ダシマ式僕のヒーローアカデミア「僕のハーレムアカデミア♥」 (ダシマ)
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プロローグ編
第1話「運命は自分で切り拓く!!」


ハーレムものです。

ヒロインはお茶子、八百万、耳郎、芦戸、梅雨の5人です。

葉隠はツッコミ役です…。

爆豪が若干不憫です。

たまにゲストが出ます。

主人公至上主義みたいな所があるので、苦手な方はご注意ください。


それではお楽しみください…。




「……(汗)」

 

 緑谷出久は困り果てていた。彼は無事に雄英高校に合格し、中でも花形と言われているヒーロー科に無事に入学できた。だが、出久は女子達に囲まれていた。

 

「ちょっとくらいいいじゃない!!」

「ダメ!!」

「緑谷さんが困っているでしょう!!」

 

 同じクラスの殆どの女子が別のクラスの女子と教室で揉めていた。そして他の生徒は困り果てていた。

 

(どうしてこうなった)

 

 出久は静かに目を閉じた。

 

 まず、緑谷出久という男について紹介しよう。彼は気弱で周りに流されやすい性格をしている。また、冒頭でも述べたがこの世界での8割が何かしらの超常能力「個性」を持っているが、彼は無個性であった。

 

 無個性であることを理由に色々苦労したが…。

 

「それでもヒーローになりたいからめっちゃ頑張ろう」

 

 と、出久は無個性でもヒーローになる為に滅茶苦茶頑張った。コスチュームやアイテムの事を研究し尽くして、そしてトレーニングもした。そして知名度を上げる為に奉仕活動も色々頑張った。

 

 ここまで来て皆さんもお察しの通りですが、原作ルートから外れております。本来はオールマイトに出会うまで、幼馴染である爆豪勝己に言われっぱなしでしたが、この物語は出久がもう原作とか無視して別のやり方で頑張る『もしも』のお話である。じゃなきゃハーレムとかにもなりませんもんね。

 

 経歴はこうだ。個性は大体4歳までに発動して、彼は母親と一緒に個性診断をして貰ったが医者から個性がないと診断された。

 

「この世代には珍しい方ですね。残念だけど…ヒーローになるという夢は諦めた方が良い」

 

 この年にして出久は全く理解できなかった。個性がないというだけでヒーローになれないのか。そんなの間違っている。此間テレビでこんな事をやっていたからだ。

 

「僕の個性尻からビームを出す個性なんですよ!!? こんな個性無い方がマシじゃないですかぁ!!(泣)」

「お前なんかまだいいよ!! オレの個性3分間だけ体の皮膚が青くなれるって…全然役に立たないじゃないか!!」

「私の個性なんか…もうお嫁にいけない!!(泣)」

 

 …無個性の自分よりも悲惨な事になっている人をたくさん知っているからだ。うん、確かに尻からビーム出すって僕も嫌だと思った。

 

「ごめんねぇ…!! ごめんねぇ…!!」

 病院に帰った後、母・引子から泣いて謝られた。個性のある子どもに産んであげられなくてと。そんな事ないよと母親に諭したが、尻からビームが出る個性よりかは絶対マシだと思った。

 

「おかあさん」

「なに?」

「諦めへんからな」

「何で関西弁!!?(大汗)」

 

 そんなこんなで出久は無個性である事をいいことに、母親を手なずけた。必死に猛勉強して小学校はヒーローに詳しい学校に入学。そこから中学までそこ通っていた。変わった人が多かったが、無個性についても理解があり、出久にとっては天国のようだった。

 

「無個性? まあ少しばかり苦労するけど、なれなくはないでしょ」

「イレイザーヘッドっていう個性消すヒーローがいるみてぇだが、奴なんか個性使わない相手やロボットには実力で戦わないといけないんだぜ」

「個性の相性が悪いからなんて、ただの言い訳だよな」

「やっぱりヒーローなんだから」

 

 こんな感じである。

 

 個性には恵まれなかったものの、学ぶ研究や仲間に恵まれた出久はめきめきと力をつけて、トップに君臨した。

 

 そして…

「おめでとう緑谷くん。雄英高校の推薦ゲットしたよ」

「ありがとうございます!!」

 

 出久の今までの努力が認められて、出久は推薦入学を手にしたのであった。努力をすれば必ず報われるという訳ではないが、彼は見事にチャンスを掴み取ったのだった。

 

 そして今に至る。

 

「いや、ハーレム作った経緯!!」

「肝心なところが書かれてない!!」

 と、クラスメイトが突っ込んだ。

 

「あー…それはそうと皆。やめようよ」

「デクくん…」

 女子達が出久を見つめた。

 

「そうだ。恋愛ごっこしたいなら他所に行け」

 と、あからさまに不潔そうな男がやってきた。彼の名は相澤消太。抹消ヒーロー「イレイザーヘッド」である。彼がやってくると、出久達生徒は席に座り、よそのクラスの生徒は自分の教室に帰っていった。

 

 そんなこんなで放課後

「ねえ、デクくん」

「なに? 麗日さん」

 クラスメイトの麗日お茶子が話しかけてきた。

「今日暇?」

「暇じゃないな」

「も、もしかして他の女の子とデート!?」

「僕がそんなにモテる訳ないでしょ」

 嘘つけ!!! とクラスメイト達は思った。中でも出久を睨みつけてる男子生徒が一人いた。

 

「おいコラァクソデク!!」

「かっちゃん…」

 

 爆豪勝己。出久の幼馴染であり、出久が無個性であることを馬鹿にしていたが…。

 

「え、何やねん爆豪くん」

 お茶子の目のハイライトが消えた。

「自分が女の子にモテへんからってそらあかんで」

「麗日!!(大汗)」

「言ってやるな!!(大汗)」

 お茶子の毒舌ぶりに男子たちが突っ込んだ。

 

「モテるわぁ!!!」

「いや、お前も嘘つけ」

 爆豪の突っ込みに仲良しの瀬呂範太が突っ込んだ。

 

「緑谷さん。よ、用事というのは…」

「女とデートじゃないならなんだよ」

 と、出久はクラスメイトの八百万百と耳郎響香の方を見た。

 

「奉仕活動。ちょっと海の清掃してきます」

 と、出久は去っていった。

 

「流石緑谷くんだ…。オレも見習わねば!!!」

 と、クラス委員長の飯田天哉が感心した。

 

 

 この物語は皆さんの知っている僕のヒーローアカデミアと、ちょっと違う物語である…。さて、どうなる事やら…。

 

 

「ちなみに一話完結方式の予定です」

 

 

おしまい

 




登場人物紹介01

緑谷 出久(みどりや いずく)
毎度おなじみ「僕のヒーローアカデミア」の主人公。

本作では無個性という現実を突きつけられてすぐに努力し始めた。
性格は原作と同じ穏やかではあるものの、若干捻くれている。
お茶子たちの好意については気づいているが、
本人はヒーローになりたいのでお付き合いはそれからでも遅くは無いかなーと思っている。

最近のブームはカツ丼にレモンをかける事である。


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第2話「僕がハーレムを手にするまでのお話」

旅に出たいがこの状況だと無理だ。


 

 僕は無個性だった。

 

 この世界では全人口の8割が何かしらの超常能力「個性」を持っている。しかし、僕に個性は宿らなかった。

 

 

「出久くん。君は何の個性も宿っていない。厳しいだろうが、ヒーローになるのは諦めた方が良いかもね」

 

 …よく考えたら、もうちょっと配慮とか出来なかったのかな。いや、そうなんだろうけどさ、4歳の子供相手にここまで正直に言うかね。絶対奥さんと娘とかに嫌われるタイプやろ絶対。

 

「ごめんねぇ…!! ごめんねぇ…!!」

 

 僕のお母さんは無個性として産んでしまった事を謝ってくれたが、僕が言って欲しかったのは「ヒーローになれる」という言葉だ。え、何なん? ヒーローになるのに個性絶対必要なん? え? おかしくね? と子供ながらに思いました。

 

 でもヒーローになる夢を諦める訳がない僕は。

 

「おかあさん。ぼくおじゅけんする」

 

 と、言い放った。

 

「少しでもヒーローになれるかのうせいがあるなら、すこしでもかのうせいをひろげたい」

「いや、でも出久。個性ないしうちにそんなお金は…」

「いや、お父さん海外で働いてるし、なに? 折寺小学校(仮)じゃないとつごうわるいの?」

「……」

「ちゅうがくですいせんねらうわ」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 と、僕はお受験しました。そして合格して、その手に詳しい学校に進学しました。爆豪勝己? 知らない子ですね。

 

 そして僕はそこで6年間。必死に猛勉強しました。当然個性がない僕にヒーローになれるわけがないと、クラスメイトは笑いましたが、そこではアイテムやコスチュームの勉強もするので、僕は必死に猛勉強し、まあ自分で言うのもアレですけど頭良かったんで、見事に大逆転。馬鹿にした奴らは「ヒーロー志望の癖に無個性を差別した」として、今も肩身の狭い生活を送っています。

 

 そして中学に進学ですが、実家から離れて遠い所の学校に行きました。そこで出会った友達とかは結構変わった人が多かったですが、とっても楽しかったです。

 

 また、本格的にヒーローとして名前を売っていくために、奉仕活動も積極的に始めました。海岸の掃除、ゴミ拾いといった簡単なものから、ヒーローイベント設備の手伝いと言った将来声がかかるかもしれないという所にも顔を出しました。

 

 ライブもしたなぁ…。

「代役で歌う事になった緑谷出久だぜベイベー!!」

「わぁあああああああああああああ!!!」

 と、出久が歌い出した。

 

「素敵…♥♥」

 出久の歌声に心魅かれた少女がいた。のちのクラスメイトになる耳郎響香である。

 

 で、たまにヴィランとも戦いました。愛知県では幼い兄弟を助けました。

 

「ほんとうにありがとう!!」

「いやいや」

 黒いセミロングの少女からお礼を言われた。

 

「あなたおなまえは?」

「名乗るほどのものではございません。あなたは?」

「私は蛙吹梅雨よ」

「蛙吹さんか…」

 出久が口角を上げた。

 

「おっと、バイトの時間だ。それじゃ!」

「あっ…」

「ありがとねー」

 梅雨の弟と妹が手を振ってお礼を言った。

 

 そしてまた…

「車直りましたよ」

「まあ!! ありがとうございます!!」

 出久は車の修理をしていて、少女が感激していた。この少女も後のクラスメイトとなる八百万百である。

 

「あの! お礼に家で…」

「礼には及びません。バイトの時間があるので! では!!」

「あっ…」

 と、出久は颯爽と去っていった。決して逃げるように去っていったのではない。颯爽と去っていったのだ。そんな出久の後姿を見て八百万はうっとりしていた。

 

(なんて紳士な方なのでしょう…/////)

 

 ある時は…

「大丈夫?」

「……っ///////」

 後のクラスメイトとなる芦戸三奈をお姫様抱っこして、ヴィランから逃がしていた。

 

「グォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「かかってこいよ!」

 出久が棒を如意棒のようにぐるぐる回していた。

 

「……!」

 そしてその様子を後のクラスメイトとなる切島鋭児郎も見ていた。

 

 

 こんな事もあったなぁ…。世の中って狭い。

 

 

 で、そんな活動をした甲斐もあり、雄英高校の推薦入試を手にした!!

 

「ヒャッホイ!!!」

 

 雄英高校ヒーロー科の推薦を手にした事でお母さんも喜んでくれた。

 

「個性ないからって、諦めるもんじゃないね」

「そうね…」

 

 で、雄英高校がどんな学校か気になったので入試の時にこっそり様子を見に行きました。

 

 そこでも…。

「大丈夫?」

「……っ!/////」

 女子生徒が転びそうになったので、出久が受け止めた。のちのクラスメイトとなる麗日お茶子である。

 

「いきなり転んだら大変だよね」

「ひゃ、ひゃい…(ひゃ~~~~!!! ダイエットしとけばよかったぁ!!/////)

 

 出久はお茶子を起こした。すると…。

 

「あーっ!! あの時の!!」

「!!?」

 芦戸、梅雨、耳郎がやってきた。

 

「あらま」

「アタシの事覚えてる!!?」

「覚えてますよ」

 

「ライブ以来だな」

「そうですね。その節はお世話になりました」

 

「あなたけっこうゆうめいじんだったのね」

「蛙吹さんでしたっけ」

「梅雨ちゃんと呼んで」

 そして女子4人が見つめ合った。

 

「……」

 なんか嫌な予感がしながらも、その場では何も言わなかった。

 

 が、

 

「おいコラクソデ…」

「緑谷さん!!」

 爆豪が出久に突っかかろうとしたが、八百万が前に出た。

 

「あ、車の…」

「八百万です。覚えてらっしゃいましたか!?」

「うん。調子はどうだい?」

 出久が八百万と話をした。

 

「で、こちらの方は…」

「武者修行をしていた時に出会った人たちだよ」

「武者修行…」

 八百万が4人を見つめた。

 

(わ、私以外にもこんなに…。ま、負けられませんわ!!)

(何やろう…この人もこの子ねらっとるんかいな。でもなんやろ…モヤモヤする…も、もしかしてうち!!!//////)

 ご都合主義とか言わないように。

(やっぱり他の女も虜にしてたかー…)

(どうでもいいけど…うち以外皆胸でかい…)

(あら。これはたいへんね)

 

 と、女同士で火花を散らしていた。

 

「おいコラァクソナード!!」

「!!」

 出久が爆豪を見た。

 

「あ、かっちゃんひさしぶりー」

「久しぶりじゃねーよ。てめぇ無個性の癖に何故ここに来てやがる!! 他所行けや!!」

「あなたが他所言ってください」

「せや」

「え、お前も雄英受けんの?」

「えー…。まさかとは思うけどヒーロー科とかいわないよね?」

「そういうのよくないわ」

「一斉に喋んなや!!」

 ヒロインズが喋ると爆豪が憤慨した。

 

「でも緑谷さんもお受験されるんですね!」

「あ、僕推薦だから入試受けないよ?」

「え?」

 皆が驚いた。

 

「どういう学校か見ておきたくて。今から帰る所なんだ」

「ええっ!!? そうだったの!!?」

 お茶子が驚いた。

 

「てめぇが推薦だと!!? 何かの間違いだ!!!」

 爆豪がいちゃもんをつけるが、出久の表情は変わらないし、ヒロインズが冷ややかな目で見てきた。

 

「かっちゃん」

「あぁ!!?」

「もう僕は昔の僕じゃないんだ…。夢を叶える為にも、僕はこの学校で…」

「……」

 出久が口角を上げる。

 

「奉仕活動しまくる!!!」

 と、高らかに宣言した。

 

「という訳で宜しく哀愁!! 皆頑張ってね!!」

 出久は去っていった。

「あ、お待ちになってください緑谷さん! 私も推薦で見学しにきたのです! 良かったらお茶でも…」

「それはダメー!!」

「抜け駆けすな!!」

 と、ひと悶着が起きて、それを後の担任である相澤消太が見ていた。

 

 

(非合理的だ。帰って欲しい)

 

 

 そして今に至る。

 

 

おしまい

 

 

 

 




登場人物02

麗日 お茶子(うららか おちゃこ)

「僕のヒーローアカデミア」のヒロインであるが、本作ではヒロインの一人。
実家の会社を有名にするためにヒーローを志していたが、
入試で出会った出久に一目ぼれ。それ以来原作ヒロインのポジションを利用してアプローチをかけようとするが、他のヒロイン達に邪魔をされる。

ちなみに両親からの恋愛に関する質問攻めについては耐性がない。



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第3話「出久くんのモーニングルーティン♥」

出久視点です。


 

 こんにちは。緑谷出久です。今日は僕の1日をご紹介していきたいと思います。

 

 AM5:00

 

「ふぁあ…」

 

 いつもこの時間に僕は目覚めます。たまに6時だったりしますが、朝は早い方です。

 

 起きてすぐにやる事は軽めの水分補給をする事と、ランニングをする事です。雨の時は勉強しますね。

 

 中学までは学校の寮で暮らしていたのですが、高校に進学にしてからは実家に帰ってそこから雄英高校に通っています。

 

 AM6:30

 

 大体この時間に朝ご飯を食べますね。朝ごはんはお母さんが作ってくれています。ちなみに僕自身も料理が出来るのですが、大体お母さんが作っています。

 

お母さんがいない時に料理をしたのですが、何かやたら豪華な食事を作ってるのが癇に障ったのかはわかりませんが、厨房に立たせて貰えません。でも洗濯とか掃除とかは普通にさせます。何でや…。

 

「出久。最近学校どう?」

「いつもと変わらないよ」

「そう…」

 

 と、親子の他愛のない会話をする。ちなみに僕のお父さんは海外で働いてて、たまにしか帰ってきません。主人公の親って大体どっちとも死んでるか、片方しかいないと思うでしょうが、どっちとも生きています。

 

 AM7:00

 

「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃーい」

 

 僕は家を出た。すると、目の前に一台の高級車が止まっていた。

 

「……」

 僕は立ち止まっていると、車の窓が開いた。

 

「出久さん! おはようございます!」

 

 八百万さんだった。こういう時ってリムジンで来そうなするが、普通の小型車だった。

 

「おはよう八百万さん。確か八百万さんの家って…」

「マンションを借りましたの!」

「マジか」

 

 確か八百万さんの家ってお屋敷だったような…。と、朝でかけようとすると、大体家の前に誰かいる。

 

「そっか。じゃ、また学校でね」

「いや、ちょっと待ってください! 折角だから乗っていきませんですか!?(そうじゃなきゃここまで来た意味ないじゃないですか…!!)」

「あー。ゴメン、耳郎さんと登校する約束になってるから」

「えっ…」

 

 何か八百万さんがショックを受けていたけど、約束をしているから仕方ない。

 

「また今度ね」

「いや、ちょっと出久さ」

「出久。何やって…」

 

 耳郎さんがやってきたが、八百万さんと耳郎さんが目を合わせるなり、何やら気まずそうにしていた。僕が一番気まずいんだけど。

 

(もしかして八百万も出久と…!! 乳もでかいしその上金持ちなんだから少しは自重してくれよ!!)

(な、なんという事…。私ももうちょっと積極的になる必要がありそうですね…!!)

 

 顔を見たら分かるけど、二人とも本当に困っている。でも、僕は普通に耳郎さんに声をかけた。

 

「あ、耳郎さん」

「お、おう緑谷…」

 

 ここでまずいと考えたのか八百万さんはこういった。

 

「も、もし良かったら耳郎さんもご一緒に乗っていきますか?」

「え…」

 

 と、八百万さんは何やら圧力をかけていた。何か圧力をかけても仕方ない気がするけど、耳郎さんはお言葉に甘える事になったので、僕も一緒に載る事になったんだ。

 

 そして車の中、奥から八百万さん、耳郎さん、僕の順番で座った。

 

「あの、なんかおかしくないですか?」

「何が」

 

 言いたい事は分かる。普通は八百万さんと耳郎さんの間に僕が座るのがセオリーだ。だけど耳郎さんはここでアピールをしてきた。

 

え? 自覚あるのかって? あそこまでやられて鈍感になるのはちょっと無理があるんじゃないでしょうか。本当に好意を寄せていなかったらいなかったでそれでいいんだけど。

 

 八百万さんが何か腑に堕ちなさそうな感じだけど、そこはまあソーシャルディスタンスと言う事で。

 

「耳郎さん! 密ですわ!」

「わざわざ時事ネタ挟まなくてよろしい」

 

 と、車は進んでいった…。

 

「あーッ!! 先越されたぁ~~~~!!!!」

 

 と、芦戸さんが後ろで地団駄を踏んでいたのは気のせいだろうか。

 

「あ、あのう…」

「?」

 

 芦戸さんが横を向くとお母さんが困惑しながら話しかけた。ああ、これ絶対ややこしくなる奴だわ。

 

「もしかして…出久のお友達?」

「あ、はい! まだお友達です!!」

(あの子…ッ!!)

 

 赤飯とか炊きそうで怖いでござる。

 

 AM8:00

 

 そんなこんなで僕達は学校についた。気のせいかいつもより遠回りをしていたのはきのせいでしょうか。いいえ、気のせいじゃありませんね。

 

 で、問題はここからだった。

 

「お、おい…」

「あいつ…」

「両手に華作ってるぞ…!!」

 

 八百万さんと耳郎さんの間を歩いている僕は注目の的になっていた。まあ、車から出てきてますし、そりゃそうですよね。

 

「巨乳と貧乳にはさまれてる!!」

「なんて贅沢な奴だ!!」

「やっぱり巨乳は強いよなぁ…」

「いやいや。貧乳も育て甲斐があって…」

 

 という話がどこからか聞こえてきたが、胸の話しかしない。可哀想…。

 

(貧乳つった奴、後で全員突き指させる!!(激怒))

 

 耳郎さんは激おこでした。そうですね。怒っていいよ。

 

「あ、あの…出久さん」

「何でしょう」

「あの…出久さんはお胸は大きい方と小さい方…どっちがお好きでしょうか?」

「ノーコメントで」

「えっ!? あ、そ、そうですよね…公衆の面前ですし…」

「それもそうだけど耳郎さんが…」

 

 耳郎さん、めっちゃ般若の顔をしている。で、この後八百万さんは平謝りした。流石にね…。でも後でこっそり教えて欲しいと言われた。

 

 そんな時だった。

 

「あ、デクくん! おはよー」

 

 お茶子がすかさず声をかけてきた。

 

「見ろ! 一人増えたぞ…」

「一体何者なんだ…あの緑色…」

「あの子もちょっとおっきめだね…」

「やっぱり高校生はええどすなー。ハリがあって」

「あ、もしもしおまわりさん?」

 

 という声がしたが気にしないでおこう。

 

(何でどいつもこいつも胸でけぇんだよ…!! 巨乳はイケメンでも相手しとけや!!)

 

 耳郎さん。それは言い過ぎ。

 

 

「緑谷の野郎…!!」

「朝からハーレムイベント起動させやがってぇ…!!(血涙)」

「…イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ(激怒)」

 

 たまに遠くで見ていた上鳴くん、峰田くん、かっちゃんから言いがかりをつけられるが、いつも返り討ちにしてます。もうやってもいいよね!?

 

 

 で、こんな感じで僕の朝は始まります…。ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

おしまい

 




登場人物03

八百万 百(やおよろず もも)

大金持ちの家のお嬢様。
本作では出久に家の車を修理して貰い、ちょっと話しただけで出久に惚れたチョロイン(原作も結構チョロいが…)
自分にはあまりアピールできるところがないと考えている為か、アプローチをするのに若干財力に頼りがちである。

ヒーローコスチュームの露出度についてあまり気にした事が無かったが、やはり殿方の前で露出しすぎるのは良くないと考えているのか、現在検討中である。
(ちなみに峰田からは猛反対されているが、女子達からは大賛成されている)


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女子会編
第14話「私が出久に惚れるまで ~芦戸編~」


今回はA組女子会で起きた馴れ初め発表回です。






 

 

 それはある日の事だった。A組女子達がとあるカフェで女子会をしていた。

 

「えー皆さん。今日はお越し頂きありがとうございます」

 

 葉隠がパーティーの司会のように挨拶をした。お茶子、八百万、耳郎、芦戸、梅雨も葉隠の方を見た。

 

「でも急にどうしたの? いきなり女子会やりたいだなんて…」

「いいじゃんいいじゃん。たまにはこういうのもさ!」

 梅雨の言葉に芦戸が暢気に返した。

 

「いやー。どうしても気になる事があってね」

「気になる所?」

 

 葉隠が口角を上げた。

 

「ほら、私以外緑谷くんの事が好きじゃん?」

 葉隠の言葉にお茶子たちは頬を染めた。

 

「ひ、人に指摘されると恥ずかしいね…//////」

「そ、そうですね…/////」

 お茶子と八百万が顔を合わせた。

 

「でも、私あまりそういう事知らないし、どうして緑谷くんの事好きになったのか、改めて知っておきたいなーって」

「まあ…5人もすきなひとがおなじならきになるわね…」

 

 梅雨は自分に言い聞かせるようにした。

 

「じゃあ思い切ってぶっちゃけちゃう?」

「ぶっちゃけるだなんてそんな…」

 芦戸の言葉に八百万はもじもじして、喋る事に躊躇っていたが…。

 

「じゃーまずアタシからね」

「私の話を聞いてました!!?」

 芦戸の言葉に八百万が突っ込んだ。

「麗日が一番最後だと思うから、麗日が一番最後ね」

「う、うん…」

 芦戸の言葉にお茶子は苦笑いした。

 

「そういやいつ頃だったかなぁ…。確か春くらいだったな。出久と出会ったの」

「結構早いね」

「多分アタシが一番早いと思うよ」

 

「そうね…」

「うちは夏だったから…」

「ええ…」

 と、梅雨、耳郎、八百万も相槌を打った。

 

「どこで出会ったの!?」

「そうだねー。どこでって言われたら…アタシの地元の中学の近くで、ヴィランに襲われそうになったのを出久が助けてくれたのが最初の出会い」

 

 - 回想 -

 

「グォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 ヴィランが暴れていた。

 

「キャー!!」

「早く逃げて!!」

 

 その時芦戸は同級生と一緒に下校していたが、その途中で獣型のヴィランと遭遇。危機を感じた芦戸は同級生を逃がして一人で応戦する事に。

 

「グォオオオオオオオオオオオオ!!!」

 一回りも大きいヴィランに芦戸は息をのんでいた。自分にできる事は仲間を逃がす事しか出来ないと心の中で思い、覚悟を決めていた。

 

 そしてヴィランが芦戸にめがけて突っ込んでいった時、突如芦戸は体が軽くなるのを感じた。そしてそれと同時に自分がいた場所で大きな音がしたのにも気づく。

 

「!?」

 一瞬何が起きたかわからず、顔を上げると…出久が自分をお姫様抱っこしている事に気づいた。

 

「!!?//////」

 芦戸はお姫様抱っこされているという事に対して頬を赤らめた。

 

「あ、ごめんね」

 それに気づいたのか出久が話しかけた。

 

 ヴィランからある程度距離を取って、出久は芦戸を下した。その時の出久の格好は緑色のTシャツにデニムといった至ってシンプルな格好だった。

 

「大丈夫?」

「あ、うん…」

「そう。それなら良かった」

 出久がにっこり笑うと、芦戸はあっけにとられた。

 

「さて、僕が奴を倒すから君は警察を呼んでくれるかな?」

「えっ…」

「大丈夫。僕強いから。頼んだよ」

「あっ…」

 と、出久はヴィランの所に向かった。芦戸は困った顔でそんな出久を見つめていたが…。

 

「グオオオオオオオオオオオオ!!」

 ヴィランが出久に向かって襲い掛かったが、瞬時にかわして…

 

「やかましい!!」

「グフォッ!!!」

 

 出久はヴィランの頬に一発パンチをお見舞いすると、ヴィランはそのまま壁に叩きつけられて伸びた。

 

(ええええええええええええええええええええええええええ(大汗))

 

 - 回想終わり -

 

「…かっこいいっていうより、ただ単に凄いって思ったなぁ。あの時は」

「うーん…」

 芦戸の言葉に他の女子達も何とも言えない気持ちになった。

 

「緑谷くんって、若干変だけど滅茶苦茶強いよね…」

「そうなの。でも何でそんなに強いのか聞いても全然教えてくれないの。『これ教えたら25話までもたない』とか訳の分からないとか言って」

(何も突っ込まんぞ…)

 芦戸の言葉に耳郎が視線を逸らした。

 

「さあ続き続き!」

「うん」

 

 - 回想 -

 

 ヴィランを倒した後、芦戸は出久に近づいた。

 

「大丈夫!!?」

「僕は大丈夫。それよりも警察呼んでくれた?」

「うん! 今こっちに向かってくれるって! それよりも怪我してない!!?」

「してないよ」

 出久が殴った方の拳を芦戸に見せたが、凄く大丈夫そうだった。

 

「でも君凄く強いね! もしかしてヒーロー志望!?」

「そうだよ」

「私もそうなんだ! どこ受けるの!?」

「雄英高校か士傑高校。でも地元のヒーロースクールで下克上もいいなぁ」

「下克上…(汗)」

 出久の言葉に芦戸が口元を引きつる。

 

「私雄英高校受けるんだ!」

「へー。そりゃ凄いね」

 と、そのまま普通に喋っていた。

 

「…あのさ」

「何だい?」

「その…」

 芦戸がモジモジした。

 

「も、もし良かったらだけど…。で、電話番号。交換してくれない?」

「何で?」

「何でって…。ヒーローを目指すならさ、連絡できた方が良いかなって…」

「……」

 出久が芦戸を見つめた。

「い、嫌なら別にいいよ!? 無理強いはしないし!」

 芦戸が慌てると、

「それだったらさ」

「?」

 

「雄英高校に合格したら交換しようよ」

「!!」

 出久の言葉に芦戸が目を大きく開いた。

 

「あ、でもそういや何年生?」

「さ、3年生…」

「そっか。じゃあ丁度いいね。その方が受験頑張れるかなって。ドラマみたいで」

「……」

 出久が口角を上げた。

 

「じゃ、あとは宜しくね」

「えっ、ちょ…」

 出久がその場を後にした。それと入れ替わるように警察が到着した。

 

(ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!)

 

 - 回想終わり -

 

「…っていう事もあったなぁ」

「(出久の呼び名)らしいなぁ…」

 芦戸が一息つくと、お茶子、耳郎、八百万、梅雨が相槌を打った。

 

「でもこれで惚れるって…」

「あ、えっとね。その時はまだ何ともなかったんだよ」

「入試で再会したときとか?」

「ううん。合格した後」

「!?

 

 - 回想 -

 

「あ!!」

 雄英高校の中庭で芦戸が出久を見つけた。

「おーい!!」

「おや」

 芦戸が声をかけると、出久が芦戸の方を振り向いた。

 

「芦戸さん」

「良かったぁ!! ちゃんといたぁ!!」

 芦戸が出久を見た。

「このまま他の学校に行ったら許さなかったよ!」

「そう?」

 芦戸が憤慨しているのを見て、出久は苦笑いした。

 

「で、あのさ出久。覚えてる? あの約束…」

「覚えてるよ」

 出久が口角を上げた。

 

「電話番号」

「……!!」

 

 どうせいつものようにボケるんだろうなと思っていた芦戸だったが、まっさきに約束の事を持ってきて、思わずときめいてしまった。

 

「覚えてくれてたんだ!」

「そりゃあ覚えてるさ。だって…」

 出久が芦戸を見て、苦笑いした。

 

「約束だから」

「/////////」

 

 

 - 回想終わり -

 

「完全にしてやられました///////」

「ニコポ…」

 芦戸が頬を染めてテーブルに顔をつけながら言うと、葉隠が突っ込んだ。ちなみにニコポとは主人公が「ニコッ」と笑うだけでヒロインが「ポッ」と惚れるハーレム系小説を指す用語である。また女性が笑って男性を惚れさせるパターンもある。

 

「チョロインじゃねーか…」

「じゃあ次は耳郎ね」

「んなぁ!!!//////」

 

 と、ガールズトークはまだまだ続くのだった。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル14
飯田 天哉(いいだ てんや)

生真面目・堅物が良く似合うA組のクラス委員長。
原作同様出久やお茶子と仲がいいが、お茶子が出久にぞっこんな為、
孤立しがちなのは内緒だ。
だが、最近は轟とも仲良くなったので、彼と一緒に行動する事もある。


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第15話「ウチが出久に惚れるまで ~耳郎編~」

 前回までのあらすじ

葉隠から「どうして皆は緑谷くんの事を好きになったの?」という質問を受けて、答える事になったお茶子たち。芦戸が恥ずかしい思いをしながら答えたのに対し耳郎が「チョロインかよ」と思わず本音を漏らしたため、2番手は耳郎となりました。


「喋らなかったらお父さんから小さい頃の写真を仕入れてるので、公開ね」
「何してくれてんだあのおっさんはぁああああああああ!!!!(激怒)」
「耳郎ちゃん。他にもお客さんがいるから静かに」
「はい」

 芦戸の脅迫に耳郎が怒鳴ると、梅雨が冷静に突っ込んだ。


 

「え、えーと…//////」

 耳郎がモジモジした。両耳にあるイヤホンジャックを指をツンツンするかのように、くっつけていた。

 

(カワイイ)

「可愛い思うなぁ!//////」

 あからさまにお茶子たちから可愛いと思われているのに気付いて突っ込む。

 

「ほら早く!」

「無理強いはよくないわ」

「うん。今ので十分に好きって言うのは伝わったよ」

 芦戸が急かそうとすると梅雨と葉隠が諫めた。

「思った以上に引っ込み思案だったのね…耳郎って」

「ち、ちがわぁ!! えっと…うちが最初に出久に出会ったのは夏休みの時だ」

 

 耳郎が息をのんだ。

 

「夏休み?」

「ああ…。気分転換にフェスに出かけたんだよ。ただ…」

「ただ?」

「フェスに出かける直前に、友達とくだらねぇ事で喧嘩したんだけどな…」

「ああ…」

 耳郎の言葉に何とも言えない感じだった。

 

「で、それが惚れるきっかけになったんでしょ?」

「そ、そうだよ…////」

 芦戸の言葉に耳郎が頬を染めた。

「もっと詳しく教えて!!」

「……」

 葉隠の言葉に耳郎は観念したのか、詳細をおしえた。

 

 - 回想 -

 

「はぁ…」

 フェス会場にやってきたが、耳郎は浮かない顔をしていた。

 

『もういいよ! 電話かけてくんな!!』

 と、耳郎は電話越しの友達にそう叫んだ。

 

(うちの悪い癖だなぁ…。ああやってすぐにムキになんの。これじゃヒーローになんて慣れる訳ないよ…)

 と、耳郎が考えていると、耳郎の前にいた人がひょいっと避けた。あまりにも変な動きをしたので耳郎が思わず振り返った。その変な動きをした男こそが緑谷出久である。白のTシャツに緑色の短パンを穿いていた。

 

「前を見て歩かないと危ないですよ」

「す、すみません…」

 出久の言葉に耳郎は頭を下げた。

 

「元気ないけど、具合悪いの?」

「い、いえ違います!」

「そっか。それならいいけど無理しないでね」

 そう言って出久は去っていった。

「……」

 

 このままじゃいけないと思い、耳郎は気をしっかり持ち直してライブ会場に向かった。

 

 そして熱狂に包まれたままフェスが行われた。ヴィランが来る事もなく平和なひと時だった。

 

「……」

 耳郎もそれなりに楽しんでいたが、喧嘩の事が脳裏によぎっていた。

 

 そんな時だった。

 

『続いてはこのバンドです!!』

 と、アナウンサーの紹介で5人の男女が現れたが、ボーカルを務めていたのが出久だった。

 

「!!?」

「えー。どうもこんにちは。ザ・デクバンドです」

 出久が凛々しい顔でMCを務めていました。

 

「えー。本当は僕ギターだけだったんですけど…。あ、自己紹介しますね」

 出久が口角を上げた。

 

「代役で歌う事になった緑谷出久だぜベイベー!!!」

 出久が高らかにそう言い放つと大歓声が上がった。普通に考えたら「MCになってなくね?」と思うかもしれない。だが、観客たちはヒートアップしていて、出久のノリに全力で乗っかっていた。

 

「……!!」

 耳郎もなぜかその姿に心を奪われていた。

 

「それでは早速ですが聞いてください。大きな栗の木の下で」

 

 童話をバンド風に演奏し、出久もそれっぽく歌い始めた。普通なら笑いが生まれる所だが、出久の歌唱力は人並み以上はあり、他の4人の演奏が完全に出久が放つ世界観に合っていて、観客を盛り上げるには十分だった。

 

「素敵…//////」

 耳郎はこの時点で出久にときめていた。歌唱力でも演奏でもなく、演奏を心から楽しんで、ありのままの自分を素直にさらけ出している姿に。

 

 素直になる事。それこそが彼女が今一番求めていた姿であり、決心した。友達にちゃんと謝ろうと。

 

 ライブが終わり、耳郎は出久を待ち伏せしていた。友達に謝る前に出久にちゃんとお礼を言おうと。

 

 すると出久がやってきて、チャンスだと思った耳郎は出久の前に現れた。

 

「あら」

「……!」

 耳郎が緊張した面持ちだった。

 

「今度はどうしたの?」

「その…」

 耳郎が口をつぐんだ。

 

「ライブ。とっても良かったです」

「そっかー。ありがとう」

 出久が苦笑いした。

「それから…歌、聞いて…元気が出ました」

「そりゃよかった。本当に代役だったんだけど、頑張った回があったよ」

 出久がそう言うと、耳郎は出久を見つめた。

 

「その…プロの方ですか?」

「違う違う。息抜きに来た受験生だよ」

「え」

 耳郎が驚いた。

 

「じゅ、受験生って…高校3年生ですか?」

「ううん。中学3年生」

「同い年!!?(大汗)」

 出久の年齢を聞いて耳郎が驚愕した。

 

「まあ、それはそうと…悩みは解決した?」

「え」

 出久が口角を上げた。

「元気なかったから、悩んでたのかなって思ったんだけど」

「あ、えっと…」

 耳郎が事情を説明した。

 

「うん。何事も素直になるのが一番いいよ」

「!」

 出久が口角を上げる。

「頑張って。耳郎さんなら出来るって信じてるから」

「……!」

「じゃ、そういう事で」

 そう言って出久は去っていった。

 

 - 回想終わり -

 

「…で、ずっと出久の事を考えてて、気が付いたら恋心に気づいたってパターンか」

「言うな…//////」

 芦戸の言葉に耳郎が頬を染めて突っ込んだ。

 

「うーん。こうしてみると緑谷くんってヒーローみがあるよね」

「それな」

 葉隠の言葉に芦戸と耳郎がツッコミを入れた。

 

「雄英高校に入ってからわかったけど、緑谷ちゃん。普段からほうしかつどうをしているのよね…。わたしたちのしらないところで」

「勉強とかいつしてるのかな…」

 と、出久の話題になった。

 

「いやー…もう本当に罪な男だよね。出久って。ねえ耳郎」

「うちに話を振るなっ!!//////」

「こうなったらもうお互いカミングアウトした者同士、仲良くしよーよ」

 芦戸の言葉に耳郎は何か腑に落ちなかったのか…。

 

「ええい! 次は梅雨ちゃんだ!!」

「ケロッ」

 

 ガールズトークはまだまだ続く。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル15
切島 鋭児郎(きりしま えいじろう)

男気ヒーロー・クリムゾンライオッドに憧れる熱血漢。
その半面で自信がない所があり、中学時代に同級生だった芦戸を
ヴィランから守れなかった事を悔やんでいて、
その雪辱を晴らすために日々奮闘している。
それでも勉強は苦手。


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第25話「私達があの子に惚れるまで ~梅雨・八百万・お茶子編~

第25話

 

 とあるカフェでA組女子はガールズトークを繰り広げていた。その中でどうして出久の事を好きになったのかという葉隠の質問に対し、芦戸、耳郎が答えた。

 

「それじゃ次は梅雨ちゃん!」

「ケロ」

 

 葉隠の言葉に梅雨が反応した。

 

「こうやってあらためていうのは、はずかしいわね」

「分かるよー」

「でもうちらも言ったんだから」

「それもそうね」

 芦戸、耳郎の言葉に梅雨は打ち明ける事にした。

 

「私が出久ちゃんにはじめてであったのは、きょねんのあきね」

 梅雨が思い出していた。

 

「そのとき、ちょうどおとうとといもうととかいものにでかけてたのよ」

「あー。そういや梅雨ちゃんって弟くんと妹ちゃんがいるんだっけ」

「そう。そしておとうさんとおかあさんがともばたらきで、ふだんいえのことはわたしがやってるの。たまにいっしょにそとにつれていったりすることもあるわ」

 葉隠の問いに梅雨が答える。

 

「で、そのときにヴィランがおそいかかってきたの」

「!!」

 

「わたしはおとうとといもうとをにがそうとしたんだけど、つれていかれてね…」

「そこで出久が助けに来てくれたんだね」

「そうなの」

 

 - 回想 -

 

「五月雨!! さつき!!」

「お姉ちゃーん!!!!」

「ヒャッハー!!! ストレス発散にガキに何かしてやるぜェ~~~~!!!!」

 と、大柄なヴィランが梅雨の弟と妹を抱えて飛び去っていった。

 

「……!!」

 どうしたらいいか分からない上に、あのまま弟と妹がヴィランに酷い目にあわされたらと考えてしまい、泣きそうになってしまった。

 

 そんな時だった。

 

「いや、何かするくらいは考えとこうよ」

「!!?」

 ヴィランが横を見ると、出久が並走していた。

 

「ヒィ!!!」

 そして出久がヴィランをビンタした。あまりにも強烈だったのか、ヴィランは一撃で気絶して、そのまま体制が崩れた。

 

「きゃーっ!!」

「うわああああああああああっ!!」

 ヴィランが手を離してしまった為、梅雨の弟と妹は宙を舞った。

「大丈夫」

 出久がカプセルを取り出して、下に投げると大きなマットが現れて、弟と妹、そしてヴィランを受け止めた。出久は普通に着地する。

 

「大成功☆」

 出久が親指を立てた。

 

「大丈夫かい? 君たち」

「う、うーん…」

「うぅぅぅ~~~~~」

 

「緑谷が来たで」

 出久はオールマイトのように言い放った。

 

「さて、親御さんの所に帰ろうか」

 と、出久がさつきと五月雨を梅雨の所に移動した。

 

「ヴィランはあそこにおいておいていいの?」

「プロヒーローがなんとかするでしょ。ていうかして貰わなきゃ困るんだけど」

 

 そして…

「あれが君たちのお姉さんじゃないのかい?」

「あ!」

「うん、姉さん」

「!!」

 梅雨が五月雨とさつきの存在に気付いた。

 

「五月雨!! さつき!!」

 梅雨が泣きながら二人とも走った。

「お姉ちゃん!! うぇえええ~~~~ん!!!」

 妹の皐月が梅雨に抱き着くと、梅雨が抱きしめた。

「こわかったわね…こわかったわね…」

 それを遠くから見た出久は口角を上げた。

 

「だれがたすけてくれたの?」

「あのおにいさん」

 五月雨が出久の方を指さしたが、出久が走って逃げようとした。

 

「ま、待って!!!」

 

「あなたおなまえは?」

「名乗るほどのものではございません。あなたは?」

「私は蛙吹梅雨よ」

「蛙吹さんか…」

出久が口角をあげる。

 

「おっと、バイトの時間だ。それじゃ!」

「あっ…」

「ありがとねー」

 と、梅雨の弟たちが手を振ってお礼を言った。

 

「待って!!」

 梅雨が叫んだ。

「?」

 出久が振り向いた。

 

「どうしたの?」

「その…こんど、おれいをさせてもらえないかしら?」

 梅雨がそう言うと、

「そりゃあ出来ませんね」

「でも、こっちの気が…」

 

「ヒーローが見返りを求めるもんじゃないですよ」

「!!」

 出久が口角を上げた。

 

「それよりも弟さんと妹さんをしっかり守ってあげてください」

「……!」

「それでは、失礼しまーす」

 出久は走り去っていった。

 

「……!!」

 

 

 ここで回想が終わる。

 

 

「すっかりやられてしまったわ///////」

「やっぱり苦労してるだけあって、何かそういうのあるかな…」

「うーん…」

 と、女子達が考えていた。

 

「あ、そういえば梅雨ちゃん」

「なにかしら」

 耳郎が梅雨に話しかける。

 

「その…弟と妹って結局緑谷に再会できたのか?」

「ええ。再会できたわよ。体育祭の時に」

「えっ!!? 全く知らなかった!!」

 

「もうね。二人とも出久ちゃんのだいファンよ。ヒーローになれなくても、ひとをたすけられるしごとがしたいっていって、弟なんかもうひっしにべんきょうしてるわ」

 梅雨が苦笑いした。

 

「やっぱりデクくん凄いなぁ…」

「ええ…。やっぱり努力家ですね…」

 

「それじゃ次はヤオモモね!」

「えっ? 私ですか?」

 八百万が困惑した。

 

「特に私は語れるようなものが無くて…」

「何で?」

「そういや家の車を治してもらったって…」

 八百万が頬を染めた。

 

「…一目惚れのようなものだったので//////」

 

 空気が止まった。

(え、何可愛いんですけど)

 と、お茶子たちはときめいた。

 

「うちもそんな感じやったなー。抱きかかえられたくらいで、自分でもチョロいなーって思ったんやけど、恋をするってこんな感じなんやなって…あははは…//////」

 お茶子も同調した。

「せやから八百万さんの気持ち、わかるで」

「麗日さん!!」

「まー…。語る所は語ってるから、良しとするか」

 芦戸が腕を組み、苦笑いしながら言った。

 

「でもなー。出久が…」

 芦戸がそう呟くと、ヒロインズが肩を落とした。ヒーローになる事しか見ておらず、自分達の事をそんなに意識していない事に。

 

「緑谷くんって凄く変だけど、真面目で努力家だよね」

「そうだね…」

 葉隠の言葉に皆が苦笑いした。

 

「構ってくれへんけど、頑張ってる姿はとってもカッコいいし…」

「努力している姿も見習わないといけませんわね」

「そうだな。あの頃の出久と全く変わってない」

「ああやって頑張ってるから、私達が好きな出久でいられるんだね…」

「そうね。ここはだまっておうえんしてあげましょう」

 

 皆が口角を上げた。

 

「さ、皆食べよう食べよう!!」

 と、芦戸が言うと、注文していたお菓子を食べる。そしてそれを一人の少年が口角を上げた。

 

 

『随分好かれてるようだね。出久』

「そう?」

 その夜、少年は出久と電話にした。

 

 

「同じ同級生として鼻が高いよ」

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル25

蛙吹 五月雨(あすい さみだれ)

梅雨の弟。喋り方は姉にそっくり。
姉と買い物に行ってる最中にヴィランに襲われた所を出久に助けられる。
最近では出久の事を尊敬して、雄英高校に入学できるように勉強している。


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日常回
第7話「誰かに見られてる気がする」


 

 それはある日の事だった。

 

「……」

 

 教室にやって来た出久は何かソワソワしていた。そして席に着くと後ろの席にいた峰田が話しかけてきた。

 

「どうしたんだよ緑谷」

「いや…」

 

 峰田の問いに出久はこう答えた。

 

「最近誰かに見られてる気がして…」

 

 出久の言葉にヒロインズ(お茶子・八百万・耳郎・芦戸・梅雨)がはんのうした。

 

「…何か、私だけ仲間外れ」シュン

「まあまあ…」

 唯一出久の事を好きじゃない葉隠透が落ち込むと、一緒にいた尾白猿夫が宥めた。

 

「だ、誰かに目をつけられてるってど、どどどどどどういうことなん!!?」

「戦争の始まりですか!!?」

 

 八百万が物騒な事を言いだした。下手したら怒られるし、出久が誰かに見られてる気がするくらいで戦争が起こるなら毎日戦争になってるわ。そう言いたかったが、こうなったら女子を怒らせると第6話の瀬呂のようになってしまう。瀬呂ってしまうのだ。

 

「その表現やめて!!(大汗)」

 瀬呂本人が突っ込んだ。

 

「あ、大丈夫だよ」

「!」

 出久が諫めた。

 

「自分で犯人を捜すから」

「お前が一番戦争おっぱじめる気満々じゃねぇか!!!(大汗)」

 出久のまさかの武闘派宣言にクラスメイト達が絶望した。

 

「それならうちも手を貸す。これが知らない女とかだったら…」

「それもそうだけど、出久に不安にさせるのは良くないよねー」

「さがしだすひつようがあるわ」

 

「女超怖ぇ!!!(大汗)」

 

 男子たち(約一名のぞく)は女子に絶対逆らわないように心に誓った。

 

「こわい(泣)」

 葉隠もブルブル震えて尾白にくっついていたのは内緒だが…。

 

 

 そんなこんなで次の授業が行われたが、ヒロインズは出久を見ている輩がいないか、個性を使ったりしてチェックをしていた。出久はいつも通り授業を受けていたが…。

 

「……(汗)」

 授業をしていたヴォイスヒーロー・山田ひさしは困惑していた。

「NO! プレゼント・マイクだ!!!(大汗) リスナーたちも一体どうしたんだ!!? 授業中の個性はタブーだぜ!!」

 

「申し訳ございませんプレゼント・マイク先生。出久さ…じゃなかった緑谷さんの事を見ているかもしれないという輩がいないかどうしても気になって…」

「は?」

 八百万の言葉にマイクは片眉を上げたが、

 

「だからー。出久にストーカーがいるかもしれないって事なの!」

「リスナー。どういう事だ?」

「見られてる気がするっていうだけで、見られてないかもしれないんですけど、僕の為に彼女達が躍起になってしまったんです」

「ムカつく!!!」

「モテ男ぶってんじゃねーよ!!」

 

 出久の言葉に上鳴と峰田が身を乗りだして出久に突っ込んだ。

 

 そんなこんなで休憩時間。プレゼント・マイクの協力(というか脅された)により、本格的に犯人探しが行われたが、すぐに見つかった。

 

「も、もうしません…(泣)」

 

 犯人は普通科の男子生徒だった。動機はやたらモテる出久がムカついたずっと睨みつけていたとのことだった。

 

「いや、これは僕が悪い。ごめんね」

 

「謝るな!!!(大汗)」

「そういうのが余計に癇に障るんだよ!!(大汗)」

 出久が謝ると、峰田と上鳴が突っ込んだ。実際そうなのかは読者の皆さんにお任せいたします。

 

「いや、デクくん謝っとうやん」

「自分を睨んだ方に…何て寛大な方なのかしら」

「これは出久が正しい」

「そうそう。癪に障るなんて器が小さい」

「そうね」

 

 と、ヒロインズも出久に味方した。

 

「ケッ。揃いにも揃ってイエスマンかよ」

 何故かその場にいた爆豪が悪態をついた。

 

「ところでデクくん」

「スルーすんなや!!!(激怒)」

 お茶子が爆豪をスルーして話を進めようとしたため、爆豪が激昂した。

 

「あ、爆豪くん。一応デクくんが間違っとる事をしたらちゃんと叱っとるから」

「そうですわ」

「少しは見習えよ…」

「そうそう」

「にんきでないわよ」

 爆豪が発狂したが、クラスメイトの障子目蔵に気絶させられた。障子はクラス一の怪力で、拳骨などされようものなら一たまりもないが、爆豪はタフネスなので何とかなった。

 

「ていうかもう公式チートだよな…」

 上鳴がぼそっと呟いた。

 

 そして昼休憩。出久は弁当を食べようとしたが…。

 

「デクくん。一緒にお昼ごはん食べよ」

 ヒロインズが出久に話しかけた。

「あ、12時半から打ち合わせがあるから…」

「それじゃそれまでですわ」

「あ、それならいいよ」

 と、ヒロインズと食事をする事になったが、峰田と上鳴がついていこうとした。

 

「お前らは来なくていい」

「あの、すいません。何かモテ男ぶってるのあれなんで」

「もーしつこいよ!?」

 

 色々揉めたが、一緒に食べる事になった。

 

(気のせいか視線を感じる事は無かった)

 出久は心の中で思っていた。

 

 だが食事をしている時…。

 

「デクくんの隣はうち!」

「私に譲ってくださいまし!」

「アタシも出久のとなりがいい!!」

「上鳴と峰田やるから譲って」

「あの、耳郎さん?」

 出久の隣は誰が座るかで揉めていた。

「みんな。ここはじゃんけんにしましょ」

 皆が梅雨をみた。

「しょうがない。そうしよ!!」

 と、くじの結果。

 

「ふふーん!!」

 出久の隣は芦戸が、向かいは梅雨が座る事になった。お茶子、八百万、耳郎は悔しそうにしていた。しかも耳郎に至っては両隣が峰田と上鳴だった。

 

「自業自得です!!」

「そうそう」

「こいつら…!!(激怒)」

 

 耳郎が握り拳を作った。お茶子と八百万もテンションだだ下がりだった。

 

「あの、芦戸さん…」

「えー。追加ルールはキリがないからダメって言ったの麗日でしょ?」

「…おいくらで」

「それはもっとダメ!!(大汗)」

 

 八百万が金で解決しようとしたため、全員が止めた。

 

 で、そんなこんなで食事をする事になったが…。

 

「はい出久。あーん」

「大胆」

 

 芦戸が自分のハンバーグを食べさせようとしていた。当然全員が見ていた。

 

「あの、芦戸さん?」

「えー。皆だって隣だったらやるじゃん」

「いいん?」

 出久は答えた。

 

「いいよ。はい」

「あー…」

「……」

 梅雨がじーっと見つめていたが、出久が食べた。

 

「蛙吹が見てる中で…」

「緑谷…ちょっと見直したぜ…」

「何でや!!!」

 峰田の言葉に皆が突っ込んだ。

 

「あー。梅雨ちゃん。今の感想はどう?」

 上鳴が聞いた。

「そうね…。出久ちゃん…人気者だもんね…」

(すっごい怒ってる!!!(大汗))

(表情変わってねぇけど、こんなに怒ってるって伝わるんだね!!!(大汗))

 

 梅雨は露骨に怒っていた。勉強会とかもした中なのに、やっぱり他の女と戯れているのは面白くなかった。

 

「ごめん梅雨ちゃん」

「べつにいいわ…」

 梅雨が自分のざるそばを救って、出久に向けた。

 

「わたしにもあーんさせてくれたら、ゆるしてあげる」

 

(あ、これ蛙吹の圧勝だわ)

(梅雨ちゃんめっちゃいい女。流石お姉ちゃんだわ)

 峰田と上鳴がそう思っていると、出久がそばを食べた。

 

「美味いで」

「そ、それは良かったわ…」

 

 なんだかんだ言って惚れた弱みなのだろうか、梅雨はそれで許した。

 

「なんだアイツ…」

「ギャルゲーのイベントじゃねぇか…!!」

「許せん…許せん…!!」

「オレも女子からあーんされてぇ…!!」

 

 と、男子生徒達の嫉妬を買った。しかし出久は気にしなかった。

 

 

(更に前へ! Plus ultra!!)

