強き絆の心とありふれない魔界の王候補の異世界道中記 (カオスサイン)
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プロローグ&キャラ設定集
プロローグ


プリコネの方が一段落したので構想していたガッシュxありふれをいくぜ!


Side?

「ほう、君が数日中にこの町を離れる事になるとは寂しくなってしまうな…くれぐれも気を付けるのじゃよ」

「ええ、父の仕事の都合と母の墓参りを兼ねましてね…貴方こそ体大事にして下さいよ?」

俺の名は欠道 晶。高校生だ。

俺はある日、父の仕事と俺が物心付く前に病気で亡くなった母の墓石がその街に在るからと俺が高校生に慣れたのを機にこの住み慣れ親しんだモチノキ町を数日中に離れる事となった。

その事を友人の一人から聞いていたのかとある権利を賭けた戦いである者を潰す為に共に戦った仲間の内の一人であるナゾナゾ博士が訪ねて来ていた。

「分かっとるわい!そういえば先日の戦いで魔界に送還させずに君が保護を申し出た千年前の魔物はどうするのかね?」

「勿論一緒に連れて行きますよ?ゲリュは相変わらず俺から離れたがらないし他の子達も責任持って人間界での生活を謳歌させてあげたいですから!」

「そうか、それを聞いて一安心したよ。

最後に一つだけいいかい?」

「何ですか?」

「…生き残るんだぞ…」

「分かっていますよ。博士もキッドもどうかお元気で!」

ナゾナゾ博士と語った数日後俺はこの町を離れた。

そして新しい高校に転入して数週間が過ぎていた。

友人も何人か出来、例え一時的にでも戦いから解放された青春の日々を謳歌していた。

「南雲ーまたちょっとツラ借してくれや」

「な、何だい一体?」

「いいから来いって言ってんだよ!」

「テメエ等又性懲りも無く苛めやってんのか!」

ある日の昼休みになった直後に不良グループの筆頭である檜山 大介が俺の友人となってくれた南雲 ハジメに又下らない因縁をつけ校舎裏に連行しようとしていた所を目撃したので止めに入る。

「(・д・)チッ!変人の転入生が…」

檜山はそう捨て台詞を吐いて教室を出ていった。

ちなみに俺が何故変人扱いされているのかというと一度学校に寝ぼけてしまっていたせいなのか体に軽く巻き付いていたゲリュに気が付かずに彼を連れて登校して来たせいだった。

マジで離すの忘れてたわ…そんで先生に軽く怒られた後、珍しい蛇だと狙って来た上級生の不良生徒に絡まれたりもしましたがゲリュが威嚇して追い払ってくれました。

檜山はその事を耳にしているのか俺を警戒している。

「南雲君屋上で昼食にしよ!」

「あ、ああいいけど…欠道君も一緒にどう?」

「承ろう」

明らかにハジメを恋慕を抱いているであろうクラスメイトの白崎香織に誘われたハジメは照れ隠しの為か俺を巻き込んでくるが断る理由も無いのでついていこうとした。

「全く香織は優しいな」

「…」

出たな!自己正義陶酔野郎、天之河 光輝!

俺もこの学校に転入した時一度彼とも会話したのだが彼の言葉というか考えそのものが意味不明であった為、絶対に此方からは関わらないようにしようと決めている。

だってコイツも一度ハジメが檜山達に苛められている場面に遭遇したみたいだが一度止めただけで屑でしかない檜山達が苛めをやめたと思い込んでいる様な奴だった。

事実ハジメに対する苛めは猶更酷くなったという。

様はコイツは「正義を成した」という自己満足な思い違いに浸っているだけのその後の対策とかは微塵も考えてなどいない顔と勉学が優秀っていうだけの空っぽな奴でしかない。

なんだかコイツを見ているとかつての友人を馬鹿にされた様な気分になる。

「なんで光輝君の許可がいるの?」

「なっ!?…」

「白崎!そんな陰湿な奴と一緒に居ても良い事無いと思うぞ?」

まあこのアホは白崎さんに対して恋慕を抱いているようだが時既に遅しだという事にまるで気が付いていない。

まあ気付いたとしても間違い無くコイツの性根だと受け入れないだろうが。

そしてアホを擁護するのはこれまた筋肉で物事を決めてますって只の馬鹿である中村 龍太郎。

コイツも人の話を聞かないので関わらないようにしている。

「光輝ー、先生が呼んでいたわよ」

「今行く」

アホの幼馴染で彼の性分を人一番理解しているであろう八重樫 雫さんが気を利かせたのかどうなのか分からないがそう言ってきたので糞真面目なアホは颯爽と職員室へと行った。

「南雲君も大変だね…」

「全くだな…まあ言った所で理解しないだろうし此方からもあまり関わりたくないしな…」

「あはは…」

そう心配そうにしたのはゲリュを誤って連れて来てしまった時に彼の事を怖がらずに撫でて可愛いがってくれた園部 優花さんだ。

以降仲の良い異性の友人である。

「御主人、弁当を忘れていたから届きに来たぞ」

「リース!?ああ、あはは忘れてたわ…」

俺ととある選定の戦いの為にパートナーを組んでいるリースが学校にやって来ていて俺は慌てた。

「この子誰?」

当然彼女の事を知らない白崎さん達が訪ねてくる。

「コイツはリース。ぱー…じゃなかった母さんの知り合いの子だよ」

「へー私達は欠道君のクラスメイトだよ、よろしくね!」

「よ、よろしくお願いする」

我ながらかなり苦し紛れに思いついた言い訳だったが白崎さん達は特に疑う事も無くリースと握手を交わしていた。

これなら仲良くなれそうだな。

そしてリースから弁当を受け取り急いで食って教室に戻り、昼休み終了の予鈴が鳴った直後だった。

それが発生したのは…

「な、何!?」

「魔法陣だと!?」

「皆さん!早く教室から…」

「御主人!」

突然魔法陣が浮かび上がり教室中を取り囲みそれに俺達だけでなく事情説明の為にいたリースも巻き込まれ気が付くと誰もその場にはいなかった。

 



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本編
EPⅠ「異世界トータス」


ガルパの今イベはカサブタとFainal Phase交互リクで走ってます。



Side晶

「くう!?…皆は大丈夫なのか?!」

「あたた…」

「御主人怪我はないか?!」

「あ、ああなんとかな…」

「何だったんだ今のは一体?…」

「いや…俺にも全く分からん…」

魔法陣に教室が一瞬にして包まれ、しばらくして目を覚ました俺は他の魔物の襲撃によるものなのかと思ったが一範囲だけに絞って放てる呪文を持っている魔物など心当たりが無く、リースや他の本も無事である事を確認済みなので違うと思い周囲を見渡すと全く別の場所に俺達はいた。

どうやら巻き込まれたクラスメイト達は皆無事なようだが…

「此処は何処なんだ?…」

俺達は儀式の祭壇を行う様な場所にいた。

これって真逆…

「これはようこそおいで下さいました勇者様方!我々の世界トータスへ!

私は聖教教会の神官であるイシュタル・ランゴバルドと申す者」

「…」

俺達の前に何処からどう見ても胡散臭さしか感じないジジイがそう言いながら現れた。

そうだ、リースとガッシュのタッグで叩きのめしてやったデカイ口叩いてた割には超弱かったフェインみたいなそんな感じの。

「トータス?我々の世界?…」

「どう考えても異世界召喚だとしか考えられないですね…」

クラスメイトが疑問を口にするとハジメがそう結論付ける。

「貴方方は我等の創造神「エヒト」様の下された神託によって召喚されました。

詳細は王城へ御案内している間にお話し致しましょう」

ジジイは気色悪い笑みを浮かべながら何故俺達がこの世界に呼び出されたのかを語っていく。

要約するとこうだ、この世界の人間が急激に力をつけてきた魔族によって滅ぼされそうになっているから神様の言葉通り俺達に戦争に加担しろとの話。

俺の戦友達が聞いたら間違い無く皆口を揃えてこう言うだろう。

「ふざけないで下さい!」

うんうん!って愛子先生が言うのかい!

まあ、先生という立場上もあって言わない筈がないか。

あんま威厳がないけど…。

その後、あの空っぽ野郎がジジイの頼みを聞くとかアホな事を言い出した為に俺は反論する。

「おい、空っぽ偏り偽善野郎お前ふざけてるのか?

戦争したけりゃ勝手にお一人でどうぞ。

少なくとも俺はこの馬鹿げていて無益でしかない戦争になど手を借したりするつもりは微塵も無いぞ!」

「馬鹿げている?君こそ何を言っているんだい?この世界の人達は実際に窮地に陥っているんだぞ!」

はああこの馬鹿は…俺はさっきのジジイの態度といい今の空っぽ野郎の言葉に心底呆れた。

俺達が行っている魔界の王選定の戦いとこの世界が行っている戦争は大いに訳が違う。

俺達の行っている戦いにはそれぞれが思い抱く王になる為にという意義がある。

一方のこの世界が行っている戦争には明らかにそれが無い。

ジジイのあの気色悪い表情を見た限りこの世界の神(笑}の言葉に疑いなど微塵も持っておらずさも当然といった態度のいわゆる使い走りのような奴だ。

それだけでその神が神と呼ばれるべきではない碌でもない奴だという事に十二分に確信が持てた。

「ならテメエは敵だとされている魔族の人達の立場にもなってみろよ。

テメエの言っている事は片方の言い分しか聞かないで一方的に滅ぼすと言ってるのと同じ事なんだぞ?

