デート・ア・オルフェンズ (鉄血)
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番外編
凜祢バスタイム 前編


羽休め的な、投稿!

もし、ゲームオリジナルキャラクターの凜祢がいたら?という話です。
ちなみに、ちょっとだけ凜祢に三日月の知り合いのキャラが混じってます。ほんのちょっとだけですが。

「一緒に頑張りましょう!クーデリアさん!」

ハーレム上等アトラさん


『───きゃぁっ!』

 

ある日の夜。士道がシャワーを浴びていると、リビングの方からそんな悲鳴が聞こえてきた。

 

「ん・・・なんだ?」

 

不審に思い、シャワーを切って身体についた水滴を払う。今の声はおそらく四糸乃のものだろう。四糸乃があんな大きな声を上げるだなんて、一体何かあったのだろうか。

そして扉を開けると────。

 

「・・・・っ、寒いな」

 

士道は思わず顔をしかめてそう呟いた。

その寒さに、士道は頭の中にはある可能性が過ぎった。

 

「これは、もしかして・・・」

 

士道はそう呟き、風呂場から出た。

 

 

「・・・で、十香が食べてたアイスがよしのんに落ちて、驚いた訳か」

 

士道は、コミカルな意匠のウサギのパペット『よしのん』の頭を濡れた布巾で拭いながら、ため息を吐く。

 

「・・・すみません・・・士道さん」

 

言って、そのパペットを左手に装着した子柄な少女────四糸乃が、申し訳無さそうに顔を俯かせた。その目は、うっすらと涙が滲んでいる。

 

「別に四糸乃が悪気でやったわけじゃないんでしょ?なら、別にいいよ」

 

士道がそう言ってデーツを口に含む。

その隣に神妙な面持ちで正座をした十香が、四糸乃と『よしのん』に頭を下げる。

十香の顔にはしゅんとした表情に彩られていた。

 

「いえ、そんな・・・・」

 

『そうよー、気にしないで十香ちゃん。悪気があったわけじゃないんだしー。四糸乃もちょっと驚いちゃっただけなのよー』

 

四糸乃が手を振り、『よしのん』がわははと笑う。しかし十香は「む、むぅ・・・」と申し訳なさそうに肩をすぼめた。

 

「しかし、私のせいでシドーにまで迷惑をかけてしまった」

 

「別に気にしてないよ。これぐらい───クシュ!・・・んん」

 

「し、シドー!」

 

「別に、大丈夫」

 

思いの外、身体が冷えていたのだろうか。士道は鼻を擦りながら十香達にそう言った。

 

「四糸乃に続いて十香まで不安がらせてどうするのよ。まったく」

 

「ごめん」

 

琴里の言葉に士道はそう言ったちょうどそのとき、ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。

 

「ん・・・・?」

 

来客だろうか。士道は視線を琴里から外の方へと向ける。

すると、まるでそんな士道の仕草を察するかのように、ガチャリと玄関が開けられる音と、トントンと廊下を歩く音が聞こえてくる。どうやら士道の返事を待たず勝手に入ってきたらしい。

普通の客がそんなことをするはずがない。やたらアグレッシブな泥棒か、気の早い酔っぱらいでなければ、その足音の主は恐らく────

 

「士道、いるー?」

 

そんな声とともにリビングの扉が開かれる。

ゆるいウェーブのかかったセミロングの髪を揺らしながら顔を出したのは、士道の予想通りの人物だった。

一言で言うなら、柔らかそうな少女である。 

それには物理的な意味も含まれているのだが、とにかくその表情や物腰、声に至るまでが、対面しているだけで思わず緊張感を解いてしまうような柔和さに溢れているのだ。

士道からしてみれば、まるで“アトラ“によく似ていた。

園神凜祢。五河家での隣に住む少女にして、士道のクラスメート。そして────士道の『幼なじみ』である。

 

「あれ?凜祢、どうしたの?」

 

「うん、実は・・・って、士道こそどうしたの?この状況」

 

凜祢が首を傾げ・・・はっと何か気づいたように肩を揺らす。

 

「もしかして士道、十香ちゃんと四糸乃ちゃんに何かしたの?」

 

「・・・は?何いってんの?」

 

士道はそう言いながら周りを見渡す。

今リビングには、正座した十香と四糸乃に、十香達の前仁王立ちする士道、という光景が展開されていたのだ。

ついでに十香と四糸乃は目にうっすらと涙を浮かべている。凜祢が戸惑うのも無理はなかった。

 

「だめだよ士道。女の子を思いっきり叱っちゃ!一体何したの?正直に言ってみて。私も一緒に謝ってあげるから・・・」

 

「何か・・・勘違いしてない?俺、怒ってないし。ただの誤解だよ」

 

士道は、そう言うと、凜祢にことのあらましを説明する。無論、四糸乃の霊力や精霊云々は上手く誤魔化して。

 

「なーんだ、そうだったんだ。・・・あ、私は士道を信じてたよ?」

 

「真っ先に俺を疑ってた奴のいう言葉じゃないよね。それ」

 

士道のその言葉に、凜祢はごめんねと頬に汗を浮かばせながら頭をかく。相変わらず調子のいい奴である。凜祢は昔からこうだ。

そう、それこそ士道たちが小学校に入る前か、ら────

 

「・・・ん?」

 

士道は小さく首を捻る。おかしい。自分の記憶はオルガ達と一緒にいた時のことと、この生を過ごしているときの分の筈だ。

その中で、『凜祢』という“幼なじみは居たのだろうか”?

 

「?どうしたの?」

 

「・・・何でもない。それで、何か用だったんじゃないの?」

 

まあ、何年も前の話だ。最近のことさえ、あんまり覚えていないのだ。よっぽどのことかない限りは当然だろう。士道はそう結論を出し、凜祢に向き直る。

 

「ああ、そうそう。実は・・・」

 

言って、凜祢が手にしたものを示してくる。シャンプーや石鹸などが入れられた洗面器に、着替えが入っていると思しき布袋である。

 

「お風呂を溜めようとしたんだけど、なぜかお湯が出なくなっちゃってね・・・ちょっとお風呂貸してくれないかなって」

 

「・・・あー、ごめん。俺のところも今水がでないんだ」

 

「ええっ、そうなの?困ったな・・・」

 

凜祢があごに指を当て、眉を八の字に歪める。

実際、困っているのは士道たちも同じだ。

別に、士道は風呂に入らなくてもいいが、それをすると凜祢がアトラと同じくらいにうるさい。それに他の三人はまだ風呂に入ってもいない。

シャワーも出ないままの状態では、汗を流すことも出来ないだろう。

と、士道は考えていると、凜祢が何かを思い出したかのように「あ」と声を出す。

 

「ねえ、みんなはもうお風呂に入ったの?」

 

「ぬ・・・?いや、まだだが」

 

十香は首を振る。それに合わせるように琴里と四糸乃もまた凜祢に目を向けた。

 

「そっか。みんなまだならこんなのはどうかな?」

 

「ん?」

 

凜祢は、指を一本ピンと立てた。




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凜祢バスタイム 中編

投稿!

「オルガに見捨てられないように、俺ももっと頑張らないと」
 
三日月・オーガス


それから十数分後。士道たちは五河家をあとにしていた。

凜祢の提案は単純明快。みんなお風呂に入れなくて困っているのなら、一緒に銭湯にでも行こうというものだった。

水が出るようになるまでどれくらいかかるか分からない以上、是非もない。士道たちは凜祢と同じように替えの服やタオルなど詰め、街灯に照らされた暗い道を歩いていた。

 

「銭湯ってなんか久しぶりだけど、あそこまだやってんの?」

 

確か前に行った時は、相当客数が少なかったはずだ。

もう潰れているかと思うが・・・と、士道の疑問に凜祢が小さく首を回してくる。

 

「うん、年季は入ってるけど、まだまだ現役だよ。っていうかあの銭湯、地主のおばあちゃんが趣味でやってるようなものだから、極端な話常連さんが入りに来てくれれば十分らしいんだよね」

 

「へー」

 

士道は興味なさそうに返事をする。まあ趣味人のおばあちゃんと常連のおかげで風呂に入るのだ。感謝せねばなるまい。

 

「でもそっか、士道も行ったことあったんだね、あの銭湯」

 

「まあね」

 

士道は凜祢にそう言いながら、十香を見る。

なぜか十香は妙に戦慄した面持ちになって、士道の腕をつついてきた。

 

「シドー。・・・やはりもう一度しっかりと準備した方がよいのではないか?」

 

「ん?多分十香が思ってる事とは違うよ」

 

「ぬ?」

 

恐らく十香は戦闘と勘違いしている。なので、十香に軽く説明した。

 

「俺達が今、向かってるのはでかい風呂場。戦いに行くわけじゃないから別にこれでいいよ」

 

「大きな風呂・・・温泉か!?」

 

十香は目を見開き、驚いたような声を発する。家で準備している時からやけに険しい顔をしていると思ったらやはり勘違いだったらしい。

 

「温泉とは違うと思うけど、まあそんなもんだよ」

 

「そうか、大きい風呂か。うむ。それは、なんだ、いいと思うぞ!」

 

十香はそう言って、前を走る。

士道はソレを見ながら視線を前方に戻すと、件の銭湯が見えてくた。

 

「んじゃ、また後で。一時間後に此処でいい?」

 

士道はそう言うと、皆がそれに応ずるように首肯する。

 

「うん、じゃあね、士道」

 

「うむ。ではまた後ほどだ」

 

「はい・・・」

 

「覗くんじゃないわよ。家でならいざ知らず、こんなところでやったら一瞬で豚箱コースだからね」

 

「別に興味ないから」

 

琴里の軽口を士道はそう言い返し、『男』と書かれた藍色ののれんをくぐる。

脱衣所の中を見渡すと、見る限り士道以外に人影はなく、脱衣カゴも使われていない。どうやら男湯には今、士道一人しかいないらしい。

幸いなことに、四糸乃の冷気はそう広い範囲に影響を及ぼしたわけではないようだ。

 

「・・・貸し切りか」

 

言いながら、士道は手近なカゴの前に立ち、服を脱いでいく。

普段は『阿頼耶識』の関係上、こういった人が集まる所には行かないのだが、まあ一人しかいないので気楽でいける。

士道は肩を鳴らしながらタオルを片手に、風呂場に歩いて行く。

扉を開けると、今のもわっと白い湯気が視界いっぱいに広がった。

 

「・・・蒸し暑い」

 

士道はそう呟きながらも適当な所で身体を洗い、湯船に入る。

こういった習慣は昔はなかったものだから、慣れないと言えば慣れない物だ。

 

「・・・久しぶりだな。こんなデカイの」

 

鉄華団にいた頃にも確かに湯船はあったが、正直な所、士道はシャワーで済ませることが多く、湯船に入る必要がなかった。ある意味で新鮮でもある。

と、士道はゆっくりしていると、後ろの壁の方から、何やらガラガラっという音が聞こえてきた。

 

「・・・・ん?」

 

士道はすぐにそちらに視線を回すが、その先にあるのは壁のだけだ。だが、その原因はすぐに知れた。

 

『おおっ、本当に広いな!とうっ!』

 

『あっ、駄目だよ十香ちゃん。みんなが入るお風呂なんだから、身体を洗ってから、ね?』

 

『ぬ、うむ。そうだったな!』

 

ペタペタと足音に続いて、くぐもった声が聞こえてくる。

どうやら、十香達の場所から音や声が響いてきているようだ。

 

「十香達か」

 

士道がそう呟くと、琴里の声が反響してくる。

 

『あー、いいお湯ね。今日はお風呂抜きになると思ってたから特に』

 

『す、すみません・・・』

 

『だから、気にしないでって。むしろ四糸乃のおかげでここに来れたことでいいじゃない』

 

『そうだよ四ー糸乃。みんなでお風呂楽しいじゃなーい』

 

『う・・・うん、そうだね、よしのん』

 

十香達の楽しそうな声に、士道は目を瞑りながら耳を傾ける。

そんな十香達の声と共に、あははっという朗らかな笑い声が聞こえてきた。────凜祢だ。

 

『そうだね。たまにはこういうのもいいかもね。それにしても・・・』

 

『ぬ?どうした凜祢?』

 

凜祢が言葉を切ったかと思うと、十香の不思議そうな声が聞こえてくる。

 

『・・・改めて見てみると、なんていうか、十香ちゃん本当にすごいなあって・・・』

 

『すごい?何がだ?』

 

『いや、それは・・・ほら、ねぇ?』

 

凜祢が言うと、他の面子も皆がうなずく様子が分かる。

 

『ぬぅ、一体何なのだ?皆で何を納得している?』

 

十香の疑問の声が響きながらも、士道は湯船に肩まで浸かる。

と、そこで凜祢の声が響く。

 

『ねえ・・・みんな。ちょっと話は変わるんだけど』

 

凜祢が、静かにそう言った。

 

『────士道のこと、皆はどう思う?』




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凜祢バスタイム 後編

投稿!!
次からはまた本編に戻ります!


「また、三日月のミサンガ洗ってあげなくちゃ。大丈夫。私はお花の香りがするもん」

アトラ・ミクスタ


「む・・・?」

 

不意に凜祢が発した問いに、十香は目を丸くする。

今女湯には、十香たち四人と一匹しかいない。

そんな中、凜祢が先程の言葉を発したのである。

十香はその質問の意図がよくわからず、首を傾げながら凜祢の方に目をやり、皆の反応を見るように視線を移動させていった。

そして、凜祢の問いに十香は言った。

 

「シドーのこと?」

 

十香が首を傾げながら問うと、凜祢はいつもの如く優しく微笑んだ。

 

「うん。十香ちゃんは、どう思っているの?」

 

「どう・・・というと」

 

十香はうむうむとうなりながらあごに手を当てる。すると、凜祢が微笑のまま言葉を続けてくる。

 

「つまりね────十香ちゃんは士道のこと、好きなの?」

 

『・・・・・!?』

 

なぜだろうか、凜祢がそう言った瞬間、皆の表情がぴくりと変わった気がした。

だが、考え込まなければならないような問いではない。

 

「うむ、当然だ」

 

大きく首肯して、続ける。

 

「───シドーは私を救ってくれた。シドーが私に居場所をくれた。今の私があるのは、シドーがいてくれたからだ。この恩は、一生をかけて返すつもりだ」

 

十香が答えると、凜祢は「うーん」と頬をかいた。

 

「んー・・・そういう感じとはまたニュアンスが違うんだけどね。───じゃあ訊き方を変えよっか。十香ちゃんは、士道といると楽しい?」

 

「うむ!とても楽しいぞ!」

 

「じゃあ、士道と一緒にいると、ドキドキしたりする?」

 

「ドキドキ・・・うむ、するな。なぜ知っているのだ?」

 

「ふふ、なんでだろうね」

 

十香が言うと、凜祢は再びニコッと微笑んだ。そしてそのまま、十香の隣に視線を移す。

 

「四糸乃ちゃんは・・・どう?」

 

「え・・・っ?」

 

急に凜祢に話を振られ、四糸乃はビクッと肩を揺らした。

凜祢の質問。「どう?」とは・・・つまり十香にした質問と同じことを聞かれているのだろう。

 

つまり・・・・士道が好きか、と。

 

「わ、私は・・・その・・・」

 

四糸乃はしどろもどろになりながら顔を真っ赤に染める。好きか否かと問われたなら、それは、あれだが、この面子の中でそんなことをはっきりと言える筈がない。

と、そんな四糸乃に『よしのん』が顔を近づけ、皆に伝わらないように話かける。

 

『凜祢ちゃん、攻めてきたねー。負けちゃ駄目だよ四糸乃。ここは一発ガツンと言っちゃおう」

 

「そ、そんな・・・」

 

言いながら、凜祢を見やる。

微笑みを浮かべたまま、四糸乃の答えを待っている。

そして先程の凜祢の問いに顔を俯かせながら「はい」と答えた。

 

「ふふっ、そっか」

 

凜祢は恥ずかしがる四糸乃の様子を見て微笑を浮かべたまま小さく首肯すると、今度はその隣────琴里に目を向けた。

 

「────琴里ちゃんは?」

 

「・・・・!?な、何が!?」

 

不意に問われて────琴里はビクッと肩を動かす。

だがそこですぐに、十香や四糸乃にしていた質問が、琴里に回ってきたのだと理解する。

 

「別に。士道はただの兄よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

ふふんと鼻を鳴らし、悠然と腕を組みながら返す。きっぱり言い切ってしまえば、凜祢もそれ以上追及はしてこないだろう。

だが、琴里がそう言った瞬間。湯船に浸かっていた凜祢、十香、四糸乃が、一様に『えっ?』という顔をして琴里を見てきた。

 

「な、何よ、その顔は・・・」

 

すると皆が顔を見合わせてから、再び琴里に目を向けてくる。

 

「だって・・・ねぇ」

 

「何を言っているのだ?琴里はシドーが大好きではないか」

 

『んもー、琴里ちゃんたら素直じゃないんだからー』

 

「んな・・・・・ッ」

 

琴里は頬を真っ赤に染めて目を見開いた。

 

「じ、冗談はよしてよね!誰もそんなこと言ってないでしょ!」

 

ばしゃん!と水面を叩きながら抗議の声を上げる。

そんな琴里は凜祢に言った。

 

「じゃあ、凜祢は!?凜祢はどうなの!?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「え?」

 

琴里の質問に、凜祢が素っ頓狂な声を上げる。どうやら自分にその問いが返ってくるとは思っていなかったらしい。

だが、それは十香にとっても興味深い問いだった。こくりとうなずき、口を開く。

 

「うむ、確かに凜祢の答えはまだだったな。どうなのだ?凜祢は、シドーのことをどう思っているのだ?」

 

十香がそう言うと、四糸乃や琴里も興味深そうに頷く。

凜祢が、困ってしまったような笑みを浮かべながら頬をかく。だが、やがて皆の視線の前に折れたのだろう、小さく息を吐くと、ゆっくりと唇を動かした。

 

「────好きだよ。もちろん」

 

言って、いつものように優しげに微笑む。

その反応を見て、琴里は唇を引き結び、四糸乃がさらに頬を赤くしてまじまじと凜祢を見た。

十香としては・・・まあさほど驚きはなかった。凜祢が士道を大切に思っているのは、日々の様子を見ていればなんとなく察しが付いていたし、十香は凜祢のことも大事な友人だと思っている。

そんな凜祢が十香と同じように士道を好いていてくれるのは、とても喜ばしいことのはずだった。

だが────なぜだろうか。

 

「む・・・・」

 

頭ではそう理解できていても・・・凜祢の口からその言葉を聞いた瞬間、なんだか胸の中をくすぐられるような、奇妙な感覚が生まれた。

そんな中、凜祢はうっすらと笑みを浮かべながら続けた。

 

「私はね、士道が好き。大好き。もしかしたら、この中で“一番“かもしれないくらいに」

 

「・・・・・」

 

凜祢の言葉に十香は息を詰まらせる。

それは他の皆も同じだったらしい。皆が表情をぴくりと動かし、否定の声を上げようとしてか唇を動かしかけた。

だが、それよりも早く、凜祢があとを続ける。

 

「でもね・・・士道はきっと、“止まってくれない“」

 

「・・・止まって?」

 

凜祢の言葉に十香がそう呟く。

凜祢は何を言っているのだ?そんな疑問が頭の中をグルグルと渦を巻き始める。だが、凜祢は言葉を並べていく。

 

「私がどんなに士道が好きでも、きっと士道は前に進み続ける。

どれだけ、私が士道の幸せを願ってもきっと士道を“幸せ“にする事は出来ない。だって、士道の幸せは“あの人の隣“だけだから」

 

「凜、祢・・・・?」

 

十香はかすかに眉をひそめ、凜祢の名を呼んだ。

表情が変わったわけでもない。声が変わったわけでもない。口調が変わったわけでもない。

だというのに────十香は一瞬、凜祢が優しい笑顔の裏に、凜祢が“苦しんでいる“ように見えた。

 

「あ・・・」

 

と、凜祢が皆の表情に気づいたかのように小さく声を発した。

 

「・・・あ、ごめんね。ちょっと話過ぎちゃったかな。ごめんねみんな。一人で盛り上がっちゃって。───でもね、士道を幸せにしたいのは本当だよ?」

 

そして、あははと苦笑する。張り詰めていた空気がとけ、皆が息を吐くのがなんとなく分かった。

だが、

 

「────“今度は、注意しないと”」

 

「ぬ・・・・?」

 

十香は小さく眉根を寄せる。他の皆は気づいていないようだが、凜祢が何かを言うのが聞こえたのである。

 

「何か言ったか?凜祢」

 

「あ、ううん。“なんでもないよ“」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「なんで凜祢がその事、知ってるんだろう?」

 

士道は壁の向こう側から断片的に聞こえてくる言葉を聞いてそう呟く。

誰にも、人前で話したことなどないその話に士道は眉をひそめる。そして、話の内容もそうだ。

────俺が幸せならば、構わない。

士道の、三日月の幸せはオルガと一緒にいる事。そのオルガがここにいない今、士道に“生きる意味“はない。だが、“オルガの命令”が俺の中に生きている。だからその命令が生きている限り、士道は死ぬまで生き続ける。十香達を仲間を守り続ける。

それが自分の生きる意味だ。

士道はそこまで考えた所で────。

 

「まあ、いいか。やることは変わんないし」

 

そう呟き、風呂場から出た。

 

 

◇◇◇◇◇

 

ひんやりとした空気が、湯上がりの体の表面を撫でていく。

 

「じゃあ、また明日ね、士道」

 

「うん。今日はありがとう」

 

「ううん、こっちこそ。久々の銭湯、楽しかったよ」

 

「んじゃ、また今度行く?」

 

士道が何となしに言うと、凜祢はふっと口元を緩ませた。

 

「うん───そうだね。“今度も“きっと、行こうね」

 

「・・・・?」

 

その言葉に、士道は小さく首を傾げる。

だが、凜祢の言葉に遮られた。

 

「あ、そうだ。士道に渡すものがあるんだった」

 

「・・・なに?」

 

凜祢はそう言って、ゴソゴソと鞄を漁る。そして、士道に“見覚えのある“それを渡してきた。

 

「はい、これ“お守り”。士道が無茶して怪我がないようにって思って作ったの」

 

それは、アトラがあの時にくれた“ミサンガ“だった。

 

「ああ、ありがとう。でも、これ・・・」

 

「それ、私とお揃いなの。だから大事にしてね」

 

「・・・・うん」

 

士道は言おうとしたが、凜祢に無理矢理押し込まれるようにして言葉が切られる。

 

「じゃあ、士道(三日月)またね」

 

一瞬だけ、凜祢がアトラと重なった。

だが、そんな凜祢に士道は言った。

 

「うん。また明日」

 

士道はそう言って、凜祢と別れる。そして凜祢から貰ったミサンガに鼻を近づけると、フワッとした香りが鼻をくすぐった。

 

「・・・アトラの匂いだ。花みたいな甘い匂い」

 

もし生まれ変わりであったとしても、きっと三日月とはもう呼んでくれないだろうから。

 




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皆さんは悪魔フラウロスについては知っていますか?

フラウロスは魔法陣の中にいるときは“嘘“はつかないけれど、外にいる時は必ず“嘘”をつくって。
シノとヤマギとの約束。

嘘つきになってしまったシノ。

皮肉だなあ


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デート・ア・オルフェンズ もしも狂三が日常に溶け込んでいたら

投稿!!

祝!!ガンダムTVアニメ機動戦士ガンダム 水星の魔女

来年放送!!気になるなぁ!!

ウルズハントも来年の春に配信予定だし、楽しみだ!!



とある休日の昼下がり。

十香を始めとする女性陣達は、皆でセレクトショップを訪れていた。

 

「皆、これを見てくれ!ふわふわだぞ!」

 

言って、十香が近場にあったラビットファーのバッグを手に取る。

 

「あら、いいじゃない」

 

「かわいい・・・です」

 

「む、確かに」

 

琴里と四糸乃、真那が微笑みながら言ってくる。すると、狂三もまた唇をほころばせた。

 

「ええ、素敵ですわ。────その、可愛らしいウサギさんの毛皮をはぎ取って作られた鞄」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「十香さんの言った事を全て台無しにしましたね。《ナイトメア》」

 

押し黙る三人を横目に、そう呟く真那。

そんな中、十香は話題を場の空気を変えようと、近くに見えたレストランの料理を指差す。

 

「こ、琴里!お腹は空かないか!?このレストランのスパゲッティミートソースは絶品なのだ!食べに行こう!」

 

「そ、そうね!それがいいわ!」

 

「お、おいしそう・・・です」

 

「そうですね」

 

するとそれに合わせるように、狂三もまた首肯してくる。

 

「ええ、美味しそうですわね。────まるで血の滴る臓物のようで」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「だーから、気分悪くするような言い方は止めろって言ってやがるでしょーが!」

 

三人の無言に対し、真那だけは狂三に抗議する。

 

「し、食事の前にもう少し歩かないか?」

 

「そ、そうね。それがいいわ!」

 

「あ・・・あそこにペットショップが・・・」

 

と、言いかけた四糸乃の口を、慌てた様子で真那が押さえる。

 

「四糸乃、それは駄目かと。ペットショップなんて入ったら、『売れ残ってしまったこの子たちはどこに行くのでしょう・・・』とか言われるに決まってます!」

 

「あ・・・!」

 

四糸乃がハッとした様子で肩を揺らす。

しかし、もう遅い。既に狂三はペットショップの中に入ってしまっていた。

 

「ちっ・・・遅かったか!!」

 

舌打ちする真那だが、すぐに違和感に気づく。

狂三が、ゲージの中に入れられていた子猫を見つめながら、ぽっと頬を赤らめていたのである。

 

「・・・・十香さん、四糸乃さん、琴里さん」

 

真那の言葉に、三人はコクリと頷くと、店員の許可をへて、別のゲージから子猫を抱え上げ、狂三の方へと歩いていった。

 

「狂三、狂三」

 

「?なんです・・・・のぉっ!?」

 

振り向いた狂三が、狂三らしからぬ甲高い声を上げる。

それはそうだ。何しろ今の狂三の視界は、モフモフのモコモコに囲まれていたのだから。

 

「や、やめてくださいまし・・・・!」

 

狂三は顔を真っ赤にしながら身をよじる。だが、十香たちはモフるのを止めなかった。

 

「ちょ・・・や、やぁぁぁぁぁっ!」

 

悲鳴とも恍惚ともつかない狂三の声が、ペットショップに響き渡った。

そんな中、真那はしてやったりとした顔で狂三の様子を端で見る。

 

「今日はアイツのせいでそこまで楽しめませんでしたし・・・今日はとことんこの子達と戯れましょうか」

 

真那はそう言って近くにいた子猫を抱き抱えると、十香達のもとで一緒に戯れはじめた。

 




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ちなみに私がガンダムを始めてた見たのはSEEDからです!

・・・当時は五歳でしたけど


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三日月・コンサート

クリスマスも近いので投稿!!

実はボツネタを引っ張ってきたこの作品。

youtubeで、鉄血コンサートの表紙のピアノを弾く三日月とそれを見守るユージンとクーデリア、そしてオルガ達をみて、書いた作品です。 


幸せに本物と偽物があるのか?

本物の幸せを知らなかった一人の男


「あ・・・」

 

「ん?どうしたの、真那」

 

「あ、いえ・・・ただ、あれが気になったので」

 

真那が指差す先にあるのはデパートの広場にあるピアノだった。

黒色の光沢を輝かせ、広場の真ん中に置かれているピアノをユージンは見て士道に言った。

 

「弾いてやりゃいいじゃねえか」

 

「勝手に使っちゃ駄目でしょ。あれ」

 

そう言う士道に対し、琴里は言う。

 

「そうでもないわよ?あれ、前にも弾く人はいたから。というか、士道はピアノを弾けたの?」

 

そう答える琴里に対し、ユージンは士道の肩を叩きながら笑う。

 

「おう。昔、お嬢にピアノを教えてもらってた事があったんだよ。手先が器用だからってな」

 

「別にそこまで上手くないよ」

 

そう答える士道に十香は目を輝かせながら言った。

 

「シドーはピアノを弾けるのか!聴いてみたいぞ!」

 

そう言う十香に賛同するように四糸乃やよしのん、耶俱矢、夕弦も頷く。

 

「あの、私もちょっとだけ兄様がどうやって弾くのか気になります」

 

「・・・・・・」

 

皆の聴いてみたいと頷くお願いに士道は息を吐く。

 

「・・・わかった」

 

あまり乗り気ではない士道にユージンは言う。

 

「後で飯、奢ってやるから頑張ってこいよ」

 

「んじゃ、やってくる」

 

士道はそう言ってピアノの元へ歩いていき、一緒に置かれている椅子へ座った。

そしてピアノの鍵盤へと指を置いて────

 

『────────────────────』

 

ピアノを弾き始める。

 

「わぁ・・・・」

 

士道が弾き始めたと同時に、周りの人達もその音楽につられて足を止める。

士道としては右腕が使えなくなるまでの短い期間に教えてもらった曲の一つ。

鉄華団らしさを表した曲だそうで、士道は忘れてしまったがその曲の題名は────

 

────iron-blooded orphans────

 

曲の盛り上がりであるサビに入ると同時に、周りの人達もどんどん足を止めて増えていく。

真那も士道が弾くその曲を聞いて、高揚感と共になんとも言えない悲しさが曲から伝わってくる。

ユージンもその曲を聴いて懐かしさと同時に、三日月がクーデリアが横についてピアノを練習していた時の事を思い出していた。

あの時は三日月もまだ不器用ながらに弾いていた頃で、オルガ達が部屋の外からその光景を眺めていた時の事を思い出す。

そんな中、曲も終わりを迎えようとしていた。

 

『────────────』

 

曲が終わる。

少しの間、デパートの広場が静かになり、そして──── 

 

パチパチパチ、と周りから拍手が送られた。

 

「おう、お疲れ。前より良くなってるじゃねえか」

 

「ん、ちゃんと飯奢ってよね」

 

そう言う二人に十香達がそれぞれに口を開く。

 

「凄いぞ!シドー!こんな事も出来たのだな!」

 

『やー、凄いね士道くん。よしのん感動しちゃったよー』

 

「その・・・凄かったです」

 

「士道、貴方こんな事もできたなんてね。思っても見なかったわ」

 

「まさか士道もこのような隠し芸を持っていたとはな。我も思わず聞き惚れてしまったわ」

 

「感想。とても素晴らしいものでした」

 

皆がそう答える中、士道は真那が口を開いていない事に気付き、顔を真那に向けると────

 

「・・・真那?どこか痛い所でもあるの?」

 

「・・・へっ?痛いところなんてねーですよ?」

 

士道の問いに真那は思わずそう返事を返すと、士道は再び口を開く。

 

「じゃあ聞くけど、なんで泣いてるの」

 

「・・・えっ?」

 

真那は士道にそう言われ、自身の頬に手を当てると確かに濡れていた。

こころなしか視界も霞んでいる。

 

「あれ?・・・なんでですかね?・・・悲しくもなんともねーですのに」

 

そう言って真那は目を擦るが、涙が止まらない。

 

「ちょっと・・・席外しますね。すぐに戻りますので・・・」

 

真那はそう言って走っていった。

 

「ちょっと!?真那!!」

 

琴里達はそう言いながら真那の後を追っていく。

広場に残された士道とユージンは二人して真那達の後ろ姿を見て、呟いた。

 

「なんか思うところあったんだろうな」

 

「そう言うけど、ユージンもそうなんでしょ」

 

「まぁ、な」

 

ユージンはそう言って近くの椅子へと座ると、士道に言った。

 

「どうせしばらく帰ってこなさそうだし、ちょっと休憩しようぜ」

 

「うん」

 

士道も頷いてユージンの隣に座ると、ユージンが何か思い出したかのように顔を上げた。

 

「そういやよ、三日月」

 

「ん?なに」

 

首を向ける士道に、ユージンは疑問をぶつけた。

 

「お前確か、“自分の名前“の曲も弾けるよな?なんで弾かなかったんだ?」

 

ユージンの問いに士道は“あー“と言ってから口を開いた。

 

「俺はあの曲、“好きじゃないから“」

 

「?なんだそりゃ」

 

士道はそう言って買ってきた缶ジュースをカシャと開けながら口の中に入れた。




感想、評価、誤字報告よろしくです!


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寄せ鍋(闇鍋)パーティ

投稿!!

鍋パーティと書かれてますが、これは作者の実体験です
因みにこれがあったせいでアボカドが嫌いになりました

「臭くねえんだよ・・・おやっさん」

チャド・チャダーン


「鍋食いてぇ」

 

「・・・急にどうしたの?ユージン」

 

昼休み、士道とユージンは学校の中庭でそんな会話をしていた。

 

「いや、今日は寒ぃだろ?だからよ、皆誘って寄せ鍋しようぜ。寄せ鍋」

 

「・・・いいけど、結局作るの俺じゃん」

 

そう言う士道に、ユージンは言う。

 

「具材は俺達で用意すっから出汁は頼んだぜ、三日月」

 

「分かった。じゃあ、真那達に鍋の材料買ってきてって言っとく」

 

「おう。なら、俺も何か適当に買ってくるわ」

 

「ん」

 

予鈴のチャイムが鳴ると、二人はベンチから立ち上がり、教室へと戻っていった。

 

放課後。

 

「シドー!!今日の夕餉は何にするのだ!!」

 

学校から帰宅する最中、十香が目を輝かせて聞いてくる。

 

「鍋」

 

「・・・鍋?最近テレビでやっている煮込み料理だな!」

 

「ん。ユージンが鍋食いたいって言うから鍋すんの。耶俱矢と夕弦はなんか食いたいものある?」

 

そう言う士道に、耶俱矢は唇に笑みを浮かべて言う。

 

「くくく・・・我に相応しきは、烈火の如き灼熱を帯びた真紅の煉獄!」

 

「?」

 

「翻訳。耶俱矢はチゲ鍋と言っています」

 

耶俱矢の言葉に首を傾げる士道に、夕弦が翻訳する。

 

「真那が材料買ってたらね。十香は?何が良いの」

 

「む?私は何でもいいぞ?シドーが作る物は何でも美味いからな」

 

そう言う十香に、士道は息を吐いて呟く。

 

「んじゃ、ある物入れればいいか」

 

そして士道は玄関を開けると、リビングの方から四糸乃と真那が駆けつけてくる。

 

「おかえり、なさい」

 

『おかえりー士道くん。待ってたよー』

 

「お帰りなさい!兄様!」

 

返事をする三人に士道も返事を返す。

 

「お疲れ。真那、材料買ってきた?」

 

「ええ!もちろん!野菜にお肉に豆腐にお魚、それとうどんも!一通り全て買ってきました!」

 

「分かった。じゃあ皆は着替えてきたら集合ね。何か自分で入れたいやつあるなら持ってきて」

 

「うむ!」

 

「おう!」

 

「首肯。分かりました」

 

三人は頷くと、着替える為に先に隣のマンションへと戻っていった。

そして残った四糸乃、よしのん、真那に士道は言う。

 

「今から鍋作るから準備しよう。後、今日はユージン来るから琴里にも言っといて」

 

「「『はーい』」」

 

三人はそう言って、リビングへと向かっていった。

 

一時間後

 

ピンポーンと、ベルが鳴る。

 

「はーい。今でまーす」

 

琴里がそう言って玄関の扉を開けると、ユージンと十香達が玄関の前に立っていた。

 

「おう。邪魔するぜ」

 

「入らせてもらうぞ」

 

「同意。お邪魔します」

 

「───シドー!」

 

三人がゆっくりと入る中、十香はパタパタと足音をたてながらリビングへと向かう。

 

「あ、十香。ちょっと待ってて」

 

リビングに次々と集まる中、士道は鍋をコタツの上に置いてあるカセットコンロの上に置く。

そしてユージンは言った。

 

「んじゃ、参加者も全員揃ったわけだし、寄せ鍋夜会始めるぜー!!。中身入れるから持ってきた具材出してくれよな!因みに俺は肉持ってきたぜ!」

 

「野菜はもう準備してありますよ!あと、〆のおうどんも!」

 

「我はエビとキノコを持って来たぞ」

 

それぞれ具材を出しあっていく中で、真那は机の上に置かれた“アボカド”を見て呟く。

 

「あれ?これを持って来たのは誰です?」

 

「返答。それは夕弦です」

 

真那の手にしたアボカドを見て夕弦は答える。

 

「まあ、どうせ鍋に入れるんだし、入れちまえ入れちまえ!明日は学校休みなわけだしよ!」

 

ユージンはそう言って、鍋に具材を入れていく。

そんな中、一人黙っていたのは琴里だった。中に入れられていく具材を見て目を逸らしている。

 

「・・・?どうかしたのか、琴里?」

 

そう言う十香に、琴里は目を逸らしながらこの場にいる全員に言う。

 

「あのさ、私、テレビで見たんだけど・・・たしか、湯煎したアボカドって、クッッッッソ不味いらしいんだけど」

 

「「「「「「「「え?」」」」」」」

 

琴里以外のその場にいた全員はそう呟いた。




※三日月を除く全員、ぶっ倒れました

鍋の具材

(ベース アゴ出汁+カツオダシ)

具材 豚肉、肉団子、白滝、豆腐、白菜、つみれ、ネギ、うどん、海老、フ、椎茸、エリンギ、アボカド

真似はしないで下さい。
万が一した人は自己責任で


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真那キャット

本編は来週!

今回は、半ばお蔵入りになっていたヤツを投稿します


ところで・・・キマリスヴィダールの装備って、対人装備じゃないですよね? 
ドリルをみつつ

ハイパーギャラクシーフィンガー!!

ノルバ・シノ

設定ミスって、投稿したやつがずれました


「な、な・・・なんでやがりますか!?これ・・・!?」

 

五河家の二階の部屋で、少女の悲鳴が響き渡る。

つんざくような悲鳴の主は高宮真那。鏡に映った自分を見つめ、すっとんきょうな声を上げていた。

“こんなもの“が急に頭から生えてくるなんて信じられない。さっきまでなんともなかったはずなのに、どうしてこんなことに?

 

「こんなの誰かに見られたら───」

 

真那は自分の頭から生えていた“それ”に手を触れてみる。

非常に柔らかな、もふもふとした毛の手触り。温かさも感じるし、作り物などでは断じてない。

 

「これ・・・猫の耳ですよねえ・・・」

 

真那の頭の上にあったのは、何処からどう見ても猫の耳だった。

三角にとんがった耳が、ぴょこん、と頭に生えている。

 

「こういう時はどうしたらいいものか・・・」

 

猫の耳を引っ張ってみると、痛みが奔る。

 

「・・・夢じゃねーですよね」

 

突然の出来事に、真那はショックを受けながらもため息をついた。

 

「はぁ。とりあえずは原因を探してみますか“にゃ“」

 

真那はすぐに自分が言った言葉に疑問を抱く。

 

「・・・・・『にゃ』?」

 

はい?どういうこと?

 

真那自身は、そんな喋り方をしている自覚がなかったが、さっきまで普通に話していた筈なのにどういうことだろうか。

 

「そ、そんにゃ・・・まさか・・・」

 

真那は顔を引き攣らせながら一つの思案が頭の中に思い浮かぶ。

猫化してる?

真那は恐る恐る自分の腰辺りに目を落とす。さっきからふわふわとしたものが太ももに当たってくすぐったい。

間違いであってほしいと思いながら、背中に目を向けた───

そこにはふわふわ、もこもこの柔らかそうな尻尾が・・・

 

「うにゃああああああああああああッ!?」

 

真那の二度目の絶叫が五河家に響いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・平常心。・・・平常心」

 

真那はブツブツとベッドの上でそう呟きながら、体育座りをしていた。

流石に色々とありえないことが起こり過ぎている。

パンク寸前になる前に、何とか何時ものペースに戻った真那は一つの考えを思いつく。

 

「・・・そうですにゃ。これは夢です。にゃら、寝たら夢から覚める筈」

 

真那はそう言いながら横になり、目を瞑る。

 

「一眠りしたら、にゃにもなかった。それだけです」

 

そうして真那は眠りについた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

───ふぁ・・・よく寝ました。なんだか随分と身体が軽くなったみてーです。

真那はそうして伸びをしようとすると、妙な事に気が付いた。

───あれ?

何かがおかしい。

いや、具体的に何がおかしいのかはよくわからないのだが、なんとなく周りの世界すべてに違和感を覚える。

───はて?今寝転がっていたこのベッド。こんなに大きかっただろうか?

いや、どちらかと言えば、自分が縮んだような・・・

真那はハッとして、自分の手のひらを見てみる。

それはもはや、手のひらではなかった。そこにあったのは、ぷにぷにとした、柔らかそうなふくらみ───まごうことなき、猫の肉球であった。

 

「うにゃあああああああっ!?(なんですかこれええええっ!?)」

 

変わったのは手のひらだけではない。気がついてみれば、全身がふわふわとした毛に覆われている。腕も身体も顔も、まるで見覚えのない形だ。

真那はあわてて鏡に目をやると、そこには一匹の黒猫の姿があった。

───猫・・・!完全に猫になってる!?

それは普段の真那なら、見つけたら立ち止まって頭を撫でてあげたいくらいには、かわいい猫だったかもしれないが、それが自分の姿となれば話は別だ。

すっかり頭がパニック二なっている真那だったが、そんな自分にさらに追い打ちをかけるような声が部屋の外から響いてきた。

 

「真那。起きてる?」

 

士道の声が部屋の外から聞こえてくる。おそらく晩御飯のメニューを決めに来たのだろう。

 

───に、兄様!?

 

そんな真那(猫)の心情に構わず、士道が扉を開けた。

 

「・・・?猫?」

 

士道は不思議そうな表情で、こちらを見下ろしていた。

 

「真那が拾ってきたやつか?」

 

士道は左手を真那のほうへと手を伸ばしてくる。急なことに気が動転していた真那は、なんの抵抗もできないまま、彼の胸へと抱きかかえられてしまった。

 

「猫飼うなら飼うって言えばいいのに」

 

「うにゃ!?にゃにゃにゃ!?(に、兄様!?なにしてやがるんです!?)」

 

慌てる真那に、士道は真那(猫)を敷いていたものに目を向けた。

 

「真那のやつ、脱ぎっぱなしじゃん」

 

「にゃ!?んにゃあっ!?(兄様!それは見ちゃだめです!?)」

 

しかしそんな真那の悲痛な叫びの意味が、士道に伝わっているはずがない。

不慮の事故とはいえ、自分が脱ぎ散らしたばかりの衣服を士道に見られるなんて、一生の不覚だった。

 

「洗濯機にいれとくか」

 

士道はそう呟くと、抱えた真那を右腕の掛け布に入れながら、ベッドの上に置かれた衣服を纏め始める。

 

「にゃ!にゃあああああん!?(兄様!止めてください!?)」

 

それでも士道が服の内側の下着の存在に気付かず、そのまま纏めてくれたことだけは、不幸中の幸いだったかもしれない。

 

(・・・ふにゃ・・・(もう死にたい・・・)」

 

───これではもう、士道に顔を合わせられない。・・・いっそこのまま猫になっちゃう方がいいのかもと真那は「にゃあ」と呟いて、なすがまま身を任せるのだった。

 

◇◇◇◇◇

 

真那が着ていた衣服を洗濯機に放り込まれ、リビングに来た真那は、ソファに寝転がり、自分を湯たんぽ替わりに一眠りしている士道見つめながら「にゃあ」と息を吐く。

どうしたらもとの身体に戻れるのだろうか。真那はそう考えるが、何も思い浮かばない。

 

「にゃあ・・・んにゃあにゃ。(何も浮かばねーですし・・・ちょっとだけ、考えましょう)」

 

真那は目を閉じて考える。

だが───。

 

(・・・温かいです。こうやっているのも・・・ちょっと・・・だけ・・・)

 

強烈な眠気が真那を襲い、ウトウトと目を閉じ始める。

そしてそのまま寝息を立てながら真那(猫)は眠ってしまった。ほんの少しだけ───この幸せな時間を

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「おう、悪いな。鍵貸して貰ってよ」

 

「別にいいわよ。お兄ちゃんに用があったんでしょ」

 

ユージンと琴里は家の前で鍵を開けながらそんな何気ない会話を交わす。

ガチャリと鍵を開けて、ユージンは言った。

 

「おう。今日は晩飯世話になるって言ってたしな」

 

「ああ、だから士道も言っていたわけね。今日は皆で食べるって」

 

「そういうこった。なら、さっさと飯の準備しようぜ」

 

ユージンと琴里は靴を脱ぎ、リビングの扉を開けた。

 

「よー、三日月。飯食いにきた・・・ぜ?」

 

「どうしたのよ・・・って───」

 

ユージンと琴里の視線の先───ソファの上に士道と真那が寝ていた。だが、そこはまだいい。

問題は真那の方だった。

横向きになって寝ている士道に乗っかるように“素っ裸“の真那が寝ていたらそりゃ、言葉が出てこなくなる。

 

「・・・ふあああ・・・よく寝ました・・・」

 

と、真那が大きな欠伸をしながら目を擦る。

 

「ふん!!」

 

琴里はすぐさま隣にいたユージンを顔に蹴りを入れた。

 

「痛ってええ!?何しやがる!?」

 

「しばらく見るな!バカ!」

 

「・・・・どうかしました?」

 

状況が分かっていない真那に、琴里は言う。

 

「じゃあこっちが聞くわ、真那。貴方、まずは自分の状況を把握しているのかしら?」

 

「・・・・へ?」

 

真那は一瞬首を傾げた後、ようやく琴里が言わんとしていることに思い当たった。

そして同時に、すべてが手遅れだったことにも。

真那は今、一糸まとわぬ姿。しかも寝ている士道の上という、場所で。ギャラリーつきで。

 

「う・・・にゃ、うにゃあああああああああああっ!?」

 

五河家に響き渡る声をあげ、真那はその場にくずおれた。

これはもう、痴女のレッテルすら貼られかねない事態だ。

そしてその叫び声と、ともに士道も不機嫌そうに目を覚ます。

 

「・・・・煩いんだけど」

 

───あはは。終わった・・・何もかも・・・。

 

本日最大最悪の受難に、真那は完全に意識がブラックアウトした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・な。・・・真那」

 

「・・・ん・・・む・・・にゃ、にゃあ・・・」

 

「なに猫みたいな寝言言ってんのよ」

 

そんなセリフとともに、額に鈍い痛みが走る。

 

「あうっ!?痛てーですね!?」

 

「いつまで寝ぼけてるの。今日、午後から士道達と一緒に買い物に行くんでしょ?」

 

そう言う琴里に、真那は「あー」とぼやく。

 

「もしかして、私完全に寝てました?」

 

「寝てたも何もずっと寝てたわよ。ほら、早く行くわよ」

 

「・・・夢でよかったですにゃ」

 

「・・・『にゃ』?」

 

琴里は、真那の謎の語尾に不思議そうな表情を浮かべる。

だが、真那そんな琴里に猫語まじりの愛想笑いで誤魔化した。

 

「あー、にゃんでもにゃいでやがりますよ・・・?」




作者「あ”ー、やっと出来たー。二人がかりだとやっぱ速いなー」

狂三「塗装も重ね塗りする必要なんてありますの?」

作者「艶が出てカッコ良くなるだろ?まさにそれが目当てなのよ」

狂三「わかりませんわよ。そんなこと」

ピンポーン

?「作者ー?いるか?」

作者「?いるよー」

狂三「誰ですの?」

作者「知り合いの“戦車のヤベー奴“。ガンダム仲間。なんならたまにクロブでタッグくんでるドルブ使い」

戦車のヤベー奴「作者、お前にプレゼントだ」

作者「?」

戦車「ほら、マグアナック隊36機セット」

作者「」

狂三「」

プレゼントで渡していいもんじゃねえぞそれ・・・


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機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズG 配信記念  叶わぬ夢

本編とも何にも関係ない番外編です
なお、ネタは友人の戦車が出してくださいました!
物語にするのは俺だけど。

鉄華団と精霊の皆の居場所を一人守るミカの話


「三日月」

 

懐かしい声が聞こえる。

三日月が目を開けると、目の前にアトラの顔があった。

 

「・・・アトラ?」

 

「あ、やっと起きた。団長さんやクーデリアさんに十香さん達もみーんな下で待ってるよ」

 

寝ぼけ眼の三日月に、アトラはそう言って三日月を起こす。

 

「三日月さーん、まだっすか・・・って今起きたとこっすか。十香さん達が待ちくたびれてますっすよ」

 

ハッシュも扉から顔を出して三日月を呼ぶ。

 

「うん。今行く」

 

三日月はベッドから起き上がると、そのままアトラとハッシュと共にリビングへと向かった。

 

「遅かったではないか。士道」

 

「私刑。遅れた罰であとで撫でさせてください」

 

耶俱矢と夕弦は今しがた来た三日月にそう言う。

 

「遅えぞ!三日月!もう皆揃ってんだからよ!」

 

シノが家の外の庭でそう叫ぶ。

 

「まあまあ、皆揃ったんだし・・・」

 

ビスケットはそう言うと、近くにいたオルガを見る。

 

「だよね、オルガ」

 

「・・・ああ。ミカ!真ん中に来い!」

 

「うん」

 

オルガに返事を返すと、真ん中に向かった。

────と。

 

「シドー!」

 

「・・・士道さん」

 

十香と四糸乃が三日月に近づいて両手に二人がしがみつく。

 

「十香?それに四糸乃もどうしたの?」

 

三日月が不思議そうに言うと、そんな三日月によしのんがパクパクと口を開いた。

 

『やーねー、士道くん分かるでしょー。十香ちゃんと四糸乃は士道くんの隣で撮りたいんだよー』

 

「そっか。なら一緒に撮ろう」

 

「・・・!うむ!」

 

「・・・はい!」

 

十香と四糸乃、そして三日月は一緒にオルガがいる真ん中へと向かう。

 

「三日月───それに十香さんに四糸乃さんもほら」

 

クーデリアが隙間を開けて三日月達がその間に入る。

 

そして────

 

「ユージン!準備出来てるか!」

 

「おう!いつでもいいぜ!」

 

ユージンはカメラをセットするとすぐに此方へと走って皆がいる列へと並ぶ。

 

「シドー」

 

と、カメラのシャッターが下がる直前、十香が三日月の隣で呟く。

 

「・・・?なに」

 

三日月が聞き返すと、十香は笑みを浮かべて言う。

 

「こんなにも・・・楽しいのだな。シドーの居場所は」

 

「・・・うん。そうだね」

 

三日月は十香にそう言って小さく笑みを作った。

 

 

 

「「「「はい!チーズ!」」」」

 

 

 

カシャリとフラッシュが眩く光った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───────」

 

軽く息を吐く。

士道の眼前には二機のモビルアーマー達が並んでいた。

 

『────────!!』

 

『────────!!』

 

ハシュマルとアナネルの耳障りな機械の咆哮と共に、プルーマ達が騒ぎ出す。

そんな絶望的な状況でも、士道はバルバトスと共にその地獄のような戦場へと立つ。

 

「・・・もし、オルガ達がいたらあんな夢を見れたと思う?バルバトス」

 

『────────』

 

士道の言葉にバルバトスはツインアイを強く輝かせた。

 

「・・・そうだね」

 

士道はバルバトスの返答に笑みを浮かべると、バルバトスに言う。

 

「じゃあ────さっさと殺して皆の所に行くか。バルバトス」

 

『────────ッ!』

 

士道のその言葉と共に、バルバトスはツインアイを赤く輝かせる。そして────

 

「────俺達の本当の居場所に」

 

士道のその言葉と同時────バルバトスは二機のモビルアーマーへと駆けていった。

 

────決して散ることのない華を咲かせて────




新たなガンダム・フレームの名前 ガンダム・ガミジン

四番目に作られたガンダム・フレーム セブンスターズが保有するガンダム

モビルアーマー アナネル

蜘蛛のような蟹のようなモビルアーマー
プルーマがなんかクワガタみたいな感じ

天使ってより原点では堕天使らしい


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八舞ゲームセンター 戦車と重腕の逆襲

先に言います

酒で酔った勢いで書きました・・・・

前のあとがき───鳶一デビルの九話のあとがきであった事を話にしてます

酒の勢いって怖いね・・・


 

「夕弦。アイツのヘビアだけ見といて。私があの眼鏡のドルブを潰す!」

 

「首肯。もう勝ち筋がそれしかありません」

 

ゲームセンターの端で二人の少女と、二人の青年がゲーム台を挟みながら声を上げる。

 

「はっはっはっ!やれるもんなら───」

 

「やってみろやぁ!」

 

「てか、アンタ達強すぎない!?アンタのヘビアに狙われたら終わりなんだけど!?」

 

「だってお前らゴールドフレームとラファエルじゃん。ヘビアの餌だよ?ヘビアの餌」

 

「生粋の戦車乗りはな、ファンネルにも対応しなきゃ生きていけんからな」

 

そう返事を返す青年達に、夕弦は言う。

 

「反論。だからと言って耶俱矢のゴールドフレームを捌ききるのはどうかと思います」

 

「ダテに俺の相方努めてないしな・・・」

 

そうやりとりをする四人を横に士道は隣に座っていた狂三に向け、口を開いた。

 

「・・・アンタ最近あんな奴と一緒にいるの?」

 

「・・・付き合う相手を間違えたと私も思ってますわよ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「士道!今日は我らとゲームセンターに行くぞ!」

 

「は?」

 

放課後、学校の教室で突如やってきた耶俱矢に士道は思わずそう返事を返す。

 

「ゲームセンター?なんで?」

 

そう聞き返す士道に夕弦が言った。

 

「説明。三人でデートに行こうと、耶俱矢は言っています」

 

「な!?夕弦言うなし!?」

 

顔を赤くする耶俱矢に対し、夕弦は士道に唇を開く。

 

「質問。それで、士道は行きますか?」

 

「あー・・・んじゃ行く」

 

「ならすぐに準備するといい!すぐに向かうぞ!」

 

久しぶりの耶俱矢の誘いである。偶には付き合うのもいいだろう。

士道は楽しそうに笑みを浮かべる二人を見つめながら、その椅子から立ち上がった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「・・・・・・」

 

ゲームセンターの一角で。

折紙は、無言のままUFOキャッチャーのボタンを操作していた。

中にある景品は、夢パンダのパンダローネストラップである。

とゲームセンターの端、何やら人が集まっていた。

 

「・・・くくく、これで五勝目だ!」

 

「勝利。私達の勝ちです」

 

「だー!!お前等強すぎだろ!?」

 

「やるね」

 

士道達がいたのはアニメなどでやっていたロボットを操作するゲームだった。

ハイタッチする八舞姉妹に、反対側ではユージン・セブンスタークと士道がもう一度と言っている。

 

「・・・・・」

 

折紙としては行きたい所だが、ユージン・セブンスタークがいると目を付けられるので行きづらい。

───と、そんな四人がいる所に二人の男性と一人の少女が歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ふふん、どうだ士道。私達も結構やるであろう?」

 

「結構やるね」

 

何度か負けてなんとなく感覚を掴みかけていた士道に対し、夕弦が言う。

 

「驚嘆。ですが士道もたった数度で私達と並べる実力とは驚きです」

 

「別に。普通でしょ」

 

楽しそうに会話する三人に、ユージンは小さく笑みを浮かべる。

三日月が当たり前に日常を過ごしているこの風景をオルガやアトラ、お嬢にも見せてやりたかった。

そんな士道達に、三人の人影が歩いてくる。

 

「ん?」

 

士道がその人影に気づき振り返る。

そしてその人影の中に、見覚えのある姿があった。

 

「あ」

 

「「「「あ」」」」

 

その人影の中にいた狂三が士道達を見つけると、露骨に目を逸らしてくる。

 

「ん?どしたよ?」

 

「知り合いでもいたか?」

 

薄い色のサングラスをかけた男性と、眼鏡をかけた男性が狂三にそう言ってくる。

 

「なんでもありませんわよ?」

 

「いや、なんでもあるだろうが」

 

ユージンは話を逸らす狂三に対してそう言うと、男性二人が言う。

 

「知り合い?」

 

「そうぽいっな」

 

男性二人はそう言って、狂三に言う。

 

「話してきて良いよ。俺らはアレやるし」

 

「ん?アンタ達これやるの?」

 

「あー、使ってたか?」

 

申し訳なさそうにする眼鏡の男性に、士道は言う。

 

「いや、別にいいよ。かわりに耶俱矢と夕弦の相手してくれる?」

 

そう言う士道に二人は言った。

 

「別にいいけど?面白ければねぇ?」

 

「おう」

 

そう言う二人に、耶俱矢と夕弦が笑みを浮かべる。

 

「ほう?それほど自信があると?我ら八舞に勝てると言うか」

 

「呼応。ならばやりましょう」

 

好戦的な二人に対し、青年二人は苦笑いをつくる。

 

「おおう・・・個性が強い子達」

 

「まあ、いいんじゃないの?」

 

そう言いながら二人は先程まで士道達が座っていた席へと座る。

士道とユージン、そして狂三は前にあるモニターを見ながら近くの椅子へと座った。

 

「さーてやりますか。まあ取り敢えずいつも通りやる?」

 

「おう、任せな」

 

そう言いながら彼等が選んだ機体はガンダムヘビーアームズewと、ヒルドルブだった。

耶俱矢達は見たことのない二機を見て目を丸くする。

 

「見たことのない機体だが油断はせんぞ。行くぞ夕弦!」

 

「呼応。負けません」

 

そして試合が始まった。

 

「うわ、ラファエルいる」

 

「んー、じゃあ俺がラファエル見るわ」

 

そう言ってヘビアームズはラファエルの相手をする。

 

「あらあら。彼の相手は夕弦さんがしますのね」

 

「強いの?」

 

「まあ・・・変態と言えば変態ですわね」

 

「どういう意味だそりゃ?」

 

「見ればわかりますわよ」

 

そう言う狂三に、士道達も試合の画面に視線を向けた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ああー!やめてやめて!?こっち狙わないで!?」

 

「戦慄。耶俱矢!」

 

夕弦が目を見開き、耶俱矢の名を呼ぶ。

 

「もうスラねえよな?」

 

そう言う眼鏡の男性がヒルドルブの射撃で耶俱矢のゴールドフレームを着地狩りする。

 

「ちょ!?」

 

爆散する耶俱矢を横にヘビーアームズが出したデスサイズヘルが夕弦のラファエルへと突き刺さった。

 

「戦車、天いける?」

 

「いけるいける」

 

「おっしゃ!やるやる!」

 

そう言って笑みをうかべながら夕弦を追い詰めるヘビーアームズ。

 

「あ、落とされますわね」

 

「ありゃ負けるわ。動きがチゲェ」

 

「強いね。あの二人」

 

それぞれの反応をする三人に対し、夕弦はとうとう捌ききれなくなり、ミサイルでやられてLOSEと画面が表示された。

 

「「いえーい!」」

 

「もう一回!もう一回!」

 

「請願。お願いします」

 

ハイタッチする二人に、耶俱矢と夕弦はもう一度と言う。

 

「これ長くなりそうだな」

 

「私は一度離れますわ。また戻りますので」

 

狂三は長くなると踏んだのか、すぐにこの場から離れて言った。

 

「俺も寝る。終わったら起こして」

 

「・・・お前なぁ」

 

横で寝始める士道に、ユージンは熱くなっている二人を見てボソリと呟く。

 

「・・・早く終わらねえかなぁ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・で?耶俱矢さん達が倒れてますけど、何したんです?」

 

戻ってきた狂三が倒れ伏す八舞姉妹を見てそう呟くと、サングラスをかけた男性が狂三に言った。

 

「戦車と一緒にヘビアドルブでボコボコにした」




狂三「で?何か言いたいことはあります?」

作者「大変申し訳ございませんでした・・・」

狂三「酒の勢いで書くってどうなんです?しかもあとがきを?」

作者「いや、本当に申し訳ございません」

狂三「謝れとは言ってませんわ」


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10月18日 スープパーティ

本編が真那と八舞姉妹を虐めまくってたので、そんな三人をミカがアトラ達とスープパーティをしたように幸せな日常にしました


「えーと・・・後は・・・あ、ジャガイモの皮を剥いてませんでした」

 

五河家のキッチンで真那は鍋をグツグツと煮込ませながらキッチンの戸棚を漁り始めた。

 

「間に合いますかね・・・」

 

真那はもうすぐ開かれる八舞姉妹の誕生日パーティの時間を気にしながらジャガイモを洗い始める。

と、リビングから士道が真那の元へと歩いてきた。

 

「あ、兄様」

 

「こっちの準備は終わったよ。真那の方はどう?」

 

「ちょっとジャガイモを切り忘れていまして。今から切り始めるところです」

 

「・・・・・そっか」

 

失敗しましたと苦笑いをする真那に士道は少し考えた後、ジャガイモを切り始めた真那に一言。

 

「真那」

 

「はい?」

 

唐突に名前を呼ばれて首を傾げる真那に、士道は言った。

 

「俺、次は何をすればいい?」

 

「へっ!?」

 

士道の言葉に素っ頓狂な声を出す真那は慌てながら士道に言う。

 

「兄様は休んでてくだせー!朝からずっと忙しかったのは兄様なんですから!」

 

八舞姉妹の誕生日パーティの準備で片腕が使えない中、一番仕事をしていたのは士道だ。だから時間が来るまで休んでいて欲しいと言う真那に士道は首を横に振る。

 

「平気、何か手伝うよ。真那忙しそうだし」

 

士道はそう言って、洗ったジャガイモを手に取る。

 

「このジャガイモ、切ればいい?」

 

「あ、はい・・・けど、兄様・・・右手・・・」

 

「ジャガイモくらいなら片手で出来るんじゃない?」

 

そう言いながら士道は左手で包丁を持ち、ジャガイモを切り始めようとするが───

 

ゴッ!!

 

「いった!?」

 

切り始めようとしていたジャガイモがまな板の上からポーンと飛んでいき、真那に直撃した。

 

「あ、飛んだ?ごめん」

 

謝る士道に真那は首を横に振る。

 

「・・・だ、大丈夫ですよ」

 

「そう?」

 

そう答える真那に、士道はもう一度ジャガイモを切ろうとするが───

 

ゴッ!!

 

「あでっ!?」

 

また飛んだジャガイモが真那に直撃した。

 

「あ、また・・・ごめん」

 

「い、いいえ・・・」

 

二回も飛んでくるとは思わなかった真那は額を擦っていると、士道は参ったなといった表情をしながら呟いた。

 

「やっぱり手で押さえないとダメか」

 

何か考える仕草をした後、士道は───

 

「じゃあ───足で」

 

「だ、大丈夫でやがりますからね!?本当に大丈夫でやがりますからね!?それと兄様!怪我しそうで私がヒヤヒヤするので足でするのは止めて下せー!?」

 

慌てる真那に、士道は言う。

 

「バルバトスなら上手く切れるんだけどな」

 

「ジャ、ジャガイモが潰れると思いますよ・・・」

 

それは確実に潰れる。というか、そんなことでバルバトスを使うのはどうなのかと思う。

若干引き気味の真那はどうしたものかと周りを見渡す。

 

「うーん・・・ではこっちを頼んでもいいですか?」

 

「これ?」

 

「ええ。パンにこの具材を入れてサンドウィッチにするんです」

 

サンドウィッチなら片腕が使えなくても切る作業を除けば出来る。その真那の意図を感じとったのかは分からないが、士道は首肯いた。

 

「分かった」

 

そしてパンに具材を挟み始める士道を見ながら真那は時計に視線を向ける。。時間は午前十一時十分。耶俱矢さんと夕弦さんが来るお昼までに間に合えばいいのですけど・・・と思いながら真那はジャガイモの皮を剥き始めるのだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───朝から何か我等に隠し事をしていたと思って嗅ぎつけてみれば・・・なるほどそう言う訳か」

 

「納得。道理で十香達が家に近づかせようとしない訳です」

 

バレた。

十香達の足止めはお前達の仕業か!と言わんばかりにジト目で二人は溜息をつきながら士道と真那を見る。

そんな二人に対し、士道は二人は誕生日でしょ?座ってればと言うが、逆に今の士道の料理の仕方を見て、八舞姉妹の方が危なっかしいから士道が座っていろ!と言われる始末であった。

 

「本当はお二人が来るまでに完成している筈だったのですが・・・」

 

「嘆息。今の状況を見れば分かります。今の士道は碌に料理も出来ないのですから私達に任せてください」

 

そう言う夕弦に士道は二人に言った。

 

「なら、真那の手伝いをしてくれない?俺、そっちの方は出来ないから」

 

「おう!なら、夕弦は士道の手伝いを引き続き頼む」

 

「承諾。任せてください」

 

「別に良いのに」

 

手伝おうとする夕弦に士道はそう言うと、夕弦はそんな士道にメッとするような表情をする。

 

「憤慨。いくら士道でも怪我をしては私達が心配です」

 

「我等の誕生日に士道が怪我をしては誕生パーティどころではないわ」

 

「そうですよー?ただでさえ、兄様は自分の身を安静にしないといけない立場なんですから」

 

「それ、真那もでしょ」

 

「うぐっ・・・ソレを言われると何も言い返せねーです」

 

真那が放った言葉のボールを全力で打ち返され、苦い顔をする真那は、細かく切ったジャガイモを鍋の中に入れて煮込み始めた。

 

「これでよしっと・・・あとこれは煮込むだけで出来上がりです。サンドウィッチは・・・こんなに作ったんですか!?」

 

驚いた様子の真那に士道は言う。

 

「具材挟むだけだったし、簡単だから。それに耶俱矢と夕弦もある程度手伝ってくれたから」

 

「では、後はスープが出来たら完成ですね。サンドウィッチは・・・十香さんがどれだけ食べるか・・・」

 

「提案。なら、多めに作りましょう。残った分は皆さんに分配すればロスもありません」

 

「逆に十香なら全部食べきりそうだけど」

 

耶俱矢は十香なら食べきると言うと、三人もその光景が目に浮かんだ。

グツグツと煮込まれる鍋を四人で見ながら時間を過ごしていると、ふと真那が呟く。

 

「こうして四人で料理をしながら時間を過ごしていると、なんだか楽しいです」

 

「首肯。皆さんと距離が縮まったようで嬉しく思えます」

 

「分かる。こんなに料理が楽しく思えるのは初めて」

 

「俺は良くわかんないけど、なんだか温かい気がする」

 

「兄様がそう言うなら、そういうことですよ」

 

真那達はホッコリした気分になりながら鍋を見ていると、グツグツと湯気と熱が多くなった鍋を見て真那が呟く。

 

「あ、ちょっと火が強いですかね?」

 

「火を弱めればいい?」

 

そう言って、士道がその場から動いて火を弱めようとした時だった。

 

「・・・・・あ」

 

士道の左手がコンロ前の棚に置いてあった瓶に軽く当たり、その揺れで瓶ごと中身が鍋の中に入ってしまった。

 

「え?何が落ちた?」

 

「なんか、スープに落ちた」

 

真っ赤になるスープを見て、真那はすぐに慌てた様子でオタマを取り出す。

 

「は、早く取り除かねーと!?」

 

急いでスープに入った瓶を取り除くが、瓶の中身は既にすっからかんである。

 

「な、なんの瓶でしたっけ・・・?」

 

ラベルの貼られていない瓶に真那は顔を引き攣らせながらも、耶俱矢は落ち着いてはいないがすぐに真那に言った。

 

「だ、大丈夫な筈!食べられないものが入った訳じゃないし!なんとか味をごまか・・・整えれば・・・!」

 

完成が心配ではあるが、食えないこともないであろう。

結局は完成を待つだけである。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「これを・・・食べていいのか?」

 

「随分真っ赤だけど、野菜スープか何かかしら?」

 

「うん」

 

十香と琴里が皿に盛られた真っ赤になった野菜スープに士道は何ごともなかったように頷く。

後ろでは夕弦を除いて二人が冷や汗をかいていた。

 

「だが、何故私達なのだ?」

 

「いや、その・・・・・装飾一番頑張ってたのお二人なのでお疲れ様〜と思って・・・」

 

「へぇ、気が利いているじゃない。なら、遠慮なく」

 

「うむ!」

 

二人はスープを口にする。

 

「どう?」

 

士道のその言葉に琴里は言った。

 

「普通に美味しいわよ?」

 

「ほ、ほんと!?」

 

琴里の反応に耶俱矢が聞き返すと、十香も頷いた。

 

「うむ!とても美味しいぞ!」

 

「変な味しない?」

 

「え?しないけど・・・」

 

「身体が変になったりも、無い?」

 

「?いや、そういったこともないが・・・」

 

「よかったぁ〜」

 

二人の反応を見て、耶俱矢は安堵する。

 

「じゃあ、四糸乃達にあげても大丈夫だね」

 

「懐疑。どうでしょう?刺激が強すぎるかもしれません」

 

「一応、常備薬用意して置きます?」

 

そんな会話をする四人に琴里の目が鋭くなっていく。

 

「・・・ねえ、私達に何を食べさせたのかしら?」

 

「では、皆さんを呼んで来ますので準備をお願いします」

 

「うん。分かった」

 

夕弦はそう言って玄関の方へと走っていこうとしたその時───その夕弦の肩を琴里が笑顔で掴む。夕弦が振り返るが琴里のその目は笑っていなかった。

 

「ねえ?私達に何を食べさせたのかしら?」

 

「教えてもらうぞ!シドー!!」

 

どうやらパーティまではもう少し時間がかかりそうである。




作者「はい!飴終わり!真那ちゃん!早く三日月から手を離してね!!」

真那「嫌でやがりますよ!!作者さんが離せばいいじゃねーですか!!」

作者「文句言わないでよ!本編進まねえから!!」

真那「進まなくていいです!このままずっと兄様と一緒が良いです!」

三日月「・・・・・」

狂三「ブラコン拗ねらせてますわよ・・・」

真那「ここで作者さんをピー(放送禁止用語)すれば兄様とずっと一緒に・・・!」

戦車「ヤバい!!このままだと真那が作者をガチでやりかねんぞ!?」

狂三「止めますわよ!!」

三日月「・・・・・」←メッチャ不機嫌そうな顔


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十香デッドエンド
プロローグ


「ねぇ、次はどうすればいい?オルガ?」

三日月・オーガス


(俺達の本当の居場所・・・だろ・・・オルガ)

 

(ああ、そうだなミカ・・・。)

 

バルバトスの首が剣によって貫かれた。

その衝撃で、三日月は自身の左手につけていたアトラのお守りが血で汚れる。

それを見て、意識が無くなりつつある三日月は思う。

 

(ああ、また汚れた・・・アトラに怒られる・・・クーデリア・・・一緒に謝ってくれるかな・・・)

 

『今、ここにアリアンロッド艦隊指令、ラスタル・エリオンの威光の元に悪魔は討ち取られた!』

 

機械的な音声と共に周りからは歓声が上がる。

だが、三日月には聞こえていなかった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

パン!パン!

 

拳銃の発砲する音が聞こえる。

 

「・・・ってぇ・・・・」

 

「ふぃー・・・」

 

「ねぇ、次はどうすればいい?オルガ?」

 

「行くんだよ」

 

「何処に?」

 

「此処じゃないどっか。俺達の本当の居場所に」

 

俺の問いにオルガは答える。

だけどその頃の俺はオルガが言う本当の居場所の意味が分からなくて・・・。

 

「本当の?」

 

「ん?」

 

「それってどんなとこ?」

 

「えっ・・・んーわかんねぇけど、すげぇ所だよ。飯が一杯あってよ、寝床もちゃんとあってよ、後は・・・えっと後は・・・」

 

オルガがそう言って俺に血で汚れた手を出してくる。

 

「ん?」

 

分からなそうにみる俺をオルガは笑って言う。

 

「行ってみなきゃわっかんねぇ、見てみなきゃわかんねぇよ!」

 

「見てみなきりゃ?」

 

「そうだよ、どうせこっから行くんだからよ」

 

俺はその時に自分の生きる意味を見つけたんだ。

 

「そっか。オルガについていたら見たこと無い物いっぱい見れるね」

 

「ああ、だから行くぞ!」

 

その瞬間に俺は、自分は生まれたんだ。

 

 

◇◇◇◇

 

 

目の前に手を伸ばしながら、目を覚ます。

 

「なつかしい夢を見たな・・・」

 

五河士道は伸ばしていた手を頭に持っていき、髪をかく。

目元まで延びていた髪はボサボサになるが、そんな事は気にすることなく、時計を見る。

もうすぐアラームがなる時間だと思い、アラームを切ると慣れないフカフカなベッドから起き上がり、窓の前へと立つ。

そして、手を滑らせるように服の中に入れて、背中を沿うようにしながら撫でるとコツンと硬い感触が伝わった。

硬い感触の先には明らかに異物である三つの突起物があった。

物覚えが分かる前から存在するそれにはもう長い付き合いだった。これについて知っているのは自身の他に両親しかいない。

 

毎朝の確認を終えると、その瞬間に扉が開かれた。

 

「おにーちゃん!おっはよー!」

 

自身の背中についているコレを知らないであろう妹が彼の部屋の扉を勢いよく開けて入ってきた。

 

「琴里、うるさいよ」

 

朝からうるさい妹に言うが、彼女は反省していないような返事で答える。

 

「はーい!でもおにーちゃん、おとーさんとおかーさんが居ないから起こしてって言ったのはおにーちゃんだよ?」

 

ああ、確かそんな事を言った気がする。

士道はそう思いながらも、琴里に言う。

 

「今から着替えるから、先に下で待ってて」

 

「はーい!」

 

そう言って琴里は下へと降りていく。

毎週起こる嵐が過ぎさった後、自分以外誰も居ない部屋で此処にはいない人へ言った。

 

「ねぇ、次はどうすればいい?オルガ?」

 

彼のその問いに答える人はいない。

だが、彼は・・・

 

「うん、わかってる。立ち止まってなんていられない。だろ?オルガ」

 

彼は記憶の中に存在する男に向かって笑った。

その男も、そんな彼に笑い返したような気がした。




感想、誤字報告よろしくです。


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第一話

三日月が言うセリフがすげぇ考えないとそれっぽくなくなる・・・。



「あー、いいよ。昔さ、オルガが言ってた。死んだ奴には死んだあとでいつでも会えるんだから、今生きてる奴が死なないように精一杯できることをやれって」

三日月・オーガス


士道がリビングに向かうとテレビの音声が聞こえてくる。

どうやら琴里がテレビの電源を入れたらしい。

 

「そういえば、朝から何か琴里見てたっけ?」

 

士道はそう呟きながら調理場へと足を向けた。

昔はアトラの食事を食べていたので、自分で作る事など思っても見なかったが、今となっては調理器具の扱いには自信があるくらいだった。

料理は楽しいと思えるようになったが、肝心の食事に関していえば、士道の魚嫌いは治らなかったが。

 

(オルガ達が見れば驚くだろうな)

 

士道はオルガやユージンが料理をする俺を見て驚く顔をする姿を想像し、思わず頬を緩める。

士道は、調理場で聞こえてくるテレビの音声に耳を傾けながら卵を取り出そうとした時。

 

『───今日未明、天宮市近郊の───』

 

「ん?」

 

普段は聞く事の少ないニュースの内容に、顔を上げる。

理由は単純。明瞭なアナウンサーの声で、聞き慣れた街の名前が発せられたからだ。

 

「何?此処から結構近いね。何かあった?」

 

世界について興味のない士道でもそればかりは目を向け、カウンターテーブルに身を乗り出すようにしながらテレビの画面に視線を向ける。

画面にはモビルスーツの手によって破壊されたような街の様子が写し出されていた。

 

「・・・・空間震・・・だったっけ?」

 

「そーみたい」

 

士道の一人事に琴里はつまらなさそうに答える。

空間の地震と称される、広域振動現象。

発生原因不明、発生時期不定期、被害規模不確定の爆発、振動、消失、その他諸々の現象の総称である。

まるで、モビルスーツが街で戦闘し、街を破壊していくような理不尽極まりない現象。

この現象が初めて確認されたのは、およそ三〇年前のことである。

ユーラシア大陸のど真ん中───当時のソ連、中国、モンゴルを含む一帯が、一夜にてくりぬかれたかのように消失した。

士道達の世代になれば、教科書の写真で嫌というほど見ている筈なのだがこの男、ほぼ授業では寝てばかりなので殆ど覚えていない。

死傷者、およそ一億五〇〇〇万人。人類史上稀を見ない最大の災害である。

そして、その約半年間、規模は小さいものの、世界各地で似たような現象が発生した。

無論、士道が住む日本も例外ではなかった。

ユーラシアの大空災の6ヶ月後、東京都南部から神奈川県北部にかけての一帯が、まるで消しゴムでもかけたかのように、消失した。

それを聞いた当時の士道は・・・

 

「へー・・・スゴいね」

 

と小学生のような感想を一言、言っただけだった。

 

士道はテレビを見ながら琴里に言う。

 

「確か、最近は全然起こらなくなったのに、何で増え始めたんだろうね」

 

「どうしてだろうねー」

 

士道がそう言うと、琴里がテレビに顔を向けたまま首を傾げた。

そう。その南関東大空災を最後に、空間震はしばらくの間、確認されなくなった。

だが最近、再開発された天宮市の一角で空間震が確認されたのを皮切りに、またちらほらと、発生するようになった。

まぁ、その空間震をきっかけに全国に地下シェルターが普及率は爆発的に上昇したのだが。

加えて、自衛隊に災害復興部隊なんてものもある。

被災地に赴き、崩落した施設や道路の再建する事を目的にした部隊なのだが、その仕事ぶりは他人に感心をあまり持たない士道でも驚かざるを得なかった。

 

「そういえば最近妙に空間震が多いね?去年くらいから特に」

 

「・・・・んー、そーだねー。ちょっと予定より早いかなー」

 

と、琴里がソファの手すりに上体を預けながら言ってくる。

 

「早い?何が?」

 

「んー、あんでもあーい」

 

士道は首を傾げた。

琴里の言葉の内容も気になったが、その声が後半から少しくぐもったのが気になって。

 

「・・・・・」

 

無言で士道はソファにもたれかかった琴里の側に歩いていく。

琴里もそれに気づいたのか、士道が近づくのに合わせて、徐々に顔を背けていった。

 

「琴里、ちょっとこっちを向いて」

 

「・・・・・」

 

「はぁ・・・」

 

「くぎゅっ!?」

 

琴里の頭を手で鷲掴みにし、ぐりっと方向を転換させる。彼女ののどから変な声が鳴った。

そして琴里の口元に予想通りのものを見つけ目を細める。

朝ご飯前だというのに、琴里は口にチュッパチャプスをくわえていた。

 

「・・・・」

 

「んー!んー!」

 

無言で飴を取り上げようと棒を引っ張るも、琴里は唇をきゅっとすぼめて抵抗してくる。

 

「はぁ・・・ちゃんと飯も食うんだよ?」

 

結局は士道が折れた。

自分も似たような事をしているのであまり強く言えない。

 

「おー!愛してるぞおにーちゃん!」

 

士道は適当に手を振り作業に戻る。

その時、士道は思い出したかのように言う。

 

「そういえば今日は中学校も入学式だっけ?」

 

「そうだよー」

 

「じゃあ昼前には帰ってくるってことか。昼飯、何か食べたいものある?」

 

琴里は「んー」と思案するように頭を揺らしてから、姿勢を正す。

 

「デラックスキッズプレート!」

 

「ない」

 

士道はバッサリと切り捨てる。

 

「ええー」

 

キャンディの棒をぴこぴこさせて、琴里が不満そうな声を上げる。

 

「じゃあ、外食にする?」

 

「おー!本当かー!」

 

士道の言葉に目を輝かせて琴里は言う。

 

「じゃあ、学校が終わったらいつものファミレスにいこう」

 

士道が言うと、琴里は興奮した様子で手を振った。

 

「絶対だぞ!絶対約束だぞ!地震が起きても火事が起きても空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!」

 

「占拠されてたら食べれないと思うけど?」

 

「絶対だぞー!」

 

「わかった」

 

士道が言うと、琴里は元気よく手を上げた。

そして自分の部屋に戻っていくのを見て、彼は呟いた。

 

「そういえばクッキーとクラッカもビスケットの前ではあんな感じだったな」

 

士道はかつての仲間であった兄妹を思い出して彼等と思い被せる。

 

「・・・・準備するか」

 

そうして朝食の準備に彼は取りかかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

士道が高校に着いたのは、午前八時一五分を回った頃だった。

廊下に貼り出されたクラス表を適当に確認して、これから一年間世話になる教室に入っていく。

まだホームルームまでは少し時間があったが、結構な人数がそろっていた。

同じクラスになれたのを喜ぶ者、一人机についてつまらなさそうにしている者と、反応は様々だったがあまり知った顔は見られない。

と、士道が黒板に書かれた座席表を確認しようとして向かおうとすると、

 

「───五河士道」

 

後方から不意に、静かで抑揚のない声がかけられた。

 

「ん?」

 

聞き覚えなどない声に士道は振り向く。

そこには、細身の女子生徒が一人、立っていた。

肩に触れるか触れないかぐらいの髪に、人形のような顔が特徴的な女子生徒。

まるで本物の人形みたいな彼女に士道は言った。

 

「アンタ、誰?」

 

自分が知らない生徒に名前を言われ、警戒する。

だが彼女は不思議そうに首を傾げ言った。

 

「覚えてないの?」

 

そう言った彼女に士道は答えた。

 

「俺はアンタなんか知らないし、会ったこともない」

 

「そう」

 

キッパリ言った士道に彼女は特に反応することなく、短く言って窓際の席に歩いていった。

そのまま椅子に座ると、机から分厚い技術書のような本を取り出し、読み始める。

 

「なんだ・・・アイツ」

 

士道はそう呟き、眉をひそめる。

どうやら自分の事を知っているような雰囲気だったが、何処かで会ったか。

 

「とうッ!」

 

「ん?」

 

後ろから飛んできた平手打ちに士道は直ぐ様反応し、向かってきた手首を全力で握りしめる。

ギリギリといいながら掴まれる手首をその飛ばした本人が痛そうな声で言う。

 

「痛だだだだだ!?ギブギブギブ!?」

 

「ん」

 

士道は言われてその手を離す。

 

「痛ってぇ・・・少しは手加減しろよ!?士道!手首が折れるじゃねぇか!?」

 

「ごめん殿町つい反応した」

 

「ついで出来る力じゃねぇよ・・・」

 

平手打ちをしようとした犯人はすぐにわかった。

 

「まぁ、元気そうだな鈍感五河」

 

士道の数少ない友人というか成り行きで知り合った殿町宏人は、同じクラスであったことを喜ぶよりも先に、ワックスで逆立てられた髪と筋肉質の身体を誇示するように、腕を組み軽く身を反らしながら笑う。

 

「鈍感?なんで?」

 

士道は見覚えのない言葉に首を傾げ言う。

その反応を見て、ニヤニヤしながら殿町は言った。

 

「ほら何にも気づいてない。ちょっと見ない間に色気づきやがって。いつの間にどうやって鳶一と仲良くなりやがったんだ、ええ?」

 

「鳶一・・・・誰ソイツ?」

 

士道は誰の事かさっぱり分からず首を傾げる。

 

「とぼけんじゃねえよ。今の今まで楽しくお話してたじゃねぇか」

 

言いながら、殿町があごをしゃくって窓際の席にの席を示す。

士道はその席を見ると先程の彼女が座っていた。

すると士道の視線に気づいたのか、彼女が目を書面から外し、こちらに向けてくる。

 

「ああ、アイツか」

 

士道はそう呟く。

反して、殿町は笑って手を振る。

 

「・・・・・・・」

 

彼女は、別段何も反応も示さないまま、手元の本に視線を戻した。

 

「ほら見ろ、あの調子だ。うちの女子の中でも最高難易度、永久凍土とか米ソ冷戦とかマヒャデドスとまで呼ばれてんだぞ。一体どうやって取り入ったんだよ」

 

「別に、何もしてないよ」

 

「いや、おまえ本当に知らないのかよ」

 

「・・・・うん、でもアイツ前のクラスにいた?覚えてないけど」

 

士道が言うと、殿町はまたも信じられないといった具合に両手を広げて驚いたような顔を作る。

 

「鳶一だよ、鳶一折紙。ウチの高校が誇る超天才。聞いたことないのか?」

 

「知らない。初めて聞くけど、すごいの?」

 

「すごいなんてモンじゃねえよ。成績は常に学年主席、この前の模試に至っちゃ全国トップとかいう頭のおかしい数字だ。クラス順位は確実に一個下がることを覚悟しな」

 

殿町の説明に士道は答える。

 

「へー、じゃあ頭いいんだ。でもなんでそんな奴がこの学校にいるの?」

 

「さぁ?家の都合とかじゃねぇの?」

 

肩をすくめながら、殿町が続ける。

 

「しかもそれだけじゃなく、体育の成績もダントツ、ついでに美人ときてやがる。まぁ、運動神経に関してはお前がダントツだけどな。去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』でも第3位だぜ?見てなかったのか?」

 

「興味ない」

 

恋愛のれの字もない士道にそんな事を言われても仕方ない。

殿町は苦笑しながら士道に言う。

 

「まぁとにかく、校内一の有名人っつっても過言じゃないわけだ。五河くんの無知ぶりにさすがの殿町さんもびっくりです」

 

「知った所で変わりないでしょ」

 

士道がそう言った所で一年生の頃から聞き慣れた予鈴がなった。

 

「じゃあ、殿町。また後で」

 

「おう。またな士道」

 

士道は言われた。黒板に書かれた席順に従い、窓側から数えて二列目の席に鞄を置いた。

そこで、気づく。

 

「ん?」

 

何の因果か、士道の席は、学年主席様のお隣だったのである。

鳶一折紙は予鈴が鳴り終わる前に本を閉じ、机にしまい込んだ。

そして視線を真っ直ぐ前に向け、定規で測ったかのような美しい姿勢を作る。

 

「・・・・・」

 

興味なさげに士道は視線を黒板の方にやった。

それに合わせるようにして、教室の扉がガラガラと音をたて開けられる。

そしてそこから縁の細い眼鏡をかけた小柄な女性が現れ、教卓につく。

まわりから、小さなざわめき声が聞こえる。

 

「タマちゃんだ・・・」

 

「ああ、タマちゃんだ」

 

「マジで、やったー!」

 

───おおむね、好意的なもののようだった。

 

「はい、皆さんおはようございます。これから一年、皆さんの担任を務めさせていただきます、岡峰珠恵です」

間延びしたような声でそう言って社会担当の岡峰珠恵教諭・通称タマちゃんが頭を下げた。

士道はつまらなそうにポケットに入っているデーツを取り出そうとした時、

 

「・・・・・?」

 

不意に視線を感じて目を左隣に座った折紙に向けた。

視線を感じた原因は彼女だった。此方に視線を送っていたのである。

 

「・・・なに?」

 

「・・・別に」

 

「・・・・・」

 

無言でデーツを口の中にほりこむ。

 

「・・・ハズレ」

 

ハズレのデーツを引いた士道は顔をしかめながらホームルームを過ごした。




感想誤字報告よろしくです。


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第三話

少し短いですが投稿です。


ブレスレット、喜んでくれるといいなぁ。
いつも着けてくれるかなぁ。
あっ、そしたら臭くなっちゃうかな?
たまに、日の当たる所で干してくれるといいんだけど…。
あっ!でも宇宙に行っちゃったら無理だよね!?
どうしよう~!

アトラ・ミクスタ


「───状況は?」

 

真紅の軍服をシャツの上から肩がけにした少女は、艦橋に入るなりそう言った。

 

「司令」

 

艦長席の隣に控えていた男が、軍服の教本にでも書いてあるかのような綺麗な敬礼をする。

司令と呼ばれた少女はそれを一瞥だけして、男を爪先で蹴った。

 

「おうっ!」

 

「挨拶はいいから、状況を説明なさい」

 

苦悶、というよりは恍惚とした表情を浮かべる男に言いながら、艦長席に腰を掛ける。

男は、即座に姿勢を正した。

 

「はっ。"精霊"の出現と同時に攻撃が開始されました」

 

「AST?」

 

「そのようですね」

 

AST。対精霊部隊。

精霊を狩り精霊を捕らえ精霊を殺すために機械の鎧を纏った、人間以上怪物未満の現代の魔術師たち。

とはいえ──超人レベルでは、精霊に太刀打ち出来ないのが実状だった。

それくらい、精霊の力は桁が違う。

かつて大昔には天使を狩る72の悪魔の名を持つガンダムと呼ばれた兵器もあったらしいが、今では神話のような話だ。

 

「確認されているのは十名。現在一名が追撃、交戦しています」

 

「映像出して」

 

司令が言うと、艦橋の大モニターに、リアルタイム映像が映し出される。

繁華街から通りを二つくらい隔てた広めの道路の上で、

二人の少女が巨大な武器を振り回しながら交戦しているのが確認出来た。

武器を打ち合うたびに光が走り、地面が割れて、建物が倒壊する。

およそ現実とは思えない光景である。

 

「やるわね。──でも、ま、精霊相手じゃどうしようもないでしょ」

 

「確かにそのとおりですが、我々が何もできていないのもまた、事実です」

 

「・・・・・・」

 

苛ついたのか司令は足を上げると、ブーツの踵で男の足を踏みつぶした。

 

「ぐぎっ!」

 

男が、この上なく幸せそうな顔を無視し、司令は小さく嘆息した。

 

「言われなくても分かっているわ。───見ているだけというのにも飽きてきた所よ」

 

「ということは」

 

「ええ。ようやく円卓会議から許可が下りたわ。──作戦を始めるわよ」

 

その言葉に、艦橋にいたクルーたちが息を呑むのが聞こえる。

 

「神無月」

 

司令は軽く背もたれに身体を預けるようにすると、小さく右手を上げ、人差し指と中指を立てた。

まるで、煙草でも要求するように。

 

「はっ」

 

男は素早く懐に手をやると、棒つきの小さなキャンディを取り出す。そしてすみやかに、しかし丁寧に包装を剥がしていく。

そして司令の隣に跪き「どうぞ」と、司令の指の間にキャンディの棒を挟み込む。

司令がそれを口に放り込み、棒をピコピコと上下に動かす。

 

「・・・・・ああ、そういえば肝心の"秘密兵器"は?さっき電話にでなかったのだけれど。ちゃんと避難しているんでしょうね?」

 

「調べてみましょう───と、ん?」

 

男が怪訝そうに首を捻る。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、あれを」

 

男が画面を指差す。司令はそちらに目をやり「あ」と短い声を発した。

精霊とAST要員が武器を打ち合っている横で、制服姿の少年が気を失っていたのである。

 

「・・・・ちょうどいいわ。回収しちゃって」

 

「了解しました」

 

男は、またも折り目正しく礼をした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

───久しぶり。

 

 

頭の中に何処かで聞いたことのあるような声が響く。

 

 

───やっと、やっと会えたね■■■

 

 

懐かしむように、慈しむように。

 

 

───嬉しいよ。でも、もう少し待って。

 

 

アンタ、誰と、問いかけるも、答えはない。

 

 

───もう、絶対離さない。もう、絶対間違わない。だから、

 

不思議な声がそう言った瞬間───

 

『ミカ、止まるんじゃねぇぞ』

 

オルガの声と共にバルバトスによって掻き消された。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「・・・・ッ!」

 

士道は目を覚まし、反射的に見知らぬ女性に強烈な頭突きを食らわせ、距離を取る。

つい、昔の時の反応でやってしまった。

だが、士道の反応は仕方ない事だった。

何しろ見知らぬ女性が指で士道の瞼を開き、小さなペンライトのようなもので光を当てていたのである。

 

「・・・ん?目覚めたね」

 

先程の頭突きを気にしないかのように、妙に眠たげな女は、その顔に違わぬぼうっとした声で言った。

気を失っていた士道の目を見ていたらしく、妙に距離が近かった。

 

「アンタ、誰?」

 

「・・・・ん、ああ」

 

女はぼうっとした様子のまま身体を起こすと、垂れていた前髪をかき上げた。

軍服らしき服を纏った、二十歳くらいの女だ。

無造作に纏められた髪に、分厚い隈に飾られた目、あとはなぜか服のポケットに入っている傷だらけのクマのぬいぐるみがやけに特徴的だった。

 

「・・・・ここで解析官をやっている、村雨令音だ。あいにく医務官が席を外していてね。・・・・まぁ安心してくれ。免許こそ持っていないが、簡単な看護くらいならできる」

 

「そう言って安心出来るとでも思う?」

 

なぜなら明らかに、自分よりもこの女の方が不健康そうに見えるし、何よりコイツは何者かわからない。

それに"此処が何処か"もわからない。

士道は周囲を視線だけで見回す。

自分は簡素なパイプベッドの上で寝かされていた。

そしてその周りを取り囲むように、白いカーテンが仕切りを作っている。まるで、学校の保健室のようだ。

ただ、少し異なる所は天井だった。何やら配管や配線が剥き出しになっている。

 

「ねぇ、眠そうな人」

 

「・・・・ん、何だい?」

 

「アンタ、ここの人何でしょ。此処は何処?」

 

この訳のわからない居場所に士道は少しでもこの場所の事を知るべく、彼女に聞く。

 

「・・・・ああ、〈フラクシナス〉の医務室だ。気絶していたので勝手に運ばせてもらったよ」

 

「〈フラクシナス〉・・・?何それ?」

 

何かの名前なのだろうが、士道は見当もつかなかった。

しかし令音は応じず、無言で士道に背を向けた。

 

「・・・・」

 

士道は彼女の行動が分からず警戒するが、令音は構わず言う。

 

「・・・・ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。・・・気になることはいろいろあるだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」

 

言って、カーテンを開ける。

カーテンの外は少し広い空間になっていた。

ベッドが六つ程ならび、部屋の奥には見たことのない医療器具が置かれている。

令音は部屋の出入口と思う場所に向かって、ふらふらと歩いていく。

が、すぐに足をもつれさせると、"ガン!"と音を立てて頭を壁に打ちつけた。

 

「眠そうな人、大丈夫?」

 

あまり仲間以外の心配をしない士道でも心配するくらいには頭にクリーンヒットした。

 

「・・・むう」

 

一応、倒れはしなかったらしい。彼女は壁にもたれかかるようにしながらうめく。

 

「・・・・ああ、すまんね。最近少し寝不足なんだ」

 

「へー、そうなんだ。寝れる時に寝た方がいいよ」

 

「・・・ああ、すまないね」

 

彼女はそう答え、時計を見る。

そして彼女は呟いた。

 

「・・・と。ああ、失礼、薬の時間だ」

 

彼女はそう言って懐を探ると、錠剤が入ったケースを取り出した。

そして蓋を開けると、錠剤をイッキ飲みするように。一気に口の中に放り込む。

 

「アンタ、自殺志願者?」

 

何の躊躇いもなく、おびただしい量の錠剤を飲み込む彼女に士道は少し眉をよせながら言う。

 

「・・・いや、いまいち効きが悪くてね」

 

「・・・・ふーん、そうなんだ」

 

士道はそう言って歩みを進める。

令音が空っぽになったケースを懐に戻してから、危なっかしい足取りで歩み進め、医務室の扉を開ける。

士道が部屋の外に出ると、狭い廊下のような作りになっていた。

まるで"イサリビ"にいた時の事を思い出す。

そして、どれくらい歩いたか。

 

「・・・ここだ」

 

通路の突き当たり、横に小さなパネルが付いた扉の前で足を止め、令音が言った。

 

「・・・・さ、入りたまえ」

 

令音が中に入っていく。士道もその後に続いた。

 

「へー、スゴいね」

 

扉の向こうは艦橋だった。

イサリビよりも広く、最新的で一言で言うと凄いという言葉しかない。

 

「・・・連れてきたよ」

 

令音が、ふらふらと頭を揺らしながら言う。

 

「ご苦労様です」

 

艦長席の横に立った長身の男が、執事のような調子で軽く礼をする。

ウェーブのかかった髪に、日本人離れした鼻梁。

何かの絵にでも出てきそうな風貌の男だった。

 

「初めまして。私はここの副司令、神無月恭平と申します。以後お見知りおきを」

 

「へー、アンタが副団長ってこと?」

 

「そう言う事になりますね」

 

男はそう言って笑う。

 

「じゃあアンタ、二番目に偉い人なんだ」

 

士道はそう言って手をポケットに入れる。

最初、士道は眠そうな人がこのガリガリに言ったのかと思ったが違った。

副団長と言うことはオルガと同じ、団長もいる筈だ。恐らく先のガリガリがいた場所の隣に座っているのだろう。

 

「司令、村雨解析官が戻りました」

 

神無月が声をかけると、こちらに背を向けた艦長席が、低いうなりを上げながらゆっくりと回転する。

そして。

 

「───歓迎するわ。ようこそ、〈ラタトスク〉へ」

 

司令なんて呼ばれるには少々可愛い声を響かせながら、真紅の軍服を肩がけにした少女の姿が明らかになった。

士道は眉をひそめて言う。

 

「・・・・何やってんの?琴里?」

 

格好、口調、それに雰囲気、違いはあるが紛れもなく自分の妹、五河琴里だった。

 

 




感想、誤字報告よろしくです。













このクロスオーバーをした理由は実は厄祭戦のモビルアーマーと十香達の霊装が実は同じ系列の天使だったり、設定がある程度組み込みやすかったり、主人公の名字がオルガと一緒って事で投稿を始めたんですよね。

設定とか見たいと言う人はどうぞいつでも言って下さい。投稿するのはかなり後にはなりますが。


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第二話

「死なねぇ!死んでたまるか!このままじゃ・・・こんなところじゃ・・・!終われねぇ!!だろ?ミカァッ!」

オルガ・イツカ


それから、およそ三時間後。

 

「五河ー、どうせ暇なんだろ、飯いかねー?」

 

始業式を終え、帰り支度を整えた生徒たちが教室から出ていく中、鞄を肩がけにした殿町が話しかけてきた。

昼前には学校が終わることなど、テスト期間以外ではそうない。周りをみると、ちらほらと友人とどこに昼食を食べに行くか相談している集団が見られた。

 

「ごめん。今日は約束があるんだ」

 

「なぬ?女か?」

 

士道の言葉に女かと反応する殿町。

それに士道は答えた。

 

「まぁ、そうだけど・・・琴里だよ」

 

「んだよ、脅かすんじゃねぇよ」

 

「殿町が勝手に驚いただけでしょ」

 

「でもま、琴里ちゃんなら問題ねぇだろ。俺も一緒に行っていいか?」

 

「別に。かまわないよ」

 

と、士道が言った途端、殿町が士道の机に肘をのせ、声をひそめるように言う。

 

「なあなあ、琴里ちゃんって中二だよな。もう彼氏とかいんの?」

 

「さぁ?聞いてないけど?」

 

「いや別に他意はねえんだが、琴里ちゃん、三つくらい年上の男ってどうなのかなと」

 

「さぁ、そんなの琴里に聞けば?」

 

士道は殿町の質問にあまり興味を示さず農業の本を鞄に片付けて席から立ち上がる。

 

「だっておめ、琴里ちゃん超可愛いじゃねぇか。あんな子と一つ屋根の下とか最高だろ」

 

「別に。そう考えた事ないけど」

 

士道からしてみればよくトレーニングの邪魔をしてくる世話のかかる妹というだけとしか思わなかった。

だが、鉄華団の皆と同じ家族なのだから守っていこうという意識はある。

 

「そういうもんかねぇ」

 

「そういうもんでしょ」

 

───と、その瞬間。

 

ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ─────────

 

「・・・・・!!」

 

教室の窓ガラスをビリビリと揺らしながら、街中に不快なサイレンが鳴り響く。

 

「な・・・・なんだ?」

 

殿町が窓を開けて外を見やる。

サイレンに驚いたのか、カラスが何羽も空に飛んでいた。

教室に残っていた生徒たちも、皆会話を止めて目を丸くしている。

と、サイレンについで、聞き取りやすいようにするためか、言葉を一拍ずつ区切るようにして、機械越しの音声が響いてきた。

 

『───これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予想されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難してください。繰り返します───』

 

瞬間、静まり返っていた生徒たちが、一斉に息を呑む音が聞こえた。

──空間震警報。

皆の予感が、確信に変わる。

 

「おいおい・・・マジかよ」

 

殿町が額に汗を滲ませながら、乾いた声を発する。

だが、殿町を含め、教室の生徒たちは、顔に緊張と不安こそ滲ませているものの、比較的落ち着いてはいた。

少なくとも、恐慌状態に陥ったりする生徒は見受けられない。

この街は三十年前の空間震によって深刻な被害を受けているため、士道たちは幼稚園の頃から、しつこいほどに避難訓練を繰り返されていたのである。

加えて、ここは高校。全校生徒を収容できる規模の地下シェルターが備えられている。

 

「シェルターはすぐそこのはずだよ。落ち着いて避難すればいい」

 

「お、おう、そうだな」

 

士道の言葉に、殿町がうなずいた。

走らない程度に急ぎ、教室から出る。

廊下には、もう既に生徒たちが溢れ、シェルターに向かって列を作っていた。

と────士道は気づいた。

一人だけ、列と逆方向───昇降口の方向に走っている女子生徒がいたからだ。

 

「銀髪の人?」

 

そう、急ぎながら廊下を駆けていたのは、あの鳶一折紙だった。

 

「銀髪の人、何でシェルターがない所に・・・」

 

士道は首を傾げながらも、殿町とともに生徒の列へと並ぶ。

銀髪の人のことは気にはなったが、別にどうでもいいかと思い列に待つ。

 

「お、落ち着いてくださぁーい!だ、大丈夫ですから、ゆっくりぃー!おかしですよ、おーかーしー!おさない・かけない・しゃれこうべーっ!」

 

前には生徒を誘導しているタマちゃんの姿が・・・

 

「・・・・なんか自分より焦っている人を見ると落ち着くよな」

 

「そう?俺は別に思わないけど」

 

殿町の言葉に素っ気なく言う士道に殿町は苦笑する。

まぁ実際、なんとも頼りない彼女の様子に生徒たちは不安を感じるより、緊張がほぐされているように見える。

ふと士道はあることを思い出し、ポケットを探ってスマートフォンを取り出した。

 

「ん、どうしたんだよ五河」

 

「琴里に電話」

 

士道は短く言って着信履歴から琴里の名を選んで電話をかける。

が───繋がらない。何度か試すが、結果は変わらなかった。

 

「ダメか。琴里、ちゃんと避難すればいいいけど」

 

まだ中学校を出ていなかったら大丈夫だろう。

問題は、もう既に学校を出ていた場合だが。

だが、あの近くにも公共シェルターがあるはずだし、普通に考えれば問題ないのだが、どうにも嫌な予感が拭いきれなかった。

今朝の言葉が先程からずっと渦巻いたままだった。

 

「確かあれがあったっけ?」

 

確か琴里の携帯には、GPSというものがついていた筈である。

慣れない手つきで操作すると、画面に上から見た街の地図と、赤いアイコンが表示された。

 

「──!」

 

それを見て、士道は息を飲んだ。

琴里の位置を示すアイコンは、約束のファミレスの真ん中で停止していたからだ。

士道は生徒の列から抜け出しすぐさま走り出す。

 

「お、おい、どこいくんだ五河!」

 

殿町の声を無視して士道は走る。

列を逆走して昇降口に出る。

そのまま速やかに靴を履き替えると、外へと駆け出していった。

校門を抜け、学校前の坂道を駆け下りる。

士道は、今出せる最高速度で足を動かしながらファミレスへと向かう。

士道の視界に広がっているのは、車の通らない道路に、人影のない街並みだった。

街路にも、公園にも、コンビニにも、誰一人として残っていない。

先程まで、誰かがそこにいたことを思わせる生活感を残したまま、人間の姿だけが街から消えている。

まるでモビルスーツの戦闘が始まる前の街道のようだった。

三十年前の大空災以来、神経質なほど空間震に対して敏感に再開発されたのがこの天宮という街である。

公共施設の地下はもちろん、一般家庭のシェルター普及率も全国で一位と聞いた事があった。

それに最近、空間震の頻発もあってか避難は迅速だった。

 

「無事だと良いけど・・・!」

 

呟きながら走る。

そして走りながらスマートフォンの画面を開く。

琴里を示すアイコンは、やはりファミレスの前から動いていなかった。

士道は琴里の無事を心配しながら、ファミレスを目指して走り続けた。

 

と───

 

「・・・っ、なんだ?」

 

士道は足を止め、顔を上方に向けた。

視界の端に、何か動くものが見えた。

士道は眉をひそめ目を動かす。

 

「三つ・・・いや四つか。何か飛んでるな・・・」

 

だが、すぐにそんなものは気にしていられなくなった。

なぜなら───

 

「くっ・・・・!!」

 

士道は思わず腕で顔を覆った。

突然進行方向の街並みがまばゆい光と共に包まれたからだ。

続いて、耳をつんざく爆音と同時に、凄まじい衝撃波が士道を襲う。

 

「ちっ・・・!!」

 

反射的に足に力を入れ踏ん張ろうとしたが無駄だった。

台風も勝るに劣らぬ風圧に煽られ、バランスを崩して後方へ転がる。

 

「一体なんだ・・・?」

 

まだ少しだけチカチカする目を擦りながら、身を起こす。

 

「街が・・・」

 

士道は自分の視界に広がる光景を見て、一瞬だが呆然とする。

今まで目の前にあった街並みが目を瞑った一瞬のうちに跡形もなく、なくなっていたから。

 

「何なんだ・・・一体」

 

士道はそう呟く。

何の比喩でも冗談でもない。

まるで削りとられるかのように消し去っていた。

そして、クレーターのようになった街の一角の、中心。

そこに、何やら金属の塊のようなものが聳えていた。

 

「誰かいる」

 

士道はそんな物よりも先の爆発によって消えさった筈の場所に人の気配を感じ警戒する。

遠目のため細かい形状までは見取れないが───椅子のような形をしているように見える。

だが、重要なのはそこではない。

その椅子の肘掛けに足をかけるようにして、奇妙な服を纏った少女が一人、立っていたからだ。

 

「アイツ・・・何かヤバイな」

 

雰囲気でピリピリとした感じが士道には伝わっていた。

すると、少女が気怠そうに首をこちらへと回し、士道の方へと顔を向けた。

 

「ん・・・・?」

 

自分に気付いたのだろうか。少しだけ遠く分かりづらい。士道が再び警戒するように見ていると、少女はさらに動きを続ける。

ゆっくりとした動作で、椅子の背もたれから生えた武器の柄のようなものを握ったかと思うと、それをゆっくりと引き抜く。

それは───幅広の刃を持った、巨大な剣。

虹のような、星のような幻想的な輝きを放つ、不思議な刃。

少女が剣を振りかぶると、その軌跡をぼんやりとした輝きを描いていく。

そして───

 

「・・・・・ッ!?」

 

彼女が、自分に向かって、剣を横薙ぎに振り抜いてきた。

咄嗟の判断で頭を下げる。

その、今まで自分の頭があった位置を、刃の軌跡が通り抜けていった。

もちろん、剣が直接届くような距離ではない。

だが、実際─────

 

「食らったらヤバかったな」

 

士道は視線を後ろに向けて刃の軌跡が通り抜けた場所を見る。

自分の後方にあった家屋や店舗、街路樹や道路標識などが、みんな同じ高さに切り揃えられていたからだ。

一拍遅れて、遠雷のような崩落音が聞こえてくる。

士道は現実離れした芸当を前にしても、注意をそらせない。

なぜなら彼女から注意をそらせば死ぬような気がしたからだ。

だが。

 

「───おまえも・・・か」

 

「・・・・っ!」

 

ひどく疲れたような声が、頭の上から響く。

士道は顔を上げる。

顔を上げると目の前に、一瞬前まで存在しなかった彼女が立っていたからだ。

そう、それは───先程まで、クレーターの中心にいた彼女だった。

 

「っ──」

 

意図せず、声が漏れる。

歳は自分と同じか、少し下。

膝まであろうかという黒髪に、愛らしさと凛々しさを兼ね備えた顔。

その中心には、まるで宝石のように様々な色の光を他方向から当てているかのような、不思議な輝きを放つ目が鎮座している。

装いもまた奇妙なモノ。

布か金属か、よく分からない素材が、ドレスのような形を作っている。

そしてその手には、身の丈ほどあろうかという巨大な剣が握られている。

状況の異常さ。

風貌の奇異さ。

存在の特異さ。

どれも士道には体験したこともない出来事だった。

だけど。

自分が少しだけ気を奪われた理由に、そんなモノは含まれていなかった。

 

「───────」

 

一瞬。ほんの一瞬だけ彼女にだけ目を離せなかった。

それくらい。

彼女はオルガに会う前の自分に似ていたから。

 

「アンタは───」

 

無意識に。

士道は声を出していた。

彼女が視線を此方に向けてくる。

 

「・・・名、か」

 

どこか心地がいい調べのごとき声音が、空気を震わせる。

しかし。

 

「────そんなものは、ない」

 

どこか悲しげに、彼女は言った。

その時に士道と彼女の目が初めて交わった。

それと同時に、名前がない少女が、酷く憂鬱そうな───まるで、今にも泣き出してしまいそうな表情を作りながら、カチャリと音を鳴らして剣を握り直す。

 

「何するつもり?」

 

士道は彼女の行動に問いを投げる。

だが、彼女はそんな士道に不思議そうな目を向けてくる。

 

「・・・なんだ?」

 

「アンタは、その剣で何するつもりだって聞いてるんだ」

 

「それはもちろん───早めに殺しておこうと」

 

さも当然の如く言った彼女に士道は顔を変えずに言う。

 

「俺はアンタに恨みなんか買った覚えなんてないよ」

 

「?」

 

言葉の意味が分からなかったのか、彼女は首を傾げる。

 

「じゃあ意味を変える。アンタは何で俺を殺そうとするの?」

 

士道は確かに敵対者には容赦はしない。だが、無関係な奴は殺す意味がない。

だが彼女は?

 

「───だっておまえも、私を殺しに来たんだろう?」

 

「は?」

 

困惑する回答に士道は眉を潜める。

 

「なんで?」

 

「───何?」

 

「何で意味もなく俺の邪魔をしないアンタを殺さなくちゃいけないの?」

 

士道はそう言って彼女を見つめる。

少女も士道を観察するように見つめていると、自分から視線を外し、空に顔を向けた。

何かと思い、士道も目を上方へ向けると、

 

「何アレ?」

 

訳のわからないモノをみたような反応をした。

何しろ空には奇妙な格好をした人間が数名飛んでいて──ミサイルらしきモノをいくつも発射してきたのだから。

 

「チッ─!!」

 

士道は直ぐ様回避行動に入る。だが───

 

「えっ?」

 

目の前の不思議な光景に声を漏らす。

空から放たれたミサイルが、少女の数メートル上空で、見えない手にでも掴まれたかのように静止していたからだ。

彼女が、気怠げに息を吐く。

 

「・・・こんなものは無駄だと、何故学習しない」

 

言って彼女は、剣を握っていない手を上にやり、握りつぶすように握る。

すると何発ものミサイルが圧縮されるようにへしゃげ、その場で爆発した。

爆発の規模も恐ろしく小さい。まるで、威力が内側に引っ張られているかのようだった。

 

「おー、凄いな剣の人」

 

士道は確かにその行動を見て、思った事を口にする。

空を飛んでいる人間たちが狼狽しているのが、何となくだが分かる。

だが、攻撃をやめようとはしない。

次々とミサイルが飛んで来る。

 

「───ふん」

 

彼女は小さく息を吐くと、まるで泣き出してしまいそうな顔を作った。

先程自分に剣を向けようとしたときと、同じ顔。

そして───

 

「・・・消えろ、消えろ。一切、合切・・・消えてしまえ・・・・っ!」

 

そう言いながら。

彼女は不思議な輝きを放つ剣を空に向けた。

そして無造作に一振りする。

瞬間に風が、嘶いた。

 

「・・・・っ、チィ・・・!」

 

すさまじい衝撃波が辺りを襲い、太刀筋の延長線上の空に、斬撃が飛ぶ。

上空を飛行していた彼らはそれを慌てて回避し、その場を離脱していった。

士道はその衝撃波で吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

「ガッ!?」

 

その衝撃が強かったのか意識が薄れていく。

そして彼が最後にみた光景は・・・

諦めたような顔をした彼女の姿だった。

 




感想誤字報告よろしくです。

三日月ぽくなかったらごめんなさい。


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第四話

ちょっと遅れましたが投稿です。
明日から八月いっぱいまでは投稿ペースが落ちます。
サービス業で働いているので、中々投稿が出来なくなりますので。


鉄華団、決して散ることのない鉄の華。
ユージンなんかはダセェって散々けなしまくってくれたけどよぉ、お前はこの名前、褒めてくれたよな、ビスケット。
弔い合戦なんて、お前が望んじゃいねぇことはわかってる。
だけどよ、もう鉄華団は止まれねぇんだ。

オルガ・イツカ


「──五河、士道」

 

小さな、誰にも聞こえないくらいの声を発し、折紙は頭の中に彼の顔を思い浮かべた。

間違いなく、"あのときの"の少年だった。

自分の記憶が、間違えるはずはない。

少し残念ではあったが───会ったのはあれ一回きりだったし、向こうが自分のことを覚えていないのは仕方がない。

高校に入学したときからあれこれと接触を試みていたが、全て失敗に終わったし。

今はそれ以上に、気になることがあった。

 

「なぜ、あんなところに」

 

空間震警報の鳴り響く街に、なぜ彼が出ていたのかが分からなかった。

それに───彼は、間違いなく目にしていた。

────精霊を。

 

「鳶一一曹、準備整いました!」

 

「─────」

 

突然響いた整備士の声に、折紙はうつむかせていた顔を上げた。

そしてすぐさま、頭の中に浮遊の司令を発現させる。

するとその指令は折紙が身に纏ったワイヤリングスーツを通して、背に装着されたスラスターパーツに伝わり、内蔵された顕現装置を発動させる。

およそ飛行には向きそうもないフォルムの装備を纏った折紙の身体が、鈍重そうな武器ごと軽やかに宙に浮く。

陸上自衛隊・天宮駐屯地。

その一角に位置する格納庫で、折紙は整備士の誘導に従いながら、自分の専用ドックに腰掛けるように着地し、武器を定位置に収めると、ようやく息を吐いて全ての顕現装置を解除した。

それと同時に、今まで欠片も感じていなかった装備の重量や身体に蓄積された疲労が、一気に折紙の身体に押し寄せた。

後方から機械音がして、背に装備していたスラスターの接続が解除される。

だがその後三分ほど、折紙はその場から立ち上がる事が出来なかった。

このCR-ユニットを使用したあとは毎回こうである。

超人から一般人に戻ると、それだけで身体が異様に重く感じてしまう。

戦術顕現装置搭載ユニット。通称CR-ユニット。

三十年前の大空災の折、人類が手にした技術・顕現装置を、戦術的に運用するための装備の総称である。

簡単に説明すれば、科学的な手段を以て、いわゆる『魔法』を再現するシステムだ。

そして同時に人間が精霊に、唯一対抗できる手段でもある。

 

「ちょっと退いて!担架通るよ!」

 

と右方から怒鳴るような声が響く。

ちらと視線だけを動かして見ると、自分と同じくワイヤリングスーツに身を包んだ隊員が、担架に乗せられていることがわかった。

 

「・・・くそッ、くそッ、あの女・・・・ッ!絶対、絶対にぶっ殺してやる・・・ッ!」

 

担架に乗せられた隊員が、血の滲む額の包帯を押さえて、忌々しげにうめきながら運ばれていく。

 

「・・・・・」

 

毒づく元気があるなら大丈夫だろう。折紙は興味なさげに視線を戻した。

実際、医療用の顕現装置を用いて治療を行えば、よほど深刻な怪我でない限りはすぐに完治する。

前に自分が足を骨折したときも、翌日には歩けるようになっていた。

 

「────」

 

折紙は、細く息を吐くと同時、視線を少し上にやる。

今日の戦闘を思い起こす。

───世界を殺す災厄・精霊。

超人たる折紙たちが幾人束になろうとも、傷一つつけることが叶わない異常。

どこからともなく現れ、気まぐれに破壊を撒いていく、"天災的"怪物。

 

「・・・・・」

 

結局今日の戦闘も、精霊の消失により幕引きとなった。

消失、といっても、精霊を殺した訳ではない。

要は、空間を越えて逃げられただけだ。

 

「・・・・・っ」

 

彼女は表情をピクリとも動かさなかったが、奥歯を強く噛み締めた。

 

「折紙」

 

と、そこで格納庫の奥から響いてきた声に、折紙は思考を中断させられた。

 

「・・・・・」

 

無言で、そちらを向く。まだ身体が慣れていないのか、首がずっしりと重い。

 

「ご苦労さん」

 

そこには、自分と同じくワイヤリングスーツを着こんだ、二十代半ばくらいの女が、腰に手を当てて立っていた。

日下部燎子一尉。折紙の所属するASTの隊長だ。

 

「よく一人で精霊を撃退してくれたわね。・・・友原と加賀谷にはきつく言っとくわ。折紙一人に任せて離脱するなんて」

 

「撃退なんて、していない」

 

折紙がそう言うと、燎子は肩をすくめる。

 

「上への報告はそうしとかなきゃなんないのよ。ちゃんと成果出てますってことにしとかなきゃ予算が下りないの」

 

「・・・・・」

 

「そう怖い顔すんじゃないの。誉めてんだから。エースが席を空けている状況で、よく頑張ってくれるわ。あんたがいなきゃ死んでた人間も、もう一人や二人じゃすまないでしょうよ」

 

彼女はそう言って、ふうと息を吐く。

 

「ただねぇ」

 

燎子は視線を尖らせ、折紙の頭を掴んで自分に向けさせた。

 

「あんたは少し無茶しすぎ。──────そんなに死にたいの?」

 

「・・・・・・」

 

燎子は折紙に鋭い視線を向けたまま言葉を続ける。

 

「あんた、自分がどんな怪物相手にしてるか本当にわかって戦ってるの?あれは化け物よ。知能を持ったハリケーンよ。───いい?できるだけ被害を最小限に抑えて、できるだけ早くロストさせる。それが私たちの仕事よ。無駄な危険は冒さないようにしなさい」

 

「───違う」

 

折紙は燎子の目をまっすぐ見つめ返すと、小さく唇を開いた。

 

「精霊を倒すのが、ASTの役目」

 

「・・・・・」

 

燎子が眉根を寄せる。

それはそうだろう。

彼女はASTの隊長。対精霊部隊の名の意味を、折紙よりずっと深く、重く理解しているはずだった。

理解した上で、彼女は言っているのだ。

───自分たちには、被害を抑えることしかできないと。

けれどそれを承知した上で、折紙はもう一度言った。

 

「───私は、精霊を、倒す」

 

「・・・・・」

 

燎子は息を吐くと、折紙の頭から手を離す。

 

「・・・別に、個人の考えに口を出すつもりはないわ。

好きに思ってなさい。───でも、戦場で命令に背くようなら、部隊から外すわよ」

 

「了解」

 

折紙は短く答えて、ようやく馴染んだ身体を起こし、歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

目の前の艦長席に座っている琴里を見て、士道は目を細める。

なんせ自分が知らない所で組織の団長をやっていたのだ。彼が疑うには十分すぎる材料だった。

 

「・・・琴里?無事だったの?」

 

「あら、妹の顔も忘れたの、"士道"?物覚えが悪いとは思っていたけど、さすがにそこまでとは予想外だったわね。今から老人ホームを予約しておいた方がいいかしら」

 

琴里の言葉に眉をひそめる士道は琴里に言う。

 

「どうでもいいけど、此処は何処なの?それにコイツらは何?それに───」

 

琴里が、はいはい、と言いたげに手を広げて士道の言葉を止めさせる。

 

「落ち着きなさい。まずはこっちから理解してもらわないと、説明のしようがないのよ」

 

言って琴里が、艦橋のスクリーンを指差す。

そこには先刻自分が遭遇した黒髪の少女と、機械の鎧を纏った人間たちが映し出されていた。

 

「コイツら、さっきの・・・」

 

士道がそう呟くと、琴里は答える。

 

「そ、さっき士道が遭遇したこれが精霊って呼ばれている怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊よ。厄介なものに巻き込まれてくれたわね。私たちが回収してなかったら、今頃二、三回くらい死んでたかもしれないわよ?」

 

「ふーん・・・精霊ってコイツのことなんでしょ?なら精霊は一体何なの?」

 

士道はポケットからデーツを取り出し、口の中に放り込む。

士道の言葉に対して琴里は説明する。

 

「簡単に言うと、彼女は本来この世界に存在しないモノであり───この世界に出現するだけで、己の意思とは関係なく、辺り一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 

琴里が両手をドーン!と広げ、爆発を表現する。

士道は、再びポケットからデーツを取り出して口にし、言った。

 

「へぇ・・・そうなんだ。じゃあ、空間震ってやつはコイツが起こしてるの?」

 

士道の言葉に琴里は驚くような顔で言う。

 

「カンが鋭いわね、士道」

 

「別に。普通でしょ」

 

琴里の言葉に対し、士道は何事もないように言う。

 

「空間震って呼ばれている現象は、彼女みたいな精霊が、この世界に現れるときの余波なのよ」

 

「へぇー・・・」

 

空間震と言われている現象を作り出しているその原因が、彼女だというのか───。

 

「ま・・・・規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければ───それこそ、大陸に大穴が開くくらい」

 

琴里が両手で大きな輪を作る。

士道はそんな規模の空間震があったかと思いながら、食べ終わった手を擦る。

 

「運がいいわよ士道。もし今回の爆発規模がもっと大きかったら、あなた一緒に吹っ飛ばされてたかもしれないんだから」

 

「ふーん」

 

士道は興味なさげに言う。

琴里はそんな士道の様子に半眼を作る。

 

「だいたい、なんで警報発令中に外に出てたの?馬鹿なの?死ぬの?」

 

「え・・・・?なんでって、これ」

 

士道はポケットからスマートフォンを取り出すと、琴里の位置情報を表示させた。やはり琴里のアイコンはファミレスの前で停止している。

 

「ん?ああ、それ」

 

しかし琴里は、懐から携帯電話を取り出して見せた。

 

「あれ・・・?なんで琴里、それ」

 

士道はそう言ってスマートフォンの画面と、目の前に掲げられた琴里の携帯電話を交互に見た。

こんなところに琴里がいるから、てっきりファミレス前に携帯を落としてきたのかと思っていたのだ。

琴里は肩をすくめると、はぁっと嘆息した。

 

「なんで警報発令中に外にいたのかと思ったら、それが原因だったのね。私をどれだけ馬鹿だと思っているのかしらこの阿保兄は」

 

「だって・・・ん?ていうか、なんで?」

 

士道は自分のスマートフォンと琴里の携帯を再び交互に見て言う。

 

「簡単よ。ここがファミレスの前だから」

 

「は・・・・?」

 

「ちょうどいいわ。見せた方が早いでしょ。──一回フィルター切って」

 

琴里が言うと、薄暗かった艦橋が一気に明るくなる。とはいえ、照明がつけられた訳ではない。どちらかというと、天井の暗幕を取り払ったような感じだった。

事実───辺り一体には、青空が広がっていた。

 

「おー」

 

「驚かないでちょうだい。外の景色がそのまま見えているだけよ」

 

「へー、外の景色なんだ・・・」

 

「ええ、ここは天宮市上空一万五千メートル。───位置的にはちょうど、待ち合わせしてたファミレスのあたりになるかしらね」

 

「じゃあ、ここって・・・」

 

士道が思っていた事を琴里は言う。

 

「そう。この〈フラクシナス〉は、空中艦よ」

 

腕組みし、琴里がふふんと鼻を鳴らす。まるでお気に入りの玩具を自慢する子供のように。

 

「空中艦・・・でも、何で琴里がそんなのに?」

 

「だから順を追って説明するって言ってるでしょう?鶏だって三歩歩くまでは覚えているでしょうに」

 

「ん・・・・」

 

「・・・・でも、ケータイの位置確認で調べられちゃうなんて盲点だったわね。顕現装置で不可視迷彩と自動回避かけてたから油断してたわ。後で対策を打っておかないと」

 

琴里が、よく分からない単語を呟きながら顎に手を置く。

 

「何言ってんの?」

 

「ああ、こっちの話。士道にはわからない事だから気にしないで」

 

「ふーん」

 

士道はそう言って再びポケットに手を突っ込む。だが、もうそこにはデーツの残りカスしか残っていなかった。

 

「・・・また、買いにいかなきゃ」

 

士道は緊張感のない声音で、場違いな事をいいながら、青空を見上げる。

その青空はまるで火星で見た青空と同じようにすみわたっていた。

 

 




感想誤字報告よろしくです。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。
投稿に関しては問題なく。




皆さんはどのバルバトスが好きですか?
良ければ、言って下さい。その形態で出すかも知れませんので。


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第五話

最新話投稿です。
少し短いですがどうぞ。



血が混ざって繋がってか、そういうのは仲間って言うんじゃないぜ。家族だ。

名瀬・タービン




しばらくして琴里はスクリーンに写し出された一団を指を指して士道に言った。

 

「それと、次はこっちね。AST。精霊専門の部隊よ」

 

「・・・精霊専門の部隊って──何すんの?」

 

士道が琴里に問うと、琴里は当然と言うように眉を上げ、言った。

 

「簡単よ。精霊が出現したら、その場に飛んでいって処理するの」

 

「処理?じゃあコイツを殺せばいいってことか」

 

「ええ」

 

こともなげに、琴里がうなずく。

言っていることは理解出来た。精霊。なるほど聞いたかぎり、確かに危険な存在だ。

士道は、彼女がオルガの言った"本当の居場所"にたどり着く邪魔になるのなら潰すかとしか、考えていなかった。

 

「まぁ、普通に考えれば死んでくれるのが一番でしょうね」

 

特に感慨もなさそうに琴里は言う。

 

「そうなの?」

 

「ええ、何もおかしいことはないでしょう。あれは怪物よ?この世界に現れるだけで空間震を起こす最凶最悪の猛毒よ?」

 

「そんなもんか?まぁ、いいや。で、どうすればいい?琴里。コイツを殺せばいいの?」

 

「・・・・・ッ!」

 

士道はそう言って琴里を見る。

そう言って自分を見る士道に琴里は一瞬、得体のしれない寒気を覚えた。

まるで、士道から寄せられる信頼に応えればならないと言うプレッシャー。目的の為ならば、殺すことも平気でやるような目だった。まるで悪魔との契約をすればこんな気持ちになるのだろう。

だが、琴里は自分の兄はそんな事をするような人ではないと"思ってしまった"。

琴里は内心恐怖を感じながらも、真顔を作りながら自身の兄を見て言う。

 

「いいえ、そんなことはしなくてもいいわ」

 

琴里はそう言って、士道に話を続ける。

 

「いい?精霊の対処方法は、大きく分けて二つあるの」

 

「二つ・・・・?」

 

士道は首を傾げて問うと、琴里は大仰にうなずき、人差し指を立てた。

 

「一つはASTのやり方。戦力をぶつけて精霊を殲滅する方法」

 

続けて中指を立てる。

 

「もう一つは・・・・・精霊と、対話する方法。────私たちは〈ラタトスク〉。対話によって、精霊を殺さず空間震を解決して士道をサポートするために結成された組織よ」

 

「・・・・・・・は?」

 

士道は呆然としながら琴里を見る。

その組織とは何なのかとか、なぜ琴里がそんな所に所属にしているのかとか、気になるところはたくさんあったが───とにかく気にせねばならない事を口に出す。

 

「なんで、その組織が俺をサポートするの?」

 

「ていうか、前提が逆なのよ。そもそも〈ラタトスク〉っていうのは、士道のために作られた組織だから」

 

「・・・はぁ?」

 

士道は疑問の顔を浮かべると、わからないといった声を上げる。

 

「俺のため?なんで?わからないんだけど?」

 

「ええ。────まあ、士道を精霊との交渉役に据えて、精霊問題を解決しようって組織って言った方が正しいのかもしれないけれど。どちらにせよ、士道がいなかったら始まらない組織なのよ」

 

「へぇ、じゃあ此処にいる人って、全部そんなことのために集められたって事?ていうか、なんで俺?」

 

士道が問うと、琴里はキャンディを口の中で転がしながらうなった。

 

「んー、まあ、士道は特別なのよ」

 

「ふーん」

 

士道は自分が特別と言われても、興味がなさそうに言う。

しかし琴里は不敵に笑うと、肩をすくめる仕草をして見せてきた。

 

「まあ、理由はそのうちわかるわ。いいじゃない。私たちが、全人員、全技術を以て士道の行動を後押ししてあげるって言ってるのよ?それとも───また一人で何の用意もなく精霊とASTの間に立つつもり?死ぬわよ、今度こそ」

 

琴里が半眼を作り、冷淡な口調で言ってくる。

士道はそれに気にしてない様子で言う。

 

「で?その対話って何すんの?話あえばいいの?」

 

話合いなどクーデリアの領分だ。

戦うことしか出来ない自分には向かない。それを知った上で士道は言う。

 

琴里は士道の問いに小さく笑みを浮かべた。

 

「それはね」

 

そしてあごに手を置き、

 

「精霊に─────恋をさせるの」

 

ふふんと得意げに、そう言った。

 

「・・・・・は?」

 

士道は二度目の わからない発言で眉をひそめる。

 

「・・・ごめん。意味が分からないんだけど?」

 

「だから、精霊と仲良くお話ししてイチャイチャしてデートしてメロメロにさせるの」

 

さも当然のごとく言う琴里に、士道はわからないという顔で琴里に言う。

 

「で、その"でーと"ってやつでなんで空間震が解決するの?」

 

琴里は指を一本あごに当てながら「んー」と考えるような仕草を見せたあと、

 

「武力以外で空間震を解決しようとしたら、要は精霊を説得しなきゃならないわけでしょ?」

 

「うん」

 

「そのためにはまず、精霊に世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなに素晴らしいモノなんだー、ってわかれば、精霊だってむやみやたらに暴れたりしないでしょうし」

 

「そう言うことか」

 

「で、ほら、よく言うじゃない。恋をすると世界が美しく見えるって。───というわけでデートして、精霊をデレさせなさい!」

 

「分かった」

 

琴里の言った事に士道は即答した。

 

「はやっ!?」

 

琴里は士道の即答に驚くが、士道は気にしてないように言う。

 

「殺さなくていいんだったら、それでいいでしょ。俺は俺の邪魔をするやつは潰すだけだ。だったら手段なんて選んでられないでしょ」

 

士道はそう言って腕を伸ばす。

それにと士道は言う。

 

「琴里達が決めたんでしょ?だったら俺は俺にできる事をやるだけだ」

 

士道はそう言って琴里を見ると、琴里は満面の笑みを作った。

 

「────よろしい。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも一週間後。早速明日から訓練よ」

 

「・・・・?訓練・・・?」

 

士道はそう言って琴里を見たが、その顔は不敵な笑みを浮かべたままだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

そして、次の日。

 

「来て」

 

「ん?」

 

突然。

士道は折紙に手を掴まれ、不思議な声を発した。

 

「ねぇ、ちょっと何?」

 

ガタンと椅子を倒され、折紙に引っ張られて教室を出ていく。

後方では殿町がポカンと口を開け、女子の集団が何やらキャーキャーと騒いでいた。

士道は何だろうかと思いながらも、折紙についていく。

まあ、少なくとも自分は何も彼女にしていない。

四月十一日、火曜日。

士道があの不思議な体験をした次の日である。

結局あのあと士道は別室に移され、知らないやつに詳細な説明を深夜まで延々聞かされたあと、何かわからない紙に名前を書かされてからようやく家に帰された。

風呂も入らずにベッドに入り、気づけば朝である。

気だるい身体を動かしながら登校し、眠い眼を擦りながらなんとか授業に耐え、帰りのホームルームが終わった───と思った瞬間の出来事だった。

折紙は無言のまま階段を上り、しっかりと施錠された屋上への扉の前までやってきて、ようやくその手を離した。

下校する生徒たちの騒ぎが遠く聞こえる。

 

「で、何?」

 

彼女が何をするのか分からないが、士道は折紙を見て言う。

 

「昨日、なぜあんな所にいたの?」

 

士道の目をじっと見つめながら言った。

 

「・・・何の事?」

 

「───昨日、空間震の真ん中であなたを見た」

 

「ああ、あれか。でもなんでアンタがそんな事知ってんの?」

 

「言えない」

 

「あっそ」

 

彼女がそう言うと、士道は興味を無くしながら適当に答える。

 

「・・・で、結局何のようで此処に連れてきたの?野菜の世話しなきゃいけないから俺、帰るよ?」

 

士道はそう言って、彼女に背を向ける。

背を向けた士道に彼女は言う。

 

「昨日の事、忘れた方がいい」

 

それはきっと、あの精霊とか言う奴の事を言っているのだろう。

 

「・・・昨日の事?」

 

士道はそう言って折紙を見る。だが、折紙は無言で士道を見つめてくるだけだった。

 

「何で忘れた方がいいのか知らないけど、アンタには関係ないでしょ」

 

士道は短く答えて、階段を下りる。

すると後ろから彼女が言う。

 

「あれは、精霊」

 

折紙は短く答えた。

 

「私が倒さなければならないもの」

 

「あっそ」

 

士道はこれ以上聞く気はないのか、階段を下りていく。

すると微かに、折紙が唇を噛み締めた音がした。

 

「───私の両親は、五年前、精霊のせいで死んだ」

 

士道はその言葉に首だけを向け、折紙を見る。

 

「私のような人間は、もう増やしたくない」

 

折紙の言葉に士道は・・・

 

「アンタ・・・俺に何が言いたいの?死んだアンタの両親に失礼だよ」

 

士道はそう言って、階段を下りていった。

士道にとって自分のせいで他人を死なせてしまったというのは嫌いだった。

ソイツらには自分の考えがあってそうしたんだろう。

だったらいつまでもそうやって引っ張っていくのは死んだ奴等に失礼だ。

俺だって鉄華団の団員を全員守れたわけではない。

でも、アイツらはアイツらなりに生きたのだ。

だからそんな風に後悔なんてしてられない。それに死んだ奴には死んだ後でいつまでも会えるのだ。

悲しんでなんかいられない。

士道はイラつきながらも、帰宅する為に教室に戻っていった。




感想誤字報告おねがいします。



皆さんは他のオルフェンズキャラを出してほしいですか?それとも、三日月だけでいいですか?
良ければ書いてみて下さい。


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第六話

最新話投稿です。



「俺、格好いいか?」

「「ユ、ユージーン!!!」」

ユージン・セブンスターク

ダンテ・モグロ

チャド・チャダーン


士道が教室に戻る為に廊下を歩いていたとき。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁぁ─────ッ!!」

 

すぐ先の廊下の角から、女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

士道はそう呟いて角を曲がるとそこには数名の生徒が集まっているのが見えた。

そしてその中心に、白衣を着た女性が一人、うつぶせで倒れているのが確認できた。

 

「どうしたの?」

 

「し、新任の先生らしいんだけど・・・急に倒れて・・・・っ!」

 

呟くと、近くにいた女子生徒があたふたしながらそう返してきた。

 

「ふーん、よくわかんないけど、とにかく保健室に連れてけばいいんでしょ?」

 

士道はそう言って倒れた白衣の女性に近づくと、倒れていた白衣の女性ががしっ、と士道の足を掴んだ。

 

「・・・・ッ!」

 

「・・・心配はいらない。ただ転んでしまっただけだ」

 

言いながら、女は廊下にべったりつけていた顔面を、ゆらりと上げる。

 

「何でこんなとこにいんの?眠そうな人」

 

士道はそう言って自分の足を掴んだ女性を見る。

 

「・・・・・ん?ああ、君は───」

 

女────〈ラタトスク〉の解析官・村雨令音が、のろのろと身を起こす。

 

「何やってんの?アンタ?」

 

「・・・見てわからないかい?教員としてしばらく世話になることにしたんだ。ちなみに教科は物理、二年四組の副担任も兼任する」

 

白衣の胸につけていたネームプレートを示しながら、令音が言ってくる。

 

「あっそ、ならアンタが副担任ってことでいいんだね?」

 

士道はそう言って手を伸ばし、令音を立ち上がらせる。

 

「・・・ん、悪いね」

 

「別に、気にしてないよ」

 

士道はそう言い、この場から去ろうとすると、令音が言う。

 

「悪いが、君には少し用があるんだ。歩きながら話そう」

 

「俺、家に帰って野菜に水あげなきゃいけないんだけど?」

 

「それは気にしなくていい、〈ラタトスク〉の人員がやってくれるからね」

 

「ならいいけど」

 

士道はそう言って、令音の後をついていく。

 

「で、眠そうな人、結局用ってなに?」

 

「・・・・昨日琴里が言っていた強化訓練の準備が整った。君を探していたところだ。ちょうどいい、このまま物理準備室に向かおう」

 

「分かった。で、訓練って結局何するの?身体を鍛えればいいの?」

 

「・・・・うむ。琴里に聞いたが、シン、君は女の子と交際をしたことがないそうじゃないか」

 

「・・・?こうさいって何?」

 

令音は士道の言葉に少し目を見開け、驚いたような顔をする。

そして少しだけ驚いた声で言う。

 

「まさかそこからとは・・・別に責めているわけじゃない。身持ちが堅いのは大変結構なことだ。・・・だが、精霊を口説くとなるとそうも言っていられないんだ」

 

「ふーん」

 

士道は若干適当に言いながらも、令音の後をついていく。

と、職員室の近くを通ったときだったろうか、

 

「・・・・あれ?」

 

士道は、奇妙なものを目にして立ち止まった。

 

「・・・どうかしたのかね?」

 

「いや、あれ・・・・」

 

視線の先を、担任のタマちゃん先生が歩いていたのだが───その後ろに、どうも見覚えのある、髪を二つ結びにした小さい影があったのである。

 

「あ!」

 

士道の視線に気づいたのだろうか、小さい影───琴里が表情をパァッと明るくした。

 

「おにーちゃぁぁぁん!」

 

瞬間、琴里が、吸い込まれるように士道の腹に飛び込んでくる。

 

「・・・ん」

 

士道は琴里をうまく受け止め、琴里に言う。

 

「何で高校にいるの?琴里」

 

士道がそう言うと、琴里の後ろからタマちゃん先生が歩いてきた。

 

「あ、五河くん。妹さんが来てたから、今校内放送で呼ぼうとしてたんですよぅ」

 

「へー」

よく見ると、琴里は来賓用のスリッパを履き、中学の制服の胸に入校証をつけていた。

ちゃんとした手続きを踏んで学校に入ってきたらしい。

 

「おー、先生、ありがとー!」

 

「はぁい、どういたしましてぇ」

 

元気よく手をブンブンと振る琴里に、先生がにこやかに返す。

 

「やー、もうっ、可愛い妹さんですねぇ」

 

「うん・・・まぁ」

 

士道は若干戸惑いながら、曖昧な返事をした。

先生は琴里と笑顔で「バイバイ」と手を振り合うと、職員室の方に歩いていった。

 

「・・・で、琴里」

 

「んー、なーに?」

 

琴里が、まるっこい目を見開きながら首を傾げてくる。

 

「琴里・・・昨日のあれ、〈ラタトスク〉とか精霊とか、訓練とか────」

 

「その話はあとにしよーよ」

 

口調はいつもと変わらないままだったが、なぜか変な感じがして、黙りこむ。

と、士道の後方から、令音の静かな声が響いてくる。

 

「・・・早かったね、琴里」

 

「うん、途中で〈フラクシナス〉に拾ってもらったからねー」

 

自分では後にしよう、と言ったわりには、普通に艦の名を出している。

少し不条理なものを感じながら、士道はしかめ面をした。

琴里は能天気そうな笑顔でそれを見てから、士道を先導するように廊下を進み始める。

 

「それよりほら、おにーちゃん。早く行こ?」

 

言って、琴里が手を引いてくる。

 

「分かったから走るなって・・・」

 

今日はやけに引っ張られるなと呑気なことを士道が考えているうちに、二人は目的地に到達した。

東校舎四階、物理準備室。

 

「さ。入ろー、入ろー!」

 

琴里に促され、士道はスライド式のドアを滑らせた。

そしてすぐに眉間を寄せて目を細める。

 

「・・・ねぇ」

 

「・・・何かね?」

 

士道の言葉に、令音が小首を傾げる。

 

「何これ、この部屋」

 

物理準備室など、生徒がそう入る場所ではないし、実際、士道も中に入った事は一度だけだ。

だからこそ、はっきりと認識できる。

───ここは、違うと。

何しろ今士道の目の前には、いくつものコンピュータにディスプレイ、その他見たこともない様々な機械で埋め尽くされている。

前まではなかったモノだ。

 

「ねぇ、前にはこんなのなかったけど、なにこれ?それに前に此処にいた影が薄い人は?」

 

そう。元々は、初老の物理教師の長曽我部正一(影が薄い人)がいたはずだ。

その先生の姿や匂いが何処にもない。

 

「・・・ああ、彼か。うむ」

 

令音があごに手をやり、小さくうなずく。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・ねぇ」

 

士道は数秒間の間があった後、再び声をかけるが、令音がスルーし、言う。

 

「・・・まぁそこで立っていても仕方ない。入りたまえ」

 

「・・・あっそ」

 

士道はもう、詳しい事は聞かない事にした。

聞いてもよく分からないなら、聞く意味はないだろう。

士道はそう言って近くの椅子に座る。

その後に琴里が部屋に入っていく。

そして、慣れたような様子で白いリボンで括られた髪をほどくと、ポケットから取り出した黒いリボンで髪を結び直す。

 

「────ふぅ」

 

するといきなり、琴里の雰囲気が変わった気がした。

気だるげに制服の首もとを緩め、令音の近くの椅子に座る。

そして琴里は、持っていた鞄から小さなバインダーのようなものを取り出した。

中には綺麗に何時もの飴がいれてある。

その中の一つを選ぶと、口に入れて、入り口近くの椅子に座った士道を見て言った。

 

「さて、士道いまから始めるわよ」

 

「了解」

 

士道はそう言って琴里を見る。

士道の様子を見て、令音が足を組み替えながら首肯した。

 

「・・・君の真意はどうであれ、我々の作戦に乗る以上は、最低限クリアしておかねばならないことがある」

 

「何?」

 

「・・・単純な話さ。女性への対応に慣れておいてもらわなければならないんだ」

 

「・・・・?どういうこと?」

 

士道は眉をひそめて令音が言った事に質問する。

 

「・・・対象の警戒を解くため、ひいては好意を持たせるためには、まず会話が不可欠だ。大体の行動や台詞は指示を出せるが・・・やはり本人が緊張していては話にならない」

 

「そんなもんか?」

 

戦場での緊張は知っている士道ではあるが、ただ人と話すだけで緊張をするのだろうか。

士道はそう思いながらも呟く。

 

「まぁ、士道はそんな事には程遠いわよね」

 

琴里はそう言って士道を見る。

 

「鈍感、筋トレ馬鹿、野菜馬鹿、女の子と話すのを幾つか確認したけど、どれもこれも興味なさそうに話してるから逆に心配なのよね」

 

それにと、琴里が士道の頭を押し、ぎゅっと令音に押しつけた。

 

「・・・・ん?」

 

「・・・なにこれ?」

 

士道はそう言って、琴里を見る。

 

「ほら、これだから士道に出来るか逆に心配になってくるのよ・・・」

 

琴里は頭を押さえながらやれやれといった感じで首を振る。

 

「まっ、やるだけやってみるけどね・・・」

 

琴里はため息をつきながら言った。

 

「・・・じゃあ訓練を始めようか」

 

「うん」

 

士道はそう言って琴里達を見た。

その先が、琴里達にとって取り返しのつかない事になってしまうことをまだ知らないまま。

 




感想誤字報告よろしくです。
最近は少し短いですが、9月頃には長くなると思います。


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第七話

久しぶりの投稿です。
三日月っぽくなかったらすみません

今まで誰が敵とか味方とか、
あんま、考えたことなかった。
目の前に立ち塞がるやつらを
オルガの命令で倒してただけだから。
でも、ここから先は違う。
鉄華団を、邪魔するやつはみんな俺の敵だ。

三日月・オーガス


結果だけ言おう。

士道の鈍感と言うか、天然を矯正するのは失敗に終わった。

士道は琴里に言われた事を坦々とこなしていったが、全くもって効果がなかった。

三日月としての頃から女性の扱いに対して周りから言われた事をそのまま実行する事が多かった士道に、琴里の面白半分、冗談で言われたこともやろうとしていた為にこの一週間はほぼ無駄に終わった。

そんな事があり、琴里は士道に対して頭を抱えることとなっている。

ホームルームが終わり、士道は学校の畑で水をやっていると、

 

ウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

 

「っ!!」

 

何の前触れもなく、あたりに警報が響き渡る。

その警報とほぼ同時に士道は走りだした。

そしてすぐに、前に渡されたのでインカムという物から声が聞こえてくる。

 

『士道、空間震よ。一旦〈フラクシナス〉に移動するわ。戻りなさい』

 

「了解。で、場所は?」

 

士道が言うと、琴里は一拍置いてから続けてきた。

 

『出現予測地点は────"ここよ"』

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

時刻は、十七時二十分。

避難を始める生徒の目を避けながら、街の上空に浮遊している〈フラクシナス〉に移動した三人は、艦橋スクリーンに表示された様々な情報に視線を送っていた。

軍服に着替えた琴里と令音は、時折言葉を交わしながら意味ありげにうなずいていたが、士道にはさっぱりわからない。

唯一何とか理解できるのは───画面右側にあった自分の通っている高校を中心にした街の地図くらいである。

 

「なるほど、ね」

 

艦長席に座りチュッパチャプスを舐めながら、クルーと言葉を交わしていた琴里は、士道に言った。

 

「───士道」

 

「何?」

 

「心配だけど、早速働いてもらうわ。準備なさい」

 

「分かった」

 

琴里の言葉に簡潔に士道は言う。

 

「───もう彼を実戦登用するのですか、司令」

 

と、艦長席の隣に立っていた神無月が、スクリーンに目をやりながら不意に声を発した。

 

「相手は精霊。失敗はすなわち死を意味します。訓練は十分なのでしょげふっ」

 

言葉の途中で、神無月の鳩尾に琴里の拳がめり込む。

 

「そんなの分かってるわよ。でも、もうやるしかないじゃない。時間もないんだし」

 

琴里はなげやりに言いながらスクリーンを見る。

そして、キャンディの棒をピンと上向きにして言った。

 

「でも士道、あなたかなりラッキーよ」

 

「ん・・・・?」

 

琴里の視線を追うように、スクリーンに目を向ける。

やはり意味が分からない数字が躍っていたが───右側の地図に、先程と変わったところがあった。

士道の高校に赤いアイコンが一つ、そしてその周囲に、小さな黄色いアイコンがいくつも表示されていた。

 

「これは?」

 

「赤いのが精霊、黄色いのがASTよ」

 

「ふーん・・・・で、何がラッキーなの?」

 

「ASTを見て。さっきから動いてないでしょう?」

 

黄色いアイコンに視線を向けると、赤いアイコンを取り囲むように静止しているのが分かる。

 

「もしかして、建物の中にいるから外に出るのを待ってる?」

 

士道は状況をすぐさま判断して呟く。

琴里は士道のその判断に驚く。

 

「正解よ。そもそもCR-ユニットは、狭い屋内での戦闘を目的として作られたものじゃないのよ。いくら随意領域があるとはいっても、遮蔽物が多く、通路も狭い建造物の中では確実に機動力が落ちるし、視界も遮られてしまうわ」

 

言いながら、琴里がパチンと指を鳴らす。

それに応じるように、スクリーンに表示されていた画像が、実際の高校の映像に変わる。

校庭に浅いすり鉢状のくぼみが出来ており、その周りの道路や校舎の一部も綺麗に削り取られていた。

まさに先日の士道が見たのと同じ光景だった。

 

「校庭に出現後、半壊した校舎に入り込んだみたいね。こんなラッキー滅多にないわよ。ASTのちょっかいなしで精霊とコンタクトが取れるんだから」

 

「・・・ふーん」

 

理屈は分かった。

なら後はどうするか決まってる。

 

「なら、早く行こう。アイツらが動く前に」

 

「よろしい。カメラも一緒に送るから、困ったときはサインとして、インカムを二回小突いてちょうだい」

 

「分かった」

 

士道はそう言って艦橋のドアに足を向けた。

 

「士道」

 

すると後ろから琴里に声をかけられる。

 

「何?」

 

「グッドラック」

 

「うん」

 

ビッと親指を立てている琴里に士道は軽く頷いて、ドアの先へ向かう。

そして士道のその目にはただ強い意志があった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

〈フラクシナス〉下部に設えられている顕現装置を用いた転送機というものは、直線上に障害物さえなければ、一瞬で物質を転送、回収できるのはという代物らしい。

士道の視界が〈フラクシナス〉から、薄暗い高校の裏手に変わったのを確認してから、首を軽く回す。

 

「さてと、まずは校舎内に向かわないと・・・」

 

言って士道が振り返ると目の前にはある校舎の壁が、冗談のようにごっそりと削り取られており、内部を覗かせていた。

 

「じゃあ、探すか」

 

士道はそう言って校舎の中に入っていった。

あまりのんびりしていると精霊が外に出てしまうかもしれないし、それ以前に、士道がASTに見つかって『保護』 されてしまう可能性もある。

『さ、急ぎましょ。ナビするわ。精霊の反応はそこから階段を上がって三階、手前から四番目の教室よ』

 

「分かった」

 

士道はそう言って、近くの階段を駆け上がる。

そして一分もかからず、指定された教室の前まで辿り着く。

扉は開いておらず、中の様子は窺えなかったが、この中に精霊がいると確信できる。

教室のクラスを見ると────

 

「あれ?ここ、俺の教室じゃん」

 

『あら、そうなの。好都合じゃない。地の利とまでは言わないけど、まったく知らない場所よりよかったでしょ』

 

琴里はそう言うが実際、まだ進級してそう日が経っていないので、そこまで知っている訳でもない。

士道は普段入るような様子で扉を開けた。

夕日で赤く染められた教室の様子が、網膜に映り込んでくる。

 

「─────ッ」

 

士道は目を細めると、教室の中の様子が写しだされる。

前から四番目、窓側から二列目───ちょうど士道の机の上に、不思議なドレスのような服を身に纏った黒髪の少女が、片膝を立てるようにして座っていた。

幻想的な輝きを放つ目を物憂げな半眼にし、ぼうっと黒板を眺めている。

 

「───ぬ?」

 

少女が士道の侵入に気づき、目を完全に開いてこちらを見てくる。

 

「・・・ん?」

 

こちらを見てくる彼女に、士道はただ見つめ返す。

そして彼女が無造作に手を振るったかと思うと、士道の頬を掠めて一条の黒い光線が通り抜けていった。

そして一瞬のあと、士道が手を掛けていた教室の扉と、その後ろにある廊下の窓ガラスが盛大な音を立てて砕け散る。

士道は掠めた頬を指でこすって確認するが、血もついていなかったので、少女を見て呟く。

 

「・・・・アンタ・・・何のつもり?」

 

士道はそう言って彼女を見る。

本来であれば士道はこの場で殺しにかかるが、今回の仕事は彼女の保護だ。

なら殺したり、彼女から嫌われるような事はしてはいけない。

その事にめんどくさいなと思いながら、士道は言う。

 

「なぁ、俺はアンタの敵じゃないけど?」

 

士道の言葉が通じたのか、彼女は再び士道を見つめる。

 

「入るよ」

 

『ちょっと!?』

 

琴里を無視し、士道は扉がなくなった教室に入る。

 

「・・・・・」

 

そんな士道に、少女はじとーっとした目を向けていた。

一応攻撃はしてこないものの、その視線は猜疑と警戒が満ちている。

そんな彼女に士道は一歩教室に足を踏み入れると、

 

「───止まれ」

 

少女が凛とした声音を響かせると同時───ばじゅッ、

と士道の足元の床を光線が焼く。

士道は先の行動に足を止める。

 

「あのさ、さっきも言ったけど俺は敵じゃないけど?」

 

士道の言葉を無視し彼女が士道の頭頂から爪先までを舐めるように睨め回し、口を開いてくる。

 

「おまえは、何者だ」

 

「?・・・・俺?俺は五河士道だけど?」

 

士道はそう言って彼女を見る。

 

「・・・・・」

 

士道がそう言うと、少女は訝しげな目を作りながら士道の机から下りた。

 

「───そのままでいろ。おまえは今、私の攻撃可能圏内にいる」

 

「・・・・分かった」

 

士道は了解を示すように、姿勢を保ったまま言う。

少女が、ゆっくりとした足取りで士道の方に寄ってくる。

 

「・・・ん?」

 

そして軽く腰を折り、しばし間士道の顔を凝視してから「ぬ?」と眉を上げた。

 

「おまえ、前に一度会ったことがあるな・・・?」

 

「ああ・・・確か今月の───10日の街中で会ったよ」

 

「おお」

 

士道が思い出したかのように言うと、彼女は得心がいったように小さく手を打つと、姿勢を元に戻した。

 

「思い出したぞ。確かあの時におかしな事を言っていた奴だ」

 

「・・・?そんなおかしな事、言ったっけ?」

 

士道はそう言って頭をかく。

 

「それで、貴様、私を殺すつもりがないといったな?ならおまえは一体何をしに現れたのだ?」

 

「ん?それはアンタに会うためだよ」

 

「私に?一体何のために」

 

士道は彼女の予想外の問いにどう答えるか考えるが、すぐに話す為だと思い出し、言う。

 

「えっ?えーと、アンタと話す為?」

 

士道が言うと───少女は意味がわからないといった様子で眉をひそめた。

 

「・・・・どういう意味だ?」

 

「そのままだよ。俺は、アンタと話をしに来たんだ。別にアンタを否定したり、どうしようなんて思わないよ」

 

士道はそう言って彼女を見る。

 

「それに、アンタはオルガに会う前の俺に似てるからさ」

 

「・・・・・っ」

 

彼女は眉根を寄せると、士道から目を逸らす。

 

「・・・・シドー。シドーといったな」

 

「うん」

 

「本当に、おまえは私を否定しないのか?」

 

「しないよ」

 

「本当の本当か?」

 

「・・・じゃあこれ食べる?」

 

士道はそう言って、当たりだと分かったデーツを制服のポケットから出す。

当たりなので、あまり他の人に渡したくはないがそれでも分かってもらうためだから仕方ない。

 

「これは?」

 

「ん?デーツ。当たりだから気にしなくていいよ」

 

「───ふん」

 

少女はそう言って、複雑そうな表情で士道に手を出す。

士道は彼女にデーツを渡すと自分もポケットからデーツを取り出し口に入れる。

彼女は恐る恐るデーツを口に入れて咀嚼すると、顔を明るくして士道に言った。

 

「うまいな!シドー!」

 

「でしょ」

 

少女の言葉に士道は少し表情が和らぐ。

そして、そんな彼女に士道は再び言う。

 

「だからさ、少しだけ話そうか」

 

「そうだな・・・おまえにどんな腹があるかは知らんが、まともに会話をしようという人間は初めてだからか。・・・この世界の情報を得るために少しだけ話をしてやる」

 

彼女の改心に士道は頭をかきながら思った。

やっぱり話し合いは難しいなと。

ここから彼の物語は加速する。




感想、誤字報告よろしくお願いします。


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第八話

やべぇマキオン楽しい。バルバトス動かすの楽しい・・・
久しぶりの投稿なので三日月っぽくなかったらごめんなさい。
もうそろそろ、バルバトスが出でくるよー


─────────


大将っつうのはでっかく構えとくもんだろうが。
ノコノコ出て行くなんてみっともねぇまねは俺が許さねぇ!
テメェらもだ!!なんでもかんでもオルガに頼ってんじゃねぇぞ!

ユージン・セブンスターク


士道は自分と同じ教室にいる彼女の質問に答えていた。

 

「シドー」

 

「なに?」

 

「───早速聞くが。ここは一体なんだ?初めて見る場所だ」

 

言って、歩きながら倒れていない机をペタペタと触り回る。

 

「ああ・・・ここは学校って言って俺と同じくらいの奴と一緒に勉強する所。知りたい事とか教えてくれる」

 

「なんと」

 

少女は驚いたように目を丸くする。

 

「これに全て人間が収まるのか?冗談を抜かすな。四十近くはあるぞ」

 

「本当だよ」

 

言いながら、士道は頬をかく。

彼女が現れるときは、街には避難警報が発令されている。彼女が見たことのある人間など、ASTくらいのものだろう。人数もそこまでいないだろう。

 

「なあ───アンタ、名前ってあんの?」

 

「ぬ?」

 

士道の問いに彼女は眉をひそめてくる。

そしてしばらく考えを巡らせるようにあごに手を置いたあと、

 

「・・・・そうか、会話を交わす相手がいるのなら、必要なのだな」

 

そううなずいて、

 

「シドー。───おまえは、私を何と呼びたい」

 

手近にあった机に寄りかかりながら、そんなことを言ってきた。

 

「・・・・ん?」

 

彼女が言っている意味が分からず、目を細めて問い返す。

少女はふんと腕組みすると、尊大な調子で続けた。

 

「私に名をつけろ」

 

「・・・・・・は?」

 

士道は彼女が名前をつけろと言った事に困惑しながら言う。

 

「俺が、アンタに名前をつけるの?」

 

「ああ。どうせおまえ以外と会話する予定はない。問題あるまい」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「うっわ、これまたヘビーなの来たわね」

 

艦長席に腰掛けながら、琴里は頬をかいた。

 

「・・・ふむ、どうしたものかな」

 

艦橋下段で、令音がそれに応えるようにうなる。

艦橋にはサイレンが鳴っているものの、スクリーンが多過ぎて表示しきれないのだろう。

AIでランダムに名前を組むだけでは、パターンが多すぎて表示しきれないのだろう。

 

「士道、貴方ネーミングセンス最悪だから変な名前言うんじゃないわよ?」

 

「え、もう決めてるんだけど?」

 

インカムから士道の返答が返ってくる。

 

「へぇ、まぁ一応聞いて上げる。一体どんな名前にしたの?」

 

琴里の返答に士道はインカム越しで言う。

 

「十香」

 

士道の考えた名前に琴里は目を丸くしながら言った。

 

「士道にしては、まともなネーミングじゃない」

 

「別に。考えた理由も十日にあったから思いついただけだよ」

 

士道はそう言って琴里に言う。

そして琴里は士道に言った。

 

「じゃあ士道。その名前で言ってみて」

 

「分かった」

 

士道はそう言って目の前にいる彼女に言った。

 

「十香」

 

「ぬ?」

 

「どう?」

 

「・・・・・・・・」

 

少女はしばらく黙ったあと────

 

「まぁ、いいだろう」

 

少女の反応に士道は頭をかいた後、ポケットに手をいれる。

するとすぐにトン、トンと士道に近づいてくる。

 

「それで────トーカとは、どう書くのだ?」

 

「ん?ああ、それは───」

 

士道は黒板の方へと歩くと、チョークを手に取り片手で、『十香』と書いた。

 

「ふむ」

 

少女が小さくうなってから、士道の真似をするように指先で黒板をなぞる。

 

「コイツを使わないと字が書けないよ」

 

言って、言葉を止めた。

士道の視線には、彼女が指でなぞった後が綺麗に削り取られ、下手な字で『十香』の二文字が書かれていた。

 

「なんだ?」

 

「コイツを使わないと字が書けないって言ったけど、書けたならそれでいいや」

 

十香の問いに、士道はそう言ってチョークの粉がついた手を払うと、再びポケットに手を入れる。

 

「そうか」

 

十香はそう言うと、しばしの間自分の書いた文字をじっと見つめ、小さくうなずいた。

 

「シドー」

 

「なに?」

 

「十香」

 

「え?」

 

士道は十香の言葉に顔を向けて言うと、

 

「十香。私の名だ。素敵だろう?」

 

「あー、うん」

 

何とも言えない気分になりながら、士道はポケットのデーツを食べる。

だが、彼女───十香は、もう一度同じように唇を動かした。

 

「シドー」

 

・・・・さすがの士道でも、もう十香の意図は分かった。

 

「十香」

 

士道がその名前を呼ぶと、十香は満足そうに唇の端を上げ笑った。

 

「・・・・笑ったじゃん」

 

そういえば十香の笑顔を見るのは、これが初めてだった。

 

「む?」

 

十香は目を丸くしながら士道を見て言う。

 

「そうなのか?」

 

「うん」

 

「そうか・・・そうか・・・」

 

十香はそう言って士道を見て笑う。

 

「士道と会ったからかもしれないな」

 

「ん?」

 

と、そのとき、

突如、校舎を凄まじい爆音と震動が襲った。

咄嗟に教卓に手をついて体を支える。

 

「なんだ?」

 

『士道、床に伏せなさい』

 

と、インカム越しから右耳に琴里の声が響いてくる。

 

「っ!!」

 

士道は教卓を倒し、床に伏せた。

次の瞬間、ガガガガガガガガ───ッと、けたたましい音を立てて、教室の窓ガラスが一斉に割れ、ついでに向かいの壁にいくつもの銃痕が刻まれていく。

 

「チッ!!」

 

『外からの攻撃みたいね。精霊をいぶりだすためじゃないかしら。───ああ、それとも校舎ごと潰して、精霊が隠れる場所をなくすつもりかも』

 

「それはマズイな」

 

『今はウィザードの災害復興部隊がいるからね。すぐに直せるなら、一回くらい壊しちゃっても大丈夫ってことでしょ。───にしても予想外ね。こんな強攻策に出てくるなんて』

 

と、そこで、士道は顔を上げる。

十香が、先ほど士道に対していたときとはまるで違う表情をして、ボロボロになった窓の外に視線を放っていた。

無論、十香には銃弾はおろか、窓ガラスの破片すら触れていない。

だがその顔は、ひどく痛ましく歪んでいた。

 

「───十香、こっち」

 

「・・・・っ」

 

ハッとした様子で、十香が視線を、外から士道に移してくる。

未だに銃声が響いていたが、教室への攻撃は一旦止んでいた。

外に気を張りながらも身を起こす。と、十香が悲しげに目を伏せた。

 

「早く逃げろ、シドー。私と一緒にいては、同胞に討たれることになるぞ」

 

確かに逃げなければならないのだろう。だが────

 

『選択肢は二つよ。逃げるか、とどまるか』

 

琴里の声が聞こえてくる。

だが、士道の答えは決まっている。

 

「・・・・・べつに、慣れているから問題ないよ」

 

冷静にそして何ともないような声で、そう言った。

 

『馬鹿ね』

 

「・・・・なんとでも言えば?」

 

『褒めてるのよ。────素敵なアドバイスをあげる。死にたくなかったら、できるだけ精霊の近くにいなさい』

 

「わかった」

 

士道はそう言って十香の後ろに回る。

 

「は────?」

 

十香が、目を見開く。

 

「何をしている?早く───」

 

「知った事じゃないでしょ・・・今は俺との話をするんだろ?だったら気にしたって仕方ない。それに十香は、この世界の情報が欲しいんでしょ?俺に答えられることだったらなんでも答えるよ」

 

「・・・・!」

 

十香は一瞬驚いた顔を作ってから、士道の向かい合わせになった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「────────」

 

ワイヤリングスーツに身を包んだ折紙は、その両手に巨大なガトリング砲を握っていた。

照準をセットして引き金を引き、ありったけの弾を学舎にぶちまける。

テリトリーを展開させているため、重量も反動もほとんど感じないが、本来ならば戦艦に搭載されている類の大口径ガトリングである。

実際、四方から砲撃を受けた校舎は、みるみるうちに穴だらけになってその体積を減らしていった。

とはいえ────顕現装置搭載の対精霊装備ではない。

ただ単純に、校舎を破壊して精霊を燻り出すためのものだ。

 

『────どう?精霊は出てきた?』

 

ヘッドセットに内蔵されたインカム越しに、燎子の声が聞こえてくる。

燎子は折紙のすぐ隣にいるのだが────この銃声の中では肉声などが届かないのだ。

 

「まだ確認できない」

 

攻撃の手を止めないまま、答える。

折紙は自らも銃を撃ちながら、目を見開いて崩れゆく校舎をじっと見ていた。

通常であればまともに見取ることすらできない距離だったが、テリトリーを展開させた今の折紙には、校舎脇の掲示板に張られた紙の文字を読むことだって可能だった。

と────折紙は小さく目を細めた。

二年四組。折紙たちの教室。

その外壁が、折紙たちの攻撃によって完全に崩れ落ち───ターゲットである精霊の姿が見えたのだ。

だが─────

 

『・・・・ん?あれは────』

 

燎子が訝しげな声を上げた。

それはそうだろう。教室の中には、精霊の他に、もう一人少年と思しき人間が確認できたのである。────逃げ遅れた生徒だろうか。

 

「な、何あれ。精霊に襲われている────?」

 

燎子が眉をひそめながら声を発する。

だけれど折紙はそれに反応を示すことなく、教室をじっと見つめ続けた。

精霊と一緒にいる少年の姿に、みおぼえがある気がしたのである。

 

「─────!」

 

折紙は、目を見開いた。

なぜならその少年は────折紙のクラスメート・五河士道その人だったのだから。

 

「───折紙?」

 

隣から、燎子が怪訝そうに話かけてくる。

だが折紙は答えず、ただ頭の中に指令を巡らせた。

全身に纏った顕現装置への、最速機動の指令を。

 

「ちょっと、折紙!?」

 

『────危険です。独断専行は避けてください』

 

さすがの異常に気がついたのか、燎子と本部からの通信が、ほぼ同時に響く。

しかし折紙は止まらなかった。すぐさま両手に携えていたガトリングを捨て、腰に携えた近接戦闘用の大精霊レーザー・ブレード〈ノーペイン〉を引き抜き、校舎へと向かっていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

銃弾か吹き荒れる教室で、十香と向き合いながら話す。

十香の力なのだろうか、夥しい数の銃弾は、二人をさけるように校舎を貫通していく。

とはいえ目の前を弾が通り抜けるのは久しぶりだった。

それにその銃弾の嵐の中で話している内容自体は、なんてことのないものばかりだ。

十香が今まで誰にも聞けなかったようなことを質問し、自分が答える。ただそれだけの応酬で、十香は満足そうに笑った。

どれくらい話した頃だろうか───士道の耳に、琴里の声が聞こえてきた。

 

『────数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみてちょうだい。精霊の情報が欲しいわ』

 

言われて、少し考えてから士道は口を開く。

 

「十香」

 

「なんだ?」

 

「十香は、どこから来たの?」

 

「む?」

 

士道の質問に、十香は眉をひそめて言った。

 

「───知らん」

 

「知らないの?」

 

「ああ、仕方ないだろう。────どれくらい前だったか、私は急にそこに芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない」

 

「ふーん、そういうもんか」

 

士道はそう言うと、十香はふんと息を吐いて腕組みをした。

 

「そういうものだ。突然この世に生まれ、その瞬間にはもう空にメカメカ団が舞っていた」

 

「メカメカ団?」

 

「あのビュンビュンうるさい人間たちのことだ」

 

「ああ、アイツらか」

 

士道はASTのことだろうと思いながら言う。

と、次いでインカムから、軽快な電子音が鳴った。

 

『!チャンスよ、士道』

 

「は・・・・?何が?」

 

『精霊の機嫌メーターが七〇を超えたわ。一歩踏み込むなら今よ』

 

「踏み込むって・・・なにすればいいの?」

 

『んー、そうね。とりあえず・・・デートにでも誘ってみれば?』

 

「ああ、一緒に出かけるあれか」

 

士道はそう呟くと、十香が反応する。

 

「ん、どうしたシドー」

 

「あー、十香」

 

「ん、なんだ」

 

「今度、俺とさ」

 

「ん?」

 

「デートってやつやらない?」

 

十香はキョトンとした顔を作った。

 

「デェトとは一体なんだ?」

 

「良くわかんないけど、なんかどっかに出かける事みたい」

 

士道がそう言った瞬間。

 

『───士道!ASTが動いたわ!』

 

「ん?」

 

目前にいる十香にも聞こえているだろうが、士道は構わず声を発していた。

瞬間───いつの間にか解放感に溢れていた教室の外から、折紙が現れる。

 

「あれ?銀髪の人?」

 

「────っ!」

 

十香が一瞬のうちに表情を険しくし、そちらに手のひらを広げる。

それから一拍もしないうちに、手にした無骨な機械から光の刃を現出させた折紙が、十香に襲いかかった。

溶接現場のような火花が、辺り一面に飛び散る。

 

「く─────」

 

「────無粋!」

 

十香は一喝するように叫ぶと、光の刃を受け止めていた手を、折紙ごと振り払う。

 

「・・・・・・っ」

 

微かに歯を食い縛りながら、折紙が後方へ吹き飛ばされる。が、即座に姿勢を整えると、

銃痕だらけの床に着地してみせた。

 

「ち───また、貴様か」

 

光の刃を受け止めていた手を軽く振りながら、唾棄するように十香は言う。

折紙は士道を一瞥すると、安堵したかのように小さな息を吐いた。

しかしすぐに見慣れない武器を構え直し十香に冷たい視線を放つ。

 

「・・・・・」

 

その様子を見た十香は、ちらと士道を一瞥してから、自分の足下の床に踵を突き立てた。

 

「────〈鏖殺公〉!」

 

瞬間、教室の床が隆起し、そこから玉座が現れる。

 

「おー・・・凄いな」

 

士道は簡素な感想を言うと、耳から琴里の声が聞こえてくる。

 

『士道、離脱よ!一旦〈フラクシナス〉で拾うわ。できるだけ二人から離れなさい!』

 

「わかった」

 

士道がそう言った後、十香が玉座の背もたれから剣を抜き、折紙に向かって振るう。

その際の衝撃波が士道を襲うが、士道はそれを使って校舎の外へと飛び降りる。

 

『ナイスっ!』

 

琴里の声が響くと同時、士道の身体が浮遊感に包まれる。

宇宙にいた時の事を感じながら、士道は〈フラクシナス〉に回収された。




感想、誤字報告よろしくです!


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第九話

最新話を投稿。
後、一話か二話くらいでバルバトスが出せる!


コイツはそんなダセぇ名前じゃねえ!このシノ様の「流星号」だ!!

ノルバ・シノ


「・・・まあ、そうか。普通に考えても休みか」

 

士道が精霊に十香という名をつけた次の日。

朝一のランニングコースである校門前を通ると、そこにはピタリと閉じられた校門と、瓦礫の山と化した校舎を見て、そう呟く。

 

「・・・デーツ買って、帰るか」

 

そう言って、家への帰路とは違う道に足を向ける。

このまま帰るのもあれだし、デーツを買ってシャワーを浴びて野菜に水をやろう。

そう思いながら走っていたが、数分と待たずに士道は足を止める事になった。

道に、立ち入り禁止を示す看板が立っていたからだ。

 

「通行止めか・・・」

 

だがそんなものがなくても、その道を通行できないことは容易に知れた。

何しろアスファルトの地面は堀り返され、ブロック塀は崩れ、雑居ビルまで崩落している。これでは前を走ることすらできない。

 

「───あれ?ここは・・・?」

 

確かこの場所には見覚えがある。初めて十香に会った空間震現場の一角だった筈だ。

まだ復興部隊が処理をしていないのだろう。前の惨状を残したままの光景が広がっている。

 

「・・・遠回りするか」

 

士道がそう言って身体をひるがえしたその時。

 

「おい、シドー」

 

「ん?」

 

ふと、呼ばれた声がして士道は振り向く。

振り向いたその先───視界の奥に通行止めになっているエリアの向こう側からそんな声が響いてきて、士道は首を傾げた。

 

「その声・・・十香?」

 

士道はそう言って声が響いてきた方向に視線を向けた。

するとその先には────。

瓦礫の山の上に、明らかに町中に似つかわしくないドレスを纏った十香が、ちょこんと屈みこんでいた。

 

「何でこんなとこにいるの?」

 

士道はそう言うが、十香はトン、と瓦礫の山を蹴ると、かろうじて原形が残っているアスファルトの上を辿って士道の方へと進んできた。

 

「とう」

 

通行の邪魔だったのだろう、十香は立ち入り禁止の看板を蹴り倒し、士道の目の前に到着する。

 

「なにしてんの?十香?」

 

「・・・ぬ?何とはなんだ?」

 

「なんで、こんな所にいるのかって思ってさ」

 

士道は十香にそう言うが、当の本人は─────

 

「なんでと言われてもな」

 

その状態をまる気にしていない様子だった。

すると、十香から意外な言葉が出てきた。

 

「お前から誘ったのだろう、シドー。そう、デェトとやらに」

 

「・・・ああ」

 

士道は今まで忘れていたと言わんばかりの返事をして後頭部をかく。

 

「覚えてたの?」

 

「ぬ?なんだ、私を馬鹿にしているのか?」

 

「そういう訳じゃないけど?」

 

「───ふん、まあいい。それよりもシドー、早くデェトだ。デェトデェトデェト」

 

「わかったから、少し静かにして」

 

士道はそう言って、居心地の悪い視線の方へ顔を向ける。

近所の人がニヤニヤと笑いながら、微笑ましい目を向けて来てるのがとてもうざかった。

 

「・・・・ぬ?」

 

十香もその視線に気づいたらしい。士道の陰に身を隠すようにしながら目を鋭くする。

 

「・・・・・シドー、なんだあいつらは。敵か?殺すか?」

 

「・・・・やらなくていい。ほら目立つから、さっさと行くよ」

 

十香の言葉に若干鬱陶しがりながらも、士道は言って十香の手を引っ張り、歩きだした。

 

「ぬ。おい、シドー、どこへ行く!」

 

十香はそう言いながら、士道の歩くペースについていく。

士道は十香と一緒に、ひとけのない路地裏に入ると、息を吐く。

 

「やっと止まったか。まったくおかしな奴め、一体どうしたというんだ」

 

十香が半眼を作り、やれやれといった風情で言ってくる。

 

「アンタの格好が目立つからだよ」

 

「む?そうか?」

 

十香はさも意外といったように目を丸くした。

 

「私の霊装のどこがいけないのだ。これは我が鎧にして

領地。侮辱は許さんぞ」

 

「俺はいいけど、アンタの格好は目立ちすぎるよ。アンタの言うメカメカ団って奴に嗅ぎ付けられる」

 

「ぬ」

 

流石にそれは面倒と思ったのだろう。十香は嫌そうな顔を作る。

 

「では、どうしろというのだ」

 

「まあ、着替えるしかないと思うけど」

 

士道はそう言うが、正直言って今ここに女性用の服などないし、 店に連れて行くにしてもそこまでの行く道が大変だ。加えて、士道の財布もそこまでの金はない。

士道がそう思っていると、十香が焦れたように唇を開いてきた。

 

「どんな服ならばいいのだ?それだけ教えろ」

 

「え?あー・・・」

 

どんな、と言われてもすぐには出てこない。

と、そんなとき、視界の端を見慣れた制服姿が過ぎった。

 

「ん?」

 

眠そうな顔をした、見知らぬ女子生徒が道を歩いている。

恐らくだが、休校情報を聞き逃した生徒だろう。

 

「十香、あれ。あんな服だったら多分大丈夫」

 

「ぬ?」

 

十香が士道の示した方向に目をやり、顎に手を当てる。

 

「ふむ、なるほど。あれならばいいんだな」

 

言うと十香は、右手の人差し指と中指をピンと立てる。

そして指先に黒い光球を出現させ、女子生徒の方へ向ける。

 

「なにするつもり?」

 

士道はそう言って十香の手を引っ張り、射線をそらす。

瞬間、十香の指から光球が放たれ、女子生徒の髪を掠めて後方のブロック塀に当たった。

ゴッ、という鈍い音が響き、あたりに細かい破片が飛び散る。

 

「ひ・・・・っ!?」

 

突然の出来事に女子生徒が肩を震わせて、キョロキョロとあたりを見回した。

だが自分が寝惚けていたと判断したのか、不思議そうに首をひねって去っていった。

 

「何をする。外してしまったぞ」

 

「何をするじゃないよ。無関係の人を巻き込んじゃだめだ」

 

「なぜだ?」

 

「・・・アンタだって、メカメカ団に攻撃されたら嫌だろ。それと一緒だよ」

 

「・・・むう」

 

士道がそう言うと、十香は不服そうに唇を尖らせた。

士道の言うことが了承できないというより、年少組に言い聞かせるような士道の話し方に不満を持っているような調子だった。

 

「・・・・わかった。覚えておく」

 

そんな表情のまま、十香が首肯する。

続いて、十香は何か思い起こすように顔を軽く上げると、

 

「───仕方ない。では服は自前で何とかするか」

 

そう言って、指をパチンと鳴らす。

すると途端に十香が身に纏っていたドレスが、端から空気に溶け消えていく。

かと思うと、それと入れ替わるようにして周囲から光の粒子のようなものが十香の身体にまとわりつき、別の形を作っていった。

数秒のあと、そこには、先ほど道を歩いていた女子生徒と同じ、来禅高校の制服を着た十香が立っていた。

 

「おー・・・スゴいな」

 

「霊装を解除して、新しく服を拵えた。視認情報だけだから細部は異なっているかもしれないが、まあ問題ないだろう」

 

ふふんと腕組みし、十香が言ってくる。

 

「そんな事出来たんだ。」

 

士道がそんな簡素な感想を言うと、十香はわかったと言うように手をひらひらと振る。

 

「そんなことより、どこへ行くのだ?」

 

「ん?ああ、じゃあ買い物に行こうか」

 

士道はそう言って、歩き始める。

と、ほどなくして、十香が声を上げる。

 

「───シドー。歩みが速い。少し速度を緩めろ」

 

「・・・?ああ、ごめん」

 

指摘されて、士道は歩調を十香に合わせる。

そもそも歩幅が違うのだから、士道の方が先に進んでしまうのは仕方ない。

士道はそう思いながら横を歩く十香を見る。

そこにいるのは、剣の一振りで地を裂く怪物と呼ばれいる彼女ではなかった。

と、路地裏を抜け、様々な店が軒を連ねる大通りに出たところで、十香が眉をひそめてキョロキョロとあたりの様子を窺い始める。

 

「・・・・っ、な、なんだこの人間の数は。総力戦か!?」

 

先ほどまでとは桁違いの人と車の量に驚いたらしい。

十香が全方位に注意を払いながら忌々しげな声を上げる。

そんな十香に士道は面倒くさそうな顔でいう。

 

「だから違うよ。誰もアンタの命なんか狙ってないよ」

 

「・・・本当か?」

 

「うん」

 

士道がそう言うと、十香は油断なくあたりを見回しながらも、光球を消す。

と────不意に、警戒に染まっていた十香の顔が緩む。

 

「ん・・・?おいシドー。この香りはなんだ」

 

「・・・香り?」

 

十香に言われ、士道は周りの匂いを嗅いでみると、たしかに香ばしい香りがただよってくる。

 

「多分、あれだと思う」

 

「ほほう」

 

言って、右手にあったパン屋を指を指すと、十香は興味ありげにパン屋をじっと見つめた。

 

「・・・・・十香」

 

「ぬ、なんだ?」

 

「入る?」

 

「・・・・・・」

 

士道はそう言うと、十香のお腹が鳴る。

 

「シドーが入りたいのなら入ってやらんこともない」

 

「そう言うのが一番困るんだけど・・・じゃあ入るか」

 

「そうか、なら仕方ないな!」

 

十香はやたら元気よく言うと、大手を振ってパン屋の扉を開いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・・・」

 

塀の陰に隠れながら、パン屋の前で会話する男女をジッと見つめていた折紙は、表情を変えないまま細く息を吐いた。

登校するも休校だったため、仕方なく帰路についた折紙だったのだが、その途中、五河士道が、女子生徒と歩いているのを発見したのである。

それだけでも十分由々しき事態だ。"恋人らしく"、しっとりと尾行を開始した。

だが───もっと大きな問題があった。

その少女の顔を見たことがあったのである。

 

「───精霊」

 

小さく、呟く。

そう。怪物。異常。世界を殺す災厄。

折紙たちが討滅すべき人ならざる者が、制服を着て士道の隣を歩いていたのである。

 

「・・・・・・」

 

だが、冷静に考えればあり得ないことでもあった。

精霊が出現するときには、予兆として平時では考えられないレベルの前震が観測される。

それをASTの観測班が見逃すはずはない。だが、それならば昨日のように空間震警報がなっているはずであるし、折紙にも伝令が走っているはずなのだ。

折紙は鞄から携帯電話を取り出し、開いてみた。何の連絡も入っていない。

だとしたら、やはりあの少女は精霊などではなく、他人の空似だろうか。

「・・・・そんなはずはない」

 

静かに唇を動かす。自分が、精霊の顔を見間違えるはずがなかった。

 

「・・・・・」

 

折紙は開いたままのスマートフォンを携帯電話のモードへ変換し、電話帳から番号を選択して電話をかけた。そして────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「あ、令音ー。それいらないならちょーだい」

 

「・・・・ん、構わんよ。持っていきたまえ」

 

琴里がフォークを伸ばして、令音の前に置いてあった皿のラズベリーを突き刺した。そのまま口に運び、甘酸っぱい味を堪能する。

 

「んー、おーいし。なんで令音はこれ駄目なんだろうねー」

 

「・・・すっぱいじゃないか」

 

言って、令音は砂糖がたっぷり入ったアップルティーを一口すする。

今二人がいるのは、天宮大通りのカフェだった。

琴里は中学校の制服、令音は淡色のカットソーにデニム生地のボトムスという格好をしていた。

いつも通り中学校に登校した琴里だったのだが、昨日の空間震の余波で琴里の中学校も多少被害が出たらしく、休校になっていたのだ。

兄である士道がランニングから帰って来なかったのは、これが理由かと思いながらも、そのまま帰るのも癪だったので、電話で令音を呼び出し、おやつタイムを楽しんでいたのである。

 

「・・・・そうだ、ちょうどいい機会だから聞いておこう」

 

と、令音が思い出したように口を開いた。

 

「なーに?」

 

「・・・初歩的なことで悪いのだがね、琴里、なぜ彼が精霊との交渉役に選ばれたんだい?」

 

「んー」

 

令音の問いに、琴里は眉根を寄せる。

 

「誰にも言わない?」

 

「・・・約束しよう」

 

低い声音のまま、令音はうなずく。

琴里はそれを確認してから首肯し返した。

彼女は口にしたことは守る女である。

 

「実は私とおにーちゃんって血が繋がってないの」

 

「・・・ほう」

 

面白がるでも驚くでもなく、令音が小さく首を傾げる。

ただ速やかに琴里の言葉を理解して「それと今の話に何の関連が?」と訪ねてくるかのような調子だった。

 

「だから私は令音のこと好きなんだよねー」

 

「・・・・?」

 

令音が、不思議そうな顔を作る。

 

「気にしなーい。・・・で、続きだけど。何歳の頃って言ったかな、それこそ私がよく覚えてないくらいの時に、おにーちゃん、本当のお母さんに捨てられてうちに引きとられたらしいんだ。私は物心つく前だったからあまり覚えてないけどさ、その時のおにーちゃん、何も気にしてなかったんだ。本当に捨てられたことも気にしてないみたいに」

 

「・・・・・・」

 

なぜだろうか、令音がピクリと眉を動かした。

 

「どしたの?」

 

「・・・いや、続けてくれ」

 

「ん。それでねーそんなおにーちゃんに私ね聞いてみたの。悲しくないのって」

 

琴里は一度話を区切り、ジュースを口にすする。

そして再び言った。

「そしたらね、その答えが『別に気にしてないよ。俺には帰る場所があるから。それに死ぬまで生きてオルガの命令を果たさないといけないから』って言って気にしてなかったんだよねー」

 

「オルガ?それは誰だい?」

 

令音は琴里に聞いて見るが、琴里は首を横に振って答える。

 

「わかんなーい。聞いても、あんまり教えてくれないし。ただ、おにーちゃんの命の恩人っていうくらいしか知らない」

 

琴里がそう言うと、令音は「・・・なるほど」と目を伏せた。

 

「・・・だが、私が聞きたいのはそういう心情的な理由ではないね」

 

「・・・・・・・」

 

令音の言葉に、琴里はピクリと眉を動かす。

 

「っていうと?」

 

「・・・・とぼけてもらっては困る。君が知らないとは思えない。───彼は一体"何者"だね」

 

令音は〈ラタトスク〉最高の解析官である。特注の顕現装置を用い、物質の組成は当然として、体温の分布や脳波を計測して、人の感情の機微さえもおおよそ見取ってしまう。

────その人間に隠された能力や特性すら。

琴里はふうと息を吐く。

 

「ま、令音におにーちゃんを預けた時点でこうなるのは大体わかってたけどねー」

 

「・・・ああ、悪いが、少し解析させてもらったよ。それで気になる事があったのでね」

 

「気になること?」

 

「ああ、それは────」

 

令音が言おとした瞬間にカランカラン、という扉の音と、「いらっしゃいませー」という店員の声を聞きながら、琴里は肩をすくめた。

そして手元のコップにささっていたストローをくわえ、残っていたブルーベリージュースを一気に吸い込む。

と─────

 

「ぶふぅぅぅぅぅぅぅッ!?」

 

今店に入ってきたと思しきカップルが琴里の視界に入ると、口の中に入っていたジュースを勢いよく吹き出した。

 

「・・・・」

 

どうやらカップルには気づかれなかったようだが、琴里の目の前にいた令音はその被害をモロに受けていた。

要はびしょ濡れである。

 

「ごめっ、令音・・・・」

 

「ん・・・・・」

 

声をひそめて琴里が謝ると、令音は何事もなかったかのように、ポケットから出したハンカチで顔を拭っていた。

 

「・・・何かあったのかね、琴里」

 

「ん・・・ちょっと非現実的なものを見た気がして」

 

「・・・なんだね?」

 

令音の問いに答えるように、琴里は無言で、令音の後ろを指をさした。

 

「・・・・?」

 

令音は首を回し、ピタリと動きを止めた。

そして数秒あと、ゆっくりと首をもとの位置に戻し、アップルティーを口に含んだ。

それから琴里に紅茶を吹き出す。

 

「・・・なまらびっくり」

 

なぜか方言だった。令音なりに動揺しているのかもしれない。

それはそうだろう。何しろ彼女の後ろから二つ程離れた席には、琴里の兄・五河士道が女の子を連れて座っているのだから。

しかもこれだけではなかった。

その女の子は───琴里たち災厄と、精霊と呼ぶ、あの少女だったからだ。

 

「えええ・・・なにこれぇ」

 

琴里は令音から手渡されたハンカチで顔を拭きながら、押し殺した声を発した。

ポケットから電話を探り見るが、〈ラタトスク〉からの連絡は入っていない。

要は、精霊が出現する際の空間の揺らぎは感知されていないということだ。

だが、あれは確かに精霊・十香だった。あんな美しい少女が何人もいてたまるものか。

 

「精霊には、私たちに感知されずに現界する方法があるってこと?」

 

「・・・ただのそっくりさんという可能性は?」

 

令音の言葉に、琴里はしばし考えを巡らせた。

だがすぐに、首を横に振る。

 

「もしそうだとしたら、おにーちゃんが普通の女の子連れてるってことになるぞー。それにあんなダサい格好しているのに、普通の女の子を連れてるなんて思えないかなー」

 

「・・・なるほど」

 

士道に対してかなり酷い台詞に令音は首肯した。

なんせ、士道の今の格好は長いカーキ色のズボンに、タンクトップ、そしてその上からブカブカな緑のジャケットという姿だ。そんな格好の奴についてくるには思えない。

 

「・・・だが仮に精霊だとすると、シン一人で精霊を対応できるだろうか」

 

「んー・・・」

 

琴里はふうとそんな二人の様子を見て────

司令官モードへとトランスフォームする。

そして────

 

「・・・ああ、私よ。緊急事態が発生したわ。───作戦コードF-08オペレーション『天宮の休日』を発令。至急持ち場につきなさい」

 

「やる気かね、琴里」

 

「ええ。この状況だもの。仕方ないわ」

 

「・・・そうか。この状況からだと───ルートCというところか。・・・ふむ、では私も動くとしよう。早めに店に交渉してくるよ」

 

「お願い」

 

言って琴里はポケットからチュッパチャプスを取り出し、口にくわえた。




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第十話

遅くなりましたが、投稿です。
久しぶりですので三日月ぽくなかったらごめんなさい。
次、バルバトスがやっと出せる!!


