アクセルワールド 悪意の使者 (オメガリバイブ)
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第一話 アークとコスモス

 どうもオメガリバイブです。

 アークゼロを見て、書きたいと思った作品なので、その辺はご了承ください。




 シルバークロウが加速世界に降り立つ5年程前、無制限中立フィールドで、二人のバーストリンカーによってある一人のバーストリンカーがポイントを全損近くまで追いやられていた。

 

「アーク!今日ここでお前の悪夢に終止符を打つ!」

 

 青い騎士がそう叫び、アークと呼ばれたバーストリンカーに剣を振るう。

 

 ジェットブラック・アーク。このバーストリンカーはこれまで、合計40人ものバーストリンカーを全損させており、黒い破壊神と呼ばれ恐れられていた。

 

 アークは振り下ろされた剣をガードすることもなくもろに喰らい、後ろに転がって行く。

 

「この結末も、私の予想どうりだ。──ブルー・ナイト、グリーン・グランデ、君達には私の悪夢を止めることは出来ない。フフ、フハハハハハハハ!!」

 

 アークは先ほどの一撃でHPが0になり、体から体を形成していたリボン状のデジタルコードが空に上がって行く。

 体が消滅する中、アークは不敵に笑い続ける。

 

 ブルー・ナイトとグリーン・グランデはアークの消滅を確認すると、そのまま近くの無制限中立フィールドから離脱するポータルに向かった。

 

 ふたりが去ると、アークが消滅した場所に何本かのリボン状のデジタルコードが戻ってきてある形を作る。

 それはアークが腰に巻いていたドライバーと謎のキーだった。

 

─────────────────────────

 

「──今日も変わりない一日になるのかな?」

 

 東京都千代田区のとあるカフェの一角で、高校1年の氷室司はホワイトコーヒーを飲んでいた。

 

 すると、バシイイイ!!という衝撃音と共に世界が暗転し、首もとのニューロリンカーに入っているプログラム《ブレイン・バースト》が開かれ、現実世界の1.8秒、向こうでは30分の加速世界に誘われる。

 

 どうやら司が以前興味を持ったバーストリンカー《シルバークロウ》の対戦の観戦として、ブレイン・バーストが起動したようだ。

 

 ステージは煉獄で、シルバー・クロウの相手は格上のレベル4のシアン・パイルだ。

 戦いはレベル差もあってシルバー・クロウが防戦一方になっていき、HPバーがゴリゴリと削られていく。

 

(これは、シアン・パイルの圧勝だな)

 

 司は後ろを振り向き、観戦から抜けようとする。その時、他の観戦していたバーストリンカー達が驚きの声を上げた。

 驚きの声を聞いた司は、フィールドを見た。フィールドの地面ではなく、空に羽を広げるシルバー・クロウが居た。

 

(──まさか!《飛行アビリティ》を持っているなんて)

 

 シルバークロウは空から急降下して、シアン・パイルを地面に叩きつけて大きく土煙を上げた。シアン・パイルのHPバーのゲージ量がシルバークロウのHPバーのゲージ量より少なくなり形勢逆転した。

 

 そしてもう一つ驚くべき事態が起きた。土煙の中からシルバークロウが誰かをお姫様だっこして、空に上がる。

 シルバークロウがお姫様だっこしているのは、なんと忽然と姿を消していた黒の王《ブラック・ロータス》だった。

 そしてブラック・ロータスは高らかに声を上げて……。

 

「聞け!!六王のレギオンに連なるバーストリンカー達よ!!我が名はブラック・ロータス!!僭王の支配に抗う者だ!!」

 

 ブラック・ロータスの声はフィールドに響き渡る。

 

「我と、我がレギオン《ネガ・ネビュラス》、今こそ雌伏の網より出でて偽りの平穏を破らん!!剣を取れ!!炎を掲げよ!!戦いの時──来たれり!!」

 

 ブラック・ロータスの宣言がフィールドを木霊する。

 

「───ブラック・ロータス、シルバー・クロウ、シアン・パイル、いいものを見せてもらったよ。特にシルバー・クロウ、君の今回の行動はしっかりと学習(ラーニング)させてもらったよ」

 

 そして観戦が切れる。

 

─────────────────────────

 

 現実世界に帰ってきた司は、残っているホワイトコーヒーを全部飲む。するとそこにメールが届き、司はメールを開く。

 

『──港区第一エリアで、お話ししませんか?

 

                ~白の王~』

 

 司は『了解』と返信し、コーヒーのお代を払い、外にあるマウンテンバイクで、千代田区から港区に移動する。

 

 港区に移動するとすぐにバシイイイ!!と衝撃音が走り、世界が暗転する。

 

 今度は司が戦う方になり、自分のアバター名表記される。相手の方も表記され、名は《ホワイト・コスモス》となっていてる。

 

 司は現れた三角のカーソルに従って歩き、5分後、奥の方から人影が見えてきた。

 華奢な体を純白のサマードレスに包んだ、長い金髪の少女。戦闘(・・)体勢ではない彼女がやって来た。

 

「今日はその格好できたんだ」

 

「ええ。あの格好でもいいのだけれども、たまにはこの格好で出てみたいのよ。それで今日呼んだ理由なんだけど、加速世界初の飛行型アバターの出現と、あの子のレギオン復活の話は聞いたかしら?」

 

「ああ。実際にこの目で見たからな」

 

「そうなの……」

 

 コスモスは少ししょんぼりする。

 

「なんか……ごめん」

 

「まぁいいわ、このしょんぼりした気持ちは後で貴方で晴らすとして、そろそろ私達は本格的に研究会を動かすつもりなのだけど。あなたはどうする?」

 

「そうか、なら私も研究会の為に動きますよ。研究会の活動は私の復活の為にも非常に重要になってくるからな」

 

「うれしいわ。じゃあさっそく愛の共同作業に入りましょうか、《ジェットブラック・アーク》」

 

 司、もといジェットブラック・アークは、ホワイト・コスモスとは加速世界と現実世界で恋人で、この二人が加速世界を大きく揺るがす。

 

 

 




 次回から復活編に入って行きます。
 
 それでは次回もお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪


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第二話 仕込まれていた悪意

 コスモスとの会談から数日後、司は加速研究会副会長のブラック・バイスと共に池袋の無制限中立フィールドに来ていた。

 

「今日は何をするつもりなのですか、先生?」

 

 司……ジェットブラック・アークは加速研究会の顧問という役職に就いており、研究会の皆からは先生と呼ばれている。

 

「つい最近、5代目のクロム・ディザスターが現れたと聞いた。それで奴が次に現れると思われるのがここ池袋周辺だ。今日君を呼んだのは、そのクロム・ディザスターのデータを回収するのを手伝ってもらうためだ」

 

 アークの言葉にバイスは首をかしげる。

 

「データの回収ですか?クロム・ディザスターもとい災禍の鎧の回収ではなく?」

 

