪魔を

 蹴り飛ばした。一応威力は抑えたため、はぐれ悪魔は壁にめり込むぐらいで済んだ。

 

『(今の威力の蹴りでこれか....ボトルの成分の期待は気薄だな)」はぁ

 俺はため息をつきながら海賊ボトルを振ってドリルクラッシャーに挿し込んだ。

 

Ready Go! ボルテックブレイク!

 

『失せろ』

 俺はドリルクラッシャーを十字の形に振ると、十字の形をした水の斬撃がスマッシュを

 斬り裂いた。そして、スマッシュは大爆発を起こし、はぐれ悪魔も爆発に飲まれて

 燃えていた。俺は燃えている場所にエンプティボトルを向けた。すると、ボトルの

 三分の一程度が黒色に変化した。

 

『....やっぱこんなもんか』

 俺はボトルに入った成分を光に当てながらそう呟いた。そして、俺はやる事も終わって

 帰ろうとした時、入り口に赤い魔法陣が浮かび上がった。

 

『(....タイミング悪)』

 そう思っている間に、魔法陣から五人の男女が現れた。その内、四人は俺の知っている

 悪魔だった。

 

「....そこのあなた、こんな所で一体何をしているのかしら?」

 赤髪の悪魔、リアス・グレモリーは俺を警戒しながらそう言ってきた。

 

『お前に言う必要があるのか、リアス・グレモリー』

「えぇ。ここは私が管理している領地よ」

『....管理か。はぐれ悪魔を放置しておいて管理なんてよく言えたもんだな』

「何ですって....?」

 俺の言葉にリアス・グレモリーは殺気を向けてきた。

 

『実際そうだろ。今まで俺が何十体倒してきたと思ってる。テメェの管理の甘さで

 人が死んで良いと思ってんのか』

「私はちゃんと管理をしているわよ! 今回はたまたま....」

『それが何回あったと思ってんだ。それに、ここはそもそも人間の領地だ。責任も

 取ろうとしないのならとっとと管理者を辞めて冥界に帰れ』

「っ、テメェ! さっきから聞いてたら好き勝手言いやがって! 部長の苦労も

 知らないくせに!」

 すると、クズ兄がそう言ってキレてきた。

 

『あぁそうだな。そいつの苦労など俺にとってはどうでも良い事だ』

「フザケンナァァァァ!」

 そう叫びながら、クズ兄は俺に殴りかかってきた。

 

『はぁ....』

 俺はそれを、ため息をつきながら躱して逆に天井に蹴り飛ばしてやった。

 

「ガハッ!?」

「イッセー!? 朱乃! 小猫! 祐斗!」

「「「はい部長!」」」

 リアス・グレモリーの言葉で、一人は雷を、一人は剣を握って、一人は拳を握って

 俺に攻撃を仕掛けてきた。俺はまず雷を躱して男の剣をドリルクラッシャーで受け止めて

 工場の壁に殴り飛ばした。そして、次に拳で殴りかかってきた少女の一撃を

 受け止めたのだが....

 

『っ!』

 俺は少女から感じた魔力に覚えがあった。

 

『なるほどな....』

 俺は少女の背後に回って首筋に手刀を当てて気絶させた。そして、少女を寝かせると、俺は

 ドリルクラッシャーをガンモードに変形させて雷を放ってきた女を撃ち落とした。

 

「そんなっ....!」

『遊びは終わりか? だったら俺は帰るぞ』

 そう言って、俺は工場から出ようとしたのだが、後ろから魔力の塊が飛んでくるのを感じた。

 それを俺はラビット側の脚でグレモリーに跳ね返してやった。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 背後では叫び声の爆発音が響いた。俺はその間に、走ってこの場から離れた。

 

 

 〜〜〜〜

 nascita

 

「ただいま〜....って、みんなドラマ見てんのか」

 家に帰ると、四人はドラマを見ていた。

 

「おかえり....」

「あ、おかえり〜」

「おかえりなさい」

「随分と時間かかったな。何かあったか?」

「あぁ。それで悪いんだが黒歌、少し話があるから来てくれるか?」

「私?」

 黒歌は不思議そうな表情をしていた。

 

「あぁ。すぐ終わるから」

 そう言うと、黒歌は俺と一緒に部屋を出た。

 

「で、私に話って?」

「実はだな、さっきお前の妹らしき悪魔と接触した」

 そう言った瞬間、黒歌は俺の襟を掴んできた。

 

「ど、何処で! 何処で白音に!」

「お、落ち着け! お前の妹って確証はねぇんだよ!」

 そう言いながら、俺は黒歌を一度落ち着かせた。

 

「....はぐれ悪魔の戦闘後、グレモリーが現れたんだよ。その時に一緒にいた小さい

 女の子からお前と似たような魔力を感じたんだ」

「....その女の子の容姿は」

「白い髪にショートカットだ」

「....」

「とりあえずお前の妹なのかは俺にはわからない。だから、明日一緒に学校に行って

 確認するぞ」

「わかったにゃん....」

「じゃあ明日、俺のカバンの中に入って学校に行くぞ」

 そう約束すると、黒歌は部屋に戻っていった。

 

「....さて、妹だった時の事を考えて俺も動きを考えないとな」

 

 

 



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妹と堕天使

「....あら、こんな所で奇遇ですね石動君」

「あぁ会長。どうも」

 昼休みになり、昨日会った少女を探していると、偶然生徒会長である支取 蒼那先輩と会った。

 

「会長は生徒会の仕事っすか?」

「えぇ。....誰かさんが校舎の壁や窓を破壊しましたからね」

 会長は冷めた目で俺を見ていた。

 

「あはは....すんません」

「謝るなら最初からしないでください....」はぁ

 会長はため息をつきながらそう言ってきた。

 

「へい....というか、あの三人をどうにか出来ないんすか?」

「私の方からも忠告は出しているんですが....まるでやめる気配はありませんね」

「大変だな会長も....」

「えぇ。ですから、是非石動君には生徒会に入って欲しいのですが....」

「まだそれを言うんすか....」

 会長は何かと俺に会うと生徒会に誘ってくる。これでもう何十回目かも忘れるぐらいには....

 

「誘ってくれんのは有難いっすけど家の事もあるんで」

「....そう言われると私も強くは言えませんね。気が向いたらいつでも言ってください。

 席は空けておくので」

「....ま、一応考えてはおきますよ」

「はい。良い返事を期待しています」

 そう言うと、会長は生徒会室の方に歩いて行った。

 

「....創二、今の女」

「あぁ。悪魔だってことはわかってる」

 カバンの中から聞こえた黒歌の声に俺はそう答えた。

 

「警戒しなくて良いの?」

「変に警戒する必要もないだろ。向こうが何かをしない限りは俺も事を起こすつもりはない」

「....そ」

 そう言うと、カバンの中にいる黒歌は黙った。そして、俺もある場所に

 向かって歩き出した。

 

 〜屋上〜

 

 俺が来たのは屋上だった。

 

「....何で屋上?」

「こっからだったら外にいる連中は全員見えるからな。飯食いながら昨日の子を探せる」

「その子が屋内にいたら?」

「それは....まぁ仕方ない」

「相変わらず適当にゃん....」

 そんな事を話しながら、黒歌は俺の膝に乗り、俺は弁当を食いながら

 グラウンドの方を見下ろしていた。すると....

 

「....あの、すいません」

 急に俺は誰かに声をかけられた。

 

「ん? なん....!?」

 俺は声が聞こえた方を見ると、そこには俺が探していた少女がいた。

 

「(な、何でここに!?)」

「....あの、隣に座っても良いですか?」

「あ、あぁ....好きにしてくれ」

「....ありがとうございます」

 すると、少女は俺の隣に座って弁当を食べ始めた。すると、膝に乗っていた

 黒歌は少女に近づいて行った。そして、少女の顔をしばらく見ていると

 少女の脚に頬ずりをし始めた。

 

「よしよし」

 少女は黒歌の頭を撫で始めた。そして、しばらく撫でると俺の方を見た。

 

「あの、石動 創二先輩ですよね?」

「あぁ。君は?」

「塔城 小猫です。この猫、石動先輩の飼っている猫なんですか?」

「あ、あぁ。コイツ、たまに勝手に俺のカバンに入って来るんだよ」

「そうなんですか。この子、名前は何て言うんですか?」

 そう聞かれ、俺は少し考えたがすぐにこう答えた。

 

「コイツの名前は"黒歌"だ」

「黒、歌....」

 塔城は一瞬驚いたような表情をした。

 

「(今の感じ....おそらく当たりだな)」

 そう考えながら、俺は黒歌を捕まえた。

 

「悪いんだが学校に連れて来てる事は黙っててくれよ? 会長に見つかると

 何を言われるか....」

「はい。でも、黙っている代わりにまたこの子を撫でさせてください」

「良いぞ。コイツも喜んでるみたいだしな」

 そう言うと、黒歌は鳴き声をあげた。すると、予鈴のチャイムが鳴った。

 

「じゃあ石動先輩、また今度お願いしますね」

 塔城はそう言うと、屋上から出て行った。

 

「....で、どうだ? お前の妹だったか?」

 俺がそう聞くと、黒歌は人の姿に戻った。

 

「間違いないにゃん....あの子は、私の妹の白音にゃん」ポロポロ

 黒歌は涙を流しながらそう言った。

 

「そうか。とりあえず、見つかって良かったな」

 俺は黒歌の頭に手を置いた。

 

「さぁてと、後はどうやってこっちに引き込むか....」

「....創二。白音を引き込むなら、私も動いて良い?」

「....お前がか?」

 黒歌の思いがけない提案に俺は驚いた。

 

「白音の事なら私が一番分かってるから」

「....良いぜ。好きにしろ。でも、俺は俺で動くからな」

「うん。そっちはそっちでお願いにゃん」

 そう話していると、授業が始まるチャイムが鳴った。

 

「ヤベェ....急いで猫に戻れ黒歌!」

「はいはーい」

 俺は黒歌をカバンに入れると急いで教室まで走った。

 

 

 〜その日の夜〜

 エボルトside

 

『ふむ、ここに堕天使どもがいるのか』

 俺はとある教会の前にいた。

 

『さぁて、さっさと探しますか』

 俺は姿を液状に変えて教会の中に入った。そして、ある程度教会内を探すと隠し階段を

 見つけた。俺はその階段を降りると、そこには四人の堕天使がいた。

 

『へぇ、こんな所に秘密基地か。面白い事を考えるもんだなぁ、堕天使も』

 俺は四人に聞こえるようにそう言った。すると、四人の堕天使はギョッとした表情で

 俺を見た。

 

「ア、アンタ何者っスか!?」

「どうやってココが!?」

『初めまして堕天使の諸君。俺の名はブラッド・スターク。ちょっとしたゲームメーカーだ』

 俺は仮面の中で笑顔を浮かべながら礼をした。

 

 

 

 

 

 

 



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計画の始まり

「で、堕天使の連中の目的はとある聖女が持っている神器を回収する事か」

「あぁ。何でも二日後には神器を抜くらしいぜ」

 黒歌の妹と会った次の日の朝、朝食を食いながら俺達は堕天使の話をしていた。

 

「神器が目的ねぇ....」

「そんなに、珍しい神器....?」

「あぁ。何でもあらゆる種族を回復させるとか言ってたな」

「おそらくそれは、聖母の微笑ですね」

「「聖母の微笑?」」

 グレイフィアの言葉に俺とエボルトは首を傾げた。

 

「はい。先程言った通り、どのような種族でも傷や痛みを治す事の出来る神器です。

 回復系の神器は大変希少なんです」

「なるほど....」

「そういう事か。ま、俺らにはあまり関係がなさそうだな」

「あぁ。俺らは俺らの計画を進めるだけだ。エボルト、堕天使どものハザードレベルは?」

「女は1.9、1.5、1.6。男が1.2だった」

「そうか。なら、いつも通りに頼むぞ」

「へいへい。それよりも、時間大丈夫か?」

 そう言ってエボルトが時計を指すと、時間はかなりギリギリだった。

 

「ヤッベ....行ってくる!」

「「「「いってらっしゃい」」」」

 俺は急いでカバンの中からビルドフォンを取り出し、ライオンフルボトルを挿してバイクに

 変形させた。俺はそれに乗り、急いで学校まで向かった。

 

 

 〜そして二日後〜

 

『じゃ、俺は先に行って待ってるぜ』

「あぁ」

「エボルト! 白音を傷つけたら承知しないわよ!』

『分かってるっての』

 夜になり、エボルトはブラッドスタークに姿を変えて煙の中に消えた。

 

「さて、俺も行くか。グレイフィア、回収できる奴等がいたら回収は頼んだぞ」

「分かりました」

 俺はグレイフィアにそう言ってマシンビルダーに乗り、教会に向かって走り出した。

 

 

 〜〜〜〜

 リアスside

 

「くっ....! まさかここまでとは....!」

「こんなに強いなんて聞いてないっスよ....!」

 私は今、朱乃とともに堕天使の掃除をしていた。そして、既に一人を消滅させ、残った

 二人も私達の前に倒れ伏していた。

 

「どうやらこれで終わりね」

 私はそう言いながら自分の手に破滅の魔力を溜めた。そして、堕天使に向かって放とうと

 したその時....

 

『おいおい、随分とやられてんなぁ』

 突然男の声が聞こえてきた。驚いてその方を見ると、そこにはワインレッドの鎧を纏い、

 胸に蛇のマークが入った異形がいた。

 

「(全く気配を感じなかった....!)」

 私は一切気配を感じなかったこの男を警戒した。

 

「ブ、ブラッドスターク!」

「何でここにいるっスか! レイナーレ様の方は!」

『問題ねぇよ。それよりも、たかが悪魔に随分の状態だなぁ』

「う、うるさいっス!」

 男は堕天使達をおちょくるように話していた。

 

「....貴方、堕天使達の仲間かしら?」

『俺はただの協力者でゲームメーカーだ。仲間って程ではねぇよリアス・グレモリー』

 男は私の事を面白い物を見つけたような表情で私を見ていた。

 

『さ、お前ら二人にはもう少し働いてもらわないとな』パチンっ

 そう言って指を鳴らした瞬間、堕天使の二人は急に苦しみ出した。

 

「な、何スかこれは....!」

「ブ、ブラッドスターク! 一体私達に何を....!」

『ちょいとばかしお前等の身体に毒を注入していてなぁ』

「毒、だと....!」

『あぁ。ま、精々足掻いてくれよ』

 すると、堕天使達は煙に飲み込まれ、煙が晴れるとその姿は異形の姿へと変わった。

 

「っ、これは....!」

「貴方! 堕天使達に一体何をしたの!」

『さぁ? ....っと、それよりも』

 男が木の上に登ると、急に背後からバイクの音が聞こえてきた。見ると、背後から黄色い

 バイクが私達の方に向かってきた。そして、バイクに乗っていた人間は異形の姿を見ると

 バイクを止めてバイクから降りてきた。

 

『よぉ、来たか“ビルド”』

「スターク....」

 声からしてバイクに乗っていたのは男だった。だが、ヘルメットを取っていないので顔までは

 見えなかった。

 

『思ったより早い到着だなぁ』

「黙れ。今日こそお前の首、取らせてもらうぞ」

 そう言った男が手に持っていたのは、この前はぐれ悪魔を倒したと思われる赤と青の鎧が腰に

 巻いていた物と同じだった。

 

「それは....!」

 男は腰にそれを巻くと、赤と青のボトルを振ってベルトに挿し込んだ。

 

ラビット! タンク! ベストマッチ!

 

 そして、突然軽快な音楽が流れると男の前後にランナーの様なものが現れた。そして....

 

Are you ready?

 

「変身」

 

鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!

 ランナーが重なり、男の姿はこの前廃工場で見た姿に変わった。



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破壊の輝きと想定外

 目的地に着くと、何故だか知らないがリアス・グレモリーと雷を落としてきた女がいた。

 

『(何でコイツらがいるんだか....まぁどうでも良いか)』

 俺はグレモリー達に特に興味を示さずにスマッシュを警戒した。

 

『さ、行ってこい』

 スタークがそう言うと、二体のスマッシュは俺に向かってきた。俺は二体のスマッシュの

 攻撃を躱しながらカウンター攻撃を仕掛けたが、どちらも防御力が高いのかあまり

 攻撃が効いていなかった。

 

『フフフッ! 其奴らはそれなりの防御力を持ってるぜ。そのベストマッチだと相性が

 悪いんじゃないかぁ?』

『黙ってろ』

 俺はスマッシュを蹴り飛ばして距離を取ると、茶色と水色のボトルを取り出して数回振り

 ベルトに挿し込んだ。

 

ゴリラ! ダイヤモンド! ベストマッチ!

 

 そして、俺がレバーを回すと再びプラモランナーが現れた。

 

Are you ready?

 

『ビルドアップ』

 俺がそう言った瞬間、プラモランナーは重なり、俺の姿は右腕に巨大な武装をした姿に

 変わった。

 

輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イェーイ!

 

 すると、俺の姿が変わった瞬間、一体のスマッシュは俺に接近しパンチを放ってきた。俺は

 それをあえて避けずに真正面から受け止めた。スマッシュの一撃は俺に一切効かず、逆に

 スマッシュは手を痛めていた。

 

『今度はこっちの番だ』

 俺はそう言ってスマッシュの頭を掴み右腕で数発殴って殴り飛ばした。すると、もう一体の

 スマッシュが光の槍を投げてきた。俺はそれを左肩のダイヤモンドから展開された光の障壁で

 全て打ち消した。

 

『....そろそろ終わりだ』

 俺はベルトのレバーを回し、自分の目の前に巨大なダイヤモンドを作り出した。

 

Ready go! ボルテックフィニッシュ! イェーイ!

 

 その音が鳴った瞬間、俺は目の前のダイヤモンドを小さいサイズに破壊してスマッシュに

 向かって飛ばした。小さくなったダイヤモンドはスマッシュ達に直撃し、スマッシュ達は

 緑色の炎を上げて爆発した。俺はエンプティボトルを炎に向けると、ボトルの全てが

 真っ黒に変わった。だが、一つ妙な事が起こった。

 

『(何で消滅していない....)』

 スマッシュだった堕天使は何故か消滅せずにその場で気絶していた。

 

『フフフッ....コイツは想定外だなぁ』

 すると、スタークは笑いながらスチームガンで堕天使達をこの場から消した。

 

『....次はお前だ、スターク』

 俺はそう言って右腕を構えた。

 

『良いぜ。ただし....俺に追いつけたらな』

 スタークはそう言うと液状になって教会の方に向かっていった。

 

『っ、待て!』

 俺はラビットタンクに姿を戻し、マシンビルダーに乗ってスタークを追いかけた。

 

 

 〜〜〜〜

 イッセーside

 

「くっ....! 何故! 何故なの! 私は至高の堕天使に近づけたはずなのに!」

 俺の目の前では堕天使のレイナーレが倒れ伏していた。

 

「知るか! そんな事でアーシアの命を奪いやがって....!」

 俺はレイナーレの言葉に拳を握りしめた。

 

「そんな事、ですって....! あんた如きの下級悪魔に、私の何がわかるのよ!」

 そう叫ぶと、フラつきながらもレイナーレは立ち上がった。すると、突然教会の窓を

 突き破ってワインレッドの色の鎧を纏った何かと、この前廃工場で会った赤と青の鎧を

 纏った何かがバイクに乗って現れた。

 

『はぁ、危ねぇ危ねぇ。って、こっちも随分とやられてるなぁレイナーレさんよぉ』

 すると、ワインレッドの鎧の異形はレイナーレに近づいてそう言った。

 

「ブラッドスターク....」

『アンタにはまだ戦ってもらわないと困るんだよなぁ』

 そう言った瞬間、ブラッドスタークと呼ばれた異形はレイナーレに腕から出した針を

 突き刺した。

 

「ブ、ブラッドスターク....! 一体私に何をした....!」

 すると、レイナーレは急に苦しみ出しながらそう聞いていた。

 

『さぁて? んじゃまぁビルド。コイツを倒したら遊んでやるよ』

 そう言った瞬間、レイナーレの姿は黒い何かへと姿を変えた。そして、姿を変えた

 レイナーレは赤と青の鎧に向かっていった。

 

『さて、俺は暇だしお前さんらの相手をするかねぇ....』

 そう言うと、ブラッドスタークと呼ばれた異形は俺達に銃弾を放ってきた。

 

「っ、危なっ!?」

『避ける気ないなら避けなくても良いぞ〜。....まぁ、それで死んでも知らねぇけどな』

 それを聞き、俺と木場、小猫ちゃんは放たれる銃弾を避け続けた。

 

 

 

 



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忍びと決着

 俺はスタークが三人を引きつけてる間にスマッシュの強化体となった堕天使と対峙していた。

 

『(強化体か....珍しい事もあるもんだ)』

 そう考えながら、俺はラビット側の脚を使ってスマッシュに接近して殴り掛かった。

 その一撃はスマッシュに直撃し、スマッシュのボディには傷が付いたが一瞬にしてその傷は

 治ってボディは元に戻った。

 

『どうなってる....』

 俺はスマッシュの攻撃を躱しながら格闘攻撃を叩き込んで傷を作るが、傷は全て元通りに

 治っていった。そして、しばらくスマッシュの攻撃を躱しているとある事を思い出した。

 

『(そういえば、堕天使の目的はあらゆる種族を回復する事ができる神器だった....

 て事は、この堕天使は既に神器を回収したのか)』

 俺は一つの仮説を立て、ドリルスラッシャーのガンモードで攻撃を仕掛けた。

 撃ち抜いた所は先程と同じように傷が治っていった。その時、俺はある事に気づいた。

 それは、堕天使の傷は撃ち抜いた場所から順番に治っていく事だ。

 

『(....回復が追いつけない程の攻撃を放てば、このスマッシュを倒せそうだな)』

 そう考えた俺は紫色と黄色のボトルを取り出して振り、ベルトに挿し込んだ。

 

忍者! コミック! ベストマッチ!

 そして、俺がレバーを回しているとスマッシュは光の槍を投げてきた。

 だが、それは全て俺の目の前に現れたランナーが弾いた。

 

Are you ready?

 

『ビルドアップ』

 俺がそう言うと、ランナーは重なり、紫と黄色の姿に変わり、右手に4コマ漫画が

 書かれた剣が現れた。

 

忍びのエンターテイナー! ニンニンコミック! イェーイ!

 

 そして、俺は4コマ忍法刀のトリガーを一回引いた。

 

『分身の術!』

 すると、俺と同じ姿の分身体が三体現れた。三体の分身と俺はそれぞれ動き、

 スマッシュに攻撃を始めた。

 そして、しばらくするとスマッシュの傷の回復が間に合わなくなっていた。

 それを見逃さず、俺と分身体の一体はトリガー二回、残りの二体の分身体は

 トリガーを三回引いた。

 

火遁の術! 火炎斬り!

風遁の術! 竜巻斬り!

 そして、俺と分身体の火炎を纏った剣はスマッシュを目にも止まらぬ速さで斬り裂いた。

 そして、それに続くように竜巻を纏った剣がスマッシュを斬り裂き、スマッシュは炎の竜巻に

 包まれた。そして、スマッシュは竜巻の中で大爆発を起こした。俺は爆発したスマッシュに

 エンプティボトルを向けると、スマッシュから成分が抜き取られボトルは真っ黒に変わった。

 そして、爆心地には涙を流している堕天使が倒れていた。

 

「どうして....私は、至高の堕天使に近づけたはずなのに....」

 堕天使は聞こえないぐらいの声で小さく呟いた。俺はそれを聞いていた時、突然周りにいた

 分身体が全て消滅させられた。背後を見た瞬間、俺に向かって銃弾が飛んできていた。

 俺は4コマ忍法刀でその銃弾を弾いた。

 

『はぁ....ま、良いデータ収集にはなったか』

 そう言うと、スタークはスチームブレードで斬りかかってきた。俺は4コマ忍法刀で

 受け止めたが、スタークは蹴りを放ってきて俺は後方に飛ばされた。

 

『ビルド、悪魔の諸君。今日は良いものを見させてもらったなぁ。俺は機嫌が良いから

 今日のところは引いてやろう』

 そう言うと、スタークは倒れていた堕天使を担いだ。

 

『Ciao〜』

 そして、その言葉とともにスタークは天井に向かって大量の銃弾を放った。すると、

 天井は嫌な音を立てながら揺れ始めた。その間にスタークは煙の中に消えた。

 

『チッ....マジかよアイツ....』

 俺はスタークに舌打ちしながらも4コマ忍法刀のトリガーを四回引いた。

 

隠れ身の術! ドロン!

 その音とともに、俺は煙に包まれてその場から姿を消した。

 

 

 〜〜〜〜

 教会外

 

 煙が晴れると、俺は教会の外にある木の上にいた。そして、俺はさっきまでいた

 教会を見た。教会は壁から崩れていき、教会としての姿は完全に分からなくなった。

 すると、突如協会の瓦礫が吹き飛んだ。そこから剣を持った男と黒歌の妹、クズ兄が

 一人の少女を背負って出てきた。四人に目立ったような傷はなさそうだった。

 俺はその様子を見て、気づかれないように家に向かって走り出した。

 

 

 

 

 



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新たな協力者

 レイナーレside

 

「っ....ここは....」

 私は周りが鉄の壁で覆われた部屋で目を覚ました。今私がいるのはベッドの上で、

 身体には包帯を巻かれて病人が着るような服を着ていた。

 

「(ここは一体....それにこの服装に包帯は....)」

 私は周りを見渡すと、私の隣には同じような服を着たカラワーナとミッテルトが

 ベッドの上で眠っていた。

 

「(誰かが私達の手当てを....? でも一体誰が....)」

 そう考えていると、突然部屋の扉が開き、女の私でも美しいと思う程の銀髪の女が

 入ってきた。

 

「お目覚めになったのですね、堕天使レイナーレ」

「っ!? どうして私の名を!」

 女が私にそう言った瞬間、私はベッドの上で身構えた。

 

「それは....」

「俺が教えたからだよ、レイナーレ」

 すると、銀髪の女の背後から眼鏡をかけて帽子を被った男が現れた。その男の声に、私は

 聞き覚えがあった。

 

「その声....まさか、ブラッドスターク!」

「ビンゴ! 正解だ!」

 男は笑いながら私を指差した。

 

「こうして目が覚めたのは、俺達にとっては非常に喜ばしい事だ。なぁ、グレイフィア」

「えぇ、そうですね。では、私は創二様を呼んで参ります」

 そう言うと、グレイフィアと呼ばれた女は部屋から出ていった。そして、ブラッドスタークは

 近くの椅子に座って私に話しかけてきた。

 

「さてと、まずは礼を言うか。俺の実験台になってくれて感謝するぜレイナーレ。お陰で

 俺達の計画がまた少し進んだ」

「実験台? それに計画ってどういう事よ」

「俺がお前らに協力を持ちかけた時に言ったある人間を殺したい....アレは全部嘘でなぁ。

 俺はとある目的の為にお前らに近づいたんだよ」

 そう言いながら、スタークは手でボトルを回し始めた。

 

「コイツはフルボトルって言ってなぁ。お前らがなったスマッシュから作れるんだよ」

「....まさか、それを作るためだけに私達に接触したの?」

「正解。コイツを作るにはハザードレベルが高くないとダメでなぁ....」

「ハザードレベル?」

 聞いたことのない言葉に私は首を傾げた。

 

「スマッシュになるためのレベルだ。このレベルがある程度ないとスマッシュになる前に

 消滅しちまうんだよ」

「消滅....!」

「本来ならお前らも消滅するはずだったんだが、何でか知らねぇが消滅しなかったからなぁ。

 ウチまで運んで手当てをしてやったんだよ」

 スタークは何気にとんでもない事を面白そうに言った。すると、扉が開きさっきの銀髪の女と

 茶髪の高校生ぐらいの男が入ってきた。

 

「来たか創二」

「あぁ。この姿では初めましてだな、堕天使レイナーレ。俺は石動 創二。お前達を倒した

 仮面ライダービルドに変身する者だ」

 そう言って、創二と名乗った男は丁寧に礼をした。

 

「....あっそ。で、その私達を倒したアンタは私達をどうする気?」

「そうだな....俺はお前達と取り引きをしたいと思っている」

「....取り引きですって?」

 思いがけない言葉に私は首を傾げた。

 

「あぁ。レイナーレ、お前は誰がに復讐をしたいと思っているな」

「っ!?」

 その言葉に、私は創二を睨みつけた。

 

「その様子からして図星だな」

「....図星だったら何だって言うのよ!」

「そう怒るな。お前は欲しくないか? 復讐を成す事が出来る力が」

「....何ですって」

 すると、創二は紫色の拳銃と赤と青の歯車が付いたボトルを見せてきた。

 

「俺はお前達に復讐を成す事の出来る力をくれてやる。そのかわり、

 俺の復讐の為にその力を貸せ」

「アンタの復讐にですって?」

「あぁ。お前が殺そうとした人間、兵藤 一誠への復讐にな」

「兵藤 一誠ですって!?」

 私はその言葉を聞いて目を見開いた。

 

「あぁ。俺は兵藤 一誠への復讐を望んでいる」

「な、何でアンタが兵藤 一誠なんかに....」

「それは、俺があの男の弟だったからだ」

「アンタが、あの男の弟....?」

「あぁ。まぁ昔に家を飛び出してアイツは俺が死んでいると思ってるがな」

 そう言った創二の目には復讐の炎が見えた。

 

「(この男....私と同じかそれ以上の復讐を誓っているのね)」

「さて、俺の話しはこれで終わりだ。それでどうする? この誘いに乗るか?」

「....もしも断ったらどうなるのかしら?」

「その時はここでの記憶を消して何処かに連れて行く」

「(なるほど....殺す気は無さそうね)」

「それともう一つ。もしも俺達についたら、いずれ三大勢力と戦争を行う。

 その時に、同胞の堕天使を殺してもらうかもしれんぞ」

「同胞ね....上等よ。誰が来ようと全て殺してやるわ」

「ということは....」

「えぇ。アンタの復讐、手伝ってあげる」

 私がそう言うと、創二は笑いながら私に拳銃とボトルを渡してきた。

 

「なら、これからよろしく頼むぜレイナーレ」

「えぇ。こちらこそ。それと、この二人の説得は私に任せてもらって良いかしら? 

 私が説得すればこちらについてくれるはずよ」

「わかった。ならば任せるぞ」

「えぇ」

 こうして、私は強力な後ろ盾を手に入れる事になった。

 

 

 〜〜〜〜

 エボルトside

 

「これで残るは天使だな....」

 俺は自分の部屋で端末を見ながらそう呟いた。俺が見ている端末には俺を合わせた八人の

 武装とベルトが記されていた。

 

「さて....楽しみになってきたなぁ!」

 そう言った俺の視線の先には二本のスクラッシュドライバーがあった。

 

「(せいぜい俺を満足させてくれよ....三大勢力)」

 

 

 

 

 

 

 

 



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戦闘校舎のフェニックス
次なる計画


「ただいま」

「あら、おかえりなさい」

 家に帰ってくると、レイナーレが出迎えてくれた。レイナーレはあの後、残り二人の

 堕天使をこちら側に引き込んだ。そのおかげで、俺達の戦力は大幅に強化された。

 そして、三人が加わってから既に二週間近く経った、

 

「香菜と美登は?」

 香菜はカラワーナの偽名で、美登はミッテルトの偽名だ。レイナーレにも零奈という

 偽名がある。

 

「買い出しに行ってるわ」

「そうか。店にも慣れたか?」

「えぇ。意外と退屈しなくて飽きないわ」

 そう言いながらレイナーレはレジにある伝票を片付けていた。

 

「そうか。....さて、俺は看板を片付けに行くか」

 そう呟き、俺は外にある看板を片付けに行った。

 

 

 〜次の日〜

 黒歌side

 

「....ふ〜ん。アレがグレモリーとその眷属達ね」

 私は今、創二の通っている高校の中にある旧校舎の近くの木の上にいた。そして、私は

 猫の姿でその部屋の中にいる茶髪の男を見ていた。

 

「(それで、アイツが創二の兄だった男ね....これといって長所はなさそうね....)」

 そんな事を考えていると、突然部屋の中に赤い魔法陣が現れた。

 

「(あの魔法陣、確かフェニックスの....)」

 すると、その魔法陣から金髪でガラの悪そうな悪魔が現れた。

 

「(うわぁ....白音の教育に悪っ....)」

 そう考えながら様子を見ていると、フェニックスとグレモリーは何か言い争いをしていた。

 私は仙術で聴力を強化して部屋の中の声を聞いた。

 

『だから! 私は貴方と結婚する気は無いわ! 自分の結婚相手は自分で決める!』

『そういうわけには行くか! 俺だってフェニックス家の看板を背負ってるんだよ! 