 

 

 

おしまい

 

 




キャラクターファイル07
爆豪 勝己(ばくごう かつき)

出久の幼馴染でありライバル的存在…の筈。

本作では出久が別の小学校に行ってしまったが、
何でも出来るという所は変わらず、性格も同じように捻くれている。

個性と才能にかまげて何もしなかった自分と、
無個性でありながら努力し続け、世間に認められるようになった出久を比較されるようになり、そこから出久を一方的に憎悪している。

ヒロインズからは相手にされていない。


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第8話「出久さん、運動会に出る」

アンケートを入れてくださった方、本当にありがとうございました。
アンケートの投票結果は今回のオチで使わせて頂いております。



 

 

 ある日の事だった。

 

「ねえ出久!」

 雄英高校のヒーロー科の教室で、芦戸が出久に声をかけてきた。

 

「何でしょう芦戸さん」

「今度の休みって暇?」

「あー。暇じゃないんだ」

 

 と、空気が止まった。

 

「何か用事でもあるの?」

「今度の休み、町内会の運動会があってそこに助っ人で頼まれてるんだよ」

「運動会!!?」

 皆が驚いた。

 

「それってどこでやるん!!?」

「ダシマ公園」

 お茶子が場所を聞いてきたので、出久は開催場所を答えた。

(いや、名前…(汗))

 名前に関しては突っ込まないでください。

 

「そうか…頑張りたまえよ!!」

「ありがとう」

「……」

 飯田に激励されている出久を見た爆豪は何か思い込んだ。

 

 

 そして運動会当日。空は快晴でまさに運動日和だった。

 

「さーてと…」

 出久も準備運動をしっかり済ませていたが…。

 

「おい、あれ雄英高校の生徒じゃないか?」

「ホントだ…」

「でも何であんな格好なんだろう」

「それはそうと…」

 

 胸でけぇな!!!!

 

「……」

 出久はチアガールの格好をしている八百万たちを見かけた。彼女達だけではなく、興味本位で爆豪以外のクラスメイトが応援に駆けつけていた。

 

 そして出久と合流する…。

 

「やあ」

 出久がそう言い放った。目の前には緑を基調としたチアガール姿をした八百万たちがいる。スカートは若干短めにしたが、スパッツを穿いている。理由は言うまでもない。

 

「いや、スパッツもありです」

「緑谷にマジ感謝」

「拝むな!!!(激怒)」

 峰田実が親指を立てて、上鳴が両手を組むと耳郎が突っ込んだ。

 

ちなみにいつもなら個性のイヤホンジャックを使って、上鳴や峰田の耳にイヤホンを差し込んで爆音を流し、気絶させるのだが、民間人がいる手前個性を使う訳にはいかなかったので、口だけである。

 

「爆豪も来ればよかったのになー」

 と、切島が苦笑いすると、

 

「ああ。かっちゃんなら来てるよ」

「え?」

 出久の言葉に皆が驚いた。

 

「僕と違うチームだけど」

「ええええええええええええ!!!?」

 

 出久が指を刺した先に爆豪がいた。

 

「ば、爆豪の奴…(汗)」

「どんだけ緑谷敵視してんだよ…(汗)」

 上鳴と瀬呂が困惑した。

 

「デクくん頑張ってね!」

「応援してますわ!!」

「爆豪なんかに負けんなよ!!」

「大丈夫!!」

「おうえんしてるわ」

 と、ヒロインズに応援された。

 

(でもやっぱり羨ましい…)

(緑谷の専属チア軍団みたいなもんだしなぁ…)

 応援されている出久を見て、上鳴と峰田は砂になっていた。

 

『これより運動会を始めます。選手は中央に集まってくださーい』

 というアナウンスが流れた。

 

「それじゃ僕行ってくるから」

 と、出久は中央に向かっていった。

 

「よし! それじゃ皆! デクくんを応援しよう!!」

「おー!!」

「……」

 

 切島たち一部の男子は心の中で『爆豪も応援してやろう』と思っていた。

 

 そして運動会が始まった。紅組と青組に分かれる。

 

「青組…?」

「白組じゃないの?」

 

 これについては学校によって違います。ちなみに出久は青組で爆豪が紅組である。

 

 最初の種目は二人三脚だったが、出久と爆豪は親子で出場する事になった。

 

しかし、青組は引子の運動不足がたたって思うように前に進めなかった。それに対して紅組は親子そろって運動神経抜群だった上に息もぴったりだったので圧勝した。

 

「ゴール!!! 紅組の勝ちー!!!」

 

 と、アナウンスすると大歓声が上がった。

 

「ドンマイドンマイ!!」

「次頑張りましょう!!」

 と、お茶子たちが声掛けをしたが、当然出久達に聞こえている筈がない。

 

 競技が終わって…

「ご、ごめん出久…ぜぇ…ぜぇ…」

「いや、息上がり過ぎでしょ。大丈夫?」

 引子がクタクタになっていると、爆豪が現れた。

 

「かっちゃん」

「今回はオレが勝たせて貰う」

 

 そう言って爆豪は去っていった。

「ご、ごめんね出久…」

「大丈夫だよ。まだ競技はあるから。でも…」

 出久が引子を見た。

 

「もうちょっと運動しようか…」

「うん…」

 

 負けた事よりも引子の体力の無さが心配になる出久だった。

 

 続いての競技は玉入れだった。この競技は出久と爆豪も出ていて、二人とも正確に投げていた。

 

「いけー!!! デクくーん!!!」

「爆豪も頑張れー…(小声)」

 

「もっと気合込めて応援しろや!!!(激怒)」

 切島や瀬呂が小声で応援していたので、爆豪が突っ込んだ。その間にも出久は確実に球を入れていった。

 

 その結果…。

 

「青組の勝ちです!!」

 

「やったやったー!!」

 ヒロインズは喜び、はしゃいだ。この時峰田と上鳴はヒロインズの乳揺れを見逃さなかった。そして耳郎が忘れさせようとしたが、何とかかわした。まあ、運動会が終わったら記憶を消されるだろうが…。

 

「オイラは何度でも蘇る!!!」

「蘇らんでええわ!!」

 

 障害物競走も行われたが、これは出久のみの参加だった。

 

「緑谷出久さん! 余裕で1位です!!」

 

 圧勝で、ヒロインズも喜んだ。峰田が乳揺れを確認しようとしていないか耳郎が見張ったものの何もしていなかった。

 

 そしてまた100m走では爆豪が参加したが、爆豪も1位だった。

 

「爆豪勝己さんが1位です!!」

 

「わーすごいすごーい(棒読み)」

「もっと感情込めろや!!!(激怒)」

「凄かったぞ爆豪!!」

 

 ヒロインズが投げやりだった為、爆豪がまたつっこんだ。切島がなんとかフォローを入れたが、爆豪はヒロインズをずっと睨み続けたままだった。

 

 

 そして…

「本当に激戦だったな!!」

 出久が協議を終えて、皆と合流して昼食を取っていた。そんな中飯田が出久に言い放った。

「そうだね。そしてかっちゃんは相変わらず強敵だった…」

 出久が苦笑いした。

 

「そういや爆豪は?」

「おばさん達と食べてるんじゃないかな」

 

 すると…

 

「あ、デクくん。うちらお弁当作ってきたんよ」

「へー。ありがとう」

「本当にありがとね…」

 引子が申し訳なさそうにお礼を言うと、

 

「いえいえ!!」

 と、にこやかにヒロインズが言い放った。

(点数稼ぎしようとしてるのがあからさま…(汗))

 

 分かりやすいヒロインズの裏の顔に他の生徒達は呆れた。

 

「ささ、食べて食べて!!」

「頂きます…」

 出久が弁当を食べた。

「美味しい!!」

「そ、そう?」

 梅雨が反応した。

 

「これ、蛙吹さんが作ったの?」

「そうよ。よかったわ」

「いや、本当に美味しい」

「え、そう?」

 引子が梅雨の卵焼きを食べた。

「あらやだ。私が作る奴より美味しい」

「そ、それはほめすぎですよ…」

 引子が大絶賛した事で梅雨は照れた。他の4人は危機感を抱く。

 

「デ、デクくん。他にもいっぱいあるから食べてな! あ、おにぎり作ってんねんけど…」

「私はこれを作りましたわ!」

「アタシも頑張ったんだよ! これとか…」

「うち、これ作った…」

 と、出久にアプローチした。出久はありがとうと苦笑いしながら言った。

 

「出久…もしかして、モテモテ?」

「そうなんですよー」

 

 引子の呟きにクラスメイト達は一斉に答えた。

 

「あのクソナードが…!!!」

「クソナード言うんじゃない!!」

 

 爆豪は母・光己に盛大に頭を殴られたとさ。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル08
上鳴 電気(かみなり でんき)

クラス一のチャラ男。ミーハーで軽い性格だが仲間思いである。
やたらモテる出久に対して悪態をつくことがあるが、
ヒーロー実習の時は普通に協力し合う。

最近の悩みが耳郎がやたら厳しい事である。


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第11話「B組登場!」

第11話

 

僕は高校生ヒーロー志望、緑谷出久! 幼馴染で同級生の爆豪勝己に「無個性はヒーローになれない」って言われたけど、どうしてもヒーローになりたかったから、原作の展開無視してコスチュームやアイテムに関して研究する小学校に行き、中学は本格的に売り込みをする為にその辺の中学校に進学した! その結果最高峰と言われている「雄英高校」の推薦を貰ったんだ!

 

 No.1ヒーローであるオールマイトから「ワン・フォー・オール」を授かる所から物語は始まる筈だったんだけど、正直個性ない状態でヒーローになった方がかっこいいし、正直ワン・フォー・オールを使ってみて、合わないなーって思ったし、絶対ヤバい奴らに狙われるし、自分の力で頑張る事にしたんだ。

 

 ヴィランを倒す事だけにこだわらず、小さなことから大きなことまで奉仕活動を地道に頑張って、またアイテムを開発したりしてヒーローとしての幅を広げてるんだ! 正直そういう資格を持っているので、何かあっても大丈夫!! 

 

 こういった事をかっちゃんや他の皆には一切話してない! 知っているのはグラントリノただ一人! 何故グラントリノかというと、このナレーションの元ネタを知っている人はお察しの通りです!!

 

実力で頑張ってもやる事はほぼ同じ!! 迷宮無いけど人望もない主人公!!

 

 

「真実はいつもひとつ!!」

「人を踏み台にしながら言うなぁ――――――――――――――――!!!!!(大汗)」

「うっせ、家族を死んだことにして金を巻き上げていたド畜生が」

「口悪っ!!!(大汗)」

 

 と、ヴィラン(?)を踏み台にしながら口上を上げていた。

 

 

 後日、出久は雄英高校の体育館で表彰されていた。全校生徒の前である。

 

「感謝状、緑谷出久殿。ヴィラン倒したので表彰します」

「ありがとうございまーす」

 校長である根津が読み上げると、女性教諭のミッドナイトが表彰状を渡した。出久が表彰状を受け取ると、全校生徒から拍手が起こった。

 

 

 表彰式が終わって1年A組の教室

 

「あー。疲れた」

 出久は一息ついていた。

「お前…凄いんだよな」

 峰田が話しかけてきた。出久の強さは前から理解はしていたけど、何やら腑に落ちない状態だった。

「努力のたまものだよ」

 出久がそう言うと、

 

「ケッ。何が努力の賜物だ。チート貰ったくせによ」

 前の席にいた爆豪勝己が悪態をついた。

 

「あ、それはそうと峰田くん」

「無視すんなや!!!」BOMB!!

 と、爆豪が個性を使って爆音を立てながら怒鳴った。

 

「近所迷惑!!」

「てめーのせいだろうが!!」

 出久が爆豪の方を見ると、爆豪が逆切れした。

「でもさかっちゃん」

「あぁ!!?」

「こういう時って相澤先生いっつも喧嘩両成敗にするよね…」

 出久の言葉に空気が止まった。

 

「どう思う?」

「ヒーローやめちまえ!!」

「ほう。中々いうじゃないか」

「!!」

 出久と爆豪がある方向を見ると、相澤がいて瞳孔を開いていた。

 

「さあ、かっちゃんだけしばかれるのか、いつも通り喧嘩両成敗なのかどっちなんだい!!」

 

 そして…出久と爆豪は相澤に連行されていった。

 

「また次回―」

「まだ終わんない!!(大汗)」

「まだ終わんないからぁ!!!(大汗)」

 出久が勝手に終わらせようとした為、クラスメイト達が突っ込んだ。

 

 

 昼休憩

 

「はー。酷い目に逢った」

 

 出久はヒロインズ(お茶子、八百万、耳郎、芦戸、梅雨)と一緒に廊下を歩いていた。

 

「まあ、デクくんも悪い所はあるけど…」

「爆豪さんには困りましたねぇ…」

「そのうち除籍されるんじゃね?」

「うーん…」

「けっこうそういうさくひんもみかけるから、ゆだんはできないわね…」

 そう考えていると、

 

「おやおやぁ!? 緑谷くんじゃないかぁ」

「!!」

 

 目の前にB組の物間寧人、後ろには拳藤一佳と鉄哲徹鐵がいた。

 

「おや。物間くんに拳藤さんに鉄哲くんじゃないか」

 出久が答えた。

 

「僕達の名前を知ってくれて光栄だよ。てっきり知らないのかと…」

「あれ? 違ったっけ」

「いや、合ってるよ!!!」

「自信持って!!(大汗)」

 出久が言いなおそうとしたため、鉄哲と拳藤が突っ込んだ。

 

「それはそうと、ヴィランを倒して調子に乗ってるんじゃないのかい? 女子達を引きつれてさ」

 物間が出久を挑発したが…。

 

「?」

 出久は首を傾げた。

 

「あれあれぇ!!? ヴィランを倒したからてっきりそういうのに敏感だと思ったけど、そうでもないんだねぇ!! これだとB組がすぐに追い抜いちゃうかもよ!!」

「おう。それは是非お願いします」

「何言ってんの!?」

 出久の言葉に拳藤が突っ込んだ。

 

「あははははは!! 是非楽しみにしててよ! B組がA組を追い越して、君はそれを指をくわえて見てるといいよ!!」

「そうするね!! 出来るだけ早く頼むわ!!」

「前々から思ったけど、緑谷全然キャラ違くない!!?」

 拳藤が突っ込んだ。

 

「いやー。第1話は原作と同じ感じにしようと思ったんだけど、やっぱり何か変な感じになって言った」

「落ちぶれていったんだねぇ!!」

「せやな」

 さっきからヒロインズの目が全然笑ってなかった。

「ステイやステイ…」

 出久が待ったをかけた。

 

「で、そろそろ行ってもいいかな。食堂しまっちゃうのよ」

「ふん。まあいいよ」

 物間が悪態をついた。

 

「まあ、そんな様子じゃすぐに追い越せそうだね。あっははははははは!!!」

 と、物間が去っていった。拳藤は困惑しながら、

 

「何かゴメンな。あいつ捻くれてて…」

「だろうね」

 出久はその一言で終わらせた。

「おいおい!! 捻くれてるなんて失礼だなぁ!! 大体君が…」

 ヒロインズが物間を睨みつけた。

 

「!!?」

 

「なあ…さっきからええ加減にしてくれへん?」ゴゴゴゴゴ

「いきなり現れて何なんですの…?」ゴゴゴゴゴ

「上鳴や峰田とは違う意味でうざったいんだけど」ゴゴゴゴゴ

「そんなんじゃ人気出ないよ?」ゴゴゴゴゴ

「あまりそういうのよくないわ」ゴゴゴゴゴ

 と、ヒロインズの怒りのオーラは物間の周りにいた生徒達をビビらせた。

 

「で、結局B組ってこんな人達ばっかりなの?」

「違う!!! それは断じて違う!!!」

 出久の言葉に鉄哲が慌てて否定した。

 

「よくもそんな失礼な事を!! 大体A組こそ野蛮…」

「お前もう黙れ!!!(大汗)」

 拳藤が物間に手刀を入れて気絶した。

 

「悪いんやけど、さっさと連れて行ってくれんか」

「お、おう。ま、またな!!」

「ごめんな!!」

 と、鉄哲と拳藤は物間を連れて去っていった。

 

「やれやれだぜ…」

 出久は口角を上げた。

 

「で、お昼ごはん食べる?」

「食べる…」

 と、ヒロインズは浮かない気持ちをしながら出久と一緒に昼食を取った。

 

(B組いつかぶっ飛ばす!!!!)

 

 恐ろしい未来を作り出そうとしながら…。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル11
葉隠 透(はがくれ とおる)

透明人間。A組女子で唯一出久に好意を寄せていない。
出久の実力はちゃんと認めている一方で、気が付いたら尾白と一緒にいる事が多い。
これは果たして…。


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第12話「強い理由」

 ある日のこと、今日も今日とて出久たちは一人前のプロヒーローになるために、修行に励んでいた。

 

「僕ら、最強」

 

 …まあ、出久はいつも通りだったが。

 

「こんなのおかしいだろー!!」

「やっぱりチートだろ緑谷!!!」

 

 今日の修業は2対2の戦闘模擬戦で、出久は轟焦凍という少年と組み、対戦相手は峰田と上鳴だった。

だが出久はもちろんのこと、轟も戦闘力はA組の中でもトップクラスだったため、峰田と上鳴はなすすべもなかった。

 

「デクくんすごーい!!」

「さすがですわ!!」

 

 と、お茶子と八百万が出久を称賛していた。耳郎、芦戸、梅雨も言葉には出していないものの、同じ気持ちだった。

 

「…!!!」

「まあまあ…」

 

 爆豪が出久を睨みつけると、一番仲がいい切島が諫めた。

 

「お疲れ様。轟くん」

「ああ…」

 

 轟は出久を見つめていた。そして出久も轟の視線に気づく。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもねぇ…」

 

 そういって轟は視線をそらして、出久の前から去っていった。

 

「……」

「次の組」

 

 

 そして放課後

 

「緑谷」

 出久が教室で荷物をカバンの中に入れていると、轟が出久に話しかけた。

 

「やっぱり何かある?」

「!!」

 

 出久が口角をあげた。

 

「いいよ。付き合うよ」

「……」

 

 

 そして出久は轟を連れてハンバーガーショップへと移動した。

 

「ハンバーガーショップは初めてかい?」

「…そうだな」

 

 轟の様子を見て出久は口角をあげた。

 

「そうだよね。まあ、社会勉強だと思って体験してみよっか。そういうのも大事だからね」

「ああ…」

 

 と、出久は轟と一緒に並んで、ハンバーガーの注文の仕方などを教えてあげることにした。気のせいか出久と轟を見て、

対応していた女性店員たちのテンションがあがっていたのは気のせい…ではなかった。

 

「ねえ、あの2人なかなかいいかんじじゃない?」

「うん! あの白と赤の子(轟)なんかすごくイケメン!!」

「緑色の子もなんかかわいくない?」

「わかる~!!!」

 

 丸聞こえしていたため、轟は何て言えばいいのかわからなかった。

 

「仕事してください」

 

 出久が遠慮なく言うと、轟がはっとした。

 

「いやね。店員さんに横柄な態度をとるのはよくないけど、言わなきゃいけない時もあるんだよ。難しいよね」

「あ、ああ…」

 

 そして注文した品を渡された二人は空いていた席を見つけ出して座った。

 

「これが3人以上だと、1人が座席に座るの。じゃないと他のお客さんにとられちゃうから」

「そうか…」

 

 2人が向き合うように座る。

 

「食べながらはなそっか」

「あ、ああ…」

 

 すっかり出久のペースであるが、轟は気にしなかった。

 

「で、轟くん」

「……」

 出久が轟の顔を見て口角をあげた。

 

 

「聞きたいことって何だい?」

「……」

 出久の言葉に轟はうつむいた。

 

 

「お前は何故強いんだ」

 

 空気が止まった。すると出久は満面の笑みを浮かべた。

 

「いい質問だねぇ~~~~~~~」

「……?」

 

 出久がなぜこんな風に言っているのかよくわからない轟だったが、いったん黙っていることにした。

 

「僕も遂にこういうことを言われるようになったか…」

 と、うんうんと頷く。

 

「まあ、早い話がね。強くなる為に努力したから」

「……」

 

 出久が口角をあげる。

 

「全部話すといろいろ長くなるから、一部だけ話すね」

「ああ…」

「轟くんももう知ってると思うけど、僕個性がないの。だから色々苦労した」

 

 出久が轟の目を見た。

 

「かっちゃんにもね、個性がない奴はヒーローになれないって言われたよ。まあ、個性がないプロヒーローなんて前例がないからね。それは仕方ないと思った。でもね」

「!」

 出久はまた口角を上げて楽しそうにしゃべる。

 

 

「チャンスだと思ったの」

「え?」

 

 

「個性がないままプロヒーローになったら、絶対有名になれるってね。まあ、有名になりたいからプロヒーローになるんじゃないけど」

「……」

 

「それにね、個性がないならないで、プロヒーローになったら同じように個性がなくて苦しんでいる人を救えるんじゃないかなって。ヴィランと戦うだけがヒーローじゃないし」

「!!」

 轟は目を大きく開けた。

 

「そりゃあ個性がない分は、ある人より苦労はするし、今までもね。かっちゃんと同じように「ヒーローになれるわけがない」とか「馬鹿げてる」とか言われたし、ましてや個性がないってだけで嫌がらせも受けたよ」

「……」

 

「でもそれって…」

「?」

 

「漫画の主人公みたいじゃない?」

 出久の言葉に轟はきょとんとした。

 

「もうなおさらやるしかないでしょこれはと思って、気が付いたら雄英の推薦もらってた。とにかく我武者羅だったね」

「……」

「でもね、それでも認めてもらえなかった事もあったの。お前には無理だとか、オレは認めないとかね。でももうそんなのどうだっていいの」

 轟は出久を見た。

 

 

「僕がやると決めたからやるの。個性がないからヒーローになれないなんて、そんなのおかしいとも思ってるから」

「!」

「だから僕はこれからも強くなるよ。ヒーローになることもそうだけど、たった一度の人生をヒーローとして貫き通したいから。以上!!」

 

 出久の言葉に轟はぽかんとしながらも、くすっと笑った。

 

「面白かった?」

「ああ…お前、本当に面白いやつだし、大したやつだよ」

 轟が口角をあげた。

 

「お前を見てると、本当に頑張らないとって思うし…。親父が敷いたレールを歩いてただけだったなんてなって…」

「轟くん…」

 

 轟の父親はトッププロヒーローであるが、とても厳しく轟を束縛していた。家族も顧みなかったので嫌っていたが、少しずつ変わりつつある。

 

 

「今日はありがとな」

「うん。こっちも楽しかったよ」

 食べ終わって、出久と轟は別れようとしていた。

 

「緑谷」

「?」

 轟が口角をあげた。

 

「オレもオレの信念を貫くために、必ず親父を超えるヒーローになる」

「頑張って!」

「ああ、それじゃまた明日」

「また明日ー」

 

 そういって轟は去っていった。

 

「……」

 轟を見送った後、出久も背中を向けた。

 

 

「僕ももっとがんばろーっと」

 

 

 

つづく

 

 

 

 




キャラクターファイル12
轟 焦凍(とどろき しょうと)

トップヒーロー・エンデヴァーの息子。
自己中心的で、私利私欲のために家族を傷つけた父を避けていたが、
出久との出会いで少しずつ向き合うようになっていく。
だが、それでも生理的に受け付けず、エンデヴァーが酷い目に逢うと、
普段から想像もつかないほどの笑みを浮かべる。



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第13話「出久さんの家庭訪問! ~耳郎編~」

 

 ある日の雄英高校。出久は教室で耳郎に話しかけられた。

 

「……」

「その…悪いんだけど、今度の休み。うちに来て欲しいんだけど///////」

 

 耳郎が恥ずかしそうにもじもじしている。そしてそれを他のクラスメイト達も見ていた。

 

「え、ちょ…」

「どういう事ですか耳郎さん!!?」

 お茶子と八百万が反応した。

 

「耳郎って奥手に見えて、結構大胆だね…」

「そうね」

「ちがーう!!!!///////」

 芦戸と梅雨の言葉に耳郎が顔を真っ赤にして反論した。

 

「いや、家に連れ込むとか絶対そうじゃん!!」

「人には散々な事言っといて、破廉恥―!!!」

「うるせぇ!!!///////」

「まあまあ耳郎さん。落ち着いて」

 出久が耳郎をはかいじめにした。

 

「ふぁあああああああああああああ!!!///////」

「訳を話して」

 出久が後ろから密着して耳郎は借りてきた猫のようにおとなしくなった。そんな様子を見てお茶子、八百万、芦戸、梅雨は「いいなぁ…」とちょっとだけ耳郎を羨ましがった。

 

(緑谷…ちょっと見直した)

(男の中の男だ…!!)

 

 上鳴と峰田からの評価もちょっとだけ上がった。

 

 そんなこんなで当日。出久は耳郎と待ち合わせをしていた。

 

「よし…」

 耳郎は集合場所の近くのベンチで髪などを整えていた。

 

「うん…大丈夫。行こう!!」

 手鏡を見て乱れないが確認をした後、耳郎が出久が待っている駅前に向かった。すると、出久は既に来ていた。

 

「ごめん。お待たせ」

「ううん。丁度今着た所だよ」

「……!!」

 耳郎は出久の私服姿を見た。中々しゃれこんでいる。

 

「も、もしかして結構服とか気を遣った?」

「お母さんが使ったよ。女の子の家に行くなら色々準備しておかねばって」

「おかねばって何…/////」

 耳郎が頬を染めた。

 

「それじゃ行こうか」

「う、うん」

 と、出久と耳郎が移動した。

 

「……」

 そんな様子をお茶子、八百万、芦戸、梅雨、上鳴、峰田の6人が見ていた。

 

「なあ…」

「ああ、間違いないぜ…」

 上鳴と峰田が喋り、出久を嫉妬のまなざしで見ていた。

 

(完全にデートじゃねぇか…!!)

 だが、上鳴と峰田の後ろにいた4人はもっと嫉妬していて、上鳴と峰田の嫉妬はすぐに、4人に対する恐怖に変わった。

 

 耳郎家につくまでにそんなに時間はかからなかった。

 

「……」

 出久は平然としている。

「い、出久…。緊張してない?」

「いいや。寧ろ会うのが楽しみだよ。行こうか」

(うちの方が緊張してるやんけ!!!(汗))

 

 あまりにも堂々とし過ぎていたので耳郎は思わず心の中で突っ込んだ。

 

「ただいまー。出久連れてきたー」

「お邪魔しまーす」

 と、耳郎と出久が中に入っていった。

 

 そしてお茶子たちはというと…。

 

「耳郎さんには正式に許可を取ったので、撮影の様子をここで見ましょう」

 とあるカフェにいて、パソコンから出久と耳郎の様子を見ていた。

 

(ガチすぎるだろ…)

(ていうか耳郎も良く認めたな…)

 上鳴と峰田は若干女子の行動に引いていた。

 

 そして耳郎家では…。

 

「良く来てくれましたね。緑谷くん」

「こんにちは」

「いつも娘がお世話になっています。母の耳郎美香です」

「宜しくお願いします。あ、こちらお土産です」

 と、出久と美香が挨拶を済ませていた。

 

「ささ、こちらにいらしてください」

「お邪魔します」

 と、美香が部屋に通すと、耳郎の父である響徳が踏ん反りがえりながら椅子に座っていた。

 

「あー。気にしなくていいから。あれ、厳格な父気取ってるだけだから」

「そうなの?」

「君が緑谷出久くんかね?」

 娘の忠告を無視して、厳格な父を気取る響徳。

 

 カフェ

「やっぱりどこのお父さんもこんな感じなのかな…」

 響徳とのやり取りを見て、上鳴と峰田は困惑していた。

「そりゃそうよ。だいじなむすめがおよめにいくのよ」

 と、梅雨が言い放つ。

 

 耳郎家

「……」

 出久、耳郎と響徳、美香が向かい合っていた。

 

「本日は御招き頂き、誠にありがとうございます」

 出久が一礼した。

「いいのよ。そんなに畏まらなくて」

「美香」

 なだめる美香を響徳が止めた。

 

「男が覚悟を決めてこの場にいるんだ。立ててあげなさい」

(何を偉そうに…///////)

 と、耳郎は頬を染めながら心の文句を言っていたが、実は若干ナイスと思っていた。

 

 カフェ

「本当に結婚の挨拶みたいだねー」

「そうですわねー」

「……」

 と、お茶子たちが嫉妬の炎を燃やしていた。

 

 耳郎家

「早速ですが、本題に入らせて頂きたいと思います」

「……」

 出久が響徳と美香を見た。

 

「何故私との面会をご希望されたのでしょうか」

 

 響徳が目を閉じた。

「本当にすまないと思ってるよ。いきなり呼び出した事を。だが、娘が君の話ばかりしていてね。少しばかり会って話をしたいと思っていたんだ」

「……」

 耳郎は赤面したままだった。

 

「緑谷くん」

「はい」

 響徳が出久の顔を見た。

 

「君は…雄英高校に入学する前に、娘と会ったそうだが、本当なのかね?」

「事実です」

 響徳の言葉に出久はすぐに返答した。

「あー…済まないが、その事について、詳しく話してくれないかね」

「あれは夏休みの事でした」

 出久は耳郎と出会った事についての経緯を話しはじめた。

 

 受験前の思い出作りとして、当時の仲間とバンド演奏をする事になった出久。そして練習を重ねてフェスに参加し、そこで耳郎と出会ったのだ。

 

「響香さんはその時、友達と喧嘩して落ち込んだままフェスに一人で足を運ばれたんです。で、その時に丁度お話しする機会があって、どうしたのかって聞いたのが始まりです」

「そうか…」

 響徳が頷いた。

「バンド演奏を行った時、丁度響香さんと目が合ったのもいい思い出ですね」

「で、その後どうなったんだ?」

「演奏が終わって、響香さんが僕に話しかけてくださったんです。丁度一人でいる時に…。とても良い演奏だったと言ってくれたんです。その頃には耳郎さんも元気を取り戻して、色んなお話をしました」

「そうか…」

 響徳が口角を上げた。

 

「緑谷くん」

「はい」

「君は何の楽器をしていたのかね?」

「ギターをしていました」

「だったら…ちょっと弾いてみてくれんかね」

「!」

 響徳の言葉に皆が驚いた。

「ちょ、ちょっと父さん!!」

「そうよあなた」

「僕は構いませんよ?」

「そうか。ならちょっと待っててくれ」

 と、響徳がギターをチューニングして弾けるようにした。

 

「弾いてみてくれ」

「分かりました」

 出久がギターを手に持って、演奏しようとしていた。

 

「それでは聞いてください。佐賀県」

(佐賀県!!!?(大汗))

「いや、だって最近真面目にやり過ぎて…」

 某お笑い芸人の代表曲「佐賀県」を熱唱したが、とても演奏がうまかった。

 

「ありがとうございました」

 出久が一礼すると耳郎たちが拍手した。

 

 カフェ

「デ、デクくん…。演奏うまかったんやな…」

「そうね…」

 お茶子と梅雨が顔を合わせた。

「わ、私だってピアノなら自信がありますわ!!」

「アタシタンバリンなら出来るよ!」

 と、八百万と芦戸も話に加わった。

 

「どうでしたか?」

 出久が響徳を見た。

 

「とても面白く…とてもいい演奏だった」

「……!」

「演奏を聞いてよく分かったよ。響香が君を選んだ理由が」

「オ、オッサン!!//////」

 耳郎が思わずオッサン呼びをしてしまった。

 

「出久くん」

「はい」

 響徳が突然名前呼びをしたので、お茶子たちだけではなく娘の響香もぎょっとした。

 

「今日から私の事は…パパと呼びなさい」

「何でじゃ!!!」

 そして皆が突っ込んだ。

 

「ちょっとあなた。パパは飛躍し過ぎですよ。お父さんにした方が」

「響香がパパって呼んでくれないから…」

「うちのせいにするなあと、もう高校生だぞ!! 呼べるかっ!!!///////」

「高校生でもパパって呼ぶ人はたくさんいると思います!!」

「うちは絶対呼ばない!! 呼ばないからな!!」

 と、壮絶な親子喧嘩が始まって、出久は立ち尽くしていた。

 

(これは…一応成功と言う事でいいのかな?)

 

 と、静かに思っていた。

 

 

 後日

「出久さん」

「なんでしょう」

 八百万が出久に話しかけた。

「私の父が出久さんに面会を求めていて…」

「デクくん!! うちの父ちゃんと母ちゃん紹介したい!!」

「アタシも!!」

「そういや私のおやとはあってないわよね?」

「ちょ、ちょっと皆さん!!!」

 と、一気に集まりだして、クラスメイト達はまたかと一息ついた。

 

「ところで耳郎」

「何だよ」

 上鳴が耳郎に話しかけた。

 

「結局パパって呼ばな」

 上鳴はしばかれた。

 

 

おしまい

 

 

 




キャラクターファイル13
青山 優雅(あおやま ゆうが)

自分大好き男子。とてもキラキラしたものが好きで、
たとえどんなにひどい目に逢ってもそのキャラは崩さない。
その反面とても鋭い一面も持つ。



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第17話「膝枕戦争!」

 こんにちは。緑谷です。雨が続きますが、めげずに頑張っていきましょう。

 

 雨といえば湿気とかあって洗濯物がかわかなかったり、髪の毛がしなしなになったりしますよね。ましてや中にずっといると運動不足ですもんね。

 

 さて、そんなことはいったん置いておいて、僕は今…アルバイトの途中です。

 

「緑谷くん!! ケーキ10人前ね!!」

「はい」

 

 と、出久がケーキを作っていた。

 

「あ、僕ケーキとか作らせてもらえてるんですよ。最初は掃除とかだったんですけど。地道に頑張っていきましょう」

 出久はメレンゲを泡立てていた。しかし、すぐにしゃべることはなくなった。

「……」

 

 沈黙が起こる。

 

「あ、次に行ってもらって大丈夫です」

 

 そんなこんなで登校日。

「おはよー。デクくん!」

「おはよう」

 お茶子が話しかけてきた。それに対し出久はいつも通りにあいさつした。

「おはようございます出久さん」

「おはよう」

 八百万もあいさつしたので、挨拶し返した。

 

「おはよう出久」

「おはよー」

「おはよう出久ちゃん」

「おはよう皆」

 耳郎、芦戸、梅雨もあいさつしてきたので、出久は挨拶を繰り返した。

 

「……」

「どうしたの?」

  お茶子たちは出久を見つめた。

 

「あのさ、デクくん」

「なんか癇に障ることした?」

「いや、癇に障ることはしてないけど…」

 お茶子が口角をさげた。

 

「いつ休んどん?」

 

 お茶子の言葉に皆が出久のほうを見た。

 

「日曜日」

「日曜日!!!?(大汗)」

「あ、ちゃんと休んでることは休んでたのね!!?(大汗)」

 

 この時クラスメイトは、視線をそらしてダンマリ決め込むつもりだと確信していたが、思ったほかちゃんと決めた時間に休んでいることが分かって、衝撃を受けていた。

 

「さすがに毎日働いたら体壊しちゃうよ」

「お、おう…」

 お茶子はたじろいた。

 

「ちゃ、ちゃんと休んどったらええねんけど…」

「もう無茶して怒られるのは原作だけで十分だぜ」

「原作とか言わない!!(大汗)」

 

 マイペースすぎる出久に皆は今日もひやひやしていた。

 

「あの、緑谷さん」

「なんでしょう」

 八百万が話しかけた。

 

「も、もしよろしければ…//////」

 八百万の頬が赤く染まった。

 

「私が膝枕」

「上鳴くんと峰田くんが羨ましがるからやめとくよ。気持ちだけ受け取っておくね。ありがとう」

 出久が苦笑いした。

 

「緑谷ァアアア!!! オレ達のせいにすんじゃねぇよ!!」

「えー。じゃあ膝枕されたほうがいいの?」

「そういうことじゃねぇんだよぉ(血涙)」

 峰田が出久に突っかかったが、出久はのらりくらりと返す。

 

「女子の膝枕なんてものすごく羨ましいことされてんじゃねぇよ!!」

「ですよね」

 

「あ、それやったらさ」

「?」

 お茶子が話に参加した。

 

「八百万さんが上鳴くんと峰田くんに膝枕して、私がデクくんに膝枕するってのはどうやろうか」

「思いっきり抜け駆けしてるじゃねぇか!!!(大汗)」

「麗日さん!!?(大汗)」

 八百万も思いっきり突っ込んだ。

 

「おい麗日!! 抜け駆けしてんじゃねぇよ!!」

「そうだよ!!」

 と、耳郎と芦戸が憤慨した。

 

「ここはじゃんけんにしましょ」

「えー。絶対梅雨ちゃん勝ちそう…」

「そんなことないわ」

「じゃあくじ引きは!?」

「くじどこだよ」

「私が個性で…」

「絶対ズルするパターンじゃん!!!」

 と、5人が言い争っていた。

 

「……(汗)」

「……(汗)」

 その様子を尾白と葉隠が見ていたが尾白が

 

「参加しなくていいの?」

 と言ってみると葉隠はこう言った。

 

「そんなこと言うと、もう膝枕してあげないよ」

 と言った。そしてクラスメイトは尾白を見た。

 

「されてませんけどぉ!!?」

「尾白ぉ…!!!」

「貴様やっぱり裏切り者だったのか…」

「ちが~~~~~~~~~~~~~~~~う!!!!(大汗)」

 

 峰田と上鳴が殺意の波動に目覚めると、尾白は涙目で突っ込んだ。

 

「葉隠さんが覚醒した…」

 と、出久が突っ込んだ。

 

「そ、それやったらデクくんに決めてもらおう!!?」

「え? それじゃ最初に言ってくれた八百万さんで」

 空気が止まった。

 

「早いよ!!!」

「そこはもうちょっと悩むべきだろ!!!」

「そうだよ!!」

「けつだんりょくがはやいのはいいことだけど…」

 とお茶子、耳郎、芦戸、梅雨が突っ込んだ。

 

「聞きましたね? 聞きましたね?」

 八百万はほかのクラスメイトに確認を取った。

 

「出久さんは私を選んだんですから、膝枕は私がします!」

「え、本当にしてくれるん?」

「ええ。もちろんですわ!!」

「あー…人のやさしさに触れた」

「なにがあったの!!?(大汗)」

 

 そして放課後…

 

「い、出久さん。私の太ももはいかがですか?」

「いい塩梅」

 

 出久は本当に八百万に膝枕されていた。そのようすをお茶子、耳郎、芦戸は不満そうに、梅雨が残念そうに、そして上鳴と峰田は嫉妬した表情で見ていた。

 

「緑谷…」

 切島は複雑そうにしていた。

 

「殴られる覚悟はできているで」

「!!」

 出久の言葉に切島ははっとなった。

 

「じゃあオレがぶんなぐってやるよ…!!!!(激怒)」

 と、爆豪がゴキゴキこぶしを鳴らしながら近づこうとしたが、轟が凍らせた。

 

「轟!!!」

 皆が轟を見た。

 

「喧嘩はよくねぇ」

 と言い放った。その一言だけ言い放つ姿に、出久と爆豪以外は「お、おう…」と何とも言えない空気になった。

 

「あーマジいい塩梅」

 と、出久がくつろいでいると、

 

「おいこらぁあああああああ!!! オイラにも膝枕代われぇえええええええ!!」

「女子の膝枕プリーズ!!」

 と峰田と上鳴が騒ぐと、お茶子たちが割って入った。

「八百万さん! そろそろ代わってや!」

「やっぱり順番でやろ。な?」

「アタシもしたーい!!」

「わたしいちばんさいごでいいわよ…」

 と、立候補した。

 

 

「今日も雄英高校は平和だったのである」

 出久はそうしめながら、膝枕を堪能し続けた。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル17
砂藤 力道(さとう りきどう)

A組屈指の甘党にして巨漢。
砂糖を食べると一定時間パワーアップする個性を持つ。
普段は目立たないが、体格とキャラを活かして活躍する日が…来る?
ちなみに彼の作るケーキは女子達から評判が高い。


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第23話「空と君との間に」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「えーと…今日のMVPは…緑谷少年!!」

「あざまーす」

 

 いつものように、一人前のプロヒーローになる為に出久達は切磋琢磨をしていた。今回はNo,1ヒーローであるオールマイトの「ヒーロー基礎学」で救助訓練をしていた。

 

 今回はゲーム形式で一番最初に被害者を助けた人が勝ちというルールで訓練をしていたが、出久が圧勝だった。

 

「……」

「強すぎるぜ…!!」

「デクくん。めっちゃ早いわ…」

「ええ…」

 轟、瀬呂、お茶子、八百万とともに競っていたが、4人とも出久の圧倒的な力を感じていた。

 

「だけど…緑谷少年」

「何でしょう」

「私を助けてくれる時に言ってた、『君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる』ってあれ…」

「中島さんです」

「中島み〇き!!?(大汗)」

 出久の発言に皆が驚いた。

 

(あれ、オレが学生の頃のドラマの歌だぞ…(汗))

 相澤も困惑していた。

 

「よ、良く知ってるね…(汗)」

「いえ」

 

 こうして訓練が終わって解散した。

 

「ふぅ…」

 出久が一息ついた。

「なあ緑谷」

「なあに?」

 出久が峰田に話しかけられたので、峰田の方を向く。

 

「どうしたの?」

「どうしてお前そんなに強いん?」

「強くなりたいから」

 轟と切島も出久を見ていた。

 

「ただ、それだけだよ」

「それだけでそんなに強くなれんのかよ!!」

「よく言うじゃない。『女は弱し、されど母は強し』って。守るべきものがあるとどんな人でも強くなれるものなんだよ」

「……!」

 出久が口角を上げた。

 

「そういうk」

「ケッ。結局主人公補正とかで力をつけて貰ったんだろう」

「あ、分かる?」

「それでいいの!!?(大汗)」

 爆豪が悪態をつくと、出久が素直に返事した。

 

「とにかくオレは認めねぇからな…!!」

「分かった。じゃ、また明日」

 爆豪の悪態に対して、出久は軽くあしらって去っていった。

 

「お、おい爆豪…」

「お前いくらなんでも緑谷に冷たすぎだろ…」

 切島と瀬呂が困惑していた。

「モテる所に関しては同感だけどよ…」

 上鳴も困惑したが、爆豪は聞きはしなかった。

 

 そんなある日の事だった。

 

「緑谷!!!」

「なーに?」

 皆が出久に詰め寄った。

 

「お前このネットゲームの大会に昨日出てたって本当なのかよ!!?」

「そうだよ」

「!!」

「残念ながら結果は9位だったけどね」

 出久は苦笑いした。

 

「いや、9位って世界で9位だろ!!?」

「ていうかお前ゲームするのかよ!!」

「いや、ヘビーゲーマーって訳でもないんだけど、最近は芸能人がゲーム配信とかしてるから、ヒーローでもそういうの出来るとさ、ゲーム関係で人助け出来るんじゃないかなって」

「……」

 皆が困惑した。

 

「まあ、普段のプロヒーローの訓練をちゃんとしろって話だけどね」

「……!!」

 爆豪が出久を睨みつけた。

 

「かっちゃん」

「!!」

 出久も爆豪を見つめた。

 

「確かに僕は主人公としての立場に甘えていたのかもしれない」

「!!」

「お、おい緑谷さん?」

 切島がまずそうに止めようとしていた。

 

「だからこそ、今回はオールマイトや個性に頼らないで、自分の力で最高のヒーローを目指す。じゃなきゃ…かっちゃんを追い越せないしね」

「デクくん…」

 ヒロインズも見守っていた。

 

「まあ、そういう事なので今後も皆宜しく」

「お、おう…(汗)」

 

 クラスメイト達は思った。此間の救助訓練でオールマイトに冗談交じりで言った「君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる」という言葉は、あながち嘘じゃなさそうだと…。

 

 そしていつも通り学校が始まったが、すぐに終わった。

「いや、雑か!!!(大汗)」

 

 出久が今日も活躍していた。

「だからもうちょっと具体的に書けっての!!!(大汗)」

「内容が薄っぺらいってば!!!(大汗)」

 

 それでは放課後の事を濃く書きましょう。

 

「さて、帰りましょう」

「ねえ、デクくん」

 お茶子が出久に話しかけると、出久がお茶子を見た。

「なに?」

「あ、あのさ。今日空いてる?」

「うん、空いてるよ」

「えっ…あ、空いてるんだ」

「問題ある?」

「い、いやないけど!!」

 ダメ元でお茶子が予定を聞き、まさかの空いてる発言をされたので驚いていた。大体いつも空いていないとかいう。

 

「で、何かな?」

「あ、あのさ…。ちょっとどっか寄って行かない?」

「デートかい?」

「デッ…///////」

 お茶子が顔を真っ赤にした。

 

「ちょ、ちょっと麗日さん!!/////」

「そうだ!! 抜け駆けだぞ!」

「そうだよ!!」

「みんなでいきましょ」

 と、遂に隠さなくなったヒロインズ。

 

「で、麗日さんどこに行くの?」

「えっと…」

 特に決めていないお茶子だった。すると出久は目を閉じた。

 

「ちょっと近くのショッピングモールに行きたいんだけど、いいかな?」

「!」

 

「ど、どうしてショッピングモール?」

「あそこにたこ焼きの屋台があるんだけど、それが食べたい」

「たこ焼き!!?(大汗)」

 皆が困惑した。

「いいね! たこ焼き!!」

 芦戸が賛同した。

 

「それだったらオレ達も行くぜ!!」

「ハーレムさせてたまるかい!!」

「オレもオレも!」

「オレも!!」

 

 と、クラスほぼ全員で行く事になった。爆豪は逃げた。

 

 そして皆がたこ焼きを食べる。

「おいし~~~」

 たこ焼きの味に舌鼓をしていた。そんなクラスメイト達を見て出久は口角を上げた。

 

「あれ? デクくん。食べへんの?」

「食べるよ」

 お茶子と耳郎が出久の間に座っていた。

 

「屋台で食べる奴って何か美味いけど、ここのはマジでうめぇ!!」

「ああ!!」

 切島と瀬呂がたこ焼きに満足していた。それを見た出久は満足そうにしていた。

 

「出久?」

「ああ、うん…」

 出久がたこ焼きを食べた。

「あっふ」

 いつもと変わらない感じでハフハフ言いながら食べた。

 

「あ、それはそうと麗日さん。何か話があるんじゃなかったの?」

「あ、うん…」

 皆がお茶子を見た。

「いや、そんな見んといてよ//////」

「もしかして改めて愛の告白とか?」

「いや、こんな所でできんよ!!/////」

(ん…?)