「鎧の回収はしたいが、今回の装着者が今の赤の王に近い者だから赤の王が出っ張ってくる恐れがある。

 それに今の赤の王はとても行動力がある。赤の王がもし今勢いがある黒の王に接触していて、クロム・ディザスター討伐に来ていたら今の私では手に負えない。

 だから、鎧の回収ではなく鎧のデータの回収をするのだよ」

 

「なるほど、そのようなお考えがあるとは」

 

 アークは大量に現れたコンソールを物凄い速さで操作し、そして操作し終えると今使っている自身の観戦用ダミーアバターが黒い液体となって地面から落ちる。

 そしてその液体は人の顔くらいのウニのような形になり中に浮かぶ。

 

 そのウニのような姿が今のジェットブラック・アークの戦闘アバターなのだ。

 

「さて作戦なのだが、ここから3Km先に少し大きなクレーターがある。バイス君はクロム・ディザスター発見次第、奴をこのクレーター内に誘い込み、その後君は離脱してくれ。

 後は私がやるが、もし誘い込みの際に不足の事態が起きれば、臨機応変で乗り切ってもらいたい。行けるかい?」

 

「分かりました、先生」

 

 そう答えて、バイスは自身のアビリティで近くの影に潜っていった。

 そしてアークはクレーターが見える位置まで移動する。

 

 アークがクレーター近くまでくると、そこにはアークの予想外の事態が起こっていた。

 

(──なぜ黄の王がここにいる!?)

 

 クレーターの所には、予想していた赤の王と黒の王が居り、そしてまだ予想範囲内であった以前見たシルバー・クロウとシアン・パイルも居た。

 しかし黄の王がこんなところまで自身のレギオンの軍団を引っ張ってやって来るのは予想外だった。

 

(ここで赤の王、黒の王が撤退をされると今日の計画が水の泡になる。黄の王と今回のクロム・ディザスターは相性悪すぎる)

 

 黄の王は幻覚系の攻撃を得意とするが、クロム・ディザスターは幻覚をなんのそのと攻撃してくる狂戦士で、結果は見えている。

 

 アークは大変不本意と思いながら、自身の対エネミー用のアビリティ《Compulsory control(強制制御)》を心意で弄くって、赤の王やシルバー・クロウに襲いかかっている軍団に向けて発動させ、軍団の動きを止める。

 

 そしてアークにとって幸運なことが起きた。

 黄の王と黒の王が戦っている最中、黄の王の腹から剣が突き出された。その剣の持ち主は今日の計画の主役である、クロム・ディザスターだった。

 

(──バイス、よくやった)

 

 バイスの影は見当たらないが、クレーターの所にクロム・ディザスターを誘い出してくれた。

 

 剣で腹を貫かれた黄の王は緊急脱出用の必殺技を使って、その場から離脱した。

 黄の王が消えると、クロム・ディザスターはその近くに居た黄の王のレギオンのバーストリンカー達を獣のごとく喰らっていく。

 

 そしてある程度バーストリンカー達を喰らうと、今度は黒の王の方に向かっていった。

 迫りくるクロム・ディザスターに黒の王は剣で出来た両腕で迎え撃つ。クロム・ディザスターと黒の王は激しい接近戦を繰り広げ、クロム・ディザスターが徐々に黒の王のHPを削って行くのが分かる。

 すると横からレーザー光線が黒の王を掠め、クロム・ディザスターを呑み込んだ。

 レーザー光線をモロに受けたクロム・ディザスター、しかしクロム・ディザスターはレーザー光線で吹っ飛ばされることもなく、その場に立っていた。そしてレーザー光線を撃った相手────赤の王を襲いかかった。

 

 その時、シルバー・クロウが渾身のパンチをクロム・ディザスターに喰らわせ、クロム・ディザスターは近くのビルの壁に叩きつけた。

 

(───頃合いか)

 

 アークは誰にも気付かれないようクロム・ディザスターに近付く。

 しかし………。

 

「グアァァァァ!!!!」

 

 クロム・ディザスターは雄叫びを上げ、腕からアンカー付きワイヤーを出し、クロム・ディザスターが誰からか奪ったであろう《超長距離ジャンプ》のアビリティを使って移動する。

 それを見たシルバー・クロウが《飛行アビリティ》を使って追いかける。

 

(ちっ!まだ動けるのか)

 

 アークもまたクロム・ディザスターを追う。

 

 そして数100m行った先で、シルバー・クロウがクロム・ディザスターを追い抜き、クロム・ディザスターが次に出すアンカー付きワイヤーの目標地に先回りして自分の背中に引っ掛ける。そして時速100kmにまでスピードを上げて、高度を上げる。

 

 そして高度100mまで来ると、シルバー・クロウは背中に引っ掛けていたアンカー付きワイヤーを外し、そのままクロム・ディザスター目掛けて急降下キックを繰り出した。

 

 急降下キックは綺麗に決まり、クロム・ディザスターを地面に叩きつけた。

 

(──チャンスは逃さない!)

 

 アークはシルバー・クロウに気付かれないようクロム・ディザスターが見える位置に着き、ウニ状の体からあるキーを取り出し、起動させる。

 

『Malice learning ability』

 

 音声と共にクロム・ディザスターからデジタルコード現れ、キーの中に入って行く。

 

「──これで、私の計画がまた一歩前進した」

 

 アークはそう呟き、その場を後にした。

 

─────────────────────────

 

 先程の場所から1㎞離れた場所に来たアークは、先程のキーを取り出す。

 

「──さぁ、始めようか」

 

 アークはキーのデータを自身と共有する。

 

「──ん?私が植え付けた悪意データが少ない……。あれほどの時間を掛けてこの程度とは残念だ。

──まぁもう終わったことだ仕方ない」

 

 アークはキーからあるデータを閲覧する。するとアークの体は形を変え、どんどん人の形になっていく。

 そしてアークの体は、先程クロム・ディザスターになっていたチェリー・ルーク(・・・・・・・・)になった。

 そして……。

 

『アークドライバー!』

 

 腰に黒いドライバーが巻き付き、アークはドライバーの赤いボタンを押す。

 

「変身」

 

『アークライズ!』

 

 音声と共に悲鳴と怨念の声が鳴り、目の前に3つの黒い流体金属が出現し、色んな動物に変わっていく。

 そして流体金属の一つが体を覆っていき、一つが体の左半分の装甲になり、一つが体の右半分の装甲になって体に装着される。

 

『オール・ゼロ………!』

 

 ジェットブラック・アークの体がここに復活した。

 

「───ふむ。こんなものか」

 

 アークは体の調子を確認し、離脱ポータルに向かう。 

 しかし体に異変が起きた。

 

「くっ!」

 

 体中に電気が走り、体がチェリー・ルークの姿に戻る。

 