 このままお前が俺との結婚を拒むと言うのなら眷属を殺してでもお前を連れていくぞ!』

「....はぁ?」

 フェニックスの男の声が聞こえたその瞬間、私は無意識に殺気を放ってしまった。すると、

 グレモリー達がいる部屋の窓ガラスが木っ端微塵になってしまった。

 

「ヤバっ....!」

 私は咄嗟にマズイと思い、木から降りてnascitaに向かって走り出した。

 

 

 〜その日の夜〜

 

「....」ダラダラ

 私は今、創二の目の前で冷や汗を流しながら正座をしていた。

 

「なぁ、誰が学校の中で仙術を使って良いって言った?」

「....その、誰も言っていません」

「だよな....じゃあ、なんで仙術を使った?」

「そ、それはですね....す、少し無意識のうちに殺気が出てしまったというか....」

「....」

「その....本当にごめんなさい....」

 私は創二から放たれる無言の圧に耐えられずその場で土下座した。

 

「はぁ....今回は一回目だから大目に見ておいてやる。だが、次やったら一ヶ月は店で

 大人しくしててもらうからな」

「あ、ありがとうございます....」

 私は創二の寛大な処置に礼を言った。

 

「さ、説教も終わったから部屋に戻って良いぞ」

 創二がそう言ったので、私は部屋を出ようとしたのだが、ある事を思い出した。

 

「あ、そういえば創二」

「何だ?」

「ボトルって後何本作らないといけないんだったけ?」

「ボトルか? ....多分、後十本ぐらいだったと思うが。それがどうかしたのか?」

「いや、ちょ〜っと使える悪魔がいてね....」

「使える悪魔?」

 創二は不思議そうにそう言ったので、私は今日見た悪魔の事を話した。

 

「なるほど。フェニックスか....」

 すると、創二はパソコンを開いてボトルの一覧表のようなものを見始めた。

 

「黒歌、お手柄だったな。フェニックスボトルはまだ完成していない」

 そう言った創二の視線の先には黒くなっているボトルの画像があった。

 

「さてと、エボルトに報告して色々と動くか....」

「ま、待って!」

 私は部屋を出て行こうとした創二を呼び止めた。

 

「今回は私が動いても良い?」

「お前がか?」

「えぇ。ちょっと色々とやりたい事があるから」

「....わかった。なら、今回はお前に任せてやるよ」

 創二は少し考えたような表情をするとそう言ってきた。

 

「っ、ありがとにゃん! じゃあ私は部屋に戻るにゃん」

「はいはい」

 私は創二にそう言うと部屋を出て、明日からの動きを考え始めた。

 

 

 〜〜〜〜

 次の日

 

「あ、おはよう石動君」

「よう片瀬。....何か賑やかだな。何かあったのか?」

 学校に着いて教室に入ると、クラスの雰囲気はいつもよりどこか賑やかだった。

 

「うん! 誰が聞いたかわからないんだけど、変態兵藤がしばらく学校を休むんだって!」

「それでこんなに賑やかなのか....」

 俺はこの賑やかさの理由に納得した。それと同時に、俺は一つ疑問が生まれた。

 

「(しばらく休むって事は、昨日の黒歌が言っていた事と関係してるはずだな....て事は、

 グレモリーの眷属もしばらく休むんだろうな。後で黒歌の妹の学年を見に行くか)」

 

 

 〜昼休み〜

 

「やっぱり居ないか....」

 俺は黒歌の妹のクラスに来たのだが、俺の予想通り塔城は休んでいた。

 

「(さて、アイツらは一体何処に行ったんだか....)」

 そう考えていると、こんな時に頼りになる人を思い出した。

 

「(あの人なら、何か知ってるか)」

 そう思い、俺はある教室に向かった。

 

 〜生徒会室〜

 

「邪魔しますよ会長」

「....邪魔をするなら帰ってください」

 俺は生徒会室に来た。生徒会室には会長が一人で書類に何かを書いていた。

 

「そう言わないでくださいよ会長。会長にちょっと聞きたい事があるんですよ」

「私にですか?」

「えぇ。一年の塔城 小猫って知ってます?」

「塔城さんですか? 知っていますが、それがどうしましたか?」

 会長は俺が塔城の名前を出すと、不思議そうな表情をした。

 

「塔城が何で休んでるか知らないっすか? アイツとはたまに一緒に昼飯を食うんすけど

 一年の教室に行ったらしばらく休むらしいって言われたんで」

「....塔城さんでしたらしばらく部活の合宿で休むそうですよ」

 会長は紙の束から一枚の紙を見てそう言った。

 

「合宿っすか?」

「はい。この近くの山に10日程合宿に参加するようですよ」

「10日っすか。ありがとうございます」

「いえ。....それよりも、二つほど石動君にお願いがあるのですが聞いてもらえますか?」

「何すか?」

「書類の整理と、コーヒーを一杯頂けますか?」

「....そんな事でしたら喜んで」

 俺はそう言うと、生徒会室にあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れた。そして、俺は

 昼休みが終わるまで会長の仕事を手伝った。

 

 

 

 

 

 



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接触

「....創二」

「どうしたオーフィス」

 土曜日の昼間、一番忙しい時間に地下にいたオーフィスが厨房にいる俺の所にやってきた。

 

「黒歌がいない....どこに行ったか知らない....?」

「黒歌か? アイツなら山に行ったぞ」

「山....?」

「あぁ。妹に接触するんだとさ」

「....わかった」

 オーフィスは納得したのか頷いたが、どこか寂しそうな様子だった。

 

「....後五分したらエボルトに全部任せて降りるから。だから少しだけ待ってろ」

「っ! ....わかった」

 オーフィスはそう言うと、嬉しそうに地下の方に降りていった。

 

「....てな訳で、あと頼むぞ」

「おいおいおい! この状況で俺に全部丸投げかよ!」

「....この前お前がサボった時の始末、誰がつけたと思ってる?」

「ぐっ....」

 俺の言葉にエボルトは何も言い返してこなかった。

 

「....変わってくれるよな?」

「....あぁわかったよ! 変わりゃ良いんだろ! 変わりゃ!」

 エボルトはそう言って俺からフライパンのフライ返しを奪って料理を作り始めた。

 

「んじゃ、後は任せたぞ」

 そう言って、俺は地下室の中に入っていった。

 

「(さて、黒歌の奴....今頃上手くやってんのか?)」

 

 

 〜〜〜〜

 白音side

 

「....ふっ!」

 私は今、部長の家が所有する山の中で今度のレーティングゲームの為の修行をしていた。

 

「この程度では、まだまだですね....」

 私の目の前には砕けた巨大な岩があった。

 

「(このままだとフェニックスに勝つ事は出来ない....)」

 私はもっと強くなれる方法を考えていた。その時、私の頭の中には一つ、ある方法が

 思い浮かんだ。だが、その方法を私はすぐに忘れようとした。

 

「(あの力は、使えない。使ってしまえば。私は姉様のように....)」

 そう考えていたその時....

 

「姉様のように、どうなるのかにゃん?」

 突然木の上から懐かしい声が聞こえた。

 

「(今の声....!?)」

 私は慌てて声が聞こえた方の木の上を見ると、そこには数年前から行方不明だった私の姉、

 黒歌姉様がいた。

 

「姉、様.....!?」

「久しぶりね、白音」

 そう言って姉様は木の上から飛び降りて来た。

 

「....とりあえず、元気そうで何よりにゃん」

「ど、どうして姉様がここに....」

「どうしてって....そんなの、愛する妹に会うために決まってるじゃない」

 姉様がそう言った瞬間、私の目の前から消えた。

 

「っ!? 何処に....!」

「そ〜れ」

「っ!?」

 姉様の声が聞こえた瞬間、私は背後から姉様に抱きしめられた。

 

「ん〜! 良い抱き心地ねぇ〜。....まぁ胸の方は発展途上って感じだけど」

「よ、余計なお世話です! それよりも離して....!」

 私は戦車の力で姉様は引き剥がそうとしたが、姉様はビクともしなかった。

 

「っ、何で....!」

「この力....戦車(ルーク)の駒ね。だけど、所詮は悪魔が作った玩具。私の仙術の力には到底

 及ばないにゃん」

 そう言うと、姉様は私の首筋を舐めてきた。

 

「ひうっ!?」

「にゃはは。可愛い声」

 姉様はそう言うと私から離れた。

 

「さてと、遊びはこの辺にして本題に入らないと」

「ほ、本題....?」

「えぇ。ねぇ白音、悪魔をやめて私と一緒に来る気はない?」

 姉様は突然変なことを言い出した。

 

「それは、どういう意味ですか....?」

「どういう意味って....そのままの意味よ。悪魔をやめて、私が世話になっている所で

 一緒に住もうっていう話にゃん」

「姉様がお世話になっている所、ですか?」

「えぇ。信頼できる人物だし、白音が来ることにも賛成してくれてるにゃん。それに、

 その人物のおかげで私は転生悪魔からただの猫魈に戻れたにゃん」

「ただの猫魈って....そんな事が!」

 私は姉様の言葉を信じる事が出来なかった。

 

「でも、実際私から悪魔の駒の気配を感じる?」

「っ、そ、それは....」

 私は姉様の言葉を否定できなかった。実際に、姉様からは悪魔特有の気配を感じることが

 できなかったからだ。

 

「それに、悪魔になってても仕方ないじゃない。悪魔なんて、殆どは嘘つきで傲慢で他種族を

 見下しているような奴等にゃん。そんな陣営に白音がいるのはお姉ちゃん悲しいにゃ〜」

「そ、そんな事はありません! 部長はそんな悪魔とは....!」

「外面はそう見せてるだけで内面はどうかわからないじゃない。ま、仙術を使えばわかるけど。

 白音、あなたは仙術を使わないの?」

「あんな力、使いたくありません! 全て壊してしまうようなあんな力....」

 私は姉様にそう叫んだ。だが、姉様は特に表情も変えずに静かに聞いていた。そして、姉様は

 突然口を開いた。

 

「....ねぇ白音。どうして私がはぐれ悪魔になったか考えた事ある?」

「姉様が、はぐれ悪魔になった理由ですか....?」

「....その様子だと、考えた事ないみたいね」

 姉様は少しだけ残念そうな表情をした。だが、すぐにさっきまでの様子に戻って

 こう言って来た。

 

「それじゃあ白音に宿題。今度会いに来た時に私がどうしてあんな事をしたのか一人で調べて

 おくこと。もしも白音が真実を知れば、白音はこっちに来たくなるはずよ」

 姉様はそう言いながら、仙術で魔法陣を作っていた。

 

「それとついでに、一つ良いこと教えてあげる。兵藤 一誠を信じちゃダメよ」

「イッセー先輩を? それはどういう意味ですか」

「それはまだ秘密。だけどあの男、いや、あの男の家族は悪魔以上の悪魔よ」

 姉様は、さっきまでとは比べ物にならない程真剣な表情でそう言ってきた。

 

「悪魔以上の悪魔....」

「....それじゃあ今日はこの辺で。また会いに来るわね、私の可愛い白音」

 そう言って、姉様は魔法陣の中に入っていった。そして、私はただ姉様がさっきまでいた所を

 見ていただけだった。

 

 

 〜〜〜〜

 黒歌side

 

「たっだいま〜....って!?」

 私は自分で作った魔法陣で家の地下室に帰ってきた。そして、まず私が一番最初に見たのは

 創二に膝枕されているオーフィスの姿だった。

 

「おっ、おかえり黒歌」

「えぇ、ただいま創二。で、何で創二はオーフィスを膝枕をしてるのかにゃん?」

「さっきオーフィスがして欲しいって言ったからな。さっき寝たばかりだから起こしてやるなよ」

 そう言いながら創二はオーフィスの頭を撫でていた。

 

「(う、羨ましい....!)」

 私は無言でオーフィスの事を睨みつけていた。

 

「そういえば、上手くやってきたのか?」

 すると、創二が急にそう聞いてきた。

 

「....えぇ。白音に気付かれずにマーキングしてきたわ。これで白音の行動は全て分かるわ。

 それと、兵藤 一誠に注意するように警告をしておいたわ」

「そうか。上手くいったなら何よりだ」

 創二はそう言うと、膝に乗せていたオーフィスを膝から下ろしてベッドの上に寝かせた。

 

「黒歌、寝たいんだったら来い」

「へっ?」

 そう言いながら創二は膝を叩いていた。

 

「さっきからオーフィスの事睨んでるの丸わかりだったぞ」

「うっ....」

 創二の言葉に私は苦い顔になった。

 

「さ、来るのか来ないのか早く決めてくれよ」

「い、行く! 行くからちょっと待って!」

 私はそう言って急いで自分の部屋で部屋着に着替えた。そして部屋に戻って来た私は

 創二の膝の上に頭を乗せていた。

 

「....やっぱり、創二の膝枕は落ち着くにゃん」

「そうか。寝るんだったら寝ても良いからな」

「....うん」

 創二の言葉を聞いて、私はそのまま目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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暗躍する者達

『ライザー・フェニックス様の兵士二名、戦車一名、リタイア』

 

「はぁ....見ててもつまんないの」

 白音に接触して八日後、私は今、フェニックスとグレモリーのレーティングゲームを

 ゲーム会場の中にある木の上から見ていた。すると、近くの木から煙が上がった。

 その煙の中からレイナーレ、ミッテルト、カラワーナが現れた。

 

「黒歌、手筈通りガスを巻いてきたわよ」

 そう言った三人の手にはネビュラスチームガンが握られていた。

 

「三人ともご苦労様にゃん。後は私がやるから、三人とも先に帰って

 くれてもいいわよ?」

「そうっスか? じゃ、ウチは先に帰らせてもらうっス」

「私も先に帰らせてもらおう。レイナーレ様は....」

「私は残って黒歌のサポートをするわ」

「....分かりました。では、私達は先に失礼します」

「お先に失礼するっス」

 二人はそう言って、ネビュラスチームガンから煙を出してこの場から消えた。

 

「....それで、何でここに残ったのよ」

 私は残ったレイナーレにそう聞いた。

 

「アンタがフェニックスと戦っている間、他の奴らの足止めが必要でしょ? 

 だから残ったのよ」

「ふーん....なら、しっかりと足止めは頼むわよ」

「分かってるわよ」

『リアス様の戦車一名、リタイア』

 そう話していたら、白音がリタイアしたアナウンスが聞こえてきた。

 

「あなたの妹、やられたみたいね」

「....仙術を使わない状態よ。戦車だけの力じゃ白音はそこまで強くないわ」

「あら、妹がやられたのに随分と冷静ね」

「今は任務中よ。私個人の暴走でチャンスを無駄にはできないわ」

「見た目と違って真面目ねぇ」

「....うるさい」

 そう話している間にも、お互いの眷属がリタイアしたアナウンスが聞こえていた。すると、

 突然校舎の屋上から巨大な魔力がぶつかり合うのが見えた。

 

「そろそろね....レイナーレ、そっちは任せるわよ」

「はいはい」

 そう言った私はスクラッシュドライバーを腰に当てた。ドライバーは腰に巻きつき、

 私は手に握っていたスクラッシュゼリーの蓋を正面に向けベルトに挿し込んだ。

 

ウィザードゼリー!

 

「変身」

 そう言って、私がレンチを降ろすと、私の周りにビーカーの様な物が現れ、私の身体は

 黒い液体に覆われた。

 

潰れる! 流れる! 溢れ出る! ウィザード in ソーサレス!

 そして、私の姿はどこか魔法使いを彷彿させるような姿になった。

 

『....さぁ、少しは楽しませてくれるわよね。不死鳥(フェニックス)

 そう呟いた私は、フェニックス達がいる校舎の屋上に向かった。

 

 

 〜〜〜〜

 イッセーside

 

「お前みたいなやつに、部長を渡してたまるか....!」

「ほざけ下級悪魔が! 貴様ごときが、この俺に勝てるわけがない!」

 そう言って、ライザーは炎の塊を形成していた。俺は躱そうとしたが、さっきまでの

 戦いで俺の体はまともに動けないほどボロボロだった。

 

「(クッソ....! ここまでかよ....)」

 俺が拳を握りしめて悔しがったその時....

 

「ぐっ....!?」

 突然ライザーは胸を押さえて苦しみ始めた。

 

「な、何だコレは!?」

 すると、ライザーの身体からは謎の黒い霧が放出された。そして、その霧はライザーの

 肉体を覆っていった。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!?」

 霧に覆われたライザーは叫び声を上げていた。そして次の瞬間、突然ライザーの身体は

 この前見たレイナーレと似たような姿になった。

 

「アレは....!」

 ライザーの姿は真っ黒な謎の異形に姿を変えた。その異形は部長の方を

 見て真っ黒な炎の塊を作り出した。

 

「っ、部長! 早く逃げて....!」

 俺は部長に逃げるように言おうとしたその時、突然異形となったライザーに

 白い光弾が飛んできた。その光弾はライザーに直撃し、ライザーは地面に落ちていった。

 

「きゅ、急に何が....」

 俺が周りを見ると、ここから数キロ離れた所に黒い鎧を着た何かが

 浮いていた。その黒い何かはライザーが落ちた場所に向かっていた。

 俺もその場所に向かおうとしたのだが....

 

「イッセー! そこから離れて!」

 突然、後ろから部長の叫ぶ声が聞こえてきた。それと同時に、俺の上空から

 銃弾の様なものが飛んできた。突然の事だったが、俺は転がりながらその銃弾を躱した。

 すると、部長とアーシアが俺に駆け寄ってきた。

 

「イッセーさん!」

「イッセー! 大丈夫!? 当たらなかった?」

「は、はい! 今の銃弾は....」

 俺が部長に聞こうとしたその時....

 

「へぇ、ちょっとは強くなったみたいね。イッセー君」

 上空から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。ハッとした俺は上空を見ると、そこには紫色の

 銃を持った堕天使、レイナーレがいた。

 

「レイナーレ....!?」

「レイナーレ様....!?」

「どうしてあなたがここに!」

「仕事よ仕事」

 レイナーレは平然とした表情でそう言ってきた。

 

「仕事ですって....?」

「えぇ。私の新しい上司からのね」

 そう言いながらレイナーレは俺達に向かって銃弾を放ってきた。

 だが、その銃弾は部長の破滅の魔力で消滅した。

 

「流石は魔王の妹。これなら、少しは楽しめそうね」

 そう言ったレイナーレは、謎の青いギアが付いたボトルの様なものを取り出した。

 そして、そのボトルを銃に挿し込んだ。

 

ギアリモコン! ファンキー!

 

「潤動」

 レイナーレがそう言うと、銃からは煙が射出されレイナーレの身体を包んだ。そして、

 レイナーレは顔に半分だけギアが付いた鎧を纏っていた。

 

Remote control gear!

 

『さぁ、少しは楽しませて頂戴ねリアス・グレモリー』

 そう言ったレイナーレは俺達に向かって無数の銃弾を放ってきた。

 

 

 

 



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沈む不死鳥

『さて、さっさと終わらせないと....』

 私は撃ち落としたフェニックスと対峙していた。すると、フェニックスは私に向かって

 無数の炎の球を飛ばしてきた。私はそれを仙術で作った障壁で全て無効化した。

 そして、今度は私がフェニックスの周りに妖術と魔術と仙術を混ぜ合わせた陣を展開し、

 そこから仙術で作った光弾を放った。光弾はフェニックスに直撃するが、光弾で

 出来た穴はすぐさまフェニックス特有の再生で治っていった。

 

『(ま、こうなるわよねぇ....なら)』

『バインド』

 私はこうなる事が予想できていたため、陣に向かってそう言った。すると、陣から

 無数の鎖が出現し、フェニックスの身体を縛りつけた。フェニックスは抜け出そうとして

 暴れるが、あの鎖は私の仙術を混ぜ合わさった特別製の為、抜け出すことができなかった。

 そして、私はフェニックスの頭の上に巨大な陣を展開した。

 

『さて、フェニックスはこれにどれだけ耐えられるのかしら?』

 そう言って指を鳴らすと、巨大な陣からは水が出てきた。だが、その水はただの水ではなく、

 私の仙術とレイナーレ達の力で作ったお手製の聖水だ。そして、聖水がかかった

 フェニックスは叫び声を上げながらダメージを受けていた。だが、すぐさま

 フェニックスの炎が聖水で出来た傷を治していた。しかし、一分も経たないうちにその炎は

 消えかかっていた。

 

『フェニックスでも、所詮この程度なのね....』

 私はフェニックスの呆気なさに少し残念に思った。

 

『....だったら、もう終わりで良いわね』

 そう呟いて、私はベルトのレンチを降ろした。

 

スクラップバースト!

 

 すると、フェニックスの周りに無数の陣が展開された。そして、その陣から仙術の光弾と

 氷の槍が出現し、フェニックスの身体を貫き、氷漬けにした。

 

『さて、回収回収っと』

 私は氷の中で緑の炎をあげているフェニックスにエンプティボトルを向けた。ボトルは

 黒色に染まりフェニックスのスマッシュ化は解除されたが、身体は光弾で穴だらけで、

 気絶していた。

 

『さてと、レイナーレを連れて撤退しないと』

 私はグレモリーの足止めをしているレイナーレの元に向かった。

 

 〜〜〜〜

 レイナーレside

 

「っ、滅びよ!」

『遅い!』

 グレモリーが消滅の魔力を放とうとした瞬間、私はネビュラスチームガンで滅びの魔力の

 魔法陣を破壊した。

 

「うおぉぉぉぉ!」

『Boost!』

 すると、今度は赤龍帝が攻撃を仕掛けて来た。だが、私はその攻撃を躱して赤龍帝を

 地面に叩き落とした。

 

『....弱いわね赤龍帝。前の方がまだマシだったわよ』

「ウルセェ....!」

 赤龍帝は私を見上げながらそう言ってきた。すると、黒いボトルを持った黒歌が来た。

 

『終わったの?』

『えぇ。結界を解除して帰るわよ』

『はいはい』

 そう言って、私は指を鳴らしてこの空間に張っていた結界を全て解除した。

 

『それじゃあ赤龍帝、グレモリー、アーシア。また会いましょう』

 私はネビュラスチームガンから煙を出して黒歌と共にこの空間から撤退した。

 

 〜〜〜〜

 黒歌side

 

 霧が晴れると、私達はnascitaの地下室にいた。

 

「それじゃ、私はお風呂に入って先に寝るから。報告は頼むわよ」

 いつのまにか変身を解除していたレイナーレはそう言うとお風呂場の方に

 歩いて行った。私も変身を解除してエボルトのいる部屋に向かった。

 

「エボルト、入るわよ」

 私はエボルトの了承を取らずに勝手に部屋に入った。エボルトはいつものように

 机に座ってパソコンを叩いていた。

 

「お、帰ったか黒歌」

「えぇ。はいこれ」

 私はフェニックスから取った成分が入ったボトルをエボルトに渡した。

 

「ご苦労さん」

 エボルトはそう言うと、ボトルを電子レンジの中に入れた。

 

「そういや、レイナーレはどうした?」

「お風呂に入ってもう寝るって」

「そうか。お前は今からどうするんだ?」

「私ももう寝るわよ」

 すると、エボルトは悪い笑顔を浮かべた。

 

「なら、一つ良いことを教えてやるよ。オーフィスの奴、パジャマで

 創二の部屋に入って行ったぜ」

「っ!? ....そう。それは良いことを聞いたわ」

 私はここにいないオーフィスに対して少し焦りを感じた。

 

「ま、お前さんらが何をするにしても俺はとやかく言わねぇが....創二の負担になる事は

 するんじゃねぇぞ」

「わかってるわよ。そういう事は、全部終わった後にいくらでもできるわ」

「ひゅ〜、孫の顔を見るのが楽しみになって来たな! ま、それがいつになることやら....

 告白もまだだしなぁ....」

「うっさいわね! この蛇もどき!」

 私はエボルトに向かって仙術の光弾を放つと部屋から飛び出た。

 

 

 

 



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月光校庭のエクスカリバー
帰ってきた聖剣使いと新たな影


 とある霊園に一人の少女がいた。

 

「....よし。これで綺麗になったかな」

 その少女は一つの墓石の掃除をしていた。そして、持って来ていた仏花を供えて

 手を合わせていた。

 

「....◾️◾️君。◾️◾️君が居なくなって、もう六年も経っちゃったよ」

 少女はどこか悲しそうな声色で墓石に向かってそう言った。

 

「私ね、今は聖剣使いとしてプロテスタントの教会に所属してるの。昔と違って、

 とっても強くなったから◾️◾️君、きっと驚くと思うよ。それにね、私が今、

 ここにいるのはある任務のためなの。もしもこの任務を遂行できれば、私の立場も

 高くなるの。だから....あと少しだけ待ってて。必ず、◾️◾️君を生き返らせて

 みせるから....」

 そう言うと、少女は立ち上がってフードを被った。

 

「じゃあ、今日はもう行くね。....また来るね、◾️◾️君」

 少女はそう言うと、霊園から離れて何処かに歩いていった。

 

 〜〜〜〜

 創二side

 

『....はぁ。これで終わりか』

『....相変わらず、容赦がないわね』

 俺は今、レイナーレと共にはぐれ悪魔の処刑を行なっていた。俺の姿はブラッディウルフで

 レイナーレの姿はカイザーリバースだった。

 

『相手は悪魔だった。いちいち遠慮をする必要はないだろ』

 そう言いながら、俺は顔についた血を拭った。

 

『さて、帰るぞレイナーレ』

『えぇ....ん?』

 そう言って帰ろうとした時、突然レイナーレは足を止めた。

 

『どうした?』

『....ねぇ、何か人間の血の匂いがしない?』

『血?』

『えぇ。あっちの方から匂いがするわ』

 レイナーレが指を差した方向は、以前俺がレイナーレ達と戦った教会の方だった。

 

『....少し見に行ってみるか』

 そう言って、俺はレイナーレと共に教会の方に向かった。

 

 〜〜〜〜

 

『....おいおい、何だよこの惨状』

 俺の目の前には身体を細切れにされた男達が転がっていた。

 

『....コイツら、教会のエクソシストね』

 レイナーレは地面に落ちているローブを拾ってそう言った。

 

『教会?』

『えぇ。簡単に言えば、天使側の人間達よ』

『天使か....』

『....にしても、この斬られた跡。どうも変な感じね』

 教会の軽い説明をしたレイナーレは落ちていた生首を拾ってそう呟いた。

 

『変な感じって?』

『斬られた跡が綺麗すぎるのよ。こんなにも綺麗に斬ろうと思ったら、相当な業物の

 剣じゃないと無理よ』

『言われてみればそうだな....』

 俺も斬られた跡を見てそう言った。

 

『....何だか、面倒な感じがしてきたわね』

 レイナーレは夜空に浮かぶ月を見上げてそう呟いていた。

 

 

 〜〜〜〜

 

 家に帰って部屋のベッドで寝転がっていると、突然携帯が鳴った。電話を掛けてきたのは

 九重だった。

 

「もしもし。どうした九重」

『創二、少し聞いて欲しい事があるのじゃ』

「何だよ聞いて欲しい事って」

『実は、数時間前にこの国に堕天使の幹部が聖剣と呼ばれる物を持って侵入して来たのじゃ。

 そして、その堕天使は創二のいる街に潜伏している様なのじゃ』

「そうか....それで、そいつは俺達が勝手に処理しても良いのか?」

『天照様はそちらに全て任せるとおっしゃっていたのじゃ』

「わかった。なら、こっちで好きにさせてもらう」

 そう言って、俺は電話を切った。

 

「(さて、明日全員に伝えておくか....)」

 そう思った俺は眠りについた。

 

 

 



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厄介ごとは突然に

「堕天使の幹部が侵入してきた?」

「あぁ。昨日の夜、九重から連絡が来た。処理は俺達に任せるとさ」

 次の日の朝、朝飯を食いながら九重に聞いた話を全員に話していた。

 

「堕天使の幹部ねぇ....」

「そうなると、一人しか思い浮かびませんね」

「そうなのか?」

「はい。そうですよね、お三方」

 グレイフィアは堕天使三人衆を見てそう言った。

 

「まぁそうっスね....」

「恐らくと言うか、確実に....」

「コカビエル様ね」

「コカビエル?」

「無類の戦闘狂の堕天使....三大勢力の戦争でも、その中ではそこそこ強かった」

 オーフィスはお茶を飲みながらそう呟いた。

 

「へぇ....」

「(少しは楽しめると良いんだが....)」

 そう思っていると、グレイフィアはふとこう呟いた。

 

「コカビエルもそうですが、気になるのは聖剣ですね」

「聖剣っつうと、エクスカリバーとかか?」

「はい。エクスカリバーは天使陣営が所有していました。ですが、三大勢力の戦争で

 七つに折れ、天使陣営が所有していたはずなのですが....」

「天使どもが堕天使に奪われたんじゃないかにゃん?」

 黒歌は興味なさげにそう言った。

 

「まぁそれが妥当でしょうね....」

「となると、天使陣営も侵入してくる可能性があるな」

「....そういえば創二。昨日天使どもの神父が殺されてなかった?」

「....そういえばそうだな」

 レイナーレが言っているのは、昨日殺されていた神父達の事だった。

 

「面倒な事になったのは確定ね....」

「だな。....とりあえず、全員で警戒はしておこう。特にレイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、

 グレイフィア。お前達四人は特に警戒しておいてくれ。一応、お前達は悪魔と堕天使だからな」

「あぁ」

「わかってるっス」

「わかりました」

「了解。....てか、そろそろ学校に行ったら? 今日日直なんでしょ」

 レイナーレは壁にかけている時計を指差してそう言った。

 

「あぁ。じゃ、行ってくる」

 俺はカバンを持って家を出た。

 

 〜〜〜〜

 

「(何かいつもと空気が違うな....)」

 学校に向かっている途中、俺はいつもと違う違和感を感じていた。その違和感は、学校に

 近づけば近づくほど濃くなっていた。そして、学校が見えて来たところでその違和感の正体が

 わかった。

 

「(あれが違和感の正体か....)」

 俺の視線の先には、昨日死んでいたローブの男達と同じローブを着た人間が二人いた。

 そのうちの一人は、背中に何か巨大な物を背負っていた。その背中に背負っている物から、

 何か謎の気配を感じた。

 

「(....気配は昨日のエクソシスト達と同じ。てなると、アイツらは天使陣営の人間か)」

 俺はそう考えながら見ていると、何かを背負っていた人間が俺に近づいてきた。

 

「君、少し良いだろうか?」

 声からして、その人間は女だった。

 

「....えっと、何か俺に用事でも?」

「この学園の生徒会長殿は既に登校されているかわかるか?」

「会長か? 多分この時間なら登校してると思うが....」

 そう言いながら、俺は携帯を取り出した。

 

「少し待ってくれ。会長に連絡してみる」

「あぁ、すまないな」

 俺は少し距離をとって会長に電話をかけた。

 

『はい、どうかしましたか石動君』

「会長。会長ってもう学校の中にいますか?」

『はい。既に学校にいますが....それがどうかしましたか?』

「何か門の前に会長のお客さんがいるんすけど....ローブにフードを被ったのが二人」

 そう言うと、会長はしばらく黙った。

 

「あの、会長?」

『....石動君、申し訳ありませんが生徒会室まで連れて来ていただけませんか?』

「は、はぁ....わかりました」

『では、お願いしますね』

 会長はそう言って電話を切った。そして、俺は二人がいる所に戻った。

 

「とりあえず、会長は生徒会室にいるとさ。で、俺にそこまで案内しろってお達しが来たから

 ついて来てくれるか?」

「そうか。わざわざすまないな」

「....そっちのアンタも、俺について来てくれよ」

「....えぇ」

 俺はフードを深くかぶっている方の人間にもそう言った。声を聞く限り、こっちの人間も

 女だった。そして、この女の声を、俺はどこかで聞いた様な気がしていた。

 

「(何処かであった事があるのか....?)」

 そう心の中で思いながらも、俺は二人を生徒会室まで案内した。その時、フードを深く

 かぶった女が、俺の事をジッと見ているのに気づかなかった。

 

 〜〜〜〜

 

「会長、邪魔しますよ」

 生徒会室に着き、俺は勢いよく扉を開けた。生徒会室には、会長と副会長がいた。

 

「石動君....せめてノックはしてください」

「すんません。アンタ等、ショートのメガネの人が会長さんで、ロングのメガネの人が

 副会長さんだ」

「そうか」

「んじゃ、俺はこれで失礼しますよ会長。頼まれた事も終わったんで」

「えぇ。わざわざありがとうございます」

 そう言って、俺は生徒会室から出た。

 

「(さて、天使と悪魔が邂逅するとは....面倒ごとになるのは確定か....)」はぁ

 俺はこの先に起こりそうな事を想像しながらため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 



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邂逅[主人公不在]

「リアス・グレモリー、本日は会談に応じてくれて感謝する。私はゼノヴィア。

 カトリック教会の聖剣使いだ。そして....」

「....紫藤 イリナ。プロテスタントの聖剣使いよ」

 今、私の目の前には教会からの使者が二人座っていた。一人は青髪で目つきの鋭い女で、

 一人は栗色のツインテールでこちらを睨んでいる女だった。

 

「そう。それで、教会の人間がここに来た理由は何かしら?」

 そう聞くと、ゼノヴィアが真剣な表情になって私達に話し出した。

 

「....先日、教会で管理、保管していた聖剣エクスカリバーが四本、堕天使に奪われた」

「えっ? エクスカリバーって四本もあるのか?」

「イッセー、聖剣は三大勢力の戦争で折れてしまったの」

「あぁ。そして、聖剣は七つに分かれた。その内の一本は行方が分からないが、残りの

 六本は正教会、カトリック、プロテスタントが二本ずつ所有していた」

 そう言いながら、ゼノヴィアは椅子に立てかけている布を取った。その布の中には、

 一本の巨大な剣があった。その剣を見た瞬間、私達全員は身震いした。

 

「これが分かれた聖剣の一本、”破壊の聖剣“だ。そして、イリナも“擬態の聖剣”という

 聖剣を所持している」

「....それで、その話がなんの関係があるのかしら?」

「....奪われた聖剣は、日本、いやこの地に持ち込まれている」

 そう言った瞬間、周りにいた私の眷属達は驚いた顔をしていた。

 

「聖剣を奪った主導者は?」

「グレゴリの幹部、コカビエルだ」

「コカビエル....古の戦いから生き残る堕天使の幹部....聖書にも記された者の名前が

 出されるとはね」

 主導者の名前を聞いて、私は苦笑してしまった。

 

「それで、私達の要求なのだが、私達の戦いが終わるまで一切事件に関わらないで欲しい」

「....ずいぶんな言い方ね」

「本部は悪魔と堕天使が手を組む可能性があると見ているからな」

「私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を

 塗るような真似はしない!」

「....それを聞けただけで十分だ」

 ゼノヴィアは落ち着いた様子でそう言った。

 

「正教会からの派遣は? まさかあなたたち二人で堕天使の幹部から聖剣を取り戻すつもり

 ではないでしょう?」

「いや、私たち二人のみだ」

「死ぬつもり? 相変わらず、あなた達の信仰はわからないわ」

 私は呆れた様にそう言った。

 

「悪魔のあなたではわからないだろうな。....さて、言いたい事は伝えさせてもらった。

 イリナ、そろそろお暇させてもらおう」

「....えぇ」

 そう言って二人は立ち上がって出て行こうとした時、ゼノヴィアはアーシアを見てこう言った。

 

「....まさか、『魔女』アーシア・アルジェントか?」

「あなたが、教会で噂になってた....」

 紫藤 イリナも聞き覚えがあったのかアーシアを見ていたが、その目には一切の興味が

 なさそうだった。

 

「あ、あの....私は....」

「まさか悪魔になっているとは....堕ちるところまで堕ちたものだな。まだ我らの神を

 信仰しているのか?」

「....はい。ずっと信じてきたものですから....」

 アーシアは悲しそうにそう言った。すると、ゼノヴィアは聖剣をアーシアに向けた。

 

「そうか。ならいまここで私に斬られるといい。いまなら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、

 我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

「テメェふざけんなよ! さっきから好き勝手言いやがって! 自分たちで勝手に『聖女』にして、

 少しでも求めていた者と違ったから、見限るのか! アーシアの苦しみを誰もわからなかった

 くせに!」

「そうは言うが、君はアーシアの何だ?」

「家族だ。友達だ。仲間だ。だから、アーシアを助ける! アーシアを守る! お前がアーシアに

 手を出すなら、俺はおまえら全員敵に回してでも戦うぞ!」

「イッセーさん....」

「....」

 イッセーの言葉に、アーシアは今にも泣き出しそうだった。その時、何故か紫藤 イリナは

 イッセーの事を睨みつけていた。

 

「それは私達、我らの教会全てへの挑戦か? 一介の悪魔にすぎない者が、大きな口を叩くね。

 グレモリー、教育不足では?」

「っ....イッセー、そこまでにしておきなさい」

「....なら、僕が相手になろう」

 すると、突然部室の扉が開いた。部屋に入って来たのは、さっきまでここにいなかった

 祐斗だった。

 

「祐斗....」

「君は誰だ?」

「君達の先輩だよ。失敗作だけどね」

 

 

 

 



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怒りとお願い

 小猫side

 

「(アレが聖剣....)」

 今、私達の目の前には二本の聖剣があった。ゼノヴィアさんが持っている聖剣は

 巨大な大剣の様な見た目で、紫藤さんの聖剣は日本刀の様な見た目だった。

 そして、その二人の前には祐斗先輩とイッセー先輩が立っていた。

 

「(それよりも、紫藤さんのあの眼....)」

 私は剣を構えている紫藤さんの眼を見て恐怖を感じた。その眼から恐怖を感じているのは

 周りを見る感じ私だけだった。

 

「では、試合開始!」

 そう考えていると、祐斗先輩達の試合が始まった。祐斗先輩はゼノヴィアさんに突っ込み、

 イッセー先輩は紫藤さんに突っ込んでいった。すると、その攻撃をゼノヴィアさんは聖剣で

 受け止め、紫藤さんは身軽に躱していた。

 

「遅い....」

 そう呟いた紫藤さんは聖剣の形を足のプロテクターの様な物に変えて、それを脚に

 装備するとイッセー先輩を蹴り飛ばした。

 

「ガハッ!」

 蹴り飛ばされたイッセー先輩は木にぶつかると血を吐いていた。そして、蹴られた所は

 焦げの様なものが出来ていた。

 

「これぐらいで死なないでよ。私の復讐はまだ始まってもいないんだから」

「復讐?」

 紫藤さんの言葉に、この場にいる全員は首を傾げていた。

 

「復讐って....一体どういう意味だよ! 俺が何をしたって言うんだ!」

「っ....! よくもそんな事が言えたわね....」

 紫藤さんは震えながらそう言うと、聖剣の形を双剣に変えた。

 

「アンタだけは絶対に許さない! 今ここで殺されて、“誠二君”に償いなさい!」

「っ!? 何でその名前を!」

 紫藤さんの言葉に、イッセー先輩は見たことがないほど動揺していた。

 

「(誠二....聞いたことがない名前ですね....)」

 私は自分の記憶を掘り返したが、そのような名前の人は記憶になかった。そう考えている間、

 紫藤さんはイッセー先輩を追い詰めていた。イッセー先輩は、ひたすら逃げる事しか

 できていなかった。すると....