 それだと出久に好意がありますと言っているようなものだと、皆は思った。

 

「ありがとう。僕なんかに構ってくれて」

 出久が口角を上げた。

「ふぇっ…//////」

 お茶子が顔を真っ赤にして出久を見た。

 

「そ、それはそうと緑谷はどう思ってんだよ! 麗日達の事!!」

「そ、そうだよ!!」

 上鳴の言葉にお茶子たちも反応した。

 

「仲間だと思ってるし、本当に構ってくれて有り難いと思ってるよ」

「!」

 出久が口角を上げた。

 

「あ、いや。そうじゃなくて…」

「上鳴」

 瀬呂が止めた。峰田も瀬呂を見た。

 

「もう言わなくてもわかるだろう」

 障子が続いた。

 

「まあ、オレ達もちょっと気になるけど、今は緑谷の夢を応援してやろうぜ」

 砂藤がそう言うと、口田が頷いた。

 

「そういう事に首を突っ込むのは野暮というものだ」

 常闇も続いた。

「わ、分かったよ…」

 その言葉に上鳴と峰田は俯いた。

 

「それに…」

 常闇が続いた。

「!」

 

「そういう真っすぐな姿勢を貫いてこそ、麗日達が緑谷に声をかけたのだ。このままの姿勢でいる事が、筋というものだろう」

「オレもそう思う」

 障子が頷いたが、

 

「お前ら…。何か急に存在感出してきたな」

「!!」

「……」

 上鳴の言葉に障子と常闇が困惑すると、笑いが生まれた。

 

「でも本当に彼らの言う通りだよ。ありがとう」

 出久が苦笑いした。

 

「それでデクくん…」

「なに?」

 お茶子が出久に話しかけた。

 

「また何か賞レースに出るん?」

「当分は出ないよ」

「何で?」

 芦戸が聞いた。

 

「だってもうすぐテストじゃん」

「ああああああああああああああああああああああ!!! そうだったああああああああああああああああああああああ!!!」

 上鳴と芦戸、瀬呂が叫んだ。

 

「そういう事なんで。また次回!!!」

「緑谷あああああ!! 勉強教えてくれぇええええええええええ!!」

「え、僕でいいん?」

 上鳴が出久に泣きつくと、ヒロインズが睨みつけた。

 

「爆豪さんに頼みなさい」

「えー!! あいつ怖ぇしケチだし人望ねぇもん!!」

「あるわ!!! 教え殺してやる!!!」

 と、爆豪が現れて大騒ぎになった。

 

 

「平・和」

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル23
ミッドナイト

雄英高校の女性教諭。
フェロモンを放ってその匂いを嗅いだ相手を眠らせる能力を持つ。
セクシー系ヒーローであり、若いころは色々物議を醸しだした。
最近の悩みは…彼女の沽券にかかわるのでやめておこう。


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第26話「出久、モデルになる」

この話から台本形式になります。
苦手な方はご注意ください。


 

 こんにちは。緑谷出久です。今日も雄英高校は平和でした。

 

相澤「おい、勝手に終わらせるな。今から始まったばかりだろう」

出久「相澤先生」

 

 ここは雄英高校の1年A組の教室。出久が物思いに更けていると、担任である相澤消太が入ってきた。

 

相澤「さて、HRを始める前に…緑谷」

出久「何でしょう」

相澤「お前に仕事が来ている」

出久「マジですか」

相澤「マジだ。そしてこれは雄英高校のスポンサーが絡んでいるのでお前に拒否権はない」

出久「いや、それはいいんですけど、拒否権が無いのは流石にマズいのでは」

相澤「これもご都合主義だ。主人公である以上はある程度覚悟を決めろ」

出久「ハイリスクハイリターンですね。了解した☆」

切島「いや、よくよく考えたら何かマズい展開になりそうなんですけど!!(汗)」

 

 と、切島が突っ込んだ。切島だけではなく、他の生徒達も出久のマイペースぶりに辟易していた。これは絶対嵐が来るな…とも思っていた。

 

爆豪「チッ…!!」

 

 そんな中で唯一面白くなさそうにしていたのは爆豪だった。雄英に入学してからというもの、出久を一方的にライバル視し、嫌っていたがそうすればそうするほどにどんどん差をつけられていった。仕事は出来るものの、態度が悪い為評価が一向に上がらないのだ。

 

 何でも出来たというだけで皆から持て囃された彼は、漸く社会の厳しさと才能だけでは世の中を渡っていけないという現実をつきつけられたのだ…。

 

お茶子「お仕事って何ですか?」

八百万「そうですわ。わざわざ出久さんにそんな…」

 お茶子と八百万が聞くと、相澤は真顔で言い放った。

 

相澤「モデルの仕事だ」

「モデル!!?!」

出久「あらま」

 出久が反応した。

 

芦戸「モデルって、プロヒーローがするような写真撮影ですか!!?」

梅雨「すごいわね」

耳郎「へー…」

 耳郎が出久を見て呟くと、

出久「へー」

 出久も耳郎を見て言い放った。

耳郎「何でうちの方を見て言うんだよ」

出久「お約束で。あ、そういや何か髪型変えた?」

耳郎「よ、よく分かったな…/////」

 実はちょっとだけアピールをしていたが、意中の相手に気づかれて嬉しそうにする耳郎。

 

出久「いや、何か見てたら分かった。何でだろう」

耳郎「何でだろうなぁ…」

 耳郎が照れると、お茶子、八百万、梅雨、芦戸がやきもちをやいた。

 

出久「あ、ごめんなさい相澤先生。話を続けてください」

相澤「本当に非合理的だね…君は…」

 教師の前でもマイペースを崩さない出久に、相澤は静かに目を閉じてあきれ果てた。

 

相澤「とにかく仕事は3日後だからな」

出久「畏まりました」

 

 そして3日後。放課後になると出久は相澤に連れられて、スタジオに向かった。

 

出久「ここがスタジオですか」

相澤「ああ」

 出久と相澤がスタジオを見つめた。

出久「それでは行って参ります」

相澤「おう。粗相のないようにな」

 と、出久はスタジオの中に入っていき、相澤は見送った。そして…。

 

相澤「お前らは帰れ(怒)」

「や―――――――――――!!!!」

「スタジオ見学自由って言ってたじゃないですか!!!」

 と、相澤はついてきていたクラスメイト達を足止めしていた。

相澤「お前らは人の事より自分の事に専念しろ!!!」

 

 そして出久は受付を済ませて、お世話になるスタッフたちに挨拶をした。

 

出久「本日は宜しくお願いします」

「宜しくお願いしまーす」

 と、挨拶した。

 

 そして出久の撮影が始まった。

「まずはこれを着てください」

 と、最近はやりの服を着せられる出久。そして着替えると…。

 

出久「着替えました」

「やっぱ似合うわー」

「凄い人が着るとやっぱり凄いんだなー」

 と、若い男性スタッフは絶賛していた。

「でも髪型もちょっと変えてみようか」

出久「あ、はい」

 スタイリストが出久の髪形をアレンジした。

 

「良い感じじゃん!!!」

「最初は何か普通の人っぽかったけど、結構いいね!!」

 と、盛り上がる。

「それじゃ撮影に入ろうか! こっちがポーズの指示を出すから、やってみて!」

出久「はい、宜しくお願いします」

 

 と、出久の撮影が続いた。

 

 

 外

芦戸「せんせー…何でダメなんですか?」

相澤「うるさいから」

切島「ちゃんと静かにしますって!!」

上鳴「そうですよ!!」

相澤「顔が一番うるさいんだよ。人の事にいちいち首を突っ込むんじゃない。しんどいだろ」

 相澤は正論を言っていた。

 

お茶子「あのーすいません。これ、ハーレムものなので、うちらがいないとお話が成り立たないんでしょうか?」

相澤「お楽しみはとっておくものだし、お前ら女性スタッフとか共演者に突っかかるだろ。絶対突っかかるね」

八百万「そ、そんな事ございませんよ?」

耳郎「そうです!!」

芦戸「本当にダメなの!?」

梅雨「ケロ…」

 と、生徒達がつぶらな瞳(?)で見つめた。

 

「ママ―。あのひとたちなにやってるの?」

「見ちゃいけません!! 可哀想に…」

「可哀想ではありません!!!(大汗)」

「ごめんなさいお母さん。僕達正常です!!!」

 

相澤「失礼な奴だ…」

「いや、プロヒーロー!!(大汗)」

 

 と、ひと悶着を起こしている間に出久の撮影会は佳境に入っていた。

 

出久「何かあんまり僕が注目されてないけどいっか」

 出久は紫色の服を着ていたが、女性スタッフの数名はメロメロになっていた。

 

「紫もいいねー」

出久「いや、お兄さんのセンスが良いからですよ」

「はははは。ありがとう」

 

 と、スタッフたちともすっかり仲良くなっていた。

 

 そしてそんなこんなで撮影が終わった。

 

出久「終わりましたよー」

「緑谷!!」

「ああんもう終わったぁ!!!」

出久「いや、ずっとそこで揉めてたの?」

 

 出久がスタジオから出てくると、相澤とクラスメイト達が攻防戦を繰り広げていたのであきれていた。

 

飯田「お疲れ様だ緑谷くん! 撮影会はどうだったかね!!」

出久「めっちゃ順調に進んだ」

相澤「お前らがいたら絶対こうはならなかっただろうな…」

「どんだけ入れたくないんですか!!(大汗)」

 相澤の冷徹な一言に皆が突っ込んだ。

 

お茶子「デクくん!!」

出久「何でしょう」

 お茶子が出久に詰め寄った。

 

お茶子「女性スタッフに変な事されへんかった!!?」

出久「ううん?」

八百万「本当ですか?」

出久「本当ですとも。てか、そんな事したら一気にクビ飛ぶよ」

 と、和気藹々としていた。

 

芦戸「そのポスターっていつみられるの?」

出久「来月」

「来月!!?」

芦戸「そんなに待てなーい!!!」

 と、芦戸の悲鳴が響き渡った。

 

 そして来月

「うおおおおーっ!!!」

 と、出久が表紙を飾っている雑誌をクラスメイト達が見ていた。

 

出久「おや、良い仕上がり」

峰田「めっちゃイケメンに写ってるじゃねぇか緑谷ぁ!!」

上鳴「そうだぜお前!! これでまたモテ街道驀進中かオイ!!?」

 爆豪は即刻燃やした。

 

お茶子(こ、こんなにかっこええなんて…!!//////)

八百万(殿方でこんなにドキドキしたの初めてですわ…!!//////)

耳郎(絶対ライバルが増える…)

芦戸(めっちゃかっこいいじゃん出久…!!)

梅雨(……//////)

 と、ヒロインズも心の中でメロメロになっていた。

 

葉隠「次もモデルの仕事来たりするのかな!?」

出久「さあ。相澤先生の事だから断るんじゃない?」

 すると相澤がやってきた。

 

相澤「緑谷。いきなりで悪いがお前にまた依頼だ」

出久「拒否権は?」

相澤「ない」

出久「合点承知の助☆」

 

 出久の戦いはまだまだ続く…。

 

 

おしまい

 

 




キャラクターファイル26

蛙吹 さつき

梅雨の妹。幼稚園くらいであり、他の家族が蛙っぽいのに対し、
彼女だけはまだおたまじゃくしのような風貌である。
姉たちと買い物に出かけてる最中、ヴィランに襲われた所を出久に助けられる。
自分ではなく姉を出久のお嫁さんにしたいと考えているおませさん。


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第27話「出久さん何でそんなに強いんですか」

第27話

 

 ある日の雄英高校。今日も今日とて出久達は一人前のヒーローになるべく、鍛錬を積んでいた。

 

出久「オラァ!!」

切島「ぐはっ!!」

 

出久「あたたたたた!!」

上鳴「ほげぇ!!!」

 

出久「ファンタスティック・フォー!!!」

瀬呂「面白いよね!!!」

 

 今日は複数のヴィランとの戦闘を想定した戦闘訓練をしていたが、出久が無双していた。正直強すぎて他の生徒はついていけなかった。というかもう最初から勝てる気がしなかった。

 

「……!!(大汗)」

 

 見学している生徒の殆どが絶句していた。一緒の組に当たった切島、上鳴、瀬呂に心から同情するとともに出久の異常さを改めて感じていた。

 

相澤(やっぱりあいつだけ何かが違う…(汗))

 

 そして訓練が終わり…。

相澤「戦ってみてどうだった」

上鳴「勝てる訳ないじゃないですかぁ!!」

瀬呂「全然捕まらなかった…(汗)」

切島「あいつ…普段どんな修業をしてたんでしょうか…」

相澤「……」

 相澤が考えていたが、出久はいつも通りにしていた。

 

出久「え? そんなプロヒーローがしてる修業と変わりませんよ」

峰田「だからっていくら何でも強すぎだろ!!(大汗)」

爆豪「チート貰ってるからだろうがよ…!!」

出久「まあ、それはそうと…」

爆豪「無視すんなコラァアアアアアアアア!!!」

相澤「うるさい爆豪。それよりも緑谷」

出久「?」

相澤「ちょっと来い。その強さは異常だ」

出久「え、27話目にしてそれ聞きます?」

 出久が困惑したが、結局聞かれる事は無かっ…

 

相澤「待て待て待て待て。勝手に展開を変えようとするんじゃない」

出久「チッ」

(いや、舌打ち…)

(完全にキャラ変わってるじゃねぇか…(汗))

 

 出久達は教室にいて、出久の強さの秘訣を聞き出そうとしていた。

 

出久「もうこういう時だけ異常に仕事速いのやめましょうよ」

相澤「喧嘩売ってんのかワレェ…!!!」

 相澤が瞳孔を開いて個性を放つ。

 

切島「そうだぜ緑谷!! そろそろ気になる!!」

瀬呂「教えてくれよ!!」

出久「教えた所でどうにもならないよ」

上鳴「何でだよ!」

 と、皆が出久を見た。

出久「いや、だってあまりにもありえない内容だから。教えた所で信じるわけがないし」

「だから聞きたいんだろうが!!!」

 出久の言葉に皆が突っ込んだ。

 

お茶子「デクくん!!」

八百万「緑谷さん!!」

 と、皆がせがむと

 

「何をしてるんだい?」

 根津が現れた。

相澤「校長…」

根津「ただ事じゃなさそうですけど」

出久「それがですね…」

 出久が事情を説明した。

 

根津「気持ちは分かるけど、無理やり聞くのは良くないよ」

「うっ…」

芦戸「もしかして校長先生は知ってるんですか!?」

根津「知ってるよ。校長だからね」

「じゃあ説得力!!!」

上鳴「校長だけずるいじゃないですか!!」

 と、生徒達が騒いだ。

 

根津「うーん…A組は本当に自分の意思を表示出来るね…(汗)」

物間「いやいや、ただ自分勝手なだけですよ!! これだから!」

 と、物間が突然現れた。

 

出久「あ、物間くん」

物間「何だい!? 強いからって随分余裕ぶってるようだけど云々…」

出久「言われたくないだろうけど君…」

物間「!!?」

 

出久「キャラ的にA組の方が合ってるんじゃない?」

 空気が止まった。

 

物間「そ、そんな訳ないだろう!!? 何を言い出すかと思えば…」

出久「でも思う所はあるでしょ?」

 物間が口元を引きつらせた。

 

出久「素直になりなよ。そうやって悪態ついても状況変わらないよ」

物間「フ、フン!! 君に言われなくても僕はいつも素直さ!!」

出久「ああそうだったね。ごめんごめん」

物間「さっきから君、僕に喧嘩売ってる!!?」

出久「ところでやっぱりB組って…」

「すいません!! 本当にすいません!!」

「ただちに撤退しますんで!!!」

 出久の言葉にB組のメンバーが現れた物間を撤退させた。すっかりルーティンワークになってしまっている。

 

出久「あ、それじゃちょっとだけ教えてあげるね」

「!!?」

 出久が口角を上げた。

 

出久「基礎練習」

「え?」

出久「基礎練習をね、3年間ずっと真面目にやり続けたからかな」

爆豪「そんな筈あるか!!」

上鳴「基礎練習って具体的になんだよ!!」

出久「そりゃああれですよ。走り込みとか反復横跳びとかそんなんですわ」

 出久が平然と話す。その様子に他の生徒達は納得しなさそうにしていた。

 

出久「どんなに些細な事でも極めれば…ってね。飯田くんもそうでしょ?」

飯田「う、うむ! 確かに基礎鍛錬こそがヒーローの要だ!! 基礎を疎かにしないから今の強さがあるのだな!」

 

 出久が飯田に意見を求めると、飯田は素直に納得した。飯田に聞いたのは、クソ真面目で、基礎が大事だという事を重々理解しているからである。

 

出久「そういう事です。相澤先生」

相澤「いや、全然わからん」

 出久が納得を求めるかのように相澤の方を見たが、相澤は冷徹と突っ込んだ。確かにそうかもしれないが、自分が聞きたいのはそういう事じゃない。と言わんばかりだった。

 

出久「いや、もうちょっと空気読んでくださいよ。派手な修業をしているっていえば、皆それやるじゃないですか。地味な事をやり続ける事が一番大事だって読者の皆さんにも分かって貰わないといけないんですよ?」

「分かったからメタ発言はやめなさい!!(大汗)」

 

 あまりにも相澤が空気を読まないので、出久はメタ発言をし始めた。それについてまずいと思ったのか、他の生徒達が突っ込む。メタ発言をすると色々収集つかなくなる場合があるが、たまにこういう発言が出ます。

 

相澤「ハァ…もういい」

出久(勝った!!!)

 出久が口角を上げる。

 

相澤「校長に聞くことにする」

根津「相澤くん。君はもうちょっと生徒を信じてあげるべきだと思うのさ」

相澤「素性の分からない生徒を信頼しておくほど、私も甘くはないんですよ」

出久「いや、自分にすっごい甘いじゃないですか」

 相澤が出久に睨みつけた。

出久「知ってるんですよ。此間の出張、女子校の前で…」

相澤「あそこが一番合理的…」

根津「相澤くん…どういう事か詳しく聞かせて貰おうか(怒)」

 と、根津は相澤を連れて行った。

 

出久「こういう些細な困難を乗り越えていくのも、強さを繋がるのです。以上!!」

「いや、相澤先生~~~~~~~~!!!!!(大汗)」

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル27
根津

雄英高校の校長先生。小さな鼠だが校長である。
人間の言葉を喋れて、人間以上の頭脳を持っている。
出久の強さを知っている数少ない人物。


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第28話「一時も目が離せない」

 

 

 

 ある日の雄英高校。今日もヒーローの卵たちは修業を…。

 

八百万「あの、出久さん。折り入ってお願いしたい事があるのですが…」

出久「何でしょう」

 

 A組の教室で八百万が出久に話しかけてきた。当然の事ながらクラスメイト達は2人の方を見る。

 

出久「あ、お構いなく」

上鳴「いや、気になるじゃんか!!」

瀬呂「今度は一体どうしたんだよ」

峰田「女子から声をかけられるって事はそういう事じゃねぇかぁああああああ!!!」

 

 峰田が憤慨した。なんでお前ばっかりと言わんばかりに。

 

お茶子「せや。教えてや」

芦戸「そうそう」

耳郎「抜け駆けは無しだぞ」

梅雨「なにがあったのかしら?」

 

 と、他のヒロインズもさり気に聞き出そうとしていた。

 

八百万「実はですね…」

 八百万は一息をついた。

 

八百万「私の恋人役をやって」

 

耳郎「はい却下」

お茶子「爆豪くん…じゃなかった、轟くんでええやん」

爆豪「なんでいいなおした丸顔…!!(激怒)」

 

 お茶子の言葉に爆豪が瞳孔を開いた。

 

芦戸「そんな事言って、そのまま親に紹介する気でしょ!!」

八百万「ギクッ!! そ、そんな事ありませんわ!!(大汗)」

「ギクッてなんだよ!!」

「へたくそか!!」

 

 八百万が露骨に焦り始めたので、クラスメイトが苦笑いしながら突っ込んだ。容姿端麗頭脳明晰で定評のある八百万だが、たまにこういうポンコツぶりがある。これを人は「ポンコツかわいい」と呼ぶ。

 

出久「え、僕でいいん?」

八百万「愚問ですわ」

 

 出久はあえて自分でいいのかと聞くが、完全に分かり切っている為、上鳴、峰田、爆豪に対して喧嘩を売るのには十分すぎた。

 

上鳴「随分余裕ぶってるじゃないの緑谷くぅ~ん…?」

峰田「いつもどんな思いでお前のハーレム見てると思ってるんじゃコラァ…」

爆豪「公式で理不尽な目に逢えや」

切島「爆豪! それはいけません!!」

 

 爆豪がメタ発言をしたため、切島が諫めた。

 

出久「何かお見合いでもあるの?」

八百万「お見合いではなく、パーティーがあるのです…」

出久「パーティ?」

八百万「ええ。父の仕事の関係で、私も毎年顔を出しているのですよ…」

 

 と、八百万が困惑していると、

 

轟「八百万もパーティがあるのか」

「え?」

 皆が轟を見た。

出久「轟くんちもパーティがあるんだ」

瀬呂「そりゃああのトップヒーロー・エンデヴァーの息子だもん。無い方がおかしいよ」

八百万「お互い大変ですわね…」

轟「ああ…」

 と、会話をしていると八百万は出久を見た。

 

八百万「という訳で、引き受けてくれますね!?」

お茶子「いやいやいや。待って待って。それとこれとは話が別や」

芦戸「そーだよ。飯田とかでもいいじゃん」

梅雨「フェアじゃないわ」

八百万「何をおっしゃるのですか!! それこそ轟さんや飯田さんに申し訳ないでしょう!!」

飯田「八百万くん! オレは別に…」

葉隠「飯田くん。そういう意味じゃないから静かにしてようね」

 

 そう言って葉隠が飯田を静かにさせた。

 

八百万「良いんですか!! このままだとこのお話が中途半端に終わってしまいますよ!!?」

切島「どんだけ緑谷をパーティーに連れて行きたいんだよ!!(大汗)」

瀬呂「必死か!!(大汗)」

 

お茶子「大丈夫。うちらが何とかする」

耳郎「だから安心して諦めろ」

芦戸「そうそう」

梅雨「わたしたちにまかせて」

 

「良い事言ってるみたいだけど、やってる事ただの嫉妬による妨害工作だから!!!(大汗)」

 

八百万「何とかするって、具体的にどうするつもりなのでしょうか!!?」

出久「僕んちとかでホームパーティー」

八百万「そっち行きたいんですけど!!?(大汗)」

 

お茶子「いいねそれ!!」

 お茶子が賛同する。

 

梅雨「でも出久ちゃんのおかあさんにもうしわけないわ」

芦戸「じゃあアタシの家にする? 大体自由だし」

耳郎「いや、そういう問題じゃ…」

 梅雨が申し訳なさそうにすると、芦戸が提案した。それに対して耳郎が苦笑いしながら突っ込む。

 

上鳴・峰田「じゃあオレ達も」

耳郎「お前らは却下」

上鳴「そういうの良くないと思います!!」

峰田「そういう事ばっかり言ってるとお前が仲間外れにされるぞー」

耳郎「セクハラ発言ばかりしてるお前らに言われたくねーよ!!(激怒)」

 耳郎が激昂した。

 

葉隠「あ、ちなみにただパーティに参加してみたい私は…」

耳郎「葉隠はOK」

上鳴「あ、すみません。ヤオモモの恋人役耳郎でお願いします」

耳郎「誰に話しかけとんじゃあ!!」

 

 すると相澤がやって来た。

 

相澤「耳郎」

「!?」

 相澤が耳郎を見た。

 

相澤「今度の休み、八百万家のパーティーがあるみたいだが、お前も付き添いで行ってこい」

耳郎「な、何でですかぁ!!?」

相澤「お前もうちょっと社交性を身に着けてこい。態度が悪いって…」

耳郎「」

 

 耳郎は真っ白になった。

 

上鳴「そうだぞ耳郎」

峰田「内弁慶な所も直そうな」

耳郎(こ、このやろ~~~~!!!(泣))

 耳郎が涙目で上鳴と峰田を睨みつけた。

 

八百万「出久さん! 絶対に立食パーティをしないでくださいね!!?」

出久「立食とは言ってないよ」

耳郎「うちらがパーティーに行ってる間、他の女子と遊ぶの禁止!!」

出久「いよいよ隠さなくなったなぁ」

 

 八百万と耳郎のオープンさに苦笑いする出久だった。

 

 そしてパーティー当日

 

お茶子「遊ばなかったらええんよね」

出久「そうだね」

芦戸「なので…」

 

「修業だ!!!」

 出久、お茶子、芦戸、梅雨の4人は山にあるアスレチックで修業しまくった。ハーレムを作らせまいと上鳴と峰田もついてきていたが…。

 

上鳴「ゼェ…ゼェ…」

峰田「もうだめだぁ~~~~」

 上鳴と峰田はすぐにバテた。

 

出久「大丈夫。休む?」

お茶子「う、うん…(汗)」

芦戸「出久すっごい体力だね…」

梅雨「出久ちゃんのつよさのへんりんをみたわ…」

出久「そうでしょ。まあ、自分のペースでね」

 と、出久は練習に戻っていった。

 

 後日

出久「で、パーティどうだった?」

八百万「声をかけられましたけど、何とかなりましたわ…」

耳郎「それはもういいんだよ…」

 

 八百万と耳郎は身を震わせて、何か言いたそうだったが出久には分かっていた。

 

出久「いや、遊んでないじゃん」

八百万「遊んでなくても、一緒にいる事が問題です!!!(激怒)」

耳郎「見事にフラグ回収しおってからに!!(激怒)」

出久「ゴメンね♪」

 出久がウインクして舌を出した。

 

おしまい

 




キャラクターファイル28

耳郎 響徳(じろう きょうとく)

耳郎の父親。娘を溺愛しているがウザがられている。
厳格な父親を気取りたいが、実はオールマイトの熱烈的なファン。
何かしら表現を音楽に例える癖がある。
実は婿養子。


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第29話「ほんの些細な時間もHERO」

 

 それはある日の事だった。

 

「わ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!! 数学の宿題やってくるの忘れたぁ~~~~~~~~~~~!!!!」

 

 と、教室で泣き叫んでいるのが上鳴電気だった。彼はクラス一成績が悪く、授業中充てられてもまともに答えられたことがなかった。

 

耳郎「ご愁傷様」

上鳴「ご愁傷さまじゃねぇだろ!! そんな事を言うヒーローがいるか!! 緑谷に言いつけてやる!!」

耳郎「やってこないアンタが悪いんだろ!!」

 

 耳郎が嫌味を言ってきたので言い返し、そのまま言い争うが正直そんな時間は無い。

 

上鳴「もう時間がねぇ!! もう終わりだぁ~~~~~~!!!」

瀬呂「あーあ…」

 

 瀬呂をはじめ、他のクラスの面々も何とも言えない顔だった。

 

 約一名のぞいて…。

 

出久「上鳴くん」

上鳴「ど、どうしたんだ緑谷!!」

出久「お金貸して」

上鳴「よくこの状況でぶっこめたなおめぇ!!(激怒)」

 

 出久のまさかの発言に上鳴が激昂した。

 

八百万「出久さん!! お金なら私が!!」

瀬呂「八百万は入ってこなくていい!!(汗)」

上鳴「そんなコントに付き合ってる暇はねぇんだよ!! あぁぁぁ~~~~!!!! おしまいだぁ~~~~!!!!!」

 

 上鳴が頭を抱えた。勉強できないならまだしも宿題を忘れてくるという事はどういう事か、大体察しが付く。

 

出久「上鳴くん」

上鳴「何だよ!!!(激怒)」

出久「悪魔の契約をしませんか?」

上鳴「悪魔の契約…?」

 

 上鳴がそう言うと、出久はスッとノートを出してきた。

 

出久「ここに今回の宿題の答えとその解き方が書いてあるノートがございます」

上鳴「ま、まさか貸してくれるのか!!?」

出久「はい」

 

 出久があっさり承諾した。

 

飯田「み、緑谷くん!! 上鳴くんを助けたい気持ちは分かるが、宿題は自分でやってくるものだぞ!!」

出久「確かにそうだけど飯田くん。僕だって毎回貸すわけじゃないよ?」

「え!?」

 

 出久が口角を上げた。

 

出久「この話を面白くするためだよ」

「!!?」

出久「さあ、どうします上鳴くん」

上鳴「お前はどうすんだよ!!」

出久「勘で答えてみせるよ」

「めちゃくちゃ舐めププレイ!!!(大汗)」

 

 無謀ともいえる出久の度胸に皆が突っ込んだ。

 

お茶子「いや、あのデクくん…(汗)」

耳郎「上鳴を甘やかすな!」

出久「甘やかしてるように見えるけど、今上鳴くんには罪悪感がいっぱいだよ。ねえ?」

上鳴「あの、本当によろしいんですか?」

 

 正直ノートを見せて貰うのは申し訳ないが、このまま宿題を忘れると自分はどうなるか分かったものじゃない。色々悩んだ末に上鳴は一人の結論を出した。

 

上鳴「あなたの事は一生忘れません…!!」

「借りるんかーい!!」

出久「忘れていいよ。じゃあの!!」

 

 出久がそう言うと、チャイムが鳴って先生がやってきた。

 

「席つけー」

「!!!?」

 

 クラスメイト達は思った。出久は果たして正解できるのか。そして上鳴はバレないかどうか…。

 

(気になって授業どころじゃねぇ!!!(大汗))

 

 よくよく考えたら周りのクラスメイトが一番の被害者である。本来全く気にしなくて良いことを、出久と上鳴のせいで無駄に心配しなければならなくなってしまったのだから…。

耳郎とかは腑に落ちなさそうにしていた。

 

「じゃあここの問題を…爆豪」

爆豪「5っす」

「正解だ」

 

 と、いろんな生徒があてられる中、出久と上鳴はなかなか当たらずにいた。

 

瀬呂(結構難しいぞこの問題…!!)

切島(本当に大丈夫か…!? 上鳴!!)

 

 そして授業が終わって5分前。

 

「では、最後にこの問題を解いて貰おうか」

 

 と、滅茶苦茶難しい問題が出てきていた。

 

「ちゃんと宿題をやっていれば解ける筈だ。じゃあ…」

 

 先生が上鳴の方を見ると、上鳴は汗をかいていた。そして周りの生徒もハラハラしていた。

 

「緑谷!!」

「!!」

 

 出久があてられていた。

 

出久「あ、はい。この問題の答えは19です。理由はというと…」

 

 と、出久がスラスラ過程を答えた。

 

「正解だ!」

出久「ありがとうございまーす」

 

 難なく問題を解いて、ほかの生徒達も驚いた。そしてチャイムが鳴った。

 

「む。もうこんな時間か。それじゃあ今日の授業はここまで!」

「ありがとうございました!」

 

 先生が帰った後、上鳴は出久の教室にやって来た。

 

上鳴「緑谷~~~~!!!! マジでサンキューなぁ~~~!!!!」

 

 と、上鳴は感涙していたが出久はいつも通りだった。

 

出久「You’re welcome」

峰田「欧米か!!(大汗)」

 

 英語で「どういたしまして」と言った為、後ろの席にいた峰田が突っ込んだ。

 

上鳴「オレ…今なら緑谷に抱かれてもいいわ」

出久「いや、男はいいわ」

上鳴「うん。オレも出来れば女子を抱きたい」

 

 という会話をしていた。

 

八百万「出久さん!! お、お抱きになるのでしたら、ぜ、ぜひとも私を…///////」

耳郎「コラァ八百万!! そう言う事いうんじゃねぇ!!/////」

 

 八百万が過激な発言をしたので、耳郎が突っ込んだ。

 

お茶子「いや、それやったらうちだって!!///////」

芦戸「アタシも!!」

梅雨「は、はずかしいけど…わたしも…///////」

峰田「おんどりゃああ緑谷ぁ!! 毎回毎回ええかげんにせぇよお前!! ちなみに誰から…」

 

 峰田が喋ると梅雨がベロでぶっ飛ばした。

 

瀬呂「それにしても流石だな緑谷」

出久「まあね」

 

 前の席にいた爆豪がイライラしていた。

 

出久「でもまあ、次からは宿題やってきてね」

上鳴「お、おう」

出久「次は流石に見逃してくれないよ」

 

「え?」

 皆が驚いた。

 

出久「最後の問題あったじゃない。あれでバレてたよ。言ったでしょ。宿題をちゃんとやってれば解けるって。なのにあんな顔するんだもの」

上鳴「」

 

 上鳴は真っ白になった。

 

出久「まあ、次確実にやってこなかったら、倍怒られるね」

上鳴「分かりました。ぜひともやってきます!」

出久「宜しい」

 

 上鳴が敬礼しながら言うと、出久がそう言った。

 

出久「さて、これで尺は稼げたかな?」

切島「尺とか言わないの!!(大汗)」

爆豪「オラァクソデク!! 出しゃばった事してんじゃねぇ!!」

 

 と、爆豪が突っかかった。

 

出久「でもなんだかんだ言ってかっちゃんも優しいね」

爆豪「ああ!!?」

出久「いつものかっちゃんだったら、僕が上鳴くんにノートを渡した事チクる筈なのに」

 

 出久がそう言うと、

 

切島「まあ…流石に爆豪も空気読んだんじゃないか?」

瀬呂「それは流石に…なあ」

耳郎「そうしてもいいけど、やっぱりそういうのはな…」

爆豪「ふ…ふんが――――――――――――――――――――!!!!!」

 

 と、爆豪の雄たけびが学校中に響き渡った。

 

 

出久「それでは今回のお話はこれにしておしまい! See you!!」

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル29

耳郎 美香(じろう みか)

耳郎の母親。とても大人しい性格。
彼女の才能を見込んだ夫からもうアプローチを受けて結婚。
父親と娘の親子喧嘩をよく止めるが、
物事を音楽関係に例える事が多い。


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第30話「僕の焼肉アカデミア!」

 

 こんにちは。緑谷出久です。今日も今日とて僕は一人前のヒーローになる為に…。

 

出久「精を出してます!!」

 

 出久は現在テニスをしていた。というのも、先日街を歩いていたらおっさん二人が喧嘩をしていたので止めようとしたら、『今度の休みに行われるテニスに負けた方は自分が持っている会社をたたむ』という無茶な事を言っていて、その片方のおっさんからテニスを出来る人間がいないという事で、助けを求められ、今テニスコートで試合をしているという事だ。

 

お茶子「デクくーん!! ファイトー!!」

八百万「ファイトですわー!!」

耳郎「踏ん張れー!!!」

芦戸「頑張れー!!」

梅雨「……!!」

 

 A組の面々も応援に来ていて、女子達はチアの格好をしていて、男子は私服で応援していたが、上鳴と峰田がうらやましがっていたのは言うまでもない。

 

上鳴「くぅ~!!! 緑谷の奴ぅ~!!!」

峰田「女子にここまで応援されるなんて聞いてねぇぞ!!!」

 

 ちなみにチアの格好は自分達の意思で着用した。ご丁寧にボンボンも用意していて、出久への気持ちが伺えていた。

 

 そして…

 

『ゲームセット!! 緑谷!! 6-0!!』

 

 と、審判が高らかに言い放つと、出久の勝利が確信した。

 

瀬呂「うおおおおおっ!!!」

切島「緑谷が勝ったぜ!!!」

「やったやったー!!!」

 

 女子達は抱き合って喜んでいた。

 

出久「おっしゃ」

 

 出久は普通に喜んでいた。

 

「そ、そんな馬鹿な…このイケメンのオレが…」

 

 対戦相手のイケメンが膝を崩して落ち込んでいた。ちなみにテニス経験者であり、出久に至ってはどうせ素人か何かだろうと思って高をくくっていた。この様である。

 

「く、くそーっ!! 今のなしだ!!! やっぱり助っ人なんて…」

「見苦しいぞ和辛子(わがらし)」

 

 と、二社のリーダー達も傍観していたが、対戦相手の和辛子は落胆していた。

 

 そして…

 

山葵「本当にありがとう。緑谷くん」

出久「良かったですね」

 

 と、山葵社長と出久が握手をしていた。クラスメイト達もその様子を見ていた。

 

山葵「私の無茶なお願いを聞いてくれてありがとう。助かった」

出久「いえいえ」

 

 ちなみに会社の取り壊しは社員たちからの猛反対があった為、結局なしになった。

 

山葵「まあ、これで和辛子の奴もしばらくは大人しくなるだろう」

出久「まあ、あんまり無茶しないで下さいよ」

山葵「はっはっは。もちろんだとも。キミには迷惑をかけてしまったね。お礼は…」

出久「あ、僕ヒーロー志望なので」

 

 出久が片手を出した。

 

出久「自分で焼肉に行ってきます」

八百万「い、出久さん!! 焼肉なら私が!!」

耳郎「いや、ずるいってヤオモモ!!」

お茶子「せや!!」

切島「それじゃ今日は緑谷の祝勝会だな!!」

 

 切島がそう言うと、爆豪はそのまま逃げた。

 

瀬呂「あ、おい爆豪!! しかたねーなぁ」

上鳴「まあ、参加したくなったらするだろ」

 

梅雨「出久ちゃん。カッコよかったわ」

出久「ありがとう」

耳郎「ていうかテニスも出来たんだな」

出久「中学時代色々遊んでたからね」

 

 出久は女子達に囲まれていた。

 

出久「さて、それでは僕たちはこれで失礼します」

山葵「ああ。気をつけて帰ってくれ」

 

 と、出久達は山葵と別れて帰路についた。

 

 そして…

 

上鳴「それじゃ緑谷の祝勝会を始めます!!」

 

 と、結局爆豪も連れてこられて、A組全員で祝勝会をすることになった。

 

上鳴「えー…主役の緑谷くんのご挨拶は最後にとっておきましょう。それじゃ、かんぱーい!!」

「かんぱーい!!」

 

 と、皆が乾杯した。

 

耳郎「お疲れ様。出久」

出久「ありがとうございまーす」

 

 テーブルは4人1組となっており、出久は上鳴、峰田、耳郎と一緒に座っていた。ちなみに上鳴と峰田がハーレムにさせないようにする為に座り込んでいて、お茶子たちから苦情があったが、こうする事によって出久を独り占めできると、言葉巧みにだましてじゃんけんをさせて、その結果耳郎が勝った。

 

 お茶子、芦戸、八百万、梅雨の4人はそのテーブルの横に座っているが、出久は奥の席に座らされていた。

 

お茶子「や、やっぱり交代制にしない?」

耳郎「こいつらが喜ぶだけだぞ。食器持つの面倒だし」

梅雨「ケロ…」

 

 と、耳郎もかたくなに譲る気は無かった。

 

出久「それはそうとクッパ頼んでいい?」

上鳴「おう! そりゃもちろん!!」

峰田「オーダーバイキングだからな!! あ、ちなみにオイラもお願いします」

耳郎「あ、うちも」

上鳴「あ、じゃあオレも」

 

 と、和気藹々とする4人に、お茶子たちは頬を膨らませた。

 

瀬呂「緑谷の奴、すげーな…」

爆豪「あのクソナードの話すな(怒)」

 

 爆豪のイライラが最高潮だった。

 

轟「だったらお前も何かすればいいだろう」

爆豪「あぁ!!?(激怒)」

飯田「やめたまえ爆豪くん!!!」

 

 と、飯田がいさめた。

 

上鳴「それにしても個性がないのにここまで来れるなんてすげーよ…」

出久「ちゃんと努力した結果だよ」

 

 出久がウーロン茶の入ったグラスを軽く握った。

 

出久「何もしない事には何も始まらないんだよね」

峰田「名言きました!!」

 

 ヒロインズも出久を見ていた。

 

耳郎「で、次は何をするつもりなの?」

出久「学校の勉強」

「!!」

 

 出久が笑みを浮かべた。

 

出久「学生の本分は勉強だからね。そりゃあもう」

梅雨「それじゃこんどべんきょうかいしましょう」

出久「え、僕でいいん」

梅雨「ぐもんよ」

 

 梅雨も笑みを浮かべた。

 

お茶子「あ、はいはいはい!! それやったらうちも!!」

八百万「私も行きますわ!!」

芦戸「アタシも!!」

上鳴・峰田「じゃあ僕達も!!」

耳郎「お前らは来るな!!」

上鳴「おに!!」

峰田「ろくでなし!!」

 

 と、峰田たちと女子達が騒いでいて、出久は嬉しそうに見つめる。

 

轟「……?」

 

 そんな様子を轟は見ていて、上鳴たちも気づいた。

 

上鳴「何だよ緑谷」

出久「いやあ、この学校に来て良かったなって」

「え?」

 

 出久が目を閉じた。

 

出久「正直な話、個性もないもんだから最初はどうなるかと思ったけど、今となっちゃ大丈夫だって確信したんだ」

峰田「緑谷…」

出久「これもいつも親切にしてくれる皆のお陰だよ。本当にありがとう」

 

 出久がそう言うと、上鳴と峰田が号泣した。

 

上鳴「やめろよぉ!! いきなり泣かしてくんのぉ!!!(泣)」

峰田「ふざけんじゃねぇよバカが!!(泣)」

 

 すると切島と飯田も号泣した。

 

切島「いきなり嬉しいこと言ってんじゃねーよ!!!」

飯田「オレこそ君がこの学校に来てくれて嬉しい!!」

 

 ヒロインズも貰い泣きした。

 

梅雨「そうね…」

耳郎「まあ、出久はあの時のままだしな…」

八百万「感動いたしましたわ…」

 

上鳴「よーし!! これからもA組頑張るぞー!!」

切島「ファイトー!!!」

「おーっ!!!」

 

 と、A組が団結した。約一名を除いて…。

 

爆豪「……」

 

 

 後日

 

物間「ええっ!!? A組が焼肉屋で団結していた!!? だったらB組も…」

拳藤「それ以前の問題でしょ」

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル30

物間 寧人(ものま ねいと)

1年B組の生徒。やたら目立つA組の生徒を僻んでいて、
何かしらいつも嫌味を言う。
いかにも小悪党っぽいが、一応身内には優しくて甘いが、
クラスメイトは彼の嫌味に迷惑している。


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第39話「僕のほっぺたアカデミア」

 

 ある日の雄英高校。ヒーローを目指す卵たちは今日も訓練に励んでいて…

 

峰田「はー。女子のほっぺたプニプニ触ってみてーなー。やわらかいんだろうなー」

 

 と、峰田が女子に聞こえるように教室で独り言をつぶやいた。女子達はゴミを見る目で峰田を見ている。

 

出久「それでね。DNSキャッシュボイスニングは…」

峰田「話聞けやぁあああああああああああああ!!!!」

 

 出久は全く気にせず、口田に勉強を教えていたので峰田が突っ込んだ。ちなみにDNSキャッシュボイスニングとは、嘘の情報をサーバーに送信して、不正に登録させるというものである。これにより、機密情報を盗まれてしまうので、皆さんもお気を付けください。

 

出久「え? 何だって?」

峰田「オイラの話まるで聞いてなかったのかよ!! はーそりゃそうだよな!! お前は何も言わずとも女子がほっぺた触らせてくれるもんな!!」

上鳴「そうだそうだ!!」

 

 上鳴が便乗して出久を避難した。

 

出久「そんな訳ないでしょう。女の子はデリケートなんですよ?」

 出久がそう言うと、女子達がうんうんと頷いた。

 

出久「突然触ろうものなら麗日さん達の僕に対する信頼は急降下。主人公降板ですよ」

お茶子「いや、そこまでは行かんけど…」

耳郎「お前らに触らせるほっぺたはねぇ。砂藤の触ってろ」

砂藤「いや、何でオレなんだよ!!」

 

 砂藤が慌てて突っ込んだ。

 

峰田「砂藤に失礼だろうが!!」

上鳴「そうだそうだ!! 男の純情を踏みにじるんじゃねぇ!!」

砂藤「とにかくお前ら静かにして…」

 

 砂藤がそう諫めると、相澤が現れてそのままHRとなった。

 

 そして昼休憩。

 

「全く峰田と上鳴には困ったもんだな」

「それ!」

 

 出久は屋上で葉隠以外の女子とランチを取っていた。

 

お茶子「と、ところでデクくん…」

出久「なんですか?」

 

 出久はお弁当のうなむすびを食べていた。

 

お茶子「その…デクくんは女の子のほっぺた…触ってみたいって思った事ある?」

出久「ないよ?」

 

 空気が止まった。

 

お茶子「せ、せやんね」

芦戸「何で?」

出久「その発想がなかった」

 

 出久の言葉に再び空気が止まる。

 

芦戸「あ、あー…なるほどね…」

梅雨「それでなによりだわ。峰田ちゃんや上鳴ちゃんみたいな出久ちゃんなんて、ちょっといやだもの」

 梅雨がそう言い放った。

 

出久「そう?」

八百万「い、いつもの方が出久さんらしくて良いと思いますわ!」

耳郎「そうそう」

出久「ありがとう。自分でもそう思ってたから自信持てた」

(結構いい根性してるなぁー…)

 

 でもそういう所も好きなお茶子たちであった。

 

芦戸「でもよくよく考えたら、麗日たちのほっぺたに関しては興味あったんだよねー」

「えっ…」

芦戸「ちょっと触ってみてもいい? 麗日」

お茶子「え、そ、そんな事急に言われても…ひゃっ!!」

 

 と、芦戸がお茶子のほっぺたを急に触った。お茶子は若干くすぐったそうにしていて、出久以外の他のメンバーは少し驚いていた。

 

芦戸「うわっ!! 麗日のほっぺ凄くもちもち…」

お茶子「く、くすぐったいよ~!! やめてぇ~~~~~」

 

 お茶子が本格的にくすぐったそうにしていた。これを峰田と上鳴が見ていたら興奮していただろう…。

 

芦戸「八百万もいい?」

八百万「い、いえ私は…/////」

芦戸「じゃあ出久」

出久「ええで」

 

 芦戸が出久のほっぺたを触ると…。

 

芦戸「おー…」

出久「やっぱり脂ギッシュ?」

芦戸「脂ギッシュっていうか…。やっぱりごつごつしてるんだね」

出久「そうだね。すべすべなの羨ましいなぁ」

芦戸「まあ、ごつごつしてるのアタシ結構好きだけどね」

 

 出久と芦戸の距離がどんどん近づいていき、お茶子、八百万、耳郎、梅雨が焦った。

 

耳郎(やっぱり芦戸の奴…。ぐいぐい行くなぁ…)

八百万(私もあの積極的な姿勢は見習わないといけませんわね…)

梅雨(三奈ちゃんはすごいわね)

 

 その時だった。

 

お茶子「あ、あの。デクくん!」

出久「何ですか?」

 

 出久がお茶子を見ると、芦戸もお茶子を見た。お茶子は若干もじもじしている。

 

お茶子「よ、良かったら…。わ、私のほっぺ、触ってみませんかっ!!?//////」

 

 お茶子の言葉に出久が驚いた。

 

出久「ええんですか?」

お茶子「え、ええんです…」

出久「ありがとう。でも気持ちだけ受け取っておくよ」

 

 出久が笑ってやんわりと断った。

 

お茶子「な、何で?」

出久「峰田くんと上鳴くんに何か悪いから」

芦戸「別に気にしなくていいよ。ほら、触って」

 

 出久が気にせず芦戸のほっぺたを触った。

 

芦戸「ひゃああああああああああっ!!!///////」

出久「ごめん。フリかと思った」

 

 芦戸がとびのくと、出久はすかさず謝った。

 

芦戸「ちょ…ご、強引だよ緑谷…//////」

お茶子「……//////」

出久「ごめんて」

 

 芦戸がモジモジした。

 

芦戸「ま、まあ…そういうの…嫌いじゃないからいいんだけどさ…/////」モジモジ

出久「そうなんだ」

芦戸「そこは聞き流してよ!!!」

 

 出久の言葉に芦戸が慌てて突っ込んだ。

 

お茶子「あ、あの…デクくん…」

出久「触ってもいいんですか?」

お茶子「ど、どうぞ…/////」

 

 お茶子がそう言うと、出久がお茶子のほっぺたをプニプニ触った。

 

出久「確かにとってももちもちしてるね」

お茶子「……//////」

 

 お茶子は顔を真っ赤にしていた。

 

耳郎(す、すごい大胆…/////)

八百万(私もあんな風に…/////)

梅雨(けっこうくるのね/////)

 

 耳郎、八百万、梅雨はドキドキしていた。

 

出久「麗日さん。顔すごい真っ赤だね」

お茶子「ふぁへひぃ!!?/////」

 

 物凄い奇声を上げてたじろいた。

 

出久「ごめんね。つい触り心地が良かったから」

お茶子「あ、いや…気に入って戴けて何よりやで!! あはははははは…!!//////」

 お茶子が笑ってごまかしたが…。

 

お茶子(あ~~~~~~~~~~!!!! 滅茶苦茶ほっぺた触られたぁ!! ちゃんと朝洗顔しとけばよかった…あぁぁぁぁぁ…///////)

 

 心の中でパニック状態になっていると、個性が自動的に発生して、浮いていた。

 

出久「麗日さん」

 出久がお茶子の足首を掴んでいた。

 

お茶子「ひゃあああああああああああああっ!!!//////」

出久「あ、誰か」

梅雨「まかせて」

お茶子「いや、もう…ごめんなさ~い!!!!///////」

 

 こうして、ドキドキの昼休憩は終わった。

 

 

 そして午後の授業

 

お茶子「……///////」

相澤「?」

上鳴・峰田・爆豪「……!!!(出久への疑惑の目)」

出久「……」

 

 この後バレました。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル39
材 椿(はやし つばき)

オリジナルキャラクター。
飛鳥の同級生で、林日向の双子の妹。
ロングヘアーで眼鏡をかけている姉に対し、彼女はショートカットで裸眼。


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第40話「ロックンロール漫才」

 

 ある日の雄英高校の体育館。

 

「1・2・3・4!!」

「パーパラーパッパッパラッパッパ!!」

 

 と、ライダースーツに身にまとった出久、お茶子、八百万、梅雨、耳郎、芦戸が体育館の壇上に現れた。

 

 

 

耳郎「どうも超英雄塾です! そこん所」

6人「宜しく!!」

 

 6人がそう言うと、拍手や歓声が上がった。ちなみにA組の面々も見学に来ていた…。

 

上鳴「女子5人に囲まれて漫才かよぉ~~~~~~!!!!!」

峰田「うらやまし~~~~~~~~~!!!!」

爆豪「……」

 

 爆豪はとにかく出久に対してイライラしていた。

 

出久「えー。このシリーズが40回目を迎えたという事で某お笑いグループのロックンロール漫才をやってみる事にしました。あと10回だけお付き合いくださ」

梅雨「うー…」

 梅雨が前に出た。

梅雨「ケ―――――――――――――――――――ロ―――――――――――――――――――」

 梅雨が叫ぶと、芦戸が前に出て、

 

芦戸「これが彼女なりの「ウェー」でございます」

 そう言って梅雨と一緒に後ろに下がった。。

 

 

出久・八百万・お茶子「どうした!!」

芦戸「梅雨ちゃんが嘆いている。梅雨ちゃんがヒーローとして大活躍したいって嘆いているぜ!!」

耳郎「お前らにヒーローなんて出来る訳ねぇじゃねぇかよ!」

 

お茶子「私がヒーローになってやる!」

「何っ!!」

 

耳郎「かかってこい、ウラビティ!!」

お茶子「行くぞ!!」

八百万「お待ちなさい!! ここは私が倒しますわ!」

お茶子「いや、私が倒す!」

八百万「私!!」

お茶子「私や!! よーしこうなったら…」

 

お茶子・八百万「どっちが戦うか、じゃんけんで勝負や(ですわ)!!」

耳郎「協力しろよ!!」

 耳郎が突っこんだ。

 

耳郎「ヒーローとして最悪じゃねぇか!! 争ってる間にヴィランが2人ともぶっ飛ばす展開になるだろ! ていうかじゃんけんって地味!!」

お茶子「いや、ドラゴンボールでもやってたし…」

耳郎「そういうのはいらないから!!」

 

八百万「私がヒーロー!」

「何っ!!」

 

耳郎「かかってこいクリエティ!!」

八百万「参りますわよ!!」

 と、八百万が耳郎に襲い掛かるが、耳郎が片手で八百万の頭を押さえて、八百万は両腕を縦に振り回していた。

 

「……」

 

 数秒位で耳郎から離れると…。

 

八百万「きょ…今日はこれくらいで勘弁して差し上げますわ!!!」

耳郎「弱っ!!!」

 耳郎が突っこんだ。

 

耳郎「完全に出てこない方が良いだろコレ!! ってか、今どきギャグマンガでも見ないわこの展開!!」

 

芦戸「私がヒーロー!!」

 

耳郎「かかってこいピンキー!!」

葉隠「よーし! こうなったらパワーアップするために…水着に着替えるぞ!!」

耳郎「待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 耳郎が突っこんで、葉隠の額にチョップした。

 

耳郎「TPO!!! TPO弁えなさい!! ていうか個性の性質上、水着に着替える必要ある!!?」

芦戸「いや、今暑いし」

耳郎「女の子がみだりに服を脱いだらいけません!! 」

峰田「余計な事してんじゃねぇよ耳郎!!」

耳郎「はいそこ静かにする!!」

 

 耳郎が観客席にいる峰田に突っ込んだ。

 

梅雨「わたしがヒーロー」

「何ッ!!」

 

耳郎「かかってこいフロッピー!!」

梅雨「ゲロゲロ」

耳郎「え? なんて?」

お茶子「覚悟しろヴィラン! 僕が相手だと言ってます」

 

梅雨「ゲロゲロ」

耳郎「ちょっと何言って…」

八百万「お前の好きにはさせないぞ! と申し上げております」

 

梅雨「ゲロゲロ」

耳郎「あのー」

出久「この町は僕が守ると言ってます!」

 

梅雨「ゲーロー」

芦戸「覚悟しろヴィラン…」

耳郎「日本語喋らんかい!!!」

 耳郎が突っこんだ。

 

耳郎「確かに言葉が喋れなくて通訳して貰ってるヒーローもいるけど、君の場合はも日本語喋ろう!!? ていうか喋れるから!!」

 

出久「僕がヒーロー!」

 出久が前に出てくると耳郎は。

 

耳郎「いや、やめとこう」

出久「なんでさ」

耳郎「何か色々怖いし…」

出久「怖くないでしょー。ねー?」

耳郎「でもなぁ…」

出久「ダメかな…」

耳郎「うっ…」

 

 しょんぼりする出久を見て耳郎は罪悪感に押されていた。お茶子、八百万、芦戸、梅雨はじーっと見つめていた。

 

耳郎「わ、分かったよ! やればいいんだろやればぁ!!!」

 

 と、仕切り直しになった。

 

耳郎「今日が貴様の命日だデク!」

出久「出たなヴィラン! 今日は必殺技を編み出してきた!」

耳郎「はじき返してくれる!!」

出久「必殺!! かーめーはーめー…」

 耳郎が困惑した。

 

出久「h…」

 耳郎がすかさずチョップを入れた。

 

耳郎「何してんの」

 耳郎は出久に突っ込んだ。

 

出久「いや、必殺技」

耳郎「他所の作品の必殺技使ったらダメでしょ!! しかも大先輩の!!」

出久「ごめんちゃい」

 

 すると耳郎以外の全員が前に出てきた。

 

「それじゃ私達全員で、ヒーロー!!」

耳郎「全員で出てきたらややこしくなるだろ!!」

 

お茶子「ヒーローはPlus ultraでGO!」

八百万「Plus ultraでGO!」

梅雨「Plus ultraでGO!」

お茶子・八百万・梅雨「そしてこの人が!!」

 

芦戸「爆豪!!」

耳郎「似てる!!!