「──データ不足か。実体のデータ無き体では変身を維持するのも難しいか。やはり仮でも実体のあるデータの体では無いといけないか」

 

 アークはそう呟きながら、離脱ポータルに向かって行った。

 

 

 

 




 次回もお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

 評価、感想お待ちしてます。


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第三話 司のいつもの朝、アークの力

「ふわぁぁ~~」

 ──朝6時。司はいつもの定刻どうりに起床する。

 今日の司の調子はいつもより眠たかったことだ。

 それは昨日にとりあえず戦闘できる体を取り出し、離脱ポータル前にポップしたエネミーを狩ったのは良いが、久しぶりの戦闘で体がなまっていて本来なら直ぐに倒せるはずのエネミーを時間掛けて倒してしまい、現実世界に帰ってきたのは深夜0時頃だった。

 

「さて今日はハムエッグでも作るか」

 

 司は毎日一人で朝ご飯を作る。理由はいつも家に親が居ないからである。

 司の両親はソーシャルネットワーク及びニューロリンカーの開発、更新していて会社に働いていてほぼ会社で寝泊まりしている。

 

「今日は結構いけてるな」

 

 ハムエッグが我ながら上手に出来たと思い、皿に乗せて昨日炊いていたご飯の残りを茶碗によそう。

 

「いただきます」

 

 こうしていつもの静かな朝御飯始まる。

 

「ごちそうさまでした」

 

 約10分でご飯を平らげると、食器を洗面台に持っていて、父さんが以前仲のいい家電会社からもらった最新式の食器洗い器の中に入れて、帰ってくるまでに洗っておくようセットしておく。

 

 自分の部屋に戻ると学校の用意をして、家を出る。

 家は港区にある、4年ほど前に出来た最新式の高層マンションの最上階にある。

 

 エレベータに乗って地上にまで降りると、駐輪場にある自分のマウンテンバイクに跨がりヘルメットをする。

 そしてニューロリンカーにニューロリンカー専用のメモリーカードを装着させ、起動する。

 このメモリーカードはニューロリンカーのデータストレージを拡張するほか、ブレインバーストのマッチングリストに出現するのを任意で変更したり、無制限フィールドでの減速(・・)の効果を着けてくれる。

 

 メモリーカードの起動を確認すると、マウンテンバイクを漕ぎ、千代田区を通って新宿区に向かう。

 

 司の通っている学校は東京脳科学大学付属高校という所で、2年ほど前に出来た学校だが異例の速さで1年目で、世界の有名大学が拍手を送るほど学校となり、世界の有名大学20選に選ばれるほどの学校となった。

 学部は4つに別れていて司は心理学研究学部に入っていて、学部内では毎回成績学年1位になっている。

 学校生活は普通で、その日も何事もなく終わって行った。

 

 そして一週間後、司はブラック・バイスから無制限フィールドに来てほしいといった内容のメールを貰い無制限フィールドに入った。

 

 無制限フィールドに入るとバイスから来たメールに記された合流地点に向かう。

 合流地点にはブラック・バイスが居た。

 

「来てくれましたか、先生」

 

「今日は何のようだ、バイス」

 

「まずこれを見ていただいて、今日の本題に移らせて貰います」

 

 バイスは無制限フィールドにあるショップと呼ばれる店で買える、対戦などを記録するリプレイ・カードを取り出して、リプレイ・カード内に入っている録画を再生する。

 

 録画は2対2のタッグバトルのもので、バイスは戦いがあるところまで行くと一時停止させる。

 

「この黒紫色のアバターが今日の本題で、名はダスク・テイカーと言います。彼はつい先日加速研究会に入ってきて、加速世界では珍しくあらゆるものを奪える必殺技の持主であります」

 

「ほぉ……」

 

「その彼なんですがここでの時間の1ヶ月後、あのシルバー・クロウと決闘すると言って、私に多分現れるであろうもう一人のバーストリンカーの始末をしてくれと云ってきたのです。

 そこで先生は隙を伺って、テイカー君を倒して貰えませんか?」

 

 バイスの相談にアークは少し驚いた。

 

「いいのか?貴重な戦力なのだろ?」

 

「大丈夫です。加速研究会がほしいのは彼の必殺技だけなのですから、彼自身は要らないので。

 あとこの話は会長がする予定でしたが、都合が合わず私が話すことになりましたので、決して貴方を除け者扱いにするつもりはありませんので」

 

「そうか……。ではダスク・テイカーの処理の仕方は自由でいいのだな?」

 

「はい、構いません」

 

「そうか、ではその決闘の場所に向かうとしよう」

 

「はい」

 

 アークは体をウニの様な形になると、ブラック・バイスの体内に潜り込む。

 アークが他の生命の中に入ると、それを支配するが、今回は調整して、ブラック・バイスの意識を失わせないようにする。そしてブラック・バイスが決闘の場所に案内してくれる。

 

 決闘の場所に着くと、アークはブラック・バイスから分離して少し離れて決闘の様子を見る。

 

(シアン・パイルにシルバー・クロウ。お前達の戦い方をラーニングさせてもらうぞ)

 

 アークの体内の赤いコアがひかり、シルバー・クロウとシアン・パイルの一つ一つの動作を記録していく。

 

 すると近くで鋭いものがぶつかり合う音が聞こえた。その音の正体は突然と現れた黒の王ブラック・ロータスがブラック・バイスに斬りかかる音だった。

 

(ブラック・ロータス!これは好都合、お前の動作もラーニングさせてもらう)

 

 アークはブラック・ロータスの方にもう一つ動作を記録するシステムを起動して、記録していく。

 そしてシルバー・クロウとシアン・パイルの向く、そしてそこにはシルバー・クロウとダスク・テイカーの姿がなく、何処に行ったかと探すと二人は空で激突していた。

 

 ダスク・テイカーはブラック・バイスからもらった情報には無い飛行アビリティで空を飛び、シルバー・クロウは背中にスラスターを着けて空を飛んでいて。

 その事から、ダスク・テイカーが必殺技でシルバー・クロウの飛行アビリティを強奪したということが予測できる。

 

(これはシルバー・クロウの勝利だな)

 

 まだどちらもこれといった攻撃をしていないが、アークは二人の戦い方を見て、シルバー・クロウの勝利を予測した。

 そしてアークの予測どうり、ダスク・テイカーが徐々にシルバー・クロウに押され始め、HPバーは見えないが確実に削れていっていくのがわかる。

 

 だがそこでアークが予測していなかった事が起きた。

 

「シトロン・コール!」

 

 先程から戦いを傍観していた黄緑色のF型のバーストリンカーが必殺技を発動し、手についている大きなベルから緑色の光が放たれ、その光がダスク・テイカーのHPを回復していく。そしてダスク・テイカーの背中に着いてあった翼が消え、シルバー・クロウに翼が戻った。

 