大体、窮地に陥っているのなら何故全くの無関係、無縁でしかない俺達じゃなくて戦い慣れている筈のこの世界の人達に力を与えないんだこの世界の神って奴はよ?」

「そ、それは…色々と事情があるんだろう?!」

「そんな答えしか出ないのならテメエの偏った偽善に皆を巻き込もうとするな!

テメエとこれ以上問答する事は無い」

「なんだと!?…」

あのジジイを見ているとそういう事は一度も無いのだろうと俺は確信していた。

空っぽ野郎は喚くが俺は完全に無視を決め込む。

そして俺達は王城へと連れられ其処で歓迎を受ける事になるが…この国ハイリヒ王国の国王だという人物がジジイの手にキスしているのを見てドン引きした。

リースも後に「妄信に陥り民を正しき道へ導くべきである王族の誇りを忘れた愚か者」と酷評していた。

一方、狂っているであろう神の教えに惑わされずにしっかりと自分の考えを持ち得ている王女様であるリリアーナさんや少し危うい感じはするがまだしっかり修正が利くであろうランデル王子とは友達となった。

 

 

 



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EPⅡ「ステータスと月下の語らい」

Side晶

「よーし各自ステータスプレートは配られたな?」

俺達が異世界トータスへと一方的に呼び出された翌日、騎士団長だというメルドさんに招集される。

今回は「オルクス大迷宮」と呼ばれるダンジョン区を攻略する為の招集だという事で俺も招集される事を認めた。

だが戦争への加担は絶対にしないぞ。

メルドさんが言うには俺達に配られた板はこの世界の神代において失われし技術の産物らしく唯一量産が可能な身分証だとの事。

俺は自身のステータスを見てみる。

『欠道 晶 十六歳 男 LV1 天職:魔との絆と心を繋ぎし者『パートナー:リース・ドメスティカ』

・体力:1500

・魔力:5000

・筋力:65

・俊敏:250

・魔耐:1000

 

・心の力:15000

技能:言語理解・魔法適正A

特殊技能:魔界の術本(デビルスペルブック)』

おおうこれは…明らかにこの数値は異常といっても過言ではないだろう。

恐らく俺が元の世界の戦いで培ってきたものがそのまま反映されているな。

魔力についてはこの世界で開花したものだろう。

とすればここは魔本への耐性付与魔法と一部ステータスに隠蔽魔法をかけておくべきか。

俺は一部を隠したステータスをメルドさんに提示すると二度驚かれた。

「はあ…」

ハジメは錬成士という結構便利な天職を持ったが肝心のステータスがこの世界の平均以下だったらしい。

そしてあの空っぽ野郎は勇者の役職を与えられた事でますます調子に乗っていた。

メルドさん曰く天職やステータスはエヒトから与えられるものらしい(俺は例外中の例外〉…明らかに襟好みしたな。

これでエヒトを信頼出来ない点がまた一点だな。

それと屑連中がハジメのステータスを勝手に盗み見て貶めていたがあの空っぽ野郎は止めもしなかったので俺が今迄戦った魔物の攻撃を再現した魔法(そうだな…ジュロン!)をこっそりと屑連中達のケツに向けて撃ち込んでやった。

無論、しばらくはヒリヒリ、チクチクする程度のレベルには留めてはやった。

屑連中の絶叫が響いたが空っぽ野郎以外は誰一人も相手にしてなかったのは御愁傷様。

そしてその日の夜の事であった。

「御主人、白崎香織様がお話をされたいとお呼びになっておられますが如何されます?」

「何?すぐ行く」

リースと今後の事について話し合おうと二人きりになろうと考えていた所にリースから香織さんが俺を呼んでいる事を告げられたので彼女に割り当てられた部屋に向かった。

「欠道だが入っていいな?」

「どうぞ」

部屋に通されると他には八重樫さんも居た。

「話って何だ?」

「えっとね…」

白崎さんの話たい事とはハジメに関する事だった。

彼女は明日の迷宮攻略に向けて早く寝ようとしていたが悪夢だとしか思えない夢を見たらしい。

それで不安になりハジメと仲の良い俺と一番の親友である八重樫さんに相談を持ち掛けたとの事だった。

うん…明らかに不安要素はあるよな…ゲリュや他の魔物の子達が居ればあの屑連中を迷宮区に行かせる事無く監視出来るのだが…今は彼等の魔本が俺の手元にあるだけでそれは無理…出来るだけ俺達で監視の目を光らせるしかないようだな…。

 



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EPⅢ「大迷宮の激闘と悲劇 前編」

Side晶

「ハジメ、そっちにいったぞ!」

「ああ、任せて!」

オルクス大迷宮の攻略に向かう日が訪れた。

俺達は難無くハジメ達の的確な援護や空っぽ野郎の働きもあって二桁台の階層へと早々に到達を果たしていた。

尚、ここまで俺は一度もリースの魔本を開いていない。

元の世界で敵対した魔物からこの世界に呼び出されて唯一恩恵を受けた魔力を行使してラーニングした術で粗方のこの世界の粗方の魔物は倒せていた。

そろそろ力をセーブしとかないといけないな。

そう思い後退していると空っぽ野郎と白崎さん達が居る方向からゴーレムの様な魔物ロックマウントが現れる。

「香織達を怖がらせて…許さないぞ!【天翔閃】!」

「あの馬鹿!…」

ロックマウントがどこぞの大怪盗みたいな少々キモイ動きをしてきた事から女性陣が気色悪く感じたのか少し蒼褪めていた。

それを恐怖したのだと勘違いした空っぽ野郎が大技をロックマウントに撃ち込んだ。

がその余波の衝撃で階層内の天井が危うく崩落しかけた。

それでメルドさんにこっぴどく空っぽ野郎が説教されていたのはいうまでもない。

「ん…あれ何だろ?」

ふと白崎さんが奥の壁際で何かを発見したようだ。

それは青白い輝きを放つ石の塊だった。

「キラキラしてる…!」

「ほう、アレはグランツ鉱石だな。あれ程のサイズは滅多にお目にかかれないレアアイテムだ」

どうやらその鉱石は装飾品に主に使われるレア素材の一種らしく女性陣は目を奪われていた。

「だったら俺達で取ってやろうぜ!」

其処で此処まで碌に支援もしていない檜山グループが鉱石を採取しようと言い出す。

「あ!?待て、安全確認も済んでないんだ!レアアイテムだからといって迂闊に手を出すのは危険なんだ!それ自体が罠である可能性も高いんだぞ!」

「♪~」

メルドさんがそう慌てて警告を促すも檜山は聞こえないフリを押し通して鉱石に触れようとしている。

くっ!?奴を止めようにも此処から術を撃ったら皆(空っぽ野郎と屑山グループの面々以外)を巻き込んでしまう!…

力をセーブした事がこんな形で仇になるとは…そうこうしている内に檜山の手が鉱石に触れる。

「「!?」」

「やはりトラップだったか…うっ!…」

その瞬間、鉱石が起点となってやはり仕掛けられていたトラップが起動してしまい眩い光を放った。

光が止み俺達が目を開けると吊橋のある場所に全員が飛ばされていた。

「階層強制ワープトラップだと!…此処は一体何階層なんだ?!いやそれよりも早く撤退を…」

「団長!何かが此方へと向かって来ています!」

「ム!?…」

現在地を冷静に把握し撤退しようと考えていたメルドさんだったが、騎士団員の報告を受けて前方から何かが出現し此方へ向かって迫って来ている事に気が付く。

「ま、真逆あの魔物は!?…」

それは俺達が居る吊橋にギリギリ入れるかといった巨大なサイズを誇ったトリケラトプスの様な魔物とそれに従うかのように沸き出て来たその他の大量の魔物の軍勢だった。

「…」

どうやら使わねばならない時が来たようだな…。

そんな俺の意図を汲み取ったリースも静かに頷いた。

 

Sideハジメ

「間違い無い!あのデカイ魔物はベヒモスだ!」

「やはり!…では此処は六十五階層なのか!なんてことだ…」

唯一誰よりも多くの知識を得ていた僕がそう告げるとメルドさんが現在地を絞る。

「メルドさん!あのデカイのが一番ヤバイ魔物でしょう?だったら俺があれの相手をします!

他の皆は取り巻きの魔物達を!」

光輝がいの一番にベヒモスに立ち向かおうとしていた。

「馬鹿を言うんじゃない光輝!あの魔物は今のお前達の実力では到底勝てる見込みは無い!」

「俺達は確実に強くなっています!任せて下さいよ!」

「そういう事を言っているんじゃない!此処にはこれまでの戦いの消耗が響いている者も居てこれまでの階層と同じって訳にはいかないんだ!

お前の無謀で他の者達の動きを阻害してどうするんだ!