─────────────────



んんっ、ふんっ!はぁ…。
ああっ?なんでそんなに鍛えてんのかって?
愚問だろ。いざってときに大切なものを守れなかったら…
あっ、いや、筋肉に意識を集中させてりゃ、
余計なこと考えねぇで済むからな。ふんっ!

昭弘・アルトランド




士道は手にした伝票を持って立ち上がり、十香に言った。

 

「行くよ、十香」

 

「ん、もうか?」

 

十香は目を丸くしながら言う。

士道がレジに歩いていくと、十香もそれについてくる。

周囲の客にも、そこまで刺々しい敵意は放っていない。

この街に慣れたようだった。

士道はレジに伝票と、有り金のほとんどの紙幣を置く。

 

「ん、会計済ましたいんだけど」

 

言ってレジに立っていた店員に声をかけ───

 

「何やってるの?眠そうな人」

 

さほど驚いた様子もなく、士道は見覚えのある店員に言った。

 

「ん?どうしたシドー?」

 

十香は不思議そうに顔を向けてくる。

 

「いや、知ってる奴がいたから」

 

士道はそう言って制服を着た令音を見る。

 

「・・・こちら、お釣りとレシートでございます」

 

士道が振り向いている間に、手早く会計を済ませた令音が、紙面をトントンと叩きながらレシートを渡してくる。

 

「ん?」

 

そのレシートの下の方に、『サポートする。自然にデートを続けたまえ』という文字が書かれていたからだ。

 

「ふーん」

 

士道はそう言ってレシートをジャケットのポケットに捩じ込んで十香と一緒に出ていった。

なんだかんだあったが、士道達のデートはうまくいっていた。

色々な物に興味を持ちながら好奇心旺盛に、士道を連れて回る十香と、それについていく親のように歩く士道はまさに他人から見れば、仲がいい二人だと思うだろう。

そしてそのデートも最終局面にまで近づいていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

時刻は十八時。

天宮駅前のビル群に、オレンジ色の夕日が染み渡る。

そんな最高の絶景を一望できる高台の小さな公園を、少年と少女が二人、歩いていた。

少年の方はさほど問題ない。年齢的に普通の高校生だ。

しかし、少女の方は───

 

「・・・・ふう」

 

日下部燎子は目を細めながら唇を舐めた。

 

「存在一致率九十八・五パーセント。さすがに偶然とかで説明できるレベルじゃないか」

 

精霊。

世界を殺す災厄。

三十年前にこの地を焦土とし、五年前には大火を呼んだ最凶最悪の疫病神と同種の少女。

 

「・・・・・」

 

しかし今燎子の網膜に映るその姿は、ただ可愛い女の子だった。

 

「狙撃許可は」

 

と、静かな───逆に言えば、底冷えするような音声が、燎子の背に投げられた。

振り向くまでもない。折紙である。

燎子と同じくワイヤリングスーツにスラスターユニットを装備し、右手に自分の身長よりも長い対精霊ライフル〈クライ・クライ・クライ〉を携えている。

 

「・・・出てないわ。待機してろってさ。まだ、お偉方が協議中なんでしょ」

 

「そう」

 

安堵した様子も、落胆した様子もなく、折紙がうなずく。

今精霊がいる公園の一キロ圏内には、燎子たちAST要員が十人、二人一組の五班に分かれて待機していた。

二人がいるのもそのポイントのうちの一つである。

公園よりもさらに都市部から離れた、宅地開発中の台地だ。昼間はトラックやクレーンなどの作業車が列を作っているものの、この時間になれば静かなものだった。

数時間前、折紙が発見した少女に精霊の判定が出てからすぐにCRーユニットの起動許可が降りた。

だが、まだ防衛大臣やら幕僚長やらは、対応を協議しているらしい。

要は、攻撃を仕掛けるか、否か、である。

空間震を観測できない現界だったため、空間震警報はなっていない。

つまり住人は誰一人として避難しておらず、今精霊が暴れ出しでもしたら、深刻な被害が出てしまうのである。

かといって、今警報を鳴らして精霊を刺激してしまうのも上手くない。なんとも嫌な状況だった。

 

だが───

 

「これは好機」

 

折紙は、いつものごとく温度のない口調で唱えた。

確かに折紙の言うとおり、これはチャンスでもあった。

なぜなら今、精霊はその身に霊装を顕現させていない。

燎子たちのテリトリーと同じように、精霊を最強で究極で無敵の生命体たらしめている外殻を、纏っていない。

今ならば、こちらの攻撃が届く可能性は十分にあった。

ただしそれもあくまで可能性にすぎないうえ、確実に一撃で致命傷を与えなければならない。折紙が、平常装備に含まれない対精霊ライフルを携えている理由がそれだった。

使用者が悲鳴を上げ、弾道が軋み、目標が断末魔の声を上げる。

ゆえに〈C・C・C〉。

テリトリーを展開させていなければ、反動で狙撃手の腕の骨が折れてしまう、頭のおかしい銃である。

だが燎子は、その銃を使うような事態になるとは思っていなかった。

 

「・・・頭ん中日和ってるお偉方が、この状況で攻撃許可出すかしらねえ」

 

「出してもらわなければ困る」

 

燎子が言うと、ノーウェイトで折紙がそう返してくる。

 

「・・・ま、現場としちゃそうなんだけどさ。攻撃許可を出したけど一撃で仕留めきれなくて精霊が暴れ出しました、ってのと、精霊が勝手に暴れたけど、現界していたなんて知りませんでしたー、ってのだと、責任問題になったときに随分意味合いが違ってくるのよ」

 

「そんな理由で決められては困る」

 

「そうは言っても、十把人絡げの人命より自分の地位が大事なお方が多いからねぇ」

 

言って、肩をすくめる。

折紙の表情は微動にしなかったが、何となく憮然としているような気がした。

と───そこで、燎子の耳にノイズ混じりの音声が届いてきた。

燎子は鼓膜に伝わった情報に、目を丸くした。

 

「──了解」

 

そうとだけ言って、通信を終了する。

 

「・・・驚いた。狙撃許可が下りたわ」

 

正直、少し意外だった。間違いなく待機命令が出ると踏んでいたのだ。

否────そういえば、昨日の校舎への攻撃命令も、今までではあまり考えられない強行策だった。

上層部で人事異動でもあったのだろうか。

まあ、燎子は自分の仕事をするだけだ。具体的に言えば今は───ここにいる中でもっとも作戦の成功率が高いであろう隊員に、引き金を預けることである。

 

「───折紙、あんたが撃ちなさい。今いる面子の中では、あんたが一番適任よ。失敗は許されないわ。絶対に一撃で仕留めること」

 

その言葉に。

 

「了解」

 

折紙はやはり何の感慨も浮かべぬまま答えた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

夕日に染まっていた高台の公園には今、士道と十香以外の人影は見受けられなかった。

時折遠くから自動車の音や、カラスの鳴き声が聞こえてくるだけの、静かな空間。

 

「おお、絶景だな!」

 

十香は先ほどから、落下防止用の柵から身を乗り出しながら、黄昏色の天宮の街並みを眺めている。

日が傾けたこの公園はかつて見た地球の夕日を思い浮かべた。

すると十香が遠くに走る電車を指をさして、目を輝かせながら士道に言ってくる。

 

「シドー!あれはどう変形するのだ!?」

 

「電車は変形しないよ」

 

「何、合体タイプか?」

 

「・・・まあ、合体はするけど」

 

「おお」

 

十香ら妙に納得した調子でうなずくと、くるりと身体を回転させ、手すりに体重を預けながら士道に向き直った。

夕焼けを背景に佇む十香は、それは綺麗でまるで一枚の絵みたいだった。

 

「───それにしても」

 

十香が話題を変えるように、んー、と伸びをした。

そして、にぃッ、と屈託のない笑みを浮かべてくる。

 

「いいものだな、デェトというのは。実にその、なんだ、楽しい」

 

「そっか。良かった」

 

士道はそう言って十香の横に並ぶ。

そして、夕日を見ながら十香に言った。

 

「───どうだった?街の人はアンタを殺そうとする奴はいなかったでしょ?」

 

「・・・ん、皆優しかった。正直に言えば、まだ信じられないくらいに」

 

「ん・・・?」

 

士道はそう言って首を十香に向けると、十香は自嘲気味に苦笑した。

 

「あんなにも多くの人間が、私を拒絶しないなんて。私を否定しないなんて。───あのメカメカ団・・・ええと、なんといったか・・・」

 

「ASTのこと?」

 

「そう、それだ。街の人間全てが奴らの手の者で、私を欺こうとしていたと言われた方が真実味がある」

 

「じゃあさ、俺もアンタにとってはASTの仲間ってことになるの?」

 

士道がそう言うと、十香はぶんぶんと首を振った。

 

「いや、シドーはあれだ。きっと親兄弟を人質に取られて脅されているのだ」

 

「なにそれ?」

 

「・・・おまえが敵とか、そんなのは考えさせるな」

 

「ん・・・何?」

 

「なんでもない」

 

士道は上手く聞き取れず十香に言うと、はぐらかすように言って、顔を背けた。

表情を無理矢理変えるように、手で顔をごしごしとこすってから、視線を戻してくる。

 

「───でも本当に、今日はそれくらい、有意義な一日だった。世界がこんなに優しいだなんて、こんなに楽しいだなんて、こんなに綺麗だなんて・・・思いもしなかった」

 

「良かったね」

 

士道はそう言って十香を見た。

だがその十香は、そんな士道に反するように、眉を八の字に歪めて苦笑を浮かべた。

 

「あいつら───ASTとやらの考えも、少しだけわかったしな」

 

「わかったの?」

 

士道がそう言うと、十香が少し悲しそうな顔を作った。

 

「私は・・・いつも現界するたびに、こんなにも素晴らしいものを壊していたんだな」

 

その言葉を聞いて十香に士道は言った。

 

「でも、それはアンタの意思とは関係ないんだろ?」

 

「・・・ん。現界も、その際の現象も、私にはどうにもならない」

 

「ふーん」

 

「だがこの世界の住人たちにしてみれば、破壊という結果は変わらない。ASTが私を殺そうとする道理が、ようやく・・・知れた」

 

十香は悲痛な顔を作り、そして言った。

 

「シドー。やはり私は───いない方がいいな」

 

言って───十香が笑う。

 

「アンタはそれでいいの?」

 

士道はそう十香に言って目を合わせる。

 

「え・・・?」

 

「今日は、その空間震は起きてなかったじゃん。きっとなんか違いがあるんじゃないの?」

 

十香は首をゆっくりと振った。

 

「たとえその方法が確立したとしても、不定期に存在がこちらに固着するのは止められない。現界の数は減らないだろう」

 

「じゃあ、帰らなかったらいいじゃん」

 

士道はそう言うと、十香は顔を上げて目を見開いた。

まるでその考えをまったく持ってなかったというように。

 

「そんなことが───可能なはずは・・・」

 

「やったの?」

 

「・・・・・」

 

十香が唇を結んで黙りこむ。

 

「で、でも、あれだぞ。私は知らないことが多すぎるぞ?」

 

「最初は誰でも一緒でしょ」

 

「寝床や、食べるものだって必要になる」

 

「アテがあるから大丈夫だと思うよ」

 

「予想外の事態が起こるかもしれない」

 

「別に慣れてるからいいよ」

 

十香は少しの間黙りこんでから、小さく唇を開いてきた。

 

「・・・本当に、私は生きていもいいのか?」

 

十香の問いに士道はいつかクーデリアに言った言葉を言った。

 

「これは・・・アンタが決めることだよ」

 

「え・・・?」

 

「どっちにしろ、アンタが精霊ならそのASTに狙われるんだ。今までの事で分かってるだろ」

 

「それは・・・」

 

「これは、多分俺が最初に人を殺した時と同じ十香のこれからの全部を決めるような決断だ。だからこれは十香が自分で決めなくちゃいけないんだ」

 

「この世界にいてもいいのか?」

 

「それもアンタ自身が決める事だよ」

 

士道はそう言ってオルガと始めてあった時のように手を出す。

 

「俺と一緒に行ってみない?俺達の本当の居場所に」

 

十香は顔をうつむかせ、数瞬の間思案するように沈黙したあと、ゆっくりと顔を上げ、そろそろと手を伸ばしてきた。

 

「シドー───」

 

と、

 

士道と十香の手と手が触れ合おうとした瞬間。

 

「───────ッ!!」

 

途方もない嫌な予感がして、十香を突き飛ばした。

その瞬間。

自分の腹の間に凄まじい衝撃を感じた。

 

「な───なにをする!」

 

砂まみれに十香が、非難の声を上げるが、それに返すことも出来ない。

 

「──シドー?」

 

視界が暗転する。

自分はこれを知っている。

士道は三日月・オーガスはそう思いながら意識を失った。




感想誤字報告よろしくです。


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第十一話 鉄と血と

つい、調子に乗って書き上げました。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。
今回はオルガが特殊な感じで登場します。ではどうぞ!


オルガが止まらない限り、俺も止まらない。
これまでも、これからも。

三日月・オーガス





「あ────」

 

折紙はテリトリーで強化された視力で吹き飛ばされた士道の影を見ながら、自分ののどからそんな声が漏れるのを聞いた。

宅地開発のために平らに整備された地面に腹ばいになり、対精霊ライフル〈C・C・C〉を構えた状態のまま、数瞬の間身体を硬直させる。

数秒前。

折紙は〈C・C・C〉の顕現装置を起動させると、装填された特殊弾頭に攻性結界を付与させ、完璧に狙いを定めてから引き金を引いた。

外れる要素は微塵もなかった。

───士道が、精霊を突き飛ばさなければ。

折紙の放った弾は────精霊の代わりに士道の身体を、綺麗に削り取った。

 

「────」

 

今度は、声すら出なかった。

指が、引き金を引いた指が、微細に震えているのがわかる。

だって、今、自分は、士道を───

 

「───折紙ッ!」

 

「────っ」

 

燎子の声で我に返る。

 

「悔いるのはあとにしなさい!あとで死ぬほど責めるから!今は────」

 

言って燎子が、戦慄した様子で公園を睨んだ。

 

「生き延びることだけ、考えなさい・・・ッ!」

 

 

 

「シドー・・・・・?」

 

名を呼ぶが、返事はない。

それはそうだ。士道の胸には、十香の手のひらを広げたよりも大きな穴が空いている。

頭が混乱して、意味がわからない。

 

「シ───、ドー」

 

十香は士道の頭の隣に膝を折ると、その頬をつつく。

反応は、ない。

つい先程まで、十香に差し伸べられていた手は、一部の隙間もなく血に濡れていた。

 

「う、ぁ、あ、あ────」

 

数秒のあと、頭が状況を理解し始める。

・・・・あたりに立ち込める焦げ臭さには覚えがあった。

いつも十香を殺そうと襲ってくるあの一団───ASTのものだ。

研ぎ澄まされた一撃。おそらく───あの女。

如何に十香とはいえ、霊装を纏っていない状態であれを受けたなら、無事では済まなかっただろう。

ましてなんの防護も持たない士道がそんな攻撃を受けてしまったなら。

 

「────」

 

十香は途方もない目眩を感じながらも、未だ空を眺める士道の目に手を置き、ゆっくりと瞼を閉じさせてやった。

そして着ていた制服の上着を脱ぐと、優しく士道の亡骸にかける。

 

───ああ、ああ。

 

駄目だった。やはり、駄目だった。

一瞬───十香は、この世界で生きられるかもしれないと思った。

士道がいてくれたなら、なんとかなるのかもしれないと思った。

すごく大変で難しいだろうけど、できるかもしれないと思った。

だけれど。

ああ、だけれども。

やはり、"駄目"だった。

この世界は────やはり十香を否定した。

それも、考える限り、最低最悪の手段を以て───ッ!

 

「──〈神威霊装・十番〉・・・ッ」

 

喉の奥から、その名を絞り出す、霊装。絶対にして最強の、十香の"領地"。

瞬間、世界が悲鳴を上げた。

周囲の景色がぐにゃりと歪み、十香の身体に絡みついて、荘厳なる霊装の形を取る。

そして光り輝く膜がその内部やスカートを彩り───災厄は、降臨した。

ぎしぎし、ぎしぎしと。

空が、軋む。

突然霊装を顕現させた十香に、不満をさえずるように。

十香は、視線を少し下げた。

山が削り取られたかのように平らになった高台に、今士道を撃った人間がいる。

"殺すに足りてしまった"人間が、いる。

十香は地面に踵を突き立てた。

瞬間、そこから巨大な剣が収められた玉座が現出する。

十香はトン、と地を蹴ると、玉座の肘掛けに足をかけ、背もたれから剣を引き抜いた。

そして。

 

「ああ」

 

 

のどを震わせる。

 

 

「ああああああああああああ」

 

 

天に響くように。

 

 

「ああああああああああああああああ────ッ!!」

 

 

地に轟くように。

自分の頭を麻痺させ、自我を摩滅させるような感覚。

 

「よくも」

 

目が、湿る。

 

「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも」

 

十香は剣を握る手に力を込めると、視線の先まで"距離を殺した"。

 

「な───ッ!?」

 

「─────」

 

瞬きほどの間も置かず、十香今し方見ていた高台に移動していた。

目前には、驚愕に目を見開く女と、無味な表情の少女がいる。

憎い、憎いその顔を見ると同時、十香は吠えた。

 

「〈鏖殺公〉───【最後の剣】!!」

 

刹那、十香が足を置いていた玉座に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。

そして玉座の破片が十香の握った剣にまとわりつき、そのシルエットをさらに大きなものに変えていく。

全長十メートル以上はあろうかという、長大過ぎる剣。

しかし十香はそれを軽々と振りかぶると、二人の女に向かって振り下ろした。

刀身の光が一層強いものになり、一瞬にして太刀筋の延長線上である地面を這っていく。

次の瞬間、凄まじい爆発があたりを襲った。

 

「な・・・・ッ!」

 

「─────く」

 

すんでのところで左右に逃れた二人が、戦慄に染まった声を上げる。

それはそうだろう。十香はただの一撃で、大地を縦に両断していたのだから。

 

「この・・・ッ、化け物め───!」

 

長身の女が叫び、無骨な剣のようなものを振るって十香に攻撃を仕掛けてくるが、そんなもの、霊装を纏った十香に通じるはずもない。

視線をそちらに向けるだけで、その攻撃を霧散させる。

 

「───嘘」

 

女の顔が、絶望に染まる。

だが十香はそんなものには興味を示さず、もう一人の少女に目を向けた。

 

「ああ、ああ、貴様だな、貴様だな」

 

静かに、唇を開く。

 

「我が友を、我が親友を、シドーを殺したのは、貴様だな」

 

十香がそう言うと、ほんの少しだが、少女が始めて表情を歪めた。

しかし、そんなことはどうでもいい。

 

【最後の剣】を顕現させた十香を止められるものなんて、この世界に存在しない。

真っ黒に淀んだ瞳で少女を見下ろしながら、"冷静に、狂う"。

 

「───殺して壊して消し尽くす。死んで絶んで滅に尽くせ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「司令・・・ッ!」

 

「わかってるわよ。騒がないでちょうだい。私にも士道に聞きたいことができたから」

 

琴里は口の中で飴を転がしながら、狼狽した様子の部下に言葉を返した。

 

〈フラクシナス〉艦橋。正面のモニターには身体をごっそりと削り取られて倒れ付した士道と、精霊・十香の戦闘映像が表示されている。

部下の動揺も分からなくはなかった。

状況は、圧倒的に、絶対的に、破滅的に、絶望的だった。

ようやく空間震警報がなり始めたようだが、住民の避難はほとんど終わっていない状態で、十香とASTの戦闘が始まってしまったのである。

そして───〈ラタトスク〉の最終兵器であった筈の五河士道の突然の死。

琴里たちは、考える限り最悪の状況に立たされた格好になっていた。

だが、琴里は士道の口にした言葉に気になっていることがあった。

"始めて人を殺した"。

士道は私の知る限り、人を殺したことはないはずだ。

だが、士道は人を殺した事がある言いぐさだった。

琴里がその事についていると、艦橋下段の部下が、画面左側────公園が映っているものを見ながら、驚愕に満ちた声を発してきた。

 

「──来たわね」

 

キャンディの位置を変え、にやりと口を歪ませた。

 

「すぐに回収の準備をしなさい。───彼女を止められるのは士道だけよ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「─────」

 

声が聞こえる。

 

「────カ」

 

聞き覚えのある声

 

「───ミカ」

 

ああ、この声は・・・

 

「起きろ、ミカ」

 

オルガの声で目を覚ます。

 

「・・・あれ?オルガ?」

 

三日月はそう言ってオルガを見ると、オルガはなんとも言えない顔で三日月に言った。

 

「なに、こんなとこで寝てんだ?風邪ひくぞ?」

 

「あれ、俺寝てたんだっけ?」

 

「まあな。で、なんかいい夢でも見ていたのか?顔に出てたぞ?」

 

「うん、オルガが言ってた本当の居場所で新しい家族と一緒に暮らしてた夢」

 

「へぇ、どうだった?その場所は?」

 

「いいとこだったよ。飯がいっぱいあって寝床もちゃんとあって、俺達みたいな奴が戦わなくてもいい場所だった。」

 

「そうか・・・・」

 

「でも、やっぱり俺には皆が居ないと楽しくないや」

 

「ミカ・・・」

 

三日月の言葉にオルガは何も言えなかった。

だが・・・・・

 

「でも、守りたい奴はできたんだ」

 

三日月は自分の左手を見ながら言った。

 

「新しい家族もできたし、それにオルガに会う前の俺に似たような精霊って奴もあったから、そいつらを守りたいと思ったんだ。ねぇ、オルガ。これってオルガなら何か分かる?」

 

「・・・さあな」

 

「そっか・・・オルガにも分かんないのか・・・」

 

三日月の問いにオルガはそう答えるしかなかった。

しかし──────

 

「でも他にも守りたい奴がミカにも出来たんだろ?だったらそいつらも守ってやんねぇとな。ミカの家族も俺達鉄華団の家族だ」

 

「でも、皆を守れる力は今の俺にはないし、それに死んじゃったしね」

 

「でも、お前は止まるつもりはねぇだろ?ミカ」

 

「うん。オルガが止まらない限り俺は止まらないよ。これまでも、これからも」

 

「だったらすぐに行かねぇとな、そいつらの所に」

 

「うん」

 

オルガはそう言って歩き始める。

そして振り返り言った。

 

「ああそうだミカ、戻るんだったら守れる力がいるんだろ?だったら、コイツが必要だろ?」

 

オルガはそう言って横をに顔を向ける。

三日月はオルガが向いた方向へ首を向けると、そこには

見慣れたそれがあった。

 

「バルバトス・・・直してくれたんだ」

 

「これがあればまた、皆を守ってやれるだろ?」

 

オルガは三日月にそう言って、笑う。

 

「うん、バルバトスがあればまた皆を守れるし、また走れる」

 

三日月はそう言ってバルバトスに向かって歩いていく。

そして一度立ち止まり、振り向いてオルガに言った。

 

「ねぇ、オルガ」

 

「なんだ?」

 

「次はどうすればいい?」

 

それはいつかに言った問い。

それに対してオルガは笑って言った。

 

「そんなもん、決まってんだろ。“家族を守ってやれ“」

 

「うん、分かってるよ。ただ聞きたかっただけ」

 

そう言って三日月は歩き始める。

まだ、こんな所で止まる訳にはいかない。

さあ、もう一度いこう。オルガやクーデリアが目指したその場所を。

 

俺達の本当の居場所に。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

士道が目を覚ますとそこは先程の公園だった。

自分の身体をペタペタと触りながら、眉を少し寄せて呟く。

 

「なんで、傷がないんだろ?」

 

着ていたジャケットやタンクトップには綺麗な穴が空き、血で汚れている。

そんな格好でも、士道は恥ずかしがることもなく立ち上がると、周りを見渡す。

と、士道がいる公園よりもさらに高台から、黒い光が発せられ───続いて、凄まじい爆音と衝撃波が撒き散らされた。

 

「・・・なんだ?」

 

そう呟いて士道がそちらに視線を向けると、そこは巨大な剣で切り裂かれたかのように鋭利な断面を覗かせていた。

 

「あれか・・・?」

 

と呟いた瞬間。

 

「・・・・ん?」

 

士道は、自分の身体から重さがなくなるのを感じ、認識した時はもう、士道の視界は、高台の公園ではなく〈フラクシナス〉の内部に変貌していた。

 

「こちらへ!」

 

と控えていた〈フラクシナス〉のクルーが大声を上げてくる。

 

「何?」

 

士道はそう言いながら、艦橋に引っ張られていく。

そして艦橋に到着するなり、

 

「───お目覚めの気分はいかが、士道」

 

艦橋上段の艦長席に腰掛け、チュッパチャプスの棒をピコピコさせながら、琴里は言ってくる。

「・・・琴里、状況はどうなってるの?」

 

「ん、士道がASTの攻撃でやられて、キレたお姫様がASTを殺しにかかってるわ」

 

言ってちょいちょい、と斜め上のスクリーンを指さす。

 

「すごいな・・・」

 

スクリーンに写っていたのは巨大な剣を振るって山を切り刻む十香と、応戦するASTの姿があった。

いや、応戦と呼べたものではないだろう。

ASTは猛烈な勢いで攻撃を仕掛けているものの、十香には微塵も届いていない。

逆に十香の斬撃は、直撃せずともその余波だけで、テリトリーなど存在していないかのように吹き飛ばしていた。

ただただ、一方的で圧倒的な───王者の行進。

 

「完全にキレてるわ。よっぽど士道を殺されたのが許せないのね」

 

言って、琴里は肩をすくめる。

 

「で、アレを止める方法はあるの?」

 

「ええ、もちろん。士道がやるのよ」

 

「どうやってするの」

 

士道がそう言うと、琴里は口からチュッパチャプスを引き抜き怪しい笑みを浮かべながら、

 

「知らない?呪いのかかったお姫様を助ける方法なんて、一つしかないじゃない」

 

言って、すぼめた唇でキャンディにチュッ、と口づけた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

状況は最悪だった。

待機していたAST要員はすでに十名全員が参戦していたが、精霊に傷を負わせることはおろか、接近することすら叶わない。

否──それ以前に、精霊は、折紙以外の人間など意識の端にも入れてはいなかった。

あたかも───蟻を気にかけて歩く獅子がいないように。

 

「おああああああああああああああああ────ッ!!」

 

まるで涙に濡れた泣き声のような咆哮を上げ、精霊が巨大に過ぎる剣を振り下ろす。

 

「・・・・・・っ」

 

折紙はスラスターを駆動させると、身をひねって空に逃れ、その一撃を避けた。

が─────剣圧の巻き起こした衝撃をがテリトリーを侵して折紙の身体を打つ。

 

「く────」

 

油断は、一瞬だった。

 

「────ああああああああああああッ!」

 

精霊が吠える。

そして思い切り肩を回し、風を切り空気を割りながら、再度剣を折紙めがけて振るってきた。

 

『───折紙!!』

 

燎子が声を荒らげてくる。だが、もう遅い。

折紙のテリトリーに精霊の剣が触れる。

───瞬間。

 

「─────」

 

折紙は、自分の判断が甘かったことを知った。

時間にすれば、僅か一・五秒。

テリトリーが。

絶対の力を誇るはずの折紙の城が。

 

「────────────」

 

音もなく、声もなく、打ち砕かれた。

折紙の身体が空から地面へと叩きつけられる。

 

「ぁ─────」

 

『折紙ッ!』

 

燎子の声が、どこか遠く感じる。

テリトリーが解除されたためか、脳の負担は幾分か和らいだが、その代わり全身がひどく痛んだ。

骨折は一ヶ所では済むまい。傷口がどこかわからない血がワイヤリングスーツの中に溢れ、気持ち悪い感触を作っていた。重力を思い出したかのように急激に重くなった首を、ほんの少しだけ動かす。

霞む視界の中、空に立った精霊の姿だけがはっきりと見えた。ひどく悲しそうな顔をして剣を握る、ひどく小さな少女の姿が。

 

「─────終われ」

 

精霊が、剣を振り上げ、そこで止めた。

精霊の周囲に黒い輝きを放つ光の粒のようなものがいくつも生まれ、剣の刃に吸い寄せられるように収束していく。

逃げ出さないといけないのに、身体が重くて痛くて、まるで動こうとしてくれなかった。

燎子をはじめ他の隊員もすでに戦闘不能に陥っている。精霊を止めることができるものは、もう存在しなかった。

精霊が、剣を握る手に力を込める。

と───その時。

空から。

精霊よりもはるかに上から。

飛行機のような空気を切り裂くような音と共に。

狼の王の名を持つ巨大な悪魔が墜ちてきた。

 




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第十二話

最新話投稿です。
これで、一端、十香編は終わりです。
三日月っぽくなかったらごめんなさい。
ではどうぞ!


生き物の肉はオレいいや。

うっす。

ちょっと、三日月みたいな事言って

オレはあそこまで酷くないよ。


ヤマギ・ギルマトン

デイン・ウハイ

アトラ・ミクスタ



巨大な白い悪魔が墜ちてくる。

十香や折紙、他のASTの隊員達がその様子を呆然としながらその様子を見ていた。

そして、その機体が背中や腰、脚のスラスターを全開に吹かせながら着地姿勢を取り、そして────

 

ボゴォォォォォォォン!!

 

凄まじい爆音と共に、それは着地した。

着地した際に発生した砂煙が十香や折紙達を飲み込んで、その衝撃波が襲った。

 

「くっ・・・何だ!?」

 

「─────ッ」

 

十香と折紙は反射して眼を閉じ、その衝撃波を耐える。

そして、勢いが収まると恐る恐る眼を見開けた。

砂煙の中、巨大な影が見える。

巨大なその影が動き始め、手に持った"ナニカ"を振り払うと、砂煙が吹き飛ばされ、その全貌が見えた。

白を主軸とした色合いに、異様に大きな両腕、尻尾のような突起とブースターが見える背中、そして恐ろしいくも荒々しいツインアイが見える顔、手に持つあまりにも巨大過ぎるメイス。そしてなにより、十香達はその巨大な機体の胸部にあるマークに眼を奪われていた。

胸部の赤い装甲に描かれた白い華のような絵を見て、彼らは何を感じたのだろうか。

それは彼らにしかわからないが、それでも言えるのはただ一つ。

まるで、必死に居場所を探しているかのような子供達の姿が見えるようで────

彼らがそう思っていた時に、その悪魔から聞き覚えがありすぎる、そして同時にあり得ない声が聞こえてきたから。

 

 

『無事、十香?』

 

その声は、つい先程、折紙が撃ってしまった少年のものだったから。

 

 

 

 

 

数分前。

 

「お姫様は滞空中か・・・なら士道をここから突き落としましょ。低空まで降りてるし、精霊に接近したら、こっちから重力中和してあげ「いらない」・・・は?」

 

途中で割り込んだ士道の発言に琴里は固まった。

 

いかんせん、パラシュートともなしに、高度を下げているとはいえ、三千メートルは地上と離れているのだ。

 

士道は何を考えてるかわからないが、正気の沙汰ではないだろう。

そして士道は撃たれて穴が空いたジャケットを腰に巻いて着ていたタンクトップを脱ぎ捨てる。

 

そして琴里は鍛えられた上半身裸の士道の"背中にある突起"を見て絶句した。

 

「士道・・・あなたそれ・・・」

 

「ん?・・・ああ、また答えるからあとでね」

 

士道はそう言って近くにいた作業員に言った。

 

「ねぇ、外にでられる所はある?」

 

「・・・え、ええ、艦体の下部に・・・」

 

「そっか、じゃあ案内して」

 

「わ、わかりました・・・!」

 

士道はそう言ってその作業員の後に付いていく。

ハッチの前まで来た士道は、軽い返事で琴里達にインカム越しで言った。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

強風が吹き荒れる大空に士道はその身を投げた。

 

『ちょっと!?』

 

耳に着けてあるインカムから琴里の声が聞こえてくるが、士道はそれを無視して最初にバルバトスを起動させた言葉を独り言のように呟く。

 

「網膜投影スタート」

 

すると士道の周りの空間が歪み始め、巨大な人型を作り始める。耳に着けてあったインカムがまるで、充電が切れた携帯のようにブツリと音がきれた。

 

そして────

 

「いくぞ、バルバトス」

 

士道がそう言った瞬間、士道の声をに答えるようにして悪魔が顕現する。

背中の阿頼耶識を通じて、バルバトスの情報が流れてくる。懐かしい感覚に士道は少しだけ顔を緩めてバルバトスに言った。

 

「お前も機嫌がよさそうだな、じゃあ行くか」

 

士道はそう言って、グリップを握って十香達の場所に着地点を合わせて操縦する。

 

「慣性制御システム、スラスター全開」

 

阿頼耶識でバルバトスを着地姿勢を取りながら、スラスターを全開に吹かし、少しでもバルバトスの負担にならないように合わせる。

そして十香達のいる場所より少し離れた場所でバルバトスが着地した。

 

ボゴォォォォォォォン!!

 

凄まじい爆音が響き渡り、バルバトスのコックピットにもその衝撃が伝わるが、士道は何ともないようにバルバトスを動かし、巨大なメイスを振り払う。

振り払われた風圧で砂煙は吹き飛ばされ、十香達の姿を視認することが出来た。

そして、バルバトスについている音声スピーカーを点けて士道は十香に軽い返事をするように言った。

 

『無事、十香?』

 

スピーカー越しに聞こえてきた、士道の声に気づいてか、十香は長大な剣を持ったまま、顔を此方に向ける。

頬と鼻の頭は真っ赤で、目はぐしゃぐしゃ。みっともない有り様だったが、無事だったようだ。

十香と、バルバトスに乗った士道と目が合うと、まだ状況を理解できていないような様子で、十香が呟く。

 

「シ───ドー・・・・・?」

 

十香がそう呟くと、士道はバルバトスのコックピットハッチを開けて、外へと出る。

コックピットから出てきた士道を見て、十香は信じられないものを見るような声で言う。

 

「シドー・・・ほ、本物、か・・・・?」

 

「うん、俺は俺だよ」

 

士道はそう言うと、十香は肩を震わせて、士道の方へと向かってくる。

そして─────

 

「シドー、シドー、シドー・・・・っ!」

 

「大丈夫だよ」

 

と言った所で、士道の視界の端に凄まじい光が満ちた。

十香が先程まで、振りかぶったまま空中に静止させていた剣が、あたりを夜闇に変えんばかりに漆黒の輝きを放っている。

 

「なんだ?」

 

「ッ・・・! しまった・・・!力を───」

 

十香が眉をひそめると同時に刃から光が雷のように漏れでて地面を穿っていた。

 

「何これ?」

 

「【最後の剣】の制御を誤った・・・・!どこかに放出するしかない・・・!」

 

「どこにそれを撃つの?」

 

「─────」

 

十香は無言で、地面の方を見た。

士道はつられて目をやると、そこに今にも死にそうな折紙が横たわっているのが見える。

 

「────撃ってもいいけど、周りにも被害が出そうだな・・・」

 

「で、ではどうしろというのだ!もう臨界状態なのだぞ!」

 

そう言っている間にも、十香の握る剣は辺りに黒い雷を撒き散らしていく。

と、そこで、士道は今さっきまで忘れていた琴里の言葉を思い出した。

────十香を止め、その力を封ずる唯一の方法。

 

「十香、落ち着いて聞いて」

 

「なんだ!今はそれどころでは───」

 

「それを何とかできるかもしれない可能性があるんだけど?」

 

「なんだと!?一体どうするのだ!?」

 

十香が急かすように言ってくるが、士道はいつもの調子で十香に言った。

 

「んじゃ、顔を此方に近づけて」

 

「こうか!?」

 

十香はそう言って士道の真正面に顔を向ける。

そして─────

士道は躊躇いなどなく、クーデリアの時と同じように自分の唇を十香の口に押しつけた。

 

「──────────ッ!?」

 

十香が力一杯に目を見開き、声にならない声を上げる。

一拍おいて。

───天に聳えていた十香の剣にヒビが入り、バラバラ

に霧散して溶けて消える。

つづいて、十香がその身に纏っていたドレスのインナーやスカートを構成する光の膜が弾けるように消失した。

 

「な───」

 

十香が、狼狽に満ちた声を発する。

 

「・・・・・・あれ?本当に出来た」

 

士道は表情には出てないが多少は驚いていた。

半信半疑ではあったが琴里から聞かされていた。

だが、どちらかと言うと、本当にできるのか信じていなかったが、この一連を見て、琴里の言っていたことは本当だったようだ。

 

「ぷは・・・・っ!」

 

まるで息継ぎでもするかのように、十香は唇を離して、身体を起こす。

 

「ごめん、こうするしかないって言われて・・・・・嫌だった?」

 

士道は少しだけ、反省の顔を浮かべて十香に言ったが、十香は何も言ってこなかった。

 

「・・・・?」

 

怪訝そうに十香を見ると、十香はバルバトスのハッチに座ったまま、不思議そうな顔をして、自分の唇に指を触れさせていた。

士道はそんな十香に腰に巻いていた穴の空いたジャケットを十香に渡して言った。

 

「十香、服がボロボロだからこれでも着れば?」

 

「───ッ!」

 

士道の言葉に気づいたのだろう。

十香は顔を真っ赤にして、慌てて士道からジャケットを引ったくる。

 

「ごめん」

 

「み、見るな、馬鹿者・・・ッ!」

 

十香にも人並みの羞恥心はあったらしく、すぐに士道から引ったくった穴の空いたジャケットを着て言う。

そして、しばしの後。

 

「・・・シドー」

 

十香が、消え入りそうな声を発しながら士道に言った。

 

「なに?」

 

「また・・・・・、デェトに連れていってくれるか・・・?」

 

「いいよ。言ってくれれば、いつでも行くよ」

 

士道はそう言って頷いた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「───以上です」

 

司令たる琴里しか立ち入ることの許されない〈フラクシナス〉特別通信室。

その薄暗い部屋の中心に設けられた円卓につきながら、琴里はそう言って報告を締めくくった。

精霊の攻略・回収に関連する報告を。

円卓には、琴里を含めて五人分の息づかいが感じられた。

だが───実際に〈フラクシナス〉にいるのは琴里のみである。後のメンバーは、円卓の上に設けられたスピーカーを通してこの会議に参加していた。

 

『・・・彼の力は本物だったというわけか』

 

少しくぐもった声を発したのは、琴里の右手に座ったブサイクな猫のぬいぐるみだった。

正しくはぬいぐるみのすぐ前にあるスピーカーから声が発せられているのだが、琴里から見ればブサイクな猫が喋っているようにしか見えない。

先方にはこちらの映像が見えていないはずなので、琴里が勝手に置いたものである。

おかげで〈フラクシナス〉の最奥に位置するこの部屋は、妙にファンシーな空間になっていた。

琴里が得意気に腕組みすると、今度は左手に座った泣きネズミが静かに声を発する。

 

『───君の説明だけでは、信憑性が足りなかったのだよ。何しろ自己蘇生能力に精霊の力を吸収する能力、そして、おとぎ話で出てくる"厄祭戦にて出てきたガンダムの名を持つ七十二体の悪魔の内の一体"。にわかには信じられれん』

 

琴里は肩をすくめた。

まあ、仕方のないことだろう。様々な観測装置を使って、士道の特異性を確かめるに要した時間は───およそ五年。そしてさらにバルバトスと言う士道の操る霊装に近い"ナニカ"は予想外だった。

 

『それで、精霊の状態は?』

 

続いて声を発したのは、ブサ猫の隣に座った、間抜け極まるデザインのブルドッグだった。

 

「〈フラクシナス〉に収容後、経過を見ていますが───非常に安定しています。空間震や軋みも観測されてません。どの程度力が残っているかは調べてみないとわかりませんが、少なくとも、『いるだけで世界を殺す』とは言い難いレベルかと」

 

琴里はそう言うと、円卓の四体のぬいぐるみの内、三体が一斉に息を詰まらせる。

 

『では、少なくとも現段階では、精霊がこの世界に存在していても問題ないと?』

 

明らかに色めき立った様子で、ブサ猫が声を上げる。

琴里は視線に嫌悪感を滲ませながらも口調は穏やかに「ええ」と答えた。

 

「それどころか、自力では隣界にロストすることすら困難でしょう」

 

『───では、彼の様態はどうなんだね。それほどまでに精霊の力を吸収したのだ。何か異常は起こっていないのかな?』

 

今度はネズミが問うてくる。

 

「現段階では異常は見られません。士道にも、精霊にも」

 

『なんと。世界を殺す災厄だぞ?その力を身に封じて、なおかつあのバルバトスと言う"ナニカ"を操ってなお、何も異常が起こらないというのか』

 

犬のぬいぐるみはそう言ってくる。

 

「問題が起こらないと踏んだから、彼の使用を承認したのでしょう?」

 

『・・・彼は一体、何者なのかね。そんな能力・・・まるで精霊ではないか』

 

ぬいぐるみの顔だけでなく、本当に、馬鹿だ。琴里は内心で嘆息しながらも律儀に口を開いた。

 

「───蘇生能力については、以前に説明した通りです。吸収能力や、士道の霊装"バルバトス"と背中にある突起に関しては、現在も調査中としか」

 

琴里がそう言うと、しばしぬいぐるみたちは黙った。

そして数秒のあと、今まで一言も喋っていなかった、クルミを抱えたリスのぬいぐるみが、静かに声を発した。

 

『───とにかく、ご苦労だったね、五河司令。素晴らしい成果だ。"バルバトス"に関しては、此方でも厄祭戦について調べてみるよ。これからも期待しているよ』

 

「はっ」

 

琴里は初めて姿勢を正し、手を胸に置いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

あの一件から土日を挟み、月曜日。

復興部隊の手によって完璧に復元された校舎には、もう相当の数の生徒が集まっている。

そんな中士道は、ぼうっと教室の天井を眺めていた。

──あの日。

あれからすぐにバルバトスと回収された士道は、施設で入念なメディカルチェックを受けさせられ、阿頼耶識についても調べさせられたのだが、あれ以降、十香の姿を見ていない。

別に琴里達のことだから大丈夫だとは思うが、それでも多少は気にはなっていた。

 

「まあ、気にしても仕方ないか」

 

そう呟いて、士道は制服のポケットからデーツを一つ取り出して口に含む。

すると後ろから、良く聞く声が聞こえてきた。

 

「何が、気にしても仕方ないんだ?五河」

 

「ん?ああ、殿町かどうしたの?」

 

士道は急に話し掛けてきた殿町に反応して、首を彼に向ける。

 

「もうすぐホームルームだぞ?自分の席にもどれよ」

 

「大丈夫でしょ。どうせいつもタマちゃん少し遅れるんだし」

 

「おまえ・・・一応担任だろ。そんな猫かアザラシみたいなあだ名やめとけよ」

 

「別に本人は気にしてなさそうだし、大丈夫でしょ」

 

「おまえなあ・・・」

 

下らないやり取りをしていると、教室のドアをガラガラと開ける音がし、士道達は顔を扉へ向けた。

そして一瞬、教室がざわつく。

それも仕方ないかもしれない。何しろあの鳶一折紙が、額やら手足やらを包帯だらけにして登校してきたのだから。

 

「・・・・・・」

 

士道は目を細め、彼女を見るが特にこれと言った感想はない。

なぜなら、自分を殺した張本人だし、何より俺達の敵に値する組織の人間だ。

さっさと殺した方が楽なのだが、精霊との戦闘以外で彼女を殺すと、警察とか言う治安維持の人間がくるので無闇に殺すことができない。

士道は彼女を一目して、興味をなくし窓の外の風景を見ながら、デーツをもう一つ口に入れる。

すると後ろから・・・・

 

「五河士道」

 

鳶一の声が聞こえてきて、士道は視線をそちらに向ける。

 

「なに?」

 

興味なさそうに士道は彼女に視線を向けると、彼女は自分に深々と頭を下げていることに気づいた。

 

「何のつもり?」

 

教室が騒然とするなか、士道と折紙に反応して視線が集中する。

しかし彼女なまるで意に介していない様子で、言葉を続けた。

 

「───ごめんなさい。謝って済む問題ではないけれど」

 

「・・・アンタがこれ以上俺の邪魔をするなら潰すよ」

 

士道はそう言って、自分の席に戻っていく。

すると後ろから制服の裾が引っ張られ、再び顔を向けると折紙は、そのひんやりとした表情をまったく変えないまま、顔を近づけて言った。

 

「浮気は、駄目」

 

「・・・・・は?」

 

士道は眉間にシワを寄せながら彼女の意味のわからない言葉を聞き、周りのクラスの面々の目は、点になる。

とそれにあわせるように、ホームルームの開始を告げるチャイムがなった。

クラスの面々は興味深そうに折紙と士道の方を眺めながらも、自分の席に着いていく。

だが、折紙だけはそのまま、士道の顔をジッと見つめてきていた。

その最悪の空気の中、救いの女神が現れる。

 

「はーい、皆さーん。ホームルーム始めますよぉー」

 

扉を開け、タマちゃんが教室に入ってきたのである。

 

「・・・?と、鳶一さん、五河くん、何してるんですかぁ?」

 

折紙は無言のまま珠恵を一瞥すると、士道の服の裾を離して自分の席に戻っていった。

とはいえ、彼女の席は士道のすぐ隣。士道は彼女の視線に若干イラつきながらも、席に座る。

 

「は、はい、皆さん席につきましたね?」

 

教室の不穏な空気を感じ取ってか、珠恵がやたら元気な声を上げる。

次いで、思い出したかのように手を打ち、うんうんと頷いた。

 

「そうそう、今日は出席を取る前にサプライズがあるの!───入ってきて!」

 

言って、今し方自分が入ってきた扉に向かって声をかける。

 

「ん」

 

と────それに応えるように聞き覚えがある声がした。

 

「・・・・あれ?」

 

「──────」

 

士道の困惑と、折紙の驚愕とともに。

 

「今日から厄介になる、夜刀神十香だ。皆よろしく頼む」

 

高校の制服を着た十香が、とてもいい笑顔をしながら入ってきた。

見ているだけで目が痛くなるほどの美しさに、クラス中が騒然とする。

十香はそんな視線になど意に介さず、チョークを手に取ると、下手くそな字で黒板に『十香』とだけ書いた。

そして満足げに「うむ」とうなずく。

 

「何で学校に十香がいるの?」

 

「ぬ?」

 

士道が言うと、十香が視線を向けてきた。

不思議な輝きを放つ、その光彩。

 

「おお、シドー!会いたかったぞ!」

 

そして大声で士道の名を呼び、ぴょんと跳び跳ねて士道の席の真横───ちょうど、ついさっきまで折紙が立っていた位置までやってくる。

再び、士道はクラス中から注目を浴びた。

ざわざわ、ざわざわ。あたりから、二人の関係を邪推する声や、先程の折紙との関連性を勘ぐるような声が聞こえてくる。

士道は周りにも聞こえないように小さく声を発した。

 

「十香、どうして学校にいるの?」

 

「ん、検査とやらが終わってな。──どうやら、私の身体から、力が九割以上消失してしまったらしい」

 

十香も士道を真似をしてか、小さな声で言ってくる。

 

「まあ───とはいえ怪我の功名だ。私が存在しているだけでは、世界が啼かなくなったのだ。それでまあ、おまえの妹がいろいろしてくれた」

 

「ふーん」

 

士道はそう言って頭をかく。

十香を自由にしてくれたのはいいが、他にもやりようがあっだろう。

しかし十香は何食わぬ顔で、

 

「なんだ、シドー。元気がないな。────ああ、もしや私がいなかったので寂しかったのか?」

 

なんて、冗談めかす調子もなく、そんなことを言ってきた。

しかも、周りの皆に聞こえるくらいの大きさで。

クラスのざわめきが、最高潮に達する。

士道は周りの声でこの上ない居心地の悪さを感じながらも、何でもないように言う。

 

「別に。でも何にもなくて良かった」

 

「なんだ、つれないな。あのときはあんなに荒々しく私を求めてくれたというのに」

 

言って両手で頬を覆い、恥ずかしそうな顔を作る。

 

『─────っ!?』

 

周囲の空気が変わった。

だが、士道はそんな事を気にせず、十香に言う。

 

「どっちかって言うと、ああするしかなかったって感じでしょ」

 

士道はそう言うが、周りの反応はやたら騒ぎだす。

と、瞬間────十香が士道に近づけていた顔を右に動かした。

 

「・・・?」

 

不思議がる士道の目の前を、ペンが凄まじい速さで横切った。

 

「なんだ?」

 

目の前に通ったペンの出所を見る。

そこには、たった今ペンを放った格好のまま、冷たい視線を向けてくる折紙の姿があった。

 

「・・・・・ぬ?」

 

「・・・・・・・」

 

十香と折紙。二人の視線が混じり合う。

 

「ぬ、なぜ貴様がこんなところにいる?」

 

「それは、私の台詞」

 

まさしく一触即発。

だが二人とも、ここで戦闘をやる気はないようだった。

それはそうだろうと言えるかもしれない。

片や力のほとんどを失った状態、片や装備もなく、怪我をした状態だ。

 

「は、はい!おしまい!おしまいにしましょう!ねー!仲良く!」

 

タマちゃんが慌てた様子で二人の間に割って入り、どうにかその場は水入りとなった。

だが。

 

「じゃあ、夜刀神さんの席は───」

 

先生が十香の席を探し始めると、

 

「無用だ。───退け」

 

十香は、士道の隣───折紙の反対側に座っていた生徒に、鋭い眼光を放った。

 

「ひ、ひぃぃぃっ!」

 

そのプレッシャーに圧され、座っていた女子生徒が椅子から転げ落ちる。

 

「ん、すまんな」

 

言うと十香は悠然とそこに腰掛け、士道の方に視線を送ってきた。

だがそうすると、視線が混じるのは士道ではなく折紙になるわけで。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

二人して、無言で睨み合う。

士道は睨み合う二人の間で目を閉じて言う。

 

「二人とも、その視線止めて。うざいから」

 

士道の言葉に彼女達は、

 

「わ、わかった」

 

「・・・・・」

 

そう言って前を見る。

ホームルームが始まると、今日も昨日とは違う一日が始まった。




感想、誤字報告よろしくです。
















バルバトス

オレの出番は?


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四糸乃パペット
第一話


投稿です。三日月ぽくなかったらごめんなさい。

さて、新章です。

「双子のお嬢さんは元気かな?」

マクギリス・ファリド


「シドー・・・・!クッキィというのを作ったぞ!」

 

「ん?」

 

士道は自分の名前を呼ばれて、教室の入口に顔を向ける。

そこにいたのは水晶のような瞳と腰まであるであろう夜色の髪をなびかせた十香が興奮気味に言って、手にしていた容器を自分の中の目の前に突きだしてくる。

 

「十香、何か作ったの?」

 

「うむ、これを見てくれ!」

 

十香はそんな士道に応えるように、容器の蓋を開けた。

そこには、形が歪だったり、ところどころ焦げていたりするものの、辛うじてクッキーと言えるものが入っていた。

士道と十香は同じクラスだったのだが、なんでも、個々人の作業量が充実するように・・・とかいう理由で、実験的に、調理実習を少人数に分けて行っていたのだった。

つまり、今日は女子生徒だけが調理実習の日だったのだ。

 

「これ・・・クッキー?」

 

「うむ、皆に教えてもらいながら、私がこねたのだ!食べてみてくれ!」

 

言って、十香がまたも満面の笑みを作る。

 

「へぇ・・・じゃまあ」

 

士道はそう言って容器からクッキーを一つ取って口に入れる。

 

「うん・・・これくらい固いほうが食ってる感じがして旨い」

 

士道はそう言って、もう一つ手を伸ばす。

すると近くにいた殿町が苦笑いしながら、士道に「相変わらず気づかないなあ」と言っていた。

そしてもう一枚口に入れようとした時。

 

「・・・・?」

 

士道の持っていたクッキー目掛けて、銀色の弾丸のようなものが、一直線に通り過ぎて手に持っていたクッキーを粉々に砕くと、そのまま壁に突き刺さった。

 

「・・・なんだ?」

 

廊下の方から放たれたそれの先に目を向けると、フォークが壁に突き刺さって、音を立てながら、柄を揺らしていた。恐らくは、調理室のものだろう。

 

「ぬ、誰だ!危ないではないか!」

 

十香が叫び、廊下に顔を向ける。

士道もそれに釣られるように、そちらに顔を向けた。

 

「・・・・・・」

 

そこには、つい今し方何かを投擲したように、右手を真っ直ぐ伸ばした少女が無言で立っていた。

そんな見覚えのある彼女を見て、士道は目を細める。

肩口をくすぐるくらいの髪に、色素が薄い肌。顔立ちは端整だが、表情は一切見受けられなかった。

 

「また、アンタか」

 

「ぬ」

 

士道はそう言い、十香は不機嫌そうに眉根を寄せる。

少女───鳶一折紙は、そんな二人を見つめながら、ゆっくりと歩み寄ってきた。

そして士道の前まで辿り着くと、左手に持っていた容器の蓋を開け、先ほどの十香と同じように士道に差し出してくる。

 

「夜刀神十香のそれを口にする必要はない。食べるならこれを」

 

そこには、工場のラインで製造されたかのごとく、完璧に規格の統一されたクッキーが綺麗に並んでいた。

 

「何?」

 

「邪魔をするな!シドーは私のクッキィを食べるのだ!」

 

士道がどう反応すればいいか分からず、十香がぷんすか!といった調子で声を上げた。

しかし折紙は微塵も怯まず、それどころか表情をぴくりとも動かさず、のどを震わせる。

 

「邪魔なのはあなた。すぐに立ち去るべき」

 

「何を言うか!あとから来ておいて偉そうに!」

 

「順番は関係ない。あなたのクッキーを彼に摂取させるわけにはいかない」

 

「な、なんだと!?」

 

「あなたは手洗いが不十分だった。加えて調理中、舞い上がった小麦粉にむせ、くしゃみを三度もしている。これは非常に不衛生」

 

「な・・・・っ」

 

虚を突かれたように、十香が目を丸くする。

士道は二人の争いを止める訳でもなく、周りを見渡すと、先程の折紙の言葉で周囲の男子生徒たちが、騒ぎ始める。

しかし十香はそんなことに気付く様子もなく、ぐぬぬ・・・と拳を握りしめる。

 

「し、シドーは強いからそれくらい大丈夫なのだ!」

 

「因果関係が不明瞭。───それに、あなたは材料の分量を間違えていた。レシピ通りの仕上がりになっているとは思えない」

 

「・・・・っ!?」

 

折紙が言うと、十香は眉をひそめ、自分と折紙のクッキーを交互に見た。

 

「う、うるさいっ!貴様のクッキィなぞ、美味いはずがあるかっ!」

 

十香はそう叫び、目にもとまらぬスピードで、折紙の容器からクッキーを一枚かすめ取ると、自分の口に放り込んだ。

そしてサクサクと咀嚼し───

 

「ふぁ・・・・・っ」

 

頬を桜色に染め、恍惚とした表情を作った。どうやら、旨かったらしい。

しかし十香はすぐにハッとした様子で首を横にブンブンと振った。

 

「ふ、ふん、大したことはないな!これなら私の方が美味いぞ!」

 

「そんなことはあり得ない。潔く負けを認めるべき」

 

「なんだと!?」

 

「なに」

 

放っておいたら殴りあいになってしまいかねない。

敵とはいえ、同級生である折紙と、仲間の十香が殴り合うのは自分としてもあまり気分は良くない。

なので、外から見ていた士道は十香の耳を引っ張り言った。

 

「喧嘩か?十香。俺は嫌だ」

 

「痛い痛い!シドー離してくれ!!」

 

「じゃあ、喧嘩はしないでよ」

 

「わかった!!わかったから!!離してくれ!!」

 

十香は涙目になりながら言うので士道は手を話す。

そして折紙に士道は言った。

 

「アンタも、変にかかわらないでくれ」

 

「・・・・・」

 

士道の言葉に折紙は何も言わなかったが、どうやらもう何もしないようなので、士道は自分の席に戻る。

すると後ろから十香が抗議するように、士道に言った。

 

「・・・うう、痛かったぞ・・・シドー・・・」

 

「でも、これくらいしないと喧嘩になりそうだったからね。今度はしないでよ」

 

「・・・わかった」

 

十香は少ししょんぼりしながら、自分の席に座った。

そして十香が座った時、士道は思い出したかのように十香に言った。

 

「ああそうだ・・・十香、あのクッキー結構旨かったから、また頂戴」

 

「う、うむ!ならいつでも食べてくれ!!」

 

十香はしょんぼりしていた顔を再び明るくする。

そして次の授業のチャイムがなると、他の生徒も自分の席に座り準備を始める。

士道と十香も、次の授業の為に準備をし始めた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「流石に鬱陶しいな、アイツ」

 

士道は学校の帰り道、イラつきながらポツリと呟いて、十香からもらったクッキーを口に入れる。

だが、それも無理からぬことだろう。

十香と折紙はあの後も喧嘩をし、それを見つけた士道が止めに入るというのを何度もしていたのである。

一度、実力行使で止めた方が良いのかも知れないが、学校ではそういう事が出来ないのが、士道に取ってもかなりイライラする原因でもあった。

しかも、そんなバトルは今日に始まった話ではない。

先月十香が、士道の通う学校に転入してきてからというもの、毎日のように二人の小競り合いは続いていたのだ。

───だが、それがただの口喧嘩であれば、士道は止めやしないだろう。

 

「・・・・・」

 

士道は先月目にした十香と折紙の姿を思い起こす。

片や、世界を殺す災厄と呼ばれる『精霊』。

片や、陸上自衛隊・対精霊部隊の魔術師とかいうわからない集団。

そんな二人の間に、一々割って入る自分の気にもなって欲しい所だ。

 

「・・・まぁ、いいか。戦闘になれば潰せばいいし」

 

もし、彼方から仲間に攻撃するような事があれば、その時は全力で潰す。

士道はそう思いながら、もう一つクッキーを口に入れた。

 

「・・・・ん?」

 

クッキーを咀嚼しながら、士道は顔を上にやった。

突然、ぽつん、と首筋に冷たいものが当たった気がしたのである。

 

「・・・・・雨か」

 

士道はそう言って空を見上げた。

いつの間にか、空がどんよりと曇っていたからだ。

 

「天気予報じゃあ晴れって言ってたのにな。最近あまりあてになんないな」

 

士道の言葉に反応するかのようにポツ、ポツ、と大粒の雫が道に染みを作り始める。

 

「急いで帰らないと」

 

士道は手に持っていた鞄を頭の上にやり、小走りで家へと急ぐ。

しかし、雨はみるみるうちに激しさを増していった。

制服に染みていく冷たい感触を味わいながらも、士道は走っていく。

そして分かれ道を右に曲がった所で。

 

「ん・・・?」

 

雨の中、士道はふと足を止めた。

それは前方に気になるモノを見たからだ。

 

「なんだ、アイツ?あんな所で」

 

士道の視線の先にいたのは、少女だった。

可愛らしい意匠が施された外套に身を包んだ、小柄な影。

顔は見えない。というのも、ウサギの耳のような飾りが付いた大きなフードが、彼女の頭をすっぽりと覆い隠していたからだ。

そして気になるのはその左手。

イヤに、独特的なウサギ形の人形が、そこに着けられていたのである。

そんな少女が、ひとけのなくなった道路のど真ん中で、ぴょんぴょんと跳ね回っていた。

 

「アイツのこの感じ・・・知ってるやつだ」

 

士道はそう言ってその少女を見る。

この嫌な感じ。バルバトスを出したあの時から十香でも伝わっていた。

そう、"あの鳥みたいなMAと対面したような"あの感覚。

 

「・・・・・」

 

士道はその感覚を感じながらも少女を凝視する。

冷たい雨の降り続く中、軽やかに踊る少女に、目を釘付けにし───

─────ずるべったぁぁぁぁぁぁんッ!

 

「は?」

 

士道はそう呟く。

・・・・・女の子が、コケた。

顔面と腹を盛大に地面に打ち当て、あたりに水しぶきが散る。ついでに彼女の左手からパペットがすっぽ抜けて、前方に飛んでいった。

そして、うつぶせになったまま、動かなくなる。

 

「・・・・大丈夫か?アイツ?」

 

士道はそう言って彼女に近づくと、彼女の身体を仰向けにしてやる。

 

「生きてる?」

 

そこで初めて、少女の顔を見る事が出来た。

年頃は妹と同じくらいだろうか。髪は海のような青色で、昔みたフランス人形とかいうヤツに似ていた。

 

「・・・・・!」

 

と、そこで少女が目を開いた。長い睫毛に飾られた、宝玉のような瞳が露になる。

 

「アンタ、動ける?」

 

士道が言うと、少女は顔を真っ青に染めて目の焦点をぐらぐらと揺らし、士道の手から逃げるようにぴょんと跳び上がった。

彼女は士道から少し距離を取ってから、全身を小刻みにカタカタと震わせて、士道を怖がるような視線を送ってくる。

 

「・・・・・」

 

「・・・こ、ない、で・・・ください・・・っ」

 

そんな彼女を見て、士道はすぐに状況を察して足を前に踏み出す。

 

「・・・・は?」

 

士道が彼女の言葉を聞き、そう呟く。

 

「いたく、しないで・・・ください・・・っ」

 

続けて、少女はそんな言葉を言ってくる。

彼女にとって自分に危害を加えるように見えるのだろうか。その様子はまるで震える小動物のようだった。

 

「・・・・・」

 

士道は彼女のその様子にめんどくさそうにしながら息を吐く。

どうしようかと思っていた士道は、自分の足元に落ちていたパペットに気がついてそれを拾い上げ、少女に言う。

 

「これ、アンタのだろ」

 

「・・・!」

 

すると少女は目を大きく見開き、士道の方に駆け寄ってこよう───としたところで、足を止めた。

 

「・・・ん」

 

士道は手に持ったパペットを少女に向かって突き出すような格好で、彼女に渡す。

 

「・・・っ!」

 

少女がビクッと肩を揺らすが───士道の意図に気づいたのだろう、あちらもゆっくりと近づいてそして、士道の手からパペットを奪い取るなり、それを左手に装着する。

すると突然少女が、パペットの口をパクパクと動かし始めた。

 

『やっはー、悪いねおにーさん。たーすかったよー』

 

「ん?」

 

よく分からないが、ウサギが妙に甲高い声を発してくる。

首を傾げて、訝しげに少女の顔を見やるが・・・まるで士道と彼女の間を遮るように、ウサギのパペットが言葉を続けてくる。

 

『───ぅんでさー、起こしたときに、よしのんのいろんなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、どーだったん?正直、どーだったん?』

 

「はあ?」

 

パペットの言っている意味が分からず士道はそう呟くが、そのパペットは笑いを表現するかのようにカラカラと身体を揺らした。

 

『またまたぁー、とぼけちゃってこのラッキースケベぇ。・・・まぁ、一応は助け起こしてくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ルんっ』

 

「・・・あっそ」

 

士道は興味無さげにそう言う。

 

『ぅんじゃね。ありがとさん』

 

と、パペットがそう言うと同時、少女が踵返して走っていった。

少女が走っていった方を士道が見ると、そこにはもう彼女の姿はなかった。

 

「なんだ、アイツ・・・変な奴だったな」

 

士道はそう呟き、帰り道に踵返した。

 

 




感想誤字報告よろしくです。


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第二話

最新話投稿です。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。
半分以上ストーリーがオリジナルになってしまった。

「ねぇ、何人殺せばいい?後何人殺せばそこへ着ける?教えてくれ、オルガ。オルガ・イツカ」

三日月・オーガス


士道が走りながら帰って、数分。

 

「・・・ん?」

 

自宅の前までたどり着き、玄関に鍵を差し込んだ士道は、小さく眉をひそめた。

ドアノブを握り、そのまま引いてみる。

すると予想通りに、出がけに鍵をかけていたはずの扉が、何の抵抗もなく開いた。

 

「琴里、帰ってたのか」

 

士道はそう呟いて、扉を全開に開ける。

士道の妹───五河琴里。近所の中学校に通う十三歳の中学二年生。

そしてそれと同時に、精霊を平和的手段によって無力化しようとする組織・〈ラタトスク機関〉の司令官でもある。

十香という精霊を保護した事後処理に追われ、先月から一度も家に帰っていなかった。

 

「・・・・・」

 

十香の件で忙しいのはオルガで分かっていたので、士道からは何も言うことはない。

 

「ただいま」

 

雨で濡れた靴と靴下を脱いで、フローリングの床に足跡を残していく。

と、廊下の先からテレビの音が聞こえてくる。

きっと、琴里がリビングにいるのだろう。

士道はその事を気にせず風呂場へと向かう。

士道は片手に鞄と靴下を持ちながら、脱衣所の扉を慣れた調子で開けた。

と。

 

「・・・・あれ?」

 

瞬間、士道は目を丸くする。

──脱衣所に、ここにいるはずのない少女の姿があったのである。

背を隠す長い夜色の髪に、水晶玉のごとき瞳。

そんな圧倒的な存在感を放つ美少女。

そんな少女は、士道の記憶の中に一人しかいなかった。

つい先程まで、折紙と喧嘩を繰り返していた彼女。

夜刀神十香が、そこにいた。

───その身に、一糸すら纏わぬ姿で。

 

「何で、十香が家にいるの?」

 

士道は十香にそう言うと、そこでようやく十香が肩をビクッと震わせ、顔をこちらに向けてくる。

 

「な・・・ッ、し、シドー!?」

 

「? なに?」

 

士道は十香の問いの意味がイマイチ分からずに答える。

 

「いッ、いいから出ていけ・・・っ!」

 

「・・・?分かった」

 

十香の言葉に士道はそう言って脱衣所の扉を閉める。

 

「何で家に十香がいるんだろ?」

 

士道はそう呟くと、脱衣所の扉が少しだけ開かれ、頬を真っ赤にした十香が顔を覗かせてきた。

 

「・・・見たのか、シドー」

 

「・・・何を?」

 

士道は、じとーっとした視線を送ってくる十香に、首を傾げた。

何か見てはいけないものでもあったのだろうか。士道はそう考えていたが、十香は士道の答えに若干疑いながらも納得したようで、「むう・・・・・」と唸ってから、扉を全開にする。

十香が服を着ていたが、それは何時もの制服ではなく、琴里が貸したのだろうか。士道がたまに着ていた部屋着だった。

士道でも一回りサイズが大きいそれを、十香だと二回り程サイズが大きいため、襟元から鎖骨が覗いている。

だが、士道がそんな事を気にする事なく、十香に再び先程言った質問を言った。

 

「そういえば、何で家に十香がいるの?」

 

しかし十香は、士道が何を言っているのかわからないといった感で首を傾げると、

 

「何?妹から聞いていないのか?なにやら、ナントカ訓練だとかで、しばらくの間ここに厄介になれと言われたのだ」

 

「へぇ・・・まぁ琴里が決めた事なら別にいいや」

 

士道は十香にそう言ってから、十香の横を通り過ぎる。

 

「話はまた、琴里に聞くから十香は好きにしといて」

 

そう言って士道は脱衣所の鍵を閉めた。

 

 

◇◇◇

 

 

「ねぇ、琴里。これってどういうこと?」

 

シャワーを浴びた士道は何時もの格好でテーブルの向かいに座った琴里と令音に視線を向けた。

今三人がいるのは、五河家二階に位置する琴里の部屋だった。

六畳くらいのスペースに、パステルカラーのタンスやベッドが配置され、そこかしこに、ファンシーな小物やぬいぐるみなどが所狭しと並んでいる。

本当ならリビングで話すべき話なのだろうが、十香の耳に入れたくない話もあるということで、こちらに場所を移したのだ。

ちなみに十香は今、リビングでアニメの再放送に夢中になっている。とりあえずあと二十分は大人しくしているだろう。

 

「んーとね」

 

と、琴里が、指で頬をぷにっ、と持ち上げた。

 

「今日からしばらくの間、十香がうちに住むことになったのだ!」

 

そして、えっへんと胸を反らすようにしながら、無邪気な笑顔を作る。

 

「それはさっき十香に聞いた。でも何で俺達の家なの?確かアンタ達の所で住んでるって話だったはずだけど?」

 

「それは、私から話そう。シン」

 

「ん?」

 

士道は令音に目を向けると、静かな声でいい始めた。

 

「・・・理由は大きく分けて二つある」

 

「・・・一つは───十香のアフターケアのためさ」

 

「アフターケア?」

 

余り聞きなれない言葉に頭を傾げながらも士道は答える。

 

「・・・シン。君は先月、口づけによって十香の力を封印したね?」

 

「あー、うん。それがどうしたの?」

 

「・・・まあ、そこまではいいのだが、一つ問題があってね。・・・今、シンと十香の間には、目に見えない経路のようなものが通っている状態なんだ」

 

「パス?バルバトスと繋がってる時みたいなもんか」

 

「それがどういう物か分からないが、そんなものと思ってくれていい。まあ、簡単に言うと、十香の精神状態が不安定になると、君の身体に封印してある精霊の力が、逆流してしまう恐れがあるということさ」

 

「へぇ・・・じゃあ前みたいに俺が死んだら、その力が元に戻る場合があるってこと?」

 

「まぁ、そうなるね」

 

士道の淡々とした調子を知ってか知らずか、令音が静かな声で言葉を続ける。

 

「・・・・十香の精神状態は常にモニタリングしているのだが・・・どうも、〈フラクシナス〉にいると、学校にいるときに比べて、ストレス値の蓄積が激しいんだ」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

「・・・ああ。それに、一日二回の定期検査もあまりお気に召さないようだ。今はまだ許容範囲内だが、このまま放置しておくのも好手とは言い難い。───そこで、だ」

 

令音が、立てた指をあごに当てた。

 

「・・・・検査の結果も安定してきたし、そろそろ〈フラクシナス〉外部に、十香の住居を移そうということになってね」

 

「そうなんだ」

 

「・・・ああ。というわけで、精霊用の特設住宅ができるまでの間、十香をこの家に住まわせることになったんだ」

 

「へぇ、そうなんだ。だったらさっさと引っ越しの準備しないといけないね」

 

「・・・理由は聞かないのかい?」

 

士道が二つ返事で了承したことに、令音は士道にその理由を聞いてみる。が、令音の考えていた答えとは予想外

の返事が返ってきた。

 

「・・・別に、その辺り気にする必要無いだろ。それにアンタらがちゃんとしてくれるだろうし」

 

「・・・そうか」

 

「・・・で、もう一つは?」

 

「・・・・・ああ、これはもっと単純明快だ。──シン。君の、訓練のためさ」

 

「そういえば十香も言ってたけど、何の訓練するの?精霊って奴はもういないんでしょ?」

 

士道が言うと、令音はゆらゆらとした調子で首を横に振った。

 

「・・・精霊が十香一人だなんて、誰が言ったのかな?」

 

「違うの?」

 

「・・・ああ、空間震を起こす特殊災害指定生物───通称・精霊は、十香だけではない。現在の段階でも、彼女の他に数種が確認されている」

 

「他にもいるんだ」

 

士道は、複数精霊がいると言われても、特にこれといった感情は抱かなかった。

 

「・・・・ああ、だからシン。君には引き続き、精霊との会話役を任じてもらいたい。そのための訓練さ」

 

「あんまり話し合いは得意じゃないけど、やれと言われたらやるよ。俺は」

 

士道のその答えに琴里はニヤリと唇を歪めて、士道に言った。

 

「良く言ったわ、士道。ならこの話はおしまい。私達からも、士道に聞きたい事があるからいいかしら?」

 

「まぁ、いいけど。でもあんまり答えられないかもしれないよ?」

 

「それは構わないわ。士道はあんまり賢くないからそこまで詳しいことは期待してないわよ」

 

「分かった」

 

士道は琴里達にそう言ってズボンのポケットから棒状の食べ物を取り出して、包み紙を剥がして口に咥えた。

そして一口、咀嚼して飲み込むと、琴里に言った。

 

「で、聞きたいことってなに?」

 

士道の問いに答えたのは令音だった。

 

「・・・シン。君の身体検査をした時に分かったことなのだが、君の背中に付いているそれは何かね?」

 

「・・・阿頼耶識のこと?」

 

士道は素っ気なく令音に言って答える。

 

「・・・ああ、その阿頼耶識といったかな。ちゃんと検査してみれば、君の脊髄に完全に同化している。君はそのようなモノを何処で着けたのかな?」

 

「さあ?"こっちじゃ"あんまり覚えてない」

 

「つまり何処でつけたかは覚えていないと?」

 

「うん」

 

士道はそう言ってもう一口、口に入れて頬張る。

令音はそんな士道を見て何の気にもせず、質問していく。

 

「・・・では、その阿頼耶識は一体何に使うものかな?」

 

「モビルワーカーや、モビルスーツを動かすのに使うけど、それ以外だと特にない」

 

モビルワーカー。モビルスーツ。それはおとぎ話の厄祭戦という戦争で出てくる言葉だ。

では、士道のつけている阿頼耶識というモノは、その厄祭戦に関係するものなのだろうか。

その事を聞くべく、令音は士道に言う。

 

「・・・では、どういう風に動かすんだい?そのモビルスーツというのを」

 

「自分が考えてる事をそのまま。後は勘」

 

「勘って・・・」

 

令音の隣で琴里は頬をひきつらせるが、それに気にする事なく令音は言った。

 

「・・・大体分かった。つまり、本来コンピュータで情報処理をする所を自分の脳でする事によって、本来機械などでは出来ない生身のような動きを出来るようにする。と、言った所か」

 

「まぁ、聞いた話だとそんな感じ」

 

令音の予想が大体あっていたので士道はそう言って令音をみる。

琴里はその事を聞いて、目を見開けながら焦るような声で言った。

 

「ちょっと待って。それじゃあ士道の脳にはそのモビルスーツを動かす度に莫大な負荷がかかるじゃない!?」

 

「ん?慣れれば平気だよ。酷かったのが、最初だけでそれ以外は特に問題ないから」

 

・・・となんとも無いように士道は言うが、まだ、士道が三日月だった頃にリミッターを解除した事によって手足が動かなくなった事を気にせず、問題ないと言う辺り、どこか他の人とはずれていた。

そんな事を知らない琴里達は、再び士道に聞いていく。

 

「・・・では、これが最後の質問だ・・・君のその"バルバトスという霊装は何処で手に入れたんだい"?」

 

その問いに─────

 

「"最初からだよ"。俺はバルバトスが無いと、オルガや皆を守れないから。だから俺は皆を守る為にバルバトスに乗るんだ。それにオルガの命令を破る訳にはいかない」

 

士道の答えに琴里は驚愕し、令音は少しだけ表情を変える。

 

「・・・そうか。欲しい情報は取れた。ありがとう、シン」

 

「別にこれも、仕事なんでしょ?気にしてないよ」

 

士道はそう言って立ち上がり、部屋を出ていこうとする。

 

「まちたまえ、シン」

 

「何?」

 

「君は、"人を殺した事はあるのかい"?」

 

それは前に十香に言っていたあの言葉。

その問いに───────

 

「あるよ。あの日に、オルガが本当の居場所に連れて行ってくれるって言った時に」

 

その言葉を言った時に何故だか、琴里と令音には士道とは違う別の少年の姿が見えた気がした。

 

 




感想誤字報告よろしくお願いします。


良ければ皆さん。私の活動報告に今後のデート・ア・オルフェンズについての内容を多数決で決めさせていただきます。
良ければ、ジャンジャン投稿してください!



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第三話

ランキング50以内に、入っててビックリした鉄血です。
来週、投稿出来るか分からないので投稿します。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。

「この声・・・あんたチョコの隣の」

「ガエリオ・ボードウィンだ!!」

「ガリガリ?」

「貴様わざとか!!」

三日月・オーガス

ガエリオ・ボードウィン


あの後、十香の荷物を全て空き部屋に移動させた士道は流し台に溜まった皿を洗って、自分の部屋に戻っていった。

時計の針を見ると、もう十一時を回っていた。

十香と琴里は、既に各々の部屋で寝ている状態だ。

普段はこの後にトレーニングを行っているのだが、今日はもう遅い。

 

「明日も早いし、今日はもう寝るか」

 

士道はそう呟いて慣れないベッドに入り、眠りに落ちた。

 

『・・・里。琴里、起きてくれ。時間だ』

 

皆が寝静まった深夜。右耳の鼓膜が震わされる感覚に、琴里は眉をピクリと動かす。

 

「ぅ・・・んー・・・」

 

だが、それで起きるほど、五河琴里の眠りは浅くはない。

ベッドの上で身をよじると、タオルケットを身体に巻き付けるように寝返りを打ち、再びすやすやと穏やかな寝息を立て始める。

 

『・・・琴里。琴里。寝直さないでくれ』

 

「んー・・・・・」

 

琴里は手の甲でショボショボの目を擦り、のろのろと身を起こした。

 

「なぁーにぃ・・・おにーちゃぁん・・・」

 

『・・・悪いがシンではない。私だ、令音だ』

 

小さく首をひねり、ふぁぁぁぁぁぁああ・・・と大きなあくびを一つ。

 

「令音ぇ・・・?どぉしたの、こんな時間に・・・」

 

琴里は片手で目を擦りながら、枕元をぺしぺしと叩き、手探りで携帯電話を発見すると、画面を点灯させて表示された時刻に目を這わせた。

午前三時二十分。大人も子供も皆、寝ている時間だ。

 

『・・・準備ができた。指示を頼む』

 

言われて、琴里は、「あ」と小さく口を開いた。

 

「ん・・・そっか・・・起こしてって頼んでたっけ・・・」

 

琴里は令音のように頭をぐらぐらと揺らしながら、再び枕元をぺしぺしと叩いていった。

そしてそこに置かれていた一口サイズの棒つきキャンディを手に取ると、雑に包装を破りとって口に放り込んだ。

 

「──────っ!」

 

瞬間、舌の上で爆発が起こるかのような感覚が脳に伝わり、琴里は全身をブルブルと震わせた。同時に、スーッとした刺激的な香りが鼻腔を通り抜ける。

琴里は黒のリボンを手に取ると、髪をいつものツインテールに括った。

 

「あー・・・目が覚めたわ。悪いわね、令音」

 

『・・・構わないさ。───早速だが、報告だ。シンが熟睡状態に入ったよ』

 

「そう。それで、要員の方は?」

 

『・・・言われたとおり待機させてあるよ。いつでもいける』

 

「けっこう」

 

琴里はそう言うと、足音を殺して部屋を出、階段を降りて玄関までたどり着いた。

そして、カチャリと音をさせて、錠を開ける。

玄関前には、黒い戦闘服に目出し帽という、特殊部隊みたいな格好をした男たちが数名、待機していた。

「ターゲットは二階よ。頼むわ」

 

「了解」

 

男たちは琴里の指示に従い、足音なく五河家に侵入していった。

 

「・・・さてと、うまくいくかしら?」

 

琴里はそう呟きながら士道の部屋を見る。

いかんせん、昼間の作戦は全て失敗に終わったのだ。

士道の天然さというか、なんというべきか、あれやこれやと回避されて全て空回りで終わっている。

士道が寝ている今なら、この作戦は成功するだろう。

そう思いながら、琴里は背を向けた時────。

 

ダァァァン!!

 

まるで重い物を地面に叩きつけるような音と数人の男のうめき声が士道の部屋から聞こえてきた。

 

「・・・嘘でしょ?」

 

琴里は顔をひきつらせながら士道の部屋に向かう。そしてその部屋の光景に琴里は絶句した。

琴里の目に映っていたのはあり得ない光景だった。

数人いた男の内二人は、床に叩きつけられて伸びていた。

そして後の一人は・・・・。

 

「ガ・・・・ッ!?ガハ・・・助け!?・・・・」

 

「・・・・・・」

 

士道に片手で首を締め上げられ、壁に叩きつけられるように密着し、もがき苦しんでいた。

士道はその状態の男を見ても表情を変えないまま、不機嫌そうな顔でその男を見ている。

 

「ちょっ!?士道!?待ちなさい!!今すぐ手を離して!?」

 

琴里はその様子を見て、士道にすぐに止めるよう慌てて言った。

 

「・・・ん?」

 

琴里の言葉に士道はすぐに男の首もとから手を離すと、琴里を見て言う。

 

「どうしたの?琴里」

 

「どうしたの、じゃないわよ!?どうしてこんなことしたの!?」

 

琴里の言葉に士道はすぐに答える。

 

「いや・・・コイツらが俺に何かしようとしてたから・・・」

 

士道がそう言うと、琴里はすぐにこの手のネタばらしをする。

 

「士道待ってそれはスタッフ!?〈ラタトスク〉のスタッフだから!?」

 

「・・・スタッフ?じゃあ・・・」

 

士道は琴里の言葉を聞き、先程まで締め上げていた男を見て、状況を理解した。

 

「・・・あの・・・すみませんでした」

 

「・・・何が・・・すみませんでしただ・・!」

 

男は士道に拳を振りかぶるも、士道はそれを横へずれて回避する。

そして再び、警戒するように士道はその男を見る。

すると琴里はその男に言った。

 

「・・・ごめんなさい。今は下がって」

 

「・・・了解」

 

琴里の言葉にその男は士道の部屋から出ていく。

そして琴里は士道に言った。

 

「・・・はぁ、これじゃあ訓練どころの話じゃないわね」

 

「・・・えっと・・・さっきはごめん」

 

士道は琴里にそう言うが、琴里は別に気にしていないという風に言う。

 

「別に気にしなくていいわよ。先に言わなかった私も悪かったし・・・」

 

琴里も反省するように士道に言った。

 

「次は言ってくれたらちゃんとするよ」

 

「・・・ええ、次はそうするわ」

 

士道の言葉に琴里は頭を悩ませながらも、他の事を考えていた。

今のままだときっといつか、絶対に不味い事が起きるという予感が琴里の中で渦巻いていた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「おーう五河。・・・て、どうしたんだ、おまえ」

 

朝、士道は教室に入るなりかけられたのは、殿町の怪訝そうな声だった。

 

「・・・ん、なに?」

 

「・・・いや、大分今のおまえかなりピリピリしてるからさ、なんかあったのかってな」

 

「何にもないよ。ただ、夜中に面倒な事があっただけ」

 

士道がそう言って鞄を担ぎ直すと、珍しく本を読んでいる殿町に聞いた。

 

「そういえば、殿町は何読んでるの?」

 

殿町は、シノ辺りが好きであろう本を深刻そうに眺めていたのである。

 

「ああ、これか。───そうだ、五河にも訊いておきたいんだが・・・」

「ん?」

 

士道が首を傾げると、殿町はいつになく真剣な様子で言葉を続ける。

 

「ナースと巫女とメイド・・・どれがいいと思う?」

 

「・・・・は?」

 

よく分からない単語に士道は間の抜けた声を出す。

 

「読者投票で次号のグラビアのコスチュームが決まるらしいんだが・・・悩むんだよなあ」

 

「・・・あっそ」

 

グラビアだとかコスチュームだとか分からない言葉を言う殿町に、士道は興味をなくして自分の席に向かおうとする。と、殿町が此方に雑誌を突きつけてきた。

 

「で、おまえはどれがいいと思う!?」

 

「・・・ん?・・・じゃあ、これ」

 

士道が適当に指を指すと、殿町がピクリと眉を動かした。

 

「どうしたの?」

 

「───まさかおまえがメイド好きだったとはな!悪いが俺たちの友情はここまでだ!」

 

「・・・あっそ」

 

士道は殿町にそう言って、自分の席に歩いていく。

 

「あっ、おい、どこに行くんだ五河!」

 

「・・・友情はここまでなんでしょ?」

 

「なんだよノリ悪すぎだろおーい。メイド好きとナース好きが手を取り合う。そんな世界があってもいいとは思いませんかー」

 

「・・・俺にそんな事言っても分からないって殿町は知ってるだろ。大体その"なーす"だとか"めいど"とかあんまり良く分かんないし」

 

士道はそう言って自分の席に鞄を置いた。

その際、既に隣の席に着き、分厚い技術書を読んでいた折紙が、ちらりと士道に目を向けてくる。

 

「・・・・・」

 

「・・・・なに?」

 

こちらを見てくる折紙に士道は眉間を細めていうと、折紙の方から挨拶をしてきた。

 

「おはよう」

 

「・・・・おはよう」

 

士道は彼女の挨拶にぶっきらぼうに返すと、教室から出ていこうとする。

すると後ろから抑揚のない声で、折紙が声をかけてきた。

 

「メイド?」

 

「・・・あん?」

 

どうやらさっきのやり取りを聞いていたようだ。

士道はその答えに言った。

 

「・・・別に、アンタには関係ないだろ」

 

「そう」

 

折紙はそうとだけ言って、再び書面に視線を戻した。

 

「おはよー」

 

と、次いで殿町が手を振るが、折紙はぴくりとも顔を動かさなかった。

殿町は大仰に肩をすくめ、士道の脇腹をぐりぐりと押してくる。

 

「毎度のことだけど、なーんでおまえだけ挨拶してもらえんだよー。くぬっ、くぬっ」

 

「知らない」

 

鬱陶しげに殿町を振り払い、席に着く。

と、そこで教室の扉がガラッと開かれ、十香が入ってきた。

無論十香は今五河家に住んでいるわけだから、通学路もまったく同じなのだが、一緒に登校すると隣にいる折紙に勘ぐられそうだったため、家を出る時間をずらしたのだ。

ただでさえ、十香が転入時に発してくれた台詞が、未だに尾を引いているので、新たな爆弾を投下されてはたまらなかった。

 

「・・・・・」

 

十香は無言のまま士道の右隣の席に座ると、視線を合わせぬまま唇を開いてきた。

 

「・・・その、昨日は世話になった」

 

昨日の引っ越しの件の事だろう。士道はなんとも無いように頭をかく。

 

「ああ、別にいいよ。ちょうどいい運動になったし」

 

「む?そうか」

 

十香が小さくうなずく。そこでようやく───士道は気がついた。

 

「・・・ん?」

 

二人の会話を聞いた数名のクラスメートが、興味深げな視線を送ってきているのに。

しかし、十香はまだそれに気づいていないらしい。

 

「・・・なに?」

 

士道はそう言って周りのクラスメートを見る。

が、周りは何も言わず視線を士道から反らした。

 

「・・・・?」

 

士道は目を細めながら、視線を十香に戻す。

 

「・・・・・」

 

なんだか、すぐにボロが出そうな気がする。士道は少しだけ息を吐いた。

───そして、その懸念は以外と早く的中してしまうことになるのだった。




感想誤字報告よろしくです。


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第五話

えー、先週は投稿出来なくてスミマセン。
どうしても仕事の関係上、今の時期に休みが余り取れないので投稿が遅れました。
もしかしたら、暫くはこんな事があるかもしれませんが気長にお待ちください。
ソード・オラトリア・オルフェンズも地味道に投稿していきますのでよろしくです。メインはこっちだけど。
では、どうぞ!

──────────────────────

「ああー!!ヤマギやべぇ!スラスターのガス補給するの忘れたー!」

「ええっ!?」

「どうしよう・・・」

ヤマギ・ギルマトン

ナディ・雪之丞・カッサパ


士道が画面に目をやると、今し方少女──〈ハーミット〉と呼ばれる精霊がいた場所に煙が渦巻いていた。

恐らく、ミサイルか何かを撃ち込まれたのだろう。

そしてその周囲には、物々しい機械の鎧を着込んだ人間たちが数名、浮遊していた。

陸上自衛隊・対精霊部隊。通称AST。

琴里たちの組織〈ラタトスク〉とは違い、武力を以て精霊を排除する事を目的とした特殊部隊である。

と、煙の中から、小さなシルエットがぴょん、と飛び出した。〈ハーミット〉である。

彼女は左手のパペットを掲げるような格好のまま宙を舞うと、周囲を固めるAST隊員たちの間を抜けるように身を捻り、空に躍った。

だが、AST隊員たちはすぐにそれに反応すると、一斉に〈ハーミット〉を追跡する。

そしてそのまま、身体中に装着していた武器から、夥しい量の弾薬を発射する。

 

「・・・当たるね」

 

士道はそう呟くと、画面越しの警告には何の力もなく、AST隊員の放った無数のミサイルや弾丸は、無慈悲に〈ハーミット〉の身体に吸い込まれていった。

そして再び、〈ハーミット〉は反撃しようとはせず、ただ逃げ回るだけだった。

 

「・・・攻撃しない?いや、出来ないのか」

 

士道は前にあった彼女の性格を思いだす。

人も殺せないような、タカキみたいな性格だ。

だったら逃げ回るのも仕方ないのだろう。そして士道のその呟きに琴里は言う。

 

「ええ。いつものことよ。〈ハーミット〉は精霊の中でも極めて大人しいタイプだし」

 

「・・・へぇ」

 

士道は興味などないように答えると、再び画面を見る。

ぴょんぴょんと飛び回って素早い動きでASTから逃れようとする〈ハーミット〉に、ミサイルや銃弾を撃つAST達を見て士道は言った。

 

「琴里」

 

「何よ」

 

「精霊の力がなくなれば、アイツもASTに狙われる事はなくなるの?」

 

士道が言うと、琴里は眉をピクリと動かして、士道へ視線を向けて言った。

 

「ええ。───その通りよ」

 

「ふーん。じゃあ、さっさと行くか。琴里、準備お願い」

 

「───ふふ」

 

士道はそう言うと、琴里はどこか嬉しそうに、キャンディの棒をピンと立てた。

 

「それでこそ───私のおにーちゃんよ」

 

「別に。仕事だよ」

 

士道はそう言って身体の向きを変えて歩き出す。

琴里も艦橋正面へ向きを変え、艦橋下段のクルーたちに向かって声を投げた。

 

「総員、第一級攻略準備!」

 

『はッ!』

 

クルーたちが一斉にコンソールを操作し始める。

琴里はそんな光景を眺めながら、唇を舐めた。

 

「さあ───私たちのデートを始めましょう」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───なあ、タマちゃん先生よ」

 

高校地下に設けられた大型シェルターに避難していた十香は、そわそわする心地を抑えるようにスカートの裾をきゅッと握りながら、すぐ隣に座っていた珠恵に声をかけた。

 

「や、夜刀神さんまでその呼び方・・・」

 

先ほどよりは幾分か落ち着いた様子で、珠恵が顔を向けてくる。

しかし十香は、抗議めいた視線など気にもとめずに、言葉を続けた。

 

「先ほどの音は、一体なんなのだ?ここは一体どういう場所なのだ?」

 

「な、何言ってるんですかぁ。さっきのは警報ですよ、空間震警報。空間震が起こる可能性があるから、みんな地下シェルターに避難してるんです。ここにいれば安全ですからね」

 

「空間震・・・?なんだそれは」

 

十香が首をかしげると、タマちゃんはさらに予想外といった表情を作ってきた。

 

「え?空間震ですよ?知らないんですか?」

 

「・・・・むぅ」

 

言われて、十香は気まずげに口を結んだ。

どうやらその空間震とやらは、誰もが知っている言葉のようだ。

もしかしたらまずいことを訊いてしまったかもしれない。十香は士道から余り目立つ言動を控えるように言われているのだ。極端な無知は、晒さないに越したことはない。

と、そんな沈黙をどう受け取ったのか、タマちゃんが慌てたように手を振ってきた。

 

「あ、いえいえ、大丈夫ですよ。そうですよね、知らない人だっていますよね」

 

「・・・ぬ、すまん」

 

タマちゃんはもう一度「いえいえ」と言うと、指をピンと立ててきた。

 

「空間震っていうのは、突発性広域災害の総称です。まあ、簡単に言えば、ある日突然世界のどこかで、どんっ、と爆発が起こってしまうんですよ。気圧変化説やプラズマ説など、様々な説が唱えられていますが、原因は解明されていません」

 

「───爆発、だと?」

 

タマちゃんの説明に、十香は眉をひそめる。

 

「はい。今までで一番大きかったのは、およそ三十年前。ユーラシア大空災ですね。実に一億五千万人あまりの死傷者を出した、有史以来最悪の大災害です」

 

「な、なんだそれは、危ないではないか!」

 

「ええ。だからみんなシェルターに避難するんです。───まぁ、現在はそこまで大きな空間震は起きていませんが、この近辺は、数年前から小規模な爆発が頻発しているんです」

 

一通り説明をしたタマちゃんの言葉に、十香は眉根を寄せた。

 

「な、ならシドーはそんな危険なときに、どこへ行ったのだ?」

 

「え・・・?え、ええと・・・それは・・・・」

 

珠恵は、困ったように眼鏡を動かしながら、周囲に座り込んだ生徒たちを見渡した。

 

「・・・・・・」

 

十香は無言のまま、一層強くスカートの裾を握りしめる。

 

「・・・・・シドー」

 

どく、どく、と胸の辺りから音が聞こえてくる。

なぜかわからないが・・・とても嫌な予感がした。そう。どこか遠くへ行ってしまうような感覚。

そして、動悸が最高潮に達したとき。

 

「・・・・・っ」

 

十香は、バッと顔を上げた。

 

 

 

 

 

「え・・・・と。だ、大丈夫ですよ。ちょっとこの辺りには見えませんけど・・・きっと忘れ物か何かを取りに戻っただけだと思いますし、きっともうシェルターのどこかに・・・・」

 

と、シェルターの中を見渡していた珠恵が、十香に視線を戻すと。

 

「あれ・・・・?や、夜刀神さん?」

 

そこに、十香の姿はもうなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「・・・・ここでいいの?」

 

〈フラクシナス〉下部に設けられた転送装置で地上まで送られた士道は、右耳に装着した小型のインカムに向かって声を投げた。

 

『ええ。精霊も建物内に入ったわ。ファーストコンタクトを間違わないようにね』

 

「分かってる」

 

士道はそうと言って、インカムから手を離す。

そして、周りを警戒しながら昨日あった〈ハーミット〉を探し始めた。

士道は今、商店街の先に聳える大型のデパートの中にいた。

なんでも〈ハーミット〉は、比較的出現回数が多い精霊らしく、その行動パターンの統計と、令音の思考解析を組み合わせれば、おおよその進路に目算がつくのだという。

無論、ASTの出方によっては微妙に進路が変わってしまう可能性もあったが、そのときはまた士道を回収して、次の予測地点に向かえばいいとのことだった。

ASTの主要装備であるCR─ユニットは、屋内での戦闘は不向きである。

無論、十香のときのように建物を破壊して精霊をあぶり出そうとしてくる可能性もあったが、とりあえずしばらくの間は、精霊が建物内から出てくるのを待つだろう。

そしてその間が、戦場において士道が精霊と会話するための貴重な時間なのであった。

最初の時は、士道がバルバトスで街中に降りてASTを片付けてから接触という手段もあったのだが、いかんせん士道がバルバトスを顕現させると、バルバトスの巨体による被害、都市部機構の停止、通信機の使用不可、電気機器などの電気を使うものが軒並み機能しなくなってしまうので、よっぽどのことがない限りはバルバトスの使用を許可されていなかった。

その代わりに、士道には護身用に拳銃を渡されていた。

実弾と麻酔弾、両方を渡され今この場へと立っている。

 

「バルバトスが使えないから、暫くコイツでやるしかないか」

 

士道はカチャっと手の拳銃のセーフティをいれた後、実弾をセットして懐のポケットへと入れる。

 

「・・・・んじゃ、探すか」

 

士道がそう言った瞬間に右耳のインカムから琴里の声が聞こえてきた。

 

『───士道。〈ハーミット〉の反応がフロア内に入ったわ』

 

「・・・・・分かった」

 

士道が琴里にそう言った瞬間。

 

『───君も、よしのんをいじめにきたのかなぁ・・・?』

 

「・・・・・!!」

 

急に頭上からそんな声が響き、士道は懐の銃を直ぐ様取り出し、セーフティを解除した後、頭上へと向ける。

そこには、件の少女〈ハーミット〉が、重力に逆らうような逆さの状態で浮遊していた。

 

『 駄目だよー。よしのんが優しいからってあんまりおイタしちゃ。・・・・って、んん?』

 

と、少女は逆さになっていた身体を空中でぐるんっ、と元に戻して、床に降りたった。

 

「なんだ、アンタか」

 

士道は敵でなかった事を知り、拳銃を上に上げた後、足元に銃口を向けた。

そんな士道に、彼女はパクパクとパペットの口を動かす。

 

『ぉおやぁ?誰かと思ったら、ラッキースケベのおにーさんじゃない』

 

士道の顔をまじまじと見たのち、パペットが器用にぽん、と手を打ってくる。

 

「そのらっきーなんとかってのは、あんまり分かんないけど、久しぶり」

 

士道は気にしてないように彼女に言った。

すると、ハーミットはそんな士道にパペットを士道の顔に視線を合わせて口をパクパク動かす。

 

『やー、しかしラッキースケベのおにーさん。珍しいところで会うねー。ぁっはっは、おにーさんみたいなのは歓迎よー?どーもみんな、よしのんの事が嫌いみたいでさー。こっちに引っ張られて出てくると、すーぐチクチク攻撃してくるんだよねぇー』

 

言って、パペットが、またも笑ってみせる。

 

「そう言うアンタはあんまり気にしてないみたいだね」

 

士道がそう言うと、琴里もインカム越しから聞こえてくる。

 

『随分とまあ、陽気な精霊ね』

 

右耳に、士道が思ったままの言葉が聞こえてくる。

やはり、琴里もそう思ったらしい。

そしてふと、〈ハーミット〉の言葉の中に、気になることがあったのでハーミットに言った。

 

「なあ・・・よしのん、ってなに?」

 

士道が言うと、パペットは驚きを表現するように、口を大きく開けた。

 

『ああっ、なんてみすていくっ!よしのんともあろう者が、自己紹介を忘れるだなんてっ!よしのんはよしのんのナ・マ・エ。可愛いっしょ?可愛いっしょ?』

 

と、パペットが士道にずずいっと顔を近づけてくる。

 

「・・・う、うん」

 

やたらハイテンションなパペットに気圧されるように士道は頷いた。

すると、右耳に琴里の怪訝そうな声が聞こえてきた。

 

『────よしのん、ね。ふうん、この精霊は十香と違って、名前の情報を持っているのね』

 

「そうだね」

 

言われてみればその通りだ。十香は、名前を持っていなかった。

『十香』いうのは、士道がつけた名前であり、彼女自身が持っていた名前ではない。

と、パペットが再びずずいっ、と顔を寄せて来てその思案は中断された。

 

『ぅんで?おにーさんはお名前なんてーの?』

 

「五河士道」

 

士道はぶっきらぼうによしのんに言う。

 

『士道くんねー。カッコいい名前じゃないの。ま、よしのんには勝てないけどねぇー』

 

「あー、うん」

 

士道はそう曖昧に言ってよしのんを見て言った。

 

「なぁ、何でアンタはこんなトコにいるの?」

 

『んー、あの飛んでる人達から逃げてきてさー、建物の中にいればあんまり狙われないから此処にいるんだよねー』

 

「そうなんだ」

 

よしのんの問いに士道はそう答えて、本題に入った。

 

「んじゃ、どうせ此処にいても暇なんだろ?だったら一緒に見てまわる?」

 

士道がそう言うと、よしのんはパペットの小さな手をバタバタさせて言ってきた。

 

『ほっほー!いいねー。見かけによらず大胆に誘ってくれるじゃーないの。うふん、もちろんオーケイよん。というか、ようやくまともに話せる人に出会えたんだし、よしのんからお願いしたいくらいだよー』

 

言って、カラカラと笑う。

 

「・・・・調子狂うな・・・」

 

士道は琴里やよしのんに聞こえない声で呟きながら、『よしのん』とともに、デパートの中を歩いていった。




感想、評価、誤字報告よろしくです。


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第四話

日曜日にランキングを見たら9位まで上がっててビックリした鉄血です。
皆、三日月大好きすぎでしょ・・・
また、只今、皆様、読者のメッセージを見て、三日月が主人公のソード・オラトリア製作中です。
正直にいいます。私、本ではざっとしか見てないし、原作のだんまちはアニメでしかみた事ないので過度な期待はNGです。
メインはこちらを重視していきますので、心配しないでください。
では、どうぞ!


「不可能を可能に出来なきゃ鉄華団は終了だ」

オルガ・イツカ



四限目の授業の終了のチャイムが校舎中に鳴り響き、昼休みの開始が示される。

それと同時に────

 

「シドー!昼餉だ!」

 

「・・・・・・」

 

士道の机に、左右からがっしゃーん!と机がドッキングされた。

無論、右は十香、左は折紙である。

 

「・・・ぬ、なんだ、貴様。邪魔だぞ」

 

「それはこちらの台詞」

 

士道を挟んで、左右から鋭い視線が放たれる。

 

「いい加減、飯の時ぐらい喧嘩しないでくれる?」

 

士道がキツく言うと、渋々といった様子で、十香と折紙は大人しく席に着いた。

そして二人とも、自分の鞄から弁当を取り出す。

士道はそんな二人に合わせるように自分の弁当を机の上に出すと、二人と一緒に蓋を開ける。

そして───

 

「・・・・・・」

 

折紙が目をほんの少しだけ見開くのを見て、士道は首を傾げる。

士道の弁当は、朝自分で作ってきたものである。もちろん、いつも琴里のものも一緒に作っている。

無論───急遽弁当がもう一人分必要になったとしても、それは士道の仕事だった。

 

「・・・・・」

 

折紙が、冷たい視線を、自分と十香の弁当箱の中身に交互に這わせる。

───まったく同じメニューで揃えられた、二人の弁当に。

 

「何?人の昼飯見て?見てたってやんないよ」

 

士道はそう言って、十香と一緒に怪訝そうな目を向ける。

 

「どういう、こと?」

 

「は?」

 

折紙から問われ、士道は怪訝そうに折紙を見る。

折紙は、十香の弁当箱の蓋を持ち上げて言った。

 

「これは今から一五四日前、あなたが駅前のディスカウントショップにて一五八十円で購入したのち、使用し続けているもの。彼女の物ではない」

 

「なんで、そんなこと知ってんの?」

 

「それは今重要ではない」

 

折紙の言葉に士道はさらに目を細める。

 

(どっかから俺の事を監視してるな。コイツ)

 

士道はそう思いながら、折紙を見る。

何の感情もない能面な顔に士道は警戒を高める。

 

「むう、さっきから二人で何の話をしているのだ!仲間はずれにするな!」

 

横から、不満げに頬を膨らませた十香が声を上げてくる。

と、そのとき。

 

 

 

ウウウウウウウウウウウウ──────

 

 

 

街中に、けたたましい警報が鳴り響く。

瞬間、ざわついていた昼休みの教室が、水を打つように静まりかえった。

────空間震警報。

およそ三十年前より人類を脅かす、最悪の災厄。空間震と称される、災害の予兆である。

 

「・・・・・・」

 

折紙は一瞬俊巡のようなものを見せながらも、即座に席を立ち、素晴らしい速さで教室を出て行ってしまった。

 

「・・・・ッ」

 

士道は警戒しながらも、その背を目で追っていくが、教室を出た後、興味をなくし十香を見る。

と、そこで教室の入り口から、ぼうっとした様子の声が響いてきた。

 

「・・・皆、警報だ。すぐ地下シェルターに避難してくれ」

 

白衣を纏った眼鏡の物理教師───令音が、廊下の方へと指を向ける。

生徒たちはごくりと唾液を飲み下したあと、次々と廊下に出ていった。

 

「ぬ?シドー、一体皆どこへ行くのだ?」

 

十香が、そんなクラスメートたちの様子を見て首を傾げてくる。

 

「シェルターだよ。学校の地下にあるんだ」

 

「シェルター?」

 

「とりあえず説明はあと。俺達も行くよ、十香」

 

「ぬ、ぬう」

 

十香は手を付けていない弁当に名残惜しそうな視線を残しながらも、士道の指示にしたがって立ち上がった。

そして、ともにクラスメートたちの後について廊下に出ようとしたところで。

 

「・・・・シン。君はこっちだ」

 

士道は、令音に首根っこをひっ掴まれた。

 

「・・・なに?何処に行くの?眠そうな人?」

 

「・・・決まっているだろう、〈フラクシナス〉だ」

士道が問うと、他の生徒に聞こえないよう声をひそめながら、令音が言ってきた。

 

「・・・昨日の今日だ。今後のことについて、まだ結論は出ていないかもしれない。だが・・・いや、だからこそ、君には見ておいてほしい。精霊と、それを取り巻く現状を」

 

「・・・・わかった。今行く」

 

令音は眠たげな半眼のまま小さく首肯すると、生徒たちが全員列に並ぶのを見てから、昇降口の方に顔を向ける。

 

「・・・さあ、急ごう。空間震まで、もう間もない」

 

「分かってる。───そう言えば、十香は一緒に連れてかなくていいの?」

 

士道は十香の方に目をやりながら、言う。

十香はといえば、廊下にずらりと列を作りながら避難するクラスメートたちに、驚いたような視線を送っていた。

 

「・・・ああ、そのことか。───うむ、十香は皆と一緒にシェルターに避難させてしまおう」

 

「それでいいの?」

 

「・・・ああ。力を封印された状態の十香は人間とそう変わらない。それに、精霊とASTの戦いを見て、自分のときの事を思い出されても困ってしまう。言っただろう?〈ラタトスク〉としては、できるだけ十香のストレスを蓄積させたくないんだ」

 

「ふーん。あっそ」

 

と、士道がそう言った所で、廊下の奥の方から、甲高い声が響いてきた。

 

「ほ、ほらっ、五河くんに夜刀神さん、それに村雨先生までっ!そっ、そこで立ち止まらないでくださいっ!早く避難しないと危険が危ないですよ!」

 

士道の担任の岡峰珠恵教諭・通称タマちゃんが、小さな肩をいからせながら、焦ったような調子で言ってくる。

彼女の言葉の意味が支離滅裂だった。

 

「・・・ん、捕まっても面倒だ。行こうか」

 

令音がちらと目配せし、昇降口の方に足を向ける。

 

「了解」

 

少し気がかりではあるが、仕方ないとすぐに割りきり、十香の手を取ると、その手をタマちゃんに預けた。

 

「タマちゃん。十香をよろしく」

 

「ふぇ?え?あ、は、はい、それはもちろん」

 

急に十香を託されたタマちゃんは、呆気にとられたように目を丸くしながら、「わ、私先生ですもの!」とうなずいた。

 

「シドー・・・・?」

 

十香が、少し不安そうに眉を歪めてくるが、士道は十香を不安にさせないように言った。

 

「十香。タマちゃんと一緒に先にシェルターに避難してて」

 

「シドーは、シドーはどうするのだ?」

 

「・・・他に逃げ遅れた奴がいないか探しにいく。先に行ってて」

 

咄嗟に出てきた言葉を言って士道は彼女に背を向ける。

 

「!あ、し、シドー!」

 

「五河くんに、村雨先生まで!?一体どこへ!?」

 

心配そうな二人の声を背に聞きながら、士道と令音は、校舎の外へと走っていった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「───ああ、来たわね二人とも。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」

 

士道と令音が〈フラクシナス〉艦橋に着くなり、艦長席に座った琴里から、そんな言葉が飛んできた。

 

「・・・ああ」

 

令音が小さくうなずき、白衣の裾を翻して、艦橋下段にあるコンソールの前に座り込む。

 

「───さて」

 

と、士道が無言でいると、琴里は首を傾げるようにしながら言ってきた。

 

「あまり時間をあげられなくて悪いのだけれど。覚悟はもう決まってる?士道」

 

「何回言わせんの。これも仕事なんでしょ?だったらやるだけだよ」

 

士道がそう言い切った瞬間、艦橋内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

 

「・・・・なんだ?」

 

「非常に強い霊波反応を確認!来ます!」

 

士道が首を傾げて呟くのと同時に、艦橋下段から男性クルーの叫び声が発せられる。

琴里はそれを聞くと、パチンと指を鳴らした。

 

「オーケイ。メインモニタを、出現予測地点の映像に切り替えてちょうだい」

 

琴里が指示を発すると、メインモニタに、街の映像が写し出される。

いくつもの店が並ぶ見覚えのある大通りである。だが当然の如く人の姿はなく、まるで誰もいない廃墟のようになっていた。

そんな映像の中心が、ぐわんっ、と歪んだ。

 

「・・・・ッ!」

 

一瞬、映像を映し出されている画面に不具合があると思ったが────違う。

この感覚は、"MAが起動した時"にとても似ている。

その時────空間に。

なにもないはずの空間に、水面に石を投げたときのような波紋ができていた。

 

「・・・来る」

 

士道がそう呟くのとほぼ同時、空間の歪みがさらに大きくなり───

爆音とともに、画面が真っ白になった。

その爆音があった数秒の後の映像には、まったく違う風景が映し出されていた。

街に穴があいている。

そうとしか表現のしようがなかった。

いくつもの店が並んでいた通りの一部が、浅いすり鉢状に削り取られている。

そこにあった筈の街灯や電柱、さらには道路の舗装に至るまで、全てがなくなっていた。

そして爆発の余波の為か、その周囲もまるで砲撃でも撃たれたかのような有り様になっている。

その様は、ひと月前の十香と初めてあった場所に酷似していた。

 

「さっきのが、空間震ってやつか」

 

士道は何の感情も抱かないような声で言うと、琴里は「ええ」と首肯した。

 

「──精霊がこちらの世界に現界する際の空間の歪み。それが引き起こす突発性災害よ」

 

「ふーん」

 

廃墟を見たことや、至近距離で体験したことはあるが、爆発が起こる瞬間を目撃したのは初めてだった。

 

「ま、でも今回の爆発は小規模ね」

 

「そのようですね」

 

と、琴里と、その後ろに控えていた男───副司令・神無月恭平が言う。

 

「良かった───と言いたい所ですが、〈ハーミット〉ならこんなものでしょう」

 

「まあ、そうね。精霊の中でも気性の大人しいタイプだし」

 

「今の爆発で小規模なんだ」

 

士道は空間震の爆発を見てそう呟くと、ふと二人の会話に気になる点があったので、聞く事にした。

 

「・・・ねぇ、琴里。〈ハーミット〉ってなに?精霊の名前?」

 

「ああ、今現れた精霊のコードネームよ。ちょっと待ってて。───画面拡大できる?」

 

琴里が、艦橋下段のクルーに指示を出す。

するとすぐに、映像がズームして、街の真ん中に出来たクレーターに寄っていった。

と、それに合わせて、画面内に変化が訪れる。

 

「・・・雨?」

 

士道は小さく呟いた。

先ほどまで、快晴だった空が急に暗くなったかと思うと、ポツ、ポツと雨が降り始めたからだ。

だが──そんな変化は特に気にする事なく、クレーターの地面の中心に、小さな少女の姿が確認できたからだ。

 

「・・・・あれ?コイツ・・・前に」

 

拡大された画面の中心に佇む、一人の少女の姿。それに士道は見覚えがあったからだ。

ウサギの耳のような飾りがついたフードを被った、青い髪の少女だ。

歳はライドたちと同じか少し上。大きめのレインコートに、その左手にある変なウサギの人形を見て士道はすぐに思いだす。

あれは、昨日の帰り道の途中で盛大に転けた女の子だった。

 

「・・・・?どうしたのよ、士道」

 

士道の様子を不審がってか、琴里は怪訝そうは声を響かせてくる。

士道は琴里に彼女の事を言った。

 

「アイツに会った事があるって思っただけ」

 

「なんですって?一体いつの話よ」

 

「昨日。学校から帰る時に雨が降ってきたから、その時に転けたのを目の前で見た」

 

士道は、昨日の出来事を簡単に話した。

ひとしきり士道の話を聞いた琴里は、艦橋のクルーに指示を飛ばした。

 

「昨日の十六時から十七時までの霊波数値を私の端末に送って。大至急!」

 

そうしてから手元の画面に視線を落とし、苛立たしげに頭をがりがりとかく。

 

「・・・主だった数値の乱れは認められないわね。十香のときのケースと同じか。・・・士道、なんで昨日のうちに言わなかったの?」

 

「それっぽい感じはしたけど、確信出来なかった」

 

と、士道が言うと同時にに、〈フラクシナス〉艦橋に備えられていたスピーカーから、けたたましい音がまた響く。

 

「・・・今度はなんだ?」

 

「───精霊が現れたんだもの。仕事を始めるのは私たちだけじゃあないでしょうね」

 

「ああ、メカメカ団か」

 

「め、メカメカ団?」

 

「前に十香が言ってた」

 

「・・・ああ、そういう・・・・」

 

士道の言葉に琴里は困惑するも、他人の影響を受けやすい事を思い出した琴里は納得するように言った。

士道はこれから起こるであろう、ASTと〈ハーミット〉と呼ばれた少女の戦闘をただ画面から見続けていた。

 




感想、誤字報告よろしくです。
あと、良かった活動報告でだんまちの事を教えていただけるとありがたいです。


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第六話

ちょっと短いですが、キリがいいので投稿です。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。
ソード・オラトリア・オルフェンズの投稿は出来たら今週中か、来週になります。

では、どうぞ!!


クジャン家当主、イオク・クジャン。

レギンレイズ、でるぞ!

このイオク・クジャンの勇姿、その目に刻め!


グシオンに潰されたペシャン公


「・・・・・・・」

 

折紙は、全身にワイヤリングスーツと、ありったけの弾薬を積んだアウトレンジ装備を纏った臨戦態勢で、デパートの上空を浮遊していた。

周囲には、同じ装備のAST隊員が数名浮遊し、あたりに気を張っている。

AST──対精霊部隊は、陸上自衛隊の特殊部隊の中でも、ひときわ特殊性の高い部隊だ。

空想を現実に再現する装置・顕現装置を用い、世界を殺す災厄たる精霊に対抗するための部隊。

しかし、顕現装置を戦術的に運用するための装備───戦術顕現装置搭載ユニットを使用することが出来る人間が限られているため、折紙のようなイレギュラーな隊員が存在するのだった。

駐屯地外に住居を構え、あまつさえ学校に通いながら、有事の際にのみ出動する。

扱いとしては、出動頻度が極端に高い予備自衛官のようなものだった。

 

「・・・・・」

 

周囲に展開されたテリトリーの表面を、ひっきりなしに雨粒が叩いている。

精霊───〈ハーミット〉がビル内に侵入してから、およそ一時間が経とうとしていた。

しかし、〈ハーミット〉は屋内に潜伏したまま、今なお姿を現そうとはしない。

 

『───随分と粘るわね』

 

と、通信機を通して、部隊の隊長である日下部燎子の声が聞こえてきた。

 

『〈ハーミット〉にしては珍しいわね。こんなに一ヶ所に留まっているなんて。いつもはもっとビュンビュン飛びまわってるイメージだったわ』

 

そう。〈ハーミット〉は、行動パターンのほとんどが逃げの一手なのである。

折紙たちがいくら攻撃を仕掛けようとも、反撃をしてくることもなく、逃げ回るだけ。

それが、もし屋内でロストまでの時間をやり過ごす知恵を付けたのだとしたら───折紙にとってはあまり面白くない事態だった。

 

「攻撃許可は」

 

静かな声で折紙が問うと、燎子が嘆息めいた声を返してきた。

 

『────一応要請はしてみたんだけどね。待機だってさ』

 

「建造物なら倒壊しても、修復は可能」

 

『・・・・ま、合理的に考えればそうなんだけれどね。そう簡単にはいかないものなのよ。復興部隊動かすのだってタダじゃないし。───第一、前回の〈プリンセス〉クラスならまだしも、今回のターゲットは弱虫〈ハーミット〉よ?』

 

「・・・・・・」

 

〈プリンセス〉。

 

その識別名に、折紙は小さく眉を動かした。

どんないきさつがあったのか知らないが、その識別名を持つ精霊は今、人間の少女───夜刀神十香として折紙の学校に通っているのである。

無論、折紙は十香の存在を確認するなり、燎子に報告をした。

だが、なぜか彼女から精霊の反応が確認されなかったため、攻撃許可は出なかったのである。

無理言って戸籍なども調べてもらったが、そちらからも不審な点は発見されなかった。

少なくとも現段階において───折紙としては不満極まりないものの───彼女は折紙たちの守るべき日本国民であったのだ。

と────

 

「・・・・・っ?」

 

折紙は不意に目を細めた。

一瞬、視界の端に、美しい闇色の髪が映ったように感じたのである。

そう。まるで十香のそれのような。

下方───ひとけの無くなった、雨の降りしきる大通りに顔を向ける。

 

「・・・・・」

 

だが、十香の姿は確認出来なかった。

折紙は無言でかぶりを振った。どうもナーバスになっているらしい。

こんなことで精霊を取り逃しては目も当てられない。

折紙は細く息を吐くと、さらに気を張って警戒を続けた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

──『よしのん』と遭遇してから、約一時間くらいか。

士道と『よしのん』は、デパートの中を歩き回りながら、口数の少ない士道と『よしのん』は会話に花を咲かせていた。

もちろん時折琴里から指示が飛ぶのだが───妙に笑いの沸点が低いらしい『よしのん』は、どんな些細なことでもカラカラと笑っていた。

実際、彼女の精神状態をモニタリングしている〈フラクシナス〉艦橋でも、いい数値が出ているらしい。

 

『───ふむ、存外いい感じじゃない』

 

琴里が、そんなことを言ってくる。

 

『そもそもが人なつっこい性格なのかしらね。好感度も上々よ。今すぐキスしようっていっても、拒まれはしないんじゃないの?』

 

「・・・まだ早いんじゃないの?」

 

冗談なのか本気なのかわからない言葉に、士道は小声で言う。

・・・・・だが。

 

『やっぱりお喋りするのはたーのしーいねー。どうもあの人達は無粋でさー』

 

「ふーん」

 

パペットがパクパクと口を開きながら言うのに、士道は余り興味がない調子で返す。

・・・・だが、なんというかやはり気になることはあった。

会話が弾むのは願ったり叶ったりではあるし、数値的にも機嫌や好感度が上がっているのなら、何も問題はない。・・・・はずなのだが。

 

「・・・・・」

 

士道は無言で視線だけをパペットを操っている少女の方を見やった。

昨日会った時も、そして今日も。雄弁に喋るのはパペットの腹話術だけで、本人の口はぴくりとも動いていないである。

まるで、人形のようだった。

 

『────おぉ?』

 

「・・・・・ん?」

 

と、不意にパペットがこちらを向くのを感じて、士道はよしのんを見る。

 

『すっごーい!何かねありゃー!』

 

パペットが興奮気味に手をバタつかせると、その場からとてとてと走っていく。───まあもちろん、走るのは本人の足なのだが。

『よしのん』が興味を持ったのは、玩具売り場の一角に組まれていた、お子様用の小さなジャングルジムだった。

やたらカラフルな強化プラスチックのお城に、両足と右手だけで器用に上っていく。

そして頂点に到達すると────

 

『わーはは、どーよ士道くん。カッコいい?よしのんカッコいい?』

 

なんて、声を弾ませて訊いてきた。

 

「そこに立ってると危ないよ」

 

あくまで子供用の室内用ジャングルジム。そこまで大きくないとはいえ、てっぺんから落ちては怪我をするだろう。

いや、彼女が空を飛べるというのは分かっているのだが、どうも士道のイメージでは昨日のドジした彼女イメージが強かった。

士道はそう言って、ジャングルジムに近づく。

しかし『よしのん』は不満げにパペットの手を振った。

 

『んもうっ、カッコいいかどうかって訊いてるのにぃ───っと、わ、わわ・・・っ!?』

 

「────!!」

 

その動作でバランスを崩してしまったのだろうか、『よしのん』はジャングルジムの上で踊るように手を振ってから、士道の上に落下してくる。

士道は落下してくる『よしのん』を両腕でキャッチするが、その衝撃で士道と『よしのん』の顔が軽くだが、ぶつかった。

そのぶつかった衝撃で─────

 

「─────ん?」

 

ちょうど、口のあたりに、妙に柔らかい感触があった。

数秒のあと、今自分の状況を直ぐ様理解した。

 

『・・・・わぉ。やるわね、士道」

 

さすがに琴里も予想外だったのだろう。驚いたような声を響かせてくる。

それはそうだ。だって今士道は───上から落ちてきた少女と、ばっちり口づけを交わしてしまっていたのだから。

 

『・・・・・・・・』

 

───無言のまま、『よしのん』を士道は降ろす。

その時、ようやく二人の唇が離れた。

これで、『よしのん』の力は封印できたはずである。

だが、何故だろうか、見た目が変わることなく通常のままだった。

───と、そこで再びインカムの向こうから、けたたましいサイレンが鳴り響いてきた。

 

「・・・なに?」

 

眉をひそめ、士道は声を発する。

この音は、精霊の機嫌が悪くなると、鳴るものだった筈だ。と、いうことは、『よしのん』は今───。

 

『あったたたぁー・・・ごめんごめん、士道くん。不注意だったよー』

 

しかし『よしのん』は、パペットをパクパクと動かすと、平然とそんな声を発して来ている。

ならこのアラームは一体・・・・。

すると、耳元のインカムから琴里の声が何時になく焦った様子で言ってくる。

 

『───士道、緊急事態よ。・・・・それもたぶん最強最悪の』

 

「・・・は?何が・・・」

 

と、後方から、ザッ、という足を踏みしめるような音がして、士道は首を後ろへと向ける。

そこには───意外過ぎる、顔がそこにあった。

 

「あれ?十香・・・?」

 

士道は意外そうな顔をして、そこに立っていた少女の名を呼んだ。

そう、そこにいたのは、来禅高校の地下シェルターに避難している筈の十香だった。




感想、評価、誤字報告、よろしくです!!


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第七話

久しぶりの投稿!

「・・・撃って良いんだよな?」

「当たり前じゃん」

ガチムチと三日月


士道とよしのん、そして十香がいるこの空間が凄まじい重圧がかかっているのを士道は感じた。

そして十香が何かしらに怒っているのも。

雨に当たりながら走って来たのだろうか、その全身はびしょ濡れで、全力疾走してきたかのように、荒く肩で息をしている。

 

「─────シドー」

 

士道の疑問を遮るかのように、十香が身体をゆらりっ、と揺らしながら声を発してくる。

なぜか、アトラが怒った時よりも凄まじく威圧を感じる。

そんな十香に、士道は何ともないように言った。

 

「なに?」

 

すると十香は、肩をフルフルと震わせながら士道に言う。

 

「・・・・今、何をしていた?」

 

「・・・・何って・・・えーっと、お出かけ?」

 

士道の誤魔化しに、十香は気にいらなかったのか、まるでぐずる子供のような表情を作ると、のどの奥から震える声を絞り出した。

 

「───あ、あれだけ心配させておいて・・・」

 

「・・・ん?」

 

「女とイチャコラしているとは何事かぁぁぁぁっ!」

 

だんッ────!

 

十香が叫び、足を打ち付けた瞬間、その位置を中心に床がベコンッ!と陥没し、周囲に放射状の亀裂が入った。

 

「どうなってんの?」

 

突然の事態に、士道は呟く。

普通の女子は、地団駄を踏んだくらいで床をへこませたりはしない。

無論十香は普通ではないのだが、今精霊としての力はないはずで、身体能力は常識的な範囲内のはずだった。

 

「どういうこと?琴里」

 

士道は冷静にインカムで問うと、琴里がため息交じりに返してくる。

 

『だから・・・前々から言ってたでしょ。士道と十香の間にはパスが通ってるから、十香の精神状態が不安定になると、力が少し逆流する恐れがあるって』

 

「へぇ・・・んじゃ今、十香の精神状態は不安定って事?」

 

『ええ。状態が悪化する前に、なんとか十香の機嫌を直しなさい』

 

「・・・・分かった」

 

そんなことを言っている間に、十香は士道と『よしのん』のもとに到達した。

そして鋭い視線で二人を交互に見たあと、「むむむ・・・」と唇を引き結んでから、士道にキッ!と視線を向け、『よしのん』にはビッ!と指を向けた。

 

「・・・シドー。おまえの言っていた大事な用とは、この娘と会うことだったのか?」

 

「あー、うん」

 

士道は十香に正直に答える。

どのみち何時かは話さないといけない事だったのだ。なら、今話した方が幾分か楽だろう。

士道の返答に気に食わなかったのか、十香はキッ!と士道を睨み付けてくる。

と、そこで・・・

 

『・・・いやぁー、はやぁー・・・そぉーいうことねぇ・・・』

 

今の今まで十香の登場にキョトンとしていた『よしのん』が、甲高い声を出した。

一体どうやっているのかわからないが、ウサギの顔が、いたずらっぽい笑顔を作っている。

 

『おねーさん?ええと───』

 

「・・・十香だ」

 

パペットに言われ、憮然とした様子で十香は返す。

 

『十香ちゃん。君には悪いんだけどぉ、士道くんは君に飽きちゃったみたいなんだよねぇ』

 

「な・・・・っ」

 

「・・・・は?」

 

十香は息を詰まらせ、士道は訳がわからないという表情を作りながら、パペットの方に目を向ける。

 

『いやさぁ、なんていうの?話を聞いていると、どうやら十香ちゃんとの約束をすっぽかしてよしのんのとこに来ちゃったみたいじゃない?これってもう決定的じゃない?』

 

「・・・・っ」

 

十香が肩をぴくりと揺らし、今にも泣き出してしまいそうな顔を作る。

 

「アンタ・・・何言ってんの?」

 

士道がパペットにそう言うが、十香がそんな士道にキッ!とした視線を向けて言った。

 

「シドーは少し黙っていろ」

 

「分かった」

 

有無を言わせぬ迫力を発しながら、自分を睨み付ける士道はすぐに返答した。

十香の目を見ればすぐに分かる。

テイワズのボスであったマクマード・バリストンのような鋭い目だ。あれはテコでも動かないだろう。

パペットはそんな様子が愉快で仕方ないというような調子で、言葉を続けた。

 

『やー、ねー、ごめんねぇ、これもよしのんが魅力的すぎるのがいけないのよねぇ』

 

「ぐ、ぐぐ・・・・っ」

 

『別に十香ちゃんが悪いって言ってる訳じゃぁないのよぅ?たぁだぁ、十香ちゃんを捨ててよしのんの元に走っちゃった士道くんを責めることも出来ないっていうかぁ』

 

「う・・・・・うがーッ!」

 

十香が我慢の限界とばかりに叫び声を上げた。

 

「う、うるさい!黙れ黙れ黙れぇっ!駄目なのだ!そんなのは駄目なのだ!」

 

『ええー、駄目って言われてもねぇ。ほらほらぁ、士道くんもはっきり言ってあげなよぅ、十香ちゃんはもういらない子、って』

 

「・・・・・っ!」

 

瞬間、彼女の言葉に対して十香はガバッとパペットの胸ぐらを掴み上げた。

無論小さなパペットだ。少女の手から容易く外れ、上空に持ち上げられてしまった。

 

「・・・・・!?」

 

と、パペットを取り上げられた少女が、目を丸くした。

次の瞬間には目がぐらぐらと揺れ、顔面が蒼白し、顔中にびっしりと汗を浮かんでいた。ついでに目に見えて呼吸も荒くなり、指先がぷるぷると震え始める。

 

「よ、よしのん・・・?」

 

士道は、急な変化を見せた『よしのん』に、怪訝そうな視線を送る。

 

「雰囲気が変わった?」

 

だが、十香はそんな『よしのん』の様子に気がついていないのか、両手で摑み上げたパペットに、ナイフのように鋭い視線を向け、詰め寄っている。

 

「わ・・・ッ、私は!いらない子ではない!シドーが・・・シドーが私に、ここにいていいと言ってくれたのだ!それ以上の愚弄は許さんぞ!おい、何とか言ったらどうなのだ!?」

 

パペットが声を発していたと思っているのだろうか、ウサギの首元を摑み上げながら、ぐらぐらと揺らす。

 

「・・・!・・・!」

 

そんな様子に、『よしのん』が声にならないように悲鳴を上げていた。先程までの悠然とした調子が嘘のように、全身を小動物のように震わせている。

そして『よしのん』が、視線を避けるようにフードを目深にかぶり直してから、おっかなびっくりといった調子で、十香の服を引っ張った。

 

「ぬ。な、なんだ?邪魔をするな。今私は、こやつと話をしているのだ」

 

「───かえ、して・・・っ、くださ・・・っ」

 

十香の両手で高々と上げられたパペットを取ろうとしてか、『よしのん』がぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

『───何してるの士道。よしのんの精神状態まで揺らぎまくりよ。早く止めなさい!』

 

と、右耳に、琴里の声が響く。

そんな争いの言葉が行き交う中、士道は静かに“キレた“。

士道はポケットに仕舞ってあった銃を取り出し、天井に向けて“発砲”した。

 

パンパン!!

 

銃声がデパートの中に響き渡る。その音に反応するように十香と『よしのん』が動きを止めた。

そして士道、いや『三日月』が言う。

 

「ねぇ、いい加減にしてくれない?“仕事の邪魔”」

 

十香と『よしのん』が士道から発せられる怒気に全身が硬直する。まるで自分達が“狩られるような“錯覚に陥る中、『よしのん』が動いた。

 

「・・・っ、〈氷結傀儡〉・・・っ!」

 

『よしのん』がバッと右手を上げたかと思うと、それを真下に振り下ろした。

 

「・・・へぇ」

 

全長三メートルはあるかと思われる、ずんぐりしたぬいぐるみのようなフォルムの人形である。体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれていた。

そしてその頭部と思しき箇所には、長いウサギのような耳が見受けられる。

そして“バルバトスもソレに反応した”。

 

「コイツ、“あの鳥と一緒か“」

 

「───なっ、これは───!?」

 

士道と十香が、同時に声を発する。

次の瞬間───人形の目が赤く輝き、その鈍重そうな体躯を震わせながら咆哮する。

ソレに合わせるかのように、人形の全身から白い煙のようなものが吐き出された。

 

「冷たいな」

 

その煙に士道は十香を抱えて距離を取った。

 

「な、何をする!?」

 

腕の中で十香が暴れるが、士道はソレに気にすることなく肩で十香を担ぐように背負った。

と、突然右耳から琴里の叫び声が響く。

 

『───このタイミングで“天使”を顕現・・・!?士道、まずいわ、逃げなさい!』

 

「分かってる」

 

三日月は十香をお米様抱っこで廊下を走る。

と、後ろから人形───〈氷結傀儡〉が低い咆哮とともに身を反らした。

すると、デパート側面部の窓ガラスが次々と割れていき、フロア内部に雨が入ってくる。

 

「チッ」

 

士道は軽く舌打ちをして、エスカレーターを十香を抱えたまま駆け降りていく。

三日月は降りた後、上を見上げると〈氷結傀儡〉はエスカレーターをそのまま通り過ぎ、先程まで自分達がいた場所を通り抜けて、十香の手から落ちたパペットを口に加えて、屋外に飛び出してしまった。

 

「ふぅ・・・」

 

士道は『よしのん』の背を視線で追ってから口を開く。

 

「助かった」

 

『・・・ええ。反応は完全に離脱したわ。なかなか無茶をするわね、士道』

 

「無茶なんて今に限ったことじゃないでしょ」

 

と、言ったところで、

 

「いいから早く離さんか・・・ッ!」

 

髪を引っ張られる三日月は未だに暴れる十香を降ろす。

彼女は頬を紅潮させ歯を食いしばるという、駄々っ子のような表情を作りながら、その場に立ち上がり、十香は顔を背けてしまう。

 

「何怒ってんの?」

 

「うるさいっ!話しかけるな!わ、私より、あの娘の方が大事なのだろう・・・・・っ!」

 

「そういうことか」

 

士道が納得したように呟くと、十香が苛立たしげに地面を蹴り始めた。

 

「う、う、う、ううううう─────────ッ!!」

 

十香が地面を蹴るたびに地面に亀裂が走り、陥没していく。

十香に話を聞いてもらえない士道は困った表情のまま、その場所で立ち続けた。

 




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第八話

投稿!

今回は、三日月っぽくないかもしれない気もせんでもない


我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!面壁九年 堅牢堅固!

カルタ・イシューと愉快な仲間達


「十香」

 

士道は固く閉めきった扉をコンコン、とノックをする。

しかし、反応はない。

 

「・・・・・」

 

ドアノブを握り、押してみるも鍵がかかっており開く気配がなかった。

すると───ドンっ!と凄まじい音が扉越しに聞こえ、家全体がビリビリと震えた。

そして士道が今までノックを続けていた扉の向こうから、くぐもった声が響いてきた。

 

『・・・ふん、構うな。・・・とっととあっちへ行ってしまえばーかばーか』

 

そしてそれきり、反応がなくなる。完全に、拗ねているようだった。

 

「・・・・・はぁ、面倒くさいなぁ」

 

士道は半端面倒くさがるように溜息を吐き出した。

『よしのん』が隣界に消失してならおよそ五時間。

士道達はあの後、〈フラクシナス〉に回収してもらい、家に帰って来たのだが・・・家に入るなり、十香が自分の部屋には閉じ籠もって出てこなくなってしまった。

 

『───士道。ちょっといい?確認しておきたいことがあるのだけれど』

 

と、右耳につけっぱなしにしていたインカムから、琴里の声が聞こえてくる。

 

「・・・なに?」

 

士道は若干苛立たしげに琴里に返事をした。

今、士道が苛ついている理由は琴里に対してだ。

彼女の指示がちゃんと出来ていなかったせいで、先の接触で自分は死にかけた。作戦内容も、まるで自分が一回は死ぬであろうと始めから想定された作戦。

生きてオルガの命令を果たす為に生きている士道は自分の妹、琴里に対してかなり不信感を抱いているのだ。

そんな士道の心情を知らない琴里は言ってくる。

 

『士道、あなた、ちゃんとよしのんとキスをしたのよね?』

 

「・・・・・まぁ」

 

『ふむ・・・・・』

 

彼女達が考える声が聞こえてくる。士道はそんな彼女達に言った。

 

「その反応だと、封印とかなんとか出来てないんでしょ。よしのんを見れば分かるよ」

 

よしのんとは事故とはいえ、キスをした。だがあの後も、〈天使〉とかいう精霊の力を振るっていた。

それだけの判断材料があるのだ。理解は出来る。

士道の言葉に琴里は冷静に返した。

 

『まあ、十香の時ほど好感度が上がっていたわけでもないし、全ての力を封印することはできないのは当然だとしても───少しもできていないっていうのはちょっと引っかかるわね。数値的には、あの段階でも二、三割くらいいけると思ったのだけれど』

 

言って、彼女はまた唸り始める。

 

『・・・何かよしのん特有の能力があるのかしら。それとも───』

 

「そんなことどうでもいいよ。十香はどうすんの?」

 

『───ああ、十香のことね。どうなの、様子は』

 

「呼びかけても、意味がない」

 

『なるほど。数値を見るに、一時的に顕在化した力は経路を通して再封印されたみたいだけど───早めに機嫌を直しておいた方がよさそうね』

 

「ふーん」

 

士道は無関心にそう呟くと、インカムから琴里が言ってくる。

 

『何無関心に言ってるの。士道貴方がやるのよ?しっかりしなさい』

 

彼女の無責任極まりない言葉に士道は言い返す。

 

「は?なんで?」

 

『なんでって、それは・・・』

 

琴里が何か言おうとしてくるが、士道はそれを許さない。

 

「さっきから琴里は俺に言ってるけどさ、これって“そっちのミス”なんじゃないの?」

 

『三日月』はそう言って琴里に聞く。

普段は仲間のミスを責めたりしない士道だが、今回は違う。

今、士道は琴里が自分の敵か、味方か、今見極めている。

 

『なに言って・・・』

 

「確かに俺の不注意もあったけど、琴里のとこの人居たよね?あのシェルターに」

 

『・・・・!?』

 

息を呑む声が聞こえる。

士道はそんな事を気にせず、続けた。

 

「じゃあさ、なんでソイツに十香を止めさせないの?外は危ないって止められた筈なのに」

 

『・・・それはっ!』

 

「それは、なに?」

 

士道は琴里に聞く。

 

「いいよ、話せば?“聞くから“」

 

士道の言葉に琴里は口をつぐむ。

モニター越しから見える士道の目がまるで狼を思わせるように鋭かった。

下手な事を言えばすぐさま首を噛みちぎられるような錯覚に琴里は喉を詰まらせる。

 

『シン、ソレについてだが・・・』

 

「アンタには聞いてないけど?」

 

士道はそう言ってくるが、令音は臆せずに言葉を続けた。

 

『いや、私が説明する』

 

令音は士道に言葉を強く発する。

そんな彼女の言葉が届いたのか、士道は言った。

 

「・・・・あっそ。じゃあアンタに聞く」

 

『・・・すまないね。で、先程の理由だが、それは下手に十香をあの場所で止めてしまうと、先程起こった霊力の逆流がシェルター内で起こりかねない。だから止める事は出来なかった』

 

令音の言葉に士道は眉を上げて、聞き続ける。

そんな士道に令音は続けた。

 

『そうなってしまえば、シェルター内の人達の安全も保証ができなくなる。だからコレが最善の方法だった』

 

令音の説明に納得したのか、士道は分かったと言って息を吐く。

 

「じゃあ、もう一つ聞くけどあの作戦を決めたのは誰?」

 

士道が一度死ぬ前提で考えられたあの作戦。

士道はソレを考えたのは誰か聞く。

 

『“それも私だ”。君が十香の時、一度生き返っているのを見たから“私が“提案した。それについてはすまない。謝罪として出来る限りの事はしよう』

 

「・・・へぇ。じゃあ、俺がアンタを“殺してもいいわけ“?」

 

士道はそう言って令音に聞く。

 

『シンがソレを望むならね』

 

令音は三日月の言葉にそう答え、頷く。

そんな彼女の言葉を聞いて“納得“したのか士道はいつもの調子に戻って言った。

 

「・・・分かった。今回は俺や十香に怪我なんてなかったからいいけど、“次はないから”」

 

『ああ、約束しよう。“次は必ず無いように“する』

 

「じゃあ、十香をお願い。今、ピリピリしてるから“俺だと話聞いてくれないだろうしね“」

 

士道の言葉に令音は答える。

 

『任せてくれたまえ。今回の件は私が引き受けよう。十香に伝えておいてくれないか?名目は、そうだな日用品の買い出しとでも伝えておいてくれ』

 

「分かった。そっちは頼んだよ」

 

「ああ」

 

令音はそう言ってマイクを落とす。

 

「・・・・・ふう」

 

令音は力が入っていた肩を降ろし、息を吐く。

そして“琴里“を見て言った。

 

「シンは君が“思っている人間ではない“ようだね。琴里」

 

「うん・・・お兄ちゃん、“人が変わったみたいだった“」

 

琴里は指揮官として状態ではく、五河琴里の状態でそう呟く。

昔の士道とは違う。自分の邪魔をするのなら、たとえ家族であろうと叩き潰す。そんな目をしていた士道を思い出して、琴里は身体を震わせた。

そんな彼女を見て、令音は息を吐いて一つの画面を見つめる。

それは暴走した十香と士道の一枚の映像。

おとぎ話としての存在かと思われたモビルスーツ。悪魔の名を持つガンダム。そして天使を操る“天災“精霊。

 

「シン、キミは・・・一体どうしたら“救われる“のだろうね」

 

ポツリと呟かれた令音の言葉は誰の耳に聞こえる事はなかった。




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第九話

投稿!

「三日月、僕は降りないよ。降りるときは、帰るときは、皆で一緒に帰るんだ」

ビスケット・グリフォン



「・・・と、いうわけで、十香。買い物に行こうと思うのだが、ご同行願えるかな?」

 

翌日、五月十三日(土)。午前十時。

昨日言ったとおり、令音が五河家を訪れ、十香の部屋の扉の前でそう言った。

その装いは、平時のような白衣や軍服ではなく、胸元に傷だらけのクマのぬいぐるみが覗いたカットソーに、暗色のボトムス。そして鞄を肩がけにした出かける時の格好だった。

しかし肝心の十香は昨日と同じように、扉の奥から苛立たしげな声が響く。

 

『うるさいっ、私のことは放っておけ・・・!』

 

荒々しい語気に、令音の隣に立っていた士道は溜息を吐く。

 

「昨日からずっとこの状態で出てきてないよ」

 

「・・・ふむ」

 

令音は、思案するようにあごに手を当てた。

そして鞄から、小さなパソコンのような端末を取り出すと、片手でソレを弄り始めた。

 

「・・・・・?」

 

士道はソレを隣で眺めていると、令音は画面を眺めてから端末をしまい込み、扉に向かって一歩足を踏み出した。

 

「・・・十香」

 

『構うなと言っているだろう・・・!私は───』

 

「・・・・買い物のついでに外で食事でもと思っているのだが、どうかな?」

 

令音が言うと、不意に十香が黙り込む。

そして、数十秒後。

ギィ、と部屋の扉が開かれ、中から不機嫌そうな十香が顔を出した。

昨日から着替えてないのだろう、身に纏った高校の制服は、またしっとりと濡れていた。ついでに、あまり寝ていないのか目に隈が浮かんでいる。眠そうな人と並んで歩いたら姉妹と思われるだろう。

 

「へぇ、やるじゃん」

 

士道は令音が言葉だけで十香を外に出したことを素直に賞賛する。

 

「眠そうな人。どうやって十香を出したの?」

 

「・・・何も。十香の空腹値が上昇していたからね。そろそろ限界とは思っていたんだ」

 

「へぇ、でも昨日の夜飯の時に呼んだ時は出てこなかったけど?」

 

「・・・それはまあ、君と顔を合わせたくなかったんだろう」

 

「・・・・それもそうか」

 

三日月がそう呟くと、ようやく外に出てきた十香は、士道の姿を見るなりぷいっと顔を背け、そのまま歩いていってしまった。

 

「じゃあ後はお願い。俺は買い物しなくちゃいけないし」

 

「・・・・・ん、任せたまえ。今日も朝から雨が降っている。傘を忘れないようにしてくれ」

 

「分かってるよ」

 

士道はそう言って二人を玄関まで見送った。

扉が閉まり、気配が遠のいた後、三日月は身を翻す。

 

「さっさと買い物済ませて、トレーニングするか」

 

昨日下校時に商店街に寄るつもりだったが、色々面倒事があったせいで買い物が出来なかったのだ。

士道は手早く着替えを済ませると、傘を手に取り家を出た。

そして鍵をかけてから、士道は雨の道を歩いていった。

 

───どれくらい歩いた頃だろうか。

 

「・・・・・あれ?」 

 

商店街に向かう途中。見覚えのある後ろ姿を視界に納めて、士道は足を止めた。

その、ウサギのような耳がついた緑色のフードを見つけて。

 

「あれ?なんでアイツが・・・」

 

士道は若干目を開けて口にする。

昨日の空間震によって破壊され、立ち入り禁止になっていたエリアの向こうに、精霊『よしのん』の姿があったからだ。

士道は塀に身を隠すと、『よしのん』の様子を観察する?

 

「警報はなし。前と同じパターンか」

 

そういえば、初めて『よしのん』と遭遇したときも、警報は鳴っていなかった。もしかしたら、頻繁にこちらの世界と隣界を行き来しているヤツなのかもしれない。

 

「・・・電話するか?」

 

士道が呟いて携帯画面を開く。そして電話帳から琴里と書かれたログを見てかけるかどうか決めかねていた。

士道は琴里に対して不信感がある。いかんせん、信用できるかと言われれば今は出来ないと答えるだろう。だが、今の状況を下手に自分が駄目にしてしまっては元も子もない。ゆえに───

士道は電話の呼び出しボタンを押し、耳に付ける。

しばらく呼び出し音が続いた後、眠たげな声が電話から聞こえてくる。

 

『・・・もしもし・・・?おにいちゃん・・・?』

 

明らかに今起きたような感の声音に、士道は気にせず琴里に言った。

 

「おはよう琴里」

 

『んー、おはよ。どうしたの・・・?』

 

「よしのんを見つけたけど、どうする?」

 

『・・・・・・・』

 

士道がそう言った瞬間、電話口の向こうから、パチン!パチン!と頬を思い切りひっぱたくかのような音が聞こえてくる。

そしてすぐに切り替えたように、凛とした声が響いてきた。

 

『───詳しく状況を聞かせて』

 

「買い物に行ってたら、昨日あった所の近くで見つけた」

 

士道は今の状況を軽く説明すると、琴里が呟やく。

 

『・・・なるほど。また静粛現界か、厄介ね。───それで、まだ士道の存在は精霊に気づかれていないのね?』

 

「すぐに隠れてるから、大丈夫だと思う。それで聞くけど、“次はどうすればいい”?」

 

「・・・・・・っ!」

 

息を呑む声が聞こえる。

今後、琴里達がちゃんと指示をくれるのなら、士道はそれに従う。だが、しないのなら“叩き潰す”。

しばらく無言が続く中、琴里が言った。

 

『インカムは持ってる?』

 

「持ってるよ」

 

『なら、ソレをつけて精霊を見失わないように待機して』

 

「そっちはどうすんの?」

 

『・・・フラクシナスでまた指示をするわ』

 

「分かった。じゃあ監視続けるね」

 

そう言って士道が電話を切ろうとした時。

 

「・・・・・士道」

 

「なに?」

 

琴里に呼び止められる声が電話から聞こえ、返事を返す。

 

「昨日は・・・その、ごめんなさい。この後ちゃんとまた謝るわ。作戦も指示も次は・・・」

 

「別にいいよ。謝らなくても」

 

琴里の謝罪に対して三日月はそう言い返す。その言葉に対して琴里は黙り込んでしまった。

 

「でも、次はちゃんとやってよね。俺は琴里に“自分の命のチップ“を今、預けてるから」

 

士道はそう言って言葉に重しを乗せる。俺とオルガはそうやって前に進んで来た。たとえ誰かが死んだとしても、オルガに詰め寄ったとしても、俺達はそこを目指し続けた。

お互いに突き動かして、突き動かされて、ただひたすら前に進み続けた。

その先で十香や仲間が馬鹿笑い出来るのなら、俺は“自分の命“すらもかける。

だから、こんな所で“止まってなんて“いられない。

俺の言葉に琴里は、インカム越しで言葉を返す。

 

『・・・分かったわよ。そこまで言われたならこっちもしっかりしないといけないわよね』

 

琴里はそう言って・・・俺に言う。

 

『士道、貴方のそのチップ使わせて貰うわよ。この先、十香達がちゃんと生きられるような未来の為にね』

 

「ああ、その為ならなんだってやってやるよ」

 

「さあ、私達の・・・戦いを始めましょう」

 

俺は前に進み続ける。オルガの目指した先へ。そして、オルガの命令を果たす為に。




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第十話

投稿!戦闘はまだ先だけど、レンチメイスって対人武器にして良いと思う?では、どうぞ!

「イオク様は白いのでも撃っていてください」

「援護してやっているんだぞ!」

「要りません」

蝶を食べた金髪サルと、オジャン公


「・・・で、どうする?このまま接触する?」

 

士道の言葉に琴里は言った。

 

『このまま彼女を放っておくこともできないわ。とりあえず接触してみましょ』

 

「・・・・了解」

 

士道は短くそう言って『よしのん』の方に歩いていった。

『よしのん』は未だに士道に気付く様子もなく、必死に地面に視線を放っている。

 

「声かけるよ」

 

『ええ。───っと、ちょっと待ちなさい』

 

「なに?」

 

琴里が士道を静止させる声に足を止める。

士道が精霊に接触しようとしたところで、艦橋のモニターにウィンドウが表示される。が───。

 

「・・・何でまともなやつがないのよ・・・」

 

精霊を刺激しないための方法を検索したが、碌なものが一つもなく、琴里は目を手で覆った。

選択肢というものが無いのかと言わんばかりのモノばかりだったので琴里は待機している士道に言った。

 

『士道、選択は貴方に任せるわ』

 

「・・・?分かった」

 

妙な間に士道は不思議に思ったが、すぐに切り替える。

そして士道は『よしのん』に声をかけた。

 

「ねぇ」

 

士道がそう言った瞬間、『よしのん』が、ハッとした様子で振り向いてくる。

顔を蒼白にして歯をカチカチと鳴らし、全身を小刻みに震わせ始める。

 

「・・・ひっ、ぃ・・・・・っ」

 

そして、もう今にも泣き出してしまいそうな顔を作り、右手をバッと高く掲げる。

あの動作には覚えがあった。昨日『よしのん』が“アレ“を顕現させた際の行動だ。

 

「マズいな」

 

その行動を見て、士道は傘をそのまま捨てて両手を上げる。

 

「俺は何にもしないよ。それに何にも持ってない」

 

士道がそう言った瞬間、手を振り降ろしかけていた『よしのん』が、呆気にとられたような顔を作る。

そして、恐る恐るといった調子で右手を元の位置に戻し、士道の様子を窺い始める。

 

「大丈夫。俺はアンタに何もしないから」

 

士道は彼女をなだめるように言って声をかける。だが、『よしのん』は警戒したまま睨みつけてくるだけ。

そんな彼女に対して士道は息を吐くと、パペットを無くした彼女に言った。

 

「手につけてたヤツでも無くしたの?」

 

「・・・・・!」

 

士道が言った瞬間、『よしのん』がカッと目を見開く。そして士道の元にパタパタと走り寄ってきたかと思うと、服を掴み、問い詰めるように揺さぶってくる。

 

「・・・・っ!・・・・っ!?」

 

「分かったからやめて、服が伸びる」

 

士道がそう言うと、『よしのん』がハッとしたように士道の服から手を離した。

士道はそんな彼女の様子を見て、もう一度聞いて見る。

 

「やっぱり、あれを探してんの?」

 

『よしのん』が、何度も力強く頷き、それから不安そうな瞳を士道に向けてくる。まるで、パペットのある場所を聞いてくるかのように。

 

「悪いけど、俺もどこにあるかは知らないよ」

 

士道がそう言うと、『よしのん』はこの世の終わりを告げられたかのような顔をして、その場にへたり込んだ。

そしてそのまま顔をうつむかせ、嗚咽を漏らし始める。

 

「・・・・・ねぇ」

 

そんな彼女に士道は声をかけると、『よしのん』はまたもビクッと身体を震わせて、こちらを見上げてくる。

そしてそのまま、『よしのん』に言った。

 

「俺の仲間がアンタに迷惑かけたから、俺がソレを探すの手伝うよ」

 

「・・・・・!」

 

士道が言うと、『よしのん』が驚いたように目を見開いた。

そしてそのあと、初めて顔を明るくし、うんうんと力強く首を縦に振ってくる。

そして士道はそんな彼女に対して、何処で無くしたのか聞いてみた。

 

「じゃあ聞くけど、手につけてたヤツ、何処でなくしたか覚えてる?」

 

問うと、『よしのん』は逡巡するように視線を泳がせてから、口を開いた。

 

「・・・き、のぅ・・・」

 

そして、ウサギの耳付きフードを握って顔をうつむけ、目元を隠すようにしながらたどたどしく言ってくる。

 

「こわい・・・人たち、攻撃・・・され・・・気づいたら・・・、ぃなく、なっ・・・」

 

「昨日、アイツらに襲われて落としたのか」

 

士道が言うと、『よしのん』はこくんと首を縦に振った。

 

「なら、あの後か」

 

そう言いながら、首を左右に回して辺りの様子を見る。崩落した建物や、ヒビの入った道路が、視界いっぱいに広がっている。と、それに合わせるようにして、右耳に〈フラクシナス〉からの音声が届く。

 

『───こっちからもカメラをあるだけ送るわ。できるだけ彼女とコミュニケーションを取りながら捜索してちょうだい』

 

「了解」

 

士道は短くそう答え、『よしのん』を見る。

 

「じゃあ、探そうか。えっと・・・名前なんだっけ」

 

「・・・・・!」

 

『よしのん』が首肯し───しばし口をモゴモゴさせてから、声を発してくる。

 

「わ、たし・・・は、」

 

「うん」

 

「私・・・は、四糸乃。・・・です」

 

「そっか。じゃあ探そう、四糸乃」

 

士道はそう答え、傘を拾って四糸乃にソレを渡す。

 

「それ。使えば?雨で濡れて探すよりマシだろ」

 

「?」

 

不思議そうに首を傾げる四糸乃に士道は手に傘を握らせ、差し出す。すると、雨粒が自分の身体に触れなくなったことに驚いたのか、四糸乃は目を丸くして頭上を見る。

 

「・・・・!・・・・!」

 

透明なビニール傘に雨粒が弾け、光りながら落ちていくのを、四糸乃は興奮気味に、傘を持っていない方の手をパタパタと動かした。

 

「ソレ、持ってて。俺はあっち探すから」

 

士道はそう言って瓦礫の中を探し始める。と・・・不意に雨が当たらなくなった。

 

「ん?」

 

顔を上げると、四糸乃が自分に傘に入るように手を伸ばし、そこに立っていた。

 

「なに?」

 

四糸乃の行動に訳が分からず、彼女を見つめる士道に四糸乃が小さく言った。

 

「・・・お、礼・・・」

 

「・・・そっか、でもいいよ。俺の事は気にしなくても。だから使って」

 

士道の言葉に四糸乃は傘と士道を交互に見たのち、

 

「ぁ・・・り、が・・・ぅ・・・」

 

ペコリとお辞儀をしてから、パペットの捜索に戻っていった。

 

『格好いいことしちゃって』

 

からかうような琴里の声が聞こえてくるが、士道はそれに対し、

 

「普通でしょ」

 

そう答えて、パペット探しに戻った。




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第十一話

投稿!

女は太陽なのさ。太陽がいつも輝いていなくちゃあ、男って花はしなれちまう。

名瀬・タービン


「───どう?パペットは見つかった?」

 

「いえ、まだですね。見当たりません」

 

琴里が問いかけると、艦橋下段からクルーの返答が聞こえてきた。

時刻は十二時三十分。士道が四糸乃とともに捜索を開始してから、およそ二時間が経過している。この雨の中の作業となれば、身体も冷えてしまっているだろうし、疲労も溜まっているだろう。

〈ラタトスク〉の機関員を捜索に回してもよいのだが───急に大人数を投入して四糸乃を怖がらせてしまっては元も子もないし、仮に怖がらなかったとしても、士道に向けられるべき感謝や好印象が、多方向に分散してしまう可能性がある。

 

「映像の方は?」

 

琴里が右手側に目を向けると、コンソールをいじっていたクルーが、視線は寄越さぬまま、声だけを投げてきた。

 

「解像度は粗いですが・・・なんとか」

 

「モニターに出してちょうだい」

 

琴里が言うと、〈フラクシナス〉艦橋のモニターの一部に、昨日、四糸乃とASTが交戦した時の映像が映し出される。

攻撃の余波に巻き込まれぬよう、カメラも距離を取って撮影していたため、平時に比べて多少画質が悪かった。

 

「精霊が消失する瞬間の映像では───もう既にパペットをもっていません」

 

一時停止ののち、画面が拡大されて、落ち行く四糸乃の姿がアップされる。

 

「───反して、ASTの攻撃が着弾する前の映像では、天使の口元にパペットを確認することができます。この攻撃によって紛失したと考えるのが妥当だと」

 

「で、肝心のパペットは?」

 

「煙が非常に濃いため、確実ではありませんが・・・落下している影が確認できますので、攻撃の際に燃えてしまっているという最悪のパターンにはなっていないと思われます」

 

「・・・・・ふむ」

 

琴里はあごに手を当てる。

 

「四糸乃が消失したあとの、この近辺の映像は?残っていないの?」

 

「さがしてみます!」

 

と、そこでスピーカーから、きゅるるるる、という間の抜けた音が聞こえてきた。

 

 

 

「・・・・・四糸乃?」

 

「・・・・・・!」

 

パペットの捜索を始めてから、およそ二時間。

士道は雨に濡れた髪をかき上げながら、隣でパペットを探す四糸乃の方を向いた。

四糸乃はまたも怯えるように肩を震わせたが───少しは士道の声に慣れたのか、顔を此方へ向けてきた。

 

「・・・腹減ったの?」

 

士道がそう聞くと、四糸乃は顔を真っ赤にしてブンブンと首を横に振った。

しかし、そのタイミングで、またもお腹の音が鳴る。

 

「・・・・・・っ!」

 

四糸乃はその場にうずくまると、フードを引っ張って顔を完全に隠してしまった。

精霊といえど、腹は空くようだ。

そういえば、琴里が霊力でまかなうとかどうとか言っていたような気がしたが・・・忘れたモノは仕方ない。

 

「休憩して飯、食いに行く?」

 

士道がそう言って背筋を伸ばしながら四糸乃に話しかける。

士道の言葉に、四糸乃は首を横に振るが、そこでまたもお腹がなる。

 

「・・・・・!」

 

「俺は別にいいけど、四糸乃が倒れたらパペット探せないでしょ?」

 

四糸乃は少しの間考えを巡らせるように唸ってからら躊躇いがちに首肯した。

 

「んじゃ、行くか」

 

言ってから、士道は「ん?」と思い出した。

確か今、十香達が外出している筈だ。それに外食すると言っていた筈。それに遭遇すると面倒な事になる。

士道はソレを思い出してインカムを小突いた。

 

「ねぇ、琴里。飯の場所だけど、家でもいい?十香達と鉢合わせになると面倒だし」

 

『あー、そうね。・・・ま、他に場所もないでしょうし、許可するわ』

 

「ありがとね」

 

士道は短く返事をして、四糸乃に声をかける。

 

「じゃあ、行こうか」

 

四糸乃は無言のまま、小さくうなずいた。

 

 

◇◇◇◇◇ 

 

 

「・・・・むう」

 

十香は、嘶くお腹をさすりながら、令音のあとについて雨の街を歩いていた。

昨日の夜から何も食べていないうえ、あまり睡眠もとれていないため、どうも気分が悪い。

だが、この途方もない気分の悪さが、空腹感や睡眠不足のみによるものでないことは、十香にも何となく分かっていた。

 

「・・・・・」

 

十香は奥歯を噛みしめると、雨に濡れた地面をぺしっ、と蹴る。

しかしそんなことで、腹の底にぐるぐると渦巻いた苛立ちが晴れるはずもない。

と、前を歩いていた令音が、不意に足を止める。十香はその背にぶつかる寸前で立ち止まった。

 

「・・・先に食事にしようか。ここでいいかな?」

 

二人の目の前には、カラフルな看板のついた建物があった。確かファミレスとかいう、食事を提供してくれる店舗だ。

十香はそれに深くうなずき、令音に言う。

 

「ん・・・そうしてもらえると助かる。腹が空いて死にそうだ」

 

「・・・では、入ろうか」

 

二人は傘を畳んで店内に入ると、店員の案内に従い、禁煙席の一番奥に腰をおろした。

そしてすぐに、メニューに目を通して料理を注文する。

そして料理が来るまでの間、どうにか腹を保たせようと、店員がテーブルに置いていった水を一気に飲み干す。───と、

 

「・・・・十香」

 

そこで令音が、分厚い隈に飾られた双眸を十香に向ける。

 

「なんだ?」

 

「・・・料理が運ばれてくるまでの間、少し話をしたいのだが・・・いいかな?」

 

「ぬ・・・まあ、構わんが・・・一体何を話すのだ?」

 

十香は、少し警戒するように身体を離しながら頷いた。

自分の目の前にいる村雨令音という女・・・いつも何を考えているのかわからなくて───そのくせこちらの考えは全部見通されている気がして、少々気味が悪かったのである。

そんな十香の思考に気づいているのかいないのか、令音がぼうっとした挙動のまま鞄から機械のようなものを取り出し、テーブルの上に広げる。

 

「なんだ、それは」

 

「・・・ああ、気にしないでくれ」

 

言いながら、令音が片手でそれをカタカタカタ・・・とリズミカルに操作する。

すごく気になるが、十香はどうにかそれを無視して、令音の顔に視線を戻した。

すると令音も十香に目を戻し、唇を開いてくる。

 

「・・・まあ、話が得意な訳でもなし、単刀直入にいこう。十香、君が苛立っていた───否、今まさに苛立ちを覚えてる、その理由と原因を教えてはくれないかな?」

 

「──────っ」

 

令音の言葉に、十香は思わず息を詰まらせる。

 

「っ、私は、別に───」

 

「・・・やはり、シンが別の女の子と会っていたのが許せないのかな?」

 

シン。それは令音が士道を呼ぶ際の名前だった。

 

「なっ、なぜそこでシドーが出てくるのだ・・・っ」

 

「・・・おや、関係がなかったかな?」

 

十香はテーブルに肘を突くと、観念したように頭をくしゃくしゃと触る。

そして大きな溜息を吐いてから、重苦しい調子で話始めた。

 

「・・・わからないのだ」

 

「・・・わからない?」

 

令音が、首を傾げながら聞き返してくる。十香はうつむけた顔をさらに前に倒した。

 

「うむ・・・自分でも、なぜこんな気分になってしまっているのか、わからないのだ・・・」

 

頭を抱えながら、言葉を続ける。

 

「昨日・・・シドーが私を学校に置いて───その、女の子と、キスとやらをしていたのだ・・・」

 

キス。その単語を出すだけで、何故か胸の辺りが痛んだ。

 

「・・・ああ、そのようだね」

 

「別に・・・何がいけないわけでもないはずなのだ。シドーがどこで誰と会おうが、誰とキスをしようが、私にそれを咎められるはずもない。・・・だが、それを見た瞬間、もう、なんというか、とても───そう、とても嫌な感じがしたのだ」

 

「・・・ふむ」

 

「気づいたときには・・・声を荒らげていた。それに・・・そのあとあのウサギが、シドーは私よりあの娘の方が大事だと言うのを聞いて・・・もう、どうしようもないくらい、悲しくて、怖くて、何がなんだかわからなくなってしまったのだ。・・・自分でも意味がわからない・・・こんなことは初めてだ」

 

再び大きく溜息を吐く。

 

「やはり・・・どこかおかしいのだろうか」

 

「・・・いや、おかしくなどないさ。それは非常に健康的な感情だ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「・・・ああ。心配することはない。だが───誤解は解いておいた方がよさそうだね」

 

「誤解・・・?」

 

「・・・ああ。あのキスに関しては完全な事故だし・・・シンが十香、君よりもあの女の子のことを大事に思っているとか、そんなことは決してない」

 

令音が機械の方を一瞥してから言ってくる。十香はバッと顔を上げた。

 

「っ、ほ、本当か・・・?」

 

「・・・本当だとも」

 

「だ、だがシドーは・・・仕事の邪魔だと言って・・・」

 

「・・・君のことを大切に思っていなければ、自らの命を危険に晒してまで君を助けはしないと思うがね」

 

「───あ・・・」

 

言われて───十香は言葉を失くす。

胸に、腹に渦巻くわけのわからない感情に気を取られ、完全に失念してしまっていた。

───昨日、士道は、先月と同じように、十香を守るように動いてくれたではないか。

また、凶弾に倒れる可能性があったにも拘わらず。

十香は、胸元のあたりを手で押さえながら、ごくんと唾液を飲み込んだ。

 

「・・・っ、私は───」

 

なんて、馬鹿なことを。

十香はうめくようにのどを震わせると、再び頭をくしゃくしゃとかきむしった。

そして、バッとその場から立ち上がる。

 

「・・・十香?」

 

「すまん、今日の買い物、後日にまわしてもらうことはできないか?」

 

十香は、唇を噛みしめてから再び声を発した。

 

「・・・シドーに、謝らねばならん」

 

令音はあごに手をあててから、小さくうなずいた。

 

「・・・行きたまえ」

 

「感謝する」

 

十香は短く言うと、ファミレスの扉を抜けて傘を手に取り、雨の街を走っていった。

 

「・・・ふむ。まぁ、一件落着・・・かな?」

 

一人残された令音は、小型端末の画面に表示されたグラフと数値に目をやりながら、誰にともなく呟いた。

十香の精神状態を歪めている要素には、なんとなく予想がついていたのだ。

駄々っ子のような拗ね方をしていたものの・・・十香は、士道を悪く思っているわけでもなければ、士道が会っていた少女を嫌っているわけでもない。

どちらかといえば、苛立ちが収まらない自分自身に、得体の知れない恐怖や焦燥を覚えていた・・・というのが近いのだろうか。

だから、機嫌を直すところまではいかずとも、十香の意識を変えること自体は、そう難しいことではなかった。

そう───ただ、気づかせてやればいい。

自分が、士道に守られていたのだということを。それが何を意味するのかを。そしてそれを知ったとき、自分が何を思うのかを。

 

「・・・まぁ、ジェラシーも、立派に恋のうちさ」

 

呟きながら、端末を閉じる。

 

「・・・ただ、気をつけたまえよ。ソレはきっと、世界を殺す感情だ」

 

と。

 

「───お待たせしました!こちらダブルチーズハンバーグセットのライス大盛りに若鶏の唐揚げ、牡蠣フライセット、ミックスグリル、マルゲリータ、スパゲティ・ボロネーゼでございます。鉄板が熱くなっておりますのでお気をつけください」

 

「・・・ん?」

 

突然現れた店員が、テーブルに十香が注文した料理を次々と並べていく。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

そして慣れた調子で身体を倒すと、その場から去っていってしまった。

 

「・・・・・ふむ」

 

残された令音は、その夥しい数の料理を前にして頬をかく。

 

「・・・これは・・・困ったな」

 

一人そう呟いてその料理を見つめた。




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第十二話

投稿!
ちょっと仕事が忙しくなるのでしばらく投稿ペースがダウンします。ではどうぞ!

「こっち・・・睨んでやがる」

魚をみた昭弘


何時から肉や魚を食べたくないと思ったのだろうか。

魚は確か、地球に初めて来た時に見たときだった。あんな気持ち悪い見た目のアレをどうしても食べる気になれなかった。

なら、肉は何時の時だったか。確かかなり昔・・・ああ、初めて“人を殺した”時だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「えっと・・・卵と、鶏肉があるのか。飯もまだ残ってるし・・・オムレツでいいか」

 

冷蔵庫の中を見回してすぐにメニューを決め、必要な材料を取り出すと、キッチンへと並べる。

そしてフライパンをコンロに置き、火をつけた後、リビングの方をちらりと視線を向ける。

そこには、ソファに座りながら、物珍しそうに辺りを見回す四糸乃の姿があった。士道は家に帰ってすぐに服を脱ぎ、タンクトップ姿になったのだが、四糸乃の装いは、先ほどと同じウサギのコートだった。琴里に聞いた通り、あれだけ雨を浴びていたにもかかわらず、少しも濡れていない。十香の光のドレスと同じように、霊装というやつの影響なのだろうか。

 

「飯、今から作るからちょっと待ってて。すぐに終わるから」

 

「・・・・・!」

 

士道の言葉にこくこくと四糸乃は首を縦に振った。

 

「んじゃ、やるか」

 

士道はそう言ってにんにくを微塵切りにし、オリーブオイルで炒めていく。そして炒め終わった後、トマト缶と塩、コショウ、砂糖を加えていき、バターを溶かしてソースを作っていく。

玉ねぎの皮を剥き、人参とピーマン、マッシュルームと一緒に刻み始める。そして鶏肉をさいの目切りにカットし、切り終えた野菜と一緒にフライパンの中に放り込んだ。

炒めながら士道は、ケチャップを冷蔵庫から取り出して、コンソメを砕いていく。その後炊飯器の中に残っていたご飯を、火の通った鶏肉と野菜の入ったフライパンに入れていき、ケチャップとコンソメ、あらびきコショウを入れて焦がさないよう切るように混ぜていく。

 

「コイツはこんなもんでいいか」

 

士道はそう呟いて出来たチキンライスを皿へ移す。

 

「後は、オムレツか」

 

士道はそう言って、卵を器に入れ、卵をとき始める。

カチャカチャと、リズミカルに箸と器が当たる音に四糸乃は気になったのか、此方をじっと見つめているが、士道は手を止めず、そのままフライパンにオリーブオイルとバターを入れて溶かし始めた。

そして塩を少し入れてといた卵を入れる。

箸で卵をかき混ぜながらフライパンを揺らしていき、半熟状態を作っていく。

半熟になった卵をフライパンの端に寄せ、形を整えてひっくり返す。卵の閉じ口を上に器用に持っていき、フライパンと一緒にチキンライスのもとへ持っていく。そして形を崩さぬよう、チキンライスの上にのせ、最初に作ったソースをかければ。

 

「これで完成」

 

士道の前には大きな皿にのったオムライスが目の前に鎮座していた。

慣れた手つきで調理を終えた士道は、オムライスがのった皿を持っていき、四糸乃の前に出す。

 

「四糸乃、昼飯。これ食ったら早く探しに行こう」

 

士道はそう言って、自分用に作ったCGSの時に食べ慣れた黄色いドロドロした昼飯の器を自分の前に持っていく。

そしてスプーンを四糸乃と自分の前に置いて、手を合わせた。

 

「んじゃ、いただきます」

 

士道が手を合わせて言うと、四糸乃もその仕草を真似るようにペコリと頭を下げた。

そしてスプーンを手に取り、オムライスを一口、口に運ぶ。

 

「・・・・・!」

 

すると四糸乃は目をカッと見開いて、テーブルをペシペシと叩いた。

 

「うまい?」

 

士道がそう言うと、四糸乃はこくこくと首を縦に振る。

どうやら気に入ってもらえたようだった。

よほど腹が減っていたのだろう。四糸乃は小さな口を目一杯開けて、食べ始める。

 

「そっか。よかった」

 

士道はそう言って、スプーンで食べ慣れたお粥モドキを口に入れる。ポレンタ粉に水と塩を入れて、焦がさないようにかき混ぜたモノなので味がトウモロコシの味しかしないが、腹持ちが良いので良く作る料理でもあった。

 

『また、それ食べてるの?身体に悪いわよ、士道』

 

琴里がそう言ってくるが、特に返事を返すこともなく黙々と口に入れる。

 

「ごちそうさま」

 

「・・・ごちそう・・・さま」

 

士道を真似するように四糸乃は手を合わせてそう言った。

と───四糸乃の食事が終わるのを見計らうようにして、琴里が喋りかけてくる。

 

『まだ少し休憩するでしょう?できるだけ精霊の情報が欲しいわ。ちょうどいい機会だし、いくつか四糸乃に質問してみてくれない?』

 

「質問?分かった」

 

士道は、皿を空にして満足そうに息を吐く四糸乃に聞いてみる。

 

「ねぇ、聞きたいことあるんだけど、聞いてもいい?」

 

四糸乃が、不思議そうに小首を傾げてくる。

 

「あのパペット、大事そうにしてたけど、四糸乃にとってどういったもんなの?」

 

士道がそう聞くと、四糸乃は恐る恐るといった調子で、たどたどしく唇を開く。

 

「よしのん、は・・・友だち・・・です。そして・・・ヒーロー、です」

 

「ヒーロー?」

 

士道は聞き返すと、四糸乃は頷く。

 

「よしのんは・・・わたしの、理想・・・憧れの、自分・・・です。わたし、みたいに・・・弱くなくて、わたし・・・みたいに、うじうじしない・・・強くて、格好いい・・・」

 

「ふーん」

 

士道はそう言って、チョコレートを口に入れる。

確かにパペット越しで話していた四糸乃と、今の四糸乃では、口調から態度までまるで別人だ。でも───

 

「俺は、今の四糸乃の方が好きだよ」

 

十香が現れたときのパペットがのたまった冗談の数々を思い出し、若干顔をしかめる。

あの時の四糸乃は陽気だったが、アレは自分とは合わないし、勘弁だった。

だが士道がそう言った瞬間、四糸乃は顔をボンっ!と真っ赤に染める。

 

「四糸乃?どうしたの?」

 

士道が顔を覗き込むようにしながら声をかけると、四糸乃がフードを握っていた手を離し、顔を上げる。

 

「・・・そ、んなこと、言われた・・・初め・・・った、から・・・」

 

「そうなの?」

 

四糸乃が、深く首肯する。

 

『士道、今の・・・計算?』

 

「は?計算?何それ?」

 

『・・・いえ。違うならからいいわ』

 

「はあ・・・?」

 

自分が思った事を言っただけなのに、何が可笑しいのだろうか。

 

「なあ、四糸乃」

 

と、士道が言ったその時。

 

「シドー・・・!すまなかった、私は───」

 

突然扉が開かれたかと思うと、朝方家を出たはずの十香が、肩で息をしながら、リビングに入ってくる。

そして、向かい合う士道と四糸乃の姿を見るなり、ぴき、と身体を固まらせた。

 

「あ」

 

一瞬。それで士道は理解した。

 

「・・・ひ・・・・っ」

 

四糸乃も異常を感じたのだろう、後ろを振り返り、小さな声を漏らす。

しかし、それも仕方ない事だろう。四糸乃にとって十香は、パペットを取り上げた怖い相手であるはずだし───そして何より、リビングの入り口に佇む十香からは、士道に向けて凄まじいプレッシャーが向けられていたのだから。

 

「・・・・・・・」

 

十香は無言のまま、いやに穏やかぁーな笑みを作ると、そのままゆっくりとした足取りでリビングに入ってくる。

ビクッ、という感触が手に伝わる。どうやら四糸乃が身を震わせたらしかった。

そんな二人に十香は二人の脇を通り過ぎると、リビングを抜けてキッチンに向かい、冷蔵庫や棚からありったけの食料と飲み物を持ち出し、そのまま廊下へ出ていってしまった。

扉の先から、ダダダダダダっ、という足音が聞こえ───それが二階に到達したかと思うと、今度はバァン!と、乱雑に扉を閉めたような音が聞こえてくる。

 

「面倒くさいなあ」

 

どうやら、また部屋に閉じこもってしまったようだ。

今度は、十分に食料を蓄えての籠城だ。

 

『・・・厄介なことになったわね』

 

右耳に、若干ため息交じりの声が聞こえる。

 

『とりあえず、今は放って置くしかないわ。今士道が声をかけても、多分逆効果にしかならないでしょうし』

 

「分かってる」

 

四糸乃の姿もどこにもない。どうやら、十香がよっぽどトラウマになっているようで、ロストしてしまったらしい。

 

「まあ、いいや。ねぇ、琴里。一つ気になる事があるから調べてもらっていい?」

 

『何?』

 

士道は簡潔に、頭に浮かんだ疑問を伝える。

 

『・・・ふーん。分かったわ。令音が戻ってきたら調べてもらいましょ』

 

「じゃ、よろしく」

 

士道が言うと、琴里が何かを思い出したかのように話を続けてきた。

 

『・・・ああ、そうそう。十香の乱入で言いそびれたけど、一つ朗報があるわ』

 

「あ?」

 

『映像を洗ってみたところ、パペットの所在が判明したの』

 

「へぇ、どこにあんの?」

 

『それはね───』

 

琴里が発した言葉に、士道は顔を顰めた。

 




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第十三話

投稿!


それ、お守りなの。私とお揃いで

アトラ・ミクスタ


・・・ここか」

 

左手に菓子折りの入った紙袋、右手に地図のかかれたメモ用紙を持った士道は、目の前に聳えるマンションを見上げる。

しかし、それにしても。

 

「これ、仕事じゃなかったら絶対やらない」

 

『仕方ないでしょ。鳶一宅に招き入れられるのなんて、士道くらいしかいないんだし』

 

ぼやく士道に、右耳に装着したインカムから、琴里の声が聞こえてきた。

そう─────今士道は、鳶一折紙の自宅であるマンションを訪れていた。

四糸乃が消失した際の映像を解析してみたところ────基地に帰投する折紙が、パペットを拾い上げ、持ち去ったことが分かった。

それをどうにか入手する為に、わざわざ折紙に家に行っても良いか聞いて、家に招いてもらうことになったのだ。

 

「・・・というか、そもそも俺が行く必要無いんじゃないの?パペット一つ取るくらい簡単に─────」

 

『・・・やったわよ、とっくに』

 

出来るでしょと言おうとした時、琴里に遮られる。

 

「数日前から三度にわたって侵入を試みたけど、全部失敗したの。────部屋中に赤外線が張り巡らせてあるわ、催涙ガスは噴射されるわ、要所にセントリー・ガンまで設置されてるわ・・・うちの機関員六人が全員病院送りよ。一体何と戦ってるの彼女は?』

 

「聞いただけでも面倒だな」

 

『数に物を言わせて強引に押入れば奪取は可能でしょうけど───向こうからお誘いいただけるなら、それに越したことはないじゃない?』

 

「それもそうか」

 

正直に言って、気が進まない仕事ではあったが・・・四糸乃にパペットを探すと言ってしまった以上はやるしかない。

それに─────士道自身、折紙に聞いておきたいこともあった。

と、士道は思い出したのように、琴里に問いかける。

 

「十香の様子はどう?」

 

『相変わらずよ。部屋に籠もってるわ』

 

「あっそ」

 

士道はそう言ってマンションの入り口に向かって歩き始める。

十香も昨日から様子がおかしいが、それよりも今は、目の前の仕事が先だ。

自動ドアをくぐり、エントランスに設えている機械に、折紙の部屋番号を入力する。 

と、すぐに折紙の声が聞こえてきた。

 

『だれ』

 

「俺だよ。五河士道」

 

『入って』

 

短く応えた士道に、折紙はすぐにそう言葉を返して、エントランス内側の自動ドアが開く。

士道は、促されるままにマンションに入ると、そのままエレベーターに乗って六階まで上がり、指定された部屋番号の前に到着する。

 

「なんか、案外拍子抜けなんだけど」

 

『・・・え、ええ。何事もなかったわね』

 

士道は琴里にそう言うと、琴里もその事に驚いて困惑する声が聞こえてくる。

 

「じゃあ、サポートよろしく」

 

『ええ。任せてちょうだい』

 

士道はそう言って、呼び鈴を鳴らす。

するとすぐさま────折紙が玄関で待ち構えていたかのようなタイミングで、扉が開けられた。

 

「ごめん、銀髪の人・・・何やってんの?」

 

士道は練習した言葉を言おうとした矢先、折紙の格好を見て態度をすぐに変えた。

ここは確かに鳶一の家だ。彼女がどんな格好をしていようが、自分には関係ない。

だが、今の彼女の格好は前に殿町に見せてもらった本の格好に良く似ていた。

確か、メイドだとかなんとかいうヤツだった筈だ。

 

「何でそんな格好なの?アンタ」

 

士道は折紙にそう言うと、折紙はいつものように人形のごとく無味な表情のまま、小さく首を傾げる。

 

「きらい?」

 

「別にどうでもいいけど?」

 

三日月は彼女の言葉に対して短く答える。

 

「そう、なら入って」

 

だが、三日月の言葉に折紙は気にすることなく、折紙はそう言って部屋の中へ招き入れる。

 

「じゃあ入るね」

 

士道はそう言って靴を脱いで部屋には上がる。

 

「・・・・?」

 

と、士道は眉をひそめる。急にインカムから、ノイズのような音がなったのである。

 

『く・・・・っ、まさ────ジャミング────士────、通────ない───、なんとか────』

 

そこまで聞こえたところで、ぷつん、と音声が途切れた。

 

「ジャミングか」

 

「どうしたの?」

 

「別に。なんでもないよ」

 

士道は折紙にそう言ってさっさと歩き始める。

通信が使えない以上、後の事は自分一人でやらなければいけないだろう。

士道は短く息を吐いてから、折紙の後についていく。

そして、折紙に促されるままリビングに足を踏み入れた瞬間、甘い香りが部屋に充満していた。

 

「・・・なんだ?この匂い・・・」

 

食べ物の匂いといった感じではない。どちらかと言えば、香水や

それに近い匂いに士道は足を止める。

 

「どうしたの?」

 

再び振り向いた彼女に、士道は言った。

 

「この匂い、なに?」

 

士道の問いに折紙は首を傾げた後、近くにあった机の上にあるモノに指を指す。

 

「あれの事?」

 

折紙が指を指す方向へ目を向けると、そこにあったのはお香だった。

 

「お香?」

 

「そう」

 

「へぇ」

 

士道はそう言って、部屋へと入る。

 

「座って」

 

「ん」

 

言われて、リビングの中央に置かれた背の低いテーブルの前に座る。

 

「・・・・・」

 

そして、士道が座ったのを見届けてから、折紙も腰を降ろした。

士道の、すぐ隣の椅子に。

 

「・・・何で隣に座るの?」

 

士道は折紙にそう言うが、彼女からの返答が返ってくる。

 

「ここは、私の家。だから何処に座ろうと自由」

 

確かにそうであるが、流石に隣に座られると思っていなかった士道はあっそと、短く答えた。

そして、士道は折紙に聞きたかった事を口にした。

 

「なあ、アンタ」

 

「なに」

 

「アンタは、なんで精霊ってやつが嫌いなの?」

 

「・・・・・」

 

士道がその言葉を発した瞬間、折紙の雰囲気が変わった。

自分がそんな話題を出したことを訝しむように、小さく首を傾げる。

 

「なぜ」

 

折紙は、士道の目を真っ直ぐ見ながら、聞いてくる。

 

「別に。気になっただけだよ」

 

正直に言えば、コイツが俺の敵になるなら早いうちに潰すとしか考えていない士道に聞く必要などない質問だったが、琴里の指示だ。

士道の言葉に折紙は答えた。

 

「精霊は現れるだけで世界を壊す。そこに『居る』だけで世界を殺す。あれは害悪。生きとし生けるものの敵」

 

「へぇ────」

 

「───私は、忘れない」

 

士道は短く返事を返し、折紙は言葉を続ける。

表情も、声のトーンも、何一つ変わっていないというのに、彼女からは威圧感が感じられた。

 

「五年前、私から両親を奪った精霊を」

 

「・・・五年前?」

 

何かあっただろうかと、思った士道に彼女は話し続ける。

 

「五年前、天宮市南甲町の住宅街で、大規模な火災が発生した」

 

「ん?」

 

火災。そう言えば、そんなのがあった気がすると思いながら、士道は話を聞く。

 

「公式には伏せられているけれど、あの火災は────精霊が起こしたもの」

 

「へえ・・・・」

 

士道は鳶一の言葉に表情を変えずに、短く口を開く。

 

「その身に、真っ赤な炎を纏った精霊。私は────あの精霊に全てを奪われた。絶対に、許さない。精霊は全て、私が倒す。もう、私と同じ思いをする人は、作らせない」

 

静かな、しかし強固な意志を思わせる声でそう言い、折紙は拳を握る。

 

「そして、無論それは────夜刀神十香も例外ではない」

 

彼女がそう言った瞬間。

 

カチャリと、士道は彼女に取り出した銃の銃口を彼女に向けた。

 

「どういうつもり?」

 

鳶一の問いに、士道は答える。

 

「アンタが、十香や俺の仲間に手を出すつもりなら俺は此処でアンタを殺すだけだよ」

 

士道はそう言って、引き金に指をかける。

そんな士道とは裏腹に、折紙は坦々と答えた。

 

「───しかし。上層部の方針として、精霊の反応が確認できない限り、それは人間と認め得ざるを得ない。私の独断で攻撃をすることはできない」

 

「じゃあ、アンタの上の奴が今の十香を敵として見てないから、アンタは手は出せないのか」

 

「その質問には、肯定を示す」

 

銃口を向けられてもなお、折紙は落ち着きを払った様子のまま答える。

 

「分かった。なら、俺も“今は“アンタに手は出さない。此処で殺したりすると、後がメンドイし」

 

士道はそう言って銃をポケットにしまい込む。そして彼女に最後の質問をした。

 

「アンタらは、俺達の“敵”?」

 

士道の問いに折紙が答えようとした、その時だった。

 

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ─────

 

と、外から空間震警報が鳴り響いた。

 

「警報?」

 

「・・・・・・」

 

折紙は数瞬の間黙り込むと、小さく息を吐いてその場から立ち上がった。

 

「───出動。あなたは早くシェルターへ」

 

それだけ言って、折紙は廊下に出ていった。

残された士道は─────

 

「パペット探すか」

 

そう呟いて、椅子から立ち上がった。




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第十四話

投稿!!

ついに、バルバトス本格的に出陣!