(予測外だ、あのバーストリンカーが巻き戻しの回復持ちとは…………。これは計算し直さないと行けないか)

 

 アークのアビリティの一つ《High speed operation(高速演算)》。

 スーパーコンピューター並の演算出来るようになるアビリティで、これから起こりうるあらゆる事象を想定し、どの事象が最も起こりやすいか計算する。

 

(前提を変え、結果を予測し直した……)

 

 演算結果は、最初に予測したダスク・テイカーが負けるという結果に戻り、アークは静かにある瞬間を待った。

 翼を失ったダスク・テイカーは自由落下していき、シルバー・クロウはそれに追い討ちをかけるよう急速にダスク・テイカーに向かって降下し、その際に発生するスピードと腕から造り出させれる心意の槍でダスク・テイカーを地面に叩きつける。

 

 地面に叩きつけられたダスク・テイカーは下半身を失い、這いつくばって動くしかない体になった。

 

「くそぅ!!バイス!さっさとボクを連れて離脱しろ!研究会の主力だぞ!」

 

 ダスク・テイカーは声を荒げてブラック・バイスに助けを請う。

 

「頃合いか…」

 

 アークは体をチェリー・ルークの姿に変え、近くの影に潜り、ゆっくりとダスク・テイカーに近付いて行く。

 

「それは難しいよテイカー君。私は今黒の王を押さえているんだ。手負いの君を連れて4対1の状態になって離脱するのは不可能だ。

 それに君は今日ここで加速世界から一旦退場してもらい、先生の贄になって貰うことが会長殿と他のメンバーの相談で決定したのだよ」

 

「おい!それはどういうことだ!先生て──────!!─────」

 

 ダスク・テイカーは悪寒を感じ、後ろを振り向く。そこにはアークが立っていた。

 

「い、いつのまに!気配を感じなかった!………それになんで君がそこにいるんだ。───チェリー・ルーク!」

 

 ダスク・テイカーを見ていたシルバー・クロウ、シアン・パイル、黄緑色のアバターが突然と現れたアークに驚いた。そしてシルバー・クロウは目の前で赤の王に断罪され二度と加速世界に現れないアバターであるチェリー・ルークの出現に驚いた。

 

「──ダスク・テイカー。今までご苦労だったな、お前は今ここで私と加速研究会の計画の重要な歯車の一つになれる」

 

 アークはそう言ってキーを出現させる。そしてキーを見たダスク・テイカーはこれから何が起こるか想像でき、アークから這いつくばって逃げる。

 

「や……やめろ!いやだ。いやだいやだいやだ!こんな所でボクは加速を失いたくないだ!」

 

 そしてアークはキーのボタンを押し、ダスク・テイカーに向け、無慈悲な機械の音声が流れる。

 

 

 

 

『Malice learning ability』

 

 

 

 

「い、嫌だああああああああああ!!!!!」

 

 ダスク・テイカーの体からリボン状の光が現れ、全てがキーに吸い込まれていく。10秒程でダスク・テイカーの体を構成するデータ以外のデータは全てキーに収まった。

 

「さて……」

 

 アークは再び体をウニ状に変えると、ダスク・テイカーの体に取り付いて支配し、体に残っているデータを元にダスク・テイカーの体を元に戻し、アークドライバーゼロを腰に造り出す。

 

『アークドライバー!』

 

 アークはダスク・テイカーの体を動かして調子を確認し、シルバー・クロウの方を向く。

 

「感謝するよ、シルバー・クロウ。お前のお陰で楽にこの体を手に入れることが出来たのだから」

 

「テイカーはどうなった……」

 

「彼は無事に現実世界に帰って、ブレインバーストをアンインストールされた。もう二度と加速世界に帰って来ることもない。──────撤収するぞ、バイス。計画の第一段階は完了した」

 

「分かりました、先生」

 

 バイスは影に潜り、その場から立ち去り、アークもその場から立ち去ろうとする。その時、紫の閃光がアークの前に落ちる。

 

「待て!貴様には聞きたいことがある。みすみす見逃す訳にはいかん!」

 

 閃光を放った黒の王がシルバー・クロウに駆け寄ってアークに剣を向ける。

 

「今、私を止めたのは愚かな行為だ。その行為の代償と私への協力の褒美をくれてやろう。──────変身……」

 

 アークはベルトのボタンを押す。

 

『アークライズ!』

 

 ベルトから黒い液体金属が流れ、液体金属は体を覆っていき、ダスク・テイカーの体を本体のアークの体に変えていく。

 

『オール・ゼロ……!』

 

 姿を変えたアークに一同が驚愕し、アークはシルバー・クロウ達の方を向く。

 

「ではその愚かさを身をもってラーニングするといい……」

 

 アークの手からあらゆる怨嗟の声と共に負の心意の波動が放たれ、シルバー・クロウ以外(・・)の全員がその場で倒れ込む。

 

「───!一体なにをしたんだ!」

 

「ん?これは予想外だ……。お前を含め全員を強制的に《零化現象(ゼロフイル)》する予定だったが、耐える者がいるとは。──まさかお前は………」

 

 アークは左の赤に複眼を光らせ、シルバー・クロウを視る。

 

「なるほどそういうことか………これで一つの結論にたどり着く……。黒のレギオン『ネガネビュラス』よ、来たる時に私はお前達の前に再び現れる。それまでは全損をするなよ」

 

 そう言ってアークはその場から立ち去る。

 

 シルバー・クロウは耐えたとは言え、一歩も前に進むことが出来ず、アークが去るのを見守っているしかなかった。

 

 




 次回もお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

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第四話 共鳴する悪意

 アークがとりあえずの体を手に入れてから数日後。アークはコスモスに呼ばれ、無制限中立フィールドにダイブし、合流地点である東京ミッドタウン・タワーに向かう。

 

 東京ミッドタウン・タワーに着くと最上階らへんに2つの生命反応を確認した。

 

(──恐らく、コスモスとバイスだな。さて、素直に登って行くのは効率が悪い……跳んで行くか)

 

 アークは足に跳力強化の心意を纏わして、飛び上がる。今、この無制限中立フィールドは《黄昏》になっていて、ミッドタウン・タワーの外壁がその影響で崩れており、アークはその崩れた所に着地する。

 そして少し歩くと、コスモスとバイスが目玉の様なもの前に立っていた。

 

「来てくれてありがとう、アーク。今日は頼み事があるの」

 

「そこにあるものことか?」

 

 アークは目玉の様なものを指す。

 

「そう。これに以前手に入れたレッド・ライダーのデータ(・・・・・・・・・・・・)と貴方の心意をこれにインストールして欲しいの」

 

「それで何をするつもりだ?」

 

「レッド・ライダーのアビリティ《銃器創造(アームズ・クリエイション)と貴方の負の心意を使って、誰でも手軽に心意技を使えるようにするアイテムを作る。……確か負の心意は使えば使うほど、増幅していくのよね?」