 

『Boost!』

 

 何度目かの赤龍帝の籠手の音が鳴り、イッセー先輩は左腕を構えた。すると、背中からも

 悪魔の翼が生えた。そして、何やらイヤらしい顔をしていた。

 

「紫藤さん。今のイッセー先輩に服を触られると服を消し飛ばされますよ」

「小猫ちゃん!?」

「へぇ....変態に磨きがかかってるわね。こんなのを兄に持っていた誠二君は可哀想だわ」

 紫藤さんはそう言いながらイッセー先輩を睨みつけていた。

 

「ぐっ! このっ! 洋服破壊(ドレスブレイク)!」

 イッセー先輩は真っ直ぐに紫藤さんに突っ込んでいった。すると、紫藤さんは双剣を

 盾に変えてイッセー先輩の攻撃を受け流した。

 

「なっ!?」

「その程度で私に勝てると思わないでくれるかしら!」

 そう言うと、紫藤さんは背後から槍に変形させた聖剣をイッセー先輩の左脚に突き刺した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 イッセー先輩はその場で倒れ、叫び声をあげていた。そして、紫藤さんは槍を強く握りしめ

 倒れているイッセー先輩に近づいていった。

 

「痛いでしょ。でもね、あんた達が殺した誠二君の痛みはこんなものじゃなかった! 

 もっと痛かった筈だし、苦しかった筈よ!」

「えっ....」

 私は紫藤さんの言葉に驚いて、小さくそう呟いた。

 

「お、俺は誠二を殺してなんて....!」

「いいえ! あんた達が殺したのも同じよ! あんた達が誠二君を死に追いやったのよ! 

 だから、私はあんた達を絶対に許さない! 手始めに、あんたには誠二君と同じ痛みを....!」

 紫藤さんはそう言ったが、突然その場から飛び退いた。すると、さっきまで紫藤さんが

 いた所に消滅の魔力が落ちた。

 

「リアス・グレモリー....何のつもりかしら?」

「些かやり過ぎではなくて? これ以上は流石に私も見過ごせないわよ」

「この程度でやり過ぎ? ....笑わせないでくれる。このクズが誠二君にやった事と比べれば

 可愛いものよ」

 そう言いながら、紫藤さんは部長に聖剣の槍を向けた。

 

「邪魔をするなら、たとえ魔王の妹だろうと始末させてもらうわよ」

 紫藤さんはそう言って部長に走り出そうとしたが、何かが倒れる音に気づいて動きを

 止めた。私が倒れる音の方を見ると、祐斗先輩がゼノヴィアさんに倒されていた。

 

「イリナ、こちらは終わったぞ」

「....そう」

 ゼノヴィアさんがそう言うと、紫藤さんは急に構えていた槍を紐に戻して腕に巻いた。

 

「今日のところはこれで引いてあげる。そこのクズに伝えておきなさい。私はあなたの命を

 頂く。たとえこの身が滅びようとも」

 そう言って、二人はこの場から去っていった。その時、私は姉様に言われた事を思い出した。

 

 〜〜〜〜

 

『あの男の家族は悪魔以上の悪魔よ』

 

 〜〜〜〜

 

「(姉様が言っていた事....もしかして、誠二って人が関係しているんじゃ....)」

「部長、今日は先に失礼します」

「こ、小猫?」

 私は部長にそう言って部室にカバンを取りに行くと、急いで紫藤さんを追いかけた。

 

 〜〜〜〜

 イリナside

 

 クズと戦った私は、ゼノヴィアと学園の門の所まで来ていた。すると....

 

「紫藤さん!」

 突然背後から自分の名前を呼ばれた。振り向くと、そこには試合中に私に助言をくれた

 銀髪の子がいた。

 

「君はリアス・グレモリーの眷属の....」

「塔城 小猫です。あの、紫藤さんに聞きたい事があって....」

「私に?」

 私は塔城さんの言葉に首を傾げた。

 

「はい。....あの、誠二さんというのは一体誰ですか?」

「っ!」

 私は予想外の質問に一瞬困惑した。

 

「....どうしてそんな事を? リアス・グレモリーからの指示かしら?」

 私は疑いながらそう聞いた。

 

「い、いえ! その、私自身が気になったので....」

「....」

「無理にとは言いませんが、誠二さんについて教えてください! お願いします!」

 塔城さんは、真剣な表情で私にそう言ってきた。

 

「....分かったわ。じゃあ明日の夕方、ここであなたを待つわ」

「イリナ!?」

 私の塔城さんの返答に、ゼノヴィアはものすごく驚いていた。

 

「何よ」

「何を考えているんだ! 悪魔と関わるなどと!」

「別に。私はただ、()()()()()()()()()()()() ()()()()()と話をするだけよ。悪魔も天使も

 関係ないじゃない」

「そんなのは屁理屈だろう!」

「....うるさいわね」

「っ!?」

 私は口うるさく言ってくるゼノヴィアを睨みつけた。

 

「向こうが誠心誠意お願いしてきてるのよ。それに報うのは人として当然でしょ」

「だ、だが....」

「....あまり私を怒らせないで。いくらゼノヴィアでも、私の邪魔をするなら斬るわよ」

「わ、わかった....」

「....じゃあそういう事だから。明日、この場所で待ってるわ」

「は、はい!」

「....それじゃ、また明日」

 イリナさんはそう言うと、何処かに歩いていった。

 

 

 

 



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小猫とイリナ

 次の日、放課後になると、私は学校の正門に向かって走っていた。理由は、誠二さん

 という人について紫藤さんに聞くためだからだ。

 

「塔城さん」

 そして、正門に着くと、既に紫藤さんはいた。

 

「紫藤さん! すいません、遅れてしまって....」

「そこまで待ってないから大丈夫よ。....じゃあ、行きましょうか」

「は、はい!」

 そう言って、私は前を歩く紫藤さんについていった。

 

 〜〜〜〜

 

「....あの、紫藤さん」

「何かしら?」

「今、何処に向かっているんですか?」

 学校から歩いて数十分後、私と紫藤さんは商店街を歩いていた。

 

「カフェよ」

「カフェ、ですか?」

「えぇ。少し長い話しになるから、飲み物を飲めるところの方が良いからね」

 そう言って、紫藤さんはあるカフェの前で止まった。そのカフェの名前は“nascita”という

 名前だった。

 

「ここで良いかしら?」

「はい」

「そう。じゃあ入りましょ」

 紫藤さんはそう言うと、カフェの扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 カフェに入ると、黒髪ロングのスタイルの良い店員さんがそう聞いてきた。

 

「二人よ」

「テーブルとカウンターがありますが、どちらになさいますか?」

「テーブルで。後、窓側の方の席にしてもらえないかしら?」

「かしこまりました。では、こちらへ」

 店員はそう言うと、私達を席まで案内してくれた。そして、お冷やとおしぼりを

 持ってきてくれた。

 

「ご注文が決まりましたら、そちらのボタンでお呼びください」

 店員はそう言うと、店の奥に歩いていった。

 

「好きなものを頼んでくれて良いわよ。代金は私が持つから」

「そ、そこまでしてもらうわけには....!」

「良いのよ。教会からそこそこ金を貰ってきてるから」

「そ、そうですか....それじゃあお言葉に甘えて....」

 私は紫藤さんの言葉に甘えて注文するものを決めた。

 

「決まった?」

「はい」

「そう」

 そう言って、紫藤さんは呼び出しボタンを押した。すると、すぐに先程の店員さんが来た。

 

「この、三種のサンドイッチセット一つと季節のケーキセットを一つ」

「かしこまりました。お飲み物はコーヒーか紅茶、どちらになさいますか?」

「塔城さんはどうする?」

「紅茶で」

「じゃあケーキのセットは紅茶で、サンドイッチのセットはコーヒーで」

「かしこまりました」

 店員さんはそう言うと、また厨房の方に戻っていった。

 

「さてと....注文もした事だし、来るまで少し話しましょうか。誠二君の事について、ね」

 紫藤さんは、先程とは比べ物にならないほど真剣な表情になった。

 

「....はい」

「まず最初に質問なんだけど、兵藤 一誠に双子の弟がいるのは知ってる?」

「えっ....?」

 紫藤さんの言葉に、私は困惑してそう呟いた。

 

「....その様子だと、知らないみたいね」

「す、すいません....」

「別に謝らなくて良いわよ。知らなくても不思議じゃないから」

 紫藤さんは気遣ってくれたのかそう言ってくれた。

 

「話しを戻すのだけど、兵藤 一誠には双子の弟がいたの。その子の名前が兵藤 誠二。

 私が言っていた誠二君とはその子の事なのよ」

「そうなんですか....」

 その時、今の話しを聞いて私は一つ疑問に思った。

 

「あの、紫藤さんは変態先輩と知り合いなんですか? 変態先輩は紫藤さんの事を知らなさそう

 でしたが....」

「変態先輩....アイツにはいいあだ名ね」

 紫藤さんはそう言いながら笑っていた。

 

「非常に腹立たしい話しだけど、アイツとは幼馴染だったのよ。でも、私自身アイツとは

 殆ど関わりがなくてね。ずっと一緒にいたのは誠二君だったの。アイツが私の事を

 知らなさそうなのはそういう事なのよ」

「そうなんですね」

「えぇ。ホント、アイツと幼馴染なんて私の人生で唯一の汚点よ」

 そう話していると、店員さんが注文した物を持ってきてくれた。そして、紫藤さんは一口

 コーヒーを飲むと気分を落ち着かせていた。

 

「あの、紫藤さん....」

「何?」

「その、今、誠二さんは何処....」

「誠二君は亡くなってるわ。六年前にね」

「っ!?」

 紫藤さんがそう言った時、突然お皿が割れる音が聞こえた。驚いて音が鳴った方を見ると、

 店員の人が頭を下げて謝っていた。

 

「凄いタイミングで割れたわね....」

「は、はい....」

 紫藤さんもお皿が割れたタイミングに少し驚いていた。

 

「それで、六年前に亡くなったってところまで言ったわよね」

 紫藤さんはコーヒーを一口飲んでそう言ってきた。

 

「....はい」

「誠二君が亡くなった理由はね、全部アイツとその家族が原因なのよ」

「どういう事なんですか....?」

「塔城さん。アイツは学校でどんな様子か教えてもらえない?」

「変態先輩ですか?」

 私は少し考えて、思いついた事を言っていった。

 

「まぁ、覗きをやったり、スカートをめくったり、胸の大きな人の胸を見ていますね」

「....予想通りすぎて驚きもないわね」

 紫藤さんは呆れてため息をついていた。

 

「誠二君が亡くなった理由はね、全部それが原因なのよ」

「覗きとかがですか?」

「えぇ。悲しい事に、アイツと誠二君は双子だったからね。顔はよく似ていたのよ。それを

 アイツは利用してね。自分がやった事を全部誠二君に擦りつけたのよ」

「っ!? それ、本当なんですか!」

「本当の事よ。そのせいで、誠二君はイジメを受けてね。教師や親も自業自得といって

 何もしなかった。それに嫌になったのか、家出をしたのかしらね....その時に、悪魔によって

 殺された。肉体は一つとして残らず、血の池だけが見つかってね....」

「っ....!」

「可笑しな話よね。誠二君は何もしてないのに、悪魔に殺されるなんて....本当に殺されないと

 いけない人間はのうのうと生きているのに....」ポロポロ

 紫藤さんはそう言いながら涙を流していた。

 

「紫藤さん....」

「私にとって誠二君はね、大切な幼馴染で初恋の人だったの。なのに、私は何も出来なかった。

 イジメを止めることも出来なかったし、誠二君を助ける事も出来なかった....」ポロポロ

「....」

 紫藤さんの悲痛な言葉に、私は何も言えなかった。

 

 〜〜〜〜

 

「ごめんなさい、急に泣いてしまって」

 少しすると、紫藤さんは涙を拭いた。

 

「い、いえ! 大切な人がいなくなるのは、私もよくわかりますから....」

 私は姉様が行方不明になった時の事を思い出しながらそう言った。

 

「....不思議ね」

「えっ?」

「塔城さんの様な人が悪魔になったのが不思議だなって思ってね。何か深い事情でもあるの?」

「....少し、私の過去が関係していて。ちょっと長くなりますが、良いですか?」

「えぇ。それは構わないのだけど....それって私が聞いても良いの?」

「私だけ聞いて話さないというのは筋違いですから」

 私はそう言って、紫藤さんに自分の過去を話し始めた。

 

「私は猫魈という妖怪と人間のハーフだったんです。そして、私には姉が一人いてずっと

 二人で生きてきたんです」

「ご両親は....」

「私が物心つく前に亡くなっています」

「っ! ....ごめんなさい」

「気になさらないでください。....話し、続けますね」

「えぇ」

「両親がいなくなり、私と姉様はある悪魔のもとで暮らしていました。その時に、姉様は

 その悪魔の眷属となり、私をたった一人で育ててくれました。ですが....」

 私はあの時の事を思い出しながら話し始めた。

 

「暮らし始めて数年が経った時、姉様は突然、王である悪魔と眷属を全て殺してしまったんです。

 そして、姉様はそのまま行方不明となり、私はグレモリー家に何故か引き取られたんです。

 その結果、私は眷属悪魔になったというわけです」

「....随分と、大変な人生を送ってきたのね」

「まぁ、今思い返せばそうですね」

「お姉さんとその後は一度も?」

「いえ。先日、姉様は私の前に現れたんです。昔と変わらない様子で。その時に、姉様は私に

 こう言ってきたんです。“兵藤 一誠を信じちゃダメ。あの男の家族は悪魔以上の悪魔よ。”と」

「っ! もしかして、それが私に誠二君の事を聞いてきた理由?」

 紫藤さんはそう言って驚いていた。

 

「そうなります」

「そう....」

 そう言うと、紫藤さんは考え込み始めた。

 

「でも、良かったわね。お姉さんと再会する事ができて」

 紫藤さんは考え込むのをやめたのか、私にそう言ってきた。

 

「はい。でも、色々と謎を残していったんですよね....」

「謎?」

「”どうして私が王である悪魔を殺したのか“と言ったんですよ。まるで、何か理由が

 あって殺したかの様な言い方に聞こえませんか?」

「確かにそうね....王である悪魔を殺した理由、ね....一つ思い当たる事があるわ」

「っ! 本当ですか!」

 私は身を乗り出して紫藤さんにそう聞いた。

 

「私が教会にいたときの話なんだけど、はぐれ悪魔の過去が書かれた書類を見たのよ。

 その時に見たやつなんだけど、はぐれ悪魔になった理由が王が嘘をついたって

 書かれていたのよ」

「嘘?」

「何でも、王とはある約束をしていたんですって。でも、その王が約束を破ったから

 はぐれ悪魔になったそうなのよ」

「約束....」

「(じゃあ、もしかしたら姉様もその悪魔と同じように約束をしていた....? でも、その約束を

 破ったから王を....)」

 私は紫藤さんの話しを聞いて一つの仮説を立てた。

 

「お姉さんがどうかまではわからないけど、役には立てたかしら?」

「はい。その線で私なりにも調べてみます」

「そう。頑張ってね」

 

 〜〜〜〜

 

「今日はありがとうございました」

 店を出て、私は紫藤さんにお礼を言った。

 

「気にしないで。私も、こんなに長く人と話すのは久しぶりだったから楽しかったわ。

 ....話の内容は重かったけど」

「....それは言っちゃダメなやつです」

 私は紫藤さんの言葉にそう言わざるを得なかった。

 

「....それもそうね」

 紫藤さんは苦笑いしてそう言った。

 

「それじゃあ、ここでお別れね」

「はい。....聖剣の件、頑張ってくださいね。私も応援しています」

「ありがとう。塔城さんもお姉さんの件、解明できる事を祈っているわ」

 私と紫藤さんはそう言って別れを告げた。その数十分後、紫藤さんのストレスが

 急上昇する事を私は知らなかった。

 

「....」

 そして、私と紫藤さんの事を見ていた目に気づくこともなかった。

 

 

 

 

 

 



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困惑

 学校も終わる時間帯、俺は店の厨房で銀華と料理をしていた。

 

「香菜、それを二番テーブル。零奈は三番カウンターに注文聞いてこい」

「了解っス」

「はいはい」

「創二〜、銀華〜、サンドイッチセット二つととナポリタンセット三つだって〜」

「分かった」

「分かりました」

 俺は二人に指示を出しながらも、黒歌の言葉を聞いてそう返した。それから少し経ち、

 人の流れが収まると、突然店の扉の方から悪魔と、この前感じた謎の気配を感じた。

 

「創二様....今の気配は....」

「あぁ....」

 すると、レイナーレが顔色を悪くして厨房に入ってきた。

 

「ねぇ....聖剣使いが来てるんだけど....」

「....そうですか。どうなさいますか、創二様?」

「とりあえず様子見にしておけ。店で暴れられると面倒だ。あと、悪魔の方は?」

「悪魔は黒歌の妹よ。何でか聖剣使いといるけど」

「そうか....」

「(何故に聖剣使いと....?)」

 俺は不思議の思いながらも手を動かしていた。すると、レイナーレが白音達の注文を聞いて

 戻ってきた。俺は注文の品を作ってレイナーレに渡して少しすると、厨房から顔を出して

 白音達がいる席の方を見た。

 

「(聖剣使いってどっちが来た....っ!?)」

 俺はそう思いながら聖剣使いの顔を見た瞬間、全ての思考が停止した。そして、足元がふらつき

 近くの棚に手を使って自分の体を支えようとした時、その棚にある皿を落としてしまった。

 

「っ! 創二様!」

「お、おい! 大丈夫か!」

 俺が突然体勢を崩した事に驚いたエボルトとグレイフィアはそう言って近づいて来た。

 

「悪い....」

 俺は何とか体勢を立て直したのだが、さっきの光景が信じられないものだと思い混乱していた。

 

「急にどうしたんだよ。お前らしくもない」

「....エボルト、あそこにいる黒歌の妹と聖剣使いが店を出たらしばらく追いかけてくれ」

「....随分と急だな」

「わかっている....だが、お前にしか頼めねぇ。だから、頼む」

「....わかった。だが、後で話しは聞かせろよ」

 エボルトはそう言うと、厨房から出ていった。その後、俺は割れた皿を片付けていた。だが、

 頭の中にはさっき見たことが何度も繰り返されていた。

 

「(何で....何でここにいるんだよ....)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(()()()()()())」

 

 

 〜〜〜〜

 その日の夜

 

「で、どういう事か話してもらおうか」

 俺の目の前には七人が揃っていた。

 

「あぁ....今日来ていた聖剣使いは、俺のたった一人の親友だ」

「おまっ....! それって....」

「エボルト、あんた何か知ってるのかにゃん?」

「まぁな....なるほど、あの女が....」

 エボルトはそう言うと、何か考え込み始めた。

 

「それで、結局あの聖剣使いの正体は?」

 しびれを切らしたのか、レイナーレはそう聞いてきた。

 

「....あの子は紫藤 イリナ。俺が兵藤 誠二だった時の唯一の親友の女の子だ」

「っ!?」

「創二の親友....」

 そう言うと、黒歌とオーフィスの空気が変わった。

 

「あんたの昔の親友ね....」

「それはまた....」

「すごい偶然っスね....」

 堕天使の三人は俺の言葉に驚いていた。

 

「なるほど....それで彼女の対処はどのようになさるのですか? 我々の方に勧誘は....」

 グレイフィアは先のことも考えたかの様にそう聞いてきた。

 

「....正直な話、迷ってる。勧誘したい気持ちもあるが、同じくらい勧誘したくない

 気持ちがある」

「....そうですか」

「とりあえず黒歌。一つ頼みがあるんだが良いか?」

「....何?」

「明日、妹にイリナちゃんと何の話をしていたか聞いてくれないか?」

「....わかったにゃん」

 黒歌は非常に不満そうにそう言った。

 

「とりあえず、全員聖剣についての警戒は怠るな。もしも堕天使と接触した場合は迎撃して

 くれても構わない」

 俺の言葉に、全員首を縦に振っていた。

 

「....じゃあ、悪いが俺は先に寝させてもらう。何かあったら起こしてくれ」

 そう言って俺は部屋を出て、自分の部屋に入るとベッドに寝転がった。

 

 

 〜〜〜〜

 エボルトside

 

「アイツ....様子がおかしいわよね」

 創二が部屋を出てしばらくすると、レイナーレがそう言った。

 

「確かにな。だが、今回の事に関しては変に関与しないほうが良いだろ」

「大丈夫なのですか?」

「心配すんなグレイフィア。きっかけさえあればアイツ自身がどうにかするだろ」

 そう言って俺は立ち上がり、黒歌とオーフィスに近づいた。

 

「二人とも、あの女に変な事をしようとするなよ。あの女に手を出したら、最悪アイツが

 暴走しかねないぞ」

「....流石に手は出さないわよ」

「....わかってる。創二が嫌がる事、我、やらない」

 オーフィスは目を見ていたが、黒歌は若干視線を逸らしながらそう言った。

 

「なら良いが....とりあえず、今日は解散だ」

 俺は全員にそう言って解散させた。そして、俺は店の監視カメラで撮っていた紫藤 イリナの

 顔を見た。

 

「さてと....俺はどう動いたもんだか....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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悩み

 白音side

 

「白音〜、やっほ〜」

「....何やってるんですか姉様」

 イリナさんの話しをした次の日の昼休み、屋上に来ると何故か姉様がいた。

 

「ちょっと白音に聞きたいことがあってねぇ。安心して、悪魔に見つからないように

 結界は張ってるから」

「そうですか....それで、何を聞きたいんですか?」

 私は屋上にある座れる所に座ってそう言った。

 

「昨日、聖剣使いと何を話してたの?」

「っ....! 何故姉様がその事を....」

「白音と聖剣使いが喫茶店に入っていくのが見えたからねぇ。一応悪魔である白音と

 教会の聖剣使いが何を話していたのか気になったのにゃん」

 姉様は呑気な様子でそう言ってきた。その時、私は一つ、ある事を思いついた。

 

「別に話すのは構いませんが、私も姉様に一つ聞きたい事があるんですが....」

「私に? 白音の質問だったら、お姉ちゃん何でも答えてあげるにゃん。でも、先に話してた

 内容を聞かせてほしいにゃん」

「わかりました」

 そう言って、私は姉様に昨日の事を話した。

 

 〜〜〜〜

 

「これが昨日あったことです」

「そう....」

 私が姉様に全て話し終えると、姉様はどこか厄介そうな表情をしていた。

 

「それで姉様....私が聞きたい事なんですが....」

 私は厄介そうにしている姉様に向かってそう言った。

 

「何?」

「姉様は、兵藤 誠二という人物について知っていますよね?」

「....どうしてそう思ったのかにゃん?」

 姉様はどこか驚いた表情をしながらもそう言ってきた。

 

「姉様は私に変態先輩を信じるなと言いました。どうして接点のない変態先輩に対して

 そんな事を言うんだろうと思いましたが、昨日の件で確信を持てました。おそらく姉様は、

 兵藤 誠二さんと何処かで会った....その時に、変態先輩の家族についても知った。

 違いますか?」

 私は自分なりの推理を話すと、姉様はくすくすと笑いだした。

 

「なかなか良い推理にゃん、白音。でも、少しだけ違うにゃん」

「違うというのは....?」

「私は兵藤 誠二本人とは会ったけど、肉体を持った兵藤 誠二とは会ってないにゃん。

 私が会った兵藤 誠二は浮遊霊となった兵藤 誠二なのにゃん」

「....そうなんですね」

「(やっぱり誠二さんはもう亡くなって....)」

 私はほんの少しの希望にかけてみたが、誠二さんが亡くなったという事は覆らなかった。

 そう考えていると、昼休みが終わるチャイムが鳴った。

 

「どうやら、今日はここまでみたいにゃん。....そういえば白音、私がはぐれ悪魔になった理由、

 わかったかにゃん?」

 姉様は思い出したかの様にそう聞いてきた。

 

「はい。まだ色々と調べたい事はありますが....」

「....そ。じゃあ、次に会いに来た時には良い答えが聞けるのを楽しみにしてるにゃん」

 姉様は、どこか嬉しそうな表情をしながらそう言うと、背後に魔法陣を創り出していた。

 

「じゃあね白音」

 そう言って、姉様は魔法陣の中に入って消えた。私も授業に間に合う様に、急いで自分の

 教室に戻った。

 

 〜〜〜〜

 

 その日の放課後

 

「....あれは」

 私が学校から帰ろうとした時、変態先輩と祐斗先輩と生徒会の新しい兵士の人がコソコソと

 何処かに向かおうとしていた。

 

「(何でしょう....この、何とも言えない嫌な感じは....)」

 私は変な胸騒ぎを感じながらも三人を放っておいて家に帰った。

 

 〜〜〜〜

 黒歌side

 

「今のが昨日あったことだって」

「そうか....」

 夜になり、私は白音から聞いた事を創二に報告していた。すると、創二はどこか嬉しそうな

 表情をしていた。

 

「(やっぱりあの女....創二とっては特別な女なのね....)」

 私は創二の様子や表情を見ながらそう考えていた。

 

「じゃ、報告は終わったから部屋に戻るわね」

 そう言って自分の部屋に戻ろうとした時、偶然オーフィスと会った。

 

「黒歌、機嫌悪い?」

 オーフィスは私の顔を覗き込んでくるとそう言ってきた。

 

「機嫌は悪くないわ。ちょっと厄介な事になりそうだと思ってね....」

「厄介?」

「そ。創二が他の女に盗られるかもしれないのよ」

「創二が、他の女に....」

 すると、オーフィスの表情は複雑そうな表情に変わっていった。

 

「我の胸、ズキズキする....」

「それは私も同じよ。私だって創二のこと大好きだから他の女に盗られたくないわ」

「大好き....じゃあ、これが恋?」

「そうよ。大好きな人に対しては胸がドキドキしたり、大好きな人が他の女といると

 思うと胸がズキズキするのよ」

 そう言うと、オーフィスは胸に両手を当てながらこう聞いてきた。

 

「この胸のズキズキ、どうすれば治る?」

「さぁね....それがわかってたら、私もどうにかしてるわよ....」

「そう....なら、グレイフィアに治す方法を聞いてくる」

 オーフィスはそう言うと、グレイフィアの部屋に向かって歩いていった。

 

「....私、どうすればいいんだろ」

 私は自分がどうすれば良いのか分からない事を悩みながら自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

 



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不運

「....」

「(まただ....)」

 姉様が現れて数日後、私は再び変態先輩が祐斗先輩と生徒会の人といるのを見かけた。

 

「(あの三人....一体何を....)」

 姉様が現れてから数日が経ったが、私は毎日のようにあの三人が一緒にいるのを

 見かけていた。

 

「(....何だか、ものすごく嫌な予感がしますね。....一応、追いかけてみますか)」

 そう思った私は、三人に気づかれない様に後を追った。

 

 〜〜〜〜

 

「(こんな路地裏で何を....)」

 三人の後を追っていくと、何故か路地裏に着いた。そして、路地裏に入った瞬間、私は

 上の方から嫌な気配を感じた。私はその気配の方を見ると、上から剣を持った人型の何かが

 三人に剣を振り下ろそうとした。三人は咄嗟に気づき、その場から回避していた。

 

「(アイツは....!)」

 私は剣を振り下ろした人間を知っていた。その人間は、私達が堕天使レイナーレの住処に

 向かった時にいた神父だった。そして、その神父が持っている剣の気配を感じて、

 私はその剣が聖剣エクスカリバーの一本だとわかった。

 

「(これはマズイですね....)」

 そう思った私は携帯である人に電話をかけた。

 

『はい。どうかしましたか、塔城さん』

 電話をかけたのは、学園の生徒会長でシトリー家次期当主のソーナ・シトリー先輩だった。

 

「ソーナ先輩大変です。ソーナ先輩の兵士の人が聖剣使いと戦っています」

『....はい? それは一体どういう....』

「私もよくわかりません。とにかく、ウチの部長を連れてここに来てください。私では

 どうにもできそうになくて....」

『....一先ずわかりました。塔城さんは見つからない様に隠れていてください。私はリアスを

 連れてすぐに向かいます』

 そう言うと、ソーナ先輩は電話を切った。そうして、私は三人の戦いを様子見していると、

 背後から別の聖剣の気配を感じた。振り向くと、そこには破壊の聖剣を構えてこちらに向かって

 走ってくるゼノヴィアさんと、擬態の聖剣を構えてその後を追っている紫藤さんがいた。

 

「紫藤さん!」

「塔城さん!? どうしてこんな所に!」

 紫藤さんは私の姿を見た瞬間、驚いた表情をしていた。

 

「....あの三人を追っていたらこうなってまして」

「何やってるのよ....とりあえず、塔城さんはここにいて。塔城さんではアイツの相手は

 できないから」

 そう言うと、紫藤さんは神父の方に向かっていった。そうして紫藤さんが戦いに加わって

 少しすると、年寄りの神父が現れ、閃光玉を使ってこの場から逃げていった。

 

「イリナ! 追うぞ!」

「私に指図しないでくれる!」

「僕も追わせてもらう!」

 すると、紫藤さんとゼノヴィアさんと祐斗先輩は神父達を追いかけ出した。

 

「....これは、一体どういう状況ですか」

 それと同時に、私の背後にソーナ先輩と椿姫先輩、リアス部長と朱乃先輩が現れた。

 

「か、会長....」

「ぶ、部長....」

 二人は四人の姿を見た瞬間、一気に顔色が青ざめた。そんな様子を見ていた時....

 

「っ!?」

 私は一瞬、誰かの視線を感じた。だが、その視線はすぐに消えてしまった。

 

「(今の視線は一体....悪魔や堕天使とは違った視線は....)」

 

 〜〜〜〜

 イリナside

 

「(ホント....今日はことごとく運がないわ!)」

 フリードを追ってきた私達は、ある森に来ていた。そして、今私達が戦っているのは

 フリードではなく、今回の事件の首謀者のコカビエルだった。

 

「どうした! ミカエルが寄越した聖剣使いどもに神器使いの転生悪魔! 所詮はこの程度か!」

「くそっ....噂には聞いてはいたがこれ程とは....」

「言ってる場合じゃないでしょ! ここは一度撤退して態勢を立て直すわよ!」

「....それが良さそうだな。グレモリーの騎士、君もそれで良いか?」

「....そうだね。ここは一度態勢を立て直そう」

 そう言うと、グレモリーの眷属は一本の魔剣を創り出した。そして、その魔剣を地面に

 突き刺すと、地面は爆発を起こし、周囲に砂煙が起きた。私達はその瞬間、この場から一気に

 逃げ出そうとした。だが....

 

「っ....!」

 砂煙の中から飛んできた光の槍が私の脚に掠った。そして、私はその場で膝をついた。

 

「ほぉ....当たったのは擬態の聖剣の方か」

「....っ」

「(どうする....逃げようにもこの脚じゃすぐに追いつかれる。戦ったとしても....)」

 私はこの状況に絶望していた。

 

「まぁ良い。貴様は四肢をもいでグレモリーどもと天界の者どもへの手土産に....」

 そう言いながら、コカビエルが私に近づこうとしたその時....