それよりも撤退を促すのが最優先事項だ!」

「うッ!?…」

漸くメルドさんの言葉の意味を理解した光輝は渋々と引き下がった。

「と言った所で素直に撤退させてはくれまいか…」

なんとか時間を稼いで負傷者を下がらせるには至ったが残された者達が此処から撤退するには非常に困難であった。

「グオオオー!」

「不味い!?」

「「『全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて神敵を通さず!』【聖絶】!」」

眼前に荒々しい咆哮を上げながらその悪魔の如き牙を振り下ろそうとする。

白崎さん達が咄嗟に防御魔法を展開し防ごうと試みる。

「グアァー!!」

「くうっ!?…」

「皆、俺に任せろ!」

「光輝!?あの馬鹿!…」

がベヒモスの猛攻は想定以上のもので彼女達が展開した聖絶には段々とヒビ割れが起きていた。

天之河君がそれを見て咄嗟に聖剣を構えて突撃したが…

「うわっ!?…」

「光輝!?くそっ!?…」

ベヒモスの圧倒的なまでの力に異世界召喚による恩恵を誰よりも受けている筈の天之河君ですらも抑え切れずに吹き飛ばされてしまう。

このままじゃ白崎さん達が…錬成で援護しようとしたもののベヒモスに対する恐怖で体がいうことを聞いてくれない。

「「キャア!?」」

「「皆/香織!?」」

そうこうしている内に遂には聖絶が突破されてしまいベヒモスの牙が魔法発動後の硬直で動けない白崎さん達に迫ろうとしていたその時であった。

「【クワル】!」

「グギャアー!?」

「!?」

そう聞こえたかと思うとベヒモスの顔面目掛けて鋭い水晶の塊の様な物体が降り注いでいった。

その攻撃の直撃を受けたベヒモスは苦痛の声を上げる。

「よっと!おい恐竜モドキ野郎よくもここまでやってくれたもんだな…まあこれ以上此処から先へは行かせねえけどよ!」

「強大な敵勢存在を確認!更なる追撃に入ります」

その攻撃を繰り出したであろう人物達が眩い輝きを放つ薄青緑の本を構えながらベヒモスの眼前へと着地した。

 



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EPⅣ「大迷宮の激闘と悲劇 後編」

光輝がベヒモスに立ち向かおうとするまで少し時間を戻して、Side晶

推奨戦闘BGM「カサブタ」(InstVer)♪

「そろそろ不味いか…いくぞリース!」

「御準備はいつでもよろしいです」

白崎さん、谷口さん、王宮魔法師の数人がかりが結界を張るがベヒモスの圧倒的なパワーの前ではあまり長持ち続きしないだろう。

そう判断した俺はリースに声をかけて迎撃準備に入る為共に駆け出した。

「うおおおー!」

「チッ!あの空っぽ正義馬鹿が!…とう!」

「!はっ!」

その途中で空っぽ勇者が無策でベヒモスに立ち向かっていって案の定返り討ちに遭っていたのを目にして思いっ切り跳躍する。

それに合わせてリースも跳ぶ。

「!お急ぎ下さい!白崎様達が!」

その間に白崎さん達が張っていた結界を完全に破壊しその牙を彼女達へと振り下ろそうとするベヒモスの姿が見える。

「間に合ええー!【クワル】!」

急いで魔本を取り出して開き呪文を唱える。

リースが片手を突き出して手の平から水晶の弾丸を五連弾程降らせる。

これがリースが持つ初級呪文の力だ。

「グギャアー!?」

「よっし!」

ベヒモスは牙を白崎さん達に当てようとした直前に見事にリースの放った術の直撃を受けて苦痛の声を上げて仰け反りそうになった。

「よっとお!」

「!?」

苦痛の声を上げているベヒモスと白崎さん達の間に俺達は着地した。

「あ、ありがとう…」

「か、欠道君だよね?…」

「そうだが」

「ど、どうやって此処まで来たの?確か結構後方に居た筈だよね…もしかして跳躍魔法?」

白崎さんに感謝された後、ハジメと谷口さんが俺に話しかけてくる。

「んにゃ、素の運動能力だけど?勿論リースもだ」

「正式メイドとなる為には当然の技量です」

「「ええええー!?」」

俺がそう言うと皆驚いていた。

そしてリースも少しドヤ顔していた。

 

Sideハジメ

「ハジメも援護しようとしたけど体が動かなかったって所か?」

「ご、ゴメン…」

「別にお前が謝る事じゃないさ。

寧ろほとんど当然の事だろ。

あの空っぽ野郎の様に無策で突っ込まれた方が余計な被害が出かねないんだよ」

僕達はベヒモスの猛攻を一時的にだけでも止めた人物達の姿にとても驚いた。

それもその筈だ、先程迄かなり後方に下がって戦っていた筈の欠道君が前線に居た僕達とベヒモスの間にまで飛んで来て割り込んできたのだから。

それも素の身体能力でだって!?

一緒に来たえっと…ベヒモスに片手を向け続けているリースさんもそうらしいが…

あの輝きを放っていた本といい一体彼等は何者なんだ?

「っともう一発コイツにブチ込んでおくか…リース!」

「御意!」

欠道君は先程の不可思議な本を再び開きリースさんに指示を飛ばす。

「【クワルガ】!」

「「!?」」

まるであの本に記述されているであろう呪文を詠唱するかのような叫びを欠道君が上げると本が又眩い輝きを放ったかと思うとリースさんがベヒモスに向けていた片手から先程よりも巨大な水晶の弾丸が出てきて発射されその弾丸の直撃を受けたベヒモスとついでに取り巻きの魔物を吊橋の向こう側にまで吹き飛ばしたのをみて僕達は声にならない驚愕を感じた。

「…奴さん、以外にタフな奴だな。

さっきと今の一撃を受けた身でまだ息がありやがるとは…」

「ええ!?」

欠道君の言葉に俺達はまた身構えようとしたその時だった。

「うわああー!?」

「「!?」」

「!入口側にもモンスターか!…」

後方で脱出しようとしていた人達が沸き出していたトラウムソルジャーと呼ばれる骸骨戦士に阻まれて苦戦を強いられていた。

天之河君もまだ目を覚まさないしあのままでは皆が危ない!

「仕方無いな!…俺が白崎さん達を下がらせるついでに援護に行ってくる!

ハジメは俺が戻る迄の間にベヒモスを抑えてくれ!」

「ええ!?」

「大丈夫、俺達の攻撃で奴さんはもう瀕死状態だ。

それに誰よりも必死に得たこの世界の知識と今のお前の力量なら錬成で閉じ込めて動きを封じるなりが出来る筈だ!」

「欠道君…」

欠道君の提案に俺は渋りそうになったが彼の言葉に勇気付けられた事で決意する。

「任せて!」

「ハジメ君!?」

僕がそう言った事で白崎さんが心配そうな声を上げる。

「大丈夫だ白崎さん。

ハジメの力を信じてやれ。

もしもという時はリースを先に向かわせる」

「…死なないでねハジメ君!」

「うん…」

欠道君の対応策を聞いて一応納得してくれたのか白崎さん達は未だ気絶している天之河君を抱えた彼等と共に入口側の援護にへと向かって行った。

「グウウ!…」

「さて任されたからには全力でやってやる!【錬成】!奴の周囲に岩壁を生成!」

気絶から目覚めて憎しみを既に場を離れた欠道君に対して放っているであろうベヒモスは最早俺など眼中にしていないようだ。

そのおかげで見事に動きを封じ込める事に成功する。

「後は…コレでまた夢の中にでも行ってくれ!」

動きを封じ込めたベヒモスが居る地点に今度は土杭を生成してその勢いを利用して奴を空高くふっ飛ばしてやった。

「グウゥ!?…」

「いよっしゃあー!」

今迄受けていたダメージが祟りまともに受け身も取る事さえ出来なかったベヒモスの巨体は空中に打ち上げられた事によって思いっ切りバランスを崩し頭部を地面に激突させた事で再び気絶へと追い込めたのを確認し俺は冷や汗を流しながらも自身の攻撃が通じた事に喜んだ。

そのしばらく後に自身に訪れようとする悲劇を知る事も無く…。

 

ハジメがベヒモスを気絶に追い込む少し前、Side優花

「入口前にも魔物だと!?…」

「なんでこんな!?…」

檜山達の軽率で馬鹿な行動のせいで六十五階層などという明らかに今の私達では太刀打ち出来ないレベルの巨大な魔物と取り巻きの軍勢が居る場所に飛ばされた。

すぐにメルド団長さんが撤退指示を出して入口前まで退けたのは良いが其処でもベヒモスの周囲に居た取り巻きの魔物の軍勢が出現してきて私達は再び追い詰められてしまった。

大元の原因を作った檜山達は援護する所か逃げ回っているばかりで、今回同行している王宮の騎士団の人達も団長さん以外はこの階層ではあまり充てには出来ない。

兎に角せめて負傷者を先に階層の出口まで逃がさないと…そう思いなんとか対応していた私達だったが…

「カラカラ…」

「はっ!?優花後ろよ!」

「え!?…」

友人の妙子の声で私ははっとなる。

先程まで足手纏いの近藤を追いかけていた筈のトラウムソルジャーが急に私へと狙いを変えて背後にまで迫って来ていたのだ。

不味い!…さっき前方に投擲したナイフをまだ手元に回収出来ていない…それよりも早くトラウムソルジャーの剣が私に振り下ろされようとしていた。

「優花!?」

殺られる!?…嫌!誰か…助けて…!

私は最悪の瞬間が訪れる事を感じながら目を閉じて祈る事しか出来なかった。

ガキン!