 

「ああ、そうだが」

 

「良かった。それで、増幅された負の心意をこれに貯めて、私達の新しい切り札を作るの。それにこれはサーバーと繋がっていて、貴方に使用者のデータが行くように設定すれば、貴方の完全な復活に大きく近付くじゃあないかしら?」

 

 コスモスの提案はアークにとってレッド・ライダーのデータと釣り合う物だった。

 

「なるほど、そう言うことなら良いだろう」

 

 そう言うとアークはキーを出して、目玉に突き刺すし、データと心意をインストールする。

 

「インストール完了」

 

「ありがとう、アーク。それでもうひとつ頼み事があるの」

 

「なにかね?」

 

「近々、ヘルメス・コードを縦走するレースがあるの。そこに貴方が参加して、ギャラリーを巻き込んで心意を発動して欲しいの」

 

 ヘルメス・コード。

 何年前に東太平洋に建設された宇宙エレベータである。

 

(確かソーシャルカメラがそこに輸出されると、父さんが言っていたな)

 

「なるほど……心意は一般に知られていないから、レースで心意を見せれば、心意を使いたがる奴が現れる。そこでこいつを使ってお手軽心意キットを造ってバラ撒き、使った奴の負の心意のエネルギーを回収するといことだな」

 

「ええ、流石はアーク。だからお願いね、レースの予約はバイスが取ってくれているから」

 

「そうか助かるよ、バイス。……もしかしたら奴も参加しているかも知れないな」

 

 アークの脳裏にシルバー・クロウの姿が浮かぶ。

 

─────────────────────────

 

 数日後、あの後でバイスからもらったレースの招待状に書いてあった指定された車に近付く。

 

 アークはまだ自分の正体がばれないよう、姿は全損する前に戦ったことのある名も忘れたバーストリンカーの姿になっていた。

 

(レースゲームをやるのは久しぶりだが、まぁなんとかなるだろう)

 

 アークは車に乗り込み、競い相手を見る。そこにはシルバー・クロウ達もいた。

 

(今日にでも目覚めて貰うぞ)

 

 そしてカウントダウンが始り、レースを見に来たバーストリンカー達の声が響き渡る。

 

「……今日がブレイン・バーストの変革の日だ」

 

 そしてカウントの光が赤から青に変り、アクセルを目一杯に踏み込んだ。

 

 アークは最初の方は他の車と離されないようにアクセルを目一杯踏むが、ある程度まで進むと、アクセルから徐々に足を話して行き、わざとスピードを落として最後尾まで落ちる。

 

「このくらいまで落とせば良いだろう」

 

 アークは体から心意のエネルギーを出して、車を先程まで出していたスピードを超えるスピードを出すために、車を改造していく。

 

 改造が終わるとまたアクセルを目一杯踏み込み、徐々に前の相手を抜かしていく。そしてスピードは先程の倍になり、先頭を走っていたシルバー・クロウ達の車を軽々と抜いて行き、目の前に出たワープゲートを抜け宇宙空間にでる。

 そして宇宙空間にでると先程通ったワープゲートから10㎞進んだところでアクセルから足を外して、ブレーキを目一杯踏み、ハンドルを180°回転させる。

 

「一度こういうことをしてみたかったんだな」

 

 車を止め、車から降りる。このヘルメス・コード自体に重力が発生していて、体が浮くことはなかった。

 そしてギャラリー達がアークが車から降りたことにざわめく。

 

「なんだあいつ?車を降りたぞ」

「あんな加速をしたんだ、故障するだろ。自業自得だな」

 

 そんなギャラリー達の声をアークは……

 

「……その反応は予測済みだ。そして君達はこれから“私”という存在を認証し、その圧倒的な力に屈服するのだ。……………変身」

 

 アークは腰についてるベルトのボタンを押す。

 

《アークライズ!》

 

 ベルトから3つの黒い流体金属が流れ、様々な動物に変化しあらゆる悪意の声が流れる。

 そして黒い流体金属はアークの本来の姿を形取り、今のアークの体を上書きする。

 

《オール・ゼロ!》

 

 変身したアークを見て、ギャラリー達が再びざわめいた。

 

「おい!あいつ姿が変わったぞ!」

「あんなアバター見たことねえ!」

「おい!急いでレギオンへの勧誘の準備をしろ!」

 

 そんな声をよそに、アークは急速に負の心意のエネルギーを貯め始め、体が薄く黒く光る。

 

「さあ!変革の時だ!──マリス・ワールド(悪意の世界)!」

 

 放たれた負の心意のエネルギーは、波となってヘルメス・コードを黒く侵食していって、波はギャラリー達が居るところの一部まで到達した。

 

「なんだこれ!力が出ない!それにHPバーがすごいスピードで削れ……グァァァァァ!!」

 

 心意攻撃の対策を知らない物達が次々と倒れ消えていく。

 そしてシルバー・クロウ達が心意攻撃の影響を受け、乗っていた車が徐々にスピードが落ちていく。

 

 この心意攻撃はその空間内にいる者にスリップダメージと強制的に零化現象(ゼロフイル)させるものであり、対策をしても零化現象(ゼロフイル)を避けることが出来ない。

 

 その中、一人だけ動ける者がいた。シルバー・クロウだ。

 シルバー・クロウは他の者の様子を見て、アークの方を向き、そのまま突っ込んで来る。

 

「ウオオオオオ!!!」

 

 シルバー・クロウは右ストレートを打つが、アークの左手に止められる。

 

「いいストレートだ。だが、甘い!」

 

 アークはシルバー・クロウの手を持った左手を横にずらし、シルバー・クロウの鳩尾を右手でパンチする。

 

「グハッ!」

 

 シルバー・クロウが少し怯むと、右手を首に持っていき、首を持ち上げる。

 

「……不思議に思わないか?なぜ自分は他の連中らと違って動けるのか。その答えは、お前が私と同じものを持っているからだ!」

 

 アークは首を持っている右手から負の心意を送る。

 

 すると、シルバー・クロウの尻から鋭い尾が生えて、アークの胸甲を傷付け、アークは傷付けられた痛みで首から手を放し、少し後ろに下がる。

 

「さあ、目覚めの時だ。──クロム・ディザスター」

 

 シルバー・クロウの体が徐々に変化していって、二足歩行のドラゴンの様な姿になった。

 

「■■■■■■■■───!!」

 

 変化したシルバー・クロウはアークを攻撃しようとするが、アークは一歩も動かない。

 アークはシルバー・クロウが動いた瞬間、2億通りもの攻撃パターンを予測し、それに自分がどう対応するかを立体的なイメージを見る。その時間は0.5秒ほどである。

 

「予測完了。二手で決まる」

 

 アークはベルトのボタンを押す。

 

《オールエクスティクション!》

 