「バルバトスルプスレクスだって」

「またなげぇな。レクス?」

「王様だって」


三日月・オーガス

オルガ・イツカ


「・・・・・っ!?」

 

目を開けて。四糸乃は、狼狽に身を震わせた。

闇の中で微睡むかのような感覚が掻き消えると同時────ひんやりとした空気が頬を撫で、視界に街の景色が流れ込んできたのである。

 

「ぇ・・・、ぁ・・・っ」

 

四糸乃は辺りを見回す。

どこか知らない、街の真ん中。

四糸乃の周囲だけが、爆発でも起こったかのように消し飛んでいる。

そして空からは、冷たい雨。

幾度も、それこそ飽くほどに経験した、現界の感触。

ただ違いがあるとすれば────その左手に、四糸乃の無二の友だちがいないことだろう。

 

「・・・・・っ!」

 

空からは、聞き覚えのある音が聞こえてくる。

そこには────四糸乃の予想通り、機械の鎧を纏った幾人もの人間が浮遊した。

 

「────目標を確認。総員、攻撃開始」

 

『は』

 

そんな会話のあと、人間達の手足から、幾つもの弾が四糸乃目がけて放たれる。

 

「・・・・・っ!!」

 

四糸乃は息を詰まらせると、地面を蹴って空へ舞った。

そのまま、人間達の攻撃を避けるように、複雑な軌道を描きながら逃げていく。

 

「逃がすんじゃないわよ!」

 

『───了解!』

 

後方からそんな声が響き、さらに何発もの弾丸が射出される。

それぞれ致死の力を持つ、必殺の一撃。霊装がなければ、四糸乃を百回は殺しても、釣りが出るであろう悪意と殺意の化身。

 

「・・・・・!・・・・・!」

 

四糸乃は、錯乱気味に空を舞いながら、声にならない叫びを上げた。

動悸が激しくなって、

お腹が痛くなって、

目がぐるぐると回る。

誰かに悪意を、殺意を向けられていることが、四糸乃には許容しきれなかったのだ。

いつもは─────違う。

いつもなら、四糸乃の左手には『よしのん』がいてくれる。

そして『よしのん』はとても強くて頼りになるから、こんな攻撃はものともしない。だから四糸乃も平気だった。みんなを傷つけずにいられた。

でも、今は─────

どうしようもないくらいの恐怖が、四糸乃の心に広がっていく。

ガチガチと歯が鳴って、

ガタガタと足が震えて、

グラグラと視界がゆれる。

どうしようもないくらいに、頭の中がグシャグシャになる。

 

「ぅ、ぁ、ぁ・・・」

 

─────雨が、強くなる。

 

「───よし、このまま一気に行くわよ!」

 

リーダーカクの女が言うのと同時、人間達の禍々しい武器が、一斉に四糸乃に向けられた。

そして、そこから、今までで一番たくさんの殺意が、形と成って降り注いでくる。

それが着弾する直前。四糸乃は、天高く右手を上げていた。

 

─────そして。

 

「・・・〈氷結傀儡〉・・・ッ!!」

 

厄災の天使の名とともに、それを、振り下ろした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・・・ッ!?」

 

五河家二階奥の部屋で眠っていた十香は、不意に鳴り響いた爆発音にハッと顔を上げた。

 

「な───なんだっ・・・!?」

 

急なことに驚いて身を起こし、ガラガラッ、と音を立てて窓を開ける。

そこで、十香は思わず身を震わせた。

何かに途方もない恐怖を感じたというよりは、窓から入り込んできた風の、予想外の冷たさに身体が震えたのである。

異常なほどに、気温が下がっている。十香は怪訝そうに眉をひそめながら外を見渡した。

 

「こ、これは・・・」

 

視界一面に雨が降り注ぎ、しかも、地面に触れた雨粒が、一瞬のうちに凍りついている。

 

「一体、何が起こっているというのだ・・・」

 

と、そこで、ふと先程のことを思い出す。

昼寝をしていた際、何やら警報のような音が鳴っていた気がする。

夢か何かかと思っていたが、あれは・・・

 

「警報・・・というやつだったのか・・・!?ならばこれが・・・空間震?」

 

タマちゃん教諭に聞いていた爆発云々とは随分イメージが異なっていたが、見るからに異常な事態である。早くシェルターとやらに避難せねばなるまい。

と─────十香が部屋から出ようとしたその時。

 

「・・・・・っ!?」

 

窓の外を奇妙なモノが凄まじいスピードで通り過ぎていった。

ずんぐりしたフォルムの、全長三メートルはあろうかという人形である。しかもその背に、緑色のコートを着た少女を乗せていた。

 

「あれは・・・あのときの」

 

そう、あれは、士道と会っていた少女だった。

それを認識すると同時、十香は、心臓がどくんと震えるのを感じた。何の根拠もない。だけれど、なぜだろうか───あの少女のもとに、士道がいる気がしてならなかった。

 

「・・・・・っ」

 

十香は唇を噛むと、部屋の外に飛び出していった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「へぇ・・・こんな事も出来るんだ」

 

パペットを手して、マンションの外に出た士道は、目の前に、広がる光景を目に素直な感想を送る。

何しろ、見慣れた町並みが一面銀世界になっていたからだ。

それも、雪が積もったというよりかは、純粋に街が凍りついているのだ。

 

『───警報が聞こえなかった?四糸乃よ』

 

今まで沈黙を保っていたインカムから、琴里の声が聞こえてくる。

 

「あ、やっと繋がった」

 

やっと繋がったインカムに士道はそう言って、琴里に耳を傾ける。

 

『それより、精霊が出現するまで何をしていたの?野外に出るまで随分時間が書かっていたようだけれど』

 

「セントリー・ガンの相手をしてた」

 

士道は何でもないようにそう言っているが、琴里は顔を引き攣らせながら、士道の言葉を聞いていた。

生身、拳銃一つで、セントリー・ガンの相手をしていたとか、人外じみた事をした兄に、琴里はドン引きしていた。

 

「・・・・で、状況は?」

 

士道は短く、そして今必要情報を得るべく、琴里に聞いた。

 

『四糸乃は今、ASTと交戦中。今、士道が見ている景色も四糸乃の天使の影響と見て間違いないわ』

 

「了解、四糸乃の場所は?分かる?」

 

『マンションを出て右手に真っ直ぐ、大通りが出るまで走りなさい。四糸乃の進行方向と、速度から見て、およそ五分後、そこに到達するわ』

 

「ありがとう」

 

『さっさと、好感度上げてキスしちゃいなさい』

 

琴里の指示を簡潔に聞いた士道は琴里に礼を入れて、先程セントリー・ガンを相手にした時、出来たバルバトスの別の姿を試す。

 

(感覚は、“乗る“感じじゃなくて、“着る”感じ。俺が“バルバトスになるような“感じでいい)

 

士道がそう頭で認識すると、士道の姿が変わっていく。

 

『ちょっ!?士道!?』

 

琴里は士道の変化に叫び声を上げるが、士道はそれに気にすることなく、集中する。

そして士道が目を見開くと、自分の視界がクリアになっていた。

両腕は巨大化しており、分厚い装甲と金属質のフレームが見えている。そして右手には自身の身体よりも巨大な大型のメイスが握られていた。

そして背中には、巨大なブレードが獲物を待つように伸びている。

そして士道は自身の相棒に向けて言った。

 

「行くぞ。バルバトス」

 

士道がそう言った瞬間。

狼王は、士道の“三日月“に応えるように咆哮を上げ、戦場へ疾走した。




俺がバルバトスになるような感じでいい。

三日月・オーガス




刹○・F・セイ○イ

ガタッ!!






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第十五話

投稿!!

グロ注意!!

ふざけんなよ!おい!お前楽しんでるだろ!人殺しをよ!?

クダル・カデル


『────B分隊、先行しなさい!〈ハーミット〉を囲い込むわよ!』

 

『了解!』

 

通信機から、燎子と、それに応ずるAST隊員たちの声が響いてくる。

折紙は、AST隊員二名とともに、微妙に進行方向を変えて、〈ハーミット〉を追う本隊から離脱した。

目標地点は、およそ一キロメートル先の交差点。

通常であれば目を開けてすらいられないような風圧や、意識が朦朧としてしまうほどのGをテリトリーで中和しながら、目標地点に到達する。

 

「・・・・・っ」

 

そして空を蹴るような感覚でブレーキをかけ、方向転換し、視界には、こちらに進んでくる〈ハーミット〉と人形の姿が見て取れた。B分隊三名はそれを確認すると同時に左右に展開、脳内に指示を出し、スラスターの脇に装備された二本のアンカーユニットを、地面に向かって射出した。

合計六本のアンカーユニットから光の糸が伸び、互いに絡みあって広大な網の形作る。

 

「レイザーウェブ展開完了、β機、γ機と結合を確認」

 

『よし、追い込むわよ!』

 

折紙が言うと、〈ハーミット〉を追っていた燎子の叫び声が通信機越しに響いた。

 

「・・・・・っ!?」

 

そこにきてようやく〈ハーミット〉が待ち伏せに気づいたらしい。

 

だが────もう遅い。

前方、そして左右には網の目状に編まれた魔力の光が。

後方には燎子たちA分隊の追撃が。

そして上方には、レイザーウェブを張り終えた折紙たちB分隊が浮遊している。

 

「ぁ────あ、あ、ぁぁ・・・・・ッ────」

 

人形の背に張り付いた〈ハーミット〉が、目を見開き絶望に染まった声をだす。

 

『総員────攻撃!』

 

しかし、ASTに精霊に対する同情や慈悲などはなかった。

号令とともに、AST隊員全員が、標準装備である近接専用レイザーブレードを抜き、〈ハーミット〉に襲いかかった。

 

────が、次の瞬間、雨が降っていた空が一気に暗くなった。

 

「・・・・え?」

 

一人の隊員が空を見上げる。

その一瞬だった。

空から物凄い勢いで、一人の隊員に向けて何者かが突っ込んできた。

そして勢いよくその隊員はぶつかり、地面がある足元へと一緒に落下していき、巨大な砂煙を上げた。

 

「なに!?」

 

燎子がそう叫んで、隊員が落ちた落下地点へと顔を向ける。

他の隊員や〈ハーミット〉もその出来事に呆然としながら、その場所を見つめていた。

その砂煙は数十秒経つとどんどん薄れていき、衝突した隊員と正体不明の人物のシルエットが映し出されていく。

そのシルエットは一言で表すと異形だ。

ヒト型のシルエットではあるものの、両腕は巨大で長い。そして背中から生えるように伸びた巨大な突起。

そしてその異形の両眼は砂煙の中でもライトグリーンに輝いていた。そしてその巨大な手に持っているのは巨大な刀状にゆるやかにカーブした剣・・・もとい、太刀が握られていた。

そして足元には────

 

「・・・うぷっ・・・オエェェ・・・」

 

何人かの隊員は“ソレ“を見て吐瀉物を吐き出す。

なぜなら────

その異形の持つ太刀に頭から股下まで“串刺し”にされた隊員だったであろうモノが血の海を作り上げて転がっていたからだ。

その光景を見て、折紙は眉を少しだけ顰める。

見ていてあまりいい気分になれるものではない。

そして何よりも、その異形は“一度、見たことがあった”。

 

「あれは・・・!?」

 

燎子がそう叫びながら、その異形を見る。

白と青を基調としたツートンカラーの怪物。

精霊〈プリンセス〉の時に現れ、その胸部から出てきた青年は自分もよく知る彼だった事を覚えている。

そしてこの惨劇を作り出した彼は、何事もなかったかのように太刀を振り払う。

その勢いで突き刺さっていた隊員の死体がゴミのように地面に転がった。

 

『アイツ、どっからやってきやがった!?』

 

『何なの!?アイツは!?』

 

無線機越しで他の隊員が慌てふためくように声を出す。

 

「ふぅ・・・・」

 

そしてその怪物から聞き慣れた声が聞こえてきた。

その声は───

 

「五河・・・士道・・・」

 

折紙は小さく呟きながら、彼を見つめていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「まず、一人」

 

士道はそう言って太刀を消し、腰にマウントしてあった巨大メイスを手に取る。

すると耳元から琴里の叫び声が聞こえてきた。

 

『ちょっと士道!!貴方、何をしたか分かってるの!?』

 

慌てた声で叫ぶ琴里に、士道はなんともないように答える。

 

「ん?何をしたって・・・敵だから殺っただけだよ」

 

「・・・・・・っ」

 

たった今、一人の人間を殺したにも関わらず、何時もと変わらない態度で言う士道に琴里は身体を震わせた。

殺人という罪がある現代で、士道はまるで殺す事に躊躇いなど一つもないと言わんばかりに一人の人間を殺した。

そんな士道が琴里は怖かったのだ。

たまに見せる普段と違う兄に対して、琴里は恐れを抱いた。

そんな琴里に対して、士道は未だに呆然とこちらを見ている四糸乃に視線を向ける。

 

「・・・・・ひっ!?」

 

四糸乃はビクッと肩を震わせて、後ずさりする。

そんな彼女の様子を知らないでか、士道は四糸乃に向けて足を進めた。

そんな士道に対して、四糸乃も一歩、また一歩と後ずさる。

どうやら怖がらせてしまった四糸乃に対し、士道はどうしようかと思ったその時。

 

「テメェ!よくも!仲間を!」

 

「ちょっと!?待ちなさい!?」

 

一人のAST隊員が士道に対して、ブレードを片手に特攻を仕掛けてきた。

 

「邪魔」

 

士道はそう呟きながら、巨大なメイスを掲げ、特攻をしてきたAST隊員に振りかぶる。

 

「そんな攻撃!!」

 

AST隊員は士道の巨大なメイスを自身のテリトリーで受け止めようとする。だが、士道にはそんなものは関係なかった。

 

「ふっ!」

 

力ずくでそのテリトリーを突破し、AST隊員の頭部に向けて巨大メイスが墜落した。

ゴシャアァ!と、嫌な音を立てて頭が潰れ、血が脳幹が飛び散る。その血が士道や四糸乃に飛び散り、白い装甲に赤いシミが出来上がった。

そして四糸乃の目の前にコロコロと白くて丸いものが転がってくる。

 

「・・・・・ひぃ!?」

 

四糸乃はそれに視線を向けると、小さく悲鳴を上げて顔を青ざめた。

それは“目だった”。

先程自分を殺そうとしていた人間の目が、光をともさない濁った目で四糸乃をじっと見つめていた。

 

「ぅ───あ、あ、あ、あ・・・・ッ」

 

四糸乃はガクガクと恐怖で震えながら、目の前の悪魔に視線を向ける。

ライトグリーンの鋭い目が自身を見つめている。手にした巨大なメイスで自身を潰すつもりなのか。

四糸乃はそんな事を考え────

 

「ぅ・・・ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────ッ!」

 

四糸乃は恐怖で叫び、〈氷結傀儡〉を顕現させた。




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第十六話

投稿!!

「モビルアーマー。厄祭戦の中心を成す禁忌の存在」


怒りの中で生きた金髪ロリコンの仮面男。


「なんだ?」

 

士道は突然暴走し、〈氷結傀儡〉を顕現させた四糸乃を見てそう呟いた。

四糸乃の周囲に、凄まじい風が巻き起こる。

あたりに降り注いでいた雨粒が雹のように凍結し、四糸乃を覆うように渦を巻いて吹雪のドームを作り出し、その中へ閉じ篭もってしまった。

すると琴里からインカム越しで言ってくる。

 

『おそらくだけど、士道のやり過ぎでああなったと思うわ』

 

「・・・やり過ぎ?何が?」

 

身に覚えのない事に士道は首を傾げる。

 

『四糸乃の前でASTの隊員の頭を潰してミンチに変えたことよ!!リアルタイムで私達も見ちゃったから他のメンバーは気分不良で手洗いに行っているわよ!』

 

耳元で琴里の高い声が鳴り響く。

その声に士道は顔を顰めながら、空中に浮遊するAST隊員を見る。

彼等は先程、隊員二人を殺した自分を睨みつけながら周りに警戒するように漂っていた。

その中で、折紙だけは顔一つ変えずにじっとこちらを見つめて観察していた。

 

「ねぇ、琴里」

 

『・・・なによ』

 

あからさまに気分が悪そうな声を出す琴里に士道は言った。

 

「アイツらはどうすればいい?彼処にいられると邪魔だから、始末する?」

 

此方を見ているASTに対して士道は琴里に聞く。

 

『何でもかんでも殺して排除するのは止めなさい。ASTの人達だってあの光景を見て、今の士道に下手に手を出せない筈よ。なら、さっさと帰ってもらうように話してみたら?』

 

「・・・分かった」

 

琴里の言葉に士道はそう短く答える。

そして士道は未だに警戒しながら此方を見ている彼等に声を上げた。

 

「ねえ」

 

「・・・・・っ!?」

 

士道の言葉に機敏になる彼等に対して、士道は気にすることなく、彼等に言った。

 

「アンタら弱いからさっさと帰ってくれない?そこにいると“邪魔”」

 

『ちょっ!?士道!?煽ってどうするのよ!?』

 

士道の無自覚な煽りに、琴里は慌てふためく。

そんな士道の言葉を聞いて、隊長らしい女が叫んだ。

 

「アンタのせいで仲間が二人もやられてこっちだって損害被ってんのよ!そんな中で、帰れ?ふざけるな!!」

 

彼女がそう言うと、折紙含む全員が武器を構える。

 

「結局、敵になるのか。まぁどっちでもいいけど」

 

士道はそう呟いて血がついたメイスを構え、迎撃体制へと入る。

 

「総員!距離を置いて総攻撃!近づかれないように距離は保ちつつ、生き延びる事を考えなさい!」

 

「「「了解!」」」

 

彼等はそう言って銃を武器を士道へと向ける。

 

「まぁ、プチプチ潰して早く四糸乃の所に行くか」

 

士道はそう言って、AST目掛けて跳躍した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「あ───あれは・・・っ!」

 

凍り付いた街を走っていた十香は、視界の先に見えた光景に戦慄した。

開けた道路の上、士道が乗っていたヒト型機械を小さくしたものと、先日見た青い髪の少女、それにASTたちの姿が確認できたのである。

そして、人形を駆る少女はヒト型機械に対して顔を青ざめながらガタガタと震えていた。

そしてその少女は恐怖で叫びながら、人形をのけ反らせる。

 

「──────っ」

 

十香は、腹の底がぞくっと冷えるのを感じた。

なぜだろうか、本能とかそういったもののレベルでしか語りようがないが、なんとなく、わかる。あれは───とてもよくないものだ。

言葉では表しづらいのだが、そう、あれは十香が〈鏖殺公〉で渾身の一撃を放とうとする寸前と、非常によく似た空気の震え方をしているのである。

 

「・・・・っ、シドー!」

 

十香はヒト型機械を何故かシドーと“無意識で”叫んでいた。

士道ではないかもしれないのに、何故か士道だと思ってしまう。

だが、そんな事をしても意味がないのはわかりきっている。

 

「〈鏖殺公〉・・・・・ッ!」

 

そして、その名を呼ぶ。十香の最強の剣であり、玉座。形を持った奇跡、厄災の名を。

 

「・・・・・っ、く───」

 

しかし、何も起こらない。十香は顔を歪めた。

予想をしていなかったわけではない。一応、琴里たちからいろいろな説明は受けていた。

十香がどのような存在であるのか。琴里たちは、そんな十香をどうしたいのか。

そしてその過程で、十香の力を封印したということも、聞いていた。

無論、最初から微塵も不安にならなかったといえば嘘になる。何しろ今まであった力が、ある日を境に無くなってしまったのだ。

だけれど次第に、それが士道とともに人間としての生活を送るために必要な要素だということが理解できてきた。

正直───今の生活がたまらなく楽しい。

折紙は未だに鼻持ちならないし、琴里や令音も、完全に信用に足るわけではない。

でも、士道と一緒に過ごす日常は、今まで感じたことがないくらい輝きに溢れていた。

士道と一緒なら〘どこまでもついていける〙と思った。士道が目指す《此処じゃないどこか》を見てみたいと思った。

───だが。

 

「〈鏖殺公〉───〈鏖殺公〉っ!〈鏖殺公〉・・・!」

 

士道を助けるために、今、いらないはずの力を再度求めなければならなくなった。

だが、何度試しても、〈鏖殺公〉は顕現しない。

 

「く───頼む・・・出てくれ、〈鏖殺公〉・・・っ!」

 

歯を噛みしめ、眉根を寄せ、泣いてしまいそうになりながらも、地面を蹴り続ける。

 

「・・・・くっ」

 

頭の中に、士道が凶弾に倒れたときの光景が鮮明に蘇る。

ごっそりと抉り取られた腹部。ゆっくりと倒れ伏す士道。何もできなかった自分。

もう、あんな思いは絶対に経験したくない。

───その瞬間、少女が〈氷結傀儡〉を顕現させ、吹雪の牢獄を作り上げていく。

 

「・・・・・っ!」

 

ゆらゆら、ぐらぐらと、“十香の精神状態が、不安定になる。意識がとんでしまいそうなほどのストレスが、十香の頭の中を駆け巡った“。

そして顕現する。厄災にして奇跡が───とある“殺戮兵器“と同じ名を持つ天使が顕現する。




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Q三日月のバルバトスがデアラみたいに反転したらどうなるの?


A.ハシュ○が出てきて殺戮を開始します。


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第十七話

投稿!!

三日月っぽくなかったらゴメンナサイ!!
原作もだいぶ弄りました!!

それと、まさかのあの武器が登場!!


「来るな!来るな!来るな!?」

 

一人の隊員が叫び声を上げながら手にした銃を撃つ。

が、その目の前にいる相手を捉えることが出来なかった。

そして今、その悪魔が手にした巨大メイスが彼女に向けて振り下ろされた。

 

「ひぃ!?」

 

彼女は咄嗟に銃から手を離してテリトリーを全開に展開し、最高速度でその悪魔から距離を取る。

ガゴンッ!!という音と共に銃がメイスに粉砕され、爆発が起きた。

爆風と熱風が彼女を襲い、その悪魔が爆発に巻き込まれる。

爆煙がその場で起こる中、その悪魔が傷一つなく、爆煙の中から凄まじい勢いで現れ、巨大な左腕にある獣のような黄金の指先を手刀のように揃えて彼女に向けて疾走する。

そしてそのまま、AST隊員である彼女に向けてその左腕を勢いよく前に突き出した。

 

「ゴフッ!?」

 

腹部を悪魔の鋭い爪で穿たれた彼女は、口から大量の血を吐きながら自身を殺そうとする悪魔に視線を向けた。

自分の血で真っ赤に染まったその悪魔は、まるで飢えた狼のように彼女は見え、視界が暗転した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「三人目」

 

悪魔はそう呟いて左腕で突き刺した隊員を蹴り飛ばす。

勢いよく地面へ向けて跳んでいき、地面にボールのように転がりながら動きを止め、その場で血の池を作った。

 

『β機がやられた!!』

 

『距離を取って包囲しろ!』

 

折紙の通信機は隊員の動揺と混乱によって混雑している。

だが、それも仕方ない事だろう。

五河士道。彼の動きは明らかに“戦闘に慣れすぎている”。

折紙は迂闊に手を出すと危ないと判断し、彼を無力化する準備を進めた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「これで三人目」

 

士道はそう呟いて、AST隊員を蹴り飛ばす。

 

『士道!!やり過ぎよ!?』

 

琴里からそう言われるが、士道にとって知ったことではない。

 

「・・・別にコイツらは敵だし、俺達の邪魔をするなら今のうちにさっさと殺せば後が楽でしょ?」

 

『それでもよ!これ以上犠牲者を出したら、逆に士道がASTの標的になりかねないわ!だからこれ以上は殺さないで!』

 

「・・・・分かった」

 

琴里の必死の説得に渋々言う士道に、琴里はホッと息を吐く。

だが、彼女は一つ聞き逃していた。

 

「・・・じゃあ、死なない程度に痛めつけてさっさと撤退してもらうか」

 

士道の不穏な言葉に琴里は気づかなかったのだから。

士道が上を見上げると、そこにASTの隊員二人が自分に向けて銃口を向けて叫ぶ。

 

「死ね!」

 

「これで!!」

 

二人はそう言って手にした銃を連射する。

士道は巨大メイスを盾替わりにし、その弾丸を防いでいく。

 

「ふっ!!」

 

と、後ろからレイザーブレードを手にした隊員が士道に向けて突貫してくるが、士道はすぐさまその隊員に反応し、テイルブレードを射出した。

 

キュルルルルル!

 

と、音をたてながらテイルブレードがその隊員目掛けて勢いよく伸びていく。

 

「なに!?」

 

隊員はすぐさま回避行動に移ろうとするが、もう遅い。

テイルブレードはその隊員目掛けて伸びていき、CR-ユニットに突き刺さり、そして勢いよくその隊員を空中で引き摺り回した。

 

「あああああああああ!?やめてくれ!?」

 

絶叫系アトラクションも真っ青な変則的で読めない動きに他の隊員もどうすることが出来ない。

そしてその勢いでテイルブレードから逃れる事が出来た隊員だが────。

 

「うぷっ・・・おぇぇぇぇぇぇ・・・」

 

三器官がやられてマトモに動く事も出来なくなり、勢いよく振り回された結果、その場で吐き出してしまった。

 

「これで四人目」

 

戦う事が出来なくなった奴にようはないと言わんばかりに、士道は視線を次の敵に向ける。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

次の隊員はアサルトライフルを片手にレイザーブレードを持って突撃してくる。

士道はそれを迎撃しようとした時、ふと巨大メイスが動かない事に気づく。

 

「アンカー?」

 

ギチギチと地面にアンカーで固定されたメイスを見て士道は呟く。そして空にいた二人が士道に向けてミサイルを放つ。

ミサイルは士道目掛けて飛んでいき、士道に直撃した。

爆音が辺りに響き渡る。

爆煙と砂煙が舞う中、若いAST隊員がレイザーブレードを士道に振り下ろそうとしたその時────。

 

ガゴン!と、何かが開く音が聞こえた。

 

「えっ?」

 

彼女は呆気に取られ、少し反応が遅れてしまう。

その結果が彼女の命取りとなった。

 

「ガッ!?」

 

何かに挟まれる衝撃と共に、地面へと叩きつけられた。

煙が蔓延する中、テリトリーによって強化された彼女の視界には

自身が捕まった“ソレ”を見て顔を青ざめさせた。

悪魔の両手に握られた“ソレ“は恐竜の頭部をおもわせる武器・・・いや、レンチと呼ばれる工具だった。

だが、彼女が恐怖したのはそれではない。

顎につく歯のように“チェーンソー“がその姿を覗かせていたのだ。

 

「五人目」

 

士道がそう言って彼女を踏みつけ、固定する。

そして────────。

少しだけコンテナ部分が緩くなり、隊員とチェーンソーがついたコンテナに隙間が出来た。

 

「・・・ゃだ」

 

彼女はこの後、起こるであろう出来事に首を横に振る。

そして、その彼女が予想した出来事が的中した。

 

“キュイイイイイイイイイイ!!“

 

チェーンソーが回転し始める。そしてゆっくりと彼女目掛けてコンテナが閉じ始めた。

 

「やだ!?ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!?お願い!?止めてぇ!?」

 

泣き叫ぶ彼女の懇願に士道は聞く耳を持たない。

チェーンソーの刃が徐々に近付いて彼女を恐怖のドン底へと叩き落としていく。

そんな彼女に対して、士道は言った。

 

「なら、今日はもう引いてくれない?これ以上アンタらを殺すと、俺もうるさく言われるし」

 

先程から琴里がうるさいのだ。それ以上やるなと。

色々後からグチグチ言われると鬱陶しくてたまったものではない。士道の脅しに、彼女は泣きながら首を縦に振り言った。

 

「引くっ!もう、私は貴方と戦わないっ!何でもするからっ!だからもうやめてぇ・・・・!」

 

泣きじゃくりながら、彼女は言う。

その言葉を聞いて士道は、燎子へと視線を向ける。

 

「アンタはリーダーだよね?どうすんの?」

 

「・・・分かった。その提案・・・飲むわ」

 

「隊長!?」

 

他の隊員は驚いたように燎子へ視線を向けるが、彼女は唇を噛み締めたまま言った。

 

「・・・これ以上犠牲者を出すわけにはいかないの。分かって」

 

彼女の言葉に渋々と武器を下げる隊員達を見て、士道はレンチメイスのチェーンソーを止めて拘束した彼女を開放した。

 

「行けば?次、俺達の邪魔したら容赦しないけど」

 

「ヒック、ヒック、ヒック」

 

士道の言葉にゆっくりと泣きながら歩いて戻る彼女を見て士道は言った。

 

「んじゃ、後は俺に任せてさっさと帰って。俺にはまだやる事あるし」

 

「・・・総員撤退。折紙も撤退するわよ」

 

「・・・・・分かった」

 

燎子の言葉に折紙も渋々頷く。そして此方をチラッと見てから撤退していった。

 

そして────

 

「シドー!!」

 

「あれ?十香?何で此処にいんの?それにそれ・・・」

 

士道はそう呟きながら天使を纏った十香と合流した。

 




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第十八話

明日、四月十一日は確か、オルガの命日だったはずなので投稿!!

「モビルアーマーの最も厄介な所はプルーマと言われる子機達です。攻撃の他に重要な機能がもう一つ・・・・」

「なんかちょっとかわいいがあります」

「かわ・・・いい?」


石動・カミーチェ

オルガ・イツカ




「──シドー!!」

 

後方から聞こえてくる十香の声に士道は不思議そうに言った。

 

「あれ?十香?何で此処にいんの?それにそれ・・・」

 

十香の声がした方へ振り向いた士道は、見慣れない十香の姿に若干困惑した。

十香はいつも通り来禅高校の制服を着ていたのだが───胸元やスカートなど、身体の要所に、美しい光の膜が揺れているのが分かる。

 

「十香、それなに?」

 

「ぬ?」

 

士道が言うと、十香は目をぱちくりさせて自分の身体に視線を落とした。

 

「おお!?なんだこれは!霊装か!?」

 

指摘されて初めて自分の様子に気がついたらしい。十香は驚きの声を上げる。

そしてしばしの間、ペタペタと光の膜を触ったあと、ハッと顔を上げ、士道の方へ視線を戻す。

 

「そんなことより───シドー、無事か?怪我はないか?」

 

「俺は大丈夫だよ。十香は?怪我とかない?」

 

すると士道の言葉に対し、十香はばつが悪そうに目を泳がせ、少し震えた声であとを続けてきた。

 

「・・・私は無事だ。その・・・なんだ、わ、悪かった・・・いろいろと」

 

「え?」

 

士道は見に覚えのない十香の謝罪に対し、キョトンとしながら言葉を返すと、十香は「むむう」とうなりを上げる。

 

「だから・・・!私が、よくわからないことで苛ついてしまって・・・その、シドーに礼も言えず・・・迷惑をかけた、から──ずっと、謝りたかったのだ・・・」

 

「別に気にしてないよ」

 

十香の言葉に士道は短く答える。そしてその言葉の続きを士道は言った。

 

「俺だって十香にちゃんと説明してなかったんだし、悪いのは俺だって同じだよ。だから十香はそんなに気にしなくてもいいよ」

 

「・・・だがっ!」

 

それでも食い下がってくる十香に士道は言った。

 

「そんなに気にするんなら、俺の頼みを聞いてくれる?時間もそんなにないし」

 

「ぬ・・・?なんだ、改まって」

 

十香が不思議そうに首をひねってくる。

 

「四糸乃を助けるから手伝ってくれない?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

十香はしばしの無言のあと、小さな声を響かせてきた。

 

「四糸乃というのは────あの娘のことか?」

 

「うん」

 

「・・・・・っ」

 

息を詰まらせてから、十香は言葉を続ける。どこか───悲しそうに。

 

「・・・そうか。やはり、あの娘が大事なのだな。───私、より」

 

「そんなこと、俺は思ってないよ」

 

十香の言葉に士道はバルバトスを解除して十香を抱きしめた。

 

「え・・・・・?」

 

「十香は俺達の“仲間“だ。俺は戦う事しか出来ないから十香を色々不安にさせるかもしれないけど、俺は十香を仲間を守る為にオルガの命令を守る為に今を生きてるんだ。・・・四糸乃だって、十香と同じだ」

 

「同じ・・・・・?」

 

「うん。四糸乃は、十香と同じ────精霊ってやつなんだ」

 

「・・・・・っ!?あの娘が?」

 

十香が、眉をひそめて怪訝そうな声を発する。

 

「────うん。それだけじゃない。四糸乃だって、前の十香と同じように、ずっと戦ってたんだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「それに、俺は四糸乃と約束したからね。俺が四糸乃を守ってあげるって」

 

俺に出来る事はそれだけだから。鉄華団を家族を、アトラを、クーデリアを、オルガを守る為に俺はずっと戦っていた。

失くしたものは二度と元に戻らない。

だから俺に出来ることは今、生きている奴を死なせないように全力で守るだけだ。

オルガが十香達を俺達の家族と言った。だから俺の“命”というチップを賭ける理由がここにある。

 

「・・・・・」

 

沈黙が、流れる。

だが────それは長くは続かなかった。

すぅー・・・はぁぁぁぁ、と深呼吸のような音が聞こえてきたあと。

 

「・・・・・っ、はは」

 

小さな、笑いにも聞こえる声が響いた。

 

「・・・?」

 

士道は突如、額に手を当てた十香を不思議そうに見つめる。

そして、十香の口元が小さく動いた。

 

「・・・ああ、そうか。そうだった。なぜ忘れていたんだろう。────私を救ってくれたのは、“こういう男”だった」

 

「十香?」

 

士道は訝しげに聞き返すが、十香は答えず、バッと身を翻した。

 

「────あの娘を、助ける手伝いをすればいいのだな?」

 

「うん。それで十分だよ」

 

士道はバルバトスを再度展開し、四糸乃が作り上げた氷結の結界を見上げる。

 

「・・・それで?あれはどうなってんの?」

 

『・・・四糸乃が構築した結界だね。ふむ、よくできている』

 

士道が言った瞬間、令音が冷気のドームの解析結果を簡潔に説明してくる。

魔力────つまりは、ASTがCR−ユニットで出力した攻撃に反応してオートで迎撃を仕掛けてくる氷の鶏でだという。

 

『困ったことになったわね。あれじゃあ、誰も四糸乃に近づけないわ』

 

普通に考えれば確かにそうだ。だが、“バルバトスは違う“。

 

「なら、俺がバルバトスを“モビルスーツにしてあの中に乗り込むよ”」

 

「なっ!?」

 

士道の言葉に十香は驚愕し、琴里は叫ぶ。

 

『バルバトスだって例外じゃないのよ!!あの吹雪が吹き荒れる中、散弾銃に撃たれながら入るなんて正気じゃないわ!しかも、霊力を感知されたら、十香の〈鏖殺公〉みたいに凍り付かされるわよ!!』

 

「モビルスーツの時のバルバトスなら大丈夫だよ。“霊力に反応しない“しね」

 

士道はそう言って、バルバトスを再度展開し直す。

士道を中心に段々とバルバトスは巨大化していく。

 

『士道────!士道!止まりなさい!』

 

「────シドーッ!」

 

琴里が、いつになく必死な様子で叫んでくる。十香も士道を止めようと手を伸ばすが────

 

「行ってくるね」

 

『────止まって・・・ッ、おにーちゃ────」

 

そんな琴里の声を最後に、士道の耳に凄まじい雑音が入る。

エイハブウェーブにより、街中の電子機器が、交通機器が、全てシャットアウトする。

そしてバルバトスのコックピットの中で、士道は言った。

 

「・・・オルガ。俺は止まらないよ。これまでも、これからも。お前だって、まだ止まりたくないもんな。バルバトス」

 

“三日月“の声に答えるようにバルバトスはライトグリーンのツインアイを輝かせた。

 




感想、評価、誤字報告よろしくです!!

ちなみに吹雪による散弾の雨?嵐?

ナノラミネートアーマーの効果、お忘れかな?琴里ちゃん?


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第十九話 約束

投稿!!

次の投稿は火曜日予定!次で四糸乃パペットのエピローグに入ります!!

行くんだよ。此処じゃないどこか。俺達の本当の居場所に

オルガ・イツカ


「ぅ、ぇ・・・・・っ、ぇ・・・・・っ」

 

結界の中心部で、四糸乃は〈氷結傀儡〉の背にうずくまり、一人泣いていた。

吹き荒れる氷弾の中とは思えないほどに、静かな空間である。ただただ、四糸乃の嗚咽と鼻をすする音だけが、いやに大きく反響した。

とても怖くて、外には出られない。でも、ここは───とても、寂しかった。

 

「よ、し、のん・・・・っ・・・・・」

 

涙に濡れた声で、友達の名前を呼ぶ。

答えてくれるはずがないのは、四糸乃にも分かっていた。だが、呼ばずには──────

と、次の瞬間。

 

ドォォン!!

 

「・・・・・・・・ッ!?」

 

凄まじい爆音がドームの中に響く。四糸乃はビクッと肩を震わせると、バッと顔を上げてあたりを見回した。

 

「・・・・・ひッ!?」

 

四糸乃は上を見上げた瞬間、顔を青くし、小さく悲鳴を上げた。

先程、外で自分を殺そうとしていた人達の一人を自分の目の前で殺した悪魔が、自分を見下ろすように此方を見ていたのだ。

 

「・・・・・・ぅぇ・・・・・」

 

恐怖のあまり、四糸乃は身体を硬直させる。

四糸乃は恐怖のあまり、気を失いそうになったその時。

 

『あ、良かった踏まなくて。四糸乃、無事?』

 

響くように悪魔から聞こえた声に四糸乃は困惑するような声で声を発した。

 

「・・・・士道・・・さ・・・ん?」

 

『うん』

 

四糸乃の言葉に士道は何でもないように言った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『四糸乃、ちょっとしゃがむからどいてくれない?』

 

「・・・・・!!」

 

士道の言葉に四糸乃はすぐに首を縦に振り、〈氷結傀儡〉と共にその場から身を引く。

士道はバルバトスを正座のように座らせ、安全な位置にコックピットを移動させると、コックピットハッチを開いた。

 

「よっと」

 

士道は身軽にバルバトスの腕をつたい、四糸乃のもとへ駆け下りていく。 

 

「───四糸乃」

 

士道は地面に足をつけ、四糸乃の名前を呼ぶと、ウサギのパペットをポケットから取り出して四糸乃に差し出した。

 

「約束、守りに来たよ」

 

すると四糸乃は目を丸くしたのち、

 

「う、ぇ、ぇぇぇぇ・・・・・」

 

目に涙を溜め、泣き出してしまった。

 

「・・・・・・なんか、ごめん」

 

士道はそう言って、四糸乃を抱きしめる。

謝る士道に四糸乃はふるふると首を振った。

 

「違・・・ます、来て、くれ・・・嬉し・・・て・・・っ」

 

そう言って、再び「うぇぇぇぇ・・・・」と泣き出してしまう。

そんな四糸乃に対し、士道は四糸乃を抱きしめながら令音の言葉を思い返す。

 

『調査の結果、こちらがモニタリングしていた精神グラフの後ろに、もう一つ非常に小さな反応が隠れている事が分かった』

 

「それってなに?」

 

『・・・要するに、パペットを着けているときにだけ、四糸乃の中に人格がもう一つ、並列して存在しているということさ』

 

「つまり、二重人格みたいなもんか」

 

『その通り。だから、デパートで君が会話していたのは四糸乃ではなくパペットを介して発現していた別人格だったということさ。通りで力が封印出来なかったわけだ』

 

「へぇ、じゃあその二重人格はやっぱりASTに狙われていたのが原因?」

 

『・・・いいや。───なんとも信じがたいことに、この少女は、自分ではなく、他者を傷つけないために、自分の力を抑えてくれる人格を生み出した可能性がある』

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・シン。きっと、彼女を救ってやってくれ。こんなにも優しい少女が救われないのは・・・嘘だろう』

 

 

───そんな、やり取りを。

 

「・・・・・もう大丈夫?」

 

「ありが、とう・・・ござ、ます」

 

と、四糸乃が頭を下げてくる。

 

「俺、なんかした?」

 

「・・・よしのんを、助けて、くれて」

 

「あー・・・うん」

 

士道は一瞬、どう返事をしようか迷ったが、頭をかいて頷いた。

 

「まあ、俺にはまだ仕事があるんだけどね。四糸乃を助けるって仕事が」

 

「え・・・・・?」

 

四糸乃が不思議そうに返してくる。そんな四糸乃に士道は目線を合わせるように、その場に膝を突く。

 

「じゃあ四糸乃。今からアンタを助ける為にキスをしなきゃいけないんだけど、大丈夫?」

 

士道がそう言った矢先───

 

「──────ん?」

 

四糸乃が士道に唇を近づけさせる。

 

「・・・こう、ですか?」

 

目をギュッと瞑りながら、四糸乃は士道の顔に自身の顔を近づけさせる。

 

「まあ、それでいいんだけど」

 

士道はそう呟きながら、四糸乃の唇に自身の唇をくっつける。

と、瞬間。

 

『もう一度みせてみろよ──────────力』

 

一瞬。ほんの一瞬だけ。

士道の脳裏に精霊とバルバトスの姿が映った。

 

「・・・・なんだ?さっきの?」

 

と、四糸乃の肩が、驚いたようにビクッと震える。

 

「・・・・・っ、し、士道さ・・・、これ───」

 

四糸乃は何がなんだかわからないといった様子で、目をぐるぐると回しながら、半裸状態の身体をかくすように、身をかがめる。

 

「あー、言ってなかったっけ?」

 

士道は忘れてたと頭をかくと、───そこで。

 

「ん・・・・・」

 

四糸乃が、眩しそうに目を細めた。雲の切れ目から───太陽の光が、注いできている。

 

「暖か───い・・・・・」

 

まるで初めて太陽を目にしたかのように、四糸乃が小さな驚嘆を発する。

そういえば、四糸乃がこの世界に現れたときはいつも、雨が降っていた気がする。

 

「き、れい・・・・・」

 

ぼうっと、呟くように。

四糸乃が、空を見上げて言う。

士道も、それにつられるように顔を上にやる。

四糸乃が見ていたもの。それは──────

 

「虹か」

 

火星にいた頃は一度も見たことがない虹が、かかっていたのである。

バルバトスもまた、用は終わったとばかりに光の粒子となって消えていく。

そして虹を見上げていた四糸乃に士道は言った。

 

「綺麗でしょ。俺達の“今の居場所は”」

 

「は、い・・・・」

 

四糸乃は士道に短く答えて、そして小さく笑った。




感想、評価、誤字報告よろしくです!


ちなみに思った事。


11巻か12巻あたりで十香達が士道攻略しようとする話があるんですけど・・・中身三日月だと、オルガ以外誰も攻略出来なくね?


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二十話 エピローグ

投稿!!四糸乃パペット最終話!

ガエリオの伝言ゲーム

「ガエリオ・ボードウィン」

「ガエリオ・ボードウィン特務三佐」

「ガエリオ・ボードウィン」

「ガエリオ・ボールドマン?」

「ガエリオ・ボールドさん」

「ガリガリ・ボンドマン」

「貴様わざとか!?」


アイン・ダルトン

バエルマン

オルガ・イツカ

アトラ・ミクスタ

全てを無に返す三日月

ガリガリ・ボンドマン


「なにこれ?」

 

四糸乃の力を封印した日から、二日。

検査を終えた士道と十香は、ようやく家に帰ってくる事ができたのだが・・・その日、朝起きてみると、五河家の隣に、マンションのような建物が聳えていたのである。

二日前までは空き地だったスペースに、突如として。

まるで、化かされているような気分だった。

 

「何って・・・言ってなかったっけ?精霊用の特設住宅を造るって」

 

と、後方から琴里が、眠たげに目を擦りながら言ってくる。

 

「ああ、じゃあこれがそうなんだ」

 

「ええ。見た目は普通のマンションだけれど、物理的強度は通常の数百倍、顕現装置も働いているから、霊力耐性もバッチリよ。多少暴れても、外には異常がもれないわ」

 

「へぇ・・・でもこんなのいつの間に造ったの?一日二日で出来るもんじゃないよね?」

 

「やあねえ。陸自の災害復興部隊だって、破壊されたビルを一晩で直しちゃうじゃない」

 

「そういうことか」

 

言われてみればそうである。きっとこれも、顕現装置とやらを使った結果なのだろう。

 

「・・・・ってことはさ、住居ができるまで、ってのは結構な詭弁だったわけか」

 

「人聞きの悪い。十香が外部で暮らすための試用期間でもあるって言ったでしょ」

 

「・・・ん?」

 

いろいろと腑に落ちなかったが、きっと言い返しても無駄だろう。

琴里は身を翻すと、家の方へ足を向けた。

 

「───というわけで。明日から十香は隣の家で暮らしてもらうことになるわね。もう十香には言ってあるわ。今頃荷造りしてるんじゃないかしら?」

 

「そっか。じゃあ荷物を運ぶの手伝うか」

 

士道はそういうと、琴里は「はいはい」と言いながら家の中に入っていった。

士道も一度、マンションを見たあと家に足を向けた。

と─────

 

「ん・・・・・?」

 

士道は不意に視線を歩道へ向ける。

可愛らしいワンピースを纏い、頭に顔を覆い隠すようなキャスケットを被った少女が、飛び跳ねるように走ってきたからだ。

 

「・・・四糸乃?」

 

士道は少女の名を呼ぶ。身に纏っているのは霊装ではなかったが───間違いない。

何しろ、少女は左手に、ウサギのパペットを着けていたのだから。

 

『やっはー、士道くん』

 

パペットがパクパクと口を動かしながら、甲高い声を響かせてくる。

 

『やー、やっと会えたねえ。助けてもらったのにお礼言えなくてごめんねー』

 

「別に仕事だよ。でもなんでこんなとこにいんの?もう検査は終わり?」

 

『んー、第一検査だけはね。まだあるらしいんだけど、士道くんにお礼が言いたくてさ。特別に少しだけ外に出してもらったんだー』

 

言って、〈フラクシナス〉を見るように、パペットが空を仰ぐ。

 

『ま、そういうわけで、検査終わったらまたデートしよーねー』

 

「アンタ相手だと、俺結構疲れるんだけど・・・まあうん。言ってくれれば付き合うよ」

 

『ふふ、うんじゃ、まーたね』

 

パペットが小さな手を振る。

と、四糸乃がぴくりと肩を揺らすと、躊躇いがちに顔を士道の方に向けてきた。

 

「・・・どうかした?」

 

「───あ、の・・・・」

 

と、士道はその声を聞き、少しだけ眉を上げる。

 

「また・・・おうちに、遊びに、行っても・・・いい、ですか・・・?」

 

そう言って、恐る恐るといった様子で士道の方へ視線を送ってくる。

 

「いいよ。いつ来ても。好きな時に来れば?」

 

士道が答えると、四糸乃は顔を明るくしてから頭を下げ、パタパタと走っていった。

 

『ふふっ、偉い偉い。頑張ったねー』

 

「・・・・・うんっ」

 

なんて会話を、パペットと交わしながら。

 

「・・・・・戻るか」

 

士道はそんな彼女を見ながらそう呟き、家の中に入っていく。

階段を上り、自分の部屋で寝ようかと思い、入ろうとしたところで、士道は視線に気づいた。

廊下の奥に位置する客間の扉が微妙に開き、そこから、十香が顔を半分ほど覗かせて士道の方を見ていたのである。

 

「・・・何やってんの?十香」

 

「・・・・・・・・」

 

士道は不思議そうに言うと、十香は無言のまま、扉の隙間から手を出し、ちょいちょい、と手招きをする。

 

「・・・・んー?」

 

十香の行動に士道は足を進めると、十香はそのまま部屋の中に引っ込んでしまった。

 

「・・・・なんだろ?」

 

十香の訳のわからない行動に士道は困惑しながらも、十香がいる部屋に向けて歩いていった。そして扉を開ける。

十香は、部屋の左手側───壁際に置かれた棚の前あたりに立っていた。それと向き合う形になるように、部屋の中程まで歩みを進める。

 

「なんか用?十香」

 

士道が問うと、十香は小さく唇を噛むようにしてから顔を上げてきた。

 

「・・・・ん。琴里から聞いているかもしれないが、明日から、隣の家に住むことになった」

 

「うん。琴里から聞いた」

 

「それで・・・ん、今のうちに、シドーと話しておきたいことかあるのだ」

 

「話?」

 

「・・・・・うむ」

 

十香が、何か言い出しづらそうに、目線を微妙に逸らす。

 

「昨日、検査のとき、琴里や令音にいろいろと、聞いた」

 

「───?色々って?」

 

「ん・・・琴里たちは、私たち精霊を助けようとしてくれていて・・・シドーもそれに協力しているのだと」

 

十香は、心拍を落ち着けるように深呼吸をしてから、士道に向き直ってきた。

 

「話というのは、それに関連してだ。───シドー。お願いだ。もし今夜、私や四糸乃のような精霊が現れたなら、きっと救ってやって欲しい」

 

「・・・・・」

 

士道は、表情は変えずにじっと十香を見つめる。

 

「琴里が言うには、まだ精霊は数体確認されているらしい。きっとその中には、私たちのように、望まぬままに戦いに巻き込まれている者もいるはずなのだ。───そんなのは、可哀想ではないか」

 

十香が、どことなく寂しそうな笑顔を作りながら、言う。

 

「だから頼む。シドーの力で、そういう精霊達を救ってくれ。・・・あのとき、私を、助けてくれたように」

 

「分かってる。だから心配しなくていいよ」

 

十香は、望み通りの答えが得られた筈なのに、何故か複雑そうな顔をして笑った。

 

「ん・・・恩に着る。あと・・・もう一つ、いいだろうか?」

 

「なに?」

 

「ん・・・・・」

 

と、十香が、何かモゴモゴと口を動かしながら、ふっと顔をうつむけてしまう。

 

「・・・・・?なに?」

 

士道は十香が何を言っているのか分からず、耳を傾けながら十香の方に足を踏み出し───

 

「・・・・・・!」

 

急に顔を上げた十香に身体を寄せられ、十香は士道の首に腕を回すと、そのまま士道はを近くにあったベッドに押し倒す。

そして───

 

「ん・・・・・?」

 

一瞬、逡巡のようなものを見せてから、十香は、おもむろに自分の唇を士道の唇に合わせてきた。

 

「ん?(は?)」

 

突然の事に士道はそう呟くが、十香はギューと士道を抱きしめながら数十秒間、キスを続ける。

そしてようやく───十香が唇を離して顔を上げた。

 

「ぷは・・・・・っ」

 

どうやらキスの間中、息を止めていたらしい。息継ぎでもするように、十香が息を吐く。

そしてマウントポジションを取ったまま、士道の目をジッと見つめてくる。

 

「十香?さっきのといい、どうしたの?」

 

士道はそう声を発すると、十香は視線を変えぬまま続けてきた。

 

「・・・・・今回は、これで手打ちにしてやる」

 

「は?」

 

士道は眉を上げながら声を返すと、十香は恥ずかしそうに目を逸らす。

 

「・・・・なぜだろうな。ただ唇を触れさせるだけの行為なのに・・・悪くない感じがする。不思議と───シドー以外の人間とは、したいと思わないのだ。・・・それと同じ・・・なのかどうかはわからないが、シドーが・・・その、ビルとやらの中で四糸乃とキスをしていたときは、なんというか・・・イヤな感じがした」

 

そんな事を言う十香は恥ずかしそうに言葉を続ける。

 

「・・・だから。その、なんだ。・・・もう、私以外とは、するな」

 

「・・・・・・え?あー、うん?」

 

曖昧な返事をしてしまったが、どうやら十香は精霊の力を封印する為の方法を聞かされていないらしい。なんというか、無茶な要求をしてくれる。

 

「返事っ!」

 

「えっ?うん」

 

十香の言葉に、士道はそう言った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───兄様・・・・・?」

 

彼女は画面に写る士道の画像を見てそう呟いた。

その彼女の雰囲気は、どこか士道に似ていた。




感想、評価、誤字報告よろしくです!


ちなみに、ちょっと〈フラクシナス〉と鉄血の〈スキップジャック級戦艦〉ってどれだけサイズが違うのかなーと、調べてみたら
・・・

フラクシナス

約275m

アリアンロッド艦隊 スキップジャック級戦艦

約800m


・・・・・ラスタル様、貴方の戦艦デカすぎません?


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狂三キラー
第一話


投稿じゃあ!!

新章!!


「目つき悪っ。でも・・・なんか似てるかも」

昭弘似のクマのぬいぐるみを見たラフタ


「わたくし、精霊ですのよ」

 

 

六月五日、月曜日。

黒板の前に立った転校生の言葉に、来禅高校二年四組の教室は静まりかえった。

ただ、皆が皆、同じ顔をして黙りこくったわけではない。

もっとも多いのは、彼女が放った言葉の意味が理解できず、「なんなのこの子」と怪訝そうな顔を作った生徒たち。

それに次いで多いのが、彼女のぞっとするほどに美しい容貌に目を奪われ、そもそも言葉を聞き逃していた男子たちである。

十香は、目を丸くし口をぽかんと開け、傍から見てもすぐに驚いていることがわかる顔を作っている。

────だが五河士道は、そのどちらにも属していなかった。

 

「・・・・・・」

 

瞼を閉じ、ぐっすりと眠っていたのである。

彼女の美しい美貌も、自分が知ったことじゃないとばかりに士道は爆睡していた。

そんな中、朝の朝礼は終わった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

唇を舐めると、汗の味がした。

身体の周囲に展開されたテリトリーは、重力を初めとして、温度や湿度もおもいのままにコントロールする事が出来る。

ゆえに、わずかとはいえ発汗が認められるということは、そんな外的条件以外の原因が考えられるということだった。

 

「・・・・・・・」

 

鳶一折紙は呼吸を整えるように唾液を飲み込むと、手にした高出力レイザーブレード〈ノーペイン〉の柄をぐっと握り直した。

今折紙の華奢な肢体を包むのは、着慣れた高校の制服ではなく、ワイヤリングスーツと顕現装置搭載ユニットだった。

これを身に纏い、テリトリーを展開させた魔術師は、まさに超人といってもいい。

だが─────今。超人であるはずの折紙は、完全に追いつめられていた。

 

「────さ、あと一人です。どこからでもかかって来やがってください」

 

彼女は、足元には倒れたAST隊員を一瞥もせず、そう言ってきた。

─────祟宮真那。

年の頃は十四、五といったところだろう。左目下の泣き黒子に飾られた利発そうな顔には、まだどこかあどけなさが見て取れる。

だがその小さな体躯を包むのは、少女にはまるで似つかわしくない機械の鎧────CRーユニットだった。

ここからは見えないが、周囲に広がった障害物の影には、無力化された八人のAST隊員が倒れているはずである。

あまりに、圧倒的。まるで精霊を相手取って戦っているかのようですらあった。

───彼女がこの天宮駐屯地に配属されてきたのは、先月末のこと。

曰く、陸自のトップエースである。

曰く、顕現装置の扱いは世界でも五指に入る。

曰く─────精霊を、単独で“殺した“ことがある。

確かに話だけを聞けば、規格外の怪物だ。

だが、出会いざまに「この中に一人でも、私に勝てる人がいるのか」だなんて言われたなら、精鋭を自負するAST隊員達が黙っていられるはずもなかった。

ゆえに、真那の力を確かめるという名目で、一対十の特別演習が行われたのだ。

折紙としては、正直あまり興味なかったのだが・・・

 

「・・・・・」

 

無言で。折紙は、先日真那と交わした会話を思い起こした。

 

真那がこの天宮駐屯地に配属になった日、ちょうど折紙たちは先日と、〈プリンセス〉の戦闘映像を見ていたところだった。

そして真那が、映像に映っていた少年────五河士道を見て、言ったのだ。

 

───『兄様』、と。

 

士道にこんな妹がいるだなんて聞いたことがない。のちに折紙がそのことを問うと、真那は驚いたような仕草を見せてから口を開いた。

 

(!鳶一一曹は兄様とお知り合いなのですか!?ふむ・・・ええ、いいですよ、詳しく話しても。───ただし、今度の演習、あなたも参加しやがってください。それが条件です)

 

そう言われては、選択の余地がなかった。

結局、折紙も演習に参加することになったのだが───

 

 

結果は、見ての通りである。

九名が既に無力化され、折紙もまた、近接用レイザーブレード以外の装備を失っていた。

反して真那は、未だ傷一つ負っていない。

 

「・・・さあ、このままでは時間切れになってしまいやがりますよ?」

 

真那がふうと息を吐きながら、敬語になりきっていない敬語で言ってくる。

このまま隠れていても仕方がない。折紙は身体を浮遊させ、真那の前に姿を現した。

 

「────お。ようやく腹が決まりやがりましたか?」

 

「・・・・・・」

 

折紙は脳内で司令を発し、背中のスラスターを駆動させる。

もとより折紙の手に残った武器は〈ノーペイン〉一つのみである。接近戦を仕掛ける以外に道は残されていない。身体を前傾させ、凄まじいスピードで空を駆ける。

 

「潔し。嫌いじゃねーです、そういうの」

 

真那は唇の端を上げて、折紙を迎撃した。

─────勝負は一瞬にして決まった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「あ・ん・た・ら、ねぇ・・・・・」

 

ピクピクと額に浮き出た血管を蠢かせながら、ビッ!と演習場から回収された鉄塊───真っ二つに断ち分かたれたスラスターユニットを指さす。

 

「模擬戦って言ったでしょうが!何貴重な装備潰してくれてんの!」

 

二人はしばしの間、燎子の指の先を眺めてから口を開く。

 

「生半可な方法では、祟宮三尉に隙を作ることは出来なかった」

 

「やはり模擬戦とはいえ本気でやらねーと、正確なデータはとれねーと判断し───」

 

そこで、二人の頭が叩かれる。

 

「ご高説は、顕現装置搭載したユニットのお値段をちゃんと調べてから吐きなさい。ウチだって、予算が無尽蔵にあるわけじゃないのよ」

 

「了解」

 

「善処するです」

 

「ったく・・・・」

 

彼女は「以後気を付けるように」と残し、肩をいからせながら歩いていった。

その背中が見えなくなってから、真那が不満げにぶー、と唇を突きだす。

 

「まったく、隊長殿にも困ったものですね。そんなみみっちいことだから、精霊にいいようにされちまいやがるんですよ」

 

「同感」

 

折紙がうなずくと、真那は嬉しそうに唇の端を上げた。

 

「あなたとは気が合いそうです、鳶一一曹。こちとら、精霊なんて化け物を相手取ってるんです。金に糸目なんて付けやがったら、勝てるものも勝てなくなっちまいやがります」

 

言って、大仰に肩をすくめた。

折紙は無言で、真那の顔を改めて見直した。

やはり・・・目鼻立ちというか、容姿が士道に似ている。

だが、士道に妹は一人しかいなかったはずだ。

会話を交わしたことはなかったが、何度か見たことがある。五河琴里。言わずもがな、真那とは別人である。

だが────折紙データベースによると、確かに士道は養子だったはずだ。彼女が本当に士道の妹である可能性も、完全に否定出来なかった。

 

「祟宮三尉」

 

折紙は、自然と口を開いていた。

 

「約束。あなたと士道の関係を教えて」

 

「士道・・・・?誰ですか、それは」

 

真那が首を傾げる。・・・おかしい。折紙は訝しげに続けた。

 

「先日見ていた〈ハーミット〉戦の映像、〈プリンセス〉戦の時に出てきた〈デーモン〉のから出てきた少年の名前。貴方が、兄様と呼んだ人。演習に参加したら、教えてくれるという約束」

 

「・・・っ、兄───様・・・?」

 

と、真那が小さく眉をひそめた。

 

「どうしたの」

 

「いえ、少し、頭痛が・・・」

 

言って、側頭部を手で押さえる。

折紙はそんな真那の様子に見覚えがあった。───先月、映像で士道を見たときと同じだ。

 

「・・・・っ、失敬失敬。もう大丈夫です。ええと、兄様のことでしたね」

 

真那は、頭痛を放逐するように軽く頭を振ってから、ワイヤリングスーツの胸元をまさぐると、銀色の小さなロケットを取り出した。

そして、それを開いてみせる。中には、小さな男の子と女の子の写真が入っていた。

 

「────士道」

 

小さく呟く。そう、それは間違いなく、幼い頃の五河士道である。そして隣に写っている、泣き黒子が特徴的な女の子は───どう見ても、真那だった。

 

「これは?」

 

「昔の写真です。────生き別れた兄様の、唯一の手がかりです」

 

「詳しく、教えて」

 

折紙が言うと、真那は困ったように頭をかく。

 

「すまねーのですが、あんまり覚えてねーのです」

 

「・・・・?どういうこと?」

 

「いえ・・・実は私、昔の記憶がねーのですよ」

 

「・・・記憶喪失?」

 

「平たく言えばそうなりやがります。───でも、あの映像を見た瞬間、思い出したのです。私は、あの方を兄様と呼んでいたことかある、と」

 

「ならばなぜ、あんな条件を」

 

折紙が怪訝そうに問うと、真那はすまなそうに頭を下げた。

 

「いやー・・・鳶一一曹の実力を見ておきたかったのです。この部隊の中で一番やりそうなのがあなただったもので。────実際、期待以上でした」

 

「・・・・・」

 

折紙は無言で真那の顔を見つめ返す。あそこまで圧倒的な差を見せつけられてから『期待以上』だなんて言われても、少し複雑である。

と、真那が、上目遣いになりながら言葉を続けてきた。

 

「それで・・・鳶一一曹。ごめんなさいついでにもう一つお願いがあるのですが」

 

「なに」

 

「虫の良い話だと思うのですが、その・・・兄様のこと、知っていやがるのですよね?わかる範囲でいいので、教えてくれねーですか?」

 

「・・・・・・」

 

なんだか立場があべこべになっている気がするが・・・折紙は少しの間思案を巡らせてから、小さく首肯した。

 

「────名前は、五河士道。年齢十六歳」

 

「はい」

 

「家族構成は父、母、妹。現在両親は海外出張で家を開けている。家事全般が得意。趣味はトレーニングや野菜などの栽培」

 

「ふむ・・・・」

 

「血液型はAO型のRh+。身長百七十センチ」

 

「・・・・・はい?」

 

「体重五十八・五キロ。座高九十・ニセンチ。視力は右ニ・○、左一・八」

 

「す、ストップストップ!そこまで聞いてねーです!」

 

「そう」

 

焦るように叫ぶ真那に、折紙は小さくうなずき返した。

 

「ていうか、え、なんですかその詳細なデータ。冗談ですか?」

 

「冗談ではない。全て正確な数値」

 

「・・・・・・・・・・」

 

折紙が真顔で返すと、真那は頬に汗を浮かべて顔を引き攣らせた。

 

「・・・失礼、鳶一一曹と兄様は一体、どのようなご関係でいやがるのでしょうか?」

 

真那の問いに、折紙は間髪入れず、何の迷いも躊躇いも逡巡もなく唇を開いた。

 

「恋人」

 

 

 




三日月

「・・・・・・」スッ

銃をガチャリ

感想、評価、誤字報告よろしくです!


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第三話

投稿!

ソード・オラトリア・オルフェンズはゴールデンウィーク終わりまで投稿を控えます!もちろん、ゴールデンウィークが終わったら投稿を開始しますので、安心してください!理由は、活動報告にて!
では、どうぞ!


「やっと俺らの居場所が出来たんだ。皆の命も将来も鉄華団の上に乗っかてんだ。守ってやらねえとな」

「そうだね」

オルガ・イツカ

三日月・オーガス


「と、もうこんな時間。そろそろ十香が家を出る時間でしょ。細かい事はインカムで指示するわ」

 

「・・・分かった」

 

未だに納得というか理解が出来ていない士道だったが、琴里に言われて外へ出ようとする。

と、そこで士道の背に、再度琴里が声をかけてきた。

 

「ああ、そうそう、もう一つ。今日はちょっとしたゲストがいるんだった。まあ挨拶程度になると思うけど、ちょっと話してあげてちょうだい」

 

「はあ?ゲスト?」

 

士道が問うも琴里は答えず、階段をトントンと上がっていってしまった。インカムで指示を出すと言っていたので、おそらくは二階のベランダから回収してもらうつもりなのだろう。

 

「・・・まあ、行くか」

 

止まっていても仕方がない。扉を開け、外へ出る。

 

「・・・暑い」

 

今日は六月五日。もう梅雨に入っている筈だが、最近は天気がいい。───まるで、先月のうちに雨を使いきったかのように。

流石に暑さに絶えかね、士道も今日から制服を夏服に変えていた。

と────そこで。

 

「ん・・・?」

 

陽光の中、五河家の真ん中に立っていた人影を目にして、士道は目を細める。

 

「あれ、四糸乃か」

 

そこにいたのは四糸乃だった。

あのコミカルなウサギのパペットは忘れられそうにない。

薄手の涼しそうなワンピースに、目元を覆い隠すかのように目深に白の麦わら帽子を被っている。

士道は階段を降りて、門を開くと、四糸乃のもとまで足を進めた。

 

『やっはー、士道くん。ひっさしぶりだねー!』

 

と、四糸乃の左手に装着されていたウサギのパペットが、口をパクパクさせてくる。

 

「うん。よしのん、久しぶり」

 

士道はそう言って、パペットの方へ返す。

そして士道は『よしのん』を見て言った。

 

「それで、今日はどうしたの?もう検査とか終わった?」

 

『んー、検査自体は結構前に終わってたんだけどねー。ちょーっと練習をしてたのさー』

 

「・・・練習?」

 

士道が言うと、『よしのん』が四糸乃の帽子のつばをくっと上げた。

 

「・・・・・っ」

 

四糸乃は怯えるようにビクッと肩を揺らす。

だがこくんと唾液を飲み込む仕草を見せたあと、震える唇を開いた。

 

「お・・・っ、おはよう、ございます、士道さん・・・!」

 

先月よりも少しだけはっきりした声音で、四糸乃が言ってくる。

 

「うん。四糸乃もおはよう」

 

士道は四糸乃に言葉を続ける。

 

「結構喋れるようになったじゃん」

 

前は人前で喋ることも難しそうだったのに、今は成長して喋れるようになっていた。

と、そこでインカムからフフンと琴里の声が聞こえてくる。

 

『どう?もう私や令音なんかとも話せるようになったのよ?』

 

「へえ、凄いじゃん」

 

士道が言うと、四糸乃は恥ずかしそうに帽子のつばを下げ、しかし口元をモゴモゴと嬉しそうに動かした。

と、チュッパチャップスを口の中で転がす音をさせてから、琴里が続けてくる。

 

『まだ先になると思うけれど、そのうち四糸乃も艦外に住ませようと思ってるの。────よしのんっていう話し相手がいるからか、十香よりストレス値の蓄積は少ないし、このままでも大丈夫なんだけど・・・やっぱり〈ラタトスク〉としては、精霊にきちんと社会性を身につけてもらって、ちゃんと幸せな生活を送ってほしいわけなのよ』

 

「へえ、いいんじゃない?俺、そういった事はあんまり良くわかんないから、そこら辺は任せるよ」

 

 

『ん。だから、今日はちょっと顔見せにね』

 

「そういうことか」

 

士道はそう言って、隣に聳えたマンションを見やる。

確かに、四糸乃が暮すとなるとこのマンションになる。そうなると、十香と話せないと厳しいだろう。

と────そこで、マンションの自動ドアが静かに開いた。

そして中から、十香が大きなあくびをこぼしながら歩いてくる。

 

「おはよう。十香」

 

「ん・・・?シドー!?」

 

十香は士道の存在に気づき、目を見開いて声を上げた。

今十香は、先週までのブレザーではなく、半袖のブラウスにリボンという夏服スタイルに身を包んでいた。

そんな十香が士道に言った。

 

「どうしたのだ、朝に会うとは珍しいではないか!」

 

「ああ、たまには一緒に学校に行くかって思っただけ」

 

士道はそう言うと、十香は薄く頬を染めて顔をパアっと明るくした。

 

「そうか!うむ、それは───その、あれだ、いいと思うぞ!」

 

十香は嬉しそうに深く頷く。

士道は軽く、息を吐きながら十香に手にした弁当を渡した。

 

「それと、これ。十香の昼飯」

 

「おお!ありがとうなのだ!シドー!」

 

十香はそれを受け取ると、満面の笑みを作った。と、

 

「ぬ?」

 

十香が不意に目を丸くし、士道の隣にいる四糸乃に顔を向けた。どうやら、今の今まで気づいていなかったらしい。

 

「おお、四糸乃ではないか。久しぶりだな!」

 

屈託のない笑みを浮かべ、十香が話しかける。

色々と悶着はあったものの、十香はもう、さほどそのことを気にしていないようだった。

 

「・・・・っ!」

 

だが、四糸乃は肩を震わせて後ずさる。

 

『がんばれっ!がんばれっ!』

 

『よしのん』の応援になんとか踏みとどまると、すぅっ・・・と息を吸ってから足を踏みしめる。

 

「お───おは、よう・・・ござい、ます・・・」

 

士道の時よりも小さな声。でもしっかりと、その言葉を口に出した。

 

「おお、おはようだ!」

 

「・・・・っ」

 

四糸乃はまたも身体を震わせたが・・・どうにか場に踏みとどまった。

そんな四糸乃に士道は手を伸ばし、帽子越しで四糸乃の頭を撫でる。

 

「・・・っ!?士道、さん!?」

 

「頑張ったね」

 

士道はそう言って手を離す。

 

「むぅ・・・」

 

十香が何やら複雑そうな顔で士道を見ていた。

 

「十香・・・どうかした?」

 

「・・・なんでもない」

 

十香はそう言ってぷいっと顔を士道から逸らす。

 

「・・・・?」

 

士道は首を傾げると、右耳から琴里の声が聞こえてきた。

 

『はい、駄目ー』

 

「ん?」

 

『ん?じゃないでしょ。何やってるの士道。もう訓練は始まってるのよ?』

 

「は・・・?」

 

士道はそう言うと、琴里は盛大なため息を吐いてきた。

 

『言ったでしょ。今日の課題は、十香を嫉妬させないようにすることだって。────士道、なんで四糸乃には頭を撫でたのに、十香には何もしてあげないの?』

 

「はあ・・・?」

 

士道はそう言う。が、琴里は言葉を続けた。

 

『十香はね、四糸乃が頭を撫でられてもらってるのに、自分は何もしてもらえないもの。───もしかしたら十香も無自覚かもしれないけれど、機嫌メーターが少し低下しているわ』

 

「えぇ・・・・」

 

士道は面倒くさいと言わんばかりの顔をつくる。

 

『まあ、何かしてあげたら機嫌が直るんじゃない?士道、何かしらしてあげたら?例えば・・・そうね、抱きしめてあげたら?』

 

「・・・分かった」

 

士道はそう言って、十香に手を広げてギューと抱きしめる。

 

「ん?」

 

「・・・シドー!?」

 

「!?」

 

『わ〜お、大胆!!』

 

士道の突然の行動に十香は驚愕し、四糸乃は顔を赤くする。よしのんは笑みを浮かべるかのように口元を歪めていた。だが、士道本人は何か違和感を感じながらも、十香に言った。

 

「なんか不機嫌そうだったみたいだからこうしてるけど、嫌だった?」

 

「わ、わかったから今はやめてくれ!」

 

「うん、分かった」

 

十香は顔を真っ赤にしながら、そう言って肩で息をするように上下させる。

と、そんな士道に琴里は呆れたように言った。

 

『本当に実行する?普通。でも、上出来よ。十香の機嫌パラメーターは急上昇、この上ないくらい超ご機嫌。十香の前に回って顔でも見てみたら?多分面白いことになってるわよ』

 

「そう?俺はやれって言われたからやっただけだけど?」

 

士道は短くそう言うと、四糸乃がペコリと頭を下げた。

 

「きょ・・・今日は、これで・・・失礼、します。いってらっしゃい・・・士道さん、十香さん」

 

「うん、またね」

 

「ん────ではな」

 

士道と十香が軽く手を振る。四糸乃はもう一度深くお辞儀をすると、とてとてと道の向こう側に走っていった。

 

「十香、行く前にちょっとだけ確認していい?」

 

「む?なんだ?」

 

士道の問いに十香は首を傾げながら、そう答える十香に士道は言った。

 

「胸の下着、十香着けてる?」

 

「む?なんのことだ?」

 

「・・・・琴里」

 

十香の答えに、士道は琴里にインカムで聞く。

 

『あー、一応用意しておいたんだけど・・・そもそも用途がわからなかったみたいね』

 

「・・・どうすんの?これ?」

 

流石に女がそれをつけていないのはまずいだろう。クーデリアも着けていたみたいだし、アトラは・・・どうだったのだろうか?だが、そんな事を考えても埒が明かない。と、インカムから琴里が提案してくる。

 

『そうね。十香のタンスの一番上に入っているはずだから、着け方教えてあげてくれる?』

 

「俺も分かんないけど?」

 

『なら、私がインカム越しで教えてあげる』

 

「・・・分かった」

 

琴里の言葉に士道は答えて、十香に言う。

 

「十香、着け方教えるから部屋教えて」

 

「う、うむ」

 

士道は十香にそう言って部屋に向かった。

そして数分後。

顔を真っ赤にした十香と、仕事が終わったとばかりの顔をした士道がマンションから出てくるのだった。

 

 




感想評価、誤字報告よろしくです!

所でなんですけど、原作見直していて、デアラにも一応、〘ダインスレイヴ〙あるんですよね。

“主人公抹殺兵器として“

鉄血といいデアラといい、ダインスレイヴは主人公抹殺兵器になってない?


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第ニ話

投稿!

「もっとだ。もっと。もっと寄越せバルバトス!!」


悪魔にメンチを切る悪魔


「ちょっと。何してるのよ、士道」

 

「ん?」

 

自宅のリビングで。五河士道は、不意にそんな声をかけられ、振り向く。そこには長い髪を黒いリボンで二つ結びにした制服姿の女の子が、腰に手を当てて仁王立ちしていた。

士道の妹・五河琴里────の、“司令官”状態である。

双眸は不機嫌そうに歪められ、口にくわえられたチュッパチャップスの棒は、傍から見れば威嚇する動物の尻尾のようにピンと立てられている。

 

「何って、学校に行くんだけど?」

 

士道はそう言って琴里を見るが、しかし琴里は肩をすくめながら首を横に振った。

 

「オーケイ、話を整理しましょう。士道が左手に持っているものは何?」

 

「・・・?弁当だけど?」

 

「自分が食べるもの?」

 

「十香のだよ」

 

自分の分は鞄の中に入っている。これは家の隣のマンションに住む十香の為に、士道が別で作ったものだ。

 

「それをどうやって十香に渡すの?」

 

「郵便受けに入れるけど・・・それが何?」

 

別に手渡しでも良いが、そうなった場合、士道が十香の家に直接行く事になるので、いつも朝が早い士道に関してはまだ寝ているであろう十香を、起こしたらいけないという配慮もあっての事だった。

 

「へぇ・・・じゃあなんで郵便受けに入れるのよ」

 

「登校時間違うのに、渡せるわけ無いじゃん」

 

「そこよ」

 

琴里が口にくわえていたチュッパチャップスを指で摘み、ビシッと士道に向けてくる。

 

「は?」

 

「十香が隣に越してきてから、約二週間。───士道、十香と何回一緒に登校した?」

 

「え?ええっと・・・」

 

視線を上に上げ、頭の中で数えてみる。

 

「多分ないと思うけど・・・」

 

士道はそう言って視線を上に上げた。

わけあって士道と十香は、この家で少しの間同居していたことがあったのだが、その際、士道が朝一番速いので問題なかった。

だが、十香の弁当を作って十香を待つと、学校で栽培している野菜に手がつけられなくなってしまう。

なので、行きは別々だが帰りは一緒に帰るというのが、日課になっていた。

琴里はやれやれといった調子で額に手を当てた。

 

「せっかくお隣に住んでて、クラスも同じだってのに、わざわざ登校イベントを潰す理由がわからないわ。────今後また別の”精霊“が出現したら、十香にかかりきりになってるわけにもいかなくなるんだから、一緒にいられるときはいてあげなさい」

 

「・・・分かった」

 

士道は短くそう言って立ち上がる。

 

「分かってる?士道。次の精霊が現れたら、またデレさせなきゃいけないんだからね」

 

「分かってるって。“仕事“なんだから覚えてる」

 

士道は鬱陶しいと吐息を漏らしながらそう答える。

 

「よろしい。それじゃあ、今日は十香と一緒に登校すること。オーケイ?」

 

「はいはい」

 

別に嫌と言う訳ではないが、ただ単純に面倒くさいなと思った士道は、鞄を手に持つと、玄関の扉に手をかける。

 

「ちょっと士道。忘れ物よ」

 

と、その途中、琴里に声をかけられ、士道は自分の手元を見直した。

 

「?他に何かあった?」

 

「これよ、これ」

 

琴里が小さなインカムを左手の平に載せ、腕を伸ばしてくる。

そして右手の人差し指を立てると、ちょいちょい、と自分の耳を指さす。

────まるで士道に、そのインカムを今装着しろとでも言うように。

 

「・・・・なに?」

 

「ちょうどいいから、訓練も兼ねちゃいましょ。ほら、装着装着」

 

すると琴里はにい、と唇の端を上げ、半ば無理矢理士道の右耳にそれを装着させた。

 

「訓練って言っても、次はなにするの?」

 

「そうね────今日の課題は、十香に嫉妬させないように振る舞うこと、よ」

 

「嫉妬をさせない?どういうこと?」

 

十香が嫉妬?誰に嫉妬したのだろうか?士道は頭を傾けながらそう思ったが、琴里が言葉を続ける。

 

「先月、四糸乃が現れたときの十香のことを覚えてる?」

 

「ああ、あの時か」

 

四糸乃と一緒にいた時、十香が妙に拗ねたあの時のことを思い出し、士道は納得する。

 

「そ。要はあれ、士道が他の女の子と仲良くしてるのが、十香は面白くないわけよ」

 

「へぇ、そういうことか」

 

士道がそう言うと、琴里は息を吐く。

 

「まあ、とにかく。士道が他の子と仲良くしてると、十香は段々と精神状態が安定しなくなって────結果、精霊の力が逆流してしまうのよ。新しい精霊が現れるたびにそれじゃあ、やっぱり困るのよね。────そこで、よ」

 

琴里が、立てていた指を士道に向ける。

 

「今日の登校中、〈ラタトスク〉の機関員が十香の嫉妬を煽るようにいろいろと工夫するわ。士道はそれを受けつつ、上手く対応してちょうだい」

 

「・・・・分かった」

 

士道は頭をガリガリとかきながら、ボソッとそう呟いた。

 

 




おまけ

夏祭り

「四糸乃、どうしたの?」

士道はそう言って四糸乃を見る。

「・・・あっ、あの子・・・かわいいな・・・って」

『四糸乃はねー、あの台に乗ってるあの緑の丸いぬいぐるみが気になるんだってー』

四糸乃の視線の先に目を向けると、ハロとか言う、ぬいぐるみが台の一番上にのっていた。
そして、そのぬいぐるみを扱う店が────。

「射的か」

士道はそう呟くと、四糸乃に聞く。

「アレが欲しいの?」

「・・・えっと・・・はい」

小さな声でそう言った四糸乃に、士道は射的屋に足を進める。

「いらっしゃい!やってくかい?」

「うん。これでやれるだけお願い」

店主の言葉に士道は千円を渡して、おもちゃの空気銃を手に取る。

「ああ、ありが・・・」

パン!パン!パン!

店主が言い終わる前に、空気の乾いた音が屋台に鳴り響いた。



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第四話

短いですが、投稿です!

「なあ、俺達・・・仲間なんだよな?」

チャド・チャダーン


「・・・疲れた」

 

士道はそう呟きながら十香と一緒に廊下を歩く。訓練、という目的で街中や学校で〈ラタトスク〉の機関員が配備されていたのだが、まあ慣れない事を言われて、面倒だった。

 

「シドー。大丈夫か?」

 

「・・・うん、大丈夫」

 

扉を開けて教室の中を入ると、入り口の近くで黒板に落書きをしていたクラスメートの殿町宏人が、士道の方に目を向けた。

 

「あー?なんだよいつもより遅いと思ったら十香ちゃんと一緒かよ。うーわ、うーわ」

 

と、渋い顔で言いながら、手にしたチョークで黒板に相合い傘を描く。もちろん名前は、士道達だった。

 

「・・・・・」

 

士道はそれを無視し、自分の席へと向かう。

 

「お、おい、ノリ悪いな士道?」

 

困惑する殿町に士道は言った。

 

「・・・悪いけど、今疲れたから少し寝る」

 

士道はそう殿町に言って、瞼を閉じた。

隣の折紙から凄まじいプレッシャーが放たれているが、士道はそれに気にすることなく、意識を落とした。

────と。そこで、スピーカーからチャイムが鳴り響いた。

周囲に散らばっていたクラスメートや十香も次々と着席しつつ、程なくして、教室の扉が開き、眼鏡をかけた癖毛の小柄な女性が入ってくる。

 

「はい、みなさんおはよぉございます」

 

と、ほわほわした挨拶を済ませると、タマちゃん教諭は出席簿を開こうとし────その手を止める。

 

「あ、いけない。今日はみんなにお知らせがあるんでした」

 

言って、ざわめく教室に思わせぶりな視線を向けてくる。

 

「ふふ、なんとですねえ、このクラスに、転校生が来るのです!」

 

ビシッ、とポーズをつけながらタマちゃんが叫ぶ。すると教室中から、『おおおおおお!?』と地鳴りのような声が響いた。

まあ、仕方あるまい。転校生といえば、学校生活の中でも大きなイベントだ。実際、十香がこのクラスに来たときも、皆一様に浮かれていた。

 

「さ、入ってきてー」

 

どことなくあいだ延びしたタマちゃん教諭の声に反応するように、ゆっくりと扉が開き、転校生が教室に入ってくる。

瞬間────教室は水を打ったように静まり返った。

姿を現したのは、少女だった。この暑い中、冬服のブレザーをきっちりと着込み、足には黒いタイツを穿いている。

影のような、なんて形容がよく似合う、漆黒の髪。長い前髪は顔の左半分を覆い隠しており、右目しか見取ることは出来なかった。

だが、それでも、そな少女が十香に────人外じみた美貌を備えた精霊に────勝るとも劣らない妖しい魅力を持っていることは容易に知れた。 

ごくり、と皆が唾液を飲み込む中、士道はというと・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

寝息を立てながらぐっすりと眠っていた。

 

「さ、じゃあ自己紹介をお願いしますね」

 

「ええ」

 

士道が寝ているのに気づかないまま、タマちゃんがそう促すと、少女は優美な仕草でうなずき、チョークを手に取った。

そして黒板に、美しい字で『時崎狂三』の名を記す。

 

「時崎狂三と申しますわ」

 

そして、そのよく響く声で、少女────狂三はこう続けた。

 

「わたくし、精霊ですのよ」

 

だが、士道は────。

 

「すう・・・すう・・・」

 

なんの反応も示すことなく、寝息を立てながらぐっすりと眠っていた。

 

「え・・・ええと・・・はい!とっても個性的な自己紹介でしたね!」

 

狂三がもう言葉を継がないと察したのだろう、タマちゃんがパン!と手を叩いて終了を示す。

 

「えー、それじゃあ時崎さん、空いている席に座ってくれますか?」

 

「ええ、分かりました」

 

狂三はそう言ってニコリと微笑むと、軽やかな足取りで指定された席に歩いていった。




おまけ

「「「トリック・オア・トリート!お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!!」」」

十香、四糸乃、琴里が、士道にそう言って籠を差し出す。

「・・・・なに?」

士道はそう言って十香達を見るが、その疑問に琴里が答える。

「なに、じゃないわよ士道。今日はハロウィンなんだからお菓子を私達にくれないとイタズラするわよ?」

「・・・お菓子?なら、これでいい?」

士道はそう言ってポケットからゴソゴソとデーツを取り出し、籠へ入れた。

「これ・・・士道がいつも食べてるやつじゃない。他にないの?」

「他?チョコレートならあるけど?」

士道はそう呟いてズボンのポケットからチョコレートが入った袋を十香達に渡していく。

「ありがとうなのだ!シドー!」

「ありが、とう・・・ございます」

「ん」

十香達の礼に士道はそう返事を返す。と、思い出したかのように士道は顔を上げた。

「そういえば・・・あげたデーツ、どれか“ハズレ“だった筈だからハズレ引いたらごめん」

「えっ?」

「えっ?」

「はい?」

十香達は籠の中に入ったデーツに目を下げる。

「んじゃ、俺、畑いくから」

十香達に爆弾を渡した士道はそう言った後、畑の方へ歩いていった。

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第五話

投稿です!
いやあ、狂三ね、口調が難しい!!
では、どうぞ!

オルガの最後を再現


だからよ・・・止まるんじゃねぇぞ・・・
ₘₙⁿ
▏n
█▏ 、⺍
█▏ ⺰ʷʷィ
█◣▄██◣
◥██████▋
 ◥████ █▎
  ███▉ █▎
 ◢████◣⌠ₘ℩
  ██◥█◣\≫
  ██ ◥█◣
  █▉  █▊
  █▊  █▊
  █▊  █▋
   █▏  █▙
   █

鉄華団団長 オルガ・イツカ


黒板の上に設えられた時計は、もう三時を回っている。

士道の視界の中では、見慣れた帰りのホームルームが展開されていた。チャイムに入ってきたタマちゃん教諭が教卓に出席簿を開き、連絡事項を伝えている。

何の変哲もない光景。士道は聞き流すように手を頬につけながらタマちゃんの話を聞く。

 

「連絡事項はこんなところですかね。────あ、それと、最近この近辺で、失踪事件が頻発しているそうです。皆さん、できるだけ複数人で、暗くなる前におうちに帰るようにしてくださいね」

 

「・・・へぇ」

 

タマちゃんの言葉に士道はそう呟く。

そういえば、朝のニュースでそんな事を言っていた気がする。

だがすぐに、士道は関係ないかとすぐに忘れると、起立の号令が響いた。それに従って椅子から立ち、礼をする。タマちゃん教諭は「はい、ではさようなら」と言って教室から出て行った。

周りから、席を立つガタガタという音と、生徒たちの談笑が周りから聞こえてくる。

士道は、野菜に水をあげて帰るかと思いながら、席を立ち上がったその時。

 

「士道さん」

 

「・・・ん?」

 

士道は後ろから声をかけられ、首をそちらへ向ける。

そこにいたのは確か、転校生の・・・誰だったか。昼休みに殿町がなんか言っていた気がするが、どうでも良かったので聞き流した覚えがある。

 

「・・・アンタは?」

 

士道はそう彼女に言うと、狂三は答えた。

 

「時崎狂三と申しますわ。士道さん」

 

「ふーん・・・俺になんかよう?」

 

士道は狂三にそう聞き返すと、狂三が指を一本立ててあごに当てた。

 

「わたくし、転校してきたばかりでこの学校の事をよくわかりませんの。案内をお願いできませんこと?士道さん」

 

狂三はそう言って士道に案内をしてもらえるように求める。士道はそんな彼女の顔をひと目見て、目を閉じると身を翻す。

 

「・・・んじゃ、こっち。えーと・・・トッキー」

 

士道は狂三にそう言って鞄を持ち、歩き始める。

 

「ト、トッキー!?・・・あ、待ってくださいまし!士道さん!」

 

叫ぶ狂三を放っておいて歩き始める士道に、狂三はすぐに士道のあとを追い始める。

士道と狂三が最初に向かったのは食堂だった。

 

「ここが食堂。まあ、飯食う所って言えばいいか。で、その隣が購買。いろんなものが売ってる」

 

士道はそう言いながら足を進めると、狂三は士道に訪ねてくる。

 

「士道さんは、此処を使いますの?」

 

「まあ、飯が足りない時とかにたまに買いに来る」

 

士道はそう言って廊下を歩いていく。

 

「んで、ここが学校のシェルター。ウチの学校には自前のシェルターがあって空間震が起こった時は皆がここに避難してる」

 

軽く説明しながら歩いていく士道に、狂三も頷きながら士道の後ろについてくる。

そしてあちこち学校の中を歩きながら、士道は狂三を案内していく。

そして色々と周り終えたあとを、最後に残った屋上に案内する。

 

「ここが学校の屋上。鍵を借りればいつでも来れるから、晴れの日は誰かしらここにいる」

 

士道はそう言い終わると、狂三に視線を向ける。

 

「これであらかた案内したけど分かった?」

 

「ええ、とても」

 

「そっか」

 

狂三の言葉を聞いて士道は短く返事を返す。と、狂三は手を自身に差し出してきた。

 

「ん?」

 

それを見た士道はなにをするかと思ったが、その疑問を口にする前に狂三が言う。

 

「お友達になりましょう士道さん。その握手ですの」

 

握手。狂三が求めてきたのは士道に対する握手だった。

 

「あー・・・」

 

士道はそう呟きながら自身の手を見る。その手は学校のあちこちを触ったり、畑の土を触ったため手が汚れていた。

 

「どうかなさいました?」

 

狂三が士道にそう聞いてくる。そんな狂三に士道は言った。

 

「手が汚れてたから遠慮しただけなんだけど」

 

そう言って左手の平を見せる士道に顔を恥ずかしそうに伏せる狂三。だが、そんな狂三に士道は言った。

 

「でもそれってさ、“汚れた手の俺“とじゃ握手したくないってことだよね」

 

「・・・・・っ!!」

 

士道の言葉に狂三は伏せた顔の下に見える目を見開く。

そんな狂三の反応を見ても、気にしていない士道は身を翻して言った。

 

「んじゃ、俺明日の準備あるから帰るね」

 

士道は狂三にそう言ったあと、カツカツと靴音を鳴らしながら屋上から出ていった。

 

 

 

 

 

「汚れた手ですか────」

 

士道と別れて、一人夕日の道を歩きながら、狂三はそんな声を発する。

自分に言い聞かせるように呟き、彼女は道を歩いていく。

と────その瞬間。

 

「・・・あら?」

 

狂三は、不意に全身を襲った感覚に、眉をぴくりと動かした。

全身を無遠慮に撫で回されるかのような感触。

この感覚は初めてではなかった。

現代の魔術師が顕現装置とかいう機械を使って作り出した結界・テリトリー。

その中でも特別なもの。そう、間違いなく────あの女。

 

「やっと見つけましたよ〈ナイトメア〉」

 

狂三の思考を裏付けるように、狂三の目の前に、一人の少女が姿を現した。

髪を一つに括った、中学生くらいの女の子である。

装いはパステルカラーのパーカーにキュロットスカートというラフなものだったが、その身に纏う空気は、獲物を見つけた猛禽さながらに剣呑だった。

 

「あらあら、あなたは・・・祟宮真那さん、でしたかしら?」

 

狂三が小さく首を傾げながら言うと、真那はフンと不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「私の名を覚えてやがったことは褒めてやりますが、気安く呼ばれるのは反吐が出やがります」

 

「あら、これは失礼しましたわ」

 

狂三はペコリと頭を下げ、素直に謝った。

 

「でも、“お名前”は大事でしてよ。わたくしも〈ナイトメア〉なんて呼ばれるのは悲しいですわ。時崎狂三と呼んでくださいませんこと?」

 

狂三が言うと、真那は一層気分悪そうに眉を歪めた。

 

「大事だから、貴様には呼んで欲しくねーんです。大事だから、貴様は呼んでやんねーんです」

 

「難しいお方」

 

「黙れよ、精霊」

 

真那が視線を鋭くする。

狂三は、肌の表面がちりつくのを感じた。




感想、評価、誤字報告よろしくです!


書いてて狂三のあだ名・・・マッキーとほぼ一緒じゃねえか!と思った作者。


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第六話 家族

投稿!!

死んじまった仲間が流した血とこれから俺らが流す血が混ざって鉄みたいに固まってる。だから離れらんねえ。離れちゃいけないんです。危なかろうが、苦しかろうが、俺らは────

そういうのは仲間って言うんじゃないぜ?家族だ。

行こう・・・俺達皆で・・・

オルガ・イツカ

名瀬・タービン

三日月・オーガス




狂三と別れたあと、士道は十香と一緒に、近所のスーパーに夕食の材料を買いにいっていた。

ずしりと重いビニール袋を右手に引っ提げ、もうだいぶ暗くなってしまった道を歩く。

と、十香が今日の夕飯について聞いてくる。

 

「シドー!今日の夕飯はなんだ?ハンバーグか?」

 

十香もここ数週間で、材料からメニューを推し量るのに慣れたらしい。興奮気味に口を開いてくる。

 

「あ、私もそれに一票」

 

と、隣で琴里もそう言ってくる。

 

「別にいいけど、俺は食べないよ?俺は別のやつ食うから」

 

「ちょっと、士道。好き嫌いばっかりしてるんじゃないわよ?身体に悪いからちょっとくらいは食べなさい」 

 

「そうだぞ、シドー。琴里の言うとおりだ。シドーの身体が悪くなったら私も悲しいぞ・・・」

 

「・・・・・・」

 

琴里と十香の言葉に眉を顰める士道は、軽くため息を吐く。と、前方から、ざっ、と、スニーカーの底でアスファルトの道を擦るような音が聞こえてきて、士道はふと顔をそちらに向ける。

 

「・・・・ん?」

 

そこには、ポニーテールに泣き黒子が特徴的な、琴里と同年代くらいの女の子が、驚愕に目を見開きながら立っていた。

パーカーにキュロットスカートというラフな格好。白いスニーカーには、ついて間もないと思われる赤い汚れが目立っていた。自分がよく知る血のような汚れだ。

 

「・・・なんだアイツ?」

 

見知らぬ顔の筈だが、士道は小さくそうつぶやく。

なぜだろうか、妙に“今の自分“と姿が似ている気がする。

と、そこで、少女が士道達のいる方向をジッと見つめて驚いているのに気づく。

士道は後ろを振り向くが、何か少女のことを驚かせるようなものはない。

士道はまあ、いいかと思いながら忘れようとした所で────。

 

「に」

 

少女が、震える唇を動かす。

 

「?」

 

士道は意味が分からず眉を眉間に寄せる。

と、少女はバッとその場から駆け出すと、士道の胸に飛び込んできた。

 

「は?」

 

「なっ!?」

 

士道と琴里は少女のその行動にそう呟いて、自分に向けて飛び込んできた少女に視線を向ける。

自分の身体に手を回し、感極まったようにぎゅうぅ、と抱きついてくる。

そんな彼女を士道は引き剥がそうとした時、少女が士道の胸に顔を埋めながら、言った。

 

「────兄様・・・・・!!」

 

「は?」

 

「は・・・はあっ!?」

 

士道は訳が分からないと言わんばかりの返事をし、琴里に関しては、驚愕の叫びが路上に響いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「おお、ここが兄様の今の家でいやがりますかっ!」

 

五河家の前にたどり着くなり、少女が髪をブンブンと振り回しながら、敬語になっているのかよくわからない言葉を弾ませた。

 

「・・・何コイツ」

 

士道はそう言って彼女を見る。

自称・士道の妹。名前は高宮真那というらしい。

胡散臭いことこの上ない少女ではあったが・・・路上で突然士道に抱きついたあと、その場にへたり込み、目に涙を浮かべながら、自分がどれだけ士道に会いたかったかを切々と語りだしたため、仕方なくここに連れてきたのである。

無論、琴里にも許可はとってある。というか───真那を五河家に連れてこいと言ったのは、他ならぬ琴里なのだ。

 

「む、しかし驚いたぞ。シドーにもう一人妹がいるとは・・・」

 

と、十香が、真那をまじまじと見つめながら言ってくる。

 

「俺そんな事知らないんだけど?」

 

「そうなのか?シドーによく似ていると思うのだが・・・」

 

「当然です!妹でいやがりますから」

 

十香が言うのに、真那が自信満々といった様子で腕組みする。

だが真那はすぐにハッとした顔を作ると、複雑そうな表情で十香と士道を見てくる。

 

「・・・しかし兄様。真那はあまり感心しねーです」

 

「ん?何が?」

 

「決まっていやがります!鳶一───じゃなくて、ええと、ね、義姉様というものがありながら、他の女性とも関係を持つなどと・・・」

 

「は?」

 

士道は真那の言葉に眉を顰める。

 

「?どうかしやがりましたか」

 

真那の言葉に士道は言った。

 

「色々と聞きたい事はあるんだけど、その義姉様ってのは何?」

 

「いや、私もその呼び方に抵抗がなくはねーのですが、将来的にそうなるからと・・・」

 

真那の言葉に三日月は言う。

 

「無いよ。そんなこと」

 

「そ、そうなのですか・・・?」

 

真那は困惑気味に眉をひそめた。

 

「しかし、そうだとしても兄様の二股疑惑は・・・」

 

「ふたまた。なんだそれは?」

 

十香が首を傾げる。また、面倒な言葉に食いついてくれたものだ。

しかし士道が言う前に、真那が十香に向かって声を発した。

 

「単刀直入に聞きます。十香さんでしたね。貴方は兄様とお付き合いしていやがられるのですか?」

 

「な・・・・・っ!」

 

十香が顔を赤くして士道に視線を向ける。

そんな十香に対し、士道は真那を見て言った。

 

「付き合ってないよ」

 

真那が士道の言葉を聞いた後、十香に訝しげな目を向ける。

 

「・・・十香さん?兄様とデートなどしやがったことは?」

 

真那は十香に質問を投げる。

 

「おお、あるぞ!」

 

「・・・・・・・」

 

真那が、じとーっとした目で士道を睨んでくる。

そんな真那に士道は「はあ」と息を吐いた後、口を開いた。

 

「十香と琴里は“俺達“の家族だよ」

 

「・・・家族ですか」

 

士道の言葉を復唱する真那に士道は言葉を続ける。

 

「俺と十香達に血の繋がりが無くたって、俺達はこうやって一緒に生きてる。血の繋がりなんて関係ない。俺達には同じ帰る場所

があってそれを一緒に支える仲間なら俺やオルガは家族だって思ってる」

 

士道の言葉に琴里達は呆然とする。

士道が口にした家族という意味。それは血の繋がりよりも、自分達と一緒の居場所にいる人が士道にとっての家族。

士道が考える家族が自分とは違うという事に琴里は前に士道が自分に見せた姿を思い出す。

四糸乃の力を封印する時にデパートで起こった後の士道の事を。

たとえ家族であろうとも、“自分が進む道の邪魔をするのなら叩き潰す“と言った士道を。

最初から自分の兄の目には、たった一人の人の背中しか見えていないのかもしれない。

士道が言っていた“オルガ“と言う名前の人物。

その人は、一体・・・五河士道の何なのだろうか?

琴里は士道の言葉を自身の中で反復させながらそう思った。




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第七話

投稿!!

アンタの機体、派手だな。囮役にちょうど良さそうだ。

あの機体やたら目につくな。眩しいからさっさとやるか。

金色の機体をみた、三日月


「しかし・・・妹、ね」

 

琴里が、半眼を作って真那を睨め付ける。

普通に考えれば、突然「私はあなたの妹だ」なんて言われても信じられるはずがない。

だが士道に関しては、そんなことあり得ないとは言い切れない事情があったのである。

もともと士道は、この五河家の本当の息子ではないのだ。

幼少の頃に、実の母親に捨てられて以来、この家の子供として育てられた。

だから真那の言葉を、完全に嘘や妄言と断ずることができないのである。

士道が覚えていないだけで、真那が本当に血の繋がった妹という可能性だってなくはないのだ。

 

「ねえ・・・ちょっと質問してもいい?」

 

「はい!何でしょう、兄様」

 

士道が声をかけると、真那は心底嬉しそうに、跳び上がらんばかりの勢いで答えた。琴里はなぜか不機嫌そうに、フンと鼻を鳴らす。

 

「悪いけど、俺はアンタの事覚えてないし、知らないけど」

 

「無理もねーです」

 

真那は腕組みをし、うんうんとうなずく。

 

「じゃあ聞くけど、アンタの親は?」

 

士道はそう聞くと、予想外の言葉が返ってきた。

 

「さあ?」

 

真那は首を傾げると、あっけからんとした調子でそう言った。

 

「・・・・・・」

 

士道は無言のまま、眉根を寄せる。────まさか、コイツも自分と同じか。と、士道が思った所で、真那が士道に首を振った。

 

「あ、ちげーますちげーます。そういうことじゃなく───」

 

真那は恥ずかしそうに苦笑すると、手元に置かれた紅茶を一口飲んでから言葉を続けた。

 

「私───実は昔の記憶がすぱっとねーんです」

 

「・・・へぇ」

 

「・・・なんですって?」

 

その言葉に、不審そうな色を濃くしたのは琴里である。軽く姿勢を直して真那に向かい、再び唇を開く。

 

「昔のって、一体どれくらい?」

 

「そうですね、ここニ、三年のことは覚えてやがるんですが、それ以前はちょっと」

 

「二、三年って・・・じゃあなんで士道が自分の兄だなんてわかるのよ」

 

琴里が問うと、真那が胸元から銀色のロケットを取り出し、中に収められていた、やたらと色あせた写真を見せてくる。士道達は覗き込むように見ると、そこには、幼い士道と真那の姿があった。

 

「これ・・・俺?」

 

「シドーとそっくりだな」

 

士道は少しだけ驚くような声音になりつつ、そうつぶやく。しかし────琴里は怪訝そうな顔を作った。

 

「ちょっと待ってよ。これ、士道十歳くらいじゃない?その頃にはもう、うちに来てたはずでしょ?」

 

「・・・そうだっけ?」

 

士道はそう言って写真を見直すが、この写真の人物が今の自分にしか見えないのもまた、事実だった。

 

「そうなのですか?不思議なこともあるものですねぇ」

 

士道と真那はこういった細かい事を気にしない所が似ている・・・気がしないでもないが、琴里は真那に言った。

 

「不思議って・・・他人の空似なんじゃないの?確かに・・・かなり似てはいるけども」

 

「いえ、間違いねーです。兄様は兄様です」

 

「・・・なんでそう言い切れるのよ」

 

琴里が問うと、真那は自信満々に胸をドンと叩いた。

 

「そこはそれ、兄妹の絆で!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・そうなのか?」

 

琴里は話にならないといった調子で肩をすくめ、はふぅと吐息した。・・・少しだけ、安堵しているようにも見える。

士道に関してはまあ、それもあるかと思っていた。

十香に関しては士道と真那に首を振りながらそう呟く。

そんな三人に真那は、感慨深げに目を伏せて言葉を続けた。

 

「いや、自分でも驚いていやがるのです。本当にびっくりしました。兄様を見たとき、こう、ビビッときたのです」

 

「何それ。安い一目惚れじゃあるまいし」

 

「はっ、これは一目惚れでしたか。───琴里さん、お兄さんを私にください」

 

「やるかッ!」

 

琴里は反射的に叫んだあと、ハッとした様子でわざとらしく咳払いをする。

 

「とにかく、よ。そんな薄弱な理由で妹だなんて言われても困るわ。第一、士道はもううちの家族なの。それを今さら連れていこうだなんて────」

 

「そんなつもりはねーですよ?」

 

「え?」

 

あっけらかんと答えた真那に、琴里が目を丸くする。

 

「兄様が家族として受け入れてくれやがったこの家の方々には、感謝の言葉しかねーです。兄様が幸せに暮らしているのなら、それだけで真那は満足です」

 

言って、真那がテーブルを越えて、再び琴里の手を取る。

 

「む・・・・」

 

琴里が、ばつが悪そうに口をへの字に結ぶ。

 

「ふん・・・何よ、一応分かってはいるみたいじゃない」

 

「ええ。───ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様がどこかへ行ってしまったことだけは覚えています。確かに寂しかったですが、それ以上に、兄様がちゃんと元気でいるかどうかが不安でした。───だから、今兄様がきちんと生活できていることがわかってとても嬉しいです。こんなに可愛らしい義妹さんもいやがるようですし」

 

言って、真那がにっと笑う。琴里は頬を染め、居心地が悪そうに目を逸らした。

 

「・・・十香、飯作るから手伝ってくれる?」

 

「うむ!シドーの手伝いだな!」

 

士道は琴里達をもう大丈夫だと判断して、十香に夜ご飯の準備を始める為に、台所へ向かう。

そして士道が冷蔵庫を開けた次の瞬間。

 

「まあ、もちろん。“実の妹には敵わねーですけども“」

 

「・・・・・・」

 

瞬間。ぴきッ、と、空気にヒビが入るような音が聞こえた気がした。

士道は視線だけを琴里達に向け、フライパンを用意する。

無言の空間の中、琴里はピクピクとやたら引きつった笑みを浮かべている。

 

「へぇ・・・そうかしら?」

 

「いや、そりゃそーでしょう。血に勝る縁はねーですから」

 

「でも、士道が言ったように遠い親戚より近くの他人とも言うわよね」

 

琴里が言った瞬間、今度は終始にこやかだった真那のこめかみがぴくりと動いた。 

そして一拍おいたあと、真那が琴里の手を放し、テーブルに手を突く。

 

「いやっはっはっは・・・でもまあほら?やっぱり最後は、血を分けた妹に落ち着きやがるというか。三つ子の魂百までって言いやがりますし」

 

「・・・ぐ。ふ、ふん。でもあれよね、義理であろうと、なんだかんだで一緒の時間を過ごしているのって大きいわよね」

 

「いやいや、でも結局他人は他人ですし。その点実妹は血縁ですからね。血を分けてますからね!まず妹指数の基準が段違いですからね!」

 

真那が高らかに叫ぶ。妹指数。聞いたことのない単語だった。

しかし、琴里は差し挟むふうもなく言葉を返す。

 

「血縁血縁って、他に言うことないの?義理だろうが何だろうが、こっちは十年以上妹やってんのよ!」

 

「笑止!幼い頃に引き裂かれた兄妹が、時を超えて再会する!感動的じゃねーですか!」

 

「うっさい!」

 

琴里はそう言って、近くにあったクッションを真那に投げつける。真那はそれを咄嗟の瞬間で躱すと、“ガチャン“と窓縁に置かれていた“野菜の苗”が植えてあった鉢が落ちて“壊れた”。

 

「「あ」」

 

琴里と真那はそう呟いて動きを止める。

と、次の瞬間────。

“パン”、と士道が不機嫌そうにフライパンを手のひらで叩いた。

憤怒のオーラを撒き散らしながら士道はフライパンを手に持ち、動けない二人に近づいてくる。

十香に至っては、部屋から逃げ出してしまっている。

そんな動けない二人に、士道は静かに言った。

 

「ちょっと、反省しろ」

 

そう言って、手に持った鈍器(フライパン)を琴里と真那の二人に振り下ろした。




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第八話

投稿!!

「アンタ・・・ガンダム?ガンダムって言うのか。随分変わった名前だな」

相方が刹那(エクシア)の時の三日月。


翌日。キーンコーンカーンコーン、と、聞き慣れたチャイムが鼓膜を震わせる。

時計の針は八時三十分を示していた。朝のホームルームの開始時刻である。辺りで談笑していたクラスメートたちがわらわらと席に着き始めていく。

そんな中、士道は昨日の件でフライパンで引っ叩いたあの後、どこで暮らしているか聞いてみたが、はぐらかすような真那の行動に士道は違和感を覚えていた。だが、士道はちょっと考えた所で────

 

「まあ、いいか」

 

考えるのを止め、自身の席に座る。

もとより考える事を殆どしない士道にとっては、どうでもいいことなのだ。

 

「・・・ん?」

 

そんな中。早めに席に着いていた士道は小さく首を傾げる。

チャイムが鳴ったというのに、狂三の姿が教室になかったのである。

十香も同じことを思ったのだろう、キョロキョロと辺りを見回している。

 

「むう、狂三のやつ、転校二日目で遅刻とは」

 

と、十香がそう言うと、

 

「───来ない」

 

士道の左隣から、そんな静かな声が響いてくる。

折紙が、視線だけを十香に向けて唇を開いている。

 

「ぬ?どういう意味だ?」

 

「そのままの意味。時崎狂三は、もう、学校には来ない」

 

「は?アンタもしかして────」

 

士道は折紙の言葉に狂三が精霊だったいう可能性が頭の中によぎる。

士道は折紙に狂三の事を聞こうとした所で、ガラッと教室の扉が開き、出席簿を両手で抱えるように持ったタマちゃんが入ってきた。すぐさま学級委員が、起立と礼の号令をかける。

 

「・・・・・」

 

折紙が言っていたことにも気になったが、士道の頭の中には狂三の件について、琴里に聞かなければならないと思っていた。

もし狂三が精霊なら、彼女の力を封印しなければならないのだ。

狂三がもし精霊で殺されたのなら、目的は失敗である。

士道は「はぁ」と息を吐きながらタマちゃんの話を聞いていく。

 

「はい、皆さんおはよぉございます。じゃあ出席取りますね」

 

言ってタマちゃんが出席簿を開き、生徒の名前を順に読み上げていく。

 

「時崎さーん」

 

そしてタマちゃんが、狂三の苗字を呼んだ。だが、返事はない。

 

「あれ、時崎さんお休みですか?もうっ、欠席するときにはちゃんと連絡を入れてくださいって言っておいたのに」

 

タマちゃんが、頬を膨らませながら、出席簿にペンを走らせようとする。

と、その瞬間。

 

「────はい」

 

教室の後方から、よく通る声が響いた。

 

「ん?」

 

後ろを向き、士道は視線を向ける。

そして教室後部の扉を静かに開き、そこに立っていたのは、穏やかな笑みを浮かべながら小さく手を挙げた狂三だった。

 

「もう、時崎さん。遅刻ですよ」

 

「申し訳ありませんわ。登校中に少し気分が悪くなってしまいましたの」

 

「え?だ、大丈夫ですか?保健室行きます・・・?」

 

「いえ、今はもう大丈夫ですわ。ご心配おかけしてすみません」

 

狂三はペコリと頭を下げると、軽やかな足取りで自分の席に歩いていった。

 

「なんだ。普通に来たじゃん」

 

士道はそう言って不穏なことを言っていた折紙の方へ視線を向ける。

 

「・・・ん?」

 

士道は訝しげにしながら折紙を見る。

折紙は微かに眉根を寄せ、狂三のことを凝視していたのである。

表情にそこまで劇的な変化はない。だが────士道にわかる。今、コイツは間違いなく驚愕している。

士道は琴里に調べてもらいたいことが出来たなと思いながら、頬を付く。

 

「────はい、じゃあ連絡事項は以上です」

 

ほどなくして、タマちゃんがホームルームを終えて教室を出ていく。

そして、士道は琴里に電話をしようとした時────。

ポケットに入れていた携帯電話が着信音を響かせ始める。

画面を見ると、そこには五河琴里の名が表示されていた。

 

「もしもし?琴里?」

 

『────ええ、士道』

 

「ちょうど良かった。琴里に聞きたい事があるんだけど」

 

『何かしら?士道』

 

「昨日俺達の学校にトッキーが、転校してきたんだけどさ、トッキーって“精霊”?」

 

士道の言葉に琴里は言葉を返す。

 

『トッキー?そのトッキーって人は時崎狂三って名前かしら?』

 

「うん。でも、なんで知ってんの?」

 

『令音から聞いたの。後、さっきの質問だけど答えはYESよ。それと、嫌な事態になったわ。控えめに言って最悪よ』

 

琴里らしくない苦々しい語調に、士道は首を傾げる。

 

「何かあった?」

 

「ええ。・・・困ったことになったわね。まさかこんなことが現実に起こり得るだなんて』

 

もったいぶる言い方に、士道は更に疑問を浮かべる。

 

「・・・何があったの」

 

『ええ、実は────』

 

と、そこで士道の肩がつつかれる。狂三が不思議そうな顔で首を傾げている。

 

「何をなさっていますの、士道さん」

 

「・・・ん?ああ、ちょっと電話。少し待ってて」

 

シが言うと、狂三は大仰な動作で驚きを表現したあと、ペコリと頭を下げた。

 

「これは失礼しましたわ。お邪魔するつもりはなかったのですけれど」

 

「別にいいよ。話なら後で聞くから」

 

士道は狂三にそう言って、電話に耳を傾ける。

 

「それで、琴里。一体何が────」

 

『ちょっと待って士道。今・・・誰と話していたの?』

 

「は?狂三だけど?」

 

士道はそう言うと、琴里は急に無言になる。

 

「琴里?どうしたの?」

 

士道は急に無言になった琴里に言葉をかけるが、返事はない。

どうやら、電話の向こうで誰かと会話を交わしたあと、言葉を続けてきた。

 

『士道。昼休みになったらすぐに物理準備室へ向かって。見せたいものがあるわ』

 

「は?なんで?・・・」

 

『いいから、絶対に来なさい』

 

そこまで言うと、琴里は士道の返答も聞かずに電話を切った。

 

「・・・まあ、とりあえず昼休みに行けば分かるか」

 

士道はそう呟いて、携帯電話をポケットにしまい、授業の準備に入った。




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???

「俺が、俺達が、ガンダムだ!!」


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第九話

投稿!!

あっちのオルガはウチの団長とはまるっきし違うんだな

クロト・シャニが相方の時の昭弘


午後十二時二十分。四限目の授業の終了を告げるチャイムが鳴る。

生徒たちは礼が済むと、先生が教室を去るよりも早く、昼食の準備を始めていった。

無論、十香も例外ではない。待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせ、机を士道の机に繋げてくる。

 

「シドー!昼餉にしよう!」

 

言って、ランチバックから弁当箱を取り出す。だが、士道は琴里に昼休み、物理準備室に行くように言われているので、十香に言った。

 

「あー・・・ごめん、十香。俺今から行くところがあるから先に飯食べてて」

 

士道は十香にそう言って廊下へと向かう。

 

「あ!シドー・・・」

 

背後から寂しげな十香の声が聞こえてくるが、士道はそのまま廊下へと出る。

そのまま校舎を移動し、階段を上って物理準備室へとたどり着くと扉を開けた。

 

「────遅い」

 

中学校の制服を着た琴里が、不満をさえずるように唇を突き出しながら顔を出す。

 

「ごめん。さっきまで十香に捕まってた」

 

「そう。十香に不安させてないでしょうね?」

 

「してないよ」

 

士道の言葉に琴里は「はあ」とため息をつくと、唇を再び開く。

 

「まあ、いいわ。早く入りなさい。時間が惜しいわ」

 

琴里はそう言うと、あごをしゃくり、士道を部屋の中へ誘い入れた。

と、そこで琴里の胸にいつもの来賓許可証がないことに気づき、士道は言った。

 

「今日は黙ってきたの?琴里」

 

「そりゃあね。放課後ならまだしも、こんな時間に中学生が高校にいちゃいけないでしょ」

 

「それもそうか」

 

士道は理由を聞いて興味を無くすと、物理準備室の奥へと顔を向けた。

部屋の最奥にある回転椅子には、既に令音が座っていた。

 

「・・・ん、来たね、シン」

 

「眠そうな人も来てたのか」

 

いつものように名前と何ら関わりないあだ名で士道と呼ぶ令音に士道はそう言って近くの椅子に座る。

ギシリとパイプ椅子の軋む音を聞きながら士道は二人に聞いた。

 

「で、俺に見せたいものがあるって聞いてるけど、何?」

 

士道がそう言うと、琴里が机の上に置かれたディスプレイを示した。

士道は画面に目を向けると、映し出された映像を見る。

────狭い路地裏に、なぜか狂三と、ポニーテールの女の子が向かい立っている。

 

「ん?コイツ・・・確か・・・」

 

士道は映像に映っている真那を見てそうつぶやく。

そう、その映像に映っている少女は、狂三と真那だった。

 

「ええ、昨日の映像よ。───周りをよく見て」

 

士道は琴里に言われた通り周りを見ると、変哲もない住宅街の一角に、機械の鎧を纏ったASTの隊員の姿があるのを見て、士道は最短で真那の正体を察した。

 

「?ああ、メカメカ団か。てことは真那はコイツ等の仲間か」

 

昨日、真那は自分の事を殆ど言わなかった事や折紙の事を知っていたことが気になっていたが、真那がAST隊員のメンバーなら納得がいく。

そして、狂三が精霊だという事も。

 

「でも、これ見る限りだと周りの人も避難してない。てことは暴れる前に仕留められる実力がコイツにはあるってことか」

 

祟宮真那を見て士道はそう呟くと、映像の真那の全身に白い機械の鎧が出現する。

 

「・・・へぇ」

 

士道は目をそう呟き、映像を見続けると、それに応ずるように狂三が両手を広げた。

足下の影が狂三の身体を這い上がり、ドレスを形成していく。

そして本当の姿を現した狂三に士道は声を出す。

 

「やっぱりそうか」

 

今日の折紙の反応に対し、士道は確信した。狂三は精霊だったと。そしてそれから起こる戦闘は数秒で片が付いた。

狂三が反撃をしようと行動を起こすが、それに先んじて、真那の攻撃が狂三の身体に突き刺さる。

そして路地に、真っ赤な血が撒かれた。

そして地面の上に仰向けに横たわり、完全に動かなくなった狂三の首に、真那が光の刃を突き立てる。

それを見た士道は別に何ともないように言った。

 

「琴里達が驚いてた理由って狂三が死んだ筈なのに、普通に学校に登校していたからって事か」

 

「そう、我々もそこが分からないんだ」

 

士道の言葉に令音と琴里はまったく同じタイミングで腕組みをする。

 

「士道が狂三と話してるって聞いた時は、とうとう幻覚でも見え始めたのかと思ったわ」

 

琴里も、冗談めかすように言いながら肩をすくめる。

士道は少しだけ考えると、自身の口を開く。

 

「俺が十香の時に死んだ時と同じってこと?」

 

士道はそう言うが、琴里は肩をすくめる。

 

「どうでしょうね。────現段階では何とも言えないわね」

 

「あっそ」

 

琴里の言葉に士道はさらっと聞き流し、そして言う。

 

「どっちにしろ俺のやる事は変わらないんだ。なら、別に細かい事を気にしても仕方ない」

 

「・・・士道、貴方ねえ・・・」

 

兄の思考の放棄っぷりに琴里は眉を寄せる。

 

「別に生き返ったらならまだチャンスはあるって事でしょ。それに狂三が生き返ってるって事も、もうアイツにバレてる。ならどのみち早いとこケリを付けなきゃいけない」

 

士道の言葉に琴里と令音は頷く。

 

「そうね。士道がその気なら全力でサポートするわ」

 

「・・・別に俺、“仕事“だからアイツに死なれても困るって事なんだけど」

 

士道の余計な一言に、琴里は「はあ」とため息をつく。

 

「士道、最後のそれは一言余計よ。台無しじゃない」

 

琴里のその呟きが物理準備室に響いた。




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第十話

マキオンでヘビーアームズewの変態機動で二分間ずっと生き残って相手にガン無視を決められた鉄血です。
なぁんで無視されるんですかねぇ?ではどうぞ!

お嬢様っていい匂いするんだろうなぁ!なあ、三日月!

お嬢様っても同じ人間なんだし、そんなにかわんないだろ

はあ?

女に飢えていない三日月さんに、んなこと言っても無駄っすよ

ノルバ・シノ

三日月・オーガス

ダンジ・エイレイ


折紙は士道が教室を出るのを横目で確認してから、ゆっくりと立ち上がった。

士道が昼食も摂らずに、しかも夜刀神十香まで放って向かった場所も気になったが────今はそれより先にやらねばならないことがある。

しょんぼりと肩を落とす十香の脇を通り抜け、目的の人物の席まで歩いていく。

 

「────少し話がある」

 

そして、その席の主───時崎狂三に、冷たい視線を投げながらそう言った。

狂三は大仰に首を傾げると、右目をまん丸に見開いてきた。

 

「折紙さん・・・でしたわよね。わたくしに何か?」

 

「きて」

 

折紙は短く答えると、そのまま教室の外に歩いていった。

狂三は数秒の間、逡巡するようにあごに指を当てていたが、折紙が廊下に出てしまうというところで、慌てた様子で席を立った。

 

「ま、待ってくださいまし。一体どうしたんですの?」

 

「・・・・・・・」

 

ちらと後方を一瞥する。

触れれば折れそうな華奢な手足を振りながら、必死に折紙に付いてくる狂三の姿が目に映る。なるほど、どこか庇護欲を掻き立てられる姿だ。

だが────今折紙にはその姿に、得体の知れない気味悪さしか感じなかった。

そのまま歩調を緩めることもなく、すたすたと屋上前の扉に歩いていく。

以前、士道を連れてきたこともある場所である。平時であればまず人が訪れない、耳を気にせねばならない話をするときには便利な空間だった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っ」

 

階段を一気に上がったからだろうか、狂三が肩で息をしながら手すりにもたれかかる。

それから数十秒。呼吸が落ち着くのを待って、狂三は唇を動かした。

 

「ええと・・・何かご用ですの?わたくし、まだお昼を食べていないのですけれど・・・」

 

少し不安そうに眉を八の字にしながら、狂三が言ってくる。

折紙はそんな狂三の様子に表情をぴくりとも動かすことなく応じた。

 

「あなたはなぜ生きているの」

 

「え・・・・?」

 

「────あなたは、昨日死んだはず」

 

そう。折紙は昨日、確かに見た。

狂三が真那によって四肢を断たれ頭を潰され、完全に絶絶命させられたのを。

真那としては不服そうだったそうだが、燎子の命令で招集された折紙たちAST隊員は、万が一真那餓精霊を仕留め損なったときのために、周囲を固めていたのである。

 

「・・・・・・」

 

狂三が、ぴくりと眉の端を動かした。

その後数秒間、外気に晒されている右目で、折紙の顔を睨め回してくる。

そして────。

 

「────ああ、ああ。あなた。あなた。昨日真那さんと一緒にいらっしゃった方ですの」

 

「・・・・・」 

 

狂三がそう言った瞬間、折紙はその場から飛び退いた。

根拠はない。ただ脳が得体の知れない違和感を覚え、折紙に逃げろと警告したのだ。

 

「まあ!まあ!素晴らしい反応ですわ。素敵ですわ。素敵ですわ。でぇもォ」

 

「────っ!」

 

折紙は息を詰まらせた。後方に飛び退いた先で、何者かに足首を掴まれたのである。

見やると、いつの間にか折紙の足下にまで狂三の影が伸び────そこから、白く細い手が二本、生えていた。

しかも影はじわじわとその面積を増すと、壁をも這い上がっていった。

そしてそこからも無数の手が生え、後方から折紙の腕や首をがっちりと拘束してくる。

 

「く────」

 

もがくも、細い指は折紙の身体から離れようとはしなかった。それどころかさらに力を増し、折紙を壁に磔にしてくる。

 

「きひひ、ひひ、駄ァ目ですわよぅ。そんなことをしても無駄ですわ」

 

狂三が、笑う。

数刻前の狂三からは想像も付かない歪んだ笑みを顔に貼り付け、聞いているだけで腹の底に冷たいものが広がっていくかのような声を発しながら。

 

「昨日はお世話になりましたわね。きちんと片付けしてくださいまして?わたくしのカ・ラ・ダ」

 

狂三が、髪をかき上げながら折紙の方に近づいてくる。一瞬、前髪に隠されていた左目が見えた気がした。無機質な金色。

およそ生物の器官とは思えない形状をした瞳に見えるのは、十二の文字と二本の針。そう────それは、まるで時計のように見えた。

 

「わたくしのことを知りながら、一人で接触を図るだなんて、少々迂闊なのではごさいませんこと?しかもわざわざ、人目につかない場所まで用意してくださるだなんて」

 

「・・・・っ」

 

確かにその通りだった。昨日のあまりにもあっけない幕切れを見て勘違いしていたのか────それとも、学校での狂三の姿から錯覚していたのか。いずれにせよ、折紙のミスだった。

精霊を脅威と言っていながら、心のどこかに油断があったのだ。

 

「あなた───は、何が・・・目的」

 

のどを締め付けられながらも、声を発する。すると狂三はにぃぃ、と唇の端を上げた。

 

「うふふ、一度学校というものに通ってみたかった、というのも嘘ではございませんのよ?でも、そうですわね、一番となるとやはり────」

 

そこで一拍おいてから、息がかかるくらいの距離にまで顔を近づけてくる。

 

「────士道さん、ですわね」

 

「────ッ!!」

 

士道の名前を出されて、折紙は声を詰まらせた。

そんな反応を見てか、狂三がいたく楽しそうに笑みを濃くする。

 

「彼は素敵ですわ。彼は最高ですわ。彼は本当に────“美味しそう“ですわ。ああ、ああ、焦がれますわ。焦がれますわ。わたくしは彼が欲しい。“彼の力が欲しい“。彼を手に入れるために、彼と一つになるために、この学校に来たのですわ。一度手を出そうと触れたのですけれど、あの“怪物“のせいで阻まれてしまいましたけど」

 

────戦慄。折紙は背中がじっとりと湿るのを感じた。まさか、精霊が一個人を────しかもよりにもよって士道を狙って現れるだなんて、予想だにしなかった。

しかし。そこで折紙には疑問が生まれた。

今し方狂三が発した言葉。『彼の力』とは士道のあの想像を絶するあの力なのだろうか。

 

「・・・・・っ」

 

そんな思考は、狂三によって中断させられた。

狂三が、折紙の身体に妖しい手つきで指を這わせてきたのである。

 

「折紙さん。鳶一、折紙さん。あなたも────とても、“いい“、ですわよ。すごく、美味しそうですわ。ああ、たまりませんわ。たまりませんわ。今すぐにでも食べてしまいたい」

 

頬を上気させ、息づかいを荒くしながらそう言ってくる。

 

「・・・・っ、触らないで」

 

「ふふ、そうつれないことをおっしゃらないでくださいまし」

 

「く・・・・・」

 

「ああ、ああ、でも駄目ですわ。とても惜しいですけれど、お楽しみはあとにとっておかなくてはいけませんわ」

 

狂三は大仰に首を振ると、折紙の口づけを残し、身体を離していった。

 

「あなたは、士道さんのあとに。────もっと、もっと美味しくなっていてくださいまし」

 

そう言うと、狂三はくるりと踵を返し、階段を下りていった。

 

「・・・っ、けほっ、けほっ」

 

床にうずくまるような格好で咳き込む。

廊下に広がった影は、主のもとに帰るように、階段の方へと収縮していった。

 

「士、道────」

 

なぜかは分からないが、狂三は、士道を狙っている。

早く本部にそのことを伝えなくてはならない。否、たとえそうしたとしても、精霊が個人を狙っているなんて話を信じてもらえるかどうかは分からなかった。

────もしその時は、私が士道を守らなくては。

折紙は奥歯を噛みしめ、くっと拳を握った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・むぅ」

 

十香は椅子に座ったまま顔を上げ、黒板の上にある時計を見やった。そろそろ昼休みが終わってしまう時間である。

お腹がコロコロと鳴る。朝ごはん以来食べ物を口にしていないものだから、健啖家の十香はもう目眩がするくらいお腹がペコペコだった。

でも、弁当はまだ開けていない。士道は先に食べていろと言ったが・・・士道と一緒に食べるご飯のおいしさを知ってしまった十香は、どうもそういう気になれなかったのである。

 

「・・・シドー」

 

もう教室には、外に遊びに行っていた生徒がちらほらと戻り始めていた。気の早い者などは、もう次の授業の準備を始めている。

だが、まだ士道の姿は見えなかった。

 

「う・・・う・・・」

 

なぜだろうか、目がじんわりと熱くなって、鼻で呼吸をするのが苦しくなってくる。

ずずっと鼻をすすって、目元を拭う。服の袖が少し濡れていた。────と、そこに。

 

「────あれ?どしたの十香ちゃん」

 

「何、まだご飯食べていないの?」

 

「もう授業始まっちゃうよー」

 

外で昼食を摂っていたらしい女子三人組が、教室に入るなり、十香に声をかけてきた。

よく十香を構ってくれる女子たちである。確か名前は、右から亜衣、麻衣、美衣。似たような名前が縁で仲良くなったのだという。

 

「ってうわ!どーしたのよ十香ちゃん!泣いてんじゃん!」

 

「なになに、誰かに何かされたの!?」

 

「おいコラ誰だよ出てこいやぁッ!!」

 

見事なコンビネーションで十香を囲い込み、三人が口々に言う。

教室の男子たちがビクッと肩を震わせた。

 

「ち、違うぞ!別に何もされていないぞ!」

 

十香は慌てて手を振ると、三人に訴えかけた。

 

「ええ?そうなの?」

 

「じゃあ何、どうしたの?」

 

「花粉症?花粉症なの?」

 

十香はブンブンと首を振ると、手元の弁当箱に視線を落とした。

 

「シドーがな、まだ戻ってこないのだ。・・・それで、今日は、あまりシドーと話せていないなあと思ってしまって、そうしたら、なぜか、こう・・・」

 

それを口に出すと、目からポロポロと大粒の涙がこぼれた。

 

「あぁっ!十香ちゃん!いいのよ辛いならそれ以上言わなくて!」

 

「ていうか五河君あり得ないんですけど!こんなかわいい子を泣かせるとか!」

 

「首を落として豚の餌にしてくれるッ!」

 

三人がやたらテンション高く叫ぶ。十香は再びアワアワと制止した。

 

「し、シドーは悪くないのだ!ただ、私が・・・」

 

十香は乏しい語彙の中から言葉を拾い集め、士道に非がないこと、十香がちょっと士道がいることに慣れてしまっていたことが原因なのだと説明をした。

それを聞いて、亜衣、麻衣、美衣がふぅむとうなる。

 

「十香ちゃん的には、五河君とお話できて、ご飯とか食べちゃって、あまつさえ遊んだりできたらスーパーハッピーなわけね?」

 

亜衣が言ってくる。十香はこくこくと頷いた。

 

「くぅッ、なんて純真なの。もうこれ五河君百叩きじゃ済まないでしょ」

 

次いで、麻衣が芝居がかった調子で涙を拭く真似をする。十香は目を丸くした。

そんな十香の様子を見ていた三人は「よし!」と膝を叩いた。

 

「十香ちゃんのためなら人肌脱ぐよ私は!」

 

と亜衣が言うと、自分の鞄から紙切れを二枚持ってきた。

 

「あ、亜衣、あんたそれは・・・!」

 

「そう、天宮クインテットの水族館のチケットよ・・・ッ!確か明日開校記念日で休みでしょ?十香ちゃん!これあげるから、明日五河君と行ってらっしゃい!」

 

「亜衣!それはあんたが────」

 

麻衣が言いかけるのを、亜衣が手で制する。

 

「それ以上言うんじゃあねぇ!十香ちゃんが遠慮しちまうだろぃ・・・」

 

亜衣が言うと、麻衣と美衣は涙を堪えるような仕草をして、十香の肩をそれぞれ掴んだ。

 

「十香ちゃん・・・!黙って受け取ってちょうだい・・・!」

 

「亜衣を!亜衣を女にしてやってくんなせぇ・・・!」

 

「ぬ、ぬぅ・・・・?」

 

十香はなんとなくこの場の雰囲気を壊してしまうことが躊躇われて、大人しく亜衣からチケットを受け取った。

 

「って、いやいや」

 

急に冷静になった亜衣が、十香に言う。

 

「つまりね十香ちゃん。これ持って五河くんにお誘いかけてみなさいって」

 

「お、おさそい・・・?」

 

「そ。明日デートしていらっしゃいって言ってんの」

 

「・・・・!」

 

言われて、十香は目を見開いた。デート。確か、男女が一緒に遊びに行くことだ。

────嗚呼、それはとてもいい。

思えばここ最近ずっと、士道とデートに行っていない気がする。久しぶりにデート。それは、とっても素敵なことに思われた。

だが────一つ問題があった。

 

「わ、私が誘う・・・のか」

 

十香は緊張に汗を垂らしながら言った。

 

「ええ。たまには女子から誘うのもいいモンよ」

 

「だ、だが・・・もし断られたら・・・」

 

十香は不安げにそう言うと、三人は肩をすくめ、「はふぅ」と息を吐いた。

 

「おっけおっけ。まず断られはしないと思うけど、というか断ったりなんかしたら五河くん、しばき倒すけど、私達がとっておきの秘策を授けてあげるわ」

 

「ひ、秘策・・・?」

 

「そう。結局男なんてエロで動いてるモンなのよ。十香ちゃんがこの誘い方をすれば、一国を制圧できるレベルの兵力が集まるわよ」

 

「い、いや、そんなにはいらんのだが・・・」

 

「いーからいーから。まずはね・・・」

 

十香は、こくこくとうなずきながら亜衣の秘策を聞いた。




三日月

「面倒くさいことになりそうだなぁ」

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第十一話

投稿!!

ああ、分かったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りは出来ねぇんだ!連れてきゃいいんだろ!途中どんな地獄が待っていようと、お前を、お前らを俺が連れてってやるよ!

オルガ・イツカ

あと何人殺せばいい?(何人だって殺ってやるよ)

三日月・オーガス

あと何人殺せばいい?(もう殺したくない)

ヒイロ・ユイ

日本語って難しい・・・


「少し、よろしいですか?士道さん」

 

帰りのホームルームが終わり、士道は鞄を持ち、畑に向かおうとした時、後ろから狂三に声をかけられた。

 

「・・・なに?」

 

士道は鞄を手にしたまま、狂三に視線を向ける。

その際に十香はどこかもじもじした視線を、折紙は絶対零度のような冷たい視線を向けてくるが、士道はそれを無視して狂三を見る。

 

「ちょっとここでは話づらいので良ければここから離れませんか?」

 

狂三はそう言ってから、廊下へ視線を向ける。

 

「・・・分かった。なら、さっさといこう」

 

士道は狂三の提案に気にすることなく、鞄を手に持って狂三の後ろを歩いていく。

ひとけのない場所まで歩きながら、士道は狂三に言った。

 

「それで、用ってなに?」

 

士道の言葉に狂三は口を開く。

 

「ええ・・・実は、突然で申し訳ありませんが、明日お暇でして?」

 

「・・・え?あー、まあ」

 

「その、もしよかったらですけれど、この街の案内をお願いいただけますか?まだ、詳しく知らない所などがありますので・・・」

 

「いいよ」

 

狂三の言葉に士道は答える。どうせ、遅かれ早かれ彼女を誘う必要があったのだ。彼女から言ってくるのなら話が早い。

士道の返答に、狂三は顔をパァッと明るくする。

 

「本当ですの!?」

 

「別に予定なんて特にないから気にしなくていいよ」

 

士道はそう言うと、狂三は満面の笑みで言ってくる。

 

「では、明日の十時半に、天宮駅の改札前で待ちあわせでよろしいでしょうか?」

 

「分かった」

 

士道は狂三に短く返事を返し、「また明日」と言って踵を返す。

 

「あっ、ちょっと待ってくださいまし。士道さん」

 

「なに?」

 

狂三の呼び止めに士道は振り返る。振り返った士道に狂三は言った。

 

「一応ですが、連絡先を交換しませんか?何かあれば連絡出来ますし」

 

「・・・いいよ」

 

士道は携帯を取り出して、狂三と連絡先を交換する。

 

「それじゃあ、またね」

 

「ええ、また明日」

 

士道は狂三にそう言って廊下を歩いていく。

と、少し歩いた所で折紙が立っていた。

 

「・・・ん?」

 

「────彼女と何を話していたの」

 

折紙は怜悧な瞳で士道を見つめ、静かで抑揚のない声を響かせてくる。

そんな折紙に士道は言った。

 

「別に。トッキーに街の案内を頼まれただけだよ」

 

「・・・・・・」

 

士道の言葉に折紙はその瞳をさらに鋭くする。

そして少しした後、折紙は士道に言った。

 

「・・・そう。なら、私も同行させてもらう」

 

「は?」

 

折紙の言葉に士道は何言ってんだコイツみたいな反応をする。

 

「別にいいけど、なんでアンタも来るの?」

 

「彼女は危険な存在。士道を守る為に私も同行させてもらう」

 

士道と折紙の会話が微妙に噛み合っていない。

だが、士道はそれに気づくことなく、折紙に言った。

 

「・・・好きにしたら?」

 

コイツは表情に考えている事が出ないから面倒くさい。

士道はそう思いながら十香に声をかける。

 

「十香、帰るよ」

 

「ぬ、う、うむ!」

 

士道に声をかけられた十香はハッと反応し、士道の後についてくる。

 

「十香、野菜に水あげてから帰るけど手伝ってくれる?」

 

「ん、うむ・・・」

 

十香が、どこか歯切れ悪くうなずく。

普段とは違う十香の反応に不思議に思わなくもないが、別に追及するほどのことではないだろう。

士道達は廊下を進むと、昇降口で靴を履き替え、畑の野菜に水をやり終えると学校の敷地を出て行った。

と、その道中。

 

「あ、あああああああのだなシドー・・・!」

 

珍しく何も喋らずにいた十香が、妙に落ち着つかない様子で声をかけてきた。

 

「どうしたの?十香」

 

「っ、あ、ああ。その・・・だな」

 

そこで十香は鞄の中を探る仕草を見せたが────なぜかきょろきょろと辺りの様子を窺うと、顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

「十香?」

 

士道が心配するように聞いてくるが、十香は目を泳がせながら叫んだ。

 

「な、なんでもない・・・!早く家に戻るぞ!」

 

十香はそう言って、士道を先導するようにのしのしと歩いていった。

 

「・・・どうしたんだろ?十香」

 

十香の妙な様子に首をひねりながらも、そのあとについて行くような格好で帰路に就く。

なぜかわからないが下校中、十香はあまり顔を見せようとしなかった。

ほどなくして、五河家と、その隣に聳えた精霊用特設マンションにたどり着く。

 

「んじゃ十香。また飯の時ね」

 

と、士道がいつも通りの挨拶をしながらそうと言って鍵を取り出す。と、後ろから気配を感じ振り向くと、十香がマンションに行かず、家の方に足を向けていたからだ。

 

「十香?着替えてこないの?」

 

「!い、いいから、早く鍵を開けろ!」

 

「う、うん」

 

普段とは違う十香に士道は戸惑いながらも、扉を開ける。

 

「ただいま」

 

鍵がかかっているということは、琴里はまだ帰っていないのだろう。士道はそのままリビングに直行し、ソファに鞄を置いて首を回す。

 

「・・・つかれた」

 

と、そこでガチャリと音がする。

どうやら士道のあとから家に入ってきた十香が、玄関の鍵を閉め直したらしい。そのまま、顔をうつむかせてリビングに入ってくる。

 

「あれ、十香?別に扉閉めたの?琴里が帰ってくるから別に閉めなくてもいいのに」

 

「・・・・・・」

 

しかし十香は答えず、その場に鞄を落とすと、その中に手を突っ込み、何やらチケットらしきものを二枚、取り出した。

 

「し、シドー、もしよかったら・・・なのだが」

 

そしてそこで、何かを思い出したかのようにハッと顔を上げる。

 

「そ、そうだ、ちゃんとやらなくては・・・」

 

「ちゃんと・・・?何を?」

 

士道は首を傾げと、十香は何やら慌ただしくリビングの窓に向けて走っていくと、厚手のカーテンをピシャッと閉めてしまった。

 

「・・・何やってんの?」

 

「ちょっと待っていろ!じゅ、準備する!」

 

「準備?・・・何の?」

 

だが、やはり十香は答えない。

今度は鞄からルーズリーフを一枚取り出し、テーブルの上に置いた。そして、それを難しげな顔で見ながら腰元に手をやると、スカートの上部をくるくると巻き込んでいった。

 

「十香?何やってんの?」

 

十香の行動に意図が分からず、士道は眉を顰める。

次いで十香は制服のリボンを緩めると、ブラウスのボタンを上から順番に外していった。

第二・・・第三・・・そして第四まで。ブラウスの隙間から十香の白い胸元が覗き、士道は思わず言った。

 

「・・・何やってんの」

 

士道は呆れながらそう言って、十香にソファに置いてあった毛布を十香に渡す。

 

「シドー・・・これは・・・そ、そのだな」

 

言いよどむ十香に士道は口を開く。

 

「そんなことしなくても、ちゃんと話聞くから。ほら、ちゃんと服を着て」

 

士道の言葉に十香は頷いて制服を着直す。

制服を着直した十香に士道は言った。

 

「それで十香。どうしたの?急に」

 

「あ、明日・・・デェトに行かない・・・か?」

 

「・・・デート?」

 

「う、うむ・・・!」

 

十香は大仰にうなずき、手に持っていたチケットを士道に渡してくる。

 

「・・・ん?」

 

士道は十香からチケットを受け取ると、そのチケットを見る。

水族館のチケットを見て、士道は目を細める。

 

「その・・・士道が魚が苦手なのは知っているが、良ければ一緒に・・・」

 

十香の小さな声に士道は「はあ」と息を吐いて言った。

 

「・・・分かった。ちょっと考えるから着替えて待ってて」

 

「う、うむ!」

 

十香は士道の言葉に頷いてリビングから出ていく。

そして一人になった士道は、ポケットから携帯を取り出すと、先程交換したばかりの番号に電話をかける。

 

『もしもし?士道さん、どうかなさいましたか?』

 

「うん、ちょっと明日の予定で話をね」

 

士道はそう言って話を進めた。

 




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第十ニ話

投稿!!

投稿に関してですが、一週間に二本は結構厳しくなってきましたので、しばらくは交互に投稿していきたいと思います。

では、どうぞ!

バエルを持つ私に逆らうか!!

義務教育をアグニカで終えた男


カツカツと、靴底が硬い床に音を鳴らせる。

琴里と令音は二人で、〈フラクシナス〉のある部屋に向かっていた。そして目的地である部屋の前に到着すると、その扉が開いた。

 

「おう、司令官悪いな。“厄祭戦“について色々と調べて来たぜ」

 

扉の先に立っていた男がそう言って、手に持ったチップを見せる。

 

「ありがとう。それで?何か分かった?」

 

琴里はそう言うと、男はガシガシと頭をかきながら言った。

 

「まあ、ある程度はな。でも、あまり期待はすんなよ?なんせ、現存する資料がすくねえからな」

 

男は言って、チップをパソコンに入れた。

 

「まずは、これを見てくれ。五河士道のレントゲン写真だ」

 

そう言って、スクリーンに画像を映す。

 

「これは・・・」

 

「・・・っ!?」

 

その画像を見た瞬間、琴里達は驚愕する。

 

「まあ、無理もないわな。“阿頼耶識システム“に使われているナノマシンが脊髄に“完全癒着“しているからな」

 

男はそう言いつつも、話を続ける。

 

「この阿頼耶識システムなんだが、ご覧の通り完全に脊髄に癒着している。だから、手術で取り外す事は出来ないんだ。それとこの阿頼耶識システムは、厄祭戦の物語に出て来た“モビルスーツ“とやらに必要なシステムだったらしいんだよな」

 

「必要って・・・どういう事よ」

 

「詳しく説明して貰えると助かる」

 

男の言葉に反応した琴里と令音はそう言って視線を向ける。

 

「まあ、分かりやすく言えば、“モビルスーツ”は“阿頼耶識システムがある事前提”で作られたって事だよ」

 

「な・・・っ!」

 

「ふむ・・・」

 

男の言葉に二人は違った反応を示す。

琴里は驚愕する反応を。そして令音は興味を示す反応を。

 

「どうして、その結論に至ったのか、教えてくれないかい?」

 

「・・・説明も?」

 

「もちろんだとも」

 

はあ、と男はため息をついた後、口を開いた。

 

「まずは、バルバトスのフレームなんだが、見たこともない金属が使われていてな。この金属がやたら硬いんだ。現在確認されているどの金属よりもな。それにフレーム構造もこの手のデカいロボットならモーター駆動式を採用するんだが、コイツはシリンダー駆動なんだよ。柔軟性が優れた・・・な」

 

「ふむ、それで?」

 

令音は男に続けるように言う。

琴里も、興味があるようだった。

 

「このシリンダー駆動のタイプは動かす際に非常に人間の動きに近い動きをする事が出来るんだよ。それに阿頼耶識システムのパイロットによる思考操作が、非常に噛み合ってる。これで機械で出来たロボットなのに、生身の人間のような動きが出来るって話だ。理論上はな」

 

男はそう言いながら、パソコン画面の映像を変える。

 

「だが、このサイズの機体を歩かせるだけならまだしも、自在に動かすとなると、莫大なエネルギーが必要になってくる。なら、そのエネルギーを何処で手に入れているんだって思ってな、士道少年に聞いたのよ。そしたら“エイハブ・リアクター“ってやつでエネルギーが生産されてるって話だ」

 

「エイハブ・リアクター?」

 

男に琴里が聞いたことのない単語に声を出す。

 

「俺の“ツテ”で詳しく知っている奴に話を聞くとな、なんでも、“半永久的に膨大なエネルギーを生産“し、“疑似重力や、通信妨害も出来る物理的に破壊出来ないエンジン“が搭載されているんだとさ」

 

「「は?」」

 

男の口から出てきた言葉に琴里と令音はそう返事を返す。

とんでもないオーバーテクノロジーに対し、男は笑う。

 

「そりゃそんな反応になるわな!なんせ、俺も聞いた時は二人のような反応をしたよ!」

 

琴里達はそれどころではなかったが。

そんな二人の反応に男は笑いながら言った。

 

「まあ、俺が知っているのはこれくらいだ。後は、俺のその“ツテ“から聞きな」

 

「じゃあ、その人の事を教えてくれる?私も少し気になるわ」

 

琴里の言葉に男は頷いて、口を開いた。

 

「・・・確か、“モンターク商会“のモンターク“って男だ」




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第十三話

投稿!!

「このトマト・・・お尻みたい!」

「お尻だ!お尻!」

クッキー・グリフォン

クラッカ・グリフォン


狂三と約束した次の日。

 

「あの・・・士道さん」

 

「・・・なに?」

 

天宮駅東口の改札前で待ち合わせをしていた狂三と合流した後、狂三が若干戸惑うような顔と声音で言った。

 

「・・・確かに昨日、人数が増えると言っていましたし、わたくしも了承したのですけれど・・・」

 

狂三はそう言いつつ、目の前にいる“彼女達“を見て、思っている事を口にした。

 

「何故貴様もここにいるのだ!鳶一!」

 

「それはこちらのセリフ。何故、貴方がいるの」

 

十香と折紙を傍目に見ながら、狂三は士道に言う。

それに対して、士道は答えた。

 

「こうでもしないと、時間が取れなくなった」

 

「・・・そう言う事ですか」

 

士道の半ば説明が面倒くさいから聞くなと言わんばかりの顔に狂三はすぐに会話を合わせた。

そんな士道達に構いなく、十香と折紙は言い争いを続けている。

士道は言い争いを続けている十香達に近づくと、二人の間に割って入った。

 

「二人共、今日は出かける為に来たんでしょ。喧嘩するならよそでやってくれない?」

 

「う・・・そ、そうだな」

 

「・・・・・喧嘩はしていない」

 

士道は二人を仲裁した後、狂三に向けて口を開いた。

 

「・・・で?街を案内すれば良いんだよね?それと、十香が水族館のチケット貰ってるらしいし、残りの人数分のチケットを買って水族館にも行こうか」

 

「え?でもチケットの代金は・・・」

 

「俺が払うよ。どうせ、金の使い道なんて殆どないし」

 

狂三の困惑する声に、士道は短く答えて歩きだす。

こうして三人のデート(お出かけ)が始まった。

 

◇◇◇◇◇

 

「それで、みんなは何見に行きたいの?それとも買い物?」

 

士道の問いに三人は答えた。

 

「そのだな・・・シドー」

 

「疑問が一つある」

 

十香と折紙の問いに士道が口を開く。

 

「・・・なに?」

 

その質問に狂三は答えた。

 

「そのですね・・・士道さん。今からデートをするのに流石にその格好はどうかと思いますの」

 

狂三達はコホンと息を吐きながら、士道の“服”を見る。

藍色のタンクトップに、作業ズボンと間違えそうなカーキ色のブカブカなズボン。

そして暑苦しい上着。

どこからどう見ても、デートで着るような服ではないだろう。

十香から見ればいつもの服なのだが、士道がこの服装以外を着ているのを見たことがない。

他の二人はその格好はどうかとあの折紙でさえ、顔に出ていた。

 

「・・・そんなに変?」

 

士道は自身の服装をみながら、キョロキョロと顔を動かす。

 

「いつもの格好ではあるのだが、少し暑苦しく見えるぞ」

 

十香からの指摘に士道は言った。

 

「上着を脱げばいい?」

 

「そういう問題でもない気がする」

 

折紙からもそう言われ、士道は頭をかいた。

そんな士道に狂三は口を開いた。

 

「なので、一度士道さんの服を見に行きましょう。デートはそれからですわ」

 

「うむ!そうだな!」

 

「同意」

 

「は?」

 

狂三の言葉に三人は頷き、士道は何故そうなったのか分からないと言わんばかりの返事を返した。

 

◇◇◇◇◇

 

「これはどうだ!シドー!」

 

十香がそう言って服を持ってくる。

 

「全体的に黒っぽいですが、士道さんには合いますわね」

 

「そうであろう!シドーは何でも似合うのだ!」

 

「・・・・・」

 

手を顎につけて唸る狂三に、士道を自慢する十香。そして、狂三を睨みつけるように視線を向けながらも、手にした携帯で写真を取る折紙と、三者様々な反応だった。

 

「・・・ねえ、もうこれでいい?」

 

士道は普段着ない服に違和感を持ちながらも、十香達に言う。

あの後、服屋に向かった士道達は、士道をまるで着せ替え人形のように様々な服の試着をさせていた。

狂三と折紙がコーディネートし、十香が似合う服を持ってくる。

そんなこんなしている内にもう一時間以上、士道は試着を繰り返している。

今の士道は、Tシャツにジーンズ、黒のカーディガン。そして靴までも変えられて、スニーカーを履いている。

もううんざりとした顔で狂三達に士道がそう言うが、狂三達は止まらない。

 

「まだまだですわ。十香さん、あちらに掛けてあった服を持ってきてくれません?後、薄手の上着もお願いしますね」

 

「うむ!わかったぞ!」

 

「・・・・・」

 

十香に指示を出す狂三に、服を取りに行く十香、そして相変わらず写真を取り続ける折紙に士道は────

 

「・・・いい加減終わらないかな」

 

半ば諦めた様子で、彼女等を見るのだった。

 




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第十四話

投稿!!

「ギャラクシーキャノン!発射!!」

ノルバ・シノ

ピンクに染められたガンダムフラウロス


「これでどうですか?士道さん」

 

「・・・もうこれでいいよ」

 

あれからはや一時間。やっとの事で服を選び終わった狂三達に対して、士道はうんざりしながら言った。

Tシャツにジーンズというシンプルな格好だが、普段あまり見られない姿に十香と折紙はそれぞれの反応を見せる。

 

「おお!かっこいいぞ!シドー!」

 

「似合ってる」

 

二人の反応に対して、士道は「はいはい」と軽く返しながら三人にどこへ行くのか聞いた。

 

「で?三人は何処に行きたいの?昼から水族館には行くけど、まだ時間あるし」

 

士道の言葉に対して狂三は言った。

 

「では、商店街などはどうでしょう?水族館ともそれほど離れていませんし、それに皆さんと買い物出来ると思いますので」

 

狂三の言葉に十香と折紙は賛同する。

 

「私はそれで構わないぞ!」

 

「私も構わない」

 

二人の言葉を聞いて、士道は分かったと答える。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「ええ、エスコートをお願いしますわ」

 

「うむ!」

 

「うん」

 

三人はそれぞれ返事を返して、士道と一緒に商店街へと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「今日はなんか賑わってるな」

 

周りに視線をやりながら、士道達はゆっくりとした足取りで通りを歩いていた。

視界に広がる商店街は、いつもより活気づいている。

 

「おお!お祭りをやっているな!」

 

「そっか。今日は祭りの日か」

 

そういえば前にそのポスターを見た気がする。

そんな曖昧な記憶ながらも、士道達は賑わう商店街を歩いていく。

通りには屋台が設営され、たこ焼きや焼きそばなど定番メニューに加えて、たくさんの出店が並んでいた。

周りをキョロキョロと見回す狂三に士道は言った。

 

「ここが商店街。普段はこんなに人はいないけど、今日は祭りだからこんなに人が集まってる」

 

「そうなのですか?てっきり普段も賑わっているのかと・・・」

 

「普段はここまで賑わってないよ」

 

狂三の質問に対してバッサリと切り捨てる士道。

そんな士道に十香が屋台に指を差す。

 

「シドー!あの“カステラ“美味しそうではないか?」

 

「ん?ああ、あれか。じゃあみんなで分けて食べるか。ここで待ってて」

 

士道はそう言って、その屋台に足を進める。

 

「おっさん。これ一つ」

 

「誰がオッサンだ!?って五河の兄ちゃんじゃねえか。どうした買い物か?」

 

出店をやっていた男性は士道を見るとすぐに反応を変える。

 

「買い物っていうより、今日は街の案内をしてる。学校で転校生が来たからその付き合い」

 

「ほぉ?お前みたいな奴に頼む奴がいるとはなあ。で?そいつは何処にいるんだ?」

 

気になるのか、士道に聞いてくる。

 

「あれ」

 

屋台のオヤジの質問に対して、士道は狂三達に視線を向ける。

屋台のオヤジは士道の視線の先にいる狂三達を見ると、士道に言った。

 

「後の二人は知ってるから、片目を隠してる姉ちゃんの方か?」

 

「うん」

 

士道はそう答えると、屋台のオヤジは言う。

 

「そうかい。なら、サービスしてやんねえとな。お前には良く手伝いしてもらってるから、その礼も込みだ」

 

そう言って、カステラが入った袋を四つも渡してくる。

 

「俺、一つって言ったけど?」

 

「サービスだって言ってるだろ?皆で分けな。それにお前さんといるあの姉ちゃんは結構食うんだろ?だったら尚更だ」

 

そう言って、士道に押しつける。

 

「んじゃ、貰ってく」

 

「おう、デートなんだろ?楽しんでこいよ。五河の兄ちゃん」

 

屋台の男性にそう言われながらも、士道は買ったカステラの袋を持って十香達の元へ戻っていく。

 

「おかえり士道」

 

「おかえりなのだ!」

 

「以外とかかりましたのね?」

 

三者様々な反応を示すが、士道の手に持つ四つの袋を見て、折紙が反応した。

 

「士道、四つ買ったの?」

 

「三つはおまけ。良く商店街で手伝いしてるからそれの礼だってさ」

 

士道は三人に一つずつ袋を渡していくと、士道は自分のカステラの袋を開けて一つカステラを口に入れる。

そんな三人の前でカステラを食べる士道に折紙が士道に袋を渡してきる。

 

「なに?」

 

士道は折紙の行動にそう聞くと、折紙は口を開いた。

 

「食べさせて」

 

「なっ!?」

 

「あら?」

 

折紙の言葉に十香は驚愕し、狂三は口を隠す。

そんな折紙に士道は言った。

 

「それやると、十香と喧嘩になるからやらない」

 

「だったら、夜刀神十香ともやればいい」

 

「・・・・・」

 

珍しい。

あの折紙がそう言うとは思わなかった。

“じっー“とこちらを見つめてくる折紙に士道は「はあ」と息を吐き、折紙から紙袋を受け取る。

そして──────

 

「一回だけだよ」

 

「構わない」

 

士道は折紙にそう言って、袋からカステラを取り出し、折紙の口元へ持っていく。

 

「・・・ん」

 

そのカステラを折紙は口に入れた。

その様子に対して二人の視線が突き刺さる。

そんな二人に対して士道は一言。

 

「やってあげるから、喧嘩はしないでよ」

 

この後、商店街の中で二人にもやってあげた。

士道が三人にカステラを食べさせた後、士道達は近くのショッピングモールへと向かった。

そのショッピングモールでは三人が服を見たり、買ったりと好きなように買い物をしたりゲームセンターで遊んだりしていた。

 

「・・・ふぅ」

 

士道は軽く息を吐いて、椅子に座る。

狂三達は三人で目の前の店で色々と商品に手を取り、それぞれ買い物をしている。

士道は自販機で買った水を口に含みながらその様子を見ていると、男に声をかけられた。

 

「隣に座っても構わないかな?」

 

「好きにしたら?」

 

「では、失礼」

 

士道の隣に男性が座る。

そして、士道はその男の声と匂いに覚えがあった。

士道は視線を横へ向けると、見覚えがある金髪の男性が本を読んでいる。

その男性に対し、士道は言った。

 

「なんで此処にアンタが居るの?“チョコの人“」

 

士道の三日月の記憶が間違えでなければ、此処にいる筈のない人物だ。だが、それに対して男性は口に笑みを浮かべながら言った。

 

「その名前で言われるのは“久しぶり“だな。五河士道。いや、“三日月・オーガス“」

 

チョコの人────マクギリス・ファリドは本を閉じ、士道に顔を向ける。

 

「チョコの人なんで此処にいんの?もしかして俺と同じ?」

 

「君みたいに容姿が変わった訳ではないが、同じだろうな」

 

「・・・へぇ」

 

士道の言葉にマクギリスはそう答えると、今度は士道にマクギリスが言った。

 

「君は外見は変わっても中身は変わっていないようだな。三日月・オーガス」

 

「俺は俺だよ。チョコの人もそんなに変わってないね。それで、“俺に何かよう“?」

 

三日月はマクギリスにそう言って、視線を向ける。

この男が自分に話しかける時は、何かある時だ。

そんな三日月に対して、マクギリスは言った。

 

「今は君に頼る用は無いとも。だが、君が所属している〈ラタトスク〉に呼ばれ、私は今、此処にいる。そして君がガンダム・バルバトスを操っている映像を見させて貰って、五河士道が“三日月・オーガス”だと確信したよ」

 

「あっそ」

 

マクギリスの長話に士道は適当に聞き流す。

そんな士道にマクギリスは「フッ」と笑うと、士道に言った。

 

「何かあれば私に頼りたまえ。私で良ければ力を貸そう。君のことは私も気に入っているからね」

 

「じゃあ、何かあればアンタを頼るよ」

 

マクギリスはそう言い、士道に名刺をさしだす。士道はそれを受け取ると、ポケットに入れた。

 

「では失礼する。君も、彼女達もこの世界でどう生きて行くのか・・・楽しみにしているよ。三日月・オーガス」

 

マクギリスはそう言って、席から立ち上がり歩いていった。

その後ろ姿を士道はただ、見つめるだけだった。

 




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第十五話

短いですが、投稿!!

青くて目立つ機体だ。いい的だな。

これはモンテーロ。舐めているなら、この天才が後悔させてやる

三日月・オーガス

天才・クリム〘ハッシュ〙


ショッピングモールで昼食を済ませた後、士道達が次に向かったのは水族館だった。

そんな中で、狂三は士道に対して申し訳なさそうな表情と声音で士道に言った。

 

「あの、本当によろしかったのですか?水族館の代金を全て払っていただいて・・・」

 

そんな狂三に対し、士道は「別に」と答える。

 

「どうせ金なんて、飯食う時くらいしか殆ど使わないし、これくらい気にしなくていいよ」

 

ぶっきらぼうに答える士道は足を館内に進める。

夏前ということもあり、冷房が効いた部屋はとても涼しかった。

そんな中で十香が、驚いた様子で前の魚が泳いでいる水槽を見て士道に言った。

 

「シドー・・・これはなんというか・・・凄いな」

 

一面ガラス張りの水槽の中に大小無数の魚達が泳ぎ回っている。

始めて見るであろう十香が驚くのも当然といえば当然だった。

 

「こ、これが全て魚か・・・」

 

足元をまったく見ずに歩きながら、十香が言う。

 

「うん、十香はどう思う?」

 

「う、うむ。とても綺麗だ・・・」

 

「そっか」

 

十香はそう言って、大きなガラスの壁にぺたりと両手をつけた。

そんな十香を端で士道が見ている中で、“カシャリ“と音が聞こえた。

 

「ん?」

 

士道は音がなった方へ視線を向けると、そこには折紙がスマートフォンのカメラをこちらへ向けて写真を取っているのに気づく。

 

「・・・なに?」

 

士道は視線を折紙に向けながら、折紙に言葉を投げる。

それに対し、折紙は言った。

 

「士道の写真を取ってる」

 

馬鹿正直にそう言ってカメラのシャッターを押す折紙に士道は短く答えた。

 

「別に取ってもいいけど、邪魔しないでよ」

 

「分かってる」

 

今日はやたら素直な折紙に士道は不気味に思いながらも、足を進める。

水族館には何度か来たことがあるが、あまりいい思い出はない。

水族館の館内に漂う生き物の死んだ臭いが籠もっているのもあってか、好きになれなかった。

コツコツと靴音が館内に響き渡る中、士道は狂三に声をかけられた。

 

「士道さん。少しだけよろしいです?」

 

士道は後ろを振り返り、狂三を見る。

 

「どうしたの?」

 

士道の言葉に狂三は言った。

 

「この後、二人きりでお話したいので公園に来ていただいてもよろしいですか?」

 

「いいよ」

 

「・・・・!!ありがとうございますわ」

 

嬉しそうに答える狂三に、士道は口を開く。

 

「んじゃ、それまで俺は適当にしてるよ」

 

士道はそう言ってその場から去ろうとした時、狂三に呼び止められる。

 

「待ってください、士道さん」

 

「・・・・・?」

 

首を傾げて振り返る士道に、狂三は答える。

 

「前に握手をできませんでしたから、よければしませんか?」

 

そう言う狂三に対し、士道は自身の手を見つめる。

 

「俺の手。また汚れてるよ」

 

「構いませんわ」

 

狂三は士道の言葉にそう答えて、手を士道に差し出す。

そんな狂三に士道は自身の手を握り返す。

狂三は驚いた顔をしながらも、士道の手を握り返した。

 




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第十六話

投稿!!夏休み期間に入った為、投稿は激減しますが、よろしくです!

ゼロシステム?それは、鉄華団の未来も見せてくれるのか?

ゼロ、エピオンが機体が相方の時の三日月


水族館を四人は満喫した後、折紙は公園で士道達と別れた。

折紙に関しては何かしら言いたげそうな雰囲気だったが、狂三を一睨みしただけで特に言うこともなく帰っていった。

そんななか、士道は十香に言った。

 

「十香。先に帰ってて。夕飯の買い物するから」

 

「む?なら、私も一緒にいくぞ?」

 

そう言う十香に士道は口を開く。

 

「別にそこまで買うわけじゃないし、気にしなくていいよ。それに最近トレーニングサボってたから身体も動かしたいからさ」

 

そう言う士道に十香は唸る。

 

「むぅ・・・」

 

食い下がる十香に士道は言った。

 

「飯、好きなやつ作ってあげるから」

 

そう言われば、十香は引き下がるしか無かった。

 

「シドー・・・絶対だぞ?」

 

「分かってるよ」

 

十香はそう言って、先に帰っていった。

士道は十香を見送った後、狂三に言った。

 

「・・・で、話ってなに?」

 

士道はそう言うと、狂三は口を開いた。

 

「ええ。それは──────」

 

狂三が言おうとしたその時だった。

 

「──────っ!」

 

士道は突如頭上から狂三に向けて放たれる殺気に気付き、バルバトスを一瞬で身に纏わせ、超大型メイスで迎撃する。

“ガァァン!!“と誰もいない公園で金属音と火花が飛び散る。

そんな中で、士道はテイルブレードを襲撃して来た人物に向けて射出した。

 

「!!」

 

不意打ち気味に襲ってくるテイルブレードが襲撃者に襲いかかる。

逃げまわる襲撃者に対し、士道はメイスを投擲した。

 

「チッ!」

 

襲いかかる巨大メイスに対し、跳躍し回避する襲撃者に士道は見覚えがあった。

 

「────容赦ねーですね。兄様」

 

聞こえてくる声に対し、士道が言う。

 

「不意打ちするからでしょ。それに殺気出てたから迎撃しただけだよ」

 

士道と狂三の視線の先に立っていたのは、ワイヤリングスーツを纏った真那が、士道を見つつも狂三を睨みつけていた。

肩には盾のような、羽のようなパーツが装着されている。昨日、士道が映像で見た装備だった。

 

「で?なんで真那は狂三を襲うの?」

 

士道がそう言って真那を見る。

そんな士道に対し、真那は口を開こうとしたその時。

 

「っ!?兄様!!」

 

突如慌てた様に叫ぶ真那に、士道はすぐさま反応する。

“パァン!!”と銃声が一度放たれる。

超至近距離で放たれる影のような弾丸が士道を襲うが、その攻撃を士道はナノラミネートアーマーで受け弾いた。

なぜか攻撃を仕掛けてきた“狂三に“対し、士道は容赦なくレクスネイルを狂三の首元を目掛けて手を掴むと、そのまま公園のアーチに投げつける。

 

「コフッ!?」

 

アーチに叩きつけられた狂三に士道は一目すると、真那が手にしたブレードでトドメを刺す。

じゅッ、と嫌な音を出しながら、それきり狂三は何も言わなくなった。

 

「ふぅ」

 

真那が軽く右手を振る。すると手に装着されていたパーツが肩に戻っていった。

 

「悪い。助かった」

 

突如襲ってきた狂三に士道が対応出来たのは真那のおかげだ。

士道は軽く感謝の言葉を伝えると、真那も言う。

 

「ヒヤヒヤしましたがまあ、兄様も躊躇いなくやりましたね。それに・・・」

 

真那は今の士道の姿に目を細める。

 

「今回は見逃しますが兄様のその姿。あまり表に出さねー方がいいですよ。“魔力感知に引っかからない“から警報やASTは出ませんが、一応兄様も抹殺か確保の対象になってやがりますので」

 

「別にアンタらが俺達の邪魔しなかったら戦うつもりなんてないよ。ただ、俺だってアンタ達に“仕事”の邪魔をされてるから応戦してるだけだし」

 

士道の言葉に真那は息を吐く。

 

「その“仕事“ってヤツを聞かせて貰っても?」

 

「言う必要あるの?」

 

「・・・まあ、そうでやがりますよね・・・」

 

士道の一言に、「はあ」と再び息を吐く真那。

そしてそのまま、真那は士道に交渉をした。

 

「じゃあ、こうしましょう。今回の件、私は上に“報告しないことにします“。勿論他言無用です。これでどうでやがりますか?」

 

「・・・アンタが嘘をついて報告する可能性もあるけど、保証はある?」

 

士道の言葉に対し、真那が言う。

 

「・・・そうでやがりますね・・・なら、先程兄様と一緒にいた《ナイトメア》についての情報提供って所でどうです?」

 

真那としても、これ以上の提供を要求されると残されているモノなど、ワイヤリングスーツの情報提供くらいしかなくなる。

真那は冷や汗を流しながらも、黙る士道に視線を向けていた。

そんな真那に士道は答えた。

 

「分かった。ならそれでいいよ」

 

「そうですか・・・それで手を打ちましょうか」

 

安堵する真那に士道は自販機でお茶を買って、真那に放り投げる。

 

「ん。時間かかると思うから、コイツ飲みながら話そうか」

 

「ありがとうございます」

 

お茶を受け取る真那に対し、士道は水を買って近くのベンチに座った。

真那もそれにつられるように隣に座る。

そして、二人の問答が始まった。

 




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また、やるかわかりませんが、あとがきで設定会話や作者の色々なネタバレ会話などやるかもしれませんがよろしくです!
ちなみに、(本気でやるかは分かりません)」


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第十七話

投稿!!

リボーンズガンダム!リボーンズキャノン!リボーンズガンダム!リボーンズキャノン!リボーンズガンダム!リボーンズキャノン!リボーンズガンダム!

ごちゃごちゃうるさいよ。お前

エクバでリボガンと戦う三日月と期待の大型新人


「では兄様。兄様は一体どういった仕事をやっていやがるんですか?ある程度予想するに、精霊関係だと思われるんですが」

 

真那の問いに士道は水を含みながら、答えた。

 

「精霊を助ける仕事」

 

「精霊を助ける・・・でやがりますか?」

 

そう呟く真那に士道は頷く。

 

「うん。なんでも俺には精霊の力を封じる力があるんだって」

 

「精霊の力を封じる!?」

 

真那は士道のその言葉に反応した。

もし、その言葉が本当ならとんでもないことである。

そんな真那に対し、士道は話を続ける。

 

「そこまで驚く?」

 

「驚きますよ!普通はそんな事できませんからね!!」

 

「そっか」

 

そう言う真那に士道は頭をガリガリとかきながら、呟く。

 

「それで、その封印とは一体どうやってするのでしょうか?やはり特別な事でも・・・?」

 

そう聞いてくる真那に士道は答えた。

 

「別に特別な事なんてないよ。精霊とキスすればいいだけの話だし」

 

「・・・兄様?今なんと?」

 

真那は士道の口から出た言葉に反応する。

冷や汗を流す真那に士道は何事も無いようにもう一度言った。

 

「だから、“キス“すればいいだけなんだから別にそこまで特別な事なんてないよ」

 

「・・・・・・・・・・はぁ!?」

 

士道は何ともないように言っているが、真那にとっては聞き逃がせないものであった。

 

「き、キスッて言いやがりましたか!?兄様!!もしかしなくても、もうやってる訳じゃないですよね!?」

 

真那が士道の肩を揺さぶる。

グラグラと頭を揺らされる士道は真那に言った。

 

「やらなかったら、十香達は普通に暮らしてないよ」

 

「達!?」

 

精霊が複数いるのは知っているが、まさか何人かとやっていると?真那は士道に真相を問い詰めるべく口を開く。

 

「い、一体何人とやっていやがりますか!?てっ、言うより一体どうやってその事を知ったんです!?」

 

「真那、答えるから首揺らすの止めてくれない?喋りづらい」

 

「あっ、すみません。気が動転していました」

 

真那は士道の言葉に手を士道の肩から離す。

真那としては落ち着いてもいられないが、ここは一つ深呼吸をして士道に言う。

 

「で?一体どうやって知ったんですか?」

 

真那に対し、士道は頭を回しながら答える。

 

「知ったのはたまたま。で、何人かって言われると、十香と四糸乃の二人だけだよ」

 

嘘は言っていない。琴里に言われるまで知ることなど無かったし、それに嘘を言った所でメリットがない。

士道はそう言い切った後、ペットボトルの水を口に入れる。

一気に半分まで飲み干すと、士道は息を吐いた。

そんな中、真那が考え込むように手を顎に置くと、独り言のようにブツブツと言い始める。

 

「十香と四糸乃・・・おそらくはプリンセスとハーミットの事でしょうか・・・確かにあの後、二人の精霊は見ていませんし・・・もしかしたら本当に・・・」

 

そう呟く真那に対し、士道は言った。

 

「・・・で?俺は答えたけど、今度は俺が聞いてもいい?」

 

「・・・!!ああ、すみません!《ナイトメア》についてでしたね」

 

そう答える真那に、士道は軽く首を縦に振った。

 

「《ナイトメア》─────時崎狂三は、精霊の中でも特別です」

 

「特別・・・?」

 

真那が頷く。

 

「“死なねー“んですよ。何度殺しても、どんな方法で殺しても。あの女は、何事もなかったかのように、必ずどこかに出現して、何度も“人を殺しやがる“んです」

 

「・・・へぇ」

 

士道はそう呟きながらも、時崎狂三との戦闘に違和感があった。時崎狂三と一瞬だけ相手をしていた時、あの“鳥“みたいな気配は無かった。

本体のようだけど、本体じゃない。

まるで、ダミーかオマケと戦わされているような感じ・・・とでも言えばいいか。

あのデカイ鳥のオマケ。士道が狂三に対し、戦って感じたのはその印象だ。

士道が三日月としての野生の勘がそう告げている。だが、それでも不確定要素もあり、士道はただ考えるしかない。

そんな中で、真那がベンチから立ち上がった。

 

「では、兄様。私はこれで失礼させてもらいます。他にも“色々と”聞きたい事はありますが、また別の機会に」

 

「一応言うけど、誰にも話さないでよ?」

 

「分かってます。こんな重大な事を話したら兄様が確実に実験台にされますので。そんなのは私だって望んでねーです」

 

そう言う真那に士道はポケットから“何か“を取り出すと、それをそのまま真那に投げる。

 

「ん」

 

「おっと・・・・兄様これは・・・?」

 

士道から受け取ったのはインカムであった。

インカムを受け取った真那は士道に聞く。

 

「真那がもし、俺達に興味あるんだったらそれをつけて戦いにいけば?それ、前に“壊して“聞く事しか出来なくなったやつだからあげる」

 

「あ、ありがとうございます兄様」

 

真那はそう言って、士道を見る。

ベンチから立ち上がって背を伸ばしている士道に真那は聞いてみた。この先について─────精霊を助けた後、どうするのかを。

 

「兄様。兄様は精霊を全員助けたらどうなさるつもりですか?それを聞きてーです」

 

「助けた後?」

 

士道は真那の問いに頭をかく。そして少し考えるような仕草をした後、真那に言った。

 

「まあ、農業をやってみたいかな。“前の時は“出来なかったから。後は・・・死ぬまで十香達を守る為に戦うだけだよ。“俺にはそれしか出来ないから“」

 

士道の言葉に、真那は──────

 

「そうでやがりますか。“いい夢“ですね」

 

そう答えることしか出来なかった。




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イエス、ウィ、あとがき!

登場人物

鉄血(てっけつ)

このデーオルや他作品のオラ鉄など書いている作者。最近は仕事忙しくて投稿が長くなりつつある。


少鉄血(しょうてっけつ)


鉄血とは血の繋がらない赤の他人。 
実在するのかしないのか、それは神のみぞ知る。

ごあいさつ

おまたせしました!あとがき!始まるよー!

やけにテンション高いなお前。

テンション上げていかないとやってらんないよ。だから今日はこのテンションでいくね!

やめろ馬鹿。暑苦しいわ


本編語り


いやー、先週みたけど、この作品ももう一周年ですよ。一年書き始めてるわけですよ。飽き性の俺にしては凄くない?

ある意味凄いよな。お前がここまで続くとは思わなかったわ

ほんとにねー。でも結構楽しいから書き続けるよ?これからも。

失踪しないだろうな?

多分失踪するときは、忘れられたときだよ。


◇◇◇◇◇


で?お前はなんでこんなあとがきを書き始めたんだよ?普通はないだろ?

えー?作品書いてるとね、色々とネタが浮かんでくるんだよ。ボツネタとか沢山でたよ

だろうな

いやね前にこの作品で番外編書いたでしょ?凜祢がアトラの記憶持ってるってヤツ。

あったな

それね、じつは最後のシーンも考えててね、最後の別れるシーンに三日月に全部話すシーンも考えてたんだよね

そこまで考えてたのか

そ。最後に三日月にありがとうって言って消える凜祢って言う感じにしようかなーと思ってたんだけど、今回はそういった作品は無しにしてるからやらないんだけどね

勿体ない

しゃーないね。


◇◇◇◇◇


そう言えば、お前エクバでヘビア使ってるけど実際どうなの?

えっ?終わってるよ?

え?終わってんの?

希望の欠片すらない。特に相方がヘビアの時は希望の花すら咲かないレベル。

希望の花ーじゃなくて?

そ、ずっとオールフェーンズって歌ってる。

終わってる方だ(笑)

なんならずっと涙流してるよ。やってたら分かる


◇◇◇◇


このままいくとめちゃくちゃ長くなりそうだからきるね

おう。

もしかしたら続くかもしれない

マジ?

マジマジ

イエス、ウィ、あとがき!


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第十八話 誰が為

投稿!!

さぁーて、三日月と琴里のすれ違いに、三日月が精霊を助ける意味をやってくぞー!


あの後、士道はスーパーに行って食材を買った後に、十香達と夜ご飯を一緒に食べた。その後、部屋に戻った十香達がいなくなったリビングにいる士道はソファで寝転がっている琴里に言った。

 

「琴里」

 

「んー?なあに?お兄ちゃん?」

 

士道の声に反応して琴里はソファから身体を起こす。

そんな琴里に対し、士道は言った。

 

「琴里はさ、トッキーが人を殺してたの・・・知ってた?」

 

「・・・!!なんでまた急に?」

 

琴里は士道の口から出てきたその言葉に眉を顰める。

そんな琴里に対し、士道は何も変わらない表情で皿洗いをしながら言った。

 

「今日のデートでさ、公園でトッキーと一緒にいた時、真那に襲われたんだよ。そんで迎撃したら、トッキーがいきなり俺に不意打ちしてきたから“殺したけど“、その後、真那に聞いたらそう言ってたってだけ」

 

士道の言葉に琴里は叫んだ。

 

「・・・殺した?殺したですって?士道。貴方何をやったか分かってるの?狂三は私達の攻略対象でしょ!?そんな狂三を殺したって!」

 

そう叫ぶ琴里に対し、士道はなんでもないように言う。

 

「でも、やらなきゃ俺がやられてた。まぁ、でもバルバトスのナノラミネートアーマーを貫通しなかったからアイツの攻撃で致命傷はでないと思うから大丈夫だよ」

 

「・・・・・っ!!」

 

話が噛み合っていない。

 

それに気づき琴里は歯を食いしばる。

そして皿を洗う士道に言った。

 

「士道・・・貴方、私達の目的は覚えてる?」

 

「・・・・?精霊を助ける事でしょ?」

 

琴里の突然の言葉に士道はそう答える。

 

「・・・そうね、なら士道。貴方、なんで“〈ナイトメア〉を殺した“のかしら?その理由を“もう一度聞かせて“欲しいのだけど?」

 

琴里はかつてない程に士道に怒りを感じている。

確かに、士道を自由にさせていた。だがそれは、士道もやる事はキッチリやるから“自由にさせていた”のだ。

だが、士道は今回の件で“狂三を〈ナイトメア〉を生き返るとはいえ、一度殺しているのだ“。そうなれば好感度を上げて封印と言う話どころではない。

怒りを露わにしている琴里に対して、士道は言った。

 

「“やられたからやり返した“。それだけだけど?」

 

「・・・そう」

 

悪気など一切ないその言葉に琴里は“キレた”。

 

「なら士道。少し痛い目を見ないと分からないかしら?」

 

琴里は“パチン“と指を鳴らす。

するとそれに反応するようにリビングの扉から、窓からスーツ姿の男達が入ってくる。

 

「・・・へぇ」

 

士道が戦闘体勢に入る。

バルバトスを出してはいないが、それでも自身の兄は強い事を琴里も前回の件で反省していた。

ゆえに、今度は数の暴力で士道を抑え込む。

こんな事など本当はしたくない。だが計画もある以上、これ以上の想定外の事を起こされたくないのだ。

 

「・・・よろしいので」

 

「ええ。“痛めつけるだけでいいわ“やっちゃって」

 

琴里のその言葉と共にスーツの男達は士道に襲いかかる。

士道はポケットに入れていた手を出すと、“その手に握られた銃“を躊躇いなく発砲した。

 

パンパンパンパンパンパン!!

 

乾いた銃声が六回、部屋に響く。

倒れ込む三人の男。

 

「──────────」

 

琴里は呆然とその光景を見つめていた。

血を流して倒れ込む部下に、銃を下げる士道。

そんなありえない光景を目に焼きつけながら、琴里はペタンと座り込む。

そんな琴里に対し士道は言った。

 

「・・・で?なんか言うことある?琴里」

 

「─────っ!」

 

琴里は視線を士道に向ける。

視線の先、士道が自身を見る目は────“つまらなさそうな目“だった。

そんな士道に琴里は息を飲む。

まるで自身にもう興味などないように見つめる士道に琴里は言葉を出すことが出来ない。

そんな琴里に対して士道は言う。

 

「あのさ・・・“俺は仕事でやってるんだ“。十香に関しては“俺の個人的な事もあるから“違うけど、別にそれ以外は“どうでもいいんだよ“。四糸乃には悪いとは思うけどさ」

 

そう言う士道に琴里は肩を震わせる。

そして、士道は“三日月として“の感情を露わにする。

 

「俺が十香達を精霊を、助ける理由なんて一つしかない。アンタらの為じゃない。“オルガ“の為に俺は助けるんだ。オルガのやりたい事は“俺のやりたい事“だ。オルガが助けてやれって言ったから俺は精霊を助ける。だからさ琴里。そこらへんは理解しといて」

 

そう言う士道に琴里はうわ言のように口を開く。

 

「・・・そんなの・・・そんなの間違ってるよ・・・お兄ちゃん・・・」

 

「間違っていようが関係ない。俺は“この生き方しか知らない“から」

 

士道はそう言って銃をポケットにしまうと服を脱ぎ、先程殺した男の死体を担ぐ。

 

「コイツら、運ぶから後始末よろしく」

 

士道はそう言って、リビングを出ていく。

一人残された琴里は顔を伏せ、ただ泣くしかなかった。

 




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第十九話

投稿!!

マキオンヘビアで本格的にガン無視されつつある鉄血です。
なんで・・・みんな無視するの?

三日月またこんなにブレスレットを汚して、アトラさんに怒られますよ?一緒に謝ってあげますから帰って来てください。皆の元に────

クーデリア・藍那・バーンスタイン


死体の片付けを終えた士道は風呂に入った後、部屋に戻る。

部屋の電気を消し、寝ようと瞼を閉じた時だった。

“コンコン“と部屋の扉がノックされる。その音に気がついた士道は身体を起こすと、部屋の扉を開けた。

 

「あれ、十香?それに四糸乃まで・・・どうしたの?」

 

部屋の前にいたのはパジャマ姿の十香達だった。夜に来ることのない二人に士道は目を丸くする。

 

「・・・そ、その・・・」

 

四糸乃は小さな声で士道に伝えようとするが、耳に入ってこない。よしのんに関しては四糸乃が最後まで言い切ろうと頑張る姿をみながら、応援していた。

そんな四糸乃に対し、十香もなにやらもじもじした様子で士道に視線を向けたり、逸したりしている。

そんな十香達に対し、士道は言った。

 

「・・・そこに立ってるのもあれだし、入れば?」

 

「う、うむ・・・」

 

「は、はい・・・」

 

妙に歯切れの悪い二人に士道は疑問を浮かべながらも、部屋に入れた。

部屋に入った後も妙に落ち着きがない二人に士道は言う。

 

「十香に四糸乃。急に部屋に来て何か用?」

 

士道の言葉に対して最初に反応したのは四糸乃だった。

 

「・・・その・・・士道・・・さん」

 

「?」

 

四糸乃はおそるおそると言った声で士道に言おうとするが言葉が出てこない。

そんな四糸乃に対し、十香が四糸乃の代わりに口を開く。

 

「その・・・だな、シドー。四糸乃がさっき、シドーの家から響いた音にびっくりして心配になって眠れなくなったそうなのだ。だから・・・そのー・・・今日は一緒に寝て欲しい」

 

「・・・・・・」

 

十香が妙に歯切れが悪い反応だったのはそういう事かと、士道は納得する。

確かについ先程、銃を撃ったばかりだ。その音で四糸乃は心配になって出てきたのだろう。十香に至っては四糸乃の性格がこんなだから代わりに言ってくれる代役といった所か。

そんな十香達に士道は頷きながら言う。

 

「まあ、いいけど」

 

士道はそう答えて士道はベッドへと向かった。

二人もそれに続いて士道のベッドに身体を預ける。

 

「この状態で寝るの・・・?」

 

士道は背中に阿頼耶識がある以上、身体を横にしなければ寝る事が出来ない。そんな士道を真ん中に背中側が十香、正面が四糸乃という対面になっていた。

そんなぼやきを言う士道に対し、『よしのん』がパクパクと口を開く。

 

『まーまーせっかくなんだし、十香と四糸乃の身体を堪能しちゃえばー?別に四糸乃も悪い気はしてないみたいだしー?』

 

よしのんの言葉に四糸乃は顔を赤くする。

そんなよしのんと四糸乃に士道は言った。

 

「別に興味ないよ。眠いからさっさと寝よう」

 

士道はそう言って瞼を閉じる。

 

「おやすみ・・・なさい」

 

「おやすみなのだ、シドー」

 

「ん・・・おやすみ」

 

十香達の返事に士道は短く答え、押し寄せる睡魔に身を預けた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

深夜一時。

ふと、士道は目が覚めた。

普段は目が覚めない時間に起きた士道は身体を起こす。

隣には四糸乃がぐっすりと眠っている。

時折、士道の名前を口にしている事から何かしらの夢を見ているのだろう。

だがもう一人、隣に寝ていた筈の十香の姿がないのを見て、士道は扉に視線を向ける。

ギィ、と音をたてながら開いている扉を見て、士道はベッドから出るとそのまま一階に目を向けた。

リビングに明かりがついている。

おそらく十香がつけたのだろう。士道はそう思いながら、階段を降りて一階へと向かった。

そしてリビングに向かうと、ソファにやはりと言うべきか十香が座っていた。

何やら考えこんでいる十香に対し、士道は後ろから声をかける。

 

「・・・何やってんの?十香」

 

後ろから声をかけられた十香は身体を“ビクッ“とさせながら士道のいる方へ顔を勢いよく向けた。

 

「あ、いや、そのだな・・・」

 

たどたどしい態度の十香に対し、士道は疑問を浮かべながらも、十香の元へと足を進める。

そしてそこにいたのはを─────

 

「・・・琴里?」

 

十香の膝の上には泣き疲れたように眠る琴里の姿があった。

よほど泣いていたのだろう、顔を赤く腫れぼったくし、涙の後が頬にまだ残っている。

そんな琴里を十香は見ていたのだろうか?

 

「琴里の面倒してたんだ。俺は今は邪魔か」

 

士道は十香にそう言うと、十香は慌てたように言う。

 

「別に邪魔ではないぞ!?シドー!?むしろ居てくれた方が助かる!だから少しだけ居てはくれないか・・・?」

 

「・・・・・分かった」

 

十香の言葉に士道は少し考えた後、頷いて十香の隣に座った。

士道は座ったまま目を瞑っていると、十香が士道に言った。

 

「シドー・・・昨日の夜に言ったあの言葉・・・本当にそう思っていたのか?」

 

「・・・?何が?」

 

戸惑いを含ませた声音で十香は士道に言う。

 

「その・・・琴里と喧嘩をしていた時に言っていた・・・四糸乃や他の精霊などはどうでもいいという・・・」

 

十香は悲しそうな表情で顔を俯かせながらポツポツとそう呟く。琴里に言ったその言葉の質問に対し、士道は気まずそうに答えた。

 

「あー・・・まぁうん。言った」

 

士道の言葉に十香は更に眉を八の字に歪ませる。

 

「シドー・・・」

 

最早泣きそうな十香に対し、士道は十香を抱きしめる。

 

「・・・シドー?」

 

士道の突然の行動に、十香は顔を上げる。

 

「十香がそんなに泣きそうになるだなんて思ってなかった。ごめん」

 

「わ、私は良いのだ!!それは四糸乃にやってあげてくれ!」

 

「でも、十香も泣いてる」

 

「そうだが・・・っ!」

 

言葉が詰まる十香に対し、士道は十香をポンポンと、優しく叩く。

そんな士道に十香は小さな声で言った。

 

「・・・シドー。何故、琴里と喧嘩をしたのだ・・・?」

 

そんな十香の問いに、士道は口を開く。

 

「意見が合わなかっただけだよ。それだけ」

 

そう言う士道に十香は言う。

 

「・・・琴里は、ずっと泣いていたぞ?仲直りはしないのか?」

 

「・・・やる意味ある?」

 

士道は十香にそう言うと、「そ、そうか」と答える十香。

だが、その後に十香が士道に言った。

 

「だが、シドーと琴里がこのまま仲直り出来ないのは私も四糸乃も嫌だぞ。泣いていた琴里を見て私はそのー、胸がこうキューウと痛くなるのだ。そんなのがずっと続くなど私は嫌だ」

 

「・・・・・」

 

そう言う十香に士道は何も言わない。

だが十香のその目を見て、士道は息を吐いた。

 

「・・・分かった。また謝れる時に謝っとく」

 

四糸乃も不安にさせたようだしまた何かしてあげるかと考えていると、十香の頭が士道の肩にのしかかる。

 

「・・・十香?」

 

士道は頭を肩に乗せてくる十香に話かける。

十香の目はとろんとした目でこっくりこっくりと船を漕いでいる。

眠そうにしている十香に士道は言った。

 

「・・・おやすみ。十香」

 

「・・・・・うむ。おやすみなのだ・・・シドー」

 

十香はそう言って瞼を閉じた。

眠ってしまった十香を横に士道は窓に視線を向ける。

そこに写る自分の姿は五河士道としての自分ではなく、三日月・オーガスの姿がそこにあった。

そして、三日月は此処にはいないオルガに対し、言葉を投げる。

 

「ねえ、オルガ。こんな時、クーデリアだったらなんて言うかな」

 

クーデリアも十香や琴里と同じような事を言うのだろうか?それとも言わないのだろうか?考えるだけ無駄なのは分かっている。だけど、あの二人ならきっと答えると思ったから。

三日月は眠る十香と琴里を横にただ一人、その答えを考え続けていた。




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第二十話

投稿!!
短いですが、投稿です!