 

「っ!? ゴハッ....!?」

 突然コカビエルは後方に吹っ飛んでいった。コカビエルが後方に吹っ飛んだ事で、周りにある

 木は倒れ、私の前は砂煙に包まれた。

 

「(っ! 急に何が....!)」

 私は腕で顔を覆っていると、砂煙の中に何かがいる気配を感じた。そして、その砂煙が晴れると

 そこには....

 

「っ....何、あれ....」

 血の様に真っ赤な、狼の様な鎧を纏った異形が立っていた。

 

 

 

 



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胸に刺さった言葉

『(....こいつがコカビエルか)』

 俺は吹っ飛んで木にもたれて倒れている堕天使を見てそう思った。

 俺は今日、誰かを追っている白音を見かけ、気づかれない様にこっそり追っていたら、

 エクスカリバーを使う神父を見た。そして、しばらく戦っているのを眺めていると、

 イリナちゃんともう一人の聖剣使いが現れた。その二人とグレモリーの眷属が神父を

 追いかけるのをさらに追いかけると、今回の件の首謀者であるコカビエルを発見した。

 そのコカビエルを見た瞬間、イリナちゃんにもしもの事がない様にするために、俺は

 ブラッディウルフに変身していた。そして、イリナちゃんがコカビエルに襲われそうに

 なった瞬間、俺は一瞬で間合いを詰めてコカビエルを殴り飛ばした。

 

『(汚ねぇ手でイリナちゃんに触ろうとしやがって....)』

 俺は手の指を鳴らしながらコカビエルを睨みつけていた。すると、コカビエルは立ち上がり

 数十本の光の槍を作って飛ばしてきた。

 

『遅いんだよカラス如きが!』

 俺は飛ばしてきた槍を全て殴り潰した。

 

「なっ!?」

「すごい....!」

『たかがカラスの幹部如きが....この俺に勝てると思っているのか!』

 俺はそう叫んで腕を振るい、斬撃を飛ばした。だが、突然その斬撃は弾丸によって消された。

 

『おっとっと、それ以上はやめてくれねぇか? ブラッディウルフ』

 すると、木の上から声が聞こえてきた。見ると、そこにはトランスチームガンを指で回して

 俺とイリナちゃんの事を見ているスタークがいた。

 

『スターク....』

『よっ。相変わらず行動パターンが読めねぇやつだなお前は』

 スタークはそう言いながらコカビエルの前に飛び降りた。

 

『ったく、しっかりしてくれよ。コカビエルの旦那』

「黙れこの蛇もどき」

『おいおい、助けに来たってのに辛辣だな。今ここでアンタに倒れられるのは困るんだよ』

 そう言いながらスタークはコカビエルに肩を貸していた。

 

『スターク....テメェ何をするつもりだ』

『俺か? 別に俺は何もしねぇよ。ただ俺は、この堕天使様の計画の手伝いをしてるだけだ。

 この堕天使様の計画が成功すれば面白い事になるからなぁ』

 そう言いながら、スタークはトランスチームガンから煙を発射した。

 

『じゃ、俺達は引かせてもらうぜ。Ciao〜』

 そう言って、スタークとコカビエルは煙の中に消えた。

 

『逃げたか....』

 俺はそう呟き、イリナちゃんの方に向かった。

 

『怪我はないか?』

「え、えぇ....あなたのお陰で、っ....!」

 そう言って立ち上がろうとしたが、イリナちゃんは脚を気にしながら膝をついた。

 見ると、イリナちゃんの脚からは少し血が出ていた。

 

『脚に傷か....少し待て』

 俺はそう言ってトランスチームガンにドクターフルボトルを挿し込んでイリナちゃんの脚に

 銃口を向けた。

 

フルボトル! スチームアタック!

 

 銃口から出た煙はイリナちゃんの脚を包んで、傷を治していた。

 

「嘘っ....傷が....」

『俺の力で治した。今のうちにこの街から去った方が良い。この街は危険だ』

 俺はイリナちゃんを巻き込みたくがないためにそう言ったのだが....

 

「....悪いけど、それはできないわ。私は、コカビエルを倒さないといけないの。じゃないと、

 大切な人を生き返らせる事ができないの」

 そう言いながらイリナちゃんは剣を杖にして立ち上がり、何処かに向かって歩き始めた。

 

『何でだ....相手の力量がわからないわけでは無いだろ!』

「....大好きな人なの」

『っ!』

「私は、その人に助けてもらってばかりだった。だから今度は、私が助ける番なの。

 たとえこの命が尽きようとしても、彼だけは助けたい....! それに、彼にはどうしても

 伝えたい事があるの!」

 イリナちゃんは、覚悟を決めた表情をしてそう言っていた。

 

『(俺が死んでると言われてからも、そこまで思っててくれたのか....)』

 俺はイリナちゃんの言葉が胸に刺さった。

 

『....そうか。なら、俺が言える事は無いな....』

 そう言って、俺はイリナちゃんの前から去った。そして、ある程度距離を取ると、変身を

 解除してスタークに電話をかけた。

 

『どうした?』

「連中の計画を起こす場所は」

『お前が通っている学校だ。二時間もすれば計画を始めるらしい』

「そうか」

『あっ、お前は後から来いよ。すぐに来ると色々とこっちの準備が間に合わないからな』

「....わかった」

 そう言って電話を切り、俺は一度家に帰った。

 

 〜〜〜〜

 エボルトside

 

『じゃ、コカビエルの旦那。こっちは俺に任せとけ』

「精々俺の期待を裏切るなよ」

『はいはい』

 俺はそう言いながら持ち場に向かった。

 

『(相変わらず、扱いやすい堕天使だ)』

 俺は堕天使の扱いやすさにマスク越しで笑っていた。

 

『さてさて、後は適当に場を荒らせば良いか』

 

 

 

 

 

 



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計算された遊戯

 イリナside

 

 謎の狼の様な鎧を纏った人物に助けられてから、私は突然現れた光の柱に向かって

 走っていた。

 

「(あの光の柱から感じた気配、エクスカリバーと同じだった....)」

 そう思いながら走り続けて光の柱がある場所に着くと、その場所は塔城さんが

 通っている学園だった。

 

「(こんな所で一体何を....)」

 私は学園の敷地に入ろうとしたのだが、突如見えない壁に道を阻まれた。

 

「邪魔!」

 私は擬態の聖剣で結界に斬りかかると、結界には私が入れるぐらいの穴ができた。

 私はその穴を使って学園の中に入り、近道をするために校舎の屋上に登った。

 そして下を見るとそこには....

 

「ケルベロス....!」

 二体のケルベロスと戦うグレモリー眷属がいた。その近くでは年寄りの神父が光の柱の前で

 何かをしており、上空にある玉座にはコカビエルが座っていた。

 

『お、もう着いたのか。擬態の聖剣使い』

 すると、私の真横から声が聞こえてきた。見ると、そこには少し前にコカビエルの逃走を

 手助けしたワインレッドの鎧を纏った何かがいた。

 

「っ!? あなたは!」

 私は咄嗟に擬態の聖剣を向けた。

 

『おいおい、俺はお前と敵対する気は無いぜ』

「....その言葉を私が信用できるとでも?」

『そりゃそうだな。だが、敵対するってなら登ってくる時に攻撃してるぜ』

「っ!」

「(コイツ、私に気づいてたの....?)」

 私は警戒しながらも、ケルベロスの方を見た。すると、ケルベロスと戦っていた塔城さんが

 ピンチになっていた。

 

『おっと、お友達はピンチみたいだぜ? 助けに行かなくて良いのか?』

「(っ、コイツ....!)」

 ワインレッドの鎧はおちょくる様に私にそう言ってきた。

 

『ま、背中から撃つような真似はしねぇから安心しとけ。お前に怪我をさせると、アイツに

 殺されかけねぇからな』

「アイツ....?」

「(コイツ、コカビエルと手を組んでるんじゃないの?)」

 そう思いながらも塔城さんの方を見たら、倒れている塔城さんに向かって炎が向かっていた。

 

「(っ! 考えるのは後! 今は....!)」

 私は一度、考える事を放棄して塔城さんの前に飛び降りた。そして、擬態の聖剣を盾にして

 炎を受け流した。

 

「紫藤さん....!?」

「塔城さん、少し下がってて....」

 私はそう言うと、盾から刀に変形させてケルベロスの首を一つ斬り落とした。そして、落ちた

 ケルベロスの頭を踏み台にしてもう一つの首を斬り落とした。

 

「(ラスト!)」

 そう思ったのだが、突然ケルベロスが真っ二つに割れた。見ると、そこにはゼノヴィアと

 グレモリーの眷属がいた。

 

「ゼノヴィア」

「イリナ! 無事だったか!」

「まぁね。....そんな事より良い時に来てくれたわ。急いであの光の柱を破壊しに行って。

 あそこに奪われたエクスカリバーが集まっているはずだから」

「わかった。イリナはどうするんだ?」

「私はもう一体のケルベロスを倒してから向かうわ」

「了解した! 行くぞ、グレモリーの騎士!」

 そう言うと、ゼノヴィアはグレモリーの眷属とともに光の柱に向かっていった。

 

「さてと....塔城さん、動けるなら校舎の方まで下がっていて」

「....大丈夫です。少し休めたので、それなりには動けます」

「....そう。なら、一緒に行きましょうか!」

「はい!」

 私は塔城さんにそう言って、塔城さんと共にケルベロスに向かった。

 

 〜〜〜〜

 創二side

 

「(....連絡はまだか)」

 エボルトに電話して二時間後、俺は学校付近にビルドフォンを変形させた

 マシンビルダーに乗って連絡を待っていた。すると、突然携帯が鳴った。

 画面を見ると、それはエボルトからだった。

 

『そろそろ来ても良いぞ』

「わかった。上手くやってくれよ」

『任せとけって。お前もミスんなよ』

「あぁ」

 そう言って電話を切ると、俺はマシンビルダーを学校に向かって走らせた。

 そして学校の前に着くと、会長と生徒会の悪魔どもが結界を張っているのが見えた。

 

「(会長には悪いが、力づくで通らせてもらうか)」

 そう思い、俺は右手にドリルクラッシャーを持った。そして、ドリルクラッシャーに

 ユニコーンフルボトルを挿し込んだ。

 

Ready Go! ボルテックブレイク!

 

 そして、俺はドリルクラッシャーを構えるとバイクを走らせ結界に突っ込んだ。結界に

 ドリルクラッシャーが触れた瞬間、先端のドリルが回転し、結界の一部を粉々に破壊した。

 俺はそのままバイクを走らせてグラウンドの方に出た。すると、そこには....

 

「....何だよこの状況は」

 血を流してぶっ倒れているケルベロスが二体と、光の槍がぶっ刺さって倒れている

 ジジイが一人、そして膝をついて絶望した様な表情をしたイリナちゃんがいた。

 そのイリナちゃんの隣には、黒歌の妹である塔城が心配そうな表情で付き添っていた。

 

『おっ、やっと今日の主役のご登場か!』

 すると、俺の上空からそんな声が聞こえた。俺が上空を見ると、校舎の屋上にスタークが

 いるのが見えた。そしてスタークは屋上から飛び降りて俺の前に立った。

 

「スターク....この事態を作り出したのはやっぱりお前だったか」

『まぁ、間違ってはいねぇ、なっ!』

 そう言った瞬間、スタークは俺に向かってトランスチームガンを放ってきた。俺は咄嗟に

 躱したのだが、被っていたヘルメットが吹き飛ばされてしまった。すると、塔城や兵藤、

 グレモリーの眷属の表情が驚愕の表情に変わった。

 

「い、石動先輩....!?」

「何でお前がここに....!?」

『おっと〜、正体がバレちまったみたいだなぁ』

「テメェのせいだろうが....」

 俺はそう呟くと歩き出し、イリナちゃんと塔城の前に立った。

 

「塔城、その子を連れて下がってろ」

 そう言って、俺はビルドドライバーを腰にかざした。

 

「っ....! そのベルトは!」

「スターク。お前がやったのかそこに浮いてる鴉がやったのか知らないが、俺の後輩に

 怪我をさせたんだ。それなりの覚悟はできてるよな....?」

 そう言いながらボトルを振り、俺はベルトにボトルを挿し込んだ。

 

ラビット!  タンク!  ベストマッチ!

 

 その音が鳴り、俺はレバーを回し自分の前後にプラモランナーを出現させた。そして....

 

Are you ready?

 

「....変身」

 

鋼のムーンサルト!  ラビットタンク!  イエーイ!

 

 俺は仮面ライダービルドへと変身した。

 

 

 

 

 

 



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生贄と炭酸

 創二が来る少し前....

 

 スタークside

 

『(さてと、後は創二が来るのを待つだけだが....)』

 俺は屋上から状況を見ていた。まずはケルベロスだが黒歌の妹と創二の幼馴染によって

 倒された。次に胡散臭い神父のジジイとネジが飛んでる神父はグレモリーの騎士と

 青髪の聖剣使いと戦い、統合したと思われる聖剣をグレモリーの騎士が創り出した

 謎の剣によって折られていた。

 

『(あのエクスカリバーの欠片は回収だな)』

 そんな事を思っていると突然神父のジジイが笑い出したかと思うとコカビエルによって

 消滅させられた。

 

『(あーらら....消されちまったか。創二の新しいベストマッチの生贄にしようと思ってたん

 だがなぁ)』

 俺がそんな事を呑気に考えていると、突然コカビエルは全員に聞こえるようにこう言った。

 

「貴様らが信仰している神とやらは死んだ! 過去の三大勢力の大戦でな!」

『(うわっ....あの鴉もどき、めんどくさくなる事言いやがった....)』はぁ

 その言葉が聞こえた瞬間、俺はため息が出た。すると....

 

「神が....死んでいる....?」

 絶望した様な表情をして、創二の幼馴染は膝をついた。そして、破壊の聖剣の女と

 聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を持つ女も崩れ落ちていた。

 

『(おいおい、この状況どうすんだよ)』

 そう思っていたその時、校舎の方からバイクの音が聞こえてきた。そして、校舎から

 バイクに乗った創二が現れた。

 

『(ま、俺は俺の仕事を始めるか)』

 

 〜〜〜〜

 創二side

 

 ビルドに変身した俺は、右手にガンモードのドリルクラッシャーを持ちスタークに向けた。

 

『....』

『おぉ、怖い怖い! おい旦那! コイツが俺が言ってた人間だぜ!』

 すると、スタークは上空にいる堕天使に向かってそう言った。その声が聞こえたのか、

 堕天使はわざわざスタークの近くに降り立った。

 

「ほぉ....コイツが悪魔を殺す人間か。確かにコイツらと比べれば良い殺気をしているな」

『だろ? コイツだったらアンタの相手は多少務まるはずだぜ』

「ふっ、そうか。ならば人間よ! 戦争の前の軽い運動にさせてもら....!」

 そう言ってペラペラ喋り出したその時、スタークが堕天使の腹に腕を突き刺した。

 

「ガハッ....!? き、貴様! 一体何を....!」

『ありがとな鴉もどき。お前のお陰でアイツは来てくれた。これで俺の計画を自由に進められる』

「計画、だと....!」

『あぁ。お前の計画に協力? バカじゃねぇのか。テメェみたいな弱い鴉の下につくなんて、

 俺にとってはあり得ない事なんだよ。お前の下にいたのは全てアイツをこの場に引きずり出す

 計画のためだ。....だから、アイツが来た以上お前は用済みなんだよ。後は、せいぜいアイツの

 力の向上のために生贄になると良い』

 スタークはそう言い終わると、直接堕天使の身体にネビュラガスを流し込んだ。

 

「き、貴様ァァァァァ!!」

 そう叫びながら、堕天使はネビュラガスに包まれ、ハザードスマッシュへ姿を変えた。

 

『さ、これで準備は整った。ビルド! お前はこのスマッシュを倒せるか?』

 スタークは挑発するように俺にそう言ってきた。

 

『黙っていろ....』

 俺はそう言ってドリルクラッシャーから弾丸をスマッシュに向けて放った。だが、弾丸は

 スマッシュに当たった瞬間弾かれていた。

 

『無駄無駄。そんなんじゃ傷一つつかねぇって』

 スタークはそう言うと、スマッシュは俺に向かって走り、殴りかかってきた。俺は咄嗟に

 防御をしたのだが....

 

『(っ! 重っ....!)』

 スマッシュの一撃はかなり重く、後方に吹っ飛ばされた。だが、空中で回転して何とか

 地面に着地した。

 

『(これだと相性が悪そうだな....)』

 そう思いながら、俺はベルトからボトルを抜き、ボトル二本分の大きさの缶を取り出した。

 そして、缶を振ってプルタブを上げベルトに挿し込んだ。

 

ラビットタンクスパークリング!

 

 俺はレバーを回転し始めると、俺の前後に丸い形のプラモランナーが現れた。

 

Are you ready?

 

『ビルドアップ』

 

シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イエイ! イエーイ!

 

 俺の身体にランナーが挟まった瞬間、俺の姿はラビットタンクを強化した様な姿に変わった。

 そして、俺は左脚で地面を蹴り、右脚でスマッシュに蹴りかかった。すると、スマッシュを

 蹴った瞬間、右脚から泡の様なものが出てきた。その泡がスマッシュに当たると泡は爆発を

 起こし、スマッシュを上空に吹き飛ばした。それを見て、俺はベルトのレバーを回した。

 

『....面倒だ。これで終わらせる』

 

Ready go!

 

 俺は左脚で地面を蹴り、スマッシュよりも上に飛んだ。すると、スマッシュの近くに

 ワームホールの様な図形が現れ、スマッシュを図形の中心に拘束した。

 

スパークリングフィニッシュ!

 

『ハァァァ!』

 そして、俺は拘束されているスマッシュにライダーキックを放った。ライダーキックが

 当たったスマッシュは上空で大爆発を起こし、スマッシュになっていた堕天使は炎に

 包まれながら地面に落ちてきた。

 

「嘘でしょ....!」

「コカビエルをこうもあっさり倒すなんて....!」

『ハッハッハ! 流石だなビルド! こうもあっさり殺すとはな! やはりお前という人間の

 成長速度は恐ろしい!』

 スタークは高笑いしながら落ちてきた堕天使を消していた。

 

『この状況でよく笑っていられるな!』

 俺は地面を蹴ってスタークに殴りかかった。だが、スタークは両腕をクロスして防御した。

 

『っ! ハザードレベル4.9! この短期間でここまで強くなるか!』

 スタークは笑いながら俺から距離を取った。

 

『楽しみになってきたなぁ! お前が俺と対等に戦える時が来るのが!』

 そう言いながらスタークは俺に向かってボトルを二本投げてきた。俺は投げてきた

 ボトルをキャッチすると、一本のボトルに何かの紙が巻き付いていた。

 

『それはお前にやる。それを使って更に強くなってくれよ』

 スタークはそう言いながら自分の周りにスチームガンで煙を出していた。

 

『今日のところはここで退却しよう。欲しかったブツも手に入ったからな』

 そう言っているスタークの手には、何かの破片がいくつか握られていた。

 

『次も楽しもうぜビルド。Ciao』

 そう言い残してスタークはこの場から消えた。

 

『逃したか....』

 俺は一言そう呟き、ビルドフォンにライオンフルボトルを挿し込んでバイクに変形させた。

 そして、バイクにまたがりこの場から去ろうとすると....

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何勝手にここから去ろうとしてるのよ!」

 グレモリーが後ろからそう叫んできた。

 

『....俺の標的も逃走した。これ以上にここにいる理由がないから帰るだけだ』

「っ! そう簡単に帰れると思わないで! あなたにはいくつも聞きたい事が....!」

 俺はそう言ってくるグレモリーが面倒になってきたので、この場にいる塔城と青髪の

 女以外に腕から飛ばせるエネルギー刃を飛ばした。そのエネルギー刃の影響で辺りは砂煙に

 包まれたので、その隙をついてこの場から撤退してある場所に向かってバイクを走らせた。

 

『(あの紙に書かれていた方角にあるのは....)』

 

 〜〜〜〜

 ? side

 

「何だ、あの人間は」

『只者でないのは違いない。あの人間、こちらに気づいて斬撃を放ってきたぞ』

「....そうか。人間でもああも面白い人間がいるか!」

『戦うのは構わないが、先に任務を遂行してからだぞ』

「あぁ。それは分かっている」

 

 〜〜〜〜

 塔城side

 

「石動先輩....」

 私は目の前で起こった事に頭がついていかなかった。突然バイクに乗って現れたかと

 思えば赤と青の謎の姿に変身してコカビエルが変化した姿と戦い、数分でコカビエルを

 倒してしまった。

 

「先輩....あなたは一体何者なんですか....?」

 そう呟いた時、私はある事に気付いた。

 

「....紫藤さん?」

 そのある事とは、紫藤さんがこの場にいない事だ。

 

「(一体何処に....)」

 私は周囲を見渡し、紫藤さんがさっきまでいた場所を見たが紫藤さんの姿は何処にも

 見当たらなかった。そして、この場に紫藤さんがいない事に、私はどこか嫌な予感を

 感じていた。

 

 

 

 

 



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再会

 イリナside

 

「やっぱり、ここは星がよく見えるなぁ....」

 私は駒王町にある、とある丘の上に来ていた。そして、私は夜空を見上げながら

 そう呟いた。

 

「神は死んでいたか....私、今まで何のために生きていたのかな....」

 そう呟きながら、私は空に見える星に手を伸ばした。だが、星に手が届くはずもなく、

 私は手を星に伸ばすのをやめた。そして、私は身体を起こし近くの崖に近づいた。

 

「....ここから飛び降りたら、あの世で誠二君に会えるかな」

 崖下は暗闇に包まれており、光なんてものは一つとしてなかった。

 

「(心残りは、もう無いや....)」

「待っててね誠二君。私も、すぐに行くからね」

 そう呟いて、私は崖から身を投げた。そして、私はそのまま崖の下に落ちるはず

 だったのだが、突然私の腕は誰かに掴まれて、私の身体は空中に浮かんだ。

 

「えっ....?」

「はぁ、はぁ....ギリギリ間に合った....」

 そして、崖の上からは男の人の声が聞こえた。上を見ると、そこには私を生徒会室まで

 案内してくれた人がいた。

 

「あなたは....」

「少しだけ動かないでくれよ....!」

 そう言って、彼は私を崖から引き上げた。

 

「あなたは、この前の....」

「あぁ、久しぶりだな」

「どうしてあなたがこの場所を知ってるの....ここを知ってるのは私と....」

 私はこの場所を誰かが知っている事に驚いていた。だって、この場所は私と誠二君しか

 知らない約束の場所だからだ。

 

「どうしてこの場所をか....俺がイリナちゃんとの約束の場所を忘れるわけないだろ。

 ここでまた、一緒に流星群を見ようという約束をしたこの場所を」

「えっ....?」

 そう言うと、彼はワインレッドの鎧が持っていた拳銃を手にした。そして、彼は拳銃の

 銃口を自分の顔に向けてトリガーを引いた。すると、銃口から黒い煙が噴出され

 彼の顔を覆った。そして、彼が銃口を下に向けると彼の顔から煙が晴れた。

 そこに現れたのは....

 

「....久しぶりだな、イリナちゃん」

「嘘....」

 昔と似たような雰囲気を持った誠二君だった。

 

「誠二君、なの....?」

「あぁ。六年ぶりだな、イリナちゃん。....ずっと会えなくて悪かった」

 そう言いながら、誠二君は私の身体を抱きしめてくれた。誠二君の身体は

 冷たかったが、私の心はどんどん温かくなっていった。

 

「っ....! 誠二君....! 誠二君!」ポロポロ

 そして、私はこれまで抑えていた色々なものが崩壊し、誠二君に抱きついて

 泣いてしまった。

 

 〜〜〜〜

 

「ねぇ、誠二君....今まで、ずっと何処にいたの?」

 誠二君に抱きついてひとしきり泣いた私は誠二君にそう聞いた。

 

「色々な所にいた。日本にいたり海外にいたり。この町には二年前に来たんだ」

「そうだったんだ....」

「ごめんな。ずっと会いに行けなくて。俺も俺でこの六年間色々あったんだ」

「色々....?」

「あぁ。それに、少しイリナちゃんに話しておきたいことがあるんだ。

 だから、良かったら今から俺の家に来ないか? イリナちゃん、色々あって帰ろうにも

 帰れないだろ?」

「う、うん....」

「なら決まりだな」

 そう言うと、誠二君はカラフルなゴツいスマホを取り出した。そして、

 そのスマホにボトルのような物を挿し込むとスマホを空中に投げた。

 すると、空中に投げられたスマホはさっきコカビエルの時に現れたバイクに変形した。

 

「そのバイクは....」

「イリナちゃんの思ってる通りだと思うぜ」

 そう言いながら、誠二君はフルフェイスのヘルメットを投げてきた。

 

「後ろに乗ってくれ」

「う、うん!」

 そう言われ、私はヘルメットをかぶってバイクの後ろに乗り誠二君のお腹に

 手を回した。

 

「しっかり掴まっててくれよ」

 そう言って、誠二君はバイクを何処かに向かって走らせた。

 

 

 

 

 

 



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同じ志を持つ者として

 イリナちゃんをバイクに乗せた俺は、nascitaの前でバイクを止めた。

 

「イリナちゃん、着いたぞ」

「ここって....」

「俺の家。この前塔城と来てたよな」

 俺はそう言いながらバイクをスマホに戻して、ポケットから店の鍵を取り出して

 扉を開けた。そして、俺はキッチンに行き巨大な冷蔵庫を開けた。その冷蔵庫の先には

 地下に繋がる階段があった。

 

「イリナちゃん、ついてきてくれ」

「う、うん」

 イリナちゃんは階段があるのが不思議といった表情をしながらも俺についてきてくれた。

 そして、地下についた俺は扉を開けた。扉の先にはエボルトを除く六人がいた。

 

「おかえり」

「ただいま。アイツは?」

「部屋で何か実験をやってるわよ」

「そうか」

「せ、誠二君....ここにいる人達って....」

 イリナちゃんは六人を見るとどこか警戒した表情をしていた。

 

「堕天使に悪魔、妖怪にドラゴン様だ。俺の仲間だから安心してくれ」

「そ、そうなんだ....」

 そう話していると、俺が入ってきた扉とは別の扉からスタークが入ってきた

 

『おっ、帰ってきたか』

「あ、あなたは!?」

『よっ、さっきぶりだな』

「な、何であなたがここにいるのよ!」

『何でって、俺はそいつの協力者だからな。なぁ、創二』

 そう言いながら、スタークは変身を解除して人間の姿に戻った。

 

「まぁ適当に座れよ。グレイフィア、全員にコーヒー用意してくれ」

「かしこまりました」

 グレイフィアはそう言うと一度部屋から出ていった。

 

「取り敢えず、イリナちゃんは俺の隣に座ってくれ」

「う、うん」

 そうして少し待っていると、グレイフィアが人数分のコーヒーが入ったカップを

 持って部屋に戻ってきた。

 

「どうぞ」

「ど、どうも....あ、美味しい」

「お口にあったなら幸いです」

「さてと、とりあえずイリナちゃんには俺の仲間を紹介するか。まずはさっきコーヒーを

 淹れてくれたのは悪魔のグレイフィア。旧魔王派の全滅を目的としてる」

「よろしくお願いします」

 グレイフィアは立ち上がるとイリナちゃんに一礼した。

 

「次にそこに固まって座ってる三人だが、青髪がカラワーナ、金髪がミッテルト、黒髪が

 レイナーレだ。三人全員が堕天使で堕天使に復讐しようと考えている」

「まぁそういうことだ」

「一応よろしく」

「よろしくっス~」

「で、次はそこに座っている着物の猫耳なんだが....」

「創二、私は自分で挨拶するにゃん」

 そう言うと、黒歌は立ち上がりイリナちゃんの前に立った。

 

「私の名前は黒歌。この名前、あなたは聞き覚えがあるんじゃない?」

「っ!? もしかして、塔城さんの....!」

「えぇ。私はあの子、白音の実の姉よ。一応あの子のことを守ってくれたそうね。

 姉として礼を言うわ。ありがとう」

 そう言うと、黒歌はイリナちゃんに頭を下げた。だが、頭を上げるとイリナちゃんの

 耳元に近づくと何かを言っていた。

 

「っ!? あなた....っ!」

「ま、一応よろしく」

 イリナちゃんは黒歌の謎の発言に目を見開いて驚いていた。だが黒歌は普段と変わらない

 様子だった。

 

「創二、続きどうぞ」

「....あぁ。イリナちゃん、続き始めてもいいか?」

「え、えぇ....」

「じゃあ次にそこに座ってるロリッ娘だが、名前はオーフィス。無限の龍神って

 言われているドラゴンで俺の仲間の中ではNo.2の実力を持っている」

「我、オーフィス。よろしく」

 オーフィスはそう言うとイリナちゃんにトコトコと近づいて行き、手を差し出した。

 

「よ、よろしく....」

 イリナちゃんは差し出された手を握った。すると、オーフィスはこんな事を言った。

 

「我も黒歌と同じ。そこのところよろしく」

「っ....! あなたもなの....!?」

「ん」

 イリナちゃんの言葉にオーフィスは首を縦に振って椅子に戻った。

 

「じゃあ最後に、そこにいる眼鏡をかけた男はエボルト。俺の命の恩人で

 俺の仲間ではNo.1の実力を持つ宇宙人だ」

「ま、そういうこった」

 エボルトは呑気に手を振ってそう言った。

 

「とりあえず、今ここにいる俺の仲間はこれで全員だ」

「そうなんだ....」

 そう言って、イリナちゃんは七人を観察していた。そうしているイリナちゃんに、

 俺は考え抜いて出した答えを聞いた。

 

「イリナちゃん、一つ相談があるんだが良いか?」

「何?」

「イリナちゃんさえよければ、俺の仲間になってくれないか?」

「えっ?」

「俺の、俺達の計画には実力のある者の力が必要なんだ」

「....計画って?」

「あのクズを殺すのと、三大勢力を滅ぼす」

「っ!」

 そう言うと、イリナちゃんの表情は変わった。

 

「俺達を陰から支えてくれている勢力に頼まれたんだ。三大勢力を滅ぼしてくれってな。

 イリナちゃんも知らないわけじゃないだろ? 奴らがこれまで人間に行ってきた愚行の

 数々を」

「まぁね....」

「その愚行についに堪忍袋の緒が切れたみたいでな。俺達に三大勢力を滅ぼすことを

 依頼してきたんだ。手厚いサポートと引き換えにな」

「そうなんだ....」

「一応イリナちゃんに無理強いは....」

「良いわ。私は誠二君に協力する」

 俺の言葉を遮るように、イリナちゃんは覚悟を持った目でそう言ってきた。

 

「イリナちゃん....」

「私の数年間を無駄にされた。その報いは受けてもらわないと気が済まないの。

 それに、あのクズを殺したいのは私も同じよ」

「....」

「創二、こりゃ気持ちがぶれることはねぇぞ」

 エボルトは笑いながら俺にそう言ってきた。

 

「....言われなくてもわかってる。ならイリナちゃん、これから改めてよろしくな」

「こちらこそ。改めてよろしくね、誠二君」

 そう言ったイリナちゃんの笑顔は、昔の笑顔と似ていた。

 

「じゃあ早速だがイリナちゃん、少しついてきてくれ。エボルト」

「あいよ」

 そう言いながら、俺とイリナちゃん、エボルトは部屋を出てエボルトのラボに向かった。

 

 ~~~~

 エボルトのラボ

 

 しばらく歩くと、俺達はエボルトのラボに着いた。

 

「ようこそ、俺のラボへ」

 エボルトのラボは、そこら中に何かの機械や武器が置かれていた。そして、俺達は

 目的の機械の前に立った。その機械は酸素カプセルのような機械だった。

 

「イリナちゃん、ひとまずこのカプセルの中に入ってくれないか?」

「カ、カプセルの中に....? どうして?」

「このカプセルの中にはネビュラガスっていう毒ガスが入っているんだ。その毒ガスを

 自分の中に取り込んで克服すれば人間を超えた力を手に入れることができる。それに、

 俺が変身したビルドにも変身することができるんだ」

 そう言って、俺はポケットからラビットとタンクのボトルを見せた。

 

「その、危険とかはないの?」

「危険と言われれば危険だ。人間によっては消滅する人間もいるからな」

 イリナちゃんの言葉に、エボルトはいつも通りといった様子でそう言った。

 

「しょ、消滅!?」

「おいエボルト!」

 俺は余計なことを言ったエボルトを怒鳴った。

 

「安心しろ。消滅するのはあくまで弱い人間だ。お前さんなら最初は激痛が走るだろうが

 すぐに体にガスが馴染むだろう」

「激痛って....」

「まぁ言うて知れてる痛みだ。安心してカプセルの中に入りな」

「し、信用しても良いのよね....」

「あぁ」

「....信じるわよ」

 イリナちゃんは若干エボルトを疑いながらもカプセルの中に入っていった。そして、

 入り口をロックするとエボルトは近くにあるパソコンのキーボードを叩き出した。

 

「お前、変に不安がらせることを言うなよ....」

「念のために事実は伝えたほうがいいだろ?」

「....否定はしないが」

「だろ?」

「はぁ....」

「んじゃ、そろそろガスを流すぞ。激痛が走っても耐えろよ」

 エボルトはカプセルの中にあるスピーカーに繋がっているマイクに向かってそう言うと

 カプセルの中にガスを流し込んだ。そうして少しすると、カプセルから何かを叩いたり

 殴ったりする音が聞こえてきた。

 

「....頑張れ」

「ほぉ、こいつはなかなかだな」

 俺がカプセルに祈っていると、隣にいるエボルトはそう言った。

 

「何がなかなかなんだよ」

「ネビュラガスへの耐性だ。ハザードレベル4.7。最初からここまで高い人間は初めてだ。

 こいつは磨きがいがある」

 そう言いながらエボルトは別の場所に置かれている謎の液体が入っているカプセルを

 見ていた。すると、イリナちゃんが入っているカプセルから音が鳴った。カプセルの扉は

 自動的に開き、中から汗だくのイリナちゃんが出てきた。

 

「はぁ、はぁ....」

「だ、大丈夫かイリナちゃん?」

「え、えぇ....最初は本当に死ぬかと思ったわ....」

 イリナちゃんは息を切らしながら俺にそう言ってきた。

 

「と、取り敢えずお風呂まで送るわ。エボルト、イリナちゃん用のボトルを作って

 おいてやってくれ」

「はいはい、って言いたいところだが....紫藤 イリナ、お前の持ってる擬態の聖剣を

 少し俺に貸せ」

「擬態の聖剣を?」

「あぁ。お前用のボトルを作るのに必要だからな。終わったら返すから安心しろ」

「わかったわ」

 イリナちゃんはそう言うと、腕から擬態の聖剣を外すとエボルトに手渡した。

 

「確かに預かった」

「じゃ、行こうかイリナちゃん」

「えぇ」

 そう言って、俺とイリナちゃんはラボを出て風呂場のほうに向かった。

 

 ~~~~

 エボルトside

 

「さて....」

 俺は受け取った擬態の聖剣を手で回しながら目の前の培養液に入れてある聖剣の欠片を

 見た。

 

「(聖剣は全部で七本。欠片も合わせれば一応六本で足りないのは....)」

 そう思いながら、俺はある奴に電話を掛けた。

 

「あぁ、もしもし俺だ。少し頼みがあるんだが....」

 

 

 

 

 

 

 

 



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幕間
話し合いという名の言い争い


 イリナちゃんが俺達の仲間になった次の日、俺は普通に学校に来ていた。

 

「(あれだけボロボロだったのを一日で直すとは....流石は会長って言ったところか)」

 校舎の前で、俺は何となく会長が直したのだと思いそう考えていた。すると....