「え!?…」

鈍い音がしたにも関わらず痛みが一向に襲って来ない事を不思議に思い目を開けた私が見たものは…うちの学校に転校生として入って来て仲良くなった欠道 晶君が不思議な輝きを放つ本を持ちながら魔法の呪文の様な言葉を叫ぶとメイドさんの様な恰好をした女の子が水晶が散りばめられた凄く神秘的な盾を出してトラウムソルジャーの攻撃を防いでくれていた光景だった。

 

少し時を戻して、Side晶

白崎さん達を連れて入口前まで急いで救援に駆け付けた。

「白崎さんと谷口さんは結界を張りながら早くソイツを叩き起こして周囲の魔物達の掃討に充たるんだ!

俺達は追い詰められそうな他の者達の救援に入る!」

「わ、分かったわ!香織ちゃん!」

「は、はい!聖絶!」

白崎さん達に空っぽ野郎の事を任せて他の者達の所へと行こうと駆け出そうとしていた時だった。

「御主人、あそこに居る魔物の動きが何か可笑しい」

「何?…」

リースの指摘を受けて俺がその地点に居た魔物を見ると逃げ回っていた檜山グループの一味である近藤(本当に足手纏いだな)を追い回していた骸骨騎士が何かを見つけたかのように急に動きを変えた。

奴が向かっていこうとする先には目の前の敵に対応していて背後から迫ろうとする奴に気が付いていない園部さんの姿だった。

「不味い!」

奴を急いで追っている途中で偶然付近で戦っていたクラスメイトの菅原さんが気が付いて園部さんに警告を発したが彼女は得物の回収をし終えておらず対応したくても出来ない状況に追い込まれてしまっていた。

やらせるもんか!

そう思った俺はスピードを上げリースと共に骸骨騎士と園部さんの間に割り込んだ。

そして魔本を開き呪文を叫ぶ。

「【クワルド】!」

「!?」

「え!?…」

初級の防御呪文をリースは展開し園部さんに襲いかかろうとしていた骸骨騎士の剣を防いだ。

そしてクワルドが生み出したその硬さには流石に奴の剣は耐え切れず遂には根本から盛大に折れた。

「今だ!クワル!」

続けざまに隙有りと見てクワルを発動させて骸骨騎士を跡形も無く粉々に砕いてやった。

「大丈夫か?」

「え、ええ…なんとかおかげ様で…わっとと!?」

「おっと!」

骸骨騎士を片付けた俺は園部さんに無事を確認しながら歩み寄る。

彼女はそう答えながら立とうとしたがバランスを崩し転びそうになった為に俺は彼女を支えようとした。

ってあれ?…これって…や・ら・か・し・た(;^ω^)

 

Side優花

「おっと!」

「!?///~」

「わっ!優花ってば意外と大胆じゃん!」

欠道君に窮地を助けられた私は彼にお礼を言いながら立とうとしたが先程迄感じさせられていた死の恐怖から解放された事で思わず気が抜けてしまいバランスを崩して転びそうになった。

欠道君がすぐに私を支えてくれた…のはいいのだけれど…これって私抱き締められてない!?

何処からどう見てもそうとしか見えない私達の光景を唯一目撃していた妙子がからかってくる。

「はっ!?ごめん園部さん!そんなつもりはなくてだな…」

彼も漸くその事に気が付いて慌てて離れた。

「その割にはなんだか手つきがいやらしかった様な…」

「ほんとごめん!」

つい悪戯心が出て私がからかうと欠道君は勢い良く土下座しながら謝罪してきた。

彼に謝られて今度は逆に私が恥ずかしくなってきた…。

「ま、まあいいけど///~…そ、それよりベヒモスはどうなったの?」

「あ!?…今はハジメが奴を抑えているんだ!

あの空っぽ野郎も目が覚めたようだしお前達は早いとこ脱出するんだ!」

「か、欠道君はどうするの?」

「俺はリースと一緒にまた奴の所に戻ってハジメを下がらせてからトドメを刺したら脱出するさ!」

「そ、そう…くれぐれも死んだりしたら承知しないわよ!」

「ああ!」

なんとあの南雲が上級クラスの魔物を抑えていた事に驚いた私達。

色々と聞きたい事はあるが今はまだそれ所ではなさそうだ。

欠道君はリースちゃんと一緒にベヒモスと南雲が居る地点まで戻っていった。

彼等の背を見送った私は祈りながら妙子と一緒に階層の入口前まで下がった…のだがこの直後にある悲劇が起こるとは思いもよらなかった。

 

Side晶

ああもう!完っ全にやらかしたよ!

園部さんを思わず抱き締めるような態勢とっちゃうなんてよお!

彼女の体凄く柔らかくて…って何考えてんだよ俺!?

これもどこぞのイタリアの俳優のせいだー!

「御主人、お気をお取り直し下さいませ。

間も無くあの大型魔物の付近です」

「ああ!」

リースに軽く注意され俺は気を取り直しハジメに声をかける。

「状況は?」

「僕の錬成でなんとか奴を閉じ込める事に成功したけどそろそろ持たない!」

見るとハジメの言葉通りベヒモスは彼が生成した岩壁の間に挟まれ身動きを封じられていた。

だがそれも限界の時が近付いているようだ。

「再び動かれる前に叩く!クワル!」

「やった!」

俺は呪文を発動させリースが瀕死のベヒモスにトドメの一撃を撃ち込んだ事でベヒモスはその牙を折られ完全に沈黙した。

その直後の事であった。

「!?」

魔法で生み出されたであろう火球弾が俺達の居る地点に降ってきていた。

今更援護が?嫌、こいつは違う!

「クワ…」

そう確信した俺は防御呪文を発動させようとしたのだが…

「な、何!?」

火球が急に軌道を変えたのだ…真逆これは!?不味い!

「ハジメ!今すぐその場から離れろ!」

「え?…うわあ!?」

俺がハジメにそう警告を発するも時既に遅く軌道を急変更した火球はハジメのすぐ足元に着弾した。

その火球の着弾にベヒモスの質量が加わった事、それとハジメの錬成で抉られていた地面へのダメージが限界を迎えてしまったようで崩落を起こし始めたのだ。

「御主人!」

「くっ!?…ハジメー!」

「駄目です!もう間に合いません…!」

俺はすぐにリースに抱えられてなんとか崩落から逃れる事が出来た。

だがハジメは逃げ切れずにベヒモスと共に崩落に巻き込まれてしまい彼は迷宮の奈落の底にまで真っ逆さまに落下していってしまった。

 

 

 




その頃、地球 どこぞのイタリアの俳優
「へっくち!」
「おや?風邪でもひいたのかい?」
「いやいや、誰かがこの僕の噂でもしてるのかも!ハハハ!」


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EPⅤ「鬼の尋問と奈落の底で」

Side晶

「嫌あああああー!?ハジメくーん!…」

「香織、駄目だ南雲はもう!…」

「嫌!行かせて!ハジメ君を助けに行かせてー!」

「香織!」

ハジメが放たれた魔法の余波によって引き起こされた崩落によって奈落の底へ落下してしまった。

尋常じゃない物音で入口側に居た者達が奴等以外を除いて此方へ駆けつけて来て状況を把握する。

ハジメが崩落に巻き込まれた事を知った白崎さんが彼が落ちていってしまった崖を覗き込みながら叫び今にも飛び込みそうになるのを空っぽ野郎と八重樫さんがなんとか羽交い締めにして必死に止めていた。

「(【フリズド】)…オイ、何テメエ等は何食わぬ顔で帰ろうとしているんだあ?」

「「んなっ!?…」」

俺は何事も無かったかのような顔をして此処から出ようとしていた檜山一味に対しラーニング魔法術で足場を凍らせて身動きを封じさせた。

「な、何をしているんだ欠道!?」

案の定という所か空っぽ野郎が抗議してくる。

「何をって見て分からないのか?あんな事があったというのに真っ先に此処から出ようとする…怪しさ以外のなにものもないだろう」

「それは…」

「彼等が疲労していて他人の心配をしている余裕が無かったから…とかでも言いたいのだろう…だがアイツ等はあの余計な一撃以外には碌な援護すらもしていねえ、只逃げ回ってただけだ。

そんな奴等が真面に魔物と交戦していた俺達よりも疲弊しているなんて事はまずあり得ないんだよ!」

「そうだよ!アイツ等が碌に援護もしてくれなかったから優花や他の皆が危険な目に遭ったんじゃん!

大体ベヒモスなんかと遭遇しないといけない羽目になった原因も団長さんの警告を無視して勝手な事をやったアイツ等のせいじゃん!」

「うっ!?…」

俺の言葉と菅原さんの援護攻撃で空っぽ野郎は押し黙った。

空っぽ野郎を黙らせて俺は檜山達に問いかける。

「さて、最初は漁夫の利でも狙おうとしたのかと思ったが真逆、俺を騙し討ちに使ってハジメを狙うとはな…一体どういう了見だあ!?」

「あ、あれは只の事故で…あ!?…」

「自白したな。だが今更そんな言い訳が通じるとでも思っているのか!(【ガロン】)」

「ぐふっ!?…」

みっともなく言い訳に走った檜山に俺はラーニング魔法術で彼を岩壁に叩き付けてやる。

「やり過ぎだ!」

「不自由が無い程度に加減はしてやった。

これよりももっとハジメは痛みを感じている筈だ」

案の定また空っぽ野郎が抗議してきたので俺はそう言葉を返す。

「それはそうかもしれないが…何も仲間にそこまでやる必要性は…」

は?コイツは何を言っているんだ?