 

 出久が爆豪の物まねをした。

 

爆豪「オレの物まねしてんじゃねえええええええええええ!!!」

切島「まあまあ落ち着けよ爆豪」

瀬呂「そうだぜ」

 

 暴れる爆豪を切島と瀬呂が取り押さえた。

 

「以上!! 超英雄塾のロックンロール漫才! おしまい!! センキュー!!」

 

 と、6人が決めポーズをして終わると、観客は大歓声を上げた。

 

芦戸「いやー。楽しかったねー」

お茶子「こういうのも悪くないなー」

八百万「そうですわね」

梅雨「ゲロ」

耳郎「……」

出久「さて、やる事がまだあるね」

「え?」

 

 その時、爆豪が鬼ような形相で出久を追いかけてきた。

 

爆豪「待ちやがれクソデクがぁあああああああああああああああああああい!!!」

 

 出久は脱兎のごとく逃げた。

 

 

出久「センキュー!!!」

 

 

つづく

 




キャラクターファイル40

鉄哲 徹鐵

1年B組の生徒。切島と個性やキャラがよくかぶっていると言われる。
最近ショックだったのは小学生から切島の2Pカラーと言われた事である。


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第41話「新たなライバル!?」

 

 それはある休日の事だった。

 

峰田「あー。暇だなぁ」

上鳴「可愛い女の子が声をかけてこないかなぁ」

 

 と、峰田と上鳴が町の中を歩いていた。学生らしくゲームセンターなどで遊んでいたが、やはり可愛らしい女子がいない為か、物足りなさそうにしていた…。

 

 そんな時、2人に止めが刺されようとしていた。

 

上鳴「なんでじゃ!!!」

峰田「さては緑谷だな!! さては緑谷が近くにおるんやなぁ!!?」

 

 と、峰田がキョロキョロ見渡すと、とんでもない光景を目にした。

 

峰田「」

上鳴「どうした? 峰田…」

 

 峰田が石化したので上鳴が同じ方向を見ると…。

 

 出久と一人の女性が歩いていた。

 

上鳴「」

 

 そして上鳴も石化した。

 

「ごめんねー。出久くん」

出久「いえいえ。お気遣いなく」

 

 出久は荷物を持っていて、隣にいた女性が謝っていた。

 

出久「送崎さん」

「信乃でいいわよ」

 

 出久の隣にいた女性は送崎信乃。プロヒーローであり、山岳救助のスペシャリストである「ワイルド・プッシ―キャッツ」のメンバー・マンダレイである。林間学校で仲良くなったのだが…。

 

上鳴・峰田「」

 

 林間学校で共にしたのはこの2人も同じで、衝撃が隠せずずっと石化していた。

 

 

 その夜

 

出久「はー疲れてぃ」

 

 林間学校終了後、出久達は色々あって全寮制になり、出久は男子寮に住んでいた。そんな時だった。

 

「緑谷くん」

 上鳴と峰田が待ち構えていた。

 

出久「おや」

上鳴「お兄さんたちと」

峰田「お茶しない?」

出久「マンダレイの件でしょ?」

上鳴・峰田「!!」

 上鳴と峰田が反応した。

 

上鳴「知ってるなら話が早ぇ…」

峰田「教えろよ…教えろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 上鳴と峰田が出久に詰め寄って、そのまま峰田の部屋まで拉致した。

 

峰田「あの時一体何をしていたぁ!!」

上鳴「麗日たちというものがありながら、プロヒーローにも手を出してたのかぁ!!」

峰田「冗談抜きで見損なったぞ緑谷!!」

 

 実際は年上の女性とデートしていたことを妬んでいて、上鳴と峰田がずっと吠え続けていたが、出久はいたって冷静だった。

 

出久「ンモー。すぐにそっちの方に結び付けるんだから。違うよ」

 出久が否定するも、上鳴と峰田は信じなかった。

 

峰田「ホントですかァ~?」

上鳴「緑谷。切島じゃねぇけど、ここは男らしく腹を割ろうぜ」

切島「呼んだ?」

上鳴・峰田「呼んでねぇよ!!!」

 

 切島が突然出てきたので、上鳴と峰田が突っ込んだ。

 

切島「一体何の話してたんだよ」

出久「いやー。マンダレイと買い物してたんだけど、上鳴くんと峰田くんがデートだって言うんだよ」

切島「買い物なら違うじゃねぇか」

上鳴「違う。違うんだよ切島くん」

峰田「男女で出かけてるのは全部デートなんだよぉ…!!」

出久「偏見凄すぎて草」

 

 上鳴と峰田がデートについて熱弁していたが、出久は特に興味なさそうだった。

 

切島「うーん。よく分かんねぇなぁ…」

出久「証人もおるんですけどねぇ」

上鳴「洸汰くんだろ」

峰田「そもそも何してたんだよ」

出久「えっとね。街を歩いてたら偶然会って、折角だから昼ご飯食べていかないって言われて」

上鳴「デートどころかお持ち帰りされとるやんけぇ!!」

出久「いや、帰ってきたやん」

峰田「女の家に踏み入れた時点でアウトなんだよぉ!!!」

 

 と、ドエロブラザーズ(上鳴&峰田)の暴走は止まらず、この後も追及が止まらなかった。

 

 

 翌日

 

出久「おはらーっす」

 

 出久が登校すると、葉隠以外の女子達がジト目で出久を見つめていた。出久が後ろを見ると、上鳴と峰田がいた。

 

上鳴「多分お前だぞー」

峰田「いや、間違いなくお前だ」

耳郎「お前らだよ!!」

上鳴「ええっ!!?」

 

 まさかの自分達に上鳴と峰田は驚きを隠せなかった。

 

峰田「ここ緑谷って流れだろ!!?」

上鳴「ていうかオレらなんかした!!?」

耳郎「しただろ!! お前ら女子のスカートの中を見てニヤニヤしてたって…」

峰田「事故です」

上鳴「そう! アレは事故!!」

お茶子「ホンマにこりひんなぁ…」

八百万「今後はおやめになってくださいね」

芦戸「うんうん」

梅雨「ほんとうにしょうもないひとたちだわ」

 と、皆が呆れていた。

上鳴・峰田(カッチーン)

 ドエロブラザーズはカッチーンときた。

 

峰田「そんな事言っていいのかなー」

「?」

梅雨「どういういみ?」

 

 女子達の理不尽な仕打ちにカチンときた上鳴と峰田は仕返しをする事にした。出久は察したのか呆れていた。

 

上鳴「もうこれはマンダレイの勝ちだな…」

峰田「そうそう。やっぱガキだなぁ」

 

 5人が反応した。

 

お茶子「ど、どういう意味!!?」

八百万「まさかマンダレイも…!!」

耳郎「落ち着けよ。どうせこいつらの大法螺だ。うち等を困らせる為に…」

芦戸「…耳郎。顔と発言が一致してないよ…って、どういうことなの出久!!?」

梅雨「出久ちゃん…?」

 

出久「ただ単に一緒に買い物して、洸汰くんと3人でご飯を食べたの。それだけ」

葉隠「なーんだ…」

 

 と、葉隠が反応したが、お茶子たちは嫉妬の炎を燃やしていた。

 

葉隠「…きょわい」

尾白「葉隠さん。ノータッチで行こう」

 

 葉隠が涙目になると、尾白が困惑しながら葉隠の肩を抱いた。

 

 

出久「何か問題でも?」

お茶子「な、ないよー…?」

八百万「そ、そうですわねー…」

 

 滅茶苦茶顔が引きつっていた。

 

出久「買い物として一緒にご飯食べただけだよ」

 

耳郎「そ、そう…かいものしてごはんたべたの…」

梅雨「……」

 

 その時だった。

 

芦戸「ずるいよ!! アタシとはそういう事まだ1回もしてないじゃない!!」

出久「してないね」

芦戸「じゃあ今度アタシとデートしてよ!!」

「まさかの展開!!!」

 

 芦戸がデートを申し出て皆が驚いた。

 

耳郎「お、おい!! お前が一番ズルいぞ!!」

梅雨「ぬけがけよ三奈ちゃん」

八百万「そ、そうですわ!!」

お茶子「せ、せや!!」

 

 と、他の4人が続いて上鳴と峰田が真っ白になった。

 

相澤「席つけ」

 相澤が絶妙なタイミングで現れ…。

出久「ハイ撤収―」

 

 出久がそう言って席に着くと、上鳴たちが出久を怒鳴った。

 

相澤「やかましい」

 

 こうして一連の騒動が終わった。

 

 だが、昼休憩。皆が食事をしていると…。

 

「ああ! 緑谷くん!? そうね!! 私は彼の事が好きよ! こないだもアプローチしたんだけど、彼ったら相手にしてくれなくて…」

「……!!!」

 

 トップヒーロー・リューキュウがテレビで出久に対してラブコールを上げていた。

 

出久「あらまあ」

 

 

 これが新たな騒動の引き金になった…。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル41
送崎 信乃/マンダレイ

山岳救助をメインとしたヒーローチーム
「ワイルド・プッシ―キャッツ」のメンバー。
ヒーロー活動の傍ら、親戚の洸汰の面倒を見ている。
最近の悩みは同じ「プッシ―キャッツ」のメンバーである
ピクシーボブが合コンに失敗する度に愚痴を聞かされることである。


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6月
第4話「梅雨ちゃんと勉強会!」


章ごとに話数が変動する事がございます。話数は作成した順番になります。
(例)

5月
第5話:

6月
第4話:


宜しくお願い致します。


 

 

<出久side>

 

 とある雨の日。僕は優雅に紅茶を飲みながら読書をしていたんだ。

 

「うーん。フレーバー」

 

 なんて言っていると、インターホンが鳴ったんだ。僕は『彼女』が来たんだと思い、扉を開けた。するとそこには…。

 

「蛙吹さん」

「梅雨ちゃんとよんで」

 

 クラスメイトの蛙吹梅雨さんがやってきた。やたら名前呼びさせたがるが、名前呼びすると色々騒がしくなるので、苗字呼びだ。

 

「いらっしゃい。わざわざ来て貰って悪いね」

「そんなことないわ」

「弟くん達元気にしてる?」

「とってもげんきにしてるわ。あいたがってたけどね」

「宜しくって言っといてね。それじゃ上がって」

 

 今回蛙吹さんを家に呼んだのは、ただの勉強会である。本当なら図書館あたりでやれば良かったんだけど、蛙吹さんがゆっくり話をしたいという事で二人きりになった。

 

 まあ、皆さんもお察しの通りとは思いますが、麗日さん達と差をつけたいのでしょう。多分…。

 

「まあまあ! よく来てくれたわね!! 母です」

「おじゃまします。あ、これおみやげです」

「悪いわね~」

 

 お母さんが楽しそうです。息子が彼女を連れて来たとかなのでしょう。お母さん。彼女以外にも色々声かけられているので、息子としては色々複雑でござる。

 

「どうぞごゆっくり~」

 

 とお母さんがニヤニヤしていた。こういう時こそ謝って欲しいものだ。

 

 とまあ、僕は蛙吹さんを部屋に連れ込んだ。蛙吹さんは部屋に入るなりキョロキョロ見渡した。

 

「どうしたの」

「出久ちゃん…ヒーローが好きだからヒーローグッズをならべているとおもったのだけど…」

「まあ人が来るからね。流石に趣味を強く出張させるのは宜しくないと思ったんだ。ましてや女の子だし」

「おんなのこ…」

 

 女性として見てくれている事に梅雨は少しだけときめいた。

 

「それじゃ勉強会やっていきましょうか」

「そうね」

 

 と、教科書とノートを出して勉強を始めました。

 

<出久 side 終わり>

 

 黙々と勉強をして数時間が立ったころ、引子がやってきた。

 

「出久。蛙吹さん。お昼ご飯にしましょ」

「あ、うん」

「もうこんなじかんだったのね…」

 

 引子が出久の部屋にやってきて声をかけると、出久と梅雨は昼になっていた事に気づいた。こういう時梅雨が出久に色々アプローチをして勉強会が全然進まなかったというのが定番ではあるが、二人は思った他勉強していた。

 

(はやすぎるわ)

 梅雨は心の中でそう思った。

 

 そしてテーブルには昼ごはんが用意されていたが…。

 

「わあ」

 用意されていたのは冷製パスタにサラダそしてゼリーだった。

 

「こんなものしか用意できなかったけど…」

「いえ、ありがとうございます…」

 

 梅雨も流石に慌てていたが、出久がフォローして一緒に食事した。

 

「そういえば蛙吹さんって愛知の人よね?」

「あ、はい」

 

 と、引子と梅雨が沢山話をして、出久はそれを聞いていた。

(めっちゃ馴染んどるがな)

 

「出久くんにはたすけていただいて…」

「え?」

 引子が驚いた。

 

「え、出久どういうこと?」

「そういうこと」

 梅雨が出久を見た。

 

「え、緑谷ちゃん…はなしてないの?」

「話してないの。色々心配するから」

「ど、どういう事?」

「えっとね…」

 出久が梅雨との出会いから現在までの経緯を話した。すると…

 

「そういう事は言いなさい!!」

 と、引子は慌てた。

「いや、そんな事言って前寮まで飛んで来た事あったじゃない」

「当り前よ!!」

「いや、来るなら来るで事前に電話してよ。吃驚するから」

 と、言い争っていた。

「それにね」

「?」

 出久が引子を見た。

 

「人助けに関してはあまり大っぴらに言いたくないの。恩を売ってるわけじゃないから」

 

 と、言い放った。

「いや、緑谷ちゃん。さすがにそれはおかあさんもしんぱいするわ」

「そうよ!」

「そう? じゃあごめんなさい」

 と、出久が謝った。

 

「全くもう…ごめんね梅雨ちゃん。うちの息子が…」

「あ、いえいえ…」

 梅雨が苦笑いした。

「あ、しょくじがおわったらおさらあらうのてつだいます」

「いいのよ。ゆっくりしていって頂戴」

 

 食事が終わった後、再び出久と梅雨は部屋に戻っていったが…。

 

「もしかしてお茶子ちゃん達の事もはなしてないの?」

「うん」

 出久が口角を上げた。

「…って、麗日さんはただ転びそうになったのを助けただけだよ」

「そうかもしれないけど…」

「あんたまだ隠してる事があるの!!?」

「わぁお」

 

 と、出久は洗いざらい吐いたが、その度に引子は心臓が止まる思いをしていた。

 

「全くもうあんたは無茶ばっかりして!」

「お母さん」

「なに?」

 引子が出久を見た。

 

「僕だって無著したくないけどここまでやらないと物語が盛り上がらないし、見捨てたら最低だよ」

「メタ発言すな!!(大汗)」

 

「せめてプロヒーローが仕事してくれたらなぁ…。此間も何もしてないくせに「無茶すんな」って怒ったし…」

 と、出久はどんよりした。それを見て梅雨と引子はなんともいえない感じになった。

「蛙吹さんはそんなヒーローになっちゃだめだよ」

「そ、そうね…」

 梅雨は困り果てていたが、

 

「むちゃをするのはいけないことだけど、緑谷ちゃんのこうどうはりっぱだとおもうわ」

「!」

 梅雨は出久を褒める事にした。

 

「わたしのおとうとやいもうともたすけてもらったし。これからはいっしょにがんばりましょう」

「蛙吹さん…」

 そういうやり取りを引子はにこにこしながら見ていた。

 

(梅雨ちゃん嫁に来てくれねぇかな~~~~~~~~~~~!!!!!!)

「お母さんはちょっと自重して」

 引子の心の叫びに出久がツッコミを入れた。

 

 そして…

「おじゃましました」

 梅雨が帰ろうと玄関先の前まで行った。

「また来てね梅雨ちゃん」

「ありがとうございます」

「出久。送ってあげなさい」

「そうだね」

「いや、いいわ。悪いし…」

「そう?」

「送りなさい」

「お母さんがこう言ってるので送らせてください」

「わ、わかったわ…」

 

 こうして引子と別れ、出久と一緒に最寄りの駅まで歩いた。

 

「いいおかあさんね」

「そうだね。暴走気味がなのが気になるけど…」

 と、二人で並んで歩いた。雨はすっかり止んでいて、二人とも傘を手に持って歩いていた。

 

「緑谷ちゃん」

「なあに?」

 梅雨が出久を見た。

 

「またいっしょにべんきょうかいしましょうね」

「うん」

 

 こうして出久と梅雨の勉強会が終わったが、これをたまたま買い物に行っていた爆豪が見ていた。

 

「……!!!(激怒)」

 とてつもない変顔をしていた。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル04
蛙吹 梅雨(あすいつゆ)

蛙のような能力を持っている少女。
中学の時にヴィランに襲われていた自分の弟妹を出久に救ってもらい、
その紳士的な態度にベタ惚れ。
感情には出ないものの、大抵出久の事を考えている。

最近の悩みは妹に「出久お兄ちゃんといつ結婚するの?」と言われる事。
(ただ梅雨自身も満更ではない)


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第5話「戦わなければ生き残れない」

出久視点でお送りしています。


 

 

 こんにちは。僕緑谷出久です。此間蛙吹さんと自宅で勉強会したんですけど、僕の幼馴染のかっちゃんが一緒に歩いてるのを見て、で、どういう訳かクラスの皆にもバレてました。かっちゃん昔からこういう所あるんだよなぁ…。

 

 で、僕は事情聴取を受けています。

 

「事情聴取を受けてる奴の態度じゃねぇ!!(大汗)」

「足乗っけるな!!(大汗)」

 

 僕は机に脚を乗せていた。そして僕を問い詰めているのは芦戸さん、麗日さん、八百万さん、耳郎さん、上鳴くん、峰田くんの6人だ。かっちゃんは他人事のようにして、他のクラスメイトも声かけたいけど声をかけれない状態だった。こういう時なんでか知らないけど助けてくれない。蛙吹さんは困った顔をしている。

 

「自業自得だ。クソナードが」

 と、かっちゃんがなんか言ってるけど、聞き取れなかったからまあいいや。

 

「舐めてんのかクソナードが!! 自業自得だつってんだよ!!」

「そっか…」

 

 これといってどうでも良かった。何でだろう。

 

「爆豪くんの事はどうでもええねん。それよりもデクくん。どういうことなん?」

「え? 普通に約束してただけだよ?」

 

 それしか言いようがないし、無茶言われても困るわ~。麗日さんってこういう子だったんだな。

 

「あの、ちょっと待ってください!!(大汗)」

 

 待とう。

 

「だったらオレ達が代わりに問い詰めてやる!! 緑谷! お前って奴は!!」

「女子と二人きりで勉強会ってどういう事だコラァアアアアアア!!」

 

 上鳴くんと峰田くんが憤慨していた。気持ちは分からなくはない。

 

「やっぱりまずかった?」

「そういう事じゃねーんだよ…」

「お前、主人公補正使って女子と戯れるなんて、それでもジャンプの主人公か…!!」

 

 とんでもないいちゃもんだ。だから僕は今まで原作の展開を外れてでも

奉仕活動とか頑張ってたのに。何て仕打ちだ。

 

「てめーは大人しくオレの後ろを歩いてれば良かったんだよ…」

 

 かっちゃんがまた何か言ってるけど、本当に声小さいなー。昔はあんだけでかい声で言ってたのに…あ、こっち来た。

 

「爆豪さん? 何か御用ですか?」

「出久に暴力振るうんだったら話は別だよ?」

「すっこんでろ」

「オレに指図すなや!!」

 

 と、かっちゃんが吠えたけど返り討ちに遭っちゃった。ああ…前に女同士の喧嘩と女の仕返しはえげつないってあの人が言ってたなぁ…。

 

「で、話は戻りますが出久さん」

 

 おお…八百万さんが黒い笑みを浮かべている。ラノベアニメでよく見るヒロインの黒い笑み。通称「ブラックスマイル」だ。

 

「何故、蛙吹さんと勉強会をしていたのですか?」

「さっき言ったよ」

「誘ったのはどっちからだ!?」

 

 耳郎さんが迫ってきた。

 

「僕」

 

 僕は嘘をついた。本当は誘ったのは蛙吹さんだが、ここで責任転嫁するのは主人公としても、男としても如何なものかと思う。でもこれ全部男が悪い事になるんだろうなー。やだなー。確かに女の子を悪者にすると色々怒られるからアレだけど、好きで怒られる奴なんていないよ。ああ、やだなー。やだなー。ヤダナボンバガン(ミャンマーの都市バガンにあるホテル)。

 

「僕!!!」

「いや、何で2回言った!!?」

「凄く大事な事なので2回言いました!!」

 

「梅雨ちゃんが誘ったんやな」

「ええ。蛙吹さんですわね」

「梅雨ちゃんかー」

「うん。どう考えても梅雨ちゃんだな」

 

 バレました。女の勘って怖いでござる。

 

「で、梅雨ちゃんはどういうつもりなん?」

 麗日さんが梅雨ちゃんを問い詰める。言い方よ。

 

「ごめんなさい。緑谷ちゃんと一度ゆっくりお話がしたかったの」

 梅雨ちゃんが申し訳なさそうに言った。これで男は簡単に騙されるだろうが、女の子はそうはいかない。でもあんまやり過ぎるとえげつなさ過ぎて放送できません。頼むよ…。

 

「まあ、気持ちは分からなくはないけど、それはうちらだって同じなんだよ」

 耳郎さんが諭すように言い放った。これが峰田くんや上鳴くんだったら問答無用でしばき倒すのに。

 

「それな!!」

 乗ってきました。

 

「まあいいじゃないか。たまにはこういう事があっても」

 出久が言い放った。

 

「お前が言うなよ!!!(大汗)」

「ていうか一番の原因お前!!!(大汗)」

 クラスメイト達から突っ込まれちゃった。

 

「ところでデクくん」

「何でしょう」

 麗日さんが僕に話しかけてきたんだけどめっちゃ怖い。八百万さんも芦戸さんも耳郎さんも似たような感じだ。ああ、これが俗にいうブラックスマイルという奴ですな。

 

「…うちらには何かないん?」

「勿論用意してるよ」

「!!?」

 伊達にジャンプの主人公はやってません。ちゃんとその辺は理解してますよ。

 

「麗日さん達の為に、相澤先生に頼んで特別メニューを受けられるようにしておきました」

「おう。やりたかったらいつでも声かけてくれ」

「思ってたのと違う!!!(大汗)」

「何かやけに準備早いと思ったら!!!(大汗)」

 

 ヒーローだもんね!!

 

「いや、ヒーローだもんねの一言で片づけるな!!(大汗)」

 

「そういうのいらんから」

 あ、麗日さん激おこだ。

「いらんだと…?」

 相澤先生が反応した。

 

「お前ら何しにこの学校に来てんだ…!!(激怒)」

 

 そうですね。こういう時は嘘でもありがとうと言いましょう。

 

「よし分かった。強制にしてやる。じゃなければ色々非合理的だもんな。麗日、八百万、耳郎、芦戸の4名は今日から特別メニューを受けて貰う」

「えええええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!?(大汗)」

「そしてその説明があるから…一緒に来い」

「いや、あの、ちょ!!」

「どうして私達まで!!」

「麗日一人でいいじゃん!!」

「ちょ、うちだけは嫌や!」

 

 4人は連れ去られていき、教室はシーンとした。まあ、ここで蛙吹さんも愛想をつかすだろう。でもそれでいいんだ。

 

 ヒーローは孤独だもの。

 

 

「緑谷ちゃん…」

「なに?」

 蛙吹さんが話しかけてきた。最低とか言うんだろう。はい!!! 仰る通…

 

「こうなったらわたしたち、つきあいましょう」

「!!!?」

 皆が驚いた。

 

「…そう来たか」

「お茶子ちゃん達のぎせいをむだにはできないわ。それに…」

「待てーい!!!」

 と、麗日さん達が戻ってきたんだ。相澤先生が必死に連れ戻そうとするけど、めっちゃ苦しそう。

 

「それに…なに?」

 僕の問いに蛙吹さんはこう言いました。

 

 

「わたし、ほんきだから!!」

 

 

 その一言で、雄英高校に嵐が巻き起こりましたが、僕『は』生き伸びました。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル05
耳郎 響香(じろう きょうか)

イヤホンジャックの個性を持つ少女で、ツッコミ役。
ぶっきらぼうだがとても繊細。
男子に厳しく、女子に若干甘いが、そこもご愛嬌。

中学の頃とあるアマチュア向けのライブに参加して、
そこで出久と出会い、彼の歌声と人柄にベタ惚れした。

最近の悩みは出久に好意を寄せているメンツの中で自分だけ貧乳である事。


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第16話「雨の中の決意」

 こんにちは。緑谷出久です。何やらいろいろ騒がせているようですが、これからもPlus ultraしていくので宜しくお願い致します。

 

 さて、本日のお話なんですが…。

 

「……」

「……」

 

 雨が降るある日の事、僕は今下校中だったのですが、一人の女子生徒がこっちをじーっと見つめていました。顔が蛇の女の子です。

 

 無視しました。

 

「ちょっとぉ!! 何で無視するのよぉ!!!」

 

 あらまぁ。突っ込んできました。

 

「君のツッコミ待ち」

「え ?あ、そ、そう…?」

 

 出久のマイペースぶりに女子生徒も思わず怯んでしまった。

 

「それはそうと、何か用かな?」

 

 出久は少女に話しかけた。

 

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は万偶数羽生子(まんぐうす はぶこ)。梅雨ちゃんの友達よ」

「ああ。蛙吹さんの」

 

 出久が納得した。

 

「で、どうかしたのかな?」

「話があるの。時間いい?」

 

 暫くして…。

 

「あーあ。天気悪いなー」

「梅雨明け来週らしいぞ」

「マジかよ!!」

 切島と瀬呂が歩いていた。

 

「ん?」

 瀬呂がある事に気づいた。

「どうしたんだよ瀬呂」

「おいあれ見ろよ。緑谷じゃね?」

「あ、ホントだ…って、あれ?」

 羽生子の存在に気付いた。

 

「もしかして…」

「マジかよ!!!(大汗)」

 

 切島と瀬呂が向き合い、瀬呂が絶叫したが切島は複雑そうにしていた。

 

「とりあえずファミレスにでもいこっか」

「ええ」

 と、出久が羽生子とファミレスに行くと、瀬呂と切島をあとをつけた。

 

「緑谷の奴、どんだけ女にモテるんだよ…」

「……」

 瀬呂が切島にそう言うが、切島は返事をしない。

 

 切島の脳裏には芦戸の事がよぎっていた。

 

 テーブルについた2組はそれぞれ注文した。出久・羽生子テーブルは出久が注文して、切島・瀬呂テーブルは2人で注文をしていた。店員がオーダーを取り終わってその場を去ると、瀬呂と切島は出久と羽生子の事を監視していた。

 

「思った以上に聴き取れねぇな…」

「ああ…」

「こんな時耳郎がいてくれたらなぁ…」

 と、瀬呂が嘆いていると、

 

「緑谷くん」

「!!」

 

「梅雨ちゃんの事、どう思ってるの?」

 羽生子の問いに切島と瀬呂が反応した。

 

「クラスメイトだと思ってるよ」

 出久が羽生子の顔を見て答えた。

 

「そう…」

「……」

 落ち込んだ様子の羽生子を見て出久は何も言わなかった。

 

「あなた、彼女とか作る気はないの?」

「無いね」

 

 切島と瀬呂も衝撃を受けたが、この時切島は怒りの感情も沸き起こっていた。

 

 - 回想 -

 

「芦戸!!」

「!!」

 

 去年の事、切島は芦戸と女子生徒の所を訪ねた。この時の切島の髪形は今の派手な赤色で逆立ちへあーではなく、黒のストレートだった。

 

「すまなかった!!」

 切島が頭を下げると、芦戸達は驚いた。

 

「え、何急に…」

「その…」

 切島は芦戸がヴィランに襲われていた時に、自分は足元がすくんで助ける事が出来ず、出久に任せてしまった事を芦戸に説明した。

 

「あーそっかー」

「本当にすまねぇ!!!」

 切島が再度謝った。

 

「それは別にいいよ。足元がすくんで動けなかったのはアタシも同じだったし」

「でも!!」

「切島の気持ちは分かったから。ありがと」

 芦戸が口角を上げた。

 

「芦戸…」

「切島がいたって事はさ。あの子も見てたんだよね?」

「え?」

「あの緑色の子!」

「あ、ああ!」

「あの子凄いよね。何かなよなよとしてた感じがしてたけど、戦ってる時とか凄く男らしくてさ」

 芦戸が出久の事を楽しそうに話し始めたが、その時に本当に出久に恋をしているんだという事が分かっていた。

 

 - 回想 終わり -

 

 そんな出久の返答を聞いて切島は握り拳を作って、今にでも出久を殴りそうだった。

 

「どうしてかしら?」

 出久は目を閉じた。

 

「万偶数さんは僕が個性がない事は知ってるかい?」

 出久の言葉に万偶数はこう答えた。

 

「知ってるわよ。梅雨ちゃんから聞いてるもの。そしてあなたの夢も知ってる」

 万偶数が出久を見つめた。

 

「個性が無くてもプロヒーローになって、無個性の人達に希望を与える。それがあなたの夢…」

 万偶数の言葉に切島は握り拳をほどいた。

 

「その通りだよ」

「……」

 出久が目を閉じた。

 

「ここまで来るのに色々犠牲にしてきたし、沢山の人達が自分の時間を割いて僕に協力をしてくれた。僕の夢はもう僕一人だけのものじゃなくなったんだよ」

「!!」

 出久が目を見開いて万偶数を見た。

 

「僕にはこの夢を叶える義務がある。後戻りも出来ない」

「……!」

 

「蛙吹さんや君たちには悪いけど、僕はその為に雄英にいる。恋は…夢を叶えてからでも遅くないと思ってる」

「そう…」

 万偶数が呟くと、切島は俯いた。そして出久を殴ろうとしていたことを恥じた。

 

 芦戸を応援したい気持ちはあるけど、出久には出久の都合があるし、皆ヒーローになりたくて雄英高校に来ている。それを邪魔してはいけないと考えていた。

 

「ごめんね」

「謝らないで」

 羽生子が出久を見た。

 

「今の貴方の目を見たら私も止められないわ」

「…ありがとう」

「それに、夢よりも女の子を優先させても、梅雨ちゃんは喜ばないわ」

「!」

 出久が羽生子を見た。

 

「だって梅雨ちゃんは優しい子だもの。私なんかともお友達になってくれたし」

「万偶数さん…」

 万偶数は口角を上げた。

 

「でもね」

「?」

 万偶数が個性を使って蛇にらみをした。

 

「無暗に梅雨ちゃんを悲しませたら許さないから」

「それはもう」

 出久が普通に答えた。

「…本当に肝が据わってるのね」

「ええ。そりゃあもう」

 

 と、その後も出久と羽生子の談笑は続いたが、切島は浮かない表情のままだった。

「まー…これはちょっと冷やかすのはよした方が良さそうだな」

 瀬呂も流石に空気を読む事にした。

 

 そして…

「ありがと。送ってくれて」

 ファミレスを出た後、出久は羽生子を駅まで送った。

「いやいや。それにしても雨が止んで良かったね」

「そうね」

 出久と羽生子は見つめ合った。

 

「お互い頑張ろう」

「そうね。あなたには頑張ってもらわないといけないから。それじゃあね」

「はーい」

 と、羽生子は定期券を機械に通して、ホームの中に入っていった。そして出久は羽生子が見えなくなるまで見送った。

 

 

「…さて」

 羽生子が見えなくなった後、出久は呟いた。

 

「そろそろ出てきていいよ。切島くん、瀬呂くん」

「バレてたか…」

 切島と瀬呂が現れたが、瀬呂は苦笑いしていた。

 

「蛙吹さん達にバラすの?」

「最初はそうするつもりだったけどやめる。瀬呂さんは空気の読める男だから」

 と、瀬呂はおどけてみせた。

「…とまあ、切島がどうしても言いたい事があるみたいだぜ」

「知ってる」

 切島が出久に詰め寄った

 

「緑谷ァ」

「何だい?」

 切島が出久の胸ぐらをつかんだ。

 

「!!?」

「あ、大丈夫です。喧嘩とかじゃないんで…」

 それを見て瀬呂は困惑しながらも、心配していた周囲の人を宥めた。

 

「お前、夢を語ったよな」

「語ったよ。そして二言はない」

「言ったな。いいか! 言ったからには絶対夢叶えろよ!!」

「叶えます!!」

「よし!!」

 と、切島が出久を離した。

 

「いや、あっさり終わるんかい…」

「そりゃあ終わるよ。お巡りさんが来て三人仲良く事情聴取なんて嫌でしょ?」

「めっちゃ嫌」

「僕達も帰ろう」

「そうだな…」

 と、出久は切島と瀬呂と一緒にその場を後にした。ちなみに近くに交番があり、おまわりさんも見ていたが、止めなかった。

 

「止めなくて良かったんですか?」

「男が夢を語り合っていた。止める理由がどこにある!」

 

 そして、羽生子は電車の中で出久の事を思い出していた。

 

(梅雨ちゃん。あなた、結構いい男の事を好きになったのね。友達として誇らしいわ♪)

 

 という内容のメールをして、梅雨が顔を真っ赤にしたのは言うまでもなかった。

 

おしまい

 




キャラクターファイル16
瀬呂 範太(せろ はんた)

A組のガヤ担当。地味で目立たないが、それでもめげないある意味凄い奴。
そして空気も読める為、なくてはならない存在だ。
でも、なんだかんだ言って報われない。
さあ皆さんもご唱和ください。どーんまい。


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7月
第6話「女同士の喧嘩と女の嫉妬には気を付けて!(大汗)」


 ある日の事。

 

「あーはいはい。分かりましたー。ぴーぴーどぅどぅかぁかぁ」

 

 出久はスマホで誰かと話をしていた。こういった事は雄英高校に入学してからしょっちゅうあり、この電話から出久は奉仕活動とかに言っているのだ。

 

 出久がスマホを切った。

 

「出久ちゃん。きょうはどんなようけんなの?」

「もう皆にバレました」

 

 事の顛末はこうである。出久とどうしてもお近づきになりたいお茶子、八百万、耳郎、芦戸、梅雨の5人はどうにかして学校がない休日に出久とデートみたいな事をしたいと思っていた。

 

だが、出久がたまに何かしら予定を入れており、バイトとしか言っていない為、お茶子たちが詮索して、それがクラスメイト達に広まってしまい、今となっては全員にバレたのだ。

 

 ちなみに皆さんの反応は下記の通りである。

 

「流石だよ緑谷くん。オレも是非見習わねばな!!」

 出久の友人であり、クラス委員長の飯田天哉はこう言った。

 

「ヒーロー科に入学して奉仕活動を続けているなんて…輝いてるね☆」

 最近仲良くなった青山優雅はこう言っている。

 

「……」

 動物関係の奉仕活動でたまに一緒になる口田甲司も出久を尊敬していた。

 

「オレよりでしゃばんなつったろーが…!!」

「点数稼ぎか!! 点数稼ぎなのかぁ!!?」

「また女子を落とすのかぁ!!?」

 

 こいつ等は…お察しください。

 

 そんなこんなで出久の影響で他のクラスメイト達も奉仕活動とかするようになった。だが、これはこれで扱いづらい。

 

「今となっては仕事の奪い合いになってるから」

 

 しかし出久は折れない。だって主人公だから。

 

 話は戻って梅雨に聞かれた出久。

「えっとねー」

 

 出久は梅雨に電話の内容を話したが、これもクラス全員にバレる。

 

「プライバシーって言葉を知ってるかい?」

「そう言うなよ緑谷―」

「こういうのは情報共有しようぜ!!」

 

 出久の問いに瀬呂と上鳴が簡単にあしらった。

 

「で、今度新しくできたお化け屋敷にモニターで行く事になったんだけど、一人で行ってくるね」

 出久がそう言うと、

 

「デクくん。そういう空気の読めない事したらあかんで」

「一緒に行きたいの?」

「行きたいです」

「ちょ、ちょっとお待ちください!! 私も!!」

「私も出久と一緒にお化け屋敷いきたーい!!」

「うちも…苦手だけど…」

「にがてならむりしなくていいわ。出久ちゃん。わたしじゃだめかしら?」

 と、お茶子、八百万、芦戸、耳郎、梅雨が一斉に声をかけた。

 

「緑谷」

「何でしょう」

 出久が上鳴と峰田を見た。

 

「一人にしなさい!!」

「え? じゃあ蛙吹さ」

 

 大きな音が鳴った。耳郎である。

 

「個性を乱用するんじゃありません」

「いやー。悪い…。ちょっとノイズ拾っちゃって…」

 耳郎が脅しをかけたが、出久は聞こえないふりをした。

 

「あれ? デクくん。うちの話聞いてなかった? うち行きたい言うたよな?」

「お茶子ちゃん。きもちはわかるけど、わたしをえらんでくれたのよ」

「えー!! 梅雨ちゃんは此間も勉強会したからいいじゃん!!」

「そうですわ!!」

 

 と、揉めていた。

 

「あ、あのう…」

 尾白が声をかけた。

 

「何だい?」

「そのお化け屋敷って、一度に何人入れるの?」

「2人まで」

 出久の答えに空気が止まった。これを聞いて尾白は「そ、そう…」としか言い返せなかった。

 

「もう1回デクくんに決めて貰おう!!」

「そうだな」

「出久さん。よーく考えてください」

「梅雨ちゃん以外で行きたい人は!?」

「梅雨ちゃん外すなよ!!(大汗)」

(これが女同士の喧嘩か…(大汗))

 

 女性読者の皆さん。申し訳ございません。

 

「梅雨ちゃん以外で?」

 出久は聞いた。

「梅雨ちゃん以外だったらー…麗日さ」

 八百万がバズーカを放って爆音を出した。

 

「近所迷惑!」

 出久が叫んだ。

 

「すみません出久さん…。私ですか?」

「いや、麗日さ…」

 その時、芦戸が出久に近寄って、後ろから密着した。当然の如く、芦戸のおっぱいが出久の背中に当たっていた。

 

「ファーン!!!!」

 峰田が発狂した。

 

「いきなりラッキースケベるなや!!!(激怒)」

 上鳴もわなわな怒っていた。

 

「緑谷ぁ。誰だって?」

「おっほう。これは色仕掛けに見せかけて、芦戸さんを選ばなかったら殺す奴だな」

 芦戸の問いに出久はいつも通りだった。

 

「あ、芦戸さん! 卑怯ですわ!!」

「八百万さんも武器を向けるんじゃありません」

 

「せや!!」ゴキゴキ

「わー。どうあがいても地獄」

 

「出久…。誰と一緒に行きたいんだ?」ユラリ

 耳郎が出久に近づいた。

 

「……」

 梅雨は何も言わなかった。

 

「答えて!!!」

 

「梅雨ちゃん」

 出久はあっさり答えた。

 

「ど、どうして蛙吹さんなの?」

「乱暴な事しなかったから」

「あっさり!!!(大汗)」

 

「そ、そんな…」

 選ばれなかった4人は崩れ落ちた。

 

「そういう訳だからゴメンね」

「ひとりよがりのあいじゃ、うまくいかないわ」

「……」

 芦戸、八百万、お茶子、耳郎が意気消沈した。

 

「これはもう梅雨ちゃんに決定だな…」

 瀬呂の余計な一言で、再燃した。

 

「じゃあ瀬呂くんに残り4人の事をお願いしようか」

「は、はぁ!!? 何でそうなるんだよ!!」

 と、瀬呂が反論しようとするが4人がゆらりと近づいた。

 

「そうだね…」

「こうなっては、瀬呂さんに何とかして頂きましょう…」

「うふふふ…」

「瀬呂…。一緒にお化け屋敷…楽しもうね…」

 お茶子、八百万、耳郎、芦戸が近づいた。

 

「え、ちょっと待って…いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 と、瀬呂の断末魔が学校中に響き渡った。

 

 

(どーんまい)

 

 

 

 そしてどうなったかというと…

 

「お待たせー」

「あ、緑谷ちゃん」

 出久と梅雨がやってきたが…。

 

「いやー。何か八百万さん達が家の前見張ってたから、ついこのビルのホテルに1泊しちゃった」

「なんか…ごめんなさいね…」

「いやいや。それよりもお化け屋敷に行こう!」

 と、出久は梅雨とお化け屋敷を楽しんだ。梅雨はちょっとだけ驚いて出久にくっついて、甘い時間を過ごしました。

 

 一方瀬呂はというと…。

「もう許して~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!(泣)」

「どーんまい…」

「さあ、出久さんを探しに行きましょう…」

「そうだな…」

「うふふふふふ…」

 

 お茶子、八百万、耳郎、芦戸の4人に色々連れまわされたそうです。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル06

芦戸三奈(あしど みな)

ピンク色の身体に角が特徴の女子生徒。
ヴィランに襲われていたところを出久に助けて貰って、そこで一目惚れ。
元気いっぱいでムードメーカーでもあり、そこから出久にアプローチしようとしている。

切島とは同級生で、男らしいヒーローにあこがれている切島を応援しているが、
お互い恋愛感情はない。



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第9話「何事も始まる前が一番楽しいらしい」

 

 

 それはある夏の事だった。

 

「ねえ出久! 今度の休み暇!?」

 

 雄英高校ヒーロー科1年A組の教室で、芦戸三奈が緑谷出久に話しかけてきた。

 

「どうしたの?」

「いや、今度の休み海に行かない?」

 

 芦戸の言葉に皆が出久と芦戸の方を振り向いた。

 

「さんせー!!」

「オイラ達もー!!!」

「あ、悪いんだけどアンタ達はお呼びじゃないから」

「何でや!!」

「そういうの良くないぞー」

 

 と、上鳴と峰田が参加しようとしたので芦戸が止める。当然出久ばかりに良い思いをさせたくない上鳴と峰田が粘る。

 

「芦戸さん。こればっかりは上鳴くんと峰田くんの言う通りやで」

「そうですわ」

 お茶子と八百万が擁護した。これには上鳴と峰田も感動したが…。

 

「ここはやっぱり平等やないと。デクくんと女子全員で」

「そうですわ」

「あれ!!? 何か思ってたのと違う!!(大汗)」

 

 自分達を仲間に入れる気がないと分かって、上鳴と峰田が突っ込んだ。

 

「当たり前だろ。お前らいやらしい目で見てくるし」

「きもちはわかるけど、そういうのはえんりょしてほしいわね」

「じゃあ緑谷もいやらしい目で見るのは禁止な」

「それじゃ海に行かない方が良いね…」

 峰田の言葉に出久がそう言うと、空気が止まった。ヒロインズは「余計な事しやがって…」と上鳴と峰田を睨みつけた。

「いや、オレ関係なくね!?(大汗)」

 上鳴が突っ込んだ。

 

「ねー。そんな事言わず行こうよー」

「まあ、テストも終わったしね…」

 出久が考えていると、

 

「な、なあ。ここは平等に全員で行くってのはどうよ。海に行きたい奴は他にもいるだろうし…」

 切島が妥協案を出してきて、結果的に皆それで承諾した。

 

(くぅぅ…!! 余計な事をして…!!)

(まあ、これで何とか海に行く約束をとりつけただけよしとしよか)

(水着を選ばなくては…)

(よく考えたらうち以外皆胸がでけぇんだよな…何でだ!!!)