だからお前はアホなのだ。何いってんの?

マスターガンダムに乗った三日月


次の日の朝、士道が教室に入ると、既に昨日殺した筈の狂三が席に着いているのが目に入った。

明らかな異常。一度自身も体験しているとはいえ、やはり違和感があった。──────死んだ筈の人間が、何食わぬ顔をして登校してきている、なんてのは。

士道の姿を見るなり穏やかな微笑を作り、狂三がペコリと頭を下げてくる。

 

「あら、士道さん。ごきげんよう」

 

その姿は、殺した昨日と何ら変わりなかった。

昨日、殺した相手に何も変わらない表情で笑顔を向けるのは不気味極まりないが、士道は何時もと変わりない挨拶を返す。

 

「うん、おはよう」

 

だが、士道にとってそこまでの驚きはない。予想していた事態でもあったからだ。

 

「昨日は楽しかったですわね。また是非誘ってくださいまし」

 

「ふーん。なら、暇ならまた誘うよ」

 

その言葉に狂三は再び微笑む。それは士道達とのデートの事を言っているのか、公園の事を言っているのか。士道には判別がつかなかった。

狂三はそんな士道の思案に気づいているのかいないのか、可愛らしい微笑を顔に貼り付けたまま言葉を続けてきた。

 

「でも、少し驚きましたわ」

 

「・・・・?何に?」

 

士道が聞き返すと、狂三は微かに目を細める。

 

「てっきり士道さんは、学校をお休みになると思っておりましたので」

 

狂三の言葉を聞いて、士道は軽く息を吐きながら口を開く。

 

「別に学校休む理由なんてないだろ。それとも来ないほうがよかった?」

 

「いえ、士道さんがちゃんと登校してきてくれて、とても嬉しいですわ」

 

屈託のない笑顔でそう言う。

 

「・・・・・」

 

そんな狂三に士道は大した反応をする事なく、狂三に言った。

 

「アンタに聞きたい事があるから放課後に来てもらえる?」

 

「・・・?いいですが・・・理由を聞いても?」

 

キョトンとする狂三に士道は口を開いた。

 

「トッキーが“俺を襲う“意味だよ。それくらい昨日のアレを見れば分かる」

 

士道は狂三にそう言うと、狂三は数瞬の間何か考え込むような仕草をした後、唇を開いた。

 

「・・・ええ。ならお答えしますわ。なら放課後、屋上に来てくださいまし」

 

狂三はそうとだけ言うと、士道から視線を外した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

来禅高校の屋上に立った狂三は、妖しく笑ってトン、トン、と軽快な足音を響かせる。

空は雲一つない快晴。真夏さながらの強烈な日差しが狂三に注ぎ、いつもよりその影を黒々と地面に映し出されている。

時刻は九時十分というところだろう。もう一限目の授業が始まっているためか、校舎から響いてくる喧噪は幾分か収まっていた。その代わり、音楽室からまばらな楽器の音が、体育館からボールの弾む音が聞こえてくる。

狂三は、踊るようにステップを踏んでいた。地面に円を描くように、くるくると。

 

「もう少し、士道さんとの学校生活を楽しんでも良かったのですけれど──────」

 

もし上空からその光景を見た者がいるのならば、その異常に気づいたかもしれない。

狂三の通った場所が、薄暗くなっていたのである。

──────まるで、狂三の軌跡から、影が消えないように。

 

「そろそろ、潮時ですわね」

 

そして、カッ、と踵を地面に突き立てる。

すると屋上の中央に薄暗い線で描かれた円が、じわじわと面積を広げていく。

屋上の全域を覆い尽くし、校舎の外壁を伝い、校庭を侵食し、やがて学校を中心とした街の一区画を覆わんばかりに。

 

「────きひひ、ひひひひひひひひひ」

 

唇を歪んだ三日月の形にし、笑みを漏らす。

 

「ああ、ああ、士道さん、士道さん。愛しい愛しい士道さん。あなたはわたくしを助けるつもりなのでしょうが、こんなわたくしでも助けるつもりなのでしょうか?」

 

狂三はそう言いながらも、士道と自分の代わりがいる教室に視線を向ける。

 

「でも・・・士道さんの奥に眠るその力、楽しみですわ。わたくしでも“分からない天使の力”────どれほどの力なのでしょう」

 

狂三はこの先に起こる優越に浸りながら、放課後を待っていた。




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第二十一話

投稿!!

さーて、ブチギレ三日月の登場だ!

「お前、消えろよ」


シノをやられて猿にキレる三日月


カツカツ、と靴が鳴る音が学校の廊下に響き渡る。

 

「・・・・・」

 

士道は無言のまま屋上へ向かう階段を見上げると、そのまま階段を上がりだす。

時刻は十六時三十分。辺りにからは、部活に向かう生徒たちの声が響いていた。

結局今日はあれきり、狂三と会話をしていない。一限目が始まった時に屋上から妙な感覚があったのだが、士道は特に気にすることなく、放課後までずっと待っていたのだ。

 

『・・・大丈夫かね、シン』

 

と、右耳に装着したインカ厶から、やたら眠たげな声が聞こえてくる。令音だ。

 

「別に。緊張する事なんてないでしょ。そう言えば琴里は?声がしないけど?」

 

『・・・ああ、琴里は今少し席を外している』

 

「ふーん。まあいいけど」

 

そう言えば朝から琴里の姿を見ていない。おかげで謝る機会がなかったのだが、また今度でいいかと考える士道に対し、令音が言う。

 

『今、この場にいなくてはいけないのは琴里も重々承知している。だが、それを考慮した上で、こちらの方が作戦の成功率が上がると判断したのさ。・・・今は邪魔者の横槍が一番厄介だからね』

 

「・・・真那の事か」

 

士道は小さく令音達に聞こえない声で呟いた。

確かに、接触しようにも真那が一々乱入してこようものなら面倒極まりない。

それに昨日壊れたインカ厶を真那に渡しているのだ。もしかしたらそれに対し、話し合いでもしているのだろう。

士道はそこまで考えた後、その瞬間に辺りを襲った異変に、眉を動かした。

 

「・・・なんだ?」

 

士道にも何が起こったのかは分からない。だが周囲がふっと暗くなったかと思った刹那、全身に強烈な違和感が襲ったのである。

 

「・・・へぇ」

 

士道は階段下から見える気を失った生徒達の状態を見て、そう呟いていた。

 

「よっぽど他の奴に聞かれたくないのか」

 

『・・・そのようだ。今、高校を中心とした一帯に、強力な霊波反応が確認された。この反応は─────間違いない、狂三の仕業だ。広域結界・・・範囲内にいる人間を衰弱させる類のもののようだ』

 

「十香は無事?」

 

士道は令音のその言葉を聞き、すぐさま十香の状態を確認する。この状況で十香を人質でも取られたら不味いと考えたからだ。

 

『・・・ああ。無事のようだ。少し倦怠感はありそうだが、それ以外は安定している』

 

「そっか。ありがとね」

 

士道は令音の言葉を聞いて十香が無事だというのを確認すると、そのまま屋上へと続く扉の前までたどり着いた。

扉に、鍵はかかっていない。

否───正確にはドアノブの下辺りが、銃で撃ったかのようにボロボロになっていて、その役割を果たしていなかった。

考えずとも狂三の仕業で間違いないだろう。士道はそのままノブを握り、扉を開けた。

そしてそのまま視線を中心に向ける。

そこにいたのは。

 

「───ようこそ。お待ちしておりましたわ、士道さん」

 

狂三がフリルに飾られた霊装の裾をくっと摘み上げ、微かに足を縮めてみせる。

そんな狂三に対し、士道は口を開く。

 

「此処までするってことは、よっぽど他のやつに話を聞かれたくないみたいだけど、それにしてもなに?この変なヤツ」

 

来禅高校の屋上で士道は周りを見渡しながら狂三に問いかけると、狂三は士道の反応が楽しくて仕方ないといった様子で、さらに笑みを濃くする。

 

「うふふ、素敵でしょう?これは〈時喰みの城〉。わたくしの影を踏んでいる方の『時間』を吸い上げる結界ですわ」

 

「時間を吸い上げる?」

 

士道は怪訝そうに目を細める。吸われている感覚など一切ないが、他の奴が倒れているのを見ると、実際そうなのだろう。

そんな士道に狂三はくすくすと笑いながらゆっくりと歩み寄ってきた。

そして、優雅な仕草で髪をかき上げる。常に前髪で隠された左目が露わになった。

 

「・・・!」

 

士道はそれを見て、眉をひそめる。

明らかに、異様だった。無機的な金色に、数字と針。

そう───狂三の左目は、時計そのものだったのだ。

しかもおかしなことに、その時計の針が、くるくると逆方向に回転しているのである。

 

「なにそれ?」

 

「ふふ、これはわたくしの『時間』ですの。命───寿命と言い換えても構いませんわ」

 

言いながら、狂三がその場でくるりとターンする。

 

「わたくしの“天使”は、それはそれは素晴らしい力を持っているのですけれど・・・その代わりに、ひどく代償が大きいのですわ。一度力を使うたびに、膨大な私の『時間』をくらっていきますの。だから───時折こうして、外から補充することにしておりますのよ」

 

「・・・・・」

 

狂三の言葉に士道は表情を変える事なく、聞き続ける。

それが本当だとするのなら、この結界の中で倒れている人たちは今、狂三に残りの命を吸い上げられていることになる。

狂三はそんな士道の表情を見ると、なぜか、少しだけ寂しそうな顔をした。

だがすぐにその顔に凄絶な笑みを貼り付けると、指先で士道の肩に触れる。

 

「精霊と人間の関係性なんて、そんなものですのよ。皆さん、哀れで可愛い私の餌。それ以上でもそれ以下でもありませんわ」

 

まるで士道を挑発するように眉を歪め、続ける。

 

「ああ───でも、でも、士道さん。あなただけは別ですわ。あなただけは特別ですわ」

 

「・・・・俺が特別?」

 

「ええ、ええ。あなたは最高ですわ。あなたと一つになるために、わたくしはこんなところまで来たのですもの」

 

「へぇ・・・」

 

士道は声音を低くし、狂三に返事を返す。

 

「一つになるって言ったけど、どういう意味?」

 

「そのままの意味ですわ。あなたは殺したりなんてしませんわ。それでは意味がありませんもの。───わたくしが、直接あなたを“食べて“差し上げるのですわ」

 

 

その『食べる』という表現が文字通りの意味なのか比喩的なものなのか───それに判別はつかない。

そして狂三は未だに黙ったままの士道に対し、士道を怒らせるに十分な地雷を踏み抜いた。

 

「もちろん、士道さんを一人にはさせませんわ。“十香さんも同じように食べて差し上げますので“安心してくださいまし」

 

狂三がそう言った瞬間だった。

 

ゴッ!!

 

「・・・ガフッ!?」

 

狂三の横腹に強烈な衝撃が炸裂する。

放物線を描くように凄まじい勢いでグラウンドに叩きつけられた。

 

「ケホッケホッ!?」

 

砂煙を上げて狂三はグラウンドで倒れ伏す中、士道はバルバトス越しで狂三に言った。

 

「俺の家族に手を出したならアンタは“俺の敵だ“。それにもう十香にも手を出しているんだろ。ならお前はここで消えろよ」

 

三日月はそう言って、巨大メイスを狂三に目掛けて振り下ろした。




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第ニ十ニ話

投稿!!

オラトリアはどうしたって?先にこっちをキリのいい所で終わらせたい!!
それまで、しばし休息!


このフラッグのシートに、少年がいたとは・・・フフッ!!

気持ち悪いから生きてた変態


錆び付いたノブを回し、ドアを押し開ける。老朽化したドアはパラパラと剥がれた塗装の砕片をその場に落としながら、耳障りな悲鳴を上げた。

 

「・・・ち」

 

琴里は眉をひそめながら小さく舌打ちをし、その建物の屋上に出た。

今琴里が訪れていたのは、天宮市の南端に位置する廃ビルの一つだった。

別に廃墟探索の趣味があるわけではない。こんな辺鄙な場所に来たのには理由があった。

琴里は士道との件で肩を落としていると、

 

「───お待ちしておりました、琴里さん」

 

先に屋上で待ち構えていた少女───真那が、琴里に声をかけてきた。

そう。今日、士道達より先に目が覚め、部屋に戻った時に窓に、時刻と場所、そして真那の名前が書かれた紙が貼ってあったのである。

琴里は不機嫌そうな心地を隠すでもなく、フンと鼻を鳴らした。

 

「・・・まったく、何なのよここは。理由もなく私を呼び出すなんていい度胸してるじゃない」

 

「これは失敬。───ですが、お互いに人の目と耳はねー方がいいと思いやがりまして」

 

「・・・ふん。それで、一体何の用で私を呼び出したのよ?」

 

「少し、お話がしたいと思いまして」

 

と、真那がポケットから何かを取り出し、琴里に向かって放り投げてきた。

緩やかな放射線を描いて迫ってきたそれを、両手でキャッチする。

 

「これは・・・・」

 

琴里は眉をひそめた。真那が放ってきたそれは〈ラタトスク〉が使用している超高感度の小型インカ厶だったからだ。

 

「───〈ラタトスク機関〉」

 

「・・・・・っ」

 

琴里は、真那の口から出た言葉にピクリと片眉を動かした。

 

「噂には聞いていました。精霊を武力で殲滅するのではなく、対話によって懐柔することを目的とした組織。───初めて聞いたときは都市伝説かと思っていやがったのですが・・・」

 

真那が、キッと琴里を睨み付けてくる。

 

「《デーモン》兄様から全部聞かせてもらいましたよ」

 

真那の言葉に琴里はインカ厶をポケットにしまい込むと、「はぁ」と息を吐いた。

 

「・・・そう言う事ね。士道が全部話した訳。それ何が目的?わざわざ私を呼び出したってことは、何か狙いがあるんでしょう?」

 

真那は視線を動かさないまま、唇を開いてくる。

 

「───私は、この件を上に報告するつもりはねーです」

 

「・・・ふうん?」

 

「そのかわり。兄様を今すぐに、〈ラタトスク〉から開放しやがってください」

 

真那の言葉に、琴里は眉をひそめる。

その理由になんとなくだが、察しはついているからだ。

 

「一応、聞いておくわ。教えてもらってもいいかしら?」

 

半ば分かっている状態であったが、琴里は真那に問う。

 

「どういうことも何もねーです。───琴里さん、なぜあなたは、兄様にあんな危険な真似をさせていやがるのですか。いくらあの霊装モドキを使っているとはいえ、正気の沙汰とは思えねーです」

 

それと、と真那は言葉をつけ加える。

 

「今までの兄様の行動を見てると、“ラタトスク機関という組織“には合ってねーようにみえます。琴里さん。───いえ、五河琴里。とても残念です。あなたのような人に、兄様は任せられねーです」

 

「・・・・・・っ」

 

琴里は頬をピクリと動かすと、真那に言う。

 

「へぇ、それで、私が妹失格だったらどうするっていうの?」

 

「私が兄様の身柄を引き受けることも考えなければなりません」

 

真那の言葉を聞いて、琴里は顔を歪めた。

 

「冗談じゃないわ。DEMみたいな悪徳企業に士道を預けろっていうの?」

 

言いながら琴里が肩をすくめると、真那が驚愕したように腕を解き、肩を揺らした。

 

「・・・っ、なぜそれを」

 

「優秀な友人がいてね。情報を握っているのはお互い様ってこと」

 

それにDEMには良からぬ噂もある。そんな所に士道を預けたら最後、モルモットとして扱われるだろう。

真那はふうと息を吐くと、唇をを開く。

 

「───まあ、割れているのなら隠す必要もねーですね。そう、私はもともと自衛官だったわけではねーです。DEMインダストリー社から出向してくるに当たって、必要だったから適当な階級を得たに過ぎねーです」

 

しかしそう言うと、またすぐに視線を研ぎ澄ます。

 

「しかし、DEMが悪徳企業というのは聞き捨てならねーですね。あそこは記憶喪失だった私を受け入れてくれて、存在理由を与えてくれやがりました。感謝してもしきれねーです」

 

「・・・っ!!本気?狂ってるとしか言いようがないわ」

 

士道と同じ事を言っている真那に顔を歪めながらも、琴里はそう言った。

 

「失礼な。何を言っていやがるのですか」

 

琴里は真那の口ぶりに、違和感を覚えた。もしかして彼女は──

 

「あなた、もしかして、知らないの・・・?自分の身体のことを」

 

「身体・・・?何の話ですか」

 

キョトンとした様子で、真那が首を傾げてくる。琴里は戦慄に唾液を飲み込んだ。

 

「・・・・っ、なんてこと」

 

まったく予想していなかった訳ではない。だが、まさか令音の懸念通りになるとは。琴里は渋面を作り、真那の方にカツカツと歩いていくと、その肩を掴んだ。

 

「な、何をしやがるのですか」

 

「・・・悪いことは言わないわ。あなたこそDEMを抜けなさい。〈ラタトスク〉が面倒を見たっていいわ。だから───」

 

「はぁ・・・?いきなり何を・・・」

 

と、真那が眉をひそめて言いかけた瞬間、琴里と真那の携帯電話が殆ど同時に着信音を鳴らし始めた。

苛立たしげに顔をしかめてから、通話ボタンを押す。

 

「───わたしよ。何?」

 

『琴里、不味い事態になった。来禅高校で士道がナイトメアと交戦している。士道に至っては、ナイトメアを完全に殺しにかかっている事態だ』

 

「なんですって・・・・!?」

 

琴里はちらと真那の方を見やった。どうやら───表情からして、彼女もまた、琴里と似たような報告を受けているようだった。




感想、評価、誤字報告よろしくです!


刹那・○・セ○エイ

ゾクッ!?


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第ニ十三話 狼王 エピローグ

投稿!!

次はオラトリアの方も投稿していきます!

なあ、あの鳥は愉しかったな。お前、さっさと本気を出さなくて手こずったけど、殺しきれた時ゾクゾクしただろお前。
お前はMA(アレ)を殺るために生まれてきたんだからうれしいに決まってる。 よかったな。

三日月・オーガス


「・・・くっ!」

 

狂三は襲いかかってくる士道から逃げまわる。

“狂三の本体“を追いかける士道は、周りにいる狂三達に対し、ボソリと呟く。

 

「・・・死なないって言ってたのはコイツらがいるからか」

 

数え切れない程の狂三を見てうんざりしながらも、士道は腕部にある砲身の装甲をスライドさせ、そこから顔を覗かせる銃口から魔力で出来た弾を狂三の本体へと撃つ。

砲声を辺りに響かせながら、その弾丸は狂三へと襲いかかる。

 

「危ないですわねっ!?」

 

狂三はそう叫びながらも、その弾丸を躱し続ける。

士道は当たらない狂三に苛立ちを覚えながらも、士道はバルバトスのスラスターを吹かせて加速する。

 

「いかせませんわ!」

 

狂三の分身体がそう言って士道の進む進路を阻んでくるが、そんな狂三の分身体に対し、士道は巨大メイスを馬上槍のように前に突き出しながら、そのまま突進した。

 

「・・・ゴフッ!?」

 

巨大メイスの尖端が狂三の分身体の身体に突き刺さる。

そしてそのままメイスを振りまわし、突き刺さった狂三の分身体を投げ捨てた。

地面に叩きつけられ、コンクリートの地面に血の海を形成されるが、士道はそれに目を向ける事なく、そのまま狂三の本体に再び疾走する。

 

「・・・っ!わたくし達!!」

 

狂三が叫ぶ。

周りから分身体が集まってくるが、士道はその分身体達にテイルブレードを射出した。

 

“キュルルル“と、テイルブレードが不気味な音をたてながら一人の分身体の胴体に突き刺さると、そのまま周りの分身体を巻き込みながら鞭のようにしなる。

 

「なっ!?」

 

一人、二人、三人目まで巻き込んだ後、テイルブレードの剣先は士道の元へと戻っていく。

だが、その剣先の返しに引っかかったまま抜けていない狂三の死体を見て、士道はテイルブレードの先端をグラウンドに低空させてそのまま勢いよく引き摺り回した。

 

ガリガリガリガリッ!!

 

生理的に受けつけない音が、狂三の分身体から鳴り響く。

引き摺り回された場所から赤い血を引き伸ばし、十五メートル近く引き摺った後、分身体の身体からテイルブレードが引き抜けた。

そしてそのままバルバトスの背中にワイヤーが収まると、更に士道は加速する。

急速接近してくるバルバトスのその顔を見て、狂三は驚愕と恐怖が混じった表情を浮かべながらも逃げまわった。

途中、何度も分身体が士道に影の弾丸を放ったり、襲いかかったりしてはくるが、士道は持ち替えたツインメイスで殴り、両腕部の砲身が火を吹きながら次々と片付けていき、近づいてくる分身体達を片っ端から殺していった。

最初はかなりの数がいた分身体も、今となっては半分近くにまで減っていっている。

 

「このままだとマズイですわね・・・」

 

狂三は苦虫を噛み潰した表情を作りながら、その光景を見つめる。

だが、逸時も休める時間などない。

と───。

 

「・・・・っ!!」

 

遠方から複数の人影が見える。武装している人間を見て、狂三は察する。ASTだ。

霊力の反応を嗅ぎつけてすぐに駆けつけたのだろう。

 

「・・・引き時ですか」

 

狂三は目を細めながらそう呟くと、同時にテイルブレードが頬をかする。

 

「・・・・・っ」

 

狂三は顔を引き攣らせながら距離を取る。

テイルブレードはそのままバルバトスの所へ帰っていくが、あれが直撃したらと思うと想像にしたくはない。

狂三はそう思いながら、士道に言う。

 

「士道さん。折角ですけれど、わたくしは此処で引かせてもらいますわ。これ以上長引くと、彼等も参戦しそうですので」

 

狂三の視線の先にいるASTを士道は確認しながら狂三に言う。

 

「逃がすと思ってんの?」

 

ドスの効いた声で士道は答えるが、狂三は肩をすくめて言った。

 

「ええもちろん。ですが此処はわたくしの勝ちです」

 

狂三はそう言った後、士道の足元の影から手が伸びる。

 

「!!」

 

士道は足元を狂三の分身体に掴まれるが、その分身体に足裏のヒールバンカーを射出する。

胸元を貫かれた分身体は影に飲まれるが、その一瞬で狂三は消え去っていた。

 

「チッ。逃した」

 

士道は軽く舌打ちをした後、その場から引こうとしたその時だった。

 

「待ちなさい士道」

 

「少し待ってもらっていいです?兄様」

 

「・・・あ?」

 

後ろからかけられた聞き覚えのある声に士道は振り向く。

そこにいたのは──────

“見たことのない霊装を纏った琴里“とワイヤリングスーツを纏った真那がそこにいた。

その二人に士道は言う。

 

「──────ここじゃ駄目だ。家でやろう。でないと彼奴等が来る」

 

士道がそう言うと、琴里達も頷く。

 

「・・・分かったわ。なら、家でちゃんと聞くから覚悟しなさい」

 

「私も後で合流するんで待っててくださいよ?私も色々と聞きてー事があるんで」

 

真那はそう言って、先に部隊の元へと帰っていった。

士道は軽く空を見上げた後、グラウンドへと着地し、バルバトスを消す。

そして──────

 

「・・・・アイツ。殺しきれなかったな」

 

士道はそう呟いて歩いて十香の元へと向かっていった。




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五河シスター
第一話


投稿!!

このまま行くと、三日月が勝手してハッピーエンドどころかバッドエンド直行しそうなので、鉄血キャラを苦渋の決断で登場させます!では、どうぞ!

このイオク・クジャンの裁きを受けよ!!

fgoでは主人公の男

Fate/GrandOrder 特異点 機動戦士ガンダム00―Awakening of the Trailblazer―最後の対話

新しく投稿し始めたので、そちらもどうぞ!



『オルガ、手伝おうか?』

 

『大丈夫だミカ』

 

懐かしい夢を見ている。

俺が新しく生まれ変わる前、同じ名前を持って、アイツらと一緒にビスケットのトウモロコシ畑に手伝いに行った夢だ。

 

『ユージン、早くしろって。オルガと三日月に置いていかれっぞ!』

 

『う・・・うっせぇ!』

 

暁を見ていた時の事を思い出す。

 

『ユージン、クーデリア達が呼んでるよ?』

 

その声が本当に呼ぶのは俺の名前じゃない筈だ。

 

シノを、昭弘を、オルガを──────

 

追いかけていったあいつはどこへ行ったのだろう。

暁が、三日月にどんどん似てきた時に思った事がある。

 

なんでオルガを呼ばないんだ───?

 

なんであいつの隣にオルガや三日月がいないんだ、って───

 

あの時に残った俺達は普通に生きた。

彼奴等が賭けた命のチップは残った俺達の為になった。

けど、どうしても会いたかった。

・・・生まれ変わった今でも、三軍だった頃の夢を見る時がある。

 

その時に俺は夢の中で安心するだよ。

 

オルガも三日月もみんないる。ひでぇ夢を見た、って。でも───同時に嬉しいんだ。

 

メシはまずくて、寝床は悪くて殴られんのにバカみてぇだろ───?

 

だから俺は気を失う前に見えた“バルバトス”の姿を見て思うんだ。

 

なあオルガ、三日月。

お前等に言ってやりたいことは死ぬほどあるんだ。

だから───────

 

──────次は何でもかんでも自分等で何とかしようとしねぇで、もう少し俺達を頼ってくれよ──────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

士道は気を失っていた十香を学校から運び出した後、フラクシナスの医務室に十香を運んだ。

どうやら狂三の分身体と戦った痕跡があり、彼方此方にすり傷があった為、一度医務室に運びこんだのだ。

そして、十香を運びこんだ士道は一つの部屋の前で立ち止まった。その扉の先には琴里がいるらしい。

士道は真那が到着する前に聞き出して置きたい事があった。

士道は無言のまま、部屋へと入る。

部屋の奥へと歩いていくと、ガラスを隔てた場所に、琴里の姿があった。

椅子に腰掛け、優雅に紅茶なんぞ飲んでいる。

もうあの霊装は纏っておらず、いつもの私服姿である。

士道はそんな琴里に声をかけた。

 

「琴里」

 

名を呼ぶ。が、琴里は答えなかった。

 

「・・・こちらの音声はあちらには届いていない。───シン。ここからは君一人だ」

 

言って、令音が歩いていく。ガラスの壁の一角に、扉のようになった場所があった。

士道はその扉の前まで歩いていくと、令音が先ほどやっていた指紋、声紋認証をし、扉を開ける。

士道はそのまま部屋に入ると、琴里が視線を上げてくる。

 

「・・・ん?あら、士道じゃない。十香は大丈夫?」

 

「うん。かすり傷と、気失ってるだけだから問題ないよ」

 

「・・・そう」

 

琴里は紅茶が入ったカップを皿の上に置き、士道に言う。

 

「色々と聞きたいことはあるでしょうけど、まずはそこに座ったら?立ち話もアレだし」

 

「・・・・・」

 

琴里に言われ、士道は琴里の反対側の椅子にドカッと座り、テーブルを挟んでしばしの間、向かいあう。

そして士道は琴里に本題を口にした。

 

「ねえ。琴里は精霊で間違いない?」

 

すると琴里が、肩をすくめながら鼻を鳴らす。

 

「ふん、違うって言ったら信じてくれるのかしら?」

 

琴里の言葉に士道は言う。

 

「・・・琴里が違うって言うなら信じてもいいけど、“バルバトスは今の琴里は精霊“だって言ってる」

 

士道の言葉に琴里は小さく吐息をこぼして言った。

 

「・・・私は、人間よ。少なくとも、自分ではそのつもり。───でも、きっとそうはいかないでしょうね」

 

「あっそ」

 

琴里の言葉を聞いて、士道は短く答える。

しばしの沈黙の中、琴里は士道に言った。

 

「ねぇ・・・士道。私からも聞いていいかしら?」

 

「・・・なに?」

 

士道の返答に対し、琴里は唇を開く。

 

「狂三の時、何であんなに怒っていたのかしら?それを聞かしてもらってもいい?」

 

「・・・別に。十香に手を出すって言われたからやっただけだよ」

 

「・・・・そう」

 

琴里は軽く顔を伏せた後、ポツリポツリと言葉を零す。

 

「私は、五河家に生まれた人間。それは間違いないないわ。でも、今から五年前。──私は、精霊に“なったの“」

 

「・・・へぇ」

 

士道は軽く眉を上げて琴里を見る。

 

「まあ・・・正確には精霊の力を持った人間っていった方が適当かもしれないわね。士道の精霊の力を封印するのが分かったのも、大体それくらい」

 

琴里の言葉を聞いて、士道は口を開く。

 

「俺はそんな事覚えてないけど?」

 

士道の言葉に琴里も頷く。

 

「ええ、私もよ。“何故精霊になったのか“分からないのよ。自分の存在がひっくり返るような大事件を、この私がうっかり忘れる筈がないわ」

 

琴里はそう言いながらも、更に口を開く。

 

「五年前、あの火災が起こったあの場にいた二人がそろって記憶を失っている。・・・妙だと思わない?」

 

「・・・まあ」

 

士道の返事に琴里は言う。

 

「誰かが私達の記憶を消したと考えても、何故消したのか理由が分からないの」

 

私の力を封印したのも士道だしね。と答える琴里に士道は目を少し開ける。

 

「そんな事した覚えないんだけど?」

 

「火災の事すら忘れてる士道が覚えてる訳ないじゃない」

 

そう言われては仕方ない。士道はふと、今日は琴里がやけに自身に反発的でない事に違和感を持ち、士道は琴里に言った。

 

「ねえ。今日は昨日と比べてヤケに大人しいけど何かあった?」

 

「・・・・・」

 

押し黙る琴里に士道は黙ったまま返答を待つ。

そして琴里はポツポツと言葉を溢す。

 

「士道から精霊の力を返してもらってから時折、無意識の内に何かを壊したくて、誰かを殺したくて堪らなくなって───身体が言うことを聞かなくなるの。今はどうにか薬で抑えているわ」

 

「・・・・・・」

 

士道は黙ったまま、視線を琴里に向ける。

そんな士道に琴里はだからと続けた。

 

「・・・怖いのよ。自分が何をしてしまうのか分からないの。自分で、自分が、抑えられない。もしかしたら、記憶に残っていないだけで、五年前にも何かをしてしまったのかもしれないって。──それこそ、誰かを殺してしまっている可能性だってある。もしそうだったら、私は───」

 

弱音を吐く琴里に士道は何も言わずに立ち上がる。

そして身を翻し、琴里に言った。

 

「それは俺にはどうしようも出来ないし、何もしてやれない。だけど、俺に言えるのは“逃げるな“。それくらいしか俺は言えないよ。俺には逃げないで進み続けるしか道はないから」

 

士道はそう言って部屋を出ていった。




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第ニ話

投稿!!

この先の展開を確認してたら三日月VS折紙になるけど、下手すると殺しかねないよ?三日月さん!ヒロイン殺しは止めてよね!面倒くさくなるから!?



(設定や書くのを自分でやってる作者 談)


俺が前でお前が後ろ。いつもどおりにやれば上手くいく。一緒に帰るんだろ?フウカの元に。

アストン・アルトランド






「さて、今後について言いたい所なんだけど・・・」

 

五河家のリビングで琴里が士道と真那に視線を向けながら言う。

 

「なんで貴方が居るのかしら?呼んだ覚えはないのだけれど?」

 

「私も聞きてー事があると言いませんでした?琴里さん」

 

真那の言葉に琴里は頭を抑えながら言った。

 

「あー・・・そういえば言っていたわね。まぁいいわ。先にそっちから終わらせましょう。で?貴方が聞きたいことって何かしら?」

 

琴里の言葉に真那は口を開く。

 

「そうですね・・・琴里さんが精霊だという事も、もちろん驚きだったんですが・・・それより聞きたいのは兄様の事です」

 

「俺?」

 

士道は真那の突然の指名に顔を向ける。

そんな士道に真那は言った。

 

「ええ。何故、兄様は自分と合っていないラタトスクという組織にいるのだろうと思いまして。何かしらの理由があると思いますが、それをお聞きさせてもよろしいですか」

 

「・・・・あー」

 

士道は真那の質問に頬を掻く。

確かに琴里には言った気はするが、真那には言っていなかった気がする。

士道はじっと目を此方へ向けてくる真那に口を開いた。

 

「・・・十香達の為だよ」

 

「十香さん達・・・精霊の為だと、兄様は言うのでやがりますか?」

 

真那の言葉に士道は頷く。

 

「俺は俺のやる事はあるけど、十香達を助けた後の事を考えるとASTみたいな敵対してるとこに預けるより、ここの方が良かったってだけ。俺は居心地は良くはないけど、十香達が楽しそうならそれでいいしね」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

真那は士道の言葉に考え込むように黙り込み、琴里に至っては思い当たる節があり過ぎて目を逸らす。

そんな事に数十秒時間を取った後、真那が嘆息の息を吐く。

 

「・・・まぁ、兄様がそれで構わないと言うのであれば私は何もいいません。・・・ですが!!」

 

真那は琴里に視線を向け、強い口調で琴里に言った。

 

「だからと言って、兄様を危険に晒すのはどうかと思われますが!あんな力を持っているとはいえ、兄様は・・・人間なのでしょうか?」

 

「疑問系で返すんじゃないわよ!?」

 

真那の突然の疑問に琴里が叫ぶ。

ASTや精霊と殺り合ってる時点で一般人と言っていいのか疑問だが、だからと言って本人の前で言う事ではない。

突然のボケとツッコミに士道は何も言わず、デーツを咀嚼しているだけだった。

 

「・・・まあいいわ。で、今後の方針なんだけど・・・」

 

「ん」

 

「はい」

 

士道と真那は同時に返事をする。

琴里としては真那はまだASTの人間なのであまり言いたくはないのだが、仕方ないと割り切って言う。

 

「今、士道の中には私の精霊としての力はないわ。十香の時とは違って士道からほぼ百パーセントの力を引き出しちゃったからね。こうなるともう、自然にはもとに戻らないわ」

 

「ふーん。その言い方だと琴里は知ってるみたいだけど、どうするの?」

 

「確かに。それは気になりますね」

 

士道と真那のその様がよほど可笑しかったのか、琴里は苦笑しながら口を開いた。

 

「まぁ、再封印するしかないでしょうね」

 

「再封印・・・・?ってまさか・・・」

 

真那が何か察した顔をする。

士道に関しては「そう言うことか」と呟いて、琴里に言った。

 

「つまり、十香達と同じようにやれって事?」

 

「そう言う事」

 

「────────」

 

士道と琴里の言葉に真那が固まった。

そんな真那を放って置いて、士道がふと思い出したように琴里に言う。

 

「ああ、そうだ琴里」

 

「ん、何かしら?士道」

 

琴里が士道に顔を向ける。そんな琴里に士道は言った。

 

「昨日はごめん。十香に言われてだけど、俺もちょっと言い過ぎた」

 

「────────────」

 

琴里は士道の突然の謝罪に言葉が出ずに、真那と同様に固まった。だがすぐに首を振ると、琴里も言う。

 

「・・・こっちも少し無神経過ぎたわ。ごめんなさい」

 

「ん。んじゃ俺、何時もの日課やってくるから」

 

士道はそう言って、リビングから出ていった。

そんな中、琴里は小さく隣で未だに固まっている真那にも聞こえない声で呟く。

 

「お兄ちゃんの馬鹿。突然言われるこっちの身にもなりなさいよ・・・」

 

琴里のその呟きは誰の耳にも届く事なく小さく響いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

視界に広がるのは、地獄とも見まごう光景だった。

見慣れた住宅街が、真っ赤な炎に沈んでいる。建ち並んだ家々も、通い慣れた通学路の街路樹も、公園の木々も、可燃物と思しきものには一切の例外なく炎が舌を揺らめかせ、次々とと炭に灰に変えていく。

辺りからは勢い良く燃え盛る炎の音に交じって、逃げ惑う人々の悲鳴や足音が響き、時折、何かが爆発するような凄まじい音が聞こえてくる。

 

(なに・・・・これ・・・)

 

そんな、あまりにも現実離れした光景を目の当たりにし、折紙は呆然と声を発する。

意味のない行動。その一言を発する間に足を動かした方が、遥かに賢明だ。だが、それを愚かしいと断ずる者はいないだろう。十と二つ歳を重ねただけの子供が速やかに理解するには、余程の修羅場をくぐり抜けた者だけだろう。

と────そこで、折紙はハッと目を見開いた。

 

(お父さん、お母さん・・・!)

 

そう。家には、父と母が残っていた筈なのである。

それを思い出した瞬間、折紙は手に提げていた鞄をその場に放り、駆け出していた。

子供が一人駆けつけたところで何ができるわけでもないし、もしかしたら既に避難を終えているかもしれない。だが、混乱する折紙にそんな判断が出来るはずもなかった。

そして数分後、なんとか自宅へと辿り着いた折紙は、顔を絶望に染める。折紙の家も他の家屋と同じように真っ赤な炎に包まれ、黒い影しか見えなくなっていたからだ。

 

(そん、な・・・)

 

予想できていなかったわけではない。だがそれでも、実際目にするまでは一縷とはいえ希望があったのだ。だが、これでは────

 

(─────っ!?)

 

と、折紙は肩を揺らす。自宅の扉が、内側から蹴破られたのである。

そしてその中から、額に汗を浮かばせた父が、母の肩を抱くようにしながら歩みでてくる。

 

(お父さん!お母さん!)

 

折紙は精一杯喉を絞り、大きな声で二人を呼ぶ。

 

(っ、戻っていたの、折紙!?)

 

(怪我はないか?ここは危ない。すぐに逃げるぞ!)

 

そう言いながら、父が折紙に手を伸ばして歩みを進めてくる。

折紙は二人が生きていてくれた事が嬉しくて、目に涙を浮かべながら何度もうなずいた。父の手を取ろうと手を伸ばし───

 

(─────え?)

 

一瞬、何が起こったのかわからず、折紙はそんな声を発していた。

折紙が手を伸ばした瞬間、空から目の前に光のようなものが降り注いだのである。

そしてすぐに、凄まじい衝撃波が発され、折紙の身体は軽々と吹き飛ばされてしまった。

 

(きゃ・・・・・・!)

 

数メートル離れたコンクリート塀に打ち付けられ、数度咳き込む。

痛くて痛くて泣いてしまいそうになる。けれど、今はそんなことよりも両親の安否が気にかかった。なんとかそれに耐え、視線をもといた場所へと向ける。

─────だが、そこにはもう、誰もいなかった。折紙の両親がいた場所は地面ごと抉られ、まるで小さなクレーターのようになっていたのである。

這うようにしながら、そこへと進んでいく。

 

(あ、あ・・・あ・・・ああああああ───)

 

抉り取られた地面に父と母であったものを見つけ、折紙は歯をガチガチと鳴らした。

強い目眩。世界が歪むかのような感覚。真っ赤だった視界が、灰色と黒で塗りつぶされるような絶望感が折紙の意識を侵食していく。

何故。どうして。詮無い問いが頭を巡り、解が得られないままぐるぐると渦巻く。

 

(─────っ)

 

折紙は顔を上げる。今し方折紙の父母を焼いた光。その根源を確かめるように。

そして・・・またも、身体が動かなくなった。

 

(てん───し・・・)

 

呆然と、呟く。そこには────天使がいた。

無論、そんなものがこの世に存在するはずがないのは分かっている。だけれど今折紙の視線の先にいる存在を表すのに、他に適当な言葉が思い浮かばないのもまた、事実だった。

痛みに視界が霞み、細部まで見取ることは叶わなかったが、空に立った“それ”が人の形をしている事が分かった。

燃え盛る街を睥睨するように宙に浮いた、華奢なシルエット。────恐らく、年若い少女。

その影が手を頭に触れさせ、身体を微細に震わせる。

それは嘆いているようでもあり───嗤っているようにも見えた。

 

(お、まえ、が・・・)

 

────お父さんと、お母さんを。

言葉の後半は、声になっていなかった。ただ血が出んばかりに拳を握りしめ、歯を噛み締めて、火の海を舞う天使の姿を睨み付け、呪いと怨嗟に満ちた叫びを上げる。

 

(許、さない・・・!殺す・・・殺してやる・・・ッ!私が───必ず・・・っ!)

 

 

そこで、鳶一折紙は意識を取り戻し、カッと目を見開いた。

 

「・・・・っ、・・・・っ」

 

今の今まで眠っていたというのに、呼吸が荒い。

折紙は身体を起こすと、動悸を抑えるように大きく深呼吸をする。呼吸を整えた折紙は、ゆっくりと首を回し、周囲の様子を確かめる。

白い天井に、白い壁。視界の端に見えるのは、点滴を吊り下げておくスタンドだろう。

すぐに、自分が何度も世話になっている自衛隊病院の部屋と気付く。しかも、ご丁寧に個室である。

 

「・・・・・」

 

昨日の事を思い出す。

教室で皆が倒れた後、《ナイトメア》が現れ、交戦したのを覚えている。

そして倒した後は此方も疲弊によって気を失ってしまったのだ。

そして、今の夢を見たのは恐らくだが、この病院に運ばれる前に耳にした五年前、南甲町に大火を呼んだ炎の精霊。

────折紙の目の前で、両親を殺した精霊。

 

「見つけた。ついに・・・」

 

五年間、探して、探して、探し続けた仇敵。命を賭してでも殺すと決めた復讐の標的。 

一瞬見えた映像にその姿を映していたその顔を今もはっきりと覚えている。

だが・・・なぜか、不思議な違和感があった。炎の精霊───〈イフリート〉の顔を、五年前のあのときは別に、見た事がある気がしたのである。

一体どこだっただろうか。思案を巡らせるも、出てこない。

折紙は数分間考え込んだあと、ベッドに身体を預けて目を閉じる。

今は身体を休ませるのが先だ。万全な状態であの炎の精霊を殺す事を考えよう。

折紙はそう思いながら目を瞑った。




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ちなみにもうちょい先だけどもユ○○ンが登場しますよ?



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第三話

投稿!!

バウンドドック使って14連敗した鉄血です。
ヘビアとサバとバルバトスじゃねえと、全く勝てねぇ・・・

オルガの道は俺が切り開くよ

三日月・オーガス


「・・・これ、俺行く必要ある?」

 

「まぁ、一応お見舞いはしておいて損はないかと。鳶一さんも、一昨日のあの日に〈ナイトメア〉に襲われて入院してますし」

 

「・・・・・」

 

真那のその言葉に嘆息を吐きながら、目の前の大きな建物を見上げる。

門には、『自衛隊天宮病院』と記されている。どうやらここで間違いなくなさそうだ。

 

「では、私は此処で。“上に“に呼ばれてますので、昼頃にまた此処で合流しましょう」

 

「・・・分かった」

 

士道は若干面倒くさそうな表情をつくりながら真那に言う。

昨日、士道は真那にも来て大丈夫なのかは聞いたのだ。

 

俺が行っても大丈夫なのかと。

 

如何せん、士道とASTとでは一応敵対している関係なのだ。

そんな自分が敵対地の敷地に行っても大丈夫なのかと。

そしたら真那は言ったのだ。

 

別に顔を見られてないから大丈夫だと思いますよ?

 

そんな理由に士道は半ば行きたくないものの、真那と一緒に行く事になったのだ。

士道はその事を思い出しながら、門をくぐり、受付窓口まで歩いていく。

 

「あの・・・」

 

「はい、初診ですか?一般の方ですと紹介状が必要になるのですが・・・・・」

 

士道が声をかけると、受付にいた女性が声を上げてきた。

 

「見舞い。鳶一折紙って奴いる?」

 

「鳶一折紙さんですね。ご家族の方ですか?」

 

「違う。知り合い」

 

「少々お待ち下さい」

 

事務員の女性が手元のパソコンを慣れた手つきで操作し始める。

そしてそれから数十秒後、士道に顔を向けてくる。

 

「鳶一折紙さんの病室は西棟三階の三○五号室になります」

 

「そ。ありがと」

 

受付の女性に士道は短く返事を返し、その病室に行こうとしたその時だった。

 

「───士道?」

 

士道の背に、聞き覚えのある声がかけられる。士道がそちらに振り向くと、そこには病衣姿の折紙が、点滴のスタンドを握りながら立っていた。

 

「あ」

 

士道はそんな折紙を見て、そう呟く。

肩口をくすぐるくらいの髪に、人形のような顔が特徴的な少女である。額には包帯が巻かれ、その華奢な手足にもところどころ湿布が貼り付けられていた。

折紙は士道の顔を見るなり、ほうと小さな息を吐いた。表情は全く変わらないものの、どことなく放念しているような様子が見て取れる。

 

「ちょうど良いや。アンタの見舞いに来るよう言われてたんだけど、無事そうなら大丈夫か」

 

士道はそう言って、帰ろうとした時。

 

「待って」

 

「なに?」

 

折紙の静止の声に士道は足を止め、顔を向けると折紙は唇を開いた。

 

「夜刀神十香は?」

 

「──────」

 

折紙の言葉に士道は若干驚く。

十香と折紙は、顔を合わせるたびに喧嘩をする犬猿の仲と言うのにも関わらず、まさか折紙が十香を心配するなど思いもしなかった。

そんな折紙に士道は言う。

 

「十香も無事だよ」

 

「ちっ」

 

「──────」

 

士道は折紙の舌打ちを聞いて嘆息する。

やっぱりこうなるかと、士道は思いながら折紙を見る目を細める。

そして士道は折紙に言った。

 

「他に用が無いなら帰るよ」

 

「───最後に一つ、いい?」

 

士道はそう言って帰ろうとすると、帰ろうとする士道の背に声をかけてくる。

 

「・・・なに?」

 

妙に嫌な予感が広がるのを感じながら、問い返す。

そんな士道に折紙は予想外の言葉を吐いてきた。

 

「昨日。時崎狂三と貴方が交戦したあとの事を教えて欲しい───。空からもう一体精霊が現れたはず。和装のような霊装を纏った、炎を操る精霊が」

 

「教えてどうするの?」

 

一応、琴里からはある程度聞いてはいるが、なぜコイツがその事を知っている?

士道は警戒しながらも、折紙にそう返事を返す。

 

「この前話したことを覚えてる?」

 

「この前・・・?」

 

「私の両親が精霊に殺されたという話」

 

「ああ、あれか」

 

士道は折紙が精霊を憎む理由を思い出し、そう返す。

それが確か、五年前の事件だった筈だ。

 

「五年前。天宮市南甲町の住宅街に大火を呼び、父と母を私の前で焼いた精霊。───それが、あの炎を操る精霊」

 

「・・・へぇ」

 

士道は折紙の言葉を聞き、すぐさま答えを頭の中で叩き出す。

つまり、琴里がコイツの親を殺したのだと。コイツは言いたいのだ。

 

「───ずっと、ずっと探し続けてきた」

 

士道の機嫌が悪い様子に気づかぬ様子で、折紙は続ける。

 

「やっと見つけた。ようやく見つけた。殺す。殺す。絶対に殺す。私が、この手で」

 

いつもの彼女の様子とは考えられないくらい雄弁に、折紙が呪いの言葉を並べ立てる。 

途方も無い怨嗟が籠もっているその声は、常人ならば心臓を締め付けられるだろう。だが──────

 

「へぇ・・・じゃあ俺の邪魔する気?」

 

士道にとってはさほど気にすることでもない。士道の言葉に折紙は何も言わなかった。

だが、折紙の意志が凄まじいのが士道にも分かる。いつかどこかでぶつかるだろう。

無言が続く中、廊下の方からアナウンスが響く。

 

『───ご面会中の皆様にお知らせいたします。本日の面会時間は終了しました。院内におられる方は、速やかにお帰り頂ますようお願いいたします。繰り返します───』

 

そんなアナウンスが響く中、士道は身を翻し出入り口へと向かう。

そして、折紙に言った。

 

「別にアンタが俺の邪魔をしないなら俺は何もしないけど、もし、邪魔をするようなら全力で邪魔するから」

 

士道は折紙にそう言って部屋を出ていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・で?私を呼び出して何か用ですか?私もそこまで暇じゃねーんですが」

 

真那は燎子にそう言うと、燎子は言った。

 

「一応、DEMのスポンサーが顔を出してるのよ。折紙は仕方ないとはいえ、全員集合になっているから我慢しなさい」

 

「スポンサー?そんなのありましたっけ?」

 

真那は首を傾げながらそう言うと、燎子は答える。

 

「私も始めは知らなかったのよ。なんでも“モンターク商会“って言う組織で前々からあったみたいなんだけどね」

 

「モンターク商会?」

 

噂で聞いたことがある。確か、兵器から家庭用品まで様々な商品を提供している組織だった筈。そんな組織が一体どのような理由でうちに来たのだろうか?

真那はそう思いながら部屋へと向かう。

 

「失礼します」

 

二人はそう言って部屋に入ると、部屋には既に仮面を付けた男がいた。

 

(仮面?)

 

真那はその男を見て、そう感想を漏らす。

表情を変えずに観察する真那に仮面の男は口に笑みを浮かべて彼女等に言った。

 

「始めましてと言っておこうか。私はモンターク。モンターク商会を運営しているトップとでも言っておこう」

 

燎子はそんなモンタークに口を開く。

 

「これはどうも。モンタークさん。それで?視察と言ってはいましたが、一体どういったご要件で?」

 

燎子の言葉にモンタークは口を開く。

 

「ふっ。君たちの活躍は聞いている。なに、君たちに少し聞きたい事があってね」

 

「聞きたい事?」

 

燎子はモンタークの言葉に首を傾げる。

そんな燎子にモンタークは言った。

 

「君たちは、ガンダムと呼ばれる悪魔と戦ってどう思ったのか感想を聞きたい」

 

モンタークの何を考えてるか分からない不気味な笑みに真那は顔を顰めるのだった。




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第四話

投稿!!

マキオンでやっと中将にいきましたよ・・・ヘビアばっか使ってるからそっちに慣れすぎて他の機体が使えなくなるとい事態になってきました・・・

fgoで水着沖田の煉獄の声聞いて思った事。

ハム仮面じゃあねえか・・・


病院から出た士道は真那が帰ってくるまでの間、近くのベンチで暇を潰していた。

真那が来るまでの間、やる事が特に無い。だからと言って今後について考えても、自身の考えなどたかが知れている。

 

「寝るか」

 

士道はそう呟いた。

やる事がない以上、無理に身体を動かす必要などない。最近は休む暇など殆どなかったのだ。少し寝るくらい大丈夫だろう。

そうして士道は瞼を閉じる。周りの声が聞こえる中、唐突に電話がなった。

 

「ん?」

 

士道はそれに気付き、ポケットから携帯電話を取り出して確認する。着信画面には令音の名前が映し出されていた。

士道は通話ボタンを押す。

 

「眠そうな人、どうしたの?」

 

『・・・もしもし、シンかい』

 

知り合ってから随分経つが、令音はまだ士道の名前を間違えているのである。もっとも士道も人の事は言えないが。

 

『・・・ああ。折紙のお見舞いは終わったかな?』

 

「終わってるよ」

 

『ふむ、そうか。シン、今は何をしているんだい?そこまで急用ではないのだが一応聞いて置きたい』

 

「?今は病院出て真那を待っているとこ。さっきまで寝ようとしてたから、特にやることはないよ」

 

士道がそう言った後、令音が黙り込む。そして少しの沈黙の後に令音が口を開いた。

 

『なるほど。なら、真那が帰ってきてから〈フラクシナス〉に戻って来られるかな?琴里の事で作戦会議をして置きたい』

 

「作戦会議?」

 

令音の言葉に士道は疑問を浮かべる。

自分にはあまり馴染みのない事だった為、突然の作戦会議に少し疑問が浮かんだのだ。

そんな士道に令音が『・・・ああ』と返してきた。

 

『・・・シン、君は琴里をデレさせろと本人に言われたらしいが・・・今回のケースの場合、十香や四糸乃のときにはなかった大きなアドバンテージがある』

 

「アドバンテージ?」

 

『・・・ああ。至極単純な理由さ。突然現れる精霊と違い、今度の攻略対象は君や我々と何年もの間一緒に過ごしてきたんだ。その趣味嗜好、好きなもの、行きたがっている場所、欲しがっているもの・・・まあ、何でもだ。我々はそれらの情報を、他の精霊とはくらべものにならないくらいレベルで保有しているんだ。しかも、一日強とはいえ、プランを練る時間も用意されている。なら、これを有効活用しない手はないだろう』

 

そう言われてみればそれもそうかと、士道は納得する。 

 

『・・・そこで、琴里の事をよく知るクルーたちを集めて、二日後のデートプランについて話し合おうと言う事になったんだが、是非シンにも参加してもらいたいと思ってね』

 

「そこまで役に立てるとは思わないと思うけど?」

 

士道と言葉に令音は『それでもだ』と言ってくる。

 

「わかった。なら真那が戻ってきたら戻るね」

 

『・・・助かるよ。───では〈フラクシナス〉で拾おう。真那が戻ってきたら一旦自宅に戻って貰えるかな?』

 

「了解」

 

士道は短く答えて電話をきる。

ポケットに電話を押し込むと、そのまま士道は深くベンチに座り込む。と─── 

 

「すみません兄様。少々遅れました」

 

真那がそう言いながら、声をかけてきた。

 

「遅かったね」

 

士道の言葉に真那が嘆息しながら口を開く。

 

「ええ。少々面倒な方がいらっしゃいましてね。その方を相手していたので遅れました」

 

「そっか。お疲れ」

 

やたらげんなりしている真那に、士道はそれ以上声をかける事なくベンチから立ち上がる。

 

「んじゃ、もう昼だし飯食べに行く?」

 

「おっと、もうそんな時間でしたか。なら何処へ行きます?」

 

士道の言葉でもうお昼かと気づく真那に士道は言う。

 

「まぁ、歩きながら考えよう。あ、それと、真那」

 

「・・・?なんですか兄様?」

 

士道の言葉に首を傾げる真那に士道が言った。

 

「家に帰ったら眠そうな人が作戦会議するから真那もどう?」

 

「眠そうな人?・・・ああ、令音さんですか。作戦会議とは一体何をするんです?」

 

お茶の蓋をパキッと開けながらそう問う真那に士道がストレートに答える。

 

「デートプランだってさ」

 

「ぶっ!?」

 

士道の爆弾発言に真那は口に含んでいたお茶を吹き出す。

 

「大丈夫?」

 

ケホッケホッと咳き込む真那に士道は首を向けて言う。

 

「大丈夫であれば吹きませんよ!?兄様は気にしてないんです!?」

 

「気にした所でどの道やらないといけないから気にするだけ無駄でしょ」

 

「そりゃそうですけど・・・」

 

士道の言葉に真那は何も言えない。

そんな真那に士道は言った。

 

「まぁ、そんな事より昼飯食べに行こう。腹減った」

 

「何か納得いかねーです」

 

商店街の方に歩く士道について行くように真那は士道の後を追った。




もしも、鉄華団メンバーが他にもいたら

雨が降る中で士道達は窓を見て口々に言葉を漏らす。

「昼まですんげぇ晴れてたのに、いきなり雨降ってきたな・・・」

「まじかよ〜!傘持ってきてねえーわ!」

「俺も」

ユージンとシノがそう言う中、ビスケット達が口々に言う。

「ばあちゃんが雨が降るっていってたから俺は持ってきたよ」

「俺も昌弘が今日は絶対持っていけって」

「俺はニュースでも見たし、ツバメが低く飛んでたから知ってた」

士道達もそう言うが、そんな中オルガは苦い顔で言う。

「俺は天気予報で知ってけど、忘れちまった」

「んじゃ、俺の使えば?」

苦い顔を作るオルガに士道がそう言う。

「いや、それだとお前が濡れるだろ・・・」

「へーき」

オルガの言葉に士道は平気と言って鞄から未開封のゴミ袋を取り出す。

「これでカッパ作ればいいし」

「ワイルド過ぎるだろミカ・・・」

士道の言葉にオルガはそう呟いた。
その後、ゴミ袋を被ろうとした士道を見た十香達が自分達の傘に士道を入れたのを見て、シノとユージンが嫉妬の顔を作ったのだとか。


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第五話

投稿!!

三日月から精霊の力を取り戻すとどうなるのか?今日はそれを書いてみました。では、どうぞ!!

マクギリスぅぅぅぅぅぅぅ!!

捨て駒にされたガリガリ


『ねぇ、次はどうすればいい?オルガ』

 

小さな少年の言葉が、琴里の耳に木霊する。

 

「・・・何よ・・・これ・・・」

 

琴里は恐らく夢であろう目の前の光景を見て、そう呟く。

薄汚れたコンクリートでできた路地裏に夕日が差し込んでいる。

その夕日の向かい側には、二人の少年が向かい合うようにいた。

片方の白髪の少年は左腕から血を流しながらも、もう一人の黒髪の少年を険しい顔で見つめている。

そしてもう一人の少年は、左手に銃を持ったまま、血で汚れた顔を白髪の少年に向けてきた。

そして彼等のその先には先程まで生きていたであろう、人間が地面に血溜まりを作りながら死んでいた。

そんな二人の少年をまるで映画を見る観客のように見ることしか出来ない琴里は、ただ、その場で見ていることしか出来なかった。

呆然と見ることしか出来ない琴里をよそに二人の少年は口を開いた。

 

『行くんだよ』

 

『何処に?』

 

『此処じゃないどっか。俺達の本当の居場所に』

 

本当の居場所。それは、士道がよく口にしていた言葉であった。

なぜ、その言葉をこの少年が?と疑問が浮かぶ。

そんな琴里に対し、二人の会話は続いていく。

 

『本当の?』

 

『ん?』

 

『それってどんなとこ?』

 

『えっ・・・んーわかんねぇけど、すげぇ所だよ。飯が一杯あってよ、寝床もちゃんとあってよ、後は・・・えっと後は・・・』

 

白髪の少年はそう言いながら、黒髪の少年に血で濡れた自身の手を伸ばす。

 

『ん?』

 

『行ってみなきゃわっかんねぇ、見てみなきゃわかんねぇよ!』

 

『見てみなきりゃ?』

 

『そうだよ、どうせこっから行くんだからよ』

 

彼の言葉に、黒髪の少年は身体を起こしながらその手を取る。

その約束は琴里からしてみれば、悪魔と契約をしているような光景にも見える。だが、次の言葉に琴里は驚愕する事になった。

 

『そっか。“オルガ“についていたら見たこと無い物いっぱい見れるね』

 

『ああ、だから行くぞ!』

 

オルガ。それは士道が言っていた大切な人の名前。

もしかしてこの黒髪の少年は────

 

「お兄ちゃん・・・なの・・・?」

 

姿も声も、似ても似つかない小さな少年。

だが、その絹を隠さない言葉づかいや仕草は士道と類似している部分が多い。

そんな呆然とする琴里をよそに隣から新たな風景が映し出される。

 

「──────え」

 

『今、ここにアリアンロッド艦隊指令、ラスタル・エリオンの威光の元に悪魔は討ち取られた!』

 

『『『『オオオオオオオオオオオオオオ!!』』』』

 

赤茶色の荒れた大地に佇む巨大な機械の体躯。

そして掲げられる“悪魔の首”。

 

「・・・うそ・・・嘘よ・・・そんな訳・・・」

 

その悪魔の首は琴里がよく知っている“バルバトスの首”。

 

「──────ッ!!」

 

琴里はその光景に視線を逸らす。機械であるのにも関わらず、あまりにも生々しいその光景に一秒でも目を逸したかった。そんな時に、バルバトスルプスレクスの胸元から見える一人の影。

 

「─────────」

 

琴里はそれを見て固まった。

何故、と言われれば何故だろうとしか答える事が出来ない。だが、何故かその光景から目を逸らす事が出来なかった。

まるで、現実から逃げるなとでも言うように。

コックピットから見える人影。

それは、あの黒髪の少年だった。

全身に金属の破片が突き刺さり、身体の彼方此方からはとめどなく血が流れている。

だが、その顔はどこか満足そうで──────

 

「─────────ッ!!」

 

琴里はそこで目が覚めた。

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

 

息遣いが荒い。身体から冷や汗が止まらない。さっきの夢は一体なんだ?と言う疑問が頭から離れない。

時計を見ると、夜の二時を過ぎている。琴里は無言のまま、ベッドから身体を起こすと、そのまま一階のリビングへと降りていく。異様に汗をかいたせいか喉が乾く。

そのまま階段を降りていくと、リビングに明かりがついているのに琴里は気づいた。

 

「誰よ・・・電気をつけっぱなしじゃない」

 

琴里はそう呟いて、リビングに入ると───

 

「あれ?琴里じゃん。どうしたの?」

 

士道が頭だけを此方へ向けて、琴里にそう言った。

 

「──────ッ!?」

 

琴里は士道に過剰なリアクションをする。

 

「?どうしたの」

 

士道がそう聞いてくる。

 

「・・・なんでもないわ」

 

琴里はそう言って、リビングを通り過ぎて冷蔵庫から飲み物を取り出すと、そのまま一気に飲み干した。

 

「・・・そうよ。あれは夢。・・・夢なんだから」

 

野菜に水を上げている士道を視界に入れながら、誰にも聞こえないように琴里はそう呟いた。




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第六話

投稿!!

阿頼耶識でバルバトスに繋がっている時は動くんだ。だからまだ働ける。

三日月・オーガス


翌、六月二十一日は水曜日だった。

祝祭日でも振り替え休日でもないのだが・・・士道たちの通う学校は今日、臨時休校となっていた。

しかしそれも無理からぬことである。何しろ学校にいる生徒・職員の全員が倒れ、一時意識不明状態に陥ったのだ。

幸い症状が重い生徒はいなかったが、高校はガス管等の徹底検査をするらしく、今週いっぱいの臨時休校が決定されたらしい。

 

「・・・まぁ、ちょうどいいか」

 

『・・・は、そろそろ十時だ。こちらからも先ほど四糸乃をマンションの屋上に転送した。もうすぐそちらに着くだろう』

 

士道が家の扉に鍵をかけながら息を吐くと、不意にそんな眠たげな令音の声が士道の右耳に響いてきた。

 

「あっそ」

 

士道は軽く返事を返すと、令音に今日の事を聞いた。

 

「で、今から駅前のビルに行けばいいんだよね?」

 

『・・・ああ。そこで、二人に水着を見繕ってやってもらいたい』

 

「分かってる」

 

士道は適当に返事をし、数段の階段を下っていく。

そして、家前で立っている琴里に士道は言った。

 

「悪いね。今日、十香達の買い物に付きあってもらって」

 

「別に構わないわ。どうせ、私もそろそろ新しい水着見繕わないといけなかったし。で?士道はどうするのよ?」

 

「俺?」

 

琴里の視線に士道は首を傾げる。

 

「士道も買わないのかって聞いてるの。貴方の場合、背中の阿頼耶識があるから上着がないといけないけど、どのみち行かないといけないから必要じゃない」

 

「・・・あー」

 

別に入らなかったらいいかと考えていた士道だが、そう言われると必要になってくるかと思い始める。

 

「んじゃ、適当に買うか」

 

士道はそう答えて、マンションの前まで歩いていく。

と───。

 

「シドー!」

 

『やっはー、おっまたせー』

 

歩いて数十歩、五河家の隣にそびえたマンションから、そんな声が響いてきた。

そちらに目をやると、淡い色のキャミソールとスカートを纏った十香と、サスペンダースカート姿の四糸乃が立っていることがわかる。

 

「あれ?結構早いね十香、四糸乃」

 

十香と四糸乃の姿を見て、士道はそう言う。

 

「今日はシドー達と買い物だからな!準備をして待っていたのだ!」

 

「・・・はい。士道さん達との買い物・・・楽しみです」

 

二人の言葉に琴里は唇を歪めて笑う。

 

「良かったじゃない。二人は今日、楽しみにしてたみたいよ?」

 

「琴里はどうなの?」

 

「私?そりゃ私も楽しみにしてるわよ。久しぶりに買い物行くわけだし」

 

士道の言葉に琴里はそう言って足を進める。

 

「ほら。行くわよ士道。他にも色々と見て回りたいんだから、さっさとしなさい」

 

「・・・・分かった」

 

士道はそう言って、十香達と一緒に駅近くのデパートへ向かった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「まぁ、こうなるか」

 

士道はデパート内に設置してあるベンチへ腰を下ろす。

視線の先には十香達が楽しそうに店の商品を手に取りながら喋っていた。

寄り道である。

気になる店があれば彼方此方へ見に行く三人に、士道は疲れて休憩をしているのだ。

しばらくあのまま、放って置いて問題ないだろう。

ベンチに座る士道は琴里達から視線を逸し、此方へと向かってくる人物に視線だけ向けて、口を開いた。

 

「・・・で?今日は何の用。チョコの人」

 

士道の言葉に仮面を付けていない“マクギリス”は言った。

 

「やはりバレてしまうか。三日月・オーガス。だが、今日は時間が少ししか空いていないのでね。少し君に関係する話をしに来たのだよ」

 

「・・・俺に関係する話?」

 

マクギリスの言葉に士道は首を傾げる。

そんな士道を見て、マクギリスはいつもの顔から一変、真面目な顔つきになり士道に言った。

 

「ああ。“この世界の阿頼耶識システムと御伽話の厄祭戦について“の事だ。後者はともかく前者は君に深く関わる話だ」

 

「──────」

 

士道の表情が少しだけ変わる。

チョコの人が真面目な顔をした時は大抵、何かしらの情報を握っている可能性がある。

なら、聞く必要はあるだろう。

 

「・・・分かった。なら、隣に座れば。長話になりそうだし」

 

「君ならそう答えると思ったよ。三日月・オーガス」

 

マクギリスはそう言ってベンチに腰を下ろし、そして───

問答が始まった。




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第七話

投稿!!

マッキー、真相に着々と近づいています。

「ルプスレクス・・・狼の王。狼とは群れる生き物だ。私には出来ない生き方だな」

マッキー


「まずはこれに目を通してくれ」

 

ベンチに座ったマクギリスは士道にタブレットを手渡す。

 

「崇宮真士・・・誰コイツ」

 

士道は写真の無いプロフィールを見てそう呟く。

崇宮と聞くと、真那と同じ名前だと言うのは分かるが、士道にとっては関係の無い話だ。

興味なさげに端末を動かす士道に、マクギリスは言った。

 

「DEM社とラタトスク機関に潜伏させている部下にそのプロフィールが手に入ってね。その男は“始めての精霊接触者であり、君を含めて二人目の阿頼耶識接続者“だ」

 

「ふーん」

 

士道は興味が無いと言わんばかりの返事を返す。

なぜなら、そんな奴などいくらでもいる世界に士道はいたから。

あまり関心を持たない士道にマクギリスは言葉を続ける。

 

「そして、これを見たまえ」

 

「・・・・?」

 

マクギリスは端末を操作しながら、士道の持つ端末に送る。そして画面に映し出されたものを見て、士道は首を傾げた。

 

「なにこれ」

 

「“ガンダムフレームの設計図“だ。本来、“この時代には無いはずの物“でもある」

 

マクギリスの言葉に流石の士道も反応を示す。

 

「でもそれって、俺達のとこでも無いって聞いてたけど、何で此処にあるの」

 

士道の言葉にマクギリスは手を組みながら答えた。

 

「それは今、調べている最中だ。なぜ、我々の時代の物がこの時代に存在するのか・・・そして、流出版とは言え、阿頼耶識システムが君達二人につけられたのかはまだ予想しか立てられていない」

 

「予想は立ててあるんだ」

 

「ああ」

 

士道の言葉にマクギリスは首を縦に振る。

だが、どうも引っ掛かる点がある様でまだ予測でしかないらしい。

 

「三日月・オーガス。君は長いあいだバルバトスを使っているようだが、バルバトスの調子はどうかな。何か変わった事でもあるようなら言ってくれたまえ」

 

「変わった事?」

 

マクギリスの言葉に士道は首を傾げるが、ふと思い出した。

 

「変わった事って言うか最近バルバトスが妙に五月蝿い事くらい?」

 

「五月蝿い?」

 

「うん。いつも〈フラクシナス〉ってとこに行くと、バルバトスがうるさいんだよ。“早くアイツを殺させろ“って」

 

「ほう?そのアイツとは?」

 

「さあ?」

 

モビルアーマーと遭遇した時、リミッター解除直前の反応をバルバトスが〈フラクシナス〉の中でするのだ。だが、原因が分からない以上どうしようもない士道はそのまま放置していた事をマクギリスに言う。

士道の言葉を聞き、マクギリスは前髪を触りながら考えていた。

 

(バルバトスやガンダムフレームに意識がある・・・阿頼耶識接続者を意識がないまま機体から外すと目を覚まさないと言う件が過去に何度かあった。三日月・オーガスも機体に繋がっている間は手足を動かす事が出来ていたとなると・・・何かしらの実験をしていたに違いないか)

 

「チョコの人」

 

考え込むマクギリスに士道は声をかける。

 

「何かね?」

 

マクギリスが答えると、士道は立ち上って言った。

 

「俺、もう行くけどいい?」

 

「ああ。行って構わないとも。此方も時間を取らせて悪かった。礼と言ってはあれだが、コレを持っていくといい」

 

そう言って士道にチョコレートが入った袋を渡す。

 

「ありがとう。そっちも頑張ってね」

 

士道はマクギリスにそう言って、十香達の元へ歩いて行った。

 

「・・・・・さて」

 

そして、一人になったマクギリスも立ち上がる。

 

「私も行くとするか。だが・・・・」

 

マクギリスは今や遠くなった士道の後ろ姿を見て、呟く。

 

「バルバトスが精霊と同じように霊力と言う物で生成できるのは少々気になる。その辺りを調べるか」

 

かなり望みは薄いが調べる価値はある。

機体に魂や意識が宿る。それではアグニカ・カイエルの魂がバエルに宿ると言うのは本当なのかもしれない。

マクギリスはそう思い、彼等とは正反対の方へと歩いて行った。




機体に意識や魂が宿る。これがこの先の鍵でもあります!
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第八話

投稿!!

感情を処理出来ない人類は○ミだと教えた筈だがな。

そうだ!私だ!逃しはしないよ・・・キンケドゥ!!

綺麗なザビーネ

感情を処理できない○ミ


あれ?デアラにも感情を処理出来ない○ミの人いなかったっけ?

原作見て


「そういえば、シドー」

 

と、エレベーターが低いうなりのような駆動音を響かせ始めた所で、十香が不意に首を傾げてきた。

 

「ん?なに?」

 

「水着とは、一体何なのだ?」

 

「え?」

 

士道はそう聞き返したが、そういえば、十香達はまだプールや海に行った事が無かった筈だ。確かに十香が知らないのも仕方ないのかもしれない。

そんな十香に士道は言う。

 

「海とかプールとか水が多い所で泳いだりする時に付ける服だよ。ほら、普通の服だと水が入るとヘンな感じがするだろ?」

 

「うむ、そうだな」

 

「それを気にしなくていい為に着替える服って思えばいいんだよ」

 

「おお!なるほど!」

 

エレベーターから降りるとすぐに、カラフルな水着が陳列されたスペースが視界に入り込む。もう六月も後半。店側としてはちょうど今が売り時なのだろう。

そんな中、駆け出す十香は不思議そうに店内を見回し、首を傾げる。

 

「それで、シドー。水着というのはどれのことなのだ?」

 

「ん?周りのヤツ全部」

 

「!な、なんだと・・・・?」

 

士道の言葉に、十香は目を見開いて両手をわななかせた。

恐る恐るワンピースタイプの水着を手に取って矯めつつ眇めつつ眺め回し、手触りを確かめるように生地を撫でてから、何かに気づいたようにハッと顔を上げてくる。

 

「なるほど、そうか。これの上に何かを着るのだな?」

 

「間違ってないはないけど、普段はそれだけの筈だよね?琴里?」

 

普段海やプールに行っても水着を着ない士道を横に琴里は「はぁ」と息を吐き、頷く。

 

「士道の言った通りよ十香。基本はその服単体だけ着るの」

 

「こ、これでは身体が隠しきれないぞ!なぜこんなに面積が小さいのだ・・・!?」

 

「動きやすいからじゃないの?」

 

「ぬ、ぬぅ・・・・確かにそうかもしれんが・・・」

 

渋る十香に琴里は両手のひらをパンパン!と鳴らし、口を開いた。

 

「はいはい。どの道渋ってたって水着はそういうものなの。ほら、とりあえずどれか気に入ったのがあれば試着してみて」

 

そんな琴里の言葉に四糸乃は恥ずかしそうに首肯する。そんな四糸乃を様子を見てか、十香も頬を染めながら、「・・・特別だぞ」と唇を動かす。

そして拳をぐっと握り、四糸乃に向かってポーズを取ってみせる。

 

「よし・・・では勝負だ、四糸乃!」

 

「え、えと・・・お手柔らかに、お願い・・・します」

 

そんな二人のやりとりを見て、士道は首を傾げる。

 

「勝負って、・・・・何をするの?」

 

「うむ。今日私と四糸乃とで、よりシドーをドキドキさせた方に、シドーとデェトをする権利をくれるらしいのだ」

 

「は?」

 

士道のその返答と共に、耳元から令音の眠そうな声が聞こえてくる。

 

『・・・ん、どうせなら少し難易度を上げておこうと思ってね』

 

なんの?と思いもしたが、どうせはぐらかされるだけだろう。

 

「んじゃ、俺も適当に見るからなにかあったら呼んで」

 

「うむ!」

 

「・・・はい」

 

士道の言葉に返事を返す二人を横に、琴里は士道に言った。

 

「まったく、士道は相変わらずね。で?士道はどうするのよ?自分の水着」

 

「俺は阿頼耶識があるからそれを気にしないといけなくなるんだけど」

 

士道の言葉に琴里は「あー」と言って眉を潜める。

 

「・・・そう言えばそうだったわね。それなら上着でも買っておいたら?それなら上から羽織るだけで十分だろうし・・・」

 

「それでもいいけど」

 

士道はそう言って上着を手に取る。

どうせ殆ど使わない代物になるだろうが、変な注目を浴びるよりかはマシだろう。

 

「本当、ソレあると不便よね?今まで何も思わなかったの?」

 

「別に、そこまで気にすることなんてなかったし。ただ、親父達に隠すよう言われてたから、普段は隠してただけ」

 

「・・・そう」

 

と、琴里が目を伏せた、その瞬間。

 

「士道・・・さ────ん・・・!」

 

蚊の鳴くような声が、どこからか聞こえてくる。

 

「ん?」

 

「今の声って・・・四糸乃よね?」

 

士道達が耳を澄ますと、再び小さな声が聞こえてくる。

 

「士・・・道はさん・・・た、たす・・・けて・・・ください・・・・っ」

 

どうやらその声は、三つ目の更衣室の中から聞こえてきているもののようだった。

 

「何かあったのかしら?」

 

琴里は眉を寄せながらそう呟く。

 

「・・・行って見るか」

 

士道はなんとなく予想はついてはいるが、四糸乃がいるであろう更衣室へと足を進める。

 

「四糸乃、開けるよ」

 

士道はそう言ってカーテンを開ける。と───そこには。

 

「し、士道さん・・・」

 

服をはだけ、半裸状態になった四糸乃が、水着を腕に通した状態で、胸元を押さえながら涙目になっていた。

 

「か、片手だと・・・上手く、着られません・・・」

 

四糸乃の言葉に士道は息を吐く。

 

「まぁ、怪我がないから安心したけど」

 

「・・・そうね」

 

士道と琴里はお互いにそう呟いた。

 




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第九話

投稿!!

最後はおまけもあるよ!

俺、いつか絶対に追いつくんで・・・だから、止まんないで下さい・・・

最後まで戦い続けたハッシュ・ミディ


「折紙!?あんた、退院したなら早く連絡しなさいよ」

 

折紙は病院から退院し、自宅に戻る前に天宮駐屯地のCR-ユニット格納庫に顔を出すと、AST隊長である日下部燎子がそんな声を上げてきた。

作業ズボンに黒のタンクトップという格好に、何かの搬入チェックでもしていたのだろうか、クリップボードを脇に挟み、もう片方の手にペンを握っている。CR-ユニットはデリケートかつ極めて秘匿性の高い装備であるため、触れることが出来る人間が少ない。

実戦要員であるASTの隊長がこういった雑務をこなすことも少なくなかった。

と、無骨なデザインの搬入車両が、巨大な装備を引いてゆっくりと近づいてきた。

 

「おっと。ほら折紙、あんたもちょうと避けなさい」

 

言いながら、燎子が手招きしてくる。折紙はそちらの方向に歩いていった。

その際、ちらと後方を通る搬入装備に目をやる。保護用シートが被せられた、全長五メートル以上あろうかという、巨大なユニットだ。

 

「これは?」

 

折紙が問うと、燎子は脇に挟んでいたクリップボードにペンを走らせながら答えてきた。

 

「んー、新しく配備された実験機よ。DW-029・討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉。大型レイザーブレイド〈クリーヴリーフ〉二本、五十・五cm魔力砲〈ブラスターク〉二門、それに換装可能の大容量ウェポンコンテナ〈ルートボックス〉八基。AST一個中隊分の火力を一個人にぶっ込んだような頭のおかしいユニットよ」

 

「・・・・・」

 

折紙は無言で、その巨大に過ぎる兵装を見上げた。

 

「これを使えば、〈イフリート〉も倒す事が可能?」

 

「は?何言ってんの。これはあんたには扱えないわよ。権利的にも、技術的にもね。DEM社から直接送られてきた実験機だもの。ま、一応理論値では、精霊を倒せるレベルの装備らしいけど・・・DEMの専属魔術師が、全装備フル稼働三十分で廃人化したって話よ。悪いことは言わないからやめときなさい」

 

「・・・そんな装備が、なぜここに」

 

「ん、どうやらDEMのお偉いさんが、もしかしたら真那だったら扱えるんじゃないかって寄越したらしいわ。本来は〈バルバトス〉を押え込みながら、私達が精霊討伐に集中出来るようにって言っていたけど、肝心の真那は「こんなので押さえ込めるか!!」の一点張りなのよ」

 

「そう」

 

あの真那がそう言うのも、一度だけまともにやりあって生還出来ての予想なのだろう。

 

「ていうか・・・〈イフリート〉?五年前に現れたっていう炎の精霊?なんでそんなのの名前が出てくるのよ。五年前に一度確認されたきり現れていないん───」

 

と、不意に燎子が言葉を止めた。

不思議に思い折紙が視線を送ると、何かを思い出したようにパチンと指を鳴らしてくる。

 

「ああ、そうか。───あれが〈イフリート〉か」

 

「・・・っ、どういうこと?」

 

折紙は微かに眉根を寄せ、身体ごと燎子に向き直った。そのまま足を一歩前に踏み出し、詰め寄るように続ける。

燎子は折紙のただならぬ様子に驚いたのか、折紙とは逆に足を一歩引いて軽く身を反らした。

 

「な、何よ急に」

 

「いいから、教えて」

 

「教えてって言われても・・・一昨日、〈バルバトス〉と〈ナイトメア〉が戦った時に現れたのがその〈イフリート〉なんじゃないの?真那がいち早く駆け付けたけど、やけに〈バルバトス〉が気が立っていたって言って戦闘に入らなかったっていう・・・」

 

「何故、一昨日、炎の精霊が現れた事を知っているの」

 

「なぜって・・・そりゃあ、画像じゃなくて映像でみたから・・・」

 

「・・・・・!」

 

目を見開く。まさかこんなにも近くに。〈イフリート〉の新たな手がかりがあったとは。

 

「日下部一尉」

 

「な、何よ」

 

「お願い。その映像を見せて。───今、すぐに」

 

 

◇◇◇◇◇

 

「・・・・・・っ」

 

仕事中の燎子を無理矢理ブリーフィングルームまで引っ張ってきた折紙は、プロジェクターでスクリーンに映し出された映像を見て、言葉を失った。

映像の質自体は、お粗末なものだった。だが、それでも折紙には十分過ぎた。

五年前。霞む目で捉えたその姿。一昨日。揺らぐ意識の中で捉えたその姿。

その憎き仇敵の顔を、今初めてはっきりと見取ることができたのだから。

そして───折紙の疑念は確信へと変わった。

 

五年間、ずっと追い続けてきた炎の精霊。───その、顔は。

 

「五河・・・琴里」

 

五河士道の、妹のものだったのである。

 




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全てをぶち壊すおまけ

鉄華団メンバーがデアラ世界にいたらPart2


「三日月さん!」

ガラッと音をたてながら教室の扉を開けるハッシュ。そしてハッシュが士道に目を向けると、女装した士道がユージンと一緒にいた。

「!!?」

「何?」

士道はそう答えるが、ハッシュはショックで固まり動けない。

「ハッシュ?」

士道の言葉が聞こえないくらいにハッシュは混乱していた。


◇◇◇◇◇


「なんだ、今度の文化祭の衣装合わせをしてたんすね。・・・てっきり俺の心の奥底で秘めた願望が何かが実現したのかと・・・」

「今、すっげぇ爆弾発言したけどツッコミたくねえから聞かなかった事にすんぜ」

ユージンはそう言うが、ハッシュは構わずユージンに聞いた。

「ってことはカフェっすか?女装喫茶的な」

「違う映画」

「先に作っちまえば当日ビデオ流すだけでいいし、皆で遊びまくれるしな」

ユージンの言葉にハッシュは気になる様子で聞いて見る。

「え、映画っすか・・・ハイアンドロー的なアクションものとか」

「違う。恋愛」

「アクション物は去年やったからな。イサリビ戦隊鉄華団ってやつ。すっげぇ大好評だった」

ユージンと士道のその言葉にハッシュは冷や汗を流す。

「ちょっと待ってください。恋愛でその格好って・・・まさか三日月さん・・・」

嫌な予感がハッシュにヒシヒシと襲いかかるが聞かずにはいられない。
そんなハッシュの予想を裏切るように士道は言った。

「うん。ヒロイン」

「ちなみに主役は昭弘だぜ!」

「!!!!!?」

二人の爆弾発言にハッシュは周りを見渡す。
そこには机に突っ伏したまま、ショックを受けている十香、折紙、八舞姉妹の姿があった。

(嘘だろ・・・三日月さんがヒロインで、昭弘さんが・・・昭弘さんが・・・!?)

ハッシュはさらに混乱した。


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第十話

投稿!!

明日は都合上オラトリアの投稿は出来ません!申し訳ありません!

臭くねえんだよ・・・おやっさん


チャド・チャダーン


六月二十二日、午前九時五十五分。

士道は昨日購入した水着とバスタオルなどを詰めた鞄を背負いながら、天宮駅東口のパチ公前に立っていた。

お座りした犬の銅像である。天宮駅の待ち合わせスポットと言われているらしいのだが、士道はよく知ってはいない。

 

「・・・・・眠い」

 

若干まだ眠気が残っているのか、士道あくびをしながら琴里達を待つ。

士道はポケットからデーツが入った袋を取り出すと、その袋に手を入れる。

 

「・・・・?」

 

手に感触がない。士道が袋の口に目を覗かせると、中は何も入っていなかった。

 

「・・・また買うか」

 

士道はそう呟き、袋をポケットへと突っ込む。

無いものなら仕方ない。士道はそう思いながら空を見上げる。

見上げた空は雲一つなく、そして青かった。

太陽の光に目を細めていると、街の方から小さなシルエットが歩いて来るのが見えた。

可愛らしいフリルに飾られた半袖のブラウスに、裾の短い焦茶色のオーバーオールという出立ちで、手に水着が入ったと思しき鞄を提げている。そして、その長い髪を二つに括るのは、使い込んだ黒色のリボンだった。

 

「おはよう。琴里」

 

「ん、待たせたわね」

 

士道は短く返事をすると、琴里が首肯しながら返してきた。

 

「十香達は?」

 

「もうすぐ来るんじゃないかしら?一緒に出た訳だし」

 

「そっか」

 

琴里の言葉に士道は短く答える。そしてその後しばしの間、沈黙が流れた。

と、黙っている士道に琴里がやれやれとため息を吐いた。

 

「おめかしした女の子と会って一言もなし?いの一番に教えたと思ったけれど?」

 

「え?あー、ごめん。忘れてた」

 

教えてもらっているとはいえ、士道にとっては服装を褒めるというのはあまり馴染みがない。

アトラやクーデリア達がいた時も、普段の彼女達の服装にあまり変化もなかったせいか、そういったところはまだ鈍い所がある。

 

「まぁ、士道の事だからそこまで興味なんてないでしょうしあまり期待はしてないけど・・・どう、今の私は?」

 

呆れと、士道の反応を聞いてくる琴里に士道は素直な感想を口にする。

 

「似合ってるよ」

 

「・・・・っ」

 

士道が言うと、琴里はピクリと肩を揺らした。

 

「俺、そういうのは全く分からないけど、けど今の琴里はかわいいと思うよ」

 

士道の感想を聞いた琴里は小さく呟く。

 

「そう。なら良かったわ。こっちも褒められるのは嫌な気、しないし」

 

「そっか。今度は気をつける」

 

「ええ。その調子で頑張りなさい。士道」

 

と。

 

「うむ!到着だ!」

 

「は、はい・・・・っ」

 

『やー、楽しみだねー』

 

「ふぅ・・・此処まで来るのに苦労しました」

 

琴里の言葉の後に四つの声が続き、士道は首を声のした方へと向ける。

そこには、出かける準備を万端に整えた十香と四糸乃、そしてこの場に来る筈がなかった真那の姿があったからだ。

 

「ていうか、なんで真那がこんなとこにいるの?」

 

士道はそう言って首を傾げる。

その言葉に真那は言った。

 

「んー・・・なんて言えばいいのでしょうか・・・皆さんがこうして出かけると聞いたのと、兄様が琴里さんとデートすると前々から聞いていたので、十香さん達と一緒にお邪魔しようかなーと。後、私も誘ってくれなかった兄様の気遣いの無さに、すこーしだけ、イラッときましたので」

 

ついて来ましたと言わんばかりに鞄を持ち上げる。

 

「・・・士道」

 

琴里が、睨みつけるように士道に視線を向ける。

明らかに機嫌が悪そうになってはいるが、ついて来てしまったものは仕方ない。

十香達も真那の同行に気にしていないせいか、普通に話あっている。

そんな中琴里はため息を一つ吐くと、士道に仕方ないと言った顔で言った。

 

「来ちゃったものはもう仕方ないわ。ここで真那を追い返すのも十香達にも悪いし。真那に関しては・・・まぁ、後で本人に聞くとして・・・いいわ」

 

「?なにが?」

 

琴里の言葉に首を傾げる士道に、琴里は言う。

 

「士道の事だから、こうなると思っただけよ。けど、士道。こうなったからには────」

 

「?」

 

「・・・・ごめんなさい。何でもないわ」

 

「まぁ、いいけど」

 

口籠った琴里に士道は短く返事を返す。

琴里は先程まで口籠っていたのが嘘のように表情や雰囲気を変え、十香達に言った。

 

「ほら、時間が惜しいから早く行きましょ」

 

そう言って、十香達と駅の改札へと向かっていった。

そんな彼女達の後を追うように、士道も足を進めるのだった。

 




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第十一話

投稿!!

仕事の邪魔する気?いいよ。まとめてやるだけだし

ソレスタルビーイングに対しての三日月



オーシャンパークは天宮駅から五駅先にあるテーマパークである。

様々なプール施設や大型浴場、屋内アトラクションから成るウォーターエリアと、野外遊園地がメインとなるアミューズエリアの二つから構成されており、夏休みともなれば、遠方からも沢山の家族連れやカップルなどが訪れる人気スポットらしい。

とはいえ、今はまだ六月半ば、屋内施設や遊園地は年中利用できるものの、看板エリアである屋外プールが開放されるのは来月からであるため、客の入りは少なかった。

まあもっとも、人が多ければ士道は水着に着替える事などしなくていいと考えていたのだが。

そんなことを考えていた士道は、着替えを終えて上着を羽織る。そして更衣室から屋内プールへと移動した。

まだ琴里達は着替え中のようである。士道は身体を軽く動かしながら首をぐるりと回し、辺りの様子を一望した。

 

「テレビで見た時とあんまり変わんないな」

 

士道は始めて来た所に抱いた感想がそれだった。

まぁ、こんなもんかと思いながらもペタペタとタイルを踏みながら足を進める。と────。

 

「シドー!待たせたな!」

 

士道の背から元気な声がかけられる。

振り返るとそこには、着替えを終えた十香と四糸乃、そして真那と琴里が立っていた。

十香と四糸乃の装いは、士道の予想通りだった。昨日、皆で買いに行った水着である。

十香が藤色のビキニ、四糸乃が腰部分にスカートのようなひらひらがついた、淡いピンクのワンピースタイプである。

四糸乃に関しては着替えるのに苦戦していたのを見ていたので、おそらく十香達に手伝ってもらったのだろう。

真那に関しては、学校などで配布されるスポーツタイプの水着だった。買ったというより、持ってきたのだろうか?

そして士道は琴里に視線を変える。

十香達と同じように水着に着替えた琴里が、腕組みをして口にチュッパチャップスをくわえながら立っていた。

白いセパレートタイプの水着である。

もっとも、士道にとって種類がどう違うのか分かってはいないの

だが、それでも琴里達はそれぞれ見た目を気にしているのだろう。

 

「皆似合ってるじゃん」

 

士道はそう琴里達に感想を言った。

 

「士道ならそう言うと思ったわ。士道は詳しい感想なんてしたことないから、そう言って褒めるのよね。まぁ、士道らしいけど」

 

自身の兄が言う単調な感想に琴里は嘆息の息を吐きながらも、頬を緩める。

そんな琴里の吐息など全く気付いていない様子で、十香が大声を上げる。

 

「おお!凄いなこれは!建物の中に湖と山があるぞ!」

 

それに次いで四糸乃が、珍しく興奮気味に頬を紅潮させながら口を開く。

 

「み、水が、いっぱいです・・・・!」

 

『はー!テンションあがるねこりゃー!』

 

「シドー、あの湖には入っていいのか!?」

 

「いいよ。けど、ちゃんと準備運動してから入ってね」

 

十香の問いに答えてやると、十香は輝いていた目をさらに燦然と光らせ、声を上げた。

 

「よし!行くぞ四糸乃っ!」

 

「は、はい・・・・っ!」

 

元気よく二人がプールに駆け出していく。そんな二人を見守っていると、視界の端に琴里に視線を向けていた真那の姿が目に入った。

 

「・・・むむむむ」

 

「な、なによ・・・」

 

ジッと見つめる真那に琴里は身を引かせる。そして真那は肩を落とす。

 

「こんな事なら、新しい水着を買ってくるべきでした・・・」

 

「そ、そこまでショック受けることなの・・・?」

 

琴里は引きながらそう呟く。

 

「別に、本人が気にしてるだけだからほっとけば?」

 

士道は琴里にそう言って、ペタペタとプールとは反対方向へと足を進める。

 

「ちょっ!何処へ行くつもり!?士道!」

 

プールとは反対方向へ足を運ぶ士道に琴里は呼び止める。

 

「ん?入る前にちょっとあっち行ってくる」

 

「あっち?」

 

士道が指を差す方向へ琴里は視線を向けると、そこにはサウナと書かれた看板があった。

 

「いや、何の為にサウナ行くのよ!?普通プールからでしょ!?」

 

メインに入らず、何故サウナに行くのだと突っ込む琴里に対し、士道は言う。

 

「何の為って、汗かいてそれからプール入る方が涼しいじゃん」

 

「訳分かんないわよ!」

 

突拍子も無い、デートとも言えないこのデートに琴里は頭を抱える。そうだ、真那にも士道を止めてもらおう。そう考えた琴里は真那に視線を向けるが・・・。

 

「私も新しい水着を買うべきでした・・・いや、そもそもプライベート用の水着を持っていない私からすればどんな物にすればいいのか・・・・」

 

未だにショックを受けているツッコミ役が立ち直っていなかった。

 

「ああ、もう!ほら、真那!しっかりしなさい!!また一緒に買いに行って上げるから早く立ち直りなさい!」

 

琴里はそう言って、真那を立ち直らせるのだった。




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第十二話

投稿!!

「アンタにも弟がいるのか。なら、お互い無くさないようにしなきゃな」

ロックオン、シャギアとペアの時の昭弘


「ほら士道。せっかく来た訳なのだから、遊びましょ」

 

「まぁ、いいけど」

 

琴里の言葉にぶっきらぼうな調子で、士道はそう言葉を返す。

 

「でもなにで遊ぶの?」

 

「そこら辺は自分でも考えなさいよ。たまには頭を使うこともしなさい」

 

「・・・・・」

 

琴里の言葉に士道は少しの間、黙り込む。

そして、視界に大きく広がるウォータースライダーを見て指を差した。

 

「あれなんてどう?」

 

琴里は士道の指の先をしばらく眺めていたが、ふぅと息を吐くと身体の向きを変えた。

 

「ベタな気はするけど・・・まぁ、妥当よね。いいわ、行きましょう」

 

琴里はそう言って、足をスライダーの方へと向ける。

と、そんな士道と琴里の様子に気付いたのか、プールでぷかぷか浮いていた十香と四糸乃が、こちらに視線を寄越してくる。

 

「シドー、琴里。どこかに行くのか?」

 

「え?ああ、ちょっとあれでも滑ってくるつもりだけど」

 

「あれ?」

 

十香は目を丸くしながら首を傾げる。士道はそんな十香にもう一度指を岩山の方へと向けた。

 

「あれだよ」

 

「おお・・・・!人が流れてくるぞ!」

 

十香は目を輝かせると、浮き輪を腹部に塡めたままプールから上がってきた。

 

「私も、私も行きたいぞ!」

 

「まぁ俺は構わないけど、琴里はどうなの?」

 

士道の言葉に琴里は頭を押さえながら口を開く。

 

「・・・変に十香の好感度下げるよりかは一緒に連れていった方がいいわ。四糸乃はどうするのかしら?」

 

琴里は十香に関しては連れていってもいいと言ってはいるが、そうなると、四糸乃が一人になってしまう。その問題をどうするか考えていたが、そんな二人に真那が言った。

 

「なら、私が四糸乃さんを見てやりましょうか?先ほどの一件の事もありますし」

 

先のプールの一部を凍らせた事件を目の当たりにした真那が四糸乃は任せろと胸を叩く。

 

「そう?なら頼むよ」

 

「ラジャーです」

 

真那が心良い返事を返す中、琴里は士道と十香に言った。

 

「話は終わったかしら?なら、十香は浮き輪を置いていきなさい。士道は上着を脱ぐ事ね」

 

「着たままは駄目だったっけ?」

 

「駄目に決まってるじゃない。それにそれを濡らしたら、この場所で行ける場所が限られるわよ」

 

「そっか」

 

琴里の言葉を聞いて、士道は上着を脱ぎ始める。

上着を脱いだ事によって鍛え上げられた士道の上半身と、背中に並ぶ阿頼耶識があらわになった。

 

「・・・!兄様・・・それは・・・」

 

「ああ、気にしなくていいよ。昔からあるやつだから」

 

真那が士道の背中にある阿頼耶識を見て、息を呑む。

だが、そんな真那が息を呑む理由も大まかに理解している士道にとって気にすることはない。

 

「・・・そうですか。なら、何も言いません」

 

士道が何でもないと言うのを聞いて、真那はこれ以上口をつぐむ事はなかった。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

「・・・行って・・・らっしゃい」

 

『感想、また聞かせてねー。士道くん』

 

士道達は四糸乃達に見送られてウォータースライダーへと歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「おい、ユージン。話聞いてるか?」

 

「あ、悪ぃ。聞いてなかった。で、何だって?」

 

ユージンは同級生の友人に言葉を返す。

 

「だから、あの夜刀神十香っていう二年に入った子の水着姿!可愛かったよなって!!お前見てないのかよ?」

 

「悪ぃ。考え事してたから見てなかった。てか、どうせソイツは士道とか言う奴と一緒に来てるんだろ?学校でも噂で持ちきりなんだぞ」

 

ユージンの言葉にその友人は首を縦に振った。

 

「そうなんだよ!ほら見ろよアレ!!あんなハーレム築いてんだぜあの男!!羨ましいとは思わねえのかよ!!」

 

「いや、俺は別に・・・」

 

ユージンはハーレムと聞いて名瀬・タービンの事を思い出す。

かつて、前の俺達の世話をしてくれた俺達の兄貴分。そんな彼もハーレムを気付いていたが、あれはあれで羨ましいが大変そうだった。

そんな事を考えながらユージンは親友が指差す方へと視線を向ける。

五河士道と夜刀神十香。学校では噂で持ちきりの二人だ。三年である俺達ですら、その噂を耳にしている。

そんな彼等の周りには鉄華団にいた時のアトラと同い年くらいの三人の少女。

小さいながらも、彼といるその姿はビスケットの妹達が三日月と一緒にいた時の事をどうしても思い浮かべる。

 

「・・・って、何考えてんだろうな。俺・・・」

 

前に学校で『バルバトス』を見た時に、この平和な場所でつい三日月がいるんじゃねえかとつい思ってしまう。

俺達のもとへ帰ってくる事なく、オルガの命令を果たした三日月をユージンは許していなかった。

アイツにはアトラやクーデリアのいる帰る場所があったにも関わらず、アイツはオルガ達のいる所へと行った。

それがどうしようもなく“羨ましかった“。

俺も彼奴等と一緒に行きたかった。けど、オルガの命令を果たさないといけなかった。だから、“俺達は精一杯死ぬまで生きた”。

死ぬまで生きて、彼奴等の居る場所へと行ける。そう思って目を開けた時には新しく生まれ変わっていた。

昭弘の言った通りに。

 

「・・・まぁ、もしアイツがいたら一つ文句を言ってやらねえとな」

 

「誰に文句だって?」

 

「なんでもねえよ」

 

ユージンはそう言ってもう一度、彼等に視線を向ける。

そして──────

 

「────────」

 

言葉が出なかった。

ユージンの視線の先。五河士道の首の付け根から背中に並ぶ、三本のピアス。

ユージンはそれに“見覚えがあった“。

阿頼耶識。かつて俺達が持っていた物。

 

「────ッ!!」

 

ユージンは走り出す。

歩き始める彼等のもとへと。

 

「お、おい!何処に行くんだよ!?」

 

「悪い!ちょっと用事ができた!!」

 

「はぁ!?」

 

呼び止める親友の声に振り返って返事を返す。そして再び視線を戻した時は────

 

「くそっ!どこ行きやがった!」

 

彼等の姿は何処にも見当たらなかった。

右へ左へ辺りを見渡す。

だが、人混みもある中で、彼らの姿は見当たらない。

もしかしたら。もしかしたらでもいい。アイツが三日月であって欲しい。そしたら、オルガの奴もきっと・・・。

見失ったユージンは、拳を握る。

そして、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「ちょっとくらい話させろよ。三日月」

 

話したい事がいっぱいあるんだ。と思いながらユージンは歩いていった。

 

 




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第十三話

投稿!!

一度手にした力は手放し難いものなのさ。たとえそれが、自らを滅ぼす力だとあったとしても

マクギリス・ファリド


時刻は二時十分。士道たち一行は、オーシャンパークにあるフードコートで、遅めの昼食を摂っていた。

士道、十香、四糸乃、真那、そして琴里の五人が着いた白いプラスチック製のテーブルの上に、クラブハウスサンドの並べられた大皿と飲み物の入った紙コップが置かれている。

かなりの量があるのだが・・・まぁ、十香がいれば余ることはないだろう。

 

「うむ、美味いなシドー!」

 

十香がサンドイッチを頬張り、満面の笑みを浮かべる。そしてその正面に座った四糸乃は、小さな口で少しずつサンドイッチを齧り、こくんと頷いた。

 

「美味しい・・・です」

 

「へぇ、そっか」

 

士道も二人の様子を見ながら、大皿からサンドイッチを手に取ると、口を開けてそのままかぶりついた。

 

「うん。うまい」

 

咀嚼しながら喋る士道に、真那が言う。

 

「食べながら喋るのはあまり関心しねーですよ兄様」

 

「へー」

 

真那の言葉に適当に返事を返す士道。

そんな四人の中、琴里は足を組みながら真那に言った。

 

「士道にテーブルマナーを教えても無駄よ真那。士道はそんなの気にしないから」

 

琴里は真那にそう言って、大皿からサンドイッチを取るとそのまま口に入れて咀嚼する。

 

「あ、これおいしい」

 

そんな事を言いながら琴里はサンドイッチを食べていた。そして琴里は飲み物に口を付け、それに咽たかのように数度咳き込んだ。

 

「ッ、けほっ、けほっ・・・・」

 

「大丈夫?琴里」

 

「・・・・ええ、少し気管に入っただけよ」

 

言うと琴里は足を崩し、席を立つ。そしてそのまま、誰にも声をかけずに歩いていく。

 

「琴里?」

 

不自然な琴里の行動に士道は声をかける。

そんな士道に琴里は言った。

 

「手を洗いにいくのよ」

 

「そっか。いってらっしゃい」

 

琴里に士道はそう返事を返す。

そんな士道に琴里は若干不満そうな顔をするも、そのまま歩いていった。

そんな中、士道は真那に目を向けた。

真那は士道の視線に気付くと、十香達にバレないように頷いて席を立ち上がる。

 

「ん?どこかにいくのか?真那?」

 

「ええ。ちょっとお手洗いに行くだけですよ」

 

「そうか。なら、真那のサンドイッチも残しておくぞ!」

 

「ありがとうございます。十香さん」

 

真那はそう言って、琴里が歩いて行った方向へと足を運んだ。

そして、少し離れた所で真那は呟く。

 

「全く・・・兄様も人使いが荒いですよ・・・。けど、私も琴里さんが心配なのでちょっと様子を見てあげますね」

 

真那がそう呟きながら、琴里の後を付けていく。

そして琴里が入っていった場所に真那は首を傾げた。

 

「・・・自販機の裏?」

 

疑問を浮かべながらも、真那は身を隠しながら顔を覗かせる。

並んだ自販機の裏に出来た、ポケットのような空間。その場所には─────二人の人間がいた。

一人は、ビキニに白衣というまたプールには似合わない格好でその場に膝をつき、傍らに黒い鞄を携えた、令音。そしてもう一人は────壁にもたれかかるようにして地面にへたり込み、苦しげに頭を押さえる琴里だった。

真那はそんな二人を自販機の影に身を隠しながら様子を見る。

 

「・・・大丈夫かい、琴里」

 

「ええ・・・なんとかね。でも、危なかったわ。────お願い」

 

琴里が片腕を令音に差し出す。しかし令音は、躊躇うように唇を噛んだ。

 

「・・・今朝の時点でもう既に、通常の五十倍もの量を投与しているんだ。これ以上は命に関わる」

 

「ふふ・・・精霊化した今の私なら、薬物程度で死にはしないわよ」

 

令音が渋面を作る。しかし琴里は、荒い呼吸の合間を縫うように口を開く。

 

「・・・お願い。士道との・・・おにーちゃんとのデートなの」

 

「・・・・・」

 

琴里の言葉を聞いて真那は目を軽く閉じると、その場から身を引く。

そして一人、真那はため息を吐いて呟いた。

 

「・・・兄様になんて報告すればいいんですか・・・」

 

聞くんじゃなかったと後悔する真那だった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

陸上自衛隊天宮駐屯地のCR-ユニット格納庫に作業服姿で足を踏み入れた燎子は、庫内の騒然とした様子に怪訝そうな声を発した。

 

「ちょっと、何かあったの?」

 

近くにいた整備士に話しかける。整備士は慌てた様子で鬱陶しげに眉根を寄せた。

 

「何だよ、あとにしてくれ!今それどころじゃ───て、隊長!」

 

整備士がビッと敬礼を示してくる。燎子は小さく首を振って言葉を続けた。

 

「敬礼はいいから。何があったのか教えてちょうだい」

 

「その・・・〈ホワイト・リコリス〉が、ありったけの弾薬と一緒に丸ごと無くなってるんです」

 

「なんですって!?」

 

燎子は目を見開くと、顔を右方へ向けた。

整備士の言ったとおり、大型の討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉が安置されていた箇所に、ぽっかりと穴が空いており、その周りを何人もの隊員や整備士が慌ただしく走り回っている。

 

「誰かが持ち出したっていうの・・・?」

 

「さ、さぁ・・・詳しいことは私も」

 

燎子は庫内の様子を見回した。────詳しく調べてみなければ分からないが、他に変わった様子は見受けられない。扉を破ったあとも、搬入車を動かした形跡すらなかった。

燎子はしばしの間押し黙ってから、再度整備士に話しかけた。

 

「────今、緊急着装デバイスノ保管状況はどうなってる?」

 

「緊急着装デバイス・・・ですか?少々お待ち下さい」

 

言って、整備士が手に持っていた小型端末を弄り始める。

緊急着装デバイスは、一時的にテリトリーを展開させ、一瞬でワイヤリングスーツを装着するための装置である。

AST隊員がこれを使えば、正規の着装許可がなくとも魔術師の力を得ることができる。

ゆえにその管理はパーソナルコードによって行われ、誰がいつデバイスを持ち出し、いつ着装を行ったかが、自動的にデータベースに記録されるようになっているのである。

これは、一つの可能性であり、小さな疑念に過ぎなかった。

だが────〈ホワイト・リコリス〉クラスの巨大な装備を搬入車を使わずに一瞬のうちに移動させることができるのは、テリトリーを展開した魔術師くらいしか思い当たらなかったのだ。

心の中で、該当コードが出ないことを祈りながら、整備士の言葉を待つ。

────だが。端末からピー、という高い音が発せられると同時、整備士が声を詰まらせる。

 

「隊長、ひ、一人、デバイスを携行している隊員がいます」

 

「・・・・っ、誰?」

 

燎子が問うと、整備士が震える声で発してきた。

 

「と、鳶一折紙一曹です・・・・・」




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第十四話

投稿!!


やっちまえミカー!!

オルガ・イツカ


真那の様子がおかしい。

昼食を終え、十香達は再度プールで遊ぶ中、士道は琴里の様子を見にいった後の真那を見てそう思っていた。

行く前は普通に返事を返していたのにも関わらず、帰ってきた時は何かを隠すような表情や声音で「何でもなかった」と答えているのだ。

一体何を見たのか知らないが、おそらく自分には知られたくないような件なのだろう。

琴里についても、今朝から様子がおかしいのは分かっている。だが、本人は「大丈夫」と答えるだけで他に答えようとしない事から、真那が見た一件と何かしら関わっていると士道は勘づいていた。

 

(俺が行けば良かったな)

 

だが二人がこうして何も話さない以上、士道としてはどうしようもない。

話題も特に思いつかなかった士道は、少し辺りを見回すと琴里に言った。

 

「琴里」

 

「なによ?」

 

士道の言葉に琴里が振り返る。

そんな琴里に士道は言った。

 

「辛くなったらいつでも言ってね」

 

「な、何よ・・・いきなり」

 

「別に。思った事を口にしただけだよ」

 

士道はそう答えて足を進める。と、士道は唐突に琴里が精霊になったと言う話を思い出す。

 

「そうだ、琴里」

 

「今度は何?」

 

ジト目で此方に視線を向ける琴里に士道は口を開く。

 

「あのさ、琴里は五年前────」

 

────と言いかけた瞬間。士道は周りの音が、少しだけ遠くなるのを感じた。

一瞬のあと、すぐに気付く。自分の周りに、目に見えない壁か膜のようなものが張られている事に。

 

「士道?」

 

不審に思った琴里が振り返る。

そして次の瞬間、上方から目の前───琴里のいる場所に、何かが落ちてくるのが見えた。

凄まじい爆発音が響き渡り、視界に広がっていた景色が炎に包まれる。

 

「琴里!」

 

“此処で士道はオルガやアトラ達以外で初めて焦った様な声“を出した。

 

「────!!」

 

士道はすぐに顔を上げ───そこにいた人物を見て口を開いた。

 

「またお前か」

 

そう。士道と琴里のいた場所を睥睨するように、空には、ワイヤリングスーツに、CR-ユニットを纏った鳶一折紙が浮遊していたのである。

 

「────士道。ここは危険。離れていて」

 

「どの口が言っている」

 

士道はそう答えると同時に、周囲の客達もその異常事態に気づいたらしい。辺りから甲高い悲鳴が幾つも響き、客達がバタバタと逃げ去っていく。

それはそうだろう。平和だった遊園地に、ミサイルを放って辺り一帯を焦土と化したのだ。逃げるのは当然だった。

二人が睨みあっている中、煙の中から声が耳に届く。

 

「やってくれるわね。鳶一折紙。あなたはもう少し賢明な人かと思っていたのだけど」

 

燻っていた煙が、風に巻かれるように霧散する。───その中心には、焔の壁に守られた琴里の姿があった。

 

「・・・私の事を知っているの?」

 

「警報も鳴っていない、避難もできていない中でミサイルをぶっ放すようなクレイジーな女なんて知らないわ」

 

「・・・・・・」

 

折紙は無言で、キッと視線を鋭くする。

そしてそれと同時に士道は吹き飛ばされた。

 

「チッ」

 

弾丸のように吹き飛ばされる自身に士道は舌打ちをしながらバルバトスをすくざま呼び出す。

バルバトスから発せられるエイハブウェーブが折紙が形成するテリトリーをかき消して士道は落下する。

着地体制をとった士道はプールのタイルを踏み砕いて着地すると同時、スラスターを全開に吹かせようとしたその時だった。

 

「“三日月!!”」

 

「────────」

 

誰か聞き覚えのある声が士道の背に投げられ耳に届く。

士道は振り向くとそこにいたのは────

 

「ユージン?」

 

かつて、一緒に戦った仲間にして家族であったユージンの姿がそこにあった。




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第十五話

投稿!!

撃っちゃうんだなぁこれがぁ!!


中身がユージンなゾルダン


「くそっ!?どうなってんだよこりゃあ!!」

 

ユージンはそう叫びながら戦場と化したテーマパークを走り回る。戦争などこの時代に生まれてからは体験などした事はないが、鉄華団の副団長として、この程度の荒事は日常茶飯事のことだった。

 

「平和な国って話だったが、とんだ嘘っぱちじゃねえか!!こんな時によぉ!!」

 

そう叫ぶユージンだったが、同時にその顔は笑みを浮かべていた。

そう、こんな大事になるとなると必ず“三日月の奴が首を突っ込みに来る“。そんな確信がユージンにはあったのだ。

もし、あの五河士道という二年生が三日月なのだとしたら、確実にこの騒動を起こした元凶を潰しにくる。もし、彼女達が怪我などをしたなら尚更だ。

 

だからこそ、そこを狙う。

 

ユージンにとっての狙い目はそこだ。もし、あの二年生が三日月なら俺が名前を呼んだだけで気づく筈だ。それで俺の姿を見て、ユージンと言えば尚の事、ソイツが三日月だと確信できる。

 

「・・・と、危ねえ!?」

 

倒れてくる街灯を大げさに避けながらユージンは走り続ける。

 

「どこだ・・・どこにいる・・・?」

 

首を左右に振りながらユージンは三日月、もしくはバルバトスの姿を探す。

前者はともかく、後者ならかなり目立つから見つけやすい。

煙や火を上げ、悲鳴が上がるテーマパークを縦横無尽に走り、探しまわる。

一度疲れて足を止めたその時だった。

 

ドゴォォォン!!

 

目の前で何かが勢いよく着地する。

砕けるタイルと共に粉塵が舞い上がる。そしてユージンは目の前の人物を視界に映した。

白を特徴とした装甲。頭部から伸びる二本のツインアンテナ。巨大化した両腕にその手に握られているのは巨大な黒光りするメイス。

鉄華団の遊撃隊長を務め、最後にはオルガと一緒に皆に生きる先の道を作った狼王の名を持つ悪魔。

 

ガンダムバルバトスルプスレクス

 

その悪魔の姿を目に写していたユージンはすぐに叫んだ。

 

「“三日月!!“」

 

アイツにとってもっとも呼び慣れた名前。

頼む。三日月であってくれというユージンのちっぽけな願いと共に、バルバトスの背中を見続けるユージン。

そんなユージンの願いが叶ったのか、バルバトスが此方へと振り向いた。

ライトグリーンのツインアイがユージンを捉えると、そこから響くような声が聴こえてきた。

 

「ユージン?」

 

その声はかつての三日月の声とは違う。

だが、ユージンはコイツが初対面である俺の名前を呼んだ事で三日月だと確信した。

呆気にとられるような彼にユージンは近づいていくと拳を握りしめ、バルバトスの頬の装甲へと殴りつけようとする。────が、三日月がそんな事を許すわけもなく、ユージンの手を掴むと同時、一気に握り返してきた。

 

メキメキメキ!!────と、嫌な音がユージンの腕から鳴り響く。

 

「イデデデデデデ!?三日月!折れる!折れるって!?だから離してくれって三日月!すんませんした!!」

 

「そう?ならいいけど」

 

そう答える士道にユージンは涙目で言う。

 

「いってぇ・・・お前、見た目が変わっても中身が全く変わってねえな。少しは丸くなってるのかと思ってたのによ!!」

 

そう叫ぶユージンに対し、士道はユージンに言う。

 

「変わるわけないじゃん。俺は俺だよ」

 

「・・・そうだな。お前はそういう奴だもんな。何でもかんでもオルガと一緒の道を選びやがってよ・・・」

 

語尾がどんどん弱くなっていくユージンに士道は黙ったままだ。

 

「アトラだってよ、ずっとお前が帰ってくるのを待ってたんだ。それなのにお前は!」

 

「ユージン」

 

ユージンの言葉に士道は口を挟む。

 

「俺やオルガは最初は皆が、家族が幸せになれればいいって考えてた」

 

そう言う士道にユージンは口を閉じる。

 

「けど、俺はオルガが目指した本当の居場所で過ごして、見てみたけど“アトラ達もこんな気持ち”だったんだなって少しだけ分かった気がする」

 

「・・・何がだよ」

 

ユージンは士道の言葉に問いを返す。

 

「守りたい奴や皆がいない帰る場所なんて楽しくないなって」

 

「・・・・・」

 

士道の言葉にユージンは黙って聞いたままだ。

 

「ねえ、ユージン。俺はこの場所で・・・“帰る居場所”ってあると思う?」

 

それは士道の三日月なりの疑問だった。

最初は十香や琴里で自分を誤魔化していた。此処が今の自分の帰る居場所だと。

だが────ユージンを見てしまった今、士道は三日月は考えてしまうのだ。此処は自分が居ていい場所なのかと。

今の時代、自分のような戦う事しか出来ない兵士はいらない。琴里と喧嘩をした時だって、人を殺した時だ。

自分の常識が間違っている。なら、自分の帰る居場所はここにはないのかと。

そんな事を聞いたユージンは言った。

 

「んなもん関係ねえよ」

 

「え?」

 

「自分の居場所が無いって?それはお前の思い違いだろうが!!ないなら作りゃいいだろ!!オルガがしたように!家族を作りゃいいだろ!!この世界だってな、アトラやクーデリアみたいにお前を必要としている奴がいるだろうが!!」

 

ユージンの言葉に士道は呟く。

 

「そっか、ありがとね。ユージン」

 

三日月はそう答えると、ユージンは「ったく」と笑いながら答えた。

そしてすぐに真剣な表情で、ユージンは言った。

 

「で、だ。三日月、この状況は一体どうなってんだ?こんな状況を作り出せるものなんかモビルスーツくらいしか思いつかねえしよ・・・」

 

ユージンの言葉に士道は視線で方角をユージンに伝える。

 

「あれだよ。琴里とあの女がやりあってる」

 

「あん?」

 

士道の視線の先をユージンも見つめる。

目を細めると、焔を放つ琴里と巨大なCR-ユニットで応戦する折紙の姿が小さく見えた。

 

「映画じゃねえよな。つか、あの女の方は確か・・・」

 

折紙を見てユージンはボソリと呟いていたが、すぐさま士道に振り返ると言った。

 

「って、そんなことより早く一般人を避難させねえと、怪我人が増えるぞ。最悪死ぬやつもくるかもしれねえ。彼奴等分かってんだろうな!?」

 

そんなユージンの言葉に士道は返す。

 

「琴里は気にしてるみたいだけど、アイツは考えてないでしょ。両親の復讐するとかって言ってたし。今、それしか頭にないんじゃない?」

 

「さっきから琴里って言ってるけどよ、知り合いか?」

 

「妹」

 

「お前に妹とか・・・マジかよ」

 

そう言うユージンに士道は言った。

 

「で?どうする。被害が広がるけど、その前にアイツを殺せばいい?“副団長“」

 

「────────」

 

士道の言葉にユージンは押し黙る。

確かに元凶は早期の内に潰した方が早い。だが、ユージンはそんな士道に言った。

 

「・・・いや、殺すのは無しだ。三日月」

 

「・・・いいの?」

 

「ああ。今、この場で下手に殺したりすると俺達にも目をつけられる。そうなるのは避けてえ。だから三日月、“アイツの注意を引いてくれ”」

 

「注意を引く?」

 

そう答える士道にユージンは頷いた。

 

「ああ。その間に“俺が車を用意するから三日月は全力でアイツを引き付けてくれ”。説明は後だ!!」

 

「分かった」

 

士道は短く答えて、バルバトスを一度消すと、上着のポケットから携帯電話を取り出した。

そして電話帳を開き、コールボタンを押す。

三度目のコールと共に耳元から聞き慣れた声が響いた。

 

『兄様!!良かった!ご無事でしたか!』

 

「うん。無事。真那、十香達は?」

 

『十香さんと四糸乃さんも無事です!!』

 

真那の言葉と同時に、真那の電話越しから『シドー!無事なのか!!シドー!』と声が聞こえてきた。

 

士道は十香達が無事なのを確認すると、士道は真那に言った。

 

「真那。今から十分したら真那は十香達と一緒入り口に向かって。ユージンが迎えがくる」

 

『迎え?それにユージンって誰ですか!?兄様はどうするつもりですか?』

 

「俺は琴里の所に向かう。時間稼ぎするからなるべく急いでね」

 

『えっ?ちょっと待ってくださ────』

 

真那の言葉を待たずに士道は電話を切る。

 

「ユージン。十分後、遊園地の入口に十香達が行くように言っておいたから頼んだよ。副団長」

 

「おう、任せとけ。遊撃隊長」

 

士道とユージンはお互いに手を出すと、軽くハイタッチをしてお互いのやるべき事へと走っていった。




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第十六話

投稿!!

「二人乗りか。ユージンが見たらきっと羨ましいがるだろうな」

三日月・オーガス


「ふ─────ッ」

 

折紙が短く息を吐くと同時に、折紙が背負っていたコンテナ状のユニットが、一斉にその口を開ける。そして、先ほどまでとは比べ物にならない量のミサイルが、煙で軌跡を描きながら地上の琴里に迫っていく。

凄まじい爆音と爆風、そして振動と衝撃波が、辺りに撒き散らされた。

地上の物を破壊し尽くす絶対的な意思で固められたミサイル群は、一瞬のうちに、遊園地の一角を壊滅させた。

 

「ふん・・・随分と行儀の悪い武器を使うわね」

 

折紙は声が聞こえる方へ顔を向ける。そこには傷一つない琴里が悠然と浮遊していた。

 

「く─────」

 

折紙が苦しげに顔を歪め、そちらに向き直る。そして再び声を上げると、それに合わせて、先ほどと同じように夥しい数のミサイルが琴里へと向かっていった。

しかも、今度はそれだけでない。

 

「─────施行性随意領域・展開!座標固定(ニニ三・四三九・三六)・・・ッ!」

 

折紙がその文言を唱えると同時、琴里の周囲に球状の結界が形作られる。

琴里が眉をひそめると同時に、ミサイル群は琴里へと襲いかかるその時だった。

青いスラスターの光が不規則な軌道をえがきながらバルバトスが両腕の砲身から弾丸を連続して吐き出す。

その弾丸は琴里に襲いかかろうとしていたミサイル郡を迎撃した。一部のミサイルに弾丸が直撃し、爆発する。そしてその爆発に巻き込まれるように次々と周りのミサイルは爆発していった。

 

「なッ─────」

 

折紙は驚きの声を上げる。

それは危険だと引き離した士道がもう戻ってきたのだ。

 

「士道、もう戻ってきたの?あいにくだけど────」

 

琴里が士道に言うのと同時に、士道は琴里を手を取る。

 

「へっ?」

 

「琴里。駐車場で待ってて。すぐに迎えが来るから」

 

唐突な士道の行動に琴里は間の抜けた声を上げる。

そして──────

 

「ふッ──────」

 

士道は全力でそんな琴里を駐車場目掛けて投擲した。

 

「ちょ────士道なにすんのよぉぉぉ!!」

 

投擲された琴里は叫ぶが、士道はそれを聞き流す。

士道は折紙に視線を向けると同時に、巨大メイスを折紙目掛けて投擲した。

 

「ッ─────」

 

折紙はその投擲された巨大メイスを回避すると同時に士道に問いを投げる。

 

「どうして邪魔をするの」

 

折紙のその言葉に対し、士道は言う。

 

「そんなの決まってるじゃん」

 

士道はツインメイスを握るのと同時に、折紙に言った。

 

「家族だから守る。それだけだ」

 

そう言って、士道は折紙へと向かっていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「全く兄様は人の話を聞かないんですからぁ!!」

 

真那がそう叫びながら十香達と一緒にパークの駐車場へと走る。

 

「シドーのもとへ向かわなくていいのか!?真那!!」

 

十香のその声に真那が言い返す。

 

「行きてーのは分かりますが、今は堪らえてください!!兄様にも何かしらの考えがあるようでしたし、変に動いたら此方が危なくなるだけです!」

 

とりあえずは士道の言うとおりに動いた方がいいと叫ぶ真那によしのんが口をパクパクと開く。

 

『でもでもー、そのユージンって人とよしのん達が合流しても大丈夫なのかなー。いくら士道くんが言ってもちょっと心配だよー』

 

「それは私も心配です!!」 

 

そう返事を返す真那。

そのユージンという人がどういった人なのか分からないが、彼女達にとっても心配なのは分かる。

そんな中で、エントランスの目の前に一台のワゴン車が止まっているのが見えた。

そして運転席の窓を開けて金髪の髪の男性が十香達に叫ぶ。

 

「お前等が十香達だな!?早く乗れ!!三日月の・・・じゃなかった、士道のもとに行くぞ!!」

 

そう叫ぶ男性に真那は走りながら叫ぶ。

 

「貴方がユージンさんですか!!」

 

「おう!!説明は車の中で話す!!だからお前等早く乗れ!」

 

ユージンはそう叫びながらワゴン車の後部座席の扉を開けた。

そして十香達はワゴン車の中に入り込む。ユージンはワゴン車の扉を閉めると同時に、真那達に言った。

 

「んじゃ今からアイツの妹も回収しにいくから気ぃつけろよ!!」

 

ユージンはそう言うのと同時にアクセルを全開に吹かせ、ワゴン車を急発進させた。

 

「ちょ────説明何も聞かされていねーですけどおぉぉぉ!!」 

 

「・・・・・・・・・ッ!!」

 

「待っていてくれッ。シドー!!」

 

「喋るなよ!!舌噛むぞ!!」

 

ユージンはワゴン車を運転しながら三人にそう言って、琴里のもとへと走っていった。




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第十七話

投稿!!

もうそろそろエピローグになります!
ちなみにどんどん三日月が半身不随に近づいていきます

「おいおい、三日月・・・俺達の出番ねえじゃねえか」


ノルバ・シノ


「士道・・・後で覚えてなさいよ・・・!」

 

琴里はそう呟きながら駐車場で彼等の戦いを傍観する。

士道が此方へと向かおうとする折紙を妨害しているのが見える。

まるで、彼女が自滅するのを待っているような戦い方に琴里は疑問を覚えた。

 

「士道がああやって戦うなんて・・・何かあったのかしら?」

 

敵にも味方にも容赦ない士道らしくない戦い方だ。

しかも本人としても、そこまで不本意そうな戦い方をしていないのが動きを見て分かる。

 

「なによ・・・私が言った時はそこまでやらない癖に」

 

そう琴里が愚痴をこぼしていると、遠くからワゴン車が此方へと走ってきているのが見えた。

車体の彼方此方がベコベコに凹んでおり、かなりぶつけたのだろうと見てわかる。

そのワゴン車は琴里に近づくと同時にスピードを落としていった。

そして、琴里の目の前でワゴン車が止まると同時に、後ろの扉が開いた。

そして後部座席に乗っていた真那達を見て、琴里は目を丸くする。

 

「真那!?それに十香や四糸乃までどうしたのよ!!」

 

ワゴン車に乗っていた三人を見て琴里がそう言うと、真那が口を開いた。

 

「に、兄様の指示に従って動いて・・・ヒデーめに遭いました・・・」

 

そう言う真那の言葉に琴里は周りを見渡すと、十香達も車酔いしたのか気分悪そうな色になっていた。

 

「そう言えば誰が運転を・・・」

 

琴里がそう思った瞬間、運転席から声が投げられた。

 

「お前が三日・・・士道の妹の琴里だな?」

 

ユージンの言葉に琴里が答える。

 

「・・・そうよ。そう言う貴方は何者かしら?私から見れば一般人にしか見えないのだけれど?」

 

そう言う琴里にユージンは言った。

 

「俺はアイツの“友人”だっての。アイツの事は昔からの付き合いだから良く知っている」

 

「友人?昔からの付き合い?私は知らないのだけれど?」

 

そう言う琴里に対し、ユージンは言う。

 

「その話は後だ後!次はアイツとの集合場所に向かうぞ!」

 

「アイツって・・・まさか、士道の所?」

 

「それ以外どこに行くってんだ!!」

 

ユージンはそう言ってサイドブレーキを下げる。

そんなユージンに真那が顔を青くしながらユージンに向けて言った。

 

「そう言えば、ユージンさんは免許を持っているので?」

 

「モビルワーカーや船は動かせるし大丈夫だっての!!出発するぜお前等!!しっかり掴まってろよ!!」

 

そう言ってユージンは車のアクセルペダルを踏み出す。

 

「物理法則にまで反逆する運転は止めて欲しいですよ!?」

 

真那の言葉は虚しくワゴン車は暴走するようにテーマパークの中へと侵入する。

途中、障害物があるにもかかわらずユージンはスピードを落とさずに障害物を躱していった。

ガタガタと激しく揺れる車内に真那は叫んだ。

 

「これなら私が運転すれば良かった!!」

 

「これ以上喋んなよ!!舌本当に噛むぞ!!」

 

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ちょっと!!止めなさい!!止めなさいってば!?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「討滅せよ─────〈ブラスターク〉!」

 

その声と同時に、至近距離から、魔力光の奔流が士道目掛けて放たれる。

目映く、青白い破壊の光。そんな破壊の光がバルバトスを襲うが、バルバトスは空中でバク転し回避すると同時に滑腔砲を折紙目掛けて引き金を引く。

 

「く・・・防性随意領域─────展開!」

 

折紙が奥歯を噛みしめてからそう唱えると、折紙の周囲に展開されていた随意領域がその面積を減らし、折紙とユニットに張り付くような格好になった。

次の瞬間、滑腔砲の弾丸がその表面へと打ち付けられる。

それと同時にテイルブレードの返しが折紙の脚を引っ掛けるとそのまま士道は自身の元へと引き寄せた。

折紙は完全に引き寄せられる前にテイルブレードから脚を外すと、距離をとった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

折紙は憔悴した様子で肩で息をしながら折紙はバルバトスを見つめる。

さっきからずっとこの繰り返しだ。

折紙が駐車場へと投げられた琴里を追おうとすると、士道に行かせまいと妨害され逆に引き寄せられる。

逆に折紙は相手が士道である為、全力で排除する事が出来ない。

防戦一方。この戦闘は折紙にとって不利しかない。

妨害を続ける士道に折紙は口を開いた。

 

「何故・・・復讐をさせてくれないの」

 

「ん?」

 

折紙の言葉に士道は反応する。

そんな士道に折紙はさらに言葉を続ける。

 

「〈イフリート〉は・・・五年前・・・私のお父さんと、お母さんを殺したのに─────」

 

「関係ないよ」

 

折紙の言葉に士道はそう言葉を返す。

 

「アンタの復讐だなんてどうでもいい。俺は俺のやることをやるだけだ。それにアンタが邪魔してるだけだから俺は潰してるだけだ」

 

「・・・そう」

 

士道の言葉を聞き、そう答える折紙。

そんな折紙に士道は言葉を続けた。

 

「それにアンタの親を殺した精霊が琴里なのだとしても、その力を封印すれば次は俺が〈イフリート〉の力を持つんだ。なら、その時は“俺を殺しにくればいい“」

 

それなら琴里は関係無いでしょ。と、答える士道に折紙は絶句する。

あくまで折紙の目当ては精霊〈イフリート〉であって五河琴里ではない。なら、その五河琴里が〈イフリート〉でなくなって、五河士道が〈イフリート〉の力を手にしたら?

なら、折紙の復讐の対象はどちらになる?

ただの人間である五河琴里か─────それとも、〈イフリート〉の力を持った五河士道か。

 

「・・・・・っ」

 

その選択に彼女は息を詰まらせる。

 

選べない。

 

折紙の出した答えはそれだった。

選ぶ事など出来ない。今は、五河琴里が〈イフリート〉であるため、選ぶ事は出来る。

だが、士道が〈イフリート〉になった場合は折紙は彼を手にかける事が出来ない。

押し黙る折紙を見て、士道は口を開く。

 

「で、どうすんの?このまま引くか────それとも限界になるまで俺と戦うか」

 

「・・・・・・」

 

武装の殆どを士道に使い果たし、それでも大したダメージを与えられず消耗するのは此方だけ。

だが、折紙は戦うしか他に方法がなかった。

武器を構える折紙に対し、士道はただ黙った立つだけだ。

そんな中、士道はふと視線を折紙から外す。

 

「・・・・・?」

 

そんな士道を折紙は不思議そうに見つめていると、士道は折紙に言った。

 

「・・・時間稼ぎは出来たから俺はもう行くね」

 

「・・・時間稼ぎ?」

 

折紙は士道の言葉を復唱すると同時に、士道はバルバトスのスラスターを吹かせるとそのまま飛び去っていく。

 

「なっ・・・まだ・・・」

 

折紙はそう言った瞬間────激痛が身体に走る。

 

「く・・・活動・・・限界?そんな。こんなところで───」

 

折紙はそう言って───力無く、その場に倒れ込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「おう。やっと来たか三日月」

 

「うん。言われた通り、時間稼ぎは終わったよ」

 

ユージンと士道はそう言って腕を交わす。

それは久しぶりのやり取りでもあった。鉄華団が無くなるまでずっと年長組でやってきた仕事終わりのやり取り。

今となってはもうやる人など自分達くらいしかいないが、それでもやれる事に懐かしさすら覚える。

 

「しっかし・・・お前、本当に変わったよな。こう・・・見た目とか声とかよ」

 

「そう言うユージンは全く変わってないよ。変わったとすれば・・・少し痩せたぐらい?」

 

「うっせぇな、お前に言われたくねえ」

 

そんなくだらないやり取りをするのも懐かしいと感じるほどに笑いながら話していく。

と、士道はユージンに琴里達について聞いた。

 

「そう言えば、皆は?」

 

「おう。今は車の中で休んでるぜ。お前の妹はもう復帰してるんじゃねえか?一番乗ってた時間が短かったしな」

 

「そっか。じゃあ見に行くね」

 

「おう」

 

士道はそう言って足を進めると、後ろからユージンに声がかけられる。

 

「三日月」

 

「なに?」

 

ユージンの言葉に士道は振り向く。

 

「俺はな三日月・・・その・・・お前がこの場所で生きていてよ嬉しかったんだぜ」

 

「・・・・・」

 

「そんだけだよ。んじゃな。行ってこいよ」

 

「うん、じゃあね。ユージン」

 

士道はそう言って琴里がいるところへと歩いていった。




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第十八話

投稿!!


そんで、アレが登場!!
まさかそこにいるのが判明!!

俺とアインの関係をセストとやらが喜びそうだと?何を言っている?

ガエリオ・ボードウェン


「こんな所にいたんだ。琴里」

 

「・・・士道」

 

士道の言葉に琴里は振り返る。だがその表情は、どこか浮かばれない表情だった。

 

「どうしたの?」

 

士道の言葉に琴里は溜息を吐きながら士道に言った。

 

「士道。貴方、隠していたでしょ」

 

「ん?」

 

「鳶一折紙が私を狙っている理由」

 

「へぇ」

 

琴里の言葉を聞き、士道は感心するように呟くと同時に琴里は士道に口を開いた。

 

「どうして言わなかったのかしら?」

 

その言葉に士道は言う。

 

「言ったら琴里、ショック受けるでしょ」

 

「・・・・・」

 

士道の言葉に琴里は何も言えない。

確かに鳶一折紙に直接言われれば、確かにショックを受けるだろう。その後の行動もある程度予測出来てしまう為、あまり理解したくない。

そんな琴里に対し、士道はこれ以上何も言わなかった。

そんな中、琴里はポツリと言葉を漏らす。

 

「ねぇ・・・士道」

 

「なに」

 

士道は琴里に言葉を返す。

 

「士道は・・・お兄ちゃんはオルガの為に戦ってるって言っていたけれど・・・本当は何の為に戦っているの?」

 

「・・・・・」

 

琴里のその言葉に士道はすぐに答える事が出来なかった。

人を殺してでも自分には戦う意味があると前に言った。その時はオルガの為に戦うと自分は言ったのを士道は覚えている。

なら、今はどう思い、戦っているのか、

士道は少し考えるような仕草をしてから自分の左手を見つめ、士道は────三日月は答えた。

 

「俺は皆の・・・家族の幸せの為に戦ってる。俺が戦えば皆が狙われずにすむ。なら、俺は皆で帰れる場所に帰りたいから戦ってるって感じかな」

 

「──────」

 

士道の三日月の口から出たのは前とは違う答えに、琴里は呆然とする。

これは彼なりの変化でもあった。ユージンと出会い、考え直す事によってその考えを出す事に至ったのだ。

前は皆の元へ帰る事が出来なかった。前に突き進む事しか出来なかったからこそ、本当の居場所がどういった所にあったのかを知ったのだ。

だからこそ、次は皆の元へ帰る。そして皆を守ってみせる。

そんな変化がユージンと出会った事で導き出されたのだ。

その言葉を聞いた琴里は少し苦笑した後、士道に言った。

 

「何それ。なら、他の精霊を助けるのもその為って言いたいわけ?」

 

「そう言う訳じゃないけど?」

 

士道の言葉に琴里はまたも苦笑する。

そして士道に言った。

 

「まぁ、いいわ。なら、私も頑張らないといけない訳だし?なんなら、鳶一折紙の為って訳じゃないけれど、他の精霊も彼女みたいな犠牲者を出さないよう全力で士道をサポートをしなくちゃね」

 

「琴里らしくて良いんじゃない?」

 

そう言う士道に琴里は振り返ると、ふと思い出したかのように言った。

 

「あっ、そうだ。お兄ちゃん。忘れてた事があるんだけど?」

 

「なに?」

 

琴里の言葉に首を傾げる士道に琴里は言う。

 

「こっちに向いて」

 

「?」

 

琴里に言われた通り、顔を琴里へと向ける。

 

「──────」

 

琴里はそんな士道に自身の唇を士道の唇へと触れさせた。

士道は唇を介して、自分の中に何が流れ込んでくるのを感じた。

それは十香や四糸乃のときにも経験した時と同じようなもの。

だが、それと同時に──────

 

「──────」

 

頭の中へぼんやりとした記憶が流れこんできた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

家のすぐ向かい側にある小さな公園で琴里はその日、一人で遊んでいた。

いや、遊んでいた・・・というのは少し違うかもしれない。琴里はつまらなそうにしながら、キコキコとブランコを揺らしていただけだった。

 

(う・・・、ぇ・・・っ)

 

泣き出しそうな琴里に頭上から、声がかけられた。

 

【───ねえ、何を泣いているの?】

 

(え・・・・?)

 

顔を上げる。そこには、なんとも形容しがたい人物が立っていた。

そこにいるのはわかるのに、どんな姿形をしているのか分からない。

言葉を認識できるのに、どんな声をしているのかわからない。

そんな『何か』が、そこにいた。

琴里は肩を震わせた。こんな得体の知れない人物に警戒を抱くなという方が無理な話である。

 

(だ、大丈夫です。もう、おうちに帰るところです)

 

琴里はそう言うと目を擦り、ブランコを降りて、家の方に走っていった。だが────

 

【ふうん、お父さんとお母さん、お兄ちゃんもいないんだ。誕生日なのに、寂しいね】

 

そんなことを言われて、琴里は足を止めた。

 

(な、なんで、そんなこと・・・)

 

問うも、『何か』は答えを返してこなかった。その代わり、静かに続けてくる。

 

【───君が今より強くなれたら、お兄ちゃんも君を認めてくれるのにね】

 

(・・・っ、それ、は)

 

【ねえ、もっと強くなりたくはない?お兄ちゃんに心配をかけないでいられるくらいの力が、欲しくない?】

 

(・・・・・)

 

琴里が押し黙っていると、その『何か』が小さく笑った気がした。

そして、琴里の方に手を伸ばしてくる。

するとその手の平の上に、小さな赤い宝石のようなものが現れた。ぼんやりとした輝きを放つ、なんとも不思議な物体が。

 

(きれい・・・)

 

その言葉に、『何か』はもう一度笑うと、言葉を続けてきた。

 

【もし、強くなりたいのなら、これに触れるといい。そうすれば、君は誰より強くなれる。お兄ちゃんも、きっと強い君を好きになってくれるよ】

 

琴里は、ごくんと唾液を飲み込む。

 

(本当に・・・おにーちゃんが・・・私を、好きになってくれるの?)

 

【ああ、もちろんだとも】

 

『何か』が言う。誘うように。誘うように。

琴里は、ゆっくりと手を伸ばし、それに触れた────。

触れて、しまった。

 

(・・・・!?)

 

瞬間、赤い宝石が琴里の手の平に溶け入ったかと思うと、琴里は全身が火に焼かれるように熱くなるのを感じた。

それと同時に、琴里の衣服が下から燃えていき────奇妙な和装のようなものに変化していく。

 

(・・・・ッ!?あ、ああ・・・っ)

 

全身を襲う炎の熱に顔を歪める。

そして周囲に真っ赤な焔が生まれ、その焔が撒き散らされた。

公園に。向かいの家に。その隣のアパートに。そしてそのまた隣の店に。

街の全てを飲み込んでしまうくらい、苛烈に、猛烈に。

と。その瞬間、上空より一閃の光が地面に突き刺さり、琴里の目の前にいた『何か』が姿を消す。

 

(え・・・?何───これ・・・)

 

ようやく全身を襲う痛みが和らいだ琴里は、周囲の様子を見て取れるくらいになったときには────琴里の視界に映る景色は、一変していた。

 

(あ、あ、あ・・・)

 

琴里の大好きな家が、公園が、街が燃えていく。

それが自分自身の手によるものであることは明らかだった。

琴里の身体に巻き付いた焔の帯が、視界にあるもの全てを焼き尽くしているのである。

 

(お・・・にーちゃん・・・!おにーちゃん・・・ッ!)

 

目から大粒の涙をこぼす琴里の目の前に、巨大な■■が土煙を上げながら着地した。

 

(ひッ────)

 

巨大な顔を琴里へと向けながらその■■はジッと琴里を見ている。

周りには赤い一つ目の怪物達が集まってきているのが見えた。

琴里はその絶対的な恐怖に目を瞑り、身体を小さく縮こませる。

だが─────

 

【やれやれ。“君のような怪物“はお呼びじゃないんだけどね】

 

『何か』はそう言ってその■■を見つめる。

琴里も弾かれたように顔を上げると、そこには、先ほどの『何か』が立っていた。

 

(あなた・・・は──────)

 

琴里は、わなわなと身体を震わせながら『何か』を見上げた。

 

(わ、私の身体に・・・何をしたの!?私・・・要らないっ、こんな力・・・要らないっ!)

 

琴里が言うと、『何か』は静かに返答を返す。

 

【そう。でも少し待ってて。まずは“彼“をこの怪物から引き剥がさないといけないから】

 

『何か』はそう言って呟く。

 

『────────────』

 

■■は『何か』をジッと見つめたまま動かない。

そしてそのまま、■■は光の粒子となってその少年の影の中へと一つ目の怪物と共に消えていった。

琴里は涙で潤んだ瞳で現れたその少年を見る。

 

(おにーちゃん!!)

 

琴里はそう叫びながら士道の方へと近寄ると、火傷や肩から腹部にかけて肉を抉ったかのように傷痕が這っていた。

どう見ても助かるような状態には思えない。

 

【彼を助けたい?】

 

『何か』はそう言って琴里に視線を向ける動作をする。

そんな『何か』に対し、琴里は士道の方へ視線を戻す。

 

(おにーちゃんを、助ける方法が・・・あるの?)

 

【ええ】

 

そして『何か』は、その『方法』とやらを、静かに語り始めた。こんな場所で言うには、あまりに馬鹿らしい、方法。だけれど、琴里には、他の選択肢などは無かった。 

琴里は小さく深呼吸をすると、『何か』の言った『方法』を実行し──────

 

そこでその記憶が暗転した。

 

 

 

 

「今のは──────」

 

士道は若干驚いたような顔をしながら先ほど見た記憶にぼやく。

どうやら琴里も同じようだったようで呆然と声を発する。

 

「思い・・・出し、た。あのとき・・・わたしは─────あの、『何か』に─────」

 

そう呟く琴里に対し、士道は自身の影を見つめる。

琴里達の前に現れた“アレ”。あれについては士道も良く知っていた。

モビルアーマー。厄祭戦を引き起こした天使の名を持つ殺戮兵器。

アレが今もなお、自分の影の中で眠っている。

なら──────

 

チョコの人に言っておくか。

 

チョコの人なら何とかしてくれそうだし。と、士道は思いながら、琴里に上着を渡した。




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第十九話 エピローグ

投稿!!

あれはどうする?

ああ、敵からは離れていってるし、回収は後でいいでしょ

鬼かよ・・・・

三日月・オーガス

昭弘・アルトランド


夕日がビル群の谷間に落ちた頃。

ビルの屋上の縁に腰掛けるようにしながら、時崎狂三は気怠げに首を回した。

背後には、数名の人間が倒れている。否───正確に言うのなら、このビルの中にいる人間全てが、意識を失っている状態であるはずだった。

〈時喰みの城〉。狂三の影を踏んでいる人間から時間を吸い上げる、狂三の持つ広域結界である。

狂三の左目の時計が、逆方向にくるくると回る。

先日予想以上に消費させられてしまった『時間』を埋めるように。

狂三は小さく息を吐くと、ビルを覆った影を、ゆっくりと自分の足元に収めていった。

本来ならば死の直前まで時間を吸い尽くした方が効率はよいのだが、これだけの人数が大量死したとなれば間違いなく騒ぎになる。まだ十分に『時間』を補充できていない狂三としては、ASTやあの赤い精霊に嗅ぎつけられるのは避けたいところだった。

“彼“に関しては関係のある人間に手を出さない限りは自分から出ることはしないだろう。

 

「・・・ふぅ。まだまだ、足りませんわね・・・」

 

軽く伸びをすると、左手を伸ばして唇を開く。

 

「〈刻々帝〉」

 

すると狂三の影から、巨大な時計が姿を現す。

狂三が片手を掲げると、時計の短針────古式の短銃が、手の中に収まった。

続けるように、妖しく唇を動かす。

 

「───【八の弾】」

 

狂三の声と同時に、左目の時計が凄まじい速さで順方向に回転し、『Ⅷ』の数字から滲み出た影が短銃の銃口に吸い込まれていく。

そして狂三は、影の装填された短銃ノ銃口をゆったりとした動作で自分のこめかみに持っていくと、何の躊躇いも無く引き金を引いた。

瞬間、頭をぐわんと揺らすような衝撃が通り抜けていき、“狂三の身体が二つに分かれる“。

いや、正確に表現するのであれば、狂三から、もう一人の狂三が生まれた・・・と言った方が適切だろう。

 

「まったく、本当に燃費の悪い子ですわ」

 

愚痴るようにこぼしながら、もう一発勝負、【八の弾】をこめかみに撃ち込む。すると再び狂三の身体からもう一人の狂三が生まれ、屋上に蟠った影に吸い込まれていった。

数日前、来禅高校の屋上で五河士道に消された分身体の数はおよそ百体前後。

未だ狂三の影の中に、幾体もの分身体を保有しているが───彼を捕まえるのにはまだまだ数が必要になってくるだろう。

 

「次は・・・絶対に、いただきますわよ、士道さん」

 

唇を歪んだ上弦の月にし、くすくすと笑みを漏らす。と───

 

「・・・・?」

 

狂三は不意に後ろを振り向いた。誰も────少なくとも意識のある人間はいないはずの屋上に、何者かの気配を感じとったのである。

だが、すぐにその正体は知れた。鼻から息を吐き出し、肩をすくめるようにする。

 

「ああ、ああ、あなたですの」

 

狂三は眉を撥ね上げ、軽く目を細めた。そこには、見覚えのあるシルエットが立っていたのである。

しかし、『正体は知れた』・・・というのは少し語弊である。何しろ『それ』は、実像を見取るのも困難なほどに、存在の解像度が粗かったのだから。

 

【────どうだった?彼は】

 

男なのか女なのか、低いのか高いのか、それすらわからない奇妙な声音を響かせてくる。

だが、別に始めての事ではない。狂三は驚くでも悠然と首を前に倒した。

 

「ええ、素晴らしかったですわ。あんな方が実在するだなんて、この目で見るまで信じられませんでしたけれど」

 

そう言う彼女に対して、『何か』は言う。

 

【しかし・・・彼のことは諦めたのかな?】

 

「ふふ、まさか」

 

『何か』の言葉に鼻を鳴らす。

 

「────でも今は、『時間』を蓄えるのが先ですわ。今の状態では、彼を抑えるのもいっぱいいっぱいですし。・・・でも、諦めませんわよ?」

 

【八の弾】で頭部を撃ち抜きながら、続ける。

 

「〈刻々帝〉最後の弾────【一ニの弾】を使うためには、士道さんの力が必要なんですもの。絶対、絶対いただきますわ。絶対、絶対諦めませんわ」

 

そう。永劫に叶わぬと思っていた願い。

この世に生まれ落ちてからずっと心に燻り続けた悲願。

それを達成しうる道を、ようやく見つけたのである。

 

【───時間遡行の弾。そんなものを使って、一体何をするつもり?】

 

「・・・・・・」

 

その言葉に狂三は眉をひそめて視線を鋭くした。

 

「なぜそこまで知っておられますのかしら?人に見せたことはおろか、話したこともないですけれど」

 

【さて・・・なぜでしょう】

 

おどけるように言ってくる『何か』に狂三はふんと鼻を鳴らした。

 

「────【一ニの弾】。わたくしはそれで、三十年前に飛びますの」

 

【三十年前・・・?なぜそんな時代に】

 

『何か』が問うてくる。狂三は短銃の引き金に指をかけながら続けた。

 

「三十年前、この世界に初めて現れたという精霊。全ての精霊の根源となった『最初の精霊』。────それを、この手で殺すためですわ」

 

【・・・・・】

 

『何か』が、無言になる。狂三は構わず言葉を継いだ。

 

「この世に、精霊が現れたという事実を消し去る。今この世界にいる全ての精霊を、“なかったことにする“。────それがわたくしの悲願ですわ」

 

しばしの沈黙のあと、『何か』が声を発した。

 

【そう────君は、意外と優しいんだね】

 

「・・・・・っ!」

 

狂三は不快そうに眉根を寄せると、握っていた短銃を『何か』に向けて引き金を引いた。

だが銃口から放たれた弾がその身に届く前に、『何か』の身体は闇に溶けて消えていった。

 

──────と。

 

ゾクッと狂三は寒気を覚え、肩を震わせる。

 

「──────ッ!!」

 

狂三は再び銃口を向けると、そこには巨大な赤い一つ目がじっと見つめていた。そしてその一つ目は何もせず、スッと影の中に消えていった。




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八舞テンペスト
第一話


最新話投稿!!

ある意味、三日月とオルガとの関係性に近いような二人の登場です!!

お兄ちゃん帰ってくるかなー?

まだお仕事だよー

地球にもトウモロコシってあるのかな?

あればいいね!

うん!

地球モロコシー!!

地球モロコシー!!

クッキーとクラッカ


「・・・なにこれ」

 

士道は面倒くさそうな心地でそう呟くと、同時に今自分が置かれている状況を再度確認するために目を動かす。

士道の視界には、二人の少女が確認できた。

一人は明るい色の髪を結い上げた、勝ち気そうな少女。

唇の端を小さく上げ、美しい造作の顔に不敵な笑みを浮かべている。

 

「くく・・・士道よ。何を悩む事がある?御主はただ選べばよいのだ。このわれを。八舞耶俱矢を。さすれば主の望みを何なりと叶えてやるぞ?」

 

言って、少女────耶俱矢が、まるで演劇でもしているかのような調子で優雅に手を伸ばし、士道のあごをクイと持ち上げてくる。

だが───それで終わりではない。

もう一人の少女は、耶俱矢と非常に────それこそ、ドッペルゲンガーを疑うほどによく似た顔立ちをしていた。

三編みに結われた髪に、どことなく物憂げな色を映す双眸。そしてその肢体は耶俱矢とは違い、肉厚的な魅力があった。

 

「誘惑。士道、耶俱矢などより、夕弦を選んでください。耶俱矢の貧弱な身体では味わえない快楽を与えてあげます」

 

言って、指先で士道の頬を撫でてくる。

それらに対し、士道は顔を変えないままだ。

 

「ふ・・・やめておけやめておけ。貴様なぞに言い寄られては、士道も迷惑というものだ」

 

「失笑。正攻法では勝てないからと、夕弦の行動にけちを付けるのはみっともないです」

 

耶俱矢と夕弦は互いに睨み合うと、まったく同時に士道に視線を戻し、これまた同時にバッと手を差し出した。

 

「さぁ、士道よ」

 

「質問。どちらを選ぶのですか?」

 

「・・・・・・」

 

彼女達の質問に、士道はどうしようかと久しぶりに考える。

そんな士道に、

 

「なあ・・・我の方が、可愛いだろう?」

 

「質問。夕弦では・・・駄目ですか?」

 

二人して上目遣いになりながら、士道に問うてくる。が、士道は動じなかった。

その代わりに別の方向で思考を働かせる。

確かに、自分は精霊を助ける為にこの仕事をしている筈だ。

それなのに・・・

────今士道は、なぜ精霊に“攻略されて“いるのだろう?

士道は溜息を吐きながらそう考えていると、耶俱矢と夕弦がさらにぐいと手を伸ばしてきた。

 

「さぁ────どちらか一方を」

 

「請願。選んでください。士道」

 

そんな二人に士道はまだ、クッキーとクラッカの相手をしている方がマシかも知れないと考えていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「────それでは、処分を言い渡す」

 

静かで重い男の声が、直立した折紙の鼓膜を震わせる。

自衛隊天宮駐屯地の一室には今、数名の男たちが居並び、部屋の中央に立った折紙に視線を向けていた。その表情は一様に険しく、まるで折紙を糾弾しているかのようである。

だが、それも当然だった。

なぜなら、今行われているのは、先の折紙の不祥事に対する査問であったのだから。

 

「鳶一折紙一曹を、懲戒処分とする。もう顕現装置に触れることは二度とないと思え」

 

「・・・・・・」

 

予想通りの言葉。表情を変えることもなく細く息を吐く。

とはいえ、あれだけのことをしでかしたのだ。当然といえば当然である。むしろ折紙自身、それを覚悟の上で起こした行動でもあった。

あの精霊さえ。折紙の両親を殺した炎の精霊〈イフリート〉さえ倒せたなら、もう戦えなくなっても構わないと、討滅兵装の引き金を引いたのだ。

だが士道の手によって全て妨害され、それでいてなおかつ、その力はもう士道に封印されているはずだろう。

そうなれば、五河琴里を狙う事は出来ない。すぐに、士道がすぐに飛んでくるだろう。

だが──────その瞬間。

 

「・・・・?」

 

突然部屋の扉が開かれ、部屋に居並んだ男たちの視線がそちらに注がれる。

 

「────ミスター・ウェストコット?」

 

その怪訝そうな声と顔に違和感を覚え、折紙もちらと後方を見やる。

そこには、一人の男が、秘書と思しき少女を従えて立っていた。

漆黒のスーツに身を包んだ背の高い男である。くすんだアッシュブロンドに、顔にナイフで切り込みを入れたかのように鋭い双眸。歳はせいぜい三十代半ばといったところだったが、どこか不思議な男だった。

その男の顔を見て、折紙は微かに眉を動かした。

DEM社業務執行取締役、サー・アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット。

世界で唯一顕現装置を製造することの出来る会社の、実質的なトップである。

 

「─────ああ、お取り込み中だったかな。これは失礼」

 

ウェストコットはそう言って、笑みを浮かべた。

その笑みはどこか、気味の悪いものであった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ふむ」

 

マクギリス・ファリドは資料を手にし、先週に起こった件について見直す。

 

「五年前。この天宮市で起こった大火災。これは〈イフリート〉である五河琴里の起こしたものだったが、その力は彼によって封印されたと。そして問題は─────」

 

そう言葉を切るのと同時に画像を見る。

荒い画像の中に巨大な機械で出来た鳥のようなものが映っていた。

 

「モビルアーマー。厄祭戦の禁忌が彼の影の中に消えていったと言う話だったが、その前に接触した“精霊を襲う“ことはなかった。何かしら関係があるのか?」

 

そう呟くマクギリスの声は誰の耳にも入る事はない。

そんな中で、デスクに置いてある電話のコールが鳴り響く。

 

「私だ」

 

マクギリスは電話を取りそう言うと電話の内容を聞き、顔を顰めさせる。

 

「なに?ウェストコットが日本に?」

 

マクギリスはそう言うのと同時に窓の外を見る。

 

「ああ。また、スケジュールを変更しておこう」

 

そう言って、マクギリスは電話を切る。

そして手を口もとで組むと、この場にはいない三日月に彼は呟いた。

 

「三日月・オーガス。彼に目をつけられなければいいが」

 

マクギリスのその言葉は誰にも届く事はなく、部屋に響き渡った。

 

 




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第ニ話

投稿!!


「とらんす・・・あむ?」

トランザムが言えないアトラ・ミクスタ


「なあ、三日月」

 

「ん?」

 

誰もいない学校の屋上でユージンはパックジュースを飲みながら士道に言った。

 

「期末テストどうだったよ?お前碌に勉強してなかっただろ」

 

「別に問題ないよ。十香は疲れてたけど」

 

「ああ・・・あんまり勉強出来そうな奴じゃねえもんな」

 

士道の言葉にユージンは顔を困らせながらそう呟く。

 

「そう言うユージンは?結構頑張ってたみたいだけど?」

 

「んー。まあ、ボチボチだな。放課後呼ばれる事はねえだろ」

 

そう言って、ユージンは飲みきったパックジュースを握りつぶすと、士道にパスをする。

士道は手に取ったパックジュースをそのまま、屋上から中庭にあるゴミ箱へと投げ入れた。

ボスッと入るパックを見てユージンは士道に言う。

 

「ナイス」

 

「ん」

 

気の抜けた短いやり取り。これが平和ボケと言うのだろうか。

そんな事をしながら、お互い街を眺める。

─────と、ユージンから話題が上がる。

 

「そういや、もうすぐ修学旅行だろ?沖縄か?」

 

「うん。次のホームルームにその話するみたい」

 

士道の言葉にユージンは視線を空へと上げる。

 

「良いよなぁ。三日月は、水着の姉ちゃんを見れんだからよ」

 

「海に行ったって、琴里から阿頼耶識を見せるなって言われてるから特に変わんないよ」

 

「・・・そういやそうだった」

 

士道の言葉にユージンは苦い顔をする。

結局、士道の阿頼耶識をユージンも見せてもらったものの、かつて自分達が付けていたものと一緒だという事だけ。手術なんぞ、当の本人が知らない時点でユージンにも分かりようがなかった。

“キーンコーンカーンコーン“と、チャイムが鳴る。

 

「んじゃ、また明日な三日月」

 

「うん。また明日」

 

そう言う士道にユージンはふと、左手首につけられたミサンガを見て目を丸くする。

 

「なあ、三日月。それってよ・・・」

 

「ん?ああ、これ?十香達から貰った」

 

そう返す士道にユージンは溜息を吐く。

 

「ああ、だからそんなに多いのか。幾つあんだよ・・・」

 

「五つ」

 

士道は指を五本上げてそう言った。

 

「五つって・・・十香と妹以外に誰のがあんだよ」

 

「四糸乃と真那の。後一個は・・・誰のやつだろ?」

 

指を折りながら首を傾げる士道にユージンは呆気に取られる。

 

「・・・誰のってお前、何かに取り憑かれてんじゃねえのかよ」

 

「・・・さあ?そんな気しないけど」

 

「おめぇな・・・」

 

無関心すぎる士道にユージンは半ば呆れながらも、教室の方へと足を進める。

 

「・・・と、そろそろ急がねえと。じゃあな」

 

「うん」

 

士道とユージンはそう言ってお互いの教室へと歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「シドー!!何処に行っていたのだ!」

 

教室に戻った士道は、早速十香から言葉が投げられる。

 

「屋上に行ってた」

 

「・・・屋上?何をしにだ?」

 

「ユージンと話してただけだよ」

 

「む、むぅ・・・そうか」

 

妙に歯切れの悪そうな声と表情を作る十香に士道は首を傾げる。

 

「どうかした?十香」

 

士道の疑問の言葉に十香がポツリポツリと呟く。

 

「最近・・・シドーはそのユージンとやらにずっと構っているようなのでな・・・その、少しだけ寂しいぞ」

 

「・・・・・」

 

そう言えば最近、学校では十香とあまり喋っていない気がする。

十香は今の今まで口に出さなかったようだが、寂しがっていたようだ。

士道は少し顔を暗くしている十香に言った。

 

「そっか。じゃあ今日は一緒に帰ろうか」

 

「・・・!!うむ!!」

 

最近十香にも構って上げられなかったし、多少は十香のわがままにも付き合おう。

十香の嬉しがりように士道は少しだけ苦笑する。

そんな士道を見て、十香や近くにいた殿町やクラスの皆がポカンと顔を呆けさせる。そんな中、折紙は携帯のカメラをカシャカシャと撮影したが。

 

「・・・?なに?」

 

クラスの反応に士道は首を傾げる。

その士道の疑問に殿町が言う。

 

「いや、だってよ・・・五河がそうやって笑うの始めてみた」

 

「はぁ?」

 

殿町のその一言を聞いて士道は眉を上げる。

そんな士道に十香は興奮したように言った。

 

「シドー!!もう一度!もう一度見せてくれ!」

 

「ちょっと十香」

 

もう一度とせがんでくる十香に士道は困っていると、は以後から教室の扉が開く音が聞こえ、タマちゃん教諭が現れる。

 

「はいはーい、皆さん席についてくださぁい。ホームルームを始めますよぉ」

 

そう言うタマちゃん教諭が士道達の様子を見てくすくすと笑みを漏らす。

 

「あらー、楽しそうですねぇ。みんな何かあったんですかぁ」

 

「シドーがな!!シドーが笑ったのだ!!」

 

興奮気味に言う十香にタマちゃん教諭は「そうなんですかぁ」と楽しげに笑ってから教卓の前に立った。

 

「さ、じゃあ帰りのホームルームを始めまぁす。席についてくださぁい」

 

そう言うタマちゃんに皆が席に着く。士道も席につくと、ちらりと隣に座っている折紙に目を向けた。

先月、琴里を襲った件についてどうなったのかはチョコの人に聞いている。

二ヵ月の謹慎処分と言っていたが、どうやらその件についてASTの偉い奴がその処分を軽くしたらしい。

まぁ、しばらくはコイツの相手をしなくて済むかとしか考えていない士道は視線を戻すと、ボーッとホームルームの話を聞く。

と、タマちゃんが思い出したかのように指に手を当てた。

 

「と、皆さんには帰る前に決めておかないといけない事があるんですねぇ」

 

「はーい、何決めるんですかー?」

 

殿町が手を挙げて、質問を投げる。タマちゃんは小さく頷いてから言葉を続けた。

 

「修学旅行の部屋割りと、飛行機の席順ですよぉ」

 

ユージンと話していた内容に士道は顔を少し上げる。

集団昏睡事件が起こる前にその話が上がっていたが、期末試験も挟んだせいかクラスの三分の一はすっかりと忘れていたようだった。

 

「うふふ、みんな忘れんぼさんですねぇ。さ、じゃ早い時間ところ────っと、そうだ」

 

と、タマちゃんが、何かを思い出したように眉を跳ね上げ、出席簿に挟んであったプリントを取り出した。

 

「その前に。────今回の修学旅行、行き先が変更になりました」

 

『────え?』

 

クラス中の声が、見事に重なる。

それはそうだ。修学旅行まで半月程度しかない土壇場で、行先が変更になるのは士道も聞いた事はなかった。

 

「ええと、それで、どこに変更になったんですか?」

 

再び、殿町が質問を投げる。

 

「えっと・・・或美島です」

 

その言葉を士道は欠伸をしながら聞き流していた。




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第三話

投稿!!

バカ野郎!!バルバトスのリミッターは三日月用にしてあんだ!!お前じゃその処理に耐えられる訳ねえだろうが!!

ナディ・雪之丞・カッサパ


「修学旅行?ああ、聞いてるわ。沖縄でしょう?」

 

五河琴里は空中艦〈フラクシナス〉の艦橋で、口にくわえたチュッパチャップスの棒をピコピコ動かしながら部下の報告に応じた。

 

「・・・いや、急に目的地が変更になった。行き先は或美島だ」

 

目元に分厚い隈を蓄えた軍服姿のおんな────村雨令音が、酩酊しているかのように頭頂部をゆらゆらと揺らしながらそう言葉を続けてくる。

 

「変更?こんな時期に?なんでまた」

 

「・・・ああ。ひと月ほど前、クロストラベルという旅行会社が学校側に接触してきた。なんでも観光PRのため、ランダムに学校を選び、島に招致しているらしい。パンフレット用の写真を撮ることが条件となるが、修学旅行の費用は全て会社持ちという話だ」

 

「はー、随分太っ腹ね。・・・でも、いくら好条件とはいえ、そんな土壇場で行き先変えちゃうものかしらね。宿泊先とか決まってたんでしょ?」

 

「・・・なんでも、予定していた宿が突然崩落し、利用できなくなっているらしい。そこにそんな申し出があったものだから、学校側としても飛びついたというわけだ」

 

「崩落?」

 

穏やかではない話だ。琴里は訝しげに眉をひそめた。

 

「・・・ああ。まだ詳しくはわかっていないが、恐らく老朽化が原因だろうということだ」

 

「ふうん・・・ま、タイミングが良すぎる気がするのだけれど・・・先方がそれでいいって言っているんならいいんじゃないの?令音も羽を伸ばしてきなさいよ」

 

琴里は小さく肩をすくめながら言った。

だが、令音はふっと顔をうつむかせると、難しげにうなった。

 

「どうしたのよ」

 

令音の様子に琴里は言葉を投げる。

 

「・・・いや、思い過ごしであればいいのだが。どうやらこのクロストラベルという旅行会社────もとを辿ると、DEMインダストリーの系列会社のようでね」

 

「なんですって?」

 

その名を聞いて、琴里は不審そうに顔を歪めた。 

デウス・エクス・マキナ・インダストリー。英国に本社を構える世界有数の巨大企業であり〈ラタトスク〉の母体の一つであるアスガルド・エレクトロニクス社を除けば世界で唯一、顕現装置を製造することのできる会社である。

そして、精霊を平和的に封印しようとする琴里たち〈ラタトスク〉とは、正反対の理念を持つ組織でもあった。

 

「・・・きな臭いわね、どうも」

 

琴里はチュッパチャップスの棒をピンと立て、眉の間に深いしわを刻んだ。

修学旅行に行く来禅高校の面々の中には、士道と十香が含まれているのである。万一の事を考えて準備をしておくに越した事はないだろう。

 

「旅行は何日からだっけ?」

 

「・・・七月十七日から二泊三日だね」

 

「げ。そうなの?その日、私本部出向なのよね。まずったな」

 

と、琴里が困ったようにあごに手を当ててうなっていると、「あっ」と声を上げる。

 

「真那は?真那はどうなのよ?」

 

「・・・真那はその日に辞表を出しに行くと言っていた。行くとしても、途中参戦になる上にDEMに目をつけられない」

 

「・・・うっ、タイミングの悪い」

 

息を詰まらせると同時に琴里は頭を抱える。

 

「うー、うー」と頭を抱える琴里はふと神無月を見て、ある人物の髪の色を思い出した。

 

「ん?どうかしました?」

 

「あーっ!!」

 

「・・・・?どうしたんだい。いきなり」

 

突如叫びだした琴里に令音が尋ねる。

 

「ユージンよ!!ユージン・セブンスターク!!」

 

「ああシンの・・・だが、彼は三年生の筈だが?」

 

彼にはその時期は遠足があった筈。それに、二日間は学校がある。彼に無理強いするのも気が引けると言うものだ。

 

「でも、それ以外適任者はいる?令音だけだと気が重いでしょう」

 

「まあ・・・そうだが」

 

「だったら、早速聞いてみるわ。後は彼次第なのだけれど」

 

琴里はそう呟きながら部屋を出ていった。

そんな琴里を見届けながら令音は息を吐き、彼女と同じように部屋を出ていった。




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第四話

投稿!!

見せてみろよ。お前の力。

三日月・オーガス


今日の夜の五河家はかなり賑やかだった。

 

「十香さん。卵を五つほど取ってください」

 

「卵だな!!少し待っていてくれ!!」

 

十香はそう言って冷蔵庫の棚を漁り始める。

 

「四糸乃さん。皿を用意してもらえますか?数は・・・そうですね。五つ用意して下さい」

 

「は、はい・・・!」

 

四糸乃はそう言いながら食器棚を開けて皿を一枚ずつ取り出していく。

 

「琴里さんは・・・落ち込んでいる暇があるなら手伝って下さい。後で話は聞くので」

 

落ち込んでへこんでいる琴里を真那は立ち直させる。

カチャカチャと菜箸で卵を溶きながら真那は熱したフライパンに流し込む。

ジュワアアアアアと油と卵が音を立てながらフライパンの表面に広がっていく。

そして四糸乃が用意した皿に真那はオムレツを乗せると真那に言った。

 

「四糸乃さん。その皿を机に並べて下さい。それと・・・もうそろそろ兄様を呼んできてくれませんか?多分・・・中庭にいると思うので」

 

「・・・はい!」

 

士道を呼んできて欲しいという真那の言葉に、四糸乃は首を縦に振って窓の外からサンダルに履き替えて士道を呼びにいく。

よしのんと一緒に四糸乃は首をキョロキョロと振っていると、庭の隅に士道はいた。

 

「ふっ・・・!ふっ・・・!」

 

短い呼吸の声と共に両腕で身体を鉄棒の上へと上げる。

真剣な表情のまま、身体のあちこちから汗が溢れ出ているのを四糸乃は遠くからボーッと眺めていると、“よしのん“が口をパクパクと開きながら四糸乃に言った。

 

『あれぇ?四糸乃もしかして、士道くんに見とれてる?』

 

「えっ・・・と・・・うん」

 

よしのんの言葉に四糸乃は恥ずかしそうに小さく頷くと、よしのんは口もとをニィと吊り上げる。

 

『やー、四糸乃も士道君に声をかけないで隠れて見るなんて、四糸乃は悪い子だねー』

 

「・・・何が悪い子なの?」

 

「・・・・!?」

 

『あり?』

 

いつの間にか四糸乃とよしのんの前にいた士道に四糸乃は目を見開いて顔を赤くする。

よしのんは小さな手を腕を組むように合わせていた。

じっと見つめる士道に四糸乃は目を逸していると、軽く息を吐いて顔を離す。

 

「飯の時間で呼びに来たんでしょ。皆が待ってるから行くよ」

 

「・・・はぃ」

 

小さく消えそうな声で四糸乃は答える。

それでも士道に視線を向けない辺り、自分が聞いてはいけない事なのだろうと士道は察して部屋に歩き始めた。

 

「シドー!!早く来るのだ!!私はもうお腹がペコペコだぞ!」

 

「うん。って何で琴里はへこんでんの?」

 

士道の疑問に真那が洗い物をしながら答える。

 

「なんでも、ユージンさんに修学旅行の護衛を断られたみたいでして。あの手この手でやっても、結果ズバズバ言われてこんな有様みたいです」

 

「まぁ、ユージンは副団長やってたし、そういうこと結構言うからね。大体ユージンに言われたんでしょ。人を引っ張っていくの向いてないって」

 

「・・・グフッ!?」

 

士道の正論が琴里の胸に突き刺さる。

ただ、比較対象がオルガや名瀬という人望やカリスマ性がある人間が彼等の対象の為、彼等を超えるという意味では難しいだろう。

 

「早く飯にしようか。冷めるし」

 

「うむ!そうだな!」

 

「・・・はい。いただきます」

 

「・・・・そうね。いただきます」

 

「元気出してくださいよ。辛気臭いですよ?」

 

そんな五人の会話が食卓に広がる。

そんな中、真那が思い出したかのように口を開いた。

 

「そういえば・・・前に鳶一さんの件に話しましたっけ?」

 

「・・・?謹慎処分の話かしら?」

 

真那の言葉に反応したのは琴里だ。

 

「ええ。その時にですけど、アイザック・ウェストコットとエレン・M・メイザースが法廷に居たんですよ」

 

「?」

 

「なんですって!?」

 

「!?」

 

「・・・急にどうしたのだ!?琴里!?」

 

「・・・!ごめんなさい。なんでもないわ」

 

真那の言葉を聞いてびっくりした十香達に琴里は謝罪を入れて真那と話を続ける。

 

「それで?なんでその二人が来たのか知っているかしら?」

 

その言葉に真那は言った。

 

「さぁ?私も知らねーです。ただ・・・予想を立てるとするならですが・・・」

 

「十香達と士道・・・でしょうね」

 

「ええ。間違いなくその辺りかと」

 

二人がそう話す中、士道も話に入り込む。

 

「あのさ、一つ聞いていい?」

 

「聞きたいこと?なんですか?」

 

士道の言葉に真那がそう言うと、士道は言った。

 

「ソイツ等って強いの?」

 

士道のその言葉に真那は頷く。

 

「ええ、もちろん。特にエレン・M・メイザースはウィザードの中で最強と言われてますよ」

 

「・・・へぇ。そうなんだ」

 

士道はそう言って、十香達を見る。

十香と四糸乃、よしのんは笑顔のまま食卓で話合っている。

士道はそんな三人を見て、今度は鉄華団の時のように悲しませないように守ると思いながら、冷めたスープを飲み干した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ほう・・・彼が〈デーモン〉かい?」

 

画像のバルバトスを見て、ウェストコットがそう呟く。

 

「はい。他の精霊と接触している謎が多い“精霊“です。他の個体と違い、全体的に機械じみている事から精霊と断定していいか決めかねますが・・・」

 

巨大化したバルバトスの画像や他の精霊と変わらないサイズに伸縮している画像まで。ありとあらゆる画像や映像がテーブルの上に広げられていた。

 

「戦闘能力に関してですが他の精霊とは違い、明らかに戦い慣れている行動が目立ちます。それもあってか、隊員の何人かは〈デーモン〉との戦闘で死亡、もしくは戦線復帰が出来ないくらいに精神面をやられている方が何名かいます」

 

「それはそれは────」

 

パラパラと資料を捲り────ウェストコットは唇の端を歪めた。

 

「────なあエレン、最近精霊を相手にしていなくて身体が鈍っているのではないかね?」

 

「・・・・・」

 

言うと、エレンはピクリと頬を動かした。

精霊は気まぐれで神出鬼没である。最強の戦力を用意した所で都合良く出現してくれるとは限らないし、仮に追い詰めたとしても、消失されては意味がない。

だが、その所在がわかっているなら、話は単純だった。

 

「この件は君に任せよう────エレン。エレン・ミラ・メイザース。世界に二人と並ぶ者のない、人類最強の魔術師よ。君なら出来る筈だ。たとえ相手が、世界を殺す彼の悪逆の精霊だったとしても」

 

エレンは、一拍おいてから答えてきた。

 

「もちろんです。相手が何者であろうと、私は負けません」

 

予想通り、期待通りの返答である。ウェストコットはくつくつと、愉快そうに笑った。

 




因みにこの最強さん、相手がハシュ○が相手だとリンチにされます。
マッキー相手だと近距離戦では勝てません。
三日月だったらどっこいどっこいの実力ですが(リミッター解除は除く)。


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第五話

ソード・オラトリアは今週はお休みです

投稿!!

こちらの玉座は気に入らないかな?三日月・オーガス

マクギリス・ファリド


七月十七日、月曜日。飛行機に揺られることおよそ三時間。士道たち来禅高校二年生一行は、太平洋に浮かぶ島に到着していた。

 

「お、おお・・・・!」

 

空港から外に出た十香が、目を丸く見開いて両手をプルプルと震わせる。

だがそれも仕方のないことかも知れなかった。

何しろ今、彼女の視界には、首を動かさなねば把握仕切れないほどの絶景が広がっているからだ。

道路と砂浜の向こうに大海が広がり、水平線が伸びている。空は快晴で太陽の光が海に反射し、美しいグラデーションに彩っていた。

 

「こ、これが・・・海か!」

 

叫び、その大きさを測るかのように、両手をバッと広げてみせる。

だが無論、彼女の小さな両腕に収まりきるほど、大洋は狭くはなかった。さらに興奮した調子で、小さく肩を震わせながら身体を反らす。

士道はそんな十香を見ながら辺りを見渡した。

海、海、海。何処を見ても海が見える光景に、かつて地球に降りた時の事を思い出す。

あの時は仕事で海を碌に眺める事などしなかったが、こう見ると綺麗な所である。

だが、士道は海から漂う臭いはあまり好きにはなれなかった。

潮っぽい臭いと同時に、生き物が死んだ臭いが微かに漂ってくる。そのせいでか士道はあまり海が好きでなかった。もちろん他にも理由はあるのだが。

 

「んー・・・・」

 

首をコキコキと鳴らしながら士道は軽く伸びをする。

飛行機の中で十香と折紙が一悶着した為、寝るに寝れなかったのだ。

 

「ぬ・・・・?」

 

ふと、はしゃいでいた十香が、妙な声を出して辺りをキョロキョロと見回しだした。

 

「?十香、どうしたの」

 

「・・・いや、何か誰かに見られている気がしてな」

 

「・・・・?」

 

士道が首を傾げた瞬間、カシャリという音がして、二人をフラッシュの光が包んだ。

 

「・・・・っ」

 

突然のフラッシュに士道は目を細める。チカチカする目をいまだに細めながら光の方向を見やると、そこには大きなカメラを構えた女性が立っていることが知れた。

ノルディックブロンドというのだろうか、淡い色の金髪を風になびかせた少女である。

明らかに東洋人とは違うはっきりとした目鼻立ちと、白い肌が特徴的だった。

 

「・・・なんかよう?」

 

士道はそう訊ねると、少女がカメラを下ろして視線を向けてきた。

 

「失敬。クロストラベルから派遣されて参りました随行カメラマンのエレン・メイザースと申します。今日より三日間、皆さんの旅行記録を付けさせていただきます。────無遠慮な撮影、申し訳ありません。気分を害されたようでしたら謝罪させていただきます」

 

「・・・・!」

 

士道は彼女の名前を聞いて思い出した。

真那が言っていた最強のウィザード。確かソイツの名前が目の前にいるカメラマンの名前と一緒だと気がついた。

そんな彼女を見て、士道は口を開いた。

 

「別にいいよ。アンタだって仕事なんだろうし。けど、“変な事はしないでよね“」

 

士道の言葉にエレンは「ええ」と答えてペコリとお辞儀して、皆の方へ歩いていった。

 

「なんだったのだ、あやつは」

 

「さあ?けど、一応釘刺しといたし大丈夫でしょ」

 

「釘を・・・刺す?なんの事だ?」

 

「気にしなくていいよ」

 

首を傾げる十香に士道は適当に言って皆が集合している場所へと歩いていった。

 

◇◇◇◇◇

 

「アデプタス1より入電。目標、島に入りました」

 

「六番カメラ、北街区、赤流空港。目標を確認」

 

「こちらからも確認。〈プリンセス〉と〈デーモン〉です」

 

艦橋下段から響く声に合わせ、モニタに少女と少年の姿が映し出される。

AAAランク精霊。〈プリンセス〉と、寸分変わらぬ容姿を持った少女の姿と〈デーモン〉と呼ばれている少年が一緒に歩いている映像を見て、艦長席に腰掛けた初老の男は、小さくうなりながら髭の生えたあごをさすった。

ジェームズ・A・パディントン。DEMインダストリー第二執行部の大佐相当官であり、ウェストコットにこの〈アルバテル〉を任された艦長である。

 

「存外拍子抜けだな。本当にコイツらが精霊なのか?」

 

『────くれぐれも油断しないでください』

 

と、それを返すように、艦橋のスピーカーからエレンの声が響く。

 

『“精霊かもしれない“。それだけで、第一級の警戒をするには十分な理由です』

 

「肝に銘じさせていただきますよ」

 

そんなパディントンの反応が不服だったのか、エレンは微かに眉を歪めた。

 

「・・・ち」

 

エレンに聞こえないくらいの大きさで、舌打ちを漏らす。

最強のウィザードだかなんだか知らないが、親子ほども歳の離れた娘の命令に従わなければならないのは、やはり面白いものではない。

だが、パディントンは与えられた立場と役職を理解出来ないほどの無能ではなかったし、意味もなく悪感情を言葉にしてしまうほど幼稚でもないつもりだった。

 

「それで?どうします?いくら精霊とはいえ、〈バンダースナッチ〉の部隊にかかれば、二人くらい捕獲するのも容易いものでしょう」

 

『いえ、そう甘くはありません。〈デーモン〉が話通りなら〈バンダースナッチ〉でも全滅でしょう。それに、彼は“気付きかけている”』

 

「は?それはどういう────」

 

パティントンはそう言うと同時に────

 

「司令!!」

 

クルーが慌てるような叫び声を上げる。

 

「なんだ!!」

 

パティントンが叫ぶと同時に、画面が視界に入る。

そしてそこに映し出されていた映像には────

 

「な────」

 

悪魔が巨大メイスを振り下ろす映像が映し出された後、ノイズと共にシャットアウトした。

 

「まさか・・・気付いていたのか!?」

 

その言葉と共に、パティントンはこの〈デーモン〉と言われた精霊が他の精霊とは違う事を実感した。

 

◇◇◇◇◇

 

「シドー!何処に言っていたのだ!!」

 

「ん?ちょっとトイレにいってただけだよ」

 

「むう、それなら仕方ないか」

 

士道は十香と一緒に皆と集合する場所へと歩いていった。




実はステルス機能、バルバトス展開時だけウェーブのせいでウェーブが届く範囲内なら無効化される為に結構バレバレだったりする。



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第六話

投稿!!

ぶっちゃけ言います。
耶俱矢と夕弦、お前等二人言い回しが面倒くさい・・・


いいじゃん昭弘。まだいけそう?

ふん、当然だろ。三日月こそ、遅れを取るなよ。

三日月・オーガス

昭弘・アルトランド



「十香、急ぐよ」

 

「う、うむ!」

 

士道は早足になりながら後方を振り返り、十香に言った。

あの後、士道は十香とのんびりしながら歩いていた為、いつの間にか学校の皆が移動を始めてしまっていたのである。

 

「ちょっとのんびりしすぎたか」

 

ついでにいくつかの監視カメラを十香にバレずに叩き壊した士道はそう呟きながら、十香と一緒に小走りで走り抜ける。

 

「・・・こっちか」

 

士道は頭の中と鼻で地図と令音の独特な香水の臭いを頼りに最初に向かう資料館へと走っていく。

ついでに右耳に触れて、小型インカムが装着されている事を確認する。

旅行中、十香の機嫌が崩れたときのためにつけておくように言われていたからだ。

最悪、これで連絡を取れば道に迷う事はないだろう。

 

「ぬ・・・・?」

 

と、後方から十香の怪訝そうな声が聞こえて、士道は足を止めた。

振り返ると、また十香が空を見上げているのがわかる。

 

「十香、どうかした?」

 

「シドー・・・何かおかしくはないか?」

 

「ん・・・?」

 

言われて上空に目をやり────士道は呟いた。

 

「なんだあれ?」

 

つい先程まで綺麗に晴れ渡っていた空に、灰色の雲が渦を巻き始めているのが目に見える。

そして段々と、驚くべき速さで、辺りの様子が様変わりしていく。快晴は暗雲に。凪は烈風に。穏やかな海は荒れ狂う大波に。

時間にして、一分も経っていない。

その僅かな時間に、士道たちのいる場所の景色は、一変してしまった。

その光景は大型の台風もかくやというほどの暴風である。近くのゴミ箱が転げでもしたのか、空き缶や新聞紙が視界の中を横切っていった。

 

「ちょっとまずいか」

 

顔を腕で覆いながら、眉をひそめる。

 

「十香、大丈夫?急いで────」

 

「シドー!危ない!」

 

「は?」

 

と、言葉の途中で十香が身体を突き飛ばしてくる。

次の瞬間、金属製のゴミ箱が十香の頭にクリティカルヒットした。

 

「ぎゃぷッ!?」

 

そんな悲鳴を発して、十香がその場に倒れ伏してしまう。

 

「十香!」

 

さすがの士道もこれには叫ぶ。軽く肩を揺らすも、十香は完全に目を回してしまっていた。

 

「仕方ないか」

 

士道はぐったりした十香を米俵のように担ぎ上げると、資料館の方に向かって歩きだす。

気を失っているとはいえ、怪我人は怪我人だ。

十香の傷口を刺激しないようにゆっくりと歩いていく。

そしてどれくらい歩いただろうか。

 

「ん・・・?」

 

士道は、不意に眉をひそめた。

荒れ狂う空の中心。

────そこに、二つの人影らしきものが見えたからだ。

 

「なんだ?あれ」

 

士道はそう思いながら思考を巡らせる。

空を飛ぶ人影だなんて、士道には二通りしか心当たりがなかったからだ。

つまりは────精霊か、ASTのウィザード。

 

「もしかしてアイツら・・・」

 

士道の脳裏に直感がかすめる。

普通では考えられないこの突発性の大嵐。もし、それが精霊によるものだとしたら────

 

「ちっ。こんな時に」

 

もし、あの人影が士道の予想通りのものだとしたら少々タイミングが悪い。士道にとっては先に十香の安全が第一なのだ。士道はぐったりとした十香を担ぎ直しながら、資料館へと向かっていく。

だが。

 

「────!」

 

士道は倒れないように足を踏ん張らせる。

上空で幾度となく激突を繰り返していた二つの影が、一際大きな衝撃波を伴ってぶつかり合った瞬間、今までとは比較にならないほどの凄まじい風が吹き荒れた。

と、上空で激突した二つの影は、互いに弾き飛ばされるように地面へと落下した。

 

────ちょうど、士道の前を挟むように右と左に。

 

「・・・・・」

 

士道はそんな二人を傍目で見ながら、十香をアスファルトの上に寝かせた。

いつでも動けるように身構えながら、彼女達を見据える。

 

「く、くくくくくく・・・・」

 

と、右手から、長い髪を結い上げた少女が、不敵に笑いながら歩み出る。

歳は士道たちとそう変わらない。橙色の髪に、水銀色の瞳。整った造作の面は、しかし今嘲笑めいた笑みの形に歪められていた。

 

「────やるではないか、夕弦。さすがは我が半身と言っておこう。この我と二十五勝二十五敗四十九分けで戦績を分けているだけのことはある。だが────それも今日で終いだ」

 

芝居がかっているような妙な言葉遣いをする女の子に士道は目を向ける。

と、今度はそれに応ずるように、左側から人影が進み出てきた。

 

「反論。この百戦目を制するのは、耶俱矢ではなく夕弦です」

 

と、左側からの声に士道はそちらにも目を向けた。

こちらは、長い髪を三つ編みに括った少女である。耶俱矢と呼ばれた少女と瓜二つの顔をしているのだが、その表情は、どこか気怠げそうな半眼に彩られていた。

こちらの夕弦と呼ばれた少女も、耶俱矢と呼ばれた少女と少々デザインは異なるものの、似たような拘束服のような服を身につけていた。ただ、錠の位置などは耶俱矢とは違い、左側となっている。

 

「ふ、ほざきおるわ。いい加減、真なる八舞に相応しき精霊は我と認めたらどうだ?」

 

「否定。生き残るのは夕弦です。耶俱矢に八舞の名は相応しくありません」

 

「ふ・・・無駄なあがきよ。我が未来視の魔眼にはとうに見えておるのだ。次の一撃で、我がシュトゥルム・ランツェに刺し貫かれし貴様の姿がな!」

 

「指摘。耶俱矢の魔眼は当たったためしがありません」

 

士道と十香達に気づかず、夕弦が言うと、耶俱矢は口ごもり、先ほどまでの大仰な調子を忘れたように叫んだ。

 

「う、うるさいっ!当たったことあるし!馬鹿にすんなし!」

 

「要求。夕弦な耶俱矢に具体的な事例の呈示を求めます」

 

「くく・・・それは、あれだ。ほら・・・次の日の天気とか当てたことあるし」

 

「嘲笑。下駄の表裏と変わらない魔眼(笑)の効果に失笑を禁じ得ません」

 

どうでもいい二人の話を聞いて士道は警戒の顔から真顔に戻る。

そんな士道を他所に二人は話を続けていた。

 

「要求。次いで夕弦は耶俱矢に、シュトゥルム・ランツェについて説明を求めます」

 

「ふ・・・我がシュトゥルム・ランツェに、理に縛られた器など存在しない。有形にして無形。可視にして不可視。ただ刺し貫くことにのみ特化した概念の力よ」

 

「嘲笑。つまり特に意味がないということですか」

 

「わ、笑うなぁぁぁぁぁっ!」

 

耶俱矢が顔を真っ赤にして叫び、両手をバッと広げる。右手首から伸びた鎖がじゃらりと鳴り、周囲に荒れ狂う嵐が強くなった。

今度は夕弦も、それに応じるように構えを取る。

そして、二人は油断なく視線を交じらせたのち、

 

「漆黒に沈め!はぁぁッ!」

 

「突進。えいやー」

 

裂帛の気合いと、気の抜けた声とともに、まったく同時に地を蹴った。

 

「チッ」

 

士道はすぐさまバルバトスを使い、二人の間に向けてスラスターを吹かす。

鎖という掴みづらい得物を狙うのではなく、耶俱矢の振るう腕に目掛けて手を伸ばした。

そして夕弦の腕にはサブアームを拡張して掴みとる。

 

『・・・・!?』

 

がっちりと掴まれた腕はそれ以上動く事はなく、放たれた鎖も力無く地面へと落ちていく。

突如割り込んできた士道に二人は驚愕した顔を向けていたが、士道は気にすることなく二人に言った。

 

「こんな所で戦うな。他のやつが迷惑になるだろ」

 

その声に耶俱矢は口を開いた。

 

「人間・・・か?まさか。我らが戦場に足を踏み入れるとは、何者だ?」

 

「驚嘆。驚きを禁じ得ません」

 

言って、驚いたように視線を浴びせかけてくる。

そんな二人に対し、士道は言う。

 

「そんなことはどうでもいいよ。アンタ達は何やってたのさ。俺達の目の前で」

 

士道の言葉に耶俱矢が口を開いた。

 

「────決闘だ」

 

「決闘?」

 

耶俱矢の言葉に士道は首を傾げる。

決闘とは確か・・・赤い旗を持って────

と、士道がそこまで考えた所で、視線を鋭くした耶俱矢が口を再び開く。

 

「そうだ!我らの神聖なる決闘に横槍を入れるとは、貴様、一体どういう了見だ?答えによっては我が・・・・ええと、シャッテン・ランツェが貴様を貫くことになるぞ」

 

「指摘。先ほどと名前が違います。後、腕を掴まれている以上、こちらとしては何も出来ないのでは?」

 

「い、いいから!夕弦は黙っててよ!」

 

「疑問。夕弦が黙らねばならない意味がわかりません」

 

夕弦が涼しい顔で言うと、耶俱矢が肉食動物のようにぐるるる・・・と喉を鳴らす。

と、今度は夕弦が士道に言った。

 

「質問。腕を離してもらえるでしょうか。流石にこれでは何もできません」

 

「・・・分かった」

 

夕弦の言葉に士道は二人の腕を離すと、元の姿に戻る。

元に戻った士道を見て、耶俱矢は何か思いついたように目を見開いた。

 

「!ああそうか、これなら・・・」

 

「質問。どうかしましたか、耶俱矢」

 

「くく・・・よい方法を思いついたぞ、夕弦よ。我と貴様は様々な勝負をしてきた。それこそ、もう思い当たる種目がなくなるくらいにな」

 

大仰な身振りをしながら耶俱矢は続ける。

 

「だが・・・ひとつ、まだ勝敗を決していないものがあるとは思わぬか?」

 

「疑問。勝敗を決していないもの、とは?」

 

夕弦が首を傾げると、耶俱矢がくくく、と含み笑いを漏らし、士道を一瞥した。

 

「「?」」

 

士道と夕弦はお互いに首を傾げながら、耶俱矢に視線を送りつけると同時に、士道には変な予感を感じながら、耶俱矢の言葉を待つのだった。




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第七話

投稿!!