 

「っ! 石動先輩....」

 背後から震えるような声が聞こえてきた。振り向くと、そこには驚いた表情の塔城がいた。

 

「よぉ、塔城」

「....よく学校に来れましたね」

「そいつはどういう意味だ」

「昨日のこと....忘れたわけではないですよね? 学校に来れば部長や変態先輩に確実に

 目を付けられますよ」

「言われなくてもわかってるっての。どうせ連行されるのは目に見えてる。放課後だったら

 時間があるから話してやってもいいって言っとけ」

「....わかりました。部長に伝えておきます」

「じゃ、また放課後にな」

 そう言って、俺は塔城と別れて自分の靴置き場に向かった。

 

 ~~~~

 

 授業を受けているうちに放課後になった。すると、クズ兄が俺に近づいてきた。

 

「おい石動。昨日のことだが....」

「俺に話しかけるな性犯罪者。いや、ここは悪魔って言ったほうがよかったか?」

「っ!? やっぱりお前は昨日の!」

「そのことなら今から話しに行く。というか、ちょうど迎えが来たか」

 そう言って教室の入り口を見ると、教室の入り口に塔城がいた。

 

「石動先輩、来ましたよ」

「おう。わざわざご苦労さん」

「こ、小猫ちゃん!?」

「....名前で呼ばないでください、変態先輩」

「グフッ!?」

 塔城は冷めた目でクズ兄のことを見ていた。

 

「石動先輩、そこの人のことは放っておいて行きましょう」

「あぁ....って言いたいんだが、少しだけ寄り道していいか?」

「寄り道、ですか?」

「あぁ。話し合いするには役者が足りないからな」

「....?」

 そう言って、俺はある場所に向かって歩き出した。

 

 ~~~~

 生徒会室

 

「邪魔しますよ会長」

 俺はノックもせずに生徒会室に入っていった。生徒会室には会長と副会長、それと

 会長の眷属である五人の女子生徒と、俺が知らない男が一人いた。

 

「邪魔をするなら回れ右して帰ってください」

「はいはい....って、そうじゃなくて、会長に話があって来たんですが」

「私に話ですか?」

「おいお前! 会長はお忙しいんだ! 話があるのならアポを取って....!」

 すると、俺が知らない男がそう言ってきた。

 

「すぐに終わるから少し黙ってな。....会長、昨日の夜の学校の件について話が

 あるんですが」

 そう言った瞬間、生徒会室の空気は変わった。

 

「....それはどういう意味ですか?」

「どういう意味もそのままですよ。昨日の堕天使を倒した人間の正体、知りたいですよね?」

 俺は会長の目を見てそう言った。

 

「....何かを知っているんですか?」

「えぇ。今からそれを塔城のご主人に話に行くんでね。会長も聞いておいたほうが

 良いと思ったんですよ」

 そう言うと、会長は呆れたようにため息をついた。

 

「....わかりました。なら、私達も同行しましょう。みんな、今の仕事を中断して私達も

 行きましょう」

「会長! コイツの言うことを信用するんですか!」

 すると、さっきの男が再び突っかかってきた。

 

「サジ、彼は滅多なことがない限り自分から噓をつかない人間です。それに、昨日の件に

 ついてリアスに聞きたいこともできましたからね」

 そう言った会長の目はどこか冷めた目をしていた。

 

「じゃ、行きますか」

 そう言って生徒会室から出て、俺は塔城の案内で旧校舎に向かった。

 

 ~~~~

 旧校舎

 

「やっと来たわね。遅かった....って、何でソーナたちがいるのよ!」

「石動君がわざわざ生徒会室に来てくれたんですよ。それよりもリアス、昨日はよくも

 私を騙してくれましたね」

 旧校舎の一室に入った瞬間、グレモリーは会長がいることに驚き、会長はグレモリーを

 睨みつけていた。

 

「べ、別に騙してたわけじゃ....」

「なら、何故昨日校舎に入っていった人が石動君だと私に教えなかったのですか?」

「そ、それは....」

「あぁー、会長。話が長くなるなら後でしてもらってもいいか? 俺も早く話を終わらせて

 帰りたいんだよ」

 何となく話が長くなりそうだと思い、俺は会長にそう言った。

 

「....そうですね。リアス、あとでしっかりと話をさせてもらいますよ」

「え、えぇ....」

 会長は少し怒った様子でそう言った。それを聞き、俺はグレモリーが座っている前に

 あるソファーに座った。

 

「さてと、俺はさっさと話しを終わらせて帰りたいんだ。聞きたいことがあるなら

 早く聞け」

「っ! だったら聞かせてもらうわ。あなたは何者! それにコカビエルの変化した姿に、

 あのワイン色の鎧は何者なの!」

 グレモリーはまくしたてるように聞いてきた。

 

「まぁ一つづつ答えていくか。まずあのワイン色の鎧の男の名前はブラッドスターク。

 人間や悪魔や堕天使を使って人体実験を行っている謎の存在だ」

「人体実験、ですか?」

 会長は不思議そうに首をかしげていた。

 

「あぁ。それと、俺もやつの人体実験の被害者だ」

「っ!?」

 すると、この部屋にいる悪魔全員の表情は驚愕の表情に変わった。

 

「言っとくが嘘じゃねぇからな」

「石動先輩。石動先輩が昨日変身した姿もそれに関係しているんですか?」

 話を聞いていた塔城は思いついたようにそう聞いてきた。

 

「良いところに気づくな。あの姿は俺が人体実験に耐えて奴から奪った力だ」

 俺はそう言いながらビルドドライバーを取り出して腰に当てた。

 

「一応会長にも見せておくか」

 そう言いながら、俺はラビットボトルとタンクボトルをベルトに挿し込んだ。

 

ラビット!  タンク!  ベストマッチ!

 

 音が鳴ると俺はベルトのレバーを回して呟いた。

 

Are you ready?

 

「変身」

 

鋼のムーンサルト!  ラビットタンク!  イエーイ!

 

 俺の前後にはプラモランナーが現れ、プラモランナーに挟まれると俺の姿は赤と青の

 ビルドに変わった。

 

『これが俺がブラッドスタークから奪った力。俺はビルドって呼んでいる』

「ビルド....」

「創る、形成するですか....」

「っ! その力は危険よ! だから私に....!」

 俺はくだらないことを言おうとしたグレモリーにドリルクラッシャーのガンモードで

 グレモリーの顔の横に向かって弾丸を放った。

 

『くだらないことを言うのならここで消してもいいんだぞ。俺は悪魔が嫌いなんでな』

 そう言うと、グレモリーは額から汗を流していた。

 

「テ、テメェ! 部長に何を....!?」

『黙ってろ性犯罪者。その頭消し飛ばすぞ』

 俺はそう言いながら銃口をクズ兄に向けた。

 

『何を言おうとしたのかは大体想像できるが、この力は現状俺しか使えねぇよ』

「ど、どうしてよ!」

『この力を使うにはハザードレベルが3.0以上必要だ』

「石動先輩、ハザードレベルっていうのは....」

『ハザードレベルはブラッドスタークが人体実験に使うネビュラガスっていう毒の

 耐性のことだ。一応今の俺はハザードレベル4.9らしいからな。そこの無能に性犯罪者、

 会長もだがネビュラガスを吸ったことがないだろ。だからこのベルトは使えない。

 もしも3.0以下の奴が使えばベルトから電流が流れるし、そもそもネビュラガスを

 吸った時点で怪物になるかこの世から消滅する。昨日の堕天使もハザードレベルが

 低かったから俺が倒した瞬間に消滅したんだろうな』

 俺は昨日のこと思い出しながらそう言った。

 

『ま、ひとまずお前が聞きたいことは答えてやったんだ。このまま帰ってもいいが、

 会長はなんか聞きたいことがあるか?』

「そうですね....」

 そう言って、会長はしばらく考え込みだした。

 

「では、三つほどいいですか」

『まず、ブラッドスタークの目的は? 次にブラッドスタークに仲間は? 最後に、

 石動君。あなたは何が目的なのですか?」

『....流石会長。どこかの誰かと違って冷静な質問だな』

 俺はそう言いながらグレモリーのほうを見た。グレモリーは怒りの目で俺を睨みつけていた。

 

『取り敢えず、会長に悪いが奴の目的は俺にもわからない。あまりにも行動に一貫性が

 見つからないからな。わかってるのはこの街にいる悪魔にネビュラガスを流し込んで

 何かの実験を続けてるってことぐらいしかわからん』

 俺は睨みつけているグレモリーを無視して会長にそう言った。

 

『次に奴の仲間だが、俺が知っているのはブラッドスタークを合わせて四人。

 一人は俺と同じベルトでドラゴンみたいなやつ。一人は魔法使いみたいなやつ。

 そして一人は姿かたちはわからないがブラッドスタークに指示を出してるやつ。これが

 俺の知っている奴の仲間だ。まぁ他にもいるかもしれないが....で、最後に俺の目的だが

 俺の身体を改造したブラッドスターク達全員をこの手で殺すことだ』

「....そうですか。貴重な情報をありがとうございます」

『お役に立ったなら何よりだ。んじゃ、俺は帰りますよ』

 そう言って、俺はこの部屋から出ようとしたのだが....

 

「待ちなさい!」

 俺はグレモリーに呼び止められた。

 

『....何だ』

「あなた、私の眷属になる気は....」

『ない』

 俺は最後まで言う前にそう言った。

 

「さ、最後まで言わせなさいよ!」

『誰がテメェみたいな無能で雑魚の下僕にならなきゃならねぇ。ていうか、さっきも

 言っただろ。俺は悪魔が嫌いなんだ』

「おい石動! お前、いくらなんでも言っていい事と悪い事があるだろ!」

 すると、クズ兄はキレたようにそう叫んできた。

 

『やっていい事と悪い事の分別がつかないテメェが言うな性犯罪者。そもそも、そこの

 無能のせいでどれだけの人間が死んだと思っている。それにこの街に人外が多いのも

 そこの無能が管理がしっかりと行き届いてないからだろうが。結構前の廃工場のことや

 廃教会のこと忘れたのか』

「部長だって頑張ってるんだよ! その頑張りを知らないお前が言うな!」

『ほぉ....頑張ってたら人間が死ぬのは仕方ないと』

「そ、そこまでは言ってないだろ!」

『言ってる事はそういう事なんだよ性犯罪者。....テメェと話してると本当にイライラ

 してくる』

 俺はそう言いながらドリルクラッシャーをブレードモードに変えてクズ兄に向けた。

 

『あまり俺を怒らせるな。....本気でここで消してもいいんだぞ』

 そう言って殺気を放つと、この部屋にあるガラスや窓が全て割れた。

 

「わ、わかったわ! 眷属するのには諦めるから、せめてこの部活には入って! あなたを

 監視しておかないと、野放しにしておくのは危険すぎるわ!」

『町の管理をできてないやつがふざけたことをぬかすな。....そもそも、監視って言うが

 俺が暴れたらお前らの中で誰が俺を止められる』

「っ! イッセーが本気を出せばあなたなんて簡単に止められるわ! そうよねイッセー!」

「当たり前です部長! コイツなんて俺とドライグが力を合わせれば一瞬です!」

『ほぉ....なら、俺と一戦交えるか? お前が勝てばそっちの条件をのんでやるよ。

 ただし、負けたら変に俺に絡んでくるな』

「良いぜ! やってやるよ!」

『....てなわけで、会長。審判頼んでもいいすっか?』

「....はぁ。まぁいいでしょう」

 会長はどこか呆れた表情でそう言ってくれた。

 

『さて、じゃあ表でやろうか』

 俺はそう言って旧校舎の外に向かった。



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龍の兄VS人外の弟

 ソーナside

 

「塔城さん、少し良いですか」

 兵藤君と石動君の勝負が始まる前、私は塔城さんに話しかけた。

 

「どうしたんですか、ソーナ先輩」

「....石動君が昨日、コカビエルを一瞬で倒したというのは事実なんですよね」

「はい」

「ならばこの勝負、どちらが勝つかは....」

「100回やったら100回石動先輩が勝つと思います。石動先輩、多分昨日も本気で

 戦っていなかったんじゃないかと思います」

「(コカビエルに本気じゃない....? 塔城さんが嘘を言うとは思いませんが....

 石動君の実力というのはどのくらいのものなのでしょう....)」

 私は塔城さんの話しを聞いて、石動君の強さがひそかに気になってしまった。

 

「ソーナ! こっちの準備はできたわ! 始めてもらえるかしら」

「えぇ、わかりました」

「(石動君。あなたの強さ、見させてもらいますね)」

 

 ~~~~

 創二side

 

「お二人とも、準備はよろしいですか?」

『いつでもどうぞ』

「はい!」

「では、私の合図で始めてください。勝負はどちらかが気絶すれば終わりです。ですが、

 これ以上は私が危険と判断した場合強制的に試合を終わらせます。良いですね?」

『了解』

「わかりました」

『(さぁて、どいつで痛めつけるか)』

 会長の話しを聞いて、俺はどのベストマッチで戦うか考えていた。

 

「それでは、勝負! 始め!」

 すると、会長が勝負を始める合図を叫んだ。

 

「行くぜドライグ。赤龍帝の籠手!」

 クズ兄がそう叫ぶと、クズ兄の左腕に赤い籠手のようなものが装備された。

 

『(赤龍帝の籠手....二天龍とか言われてるやつの片割れか。確か能力は倍加だったな)』

 俺は昔、オーフィスに教えてもらった事を思い出していた。

 

「行くぞ石動!」

 そう叫び、クズ兄は殴りかかってきた。俺はその攻撃を避けながらどのベストマッチを

 使うか考えていた。そして、クズ兄の籠手が15回"Boost!"と叫ぶと何か腕に力を溜め始めた。

 

『(....よし。これで行くか)』

 そう思い、俺は昨日スタークから貰った二本のボトルを振ってベルトに挿し込んだ。

 

フェニックス!  ロボット! ベストマッチ!

 

 そうして、ベルトのレバーを回し始めたが....

 

「おせぇよ! 食らえ、ドラゴンショット!」

 そう叫んで、クズ兄は俺に向かってレーザーを放ってきた。

 

 ~~~~

 小猫side

 

「石動先輩!」

 石動先輩は変態先輩が放ったレーザーに直撃していた。直撃した場所は爆発して巨大な

 炎が上がっていた。

 

「(まさか、石動先輩が....!?)」

「よっしゃ! 部長! あいつを倒しましたよ!」

「えぇ! よくやったわイッセー!」

 そう言って二人は喜んでいたのだが、ソーナ先輩は試合終了と一言も言わなかった。

 それどころか、ソーナ先輩を見ると石動先輩がいた場所をじっと見ていた。すると、何か

 驚いた表情をしていた。私も石動先輩がいた場所を見ると、そこに上がっていた炎が突如

 渦を巻き始めた。そして炎は石動先輩がいた場所に集まり、炎は形を成していった。

 すると、そこには先程の赤と青のビルドじゃない別のカラーリングのビルドが現れた。

 そのビルドは左腕は巨大な黒いアームで、右腕に赤い武器のようなものが付いており

 背中には赤い羽が生えていた。そして、ベルトからこんな軽快な音が流れた。

 

不死身の兵器! フェニックスロボ! イェーイ!

 

 ~~~~

 創二side

 

「な、何で無事なの!? イッセーのドラゴンショットを受けておいて!」

「そ、そうだ! さっきの攻撃は確実に....!」

『残念だったな。お前の攻撃が当たる前にフォームチェンジは終わってたんだよ。

 そして、お前の攻撃は炎になって避けさせてもらった』

 そう言って、俺は右腕を炎に変えた。

 

「嘘だろ....!」

『さて、お前の動きは見切ったしこっちもそろそろ攻撃させてもらおうか!』

 そう叫び、俺は地面を蹴って左腕でクズ兄の顔面を殴った。

 

「グフッ!?」

『おいおいどうした? さっきの威勢はどこに行った』

 そう言いながら、俺はクズ兄の周囲に火の粉を巻き爆発させた。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 クズ兄は情けない声を上げながら地面を転がっていた。

 

『はぁ....威勢がいいのは最初だけか。これ以上時間をかけても無駄だな』

「....ざけんな」

『あぁ?』

「ふざけんなぁぁぁ!!!!」

 クズ兄がそう叫んだ瞬間、クズ兄の身体に真っ赤な鎧が装着された。

 

『Welsh Dragon Over Booster!』

 

「石動ぃぃぃ!!!」

 クズ兄は叫びながら俺に向かって真っすぐに突っ込んできた。

 

『....はぁ』

 俺はそれを左腕のアームで受け止めて離されないようにガッチリと固定した。

 

「っ! 離しやがれ!」

『やなこった。てか、これで終わりにしてやるよ』

 そう言って、俺は右腕でベルトのレバーを回し始めた。すると、俺の身体は炎に包まれ、

 掴んでいる腕からクズ兄も炎に包まれ始めた。

 

『さて、お前はこの爆発に耐えられるといいな』

「ば、爆発って! お前何する気だ!」

『自分の身で味わえ』

 

Ready go! ボルテックフィニッシュ! イェ-イ!

 

 その言葉と最後に、俺はクズ兄を巻き込んで大爆発を起こした。

 

 ~~~~

 ソーナside

 

「(っ!? 何て威力ですか....)」

 私は目の前で起きたことに言葉が出なかった。一瞬にして兵藤君を追い詰め、さらには

 赤龍帝の鎧を纏った兵藤君の攻撃を片手で受け止めてそのまま自爆を起こした。そして、

 自爆を起こした場所には巨大なクレーターが出来上がっていた。私がクレーターに

 近づくと、そこには血だらけの兵藤君が倒れていた。だが、何故かそこに石動君の姿は

 なかった。

 

「(石動君は何処に....)」

 そう思って辺りを見渡すと、突然私の近くに無数の小さな火の粉が現れた。そして、

 その火の粉が集まると火の粉が石動君が変身した姿になった。

 

『会長、勝負は俺の勝ちでいいだろ?』

 身体に一切傷を負っていない石動君は普段の様子で私にそう言ってきた。

 

「....えぇ。リアス、この試合は石動君の勝ちです」

「ありえない....! あなた、どうやってイッセーだけを!」

『自爆した時に俺は炎になって爆発から逃れただけだ。まぁいわゆる、ウルトラダイナマイト

 ってところだな。それよりも、あのまま放っておいて良いのか?』

 石動君はクレーターのそこで倒れている兵藤君を指さしてそう言った。すると、リアスは

 唇をかみしめながらも兵藤君を拾いに行き、アーシアさんに回復するように言っていた。

 すると、石動君はクレーターの近くに近づき、地面を足で叩いた。すると、クレーターが

 あった場所は元の地形に戻っていった。これには、この場にいる全員が目を見開いて

 驚いていた。

 

「(これは末恐ろしいですね....あの破壊力のある攻撃にこの再生力。眷属であるならば

 どれだけ頼もしい事か....)」

 私は不謹慎ながらも石動君の力を見てそう思ってしまった。

 

『さて、終わったことだし俺は帰っても良いですよね会長』

「え、えぇ。かまいませんよ」

 私は突然声をかけられたので驚きながらそう答えた。

 

『じゃ、お疲れ様でした』

 そう言って石動君が背を向けて歩き出した時、石動君に向かって赤い何かが飛んで行った。

 よく見てみると、それはリアスが所有している悪魔の駒だった。

 

「っ!?」

「(リアス....! まさか強制的に彼を眷属に!)」

「石動君! 避けて....!」

 私がそう叫んだのと同時に、石動君はこちらを見ずに飛んで行った悪魔の駒を手で

 キャッチして握り潰した。

 

「っ!? 噓でしょ!?」

『....はぁ。めんどくせぇな』

 そう呟きながら石動君はこちらを向き何か考え込み始めた。すると、何かを思いついたのか

 私に近寄ってきて驚くべきことを言った。

 

『なぁ会長。あの件ってまだ有効か?』

「あの件とは?」

『生徒会に入るって件だよ』

「っ!」

 その言葉を聞いて、私は息をのんだ。

 

『まだ有効ならでいいんだがな』

「そ、それはもちろん有効ですが....何故急に....」

『会長が近くにいればあの無能は下手に俺に手が出せないだろ。もちろん、生徒会を

 都合のいい盾として使わせてもらうんだ。面倒ごとがあった場合の対処や生徒会の雑務も

 全部引き受けよう。それに、会長からの頼みなら少しぐらいの無茶ぶりも聞こう』

「(これは....思いがけないほどラッキーな事では? 彼が生徒会に入れば生徒会や学園、

 私にとってもメリットしかない....)」

『それで、この条件でどうだろうか?』

「....わかりました。では、明日から生徒会の業務に参加してください」

「会長!?」

 すると、驚いた表情で副会長の椿姫が私の耳元に近づいてきた。

 

よろしいのですか? 彼を生徒会に入れて

考えてもみなさい椿姫。これ以上リアスが余計なちょっかいをかければさっきの

兵藤君よりひどいことになるのが目に見えます。ここは彼をこちらで保護したほうが

学園や私達のためになります

....確かに

でしょう?

 そう言うと、椿姫は私から離れていった。

 

「では石動君。明日からお願いしますね?」

『了解しましたよ。会長』

 そう言って、石動君は変身を解除して正門のほうに向かって歩いて行った。

 

「(さて、あとはこっちですね)」

 そう思いながら、私はリアスのほうを見た。

 

「さてリアス。今から少しお話しをしましょうか」

 その時、リアスの目は恐怖で歪んでいた。

 

 

 

 

 



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戦いのその後/七本目の聖剣を求めて

 会長に生徒会に入ると言って五日が経った。生徒会の仕事は特に難しいと

 いうことはなく、順調に仕事を進めることができていた。そして、俺は会長に

 ある特別な役職を任されていた。それは....

 

「石動君! ここなんだけど....」

「ここか。....確かに中が見えるな。すぐに穴の方は塞いでおく」

「本当! ありがとう!」

「気にすんな。あの馬鹿どもの対処は会長から全部俺に一任されたからな。

 塞ぐまでだったらあそこに縄で縛ってる馬鹿どもは好きにボコっていいからな」

「わかったよ。皆行くよ」

 あの三馬鹿どもの対処と、三馬鹿が覗きを行う穴の修繕作業だ。意外にもこの学園の

 女子更衣室や女子トイレ、部室などには覗きができるような小さな穴が多々ある。

 その穴を一つ一つ修繕するのを俺は会長に任されていた。そして、今日は剣道部の

 女子更衣室に来ていた。

 

「さてと....」

 俺は持ってきた木の板と工具箱を地面に広げて穴を塞ぐぐらいの大きさに木の板を

 切った。そして、穴の開いてある場所に木の板を合わせて強力接着剤と釘で固定した。

 

「あとは....」

 俺は壁と同じ色にしたペンキで塞いだ所を塗り、[ペンキ塗りたて]の紙を横に貼っておいた。

 

「(これで終わりだな)」

 そう思い、俺は床に広げた物を片づけて木くずを掃除して更衣室から出た。そして、

 剣道部の女子が集まっている場所に向かった。そこではボコボコにされている三人がいた。

 

「おーいお前ら。そこまでにしとけ」

「石動君!」

「取り敢えず穴は塞いだ。だがペンキが乾いてないから服に付かないように気をつけろよ」

「わかったよ。ありがとう石動君!」

「あぁ。部活頑張れよ」

 礼を言われた俺はそう言って、縄で縛った三馬鹿を引きずって校舎の方に戻った。

 

 ~~~~

 

「戻りましたよ会長」

 職員室の生徒指導の担当に三馬鹿を引き渡した俺は生徒会室に戻ってきた。

 

「お疲れ様です石動君」

 生徒会室に入ると、会長と会長の眷属全員が揃っていた。

 

「会長、俺がなんか手伝うことあるか?」

「そうですね....ではこちらの書類の整理をお願いします」

 そう言って会長は積まれている書類を見ながらそう言ってきた。

 

「わかった」

 そう言って、俺は書類の束を整理し始めた。すると、整理していた書類の中に驚くような

 書類を見つけた。

 

「(っ! これは....)」

 

 ~~~~

 

「おいエボルト。イリナちゃんを学園に入れるなんて聞いてないぞ」

 生徒会の仕事が終わった俺は荷物も置かずにエボルトのラボに入ってそう言った。

 

「おっと、何でお前が知ってるんだ?」

「生徒会の書類を整理してる時に転入届があったからだ。てかなんだ、石動 イーナって。

 もうちょっと名前はどうにかならなかったのか」

「仕方ねぇだろ? ちょうどいいのが思いつかなかったんだよ」

「....はぁ。まぁ名前の方は良いが、何でイリナちゃんを学園に入れた」

「何でって....イリナは年齢的に一応学生だろ。そんな奴を学校に通わせなくてどうする」

 エボルトは至極真っ当なことを言ってきた。

 

「....」

 その言葉に俺は唖然として何も言えなくなった。

 

「安心しろ。バレねぇようにこっちで色々とやっておいた。紫藤 イリナってバレる事は

 ねぇよ」

「(そういう問題か....?)」

 そう考えていると、ラボにイリナちゃんが入ってきた。

 

「来たわよエボルト....って、おかえりなさい創二君!」

「あぁ、ただいまイリナちゃん」

「おっ、来たかイリナ。創二もいるからちょうど良いな。お前ら二人、今すぐここに行ってこい」

 そう言って、エボルトは俺に座標が書かれた紙を投げてきた。

 

「どこだよこの座標....」

「イギリスの山の中の廃村だ」

「イギリス? 何でまた....」

「その廃村にあるんだよ。七本目の聖剣がな」

「っ!?」

 すると、イリナちゃんが驚いたような表情をした。

 

「そういうわけで、お前らには今から回収に行ってもらいたいんだよ」

「イリナちゃんは分かるが、俺が行く意味は?」

「お前は念のための護衛だ。何かあった時のな」

「そういう事か....」

「行けばすぐわかるはずだ。じゃ、さっさと行ってこい」

 そう言うと、エボルトは俺にトランスチームガンを投げてきた。

 

「はぁ....わかった。イリナちゃん、少し待っててくれ」

 俺はそう言って部屋に戻り、動きやすい服装に着替えた。

 

「よし。行くかイリナちゃん」

「えぇ」

 そうして、俺とイリナちゃんはトランスチームガンから出した煙の中に消えた。

 

 

 

 

 

 



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聖剣使いVS聖剣使い

 煙が晴れると、俺とイリナちゃんはどこかの森の中にいた。

 

「ここで合ってるの?」

「あぁ。座標からは少しずれてるが、近くに廃村があるはずだ」

 そう言いながら、俺はビルドフォンで位置を確認していた。

 

「取り敢えず進もうか」

 そう言って、俺は廃村がある方に進んでいった。

 

 ~~~~

 

「そういやイリナちゃん、何で学校に通うことになったんだ?」

 廃村に向かって歩いている時に俺はイリナちゃんにそう聞いた。

 

「その、エボルトとグレイフィアさんが今後の事を考えると高校は行っておいた方が

 良いって言われてね。いざやりたいことができた時に高卒じゃないと不便だろうからって

 理由で通うことになったの」

「そうか....あの二人がか」

「私も最初は遠慮したんだけどね。二人とも気にするなって言われて。それに....」

「それに?」

「そ、その....創二君と一緒に学校に通ってみたかったから....」///

「そ、そっか....」///

 イリナちゃんの言葉を聞き、俺は顔が少し熱くなった。イリナちゃんを見ると、イリナちゃんも

 顔を赤くしていた。そんな少し気まずい空気の中だったが俺とイリナちゃんは目的地の廃村に

 着いた。

 

「ここが目的地の廃村?」

「あぁ。あとは聖剣がどこにあるかだが....」

「それならあっちの方だと思う」

 イリナちゃんはそう言いながら、何か大きな建物の方を指差した。

 

「あの建物の中から聖剣特有の気配を感じるわ」

「あの建物か....」

 イリナちゃんがそう言うので、俺とイリナちゃんは建物に近づいていった。

 近くで見るとその建物は教会の様な建物だった。

 

「教会か」

「とりあえず入ってみない?」

「そうだな」

 そう言いながら、俺とイリナちゃんは警戒しながら協会の扉を開いて中に入った。中は

 荒れに荒れており、そこら中に物が散らばっていた。だが、教会の中心部分だけは一切物がなく

 一本の剣が台座に刺さっていた。

 

「アレは....」

「間違いないわ....あれが、七本目の聖剣」

 イリナちゃんは台座に近づき、聖剣を台座から抜いた。すると、聖剣の刀身は光り出し、

 イリナちゃんの持つボトルと擬態の聖剣と共鳴を始めた。だが、それと同じタイミングで俺は

 教会の入り口から誰かの気配を感じた。

 

「そこにいる奴、大人しく出て来い」

 俺はそう言いながらトランスチームガンを入口の方に向けた。すると、扉の外から

 金髪で腰に剣を差した男が現れた。

 

「気づかれてしまいましたか」

「そんだけ濃密な気配を発してたら気づくわ。....で、お前は何者だ?」

「私はアーサー・ペンドラゴン。かの騎士王アーサー王の末裔です」

「騎士王アーサーに子孫がいるのは初耳だな....」

「おっと、そうでしたか。....それで、あなたとそちらの聖剣と共鳴している方の

 お名前を伺っても?」

 アーサーは俺とイリナちゃんを興味深そうに見ながらそう聞いてきた。

 

「まぁ、名乗られたなら名乗り返すのが礼儀だな。俺は石動 創二。

 三大勢力を滅ぼす者だ。で、こっちは紫藤 イリナ。俺の仲間で元教会の

 聖剣使いだ」

「っ! 三大勢力を滅ぼす者、ですか。面白い事をおっしゃいますね。

 それに教会の聖剣使いですか....」

 アーサーは俺とイリナちゃんの素性にどこか驚いた表情をしていた。

 

「見たところ、あなた方もその聖剣が目的でここに?」

「その言い方から察するにお前もか」

「えぇ。先客がいるのには驚きましたが」

「それは悪かったな。俺達としても、最後のこの一本はどうしても必要でな」

「そうですか....では、譲ってもらうのは難しそうですね」

「いや、別に譲ってやっても良いぞ。なぁイリナちゃん」

「まぁ、統合さえできたら私は必要ないけど....」

「えっ?」

 俺とイリナちゃんの言葉に、アーサーはキョトンとしていた。

 

「正直な話、聖剣の欠片があれば俺達は十分だ。だが、聖剣の統合に欠片だと

 やりにくいらしいからな。本体を一度実験に使って終わったら

 お前に譲っても良いぞ」

「なんと! よろしいのですか?」

「まぁな。ていうか、アーサー。お前、良かったら俺達の組織に入らないか?」

 俺はここまで話していたアーサーにそう言ってみた。

 

「あなたの組織にですか?」

「あぁ。お前、見たところ強い奴と戦いたいんだろ? さっきから俺に向かっての

 殺気が凄いからな」

「....バレていましたか」

「あぁ。俺達は近い未来、三大勢力をこの世界から滅ぼす。そのためには戦える人間が

 欲しいんだが人数不足でな。お前みたいに信用できそうで強い人間には是非協力を

 して欲しいんだ」

「そのように評価していただくのは嬉しいものですね」

「こう見えて人を見る目はあるんでな。....で、どうだ?」

「そうですね....入るのは良いのですが一つ良いでしょうか?」

「何だ?」

 すると、アーサーは腰に差した剣を俺に向けてきた。

 

「あなたの力、私に見せていただけますか? 私は誰かに仕える時は自分より

 強い相手と決めていますので」

「なるほど。それぐらいならいくらでも....」

「創二君。その勝負、私が引き受けも良い?」

 俺がアーサーの言葉に返そうとした時、突然イリナちゃんがそう言ってきた。

 

「イリナちゃん?」

「相手は聖剣使い。だったらここは同じ聖剣使いの私が相手をするわ。それに、私も

 自分自身の力を試したいの」

「て、言ってるんだが。どうだ?」

「構いませんよ。あなたもかなりの実力の持ち主のようですし。もしも私が勝てば、お相手を

 していただいても?」

「わかった。取り敢えず、やるなら外に出るぞ」

 そう言って、俺達は外に出てそこそこ広い所に向かった。そして、二人は少し距離をとって

 対峙し、俺は少し離れた所で様子を見ていた。

 

「んじゃ、二人が剣を抜いて構えたら合図する。それが勝負始めの合図だ」

「わかりました」

「わかったわ」

 そう言うと、イリナちゃんはスクラッシュドライバーを取り出して腰にかざした。すると、

 ドライバーは腰に巻き付き、イリナちゃんは一本の長いボトルを取り出してキャップを

 前に向けた。そして、イリナちゃんはボトルをベルトに挿し込んだ。

 

シャイニング!

 

エクスカリバー!