「クワル…」

「なっ!?…」

気が付くと俺は魔本を開いて空っぽ野郎に向けて呪文を唱えていた。

「ガッ!?…な、何をするんだ!?」

リースの放った呪文は空っぽ野郎に当たるが流石は腐っても勇者(笑)無駄にタフだな。

初級呪文では碌にダメージにはならんか。

「仲間ねえ…あのさあお前の言う仲間ってのは身勝手な理由で平気で罪も無い者を傷付けるような奴の事も指しているのか?

だとしたら滑稽だとしか言いようがないな!

俺はあんな屑共を仲間だなんて一ミリも思っちゃいねえ。

お前も含めてな!天之河」

「なっ!?それはどういう事だ!?」

「自分で考えてみろよ!まあ一生かかってもテメエのそのお花畑な頭じゃ分からないだろうがな!」

「ま、待て欠道!お前が持っているその本は一体何だ!?それにそこの女の子といいお前達は何者なんだ!?」

「なんで仲間じゃねえ只の一クラスメイトでしかないテメエの言う事なんぞ聞かにゃならん?

メルドさん、奴等の治療を済ませてとっとと此処から早く出ましょうか」

「あ、ああ…お前達早く此処から出るぞ」

俺の圧倒的なステータスを唯一知っているメルドさんはこれ以上は不毛であると判断し撤退指示を出した。

「おい!欠道聞いているのか!」

撤退しながらもしつこく絡んでこようとする空っぽ野郎を無視し俺はこれからの事を思案するのだった。

 

その頃、奈落の底で Sideハジメ

「う…此処は?…」

僕は痛みに目を覚ました。

そうだ…確か崩落に巻き込まれてベヒモスと一緒に真っ逆さまに…ベヒモスの巨体がクッションになったおかげで奇跡的に命が助かったのか…。

「ぐっ!?…」

だが重傷である事には違いない…このままではどの道死んでしまう。

でも一体どうすれば?…

そう思った時だった。

「え?…」

ふと急に頭の中にこの窮地を脱する為の方法が浮かんできたのだ。

僕は半信半疑に思いながらも藁にも縋る思いでその浮かんだ方法を試してみる事にした。

「本当にあった!…これなら本当に!」

浮かんできた方法の一つが示した少し先の場所まで体を引きずりながら行ってみるとその地点には城の書庫で見たとても貴重な万能回復アイテムである神水が湧き出ている源泉が確かに存在したのだ。

「後は…」

ベヒモスの死骸から剥ぎ取ってきておいた肉を僕は口にした。

「げえっ!?…」

本来なら人が口にしてはならない毒性を持った魔物の肉、だがそれは先程見つけた神水が浄化してくれる。

激しい嘔吐感と激痛に襲われるが僕は生きる為に必死にそれに耐えた。

そして…

『南雲 ハジメ 17歳 男 天職:錬成士 LV9

・筋力 300

・体力 700

・耐性 500

・俊敏 400

・魔力 600

・魔耐 777

技能 ・錬成 ・魔力操作 ・胃酸強化 ・纏雷 ・大耐性 ・言語理解(『答えを□す〇<アンサー◆ー■ー>』)』

数日後、俺のステータスはとんでもない事になっていた。

己の容姿もすっかり白髪になっている。

ベヒモスの他にも遭遇した魔物を狩って食らっていたからだろう。

だが言語理解の後ろに追加されて文字化けしているこれは一体何だ?…

答え…真逆!?

そのスキルの正体に行き着いた俺は早速試してみる事にした。

この奈落から脱出する為の答えを…出た!

この妙な追加スキルは感じた疑問の答えを導く為のスキルなんだ!これは使えるぞ!

俺は遂に此処から脱出する事を決意し歩みを進めた。

 

 

 



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EPⅥ「決闘と語りPARTⅠ」

Side晶

大迷宮から緊急帰還してから二日後の事であった。

「おい欠道!俺と勝負しろ!」

「あン?」

「無論1VS1の正々堂々だ!だからあの妙な本は使えないぞ!」

突然あの空っぽ野郎が俺にそんな事を持ち掛けてきたのだ。

成程、流石は秀才ではある。

リースがいないと魔本の効力は使えない事に気が付いたようだな。

「なんで俺がテメエと勝負なんかしないといけない?」

「君が力を隠していたせいであんな事態になったんだ!俺が勝ったらあの妙な力の事について教えてもらうぞ!」

「はあ?」

あんな事態って…あれは完全に檜山グループの馬鹿な行動によって引き起こされた事だ。

その事は明らかであるのに何故コイツは俺に責任転嫁しようとしているんだ?

「何をしている光輝?」

「メルドさん!アイツとの勝負を許可して下さい!」

「うーん…」

呆れている所に通りがけたメルドさんに空っぽ野郎がそう嘆願していた。

当のメルドさんは俺と空っぽ野郎の圧倒的過ぎるステータス差を知っている為か苦い顔をしている。

「そうだな…今日はヘルシャー帝国からの使者との会談があるが…まあ帝国への見世物ともなるから決闘を許可しよう」

苦い顔を崩さず渋々メルドさんがそれを許可した。

メルドさんの心境が察せるな。

 

しばらくした頃、Side?

「ほう?王国が召喚した勇者と神の使いの一人が決闘だと?面白い!是非共拝見するとしよう!」

俺の名はガハルド・D・ヘルシャー、ヘルシャー帝国の現皇帝だ。

帝国の使者と偽ってハイリヒ王国が召喚したという神の使いらに探りを入れようとしていたが王国騎士団団長には偽りがバレた。

その後騎士団長から面白い催しがあると聞き心を躍らせその場所へと向かった。

その戦いが俺の予想を遥かに超えるものであるとこの時は思いもよらなかった。

 

~王城内部の闘技場~ Side晶

「さあ、かかってこい!

約束はちゃんと守ってもらうからな!」

「本当に良いんだな?

俺はアンタの考えている以上に強いぜ?」

「その言葉そのままそっくり返す!」

空っぽ野郎と急遽決闘する事になり俺は奴に心底失望していた。

こんな下らない事は早く終わらせるに限る。

「来い、現実というものを教えてやるよ!」

俺は王国の武器屋で購入しておいた三切棍を構える。

「そんな棒きれなどでこの聖剣に敵うものか!」

「そいつはどうだろうな!(【エルド】)」

聖剣を構えて突撃してくる空っぽ野郎に対し俺は三節棍をラーニング魔法術で強化し打ち合う。

「そんな!?こんな馬鹿な!?…」

「ほらほらどうしたどうしたあー?」

聖剣と互角に打ち合えている事に驚愕する空っぽ野郎。

「糞っ!?…」

打ち合うのを不利だと悟ったのか空っぽ野郎は急後退する。

大技を決めてくるつもりだろうがそうはいかない。

「天翔…」

「(【ゴウ・エルド】)」

それは俺から見たら只の隙だらけである。

「なっ!?急に伸び…うわああー!?」

「はいよォー!」

俺はラーニング術で三節棍のリーチを伸ばして空っぽ野郎をド突いて大きくふっ飛ばした。

その間に伸ばした三節棍を垂直に置いて次のラーニング術を使用する。

「(【ボルク】)」

「なっ!?一体何処に行った!?」

空っぽ野郎が後退させられて再び聖剣を構え直した時には俺は姿を透明にする術を用いて垂直置きした三節棍に横向きに大回転しながら掴まっていた。

そして勢い良く空っぽ野郎の頭上まで跳んだ。

完全に俺の姿を見失っていた空っぽ野郎だったが

「!?其処か!」

漸く<気配察知>スキルで俺の居場所に気が付くがもう遅い!

「てりゃあー!〇キィーック!」

「ガッ!?…」

一度やってみたかった某改造人間の技を繰り出して空っぽ野郎をまたふっ飛ばした。

「く、糞ッ!?天翔閃!」

なんとか耐えたのか空っぽ野郎は凝りもせずに技を撃ち込もうとしてくる。

「遅い!(【ガンズ・エルド】)」

「なっ!?…俺のスキルがそんな棒きれに!?うわあああー!?」

「ヒョオォー!」

三節棍を回収し俺はラーニング術で攻撃の速度を上昇させ空っぽ野郎に連撃を加えた。

とうとうそのダメージに耐えきれなくなり地に伏せた空っぽ野郎は気絶した。

「ああそういやこっちが勝った時の事言っていなかったな。

金輪際下らない事で絡んできたら次はこの程度じゃ済まなくなるぞ」

俺は気絶した空っぽ野郎にそう言い放ち闘技場を後にした。

 

Sideガハルド

「コイツは…!」

王国が召喚した勇者と神の使いの決闘を観戦していた俺や他の観客達は予想外の結果に唖然としていた。

確かに俺から見た勇者はまだ所々甘さがある事は分かっていた。

だが仮にも一番恩恵を受けている筈であるそんな勇者をああも一方的に沈ませたあの男は一体?…

その男に俄然興味が出てきた俺は戦いを終えた男に話かけてみる事にした。

「ガハハ…よもや勇者に神の使いの一人が完封するとは流石に予想出来なかったぞ」

「おっさん誰だ?」

「俺はガハルド・D・ヘルシャー、ヘルシャー帝国の現皇帝だ」

「ああ、メルドさんが言っていた奴か。何か御用で?」

「お前さん帝国に着く気はないか?」

俺は男に単刀直入に言った。

「興味無いな。俺はどこかの陣営に着く気など微塵も無い」

「つれないな…」

「話はそれだけですか?なら失礼させてもらいます」

男は即答で此方の勧誘を蹴った。

だがアイツの目…一体どれだけの修羅場を潜ったというのだ?