 シルバー・クロウはアークの予測の一つの飛びかかり攻撃をしてくる。

 アークはそれの対応に軽く身を屈め、シルバー・クロウの顎に向けてアッパーをかけ、次に必殺技のエネルギーを右足に集中させて、踵落としを決めて、シルバー・クロウを地面に叩きつける。

 そして叩きつけられたシルバー・クロウの頭を踏みつけ、見下ろす。

 

「まだその程度なら、回収する価値もない。もう少しクロム・ディザスターとして強くなった時に回収させてもらう。──さらばだ、今日の私の目的は全て完了した」

 

 アークは心意攻撃を止めると、ヘルメス・コードから落ちて、現実世界に帰った。

 

 

 




 次回もお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

 評価、感想お待ちしています。


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第五話 一つ目のピリオドは打たれる

 アークが起こしたヘルメス・コードでの事件から数日後、心意を知った一部のバーストリンカーが、アークの心意とレッド・ライダーのアビリティで作られた、簡単に心意を使える強化外装《ISSキット》使用し、ブレイン・バーストの今まで保たれていたパワーバランスを大きく変えた。

 

 そして事件を起こしたアークは、そのISSキットの使用者6人と交戦することになっていた。

 

(その程度の力を持って、私を倒そうとは──思い上がりすぎだな)

 

 その日アークは、バーストポイントの補充の為に無制限フィールドに入って、手頃なエネミーを狩っていた。

 するとそこにISSキット使用する6人のバーストリンカーが現れ、アークの狩っていたエネミーを横取りして倒し、そしてアークを囲んだのである。

 

「へっへっへっ。お前を倒したら、どんなけポイントがもらえるだろうな?」

 

「俺はあの時、お前の心意技で耐え難い苦痛を貰ったからな、しっかりお礼させて貰うぜ」

 

 そして6人は一生にアークに手を向け、心意を発動するときに出る光を出す。

 

「「「「「「ダーク・ショット!」」」」」

 

 放たれた負の心意攻撃にアークは微動だにせず、心意攻撃は直撃する。

 

 6人はよし!と思ったが、直ぐに驚くことになる。

 6人の心意攻撃を直撃したアークが、傷一つ付かずにその場に立っていたからである。

 

「所詮借り物の攻撃だ、薄く心意のバリアを張っていればどうということもない。──予測をするまでも無かったな」

 

 傷一つ付か無かったなアークを見て、6人は一斉に逃げ出す。

 

「なんだよあいつ!こんなの聞いてないぞ!」

 

「助けてくれーー!!」

 

「い、嫌だあああ!!」

 

 逃げ出す6人をアークは、見逃すことはしなかった。

 

「オリジナルを見せてやろう」

 

《オールエクスティクション!》

 

 アークの足元から必殺技のエネルギーと心意のエネルギーが合わさった物が流れ始め、逃げる6人向かっていく。

 そして5秒程で6人はエネルギーに捕まり、空中に連れて行かれ、一ヶ所に集められ、アークが手を握る動作をするとエネルギーは爆発し、6人HPバーが一気に0になり爆散する。

 

 6人の死亡マーカーは6人が爆散した所の地上に出現し、アークはそれに近付く。

 

「今ここで、私が心意技を使って強力なエネミーを連れてきて、愚かな君達を無間EKしようと思っているのだが、君達はそんな終わりかたは嫌であろう?だから私は君達が攻撃したことを無かったことにするチャンスを与えようと思う」

 

 死亡マーカー状態なので、6人はアークの話を聞くことしか出来ない。

 

「内容は君達が復活してから話そう。そして復活した瞬間に逃げ出す者が居れば、その者をもう一回死亡させて無間EKを行いたいと思う」

 

 6人は恐怖を覚え、そしてこんな奴を相手にしてしまったと思い、後悔する。

 

 そして数分後、復活した6人は逃げ出すこともなく、アークの前に立っていた。

 

「ではこれから、チャンスの内容を話す。アッシュ・ローラーをお前達の手で無間キルしろ。それでさっきの行為は無かったことにしてやろう」

 

 アークはシルバー・クロウ内に居る、クロム・ディザスターのデータをより良い状態で回収したい。

 その為にはシルバー・クロウと仲がよいアッシュ・ローラーをシルバー・クロウの目の前で一方的に理不尽に殺させなければならない。

 そこでISSキット使用者の彼らがアッシュ・ローラーを一方的に理不尽に殺せば、目論み道理によい状態でクロム・ディザスターのデータを回収することが出来るとアークは踏んだのだ。

 最初はアーク自身がアッシュ・ローラーを無間キルしようと思ったのだが、アークが無間キルするのと、6人が無間キルするとでは意の増幅量が違うので、アークは6人に任せることにした。

 

「さあ、行ってこい」

 

 アークの号令と共に6人はアッシュ・ローラーの捜索に向かった。

 

 

 ──加速世界での数時間後。

 

「やっと現れたな」

 

 どこかでクロム・ディザスターが出現したのを感じたアークは、出現した場所に向かう。

 

 クロム・ディザスターが出現した場所には先程の6人の死亡マーカーと、アッシュ・ローラーと思われる死亡マーカーが立っていた。

 

「もう何処かに移動したのか……」

 

 アークは目を凝らし、クロム・ディザスターが使ったであろう負の心意の痕跡を視る。

 

(この方向は……まさか!本体に向かって行ったのか!)

 

 クロム・ディザスターの負の心意の痕跡は、ISSキットのある東京ミッドタウン・タワーの方向に向かっていた。

 アークは足に《ジャンプ強化》の心意を掛け、地面を蹴って、急いで東京ミッドタウン・タワーに向かう。

 

 東京ミッドタウン・タワー付近に到着すると、東京ミッドタウン・タワーの前方200メートルの地面が焼け焦げて居るのが確認でき、クロム・ディザスターの痕跡も、ここで途切れていた。

 地面の焼け焦げは東京ミッドタウン・タワーに巻き付く半透明な巨大なエネミー、本来は芝公園地下大迷宮のラスボス《大天使メタトロン》が放った光線が原因だと思われる。

 メタトロンはバイスが神器《ザ・ルミナリー》の持つ《エネミーテイム》の能力で芝公園地下大迷宮から引っ張ってきて、ISSキット本体を守る強力な守護獣と置いたのだ。

 

(クロム・ディザスターが突っ込んで反応したのかと思ったが、死亡マーカーが無いから他の要因だな。

 それじゃあクロム・ディザスターは何処に消えたんだ?痕跡はここで止まっているから───そうか!外からケーブルを抜かれたんだな、なら辻褄が合う)

 

 この無制限フィールドに入って来るときには、ケーブルを着けて入って来るのが常識とされていて、クロム・ディザスターは誰かにケーブルを抜かれて消えたというのが予測できた。

 

「ならここで寝て待つとしよう。クロム・ディザスターは戦いに餓えているから今日中には戻って来るだろう」

 