(ちょっとがんばろうかしら…。峰田ちゃんがよろこぶのはいやだけど)

 と、それぞれの思惑を胸に海水浴が行われる事になった。

 

「それじゃ雄英高校に集合な!!」

 

 当日

「ランランラリルレロリララン」

 出久が雄英高校にやってきた。すると爆豪と轟以外の全員が来ていた。

 

「あら、かっちゃんと轟くんは来ないんだね」

「そうなんだ。爆豪は何度も誘ったんだけど返信ねぇし、轟は都合が悪いって…」

「団体行動できねぇのなあいつら」

 出久が切島や上鳴と話をしていると、

 

「デクくん!」

「出久さん!」

「出久!」

「出久」

「出久ちゃん」

 

 ヒロインズが声をかけてきた。

 

「いい天気やね!!」

「絶好の海水浴日和ですわ!」

「いっぱい遊ぼうね!」

「……」

「きのうはねむれた?」

 

「うん」

 出久がそう答えた。

 

(やっぱり緑谷羨ましいなこの野郎…!!)

 上鳴と峰田はそう思っていた。

 

「それでは皆! バスに乗ろう!!」

 飯田が号令をかけると、上鳴と峰田はアイコンタクトを取り、出久をかっさらった。

 

「あ―――――――――――――――――――っ!!!(大汗)」

 そして出久は上鳴と峰田の間に挟んで座った。最前列。

 

「ここまでやるかい」

「まーなんつーの? あいつら喧嘩になるからさ」

「そう。安全に海水浴に行きたいのだ」

「納得!」

 

(あの野郎共…!!(激怒))

 ヒロインズが嫉妬の炎を燃やしていた。

 

「…きょ、きょわい」

 葉隠は遠くから怯えていた。すると隣にいた尾白が、

 

「そういえば葉隠さんは緑谷の事何とも思ってないの?」

「ううん。特に話した事ないし…」

 尾白と葉隠が見つめ合った。

「尾白くんこそ、お茶子ちゃん達の中でいいなって思う人いないの?」

「えー…」

 尾白が葉隠を見た。

「じゃあ一番いいなって思う女子は?」

「えっ…」

 葉隠の問いに尾白が困惑したが、

 

「葉隠さんかな」

 

 若干冗談交じりに言った。すると葉隠は顔を真っ赤にした。

「そ、そう…//////」

(あっ。何かこれ間違えたわ)

 尾白はマズそうな表情を下。

 

「な、なーんて…。オレなんかじゃ…」

「いや、そんな事ないよ」

「!?」

 尾白が葉隠を見た。

 

「じゃなきゃ…こうやって男の子に話しかけたりなんかしないもの…」

 空気が止まった。そして葉隠が我に返った。

 

「…って!! な、何言ってるの私!!///// あはははあはは!! 暑すぎて変な事言っちゃった!! は、早くバスの中に行こ!!!」

 と、葉隠が尾白の手を引っ張ってバスの中に入っていった。だがそれをクラスメイト達は見逃さなかった。

 

(尾白、葉隠。カップル成立!!!)

(ていうかいつの間にそういう関係だったんあいつら!!!(大汗))

 

 で、バスの中はどうなったかというと…。

 

「尾白くぅーん。どういう事かな貴様…」

「緑谷の陰に隠れてそういう事をする奴だったんだな…」

「誤解だ!!!(大汗)」

 

 尾白は上鳴と峰田に強制連行されて、問い詰められていた。そして葉隠はその横で顔を覆っていて、砂藤と口田に励まされていた。

 

 そして我らが出久とヒロインズはどうなったかというと…。

 

「ちょっと梅雨ちゃーん!!」

「くじびきできめたじゃない…」

 と、出久の隣の座を獲得したのは梅雨だった。

 

「何でも構いませんけど、蛙吹さんばかり贔屓されてませんか!!? これでも私コメント欄で推されてるのですよ!!?」

「メタ発言やめろ!! くそう…!!」

「まあ別にいいしー。水着新調したから期待していいよ♪」

「そ、それやったらうちやって…//////」

 と、お色気発言する芦戸とお茶子。

 

「…上鳴さんと峰田さんは尾白さんの事情聴取に夢中ですわね」

「尾白には悪いが感謝するぜ」

「はーい!! そこ聞こえてますよぉー!!!」

「水着期待してますね!!!」

 八百万と耳郎がぼそぼそ話すが、上鳴と峰田がリアクションした。そして出久は窓の景色を見てこう思った。

 

(かっちゃんと轟くんの判断はある意味間違ってなかったね)

 

 その頃…

 

「……」

 爆豪は自室のベッドで寝そべり、轟はトレーニングをしていた。

 

 十分後

「梅雨ちゃん!! いい加減交代して!!!」

「そういう追加ルールは…」

「お金払いますから!!」

「ちょ、それは卑怯だろ!!!」

(いいもん。海に着いたらいっぱいアプローチするし、こういうの出久嫌いだもんね)

 芦戸だけは大人しくしていた。

 

「仕方ない。大人しくしよか」

「そうですわね」

「あんまり騒ぐと出久も嫌だもんな」

(くっ…!!)

 

(見てる分は面白いけど、当事者は…ね)

 出久は静かに目を閉じた。

 

 

 恋する乙女たちの戦いはまだまだ続く。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル09
峰田 実(みねた みのる)

毎度おなじみ1年A組屈指の問題児。
女子生徒にセクハラしては毎回しばかれるもののちっとも懲りない、
ある意味強メンタルの持ち主。
出久がモテまくるのを快く思っておらず、イケメンも敵視しているが、
なんだかんだ言って情はある。

最近の悩みは出久がモテる陰で尾白と葉隠が滅茶苦茶仲がよく、
付き合ってるのではと思い始めている事である。


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第10話「実際に海水浴してみた」

 

「夏だ!!」

「青空だ!!!」

「海だー!!!」

 

 1年A組の生徒達は海水浴場に来ていた。爆豪と轟がいないが…。

 

「いやー。絶好の海水浴日和」

 出久が青空を見ていた。

 

「そうやね!!」

「ええ。そうですわ」

「沢山泳ごうね!!」

「日焼けしそう…」

 と、お茶子、八百万、芦戸、耳郎、梅雨が出久に寄って来た。当然ながら峰田と上鳴が嫉妬していた。

 

「いいモン!! こうなったらナンパしてやらい!!」

「そうだ!! イイ女いっぱい見つけてやるぜ!!」

「上鳴くん峰田くん!! 人様に迷惑をかけるんじゃない!!」

 

 と、飯田に怒られていたが、上鳴と峰田は止まる気は無かった。

 

「早く着替えましょ」

 

 そう言って皆更衣室に向かった。

 

 女子更衣室

「はぁ…」

 耳郎はため息をつきながらお茶子たちを見た。理由は言うまでもない。

 

(何でうちだけ胸ないんだろ…)

 

 そして十数分後、男子達は着替えて外に出てきたが、出久の姿は無かった。

 

「お待たせー」

 

 葉隠の声がして、女子達が男子たちの前に姿を現した。皆それぞれ個性が出ている水着だった。お茶子、芦戸は個性を重視した水着、耳郎、梅雨は露出控えめだが女性らしさが出ている水着。葉隠と八百万は若干セクシーな水着だった。

 

(神に感謝…)

 上鳴と峰田は拝んだ。正直全員紺の競泳水着かなーと思っていたが、思った以上に頑張っていて感動していた。ちなみに女性教諭のミッドナイトはこう言っていた。

 

「水着を着るなら思い切って派手なのにしなさい!! そういうファッションセンスも見られるから!! いやマジで!! それで仕事来なくなった女子ヒーローいるから!!」

 

 とまあ、なぜか必死だった。ちなみに彼女は今年で3…

 

「まだ行けますからー!!!!」

 

「あれ? ところでデクくんは?」

「トイレだって」

 お茶子の問いに切島が答えると、

 

「いやー。お待たせー」

「!!?」

 

 出久が現れたがフルボディタイプの競泳水着だった。

 

(露出完全OFF!!!(大汗))

 

「麗日さん達ももう着替え終わってたんだ」

「あ、うん…」

 

 女性陣は言葉を失っていた。

(よっしゃ緑谷の水着にドン引きしてる!!)

(これで終わるか!!? 緑谷の天下!!!)

 と、上鳴と峰田が裏で笑っていたが、これで終わったなどとその気になっていたお前らの姿はお笑いだったぜぇ?

 

(何でパラガス!!?(大汗))

 

「まあ、荷物置きに行こうか」

 と、皆が移動しだしたが、芦戸が出久に近づいた。

 

「それ、どこで買ったの?」

 アプローチをかけてきた。

 

「大型スポーツショップ店だよ」

「へー。ねえねえ。アタシの水着どうかな?」

「芦戸さんの個性が出ていいと思うね」

「ありがとー」

 と、芦戸が出久の腕を組んだ。

 

(本当にお笑いだったぜぇ…)

 上鳴と峰田が敗北に打ちひしがれて砂になったが、他のメンバーはそんな二人に目もくれずに出久と芦戸に続いた。

 

「ちょ、二人とも待ってー!!」

「出久さん! お待ちになってください!」

 と、ヒロインズも出久と芦戸を追いかけていった。

 

「…ドンマイ!」

 葉隠が声をかけたが、尾白と一緒に歩いていった。

 

 そしてパラソルとか色々準備して…。

 

「それではまずは準備体操から!!」

「ちょ、飯田!!」

「真面目だな…」

 丁寧に準備体操をしようとする飯田に対して、上鳴や瀬呂が苦笑いしたが、

 

「あ、いっちにーさんしー」

 出久が準備体操をしていた。そんな出久を皆が見ていた。

 

「いや、ヒーローになるんだったらお手本にならんと。ほれ、子供達も見てるで」

 皆が出久をじーっと見ていた。

 

「あんま遠い所まで行ったらダメだよ。戻れなくなるから」

「はーい」

「分かれば宜しい」

 

 そんな姿にヒロインズはメロメロになった。

 

(ご都合主義…)

(言ってる事は正しいけどご都合主義感が否めない…!!!)

 

 ところがどっこい。

 

「私達も準備体操をしましょう!!」

「はい、いっちにーさんしー」

 と、ヒロインズも準備体操をしていたが、乳房が自重しなかった。

 

「オラァ男子!! こっち見てんじゃねぇ!!」

「耳郎。言葉遣い」

「そうそう。一般の人も見てんだから」

 耳郎が注意するが、上鳴と峰田が冷静に注意した。

 

「……!!」

 男性の一般客がガン見していた。中には一緒に来ていた女性客に頭を叩かれたりしていた。

 

「……」

 そんな一般客に対し、出久は客たちを撮影した。

 

「皆さーん。楽しんでますかー」

「楽しんでまーす!!!」

「これ何かあった時に警察に提出しますので」

「はーい!!」

「もう警察に捕まってもいいのでおっぱいみせてください!!!」

「もうオレに居場所なんて無いから冥途の土産に!!」

「潔い!!!(大汗)」

「諦めんな!!!(大汗)」

 

 と、準備体操をするのに色々あったけど、ひと段落して皆海で遊んだ。

 

 青山優雅は自撮りしていたり、

 

 飯田はパトロールをしていたり、

 

 尾白は葉隠と一緒に遊んでいたり、

 

 上鳴と峰田は本当にナンパしては振られるか、飯田に連行されたり、

 

 切島と瀬呂、砂藤は普通に遊んでたり、

 

 障子、口田は砂の城を作っていたり、

 

 常闇はパラソルの下にいたり、

 

 皆がそれぞれ有意義な時間を過ごしていた。

 

 そんな中出久は…。

 

「それー!!」

「あははははは」

 と、ヒロインズと普通に水を掛け合って遊んでいた。

 

「めっちゃ平和」

 あまりの平和ぶりに出久が思わず突っ込んだ。

 

「こういう時ってヴィランとか来たりするのかな…」

「もーやめてよ麗日―」

「あー。そういや僕達が来る前にヴィランというか、マナーの悪い客が暴れてたみたいだけど、取り押さえられたって」

「へー」

 出久の言葉にヒロインズが驚いた。

 

「で…何か用かな? 峰田くん」

「いや、お前普通に女子と遊んでるやんけ!!」

「オレ達も混ぜろい!!」

「ナンパは上手く行った?」

「行かねぇんだよこれが…」

「いってたまるか」

 上鳴と峰田が落胆すると、耳郎が冷徹に突っ込んだ。

 

「で、耳郎さんは上手く行ったの?」

「は?」

「緑谷くんへの逆ナンパ」

「お、お前らと一緒にすなよ!!///////」

 耳郎が突っ込んだ。

 

「あ、もうアタシが先客だから」

「はぁ!!?」

「あ、芦戸さん!! どういう事ですか!!」

「はつみみよ」

 と、5人が出久を取り合っていた。

 

「随分モテモテやんけ緑谷く~ん…」

「ちょっとオレ達と一緒に来いや…」

「いいよ」

 

「ビーチフラッグで勝負じゃーい!!!」

「お! ビーチフラッグやるのか!! オレも混ぜてくれー!!」

 

 こうして、出久達は思い思いに海水浴を楽しんだとさ。

 

 

「本当に何事もなく平和だった」

 と、出久は後にそう語ったという。

「でもビキニが取れるっていうエッチなハプニングがあれば…」

 峰田がそう呟いたが…。まあ、それはそれで。

 

おしまい

 




キャラクターファイル10
尾白 猿夫(おじろ ましらお)

A組屈指の普通で真面目少年。大きな尻尾があること以外は普通。
本人も影の薄さを気にしていたが、出久を見てもう普通でいいかなと思い始めている。
最近の悩みは葉隠との関係をA組のほぼ全員から冷やかされる事。


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第18話「海水浴のお誘い♥」

 

 とある日の事。

 

「なあ、緑谷」

「なに?」

 

 A組の教室で出久は女子達と談笑していたが、轟が話しかけてきた。

 

「お前に相談がある」

「いいよ。なに?」

 

 轟が困惑した。

 

「オレと一緒に海に来てくれねぇか」

「!!?」

 

 轟の発言に皆が驚いた。あまり人に関心を持たない爆豪ですらちょっと驚いていた。

 

「急にどうしたんだよ轟!!」

「ナンパに目覚めたのかぁ!!?」

「お前らと一緒にするな!!」

 

 上鳴と峰田が騒ぐと耳郎が突っ込んだ。この時女子達は上鳴と峰田と同じであって欲しくないと心の底から思っていた。葉隠以外の女子は普段は出久しか見ていないものの、こういう時はちゃんと他の男子の事も気にかけたりしている。仲間だもの。

 

「もしかして…」

 出久が呟くと、皆が出久を見た。

 

「エンデヴァーが関係してる?」

 

 エンデヴァー。この国のトップヒーローであり、轟の実父でもある。しかし、色々自分勝手な性格な為、轟は嫌っている。

 

「ああ」

「しかし、何でまた海に行こうだなんて…」

 耳郎が言い放つと轟はこういった。

 

「海で特訓するとしか聞いてねぇ」

「それ多分家族水入らずで行きたいんじゃないかな」

 

 轟が露骨に嫌そうにした。

 

(嫌がり過ぎだろ…(汗))

(どんだけエンデヴァー嫌いなんだよ…)

(ていうか、轟そういう顔出来たんだな…(汗))

 

 轟がエンデヴァー嫌いだという事はクラスメイトも知っていたが、父親絡みになると普段から想像も出来ない事もするという事が分かり、辟易していた。

 

「で、気まずいから僕にも来て欲しいと?」

「姉さんと兄貴には承諾を得た」

 

 轟には姉が一人、兄が二人いてエンデヴァ―の事を相談すると、兄が「友達連れてくればよくね? 親父の事だからいい所見せようとしてるだろうから、断れねー雰囲気作っちまえばこっちのもんよwwwww」といい、エンデヴァーに対して嫌がらせをしようとしていた。

 

その時の表情はとても良い表情で、姉である冬美はドン引きしていた。程々にしなさいよ…と言わんばかりに。だが、友達を連れてくるという事は冬美も大賛成だった。

 

「いいよ」

「!!」

 

 出久は二つ返事で承諾した。

 

「ヒーローらしく、君を救ってみせようではありませんか」

「緑谷…!!」

 

 出久がどや顔をすると、轟は本当に感謝した。

 

「ところで轟くん」

「何だ?」

 お茶子が轟に話しかけた。

 

「海って…プライベートビーチか何かなん?」

「そうですわ」

「そういや…そこまで聞いてねぇな」

「確認して!」

「分かった」

 

 と、耳郎に言われて轟が電話でエンデヴァーに確認した。凄く嫌そうだったが…。

 

 そして確認が取れた轟は出久達に報告する事になった。

 

「…公衆の面前でやるらしい。マスコミにアピールするとかで」

 轟が頭を押さえていた。

「まー。じゃなかったら今まであんな事しないもんね」

「……!!」

 

 ヒロインズもまずそうにしていた。プライベートビーチなら出久が逆ナンパされる心配はないが、公衆の面前であれば逆ナンパされる可能性はある。だって、自分達もコロッと出久に落ちてしまったから分かるのだった。

 

(何としてでも阻止しなければ…!!)

 

 すると芦戸が口を開いた。

 

「あ、そういえば緑谷が行く件についてはちゃんと話したの?」

「ああ。嫌そうにしていたが知らん」

 轟の容赦ない一言に、皆が辟易していた。

 

「そういやどこの海水浴場!!?」

 芦戸がそう聞いた。

 

「お前らまさか…ついてくるつもりか?」

「はい!! そりゃあもう!!」

 と、皆が言い放った。

 

「もちろんべつこうどうよ。エンデヴァーと出久ちゃんのようすをとおくからみまもらせてもらうわ。さすがにおおぜいでおしかけるのはしつれいだとおもうの」

「そ、そうか…」

 梅雨はその辺空気が読めていた。

 

「皆。すまねぇ…」

「良いって事よ。あ、でもね轟くん」

「何だ。何でも言ってくれ」

 

 轟が出久を見ると、

 

「そこはね。ありがとうだよ」

「!!」

「ごめんねだと相手に気を遣わせるから。ありがとうって言った方が相手も喜ぶし、話が終わりやすくなるんだよ。次からはそうしてみて」

「あ、ああ…」

 出久の言葉に皆が口角を上げると、出久は峰田を見た。

 

「僕、今すっごいいい事言ったでしょ」

「その一言ですべてが台無しだよ!!!(大汗)」

「いやー。このままだと僕めっちゃいい人になっちゃってやり辛くなるから」

「そこはボケなくていいから!!」

 

 と、峰田が突っ込むと笑いが生まれた。轟も口角を上げた。

 

(緑谷…。お前は本当に凄い奴だよ。ふだんはふざけてるように見せかけて、オレ達をいつも助けてくれる。お前なら…オールマイトを超えるヒーローにだってなれそうだ)

 

 轟が目を閉じた。

 

(オレの親父もこうだったらなぁ…!!!!)

 

 出久の凄さを実感すると同時に、父・エンデヴァーの幼稚さに絶望していた。

 

 

 こうして、出久は轟と一緒にエンデヴァーと訓練という名の海水浴に行く事になった。

 

親子水入らずじゃないという事にエンデヴァーは憤慨していたものの、出久がこっそり「あ、ツーショット写真撮りますんで」と一言言い、実際にエンデヴァーが満足するようなツーショット写真を撮ってみせたので、エンデヴァーは上機嫌になった。

 

 轟の態度は相変わらずだったが…。

 

 お茶子たちが心配していた逆ナンパについてだったが…。

 

「この海水浴場は金を払えばプライベートゾーンとして利用する事が出来る! そう、マスコミや一般市民に訓練している所をアピールしたいヒーロー向けに開発されたのだ!!」

 

 トップヒーローがそんなんいらんやろと思うだろうが、エンデヴァーの目的はあくまで息子と仲がいいアピールをする事である為、特に気にしちゃいなかった。

 

 エンデヴァーの思惑通り、柵の向こうには市民やマスコミが集まって来ていて注目を浴びていた。轟もイケメンだったので、女性からの黄色い悲鳴も聞こえる。

 

「おのれ轟…!!!!」

「イケメンがぁ…!!」

 上鳴と峰田が嫉妬していた。

 

(あの黄色い悲鳴が轟くんでありますようにあの黄色い悲鳴が轟くんでありますようにあの黄色い悲鳴が轟くんでありますようにあの黄色い悲鳴が轟くんでありますように…)

 ヒロインズは出久に視線が行かない事を心の底から祈っていた。

 

 だが、

 

「ねえあの緑色の子もカッコよくない?」

「そうね! ムキムキだし…」

「あれ? よく見たらあの子どこかで…」

「去年や体育祭で色々大活躍してた凄い子じゃん!!」

 

「!!!」

 という声が聞こえていたので、お茶子たちが焦り始めてそこから攻防戦が繰り広げられたのは言うまでもなかった。

 

 

「あー。今日もいい一日でした☆」

 出久はそう言いながら、ジュースを飲んだ。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル18
口田 甲司(こうだ こうじ)

動物を自在に操る個性を持つが、普段は無口。
体が大きい割には小心者であるが癒し系となっている。
本作では彼の台詞を誰かが代弁している事が多い。


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第20話「信じる」

 

 

 とある夏の事。

 

「今日は相澤くんがお休みだから、私が講師よ!」

「いやっほい!!」

 

 雄英高校1年A組の教室でミッドナイトが教壇に立ち、そう言い放つと峰田が歓喜の声を上げた。

 

「授業って何やるんですか?」

 飯田が聞くと、

「夏らしく、プールで訓練よ!!」

「水着回!!」

「いやっほう!!!」

 峰田に続いて上鳴が歓喜を上げると、女子は冷ややかな目を見た。

 

「……」

 そんな中、出久は何か考えていた。

 

「どうしたの?」

「いや、どうもしませんよ。ミッドナイトこそ急にどうしたんですか?」

 ミッドナイトが質問すると、出久は聞き返した。

 

「いや、絶対なんかあるでしょ」

「ありますけど」

「あるんかい!!!」

 出久があっさり認めたので、皆が突っ込んだ。

 

「言いなさい!!」

「その前に質問があります」

「何よ」

「水着って着られるんですか?」

 

 空気が止まった。

 

「緑谷!! よく聞いてくれた!!」

「お前もそっち側の人間だったのか…」

 と、上鳴と峰田が更に騒いだ。

 

「着ないわよ?」

「あぃいいいいいいいいいいいいいい!!!?」

 ミッドナイトの言葉に上鳴と峰田が発狂した。

 

「何が18禁ヒーローなんですか!!!」

「もうアレですか!!? アレですかぁ!!?」

「お黙り!! この年になると紫外線とか気になるのよ!!!」

 

 と、上鳴、峰田、ミッドナイトが騒いだが出久は静かに目を閉じた。

 

 ちょっと前

「ありがとー。アンタやるじゃない」

「いえいえ」

 

 成り行きで新米女性ヒーロー、Mt.レディの仕事を手伝う事になった出久。半ば強制的にMtレディの仕事を手伝う事になったものの、出久は難なくこなした。難なくこなした事に対して、MtレディのマネージャーがMtレディに対してため息をついて怒られたのは言うまでもない。

「余計な事言わんでいい!!(激怒)」

「いや、もう…はあ…」

「ため息つくな!!」

 

 で、問題はここからである。

「夏ですねぇ」

「そうね」

 事務所でアイスを食べながらくつろいでいると、水着姿の女性が映っていた。

 

「ケッ! 青臭いガキが…」

「Mtレディってまだ24ですよね」

「若手ばっかりフィーチャリングされてムカつくのよ! 私もまだ24だっつーの!!」

 と、悪態をついていた。

「そういやミッドナイトは今年も水着になるのかな…」

「あー無理でしょ。30過ぎだしきついわよ。実際老いたし」

 

 

 という事があった。

「へえ…そういう事があったの…(激怒)」

 ミッドナイトが笑いながら怒った。

 

「ミッドナイト!! このままでいいんすか!!!」

「そうだぜ!! オイラが大好きだった18禁ヒーローを返してくれよ!!!」

(そんなに水着姿が見たいのか…(汗))

(ていうかどんだけ必死やねん…)

 

「ダメだよ上鳴くん、峰田くん。そんな事言ったら」

「緑谷…」

「けどよぉ!!」

 

 出久が上鳴と峰田を見つめた。

 

「勇退を決めたミッドナイトの気持ちを尊重してあげよう」

「勇退じゃないわよ!!!(激怒)」

「いや、もうそれ勇退みたいなもんじゃないですか」

「紫外線気にしてるけど、ヴィランと戦った時とかもっとアレですよぉ!!?」

「まあ、紫外線はともかくとしてミッドナイト」

「何よ」

 出久が口角を上げた。

 

「僕はミッドナイトの意思を尊重するので」

「緑谷くん…」

 

 ミッドナイトが口角を上げた。

「以上です! 耳郎さん」

「えっ!!?」

 出久が急に耳郎に話を振ってきた。

「同じ女性として何か意見はある?」

「そ、そんなの…」

 耳郎がミッドナイトを見た。

 

「出久もこう言ってるので…無理しなくて大丈夫です」

「あんたが一番ひどいわぁ!!!(激怒)」

「えっ!!?(大汗)」

 ミッドナイトを更に怒らせてしまった。

 

「耳郎…」

「いくらなんでもそのいい方はねーわ…」

 峰田と上鳴も困惑していた。

 

「無理しなくていいって、遠回しに年増って事でしょうが!!」

「え!? いや、そういうつもりじゃ…」

「どうするんだミッドナイト!!」

「そうだぜ!!」

 ミッドナイトが憤慨した。

 

「やってやろうじゃないのよォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「いよっしゃあああああああ!!!」

「それでこそミッドナイトォオオオオオオオオオオオオ!!!」

 と、A組が大騒ぎしていた。

 

「後でちゃんと謝ろうね」

「うん…」

 出久が耳郎をフォローしたが、耳郎がもじもじしていた。

 

 そう、問題はここからなのである。

「あのさ」

 耳郎が出久に頼んだ。

「何でしょう」

「ちょっと二人で話したい事があるんだけど、いいかな?」

 皆が出久と耳郎が見た。

 

「え、なに? 何なん?」

「それ、二人きりじゃないと駄目なお話ですか?」

「話ならあたし達も聞くよ?」

「そうよ」

 

「いや、今回ばかりはダメ」

 耳郎がキッパリ言い放った。

 

「何なの? 答えなさい」

 ミッドナイトも気になって聞いた。

 

「あー…」

 出久は納得した。

「これは確かに2人きりじゃないといけないパターンですわ。特に男子はダメだね」

「!!?」

 

「ど、どういう事だよ緑谷!!」

「教えろよぉ!!」

「教えたら君ら水泳の授業参加できなくなるよ。シンリンカムイと植樹活動とかやらされたりして…」

「それは嫌だけど!!!」

「教えろよぉ!!」

 と、騒ぎ始める。

 

「しょうがない。じゃあミッドナイト、ちょっと一緒に来てくれます?」

「え、ええ…」

 と、3人が外に出た。

 

 

「え? スタイルに自信ない!?」

「しーっ!!//////」

 ミッドナイトが叫ぶと耳郎が赤面して黙らせようとする。

 

「ほら、他の子は結構大きいじゃないですか」

「あ、言われてみれば…巨乳が多いわね」

「そんなハッキリ言わなくても…(泣)」

 耳郎が涙目でうなだれた。

 

「うーん…こればっかりはどうにもならないわね」

 ミッドナイトが困惑した。

 

「まあ、それは仕方ないとして…」

 耳郎が出久を見た。するとミッドナイトが気づいた。

(あー…そういう事か)

 ミッドナイトが口角を上げた。

 

「心配いらないわよ。そんなの」

「!!」

 耳郎がミッドナイトを見た。

 

「信じなさい。あなたの好きな人を」

 ミッドナイトが耳郎にウインクをすると、耳郎が顔を真っ赤にした。

 

「……」

 出久が口角を上げた。

 

 そして帰ってきた。

「緑谷!!」

「結局何だったんだよぉ!!」

「……!!」

 皆が出久や耳郎を見つめていた。

 

「別に」

「別にって何だよ!!」

 出久が口角を上げた。

 

「耳郎さんがとっても女の子らしくて可愛かったって事」

「!!!//////」

 耳郎はボンっと音を立てて顔を真っ赤にしたが、その拍子で個性が暴発してノイズが起きて、そのまま気絶してしまった。

 

「あら」

「耳郎ちゃーん!!!(大汗)」

「仕方ないな」

 出久が耳郎をお姫様抱っこした。

 

「保健室に運んできますね」

「お願いねー」

「ああああああああああああああああああああああああああ」

 お姫様抱っこしているのを見て、上鳴、峰田、お茶子、八百万、芦戸が絶叫して、梅雨が真っ白になっていた。

 

 そして二人が去っていくとミッドナイトは苦笑いした。

 

 

(色々あったけど…。頑張って、耳郎さん♪)

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル20

常闇 踏陰(とこやみ ふみかげ)

烏のような顔した男子生徒。相棒に「ダークシャドウ」がいる。
寡黙で多くは語らないが、仲間の事は大事に思っている。
最近の悩みは、趣味の黒魔術コレクションの存在がクラスメイトにバレた事である。


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第21話「芦戸とzoomで勉強会!」

 

 夏休み開始前。

 

「えー。夏休みの宿題も用意しているのでやっておくように」

「あのー。入学式は非合理的って言って何で夏休みの宿題は普通にあるんですか?」

「それこそ非合理的だと…」

「うるさい。最初に言っただろう。お前達には3年間困難を与え続けると」

「今までの困難、殆ど雄英の失態ですよ。本当に大丈夫ですか?」

「うるさい(激怒)」

 

 というやり取りが行われ、夏休みが始まった。林間学校? 知らない子ですね。

 

 相澤が去った後、生徒達が残っていた。

 

「ねえデクくん!」

「何だい?」

 お茶子が出久に話しかけた。

「ちょっと時間ある?」

「いいや、ない」

「ないんかい!!」

 

「何か御用時ですか?」

「そんなとこかな。何かな?」

「その…夏休みの宿題の事なんやけど…」

「ああ。勉強見て欲しいの?」

「う、うん!」

「いいよ。でも3日待って」

「え?」

「じゃ」

 そう言って出久は去っていった。それを見てお茶子たちをぽかんとしていた。

 

「み、3日って…」

「何で3日?」

 と、皆が不思議そうにしていた。

「……」

 

 翌朝

「はー。終わった」

 出久は一息ついた。そう、出久は夏休みの宿題を一晩で終わらせたのである。

 

「宿題のエビデンスも取ったし、これでかっちゃんに宿題燃やされる心配はないぞ。ていうか何でジャンプの主人公って…」

 

 出久が呟いたその時、電話が鳴った。

 

「誰からだろ…」

 出久が電話に出ると相手は芦戸だった。

 

「はい、もしもし緑谷です」

「あ、もしもし出久!? アタシアタシ! 起きてた?」

「起きてるけど今から寝る所」

「えっ!? 何で!?」

「夏休みの宿題もう終わらせちゃってさぁ…」

「え――――――――――――――――っ!!!?(大汗)」

 出久の言葉に芦戸が衝撃を受けた。

 

「あ、そこはウソだろって所だと思うんだけど」

「いやいやいやいや!! 鬼のようにあった宿題もう全部終わっちゃったの!!?(大汗)」

「八百万さんあたりも終わらせてるんじゃないかなぁ」

 出久があっけらかんと言い放つと、芦戸はただ絶句するしかなかった。

 

「それはそうとどうしたの?」

「いや…。アタシもう忘れそうだから、今のうちに勉強会でもしようかなって思ったんだけど、それじゃあ悪いね…(汗)」

「ありがとう。気を遣ってくれて」

「あ、でもよく考えたら突然来る場合もあるか…」

「それ、本人の前で言って大丈夫?」

「大丈夫じゃないけど!!//////」

 

「あ、そうだ。良い事思いついた」

「?」

「折角文明の機器があるから、zoom使って勉強会どうかな?」

「え、でも…」

「あ、僕もちょっとだけ休むから。午後あたりでどうだい? それまでは自分で頑張るって事で」

「さっすが出久! あったまいー!!」

「そうすれば分からない所だけ聞けて、時間も短縮できるから」

「それじゃそれで宜しくね!!」

「はーい」

 と、zoomに関する打ち合わせを軽く済ませた後、出久は電話を切って仮眠を取った。ちなみに母・引子は朝から出かけていないのである。

 

 そんなこんなで数時間後。約束の時間が来た。

 

「結局寝れなかったけど、約束の時間だ。芦戸さんに電話しよ」

 出久がzoomで芦戸を招待すると、芦戸が入ってきた。

 

「もしもし聞こえる?」

「うん、聞こえるよー!!」

 

 と、芦戸の映像が映し出された。

 

「あれ? 結構余所行きの服だね…」

「あ、そ、それは…言わないでよ」

 

 ちなみに芦戸は意中の相手と勉強会という事もあり、zoom、テレビ通話ではあるもののおめかしをしていたのである。

 

「やっぱり女の子だねぇ」

「言わないで//////」

「じゃあ始めようか。どこまで進んだ?」

「えっと国語は…」

 

 と、芦戸が進捗を報告したが簡単な所しか出来ていない事が分かった。

 

「一応手を付けたという事は評価しましょう」

「ありがとうございます…」

 出久の言葉に芦戸が頭を下げた。

 

「でもあまり酷いと相澤先生再提出させそうだから…」

「もしかしたら除籍かも…」

「かもね。合理的虚偽だったらいいんだけど。さて、どこからやりましょうか…」

 

 と、出久が主導して勉強会を進めていった。勉強が苦手な芦戸も最初は苦戦していたものの、出久のアドバイスによって、スラスラと解けるようになっていった。

 

「スラスラとまではいかないけど、自分で考えて問題が解ける所まで行きました」

「本当にありがとうございます!!」

 芦戸が頭を下げた。

 

 2時間が過ぎたころ…。

 

「まだやる?」

「やる!!」

「それじゃいったん休憩しよっか」

 と、休憩する事になり、芦戸はお菓子を食べる事にした。

 

「あ、そういや緑谷っておかし食べないの?」

「お腹いっぱい」

「お昼ごはん何食べたの?」

「メンチカツ」

「メンチカツ!!? でもそんなにお腹いっぱいになるかなぁ…」

「めっちゃ大きいサイズの奴を作ったんだ。これくらい」

 出久が両手で表すと、芦戸が驚いた。

 

「作ったの!!?」

「作れるんですよ。あとキャベツも大量につけあわせで」

「これが俗にいう男飯か…」

「ジャッジは微妙」

 

「あれ? 普段緑谷が料理やってるの?」

「いいや。今日は母さんがいないから…」

「へー…」

 と、そのまま談笑を始めた。

 

 一時間後

「うわっ!! もう4時だ!!」

「結構話し込んだね。どうする?」

「やる!!」

「OK」

 と、そのまま勉強会が行われたが、結果的に6時まで行われた。

 

「はーっ!! これで半分くらい終わった~!!!」

「お疲れ様」

 芦戸が一息ついた。

 

「本当にありがとね出久!!」

「いやいや」

「今度お礼するから」

「お礼? そうだなー」

「…遠慮しないんだ」

「いや、遠慮したらしたで…決まってるでしょ?」

「それもそうだけどー。まあいいや。何がいい?」

「お金貸して」

 空気が止まった。

 

「いくら?」

「10円」

「それ渡したらすぐに返すパターンでしょ!!」

「はい!」

「…そういう所潔くて嫌いじゃないけど、もうちょっと他に何かあるでしょ!!」

「膝枕?」

 空気が止まった。

 

「ひ、膝枕? いいよ。やってあげる」

「違うよ。僕がするんだよ」

「出久がするんかいっ!!」

「するんです」

 

 と、出久が言い放った。

 

「じゃ、そういう訳だから宜しくね。じゃ」

「あ、ちょっと!!」

 出久がzoomを切った。

 

 で、結果的にどうなったかというと…。

 

「デクくん!! 芦戸さんとずっと勉強会してたってどういう事なん!?」

「出久さん!! 勉強会ならうちでやりましょうよ!!」

「zoom使ってやったって聞いたけど、何時間くらいやったんだ!?!」

「緑谷ちゃん。こんどあえないかしら?」

「おいコラ緑谷ぁ!!」

「女子と二人きりで勉強会なんてそんなリア充みたいな事何でオイラに言ってくれなかったんだよ!!!」

 

 と、いろんな人たちから怒られたのは言うまでもない。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル21

オールマイト

この国の史上最強のヒーロー。出久達も当然憧れている。
本来はオールマイトの力の源とされている「ワン・フォー・オール」を出久に譲渡する事で物語は始まるのだが、本作では出久が受け取らなかった為、
未だに個性が残っている。

出久の事は応援したいが、受け取らない事で出番もないし他にいない為、
正直受け取って欲しいらしい。


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8月
第19話「カブトムシを捕まえたい」


 

 ある日の事だった。

 

「デクえもーん!!」

「なんだい。電太くん」

 

 上鳴が出久に泣きついてきた。

 

「どうしたの?」

 葉隠も話しかけてきた。

 

「B組の物間がカブトムシ自慢してきてオレ達はとれっこないってバカにしてきたよー」

(これ…すまっしゅのネタじゃね?)

 

 すまっしゅとは僕のヒーローアカデミアのスピンオフ漫画である。詳細は3巻を参照。

 

「あー。まためんどくさいのに絡まれたねぇ。無視が一番だよ。そういうのってつけあがるから」

「ハハハハハハ!! 敵前逃亡かィ!!?」

 

 物間が現れた。

 

「まあ、A組のお坊ちゃまたちに山の中に入って蟲を取る事なんて出来ないよね~?」

「出来ない出来ない。物間くんすごーい」

 と、出久が棒読みで物間をほめたたえた。

「ハハハハハ!! まあ、カブトムシが欲しかったらデパートで買うといいよ!! 高いけど!!」

 そう言って物間は去っていった。

 

「何だよあいつ!!」

「オレ達だって~!!!」

「まあまあ。相手にしてたらさらにつけあがるよ」

 出久が怒り狂う男子達をなだめた。

 

「そうそう。虫でそんなに熱くなる事ないだろ? 小学生じゃあるまいし」 

 耳郎がそう言うと、

 

「いや、それは違うんだなぁ耳郎さん」

「え?」

 出久が耳郎を見つめた。

 

「あー。やっぱり緑谷も男子なんだなぁ」

「というよりかはね、そういうのを専門にしてるヒーローがいるから、そういう事ばっかり言ってると干されるよ」

「思った他真面目だった!!!(大汗)」

「で、サイドキックが言おうものなら、その事務所の評判も大幅に下がるし。そういうの厳しいから」

「お、おう…悪い…」

 出久の言葉に耳郎は素直に納得した。

 

「耳郎さんだって、自分の好きな音楽を馬鹿にされたら怒るでしょ? 『女が音楽をやるなんて生意気。アイドルみたいに歌ってろっつーの』って笑いながら言われたらどうする?」

「そいつのキンタマ引きちぎる」

「怖ぇよ!!(大汗)」

「お前小学生以前に人としてどうなんだ!!(大汗)」

「てか、どんだけ男に敵意向けてんだよ!!!(大汗)」

 と、男子の殆どが股間を抑えた。

 

「それに口田くんの個性を否定する事になるよ。動物を操るのに…」

「……」

「口田。本当にうちが悪かった。だから元気出してくれ」

 口田はどんよりと落ち込んでいて、砂藤が慰めていたので、耳郎は素直に謝った。

 

「だけどこのまま逃げたら男じゃねー!!」

「ああ!!」

「あの物真似野郎一回しばかないと気がすまねー!!」

 と、切島、上鳴、瀬呂が燃え上がるが、

 

「大丈夫。すぐに解決するから」

「え?」

 出久が口角を上げた。

 

「B組ってやっぱりそういう人達ばっかりなんだって思えば」

「緑谷さん!!!!(大汗)」

「うちのバカが本当にすいませんでした!!(大汗)」

 

 B組の面々が現れて謝りに来ていて、物間はボコボコにされていた。ちなみに上鳴と瀬呂はすっきりしていた。

 

「いや! やっぱりここは正々堂々と…」

「仕方ないな」

 出久が立ち上がった。

 

「!!?」

「面白そうだからカブトムシ。取りに行きますか」

 皆が驚いた。

 

「み、緑谷!」

「物間の事は気にしなくていいよ!!」

 と、B組が慌てて止めようとしたが…。

 

「いや、まだ尺あるから」

「尺とか言わない!!!(大汗)」

 出久の言葉に皆が突っ込んだ。

 

「そうだぜ緑谷!! ここで退いたら男じゃねぇ!! オレも行くぜ!!」

「あ、それはそうと口田くんも来る?」

「!!?」

 出久が口田を見た。

「折角だから個性を活かしてみないかい」

「……!!」

 出久の言葉に口田が頷いた。

 

「個性を使うたってプロヒーローがいないじゃないか…!」

 物間が突っ込んだ。

 

「大丈夫。ちょっと知り合いに引率者として来てもらうから」

 と、出久が電話をかけた。

 

「あ、もっしー? 出久です」

(もっしーって…(汗))

「はい。是非お願いします! では今度の土曜日!」

 出久が電話を切った。

 

「そういう訳だ。物間くん…」

(いや、流石にプロヒーローはずるくない…?)

 と、皆が思った。

 

「そう思っているのなら、考えが甘いよ」

「ああ!!? 何だとクソデクが!!」

「これで物間くんが勝ったら…」

「そ、そうか!!」

 

「前半で壊れたイメージが元通り!! 利子も付けて!!」

「壊れたっていうくだりはいらないよ!!」

 出久の言葉に物間が突っ込んだ。

 

「そういう事なのでどうかな?」

「おうよ!!」

 切島が反応し、口田は頷いた。

 

「あ、それだったらあたしも…」

 と、芦戸も加わろうとしたが

「芦戸ちゃん。残念やけど今回はやめとき」

「!?」

 お茶子が制止した。

 

「これは男と男の真剣勝負や…」

(いや、プロヒーロー来てる時点でフェアじゃなくね?)

 お茶子の言葉に皆が突っ込んだ。

 

「ありがとう麗日さん」

「ええよ」

「でも連れてくるプロヒーロー。女性だから」

「は? それやったら話は別や。うちも行く」

「麗日さん!!?(大汗)」

 お茶子の切り替えに皆が突っ込んだ。

 

「ちょっとずるいよ麗日!!」

「そうですわ!!」

「ウチもいく」

「わたしもいけたらいくわ」

「こうなったらA組全員で行こうぜ!!」

「おうよ!!」

 と、盛り上がった。

 

「それはいいけど、かっちゃんと轟くんはどうする?」

「来ていいならいく」

「おー来な来なー」

 轟が行く意思を見せた為、出久が承諾した。

 

「で、かっちゃんは?」

「……」

 出久の問いに爆豪は無言だった。

 

「爆豪!」

「行こうぜ」

 上鳴と瀬呂が発破をかけた。すると切島は、

 

「オレは分かってるんだぞ爆豪」

「!」

「お前…。絶対の自信があるんだよな?」

 切島の言葉に皆が反応した。

 

「そりゃそうさ。だってかっちゃん才能マンだからね。でも…僕に負けるのが怖いのかい?」

「そんな事ねぇわ…!!!!」

 と、爆豪がめっちゃ目を吊り上げた。

 

「あれ(すまっしゅ)みてぇに、完膚なきまでに叩き潰してやるわ…!!」

「面白い。僕もダシマ劇場(ダシマが書いた作品の総称であり、一個の会社みたいなもの)の力を借りて、色々鍛えたからね。バトルしようか」

「上等だ!!」

「良い感じで盛り上がってきたのう!!」

 と、A組の中で盛り上がってきた。

 

「あ、でも子供達がおねだりしてきてもいいように対策も考えないと」

「そうだな!」

「それなら私が…」

 物間をそっちのけて話し合いをし始めた。

 

 

「僕の事すっかり忘れ去られてる!!!(大汗)」

「ありがとよ物間くん。君のお陰でA組の団結力が上がった。今回のお話は間違いなく君がヒーローだ!!!」

「ちっとも嬉しくなぁい!!!(泣)」

「いよっしゃあ! ほえ面かかしたぜ!!」

 出久の発言に物間が泣き叫ぶと、切島、上鳴、瀬呂が天高くガッツポーズを上げた。

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル19
障子 目蔵(しょうじ めぞう)

クラスで一番背が高く、怪力と言われている。
普段は目立たないが、冷静沈着でいざという時に頼れる影の実力者。
マスクをしているのは怖がられるからであるが、
やっぱり個性である複製腕ではないかと言われている…。


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IF編
第22話「実は軍に所属していた出久さん」


もしものストーリーです。


 

 

『もしも出久がどこかの軍隊に所属していたら』

 

 

 それはある日の事だった。出久達がのんびり自分の教室で駄弁っているとても平和な時間だった。

 

「でねー」

「だはー」

 

 そんな中、出久はというと…。

 

「……」

「探したぞ。出久」

 

 出久の前に知らない女が一人立ちはだかっていた。黒のセミロングの少女で、深緑色の服を着ていた。

 

「…女傭兵ちゃん」

 出久は少女の名前をつぶやいた。

 

「何故だ…」

「……」

「何故貴様は私の前から姿を消したのだ!! 貴様は私と一緒に逃げれば良かったのだ!!」

「いや、ヒーローになりたかったんで」

 出久があっけらかんと言い放った。

 

「教官は元気にしてる?」

「ああ元気さ。私と同様貴様を探している」

「そうかい」

 出久が口角を上げる。

 

「出久」

「…なんだい?」

「わが軍に戻れ。今の貴様ならトップは…」

「残念ながらそういう訳にはいかないのよ」

「何故だ…」

 女傭兵の目のハイライトが消えた。

 

「今うちの学校大変な事になってて、学校を辞める事は許されないんだ」

「その学校も教官とおなじだな…!」

「ホント。やめようと思っても権力にものを言わせてもみ消すし、もうちょっとまともな組織はないのかと言いたい」

「ホントそうよね…」

 空気が止まる。

 

「そういう訳だから諦めて」

「そういう訳にはいかない」

 

 女傭兵が出久を睨みつけた。

 

 

 雄英高校

「逃げてきました」

 翌日、出久は何とかして逃げてきたことを報告した。

「それにしてもよくここが分かったなー…」

 出久が一息ついていると、

 

「何の話だよ」

「いやあ、ちょっと昔の知り合いに会っただけの話だよ」

 峰田が話しかけると出久が返答した。そして皆が出久を見た。

 

「あーこれ質問攻めされるパターンやな。話が長くなるから割愛で」

「え~~~~~~~~~~~!!!!?」

 出久の言葉に皆が絶叫した。

 

「そんな事言わねぇで教えろよ!!」

「そうだ!! お前には報告する義務があるぅ!!」

「報連相!!!」

 と、色々と騒いでいると、

 

「席つけ」

 相澤が現れた。

 

「相澤先生」

「緑谷。オレにも詳しく聞かせろ」

「何かありました?」

「ねぇけど、場合によっては対策を立てる必要がある」

「いいですけど…もうちょっとプライバシー考慮してくれません?」

「色々考慮した結果、やはり話す必要があると判断した」

「いつ話せばいいですか?」

「今だ。手短に話せ」

「分かりました」

 出久が口角を上げた。

 

「あれは僕がアメリカのとある軍隊に武者修行してた時に…」

「……(大汗)」

 最初からツッコミどころが多い話だなぁと思った。

 

「あ、興味なさそうにしてるのでやめます」

「話せ(怒)」

 相澤が激怒した。

「あの子って女!!?」

「女だよ」

「だったら猶更話す必要あるでデクくん!!」

「そうですわ!!」

 ヒロインズも騒ぎ始めた。

 

「えーと…どっから話せばいいかなぁ」

 出久がそう言うと、皆が出久を言う。

 

「まあ、アレですよ。訓練してた時に仲良くなった子ですね」

「ざっくり!!!(大汗)」

 

「これでいいですか?」

「その女は何故お前の所に現れた」

「聞いてないのでわかりません」

 出久は普通に言い返した。

 

「そんなの決まっとるわ」

「出久さんを自分の所に連れて行こうとしてるんですわ」

「それしかねーな…」

「そうだよ!」

「れんらくさきとかきいてないの?」

「聞いてないね」

 出久が腕を組んだ。

 

「どんな感じの奴なんだよ」

「えーと。黒髪のセミロングで身長は僕と同じくらい」

「おっぱいはでかいのか!!?」

「分かんない」

「分かんねぇ訳ねぇだろ!! パッと見てどうなんだよ!!」

 峰田がヒートアップすると、

 

「峰田うるせぇ」

「せや」

「女子の前でデリカシーがないと思いませんか!?」

「本当に突き指してくれ」

「モテないよ?」

「そうね」

 それ、君たちが言う? と出久は思っていた。

 

「まあ、次逢えるかなぁ…。あの様子だと軍に入ったままだし」

「……」

 

 放課後

「さて、帰りましょうかね」

 出久が立ち上がった。

「あ、デクくん! 一緒に帰ろう!?」

「そうですわ!!」

「いや、今日はやめとくよ」

「何でだよ!!」

「もしかしてあの女に会うの!!?」

「……!」

 

「皆と一緒にいると姿を現さないかもしれないから。じゃ」

 そう言って出久はスイッチを押すと、消えた。

 

「えっ…?」

 

 そして正門前にワープした。

 

「うん。こんな事もあろうかと作っておいた『ワープウォッチ』大成功だ」

 

 ワープウォッチ

腕時計型ワープ装置。出久が中学の時に原形を作り、つい最近完成した。現在は登録した5か所までワープできる。

 

「さて…。あの子が来るかな…来てた」

 出久が横を向くと、女傭兵がいた。

 

「やあ」

「逃がさんぞ。出久」

「そうかい」

 出久が口角を上げて近づいた。

 

「また軍に戻れって言うのかな?」

「いや、それはもういいんだ」

「?」

「私と一緒に逃げよう」

「何かやったの?」

 出久が首をかしげると、

 