疑問を感じながらも俺は帝国に帰ってありのままを家臣共に話した。

 

Side晶

帝国の皇帝を名乗るおっさんから謎に勧誘をされたがすぐに蹴って俺はこれからの事について思案した。

「まずは早い所ハジメの救援に出向かなければな…それには」

俺とリースだけではとてもじゃないが人手が足りない。

それならばと試したい事もあり俺は園部さん、菅原さん、白崎さんの三人を呼んだ。

出来れば八重樫さんも呼びたかったが都合がつかなかったらしくこれ以上日を伸ばせばハジメの命が更に危うくなってしまう危険性もあった為彼女については諦めた。

「欠道君話って何?」

「ああ、俺は明朝にハジメの救出に出ようと思っているんだ」

「え!?」

俺が白崎さん達にそう話を切り出すと彼女達は驚いた顔をする。

「考えてもみろ。あの時ハジメの近くにはベヒモスの死骸があった。

少なくともあの巨体がクッションの役割になってハジメは助かっているかもしれない。

例えそうでなくてもあの迷宮の解明されていない何らかの要因が重なって生き延びられているかもしれない。例えば偶然万能の回復アイテムが近くにあったりしてな」

「ええ!?」

「ハジメと王立図書館で目にした事があるんだ。

神水という万能回復アイテムの存在があるって。

それに俺が言わなくても白崎さんはハジメの生存を信じているんだろ?」

「う、うん…それはそうだけど…でも…」

白崎さんはそう答えるが何処か迷いがあるようだ。

「ハジメの救出に足手纏いかもしれないと考えているんだろ。

それだったら良い方法が有るんだよ」

俺は預かったままであった彼等の魔本を取り出し白崎さん達の前に並べた。

「コレって確か欠道君が持っている本の色違いだよね?一体この本は何なの?」

「ああ、そこで一つ試したい事があってな。

白崎さん達に折り入ってお願いがあるんだ。

此処に並べた本を見て見て一行でも読める部分があったら教えてくれ。

それからその本の事や俺やリース達の事について話す。

ああ、くれぐれも発音するのは今はNGだ」

「分かったわ」

もし読まれて呪文が発動したら元の世界の俺の家が大惨事になりかねないので俺は一言忠告を入れながら白崎さん達に頼んだ。

白崎さん達はそれぞれ俺が並べていた魔本を手に取って黙々と閲覧し始めていく。

「…ナニコレ意味不明な文字ばっかりで全っ然読めないんだけど…」

菅原さんは青色の本、ゲリュの魔本だな。

それを見て全く読めていない様子だった。

「だったらコイツはどうだ?」

俺は薄紫の魔本を薦める。

「…読める、読めたわ!この部分だけだけど…」

「私も読める部分があったわ!」

「わ、私も!」

菅原さんは読めた部分を指差してきた。

そして園部さんが黄緑色の魔本、白崎さんが水色の魔本を読む事が出来た事が判明した。

「そうか!それだったらちょっとその本を掲げながら魔力を少し込めて念じてみてくれ!」

「こ、こうかしら?」

「魔本のパートナーと魔物は惹かれ合う」その特性と白崎さん達の魔力を利用すれば元の世界に保護している彼等をこの世界に呼び出す事が出来るかもしれない。

そう思った俺は白崎さん達にそう言った。

そして白崎さん達が本を掲げた瞬間、彼女達の魔本が激しい輝きを放った。

「「!?」」

思わずその光に目を閉じそうになった白崎さん達の前に現れたのは…

「「ショウ!?それにリースも!?」」

「キュー!?」

俺が保護した千年前の魔物達の内の二人と一匹だった。

 



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EPⅦ「決闘と語りPARTⅡ」

Side晶

「ショウ!今迄何処に行ってたのよ!?急にいなくなったから皆心配してたのよ」

「キュキュー!」

「全部話すから一旦落ち着いてくれお前等」

俺の推測は見事に当たりこの世界に呼び出された千年前の魔物の子達が詰め寄ってきたので落ち着かせる。

「実はだな…」

「何?…」

俺は彼等に今迄の出来事を話した。

彼等は此処が地球上でも魔界でもない異世界である事を知るととても驚いていた。

「欠道君、その子達は一体?」

彼等の事を知らない白崎さん達が聞いてくる。

「ああ、この子達はだなリースと同じ魔物の子達だよ」

「リースちゃんとこの子達が魔物の子?…」

その言葉を聞いて白崎さんが一歩後ずさる。

「ああ、でも勘違いしないでくれないか。

この世界でいわれている魔族とは違う。

元の世界でとある戦いをする為に人間界に送り込まれてやって来たんだ」

「ある戦い?」

「ああ、それは百人の魔物の子供達が魔界の王を決める為にする戦い…」

俺はリースや出会った戦友達と共に此れ迄に行ってきた戦いの軌跡を可能な限り白崎さん達に話した。

「「…」」

白崎さん達は黙ったまま俺の話に驚いていた。

「辛くはなかったの?」

「確かに最初は混乱はしたさ。

でもリースや他の戦友達の理想を聞いて共に戦おうという決意は出来たんだ」

確かに白崎さんの疑問通り選定の戦いの最中で豹変してしまい友情や絆を踏みにじった屑もいた。

そういう者は魔界の王になど相応しくないとリース達との結束で戦い打ち勝った。

「リースちゃんはどんな王様を目指して戦ってるの?」

「私自身は元々王になる気はないのです」

「え?だったらどうして戦ってきたの?」

白崎さんがリースに質問するとそう答えが返ってくる。

白崎さんは案の定頭に?を浮かべる。

「私は私自身の目で見極めた王に仕え寄り添う者になりたいと…そう思いこの戦いへの参加を決意したのです」

リースはそう続けて答えた。

まあ彼女にはもう一つ別の思いが芽生えているのだがそれは又別の話だ。

お次はこの世界に呼び出す事が出来た千年前の魔物達について話す。

「そう…長い間石板にされて苦しい思いを…」

「でもそれももう大丈夫…」

園部さんが話を聞いて思う所があったみたいで泣きそうになっていた。

彼女のパートナー予定であるカルーラを保護する前は本当に危なかった。

あろう事かカルーラを含む千年前の魔物達はあのブラゴに千年間の激しい憎しみをぶつけようとして戦いを仕掛け逆にボコボコにされたのだ。

彼女だけはブラゴとの実力差を思い知ってなんとか隙を突いてゾフィスに操られていた元パートナーと共に逃げ出す事に成功したが彼の強力無比な術を受けていた事でボロボロの状態で俺に発見された事で保護された。

保護した当初はほんとに石板の事も含めカルーラが抱え込んでいたトラウマを解くのには神経をすり減らす思いだったな。

「天使さんも最初は人が憎かったんだよね…」

「今では気にしてなどいないがな」

天使の様な風貌の金髪のショタ魔物であるエルジョは白崎さんとパートナーとなった。

エルジョに関しては石板状態の時、まだゾフィスの手へと渡る前の保存状態が劣悪で扱いが酷かったそうで人間に必要以上に憎しみを抱くようになっていた。

まあコイツに関しては実力差を思い知らせた上で強引に説得したまでだが。

「この子可愛い~!」

「キュー」

菅原さんはパートナーとなる灰色の子鼠の様な魔物パヨムにベタ惚れしていた。

彼に関しては割と臆病な性格の為か元のパートナーがそもそも戦いたがらなかった事もあって友情が芽生えゾフィスに操られる前にこっそりと脱出してきたらしい。

元のパートナーは偶然出会った俺にパヨムと本を託して日常に戻っていった。

話を終えた俺は早速白崎さん達に魔本の扱い方を教え今度こそハジメを救出する為の準備に入った。

~それから翌日の事~

「え?」

「だから南雲の死をいつまでも引き摺っていては駄目だ。

彼に報いる為にも俺達の手であの迷宮を攻略するんだ!」

「…」

この国から出る準備が整った為に白崎さん達を呼びにいくと空っぽ野郎が白崎さんに対してしつこく共に迷宮攻略に出向くように迫っていた。

当の白崎さんはというと「何を言っているんだコイツは?」と言いたげな顔で空っぽ野郎から少しずつ目を逸らしていた。

 

 