 

「変身!」

 そう叫び、イリナちゃんがベルトのレンチを降ろすと、イリナちゃんはビーカーに包まれ、

 ビーカーの中には白い液体が流れ込んだ。そして、液体が満タンになるとビーカーの周りに

 六本の光の聖剣が現れ、ビーカーに突き刺さり、イリナちゃんを包んでいたビーカーは

 音を立てて割れた。そして、割れた場所には白を基調とした剣士のような鎧を纏った

 イリナちゃんがいた。

 

斬れる! 斬り裂く! 斬り伏せる! パラディンinエクスカリバー! セヤァ!

 

「っ! その姿は....」

『これが私の力....仮面ライダーパラディンよ』

 そう言いながら、イリナちゃんは腕に巻かれている擬態の聖剣を剣に変えて構えた。

 

「面白い....! その力、私の聖王剣コールブランドの力を試すには最高の相手です!」

 そう言いながらアーサーも腰の剣を抜いた。

 

「じゃ、勝負始め!」

 そう言った瞬間、二人の剣は目にもとまらぬ速さで中心でぶつかった。

 

 

 

 



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決着と新たな仲間

「....」

「(剣の腕前は互角って言ったところか)」

 俺は少し離れた所から二人の戦いの様子を見ていた。二人の剣の腕前はほぼ互角で、

 お互いに決め手となる一撃を探っているようだった。

 

「(それよりも....)」

 俺は上空に目を向けた。俺の上空には箒に乗ったいかにも魔女っぽい女の子が二人の

 戦いを見ていた。

 

「(あの女の子、アーサーの親戚か?)」

 そう思いながら、俺はポケットからタカボトルを取り出して振り背中に翼を生やして

 女の子の近くに飛んだ。

 

「こんな所で何やってるんだ?」

「わひゃ!?」

 そして、後ろから声をかけると女の子は変な声を上げてバランスを崩して箒から落ちそうに

 なった。

 

「っ!」

 俺は咄嗟に女の子の腕を掴み地面に落下するのを防いだ。

 

「大丈夫か?」

「は、はい....ありがとうございます....」

「大丈夫なら良いんだが....」

 そう言いながら、俺はゆっくりと地面に降りた。

 

「で、お前は何者だ? アーサーの親戚か?」

「わ、私はルフェイ・ペンドラゴンです。あそこで戦っているアーサー・ペンドラゴンの

 実の妹です」

「アーサーの妹か。俺は石動 創二。あそこでアーサーと戦っている人間の仲間だ」

「い、石動さんですか。そ、それよりも、どうしてお兄様は戦って....」

「あぁ....それはな....」

 俺がルフェイに話そうと思った時、戦ってる二人から濃密な殺気を感じた。

 

「取り敢えず、次の一撃で終わりそうだし決着がついたら話してやるよ」

「コールブランドォォォ!」

 

クラックアップフィニッシュ!

 

『はぁぁぁ!』

 そう言った瞬間、二人は必殺技を放ち剣と剣とがぶつかった。ぶつかった場所からは砂煙が

 起こり、二人の姿は見えなくなった。そして少しすると砂煙が晴れ、そこには大の字で

 倒れているアーサーと変身を解除したイリナちゃんがいた。

 

「お兄様!」

「....ここまで清々しい敗北は初めてですね。というかルフェイ、いたんですか....」

 ルフェイに介抱されながら、アーサーはイリナちゃんにそう言った。

 

「あなたの剣もなかなかのものだったわ。少しでもタイミングがずれてたら私の負けでも

 おかしくなかったわ」

「ありがたいお言葉ですね....」

 そう言いながら、アーサーはイリナちゃんに近づいていた俺の前に立った。

 

「彼女に負けるようではあなたには勝てませんね....認めます、あなた方の力を」

「てことは....」

「えぇ。あなた方の組織に入りましょう」

「あ、あのお兄様....? 一体何がどういう事ですか....?」

 

 ~説明中~

 

「....そうだったんですね」

「えぇ。そして、私は負けたので彼らの組織に入るんですよ」

 アーサーの説明を聞きながらルフェイは納得していたが、ある事を思い出したかのかアーサーに

 こう言った。

 

「でもお兄様。禍の団の方はどうなさるおつもりですか?」

「....あ」

「禍の団って....」

「確かオーフィスがリーダーだったはずの組織だな」

 俺がそう言うと、アーサーとルフェイは驚いたような表情をしていた。

 

「オーフィスを知っているのですか!?」

「あぁ。何なら俺と一緒に住んでるぞ」

「「なっ....」」

 俺の言葉に、二人は驚いて声が出ていなかった。

 

「そんなに驚くことか?」

「「驚きますよ!」」

「そういうもんか....」

 そう言いながら、俺はある事を思いついた。

 

「なぁアーサー。一応お前は禍の団に入ってるんだよな」

「え、えぇ....」

「だったら、禍の団にスパイとしてこっちに情報を流してくれないか?」

「スパイ、ですか....」

「あぁ。禍の団には旧魔王派っていう連中がいるだろ? そいつに復讐したいメンバーが

 いるんだ。だからそのために禍の団の動きを細かく知りたいんだよ」

「なるほど....それぐらいならお任せください」

「そうか。なら一応連絡先を渡しておく」

「わかりました。ルフェイ、あなたも一応もらっておきなさい」

「は、はい!」

 そう言って、俺とアーサーとルフェイは連絡先を交換した。

 

「では、私達はお先に失礼いたします」

「あぁ。二人ともこれからよろしくな」

「じゃあね」

「はい! 失礼いたします!」

 そう言って、二人はこの場から消えていった。

 

「さて....俺達も帰るか、イリナちゃん」

 俺はイリナちゃんにそう言ったのだが、イリナちゃんからは返事が聞こえなかった。

 

「イリナちゃん?」

「ねぇ創二君....少しだけ、寄り道してもいいかな?」

「寄り道?」

「....少し、話をしておきたい人がいるの」

 

 

 

 

 

 

 



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母と娘

 イリナちゃんと俺は、廃村から離れイギリスのウェスト・アクソンにある"紫藤"という

 小料理屋の前にいた。

 

「イリナちゃん、ここって....」

「....うん。私が住んでた家兼ママのお店」

 そう言いながら、イリナちゃんは明かりがついていない店の扉を叩いた。

 

「鍵、持ってないのか....?」

「この前の戦いで失くしちゃって....」

「えぇ....」

 そんなことを話していると、店の中から誰かが扉の方に歩いてくる音が聞こえてきた。

 そして、鍵が開く音が聞こえ中からやせ細ったイリナちゃんの母親であるスミレさんが

 出てきた。

 

「あの、すみません....今日は定休日で....っ!?」

 スミレさんはイリナちゃんの顔を見た瞬間、その場で固まってしまった。

 

「....えっと。ただいま、ママ」

「....イリナちゃん、なの?」

「うん....ごめんねママ。帰ってくるのが遅くなって....」

 イリナちゃんがそう言った瞬間、スミレさんは泣きながらイリナちゃんに抱き着いた。

 

「イリナちゃん! イリナちゃん!」ポロポロ

「心配かけてごめんね、ママ....」

 

 ~数分後~

 

 ひとしきり泣いたスミレさんは俺とイリナちゃんを店の中に入れてくれた。

 

「えっと....それでイリナちゃん、さっきから気になってたんだけど横にいる人は?」

 スミレさんは俺の方を見ながらイリナちゃんにそう言った。

 

「この人は誠二君よ、ママ」

「えっ?」

「えっと....お久しぶりですイリナちゃんのお母さん」

 そう言いながら、俺は顔の変装を解除した。

 

「っ!? 誠二、君....? でも誠二君は....」

「生きてたのよ誠二君は。今の今までね。今は創二って名前だけど....」

「まぁ、そういう事になりますね....」

「そう、だったのね....もしかしてイリナちゃんを助けてくれたのもせ....創二君が?」

「はい」

「そう....ありがとう創二君。イリナちゃんを助けてくれて」

「いえ、気にしないでください」

 そう言うと、スミレさんは安心したように一つため息をついた。

 

「....でも、本当に良かった。教会からイリナちゃんが死んだって手紙が来た時は本当に

 絶望したから....」

「教会から手紙来てたの!?」

 スミレさんの言葉に、イリナちゃんは驚いていた。

 

「えぇ。でも、手紙は見た瞬間に捨てちゃった」

「そう....随分と適当ね。それにこんな早いなんて....パパの時には数ヶ月かかったのに」

「そうよね....」

「....その言い方、もしかして」

 二人の会話を聞いていた俺は一つ、ある事が頭の中に浮かび上がった。

 

「創二君には言ってなかったわね....パパは数年前に亡くなったわ。はぐれ悪魔との戦いでね」

「っ! そっか....」

「まぁ、あまり深く気にしないで」

 イリナちゃんは俺に気にしないようにそう言ってきた。

 

「それで、イリナちゃんはこれからどうするの? 家に戻る? それともしばらく創二君と

 いるの?」

「っ....その事なんだけどね、私、創二君の所でお世話になろうと思ってるの」

「そっか....」

「それとねママ。私、これから三大勢力を滅ぼすために戦うの」

「っ!」

 イリナちゃんの言葉に、スミレさんは驚いたようで言葉を失っていた。

 

「パパは天界に良いように利用されて、私は神はいないのにいるって騙されて....これ以上、

 私やパパみたいな人を出したくないの。それに、今度は私が創二君を支えたいの!」

「イリナちゃん....」

「親不孝者って思われても仕方ないよ....でも、お願い。私が選んだ道を信じて」

 そう言って、イリナちゃんはスミレさんに頭を下げた。

 

「....創二君」

「っ、はい」

 すると、スミレさんは突然俺に話しかけてきた。

 

「この件に、創二君も関わってるのよね?」

「....はい。何なら、この件の首謀者は俺です」

「そっか。....なら、イリナちゃんの事、よろしくね」

「ママ....!」

「っ....はい。イリナちゃんの事は、俺の命に代えても守ります」

「なら、心配はいらないわね。頑張りなさい、イリナちゃん」

「....ありがとう、ママ」

 

 ~~~~

 

「すいません、晩御飯ごちそうになって....」

「いいのよ。気にしないで」

 あの後、俺とイリナちゃんは晩御飯をごちそうになり、店の外に出ていた。

 

「....それじゃあ、私達は帰るね」

「うん。体に気を付けてね。創二君も」

「ありがとうございます」

 そう言って、俺は帰るためにトランスチームガンを取り出していると、スミレさんが

 イリナちゃんに耳元で何かを言っていた。すると、イリナちゃんの顔は真っ赤になっていた。

 そして、スミレさんは面白そうに笑っていた。

 

「も、もう! ママの馬鹿! 行こ! 創二君!」

 イリナちゃんは顔を真っ赤にしながら俺の腕を引っ張った。

 

「あ、あぁ。では、失礼します」

 スミレさんにそう言って、俺とイリナちゃんはトランスチームガンから出た煙の中に消えた。

 

 

 

 

 



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停止教室のヴァンパイア/歪み始める歯車
プールと白き龍


 スミレさんに会って四日が経った。

 

「今日からこの学校でお世話になります。石動 イーナです。あそこにいる創二君の従妹に

 あたります。よろしくお願いします」

「ゼノヴィアだ。これからよろしく」

 学園にイリナちゃんとこの前の聖剣使いが転校してきた。しかも、聖剣使いからは

 悪魔の気配を感じた。

 

「(あの女....悪魔になったのか。しかも反応的に無能の方か....)」はぁ

 俺はまた面倒ごとが増えたと思いため息が出た。

 

 ~それから数日後~

 

 イリナちゃんはクラスに馴染み、剣道部の部員達とかなり仲良くなっていた。俺もそれなりに

 イリナちゃんと関わりながらも、普段通りの生活を送っていた。そんな中....

 

「プール掃除の監視?」

「えぇ」

 生徒会室にいると、会長からそう言われた。

 

「今度の日曜日にリアス達がプールを使わせてほしいと言いましてね。リアス達だけだと何を

 しでかすのかわかりませんから監視をお願いしたいんです」

「会長とか副会長のほうが良いんじゃないのか?」

「その日は私も椿姫も少し用事がありまして」

「そうか....監視だけで良いんだよな?」

 俺は確認のためにそう聞いた。

 

「はい。何かあった場合は写真か動画でも取って私に送ってください。後日、改めて私の方で

 罰を与えますので」

「わかった。そういう事なら引き受ける」

 こうして、俺の日曜日の予定は決まった。

 

 ~日曜日~

 

「....何であなたがいるのかしら?」

「知るか。俺は会長から頼まれただけだ。お前らが何かやらかさないかの監視をな」

「やらかさないか、ね....」

 無能はどこか不服そうな表情でそう言ってきた。

 

「安心しろ。何もしなければ俺も何もしない。大人しく本でも読んでる」

 そう言って、俺は水に濡れない場所に移動して監視をしながら本を読み始めた。そして、

 もう少しで掃除が終わるといったところで搭城が俺に近づいてきた。

 

「石動先輩」

「どうした?」

「石動先輩って泳げますか?」

「泳げるが....それがどうかしたか?」

「なら、私に泳ぎを教えてもらえませんか?」

「....意外だな。お前、泳げなかったのか」

「....悪いですか」

 搭城はどこか拗ねたように俺から視線を逸らした。

 

「そうは言ってねぇよ。....まぁいい。教えるぐらいなら別に良いぞ」

「っ! ありがとうございます」

 そう言うと、搭城は俺から離れて掃除にしに戻っていった。それから少しすると全員は水着に

 着替えてプールで遊び出した。

 

「ま、取り敢えずどこまでできるか見せてくれ。教えるのはそれを見た後だ」

「わかりました」

 そして、俺はスク水姿の搭城に泳ぎを教えようとしていた。搭城は俺の言葉を聞くと、

 ビート板を使って泳ぎ出したが、途中で足をついてしまった。

 

「....あれだな。身体に力が入りすぎだ」

「力が、ですか?」

「あぁ。こっちに戻ってこい」

 そう言って、俺は搭城をプールサイドの方に呼び戻した。

 

「搭城、プールサイドを持ってバタ足をやってみろ」

「わかりました」

 搭城はプールサイドを掴んでバタ足を始めたが、どんどん身体が沈んでいった。

 

「搭城、やっぱり力が入りすぎだ。ちょっと俺の手を持ってバタ足をやってみろ」

 俺はそう言って搭城に手を差し出した。

 

「わかりました」

 搭城は俺の手を掴んでバタ足を始めたが、すぐに腕に力が入っていくのに気付いた。

 

「搭城、力が入り過ぎてる。もっと腕の力を抜いて大丈夫だ」

「でも、力を抜いたら沈みませんか....?」

「逆だ。力を入れれば入れるほど身体は沈む。もっとリラックスしてみろ」

 俺はそう言いながら搭城の腕を揺らして力を抜かせた。

 

「いくらでも練習には付き合ってやるから。少しずつ慣れていけ」

「....はい」

 そう言いながら練習を続けていると、俺は二つの気配を感じた。

 

「(この気配....一つは黒歌か)」

 俺は黒歌の気配を感じたほうを見ると、そこには木の上で気配を完全に隠して自分の妹を

 盗撮している黒歌がいた。

 

「(何をやっとんだアイツは....それよりも、もう一つの気配....)」

 俺は黒歌のやってる事に呆れながら、もう一つの気配の方を感じたほうを見た。

 

「(この気配....あの時の奴か)」

 俺を気配の正体に覚えがあった。

 

「....石動先輩、どうかしたんですか?」

 すると、俺の様子を不思議に思ったのか搭城がそう聞いてきた。

 

「....いや、少し気になることがあっただけだ」

「気になること、ですか?」

「ま、お前は気にしなくても大丈夫だ」

 そう言いながら、俺は搭城の頭を撫でた。

 

「っ!」

「ん? どうかしたのか?」

「い、いえ....」

 搭城は俺から視線を逸らして泳ぎの練習を続けた。

 

 ~数時間後~

 

「石動先輩、何かスイーツでも食べに行きませんか?」

 練習が終わり、着替え終わって校舎から出てきた搭城は俺にそう言ってきた。

 

「別にいいぞ。....だが、少し用事を終わらせてからな」

 そう言いながら俺は腰にビルドドライバーを巻いて学園の門に向かった。すると、そこには

 銀髪の悪魔がいた。

 

「....こんなところで何をしている、悪魔」

「っ! そのベルト....なるほど。君がコカビエルを倒した人間か」

「お前....やっぱりあの時の奴か。何が目的だ」

 俺はそう言いながらボトルを二本取り出した。

 

「っ! これほどの殺気を出せるか....今すぐにでも君とは戦ってみたいな」

「そうか....なら、やってみるか?」

 そう言って、俺がボトルを振ると悪魔はすぐに首を横に振った。

 

「いや、今日はやめておこう。今日、ここに来た目的は今代の赤龍帝がどのような悪魔かを

 見に来ただけだ。俺のライバルの赤龍帝を....君との戦いはまた今度にしておくよ」

「....そうか。なら、さっさと見てくればいい。白龍皇」

「あぁ。そうさせてもらうよ」

 そう言うと、白龍皇はクズ兄がいる方に向かっていった。俺はそれを見届けると、ベルトを

 外して搭城の方に戻った。

 

「石動先輩! 今の人は....」

「白龍皇だとよ。俺らは関係ないからさっさと行くぞ」

「は、白龍皇って....待ってください先輩!」

 搭城は俺の言葉に驚きながら走って俺を追いかけて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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授業参観

「....わざわざ来なくていいのに。何で来たんだよ」

「別に良いだろ? 単純に興味があったし、確認したい事があったからな」

 プールの監視から数日後、学園では授業参観があった。俺とイリナちゃんはエボルトに

 来なくてもいいと言っていたのだが、何故かエボルトはグレイフィアとオーフィスを

 連れて教室に来ていた。

 

「確認したい事?」

「あぁ。ま、そこはあんまりお前らが気にしなくていい」

「....そうか」

「というか、店の方は大丈夫なの?」

 イリナちゃんは不思議に思ったのかそう聞いた。

 

「あぁ。今日は臨時休業にしてきた。零奈達三人も何処かに出かけていった」

「三人?」

「黒夜は妹の方に行ってる。だから三人だ」

「そういう事か....」

 俺は大体の事情を察してそう呟いた。

 

「創二、頑張る」

「何を頑張ればいいんだかな....ま、学園だから大人しくしててくれよ」

「わかった」

「良い子だな」

 そう言いながら、俺はオーフィスの頭を撫でた。そうしていると、授業が始まるチャイムが

 鳴った。

 

「じゃ、また後でな」

 そう言って、俺とイリナちゃんは自分の席に戻って授業を受けた。

 

 ~一時間後~

 

「....何だアレは」

 授業が終わり、俺は生徒会の仕事で校舎の見回りをしていた。すると、体育館の方で何かの

 人だかりができていた。よく見てみると、人だかりの中心にはコスプレをした黒髪ツインテの

 保護者らしき悪魔がいた。

 

「(この魔力の感じ....会長の親戚か。随分と奇抜な恰好な事で....)」

 そう思いながら俺は会長に電話を掛けた。

 

「もしもし会長」

『石動君、どうかしましたか?』

「何か体育館で会長の親戚らしき悪魔がコスプレ撮影会をして....」

『石動君、速やかにそこにいる人達は離れさせてください! 私もすぐに向かいます!』

 会長はまくしたてるようにそう言うと電話を切った。

 

「(随分と焦ってたな....)」

 俺はそう思いながらも会長に言われた事を始めた。

 

「そこのコスプレに群がってる保護者兼生徒ども! さっさと写真撮影やらその他をやめろ。

 ここはコスプレ会場じゃねぇんだよ。やめない場合、保護者は即刻退場、生徒どもは教室で

 反省文20枚だ。これは生徒会長からの警告だ」

 俺がそう叫んだ瞬間、コスプレ悪魔に群がっていた人間は蜘蛛の子を散らすように

 逃げていった。

 

「....さてと、おい悪魔。こんな所で何やってやがる。それとその恰好。一応ここは学園だ。

 もう少しマシな服装をして来い」

「えぇ~。でも、これが私の正装なんだもん☆」

「(ウゼェ....)」

 そう思っていると、息を切らした会長がやって来た。その後ろには無能と無能の眷属、そして

 赤い髪をしたスーツの男がいた。

 

「(無能の親族か....)」

「あ! ソーナちゃん☆」

「お姉様! 何ですかその恰好は! ここは学園なんです! そのような恰好で来られると非常に

 困るんです!」

「えぇ~! 私は魔法少女なんだよ☆なら、この格好は普通だよ!」

「そんなわけありますか! 私はこの学園の生徒会長です! だからこそ、身内のその様な恰好を

 認めるわけにはいきません!」

「ひ、酷いよソーナちゃん! せっかくソーナちゃんの衣装も持ってきたのに!」

 そう言うと、会長の姉はどこからともなく色違いの衣装を取り出した。

 

「私は絶対着ませんよ! それよりも、やる事が終わったなら早く帰ってください!」

 そう叫びながら、会長は俺を盾にするかのように俺の後ろに回った。

 

「俺を盾にするの止めろ....ていうか、こんなのが会長の姉か?」

「えぇ....残念な事に」

「きょ、今日酷くないソーナちゃん!?」

「知りません! もう少し自分は魔王という立場を理解してください!」

「魔王って....こんなのがか....」

 俺は会長の言葉にそう呟いてしまった。

 

「というか、君誰!? ソーナちゃんに君みたいな眷属は....」

「お姉様、彼はコカビエルを倒した張本人です」

「っ!? へぇ....君が....」

 会長の姉は驚きながらも俺の事を見定めるような眼で見てきた。

 

「うんうん☆なかなか良い感じだね! この前はソーナちゃんを助けてくれてありがとね☆

 私はセラフォール・レヴィアタンって言うんだ☆気軽にレヴィアたんで良いよ☆君の

 名前は何て言うの?」

「....石動 創二だ」

「ふむふむ、良い名前だね☆あ、そういえば創二君は今度行われる会談の話し知ってる?」

「会談?」

「そ☆三大勢力のトップが集まって話し合いをするの☆その会談に、良かったら君も

 出席してくれないかな?」

「....何で俺が」

「コカビエルを怪物にした敵についての話しを聞きたくてね。あ、一応強制じゃないからね☆

 気が向いたらで良いから☆」

「....考えておく」

「そっか☆ありがとね☆」

 そう言うと、会長の姉は無能の方に向かっていった。

 

「....あんなのが姉で大変だな、会長」

「えぇ....本当ですよ」

「....んじゃ、俺は仕事に戻るぞ」

 そう言って、俺はこの場から離れた。

 

 ~その日の夜~

 

「三大勢力の会談か」

「あぁ。三大勢力のトップが集まるんだとよ」

「そうか。なら、丁度いいな」

 家に帰り、エボルトのラボで話しをするとエボルトはそう言った。

 

「丁度いい?」

「あぁ。少し試したい事と、ある吸血鬼を回収するのにな」

「吸血鬼? そんな奴いたか....?」

「いたんだよ。旧校舎の中にな。恐らく、あの無能娘の眷属だな」

「....そうか。で、その吸血鬼を回収してどうするんだよ」

「ん? まぁ、ある奴に渡すんだよ。こっち側に引き込むためにな」

「俺が何かすることはあるのか?」

「あぁ。ま、それは会談が近づいた時な」

「....わかった」

 そう言いながら、俺はラボから出た。すると、俺の携帯が鳴った。見ると、それはルフェイ

 からだった。

 

「もしもし」

『あ、石動さん!』

「どうしたルフェイ」

『禍の団に動きがあります。数日後の三大勢力のトップが集まる会談にカテレアという

 旧魔王が攻め込むそうです』

「っ! それ本当か」

『はい。間違いありません』

「そうか。情報ありがとな」

『いえ! お気になさらず。それともう一つ....』

「....わかった」

『では、皆様お気をつけて』

 そう言うと、ルフェイからの電話は切れた。

 

「(....策の練り直し、伝えに行くか)」

 そう思いながら、俺はエボルトのラボに戻っていった。

 

 

 

 

 



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吸血鬼の僧侶

「....で、こんな夜中に呼び出してどういうつもりだ? 塔城」

 授業参観があった三日後、夜中だというのに俺は塔城に呼ばれて学園の敷地内にいた。

 

「すみません....でも、どうしても石動先輩の力が必要で」

「俺の力がか?」

「はい。こっちです」

 そう言った塔城について行くと、金髪の女子の制服を着た吸血鬼の悪魔を、この前の聖剣使いが

 追いかけまわしている姿が見えた。その近くでは、クズ兄と生徒会の男、廃教会の

 元聖女がいた。

 

「何だこの状況は....それに、あの金髪は?」

「あの子は部長の僧侶のギャー君です。三日前までは封印されていたんですが、封印の

 解除を許されて表に出たんです」

「へぇ....で、そいつが何で追われているんだ?」

「その、ギャー君は極度の対人恐怖症と神器が自分の力で操れなくて....特訓という名目で

 ああして追われているんです」

「そうか。....てか、何で俺を呼んだ」

 俺は話しを聞いて不思議に思った事を聞いた。

 

「石動先輩を呼んだのは、石動先輩がビルドだからです」

「は?」

「何でも、ギャー君は石動先輩のファンだそうで....ネットのサイトでは石動先輩は

 仮面ライダーという都市伝説扱いされているそうですよ」

「何だそりゃ....」

「とにかく、一度会ってあげてください。ギャー君!」

「こ、小猫ちゃーん! って、その人誰ですかぁぁ!?」

 塔城がギャー君と呼んでいた悪魔は俺を見ると大声をあげて塔城の背後に回ってビビッていた。

 

「ギャー君が大ファンの仮面ライダーです。石動先輩」

「石動 創二だ。一応、ビルドって名前を名乗っている」

「え! 本物の仮面ライダーですか!?」

「あぁ。証拠を見せてやろうか?」

 そう言いながら、俺はベルトを腰に巻いた。そして、ベルトにボトルを挿し込んだ。

 

ラビット!  タンク!  ベストマッチ!

 

 その音が鳴り、俺はベルトのレバーを回した。

 

Are you ready?

 

「変身」

 

鋼のムーンサルト!  ラビットタンク!  イエーイ!

 

 プラモランナーは重なると、俺の姿はビルドに変わった。

 

「凄い凄い! 本物の仮面ライダー! あの、握手してください! それにサインも!」

『あ、あぁ....それは別に構わないが....』

 俺はそう言いながらベルトのレバーを回して後ろを見た。

 

『鴉の掃除を終えてからな』

 

ReadyGo!  ボルテックフィニッシュ!  イエーイ!

 

 すると、林の部分にグラフ型の固定装置が現れ、俺はグラフ部分を滑りながら必殺技を放った。

 だが、俺の必殺技はギリギリのところで躱された。

 

「石動先輩!? 何をやって....!」

「あ、危ねぇな! いきなり何すんだ!」

 すると、上から男の声が聞こえてきた。見ると、そこにはコカビエルと似たような羽をした

 堕天使がいた。

 

『堕天使を消そうとしただけだ。お前、さっきからこっちを見てて鬱陶しいんだよ』

 そう言いながら、俺は殺気を向けた。

 

「っ!? おいおい....ただの人間が出していい殺気じゃねぇだろ....」

 そう言いながら、堕天使は地上に降りて来た。

 

「とにかく、殺気を抑えてくれよ。別に俺は戦いに来たわけじゃねぇんだわ」

『それを信用できる理由は?』

「そいつを言われると耳が痛いな....」

 堕天使は頭を掻きながら周りにいる悪魔を見ていた

 

「そこの停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)持ち。その神器を制御したかったら赤龍帝の血を飲むか、そこに

 いる奴の神器で魔力を吸い取ってもらえ」

 そう言いながら、堕天使は背中の翼を広げた。

 

「本当は聖魔剣使いを見たかったんだが、これ以上ここにいるとマジでヤバそうだ。今日の

 ところは大人しく帰るとするぜ」

 そう言うと、堕天使は空を飛んでこの場から消えた。

 

『何だったんだアイツは....』

「さ、さぁ....?」

 俺の言葉に、塔城は困惑した様子でそう言った。

 

『....はぁ。塔城、俺はもう付き合ってられないから帰るぞ。じゃあなギャー助。サインは

 また今度な』

 そう言いながら、俺はビルドフォンをマシンビルダーに変形させて家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 



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後輩とのひととき

「....塔城、俺を頼るのは別に良い。だがな、悪魔の事で俺を頼るなよ....」

「すみません....」

 ギャー助と会ってから数日後、俺は再び旧校舎に訪れていた。その理由はというと、

 ギャー助が封印された部屋に引きこもり、説得するように塔城から頼まれたからだ。

 

「はぁ....ギャー助は?」

「この部屋の中です....」

 塔城が指差した先には黄色のテープが貼られた扉があった。

 

「....おいギャー助。聞こえてるか」

 俺は扉に近づき、扉の向こうにいるギャー助に向かってそう言った。

 

「石動先輩....?」

「お前、二日後の土曜暇か」

「土曜日ですか....? 特に何もないですが....」

「そうか。じゃあその日、出かけるぞ。塔城、お前も予定空けとけよ。じゃあ、俺は帰るぞ」

 そう言って、俺は自分の家に帰った。

 

 ~~~~

 土曜日

 

 土曜日になり、俺は私服姿で学園の前にいた。すると、ギャー助を連れて塔城が来た。

 

「おはようございます、石動先輩」

「お、おはようございます」

「おう。二人とも時間ぴったりだな。んじゃ、行くか」

 そう言って、俺はビルドフォンをマシンビルダーに変形させ、マシンビルダーの隣に

 追加でサイドカーを取り付けた。

 

「ギャー助、お前はサイドカーの方に乗れ。塔城は俺の後ろに乗れ」

 俺は二人にヘルメットを渡しながらそう言った。

 

「石動先輩、これからどこに行くんですか?」

「ん? それは着いてからのお楽しみだ。じゃ、しっかり掴まってろよ」

 そう言って、俺はバイクを走らせた。

 

 ~~~~

 

 バイクを走らせ、俺達が着いたのは女子向けの服屋だった。

 

「ここですか?」

「あぁ。ギャー助、お前こういう服が好きなんだろ? 塔城から聞いたぞ」

「は、はい!」

「そうか。んじゃ、欲しいものがあったら言え。俺が買ってやるよ。塔城、お前も何か

 あったら言え」

「....良いんですか?」

「あぁ。とっとと店入るぞ、二人とも」

 そう言って、俺は二人を連れて店に入った。そして、二人は俺に意見を聞きながら服の試着を

 し始めた。そして、気に入ったものをカゴに入れて俺のもとに持ってきた。

 

「二人とも、これで良いのか?」

「はい」

「はい!」

「わかった。じゃあ少し待ってろ」

 俺は二人からカゴを受け取ってレジに持って行き会計をした。値段はそれなりにしたが、

 二人が喜んでいるようだったからそれほど痛い出費ではなかった。

 

「ほれ、二人とも」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます先輩! ちょっと待っててください!」

 そう言うと、ギャー助は試着室の方に行って買ったばかりの服に着替えて戻って来た。

 

「ど、どうですか?」

「おぉ、良く似合ってんじゃねぇか」

「似合ってますよ、ギャー君」

「そ、そうですか....! えへへ....」

「よし、んじゃ次に行くぞ」

 そう言って、俺達は次の目的地に向かった。

 

 ~~~~

 

 着いたのは俺の実家の"nascita"だった。

 

「帰ったぞ」

「おっ、早かったな。あといらっしゃい、そこのお二人さん」

 店に入って声をかけてきたのはエボルトだった。

 

「どうも」

「こ、こんにちは」

「おう。ゆっくりしていけよ」

「二人とも、あそこの席に行くぞ」

 俺は二人を連れて窓際の席に向かった。

 

「二人とも、決まったら好きな物頼めよ。俺の奢りだ」

「い、良いんですか? さっきも買ってもらったばかりなのに....」

「後輩に金を出させるのは流石にな。ここは先輩に任しとけ」

「その言葉、後悔しないでくださいね」

 塔城はどこか目を輝かせながら俺にそう言ってきた。そうして少しすると、二人はそれぞれ

 注文をした。ギャー助はサンドイッチのセットを、塔城はメニュー表の一ページすべてを

 注文した。俺もコーヒーとパスタを頼んで自分で厨房に行って作った。そして、三人で

 談笑しながら食事をし、全て食べ終わるとエボルトが塔城とギャー助の前にケーキを置いた。

 

「お二人さん、そいつは俺からのサービスだ」

「あ、ありがとうございます店長さん!」

「ありがとうございます」

「気にすんな気にすんな。これからもコイツの事よろしく頼むぜ」

 そう言うと、エボルトはさっさと厨房の方に戻っていった。

 

「店長さん、良い人ですね」

「....まぁな」

 そう言いながら、俺は二人がケーキを食べているのを呑気に眺めていた。そして、二人が

 食べ終わるのを確認すると食器を持って厨房に向かった。そして、厨房にいたエボルトに

 こう言った。

 

「エボルト、食事代は俺の給料から引いておいてくれ」

「はいよ」

「....それと、()()()()()()()()()()()()()()

「了解」

 そう言って、俺は厨房から出て二人を連れて外に出た。そして、最後の目的地に向かった。

 

 ~~~~

 

 着いた場所はこの辺では一番大きいゲームセンターだった。

 

「さ、遊んで遊んで遊びつくすぞ」

「はい!」

「はい」

 そうして、俺とギャー助、塔城はゲームセンターにあるほとんどのゲームをやった。

 シューティングゲームに始まり、格ゲー、レースゲーム、UFOキャッチャー、ホッケー、

 コインゲーム....そうして遊んでいるうちに、既に空は茜色に変わっていた。そして、

 俺は二人を乗せて学園の前に来ていた。

 

「ギャー助、今日はどうだった?」

「とっても楽しかったです!」

「そうか。それなら良かった。それと....ギャー助、お前今日一回でも誰かを止めたか?」

「....そういえば、今日は一度も発動しなかったです!」

「だろうな。お前の場合、気持ちの問題だからな。気持ちが変われば周りにおびえずに

 表に出れる。今日一日で分かっただろ? お前は弱い奴じゃねぇよ。お前は強い奴だ」

「先輩....」

「また不安だったらいつでも呼べ。手助けぐらいはしてやる」

「っ、はい! 先輩、今日はありがとうございました!」

 そう言って、ギャー助は学園に去っていった。

 

「....こういう事だったんですね」

「あぁ。アイツにはうってつけの方法だろ?」

「えぇ。確かに」

「さて、んじゃ行くか」

「はい」

 そうして、俺は塔城を家に送って"nascita"に帰った。

 

 

 

 



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会談の始まり

お気に入りが1000を超えました。見てくださってる皆様、
ありがとうございますm(_ _)m


「っ、来てくれたんですね石動君」

「あぁ」

 ギャー助と塔城と出かけた数日後の夜、俺は腰にビルドドライバーを付けて学園に来ていた。

 そして、俺の目の前には会長と会長の眷属がいた。

 

「では案内します。私について来てください」

 そう言われ、俺は会長について行った。

 

 〜〜〜〜

 

 学園の中は、普段と違いどこか雰囲気や道が変わったりしていた。そして、しばらく歩くと

 巨大な扉が目の前に現れた。

 

「この先が会談会場になります。....準備はよろしいですか?」

「あぁ。いつでもどうぞ」

「....わかりました。では、開きますよ」

 そう言って、会長は扉に手を触れた。すると、扉は勝手に開いていき、会長は扉の中に

 入っていった。俺もついて行くと、そこには会長の姉、赤髪の男、金髪の男、夜中にいた

 堕天使の男が席に座っていた。そして、その後ろには護衛が二~三人ほど立っていた。

 

「石動君はお姉様の隣の空いている席に座ってください」

「わかった。....それよりも、塔城達は来ないのか?」

「....おそらく遅刻です」

「....そうか」はぁ

 俺はそう言ってため息をつき目をつぶった。その数分後、無能と無能の眷属達が自信満々の

 様子で入って来た。それを見て、会長の額からは嫌な汗が流れていた。

 

「(会長も苦労人だな。....それよりも、ギャー助と塔城はいないのか)」

 そう思っているうちに、三大勢力の会談が始まった。だが、俺はしゃべることが無く、黙って

 三勢力の話しを聞いていた。そして、話が進んでいき三勢力は和平を結んでいた。

 

「さて、こっちは終わったし一番大事な話しをしようぜ。なぁ、二色のライダーさんよ」

「....俺は特に話すことはないんだがな」

 堕天使の男がそう言ったので俺はそう返した。

 

「そう言うなよ。お前の力に謎の勢力....こっちに被害が出ないとは言えないんでな。

 対策のためにも聞いておきたいんだよ」

「力に関しては既に会長とそこの無能に話した。魔王のアンタらにも話は通っているだろ?」

「まぁね☆でも、私達的にはもう少し詳しく聞きたいんだけどね」

「....具体的には?」

「君の使うそのベルトとボトルの作り方について....」

 赤髪の魔王がそう言った瞬間、俺はホークガトリンガ―を赤髪の魔王に向けた。

 

「ふざけたことをぬかすなよ悪魔風情が。何で貴様ら悪魔にこの力を渡さなきゃならない。

 この力は俺の復讐のための力だ。誰にも渡すつもりはない」

 そう言った瞬間、この場の空気は一瞬で冷えたような空気になった。

 

「それに俺は悪魔が....いや、お前達三大勢力が嫌いだ。人間の命を駒みたいに使う、

 お前達が。....まぁ、そこの会長とここにいない塔城とギャー助は別だがな」

 そう言いながら、俺はホークガトリンガ―を降ろした。その瞬間、旧校舎の方で爆発が起こり

 この空間の時間が止まった。

 

「(始まったか....)」

 そう思いながら俺はラビットタンクに変身して窓の外を見た。

 

『(配置もルフェイからの連絡通りか。なら、俺は俺の仕事を始めるか)』

『おい無能の兄。これ、ギャー助の神器の力か?』

「あぁ。恐らくそうだろうね。でも、どうやら自分の意志では使っていないようだけどね」

『アイツは旧校舎の中か?』

「そうだよ」

『そうか。だったら勝手に行かせてもらう。そっちは任せるぞ』

 そう言って、俺はビルドフォンをマシンビルダーに変形させて旧校舎に向かった。

 

 ~~~~

 小猫side

 

「こ、これといって特に何も起きないね」

「....そうですね」

 三大勢力の会談が始まり数十分が経った。私はギャー君と一緒に旧校舎の部室にいた。

 本来なら私は会談に参加するはずだったのだが、ギャー君の神器がまだ不安定のため、

 ギャー君の護衛で一緒に留守番をしていた。

 

「まぁ、何も起きない方が良いですが....」

 そう言った瞬間、突然扉の向こうから何かが走ってくる音が聞こえた。

 

「(っ、何か来た....)」

 私は扉の向こうを警戒して防衛体制を取った。だか、いつまで経っても扉が開かれることは

 なかった。

 

「(一体扉の向こうで何が....)」

 そう思っていた次の瞬間、突然扉は開かれた。そこにいたのは....