絶望なんてどうでも良いんだよ。アンタが敵だってことに変わりないはないから

絶望したエクストリームガンダムにイライラする三日月


移動の最中、突然吹き荒れた強風は、瞬く間にその規模を増し、激しい嵐となった。

こうなっては悠長に歩いていられない。来禅高校二年生の面々は、教諭たちの指示のもと、空港からほど近い位置にある資料館に避難した。────だが。

 

「士道・・・」

 

分厚いガラス窓を軋ませる凄まじい風に、折紙は拳を握りしめながら声を発した。

館内に避難した生徒の中に、士道の姿がなかったのである。きっと道中どこかではぐれ、外に取り残されてしまっているに違いない。

無論士道を捜しに外に飛び出そうとはしたものの、すんでのところで教諭たちに止められてしまった。

否────もし仮にあそこで外に出られていたとしても、この暴風の中ではまともに進むことすらできなかっただろう。

 

「く・・・・」

 

今の折紙には、士道の無事を祈ることしか出来なかった。無力感がやり場のない焦燥となって身体中を巡り回る。

 

「・・・おい、なんだか、空が晴れてきてないか?」

 

と、窓際にいた男子生徒が、不意にそんな言葉を発した。わらわらと生徒たちが窓の方に群がり、空を見上げ始める。

折紙はその声に弾かれるように顔をあげると、生徒たちの間を縫うようにして資料館の出入り口へと走っていった。

 

「あ・・・!と、鳶一さん!まだ危険ですよぉ!」

 

珠恵の制止を振り切り、扉を開ける。そしてそのまま外へ出───ようとしたところで。

 

「・・・・?」

 

折紙は不意に足を止めた。

資料館の前に、既に折紙の探し求めていた人物の姿があったのである。

 

「ああ、アンタか」

 

折紙に気づいたらしく、士道が口を開いてくる。風のせいだろう、髪や服は乱れていたが、幸いどこにも怪我はなさそうだった。

だが折紙は、安堵するよりも先に眉をひそめ、視線を鋭く研ぎ澄ました。

士道の様子がおかしい・・・というか、士道に変なオプションがついていたのである。

まず、士道の背に背負われた十香だ。どうやら気を失っているらしい。

まぁ、これはいい。いや、よくはないのだが、まったく予想出来ない事態ではなかった。

問題は────

 

「どうだ士道。夕弦などより我の方が魅力的であろ?我を選んだならば、我の身体を好きなようにしてもいいのだぞ?」

 

「誘惑。夕弦を選んでください。いいことをしてあげます。もうすんごいです。耶俱矢なんて目じゃありません」

 

左右にそれぞれ瓜二つの顔をした制服姿の少女が立ち、何やら馴れ馴れしく士道の身体に触れながら、やたらと士道を誘惑していることだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「い、五河くん?その左右の女の子はどちら様?見たことないけど・・・」

 

「え?現地の娘をなっナンパしてコスプレイ?五河くん女子の制服持ち歩いてんの?」

 

「いいバイトを考えついたぞ五河。『一分千円で殴り放題』って看板掲げて学校中を練り歩くんだ。きっとすぐに家が建つ」

 

「それ、来たやつ全員返りうちにされないか?」

 

ざわざわと生徒たちがどよめきだす。

士道としてはとんだ迷惑話だったが、無理もない話だ。何しろはぐれたはずの自分が見知らぬ二人を連れて来たのだから。

ただえさえ面倒くさいというのに、更に事を大きくするといくら士道でも嫌な顔をするのは当然だった。

と、クラスの面々の先頭に立った折紙が、耶俱矢と夕弦に目を這わせてから、静かに口を開いてくる。

 

「士道、その人たちは、だれ?」

 

「勝手についてきた」

 

士道は短くそう答えると同時、生徒達の後方から眠たげな声が響き渡った。

 

「・・・ああ、待っていたよ。“転入生”の八舞耶俱矢に八舞夕弦・・・だね」

 

そこには村雨令音が、ゆらゆらと頭を揺らしながら立っていた。

 

「転入生?」

 

折紙が問うと、令音が「ああ」と首肯した。

 

「・・・本来なら休み明けに転入してくるはずだったのだが・・・是非修学旅行に参加したいというものでね、現地で合流する手はずになっていたんだ」

 

結構無茶な事を言っている令音だったが、その言葉に珠恵がキョトンと目を丸くする。

 

「え?て、転入生?村雨先生、私そんなの聞いてないんですけど・・・」

 

「・・・急な話でしたから、きっと連絡が間に合わなかったのでしょう」

 

「は、はぁ・・・」

 

珠恵が困惑した顔を作りながら引き下がる。確かに、担任である自分ではなく、副担任である令音が転入生のことを知らされていたとなれば、そんな顔にもなる。

折紙が訝しげな目で令音を見てから、士道の方へ視線を戻してきた。

 

「本当?」

 

「俺がそんなの知るわけないでしょ。それに眠そうな人がそう言っているならそうなんだろ」

 

士道は折紙にそう答えると令音に言った。

 

「ねえ、眠そうな人。十香が飛んできたゴミ箱が当たって起きないから寝かせられるところ無い?」

 

何時までも十香を担ぐわけにもいかず、士道がそう言うと、令音は棒読みの調子で言って手招きをする。

 

「・・・そうか、それは大変だ。こちらへ来たまえ。転入生の二人も、いろいろと注意事項を説明しておこう。一緒に来てくれ」

 

士道は周囲からの視線を集めながら、令音についていき、資料館の奥へと歩いていった。




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実は男娼経験もあるマッキー。
それ知るとまあ、ああなるよなと思いますわ。


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第八話

投稿!!

こんな俺を人間扱いしてくれる奴らが家族って言ってくれるやつが出来たんだ。

昭弘・アルトランド


令音に案内され、資料館奥の事務室に入った士道は、十香をソファに寝かせてから令音に言った。

 

「さっきはありがとう。助かった」

 

「・・・いや、構わないよ。それより────」

 

言って、令音は士道────正確には、その両腕に絡みついた二人の少女に目を向けてきた。

士道が十香を下ろす際に一度離れ、再び引っ付いてきたのである。

 

「・・・厄介なことになったようだね」

 

「ここまでくると結構うざい」

 

令音の言葉に士道はそう返事を返す。

だが、二人はそんな会話を気にすることなく、士道に言葉を囁やき始めた。

 

「くく・・・むしろそこまで寵愛を受けられるのだ。幸運に噎び泣きこそすれ、嫌がる必要などあるまい」

 

「懐疑。夕弦ならまだしも、耶俱矢に言い寄られて喜ぶ男性がいるのでしょうか」

 

「ふ、ふん・・・いくら斯様な挑発をしようと無駄だぞ。全ては決闘の決着を見れば明らかになる。さあ士道よ、言うがよい。私と夕弦、どちらが女として魅力的だ?」

 

「質問。夕弦とへちょ耶俱矢。どちらが可愛いですか」

 

「待て、なんだその微妙に貶した感じは!」

 

「無視。べちょ耶俱矢より夕弦の方が」

 

「何悪化させてんの!?」

 

言い合いながら、耶俱矢と夕弦が士道に迫ってくる。その間に挟まられている士道は、嫌がるようにしていると令音が二人に言った。

 

「少し気になる事があるのだが、その決闘というのはどう言うことかな?シンから聞いた時も二人は戦っていたとの話だったが」

 

「・・・ん?ああ────」

 

令音が問うと、耶俱矢が大仰にあごを上にやった。

 

「そういえば言っていなかったか。────我らは、もともと八舞という一人の精霊だったのだ」

 

「首肯。ですが、幾度目の現界のときか、八舞は二つに分かれてしまったのです」

 

「二つに?そんなことが・・・」

 

「?」

 

三人の会話にあまり付いていけない士道は、途中で聞き流しながらデーツを口に入れた。

簡単に言えば、この二人は最初は一人だったけれどいつの間にか二人になってしまったという認識で間違いないだろう。

 

「なんでそんなことになったのさ」

 

「それを知るのは天に座する女神のみよ。ふん、性悪な彼の女神は随分の退屈と倦怠に苛まれているようだ。時折、道理も条理も通らぬ出鱈目な賽の目を好むことがある」

 

「?」

 

耶俱矢の言葉に士道は首を傾げる。

 

「要約。よくわからない、と耶俱矢は言っています」

 

「そういうことか」

 

「情緒がないぞ」

 

夕弦の説明でようやく理解に至った士道がうなずくと、耶俱矢が不満げに声を上げた。

調子を戻すようにコホンと咳払いをし、あとを続けてくる。

 

「そして二つに分かれた我らは、互いの顔を見るなり、その身に、血に刻まれた運命と使命に気付いたのだ。そう────真なる精霊・八舞は、この世に一人のみであると!」

 

「説明。二つに分かたれた夕弦たちですが、やがて一つに戻ることがわかったのです」

 

「わかったんだ」

 

「補足。『知っていた』という方が正しいでしょうか」

 

夕弦が頭を指してから、続ける。

 

「解説。しかしもう、本来の八舞の人格は失われてしまっています。つまりその際、八舞の主人格となれるのはどちらか片方のみなのです」

 

「それで決闘をしていたということか」

 

二人は同時に首肯する。

理由を聞いた士道は令音の方へ視線を向けると、令音は椅子に腰掛け小型端末を弄りながら、難しげにふうむとうなっているのみだった。

 

「・・・やはり、駄目か」

 

「何が駄目なのさ」

 

士道がそう尋ねると、令音が小さくうなずいてから顔を向けてきた。

 

「・・・ああ、〈フラクシナス〉との通信が途絶えているんだ」

 

「また急だね」

 

「・・・現状では不明だ。少し調べてみるよ」

 

言ってから令音が端末を閉じ、椅子から立ち上がる。

そして士道の隣に迫る耶俱矢と夕弦に、静かに唇を動かした。

 

「・・・耶俱矢と夕弦、と言ったね。君たちは、己が真の精霊・八舞となるため、シンを取りあって勝負をしている。・・・間違いないね?」

 

「もちろんだとも」

 

そう言った耶俱矢に令音は、少し考えるようにしたあと、士道達に言った。

 

「・・・シン、君は十香を。────耶俱矢、夕弦。君たちには少し話がある。ついてきてくれ」

 

「くく・・・何を言うかと思えば。なぜこの我が、人間風情の言葉に従わねばならぬのだ」

 

「拒否。夕弦は士道と一緒にいます」

 

だが、二人は頑として動こうとしない。しかし令音はそれも予想の内というように肩をすくめると、思わせぶりに言った。

 

「・・・シンは見かけよりも難物だ。話を聞いておいて損はないと思うけれどね」

 

「何・・・?」

 

「・・・彼の反応を見れば一目瞭然だろう?私の目から見ても、君たちは非常に可愛らしく、魅力的な少女だ。だというのに彼は、未だにどちらも選ぼうとしない」

 

『・・・・・』

 

耶俱矢と夕弦が、目を丸くして顔を見合わせる。

 

「・・・どうするかね?私としては、どちらか片方でも構わないのだが」

 

言って、事務室の扉を開ける。

二人は再び顔を見合わせると、名残惜しそうに士道から手を離し、令音のあとをついていった。




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第九話

投稿!!

さて、羞恥心など無い三日月さん。ここをどう切り抜ける?

それと、ガンダムアスモデウスがガンプラで出ましたが、武器がまさかのユニコーンのなんちゃってトンファーではなく、ガチモンのトンファーが装備とは・・・ロマンがある!


「うだうだ言ってないでちゃっちゃと働いたらー!」

「ヤッテンダロー!モーッ!!」

ラフタとシノ


「・・・疲れた」

 

士道は肩を回しながら廊下を歩く。

十香が目覚めるまで慣れない看病をし、今やっと終わったのだ。

この後どうしようかと考えていた時、ふと誰かに見られているのに気付いて丁字路に差し掛かったところで足を止めた。

・・・左右に分かれた通路の両側から頭がちょこんと飛び出ており、士道にジーッと視線を送っていたのである。

 

「何やってんの?」

 

士道が言うと、二人が通路の奥から歩み出てきた。

 

「くく・・・我が気配に気付くとはやりよるわ。流石と言っておこうか」

 

「指摘。隠れ方がお粗末だったたけでは」

 

「・・・っ!ゆ、夕弦に言われたくないし!あんたよりは上手く隠れてたし!」

 

「反論。耶俱矢が夕弦よりも上手く隠れられる道理がありません」

 

・・・士道からしてみればどちらもバレバレなのだが、それは言わずに言い争う二人に言った。

 

「で?二人は何しにきたの?」

 

士道が問うと、二人は一瞬目を合わせてから視線を士道に戻してきた。

 

「ふ・・・教えてやろう。来るがいい」

 

「確保。どうぞこちらへ」

 

そして同じタイミングでそれぞれ士道の両腕を引っ張ってくる。

 

「・・・・・」

 

士道は黙ったまま引きずられ────ほどなくして、とある場所へと辿り着いた。

二つの隣りあった入口に青と赤の暖簾がかけられており、それぞれに大きな字で『男』『女』と書かれている。

宿の名物である露天風呂の入口だ。

 

「・・・風呂?」

 

士道は首を傾げると、耶俱矢が大仰にうなずいてきた。

 

「くく・・・貴様の身体は常闇の穢れを蓄積し過ぎた。その身を浄化することを許す」

 

「は?」

 

「通訳。お風呂に入って汗を流してください、と言っています」

 

夕弦の通訳に士道は納得する。だが、入浴時間はまだ先だし、なによりタオルも着替えも用意していない。士道は二人に言った。

 

「まだ入る時間じゃないでしょ」

 

言って踵を返そうとすると、両腕をがっしりと摑まれた。

 

「何?」

 

「貴様に選択肢があると思うてか?四の五の言わずに穢れを祓うがよい」

 

「請願。お願いします。入浴の準備はこちらで整えておきました」

 

夕弦が視線を下に落とす。そこにはバスタオルとタオル、そして浴衣が畳まれていた。

 

「・・・・・わかった」

 

流石に二人の好意をこれ以上断るにもいかず、士道は渋々と溜息を吐きながら言った。今ここで二人の指示を断って暴れ出されても泣かれてしまってはたまったものではない。

 

「くく・・・解ればよいのだ」

 

「賞賛。士道の決断に敬意を表します」

 

今ひとつ二人の意図がわからない士道だったが、一浴びして汗を流すのもいい。

用意されたタオルなどを手に取り、男湯の方へと入っていくと、その際に耶俱矢が少し照れたように頬を赤くし、夕弦が口元を手に当てていた。

 

「・・・・?」

 

そんな二人の様子に不審なものを感じながらも、士道は脱衣所で服を脱ぐと、タオルを手にして湯気で曇った引き戸を開けた。

目の前に海が広がった開放的な浴槽だったが、士道はそれにきにするなく、すぐに身体を洗い始める。

そして洗い終わると、身体を湯船に沈み込ませた。

 

「ふぅ・・・・」

 

軽く息を吐いて空を見上げる。空にはたくさんの星が輝いており、三日月が海を照らしながら輝いていた。

士道は三日月を眺めていると、ガラリと音が鳴り、浴場の引き戸が開いたのである。

 

「ん?」

 

誰か入ってきたのだろうかと入口に目をやると────そこには耶俱矢と夕弦が、バスタオル一枚を巻き付けた状態でそこに立っていたのだ。

 

「・・・なんで二人が此処にいんの?てか、ここ男湯じゃなかったっけ?」

 

士道はあまり動じる事なく、耶俱矢達にそう言うが、二人はそのまま湯船に足を浸し、士道の隣まで歩いてきた。

そんな士道に対し、耶俱矢は頬を染めながら腕組みする。

 

「く、くくく・・・ど、どうだ。流石の貴様も我が色香の前にひれ伏さざるを得まい」

 

「嘲笑。色香(笑)。耶俱矢にそんなものが備わっていたとは初耳です」

 

「・・・ふん、すぐに吠え面をかかせてくれるわ。そこな士道を我が魅力の虜にしてな!」

 

「応戦。望むところです」

 

言って、二人はそのままゆっくりと足を折り、士道を挟むように湯船に入ってきた。

入ってくる耶俱矢と夕弦に士道は言う。

 

「あのさ、一つ聞いていい?」

 

「疑問。どうかしましたか?」

 

夕弦の言葉に士道は言った。

 

「こっちは男湯なんだけど、二人はこっちにいちゃ駄目でしょ」

 

そう言う士道に、今度は耶俱矢が口を開く。

 

「く、くく・・・それについては大丈夫だとも」

 

「否定。大丈夫です。心配いりません」

 

「?」

 

士道が首を傾げたその時────

 

「とりゃー!」

 

元気のいい声とともに、新たな入浴客が勢いよく湯船に飛び込んできた。

そして、先に入っていた士道と目が合う。

聞き覚えのある凛とした声音。夜色の長い髪。そう、その姿は────紛れもなく、夜刀神十香のものだった。

 

「ん?」

 

そこで十香も、先客に気づいたらしい。キョトンとした様子で士道を見てくる。

 

「・・・・・」

 

「あれ?十香、なんでここにいんの?」

 

士道のその言葉と同時に────

 

「ギャ────────!!」

 

十香の悲鳴が浴場に響き渡った。




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第十話

投稿!!

冬休みに入ったので投稿は劇的に落ちますが、時間があれば投稿していきます!

タカキ達も頑張ってるし、俺も頑張らないと

ライド・マッス


「な、ななななななぜこんなところにいるのだシドー!」

 

十香が慌ててあたふたと両手を動かし、バッと胸元と下腹を覆い隠す。

 

「いや、それ俺が聞きたいんだけど?それにこっちは男湯じゃ無かったっけ?」

 

「何を言っている!ちゃんと皆に教わったとおり、赤い方に入ったぞ!」

 

「は・・・?」

 

十香のその言葉に、士道は一つの答えが浮かび上がる。

 

「なあ、もしかしてアンタら・・・」

 

士道はそう言って左右に目をやると、耶俱矢と夕弦がキョトンとした様子で返してきた。

 

「うむ、士道が入る前にのれんを入れ替えておいた。さすが我。策士よの」

 

「質問。もしや、何か問題がありましたか?」

 

「・・・やっぱりか」

 

二人の答えに士道は確信した。

だが、今はそれどころではない。士道は十香に言った。

 

「ごめん、十香。この二人に騙された。すぐに出てく」

 

「あ・・・シドー!」

 

立ち上がって出ていこうとする士道に、不意に十香が手を取ってきた。まるで、士道を引き留めるように。

 

「なに?十香」

 

「いや・・・そちらは、まずいと思うぞ」

 

「へ?」

 

士道が目を点にすると同時、またも引き戸が開き、女子のご一行様が入ってきた。

 

「・・・・チッ」

 

士道はすぐさま岩陰に隠れる。

 

「やー、広いじゃなーい!海そこじゃーん!」

 

「あ、転入生さん、もう入ってたんだ。はやーい」

 

「あれ、鳶一さんお風呂入らないの?」

 

「────私には、やらねばならないことがある」

 

「そ、そう・・・がんばって」

 

女子たちの甲高い声が聞こえてくる。このままでは見つかるのも時間の問題だろう。

 

「十香、ごめん。少しだけ時間稼げる?」

 

「う、うむ!任せろ!」

 

士道は十香にそう言って、何時でも海へと飛び込めるように体勢を整える。

 

「あー、十香ちゃんはっけーん!」

 

「どうしたの?こんな端っこで」

 

「ていうかうっわ、肌きれー。揉ませろコラー!」

 

十香の前方に、亜衣麻衣美依トリオが現れた。

 

「ひ・・・・っ」

 

「い、いや、なんでもないぞ!気にするな!」

 

十香がそう言うも、亜衣麻衣美依は興味津々の様子だった。このままでは、十香の背後にいる士道の存在にも気付かれてしまうだろう。

だが、士道にはその短い間に自身の脚力で岩縁から海へと飛び込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

士道はあの後、どうにか海から上がり令音の部屋まで辿り着き、予備の浴衣を借りた後を、湯飲みに注がれたお茶を飲み干してから令音に言った。

 

「ごめん。助かった」

 

「・・・いや。災難だったようだね」

 

言って、令音が小さく肩をすくめる。

 

「別に騒ぎになる前に出れたから良いよ。で?〈フラクシナス〉と通信は出来たの?」

 

問うと、令音が無言で首をふった。

 

「・・いや、駄目だ」

 

「そっか。なら早く繋がるといいね」

 

士道がそう言うと、令音が別の事なら分かったと言ってノートパソコンを操作し始めた。

そして画面を士道へと見せる。

 

「・・・・?」

 

士道はノートパソコンの画面を見ると、望遠で撮影された風の中に躍る二つの人影の姿が写し出された画像と文字列が表示される。

 

「これ・・・もしかしてあの二人か」

 

「・・・ああ、恐らくね」

 

士道の言葉に令音は小さく首を倒した。

 

「・・・実は、彼女らは我々の間ではちょっとした有名人でね。風の中で二人組の精霊を見たと聞いた瞬間から、なんとなく目星はついていたんだ」

 

「へぇ、あの二人結構有名人だったんだ」

 

士道がそう言うと、令音は唇を開く。

 

「・・・彼女らは〈ベルセルク〉と呼ばれている。君も見たように、風を伴う精霊だ」

 

「・・・ふーん」

 

「世界各地で現界が確認されている二人組の精霊だ。こちらに現れては、常に二人でじゃれ合っているだけなのだが・・・その規模が問題でね」

 

「規模?」

 

士道の言葉に令音は頷く。

 

「各地で起きている突発性暴風雨の何割かは、彼女たちのせいだろう。その上、目撃情報も非常に多いときている」

 

「それもそうか」

 

士道は令音の言葉に納得する。

あんな暴風雨が急に現れて、そんな中で二人が勝負していたら目撃情報も多いに決まっている。

 

「しかも、彼女たちによる被害も甚大だ。加えて、その姿を何度も衆目に晒してしまっている。精霊の存在を秘匿しておきたい組織にとっては悩みの種だ。故に〈ラタトスク〉でもASTでも優先目標にされているが・・・彼女らに接触できた者は殆どいない」

 

「は?」

 

「・・・彼女らの移動範囲とその速度のためさ。現界してから追っていては、誰も彼女たちに追いつけないんだ。だから君が二人に遭遇できたのは、僥倖といえる」

 

「つまり運が良かったわけか」

 

士道の言葉に令音は頷く。

 

「だが今は、〈フラクシナス〉との通信が途絶え、〈ラタトスク〉からのサポートが受けられない状況だ。私も今ある機材だけでは、十分な解析は行えない。このまま攻略するのは非常にリスキーだろう」

 

そう言う令音に士道は口を開いた。

 

「別にいらない」

 

「・・・理由を聞いてもいいかな」

 

士道の言葉に令音が口を開く。

 

「別にアンタ達を信用してない訳じゃないけど、変なことを吹き込まれるとさっきみたいな面倒な事になるから要らない。だから“今回の件は俺一人でやる“。令音は十香達の心配だけしてて。後はこっちで何とかやる」

 

士道の言葉に令音は黙ったままだったが、少しした後、ため息を吐いた。

 

「・・・ふむ。シンがそこまで言うなら私は何も言わない。だが、一つだけ言わせて欲しい」

 

「・・・なに?」

 

「必ず“二人同時にキスをするんだ“。二人が同一の精霊である以上、何らかのパスが繋がっている可能性が高い。片方ずつやって仮に封印が出来たとしても、片方が暴れられたら被害のデメリットが大きくなるのはお互いに望まないことだろう?」

 

令音の言葉に士道は言った。

 

「なら、俺はそうならないよう頑張るだけだよ」

 

士道はそう言って部屋から出ていった。

 




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第十一話

久しぶりの投稿!!


モビルアーマーを単機で仕留めるような“バケモノ“はもはや人ではない。
獣を仕留めるには相応しい作法がある。

ダインスレイヴ隊。放て────

ラスタル・エリオン


バレーボールが凄まじい勢いでコートへと直撃する。

砂浜に砲弾のように直撃したボールは砂を巻き上げてコートへと転がった。

 

「まず一点」

 

そう呟く士道はそう呟いて砂浜へ着地した。

 

「なっ!?容赦がないな!?シドー!!」

 

そう言う十香に士道は言う。

 

「勝負ごとでしょ。なら、全力でやるに決まってるじゃん」

 

「むぅ・・・それもそうだな。なら、私も全力で行かせてもらうぞ!!」

 

そう言う十香に隣にいる折紙が言う。

 

「私にも負けられない理由がある」

 

そう言って構える折紙に耶俱矢が笑う。

 

「くく・・・それは我らとて同じ事!この勝負は我らがいる限り、我が頂点に立つことは決まっているからな」

 

「同意。私達が負ける理由がありません」

 

そう言う二人に士道が言った。

 

「気を抜かないでね。二人とも」

 

「無論!!」

 

「同意。勝つのは私達です」

 

そう言うのと同時に十香の手からボールが弾き出された。

なぜ、こうなったのか?それは今から数時間前に遡る。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

修学旅行二日目。

士道は、或美島北端に位置する赤流海岸にやってきていた。

三十年前の空間震で島が削り取られてできたこの海岸は、上から見るとなだらかな弧を描いているらしく、観光ガイドなどでは格好良く三日月海岸とも呼ばれているらしい。

 

「・・・・・」

 

士道は息を吐いて海を見る。

クラスメイト達が海ではしゃいでいたり、泳いでいたりと楽しげにする中、士道は砂浜の上で伸びをする。

基本的に阿頼耶識を見せない為に上着を脱ぐなと言われている士道は海に来た所で暇なのだ。

そんな中、後ろから士道に向けて声が投げられた。

 

「くく・・・こんなところにいたか」

 

「発見。見つけました、士道」

 

特徴的な語調。確認するまでもない。士道はゆっくりと振り向いた。

そこには予想通り耶俱矢と夕弦が立っていた。

 

「・・・ん?ああ、耶俱矢と夕弦か」

 

士道は眠そうな顔で水着姿の二人を見る。

そんな士道に耶俱矢が言った。

 

「士道よ。我を見て何か思わない所はないのか」

 

「・・・?」

 

耶俱矢の言葉に士道は首を傾げながらも、「あー」と思い出して口を開いた。

 

「似合ってるじゃん。二人とも」

 

思い出したように言う士道に耶俱矢は顔を赤くし、夕弦がキョトンとして自分の装いを見下ろした。

だが、すぐにハッとした様子で、耶俱矢が腕組みをしてくる。

 

「く、くくく・・・そうであろうそうであろう。だが勘違いするなよ。この程度の衣服では、我が魅力の前に霞んでしまうわ」

 

「謝辞。ありがとうございます。とても嬉しいです」

 

次いで、夕弦が素直に首肯してくる。

士道としては耶俱矢に言われるまですっかり忘れていたのだが、これは言わない方が一番だろう。

と、耶俱矢がそんな士道に唇を動かした。

 

「そう言えば士道はこんな寂れた所で何をしている?」

 

「ん?」

 

耶俱矢の言葉が、身体を動かす士道の耳へと届く。

その言葉に、士道は返した。

 

「別に。海に来てもやる事ないし、ここで暇潰してる」

 

十香達は亜衣、麻衣、美依達に捕まり、海を楽しんでいるようだし、殿町に関しては何故か砂浜に埋められている。

なにかやらかしたのだろうか。

そんな中、やることはない士道はこうやって暇を潰していたのだ。

そんな士道に夕弦が言う。

 

「提案。なら、私達と遊びませんか?」

 

「別にいいけど、何して遊ぶの?」

 

「思考。そうですね・・・」

 

考える夕弦に隣で耶俱矢がにやりと口もとを歪めると言った。

 

「くくく・・・なら、これはどうだ?」

 

「「・・・・?」」

 

耶俱矢の言葉に士道と夕弦は振り向いて、耶俱矢の手にいつの間にか持っていたボールに目がいった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

そんな事があり今に至る。

十香達を誘い、ビーチバレーをすることになったのだが、並外れた五人の身体能力に追いつけず、脱落する者が増えていき、いつのまにか今、バレーをしているのは士道を含め、十香、折紙、耶俱矢、夕弦、令音の六人となっていた。

令音に関しては完全に巻き込まれたオチであったが。

 

「貴様と戦うのは癪だが、私もシドーと一緒にデェトがしたいのだ!!」

 

「なら、やらなければいい」

 

「なんだと!?」

 

向こうのチームは仲間割れをしているのを見て、士道は呟く。

 

「これ、俺が勝った場合どうなるんだろ」

 

賞品扱いになっている士道はそう呟き、ボールを全力で打ち出した。

そして、飛んでいく球を見て────

 

「まあ、なんでもいいか」

 

そう言って、砂浜へと着地するのだった。




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第十ニ話

投稿!!

オルガと三日月、耶俱矢と夕弦ってなんか似てません?
お互いが大事だから片方を生かそうとする。
三日月の場合は耶俱矢と夕弦と違って、押しが強すぎなんですが

死ぬまで生きて────命令を果たせ


三日月・オーガス


「ふぃー」

 

士道は短く息を吐きながら、海辺に設置されているベンチへと座った。

あの後、点差ギリギリで勝利を勝ち取った士道は、運動後の休憩の為に座っていた。

 

「・・・・・」

 

遠目で、夕弦が十香達と話をしているのが見える。

耶俱矢は手洗いにいくと言って別行動をしているので、その間、夕弦は十香達と待つ事になっているらしい。

士道はそんな十香達を見つめた後、空を見上げた。

青空の中に太陽の光がジリジリと照らす。

 

「────────」

 

そんな空の下で士道は海へと視線を変えて眺めていると、ふと誰かに見られているような感じがして顔を横へと向けた。

そこにいたのは手洗いから帰ってきた後なのだろうか?耶俱矢が此方へと歩いてくるのが見えた。

 

「あれ?皆の所に行くんじゃないの?」

 

そう言う士道に耶俱矢が言う。

 

「くく・・・まぁ、なに。ただ話をしに来ただけだ」

 

「ふーん」

 

士道は短くそう答えてベンチの半分を譲った。

そして耶俱矢はその隣に座ると、士道に言った。

 

「感謝するぞ」

 

「別に気にしなくていいよ。で?話ってなに」

 

耶俱矢の感謝の言葉に対し、士道はそこまで気にすることなく本題へと入ろうとする。

士道のその言葉に、耶俱矢は「ああ」と首肯し、喋り方を元に戻してから唇を開いた。

 

「なんか、あんたの前だと調子狂うからこのままで言うけどさ、今私と夕弦は、あんたを巡ってバトルしているわけじゃん?それで、明日にはその決着もつく」

 

「・・・まぁ、そうだけど。それがどうかした?」

 

耶俱矢にそう言う士道に、耶俱矢は思ってもみなかった台詞を吐いた。

 

「────士道。あんた明日───“夕弦を選んでよ“」

 

「・・・は?」

 

士道もその言葉を聞き、視線を耶俱矢へと向ける。

 

「は?じゃなくてさ」

 

耶俱矢が肩をすくめながら続けてくる。

 

「悩むポイントなくない?だって夕弦、超可愛いじゃん。ちょっと愛想はないかもしんないけどさ。選ばない手はないでしょ。だから────」

 

そう言う耶俱矢に士道は言葉を遮るように言った。

 

「それってさ、俺が夕弦を選んだら耶俱矢は消えるよね」

 

「うん、そーね」

 

「だったらなんで、わざと負けようとするの?」

 

士道の言葉に、耶俱矢は頭をかきながら困ったように笑った。

 

「んー・・・そりゃ私だって消えたかないけどさ。でも、それ以上に────私は、夕弦に生きて欲しいの。もっともっといろんなものを見て、思いっきりこの世を楽しんで欲しいの」

 

そう言う耶俱矢に士道は黙ったまま耶俱矢の話に耳を傾ける。士道のその様子を見て、耶俱矢は構わずに話を続けた。

 

「っていうか、あの時にあんたさえ乱入してこなきゃ全部済んでたんだからね。あそこで派手に激突して負けて終わりだったのに」

 

そう言った耶俱矢に士道は口を開く。

 

「それで、夕弦が幸せになれると思う?」

 

「は?何言って────」

 

士道の言葉に耶俱矢が表情を変えながら答えるが、士道は言葉を続ける。

 

「別にさ、それが駄目って言う訳じゃないよ。“俺だって同じようなもんだし“。けど、そんなんで負けて夕弦を勝たせた所で────きっと夕弦は喜ばないし、絶対に後悔する」

 

「ちょっと・・・なんでそう思うのよ」

 

そう言う耶俱矢に対して、士道は言った。

 

「自分が一番大切にしてた奴が無くなると、自分がちゃんとやっていれば良かったって思うようになる。“俺や昭弘”だってそうだよ。“大事な家族”が居なくなって後悔した事だってある」

 

昭弘は大事な人がいた。昌弘とアストン。そしてラフタ。大事な家族が死んだ。

士道は三日月は────自分が行けなかったばっかりにオルガを死なせた。

 

「だから、二人にはそうなって欲しくないだけ。俺や昭弘みたいな事は嫌だからさ」

 

きっと、耶俱矢が消えていなくなったら、夕弦も同じことを思うだろう。自分達とは違い、たった一人で────その思いを胸に抱えこんだまま。

士道はそう言ってベンチから立ち上がると、耶俱矢に言う。

 

「俺はオルガは居なくなったけど、俺は止まらない。十香達を守らないといけないし、“オルガの命令が俺の中に生きている“からすぐに死んでオルガに会う訳にもいかないしね」

 

だから自分が本当にどうしたいのかちゃんと考えてみたら?と耶俱矢に言って、士道は十香達のもとへと歩いていった。

そんな士道の後ろ姿を見て耶俱矢は呟く。

 

「何よそれ・・・私が間違ってるみたいじゃん」




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第十三話

今週はオラトリアは投稿しません!!

大変申し訳ないです・・・

俺の命は元々オルガにもらったものだから俺の全部はオルガの為に使わなくちゃいけないんだ。

三日月・オーガス


飛行機の中で到着のアナウンスが鳴る。

 

「・・・到着か」

 

マクギリス・ファリドはそのアナウンスを聞き、ポツリとそう呟いた。

或美島。表側では観光スポットとして有名な観光地だが、裏はDEM社が管理するリゾート地。

飛行機の中でマクギリスはタブレットの画面を開く。

開かれたその画面には、一通のメールが届いている。

マクギリスはそのメールを開くと、その内容を見て笑みを浮かべる。

 

「・・・エレン・メイザースが三日月・オーガスを目につけている・・・か」

 

マクギリスはそう呟き、飛行機の窓の外から見える或美島を見つめた。

 

「確かに、“今の彼“では彼女を相手にするのは少々厳しいだろう。だが・・・君の強さにはまだ上がある。君がバルバトスの力を引き出せれば彼女はもちろん、“精霊“ですら殺せるだろう」

 

マクギリスはそう呟き、タブレットを鞄の中へとしまう。

 

「だが、私も最近は多忙の身で少々嫌気がさしてきたのでね。今回は私も参戦させていただこうか」

 

着陸し、動きを停止させる飛行機にマクギリスは時計を確認すると、鞄を手にして立ち上がった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「シドー」

 

夕食を済まし士道は廊下を歩いていると、十香が声をかけてきた。

 

「あれ、十香。どうしたの?」

 

士道は顔を向けると、そこには浴衣姿の十香がいた。

そう言う士道に、十香はジッと士道の顔を見つめてくる。

 

「・・・・なに?」

 

「いや」

 

十香はふっと視線を逸らすと、小さく唇の端を上げ、士道の手をきゅっと握ってきた。

 

「シドー、よかったら、少し外へ行かないか?」

 

「別にいいけど。何しにいくの」

 

「夜の海をな────見てみたいのだ」

 

言って、士道の手を引いてくる。

 

「・・・・・」

 

士道は十香にされるがままに引っ張られていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

夜の浜辺にはまるで人影がなく、日中の喧噪が嘘のように静まり返っていた。

士道と十香は、ゆっくりとした歩調で海岸沿いの防波堤付近を歩きながら、何くれとない会話を交わしていた。

 

「────でな、昨日は亜衣、麻衣、美依たちと枕投げをしていたのだ」

 

「へぇ。楽しかった?」

 

「うむ。最初は鳶一折紙と勝負していたのだったが、途中からつい熱くなってしまってな、互いに疲れて眠るまでやってしまった」

 

「そっか」

 

士道はそう言って会話を続ける。

と、少しばかり歩みを進めたところで、不意に十香が振り返ってくる。

 

「それで────シドー。一体、何があったのだ?」

 

「ん?なにが」

 

そう言われて、士道は顔を十香に向けた。

 

「いや、具体的にはわからんのだが・・・何かあったのかなんとなくだがそんな感じがしたのだ」

 

「・・・・・」

 

小さく頷きながら十香が言ってくる。

少しだけ黙ったままの士道に十香が再び言う。

 

「いや、何もないならいいのだ。もしかしたら、私の思い過ごしかもしれん」

 

そう言う十香に、士道は短く吐息した。

 

「・・・耶俱矢と夕弦いるだろ。あの二人の事で少し考えてただけ」

 

「あの二人について?何があったのだ?」

 

士道は十香に彼女達の事について說明する。

あの二人が精霊であり、争いあっていること、そして────負けた方は消えてしまうことを說明する。

最初はふむふむと首肯していた十香だったが、すぐに驚いた顔になっていった。

 

「なんと・・・そんなことが」

 

「まあね。それで今日の昼に耶俱矢が、『夕弦を選べ』って言われてただけ」

 

そう言う士道に十香は目を驚かせるように開けさせる。

 

「何・・・?そんな馬鹿な、それでは耶俱矢は────」

 

言いかけて、十香は小さく首を振った。

 

「いや・・・しかし、そうか。私も、私が死なねばシドーが死んでしまうと言われたなら・・・そうするかもしれない」

 

「・・・・・」

 

そう言う十香に士道は黙って聞いていた。

その似たような事を昔、オルガに言ったような気がする。

 

“俺の命は元々オルガにもらったものだから、俺の全部はオルガの為に使わなくちゃいけないんだ“

 

かつて自分がオルガに言った言葉。

あの時の言葉に嘘はないし、後悔もしていない。そして────アトラの────自分を引き留めようとした手を振り払って、オルガの命令を果たそうとした事も。

だからこそ、あの時────耶俱矢がそう言った時に士道は言ったのだ。

 

“俺だって同じようなもんだし“。

 

守りたいものがあった。アトラやクーデリア、ユージン達は自分達が死んだ後も、生き続けたのを聞いて士道は嬉しいと思ったのだ。だけど、ユージンと始めてこの世界であった時のこと思い出すと、なんとなく思い浮かぶものもあった。

 

きっと、アトラとクーデリアは泣いてたんだろうなと。

 

士道はそこまで考えていた所で、十香が神妙な面持ちで口を動かし始めた。

 

「なぁ・・・シドー。私は思うのだが────」

 

と────その瞬間。前方から地面を踏みしめる音が響いて、士道は顔をそちらへと向けた。

そしてそこにいた少女の姿を認め、目を細めた。

そこには、顔を打つ向かせた夕弦の姿があった。

 

「復唱────要求。耶俱矢が・・・夕弦を選べと?そう言ったのですか?」

 

小刻みに身体を震わせる夕弦の向かい側に耶俱矢が士道達の背後から現れる。

 

「そう言う夕弦も、ふざけたことしてくれんじゃないの。全部聞いたわよ?令音に士道を私に選ばせるように言ったみたいじゃない?」

 

「反論。耶俱矢こそ、なんのつもりですか。夕弦はそんなこと、頼んだ覚えはありません」

 

怒りに耶俱矢も夕弦も、士道達を視界に入れていない。

 

「シドー!!」

 

「分かってる」

 

士道は十香の言葉にバルバトス出そうとした瞬間。

 

『“ふざけるな“・・・・ッ!』

 

二人が怒号にも近い声を放つと同時、二人から凄まじい風圧が発された。

 

「チッ・・・!」

 

「く────!」

 

二人のすぐ近くにいた士道と十香は、突然の風に吹き飛ばされてしまう。

そしてかなりの距離を飛ばされた士道はバルバトス越しで二人の姿を見る。

全身を締め付けるような拘束衣が出現し、首と手足に錠が掛けられる。

────霊装。精霊を護る絶対の鎧。

だが、それだけでは終わらなかった。

 

「〈颶風騎士〉────【穿つ者】!!」

 

「呼応。〈颶風騎士〉────【縛める者】」

 

その言葉とともに、辺りに渦巻く風がさらに強くなっていく。

 

「────駄目ね。やっぱり駄目。この決闘方法なら穏便に決着が付くと思ったけど、あんたの阿呆さを計算に入れるのを忘れてたわ」

 

「同意。耶俱矢の馬鹿さ加減には愛想が尽きます。───結局、こうなるのです。二人で決めた決闘を、誰かの手で終わらせてもらおうだなんて、虫が良すぎたのです」

 

言って、二人が槍を、ペンデュラムを構える。

 

「そうね。やっぱり、最後は私たち二人でやるしかないみたいね。ちょうどいいわ。今私、最高潮にあんたにむかっ腹立ってるし」

 

「応戦。夕弦もです。耶俱矢の浅慮さに苛立ちと怒りを隠しきれません」

 

「────決闘方法は」

 

「当然。知れたことです」

 

耶俱矢と夕弦は、再び同時に口を開いた。

 

『───倒れた方が、“勝ち”』

 

それが示すのはただ一つ。

どちらかが倒れるまで終わることない───闘争。

そうして二人は凄まじい風圧を伴って激突した。

 




マッキー、ここで参戦予告。

理由────仕事ばっかで流石に嫌気がさすから三日月を狙うエレンをしばきにいくね!
    ↑
   酷い理由

そして八舞姉妹の喧嘩に三日月が止める為に喧嘩をふっかけに行くよ!!

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第十四話

投稿!!

そしてマッキーの出番もあるよ!!
では、どうぞ!!

見せてくれるのだろう。君達の可能性を───

モンターク


「────っ!副司令、或美島北部の海岸付近で、凄まじい暴風が発生しています!」

 

或美島上空に浮遊していた〈フラクシナス〉艦橋にアラームが鳴ると同時、スタッフが叫びを上げた。

 

「暴風が・・・発生?」

 

艦長席の隣に立った神無月は訝しげにあごを撫でた。

 

「何か村雨解析官から連絡は?」

 

「ありません!」

 

神無月はふむと唸る。問題が発生した場合はあちらから連絡が入るはずなのだが。

 

「一度こちらから回線を開いてみてください。何もなければそれで構いません」

 

「了解!」

 

だが、コンソールを操作し始めたクルーが、すぐに訝しげな声を発してくる。

 

「通信・・・繋がりません。何者かに通信を妨害されている恐れがあります!」

 

「ふむ?」

 

神無月はピクリと眉を動かした。こちらから通信を試みるまで、妨害の存在にすら気づかせないとは一体────

 

「仕方ありません。少々危険ですが、直接連絡要員を送り込みましょう。高度を千メートルまで下げたのち、或美島北街区に人員を転送、展開した〈世界樹の葉〉を経由して通信を行います。村雨解析官と士道くん、そして十香さんの安否を確認してください」

 

『────了解っ!』

 

「さてさて・・・何が出てきますかね」

 

神無月はそう呟くと同時に、〈フラクシナス〉を包む不可視の壁がゆっくりと消えていった。

 

◇◇◇◇◇

 

同、或美島上空高度千メートル。

DEM五百メートル級空中艦〈アルバテル〉の艦橋に、クルーの叫びが響き渡った。

 

「────!艦長、レーダーに反応が!」

 

「航空機か?」

 

「いえ・・・これは、空中艦です!」

 

「・・・なんだと?」

 

艦長席に腰掛けたパディントンが訝しげに眉をひそめると同時、メインモニタに空の映像が映し出される。

航空機などではなく、間違いなく空中艦である。鋭利なフォルムの艦体後方に小さな熱板らしきものが幾つもついており、まるで巨大な樹木を思わせた。

 

「一体どこから現れた」

 

「突如として反応が出現しました。恐らくですが────不可視迷彩を施していたとしか」

 

「なんだと?識別信号は」

 

「不明です。DEM社製の艦には該当する機種が確認できません」

 

パディントンは渋面を作り、顎髭を撫でた。

 

「不可視迷彩を搭載している空中艦だと・・・?まさか。DEMインダストリーがテリトリーを用いての不可視化に成功したのはつい最近のことだぞ」

 

すると次の瞬間、件の艦は仕事を終えたように再びその姿を空に解け消えさせた。

 

「!反応、消失しました!」

 

レーダーを監視していたクルーが声を上げてくる。

もう、あの正体不明の艦が不可視迷彩を搭載していることは疑いようがない。他ならぬ自分の目で、その機能を確認してしまったのである。

だが、そんなものが存在するはずは────

 

「・・・・っ、まさか」

 

パディントンはハッと目を見開いた。そういえば以前耳にしたことがあったのである。

DEM社以外で唯一顕現装置を持つ組織の名を。

 

「────〈ラタトスク機関〉」

 

パディントンがその名を発すると、艦橋にいたクルーたちが息を飲んだ。

DEM第二執行部────DEM社が擁する影の実行部隊に属する者たちならば、聞いたことがあってもおかしくはない。

そう。パディントン自身も、その存在は聞かされていた。────アイザック・ウェストコットその人から、だ。

曰く、DEMより進んだ技術を有する組織が存在する。

曰く、空間震を平和的手段で解決しようという酔狂集団が存在する。

曰く────それは、DEMの敵である。

 

「発見した場合は、即────殲滅せよ」

 

パディントンはそれを口に出すと、くつくつと笑った。

 

「なるほど、私は運がいい」

 

その場に立ち上がり、クルーに指示を飛ばす。

 

「主砲用意!〈アシュクロフトーβ〉十号機から二十号機を魔力生成に回せ!目標は───消失した所属不明艦!」

 

「っ、艦長・・・執行部長に指示を仰いだ方が────」

 

「構わん!執行部長殿の任務は、〈バンダースナッチ〉隊がいれば事足りる!それさえ確保しておけば文句はないだろう!」

 

「りょ、了解・・・」

 

やがて艦橋に低い駆動音が響き、〈アバルテル〉がその針路を変えた。

 

「主砲、魔力充填完了!」

 

「目標、所属不明艦消失区域!」

 

クルーたちの声を確認してから、パディントンは指をモニタに向け、呟くように言った。

 

「────撃て」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「敵の船か」

 

士道は主砲を発射した空中艦を見てそう呟いた。

ドンパチやり合う空中艦に目を向けながらも、バルバトスから周囲の状況が送られてくる。

 

「なんだ?コイツら」

 

「シドー!気を付けろ!何かいるぞ!」

 

士道と十香を取り囲むように、十体ほどの人影が立ち並んでいたのである。

猫背気味の姿勢でじりじりと距離を詰めてくる人形の一団に士道は目を細めながら戦闘態勢へと入る。

 

「DD─007〈バンダースナッチ〉・・・といっても、わからないでしょうか」

 

「あ?」

 

士道はそう言って振り返ると、人形の影から一人の少女が歩み出てきた。

────随行カメラマンの、エレン・メイザースである。

 

「・・・アンタか」

 

「ぬ、おまえは・・・」

 

士道と十香がほぼ同時に声を発すると、エレンは大仰に首肯した。

 

「ようやくひとけのないところに来てくれましたね、十香さん、士道さん」

 

言って士道達を一瞥する。

 

「しかし、驚きました。まさかあの二人が精霊だったとは。────しかも、優先目標である〈ベルセルク〉ときたものです。つもりにつもった不運の代償としてはお釣りがきますね」

 

「へぇ」

 

エレンの言葉に士道はそう呟く。

エレンは手を掲げると、それに合わせるようにして、〈バンダースナッチ〉と呼ばれた人形たちが一斉に姿勢を低くし、士道と十香に向かって飛びかかってきた。

 

「無駄だよ」

 

士道は巨大メイスをフルスイングし、〈バンダースナッチ〉をまとめて薙ぎ払う。

装甲がつけられたその身体はくの字にへしゃげながら、近くの防波堤に叩きつけられた。

 

「────〈デーモン〉に〈プリンセス〉。やはり本物でしたか」

 

「あ?」

 

士道は疑問よりも先に眉根を寄せた。一刻も早くあの二人を止めねばならないのに、こんな面倒くさい女を相手するのは少々やる気が失せる。

しかしエレンはそんな士道の思考などまるでお構いなしとばかりに、自分と十香に向けて手を差し伸べるように伸ばしてきた。

 

「士道さんに十香さん。私とともに来てはくださいませんか。最高の待遇をお約束します」

 

「行くわけないだろ」

 

「────ほざけっ!」

 

二人はそう言うと、エレンは肩をすくめながら言う。

 

「そうですか。では、少々手荒ですが無理矢理でも来てもらいましょう」

 

そう言いながらエレンの身体が淡い輝きに包まれ、一瞬の後にはその身にワイヤリングスーツとCRーユニットが装着されていた。

 

「────〈バンダースナッチ〉隊、しばらく手を出さないでください。音に聞こえた〈デーモン〉がどれほどのものか、少し試させていただきます」

 

言って、右手で背に備えた剣を抜き、その刀身に光の刃を出現させる。

そして士道を誘うように、くい、と左手の指を曲げて見せる。

 

「あっそ」

 

士道はそう言ってバルバトスのスラスターを全開に吹かせ、突撃する。

巨大メイスを片手にバルバトスはエレンへと向かっていく。そして同時に巨大メイスを振りかぶるようにエレンへと叩きつけた。

そしてそれをエレンは片手で握った剣で迎撃するのと同時に────

 

バキッ!!

 

「──────ッ!?」

 

エレンの手にした剣のフーレムが巨大メイスを受け止めた瞬間、“一撃でへし折れた”。

迫りくる巨大メイスをエレンは咄嗟の判断で回避する。

叩きつけられた巨大メイスはコンクリートの防波堤を粉砕し、その破片があたりに撒き散らされて土煙を上げた。

その一瞬で距離を取ろうとするエレンに士道はテイルブレードで追撃するが、エレンのテリトリーに阻まれその動きを止める。

だが、士道はそれに気にすることなく、逃げるエレンへと向かうと巨大メイスをそのまま突き出した。

 

「────舐めるなッ!!」

 

エレンはもう一本の剣を引き抜き、それをガードするが、士道はそのガードを崩す為にメイスの先端に装着されているパイルバンカーを射出した。

轟音とともにエレンの剣もろとも形成されたテリトリーをパイルバンカーが粉砕する。

軌道がそれたそのパイルバンカーはエレンに直撃することなくそのまま通り過ぎるが、エレンにとってはその圧倒的な力の暴力に眉をひそませる。

 

「これは・・・近距離戦では分が悪いですか」

 

剣を二本ともへし折られた状況にエレンはそう呟く。

最初はどうにかなるだろうと思っていたエレンだったが、バルバトスと接近戦をしている時に出た違和感。

まるで、“自身のテリトリーがバルバトスの周囲にだけ機能していない“かのような────

そこまで考えた所で、エレンは〈バンダースナッチ〉を使い、十香だけでも捕獲しようと手を上げたその時だった。

 

 

 

「────悪いが彼を勧誘しているのは私が先でね。横槍はよしてもらおうか」

 

 

 

その声と同時に、十体の〈バンダースナッチ〉は胴体を斬り裂かれた。




最強さん三日月に喧嘩ふって近接戦した結果、押し負ける。
遠距離戦ならね、どっこいどっこいに持ち込めるのにね・・・
なお、それをするとナノラミネートアーマーのせいで泥試合になります。

そしてマッキーはどっちの機体で出てくるのかな?それは次回!


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第十五話 原初の一 第一位の悪魔

投稿!!

さて、みんな大好きあれが登場!!

バエルを持つ私に逆らうか!!

バエル中毒者 マッキー


「これは───」

 

一瞬にして斬り裂かれた十体の〈バンダースナッチ〉を見て、エレンは目を丸くする。

そんなエレンを他所に、士道はこの惨状を作り出した“機体を見上げた“。

白銀色の装甲に、二本の剣。そして背中に備えられた二つのスラスターは巨大な翼のように広げられ、青いスラスターの光が輝いていた。

 

「無事かね。三日月・オーガス」

 

「平気。てか、チョコレートも“それ“出来たんだ」

 

「ああ。隠していた事については謝罪しよう。だが、こうやって実戦に出るのは始めてでね。私がこうやって“バエル“になれるのはかなり魅力的な体験だ」

 

そう言いつつも、声音からはかなり浮かれているようにも見える。そんなマクギリスに対し、十香が士道に言う。

 

「知り合いか?シドー」

 

「まぁ、知り合いって言えば・・・知り合い?」

 

知らない奴ではないのでそう答えるしかないのだが、どう説明しようかと士道は悩む。

だが、そんな中エレンは空中に浮遊するバエルに興味深そうに呟く。

 

「新たな精霊?それにしては───」

 

興味深そうに見ていたエレンは先ほどと打って変わって、好奇の色が映る瞳でマクギリスを見つめてくる。

 

「あなたは一体何者です」

 

「マクギリス・ファリドと言っておこうか」

 

「・・・・・・」

 

エレンはマクギリスの回答に眉をひそめると、手を上に掲げた。その動作に合わせて、周囲から再び〈バンダースナッチ〉たちが現れる。

 

「気が変わりました。マクギリス・ファリド。あなたも来ていただきます。抵抗はお勧めしません」

 

「・・・フッ」

 

そう言うエレンに対し、マクギリスは余裕の笑みを浮かべて笑う。

 

「抵抗はおすすめしない・・・か。なるほど、確かにそれは強者にしか出来ない発言だ。だが───」

 

マクギリスはバエル・ソードを鞘から引き抜くと、そのまま〈バンダースナッチ〉へ加速した。

ブレードを振るう〈バンダースナッチ〉にマクギリスは一瞬で距離を詰めると、バエル・ソードで腕を一刀で切断した。

そして近場の人形にバエル・ソードを投擲し、頭を潰す。

加速するバエルを〈バンダースナッチ〉達は捕らえることが出来ずに残りの機体も軒並み鉄くずへと変えられていった。

 

「それは私相手には相応しくない言葉だ」

 

〈バンダースナッチ〉をバエル・ソードで全て屠ったマクギリスはエレンにそう言って剣を振り払い、士道に言う。

 

「行きたまえ。君にはまだやることが残っているのだろう。なら、それを終わらせてくるといい。それまで私は彼女の足止めとは言わないが、バエルの力を彼女に見せつけるとしよう」

 

「んじゃ、お願い」

 

士道はそう言って、十香を連れて行こうとする。

 

「・・・シドー、あやつ一人で大丈夫なのか?」

 

そう言う十香に士道は言った。

 

「別にチョコの人は多分、“今の俺“より強いと思うから。心配するだけ無駄だよ」

 

「むぅ・・・妙にあの男の事、詳しいのだな」

 

「前から知ってるだけ。それより今はあの二人をどうにかしなきゃいけない」

 

「うむ・・・そうだな」

 

士道と十香はそう会話をしながら、この場をマクギリスに任せて走り去っていった。

走り去っていく士道達を見て、エレンは眉を軽く歪める。

 

「やってくれましたね」

 

「彼にはまだやって貰いたい事もある。この場で君に渡す訳にはいかないのでね」

 

マクギリスはそう言って、バエル・ソードを構える。

 

「そうですか。なら、貴方だけでも来てもらいます」

 

エレンもCRーユニットを展開し、背の剣を手に取った。

 

「ならば、君にはバエルの本当の強さを教えてあげよう」

 

そう言うマクギリスにエレンは言った。

 

「たかだか剣二本で何が出来ます?私は最強の魔術師です。手足の一本二本、無くなるのを覚悟してください」

 

「その余裕何時までもつかな?」

 

そうして、最強の魔術師と最強の悪魔が激突した。




実はマッキーのバエル、三日月とは違いモビルスーツ形態になんとなれません!!

なぜか?マッキーやユージンは純粋な生まれ変わりだから。マッキーは偶然バエルを使えるだけ!!

なら、三日月は?それはまだまだお楽しみ!!

(ちなみに三日月もちゃんと生まれ変わってたら、見た目の変化などはありません)
    ↑
  これ重要
    


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第十六話

投稿!!

お前はどうだ!バルバトス!

大気圏突入の三日月


或美島北街区と南部地域を隔てる森林を、暴力的な烈風が薙ぎ払っていく。

夏季の訪れと共に青々と繁った枝葉が滅茶苦茶に千切り飛ばされ、まるでミキサーの中にでも放り込まれたようにぐるぐると渦を巻いて上空に放り出される。細い木々など根から掘り起こされ、弾丸のように周囲に放り投げられていた。

 

「───前ッから思ってたのよ!あんたは自分一人で抱え込んで処理しようとして!」

 

叫びながら耶俱矢が巨大な槍を突きだすと、槍の先端部がドリルのように高速回転し、猛烈な竜巻を生み出した。

その竜巻で撫で斬りするように夕弦に向かって槍を薙ぐ。

 

「反論。その言葉、熨斗とリボンで過剰包装して耶俱矢に突き返します・・・!」

 

しかし夕弦は、破壊的な暴風の塊が迫っているというのに、至極冷静な様子で返し、左手を複雑に動かした。

すると夕弦が握っていたペンデュラムが、まるで意志を持ったかのように蠢き、夕弦の前に方陣のようなものを組む。

それは耶俱矢の巻き起こした竜巻の一撃をナンなく防ぐと、再び元の紐状に戻って夕弦の身体の周囲に螺旋状に渦巻いた。

 

「あんたは優し過ぎんのよ!!せっかく私が主人格の座を譲ってあげようってんだから、大人しく受け取っとけばいいの!」

 

「拒否。夕弦は初めから、主人格になる気はありませんでした」

 

「・・・・ッ、アンタねぇ!!」

 

口喧嘩のような、そうでないような言葉を交わしながら、高速回転する耶俱矢の槍と、剣のように複雑に編まれた夕弦の紐が打ち合わせる。

威力はまったくの互角。インパクトの瞬間、周囲に風が荒れ狂い、士道と十香にも襲いかかる。

 

「チッ」

 

士道は十香を抱えてその風を回避した。

 

「シドー!?」

 

「大丈夫」

 

十香の叫びに士道はそう短く返すと同時に、士道はすぐにこの状況を見て、今のままだと二人に追いつけないと理解した。

速さという所でみれば、二人は自分よりも速い。そしてこの暴風の中、突き進むとなると尚更だ。

そんな中で、十香を一人にしておくのも危険過ぎる。

あの二人を気を引ける武装もなければ、彼女達に追いつける要素もない。となると───

 

「・・・使うか?」

 

バルバトスのリミッター解除。その爆発力で一気に突破するしかないと士道は考えていた所で───

 

「シドー」

 

十香の声が士道の耳に入る。

 

「・・・ん?」

 

十香の声に士道は振り向くと、十香が真剣な顔で士道に言った。

 

「私は大丈夫だ。だからシドーは耶俱矢と夕弦を止めて欲しい」

 

十香はそう言いながら話を続ける。

 

「二人はお互いに幸せになって欲しいと思うのだ。なら二人とも幸せにならねば、たとえ片方の願いが叶っても、もう片方が悲しいままだ」

 

十香はそう言いながら士道の目を見る。

 

「だからシドー。行ってくれ。それで、二人を助けてあげて欲しい。でないと、あの二人はきっと報われない」

 

十香のその言葉に士道は頷いた。

 

「ああ。任された」

 

士道は十香にそう言って、バルバトスにも言った。

 

「行くぞ・・・バルバトス。あの二人に俺も言いたい事があるから、さっさとお前の力を寄越せ」

 

そう言う士道にバルバトスのツインアイが強く発光する。

 

「え?」

 

士道は自身が今、握られている“ソレ“を見て、表情を驚きの顔へと変える。

それは、十香も同様であった。

 

「シ、ドー・・・な、なぜ〈鏖殺光〉をシドーが・・・」

 

巨大メイスの代わりに光り輝く大剣が、バルバトスの手に握られていたのだから。




バルバトス これで勘弁して

耶俱矢の槍を見て  キマリスヴィダール !?

因みに、三日月が十香達精霊の天使を使うとえらいデメリットが返ってきます。
どんなデメリットかって?
バルバトスがその天使にモビルアーマーと誤認反応してリミッター解除一歩手前の状態になります。
もちろん普通に天使は使えますし、三日月が自発的に解除しなければいいだけですが。
自分で自分の首を締めにいっているバルバトスに敬礼!


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第十七話

投稿!!

もうそろそろこの章も終わりかなと言う所です。

次の章が厄介なのよ。次が・・・

何やってんだ!!ミカー!!

オルガ・イツカ


〈鏖殺公〉が顕現した時、士道の頭の中に凄まじい情報量が流れて込む。

 

「・・・ッ」

 

士道は頭痛で痛む頭を無視しながら、手に握られた〈鏖殺公〉を見つめる。

十香が霊装を顕現させる時と全く同じ形状、輝きを放つ大剣に士道は何も感じ無かった。

だがこれを見ていると、始めてモビルアーマーと近場まで接触した時の痛みが頭の中に迸っていく。

そしてバルバトスも同様、多少だが動きづらい。

そんな状態の中で、士道は十香に言う。

 

「十香」

 

「な、なんだ?気分が悪そうだぞ?シドー・・・」

 

心拍な表情をする十香に、士道は大丈夫と答えて話を続ける。

 

「二人を止めてくるね」

 

「うむ・・・シドーも無事でいてくれ」

 

「うん」

 

十香の言葉に士道は頷いてバルバトスと士道は耶俱矢と夕弦目掛けて飛翔する。

そして〈鏖殺公〉の柄をしっかりと握り、そのまま暴風を斬り裂いて耶俱矢と夕弦へと加速した。 

 

「な───」

 

「驚愕。なぜ・・・・」

 

互いに槍とペンデュラムを向けあっていた耶俱矢と夕弦が目を丸くし、横やりをした士道の姿を見る。

そしてバルバトスの手に持つ〈鏖殺公〉を見て、眉をひそめた。

 

「士道・・・!?あんたそれ・・・!?」

 

「驚愕。まさか、天使ですか」

 

そう言う二人に士道は言った。

 

「そんなことはどうでもいい。さっさと帰るよ二人とも」

 

士道のその言葉に、耶俱矢と夕弦は不機嫌そうに顔を歪めた。

 

「あんた、聞いて無かったの?私と夕弦は、どちらかがどちらかを取り込まないと存在できなくなっちゃうの」

 

「同調。その通りです。邪魔しないでください。今このわからず屋に、耶俱矢がどれだけ優れた精霊なのかを教え込んでいるのです」

 

「っ、まだ言うか・・・!私なんかが生き残ったって仕方ないって言っているでしょ!?なんでわかんないのよ!夕弦!あんたが生き残るべきなの!」

 

「否定。そうは思いません。耶俱矢の方が生き残るべきです」

 

「あんたは・・・・」

 

「激昂。耶俱矢こそ───」

 

「どうでもいいって言ってるだろ」

 

士道は再び言い争う二人に、士道は静かに口を開く。

 

「“二人で生き残る“。それでいいでしょ」

 

士道のその声が耶俱矢と夕弦に届く。そしてどちらからともなく、大きなため息を吐き出した。

 

「・・・何それ。ふざけてんの?」

 

「軽蔑。小学生以下の回答です。決断力のない男性はみっともないです」

 

そう言って、呆れた声を発してくる。

そう言う二人に士道は口を開く。

 

「じゃあ聞くけど、本当に二人はそれでいいの?」

 

「え・・・?」

 

「確認。それはどう言う事ですか?」

 

耶俱矢と夕弦の問いに士道は答えた。

 

「耶俱矢と夕弦はお互いが大事なんだろ。なら、それで良いじゃん。二人で争って大事な奴が消えるよりは、お互いに戦うのを止めて二人で生き残る。今だって二人は“一緒に生きている“。なら、そんなどうでもいい決闘なんか止めて二人でこれからも生きていけばいいはなしだし」

 

士道はバルバトスが送られてくる情報量に限界を感じながら最後まで言い切った。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

耶俱矢と夕弦はそう言った士道を見つめた後、お互いに見つめ合う。

そして───耶俱矢が静かに唇を開く。

 

「・・・だってさ。どう思う?夕弦」

 

「不信。考えられません。たとえそれがずっと続くと言う理由になってません」

 

「だよねー・・・私も同意見」

 

「・・・・・・」

 

無理か。士道はそう思い、〈鏖刹公〉の柄を握りしめる。だが、耶俱矢と夕弦は互いの目を見据えながら言葉を続けた。

 

「・・・・ねぇ、夕弦」

 

「応答。なんでしょう」

 

「あくまでももしもの話。可能性の話だけどさ。───もし士道の言うことが本当だったら、どう思う?」

 

「請願。考える時間をくださいますか」

 

「認める。ただし三十秒」

 

「・・・・・・・・・」

 

「はい、終わり。どう?」

 

「応答。・・・とても、素敵だと思いました」

 

「・・・ふうん。案外ロマンチストなのね」

 

「憮然。そういう耶俱矢はどうなのですか」

 

「・・・奇遇ね、私もよ」

 

「質問。もし二人とも生き残れたら、耶俱矢は、何がしたいですか?」

 

「私?そうねぇ・・・あ、十香が言ってた、きなこパンっての食べてみたいかも。なんでも美味しいらしいし」

 

「同意。それは美味しそうです」

 

「夕弦は?」

 

「回答。───夕弦は学校に通ってみたいです」

 

「ああ・・・いいわね。夕弦ならきっと学校中の男たちの憧れの的よ」

 

「否定。それはないと思います」

 

「へ?なんで?」

 

「応答。だって耶俱矢も一緒だからです。きっと耶俱矢のほうが人気が出ます」

 

「は、は・・・私も一緒?」

 

「肯定。だって、もしもの話です。制限を与えられた覚えはありません」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

その言葉を最後に、二人がしばしの間無言になる。

風鳴りの中、声を再開させたのは、耶俱矢だった。

 

「・・・ねぇ、夕弦」

 

「応答。なんでしょうか」

 

「ごめん、私、嘘ついてた。・・・私、」

 

耶俱矢の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

 

「私、死にたく、ない・・・」

 

嗚咽とともに、言葉を続ける。

 

「生きてたい・・・もっと、もっと夕弦と一緒にいたい」

 

「応と───、」

 

次いで夕弦の頬に、涙がひとすじ伝った。

 

「夕弦も・・・です。消えたく、ありません。耶俱矢と、生きていたいです」

 

「夕弦・・・」

 

「耶俱矢」

 

二人が視線を合わせ、同時に唇を動かす。

 

『──────』

 

だが、二人ののどから発せられた声は、お互いに届くことは無かった。

それよりも遥かに巨大な駆動音が、耶俱矢と夕弦のさらに上空から轟いたからだ。

 

「何・・・・?」

 

「注視。あれは───」

 

耶俱矢と夕弦が空を仰ぎ見る。

士道も空を見上げると、そこには後部から煙を噴いた、巨大な黒い戦艦が浮遊していた。




耶俱矢と夕弦の会話中

三日月  そろそろ限界なんだけど?(ぶっ倒れる寸前)

尺の都合上放置された三日月さん。

いや大変申し訳ござ パンパンパンパン!!


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第十八話

投稿!!

もうそろそろエピローグ!!

おい、バルバトス。あれはお前の獲物だろ。余計な鎖は外してやるから見せてみろよ。お前の力。

三日月・オーガス


「最強の魔術師と聞いて、どれほどのものかと私も少々期待していたが・・・期待外れだったな」

 

マクギリスはそう言って倒れ伏すエレンを眺める。 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

荒い息を吐くエレンに対し、マクギリスは余裕を見せる動きで空を見上げる。

煙を上げる戦艦が空に浮かび、〈バンダースナッチ〉の残骸があちこちに転がっていた。

形勢はこちらが完全に有利。DEMはこの状況では撤退せざるを得ないだろう。

そんな状況でマクギリスは倒れ伏すエレンに口を開いた。

 

「引きたまえ。今の君では私どころか彼にも勝てんよ。私の友にも劣る」

 

かつて自分を殺した男を思い出すように、マクギリスはエレンに言った後、マクギリスはバエルのスラスターを使って飛翔する。

空へと飛翔するバエルは森の中に見える士道と耶俱矢、夕弦を見てから笑みを浮かべる。

 

「後は任せたぞ。三日月・オーガス。私にもう一度見せてくれたまえ。君の・・・君達の可能性を」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「────何よ、あれは」

 

「同意。空気を読んで欲しいです」

 

耶俱矢と夕弦は上空に現れた巨大な鉄の塊を見上げながら、不機嫌そうに声を発した。

せっかく最愛の半身と和解し合えたというのに、絶妙のタイミングでそれを邪魔されてしまったのである。

だが、それだけでは終わらなかった。

戦艦の下部に設えていたハッチのようなものが開いたかと思うと、そこからバラバラと、手足や背に様々な武器を積んだ人形が落ちてきたのである。

無機的で滑らかなフォルム。一応頭部と手足のある形をしていたのだが、人間というよりも、亜人を想起させた。

 

「またコイツらか」

 

士道はズキズキと痛む頭を無視しながら、〈バンダースナッチ〉を見る。

向かってくるその人形に耶俱矢と夕弦は不快そうに眉を歪めた。

 

「ふん・・・気味の悪い輩よ」

 

「同意。正直触りたくありません」

 

耶俱矢と夕弦は人形を吹き飛ばすと、再び人形が飛び交う上空を仰ぎ見た。

まだ、人形は残っていたらしい。またもバラバラと、人形が投下される。

二人はそれを見てうんざりと眉を歪めると、まったく同時に口を開いた。これではいくら倒してもきりがない。

 

「あのさ、夕弦」

 

「提案。耶俱矢」

 

声が綺麗に重なる。耶俱矢と夕弦はキョトンと目を丸くすると、顔を見合わせた。

そして、どちらからともなく、「ふふっ」と声が漏れる。

 

「やっちゃう?」

 

「肯定。やっちゃいます」

 

二人は小さくうなずき合うと、耶俱矢が左手を、夕弦が右手を差出し────ぴたり、と合わせた。

すると二人の霊装と天使が光り輝き────耶俱矢の右肩に生えていた羽と、夕弦の左肩に生えていた羽が合わさって、弓のような形状を形作った。

次いで、夕弦のペンデュラムが弦となって羽と羽の先端を結び───耶俱矢の槍が、矢となってそれに番えられる。

今度は、耶俱矢が右手で、夕弦が左手で。

霊装の鎧に包まれた手で以て、左右から同時にその弦を引いた。

そして、その様子を見ていた士道に二人は唇を開いた。

 

「士道!アンタの言葉のおかげで、私はこれからも夕弦と一緒にいれる!」

 

「感謝。この恩は決して忘れません」

 

「そっか。なら良かった」

 

そう言う士道に対して、二人は最大限まで引いた弓を、上空の戦艦に向ける。

そして。

 

「〈颶風騎士〉────【天を駆ける者】!!」

 

二人がそう叫んだ瞬間────

 

“ドクン“

 

「────────」

 

士道は耶俱矢と夕弦が持つその天使が放たれると同時に、視界の右側が赤く染まった。

 

ALAYA-VIJNANA SYSTEM SAFE MODE ACTIVATED

 

目の前に写し出される光景。

耶俱矢と夕弦の手に握られている“〈ラファエル〉“。

士道は─────三日月にはそれがかつて、“モビルアーマーだったナニカ“に見えた。

巨大な戦艦は〈颶風騎士〉の矢に貫かれ、そしてそれの纏った風圧により内部機関を破壊され─────巨大な爆発音と共に夜空を赤く染めた。

そして耶俱矢と夕弦がハイタッチをしながら、士道へ姿勢を向けると呆れたように耶俱矢が唇を開いた。

 

「ちょっと、なに呆けてんのさ?士道も、もうそれを使わなくても良いでしょ?」

 

「同意。辺りには敵は居ませんので安心してください」

 

そう言う二人の言葉と同時に背後から十香の声が上がる。

 

「シドー!!」

 

「・・・十香」

 

士道は十香の声に気付き、顔をそちらへと向ける。

 

「大丈夫か!?シドー!!先程凄まじい爆発があったから来て見たのだが─────」

 

「十香」

 

そう心配そうにする十香に士道が口を開く。

 

「・・・シドー?」

 

首を傾げる十香に士道は言った。

 

「ゴメン。ちょっと疲れたから寝る」

 

そう言って士道はバルバトスを消すと、“べチャリ“と生暖かい血が士道の鼻や右目から流れて落ち、地面へと倒れ伏した。

 

「シ・・・ドー・・・・?」

 

「ちょっと!?士道!!アンタ、血が!!」

 

「緊急。すぐに令音に報告を!」

 

慌てる三人に士道は赤くなった右目がちゃんと見えるのを確認し、全身が動くのを感覚で感じ安心して目を閉じる。

そして意識が失う寸前に、十香の声が聞こえた。

 

「シドー!!」と─────




バルバトス サーセン

三日月、目や鼻から出血するも、手足や目は取られず。
脳を限界ギリギリまで使った結果、三日月がぶっ倒れる事態に。
リミッター解除してないから今回は取られなかったけど、実はかなりヤバい所まではいってた三日月さん。
これで解除したら間違い無く二の舞になってます。


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第十九話

投稿!!

そして次がエピローグ!

最短で行く。どうせ止まれねえならなりふり構っちゃいられねぇ

オルガ・イツカ


「令音!!」

 

「・・・ん?どうかしたのかね?」

 

「シドーが!シドーが!!」

 

「・・・!すぐに確認する」

 

目と鼻から血を流し、気を失っている士道を耶俱矢が抱えているのを見て、目を見開く。

 

「おい!?士道は大丈夫なのかよ!?」

 

殿町も運ばれてきた士道に気付き、冷や汗を流す。

 

「士道!」

 

折紙は士道へと駆けつけようとすると、令音に阻まれる。

 

「シンの安全が先だ。下がりたまえ」

 

「外傷は?」

 

「応答。ありません」

 

「目と鼻からの出血だけよ!」  

 

「シドー!シドー!」

 

焦る耶俱矢と冷静ながらも心配そうな顔をする夕弦、そして涙を浮かべる十香に対し、令音は言う。

 

「安心したまえ。必ずなんとかする」 

 

令音はそう言って、気を失っている士道を見つめた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「─────」

 

赤茶色の荒野が目の前に広がる。

その荒野の丘に三日月は一人、立っていた。丘の頂上には鉄華団の霊魂碑がある。

その霊魂碑の前に三日月の良く知る人物が立っていた。

その男に三日月は口を開く。

 

「オルガ」

 

三日月の言葉にオルガは振り向くと三日月を見て言った。

 

「おう、ミカ。お前が此処に来るなんて珍しいな?」

 

「そう?たまにアトラ達と一緒に来るよ」

 

三日月はそう言ってオルガの隣に立つ。

三日月の目に見える先の風景は、荒れ果てた荒野。そこには巨大な穴と、ボロボロになった自分達の家が見えた。

三日月は墓に視線を向けると、刻まれた名前の中に自身の名前がない事にため息を吐くと、そのまま立ち上がった。

 

「また、無茶したんだろ?お前が此処に来る理由なんてそれしかねえからな」

 

「まあね。今回はバルバトスを使いすぎた。バルバトスにも色々文句言われたし」

 

「そうか」

 

三日月の言葉にオルガはそう言って口を閉じる。

そして、隣に立つ三日月にオルガは言った。

 

「なあ、三日月」

 

「なに?」

 

「あんまり無茶すんなよ。ミカに生きて欲しいって言う奴はいるからな」

 

「分かってる」

 

三日月はそう言って身を翻す。

 

「じゃあねオルガ。もうそろそろ帰らないといけないし」

 

「おう、行ってこい。ユージンにもよろしくな」

 

「うん」

 

三日月はそう言って歩き出す。と、三日月はオルガの言葉に疑問が出て振り向いた。

 

「ねぇ、オルガ」

 

「ん?どうした?ミカ」

 

「なんでユージンが居る事知ってんの?」

 

三日月の疑問にオルガは、笑って答えた。

 

「そりゃお前─────」

 

風と共にオルガの言葉が三日月の耳に届く。

それを聞いて三日月は軽く笑みを作った。

 

「そっか。それならオルガも知ってて当たり前か」

 

「そんだけか?」

 

「うん」

 

三日月はオルガにそう言って、元の道へと歩いていった。

 

◇◇◇◇◇

 

「─────」

 

士道は目を開けると、視界に目に涙を浮かべた十香の姿が真っ先に入った。

 

「シドー!!」

 

「・・・・いじょうぶ」

 

「じゃないわよ!皆から心配されてたのよ!」

 

士道は声が聞こえた方へ顔を向けると、そこには耶俱矢が今にも怒ってますと言わんばかりに士道に言った。

 

「補足。耶俱矢はこう言っていますが、ここに着いた時ものすごくオロオロしていました」

 

「ちょ!?余計なことを言うな!?」

 

夕弦の言葉に耶俱矢は顔を赤くしてそう叫ぶ。

そんな中で、十香はベッドに横になる士道に言った。

 

「シドー・・・大丈夫なのか?」

 

そう言う十香に士道は言う。

 

「大丈夫。なんともないよ」

 

「本当に、本当か?」

 

「うん」 

 

「・・・・・ん」

 

十香は大丈夫と言う士道の肩に頭を乗せると、そのまま自重を士道に寄せる。

そして十香はそのまま瞼を閉じるとすぅすぅと寝息をたてながら眠ってしまった。

おそらくずっと自分の看病をしてくれていたんだろう。十香に悪いことしたなの思いつつ、士道は耶俱矢と夕弦を見ると、ジトーとした目で二人は士道を見ていた。

 

「・・・・なに?」

 

「夕弦、これよこれ。目の前でこうもされると流石に私も腹立つわ」

 

「私刑。ぼこぼこです」

 

「俺、なんかした?」

 

「うっさいバーカ」

 

「追記。とーへんぼく」

 

「・・・・・・」

 

好き放題言われているが、十香にも同じようなことをされた事があるのでなんとなく士道は二人が拗ねている理由が分かった。

十香ばかりズルいと。自分達にもかまえと。彼女達は言っているのだろう。

 

「後で二人にもやってあげるから今は我慢しといて」

 

「お?言ったわね。その言葉、覚えとくわよ」

 

「同調。約束ですよ」

 

そう言う二人に士道は十香をベッドに寝かせて立ち上がると、耶俱矢がなにか思い出したかのように士道に言った。

 

「と、忘れる所だった。・・・士道」

 

「ん?」

 

「まぁ、なんというか、ありがとうね。いろいろと」

 

「多謝。士道のおかげで、耶俱矢と争わずに済みました」

 

耶俱矢の言葉に士道は振りかえると、今度は夕弦が言う。 

 

「だからまぁ、つまんないもんだけど、お礼にと思って」

 

「請願。目を閉じていてください」

 

「目?いいけど」

 

士道はキョトンとした顔を作りながらも、大人しく指示に従った。

そして─────

 

「────────」

 

右と、左。

唇の右と左から柔かい感触が生まれた。

そして─────

 

「な・・・・」

 

「驚愕。これは─────」

 

耶俱矢と夕弦はのどから狼狽に満ちた声を発した。だがそれも無理はあるまい。何しろ、彼女達が着ていた霊力で作った制服が光の粒子となって消えてしまったのだから。

 

「う、うきゃぁぁぁッ!?」

 

「狼狽。えっちです」

 

「これ、俺のせいになるの?」

 

「ぬぅ・・・うるさいぞ・・・」

 

二人揃って胸元を覆い隠し、その場にうずくまる。

士道はこれは自分のせいになるのかと呟く一方で、ベッドで寝ていた十香が寝ぼけ眼で目を覚ました。

そして耶俱矢と夕弦の姿を見て、十香は状況を理解したのだろう。顔を真っ赤に染めて、士道に言った。

 

「し、シドー!?な、ななな何をしているのだ!?」

 

「え!前に十香や四糸乃にもやったやつ」

 

「士道にいきなり服を剥ぎ取られたー・・・」

 

「落涙。もうお嫁にいけません」

 

士道はそう言うが、背後から耶俱矢と夕弦が十香に向けて援護射撃が入る。十香はさらに頬を赤くすると、士道をギロリと睨みつけてきた。

 

「シドーォォォ!」

 

「これ・・・俺が悪いの?」

 

その状況のやり取りを扉の向こう側で聞いていた令音はボソリと呟く。

 

「やれやれ。これは、大変そうだ」

 

そう呟き、令音は医務室へと入っていった。




ゴメンね、三日月さん。
君のせいじゃないよ?ただタイミングが悪かっただけで君が悪い訳じゃないよ。


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第ニ十話 士道は、私が─── エピローグ

投稿!!

ついに100話に到達!!

まだ五巻目なんだぜ?これ・・・あと17巻分・・・なっがいなぁ・・・


俺にはオルガがくれた意味がある。なんにも持っていなかった俺のこの手の中に、こんなにも多くのものが溢れてる。
そうだ。俺達はもうたどり着いていた。俺達の本当の居場所、だろ?オルガ─────

本当の居場所を見つけた 三日月・オーガス



心臓の音が、いやに大きく感じる。

琴里は広い廊下に靴音を響かせながら小さく苦笑する。こんなにも広い空間に琴里一人しかいないというのもあるが────やはり、少し緊張しているのだろう。今までも何度か訪れたことがあるというのに、どうにも慣れそうにない。

琴里はいつもの真紅の軍服姿だったのだが、ジャケットを肩掛けにはせず、きちんと袖を通してボタンを留めていた。無論、口にキャンディもくわえていない。

琴里は扉の前で足を止めると、すうっと深呼吸をした。

そして、コンコン、とノックする。

 

「五河琴里、参りました」

 

『─────入ってくれ』

 

「はい」

 

琴里は短く答えると、扉を開けて部屋の中に入っていった。

部屋の中は書斎のようになっていた。部屋の四方が本棚で埋められわ革張りの本が幾つも収められている。詳しい内容はわからない。

そして部屋の最奥に、その男はいた。

 

「久しぶりだね、五河司令」

 

言いながら椅子をくるりと回し、琴里の方に顔を向けてくる。

半ば白くなった髪と鬚に、優しげな目元。年齢は五十前後といったところだろう。老人というには幾分か歳が足りないかもしれないが、好々爺といった感である。

円卓会議議長、エリオット・ウッドマン。 

〈ラタトスク機関〉の創始者であり、琴里の恩人でもある人物だった。

 

「ご無沙汰しております、ウッドマン卿」

 

琴里は、踵を揃えて綺麗な敬礼をした。

 

「随分と活躍しているようじゃないか。円卓の連中も驚いていたよ」

 

「彼らは大仰に驚くのが仕事ですから」

 

琴里が言うと、ウッドマンは愉快そうに笑った。

 

「まあ、そう言わないでくれ。彼らは彼らで、〈ラタトスク〉に必要な人材だ。・・・それより五河司令。〈灼爛殲鬼〉を使ったと聞いたが、大事ないかね」

 

「はい。ご心配をおかけしました」

 

「いや。随分と無理をさせてしまって申し訳なく思っているよ」

 

そう言って髭を撫でながら、静かな口調で続けてくる。

 

「・・・ところで、つい先ほど報告があったのだがね」

 

「報告、ですか」

 

「ああ。〈フラクシナス〉がDEM社製と思しき空中艦に襲撃されたらしい」

 

その報告は既に受けていた。「ええ」と首を前に倒す。

 

「聞いています。しかし、艦には神無月がいますので、問題はないでしょう」 

 

「そうだろうね。────どちらかというと問題はもう一つの方だ」

 

「と、言いますと」

 

琴里が問うと、ウッドマンはしばし逡巡のようなものを見せてから言ってきた。

 

「・・・どうやら、君の兄上が天使を顕現させたらしい」

 

「・・・・・!」

 

その言葉に、琴里はぴくりと眉を動かした。

こくんと唾液を飲み下し、一瞬にして激しくなった心臓の鼓動を抑えるように胸に手を置き、呼吸を整えてから言葉を返す。

 

「そう、ですか。─────もう」

 

「ああ。恐らく、君の霊力の再封印がきっかけだろう」

 

「・・・・っ」

 

思わず奥歯を噛んでしまう。ウッドマンはそんな琴里の様子に気づいたのか、申し訳なさそうに顔を歪めた。

 

「・・・もしものときは“適切な対処“を迫られるかもしれない。でなければ、せっかく封印を施した精霊たちに、また災いが降りかかることになる」

 

「承知・・・しています」

 

琴里が静かに目を細めると、ウッドマンが一冊の本を手にして琴里に渡してくる。

 

「これを見たまえ」

 

「・・・これは?」

 

「厄祭戦の記録だ。残っている資料は少なかったが、その中に君の兄上が使っているバルバトスの名前があった」

 

「・・・・・!!」

 

ウッドマンのその言葉に、琴里は顔を上げる。

 

「七十ニ機の悪魔の名を持つガンダム・フレーム。今分かるのはそれだけだが、今後新たな情報が上がり次第君に教えよう」

 

「・・・ありがとうございます」

 

暗そうな顔をする琴里にウッドマンはうなるように声を発してくる。

 

「・・・・・君に嫌な役を押し付けてしまって、すまなく思っているよ」

 

「いえ、仕方のないことです。・・・今後、もし最悪の事態に陥ったなら─────」

 

そして、琴里は小さくうなずいてからその言葉を発した。

 

「─────“士道は、私が殺します”」




バルバトス  殺せるの?
     ↑ 
戦略兵器のダインスレイヴを衛星上から撃たれても瀕死だっただけで死ななかった奴

因みに相性問題である程度琴里なら炎でメタれる模様。
なお、戦うと琴里は死なないから太鼓の○人されますが。


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美九リリィ
第一話


新章入るよ!!
因みにこっから原作を思いっきりぶっ壊しにかかります。
それと・・・もう先にネタバレすると、この美九編で三日月をリミ解除させるつもりです。なんなら、物語後半でその理由が分かります。では、どうぞ!!

クランク二尉に手をかけた罪深き子供ォ!!

発狂アイン君


「おはよう。ユージン」

 

夏休みが終わり、朝、士道は自転車をこいでいるユージンを見つけ声をかける。

 

「おう。おはよう三日月。それと十香もおはよう」

 

「おはようなのだ。ユージン」

 

最近になって十香もユージンに慣れてきたのか挨拶を返すようになった。

そんな朝の登校の中、ユージンが言う。

 

「三日月、今日の帰り暇か?」

 

「ん?まぁ、何にもないし暇だけど」

 

そう言う士道にユージンは口もとを歪めて言った。

 

「なら帰りにゲーセン行こうぜ。みんなでよ」

 

「あそこ?いいけど。十香はどうする?行く?」

 

そう言う士道に十香は目を輝かせて頷いた。

 

「うむ!前に行った時はきなこパンの抱きまくらが取れなかったからな!今日は取るぞ!」

 

「まだ諦めてなかったのかよ・・・」

 

前回行った時のリベンジと言わんばかりに十香は頷く。

ユージンも若干呆れていたが、その顔は気難しい顔ではなく、少しだけ気の抜けた顔だ。

 

「おい。我らを置いて先に行くとは、いい度胸だな?士道」

 

「「ん?」」

 

「おお!おはようなのだ。耶俱矢、夕弦」

 

士道とユージンはお互いに顔を後ろへと向け、十香は笑顔で二人に挨拶する。

そんな十香に耶俱矢と夕弦は挨拶を返した。

 

「士道と違い良い返答だ。十香」

 

「応答。おはようございます。十香」

 

耶俱矢と夕弦はそう言った後、士道を見る。

どうやら朝一置いていった事にお怒りらしい。

 

「それで士道。我らに何か言う事はあるのではないのか?」

 

「いや、耶俱矢待っていたら流石に遅刻するし。それに夕弦に俺言ったけど。先に行くって」

 

「・・・・ちょっ!?夕弦、聞いてないんだけど!?」

 

思わず耶俱矢は素に戻り、夕弦を見る。だが、夕弦はそんな耶俱矢に対して言った。

 

「返答。時間ギリギリまで寝ていた耶俱矢に言う時間がありませんでした」

 

「私のせいにすんなし!!ってか、夕弦は何時に起きていたのさ!!その時に起こしてよ!!」

 

「応答。では、朝の五時頃に起きましょう。それで士道と真那と一緒に野菜の水やりをしますか。楽しいですよ」

 

「思ってたより早い!?それに何それ。初耳なんだけど」

 

「何やってんだ。お前等・・・」

 

ユージンはそんな二人を見てそうぼやくが、とうの士道はそんな事を気にすることなく、学校の通学路である商店街を歩いていく。と、何処かで歌が聞こえた。

 

「あ?」

 

「どうした?三日月」

 

ユージンがそう言って士道に聞き返す。

そんなユージンに士道は言った。

 

「なんかどっかで歌が聞こえたんだけど」

 

「歌ぁ?そんなもん聞こえねえけど・・・」

 

「じゃあ、気のせいか」

 

何処かで聞き覚えのある歌だったのだが、と士道は首を傾げながら十香達と一緒に学校へと歩いていった。

 

◇◇◇◇◇

 

昔、何処かで士道に歌を毎日のように聞かせてくる女の子がいた。

始めてあった時は、士道は買ったサンドイッチを何時ものベンチで食べようとした時に、ソイツがベンチの上で腹が減って動けなくなっていた時だった。

最初は邪魔だからと言う理由で、三つあるうちの一つをあげてその場から退かせようとした。

そしたら妙に懐いてきて、毎日のように歌を聞かせてくるようになったのだ。

士道にとって、そういった感性など殆どわからない。

だから最初は「へぇ」としか思っていなかったが、それでも士道は彼女の歌を何時もの公園でトレーニングついでだが、毎日のように聞いていたのだ。

そんな中、五年前の火災で家が焼け落ちた時に引っ越しが決まり、それ以降彼女と会うことはなくなった。

その少女の顔を名前を士道はもう覚えていない。

ただ、覚えているのは─────その少女が一生懸命歌っていたその姿だけだった。

 

◇◇◇◇◇

 

マクギリスはDEM社の廊下へと足を踏み入れていた。

アイザック・ウェストコットから“機密兵器“が出来たとの連絡があり、その視察の為、足を運んでいた。

そして客室の扉を開くと、そこには呼び出したアイザック本人が先に座っていた。

 

「やあ、モンターク。久しぶりだね」

 

「ああ。元気そうで何よりだ。ウェストコット」

 

マクギリスはそう言ってウェストコットと握手を交わすと、本題へと入る。

 

「・・・それで、機密兵器が出来たと聞いたのだが、どういったものだ。対精霊用装備に関してはかなりのパーツを貴方に提供したと覚えているが」

 

マクギリスのその言葉にウェストコットは笑みを浮かべる。

 

「ああ。今だ試作機の段階だけどね、〈デーモン〉を倒せるであろう機体をロールアウトする予定だ」

 

「ほう。〈デーモン〉を?」

 

マクギリスはウェストコットに話を合わせて、渡されたタブレットに映る“ソレ“を見て、仮面越しで目を見開いた。

 

「・・・これは」

 

マクギリスの反応を見てか、ウェストコットは更に笑みを浮かべる。そしてマクギリスに言った。

 

「君が解読してくれた厄祭戦のモビルスーツを設計し直して、〈バンダースナッチ〉を改良してみた。そして今できる最高のAIも搭載してね。それで名前なんだが────」

 

その名前は─────

 

「“グレイズ・アイン“。〈デーモン〉、いや・・・“五河士道”にこの機体が何処までいけるのか楽しみだよ」

 

 




みんな大好きどら○もん、グレイズ・アインの登場!! 

強さはマクギリス、三日月よりは少し下、それ以降はほぼ瞬殺に近いくらいの強さになります。
ハシュ○?アイツとはいい勝負するんじゃない?お目々グルグル


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第ニ話

投稿!!

オルガ、痩せた?

三日月・オーガス


『今からちょうど一年前・・・我らは多くのことを学ぶこととなった』

 

全校生徒が集まった来禅高校の体育館は今、異様な雰囲気に包まれていた。

壇上に立ったクラスメイトの山吹亜衣が、拳を握りながらマイク越しに声を絞り出す。

 

『苦汁の味を、敗北の屈辱を・・・・・這い蹲らされた地の冷たさを』

 

拳を震わせながら憎々しげに言っていた亜衣が、バッと顔を上げる。

 

『さあ諸君。見るも哀れな敗残兵諸君。私は君たちに問いたい。我らは苦汁を舐めたままなのか?這い蹲ったままなのか?敗北に沈んだままなのか・・・!?』

 

ダン!て亜衣が拳を演台に叩きつける。マイクのハウリング音が辺りに響き渡った。

 

『否!否だ!彼奴等は重大な失敗を犯した!それは我らにもう一度この復讐の牙を研ぐ時間を与えてしまった事である!次こそ我らに勝利あれ!』

 

『おおおおおおおおおおおおおッ!』

 

周りが盛り上がっている中で、ユージンは隣にいる士道に言う。

 

「なあ、三日月・・・・」

 

「んー・・・なに?」

 

「お前らのクラスっていつもこうなのかよ?」

 

「まあ、うん。だいたいこんな感じ」

 

「マジかよ・・・」

 

頬を引きつらせるユージンに対し、士道は慣れた様子でその光景を見つめる。

そんな中、十香が士道に視線を向けながら言ってきた。

 

「シドー、亜衣は一体何を言っているのだ?どこかと戦争でも始めるのか・・・?」

 

「やらない」

 

士道はそう答えて、隣にいたユージンは十香に説明する。

 

「今月はあれだ、天央祭があるんだよ」

 

「天央祭?なんだそれは」

 

「んー、まあ簡単に言うと文化祭だ。他の学校と合同でやるバカでかい文化祭って覚えてりゃいい」

 

そう説明するユージンに対し、士道は欠伸する。

話を禄に聞いていない士道に対し、ユージンは十香に説明を続けていく中、壇上にいる亜衣の話が続いていく。

 

『それじゃあ今から、桐崎生徒会長以下数名が、ストレスと過労でぶっ倒れたので、実行委員の代役を決めたいと思います』

 

瞬間─────

つい数瞬前まで声を響かせていた生徒たちが、一斉に静まりかえった。

これはまずいと思ったのだろう、亜衣が身振りをしながらフォローを入れてくる。

 

『いや、っていってももう大体の仕事は終わってるのよ?ホント。会議のとき座っててくれるだけでいいからさ!』

 

そう言ってはいるが、誰もが視線をそらし始める。

そんな中で、耶俱矢と夕弦が士道がいる此方へと向かってきた。

そして小さな声で耶俱矢が士道達に聞いてくる。

 

「ちょっと・・・この雰囲気どうなってるのよ?静まりかえってるじゃん」

 

「さあ?」

 

士道にとってはどうでもいい事だが、ユージンは苦い顔で二人に言う。

 

「忙しいんだよ。ああ言ってっけど、実際は滅茶苦茶大変なんだよ。多分やったらオルガみたいになる自身あるぜ」

 

 

「だってさ」

 

「疑問。オルガとは誰でしょうか」

 

用は忙しいと思えばいいだけである。

静まる空気の中、こちらをジッと見つめられるような視線があった。

 

「ん?」

 

士道はその視線の先に目をやると、そこには鳶一折紙がジッとこちらを見つめていた。

ユージンが近くにいる間は、彼女も近づいてこないので士道としてはかなり気が楽にはなったが、ここの所は視線を送ってくることが多くなった。

 

「・・・・・・」

 

士道はすぐに折紙から視線を離した視線の先に、殿町が恨めしそうに目を寄こしていた。

 

「?」

 

その理由が分からない士道は首を傾げると、殿町がぐるりと身体の方向を変えたかと思うと、不意に大声を発しながら手を高く上げた。

 

「議長!」

 

『はい、殿町くん』

 

「天央祭の実行委員に、五河士道くんを推薦しますッ!」

 

「は?」

 

唐突な殿町の発言に思わず、士道は声を出してしまう。

そんな士道に対し、周りからは次々と声が上げられる。

 

「賛成!頼んだよ、五河くん!」

 

「賛成!俺達の意思を託せるのはお前しかいない!」

 

「三日月、お前どんだけアイツから恨まれてんだよ?」

 

ユージンもそう声が上げられるが、士道としてはそれどころではない。すぐにやらないと言おうとした時、壇上から亜衣が声を響かせた。

 

『諸君らの声、しかと受け取ったぁッ!二年四組五河士道くんを、他薦、賛成多数により、天央祭実行委員に任命しまッす!』

 

「は?」

 

『おおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

体育館に大歓声が上がる中、ユージンが士道に言う。

 

「・・・多分お前じゃ無理だから俺もやるわ」

 

士道ができない事を代わりにユージンが手伝ってくれるのが、この中で唯一の救いだろうか。




なおこの後、殿町は三日月にボコられた模様。


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第三話

投稿!!

今回は最後、若干ギャグより。

頼むぜ!!三日月!!

ユージン・セブンスターク


すっかり日も落ちた十九時三十分。士道とユージンは学校の校門を出て、二人で薄暗い道を歩いていた。

 

「・・・疲れた」

 

「・・・ああ、身体がだりぃ・・・」

 

士道は事務仕事に全くと言っていいほどしていなかったせいか、実行委員の仕事を一から覚える羽目になり、ユージンに至っては、士道のフォローから予算分配等の各種伝達事項その他諸々の情報を捌いていたため、士道よりも頭と精神の疲弊が深刻だった。

 

「・・・オルガもこんな感じだったのかな」

 

「・・・いや、オルガの奴はもっと上手くやってた。俺だってよ、事務仕事で三十六時間の勤務は無かったぜ?アイツの方がもっとすげえよ」

 

通学鞄を右肩に下げながら、士道はユージンに言った。

 

「飯どうする?家で食ってく?」

 

「あー・・・そーだな。どうせ、俺の親父らは今日は帰って来ねえし、邪魔するわ」

 

「分かった」

 

士道はそう言いながら歩いていると、ふと足を止めた。

 

「・・・ん?」

 

「どーした?三日月」

 

ユージンが振り返りながらそう言うと、士道は口を開く。

 

「いや、あれ」

 

「ん?」

 

ユージンも士道の視線の先に目を向けると、前方────街灯に照らされた道の上に、小さな人影が見えた。

つばの広い麦わら帽子を被り、淡い色のワンピースを纏った小柄な少女である。

そして左手に着けられたウサギのパペットを見て、士道は前方にいる少女が誰なのかすぐに分かった。

 

「四糸乃。こんな時間に一人は危ないよ」

 

「・・・・・!」

 

名を呼ぶと、四糸乃はぴくりと肩を揺らして士道の方に視線を向けてきた。

 

「あ・・・士道、さん」

 

『おー、見ぃーつーけたー』

 

四糸乃が小さな声を発し、次いで左手のパペット『よしのん』が甲高い声を上げる。

 

「どうしたの、こんなところで?もう時間も遅いでしょ」

 

「あ、あの・・・私、士道さんのおうちに、お邪魔していたんです、けど・・・士道さんの帰りが遅くて、琴里さんが心配してたから・・・それで・・・」

 

そう言う四糸乃に対して、隣にいたユージンは言う。

 

「でもよ、一人で来るのはあんまり良くねえぞ。来るなら誰かと一緒じゃねえと」

 

そう四糸乃に言うユージンに、『よしのん』が口をパクパクと動かす。

 

『いやー、最初は真那ちゃんと一緒にいたのよ?けど、四糸乃が慌てちゃったせいで置いて来ちゃってさー』

 

「真那も?」

 

士道がそう言うと、その更に前方から小柄な少女が走って来るのが見えた。

 

「やーっと追いつきましたよ!一人だと危ねーって言ってますのに・・・」

 

真那はそう言って荒い呼吸を落ち着かせながら、士道に言う。

 

「すみません兄様!!私が居ながら、四糸乃さんを一人にしてしまって!」

 

「別に真那は悪くないでしょ。ほら、早く帰るよ」

 

「は、はい・・・!」

 

「はい!」 

 

二人はそう返事を返しながら、士道達と一緒に家へと向かう。そんな中で、真那が唐突に士道達に聞いてきた。

 

「ところなんですが、兄様」

 

「なに?」

 

「今日はどうしてこんなに遅かったのでいやがりますか?普段なら一言二言、連絡してきますのに?」

 

「ああ、これをユージンとやってた」

 

「これは・・・・?」

 

士道の指差す方、ポスターが貼られている壁に真那と四糸乃は目を向ける。

 

「天央祭・・・ですか?」

 

「うん。ユージンと一緒に実行委員ってやつの仕事」

 

「それで遅かった訳ですか」

 

真那はそう返事を返しながら納得する中で、四糸乃は興味深そうにうなる。

 

「どうした?」

 

うなる四糸乃にユージンがそう言うと、『よしのん』が答える。

 

『いやー、楽しそうだねーって思っただけだよー』

 

「まあな。結構楽しいぞ。良かったらお前等も来いよ」

 

ユージンがそう言うと、四糸乃と真那は驚いたように目を丸くした。

 

「!い、いいん・・・ですか・・・?」

 

「おう。俺等の学校でも色々出展する予定だから、遊んでいってくれよ」

 

『あっらー、よかったねー、四ー糸乃』

 

「う、うん・・・・!」

 

士道も四糸乃達に喜んでもらえると悪い気はしない。士道はそう思いながら、真那達と一緒に家に向かっていった。

 

「────ただいま」

 

「うーす、お邪魔しまーす」

 

両手が塞がっているため、四糸乃に扉を開けてもらいつつ、廊下の奥に向かって声を出す。

それから玄関に荷物を置き、靴を脱ぐと同時に、バターン!とリビングの扉が開け放たれ、長い髪を黒いリボンで二つに括った少女が飛び出してきた。そして─────

 

「遅ぉぉぉいッ!」

 

そんな叫び声を上げると同時、士道の鳩尾目掛けて跳び膝蹴りを放ってくるが─────  

 

「よっと」

 

士道は身体をずらす事によってそれを躱し、代わりに後ろにいたユージンの腹に目掛けて突き刺った。

 

「がべらてとらっ!?」

 

「「「「・・・あ・・・」」」」

 

四人は呆然とその様子を見つめる中、当の本人は謎の奇声を上げながら、ユージンの意識はブラックアウトした。




オルガ 「そうか?家族の為だ。それくらい頑張るさ」
         ↑ 
    三十六時間勤務した男

最後のユージンの悲鳴、なんかのモビルスーツが隠れてます!なんでしょうか!!


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第四話

投稿!!


ヤベェ趣味してんな・・・!この機体!!

ゴッドガンダムに乗ったユージン・セブンスターク


「冗談抜きで、死ぬかと思ったぜ・・・」

 

「「ごめん(なさい)・・・」」

 

腹に跳び膝蹴りを食らったユージンは痛む腹を押さえながら、士道と琴里に目を向ける。

そして、ユージンは琴里に言った。

 

「で?さっき蹴り飛ばされたのは良くはねえけど、今は置いといて、今日、三日月に用でもあったのかよ」

 

目を細めながら見るユージンに琴里は普段の状態とは変わり果てて、まるで借りた猫のように小さくなりながら口を開いた。

 

「えっと・・・今日はなんでこんなに遅かったのか気になって、それでハイ・・・八つ当たりしちゃいました」

 

そう言う琴里にユージンは手を頭に当てる。

 

「なるほどな・・・理由は三日月から聞いたか?」

 

「はい・・・文化祭の実行委員に選ばれて遅れたと言ってました・・・」

 

「まっ、そう言うこった。俺達も連絡を入れるのをすっかり忘れてたから今回は仕方ねえけど、しばらくは帰りが遅くなる。それを覚えてくりゃいい」

 

「・・・はい」

 

ユージンはそう言ってソファから立ち上がると、士道に言った。

 

「三日月、飯にしようぜ。どうせまだ作ってねえんだろ?俺も手伝うからさっさと作ろうぜ」

 

「分かった」

 

士道も立ち上がると、そのままキッチンへと向かう。

そして、真那は琴里に言った。

 

「まぁ、心配になるのは分かりますけど・・・今回はユージンさんの言う通りなので流石に私もカバーできません」

 

「・・・分かってるわよ」

 

机に突っ伏す琴里に、真那はやれやれと首を振って士道達がいるキッチンへと向かう。

 

「兄様、私も何か手伝いましょうか?」

 

「俺の所は別にいいよ。ユージンに聞いてみたら?」

 

「ラジャーです」

 

真那はそう言って、ユージンの元へと向かった。

士道は冷蔵庫から挽肉を取り出してボールの隣に置くと、そのままラップを取り始める。

そんな中、琴里が士道に言った。

 

「少しいい?士道」

 

「いいよ」

 

士道はラップを取りながら琴里に言うと、前の修学旅行の件について言ってきた。

 

「士道が或美島に行った時、空中艦と機械人形の事を覚えるかしら?」

 

「ああ、あれか。覚えてるけど?」

 

そう短く答える士道に、琴里は言葉を続ける。

 

「あれを調べてみた結果なんだけど、DEM社が製造した物に間違いないと思うわ」

 

「ふーん。じゃあ、あれが出てきたら壊せばいいんだろ」

 

「まあ、間違ってはいないけれど。証拠に、真那があの機械人形を見たことあるって言ってたから、士道の言う通りなら“十香達や士道“自身が狙われる可能性は高いわ」

 

「分かってるよ」

 

「本当でしょうね?」

 

適当に言葉を返す士道に、琴里は息を吐くのだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ユージンさん」

 

「あ?なんだよ」 

 

ユージンは唐突に真那に名を呼ばれて、玉ねぎを切っていた手を止める。

 

「少しお聞きしたい事があるのですが、いいです?」

 

「まあ、少しくらいは構わねえよ」

 

「では、失礼して・・・」

 

真那はユージンの隣に立つと。人参の皮を剥きながら、ユージンに言った。

 

「ユージンさんはいつも、兄様の事を三日月と呼んでやがりますよね?前々から気になっていたんです。兄様には五河士道と言う名前があるのに、なぜその名前で呼ぶのか」

 

「それ、前に言わなかったか?昔ながらの付き合いでそう呼びあってただけだって」

 

そうしらけるユージンだったが、それでも真那はしつこく食いつく。

 

「ええ。ですが、それだけではねーですよね?時折、兄様とユージンさんの話を聞いていますが、他にも何かしら理由があるはず。例えば、オルガさんの事とか」

 

「・・・なんでそんなに聞きたがるんだよ」

 

ユージンがそう言うと、真那は顔を少しだけ伏せながらポツリポツリと呟いた。

 

「・・・そうですね。一言で言えば、怖いからですかね」

 

「怖い?三日月がか?」

 

「ええ。とは言ってもちょっとだけです。私は昔の記憶なんてねーです。兄様との繋がりがあるのはこの写真だけ。ですから、本当に兄様が家族だって言えるのか、自信がねーんですよ」

 

「だから知りたいんです」。そう言う真那にユージンは口を開いた。

 

「別にそれで良いんじゃねえの?」

 

「はい?」

 

素っ頓狂な声を上げる真那にユージンは笑う。

 

「俺と三日月だって古参組の中でも長い付き合いだけどよ、アイツの事を一番良く知ってるのはオルガの奴だ。俺が三日月の事を言ったって、真っ先に出てくるのがオルガの事だぜ?」

 

シノの奴は「何考えてるか分かんねえ狂犬」だって言ったしな。

そう言って笑うユージンに真那は目を丸くする。

 

「だから三日月の事を知りたけりゃ、自分で見つけりゃいい。アトラやお嬢なんてしつこく食いついてたからよ」

 

そう言うユージンに真那は少しだけ笑うと、ユージンに感謝の言葉を投げながら言った。

 

「・・・・そのよーですね。ありがとうございます、ユージンさん。少しは気が楽になりました」

 

「おう。相談ならいくらでも乗るぜ。で、一つ聞きたい事があるんだが・・・」

 

「・・・?なんです?」

 

真那は首を傾げながらユージンを見ると、ユージンの次の言葉に顔を赤くした。

 

「結局のところ、お前も三日月の事が好きなのかよ?」

 

「な・・・・な、な、何いってやがりますかぁぁぁ!?」

 

そう叫んだ真那に対して、ゲームをしていた十香達が驚いたように一斉に振り向いた。

 

「どうしたのだ!?奇襲か!?」

 

「どうしたのよ?いきなり叫んで?」

 

「なんでもねーです!?なんでもねーですから!?ってかユージンさんもデリカシーありませんよね!?」

 

そう言う真那にユージンは言う。

 

「昔、おやっさんにもメルビットさんにそう言って言われた事があるな。つーか、なんで三日月ばっかモテんだよ。なんかずりぃだろ」

 

「ユージンの場合、やるときはやるけど、基本ヘタレだからじゃない?シノもそう言ってたし」

 

「おまっ!?それどう言う事だよ!?」

 

そんな楽しい談笑を続けていたその時だった。

 

 

ウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ─────

 

「「「「「「「「・・・・・・・!」」」」」」」」

 

リビングの大きな窓ガラスを微かに震わせ、街中に空間震警報が鳴り響いた。

刹那、琴里が真っ先に立ち上がる。

 

「士道も支度して。─────仕事よ」

 

「皆はどうする?」

 

「それは、こっちで説明するわ」

 

琴里はそう言って、玄関へと向かっていった。




実はユージンに頭が上がらない琴里。
       ↑ 
ユージンはまだ常識人だから仕方ないね!!

なお、デリカシーはそこまでない模様。



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第五話

投稿!!

久しぶりにガンダムWを見たけど、ウィングガンダム、本当に扱い酷すぎない?
    ↑
登場の半分以上が水中に沈んだままな挙げ句、自爆させられ、主人公の知らない場所で大破しているのを見て。


爆熱!!ギャラクシーフィンガー!!これが俺の流星号だァァァァァ!!

ゴッドガンダムに乗るシノ。


士道と真那が降り立ったのは、天宮市の西部に位置する立浪駅前の広場だった。

 

「・・・てか、なんで真那がいるの?」

 

そう言う士道に真那が言う。

 

「それはですね、兄様が〈ベルセルク〉の封印をされた時、身体に異常がありましたでしょう?なので、琴里さんが精霊と接触してなにかしら危ない状況になるまでは別行動するようにと。あ、もちろん装備もちゃんといただきましたので、大丈夫ですよ?」

 

「・・・別に良いんだけどな」

 

「兄様がそれが良くても、こちらの身にもなってください。皆さんも心配してやがるんですから」

 

「・・・・・・・」

 

そんな会話をしながら、士道と真那は一緒に歩いていく。 

多目的イベントホール・天宮アリーナの最寄りの駅であるため、ライブやイベリコなどが行われる日は、人で埋め尽くされる場所である。以前士道も、人気バンドのライブがやっている事を知らずに通りかかったとき、その人の多さに驚いたのを覚えている。

だが、そんな駅前広場は今、人の姿はまったく見受けられなかった。

 

『精霊の反応は空間震の発生地点から南の方に行動しているわ。急いでちょうだい』

 

「分かった」

 

士道はそう答えると、真那は別方向へ身体を向ける。

 

「なら、一旦此処で一旦お別れです。何かあればすぐ駆けつけられるようにいますので、兄様も頑張ってください」

 

「ん」

 

士道は短く返事をして琴里に言われた座標へと歩き出す。

ちょうどライブかイベントでもしていたのだろう、街頭に照らされた道にはカラフルなチラシや写真の貼られたうちわなどが散乱していた。

そんな道を歩く士道は、琴里に言う。

 

「琴里、精霊は何処にいるか分かる?」

 

『ちょっと待って。今正確な位置を─────』

 

と、琴里が言いかけた瞬間。士道は顔をアリーナの方へと向けた。

 

「・・・・ん?」

 

壁に阻まれて微かにしか聞こえないが、それは紛れもなく『歌』だった。

しかも、“今日の朝“、登校中で聞いた歌である。

 

「・・・・・・」

 

士道は身を天宮アリーナへと向けて歩みを進める。

そして大きな扉を押し開け、アリーナの中に足を踏み入れていった。

そして、ステージが一望できる位置まで足を進めると、その瞬間─────士道はふと懐かしい感覚を覚えた。

アリーナの中央。その真ん中に。

光の粒子で縫製されたかと見まごうような煌火びやかな衣を纏った少女が立ち、会場中に声を響かせていた。

そして耳元のインカムから琴里の声が響いてくる。

 

『あれはまさか────〈ディーヴァ〉・・・!?』

 

「でぃー?・・・知ってるやつ?」

 

『ええ。・・・半年くらい前に一度だけ出現が確認された精霊よ。一応データベースに存在は記録されているものの、性格や気性をはじめ、能力や天使の詳しい情報もほとんど無いに等しいわ』

 

「じゃあ、珍しい奴ってわけか」

 

士道はそう呟いて足を一歩前に出した瞬間、不意に彼女と目があった。

 

「───あらー?」

 

そして、今まで響かせていた歌声とはまた違う、間延びしたような声音をこぼす。

 

「ごめん。なんか目があった」

 

『気をつけなさいよ、全く・・・」

 

舞台上の少女は士道がいる入口を見ているが、客席は暗いため、士道の顔までは見えていないらしい。

 

「お客さんがいたんですかぁ。誰もいないと思ってましたよー」

 

そう言う彼女は更に言葉を続ける。

 

「私も一人で少し退屈していたところなんですよぉ。もしよろしければ少しお話しませんか?」

 

「だってさ」

 

士道は他人事のように琴里に言う。

 

『・・・どうやら問答無用で攻撃をしかけてくるような精霊ではないようね。真那も近くに待機してるみたいだから、直接会話が出来るくらいの位置に行ってみてくれる?』

 

「わかった」

 

士道はそう言って客席の階段をゆっくりと降りていくと、笑顔だった彼女の顔が固まった。

その顔を見て、士道は琴里に向けて呟く。

 

「なんか固まったんだけど?」

 

そう言う士道に対し、琴里は焦ったような声音で士道に言った。

 

『士道!!今すぐそこから逃げて!!』

 

「は?」

 

『説明は後からするから早く!!』

 

そう言う琴里に対し、士道は何ら反応しない彼女に目を向けると、凍ったように固まっていた彼女に変化が現れた。

ギギ・・・と錆びついた機械のように首を回したかと思うと、すぅ・・・っと身体を反らしながら大きく息を吸い始めたのである。

 

「逃げろってそう言う訳か」

 

士道は身体を反転させ、走り出す。

耳元から甲高いブザーが鳴り響くのをうっとおしいと思いながらも、士道は間に合わないと思い、バルバトスをいつでも出せるように、彼女の行動を見計らう。

そして彼女が息を吸い終え、ギロリと士道を睨み付けてきた。すると次の瞬間─────

 

「わッ!!」

 

少女が、凄まじい大声を発した。

それと同時に士道は巨大メイスを取り出し、CRーユニットを装備した真那が、焦った顔をしながら〈テリトリー〉を展開する。

凄まじい音の衝撃波が二人を襲う。

 

『士道っ!真那っ!』

 

音の圧力がビリビリと全身を震わせながら通り抜けていくのを士道は感じながら、音の壁を凌ぎきった。

そんな中、士道は軽い調子で真那に言う。

 

「生きてる?」

 

「生きてますよ・・・耳がキーンとしてますけど」

 

「無事ならいいけど」

 

士道は盾にした巨大メイスを片付けると、先程の衝撃波を放った少女を見る。

すると、その少女は士道を見て言った。

 

「え、なんで生きているんですかぁ?なんで死んでないんですかぁ?可及的速やかにこのステージからこの世界からこの確率時空から消えてくださいよぉ」

 

「は・・・・?」

 

彼女の言葉に士道は眉をひそめる。

表情をあまり変えない士道も、こればっかりは流石に嫌な表情をつくる。

そんな士道を知ってか知らずか、彼女は言葉を続けた。

 

「なんですかぁ?やめてくださいよ気持ち悪いですねぇ。そんなに嫌なら来ないでください。息もしないでください。あなたがいるだけで周囲の大気が汚染されてるのが分からないんですかぁ?わからないんですねぇ?」

 

彼女の罵倒に士道は、苛立ちを覚えたその時だった。

膨大な魔力塊による砲撃が士道の後ろから、目の前にいる〈ディーヴァ〉に向けて放たれた。

 

「あら?だれですかぁ?」

 

その砲撃は彼女に当たる事なく、後ろのステージを破壊し、粉砕する。

客席から現れた真那は全体的に狼に近いシルエットのCRーユニットを纏ったまま、左腕に装備された狼の頭の形状をした武器を前に突き付ける。

 

「さっきから黙って聞いていれば、ベラベラと。そんなに死にてーですか?死にてーみたいですよね?流石に自分の事ではないにしろ、兄様の悪口を聞いたらそりゃ気分はわりーですし、ムカつきますよ」

 

そう言う真那に対し、〈ディーヴァ〉は真那を見て、目を丸くするとすぐさま目を輝かせた。

 

「まぁ、まぁっ!」

 

先程と打って変わって、彼女は手を組みながら真那を見て言った。

 

「いいじゃないですかー。素晴らしいじゃないですかー。そうですよぉ、お客様といったらこうじゃないとぉ!」

 

そう言う彼女に真那は叫ぶ。

 

「気味の悪ぃ事をごちゃごちゃと!」

 

そう言って再び砲撃をぶっ放す真那に、〈ディーヴァ〉はその一撃を躱しながら、甘ったるい声を発する。

 

「ああん、いけずぅ」

 

「・・・チッ!」

 

砲撃を躱しながら〈ディーヴァ〉に真那は舌打ちをするが、士道は周りを見て、真那に言った。

 

「真那。一旦引くよ」

 

「ですけどッ!!」

 

「アイツらが来た」

 

士道はそう言って、駅の方角へと目を向ける。

そこには、ASTが此方へ向かって来るのが見えた。

 

「今アイツらの相手して殺さないようにするのメンドイし、それやると琴里にまた小言言われる。だから引くよ」

 

士道も相当イライラしていたようで声音が若干だが、低くなっている。士道の心境を理解した真那は頷いてから、〈ディーヴァ〉を見上げると、小さく舌打ちをしながら士道と一緒にアリーナから出ていった。




真那 「ムシャクシャしてやった。反省も後悔もしてねーです」

なお、真那がやらなかったら三日月が殺ってた模様。

なんなら、ユージンや十香達に聞かせてもブチギレ不可避です。


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第六話

ちょっと短いですが、投稿!!

こっから一気にぶち壊すぜい!

使わせてもらうぞ。イオリア

トランザムを使う時のマクギリス


「・・・・・」

 

「おい、三日月。しっかりしろって」

 

士道はユージンに連れていかれるように歩きながら、士道は眠たげな表情をつくる。

九月九日。精霊〈ディーヴァ〉との遭遇から一晩が経過した日である。

あのあと〈フラクシナス〉では、不可避な精霊の好感度低下についての会議が行われた。

士道は興味がないからとその会議に参加しないようにしていたが、どうせ明日は学校が休みだからと、士道もその会議に強制参加させられたのである。

真那に関しては昨日、一晩中八つ当たり気味に訓練をしていたみたいで、四糸乃に起こしに行ってもらった際にはまだ寝ていたらしい。

士道は眠気を我慢しながら、今日の朝にあった電話を思い出す。

今日は天央祭の各校合同会議があるからよーろしーくねー!とふざけた電話がかかってきたのである。

本来であれば、実行委員であるはずの亜衣麻衣美依がやることなのだが、なんでも三人は一日目のステージ部門でバンド演奏をする予定らしく、その練習で来られないのだという。

その代役で最初は十香と折紙が選ばれていたらしいのだが、士道はそれを却下し、折紙の代わりにユージンを選んだのだ。

 

「ったく、アイツ等が実行委員で大丈夫かよ・・・つか、自覚あるんだろうな?」

 

「無いんじゃない?」

 

珍しく士道も愚痴りながら、合同会議場である学校が遠目でだが、見えてきた。

赤煉瓦で構築された荘厳な校門から、鉄製の格子が左右に広がり、その合間に青々とした草木が生い茂っている。

部活動や天央祭の準備のためだろうか、休日だというのにちらほらと生徒の姿も見受けられる。

私立竜胆寺女学院。名家の子女も数多く通う、天宮市屈指の名門校である。

十香はその校舎を見上げて、士道に感想をこぼす。

 

「おお・・・凄いなシドー。これも学校なのか?」

 

「そうみたい。さっさと行こう」

 

「うむ!」

 

「・・・ったく」

 

十香が元気よく返事をし、ユージンは息を吐いてからそんな二人の後を追う。

士道たちは守衛に生徒手帳を見せてから敷地内に入った。

来賓用の昇降口から校舎内に入り、事務局で入校許可証を受け取ってから廊下を歩いて目的の会場に向かう。

 

「第二会議室・・・ここか。おーい三日月」

 

「うん」

 

言って、士道と十香はユージンの元へと向かい、そして扉を開けた。部屋の中には既に様々な制服の生徒たちが何人も揃っていた。まだ会議の開始まで時間があるのだろう、長机が四角く組まれ、高校の名前が書かれたプレートが立てかけられてはいるものの、席に着かず談笑している生徒も多い。

そんな中、士道達は自分達の席を探して腰を掛ける。

と、それからすぐに、コンコン、と会議室の扉がノックされた。

 

「・・・・・?」

 

「・・・む?」

 

「・・・・あん?」

 

士道達はそれぞれ反応しながら首を捻ると、部屋にいた各校の生徒たちが一斉に顔を上げた。

そして、扉の向こう側から声が聞こえた。

 

『失礼しまぁす』

 

そんな声と共に、ゆっくりと扉が開いていく。

士道はその声に聞き覚えがあった。そうそれは────

部屋に入ってくる、女子生徒の一団。その道の真ん中を、一人の生徒が女帝のごとく悠然と歩いてきた。

長い髪をゆったりと一つに纏めた少女。光に透けて紫紺に輝く、色素の薄い髪。銀色の瞳。そして周囲の少女たちの揃いのセーラー服に身を包んではいるものの、その少女を見て、士道は眉を顰めた。

 

「──こんにちわー。よく来てくれましたねー、皆さん」

 

彼女ののんびりとした口調でそう言って、ペコリとお辞儀する。

その少女は。

 

「竜胆寺女学院、天央祭実行委員長、誘宵美九ですぅ」

 

昨日、士道達が遭遇した精霊──〈ディーヴァ〉だった。




真那 「処す?処す?」←ヴァナルガンド装備しながら

琴里 「気持ちは分かるけど、ステイ!?」


美九は真那に相当恨みを買ってます←おい


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第七話

明日、多分投稿出来ないから今、投稿!!

さて問題の女装の件だが如何に?

ぼさっとしてないで、ちゃっちゃっと働く!!

ヤッテンダロー!?モー!!

ラフタとシノ


「誘宵美九・・・ね。まさか彼女が精霊だったなんて」

 

士道の隣───艦長席に座りながら映像を眺めていた琴里が、ポツリと呟く。

 

「知ってたの?」

 

「まあ、名前くらいはね。あとはCMやドラマの主題歌なんかで曲もいくつか」

 

「ふーん」

 

士道はそう言って、ポケットの中からデーツを取り出して口に入れる。

しかし琴里はそんな士道を気にすることなく、手元に置かれたプロフィールシートに視線を落とし、難しげに眉を歪める。

 

「精霊がアイドル・・・しかも最低でも半年以上前からこっちの世界に溶け込んで生活してたっていうの?こんな活動をしながら?はっ、狂三なんて目じゃないわぬ」

 

「琴里みたいなタイプじゃないの?」

 

士道の言葉に、琴里がぴくりと眉を動かす。

 

「可能性は否定できないわ。確かにそれなら、こちらの世界にとどまっていても不思議じゃないし。───ただそうなると昨日の空間震の理由がわからなくなってくるわね」

 

「じゃあ違うのか」

 

士道はそう言ってポケットに手を入れる。

それに・・・最大の問題は他にあった。

 

「結局はまだ、好感度が急落下した理由も分かってないのよね」

 

琴里はそう呟くが、士道はそんな琴里に口を開く。

 

「難しく考えるから分からなくなるんじゃないの」

 

「・・・どう言うことよ?」

 

そう言って、琴里は目を士道へと向ける。

 

「たとえば、元々から嫌いなものだったとか。俺が相手の時と、真那が相手だった時の反応とかだいぶ違ったし」

 

「元々から嫌いだった・・・てことは、まさか!?」

 

「?」

 

琴里の反応に対し士道は首を傾げるが、そんな事を気にすることなく、琴里は士道に言った。

 

「士道。もし、私の仮説が正しければかなり面倒な事になるわ」

 

「面倒事?」

 

首を横に傾げる士道に琴里は頷く。そしてチュッパチャップスを口に戻し、ピンと指を立てる。

 

「誘宵美九は────女の子が大好きな、いわゆる百合っ子である可能性があるわ」

 

「へー」

 

士道はどうでも良さそうな返事でそう返した。

 

「そんな他人事みたいな返事はどうなのよ?」

 

琴里は呆れたように言うが、士道はそれに気にすることなく言った。

 

「別に、考えるのは琴里の仕事でしょ。俺はやれって言われたらやるだけだし。その辺どうするかは任せる」

 

そう言う士道に琴里は、「はぁ」とため息を吐きながら唇を開く。

 

「まあ、策はあるにはあるのよ」 

 

「へぇ・・・どんな?」

 

士道の返事に琴里は、指をパチンと鳴らす。

すると、どこからともなく神無月が現れた。・・・なぜか、ずぶ濡れの状態で。

 

「あれ?金髪の人、どうしたの。なんか生臭いけどなんかあった?」

 

「いやはっは、少々スイミングを」

 

あっけからんとした調子で神無月が笑う。

 

「で、策って?」

 

「これです」

 

答えたのは神無月だった。背後に手を回していた手をバッと士道の方に出してくる。

 

「・・・・・・ん?」

 

その手に握られていたものを見て、士道は首を一瞬だけだが、傾げた。

神無月が持っていたものは、士道の通う来禅高校の制服だった。───ただし、“女子“の。

 

「それが策?」

 

そう言う士道に琴里は苦い顔をしながら頷いた。

 

「ええ。でも、問題があってね・・・」

 

「問題?」

 

苦々しい顔を作る琴里に士道は言うと、琴里は目を反らしながら言った。

 

「まあ、一回着替えてみたらわかるわよ。多分、絶対に似合わないと思うんだけど・・・」

 

「?」

 

士道は首を傾げながら、神無月から制服を受け取ると、更衣室へと案内されていった。

 

 

◇◇◇◇◇ 

 

 

三時間後。 

 

「・・・・で?何がどうなっていやがるんですか?琴里さん。ちょっとお話があるんですけども?」

 

「〜〜〜〜ッ!?み、三日月・・・それ・・・似合わねぇッッ」

 

怒りのオーラを放つ真那と爆笑を堪えるユージンの図がこの場で繰り広げられていた。

 

「・・・・これでいいわけ?」

 

「〜~~ッ!?三日月ッ、その格好で喋るな!?違和感がヤバいッ────」

 

最早決壊寸前のユージンの爆笑に、士道は嘆息する。

 

「いや、まあ、兄様は確かに顔は女の子に見えますけども、それを実際にやろうとは思いませんよ?如何せん腕や脚の筋肉が凄まじいせいで、雰囲気が全部それでブチ壊しているんですから、視界の暴力といいますか・・・その」

 

言葉を詰まらせる真那に、士道は察する。

そして、士道は今だに目を逸らす琴里に言った。

 

「とりあえず、着替えていい?」

 

「・・・ええ。それと、本当にゴメンナサイ」

 

取り敢えず女装は無しという事になった。




琴里「大変申し訳ございませんでした・・・」

真那「流石にあれはねーです」

ユージン「けど顔は似合ってたぜ?三日月」爆笑堪えつつ

三日月「・・・やった意味ある?」


原作と違い、中身が三日月なせいで筋肉がヤバい事になり、女装案件がボツに。これからどうなる?三日月さん


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第八話

何かネタがすぐに出来上がったので、投稿!!


三十分。三十分待とう!!準備が整い次第・・・なっ!?

決闘を吹っ掛けてボッコボコにされるカルタ・イシュー


「でもよ?その美九って奴が精霊っていう奴なんだろ?そんで、男嫌いときた。どう考えても無理じゃねえか」

 

そう言うユージンに、琴里は言葉を返す。

 

「そうなのよ。だから士道に女装をして攻略って考えたんだけど・・・」

 

「流石にアレでしたからねー・・・」

 

気難しそうな顔を作る三人に対し、士道はポケットに手を突っ込み、デーツを口に入れる。

考え込む三人とその話を適当に聞く一人がいる五河家に、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。

 

「行ってくるから、考えるのよろしく」

 

「んな人任せな・・・」

 

士道の言葉にユージンはそう言うが、どうせ士道が増えても、この件に対しては戦力にならないのだ。

だったら、自分達で考える方がいいのだろう。

 

「「「うーん・・・」」」

 

考え込む三人は頭を悩ませる。

そんな中、唐突にガチャリとリビングの扉が開いた。

 

「あ、おかえりなさー」

 

真那がそう言った瞬間、入ってきたのは夕弦だった。

 

「あれ?夕弦、どうしたのよ?」

 

琴里はそう言うと、夕弦は手にした鞄を開けながら、唇を開いた。

 

「返答。士道の実行委員の仕事を手伝いに来ました。耶俱矢も一緒です」

 

夕弦がそう言った後、後ろから耶俱矢が大仰に士道と一緒に現れる。

 

「ふっふっふっ・・・士道がどうしても我らの力を借りたいと申すのでな、報酬に一日、我らと一緒に付き合ってもらう契約を交わしたのだ」

 

そう言う耶俱矢に、ユージンは士道に言う。

 

「おいおい・・・そんな事してたのかよ」

 

「俺だとユージンの負担になるだけだし、耶俱矢と夕弦はやってみたいって言ってたから。あの三人にはもう許可は取ってる」

 

「あのバカ三人・・・」

 

ユージンはそう呟いて、亜衣、麻衣、美依の顔を苦い顔で思い出す。

まあ、ユージンだけではかなりの負担になるので、二人が手伝ってくれるのはありがたい話ではあった。

 

「追記。ユージンにも伝言があります。十香も、士道達が困っている事があれば手伝うと言っていました」

 

「・・・ったく、良かったな三日月。信頼されててよ」

 

「うん。結構楽になる」

 

「つっても、本来はお前がやる事だからな?」

 

そう言うユージンに、琴里と真那はその様子を見ていると、琴里が唐突にあっ、と声を上げる。

 

「・・・どうしましたか?琴里さん」

 

真那のその言葉に琴里は、つい先ほど考えついた作戦をその場にいる全員に伝えた。

 

「確か〈ディーヴァ〉は女の子が好きな百合っ子よね?」

 

「?さっきお前がそう言ってたじゃねえか」

 

ユージンはそう言い返すと、今度は耶俱矢と夕弦を見る。

 

「なら・・・士道の周りに誰もが羨むような美少女三人と、可愛い女の子三人を合わせればどうかしら?」

 

「は?それはどう言う・・・って、まさか!?」

 

顔を青くする真那に、琴里はニィと笑みを作る。

 

「こんなよりどりみどりの子が居るのよ?なら、〈ディーヴァ〉はそんな女の子に囲まれている士道を見て我慢出来るかしら?」

 

その言葉を聞いて、耶俱矢が嫌な予感がすると言う顔を作りながら、元の口調で琴里に聞く。

 

「あのさ、それって私達をエサにするって事じゃ・・・」

 

そう言う耶俱矢に琴里は言う。

 

「それ以外に方法はないわ。しかも、奪い取ろうとするなら必ず何かしら自分に有利な勝負を突きつけて来る筈」

 

「おいおい・・・それってつまり・・・」

 

そう溢すユージンに琴里は頷いた。

 

「ええ。つまりは一日目のステージ。それは音楽よ!!」

 

「「「ええええええええええぇぇぇぇッ!?」」」

 

折紙のその言葉に士道と夕弦を除く、三人の絶叫が響き渡った。




三人の絶叫中

三日月「食べる?」

夕弦「謝礼。ありがとうございます」←デーツもらい


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第九話

短いけど、キリがいいので投稿!!


かわいいと思ったから

三日月・オーガス


幾度となく聞いた終業チャイムの音が、寝ぼけていた士道の鼓膜を震わせる。

いつものなら家に帰る合図を示すそれは、しかし今の士道にとっては面倒な仕事をしなければならない合図でしかなかった。

 

「・・・十香、耶俱矢達連れて準備に行くよ。多分ユージンは先に行ってると思うから、早く合流しよう」

 

「あ、待ってくれ!シドー!!」

 

鞄を持つ士道に、十香は慌てながら荷物を鞄に片付ける。

そんな二人の様子をすぐ近くで、ジッと折紙は見つめていたが、特に何も言う事はなかった。

士道としてはありがたい話ではあるのだが、よく十香と喧嘩をしているのは度々見られるので、気にしておいて損はしないだろう。

士道は教室の扉の前で待つ中、ふと、後ろから声が投げられる。

 

「待たせたな士道よ!では、いざ参ろうか!」

 

「同意。此方はもう準備は出来ています」

 

「まだ十香の準備が終わってないから、あと少し待って」

 

士道は二人にそう言ってから十香に目を向けると、もう準備が出来たのだろう。

鞄を持った十香が、慌てた様子で士道達のもとへと走ってくる。

 

「すまない!待たせたな二人共!」

 

「そこまで待って居らぬわ。気にするでない」

 

「同意。急がなくても大丈夫です」

 

耶俱矢と夕弦は十香にそう言うと、士道はそんな三人を見て口を開く。

 

「じゃあ、行くよ」

 

「うむ!そうだな!」

 

士道の言葉に十香は頷いて、天央祭の会場となる天宮スクエアへと向かった。

 

◇◇◇◇◇

 

「ごめん。少し遅れた」

 

四人で目的地に向かった士道達は、先に準備をしていたユージンに声をかける。

 

「遅かったじゃねえか、三日月。もう先に準備してるぜ」

 

「見れば分かる。で、俺達は何やればいい?」

 

そう言う士道に、ユージンは顎に手をやりながら少しの間、考え込む。

 

「作戦の事もあっから、なるべく四人で行動させた方が良いよな・・・なら、力仕事を頼めるか?」

 

「俺は構わないけど、三人はどうする?」

 

「む?私は構わぬぞ?」

 

「応!我も構わぬ。この八舞がすぐに終わらせてやろう!」

 

「呼応。私達にかかれば一瞬です」

 

「だってさ」

 

「ったく・・・」

 

三人の言葉にユージンはそう呟いてから、士道に言う。

 

「んじゃ、そっちは任せたぜ。俺は他にやる事あっから、終わったら連絡くれ」

 

「分かった。ユージンも頑張ってね」

 

「おう」

 

士道とユージンはそう言ってからお互いに腕を出して、ぶつけ合う。

士道とユージンのやり取りを見ていた十香と耶俱矢、夕弦は士道に言った。

 

「シドー!!次は私もだ!ユージンばっかりずるいぞ!」

 

「無論、我らもだ。嫌とは言わせまい」

 

「憤慨。士道も偶には私達ともしてください」

 

「まあいいけど」

 

三人のお願いに、士道は腕を十香達の前に出すと、お互いにぶつけ合う。

 

「・・・・・・」

 

そしてその五人の光景を遠目で眺める少女が一人。

誘宵美九は十香達を見て、欲しいと考えていた。




三日月達のイチャイチャを遠目で見ていた美九

美九「ギリィッ!!」

因みに美九が三日月にお願い(天使による洗脳)を使っても、バルバトスが問答無用で弾いてきます 

バルバトス「やらせるとでも?」


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第十話

投稿!!

いつの間にか一気にお気に入りが増えてびっくりしました

徹底的にだ。徹底的に根こそぎ叩き潰せ。

オルガ・イツカ


「そこのあなた、少しいいですかぁ?」

 

士道達がテントの組み立て作業をし、士道は人気のない場所で少しの間休憩していると、唐突に美九の方から声を掛けられる。

 

「なに?」

 

士道は琴里の作戦通りに掛かった美九に目を向けると、美九は士道に言った。

 

「あなたぁ、前に可愛い女の子を連れてましたよねぇ。それにあの三人の子とも」

 

「それがなに?」

 

美九の言葉に士道はそう言うと、美九は士道の相手が面倒くさそうな表情で言った。

 

「ここまで言っても分かりませんかぁ?あの子達を私にくださいって言っているんですよぉ」

 

十香達以外に興味は無い。そう言った様子で答える美九に、士道は言った。

 

「やるわけないだろ。十香達は物じゃない」

 

そう言う士道に、美九は「はぁ」と息を吐き、そして───

 

【───“言う事を聞いてください“】

 

そんな口調で士道に言った。だが────

 

「聞くわけないだろ」

 

士道はそう言って、彼女の言葉を払い退ける。

 

「あらー?」

 

美九はそんな士道を見て、大層以外そうに目を丸くする。

そしてしばしの間考え込むようにし、もう一度───

 

【───“彼女達を下さいな“】

 

今度は別の言葉で士道に言うが、美九の言葉の影響を士道は全く受けることなく言った。

 

「やるわけないだろ」

 

そう言う士道に、美九は得心がいったように姿勢を正す。

 

「やっぱり、言う事を聞いてくれないんですねー」

 

「じゃあ聞くけど、俺の話を聞かないアンタに従う理由なんてある?」

 

そう返す士道に美九は嘆息の息を吐いた。

 

「そうですかぁ。なら、ちょっと痛い目を見た方がいいですかねー」

 

美九はそう言って、〈天使〉を顕現させようとした瞬間。

彼女の横にあったベンチが巨大メイスで叩き潰された。

 

「・・・は?」

 

パラパラと破片と土煙が舞う中、美九はそのベンチに目を向ける。巨大な金属の塊に押し潰され、原型を殆ど残していないベンチを見て、美九は冷や汗をかく。もしアレが直撃していたなら今頃、隣にあったベンチと同じ末路を辿っていただろう。

そしてその元凶を作った士道に、文句を入れてやろうと美九が目を士道に向けた時、自分の目に映る士道を見て目を見開いた。

悪魔のような形相の頭部に、異様に長い両腕。そして、その両手には獣のように鋭い爪が揃っていた。

その手には先程、隣にあったベンチを叩き潰した巨大メイスが握られていた。

 

「次は殺る」

 

狂三の時よりも苛ついた士道はそう言って、顔を引き攣らせる美九を見る。コイツは十香達のことをモノとしか見ていない。そういう奴等は幾らでも見てきたし、コイツよりも悪質な奴等もあの場所にいたくらいだ。

そんな美九に士道は言う。

 

「そんなに十香達が欲しいなら、俺と戦ってみる?それで済むなら手っ取り早いから楽なんだけど」

 

士道はそう言ってバルバトスを消すと美九に目を向ける。殺し合いなら手っ取り早い。そう言う士道に対し、美九は口を開いた。

 

「・・・なら、一つ勝負しませんか?」

 

「へぇ・・・じゃあ、なんの勝負する?」

 

威圧的に言う士道に、美九は気圧されながらも言った。

 

「ならー、今度の天央祭一日目で竜胆寺が勝ったら、あの子達を貰います」

 

「じゃあ、俺が勝ったら?」

 

士道はそう言うと、美九は言う。

 

「出来る事なら何でも、でよろしいですかぁ?」 

 

顔を引き攣らせる美九に対し、士道は口を開く。

 

「こっちは大事な家族をかけてるんだ。なら、アンタのその何でもは、アンタの全部を掛けるって事でいいんでしょ?」

 

「なっ!?そこまでは言っ────」

 

そう言う美九に対し、士道は更に言葉を続ける。

 

「“俺達の家族“にアンタは手を出したんだ。なら、アンタもそれくらい出来るだろ」

 

やるなら徹底的に根こそぎ叩き潰す。

士道の言葉に、美九は重々しく頷くしかなかった。




もし、オルガだった場合

オルガ「アンタは俺達の家族に手ぇ出したんだ。なら、お前が約束を守らなかったらどうなるか・・・・・分かってんだろうな?」


原作とは違い、三日月が美九に脅しをかけてくスタイル。

三日月「マルバとか、大人の奴等思い出したから余計ムカついた」

真那「私もムカついてましたのでこれくらいしねーと、やった気になんねーです」

琴里「・・・頭痛いわ」←作戦だったとはいえ、ここまで酷いとは思ってなかった

狂犬兄妹と義妹←オイ


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第十一話

短いですが投稿!!

今日は00の映画が日曜劇場でやってたんで見てちょいと遅れました!
00つったらFGOのコラボ小説投稿してねー・・・

グラハムガンダム!!世界の歪みを破壊する!!

変態だったから生きてた男。


「・・・で?何か申し開きはある?士道」

 

夜、十香達が帰ったリビングルームで、士道と真那はこめかみに皺を浮かべている琴里を見て、キョトンとした顔を作る。

 

「申し開き・・・兄様?何かしたんでやがりますか?」

 

「何もしてない」

 

そう言う士道に、琴里は顔をさらに引き攣らせながらも、唇を開く。

 

「へぇ・・・じゃあ、この映像は何かしら?天央祭の準備の終わり間際、休憩場で〈ディーヴァ〉を完全に脅してたように見えたのだけど?おかげ様で、〈ディーヴァ〉の好感度は一気に低下・・・どーしてくれんのよ!」

 

「別に上手くいったからいいじゃん(じゃねーですか)」

 

「良くないわよ!それと、二人してハモるな!」

 

琴里の予想では穏便に済む予定だったのだ。それがどうしてああなったのだと、琴里は自分を恨みたくなる。

 

「うう・・・お腹痛い・・・」

 

「腹痛いなら、行けばいいじゃん」

 

「そーですよ。無理は良くねーです」

 

「そっちじゃないわ!!」

 

胃痛をただの腹痛の勘違いした二人に、琴里は叫ぶ。

そんな琴里に対し、真那はソファに座る士道に言った。

 

「私個人としては、あの人を別段良く思ってねーですからどーでもいいです。むしろ嫌いですし。ああいうのは」 

 

「俺も久しぶりにむかついた。アイツ、十香達のことを物としか見て無かったし」

 

お互いそう言う二人に琴里は、「はぁ」と息を吐きながら二人に口を開く。

 

「・・・まあ、そうね。確かにあんな態度を取られると、私も流石にくるものはあるわよ。ただ、〈ラタトスク〉として行動するからには、それもひっくるめて我慢しなきゃいけないのよ」

 

琴里も美九のアレには流石にくるものはあったらしい。

 

「でも、作戦通りに〈ディーヴァ〉を動かしたことは褒めておくわ。・・・過程は最悪だったけれど」

 

最後に本音が漏れる琴里に、士道は琴里に言った。

 

「それで?次はどうすんの?しばらくはアイツと話す事なんてないけど?」

 

普段の目付きより若干鋭い目を作っている士道に、琴里は唇を開く。

 

「好感度上げておきたかった筈が、代わりにダダ下がりになっている状況を直すのは、正直に言って厳しいわ」

 

琴里はそう言いながら、更に口を開く。

 

「でも、まずはその前に勝負に勝たないといけないわ。負けたら最後、十香達を取られるわけでしょ?」

 

「真那も入ってたけどね」

 

「は!?」

 

士道の言葉に目を見開ける真那を無視して、琴里は言葉を続けた。

 

「ま、十香達を取られないようにする為にまずは練習をしないといけないわ。士道は音楽の経験なんてないないし。今から覚えるにしても、かなり練習しなきゃいけないけど、覚悟はいいかしら?」

 

「十香達を守らなきゃいけないのに、今さら聞く必要なんてある?」

 

「ちょっと、兄様!?先程のお話を聞かせてもらっていいです!?」

 

「それもそうだったわね。なら、明日から練習に入るわよ。耶俱矢と夕弦もバンドを出来るらしいから、一緒にやってきなさい。もう準備はしてあるから」

 

「分かった。」

 

「頑張りなさいな。おにーちゃん」

 

そう言い合う二人に、真那は絶叫した。

 

「無視しねーでくださいよ!?兄様!琴里さん!!」




真那「作者さん無視しねーでください!!」

作者「さーせん」

三日月「四糸乃の方が最近出番少ないし、出してあげたら?」

作者「近々出す予定なんで・・・」

折紙「・・・・・」←三日月と相性悪すぎて出番もらえてない

狂三「・・・・・」←琴里の章以降、出番ない人


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第十二話

短いけど、投稿!!

グレイズアインはもう暫く先かなー?
十香が反転する手前くらいには出したい

「アンタが誰かなんてどうだっていい。アンタが敵だって事に変わりはないんだろ」


三日月・オーガス



「・・・あんたら、本気?」

 

低く響くような声を発し、燎子が目の前に居並んだ一団に睨めつける。

陸上自衛隊天宮駐屯地のブリーフィングルームには今、二十名ほどの人間がいた。

燎子の側に座っているのは既存のAST隊員たち。そして対面に居並んでいるのは、先日ASTに補充要員として配属されてきた、DEMインダストリーの出向社員たちである。

出向社員たちの真ん中に座ったジェシカが、ニィ、と唇の端を上げてくる。

 

「もちろン。もし信じられないのであれば、サイン付きの書類をご用意しましょうカ?」

 

「聞き直すわ───正気?」

 

無礼とも取れる燎子の問いに、しかしジェシカは心底愉快そうに笑みを濃くした。

燎子は憮然とした様子で顔を歪めると、手元に置かれた命令書に視線を落とす。

そこに書かれていたのは、にわかには信じられない作戦内容だった。

───精霊〈プリンセス〉の捕獲作戦。

現在、都立来禅高校に通っている少女・夜刀神十香が精霊であることが確認されたため、これを捕獲するというのである。

とはいえ、ここまでは分からない話ではない。確かにこの夜刀神十香という少女が精霊〈プリンセス〉に酷似しているという話は前々から聞いていたし、もし霊波反応が確認されたのであれば放ってはおけない。

 

「百歩譲ってここまではいいとしましょう。でも、これは何?」

 

「これ、っていうト?」

 

「すっとぼけんじゃないわよ。───なんで、捕獲対象にただの一般人が入ってるのよ」

 

そう。その書類には〈プリンセス〉の疑いがある少女の他にもう一人、捕獲対象が記されていたのである。

五河士道。詳細───秘匿。

 

「この少年も精霊だっていうの・・・?」

 

燎子が彼を見たのは〈プリンセス〉の消息以降。それ以降から、〈デーモン〉が出現しているのだが、それでも、この少年が精霊だとは思えなかった。

 

「詳細は秘密ヨ。でも、非常に重要なターゲットであるとだけ伝えておくワ」

 

「あんたねえ・・・・」

 

きっぱり言うジェシカを燎子は睨み付ける。ちッ、とわざとジェシカにも聞こえるように舌打ちをこぼし、次の要項に一瞥した。

 

「なら、こっちは何なのよ。─────作戦決行日、九月二十三日の土曜日。場所が天宮スクエア天央祭会場・・・!?一体何考えてんのよこれは!顕現装置は秘匿技術のはずでしょ!?こんな衆目に─────いえ、それ以前に、こんな人の集まる場所で精霊とドンパチするつもり!?あんたら、自分がどんだけ無茶苦茶なこと言ってるか分かってんの!?」

 

燎子はもはや悲鳴じみた声で叫んだ。問題は捕獲対象だけではない。恐らく、その日天宮市でもっとも人間が集まるであろう天央祭の会場。そこに押し入り、衆目の目の前で夜刀神十香と五河士道を捕獲せよというのである。

しかもその実行部隊はDEM出向社員たちのみで構成され、燎子たち既存のAST隊員たちは、周辺警戒や情報統制など裏方に配置され、現場にすら近づけないのである。

これでは彼女らの暴走を止める事もできはしない。

最悪、何百人もの犠牲者を出す事になる。

 

「意味がわからないわ!一体何のためにこんなことをするのよ・・・ッ!」 

 

「これはセレモニーなのヨ。我々から、親愛なる御敵への挨拶なノ。────だから、少々リスクを負っても、盛大にしないといけないのヨ」

 

「は・・・?敵?挨拶?何を言って・・・」

 

「別に、納得してもらわなくても構わないワ。作戦に異存があるのであれば上へ訴えテ。もし撤回されたのであれば、我々もそれに従うワ」

 

「あ、ちょっと待ちなさい!」

 

燎子の呼び止める言葉も虚しく部屋に響くだけであった。

 

 




ちょこっとだけネタバレ。

このDEMの社員さん、ジェシカを除いて全員、ブチギレた三日月にぶっ殺されます。
ジェシカも半殺しにされますが。

三日月のブチギレた原因はまあ、この先、知っている人は知っていますが、まずブチギレ要因一。

十香と真那以外、全員美九に洗脳される。

そのニ。

十香の拉致。

そりゃ三日月も今まで以上に殺意MAXで襲いかかってきますわ


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第十三話

投稿!!


ガリガリが味方につくんだ?まあ、誰が味方でも変わらないけど

僚機がガリガリの時の三日月


『───これより、第二十五回、天宮市高等学校合同文化祭、天央祭を開催いたします!』

 

天井付近に設えたスピーカーから実行委員長の宣言が響くと同時、各展示場が拍手と歓声に包まれた。

九月二十三日、土曜日。天宮市内の高校生が待ちに待った、天央祭の始まりである。

正面入口から近い一号館、二号館には主に飲食関係の模擬店が、奥の三号館、四号館には、様々な研究発表やお化け屋敷などの簡易アトラクションが集められていた。

今士道がいるのは二号館。来禅高校の勝敗を握る重要な拠点である飲食ブースだ。

 

「・・・・・」

 

だが、そんな重要拠点にいる士道は今、椅子に腰を下ろしながら怠そうな表情を作っている。

それもその筈、ここの所最近、バンドで使う楽器を一から全部覚えていたのだ。士道にしては珍しく寝るのも惜しんで、だ。

それプラス、慣れない実行委員の仕事、学校の授業(半ば寝ていたが)もあり、いくら長期戦が出来ていても、頭を使う慣れない仕事が積もりに積もってこの有様である。

そして、十香達はというと・・・

 

「おお!ひらひらだな!」

 

「くくく・・・どうだ士道?似合うだろう。我が着ればどのような衣装も霞むというもの・・・」

 

「指摘。耶俱矢、後ろの紐が解けています」

 

「えっ!?嘘!?ちょ、夕弦直して!」

 

フリルがいっぱいついたエプロンの裾をつまんでひらひらさせながら笑う十香と服の後ろの紐が外れかけて夕弦に直してもらっている耶俱矢の姿があった。

そんな元気な三人に、士道は座ったまま十香達に言う。

 

「似合ってるじゃん」

 

メイド服を着る十香達に士道はそう言って身体を起こす。

そんな士道にユージンが声を上げる。

 

「三日月!見回りにいくぞ!」

 

「うん」

 

ユージンの声に士道はそう言って、腰を上げた。

 

「それじゃあ皆、頑張ってね。見回り行ってくる」

 

「うむ!シドーも頑張ってくれ!」

 

「確認。士道はいつ戻ってきますか?」

 

そう聞いてする夕弦に、士道は言う。

 

「まあ、一時間くらいかかるんじゃない?他のところ見に行かないといけないし」

 

「首肯。分かりました。耶俱矢にも伝えておきます」

 

「なんかあったら連絡して。すぐに向かうから」

 

士道はそう言ってユージンのもとへ歩き出す。

 

「待たせた?」

 

「待ってねえよ。んじゃ、行くか」

 

「うん」

 

ユージンはそう言って、アリーナの中を歩き始めた。

 

「で?どこ見に行くの」

 

「そーだな・・・まずは四号館の展示物の確認だな。作品がぶっ壊されてないかの確認と、入場者確認。んで、他の学校の展示物の視察ってとこか」

 

「わかった」

 

士道はそう言いながら周りを見渡す。

人混みが賑わう中で、士道とユージンはあちこち周りながら四号館へと足を運ぶ。

そんな中で、士道達の後ろから声が掛けられた。

 

「・・・シン」

 

「ん?」

 

士道とユージンは振り返ると、そこにいたのは令音と四糸乃、そして食べ物を抱えた真那がいた。

 

「二人も来てたんだ」

 

そう言う士道に四糸乃は唇を開く。

 

「あ、あの・・・お疲れさま・・・です」

 

四糸乃はそう言いながら、左手に装着された『よしのん』が、カラカラと頭を揺らしながら甲高い笑い声を発した。

 

『やー、お疲れさまー士道くん。実行委員の仕事中?大変だねー』

 

「別に。やらなきゃいけないし、そこまで忙しい訳じゃないよ」

 

そう言う士道に、真那がフランクフルトを口に咥えながら、士道に言った。

 

「にぃひゃまもおふかれさまれす。ほてとたへます?」

 

「先にそれ食ってから喋れよ・・・つか、思いっきり楽しんでんな。お前・・・」

 

ユージンは真那の様子を見てそう言うが、真那は気にすることなく、ケチャップとマスタードを口周りにつけながらモグモグと口を動かす。

 

「・・・十香達は?」

 

「十香達は今、二号館にいるよ。俺とユージンは視察」

 

「ん・・・分かった。シンもこの後、頑張ってくれたまえ。今回は十香達をも巻き込んだ攻略だ。気を付けて動いていかないといけない」

 

「わかってる」

 

令音に言われ、士道はそう答える。

 

「三日月、そろそろいくぞ。時間がねえんだから」

 

「うん。じゃあ、またね」

 

『バイバーイ!士道君』

 

「頑張って・・・下さい」

 

「では、また後で!兄様!」

 

四糸乃達はそう言いながら、士道達と別れた。

 

「んじゃ、さっさと回って俺達も手伝いにいこうぜ」

 

「うん」

 

士道とユージンはそう言いながら、館内を歩いていった。




真那「楽しんだもの勝ちです」

両手いっぱいに食べ物を抱えながら

耶俱矢「私も士道と夕弦と一緒にたーのーしーみーたーいー!!」

夕弦「首肯。終わったら、士道と一緒に楽しみましょう」

作者「そう言ってるけど二人共、美九に洗脳されたあげく、後半は三日月にボコられるよ?」

後の展開を見ながら


なお、話の都合上ボツになりましたが、三日月の女装メイドの話もあったけど、十香達の目に悪いので無しになりました


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第十四話

投稿!!

小説見直しながら書いてたけど、アレよ?
本当にこの頃の美九、三日月の地雷の上でタップダンス踊って恐れを知らねえなと、書いてて思う。


Gジェネにやり過ぎというものはないんだよぉ!!

ゴッドガンダムに乗ったギム・ギンガナム


「問題なし・・・っと。んじゃ戻るか三日月」

 

「うん」

 

士道はユージンにそう答えて、一緒に十香達がいる二号館へと歩き出す。

 

「後もう少しで始まるな。準備はばっちりなのかよ?」

 

「道具はもう控室に持っていってる。後は十香と、銀髪と、あの三人だけ揃えばいいだけ」

 

「彼奴等を連れて行ったら俺も向かう。楽器の調整が必要だろ?」

 

「ユージンってバンド出来たの?」

 

そう言う士道に、ユージンは苦い顔を作りながら呟いた。

 

「まあ・・・な」

 

苦い思い出があるような顔を作るユージンに、士道はあ得て聞かずに店の中へと入る。

───と。

 

「シドー!!遅かったではないか!」

 

十香が士道を見つけた瞬間、駆け寄ってきた。

 

「どうかした?」

 

駆け寄る十香を士道は受け止めながら士道はそう言った。

と、厨房の方から夕弦が此方へと歩いてくる。

 

「報告。つい先程、誘宵美九がこの店に来ました」

 

「アイツが来たのかよ?」

 

ユージンの言葉に夕弦は頷く。

 

「首肯。なんでも士道に宣戦布告をしに来たそうです。伝言も預かってます」

 

「伝言だぁ?」

 

「確認。聞きますか?」

 

夕弦の問いに、士道とユージンは頷いた。

 

「復唱。・・・ステージで待っています。───あなたがステージに立てたらの話ですが」

 

その伝言を聞いて、ユージンは呟く。

 

「なんだそりゃ。やっぱり何か企んでんじゃねえかよアイツ。三日月、ちょっと早めに行くぞ!十香もだ。耶俱矢と夕弦も一応付いてきてくれ!何か嫌な予感がする」

 

「我の出番か?ふっふっふっ・・・任せておけ!」

 

「同調。すぐにでも行けます」

 

「十香、行くよ」

 

「うむ!」

 

四人はそう言って店から出ると、控え室の方へと向かった。

そして数十分後、ユージンの予感は的中し、美九の言葉の真意は知れることとなった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

時刻は十二時。ステージ裏の控え室には、各校の代表が続々と集結し始めていた。

部屋の奥にはドラムセットやキーボードなどの楽器が設えられている。

士道達も、仕事を他のメンバーに引き継ぎ、控え室に足を運んでいた。

だが、小ホールに集まったのは士道と十香、ユージンに耶俱矢、夕弦だけで、いつまで経っても亜衣麻衣美依の姿が見えなかったのである。

 

「・・・ったく、何やってんだ?あの三人は・・・」

 

ユージンは腕組みをしながらうめき、時計を見やる。もう集合時間を二十分も過ぎていた。士道達には先に準備してもらうように言ったが、このままだと最初のステージが始まってしまう頃合いだ。

しかも、問題はそれだけではない。今回のステージで出る筈の鳶一折紙の姿を朝からずっと見ていない。

 

「むぅ・・・皆はどうしたのだ?」

 

十香が首を傾げる中、士道はユージンに言う。

 

「ねぇ、ユージン」

 

「あ?どうした、三日月?」

 

振り返るユージンに士道は言葉を続ける。

 

「一回、あの三人に電話してみたら?アイツが宣戦布告して来たって事は何かしたのかも」

 

「・・・!!分かった。なら、三日月達は先に練習しといてくれ。耶俱矢と夕弦にもな。最悪、俺も出るしかねえ」

 

ユージンはそう言って、ポケットから携帯電話を取り出して電話をかける。

その間、士道は十香に言った。

 

「十香。俺達も練習始めよう。多分だけど、耶俱矢達と一緒にやるかも知れない」

 

「ぬぅ・・・そうなのか?」

 

そう言う十香に士道は頷く。

 

「多分、あの三人は来ないと思う。銀髪の人は分かんないけど、あの三人はアイツの標的になりやすいだろうし」

 

「む?それはどう言うことだ?」

 

十香の言葉が言い終わる前に、耶俱矢が士道を見て言う。

 

「士道よ。此方のセッティングは問題無いぞ」

 

「同意。此方も大丈夫です」

 

「ん。なら、練習やろうか」

 

楽器のセッティングが終わったと言う二人に士道がそう言った瞬間だった。

 

「─────はぁ!?ふざけんな!!」

 

後ろからユージンの怒号が飛ぶ。

 

「・・・・・・」

 

「シドー・・・ユージンはどうしたのだ・・・?」

 

電話越しに怒鳴るユージンを見て、困惑の表情を作る十香に士道は言う。

 

「多分俺達の予想が当たったんだと思う」

 

「質問。予想とは?」

 

「すぐに分かるよ」

 

士道の言葉の後、ユージンは此方へと向かってくる。

そして、この場にいる四人に口を開いた。

 

「・・・最悪の知らせだ。あの三人は来ねえ」

 

「はぁ!?来ないってどういうこと!」

 

「質問。詳しく教えて下さい」

 

ユージンの言葉に耶俱矢と夕弦はそう答えた。

そんな二人にユージンは言う。

 

「アイツら、誘宵美九に出るなって言われたから出ねえって言いやがった。あの女、俺達とまともに勝負する気なんて端から無かったんだよ!」

 

「何それ!!ズルして私達に勝とうなんて卑怯にも程があるじゃん!!」

 

「同意。流石に見過ごせません」

 

「シドー・・・」

 

そう言う二人に対し、十香は不安そうな顔で士道を見る。

士道のその表情からは、何も読み取れない。だが、それでも士道の瞳は諦めていなかった。

 

「ユージン」

 

「・・・どうした?」

 

士道の言葉にユージンは反応し、振り返る。

 

「ユージンも手伝って。今、ここで揉めてても仕方ない。耶俱矢と夕弦もすぐに練習するから、準備して」

 

「・・・任せろ。ぜってえに勝ってやる」

 

「うん!今回の勝負は負けられない!」

 

「同調。耶俱矢とユージンに同意します」

 

三人は頷いて、すぐに準備へと入る。

 

「十香」

 

「・・・シドー?」

 

士道の声に十香は困惑気味に士道へと目に映す。

 

「絶対に勝つよ」

 

そう言う士道に、十香は頷いた。

 

「うむ!!絶対に勝つぞ、シドー!」 

 

そして士道達もギターとタンバリンを手にし、すぐさま練習の準備を始めた。




刹○「誘宵美九、貴様はガンダムではない!!」

琴里「ちょっ!?アンタ誰!?」

作者「ごめんねー・・・どうしてもって言うから・・・」 


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第十五話

投稿!!

完全に原作から外れていきますが、致し方なし。

もうそろそろかな?三日月のブチギレタイムは?

避けた方が当たりそうだな

三日月・オーガス


『なるほどね・・・美九め、ずるっこい手段を使ってくれるじゃないの』

 

琴里がインカム越しで吐息をしてから返してくる。

 

「まっ、そう言う訳だ。今、三日月達は練習してる。しかも出番まであと二時間もねぇ。何とか頑張って仕上げて見るが、正直間に合うか微妙なところだ」

 

『・・・そう。分かったわ。なら、こっちも何とかしてみるわ』

 

ユージンの言葉に琴里は手を目元に当てる。

 

『チッ。にしても、舐めた真似してくれたわね。向こうがその気ならこっちにも考えがあるわ』

 

「考え?何かあんのかよ?」

 

『ええ。正直今のままじゃ確実に勝てるとは言えないわ。先に仕掛けてきたのは向こうなんだし、遠慮なく手を尽くさせてもらおうじゃないの』

 

と、琴里が言った所で、報告していたユージンに士道が声を上げる。

 

「ユージン。アイツが歌うって十香が言ってるけど、どうする?」

 

「あん?なら、言って来いよ。俺はもうちょい練習してからそっち向かうわ」

 

「ん。分かった」 

 

士道はそう言って、十香達と一緒に控え室の先にある廊下へと出る。

 

「この辺でいい?」

 

「うむ、特等席だな!」

 

「敵の実力、見せて貰おうじゃないの!」

 

「同意。耶俱矢と同意見です」

 

三人が言い終わるのと同時、照明が落とされたステージの中央に、多方向から青いスポットライトが照射された。

そして中央にいた美九が、マイクを口元に持っていき、静かな曲調に合わせて声を発する。

 

「・・・・・・・」

 

士道はその歌をただ黙って聞いていた。周りが熱狂する中、士道だけは表情を変えずにただ無表情のままで。

そして二曲目に差し掛かろうとしたところで、急に照明が落ち、ステージが真っ暗になった。

否、それだけでははい。大型スピーカーから流れていた曲も、照明が消えると同時にぷっつりと途絶えていた。

異様な事態に、観客席にどよめきが広がっていく。

 

「琴里・・・なんかやった?」

 

『御名答』

 

その言葉と一緒に琴里は答えてくる。

 

『会場の設備を少しいじらせてもらったわ。ま、程よく白けたらまた再開させてあげるわよ』

 

そう言う琴里に対し、士道は口を開ける。

 

「いや。これじゃあ、止まらない」

 

『は?どう言うこと───』

 

よ。と、琴里が言おうとした瞬間、ステージの中央でぼんやりとした光が現れたのである。

そして、皆のざわめきを抑えつけるように、澄んだ声がステージに響き渡った。

 

「───〈神威霊装・九番〉!」

 

その声と同時、淡い光が美九の身体に纏わりつき───光のドレスを形作っていた。

そう。それは、士道が無人のアリーナで目にした美九そのものだった。

 

『な・・・霊装を顕現・・・ッ!?こんなところで!?』

 

琴里の声が痛いくらいに鼓膜を叩く。

だがそれも無理からぬことだった。霊装。精霊を守る盾にして城。濃密な霊力の糸で編まれた強固な鎧。

一部の人を除く、ほぼすべての観客たちにその衣服が何を示すのか理解できるはずもなかった。

 

「──上げていきますよー。ここからが本番です!!」

 

美九はマイクもなしに、会場中にその声を響き渡らせる。

会場中が熱狂する中、一人士道は身を翻した。

 

「・・・シドー?」 

 

十香が士道に気付き、視線を美九から士道へと向ける。

そしてほんの一瞬。瞬きするほんの一瞬だったが、士道の右目の光彩が、十香達が知っている薄茶色とは違う、空のようにきれいな水色をしていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

頭の中で指令を発しながら眼球の左下の方に向けると、網膜に小さな数字が投影された。───14:55───作戦開始まであと五分。

天宮スクエア上空に浮遊したジェシカ・ベイリーは、ペロリと唇を舐めた。

 

「さて・・・そろそろ時間ネ。皆、準備はいイ?」

 

『了解』

 

ヘッドセットから一斉に部下の声が聞こえてくる。

今天宮スクエア上空に展開しているのは、ジェシカを含む第三戦闘部隊十名に、遠隔操作型の戦闘人形〈バンダースナッチ〉が二十機という、精霊を捕まえるのには、過剰極まりないラインナップだった。そしてまだどこの国にも配備されていない、DEMインダストリーの最新装備を纏っていたのである。

如何に相手がAAAランクの精霊〈プリンセス〉とあの最強の魔術師、エレン・メイザースを打ち負かした〈デーモン〉といえどひとたまりもないだろう。

 

「───さあ、時間ヨ。アデプタス4から12は所定位置に移動。砲撃準備。〈バンダースナッチ〉も用意ヲ。アウター1以下二十機、突入に備えテ」

 

『了解』

 

「さあ・・・パーティの始まりヨ」

 

言ってジェシカは、レイザーカノンを天宮スクエアセントラルステージに向けたその瞬間。

そのジェシカ目掛けて飛来する影が遥か上空から現れた。

 

「なニッ!?」

 

レイザーカノンの銃身を半ばから断ち切られ、ジェシカはレイザーカノンを手放す。

暴発したレイザーカノンにジェシカは目もくれず、先程攻撃を仕掛けてきたソレへと視線を向けた。

そこにいたのは───

 

「悪いが、今は彼等の邪魔をしないでもらおうか」

 

ガンダム・バエル。

マクギリス・ファリドは此方へと向かってくる鳶一折紙が到着する僅か数分の間だけだが、時間稼ぎの為に現れた。

 

「誰かしラ?邪魔をしないでもらいたいのだけれド?」

 

ジェシカのその言葉に、マクギリスは返す。

 

「無論。すぐに私は立ち去るさ。だが───」

 

遠目で、〈ホワイト・リコリス〉を担ぐ鳶一折紙の姿を確認しながらマクギリスは言った。

 

「彼女が到着するまでの間、私が相手になろうか!!」

 

マクギリスはそう言って、腰部の鞘からバエル・ソードを掲げると、ジェシカたち目掛けて飛翔した。

 




マクギリス「鳶一折紙が到着するまでの間、時間稼ぎでもしよう」

作者「最後まで付きあってやれよ・・・・」


今、思った事。まだ先だけど、十香反転編終わったら七罪編じゃん?あれ・・・七罪・・・ヤバくね?


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第十六話

投稿!!

前半ギャグに近いナニカ、後半は、美九の激昂。

温度差が激しいです


火星人は、火星に帰れええぇ!!

ゼハート、三日月に対するガリガリ


ステージの方から歓声が響いてくる。

士道達は今、ステージ袖で出番を待っている状態だった。

バンドメンバーが来ている服は皆、それぞれだ。

十香や耶俱矢、夕弦はそのままで来た為、メイド服の格好をし、ユージンと三日月に関しては制服のままだ。

 

「そう言えば、真那からこれ預かってたんだけど。ユージンも付ける?」

 

「ん?なんかあんのか・・・って・・・ゴフッ!?」

 

ユージンは士道が頭に付けた被り物を見て吹き出す。

 

「ぷ、くく・・・し、士道、御主、その格好もなかなか似合うではないか・・・・ッ!」

 

「不覚。失笑を禁じ得ません」

 

士道の姿を見て含み笑いを漏らす、耶俱矢と夕弦の目の先にいる士道の姿は─────

 

「シドー!!中々似合うではないか!その緑のロボットの被り物!私もつけてみたいぞ!」

 

制服を着た“二足歩行のハロ“がそこには居た。

 

「ちょ!!おまっ・・・!!なんだよその格好!!どうしたんだよッ!!」

 

「真那からもらった袋に入ってた。ユージンのもあるよ」

 

そう言う士道に、ユージンは笑いながらそのハロの被り物を受け取る。

 

「ったく、アイツも面白えことするじゃねえか。なら、俺も・・・っと」

 

二本足の制服を着たハロ二人と、美少女メイド三人。傍から見ればかなり異様な光景だが、インパクトは十分に伝わってくる。

 

「んじゃ!勝とうぜ!!」

 

「「「おー!!」

 

「おー」

 

ユージンの掛け声と共にやる気に満ちた声と、棒読みの声がステージに響き渡った。

そして、士道達が出たステージは見た目のギャップによるインパクトと、かなりの盛り上がりを見せたという。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

天宮スクエアセントラルには、一日目の出演者達が勢ぞろいしていた。

皆が緊張した面持ちで息を飲みながら、司会者の声を待っている。

それもそのはず。今は全てのステージ、及び投票が終了し、上位校の発表が行われている最中なのである。

 

『総合順位、まず第三位──仙城大付属高校!』

 

スピーカーから校名が発表された瞬間、辺りから歓声と拍手が溢れ、ステージにいた仙城大付の出演者が喜びの声を上げる。

確か士道たちの前にジャズを演奏したグループである。士道は喜ぶ彼らに対し、軽く手を打った。

三位に選ばれるということは、相当上手かったのだろう。士道はそんな曖昧は感想のまま、聞き流す。

 

『第二位!』

 

と、歓声を抑えるようにアナウンスが再度響き渡る。

ここで来禅高校の名前が出てしまえば、自分達の負けだ。

皆の脳裏には、二つの高校の名が浮かんでいる事だろう。

常勝竜胆寺の現役アイドル誘宵美九が見せた圧巻なステージか。

それとも、最後の最後で逆転劇を見せる雷禅のステージか。

司会者も若干緊張した様子で間をおくと、すぅっと息を吸ってから続けてきた。

 

『────一歩及ばず!竜胆寺女学院ッ!!』

 

「・・・・・へ?」

 

美九が、呆然と目を丸くする。

 

『そして、ステージ部門第一位の栄冠を手にしたのは!』

 

『奇跡の逆転を掴み取った来禅高校!!』

 

「え・・・?え・・・?」

 

「よっしゃあ!!俺等の勝ちだ!!三日月!!」

 

ユージンはそんな美九のことなど知らずに、士道に言う。

ただ、士道は黙ったまま司会者の言葉を聞いていく。

 

『なんとも意外な結果になりました。ステージ部門では他を寄せ付けなかった圧倒的なパフォーマンスで一位を掻っ攫っていった竜胆寺ですが、どうやら今年は展示部門や模擬店部門が振るわなかったようですね』

 

「え・・・・?え・・・?」

 

美九が意味がわからないといった様子で顔を左右に振る。

 

『その隙を、ステージ部門二位につけた来禅が衝いたというわけですね。特に模擬店部門のメイドカフェの投票数が凄まじい!』

 

そう言葉を続ける審査員に士道は一息をつく。

そして、隣にいる美九に言った。

 

「俺達の勝ちだよ。勝負の約束はちゃんと守ってよ」

 

士道はそう言ってその場を後にしようとする。が───

 

「・・・ふざけないでください。何です、これ────」

 

背後から、震えた美九の声が聞こえてきた。

 

「・・・・・・」

 

士道は目を細め、美九に視線を向ける。

 

「おかしいでしょう・・・?私が負けるはずないじゃないですかー・・・」

 

美九はふらふらとした足取りで前方へと歩いていく。

 

「でも、結果はアンタらの負けでしょ」

 

士道の言葉に美九は首を横に振る。

 

「し、知らない!そんなの知らないです!私は・・・私は勝ったのに・・・・!」

 

そう言う美九に、士道の隣にいたユージンが言う。

 

「そんな事いってもお前の負けは変わらねえんだよ。アンタが一人勝ち誇ってもな、俺達は仲間全員でお前に勝ったんだ。駄々なんてこねんじゃねえよ」

 

「・・・な、かま・・・」

 

美九が忌々しげに呟き、渋面を作る。

 

「な、何よ・・・それ。ふざけないでください・・・仲間・・・?ははっ、人間風情が、そんな役に立つはずないじゃないですか・・・」

 

そう言う美九に、士道は美九に言った。

 

「んじゃ聞くけど、その“人間風情“って奴に負けたアンタは何なの?」

 

士道の無意識な煽りに近いその言葉に美九は俯かせていた顔をバッと上げ、両手を大きく広げた。 

 

「なら・・・教えてあげます。仲間?絆・・・?そんなもの、私の前では無意味だって・・・ッ!」

 

そして─────

 

 

「歌え、詠え、謳え───〈破軍歌姫〉ッ!!」

 

その言葉と共に天使が顕現した。




美九「人間風情が!」

リボンズ「ほぉ?」


作者「ちょ!?リボンズさん!?」


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第十七話

投稿!!

三日月プッツンの話になります!

逃がすわけないだろ

アストンを殺され、ブチギレる三日月


美九のその言葉と共に、足元の空間から放射状の波紋が広がっていった。

そして波紋の中心部から、何か巨大な金属塊のようなものがステージ上にせり上がってくる。

 

「・・・・!」

 

士道は少しだけ目を見開けて驚いたような顔をするが、すぐに懐から銃を取り出し、美九の眉間目掛けて銃弾を叩き込む。パンッパン!と乾いた銃声が館内に響き渡る。

が─────

美九を中心に見えない壁が張られているかのように弾丸が地に落ちた。

そして美九は呼び出された天使から広がる光の鍵盤に両手の指を叩きつけた。

 

───ヴォオオオオオオオオオオオオ──────ッ!!

 

瞬間、美九の後方に聳え立っていた巨大な天使が、凄まじい音を発し始めた。

規則的に連なった銀色の円筒の中を音が幾重にも反響し、周囲に撒き散らされる。会場の空気がビリビリと震え、身体中に震動が伝わってきた。

 

「が・・・・ッ!?」

 

その爆音に、流石の士道も耳を押さえる。

士道はその音を耐えるようにしながらバルバトスを展開する。もう、周囲に気を使う余裕はない。

十数秒後。嵐のように駆け巡った〈破軍歌姫〉の音は徐々に小さくなっていき、やがて、完全に消え去った。

 

「・・・ユージン。無事?」

 

騒音が収まった後、士道は近くにいたユージンに声をかける。耳がきぃんと鳴る中、自身の身体の異常を軽く、感覚で確認するが特に変化はない。

あとは皆の無事を確認するだけと思い、士道は周りを見渡した。

 

「─────」

 

だが士道はその周りの異常な光景に思わず動きを止める。

会場には未だ、何千人という数の観客がいる。

だというのに、それらの観客が、一人の例外もなく皆一様に直立姿勢をとり、無表情のまま身じろぎ一つせず、ステージの上に視線を送ってきていたのだ。

 

「・・・なにこれ」

 

気味の悪いその光景に士道は思わずそう呟く。

すると美九の方から笑い声が聞こえてきた。

 

「ふ・・・ふふ・・・ふ、仲間、家族・・・でしたよねぇ?美しいですねぇ、素晴らしいですねぇ」

 

美九は壊れた人形のようにカラカラと笑った。

 

「────こんなに、壊れやすいなんて」

 

「─────────ッ!!」

 

美九の言葉を聞いた瞬間、士道はバルバトスと共にステージを蹴破り、疾走した。

そして巨大メイスを大振りに美九の頭上へと振りかぶる。

だが─────

ガァァァンッ!!

金属同時がぶつかりあい、火花を散らす。

士道の攻撃を逸したその人物は、“耶俱矢だった”。

 

「ッ!!」

 

士道はすぐに追撃をかける事なく、その場なら離脱する。

そして先ほどまで士道がいたその場に、ペンデュラムが流れるように着弾した。

 

「・・・チッ」

 

士道は舌うちをしながら距離をとろうとすると、後ろから隔てるように氷の壁が出現し、士道の進路を阻んできたのである。

そして、後方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

『んー、ふふー。駄目だよ逃げちゃあ。そんなことさせないよー?』

 

「お・・・お姉様は、私が・・・守り、ます」

 

四糸乃の言葉を聞き、士道は美九を見て言う。

 

「お前────」

 

そう呟く士道に、突如暴風が吹き荒れる。

それと同時に、上方から不敵な笑い声が響いてくる。

 

「くく・・・愚かな。我らが姉上様に盾突こうとは、総身に知恵が回りかねておると見える」

 

「肯定。短慮かつ無謀な行動です。お姉様には指一本触れさせません」

 

言いながら、耶俱矢と夕弦が軽やかに空を舞い、美九の上空に静止した。

双方、限定的に顕現した霊装の拘束具に締め付けられており、耶俱矢は巨大な槍を、夕弦はペンデュラムのような武器をそれぞれ携えていた。

 

「さあ・・・こうなったら、あなたに用はなくなっちゃいました。さっさと始末して、精霊さんたちと遊ぶことにします。───さあ、やっちゃってください!」

 

美九が光の鍵盤を一層強く叩く。すると四糸乃と耶俱矢、夕弦が、士道に敵意に満ちた眼差しを向けて此方へと向かってきたその時────

 

「“お前───皆に何をした”」

 

バルバトスが一瞬で、美九の“目の前に現れる“。

 

「─────ひっ」

 

美九は小さく悲鳴を上げるが、士道はそのままレクスネイルがついた手で美九の首を絞め上げた。

 

「がっ!?─────あッ!!」

 

「姉上様!!」

 

耶俱矢が此方へと向かってくるが、士道は絞め上げている美九を盾にして耶俱矢へに牽制する。

 

「なっ!?卑怯な手を使いおる!!」

 

「卑怯も関係無いだろ」

 

士道はそう言って更に美九の首に力を込める。

レクスネイルが美九の首筋の肌を食い破り、そこから血が垂れ落ちていく。

苦しいそうにもがく美九に、このままとどめを刺そうと力を込めたその瞬間だった。

 

「─────十香さん!!」

 

「─────ッ!」

 

真那の悲痛な声が士道の耳に入る。

士道はその声が示した十香に目を向けるとそこには───

 

「最優先目標である〈プリンセス〉の回収は完了。後は貴方だけですよ〈デーモン〉」

 

気を失い、ぐったりとした十香を抱いて空を飛んでいる、エレン・メイザースがそこにいたのだから。




Q.なんで真那は無事だったの?

A.美九の事が他の人より大嫌いだったから、『お願い』が効かなかった。

次の次あたりから新章かな?


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第十八話 夕暮れ前の戦い────エピローグ

一応エピローグにはなりますが、話は続きます。
虐殺劇は・・・次の美九にカチコミしにいくときかな?
その時に耶俱矢達もボコられる。

後、マッキーがちょーっと頭のネジが外れてます。
んで、久しぶりに狂三も登場!


バエルを持つ私に逆らうか!!

頭がバエルの人



エレンの腕の中で気を失なっている十香を見て、士道は美九を投げ捨てると同時に、そのままエレンに向かって突撃する。

そして大型メイスをエレンに振り上げた。

その攻撃をエレンはヒョイと躱すと、士道に言った。

 

「前より動きが単調ですよ」

 

「アンタがだろ」

 

士道が言い返すと同時に、エレンのCRーユニットの後ろ部分にテイルブレードが突き刺さる。

 

「・・・くっ!!」

 

テイルブレードが突き刺さった所からエレンのCRーユニットが暴発する。

 

「十香を返してもらうよ」

 

士道がそう言うのと同時に、エレンに向かって突撃する。

が─────

 

「!」

 

士道とエレンの間に砲撃が走り、その士道の突撃を止める事となった。

 

「・・・邪魔が!」

 

見上げると、そこにはDEMの人間が二十人近く空に浮いているのが分かる。

半壊状態になったエレンを見て、ジェシカは笑った。

 

「あラ。随分とボロボロになったものネ。エレン。最強の魔術師が聞いて飽きれるワ」

 

「そう言う貴方も随分と遊ばれていたみたいですね。何人か死にました?」

 

「・・・チッ」

 

皮肉を返すエレンにジェシカは舌打ちしたと同時に───

一人の隊員の身体の上半身が弾け飛んだ。

 

「「!!」」

 

エレンとジェシカは弾け飛んだ隊員を一目した後、士道を見ると、バルバトスの手には大型のレールガンが握られていた。

 

「ごちゃごちゃうるさいよ」 

 

「・・・〈プリンセス〉に手を出した事にかなり怒っているみたいですね。ジェシカ、〈デーモン〉の捕獲はそちらに任せます」

 

「ふン。最強の魔術師も堕ちた物ネ。あんな奴くらい私がすぐに捕まえるわヨ」

 

余裕そうに返すジェシカにエレンは十香を抱えたまま浮遊する。

 

「逃がすわけないだろ」

 

士道はそう言ってエレンを追おうとするが、他の隊員達の手によって阻まれる。

そして───── 

 

「アアアアアアアアアアァ!!」

 

「─────チッ」

 

「なんなノ!?」

 

無差別に音の衝撃波が士道とジェシカ達を襲う。

士道が衝撃波のした所へ目を向けると、美九が憎々しげに此方を睨み付けていた。

 

「よくも・・・やってくれましたね!ただじゃおきません・・・!這い蹲らせてあげます!」

 

そう言い放つ美九に士道は耶俱矢達を一度見ると、士道は真那が倒れている客席へと向かい、抱えて、その場を後にする。

士道一人ならなにも問題はなかったが、真那がいるなら話は別だった。このまま戦い続ければ、真那にも被害が及ぶ可能性がある。

それを避ける為に士道は撤退を選んだのだ。

抱えられた真那は申し訳無さそうに士道に口を開く。

 

「ごめんなさい・・・兄様。私、何の役にもたてませんでした・・・」

 

そう言いながらポロポロと涙を溢す真那に、士道は言う。

 

「真那が無事ならそれでいいよ。十香や耶俱矢達の事だって、俺がちゃんと見ていたらあんな事にならなかった」

 

「兄様・・・」

 

真那は士道に顔を向けるが、肝心の士道の顔はバルバトスによって見えなかった。

そんな真那を他所に、士道はインカムを使って〈フラクシナス〉にいる琴里に通信する。

 

「琴里。聞こえる?」

 

『ハイ、どうしたのかしら?』

 

自律カメラで此方の危機的状況は分かっているだろうに、なぜか緊張感がない琴里の声に士道は眉をひそめた。

 

「安全な場所を確認して。出来たら真那の武器も欲しいんだけど」

 

『ハァ?』

 

そして士道の疑念は、一瞬にして裏切られる事になる。

 

『────何言ってるの?“お姉様“に逆らったお馬鹿は、そこでミンチにされてなさいよ』

 

「は?」

 

「こと、り・・・さん?」

 

琴里のその言葉に士道と真那はそう答えると同時に────

 

『ひぐ・・・・ッ!?』

 

情けない悲鳴を上げて、琴里から声が聞こえなくなる。

そして─────

 

『三日月・オーガス。〈フラクシナス〉は私が占拠しておいた。安心したまえ。そこから二キロ先にある駅前の廃ビルで落ち合おう』

 

「チョコの人?大丈夫だったの?」

 

士道の言葉にマクギリスは含み笑う。

 

『無論。彼女の歌よりも私のバエル愛に勝る事はない』

 

「・・・・・あっそ」

 

「・・・この人、頭の病気か何かです?」

 

マクギリスの言葉に士道は冷めた声音で、そして真那は絶望のドン底に叩き落とされた表情から、一瞬にして冷ややかな表情になる。

だが頼る人間が他にいない今、このバエル馬鹿に頼るしかない。士道は、真那を抱えたままその場を後にした。

そしてその二人を見つめる一人の影。

 

「あらあら。お困りの様子ですわね。───士道さん。少し、ここで貸しでも作っておきましょうか」

 

狂三はそう呟きながら、唇に笑みを浮かべた。




マッキーの言葉に

真那 ドン引き

三日月 無表情

狂三 「病院に行ったほうがよろしいのでは?」
  ↑
ごもっともです


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美九トゥルース
第一話


投稿!!