「訓練を受けていた時に、あの女教官がいただろう」

「ああ。そういやいたねぇ」

「あいつが出久を狙っている」

「脱獄した訳でもあるまいし…」

「いや、そういう訳ではない」

「僕を夫にしようと?」

「そうだ」

「ええっ!!?」

 女傭兵の言葉に、A組の面々が現れた。

 

「緑谷!! 一体どういう事だよ!!?」

「めっちゃ乳でっけぇじゃねぇか!! ラフな格好でエロい!!」

 上鳴と峰田が反応する。

 

「……」

「何だ。このうるさいのは」

「僕の同級生。好奇心旺盛な人たち」

「配慮がない連中の間違いじゃないのか?」

「うっ…!!(大汗)」

 女傭兵の言葉にグサッと胸に突き刺さる上鳴たち。

 

「そ、それはそうとアンタは誰なん!!?」

「出久さんとはどういう関係なんですか!?」

「私は…」

 女傭兵は出久にくっついた。

「一緒に幸せになるって決めた関係」

「結婚するとは言ってないよ」

「死んでも渡さないから…」

 女傭兵が出久を力強くくっつくと、お茶子たちの嫉妬の炎が燃え上がった。

 

「ああ。こりゃ僕は死ぬな」

「大丈夫」

 女傭兵が出久から離れた。

 

「こいつらくらい、簡単に倒せる」

「なっ!!」

「何だとコラァアアアアアアアアア!!!」

 爆豪が激昂した。

 

「かっちゃん。いたんだ」

「いるわ!!」

「お前の事は映像で見させてもらったが、個性に恵まれただけの勘違い野郎じゃないか」

「あんだとコラァァアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 と、このまま言い争いになったが、途中で駆けつけた相澤先生に全てを押し付けて、出久は逃げた。

 

「相澤先生にもたまには仕事させないとね」

「それでも主人公か!!!(大汗)」

「主人公です!!!」

 

 

 おしまい

 




キャラクターファイル22
相澤 消太

抹消ヒーロー「イレイザー・ヘッド」として活躍しているプロヒーロー。
見た相手の個性を消す事が出来る力を持っているが、
ドライアイである為あまり長時間は使えない。
真面目で面倒見はいいと言われているが、肝心な時に他人に丸投げしたり、
説得力が無いとも言われている為、ヒーローとしての評価は分かれる。


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第24話「婚約者がいた出久」

第24話

 

 ある日の事だった。

 

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!」

 

 一人の少女が部屋で叫んでいた。

 

「そんなの認めない!! ここまで来て今更婚約解消なんて…!!」

 

 少女は憤慨していた。

 

「こうなったら…!!」

 

 

 そしてある日の事。

 

「で、雄英高校まで来ちゃった訳か」

「そうよ。だって、私達結婚の約束をしてたんだから!!!」

 

 出久と元婚約者が対峙していた。そして出久の後ろにはいつもの如くA組がギャラリーとしていた。

 

「け、けけけけけけっこん…!!?」

「出久さん!! どういう事ですか!!?」

 お茶子と八百万が反応した。

 

「実はね。数年前にこの子の親が一方的に」

「一方的じゃない!! 本当にしてたんだから!!」

(あ、これしてない奴だな)

 女子達は確信した。

 

「緑谷くん! 一体どっちなのかね!!」

 飯田が口を開いた。

「してないわ。だって出久ちゃんのおばさんからそんなはなしきいてないもの」

 梅雨が口を開いた。

 

「あなた誰!!?」

「蛙吹梅雨よ。出久ちゃんのクラスメイト。じつはこないだ、出久ちゃんのおうちにいったことがあって、そこでおかあさんともあったことがあるの」

「!!?」

 梅雨の言葉に元婚約者は目を大きく開けた。

 

「あなた、おばさんにあったことがあるの?」

「……」

 元婚約者が視線を逸らした。

「ほんとうにこんやくしゃなら、りょうけでかおあわせをするはずよ」

「す、する予定だったの!! でもする前に…」

「知ってるよ。破談になった理由」

「え!!?」

 出久が口角を下げた。

 

「一体何があったんだ!?」

 切島が聞く。

 

「あのね。この子と婚約する寸前までに行ってたのは本当だよ」

「!!?」

「この子が僕にベタ惚れして、権力者だったお父さんに頼み込んで、僕と結婚するように仕向けようとしてたんだよ」

「ええっ!!?」

 驚く生徒達。

 

「そんなのインチキじゃねぇか!!」

「そうだよ!!」

「なるほどね…。だったらなおさら出久ちゃんをわたすわけにはいかないわ」

「くっ…!!」

 ヒロインズが自分を睨みつけると、元婚約者は歯ぎしりした。

 

「そ、そんなの関係ない!! 婚約の約束が無くなったって…」

「だから約束…」

 お茶子が言いかけると、出久が止めた。

「デクくん…」

「言いたい事はそういう事じゃないでしょ。君が本当に言いたい事は何?」

 元婚約者が出久を睨みつけた。

 

「嫌…」

「……」

 

「あなたを他の人に取られたくない! 絶対に嫌!!」

「……」

 という叫びが周りに響いた。

 

「…思ったんだけど、緑谷ってなんでこんなにモテるの?」

「主人公補正だつってんだろ」

 峰田がぼそっとつぶやくと、爆豪が悪態をついた。

 

「は? あんただって公式チートみたいなもんでしょうが。あんたみたいなの、本当は原作第1話でフェードアウトすべきザコキャラじゃないのよ」

「あの、ちょっと言葉選んでくれませんか!!?(大汗)」

「あんだとコラァアアアアアアアアアア!!!」

 爆豪が激昂した。

 

「こいつの事なんてどうでもいいの!! それより出久くん! 考え直してよ!!」

「ごめんなさい」

「緑谷は緑谷で即答!!(大汗)」

 出久があっさり即答したので、クラスメイト達は焦っていた。

 

「ヒ、ヒーローになりたいんでしょ? それだったら私が協力するわよ。だってあなたの妻に相応しい女になる為に、色々犠牲にしてきたのに…」

「それは君のエゴだ」

「!!」

 出久が口角を下げた。

 

「犠牲にした責任を人に押し付けたらダメだよ。本当はやらなくても良かったことなんだから。キミは人の事を考えてるようで…」

「う…うるさい!! うるさいうるさいうるさい!!!」

 元婚約者は叫んだが、出久の態度は変わらなかった。

 

「飯田くん。ちょっと警察呼んできてもらえるかな。この子の住所結構遠いんだ」

「え…」

「い、いや!! 呼ばないで!!」

「じゃあ大人しく帰って」

「!!」

 出久は冷徹に言い放った。

 

「い、いや…。どうしてそんなに冷たいの…? あなたはそんな人じゃ…」

 出久の態度に元婚約者は狼狽えていた。

 

「今度問題を起こしたらお父さん…今の地位を失う事になるって言われたよね? それを分かってここに来たの?」

「!!」

 元婚約者は青ざめた。

 

「そうなったらもう結婚どころじゃなくなるよ」

「……」

 すると、元婚約者は涙を流して、その場を去っていった。出久は口角を下げた。

 

「み、緑谷…」

「最低だと思うなら、最低だと思っていいよ。女の子を泣かしたのは事実だ」

「!」

 峰田の言葉に出久がそう答えると、皆がはっとした。

 

「だけど…。思い通りにならないからってこんな事をするようじゃ、どっちみち上手く行かないし、あの子の為にもならない。ちゃんと変わってくれるといいのだけど…」

 

「デクくん…」

 ヒロインズは心配そうに見つめると、出久がクラスメイト達を振り向いた。

 

「ごめん。こんな事に巻き込んで…」

 すると、切島が出久に近づいて、肩を抱いた。

 

「女を泣かすのは確かに許されねぇけど、男らしかったぜ」

「!!」

 すると轟も

 

「そうだな。オレもお前が正しかったと思う。相手の事を考えての事だもんな」

「轟くん…」

 すると、他の生徒も同じ気持ちになった。

 

「緑谷くん! 呼んできたぞ…」

「ああ、ありがとう。でももう帰っちゃった…」

「え」

 

 

 後日

 

「でねー」

 

 1年A組ではいつも通りに喋ってたりしていた。すると、

 

「緑谷」

 相澤が教室にやってきた。

 

「相澤先生」

「お前に手紙だ」

「あ、はーい」

 

 相澤が出久に手紙を渡すと去っていった。

 

「……」

 出久は手紙をポケットにしまった。

 

「いやいやいやいや、読もうぜ。ここで読もうぜ」

「あの子からなんだろ?」

 上鳴と峰田が即刻反応すると、すぐに注目が出久に向かった。

 

「ものっそい視線を感じる」

「何でもいいけど、お前もうキャラがすっかり変わったな…」

「原作通りだとすっごい流されるから」

 瀬呂の問いに出久は手紙を読んだ。

 

『拝啓 緑谷出久様へ

先日は急に押しかけて、取り乱して本当にごめんなさい。

他のクラスメイトの皆さんにもそうお伝えください。

 

家に帰った後、両親やいろんな人にも怒られて、冷静になって初めて自分の過ちに気づきました。完全に出久さんの言う通りでした。

 

出久さんとの結婚はいったん諦めます」

 

「……」

 結婚の事はいったん諦めるとあり、出久は読むのをいったんやめた。

 

(諦めてはいないんかい!!!)

 ヒロインズは心の中でそう思っていた。

 

 そして続きを読み始めた。

 

『ですが、私はまだ諦めてはいません。今度こそ出久さんの妻に相応しい女になる為、一回り成長してまたあなたの元に現れます。それまで楽しみにしていてください』

 

(もう来ないで!!!(大汗))

 

『もし彼女が出来ても、私は諦めませんし、即刻教えて下さい』

 

(全然反省してないだろ!!!(大汗)

 

 出久が読めば読むほどヒロインズは段々嫌な気持ちになった。

 

『それではまた会いましょう。もしかしたら奉仕活動とかで一緒になるかもしれませんね。』

 

 そこで手紙が終わった。そしてヒロインズは思った。

 

(絶対どさくさに紛れて既成事実を作る気だ!!!)

 

「当分はステイホームかな」

 出久がそう思うと、

 

「そうやって!! 絶対そうした方がええ!!」

「何なら私の家でお仕事を…」

 

 と、出久やヒロインズは対策を考えるのだが、この後スクールヒーローが色々頑張ってるという事で、雄英高校の評判が高くなるのは言うまでもなかった…。

 

「そういやあの子どこの学校に通ってるの?」

「聖愛学院って所だってさ」

 

 

 

おしまい

 

 

 




キャラクターファイル24
緑谷 引子(みどりや いんこ)

出久の母親。息子を無個性に産んでしまった事を嘆いていたが、
息子が思った他ポジティブだった為、それはそれで困惑していた。
ちなみに原作同様太っているが、出久が色々活躍してくれたおかげで、
安心しきってしまい、食べ過ぎてしまったのだ…。



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閉ざされた過去編
第31話「急展開」


 それはある日の事だった…。

 

『敵連合主犯格 死柄木弔 緊急逮捕!! 敵連合壊滅へ!!』

 

 というニュースが流れた。敵連合とは現在のヒーロー社会で一番有名な敵の組織であり、一度雄英高校にも侵入したことのある敵だった。

 

 

 このニュースは雄英高校でも伝わった…。

 

上鳴「聞いたか!? USJに侵入してたやつら全員捕まったってよ!!」

瀬呂「マジか!!」

 

 と、A組の間でも大騒ぎになっていた。

 

出久「……」

 

 出久も新聞を見つめていた。

 

お茶子「デクくん聞いた!?」

出久「うん。知ってるよ」

 

 出久の周りには葉隠以外の女子が集まっていたが、出久が何か考え込んでいる様子だった。

 

八百万「あの、出久さん?」

出久「いや、ちょっと驚いただけさ…」

梅雨「……」

 

 爆豪が出久を見つめた。

 

 そして放課後になった。

 

お茶子「デクくん。一緒に帰ろ」

出久「ゴメン。ちょっと急用が出来たからまた明日ね」

 

 そう言って出久は走り去っていった。

 

切島「緑谷の奴…何をあんなに急いでるんだ?」

瀬呂「さあ…」

 

 すると爆豪は

 

爆豪「おい、八百万」

 

 と、爆豪が八百万を読んだ。

 

八百万「な、なんですの?」

切島「珍しいな。お前が名前を呼ぶなんて」

爆豪「お前、デクを尾行できる道具を作れるだろ。作れ」

「え!?」

 

 皆が驚いた。

 

爆豪「さっさとしろ。デクは何かを隠している」

切島「ば、爆豪! 一体何を…」

上鳴「そうだぜ! 個性を勝手に使ったら…」

「オレが許可する」

「!!」

 

 相澤が現れた。

 

相澤「オレも気になってはいたが、何か隠してるようだ。八百万、作れるか」

八百万「え、ええ…」

上鳴「って、八百万も作れるのかよ!!」

 

 と、八百万が道具を作った。

 

八百万「つ、作りましたわ!」

相澤「ご苦労」

爆豪「何であんたが道具を受け取ってんだ!」

相澤「何するかわからないから。あとオレが調べてくるから大人しくしてろ」

切島「いや、もう…全員で行きましょう!!?」

 

 と、A組の面々が出久を追いかける事にした。

 

 そして出久はというと、2人の男に会っていた。一人は双葉頭が特徴の青年と、もう1人は中性的な顔立ちの少年。

 

 

出久「お久しぶりです。孫さん。飛鳥くん」

 

孫「ひさしぶりだな!」

飛鳥「久しぶり。元気にしてた?」

 

 2人とも包帯だらけだった。

 

出久「ごめんね。わざわざ来てもらって…」

飛鳥「別にいいんだけどさ」

出久「ここじゃ何だから、別の所に移動しよう」

 

 と、出久達が移動しようとすると、

 

相澤「どういう事か聞かせて貰おうか。緑谷」

「!!」

 

 A組の面々が現れた。

 

孫「なんだオマエたちは!!」

出久「どうやらバレちゃったみたいだね」

飛鳥「……」

 

 3人が相澤たちを見ていた。

 

切島「おい、あいつらって…」

上鳴「新聞に載ってたやつだぞ!! しかも…」

瀬呂「死柄木弔を捕まえた奴…」

 

 と、クラスメイト達が驚いていた。

 

飛鳥「…お久しぶりです。イレイザーヘッド」

「!!」

 

 飛鳥の言葉に驚く一同。

 

相澤「…ネス」

「!!?」

 

上鳴「外国人!?」

飛鳥「いや、れっきとした日本人です」

峰田「その前に性別は!?」

飛鳥「残念ながら男ですね」

峰田「何でぇ…男かよ」

 

 露骨に残念そうにする峰田に対し、ほっとするヒロインズ。

 

相澤「ネス。これは一体どういうことだ。何があった。話せ」

飛鳥「……」

 

 相澤の問いに飛鳥は困惑していた。

 

孫「あ、いまはあんまりひとにしゃべるなってにいちゃんがいってた」

 

 孫が答えた。

 

上鳴「それはそうと緑谷! この2人と知り合いなのか!!?」

瀬呂「そうだぜ!!」

切島「何でオレ達に黙ってたんだ!!?」

 

 と、質問攻めをする生徒達を見て飛鳥は困惑していた。

 

「そんなの決まっている。あまり口外をしてはならないからだ」

 

 と、カウボーイの格好をした40代くらいの男が現れた。

 

飛鳥「カウキングさん…」

相澤「!!」

 

 カウキング。アメリカのプロヒーローであり、孫と飛鳥のお目付け役をしてる。

(※ 孫、飛鳥、カウキングはオリジナルキャラクターです)

 

カウキング「色々思うところがあるだろうが…お引き取り願おうか」

相澤「そういう訳にはいかない」

 

 相澤がにらみを利かせた。

 

カウキング「相変わらず上から目線だな。雄英高校が大分甘やかしてるのが分かるよ」

「!!?」

 

 カウキングの言葉に皆が驚いた。

 

切島「そ、それってどういう意味ですか!!?」

カウキング「君たちもだ。もう少し配慮というものが出来ないのかね?」

「う…」

 

 カウキングの言葉に生徒達は黙りこくったが…。

 

爆豪「そんなの知った事か!!」

 

 爆豪が叫んだ。

 

爆豪「クソナードが!! 一体何を隠してやがる!! 話しやがれ!!」

カウキング「はぁ…」

 

 爆豪の言葉にカウキングがため息をついた。

 

カウキング「爆豪勝己。お前の事も調べている」

爆豪「!」

カウキング「そこまでして人のプライバシーを明かさないと気が済まないか?」

「!!」

 

 カウキングが厳しい視線をぶつける。

 

カウキング「やはり雄英はかなり甘やかされてるようだな」

「なっ…!!」

飛鳥「カウキングさん。これ以上は…」

カウキング「そうだな。緑谷出久」

出久「……」

 

 出久が口角を下げる。

 

カウキング「悪いが私も同行させて貰う。今みたいに鼠が嗅ぎまわっているからな…」

出久「分かりました」

 

 すると出久が歩を進める。

 

お茶子「ちょ、デクくん!!」

出久「大丈夫だよ。ちょっとお茶するだけだから」

 

 出久がお茶子の方を見て微笑んだ。

 

飛鳥「ていうか思ったんだけど出久」

出久「何?」

飛鳥「もしかして…昔の事、何も話してないのか?」

出久「いや、色々恥ずかしいやん」

 

 出久の言葉に飛鳥は困惑した。

 

出久「まあ、こうなったら仕方ない。近いうちに話しておくよ」

上鳴「いや、これだけは教えてくれ!! その2人とはいったいどういう関係なんだ!?」

出久「あー。簡単に言うとね。中学時代にお世話になった人たちなの」

 すると出久はこういった。

 

出久「僕…中学時代は広島にいたから」

 

 空気が止まった。

 

「え…?」

 

 これには爆豪も驚いた。

 

出久「じゃ、行きましょうか」

カウキング「ネス」

飛鳥「はい」

 飛鳥が孫、カウキング、出久の体に触れてテレポートした。

 

「消えた!!?」

 

 と、そのままA組の面々が取り残された…。

 

 

つづく

 




キャラクターファイル31

古堂 孫(こどう そん)

オリジナルキャラクター。
プロヒーローの兄を持っているが、彼自身もとても強い。
本作では出久達の宿敵であった敵連合のリーダーである死柄木弔を倒した。
普段は農業をしており、学校には通っていない。
通っていれば高校3年生である。

個性:なし

個性を持っておらず、そのままの身体能力で戦うが、
戦闘能力はプロヒーローより高い。


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第32話「出久の秘密」

 前回までのあらすじ
凶悪犯・死柄木弔が逮捕されたことで衝撃を受ける雄英高校。そんな中、出久が謎の行動を取り始め、爆豪達は出久を調査する事になり、出久を探し出すがアメリカのプロヒーローであるカウキングの妨害を受け、出久を取り逃がしてしまう。


 

切島「相澤先生! あいつと知り合いなんですか!?」

相澤「まあな…」

 

 生徒達の視線は相澤に向けられた。

 

上鳴「あいつらは一体誰なんですか!?」

芦戸「出久とどんな関係なんですか!?」

切島「教えてください!!」

 

 と、生徒達がワーワー言いだした。

 

相澤(こいつらやっぱり苦手ぇ~~~~~~~~)

 

 人のプライバシーの詮索をする事にかけてはいっつもこうである為、相澤は露骨に嫌な顔をした。

 

飯田「君たちやめないか!!」

相澤(飯田…)

 

 飯田が止めた。

 

飯田「一度に言いだしたら先生も言いづらいだろう!!」

相澤「止めろバカタレ」

 

 飯田も聞く気満々だったので相澤が突っ込んだ。

 

爆豪「一体何のためにここまで来たと思ってんだ!! 教え」

相澤「これ以上緑谷の事聞いたら除籍な」

「緑谷の事は聞いてない!!!(大汗)」

八百万「皆さんちょっと落ち着きましょう!!」

 

 八百万が止めた。

 

八百万「ここは私の家が経営しているレストランでゆっくり話し合いでも…」

相澤「オレを逃がすっていう選択肢はないのかね?」

切島「先生!!」

芦戸「せんせー!!」

相澤「めんどくせー…」

「そんな露骨に嫌な顔しなくても!!!(大汗)」

 

 今なら出久達の気持ちが分かる相澤だった。

 

 

 その頃…

 

出久「それじゃ本当に死柄木は…!!」

飛鳥「ああ。何とか孫さんと二人で捕まえたよ。本気を出される前にね…」

 

 出久は飛鳥、孫、カウキングとある居酒屋で話をしていた。

 

孫「あとはにいちゃんがたおした」

出久「やっぱりあの人強いなぁ…」

カウキング「……」

 

 カウキングが出久を見た。

 

カウキング「デク」

出久「はい」

カウキング「雄英での学校生活はどうだ?」

出久「あ、はい。順調です」

カウキング「しかし、プライバシーに首を突っ込むとは、最高峰が聞いてあきれるな」

出久「まあ、敵連合がかかわってるなら仕方ありませんよ。でもあれじゃ…登校した後に事情聴取されそうだなぁ…」

カウキング「権力にものを言わせるとはな」

 

 カウキングは皮肉を言いまくっていた。

 

飛鳥「カウキングさん」

カウキング「ああ。オール・フォーワンだろう…。残念だがまだ情報が見つかっていない」

飛鳥「まあ、このまま大人しくしてくれればいいんですけどね…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

カウキング「まあ、そういう訳にも行かないだろうな…」

 

 カウキングが孫を見つめた。

 

飛鳥「それにしても雄英高校の施設で奴らが現れたって情報があってから、こちらも色々対策を立てておいて良かったです」

カウキング「そうだな…」

 

 飛鳥とカウキングが俯いた。

 

出久「それはそうと、飛鳥くんたちはどう?」

飛鳥「皆元気にしてるよ。相変わらず和哉さんが派手にやらかしてるけど」

出久「だろうねー」

 

 するとカウキングが考えた。

 

飛鳥「カウキングさん?」

カウキング「さて、雄英に余計な詮索をさせないように『忖度』させないとな」

飛鳥「忖度って…(汗)」

 

 そして談笑した後、出久は家に帰された。

 

出久「ただいま…」

「出久!」

 

 母親の引子が慌てて駆け寄った。

 

出久「どうしたの」

引子「あ、あんた!! 新聞見た!? 孫くん達が…」

出久「うん。でも皆大丈夫だって」

引子「あぁ…」

 

 引子が膝から崩れ落ちた。

 

出久「……」

 

 そして翌朝、出久は意を決して登校した。

 

出久「おはよう」

 

 出久がやってくると、皆が出久の方を見た。

 

出久「昨日はゴメンね」

 

 すると爆豪が出久に突っかかった。

 

出久「どうしたの?」

爆豪「いい加減教えろや!!! 一体何がどうなってる!!!」

 

 爆豪が激昂した。

 

切島「お、おい落ち着け爆豪!!」

爆豪「るせぇ!!」

出久「何を聞きたいの?」

 

 と、出久が冷静に答える。

 

爆豪「てめぇが隠してる事全部だ!! 奴らの事も敵連合の事も全部教えやがれ!!」

出久「そんなに気になる?」

 

 出久の言葉に

 

上鳴「そりゃあ気になるだろ!!」

切島「それもそうだし、お前あんな凄い奴らと知り合いだったなんて…」

瀬呂「それに、中学の同級生ってのは…」

出久「うーん…。何から話せばいいかな」

 

 その時、相澤がやってきた。

 

相澤「…席に着け」

「!」

 

 大分疲れ切っていて、出久を睨みつけていた。出久は気に留める事もなく席に座った。

 

 そしてHRが終わったが、相澤は終始出久を睨みつけていた。そして出久は甘んじるかのようにずっと黙っていた。

 

「……?」

 

 そしてそれを不審に思うクラスメイト達。

 

相澤「最後にこれだけは言っておく。緑谷」

出久「はい」

 

 相澤は出久を睨んだ。

 

相澤「オレは決してお前を特別扱いしない。見込みがなければ即刻除籍する。いいな」

出久「はい」

 

 出久も真剣な表情で言い放つと、相澤は舌打ちをするように去っていった。

 

「……!!」

 

 クラスメイト達が恐れるように出久を見た。

 

切島「お、おい緑谷!! お前何したんだよ!!」

出久「僕じゃなくて、あのカウボーイハットをかぶった人いたでしょ?」

瀬呂「お、おう…」

 

出久「あの人がね。生徒のプライバシーに首を突っ込むなって校長先生に話したんだよ。多分校長先生から何か言われたんじゃない?」

「……」

 

 爆豪が舌打ちをしていた。

 

峰田「それはそうと緑谷。昔お世話になった人って言ってたけど…」

上鳴「ていうかお前広島にいたのか!?」

出久「うん。色々あってね」

 

 出久が口角を上げた。

 

爆豪「オレにビビって広島に行ったんだろうがよ…」

出久「そんな感じかな」

 

 すると爆豪が出久に突っかかった。

 

爆豪「そこで一体何があった。話せ!!」

 

 爆豪の言葉にクラスメイトの視線も出久にぶつけられた。

 

出久「話長いから次回とかにならないと無理」

爆豪「つべこべ言わず話せや!!!」

 

 どうあがいても出久のプライバシーを聞き出そうとするA組。さあ、果たしてどうなる…?

 

 

つづく

 




キャラクターファイル32

一丈字 飛鳥(いちじょうじ あすか)

孫の相棒的存在。
頭脳明晰でアイテムの開発も行う科学者の一面も持つ。
とにかく何でもできで人望もある為、かなり忙しい。
名前や外見からよく女と間違えられるが、男である。

個性:念力

念じたものを具現化させて、それを武器にしたり、
ものを引き寄せたりできる。
本人の努力の甲斐があってか、ほぼチート化した。
しかし、この個性には更なる秘密が…?







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第33話「出久の過去」

 

 クラスの空気がギスギスしたまま、放課後になった。

 

出久「さて、帰りますか…冗談だってばね」

 

 出久が帰ろうとすると、爆豪が止めた。

 

出久「え、そんな聞きたい?」

「当たり前だ!!!」

「クラスがギスギスになってるの分からんのか!」

出久「じゃあしょうがない。教えてあげ…」

 

 出久が教えようとしたその時、チャイムが鳴った。

 

『1年A組緑谷出久くん。1年A組緑谷出久くん。大至急校長室!』

 

 というアナウンスが流れた。

 

出久「……」

「さっさと行け!!!」

 

 クラスメイト達の怒声も全く気にせず、出久は校長室に向かった。

 

出久「おー怖」

 

 校長室

 

根津「緑谷くん…。突然呼んで済まないね…」

 

 根津は深刻そうにしていた。

 

出久「アメリカのヒーロー連盟になんか言われました?」

根津「言われたよ…。お宅の学校は生徒のプライバシーに配慮がないのかって…」

 

 根津が肩を落とした。

 

根津「でも、教育者としては何も知らないままという訳にも行かないんだ」

出久「そうですね。でも大したことじゃないんですよ」

 

 出久は普通に言い返した。

 

出久「校長先生も知っての通り、あの人たちは…」

根津「あ、ごめん。ちょっと待って」

 

 根津が止めた。

 

根津「そこにいるのは分かってるんだよ」

「!!?」

 

 根津の言葉にクラスメイト達と相澤が現れた。

 

出久「あらまあ」

根津「君たちの自主性は僕もね。評価してるんだよ。でも…」

相澤「生徒の事情を把握するのは担任として当然です」

根津「あのね。カウキングくんが君のそういう所が嫌いって言ってたんだよ…(汗)」

 

 相澤の発言に根津は肩を落とした。

 

切島「いや、もう本当に気になるんですってば!!」

上鳴「そうですよ!!」

 

 と、生徒がワーワー騒ぎ出した。

 

根津「相澤くん。あとでちょっと話をしようか(怒)」

相澤「いや、これはオレのせいじゃ…」

根津「君の責任でもあるでしょーが!!!(激怒)」

 

 

出久「まあ、ざっくり話しますと、昔の知り合い」

「ざっくり過ぎ!!」

「もうちょっと詳しく話して!!!」

 

 出久はクラスメイト、相澤、根津に昔の事を話そうとしたが、あまりにもざっくり過ぎた。爆豪と相澤が猛烈にイライラしている。

 

相澤「緑谷。除籍されたくなかったら真面目に答えろ」

出久「……」

根津「大丈夫だよ。除籍されるのは相澤先生だから」

相澤「何でですか」

根津「当たり前なのさ! 君が一緒になって生徒のプライバシーを聞き出そうとしたから、アメリカのヒーロー協会が激怒してるんだよ!!」

 

 根津の言葉に生徒達が青ざめた。

 

出久「説明が難しいんですよ…。まず、死柄木を倒したあの人たちの事について教える必要があるね」

切島「お、おお…」

 

出久「死柄木を倒した人たちは広島のヒーローチーム「WONDER BOY」だよ」

「!?」

 

 出久の言葉に皆が驚いた。

 

瀬呂「WONDER BOY…?」

上鳴「全く聞いた事ないぞ」

出久「うん。ヒーローチームっていうより、元々は個性を利用した便利屋みたいなものだからね。で、海外の大物ヴィランの討伐までやった事あるんだよ」

「!!?」

 

相澤「そのヒーローチームはオレも知っている。オレ達があの時出会った女みたいなやつがいただろ」

峰田「ああ…何で女じゃないんだ…」

 

 峰田の言葉を無視する相澤。

 

相澤「あいつとはちょっとした知り合いなんだよ。年はお前らと一緒だ」

「!!?」

相澤「で、オレが聞きたいのは緑谷。お前…ネスとどういう関係だ?」

出久「中学の同級生ですよ」

切島「そ、それは聞いた…」

相澤「その中学生活で一体何をしていた」

 

 と、相澤の言葉に出久は口角を上げた。

 

出久「僕がしていたのは…」

「……」

 

出久「WONDER BOYのリーダーである古堂和哉さんに師事をしていました」

 

 出久の言葉に相澤が反応した。

 

相澤「成程…。道理で強い訳だ」

出久「……」

 

 相澤と出久が見つめ合っていると、上鳴がキョロキョロ見渡して声を上げた。

 

上鳴「だ、誰だよ。その人…」

瀬呂「ヒーローチームって言ってるけど…聞いた事ないぞ?」

出久「そりゃそうさ。和哉さん達の活動は報道されないんだよ。圧力をかけてるから」

「!!?」

 

 出久の言葉にクラスメイト達が驚いた。

 

切島「圧力ってどういうことだよ!!」

出久「和哉さん達はね。『虹島』っていう小さな島で暮らしてるんだ。いちいち記事とかにするとヴィランとかが襲い掛かってくるから、公表しないように和哉さんがヒーロー協会に圧力をかけたんだよ。マスコミとかが来るからね」

「……」

 

上鳴「だけど結果的に来てるじゃねーか!」

出久「被害を最小限にしても来るものはくるの。あの人たち強いから。敵連合が襲い掛かったのだってそう。和哉さんと孫さんのお父さんがね、敵連合と何かしら因縁があるんだよ。そのお父さんはもう死んでるから、息子さんである和哉さんと孫さんが代わりになってるの」

 

 出久から告げられた言葉に生徒達は動揺を隠せなかった。

 

相澤「お前が古堂和哉に師事していたのはいつからだ」

出久「中学に入ってからです。そこから3年間みっちりとネスとともに切磋琢磨してました」

相澤「……!!」

 

 ヒロインズも出久を見つめていた。和哉の事も出久の過去も全くわからないけど、分かったのは出久も相当苦労していたという事である。

 

根津「話してくれてありがとう。緑谷くん」

出久「いえ、いずれ話そうと思っていたので」

相澤「ところで緑谷」

出久「はい」

 

 出久が相澤を見つめた。

 

相澤「奴らとは今でもつながりがあるそうだが…。ヴィラン討伐もしているのか?」

「!!」

出久「今はしていません」

「!!?」

 

 出久の言葉に皆が驚いた。

 

相澤「どういう意味だ」

出久「とは言っても、ヴィラン討伐や危ない仕事は基本的に和哉さんがしていて、どうしても人手が足りなくなった時に僕やネスが動員されていました。そして、弟の孫さんも」

 

 出久の言葉に相澤は絶句した。

 

出久「ですが、現在は雄英高校に通っていることもあって、和哉さんもその辺は配慮して僕に話を持ってこなくなりました」

相澤「本当か?」

出久「ええ。今後来る可能性はありますが」

 

 出久の言葉に相澤は歯ぎしりした。

 

相澤「今度来たらオレに教えろ」

出久「分かりました」

 

 出久の言葉にクラスメイト達が反応した。

 

爆豪「……!!」

 

 爆豪は出久の過去を聞いて驚いていた。自分ですらあまり太刀打ちできなかった敵連合。ましてやそのボスを倒した連中と一緒にいて、あそこまで強くなっていたことに。

 

 よりいっそう出久に対抗意識を燃やすようになったのは言うまでもない。

 

 

 

おしまい

 




キャラクターファイル33

カウキング

オリジナルキャラクター。
アメリカのプロヒーローであり、通称『シェリフヒーロー・カウキング』
マイナーヒーローであるが、実力は確かである。
飛鳥とは古い付き合いで、彼の警備のために来日する事がある。
雄英高校の事も知っているが、傲慢な態度をとる相澤に関しては快く思っていない。

個性:狙撃

投げたものや撃ったものにたいし、自分のエネルギーを加えることで
パワーアップさせることが出来る。


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第34話「色々あったけど、僕は僕のままに生きている」

 

 

 出久が話せる範囲で過去を話し終えて、皆が校長室を出た。相澤は根津に説教されていたが…。

 

「……」

 

 クラスメイトが出久を見つめていたが、出久は早歩きをして教室に向かっていた。

 

切島「まさか緑谷の奴…そんな凄い人に鍛えて貰ってたなんて」

瀬呂「ああ…」

上鳴「道理で強えー訳だ…」

 

 と、切島たちが感嘆していると爆豪は出久を追いかけた。

 

切島「爆豪!?」

 

 爆豪は教室に向かった。

 

爆豪「おい、クソデ…」

 

 しかし、そこに出久の姿はなかった。

 

爆豪「……!!」

「一体何をしてるんだい?」

 

 爆豪が横を向くと、物間、拳藤、鉄哲がいた。

 

物間「緑谷ならもう帰ったけど」

爆豪「あんだとぉ!!?」

 

 爆豪が物間の胸ぐらをつかんだ。

 

物間「何するんだい!! 相変わらずA組は野蛮だなぁ!!」

爆豪「るせぇあ!!」

拳藤「いや、ちょっとどうしたの?」

 

 と、拳藤が話しかけると切島たちが追いかけてきた。

 

切島「おい爆豪!! どうしたんだよ!!」

瀬呂「あれ? B組…」

拳藤「いや、状況が全くわからないんだけど、誰か説明して!!」

八百万「それが…」

 

 八百万が事情を説明した。

 

拳藤「緑谷が!?」

八百万「そうなんですの…」

物間「はっ! たかがプロヒーローにちょっと鍛えて貰ったくらいだろ? 気にする必要が…」

鉄哲「いや、此間のクラスマッチで緑谷にコテンパンにやられただろオレ達…(汗)」

 

 物間の発言に鉄哲が苦虫を噛むように思い出しながら突っ込んだ。

 

物間「そうだよ!! 僕達を笑いものにして楽しかったかいぃ!!?」

「それオレ達に言われても困るんだけど!!!(大汗)」

 

 物間も思い出して激昂したが、当事者でない為どう突っ込んだらいいのか分からなかった。

 

拳藤「それにしても…緑谷の奴、道理で強い訳ね…」

切島「ああ…。敵連合の親玉を倒すような連中と一緒だったら…」

 

 と、爆豪が激昂した。

 

爆豪「プロヒーローが何だ!! そんなの無くてもデクはデクだ!!」

物間「とかいいながら君。何回も彼に負けてるよね?」

爆豪「負けてねぇわ!!!(激怒)」

 

 爆豪が虚勢を張るが物間の冷たい視線は変わらなかった。

 

物間「…まあ。今ので君がどうして彼に勝てないかよく分かったよ」

「!?」

鉄哲「どういう意味だ物間」

 

 物間が口角を下げた。

 

物間「彼、確か個性ないんだったよね」

鉄哲「あ、ああ…」

 

 すると物間が背を向けて歩き出した。

 

物間「彼は彼なりに、自分の弱さと向き合ったんじゃない? 誰かさんと違って」

 

 そう言って物間は去っていった。

 

鉄哲「物間…」

 

 物間に言葉に皆が何も言えない状態で、爆豪は歯ぎしりをした。

 

お茶子「……」

 

 そんな中、お茶子が嫌な予感がしていた。

 

 その夜

 

出久「さーてと、そろそろ寝るか」

 

 出久が自室で就寝の準備をしようとしていると、電話が鳴った。誰からだろうと思いながら、出久は電話に出た。

 

出久「はい、緑谷です」

「あ、もしもしデクくん。麗日です」

出久「あら、麗日さん」

 

 電話の相手はお茶子だった。

 

出久「どうしたの急に」

お茶子「えっと…」

 

 お茶子は不安そうにしていた。

 

お茶子「雄英、やめへんよね?」

 

 という言葉に出久が反応した。

 

出久「今は分かんない」

お茶子「そうなん…」

 

 そこは嘘でも「やめない」って言って欲しかった梅雨だったが、出久の心情を察したため、何も言わない事にした。

 

出久「どうしたの? 昔の事がバレちゃったから、学校をやめると思った?」

お茶子「……」

出久「まあ、あの時みたいに何度もプライバシーの侵害をされたら、辞めさせられるかもだけど」

お茶子「!!」

 

 出久の言葉にお茶子が反応した。

 

お茶子「ごめん。そういうつもりじゃ…」

出久「まあ、何も教えてなかった僕も悪いけど、ちゃんと反省してね」

 

 と、出久が笑ってみせた。

 

お茶子「…デクくん」

出久「なに?」

お茶子「その…ヒーローはこれまで通り目指すのよね?」

出久「勿論。雄英じゃなくなっても目指すつもりでいるよ」

お茶子「……」

 

 お茶子は胸がしめつけられそうだった。

 

出久「もう分かるとは思うけど、僕ね。孫さんや飛鳥くんに何度も助けて貰ったんだよ。二人だけじゃないけど」

お茶子「!!」

出久「だからね。ヒーローになるっていう夢をかなえる事で恩返しがしたいんだ。無個性がなれる筈がないって笑い飛ばされた僕の夢を応援してくれた人たちだからね」

 

 出久が懐かしんだ。

 

出久「色々大変だったけど、孫さんには格闘を、飛鳥くんには技術を教えてくれた。そして、リーダーである和哉さんは生きる道を示してくれた。他の皆もそう。たくさんの人たちに守られて、ここまで来た。しつこいようだけど、引き下がるわけにはいかないよ」

お茶子「……」

 

 出久が見上げた。

 

出久「そう言う事だから」

お茶子「デクくん」

出久「?」

お茶子「その…一つお願いがあんねんけど」

出久「なに?」

 

 お茶子が意を決して言い放った。

 

お茶子「その人たちの中に、私も入れてくれへん!?」

出久「!」

 

 お茶子の言葉に驚く出久。

 

出久「え、いいの?」

お茶子「ええで」

 

 出久の言葉にお茶子が力強く返事した。

 

出久「ありがとう。それじゃ…」

お茶子「?」

出久「応援よろしく!」

 

 と、普通に言い放った。お茶子は一瞬あっけにとられたが、

 

お茶子「あ、うん! 任せといて!!」

 

 お茶子もそう返事した。

 

出久「あ、もう電話切るね」

お茶子「あ、うん! ゴメンね急に電話かけて…。やっぱり明日が良かった?」

出久「いや、八百万さん達から夥しいほどのメールが…」

お茶子「あー…」

 

 と、出久のスマホにはメールの通知が来ていたが、主に八百万、芦戸、耳郎から来ていた。梅雨は1回だけである。

 

出久「もうちょっと話す?」

お茶子「あ、はい。お願いします」

 

 二人は事もあろうに、そのまま通話し続けた。

 

 そしてどうなったかというと翌朝…。

 

八百万「出久さん!! どうして昨日返信してくれなかったんですか!?」

芦戸「そうだよ!!」

耳郎「これだと…梅雨ちゃんか麗日と電話してたのか?」

 

 八百万、芦戸、耳郎から詰め寄られた。

 

梅雨「わたしは1かいしかメールをおくってないわ」

耳郎「じゃあ麗日か!」

お茶子「えへへ…ごめんなさーい…」

 

 と、お茶子は笑ってごまかした。

 

出久「まあ彼女も反省しているので」

「お前が一番反省しろ!!!(激怒)」

 

上鳴「めっちゃ女子に言い寄られとるやんけぇ!!」

峰田「全国の男子高校生の夢をお前はぬけぬけとぉぉぉおおお!!!」

爆豪「オラァクソデク!! オレと勝負しろや!!」

出久「相澤先生の許可が取れたらいいよ」

爆豪「関係あるかあのセンコーの事なんざ!!」

相澤「大ありだ。さっさと席つけ」

 

 

 と、出久の学校生活はまだまだ続くのだった…。

 

 

相澤「緑谷。頼んだぞ」

出久「はい!!」

 

 

 

つづく

 




キャラクターファイル34

拳藤 一佳(けんとう いちか)

1年B組のアネゴ的存在で、物間のストッパー的存在。
彼女もある程度A組に対して対抗意識はあるものの、
物間みたいに行き過ぎた事はしない。
でもたまに見せる女の子らしい仕草は、男子の間で人気がある事は内緒だ。


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出久のお仕事編
第35話「出久の楽しい昆虫採集・1」


 

 

 それはある日の事だった。

 

お茶子「デクくん。今度の休み予定ある?」

 

 1年A組の教室で、お茶子が出久に休みの予定を聞いていた時の事だった。当然のごとく、クラスメイト達は出久とお茶子を見た。その中で峰田が恨めしそうに出久を見つめていたが、出久はあまり気にしていなかった。

 

出久「うん、あるよ」

お茶子「そ、そうなん…」

 

 予定がある事にがっかりするお茶子。それに対して八百万、芦戸、梅雨、耳郎はどこかほっとしていて、峰田は露骨にガッツポーズをしていた。

 

お茶子「ちなみに何の予定があるん? ヒーローのグッズ集め?」

芦戸「それだったらあたし付き合うよ?」

出久「いや、ちょっと昆虫採集を手伝う事になってね…」

「昆虫採集?」

 

 出久の言葉に驚く一同。

 

耳郎「こ、昆虫って小学生じゃないんだから…」

出久「いや、依頼人は女性」

「女性!!?」

 

 皆が驚いた。

 

お茶子「じょ、女性ってどどどどどどどどどういう事なん!!?」

出久「知ってる? 昆虫ヒーロー・インセクトガール(※オリジナルキャラクターです)」

「インセクトガール?」

峰田「知ってるぞ! 健康的な肌でおっぱいもでかい…」

出久「その人から手伝ってほしいって言われてんの」

八百万「ど、どうしてまた…」

 

 八百万の問いに出久は笑みを浮かべた。

 

出久「もう中学の事話しちゃったからぶっちゃけると、僕中学時代は色々やってて、人脈もそれなりにあるんだ。前にも手伝った事があるしね」

「!!」

耳郎「…インセクターってどんな感じ?」

芦戸「こんな感じ」

 

 芦戸がネットでインセクトガールの画像を調べた。するとなかなかの美人だった。

 

お茶子・八百万・芦戸・梅雨(結構美人!!)

耳郎(乳でっか!!!)

 

 と、衝撃を受けていた。

 

峰田「ていうかお前ひとりで行くのか!!?」

出久「ううん。孫さん達も一緒」

切島「孫さんって…」

出久「此間会ったでしょ。そう言う事だから」

 

 出久の言葉にお茶子たちはやぎもぎしていた。そりゃそうだ。自分たち以外の女性と仲がいい上に、プロヒーローなのだから。

 

お茶子(ま、まさかとは思うけど…デクくんって年上が好みとかちゃうよな!?)

八百万(出久さんは仕事で行くんでしょうが…ああっ!! 気になって仕方ありませんわ!! インセクトガール!!)

耳郎(出久…まさかとは思うけど巨乳好きとかじゃないよな?)

梅雨(昆虫ならだいじょうぶだけど…)

芦戸「いいなー。アタシも行きたいなー」

 

 芦戸がぶっこんだ。

 

出久「もしかして昆虫に興味あったりする?」

芦戸「いや、そういう訳じゃないんだけど、何か面白そうだなーって」

出久「いやいや。遊びに行く訳じゃないんだし」

お茶子「ちなみにどこまで行くん?」

出久「ちょっと広島に戻ります」

「広島!!?」

「まあ、孫さん広島にいるもんな…」

 

出久「じゃ、行ってきまーす」

 

 そんなこんなで今度の休み、出久は昆虫採集に広島まで出かけた。

 

 広島駅

 

出久「こんにちはー」

「ああ!! 出久くん久しぶりー!! 大きくなって!」

 

 出久は麦わら帽子に白いシャツ、ハーフパンツをはいた女性に挨拶した。彼女こそ昆虫ヒーロー・インセクトガールである。見た目は褐色肌で長身の大人の女性だが、性格は天真爛漫。

 

出久「お久しぶりです」

インセクトガール「元気にしてた!?」

出久「孫さんと飛鳥くんも久しぶり」

飛鳥「此間会ったばかりだけどね」

 

 出久の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

出久「他の皆は…」

飛鳥「未来さん達は受験とかがあるから来れないって」

出久「まあ、そうだよね…」

インセクトガール「さて! 皆そろった事だし…」

 

 インセクトガールが口角を上げた。

 

インセクトガール「腹ごしらえしましょう!!」

孫「おー!!」

飛鳥「お、おー…」

 

 インセクトガールと孫が元気よく返事したのに対し、飛鳥は困惑気味に返事した。

 

 そしてそれを陰で見ていた者たちが…。

 

「あの人がインセクトガール…」

「孫さんと飛鳥さんもいらっしゃいますね…」

 

 お茶子、八百万、耳郎、梅雨、芦戸がこっそりつけていた。上鳴と峰田もだが…。

 

耳郎「何でお前らもついて来てんだよ」

上鳴「いいじゃんか! 緑谷にいいつけるぞ!」

お茶子「大丈夫や。きれいさっぱり記憶を消したるさか…」

峰田「お、おい!!」

「!?」

 

 峰田が声を上げると、皆が正面を見ると、飛鳥が困った様子でお茶子たちを見ていた。

 

上鳴「気づかれてるぞ!!」

 

 上鳴の言葉に皆が慌て出したが、飛鳥は特に何もしないまま、出久達と移動した。

 

お茶子「気づいとらん…よな?」

上鳴「あ、ああ…」

 

 その後、出久達は駅の中にあるお好み焼き屋で食事をとった後、車で移動した。そしてお茶子たちも八百万の家の車でついていった。

 

上鳴「広島にも別荘があったんだな」

八百万「いえ、これでもまだ小さい車なのですが…」

お茶子(こんなにもちゃうんかいな…お金持ちって…)

耳郎(反則だろ…乳もでっかいし…)

 

 八百万の言葉にお茶子と耳郎が肩を落とした。

 

 車で移動して数時間。出久達は目的地にたどり着いた。

 

出久「やっと着いたね…」

飛鳥「ああ…」

 

 と、先に到着した出久達が歩いていると…。

 

「あ、おーい!!」

「飛鳥く~ん!! 出久く~ん!!」

 

飛鳥「あれ?」

出久「奈良川くん!」

 

 と、1人の少年と、2人の少女が研究所らしき建物の前で立っていて出久達を出迎えた。彼らが出久の中学時代の同級生であり、飛鳥とは今でも同級生である。

 

出久「日向さんと椿さんも久しぶり」

日向「久しぶりだね」

椿「体育祭見たわよ」

 

 和気藹々とする。

 

飛鳥「でもどうしたの? 3人とも…」

椿「アンタには話してなかったけど、私とお姉ちゃんも研究の手伝いをする事にしたのよ…」

 

 椿が若干嫌そうにした。実は昆虫が苦手なのである。

 

飛鳥「もしかして皆来るから来たって感じか?」

椿「う、うるさいわね!! 出久も来るっていうから顔を出しに来てやったのよ!!」

出久「ありがとう」

 

 と、出久は大人の対応をした。

 

インセクトガール「さて、これで全員そろったわね。中に入りましょうか」

飛鳥「いや、まだですよ」

インセクトガール「え?」

 

 飛鳥が横を向くと、

 

飛鳥「せっかくここまで来たんですから一緒に行きましょうよ。雄英高校の皆さん」

(やっぱりバレてた!!!)