 

『よっ。久しぶりだな』

「っ!? ブラットスターク....!?」

 石動先輩の宿敵であるブラットスタークがいた。そして、隣にはフードで顔を隠した

 人間が一人いた。

 

「どうしてあなたがここに!」

『それは、お前が知らなくて良いことだ。黒歌の妹の白音』

「っ!? 何であなたが私の名前を....まさか!?」

「そのまさかよ。スターク、そっちは任せるにゃん」

 そんな声が聞こえ、私は背後から身体を拘束されてこの空間から消え、気づけば謎の空間に

 いた。

 

「さて、力づくで悪い事をしたわね白音」

 そして、次に聞こえてきたのは申し訳なさそうな姉様の声だった。

 

「姉様....あなたが世話になっているって言った人はあの人だったんですね」

「ま、そういう事になるにゃん」

「どうして私をこんな所に連れてきたんですか?」

「簡単に言えば、あの吸血鬼の子を救うため。それにはあなたが邪魔になったからよ。

 一応言っておくけど、こう言ったのはスタークだからね」

 姉様は心底めんどくさそうにそう言った。

 

「安心して。ある程度時間が経ったら出してあげるから。それに、白音にはビルドに

 届けて欲しい物があるからね」

 そう言いながら、姉様は赤いトリガーの様な物を投げていた。

 

「ま、少しだけ大人しくしててね白音」

 そう言いながら、姉様は虚空を見つめていた。

 

「(ギャー君を助ける....? 姉様、一体何が目的なんですか....)」

 そう思いながら、私は姉様を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 



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動き出した乱入者

 ソーナside

 

 石動君はバイクに乗ると旧校舎の方へ走って行った。それと同時に、白龍皇も外に出て

 魔術師をかく乱していた。

 

「お姉様、私達はどうすれば」

「ソーナちゃん達は結界の強化を続けて。攻めるのは白龍皇やアザゼル達に任せて

 おけばいいから」

「おいおい、俺も戦うのかよ」

「敵のヘイトを集めるには丁度いいでしょ」

「ひでぇなおい!」

 そんな事を言っていると、突然外に青い魔法陣が現れた。その魔法陣には、私は見覚えが

 あった。

 

「お姉様! あの魔法陣は....!」

「レヴィアタンの魔法陣....! まさか!?」

 そう言った瞬間、その魔法陣からお姉様の先代魔王であるカテレア・レヴィアタンが現れた。

 

「(カテレア・レヴィアタン....!)」

「ごきげんよう、三大勢力首脳....」

 現れたカテレア・レヴィアタンは挨拶をしようとした瞬間、突然地面に叩き落とされた。

 そして、カテレア・レヴィアタンがいた場所には銀髪の黒い服装の悪魔がいた。

 

「申し訳ございませんね、挨拶の途中で」

 銀髪の悪魔は地面に落ちたカテレア・レヴィアタンを見下しながらそう言った。

 

「おいおい、アイツは....!」

「何で彼女がここに....!」

 サーゼクス様とアザゼルは悪魔の正体を知っているのかそう呟いた。そして、お姉様も

 悪魔を見て驚いた表情をしていた。

 

「お姉様。お姉様もあの悪魔を知っているのですか?」

「うん....彼女はグレイフィア・ルキフグス。最強の女悪魔で旧ルシファー家に最も近い

 家の悪魔....」

「(グレイフィア・ルキフグス!? かつてお姉様と最強の座を奪い合ったあの....

 でも、何故こんな所に彼女が....?)」

 そう思っていると、地面に落ちたカテレア・レヴィアタンが再び飛んできた。

 

「グレイフィア・ルキフグス! 貴様....! 死んだはずではなかったのか!」

「えぇ。あるお方にこの命を救われまして。今では私はそのお方に仕える忠実な部下です」

「ルキフグス家の悪魔である貴様がか! 随分と墜ちたものだ!」

「堕ちたのはあなた方でしょう旧魔王派。悪魔と称して数々の種族を見下したあなた方....

 ハッキリ言って見るに堪えないですね」

「っ~~~! 貴様ぁぁァ!」

 そう叫びながらカテレア・レヴィアタンは攻撃を仕掛けたのだが、グレイフィア・ルキフグスは

 全ての攻撃を弾き飛ばした。

 

「さて、私もそろそろ目的を果たしましょう」

 そう言いながら、グレイフィア・ルキフグスは青色のベルトの様な物を取り出した。

 

「っ、アレは!」

 グレイフィア・ルキフグスが取り出したベルトは、以前リアスとライザー・フェニックスの

 レーティング・ゲームに現れた謎の魔導士と同じベルトだった。

 

「旧魔王カテレア・レヴィアタン。あなたをここで殺します」

 

CONCLUSION!

 

八咫鏡!

 

「変身」

 

写す! 見通す! 打ち払う! 八咫鏡inリベリオン!

 

「変身、した....」

「まさか、彼女はブラッドスタークの....」

 私は彼女の変身を見て一つの仮説が思い浮かんだ。すると....

 

『お、良い考察だな』

「っ!?」

 突然背後から聞き覚えがある声が聞こえた。振り向くと、そこには呑気に机の上に座った

 ブラッドスタークと、顔まで隠れたフードをした何かがいた。

 

「ブラッドスターク!?」

 ブラッドスタークの姿を見た瞬間、私とリアスの眷属達は全員戦闘態勢を取った。

 

『やめとけやめとけ。そんな戦闘態勢を取ったところで俺には勝てねぇよ』

 ブラッドスタークは仮面の奥から私達をあざ笑うようにそう言ってきた。

 

「っ....」

「ソーナちゃん、もしかしてコイツが....」

「はい....この男がブラッドスターク。石動君の、いえ、私達の敵と思われる存在です」

『どうぞよろしくな、三大勢力のトップども』

 そう言いながら、ブラッドスタークは窓の外を見ていた。

 

『さてさて、グレイフィアの奴どこまでやれるだろうな。アンタはどう思う? 堕天使の長』

「....お前、この状況なのに随分と呑気だな」

『あぁ。所詮貴様等など俺の遊び相手になるかどうか....精々ビルドの様な可能性な塊が

 いない貴様等じゃその程度の評価だ』

「っ、テメェ....」

「この野郎! あんまり調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 すると、突然そう叫びながら匙がブラッドスタークに攻撃を仕掛けようとした。

 

「っ、やめなさい匙!」

 私はそう叫んだのがすでに遅く、匙はブラッドスタークの近くにいたフードの人物に剣で

 吹き飛ばされた。そして、匙の胸には焦げたような斬撃の跡があった。すると、ミカエル様と

 ゼノヴィアさんの表情が驚愕の表情に変わった。

 

「その剣、まさか!?」

「エクスカリバー!? だがなぜ! エクスカリバーは私があの時....!」

『あぁ。お前が回収してたな青髪。だが、忘れていないか? 聖剣はあの時、お前の手元に

 二本足りなかったこと』

「二本....っ! 擬態の聖剣と支配の聖剣の事か!」

『その通り! 支配は俺の仲間が回収して擬態に全て統合させたんだよ。あの時落ちていた

 五本の聖剣の欠片を俺が軽くいじってな』

「じゃあ、その聖剣を持っているのは....」

「まさか....」

 あの件に関わっていた私達はフードの人物の正体に当てはまる人物が頭に思い浮かんだ。

 

『あぁ。お前達の思う通りだ。なぁ、イリナ』

「....スターク。余計な事言わないんじゃなかったの」

 そう言いながら、フードを外して現れたのは紫藤 イリナさんだった。

 

「っ!? イリナ....! どうしてお前が!」

 ゼノヴィアさんは信じられないといった様子で紫藤さんにそう叫んだ。

 

「さぁね。少なくとも、あなたには関係ない事よゼノヴィア」

 そう言いながら、紫藤さんはグレイフィア・ルキフグスと同じベルトを取り出した。

 それと同時に、外から二つの爆発音が聞こえた。

 

「グレイフィアは終わったわね。スターク、私も始めさせてもらうわよ」

『あぁ。好きにしな』

 すると、紫藤さんは腰にベルトを巻くと白いボトルの様な物をベルトに挿し込んだ。

 

SHINING!

 

エクスカリバー!

 

「変身」

 

斬れる!  斬り裂く!  斬り伏せる!  パラディンinエクスカリバー! セヤァ! 

 

 紫藤さんがそう呟くと、紫藤さんはビーカーに包まれ白い液体がビーカーに満タンになると

 七本の聖剣がビーカーに突き刺さった。すると、中から女騎士の様な姿の鎧を纏った

 紫藤さんが現れた。

 

『さて....少し相手をしてもらいましょうか。ミカエル!』

 そう叫ぶと、紫藤さんはそう叫びながらミカエル様を校舎の外に吹き飛ばして校舎から

 跳び出していった。

 

「「「ミカエル!」」」

『おっと。お前の相手はアイツらだ』

 ミカエル様の後を追おうとしたサーゼクス様とお姉様、アザゼルは紫藤さんが壊した壁からの

 飛んできた銃弾と光線によって行く手を阻まれた。

 

『長かったわね』

『ようやく出番っスねレイナーレ様』

『えぇ。二人とも、行くわよ』

『....』

 銃弾と光線が飛んできた場所にいたのは、石動君と同じベルトをしたドラゴンの様な鎧と、

 顔の半分が青と白と水色の歯車が付いた鎧だった。

 

「まだいたのかよ!」

「くっ....仕方ない。セラフォルー! アザゼル!」

「わかってるよサーゼクスちゃん!」

「あぁくそ! めんどくさぇな!」

 そう言うと、三人は鎧の方に向かって飛んでいった。

 

『....ふぅ。さて、そろそろか』

 ブラッドスタークは三人が飛んで言った瞬間、ふとそんな事を呟いた。すると、突然

 ブラッドスタークの横に黒い魔法陣が現れそこから猫耳の着物を着崩した女が現れた。その女に

 私とリアスは見覚えがあった。

 

「っ! あなたは!?」

「SS級はぐれ悪魔の黒歌....!?」

『黒歌、首尾は?』

「今のところは完璧よ。後は、コイツ等の足止めさえできればね」

 黒歌はそう言いながら指を鳴らすと、私達を閉じ込めるためか結界を張った。

 

「結界!?」

「こんな一瞬で....」

『んじゃ、ここは任せたぜ』

「えぇ」

 ブラッドスタークはそう言うと煙の中に消え、黒歌の手には紫藤さん達と同じベルトが

 握られていた。

 

「さ、あんた達の足止めをさせてもらうにゃん」

 

ウィザードゼリー!

 

「変身」

 

潰れる! 流れる! 溢れ出る! ウィザード in ソーサレス!

 

 黒歌が変身して姿を変えると、その姿はライザーとリアスのレーティングゲームが突如

 現れた魔法使いの様な鎧だった。

 

『さ、どれだけ耐えられるか見せてもらおうかしら!』

 そう言って、黒歌は無数の光弾を私達に放ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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五つの戦い 前編

 グレイフィアside

 

「はぁ、はぁ、はぁ....」

『どうされました? 随分と息が上がっているようですが』

 そう言いながら、私は自分の周囲に浮いている小さな鏡からレーザービームを放った。

 

「ぐっ!?」

 カテレアは魔法陣で防御をするが、魔法陣に弾かれたレーザービームは近くにある鏡を

 反射してカテレアの背中を貫いた。

 

『(エボルト様や誠二様達と比べたら旧魔王でもこの程度ですか....)』

 そう思いながら、私はカテレアを見下ろしていた。私が変身したライダー、リベリオンの

 能力は反射や屈折、レーザービームの放出、鏡で偽物を創るといったものだった。

 どちらかというと誠二様やエボルト様とは違い物理アタッカーではなく、魔力を使った

 特殊アタッカー、敵を翻弄するタイプの能力だった。そして、私の目の前にいる

 カテレアはまんまと私の能力に引っ掛かり、すでに満身創痍の状態だった。

 

『さて、そろそろ終焉にしましょう』

 そう言って、私はベルトのレバーに手をかけた。すると、突然カテレアは謎の瓶を

 取り出した。その瓶の中にはオーフィス様の蛇が入っていた。

 

「まだよ....! 私にはオーフィスの蛇が....!」

『ドーピングなどさせませんよ』

 そう言って、私は周囲に浮いている鏡の欠片にレーザービームを反射させてカテレアが

 持っていた瓶を粉々に砕いた。

 

「そんな....!?」

『さぁ、最後ぐらい美しく死んでいってください』

 そう言って、私はベルトのレンチを降ろした。

 

スクラップエンド!

 

 レンチを降ろして音が鳴った瞬間、カテレアの周囲には私の偽物が十人ほど現れ、背後に

 巨大な鏡を装備していた。そして、私の背後にも鏡が現れ、エネルギーがチャージされた。

 

『さようなら、カテレア・レヴィアタン』

 そう呟いた瞬間、11枚の鏡から紫色の巨大なレーザービームが放たれた。

 

「グレイフィア....! グレイフィア・ルキフグスゥゥゥゥ!!!」

 カテレアはそう絶叫しながらレーザービームの光に包まれ消滅した。

 

『....まずは一人』

 そう呟くと、現れていた偽物は全て消滅した。すると、同時にあちこちから戦闘音が

 聞こえてきた。

 

『(皆さんも始まったようですね。ならば、私も援護に向かった方が良さそうですね....)』

 そう思いながら私はこの場から離れた。

 

 ~~~~

 イリナside

 

『....弱いわね』

「くっ....!」

「まさかここまでエクスカリバーの力を引き出すとは....!」

 今、私の目の前にはぼろぼろの姿で地面に膝をついたゼノヴィアとミカエルがいた。

 

『(本当に、今までこんなのがトップだった組織にいたのがバカみたいね....)』

 そう思いながら、私は聖剣をゲイ・ボルグに変えた。

 

「イリナ! 何故だ! 何故お前はこんなことを! 仮にも、お前も天界勢力に所属していた

 だろう!」

『えぇ、そうね。でも、それは過去の事よ。私は三大勢力を滅ぼすと決めたの』

「何だ! 一体何がお前をそこまで変えた!」

『変えた、ね....私は何も変わってないわ。むしろ、これが私の本性よ』

「なっ....」

 私の言葉にゼノヴィアは絶句していた。

 

『一つ教えてあげるわ。どうして私が天界に手を貸していたか』

 そう言って、私は近くの岩にもたれかかった。

 

『天界では成果を上げれば上げるほど神の恩恵を受けやすくなる。そして、ある程度の

 ところまで恩恵を受けれたら死者との会話ができる....私はそれで初恋の人と会うために

 天界に手を貸していたの。でも、その必要はなくなった。私の初恋の人は生きていたから』

「っ!」

『彼は自分を殺そうとした悪魔に強い怒りを覚えていてね。悪魔と一緒に、ついでに天使も

 堕天使も滅ぼすそうよ。生きていくうえで存在が邪魔だから。ま、これもあんた達の

 これまでの行いが返って来たと思いなさいミカエル』

「っ....」

 私はそう言い終わると、もたれかかっていた岩から離れゲイ・ボルグを構えた。

 

『さて、じゃあそろそろ終わりにし....』

 私はそう言いながらベルトのレンチに手を置いた。その時....

 

『おいおいイリナ。そいつらはまだ殺すなよ』

 突然私の背後からスタークが現れた。

 

『スターク....』

『あいつらはまだゲームの駒としているからな。今日はここまでにしておけ』

 そう言いながらスタークは私が構えていたゲイ・ボルグを下に向けた。

 

『....仕方ないわね』

 私は渋々ゲイ・ボルグを聖剣に戻してそう呟いた。

 

『今日のところは引いてあげるわ。....今度戦う時は、もう少し楽しませて欲しいわね』

「っ、イリナ....!」

『さようなら』

 そう言った瞬間、私とスタークは黒い煙に包まれた。

 

 

 

 



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五つの戦い 後編

 レイナーレside

 

『カラワーナ! ミッテルト! 二人は遠距離から攻撃して逃げ道を防いで! 私は接近戦で

 戦うわ!』

 そう言って、私はスチームブレードを構えてアザゼルに攻撃を仕掛けた。

 

「チッ....!」

 アザゼルは私の攻撃を躱していたが、カラワーナとミッテルトの狙撃は少しずつだが

 当たりかけていた。

 

『そこ!』

 そして、私のスチームブレードの攻撃はアザゼルの羽を一枚、半分に斬り裂いた。

 

「クッソ....お前ら、本当に容赦がねぇな。仮にも俺はお前らの元上司だぞ!」

『あぁ。元、上司だな』

『正直、もう堕天使としてのプライドとかはウチらには無いっスからねぇ』

 アザゼルの言葉に、二人は答えながらも攻撃を続けていた。

 

「ちっ....! 仕方ねぇ。こんな所でこれを使う羽目になるとはな....」

 すると、アザゼルは金色の短剣のような物を取り出して起動させようとした。

 

『ミッテルト!』

『わかってるっス!』

 すると、ミッテルトは一本のボトルを振ってライフルモードのネビュラスチームガンに

 挿し込んだ。

 

フルボトル! ファンキーショット! フルボトル!

 ミッテルトが放った銃弾はロケットの形に変形し、アザゼルの短剣に直撃して短剣を

 吹き飛ばした。

 

「なっ!?」

『そこ!』

 私は左腕のギアを回してブーストをかけてアザゼルの顔面を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!?」

 アザゼルは地面に叩き落とされて、地面にはクレーターが出来上がっていた。

 

『(今なら殺せるけど、スタークはまだ殺すなって言ってたわね....)』

『今回はこれぐらいにしてあげるわアザゼル。殺すなっていう命令があるからね。ミッテルト、

 カラワーナ。私達は引くわよ』

『了解っス』

『わかりました』

「ま、待て....!」

 私達はそう言って、ネビュラスチームガンから出した煙でこの場から撤退した。

 

 ~~~~

 オーフィスside

 

『(何とか釣れた....)』

 我についてきたのは二匹の悪魔だった。

 

『(早く倒そう....)』

 そう思い、我はビートクローザーを取り出して刀身に魔力を籠めた。すると、刀身に黒い炎が

 現れた。我はビートクローザーを二匹の悪魔に向かって振り下ろすと、ビートクローザーからは

 黒い炎の斬撃が放たれた。だが、二匹の悪魔は障壁を張って斬撃を防いでいた。

 

『(もう少し威力を上げないと....)』

 そう思い、我は魔力を籠め直して斬撃を放った。その斬撃の数はさっきよりも十倍に増えて

 二匹の悪魔に襲い掛かった。

 

「なっ!?」

「嘘っ!?」

 二匹の悪魔は障壁を張ったのだが、斬撃は障壁を破壊して悪魔にダメージを与えた。そして、

 二匹の悪魔は地面に落ちた。

 

『(....弱い)』

「どれだけの威力をしているんだ....!」

「私達の障壁を破るなんて....! このっ!」

 落ちてきた悪魔のうちの女の悪魔は巨大な氷塊を放ってきた。その氷塊を、我は腕から

 放った黒い炎で消滅させた。

 

「っ....! これならどうだ!」

 氷塊が消滅させたことに驚いたのか、男の悪魔は黒い魔力を放ってきた。その黒い魔力も、

 我は黒い炎で消滅させた。

 

『お前達では我に勝てない....せめて、ビルドかスタークぐらいの力を付けろ』

 そう言って我はベルトのレバーを回転させた。

 

Ready go! ドラゴニックフィニッシュ!

 

『これで終わり....』

 我は両腕に炎を纏わせて、それを一つに重ね合わせて巨大な炎の球体を二匹の悪魔に放った。

 巨大な炎の球体は二匹の悪魔に直撃したのか、煙が晴れると二匹の悪魔は地面に倒れていた。

 

『....』

『(我の役目は終わった....)』

 そう思い、我はスタークとの集合場所に向かって歩き始めた。

 

 ~~~~

 創二side

 

『暴れてるな....』

 旧校舎に来た俺の目の前にはスマッシュと化したギャー助がスパナを飛ばしながら大暴れ

 していた。

 

『さて、やるか』

 俺はそう呟き、ドリルクラッシャーを構えてギャー助の前に立ちふさがった。

 

『来いよ、ギャー助』

 そう言ってギャー助が俺の方を見た瞬間、俺の身体が一瞬止まった。そして、気づけば俺の

 目の前にはスマッシュとなったギャー助がいた。

 

『っ!?』

 俺は咄嗟にドリルクラッシャーでガードしたが、ギャー助の一撃で後方に吹き飛ばされた。

 

『(どんな威力してんだよ....!)』

 俺は空中で態勢を整えて地面に着地したのだが、俺の目の前には無数のスパナが

 飛んできていた。

 

『(エボルトの奴....ロストボトルを使うなんて聞いてねぇぞ!)』

 俺はエボルトの勝手な行動に内心キレながらもスパナを叩き落としていた。

 

『(さてどうする....ただでさえこのベルトはリミッターかけまくって本来の力の10%しか

 出ないっていうのに....この状況でリミッター解除するのは流石に無理だな。攻撃の手が

 止む気配はないし....強制解除のハザードトリガーを持ってくるんだったな....)』

 そんな事を考えながら次の一手はどうしようかと考えていると....

 

「石動先輩!」

 旧校舎の中から塔城が現れ俺の方に走って来た。その塔城に気づいたのか、ギャー助は

 塔城に向かってスパナを放とうとした。だがその前に、俺はドリルクラッシャーをガンモードに

 変形させてスパナを放つのを防いだ。

 

『無事だったか塔城』

「はい。それよりもアレは....」

『....ギャー助だ。正直、まだ生きてるかはわからん....』

「そんな....」

 俺の言葉に、塔城は悲しそうな声でそう言った。

 

『塔城、最悪の場合を想定してお前は先に逃げろ。ギャー助は俺がどうにかする』

「ですが....」

『良いから行け。先輩命令だ』

「っ....わかりました。でも先輩、これだけ受け取ってください」

 そう言うと、塔城がポケットからある物を取り出した。そのある物とは、今俺が必要としていた

 ハザードトリガーだった。

 

「私の姉が、ビルドに渡すようにって。これを使えば強力な力が手に入るとも言っていました」

『....そうか。確かに受け取った』

『(黒歌が接触か....また外堀を埋めに行ったか....)』

 そう考えながら、俺は塔城からハザードトリガーを受け取った。

 

「じゃあ先輩、どうかギャー君をお願いします....」

『あぁ。最善は尽くす』

 そう言うと、塔城は会談の会場の方に走って行った。

 

『さて、俺も早く終わらせるか』

 そう呟き、俺はハザードトリガーのスイッチを押した。

 

ハザードオン!

 

 俺はハザードトリガーをレバーの上に付いているパーツに挿し込みベルトからラビットと

 タンクのボトルを抜き、もう一度ベルトに挿し込んだ。

 

ラビット!  タンク!  スーパーベストマッチ!

 

ドンテンカーン! ドーンテンカン! ドンテンカーン! ドーンテンカン!

 

ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!

 

 レバーを回し続けると、俺の前後には黒いたい焼き板のような物が現れた。

 

Are you ready?

 

『ビルドアップ』

 その言葉で、俺は黒いたい焼き板に挟まれた。

 

アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベーイ!

 

『行くぞ、ギャー助』

 そう呟き、俺は左脚で地面を蹴り、ギャー助の懐に一気に接近した。そして左手でギャー助の

 腹を殴った。スマッシュとなったギャー助の腹はへこみ、旧校舎の方へ吹っ飛んでいった。

 だが、すぐにギャー助は立ち上がり、再び時間を止めて俺に向かって突っ込んできた。

 

『その手は食らわんぞ』

 俺は突っ込んできたギャー助を片手で止めて、地面に叩きつけた。

 

『悪いな。リミッターを外した今の俺に時間停止は効かない』

 そう言って、俺は叩きつけたギャー助を蹴り飛ばした。

 

『....終わりだ』

 そう呟き、俺はベルトのレバーを回した。

 

ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!

 

Ready go! ハザードアタック!

 

 右脚に黒いオーラが集まり、俺は空中に跳んでギャー助にライダーキックを放った。ギャー助は

 吹き飛び、吹き飛んだ場所は大爆発を起こした。

 

『....じゃあな、ギャー助』

 そう呟き、俺はこの場から離れた。

 

 

 

 



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暴走と終戦と崩壊

 黒歌side

 

『(....そろそろ終わる頃かしら)』

 悪魔どもを全員行動不能にした私は窓の外を見ていた。

 

『おっ、もう終わってたか』

 すると、私の背後にスタークが現れた。

 

『まぁね....正直、私が足止めする必要ある?』

『ま、念には念をって事だ。にしても赤龍帝、お前弱すぎるなぁ....お前がいるから

 少しは荒れてるかと思ったが、荒らしたのは悪魔の嬢ちゃんの方か』

 そう言いながら、スタークは眼鏡の悪魔の前に座った。

 

『面白れぇ嬢ちゃんだな。どうだ? こっちに着く気はないか?』

『....余計なリスク増やすんじゃないわよ』

「....お断りです。素性も目的もわからないあなた達に着く気はありません」

『....はぁ。それよりもスターク、ビルドは....』

 私がスタークにそう聞こうとした時、突然張っていた結界が音を立てて割れた。

 

『っ!?』

 そして、次の瞬間私達がいた校舎が音を立てて揺れ出し崩壊し始めた。

 

『なっ!?』

『おっと、逃げんぞ黒歌』

 スタークはそう言うと煙に包まれて姿を消した。私もスタークに続いて魔法で校舎の外に

 脱出した。

 

『一体何が....っ!?』

 私が辺りを見渡すと、そこには黒い色をしたビルドがいた。

 

『(何て殺気出してんのよ....!)』

 そう思っていると、私の目の前からビルドの姿は消えた。そして、気づけばビルドはスタークの

 懐におりスタークに殴りかかっていた。殴られたスタークは空中で回転しながら受け身を

 とっていた。

 

『スターク....スターク!』

 ビルドはまるで自我がないのかそう叫びながらスタークに攻撃を続けていた。

 

『これは....』

『一体どうなってるのよ黒歌』

 私が二人の戦いを眺めていると、バラバラの場所で戦っていたグレイフィア達が戻って来た。

 

『わかんないわよ....』

『(創二のやつ、完全に暴走状態ね....トリガーで暴走なんて聞いてないわよ!)』

「あなた達....! お兄様やアザゼルは!」

 すると、地面で倒れているグレモリーは私達にそう叫んできた。

 

『倒したわよ。今頃起きて這いずってこっちに向かってるんじゃない?』

「そんな....嘘よ! お兄様が負けるなんて....!」

「リアス....嘘だったら彼女達はここにいないはずですよ....」

 そう言いながら、眼鏡の悪魔は身体をふらつかせながらも立ち上がった。

 

「あなた達....一体何が目的なんです....」

『目的、ねぇ....私達は命令に従って動いただけよ。目的はスタークか、それかもう一人しか

 知らないわよ。ま、私は白音に用があったってのもあるけど。ねぇ白音」

 そう言いながら、私は変身を解除して背後にある木を仙術で破壊した。その木の背後には

 白音がいた。

 

「姉様....気づいていたんですか....」

「愛しい妹だもの。安心しなさい、あなたには手は出さないから」

「....妹だから、ですか」

「察しが良いわね。どこかの悪魔と違って」

 そう言いながら、私はグレモリーを見た。グレモリーは私の視線に気づくと憤怒の視線を

 向けてきたが、私は無視してビルドの方を見た。

 

「(ていうか、こっからどうしたらいいのよ私達....)」

 そう思っていた時、突然上から強力な魔力を感じた。その魔力はビルドとスタークの方に

 真っ直ぐに向かっていた。

 

「スターク上!」

 だが、私の言葉よりも早く魔力の反応は二人がいる場所に落ちた。落ちたと同時に、二人が

 いた場所は砂煙に包まれた。

 

「っ、一体何が....」

 私は袖で砂煙を払って二人がいた場所を見ると、そこには白龍皇がいた。だが、白龍皇は

 ビルドに腕を掴まれていた。

 

『今の奇襲を防ぐか....! やはり面白いな君は! これなら俺も本気を....!』

『ウルセェ....ジャマヲ、スルナァァァ!』

 

ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!

 

Ready go! ハザードアタック!

 

 白龍皇は何か興奮していたが、ビルドの必殺技でぶっ飛ばされていた。

 

『うわっ....』

『あれ普通の悪魔だったら死んでるじゃない....』

『はっはっはっはっは! 良いぞ良いぞ! それでこそ俺が選んだ人間だ!』

『コロス....! オマエダケハ!』

『....良い殺意だ! だが、今宵はここまでだな』

 スタークがそう言った瞬間、ビルドのボディには電気が走り無数の爆発が起きた。

 

「がはっ....!」

「石動先輩!」

 ビルドの変身は解け、創二は血まみれで地面に倒れた。そして、白音は倒れた創二のもとに

 向かって走っていった。

 

「テメェ....!」

『俺がただ躱していただけと思ったか? 残念。躱すのと同時に爆発する毒を付けてたのさ』

 そう言いながら、スタークは私達の方に歩いてきた。

 

『だが、強くなっているなビルド。あのルシファーの子供の白龍皇を一撃でダウンさせるのは

 少し想定外だったが....あの吸血鬼を殺したのがトリガーとなったか?』

 スタークはどこか笑った様子で創二に向かってそう言った。

 

「吸血鬼って....まさか....!」

『猫の嬢ちゃんは分かったか。あの吸血鬼の小僧は死んだよ。せっかくビルドが命を懸けて

 助けたのに....フッフッフッフ! 哀れだなビルド!』

「っ! このっ!」

 スタークの言葉に怒ったのか、白音はスタークに向かって殴りりかかろうとした。だが....

 

「よせ塔城....!」

 創二が白音の肩を掴んで白音を止めていた。

 

「でも先輩!」

「お前じゃ勝てねぇよ....」

 創二は血反吐を吐きながらふらふらと立ち上がった。

 

「....その状態のあなたでも勝てないでしょう」

 すると、眼鏡の悪魔が創二に肩を貸して創二の身体を支えていた。

 

「先程聞き捨てならない言葉が聞こえましたが、それは本当の事ですか蛇男」

 眼鏡の悪魔はスタークに向かってそう聞いた。

 

『白龍皇の事か? それなら本当だ。俺の情報網を甘く見るなよ眼鏡の嬢ちゃん。ついでに

 良いことを教えてやる。白龍皇はさっきグレイフィアが潰した悪魔の組織にいるぜ。そうだろ、

 孫悟空』

 そう言いながら、スタークは上空に向かって一発の弾丸を放った。だが、その弾丸はスタークに

 向かって弾き返って来た。スタークが放った弾丸の方向には絵本に出てくる孫悟空のような

 男が浮いていた。

 

「時間通りに来てみりゃ何だってんだいこの状況は....」

『白龍皇連れて帰るならさっさと行きな。うっかり、殺しちまうからなぁ....』

「っ!? お、おいヴァ―リ! 早く退くぞ! ありゃヤベェ!」

「美猴! 俺はまだあの男と....!」

「言ってる場合か!」

 白龍皇と孫悟空はそう言い合いながら、魔法陣の中に消えて行った。

 

『....さて、今日の実験は終了だ。俺達も帰るぞ』

『かしこまりました』

 スタークの言葉を聞き、グレイフィアは私達の背後に魔法陣を作り出した。

 

『最後に、お前達に俺達の組織の名前を教えてやる。俺達はファウスト。ある男の野望を

 叶える組織だ。また遊ぼうぜ悪魔の諸君、ビルド! ciao!』

 その言葉と同時に、私達は魔法陣の中に消えた。

 

 ~nascita~

 

「はぁぁ....つっかれた」

「黒歌....おばさんみたい」

「何ですってオーフィス!」

「やめなさいよ帰って来て早々....」

 私は基地に着くとソファにそう呟いてもたれかかった。

 

『ま、全員お疲れさん。休むんだったら部屋で休めよ』

 スタークはそう言いながら自分の部屋に入っていった。

 

「....あいつ、何で変身解除してないの?」

「おそらくですが....最後の仕事を済ますためではないですか?」

「あぁ....そういう事ね」

 私はスタークの目的を思い出してそう呟きテレビの電源を付けた。

 