次の投稿なんですが、一応、番外編を久しぶりに書こうかと思います。
鍋パーティみたいな感じで

昨日、本屋行ってSAOのくじがあったんで、ストラップ欲しいなーって引いたらアスナのフィギュアが当たりました・・・

物欲センサー・・・(´;ω;`)


「待たせてすまないな。三日月・オーガス」

 

駅前の暗い廃ビルの一室で。

士道と真那はマクギリスと合流を果たした。

すると真那は、マクギリスの顔を見て叫ぶ。

 

「あー!!貴方は確か、兄様の事を聞きたがってたあの仮面男!!」

 

そう言う真那に、マクギリスは言う。

 

「そう言うお嬢さんは〈ナイトメア〉を追っていた高宮真那だろう?君が今〈フラクシナス〉で使っているCRーユニット〈ヴァナルガンド〉の使い心地はどうかな?〈ラタトスク〉と〈モンターク商会〉の共同で作られた機体なのだがね」

 

そう言うマクギリスに真那は、若干引き気味に唇を開く。

 

「・・・まぁ、悪くねー使い心地ですけれど・・・」

 

「なにかあればいつでも言ってくれたまえ。いつでも整備を引き受けよう」 

 

裏でDEMとラタトスク、二つの組織に手を出しているモンターク商会に真那は薄気味悪さを覚える。

だがそんな真那に対し、士道は怒りを抑えて何時もの調子でマクギリスに言う。

 

「・・・で?チョコの人はどうしたの。用あるんでしょ」

 

そう言う士道にマクギリスは頷く。

 

「三日月・オーガス。夜刀神十香の居場所を把握しているかね?」

 

「まだ。チョコの人は知ってんの?」

 

「ああ。───デウス・エクス・マキナ・インダストリー日本支社、第一社屋。そこに夜刀神十香は幽閉されている。潜伏させている部下の情報だ。間違いはないだろう」

 

マクギリスの話を聞いて真那は頬を引き攣らせる。

 

「うわぁ・・・DEMの情報漏れまくってるじゃねーですか。前の会社どんだけ管理がガバガバなんです?」

 

マクギリスによって情報が筒抜けになっているDEMに真那はそう感想を漏らす。

 

「じゃあ、先に十香を助けた方が手っ取り早いわけか」

 

「・・・いや、そちらは後でいい」

 

マクギリスの言葉に、士道は首を傾げる。

 

「なんで?」

 

「今、DEMには試作機であるグレイズ・アインがある。先にそちらを攻略しようにも、君の負担が大きくなるだけだろう」

 

「グレイズ・アイン?なにそれ」

 

そう言う士道に、マクギリスは口を開く。

 

「君がかつてエドモントンで戦ったあの巨大なグレイズの事だとも」

 

「ああ。アイツか」

 

あの矢鱈に強かった黒くてでかいグレイズ。

もしあのままの状態のままで今、戦ったら確実に“アレ“を使わざるを得ないだろう。

 

「んじゃ、先に耶俱矢達を取り戻してから十香を助ける。それが一番手っ取り早い訳か」

 

「そう言う事になる」

 

マクギリスは士道にそう言った後、扉に顔を向けた。

 

「誰かは知らないが出てきたまえ。隠れても無駄だ」

 

「誰がいるんです?」

 

士道とマクギリス、真那は扉へと視線を向けると、そこにいたのは─────

 

「あらあら。バレてしまいましたわ。上手く隠れていたと思ったのですけれど」

 

「な─────」

 

「・・・アンタか」

 

真那は目を見開き、士道は目を細める。

 

「お困りのご様子でありませんの。────ねぇ、士道さん。少し、お話しませんこと?」

 

時崎狂三が軽くお辞儀をして、此方を見ていたのだから。




三日月「グレイズ・アイン?なにそれ?」

アイン「貴様ァ!!」


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第ニ話

投稿!!

撃っちゃうんだなぁー!これが!!

ユージンに似た誰か


「・・・・ッ!!」

 

真那は相手が狂三だと分かった瞬間、〈ヴァナルガンド〉の砲身を開けさせ、狂三へと向ける。

 

「君は・・・そうか。〈ナイトメア〉か」

 

マクギリスはそう言って狂三を観察するように見つめる。

 

「・・・アンタか」

 

士道はその少女の名を呼んだ。狂三。士道の元クラスメイトにして────『最悪の精霊』

 

狂三はそんな士道の言葉に、ぴくりと眉を揺らしてから肩をすくめてきた。

 

「あら、違いましたかしら。────四糸乃さんと八舞姉妹を精霊に奪われ、十香さんをDEM社に拐かされ・・・途方に暮れているように見えたのですけれど」

 

「別に途方に暮れてないよ」

 

士道はそう言った後、更に言葉を続ける。

 

「・・・で?なにしにきたの。また殺されたいわけ?」

 

前に狂三が十香達にした事を士道はまだ忘れていない。

そう言って狂三を見る士道に、愉快そうに唇を歪めた。

 

「ふふ、落ち着いてくださいまし。────少なくとも今わたくしに、士道さんをどうこうしようというつもりはございませんわ」

 

「信じられると思う?」

 

「わたくしが今、嘘をつく理由がございまして?」

 

「・・・・・・」

 

そう言う狂三に士道は口を閉じる。 

確かにその通りである。狂三にその気があるのなら、士道が一人でいるところを襲っていることだろう。

 

「で?話ってなに」

 

怪訝そうに言う士道に、狂三はトントンとリズミカルに靴底を叩きながら、士道に近寄ってくる。

 

「─────」

 

真那は警戒したように銃口を狂三に向けたまま、視線を鋭くした。

 

「わたくしも士道さんのお手伝いをしにきましたの」

 

「・・・へぇ」

 

「・・・ほぅ」

 

狂三の言葉に士道とマクギリスは同時に呟いた。

 

「ご安心くださいまし。戯言を吐いてはいませんわ。───まあもちろん、それでも信じていただけないのであれば、無理にとは申しませんけれど」

 

そう言う狂三に士道は少し黙った後、口を開く。

 

「・・・分かった。今回はアンタを信用する。手伝ってもらうよ。トッキー」

 

「兄様・・・!」

 

「別に何かしようとしたら、前みたいに叩き潰せばいいだけだし」

 

コイツは増えるから盾にも使えるし。そんな事を考えて、士道達は美九に手を打つ為の作戦を錬る。

 

「夜刀神十香の救出の前に、誘宵美九に手を打っておかなければならないな。理由はどうであれ、彼女は三日月・オーガスと高宮真那を血眼になって追いかけている。何万という人間と、精霊三人を従えて。・・・間違いはないな?」

 

「それで間違いはねーと思いますよ」

 

「ふむ・・・それではやはり、そちらから片付けてしまいましょう。彼女は着々と支配領域を広げていますわ。そうなると、少々困りますし」

 

「事実、彼女は実戦向きの能力を持ち合わせてはいないようだからな」

 

そう言うマクギリスに真那が言った。

 

「そうは言っても、人を操る声は厄介ですけど?」

 

「問題ありませんわ。この場にいる私達はあのような演奏に心揺らされるほど、純真ではございませんでしょう?」

 

「まあ、そうですね・・・私、あの人嫌いですし」

 

「俺も別に」

 

「私のバエルに対する愛を越えるものなどありはせんよ」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

マクギリスの“アレ“な発言に、三人は沈黙する。

 

「・・・まあ取り敢えず、士道さんを美九さんとどうにか二人きりにする事が目的になりますわね」

 

「いや、相当難しいと思いますけれど・・・まともに話が通じる相手じゃねーですし」

 

と、真那の言葉に狂三はぴくりと眉を動かした。

 

「どうかしたの?」

 

「・・・それは、どうですかしらねぇ」

 

「?」

 

顎に指を触れさせながら言う狂三の言葉に首を捻る。すると狂三は、半眼を作りながら答えてきた。

 

「上手く説明できませんけれど、本当にあの方の価値観は、先天的なものなのでしょうか」

 

「どういうことです?」

 

「いえ、なんと言いましょうか。あの方、少しばかり妙な感じが・・・」

 

そう言う狂三に、マクギリスは言った。

 

「つまりは後天的。なにかの理由があり、ああなったと言う訳か」

 

そう言うマクギリスに狂三は頷く。

そして数秒後、何かを思いついたように顔を上げた。

 

「士道さん。何か美九さんの持ち物が手に入りませんこと?」

 

「は?そんなのあるわけないだろ」

 

「彼女の私物?なぜ、そんなものを」

 

マクギリスの問いに狂三は唇を開く。

 

「わたくしの予想が正しければ、彼女の泣き所を押さえられるかもしれませんわ」

 

「・・・なに?」

 

マクギリスはそう言って、眉をひそめる。

とはいえ、彼女は精霊。彼女のものをそう簡単に手には入るものなど────

 

「・・・あ」

 

士道が顔を上げる。

 

「どうかいたしました?」

 

覗き込む狂三に、士道は言った。

 

「確か、前に琴里にアイツの家の場所が書いた紙もらったの忘れてた。多分アイツの家ならあるんじゃない?」




狂三「やっぱりこの人、病気ではありませんの?」

マクギリスを見て

真那「貴女と同じ考えだなんて嫌なんですけど、まぁ、同意です」


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第三話

投稿!

んで、三日月が美九に言いたいことが出来る回です!


発掘されたモビルスーツ。やはり、相当危険な代物だろうな

∀が僚機のマクギリス


「ここ・・・ですの?」

 

「・・・多分」

 

時刻は二十一時。街灯と民家の明かりがぼんやりと輝く静かな住宅地に、士道と狂三、真那とマクギリスは立っていた。

目の前には、精緻な細工が施された背の高い鉄柵に、丁寧に手入れされた庭園。そしておとぎ話にでも出てきそうな洋風建築が聳えていた。

琴里に渡された紙に記された誘宵美九の自宅である。

中には誰もいないのだろう、窓に明かりはなく、静まりかえっている。

美九は他の精霊とは異なり、こちらの世界で学校に通っている上、歌手として活動しているらしい。

だからこそ自分の痕跡を数の多く残しているのだ。

 

「ちゃちゃっと調べちゃいましょう」

 

真那はそう言って門に手をかけるが、鍵がかかっているのか開く気配がない。

 

「鍵掛かってますね」

 

「どいて」

 

そう言う真那に、士道はそう口にして懐から銃を取り出すと、躊躇いもなく引き金を引いた。

鍵と弾丸がぶつかり合う音と共に、門の鍵が壊れて地面に落ちる。

そして士道が門を押すとキィと音をたてて開いた。

 

「開いたよ」

 

「荒っぽいですよ・・・兄様」

 

「だが、そうも言ってはいられない状況だろう」

 

マクギリスはそう言って門をくぐり抜け、狂三と士道も後を続く。

 

「ああ・・・もうっ」

 

真那はそんな彼等にそう呟いてから後を追った。

そして玄関の鍵も同じようにかかっていたので、先程と同じように撃ち抜いて破壊する。 

家の中に入った士道達は暗い廊下の中、うっすらと光っているスイッチに手を触れさせ、明かりをいれた。

 

「それで、何処を探す?」

 

士道の言葉にマクギリスは言う。

 

「まずは彼女の寝室を探そう。基本、ものを置くとすればそこだ」

 

「分かった」

 

「りょーかいです」

 

「そうですの。では参りましょう」

 

言って階段を上っていく。

美九の寝室はすぐに見つかった。二階に上がって廊下をまっすぐ行ったところに、『BEDROOM』のプレートが下がった扉があったからだ。

 

「・・・・・」

 

士道は躊躇いもなくノブを回し、部屋へと入る。

部屋の中に入った士道は辺りを見回した。

広さは二十畳ほどだろうか。部屋の奥に天蓋付きのキングサイズベッドが置かれ、壁に沿うように木製のクローゼットや戸棚が置かれている。そしてベッドの正面には巨大なテレビが備えられていた。

 

「適当に探すか」

 

士道は適当に戸棚を開け、中を漁っていく。やっていることは完全に泥棒の類だが、この状況ではそうも言っていられない。

マクギリスや真那も同じように、テレビの戸棚やクローゼットを開けて探している。

と─────

 

「士道さん、士道さん。見てくださいまし」

 

「?」

 

背後から狂三が声をかけてくる。

 

「なんか見つけた?」

 

「ええ、凄いものがありましたわ」

 

言って、クローゼットの引き出しを指さしてくる。

士道はそれを目にすると、息を吐いた。

 

「・・・何やってんの」

 

そこには、なにしろ美九が使っているであろう下着類が、ぎっしり詰め込まれている。

 

「ほら、見てくださいまし。凄いサイズですわよ。私の顔が入ってしまいそうですわ」

 

「そんな事してる暇があったら探してよ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・気にしているのかね?」

 

「よけーな世話です」

 

狂三が手にしている美九の下着を見て、真那は自身の胸元を見ながらマクギリスにそう言った。

そんなやり取りをしている中で、士道は写真立てを見つけた。それ自体は、何の変哲もないものである。

 

「・・・・・・」

 

だがこの写真にどこか違和感を覚える士道は、その写真立てを小棚の上に置く。

そして、伏せられた写真立てを士道は持ち上げた。

 

「─────」

 

その写真立てに入れられた写真を見て、士道は少しだけ目を見開けた。

子供の頃の美九と不機嫌そうな顔を作っている“子供の頃の士道“だった。

 

「・・・兄様?どうしました?」

 

真那はそう言って写真を除き込むと、士道と同じように目を見開けた。

 

「・・・えっ?これって・・・・」

 

と。真那が言いかけたところで。

窓ガラスが微かに揺れたかと思うと、すぐに外から、凄まじい音が流れてきた。

 

「警報?・・・いや、違うな」

 

マクギリスはその音に警報と思ったが、すぐに違う事に気づく。

─────音楽である。

巨大なパイプオルガンで奏でたような荘厳な音にと、聴く者を虜にする美声によって紡がれた歌が、街に響き渡り始めた。

 

「チッ─────こんな夜中に傍迷惑なヤツですね!」

 

おそらく非常時に警報などを流す公共のスピーカーをジャックしたか・・・そうでなければ街宣車か何かを走らせているのだろう。

 

「・・・行くよ。皆」

 

「あら?もうよろしいので?」

 

「うん。アイツに聞きたい事が出来たし」

 

士道はそう言って、写真立てから取り出した写真をポケットの中に入れた。

 

「それで?何か作戦はありますの?まさか、強行突破とは言いませんわよね?」

 

そう言う狂三に士道達は言った。

 

「それ以外何かある?」

 

「それ以外あります?」

 

「それ以外あるかね?」

 

同じ事を言う三人に、狂三は肩を落として呟いた。

 

「・・・馬鹿ばっかり」




狂三「同じことしか考えてない訳ですの?」

作者「まあ、三日月達はそんなもんですし、気にしてもしゃーない」


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第四話

投稿!!

そして、三日月達のカチコミの回。
かなりド派手な方法でカチコミしにきます!

オルガ、言ったよね。最短で行くって─────

三日月・オーガス


「──────────!!」

 

天宮スクエア・セントラルステージの中には今、熱狂が渦を巻いていた。

何しろステージの中央に淡い輝きを放つ巨大なパイプオルガン───〈破軍歌姫〉が聳え、その前で霊装を纏った美九が光輝く鍵盤に指を走らせながら歌を歌っているのである。

美九の熱狂的なファンと化した観客たちの中には、感激のあまり失神している者もちらほらといるようだった。

男共は会場の外に追い出し、警備の任に就かせているため、美九の視界に犇めく観客たちは皆女の子ばかりである。

ちなみに今の演奏は、街中の至る所に設置されているスピーカーから、リアルタイムで流されていた。これで、この曲を聴いた者は美九の新たな尖兵となり、あの憎き男を捜索し始めることだろう。

 

「・・・うッ」

 

数時間前に起こった忌まわしい出来事が脳裏を掠め、美九は思わず息を詰まらせた。

ちょうどそこで演奏が終わり、会場内が割れんばかりの拍手で包まれる。

いつもなら最高の達成感と充実感に包まれる瞬間だというのに、先程よぎった男の顔のせいで気分が悪くなってしまった。

美九は憮然とした表情を作ると、今まで使っていなかったマイクに口を近づけた。

 

『・・・疲れたので、少し休みますぅ。再開まで好きにしていてくださぁい』

 

美九はそう言って、舞台の袖に戻っていった。

 

「ふぅ・・・」

 

支配領域を広げるために連続して天使を演奏したため、さすがに少し疲れた。小さく息を吐き、汗で湿った髪をかき上げる。

 

「お、お疲れ様です・・・お姉様。あの、よかったら・・・これを・・・」

 

と、そんな美九に、おずおずとした声がかけられた。見やると、そこにメイド服を着た小柄な少女が、美九にタオルを差し出しながら立っていることがわかる。

今日美九の演奏で以て虜にした少女───四糸乃だ。

緩くウェーブのかかった髪に、蒼玉のように美しい瞳。思わず抱きしめたくなるお人形さんのような女の子である。

模擬店部門・メイドカフェの制服が余っていたため、着替えておくよう指示したのだが・・・これがまた反則なまでに似合っていた。たまらず、ぎゅっと彼女を抱きしめる。

 

「あーもう可愛いですぅー!たまりませんねぇ!たまりませんねぇ!」

 

「き、きゃ・・・っ!お姉様・・・!?」

 

四糸乃が慌てふためいて目を白黒させる。

 

「ありがとうございます、四糸乃さん。私のために待っててくれたんですねー」

 

「あ、あの・・・は、はいっ」

 

四糸乃は酸漿のように真っ赤になった顔を隠すうつむかせながら、右手で握ったタオルを差し出してきた。

美九は礼を言いながらそれを受け取ると、額の汗を拭った。

 

「ふふ・・・っ、本当に私はラッキーですぅ。まさかあの会場に精霊さんがいるなんてぇ」

 

まさかこんなにも早く、精霊を自分のものにできるとは思っていなかった。しかも────

 

「くく、さぞ疲れたろう、姉上様。ゆるりと休むがよいぞ」

 

「誘導。こちらへどうぞ、お姉様」

 

美九が首を回すと、そこにはこれまたメイド服を着込んだ二人の少女が控えていた。

一瞬、そこに鏡でも立てかけてあるのではと疑ってしまうほどに、顔立ちの似た少女たちである。だがよくよく見てみると、双方に特徴があることが見て取れた。

芝居がかった言動と勝気そうな表情、それにほっそりとした身体のラインが魅力的な少女───耶俱矢に、ぼうっとした表情と特徴的な口調、そして美九に迫るやもと思えるほどの抜群のプロポーションを誇る少女───夕弦。

二人もまた、美九や四糸乃と同じ、精霊と呼ばれる存在だった。

無論双方、美九に心酔している状態である。今も美九の労をねぎらってか、控え室に椅子と飲み物を用意していた。

 

「ふふっ、ありがとうございますぅ」

 

美九な優しげに微笑むと、二人に促されるままに椅子に腰掛けた。

 

「あぁ・・・・」

 

美九は恍惚とした声を発した。

─────なんと、なんと幸せな空間だろうか。

美九だけのステージに、美九の歌を心待ちにする女の子たち。そして、心を込めて美九の世話をしてくれる、絶世の美少女たち。

あまりに最高すぎて、夢なのではないかと思ってしまうくらいだった。実際、美九は先程からニ、三度ばかり頬をつねったりしていた。

理想郷、ここに成れり。美九の邪魔をする者などどこにもいない。

だが─────

 

「・・・・く」

 

再び頭を掠めた忌まわしい記憶に、美九は顔をしかめた。

───五河士道。その名と顔が思い起こされたのである。

 

「許しませんよ・・・士道さん・・・」

 

胸の内に渦巻くドロドロとした憎悪を声と呼気に乗せ、うめくように呟く。

油断したとはいえ殺されそうにもなり、そして煽りも入れてきた士道に美九は歯を食いしばる。

 

「許さない・・・許さない・・・ッ!あの男だけは決してッ!!」

 

最高の理想郷を作り上げた美九の、最後の心残り。あの男を目の前に引っ立て、この世に生まれてきたことを後悔するような目に遭わせてやらねば気がすまないのである。

そして、五河士道が連れ去ったあの少女もすぐに手に入れる。

 

「あの男は・・・まだ見つからないんですかぁ?」

 

美九が怒気の籠もった声で言うと、四糸乃がビクッと肩を震わせた。

 

「は、はい・・・その、まだ連絡は入ってきて・・・いません・・・」

 

「そうですかぁ・・・引き続き捜索を続けさせて───」

 

と、美九が指示を出そうとしたところで────

 

「失礼しまッす!お姉様!」

 

「緊急事態です!お姉様!」 

 

「てぇへんです!お姉様!」

 

と、少女たちが身長順に叫んでくる。

 

「どうしたんですかぁ、そんなに慌てて」

 

美九が問うと、三人は一瞬顔を見合わせてから言葉を続けてきた。

 

「た、大変なんです!五河くんが見つかったんですよ!」

 

「・・・なんですってぇ?」

 

美九はその報告に一瞬視線を鋭くし────

すぐにのどの奥からくつくつという笑いを漏らし始めた。

 

「ふふ・・・ふふふふふ・・・ッ、そうですかー、ようやく見つかりましたかー」

 

言いながら、椅子からゆらりと立ち上がる。

 

「思ったより粘りましたねぇ。でも無駄ですよぉ。私の可愛い軍勢からは逃げられません。で?どこにいたんですかぁ」

 

そう言う美九に亜衣麻衣美依は困惑した様子で顔を見合わせた。

そして─────

 

ボガァァァンッ!! 

 

控え室の壁に土埃が舞いながら巨大な風穴が開く。

 

「・・・・へ?」  

 

その風穴が出来た事で、美九は目を見開き、素っ頓狂な声を発した。

だが、それも無理はない。

風穴が開いた数百メートル先。

そこには“十九メートルのバルバトスルプスレクス“が街中でスラスターを吹かせ、腕部に内蔵された二百ミリ砲が火を放ちながら、此方へと向かってきているのだから。




バルバトス(モビルスーツ形態)「ヒャッハー!!逃げる奴はただの人間だァー!!向かってくる奴はよく訓練された人間だァー!!」

エイハブ・ウェーブ撒き散らして通信機器駄目にしながら

なお、三日月含む四人はバルバトスのコックピットの中です
    ↑
 定員オーバー+三日月は上半身裸

操縦はほぼ阿頼耶識でやってる


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第五話

投稿!!

木曜日から週一から二回の投稿に戻ります。スタックがなくなったので─────
では、どうぞ!

「これ、クーデリアが作ったんだよ!!」

クーデリアの料理を渡すクッキー、クラッカ



時は少し遡って、数分前。

士道達は狂三とともに、天宮市の中心に位置する大型コンベンションセンター・天宮スクエアの近くまで戻ってきた。

十校合同文化祭・天央祭の舞台にして、天宮市大暴動の発生地点。

そして────今は精霊・誘宵美九の居城である。

 

「結構いるね」

 

士道はビルの屋上から双眼鏡を覗きこみ、天宮スクエアの様子を観察する。

さすがにこの距離から気づかれることはないだろうが、一応周囲を警戒しながら狂三達がいる所へと歩いていく。

 

「で、正面突破するけど何処から行く?あれだけ人いると流石に邪魔なんだけど」

 

そう言う士道にマクギリスは笑みを浮かべながら、士道に言う。

 

「簡単なことだ。君がバルバトスをモビルスーツ形態にして特攻を仕掛ければ話は早い。それなら此方へ向かってくるものはいないだろう」

 

「あ、そっか」

 

士道は相打つように真那と狂三は首を横に傾げる。

 

「「モビルスーツ形態とは(なんですの)?」」

 

「見れば分かるよ。─────バルバトス」

 

士道はそう言いながら、ビルの屋上から飛び降りる。

 

「な!?兄様!?」

 

「士道さん!?」

 

予想外の行動に二人は士道が飛び降りたビルの下を覗き込む。

が、そこで二人は更に驚愕で目を見開けた。

 

「「─────な」」

 

覗き込んだ先に見えたのは、二十メートルはあろうかという、巨大なロボットと言えばいいだろうか。

士道が何時も使っているバルバトスをそのまま巨大化させたようなその機体が土煙をあげながら出現し、マクギリスは笑みを浮かべる。

そしてバルバトスは左手を屋上にいる狂三達へと伸ばし、そのまま静止させる。

 

『乗って。コックピット開けるから』

 

「「・・・・・・」」

 

「行かないのかね?」

 

呆然とする二人をマクギリスは先にバルバトスの手に乗りながら、そう答える。

真那と狂三はお互いに一瞬だけ目を合わせると、バルバトスの手の上に乗った。

 

◇◇◇◇◇

 

そして今に至る。

 

「狭いですわ!?流石に狭いのですけれど!!」

 

「仕方あるまい。元々モビルスーツは一人乗りだ。無理に乗ればこうもなる」

 

狭いと叫びながらも、士道の格好を見て顔を赤くする狂三に、マクギリスは冷静に答える。

 

「・・・・ほぇ・・・」

 

「真那?大丈夫?」

 

士道の足の間の中で顔を真っ赤にしながら呆けている真那に、士道はそう答えるが反応がない。

 

「ねぇ、真那が反応しないんだけど」

 

士道は狂三とマクギリスにそう言いながらバルバトスを天宮スクエアまで疾走していく。

と、バルバトスのレーダーに観客以外に映るものが見え、士道はそちらへと視線を向ける。

映像に映っていたのはDEMの隊員がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「トッキー、チョコの人、真那、彼奴等が来た。邪魔だから先に潰す。準備して」

 

「わかりましたわ」

 

「ああ、もちろんだとも」

 

そう答える二人に対し、真那の声がなく、士道は顔を真那に向ける。

 

「・・・・ほぇ」

 

「・・・・・」

 

「駄目ですわね?」

 

「これが恋する乙女というものか」

 

駄目になってる真那に、二人はそう言った。




三日月「大丈夫?真那?」

真那「・・・・・」←返事がない。ただの────

十香、四糸乃、琴里、耶俱矢、夕弦、折紙「・・・・・」

作者「みなさーん?あの、天使とか武器持ってなんでこっち見てるんです?ちょ!?ヤメ────!?」


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第六話

投稿!!

さあ、カチコミじゃあ!!

なお、次かな?耶俱矢達をボコるの

やっちまえ!!ミカ!!

オルガ・イツカ


「くソ!どうなってるノ!?通信が出来ないじゃなイ!」

 

ジェシカは目の前に現れた巨大な〈デーモン〉を視界に入れながら憎々しげに吐き捨てる。

〈デーモン〉が現れた直後、電子機器や通信機器などがほぼ全滅。

そんな状況では増援を呼ぶ事など出来ず、ジェシカは歯を食い縛りながらも、周りの隊員に言った。

 

「アデプタス4から10は私と来テ!!残りは無事な〈バンダースナッチ〉と左右に別れて挟撃をかけるワ!!」

 

「了解!」

 

「こんなノ・・・聞いていないわヨ!」

 

通信機器が使えない以上、叫びながら指示を出していくしかない。ジェシカはCRーユニットを纏いながら他の隊員とともにバルバトスへと向かって行った。

 

◇◇◇◇◇

 

「では、士道さん。わたくしは進路を確保しますわ。確保するのに少々お時間が必要ですので、お先に」

 

そう言って、バルバトスのコックピットから飛び降りる狂三に続きマクギリスもバエルを呼び出し、士道を見る。

 

「では、私が先行しよう。君たちも後からきたまえ」

 

そう言って、マクギリスはバエルとともに飛翔した。

 

「真那、行くよ」

 

「・・・は!?す、すみません兄様!!つい呆けてしまいました!!」

 

何度目かの士道の言葉で真那は気を取り戻すと、そのままコックピットの前に立ち、〈ヴァナルガンド〉を展開する。

 

「─────ッ。ちょっとリアクターの影響で出力が低下してますね。でも問題はねーです」

 

「分かった。じゃあ行くよ」

 

「────はいッ!!」

 

その掛け声とともに、真那は飛び出す。

それと同時にバルバトスも縮小し、何時もの状態へと戻り、両手にツインメイスを握りながら近くにいたDEM隊員へと疾走する。

両腕に内蔵された銃口が火を吹きながら弾幕を張っていき、そして右手のメイスが隊員の脇腹を捉えた。

 

「ガッ!?」

 

骨が砕ける音とともに士道は、左手のメイスを背中に叩きつけそのまま蹴り飛ばすと、追撃の射撃を数発入れて次の敵へと向かう。

 

「機動性は奴の方が上だ!!距離を取って包囲する!!」

 

近くにいた隊員がそう言いながらレイザーカノンを放つが、その射撃を難なく躱し、サーベルを抜いて近距離戦を仕掛けてくる隊員に左手のメイスでそのサーベルを弾く。

そしてそのままメイスを捨てて、レクスネイルで胸部を貫き、追い打ちとばかりに“ゴリュ“と中の内臓にダメージを与え、息の音を止めにかかる。

 

「・・・ゴフッ!?」

 

返り血が腕や胸部にかかるが、士道は気にすることなく、そのままその死体を他の隊員に目掛けて蹴り飛ばした。

 

「───ひ・・・イヤァァァァァァ!?」

 

その死体と激突し、返り血を浴びた隊員は錯乱してバルバトスに目掛けてミサイルを発射するが、士道はそのミサイルをバク宙しながら迎撃し爆破させ、爆風に乗りながら一気に加速すると、右手の小型メイスで肩を殴りつけて隊員の肩を粉砕する。

そして背後から襲ってくる〈バンダースナッチ〉をテイルブレードで突き刺しながら、そのまま小型メイスで隊員の頭を殴りつけた。

悲鳴を上げるまでもなく死んだ隊員には目もくれず、士道はそのまま美九がいる天宮スクエアへとスラスターを吹かせる。

 

「行かせるかぁ!!」

 

隊員一人と〈バンダースナッチ〉二機が士道を追うが、士道はそれに目を向ける事なく、テイルブレードを射出して迎撃をする。

蛇のようにうねるテイルブレードは三機分のCRーユニットを破壊すると、そのまま〈バンダースナッチ〉を突き刺し、まとめて駐車場へと捨てた。

一瞬にして七人分の戦力を屠ったバルバトスにジェシカは慌てた様子で声を上げる。

 

「ふざけんじゃないわヨ!?出鱈目じゃなイ!!」

 

数の暴力で押し切れる。そうタカをくぐっていたジェシカはバルバトスとバエルによって次々と撃墜されていく仲間を見て叫ぶ。

そんなジェシカの前に砲撃が飛んできた。

 

「なニッ!?」

 

「おやおや、誰かと思ったらジェシカじゃねーですか。なんで日本になんていやがるんで?」

 

ジェシカはその砲撃を避けて視線を向けると、驚愕の声を上げる。

 

「タカミヤ・マナ・・・!?」

 

「あなた、一体なぜ────いえ、それよりも、今自分が何をしたのかわかっているノ!?」

 

「ん?辞表を叩きつけたのご存知じゃねーです?てっきり知っているのかと」

 

真那はそう言って右手のアギトを開き、そのままジェシカに目掛けて砲撃する。

 

「この場は、さっさと退いてくれやがるのが一番理想的なパターンなんですけれども、どうですかね?」

 

「・・・っ!ふざけないデ!あなたもわかるでしょウ!ウェストコット様の命令に背くことなんて────」

 

「まぁ、そーですよね。でも、」

 

そう言った瞬間、ジェシカの上から〈バンダースナッチ〉の残骸が落ちてくる。

 

「─────ッ!?」

 

ジェシカは上を見上げると、バルバトスが“生きた隊員“を盾にしながら此方へと突っ込んでくるのが見えた。

 

「・・・・ナッ!!」

 

驚愕に目を見開くジェシカに、バルバトスはその隊員をジェシカに向けて投げると、横に避けて躱すジェシカに蹴りを入れる。

 

「くハ・・・・ッ!?」

 

短い苦悶とともにジェシカは真下の車両群に突っ込み、テリトリーが解除され、気を失った。

 

「平気?」

 

「ええ。傷一つねーですよ」

 

士道の言葉に頷く真那に、士道は言った。

 

「じゃあ、俺はこのままアイツのところに行ってくるからあとお願い」

 

「ラジャーです!」

 

士道の言葉真那は頷いて、その場を後にする士道を見送った後、気を失っているジェシカに真那は言う。

 

「まぁ、私も一度も兄様に模擬戦で勝ててない時点で言いますけど、貴方が兄様に勝てるとは一ミリも思いませんけどね」

 

そう言って、残った隊員や〈バンダースナッチ〉を片付けるべく、真那も戦場へと向かった。




真那「殆ど残ってねーですけど?」

マクギリス「フッ・・・つい楽しくてな」

真那「・・・あそ」

ほぼ三日月とマクギリスでDEMが全滅した模様

撃墜数

三日月 十六人  マッキー 十七人 真那 五人


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第七話

投稿!!

耶俱矢達をボコる回。

なお、四糸乃以外かなり扱いが酷いです

アンタが退けよ

三日月・オーガス


DEMを蹴散らし、士道は美九がいるであろう天宮スクエアへと向かう。

道中、邪魔をする人間が殆どいなかったので、狂三の分身体が仕事をし終えた後なのだろう。 

後は耶俱矢達が邪魔をしてこないと一番良いのだが。

と、考えた所で士道に暴風が襲いかかる。

 

「・・・チッ」

 

士道は舌打ちをしながら、ステージ上から飛び上がった二人の少女を見る。

メイド服の上に拘束衣のような霊装を、背に隻翼を顕現させた双子の精霊が、士道の前に立ちふさがりながら、それぞれ巨大な槍とペンデュラムを構えている。如何に狂三の分身体とはいえど、天使を顕現させた精霊を拘束することは出来なかったらしい。

 

「また性懲りもなく来おったか!く、面妖な手を使いおって!姉上様に危害を加えようとする者は、たとえ誰であろうと容赦せぬ!煉獄に抱かれたくなくば疾く去ね!」

 

「警告。これが最後通牒です。今すぐ消えてください。これ以上刃向かうようであれば、士道さん、本気であなたを排除せねばなりません」

 

「お、お姉様には・・・指一本、触れさせません!」

 

耶俱矢、夕弦、四糸乃は空中に静止しながら士道に視線を浴びせてくる。冗談でも悪ふざけでもない。三人の視線には明確な敵意が込められていた。

それを見てか、顔を強張らせていた美九が再び顔に余裕を取り戻し始める。

 

「ふ、ふふ・・・そうですよぉ。私には今、可愛い可愛い精霊さんが三人も付いているんです・・・!負ける筈がありません!」

 

すると、会場内の分身体の狂三もまた一斉に笑う。

 

「きひひ、ひひ」  「ひひひひひ」

 

 「ああ、ああ」 「そうですか?」

 

    「士道さんは」  「簡単には倒れませんわよ」

 

そこら中から聞こえてくる狂三の声に、四糸乃や八舞姉妹も気味悪がってか、不快そうに顔を歪めた。

そして、士道も美九に言う。

 

「余裕ぶってると、後で痛い目みるよ」 

 

「─────ッ!!やりなさい!!」

 

士道の言葉を聞いて美九は怒りのまま叫び、耶俱矢達に指示を出す。

襲いかかってくる三人に、士道はレンチメイスを手に突貫した。

 

「はぁぁぁぁぁッ!!」

 

巨大な槍を手に突撃してくる耶俱矢に、士道はレンチメイスを前に突きだす。

激突する槍とメイスが火花を上げる。

 

「夕弦!!」

 

「!」

 

「応答。ていやー」

 

やる気のない掛け声とともにペンデュラムが飛んでくるが、士道はテイルブレードで対応する。

 

「なっ!?」

 

「戦慄。まさか─────」

 

テイルブレードによって絡め取られたペンデュラムを見て、二人は驚愕で目を見開く。

その一瞬を士道は見逃さなかった。

 

「ゲフッ!?」

 

士道は耶俱矢を蹴り飛ばして距離を取ると、そのままテイルブレードで絡め取った夕弦のペンデュラムを握り、さながらハンマー投げのように回転しながら夕弦を近くの貯水池に放り投げる。

回転によって平行感覚が乱された夕弦は水飛沫を上げながら貯水池の中へと叩きつけられ、沈んでいった。

 

「こんっのおおおおお!!」

 

士道に蹴り飛ばされた耶俱矢は体勢をすぐに整え、士道に突撃するが、槍が当たる直前で回避してそのまま耶俱矢を捕まえる。

そしてそのまま地面へと急加速し、コンクリートで出来た道にヒビを入れながら着地した。

 

「な、なにを─────」

 

その衝撃に若干ふらつく感覚に陥る耶俱矢だったが、そんな耶俱矢を無視してマンホールの蓋を開けると、そのまま耶俱矢をその中に放り投げて、蓋を閉める。

 

「ちょ─────ふざけんなぁぁぁぁぁ!?」

 

あんまりな扱いに耶俱矢は叫ぶが、士道はそれを無視して先程から襲ってこない四糸乃に目を付ける。

だが─────

 

「・・・ひっ!?」

 

四糸乃は襲ってくるどころか、士道が近づくたびに足を後ろに下げて、遠ざかろうとする。

 

「?」

 

士道は首を傾げるが、理由はすぐに分かった。

四糸乃の目の先─────レンチメイスに四糸乃が恐怖しているということに。

そう言えば四糸乃の前で、ASTの隊員をレンチメイスのチェーンソーで殺そうとしたっけと士道は思い出しながらも、さらに四糸乃に近づいていく。

 

「─────ッ!?」

 

そんな四糸乃は士道から逃げ出した。美九の言葉を振り払ってでも、レンチメイスの餌食になるのはゴメンだったらしい。

 

「────んじゃ」

 

後は美九だけと視線を向けた瞬間、腕にペンデュラムが絡みつく。

士道はそちらに目を向けると、夕弦が水を全身に滴らせながら士道を睨みつけていた。

おそらく耶俱矢が何処にもいない事に気づいて、問いただそうと捕まえたらしい。

 

「質問。耶俱矢は・・・どこですか」

 

そんな夕弦に士道はペンデュラムを自身の方へ引っ張ると、夕弦はそのまま士道の方へと跳んできた。

 

「ぐッ・・・・」

 

呻きを漏らす夕弦に、士道は夕弦が逃げられないようにホールドする。

そして─────

 

“グギリ“

 

「あ」

 

士道が素っ頓狂な声を上げると同時に、夕弦の腰から嫌な音が鳴る。

 

「〜~~~~~~~ッ!?」

 

その痛みのあまり、夕弦は声にならない声を上げるが、士道はやってしまったと言わんばかりに、ギックリ腰になった夕弦に言った

 

「ごめん。夕弦」

 

そして動けない夕弦を道端に放置して、士道は顔を引き攣らせた美九に視線を向けて口を開く。

 

「後はアンタだけだよ」

 




耶俱矢「汚水マンホールに放り込むってどう言う事よ!!」
  
夕弦「同意。ハグはしてもらえましたが、腰が痛いです」

四糸乃「・・・・・・!?」←レンチメイスのトラウマ


作者

耶俱矢はちゃんと風呂に入ってね

夕弦は良かったじゃん。三日月にハグ(物理)してもらえて

四糸乃は・・・ドンマイ


三人「「「良くないッ!!」」」


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第八話

投稿!!

ちょっと三日月が美九にとって悪役みたいになっちゃったけど、今後の展開に大きく関わってきます!


「後はアンタだけだよ」

 

士道はそう言って、レンチメイスを肩に担ぐ。

 

「ひッ!?────ガ、〈破軍歌姫〉!!」

 

美九はそう叫び、士道を操ろうとするが効かない。

 

「効くわけないだろ」

 

士道は美九にそうに言って、足を一歩、また一歩と歩みを進めていく。

それと同時に後ろへと下がる美九に、美九の後ろからバエルが降りたった。

 

「悪いが君を逃がす訳にはいかないものでね。観念してもらおうか」

 

「────ッ!?」

 

マクギリスの言葉に、美九は左右に逃げ場がないか首を振るが、真那と狂三が歩いてきて逃げ場を完全に失った。

そんな美九に士道が口を開く。

 

「んじゃ、さっさと皆を元に戻して。聞きたい話はその後に聞くから」

 

士道は美九を見下ろしながらそう言うと、美九は身体を震わしながら、興奮したように叫んだ。

 

「う・る・さぁぁぁいっ!黙ってください喋らないでくださぁいっ!わ、私をあれだけ辱めておいて、何を都合のいいことを!あなたの話なんて聞きたくありま────」

 

せん。と美九が言い終わる前に、士道は美九に接近して拳を握ってぶん殴ると、レンチメイスを開いて美九を挟み込む。

 

「都合がいい事を言ってるのはアンタだろ。俺達はアンタに構ってられるほど余裕なんてない。元に戻す気がないなら、ここで今すぐ殺せばいいだけだし」

 

そう言い終わるのと同時に、美九の肌に触れるギリギリの所で、チェーンソーが回転する。

 

「や、やれるものならやってみたらどうですぅ!!どうせできっこありませんから!!」

 

此処まで言っても、美九は首を縦に振らない。

そんな美九に士道は呆れたように息を吐くと、レンチメイスを握ったままバルバトスを解く。

 

「へ?」

 

「兄様!?」

 

唐突な士道の行動に、美九と真那はお互いに違った反応を見せるが、士道は気にすることなく、ポケットに突っ込んだ写真を美九に見せながら言った。

 

「じゃあ、先にこっちから聞く。アンタの部屋でこの写真見つけたんだけど、これはなに。なんで俺とアンタが映ってるか聞きたいんだけど」

 

「─────な」

 

美九はその写真を見て、目を見開けさせる。

そして顔に怒りの表情を浮かばせて、士道に言った。

 

「今更・・・今更来ても遅いんですよ!!“三日月・オーガス“!!」

 

「!」

 

「・・・なに?」

 

美九のその言葉に反応したのは士道とマクギリスだった。

そう。なぜなら、士道は自分の事を三日月・オーガスと言う人物はユージンやマクギリスを除けば自分しか知らない筈だ。なら、なぜ誘宵美九がその名前を知っているのか。

その理由はすぐに知れた。

 

「五年前の大火災が起こる前、公園のベンチで野垂れていた私に、貴方は助けてくれたじゃないですか!!それであの時、お礼に歌った歌を貴方は褒めてくれた!!あの時は嬉しかったんですよ!!あの時までは!!」

 

士道に八つ当たり気味に叫ぶ美九は、更に言葉を続ける。

 

「それからあの大火災が起こって貴方は勝手にいなくなって、けれど私は諦めなかったんです!もう一度、貴方に歌を聞いて貰おうって!けど、私は全部失ったんですよ。一度。心因性の失声症で、醜い男共のせいで─────声を・・・命よりも大事な、声を・・・・ッ!」

 

感情を吐露するように独白し、美九は今にも泣き出しそうな顔を作りながら言う。

 

「何度も自殺を考えて、でも、そこに・・・『神様』が現れて、今のこの『声』をくれたんですよ!」

 

その言葉と共に、美九はキッと士道を睨み付ける。

 

「なのに今更・・・今更のうのうと出てきた所で、貴方を許してたまるかぁぁぁ!!」

 

美九の尋常ならざる『声』が士道達を襲う。

だが、士道はそれを力で捻じ伏せた。

そして、怒りに飲まれている美九に士道は言った。

 

「別に許して欲しいだなんて思ってない。それに、アンタだけが何もかも失ってる訳じゃないんだよ」

 

士道はそう言いながら言葉を続ける。

 

「俺だって、自分の命よりも大事なオルガを死なせてる。あの時、俺も一緒にいればオルガを死なせなかった」

 

かつて自分が動けなかったせいで、残った唯一の後悔。

 

「けど、俺はアンタとは違う。俺はアンタみたいに諦めないし、止まるつもりなんてない。一度裏切られたからって嘘をつかれたからって言って、足を止めるような事を俺はしない」

 

けれど、士道は足を止めない。オルガの命令を約束も、今も自分の中に残っているから。たとえ死んだとしても、決して諦めたりしない。

 

「昔、俺はアンタになんて言ったのかなんて覚えてない。けど、アンタは覚えてるんだろ。その言葉」

 

「──────────」

 

美九は士道のその言葉に口を紡ぐ。

そして、思い出すあの時の言葉─────

 

『結構上手いじゃん。また歌ってもらってもいい?』

 

ぶっきらぼうに返される言葉だったけれど、あの時、とても嬉しかった言葉。

 

「なら、もう一度足を進めろ。アンタなら出来るだろ」

 

「──────────」

 

士道はそう言って、レンチメイスを美九から退けると、真那達に言った。

 

「十香を助けにいくよ」

 

「ちょ!?えっ!?耶俱矢さん達はどうするんです!?」

 

「言いたいことは言ったし、耶俱矢達は後からでもいいでしょ。もし、それでも元に戻さないつもりなら今度は殺るだけだよ」

 

そう言って、士道はバルバトスを使って飛びたっていく。

それに追うように真那も走って言った。

マクギリスや狂三は肩をすくませると、彼等の後ろを追って空へとかける。

 

「・・・なんですか・・・えらそうに・・・」

 

一人残された美九は誰もいなくなったステージの上でそう呟き、バルバトスへ視線を向けるが、すぐにそらすと立ち上がった。




美九が三日月を覚えてなかった理由

顔は似てるけど、名前が違った。

三日月はそもそも覚えてない。



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第九話

投稿!!

今回は三日月は出ません!代わりに十香メインになりますが

三日月よぉ、あんまり菓子で腹いっぱいにするんじゃねぇぞ。
今、うんめぇ飯、用意するからよぉ。
誰だ?ただのじいさんって。

マクマード・バリストン


「────では、次の質問です。〈ラタトスク〉という言葉に聞き覚えは?」

 

無機質な部屋の中。十香の隣に腰掛けたエレンが、膝に載せた書類束を繰りながら淡々と声を発してくる。だが十香は、フンと鼻を鳴らすと目を伏せて顔を逸した。

 

「ふん!誰が答えるものか!」

 

「そうですか。では、次です。五河士道がなぜ天使を扱えるのかご存じですか?」

 

エレンが意に介さず、質問を続けてくる。先ほどからずっとこの調子だ。

 

「・・・貴様。エレンとか言ったな。修学旅行のときのカメラマンだ」 

 

「覚えていてくださいましたか。光栄です」

 

「一体なぜカメラマンがこんなことをする。カメラマンだけでは食べていけないのか?」

 

「・・・いえ、カメラマンに扮していただけで、別にあれが本業ではありませんので」

 

「ぬ・・・?カメラマンではないのか?」

 

「いえ、ですから────」

 

と、エレンが頬をかきながら言いかけたところで、部屋の上部に設えられていたスピーカーのようなものから、何やら声が聞こえてきた。

 

『───おやめください、危険です!万が一何かあったら───』

 

それを聞いて、エレンが怪訝そうに眉をひそめる。

 

「どうかしましたか」

 

『ッ、は・・・!それが、隔離室の中に入りたいと仰っていまして・・・!』

 

「ここに?一体誰がですか」

 

エレンが問うと、スピーカーの向こうの声が、一瞬の逡巡ののち、言葉を続けてきた。

 

『み、ミスター・ウェストコットです・・・』

 

「・・・アイクが?」

 

エレンの声に応ずるように、スピーカーから、男の声が聞こえてくる。

 

『────ああ、聞こえるかな、エレン。助けてくれないか。皆が私の言うことを聞いてくれないんだ。自分の人望のなさに落胆するよ』

 

「皆あなたの身を案じているんです。あまり無茶を言わないであげてください」

 

『なるほど。そういう考え方もあるね。しかし難しいところだな。忠実に私の言うことを聞く部下と、私の身を案じてくれる部下、果たしてどちらが優秀なのだろうか』

 

「少なくとも、私は後者に属しますが」

 

スピーカー越しの声に、エレンは今まで見せたことのないようなやれやれといった顔でため息を吐いた。

 

「・・・構いません。入れてあげてください」

 

『しかし・・・!よろしいのですか?』

 

「ええ。仮に精霊が暴れたとしても、私がいれば問題ありません」

 

『わ、わかりました。くれぐれもご注意を・・・!』

 

それから数秒後、先刻と同じように壁に亀裂が入り、その箇所が扉のように開く。

─────そしてそこから、一人の男が入ってくる。

 

「・・・・っ」

 

その男が部屋に入ってきた瞬間、十香は途方もない気分の悪さに襲われた。

別にエレンのようにテリトリーを展開しているわけでない。それなのになぜかその男の視界に捉えられた瞬間、まるで擬音がぐんと下がるような錯覚さえ覚えたのである。

 

「な、なんだ、貴様は・・・!」

 

十香が戦慄した調子で男を睨み付けると、男は十香の思考を見透かしてでもいるかのように唇の端を小さく上げた。

 

「お目にかかれて光栄だ、〈プリンセス〉。いや・・・ヤトガミトオカだったかな」

 

言いながら、男はゆっくりと十香のもとに歩いてくる。

 

「DEMインダストリーのアイザック・ウェストコットだ。以後お見知りおきを」

 

男────ウェストコットが、友人と話すかのような気安さで言ってくる。しかし十香は、精一杯の敵意を視線に乗せて、ウェストコットの顔を睨み返した。

 

「・・・嫌われてしまったかな?」

 

「好かれようと思っていたのなら、もう少し手段を選ぶべきだったかと」

 

エレンが言うと、ウェストコットは「仰るとおりだ」と小さく肩をすくめた。

 

「貴様が首謀者かッ!一体──一体何が目的だ・・・!」

 

するとウェストコットは、十香に目を向け直し、静かに口を開いた。

 

「目的・・・か。まあ、それ自体は至極シンプルな話だ。君の、精霊の力が欲しいのさ」

 

唇の端を歪め、続ける。

 

「────世界の理を、ひっくり返すためにね」

 

「何だと・・・?」

 

ウェストコットの言っている意味がわからず、十香は眉をひそめた。

 

「貴様、何か勘違いをしているのではないか?私にはそんな力などない!」

 

「ああ、そうだろうね。“今の君には“」

 

「今の・・・私?」

 

訝しげに言う十香に、ウェストコットは芝居かかった調子で両手を広げてきた。

 

「君は、かつて厄祭戦という大戦があった事を知っているかな。惑星間規模で起こったという大戦。そして、五河士道が扱う厄祭戦を終わらせたガンダムと呼ばれる七十二体の悪魔・・・それほどの力が私は必要なのだよ」

 

そう言うウェストコットに、十香は背筋を凍らせる。

この男は─────一体何を言っている?

訳のわからない感覚に十香は気味の悪さを感じながらも、ウェストコットは話を続ける。

 

「まあでも、本当に厄祭戦を終わらせられる程の力を持っているのか、私も知りたくてね」

 

ウェストコットは手を下ろして、十香に目を向ける。

 

「だからまず君には、眠りについてもらわねばならない。そう───隣界の海を漂っているときのようにね。いや・・・正しく言うのなら、隣界での君に覚醒してもらわねばならないといった方がいいかな」

 

「何を・・・言って・・・」

 

「君は」

 

ウェストコットがすっと目を細める。

 

「一体どうすれば、絶望してくれるのかな?」

 

「な、に・・・・?」

 

「世界を憎み、人を恨み、最強の天使でさえもその心の間隙を埋められない。それ以外の力に縋らねばならない。そんな状態に、どうすればなってくれる?ASTの記録を見たところ、君は以前、理想に近い状態になっているようだが・・・一体何があったのかな?」

 

ウェストコットは十香にそう言いながら、エレンに視線を向ける。

 

「こちらの世界で長らく暮らしているという話だが、友達や恋人はいるのかい?目の前で親しい人を殺されたなら、どう思うかな?」

 

「・・・・ッ」

 

ウェストコットの言葉に、十香は思わず頬をぴくりと動かした。一瞬───士道が折紙に殺されかけたときのことを思い出してしまったのである。

そんな十香の反応を見てか、ウェストコットが悠然とうなずいた。

 

「さて・・・もうそろそろ彼も来そうだし、こちらも歓迎の準備でもしようかな。エレン、“グレイズ・アイン“をいつでも出せるように準備をしてくれ」

 

「了解しました」

 

ウェストコットが踵を返して部屋から出ていこうとする。

 

「待て!貴様、シドーに何をするつもりだ!」

 

十香はたまらずその背に向かって叫び、椅子から立ちあがろうとした。手を拘束していた錠が微かにみしっと音を立てる。

が───すぐに目に見えない圧力が襲い、十香は身体を椅子に押し付けられた。

 

「あ、が・・・・!」

 

「大人しくしてください」

 

エレンの冷たい声が、鼓膜を揺らす。

 

「シ─────ドー・・・・・」

 

掠れた声で士道の名を呼び────十香の意識は、闇へと落ちていった。

そんな十香に対し、外では戦場の号砲が鳴り響いた。




ウェストコットの目的

精霊と三日月を殺し合わせて、どちらが強力な力を手に入れられるかの確認。別に精霊が死んだとしても、それはそれで構わない

因みに強さの順番でいけば

リミ解ガンダム=モビルアーマー←マクギリス、三日月←通常のガンダムフレーム機=魔王←エレン←精霊←ASTやDEMの順番

精霊組だと一部を除いてモビルアーマーに勝てない。
致命的なダメージを与えられるけど、その場合、モビルアーマーも本気で殺しにかかってくる

何なら周りも死ぬ


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第十話 

投稿!!

三日月の苦手なもの。
それは超遠距離での狙撃、及び数の暴力

数の暴力は三日月は苦手ってだけであって別に、乱戦になれば無敵に近い強さを誇りますが

見せてやろう!ラスタル。純粋な力のみが成立させる真実を───世界を!!

キマヴィダがいなけりゃ、アリアンロッドを一人で葬りかけたマクギリス


時計の針が頂点を越え、下りに至ってからおよそ二時間。

天宮市東方に位置する鏡山市のオフィス街の一角のDEMの高層ビルに士道達は突撃していた。

 

「ふっ!!」

 

大型メイスが士道の掛け声と共に〈バンダースナッチ〉目掛けて振り下ろされる。

ゴシャア!!とフレームと装甲がへしゃげる音を耳にしながら士道は近くにいたDEM隊員にテイルブレードを突き刺し、壁へと叩きつける。

 

「────」

 

士道は大きく息を吐きながら、空を覆いつくす〈バンダースナッチ〉とDEM隊員を見て呟いた。

 

「何時まで続くんだ・・・これ」

 

かれこれ二時間。士道達はぶっ続けで戦闘を行っている。

これでもかなりの数を減らしてきたが、それでも空に浮かぶ隊員と〈バンダースナッチ〉の数は少なくともまだ五百はいるだろう。

一人一人が大した事はなくとも、これだけの数を相手にするのはかなりの消耗戦になる。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・アアアアッ!!」

 

真那は荒い呼吸を繰り返し、大粒の汗を流しながら、〈ヴァナルガンド〉の砲身で魔力砲を照射しながら〈バンダースナッチ〉を纏めて薙ぎ払う。

だが〈バンダースナッチ〉を纏めて薙ぎ払った直後、真那は限界が来たのだろう。〈ヴァナルガンド〉の砲塔を杖代わりに身体を支えながらも、ガチャリと装備の音をたてながら、真那は地面に膝をついた。

そんな真那に〈バンダースナッチ〉はレイザーカノンの銃口を真那に向けて引き金を引く直前に───

 

「甘いな」

 

バエル・ソードがレイザーカノンを二つに切断し、そしてそのまま胴体を切り裂く。

かれこれマクギリスも士道達と変わらない時間の戦闘をこなしているが、その勢いは劣るどころか増す勢いで数を減らしていく。

 

「大丈夫かね?」

 

「だい・・・じょう・・ぶ、です!!」

 

真那はそう言いながら立ち上がるが、その足どりは鈍い。

そんな真那を見て、士道は言った。

 

「真那はしばらく休憩。そんな状態で戦っても邪魔」

 

「でも・・・!!」

 

それでも食い下がる真那に士道は言った。

 

「十香が心配なのは分かるけど、それで真那が怪我したらそれどころじゃなくなる。後は俺とチョコレートでなんとかするから。狂三は真那を見張っといて」

 

「・・・わかりましたわ」

 

狂三は肩をすくめながら真那の隣に降り立ち、近くにいた

〈バンダースナッチ〉を手にした銃で撃ち抜く。

 

「まあ、そう言うわけですので。しばらくは大人しくしてくださいね。真那さん」

 

「・・・・わかりました」

 

渋々引き下がった真那を横目に、士道は隣にいるマクギリスに言った。

 

「チョコの人」

 

「なにかね?」

 

そう答えるマクギリスに士道は言った。

 

「このままじゃ、拉致があかない。今から強行突破するからサポート頼んでいい?」

 

「・・・フッ。良いだろう」

 

そう言ってマクギリスはバエル・ソードを握る手の力を強くする。

そして士道は、壁にもたれている真那とその真那を見張っている狂三に言った。

 

「俺は先に強行突破で中に向かうから、真那達はチョコレートと一緒に来て」

 

「正気ですの?士道さん。流石にこの数の中で強行突破は難しいと思うのですけれど?」

 

「そうです!いくら兄様でもこの数は────!」

 

「大丈夫。耶俱矢達が来た」

 

遠目だが、美九達が此方へと向かってくるのを確認し、そう言う二人に言った。

そして士道はマクギリスに合図をする。

 

「んじゃ、チョコの人。頼んだよ」

 

「ああ。まかせたまえ」

 

マクギリスはバエル・ソードを空に掲げ、その場にいる隊員及び精霊達に向けて言った。

 

「見せてやろう。DEM及び精霊の諸君。純粋な力のみが成立させる真実を────世界を!!」

 

そう叫ぶと同時に、バエルとバルバトスは敵軍のど真ん中へと向けて疾走した。




ガエリオ「俺を見ろぉぉ!!」

キマリスもって戦場へ行こうとするガリガリ

作者「お前が行ったら強行突破出来なくなるだろうが!!」


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第十一話 In a Fury

投稿!!

前半はバエル無双、後半は真那とジェシカの遭遇

最近は赤ヘビアにはまってます


コイツはガンダムフレームには見えねえしなぁ・・・

∀を発掘した雪之丞


士道とマクギリスは〈バンダースナッチ〉及び、魔術師達の中を二体の悪魔が疾走する。

 

「くそっ!!なんなんだよこりゃ!!」

 

叫ぶ隊員はビル群に疾走する士道達に、レイザーカノンやマイクロミサイルを発射するが、その間をすり抜けるように士道は目的である十香がいる第一社へと向かう。

そして士道は勢いを落とさずレクスネイルでその隊員の胸元を貫くと、そのままレイザーカノンを撃ってくる隊員の攻撃を防いだ。

 

「味方を盾に!?クソっ!!」

 

驚愕する隊員はレイザーカノンを捨て、近接戦闘を仕掛けてくるが、士道はそれに対し、盾にした隊員を向かってくる隊員に蹴り飛ばし、そのまま大型メイスでビルの壁へと押しつぶした。

 

「ギャッ!?」

 

血が辺りに飛び散るが、士道はそれを気にすることなく、目的であるビルへと向かった。

 

「行かせるか!!」

 

そう叫び、他の隊員は〈バンダースナッチ〉と共にレイザーカノンを撃つが、その隊員にマクギリスはバエル・ソードでその隊員を切り裂いた。

 

「私を忘れては困るな」

 

マクギリスはそう言って、剣を心臓へと突き刺す。

 

「私は今、機嫌が良いのでね。少々つき合って貰おうか」

 

そう言って弾幕の中を縫うように一気に加速すると、そのまま〈バンダースナッチ〉の腕を切り落とす。

そして近づいてきた隊員の攻撃をしゃがんで躱すのと同時に、その頭へと剣を突き刺し、次の相手を見定める。

 

「数だけではバエルには勝てんよ」

 

「うわッ!?」

 

そう言って、ビルの壁面が可変した所から出てきた魔術師をマクギリスは不意打ち気味の攻撃で葬りさり、バルバトスの方へと目を向けると、そのまま一気に加速する。

 

「なっ!?」

 

そして前方にいた隊員を一気に追い抜くと、そのままバエル・ソードで斬り伏せた。

マクギリスはそのまま斬り伏せた隊員を蹴り飛ばした後、そのまま一気に空へと疾走し、二本の剣で〈バンダースナッチ〉を地面へと突き刺した。

そんなマクギリスを左右から〈バンダースナッチ〉が取り囲み、バエルを押さえつけるが、そんな〈バンダースナッチ〉の首元を素手で引きちぎると、スラスターに装備されたレールガンが火を吹き、二機の〈バンダースナッチ〉を破壊する。

 

「見よ!これがバエルの力だ!!」

 

マクギリスはそう言ってバエル・ソードをクロスさせると、そのまま魔術師及び〈バンダースナッチ〉に纏めて突進し、幾重もの層を作りながらスラスターの推力任せで第一社のビルへと突貫し、大穴を作り上げた。

マクギリスが作り上げた大穴に士道は一気に突き進んでいく。

 

「ありがとね。チョコの人」

 

「ああ。私も存分に楽しませてもらったよ」

 

お互い短く言葉を交わし、マクギリスは士道を見送りながら、魔術師達に視線を向ける。

 

「さて・・・私もまだまだ楽しませてもらおうか」

 

その言葉と共に、バエルは両手の剣を構えながら魔術師達の元へと飛翔した。

 

◇◇◇◇◇

 

「本当に強行突破していきましたわね」

 

「・・・もう何も驚きません。ええ・・・ほんと・・・」

 

マクギリスと士道の二人だけで第一社まで強行突破をした二人を見て、狂三は目を開いて驚いた表情をし、真那は遠い目をつくる。

暴れまわるマクギリスを遠目に真那は立ち上がった。

 

「あら?もうよろしいので?」

 

そう言う狂三に真那は言う。

 

「・・・ええ、それよりも────」

 

真那は第一社屋の正面入口から、視界に目映い光が満ち───凄まじい大爆発が巻き起こった。

 

「あら?」

 

狂三は突如起こった大爆発に、目を丸くする。

濃密な煙の中からは、テリトリーで爆発の衝撃を抑えた真那の姿が飛び出してくる。

だが、その顔に浮かぶのは、緊張と微かな怒りだった。

 

「・・・あなた、まさか」

 

真那が静かに呟く。すると辺りに充満していた煙を裂くようにして、大穴の開いた研究所の内部から、巨大な金属の塊が姿を現した。

 

「また凄いものが出てきましたわね」

 

そう言う狂三に対し、真那はそれを背負うようにして直中に収められている一人の女を見て忌々しげに顔を歪めた。

 

「イメチェンですか?三時間前に見た時から随分とまぁ印象が変わったじゃねーですか。小憎たらしい顔が台無しですよ────“ジェシカ“」

 

言って、“〈スカーレット・リコリス〉“の登場者に目を向ける。

二十代後半くらいの、赤毛の女。

だが、その顔の全容を見取ることは困難だった。単純な理由で、彼女は今手足、胸部、額や顔に至るまで、全身の各所に包帯を巻いていたのである。

 

「あはハ!マナ。マナ。タカミヤ・マナァァァ?どウ?どォウ?私の〈リコリス〉ハ!これで私は負けないワ。あなたにハ。あなたなんかにハ・・・!」

 

しかし何処か調子がおかしい様子でカラカラと笑うジェシカに、狂三は真那に言う。

 

「知り合いですの?」

 

「昔の同僚です。・・・馬鹿なことを」

 

真那はそう言うと、一歩足を前に踏み出した。

 

「───ジェシカ!今すぐ〈リコリス〉を停止させやがりなさい!わかっていやがるでしょう!それはあなたに扱えるような代物じゃねーです!」

 

「あはははははハ!何を言っているノ?今はとてもいい気分ヨ。だって────」

 

ジェシカは笑みを浮かべ、砲門を真那に向ける。

 

「ようやく・・・あなたを、殺せるンですものォ」

 

そう言って、背後のウェポンコンテナが開き、夥しい数のミサイル群が真那達を襲った。




真那「結構ヤバい装備なんですよね、リコリスは」

作者「ガンダム世界もヤバいもんはあるよ?月○蝶とか、ツインサテラとか、ツインバスターとか、核とか、サイコジャートとか」

真那「・・・聞かなかった事にします」


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第十ニ話

投稿!!

真那が大変人気ものに・・・

ま、まさか・・・まさか!そうさ・・・これはボクの機体だ!

初代ガンダムに搭乗したリボンズ


「侵入者!?」

 

「おい貴様、何者だ!一体どこから────」

 

士道は侵入した廊下でバルバトスを解除した矢先、見たことがないデザインのワイヤリングスーツを着た男女二人と遭遇した。

屋内であるからか、手にしていたのはハンドガンと、小振りなレイザーエッジのみだったが────紛れもなく、魔術師である。

 

「邪魔」

 

士道はそう言って、その男女の両肩を制服の内側のポケットに隠してあったハンドガンで撃ち抜く。

 

「・・・・・っ!?」

 

「うっ・・・!?」

 

そして一気に距離を詰めると、二人の顎先目掛けて蹴りを入れこむ。

 

「「ガッ!?」」

 

顎を蹴られ、頭を揺さぶられた二人は気を失い、そのまま廊下へと倒れ伏した。

 

「そう大したことないな」

 

士道はそう呟いて、レイザーエッジとハンドガンの弾を奪い取ってからポケットの中へとしまい込む。

 

「・・・十香は何処にいる?」

 

宛もないない中、士道は首を左右に廊下を見回すと、周りからどんどんと魔術師達が集まってくる中、士道は舌打ちをしながらハンドガンを構えたその時だった。

 

「〈破軍歌姫〉────【独奏】!」

 

その言葉と共に、廊下に声が響き渡る。

次の瞬間、美九の歌を聴いた魔術師たちが皆一斉に武装を解除し、壁際に綺麗に整列する。

 

「・・・ああ、アンタか」

 

士道はそう言って銃を下ろすと、美九は不機嫌そうにフンと視線を逸らした。

 

「気軽に呼ばないでもらえますぅ?あなたののどから発された声で舌で発音された音で呼ばれると、それだけで苛つくんですよぉ」

 

「んじゃ、ミッチー」

 

「ミッ!?」

 

士道の言葉に美九は、顔を引き攣らせる。

そんな美九を他所に士道は窓の外を見やると、美九をこの階層まで運んできたのだろう、天使を顕現させた四糸乃と耶俱矢、夕弦の姿があった。

 

「お姉様・・・私たちはどうしましょうか」

 

巨大なウサギの人形の背にしがみついた四糸乃がそう言うと、美九が士道に向けていた引き攣った顔を一瞬のうちに微笑に変えて四糸乃に向いた。

 

「んん、そうですねぇ。四糸乃ちゃんや耶俱矢さん、夕弦さんたちの天使はビルの中じゃ窮屈そうですしー・・・じゃあ、邪魔が入らないよう外の魔術師さんたちをやっつけておいてください」

 

美九が指を一本立てながらパチリとウィンクをする。

 

「承った!我らに任せておくがよいぞ。この建物から一直線に、ビロードの絨毯を敷いておくことを約束しよう!」

 

「了解。全てはお姉様の望みのままに」

 

そう言う耶俱矢達に、士道は美九を見て言う。

 

「まだ戻してなかったの?」

 

そう言う士道に、美九が不快そうに顔を歪める。

 

「別にぃ?貴方の言う事を聞く必要なんてありませんしぃ。ここに来たのは、もう一人の精霊さんを私のコレクションに加えようと思ったからですしー」

 

「・・・一回死んでみる?」

 

十香をコレクションにする発言に、士道はカチャリと銃の音を鳴らしながらそう言うが、美九は気にする事なく士道を一瞥してから、ツカツカと廊下を歩いていった。

 

◇◇◇◇◇

 

真那の視界の中を、夥しい数のマイクロミサイルが埋め尽くす。

無論、こんなにも人間が密集した空域でそんな弾幕を張れば、被害を受けるのは対象のみではない。辺りを飛び回っていたDEMの魔術師や〈バンダースナッチ〉が被弾し、地上へと堕ちていった。

 

「・・・なりふり構わねーでやりやがりましたね!」

 

「はははははハ!無駄よォ!」

 

真那の叫びにも構う様子を見せず、巨大な赤い機体を背に負ったジェシカが甲高い哄笑を上げる。

 

「どうやら、まともな判断力さえ残ってねーようですね」

 

真那はスラスターを小刻みに駆動させて空をジグザグに飛行しながら、忌々しげに眉を歪めた。

 

「行きなさい。わたくしたち!」

 

狂三はジェシカと周りの魔術師を自身の分身体で押さえつけるが、ジェシカの〈スカーレット・リコリス〉による弾幕によって撃ち落とされる。

 

「・・・はぁ。止まる気配がありませんわね」

 

「のんきに言っている場合ですか!!」

 

叫ぶ真那は、〈ヴァナルガンド〉の砲塔をジェシカに向けて魔力砲を発射する。

 

「マァァァァァァァナァァァァァァ────ッ!!」

 

「しつけーですね!」

 

巨大な二門の魔力砲が発射され、それを躱しながら真那は舌打ちを返す。────と

 

「いっ!?」

 

真那は一瞬感じた冷気の本流に、すぐさまその場を離脱する。

そして下方に視線をやると、巨大なウサギの人形にしがみついた、メイド服の少女の姿があった。

 

「四糸乃さん・・・!?」

 

「お姉様の・・・命令です。魔術師さんは、みんな・・・やっつけます!」

 

『おーし、その意気だよ四ー糸乃!うしゃー!あの子も凍らせちゃおー!』

 

「うん・・・!」

 

そんな掛け声と同時に氷柱を生成し、真那に向かって放ってくる。

 

「ちょ・・・・!?」

 

真那は慌てて身を捻って躱すと、今度はそれを遮るように、上方から凄まじい風圧が襲い来る。

 

「今度はなんです・・・!?」

 

上方を見上げると、耶俱矢と夕弦が巨大な槍とペンデュラムを握った瓜二つの少女たちが真那に視線を送っていた。

 

「耶俱矢さんに夕弦さんは・・・そもそも大丈夫です?耶俱矢さんはちゃんと熱湯消毒しました?夕弦さんはまだ寝てないと・・・」

 

ついさっきまで士道に散々な目にあった二人はお互いに口々に呟く。

 

「したわよ!!おかげで臭いが取れるまで皆に引かれたわ!!」

 

「回答。まだ、腰が痛いです」

 

「・・・ですよねー」

 

「マアァァァァァナァァァァァァァ────!!」

 

そう言う真那に、後方からジェシカが精霊や魔術師達を無視して、魔力砲を放ってくる。

混沌と化した戦場に、真那の絶叫が響いた。

 

「あああああ!もう!!しつけええええええ!!」




真那「兄様以外ノーセンキューです!」

ジェシカ「マァァァァァナァァァァ───!!」

リボンズ「そうさ!これはボクの機体だ!」

作者「リボンズさん、それをアムロに返しなさい!!」


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第十三話

投稿!!
そんでやっとアイン君が出せる!


本気でいくぜ!!ヒイロ!!

やかましい死神だ・・・。

貧乏神と疫病神


扉を大型メイスで吹き飛ばして、扉を開ける。

士道は美九と一緒に部屋の中へと足を踏み入れた。

 

「・・・・・」

 

大型メイスを片付けて、ハンドガンの銃口を先頭に入れ、注意を払って部屋の中に足を踏み入れた。

隔壁の内部は、〈フラクシナス〉の隔離エリアによく似た構造になっている。広く仄暗い研究区画の中に、強化ガラスで囲われた空間が設えられていた。

 

「・・・・!」

 

士道は目を見開き、銃口を上へとあげる。その強化ガラスの先に、十香の姿があったのである。

眠っているのだろうか、椅子に手足を拘束されながら、顔をうつむかせていた。

 

「十香!」

 

士道は短く声を上げる。だが、此方の声は聞こえていないようだった。

士道は大型メイスを取り出し、強化ガラスに向けて叩きつける。ガシャアアン!!と甲高い音を立てながらガラスの破片が地面に落ちていった。

そして十香を助けようと、ガラス片を踏みつけたその時。

誰もいないと思っていた研究区画の中に、男が一人、士道たちの方に背を向けて椅子に腰掛けていたのを視界に入れたからだ。

 

「誰だ?アンタ」

 

士道は油断することなく、ハンドガンの銃口を男へと向ける。すぐに撃っても良かったのだが、この男へからは気味が悪い雰囲気がする。

直感で男を理解する士道に対し、美九もその男の存在に気づいたのか、警戒するように〈破軍歌姫〉の銀筒を構えた。

 

「──やあ、待っていたよ。〈プリンセス〉の友人・・・でいいのかな?」

 

男が静かな声を響かせ、椅子から立上がる。そして、ゆっくりとした動作で士道たちの方に振り向いてきた。

 

「お初にお目にかかるね。DEMインダストリーのアイザック・ウェストコットだ」

 

言って、その双眸を細めてくる。

その顔を、その名を聞いて、士道は銃を構える。

 

DEMインダストリー業務執行取締役、アイザック・ウェストコット。テレビや新聞、ネットニュースではちょっとした有名人であり、あまりテレビを見ない士道でもその名は聞いたことがあった。

 

「よく来てくれたね。〈ディーヴァ〉に────」

 

と。ウェストコットが美九に視線をやり、次いで士道に目を向けた瞬間、言葉を止めた。

そして一瞬呆けたような顔を作ったのち、訝しげに眉をひそめてくる。

 

「君は・・・何者だ?まさか・・・いや、そんなはずは・・・」

 

ウェストコットが何やら思案するように、口元に手を当てる。そして、士道に言った。

 

「君の名前を教えてくれないかね?」

 

「あ?」

 

ウェストコットのその言葉に、士道は眉根を寄せながらも、銃を向けたまま言葉を返した。

 

「五河士道だけど」

 

瞬間、ウェストコットは目を大きく見開いた。

 

「イツカ────シドウ。君が」

 

やがて、くつくつと喉を鳴らし始める。

 

「・・・くく、精霊の力を扱うことができる少年・・・話に聞いたときはまさかと思ったが、なるほど、そういうことか。くく、はは、ははははははは!」

 

「訳分かんないことをゴチャゴチャと・・・ッ!」

 

そう言って引き金に指をかける士道に構うことなく身を捩って哄笑を響かせる。

 

「滑稽じゃないか。結局───全ては“あの女“の手のひらの上だったというわけだ」

 

「・・・あの女?」

 

ウェストコットの言葉に士道は眉を潜めていると、ウェストコットは士道に言った。

 

「ああ───そうそう、一つ言い忘れていたが。イツカシドウ」

 

ウェストコットは悠然とした笑みを浮かべたまま小さく唇を開く。

 

「────そこに立っていると、危ないよ」

 

「────ッ!!」

 

士道はすぐさま隣にいた美九を蹴り飛ばし、大型メイスを取り出そうとした直前に、士道が目にしたのは、巨大なバトルアックスの肉厚な刃と、一つ目の赤い目だった。

 




耶俱矢「何か面白い事はないか?そこの男」

トロワ「俺に言っているのか?」

夕弦「首肯。何かありませんか」

トロワ「あるにはある」

耶俱矢「ほう?ならば見せてみろ!」

トロワ「了解した。大喝采を聞かせてやる」自爆スイッチ ポチッ

耶俱矢、夕弦「へ?」────To Be continved


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第十四話 魔王と厄祭の天使

投稿!!

ここで出る反転十香!!

そんで、三日月が一度死んだ事によって“アレが“出てこようとしています

モビルアーマー。厄祭戦時に当時の人口の約四分の一を殺戮した無人兵器だ

マクギリス・ファリド




ぱしゃりと、赤い液体が近くにいた十香にかかる。

椅子に座っていた十香は、微睡みを払うように頭を軽く振ってから顔を上げた。

 

「シ・・・ドー・・・?」

 

十香の目前に映った光景は右肩から先が千切れ、致死量の血を流しながら黒い人型に頭を掴まれている士道の姿があった。

 

「ぁ────」

 

十香は呆然と、目の前で起こった光景を眺めていた。

自分を助けに来てくれた士道が、夥しい血の跡を残して、動かなくなってしまっている。

 

「ぁ、ぁ、ぁ・・・・」

 

十香は、視界が真っ暗に塗り潰されるかのような感覚に襲われた。

この感覚は、以前にも一度だけ経験したことがあった。

今からおよそ五ヶ月前。十香が士道と初めてデートをした日。あの日、士道が十香を庇って、折紙の放った凶弾に倒れたときの、感情から色が消えていく、あの、感覚。

 

「シドー・・・シドー・・・シドー・・・・!」

 

十香はヨロヨロと士道の名を呼びながらグレイズアインに近づいていく。が、グレイズアインはそんな十香を装甲を纏った脚部で十香を蹴飛ばした。

そしてそんな十香に、ウェストコットが十香に目を向けた。

 

「さあ、精霊。〈プリンセス〉。ヤトガミトオカ。ようやく役者が揃った。────これから君の大切なイツカシドウを殺そうと思う」

 

「な────!」

 

「止めるならご自由に。私はそれを邪魔しない。君の持ちうる全てを使って、グレイズアインを止めてみたまえ。霊装を、天使を───そしてそれでも足りぬのなら、その先にすら手を伸ばして」

 

「何を・・・言っている・・・」

 

「じきにわかるさ。────アイン」

 

ウェストコットの言葉と同時に、グレイズ・アインのパイルバンカーが士道の頭部に狙いを定めた。

 

『────────ッ!』

 

瞬間、部屋の隅まで蹴り飛ばされていた美九が美しい声を発したが、その声はやってきたエレンのテリトリーによって防がれる。

 

「無駄ですよ、〈ディーヴァ〉。その程度では、私を惑わすことはできません」

 

「な・・・っ」

 

美九が狼狽に顔を染める。

 

「や、やめろ!やめろ!やめてくれ・・・ッ!それだけは───シドーだけは・・・!私はどうなっても構わない!何だってする!何でも言うことを聞く!だから・・・だから、シドーを私から奪わないでくれ・・・っ!!」

 

だって、あの杭が撃ち込まれたのなら、士道は本当に死んでしまう。

士道が。

楽しい日常をくれた士道が。

絶望の淵に沈みかけていた十香に、世界の美しさを教えてくれた士道が。

もう、動かなくなってしまう。

もう、喋りかけてくれなくなってしまう。

もう、微笑みをかけてくれなくなってしまう。

 

「あ、あああああああああああ────」

 

この女を士道を助けるのには力が足りない。

────“天使では“────“足りない“

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

なんでもいい。十香は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら絶叫を上げた。もはや天使でなくとも構わない。この窮地さえ。士道さえ救ってくれるのであれば、どんなものでも構わない。たとえこの身がどうなろうとも。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ────ッ!」

 

その瞬間。

意識が途切れるのと同時。十香は、右手に、何かを握る感覚を覚えた。

否。もしかしたら、それは────

何かに、“握られる“感覚だったのかもしれない。

 

◇◇◇◇◇

 

「ははははは!はははははははは!」

 

グレイズ・アインのパイルバンカーが起動しようとした瞬間、目の前で起こった光景に、ウェストコットは哄笑を上げた。

突然〈プリンセス〉夜刀神十香の身体が黒く、闇に塗り潰されるように輝いたかと思いと、次の瞬間、彼女から溢れた闇とも光ともつかない粒子の本流が、隔壁を溶かし、ビルの窓を抜けて、全方位へと撒き散らされたのである。

 

「アイク、これは────」

 

驚きのあまりエレンが、呆然と問うてくる。ウェストコットは胸の裡を梅る万感の思いを言葉に乗せ、呟くように言った。

 

「〈王国〉が、反転した。さあ、控えろ人類」

 

両手を広げる。

 

「────魔王の、凱旋だ」

 

その言葉と同時に────グレイズ・アインが吹き飛ばされた。

 

「────ッ!?」

 

「・・・おや?」

 

吹き飛ばされたグレイズ・アインが居た場所────“五河士道の影から伸びる金属質の長い尾“。

そしてその影から今にも溢れ出ようとする何百、何千の赤い目がエレンとウェストコットをジッと見つめていた。




ハシュマルが三日月から出てこれる条件

三日月の死亡による封印開放

バルバトスルプスレクスの反転時

三日月からハシュマルだけを取り除いた時

それらのどれかに該当すれば出てこれる模様

なお十香の時は、ハシュマルが出てくるのより早くバルバトスが出てきたから出れなかった


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第十五話

投稿!!

次の回かな?ハシュマルに対しての三日月の帰れコール


私は男性をこよなく愛する魅惑の愛好家・・・そうとも、君と言う存在に心を奪われた男だ!!(ねっとり)

変態ハム太郎


「・・・これは」

 

ウェストコットは士道の影の中から延びるテイルブレードを見て、その目を見開いた。

士道の影から這い出ようとしている巨大なナニカ。

全体像は見えないが、おそらく動物か何かをモチーフにしたのだろう。尻尾状の巨大なブレードがゆらゆらとまるで生き物のように揺らめいていた。

そして鳥の頭部のような形状の白い装甲がゆっくりと此方に向き、その口を開く。

 

「・・・・!!アイクッ!!」

 

エレンが咄嗟にテリトリーを最大限に展開する。

その瞬間────

 

〘────────────────!!!!〙

 

その咆哮にも似た音ともに、桃色の光の奔流が二人を襲った。

 

◇◇◇◇◇

 

「あッははははははははははハ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェェェェッ!」

 

狂気に染まった笑い声とともに、幾百という弾薬が空に撒かれる。

真那はテリトリーの強度を高めると、その集中砲火をどうにか防いだ。

だが、その隙をついてか、ジェシカが真那の周囲に限定テリトリーを展開して逃げ場をなくす。

 

「ち────」

 

真那は忌々しげに舌打ちをしてから、身体を捻り、右手のレイザーエッジでテリトリーを切り裂くが、それと同時にジェシカはすでに魔力砲の充填を済ませ、真那目掛けて〈ブラスターク〉を放つ。

 

「あめーです!」

 

真那はそれを躱すと同時に一気に加速し、その魔力の奔流の上を滑るようにジェシカに肉薄した。

そしてレイザーエッジを振りかぶり、ジェシカに斬りつける。

だが、ジェシカもまたテリトリーを防性のそれに変化させ、真那の剣撃を防いでくる。

が、そこでジェシカに異変が現れた。

 

「ぃ・・・・ッ!?」

 

突然引きつけを起こしたかのように息を詰まらせると、鼻や目から血が垂れ落ち、不意に彼女を包んでいたテリトリーが弱まったのである。

弱体化したテリトリーを真那のレイザーエッジの刃が切り裂き、〈リコリス〉の赤い装甲と魔力砲、そして右手のレイザーブレードを完全に破壊する。

 

「活動限界です。ジェシカ!勝負は着きました!大人しく────」

 

真那のその言葉を無視するように、ジェシカは残った砲門を向けてきた。そして、活動限界を迎えているとは思えない砲撃を放ってくる。

 

「チッ!!」

 

すんでのところでそれを躱し、真那は鋭い視線を向けた。

するとジェシカが、血を涙のように流しながら、狂ったように笑う。

 

「────マナ。マナ。タカミヤ・マナ。もう、ももも、もう、負け、けけけケケけ、けなイ。今度は、負けナイ。〈リコリス〉さえあレば、私は、私は、私ははははははハははハ」

 

焦点が合っていない目を巡らせながら、壊れたレコードのように言葉を繰り返す。

明らかに正常な状態とは思えなかった。

 

「ジェシカ・・・」

 

真那はそう呟き、拳を握りしめる。

詳しいことはわからないが、やはり彼女は、脳に何らかの魔力処理を施されている。数十年分の寿命を、今日一日に凝縮しているようなものだ。強くて当然である。

そして無言で、自分の手に視線を下ろす。

────自分の身体にも似たような処理が施されているということは、既に琴里と令音に聞かされていた。

士道と会わなければ自分も、ジェシカと同じようになっていたかもしれない。

 

「・・・・・」

 

真那は無言で、ギリと歯を噛みしめた。

 

「マナァ!マママ、マナ。アデプタス2ゥゥゥゥ。前から気に入らナかったのヨ。なんで、ななななんで、ウェストコット様や、め、メメイザース執行部長は、あなたみたいナ東洋人ノ小娘を重用するノノノヨォ?ワタシが。わたしの方が・・・絶対に、相応しイ、ノニ。あ、アアアアデプタス、ナンバー2、ニ!」

 

叫びながら、ジェシカが滅茶苦茶に砲撃を放ってくるが、その狙いはどれも真那に当たる事はなく、真那の周囲を破壊する。

そんなジェシカに、真那はゆっくりと近づいていった。

 

「・・・昔からあなたはそればっかりでしたね。嫉妬深くて、功名心が強くて、そのくせ嫌味ばかりいって」  

 

そう言って、真那はレイザーエッジを構える。

 

「でも、あなたの忠誠心は、尊敬しますよ。私はあなたが大嫌いでしたが────それでもこんな扱いをされなければならない人間じゃなかった」

 

「は、あははははハ、ま、まままぁぁぁナぁぁぁァ?」

 

焦点が定まっていない目で真那を見ながら、ウェポンコンテナを開いて弾幕を放ってくる。

その弾幕の雨の中を真那は突き進むと、右腕のレイザーエッジを蠢動させて、そのままジェシカの胸を一気に切り裂いた。

 

「あ、が、あ、あああああ」

 

テリトリーを裂き、ワイヤリングスーツを抜け、人の身体を裂く感触。しかし真那は顔を背ける事はしなかった。

ジェシカの周囲からテリトリーが消え去り、〈スカーレット・リコリス〉の巨大な機体が地へと落ちていく。

だが、それを真那はテリトリーでジェシカと一緒に受け止めた。

そしてテリトリーに身体を支えられながらジェシカは、大量の血を口から吐き出しながら、弱々しい声を発する。

 

「ねェ、ねねね、ねェ。マナァァァ?私、わわ、ワタシ、強いでシょうゥゥ?もう、誰にモ負けナイわァ。ウェ、ウェストコット様も、認めて、く、くれるカシらァ?」

 

「・・・ええ、もちろんでやがりますよ」

 

真那のその言葉に、ジェシカは最後に笑って────顔をうつむかせた。

 

「・・・・・・」

 

真那はゆっくりとテリトリーを使い、ジェシカを地面へと横たわらせる。

そして目を瞑った瞬間だった。

 

〘────────────────!!!!〙

 

桃色の光の奔流が、灼熱と共にDBMの第一社屋から瞬きする暇もなく迸る。

 

「・・・な」

 

真那はその光を啞然しながら見つめる。

ビルを壁を家を木々を、まるで紙のように貫き、射線上の全てを炎の地獄へと変えてその光の奔流は消えていく。

その射線上にあったものは跡形もなく消え去っていた。

その光景を見て、真那は焦りの顔を浮かべ駆け出した。

 

「・・・兄様!!」

 

◇◇◇◇◇

 

「────これは」

 

マクギリスは空でその光を見つめながら、口を開く。

見間違いなどではない。あれは、“本来存在してはいけないもの“が使うビーム兵器の光だ。

三日月・オーガスに何があったのかは分からないが、予測不可能の事態が起こっているのには間違いない。

 

「何を余所見しているか!!」

 

耶俱矢が風を纏いながら突撃してくるが、マクギリスはそれを軽くあしらうと、相手をしていた耶俱矢達に言った。

 

「すまないが、君たちの相手をしている訳にはいかなくなった」

 

「返答。なぜですか」

 

夕弦の言葉にマクギリスは言う。

 

「最悪の事態になる可能性がある」

 

マクギリスは一言だけ伝え、士道の元へとバエルのスラスターを吹かせながら第一社屋へと向かった。




ロックオン「おおおお父さん!そんなふしだらな真似、ゆるしませんよ!?」 前書き

刹那「何を言っている!?ロックオン!?」

変態「私は間違ったままでいい!!」

刹那「だぁってろ!!」


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第十六話

投稿!!

ハシュマル帰れコールの回


ハムパンチ!!ハムキック!!ハムチョップ!チョップ!

ひ、ひどいよいきなり・・・

変態と眼鏡の変態


「────」

 

美九は目に映るその光景を呆然と眺めていた。

士道が死んで、あの男が大事にしていた少女に黒い霧が現れたと思ったら、士道の影から得体の知れないナニカが現れ、今の光景となっている。

 

「・・・・っ」

 

光の奔流に巻き込まれたあの女は、男を庇った為に全身に大きな火傷を追っている。

そしてその男は、士道の影から這い出ようとしてくる機械で出来た化け物を興味深そうに見つめていた。

 

「・・・なんだ?これは────」

 

未だに実感を得ないまま、ウェストコットは呟いた。

ひとりでに溢れでたその言葉は、彼自身すら止めることが出来ず、まるで転げ落ちる雪だるまのようにその興味が膨れ上がっていく。

彼の言葉に返答ない。

ただ、その影に。その闇の向こうに。

ゾゾゾゾゾゾゾゾざザザザザザザザザ!!と、怪物が這い出ようとしてくる。

それを────

 

ガゴンッ!!と。

五河士道はバルバトスと再生の炎を纏いながら、その怪物を影の中へと引き戻す。

そして────

 

「・・・『お前』は」

 

ぼそり、と。

“三日月“の唇のが動いた。

 

「ここは、“『お前』や『俺』”が居ていい場所じゃないんだよ」

 

決して大きな言葉ではない。

にも拘らず、この場にいる全員に突き刺さった。

士道は、この部屋にいる全員を見ていなかった。今、彼が見ているのは、影に引き戻される怪物のみ。

そして士道はハシュマルにこう告げた。

 

「・・・“お前はここで引っ込んでろよ。お前の相手は全部終わったらしてやる“」

 

〘────────────!!〙

 

その言葉と共に、ハシュマルは影へと引きずり込まれた。そして、同時にバルバトスが復活する。

 

(捨てた?)

 

あれだけの力をわざわざ棒に振ってまで、五河士道は生き返った。そして、それと同時に十香のシルエットを塗り潰した禍々しい黒光が、放射状に晴れていく。

肩に、腰に輝く漆黒の鎧。そして胸元と下半身を覆うように広がった、実体のない闇色のベール。

濃密な霊力によって編まれた、完全な状態の霊装。

そして、その表情も士道が最後に見たものとは違う、ただ超然とした威圧感が滲む頂点に立つ者の顔だった。

 

(ヤバいな。アレ)

 

士道は直感で今の十香をそう判断する。

流石にモビルアーマーのソレとまでは言わないが、一筋縄ではいかない程の強敵だと理解する。

そんな士道達を前に、ウェストコットは言った。

 

「さて、予想外の事でエレンが重症を追ってしまったし、私とエレンは早々退散させてもらおうか。〈プリンセス〉を反転させる事が出来ただけでも上々だ。それに今日は────予想外の顔にも会えたしね」

 

「逃がすと思う?」

 

士道はそう言うが、内心今の十香を相手すると、逃す可能性は十分に高い。そんなカマをかけてはみるが、ウェストコットは指を鳴らすと、グレイズ・アインが半ば半壊の状態で襲いかかってくる。

 

「────チッ!」

 

「────悪いが、我々はここで失礼させてもらうよ。生き延びたのならまた会おう。タカミヤ────いや、イツカシドウ」

 

「───────」

 

ウェストコットのその言葉に、士道は眉をひそめる。

崇宮。それは、士道の妹を自称する真那の姓でもある。

 

「アンタ、俺の事知ってんの?」

 

バトルアックスを大型メイスで受け止めながら士道は言うが、ウェストコットは短く答える。

 

「いいや、知らないさ。────イツカシドウの事はね」

 

言うとウェストコットは士道から視線を外し、エレンの元へとと向かう。

そしてエレンは、火傷を負った状態でありながらも、ウェストコットを見えない手で支えるように浮遊させると、そのままスラスターを駆動させ、空の彼方へと飛び去っていった。

 

「チッ」

 

士道は舌打ちをしながらグレイズ・アインを押し返し、そのまま一気にメイスの尖端に装備されているパイルバンカーを射出する。

バゴンッ!!と、金属がぶつかり合う音と共に、グレイズ・アインはその動きを止めた。

そして十香の方へと視線を向けると────

十香我右手に握った片刃の剣を士道達に振り抜き、その太刀筋から放たれた衝撃波が、士道達を襲った。




耶俱矢「し、死ぬかと思った・・・」

夕弦「同意。いきなり自爆とは恐れ入りました」

ニール「此方に来ても良いんだぜ?」

耶俱矢「まだそっちには逝きたくないわ!!」

ニール「ちゃんと(土に)かえ(還)してやるから、安心しろ」

夕弦「質問。今、土に還すと言いました?」


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第十七話

投稿!!

ちょいと一気に詰める!!

いくぞ────バルバトス

三日月・オーガス


「チッ!!」

 

「きゃあっ!」

 

もう何度目か分からない舌打ちをしながら士道は大型メイスでその衝撃波を防ぐ。

どうにか防げたものの、今の攻撃を喰らえば流石にナノラミネートアーマーといえどダメージを与える事が出来るだろう。

 

「・・・貴様、何者だ?貴様からは天使の力を感じる」

 

「べつに、十香は知らなくていいよ」

 

士道がそう言うと、 十香が眉をひそめた。

 

「十香・・・?私のことか?」

 

「あ?」

 

士道の顔をまじまじと見るようにしながらそう言ってくる。やはり、いつもの十香ではない。士道のことはおろか、自分の名前さえも覚えていない様子だ。

 

「一体何が起こってんの?これ」

 

と、士道がつぶやくと、右耳のインカムからザザッというノイズが走り、次いで琴里の声が響いてきた。

 

『士道!士道!応答しなさい!士道!一体何があったの!?』

 

どうやらもとに戻ったらしい琴里に、士道は言った。

 

「知らない。ただ、俺が一回死んで十香が真っ黒になってる。あれも霊力の逆流ってやつ?」

 

『いえ────恐らく、違うわ』

 

「じゃあ、あの十香をもとに戻せるの」

 

『それも分からないのよ。前例がないもの。でも、可能性があるとすれば、十香の意識をこっちに引き戻すしか」

 

そう言う琴里に、士道は大型メイスを構える。

 

「やることは結局同じってわけか」

 

「何をごちゃごちゃと言っている」

 

と、士道と琴里の会話を遮るように、十香が冷たい声を発してくる。

 

「────ふん、何だか知らぬが、まぁいい。屠れば済む話だ」

 

言って、十香が再び剣を振るってくる。

士道も大型メイスを振って対抗するが、その斬撃は重い。

そしてお互いにもう一度武器を打ち合うが、少しだけ士道の体勢が崩れると、そのスキを逃さず、士道目掛けて斬撃が飛んできた。

 

「チッ」

 

避けられない。そう判断した士道は左腕を盾にして致命傷を避けようとした瞬間。

 

「ああああああああああああああッ!」

 

が、その攻撃が当たる寸前、美九が大声で不可視の壁を構築した。それが斬撃を防ぎ、士道に離脱のチャンスを与える。

 

「ありがとう。ミッチー」

 

「勘違いしないでくださいよー。貴方は十香さんを助けるんでしょう。私は『好き』とか『大切』とか、『死んでも』って言葉を軽々しく使って、簡単に翻すような男が一番大っ嫌いなんですー」

 

「は・・・?」

 

「あなた、言いましたよねー?十香さんを助けるって。なら、最後まで責任を持って十香さんを助けてください。わたしを・・・失望させないでください。それを見る為にここまで来たんですから」

 

そう言う美九に士道は一度視線を美九に向けてから言った。

 

「分かってる」

 

そして十香に目を向けると、美九が士道に言った。

 

「それでー?何か策はあるんですー?」

 

「近づければなんとなる。成功するかはやらないと分からないけど」

 

「ふーん・・・そうですか」

 

美九は気のない返事をすると、その場でくるりと身体を回転させ、カッ、カッ、と地面に靴底を打ち付けた。

 

「〈破軍歌姫〉────【輪舞曲】」 

 

すると、美九を囲うように、地面から何本もの銀筒が出現し、その先端をマイクのように美九の方に向けた。

 

「防御の声を全方位から十香さんにぶつけます。彼女相手では何秒保つかわかりませんが、少しの間であれば動きを止められるはずです。その間に、その方法とやらを試してみてくださいー」

 

なんの心変わりか美九はそう言って問うてくる。

そしてそんな美九に士道は言った。

 

「わかった」

 

「では、いきますよ────」

 

美九が身を反らしながら息を大きく吸い────

 

「────────────ッ!」

 

耳の奥に響くような高音の声を、自分の周囲に立った天使の銀筒目がけて発する。

〈破軍歌姫〉の銀筒は美九の声を幾重にも反響させ、目に見えない拘束が十香を縛りつける。

 

「む────なんだ、これは」

 

十香が不快そうに顔を歪め、拘束を剥がそうと腕に力を入れる。

苦しそうに美九は声を上擦らせるが、士道はそのまま十香に向けて疾走した。

美九がどんな思いでこの場所にきたのか、自分を手伝ってくれるのかは知らない。だが、美九のその覚悟を慮るのであれば、一秒でも早く十香のもとに到達しなければならない。

 

「ふん・・・・」

 

近づいてくる士道に気づいたのだろう。十香が片足でガッと床を蹴る。床材が砕け、散弾のように士道を襲うが、その程度ではバルバトスのナノラミネートアーマー突破出来ずに、装甲に傷をつけるだけで終わった。

と。十香が、ち、と苛立たしげに舌打ちを零した。

 

「────鬱陶しいぞ」

 

言って大きく息を吸い、身体を軽く前傾させ、音の拘束を引きちぎるように両腕を開いていく。

 

「────────!?」

 

美九の声が段々と掠れていき────そして。

 

「────────」

 

不意に、声が、出なくなってしまったのだ。

 

「────、────」

 

なんで、と呟こうとするも、それすら声にならない。ただ、喉ならヒュウヒュウと息が漏れるのみだった。

 

「ふん、小賢しい真似を」

 

十香が鼻を鳴らし、〈暴虐公〉を振り上げる。

 

「チッ!!」

 

士道がバルバトスのテイルブレードを射出し、十香へと向かわせるが、十香はそれを腕でなぎ払い吹き飛ばす。

そして────

 

「私の身を縛ろうとは。身の程を知れ」

 

言って────十香は、剣を振り下ろした。

その場でへたれ込む美九に目掛けて。

あれを避けるような力も残っていない。きっと一瞬あとには、美九は〈暴虐公〉の斬撃に沈むだろう。

あの天使の一撃に、美九の霊装が耐えきれるとも思えない。

しかしそれは、仕方のないことだ。

美九には、最初から歌しかなかった。他に、何も持っていなかった。だから、歌を、声を、音を失った彼女には、何の価値もない。

『歌』がなければ、もう誰も美九を愛してはくれない。『声』がなければ、もう誰も守ってくれない。『音』がなければ、もう誰も信じてはくれない。

そんなのはもうずっと前からわかりきっていることだ。

美九は士道をバルバトスの後ろ姿を見る。

三日月・オーガス。五年前始めてあった時、彼は自分の名をそう言った。

あの時、公園のベンチにいた自分に渡してくれたサンドイッチが美味しかったのを覚えている。

あの時はまだ歌が上手くなかったのに、疲れるまでずっと私の歌を聞いてくれたのを覚えている。

そして────最後に彼と会った時。

 

『結構上手いじゃん。また、聞かせてもらっていい?』

 

────白状すれば。

一度でいいから、もう一度私の本当の歌を彼に聞いて貰いたかった。

人間に、失望しきってしまった美九だからこそ。

最後の糸に縋る思いで、彼にもう一度だけ自分という存在を認めて貰いたかった────

でも、もう何もかも過ぎてしまった事だ。美九はふっと目を伏せて、その斬撃を受けようとした時────。

 

美九の前でバルバトスが〈鏖殺公〉を手に、美九の身体を引き裂こうとしていた斬撃をその剣で葬り去る。

そして士道は顔を上げ────

 

 

 

 

「いくぞ────バルバトス」

 

その言葉に答えるようにバルバトスもまた、そのツインアイを輝かせた。




よしのん『そーいやー気になったんだけどさー』

作者「どしたん?」

よしのん『士道君はどうして美九ちゃんや、琴里ちゃんの小さい頃のこと忘れちゃってるのさ?』

作者「まあ、一言で言えば・・・」

四糸乃「・・・言えば?」

作者「ほぼ、バルバトスとハシュマルのせい。間接的も含めるならファントムさんも同罪」

バルバトス「!?」


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第十八話

投稿!!

阿頼耶識リミッター解除発動!!

なお、ほぼ戦闘はない模様。
なぜかって?十香相手だから

あれはお前の獲物だろ?余計な鎖は外してやるから見せてみろよ。お前の力

ハシュマル相手の時の三日月


「ぁ────」

 

少しの間休ませたことで幾分か喉が回復したのか、微かな声が漏れる。

しかし、美九はそれよりも先に。一番大切な声のことよりも先に、目の前の出来事に意識を奪われていた。

粉塵を巻き上げながらバルバトスが十香と美九の間に立ちはだかり、〈暴虐公〉の一撃を防いだのである。

────右手に握られた〈鏖殺公〉によって。

 

「・・・生きてる?」

 

軽い調子で言って、士道が美九の方を一瞥する。

 

「ぁにを、やっぇ────」

 

未だ上手く声が出ない状態で美九が言う。すると、〈暴虐公〉の一撃を凌いだ士道は、十香に視線を戻しながら口を開いた。

 

「────アンタは、十香を助けるのを手伝ってくれただろ。なら、見殺しはしない。それに────」

 

士道は口を一度紡いでから、もう一度口を開いた。

 

「アンタの本当の歌。聞いてみたくなった」

 

「────────」

 

美九は口元に手を当てると、全身を小刻みに震わせる。

見開かれた目から、ポロポロと涙が零れていく。

 

「ぁ、ぁ・・・・」

 

美九は涙を零しながら小さく嗚咽を漏らす。

そんな美九を後に、士道は十香の異常に目をつける。

今し方斬撃を放った十香が、左手で額を押さえ、苦しげにうめいていたのである。

 

「う、ぅ・・・シドー・・・シドー・・・」

 

「・・・?」

 

十香のうめくように言うのを聞いて、士道は眉をひそめる。

 

「あと少しか」

 

今十香は確かに自分の名前を呼んだ。なら、もう少し揺さぶりをかければもとに戻るかもしれない。

しかし。

 

「う、あ、ああああああッ!」

 

十香は叫ぶと、右手に握った〈暴虐公〉を地面に突き立て、その刃に向かって自分の左腕を振った。

 

「あぐ・・・っ!」

 

霊装ごと左手に大きな傷が刻まれ、盛大に血が流れ落ちる。そして、落ち着きを取り戻した十香は、自らの血に濡れた〈暴虐公〉を引き抜いた。

 

「面妖な手を・・・!私を惑わすか、人間!」

 

言って、十香は床を蹴り、再び空へと舞い上がると、巨大な剣を高く振り上げる。

 

「ならば一撃にて塵も残さず粉砕してくれる!」

 

すると虚空に不思議な波紋が現れ、そこからは、十香の身の丈の倍はあろうかという巨大な玉座が姿を現した。 

そしてその玉座が空中でバラバラに分解し、十香の掲げ────た剣にまとわりついていく。

 

「────我が【終焉の剣】で・・・ッ!!」

 

十香の吠えるような宣言とともに。

〈暴虐公〉は、その真の姿を現した。

 

「ミッチーは離れて」

 

「・・・・!・・・・!」

 

士道の言葉に、美九は声を上げようとするが声はまだ出ない。

そんな美九に士道は言った。

 

「大丈夫」

 

その言葉と共に、士道は言葉を続ける。

 

「俺も───“バルバトスの余計な鎖を外す“」

 

余計な鎖。美九は何のことかはわからないが、最後の切り札というものなのだろう。

士道は美九の手を払い、そして十香に近づいていく。

 

「────十香」

 

「・・・・・ッ!」

 

士道が名を呼ぶと、十香が怯えるように肩を揺らした。

だが、十香はそれを振り払うようにかぶりを振ると、絶叫じみた声を上げて巨大な剣を振り下ろした。

 

「〈暴虐公〉────【終焉の剣】!!」

 

バルバトスに、何もかも呑み込む闇の奔流が迫ってくる。

 

「兄様・・・ッ!!」

 

「士道さん・・・!」

 

「「士道!!」」

 

真那、四糸乃、耶俱矢、夕弦が今のまさに破壊の奔流に呑み込まれようとしている士道を見て叫ぶ。

それと同時に────

 

「十香達を助けるから目でも、腕でも好きなだけ持っていけ。だから────お前の力を寄越せバルバトス」

 

士道その言葉と同時にバルバトスのそのツインアイは赤く染まり、そして、士道の視界は闇に染まった。




なんでモビルアーマーでもないのに赤くなったの?

A.三日月の手に握っているものと十香の手に握ってるものがもろに関係してます


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第十九話

投稿!!

次か、その次でエピローグかな

ここがそうなの?俺達の本当の居場所

ああ、ここもそのうちの一つだ。

そっか。綺麗だね

三日月・オーガス

オルガ・イツカ


────空が割れるかのような音が辺りに響き渡る。

次の瞬間、十香の振るった剣の延長線上にあたる全てのものに一本の線が引かれた。

一部を削り取られたビル。その下に広がる地面。さらにその先に広がる街並み。

そしてその線を霊力の波が通り抜け、そこに存在したものを一切合切粉砕していった。

 

「・・・・!」

 

ビルの床にへたり込んだ美九は、目の前を通り過ぎていった斬撃の余波に吹き飛ばされないように身を低くしながら、のどから空気を発した。 

 

「・・・・っ!・・・・っ!」

 

美九は声にならない声を上げ、士道の名を呼んだ。

しかし、返事はない。

 

「・・・そんな・・・嘘・・・嘘でやがりますよね?」

 

真那もその光景に首を横に振りながら座り込む。

 

「ふ────はは、ははははははっ!」

 

美九が床に手のひらを突いた瞬間、上空から高笑いが響いてきた。

 

「消えた。消えた。ようやく────消えた。私を惑わす奸佞邪知の人間が・・・・!」

 

そう言う十香に向かう二人の影が十香にその手の武器を振るう。

 

「十香ぁ!!あんたねぇ!!」

 

激昂する耶俱矢の巨大な槍と剣がお互いにぶつかり合う。

 

「・・・・ッ!」

 

夕弦はペンデュラムを操りながら風で十香を狙うが、それを十香は耶俱矢と一緒に纏めて薙ぎ払う。

 

「・・・くっ!!」

 

「ふん・・・雑兵がいくら集まろうと変わらん」

 

そう言う十香に氷柱が襲いかかる。が、それを〈暴虐公〉の一振りで全てが破砕される。

 

「・・・どう、して!どうして、士道さんを・・・!」

 

四糸乃が泣きそうな声でそう十香に叫ぶが、十香は短く鼻を鳴らすだけだった。

そんな時だった。

 

────────────

 

「・・・・え・・・?」

 

狼の遠吠えのような咆哮が聞こえ、真那が顔を上げる。

上空。

十香達がいる宙よりも遥か上空から。

 

〈────────────!!〙

 

赤い眼光が軌跡を描きながら、狼王が流星の如く此方へと向かってくる。

 

「────な」

 

そこで、士道が上空から迫っている事に気づいたのだろう、十香が顔を上げた。

 

「この────まだ生きていたか・・・!」

 

「士道さん!」

 

「兄様!!」

 

「「士道!!」」

 

「・・・・!」

 

バルバトスの姿を視界に入れた五人は顔に笑みを浮かべた。

十香は〈暴虐公〉を振りかぶるが、それを耶俱矢達は見逃さなかった。

 

「させるかぁ!!」

 

「首肯。やらせません」

 

「なっ!?貴様ら!!」

 

耶俱矢の【穿つ者】と夕弦の【縛める者】が蠢動し、風を生み出す。そして【縛める者】が十香の〈暴虐公〉へと絡みついた。

すぐさまそれを外そうと十香は夕弦達の元へと向かおうとするが、その足を四糸乃達が凍らせる。

 

「行かせません・・・!」

 

『よっしゃおっけー!よしのんも張り切っちゃうよー!』

 

「くっ!!」

 

十香は振り上げた〈暴虐公〉を耶俱矢達ごと纏めて薙ぎ払おうとした時、その動きを止めた。

 

 

剣を振り上げた精霊は、不意に頭を通り抜けた感覚に身体を支配された。

埋もれた記憶の一欠片が、彼女の意識を切り裂く。

 

「私は、この光景を、どこかで──」

 

────見たことが、ある。

それを認識すると同時、記憶が───彼女が知らないはずの光景が、頭の中にありありと映し出される。

巨大な剣を振り上げる精霊。そして、空から落ちてくる一人の悪魔の姿。

そして着陸した時に名を呼ぶその名前。

 

(無事、十香?)

 

「十───香・・・・」

 

記憶の中、響く名を反芻する。

それは、確か。今空より迫ってくる男や周りいる人間が、自分を呼称するのに使った名だった。

十香。十香。聞き覚えのないはずの言葉。だが────

 

「く・・・・」

 

瞬間────彼女の頭に鋭い痛みが走る。

そして、その瞬間に。

 

「十香」

 

空から振ってきた悪魔が赤い眼光と共に、彼女の目の前まで肉薄していた。

 

「貴様・・・・っ!」

 

彼女は渋面を作る。だが、そんな十香に士道はバルバトスを解いて言った。

 

「帰ろう、十香。俺達の皆の居場所に」

 

士道は耶俱矢達に風で支えてもらいながら、十香をまだ動く左腕で抱きしめる。

そして────

 

「────────」

 

士道は十香の唇に、自分の唇を押し当てる。

頭がぐるぐるとまわる。埋もれていた自分の記憶からばらばらと破片が顔を出していく。まるで自分の身体が自分のものではなくなる感覚。「シドー」その名に、意識が侵食されていく。その名が響くたび、気持ち悪くなっテ、でも、なんダか悪くナイ気分で。「シドー」あアなんで忘れていたんだロウ。私に名前を付けてくれタ。存在がひっくり返サレ────

 

「────シ、ドー・・・?」

 

十香は、のどを震わせ、自分を抱く少年の名を呼んだ。

そして、まるでそれに合わせるように、十香の纏っていた闇色の霊装が、手に握っていたけんが、粒子となって消える。

 

「・・・ん」

 

士道は短く答えて少しだけ笑みを浮かべると、そのままゆっくりと目を閉じる。

 

「し、シドー!大丈夫か!?」

 

と、十香が焦ったように声を上げる。

 

「・・・なにが?」

 

士道はそう言うと、真那が言ってくる。

 

「その右目です!血だらけじゃねーですか!!急いでラタトスクに行かねーと!」

 

「・・・ん、ああ・・・そっか」

 

昔は当たり前だった“見えなくなった右目“に士道は短く返事をし、真那に言う。

 

「じゃあ・・・後はお願い。バルバトスを使いすぎたから今は眠い・・・」

 

そう言って再びまぶたを閉じる士道とそれを見守る十香達に、街並みの間から朝日が差し込み始めた。

そして、それと同時に士道は意識を失った。




バルバトス「契約代金、叩きつけられたんですけど」

右目と右腕に目を向けながら

ハシュマル「┐(´ー`)┌」



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第ニ十話 エピローグ 生け贄

投稿!!

サブタイトルで嫌な予感をしたそこの貴方。正解です

絶対・・・帰ってきてね

アトラ・ミクスタ


九月二十五日、月曜日。天央祭開催三日目にして────DEMインダストリー日本支社での攻防戦から一日が経った日である。

〈フラクシナス〉で丸一日かけて入念な検査を受けた士道は、天央祭会場である天宮スクエアにやってきた。

一日目に比べて、人は格段に少ない。それもそのはず、もとより天央祭三日目は、参加校十校の生徒だけが文化祭を楽しむ、いわば後夜祭的な位置づけだ。

─────結局、天宮市で巻き起こった謎の大暴動は、特殊な幻覚剤が散布されたテロとして決着が着けられた。

さすがに無理があると思った士道だったが、昨日の朝方急に我に返った美九の信者たちが、操られていたときのことをまったく覚えていなかったのだから真相など追いようがない。

まあ、やたらと派手に大暴れして死者がいなかったのが不幸中の幸いである。

DEMインダストリーの惨状も、特殊な空間震の被害ということで始末がついたらしい。

マクギリスも、後に家に訪問すると伝言を残していった。

会場を見回しながら、ゆっくりと足を進めていく。

あんな騒動があったということで、さすがに二日目の天央祭は急遽中止となり、三日目の開催も危ぶまれていたが、生徒たちの熱意と〈ラタトスク〉の暗躍とによって、無事開催出来たのだった。

 

「くく・・・士道。もう傷はよいのか?」

 

「質問。十香さんはまだ来られませんか?」

 

と、メイドカフェの前を通ったところで、メイド姿の耶俱矢と夕弦が声をかけてくる。

 

「十香はまだ検査が終わらないって言ってた。俺は、別にそこまで。こっちの目が見えなくなったのと、こっちの手がうまく動かないだけ」

 

右眼と右腕を耶俱矢達に見せながら軽く返す。

 

「だけって!?重傷じゃん!?」

 

「同調。それはそこまでとはいいません」

 

少し怒った表情をする耶俱矢と夕弦に、士道は適当に返事をしながら口を開く。

 

「阿頼耶識でバルバトスにつながってるときは動くんだ。だから、まだやれる」

 

「それでも無茶は出来ないでしょーが!!」

 

ガーッ!!と感情を露わにする二人に士道は言った。

 

「でもこっちはこれが守ってくれた」

 

そう言って、大量のミサンガがついた左腕を軽く上げると、二人はキョトンとした顔を作る。

そして苦笑の顔を浮かべて言った。

 

「溜息。しょうがありません。今度は皆でもっと丈夫な物を作りましょう」

 

「そうね。ロープで作る?」

 

「同意。それは良い案です」

 

「さすがにそれは邪魔」

 

そう言う士道に二人はカラカラと笑って、唇を開く。

 

「ま、なんかあったら頼りなさいよ!」

 

「首肯。今、一番大変なのは士道ですから」

 

そう言って二人はその場を後にする。

と、士道は耶俱矢達を見て思い出した。

 

「そう言えば、ユージンは?」

 

「返答。ユージンなら今、厨房にいるかと」

 

「そっか。ありがとね」

 

士道はそう言って、メイドカフェをあとにした。

ブースを抜けて、セントラルステージへ。扉を開けると、賑やかな曲調と、空気を揺るがす大歓声が響き渡った。

ステージに立っているのは美玖九だった。

霊装に身を包み、人々を魅力する声を響かせてくる。

演奏が終わり、美九が微かに肩を上下させながら礼をする。すると会場が割れんばかりの拍手に包まれた。

 

『ありがとうございます、皆さん!本当に────』

 

そう言ってから、美九がステージを去っていく。観客たちの中から再び拍手と、美九の名を呼ぶ声が響いた。

士道はステージを出ると、裏手に回って関係者用入口から建物の中に入っていった。

そして控え室の前に立つと、ドアノブを握って口を開く。

 

「入るよ」

 

『はい、どうぞー』

 

明らかに今までとは違う声音に、違和感を覚えながら士道は扉を開ける。

控え室の中には、美九が一人、椅子に座っているだけだった。

一体どんな心境の変化があったのだろうか。まるで憑き物が落ちたかのような変貌ぶりだ。

実際─────

 

「!来てくれたんですね、“だーりん“!!」

 

「マジやめて。そう言うの」

 

士道は即答する。一瞬だが美九がそう言った瞬間、寒気が士道の全身を襲った。

 

「えー?じゃあ・・・三日月さんでどうです?」

 

「それでいいけど、アンタ、急にどうしたの。なんかだいぶ変わってるけど」

 

「うふふ、三日月さんは特別ですぅ。“昔の時“もそうだったじゃないですかー」

 

「昔?」

 

士道は美九の言葉に首を傾げるが、過去に“美九と会ったこと“があっただろうか?

まあ、思い出せないのであれば仕方ない。

士道はベタベタとくっつく美九に口を開く。

 

「で?・・・アンタが俺に話したいことってなに?」

 

「ああ、そうでしたー」

 

すると美九は思い出したように小さくうなずいた。

そして何でもない動作でふっと士道に目を向け────

 

そのままつま先立ちをし、士道にちゅっと口づけをする。

 

「─────」

 

突然のことに、思わず目を白黒させてしまうが、美九はがっしりと士道の身体を抱いたまま、唇を離そうとしなかった。

 

「・・・んっ」

 

同時に、美九が纏っていた霊装が、光の粒子となって空気に溶け消えた。

 

「わ・・・きゃっ!」

 

それに気づいたのだろう。美九がようやく士道から唇を離す。

 

「なんて早技・・・」

 

「俺のせい?」

 

「うふふ、冗談ですよぉ。───四糸乃ちゃんたちに聞いて、全部、知ってましたからー」

 

「あっそ」

 

前にも“同じことがあったような”やり取りをしながら士道はそう呟く。

 

「もうそろそろ行くね。俺もまだ全部の検査終わってないし」

 

「あはは、じゃあ、わたしも行かないと。衣装は・・・そうですね、メイドカフェさんにでも頼み込んで貸してもらいます。────私の歌、聞いてくれますか?三日月さん」

 

美九が言ってくる。その目には、途方もない不安と───それを超えるくらいに、強い意思の光が宿っていた。

 

「ちょっとくらい遅れてもいいって言ってたから、聞いてく」

 

「・・・!精一杯歌いますね!」

 

士道はそう言って、控え室の扉を開けて、部屋から出ていった。

 

◇◇◇◇◇

 

カツカツと士道は一人、廊下を歩く。

そして、ここには居ないバルバトスへと向けて、士道は独り言のように呟いた。

 

「ありがとな、バルバトス。俺はアイツに何も出来ないからお前に押しつけてばっかだけど、俺の代わりに皆を守ってくれて」

 

誰もいない廊下で、士道は歩みを止めて目を窓の外へと向ける。

耶俱矢達と合流したのだろう。十香が笑顔で出店を見回っているのを見て、三日月は笑みを浮かべる。

そして─────

 

「全部終わったら、前と同じように俺の全部をお前にやるからそれまでよろしくな。バルバトス」

 

士道はそう言って、美九がいる会場へと足を進めていった。




因みにバルバトスが三日月と契約した内容は三日月の魂だけ。

なのでもし、十香達が上手く三日月を呼び戻さないと、死か原作の主人公が出てくるオチになる

なお、バルバトスの役割

三日月に力を貸すよ!!契約代金はもらうけど

あと、ハシュマルいるから全部終わってハシュマル殺すまでは抑えてるね!!
  ↑
これの代金のせいで三日月が死ぬたびに士道としての三日月の記憶を持ってかれてる。

作者「鬼!悪魔!!」

バルバトス「悪魔ですけど」

なお、三日月も同意の上でやってます


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七罪サーチ
第一話 プロローグ


さぁて!問題作の二つ目だ!!

どうなんの?七罪・・・


もう止めるんだ!!

なんでもダルマにするアスラン・ザラ


「うふふー。ねぇ、三日月さん。もっとこっちに来てもいいんですよぉ?ほぉらぁ」

 

「あのさ、美九」

 

「なんですかー?あ、そうだ。この前美味しいイタリアンのお店を見つけたんですよぉ。今晩って何か予定ありますかぁ?よかったら一緒に行きましょうよぉ」

 

「今日の飯の当番俺なんだけど」

 

「なぁんだー、じゃあ十香ちゃんたちも一緒に行きましょうよー。私はそこまで狭量な女じゃありませんよー?もちろん私の奢りですから安心してくださいねぇ」

 

「・・・・・」

 

無邪気な笑みを浮かべながらぐいぐいと身体を押しつけてくる少女に目をやりながら、士道は鬱陶しがるような顔を作る。

この誘宵美九という少女、学年では士道の一つ上のはずなのだが、日頃から先輩らしからぬ子供っぽい言動が見受けられるのだった。

とはいえ、今の士道を見ているのは美九だけではない。

 

「・・・・・・」

 

じとーっ、という視線が、士道にからみつく。

士道の妹、琴里が、士道と美九の目の前に座っているのだ。

黒いリボンで二つに括られた髪に、どんぐりのような丸っこい目、そして口にくわえたチュッパチャップスをくわえた少女である。今は真紅のジャケットを肩がけにしながら頬杖を突き、士道と美九のいちゃいちゃ(一方通行)を、機嫌悪そうに眺めていた。

 

「・・・そろそろいいかしら、美九」

 

「え?そろそろって、何がですかぁ?」

 

美九が悪意のない顔でそう言うと、琴里はギリッと奥歯を嚙みしめて机を叩いた。

 

「だ・か・ら!!事情聴取だって言ってるでしょ!あなたが『三日月さんと一緒じゃなきゃ嫌ですぅー』とか言うから特別に同席を許してあげたんじゃない!」

 

「あぁ、そういえばそうでしたねー」

 

あははと笑って、美九が琴里に向き直る。が、手は士道の左腕に絡みついたままだった。

琴里がはぁ、と大きなため息をついてから、手元に置かれた書類を捲る。

 

「・・・じゃあ、質問に移るわよ」

 

「はいはい、どうぞー遠慮なく」

 

美九がなんとも気安い調子で言う。琴里はもう一度吐息をこぼしてから言葉を続けた。

 

「あなたの能力について、天使について、聞きたいことはいろいろとあるけれど・・・それらはとりあえずあとに回しておくわ。まず確認しておかなければならないのは────」

 

言って、琴里が美九に指先を向ける。

 

「あなたを、精霊にした存在のことよ」

 

「・・・・・!」

 

琴里がそう言った瞬間、緩みきっていた美九の頬が、ぴくりと動いた。

 

「あなたは生粋の精霊ではなく、もとは人間だった。───それは間違いないわね?」

 

「・・・ええ。そうですよー。今から数ヶ月前・・・みんなに裏切られて、心因性の失声症で声を失って、生きる希望をなくした私の前に────『神様』が現れたんですー」

 

琴里の言葉に、美九はこくりとうなずいた。

 

「・・・なるほどね」

 

琴里は難しげな顔でうなり、くわえていたチュッパチャップスの棒をピンと立てる。

 

「ま、いいわ。詳しい話は後よ後。次は士道よ」

 

「俺?」

 

いきなり自分に振られた事にキョトンとした顔を作る士道だったが、琴里は眉を潜めながら言った。

 

「俺?じゃないわよ。一番訳のわからなさでは士道が一番なのよ?」

 

琴里はそう言って、写真を見せてくる。

その写真に映っていたのは、自分の影の中から現れるモビルアーマーの姿があった。

 

「士道の影から出たこの化け物。これは何なのよ?まさか、知らないって言うんじゃないわよね?」

 

そう言って、士道の目を見る琴里に、士道は言った。

 

「知ってるけど、一番コイツの事知ってるのチョコの人だよ」

 

「チョコの人?・・・ああ、あの仮面男ね」

 

マクギリスの事だと分かった瞬間、琴里は苦々しい顔を作る。どうやら苦手意識があるらしく、うげぇと呟く。

 

「まあ、士道に聞くよりはアイツに聞いたほうが詳しく分かるからまた連絡しないと・・・」

 

琴里はそう思案してから美九に向き直ると、思い直すようにコホンと咳払いをする。

 

「ごめんなさいね。でも安心して。事情聴取はまだ始まったばかりよ。これからしっかり詳細な話を聞いてあげる。〈ファントム〉に記憶操作をされてる可能性も捨てきれないから、ちょっと脳波を見るために頭に電極も貼りましょうねー?」

 

琴里はニコッと微笑む。するとそれと対象的に、美九が嫌そうな顔で頬に汗を垂らした。




アスランに向けて

リボンズ「やるね、キミ・・・ねえ、ボクがもっとすごい力をあげようか?」


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第ニ話

投稿!!

今回はですが、阿頼耶識システムとガンダムフレーム、そして、アグニカの魂が機体に宿ると言うマクギリスの言葉を自分なりの解釈で纏めてみました。
半分以上は自分なりの予測なので、公式がこうと言うのなら変えるかも・・・
では、どうぞ!


「少しいいかな。ユージン・セブンスターク」

 

「・・・あ?」

 

ユージンは下校帰り、後ろからかけられた聞き覚えのある声に反応し、足を止めて振り返った。

そこいたのは、ユージンの予想通り、マクギリスだった。

 

「なんだよ」

 

この男が三日月以外とこうやって話すのは珍しい。

ユージンは若干の警戒をしながらも口を開く。

そんなユージンにマクギリスは表情を変えないまま言った。

 

「少し、君に話しておかなければならないことがある」

 

「あん?何をだよ」

 

マクギリスの言葉に、ユージンは眉をひそめた。

そんなユージンにマクギリスは言う。

 

「村雨令音・・・“彼女には気をつけろ“と、彼に言っておいてくれないか」

 

「村雨令音・・・って、三日月の副担任のか?」

 

ラタトスク機関にも彼女が所属している事を知っているユージンは、彼女の名前を聞いて首を傾げる。

 

「なんで、気をつけろなんだよ」

 

ユージンはそう言い返すと、マクギリスはすぐに答えた。

 

「彼女は・・・私の予想が外れていないのであれば、かつて“オリジナルの阿頼耶識“の研究員にいたメンバーの一人の筈だ」

 

「は?」

 

ユージンはマクギリスの言葉に素っ頓狂な声を上げる。

 

「いや、おかしいだろ?だってよ、そもそも俺らの時代なんざ、そもそもこの時代にない筈だろ!?」

 

post disasterと呼ばれた歴史はこの世界には存在しない。厄祭戦という戦争もおとぎ話でしかない。

だがマクギリスは戯言ではないと言いながら、更に言う。

 

「ああ、確かに私もそう思っていた。“コレが見つかるまでは“の話だがね」 

 

そう言って鞄の中からタブレット端末を取り出す。

 

「始めは私もおかしいと考えていた。だが、この“結果記録“は阿頼耶識とガンダムフレームを詳しく理解していないと、この結果には辿り着かない筈だ」

 

マクギリスはそう言って、端末をユージンに渡すと、ユージンはその画像に視線を向けた。

 

「─────」

 

それは一種の記録のようなものなのかもしれない。

だが、そこに書かれていた内容がユージンにとっては衝撃だった。

 

ガンダムフレームと呼ばれる機体には、搭乗者が気を失っている状態、または、死亡する事で阿頼耶識とのリンクが断たれると、その意識が機体に取り込まれるということが分かった。

なら、その意識を機体から引きずり出す事も可能だろう。

シンにもう一度会うためにもうなりふりを構ってはいられない。

 

そんな内容に、ユージンは冷や汗を流す。

 

「いや、でもよ、流石にそんなことあるわけねえだろ。モビルスーツに意識を取り込まれるってよ。それにその村雨令音とどう繋がる────」

 

と、そこまで言った所で、ユージンは口を閉じた。

そう言えば────ドルトコロニーを出て、地球に向かうまでの間、三日月の奴が何か言っていたような────

 

俺以外にバルバトスに乗せないでね。他の奴が乗るとバルバトス、機嫌悪くなるし

 

その時の三日月はまるで、バルバトスに自意識があるように言っていた気がする。

そして雪之丞が言っていた言葉も

 

意識がねえ状態で阿頼耶識を外すと何が起こるか分かんねえからな。絶対に外すなよ。

 

何が起こるか分からない。つまり、それが意識を機体に持っていかれると言うことなのだろう。

 

「おい、アンタ」

 

「なにかな」

 

ユージンの言葉にマクギリスは反応する。

 

「なんで、その村雨令音って奴に気を付けろってつったんだ?他に何か理由があんだろ」

 

ユージンの言葉にマクギリスは頷いた。そして────

 

「ああ。ここからは完全に私の予測になるのだが、まずは彼女が三日月・オーガス・・・五河士道をシンと呼んでいたこと。そしてもう一つが────」

 

それがマクギリスが村雨令音を怪しいと踏んだ答えだった。

 

「バルバトスが彼女に反応したと言う事だ」




作者「どこで、そんなの手に入れたのよ?」

マクギリス「ガンダムフレームについて少々調べただけさ」

作者「どこでだよ」

マクギリス「企業秘密だ」


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第三話

投稿!!

しばらくは日常編。
それから、七罪かな?

ボクの脳量子波を乱すなぁ!!

ドモンにキレるリボンズ


「士道よ。今日の晩は私達八舞が作るが故に、先に風呂に入ったらどうだ?」

 

士道は美九が帰った後、家に戻って皆の晩飯を作ろうと考えていた時、耶俱矢と夕弦が家の前におり、士道を見つけるなりそう言ってきた。

そんな耶俱矢達に士道は言った。

 

「別に良いよ。今日は俺の当番でしょ。耶俱矢達は明日じゃん」

 

そう言う士道に、夕弦は唇を開く。

 

「溜息。士道、私達は前に言いました。今、一番大変なのは士道だと」

 

「ならば、全て自分で片付けるのではなく、我等にも手伝わせろと言う訳だ」

 

そう言う二人に、士道は軽く息を吐く。

そして二人に言った。

 

「・・・分かった。じゃあ、晩飯は二人に任せる」

 

別に二人の料理は不味い訳ではないし、むしろ美味いくらいだ。自分の仕事を取られるのは少々アレだが、好意を無駄にするほど、士道もバカではない。

 

「ふ、それで良いのだ。ゆっくりと身体を休めるがいい」

 

「同意。後は任せてください」

 

そう言って、二人は先に家の中へと入っていく。

 

「・・・風呂入るか」

 

やることが無くなった士道はそう呟き、脱衣所へと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「はぁ・・・」

 

琴里は溜息をつきながら文章データを机の上に置く。

目を押さえ、ソファへと身体を預ける。

本来ならこのような仕事は、他の機関員に任せておくべき雑務である。だが謎多き〈ファントム〉の件に関してだけは、直接対面したことがある琴里が手がけなければならないのだった。

 

「美九に与えられた紫色の霊結晶・・・〈ファントム〉は一体いくつの霊結晶を持っているのかしら。・・・もし無尽蔵にそれを創り出せるとしたら────」

 

文面を目で追いながらコンソールを弄り、ぶつぶつと独り言を呟く。

と、その瞬間────

 

「ひゃっ!?」

 

不意に頬に冷たいものが押し当てられ、琴里は甲高い声を発した。

 

「な、何よ、一体・・・!」

 

驚いて顔を上げると、いつの間にそこに現れたのだろうか、真那が、缶コーヒーを差し出しながら立っているのが見て取れた。

 

「熱心なのはいーですけど、ちょっとばかし根を詰め過ぎじゃねーですか?」 

 

言って、ニッと微笑んでくる。

 

「・・・言われなくてもわかってるわよ」

 

憮然とした調子でそう返し、差し出されたコーヒーを受け取る。

 

「で、なんでこんなところにいるのかしら、あなたは」

 

「へ?」

 

琴里は半眼を作りながら缶コーヒーに口をつけると、真那は不思議そうに首を傾げた。

 

「なんでって、さっき起きたばっかりですよ?」

 

「そうじゃなくて!あなた、安静にしてるように言ったでしょ!ただでさえ身体がボロボロだからお母さんの部屋を貸してあげているのに!ほら、さっさと休みなさい!」

 

琴里はテーブルをバンと叩きながら叫んだ。

 

「言ったでしょう。すぐに〈ラタトスク〉の専門機関で処置を受ければ、少しでも命を長らえるかもしれないって!なのに・・・!」

 

「い、いやまぁ、そーなんですけどね。じゃあ、私はお風呂に入って来まーす」

 

真那はばつの悪そうな笑みを浮かべて、そそくさと退散する。

 

「あ、ちょっ!?待ちなさい!!」

 

呼び止める琴里に、真那は振り返ると言った。

 

「・・・なんです?」

 

「ちゃんと、専門機関に行って、しっかり処置してもらいなさいよ」

 

「い、いやでもほら?私は私でやることが・・・」

 

「確かに狂三の調査は急務だけど、それ以上にあなたと士道の方が大変でしょ!」

 

「あ、あの、琴里さん?可愛い顔が大変恐ろしいことになってやがるんですが・・・」

 

と、そのとき。タブレットのウィンドウから音声が響いてきた。

 

『────五河司令。本部から通信が入っています』

 

「スキあり!!」

 

「あ、ちょっと!?」

 

音声と共に気が緩んだ琴里の手を振り払い、真那は脱兎の如く駆け出す。

 

「お風呂入ってきまーす!」

 

「ちょ!?お風呂入ったらちゃんと処置を受けてもらうからね!」

 

「考えておきまーす!」

 

そう答える真那に、琴里は溜息を吐く。

 

「全く・・・あの子は・・・」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「全く・・・心配し過ぎなんですよね。琴里さんは」

 

真那はそうボヤきながら脱衣所で服を脱ぐ。

琴里は善意で言っているのかもしれないが、過保護にも程がある。自分の身体は自分で大体は分かっているし、面倒だが定期的に機関にも行っている。

とはいえ、身体を動かしていないと落ち着かないので、真那としてはありがた迷惑と言った所だった。

 

「・・・はあ、お風呂に浸かってゆっくり休みましょう」

 

真那はそう言ってバスタオルを手に取り、風呂場の扉を開けた。

 

「あれ?真那、もしかして風呂?」

 

「────────」

 

そこには背中を此方へ向け、髪を洗っていた士道の姿があった。




作者「これは、三日月のラッキースケベ?」

三日月「さぁ?」

なお、案として十香も突っ込むか迷いました



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第四話

投稿!!

続きです!どうぞ! 
鉄血のオルフェンズ特別編も四月五日にテレビでやるみたいですね!!楽しみです!

その機体は、モビルワーカー?鉄華団のよりデカくて強そうだね

ヒルドルブをみた三日月



「な、なっ!?に、兄様!?」

 

真那は扉を閉め、顔だけ覗かせながら士道を見る。

 

「なに?」

 

士道は顔を赤くして覗く真那に顔を向けながらそう言うと、真那は唇を開く。

 

「なんで今、ここにいるんでやがりますか!?」

 

確か今日は士道が調理番であり、この時間にお風呂に入っている筈はないのである。

 

「耶俱矢達が晩飯作ってやることがなくなったから、風呂入ってる」

 

そう言ってお湯を頭にかけて泡を落とす。

肌に貼りついた髪がなんともいえない色気を醸し出すが、真那は首を振って言った。

 

「じゃ、じゃあ兄様が出るまで私は外にいるんで・・・」

 

そう言って扉を閉めようとする真那に対して、士道は真那に言った。

 

「別に入ればいいじゃん」

 

そう言ってお湯を満たした浴槽に士道は身体を浸からせる。

 

「本気で言ってます!?」

 

全く気にしていないように言う士道に真那はそう言い返すが、たがもう服を脱いで洗濯機の中に掘り込んでしまったので、待つとなるとこの状態で待たなければならなくなる。

 

「・・・・・絶対にみねーでくださいね」

 

「分かった」

 

真那は恐る恐ると浴室の中に入りながら、お湯を桶に入れて身体にかけると、背中を向けている士道の後ろへ自身の身体を滑り込ませた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

(ゆっくりと出来るわけねーんですけど!!)

 

そう心の中で叫ぶ真那は顔を赤くしながら、士道の背中をまじまじと見つめる。

鍛えられた筋肉質の身体に、背中に埋め込まれた三本の阿頼耶識のピアスがかなり異質に目立っている。

そんな士道の背中を見ながら、真那は言った。

 

「兄様・・・少し聞きてーことがあるのですが・・・」

 

「・・・なに?」

 

少しだけ顔を動かしながらそう返事を返す士道に、真那は言った。

 

「兄様の・・・その阿頼耶識でしたっけ。それは手術でつけたものだって聞いたのですが・・・」

 

「・・・誰から聞いたの」

 

「えっと・・・琴里さんやユージンさんから」

 

「・・・そっか」

 

士道は真那の言葉に短く答える。

そんな士道に真那は言った。

 

「その手術を受けたら、私も強くなれるんですかね」

 

そうボソリと言う真那に、士道は言う。

 

「止めといたら?俺だってそうするしか他になかったから阿頼耶識の手術を受けただけだし。真那は今のままでも十分やれてるでしょ」

 

そう言う士道は言葉を更に続ける。

 

「俺が始めて手術を受けた時はさ十人いたんだけど、四人失敗して下半身が動かなくなったか、死んだんだよね。失敗した奴はそのまま捨てられたけど」

 

「え?」

 

士道の口から溢れた衝撃の言葉に、真那は顔を上げる。

 

「俺達は運が良かっただけ。だからそんなのに頼らなくても、真那はシノよりは強いし、無理して強くなる必要はないよ。俺が皆を守ればいいだけの話だし」

 

士道はそう言って立ち上がると、そのまま浴室から出ていった。

 

「・・・兄様」

 

士道が出ていった後、真那は湯船に全身を浸からせながら、士道が言った言葉が真那の胸内に渦巻いていった。

 




今思うと、阿頼耶識って一種の強化人間ポジションだよなぁ

ハッ!?だからなのか!?

三日月、オルガ死亡ポジションだったのは!?


ELS刹那「ロックオン・・・俺は変われたか?」

ニール「変わりすぎだろ!?誰が人間やめろって言ったよ!?」


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第五話

投稿!!

俺は俺の出来ることをやるだけだ

三日月・オーガス


十月十五日、日曜日。街の装飾がハロウィンムードに染まりきった頃。士道と十香と四糸乃は夕食の買い物をしに商店街へ足を運んでいた。

 

「おお・・・シドー、あれはなんだ?」

 

言いながら、十香は雑貨屋の軒先に飾ってある巨大なカボチャのお化けを指差す。

 

「・・・カボチャ?」 

 

『んー、でも、顔がついていてなんか不気味だよねー』

 

「ああ、アレ?確かハロウィンって言うイベントで飾るカボチャだったはずだけど」

 

「ハロウィン・・・ですか?」

 

四糸乃は首を傾げながら士道の顔を見る。

 

「なんか、海外の祭りって感じ」

 

『へぇー!なんか楽しそうじゃーなーい?』

 

よしのんの言葉に、十香も頷く。

 

「うむ!楽しそうだな!」 

 

そう頷く十香に、士道は口を開いた。

 

「んじゃ、今日の晩メシはカボチャにしようか。作るの夕弦達だけど」

 

「・・・うむ、そうと決まれば行くぞ!シドー!」

 

言って、十香が八百屋の方を指差し、歩幅を大きくして歩いていく。

 

「あ、十香さん・・・待ってください・・・!」

 

と、四糸乃が言ったところで、十香は道の脇から出てきた人影にぶつかって、その場に尻餅を突いてしまった。

 

「うぬっ!」

 

「おっと・・・」

 

『もー、十香ちゃんたら、言わんこっちゃないよー。大丈夫?』

 

「む・・・うむ」

 

よしのんはそう言いつつ、十香に手を伸ばす。

士道は、今し方十香がぶつかってしまった人影のほうへと視線を向けた。

そこにいたのは、車椅子に座った五十代の外国人男性と、それを押す二十代半ばくらいの眼鏡をかけた女性だった。

 

「大丈夫?アンタ。怪我はない?」

 

そう言う士道に、男性は柔和そうな微笑を浮かべて首を振り、顔に似合わぬ流暢な日本語を発してきた。

 

「いや、こちらこそすまなかったね。大丈夫かい、お嬢さん」

 

「うむ、大事ないぞ」

 

「それは何より」

 

おどけるような調子で男性が言う。

と、男性はそんな士道達に口を開く。

 

「そういえば、一つ聞きたいことがあるんだ。君たち、市民病院の場所を知らないかい?」

 

「病院?道案内いる?」

 

別にそこまで遠い訳でもないし、ぶつかった謝罪も含めて道案内くらいしても構わないだろう。

 

「すまないね。では、お願いしようかな」

 

「いいよ、これくらい。で、アンタはなんて言えばいいの」

 

「ああ、ボールドウィンとでも呼んでくれ。こちらはカレン」

 

言いながら、男性────ボールドウィンが、車椅子を押して歩く女性を親指で示す。するとカレンと呼ばれた女性は「どうも」とだけ言って再び無言に戻った。

淡いノルディックブロンドに、碧眼。間違いなく初対面であるはずなのに、士道は何処かで見たことがある。

 

「・・・・・」

 

DEMにいたエレン・メイザースとよく似ているが、髪の長さや性格、そして匂いが違ったので、士道は違うと判断した。

 

「どうかしたかね?」

 

「別に。なんでもないよ。“ボードウィン“の人」

 

「ボードウィン?」

 

ボールドウィンは目を丸くしながらそう言うが、士道は気にせずに歩き始める。

 

「そう言えば、君たちの名はなんて言うんだい?」

 

士道はボールドウィンの言葉に、足を止めて言った。

 

「五河士道」

 

「私は夜刀神十香だ」

 

「・・・四糸乃・・・です」

 

『よしのんだよー。よろしくねー』

 

士道達がそう言うと、ボールドウィンは機嫌良さそうにうなずいた。

 

「うむ。異国の地で君たちに出会えたことを神に感謝せねばならないな」

 

そう言うボールドウィンに、士道は気にすることはなく、足を進め始めた。

と、そんな士道の後ろで、ボールドウィンは十香達に視線を向けた。

 

「君たちは、士道くんと出会ってからどれくらいになるんだい?」

 

「む?そうだな・・・大体半年くらいだ」

 

「わたしも・・・それくらい、です」

 

「私とシドーは空間震のときに────」

 

そう言いかける十香に、士道は言った。

 

「十香と四糸乃とは、シェルターで会っただけだよ」

 

「そうか。それは運命的だ」

 

ボールドウィンがゆっくりと、何か感慨深そうに息を吐いてから、言葉を続ける。

 

「十香さん。四糸乃ちゃん。今、君達は幸せかい?」

 

「ぬ?」

 

「・・・えっ?」

 

急な質問に、二人は目を丸くする。しかし十香と四糸乃は怪訝そうな顔もせず、大きく首を前に倒した。

 

「うむ、とても幸せだぞ!」

 

「はい、とても幸せです」

 

「そうかい」

 

ボールドウィンはそう言って、優しげに微笑んだ。

そして、前を歩く士道に言った。

 

「君も、彼女達を“幸せにしてあげなさい”」

 

ボールドウィンのその言葉に、士道は当たり前だと言わんばかりに口を開いた。

 

「“そんなの分かってるよ“」




折紙「・・・・・」

作者「あのー・・・なんでリコリス使っているんです?折紙さん?」

折紙「私の出番がない事に貴方に怒りを感じている」

作者「いや、三日月と敵対行動しちゃった貴女の責に──」

此処から先は焼け焦げて読めない


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第六話

投稿!!

変な奴がきた

ゲドラフを見た三日月


────ウウウウウウウウウウゥゥゥゥ────

 

不意に。

商店街の各所に設えられた街頭スピーカーから、けたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「・・・・!」

 

士道が顔を上げるのと同時、スピーカーから避難を促すアナウンスが流れ始め、辺りにいた買い物客たちが、慌ただしく最寄りのシェルターへと向かっていった。

だが、士道は皆とともにシェルターに避難するわけにはいかなかった。

 

「十香達はすぐに避難。俺は行くから」

 

士道はそう言って、ボールドウィンに視線を向ける。

 

「アンタも、十香達と避難したら?」

 

「ああ、そうするとしよう。君は?」

 

ボールドウィンの言葉に、士道は言った。

 

「俺には、まだやることがあるから」

 

士道はそう言って歩きだそうとすると、唐突にグイッと左手を引っ張られる。

 

「?」

 

士道はその感覚に目を向けると、四糸乃が士道の左手を握っていた。

 

「・・・どうしたの?」

 

士道の言葉に、四糸乃が小さな声で言った。

 

「・・・ちゃんと、帰ってきてください」

 

震えた四糸乃のその手を士道は一度見てから、短く答えた。

 

「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから」

 

士道は四糸乃にそう言って、その手を優しく解く。

そして十香達から視線を外すと、〈フラクシナス〉と通信を取るためにポケットからインカムを取り出して右耳に装着した。

 

◇◇◇◇◇

 

「これから、いかが致しますか。───五河司令から何度か連絡が入っているようですが」

 

五河士道、夜刀神十香、四糸乃と別れてすぐ、車椅子を押すカレンが問いかけてくる。ボールドウィンはそちらを一瞥するように視線をやってから前方に向き直った。

 

「はは、心配をかけてしまったかな。とはいえ・・・空間震となると〈フラクシナス〉も忙しかろう。とりあえずは大人しく避難しておくさ。────ああ、それと、確か〈ベルセルク〉の折に捕らえたDEM社員がいるという話はだったね。せっかく日本まで来たんだ。少し話させてもらおうじゃないか」

 

「わかりました。手配しておきます」

 

淡々とした調子でカレンが言ってくる。ボールドウィンは小さく首肯した。

 

「────それで、彼らに異常は?」

 

「見る限り、今の所は問題はないかと。〈ハーミット〉は多少揺れてはいましたが、今は非常に安定しています」

 

「そうか。それは何よりだ」

 

言って、ふうと息をはく。

先月。『反転』したという精霊に、天使と機械の化け物を顕現させたという少年、五河士道。

無論、検査結果の報告は受けていたが、やはり直接会ってみなければ懸念は拭いきれなかったのである。

だが、それも杞憂のようだった。今し方耳にした二人の弾むような声を思い起こし、唇の端を緩める。

 

「───日本に来てよかった。彼女は、本当に幸せそうだったね」

 

そう言って、彼────エリオット・ボード・ウッドマンは、小さく微笑んだ。




野生の目覚め?


耶俱矢「もうだめ・・・ほんとに死んじゃう・・・」

琴里「お菓子・・・食べていい?」

三日月「昨日ダイエットするって言ってたじゃん」

十香「うううううゥゥゥ」

琴里「な、なんか十香が獲物を狙う目になってない?」

真那「空腹で野生の本能に目覚めたんじゃないですかね」

四糸乃「・・・・・」

夕弦「・・・・・」

美九「・・・・・」

ユージン「こっちの三人も野生に目覚めそうだな」

三日月「ダイエットって苦行なんだね」

琴里「そりゃそうよ・・・てか、なんで三人は平気そうな顔なのよ?」

三日月、真那、ユージン「「「慣れてるから」」」

琴里「あっそ」

続く?


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第七話

投稿!!


腹減った。なんかある?

三日月・オーガス


「なんだ?ここ」

 

〈フラクシナス〉から空間震の発生現場に転送された士道は、辺りに広がる光景を見て、そう呟いた。

直径一キロメートルに及ぼうかという広大な範囲が、綺麗に整地されたかのように円状に削り取られている。

だが、今士道が見ていたのは、そんな災害の爪痕ではなかった。

空間震の消失痕の外縁南側。そこに、なんとも異様な建造物が立ち並んでいたなのである。

空中半ばで途切れたジェットコースターのレールや、馬の首がなくなったメリーゴーランド。ひび割れたコーヒーカップに、半壊状態になったミラーハウス。

どれも錆び付き苔生しており、先程の空間震でこうなったとは思えなかった。

士道が転送装着で送られたのは、天宮市の外れに位置する遊園地の跡地だった。

正式な名前は分からない。近隣住民の間でも「おばけランド」としか呼ばれていなかった。三十年前の南関東大空災をぎりぎり免れた施設らしいが、当然ながら災害後は来客数が激減────ほぼ皆無になり、瞬く間に廃園となったという話を耳にしたことがあった。

今回の空間震においても、あくまで被害範囲に遊園地の敷地が重なっていただけで、錆びたアトラクション等はそのまま残っていた。

それが夕暮れ時の時間帯とも相まって、なんとも不気味な光景を作り出している。

 

『出現した精霊は既に空間震発生ポイントから西に移動しているわ。すぐにASTも現場に到着するはず。余計な茶々を入れられる前に接触してちょうだい』

 

「わかった」

 

どうせやることは変わらない。士道は廃墟と化した遊園地に足を踏み入れた。

だが、すぐにその足を止める。

 

「・・・は?」

 

士道はその光景を見て、そう呟いた。

ある一定の地点から、廃墟と化した遊園地が、デフォルメされたゴシック建築や、十字の墓標が並ぶ、なんとも悪趣味な空間が広がっていたのである。

 

「琴里」

 

『────ええ。微弱ながら、周囲に霊波反応があるわ。詳しいことはわからないけれど、恐らく精霊の能力が関係しているんでしょう』

 

その異様な光景を眺めながら士道は足を進めた。

────と。

 

「あらぁん?」

 

士道は声がした方へと、目を向けた。すると目の前に聳えた教会の屋根の上に、変わったシルエットが見受けられた。

オレンジ色の夕日を背にしながら、十字架の上に一人の女性が腰かけている。

逆光のためその表情までは詳しく見えないが────彼女が特徴的な帽子を被っていることははっきり見て取れた。

つばの広い、先端の折れた円錐。

そう。それはまるで────おとぎ話の中に出てくる『魔女』を思わせた。

 

「うふふ、珍しいわね、こちらに“引っ張られたときに、AST以外の人間に会うだなんて」

 

精霊はくすくすと笑い、ぴょんと十字架から飛び降りる。

そしてそのままふわふわと空中を漂いながら、士道の目の前に降り立った。

夕焼けのような橙色と、夜空のような黒で構成された霊装を纏った、長身の女性である。

 

「・・・・?」

 

彼女を目にした瞬間、士道は何か違和感を感じた。

バルバトスは“コイツは違う“と言っている。だが、その違和感の根本が分からないまま彼女を観察していると、精霊は艷やかな長い髪の合間から、エメラルドとも見まごう双眸が、興味深げに士道を見つめていた。

 

「ふぅん・・・?」

 

精霊が、士道を値踏みするように顔を近づけてくる。

 

「なに?」

 

そんな士道の反応に、精霊は再びくすくすと笑った。

 

「ふふっ、そんなに睨まなくても、取って食べたりしないわよ」

 

精霊はそう言って、片手を伸ばし、くいと士道の顎を持ち上げてきた。

 

「へぇ・・・なかなかカワイイじゃない。どうしたの、僕?確か私が現界するときって、こっちの世界には警報が鳴っているんじゃなかったっけ?」

 

その言葉に、士道は言った。

 

「・・・別に、この辺殆ど知らなかったからシェルターに行けなかっただけだよ」

 

そう言う士道に、精霊は目を見開いた。

そしてほんのりと頬を染めながら、ニッと唇の端を上げてくる。

 

「ふぅん・・・そうなの。お名前は?」

 

「士道だよ。五河士道」

 

「士道くんね。うふふ、かわいい名前」

 

士道が言うと精霊はふふっと可愛らしく微笑んでみせた。

 

「私は七罪。まあ────あなたたちには〈ウィッチ〉って呼ばれているみたいだけど」

 

七罪はそう言って、士道に笑みを返した。




耶俱矢「お腹すいた!!このままじゃ餓死するってば!!」

美九「騒ぐともっとおなかが減りますよー・・・」

夕弦「同調。・・・ですが、流石にこれ以上誤魔化すのは無理かと」

耶俱矢「何が誤魔化すのが無理なのよ」

真那「私もお腹が・・・夕弦さんは鉄拳制裁予告しているんじゃないです?」
 
琴里「恐ろしいこと言うわね・・・」

三日月「大丈夫?これ」

耶俱矢「・・・流石にもう限界。食パンあるけど食べる?なんか緑っぽくなってるけど」

ユージン「ばっ・・・耶俱矢!?それはやめとけ!」

三日月「そろそろ皆ヤバいから、メシ作るね」


十香と四糸乃はダウンしてます


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第八話

投稿!!

書いては直し、書いては直し、の繰り返しで中々進みませんでした。
来週からは投稿頻度がちょっと落ちます。四月の頭まで

ボクの脳量子波を乱すなぁ!!

ドモンにブチギレるリボンズ


「ねえ、士道くん。お姉さん、聞きたいことがあるんだけど、一つ質問してもいいかなぁ?」

 

「あ?まあ、いいけど」

 

士道は困惑した顔をしながら頷くと、七罪は片手で色っぽく唇を撫でながら微笑んできた。

 

「士道くん、私のこと・・・綺麗だと思う?」

 

「は?」

 

士道は、予想外の質問に目を丸くした。

何か裏でもあるのではと考えた士道だが、別に気にするほどでもないと決め、士道はその口を開いた。

 

「まあ、綺麗なんじゃない?」

 

「!やっぱりぃ!?」

 

すると七罪はパァッと表情を明るくし、頬に手を当てて嬉しそうに身体をくねらせた。

 

「ねぇ、ねぇ、士道くん。具体的には?お姉さんのどんなところが綺麗?」

 

「は?なに?いきなり」

 

不意にそう言ってくる彼女の勢いに士道は押されながらも、そう言い返す。

 

「ねえねえ!応えて!」

 

目をキラキラさせてくる七罪に士道は引きながら口を開いた。

 

「そんなこと言っても俺、何処がどうとか良く分かんないけど。でも全体的に綺麗なんじゃない?」

 

そう言う士道に、七罪は目を丸くする。

そして七罪は言った。

 

「もしかして、あまりそう言うのに興味がなかった?」

 

「まあ、うん。でも綺麗か綺麗じゃないかって言われたら綺麗だって答えると思うよ。他の奴も」

 

士道がそう言うと、七罪は笑う。

 

「なにそれ」 

 

でも言われて気分は良かったのだろう。彼女は鼻歌を歌いながら士道の前を歩きながら足を進める。

そしてその上機嫌な鼻歌が止まった。

七罪の長い髪とつばが広い帽子で顔は見えなかったが、彼女が一人ごとのように呟いた言葉が、耳に入った。

 

「・・・やっぱり、“この私“が・・・綺麗よね」

 

「・・・・・?」

 

士道は眉根を寄せる。一体それはどういうことだろうか。

だが、士道がそんな疑問を発するより早く、七罪が後方を振り向いた。

 

「あらぁ・・・?」

 

「・・・・・?」

 

士道は七罪の視線を追って顔を上にやり───その理由に気づく。

夕焼けに染まる赤い空。そこに、機械の鎧を纏った無骨な影が幾つも確認出来たからだ。

 

「またあいつらか」

 

そう。陸上自衛隊対精霊部隊。精霊を倒すことを目的とする、〈ラタトスク〉とは正反対の組織である。

だが。士道は小さく眉をひそめる。その中に、いつも先陣を切る折紙の姿が見当たらなかったのだ。

 

「士道くん、ASTを知ってるの?」

 

「まあね」

 

『士道!逃げなさい!』

 

琴里の叫び声が右耳の鼓膜を震わせると同時、空が瞬いたと思うと、夥しい数のミサイル群が士道達目がけて降り注いできた。

そんなミサイル群を七罪は落ち着いた様子で微笑み、右手を高く掲げてのどを震わせた。

 

「───さあ、仕事よ、〈贋造魔女〉」

 

七罪がそう言った瞬間、虚空から一本の箒のようなものが現れ、七罪の右手に収まった。

箒のような形状をしているものの、先端部が、金属か宝石でも散りばめられているかのように幻想的にキラキラと輝いている。

恐らく───天使。精霊が持つ、絶対の武器。

七罪がその箒をくるりと一回転させ、柄尻を地面に突き立てる。すると箒の先端部がぶわっと展開し、まるで夕日を反射するかのように目映い光を放った。

次の瞬間───

ポンッ!というコミカルな音を立てて、士道と七罪のもとに迫っていた何発ものミサイル群が、全てデフォルメされたニンジンのような形に変貌した。

 

「・・・おー」

 

その光景を見て士道は目を丸くすると、ニンジン型のミサイルが地面に着弾し、まるでギャグ漫画のようなコミカルな爆音を上げる。

 

「へぇ」

 

「ちょっと待っててね、士道くん」

 

七罪はそう言うと、呆気に取られる士道の前で箒に腰掛けると、そのままアクロバティックな軌跡を描きながら空を飛んでいった。

 

「・・・・!来たわよ!撃て!」

 

それに反応したASTの隊長が指示を発する。空に展開した魔術師たちが一斉に引き金を絞り、七罪目がけて夥しい量の弾薬をばら撒いた。

しかし七罪は別段慌てた様子もなく、箒に乗ったまま空を縦横無尽に駆け巡ると、再び箒の先端部分を展開させ、目映い輝きを放った。放射状に広がった光が、放たれたミサイルやAST隊員たちを包み込んでいく。

すると、次の瞬間。

 

「な・・・何よこれ・・・っ!?」

 

今度はミサイルだけでなく、光に包まれた隊員たちの姿までもが、一瞬前とはまったく違うものに様変わりしていた。

ウサギや犬が、パンダなどの、可愛らしいキャラクターに変身させられていたのである。

 

「うふふっ、みんな、そっちの方がかわいわよ?」

 

七罪は言って笑うと、空中で旋回して士道のもとに舞い戻ってきた。

 

「さ、一丁あがり。今のうちにあの人たちのいないところまで逃げちゃおうと思うけど、士道くんも一緒に来る?」

 

「・・・いいの?」

 

「もちろん。───もっとお姉さんを褒めてくれるならね」

 

言って、七罪が可愛らしい仕草でウィンクまでしてみせる。

が───そのとき。上空から、誰かが放ったニンジン型のミサイルが二人のもとに迫り来て、先程と同じようにコミカルな音を立てて着弾した。

 

「・・・チッ」

 

本来のミサイルとは比べるべくもない小さな威力。だが至近距離で爆発したためか、辺りに凄まじい砂埃が巻き起こった。

と。

 

「ふ・・・ふ、ふえっくしょん!」

 

その砂埃に鼻がくすぐられたのだろう、七罪が大きなくしゃみをする。

すると、士道の視界の端で、パァッと光り輝くのが見えた。そう。まるで、七罪が光を放っているかのように。

そして光が収まると、すぐにもう一度、士道の後ろから明るく染まった。

 

「・・・平気?」

 

そう言って振り向くと同時に、右耳につけていたインカムから、緊急事態通告を示すアラームが鳴り響いた。

 

『士道!気を付けなさい!七罪の機嫌数値が急降下しているわ!』

 

「は?」

 

士道は琴里の言葉にそう返事を返す。すると、そこで辺りを覆っていた砂煙が晴れ、七罪の姿が再度見えるようになる。

───なぜか顔を真っ赤に染め、憎々しげに士道の方を睨みつけてくる七罪の姿が。

 

「・・・見たわね?」

 

「なにが?」

 

先ほどまでの朗らかな七罪からの突然の変貌に士道も眉を潜める。

 

「惚けないで!今、私の───私、の・・・!」

 

七罪は言葉の途中でギリッと奥歯を噛みしめると、手にした箒にまたがり、そのまま宙に浮いた。

 

「見られた以上、ただで済ますわけにはいかない・・・!覚えておきなさい。アンタの人生、おしまいにしてやるんだから・・・!」

 

そうしてビッと士道に指を突き付け───七罪は、凄まじいスピードで空の彼方に消えていった。

 

「なんだ?・・・一体・・・」

 

一人残された士道は、そう呟きながら空を見上げた。




七罪「アンタの人生!おしまいにしてやるんだから!」

作者「じゃあ、七罪。鉄血世界に行ってみる?」暗黒微笑


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第九話

投稿!!

馬鹿は来る!

それが仕事だ。

トロワ・バートン ミリアルド・ピースクラフト



十月十六日、月曜日。

学校に登校した鳶一折紙は、自分の席に腰掛けながら、小さく息を吐いた。

 

「・・・・・」

 

肩口をくすぐるくらいの髪。華奢な体軀。そして、表情の見取れない人形のような顔。

しかし彼女と親しい一部の人間であれば、今の折紙の顔に、微かに陰鬱そうな色が浮かんでいることに気づいたかもしれなかった。

理由は単純なものである。

昨日の夕方。天宮市近郊に空間震の予兆が観測され、辺りに避難警報が発令された。

即ち────精霊の現界。AST隊員は速やかに出撃し、精霊を攻撃した。

しかしAST隊員の実戦部隊に数えられるはずの折紙は、警報に従って皆と一緒にシェルターに避難し、ただ精霊の脅威が去るのを待っていることしかできなかったのである。

とはいえ、それも仕方のないことではあった。

先月、折紙は格納庫に安置されていた討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉を無断使用して友軍を攻撃した挙げ句、非正規の装備を纏ってDEMの魔術師に牙を剥いたのである。

その結果、処分が決定するまでの間、折紙は軽い謹慎状態となり、ASTのあらゆる装備の使用が禁じられていたのである。

無論、本来であれば問答無用で懲戒の上、いくつもの刑事罰が言い渡される事態であった。

だが、今回の件に関してはDEMの理不尽な行動が裏側にあったということで、自衛隊内にも折紙を擁護する声が少なくなかったため、そういった面では、まだ幸運に恵まれているとも言える。

だが、折紙の気持ちをざわつかせる事象は他にもあった。

 

「士道・・・」

 

折紙は誰にも聞こえないくらいの小さな声でその名を呟き、右方に目をやった。

そう。折紙の右隣の席が、まだ空いたままだったのである。

まだ朝のホームルームまでは時間がある。別に士道が欠席と決まったわけではない。

だが・・・折紙には一つの懸案事項があった。

無言で席を立ち、士道の席────のさらに右隣の席の前に立つ。

 

「ぬ?」

 

すると、そこに座っていた少女が折紙の存在に気づいたのだろう、訝しげな声を発しながら、不快そうに目を向けてきた。

 

「・・・なんだ貴様、何か用か?」

 

少女────夜刀神十香が、折紙を睨むように視線を寄越しながら言ってくる。

折紙の懸念事項とはこの少女の存在だった。なんとも不愉快なことにこの女、住まいが士道の家の近くであるため、一緒に登校してくることが多いのである。

 

「士道は、まだ来ていないの?」

 

折紙が問うと、十香はムッとした表情を作ったのち、すぐにそっぽを向いた。

 

「ふん!士道は今日は用事があるから少し遅れてくるだなんて、貴様には教えてやらん!」

 

「・・・・・」

 

どうやら、士道は今日用事で少し遅れてくるらしい。

そうとわかれば、長居は無用である。折紙は無言で自分の席に戻った。もとより、必要に迫られていないのに夜刀神十香と会話をする理由もない。

と、そのとき。

教室の扉がガラっと開いたかと思うと、一人の少年が入ってきた。

中性的な顔立ちに、優しそう(?)な双眸。そう。五河士道だ。

 

「!おお、シドー!」

 

折紙に不機嫌そうな目を向けていた十香が表情を一変させ、弾んだ声を上げてその場から立ち上がる。

すると士道はそれに気づいたように眉をぴくりと動かすと、十香の方に足を向けた。

 

「早かったではないか!用事は終わったのか?」

 

「“ああ、おかげさまでな。それよりちょっといいか“?」

 

「・・・・・?」

 

折紙は士道の言葉使いに眉をひそめる。

士道は夜刀神十香に対して、あんな態度だっただろうか?

士道は自分が大事にした人は、素っ気ないが優しいおおらかな態度を決して崩さない人だった筈だ。

それに十香も気づいたのだろう。首を傾げながらも、士道に言った。

 

「ぬ?なんだ?」

 

すると士道は手にしていた鞄を床に放り、自由になった左手で、むぎゅう、と十香の胸を鷲掴みにした。

 

「む・・・?ん・・・・」

 

十香は一瞬何が起こったのか分からないといった様子でポカンとし────

 

「なッ、なななななななななななな・・・何をしているのだーっ!?」

 

一拍遅れて顔を真っ赤に染め、十香が拳を士道の顔目がけて放つ。

 

「おっと」

 

しかし士道は華麗な身のこなしで十香の一撃を避けると、後ろにいた人にぶつかった。

 

「あ、すみませ」

 

そう言う士道に対し、ぶつかった人物は士道に言った。

 

「・・・なあ、アンタ。“俺の顔“と同じみたいだけど────誰?」

 

「────────」

 

そこには左手をパキパキと鳴らしながら、士道は無表情でぶつかってきた士道に言った。

 




七罪終了のお知らせ

七罪「」

三日月「覚悟はいい?」 

作者「言わんこっちゃない・・・」

四糸乃「・・・・・」

作者「・・・なにしてんの?」

四糸乃「・・・な、なんでもないです・・・!」

作者「?」


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第十話

投稿!!


ガンダムシリーズの主人公で対話を拒否ったら

あっそ。じゃあ潰すね。

三日月

対話を選ばなかったのはお前達だ!!

刹那

なお刹那の場合、フルセイバーがとんできます


「な────」

 

「シドーが・・・二人?」

 

教室の中が静まりかえる。

それも無理はない。何故なら教室の扉の前に五河士道が“二人“いるのだから。

目を見開ける十香達を放っておいて、士道は先程ぶつかってきた自分を見て息を吐く。

コイツがどこの誰かは知らないが、十香に手を出したのを見たのでとりあえずコイツは叩きのめすかと考えている士道に、目の前にいる自分が口を開いた。

 

「よう“偽物”。以外と早かったな」

 

そう言う自分に対し、士道は言った。

 

「へぇ。じゃあ、偽物かどうかやってみる?・・・ユージン。ちょっといい?」

 

「あ?なんだよ」

 

と、耶俱矢達と話をしていたユージンが隣の教室から顔を出してくる。

 

「なんか、俺がもう一人いるからどっちが本物かどうかやってくれる?」

 

「・・・どういうことだよ・・・って、なんで三日月が二人もいるんだよ!?」

 

二人いる士道を前に、ユージンは驚愕の顔を作る。

だが、士道はそんなユージンに対し、言った。

 

「さっさとやって」

 

そう言う士道にユージンは息を吐いて言った。

 

「・・・んじゃ、聞くぜ?“鉄華団の団長は誰だ?”三日月なら絶対に答えられる筈だぜ」

 

そう言うユージンにもう一人の自分は口元の笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「そんなの簡単だよ。“ユージンだろ“?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

その答えに、ユージンと士道は黙った。

そして────────

 

「うし、テメエが偽物だな」

 

そう言ってユージンは先程答えた士道を見て、三日月に言った。

 

「三日月、やっちまえ」

 

「うん」

 

その言葉とともに、偽物の士道の顔面目がけて士道の拳が突き刺さった。

ゴシャア!!

明らかに人体で鳴ってはいけない音が教室に響き渡り、偽物の士道が吹き飛ばされて机に激突した。

十香達がその光景を見て顔を青くする。

そんな中で士道はじっと机の中に埋もれた偽物を見る。

 

「痛ぁ!?なにすんのよ!!容赦無さすぎじゃない!?」

 

鼻元を抑えながら涙目でもとに戻る七罪に、士道は冷ややかな目で七罪を見る。

 

「アンタが変な事するからだろ」

 

士道はそう言って、パキリと左指を鳴らす。

そして腕を掴むと、ギリギリと七罪の腕を軋ませながら力を入れた。

 

「って、ぁあああああああああ!?」

 

士道の凄まじい握力に悲鳴を上げる七罪。

 

「あいだだだだだだぁー!?腕がっ、腕がァァァァ!?」

 

もはや美女が出していい声ではないが、それほどまでに痛いのだろう。更に士道は左手に力を入れる。

 

「ァァァああああああああ!?」

 

崩れ落ちる七罪に、士道は関節技を尽かさず入れ、七罪は更に悲鳴を上げた。

 

「関節ぅ!関節が極まってぇぇえええ!?」

 

美女(精霊)を素手でボコる士道に、折紙を覗く全員が顔を引き攣らせながらその様子を見ていた。

 

◇◇◇◇◇

 

「このままじゃ済まさない・・・!絶対に一泡吹かせてやるんだから・・・!」

 

七罪は涙目で憎々しげに叫ぶと、ビッ!と士道に指を向けて、教室の窓から飛び降りていった。

 

「・・・・・」

 

なにがしたかったのか分からない七罪のその行動に、士道は溜息を吐く。今後のことも含めて、また琴里に報告をしておかねばなるまい。

しかし、士道にはそれより先にやらねばならないことがあった。

 

「シドー」

 

「「「士道」」」

 

十香と折紙、そして耶俱矢と夕弦が同時に士道の名を呼び、肩を掴んでくる。

 

「なに?」

 

士道のその言葉とともに、十香達が言葉を返した。

 

「あやつは一体何者なのだ!?」

 

「あの女は誰。どういう関係なの」

 

「教えてもらおうか!!」

 

「同意。全て話してもらいます」

 

四人の士道に向けて言われたその言葉を他所で聞いていたユージンは────

 

「・・・修羅場じゃねえか」

 

そう言って、自分の教室へと戻っていった。




デアラヒロインの過去って結構重いやつばっかだけど、それらをぶっちぎる位の三日月の幼少期や人生・・・三日月メンタルヤバない?



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第十一話

ちょっと短いですが投稿!!

アンタからは俺と同じような臭いがする

ゾルダン・アッカネンにたいしての三日月


「・・・・・」

 

士道は眠たそうに欠伸をしながら、ソファに身体を預ける。

十月二十一日、土曜日。────七罪が士道に化けて学校に現れてから、早くも五日が経とうとしていた。

あれ以来、七罪は士道の前に姿を現してはいない。空間震も起きていなければいい、〈フラクシナス〉の観測装着に引っかかった形跡もなかったのである。

なにもないことに不気味さを覚えるが、今の所何も起こっていないせいで、出来る事もできない状況であった。

 

「随分と呑気ね。士道」

 

そう言ってチュッパチャップスをピコピコと動かしながら、琴里は士道の膝の上澄ました顔で座り込む。

 

「重い」

 

「一言余計よ!」

 

士道の言葉に琴里は叫ぶ。

だが、士道は適当にいなしながら座り込んでいると、琴里はその場で立ち上がった。

 

「あの精霊────七罪が何を考えているのかはわからないけど、このまま何もせずフェードアウトってことは考えづらいわ。きっと何らかの方法で士道に接触してくるはずよ。────そして、こちらからコンタクトを取る手段がない以上、私たちはそのタイミングで確実に七罪の好感度を上げなくちゃいけないこと、ちゃんとわかってるんでしょうね?」

 

「・・・わかってるよ」

 

「どうだか」

 

士道の返事に、琴里はやれやれといった調子で肩をすくめた。

 

「まぁ。士道はそこのところちゃんとやっているのは分かってるんだけど。────ほら、士道。これ、朝ポストに入ってたわ」

 

「なにそれ?」

 

不思議そうに首を捻りながらそれを受け取る。手に取ってみると、中に何が入っているのか、厚みと重量があることが手に伝わった。

表に『五河士道様』と書かれた、白い洋封筒である。他には住所も郵便番号もなく、切手も貼られていない。

 

「手紙?」

 

「ええ。ラブレターよ。────七罪からのね」

 

「ふーん」 

 

士道な琴里の口から発せられた言葉に、なにも気にすることなく封を切る。

 

「・・・・?」

 

「・・・写真、みたいね」

 

士道の手元を覗き込んだ琴里が、怪訝そうに言う。

封筒の中には、何枚もの写真が入っていた。

精霊が写真なんてものを取って送ってくるのに若干変な感じがする士道だったが、すぐに考えるのを止める。

それに、どちらかというと今問題なのは、その写真に写った被写体の方だった。

 

「・・・これ、もしかして私?」

 

琴里は眉を潜めながら、写真を一枚摘み上げる。

 

「琴里だけじゃないよ。皆のもある」

 

写真は全部で十四枚。それら全てがどれも盗撮写真のようだった。

十香。折紙。琴里。四糸乃。耶俱矢。夕弦。美九。真那。ユージン。亜衣。麻衣。美衣。タマちゃん先生。そして────殿町。

全て、本人に気づかれないように採られた盗撮写真だ。

 

「なによ・・・この写真・・・」

 

気味が悪くなったのか、琴里は顔を顰める。一体こんなものを送りつけて、七罪は自分に何を伝えたいのだろうか。

 

「入っていたのは写真だけ?他には?」 

 

「確かめてる」

 

そう言う琴里に、士道は封筒の中を探る。

と、中にもう一枚、カードのようなものが入っていることがわかった。

それを取り出し、それに目を向ける。そこには、短い文章が記されていた。

 

『この中に、私がいる。誰が私か、当てられる?誰もいなくなる前に。  七罪』




マクギリス「おや?」

作者「しゃーないよ」


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第十ニ話

投稿!!

ウルズハントのPV.見ました?私は見ました!

流石鉄血!面白そうなPVや機体を出す!

鉄華団マークもすんげえ気になるけど・・・

では、どうぞ!


いくぞ!ミカ!

うん

オルガ・イツカ  三日月・オーガス


翌日、十月二十ニ日の午前十時五十九分。

士道は携帯電話の画面に表示された時計を見せながら、五河家の門の前に立っていた。

気持ちのいい秋晴れの日だが、さすがに半袖は肌寒いかったので、長袖の服を着た士道は空を眺める。

 

「シドー!」

 

と、時計が十一時になると同時、五河家の隣に聳えるマンションの入口から、弾んだ声が聞こえてくる。

そちらに目をやると、秋物の服に身を包んだ十香が、無邪気に手を振りながら駆け寄ってくるのが分かった。

 

「すまぬ、待たせたか?」

 

「別に。時間丁度だよ。こっちも急に呼び出してごめん」

 

「気にするな!それより、今日はどこへ買い物に行くのだ!!」

 

首を傾げつつも、十香が目をキラキラさせながら問うてくる。

 

「あー・・・じゃあ駅の方に行く?」

 

「うむ!」

 

特に考えていなかったので士道は適当にそう言うが、十香は元気よくうなずいてくる。

なんというか、士道とお出かけするのが楽しくて仕方ないといった感である。

そんな様子に士道は頭をかきながら歩き始めた。

 

『・・・シン、今日の目的を忘れずにね』

 

「・・・分かってる」

 

士道は小さな声でそう答えて、隣を並び歩く十香に目を見やった。

いつもの十香の、いつもの顔である。バルバトスも何も言ってこないし、おかしなところなどありはしない。

だが、警戒しても損はない。

そう。この十香は、もしかしたら七罪が化けている偽物かもしれないということである。

士道は十香と並んで歩きながら、左目を十香に向けて様子を窺っていた。

 

「ぬ?どうかしたのか、シドー」

 

「別に。なんでもないよ」  

 

士道はそう言って、歩みを進める。

顔や声はもとより、首を傾げる動作や、小動物のような仕草など、士道の記憶の中にある十香のものだった。少なくとも、バルバトスも反応していないのも含めて、偽物には見えなかった。

士道は十香と一緒に駅にまでやって来ると、一度携帯電話の時計を見る。

少し早いが昼飯の時間にしてその後ゆっくりと十香と駅の周りを回るのもいいだろうと考えた士道は、十香に言った。

 

「十香。先に昼飯食べてく?」

 

そう言って、通りの向こうにあるレストランに目を向ける。店名を示す看板の下に『ランチタイムバイキング開催中!』のポスターが貼ってあった。

十香はよく食べるし、こういった店だと十香も喜ぶだろうと士道は考えていると、十香は頷いた。

昼時だけあってかなり繁盛しているようだったが、幸い待つこともなくすぐに席を確保することができた。

 

「十香。先に料理取ってきていいよ。俺待ってるから」

 

「む・・・」

 

士道の言葉に、十香は一瞬笑みを浮かばせ────しかし何かを思い出したようにふるふると首を振った。

 

「私はあとでいい。シドーから先に取ってきてくれ」

 

「え?なんで」

 

「なんでもだ。さあ、早くするのだ」

 

「・・・・・?」

 

頑として譲らない十香に促され、士道は首を傾げながら席を立った。

 

「どうしたんだろ。十香」

 

士道はそう呟きながらも、様々な料理の並んでいるコーナーに歩いていった。

そして皿を手に取り、適当に料理を盛りつけて席に戻る。

今日はそこまで動いていないので腹が減っているわけもなく、士道が持って帰ったのは、サラダにそこそこの量のスープだった。

 

「ただいま」

 

「・・・・・・む」

 

士道がそう言って帰ってくると、十香は、士道が持ってきた料理をジッと眺めてから席を立った。

どうも感じが違う。十香が食事時にあんな難しげな顔をしているだなんて、どうしたのだろうか。

そんな事を考えていると、存外に早く十香が戻ってきた。手にした食器をテーブルに置き、椅子に腰掛ける。

だが、士道は十香が持ってきた料理の量を見て、眉をひそめた。

理由は単純。料理の量が、極端に少なかったのである。それこそ、士道のそれよりも、だ。

 

「十香。それで足りるの?」

 

「ぬ・・・うむ、足りるぞ。これだけあればお腹はぽんぽんだ」

 

「・・・・・」

 

十香のその言葉に、士道は目を細めた。

十香らしからぬその行動は、一つの可能性を示唆していた。だが、バルバトスは十香に何も反応を示さない。

と、その時だった。

 

くぅーという、十香のお腹から響いた。

 

「「・・・・・」」

 

士道は十香に溜息をつきながら言う。

 

「本当の事、話したら?」

 

士道のその問いに、十香はしばしの間からうなってから、観念したように顔を上げてきた。

 

「・・・昨日見たテレビで、『男よりもたくさん食べる女の子にドン引き!』というのを見てだな・・・」

 

「・・・・・」

 

「それで・・・シドーに『どんびき』というのをされたくなくて、だな・・・」

 

十香が恥ずかしそうに肩をすぼませる。十香のその本音に士道は気が抜けたようにはぁと息を吐いた。 

 

「俺は何時もの十香の方が好きだけど」

 

「!ほ、本当か!?」

 

「嘘言ってどうすんの」

 

士道が言うと、十香はハッとした様子で息を呑むと、すぐに力強く首肯して席を立った。

そして追加の皿を手にもって料理が並べられているエリアに歩いていくと、大皿に料理を満載にして帰ってきた。辺りの客やホールスタッフたちが、驚いた様子で視線を寄越している。

 

「いただきますだ!」

 

だが十香は気にした様子もなく、美味しそうに料理を食べ始めた。士道はその様子に息を吐きながら、スプーンを手に取った。




因みにもうユージンとは偽物かどうか確認をしていたりする。


三日月「ユージンが偽物かもしれないから鉄華団の名前言ってくね」

ユージン「おう、来いや!」

三日月「ガチムチ」

ユージン「昭弘だろ」

三日月「ピンク」

ユージン「シノだな」

三日月「ナラティブガンダム」

ユージン「撃っちゃうんだよなぁ!これが!・・・って違う作品のやつだろうが!?」


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第十三話

水星の魔女、ガンダムエアリアルがなんか、バルバトスとGセルフを合体させたみたいな機体だなーと思いました

ねぇ、アトラに子供の名前決めといてって言われたんだけど、何がいいと思う?
オルガが戻ったら、聞いてみる

二度と帰らないオルガを待ち続ける三日月


「いつもの十香だったな」

 

十五時十五分。自宅に戻った士道は、十香の言動を思い起こし、独り言のように呟いた。

昼食のあと、士道達は街を歩いて買い物を済ませ、その間ずっと十香と会話をしていたが────おかしな点は見受けられなかったのである。

 

「十香は違うと思うけど、アンタはどう思う?」

 

士道がインカムに向けて言うと、右耳に令音の声が返ってきた。

 

『・・・まだ何とも言えないな。とにかく、今は七罪の変身能力に綻びがあることを信じて、行動を続ける他ない。・・・と、そろそろ時間だ。二人目の調査に入ってもらうよ』

 

「次?なら次はどこに行けば────」

 

いいと言い終わる前に、令音の言葉に遮られる。

 

 

『・・・ん、シンはそこにいてくれればいい』

 

「は?」

 

『・・・タイミングよく、本人からの希望が重なってね。せっかくなので同時に消化してしまうことにしたんだ。もうすぐ着く頃だと思うが────』

 

と、令音の言葉の途中で、ピンポーンと、家のチャイムが鳴った。

 

「誰だ?」

 

インターホンの画面を見やるも、誰も映っていない。士道は首を傾げながら廊下に渡ると、玄関の方に歩いていき、ドアを開けた。

 

「誰────」

 

「バァっ!」

 

「!!」

 

ドアノブを捻った瞬間、ドアの隙間から目の前に何かが飛び出してきて、士道は『それ』に手が出る。

だが『それ』は華麗な身のこなしで携帯電話をかわすと、小さな腕を器用に組みながらぷりぷりと怒り出した。

 

『もー、士道くんたら。危ないなー』

 

よくよく見ると、それがウサギを模したパペットであることがわかる。四糸乃の友達『よしのん』だ。

しかしその姿は、士道の知る『よしのん』とは少し様相がことなっていた。

それと同時に、バルバトスの反応もいまいち良く分からない。

いかんせん反応が曖昧すぎる。

士道はよしのんに言った。

 

「ごめん。急だったからつい」

 

『気をつけてよねー』

 

なんて言って、おどけてみせる。

いやにおどろおどろしい格好をしているものの、中身はいつもの『よしのん』らしい。

そこでゆっくりとドアが開き、その隙間から恐る恐るといった様子で、少女がこちらを覗き込んできた。────四糸乃だ。

 

「ごめんね、四糸乃。大丈夫?」

 

と、開きかけたドアを大きく開くと、四糸乃の格好を見て、少しだけ目を見開けさせる。

ドアの前に立っていた四糸乃の格好が『よしのん』とおなじくらいにいつもと違うものだったからだ。

つばの広い黒いトンガリ帽子に、これまた真っ黒なローブ。右手には小さな箒まで握っている。そう────まるで士道が今探している七罪の霊装そっくりの、魔女のような格好だった。

 

「四糸乃、それ・・・」

 

士道が問うと、『よしのん』が発破をかけるように四糸乃の頬をつついた。

 

『ほらほら、四ー糸乃』

 

「う、うん・・・!」

 

四糸乃はこくりとうなずくと、意を決したように士道を見上げ、唇を動かした。

 

「と、トリック・オア・トリート・・・っ」

 

「えっ?」

 

士道は四糸乃の言葉に一瞬ポカンとなり、すぐにその意味を理解した。

 

「あ、そっか。ハロウィンの仮装だっけ、それ」

 

確かにそんな時期でもある。士道は得心がいったようにうなずいた。

 

「よしのんのそれは・・・」

 

『うふふ、フランケンシュタインの怪物だよー』

 

がーっ!と両手を上げ、『よしのん』が凄んでくる。

 

「そっか。可愛いね」

 

「・・・・・・っ」

 

士道が言うと、四糸乃が息をつまらせ、恥ずかしそうに顔を俯かせた。

と、ちょんちょん、と『よしのん』が腕をつついてくる。

 

『ねえねえ。四糸乃を褒めてくれるのは嬉しいんだけどさぁ。何か忘れてなぁい?』

 

「何か?・・・ああ、お菓子か。ちょっと待ってて」

 

そういえば、肝心なことを忘れていた。士道は上着のポケットの中をゴソゴソと漁ると、袋を取り出す。

 

「ん」

 

包装されたチョコレートを四糸乃に渡す。一昨日、マクギリスと会話した時に貰ったチョコレートだった。

これ以外だとデーツしかない。

 

「ありがとう・・・ございます!」

 

そう言う四糸乃に士道は言った。

 

「どうする?なんか食べてく?」

 

「・・・はい!」

 

四糸乃はそう頷くと、士道は家の中に四糸乃を入れる。

 

「そういえば、前にもこんなことあったよね。四糸乃が初めて家に来たとき。あのとき俺、何作ったっけ?」

 

士道はそれとなく探りを入れると、四糸乃と『よしのん』は一度顔を見合わせてから士道に振り向く。

 

「はい・・・あのときは確か・・・オムライスを、作ってもらいました」

 

言って、四糸乃がうっとりとした顔を作る。

士道はそんな四糸乃を見て軽く息を吐く。

と、顔中縫い傷だらけの『よしのん』が不満そうに言ってくる。

 

「ん?覚えてないの?」

 

問うと、『よしのん』は一瞬考え込むような仕草をしてから、ポンと手を打った。

 

『それってもしかして、よしのんが折紙ちゃん家にいたときのこと?』

 

「・・・まぁ、そうだけど」

 

士道はそう答えるが、ふと士道は疑問を覚える。

なぜ“よしのんは自分と鳶一折紙しか知らない事を知っている”?

そんな疑問を頭に浮かべながら、士道は首を捻り、キッチンへと向かった。




おまけ

真那「いや、なんです?この格好は?」

夕弦「返答。恐らくは桃太郎というものかと」

真那「いや、それは分かりますよ?というか、夕弦さん達もその格好は・・・」

耶俱矢「私が猿ってどういう事!?」

十香「ぬぅ・・・私は犬のようだが、ちょっと苦しいぞ」

夕弦「指摘。似合ってますよ」

耶俱矢「夕弦はキジでまだいいじゃん!!」

十香「シドーは?シドーは何処にいるのだ?」

琴里「あれよ」

鬼の格好(霊装)をした琴里は指差す方向には────

「・・・・・・・」 バルバトスルプスレクス

「・・・・・・・」 グシオンリベイクフルシティ

「・・・・・・・」 フラウロス

「・・・・・・・」 バエル

「・・・・・・・」 キマリスヴィダール
        ↑
    (全員鬼役です)

真那「・・・あれに勝てと?」

夕弦「返答。無謀かと」

耶俱矢「勝てる気がしないんだけど」

十香「うむ!シドーは格好良いな!」


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第十四話

投稿!!

おまけもあるよ!