 アークは適当なビルの屋上まで飛ぶと、アビリティ《完全再現(パーフェクト リ・クリエイト)》でベルトの赤いコアの様な場所から空中に使いたい物を投影し、多次元プリンターで使えるようにする。

 アークは一機の小さいドローンを創り、辺りに放す。

 

 ドローンは使用者を遠距離攻撃から守り、半径50メートルに何かが近付くと、警告音を鳴らして使用者に知らせる仕組みを持っている。

 

 アークはドローンに警備を任して眠りについた。

 

 

─────────────────────────

 

 

 ドローンが警告音を鳴らし、アークは目覚めた。

 

 そして警戒内に入ってきた人物が、アークの影から現れた。

 

「バイスか……」

 

「これはこれは先生。奇遇ですね」

 

 影から現れたのはブラック・バイスだった。

 

「どうしてここに?」

 

「メタトロンが暴れたと聞いて、様子を見にきたのですよ。先生はここで何を?」

 

「クロム・ディザスターが来るのを待っているのだ。この近くで何者かによって強制ログアウトした模様だからな。──そうだ、せっかくだから少し手伝って貰うぞ、バイス」

 

「いいですよ、先生の頼みならいくらでも聞きますよ。それで何をすればよろしいのでしょうか?」

 

「クロム・ディザスターを止めるために、何者かが現れる。その何者かとクロム・ディザスターを引き離し、その者を拘束しておくのだ。《拘束者》の異名を持つ君になら簡単な話だろ?」

 

「クロム・ディザスターはどうするのです?」

 

「使用者を倒し、データを回収しなければならない。今回の使用者は相性が良いのか、成長が予想より速く、親離れする前に回収しなければ、私にも予測出来ない事態になるかもしれないからな」

 

 クロム・ディザスターの成長は、残っていた負の心意で予想が付き、その成長スピードはアークが手に負えなくなる状態まで直ぐにでも行けそうな感じがしており、アークはデータの回収時期を早めた。

 

「なるほどそういうことなら───────先生、あれは」

 

「ああ、入ってきたな」

 

 クロム・ディザスターが消えた場所に、クロム・ディザスターが再び現れる。そしてクロム・ディザスターのケーブルを抜いたであろう人物も近くに現れる。

 現れたのは黒の王、ブラック・ロータスだった。

 

「バイス、行けるか?」

 

「はい。どんな相手でも《拘束》するのが私なので」

 

 そう言ってバイスは影に潜り、次の瞬間にはブラック・ロータスを黒い板で拘束した。

 

「ではこちらも始めよう」

 

 そう言ってアークはあるものを投影し、多次元プリンターでそれを使えるようにする。

 アークが造り出した物は、ショップに売っている木の人形《ドッペルドール》

 これは使用者と同じ姿になり、巨獣(ビースト)級以下のエネミーを1分間囮になり、使用者は15秒程無敵になれる代物だ。

 アークはドッペルドールのシステムの部分を弄くり、姿をブラック・ロータスにし、アークがコスモスから聞いたブラック・ロータスの性能データをドッペルドールにインストールし、15m程遠隔操作出来るようにする。

 そしてブラック・ロータスに変化したドッペルドールを操り、アークはクロム・ディザスターに近付く。

 クロム・ディザスターが出現した場所の近くには柱があり、アークはそこに身を隠し、ドッペルドールを操る。

 

「先輩、そこに居たんですね」

 

 ブラック・ロータスに変化したドッペルドールに気付いたクロム・ディザスターは、ドッペルドールに近付く。

 そしてアークは、ドッペルドールの射程範囲内にクロム・ディザスターが入って瞬間、ブラック・ロータスの右手の刃をクロム・ディザスターの右胸を貫いた。

 

「え………?!」

 

 クロム・ディザスターは何が起こった分からなくなり、本能でかドッペルドールを蹴ってその反動で後ろに跳び下がった。

 1分間たったドッペルドールは防御力が0で、蹴られたことにより胴体がバラバラになる。

 

(効果時間が切れたのか……。これじゃあ意味がない)

 

「これは、先輩じゃあない!────そこの柱に誰かいる!」

 

 クロム・ディザスターはアークが隠れている柱に向かって叫ぶ。

 アークは仕方なく柱から出てきた。

 

「お前は………アーク!」

 

「久しぶり……ではないか」

 

 予想外の人物の出現にクロム・ディザスターは驚いた。

 

「先輩はどうした?!」

 

「先輩?ああ、ブラック・ロータスの事か。彼女なら今ブラック・バイスに足止めされているだろ。それよりも自分の身を案じたらどうだ?──ダーク・ショット」

 

 アークの手から放たれた負の心意弾はクロム・ディザスターに向かって行くが、クロム・ディザスターは当たる直前に右に跳び、心意弾を回避して、アークに飛びかかりパンチを喰らわせようとするが、アークはそれを避ける。

 クロム・ディザスターはパンチを避けられたと認識した瞬間、もう一方の手でパンチを繰り出す。

 アークは向かってくるパンチを受け流し、肘を鳩尾に入れ、怯んだ隙に頭を鷲掴みして地面に叩きつける。

 

「お前は私とエンカウトした時からこうなることがすでに決まっていたのだよ。──さて、お前がこれ以上強くなる前に、データを回収させてもらう。

 クロム・ディザスターいやシルバー・クロウ、今日がお前の命日になる」

 

 アークはキーを取り出し、クロム・ディザスターに翳し、起動ボタンを押す。

 

『Malice learning ability』

 

 起動音と共にクロム・ディザスターの体から赤黒いリボン状のデータが出て、キーに吸い込まれていく。

 

「あ…………あ……………」

 

 クロム・ディザスターは力を吸いとられていく感覚になっていて、声も思ったように出せない。

 クロム・ディザスターとシルバー・クロウの命は徐々に消えようとしていた。

 

 その時!右側から黒い閃光がアーク目掛けて走り、アークはデータの回収を中断し、後ろに跳び下がった。

 

「これは予想外だな。もうやって来るとは………ブラック・ロータス」

 

「貴様、よくも私の可愛い《子》を痛め付けてくれたな。その代償は高くつくぞ」

 

 ブラック・バイスに拘束されているはずのブラック・ロータスが現れ、クロム・ディザスターの前に立つ。

 

「バイスはどうした?」

 

「倒してきたぞ。少し強引な方法だがな」

 

 ブラック・ロータスの装甲には所々に傷が有り、バイスとの戦闘の激しさを物語っていた。

 

「クロウ、立てるか?」

 

「はい……先輩」

 

「今の私達二人なら奴を倒せる。クロウ、ここが正念場だ!行くぞ!」

 

 立ち上がったクロム・ディザスターとブラック・ロータスがアークに向かって行き、攻撃を開始する。

 二人の攻撃は完璧なコンビネーションであるが、アークは予測してコンビネーション攻撃を回避する。そしてアークはカウンターが出来る予測を立てるが、どのにもカウンターが成功した予測が無かった。

 

(負けはしないが、反撃の余地がない。──これは違うアプローチが必要か?)