 

 

 陰から出久達のやり取りを見ていたが、飛鳥にすっかり看破されていてお茶子たちは冷や汗をかいたのは言うまでもなかった。

 

 

つづく

 




キャラクターファイル35

インセクトガール/兜山ビオラ

昆虫が大好きな若手ヒーロー。ちなみに2年目。
褐色肌で巨乳、長身と見た目の大人の女性だが、
性格は昆虫大好き、お昼寝大好き、太陽が大好き、
まるで男子小学生。ちなみに好物はうなぎ。

個性:スイートスウェット

体からとても美味しそうな液体を出す。
分かりやすく言えば爆豪の個性の亜種バージョンだが、
あまり衛生上良くない。

ちなみにプロヒーローになったのに殆ど個性は使っていない。


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第36話「出久の楽しい昆虫採集・2」

 前回までのあらすじ

 

 広島のプロヒーロー・インセクトガールから昆虫採集を手伝ってほしいと依頼された出久は単身広島に向かうが、出久の事が気になってお茶子たちも八百万家の力を借りて尾行するも、出久に同行していた一丈字飛鳥に見破られてしまった…。

 

 

 研究所の中

 

出久「まあ、来なきゃあまり盛り上がらんもんね」

「め、面目ないです…」

 

 と、出久とお茶子たちが鉢合わせしていて、飛鳥達も困惑していた。孫はきょとんとしていたが…。

 

インセクトガール「お友達?」

出久「あ、はい。雄英高校のヒーロー科です」

インセクトガール「へー。でもどうしてついてきたの?」

上鳴「いやあ、それは…」

飛鳥「まあ、出久もスミにおけないってことですよ」

「!!///////」

 

 飛鳥がそう言うと、お茶子、芦戸、耳郎、八百万、梅雨が頬を染めた。

 

椿(あー…そう言う事か)

 

 椿も察して日向も苦笑いしていた。孫と奈良川京はキョトンとしていたが…。

 

インセクトガール「なんかよく分かんないけど、ゆっくりしていってね!」

 

 インセクトガールは好意的に受け入れた。

 

上鳴「それにしても凄い昆虫の資料が…」

インセクトガール「そうなの! ここは私達の研究所の一つなんだよ!」

峰田「研究所の一つ?」

インセクトガール「いろんなところを拠点に昆虫の研究をしてるの! この個性社会になってから、昆虫たちの生態を特にね!」

上鳴「へえ…」

八百万「いい事だと思います!」

 

 上鳴と八百万が相槌を打つ。

 

耳郎「ところで…出久に依頼したい昆虫採集ってなんですか? わざわざ広島までくる必要がないと思うんですけど…」

 

 耳郎がインセクトガールに質問すると、インセクトガールは苦笑いした。

 

インセクトガール「あー…。実は昆虫採集って言うか、とっても大きくて危険なカブト虫がいるの。この山に」

「!!?」

 

 インセクトガールの言葉にお茶子たちが驚いた。

 

インセクトガール「で、ちょっと人手が足りないから出久くんにも手伝ってもらおうと思って」

耳郎「いや、それプロヒーローの方が良くないですか!?」

出久「そんな事を言ったらダメだよ耳郎さん」

耳郎「でも!」

 

 耳郎が出久の方を見た。

 

出久「そんな事言ってたら僕が活躍する機会なくなっちゃうでしょ」

「いや、そうだけど!!!」

「それ言ったらダメ!!!!」

 

 と、出久の発言に皆が突っ込んだ。

 

出久「というのは冗談で、これ修業でもあるんだよ」

「修業?」

出久「そう言う事。実際に経験値も積んでいくの。授業だと決まった事しかやらないから。まあ、習うより慣れよって言葉があるでしょ?」

お茶子「まあ、そりゃそうやけど…」

 

インセクトガール「で、今回は腕に覚えのある孫くんや飛鳥くんにも手伝ってもらおうって訳!」

 

 皆が孫と飛鳥を見た。

 

孫「どんなムシなんだろう」

飛鳥「とても大きいと思いますよ」

 

 と、孫と飛鳥が普通に話をしていた。

 

上鳴「そ、それだったらオレも行きたいです!!」

八百万「私も…」

インセクトガール「ありがと。でも今回はいいや。作戦立てちゃってるから…」

上鳴「そ、そうですか…」

梅雨「そうよ。いきなりおしかけておいて、めいわくよ」

 

 その時だった。

 

「ビオラ」

「お姉ちゃん!」

 

 と、一組の男女が現れた。

 

出久「アゲハガール。兜山博士!」

「こんにちは…」

「久しぶり。出久くん」

 

(また色っぽい女性が!!!)

 

 と、お茶子、八百万、耳郎、芦戸が反応して、上鳴と峰田が見とれていた。

 

インセクトガール「あ、お姉ちゃん」

上鳴・峰田「お姉ちゃん!!?」

出久「あ、紹介するね。この人はインセクトガールのお姉さんでアゲハガール」

アゲハガール「宜しくね」

出久「で、隣にいるのはアゲハガールの旦那さんで昆虫博士の兜山博士」

兜山「宜しくお願いします…」

峰田「既婚者かよぉ!!」

 

 と、峰田が嘆いていた。

 

インセクトガール「あ、アタシはまだ独身だよ」

峰田「おね」

 

 峰田がそう言いかけると梅雨が止めたが、椿がドン引きしていた。

 

椿「な、何なのこの子たち…」

出久「結構個性豊かでしょ」

椿「豊かっていうか癖が…」

日向「こ、こら!!」

 

 椿の発言に日向が慌てて諫めた。

 

アゲハガール「さて、ちょっと休憩したら行くわよ」

出久「あ、はい」

飛鳥「はい」

孫「ああ」

 

 と、アゲハガールと兜山博士は去っていった。

 

日向「それはそうと…八百万さん、お久しぶりです」

八百万「え、ええ…」

 

 日向と八百万があいさつした。

 

上鳴「知り合いだったのか!?」

八百万「ええ…。昔、父のパーティにお越し頂いた事がありまして」

出久「驚いたなぁ」

 

 出久が笑みを浮かべた。

 

椿「まさか貴方が出久の知り合いだったなんて、世の中って案外狭いのね…」

 

 椿も困惑していた。

 

上鳴「ところで林さんでしたっけ?」

日向「は、はい」

椿「何よ」

 

峰田「彼氏いるの?」

上鳴「連絡先交換しない?」

耳郎「こ、こら!!!」

 

 と、諫めた。

 

日向「い、いや彼氏は…」

椿「ごめんなさい。二人ともタイプじゃないので」

上鳴・峰田「ガビーン!!」

 

 上鳴と峰田がショックを受けた。

 

日向「ちょ、ちょっと椿!!」

椿「失礼なのは分かるけど、こういうのははっきり断らないと駄目よ!」

八百万「すいません!! 本当にすいません!!」

 

 飛鳥と京が苦笑いした。

 

出久「そういえば京くんは部活は?」

京「今日は休みだから来たぜ」

「部活?」

出久「彼ね、サッカー部なの。個性サッカー」

「へー」

 

 皆が驚いた。

 

出久「レギュラー?」

京「いや、まだ控えだけど試合には出れるようになった」

出久「そっか。良かった」

 

 飛鳥が苦笑いすると、アゲハガールがやってきた。

 

アゲハガール「孫くん、飛鳥くん、出久くん。時間よ」

飛鳥「あ、はい」

出久「それじゃあまた後でね」

日向「あ、うん。気を付けてね」

芦戸「行ってらっしゃーい!!」

 

 と、孫、飛鳥、出久、インセクトガール、アゲハガールが去っていき、飛鳥と出久の友人と同級生たちが取り残された。

 

「……」

「……」

 

 お互い沈黙が起こる。

 

上鳴「あ、折角だから…連絡交換…」

耳郎「しつこい!!!」

 

 

 どうなる。昆虫採集。

 

 

つづく

 




キャラクターファイル36

アゲハガール/兜山聖蝶(かぶとやま あげは)

オリジナルキャラクター。
インセクトガールの姉。彼女より4つ年上の24歳。
大人っぽい女性だが、彼女も昆虫マニアである。
旦那は大学時代の同級生であるが、
彼の人柄にベタ惚れして猛アタックの末に結婚。
ちなみに兜山という苗字は旧姓であるが、仕事は旧姓で活動している。

個性:バタフライ

ちょうちょのような羽をはやして空を飛ぶことが出来る。
羽はちぎれても再生するが、
やぶれている姿はあまり美しくないと彼女は感じているので、
極力傷つけないようにしている。


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第37話「出久の楽しい昆虫採集・3」

 

 出久、孫、飛鳥はプロヒーロー達と一緒に山の中で危険な『個性虫』を探していた。個性虫とは、個性を持っていて非常に知能の高い昆虫の事である。

 

インセクトガール「今回探すのは『アビリティオオカブト』っていう大きな虫だよ!」

アゲハガール「一丈字くん。どう?」

 

 飛鳥は目を閉じて、個性の念力で個性虫の存在を感知していた。

 

飛鳥「2時の方向で雄たけびをあげているのが聞こえます」

アゲハガール「思った他近くにいるのね!!」

インセクトガール「丁度私が個性のミツをしかけた所だけど…逃げちゃわないかな!? 大きさはどんな感じ!?」

飛鳥「結構でかいですね…。大型トレーラーよりもでかいです」

孫「そんなにおおものか!?」

飛鳥「ええ…」

 

 と、出久達はそのまま歩を進めた。

 

 その頃、建物はというと…。

 

京「まさか雄英高校の生徒も来るとはな…」

椿「うーん…」

日向「皆さん…。出久くんの事を心配してきたんですよね?」

「そうなんですよー」

 

 と、お茶子たちはわざとらしく相槌を打った。実はストーカーまがいな事をしていたなんて口が裂けても言えなかった。

 

椿「はぁ…。やっぱり高校でもそうなのね…」

お茶子「え、高校でもって?」

椿「アタシ、あいつとは3年間同じクラスだったのよ」

「ええっ!!?」

 

 お茶子たちが椿に詰め寄った。

 

お茶子「中学時代ってどんな感じだったの!?」

八百万「そう言う事を何で早く教えてくださらなかったのですか!!」

芦戸「聞きたーい!!」

 

 と、興奮していると椿が困惑しているが、

 

椿「ねえ…」

耳郎「な、なんだ?」

椿「あんた達…あいつのことが好きなの?」

 

 するとお茶子、八百万、耳郎が顔を真っ赤にして、芦戸と梅雨が頬を染めた。

 

お茶子「いや、その…好きっていうかなんというか…//////」

八百万「その…オホホホホホホ!!/////」

 

 と、照れた。

 

芦戸「ねえ。もしかして出久って中学時代モテてた!?」

椿「いいや? 女子からは変人呼ばわりされてたわよ」

 

 お茶子たちの目がハイライトオフになった。

 

お茶子「それはー…その女子達の見る目がないんとちゃうかな」

耳郎「変人って…お前らは自分の事イケてると思ってるイタい女か」

梅雨「でもかんしゃしなきゃいけないわね。とられるしんぱいはなさそう」

椿「……」

 

 お茶子たちの様子を見て、椿は思わず口元を引きつらせた。何だこいつ等…と言わんばかりに。京と日向は苦笑いするしかなかった。

 

椿「まあ、あんた達の様子を見る限りだと、出久も学校生活はちゃんと送れてるみたいね」

峰田「そりゃあ勿論!!」

上鳴「マブダチですから!?」

椿「女の子が寄ってくるからとかじゃないわよね?」

上鳴・峰田「」

日向「つ、椿!! すみませんうちの妹が…」

梅雨「いいのよ。わるいのはこのふたりだから」

 

 日向が謝罪すると梅雨が苦笑いした。

 

芦戸「それにしても日向と椿って双子なの?」

日向「あ、はい。私が姉で彼女が妹です」

上鳴「へー…確かに顔は似てるな」

椿「顔はってどういう意味よ」

上鳴「いや、お姉さんが垂れ目で椿ちゃんは釣り目だから…」

峰田「それもそうだし…」

 

 すると峰田は日向と椿の胸元を見た。

 

梅雨「ごめんなさいね」

日向「い、いえ…」

椿「梅雨ちゃん!! もっとやっちゃって!!」

日向「こ、こら!!!」

 

 と、梅雨は峰田に関節技を仕掛け、椿がもっとやるように催促すると日向が慌てて止めた。

ちなみに椿は胸がないのを気にしていて、涙目だった。

 

耳郎(仲間がいた…)

椿「ごめん。ちょっと親近感沸かないでくれる?」

 

 耳郎も胸がなかったので、仲間を見つけて安心するが、椿に看過されて怒られた。

 

梅雨「それにしても緑谷ちゃんだいじょうぶかしら」

椿「大丈夫よ。これで大丈夫じゃなかったら、とうの昔にくたばってるわ」

 

 と、椿は平然と言い返した。

 

お茶子「どうしてそう言えるの?」

椿「そりゃあ3年も近くで見てたらそうなるわよ。孫さんも飛鳥もだけど」

「!!?」

 

 完全に出久を信頼しているその姿にお茶子たちは衝撃を受けた。

 

お茶子(や、やっぱり3年の付き合いは違う…!!)

八百万(本当に好意を抱いてませんよね?! 本当に好意を抱いてませんよね?!)

耳郎(流石クラス3年も同じだっただけあるわ…!)

芦戸(めっちゃヒロインっぽい…!)

梅雨(さすがだわ。出久ちゃんのどうきゅうせいなだけあって、きもがすわってるわ)

 

 椿が眩しく見えるお茶子たちなのであった。

 

 その頃、出久達は『アビリティオオカブト』の所にたどり着いていて、交戦状態だった。

 

孫「うぉおおおおおおおおおおお!!!」

 

 孫がオオカブトの角を真正面から受け取った。

 

出久「孫さん!! そのまま取り押さえててください!」

孫「分かった!!」

飛鳥「念力で大人しくさせてみます!!」

 飛鳥が孫の前に立って、オオカブトの目を見て、自分の目を光らせた。するとオオカブトに異変が起きた。

 

兜山「聞いている…!!」

飛鳥「今だ出久!!!」

出久「分かった!!」

 

 出久が目を閉じて、両手から緑色のオーラを出して、巨大な両手をだした。

 

出久『緑双拳!!』

 

 すると出久は弱ったオオカブトを巨大な両手でひっくり返した。オオカブトは身動きが取れなくなっていた。

 

インセクトガール「今だよ! お姉ちゃん!」

アゲハガール「任せて! インセクトボール!!」

 

 と、アゲハガールがボールをオオカブトに投げると、オオカブトはボールの中に吸い込まれていった。

 

出久・飛鳥(ポケモンだ…)

 

 そしてボールが大人しくなった。

 

インセクトガール「やったー!! 捕まえた!!」

孫「おお!! 捕まった!!」

 

 と、皆が大喜びした。

 

インセクトガール「あ、飛鳥くん。いつものアレお願い!」

飛鳥「えー。私高校生ですよ?」

インセクトガール「お願い! これでしめられるから!」

アゲハガール「はい。ボール」

 

 アゲハガールからボールを受け取った飛鳥は咳払いした。

 

飛鳥「アビリティオオカブト、ゲットだぜ!!」

孫「ピッピカチュウ!!」

 

 孫がピカチュウの真似をしたが、飛鳥は大汗をかいた。

 

飛鳥「この画いる!!?」

インセクトガール「いるいる。だって声凄く似てるもん」

飛鳥「そりゃ言われますけど…」

出久「お見事」

 

 飛鳥が出久を見つめた。

 

出久「未来はオレの中にあるっしょ!!」

飛鳥「次回へ続きます!!」

 

 

 

つづく

 

 




キャラクターファイル37
奈良川 京(ならがわ きょう)

オリジナルキャラクター。
飛鳥の同級生。サッカー部に所属している。


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第38話「出久の楽しい昆虫採集・4」

 

 アビリティオオカブトを捕獲した出久達は意気揚々と帰ってきた

 

出久「ただいまー」

「あ、お帰りなさーい!」

 

 出久達はすっかりボロボロになっていた。

 

日向「お疲れ様」

上鳴「カブト虫はとれたのか!?」

出久「うん。見事に」

峰田「マジかよ!!」

芦戸「今、見られる!?」

アゲハガール「見せるのは待ってね。ちょっと大人しくさせないといけないから」

 

 と、アビリティオオカブトを見たがっている上鳴たちをアゲハガールが落ち着かせた。

 

椿「お風呂沸かしたわよ。先に入ってきたら?」

飛鳥「ありがとう」

峰田「これはインセクトガール達が先だよな…」

インセクトガール「あ、私お姉ちゃんと一緒に行かないといけないから、孫くん達先に入ってきていいよ」

孫「ありがとう」

 

 峰田がショックを受けた。

 

梅雨「孫さん。峰田ちゃんのいうことはきにしなくていいから、はいってきてください」

孫「ありがとう。でもオマエたちははいらなくていいのか?」

耳郎「いや、まあ…」

八百万「構いませんわ。働いた孫さん達から入るのが道理かと」

孫「どうり?」

飛鳥「孫さん。皆さんが先に入ってきて良いと言っているので、先に頂きましょうか」

 

 と、飛鳥がフォローを入れた。

 

飛鳥「それはそうと皆何やってたの?」

日向「あ、晩御飯の準備をしてたんだよ」

京「オレと上鳴と峰田が主に荷物持ちだったけどな…」

 

 京がくたくたになっていた。

 

上鳴「ホントきつかったぜ…」

耳郎「料理はうちらがするんだから文句言うな!」

峰田「そうだぜ上鳴! 女子の手料理にありつけるんだぞ!」

上鳴「あ、そうだった。ゴメン耳郎」

耳郎「まったく現金な奴ら…」

椿「どうせだから男子全員入ってきなさいよ」

 

 と、耳郎が憤慨していたが、その間に孫たちが風呂に入った。ちなみに大浴場である。

 

椿「あ、でもあんたはちょっと残って」

飛鳥「え」

椿「いいから!!」

 

 と、飛鳥だけ取り残されてしまった。理由は顔や体が女っぽい為、上鳴や峰田が発情するからである。

 

飛鳥「流石に大丈夫でしょ…」

椿「なんか嫌なの!!!」

梅雨「椿ちゃん。ほんとうにごめんなさいね…」

日向「あ、いえいえ…」

 

 と、日向と梅雨が謝りあっていた。

 

飛鳥「そういや何か手伝う事ってある?」

椿「無いわよ。ゆっくり休みなさい」

飛鳥「そうかい。ありがとう」

日向「ううん。飛鳥くんもお疲れ様」

 

 お茶子たちは飛鳥達を見つめていた。

 

飛鳥「どうしたの?」

梅雨「いや、一丈字ちゃんと日向ちゃんたちってなかがいいわね」

芦戸「どっちかと付き合ってんの?」

飛鳥「いいや?」

日向「そ、そうですよ!! そんな…」

椿「飛鳥とお姉ちゃん、結構噂になってるよ」

飛鳥「あー…」

日向「つ、椿!!//////」

 

 日向が頬を染めた。

 

芦戸「え!? そうなの!?」

飛鳥「いや、この子たちのお兄さんとは小学校からの付き合いで…」

八百万「幸生さん?」

飛鳥「はい。中学はちょっと成り行きで…」

芦戸「ねえねえ!! もっと聞かせて!!」

日向「あ、いや。本当にそんなんじゃなくて…//////」

芦戸「中学時代!!」

日向「もーっ! 椿~!!//////」

 

 日向が憤慨すると、お茶子たちはときめいた。飛鳥は苦笑いしていたが…。

 

 そんなこんなで夕食の時間。

 

上鳴「すげーっ!!」

 

 と、カレーが作られていた。

 

日向「沢山あるので食べてくださいね」

飛鳥「ありがとう」

出久「ありがとね日向さん」

孫「ありがとな!」

 

 男性陣から感謝される日向。

 

お茶子「あ、デクくん! うちらも作ったんやで!」

八百万「そうですわ!」

出久「そうなんだ。わざわざありがとね。麗日さん達も」

上鳴「荷物運んだんだぜ!」

峰田「感謝しろよな!」

出久「お疲れ様」

インセクトガール「それじゃ食べましょうか!」

「はい!」

「頂きます!!」

 

 皆が食事にありついた。ちなみに辛さは全員が食べられるように甘口にしている。

 

上鳴「やっぱり女子の手料理はええのう…!!」

峰田「明日への活力」

 

 上鳴と峰田が感涙していた。出久も京達と昔話に花を咲かせている。

 

飛鳥「で、そう言う事があってオレと京と日向は「猪狩のズッコケ三人組」って呼ばれるようになったの」

芦戸「えー!!!」

「あはははははは!!」

京「もう恥ずかしいったらありゃしないぜ/////」

日向「アハハハハ…//////」

 

出久「もう1年の頃は君ら3人の時代だったね」

椿「ホントそれ」

日向「もう2人とも!!」

 

 出久と椿の冷やかしにお茶子たちはハラハラしていた。

 

(やっぱり椿さんと仲いいなぁ…。気のせいか楽しそうだし)

 

 そう、出久も昔話に参加していたがとても楽しそうだったのだ。

 

飛鳥「でも2年生とか出久凄かったよな」

京「それな。その話をしてくれよ!」

出久「なんかあったかな…」

 

 そんなこんなで食事も終わり、就寝しようとしていた。男子と女子に別れる。

 

峰田「ここはひとつ、女子の部屋に遊びに行って…」

飛鳥「やめときなよ。もし見つかったら明日の朝の散歩、留守番だって」

上鳴「どういう事だよ」

飛鳥「明日の朝、この周りを皆で散歩しようって話になったんだよ」

峰田「朝よりも夜だろうが!!」

飛鳥「そう? じゃあ一人で寂しく留守番してる?」

上鳴「女子と散歩って…よくよく考えたらビッグチャンスじゃねぇか!!」

飛鳥「そうだよ。普通はこんな事ないんだよ」

 

 飛鳥の目のハイライトが消えた。

 

飛鳥「彼女たちも難しい年ごろだから…賢い判断をした方が良いよ」

上鳴「お、お前…」

峰田「おやすみなさい」

飛鳥「お休み」

 

 と、峰田が就寝した。

 

飛鳥「まあ、椿や幸生さんに怒られたくないだけなんだけどね」

上鳴「…そんなに怖いのか?」

飛鳥「幸生さんがシスコンだからなぁ…」

 

 飛鳥が見上げると、その隣の女子部屋では気まずい空気だった。

 

耳郎「え、そんなにシスコンなの?」

椿「まあね…。お兄ちゃん、何かしら飛鳥にあたるから…」

 

 と、椿が額を抑えていた。

 

出久「もうそろそろ寝よう。これ以上変な事言うと、盗聴されてるかもしれないから…」

耳郎「!!」

 

 翌朝、全員で散歩に出かけたが、女子がいっぱいいる事もあり、上鳴と峰田は大満足だったという。

 

 そして朝食を食べ終わった後、捕獲したアビリティオオカブトを全員で見た。

 

芦戸「すごくでかっ!!」

上鳴「こんなのと戦ってたのかよ!!」

出久「まあね。でも数人で連係プレイをしてやっとだよ」

 

 お茶子たちは改めて出久をバケモノと感じた。

 

出久「いやあ…。本当に思い出すなぁ。修業の日々を…」

飛鳥「それな。和哉さんに何度もぶっ飛ばされて、滅茶苦茶にされてたもんな」

出久「孫さんにもぶっ飛ばされたなぁ」

孫「ん?」

出久「でもそのお陰でこんなにでっかいカブト虫と戦えたんだ。これで良かったんだよ」

飛鳥「それもそうだな。カブト虫でてこずってたら、ヒーローになれないもんな」

 

 出久と飛鳥が物思いに更けていた。それを見てお茶子はいてもたっていられなくなったのか、

 

お茶子「デクくん」

出久「なあに?」

お茶子「その…雄英に戻ったら、もうちょっと詳しく聞かせて」

出久「え? いいよ」

上鳴「オレもオレも!!」

 

 お茶子が出久に駆け寄ってそう言うと、クラスメイト達が出久に集まりだして、飛鳥、京、日向、椿は笑みを浮かべた。

 

 

 そして…

 

出久「いやー。楽しかったよ」

飛鳥「こっちも」

 

 広島駅で出久達を見送る飛鳥達。

 

梅雨「きゅうにおしかけてごめんなさいね」

椿「もう今度からはちゃんと連絡しなさいよ」

日向「まあまあ…。でも、梅雨さん達に会えてよかったよ」

梅雨「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 梅雨が笑みを浮かべた。

 

インセクトガール「本当にありがとね。出久くん」

出久「いえ」

 

 インセクトガールと出久が握手をすると、他の生徒とも握手した。

 

出久「今度はこっちに遊びに来てね」

飛鳥「機会があれば行くよ」

八百万「大歓迎ですわ!!」

 

 そして出久達は改札をくくって、飛鳥達に手を振って別れた。そして出久達は見えなくなった。

 

日向「行っちゃったね…」

飛鳥「ああ」

 

 飛鳥が口角を上げると、中学時代の事を思い出していた。教室で過ごした時の事、和哉のもとで修業したこと、ぶつかり合った事、そして皆で笑いあったときの事を。

 

飛鳥「でももう、今の出久なら大丈夫さ」

京「飛鳥…」

 

 日向と椿が顔を合わせると、正面を向いていつくしむ表情をした。

 

椿「そうね」

日向「梅雨ちゃん達もいるもんね」

孫「イズクはつよくなった。だからいつかヒーローになれる!」

 

 孫がそう言い切ると、飛鳥も笑みを浮かべてこう言った。

 

飛鳥「ええ。絶対になれますよ。ヒーローに」

 

 

 出久は懐かしそうに笑みを浮かべて、仲間と共に帰りの新幹線を待っていた。

 

 

 

つづく

 




キャラクターファイル38
材 日向(はやし ひゅうが)

オリジナルキャラクター。
飛鳥の同級生で、林椿の双子の姉。ロングヘアーで眼鏡をかけている。
大人しくて物腰が柔らかいが、昆虫を触れたり、力持ちだったりと、
結構凄い。


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新たなライバル編
第42話「6人目の女・1」


 

 

「という訳で、来たわよ」

 

 前回までのあらすじ

 

 ある日の休日。上鳴電気と峰田実は気分転換に街を出歩いていた。すると、プッシ―キャッツのメンバーである女性ヒーロー・マンダレイと仲睦まじげに歩いていた出久と遭遇。

 

 問い詰めた末、出久はただ一緒に買い物をして一緒にご飯を食べただけと主張したが、それでも彼らと、その翌日に事情を知ったお茶子たちの怒りが収まる事はなかった。

 

 それをうやむやにしたまま昼休憩を迎え、皆で食堂のテレビを見ると、日本のトップヒーローの1人である女性ヒーロー「リューキュウ」が出久に対してラブコールを送っていたのだった。

 

 それだけならまだしも、いつものようにヒーロー訓練をやった後の放課後にリューキュウ本人が現れたという。

 

 果たしてどうなる緑谷出久。そしてA組!!

 

 

出久「リューキュウ」

ヒロインズ「……!!!(大汗)」

 

 リューキュウのまさかの登場にヒロインズは言葉を失っていたが、出久はいつも通りのほほんとしていた。

 

上鳴「いや…あの…緑谷…」

峰田「どっからどうつっこんだらええねん…」

 

 上鳴と峰田も真っ白になって、何も言えなくなっていた。

 

爆豪「……!!(激怒)」

 

 爆豪にいたってはいつも通りイライラして、他の生徒達は何とも言えなさそうにしていた。

 

出久「こんにちは」

リューキュウ「こんにちは」

 

 出久が挨拶するとリューキュウがあいさつし返した。

 

リューキュウ「で、答えは?」

出久「ごめんなさい」

「もうそこまで行ってるの!!!?(大汗)」

 

 お茶子たちが絶句していた。

 

 そして…。

 

耳郎「これより緊急会議を始める!!」

出久「裁判長! 帰っても宜しいでしょうか!!」

耳郎「被告人は黙れ!!」

 

 とある会議室で緊急会議が行われた。そこには出久、ヒロインズ、リューキュウ以外にも…というかA組全員いた。

 

お茶子「いや、デクくんどういう事なん!!?」

出久「ちょっとした知り合いなのですよ…」

梅雨「もしかしてわたしたちとおなじように、リューキュウのことたすけたの?」

出久「いいや?」

 出久が否定するも…。

 

耳郎「リューキュウに聞いた方が早いよ」

リューキュウ「そうね。あれは忘れもしなかったある冬の事…」

 

 ある冬の事。リューキュウはヴィランと戦っていた。

 

リューキュウ「チッ!!」

「フハハハハ!! クリスマスに女一人で立ち向かうとは可哀そうな奴だ!!」

 

 クリスマスにリューキュウはたった一人でヴィランと戦っていた。相手は思った以上に強く、リューキュウはボロボロになっていた。

 

リューキュウ(増援が来るまでまだ時間がかかる…。ここは何としても…)

「死ねぇ!!!」

 

 と、ヴィランがリューキュウの顔に一撃を食らわせようとしたその時、誰かがヴィランの拳を受け止めた。

 

「!!?」

リューキュウ「!!!」

 

 出久だった。

 

「な、なんだてめえは!!」

出久「メリークリスマス」

「!」

 出久が笑みを浮かべた。

 

出久「市民とヒーローを困らせる輩はパンチをプレゼントだ!!」

「ぶへぇーっ!!!」

 と、出久が殴り飛ばすと、ヴィランが気絶した。

 

リューキュウ「……!!!」

出久「まだワンパンマンと張り合えそうにないな…」

 出久がそう呟いて去っていった。

 

出久「さて、帰りましょ」

リューキュウ「ま、待って!!」

出久「あ、そうだ。これ、傷薬渡しておきますね」

リューキュウ「!」

 出久が塗り薬を渡した。

 

出久「メリークリスマス。平和なひと時をプレゼントしてくれてありがとう」

リューキュウ「!!」

出久「では」

 そう言って出久は去っていき、リューキュウは恋に落ちて今に至る。

 

リューキュウ「もう、虜♥///////」

(今の話のどこに惚れる要素が…?)

(終始緑谷がふざけてるようにしか…)

 

出久「嫌ですなぁ。ただのリップサービスですよ」

リューキュウ「それでもあなたの何気ない優しい一言は、落ちるのに十分すぎるわ」

ヒロインズ「……!!(汗)」

 ヒロインズも人の事が言えないので何とも言えなさそうにしていた。

 

上鳴「それはそうと緑谷。どうして振ったんだよ」

峰田「やっぱりプロヒーローは憧れの存在だからか!?」

出久「それもそうだし、僕年上はちょっと…」

「好みの問題だった!!!(大汗)」

 

リューキュウ「分かるわ。出久くんが数年たつのを待ってなきゃいけないもの。その間に私はもう30。でもまだ行けるわ! 子供も産めるわ! ていうか個性が発達してからそういうのも結構大丈夫になって来たから!!」

「どんだけ緑谷と結婚したいんだよ!!!(大汗)」

 

 リューキュウが熱弁するのに対して、生徒達が突っ込んだ。

 

峰田「何で緑谷ばっかりなんだよぉ~~~~~」

上鳴「主人公だからか!!? 主人公だからかぁ!!!?」

耳郎「いや、あんた達は普通に下心あり過ぎ」

 

 出久との差に絶望する峰田と上鳴に対し、耳郎が冷徹に突っ込んだ。

 

お茶子「それはそうとちょっと待ってください!」

八百万「そうですわ!! いきなり現れて何なんですの!?」

リューキュウ「ん? あんた達誰?」

 

 リューキュウが興味なさそうにお茶子たちを見た。

 

八百万「私はヒーロー科の八百万百と申します! 僭越ながら…私の方が出久さんと親しいかと…!!」

「!!」

 皆が反応した。

 

(ヤオモモがついにアプローチを!!)

(面白いことになりそうなのと、めんどくさい事になりそうなの同時にキタァ!!)

 

リューキュウ「へー。クラスが一緒だからとかじゃなくて?」

「!!?」

芦戸「いいの!!? プロヒーローがそんな態度取って!!」

リューキュウ「恋する男を取られそうになってるんだからなりふり構ってられないわよ!」

(いや、学校なんだから少しは自重しろよ…)

 と、リューキュウに対して少し幻滅する生徒達だった。

 

リューキュウ「私が今までどんな思いで、出久くんを遠くから見てたと思ってるの!? あ、そうだ。職場体験だけどグラントリノの所に行ったそうじゃない」

出久「オールマイトに決められました」

リューキュウ「ハァー…。あのKY…」

「あの、大先輩ですよね?(汗)」

 

 偉大なる大先輩に対して暴言を吐いたので、生徒達は慌てた。

 

リューキュウ「先輩だけど、余計な事して~!! あ、私指名入れてたの知ってた」

出久「あ、はい。最初リューキュウしか入ってなくて、最初はそこに行こうかなと思ってたんですよ」

リューキュウ「」

出久「でもオールマイトがグラントリノの所に行きなさいって」

リューキュウ「オールマイト殴りてぇ~~~~」

「リューキュウさん!!?(大汗)」

 

 そしてオールマイトが陰で見ていた。

 

オールマイト「…ゴメンネ」

 

 

つづく

 




キャラクターファイル42

リューキュウ/竜間龍子

日本のトッププロヒーローの1人。
戦っている姿と個性がかっこいい事から大人気。
本作ではとある理由から出久にベタ惚れしていて、
結婚も視野に入れている。

実はインタビューとかで度々話をしていた。
果たして出久はどうするのか…?


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第43話「6人目の女・2」

 前回までのあらすじ

 リューキュウが雄英高校にやってきて、出久に求婚してきた。


 

 

 

出久「言いたい事はよく分かったけど…」

リューキュウ「私は気長に待つわ」

出久「それで他の人と結婚したら?」

リューキュウ「諦めるしかないけど、予定あるの?」

出久「無いですけど」

峰田「おいコラ緑谷お前いい加減にしろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

上鳴「打ち切りだ!! このシリーズ打ち切りだ!!」

 

 峰田と上鳴が憤慨した。

 

出久「大丈夫だよ。あと7回で終わるから」

「そういう事を言うんじゃない!!!(大汗)」

 

お茶子(あと7回…あと7回で決着をつけなアカンって事かいな…!!)

八百万(時間に余裕はございませんわね…!!)

耳郎(遂にはっきりする時が来るのか…!!)

梅雨(ここからがしょうねんばね)

芦戸「絶対に出久は渡さないんだから!!」

「一人だけ声が出てるよ!!!(大汗)」

 

 お茶子、八百万、耳郎、梅雨がまだ自分達にもチャンスがあると心の中で思う中、芦戸が一人だけ声を漏らしていた。

 

出久「オチとしては100点」

芦戸「え、あ、そう?」

峰田「ていうか緑谷お前…」

上鳴「そろそろはっきり決めたらどうなんだよ」

出久「誰を彼女にするのかって?」

 

 空気が止まった。

 

出久「今はいいかな」

上鳴「そうかもしれねぇけどよ!!」

峰田「麗日たちがこんなにもお前の事を想ってるんだぞ!!」

 

 と、上鳴と峰田が出久に怒鳴る。

 

リューキュウ「確かに気持ちは分かるけど、こればかりは当人の問題よ」

「!」

 リューキュウが大人の対応を見せた。

 

リューキュウ「私だって本当は今すぐにでも選んでほしいけど、彼を待つ事にするわ」

芦戸「高校生に手を出したら捕まるもんね」

リューキュウ「うん」

「いや、うんって!!」

リューキュウ「私としてはそうしてくれる方がありがたい!!」

「いや、結局自分の事しか考えてないし、それヒーローとしてどうなの!!?(大汗)」

リューキュウ「で、もう一つ話しておかない事があってね」

出久「何ですか?」

 

リューキュウ「今度、インターンシップがあるの知ってる?」

 空気が止まった。

 

出久「ええ。存じ上げておりますよ」

リューキュウ「今度はちゃんと来てね。グラントリノ今忙しいらしいから、電話かけても断られるわよ」

「どんだけだよ!!」

 

八百万「いや、ちょっと待ってください!! 結局出久さんを独り占めしたいんじゃないですか!!?」

お茶子「それやったらうちも…」

梅雨「たしかげんさくでも…」

リューキュウ「私が代わりのプロヒーロー紹介してあげるわね。ミルコっていうんだけど」

「あの人事務所持ってねーだろ!!!(大汗)」

 

リューキュウ「ていうか、クラスでずっと一緒なんだから我慢しなさいよ」

お茶子「そんな事言って絶対手を出すパターンやろ!!」

八百万「そうですわ!!」

 

 と、ヒロインズが醜い言い争いを行っていた。

 

オールマイト(…どうしよう。緑谷少年にはナイトアイの事務所もいいかなって思ったんだけど)

 オールマイトは陰から出久を見ていた。結局「ワン・フォー・オール」は引き継いでもらっていない。

 

出久「まあ、オールマイトが何も言ってこなかったらそうしますね」

お茶子「ちょ、デクくん!」

リューキュウ「約束よ! あ、オールマイトには私から言っとくから。言う必要ないと思うけど」

オールマイト「!!!(大汗)」

 

 そんなこんなでリューキュウとの話が終わって、リューキュウは帰っていった。

 

出久「ふー…」

 出久が一息ついた。

 

出久「罵倒したければすればいいさ」

峰田「お前って奴は…」

上鳴「勿体ねぇ…ああ勿体ねぇ勿体ねぇ…」

 

 峰田と上鳴は嘆いていた。

 

お茶子「デクくん…」

出久「何です?」

 出久がお茶子たちを見ると、お茶子たちは寂しそうな顔をしていた。

 

リューキュウ「ホンマにリューキュウの所に行くん?」

出久「まだ決定じゃないけどね。もしもオールマイトが何もしなかったら、行く予定」

耳郎「どうして行くんだよ!」

出久「多分もう手をまわしちゃってると思うよ。あのヒーローインタビューがまさにそうだし」

芦戸「大人ってきたなーい!!!」 

 芦戸が頭をかきむしった。

 

出久「まあ、明日の事は明日考えましょう」

 と、出久が暢気に言ってると、

 

耳郎「待てよ。出久」

出久「?」

 

 耳郎が出久に話しかけると、出久が耳郎を向いた。

 

出久「なあに?」

耳郎「その…」

 耳郎が頬を染めた。

 

芦戸「あ、分かった。出久、背中に何かついてるよ」

出久「あ、ホントだ。ありがとう」

 

 芦戸が糸くずを取って出久に見せた。

 

芦戸「これを教えたかったんだよね」

耳郎「いや、違う…」

芦戸「あ、違うんだ。じゃあ何?」

耳郎「えっと…」

 耳郎がもじもじしていた。

 

耳郎「その、出久はうちの事…どう思ってるんだよ…//////」

 空気が止まった。

 

(おおおおお…!!)

 と、一部の男子が反応した。

 

出久「大事なクラスメイトかな」

耳郎「そ、そうか…」

 耳郎が落ち込んだ。

 

出久「本当にそこまで僕の事を想ってくれて嬉しいよ。耳郎さんだけじゃなくて他の皆も」

切島「緑谷…」

出久「まあ、彼女を作ってもいいと思うんだけどね」

「!!」

 出久が口角を下げた。

 

出久「でもそれだと何かが変わってしまう気がするんだよね。相手がいるとどうしても気を遣う所があるし」

「緑谷…」

 すると、

 

「オレは応援するぜ。緑谷」

「!!」

 

 切島が口を開いた。

切島「芦戸達には悪りーけど、男が一度決めた事は簡単には曲げられねぇよ」

芦戸「切島…」

出久「ありがとう切島くん」

切島「オレだって最初は芦戸達を応援してた。そして何で緑谷はそれに答えようとしないんだって苛立ってたけど、緑谷は中途半端な覚悟でここに臨んだんじゃない。本気なんだ。オレはその本気になった男の覚悟を最後まで見届けたい」

芦戸「切島…」

 芦戸が切島を見つめると、笑みを浮かべた。

 

芦戸「…そっか。そうだったね」

「!!」

芦戸「アタシはそう言う所も含めて、出久の事を好きになったんだった」

出久「芦戸さん…」

芦戸「アタシも待つことにするよ。その代わり、ちゃんと最後まで貫いてよね!」

出久「ロンモチ」

 出久が親指を立てると、他の4人も苦笑いした。

 

梅雨「…わたしたちもまちましょう」

耳郎「そうだな」

八百万「ええ」

お茶子「それがデクくんやもんね」

 

 と、自分に言い聞かせるように納得した。

 

出久「ありがとう。切島くん」

切島「いいって事よ」

 そう言って切島は親指を立てるのだった。

 

 

 その夜、

 

「待ってるわよ出久くん。私はいつまでも…」

 

 自室でリューキュウは出久の写真を見つめていた。

 

 

つづく

 

 




キャラクターファイル43

鍬形 博 

オリジナルキャラクター。
アゲハガールの夫であり、学者である。
昆虫を自在に操る個性を持っていて、
そのうえ紳士的な性格である為、アゲハガールに猛アタックされて結婚。


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第44話「6人目の女・3」

 

 

 リューキュウという強力なライバルが現れて、気が気じゃないお茶子、八百万、耳郎、梅雨、芦戸の5人。

 

 リューキュウが言っていた通り自分達は学校もクラスも一緒で、出久と一緒にいる時間は多いので圧倒的に有利ではあるが、一緒にいるからこそ出久がどういう人間かよく分かっている為、苦労していた。

 

お茶子(はぁ…)

 

八百万(出久さんが夢をかなえない限り、振り向いてくれませんものね…)

 

梅雨(こればかりはしかたないわ)

 

耳郎(出久だけじゃなくてうちらもレベルアップしなきゃいけねぇしなぁ…)

 

芦戸(でもやっぱりリューキュウは大人の女って感じだもんね…)

 

 と、悶々していた。

 

 そんなある日の事だった。

 

相澤「今日は先輩たちと交流を深めてもらう。この3人に来てもらった」

 

 と、1年A組の教室に3人の生徒がやってきた。1人は金髪で長身の男子生徒・通形ミリオ、2人目はひょろひょろとして暗そうな男子生徒・天喰環、そしてもう1人が明るい女子生徒・波動ねじれだった。

 

峰田「おい緑谷! あの女の先輩には手を出すなよ!」

出久「OK。ノータッチでいこう」

ねじれ「えー!! 仲良くしようよー!」

 

 峰田と出久がボソボソ話をして、ねじれには話しかけないように打ち合わせをしたが、ねじれに聞かれていた。

 

ねじれ「あ、私は波動ねじれ! リューキュウの事務所でインターンやってるんだよ!」

「!!!?(大汗)」

 

 A組の生徒は察した。これは修羅場の予感がすると…。

 

出久「そうなんですかー」

峰田「おいィィィィィィィィ!! フラグ建造してるじゃねぇか!!」

上鳴「インターンマジでリューキュウの所に行くの!!?」

出久「オールマイトが何も言わなかったらね」

上鳴「オールマイトー!! 来てくれー!!」

峰田「いつもみたいに『私が来た!!』って言ってくれー!!!」

 

 と、上鳴と峰田が騒ぐと相澤が個性を使った。

 

相澤「合理的に欠ける真似はよせ」

上鳴「全然合理的ですよ!!」

峰田「このままだと相澤先生に全部とばっちり来る可能性があるんですよ!!? リューキュウから!!」

相澤「……」

 

 相澤が考えた。

 

「…相澤先生?」

相澤「オールマイトさんを呼んでくる」

「おいコラクソ教師!!!」

「最低か!!!」

 

 自分にマイナスな事は絶対に避けたい相澤は、ねじれ達をほっぽりだして、オールマイトを呼びに行った。

 

 そして沈黙していた。

 

ミリオ「よし、それじゃ皆!」

 通形ミリオが先陣を切った。

 

ミリオ「オレと勝負してみないか!?」

 と、言い放つと、A組の生徒は驚きを隠せなかった。

 

切島「せ、先輩たちと!!?」

瀬呂「勝てるかなぁ…」

ミリオ「勿論A組全員でのハンデ付きだ!」

「!!」

 

環「ミリオ…。そんな大口叩いていいのか…!?」

ミリオ「まあ、半年もやってるからどれだけ強くなってるのか確かめたいと思うんだよね」

環「それはそうだけど…」

ねじれ「それはいいけどー」

 ねじれが出久を見た。

 

ねじれ「あ、そうだ。出久くんだっけ? リューキュウがインターンシップ来てくれって。大丈夫かな?」

出久「今のところは…」

 

 その時だった。

 

相澤「緑谷」

 相澤とオールマイトがやってきた。

 

出久「相澤先生」

相澤「インターンシップだが、サー・ナイトアイ事務所に行け」

オールマイト「私の元サイドキックなんだ…」

ねじれ「え~~~~~!!!?」

 ねじれが反応した。

 

ねじれ「どうしてぇ!?」

オールマイト「いや、どうしてってねぇ…」

 その時だった。

 

お茶子「私もナイトアイ事務所に行った方が良いと思います」

八百万「私もです」

耳郎「うちも」

梅雨「そのほうがいいわ」

芦戸「うんうん。間違いない!」

ねじれ「ちょっとー!! そんなの横暴だよ! ここは出久くんに決めさせよう!? どこ行きたい!?」

出久「間を取ってファットガム事務所」

環「絶対イヤ!!!」

 環が叫んだ。

 

環「死にたくない!!!」

ミリオ「いや、死にはしないだろ」

ねじれ「どーしてー!!?」

出久「いや、少なくともナイトアイ事務所は嫌な予感がするんだよね…」

 出久の言葉に皆が首を傾げた。

出久「リューキュウ事務所もいいかなーって思ったんだけど、ファットガムが無難かな」

環「オレが無難じゃなくなるので、他をあたってください(汗)」

ねじれ「大丈夫だよー。受け入れるのは出久くん1人だけだって言ってたし、私もついてるから! ていうかよくよく考えたら相澤先生もリューキュウの所に行かせたら、リューキュウから色々怒られずに済むよ?」

相澤「…言われてみればそうだな」

オールマイト「いや、あの、相澤くん!!?(大汗)」

 オールマイトが考えたその時だった。

 

ねじれ「それじゃこうしましょ! もしもミリオくんと貴方達A組が戦って、ミリオが勝ったら出久くんはリューキュウの事務所! あなた達が勝ったらナイトアイの事務所ね!」

ヒロインズ「乗ったぁ!!」

(ええええええええええええええええええ)

 男子たちと葉隠は完全にとばっちりだった。

 

出久「こりゃあ面白いことになって来たでぇ」

峰田「何他人事みたいに言ってんだよ緑谷ぁ!!」

上鳴「お前のせいだからな!!!」

 峰田と上鳴が激昂した。

 

オールマイト「いや、その…」

相澤「ハァ…。どこまでも非合理的な奴らだ」

 そんな生徒達を見て、オールマイトはオロオロし、相澤が額を抑えた。

 

 こうして、午後の実習で勝負をすることになった。

 

出久「自分で決めてもこれだもんなぁ…」

 と、出久が一人で食堂に向かっていると、テレビにあるニュースをしていて、それは目に移った。

 

『きょう未明、指定敵組織『死穢八斎會』の本部で大規模な戦闘が行われ、死穢八斎會の若頭である治崎廻容疑者らが児童虐待容疑、危険物密造の容疑で逮捕されました』

 

出久「へー…」

 次の瞬間、出久は目を疑った。

 

『治崎廻容疑者らの逮捕に貢献したのは広島のプロヒーローチーム『WONDER BOY』で、首謀者であった治崎廻容疑者を撃破したのは、WONDER BOYリーダー・古堂和哉さんとの事です』

出久「!!?!」

 

 すると映像には3人の男が映っていて、そのうちの2人は孫と飛鳥だった。そしてもう1人が古堂和哉らしき人物と思われる、目に大きな隈がある男だった。

 

『また、WONDER BOYは治崎廻容疑者に虐待されていたと思われる少女を保護したとの事で、警察は詳しく調査を進めています』

 

 

出久「……」

 

 

つづく

 




キャラクターファイル44

波動ねじれ

雄英高校トップスクールヒーロー「BIG3」の1人。
リューキュウの事務所でインターンシップを行っている。
天真爛漫で天然ボケ気質だが、やる時はやる。
リューキュウののろけ話にサイドキックたちが呆れる中、
彼女はいつも通り聞いている…。


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第45話「6人目の女・4」

 

 

 孫や飛鳥達が『死穢八斎會』という敵と戦っていたことに衝撃を受けた出久。

 

出久「……」

 

 出久が教室に帰ってくると、

 

「緑谷!!!」

 

 と、上鳴や峰田を筆頭にクラスメイト達がやってきた。

 

上鳴「お前ニュース見たか!!?」

峰田「古堂さんや一丈字が死穢なんとかと戦ってたって…」

出久「いやあ、驚いたなぁ」

 

 出久がすっとぼけたように言い放った。

 

出久「まあ、和哉さんの実力を考えれば当然と言えば当然かな。でも死穢八斎會と戦うなんて…」

「!!?」

 

 出久の言葉に皆が驚いた。

 

瀬呂「知ってるのか!? 奴らの事を!」

出久「ちょっとだけだけどね。さて、そんな事よりも…3年生との練習試合に集中しようか」

 

 そして体育館に移動する。

 

ミリオ「さあ、どっからでもかかってこい!!」

 と、ミリオが構えた。

 

常闇「待ってください」

「!?」

 

 常闇が口を開いた。

 

常闇「我々にハンデがあるとはいえ、敵との戦闘も経験しています」

切島「そんなに心配されるほど、オレら雑魚に見えますか!?」

 

 と、切島も続いた。

 

ミリオ「まあ、だからこそだよね」

「!」

ミリオ「さあ、かかってきなよ!!」

 

 こうしてミリオとA組(爆豪、轟のぞく)との戦いが始まったが、3年生というだけあり、ミリオはA組を圧倒していった。

 

爆豪「何でオレらは見学なんだよ!!」

相澤「仮免落ちた以上、戦いに入っても時間の無駄だ。見てろ」

 

 相澤が捕縛布で爆豪をしばりつけていた。轟が見学している。

 

上鳴「主戦力がー!!!」

峰田「どうしても黒星つけたくないだけだろ…ぐはっ!!」

 

 残ったのは出久だけになり、それ以外の生徒は腹を抑えて倒れていた。

 

出久「あらまあ」

ミリオ「さて、残るは君だけだ!!」

 

お茶子「デ、デクくん…!」

八百万「お気をつけて…!!」

 

 ヒロインズも腹を抑えながら出久を見た。

 

出久「僕を最後にするあたり…出来るな」

ミリオ「さあ、かかってこい!!」

 

 と、出久とミリオが激闘を繰り広げた。あまりにもレベルが違う戦いにA組の生徒は絶句した。

 

 

轟「強い…」

相澤「それはそうだ」

 

 轟の言葉に相澤が反応した。

 

相澤「あの男の元で修業していた緑谷はともかく、通形もプロを抑えて次期NO.1ヒーロー候補と呼ばれている。当然の結果だ」

 

ねじれ「……!!」

環「あのミリオにあそこまで…!!」

 

 環も驚いていたが、ねじれは何か見とれていた。

 

ヒロインズ「!!!!」

 