なお、読むと違うのが混じってます

俺がガンダムだ

頭ガンダムの人


「はぁ・・・」

 

午後七時を回り始めた頃、士道はソファに腰を掛けながら息を吐く。

四糸乃にお菓子を作って上げて、その後にいたずらもされた士道は晩御飯を適当に作り、くつろいでいた。

ソファの上で四糸乃の事を考える。

バルバトスが曖昧な反応をした時点で、まず怪しいと思うのが四糸乃だった。だが四糸乃が七罪だと言うのなら、バルバトスはもっとはっきりと反応する筈だ。

その辺が頭に引っかかる士道は、ソファに背を預けながら天井を見上げる。

と、その時だった。

 

ピンポーンと、玄関のチャイムが鳴り響く。

 

「・・・ん?誰だ?」

 

士道はソファから身体を起こし、玄関へと足を運ぶ。そして、玄関のドアノブに手をかけてその扉を開けるとそこには────

 

「確認。時間は空いていますか?士道」

 

淡い柄の入った長袖のブラウスに黒のフレアスカートを纏った八舞姉妹の片割れ────八舞夕弦が立っていた。

 

「時間?空いてるけど」

 

夕弦のその言葉に士道はそう言うと、夕弦は後ろに隠していたDVDのパッケージを士道に見せながら言った。

 

「提案。────一緒に映画を見ませんか?」

 

「・・・映画?いいよ」

 

夕弦からの突然の訪問に足して、一緒に映画を見ようと言われた士道は、目を丸くしながらも彼女を家の中へと入れ、テレビとレコーダーがあるリビングに夕弦を連れて行きながら、士道は言った。

 

「そう言えば耶俱矢は?一緒じゃないの」

 

「返答。耶俱矢は真那達と一緒にゲームをしています」

 

「ふーん」

 

夕弦の言葉に士道は適当な反応を返しながらレコーダーの電源を入れる。

 

「で、どんな映画?」

 

「回答。これを見ましょう」

 

夕弦は持ってきたDVDのパッケージを士道に見せた。

 

「・・・アニメ?」

 

「回答。前に耶俱矢が借りてきた映画だそうです。気になったので持ってきました」

 

「へぇ。なら、それ見ようか」

 

そう言って士道はパッケージを開けると、中に入っていたディスクをレコーダーの中に入れ、そして再生ボタンを押した後、ソファに座り込む。

夕弦も士道の横へと座ると、士道の左腕を取り、そのまま身体を寄せてきた。

 

「何やってんの?」

 

「独占。今夜だけは、士道は夕弦のものです。そして、今夜だけは、夕弦は士道のものです。────そうでしょう?」

 

日頃耶俱矢と戯れている夕弦からは想像もつかない行動に、士道は小さくため息を吐く。

 

「・・・好きにしたら」

 

どうせ見終わるまで、席を立つことはないだろう。

テレビ画面にタイトルが映し出される。

その映画はバルバトスと同じガンダムと呼ばれる機体が金属生命体と対話するという内容の映画だった。

立ち位置や相手は違うものの、今の自分と重なる部分がいくつかこの映画にもあった。

士道の左肩に夕弦が体重をかける。

そうして時間が刻々と過ぎていき、そして映画を見終わる頃にはもう九時を過ぎていた。

士道は首をコキリと鳴らし、目を閉じながら息を吐く。

 

「呼掛。────士道」

 

と、夕弦が、静かに声を発してくる。

 

「ん・・・なに?」

 

士道が答えると、夕弦はこくん、とのどを鳴らしてから、あとを続けてきた。

 

「感謝。ありがとうございます。おかげで有意義な日でした」

 

「そっか。ならよかった」

 

士道はそう言ってから立ち上がると、夕弦が士道に唇を開く。

 

「追加。今度は耶俱矢と一緒に見ましょう」

 

「・・・うん。今度は三人で見ようか」

 

そう言う士道に、夕弦が続ける。

 

「予想。きっと耶俱矢は怒ります。なんで今日呼ばなかったのよ!というふうに」

 

「そうかもね」

 

「確信。耶俱矢は、普段“あんな“ですが、士道のことが大好きですよ。夕弦が言うのだから間違いありません。夕弦と耶俱矢は元々一心同体。夕弦の嫌いなものは耶俱矢も嫌いです。同じように────夕弦の好きなものは、耶俱矢も大好きなんです」

 

「・・・そっか。俺も夕弦達が好きだよ」

 

士道はそう言って、上着を手に取る。

 

「送ってく。もう遅いし」

 

そう言う士道に、夕弦はくるりと振り返り、笑みを浮かべてきた。

 

「返答。ではお願いします。それと、耶俱矢は、士道のことをとても気に入っています。だから────耶俱矢のこと、よろしくお願いします」

 




おまけ

鶴の恩返し?


むかしむかしあるところにお爺さんが山で芝刈りから帰ってきたところで、罠にかかった鶴を見つけました。

ハシュマル『────────ッ!!!』

三日月「・・・・・・」

お爺さんはその鶴を見ないふりをしてそのまま帰りましたとさ。めでたし、めでたし・・・

「何か、変じゃありませんか?」

『変どころじゃない気がするよー?』



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第十五話

短いけど、投稿!

鉄血のオルフェンズの特別編見ます?私は見ます!

デート・ア・ライブも四期が今週の土曜日からですからね。どうなるのやら


「────で、士道。今日一日、十香達と話してみて、何かおかしなことに気づいた?────七罪と思しき人物は、いる?」

 

「・・・・・」

 

問われて、士道は今日一日の出来事を思い起こし、考えを巡らせた。

正直、まだ容疑者の三分の一程度を調べた段階である。誰かに疑おうと思えば────

 

「四糸乃かも知れないけど、なんか引っかかってる」

 

「四糸乃?なんでまた?」

 

その回答を予想していなかったのか、半眼をつくりながら目を細める。

 

「バルバトスが変な反応したから」

 

「変な反応?」

 

そう言う士道に、琴里な首を傾げる。

 

「四糸乃が七罪だってバルバトスは言ってるけど、なんか曖昧な返事しか帰ってこないし」

 

「私も一応全ての音声をチェックしてるから、四糸乃を中心に見て何かあったら伝えるわ」

 

「頼むね」

 

「ま、とにかく。明日に備えて今日はもう休みなさい。明日寝不足で朝の予定が狂った、なんてことになったら承知しないんだから」

 

「学校はどうするの?」

 

「すまないが、学校は諦めてくれ」

 

「・・・・・」

 

まぁ状況が状況なので仕方がない。

 

「んじゃ、俺寝るね」

 

「ええ。・・・お休みなさい。おにーちゃん」

 

「琴里もおやすみ」

 

士道はそう言って、自分の部屋に戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

────かちりと音を立てて、時計の長針と短針が同時に十二を指す。

午前0時。十月二十二日が終わり、二十三日が始める。

つまり────“ゲームの一日目が、終わる“。

 

「ふふ・・・」

 

闇の中で。『誰か』そっくりに変身した七罪は、小さな小さな笑い声を発した。

一日目。士道は、七罪が誰に化けているかを言い当てることができなかった。

とはいえそれも仕方あるまい。容疑者は十名を超え、ルールも曖昧。程度の差こそあれ、一日目でできることなどたかが知れているだろう。

だが、どんな理由があるにせよ、ゲームは一日目を終えてしまった。

 

「────〈贋造魔女〉。時間よ」

 

七罪は誰にも聞こえないくらいの声で呟くと、指先をぴくりと動かした。

七罪がするのはそれだけでいい。あとは七罪の意思によって、〈贋造魔女〉が仕事をこなしてくれるだろう。

 

「さあ・・・まずは、一人。私をちゃんと当てられる?」

 

くす、くすと。魔女が、嗤う。

 

「────誰も、いなくなる前に」

 

 

◇◇◇◇◇

 

午前五時。

 

士道の部屋の扉が開け放たれるとともに耶俱矢が部屋の中へと入ってきた。

 

「────士道!」

 

額に汗をびっしり浮かばせた耶俱矢が寝起きの士道に飛び付いてきた。

 

「耶俱矢?どうしたの?」

 

「し、士道!こっちに夕弦、来てない!?」

 

いつもの口調さえ忘れた様子で、耶俱矢が叫ぶ。士道は訝しげに首を傾げた。

 

「夕弦・・・?来てないけど・・・どうかしたの?」

 

「い、いないの・・・朝起きたら、夕弦がどこにもいないの!」

 

「────────」

 

耶俱矢の悲鳴じみた叫びに、士道はその両目を見開ける。

 

────思えばこのとき、ようやく七罪の『ゲーム』はスタートしたのかもしれない。




おまけ

オオカミと七匹の子ヤギ

昔々あるところに優しいお母さんヤギ(ユージン)と七匹の子ヤギ達(十香、四糸乃、琴里、耶俱矢、夕弦、美九、真那)が住んでいました。

ある日のことお母さんヤギがいいました

ユージン「これから森に出かけるからオオカミには気をつけろよ?」

四糸乃「分かり・・・ました」

子ヤギ達はお母さんヤギを見送ると、家に戻り、鍵をかけました。

さてしばらくすると、オオカミ(バルバトスルプスレクス)がやってきてドアを叩きました。

三日月「坊やたち開けてくれ。お母さんだよ」←棒読み

すると、子ヤギ達は言いました。

美九「違いますよねー?お母さんはそんな声ではありませんしー?」

十香「そうだ!貴様はオオカミだろう!」

そこでオオカミは超大型メイスを取り出すと、扉をぶち破りました。

真那「ちょ!?それは無しでやがりますよね普通!?」

三日月「開けない方が悪いでしょ」

耶俱矢「もはや原作無視してるわよ!?」

唖然とする子ヤギ達にオオカミは気にすることなく、呑み込みましたとさ


おしまい


狂三「・・・これお母さんヤギはどうなりましたの?」

作者「え?オオカミに返り討ちにあったに決まってるじゃない?」


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第十六話

投稿!!

友人とマスターデュエルしてたら、ジャンドだった

クェーサーにブレイザー、セイヴァーにクリスタルウィングの殺意マシマシの盤面を先行で出され、突破するのが面倒だった件について

キツイよ・・・

結界波からのトライブリゲードアーゼウスで消し飛ばしましたが



じゃあ、行こう。端白星

ウィスタリオ・アファム


「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

公園のベンチに並んで座りながら、士道と琴里は無言で噴水を眺めていた。

いや、正しく言うのなら別に眺めていたわけではない。ただ目の前に、噴水があっただけだ。

士道は身体を背もたれに預けながら、琴里は足を組みながら、静かに考えを巡らせていた。

時刻や午前十一時三十分。平日だからか、公園にいるのは子供連れの夫婦たちや、散歩に訪れた老人ばかりである。そんな中ただ黙ってベンチに腰掛ける若い男女二人は目に付くのか、ときおりちらちらと視線が送られてくる気がした。

だが、士道と琴里はそんな事を気にする余裕はない。

何しろ────今朝、八舞夕弦が忽然と姿を消してしまったのだから。

と、どれほどそうしていただろうか、不意に琴里が声を発した。

 

「・・・ねぇ。何か喋りなさいよ。・・・一応デートでしょ、これ」

 

「そんなに余裕あると思う?」

 

冷静さを欠けていない士道だったが、あくまでそれは冷静さだけだ。余裕とはまた別である。

すると、琴里はため息を吐く。

 

「ま、そうよね。無理もないけれど」

 

琴里はそう言って、再び息を吐き出した。

士道は空を見上げながら、先ほど〈フラクシナス〉で見た映像を思い起こした。

 

◇◇◇◇◇

 

時刻は遡って午前十時。士道と琴里のいる五河家に、令音が訪ねてきていた。

なんでも、失踪した夕弦についてわかったことがあるらしい。だが耶俱矢には知らせない方がいいだろうとのことだったため、耶俱矢、そして十香と四糸乃は、隣のマンションの一室で待機してもらっている。

 

「で?夕弦は一体どこに消えたの」

 

士道が問うと、令音は小さくうなずいて唇を動かした。

 

「・・・順を追って話そう。まず耶俱矢の話では、昨晩夕弦がシンに送られて部屋に帰ってきたのは確認した。それは間違いないね?」

 

「間違いないよ。俺もちゃんと覚えてる」

 

先ほど耶俱矢に聞いた話を思い起こしながら、首肯する。

そうなると、夕弦が消えたのは、夜から朝にかけての数時間ということになる。

 

「・・・これを見てくれ」

 

言って、令音がテーブルの上に端末を展開させる。するとその小さなモニターに、マンションの一室と思しき映像が表示された。

見覚えのある光景。耶俱矢と夕弦が二人で住んでいる部屋の寝室だ。部屋の奥にベッドが二つ並んでおり、それぞれに、瓜二つの少女が眠っていた。

 

「こんなの撮ってたんだ」

 

「・・・ああ。八舞姉妹の部屋だけではない。七罪が化けている可能性のある容疑者全員の部屋に、自律カメラを飛ばしてある。もしかしたら、誰も見ていないところでなら、何か尻尾を出すのではないかと思ってね」

 

令音はそう言うと、再び端末を操作した。すると、画面に映し出された八舞姉妹の映像が、数倍速で再生され始める。 

 

「・・・そろそろだ」

 

言って、令音が手元のキーを押すと、再生速度が元に戻った。

ほどなくして、時計の針が午前0時を指し示す。すると────

 

「・・・・!」

 

「何よ、これ・・・」

 

士道と琴里の息を飲む声が重なる。

メインモニターに表示された八舞姉妹の寝室。その中央がぐわん、と歪んだかと思うと、虚空から一本の箒のようなものが姿を現した。

 

「あれは────〈贋造魔女〉・・・?」

 

琴里がぼそりとそう呟く。

そう。それは、数日前目にした七罪の天使〈贋造魔女〉だった。

ゆっくりと〈贋造魔女〉の先端が開き、鏡面のような内部を晒していく。

そして、その鏡がキラッと輝いたかと思うと。

ベッドの上で眠っている夕弦の身体が淡く輝き、その鏡の中に吸い込まれていった。

そして夕弦を吸い込んだ〈贋造魔女〉は、ゆっくりとその先端を閉じると、虚空に溶け消えていった。

 

「・・・見てのどおりだ」

 

令音が、椅子をくるりと回転させて士道に向いてくる。

 

「・・・夕弦は、七罪の天使〈贋造魔女〉によってさらわれてしまった。恐らく、七罪が化けた本物の『誰か』も、同じ方法で消されたのだろう」

 

「・・・・・」

 

無言の士道に、令音は難しげに目を伏せる。

 

「・・・無事だと思いたいが、現状では何とも言えない状況だ」

 

「分かってる」

 

「一刻も早く、七罪を見つけ出さないといけないわ」

 

琴里はそう言って、舐めていたチュッパチャップスを口から取り出し、士道にビッと向けてくる。

 

「猶予はないわ。────私たちのデートを、始めましょう」

 

そうして、キッと視線を鋭くしながら、言った。




おまけ

一休さん


この橋渡るべからず

三日月「・・・・・・」

しかし、少年はそんな事知らないと言わんばかりに橋を渡っていき、手に持った銃で向こう岸の敵を殲滅しましたとさ


琴里「物語!!物語が続かないわよ!?士道!」


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第十七話

投稿!


身構えている時には死神は来ないものだ。ハサウェイ

アムロ・レイ


「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

琴里とのデートを終え、学校をサボっていた亜衣、麻衣、美依にばったり出くわし、軽く話しながらバルバトスの反応を確かめた後、次の現場に居たのは耶俱矢だった。

今朝の件もあり、二人は無言のまま駅の前で立ち尽くしている。

 

「・・・ねぇ、士道」

 

「・・・なに」

 

耶俱矢は暗い顔のまま、震える声を発した。

 

「・・・夕弦、見つかってないんでしょ」

 

「・・・うん」

 

耶俱矢には令音が検査だと言って誤魔化したそうだが、どうやら気づいていたらしい。

 

「・・・私は、それを知らない方がいいんでしょ」

 

「・・・・・・」

 

耶俱矢は何も言わない士道にそう呟く。

 

「なら、“お願い“。夕弦を・・・夕弦、を────」

 

今にも泣きそうな顔と声の耶俱矢に士道は左手を耶俱矢の頭の上に置いて口を開く。

 

「分かってる。夕弦は絶対に助けるよ」

 

そう言ってくしゃりと耶俱矢の髪をグシャグシャにした。

士道だって、夕弦に手を出されて苛立っているし、耶俱矢の気持ちも分かる。

そうして数分が経ったころ、耶俱矢は言った。

 

「ねえ、士道。私と勝負するのはどうだ?」

 

「勝負?」

 

いつもの調子で言う耶俱矢に士道は首を傾げる。

 

「そうだ。勝負に負けた方は、勝ったほうの言うことをなんでも一つ聞く、ってのはどうだ?」

 

「別にいいよ」 

 

士道はそう言って、周りを見渡す。

 

「で、何で勝負する?」

 

「ふふん。あれだ」

 

そう言って指先をビッとある建物へと向ける。

 

「・・・カラオケ?」

 

確か歌を歌う所の店だったか。何度かユージン達に連れられて行ったことがある。

 

「そうだ。どうした?今になって急に怖くなったか?」

 

「別に」

 

士道はそう言って、歩み始める。

 

「なら、俺も本気でやらせてもらうから」

 

士道が言うと、耶俱矢は嬉しそうにニィと唇の端を上げた。

 

「かかか!面白くなってきおったわ!よかろう、御主の本気とやら、見せて見るがよい!我が軽くねじ伏せてくれる!」

 

耶俱矢はそう言って、士道の先を歩きながらカラオケの店へと歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

────およそ二時間。士道は、完膚無きまでに敗北した。

もとから歌わないこともあってか、音程が取れず、どれもが耶俱矢の叩き出す点数を越えることはなかった。

 

「くく、我の勝ちのようだな!まぁ、よく戦ったと褒めてつかわそう!」

 

「あっそ」

 

士道はそう言って公園のベンチに座る。

そんな士道に耶俱矢は不敵に笑って腕組みをした。

 

「さぁて、忘れてはおらぬだろうな。我らが聖戦の前に交わした契約を!」

 

「覚えてる。・・・で?一体何するの?」

 

すると耶俱矢は、何も言わず士道の隣に座ると、先ほどとは打って変わって真面目な顔をして、静かに唇を動かしてきた。

 

「・・・では、御主に命ずるぞ。心して聞くがよい」

 

「・・・・?」

 

目を向ける士道に、耶俱矢は、士道の目をジッと見つめながら続けてきた。

 

「────今から十分間、我が何をしても決して驚かない、一切拒まないと誓え。そして、その間起きたことを、決して誰にも口外さぬと誓え」

 

「ん。分かった」

 

「よし」

 

耶俱矢は小さく首肯すると、しばらくの間何も喋らず────

不意に横に上体を倒し、士道の頭の上に頭を載せてきた。

そして、ゴロンと身体の向きをうつ伏せに変えると、両手を士道に回してぎゅうと力を込めてくる。

そして、耶俱矢はしばしの間、その姿勢のまま動かなくなった。

 

「耶俱矢?」

 

どれくらい時間がかかる経った頃だろうか。士道は時間になっても顔を上げない耶俱矢に声をかける。

 

「・・・っぅ、ぅぁ・・・っ」

 

耶俱矢が、小さな啜り泣きを漏らし始めたのを耳にして、士道は口を閉じた。

 

「・・・っく、ぅ、ぅ、・・・っ・・・・夕弦・・・、ゆづる・・・っ」

 

「・・・・・」

 

そして。耶俱矢の嗚咽に混じって聞こえてくる夕弦の名前を聞き、士道は左手を耶俱矢の頭の上に優しく置いた。

耶俱矢達は士道やユージンみたいに大切な家族が居なくなって、すぐに向き合えるほど強くない。

自分とて、オルガの死をハッシュから聞いた時は少なからず動揺したし、向き合うのも少しだけ時間がかかった。

そんな体験を、まだ死んでいないとはいえ、耶俱矢は一時的に一番大切な夕弦がいなくなるという事を体験しているのだ。

つい先程まで強がっていてもボロが出ていたのは士道も気づいていた。

ただ、黙って聞いている士道に耶俱矢は顔を埋めたまま言った。

 

「・・・士道。私は士道を信じる。あのとき、私と夕弦に三つ目の選択肢をくれたのは士道だから・・・」

 

耶俱矢はそう言って、ぎゅうと、士道に抱きつきながら涙が止まるのを待つのだった。




ppppp・・・


作者「ん?」

狂三「どうかいたしましたの?」

作者「いやね?さっきミノフスキー・フライトの音が聞こえたような気が・・・」

狂三「ミノフスキー・フライトとはなんですの?」

作者「ペーネロペーやΞガンダムとかに装備されてるまあ、プカプカ空に浮かぶ為の装備でね」

狂三「ふむふむ」

作者「ペーネロペーのは不完全だから音が鳴るのよ」

狂三「それの何が問題ですの?」

作者「さっき聞こえたってことはペーネロペーが近くいるってことで・・・」

pppppp・・・

バシュン!!

ジュワァッ!!

「「・・・・・・・」」

狂三「溶けましたわよ?扉が」

作者「ビーム兵器持ってるからね。仕方ないネ」

────To Be continved


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第十八話 ■■■

投稿!

前半、久しぶりの登場する人が一人います!
あと、七罪が三日月を煽りに煽ります

どうぞ!

任務・・・了解!

自爆厨のヒイロ


「・・・・ん」

 

夕弦は吹きつける風が肌に触れるのを感じ、目を覚ます。

 

「疑問。・・・ここは?」

 

ボヤケた視界により目に映るその風景に夕弦は疑問を抱かざるをえなかった。

昨日の夜、士道に自分達が住むマンションにまで送ってもらいベッドに入ったところまでは覚えている。

だが、こんな場所に連れてこられるどころか、ここが何処なのかさえ、知らなかった。

 

「呼掛。・・・耶俱矢」

 

夕弦はそう言いながら、辺りを見渡す。

だが、返す言葉はない。

 

「呼掛。・・・士道」

 

士道の名を呼ぶが、その声はまわりに響くばかりで誰からの返答もなかった。

と、視界の端で何かが目に入った。

 

「・・・・・・?」

 

こんな何もない丘に誰がいるのだろうか、という疑問を浮かべながらそちらへと視線を向ける。

そこにいたのは一人の少年だった。

士道よりも少し小さい黒髪の少年。

その少年は此方へ背を向け、座りながら何かを見つめていた。

 

「────────」

 

夕弦は少年の先にあるものを見て、言葉を失った。

丘から見えるその先────トウモロコシ畑が広がり、その先には巨大な大穴が空いていた。

そしてその大穴の中心には────

両腕が無くなり、装甲もほとんどがボロボロになったバルバトスがそこに佇んでいた。

 

「驚・・・愕。・・・これは────」

 

言葉が出ない。あの凄まじい力を誇るバルバトスがあんなにボロボロになっている事に、夕弦は信じられなかった。

無意識に両手で口元を抑えながら足を一歩、引いたその時だった。

 

「ああ。アンタ達はそれでいい」

 

「!?」

 

いつの間にか後ろにいた赤いスーツを着た褐色肌の青年に夕弦は驚愕する。

 

「質問。貴方は?」

 

「別にお前が気にすることはねえよ。これは夢みたいなもんだ。どうせ全部ここの事は忘れるからな」

 

「・・・・!?質問。それはどういう────」

 

夕弦がそう言った瞬間、周りにノイズが迸る。

 

「!?静止。待ってください」

 

だがノイズは広がり続け、夕弦の視界は暗闇に染まった。

 

「し────ど」

 

薄れゆく意識の中、夕弦はその名を呼ぶがその声は少年には届かなかった。

 

◇◇◇◇◇

 

「で、どうだったのよ、昨日、今日と調査をしてみて」

 

言って、琴里が視線を送ってくる。士道は小さく首を前に倒して言った。

 

「今の所四糸乃が一番怪しいけどなんかまだ引っかかってる。まだ全員確認してないからまだなんとも」

 

「そう。明日で一応、写真に写っている容疑者すべての調査を終わらせるわ。できるだけ早く寝て、少しでも疲れを取っておきなさい」

 

「分かった」

 

士道はそう言って時計を見る。

午後十一時五十九分。もうすぐ十二時になる。今日で一人かふたりが消えるだろう。士道は内心で舌打ちをしながら部屋へと戻ろうとしたその時だった。

五河家の中心にあたる空間が、ぐわんっ、と歪んだ。

そしてそこから、箒のような形をした天使が、姿を現す。

 

「・・・・!」

 

士道はすぐさまバルバトスを顕現させ、レクスネイルでその空間目掛けて突き出した。

 

『────ふふっ』

 

だが、その攻撃も虚しくすり抜けて身体がすり抜ける。

 

「七罪・・・・ッ!?」

 

琴里はその歪んだ空間に浮かぶ七罪の顔を見て驚愕した顔を作った。

 

『はぁい。久しぶりね、士道くん』

 

七罪は気安い調子でひらひらと手を振ると、唇の端を上げてみせる。

 

『ゲーム二日目終了よ。楽しんでもらえてるかしら?』

 

「そんなわけないだろ。さっさと夕弦を返してもらうよ」

 

士道はそう言うと、七罪はふふっと笑って肩をすくめた。

 

『それはダ・メ。きちんと私を当てることができたら返してあげるわ。でも、もし最後まで私を当てることができなかったら───そのときは、彼女の「存在」は私のものよ』

 

「『存在』・・・?それはどう言うことかしら」

 

琴里も険しい表情で問うと、七罪が悠然と首肯した。

 

『ええ。このゲームに私が勝利した場合、消えた容疑者はもう戻らないわ。その代わり、私がその顔で、声で、姿で、そちらの世界を楽しんであげる』

 

「・・・・・・!」

 

「なッ・・・!?」

 

本物がいなくった世界を、本物に限りなく近い偽物が闊歩する。

つまりは完全に成り代わるということである。

 

「させると思う?」

 

そう言う士道に、七罪はカラカラと笑って言った。

 

『なら、ちゃんと当てみせてね。最終日に答えを聞くからせいぜい頑張ってね』

 

七罪はそう言って消えていった。

 

「なっ!?待ちなさい!!」

 

琴里はそう言うが、士道は七罪が消えていった後をただ見つめるだけだった。

 

────そして、その日の夜。

 

“三人の少女“が、自宅のベッドから忽然と姿を消した。




狂三「大変な目にあいましたわ」

作者「せやねー」

狂三「あんな巨体ですのになぜあんなに速く動けますのよ?」

作者「ペーネロペー自体が音速戦に特化した機体だからね。しゃーないよね。まぁ、連邦機体はやべえのもっとあるけど」

狂三「それはなんですの?」

作者「それはねー」

?「エグザムシステムスタンバイ」

作者、狂三「「えっ?」」


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第十九話 逆鱗

なんか消えていたので再投稿。

なんでだ?




翌、十月二十五日。

士道は朝一番に目が覚め、身体を起こす。

そしてリビングに降りると、真那が台所に立っていた。

 

「あ、おはようございます。兄様」

 

「うん。おはよう」

 

士道は真那に短く返事を返すと、ガラスコップを手に取り水を入れる。

と、真那が隣で唇を開いた。

 

「その、兄様」

 

「なに?」

 

暗そうな表情でそう言う真那に士道は首を傾げる。

 

「今日、また誰が消えていやがるんですよね。・・・兄様はどういった気持ちだろうと思いまして・・・」

 

「・・・気分は良くないに決まってる」

 

「・・・そうでやがりますよね」

 

真那は士道の言葉を聞き、そう返事を返す。

と、机に置かれたタブレットから〈ラタトスク〉から通達があった。

 

「真那。確認してもらっていい?」

 

「わかりました」

 

真那はそう言って、タブレットの所まで歩いていき画面を開けた。そしてその内容を目に通すと、真那は目を見開いた。

 

「兄様ッ!!」

 

真那は甲高い声を上げて士道に目を向ける。

 

「四糸乃さんと、山吹さん・・・それに────」

 

士道は真那の次の言葉を聞き────

 

「十香さんが!!」

 

バキャッ!!

 

その言葉に、士道は左手に持っていたガラスコップを握り潰し、ガラス片が床に散らばり落ちる。

士道の手に収まっていたガラス片が士道の手のひらを喰い破り、ぽたりぽたりと血と水が滴り落ちていく。

 

「兄様!?手が!?」

 

真那が慌てたように駆けつけてくるが、士道は気にすることなく握る手の力を緩めることはなかった。

 

「・・・・・」

 

士道は苛立ちを隠そうとせず、真那に言った。

 

「・・・ちょっと頭冷やしてくる」

 

「何言ってやがるんですか!?まず手を治療しねーと!兄様、手のひらを見せてください!」

 

そう叫ぶ真那に、階段から白いリボンを結んだ琴里が降りてきた。

 

「さっきの音はなに・・・って、おにーちゃん!?どうしたの!?」

 

琴里は眠たげな表情から、一変して慌てた様子で士道達のもとへ駆けつける。

 

「琴里さん。救急箱持ってきてください!!」

 

「う、うん。わかった!」

 

琴里はそう言ってリビングにある戸棚を開けて、救急箱を探す。

 

「兄様、手を開いて下さい」

 

「ん」

 

士道は真那に言われた通りに、左手を開く。

ガラス片が突き刺さったその手のひらは皮膚が裂け、見ているだけで痛々しかった。

 

「・・・・・っ」

 

真那は消毒液と包帯を取り出し、ピンセットで士道の手に刺さったガラス片を引き抜いていき、真那はガラス片を引き抜き終わった士道の手のひらに消毒液を染み込ませた綿を当てていく。

 

「しみねーですか?兄様」

 

「別に。平気」

 

士道はそう言ってはいるが、士道のその顔は相当自分に対して苛立っているように見えた。

 

「・・・・・・」

 

真那はそんな士道の表情を伺いつつも、包帯を士道の左手に丁寧に巻いていく。

 

「はい、終わりました。兄様」

 

「ありがとね。真那」

 

「いえ、当たり前の事をしただけです」

 

真那はそう言って、救急箱の蓋をパタリとしまった。

と、黒いリボンを髪にくくった琴里が士道に言う。

 

「士道。十香が狙われた事に苛立つの分かるけど、今は抑えて。七罪の思うツボよ」

 

「・・・分かってる」

 

「分かってないでしょ。顔に出てるわよ」

 

琴里はそんな士道にはぁと息を吐く。

 

「とにかく、今日は学校に行って残りの容疑者と話して来なさい。その後、夜から美九の相手をしなきゃいけないんだから。・・・いい?」

 

「・・・・・」

 

士道は納得していなさそうな表情を作っているが、今こんな所でもめても仕方ない。琴里は更に言葉を続ける。

 

「“一番の最短コースは本物の七罪を見つけることなの“。下手に手を出して返さないだなんて言われたら打つ手なんてほとんどないわよ」

 

「・・・分かった」

 

士道はそう言って、部屋へと戻っていった。

真那と二人きりになった琴里は、はぁと息をついた。

 

「七罪もやってくれるわね。士道が一番嫌がる事をしてくるだなんて」

 

「・・・あんな兄様、始めてみました」

 

そう言う真那に琴里は唇を開く。

 

「完全にスイッチが入ってるもの。七罪を攻略するのに、まずは今の士道を収めないことにはどうしようもないわ」

 

琴里はそう言って階段に視線を向ける。

 

(・・・本格的にモンタークって男やユージン・セブンスタークから、聞き出さないといけないわね)

 

あの二人だけが知っている士道の過去を。

琴里は視線を戻すと、洗面所へと歩いていった。



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第ニ十話

ちょっと短いですが、投稿!

最近忙しくって中々かける時間がない・・・
なんなら、ゴールデンウィーク中はもしかしたら投稿できないかも・・・

三日月、ご飯食べる?

うん

アトラ・ミクスタ

三日月・オーガス


午前八時。いつもより少し遅い時間に学校についた士道は、なにやら教室が騒がしい事に気がついた。

 

「・・・?」

 

首を傾げながら士道は教室の中へ入ると、殿町が士道を見て口を開く。

 

「おう、五河。今日は十香ちゃんは一緒じゃないのか?」

 

そう言ってくる殿町に士道は言った。

 

「十香は体調不良だから休むって」

 

勿論それは令音の指示でそう言っているだけで、士道としては腹の中が煮えくり返るくらいの苛立ちを内に隠していた。

そんな中で、殿町が士道に言う。

 

「あの十香ちゃんが!?大丈夫なのかよ!?」

 

そう言う殿町だったが、士道はそれに答えることなく、教室がやけに騒がしいことに疑問を浮かべながら殿町に言った。

 

「しばらくしたら直るよ。てか、やけにまわりがうるさいけど何かあった?」

 

すると殿町は「あぁ」と呟くと、周りを見渡しながら士道に言う。

 

「なんでも、山吹の奴が行方不明になったってクラス中で広まっているんだよ。今朝見ると部屋のどこにもいなかったって話みたいなんだよなぁ」

 

「・・・・・」

 

もちろん本当かどうか分からないけどよと答える殿町に、士道は何も答えなかった。

殿町の話や行動を見た限り、七罪ではない。なんなら、バルバトスも何も反応していないので間違いはないだろう。

 

────キーンコーンカーンコーン────

 

と、予鈴のチャイムが鳴る。

 

「と、んじゃ五河。また後でな」

 

「ん」

 

そう言って自分の席に戻っていく殿町に軽く返事を返し、士道も自分の席に座る。

と、隣に座っていた折紙が士道をジッと見つめていたのに士道は気づき、視線を向ける。

 

「なに」

 

士道はそう言って折紙を見ると、折紙は唇を開いた。

 

「夜刀神十香が体調不良とは本当?」

 

「そうだけど。・・・で?なに」

 

士道は折紙にそう言うと、折紙は再び口を開く。

 

「・・・なんでもない」

 

「あっそ」

 

折紙の言葉に士道は興味をなくし、前へと向く。

そしてしばらくすると、ガラっと教室の扉が開かれた。

 

「お待たせしましたー。と、朝礼を始める前に皆さんにお話があります」

 

と、タマちゃん先生が教卓につくなりそう言った。

 

「えー、山吹亜衣さんのことについてなんですが・・・」

 

恐らくは行方不明になった亜衣についてだろう。士道は黙ったままその話を聞いた。

 

「昨日から亜衣さんの行方が分からなくなった件についてなんですが、亜衣さんが見つかるまでの間、部活動を一時停止する形になりまして・・・」

 

そう言うタマちゃん先生の言葉にクラスから声が上がる。

そんな中で、表情を変えずに聞いていた折紙はピクリと表情を変える。

 

(気付かれた?)

 

士道は折紙のその行動に視線を向けるが、それ以上表情を読み取ることができず士道は視線を前へと向けた。

 

「と、言うわけですので皆さんも気をつけてくださいね」

 

タマちゃん先生はそう言い終わると同時にチャイムが鳴り響く。

 

「では皆さん。次の授業に遅れないようにしてくださいね」

 

そう言って、タマちゃん先生は教室から出ていった。

士道は椅子から立ち上がると、次の授業場所へと足を運んでいった。




もしもの話


「あ、おはよう。士道」

「あ?」

士道が目を覚ますと、凜祢はそう言って笑みを浮かべる。

「朝ごはん出来てるよ?士道もほら、起きて一緒に食べよう?」

「・・・ん」

士道は小さく首をコキリと慣らしながらベッドから起き上がると、凜祢が唇のを開く。

「着替えは此処に置いて置くね?後、耶俱矢ちゃん達から聞いたよ?士道、お魚食べてないんでしょ」

「・・・食べてる」

凜祢の言葉に士道はそう返事を返すが、凜祢は眉を少しだけ吊り上げて怒ったような口調で士道に言った。

「嘘。だって、士道嘘つくとき目を逸らすもん」

「・・・・・・」

士道はバツの悪そうな顔を作ると、凜祢はそんな士道に言った。

「今日のご飯は私が作るからね。お魚をいっぱい使った料理を食べさせてあげる。好き嫌いばっかりしてると大きくなれないよ?」

「・・・・・」

凜祢の言葉に士道はどう逃げようか考えていると、それを抑え込むように凜祢は更に言葉を続ける。

「因みに、ちゃんと食べないと暫くデーツ抜きだからね」

「!?」

凜祢の言葉に士道は目を見開ける。
それをされるのは困る。アトラにも同じようなことをされて二週間以上食べられないことがあったが、その時は非常にキツかった。

「それが嫌だったら、ちゃんと食べること。いい?」

「・・・・分かった」

嫌だが、デーツを暫く抜きにされるよりはマシと言う感じの士道の返事に、凜祢は頷いた。

「よろしい。なら、早く着替えてきてね。十香ちゃん達もみんな待ってるから」

「分かった。すぐいく」

士道が立ち上がると、凜祢も部屋の扉に手をかけて部屋から出ようとする。そして「あっ」となにか思い出したような顔を作ると、振替って士道に言った。

「あっ、そうだ。士道」

「ん、なに?」

そう返事をする士道に、凜祢は笑みを浮かべて唇を開いた。

「今日も一緒に頑張ろう。士道(三日月)」

「うん」

士道の返事に凜祢は満足そうに頷くと、また後でねと言って部屋から出ていった。
そしてベッドから起き上がった三日月は左手首に付けられたいくつもあるミサンガの一つを見ながら呟いた。

「夢にまで出てくるくらい心配しなくてもいいのに」

今は会えなくても、きっと■■やアトラは見守ってる。今は思い出せなくても───いつか会った時にはまた皆で話をしよう。
士道はそう思いながら立ち上がり、十香達がいるであろうリビングへと向かった。


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第ニ十一話

投稿!!

クロスブースト2でヘビアが強化されてニッコニコな鉄血です


自爆ショー、始めるか

トロワ・バートン


午後六時。

学校から帰った後、士道は公園に足を運んでいた。

これから美九に会う予定であったのだが、肝心の美九はどこにも見当たらない。

 

「───?」

 

首を傾げる士道にインカムから令音の声が聞こえてくる。

 

『彼女ならもうすぐ到着する頃合いだ』

 

「そう?」

 

士道は近くの噴水に腰を降ろすと、公園を眺める。

薄暗くなってきた夜空に、士道はぼおっとしていると、そんな士道を邪魔するかのように声が投げられた。

 

「三日月さぁぁん!」

 

公園の入口から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。───美九だ。

士道はそちらへ顔を向けると、美九が此方へ走ってきているのが見えた。

そんな美九に士道は言う。

 

「ん。元気?」

 

そう言う士道に美九は笑顔で答える。

 

「はい!元気ですぅー!なんなら、三日月さんとデートが出来るのを待ち遠しかったんですよぉ!」

 

何時になくハイテンションな美九に士道は軽く息を吐く。

そんな士道に対し、美九は士道の左手に包帯が巻いてあることに気づく。

 

「三日月さん?それは・・・」

 

「ああ、怪我した」

 

ぶっきらぼうに答える士道に対して美九が言った。

 

「・・・十香さん達に何かあったんですよねぇ」

 

「・・・・・!」

 

美九の言葉に士道は目を見開ける。

耶俱矢といい、美九といい、妙に勘が鋭い。

そんな士道に、美九は目を閉じながら言った。

 

「そりゃ分かりますよぉ。三日月さんはいつも十香ちゃん達を気にしてますからねー」

 

そう言う美九は更に言葉を続ける。

 

「十香ちゃん達に何かあった時は絶対三日月さんは自分のせいにしますからねぇ。なんでかって言われると、十香ちゃんを助けに行った時にそんな目をしていましたからー。まあ、なんとなくなんですけどぉ?」

 

そう言って美九は顔を士道に向け、唇を開く。

 

「それに───三日月さんならきっと・・・十香さんや皆さんを助けられますよぉ」

 

美九は笑みを浮かべながら士道に言った。

 

「だって、三日月さんは私のヒーローなんですから」

 

「・・・ヒーロー?」

 

士道はそんなことを言う美九にそう返事を返す。

そんな士道に美九は頷いた。

 

「そうですよぉ。始めてあった時、私の歌を最後まで聞いてくれて───ちょーとやらかしちゃいましたけど、何も信じられなかった私が死を覚悟したあのとき───三日月さんは私を助けてくれたんですからぁ。他の誰かにどう映ったって、三日月さんは私のヒーローだってことは変わらないですよぉ」

 

美九はそう言いながら士道の目を見る。

 

「だから、きっと三日月さんなら大丈夫ですよぉ」

 

そして笑みを浮かべると、美九は歩き始めた。

 

「三日月さん。今日はせっかくのデートなんですしぃ、今は楽しめなくても楽しみましょうよぉ」

 

そう言う美九に士道が立ち上がると、同時に士道に声がかけられる。

 

「あのーすみません」

 

「ん?」

 

「はい?なんですかぁ?」 

 

声がかけられた方へ二人は顔を向けると、男性が士道達に言った。

 

「トリントンってどっちにあるか分かります?」

 

「・・・は?」

 

「はい?」

 

迷子の成人男性一人に、士道と美九は同時にそう返事を返すしかなかった。




グフ重装型「ココドコー?(´·ω·`)」

作者「時空を越えた迷子かよ・・・」


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第二十ニ話 偽る者  偽りを語る者

短いですが、投稿!!


皆大好き“アレ”が登場!!
なお、三日月がバルバトスのリミ解した際の副産物・・・アシストとして出てくるものですが。
なお、三日月としては出来ることすら知らない模様
なぜかって?バルバトスが勝手にやってる


スーパーギャラクシーキャノン!!発射ァ!!

ノルバ・シノ


「うふふ・・・ふふふ・・・っ」

 

✕✕✕✕に化けた七罪は、機嫌良さそうに笑みを浮かべた。

一日目に夕弦が、二日目に四糸乃と亜衣、十香が消えた時の士道の顔を思い起こして。

戦慄と、怒りの入り混じった得も言われぬ表情。それを脳裏に思い描くたびに、七罪の身体を恍惚とした快感が駆け抜けていく。

しかし、駄目だ。

───それでは足りない。

七罪は渇望していた。今までよりももっともっと大きな恐怖と怒りを。今はまだ見せていない極限の絶望に苛まれた士道の表情を。

だからこそ───次で大半を消し去る。

そしてその次に残る全てを消し去る。

そうして全てのことが終わったなら───失意に膝を突いた士道すらも、飲み込んでしまうために。

 

「私の秘密を見た者は・・・絶対に許さない。ただ消すだけじゃ済まさない。仲間を全て失って、失意の中で絶えていけ」

 

七罪はそう呟くと、ぎりと奥歯を噛む。

 

「どうせ誰も・・・私を見つけてなんてくれないんだから」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

そんな七罪を遥か遠方で“悪魔“がその様子を見ていた。

その悪魔なライトグリーンの目を輝かせると、その“身体を変形“させた。

腕部のガントレットが変形し、両手に固定される。そしてそのガントレットを地面に突き刺すと、四足歩行体型をとりながら下半身を百八十度回転させる。

肉食獣のような低い姿勢のまま、その悪魔は背中に背負ったその二門の長い砲身を廃墟ビルの屋上にいる七罪の少し下───直撃コースにはならない程度の場所で狙いを定めると、エネルギーを充填させる。

ヴヴヴヴヴヴッと不気味な音と共に莫大なエネルギーがその二つの砲身へと集まっていく。

そして臨界点にまで達したその瞬間───

 

ドオオオォォォォン!!

 

凄まじい爆音と共にその弾頭が流星のように放たれた。

その凄まじい反動が固定された四脚の地面をえぐり、悪魔を後退させる。

二つのその弾頭は十数キロあった距離を僅か数秒で駆け抜け、七罪がいる廃ビルの壁を貫通し、そのまま空の彼方へと消えていった。

 

「なっ!?なに!?何が起こったの!?」

 

凄まじい衝撃が七罪の足元を駆け抜け、廃ビルが音をたてて崩れ始める。

七罪は〈贋造魔女〉を使い、空へと上がりながらその弾頭が飛んできた方向に顔を向ける。

七罪の視界には暗闇と街明かりが広がっている中、その更に奥。

光が一つもない暗闇の中に巨大な影と二つのライトグリーンの光があった。

 

「─────────」

 

七罪はそれを見て言葉を失う。

狙撃をしたのは間違いなく“アレ“だろう。だが───“アレ“はなんだ?

暗闇でしかもかなり離れているので、シルエットや色はかなりボヤける。だが、それでも分かる色合いとシルエットだった。

ピンク系の色に背部から二門の巨大な砲身が空に向けて伸びている。

“ソレ“はライトグリーンの目を七罪に向けたまま、光の粒子となって消えていった。

まるで警告だと言わんばかりの砲撃に七罪は眉を歪める。

 

「なんなのよ・・・私は辞めないわよ。絶対に・・・アイツは許さないんだから」




フラウロス「おい、もうそろそろいい加減にしとけ」

フラウロスが出てきた理由。

七罪に対しての警告。

なお、三日月攻略戦ではガンダムフレームが勢ぞろいしたりするかも───


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第ニ十三話

投稿!


ゴールデンウィークは忙しいので、投稿できないかも?

今回、三日月は殺意マックスです

こいつは死んでいいヤツだから

三日月・オーガス



その日の夜。四人が消えた。

タマちゃん先生と、殿町、麻衣、美依が消えた。

今残っているのは、琴里、折紙、耶俱矢、美九、ユージン、真那の計六人。

だが───その六人をいくら調べても、七罪の痕跡は見つからなかった。

 

「・・・・・」

 

だが、士道は椅子に背を預けたまま厳しい顔を作って天井を見上げる。

───何かが、頭の中に引っかかっている。

四糸乃を見た時にあった極薄い七罪の反応。

前に七罪が自分に化けていた時、その反応はすぐに分かるものだった。

その反応の差に違和感を覚える士道は、一つの仮説が頭の中に思い浮かんだ。

 

「・・・よしのんが七罪?」

 

人だけでなく“物にまで化けられる“としたら?

それに、よしのんの行動には士道もいくつか違和感があった。

一つ目はよしのんが折紙の家にいた時のことを知っていた事、そしてもう一つは───

あの時投げた携帯電話をよしのんがまるで自分の意思で躱したかのような動きをしたことだ。四糸乃が扉の向こうで、その携帯電話が見えていないのにもかかわらずだ。

 

「・・・・・・」

 

それなら反応が四糸乃に出ていたのも納得出来るし、薄い反応だったのも理由がつく。

士道は椅子から立ち上がると同時に、琴里がリビングの扉を開けて入ってきた。

 

「士道、ちょっといい?」

 

「なに?」

 

琴里の言葉に士道はそう答えると、琴里は手にしていた白いカードを渡してくる。

 

「これを見て。七罪からよ」

 

士道は琴里から渡されたメッセージカードを受け取ると、そこに書いてある文章を読み取る。

 

『そろそろゲームも終わりにしましょう。今夜、私を捕まえて。でないとみんな、消えてしまう。  七罪』

 

「・・・へぇ」

 

士道はそう呟くと、琴里は言う。

 

「朝起きて見たら、ポストの中に入ってたわ。七罪からの挑戦状・・・ってところかしらね」

 

琴里の言葉に、士道はメッセージカードを握り潰す。

 

「いいよ。あっちがその気なら俺も受けるだけだから」

 

「・・・誰が分かったの?」

 

琴里の言葉に士道は言う。

 

「・・・うん。後はアイツに聞くだけ」

 

士道はそう言うと、琴里は難しい顔を作る。

 

「・・・そう。なら、どうする?このまま夜まで待つ?」

 

「・・・全員呼んで。銀髪も全員」

 

「分かったわ。手配してあげる」

 

「お願いするね」

 

士道はそう言ってリビングを出る。

そして──────

 

「誰が七罪か分かった。後は彼奴を殺せばそれで終わり」

 

仲間に手を出したアイツは許さない。

士道は怒りを内に滾らせながら玄関の扉を開けて、外へと歩いていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・お兄ちゃん」

 

その様子を琴里は二階の窓から見つめていた。

その隣には真那も暗い表情で窓の外を眺めている。

 

「・・・琴里さん。兄様は・・・もう、どうしようもねーでやがりますか・・・?」

 

窓を触っていた手を強く握りしめる真那に、琴里は言う

「まだ・・・ちゃんと話をすれば何とかなる筈よ。けど・・・」

 

今の士道を言葉で止められる人がいない。

もし、七罪を本気で士道が殺そうとするのなら───

 

「私が止めるわ。此処でお兄ちゃんが七罪を殺そうとするなら、ASTやDEMと変わらないし、何より〈ラタトスク〉がお兄ちゃんを殺しかねないの。そんなことは絶対にさせないわ」

 

「琴里さん・・・」

 

真那は琴里のその言葉を聞いて、唇を開いた。

 

「なら、その時は私も兄様を止めてみせます。私も兄様にこれ以上、人を殺させるのを見たくねーですから」

 

真那はそう言って士道が歩いていった方角を見つめると、再びその手を強く握りしめた。




狂三「・・・何ですのこれ?」

作者「え?ガンプラ」

狂三「それは見れば分かりますわ。わたくしが言っているのはサイズのことですの。大きすぎではありません?」

作者「まあ、MGだし。しかもEXーSガンダムだし」

狂三「完成まで、どれくらいかかるんです?」

作者「ちゃんと塗装して作るなら半年くらい?」

狂三「長くありません!?」


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第ニ十四話 エピローグ 二機の悪魔

ゴールデンウィーク前の最後の投稿!!
そして、原作には出てこないあの機体も登場!

では、どうぞ!

俺のアスタロトを舐めるな!!

アルジ・ミラージ



その日の夜。

士道と琴里と真那は薄暗い部屋にいた。

なんでも、〈ラタトスク〉が所有している施設の地下に当たる場所らしいが、詳しいことはわからない。入口から随分と歩いたことから、ここが住所の上でどの場所にあるのかすら不明瞭だった。

部屋の広さは二十畳ほどだろうか。ところどころに背の高いテーブルが置かれているものの、あとは何もない、ダンスホールのようなスペースである。

本当は〈フラクシナス〉の会議室が使えれば都合がよかったらしいが、容疑者の中に折紙と、力を封印していない精霊・七罪が残っている以上そうもいかなかったそうだ。

と───程なくして、三名の少女と、一人の青年がゆっくりとした足取りで部屋に入ってきた。

 

「くく、なんともお誂え向きではないか。我が、彼の邪王に審判を下すに相応しき舞台よ」

 

一人目は、耶俱矢。

 

「すごーい、なんだか秘密基地みたいですねー」

 

二人目は、美九。

 

「・・・・・」

 

三人目は、折紙。

 

「おう、三日月。あれから何か分かったみてえだな?」

 

そして最後に───ユージン。

もともと部屋にいた士道と琴里、真那を含めて計七人。

現在残っている容疑者全員が今、この部屋に集結した。

皆には既に、〈ラタトスク〉の機関員からことのあらましを説明されているはずである。

幸か不幸か───『精霊』の存在を知る面子だけが残っているからこそ使える手段だった。

 

「よく来てくれたわね、みんな」

 

琴里が言うと、ユージンを除く三人は戸惑う様子を見せながらも、士道達のもとに歩いてきた。

 

「ふん、気にするでない。どちらかと言えば、そのような重大な問題を我らに黙っていたことを謝って欲しいくらいだな」

 

「うーん、あのデートは調査の一環だったってわけですかー。それは少し残念ですねー」

 

「・・・・・」

 

皆がそれぞれに口を開くが、そんな中でユージンは士道に言う。

 

「で?三日月、あの女が誰に化けたのか分かったのかよ?」

 

「うん」

 

ユージンの言葉に士道は頷く。───と、次の瞬間。

 

部屋の中心にあたる空間が一瞬歪んだかと思うと、その場に淡い輝きが溢れ───天使〈贋造魔女〉が、出現した。

 

『な・・・・っ!?』

 

士道を除く、皆の狼狽が、部屋中に響き渡る。

 

『はあい、元気にしていたかしら?』

 

「まだ時間じゃないと思うけど?」

 

殺気立つ士道に、七罪は楽しげに笑いながら続ける。

 

『───うふふ、そう慌てないの。“どうせ当てられないのだから”最後の夜を楽しみましょう?』

 

そう言う七罪に真那が口を開く。

 

「随分と自身があるみてーですね?」

 

『そりゃあもちろん。私の変身は完璧なのよ?前はボロを出しちゃったけど、今回はそうはいかないわ』

 

そう言って、七罪は士道に顔を向ける。

 

『それで・・・士道は私が誰に変身していたのか分かったかしら?三回まで答えをあげる。それで三回とも言い当てる事が出来なかったら、全員、私のものにしてあげるわ』

 

そう言ってクスクスと笑う七罪に、士道は言った。

 

「別に三回も要らない。だってアンタが化けた奴は“よしのん“だって事は分かってる」

 

『・・・・は?』

 

そして、真面目な顔で士道を見つめ返してくる。

 

『・・・よしのん、ね。四糸乃ちゃんの着けてるパペットのことかしら』

 

「そうだよ。お前はこの数日間、よしのんに化けてたんだろ」

 

『・・・理由を聞かせてもらえるかしら』

 

七罪は顎に手で撫でながら問うてくる。が、士道はそのエメラルドのような目を見つめながら言った。

 

「アンタはよしのんに化けた時、俺と銀髪しか知らない事を口にしただろ」

 

それはバルバトスと精霊の力の拒否反応で半分以上が消えた十香達の思い出の中で残っているある時───

 

「アンタ───四糸乃がいなかった時、なんでよしのんが銀髪の家にいたってこと知ってた?」

 

よしのんは四糸乃が居なけりゃただの人形・・・パペットだ。そう。よしのんは知るはずがない。どこで自分が保護されたかなんて。

 

「アンタは余裕ぶってたんだろうけど、他にもバルバトスが四糸乃からアンタの気配を感じとってたから、どっちかだって分かってた」

 

言って、もう一度、〈贋造魔女〉を見る。

 

「で?どうなの、アンタ。アンタが化けてたのは、よしのんじゃないの?」

 

『・・・・それは───』

 

〈贋造魔女〉に映った七罪が、頬に汗を垂らして言い淀む。

───瞬間。

〈贋造魔女〉が、蠢動した。

次いでらその振動が次第に激しくなっていくとともに、〈贋造魔女〉の先端部の鏡に、ヒビが入る。

そして、鏡は今までとは違う、強烈な輝きを発した。

 

「おわッ!?」

 

「な、何よ、これ・・・・!」

 

「きゃぁっ!」

 

「ちっ・・・!」

 

それぞれ様々な反応をしめしながらも、しばらくて輝きが収まり、目がようやく明るさに慣れていく。

そして、部屋の中に、一瞬前まではいなかった幾人もの人間が横たわっていることに、皆は気づいた。

それらは皆───〈贋造魔女〉によって消し去られてしまった仲間たちだった。

 

「! 皆さん!」

 

真那はそれにいち早く気づき、声を上げる。すると十香と四糸乃が頭を押さえながらむくりと身を起こす。

 

「こ、ここは・・・一体・・・」

 

「・・・真那・・・さん?」

 

と、耶俱矢はすぐさま辺りを見回して、ぐったりとした夕弦のもとへ駆けていった。

 

「夕弦! 夕弦!」

 

耶俱矢が夕弦の身体を揺する。すると、数瞬の間のあと、夕弦が小さく咳き込んだ。

 

「朦朧。耶俱・・・矢。相変わらず・・・騒々しいです」

 

「! 夕弦・・・・っ!」

 

耶俱矢が顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら、夕弦に抱きつく。夕弦はしばしきょとんとしていたが、すぐに耶俱矢を優しく抱き返した。

だが、士道はそんな二人の感動的再会や十香達を見ていなかった。

士道は大きな帽子のつばに覆い隠された七罪の姿を見る。

 

「・・・それが“アンタ“の本当の姿か」

 

「・・・・・な───」

 

「おいおい・・・マジかよ」

 

琴里とユージンの視線の先にはへたり込んでいる少女の姿があった。だが、その少女の姿は記憶にある七罪とはまるで違っていた。

小柄で細身な体躯。如何にも不健康そうな生白い肌に、小さな身長がさらに小さく見えるような猫背。眉は卑屈そうに、その両目は憂鬱そうに歪んでおり、自信にあふれていたあの表情など見る影もなかった。

そんな少女は士道の言葉にハッとした様子でペタペタと自分の顔を触り、愕然とした表情をつくった。

 

「あ、あ、あああ・・・・ッ!?」

 

そして絶望に満ちた声を上げ、帽子のつばを握り、自分の姿を隠すように背中を丸める。

そして帽子で自分の姿を隠したまま、右手を高く上げる。

 

「〈贋造魔女〉・・・・っ!」

 

七罪の声に呼応し、円卓の中央に浮遊していた〈贋造魔女〉が、手に収まる。その際、割れていた鏡の部分が、自動的に修復していった。

そして次の瞬間、七罪の身体が発光したかと思うと、その姿が、以前士道が目にした大人の姿に変貌していた。

七罪は憎々しげな目で士道を、そして周囲の皆を睨みつけると、重苦しい声を喉から発した。

 

「知った・・・な。知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったな知ったなァァァァァァ───ッ!」

 

そして、怒り狂うように身体を捩りながら、続ける。

 

「一度ならず二度までも・・・私の秘密を見たな・・・ッ!ゆ、ゆゆ許さない。絶対に許さない。全員、全員タダじゃ済まさないィィィィィッ!!」

 

だが───。

 

「ガフッ!?」

 

絶叫する七罪の横腹に大型メイスが突き刺さり、七罪を勢いよく壁に叩きつけられる。

 

「士道!?」

 

琴里が叫ぶと、士道はボソリと呟く。

 

「ゴチャゴチャ五月蝿いよ。そんなに見られるのが嫌ならここで死ねばいいじゃん」

 

士道はそう言って顕現させたバルバトスの肩に大型メイスを担ぐと、七罪に向けて歩いていく。

 

「・・・・!カマエッ!」

 

琴里は自身の天使を顕現させようとしたその瞬間、視界が暗くなった。

 

「なに───」

 

琴里はそう呟くと同時に、“地面へと叩きつけられ固定“される。

 

「琴里さん!?」

 

真那が叫ぶと同時に、ユージンは目を見開けていた。

 

「嘘・・・だろ・・・なんでコイツが・・・」

 

ユージン達の視界に映っていた“ソレ“はユージンにとって見慣れた機体だった。

焦茶色の装甲にモスグリーンのツインアイ。そして特徴的なバックパックと両手に握られている“ペンチ状の可変リアアーマー”。

 

ASWーGー11 “ガンダムグシオンリベイクフルシティ“

 

かつての家族の機体がそこにいた。

 

「・・・・ッ!!」

 

真那は抑えられた琴里を助けるべく、《ヴァナルガンド》を展開させ、銃口をグシオンに向けた瞬間───

 

ガッ!!

 

「ぁ───ぇ・・・?」

 

首元に強い衝撃が真那を襲い、真那は気を失った。

 

「何だよ・・・あの機体!?」

 

ユージンは真那を一撃で気絶させた“ソレ“に目を見開ける。

 

グレー色の装甲に所々に蛍光グリーンに近い色の装甲と腕にトンファーが装備された謎のガンダム・フレーム。

ユージンや士道は知らないが、その機体はかつて厄祭戦に消失したとされる機体。バルバトスの最後の記録によって顕現したガンダム・フレーム。

 

ASWーGー32“ガンダムアスモデウス“

 

そんなアスモデウスはユージンに一瞬でユージンに近づくと、一瞬で首元にグラン・トンファーで衝撃を加えた。

 

「ガッ!?」

 

倒れ伏すユージン。だが、士道はそんな事を気にせずに七罪の目の前に立つと、大型メイスを振り上げる。

 

「ヒッ・・・!?」

 

壁に背を預ける七罪は後ろへ下がろうとするが、下がる事ができない。

そして振り降ろされるその瞬間。

 

「──────シドー!!」

 

十香が士道の名を叫んだ。その声が、士道の耳に届く。

 

「─────────」

 

士道は十香の声に動きを止め、顔を十香へと向ける。

十香が士道に向けていたその表情はどこか悲しそうな表情だった。かつて、アトラやクーデリア達が自分に向けた悲しそうな表情。

 

「〈贋造魔女〉───!!」

 

そんな士道の隙をついてか、七罪が叫ぶと同時に部屋の中を目映い光で埋め尽くしていった。

 

「チッ!!」

 

士道はその光に顔を腕で守る。

とはいえ、その光は数秒程度で収まった。だが。

 

「シドー! シドー!」

 

いつもより甲高い十香の声が部屋の中を響く。

士道はそちらへ目をやり───目を丸くした。

 

「シドー、なんだこれは。身体が思うように動かんぞ・・・!?」

 

言いながら、だぼたぼのパジャマを引きずって、小学三年生くらいの外見になった十香が、手足をバタつかせる。

だが、異常はそれだけではなかった。

辺りにいた皆を見回すと、意識のない者を除いた全員が、十香と同じように、幼くなっていたのである。

 

「なんだこれ」

 

「ふふ、ふふふふふふふ・・・・っ」

 

士道が眉をひそめていると、部屋の中央で〈贋造魔女〉を掲げた七罪が、暗い笑い声を発した。

 

「いいザマだわ・・・・っ!あんたたちはみぃーんな、ずっとちびすけのままでいればいいのよ・・・っ!」

 

七罪は高らかに笑うと、〈贋造魔女〉に跨り、部屋の天井に穴をあけ、空に飛んでいった。

 

「チッ!!」

 

士道が舌打ちをすると、グシオンとアスモデウスが七罪を追おうとする。だが、士道はすぐにバルバトスを消すと、その二機は粒子となって消えていった。

そして、一人残された士道は空を見上げながらもう一度目を細めると、十香達のもとへと足を運んでいった。




おまけ 

狂三「で?なんでわたくしもこうして手伝っておりますの?」

作者「しゃーねーじゃん。この機体パーツ多すぎなんだよ」

狂三「だからと言って手伝わせますか!?普通!?」

作者「じゃあ、あれ作る?」

狂三「はい?」


ネオ・ジオングの巨大箱


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七罪チェンジ
第一話


投稿!!

ウルズハントのCM見ていたら一瞬だけ、蜘蛛か蟹みたいな形のモビルアーマーの姿を見てマジか!?と驚いた作者です。
口元らしき部分が生き物みたいに動いて複眼みたいな目が機械というより、生き物みたいで気持ち悪い見た目でした・・・


十月二十九日、日曜日。

五河家の中は今、騒然としていた。

 

「シドー!おなかがすいたぞ、シドー!」

 

「しどう、おしっこ。ひとりではできない。ついてきて、しどう」

 

「みーかーづーきーさーん!」

 

「あ、あの・・・しどうさん・・・」

 

「みんなちょっとおちつきなさい!って、あ!かぐや、それわたしのチュッパチャップスじゃないの!」

 

「シドー!ごはんがたべたいぞ、シドー!」

 

「くく、ちいさきものよ。さまつなことにこうでいするは、おのがわいしょうさをろていするにほかならんぞ?」

 

「しゅこう。ひとつくらいいいではないですか」

 

「って、あなたも!かえしなさいよー!」

 

「う・・・っ、うぇぇぇぇぇぇ・・・」

 

『ああっ、ほら、だいじょーぶ、だいじょーぶ』

 

「くーくくく!いちどわがりょうちにはいったものはかえせぬなー!」

 

「とうぼう。かえしてほしかったらつかまえてみるがいいです」

 

「みーかーづーきーさーん!」

 

「・・・・・・」

 

士道は無言で苛立ちを覚えながら、調理場に立っていた。

ただでさえ寝不足でイライラしている中で、ひっきりなしに響く甲高い声と、バタバタという足音が容赦なく士道の頭を叩いていく。ついでに上着の裾は先ほどから四方に引っ張られ、びろびろに伸びてしまっていた。

今、五河家のリビングには、七人の小さな女の子たちの姿があった。

皆、歳は十にもならない。恐らくライド達よりも小さい年少組と同じくらいだろう。

ただえさえ手のかかりそうな年代である。加え、それぞれが思い思いにしているとなると、士道の苛立ちも仕方がないのかもしれなかった。

皆、黙ってさえいれば可愛らしい少女たちだ。だが、重要なのはそこではない。彼女たちの顔立ちは、小さくなっても見覚えがあるのである。

 

十香、折紙、四糸乃、琴里、耶俱矢、夕弦、そして美九。

そう。彼女らは、皆数年分もの時を巻き戻されてしまったかのように、子供の姿になってしまっていた。

一人の───精霊の手によって。

 

「アイツ・・・あの時に殺せばよかった」

 

誰にも聞こえないように士道は、ボソッと呟く。

今から数日前。士道は七罪という名の精霊ととある勝負をし───勝負を勝ち取った。

しかしその後、七罪は皆の姿を変化させ、どこかへと去っていった。

結果、その日から五河家は簡易託児所状態へとなっているのである。

 

「シドー!シドー!」

 

「しどう、そろそろげんかい」

 

「う、うぅ・・・・」

 

「この、まちなさいよっ!」

 

「ふはは!ここまでくるがいい!」

 

「ちょうしょう。そのていどですか」

 

「みーかーづーきーさーん!」

 

「・・・・・・」

 

ゆさゆさと四方から引っ張られ、身体を揺らされながら士道は我慢の限界を迎えようとしたその時───。

 

「あー・・・やっと検査が終わりました。兄様、ただいま戻りまし・・・た?」

 

「・・・どうしたよ?真那・・・って、三日月、そのチビ達はなんだよ?」

 

ちょうど良いタイミングでいい押し付け役(真那とユージン)がやってきた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・・ふぅ。やーっと落ち着きましたね」

 

真那は大きく息を吐いてソファに腰掛ける。

 

「しっかし。あのチビ共が十香達かよ。俺等が気ぃ失ってる時に何があったんだよ」

 

ユージンは炭酸飲料のキャップを開けながら、半分ほど一気に飲み干す。

そんなユージンの質問に答えたのは、ユージン達と一緒に来ていた令音だった。

 

「・・・単なる嫌がらせだと私は予想している」

 

「嫌がらせだぁ?」

 

令音の言葉にユージンがすっとんきょうな声を上げる。

 

「・・・そうだね。あの場から逃走するための緊急措置という可能性もあるし、精霊たちの戦力を削ぐことにより、君に何らかの警告かもしれない。だが、それも無駄だったようだがね」

 

令音がそう言うと同時に、キンコーンとドアのチャイムが鳴り響いた。

 

「・・・誰かきた?」

 

「あ、なら私もいきますよ」

 

士道と真那はゆっくりと立ち上がると、玄関の方へ足を運ぶ。

 

「はーい。どなたさまでやがりますか?」

 

真那が士道の替わりに扉を開けるとそこには───

 

「久しぶりだな。三日月・オーガス。村雨令音に呼ばれて君の家にきたが、失礼するよ」

 

モンターク───マクギリス・ファリドが、二人にそう言って笑みを浮かべた。




狂三「なんですの・・・これ」

戦車「マグアナック隊三十六機セット。作者がもうすぐ誕生日だから持ってきた」

作者「お前、そう言ってるけど俺は知ってるからな?前から買ったはいいけど邪魔って言ってたの」

狂三「完全に要らないものを押し付けていますわよね?」


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第ニ話

投稿!!

疲れが取れてないせいで、投稿ペースが遅れる鉄血です。

なかなか時間も取れないしなぁ、では、どうぞ!


止められるもんなら、止めてみな!

ツインサテライトキャノン発射前のガロード


イギリスはヒースロー空港から日本の成田空港まで、およそ十二時間。

プライペートジェットの機内で簡単な残務処理をこなしたアイザック・ウェストコットは、空港の専用ターミナルを出るなり、待たせていた車に乗り込み、日本の宿泊先である東京都天宮市のホテルに向かっていた。

くすんだアッシュブロンドに、抜き身の刃物のような鋭い双眸が特徴的な長身の男である。

 

「しかし、こうも短期間に往復が続くと、さすがに疲れてしまうな。どうだろう、エレン。いっそのこと日本に居を構えてしまうというのは」

 

ウェストコットが小さく肩を回しながら言うと、隣に座ったノルディックブロンドの少女がギロリと視線を鋭くする。

 

「本来であれば今回の渡日も延期していただきたかったくらいです。“あんなこと“があったばかりだというのに、よくご自分の城を空にできるものだと感心してしまいます」

 

少女が強い口調で言ってくる。エレン・M・メイザース。ウェストコット直属の部下にして、DEMインダストリー影の実行部隊たる、第二執行部の長である。

だが、そんな彼女の身体は火傷の痕が彼方此方に目立っていた。

 

「そう褒めないでくれ。照れてしまうよ」

 

「褒めていません」

 

エレンがぴしゃりと言う。ウェストコットは小さく肩をすくめた。

 

「それより、例の件は調べてくれたかい?」

 

「・・・はい、こちらです」

 

エレンは小さく息を吐き、鞄からクリップで留められた書類の束を差し出してくる。ウェストコットはそれを受け取ると、そこに印刷された写真と文字列に視線を落とした。

それは、五河士道という少年と、彼を取り巻く環境についての調査資料だった。

 

「・・・なるほど。十数年前に今の家の養子になった、か。そして妹には精霊〈イフリート〉の疑い・・・よくもまあ、ここまで揃ったものだな。いや・・・揃えた、というべきか」

 

ウェストコットはくつくつと笑い、資料を捲った。次の紙には、数名の少女時代たちの写真が印刷されていた。

 

「〈プリンセス〉、〈ハーミット〉、〈ベルセルク〉、〈ディーヴァ〉───そして先の〈イフリート〉。確認できているだけで実に六名もの精霊が、彼のもとに集まっている。それに崇宮真那もいるそうじゃないか。エレン、君はこれをどう見る?」

 

「〈ラタトスク〉の関与は間違いないかと」

 

ウェストコットの問いに、エレンが微かに不機嫌そうな調子を覗かせながら口を開いた。

 

「それは間違いないだろう。精霊の力を封印することのできる少年───それを〈ラタトスク〉が利用しているのは疑いようがない。それに巨大な組織のバックアップがなければ、彼の性格を見た限りだと、不可能に近いだろうね」

 

ウェストコットはエレンに言う。

 

「だが、本当にそれだけかな」

 

「と、言いますと?」

 

エレンが怪訝そうに問うてくる。そんなエレンにウェストコットは肩をすくめた。

 

「そのままの意味さ。この奇異で歪な状況を作り上げたのは、果たして本当に、我らが御敵〈ラタトスク〉の意志のみによるものなのかな」

 

「・・・他に、裏で糸を引いている者がいると?」

 

「さてね。だがもし仮にそうだとしても、我々のやることに変わりはないさ。───それに愛しき『魔王』と共に『面白いモノ』もあのときに見れた事だしね」

 

そう言うウェストコットにエレンは再び怪訝そうな表情を作った。

 

「“アレ“ですか・・・」

 

〈プリンセス〉が反転体となったことはまだ記憶に新しいだろう。だが、その『魔王』となった〈プリンセス〉より強大な力を持ったあの機械のような怪物───“アレ“がなんなのかは分からないが、五河士道の影の中から這い出ようとしていたことから、碌なものではないだろう。

 

「彼が扱う霊装で良いのかな。聞いた話ではあのお伽話である“厄祭戦”に関係するシロモノだと言われているそうじゃないか。もし───それが本当だとしたら」

 

「“アレ“もその厄祭戦に関するモノだと?」

 

疑いの目を向けるエレンに、ウェストコットは笑みを浮かべたまま頷いた。

 

「文明が滅び、当時の総人口の約四分の一の人間が死に絶え、厄祭戦は終結した。この戦争によって惑星間規模を巻き込み、地球圏の統治機構は崩壊、月は荒廃する壊滅的な打撃を受けたと言われている」

 

ウェストコットはエレンにそう言い聞かせながら、更に言葉を続けた。

 

「その巨大な戦争を終わらせたのが、ソロモン七十二柱の悪魔の名を持つ“ガンダム“と呼ばれた存在だ。その悪魔のもとに対極の位置に値する天使達が集まるというのは、中々面白いと私は思うね」

 

ウェストコットは笑みを深くしてその口を歪める。

 

「かの悪魔に〈プリンセス〉は惹かれ、グレイズアインが彼を殺そうとしたとき、〈プリンセス〉は絶望の淵に立ち───結果、魔王〈暴虐公〉の柄を掴むに至った。───少なくとも〈プリンセス〉は、彼を心から尊び、信頼し、愛している。素晴らしいことじゃあないか。彼らには、もっともっと信頼関係を深めておいていただこう。来るときのために・・・ね」

 

ウェストコットはエレンにそう言いながら、窓の外に目を向けながら笑うのだった。




狂三「そう言えば、気になっていることがあるのですけれど」

作者「ん?どしたの?」

狂三「このリーオーと言う機体は、乗る人によって強度が変わると聞いているのですけれど、それは本当ですの?」

作者「ホントよ?例えばアレが良い例じゃない?」

狂三「?」

リーオー「・・・・・」エレガントなポーズを取りながら、ビームライフルを受けてる

狂三「本当に何で出来ていますのよ・・・アレは」

作者「エレガニウム合金じゃなーい?」


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第三話

投稿!!


今回はマクギリスの回になります!


ウルズハントのモビルアーマー、あれ蜘蛛と蟹を合体させたなにかだわ。

死神様のお通りだぁ!!

デュオ・マックスウェル



「なるほど。では、君が出したグシオンや謎のガンダムフレームは、君の意志ではないと?それで違いはないかな」

 

「そうだけど」

 

士道な適当な返事をマクギリスに返しながら、ポケット中からデーツを取り出して口に含む。

そんな士道に、マクギリスはユージンや真那に言った。

 

「君達二人はそのガンダムフレームを一瞬見たと言っていたが、どういった見た目をしていたのか・・・覚えているかね?」

 

「私はほぼ不意打ち紛いの一撃を食らって気を無くしたんで、そこまでは。ただ、灰色の装甲が一瞬見えたくらいですよ?」

 

「俺は・・・逆にグシオンに気ぃ取られててよ。そこまで覚えてねえな。ただ、両腕にやたら長い棒みたいなのが伸びていたな。後は・・・蛍光色みたいな黄色がやたら目立ってたな。そんくらいか?」

 

二人の曖昧な情報に、マクギリスは右手を前髪に添える。

 

「灰色の装甲に蛍光色の黄色、それに両腕に長い棒・・・ユージン・セブンスターク。その長い棒はトンファーではないかね?こういった武器なのだが」

 

マクギリスはタブレットの画面をユージンに向けると、その映し出された画像を見て頷いた。

 

「ああ。そんな感じのヤツだった。でも、アイツのは腕についていたしなぁ」

 

「いや、それだけ分かれば十分だ。だが、しかし・・・また、殆ど情報になかった機体が出てくるとはな」

 

「?何か分かったんでやがりますか?」

 

真那の問いにマクギリスは頷いた。

 

「ああ。トンファーを装備したガンダムフレームは一機しかいないことが幸いした。君達を気絶させたのは間違いなく、ASWーGー32ガンダムアスモデウスだろう」

 

「ガンダムアスモデウス?聞いたことねえな。新しいガンダムフレームか?」

 

ユージンの問いにマクギリスは答える。

 

「いや、厄祭戦時に作られた32番目の機体だ。戦闘記録も一切なく、行方不明になっていたことから、記録などは殆ど残されていないに等しい機体になっている」

 

マクギリスはそう言って、出されたコーヒーを口にする。

そして士道に視線を戻した。

 

「それで───今の状態に不便はないかね?“あの時“と同じ状況になってしばらく立つが」

 

「・・・あの時?」

 

真那はマクギリスの言葉にそう聞き返すが、此方の話だと言って、真那を軽くあしらいながら、士道を見る。

 

「別に。特にないよ」

 

「そうか」

 

士道の言葉にマクギリスは頷くと、ソファからそのまま立ち上がった。

 

「・・・では、私はそろそろ行かせてもらうが、三日月・オーガス。君と二人きりで話しておきたいことがあるのだが少し時間はあるかね」

 

「ん?まあ、いいけど」

 

士道はマクギリスに言われて立ち上がると、そのまま玄関へと歩いていく。

 

「では、失礼するとしよう。と、そのまえにこれを君達に渡しておかなければいけないな」

 

マクギリスはそう言って手にしていた紙袋から金属製の箱を取り出した。

 

「これを皆と分けるといい。今日呼び出してもらった礼だ」

 

マクギリスはそう言って、チョコレートが入った金属箱を机の上に置いて玄関へと足を進めた。

 

「じゃあちょっと話あるみたいだし、十香達よろしく」

 

「りょーかいです」

 

「早く戻って来いよ。でねえとアイツらうるせーから」

 

「わかってる」

 

士道はそう言って先に言ったマクギリスの後を追う。

 

「で?話ってなに」

 

士道は玄関の扉を開けた先に立っていたマクギリスに言う。

と、マクギリスはそんな士道に言った。

 

「歩きながら話そう。彼女達に聞かれたら少々面倒だ」

 

「分かった」

 

士道は短くそう答えると、マクギリスの歩みに合わせるように歩き始めた。

 

「さて、三日月・オーガス。君は、DEMインダストリーに突入し一度死んだ。その時を覚えているかね?」

 

「?覚えてるけど」

 

士道の返事にマクギリスは言った。

 

「あの時───この世界では無いはずの兵器、ビーム兵器の光がほとばしっていくのを見た。君の影から“モビルアーマー“が現れようとしていたことも含めて君に聞く。今回のガンダムフレームが現れた件、あれは恐らく抑止力だろうと私は推測している」

 

「抑止力?」

 

士道は聞き慣れない言葉に首を傾げるが、それにマクギリスはすぐに答えてくれた。

 

「ああ。言ってしまえば、バルバトスが君に対するなんらかの警告とも取れるだろう」

 

「バルバトスが?」

 

マクギリスのその言葉に士道はそう返事を返す。

 

「ああ。今の君は精霊の力を封印できる力を持っているだろう。だが、その精霊達が持つ天使を見て、何か思わなかったかね?」

 

「・・・バルバトスの反応が悪くなったのは知ってる」

 

かつてモビルアーマーの対面した時のあの反応。耶俱矢と夕弦の天使を見た時、あれと同じ反応をしたことをまだ覚えている。

それと、関係があるのだろうか?

マクギリスはそんな士道に言った。

 

「おそらく、バルバトスの力と彼女達の力が“そもそも合っていない“のだろう。お互いの力がぶつかりあった結果、拒否反応を起こしたこともあった筈だ。それが原因で君にも影響が出ると思うのだが、身に覚えはないかね?」

 

あるにはある。だが、士道は答えなかった。

 

「“別にないよ“」

 

「・・・そうか」

 

士道の即答にマクギリスは返答する。

 

「私から一言、言っておこう。今はまだ大丈夫だとは思うが、今の君の身体に限界を越える精霊の力を封印したら、最悪な可能性として再び“モビルアーマーが現れる可能性”がある」

 

マクギリスのその答えに、士道は───三日月は言った。

 

「その時が来たら、また“殺す“だけだよ」

 

「その“結果“が、彼女達が望まないものだとしてもかね?」

 

「十香達には悪いけど、“そうしないといけないだろうしね“。もし俺がしくったら、チョコの人に嫌な役押しつけることなるけどいい?」

 

「・・・ああ。構わないとも。そうしなければならないことを願うがね」

 

マクギリスはため息を吐きながら、士道に言う。

 

「ここまでで結構だ。また時間が合えばまた会おう」

 

「チョコの人も頑張ってね」

 

「ああ」

 

マクギリスと士道はそう言って駅前で別れた後、お互いに反対側の道を歩きながらその場を後にした。




作者「いやー、相変わらずウィングガンダムは扱い酷いネ」

狂三「どういうふうに酷いんですの?主人公機でしょうに」

作者「大半が水没したり、自爆したりで散々な扱いよ?最後なんて主人公のいないところで大破するわで・・・」

狂三「もういいですわ!?酷い目というのが良くわかりましたわよ!?」


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第四話

投稿!!
最近疲れが取れなくて、投稿ペースが落ちてきた鉄血です。

早く投稿ペースをもとに戻さねば・・・


三日月、お弁当あるけど食べる?

アトラ・ミクスタ


「・・・・・」

 

翌朝。士道は首を軽く回しながら、士道はリビングのソファから身体を起こした。

結局、昨日は子供化してしまった皆を隣のマンションに帰すわけにもいかず、士道の部屋グループ(士道、十香、四糸乃、美九)と琴里の部屋グループ(琴里、耶俱矢、夕弦)とに分かれて雑魚寝をさせるはめになった。

とはいえ、全員が全員五河家に泊まったわけではない。唯一、折紙のみが、「やることがある」と、もの凄く名残惜しそうに自宅に戻っていた。

とはいえ、歯ブラシや士道の私物のいくつか見当たらなくなっていたので、次のあったらアイツを絞め落とすという苛立ちもあったが。

 

「おはよう、しどう」

 

「おはよーございまーす、みかづきさーん」

 

「お、おはよう・・・ございます・・・」

 

『うーん、いい朝だねー』

 

と、リビングに入ってきた琴里、美九、四糸乃、そして『よしのん』が士道の方に目を向けて挨拶を返してくる。

 

「おはよう」

 

士道はソファから身体を逸らすと、そのまま床に足をつけるとそのまま立ち上がった。

どうせ十香や耶俱矢と夕弦はまだ部屋で寝ているのだろう。

士道はもう一度首を回しながら言った。

 

「───飯作るからちょっと待ってて」

 

士道はそう言って、手を洗ってから朝食の準備を始めた。

 

「あの・・・わたしも、てつだい・・・ます」

 

「あ、わたしもてつだいますねー」

 

四糸乃と美九がそう言って、台所へと入ってくる。

 

「そう?じゃあ、四糸乃は皿お願い。美九は卵割って」

 

「はい・・・っ」

 

「わかりましたー」

 

卵と牛乳、砂糖を混ぜたものに、食べやすい大きさにカットした食パンを浸し、バターを溶かしたフライパンでこんがりと焼き上げる。

簡単で美味しいと定評のあるフレンチトーストである。

無論、パンに味を染み込ませている間に、自分用のサラダと皆のサラダとスープを作っておく。

 

「琴里。もうすぐだからテーブル空けて」

 

「わかったわ」

 

士道の声に、リビングにいた琴里が行動を開始した。

台布巾でテーブルを拭き、美九が料理の盛りつけられた皿を四糸乃が運んでいく。別段珍しい光景でもないが、今は彼女らの幼い容姿のためか、妙に「おてつだい」感が出ていた。

 

「じゃあ食べようか」

 

『いただきまーす』

 

三人が士道に倣うように手を合わせ、ぺこりと頭を下げる。

 

「!おいしい・・・です」

 

「ん、まあまあね」

 

フレンチトーストを口に運んだ四糸乃が目を見開き、琴里がふふんと鼻を鳴らす。

なんだかんだ言っているものの、喜んでいるようだし士道はサラダにフォークを突き刺した。

───と。

 

「しどう、さん・・・」

 

「ん?なに」

 

「ごはん、たべないんですか?」

 

士道の皿にフレンチトーストがないのに気付き、四糸乃は士道に問うてきた。

 

「?飯ならあるじゃん」

 

士道はそう言うが、その返答に答えたのはよしのんだった。

 

『もー、四糸乃が言ってるのはそう言う事じゃないよー。士道君も鈍いねー。四糸乃が言ってるのは、それだけで足りるのかって聞いてたんだよー』

 

「ふだんよりたべるりょうもすくないもの。そりゃしんぱいするわよ」

 

琴里もよしのんの言葉に頷いた。

 

「別に今日はそこまで腹減ってないし」

 

士道はそう言うが、向かいの席に座る美九は言う。

 

「おなかがへっていなくても、ちゃんとたべなきゃだめですよー?でないとちょうしがでないんですから」

 

「・・・・・」

 

美九の言葉に士道は頭をかく。

確かに美九の言いぶんも一理ある。だが、トーストは琴里達と十香達の分しか作ってない以上、食べるものなど他にない。

と───

 

「これ・・・たべて、ください」

 

「「!?」」

 

四糸乃がフォークに刺したフレンチトーストを士道に渡してきた。

 

『わーお!四糸乃てば、ダイタン!』

 

琴里達が四糸乃の行動で目を見開け、よしのんは口元を抑えながら声を上げる。

 

「ん。じゃあもらうね」

 

士道は四糸乃に差し出されたフレンチトーストを口にもっていく。

 

「「!?」」

 

 

琴里と美九は更に目を大きく見開け、四糸乃は自分が何をしたのかを今、理解したのか顔を赤くする。

 

「うまい」

 

士道はそんな三人に気にすることなく咀嚼してそれを飲み込んだ後、こちらに視線が刺さるのを士道は感じとり、顔を琴里達の方へと向ける。

その目の先には四糸乃を覗く二人はジーッとした目で士道を見つめていたからだ。

 

「・・・なに?」

 

士道はじっと視線を送ってくる二人に目を細めながらそう言うが、琴里は機嫌が悪そうに口を開いた。

 

「・・・べつに。なんでもないわよ」

 

そう言う琴里に対し、美九は言った。

 

「よしのさんだけズルいですぅ。みかづきさん!やってください!」

 

美九はそう言ってフレンチトーストが刺さったフォークの柄の部分を士道に渡してきた。

 

「別にいいけど」

 

士道はそう言いながら、フレンチトーストを美九の口元へと持っていった。

 

「あーん」

 

美九は目を閉じたままそのフレンチトーストを口にいれると、両手でほっぺを押さえながら嬉しそうに声を弾ませた。

 

「うぅーん!おいしいですぅ。みかづきさんにたべさせてもらうとまたかくべつですぅ」

 

「別に味は変わらないでしょ」

 

美九の反応に士道はそう言うが、そんな士道達を見て琴里は更に呻いた。

 

「・・・・むぅぅ・・・」

 

今にも泣きそうな目をしながら視線を送ってくる琴里に、士道は言った。

 

「やって欲しいの?」

 

士道のその言葉に琴里は言う。

 

「・・・!べ、べつにたのんでないわよ、そんなの。こどもあつかいしないでくれる!?」

 

「あっそ」

 

琴里の返答に、士道はそう答えるとそのまま席から立ち上がった。

 

「俺、学校行く準備するから自分で食べたやつは適当に洗っといて」

 

そう言ってリビングから出ようとする士道に、琴里の様子を見かねた美九と四糸乃が士道を呼び止めた。

 

「あのー・・・みかづきさん」

 

「?」

 

顔を美九に向けると、四糸乃が唇を開いた。

 

「ことりさんが、ちょっときのどくなので・・・」

 

そんな四糸乃の言葉に続けるようによしのんがパクパクと口を開く。

 

『あーんしてあげたら?ものすっごい泣きそうな顔だよ?琴里ちゃん』

 

士道が目を琴里に向けるとそこには───

 

「・・・・・・・」

 

琴里は無言のままボロボロと泣いていた。

 

「して欲しかったら素直に言えばいいじゃん」

 

そう言う士道に美九は言った。

 

「それができればくろうはしないんですけどねえ・・・」

 

「そう言うもんか?」

 

「そういうものです」

 




作者「三日月にツンデレやってもあんま意味ねえのに琴里ちゃん」

琴里「・・・だって・・・」

作者「三日月の性格なら無理だって分かると思うんだけどねぇ」


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第五話

投稿!

最近、バトオペ2に嵌まった鉄血です。
最初にバイカスでたは良いけど、操作難しすぎーよ・・・

ガンダムだと!?

レーン・エイム


「聞いてくれよ五河!俺、超絶不思議体験しちまったんだよ!」

 

士道が二年四組の教室に入るなり、髪をワックスで逆立てた少年が、興奮した様子で士道に詰めよってきた。───殿町宏人である。

見たところ、どうやら身体に異常などはない様子だった。

そんな殿町に士道は口を開いた。

 

「・・・なに?」

 

そんな士道の反応に、殿町は言った。

 

「いやな!俺、二十五日の夜に寝たと思ったら、次起きたとき、二十八日になってたんだよ!」

 

「ふーん。その日まで寝てたんだろ?」

 

「いや、流石におかしいと思わないか!?実際に不思議なんだよ!?何日も寝てたと思って家族に話を聞いてみたら、その間、俺はどこかに消えてたらしいんだ!気がついたら自分の捜索願が出されてんだぜ!?ビビったよ!」

 

「ふーん」

 

そんな生返事をする士道に対し、殿町の話を聞きつけたのか、士道の視界に、三人の女子生徒の姿が入り込んできた。

 

「おおっ、ちょっとちょっとー」

 

「気になる話してるじゃなーい」

 

「殿町くんも不思議体験組なのー?」

 

十香の友達であり───殿町と同じく、先日の事件に巻き込まれてしまった三人組、亜衣、麻衣、美依だ。

 

「お?その口振りからするとおまえらもか?」

 

殿町が問うと、亜衣麻衣美依が頷いた。

 

「そうそう、そうなのよー。みんな信じてくれないんだけどさー」

 

「私たちもここ数日間の記憶がないのよー」

 

「これって宇宙人?それとも謎の秘密結社の仕業とか?」

 

三人が口々に言い、士道を他所にやんやんやと色めき立つ。

 

「そういえばタマちゃん先生も同じような体験したって言ってたのよー」

 

「えっ、本当?これはもう偶然じゃないわね」

 

「これで五人目・・・何かの陰謀の臭いを感じるわ!」

 

「まさか、私達本当に、謎の秘密結社に拉致られてたの!?」

 

そんなくだらない話を士道は横で聞き流しながら、自分の席に着いた。

と、すぐに聞き慣れたチャイムが教室中に響き渡る。

 

「あ、もうホームルームかー」

 

「席戻んないとー」

 

「今日の一時間目なんだっけー」

 

と、亜衣麻衣美依はそれぞれ自分の席へと戻っていく。

それからほどなくして、教室の扉が開き、小柄な眼鏡の女性が入ってきた。士道たちのクラスの担任であり、先の事件に巻き込まれた一人でもある、タマちゃんである。

だが、そんなタマちゃんに対し、士道は眉をひそめる。

理由は単純。タマちゃん先生の様子がおかしかったからだ。

額に汗が滲み、目は泳ぎ、見るからに動揺しているように見える。と、不意にタマちゃんが士道の方に視線をよこしてきた。そして躊躇いがちに口を開いてくる。

 

「あのぉ・・・五河くん」

 

「・・・なに?」

 

士道が答えると、タマちゃん先生は困惑した顔を作った。

 

「あ、あのですね、五河くんにお客さんが来てるんですけど、その・・・」

 

「客・・・?」

 

士道は首を捻りながらも、タマちゃんに言った。

 

「どこに行けばいい?タマちゃん」

 

「あ、はい、今は職員室の方に・・・」

 

「わかった。行ってくる」

 

なんとなくだが、誰が来たのか想像出来る。

“此処まで来ていない”のは、真那が何とか“止めている“からだろう。士道は息を吐きながら教室から出ていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「シドー!!」

 

「くくく・・・きてやったぞ!」

 

「どうちょう。おいていくとはいいどきょうです」

 

「・・・・・」

 

職員室に向かって見ると案の定、十香達がいた。

そんな十香達を必死に真那が押さえつけていたのか、疲れた様子で士道に口を開く。

 

「すみません兄様・・・十香さん達をなんとか抑えつけようとしたんですが言うことを聞いてくれなくて・・・」

 

「別に真那のせいじゃないよ」

 

申し訳なさそうにする真那に士道はそう言った後、士道はその場にいた“四人”に目を向ける。

十香に耶俱矢と夕弦・・・そして折紙。

この四人がまだ教室に来ていないだけ、真那に感謝をしなければならないが、まず士道にはやることがあった。

 

「──────」

 

「兄様?ま、まさか・・・」

 

真那は士道が十香達に何をするのかを察して汗を流す。

士道は左手の拳を握ると、そのまま十香達の頭に叩き落とした。

 

ゴッ!!

 

明らかにヤバい音が十香達の頭から鳴り響く。

 

「「「「〜〜~~~~~~~~ッ!?」」」」

 

士道の落とした拳に頭を押さえながら蹲る四人に、士道は言った。

 

「皆、琴里に今は学校に来るなって言われてなかった?」

 

士道はそう言って、十香達を見下ろす。

悪気はないのだろうが、今は来てほしくないタイミングでもあった。

 

「むぅ・・・だが・・・」

 

十香は涙目になりながら士道を見上げるが、そんな十香に士道は言う。

 

「もとに戻るまで皆は家にいて。あと、アンタは俺のヤツ持って帰ったでしょ。返して」

 

十香達には優しく言いつつも、折紙にはキツく言いながら士道は真那に言った。

 

「真那は十香を家に連れてって。先生には俺から言っとく」

 

士道のその言葉に真那は頷いた。

 

「わかりました。ほら、十香さん達も行きますよ。後、折紙さんは兄様の私物を返して下さいね」

 

「でも、シドーが・・・」

 

十香が言い淀むが、そんな十香に真那が口を開く。

 

「今、兄様は機嫌が悪そうですから早く帰る事がおすすめですよ?もう一度拳骨をされたくはねーでしょう?」

 

その言葉に十香は頭をさすり、耶俱矢は顔を歪め、夕弦は目を細める。

折紙に関しては表情が変わらないので分からないが、もう一度アレを喰らいたくはないだろう。

 

「ほら、早く兄様が言った通りに帰りますよ。帰ったらデザート作ってあげますので」

 

「むぅ・・・わかったぞ」

 

「・・・しかたあるまい」

 

「りょうしょう。なら、かえります」

 

三人の返事を聞いて真那は頷き、折紙を見る。

 

「折紙さんも分かりましたか?」

 

「・・・わかった」

 

案外素直に言うことを聞く折紙に士道は若干の不審感を抱くが、士道は思考をすぐに切り替えて真那に言った。

 

「んじゃ、後よろしく」

 

「兄様も頑張ってくださいね」

 

真那の言葉を受け止めながら、士道は教室へと歩いていった。




作者「クロブのヘビアに慣れたせいで、マキオンのヘビアだとちょっともの足りないなぁ」

狂三「そこまで変わりますの?どれも一緒ではありません?」

作者「変わるよー。メイン誘導するし、足が速くなってるし、なんなら横サブや横特格が誘導切りついてるから変わる変わる。おかけで苦手なヤツ狩れるからかねー」

狂三「・・・詳しく語られてもわかりませんわ」

作者「だろうね。耶俱矢と夕弦はやってるみたいだから、そんな話を投稿しようかなー」

狂三「大丈夫なんですの?」

作者「冗談よ。冗談」


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第六話

投稿!!

バトオペ2でクシャトリヤの半額ガチャを引いたらまたバイカス(今度はLEVEL2)が出てきました・・・

バイカス1とバイカス2て。どんだけバイカスに愛されてんだよ・・・


チッ。はぁ・・・邪魔

ハッシュに舌打ちする三日月


「・・・・・」

 

十一月一日。士道の七罪にたいする苛立ちは限界に達していた。

七罪を取り逃してからも、あれから執拗に、七罪の嫌がらせは続いていたのである。

それはユージンや真那にも及んでいた。

まず起こったのはユージンの服装の変化。前に学校の屋上にいた時、突如違う服装になり、それが先生にバレたのだと言う。

おかげで反省文を書かされたと愚痴を零していた。

真那に関しては家でいつの間にか普段着からメイド服になっていたことに絶叫を上げていたらしい。

七罪の嫌がらせは日を追うごとに悪趣味になっていったが、裏を返せばこれはチャンスでもあった。

少なくとも、七罪は衣服や周囲のものを変化させる際、〈贋造魔女〉の効果範囲にいなければならない。無論、彼女自身も様々なものに変身できるため、特定は困難だが、士道に直接変化させるような嫌がらせはしてくる様子はあの日以来一度もない。それはつまり七罪は士道に近づきたくないということだ。

前に───士道に〈贋造魔女〉を使おうとした七罪をバルバトスが一瞬で感知し、士道が七罪を叩き潰そうとスラスターを吹かせた瞬間に、七罪はすぐに尻尾を巻いて逃げてしまった為、察知を警戒してのことだろう。

と──────

 

「なんですかぁ!?これはぁ!?」

 

真那の叫び声がリビングに響き渡った。

 

「!」

 

士道はその声に反応し、すぐにリビングへと向かった。

そこには今日の朝、見た時とは違う皆の姿があった。

 

「・・・・は?」

 

士道の目に映る十香達の衣服が、みなバニーガールのようなレオタードと網タイツになっていたのである。

そしてそんな十香達を閉じ込めるかのように巨大な檻が囲っていた。

そんな見世物状態の十香達に対し、士道の沸点は“限界を超えた“。

士道はバルバトスを顕現させ、周辺を索敵限界まで霊波反応を確認する。

そして──────

 

「今度は逃がすか」

 

士道はボソリとそう呟き、庭に出て空を飛び上がった。

 

◇◇◇◇

 

「ふふ───はは・・・あっははははっ!」

 

遠目に、苛立ちを隠さない士道の姿を見て、七罪は腹を抱えて笑い転げた。

魔女のような霊装を纏った、二十代中盤くらいの美女である。そんな彼女は目尻に涙さえ浮かべながら身を捩らせて笑い声を響かせる。

七罪がいるのは、五河家から一キロほど離れた場所にある、建設途中のビルの上だった。

鉄骨の一部を巨大な望遠鏡に変化させ、士道の反応を覗いて楽しんでいたのである。

 

「あー、可笑しい。いい気味よ。私にあんな恥をかかせておいて、のうのうと暮らそうだなんて許さないんだから」

 

言って、七罪は視線を鋭くした。

そう。七罪は数日前、あの男、五河士道に、誰にも知られたくない秘密を暴かれてしまっていたのである。

フンと鼻を鳴らし、手にしていた箒型の天使───〈贋造魔女〉を逆さに構える。

 

「さあて・・・次は何をどう変身させてやろうかしら」

 

七罪は唇を歪めると、不敵な笑みを浮かべた。頭の中に、様々な嫌がらせのアイディアが浮かんでくる。

できるだけ、士道の精神をすり減らし、士道の社会的な立場をズタズタにできるようなものがいい。もう二度と日の下を歩けないようにしてやるのである。

 

「最後にアイツの顔をもう一度拝んでから退散しましょうか」

 

七罪は笑みを浮かべたまま、再び望遠鏡に顔を寄せる。

だが、覗きこんだ望遠鏡の先には士道の姿はなかった。

 

「まさか、士道くんに見つかったっていうの・・・?」

 

七罪はチッと舌打ちをした。あり得ない話ではない。士道のあの察知から反応するまでの速度は身を持って体験している。

あの訳の分からない霊装だかなんだか分からないシロモノの対面から殴り合いをすると負けることは完全に分かっているので、七罪はすぐに身を翻した。

 

「悪いけど、こんなところで捕まってあげないわよ」

 

七罪は姿の見えない士道にべっ、と舌を出すと、〈贋造魔女〉に跨がった。

 

「ふふふっ、じゃーぁねーぇ」

 

そしてトン、と足場を蹴ると同時、七罪の身体が〈贋造魔女〉ごとふわりと宙に浮く。

そして一気に加速しようと体勢を低くした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がすわけないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

「─────────」

 

七罪の視界には超大型メイスの頭部が視界いっぱいに広がっていた。




作者「さあさあ!三日月のブッコロスイッチがON!逃げれるとイイネ!」

狂三「随分と楽しそうですわね?」

作者「自業自得で地雷踏んだ人の不幸を見るのも楽しいからかね!ところで麻婆食べる?」

狂三「どこぞの神父のように真っ赤なソレを渡さないでくださいまし」


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第七話 

短いですが投稿!!

ひっさし振りの三日月の蹂躙の回。

ではどうぞ!


コイツは死んでいいヤツだから

三日月・オーガス




「逃がすわけないだろ」

 

「─────────」

 

士道は視界に捉えた七罪に、超大型メイス不意打ち気味に叩きつけた。

建設途中のビルの屋上からビルの半ばまで、床をぶち破りながら七罪は叩きつけられる。

手応えはあった。だが、まだ“死んでいない“と確認する。

士道はひび割れた床に倒れ伏す七罪目掛けて重力とスラスターの勢い任せで振り下ろした。

 

「え・・・・っ、え・・・・っ?」

 

七罪は目を丸くしながら、そんな声を喉から絞り出した。

───今、何が起こったのかがわからない。

逃げようとした時、眼の前に巨大な鉄塊が───

 

「え、あ・・・・」

 

今までにない事態に、頭が混乱する。

七罪は霞む目に、腹部に当てていた手をゆっくりと掲げた。─────夥しい量の血がべったりと付着した、手のひらを。

 

「ひ・・・・ッ」

 

それを見た瞬間、まだどこか現実感が湧いていなかった強烈な痛みが七罪の全身を駆け抜ける。

 

───痛い。痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・ッ!!

 

「あ、ああああああああああああああ・・・・ッ!?」

 

今まで感じたことのない凄まじい痛みに、七罪は悲鳴を上げた。鋭い棘が身体中を刺していくような感覚。朦朧とする意識。霞む視界。だが、それは未だに七罪を襲う激烈な痛みが、気を失うことを許さない。

そんな中で、七罪の真上から巨大な鉄塊が悪魔と共に振り下ろされる。

 

「ヒッ・・・・!?」

 

死ぬ。七罪の直感が訴える。

みっともなく転がるように七罪は、ソレから逃げた。

それと同時に、鉄塊が先ほどまで七罪がいた所へと叩きつけられ、床を粉砕した。

叩きつけられた衝撃で床の破片が散弾のように七罪を襲う。

七罪の身体に細かい切り傷が生まれる中、そこに居たのは“悪魔“だった。

七罪も一度だけハッキリと見たことがある。

五河士道の───“霊装”。

 

「・・・へぇ。まだ生きてる」

 

低い声と共にその悪魔は七罪を見下ろした。

ライトグリーンの双眼が七罪の姿を映すが、その目からなんの感情も伝わってこない。

 

「さっさとコイツ殺して帰るか」

 

士道のその言葉を聞いて、七罪は必死にのどから声を絞り出した。

 

「・・・ッ、だ、ず・・・げ・・・死に・・・だぐ、な───い・・・」

 

「・・・・・」

 

そんな七罪に対し、士道は黙ったまま七罪を踏みつける。

 

「──────ッ!!」

 

凄まじい衝撃が七罪の腹部を襲う。

 

「お・・・ねがい!・・・は、なじを───」

 

「聞くわけないだろ」

 

士道は七罪の言葉にそう言って黙らせる。

そして士道は言った。

 

「殺さないとあんたはまた俺達を邪魔しに来るんだろ」

 

「もゔ・・・もう、しない!!だから、お願い!」

 

七罪の必死の懇願も士道は聞く事はなく、士道は最後に七罪に言った。

 

 

「それにアンタは───死んでいいヤツだから」

 

 

「──────ッ!!」

 

振り下ろされる大型メイスに七罪は思わず目を閉じる。

いつ潰されるかも知れない衝撃に目を開けることも、指先を動かすことさえできなかった。が───。

 

「はぁっ!」

 

「・・・・・!」

 

微かに驚きに染まった息づかいが聞こえてきて、それと同時に腹部から重みがなくなった。

それが気になり、七罪は恐る恐る瞼を開ける。

 

「え・・・・?」

 

そして予想だにしていなかった光景に、呆然と声を発する。

目の前にあったのは、小さな女の子の背中だった。淡く輝く霊装を纏った女の子が、身の丈ほどもありそうな巨大な剣を掲げていた。

もとに戻ったそんな彼女に、士道は口を開く。

 

「なんで止めるの。十香、それに皆も」

 

士道の視線の先には十香達が七罪を守るように立ち塞がっていた。




作者「このまま○してもよかったけど、それやると十香達VS三日月になるから辞めた」

狂三「ソレをしたら話がズレますわよね?」

作者「なんなら、タグに原作キャラ死亡つけなくちゃいけないしね!」


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第八話

投稿!

バトオペでバイアランとバイアラン・イゾルテが出ました!

なんでバイアランばっか・・・

女みたいな名前のヤツだな!

ジェリド・メサ


「なんで止めるの。十香、それに皆も」

 

士道は七罪を庇うように前に出る十香達に向けて口を開く。

その声音はいつも十香達にかけられるような優しい声音ではなく、敵を相手する冷徹な声音だった。

 

「・・・っ」

 

そんな士道に十香達は一瞬言葉を詰まらせるも、すぐに士道の顔を見て言った。

 

「質問。士道のやるべきことは精霊を助けることの筈。なら、今士道がしていることは───」

 

「間違ってるって言いたいわけ?」

 

士道は苛立ちを隠そうともせず、夕弦に視線を向けた。

 

「・・・・っ」

 

押し黙る夕弦に、その隣にいた琴里が口を開く。

 

「ねえ、士道。一つ聞いてもいいかしら?」

 

「なに」

 

「なぜ、七罪をここまでする必要はあったのかしら?十香が止めていなかったら、間違いなく七罪は士道に殺されていた。どうしてここまでする必要があったのか答えて」

 

鋭い目付きで士道を見る琴里に対し、士道は無言で周りに視線を向ける。

誰もが不安そうな顔を作る中で、十香と目があった。

十香のその表情は不安の色もあったが、何よりその目には何があってもシドーを信じているという意思が見えている。

そんな十香を見たあと、士道は息を吐きながら言った。

 

「・・・別に。ちょっと頭にきただけ」

 

「・・・頭にきた?」

 

琴里は怪訝そうな表情を作りながら、士道に聞き返す。

そんな琴里に士道は言った。

 

「俺だけだったら別にいいけど、十香達やユージンにもやってたみたいだからカッてなっただけ」

 

士道はそう言ってバルバトスを消し、十香達を通り過ぎて歩き始める。

 

「シドー・・・」

 

十香が士道に声をかけると、士道は言った。

 

「ちょっと頭冷やしてくる」

 

「あ・・・なら付き添いは・・・」

 

「要らない」

 

士道はそう言って一度も振り返ることなく、そのまま街の方へと歩いていった。

 

「・・・七罪を〈フラクシナス〉に回収して。今すぐ治療の準備をお願い」

 

琴里はインカムで短く指示をした後、真那に言う。

 

「真那。悪いけど士道をお願い。今の士道の精神状態じゃ十香達に合わせても多分変化しないと思うから」

 

「・・・わかりました」

 

真那は暗い表情で短く返事を返し、士道の方へと足を進めようとしたその時だった。

 

「・・・待ってくれ」

 

「十香さん?」

 

真那は十香の呼び止めに足を止めて振り返る。

振り返った真那に十香は口を開いた。

 

「シドーのことは私に任せてはくれぬか?」

 

十香の言葉に真那は琴里に視線を向ける。

十香からの申し出ということもあって、自身では言いづらいと顔に出ている真那に琴里は息を吐いた。

 

「仕方ないわね。いいわよ」

 

「・・・!本当か!?」

 

琴里の返事に食いつくように十香が顔を近づける。

琴里はそんな十香に抑えれ気味になりながらも言った。

 

「いいわよ。十香ならまだ士道も気がらくになると思うわ。それに───」

 

と、琴里は言いかけたところで口をつぐむ。

 

「ま、士道は十香に任せるわ」

 

「・・・?」

 

少し様子のおかしい琴里に十香と真那は首を傾げながらも、一緒に士道が歩いていった方へと足を進めていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・・・」

 

あの後、士道は山の上の展望台へと来ていた。

街全体を見渡せる展望台で士道は足を止めて、吹き付ける風を肌に浴びる。

 

「・・・・・」

 

士道はつい先程までの琴里達とのやり取りを思い出す。

 

『質問。士道のやるべきことは精霊を助けるこの筈。なら、士道がしていることは───』

 

夕弦の言葉が士道に突き刺さる。

 

『なぜ、七罪をここまでする必要はあったのかしら?十香が止めていなかったら、間違いなく七罪は士道に殺されていた。どうしてここまでする必要があったのか答えて』

 

琴里の言葉が士道が間違っていると言わんばかりに襲いかかる。

 

「・・・オルガ」

 

士道はそんな言葉を胸にオルガの名を口にした。

 

「オルガやクーデリアだったら、俺よりも上手くいってたかな」

 

士道は自身の手のひらを見ながら弱音を吐くようにボソリと呟く。

戦う事しか出来ない自分より、オルガだったら上手く出来ていたのではないかとふと思ってしまう。

と、そんな時だった。

 

「シドー」

 

後ろからいつも聞いている声が士道に届く。振り返るとそこには十香が立っていた。

 

「・・・十香?どうしたの」

 

士道がそう言うと、十香は士道に歩みよりながら言った。

 

「シドーが心配だから来てみたのだ」

 

「心配?なんで?」

 

首を傾げる士道に十香は言う。

 

「今日のシドーはいつもよりこう・・・ピリピリしていたのでな。きっと嫌な事があったのだろうと思っていたのだ」

 

「・・・・・」

 

そこまで十香を心配させていたのかと士道は黙ったまま、耳を傾ける。

 

「シドー・・・私は何があってもシドーの味方だぞ」

 

十香はそう言って、士道を見つめる。

 

「たとえ、シドーが何かを隠していたとしてもシドーはシドーだ。何もかも諦めていた私や皆を引っ張り上げてくれたのはシドーなのだ。もし辛い事があった時は私達を頼ってくれ」

 

「・・・・うん。その時は頼らせてもらうね」

 

士道はそう言ってポケットに手を入れると、士道は十香達に言った。

 

「んじゃ、皆帰るよ」

 

「ぬ・・・?皆?」

 

士道と十香は近くの草むらに目を向けると、そこから四糸乃とよしのん、耶俱矢に夕弦、美九に琴里、そして真那までもが隠れていた。

 

「ば、バレちゃいました・・・」

 

『いやー、士道くん勘が鋭すぎだよー』

 

「ほう・・・我が隠れているのを見破るとは・・・」

 

「油断。バレていないと思っていました」

 

「まぁ、三日月さんですしー」

 

「・・・・・」

 

「琴里さん。顔を合わせづらいのは分かりますが、しっかりしてくだせーです」

 

そんな彼女達に十香は目を丸くする。

 

「一体いつから居たのだ?」

 

「最初からでしょ」

 

士道はそう言うと、四糸乃達は乾いた笑みを浮かべながら明後日の方へと目を逸らす。

 

「昼飯食べてから七罪のこと考えるよ。琴里もそれでいいでしょ」

 

士道の言葉に琴里は息を吐きながら唇を開く。

 

「・・・ええ。構わないわ。七罪に関しては重症だけど命に問題はないから安心して。好感度に関してはちょっとアレだけど」

 

「その辺は後でいいでしょ。これまでも何とかなったし」

 

「ま、それもそうね」

 

士道は琴里の言葉を聞いた後、十香を見て言った。

 

「十香もありがとね」

 

「うむ!どういたしましてだ!」

 

士道達は皆で展望台を下りていきながら、家へと帰っていった。




作者「やっぱバイアラン・カスタムカッケェなぁ」

狂三「この・・・ゴテゴテした感じがですの?」

作者「それが良いんだよ。前のバイアランがビームサーベル握るとメイン射撃撃てない欠点を無くしたメガ粒子砲にこのバイザー・・・格好良くない?」

狂三「どこがどういいのかさっぱりなのですけど・・・」

作者「あとは、バイアラン無双だよバイアラン無双。ジオン残党相手に無双するあの姿・・・まさに空の王者って感じがいいね!」

狂三「・・・ついていけませんわ」

作者「ちなみに今、トッキーの後ろにそのバイカスがいるから」

狂三「はい?」


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第九話

昨日投稿するはずが、完全に寝落ちしてました・・・


貴様は何を考えている!

無論、ナニを考えている!

ガンダムバカと乙女座の男


「───七罪が目を覚ました?」

 

〈ラタトスク〉が市内に所有している地下施設の一角である。部屋の中は〈フラクシナス〉の艦橋のような造りになっており、様々な計器と、巨大なモニタが設えられていた。

 

「ええ、そうよ。士道」

 

と、士道の声に応ずるように、部屋の中央に置かれていた椅子がくるりと回転し、そこに座っていた少女が顔を向けてくる。

 

「てか、琴里どうしたの?その顔」

 

よくよく見ると、琴里の顔にうっすらと赤い線が見える。まるで猫に引っ搔かれでもしたかのように。

琴里は「あー・・・」とぽりぽり頬をかいたのち、「・・・ま、士道も気を付けなさい」と言ってきた。

 

「まあ、いいけど。で、七罪は何処にいんの?起きてるんでしょ」

 

「ええ、ついさっきね。───こっちよ」

 

士道は琴里に促されるままに部屋を出て、〈フラクシナス〉のそれよりも幅の広い廊下に、カツカツと規則的な足音を響かせていった。

ここに来るのは初めてだったが、先日、七罪の正体を突きつめる際に使用した施設と似たような造りをしていることは見て取れた。なんでも〈ラタトスク〉は、様々な事態に備えて、このような施設を幾つか保有しているらしい。

 

「───エレンのこともあるし、本当なら〈フラクシナス〉に収容しておくのがベストなんだけど・・・さすがに未封印の状態の精霊をあそこに置いておくわけにはいかないしね」

 

廊下を歩きながら、琴里がちらと士道の方を見ながら言ってくる。

 

「それに、どこの誰かさんのせいで好感度が最低値の彼女をあの艦におけるわけないじゃない」

 

「それ昨日謝ったでしょ」

 

「限度があるわよ。限度が」

 

嫌味を飛ばしてくる琴里に士道はそう言い返すと、不意に琴里が足を止める。目の前に頑丈そうな扉が見て取れた。

 

「ここよ」

 

琴里は手慣れた動作で、扉の横に設えた端末にナンバーを入力し、手のひらを当てる。すると軽快な電子音が鳴って、扉がスライドしていった。

 

「さ、士道」

 

「・・・・・」

 

琴里に促され、中に入る。

扉の先は、広い空間となっていた。薄暗いエリアの中に様々な機械が並び、その中央に、頑丈そうなガラスで仕切られた部屋が見て取れる。かつて〈フラクシナス〉で、力の戻った琴里が入れられていた隔離スペースとよく似た造りになっていた。

そしてその中に置かれたベッドの上に、不機嫌そうに顔を歪めた少女が一人、ぬいぐるみを弄くりながら座っていた。

寝癖だらけの髪に、不健康そうな生白い肌。背は低く、手足は枝のように細かった。

昨日士道が叩きのめした精霊・七罪とは似ても似つかない。だが、今のガラス越しに見えているその姿こそ、七罪の本当の姿だった。

 

「───わかってるとは思うけど」

 

琴里が、口にいつの間にかくわえていたチュッパチャップスの棒をピコピコと動かしながら言ってくる。

 

「七罪は士道から受けたダメージの影響で一時的に天使は使えなくなってるみたいだけど、現時点で士道への印象値は最悪よ」

 

琴里の言葉に、士道は視線を琴里に向ける。

 

「七罪が士道に対して心を開いてくれなければ、七罪の能力を封印することは不可能よ。今ここでなんとかしろだなんて言わないけれど、何かの糸口を摑んでちょうだい」

 

「わかってる」

 

士道は若干聞き流したような反応で、ガラスで仕切られた部屋の入口に手をかけた。

扉を開け、中に入る。外からは透明に見えていた壁は、内側から見ると普通の白い壁に見えた。部屋の中にはベッドの他に、戸棚やテーブルが置かれている。ついでに様々な娯楽品が備えてあり、どうにか七罪を飽きさせないようにしようという涙ぐましい努力が窺えた。

 

「・・・・・ッ!」

 

と、士道が部屋に入った瞬間、ベッドの上にいた七罪がビクッと肩を揺らした。

 

「元気?」

 

士道は何気ない声で挨拶をする。だが七罪は挨拶を返してくるどころか、ベッドに置かれていた枕やクッション、ぬいぐるみなどを、手当たり次第に投げてきた。

 

「・・・・ッ!っ・・・・!」

 

「・・・・危ないな」

 

士道はヒョイヒョイと躱しながら近づいていく。

 

「こ・・・ッ、み・・・、・・・な・・・・っ!」

 

「あ?」

 

七罪が何かを言うも、上手く聞き取れなかった士道は、眉をひそめて聞き返す。

 

「こっち・・・見ん・・・なっ!」

 

「なんで?」

 

顔面に飛んでくるパンダのぬいぐるみを器用に左手でキャッチし、その辺へと投げ捨てる。

 

「・・・・!」

 

だが、そのパンダが最後の弾だったらしい。ベッドの上にもう投げられるようなものがないことに気づいた七罪は、しばらくあわあわと慌てながら、ガバッと布団に潜り込んだ。

そして数秒の間モゾモゾと蠢いたのち、目元だけを出して睨んでくる。

 

「な・・・何の用・・・・ッ!」

 

敵意に満ちた視線で士道を睨みながら、七罪が言ってくる。

 

「話をしにきただけだよ」

 

「話なんてない・・・!で、出てって!」

 

「・・・・・」

 

士道は七罪の態度に息を吐く。これでは会話をするどころか、目を合わすことも出来やしない。

士道は頭をガリガリとかいていると、七罪はそんな士道に言った。

 

「だ、大体なによ!いきなり私を殺しにきたくせに、あの後助けるだなんて!言いなさいよ!何が目的!?一体どんな打算があれば、自分を困らせた犯人を助けるっていうのよ!」

 

「別に俺はどっちでもよかったよ」

 

「・・・な」

 

士道の言葉に七罪は絶句する。

別に七罪が死のうが生かそうがどっちでめ構わないという士道にだ。

 

「ただ、十香達が止めろって言ったから止めただけ。十香達が悲しむのは俺、見たくないし」

 

つまりこの男は最初から七罪を殺す気でいた。だが、彼女達のお願いで自分の首の皮一枚繫がっている状態であることを理解する。

顔を引き攣らせる七罪に対し、士道は口を開いた。

 

「てか、一つ聞きたいんだけど」

 

「・・・・・・何よ」

 

たっぷりの間を置いてから、七罪が返してくる。

 

「アンタが俺に化けたり、みんな消した理由。何かあるんだろ」

 

「・・・・・ッ!」

 

士道が問うと、七罪は布団の隙間から、ギロリという視線を送ってきた。

 

「そんなの・・・あのときあんたが、私の秘密を見たからに決まってるじゃない・・・!」

 

「秘密・・・?ああ、アンタの本当の姿だっけ。その姿を見られたくらいで気にすることないだろ」

 

そう言う士道に七罪はギリギリと奥歯を噛み締めながら続けてきた。

 

「なんで・・・なんですって?・・・ふッ、ふざけるのも大概にしてよッ!そんなの気にするじゃない!こッ、こんなみすぼらしい姿を見られて・・・平然としていられるわけないでしょ!?それとも何?それを私の口から言わせることが目的だったわけ!?」

 

ヒステリックな調子で七罪が叫び、ベッドの上をボッフボッフと叩く。

そんな七罪を士道は面倒くさいなと言う顔を作りながら、七罪から目を逸らすのだった。




作者「もとガンダムだった機体って結構あるのよね。ガーベラ・テトラしかり、リック・ディアスしかり、百式しかり・・・」

狂三「これもそうなんです?」

ジム頭に指差し

作者「まあ、もと陸ガンだからね、ソレ。まあ、それだったらコイツもそうなんだけど」

変な蒼い陸ガン

狂三「その機体は確か・・・前に・・・」

ブルー「エグザムシステムスタンバイ・・・」

作者「やっぱ狂三に反応してるよね。ブルー。もしかして狂三ニュータイプ?」

狂三「そんな訳ないでしょう!?」


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第十話

投稿!!

ちょっとネタを考えてたら、いつの間にか一週間過ぎてました

地球の重力って凄いんだな

三日月・オーガス


「駄目だった」

 

「駄目だったじゃないわよ。このバカ」

 

士道が七罪の部屋から出ると、琴里は士道にすぐさま答える。

 

「・・・・七罪は耶俱矢達に任せるしかないわね。最後の作戦よ」

 

「最後の作戦?」

 

士道が言うと、琴里は答える。

 

 

「七罪の自信のないコンプレックスを解消する作戦よ」

 

「?」

 

首を傾げる士道に琴里は笑みを浮かべた。

 

「───決行は明日。七罪の朝食が終わり次第急襲をかけるわ」

 

「いや、何するの?」

 

そう言う士道に、琴里はチュッパチャップスを指で挟み、ニッと唇の端を上げた。

 

「さあ───私たちの戦争を始めましょう」

 

「だから何するの?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ん・・・・」

 

翌朝。七罪が目覚めると、部屋にいい匂いが漂っていることがわかった。

匂いのもとはすぐに知れた。壁の一部が変形してテーブルのようになり、その上に朝食が置かれていたのである。ロールパンが二つにベーコンエッグ、それにスープとサラダが付いている。

スープからは湯気が立ち上がり、ベーコンは未だにじゅうじゅうと音を立てている。出来合いのものではなく、たった今調理したばかりであることが知れた。

 

「・・・・・・・」

 

七罪はトレイを壁からテーブルに移動させると、皿の上に置かれた料理の匂いを注意深く嗅いでから、恐る恐る口に運び始めた。

ジューシーなベーコンとまろやかな卵の味が、口の中で複雑に混じり合う。

七罪は頬を緩ませかけ───ブンブンと首を振って耐えた。

 

「くそぅ・・・なんでこんな美味しいのよ・・・」

 

悔しげにぶつぶつと呟きながら、料理を食べ進める。

七罪はジャムをたっぷりつけたパンを頬張りながら、改めて自分が閉じ込められている部屋を見回した。

ベッドにテーブル、テレビ。他にも生活に必要なものは粗方揃っている。

だが───いつまでもここにいるわけにはいかない。七罪は特に酷かった腹部の傷をさすりながら奥歯を噛んだ。

一体どんな狙いがあるのかわからないが、それが七罪にとって不利益になるものであろうことは想像に難くなかった。きっと何らかの方法で七罪に復讐するつもりに決まっているのだ。

士道が不意打ちで自分を殺しに来たのが良い例だろう。

 

「そうはいかないんだから・・・!」

 

士道に受けた傷は、順調に治りつつある。上手くいけばあと数日のうちに、〈贋造魔女〉を顕現させることができるくらいまで回復するだろう。そうなれば部屋の壁など、文字通り紙同然である。

だが───

 

「アイツが居ない間にやらないと・・・!」

 

士道のヤツが近くにいる状態でそんなことをすれば問答無用で半殺しにされる。しかも、七罪が十香達に化けようものならお前偽物だろと言わんばかりに容赦もなくなる。

とにかく今は、体力を付けて身体を治すことを第一に考えなくてはならない。そう考えて、七罪は残る食事を一気に口にかきこんだ。

すると、その瞬間。

いきなり部屋の扉が開いたかと思うと、いくつもの人影がササッと部屋に入ってきて、一瞬のうちに七罪を包囲した。

 

「え・・・・ッ!?」

 

突然のことに驚き、素っ頓狂な声がのどから漏れ出る。

慌てて周囲を見回すと、それらが皆見知った顔であることがわかった。

琴里に真那。そして、七罪が容疑者候補に選んだ十香、四糸乃である。

琴里や真那はもちろん、恵まれた容姿を持ちながら鼻にかけていない十香も、気弱そうな態度で男の気を引く四糸乃も、七罪の嫌いなタイプの女だった。

だが、今問題なのはそんなことではない。七罪を囲んだ全員が、なぜか手に大きな麻袋やロープなどを携えていたのである。

 

「な、何・・・一体!?」

 

四方を囲まれた七罪が狼狽に満ちた声を上げると、琴里がビッ!と七罪の方を指してきた。

 

「確保ーっ!」

 

『おおーっ!!』

 

琴里の号令に合わせ、真那、十香、四糸乃が一斉に動いた。

背後からバサッちあたあ麻袋が被せられ、視界が真っ暗になる。次いで再び琴里の声が響くのと同時、今度はその袋の上から、身体がロープでぐるぐる巻きにされた。

 

「んー!んんんんーッ!?」

 

慌ててもがくも、無駄だった。手足はロープでがっしりと固定され、動かすことができない。七罪に出来るのは波打ち際に打ち上げられたアザラシのように、身体を捩ることくらいだった。

そしてすぐに、ひょいと身体が持ち上げられ、何者かに担ぎ上げられる。

 

『それで、琴里。このあとはどうするのだ?』

 

『ええ、そのままこっちに連れてきてちょうだい』

 

『うむ、わかったぞ!』

 

麻袋越しにそんな会話が聞こえたのち、七罪を担いだ十香が移動を始める。

───どこかに連れて行かれる!?七罪の脳内に、最悪の想像が駆け巡る。

 

「わーっ!わーっ!わっ、私なんて食べたら、お腹壊すわよぉぉっ!」

 

だが、そんな七罪の悲鳴も虚しく、そのまま十香達に連れていかれるのだった。




とある日

戦車「おーい、作者ー」

作者「ん?どしたよ?」

戦車「お前が探してたヤツあったぞー」

作者「探してたやつ?」

戦車「これこれ」

作者「!?これは・・・・ホワイト・グリントだぁぁ!!」


ホワイト・グリントのプラモがあって大歓喜してました


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第十一話

少し短いですが、投稿!!

最近暑すぎですよね・・・なに、この暑さ・・・


俺達のやることは一つだけだろ?なあ、ユージン


ノルバ・シノ


どれくらい経っただろうか、七罪が叫び疲れて身体をぐったりと十香の肩に預け始めた頃、不意に十香が足を止め、七罪をその場にゆっくりと下ろした。

次いでロープが解かれ、麻袋が外される。暗闇に慣れていた七罪の目に、柔らかい光が飛び込んできた。

 

「う・・・・」

 

手で顔に影を作りながら、目が慣れるのを待ち───七罪は、そこに広がっていた意外な光景に、口をポカンと開けた。

 

「な、何よ、ここ・・・」

 

そこは、巨大なまな板の上でも、ぐらぐらと煮だつ地獄の大鍋の上でもなかった。

暖色の光に照らされた部屋に、人一人が横になれるくらいのベッドが置いてあり、辺りには微かに花のような香りが漂っている。

拍子抜けするくらいの穏やかな空間である。

七罪が呆然としていると、ベッドの傍らに立った、看護師のような服を着た少女が、小さく手を振ってきた。

 

「はぁーい、一日限定エステロン、『サロン・ド・ミク』へようこそー」

 

言って、少女が笑顔を向けてくる。見知った顔。確か名は───誘宵美九である。豊満な胸をこれ見よがしにぶら下げた、七罪の嫌いなタイプの女だった。

 

「ちょ、ちょっと、何よこれ・・・」

 

「何って、エステサロンですよー?お肌のケアをするんですー」

 

「・・・・ッ!?」

 

「ちょっと待って。意味分かんない。なんで───」

 

そう言う七罪に美九は七罪を捕まえて言った。

 

「はいはーい。さぁーあ、じゃあ始めましょうか。とりあえず今着ている服を脱ぎましょうねー」

 

言って、両手をわきわきさせながら美九がにじり寄ってくる。なぜだろうか、目の輝きが前とは違う気がした。

 

「え・・・っ、や・・・・っ」

 

七罪は思わず後ずさった。本能的に身の危険を察知してしまったのである。

だが、背後に控えていた琴里にガッと肩を掴まれ、身動きが取れなくなる。

 

「ちょ・・・・っ!」

 

「往生際が悪いわよ。大人しくしなさい」

 

「そ、そんなこと・・・言われても・・・」

 

「第一、あなた自分に自信がないって言っているらしいですけどぉ、何も努力しないでそんなこと言われるのは納得いかないんですよねー。そりゃあ世の中には十香さんみたいなナチュラルボーンビューティーもいるわけですけどぉ、あなたが嫉妬している世の女性たちは、みぃんな頑張って綺麗になろうとしてるんですからー」

 

「だって・・・私なんかが、何しても・・・」

 

言いながら、七罪は意識に靄がかかっていくのを感じた。身体に疲労が溜まっていたためか、美九のマッサージが心地よすぎるためか、急に眠気が襲ってきたのである。

 

「わ、たし、は・・・」

 

その言葉を最後に。七罪は、すーっと眠りについてしまった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「上手くいきそう?」

 

士道は七罪が入っていったサロンに目を向けながら近くにいた琴里に声をかける。

 

「上手くいくわよ。というか、上手くいかせるわ」

 

琴里は士道にそう言って、チュッパチャップスを口に加えた。

 

「あのネガティブ過ぎる考えを取っ払うくらい綺麗にしてやるわよ。それなら七罪もそんな事を気にしなくなるだろうし」

 

「あっそ。俺はそっちのこと全くだから任せるね」

 

士道はそう言って椅子から立ち上がると、廊下を歩いていく。

 

「ちょっと、どこ行くのよ?」

 

「家。もうすぐ昼だからメシ作りにいく。行くよ真那」

 

「・・・あ、はい。兄様!」

 

士道は横の椅子でうつらうつらと舟を漕いでいた真那を連れて帰っていった。

 

「・・・全く。いつも勝手なんだから」

 




作者「・・・・」

狂三「どうかいたしましたの?」

作者「いやね、シャア専用のハンバーガー二種類と、ニュータイプバーガー買ったんだけど、かなり多くてさ・・・食べる?」

狂三「そうですわね・・・わたくしも少し気になりますし、頂きますわ」

作者「おし、じゃあ切り分けてくるねー」


結構、おいしかったです


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第十二話

投稿!!

夏休みももうすぐ近づいて来ましたねー。
また投稿ペース落とさないといけないのか・・・ヤダなぁ・・・

ヒイロー!!早く私を殺しに来なさーい!

頭がおかしいリリーナ


「───はいっ!出来上がりですよー!」

 

「・・・・っ!」

 

美九の声によって、七罪はハッと目を覚ました。

いつの間に身体の向きを変えられたのだろうか、ベッドに仰向けに寝かされている。一応胸元にバスタオルはかけられてはいるものの、なんだか気恥ずかしかった。

 

「どうですか?感想は」

 

「え・・・・っと」

 

美九に問われ、七罪は自分の肌を軽く撫でてみた。

 

「!な、何、これ・・・・」

 

にわかには信じられなかった。自分のカサカサな乾燥肌が、みずみずしい肌に変貌していたのである。

 

「うっふっふー。エステ初体験の人はみんな驚くんですよねー。ま、もちろんその状態がずっと続くわけじゃないんですけど、やっぱり感動ものですよねー」

 

「すご・・・これ・・・ホントに私の手・・・?」

 

「ええ、紛れもなく本物ですよー。そこまでいいリアクションしてもらえると、次のお部屋が楽しみですねー」

 

「え・・・?」

 

「さ、服着たら今度はこっちよ」

 

と、部屋の外から置かれた椅子で待っていたと思しき琴里が、立ち上がりながら言ってくる。

七罪は言われるがままに、先程脱いだ病衣に袖を通すと、部屋の奥の扉を抜け、次の部屋に進んだ。

 

「くくく、よく来たな。我ら八舞の領域に!」

 

「賞賛。その度胸だけは褒めて上げます」

 

七罪が次の部屋に入ると、瓜二つの顔をした双子が、何やら格好いいポーズを取りながら出迎えてきた。

スレンダーな耶俱矢に、グラマラスな夕弦という布陣。やはり、七罪の嫌いな女たちである。

 

「こ、ここは・・・・」

 

七罪は目を見開きながら部屋の中を見回した。壁に大きな鏡があり、それに向き合う形で、大きな椅子が設えられている。一目でわかった。ここは───美容室だ。

 

「誘導。まずはこちらに来てください」

 

言って、夕弦が七罪の手を引いてくる。

 

「わ・・・・っ」

 

七罪はそのまま部屋の奥にある椅子に座らされ、首から下を覆う大きなクロスをかけられた。

そして椅子を倒され、仰向けにされる。

 

「な、何を・・・・」

 

「続行。すぐに分かります」

 

夕弦はそう言って、手元のコックを捻り、七罪の頭にほどよい温度のお湯をかける。

そうしてからシャンプーを泡立て、七罪の長い髪を丁寧に洗い始めた。

 

「う、ぁ・・・」

 

人に頭を洗われるという慣れない感覚に、七罪は小さく身じろぎした。そんな様子を見てか、隣に立っていた耶俱矢が笑った。

 

「くかかか!夕弦のシャンプーは至極快楽であろう!何しろ、第九十一試合のシャンプー合戦において、一分足らずで我から勝利をもぎ取った腕前だからな!」

 

「微笑。耶俱矢がくすぐったがりだったのもありますが」

 

この場に士道がいたら何やってんの?と言っていそうなやりとりをしながら、夕弦は泡を流す。

 

「交替。───さあ、ここからは耶俱矢の領分です」

 

と、七罪の髪を拭き終わった夕弦が椅子を起こしながら言うと、耶俱矢が腰に差していた散髪用の鋏を抜き、器用にくるくると回して両手に構えた。

 

「くくく!任せるがよい!」

 

「か、髪・・・切るの?」

 

「応とも!しかし案ずるがよい!我が腕は、第九十二試合、ヘアーカット対決の結果を見ても明らか!」

 

「・・・ホント何でも対決してるわよね、あなたたち」

 

脇で見ていた琴里が、苦笑しながら言う。耶俱矢は得意げに胸を反らすと、「なんなら、士道の髪も切ったこともあるがな!」と言う耶俱矢に琴里が「はぁ!?」とすっとんきょうな声を上げる。

 

「何、そう派手に切り散らかすつもりはない。しかし───毛先の傷みと重い髪の束!それは見逃せぬな!」

 

そう叫ぶと、耶俱矢は手にした鋏を軽快に鳴らし、七罪の髪の毛先を周囲に飛ばしていく。

数十分後には、枝毛だらけの七罪の髪が、驚くほど綺麗に整えられていた。

 

「うそ・・・すご」

 

「ふ・・・まあ、このようなところか」

 

耶俱矢が決闘を終えたガンマンの如く、鋏の先にフッと息を吹きかけてから、指穴に指を引っかけ、くるくると器用に回してから腰元にしまい込む。

そして次はドライヤーと櫛を取り出し、七罪のごわごわした髪を入念にブローしていった。

 

「随分と癖が強い様子だが、手がないことはない。濡れ髪のうちに仕留めてしまえば、彼奴らが暴れることもあるまいて」

 

「は、はぁ・・・・」

 

七罪は頬に汗を垂らしながらうなずいた。

だが、自負の通り腕は確かなようだった。いつも寝癖だらけの七罪の髪は、信じられないくらいふわりと軽くなっている。

 

「くく、上出来だ。次なるエリアへと進むがよい」

 

「首肯。こちらです」

 

「ええと・・・」

 

次なるエリア。その言葉に、七罪は不安そうに眉をひそめた。

 

「何処に連れていくつもりなのよ・・・」

 

そう言う七罪に琴里は口に笑みを浮かべながら言った。

 

「ふふん。エステ、美容室ときたら、次は服選びに決まってるじゃない」

 

琴里の言葉に、後ろにいた十香達がうんうんとうなずく。

 

「・・・は、はぁ?ちょっと待って、私、そういうのはあんまり───」

 

「はいはい。話はあとで聞くわ。───さ、みんな」

 

七罪の声を遮るように、琴里がパンパンと手を叩く。

 

「うむ!」

 

「士道と真那が帰ってくる前にちゃちゃっと終わらせちゃいましょ」

 

琴里は服のセンスが壊滅的な二人が帰ってくる前に、七罪の着替えを終わらせるつもりでいるらしい。

七罪はそんな琴里達を呆然と眺めるしかなかった。




作者「・・・うーん」

狂三「どうかいたしましたの?」

作者「いや、今は七罪編書いてて、次折紙じゃん?そんでその次が主人公編なんだけど・・・」

狂三「あの、士道さん攻略編でしたわよね?」

作者「そそ。そこでハシュマルを出して良いもんかとね・・・一応、最後までとっとくつもりで考えてんだけどもさ・・・」

狂三「出したらどんな展開になりますの?それがまず一番に聞いて置きたい話なんですけども」

作者「んー・・・三日月が半身不随になって今後の攻略に大影響する。なんならネタバレすると、澪編で物理的に退場せざる得なくなる」

狂三「それで?その後は?」

作者「え?グッドエンドやトゥルーエンドどころか、バッドエンド直行よ?最短ルートよ?」

狂三「却下ですわ。却下。最低でもトゥルーエンドにしてくださいまし」

作者「今ん所はそのつもり。なんなら、まだまだそこまで辿り着いてないしね」

狂三「それなら構いませんわ。これからも頑張ってくださいな。作者さん」

作者「へーへー。・・・うん?」


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第十三話

投稿!!

水星の魔女のプロローグを見ましたけど、モビルスーツ動かすのこれ、阿頼耶識システムとリユース・サイコ・デバイスの悪いとこ取りしたシステムじゃねコレ・・・

今回のガンダムは学園モノと思わせながら、鉄血やVガン並に暗い内容になりそうな気が・・・

ハッピバースデー・トゥーユー!

エリクト・サマヤ


『む、七罪、まだか?』

 

『まだ渋ってるようなら、私と十香でひん剥くわよ』

 

カーテンの向こうから、十香と琴里の声が聞こえてくる。七罪は大きなため息を吐いてから覚悟を決め、閉めていたときとは打って変わって、そろそろとカーテンを開けた。

十香、琴里、四糸乃、八舞姉妹、美九の視線が、七罪に集まる。

 

「う・・・・」

 

七罪はのどの奥からせり上がってくる嘔吐感を抑えるように目をぎゅっと瞑り、奥歯を噛みしめた。やがて七罪の耳には、十香たちの嘲笑めいた笑い声が・・・

 

「うむ!よいではないか」

 

「うーん、個人的にはもう少しシックな方が似合う気がするけど、どうかしら」

 

「あ・・・こんなの、ですか?」

 

『ええー、もうちょっとダイタンにいこうよー。こんなのどーお?』

 

────聞こえて、こなかった。

 

「・・・・・へ?」

 

鼓膜を揺らした意外な声に、目を開く。するとそこには、楽しげな、あるいは真剣な面持ちを向けてくる六人と一匹の姿があった。

 

「あの・・・・」

 

予想外の反応に戸惑う。すると琴里が、質の良さそうなブラウスとモノトーンのスカートを手渡してきた。

 

「さ、七罪。今度はこれ着てみて、これ。私はこっちの方がいいと思うのよね」

 

「え、えっと・・・」

 

「ほら、早く」

 

────それから三時間くらいの間、七罪は様々な服を代わる代わる着させられた。

正しく言うのであれば、服だけではない。靴や帽子、様々なアクセサリーに、時計や眼鏡などの小物類をつけさせられ、ついでに終盤はポーズまで取らされていた。気分は着せ替え人形か、さもなくばオンラインゲームのアバターである。もう何が何だかわからない。皆が納得を示す服が選定されたころは、七罪はすっかり疲れてしまっていた。

 

「────よし!これなら間違いないでしょ」

 

「はい・・・・・素敵です」

 

『うんうん、いいんじゃないかなー』

 

「うむ!よいと思うぞ!」

 

十香が快活に笑い、うんうんと頷いてくる。次いで、琴里が視線を向けてきた。

 

「さ、じゃあ、いきましょうか」

 

琴里が言うと、皆がぴくりと眉を揺らす。その様子に、七罪は思わず頬に汗を滲ませた。

 

「な、何・・・・?」

 

七罪が不安そうな顔を作っていると、八舞姉妹がくつくつと愉快そうに笑ってくる。

 

「くく、なに心配するでない。行けばわかる。さあ、こちらだ」

 

「首肯。そこで、最強の刺客があなたを待ってます」

 

「さ、最強・・・!?」

 

不穏な言葉に、ごくりとのどを鳴らす。正直あまり先に進みたくなかった。

 

「ほーら、行きましょうねー」

 

「あ、ちょっと・・・・!」

 

だが、背を美九に押され、半ば強制的に次の扉を開けさせられてしまう。

最後の部屋、と称されたそこには────

 

「────────」

 

沢山の料理が、テーブルの上に並べられていた。

 

「なに、これ・・・・?」

 

その目に写る料理の数々に七罪はそう呟く。

そして目を左右に動かすと、ソファに誰かが寝転っているのが見えた。

 

「・・・・?」

 

七罪は首を傾げながらソファを覗きこむと、そこに居たのは────

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

規則正しい寝息をたてながら、二人でソファを分け合って寝ている士道と真那の姿があった。

 

「・・・は?」

 

あまりにも無防備過ぎる士道に七罪は思わず絶句する。

自分があれだけ緊張しておいて、その相手が余裕で寝ているのを見て、七罪は胸の奥から怒りが沸いてくる。

────と、そんな士道達を見てか、隣から琴里がため息を吐いた。

 

「また寝てる・・・ていうか真那まで・・・」

 

琴里はそう呟いて、十香達に言った。

 

「皆、頼むわ」

 

「うむ!」

 

「・・・はい」

 

「くく、任せよ!」

 

「首肯。真那ばかり良い思いはさせません」

 

「そうですよね〜」

 

六人はそう口々に言ってから、士道と真那が寝ているソファの前にしゃがみ込むと、そのまま大きく息を吸い込み、そして────

 

「起きろ!(てください)ッ!!シドー!(士道)(三日月)さん!」

 

「うわぁ!?」

 

「・・・・・・あ?」

 

その言葉に真那が一瞬で跳ね起き、士道は機嫌が悪そうに身体を起こした。




作者「・・・・・」

狂三「・・・・・」

作者「いやー・・・水星の魔女、重いねー・・・ガンダムは認めないとか、阿頼耶識よりヤバいシステムもあれだけど、これが学園モノ?いや、ちゃんとガンダムしてたわー・・・」

狂三「ストーリーが予想以上に重すぎですわ・・・そもそも、コレは夕方に放送しても良い内容ではないと思うのですけれど」

作者「ビミョーだね」


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第十四話

投稿!!

来週から一気に投稿ペースは落ちますが、九月になれば通常通りになります!

ミカ────これが最後の頼みだ。露払いを頼む

やるよ。それがオルガの命令ならね

オルガ・イツカ

三日月・オーガス


皆からの目覚ましの声に目が覚めた士道は不機嫌そうに周りを見渡す。

 

「・・・・・」

 

十香達が揃っているのを見て、七罪の着せ替えは終わったのだろう。

士道は身体を解しながらゆっくりと身体を起こした。

 

「・・・・終わった?」

 

そう言う士道に、琴里はため息を吐きながら口を開く。

 

「終わった?じゃないわよ。なに?また寝ていたの?最近寝すぎよ。士道」

 

そう言う琴里に士道は頭をガリガリとかきながら、立ち上がる。

 

「真那もよ。なに士道と一緒に寝ちゃってるのよ?てか、朝から随分と眠そうだったけれど、昨日何をしていたのかしら?」

 

「・・・なんにもしてねーですよ」

 

目をそらして誤魔化そうとする真那に、琴里は再びため息を吐いた。

 

「言わないと・・・士道にバラすわよ?」

 

「・・・!・・・何をです?」

 

「何時も夜に────」

 

そう言いかける琴里に真那は焦らせた顔を作りながら叫んだ。

 

「わー!?わー!?てか、なんで知ってるんです!?私の携帯見ました!?」

 

その慌てようを見るに、余程バレたくないのだろう。真那は琴里の口を塞ぎながら冷や汗を流す様子に耶俱矢と夕弦は目を細めて真那を見る。

 

「ほう・・・?士道ならともかく私達にも教えていないこととな?琴里。それは一体どういうものだ?」

 

「質問。返答をお願いします」

 

「いいわよ」

 

「ちょっ!?」

 

琴里の軽い返答に、真那は顔を引き攣らせる。

 

「何なの?この茶番」

 

七罪は琴里と真那の茶番を横目にしながらそう呟く。

そんな七罪は辺りを見渡す。

テーブルに置かれた沢山の料理に目がどうしてもいってしまう。と、そんな七罪に真那に髪を引っ張られている琴里は言った。

 

「やっぱり気になるわよね」

 

「いや、今のアンタに言われても逆に困惑するわよ」

 

「ねえ!?絶対に言わねーでくださいよ!?もしそれが兄様にバレたら絶対に引かれるに決まってるんですから!?」

 

「へぇ・・・」

 

士道の視線が真那に突き刺さった。

 

「あ・・・・」

 

自滅した真那は顔を青くする。 

そして────

 

「真那、携帯見せて」

 

「・・・・・・・ハイ」

 

士道の言葉には逆らえない真那は死んだ目で頷いた。

 

「いや、だから何なのよ?」

 

そんな真那達を余所で七罪が更にツッコミをいれる。

 

「ま、あの二人はほっといて、ほら七罪。席について」

 

「いや、だから────」

 

そう言う七罪に琴里はため息をつきながら七罪に言った。

 

「だから皆で一旦お昼ご飯にするわよ。理由はそのあとでちゃんと話すわ」

 

十香達がそれぞれ席に着く中、その奥では────

 

「・・・・真那。コレ、いつから撮ってたの?」

 

「携帯変えてからです・・・」

 

死んだ目でそう言う真那に士道は言った。

 

「ん。後、真那もなんかあったら俺の部屋に来れば?十香とか、四糸乃とか夕弦とか最近来ること多いし」

 

「ちょっと夕弦。どういうこと?」

 

「三日月さーん?それ、どういうことですかぁ?」

 

耶俱矢と美九はそれぞれ夕弦と士道に詰め寄る。

そんな彼らの姿に七罪は────

 

「いや、だからなんなのよ・・・」

 




狂三「真那さんは一体何がバレたんですの?」

作者「三日月の寝顔撮りまくってた。一回だけと思いつつも、結局止められなかったらしいよ?」

狂三「・・・真那さん・・・」

作者「なんなら、夕弦も耶俱矢が居ない所で三日月甘やかしまくってるけどね」

狂三「それ、士道さんはどう思っているんです?」

作者「半分ウザがって、もう半分は夕弦の好きなようにさせてるみたいだけどね」

狂三「甘やかしとはどの程度ですの・・・?」

作者「最初は料理に三日月の嫌いなモノ無くしてたんだけど、今じゃエスカレートしてる。その辺、耶俱矢はしっかりしてるけどね」

狂三「夕弦さん・・・・」


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第十五話

投稿!

最近、夏バテになってぐだってた鉄血です。

しかしまあ、今年の夏は暑い!

これぞ、まさしく愛だ!

グラハム・エーカー


カツカツと廊下に足音が響き渡る。

ユージン・セブンスタークはマクギリスから連絡があり、指定された場所へと足を運んでいた。

 

「・・・・・」

 

いままでにない真剣な表情で、ユージンは部屋の扉を開けた。

その部屋の先にはマクギリスが椅子に座りながら此方を見ていた。

 

「急に呼び出してすまないな。ユージン・セブンスダーク」

 

「別に構わねえよ。で?話したい事ってなんだ?“三日月について“って言われたんだ。そりゃ気になるだろ」

 

ユージンはマクギリスを見ながらそう答えると、近くの高そうなソファへと腰を下ろす。

 

「最近、彼の様子はどうかな。変わったことなどはないかね?」

 

「変わったこと?・・・見たところはねえな。いつものアイツだと思うぜ」

 

「・・・ふむ」

 

ユージンの返答にマクギリスは手を口もとまで持っていき、何かを考えるかのような体制を取る。

そんなマクギリスにユージンは眉を釣り上げながら言った。

 

「・・・おい。さっきからお前ばっかり聞いて俺の質問にも答えてくれてもいいんじゃねえか?」

 

「すまないな。それで、何を聞きたいのかね?ユージン・セブンスターク」

 

「アンタは三日月がいまどうかって聞いたよな。三日月に何があった?俺達も他人事じゃねえ話だろ」

 

「・・・・・・」

 

マクギリスは少し黙った後、考えるような表情を作りながらも、口を開いた。

 

「今、三日月・オーガスの状態はかなり危うい状態だ。本人曰くまだ平気だと言ってはいるが、いつ限界が向かえても可笑しくはない」

 

「おい・・・三日月がヤベえ状態ってどういう事だよ!?その限界ってのも始めて聞いたぞ!?」

 

そう叫ぶユージンに、マクギリスは話を続ける。

 

「その限界の原因だが、恐らく“精霊の力“だろう。彼のガンダムバルバトスと彼女達の天使の力の相性が極端に悪いからだと私は予想しているが・・・」

 

悪魔と天使。狩る者と狩られる者。世界が違うとは言え、バルバトスにとっては天使は殺さねばならない存在だ。

お互いに相容れない存在同士が一人の少年の身体に身を潜め、お互いを排除しようとぶつかりあっている。

今の三日月の状態は“まだ“バルバトスが力を上回っているが、この均衡が崩れたら最後───“あの厄祭“が目覚める事になる。

そうなれば、天宮市はかつての火星にあった農業プラントのように、焼け野原になることだろう。

そうなる前に、マクギリスは三日月に言われたのだ。

 

“俺がしくったら、チョコの人に嫌な役目任せるけど良い?“

 

それはつまり──モビルアーマーが出てくる前に、三日月を殺す・・・もしくは、三日月がモビルアーマーにやられた後、任せるという意味でもあった。

 

「このままいけば、三日月・オーガスは確実に何処かで限界を迎えるだろう。そうなれば、モビルアーマーが彼を中心に現れる事は明白だ。なら、もはや彼を止める方法は一つしかない」

 

「・・・精霊の力の封印を止めさせる・・・ってか」

 

「ああ。今、確認している精霊は《ウィッチ》を含めて四人。《ファントム》、《シスター》、《ナイトメア》、そして《ウィッチ》・・・。“彼女達“には悪いが・・・今の私達ではモビルアーマーを止める術がない以上、始末するしかあるまい」

 

「・・・・!?ふざけんじゃねえぞ」

 

マクギリスの言葉にユージンは怒りに声を荒げた。

 

「三日月だってな始めてこの場所で、オルガの隣以外でやっと自分の居場所を見つけられそうなんだぞ!辛い事ばっかりで、やりたいこともやれなかった三日月のヤツが守りたいものも全部ぶっ壊すようなやり方は俺は許さねえ!オルガだってそう言う筈だ!」

 

「それで、世界が滅びてもかね?」

 

「・・・・・ッ!!」

 

マクギリスの返答にユージンは言い返せなかった。

 

「・・・だが、まだ時間に猶予はある。その間に私も万が一の事に備えて準備をしておこう。君も考えておきたまえ」

 

「・・・・・・」

 

ユージンは横を通り過ぎるマクギリスになにも言えず、立ち尽くすしかなかった。

そしてそんなユージンにマクギリスは振り返ると、その口を開く。

 

「これは私の・・・君達鉄華団への忠告だ。これ以上・・・彼に精霊の力を封じるのはやめたまえ。ユージン・セブンスターク」

 

マクギリスはそう言って部屋から出ていった。




作者「アッツー・・・。暑すぎてやる気でね・・・」

狂三「大丈夫ですの?」

作者「だいじょばない」

狂三「最近、美味しいと評判のかき氷が出たと聞きましたので、食べに行こうと思いましたのですけれど、辞めておきますわ」

作者「んにゃ、行く」

狂三「大丈夫ではありませんでしたの?」

作者「かき氷って聞いて気が変わった。無理してでも行く!」

狂三「・・・ホントに食い意地がはっていますわね」


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第十六話

投稿!!

今年も暑いですね。お盆は仕事で忙しい忙しい・・・

まちまちと投稿していきます




『────〈ハンプティ・ダンプティ〉、ドッキングに成功しました』

 

『システム、オールグリーン。軌道の調整も問題ありません』

 

『今からおよそ五時間後に、目的地点上空に到達します』

 

『DSSー099、空中艦〈プタメロン〉、所定の位置に着きました』

 

DEMインダストリー英国本社の会議室に設置されたスピーカーから、次々と報告が流れてくる。

マードックは目の前の液晶画面に示された数々のデータを目で追いながら、大仰に頷いた。

 

「────ウェストコットMDは、今どこに?」

 

『宿泊先のホテルから動いていません。空間震警報が発令されれば、避難するのはホテル内のシェルター、もしくは最寄りのDEM関連施設のものと思われます』

 

「耐久値は?」

 

「〈ハンプティ・ダンプティ〉の衝突位置が、誤差十キロメートル以内であれば、問題ありません』

 

「『セカンド・エッグ』の方は?」

 

『配備済みです。ご指示があれば、いつでも』

 

「けっこう」

 

「・・・・『セカンド・エッグ』?」

 

マードックの言葉に、シンプソンが怪訝そうな目を向けてくる。マードックは唇の端を上げながらそちらに視線を返した。

 

「まあ、念のための保険ですよ。わざわざ気にしていただくほどのことでもありません」

 

「・・・・・」

 

シンプソンはしばし無言のままマードックのことを見ていたが、やがて手元の液晶画面に目を戻した。

その様は不満そうでもあり────マードックを気味悪がっているようにも見えた。

 

「計画は非常に順調です。今日の夕方には、ウェストコットMDの訃報が届くことでしょう。社葬は盛大になりそうです。今のうちに、哀悼の言葉を考えておくことをお勧めします」

 

その言葉に、取締役たちは一瞬目を見合わせてから、ぎこちない笑みを浮かべてきた。

決行の日になったというのに、ウェストコットMDを敵に回すことを未だ恐れているらしい。

マードックは誰にも聞こえないくらいの大きさで、フンと鼻を鳴らした。別にそれはそれで構わない。どうせこの作戦が失敗したなら、首謀者であるマードックに命はない。どちらにしろ同じことだった。

無論、前MD暗殺などは最悪のスキャンダルだ。一方的に情報を握られたなら、今度はその情報を知った者を消さなくてはならない。だが、今居並んでいる取締役の面々は、いわば共犯者だ。その上、臆病者揃いときたものである。マードックが次なるMDに名乗りを上げようとも、文句を吐く者はいないだろう。

────エレン・メイザースにこの片腕を切り落とされた瞬間から、狂ってしまったのかもしれない。

 

 

◇◇◇◇◇ 

 

 

「十香さん・・・あれ、取ってもらってもいいですか・・・?」

 

「ぬ?これか?」

 

『ありがとねー、十香ちゃん』

 

「対峙。士道、あーん」

 

「いいよ。自分で食えるから」

 

「・・・夕弦よ。流石に甘やかしすぎではないか?それでは何時までたっても士道の好き嫌いが直らんであろう?」

 

「うーん、とっても美味しいですねー。これ作ったの真那さんですかぁー?」

 

「まあ、そうですけど・・・」

 

「後でー作り方を教えてくれませんかぁー?」

 

「ちゃんと覚えてくれるならいいですけどね!!」

 

「あら、結構おいしいじゃない」

 

「・・・・・」

 

七罪は肩身が狭いこの状況で彼女等に囲まれながら、目の前に並べられた料理をチビチビと口にしていた。

そんな七罪に琴里は口を開く。

 

「楽しんでるかしら?」

 

「・・・・何が目的なのよ」

 

そう答える七罪に琴里は言う。

 

「貴方のその自己評価の低さを解消するためよ。少しは解消されたでしょ?」

 

「・・・自己評価の・・・解消?」

 

琴里のその言葉を聞き、七罪は叫んだ。

 

「ち、ちょっと待ってよ・・・!?私はあんた達を鏡に閉じ込めて成り代わろうとしたのよ!?普通に考えなさいよ!あんたたちどっかおかしいんじゃないの!?」

 

七罪は感情のままに大声を上げながら琴里達を見る。

士道を除く皆はそんな七罪の様子に戸惑いながらも、目を見合わせて「うーん・・・」とうなった。

 

「まあ・・・確かに七罪ちゃんには怖い思いさせられましたけどぉ・・・・」

 

「でしょう!?なら────」

 

あごに指を当てながら言った美九に同調するように、声を上げる。しかし────

 

「でもぉ・・・それを言ってしまったら私も結構やらかしちゃいましたしー・・・水に流そうとか、そういうこと言う気はありませんけど、少なくとも私は、仲良くしたいと思ってますよ?」

 

美九が言うと、他の皆もうんうんとうなずき始めた。

 

「おお!私もだぞ!」

 

「わ、私も・・・です。きっと・・・仲良くできると、思います」

 

『聞いた話だけど、変身先によしのんを選んだって話じゃなーい?いやー、違いのわかる女だよねー』

 

「ふん、まあ、我をあそこまで追い詰めた剛の者よ。軍門に置く価値はあろうて」

 

「首肯。見どころがあります」

 

「まあ・・・仲良く出来るならしてーですね」

 

「・・・・・・ッ!」

 

七罪は言葉を失うと、よろめくように後ずさった。

なんだかもう、頭の中がぐしゃぐしゃになる。と、そんな中で、携帯の着信音が部屋に響き渡った。

 

「ん?」

 

皆の様子を見ていた士道はポケットの中から携帯を取り出して画面を開く。そしてその人物を見て、士道は携帯を耳に近づけた。

 

「なに?」

 

士道は携帯電話の通話先────マクギリスにそう返事を返すと、マクギリスは真剣な声音で士道に言った。

 

『緊急事態だ。三日月・オーガス。DEM社が廃棄予定の人口衛星〈DSAーⅣ〉を天宮市に落とすつもりのようだ』

 

「・・・落ちる時間は?」

 

『早くても二時間と思ってくれていい』

 

「分かった。じゃあ、皆を避難させておく。“俺はどうすればいい“?」

 

『人口衛星の解体、もしくは破壊を頼みたい。シャトルはこちらで用意する』

 

「分かった、すぐに向かう」

 

「どうしたのだ?シドー?」

 

士道は携帯をしまうと、此方を見ている十香達に言った。

 

「今から人口衛星が落ちてくるみたいだから、皆は避難しといて」

 

「「「「「・・・・・!!」」」」」

 

そう言って、立ち上がる士道に十香は士道の服の裾を握る。

 

「シドーは・・・シドーはどうするのだ・・・」

 

不安そうな顔を作る十香達に士道は言った。

 

「壊しに行く。だから心配しなくていいよ」

 

士道はそう言って駆け出した。

 

「「「「「「シドー(士道)(兄様)!!」」」」」」

 

 

呼び止める彼女等の声を士道は無視し、扉を開けて外へと出る。

 

「いくぞ。バルバトス」

 

そして、士道はバルバトスと共に駆け抜けた。




作者「ハマーン様バンザーイ!!」

狂三「ちょっと待ってくださいまし。暑さで頭おかしくなりました?」

作者「可笑しくなってなどいないさ!ただ、強化人間になっただけだ狂三!」

狂三「ちょっと気持ち悪いので名前を呼ばないでくれます?」

作者「強化人間とはいえ、メンタルまでは強化できないのよ?」

狂三「・・・帰りますわ」

作者「何処へ行こうと言うのかね?私達の帰る場所は彼処だろう」

ニュータイプ研究所←

狂三「ほぼ死刑宣告ではありませんの!?離してくださいまし!?」

マシュマー「さあ!共にハマーン様を讃えようではないか!」

狂三「いやああああああああ!?」


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第十七話

投稿!!

昨日投稿するはずが仕事疲れで一日中寝てしまい、投稿が遅れました。では、どうぞ!


νガンダムは伊達じゃない!!

死神なテンパ



士道が空を見上げると、うっすらと巨大な衛星が確認できた。

 

「・・・・あれか」

 

士道は大気圏に突入する前の衛星を見てそう呟くと、すぐさま士道はマクギリスに提示されたシャトルの位置に向かうのではなく、〈フラクシナス〉に連絡を入れる。

 

『おや?士道くん。どうかしましたか?』

 

神無月がそう言う中、士道は簡潔に答える。

 

「後二時間で、衛星が落ちるらしいから俺をバルバトスと一緒に宇宙に打ち上げて。落下する前に解体する』

 

『・・・!!それは本当です?一応、宇宙に打ち上げる事は出来ますが、帰りはどうするつもりですか?流石に大気圏からの回収は出来ませんよ』

 

神無月のその言葉に士道は答えた。

 

「それはその時に考える。今は時間ないから急いで」

 

『・・・・わかりました。では回収ポイントに向かってください』

 

「分かった」

 

そう言って、通信を切ろうとする士道に神無月の言葉が耳に入る。

 

『士道君。司令官や十香ちゃん達の為にちゃんと帰ってきてくださいよ』

 

「分かってる」

 

士道はそう言って、回収ポイントへと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「神無月・・・!返事をしなさい!神無月!!」

 

琴里はインカムで〈フラクシナス〉にいる神無月に連絡を入れるが、耳障りなノイズが響くだけで何も言葉は帰ってこなかった。

 

「・・・なんでよ!?なんでこんな非常時に!!」

 

琴里は感情的に叫びながらインカムを床へと叩きつけた。

そんな琴里に、十香達の不安を煽る。

 

「琴里・・・シドーは・・・シドーは大丈夫なのか・・・?」

 

「あ、あの・・・士道さんが言ってた事って・・・」

 

『いやー。なんかピンチな感じ?』

 

「少しは落ち着くがいい。この程度で慌てふためくとは』

 

「同調。もっと冷静になるべきです』

 

「あのー・・・さっき三日月さんが言ってた人口衛星ってあれですよね?あれが落ちてくるって聞いたんですけどぉ・・・」

 

十香に続いて四糸乃、『よしのん』、耶俱矢、夕弦、美九が、口々に言う。

 

「あ、あなたたち・・・・・」

 

琴里は思わず息を詰まらせる。

精霊たちは守るべき対象。間違っても、危険な場所に送るべきではない。

だが────その危険な場所には、士道がいる。

人口衛星が落下し続ける大気圏に士道が向かっているのを聞けば、十香達は必ず士道のもとへと向かうだろう。

司令官としての自分と、妹としての自分。

二つの立場の間で意思がせめぎ合う中────琴里は唇を噛み締めた。

と、そんな琴里に真那が口を開く。

 

「迷ってる暇はねーですよ」

 

「!!」

 

琴里は顔を真那へと向けると、真剣な表情をした真那が琴里に言った。

 

「私は行きますよ。兄様を一人で放って置くと、勝手に何処かに行きそうですし。それに、十香さん達だってほら」

 

真那は十香達に視線を向けると、少し険しそうな表情をしながらも十香達は琴里を見ていた。

 

「────琴里、士道がピンチなのだろう。私達に手伝えることはないか?」

 

「────っ」

 

琴里は十香のその言葉に息を詰まらせる。

 

「シドーは避難をしろと言ったが、私はシドーを放っては置けぬ。だから琴里、私達は何をすればいい?」

 

そう言う十香に琴里は口を開こうとした時、その様子を見ていた七罪が叫ぶ。

 

「ちょっ!?アンタ達本気なの!?アイツを助けにいく!?馬鹿じゃないの!!あんなの死にに行くようなもんじゃない!?さっさと避難すれば助かるんでしょ!!それなら────」

 

「そうかもしれぬな。だが────それは却下だ」

 

耶俱矢は七罪の言葉を遮るようにそう答える。

 

「な、なんでよ・・・アンタ達自分の命は惜しくないの!?」

 

「返答。確かにそう思う気持ちもあります。ですが────ここで士道を助けなかったら“絶対に後悔する”と。そうなれば私は自分を許しておけません」

 

夕弦の言葉に四糸乃や美九も頷く。

 

「士道さんは・・・私に居場所を、くれました。だから・・・士道さんが困っている時は・・・私が助ける番です・・・」

 

「そうですねー。三日月さんは何があっても諦めないですからー。十香ちゃんを助ける時だって、自分の命をかけてたくらいですしー。なら、私達だって三日月さんを助ける為にそうしたっていいじゃないですかー」

 

そう言う皆に七罪は絶句するしかなかった。

士道が自分達の居場所を作ってくれたから、士道が困っている時は自分達で助けにいく?

困惑する七罪に真那は言った。

 

「七罪さん。貴方はどうしたいのかは好きにしたらいーです。これは私達が決めた事なので。けど、もし────もし、貴方が自分の意思で私達を助けてくれるのなら、兄様を助けてください」

 

「私の・・・意思?」

 

目を見開ける七罪に真那は頷く。

 

「こうやって短い間でしたけど、十香さん達から話を聞いて七罪さんはどうしても悪い人ではないと私は思うようになっているんですよ。兄様は・・・流石にどう思っているかは分かりませんけど・・・けど今はあんまり気にしてないと思います。あの人、そのへんは結構適当なんで」

 

そう言う真那に、十香達も頷く。

 

「だから頼む。七罪。シドーを・・・私達の大切なシドーを一緒に助けてくれッ!!」

 

十香達は今、ちゃんと本当の自分を見てそう言ってくれた。

初めて静粛現界をした時。こちらの世界の人は誰も、七罪のことを見てくれなかった。

七罪は、それが嫌で仕方なかった。話かけて欲しくて、構ってほしくて、誰かに認めて欲しくてたまらなかった。だから────〈贋造魔女〉の力で、自分の姿を作り替えた。

でも────それをいくら繰り返しても、七罪の心は満たされないままだった。

結局は誰も、本当の自分を見てはくれない。ちやほやされるほど、そんな気持ちは強くなっていくばかりだった。

けど、彼女達は、誰にも認められていなかった『本当の七罪』に助けを求めている。

誰からも無視された七罪を、彼女達は見てくれている。

士道だって最初から変身していた自分と本当の自分と何ら変わりなく接してくれていたのではなかったか?

あの重症を負った暴力の時は、十香達を守るためであって、私をやろうとしたのではないのか?

殺されても仕方なかった私を、彼女達はどうして守ろうとしたのだろう。彼女達の一番大切な人と敵対までしてまで────。

多分だけど。信じていたのだろう。士道は本当は優しい人だから、自分達を傷つけられる事が一番嫌で七罪を排除しようとしたのだろうと。

だから────十香達は士道に敵対してまで士道を止めようとした。士道が十香達に傷ついて欲しくないように十香達もまた士道に傷ついて欲しくないようにと。

そしてそんな士道が自分達ではどうしようもない危険な場所にいる。だから、七罪に力を貸してくれと求めてきてくれた。

こんなどうしようもない私に────

だから七罪はそんな十香達をどうしても見捨てられる事が出来なかった。




作者「前は何があったのさ?」

狂三「やけに気持ち悪い貴方にニュータイプ研究所に連れていかれる所でしたわ!?」

作者「え・・・?まじかよ。そりゃ災難だったな」

狂三「災難どころではありませんでしたわよ!?」

作者「ただいまー。トッキー、お土産買ってきたよー」

狂三「はい?」

作者「ん?」

作者「あれ?なんで俺が二人居るの?」

狂三「えっ?作者さんが二人?どういうことですの?」

偽作者「バレてしまっては仕方ない。私は作者のイノベイドなのだ」

作者「イノベイドって事はまさか!?」

狂三「どういう事ですの?」

作者「つまり、俺の偽物っていうか、クローンが一杯になる」

イノベイド作者「「「「「「そう言う事になる」」」」」」

狂三「ちょ!?流石にこの人数は気味が悪いですわよ!?」

作者「コイツラがガガに乗って自爆特攻してくるんだぜ?」

イノベイド作者「「「「「トランザム!!」」」」」」

狂三「またこうなるんですの!?イヤぁぁぁぁ!?」


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第十八話

投稿!!
もうそろそろ、七罪編も終わりかな?

まあ、問題はこの先の攻略対象の二人なんだけども・・・

なんとでもなるはずだ!

ハサウェイ・ノア


『いいですか士道君。貴方がバルバトスを格納庫で一気に展開した後、転送装置で大気圏に飛ばします。ですが、十九メートル近いバルバトスを転送装置で飛ばす事は想定していないので何かしら不具合があると思いますが、大丈夫ですか?』

 

「平気。もし出たらこっちで何とかする」

 

『後、バルバトスのエイハブ・リアクターの関係上、通信は出来ないので士道君の自己判断でお願いします』

 

「分かった。じゃあバルバトス出る」

 

士道はそう言ってバルバトスを格納庫の中で目覚めさせる。

多少しゃがむようにしないと収納されないので座ったような体制になったが問題ない。

後は、転送してもらうだけと士道が思ったその時だった。

 

『副司令!!無線機器及び、転送装置の使用が出来ません!?リアライザの状態も不安定です!!これでは────』

 

と、艦内の放送が聞こえてきた所で士道は直様行動を取る。

滑腔砲をバルバトスは手にして格納庫の壁へと突きつける。

 

「ねえ、金髪の人。使えないならこの壁壊して外に出るよ」

 

『壊されると、司令に怒られるんですけどねえ・・・まあ非常事態ですし、かまいません。ですが壊すならシャッターの方へ向けて下さい。そちらなら一番壁も薄いですから』

 

神無月の言葉に士道は滑腔砲をシャッターの方へ向けると、そのまま引き金のボタンを引く。

爆音と共にシャッターがぶち破られる。高高度を飛行している為か格納庫の空気が外に吐き出されるが、士道は構う事なくバルバトスと共に宇宙へと向かった。

そして目と鼻の先に目標の衛星があるのを見て、士道はバルバトスのスラスターを吹かせるがふとその衛星の影に何かが見えた。

 

「なんだ?」

 

士道はその衛星の後ろに回り込んで確認すると、そこに見えたのは二つ目の人口衛星だった。

 

「もう一つあったのか」

 

士道はその衛星を見てそう言葉を漏らす。

このまま一つ目を破壊したとしても、あの衛星を破壊するには時間が足りない。その理由が────

 

「あのザコが邪魔だな」

 

衛星に張り付くように佇んでいるバンダースナッチの存在だった。どうやらテリトリーを張りながら衛星を大気圏の熱量で燃え尽きるのを守っているようでまずはアレを排除しなければならない。だが、モビルスーツサイズのバルバトスではあの小さいバンダースナッチを潰していくのは時間がかかる。

 

「まあ、やるだけど」

 

士道はバルバトスの操縦レバーを握り、衛星を破壊し始めた。

衛星を破壊しているのを直様察知したバンダースナッチがバルバトスに気づき始め、こちらへと向かってくる。

 

「邪魔」

 

士道はテイルブレードでバンダースナッチを薙ぎ払うが数が数だ。衛星破壊に集中出来るはずも無く、バンダースナッチの相手をする時間が増えていく。

そして、一つの衛星がバルバトスの横をを通り過ぎた。

 

「・・・・チッ!」

 

士道は通り過ぎる衛星に苛立ちを隠さない舌打ちをする。

このままだと一つ目の破壊は間に合わない。

士道は強引に衛星を破壊しようとスラスターを吹かせようとしたそのときだった。

 

「・・・・・・!」

 

上昇気流のように拭き上げた風圧と氷で編まれた壁がその衛星を止めていたのである。

 

『────士道・・・さんっ!』

 

と、士道の耳につけっぱなしだったインカムから聞き慣れた声が響いてくる。士道はバルバトスの大型メイスを衛星に突き刺して、機体を固定させてから周囲を索敵すると、衛星の少し下────シャトルの外に巨大なウサギの人形のような天使にしがみついた四糸乃の姿をが見えた。

 

「なんで四糸乃がいるの?それに────」

 

『くく、四糸乃だけではないぞ』

 

『不満。夕弦たちの活躍も見て欲しいです』

 

と、ついでにシャトルの横に耶俱矢と夕弦の姿も見えた。

だが、此処は大気圏を抜けた空気が限りなく薄い場所。どうしてこんな所にと士道が思った所で、マクギリスの声が入る。

 

『彼女達が私の所に押しかけてきてね。本来、君が乗るはずだったシャトルに彼女等を乗せてきた訳だ。ああ、彼女等を危険な目に合わせないよう手配している。テリトリーを使って彼女等の周りの空気は地上と変わりないようにしているとも。安心したまえ』

 

『シドー!』

 

『三日月さん!』

 

そう言うマクギリスに続いて響くのは、十香と美九の声だった。二人とも淡い光のドレスを纏っており、十香の手には《鏖殺公》が握られていた。

 

「十香・・・それに美九も・・・?」

 

士道が目を丸くしていると、十香は士道に言った。

 

『うむ、シドーが危ない所へ向かったのだ。シドーを一人にしてはおけぬとチョコの人に頼みに行ったのだ。間に合って良かったぞ』

 

「そっか。てことは琴里や真那も?」

 

『琴里さん達は敵の空中艦と戦ってますよー。まあ、多分そっちは任せておけば大丈夫だと思いますけどー』

 

その言葉に士道はそっかと呟いて息を吐く。

ひとまずは何とかなりそうだが、衛星は二つある。コイツを破壊したらまだ大気圏外にいるあの衛星を破壊しなければならない。

士道は直様思考を切り替えて十香達に言った。

 

「ありがとう。助かった。正直間に合うかギリギリだったし、助かる」

 

『何を言う。私たちを助けてくれたのはシドーではないか。これくらいで返せぬ恩を、私達は既に受けている』

 

十香が言うと、周りの皆もこくこくと頷いた。

と、その時バルバトスを固定した衛星が一気に揺れる。

 

『あ・・・・・っ!』

 

『く、何だこやつ、急に勢いを増しおったな』

 

『憤慨。空気を呼んで欲しいです』

 

どうやら、人口衛星と合体していたバンダースナッチが、スラスターの出力を上げたらしい。今まで空中に押し留めていた人口衛星が、ゆっくりと地上に近づいてくる。

士道はその様子を見て、十香達に言う。

 

「皆、コイツの破壊は任せていい?俺はもう一つの方を壊しに行く」

 

『分かった。シドーも絶対に帰って来てくれ』

 

『くく、その約束忘れるでないぞ!』

 

『請負。夕弦たちに任せてください。この程度のお荷物ポイーです』

 

『わ、私も・・・頑張ります・・・!』

 

『私もですよー。それに・・・七罪さんも手伝ってくれますしー、大丈夫ですよ』

 

「・・・七罪?」

 

士道は七罪の名前を聞いて眉を潜める。

 

『・・・・く、しなさいよ』

 

「・・・・ん?」

 

『・・・・早くしなさいよ。あのでかいの、壊すんでしょ。なら、早く行きなさいよ』

 

隠れるように喋る七罪に、士道は言う。

 

「俺は別にアンタの事を許したわけじゃない。けど・・・」

 

士道はそう言ってから口を開く。

 

「けど、今はアンタに礼は言っとく。ありがと」

 

『────────』

 

士道はそう言って固定していた大型メイスを引き抜くと、そのままもう一つの衛星へと向かって行った。

その姿を見た七罪はボソリと呟く。

 

「ほんと・・・・・馬鹿じゃないの」

 

だが、やるからには全力でやるしかない。七罪は右手を前方に突き出し、そして叫ぶ。

 

「────〈贋造魔女〉!」

 

それが、彼女達とアイツとの約束だから。




作者「俺も鳥になる!!」

狂三「カボチャ頭になって意味がわからないことを叫ばないでくださいまし。というか、この後ろの金ピカな機体はなんですの?」

「フェネクス。宇宙世紀のやべー機体。ちなみにこのカボチャ頭、本物のカボチャくり抜いて被ってんの。中、めっちゃカボチャの甘ったるい匂いとベタつきで被り心地は最悪よ?」←リアルでも作者は学生時の文化祭で被りました

狂三「そんなことは聞いていませんわよ・・・それで?この機体の特徴はなんですの?まさか、変身するだなんて言いませんわよね?」

作者「お、正解。けど、一番やべえのはこの緑色の光よ?」

狂三「なんですの?これは?」

作者「サイコフレームの暖かな光。ちなみにユニコーンやフェネクスのは人工物をもとの形に戻すっていう、狂三の時間逆行に近い能力もってんのよ」

狂三「・・・それオカルト地味ていませんの?というか、わたくし達、普通にそれ浴びませんでした?」

作者「うん。だから俺達の服はもとの状態に戻る」

狂三「・・・はい?」

作者「だから今まで言ってなかったけど、今のトッキーと俺、一応フル・フロンタル(自主規制)なのよ」

狂三「!!?それを早く行ってくださいまし!?この変態!?」

作者「カボチャ頭のフル・フロンタルな作者って確かに酷えや。けど狂三、キミもフル・フロンタルな時点で変態の仲間入りだ」

狂三「貴方よりはましですわよ!?というか、こちらを向かないでくださいな!?作者さん!!」


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第十九話 流星

投稿!

バトオペ2でガンダム四号機bstのメガランをバイアランやヘイズル改に撃ったら、その試合が終わるまで親の仇と言わんばかりに追い回された鉄血です。

最高だぜヤマギ!今日もお前のおかげで流星号は絶好調だ!

ノルバ・シノ



「アイク!」

 

インペリアルホテル東天宮のスイートルームにいたウェストコットは、不意に響いた呼び声に後ろを振り向いた。

とはいえ、ウェストコットの後方には、部屋の出入口などなく、あるのは天宮市の街並を一望できる巨大な窓だけだった。普通に考えれば、呼び声など響いてくるはずがない。

だが、振り向いてすぐに状況を理解する。CRーユニットを纏って宙を浮いたエレンが、四角くくり抜かれたガラスの向こうからウェストコットを呼んでいたのである。恐らく、ロビーから入る手間を嫌って、直接部屋に飛んできたのだろう。

 

「やあ、エレン。素敵な登場だが、少しノックが荒っぽいのではないかな」

 

綺麗なガラスの切断面を見ながらウェストコットが言うと、エレンはガラスに開いた穴から部屋に入ってきた。

 

「冗談を言っている場合ではありません。今すぐ逃げてください。先の取締役会での造反組が、あなたを狙ってここに人口衛星を墜落させるつもりです」

 

「ああ、聞いているよ。先ほど私の方にも連絡がきた」

 

ウェストコットは唇の端を上げると、くつくつと笑った。

 

「まさかマードックに、これほどの度胸と実行力があるとは思っていなかったよ。暗殺者を寄越すのではなく、廃棄予定の人口衛星を使うという手も面白い。いやはや、彼を過小評価していたかもしれないな。素晴らしい人材だ。イギリスに帰ったなら、褒めてやらねばならないな」

 

「・・・アイク」

 

ウェストコットの楽しげな様子を不満がるように、エレンが言ってくる。

 

「とにかく、このままでは危険です。私のテリトリーで保護しながら、できるだけ遠くへ飛びます。必要なものを纏めてください」

 

「別にここでも大丈夫だろう。何、大したことにはならないさ」

 

「・・・、確かに私と一緒ならば、テリトリーで被害を抑えることは可能でしょう。ですが万が一ということがあります」

 

「いや、それ以前に私はマードックの作戦は失敗すると踏んでいるよ」

 

ウェストコットが言うと、エレンは怪訝そうに眉をひそめた。

 

「どういうことですか」

 

「────ここ、天宮市はイツカシドウの家があり、精霊たちの生活基盤にもなっている。それに、〈ラタトスク〉の空中艦がいるのもまず間違いないだろう。彼らならば、きっと何とかするだろうさ。何しろ───あのエリオットが作り上げた組織なのだからね」

 

「・・・・・」

 

エリオットの名を出した瞬間、エレンの顔が不快そうに歪むのがわかった。

 

「信じられません。そんな理由でここに留まるというのですか?」

 

「ああ。いけないかな?」

 

「当然です。あなたは自分の重要性をわかっていないのですか」

 

「ふむ・・・・」

 

「アイク」

 

咎めるような口調でエレンが言ってくる。ウェストコットは小さく息を吐いて両手を小さく上げた。

 

「わかったよ。ではこうしよう。確かに万が一ということはある。マードックは周到だ。二の手、三の手があることも十分考えられる。だから────」

 

ウェストコットはエレンに向けていた顔を前方──部屋の中心に戻す。

そこには、一人の少女が先ほどから一言も発さず、立っていた。

 

「彼女を現場に派遣しておこう」

 

「・・・・、彼女を、ですか」

 

「ああ。〈メドラウト〉のちょうどいい試運転にもなるだろう」

 

ウェストコットはそう言うと、目を細めながら少女に問うた。

 

「───君の力を見せてほしい。どうかな?」

 

「・・・・・」

 

少女は、やはり何も言わぬまま、ただ、こくりと頷いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「────〈贋造魔女〉!」

 

七罪がそう叫ぶと、彼女の手に箒型の天使が現れ、その先端が展開したかと思うと、目映い光を辺りを包み込む。

 

「ぬ!?」

 

「きゃっ・・・・!」

 

「うわ・・・・っ!?」

 

十香達は思わず一瞬目を覆った。

そして、次に目を開けた瞬間。

 

「なっ・・・・」

 

十香は、上空を見上げて、一瞬前とは対象的に、驚愕に目を見開いた。

だがそれも当然である。何しろ、上空数千メートルに存在していた人口衛星のうち一つが、まるまるとした巨大なブタのマスコットに変貌してしまっていたのだから。

間違いなく〈贋造魔女〉の変身能力である。十香はハッとして七罪を見やった。

 

「ほら、早くしなさいよ・・・!」

 

苛立たしげに七罪が言う。未だに天宮市の上空には、巨大なブタが迫りつつあった。爆弾としては極めて低くなったかもしれないが、あれだけのサイズだ。墜落すれば、凄まじい衝撃だろう。

 

「なら、私も頑張らないとですねー。〈破軍歌姫〉───【行進曲】!」

 

美九が叫ぶと同時、天使から勇ましい曲調が響き渡り───人口衛星を押し留めていた風と氷の壁が、更に強度を増した。

 

「すごい・・・です」

 

「よくやった!美九!七罪!後は我らに任せよ!さあ、いくぞ!夕弦!」

 

「応答。いつでもどうぞ」

 

二人は小さく頷き合うと、耶俱矢が左手を、夕弦が右手を差し出し───ぴたり、と合わせる。

そして二人の霊装と天使が光り輝き、弓のような形状を作り上げた。

そして最大まで引いた弓を上空の巨大なブタへと向ける。

 

『〈颶風騎士〉───【天を駆ける者】!!』

 

二人は同時に手を離し、その巨大な矢を、天高く打ち上げた。

だがしかし、それは限定霊装による一撃のもの。本来の威力とは程遠く、周囲に浮いていた〈バンダースナッチ〉がそんな二人の攻撃をテリトリーを張って大幅に威力を衰退させる。

 

「十香!」

 

「十香さん」

 

耶俱矢と夕弦は同時に叫ぶと、十香は〈鏖殺公〉を両手で高く掲げる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

十香の放った斬撃が守るものがなくなったターゲットへと炸裂した。

しかし巨大なブタは半壊になり、中から大量のチュッパチャップスがその姿を覗かせている。が、まだ足りない。

 

「く────!」

 

あと少し。本当にあと少しなのだ。しかし、そのほんの少しが、どうしても埋まらない。

琴里や真那、〈フラクシナス〉は敵戦艦を引きつけていて、手が貸せる状態ではない。四糸乃もあの巨大なブタを支えるので精一杯だ。

 

「このままでは────!」

 

十香はもう一度、力を溜めなおそうとした時────。

 

「〈贋造魔女〉!」

 

七罪が、右手に握った天使を掲げて、再び叫びを上げる。

 

「───【千変万化鏡】!!」

 

瞬間。

七罪が掲げた箒型の天使に、変化が現れる。

箒全体が、磨き上げられた鏡面のような色に覆われていき、放棄自身が、粘土のようにシルエットを変貌させていく。

そして、数瞬のあと。

 

「な・・・・っ!?」

 

「これって・・・十香さんの・・・」

 

「は・・・・!?」

 

「驚愕。これは・・・」

 

「うっそぉ・・・」

 

七罪の手に収まっていた“それ”を見て、皆は目を丸くしていた。

それは、一振りの『剣』だった。

七罪の身の丈はありそうな幅広の刀身。金色に輝く鍔に、漆黒の柄。そう────

 

───天使〈鏖殺公〉が、そこに顕現していた。

 

「皆に────士道達に何してくれてんのよぉぉぉッ!」

 

七罪はそう叫ぶと、〈鏖殺公〉を半壊の巨大なブタ目がけて振り抜いた。

 

「〈鏖殺公〉・・・・!」

 

するとその刀身に光が溢れ、七罪の太刀筋に沿うように、斬撃が飛んでいく。

形だけではない。十香のそれには劣るものの、それは間違いなく本物の〈鏖殺公〉と同じ力を有していた。

七罪のその斬撃が巨大なブタへと直撃する。

テリトリーを砕き、巨大なブタは漫画のようにコミカルな音を立てて弾け飛び────無数のチュッパチャップスが、雨のように降り注いだ。

 

「────士道!」

 

七罪は更に上空────宇宙の大気圏にいる士道に目を向ける。

そう。あそこにはまだ士道がいる。あの人口衛星を破壊しなければここで壊した私達の努力が無駄になってしまう。七罪が十香達と一緒に士道の所へ向かおうとした時、十香達の真下から二つの砲弾が一直線に人口衛星へと突き刺さった。

バキバキバキッ!と、巨大なヒビを入れながら人口衛星がヒビ割れていく。

 

「なに!?」

 

七罪と十香達は遥か下────地上に目を向ける。

建物も何もかもが小さくなった天宮市の中に一際目立つピンク色の人型が背中に背負うその砲身を人口衛星へと向けていた。

 

「あれって────」

 

七罪は知っていた。あのとき────七罪がが廃ビルにいた時に、一瞬だけ姿を見ることが出来たド派手なピンク色のあの機体。

 

“ガンダムフラウロス“がそこに立っていた。




作者「クアンタムバースト!」

狂三「いきなりどうしましたの?」

作者「いや、ゼロシステム搭載機にクアンタムバーストしたらどうなるのかって思ってさ」

狂三「それで?結果はどうでしたの?」

作者「それは狂三、君がもうすぐ分かる」

狂三「?どう言う・・・ってあああああ!?」

作者「ゼロシステムの敵を殺す未来予知がクアンタムバースト通じて無差別にばら撒かれるんだよなぁ!?」

狂三「これ私でなければ発狂ものですわよ!?」

作者「だからこれすると、周囲を廃人化させて無力化出来るか、錯乱したパイロットがゼロシステム持ちの機体に群がるように殺しに掛かってくるんだよ・・・」

狂三「対話もへったくれもありませんわね!?」

作者「そりゃあな!!」


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第ニ十話 スーパーギャラクシーキャノン

投稿!!

多分後、一話か二話で七罪編も終わりかな?

ではどうぞ!

最近、バトオペでステイメンにハマってしまった。
スタークジェガンがいるのに・・・いけないな

見たか!これが四代目流星号の力だ!