 ~~~~

 創二side

 

「....会長、悪いな」

「いえ....今回の一件、石動君がいなければもっと被害が出ていました。謝るのはこちらの方

 です」

 スターク達が退いた後、俺は会長につきっきりで癒しの魔法をかけてもらっていた。そして、

 隣には塔城がいた。

 

「塔城には、悪いことをしちまったな....ギャー助の事、助けてやるって言ったのに....」

「いえ....あの時、私も残っていれば....」

「お二人とも....」

「....ここにいたのか石動!」

 何処か空気がしんみりしていた時、突然クズ兄が俺達の方にやって来た。

 

「お前、何でギャスパーを助けてやらなかった! 何のためにギャスパーの所に

 向かったんだよ!」

「助けてやったさ。だが、スタークが用意周到過ぎた....」

「そんなの理由になるかよ! お前のせいでギャスパーは....! ギャスパーはお前のせいで

 死んだも同然....!」

「....いい加減にしてください!」

「こ、小猫ちゃん....?」

 クズ兄が最後まで言い終わる前に、塔城がそう叫んでクズ兄の前に立った。

 

「石動先輩のせいで死んだ....? これ以上ふざけた事を言わないでください! だったらあなた

 だったらギャー君を助けることができたんですか!」

「あ、当たり前....」

「何が当たり前ですか! 石動先輩にこっぴどく敗北したくせに助けるなんて無理です! 相手は

 石動先輩にここまで重傷を与えた相手ですよ! あなたなんかがあの蛇男を止めながら

 ギャー君を助けることができるはずがありません! いい加減自分の実力を認めたら

 どうですか! それに....ギャー君を目の前で殺された石動先輩の気持ちがあなたに

 わかるんですか!」

 塔城は涙を流しながらクズ兄に向かってそう言った。

 

「塔城さん....」

「この中で一番辛いのは目の前でギャー君を殺された石動先輩です! 少し考えれば分かること

 なのに、そんなことも分からないんですか! あの時何も行動できなかったあなたがこれ以上

 好き勝手言わないでください!」

「塔城....」

「....すみません先輩。今は、一人にさせてください」

 そう言いながら、塔城はここから走り去っていった。

 

「何だよ....! 俺が悪いっていうのかよ....!」

「....そうですね。これは、兵藤君が悪いですね」

「っ!」

「あの時動けなかった私達に石動君の事を悪く言う権利は無いですよ」

「っ....!」

 会長の言葉に言い返せないのか、クズ兄は何処かに走り去っていった。

 

「....報われないものですね」

「....そうだな」

 

 ~~~~

 小猫side

 

 先輩達といた場所から走り去った私は旧校舎のある所にいた。

 

「....ギャー君」

 そして、地面に座り込んで泣いていると近くから部長と朱乃さんの話し声が聞こえた。

 

「....それにしても、ギャスパー君が殺されたのは想定外でしたね」

「えぇ....でも、ある意味幸運といえば幸運ね」

「というと?」

「僧侶の駒、お兄様から補填してもらえることが決まったわ。これで新しく強い眷属を

 下僕にすることができるわ」

「候補はいるんですか?」

「そうねぇ....あの男を下僕にしたいけどソーナの眼があるからね。下手には動けないわ。

 ま、隙を見せた時が好機ね」

「そうですか」

「それにしても、次は戦力になるような下僕が良いわね。()()()()()()()()()使()()()()()() 

 ()()()()。封印なんてされて必要な時に使えないし、死んでくれて正直ありがたいわね。

 今回のこの惨状でこの程度の被害で済んで良かったわ」

「リアス....あまり大きな声で言わない方が良いですよ」

「大丈夫よ。他の皆は別の場所にいるし。公の場で悲しいふりをしておけば同情も買えるわ」

「気を付けてくださいね....」

「....」

「(あぁそうか....あの人にとっては、ギャー君が死んだのは()()()()()()なんだ....)」

 そう思った私は、気づかれないようにこの場から離れた。

 



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取引と別れ

「はぁ....エボルトの遺伝子無かったら流石に死んでたな」

 そんな事を呟きながら、俺は一人家に向かって歩いていた。会長にある程度の

 治療を受けた俺は事後処理を会長に任せて先に帰っていた。

 

「(今回の一件で色々と事が進んだな。後はあの件を済ませれば終わりだな....)」

 そう思っているうちに、俺は家に着いた。俺は家の鍵を開けて冷蔵庫を開き店の地下に

 向かった。

 

「ただいま」

「っ! おかえりなさいませ、創二様」

 地下のリビングには髪を下ろしたグレイフィアがいた。

 

「....グレイフィアだけか?」

「はい。他の皆様は既にお風呂に入って就寝されました」

「そうか。エボルトは?」

「エボルト様ならお部屋の方に」

「わかった。今日はお疲れさん。グレイフィアも早く休めよ」

 そう言って、俺はエボルトの部屋に入っていった。

 

「帰ったぞ」

『お、随分と遅かったな』

「会長の治療受けてたからな。まぁ受けなくても傷は治るけど正体がばれないように

 するためにはな」

『そうかそうか』

「お前の遺伝子無かったら今回は流石に死んでたな」

『そりゃ殺す気でやらないと計画が破綻しちまうからな。まぁ死なねぇから安心しろ』

「わかってる。....それで、ギャー助の方はどうにかなるか?」

 そう言った俺の視線の先には手術台の上で眠りについているギャー助がいた。さっきの

 戦いでギャー助は俺の必殺技を受け爆発したが、実際に爆発を起こしたのはギャー助が

 吹っ飛んだ場所であり、ギャー助自身は必殺技を受けただけで爆発を起こしていなかった。

 実際、爆発が起こった寸前にエボルトがギャー助を回収したため、まるでギャー助が爆発で

 死んだと思わせるために俺とエボルトは一芝居打っていたのだった。

 

『お前の必殺技でスマッシュの部分は崩壊してる。ガスも抜いて神器も抜いてあとは記憶の

 改竄だが....本当に良いのか? お前の記憶も全部消しちまって』

 エボルトは確認するようにそう聞いてきた。

 

「あぁ。....その方が、ギャー助にとって幸せだと思うからな」

 俺は少し寂しい気持ちもあったが、ギャー助の今後の事を考えてそう言った。

 

『....そうか。わかった』

 そう言って、エボルトはギャー助を煙で包んだ。そして、十分ほど経つとギャー助を

 包んでいた煙は晴れた。

 

『記憶は消して別のものに書き換えた。じゃ、準備しろ』

「あぁ」

 俺はトランスチームガンにウルフロストフルボトルを挿し込んだ。

 

ウルフ....

 

「蒸血」

 

ミスト・マッチ....ウ・ウッ・ウルフ....ウルフ....ファイヤー!

 

『よし、じゃあ行くか』

 エボルトはそう言うと、ギャー助を担いで辺りに煙を撒いた。

 

 ~~~~

 

 煙が晴れると、俺達はどこかの森の中にいた。

 

『なぁ、今更なんだが取引相手って誰なんだ?』

 俺は森の中を歩きながらエボルトにそう聞いた。

 

『そういや言ってなかったな。取引相手はこの吸血鬼の幼馴染だそうだ』

『ギャー助の? お前、どうやって調べたんだよ?』

『世界を回っている時にちょっとな。それと、グレイフィアが冥界で調べてな』

『....相変わらず、人が知らない所で手回ししてんな』

『当然。俺は最高のショーが見たいからな。そのためには打てる手はすべて打つぜ』

 そう話していると、突然辺りが霧に包まれた。

 

『っ!』

『安心しろ、敵じゃねぇよ。この霧は取引相手様のものだ』

 そう言いながら、エボルトは霧の中を歩き出した。そしてしばらく歩くと館のような建物が

 ある場所に出た。そして、その館の周りにはエボルトが造っていたハードガーディアンがいた。

 

『お前、このガーディアンって....』

『俺が造ったやつだ。取引相手はちょっとしたお尋ね者でな。前金としてガーディアンを

 渡しといたんだよ』

『お尋ね者って....大丈夫なのか?』

『あぁ。お尋ね者って言っても、悪いことをしたお尋ね者じゃねぇからな』

 エボルトはそう言って、館のチャイムを押した。

 

『....はい』

『どうも。約束通りギャスパー・ヴラディを連れてきた。それと、リーダー様を連れてきた。

 開けてもらえるか?』

『っ! わかりました』

 声からして取引相手は女の子だった。そして、館から金髪の女の子が出てきた。

 

『よぉ、ヴァレリー・ツェペシュ』

「....本当にギャスパーを連れてきてくれたんですね」

『取引は取引だからな』

「そうですか。....取り敢えず、中へどうぞ」

 そう言うと、金髪の女の子は門を開き館の中に入っていった。

 

『行くぞ』

『....あぁ』

 俺はエボルトについていき館の中に入った。館の中自体は綺麗で一人で住むには十分な

 広さだった。そして、俺とエボルトはソファに座りギャー助を机を挟んだ向こうのソファに

 座らせた。そして、取引相手の金髪の女の子はギャー助の隣に座った。

 

『そいつの悪魔の記憶は全部消した。神器も抜いて今の状態はただの吸血鬼だ』

 エボルトはソファに座った金髪の女の子にそう言った。

 

「....そうですか。ありがとうございます」

『これも取引のためだ。....これで、こっちは契約を果たしたことだ』

「そうですね。それじゃあ、約束通りコレを」

 そう言うと、金髪の女の子は机の上に聖杯のような物を置いた。

 

『確かに受け取った。これで取引は完了だ。じゃ、俺は先に帰るぜ。創二、最後に

 別れの挨拶ぐらいしとけ』

『ちょ....! おい! 先帰んな!』

 俺はエボルトにそう言ったのだが、エボルトは無視して先に帰ってしまった。

 

『あんの野郎....!』

「少し良いですか?」

 俺がエボルトのいた場所を見ていると、金髪の女の子が話しかけてきた。

 

『何だ?』

「あなたが組織のリーダーでギャスパーを助けてくれたんですよね?」

『....まぁそうなるが。それがどうかしたか?』

「....改めてお礼を言わせてください。ギャスパーを助けてくれて、どうもありがとう」

 そう言って、金髪の女の子は立ち上がり頭を下げてきた。

 

『別に礼を言われるほどの事はしてねぇよ。ギャー助を助けたのは、あくまで俺の計画を

 進めるための過程で偶然起きたことだ。....だから、まぁ頭を上げてくれ』

「....彼が言っていた通り、優しい方なんですね」

 頭をあげた金髪の女の子は笑っていた。

 

『(アイツ何言った....)』

「そういえば自己紹介が遅れましたね。ギャスパーの幼馴染のヴァレリー・ツェペシュと

 申します」

『そういや俺も名乗ってなかったな。石動 創二、ファウストのリーダーだ』

「創二さんですか。良い名前ですね」

『そりゃどうも』

 俺はそう言って、ギャスパーの方を見た。

 

『ヴァレリー、あんたギャー助の幼馴染って言ったか』

「えぇ、そうですよ」

『そうか....俺にとって、コイツは可愛い後輩なんだよ。まぁそのことをギャー助は

 忘れてるんだけどな』

 そう言いながら、俺はギャー助に近づき頭を撫でた。

 

「そうなんですね....」

『まぁギャー助のためだからな。....そういうわけだから、どうかギャー助の事をよろしく

 頼む』

「....はい。お任せください」

『頼んだ....じゃあ、俺ももう行く』

 そう言って、俺は部屋に入る扉に向かった。

 

『....じゃあな、ギャー助』

 俺は部屋から出る時、最後にギャー助の顔を見てそう呟いた。そして館から出て俺は

 ヴァレリーに連絡先を書いた紙を渡した。

 

『何かあったら連絡してくれ。力になれることだったら協力する』

「ありがとうございます。では、私からはこれを」

 そう言うと、ヴァレリーは一枚の紙を渡してきた。

 

『これは?』

「吸血鬼領にある隠し通路です。エボルトさんに渡せば役に立つはずです」

『そうか。ありがとな』

「いえいえ。では、また会う日まで」

『あぁ、じゃあな』

 そう言って、俺は辺りに煙を撒いてこの場から姿を消した。

 

 

 



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厄介と壊れた戦車

 次の日、学校に来ると校舎は元通りになっていた。

 

「(会長もご苦労なこった....)」

 そう思いながら俺は教室に向かった。

 

 ~放課後~

 

「おい会長、何でカラスがここにいる」

 放課後になり、俺はオカルト研究部の部室にいた。この部室には俺以外に無能とその眷属、

 会長、会長の眷属、堕天使の長であるアザゼルがいた。

 

「すみません....断れば姉が来ると言われて....」

「あんた....本当に貧乏くじ引かされてばっかだな....」

 俺は会長の立場に同情しながらそう言った。

 

「ま、そういうこった。ただまぁサーゼクスから条件は付けられたがな」

「条件?」

「お前等を鍛えてやれってな。禍の団にあの蛇男の言ってたファウストって組織....

 勢力がどれほどかもわからない連中にお前達が太刀打ちできるようにな」

「あなたの力なんて....!」

「眷属を殺されたのにか?」

「っ....」

「こん中で連中とまともにやれあえたのは俺とそこにいる石動って奴だけだ。お前らだけで

 もしも連中とやりあったらどうなる? 今度こそお前らは全滅するぞ。....サーゼクスはその

 事態になるのを危惧してんだよ。だからお前らを最低でも上級悪魔ぐらいの力を付けさせる

 ために俺が来たんだよ。神器についての知識もあるからな。ま、文句ならサーゼクスに

 言うこった」

「(少し面倒になるな....)」

 俺はその会話を聞きながら一人そう思っていた。

 

「(厄介になる前に計画を進めるか....)」

「っと、それと石動だったか。お前のそのベルト、解析させて....」

「断る。....そもそも俺はスタークさえ殺せれば他はどうでもいい。禍の団とやらは

 お前らが勝手にやってろ。会長、もう帰って良いか?」

「え、えぇ。大丈夫ですよ」

「そうか」

 そう言って俺は先に旧校舎から出た。

 

 ~~~~

 アザゼルside

 

「やっぱそううまくは行かねぇか....」

 俺は部室から出て行った男を見てそう呟いた。

 

「(アイツのあの力がありゃこいつらも育つんだが....無理やり奪うにリスクがデカいな....

 そうなると説得だが、話聞く気もないしな....)」

「お前らの中でアイツとまともに話す奴は誰だ?」

 俺は部室にいる全員にそう聞いた。

 

「私と椿姫、あとは....塔城さんぐらいですか」

 セラフォルーの妹は俺にそう言った。

 

「そうか....」

「(こいつらにどうにか説得頼んでみるか....)」

 

 ~~~~

 ソーナside

 

「はぁ....」

「(ますます厄介ごとが増えましたね....)」

 生徒会室で一人、そう考えながら私はため息を吐いた。

 

「(石動君がまだこちらの味方でいてくれるだけマシですが....いつまでも石動君に

 頼るわけにもいけませんね)」

 そう考えていると、生徒会室の扉が叩かれる音が聞こえた。

 

「っ! どうぞ」

 生徒会室に入って来たのは塔城さんだった。

 

「塔城さん?」

「ソーナ先輩、今時間ありますか?」

「大丈夫ですが....どうかしましたか? わざわざ私の方に訪ねて来るなんて....」

「少し聞きたいことがあって....」

「聞きたいこと?」

「冥界にある図書館で過去の悪魔について書かれている本ってどこにありますか?」

「過去の悪魔ですか? それですと、一番大きなリーン図書館にあると思いますが....」

「....そうですか。ありがとうございます」

「いえ....ですが、どうして急にこんなことを?」

「....少し、調べたい事があったんです。じゃあ、失礼します」

 そう言うと、塔城さんは生徒会室から出て行った。

 

「(今の塔城さん、どこか様子が変でしたね....)」

 私は話していた塔城さんの表情が普段と違い疑問に思った。

 

「(何だか、嫌な予感がしますね....)」

 そう思いながら、私は窓から見える夕日を見た。

 

 



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冥界合宿のヘルキャット
京都旅行


「創二、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、イリナ、お前ら来週から京都に行ってこい」

 あの戦いから二週間後、晩飯を食っている時にエボルトはそう言ってきた。

 

「へっ?」

「京都に?」

「あぁ。創二以外の四人、日本神話に合ったことねぇだろ。顔合わせと挨拶に行ってこい。

 創二、お前は案内役だ」

「わかったが....四人は行かないのか?」

「俺らは俺らで計画を進める。今回の件に関しては少数で動く方がいい。それに、お前が

 いると面倒だからな。楽に進めるためにもお前は京都で休んどけ」

「....そうか。わかった」

「よし、じゃあお前らは旅行の準備しとけ。チケットは俺の方で取っておく」

 その言葉で、京都旅行の話は終わった。

 

 ~その日の夜中~

 

「で、俺を外して今回は何する気だ?」

 俺はエボルトのラボに来てそう聞いた。

 

「まぁいくつかあるな。一つ目は悪魔の会合に乱入して数人の悪魔をスマッシュにする。

 これは俺の仕事だな。二つ目が悪魔の街を破壊して経済的にダメージを与える。これは

 グレイフィアとオーフィスの仕事だ。で、最後だが....」

「搭城か....」

「BINGO! これは黒歌の仕事だ」

「てか、会合のタイミングよく知れたな」

「禍の団からのリークだ。お陰様で楽に敵の内情が知れる」

 その言葉を聞いて、俺はアーサーとルフェイの顔が思い浮かんだ。

 

「ただ、旧魔王が動かないのは残念だ。実験体にしようと思うことがあったんだが」

「そうか。....まぁ、そこは勝手にしろ。あのクズさえ殺さなかったら、俺は何も

 言わねぇよ」

「だよな」

「まぁ、こっちは任せとけ。そっちは任せる」

「あぁ」

 

 ~次の日~

 

「石動君、少しいいですか?」

 放課後、生徒会の手伝いが終わり帰ろうと思ったら会長に呼び止められた。

 

「何すか会長」

「来週、何か予定入っていますか?」

「来週、っすか....」

「えぇ。実は来週に冥界で若手悪魔の会合があるんです。それに出席するために冥界に

 帰るんですが石動君にも一緒に来て欲しいんです」

「....すんません。来週はもう京都に行く予定が入ってて」

 俺は申し訳なさそうに会長にそう言った。

 

「そ、そうですか....京都には旅行ですか?」

「旅行というか....店の第二店舗の下見についていくって感じっすね。今度京都で新店舗

 オープンするみたいなんで」

「なるほど....なら無理強いするわけにはいきませんね」

「悪いな会長。土産はちゃんと買ってくるからそれで手を打ってくれ」

「....では、楽しみにしていますね。ちなみに私は生八つ橋が好きです」

「覚えとく。じゃ、俺はお先に....」

「石動君、もう一つだけ良いですか?」

 会長は再び俺を呼び止めた。

 

「搭城さん、最近様子が変だったということはありませんか?」

「搭城? ....いや、普段と変わらないとは思うが。あぁでも....最近飯の食う量が

 減ってたような....」

「それぐらいですか?」

「そう、だな。俺が変だと思ったのはそれぐらいだ」

「そうですか。ありがとうございます」

「あぁ。じゃあお先に」

 そう言って俺は生徒会室を出た。

 

「(搭城の事を聞いてくるのは驚いたな。....よく人を見ている。一番警戒しなきゃ

 いけないのはやっぱ会長だな)」

 

 ~一週間後~

 エボルトside

 

「じゃあ行ってくる。そっちは任せたぞ」

「あぁ、任しとけ」

「九重達によろしく伝えといて」

「お土産、待ってる」

 そう言って、五人は駅に向かって歩き出していった。

 

「....さて、俺達も動くか。グレイフィア、オーフィス、お前ら先に冥界で作戦通り

 頼む。黒歌は作戦が始まるまで待機だ。待機してる間に用意はしとけよ」

「かしこまりました」

「わかった」

「了解。そっちも頼むわよ」

 そう言うと、グレイフィアとオーフィスはこの場から消え黒歌は店の中に戻っていった。

 

「....俺も準備を進めるか」

 そう呟き、俺はトランスチームガンで姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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京都到着

「へぇ....ここが京都なのね」

 新幹線に揺られて二時間ほど、俺達は京都に着いた。

 

「東京とは結構違う感じっスね」

「確かに。和風な物があちこちで売られているな」

「後で自由に動いて良いから。今は先に挨拶に行くぞ。ついでにお前ら三人は

 あるものを受け取らないとダメだからな」

 そう言って、俺達はバス停に向かった。

 

 ~十五分後~

 

「ここは....」

「神社?」

 バスに乗って来たのは伏見稲荷大社だった。

 

「伏見稲荷大社。裏京都に繋がる唯一の入り口だ」

「裏京都? 何なのよそれ」

「妖怪や日本神話が暮らす世界。分かりやすく言うなら悪魔や堕天使にとっての冥界、

 天使にとっての天界っていったところだ」

 そう言って、千本鳥居を歩きながら俺はある場所で立ち止まった。

 

「この辺だな....」

 俺は目の前にある鳥居に触れた。すると、足元から石碑が現れた。

 

「そ、創二君....これは....?」

「裏京都の入り口を開くパズル」

 俺はイリナちゃんにそう言いながら、パズルを解いた。

 

「さて、裏京都に入るから全員じっとしてろよ」

「えっ!?」

「ちょ! そんな急に言われても....!」

 そう言うと、石碑が光り輝き俺達を包み込んだ。

 

 ~~~~

 イリナside

 

 光が収まり目を開くと、私達はさっきまでいた伏見稲荷大社とは別の場所にいた。

 

「ここが裏京都....?」

「あぁ。取り敢えず俺についてこい」

 そう言って、創二君は前に進んでいった。しばらく歩いていると私達は巨大な門の前に

 着いた。その門には二体の巨大な鬼がいた。

 

「よぉ、赤鬼、青鬼」

「ヌ。キサマハソウジカ」

「ヨクキタ。マッテイタゾ。ウシロハオマエノナカマカ」

「あぁ。八坂に挨拶とビザを貰いに来た」

「ソウカ。ナラバトオルガイイ」

 鬼はそう言うと、巨大な門を開いた。

 

「四人とも行くぞ」

 そう言って、創二君は門の中に入っていった。私達も創二君について行って中に入った、

 門の中は、京都の街並みに似ており様々な妖怪が街を歩いていた。そして、妖怪達は

 創二君に気づくと創二君のもとに集まっていた。

 

「わかったわかった。あとで店に行くから。今は先に八坂の屋敷に行かせてくれ。ビザ

 貰いに行かないといけないんだよ」

 創二君が妖怪達にそう言うと、妖怪達は道を開けていった。創二君は開けていった道を

 歩いて行き、私達は創二君について行った。その時、多くの妖怪たちが私達の方を

 じっと見ていた。

 

「何かすんごい見られてたんだけど....」

「そりゃ堕天使が来たら珍しいだろ。本来ここは妖怪以外を基本的に寄せ付けないからな」

 レイナーレの言葉に創二君はそう返した。

 

「まぁイタズラしてくるが悪い奴らじゃねぇから。あんまり攻撃してやんなよ」

 そう言いながら進んで行くと、私達は巨大な屋敷の前に着いた。その屋敷の前には

 一人の狐耳の女の子がいた。すると、女の子は私達の方に走ってきた。

 

「待っておったぞ創二!」

「久々だな九重。待っててくれたのか」

「そうじゃ! ....後ろにいるのは例の仲間か?」

「あぁ。堕天使のレイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、元教会の人間のイリナちゃんだ。

 四人にも紹介しとく、この狐の妖怪は九重。裏京都の統治者である八坂の娘だ」

「九重じゃ。よろしくの、創二の仲間よ」

 そう言うと、九重ちゃんは私達に頭を下げた。

 

「ささっ、母上が屋敷でお待ちじゃ。私について来るのじゃ」

 そう言うと九重ちゃんは屋敷の扉を開けた。

 

「俺達も行くぞ」

「えぇ」

 創二君に続き、私達も屋敷の中に入った。

 

 

 

 



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顔合わせと京都観光

「ここじゃ」

 九重に案内された俺達はある部屋に案内された。

 

「母上! 創二とその仲間を連れてきたのじゃ!」

 九重はそう言って部屋の扉を開いた。部屋の中は絢爛豪華で、奥には金色の着物を

 纏った九重の母親である八坂がいた。

 

「よくぞ参られた創二のお仲間よ。妾は八坂。裏京都を統治する妖じゃ」

 八坂は笑顔で俺達にそう言った。

 

「お主達四人は妾の客人として招待しておる。何かあれば遠慮なく言って欲しい」

「あ、ありがとうございます」

「うむうむ。それと堕天使三人衆、お主達にはこれを渡しておこう」

 八坂がそう言って指を鳴らすと、三人の前にはお札が現れた。

 

「これは?」

「いわゆるビザみたいなものじゃ。妖の中には三大勢力をよく思わない者が少なくない。

 姿を見たら襲い掛かってくる血の気の多い者もいるのでな。それを防ぐためにそのビザが

 必要なんじゃ。この京都にいる間は肌身離さず持っていて欲しい」

「....感謝するわ」

「うむ。せっかく来てくれたのじゃ。存分に京都を楽しんでほしい。話はこれで終いじゃ。

 あぁ創二、お主だけは少し残ってくれ。少し話したいことがある」

 八坂は何故か俺だけ残るように言った。

 

「わかった。イリナちゃん、少しだけ待っててくれ」

「わかったわ」

 そう言って、イリナちゃんと三人は部屋から出て行った。

 

「....それで、話って言うのは」

「端的に言えば計画の事と九重の事じゃ」

「計画と九重?」

「そうじゃ。まず計画の事じゃが、こちらとしてはほとんど準備は終わっている。そちらが

 合図を出してくれればいつでも行動できるようになっておる。....今のところ、計画はいつ

 実行するつもりなのじゃ?」

「正確には定まっていない。まだ、愚兄にそこまでの地位が無いからな。やるなら、あの男が

 最高潮の時に一気に絶望に落とせるタイミングだ」

「なるほど....ならばまだしばらくは動くつもりは無いと?」

「そうなるな」

「....了解じゃ。他の者達に伝えておこう」

 そう言いながら、八坂は立ち上がり俺の隣に座った。

 

「それで、もう一つの事じゃが....」

「九重の事か?」

「その通りじゃ。....九重が婚約者では不満かの?」

「不満つうか....俺好きな子いるんだけど」

「一緒に来ていたツインテールの少女か....」

「あぁ。まぁまだ告白もしてないんだがな....」

「ふむ....まぁ、その件は夕食時にするとしよう。止めてすまなかったのう」

「気にするな。じゃあ、また晩飯の時に」

 そう言って、俺は八坂の部屋から出た。そして、出口に向かうとイリナちゃんがいるのが

 見えた。

 

「イリナちゃん」

「創二君。お話し終わったの?」

「あぁ。....三人は?」

「先に表の方に戻っていったわ」

「そっか。....じゃあ、俺達も行こうか」

「うん!」

 俺はイリナちゃんとともに表の京都に戻った。

 

 ~~~~

 

「やっぱり実物は写真で見ると違うね」

「そうだな」

 まず俺とイリナちゃんは清水寺に来ていた。

 

「それにやっぱ人多いな....流石は夏休み」

「そうだね....」

 そう言いながら、イリナちゃんは俺の腕に抱き着いてきた。

 

「イリナちゃん!?」

「そ、その....迷子になっちゃだめだから....」///

「そ、そうだな」///

 俺は少し恥ずかしかったがイリナちゃんの言う事も最もだったため肯定した。

 

 ~~~~

 

「おっと、そこのお兄さんとお嬢さん。着物のレンタルはどうだい?」

 清水寺から出て町中を歩いていろんな店を見ていると、突然店前に立っていた店員に声を

 かけられた。

 

「着物のレンタルですか?」

「おうよ。見たところ観光客だろ? せっかくの京都観光だったら着物の方がテンション

 上がるぜ?」

「へぇ....イリナちゃん、せっかくだしレンタルしていかないか?」

「良いよ。じゃあお願いします」

「毎度あり! じゃあお兄さんはそっちで、お嬢さんはそっちから入ってくれ」

「あぁ。じゃあイリナちゃん、またあとで」

「うん」

 俺とイリナちゃんは一度分かれ、それぞれレンタルする着物を選んだ。

 

 ~三十分後~

 

「お、おまたせ創二君」

 先に着替え終わり外で待っていると、イリナちゃんが出てきた。イリナちゃんは青をベースと

 した花の柄が描かれた着物を着ていた。そして、髪型はツインテールではなくストレートに

 なっていた。

 

「ど、どうかな? 似合う....?」

「....女神だ」

「ふえっ!?」///

 俺はそんなことを呟きながらイリナちゃんに抱き着いていた。

 

「そ、創二君!?」///

「似合ってる....すごくかわいいよ、イリナちゃん」

「あ、あう....」///

 イリナちゃんは真っ赤になり顔からは湯気が出ていた。

 

「そ、創二君....もうやめて....これ以上は私が死んじゃう....」///

 イリナちゃんは俺の口を手で押さえながらそう言ってきた。そう言われたので、俺は大人しく

 イリナちゃんから離れた。

 

「もう! 創二君のバカ! 恥ずかしかったんだからね!」///

 イリナちゃんはそう言いながら俺の胸をポカポカ殴ってきた。

 

「ごめんってイリナちゃん」

 俺はそう言ってイリナちゃんの頭を撫でた。

 

「....スイーツ。奢ってくれたら許してあげる」

「わかったよ。じゃ、早く行こっか」

 俺はイリナちゃんの手を握り、町中を歩き始めた。

 

 ~~~~

 

「どう?」

「美味しいよ。これだけの行列に並ぶって、名店なんだね」

「あぁ。前に来た時に食べたんだがめちゃくちゃ美味くてな」

 俺とイリナちゃんはとある店に来ていた。イリナちゃんは抹茶のショートケーキで、俺は抹茶の

 ティラミスを食べていた。すると、イリナちゃんは突然周囲を確認し始めた。

 

「どうしたイリナちゃん?」

「いえ、その....誰も見てないかなって」

「?」

「その....あーん」

 イリナちゃんはショートケーキをフォークに刺すと、それを俺に向けてきた。

 

「えっと、これはその....」

「は、早くして....」///

「あ、あぁ....」///

 俺は少し恥ずかしかったが、イリナちゃんにショートケーキを食べさせてもらった。

 

「(美味いけど....それよりも顔が熱い....)」///

「そ、創二君も....」///

 イリナちゃんはそう言うと、目をつぶって口を開けていた。

 

「あ、あぁ....あーん」///

「ん....美味しいね、創二君のも」///

 イリナちゃんは満足したのか、凄く笑顔だった。

 

「そっか....」///

「(やっぱり、笑ってるイリナちゃんは可愛いな....)」

 俺は一人、笑顔のイリナちゃんを見ながら心の中でそう思っていた。

 

 ~~~~

 

「これ、イリナちゃんに似合うな」

「そうかな....?」

「あぁ。よく似合ってるよ」

「....ありがとう」

「じゃあこれにしよっか」

 そう言って俺はレジに持っていき、代金を支払った。そして、俺は外に出て買った簪を

 渡した。

 

「創二君、大事にするね」

「あぁ」

 そう話していると、突然目の前に狐が現れた。その狐はその場で一回転すると人の形に

 なった。

 

「石動様、紫藤様。八坂様より伝言でございます。そろそろ宴の準備が出来たので裏京都に

 戻ってきて欲しいと」

「わかった。レイナーレ達には....」

「彼女達にも使いは出しておりますのでご安心ください。では」

 狐はそう言うと、煙に包まれてこの場から消えた。

 

「創二君、今のは....」

「八坂の使いだ。....取り敢えず、そろそろ戻ろっか。着物も返さないとだめだし」

「....そうだね。じゃあ行こ」

 そう言って、俺とイリナちゃんは着物をレンタルした店に向かって歩き出した。

 

 

 



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