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EPⅧ「決別」

Side晶

「さあ、早く行こう香織!」

「…」

一番面倒な時に来てしまったか…空っぽ野郎はさも当たり前の事の様に白崎さんに共に迷宮探索の続きに行くべきだと誘いをかける。

だが当の彼女はまるで「お前は何を言っているんだ?」とでも言いたげな表情で空っぽ野郎を見ていた。

「えっと…私行かないよ?」

「へっ?…」

白崎さんの返答が予想外だったのか空っぽ野郎は間抜け面をする。

「あ、迷宮に行かないって事じゃなくてね…天之河君達についていく気はないよって事なんだけど…」

「何故なんだい香織!?はっ!?真逆君は…!」

慌てて訂正した白崎さんの言葉の意図に空っぽ野郎は漸く気が付いたのか叫んだ。

「南雲を探しに行くなんて言う気じゃ…」

「そうだけど?…それと天之河君に心配してもらわなくて大丈夫、今の私には…」

「何を馬鹿な事を言っているんだい君は!?南雲はあの時死んだんだぞ!」

白崎さんの言葉を遮り空っぽ野郎は喚く。

純粋な心配からだろうが今の彼女には只の戯言にしか聞こえない。

「天之河君こそ勝手な事言わないでよ!ハジメ君はこの世界の知識を誰よりも身に着けていたの!それは私もよく知っている。だからこそ私は彼がそれを生かして生き延びている事を信じているの!」

「か、香織?よく考え直してくれ、な?」

白崎さんの叫びに空っぽ野郎は驚くもなだめようと彼女に手を触れようとした時だった。

「【ロズル】!」

「な、何っ!?…」

空っぽ野郎の足元から樹木が突然生え出して彼を拘束する。

今のは間違い無く彼女の力だな。

「さっきから黙って聞いていれば全く…天之河ってホンット融通が利かないわね…」

「そ、園部!?こ、これは一体何の真似なんだい!?」

準備を整えてやってきていた園部さんがカルーラの術を発動させたのだ。

空っぽ野郎は喚く。

「あんまり騒がない方が身の為よ。いくら他より耐性があるあんたでも怪我じゃすまなくなるわよ?」

「!そ、その本は!?…」

園部さんを目にした空っぽ野郎は彼女が持っていた魔本の存在に漸く気が付く。

「ああ、コレ?カルーラの力を解放させる事が出来たからって譲り受けたのよ。欠道君にね」

「なっ!?…」

「あんまり暴れられて時間をロスしたくないからこのまま私達の話を聞いてくれないかしら?」

園部さんが告げた言葉に驚く空っぽ野郎に彼女は話を続ける。

「白崎さんも言ったかもしれないけど私や妙子も一緒に南雲の事を探しに行く為にこの国を出るつもりだから」

「なっ!?そんな事他の皆が許すと思うのか!?」

「許すも許さないも南雲の事を一切信じていない連中に何を言われようが関係無いじゃない!

カルーラもういいわ」

「分かった」

「うわっと!?」

園部さんは呆れながらも術の発動を止めさせて空っぽ野郎を解放する。

「か、香織!お、俺達と一緒に来てくれるよな?な?」

カルーラの術から解放された空っぽ野郎はまだ希望があるとばかりに白崎さんに詰め寄る。

だが…

「お断わり致します」

「え?」

当の白崎さんはやはりというか絶対零度の微笑みを浮かべて空っぽ野郎を突き離していた。

「き、聞き間違いだよな?なあ…」

「【ビライツ】!」

「!?」

そんな白崎さんの態度を見ても尚諦め悪く詰め寄ろうとした空っぽ野郎だったが足下スレスレに何かが撃ち込まれた事で驚いて慌てて止まる。

白崎さんの背後に控えていたエルジョの術によるものだった。

「これ以上俺のパートナーの邪魔をしようというのなら俺が貴様を叩きのめしてやろうか?」

「な、何故君まで!?…」

エルジョは構えを取りながら空っぽ野郎に怒りを見せていた。

一方の空っぽ野郎は真逆白崎さんまでもが魔本の持ち主になっているとは思わなかったのか驚愕していた。

「なんでって私がエルくんの本を読めたからだよ。

南雲君は今も助けを待っているの!これ以上私達を足止めしようというのなら天之河君でも容赦は出来ないよ!」

「そ、そんな!?…」

白崎さんのその一言によって空っぽ野郎は意気消沈しその場に項垂れた。

「余計な話も終わった所で警備に見つからない内にさっさと行くぞ」

「そうね、ほんとにタイムロスでしかなかったわね」

「うん!あ、先生達には後で伝えておいてね。天之河君」

話が終わった事で未だ項垂れたままの空っぽ野郎を放っておき俺達は王宮を早急に出たのだった。

 



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EPⅨ「屈折する勇者の嘆き/迷宮がもたらした世界の真実」

真逆のガッシュ続編に奮い立たせられました



Side光輝

「ええ!?」

「何だとお!?欠道達が王国を出て行ってしまっただと!?」

「はい…」

欠道達がハイリヒ王国を出ていった翌日、俺はメルドさんと愛子先生にこの事を報告した。

「ど、どうして止めなかったんですか?!」

「そ、それは…」

愛子先生に彼等が出て行くのを止められなかった事を責められる。

「仕方無いだろう。

欠道晶は光輝よりも遥かに上回った実力を持っていた。

止められないのも無理は無い…それに…」

メルドさんがそう言うと暗い表情をする。

違う!…間接的には欠道の影響だが俺は…

「先程王国の意向により南雲ハジメの捜索隊は編成されない事が決定された…」

「そんなどうして!?まだ南雲君が死んだとは決まっていないでしょう?!」

「力及ばずすまない愛子…俺では決定を覆す事は出来ないのだ…彼等が出て行ってしまったのは最初から我々に期待などしていなかったからこそか…」

「そんな!?…」

メルドさんの言葉に愛子先生は絶望する。

だが一方の俺は

「メルドさんさっさと大迷宮の攻略に戻りましょう。

南雲もきっと俺達が此処で立ち止まっている事は望んでいない筈でしょう…」

最も愛しい人が自分から離れていってしまったという事実を認める事が出来ずに気持ちを誤魔化し続ける事で平静を保つ事しか出来ないのだった。

 

同時刻、Side晶

「リース、ハジメの魔力反応はあったか?」

「いえ…反応皆無ですね」

「そうか…」

「南雲君…真逆…」

俺達はハジメを捜索する為にオルクス大迷宮へと再び潜っていた。

だが階層をいくら下っていっても一向に彼の行方、姿形すらをも掴む事が出来ずにいた。

「まだ諦めるには早計だと思う。

もしかしたらハジメは既にこの迷宮にはいないのかもしれない」

「それって!…」

「ああ、恐らくあの時落ちて行った先がこの迷宮の最深部に繋がっていたのかもしれない。

という事は今頃は迷宮の外に出る事が出来ている筈だ」

「という事は…」

「今すぐ此処をとっととおさらばして近くの町に出向いてみた方が良いかもな」

今後の方針が決まり俺達は迷宮を後にしたのだった。

 

~その頃、Sideハジメ~

「久し振りのまともな飯だあ!」

「ハジメ嬉しそう!…」

あの後、魔物肉と神水の相乗効果を得た事によって俺の体は急激な変化を遂げステータスも劇的な上昇をしていた。

そのおかげなのだろうか文字化けしていた部分が完全に解読出来るようになった。

<答えを出す者(アンサートーカー)>…様々な過程式の最適解を瞬時に導き出す特殊な能力のようだった。

それが難解なモノになる程膨大な魔力を消費するようだがステータス上昇のおかげで今の所はあまりリスクにはならず俺はこうして大迷宮から出る事に成功したのだ。

あの迷宮の最深部でどうしてか囚われの身となっていた所を出会い俺がユエと名付けた吸血鬼族の少女と共に進んで行くとこの大迷宮を創った反逆者と呼ばれていた内の一人であったオスカー・オルクスが残していた記録映像によりこの世界に隠されていた驚きの真実を知る事となった。

実はトータスの唯一創造神とされていたエヒトルジュエを含む神々は自分達のあまりに持て余し過ぎたその暇を埋めるが為だけに人々をゲームの駒だと称して煽り戦争に駆り立てていたのだという。

オスカーを含む七人の者達はエヒトの真意に気が付く事が出来たが自分達の楽しみを潰しにかかろうとしていた彼等を神に世界に対して反逆者に仕立て上げた事で彼等の目論見は無残に打ち砕かれ今現在も無法なエヒトによる世界統治が続いているみたいだ。

まるで邪神ではないか…。

アンサートーカーでオスカーが語った事が真実である事を知り又元の世界へ帰還する為の方法が全ての七大迷宮の試練をクリアし神代魔法を会得する事こそだった。

俺達をこの世界に召喚したのもエヒトにとって都合の良い駒にしたかったからだったからか…ふざけるなよ!…邪神らの顔に一撃くれてやらねえと気がすまねえな!

まずは兎に角残り六つの大迷宮をクリアしてやる必要があるか。

「ふー食った食ったー!ユエ、この町から一番近い大迷宮は何処なんだ?」

「此処からならライセン渓谷の大迷宮…」

「決まりだな!一泊したらライセン渓谷に向かうとしよう!」

今後の方針を決め俺達は宿で眠りについたのだった。

 




次回は皆大好きあの御方が出ます!


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EPⅩ「衝撃のVと空色の兎人族の少女 前編」

早いとは思いますがタイトル通り皆大好きあの御方が遂に登場します!