 ねじれの様子を見て、ヒロインズはとてつもなく嫌な予感がした。

 

相澤「そこまで」

 相澤が個性を使って止めようとしたが、出久とミリオは個性を使っていない為、意味がなかった。

 

相澤「……」

轟「先生…」

 相澤が睨みつけたが、二人とも気づいていない。

 

ねじれ「せんせー。結局出久くんのインターンどうするの?」

環「は、波動さん…(汗)」

 

 そして…

相澤「元気があって宜しい(怒)」

 相澤が飛び出して二人を捕縛布で捕らえた。

 

ミリオ「いや、マジでごめんってイレイザーヘッド」

出久「ごめんちゃい」

 

「え~~~~~~~~~~~!!!!?」

「何で試合止めるんだよ!!」

相澤「なんか言ったか…!!」

 

 と、生徒達が止めるが、相澤が有無を言わせまいと瞳孔を開いた。

 

お茶子「インターンどないすんねん!!」

八百万「そうですわ!!」

耳郎「その為に戦ってたんでしょうが!!」

梅雨「けっきょくどうするの?」

芦戸「最近横暴が過ぎるよ!!」

「陰キャ!!」

「噛ませ犬!!」

「ビッグマウス!!」

 

 どこからともなく現れた外野を相澤は追いかけまわした。

 

 

ミリオ「…まあ! 色々あったけどこんな感じさ! 長くなったけど言葉よりも経験で伝えたかったんだ!! まあ、インターンをやるにあたって我々は「お客様」ではなくて、1人のサイドキック! プロと同列で扱われるよ! 時には人の死にも立ち会うし、怖い思いもするけど、全ては学校じゃ手に入らない! インターンで得た経験を力に変えたのだ!! やって損はないと思うよ!! 以上!」

 

 ミリオがそう言うと、1年生たちは拍手した。

 

上鳴「確かにそんな感じはあったな…」

耳郎「まあ、ここからが正念場って所だよね」

 

 こうして、ミリオ達との交流は幕を閉じたが…。

 

ねじれ「ねえねえ出久くん。うちに来てくれるよね!?」

 解散後、ねじれが出久に話しかけた。

 

お茶子「あっ!!」

芦戸「ちょっとー!!!」

オールマイト「いや、緑谷少年はナイトアイ事務所に…」

相澤「……」

 

 出久が考えた。

 

出久「ごめんなさい。ちょっと電話しないといけないので…」

 出久がそう言って去っていった。

 

八百万「出久さん…」

梅雨「やっぱり一丈字ちゃんたちがしんぱいなのね」

ミリオ「彼らと知り合いなのかい?」

 ミリオが梅雨達に話しかけた。

 

切島「え? 先輩たち知り合いなんですか!?」

ミリオ「オレはね! あの双葉頭の子がいたでしょ!」

梅雨「孫さん?」

ミリオ「いやあ、孫くん本当に強かったよね! オレ負けちゃって…」

「!!?」

 

 ミリオの言葉に生徒達は驚いた。

 

切島「先輩が負けた!!?」

瀬呂「あの死穢八斎會と戦う程だもんな…。そりゃ強いか…」

爆豪「……!!!」

 

 爆豪が歯ぎしりした。

 

お茶子「そ、そういえば孫さんや一丈字くんと一緒に写ってたあの目つきの悪い人って…」

ミリオ「ああ。和哉さん? いやあ…あの人とは戦った事ないけど、多分勝てないかなぁ…」

 ミリオが苦笑いした。

 

上鳴「そりゃプロヒーローだから…」

「プロヒーローだからじゃないよ」

 環も話しかけた。

 

環「…あの人は、雄英のプロヒーロー達よりも遥かに強い。イレイザーヘッド何かボコボコにされたしね」

「!!?」

 環がガタガタ震えながら話しかけた。

 

環「そりゃあもう凄惨だったよ…。あの時、和哉さん VS 雄英高校プロヒーローで戦ったんだけど、和哉さんが個性でイレイザーヘッドを洗脳して、皆の個性を使えなくしたんだ」

「洗脳系の個性!?」

「そういや洗脳系と言えば…」

 

環「イレイザーヘッドの意識はあったままなんだ。精神は操らず、脳だけ操ったって感じ」

「……」

環「戦った瞬間に、イレイザーヘッドの脳を支配してずっと個性を使わせ続けたんだ。当然他のプロヒーロー達は個性が使えなくなってパニック状態。異形型は効かなかったけど、瞬時に和哉さんに殴られてダウン」

「!!?」

 

 環が言葉を続ける。

 

環「更に恐ろしいのが…」

「?」

環「和哉さんはイレイザーヘッドの個性を全く受け付けずに、炎の弾を手から出してプロヒーローを一人ずつ倒していった」

「!!?」

 

 環が冷や汗をかいた。

 

環「そりゃあもう悪夢だったよ…。プロヒーロー達が次々と地面に這いつくばる姿を目の前で見たときは。夢が壊れたって感じがして、ただただ…絶望しかなくて…怖かった」

 

 環の言葉にお茶子たちは絶句した。

 

環「そんな人の弟子だって知った時にはもう生きた心地がしなかったよ」

ねじれ「もう私泣いちゃった…」

ミリオ「まあ、そういう事もあって今があるんだよね!!」

 

 ミリオがフォローしたが、和哉のヤバさ加減にA組の生徒達はただただ絶句するしかなかった…。

 

 

 

つづく

 




キャラクターファイル45

通形ミリオ

雄英高校のトップスクールヒーロー「BIG3」の1人。
ユーモアあふれる人物であり、ギャグも良く言ったりして和ませている。
オールマイトの元サイドキックであるサー・ナイトアイの元で
インターンシップを行っている。
また、自分の身体を透過させる個性をトップになるまでに
強化させた努力家の一面もある。



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WONDER BOY 編
第46話「出久のインターンシップ」


 

 ミリオ達と別れた後、出久はある人物に電話をかけた。

 

「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥くん? 僕だけど…」

「あ、出久? どうしたの?」

 

 電話の相手は兄弟弟子である一丈字飛鳥だった。

 

出久「死穢八斎會と戦ったんだって?」

飛鳥「そうなんだよ。実は孫さんが街を歩いてたら女の子を保護してきてね…」

 

 と、そのまま話し込んだ。

 

飛鳥「で、その壊理っていう女の子の個性を使って、死穢八斎會は『個性消失弾』っていう武器を作ってたんだ」

出久「まー…」

 出久が困惑した。

 

出久「で、壊理ちゃんは保護できたの?」

飛鳥「うん。今こっちにいるよ」

出久「飛鳥くん達は大丈夫?」

飛鳥「大丈夫だよ。オレはちょっと入院する事になったけど…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「和哉さんも孫さんもダメージは受けたけど、入院するほどじゃないって」

出久「そっかー。そりゃ良かった」

飛鳥「心配してくれてありがとう」

出久「まあ、死穢八斎會程になればねー。じゃーまた今度ねー」

飛鳥「はーい」

 

 飛鳥が電話を切って、出久が一息つくと、捕縛布にまかれそうになったのを避けた。そこには相澤やA組の面々がいた。

 

出久「何ですの」

相澤「さっきの電話について、詳しく聞かせて貰おうか」

出久「それを知ってどうするつもりですか?」

相澤「黙ってオレの言う通りにしろ」

爆豪「教えろや!! クソデクが!」

 ヒロインズが心配そうに見つめている。

 

「オレの弟子に何か御用ですか?」

 

「!!?」

 

 と、ある人物が現れた。古堂和哉である。

 

和哉「イレイザーヘッド」

相澤「古堂!!」

「!!?(大汗)」

 

 和哉から放たれる異質な気にA組は足元がすくんだ。

 

和哉「此間は弟と部下が世話になったようで。あとカウキングも」

相澤「ここに一体何しに来た!!」

和哉「……」

 

 和哉が相澤を見つめる。

 

和哉「相変わらず人のやる事に首を突っ込むのが好きみたいですね。ですが…アナタが知る必要はない」

相澤「オレはこいつの担任だ」

和哉「生徒のプライバシーに首を突っ込みすぎるのも、如何なものかと思いますがね」

相澤「合理的に欠ける奴だ…!!」

和哉「それはお互い様ですよ」

 相澤が和哉を睨みつけるが、和哉も相澤を睨みつけた。

 

和哉「またやられたいのであれば、お相手致しますよ」

 

上鳴(ひぃいいい~~~~~~~~~!!!!(泣))

峰田(天喰先輩が言ってた通り圧力半端ねぇ~~~~!!!(泣))

 

 和哉の怒気に生徒のほぼ全員が震えあがっていた。

 

和哉「…というのは冗談ですよ。オレは喧嘩を吹っかけに来たんじゃない。死穢八斎會の件で色々忙しいですからね」

爆豪「な、なんだてめぇ!!」

 爆豪が前に出た。

 

爆豪「いきなり現れて何だぁ!!?」

切島「よせ!! 爆豪!!」

瀬呂「殺されるぞ!!」

和哉「……」

 

 和哉は爆豪を一瞬見ると、出久を見た。

 

和哉「久しぶりだな。出久」

爆豪「無視してんじゃねぇや!!」

 と、爆豪が突っかかったが、和哉は微動だにしなかった。

 

 次の瞬間、爆豪の動きが止まった。

 

爆豪「な、なんだ!? 体が…」

 

 すると爆豪は突如身体が浮いて、そのまま壁に叩きつけられた。

 

爆豪「ぐはっ!!」

「爆豪!!!」

 

 切島、上鳴、瀬呂が爆豪に駆け寄った。

 

和哉「随分行儀の悪い生徒もいるモンだな…」

爆豪「……!!」

 

出久「あの、和哉さん。ここには…」

和哉「……」

 

 和哉が出久を見つめた。

 

和哉「死穢八斎會の現場に近かったもんでな。顔を出しに来た」

出久「そ、そうですか…」

 

 出久が困惑した。

 

和哉「オレの気配は察知できてないあたり、少し体が鈍ってるようだな」

出久「…やっぱり分かりましたか」

(あれで!!?(大汗))

 

爆豪「こ、この…!!」

 爆豪が和哉を睨みつけた。

 

瀬呂「よせって!!」

爆豪「このまま舐められてたまるかぁあああああああああああ!!!!!」

 

 爆豪が再び和哉に突っかかった。

 

和哉「遊んでやれ。出久」

出久「はい」

 

 すると瞬時に出久が爆豪を取り押さえた。

 

「!!?」

爆豪「は…離せぇ!!」

出久「もう無理だよかっちゃん」

爆豪「何が無理だぁあああああああああ!!!!」

 

 と、爆豪が個性を放とうとしたが、個性が出なかった。

 

「!!?」

爆豪「な、なんだ!!? 何故個性が出ない!!」

出久「……」

 

 個性が出なくなって慌てる爆豪に出久は無言を貫いた。

 

和哉「もうお前はオレの術に嵌っている」

爆豪「!!?」

 

 和哉が爆豪の前に現れた。

 

和哉「そしてお前は本気でない出久に完膚なきまでに抑えられている。これが実践なら…どうなるか分かるだろう。お前ならな」

爆豪「……!!」

 

 爆豪が和哉を睨みつけたが、和哉は冷徹に爆豪を見下していた。

 

和哉「お前の負けだ」

「……!!」

 

 和哉の実力を見て、生徒達と相澤は絶句した。

 

和哉「そのまま取り押さえていろ。出久」

出久「はい」

 和哉が相澤を見つめていた。

 

和哉「死穢八斎會の件については口を挟まないで貰おうか」

相澤「お前に何の権限があって…!!」

和哉「それもお互い様だろう」

 和哉が出久に対して超能力をかけた。

 

相澤「緑谷に何をした!!」

和哉「なあに。ちょっとした細工をした。こいつが死穢八斎會の事を喋ろうとしたら、アンタのマズい秘密がこいつの後ろからイメージで出てくるようにな」

「!!?」

 相澤が驚いた。

 

相澤「オレに脅しをかけているのか…!!」

和哉「脅し? 脅すも何も100%あんたに落ち度がある話だぜ。校長先生が聞いたら発狂するだろうよ」

 和哉が不敵な笑みを浮かべた。和哉は微笑むことは一切なく、口元だけ笑みを浮かべるのだが、これがまた怖い。

 

相澤「てめぇ…!!!」

和哉「話したところで何かする訳でもあるまい。ましてやその横暴さでアメリカのヒーロー達から嫌われてるんだろう。人の事より自分のことを心配しろ」

「!!?」

 と、和哉が出久を見た。

 

和哉「それじゃあ、元気そうなのも確認できた。オレは帰る」

出久「あ、はい。お疲れ様でした」

 その時だった。

 

「あ、和哉さん!」

 ねじれが話しかけてきた。

 

和哉「お前は…」

ねじれ「波動ねじれ! リューキュウ事務所のインターン生だよ! あのねあのね! 出久くんをリューキュウの事務所に入れたいんだけど!」

和哉「ああ…。本人からも電話があったぜ。驚きだよ」

 和哉があざ笑うように言い放った。

 

和哉「そんなもの出久に決めさせろ。人に言われてやるようじゃ話にならん」

 和哉が出久に背を向けた。

 

和哉「…そう教えた筈だったな」

出久「ええ」

 

 出久が和哉の方を見た。

 

出久「ねじれ先輩。ごめんなさい」

ねじれ「!?」

出久「それから相澤先生も」

相澤「?」

 

 出久が真剣な顔をした。

 

 

 

出久「僕…和哉さんの所に行きたいです」

 

 

 

つづく

 




キャラクターファイル46

天喰 環

雄英高校のトップスクールヒーロー「BIG3」の1人。
実力は申し分ないのだが、メンタル面が脆い。


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第47話「出久の決断」

 

 

 

和哉「……」

 

 自分の所に行きたいという出久に対して、和哉は口を閉じる。

 

ねじれ「えーっ!!?」

環「波動さん」

 

 文句を言おうとするねじれに対して、環が止めた。

 

和哉「飛鳥の事か?」

出久「違います」

 

 出久は真剣な表情で和哉を見つめた。

 

出久「言われた通り、この雄英高校でいろんなことを学んできました。新しい人たちとの出会い、最高の環境での救助訓練や戦闘訓練。職場体験でもWONDER BOY以外の事務所でお世話になりました。今日までこの素晴らしい仲間たちと一緒に頑張ってきました。貴方『達』のようなヒーローになる為」

「!!」

 

出久「僕の成長した姿を、和哉さん。あなたに見て欲しいんです」

和哉「……」

 

 和哉が口角を下げて俯いた。

 

和哉「…暫く会わないうちに随分に言うようになったな」

「!!」

和哉「これもイレイザーヘッドの教育の賜物か?」

出久「そうかもしれませんね」

相澤「ちげぇよ」

ミリオ「まあまあまあ! ここは空気を読んで…」

爆豪「って! いい加減離せクソデクが!!」

 爆豪が暴れるが、出久を取り押さえていた。

 

和哉「もういい。離してやれ」

出久「はい」

 出久が爆豪を話すと、切島たちが爆豪を退場させた。

 

和哉「……」

 和哉が目を閉じた。

 

和哉「イレイザーヘッド」

相澤「何だ」

和哉「ナイトアイ事務所に行く話になったと聞いているが…」

相澤「それはオールマイトが…」

 

「話は聞かせて貰ったよ」

 

 オールマイトが現れた。

 

「オールマイト!!」

 皆がオールマイトを見ると、オールマイトと和哉は見つめ合った。

 

オールマイト「久しぶりだね。和哉くん」

和哉「お久しぶりです」

「!!」

 皆が反応した。

 

和哉「ナイトアイの事務所に行くと聞いていますが?」

オールマイト「そうなんだよ」

和哉「それは…出久が自分で決めたんですか?」

オールマイト「いや…」

和哉「なら、自分で決めさせてください」

オールマイト「けどね…」

和哉「……」

 和哉が考えた。

 

和哉「分かった。死穢八斎會の情報を全部あんた達に渡す。その代わり、出久のインターンは自分で決めさせろ」

「!!?」

オールマイト「か、和哉くん!?」

和哉「アンタが無理ならオレからナイトアイに話す。日本ヒーローの信用がまた下がる前に手を打っておかないといけないからな」

 和哉の発言に皆が驚いた。

切島「日本ヒーローの信頼が下がるって…!!」

和哉「カウキングというヒーローに前にあった事があるだろう」

「!!」

和哉「今、アメリカでは日本のプロヒーローに対してあまり良い感情を抱いていない。お前達にも心当たりがあるだろう」

 

 和哉の言葉にはっとなる生徒達。

 

オールマイト「わ、分かった…。そこまで言うなら…」

和哉「感謝するよ」

 和哉が出久を見た。

 

和哉「さて、改めて聞こう。どこに行きたいって?」

出久「和哉さんの所です」

和哉「……」

 

 和哉が考えた。

 

和哉「今度の土曜日、島に帰ってこい」

「!!?」

 

和哉「孫と戦って貰う。そこでお前が使えるかテストする」

出久「分かりました」

 

 和哉の言葉に対して出久は承諾した。

 

切島「そ、孫って…」

瀬呂「確か…」

和哉「オレの弟だ」

「!!」

 

 和哉が切島と瀬呂を見た。

 

和哉「遅れたが、弟子がいつも世話になってるな。感謝している」

「あ、いえ…(汗)」

爆豪「……!!(激怒)」

 

 爆豪が和哉を睨みつけるが、和哉はまた無視して出久を見つめる。

 

和哉「交通費はこっちで負担する」

出久「ありがとうございます」

和哉「じゃあな」

 

 そう言って和哉は黒い炎に包まれて消えた。

 

「……!」

 

出久「……」

お茶子「デクくん…」

 お茶子をはじめ、ヒロインズは心配した。

 

瀬呂「あれ? 土曜日?」

 瀬呂が考えた。

 

瀬呂「って、土曜日って明日じゃんか!!!」

「えええええええええええええ!!!!?」

 

 瀬呂の言葉に皆が驚いた。

 

出久「しょうがないよ。和哉さん忙しいもん。外出許可証を貰わなきゃ」

 すると根津がやってきた。

「?」

 

根津「あ、緑谷くん。外出許可証なら和哉くんが手配してるのさ!」

「!!?(大汗)」

出久「流石和哉さんだ…」

上鳴「いや、お前の師匠ってマジでどうなってんだよ!!!(大汗)」

峰田「死ぬかと思った…(汗)」

 

 上鳴が慌てて突っ込むと、峰田はぐったりとした。

 

 そして夕方、出久は支度を済ませて…。

 

出久「じゃあ行ってくるね」

「お、おう…」

 ハイツアライアンスの前で仲間たちに見送られる出久。

 

お茶子「ホンマに大丈夫?」

出久「大丈夫」

 出久がお茶子を見つめる。

 

出久「いつもありがとう」

お茶子「え?」

出久「僕は本当に幸せ者だ」

お茶子「デクくん…」

芦戸「絶対クリアしてくるんだよ!」

 芦戸がずいっと割り込んだ。

 

梅雨「あなたならだいじょうぶよ。出久ちゃん」

耳郎「でも無理すんなよ」

八百万「ご武運をお祈りします」

出久「ありがとう」

 

 と、梅雨、耳郎、八百万にも励まされて、出久は去っていった。

 

「……」

 

 生徒達は出久の背中を見つめた。

 

瀬呂「何か…緑谷が遠いな」

常闇「ああ…」

 

 瀬呂のつぶやきに常闇が答えると、爆豪が何か考え込んでいた。

 

 広島のとある病院

 

飛鳥「え!? 出久こっちに帰ってくるんですか!?」

 飛鳥が驚いていた。

 

和哉「ああ」

飛鳥「……」

 飛鳥が考えていた。

 

飛鳥「出久…もしかして…」

和哉「余計な詮索をするな」

 

 和哉が飛鳥に背を向けた。

 

和哉「悪事をしている訳じゃない。好きにさせてやれ」

飛鳥「……」

 飛鳥が考えていた。

 

飛鳥(出久…)

 

 その夜。出久は広島のホテルで外泊をしていた。

 

出久「……」

 出久はベッドであおむけになって天井を見つめていた。

 

 そして静かに思い出す。修業の日々。

 

体が言う事を聞かず立ち上がれず、修業を打ち切られ、和哉が自分の元から去った事。

 

和哉が自分の為に学校に乗り込んで、守ってくれた事。

 

中学卒業時、和哉が出久に対してヒーローとしての道を示した事。

 

 

 

 そしてそんな事を考えているうちに、出久は眠りについた。

 

 

つづく

 




キャラクターファイル47

古堂 和哉

オリジナルキャラクター
特殊ヒーローチーム「WONDER BOY」のリーダーで、
地元である虹島では数百人のごろつき達を纏めるボスでもある。
本作では出久の師匠にあたり、出久を鍛え上げた張本人。
言動がいちいち怖く、シリアスな場面しか出てこない。


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第48話「出久の本気の戦い(前編)」

 

 

 そして朝が来た。

 

出久「……」

 

 出久は起き上がってすぐに窓から見える朝日を見つめた。

 

出久「眩しい…」

 

 支度を済ませると、レストランで朝食を取り、ホテルに戻ってチェックアウトを済ませた。

 

 そしてインターンシップの試験会場となる虹島行きの船を30分待って乗り込んだ。

 

出久「ここに帰るのも久しぶりだな…」

 出久がそう呟いていた。

 

 

「…おい、あそこにいるの緑谷じゃね?」

「あ、ホントだ」

 

 A組の面々が別の船から出久を見ていた。ついてきたのである。

 

出久「うーん。あそこに八百万さんちの船があるけど、絶対来てるなー。絶対来てるなー。どうするつもりだろ」

 

 船は30分後に虹島の港に到着した。

 

出久「さーて、ただいまーって感じなんだけど皆がいるしなー」

 出久が船から降りてくると…。

 

「あ、出久くーん!!」

 

 と、赤い髪の女性が手を振った。

 

出久「あ、未来さん!」

 出久が未来と呼ばれる少女の元にやって来た。

 

未来「久しぶり! 元気にしてた?」

出久「はい」

 

 と、出久と未来が話をしているのを陰からA組は見守っていた。

 

お茶子「誰…あの人…!!」

八百万「また女性が…」

芦戸「日向と椿だけじゃなかったんだね…」

耳郎(…胸は、仲間か)

梅雨「ゲロゲロ」

リューキュウ「流石出久くんね…」

ねじれ「違うよー。あの人は大空未来ちゃんって言って、孫くんの彼女だよ」

「!!?」

峰田・上鳴「彼女ぉ!!?」

 

 峰田と上鳴がねじれを睨んだ。

 

ねじれ「で、和哉さんとも仲がいいから多分迎えに来たんじゃないかな。飛鳥くん入院してるから代わりに…」

リューキュウ「あ、そういやあのボウヤなら昨日退院したって言ってたわよ」

ねじれ「そうなんだ!」

リューキュウ「とにかく行くわよ!!」

芦戸「いや、何で普通にリューキュウいんの」

リューキュウ「細かい事はいいのよ!!」

 

 と、A組は未来と出久を追いかけて東の方まで向かった。するとそこにはスタジアムが…。

 

切島「な、なんだこのスタジアム!」

リューキュウ「ああ。ここで1年に1回格闘大会が行われるのよ。天下一武道会みたいなやつ」

「!!?」

リューキュウ「で、出久くんは少年の部で準優勝だったわねぇ…」

 

芦戸「優勝は?」

リューキュウ「あのボウヤよ」

ねじれ「飛鳥くん」

「!!?」

 リューキュウとねじれの言葉に三奈が驚いた。

 

上鳴「それはそうと…何かスタジアムに人多くね?」

「!」

 

 そう、スタジアムの周りには沢山の見物客が来ていた。

 

「……!」

リューキュウ「私達も行きましょ!」

 

 そしてスタジアムの中では…。

 

「皆さん! 大変長らくお待たせしました!! これより! エキシビションマッチを開催したいと思います!!」

 

 女性アナウンサー・陽炎陽子のアナウンスで会場は盛り上がった。

 

上鳴「すげぇ…」

瀬呂「もしかしてお客さん…島の人たちか?」

 

陽炎「今回の対戦カードはこちらだ!!」

 

 と、モニターに出久と孫の写真が表示された。

 

お茶子「デクくん!!」

 

陽炎「それでは両選手に登場してもらいましょう!!」

 

 と、出久と孫が現れた。

 

八百万「出久さん!!」

芦戸「がんばれー!!!」

 

 舞台の上で出久と孫が向かい合っていた。孫は黒い道着を着ているのに対し、出久は雄英のジャージだった。

 

陽炎「雄英高校ヒーロー科の生徒となって帰ってきた緑谷出久選手が古堂孫選手に挑みます!! それでは両者前へ!!」

 

 孫と出久が前に出て、互いに礼をした。そして高台から和哉が見守っていた。

 

孫「かかってこい!!」

出久「お手合わせ。願いします」

 陽炎が笑みをこぼした。

 

陽炎「いざ尋常に!! はじめ!!」

 

 すると出久と孫が大地を蹴って、取っ組み合った。

 

「!!」

 

 お互い離すと、出久がパンチとキックを繰り返して攻めていき、孫が拳で受け止める。そして孫が出久にパンチを繰り返すがとても速い。

 

 

「!!?」

陽炎『おおーっと!! しょっぱなから激しい攻防戦だ!! お互い譲らないぞー!!!』

 

 あまりの激しさにA組の生徒達は絶句していた。

 

上鳴「な、なあ…。緑谷…何か滅茶苦茶強くね…?」

瀬呂「ああ…」

 

 上鳴と瀬呂は言葉を失っていた。

 

障子「あいつ…もしかして、オレ達に対して全く本気じゃなかったのか…?」

「!!?」

 皆が障子を見つめた。

 

青山「何か…本当の自分がさらけ出せたって感じだよね。今の彼…とても輝いてるよ」

常闇「ああ…」

 常闇が出久の顔を見た。

 

常闇「気のせいかとても楽しそうだ」

障子「楽しそうどころか、笑ってるぞ。あいつ」

「!!!」

 

 障子に言われて皆が言われたとおりに出久を見ると、孫の攻撃に苦戦しつつも、出久は確かに笑っていた。

 

相澤「まるで実家のような安心感だな…」

オールマイト「……」

 変装している相澤とオールマイトも見守っていた。

 

オールマイト(緑谷少年…)

 

 オールマイトが出久を見つめていた。

 

オールマイト(私は今まで君に個性を受け継がせたかった。だが、君は断り続けた…。その理由が今分かった)

 

 オールマイトが笑った。

 

オールマイト(今の自分に誇りを持っている! だからどんな逆境が来ようともそうやって笑ってられるんだ! ならば私もその思いにこたえよう)

 

 出久が地面に向かってパンチをすると、孫が飛び上がった。

 

「飛んだ!!?」

陽炎『おおっと!! 孫選手は何を仕掛けてくるのでしょうか!!』

 

 爆豪達が空を見上げると、飛鳥が瞬時に陽炎の所に現れて、陽炎をお姫様抱っこして苦し、空を飛んだ。

 

「!!?」

 

陽炎「あ、ありがとう…」

飛鳥「いえ…」

 

 

孫「くらえ!!!」

 

 孫が上から急降下すると、右手から巨大なエネルギーをまとった。

 

「!!?」

 

出久「磨旋鉄拳か!!」

 出久が孫を睨みつけるとかわし、孫が地面に磨旋鉄拳を放った。すると大きな衝撃波が起こって、観客席にも突風が巻き起こった。

 

陽炎『出たーっ!!! 古堂孫選手の必殺技「磨旋鉄拳」!! 緑谷選手は果たして無事なのかーっ!!!』

 

 

「きゃあっ!!!」

「うわあああっ!!」

 と、爆豪達は顔を覆った。

 

孫「どこだ!!」

 孫がキョロキョロ見渡すと、出久が瞬時に孫の前に現れた。

 

孫「!!」

 出久が孫の顔に向けてパンチをしようとするが、孫がバク転で緊急回避した。

 

孫「やるな」

出久「流石ですね!!」

 

 二人とも精悍な顔つきで構えた。

 

 

お茶子「…す、すごい」

梅雨「すごいなんてレベルじゃないわ…」

 

 ヒロインズはともかく、リューキュウも呆然としていた。

 

ねじれ「すごいすごーい!!! かっこいー!!!」

相澤「……」

 

 相澤が出久を見つめた。

 

相澤「ここまでとはな…」

 

 相澤も思わず笑みが生まれた。

 

 

つづく

 




キャラクターファイル48

大空未来

オリジナルキャラクター
孫の幼馴染で、出久とも面識がある。高校3年生。


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第49話「出久の本気の戦い(後編)」

 

 

 和哉の元でのインターンシップをかけて、和哉の地元である広島県・虹島のとあるスタジアムで和哉の弟である古堂孫と1VS1で戦っていた。

 

 パワーもスピードも孫の方が上であり、勝ち目はあると言い切れない戦いではあるが、出久は雄英高校で学んだ事と、経験を駆使して全力で勝負に挑んでいた。

 

 また、出久の事が心配になったクラスメイト達、教師、先輩も出久に内緒で応援に来ていたが、出久と孫の戦いを見て言葉を失った者、感動した者、そして改めて出久に対して敬意や恋心を抱く者がいた。

 

 お互い一歩も引かないまま、試合が始まって15分が過ぎた。

 

孫「……」

出久「……」

 

 舞台は壊れてしまったが、それでも孫と出久は気にせず、戦いに集中していた。普段からの姿から想像もつかない程真剣な顔をしていた。

 

お茶子「……」

 お茶子はそんな出久の顔を見て、改めて惚れ直していた。

 

お茶子「かっこいい…」

 お茶子のつぶやきに皆がお茶子を見た。するとお茶子が我に返って慌てたが。

リューキュウ「分かるわ。恥ずかしい事じゃないわよ」

 リューキュウがお茶子の肩を抱いた。

 

リューキュウ「今すぐ抱いてほしい!!」

相澤「お前は恥を知れ」

 

 自重しないリューキュウの言葉に相澤は冷徹な表情で突っ込んだ。今の彼の中ではリューキュウは峰田と同レベルになっていた。

 

峰田「ちくしょ~~~~~」

 峰田は出久の姿を見て悔しがっていた。

 

耳郎「何だよ」

八百万「何ですか」

峰田「何でこんなに緑谷かっこいいんだよちくしょーっ!!!」

上鳴「そうだ!!! こんなにかっこいいなんて聞いてないぞ!!!!」

 

 今まで女子にモテる事に対して、出久に対して嫉妬していたが今回の真剣な戦いを見て素直にかっこいいと思っていた峰田と上鳴。

 

耳郎「そ、そりゃあ…」

梅雨「そんなのきまってるわ」

八百万「そうですわね」

「?」

 

 お茶子、八百万、芦戸、梅雨、耳郎、リューキュウが苦笑いした。

 

お茶子「デクくんやもん」

八百万「出久さんだからですわ」

芦戸「出久だもん」

耳郎「出久だしな」

梅雨「出久ちゃんだからよ」

リューキュウ「出久くんだもの」

上鳴・峰田「キ―――――――――――――――――!!!!!」

 

 ヒロインズの自信満々の表情を見て、峰田と上鳴は発狂した。どうしたらあんな風になれるんだと思わずにはいられなかった。

 

切島「いけぇ――――――――――――!!!! そこだ緑谷――――――――――!!」

 

 切島が声援を送っていた。ヒーローになろうとするストイックさと、師匠である和哉に対して筋を通したいという義理堅い出久の姿を見て、完全に切島は心酔していた。そして出久は切島の声援にこたえるかのように、孫に立ち向かっていく。

 

 そして他の生徒達も心を動かされていき、出久への声援が大きくなっていった。

 

和哉「……」

 

 和哉もそんな声援を感じ取ったのか、観客席にいるオールマイト達を少しだけ見て、孫と出久の戦いに目をやった。

 

出久「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 出久は声を上げて孫に立ち向かっていった。

 

 

『み、緑谷出久です!』

 

 数年前、出久は飛鳥の紹介で和哉に出会った。その時から和哉は顔が怖く、見下していたので、出久は萎縮していた。

 

 それから色々あって稽古をつけたが…。

 

出久「うわーっ!!!」

 

 出久はぶっ飛ばされていた。

 

和哉「どうした。終わりか」

出久「ううっ…」

 

 和哉が話しかけると出久は返事が出来ず、そのまま蹲っていた。それに対して和哉は静かに目を閉じた。

 

和哉「止めだ」

出久「!!」

 

 修業を打ち止めて去ろうとすると出久が起き上がって和哉を見た。

 

出久「ま、まだ僕は…!」

和哉「言った筈だ。もう出来ないと判断したら打ち止めると。耐えれるようになってから来い」

 そう言って和哉が消えると、出久は悔しさから涙があふれ出ていた。

 

 またある日の事。

飛鳥「今日はオレとトレーニングしよう」

 

 和哉との修業を見かねた飛鳥が出久に対して話しかけて、そのままトレーニングを行い、和哉が陰から見守っていた。

 

和哉「……」

未来「行かなくて良いんですか?」

和哉「構わん。オレが行った所で同じことの繰り返しだ」

 

 一緒に来ていた未来が心配するように言うと、和哉はいつもの様子で言い放って去っていった。

 

 そして…

 

出久「和哉さん!!」

和哉「……」

 

 少し小汚い様子の出久が和哉の元に現れた。和哉はいつも通りだった。

 

和哉「何だ」

出久「稽古をつけてください!!」

和哉「……」

 

 そして稽古をつけた。

 

出久「うわーっ!!!」

和哉「少しはマシになったと思ったが…まだまだだな」

 

 和哉がまた修業を打ち止め、その度に出久は自分でどうするべきか考えた。足りないと思った事は孫や飛鳥の力を借りて鍛え、自分でも出来る限りの事は自分で鍛えた。全ては和哉との修業を最後までやる為だった。

 

 しかし、そうすればそうする程、出久の調子はおかしくなった。

 

出久「ど、どうして…」

和哉「……」

 

 どうあがいても結果が出ず、絶望する出久に対し、和哉が出久にこう言った。

 

和哉「お前は何のために修業をしている」

出久「!」

 

 和哉の言葉に出久は顔を上げて和哉の顔を見た。いつもの怖くて涼しい顔だ。

 

出久「そ、それは…和哉さんとの修業を最後まで…」

和哉「それじゃあ結果が出なくて当然だ」

「!!」

 

 出久がショックを受けたが、和哉は言葉を続けた。

 

和哉「お前の目標は何だ」

出久「そ、それはヒーローになる事で…」

和哉「そうだろう」

出久「!」

 出久が和哉を見つめた。

 

和哉「ヒーローになる為で、オレとの修業を最後まで果たす事じゃないだろう。初心を忘れるな。自分を見失った人間に未来はない」

出久「!!」

 

 和哉の言葉に出久ははっと気づいた。

 

和哉「もう一度やってみろ」

出久「は、はい!!」

 

 

和哉「……」

 

 和哉は今の出久を見て、思い出していた。

 

 

和哉(あんなに貧弱だった奴がな…)

 

 体力がなくなり始め、孫に顔を数発殴られて、ぶっ飛ばされた。

 

芦戸「ああっ!!!」

切島「緑谷―!!!!」

 

 ぶっ飛ばされた様子を見て芦戸がショックを受けて、切島が声を上げて出久を応援した。

 

お茶子「デクくん…」

 

 心では分かっていても出久の事を見守る事しか出来ない事に、お茶子はやきもきしていた。

 

出久「はぁ…はぁ…」

 出久が息を切らして孫を見つめると、孫がまた出久に攻撃を仕掛けてきたので、一瞬のスキをついて、孫の手を取って、そのまま投げ飛ばした。

 

孫「うわあああっ!!!」

 

 孫はそのまま投げ飛ばされるが、受け身を取り、出久に攻め込んだ。

 

「ううっ…!!!」

 

 個性がなくても果敢に攻め込み、昔よりも成長していた出久の姿に島の観客たちも感動して涙を流していた。

 

陽炎『な、なんということでしょう…』

 

 飛鳥に抱えられながら陽炎は実況を続けていた。

 

陽炎『これ程…これ程泥臭く、熱い試合があったでしょうか!!! 私は…私は…涙が止まりません!!!!』

 

 陽炎が涙ながらに実況を続けていて、飛鳥は見守るように出久と孫を見ていた。

 

 

出久(やっぱり孫さんは強い…)

 

 出久は息を切らしながら孫を見つめていた。

 

出久(これ以上やっても、やられるだけだ!! ここで決める!!)

 出久が力を込めた。

 

出久(僕が自分の力で編み出した…僕だけの必殺技!!!)

 

 出久が右手に力を籠めると、周りの空気が出久の拳にまとわり、それが緑色の光になった。

 

「!!」

 

出久「行きますよ!! 孫さん!! 緑拳(りょくけん)」

孫「……!!」

 すると孫も磨旋鉄拳の構えをした。

 

 そして、大地を蹴った。

 

出久(見ていてください、和哉さん。見ていて、雄英の皆)

 

 出久が歯を食いしばって孫の磨旋鉄拳と真っ向勝負を仕掛けた。

 

出久(これが…僕の…全てだ!!!)

 

 

 

出久「緑衝撃!!!」

孫「磨旋鉄拳!!!!」

 

 2つの必殺技がぶつかり合った。とても大きな音を立て、衝撃波が観客席にも響いた。

 

 そして…

 

 

 ボッカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 大きな爆発と爆発音が響き渡った。爆発により煙が巻き起こり、これが全部払われたのは数分後だった。

 

 

爆豪「……!!」

上鳴「ど、どうなったんだ!!?」

瀬呂「絶対腕失くなってるぞ…」

 

 爆豪達が周りの煙を手で振り払いながら、舞台を見ると、舞台は完全に壊れていて、孫と出久はお互い吹き飛ばされて横になっていた。腕はなくなってはいなかった。

 

出久「くっ…!!」

孫「いたたたた…!!」

 

 孫が簡単に起き上がるが、出久は力を入れて起き上がろうとしていた。

 

「!!」

 

出久「……!!」

 

 しかし、もう起き上がる事が出来ず、出久はそのまま仰向けになって倒れた。

 

 

「あ…」

 

 出久が倒れる姿に、お茶子たちは声を漏らした。

 

 

飛鳥「……」

陽炎「……」

 

 飛鳥と陽炎が顔を合わせると、お互い頷いて、陽炎が正面を向いた。

 

 

陽炎「勝負あり!!! 勝者!! 古堂孫!!!」

 

 と、陽炎は孫の名前を呼んだ。孫は特に喜びもせず、出久の元に近づいた。

 

「!」

 

出久「……」

 

 出久は目を開けていた。自分は試合に負けたんだと悟った。

 

孫「イズク」

出久「…孫さん」

 

 出久が孫を見た。

 

孫「つよくなったな」

出久「ありがとうございます。でも…負けちゃいました」

 

 孫が出久の手を引っ張って、出久を起き上がらせた。

 

孫「つぎかてばいいんだ」

出久「ですが、ヒーローになったらそうはいきませんよ」

孫「オレもつぎはまけない」

出久「……」

 

 孫の様子を見て出久は口角を上げた。

 

出久「そうでしたね。負けなければいいですもんね」

孫「ああ! でも、よくがんばったな」

出久「…はい!」

 

 

陽炎『皆さん!! 試合には負けましたが、健闘した緑谷選手にも大きな拍手をお送りください!!!』

 

 陽炎のアナウンスで、出久にも惜しみない拍手が送られた。A組の生徒も、教師たちも、先輩たちも、出久を称賛した。

 

 

 

 次回、最終回。

 

 

 

 




キャラクターファイル49

陽炎 陽子

オリジナルキャラクター
アナウンサー歴20年のベテランアナウンサー。
虹島でイベントの実況を担当している。


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エピローグ
第50話「出久、遂にパートナーを決める!?(最終回)」


今回で最終回です。
50話やり切りました。

皆さまから頂いたアドバイスやご意見はしっかり受け止めさせていただきます。
本当にありがとうございました。


 

 インターンをかけた戦いが終わった出久。支度を済ませて皆と合流するために、スタジアムの前に来ていた。

 

出久「えー。負けちゃいました」

 

 出久が苦笑いしながら言うと、

 

切島「いい!! とっても男らしくて熱い試合だったぞ!!!(泣)」

上鳴「お前色々ズルイぞコノヤロー!!!!(泣)」

峰田「せめて先輩はオイラによこせコノヤロー!!!(泣)」

 

 出久の試合に心を打たれた切島、上鳴、峰田は号泣していた。そんな3人の様子を見て出久は大げさだなぁと困惑した。

 

 

梅雨「おつかれさま出久ちゃん。いいしあいだったわ」

出久「ありがとう」

 

 梅雨が率先して出久にねぎらいの言葉をかけると、お茶子、八百万、芦戸、耳郎も続けてやって来た。

 

お茶子「アイシングいる!!?」

八百万「ケガしてる所はありませんか!?」

耳郎「病院行かなくても大丈夫か?」

芦戸「肩揉んであげよっか?」

出久「ありがとう。でも今はいいかな」

 

 心配する彼女たちに対して、出久は苦笑いした。

 

爆豪「結果的に負けたんだから、インターンは無しだな」

切島「爆豪!!」

瀬呂「お前なぁ…」

 

 爆豪の悪態に切島は憤慨し、瀬呂は呆れていた。他のメンバーも同じで、特にヒロインズは無表情になっていた。

 

お茶子「仮免許落ちとる人が何言うとん」

八百万「全くですわ」

耳郎「そういう事言うくらいなら、ついてこなきゃいいのに」

芦戸「ホント何しに来たんだって話だよね」

梅雨「ヒーローになれないわよ」

リューキュウ「少なくともうちにはいらないかな」

爆豪「一気に喋んなや!!!」

 

 ヒロインズが辛らつな言葉をかけたが、爆豪がいつも通り抵抗してきて言い争いになりかけたその時、

 

「おーい」

 

 と、飛鳥がスタジアムの出入り口からやって来て、出久達が反応した。

 

出久「飛鳥くん」

飛鳥「皆もそろってたんだね」

ねじれ「孫くん達は?」

飛鳥「もうすぐ来られます」

 

 すると瀬呂がある事に気づいて、飛鳥の方を見た。

 

瀬呂「そういやインターンの件どうなったんだよ」

耳郎「和哉さんがまだ来てないだろ」

飛鳥「あー…その件なんだけどね」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「和哉さん。また仕事が入っちゃって、大阪の方に行っちゃったんだよ。死穢八斎會が開発した『個性消失弾』を密輸しようとしていたヴィラン集団を叩くために」

「えええええ!!?」

飛鳥「結構忙しいんだよ和哉さん…」

 

 和哉の動向に驚くA組に対して、飛鳥はごめんねと言わんばかりにまた苦笑いした。

 

飛鳥「あ、でも合否は聞いてるよ」

峰田「どうなったんだよ!!」

 

 峰田の言葉に飛鳥は出久を見た。

 

飛鳥「合格だって」

出久「!!」

飛鳥「ナイトアイと校長先生に、インターンシップ出来るように手配しとくって言ってたよ」

リューキュウ「ちぇー」

 

 飛鳥の言葉にリューキュウが露骨に残念そうにすると、飛鳥はあきれた様子でリューキュウを見た。

 

飛鳥「…リューキュウさん」

リューキュウ「な、なによ!! 好きになっちゃったものは仕方ないでしょ!?」

飛鳥「…いえ。ミルコさんも出久の事を狙ってるので」

「はぁ!!?」

 

 気まずそうに飛鳥が放った言葉に、ヒロインズが驚きの声を上げた。もうこれ以上ライバル増えないでと思っていた矢先だった。

 

飛鳥「強い男の子供を産みたいって…」

リューキュウ「子供を何だと思ってるのよ!! 結婚できなくても十分に幸せになれるっつーの!!」

飛鳥「ただ自分が結婚したいだけじゃないですか…」

 

 リューキュウの憤慨に対して、飛鳥は冷静に突っ込んだ。

 

リューキュウ「出久くんがこっちでインターンしたらミルコとの接触が近くなるじゃない!!」

飛鳥「絶対毎日顔出しに来ますね」

リューキュウ「やっぱりなしよ!! なしなしなし!!」

飛鳥「和哉さんに言ってください」

 

 リューキュウの我儘に対して、飛鳥は呆れながら突っ込んだ。

 

お茶子「もー!! インターンなんてやってたら絶対取られるやんけー!!」

芦戸「出久がはっきり決めてくれたらなー」

耳郎「そうだよ!! もうこの際だからはっきり決めて貰おうぜ!!」

梅雨「そんないいかたしたらこたえないわ」

八百万「出久さん。もしこの中でお嫁さんにしたら良さそうだなーって思う人を申し上げてください!!」

 

 と、お茶子、芦戸、耳郎、梅雨、八百万、リューキュウが出久を見つめたが、出久はいつも通りだった。

 

出久「選ばれなかった人はちゃんと諦められる?」

 

 出久がそう言うと、

 

お茶子「ま、まあ聞いてみるだけやで?」

八百万「そうですわ! 今後の為に!!」

出久「でもなー。一度言っちゃったらずっとその人の事意識しちゃうかも」

耳郎「そ、そんな事言うんじゃねぇよ!!」

 

 ヒロインズは不安でいっぱいだった。というのも、後半になるにつれて出久に対するアピールが全くできず、気が付けば今回で最終回。このまま振られて終わるという悲惨な展開は誰もが迎えたくなかった。女として。

 

出久「まあ、ミルコじゃない事は確かかな」

リューキュウ「おっしゃあああああああああああああ!!!!」

 

 出久の言葉にリューキュウは露骨にガッツポーズを上げた。相澤はゴミを見るような目で見つめていたが、リューキュウは全く気にしなかった。

 

ねじれ「どうして?」

出久「いやあ、此間会ったんだけど、お前を抱いてやるとか言ったんですよ」

 

 ねじれの問いに出久が腕を組みながら答え、こう続けた。

 

出久「僕、抱きたい方だから」

爆豪「何下ネタぶっこんどんじゃぁ!!!」

飯田「女性を抱きたいなどと下品だぞ緑谷くん!!!」

 

 出久のまさかの発言に爆豪と飯田が突っ込んだ。

 

切島「男だ…!!!」

 

 切島が感動していた。意味は多分わかっていない。

 

上鳴・峰田「緑谷ァ…」

出久「何よ」

 

 出久が上鳴と峰田の方を振り向くと、土下座した。

 

峰田・上鳴「弟子にしてください!!!!」

出久「取らぬ!!!」

 

 上鳴と峰田はついに降伏して、出久からモテるテクニックを教えて貰おうとしたが、出久はめんどくさいので却下した。

 

リューキュウ「で、結果的に誰なの!?」

出久「えっとね。梅雨ちゃ」

 

 ドカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

出久「あら、大きな音」

梅雨「そうね」

 出久が爆発がした方を見ると、梅雨が即座に出久の隣に並んだ。

 

お茶子「梅雨ちゃーん。何で隣にくっついてるのかなー?」

八百万「そうですわー。抜け駆けはよくないって言ったじゃないですかー」

 

 お茶子と八百万が作り笑いをしながら二人の横に並んだ。

 

ねじれ「今完全に梅雨ちゃんって言っt」

リューキュウ「あーあーあー!!! 聞こえなーい!!!!」

 

 ねじれの言葉にリューキュウが全力で耳をふさいで叫んだ。

 

芦戸「出久のバカ―!!!」

耳郎「信じてたのに…」

 

 芦戸と耳郎は選ばれずにショックを受けていた。

 

ねじれ「でもまだ皆にチャンスがあるってことだよね?」

出久「まあ、そうですね…」

ねじれ「じゃあ私も狙っていいかな?」

「!!?」

出久「ワーオ」

 

 ねじれのまさかのぶっこみに皆が凍り付いた。

 

上鳴「おい大変だ!!?」

「!!?」

 

 上鳴がスマホで何かを発見した。

 

上鳴「今日から一夫多妻制だってよ!!!」

峰田「ぬわにぃいいいいいいいいいい!!!?」

「何この超展開!!!」

「このシリーズ最大のご都合主義だわ!!!!」

 

 まさかの一夫多妻制の知らせに皆が出久を見た。

 

出久「多分一人だけだけよ結婚相手。じゃ、行ってきまーす」

梅雨「ケロ!」

お茶子「ヒロイン面させへんからなぁああああああああああ!!!」

「待てぇええええええええええええ!!!」

 

 と、出久とヒロインズが去っていき、周りの男子たちはこう思った。

 

 

(もう…勝手にすればいい…)

 

 

中国・軽慶市から発信された「発光する赤児」が生まれたというニュースからすべてが始まった。以後各地で「超常」が発見され、原因も判然としないまま時は流れるが、この超常は後に「個性」と呼ばれるようになった。

 

世界総人口の八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在。生まれ持った超常的な力“個性”を悪用する犯罪者・敵(ヴィラン)が増加の一途をたどる中、同じく“個性”を持つ者たちは『ヒーロー』と呼ばれ、敵や災害に立ち向かい、人々を救ける社会が確立され、ヒーローは皆の憧れの的となった。

 

『ヒーロー』を目指して奮闘する少年少女達の戦いはまだまだ続く!!!

 

 

瀬呂「ところで尾白、葉隠」

尾白「な、なに?」

瀬呂「付き合ってるって本当なの?」

尾白「!!?//////」

葉隠「あ、えっと…実は~//////」

上鳴・峰田「オジロキサマァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

尾白「もういや――――――――――――――――!!!!(大汗)」

 

 尾白は上鳴と峰田に追いかけまわされた。それを見て飛鳥は呆れてカメラの方を向いた。

 

 

飛鳥「本当にありがとうございました」

孫「またな!!」

 

 

 

THE END

 




キャラクターファイル50

ミルコ

広島県出身のプロヒーロー。
気性が荒くワイルドだが、とても実力が高い。
本作では実は出久の事を狙っていて、リューキュウとは犬猿の仲である。

ちなみにこの後のインターンでは飛鳥の予想通りちょっかいをかけまくっていた。


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