 

 アークは再び高速演算し、有効な手を探す。

 そしてある一手を見つけ、アークはそれを実行する。

 

 ブラック・ロータスがアークに腕の剣で攻撃する5秒前にアークは再びドッペルドールを造り出す。

 そしてドールはある者の姿に変わっていく。

 

 それは初代クロム・ディザスターが愛したバーストリンカー《サフラン・ブロッサム》だった。

 

 ブラック・ロータスの剣はサフラン・ブロッサムの胸を貫く。

 

「あ……アアアアアアアア!!!!」

 

 それを見ていたクロム・ディザスターがアークへの攻撃を止め、ブラック・ロータスを攻撃し始めた。

 

「やはり、お前の弱点はそれか」

 

 クロム・ディザスターはブラック・ロータスを押し倒すと、右に左にと拳で顔を殴る。

 

「いいぞ!悪意!憎悪!憤怒!絶望!殺意!破滅!いい感情だ!」

 

 アークは興奮気味に喋り、二人の争い見守る。

 

 するとクロム・ディザスターが輝き始めた。

 

「な、なんだ?!」

 

 輝きが終わると、そこにはクロム・ディザスターではなく、シルバー・クロウがいた。

 

「馬鹿な!?この感じ、クロム・ディザスターを浄化したのか?!あり得ない!」

 

 どんな方法を使ったか分からないが、シルバー・クロウはクロム・ディザスターの呪いから脱出したのだ。

 

「先輩、すみません……」

 

「私は大丈夫だ。君が戻ってくれるのを信じていたからね」

 

 二人は立ち上がると横に並び、手を上に翳す。

 

「────《光線槍(レーザー・ランス)》!!」

「────《奪命撃(ヴオーバル・ストライク)》!!」

 

 二人の心意が重なり、一本の槍になる。

 

 アークはその槍を脅威と見なし、体中から負の心意のエネルギーを出し、巨大な盾を造り出す。

 そして槍は投擲され、盾にぶつかる。

 

 盾は硝子のように簡単に割れ、アークの体を貫き、アークの足場を粉々に砕いた。

 

「まさかこんなことがあり得るとは……」

 

 貫かれたあとから、リボン状のデータが流れ始める。

 

 アークの今のレベルは9で、レベル9同士のサドンデス・ルールが発動し、これから全損するのだ。

 

「欠けたピースは埋まり、次のステージが開かれた」

 

 そう言ってアークは崩れる足場と共に落ちて行った。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 数時間後、崩れ落ちた瓦礫の溜まり場に白の王《ホワイト・コスモス》がやって来た。

 コスモスは心意の力で瓦礫をあるものを探し出し回収する。

 それはアークが持っていたキーだった。

 

「次の段階の移行ね、アーク」

 

 キーはその言葉に呼応したのか、キーに付いている白い顔の赤い目を光らせた。

 

 

 



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第六話 ソノ悪意は進化する

 アークが全損してから4日後の日曜日の午後8時28分。

 加速世界ではアークである司は昨日届いた一件のメールに目を見ていた。

 差出人は白雪姫だった。

 

『日曜日の午後8時半にグローバルネットに接続して、《アンリミデット・バースト》と唱えてください』

 

 このメールを見た司はずっと考えていた。

 《アンリミデット・バースト》と言う言葉を何処かで聞いたことがあるが、どこで聞いたかが思い出せない。

 ネットで調べても《アンリミデット・バースト》という言葉が何処にも出てこない。

 司は《アンリミデット・バースト》とは何か、この時間まで考えていた。

 

 そして時計の針が8時半を指した瞬間、司はとりあえずあの言葉を唱えることにした。

 

「───アンリミデット・バースト」

 

 その瞬間、目に見えてる光景が暗転した。

 

─────────────────────────

 

 司が《アンリミデット・バースト》を唱える3秒前

 加速世界の無制限中立フィールド内に再現された、令和島にある《東京グランキャッスル》というテーマパーク内にある建物の屋上、そこにホワイト・コスモスが立っていた。

 

「そろそろね…」

 

 そう言うと手に持っていた《アークワンプログライズキー》を空にかざす。

 するとキーが赤く光り、コスモスの手から離れエネルギーを纏い始める。

 

 エネルギーは徐々に形を作り、見覚えのあるベルトに変わる。

 

《アークライズ!》

 

 ベルトから黒い流体金属が流れ、徐々に人の形を形成していく。そして流体金属が弾け飛ぶ。

 

《オール・ゼロ!》 

 

 ここに、ジェットブラック・アークが復活した。

 

 

「気分はいかがかしら?」

 

「とてもよい、感謝する。私のキーを回収してくれて」

 

「どういたしまして。それで貴方の望んできた事が出来るの?」

 

「ああ、一か八かの賭けをしたかいがあった。これで私の思っていた事の証明と進化が出来た」

 

 するとアークはキーを取り出し、キーを起動させる。

 

《アークワン!》

 

 キーは自動的に展開され、アークはそれをベルトに差し込む。するとベルトの形が変わる。

 

「……変身」

 

《シンギュライズ!》

 

 顔、胸、腕、手の装甲が粒子状になり…。

 

《破滅!破壊!絶望!滅亡せよ!》

 

 白き装甲となって再配置される。

 

《Conclusion one…》

 

 アークが姿を変え終わると、負の心意のエネルギーが溢れでて、辺りの建物を破壊していく。

 

「これ程の力とは……!」

 

 コスモスは驚いた。ただ単に負の心意のエネルギーが出ただけなのに、周囲の建物が破壊されたのだから。

 

「あらゆるパラメーターの上昇を確認。想像以上だ」

 

「これで貴方の計画は終盤に入ったのね」

 

「ああ。後は楽園のキーと地獄のキーさえ手に入れば、私は誰にも負けない」

 

 自分の進化を喜ぶアーク。しかし彼は一つ今とても重要な事を忘れていた。

 

「そういえばアーク。貴方ポイント全損ぎりぎりじゃあなかったのかしたら?」

 

「そういえばそうだな。ではこの力の実験がてらポイントを稼ぎに行くか。ではまた会おう、コスモス」

 

 そう言うとアークは姿を消した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 この日、加速世界の歴史に残る実験が起きた。

 

 

 無制限フィールドに入っていたバーストリンカー50人が加速世界での一時間内で倒されたのである。それも一箇所に集まってたのではなく、バラバラの場所でだ。

 

 そして倒された者は皆こう言ったのだ。

 

 

「何が起きたかわからない。最後に見たのは白い影と赤い閃光だった」

 

 

 そして犯人は見つかる事はなかった。

 

 

 

 

 



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