Sideハジメ

「パク、モグモグ、ムシャムシャ、ペロペロ、ゴクン!…う、うんまあー~い!」

「…」

ええっと何だこの状況?…

「あはは、凄い食べっぷりですね~V様は」

「シアァおかわりを所望する!」

「あはは…備蓄してあったメロンはもう全部V様が食べちゃったじゃないですかー」

「…ぬああにいいいーー!?ベリーシット!」

「まだ食べる気だったの!?それに本来私達の貴重な食料だった筈なんですけど…モヒカンさんもなんとか言って下さいよ…」

「…」グッ!

「いやなんでそこでグッドラックサインなんですか!?」

俺達の前にはV字型の変な奴とソイツにシアと呼ばれた水色ロングヘアーの兎人族が謎にコントを繰り広げていた。

それをシアと同じ兎人族の少女が呆れ傍に居た一世代前ぐらいの暴走族みたいな恰好をしたモヒカンヘアーの男に注意を促すも彼にはこれが平常運転だとばかりに流されていた。

コイツ等と出会ったのは俺達がオルクス大迷宮の試練を偶然にクリアし外に出て帰還の術である残りの神代魔法を習得する為に付近のライセン大渓谷にある次なる大迷宮へと向かう道中での事であった。

「た、助けて下さい~!」

「はあ?」

「こんな所に兎人族?もしかして犯罪者?…」

突然現れて助けを懇願してきたのが彼女だった。

俺達は最初犯罪者なのかと疑いをかけていたが

「ち、違いますよ!ここに居るのはとても深い訳がありまして…って今はそんな場合じゃないんですよ!ダイへドアは難無く撃退出来たんですが空に居るハイベリアにはV様だけじゃ対応出来なくて…」

「ブルアアアァー!?ベリィーシット!おのれェ!貴様等さっきからやたらとちょこまかしおってえー!俺様の美しき技が当たらぬではないかあー!」

彼女の言葉を遮って変な絶叫が聞こえてきたかと思うと変なV字型の物体が浮かび空飛ぶ魔物に対応していた。

だがソイツの繰り出す攻撃はハイベリアと呼ばれていた魔物に当たっていない。

「アレをやれば良いんだな?」

俺は錬成で作り出したドンナーを構え魔物達に照準を定め引金を引いた。

ドン、ドン、ドン!

「むお!?これはチャンスだな!モォヒカンエェース!」

「<マグルガ>!」

「アレは!?…」

俺が撃ち落としたハイベリアを見てV字の変な奴はチャンス到来と見たのか地上に居たチンピラの青年に指示を飛ばす。

すると青年は欠道が持っていた物と全く同じ様な本を構えて呪文の様な言葉を叫ぶとV字がビームを撃ち出してハイベリアを焼き払ったのだ。

「うー~ん!今日も俺様のVは冴え渡っているぜ!…それでは我がボディと再合体!」

V字はそんな事を呟きながら地上にあった奴の体にドッキングした。

「カッコイイ!…」

「そうか?…」

ユエはV字の攻撃を見てそんな感想を呟いていたが俺にはどう反応すればいいのか分からなかった。

そんな訳でほとんど成り行きで助けたシアと隠れていた兎人族の少女とV字…もといビクトリームとそのパートナーであるモヒカンエース?に詳しい話を聞く事になったのだが…。

「ブルアァァー!キャッチマイハート!ベリーメロン!♪~」 「ベリーメロン!♪」

ビクトリームが変な歌を歌いながら変なダンスを踊っていた。

シアも合いの手入れてるし

「お口にとろけるゥ~ベリーメロ…」

「いつまでやっとんだ己は!」

「ブルアアァー!?何をするのだ貴様!?」

何時迄も変な踊りをやめないのでいい加減に痺れを切らした俺はビクトリームを思いっきりド突いてやった。

「こっちはクソ忙しい中助けてやったんだとっととお前等の話を聞かせろ」

「むう…そいつは失礼した」

「わ、分かりました」

俺の言葉にビクトリームは謝罪を述べシアが事の次第を語り出すのだった。

 



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EPⅩⅠ「衝撃のVと空色の兎人続の少女 後編」

ガッシュの魔本のガチ原本化されるのが一般販売されるそうで!他の魔物ののも出ないかなあ?



Sideビクトリーム

「此処は何処なのだ一体?…」

約三日前、ゾフィスの一件から解放されたビクトリームはパートナーであるモヒカンエースと一緒に人間界を自慢のバイクでツーリングの旅を楽しんでいた。

がある日突然見知らぬ場所に迷い込んでしまっていた。

「むうゥ、まいったな…備蓄してあったメロンも既に食してしまって全く無い上にこのような場所に迷い込んでしまうとは…こうなれば!」

私は分離し周囲を見渡してみた。

「むっ!200m付近に村らしき場所を発見した!行こうではないかモヒカンエース!」 コク

その介あってか近くに村を発見出来た私はモヒカンエースと共にその場所に赴いてやったのだが…。

「やはり噂は本当だったようだな!」

「やめて下され!娘はこれまで悪い事などしておりませぬ!どうか御慈悲を!…」

「お、御爺様!…」

何やら取り込み中の様子であるみたいだがそんな事此方には一切関係は無い。

なので…

「ビクトリーム!」

私は自慢の華麗なるVのポージングをして彼等の気を引こうとしたのだが

「ならん!その娘は忌み子、ならば我等の土地に居てはならぬわ!

貴様等一族毎追放処分にしてやっても良いんだぞ?!」

「そんな!?」

「…む!?アレは!」

案の定話に夢中で無視されていた。

だが俺様の目にある物が飛び込んできた。

あの丸みを帯びた形、それと緑の縞々、名も知らぬ水色の長髪の兎の獣人の少女がなんとまごうことなきメロンをその手に抱えていたのだ。

「ブルアアァー!」

「「!?」」

俺様はさっきよりも大きな叫びで周囲を驚かせてやった。

「獣人の娘よそのメロンを俺様に献上してほしいのだが」

「え、コレですか?別に良いですけど…」

兎娘にメロンを寄越すように言うと彼女は素直にメロンを俺様に献上した。

いただきまあーす!…こ、コレは!…

「う、美味ーい!今迄口にしたメロン…いやガッシュがくれたメロンと同等レベルに美味なメロンであるぞ!

これは娘、お前が作ったものであるのか?」

「え、ええそうですが…其処迄育てるのに結構かかりましたけど」

「なんと!」

俺様の舌をここまで唸らせるメロンを作り出した人物が真逆この娘だったとは…

「な、何々だ貴様は!?」

俺様が味の感想を言っているとそこで熊の獣人の男が喚き出す。

「ベリーシット!これ程迄の素晴らしいものを作り出せる者を下らぬ事で排除しようなどとはなんとも浅はかな!そんな無粋な輩はここで排除するべきか!モヒカンエース!」

「マグル!」

唯一俺様の気分を害した熊男の足元に術を使って脅しをかける。

「!?」

「これ以上の目に遭いたくなければ早急にこの場を去るが良いぞ!」

「く、糞!真逆兎人族にあんな奴が肩入れしているとは…だが我々はその忌み子の存在を許さぬぞ!」

熊男は勝てないと悟ってそう言い放って逃げていった。

「いくらでも吠えているがいい!メロンとそれに通ずるものを侮辱しようものならいくらでも相手になってやろう!ブルアアー!」

俺様は高らかに笑いながら娘にもう一度メロンの礼を告げて俺様達の事を説明するのだった。

 

Sideシア

「華麗なるビクトリーム様?とお呼びすれば良いんですね?

さっきは私達を助けてくれてありがとうございます!」

「礼は既に貰っているからな」

「ですがこれからの事もあるでしょう?」

「むう…それもそうだな…」

本来魔力を持たない筈が生まれ持ってしまった私の事で熊人族に責められていた私達を助けてくれた不思議な力を扱う御方、華麗なるビクトリーム様はなんとこの世界とは全く違う異世界からトータスに突然来てしまった魔物の子供の一人だそうで千年前にとある事情で封印されてしまっていたがとある事情で漸く解放され今に至るらしい。

私は彼とそのパートナーさんであるモヒカンさんに衣食住を保証する代わりに村の警備等をお願いした。

彼等は快く了承してくれたのだがその翌日村に彼等だけでは勝てない程の魔物が現れて私達は泣く泣く村から出る事を強いられてしまった。

その挙句に道中で亜人差別国家のヘルシャー帝国の軍隊に遭遇してしまい半数が彼等に捕らえられてしまい散り散りになってしまって未来視の力を使ってなんとか今に至った。

 

Sideハジメ

「事情は分かった、その未来視の力はあまり自由には扱えないみたいだな…」

「はい、一度使用したらそれからしばらくの間は使えなくなりますから…でもあの時私が使うのを躊躇しなければ最悪の事態は回避出来ていた筈なんです…」

「俺様の術も多方を囲まれ人質を取られてしまえばあまり意味が無い…」

「なら手を借してやってもいいぞ」

「え?」

「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれ」

シア達の事情を知った俺達は彼女達に手を借す事にした。

そして下種な帝国部隊の連中を追い払い、囚われていた者達を解放後フェアベルゲンへと向かう。

ついでなのでフェアベルゲンに存在している大迷宮へと向かおうとしたが今は行けないという事が判明し結局ライセン大迷宮から攻略した。

正直ミレディ・ライセンが仕掛けてきた人をおちょくった様なトラップの数々に嫌気が指していた事しか覚えてない。

 

 



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