ノルバ・シノ


「あれは────」

 

ユージンはマクギリスとシャトルの中でモニターに映された“ソレ”を見て呟く。

 

「ガンダムフラウロス・・・確か鉄華団で扱っていた機体だな。確かパイロットの名は・・・」

 

「・・・シノだ。ノルバ・シノ。いっつもうるせえし馬鹿ばっかやってたけどアイツは・・・」

 

アイツは死んだ。あの時、最後のあの瞬間────格好ばっかつけて、一泡吹かせるだなんて言って、結局帰ってこなかったあの馬鹿と共に駆けた流星。

きっとアレもバルバトスが呼んだ副産物のようなものだろう。けど、あの機体を見てユージンは叫びたくなる。

だが、それはシノに言うことであってフラウロスに言うことではない。

だからユージンはフラウロスを見ながらボソリと呟いた。

 

「三日月を・・・助けてやってくれよ。流星隊の隊長」 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「琴里さん!アレを見てください!」

 

「なに!?ちょっと手が離せないんだけど!?」

 

真那の返事に、琴里はそう叫びながらDEMの空中艦〈ヘプタメロン〉に焔の砲撃を放つ。

そしてそのスキに、琴里は真那が指を指す方向へと視線を向けた。

 

「ちょっ・・・アレって確かモンタークが言ってたガンダム・フレームってやつじゃ」

 

そう言い終わる前に、フラウロスが再び衛星に向けて砲撃する。

目にも止まらぬその弾速と共に二つの弾丸が衛星に着弾した。

ビキビキビキ!と、更に深い亀裂を走らせながら人口衛星は割れていく。

 

「一体何キロあると思ってんのよ。それにあの威力をこの短時間で・・・馬鹿げてるわね」

 

琴里は呆れながらも襲ってくる〈バンダースナッチ〉を焼却させると、真那に言った。

 

「真那、一応十香達の所に行って。此処は私がやるわ」

 

「えっ?いやでも足止めは・・・?」

 

「大丈夫よ。丁度、神無月も来たみたいだし」

 

琴里はそう言って、目を横へ向けると〈フラクシナス〉が此方へと向かってくるのが見えた。

それを見た真那は、小さく息を吐くと続けざまに口を開く。

 

「・・・わかりました。では十香さん達のもとに向かいます。でも何かあったらぜってーに呼んでくださいよ」

 

「分かってるわよ」

 

「どうだか」

 

真那と琴里はそんなやりとりをした後に、お互いに背を向け合う。

 

「それじゃあいきますよ。十香さん達の護衛は任せてください」

 

「頼んだわよ。真那」

 

「はいはいっと」

 

真那は琴里の言葉を軽く返しながら、十香達のもとへ向かっていく姿を見送った後、DEMの空中艦を見すえながら〈フラクシナス〉へのインカムに話しかける。

 

「神無月。後で私の応答に出なかった事、ちゃんと聞かせてもらうわよ」

 

『分かってますよ、司令官。でもその前にアレを何とかしましょう。話はその後でも十分でしょう?』

 

「ええ。それもそうね」

 

琴里は神無月にそう返事を返し、笑みを浮かべる。

 

「〈灼爛殲鬼〉!」

 

琴里のその言葉と共に焔が燃え上がる。

そして琴里は唇を開いた。

 

「さあ────私のデートを始めましょう」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「────あの狙撃・・・シノ?」

 

バルバトスのモニターに映るフラウロスを見ながら士道はそう呟く。

フラウロスの砲撃によって飛び散った衛星の破片をバルバトスの大型メイスで粉砕しながら士道は今の状況を察知した。

 

「・・・十香達は上手くいったみたいか」

 

このまま行けば大気圏突入の際に自分が燃え尽きる可能性が出てくるので早く何とかしたいところだが、それをするためにはこの衛星を破壊しなければならない。

と、更にフラウロスから追加の砲撃が飛んでくる。

その砲撃は亀裂を更に走らせ、衛星の破片を散らしながら押し留まった。

 

「今のままじゃ結構厳しいか」

 

これだと安全に大気圏を突入出来ないかもしれない。

士道はそのことを頭の片隅に置きながら衛星の破壊活動を行うのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「後、少し!あと少しで!」

 

七罪は巨大な衛星に目に見えるほどのひび割れを見て、そう叫ぶ。

だが唐突にフラウロスの砲撃が止んだ。

 

「ぬ?・・・攻撃が止んだ?」

 

十香はフラウロスからの支援砲撃が止まったのを見てそう呟く。

 

「えっ・・・ちょっと待ってよ。後少しなのよ!?なんで・・・」

 

そう叫ぶ七罪に耶俱矢が目を見開いた。

 

「ま、まさか───」

 

「推測。弾切れかと思われます」

 

苦々しい表情で夕弦が答える。

 

「そんな・・・」

 

四糸乃が弱々しくそう呟くが、これ以上はどうしようもない。

と、美九がフラウロスを見て指を指した。

 

「あ!皆さん!あれ見てください!」

 

美九のその言葉に誘われるように五人はフラウロスに視線を向けると、五人は目を見開いた。

ガンダムフラウロスの背中に装備されたロングバレルキャノンに取り付けられた巨大な槍にも見える鈍色の弾丸。

それは────────三日月達がいた世界において禁止兵器として扱われている“ダインスレイヴ“だった。

 

「ダインスレイヴだと?」 

 

マクギリスはガンダムフラウロスに装備されている弾丸を見て目を細める。

確かにアレを打ち込めば最後、あの衛星程度ならば一撃で破砕する事も可能だろう。

だが、マクギリスが懸念しているのはそこではない。

 

「アレを破壊した際にどれほどの破片が大気圏で燃え尽きるか・・・」

 

もし、割れ方次第では三日月・オーガスの大気圏突入がかなり危険になってくる。流石にバルバトスは原型を残すだろうが、確実に彼は地表に到達する前に“燃え尽きる“。

 

「そうならないように物事が動けばいいが」

 

マクギリスはそう呟き、最悪の結末になった時の保険の為動き出した。

 

◇◇◇◇◇

 

フラウロスが砲撃形態へと変形する。

両手のマニュピレータは格納され、腕部装甲が砲台固定の留め具として地面に突き刺される。

そして下半身部百八十度回転し、脚部も反動抑制の固定アンカーとなった。

砲撃形態になったフラウロスはロングバレルキャノンをひび割れだらけになった衛星へと狙いを定める。

バチバチとツインリアクターのエネルギーと電流がそのバレルへと集中していき、臨界状態へとなっていく。

そしてフラウロスのサブブースターと連結したロングバレルキャノンは超硬レアアロイの弾頭を打ち出した。

その反動により固定されたコンクリートの地面が粉砕し、固定されたフラウロス自身もその反動で後退する。

だが、放たれたダインスレイヴの弾頭は目にも止まらぬ速さで一直線に空を飛び、雲を吹き飛ばし、そして衛星に展開されていたバンダースナッチのテリトリーを問答無用で貫通し、そして────

 

 

バゴォォォォォォォォォォォォッ!!

 

 

ひび割れた衛星を一撃で粉砕し、貫通したダインスレイヴの弾頭は成層圏の彼方へと飛翔していった。

 

「な────────」

 

そのあまりの破壊力に十香達は呆然とする。

自分達が必死になって破壊した衛星を難なく破壊したフラウロスに絶句するしかない。

だが、それでも衛星の破壊は出来た。

後は士道が戻ってくるだけと誰もが安堵した次の瞬間。

 

『君達に残念な知らせがある』

 

マクギリスからのその通信に十香達は身を強張らせる。

 

『今、ガンダムバルバトスは“大気圏に突入した“。このまま彼が大気圏で何も出来なければ、君達のもとに戻ってくる前に“彼は大気圏で燃え尽きることになる”』

 

十香達の士道の無事を願う彼女達にとって、最悪の知らせだった。




作者「オールドパイロットにオールドパイロットの意地があるのさ」

狂三「何を言っているんですか?貴方は」

真那「どーして私まで・・・・」

作者「え?オールドパイロット代表?」

真那「だーれがオールドパイロットですか!!誰が!」

作者「違うの?」

真那「違わなくは・・・ねーです」

作者「手なわけで、オールドパイロットの意地を見てみたいので真那ちゃん、デンドロビウムを持ってきたよー」

真那「持ってきたよーじゃねーですよ!!こんなの操作出来るわけねーじゃないですか!!」

作者「え?コウ・ウラキは出来たよ?」

真那「出来たよ?じゃねーです!」


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第ニ十一話 願いの重力

投稿!!

最近バイカスの動きに慣れて変態機動が出来るようになった鉄血です。

ただ、デルタガンダムが狩りずらいったらありゃしない

次がエピローグになります!では、どうぞ!

俺はその場所を見てみたい。お前はどうだ!バルバトス!

三日月・オーガス


「ちょっと待って!?それってどういう事よ!?」 

 

耶俱矢が顔を歪めながらマクギリスに叫ぶ。

 

『言った通りだ。このまま行けば彼が大気圏を無事に抜ける事はできない。バルバトス自体は装甲などかなり剥がれるだろうが、中のパイロットである三日月・オーガスは摩擦熱の焼け死ぬ事になる』

 

「反論。それでも士道には琴里さんの力を持っています。その回復力さえあれば────」

 

『無事だと言いたいのかね?一体どこにそんな保証がある?』

 

夕弦の言葉を遮るようにマクギリスは言う。

 

『五河琴里の力の事は聞いている。だが、完全に燃え尽きた状態で彼が生き返る保証もないだろう?』

 

「じゃあ・・・このまま見捨てろと言いたいんですか貴方はぁ!!そんなの私は嫌ですよぉ!!」

 

美九が目尻に涙を浮かべながらそう叫ぶ。

 

『では聞くが今の疲弊仕切った“君達に何が出来る“?今から彼を助けにいくつもりか?どうやって助ける?』

 

マクギリスは彼女達に現実を突きつける。

どうしようもない現実を。

 

「シドーが・・・死ぬ?」

 

十香が呆然とした様子でそう呟く。

視界がぐらぐらと揺れる。

また、あの光景を繰り返す事になる?耶俱矢と夕弦はどうにか助けられないかと叫んでいる。

四糸乃はずっと嗚咽をあげて泣いていた。

美九は諦めきれないと天使を使って叫ぶように声をあげていた。

七罪は、大きな帽子を深く被って顔を見せないようにしている。

そんな中で十香は宇宙を見上げて赤く光るバルバトスを見て呟いく。

 

「・・・シドー」

 

見上げる十香の頬に涙が流れ落ちた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

“ピピピピ“ッとバルバトスのコックピットから警報アラームが鳴り響く。

士道は暑くなっていくコックピットの中で、汗を流しながらポツリと呟いた。

 

「やっぱり、地球の重力って凄いな」

 

衛星破壊の時、余った大きな破片を盾にしようかと考えていた士道は、フラウロスのダインスレイヴによって粉々に砕け散った衛星を見て、その考えを止めざるをえなかった。

今、バルバトスのスラスターを全開に吹かしてもきっと宇宙には戻れないだろう。

このまま地上に降りてしまえばどうなるのだろうか。

大気圏でこのまま焼け死ぬか、それとも琴里の精霊の力で蘇生出来るのか・・・予測が全くつかない中でも士道は冷静だった。

この状況でどうやったら生き残る事が出来るのかと。

初めて地球に降りた時は、敵のモビルスーツを盾にして大気圏の摩擦熱を防ぎながら地球へと降りた。

だが、今回は違う。

そんな盾になるモビルスーツもなく、大型メイスとてバルバトスの全身を隠せるほど大きくはない。

 

「・・・・・・」

 

士道は諦めたように目を閉じる。

十香達に帰ってくると言った事が嘘になってしまうが、彼女達は怒るのだろうか?それとも泣くのだろうか?

士道はそう考えて、再び目を開ける。

 

「お前はどうだ?・・・バルバトス」

 

俺はまだ生きていたい。オルガ達がいないこの世界でも今の自分には新しく出来た家族がいる。

 

士道はバルバトスに呟くように言うと、バルバトスはツインアイを光らせて士道の三日月に返答した。

 

「────えっ?」

 

士道はバルバトスの返事に顔を上げると、黒い大きな影がバルバトスを覆った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「────あれは・・・・」

 

真那が宇宙を見上げる。

バルバトスの近くに巨大な艦が見えていた。

 

「・・・“イサリビ”」

 

ユージンは大気圏でバルバトスを守るように現れた艦を見て、シャトルの中でそう呟く。

突如現れたイサリビにユージンは安堵の顔をつくった。

 

「・・・たく、遅えんだよ。お前はよ」

 

ユージンはイサリビに向けてそう言った。

あのイサリビはきっとバルバトスが呼び出したものではなく、きっと────

 

「なあ、オルガ。やっぱお前も三日月の事が心配でいつも見てんだろ」

 

誰にも聞こえない声でユージンは窓の外からイサリビを見ていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ねえ!!あれを見て!」

 

と、唐突に七罪が声を上げる。

 

「え・・・?」

 

十香達が顔をあげて空を見上げた。

そして視界に映るソレに目を見開ける。

 

「まさか・・・そんな事が────」

 

「ぁ・・・・・」

 

誰がそう漏らしたのか────その声に皆が目に涙を浮かべた。

 

「シドー!!」

 

「・・・・士道さん!!」

 

「「士道!!」」

 

「三日月さん!」

 

それぞれが巨大な艦の上に機体を固定させていたバルバトスを見て笑みを浮かべる。

士道は自身を固定していたイサリビから機体を離すと、そのまま十香達がいるシャトルへと機体を向かわせながら、イサリビへ顔を向けた。

 

「・・・・オルガ」

 

消えていくイサリビに士道は小さく呟く。

彼処に行けば、またオルガに会えるのだろう。アトラやクーデリアだっているはずだ。けど──── 

 

きっとオルガ達はソレを望んでいない。

士道はそれをなんとなくだが感じていた。

 

だから────

 

今は後ろを振り向かずに前を向いて歩き続けよう。

“三日月”は消えゆくイサリビに振り返らず、十香達のもとへと帰っていった。




ミカ「お前はどうだ? バルバトス?」

バルバトス「俺だって止まりたくない(´•ω•`)あ!三日月、上!」

ミカ「えっ?」

実はイサリビはバルバトスが出したものじゃないという・・・


作者「やっーと次で七罪編が終わるよ」

狂三「長かったですわね。四十話くらい使いましたわよ」

作者「しゃーないよ。二巻構成だし」

狂三「次も二巻構成ですけれど問題ありません?」

作者「問題はないよ?ただ───次はなぁ・・・」

狂三「・・・折紙さんですものね」

作者「三日月の折紙に対する好感度は最悪よ?色々やらかしたせいで」

狂三「しかも折紙さんのこの話は・・・」

作者「三日月にとっては割とブチギレ案件。しかも、折紙は自業自得だし」

狂三「まあ、そうですわね」

作者「知ったこっちゃないって顔してるけど、君もやらかしてるからね?一応言っとくけど」

狂三「・・・ぐうの音も言えませんわ」


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第ニ十ニ話 エピローグ

投稿!!

やーと七罪編が終わったー!!

次も問題児なんですけどもね!?

アンタからは俺と同じ匂いがする

三日月・オーガス



「シドー!!」

 

「士道・・・さん!」

 

「「士道!」」

 

「三日月さぁぁん!」

 

士道が無事に皆の元へと帰った後。〈バンダースナッチ〉たちや衛星の破壊をしていた十香、四糸乃、耶俱矢、夕弦、美九が、士道たちのもとへとやってきた。どうやら皆、軽い怪我こそ負ってはいるものの、大事はなかったらしい。

 

「シドー!無事か!?怪我はないか!!」 

 

十香が士道にすぐに駆け込むと、泣きそうな顔で心配してくる。

そんな十香に士道は言った。

 

「平気。十香達も大丈夫?」

 

案外と平気そうにする士道に、皆は言った。

 

「うむ・・・私は平気だ」

 

「私も・・・大丈夫です」

 

『まあねー。よしのんも大丈夫だよー』

 

「まあ、我も大丈夫ではあるが・・・」

 

「同調。私も問題はありません。それより士道の方が心配です」

 

「そうですよー。私達の心配よりもー、自分の事を心配してください」

 

そう言って、皆が士道の心配をしてくる。

士道は頭をかきながら「平気なんだけど」と言った。

と、そんな中で────

 

「士道!!」

 

「兄様!!」

 

琴里と真那が焦りに焦った様子で駆け寄ってきた。

 

「兄様!平気ですか!?怪我はないですか!?何処か痛む所もねーですか!?もしあったら────」

 

「真那、うるさい」

 

士道は鬱陶しそうに目を細めて言う。

と、そんな中で琴里はご立腹そうに士道に言った。

 

「士道・・・神無月から士道の状況を聞いた時、本当に心配したのよ。分かってるかしら?分かってないからこんな無茶な事をしたのよね?」

 

「何とかなったし、別にいいじゃん」

 

「別にいいじゃん、じゃないわよこの馬鹿。十香達を不安にさせてどうするのよ!!それに私の力だって完全に燃え尽きたら発動するかわからないから、余計よ!」

 

「・・・・・・」

 

琴里の説教に士道は軽くバツの悪そうな顔を作る。

そんな士道に琴里は言った。

 

「一応、検査は受けてもらうわよ。いらないとは言わせないから」

 

そう言ってくる琴里に、士道は顔を顰めた。

だが、そんな中、一人だけ何もいわず、その場から立ち去ろうとしていた者が、いた。

────七罪だ。

 

「ねえ、どこいくの」

 

「・・・・・・・・・っ!」

 

士道が呼び止めると、七罪は盛大に肩をビクッと揺らしてその場に立ち止まった。

そしてそろそろと士道たちの方を向き、どこか怯えた様子でフンと鼻を鳴らしてくる。

 

「・・・な、何よ。あんな土壇場じゃなくてさっさと手伝えよって?それとも十香達と協力するなって・・・」

 

ネガティブな調子で、そんなことを言ってくる七罪に、士道は小さく息を吐いた。

 

「別にそんな事言いに来たわけじゃない。手伝ってくれてありがと」

 

「え・・・・」

 

士道が言うと、七罪は目を丸くしてその場で立ち尽くした。

 

「シノも手伝ってくれたけど、多分俺だけじゃ無理だった。だからそのお礼」

 

「な、に・・・言ってるのよ。私は・・・勝手にやって・・・十香達にも迷惑かけて・・・・あんたは、それで苦労して・・・」

 

そう言う士道に七罪は辿々しく言いながら、身体を小さく震わせ始める。

 

「それ以前に・・・私は、あんたたちに酷いことしたし・・・なのに、なんで、なんで・・・」

 

段々と声には、嗚咽のようなものが混じり始めた。エメラルドのような目からはぽろぽろと大粒の涙が溢れ始め、段々と声が大きくなっていく。

 

「別にさっきも言ったけど、俺はアンタがやった事を許してるわけじゃない。けど────」

 

そう言う士道は、更に続けた。

 

「今はそんなのは関係ない」

 

「何よ・・・何なのよ、あんたたち、揃いも揃って!馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの・・・!?意味わかんない!なんで、なん、そ、に・・・ッ!」

 

最後の方はもう、言葉になっていなかった。頬に涙の道を作り、大声でわんわんと泣き始める。

 

「え・・・・」

 

士道もまさか泣かれるとは思っていなかったのか、珍しく困惑した表情をつくる。

ただならぬ様子を察してか、十香達も七罪を泣き止ませようとし始めた。

だが、七罪は泣き止まず────さらに、涙に濡れた声を響かせた。

そしてずずっと鼻を啜り────

 

「あのとき────私を、可愛くしてくれて・・・皆に言えなくて・・・ごめんなさい・・・っ」

 

七罪が士道と十香達の目を見てくる。

 

 

 

 

「・・・ありが・・・とう」

 

 

 

 

「別に俺はなんにもしてないけど」

 

「兄様。それ一言余計でやがりますよ?」

 

士道の余計な一言に、突っ込む真那。

そんな士道に七罪は士道に顔を近づけてそしてそのまま───

ちゅっ、と、士道の唇にキスをした。

次の瞬間、七罪が纏っていた魔女のような霊装が消えていく。

 

「わ・・・っ!?な、何これ・・・」

 

七罪が顔を驚愕に染め、胸元を腕で覆い隠しながらその場に座り込む。

 

「し、知らなかった。霊力を封印すると、霊装って消えちゃうんだ・・・」

 

七罪は顔を真っ赤にしながらぼそぼそと呟く。

 

「シドー!?何をしているのだ!?」

 

「・・・!あ、あの・・・私、見てませんから」

 

「くく、このような街中で、それも皆の前で封印とは、見上げた性癖よのう」

 

「首肯。無人の街という非日常空間をプレイに利用する貪欲さはさすがです」

 

「きゃー!三日月さんたらダイターン!」

 

「ちょっ!とりあえず七罪さんこれ着てください!」

 

「・・・・全く」

 

その様子を見ていた皆が笑みを浮かべた時だった。

 

「・・・・・・!」

 

士道が急に顔を空へと上げた。

 

「・・・・・・・ッ!?」

 

それと同時に琴里と真那も空を見上げる。

 

「空に魔力反応!?これは────さっき取り逃がした空中艦から、爆破術式の反応よ!?」

 

そう言う琴里に、皆は一斉に顔を緊張に染めた。そして、士道と同じように、こちらへと向かってくる空中艦に目を向ける。

他の皆は力を消耗してしまっている状態で、先ほどと同じように、落ちてくる対象を迎撃するのは難しい。

だがやるしかないと、士道はバルバトスを顕現させたその瞬間。

一瞬、空に光の線のようなものが見えたかと思うと、天宮市上空で巨大な爆発が起こり───辺りの空気がビリビリと震えた。

 

「な・・・・!?」

 

「狙撃?」 

 

皆が目を見開き、士道は狙撃された方向へと顔を向ける。

爆発が起きる直前に空に引かれた光の線。その先に小さな人影が見えた。

 

「アイツは────」

 

その影は、ゆっくりと士道たちの方に向かってくると、空中で静止した。

それは、CRーユニットを纏った魔術師だった。ASTのものではない。

確か、エレンとか言うヤツのそれによく似たデザインのスーツに、特徴的なスラスター、そして、右手に携えた巨大な魔力砲が印象的だった。

そして、その魔術師に見覚えがある。

士道の代わりに、真那がその唇を開いた。

 

「折紙・・・さん?」

 

真那がその名を呼ぶと、折紙は無言で士道たちに視線を寄越してきた。

いつもよりも、感情の読み取れない瞳で。




作者「鳴らない言葉をもう一度描いてー」

狂三「何、かぼちゃを被って踊っていますの?」

作者「狂三もどう?」

狂三「やりませんわよ?」

イノベイター作者「「「俺達もやっているが?」」」

狂三「出ましたわね!?偽作者さん!それに皆さんも気味の悪い踊りをやらないでくださいまし!?」

作者「ならば、仕方ない。皆の衆」

イノベイター作者「はっ!!」

作者「狂三にかぼちゃ頭をつけさせたまえ!」

狂三「ちょっ!?作者さん!?嘘ですわよね!?」

作者「嘘だと思うかね?」

イノベイター作者「「「観念したまえ」」」

狂三「いやああああああ!?」


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鳶一エンジェル
第一話


投稿!!

ついに折紙編!!

原作で今、やっと十巻よ・・・

僕はまだ死ねない・・・死にたく・・ない

ビスケット・グリフォン


鳶一折紙という少女が『特別』になったのは、今からおよそ五年前のことである。

幼少期より聡明で、せいぜい、母が保護者会や三者面談で鼻を高く出来る程度のものに過ぎなかった。

得意科目は算数。苦手科目は国語。

好きな食べ物はグラタン。嫌いな食べ物はセロリ。

将来の夢は────可愛いお嫁さん。

世界は常識に満ち、誰もがそれを疑おうとはしなかった。己に出来る範囲のことをきちんとやっていれば、友人たちも、大人たちも、褒めてくれた。そんな優しい世界が、いつまでも続くものだと、特に意識をするでもなく思っていた。

だが、あの五年前の夏の日。折紙を取り巻く全てが変わった。

 

────あの日。街に戻った折紙を出迎えたのは、見慣れた街の風景ではなく、紅蓮の炎が燃え盛る地獄のような光景だった。

 

(お父さん、お母さん・・・・!)

 

折紙は、家にいるはずの両親の存在を思い起こすと、炎に包まれた街の中へと走っていった。

思えば、無謀極まる行動である。たとえ折紙が家に辿り着いたところで、出来ることなどなにもない。だが、その時の折紙は、父と母の無事を確かめる以外のことは考えられなかった。

ほどなくして折紙が自宅へと辿り着くと、父が母の肩を抱きながら、燃え盛る家の扉を蹴り破り、外に出てきた。

そのときの折紙の安堵といったらない。父と母は、生きていた。それが嬉しくて嬉しくて、目に涙を浮かべながら、父の手を取ろうと手を伸ばした。

しかし、その瞬間。

 

(────え?)

 

突然、空から光のようなものが降り注ぎ、折紙の身体は吹き飛ばされる。

そして────まさにその光の直下にいた両親は。

一瞬前まで人間の形をしていたとは思えないくらいに、小さな破片になっていた。

 

(あ、あ・・・あ・・・あああああ────)

 

折紙は歯の根を鳴らしながら、上空を見上げる。

そこには、光を放つ少女のシルエットが、あった。

 

(お、まえ、が・・・)

 

────お父さんと、お母さんを。

 

(許さない・・・!殺す・・・殺してやる・・・ッ!私が────必ず・・・っ!)

 

怨嗟に彩られた声を上げ、折紙は、復讐を誓った。

 

それが、折紙と精霊の出会い。そして同時に“あのとき”出会った少年。

ぶっきらぼうで、あのときにかけられた言葉は特段優しいというものではない。

だが両親を失った折紙は、彼という存在に寄りかかって、辛うじて己を保っていたのだ。

だから────それが遠因となり、ASTを追われることとなってしまった今も、彼に恨みを抱いたことなどは一度もなかった。

今になって思ってみれば・・・折紙は限界を感じていたのかもしれない。

精霊を倒すことを目的に組織されたはずのAST。超常的な力を人間に与えてくれる顕現装置。

それらを用いても、精霊には到底敵わなかったのである。

だから。折紙はさらなる力を求めた。

顕現装置を作り出した会社、DEMインダストリー。その、最新鋭の装備と、それを扱える身体を。

そして、折紙は────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「シドー!」

 

隣のマンションから元気のよい声が響く。

そちらへに目をやると、士道と同じく来禅高校の制服に身を包んだ少女が、大きく手を振っていることがわかる。

 

「おはよう、十香」

 

「うむ、おはようだ!」

 

士道がそう言い返すと、十香は満面の笑みを作りながら大きく頷いた。相変わらず元気と活気が満ちている。

 

「今日もいい天気だな!ぽかぽかするぞ!」

 

「あー・・・うん、今日は温かいね」

 

士道はそう言って、ポケットの中からエナジーバーを取り出すと、片手で器用に包み紙を破ってそのまま口へと入れる。

 

「そう言えば、耶俱矢と夕弦は?また寝坊?」

 

ある程度咀嚼した後、士道は十香の後方を見やる。

 

「いや、もうすぐ来ると言っていたのだが・・・」

 

そう言って十香も後方を見ると、すぐに二人の姿が確認できた。

眠そうな顔を作って歩いてくる二人に、士道は言った。

 

「おはよう」

 

耶俱矢と夕弦は士道の顔を見る。

 

「・・・おお、士道か」

 

「返答。おはようございます」

 

眠そうに返事をする二人に、士道は首を傾げる。

 

「二人とも夜ふかしでもした?」

 

「少し夕弦と勝負をしていてな。白熱するうちに寝るのも遅くなってしまった」

 

「同調。おかげで寝不足気味です」

 

 

そう言う二人に士道は少しだけ息を吐く。

 

「二人ともこっちきて」

 

士道は十香に鞄を渡した後、八舞姉妹に手招きする。

 

「・・・どうかしたか?」

 

「?・・・どうかしましたか?」

 

そう言う二人に、士道は八舞姉妹に言う。

 

「二人とも、後ろ向いて」

 

「「・・・・・?」」

 

半分眠っている顔を傾げながら、二人はくるりと半回転する。

 

「十香、俺の鞄開けて」

 

「うむ?分かったぞ」

 

士道は十香が開けた鞄に手を突っ込み、二つのキンキンに凍ったペットボトルを取り出す。

 

「十香、これ耶俱矢に俺と同じことやって」

 

「?うむ」

 

十香は士道からペットボトルを受け取った後、士道は夕弦の制服の襟首を片手で器用に引っぱり、そのまま無防備な夕弦の背中に極低温のペットボトルを投下した。

十香も同じように耶俱矢の制服にそのペットボトルを投下する。

 

「ぴぁ────────っ!?」

 

「────────────ッッ!?」

 

その冷たさに飛び上がった八舞姉妹の悲鳴が盛大に響き渡った。




作者「そう言えばさトッキー?」

狂三「なんですの?」

作者「前に買ってきたお土産開けた?」

狂三「そういえば開けていませんでしたわね・・・貴方の事ですから変なものではありませんの?」

作者「いや、中身はハロよ?」

狂三「ハロですの?」

作者「そうそう。ほら、アレ」

ハロ「クルミ、ゲンキカ?クルミ、ゲンキカ?」

狂三「あら?貴方にしては随分と可愛らしい贈り物ですわね」

両手でハロを抱き抱える。

作者「まあねー。ちなみに今、狂三が持ってるハロ、それガンダムさんのハロだから」

狂三「はい?」

ハロ男 腕を出しながら

狂三「いやぁぁぁぁぁぁ!?」


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第ニ話

投稿!!

折紙編はもうある程度内容は出来ているから問題ないんですけど、折紙編が終わるとなぁ・・・次が三日月なんよなぁ・・・

アイツが最期まで作ったチャンスだろうが!!

ユージン・セブンスターク


「士道・・・貴様よくもやってくれたな・・・」

 

「反撃。今日の帰りは覚悟してください」

 

八舞姉妹は士道に恨み辛みを吐きながらも、士道の両腕を離さずに歩いていた。

 

「重い」

 

士道はそう言うが、そんな士道に耶俱矢は言った。

 

「先程士道がやったことに比べればマシであろう」

 

耶俱矢はさらに士道に体重をかけてくる。

 

「・・・・ぬう」

 

そんな二人に十香は複雑そうな表情と声音で士道達を見ていた。

そんな十香に、夕弦は言った。

 

「提案。十香もどうですか」

 

「ぬ?・・・だが・・・」

 

言い淀む十香に、耶俱矢が言う。

 

「構わんではないか。これは士道の罰ゲームだ。なら、別に十香一人が増えても問題はあるまい」

 

耶俱矢の返答に、十香は士道を見る。

 

「・・・・好きにしたら」

 

「!・・・うむ!」

 

十香の顔を見た士道はそう言うと、十香は顔を明るくして士道の背中へと飛びついた。

 

「・・・・・ッ」

 

その衝撃と十香の重さが加わり顔を歪めるが、士道は足を止める事なく学校へと向かう。その際に周りからは訝しげな目と嫉妬の視線が向けられるが、四人は気にすることはなかった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「それで?七罪の様子はどうかしら?」

 

「今の所は問題はねーですよ。今頃は四糸乃さんと朝ごはん食べているんじゃねーですか?」

 

真那は琴里にそう返事をしながら、マグカップに入ったココアを口に含む。

 

「ったく、本当に適当ね。最初にあった時の貴方はそこまでじゃなかった筈なんだけど」

 

「手を抜く時には手を抜かねーと身体に負担しかねーですから。それに、〈ナイトメア〉はどうです?何か手掛かりは掴めました?」

 

そう言って話題をそらす真那に、琴里は溜息をつきなが唇を開いた。

 

「手掛かりはなしよ。未だに尻尾を出さないわ。まああんな事があったことだし、しばらくは尻尾を出さないでしょ」

 

「まあそうですよね。あの時に殺しとけばよかったです」

 

衛星落としの事を説明すると、真那は溜息を吐いて美九の時に姿を現していた狂三をやっておけばよかったと愚痴を漏らす。

 

「・・・どんどん士道に性格似ていってない?あなた?」

 

「・・・そんなつもりはねーと思いますが」

 

そう言って真那はマグカップを机の上に置いて、琴里に視線を向ける。

 

「・・・まあ、〈ナイトメア〉に関しては今はどうでもいーです。問題は────」

 

「・・・鳶一折紙ね」

 

琴里の返事に真那は頷いた。

問題は彼女である。

真那がいる以上、士道が見ていない範囲の精霊は彼女でカバーすることは出来るが、それはあくまでも彼女一人ならの話。そこにエレンが追加されれば、カバーする事は出来ない。

そうなってしまえば、被害が大きくなるのは確実だろう。

琴里はそんな状況に眉を歪ませる。

 

「・・・本当に面倒な状況よね。一応、あの男に頼んではいるけれど」

 

「ああ・・・あの・・・」

 

真那はマクギリスを思い出し、なんとも言えない微妙な顔を作る。

第一印象がアレだったので真那としては頼るのはどうかと思うが、無償で手伝ってくれてはいるので頼るしか他ないのだろう。

 

「まあ、無いよりはマシですか」

 

「そう思うしかないわよ」

 

琴里も半ば疲れた様子で返事を返す。

 

「御愁傷様です・・・と、そろそろ四糸乃さん達の様子をみにいきますね」

 

そう言って真那は立ち上がると、マグカップを持って台所へと向かう。

と、そんな真那に琴里は唇を開く。

 

「それはそうと・・・真那」

 

「はい?なんですか?」

 

マグカップを洗い終わった真那は琴里に返事を返すと、そんな真那に琴里は目を細めながら言った。

 

「あなた、最近検査を受けていないみたいだけど、一体何をしているのかしら?」

 

「・・・・・・・」

 

だんだんと目付きが鋭くなってくる琴里に、真那は冷や汗を流しながら目を逸らす。

するとそれに合わせて、琴里が真那の肩に手を置いた。

 

「最近あなたが士道みたいに自分の身体の状態も顧みず飛び出していったりとか、後先考えずにバンバン顕現装置使ったりとか、検査をサボってたりとか、私はこれっっぽっっっちも気にしていないんだから」

 

琴里の指が、真那の肩に食い込む。真那は冷や汗をさらに流しながら言い訳をする。

 

「いや・・・だから、私は問題な────」

 

「問題ない訳在るわけないでしょ。とにかく、今度こそ逃さないからね。今日は徹底的に検査して、適切な処置を施させてもらうわ。覚悟なさい。あなたが知らないところまで調べ尽くしてあげる」

 

琴里はそう言って、ぐいと真那の肩を摑む。真那は足をジタバタさせながら目に涙を浮かべて悲鳴を上げた。

 

「い、いやぁぁぁぁっ!?さ、流石にあんな詰まらない所で今日一日いるのは勘弁願いてーです!?だ、誰か!?誰か助けてください!!兄様!兄様ぁぁぁぁ!?」

 

真那は足をバタバタとさせて逃げようとするが、琴里は真那を離さない。

 

「安心なさい。士道なら今頃十香たちと学校に居るわよ。さあ、さっさと足掻きは諦めていくわよ」

 

「琴里さん!!貴方は人の心がねーですか!?鬼!!悪魔!!外道!!」

 

「あなたの心配しているのに何が外道よ。なんなら一ヶ月あなたを閉じ込めてあげてもいいのよ」

 

そう言う琴里に真那は更に顔を青くする。

そして琴里は笑顔で真那に言った。

 

「まあ、今日はよっぽどの事がない限りは帰れないと思いなさい真那」

 

「そ、そんなのは嫌でやがりますよぉぉぉぉぉ!?」

 

真那の絶叫が五河家に響き渡った。




狂三「・・・あら?」

ジュアッグ

狂三「中々可愛い見た目ですわね・・・作者さん。コレは一体なんですの?」

作者「?ああ、ジオン水泳部のジュアッグじゃん。ジオン水泳部は個性的なヤツが多いからねー」

狂三「ジオン水泳部?一体どういうものなんです?」

作者「アッガイとか、ゴックとか、御神体とか結構個性的よ?」

狂三「ご、御神体?」

作者「まあ、正式名称はゾックだけど。ほら、後ろのデカイやつ」

狂三「お、大きいですわね」

作者「そりゃあね。ちなみに顔も二つある」

狂三「・・・もうよくわかりませんわよ」


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第三話

短いですが、投稿!

ミカ、行くぞ!

オルガ・イツカ


十香達が士道にくっつきながらほどなくして高校に到着した。

いつも通り靴を履き替え、いつも通り階段を上がり、いつも通りに耶俱矢と夕弦と別れ、教室に入る。

そんな士道達にクラスメートからはいつものように挨拶をされ、士道は適当に挨拶を返した。

あとはホームルームの開始まで十香や殿町とのとりとめない会話をしていればいい。

これもまた、いつもの変わることのない時間だった。

────だが。

 

「・・・・・・」

 

士道は無言で、左隣の席に視線をやる。

まだ誰も座っていない席。士道のクラスメート───鳶一折紙の席に。

いつも十香と話していると割り込んでくる彼女がいない事に、士道は違和感を覚えた。

 

「む・・・・」

 

すると、それに気づいたのか、十香もまた、折紙の席に視線をやる。

折紙はAST───精霊を殲滅することを目的とした部隊の隊員だ。無論のこと、精霊である十香と折紙の中は決して良くはない。否、犬猿の中と言ってもいいくらいだった。だが、なぜだろうか。誰も座っていない席を見る十香の目には、何やら複雑な感情が込められている気がした。

と、そこで、教室に備えられていたスピーカーから聞き慣れたチャイムが鳴り響いた。

今日の内外に散っていた生徒たちが、慌ただしく自分の席に着き始める。

窓の外を見やると、閉じられつつある校門に滑り込む少年少女たちが何名か見受けられた。

が────やはりその中に、折紙の姿はない。

士道は目を前にやると、教室に、担任である岡峰玉恵教諭・通称タマちゃんが入ってきた。

起立、礼、着席。いつも通りの挨拶を済ませてから、タマちゃん先生は出席簿を開く。

 

「・・・はい、皆さんおはよぉございます。今日も張り切っていきましょう」

 

張り切って、という割には暗い声で言い、、タマちゃん先生は出席簿に視線を落とした。

タマちゃんらしからぬしょんぼりとした樣子に、クラスメートたちが目配せをし合う。

 

「え・・・何、タマちゃんどうしたの?」

 

「なんか元気なくない?」

 

「あ、もしかしたらまたお見合い駄目になっちゃったとか」

 

「あー・・・・」

 

なんて、勝手な想像がひそひそと飛び交う。

タマちゃんはそれが聞こえているのかいないのか、はあとため息を吐いた。

 

「出席の前に、皆さんに悲しいお知らせをしなくちゃいけません・・・」

 

言って、タマちゃん先生が眉を八の字にする。

 

「実は・・・鳶一さんが、急な都合で転校することになってしまいまして・・・」

 

「!」

 

タマちゃん先生の言葉に、士道は少しだけ反応を示した。

 

「ぬ?折紙がか?一体どういうことなのだ?」

 

十香がタマちゃんに質問を投げる。

 

「私も詳しい事情はわからないんですよぉ。突然、鳶一さんから電話がかかってきて、転校する、必要書類はあとで送るって・・・」

 

「ぬう・・・そうなのか」

 

十香はタマちゃんの返答に困惑しながらその口を閉じる。

 

「一応、分かっている範囲ならイギリスの学校にいく、とだけ・・・」

 

タマちゃんのその言葉に士道は特に反応を示すことなく、窓の外を覗きながらホームルームを過ごすのだった。




作者「どうよ!狂三!このスピードは!」

狂三「早いってものではありませんわよ!?なんですの!?この機体は!」

作者「ヅダ!一年戦争の前、ザクとの競争に破れた量産機だよ!」

狂三「なぜ破れたのですの!!教えて下さいまし!」

作者「まあ、色々と理由はあるけどその一つは───」

狂三「一つは?」

作者「スピードを出しすぎると機体が空中分解する!」

狂三「なんてものに乗っていますの!?早く、早く止めてくださいまし!?」

作者「はっはっはっ!ヅダの土星エンジンがオーバーロードして制御が効かないんだなぁこれが!!」

狂三「ふざけている暇はありませんのよ!?どうにかできませんの!?」

作者「なら、アクシズに突っ込むぞオラァ!!」

狂三「死ぬ未来しか見えませんわ!?」


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第四話

投稿!!

今週の日曜日から水星の魔女見れますね!楽しみだなー!

ママ!ママ!蝋燭みたいで綺麗だね!

エリクト (スレッタ・マーキュリー)


学校が終わり、放課後。朝方は晴れていた空は、今にも雨が振りそうな曇天になっていた。日が暮れ始めているのも手伝ってか、辺りは既に薄暗くなっている。

そんな空の下、士道と十香は八舞姉妹と共に自宅への道へと歩いていた。

 

「なに?折紙が?」

 

「疑問。なぜこのタイミングで転校したのか分かりません」

 

耶俱矢と夕弦はお互いにそう呟くが、士道はそんな二人に口を開く。

 

「考えたところで仕方ないし、アイツのことなんてどうでもいいよ」

 

これまでの折紙の行動に対して、士道は彼女に対してあまり好意的な態度を取るわけでもなく、どうでもいいと言わんばかりの表情でそう言葉を漏らす。

 

「まあ、士道からしてみればそうなんだけどさ・・・」

 

そんな会話をしながら道を歩いていると、ほどなくして十香達が住む精霊マンションが見えてくる。

 

「ん?」

 

「ぬ?」

 

と、そこで士道達は足を止めた。マンションの隣────士道の家の前に、一人の少女が立っていたからだ。

紫紺の髪を風になびかせた、セーラー服姿の背の高い少女である。モデルのような肉感的なプロモーションに、愛らしい顔。しかしその表情は今、つまらなそうに曇っていた。

 

「────あっ」

 

その少女も十香たちに気づいたらしい。暗くなっていた表情をパァッと明るくし、両手を広げてタタタッと士道たちに走り寄ってきた。

 

「三日月さぁぁん、十香さぁぁん、耶俱矢さぁぁん、夕弦さぁぁんっ!」

 

『・・・・・ッ!!』

 

士道と十香、耶俱矢と夕弦は、瞬時に危険を察知してその場から飛び退いた。しかし少女はその勢いを緩めることなく突進してきたものだから、電柱にはしっ、と抱きつく格好になってしまう。

 

「んぐっ!?もぉー、なんで逃げちゃうんですかぁ」

 

言って、「ぶー」と唇を突き出し、木にしがみつくコアラのような姿勢のまま、少女が不満そうな声を漏らす。

 

「いや、それ以前になぜ突っ込んでくるのだ!?」

 

「ええ?ハグに決まっているじゃないですかぁ。愛情表現ですよー」

 

十香が叫ぶように問うと、美九はさも当然のごとく返してくる。

 

「そ、そうなのか・・・?」

 

信じそうになっている十香に、後方から両肩をがっしと掴まれる。

 

「だ、騙されるな我が眷属よ!」

 

「警告。嘘つきの臭いがします」

 

「・・・・っ!や、やはりそうか!」

 

十香はハッと肩を揺らして足を止めた。美九が残念そうに眉を八の字にする。

 

「そんなぁー。心配しなくても、耶俱矢さんや夕弦ともちゃんと熱い抱擁を交わしてあげますってばぁ」

 

「そんなことは頼んでおらぬわ!」

 

「拒否。してもらうのなら士道がいいです」

 

「夕弦・・・また最近悪化してない・・・?」

 

夕弦の返事に耶俱矢が突っ込む。最近になってまた甘やかしと士道に甘えることが多くなってきたような・・・と思う耶俱矢に十香が言う。

 

「ぬ・・・士道となら私もしたいぞ!」

 

「それはそうですよねー」

 

「十香達とはするけど、アンタとはやらない」

 

「そんなぁー!」

 

士道の返事に崩れ落ちる美九。一応、過去に四糸乃や夕弦、真那とは違って、アレやコレやとしたせいで士道に嫌がられている状態だった。

 

「・・・ところで美九、ここで何をしていたのだ?」

 

と、十香が問うと、美九が目をぱちくりとさせたあと、思い出したかのように手を打ってきた。

 

「そうそう!そうですよぉ、学校が終わったから三日月さんのところに遊びに来たんですけど、誰もいなくて暇だったんですよぉ。お隣のマンションも訪ねて観たんですけど、みんなお留守だったみたいですしぃ」

 

美九がつまらなそうに言う。

 

「そりゃ留守に決まってんでしょ。街の案内してもらっていたんだし」

 

後ろから投げられる言葉に、士道達は振り向いた。

そこにいたのは四糸乃と七罪だった。

丁度帰ってきた頃合いだったのだろう。手には袋がたくさん握られている。

 

「四糸乃達は街に行ってたの?」

 

士道の言葉に、四糸乃は頷いた。

 

「はい。七罪さんと・・・一緒に、買い物に行っていました・・・」

 

『よしのんだけの時と違って結構楽しかったもんねー』

 

「あたしは別に・・・」

 

『またまた〜。七罪ちゃんだって楽しそうにしてたじゃなーい』

 

「ッ!?そ、そんなわけないじゃない!」

 

色々とよしのんにバラされているが、四糸乃達との行動で楽しそうにしていたのは間違いない。

 

「皆、家で飯食べてく?」

 

士道は楽しそうにしている皆にそう言うと、皆は声を揃えながら言った。

 

『食べていく!!』

 

と────その瞬間。

 

────ウウウウウウウウウウウウウウウウ────

 

と、辺り一帯に、けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

 

「む、これは・・・」

 

「空間震警報・・・ですね」

 

美九が渋い顔をしながら呟く。

 

「ふ・・・新たな精霊が現れるというのか」

 

「興味。どのような精霊か気になります」

 

八舞姉妹が興味深げにあごを撫でながら言う。しかしそれを諌めるように美九がブンブンと首を振った。

 

「駄目ですよー二人とも。空間震警報が鳴ったら、ちゃんとシェルターに避難しないと」

 

「む、むう・・・しかしシドーは・・・」

 

だが、十香は眉根を寄せて困惑していた。

 

「別に平気。すぐに終わらせるから」

 

そう言って鞄を十香に渡すと、ポケットの中からインカムを取り出し、耳へとつける。

と、そのとき。

 

「───その必要はない」

 

背後から、そんな静かな声がかけられた。

 

「ぬ・・・?」

 

十香は怪訝そうに振り返り────目を丸くした。

何しろそこに立っていたのは、つい今朝方転校を知らされた、鳶一折紙その人だったのだから。

 

「・・・あ?」

 

士道は目を細めて折紙に視線を送る。

皆の視線が折紙に集まる中、十香は眉根を寄せながら、十香は再度口を開いた。

 

「・・・それで、避難の必要がないとはどういうことだ?」

 

「空間震は、起きない」

 

「何?」

 

折紙の言葉に、十香は首を捻った。

 

「これは空間震警報ではないのか?皆避難しているぞ」

 

言って、十香は辺りの様子を示すように手を広げながら言った。

警報を聞いた周囲の住人たちが、慌てて家から飛び出し、最寄りのシェルターに向かっている。

しかし折紙は無言で────まるで近隣住民がこの場からいなくなるのを待つように────そのまま十香たちを見つめ続けたあと、ようやく口を開いた。

 

「この警報は、私が要請して鳴らしてもらったもの。実際には精霊も、ASTも現れない」

 

「で?どうするわけ」

 

士道は首元に置いていた手をゆっくりと下ろす。コイツのやることは“ある程度”理解した。そしてまた次に彼女が発するであろう言葉を士道は折紙に言わせる。

 

「───精霊である彼女達を、この場で、倒すため」

 

瞬間、折紙の身体が淡く発光し、その身に魔術師の鎧───CRーユニットが装着された。

 

「───やらせるわけないだろ」

 

士道は折紙が動き出す前にカタをつけようと、バルバトスの大型メイスの尖端を折紙目掛けて突き出した。

完全な不意打ちと強襲。

鳶一折紙に何もさせないと言わんばかりに突き出されたメイスは一つの刃によって逸らされた。

 

「!」

 

逸らされたメイスが折紙の横を通り過ぎる。だが、士道は折紙を見ず、メイスを逸らしたエレンを見ていた。

 

「装着中に攻撃するのは無作法ですよ」

 

「知るわけないだろ」

 

士道とエレンは互いにメイスとブレードを打ち合いながら、空へと飛んだ。

皆のことが心配だが、コイツがいると話は別。

十香達にはコイツの相手は厳しすぎる。

士道とエレンが空中でドッグファイトをする最中、折紙は十香達に砲身を向けて言った。

 

「ここであなたたちを────精霊を、倒す」




作者「ハマーン様バンザーイ!」

狂三「また出ましたわね!頭が可笑しい作者さん!」

作者「狂三、どうかな?強化人間になると決心してくれたかな?」

狂三「ですからならないと言っているでしょう!?ほぼ死刑宣告みたいなものでしょう!?」

作者「そっか・・・残念。なら、変わりに一緒にあの機体に乗ろうか!」

狂三「・・・なるよりはマシですわ。それで?どんな機体ですの?」

作者「あれだよ!!」

ガンダムデルタカイ

狂三「・・・あの機体、確かかなりマズイシステム搭載していませんでした?」

作者「大丈夫!大丈夫!なんにも積んでないから←大嘘」


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第五話

投稿!!
水星の魔女、面白かったですねー!

ただ、水星の魔女の決闘システムにガンダムエアリアルの人工知能、プロローグに出てきた無線兵器に対する対策兵器・・・なーんか、厄祭戦が起こる前の鉄血世界に似てるような似てないような・・・

水星ってお固いのね?こっちじゃ全然ありよ。よろしくね花婿さん

ミオリネ・レンブラン


折紙の冷たい声と共に、砲門の向きが十香達の方へと向けられる。その目には、迷いや逡巡のようなものは一切見受けられない。

普段の折紙とは異なった、純粋な敵意と殺意に彩られた視線。その異様さに、十香は思わず息を呑んだ。

 

「・・・・・っ」

 

いや─────違う。十香は思い直すように頭を振りかぶる。十香は以前にも、この折紙を見たことがある。

今から半年以上前。十香が士道と出会うより以前、この世界に現れるたびに襲いかかってきたASTの鳶一折紙は、今と同じ目をしていたのだ。精霊を憎み、精霊を忌み、精霊を殺す事に己の存在全てを懸けていた少女。今の折紙は、そのときの彼女そのものだった。

 

「なぜだ───なぜ、戻ってしまったのだ、鳶一折紙!」

 

「・・・・・」

 

十香が叫ぶも、折紙は構わなかった。無言のまま引き金を引こうとする。

 

「く・・・・ッ!」

 

十香は顔を歪めながら跳躍しようとするも、先ほどの判断でコンマ数秒遅かった。 

だがその瞬間、十香に向けられていた砲口が不意に上方へと向けられる。

理由はすぐに知れた。空からその身に限定霊装を顕現させ、空から折紙に襲いかかったのだ。

濃密な魔力の光が、空に向けて放たれる。しかし八舞姉妹は空中で身を捻り、紙一重でそれを避けた。

 

「くく、よく気づいたな!」

 

「感心。さすがです、鳶一折紙」

 

耶俱矢と夕弦はくるりと宙返りしてから十香達を守るように、折紙の前に降り立った。

そして手にしていた天使〈颶風騎士〉を折紙へと向ける。

 

「さて、一応弁明を聞いてやろうではないか、折紙。冗談にしては度が過ぎているのではないか?」

 

「詰問。答えてください。鳶一折紙」

 

「答える必要は、ない」

 

言うが早いか、折紙は魔力砲を可変させると、その尖端に魔力で編まれた巨大な刃を現出させた。そしてそのまま八舞姉妹に向かって突撃する。

だがしかし、折紙に対するのは、精霊中最高の機動力を誇る八舞姉妹である。二人はその一撃を難なく躱すと、折紙と切り結び始めた。

そしてそんな八舞姉妹を援護するように、七罪が〈贋造魔女〉で折紙が手にするレイザーブレイドを巨大なキャンディへと変化させる。

 

「!」

 

「私もいるの忘れてないでしょうね?」

 

七罪はそう言って折紙を見る。

勝手にドンパチするなら他所でやれ。自分達を巻き込むな。七罪は後ろにいる四糸乃を守るようにしながら箒を手にする。

 

「くかか!やるな!七罪!」

 

「称賛。良い援護です」

 

「だったら早く倒しなさいよ」

 

そんな軽口を叩く三人に折紙はミサイルを放つ。だが───

 

「無駄だって言ってるでしょーが」

 

そんなミサイル群を七罪は〈贋造魔女〉を振るい、ニンジンの形に変えて、着弾したニンジンはコミカルな爆発を起こしながら砂煙を上げた。

 

「・・・・・っ」

 

折紙が今、手にしている武装で七罪の相手をするのは相性が最悪だった。

 

「はああああッ!」

 

奥歯を噛みしめる折紙に十香が斬りかかる。

そんな十香に折紙はもう一方のレイザーブレイドを手に取り、十香の〈鏖殺公〉を受け止める。

そしてそれと同時にテリトリーで十香を押し出し、距離を取った。

 

「させぬわ!」

 

「同意。てやー」

 

距離を取った折紙に八舞姉妹の風が襲いかかる。

 

「く、は・・・・ッ」

 

もろに直撃したその風に折紙は平衡感覚を崩され、テリトリーを展開することも出来ぬまま、地面へと叩きつけられた。

勢いよく叩きつけられた折紙の全身のダメージは深刻だった。

打撲に、裂傷。出血も酷い。通行人に目撃されたならば、問答無用で救急車を呼ばれてしまうであろう有様である。

 

「ぐ・・・・っ」

 

いや、本当に深刻なのは体表の傷だけではなかった。

鼻から、目から、出血をしている。この症状は何も初めてではない。〈ホワイト・リコリス〉を無理に使用したときにも見られた、活動現界。

────何が互角だ。何が精霊と戦うことができるだ。結局のところ、折紙は命を削りながら、精霊に追い縋っていたに過ぎなかった。

 

「私、は・・・・」

 

折紙は震える手を天に伸ばす。

 

「・・・鳶一折紙」

 

それを見た十香は、なんとも言えない表情で呟くだけだった。

 

「わ、たし、は─────」

 

折紙の頭に、ふっと諦観が過ぎる。

折紙は弱々しく息を吐くと、天にかざした手を、力なく下ろしていった。

─────だが、次の瞬間。

 

 

 

【─────ねえ、君。力が欲しくはない?】

 

 

 

そんな折紙の耳に、男のものとも女のものともつかぬ声が、聞こえてきた。

 

「え─────?」

 

突然響いた言葉に、目を見開き、よろめきながらも身体を起こす。

するとそこに、得体の知れない『何か』が立っているのがわかった。

 

「「「「「─────!?」」」」」

 

「な─────あれは!」

 

美九が目を見開ける。アレは確か、自身が精霊になるきっかけになった『何か』────謎の精霊《ファントム》。

十香達はそのファントムを最大限に警戒しながら、ファントムと折紙の会話を聞く。

 

「あなたは・・・何?」

 

折紙は思わず『誰』ではなく『何』という表現を使ってしまった。それが伝わったのか、何やら可笑しそうにくつくつと笑い声を響かせる。

 

【私が何かなんてことは、今はどうでもいいよ。それよりも、答えて?君は力が欲しくはない?何者にも負けない、絶対的な力が、欲しくはなぁい?】

 

「・・・・・・ッ」

 

折紙は眉根を寄せ、息を詰まらせる。

だが、その問いに対する答えは決まり切っていた。半ば無意識のうちに、折紙の唇は動いていた。

 

「そんなの─────欲しいに決まってる」

 

折紙は吐き捨てるように、その言葉を口にした。

 

「私は・・・力が欲しい。何をおいても。何を犠牲にしても・・・!私の悲願を達することのできる、絶対的な力が欲しい!」

 

【そう】

 

『何か』が、短く答える。

なぜだろうか。表情など見てとれはしないのに────『何か』が一瞬、ニッと笑った気がした。

 

【────なら、私があげる。君が望むだけの力を】

 

そう言って、『何か』は折紙に向かって何かを差し出してきた。

皓い輝きを放つ、宝石のような物体。

 

「これは・・・?」

 

【力が欲しいのなら、手を伸ばして】

 

「・・・・・・」

 

折紙は訝しげに眉を潜めながらも、ゆっくりと手を伸し・・・その宝石に触れた。

瞬間。

 

「な・・・・ッ」

 

宝石が凄まじい輝きを放ったかと思うと、そのまま空中に浮かび上がり────折紙の胸に吸い込まれていった。

 

「なにが・・・・」

 

十香はその様子に呆然と呟く。その輝きで皆が目を瞑ってしまった一瞬のうちに、宝石と『何か』の姿は、忽然と消えていた。

しかし、そのとき。

 

「ぁ・・・・?」

 

折紙に─────変化が訪れる。

どくん、と大きく心臓が脈動し、折紙は眉根を寄せた。

身体の中に新たな心臓ができて、それまでとは異なる熱い血流を全身に放出していくような感覚。これまで感じたことのない異常な感触に、折紙は思わずその場に膝を突いた。 

 

「あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ、あ、あ────」

 

朦朧とする意識の中で。

折紙は、自分が別の存在に生まれ変わるような感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

それと同時に─────ファントムの出現によって“六十六番目の神と悪魔、二つ名を持った悪魔が“バルバトスの手によってその鎖が解かれた。




作者「ファントム・・・甘いなぁ、力を求めるならもっと重くすりゃいいのに」

狂三「作者さん?貴方一体どんな事を考えていましたの?」

作者「え?俺だったらこんな内容にするよ?これだった強くなれるよね!」

阿頼耶識(グレイズ・アイン)とナイトロシステム及びゼロシステムの搭載機体に乗っける

狂三「・・・作者さん」

作者「およ?どしたの?そんな良い笑顔で?」

狂三「人権って言葉を知っています?」

作者「狂三からそんな言葉が出てくるとは思わなんだ」

狂三「いくら私でも、これは人の死に方ではありませんわよ!?」

作者「そうかぁ?」

狂三「そうですわよ!」


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第六話 鉄華

投稿!!

なんか日間ランキング見たら久しぶりに入ってるのを見てびっくりした鉄血です。

なんで急に上がったんだろ?

それよりも水星の魔女も面白くなっていきそうですね!


「─────ッ!」

 

士道はエレンに大型メイスを突きだす。

突き出されたメイスをエレンは上手く受け流すと、流れるようにレイザーブレイドをバルバトスの首元へと振るう。

 

「・・・チッ!」

 

士道は苛立しげに舌打ちをしながら身体を後ろへと後退させ、その攻撃を回避した。

先程からこれの繰り返しだ。

エレンが逃げ、士道が追いかける。士道の攻撃をカウンターしながら、距離を取って逃げ回る。時間稼ぎが目的だと言わんばかりのその行動と、上手く戦えないというこの状況に士道は苛立ちを隠さなかった。

そんな士道の様子を見てか、エレンが言う。

 

「此処までしておきながら冷静さを失わないのは大したものです。大抵の人は此処まですると大胆さを見せてくるものですが」

 

称賛するエレンに士道は短く返事を返す。

 

「あっそ」

 

敵からの称賛も士道からしてみればどうでもいい。今、士道の頭の中に浮かべているのはどうやったら殺せるか、それだけしかない。

そして士道はもう一度コンクリートで出来た道を踏み締める。そして跳躍しようとしたその時。

 

「・・・なんだ?」

 

「・・・ッ!?これは─────」

 

士道とエレンは突如溢れ出る莫大な気配に顔を向ける。

そして────

 

「・・・・あ?」

 

士道の視界の半分が真っ赤に染まった。この感覚を士道は前にも体験している。あれは確か────

 

“モビルアーマーと対峙した時“の筈。

 

そして士道の目に映る一列された文字

 

ALAYA-VIJNANA SYSTEM SAFE MODE ACTIVATED

 

それと同時にバルバトスのツインアイも光り輝く。 

宿敵が、滅ぼすべき天使がいる。

それと同時に、六十六番目の悪魔が動き出した。

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

「────」

 

十香達は呆然と目の前の光景に視線を向ける。

一瞬見間違いかと思ったが───違う。

仄暗い空間に一条の光が差し、その中に一人の少女が浮遊していた。

最初に目に入ったのは、その装いだった。

しかしそれも当然である。身体の線に沿うように纏わりついたドレス。満開の花のように大きく広がったスカーㇳ。そして、頭部を囲うように浮遊したリングから伸びた、光のベール。───それら全てが、目の覚めるような純白で構成されていた。

それはまるで花嫁衣装か───さもなくば、闇の中に降り立った天使の姿を思わせる。

 

「・・・・ッ、あれ、は────」

 

しかし、十香達が息を詰まらせたのは、それらの要素に目を奪われてのことではなかった。

その白いシルエットがゆっくりと近づいてくるのと同時、少女の顔が見て取れるようなる。

 

────その、鳶一折紙の、顔が。

 

「折紙・・・?」

 

「確認。やはり耶俱矢にもそう見えますか」

 

「ですね・・・でもあの姿って・・・」

 

耶俱矢と夕弦、美九もそれに気づいたらしい。眉をひそめながら口々に言う。

 

「・・・つまりそう言うことでしょ。琴里や美九と同じ・・・」

 

七罪がそう言いかけた直前、その言葉は中断された。

理由は単純。折紙がゆらりという動作でこちらに視線を寄越した瞬間───全身を無数の針に突き刺されるかのような悪寒が襲ってきたのである。

 

『・・・・っ』

 

耶俱矢たちが目を見開き、呆然と身体を強張らせる。十香は奥歯を噛みしめると、折紙に〈鏖殺公〉を構えた。

そんな十香に、折紙はジッと見やりながら、ゆっくりと滑るように近づいてきた。

そして十香を見下ろしながら、小さく唇を開く。

 

「夜刀神・・・・十香────倒す。私が」

 

「・・・折紙、貴様」

 

十香が視線を鋭くすると、折紙は悠然と右手を天に掲げた。

そして、その名を呼ぶ。

折紙が知るはずのない、その───天使の名を。

 

 

「────メタトロン〈絶滅天使〉」

 

 

折紙の言葉に応ずるように、既に日など沈んだ後の空から、折紙を囲うように幾条もの光が降り注いだ。

 

「く・・・」

 

十香は顔をしかめた。

霊装に・・・天使。もう、見間違えようがない。

顔を上に向けたまま、叫ぶ。

 

「・・・折紙。貴様、なぜ───“精霊になっている“!」

 

「精、霊・・・」

 

折紙は十香の発した言葉を復唱するように呟くと、目を物憂げに歪めて自分の手を、身体を見下ろした。

 

「そう・・・やはり、“そう“なの」

 

折紙は目を伏せると、己に言い聞かせるように言った。

 

「ならば────それでも構わない」

 

そして目を見開き、十香に剣のような視線を向けてくる。

 

「私は、精霊を倒すためにこの力を振るおう。精霊を殺す精霊となろう。そして全ての精霊を討滅し───最後に一人残った私をも、消し去ろう」

 

折紙が、両手を広げる。その動作に合わせるように、頭上の王冠がその尖端を広げ、日輪の如く円環を作った。

 

「〈絶滅天使〉────【日輪】」

 

折紙が、静かに告げる。瞬間、折紙の頭上に広がった円状の天使が回転を始め、周囲に光の粒を振りまいていく。

 

「シドー───私に、力を貸してくれ・・・ッ!」

 

四糸乃を耶俱矢を夕弦を美九を七罪を助けるために。

そして────あの女を。

不遜で、横暴で、愛想がなくて、口が悪くて、何を考えているかわからなくて、いつも邪魔をする、十香が大嫌いな───あの気高い少女の手をとるために。

十香は士道の名を呼び、天使〈鏖殺公〉の柄を握る手に、力を込めた。

 

「────あああああああああああああああああッ!」

 

頭の中で何かが弾けるようなイメージ。十香は身体の中に、何か温かいものが流れこんでくるような感覚。

そして────

 

「────────」

 

十香の脳裏にナニカが流れ出した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『今、ここに!アリアンロッド艦隊指令、ラスタル・エリオンの威光の元に悪魔は討ち取られた!』

 

『ウオオオオオオオオ!!』

 

巨大なクレーターの中で夕焼けに輝らされる巨大な人型のロボットが剣を掲げる。

それと同時に十香の周りにいつの間にかいたロボット達が勝利の雄叫びを上げていた。

 

「これ・・・は?」

 

先程まで折紙を接敵した筈の十香は呆然とその光景を眺めていると、十香の目に中心にいたロボットの剣先に目が奪われる。

 

「────ぁ」

 

掲げられる剣の切っ先。そこには“討ち刎ねられたバルバトス“の頭が夕焼けに照らされながら掲げられていた。

 

「ぅ────ぁ」

 

十香の視界が揺れる。気持ち悪い。この光景は一体なんだ?この悪夢は一体なんだ?

十香は頭の中がグチャグチャになりながら、一歩、足を前へと進める。

 

止めてくれ。あれは私の大事なシドーの───

 

届かない手を伸ばそうとする十香に誰かがその手を摑む。

 

「────」

 

十香はビクッと身体を震わせながらゆっくりと振り返ると、そこにいたのは。

 

「悪いな。嫌な夢を見しちまって。“アンタが悪い訳じゃないが、ここで見たことは忘れてくれ“」

 

白髮の青年は十香にそう言うと、十香の意識は急激に薄れていく。

 

「シ────ドー・・・・」

 

意識が薄れていく十香は、掲げられたバルバトスに手を伸ばしながら目を閉じた。




狂三「作者さん」

作者「どしたの?狂三」

狂三「これは一体どういうことですの!?」

周りELS

作者「エルスに機体が侵食されてんだもんしゃーないじゃん」

狂三「こんな所で死ぬだなんて私は嫌ですわよ!?」

作者「だーいじょうぶ。だーいじょうぶ」

狂三「どこがですの!?」

作者「俺には今、炭酸の加護があるのだ!!」

狂三「それ、貴方は助かっても私は助かりませんわよ!!」


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第七話 六十六番目の悪魔

投稿!

とうとう鉄血のオルフェンズが誇るバルバトス、バエルに並ぶ機体、キマリスが登場!

なお、このキマリス、反応速度に関してはバルバトスと三日月コンビを超える化物です


アイン!頼む!届けさせてくれぇ!

ガエリオ・ボードウィン


「・・・・っ!?」

 

折紙は狼狽に目を見開く。

光が収まったとき、目の前にいた十香の姿を見て、折紙は思わず息を詰らせた。

彼女が身に纏っているモノ。

肩に、胸に、腰────身体の各所を鎧う紫紺の甲冑に、淡い輝きを放つスカート。見るものを圧倒する絶対的な威容に満ちたその姿は、つい先ほどまでの十香とはまるで別のものだった。

────霊装。精霊が精霊たることを示す、絶対的な鎧にして城。

今まで十香達が纏っていた限定的なものではない。完全にして無欠なるその姿に、精霊となった折紙もごくりと息を呑んだ。

最後に『それ』を見たのは、半年以上前になるだろうか。

夜刀神十香が学校に転校してくる前、高台の公園で、折紙が殺されかけた相手。

────剣の精霊〈プリンセス〉が、そこにいた。

 

「その姿・・・・」

 

折紙は表情を険しくしながら呟くように言うと、十香は顔を悠然と上げる。

だが、その顔の頬には涙の跡が何故か残っていた。

そして────

 

「鳶一折紙」

 

十香は静かに折紙の名を呟く。

そして、折紙の目に見据え、手にした天使の切っ先を向けてその唇を開いた。

 

「私は貴様が嫌いだ。今も、昔も、変わらずな。───だが、今の『嫌い』は、昔の『嫌い』と、たぶん、少し、違う。だから────」

 

一拍開けて十香は再びその唇を開く。

 

「殺すつもりでいく。────死ぬなよ、“折紙”」

 

十香は、静かな──しかし底冷えするような声音で言う。

 

「・・・そう」

 

圧倒的な威圧感。強烈なプレッシャー。少しでも気を抜いたのなら、一瞬に首を飛ばされそうな剣気が、折紙の全身を襲う。

だが、もしかしたら折紙はコレを待っていたのかもしれない。

折紙は〈絶滅天使〉を十香へと向ける。

そして十香も自身のやるべきことは一つだった。

 

「〈鏖殺公〉!」

 

天使の名を叫ぶと同時に、十香は地面に踵を叩きつける。

その名を示すのは、十香が手にした剣のみではない。

呼びかけに応えるように地面が隆起し、そこから、十香の身の丈を超える巨大な玉座が姿を現した。

 

「────【最後の剣】・・・・ッ!」

 

そして、呼ぶ。十香の天使〈鏖殺公〉。その真の姿にして、最強の剣の名を。

瞬間、玉座に幾つもの亀裂が入り、バラバラに砕け散る。そしてそれらの破片が十香の持つ剣に絡みついていき───長大な刀身を形作った。

そして十香は、上空に向けて声を上げた。

 

「もう一度だけ聞いておく!私とおまえは────本当にわかり合えないのか!?」

 

「・・・ッ、ふざけないで」

 

折紙が、顔を悲壮に歪めながら返してくる。なぜだろうか。十香にはそれが、泣きじゃくる幼子のように見えて仕方なかった。

 

「私の意志は変わらない。私の使命は変わらない。精霊は全て───私が否定する!」

 

折紙の言葉に、十香は大きく深呼吸をした。

 

「そうか。ならば仕方ない」

 

ゆっくりと、【最後の剣】を振り上げる。その刀身に、漆黒の光が纏わりついていく。

そして背後にいる五人に十香は一瞬たりとも視線を逸らさないまま、口を開く。

 

「────逃げろ。守りながらでは、戦えない」

 

耶俱矢達は、異を唱えなかった。私達も戦うとは言わなかった。十香の邪魔にさえなるかもしれない、と。

 

「十香、すまぬ・・・!」

 

「祈願。・・・ご武運を」

 

「あっ、ちょっと二人とも!」

 

耶俱矢と夕弦は四糸乃と七罪を抱えると、そのまま身体に風を纏わせて、凄まじいスピードで空へと逃げていった。

それを見届けた十香は折紙に言う。

 

「本気で灸を据えてやる。覚悟しろ、駄々っ子め!」

 

「戯れ言を────吐かすなぁぁぁぁぁッ!」

 

折紙は珍しく感情を露わにし、両手を前に掲げる。そして〈絶滅天使〉の尖端に、純白の光が収束し始めた。

そして────

 

「〈鏖殺公〉────ハルヴァンヘレ・・・・っ!?」

 

十香が〈鏖殺公〉を振り下ろそうとした時、凄まじい殺意が十香と折紙を襲った。

それと同時に────

一機の悪魔が彼女達の間に舞い降りる。

薄い紫と白、紺色を中心とした全身装甲。手にされたソレは馬上槍のように巨大でその先端は装甲の破砕に特化したドリルがつけられたドリルランス。

背中に伸びるアームにつけられたニ枚のシールド。そしてそのシールドには一つの星と八本の脚を持つ神馬スレイプニルが描かれていた。

ソレは、黄色のツインアイを輝かせてぶつかり合う直前だった十香達の姿を写す。

 

『────────────ッ!』

 

そしてバルバトス、バエルに並ぶその圧倒的な力の暴力が十香達を襲った。




狂三「作者さん。作者さん。聞いてくださいまし!」

作者「ん?どしたの?トッキー」

狂三「モビルスーツが地中から発掘されましたの!」

作者「あー。確かに幾つかの機体は発掘されて出てきたしな・・・どんな機体?」

狂三「全体的に丸くて、お髭みたいな顔が特徴的でしたわ」

作者「!?」

狂三「どうかいたしました?作者さん?」

作者「狂三。一つ言っておくわ。その機体は見なかった事にして埋め直せ」

狂三「ど、どうしてですの?」

作者「文明が滅ぶから」


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第八話 キマリスヴィダール

投稿!

最近はバトオペでEXーSで連勝している鉄血です。

火力で全てねじ伏せるの楽しいですね!

マクギリスゥ!

ガエリオ・ボードウェン


キマリスが近くにいた折紙目掛けて突撃する。

 

「・・・・・ッ!」

 

折紙は半ば強襲じみたキマリスの突撃を必要最低限の動きで避けた。だが、“ソレは致命的な判断だった“。

キマリスは折紙のその回避行動に合わせるように膝部に装備されたドリルニーを折紙の視界の外側から霊装越しにその脇腹へと叩き込む。

 

キュイイイイイイイイイイイイッ!!

 

ドリルニーの高速回転による耳障りで甲高い音が周囲に鳴り響く。

 

「あああああ、ああああああああああッ!?」

 

霊装を問答無用で貫通させながら、ドリルニーは折紙の脇腹を掻き回し、削り取っていく。

常人ならば痛みで発狂しかねないソレを折紙は耐えながらキマリスを突き飛ばすことによって何とか引き剥がした。

タンパク質の焼ける臭いが辺りに充満する。

先の一撃で一般の人間であれば致命傷になる攻撃も、精霊となった折紙は重症という形で持ち堪えていた。

顔を歪ませ、額や身体に大量の汗を流しながら苦痛の表情でキマリスを睨み付けた。

左手をドリルニーによって削りとられた脇腹を抑えるが、純白の長手袋をドス黒く血で汚すばかりですぐには出血が止まりそうにない。

 

「はああぁぁぁぁぁッ!!」

 

そんな折紙の状態を見て、十香はすぐさま標的をキマリスへと変えた。

コイツはマズイ。

十香の直感と生存本能がそう告げている。

シドーのバルバトスやチョコレートをくれる怪しい男が扱うものと良く似ているが、それよりも危険だと先程の動きで理解出来る。

それにこの殺気。十香や折紙に向けられる殺気の圧力は今まで感じてきたものの中で一番高い。

少しでも隙を晒せば致命傷になりかねない攻撃を叩き込まれる。十香は頭の中で理解しながらもキマリスの猛攻をギリギリの所で防いでいた。

ランスの突き、薙ぎ払い、距離を取ればランスに装備されている銃口から大量の弾丸が発射され距離を詰められる。

十香の〈鏖殺公〉は大剣の部類に入るため、下手な攻撃をすれば一瞬でカウンターを取られるだろう。

まだその機会を見てはいないものの、この実力だとそれくらいは容易いものだろうと理解出来た。

 

「どうすれば────!」

 

どうすればこの怪物を自分や折紙から引き剥がせる?どうすれば────!

焦りが十香の中で渦巻いていく。

そしてその焦りが十香の判断を鈍らせた。

キマリスのランスによる突きを〈鏖殺公〉の腹で受け止め、十香は思いきり弾き飛ばされ、態勢を崩す。

 

「しまった!?」

 

態勢を崩した十香がそう叫ぶがもう遅い。

もう目と鼻の先にキマリスのドリルランスが迫っている。

 

「・・・シドー────ッ!」

 

十香は痛みに耐えようと目をギュッと閉じ、士道の名前を呼ぶ。

そんな十香にキマリスのドリルランスが十香の胸を突き砕こうとしたその時だった。

 

ガキンッ!!

 

金属と金属が勢いよくぶつかり合う音が十香の眼の前で響き渡る。

 

「────────」

 

十香が目を開けると、そこにいたのは巨大なスラスターを吹かせ、両手に握られた双剣を十字に固めながらキマリスのドリルランスを防ぐバエルの姿があった。

そしてそのバエルを扱うマクギリスはキマリスを見て呟く。

 

「ガンダムキマリス・・・確かにキマリスの相手は私以外には荷が重いな」

 

マクギリスは両手に握ったバエル・ソードでキマリスをランスごと力ずくで弾き飛ばした。

そして一瞬だけ十香に視線を向けた後、すぐにキマリスに視線を合わせながら十香に言った。

 

「夜刀神十香。君はここから離れたまえ。キマリスの相手は君では無理だ。すぐに三日月・オーガスと共に〈ラタトスク〉へと撤退しろ」

 

「だが、まだ折紙が!」

 

この場にはまだ重症になった折紙がいる。そんな折紙を放っておくことは出来ない。そう食い付く十香にマクギリスは短く答えた。

 

「彼女ならもうこの場から撤退している。あの重症だ、回復するのにも時間がかかるだろう。キマリスの相手は私がしよう。今のキマリス相手に油断はせんよ」

 

「・・・・・ッ、すまぬ」

 

十香は折紙の事を聞き、眉を歪ませると、マクギリスに背を向けて士道がいる方向へと向かっていった。

そしてマクギリスはキマリスに視線を戻す。

 

「・・・さて、久しぶりの再戦だ。私も少々腕が鈍ってしまってな。彼等が撤退するまで付きあってもらうぞ」

 

『────────!』

 

マクギリスの駆るガンダムバエルとキマリスヴィダールがお互いにぶつかり合う。その戦いに誰も横槍出来るものはいない。

そしてバエルの双剣とキマリスのランスがぶつかり、二人の決闘が始まった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「鳶一折紙が精霊に・・・〈プリンセス〉が此方に向かって来ていると・・・なるほど。彼女はこの場から立ち去りましたか」

 

エレン・メイザースは冷静な口調で先の情報を口にする。

そして士道に視線をうつして唇を開いた。

 

「これ以上貴方と戦うのは無駄ですね。〈プリンセス〉も来ていますし。それに今の装備では貴方の装甲を突破することは難しい。ですからここはお互いに撤退という事でよろしいですか?」

 

そう言うエレンに士道は言う。

 

「やらせると思う?」

 

たとえバルバトスの調子が悪くても問題ない。エレンからは見えないが、右半分の視界が赤く染まっているのも士道からしてみれば多少は問題なかった。

 

「貴方ならそう言うと思ったので一応、それ相応の装備はしてあります。それではまた。五河士道」

 

エレンはそう言って凄まじいスピードで戦闘域から離脱していき、逃げていく。士道はソレを追うことはせず小さく舌打ちをすると、此方に向かってくる十香を見て小さく安堵の息を吐く。

空にはあの日、地球で見た夕日が沈み掛けていた。




作者「・・・・」

狂三「・・・・作者さん」

作者「どしたの?トッキー?」

狂三「なぜ、私達は無人島に漂流しているのですか!?」

作者「しゃーねじゃん。俺だってなんで漂流してんのか分かんねえし。それにガイアガンダムとインパルス漂着してるし」

狂三「それってもしかしてあのシーンですの?」

作者「かもね。あっそうだ、トッキー、ココナッツ飲む?」

狂三「なぜ急にと言いたい所ですわ・・・まあ、喉が乾いていますし、いただきますわよ」

作者「まあ、野生のココナッツだから飲んでもクソマズイけど」

狂三「ゴフッ!?先にソレを言ってくださいまし!?」


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第九話

ちょっと短いですが投稿!


狂三「作者さん」

作者「どしたの?」

狂三「なぜ今日は珍しくあとがきではなく、まえがきに私達がいるんです?」

作者「後半がおまけだからね、仕方ないね。まあ、そんなことよりもガンプラ作ろうぜ!今日はストフリあるから」

狂三「確か、そのストライクフリーダムは翼の部品が多いって聞く・・・?」

作者「某プラバンも買うなって言ったパーフェクトグレードのストフリ」

狂三「・・・徹夜になりそうですわね」



廃墟と化した住宅街から飛び去って、数分。ひとけのない高台に至ったところで、折紙はようやく飛行速度を緩めた。

 

「・・・・・・っ」

 

折紙は苦痛で顔を歪めながらちらと後方を見やるが、どうやら誰も追ってはきていないようである。

そしてゆっくりと近くの壁に背を預けながら、キマリスにやられた脇腹を見る。

グチャグチャにかき回された肉片と大量の出血で白いドレスは赤くなっているが、傷口の出血はもう止まっていた。

そして折紙は自分の纏った純白の衣に視線を落とした。

精霊が持つ、最強の鎧。

そう。折紙が纏っていたそれは紛れもなく霊装であった。

 

「私が────精霊・・・・」

 

折紙は言葉をこぼすと、胃の奥からせり上がってくる嘔吐感を抑えるように奥歯を噛みしめる。

自分が最も嫌い、憎み、忌んでいた存在に、自分がなってしまったという途方もない嫌悪感が襲ってくる。

しかし。今の折紙にはそれよりもずっと気にしなければならないことがあった。

言うまでもない。折紙を精霊にした、あのノイズのような『何か』のことである。

 

「まさか、あれが・・・」

 

人間を精霊にする。その信じがたい能力に、しかし折紙には聞き覚えがあったのだ。

元は人間であった筈の五河琴里は精霊に変えたという『何か』。

五年前のあの日、燃え盛る街の中にいたという、『もう一人の精霊』。

 

「・・・・、あれが、〈ファントム〉・・・?」

 

折紙の前に現れた『何か』が、五年前士道たちの前に現れた〈ファントム〉と同一のものかどうかは確証がない。

だが────もしもあの『何か』が、五年前天宮市南甲町に現れた精霊だとしたならば、それは。

 

「あいつが・・・お父さんと、お母さんを・・・?」

 

────あの正体不明の『何か』が、折紙の両親の仇である、ということに他ならなかった。

 

「今の・・・私なら」

 

───斃すことができる。精霊を。

 

〈ファントム〉だけではない。夜刀神十香を。四糸乃を。五河琴里を。八舞耶俱矢を。八舞夕弦を。誘宵美九を。七罪を。それこそ、あの時崎狂三ですら────

 

「・・・・ぁ────」

 

そこまで考えて。折紙は、ハッと目を開いた。

とある考えが、折紙の脳裏を掠める。

それは、一つの可能性だった。折紙が勝手に想像しただけの絵空事に過ぎない。実現する確証などはない。むしろ、成功する確率は極めて低いだろう。

 

「もし・・・そんなことが、可能だとしたら・・・」

 

時間の逆行。もし、時崎狂三がそれを使うことが出来るのならば────

折紙は、全身に鳥肌が立つのを感じた。さきほどのような嫌悪感とは違う。一条の光を見つけたかのような、興奮にも似た感覚だった。

 

「・・・・・・・」

 

折紙はこくんと唾液を飲み下すと、足を一歩前に出した。

時崎狂三を、捜すために。




「三日月さん!起きてください!学校すよ!」

「・・・・・」

士道は────に起こされる。

「三日月さん。十香さん達がもう待ってるっすよ。早く支度しないと」

────にそう言われ、士道は返事を返す。

「分かってる。ハッシュ、鞄取って」

「もう準備してあります」

士道はそう言った瞬間に、ハッシュの手には士道の鞄が握られていた。

「ありがと」

士道は身体を起こすと、服をタンスから取り出そうとする。

「三日月さん!制服の準備も出来てるっすよ」

ハッシュの手に士道の制服があった。

「・・・・・」

相変わらず準備が早い。
士道はゆっくりと制服を着た後、ハッシュに言った。

「んじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい!三日月さん!」

ニッと笑うハッシュに士道は適当に返事を返す。

「あ、そうだ。───ハッシュ」

士道は何かを思い出したかのように振り向くと、そこにハッシュの姿はなかった。

「・・・・・」

士道は少しの間目を細めると、外から士道を呼ぶ声が聞こえる。

「シドー!まだかー!」

「遅いぞ士道!早くせぬか!」

「同調。早くしてください」

「うん。今行く」

三人の呼ぶ声に士道は返事を返すと、部屋の扉を閉める。
そして誰もいない部屋で────

三日月さんは人気ものっすね。流石三日月さんです

そんな声が誰もいない部屋で消えていった。


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第十話

投稿!

グエルくんのとんでも発言からミオリネちゃんのあの汚部屋よ・・・キャラ濃すぎない?


スレッタ・マーキュリー・・・俺と結婚してくれ

えっ?

グエル・ジェターク

スレッタ・マーキュリー


「大丈夫?十香」

 

「うむ、大したことはないぞ。それよりもシドーの方が心配だ」

 

士道が問うと、全身湿布と包帯だらけになった十香は力強く頷いてみせた。だがその動作で腹部が痛んだのか、眉根を寄せて小さくうなる。

 

「うう・・・む」

 

「やっぱり無理してるじゃん」

 

「それはお前もだろうが」

 

そう言う士道にユージンは眉を顰めながらそう返す。

今士道たちがいるのは、来禅高校の一階に位置する保健室だった。最初は十香と士道の治療のため、士道の家か精霊たちの住むマンションの部屋に向かおうとしたのだが、あの近辺は十香と折紙の戦いによって滅茶苦茶にしてしまったため、仕方なくここまでやってきていたのである。

部屋の中に並んだベッドには十香と士道が、折紙が去ったあとに合流した耶俱矢、夕弦、美九が並んでユージンに傷を見てもらっていた。

皆はそこまでではないのだが、一番酷かった十香と目と鼻から血を流していた士道がこうして寝かされてしまっているのである。

 

「あの・・・大丈夫ですか?」

 

『うはー、こっぴどくやられたねぇー』

 

四糸乃が心配そうな顔を創りながら、汚れた十香の顔を濡れた布巾で優しく拭く。

 

「シドーやチョコレートの男が使うあのメカメカしい奴にやられたのだ。チョコレートの男が来てくれねばやられていたかもしれん」

 

そう言う十香に四糸乃は更に心配そうな顔を作る。

十香がこの様子なら安心である。士道は視線を十香から廊下の方へと視線を向けると、保健室の隅で七罪が膝を抱えながらブツブツの何かを呟いていた。

どうやら十香の傷を塞ぐ際に霊力を半強制的に絞り出した七罪はよほどイヤーな気分にならなければならなかったらしい。

心なしか、そこだけ証明が暗くなっている気がする。

 

「とりあえず処置は終わったぜ。そのうち警報も解除されるだろうし、そしたらお前らは病院に行ってちゃんと見てもらえ」

 

ユージンはそう言って、士道の近くにあった椅子に腰を降ろす。

 

「・・・で?三日月、お前の同級生の鳶一折紙だったか?十香達と同じ精霊になったって聞いたが本当かよ?」

 

「十香がそう言ってたんだし、そうなんじゃない?」

 

興味なさそうに言う士道に、ユージンは士道に聞くのは駄目だと判断する。

そして隣のベッドに横たわる十香に視線を向ける。

 

「ああ、間違いなく私は見た」

 

「ふん、さすがにあれには驚いたな」

 

「首肯。凄まじい威圧感でした。十香が万全の状態でなければ私達もやられていたかもしれません」

 

「・・・そうですねー」

 

美九は小さな声でそう呟くと、全員が無言になる。

 

「アイツは・・・これからどうするつもりなんだろうな」

 

ユージンが独り言のように呟くと、十香が思い出したかのように声を上げてきた。

 

「そういえば・・・あやつは言っていた。精霊を殺すために、精霊の力を使うと。そして最後は・・・自分さえも、殺すと」

 

「「「「「「・・・・・・・」」」」」」

 

その言葉に十香と士道を覗く全員が押し黙る。

 

「三日月、お前はどうする?」

 

ユージンは士道に問いを投げると、士道は顔をユージン達に向けて口を開いた。

 

「俺達の敵のなんだろ。なら、俺は潰すだけだよ」

 

変わらない反応に、ユージンは頭に手を置く。

 

「お前な・・・」

 

ストッパーがいなければ障害=排除の考えしかない士道にユージンは頭を悩ませるしかない。

ユージンは士道に言おうとした所であることに気づいた。

 

「あ」

 

声を発しながら、十香の方を見やる。

 

「む?なんだ?」

 

ユージンの視線に戸惑う十香。だが、ユージンはそれに構う事なく言う。

 

「確かお前、霊装ってやつ他のやつより豪華になっていたよな?それに耶俱矢も言ってたが、完全に戻ったって」

 

「う、うむ」

 

十香が戸惑いながらも、頷く。

 

「そしたらお前、再封印ってやつ三日月としねえと、あいつらがまた来るぞ」

 

琴里から説明された再封印について簡単に説明するユージンに、聞いていた十香達が、顔をかぁっと赤くする。

 

「じゃあ、琴里の時と同じか」

 

士道はベッドから身体を起こしながら、そう呟く。十香は士道の方へ目を向けた。

 

「む・・・ということは、その、なんだ、あれか、ここで・・・するのか」

 

「あー・・・まあ、そういうことになるな」

 

「そ、そうか」

 

目を泳がせる十香に、周りからの視線が突き刺さる。

 

「し、士道さん・・・」

 

『うはー、こんなところでだなんて、ダイターンだねー』

 

「ほう・・・士道は皆が見ているところで勝手する性癖があったか」

 

「辟易。よく見せつけます」

 

「えー、十香さんばっかりずるいですー!三日月さん、私も!私もーっ!」

 

「・・・み、見せつけんじゃないわよこのリア充がッ!」

 

口々に言って十香達の所へ流れ込んでくる。

 

「・・・やっぱこうなったか」

 

ユージンは皆にもみくちゃにされる十香達に溜息をつきながら、その様子を見る。

 

「な、何なのだ!一体!」

 

十香の叫びが学校の保健室に響き渡った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

高層ビルの屋上で、暗闇の中に瞬く幾つもの電気の星を眺めながら、時崎狂三はふっと目を細めた。

 

「────」

 

と、狂三は小さく息を吐く。

 

「・・・・あら、あら」

 

誰もいなかった筈のビルの屋上に、何者かの気配が現れる。

狂三はくるりと後方を向いた。

 

「───これはまた、変わったお客さんですこと」

 

言って来訪者の姿を見やる。

 

「お久しぶりですわね、折紙さん」

 

そこには、純白の衣を身に纏った折紙の姿があった。




十香「なあ、作者よ」

作者「およ?十香ちゃんが来るとは珍し。どしたの?」

十香「いや、どうしたらシドーが笑うのか聞いてみたくてな・・少々聞きにきた」

作者「なら、オルガって人を連れてきたら?男性でガンダムでてくるオルガって人は分かりやすいし」

十香「オルガと言う人だな?感謝する」

作者「だけどオルガ・サブナックじゃない・・・って行っちゃった・・・」


オルガ?「ああ!?誰だテメェ!何しやがる!」

十香「貴様がオルガなのだろう!貴様を連れて行けばシドーが笑うと作者が言っていたのでな!来てもらうぞ!」

オルガ・サブナック「俺はそっちのオルガじゃねえ!俺はオルガ・サブナックだ!」


なお、狂三は今回お休みです


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第十一話

投稿!

ストフリの羽作るの面倒くせぇ・・・
なにあの量のパーツ・・・

それで言い訳つくだろ!帰っちまえ!

綺麗なリディ


「それにしても、よくここがわかりましたわね」

 

「・・・・・」

 

狂三が言うと、折紙はおもむろに右手を前に動かした。────ぐったりとした『狂三』の首を掴んだ、右手を。

 

「ぅ・・・・ぁ・・・・」

 

狂三と同じ顔をした少女が、苦しげにうめき声を上げる。見やると、その身に纏った霊装のあちこちに痛ましい傷が見て取れた。どうやらここに至るまでに手酷くやられたようである。

 

「────あなた本人を見つけるのが困難でも、街中に何人も紛れているあなたの分身体を捕まえるのは、今の私にはそう難しいことではない」

 

言って、折紙は分身体の首を放す。

 

「ぐ・・・っ、けほっ・・・けほ・・・っ」

 

分身体は屋上に突っ伏してから数度咳き込み、恨めしそうに折紙を見上げながら、逃げるように影の中に消えていった。

 

「あらあら、随分と手荒いですわね」

 

「殺さなかっただけ加減はしている」

 

「ふぅん・・・そうですの」

 

狂三は唇を指で撫でながら眉をひそめる。

 

「それで、わたくしに一体何の用でして?まさか、精霊になればわたくしに勝てるとでも思いですの?もし分身体の力を物差しにしておられるのだとしたら、痛い目を見ますわよ」

 

言って、挑発するように指をクイと曲げてみせる。

だがそれでも、折紙は仕掛けてこなかった。ただ静かに狂三の目を見据えたまま、言葉を発する。

 

「・・・、私は、あなたと戦いに来たのではない」

 

その言葉は信じてもよいだろう。もしも折紙が狂三に敵対する意志を持っているのなら、分身体を逃がさず、殺していたはずだ。

しかし、狂三は挑発を込めて口元を歪めた。

 

「あら、精霊嫌いの折紙さんとは思えないお言葉ですわね。何人もの人間を殺している精霊と対峙しておられるというのに、討たなくてもよろしいんですの?」

 

「・・・・・」

 

そこで初めて、折紙の眉がぴくりと動く。だがそれでも、折紙は狂三を攻撃してこようとはしなかった。

いよいよ折紙の狙いがわからない。狂三は大仰に肩をすくめてみせる。

 

「なら、一体何ですの?お茶のお誘いというわけでもありませんでしょう?」

 

狂三が言うと、折紙は真剣な表情のまま首を前に倒した。

 

「一つ、質問に答えて欲しい」

 

「質問・・・ですの。うふふ、答えられるかどうかは内容によりますわねぇ」

 

おどけるように言う。折紙はそれを了承の印と受け取ったのだろう。真っ直ぐ狂三を見据えたまま、言葉を続けた。

 

「あなたの天使〈刻々帝〉は、時間を操る天使。そして十二ある文字盤の一つ一つに、異なる能力を有している」

 

「・・・・・」

 

狂三は無言のままあごを撫でる。

折紙の言うことは概ね当たっている。・・・が、別段警戒するようなことでもない。

しかし。次なる折紙の言葉に、狂三は思わず眉根を寄せることになってしまった。

なぜなら────

 

「────その十二のうちのいずれかに、撃った対象を過去に送る弾は存在する?」

 

狂三が一度も見せたことのない最後の弾───【十二の弾】の能力を、折紙が正確に言い当ててみせたからである。

 

「・・・もしあるとしたら、どうだといいますの?」

 

狂三は怪訝そうな顔を作りながら問い返す。その回答を肯定と受け取ったのだろう、折紙が続けてくる。

 

「────時崎狂三。あなたの力を借りたい」

 

「・・・・は?」

 

折紙から発せられた意外な言葉に、狂三は思わず目を丸くした。

 

「今、何と仰いまして?」

 

「あなたの力を借りたい、と言った。───あなたの、天使の力を」

 

「・・・・・あら、あら」

 

狂三はあごを名でながら、思惑を探るように折紙に視線を這わせる。

 

「わたくしに、あなたのために【十二の弾】を使えと、そう仰りたいんですの?」

 

「そう」

 

「一応・・・・・聞くだけ聞いておきますけれど。過去に戻って何をするおつもりですの?まさか、幼少期の無邪気な士道さんが見てみたい・・・・・だなんて理由ではないでしょう?」

 

別に心変わりをしたわけではない。だが、精霊の力を手に入れた折紙が【十二の弾】を使って何をしようとしているのか────それには、非常に興味があった。

 

「・・・・・」

 

折紙は数瞬の思案のあと、こくりとうなずき、唇を動かした。

 

「あなたの弾で、私を撃ってほしい。────私を、“五年前の八月三日“に、飛ばして欲しい」

 

「・・・五年前?」

 

狂三は怪訝そうに眉根を寄せた。

 

「その時代で一体、何をしようというんですの?」

 

問うと、折紙は一瞬視線を険しくしてから続けた。

 

「“私は、五年前に戻って、私の両親を殺した精霊を、殺す。お父さんとお母さんが死んだという出来事を、なかったことにする。────私はこの力で、歴史を変える”」

 

折紙のその目は決意を示すように強い意志を含んでいた。




狂三「・・・終わりませんわ」

作者「翼のパーツが多すぎるのよ。目が疲れる」

狂三「良くこんなもの作ろうと思いましたわね」

作者「完成させたらカッコイイし、達成度はあるでしょ」

狂三「まあ、そうですわね」

作者「ああ、翼は後づけな。重さで付け根が折れるから」

狂三「え?もうつけちゃいましたわよ?」

作者「え?」

狂三「え?」

パキッ←付け根が折れる音


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第十二話  

投稿!!

狂三「あら?作者さん。何をしていますの?」

作者「んー?デアラのスマホゲー出たって言うじゃん?だから入れてみてプレイ中」

狂三「ああ、あの。作者さんはどちらかと言えばこういうゲームをしないと思ったのですけれど?」

作者「まーねー。けど、こうやって原作を書いている以上、やらないとね。それにキャラももっと知って、小説も良くしていきたいし」

狂三「生真面目ですわね」

作者「ちなみに一番キャラがズレてそうなのが、真那なのよ。うちの真那ちゃん、若干ブラコン+狂犬化しちゃってるから・・・」

真那「誰がブラコンですか!?誰が!!」

作者「ちなみに名前は鉄血で登録してますのでやってる方はよろしく!!」

狂三「ここで宣伝します!?」


歴史を変える。それを聞いて、狂三は小さく息を詰らせた。

 

「・・・、そう、ですの」

 

別に折紙の決意に気圧されたわけではない。ただ───その目的に一瞬だけ、己の姿が重なって見えてしまったのである。

 

「わたくしが断ったなら、いかがするおつもりですの?」

 

「あなたが了承してくれるよう、手を尽くすだけ」

 

「・・・ふうん、言ってくださいますわね」

 

手を尽くす、という言葉の中に、強硬手段の類が含まれていることは容易に知れた。その気になれば、無理矢理にでも狂三に【十二の弾】を撃たせようという意志が感じ取れる。

狂三を侮っているのか、それとも突然手に入れた精霊の力に舞い上がっているのか・・・・。

頭のいい折紙が、後先考えずに進んでしまう理由。本当に可能かどうかすら確認の取れていない可能性に縋るため、敵の前に立つ理由。

取り返しようのない過去を、取り返す可能性。

過ぎ去ってしまった出来事を、やり直せる可能性。

その甘い誘惑は、いとも容易く人の心に入り込み、麻薬のように浸食を広げていく。たとえ本人がそれを自覚していようと構いなく、焦がれるようにそれを求めさせてしまう。

───狂三にはそれが、痛いほど理解できてしまった。

 

「・・・まあ、いいですわ。わたくしとしても、【十二の弾】を一度も撃たないまま『本番』を迎えるのは不安でしたし。あなたを実験台にさせていただくと致しますわ」

 

「・・・!本当?」

 

折紙が目を見開き、言ってくる。その表情は、いつもの折紙からは考えられないくらい純粋で───それこそ、無邪気な幼子のようにすら見えた。

 

「・・・なんだか、調子が狂いますわね」

 

狂三は頬をかくと、気を取り直すように咳払いをした。

 

「とはいえ、【十二の弾】の使用には膨大な霊力が必要になりましてよ。もちろん、わたくしの霊力を使う気は毛頭ありませんわ。あなたにそれが支払えまして?」

 

「構わない。どれくらい必要なの」

 

折紙が真摯な目で問うてくる。狂三は人差し指を立てると、思案するように唇を触れさせた。

 

「遡行する日時がどれだけ離れているかによって変化しますわね。それが過去であればあるほど、消費する霊力は指数関数的に増えていきますわ。それこそ───三十年前まで遡ろうとすれば、精霊一人の命を使い潰してしまいかねないくらいに」

 

 

「・・・三十年前?」

 

折紙が怪訝そうな顔を作ってくる。狂三は適当に手を振って誤魔化すと、再度折紙の目を見た。

 

「あとは───そうですわね。遡行先の時間にどれくらいの長さ留まっているかにもよっても使用霊力の量は変動致しますけれど・・・こればかりは、わたくしも試したことがないので感覚が掴めておりませんの。もちろん、過去に戻った側から現在の時間に戻されるなどということはないと思いますけれど、細かな時間指定までは対応しかねますわ」

 

「構わない───すぐに始末を付ければ問題ない」

 

狂三が言うと、折紙は即座にそう答えてきた。

 

「余程の自信がありますのね。まあいいですわ」

 

狂三はその場でくるりと身を翻すと、空いている左手でスカートを摘み、大仰にお辞儀をしてみせた。

 

「ならさっそく始めさせていただきますわ。───さあ、おいでなさい、〈刻 々 帝〉」

 

するとその声に合わせるようにして、狂三の足元に蟠った影から、巨大な時計の文字盤が出現した。

〈刻々帝〉。狂三の持つ時間を操る天使。

狂三は既に手にしていた歩兵銃の銃口を上方に掲げながら、タン、タン、とその場でステップを踏むように足を鳴らした。

するとその瞬間、狂三の影がその面積を広げ、ビルの屋上を這うようにして折紙の足元に蟠った。

 

「───これは」

 

すぐに異常に気づいたのだろう。折紙が微かに眉根を寄せる。

 

「うふふ、覚えておられますかしら」

 

狂三は唇の端を上げて笑った。折紙も以前、学校でこの影を踏んだことがあるはずである。

 

「もしやめるのなら、今が最後のチャンスですわよ。わたくしは不誠実ですわ。もしかしたら、霊力を奪うだけ奪って、約束を反故にするかもしれませんわよ?」

 

言って、嫌らしく笑ってみせる。

だが折紙は、まっすぐ狂三を見据えたまま視線を外そうとはしなかった。

 

「・・・それでも。私は、あなたに縋るしかない」

 

「そうですの」

 

あの計算高い折紙とは思えない言葉である。狂三は呆れるように息を吐くと、折紙から十分な霊力を確保するのを待ってから、銃を握っている右手に力を込めた。

今自分が言ったように、折紙の霊力を吸い尽くしてしまう手もあった。

そうでなくとも、【十二の弾】を撃つのに要する以上の霊力を余分に吸収してしまっても良いはずだった。

だが、狂三はそれをしなかった。理由は・・・自分でもよくわからない。

もしかしたら、見たかったのかもしれない。

自分以外に、“その”方法に辿り着いた───辿り着いてしまった少女が、どのような道を切り拓くのかを。

 

───あるいは、“どのような末路“を辿るのかを。

 

「〈刻々帝〉───【十二の弾】!!!」  

 

そして、叫ぶ。その存在を、能力を“識り”ながら、一度も撃ったことのない最後の弾の名を。

〈刻々帝〉が今までに聞いたことのないような軋みを上げ、黒い輝きを放ち始める。

やがてそれらが一点───文字盤のⅫに収束していったかと思うと、そこから濃密な影が迸り、狂三の構えた銃の銃口に吸い込まれていった。

狂三はニッと唇を歪めると、その銃口を折紙に向け───引き金を引いた。

 

「さあ、行ってらっしゃいまし、折紙さん。───あなたの悲願を叶えるために」

 

銃口から放たれた漆黒の弾丸は、空間に黒い軌跡を残しながら一直線に飛んでいき───

 

「・・・・・ッ!」

 

折紙の胸元に触れた瞬間、その身体をを弾の回転に巻き込むように抉った。

そして折紙の身体は弾道に引っ張られるように歪曲し、その空間から消えていった。

 

「────見せてくださいまし。世界を書き換えようという愚かで無謀な行いを、神がどこまで許すのか」

 

狂三は独り言のようち呟くと、身を翻してその場から消えていった。




作者「久しぶりにペッパーライス作ってみたけど、結構うめぇ」

狂三「結構美味しいですわね。というかコレは何のお肉ですの?食べたことのない味なんですが」

真那「鶏肉ですかね?いやでも、違うお肉も入っていやがりますし・・・」

作者「ミシシッピアカミミガメとウシガエルの肉」

狂三「・・・・ゴフッ!?」

真那「・・・・ブッ!?」

作者「うわぁ!?吹くなよ!?」

狂三「なんてもの入れていますの!?」

真那「まさか自分で捌いたとか言わねーですよね!?」

作者「伊達にイノシシをリアルで一頭捌いたことがあるんだ。別に気にすることないだろ!?」

狂三「なんでそんなこと出来るんですの!?」

作者「爺さんに扱かれた」

真那「どんな家ですか!?」


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第十三話  真実

投稿!!

この投稿で三話分くらい使ったぞおい・・・
丁度切れるところがなかった・・・


「う・・・・」

 

折紙は小さく眉をひそめた。狂三の撃った弾が胸に触れた瞬間、自分の存在がねじ切られるかのような感覚が襲ってきたかと思うと、一瞬意識が寸断されたのである。

痛みはない。だかその代わり、足を掴んで身体を滅茶苦茶に振り回されたあとのような酩酊感と嘔吐感が折紙の胸元に蟠っていた。

 

「・・・・・っ」

 

その一瞬あと、折紙は思わず息を詰まらせた。

意識がはっきりしていくのと同時、今度は強烈な重力と空を飛ぶような浮遊感が襲ってきた。

そう。折紙は今、空中から真っ逆さまに落下していたのである。

 

「ふッ───」

 

折紙は身体に軽く力を入れると、空中に静止し、姿勢を正した。

方法としては、CRーユニットを用いていた時とさほど変わらない。

折紙は未だに頭に残った鈍い痛みに眉根を寄せながら、空中で視線を巡らせる。

 

「ここは・・・・」

 

奇妙な感覚。先程まで真っ暗だった空が、場面を巻き戻したかのように明るくなっている。正確な時間は定かではないが、夕暮れ前といったところだろう。日は傾きかけ、建物の影が伸び始める時間帯だ。

そこで、折紙は自分の真下に視線をやった。するとそこに、高層建築物の下地となるであろう基礎部分を中心として、様々な重機が並んでいることがわかる。

───そういえば、先ほどまで折紙と狂三が会話していたビルは、五年前にはまだ完成していなかった。

それを認識して、改めて顔を上げる。

 

「───五年前の、天宮市」

 

その言葉を口にすると、折紙は全身に鳥肌が立つのを感じた。興奮で動悸が激しくなり、しばらく声を発することができなくなる。

折紙は今───戻ってきたのだ。

五年前の八月三日。

折紙の両親が、精霊によって殺されたあの日に。

求め、欲して、焦がれ───それでも手の届かなかったあの日に、戻ってきたのだ。

 

「───ああ」

 

折紙は誰も聞くことのないであろう感嘆を漏らし、息を細く小さく吐いた。

そして拳を握りしめながら、決意を新たにするように視線を鋭くする。

だがここからだ。重要なのはここからである。───折紙は頭の中に、あのとき目にした光景を思い起こした。

燃え盛る街。空から降り注いだ光によって灼かれる両親。───空に浮遊した、憎き精霊のシルエット。

父と母が殺される前に、あの精霊を殺す。両親が死んだという事実そのものを、なかったことにする。

今まで『そう』であった世界を作り変える。

敵は精霊であり、世界。しかし折紙の心の中に、怯みや躊躇いなどは欠片もない。

あるのはただ、燃え盛る復讐心と燦然と光を放つ、希望。

折紙は滲みかけた涙を拭うように親指で目尻を擦ると、身体の向きを後方へと向け、声を上げた。

 

「〈絶滅天使〉───【天翼】」

 

同時、折紙の周囲の空間にキラキラと光の粒子が輝いたかと思うと、それが折紙の背に収束し、翼の形を取った〈絶滅天使〉が顕現した。

折紙は【天翼】を羽ばたかせるように動かすと、高速で空を滑るように飛んでいった。

無論、向かう進路は───南。

五年前まで折紙が暮らしていた、天宮市南甲町の方向である。

折紙は長年胸に抱き続けた殺意を研ぎ澄ましながら、目的の住宅街へと急ぐ。

すると程なくして、耳にけたたましい音が響いてくる。

一瞬空間震警報かと思ったが───違う。これは火災警報。そして、消防車や救急車のサイレンの音である。

 

「・・・・・ッ」

 

それと同時、折紙は目の前が陽炎のように揺らめくのを感じた。

前方にある街が───燃えている。

折紙の記憶にもある。五年前の、南甲町大火災。

それがまさに、今目の前で起こっていた。

 

「・・・っ、なら───」

 

この大火災は、五河琴里───炎の精霊〈イフリート〉が起こしたものである。精霊の力を制御しきれず、その膨大な霊力の余波で辺りを火の海に変えてしまったものだ。

ならば今、そこにいるはずなのである。

───五河琴里を精霊にした、“もう一人の精霊“が。

 

「ふッ───」

 

折紙はそれを認識すると同時、高度を下げて街の上を巡るように飛んだ。

火の粉が散り、黒煙が舞い、視界は非常に悪い。だが、折紙は構わず視線を街に巡らせる。

そして───発見する。

小学生くらいの少年と、淡く輝く霊装を纏った幼い少女の姿を。

 

「・・・、士道・・・!」

 

折紙は思わず声を発していた。

そう。それは間違いなく、折紙の恋人・五河士道と、その妹───五河琴里の五年前の姿だったのである。

と、いうことは───

 

「─────────」

 

折紙は、ごくりと息を呑みながら、視線を士道たちから少しだけずらした。

地面にへたり込む士道たちの、すぐ隣。

そこに。

『それ』は、いた。

年齢も、性別も、背格好も、何一つわからない、しかし確かにそこにいる『何か』。

存在にノイズがかかったような精霊がそこに立っていた。

 

「───見つ、けた」

 

折紙は、呟くように声を発した。

それと同時に体温がすうっと下がっていくのを感じる。

 

「見つけた。見つけた。見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた。───ついに、見つけた」

 

己の全てが『それ』を殺すために最適化されていくような感覚。今の折紙は一個の殺意であり、刃であった。

 

「───〈絶滅天使〉」

 

右手を掲げ、その名を呼ぶ。

折紙の背中に顕現していた翼が、その先端を下方に向けたその時だった。

士道と琴里───そして『それ』の前に“巨大なナニカ”が現れる。

 

「──────」

 

直前に現れた“ソレ”に、折紙は攻撃をしようとしていた手を止め、“ソレ”を見た。

全長は三十メートルは超えているだろうか?白い装甲とオレンジ色の装甲で覆われた巨大な鳥のようなナニカ。

周りには小型の戦車よりも一回り大型の黒い“ナニカ“が多数、彼等を囲むように集まってきていた。

折紙はそのナニカたちに対し、底知れない気味の悪さを覚えた。

何一つ精霊と同じ所は何一つない筈なのに、これはこの世に居てはいけないものだと。

だが、そんな折紙に気づいていない様子で“ソレ”は鎌首を士道に向けて下げたかと思うと、士道の影に入り込むように消えていった。

 

「あれは───」

 

一体なんだったのだろうか、と思った瞬間、折紙はハッと我に返える。

そうだ。ここで呆然としているわけにはいかない。

折紙は下方に向けた〈絶滅天使〉の先端を〈ファントム〉へと向ける。

次の瞬間、先端から光線が迸り、地上に立つ〈ファントム〉を襲う。

が、光が着弾する一瞬前、〈ファントム〉が蠢動したかと思うと、その場から〈ファントム〉の姿が消えていた。

 

「・・・・・・」

 

しかし、折紙は焦らなかった。───ゆっくりと、前方に顔を上げる。

すると空中───折紙と同じ高さに、先ほどまで地上に〈ファントム〉が現れていることがわかった。あの一瞬で折紙の攻撃を避け、ここまで飛んできたらしい。

 

【───あれ?】

 

〈ファントム〉が、聞き取りづらい声で話かけてくる。

 

【いきなり攻撃してくるなんて一体何者かと思ったら・・・君は、精霊なの?】

 

その身体を覆うノイズのため、細かな表情を見取ることはできなかったが、驚いているような仕草を取っていることはなんとなくしれた。

 

【しかもその天使──〈メタトロン〉・・・?どういうことかな?私はまだ、その霊結晶を持っているのだけれど】

 

その言葉から、やはり今目の前にいる精霊と、折紙に霊力を与えた『何か』が同一の存在であるらしいことが推測できた。

しかし、今の折紙にはもう、仇から力を得てしまったという嫌悪感はなかった。

むしろ己の与えた力で討たれることになる〈ファントム〉の失策に、ある種の優越にさえ近い高揚を覚えていた。

 

【ねえ、君は、誰?一体どこから来たの?なぜ私を攻撃するの?】

 

「──────ああああああッ!」

 

折紙は答えず、叫びを上げると、右手を前方に向けた。

するとそれに合わせるように、〈絶滅天使〉がその先端を向け、〈ファントム〉に向かって光線を放った。

その攻撃を〈ファントム〉は先ほどのように身体を蠢動させ、その攻撃を躱す。

 

【・・・間違いなく〈メタトロン〉───か。だとすると考えられるのは・・・〈刻々帝〉の力で時間遡行でもしたのかな?もしそうだとしたら・・・少し意外だな。まさかあの子が誰かに力を貸すなんて】

 

〈ファントム〉が、独り言のように呟く。だが、今の折紙にそんなことは関係なかった。

 

「【光剣】・・・・っ!」

 

折紙は両手を大きく広げる。するとそれに合わせるように翼状になっていた〈絶滅天使〉が全てバラバラになって空中展開し、その先端を〈ファントム〉に向ける。

 

「───はぁぁぁぁッ!」

 

【やれやれ・・・あの化物相手にして疲れているのに・・・どうやら未来の私は随分と君に恨みを買ってしまったみたいだね】

 

どれくらい追いかけっこが続いた頃だろうか、空を縦横無尽に飛び回って光線を避けながら、〈ファントム〉がうんざりとした声を発してきた。

 

【・・・でも、悪いけれど、ここで君に殺されてあげるわけにはいかないんだ。───わたしにも、“叶えなければならない願い”があるからね】

 

「・・・・ッ」

 

その言葉に、折紙は眉根を寄せた。

 

「願い───?」

 

折紙の言葉に呼応するように、〈絶滅天使〉が隼のように宙を舞っていく。

 

「私のお父さんを・・・私のお母さんを殺しておいて、願い・・・?ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな・・・ッ!あなたには願う間さえ与えない。祈る時間さえ与えない。何も成さないまま死んでいけ。何も残さないまま消えていけ。その空虚な心に、後悔だけを抱いてこの世から失せろ───ッ!」

 

しかし。折紙の言葉に〈ファントム〉は不思議そうに首を傾げた。

 

【君のお父さんと、お母さん・・・?何を言っているの?覚えがないよ。悪いけど、人違いじゃあないかな?】

 

「貴───様ァァァァァッ!」

 

絶叫とともに、空に散った〈絶滅天使〉全てから一斉に光線を放ち、〈ファントム〉を攻撃する。

だが〈ファントム〉はそれを避けると、折紙に顔を見せぬまま、静かに声を発してくる。

 

【まさか、こんなにも見事に〈メタトロン〉を使いこなすなんて・・・しかし困ったな。できればこれ以上厄介事は避けたいのだけれど。これほどの力を振るえる少女に霊結晶を渡さないというのは考えられないし・・・自分に弓を引くことを分かっていながら、反逆の精霊を作ってしまうことになる・・・か】

 

〈ファントム〉はそう呟きながらも、言葉を続ける。

 

【・・・まあ、でもそれも仕方ないか。“アレ“がいる以上、私もどうしようもないし、力ある精霊の誕生は歓迎すべきことだしね。受け入れるとするよ。全ては───私の願いのために】

 

そう言うと、〈ファントム〉は折紙に顔を見せぬまま、小さく手を振った。

 

【───じゃあね。私はこれでおいとますることにするよ。今日の目的はとりあえず達したしね。これ以上ここにいても、いいことはなさそうだ】

 

瞬間、〈ファントム〉の姿がゆっくりと虚空に掻き消えていく。

 

「・・・・ッ!待て!」

 

折紙は〈絶滅天使〉を再びバラバラに分解すると、〈ファントム〉の背を射貫くように幾条もの光線を放つ。

が───遅い。

〈絶滅天使〉の光線は、〈ファントム〉の影を通り抜け、空の彼方へと伸びていった。

 

「く───」

 

折紙は苦々しげに歯噛みする。

両親の仇を目の前で逃してしまった悔しさが、全身を駆け巡った。

 

「・・・・・」

 

否。折紙は自分の考えを否定するように首を振った。

確かに折紙は〈ファントム〉を逃してしまった。だが、最も大きな目的を達することはできたのである。

〈ファントム〉が消えたこと。それはつまり───折紙の両親を殺す精霊がいなくなったということだ。

 

「───あ、あ」

 

折紙は天を仰ぎながら声を発した。

折紙の両親は、殺されずに済んだ。

これで───変わる。

世界は、作り替えられる。

狂三の弾のタイムリミットが過ぎ、現代に戻ったらなら、そこには優しい父と母の笑顔が待っている筈だった。

 

「お父さん・・・お母さん・・・」

 

目尻に涙が滲む。

折紙は、やりとげたのだ。

この手で、両親を取り戻したのだ。

決して覆しようのないはずだった事実を消し去ったのだ。

───と。

 

「・・・・・・?」

 

そこで、折紙はあることに気づいた。

 

「ここは・・・・」

 

言いながら、眼下に広がる景色を見下ろす。

そこは無論、炎に包まれた住宅街の一角だった。しかし、よくよく見てくると、その道の形に、見覚えがあったのである。

そう。そこは、“かつて折紙が住んでいた場所”だった。

 

「──────え?」

 

そして。折紙は小さく声を発した。

空を舞う折紙の眼下。そこに、一人の少女の姿があった。

その姿を見て、折紙は一瞬身を縛られるような感覚に襲われた。

肩口をくすぐるくらいの髪をピンで留めた、小学生高学年くらいの女の子。

 

「あれ、は──────」

 

折紙は震える唇から声を零す。

間違いない。間違えようがない。それは。

───五年前の、折紙の姿だった。

 

「え・・・・、ぁ───」

 

心臓が跳ねる。

無意識のうちに折紙の視線が動く。

地面にへたり込んだ、小学生の折紙が見ている、先を。

 

「ぁ・・・・、ぁ・・・・」 

 

五年前の折紙の前方。そこには、周囲よりも一際大きな破壊痕が見て取れた。

滅茶苦茶に破壊されたアスファルトの道。如何に凄まじい火災であろうと、炎などではそうはなるまい。

まるで───“上空から光線でも降り注いだかのような“痕だった。

そして、その破壊痕の中央には。

恐らく数瞬前まで人間の形をしていたであろう肉片と骨片が、無数に散らばっていた。

ちょうど───折紙が〈ファントム〉に放った光線の真下辺りに。

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・・」

 

視界が揺らぐ。指先が震える。

───かつて見た光景が、鮮明にフラッシュバックする。

目を閉じれば今でも思い出せる、悪夢のような光景。

・・・そう、折紙はそのとき空を見上げた。

そして───見た。

空の中。そこに、一つのシルエットがあるのを。

精霊を知らなかった五年前の折紙はその姿をこう表した。

───天使、と。

 

「──────」

 

五年前の折紙が顔を上げ、空の折紙の方を見てくる。

折紙の華奢な身体を覆った、淡い光を放つ純白の霊装。

それを覆うように宙を舞う、淡い光を放つ無数の羽。

───その姿は、きっと天使に見えたことだろう。

 

「あ、あ、あ、ああああああああああああ」

 

全身が震える。

折紙は頭を抱えて身体を捩った。

自分が摩滅しら消えていくかのような感覚。

いや、あるいはそれは願望に近いものか。

今すぐにでも己を消し去ってしまいたい嫌悪感が、全身を満たす。自分の存在を許すことができない絶望が、心の間隙を埋め尽くす。

そこで、地上の小さな折紙が、表情に絶望と憤怒を滲ませ、口を開いてきた。

 

 

───お、まえが・・・お父さん、お母さんを。

 

 

───許、さない・・・殺す・・・・殺してやる・・・ッ!私が───必ず・・・・っ!

 

 

それは。

折紙が幾度も脳内で繰り返した呪詛に他ならなかった。

そして、全てを理解する。 

五年前。ここ天宮市南甲町の火災現場には、士道たちの言うとおり、確かに複数の精霊が存在していた。

だが・・・精霊は、“二人ではなかった“。

火災を引き起こした〈イフリート〉五河琴里。

その琴里を精霊にした〈ファントム〉。

そして───その〈ファントム〉を討ちに未来から舞い戻った・・・折紙。

三人の精霊が、存在していたのだ。

折紙は、掠れた声を発した。

 

「わ、たしが・・・お父さんと、お母さん、を───?」

 

〈ファントム〉は、折紙の両親を殺してなどいなかった。

折紙の両親を殺した直接の一撃。

それは、“折紙自身が放った“、〈絶滅天使〉の光だった。

 

「あ、あ、あ、」

 

それを認識した瞬間。

折紙は、視界に広がる景色の光景の色が、反転するかのような錯覚を覚えた。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

世界が、裏返る感覚。

折紙は、意識が途絶える寸前、自分の心が真っ黒く塗りつぶされていくのを感じた。




作者「鉄血のオルフェンズウルズハント、とうとう事前登録でたねー!新しいモビルアーマーが二機も出てきそうだし」

狂三「一機は頭部だけでしたが、見た目はハシュマルに近かったですわね。もう一機は・・・蟹?よくわかりませんわ」

作者「新しいガンダムフレームも出てくるといいなー。ちなみにトッキー。ウルズハントの意味知ってる?」

狂三「そう言えば知りませんわね」

作者「ウルズはラテン語で運命、宿命、あるいは死、ハントは狩りだから、直訳すると『運命狩り』か『死を狩るもの』になるのよねー」

狂三「ではウルズハントはモビルアーマーを狩り取る物語でいいですの?」

作者「もしくは─────主人公を狩り取る物語だったりしてね」


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第十四話

狂三「とうとう二百話ですわよ・・・って作者さん?」

作者「エランくん・・・・エリクト・・・」

戦車「狂三?作者なら今、精神的にヤラれてるから」

狂三「どういうことですの?」

戦車「あれ」

エランくんハッピバースデーのシーン

狂三「」


「むう・・・シドー、お腹が空いたのだが・・・」

 

と、綺麗に包帯が巻き直された十香が言ってくる。

それに対し、士道は言った。

 

「じゃあこれ食べる?」

 

「・・・!いいのか!」

 

上着のポケットから出したバーベキュー味のエナジーバーを十香に渡すと、十香は食べてもいいのかと聞いてくる。

 

「いいよ。まだ持ってるし」

 

そんなやり取りを横で見ていた他の精霊たちが、「ぶー」と不満そうに声をあげてきた。

 

「こら士道。我を差し置いて眷属に禁断の果実を与えるとはどういう了見だ」

 

「不満。士道は夕弦と耶俱矢の共有財産であるという認識が足りてません」

 

「えー!十香さんばっかりずるっこですー」

 

皆、病院食では不満だったらしい。

大部屋が丸ごと空いていたので、皆同じ部屋に入ることができていたのだが、四糸乃、七罪は大した怪我はしていなかったのだが、今は帰る家がなくなってしまったため、避難施設の空きができるまで特別にここに留まらせてもらっている。

 

「・・・・・」

 

士道は不満げにポケットを漁るが、ポケットの中には何もなかった。

士道は財布があるか確認すると、そのまま立ち上がる。

 

「なかったから買ってくる。四糸乃と七罪はいる?」

 

言って部屋の奥を見やると、壁際に置かれたパイプ椅子には、四糸乃と七罪が座りながら眠っていた。

 

「・・・・・・」

 

士道はそんな二人に上着を脱いで、二人に掛けてやった。今日は色々あったし、無理もないだろう。

と。

 

「・・・・ん?」

 

士道はそこで微かに眉根を寄せた。どこかから、何かが震えるような音が聞こえた気がしたのである。

 

「む、どうしたのだ?シドー」

 

「なんか変な音が聞こえる」

 

「ポケットの携帯ではないのか?」

 

耶俱矢の指摘に士道は携帯を取り出すと、確かに携帯のバイブ音である。

 

「もしもし?」

 

士道は携帯を耳に持っていき、言葉をかける。

 

『士道!!無事!?』

 

琴里の高い声が士道の耳に響く。

士道は眉を顰めながら答えた。

 

「無事だけど。てかうるさい」

 

そう言う士道に、琴里はどこか安堵したかの様子で息を吐いていた。

 

『・・・無事ならいいわ。───それより、教えてちょうだい。士道・・・何があったの?』

 

「銀髪が精霊になって、ドジな奴が邪魔してきた」

 

『鳶一折紙が精霊に・・・!?』

 

琴里が、驚愕に満ちた声を響かせてくる。

 

『どういうこと?〈ファントム〉が現れたっていうの?』

 

「さあ?けど美九はアイツの事知ってたし、そうなんじゃない?」

 

『・・・ッ、なんてこと。なんでこんなときに・・・!』

 

琴里は苦々しげに言う。

 

『まあいいわ。それで、鳶一折紙は?』

 

「知らない。俺は見てないし」

 

『・・・・そう。わかったわ。それはこっちで追ってみましょう。・・・と、そう言えば士道。モンタークが貴方に話があるって私に言ってきたの』

 

「俺に?」

 

チョコレートの人が自分にようがあるとはどういうことだろうか?士道は首を傾げながらも、言葉を続ける。

 

「わかった。場所は?」

 

『モンターク商会が所有するビルよ。あの駅前の一等地にあるあの大きなビル』

 

そう言う琴里に士道は言った。

 

「わかった。じゃあついでに行ってくる」

 

士道はそう言って扉に手をかけると、十香達の方に顔を向けて言った。

 

「行ってくるけど、ちょっとチョコの人に呼ばれたから遅くなる」

 

「むう・・・早く帰ってくるのか?」

 

十香がそう言ってくるが、士道は知らないとだけ言って部屋から出ていった。




戦車「作者、狂三?大丈夫か?」

作者「」

狂三「」

戦車「・・・駄目だなこりゃ。菓子置いていくから食べたい時に食べな」

エランくんパッケージのエアリアル。焼きとうもろこし味


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第十五話

投稿!!

作者「おい戦車ぁ!!お前なんてもん置いてんだぁ!」

戦車「え?エアリアル焼きとうもろこし味置いていっただけだろ」

狂三「人の心ないことをしないでくださいまし!」

戦車「お前に言われたくないわ」

作者「ブーメラン発言よ?狂三」

狂三「そうでしたわ!?」

エラン「僕の変わりはいくらでもいるからね」←エアリアル焼きとうもろこし味を食べながら

作者、狂三、戦車「「「えっ?」」」


「待たせてすまないな。三日月・オーガス」

 

「別に」

 

士道はモンターク商会の待合室で出されたお菓子を口に入れながら、士道はマクギリスを見る。

 

「で?俺になんかよう?琴里に呼び出しがあったって聞いたから来たんだけど」

 

士道はそう言って、ソファに背を預ける。

そんな士道に、マクギリスは言った。

 

「ああ。用と言うのはバルバトスのことだ。今日、君たちが鳶一折紙と、エレン・メイザースと交戦していたのは確認している。だがその戦いで“キマリス“を見た。このキマリスに何か知っているかと思ってね」

 

マクギリスの質問に士道は答えた。

 

「知らない。けど、ガリガリの機体が見えたのは知ってる。それが十香達を狙ったのも。関係あるとすれば俺だけど・・・」

 

「ああ。君が分からない以上、これ以上詮索のしようがない。だが、もし君や夜刀神十香及び精霊を狙ったモノとすれば・・・恐らくはモビルアーマー・・・〈天使〉に反応したとすれば共通点がある」

 

マクギリスの予測に士道は首を傾げた。

どうにも引っ掛かかることがある。

 

「でも、十香達が狙われる理由ないじゃん。あの鳥と全く違うわけだし」

 

「恐らく、モビルアーマーのエイハブウェーブと彼女達精霊の〈天使〉が発生させる周波数が似ているのだろう。それならその問題は解決するのだが───」

 

マクギリスは一度口を閉じると、士道に視線を戻す。

 

「もしこの予想が当たっているのなら、私の操る“バエルも同じように反応する”筈だ。だが、反応したのは君の操るバルバトスのみ───この差は一体なんだ?」

 

マクギリスのその疑問に、士道は口に入れようとしていたお菓子を持った手を止める。

確かにそう言えばそうだ。

なぜ、バルバトスだけが十香達の天使に反応する?

同じガンダムフレームなら、チョコの人の機体も反応しても良いはずだ。

だがそれがなかった以上、チョコの人のバエルとバルバトスは似ているようで違うものという事になる。

 

「君のバルバトスだけがモビルスーツになれるように、私とバエルと君のバルバトスは違うものと考えていい。そしてもう一つは君と崇宮真那、そして高宮真士の関係性だ」

 

マクギリスがそう言うと、士道は首を上げた。

 

「何か分かったの?」

 

そう言う士道にマクギリスは口を開く。

 

「今の君と崇宮真那は“血縁であること“は判明した。だが、君と崇宮真士の関係性が分からない状態だ。崇宮真那にはこの事は伏せているが、君と崇宮真士の共通点・・・そして〈ファントム〉・・・君が持つ精霊を封印出来る力・・・恐らく君が中心になって全てが進んでいるな」

 

そう言うマクギリスに士道は言った。

 

「そんなの関係ないよ。俺は俺だしソイツじゃない。それに俺はまだ止まれない。オルガや皆の為にも」

 

士道はそう言って立ち上がった瞬間。

 

「!!」

 

「これは───っ!」

 

二人は突如起こった地震に驚きながらも、周囲にしがみつく。

そして二人がいた待合室におよそ自然現象とは思えない事象が襲った。───空から、闇が凝縮された黒い光線としか形容しようのない何かが降り注ぎ、天井と床を貫いて下の階に抜けていったのである。

 

「何かあったな」

 

マクギリスは眉を顰めながら空いた天井を見上げる。

 

「どっちにしろ皆が心配だから行くよ」

 

「私もいこう。外の様子も騒がしい」

 

二人はバルバトスとバエルを纏い、暗い闇の空へと上がっていった。




作者「なんでいんの!?」

エラン4号「処分されたらここにいた」

狂三「はい!?」

戦車「また凄いことになってきたなコレ」

エラン4号「まあ、そう言う訳だからこれからよろしく」

狂三「居座るつもりですの!?」

エラン4号「生きているのにこの場に居座っている君に言われたくないよ」

作者、戦車「「俺らまさかの死人判定!?」」


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第十六話

投稿!!

作者「ウルズハントの新しいガンダム・フレームカッコイイねー!ゼブンスターズのガンダム!しかも武器がガトリング砲とリボルバーガンアックスに重装甲・・・ロマン過ぎる!」

狂三「好きですわよね。作者さんこういうもの」

エラン「見た目はディランザみたいな重装甲だけど、その重装甲を無理矢理推力で動かせるみたいだね」

作者「まあ、モビルアーマーも二機ほど新しいの出てきそうだけど」


「・・・さて、折紙さんは目的を達することができたでしょうか」

 

月夜の下。ビルの屋上の縁に腰掛けた狂三は、独り言のように呟いた。

 

「うふふ、どうでしょう」

 

すると、それに返すように、影の中から狂三と同じ声が響いてくる。

 

「恐らく、無理でしょう。世界は強固ですわ。一人の少女の願いなど、容易く磨り潰されてしまうでしょう」

 

「あら、わかりませんわよ。折紙さんを見まして?あれほどの力があれば、可能性はありますわよ」

 

「『わたくし』は、どう思っておられますの?」

 

次々と、おしゃべりな分身体たちが言葉を発してくる。狂三はふうと息を吐くと、小さく肩をすくめた。

 

「何とも言えませんわね。────まあ、個人的な希望を言うのであれば、折紙さんには是非その願いを叶えていただきたいところですけれど」

 

狂三が言うと、影の中で分身体たちがくすくすと笑った。

 

「うふふ、『わたくし』らしくないお言葉ですわね。月の光にでも当てられまして?」

 

なんて、失礼なことを言ってくる。

だが、狂三はその言葉に怒るでもなく、ふっと唇の端を上げ、空に浮かんだ見事な月を見上げた。

 

「まあ────いいではありませんの。たまには、そんな気分になることもありますわ」

 

と。狂三がそう言って手に体重を預け、身体を軽く反らそうとした、────その、瞬間。

 

 

空に浮かんでいた月が────割れた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「・・・・!」

 

「これは────」

 

士道とマクギリスは外の惨状を見て、眉間を寄せた。

街が破壊されている。

天から幾条もの光線が炸裂し、士道が先ほどまでいた病院や街がいとも容易く爆散していく。

 

「・・・十香!」

 

士道が珍しく焦ったような声で病院へと向かう。それに続くようにマクギリスも士道の後を追った。

士道達が病院へと辿り着くと、皆がいた部屋の場所に十香達の姿があった。

 

「けほ・・・っ、けほ・・・っ」

 

「皆!大丈夫か!」

 

「だ、大丈夫ですー。何なんですかいったい・・・」

 

どうやら皆は病院を抜け出して無事だったらしい。

士道はほっとした様子で息を吐く。

と、マクギリスは士道に言った。

 

「安心するのはまだ早いようだ。病院にいるのは彼女らだけではない。他の患者や医師も瓦礫の下敷きになっているだろう。早く助けねばならんな」

 

そう言うマクギリスは更に空を見上げる。

士道も同じように視線を巡らせて精霊の姿を探した。

と────

 

「・・・・・・?」

 

虚空に見えた小さな人影に、士道は眉をひそめる。

漆黒に彩られた空の中。闇を具現化させたかのような霊装に身を包んだ少女が一人、浮遊していた。

だが、士道が気にしたのはそこではない。

膝を抱えて、顔は見えないがその髪に見覚えがあった。

 

「────アイツ」

 

ボソリとそう士道が言葉を漏らしたのと同時、十香が彼女を見て呆然と声を発した。

 

「折、紙・・・・?」

 

そう。闇の中で漂うその精霊は、士道のクラスメート、鳶一折紙だった。

 

「な・・・、なんだ、『あれ』は・・・ッ!?」

 

「疑念。マスター折紙・・・なのですか?」

 

耶俱矢達もまた、戦慄した様子で眉をひそめる。四糸乃や美九、七罪の反応も似たようなものだった。皆一様に空を見上げ、言葉を失っている。

 

「確かあれって琴里が言ってた・・・」

 

「『魔王』と呼ばれるモノだろうな。見たのは二度目だが・・・なるほど。接敵すると異様な圧迫感はある」

 

マクギリスもそんな彼女に対し、素直な感想をこぼす。

 

「だが、精霊の『魔王化』は精神が追い詰められるほどの極限状態にならない限り、起こらないはず。この短期間で彼女に一体何があった?」

 

「そんなのはどうでもいい」

 

士道はマクギリスの疑問にバッサリと言い捨てて、大型メイスを構える。

 

「とりあえずアイツを止める。じゃなきゃ、街も周りや十香達も危ない」

 

「そうか────なら、露払いは任せたまえ」

 

マクギリスは両手に握られた二本の剣を振り払う。

と、そんな二人に────

 

「───やっぱり、無茶しようとするわね」

 

「?」

 

士道は声のした方へ目をやると、琴里と真那がこちらへと向かってくる。

 

「兄様!」

 

「なんで二人がここにいるの?」

 

少し驚いた表情をする兄に琴里は言った。

 

「この状況をなんとかするためでしょ。今、〈フラクシナス〉はDEMの艦と交戦中。おそらくは十香の時と同じように鳶一折紙を確保するつもりよ。私と真那は士道をサポートする為に降りてきたんだけど・・・貴方も一緒にいるのね」

 

「ご不満かな、お嬢さん」

 

「不満と言えば不満よ。けど、今は時間が惜しいわ」

 

琴里はマクギリスを不満げに睨みつけるが、何かを言う暇も惜しい。

琴里は士道の正面から向き合う。

 

「士道。今から全力で貴方をサポートさせてもらうわ。鳶一折紙をこっちに引き戻してきて」

 

琴里の強い意志を感じる。

それに士道は短く答えた。

 

「わかった。けど、加減できないから」

 

「“それでもいいわ“。“第一優先は自身の安全“───けど私達の目的は────」

 

「分かってる」

 

士道は軽くあしらって折紙を見る。

 

「アイツにはケジメをつけさせる」

 

士道はそう言ってから大型メイスを強く握って口を開いた。

 

「ガンダムバルバトス────出るよ」

 

そして駆け出そうとしたその時だった。

 

 

 

「少しお待ちくださいな。士道さん」

 

 

 

その声に皆が一斉に顔を声の聞こえた方へと向けた。

そこにはいつの間にいたのか、一人の少女が立っている。

 

「アンタは確か────」

 

「「「「「・・・狂三〈ナイトメア〉!?」」」」」

 

「うふふ・・・お久しぶりですわね、士道さん」

 

少女───最悪の精霊────時崎狂三がそこにいた。




狂三「そう言えば作者さん?」

作者「どしたの?」

狂三「作者さんは折紙さんの物語が終わりましたらどうしますの?」

作者「三日月編?」

狂三「そうですわ」

作者「まあ、ストーリーはある程度纏まってる。けど、モビルアーマーはまだ出さない予定」

狂三「次でも出しませんの?なら、士道さんとの戦闘シーンは・・・・」

作者「だから予定では、十香達とガンダム・フレームをバトらせる」

狂三「はい!?」

作者「けど、ガンダム・フレームの武器は基本的に人に使うような武器じゃないのがなぁ・・・」

狂三「オーバーキル過ぎますものね・・・」

作者「そうなんだよなぁ・・・」


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第十七話 エピローグ

短いですが投稿!!

作者「とうとう此処まできたなぁ・・・」

狂三「もう十巻が終わって・・・ですからね」

作者「そうそう。まあ、ここから頑張りどころよ。まあ、三日月編はめっちゃ長くなりそうだけど」

狂三「頑張ってくださいな」

作者「お前も頑張るんだよ!」


「〈ナイトメア〉・・・一体何のようですか」

 

真那は眉を顰めながらそう言った。

そう言う真那に、狂三はクスクスと笑いながらその唇を開く。

 

「あらあら、わたくしはお手伝いをしにきたのですけれど」

 

「・・・手伝い?」

 

士道の言葉に、狂三は嘆息するように吐息を漏らす。

 

「あらあら、士道さんにそんなに信用無いだなんて。悲しいですわね。────一体、わたくしが何の邪魔をしていると仰いますの?」

 

狂三はそう言いながら折紙の方を一瞥する。

 

「“ああ”なってしまったら、もう何をしても意味がありませんわ。今の折紙さんには、何者の声も届きませんわよ。────それが如何に、士道さんであっても」

 

そう言って目を細める。

 

「本当に、一体あの先で何を知ってしまったのやら」

 

「・・・?」

 

ボソリと呟いた狂三の言葉の意味が分からず、皆は怪訝そうな顔を作る。

しかし狂三はすぐに表情を戻すと、息を吐いた。

 

「まあ────とにかく。わたくしはわたくしのすべきことをするだけですわ」

 

言うと、狂三はトン、と後方に一歩飛び退き、両手を広げた。

するとその動作に合わせるように、足下に広がった影から、二挺の中が飛び出してきて、狂三の手に収まった。

一つは銃身の長い歩兵銃。もう一つは短銃である。士道の持つ無骨で飾り気のない銃とは違い、双方アンティークのように精緻な細工が施された、古式の銃だった。

そしてそれに次ぐように、影の中から巨大な時計の文字盤が姿を現す。

〈刻々帝〉。狂三が持つ、時間を操る天使。

 

「さあ、さあ、〈刻々帝〉。始めようではありませんの」

 

すると、狂三の言葉に答えるように〈刻々帝〉が蠢動し、文字盤の数字から影を滲み出て、銃口に収まった。

そして狂三がニッと唇を歪め、二挺の銃を士道へと向けた。

 

「・・・シドー!!」

 

「・・・士道さんっ!」

 

「士道!」

 

「「士道!!」」

 

「三日月さん!」

 

「士道!」

 

「兄様!!」

 

皆が士道の名を呼ぶ中で────“三日月“は、狂三の妖しい笑みをジッと見つめていた。そんな士道に狂三は銃の引き金に指をかけ────

 

「さあ、士道さん────わたくしたちの戦争を、始めましょう?」

 

狂三は、引き金を引いた。

漆黒の弾丸を士道は避けず、胸に突き刺さる。

そして気味の悪い感覚と共に、士道はそのまま意識を失った。

 

十香達の叫びを聞きながら────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

士道の視界に眩い光が飛び込んでくる。

 

「・・・なんだ?」

 

じりじりと暑苦しい空気と灼けるように暑い太陽に、士道は顔を顰める。

そして周りから、ミンミンという虫の鳴き声を捉えたのである。

 

「・・・・蟬?」

 

士道は首を捻り、身体を起こす。

どうやら自分は屋外────しかも、道路のど真ん中で寝ていることがわかる。

 

「・・・・・?なに、これ?」

 

蟬のうるさい鳴き声に、この暑い太陽と熱気。そして前にいる人々の服装も、皆半袖だった。

 

「・・・・?」

 

と、士道は近くにあった電気屋デジタル時計に目を向けた。

 

「・・・・五年前・・・?」

 

デジタル時計に刻まれた数字は確かに五年前の日付だったのである。




作者「さあさあ!今回はすごいのが入ったよ!なんと!あのラタトスクのヴァナルガンドが格安で手に入ったんだからね!次はガンダムXを売り出すけど、汎用性はこっちが上だよ!」

狂三「・・・作者さん、それは確か真那さんの・・・」

作者「気にしなーい。気にしなーい」

真那「勝手に人のモノ売り飛ばそうとするんじゃねーですよ!このバ作者!!」


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鳶一デビル
第一話


投稿!


あと何人殺せばいい?あと何人殺せばそこへ辿り着ける?教えてくれ────オルガ

三日月・オーガス


「・・・五年前?」

 

士道は顰め面をしながらデジタル時計を見る。

狂三が自分に何かをしたのは知っているが、これはどういうことだろうか? 

 

「アイツの力、何の力だろ」

 

真那いわく、時間を操る力ではないのかと言っていた気がする。

士道は一瞬だけ狂三の顔を思い浮かべるが、すぐに頭を切り替えた。

 

「考えるだけ無駄か」

 

そんなことを考えた所で仕方ない。士道はこれからどうするか考えを巡らせたその時だった。

 

『───きひひ、ひひ』

 

「・・・・ッ!」

 

士道の頭の中から小さな笑い声が聞こえてきた。

士道はすぐに警戒するように身構えるが、周りには士道以外に誰もいない。

 

「・・・誰だ?」

 

『あらあら、悲しいですわね。もうお忘れになって・・・って、邪魔しないで下さいまし!?』

 

「・・・?」

 

狂三の突然の叫びに、士道は首を傾げた。

狂三の反応を察するに他にも誰かいるかのような・・・

と、そんな考えを浮かべる士道に、狂三は向こう側で誰かと話しているのが聞こえた。

 

『・・・はい?皆さんにも【九の弾】を使えといいますの?流石に皆さんの分の時間と霊力が足りませんわよ?』

 

狂三が向こう側で誰かと話しているのが聞こえてくる。

 

『せめて一人に絞ってくださいまし。流石にここで浪費するのは勘弁願いたいですの』

 

「何やってんの?」

 

『少々お待ち下さいな。はぁ・・・なぜわたくしがこんな事を・・・』

 

何かぶつくさ言っている狂三の声に士道は首を傾げながら数十秒。

────と、狂三以外にも聞き慣れた声が士道の頭の中に聞こえてきた。

 

『────兄様!!』

 

「あれ?真那?」

 

狂三以外にも聞こえてきた声。それは真那の声だった。

 

「なんで真那の声が聞こえてるの?」

 

そう呟く士道に、狂三が若干疲れたように言ってくる。

 

『今、わたくしや真那さんとこうやってお話ができているのは〈刻々帝〉の力ですの。【九の弾】。異なる時間軸にいる人間と、意識を繋ぐことのできる弾ですわ。そして士道さんには今、わたくしの弾で五年前の天宮市に送らせていただきましたの。この〈刻々帝〉の最後の弾である【十二の弾】の力によって』

 

「へぇ」

 

士道はあまり興味の無さそうな返事を返す。

 

『【九の弾】は意識を繋ぐだけではなく、士道さんの見たもの、聞いたものを共有することができますのよ?』

 

「それあんまりいい気分にならないんだけど」

 

『ですから、あまり人に言えないような行為は控えることをおすすめいたしますわ。まあ、真那さんもいますし、まずそんなことを士道さんはしないと思いますけれど』

 

そう言う狂三に士道は短くしないよと答えてから、こちらには居ない真那に言った。

 

「真那。“そっちはどうなってる“?」

 

『・・・ひでー状態です。見渡す限りは焦土ですし、今は私の変わりに十香さん達が戦っていますがあんまり良くはねーです。今どうにかなっているのは、モンタークさんがいるから何とかもっている状態です』

 

そう言う真那に士道は「そっか」と短く言い返した後、今度は狂三に士道は口を開く。

 

「・・・で?アンタは俺を五年前に戻して何がしたいの?」

 

そう言う士道に狂三は口を開く。

 

『士道さんにやっていただきたいのは、折紙さんが両親の仇を討つため・・・正確には────「仇」になる前の敵を討つため、ですわ』

 

淡々とした狂三の発言に、真っ先に驚いたのは士道ではなく真那だった。

 

『五年前に折紙さんが!?』

 

『ええ。士道さんには折紙さんがこの時代に戻ってきた折紙さんのその結果を覆すための“証明”をして欲しいのですわ』

 

狂三のその言葉にどこか違和感があるのを士道は感じた。




狂三「物凄く疲れたのですけれど」

作者「まさか原作でも振り回されるとは思わなかっただろ?」

狂三「なぜ、わたくしが毎回毎回こんな扱いですの!?いい加減にしてくださいまし!」

作者「そんなこと言うなら本編にモブキャラとして俺が出てやろうか?お前を振りまわす役として」

狂三「本気でやりそうで怖いですわね・・・!」

エラン「本当にやるんじゃないかな。割と彼ならやりかねないよ」

狂三「否定できませんわ・・・ッ」


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第ニ話

投稿!

今回は本格的に三日月とハシュマルの遭遇です!


「・・・は?」

 

『歴史を変えるつもりでやがりますか!?』

 

士道と真那は互いに違った反応を示しながら、狂三に返答を求める。

だが狂三はそんな二人に言い聞かせるように唇を開いた。

 

『ええ。わたくしに見せてくださいまし。この救いのない破滅を、希望の潰えた惨劇を、“なかったこと”にしてみせてくださいまし』

 

「・・・・・」

 

狂三の言葉に士道は口を閉じる。

今────十香達がいる時代の惨劇を士道がこの世界で起こるはずであろう、折紙と〈ファントム〉との戦いに参戦し、破滅をなかった事にしてみせろと、狂三は士道に言ったのだ。

誰しも変えたいと思った過去はある。それは自分もあるくらいだと。オルガが死ぬ瞬間に自分がいればもしかしたら────と。

だが、士道が狂三に返した答えは恐ろしく完結だった。

 

「なんで変える必要があるの?」

 

『────────』

 

『────兄様?』

 

士道の返答に、狂三と真那は困惑と驚愕の感情が入り混じった声音を溢す。

 

「過去を変えたからって、全部がソイツの幸せになるだなんて俺は思わない。振り返って過去の事をなかったことにするより、俺は“今俺に出来ること“をやるだけだ。死んだ仲間や家族には死んだあとでいくらでも会えるわけだし、それに生きている奴らに自分の命のチップを使った奴らにも失礼だ」

 

『────────』

 

士道の言葉に二人は言葉を失った。

士道が狂三に向けて言った言葉は誰よりも重みが違う。

まるで────自分も同じような結末を何度も見ているかのような雰囲気に二人は何も言えなかった。

そんな狂三と真那に更に士道は言う。

 

「けど、ここで俺だけ何もしない訳にはいかない。十香や皆が頑張ってるから俺は俺のやるべきことをやるだけだ」

 

士道はそう言い、五年前に火災現場になった天宮市南甲町に向けて歩いていく。

 

『・・・・・・』

 

狂三と真那はあの後、しばらく何も喋らなくなった。

無言のまましばらく歩いた士道は、ふと足を止める。

 

『いかがされましたの、士道さん』

 

狂三が怪訝そうに問うてくる。だが、士道は答えない。

士道の目の前にあるもの。それは、一軒の家だった。

 

『・・・あ・・・この家ってまさか・・・』

 

『五河』と書かれた表札が目の端に映る。それを察してか真那が士道の行動の意味を察したのだろう。 

 

「別に気にしなくていい」

 

士道はすぐに身を翻すと、目的地である公園へと向かった。

 

「公園ってどっちだろ」

 

半ば薄れている記憶に、士道は頭をかく。

 

『五年前に兄様は此処に住んでいたんですよね?なのに公園の場所が分からないんでいやがりますか?』

 

「俺もよく覚えてないし」

 

士道はそう言ってため息をついたその瞬間。

 

「・・・・・!」

 

不意に空が赤く輝き、士道はすぐにそちらへと振り向いた。

整然と並んだ家々の屋根の向こうに巨大な火柱が屹立したかと思うと、次の瞬間、それが中空で弾け、辺り一帯が炎熱の波に襲われた。

広い街の全域が瞬く間に炎に包まれ、家や木々が燃えていく。辺りから幾つもの悲鳴や絶叫が上がり、街の住民たちが一斉に避難を開始した。

 

「・・・・・」

 

『これは琴里さんの!?』

 

『どうやら、そのようですわね』

 

真那の言葉に狂三が返してくる。どうやら、琴里は既に例の公園に行ってしまっていたらしい。

そして、今。琴里は〈ファントム〉の手によって精霊〈イフリート〉にされたのだ。

士道は件の公園に行こうとしたが避難をする集団や、炎によって崩落し家屋が道を塞ぎ、上手く前に進めない。

 

「チッ」

 

士道は短く舌打ちをすると、迂回路を通りながらどうにか公園まで辿り着いた。

────と。

 

「────────!!」

 

唐突に士道は身構える。周りに────“何か“がいる。

 

『士道さん?』

 

『兄様?』

 

二人は士道の唐突な反応に首を傾げたその時だった。

 

〈ファントム〉と泣きじゃくる幼い琴里、そして倒れ伏す五年前の自分の前に一つの“巨大な影“と複数の影が一斉に現れた。

 

『あれ、・・・・は・・・・』

 

『一体・・・なんですの?』

 

唖然する二人を他所に、士道は視線を鋭くする。

士道の視線の先────そこにいたのは───

 

『────────────』

 

反転した十香を助ける際に現れ、そしてあの日────三日月が殺した“モビルアーマー“だった。




狂三「・・・・・」

真那「・・・・・」

作者「二人ともどしたん?食べないの?」

狂三「いや、なんですの?これは・・・」

作者「スターゲイジーパイだけど」

真那「いや、分かりますけどやっぱり見た目が・・・」

作者「魚の頭が乗ってるからって食べないのは駄目だぜ?」

狂三「そもそも美味しいですの?」

作者「中は旨い。上は・・・うん。生臭い」

真那「だーからあんまり食べたくないんですよ」

狂三「そもそも、頭いります?」

作者「それを言っちゃ駄目よ?」


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第三話

投稿!!

ここら辺は色々とオリジナル展開をしていきます!


『あれ、・・・・は・・・』

 

『一体・・・なんですの?』

 

『────────────』

 

目の前に立つモビルアーマーの姿に、真那と狂三は呆然とした声音で呟く。

しかしそれは無理もない。

全長が三十メートルはあろうかという巨体が目の前に現れたのだから誰しもが呆然とするしかないだろう。

更に狂三に至ってはまた別の感情もあった。

 

『・・・アレは・・・天使?』

 

直感でもなんでもない、無意識に狂三はモビルアーマーを天使と口にした。

 

「へぇ・・・アンタもチョコの人と同じこと言うんだ」

 

士道は狂三の呟きに、意外そうな顔を作る。

 

『チョコの人って・・・モンタークさんのことですか?と言うか・・・“アレ”が天使に見えます?どう見ても鳥なんですが・・・』

 

真那の素直な感想に対し、狂三は困惑した声を出す。

 

『いえ・・・何かのいい間違えでしょう。そもそもわたくしも五年前にアレを見たことはないですし・・・周りにいる黒い機械達も知りませんわ』

 

士道達を囲むようにプルーマ達の赤いレンズが〈ファントム〉と琴里達に視線らしきものを注がれている。

 

『・・・ええ。わたしも見たことがねーです。兄様は何か知っていやがるんですか?』

 

「知ってる」

 

真那の返答に士道は短くそう答えると、狂三と真那は驚いた声を出す。

 

『知ってやがるんですか!?』

 

『何処で知りました?あの怪物を』

 

狂三の問いに士道は口を開く。

 

「アイツは・・・俺とバルバトスで“殺した“。あの時に。チョコの人は確か、厄祭戦を起こした原因だって言ってたけど」

 

『厄祭戦・・・?って、あのおとぎ話の?』

 

『知っていますの?真那さん?』

 

狂三は真那に聞き返すと、真那は嫌そうな声音で狂三に言った。

 

『私の名前を呼ばねーでください。貴方に言われると無性にイラッとくるので・・・まあ、厄祭戦の事を知っているかと言われてもほんの少しだけです。大昔に地球圏規模の大きな戦争があって、その戦争で当時の人口の四分の一の人間が死んだってありえないお話ですよ?そのせいで文明が衰退していったって話なんですが・・・』

 

そう説明する真那に、狂三は言う。

 

『士道さん。“アレ“はどういったモノですの?』

 

「────“バルバトスの獲物“」

 

短く───そして静かにそう答えた。

その時、〈ファントム〉が同時に言葉を発する。

 

【やれやれ。“君のような怪物“はお呼びじゃないんだけどね】

 

〈ファントム〉はそう呟くが、モビルアーマーは何も反応を示すことなく、ジッと〈ファントム〉を見つめていた。

と、そんな状況にもかかわらず、幼い琴里が叫ぶ。

 

「わ、私の身体に・・・何をしたの!?私・・・要らないっ、こんな力・・・要らないっ!」

 

琴里が言うと、『何か』は静かに返答を返す。

 

【そう。でも少し待ってて。まずは“彼“をこの怪物から引き剥がさないといけないから】

 

〈ファントム〉はそう言ってモビルアーマーを見る。

 

『────────────』

 

モビルアーマーは〈ファントム〉をジッと見つめたまま動かない。

そしてそのまま、モビルアーマーは光の粒子となって五年前の士道の影の中へとプルーマと共に消えていった。

 

『兄様の・・・影の中に・・・?』

 

『入って・・・・?』

 

呆然とする二人を他所に、士道は〈ファントム〉に言葉を投げる。

 

「────おい」

 

【・・・・ん────?】

 

すると〈ファントム〉が、男とも女とも取れない声を響かせてくる。その際、視界にぼんやりとしたシルエットが動くが、士道は気にしなかった。

そんな士道に対して〈ファントム〉が発した言葉は予想外のものだった。

 

【─────え?】

 

〈ファントム〉が小さな声を発し、微かに身体を揺らす。

その動作が、士道や真那、狂三には動揺や狼狽に属するものに思えた。

 

【・・・うそ───君は・・・どうして、君が・・・】

 

「・・・は?」

 

〈ファントム〉の意外な反応に、訝しげな顔を作る。

 

「アンタ・・・俺の事、知ってるの?」

 

【─────】

 

士道の問いに、〈ファントム〉は沈黙を作る。しかしそれは、士道の質問を無視しているような様子ではない。ただ、呆然と言葉を発することができないように思われた。

 

【・・・君は一体『いつ』から来たの?それに───】

 

〈ファントム〉がそう静かな口調で言ったその時───。

空から一条の光線が降り注いだ。

 

「───ッ!」

 

士道はバルバトスを即座に纏い、空を見上げる。

〈ファントム〉目がけて空から光線が放たれたのだ。

士道はすぐさま顔を上げる。すると、そこに一人の人物の姿があった。

 

「・・・アイツ」

 

士道は短く、低い声音で折紙に言う。

空には折紙の他に、〈ファントム〉の姿も確認出来た。恐らく、先の一撃を避け、空に逃れたのだろう。

と、折紙が手を振ったかと思うと、折紙の周囲に浮遊していた『羽』から〈ファントム〉目がけて光線が放たれる。

そんな二人を追いかけようと士道はバルバトスと共に、空へと飛翔したその時だった。

羽型の天使を一つに結集させたその砲門が下方────士道へと向けられる。

士道は回避行動をしようとしたそのとき、耳元から真那の叫びが響き渡る。

 

『・・・兄様!射線上に人が!?』

 

「・・・・ッ!」

 

『士道さん!?』

 

真那の叫びに、士道はすぐに防御の体勢を取る。

士道の行動に、頭の中に狂三の意外そうな声が響くが、この状況に陥ってしまってはもう仕方ない。

─────結集した天使から、士道目がけて極大の一撃が放たれる。

その一撃はバルバトスに直撃したその瞬間。

 

「─────────ッ!」

 

バルバトスのナノラミネートアーマーによってその一撃は広範囲に拡散した。

勢いに押された士道は一度地上へと着地すると、舌打ち混じりに折紙と〈ファントム〉を見上げ、苛立ち気な声を出す。

 

「・・・アイツ」

 

そして士道がもう一度、スラスターを吹かそうとしたその時だった。

 

「─────!」

 

「あ?」

 

と、そんな中、誰かの声が鼓膜を揺らした。

狂三か真那かと思ったが、違う。これは明らかに───

士道はバルバトス越しに士道は気づいた。それは、目前にいた五年前の折紙のものだった。

その双眸はバルバトスへと向けられていた。

 

『士道さん、もう時間ですわ』

 

「もうそんな時間か。結局アイツから何も聞けなかったし」

 

狂三の声に士道はそうボヤくと、バルバトスを消して五年前の折紙に一度視線を向けて言った。

 

「偶然助かったみたいだけど、“次”はもうないから」

 

士道は折紙にそう言うと、次の瞬間、士道の視界が真っ暗になった。




作者「はあ・・・なんとか設定がある程度纏まったぜ」

狂三「何の設定です?」

作者「ヒロインズとガンダム・ダンタリオン(パーフェクトカウル)の戦闘描写設定」

狂三「ああ・・・前に言っていましたわね?で?どうしましたの?」

作者「ダンタリオンだけモビルスーツで出す。エイハブ・ウェーブで街がやばいことになるけど」

狂三「通信や電気系統が全部が麻痺しますわよね?」

作者「するねー。まあ、なんとかなるでしょ」


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第四話

投稿!!

最近バトオペでジェスタとデルタカイに乗っていたせいでアクティブガードと変形機が得意になってました・・・


「・・・・っ」

 

小さな唸り声を発して、士道は目が覚める。

どうやら士道は、ベッドの上で横になっていたらしい。

 

「・・・・・」

 

士道は身体を起こすと、辺りを見回す。

なんてことはない。いつもの自分の部屋。見慣れた壁や床、天井に家具。

 

「どうなってんの?」

 

士道は意識を失う前に起きた出来事を思い出す。

燃えさかる街の中で戦闘を行なっていた〈ファントム〉と折紙の戦闘に混じろうとした時に、【一二の弾】の効果限界が訪れて、士道の身体が強制的にもとの時代に戻されたのは覚えている。

 

まあどちらにしろどうでもいい。士道は軽く息を吐くと、部屋のカーテンを開けた。

 

「・・・・・」

 

そこに広がっていたのは、見慣れた天宮市の東天宮の住宅街だった。右方に目をやると、精霊たちが住んでいる巨大なマンションが聳えていることがわかる。

“いつもと変わらない見慣れた景色”だった。

建ち並ぶ家々も、街路も、全てがそのまま。要は────反転した折紙によって滅茶苦茶に破壊された天宮市の光景ではなかったのである。

それを認識した士道は部屋の扉を開けてそのままリビングへと降りていく。

するとそこには、リビングのソファに座りながらテレビを見ていた小柄の少女────琴里が、丸っこい目をさらに丸くして士道の方を見る。

 

「おー?どしたのおにーちゃん。朝ご飯ならまだだよー?」

 

そう言う琴里に、キッチンからは耶俱矢と夕弦が顔を士道の方へと向けてくる。

 

「やっと起きたか士道よ。朝食ならもう少し待っていろ。今作っている最中だ」

 

「同意。もう少しだけ待っていてください」

 

「ん」

 

そう言う二人に、士道は短く返事を返す。

─────と。

バタン!と二階から扉を勢いよく開ける音が響き渡った。

ドタドタと、転がり落ちるような音を立てながら誰かが階段から降りてくる。

 

「兄様!琴里さん!皆さんは無事ですか!?」

 

「「・・・・へ?」」

 

「疑問。・・・無事とは?」

 

息を荒くして降りてきた真那に対し、琴里と、八舞姉妹は何を言っているのかわからないといった様子で首を傾げている。

 

「・・・真那、寝ぼけてる?」

 

琴里にそう言われて、真那はハッと肩を揺らす。

そして、真那は琴里に恐る恐ると聞いた。

 

「・・・琴里さん、今日って、何月何日でやがります?」

 

「え?十一月八日に決まってるじゃん」

 

琴里が、心配そうな目で真那を見ながらで言ってくる。

その日は確か・・・反転した折紙が街を破壊していた日の、翌日だった筈だ。

そう言う琴里に、真那は士道に振り返りながら小さな声で言ってきた。

 

「・・・兄様。私達が見てたのって・・・」

 

「夢じゃないよ」

 

そう言う士道に、真那は首を縦に振る。

 

「そうでやがりますよね!?兄様も確かにあの場にいましたよね!?」

 

「・・・真那よ。一体何を言っている?」

 

「質問。話の内容が分かりません」

 

真那と士道のやり取りに、耶俱矢と夕弦が聞き返してくる。

 

「・・・どーしたの?なんか変だよ、真那におにーちゃんも・・・」

 

三人からして見ればただの奇行でしかない真那と士道のやりとり。それに対して、真那は言う。

 

「兄様・・・琴里さん達に昨日起こったことを皆さんにどう説明すればいいでしょう?」

 

「別にそのまま言えばいいじゃん」

 

「おにーにゃん?真那も・・・」

 

「でも信じてくれるかどうか・・・」

 

「そう説明するしかないから別に気にしなくていいじゃん」

 

琴里達を置いてけぼりに話を続ける士道と真那。

そんな二人に琴里は─────。

 

「ちょっとは話を聞かせなさい!この馬鹿兄妹!!」

 

もう一人の妹からの怒号が朝の五河家に響き渡った。

 




作者「〜♪」

狂三「あら?作者さん、それは?」

作者「竹笛。昔吹いてたからねー。今も時々忘れないように吹いてるけど」

狂三「良い音色でしたわね。吹奏楽でもやっていましたの?」

作者「なーんも。てか、竹笛より和太鼓の方が得意よ?大太鼓と中太鼓くらいしか出来んけど」

狂三「なんでそんなこと出来ますのよ?」

作者「お盆休みのとき、今の仕事やる前は太鼓叩いてたの。つっても高校生の時だったけど。懐かしいなぁ。。昔に伊勢神宮のおかげ横丁で太鼓ショーをやってた時が昔に思えてくる」

狂三「はい?ちょっと待ってくださいまし?作者さん何歳ですの!?」

作者「男だけどそれ聞くのは流石にNGだっつーの」


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第五話

投稿!!

忙しくなる時期になりました。
ゆっくり投稿していきますのでお楽しみに!


「世界の書き換え・・・なるほどね。士道と真那の様子がおかしかった理由が分かったわ」

 

真那の説明に、琴里、耶俱矢、夕弦は訝しげな顔を作る。

 

「士道や真那を疑っているわけではないのだが、そんな事が有りえるのか?いや、それ以前に────」

 

「返答。“鳶一折紙“という人物を“私達は知りません“」

 

夕弦の返答に真那は驚愕で目を開け、士道はただ黙っていた。

 

「士道を学校では十香と我らで取り合っていた?いや、そんな奴を我は知らぬ。学校ではいつも士道と十香が一緒にいたからな」

 

そう言う耶俱矢に、真那は目を丸くする。

 

「・・・え?それって」

 

「最初からいなかった・・・ってことよ。一応、来禅高校の全生徒を令音に調べてもらうけど・・・あんまり期待はしないでちょうだい」

 

琴里はそう言って、机に並べられた朝食を口にすると、焼いた食パンをパリッと音を鳴らしながら、琴里は何度か咀嚼する。

そして士道に視線を向けながら言った。

 

「───士道。もし、真那の言ったことが本当なんだとしたら、貴方は過去を変えた影響で未来にも影響が出たと言うことよ。だからいつも気を抜いていられちゃ困るの。またいつ精霊が現れるかわからないんだから。狂三だっているし、それこそあの〈デビル〉だって────」

 

「え?」

 

「は?」

 

琴里の発した識別名に、士道と真那は思わず眉をひそめた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください琴里さん。〈デビル〉・・・?なんですか?その精霊」

 

琴里の方に向き直り、真那が聞き返す。

〈デビル〉。少なくとも、士道や真那は聞いたことのない名前である。

 

「何言ってるのよ真那。あの“精霊狩り“の〈デビル〉よ?〈ナイトメア〉時崎狂三に並ぶ最重要警戒対象じゃない。忘れたなんて言わせないわよ」

 

「アイツに並ぶ?」

 

そう言う士道に、琴里は一緒訝しげな顔を作るが、途中で手を額に置いて顔を上げた。

 

「ああ、そう言えばそうだった。士道と真那は知らなかったんだわ・・・。まあ、いいわ。教えてあげる」

 

琴里は一度ため息を吐いてから首肯してきた。

 

「〈デビル〉。顕現は確認されているけれど、一度も接触に成功したことのない、正体不明の精霊よ。そして──」

 

琴里は一拍置くようにしてから、言葉を続けた。

 

「────恐らくではあるけれど、反転体よ」

 

「な・・・・!?」

 

真那は琴里の言葉を聞いて目を見開いた。

 

「反転体ってそんなに簡単に出る?」

 

「だから詳しいことは分かってないって言ってるでしょ」

 

琴里は苛立たしげに言う。恐らくこちらの世界の士道であればとうに承知していなければならない情報だったのだろう。

 

「では、先ほど言っていた『精霊狩り』というのは?』

 

「そのままの意味よ。〈デビル〉は単体では出現しないの。必ず、他の精霊が現れたときだけ、その精霊を攻撃をしかける精霊よ」

 

琴里のその説明に真那は息を呑み、士道は目を細めた。

過去を変えたことによる支障が、ここに現れていた。




作者「最近戦車の奴がポケモンやり始めたから買って見たんだけど、新しいやつ面白いねコレ」

狂三「もう何もツッコミませんわよ?」

作者「ちなみに俺の押しはドオーね」

狂三「この人・・・まさか害悪プレイするつもりですわね!?」


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第六話 

投稿!!

アーマードコア6だ!やったー!あの闘争がもう一度出来る!


「・・・・・」

 

「・・・兄様」

 

士道と真那は誰もいなくなったリビングで士道は目を閉じ、真那はそんな士道を心配するように呟く。

精霊を狩る精霊〈デビル〉。琴里にその精霊の映像を見せてもらった時、その精霊に覚えがあった。

精霊化し、反転した鳶一折紙の姿そのもの。

確実に〈デビル〉とは鳶一折紙で間違いないだろう。

不本意と偶然によって過去を変えたにもかかわらず、現状を見る限り、彼女が精霊になった理由が分からない。

だが、そう考えることは士道にとってはどうでもいい。

現状がどうなっているか分からないなんてことは、“あの場所“では日常茶飯事のことだったし、今の士道のやるべき事は一つ。

士道は瞼を開け真那に目を向けると、士道は言った。

 

「真那、とりあえず先に学校に行っといて。学校に行けば何か分かるでしょ」

 

「それは構いませんが・・・兄様は?」

 

真那の問いに士道は続ける。

 

「俺も十香達と一緒に学校に行ってみる。真那は外から監視、俺は中から色々探ってみるから。後で合流でいい?」

 

「・・・わかりました。兄様も気をつけてください」

 

そう言って玄関へと向かう真那。その姿を見送ろうと視線を向けた士道に、真那が顔を振り向かせて士道に言う。

 

「兄様・・・折紙さんのことや過去を変える事が────本当に“最善”だったんでしょうか?」

 

「・・・さあ?俺には分からないよ」

 

「・・・・っ」

 

士道の返答に真那は言葉を詰まらせる。

そんな真那に士道は言う。

 

「最善なんてないよ。“俺達”が最善を選ぶしかない」

 

「・・・そうですよね」

 

士道の言葉に真那は頷くと、その顔を上げる。

その顔は先ほどの暗さはなく、どこか割り切ったような表情だった。

 

「確かに最善だなんて人それぞれですよね。なら私は私の出来る最善を取ることです!」

 

急に大きな声を出した真那に、士道は目を丸くする。

 

「では兄様!行ってきます!あと、十香さん達をよろしくお願いします!」

 

そう言って真那はリビングから出ていくと、バタバタと音を立てながら外に出ていく。

 

「・・・何だったんだろ」

 

士道はそう呟いて真那の後を追うように立ち上がり、部屋に鞄を取りに戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───これは」

 

マクギリスはタブレットに映された文字列を見てそう呟いた。

前々から“おかしい“と思っていた。

“この世界“にガンダム・フレーム及び阿頼耶識システムのデータが存在することに。

そして崇宮真士が既に“死んでいる”こと。

精霊〈ファントム〉と崇宮真士が接触をしていたこと。

三日月・オーガスの様子から推測出来るガンダム・フレームが持つ“自我意識”とガンダム・バエルにアグニカ・カイエルの魂が眠っていると語り継がれていた理由。そして───“五河士道という器“の中に“彼”の自我と阿頼耶識───ガンダム・バルバトス───そしてモビルアーマーが潜む偶然。

 

精霊〈ファントム〉の目的───それは

 

「ガンダム・フレームを使った“崇宮真士の自我の復元”か───!」

 

これは仮説にしか過ぎない。だが──“これしか理由“がつかない。仮にこの仮説が本当だったとして、何故“精霊の力“がいる?

そして何故?“三日月・オーガス“に精霊の力を封印出来る力がある?

 

「この仮説が本当にあっているのなら───」

 

マクギリスがそう言いかけたその時───

 

「“それ以上踏み込んじゃいけねえよ。アンタ”」

 

「───君は」

 

マクギリスの目の前にいる一人の青年。

白い髪に焦げ茶色の肌。そして首もとに巻かれた赤いスカーフ。

その青年は───

 

「これ以上──“ミカとアイツらの邪魔をしないでくれねえか?ここからアイツらがミカをどう受け入れるのか“俺達は見届けなくちゃいけねえんだ」




狂三「作者さん」

作者「どしたの?トッキー?」

狂三「後半どう見ても、折紙さんのお話を終わらせてからするべき内容でしたわよね?」

作者「んー・・・まあ、そうなんだけど一応ここが分岐点になるのよ?折紙ちゃんの力を封印することによって全てが変わる。後半からの原作を全てブチ壊す起爆剤としてね。三日月だって立場で言えば〈ファントム〉の操り人形みたいなモノ。なら、〈ファントム〉に“奪われる側”だった三日月に説法してもらわないとね。“死んだやつは二度と帰らない“ってね」

狂三「今後の盛大なネタバレをしましたわよ!?この人は!?」

作者「原作読んでる人ならダイジョーブ!」


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第七話

作者「あ?アルティメットガンダムが暴走したぁ?」

狂三「暴走って・・・不味いのではありませんの?」

真那「スゲーやな予感がするんですが・・・」

戦車「アルティメットガンダム・・・なんだっけなぁ」

エラン四号「新しいガンダムか」

狂三「作者さん。アルティメットガンダムとはなんですの?わたくしも知らないのですが・・・」

作者「あれ?そうだっけ?アルティメットガンダムはデビルガンダムの本当の名前よ?」

真那「あれ?デビルガンダムって確か・・・」

戦車「Gガンダムのやばいヤツ」

作者「つか、俺らもだけど、狂三と真那もヤバくね?逃げ遅れたら二人共生体ユニットされるかもよ?」

狂三「なんで今そんな事を言うんですの!?」

真那「デビルガンダムの生体ユニットなんて死んでもお断りです!!」

エラン「なら僕達で足止めしないとね」

作者「ヘビアとドルブとファラクトでか?・・・いや出来るかな・・・」

戦車「絶対無理☆」


「───“オルガ・イツカ“」

 

マクギリスは目の前に立つ青年に驚愕しながらも、その名前を呼ぶ。

“鉄華団“の団長にして五河士道・・・いや、三日月・オーガスが“誰よりも信頼”する男だった。

 

「・・・よお、マクギリス。アンタ、ミカやユージンに余計な事をしていねえだろうな?」

 

閉じた目を片方開けながら、オルガの琥珀色の目がマクギリスを睨む。

 

「ああ、もちろんだとも。だが、一つ聞きたい。“一体、君はどういった存在だ?”」

 

マクギリスの問いに、オルガは答える。

 

「・・・分かりやすく言えば、俺は“ミカの夢”みたいなもんだ」

 

「夢?」

 

オルガの言葉にマクギリスは訝しげな表情を作るが、オルガは言う。

 

「まあ、アンタが顔を顰めるのも分かる。だけどな、それしか説明出来ねえ」

 

そう言うオルガ・イツカに、マクギリスは続け様に言う。

 

「・・・では、何故、他のガンダム・フレームが此方へと干渉できる?」

 

マクギリスはオルガにそう聞き返すと、オルガは言った。

 

「今のミカの身体はもうボロボロだ。天使・・・だったか?アイツらの力・・・アレのせいで日に日にミカの中にいる“モビルアーマー“の抵抗が強くなってる。それを抑えているのがバルバトスや他のガンダム・フレームの役割だ。だからこれ以上ミカにアイツらの力を押さえつけようもんなら───」

 

オルガは一息つくと、更に口を開く。

 

「バルバトスや他のガンダム・フレームの奴等が、“ミカをモビルアーマーごと“存在を消しに来るぞ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

琴里達と一緒に朝食をとり、真那が家から出た後に外に出ると、既に門の前には見知った少女達の姿があった。

 

「おお、来たかシドー!おはようだ!」

 

夜色の髪に水晶の瞳を備えた美しい少女が、元気よく手を振ってくる。───夜刀神十香。

士道のクラスメート兼家族である。

 

「おはよう。十香」

 

「いや、私も今家を出たところだ。ぴったりだぞ!」

 

十香が満面の笑みを浮かべながら言ってくる。

 

「そっか」

 

士道はそう言って、手にしていた鞄を十香に手渡す。

十香の弁当は前まで士道が作っていたのだが、今となっては耶俱矢か夕弦、もしくは真那が作るようになっていた。

 

「おお・・・!ありがとうだ、シドー!それに耶俱矢に夕弦も、いつもありがとうなのだ!」

 

「かか、気にするでない。この程度片手間よ」

 

「同意。作っているのも楽しいものです」

 

そう言う二人に、士道は言った。

 

「行くよ」

 

「ぬ?うむ、そうだな!」

 

「む?もうそんな時間か」

 

「返答。わかりました」

 

士道がそう言うと、皆は士道を真ん中に並んで通学路を歩いていく。

 

「それで昨日夕弦と一緒にデパートに行ったのだが・・・士道、聞いているのか?」

 

「ん?」

 

十香達と楽しく談笑していた耶俱矢が若干ムッとした顔を作りながら士道に言う。

そんな耶俱矢に話を聞き流していた士道は「あー・・・」とボヤくと、耶俱矢に謝りながら口を開いた。

 

「ごめん。聞いてなかった。で、何?」

 

そんな士道の反応に耶俱矢は若干カチンときたのか、耶俱矢は士道に詰め寄ると、顔を士道の目の前に持っていきながら、目を見て耶俱矢は唇を開く。

 

「さっきからずっと上の空なのは朝の事を聞いて既に知っておるわ。けどまあソレは別に良いわよ。だけど、今日の士道は本当に変よ。ねえ、私達に他に何か隠してない?」

 

「別に隠してない」

 

真剣に、だが耶俱矢の目の奥には怒りが燻ぶっているのが見える。

まるで自分達を頼れと言うかのように。

そんな耶俱矢に対して、十香と夕弦は少し真面目な顔を作りながら士道に言った。

 

「シドー・・・何か・・・あったのだな」

 

「質問。士道、答えてください」

 

「・・・・・・」

 

耶俱矢、夕弦、十香がそれぞれ真剣な表情で士道を見てくる。そんな彼女達に、士道は息を吐きながら短く答える。

 

「別に。“本当になにもないよ”」

 

そう答える士道に耶俱矢達は小さく息を吐くと、士道を見て口を開いた。

 

「・・・ならいいわよ。けど、いい?士道。士道は私達にとって“一番好きで大切“だって事、忘れないでよ」

 

「首肯。士道は今の私達にとって居なくてはならない人です。何もかも一人で抱え込まないでください」

 

「そうだぞシドー。何かあった時は私達がシドーの力になる。“皆も私もシドーを信じている”のだ。だから何時でも頼ってくれ」

 

そう言う十香に士道は──────

 

「“分かった”」

 

だが、士道は彼女達を頼ることはないだろう。

何故なら───

 

(もう十香達には心配かけられないな)

 

士道にとって大切な家族である彼女達を自分の選んだ戦場に巻き込ませる訳にはいかないのだから。




作者「駄目だってこれ。弾とミサイル切れたよ?」

狂三「諦めないでくださいまし!?」

戦車「ドルブじゃ無理だわ」

真那「ちょっと戦車さん!?」

エラン「・・・焼きとうもろこしになりたい・・・」

狂三・真那「「エランさん!?」」


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第八話

投稿!


もしかしたら来週は投稿出来ないかも知れない・・・




士道達が学校に登校し、教室に入ると周りから挨拶が投げられてくる。

士道は適当に挨拶を返しながら、自身の席に鞄を置く。

と、そんな士道に声がかけられた。

 

「おう五河!おはよう!」

 

士道が顔を向けると、そこにいたのは殿町だった。

 

「辛気臭い顔してるなぁ。どうしたよ?」

 

「別になんでもないよ」

 

殿町の言葉に士道はそう返す。

そんな士道に対し、殿町は口もとに笑みを浮かべて士道に言う。

 

「なぁなぁ、今日転校生が来るって話知ってるか?」

 

「知らない」

 

即答する士道に、殿町は苦笑いする。

 

「まあ、そうだよな。なんでも聞いた話じゃ女の子って話なんだぜ!興味あるだろ?」

 

「別に興味ない」

 

「は〜?」

 

「女に飢えてない五河にそんな事言っても無駄だろ。殿町」

 

「そうそう。五河君には十香ちゃんってかわいい子がいるんだから」

 

周りの野次からそんな返事や笑い声が返される中、士道は窓の外を眺める。

別に転校生など正直な話どうでもいい。

どうせこの学校に折紙はいないのだ。なら、彼女が現れた時の対処をどうするか考える方がずっといい。

と、キーンコーンカーンコーンと学校のチャイムが鳴り響く。

そのチャイムと同時にガラガラと教室の扉が開けられ、タマちゃん先生が入ってくる。

 

「はーい。皆さんおはようございます。今日は出席を行う前にぃ皆さんに新しいお友達を紹介しますよぉ」

 

そう言うタマちゃんに、士道はちらと視線だけをそちらへと向けた。

どうせすぐに忘れるとはいえ、一応どんな奴か見ておこう。士道はそんな心境で転入生が入ってくるのを待つ。

 

「───さ、入ってきてくださぁい」

 

タマちゃんがそう言うのと同時、ガラッという音を立てて教室の扉がさらに開かれ、一人の少女が入ってきた、

 

「──────」

 

教卓の前まで歩いてきた少女の姿を見て、士道は少しだけ驚愕に目を見開いた。

人形のように端整な顔をした、線の細い少女。背を覆う髪は少し早い色素が薄く、彼女を異国のお姫様のように見せていた。

少女が登場した瞬間、クラスメートたちが色めき立つ。周りの男子たちが「おおっ!?」と身を乗り出し、女子たちもまた目を煌やかせていた。

しかし、そんな中で、士道は一人眉を顰めながら、その少女を見る。

理由は単純。その少女の顔に、見覚えがあるからだ。

 

「はい、じゃあ自己紹介をお願いします」

 

タマちゃんが、転入生に促す。

すると彼女は、こくりとうなずいてから顔を正面に向け、静かな声でこう言った。

 

「──“鳶一折紙です“。皆さん、よろしくお願いします」

 

そして、深々と礼をしてみせる。クラスの面々がわぁっと色めき立った。

だが、今の士道にそれらに反応することはない。

 

「・・・・・」

 

士道の目の前に立つ人物。そこにいたのは、髪の長さこそ違うものの、間違いなく、士道の記憶の中の鳶一折紙だった。

皆の色めき立つ中、タマちゃんは教室を見回すように視線を巡らせる。

 

「えぇっと、じゃあ鳶一さんの席は・・・五河くんの隣が空いてますね。あそこに座ってくれますか?」

 

「わかりました」

 

折紙が首肯し、ゆっくりとした足取りで士道の方に向かってくる。

が、折紙は数歩歩いたところで、不意に足を止めた。

 

「あ───」

 

「・・・ん?」

 

士道は少し顔を上げるのと同時、折紙が意外そうに目を丸くした。

 

「───嘘。あなたは・・・」

 

そう。まるで、“自分の顔に見覚えがある“ような反応を彼女はしたのだ。

確かにあの時ほんの数瞬だけ、顔を見せて次はないと言った覚えはある。だが、その数秒で士道の顔を覚えることを出来るのだろうか?

 

「・・・なに?」

 

士道はそんな思考を一瞬巡らせながらも、折紙に顔を向けて口を開く。

 

「・・・あ・・・ごめんなさい」

 

そんな士道に、折紙はすぐに思い直すように首を振ると、今度は一転して他人行儀な調子で会釈をしながら、タマちゃんに指定された席に腰を落ち着けた。

 

「はい!じゃあ改めて出席を取りますよぉ!」

 

タマちゃんの元気のいい声が教室に響き渡る中、士道の頭の中にあるのは───

 

 

コイツ──鳶一折紙は、確実に自分のことを覚えている。

 




作者「だぁぁっ!!デビガン面倒くせぇ!」

狂三「どうにか出来ませんの!?どんどん数が増えていきますわよ!?」

戦車「それが出来たらこうなってないんだよなぁ」

真那「諦めムードにならねーでください!?二人とも!?」

作者「つか、エランはどしたよ?」

戦車「あそこで燃え尽きてる」

エラン「・・・焼きとうもろこしになりたい」

作者「・・・駄目だな。あれ」

戦車「この状況何とかならねえかなぁ」

真那「助けてください!兄様!兄様!」

作者「流石の三日月でもデビガンは無理だろ・・・」

?「ならば、私にまかせたまえ!」

作者「だ、誰だ!?」

狂三「だ、誰ですの?」

戦車「お、お前は───」

?「そう。私はハム仮面!!愛も憎しみも超越し、もはやガンダムとは運命と結ばれたMr.ハム仮面だッ!!」

真那「な───」

作者、狂三、真那、戦車「「「「その前に服を着ろ(着てください)まし!?この変態!!」」」」


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第九話

投稿!

来週の投稿は・・・できたらで!


『・・・・はぁ?』

 

電話越しに聞こえてきた琴里の声は、怪訝そうな色を帯びていた。

とはいえそれも無理もない。休み時間に急に電話がかかってきて『そんなこと』を告げられたなら、士道でも似たような反応を返すだろう。

 

『ちょっと待って。一体どういうこと?詳しく説明してちょうだい』

 

「さっき言った通りだけど。銀髪が俺のクラスにきた」

 

士道は、先ほど琴里に発した言葉を、もう一度言う。

 

『だから、それが意味わかんないって言ってるのよ。一体なんで〈デビル〉が学校に転入してくるのよ?その転入生が〈デビル〉だなんて───』

 

「アイツは俺と真那が知ってる」

 

『・・・過去を変えたってことに関係しているのかしら』

 

「まあ、関係してる・・・と思う」

 

そう言う士道に、琴里はやれやれといった調子で言葉を返す。

 

『正直な話、半信半疑よ?でも、何の情報もなかった〈デビル〉の正体がわかったなんて言われたら、何もしないわけにはいかないでしょ』

 

それに、と琴里は言う。

 

『士道が何の根拠もなくそんな事を言い出すことないでしょう?それに、お兄ちゃんの感覚は凄まじいものだってことは私も知っているわ』

 

「そっか」

 

士道のその反応に、琴里は息を吐きながら言った。

 

『ま、すぐに調べてみるわ。ええと、何て名前だったかしら、その女子生徒』

 

「折紙。鳶一折紙ってヤツ」

 

『鳶一折紙ね。鳶一───』

 

と、そこで琴里が言葉を止めた。そして何かを思い出したかのように、小さく喉を鳴らす。

 

『それって・・・もしかして、ASTの鳶一折紙?』

 

「は・・・・?」

 

琴里の言葉に、士道は眉を顰める。AST。確かそれは精霊を倒す為の自衛隊ではなかったか?

 

『確かASTにそんな名前の隊員がいたのよね。何度か十香たちとも戦ったこともあるんじゃないかしら。ただ、ちょっと前に退職している筈よ』

 

「退職?」

 

折紙がASTに所属していた。それはつまり自分達が知っている精霊に両親を殺された“鳶一折紙と同じ“結果になったということである。

 

『ええ。でも言われてみれば、鳶一折紙がASTを辞めた時期と、〈デビル〉が出現し始めた時期は大体一致しているわ。もしも退職した理由が自身の精霊化であるとしたら・・・』

 

琴里はううむと唸りながらブツブツと呟き始める。

 

「どうなってんだろ」

 

そもそもアイツがASTに入った理由は、両親を殺した精霊を倒そうとしてのことだったはず。

偶然とはいえ、アイツの両親が助かった筈のこの世界で、一体どんな出来事が折紙の背を押すことになったのだろうか。

 

『───ちょっと士道?』

 

「ん?ああ、ゴメン」

 

琴里の呼び声に、士道はハッとした。

 

『もう、しっかりしてよね。とにかく鳶一折紙が精霊かどうかこっちで調べておくわ。一応、真那も怪しい様子がないか監視しておくよう言っておくわよ。もし、本当に鳶一折紙が〈デビル〉なのだとしたら、非常に危険な反転体よ。あまり無茶はしないで』

 

「わかった」

 

士道はそう言うと、電話を切った。

 

「・・・・・・」

 

携帯電話をポケットに放り込み、士道は廊下を歩き始める。頭の中では面倒な事になったとすぐに整理すると、廊下のすれ違いざまに鳶一折紙とすれ違う。

 

「・・・・ぁ」

 

折紙はすれ違った相手が士道だと認識すると、小さく声を漏らす。

立ち止まる折紙のその横を士道は通ると、そんな士道に折紙は声を上げた。

 

「あ、あの!」

 

「・・・なに?」

 

折紙の呼び止めに士道は足を止め、振り返る。

 

「・・・っ、あの、このあと少しお話しませんか?」

 

折紙のその言葉に、士道は目を丸くした。




耶俱矢「夕弦。作者のヘビアだけ見といて。私が戦車のドルブを潰す!」

夕弦「首肯。もう勝ち筋がそれしかありません」

作者「はっはっはっ!やれるもんなら───」

戦車「やってみろやぁ!」

耶俱矢「てか、アンタ達強すぎない!?作者のヘビアに狙われたら終わりなんだけど!?」←14連敗

作者「だってお前らゴールドフレームとラファエルじゃん。ヘビアの餌だよ?ヘビアの餌」

戦車「生粋の戦車乗りはな、ファンネルにも対応しなきゃ生きていけんからな?」

夕弦「反論。だからと言って耶俱矢のゴールドフレームを捌ききるのはどうかと思います」

作者「ダテに俺の相方努めてないしな・・・」

◇◇◇◇◇

狂三「・・・で?耶俱矢さん達が倒れてますけど、何したんです?」

作者「ヘビアとドルブでボコボコにした」



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第十話

投稿!!

遅れましたが、どうぞ!

水星の魔女もまあ、えらい展開に・・・大丈夫か?あれ・・・


その日の昼休み。士道は教室を抜け出すと、屋上前の階段までやってきた。

教室のある区画から離れているため、ここを訪れる生徒はそういない。実際、校舎中に響く昼休みの喧噪が嘘のように、階段はひっそりと静まりかえっていた。

しかしそれはその場に誰もいないことを示しているわけではない。

士道の目の前───そこには、既に一人の少女が立っていた。───話題の転校生、鳶一折紙である。

 

「・・・で?呼び出してなんかよう?」

 

士道が折紙にそう言うと、折紙はそんな士道に対し、何処か戸惑うように言った。

 

「えっと・・・その・・・五河くん」

 

「うん」

 

「その・・・気が障ったらならごめんなさい。”昔───南甲町の大火災”であったことありませんか?」

 

「・・・・」

 

折紙の反応に士道は少しの間、口を閉じる。

折紙の反応を見る限り、コイツは俺のことを覚えている。

そんな士道に、折紙は言う。

 

「ごめんなさい。変な質問をしちゃって。私がその人に会ったのは五年前ですから。私達がまだ小学生の時でしたし」

 

そう言う折紙に、士道は言った。

 

「で?アンタは俺にそれを言う為だけに来たの?」

 

「!!・・・・迷惑でしたよね」

 

士道の言葉に折紙はすぐに謝ろうとするが、そんな彼女に士道は苛立たちを覚えた。

 

「別にそんなのどうでもいいよ。逆に聞くけど、もしソイツが俺だったらどうするつもりだったの」

 

士道の言葉に、折紙は言う。

 

「もし、貴方がそうだったら・・・お礼を言おうと思ってました」

 

「ふーん」

 

そう言う折紙に、士道は興味なさげに返事を返す。

そして、士道は折紙に言った。

 

「一つ聞いていい?」

 

「・・・?なんですか?」

 

「アンタは・・・“どこまで覚えてんの”?」

 

「・・・え?」

 

士道の質問に折紙はキョトンとした顔を作る。

 

「それってどういう・・・?」

 

「覚えてないならそれでいいよ」

 

折紙の質問に、士道は覚えてなければそれでいい。それだけ言って身を翻すと、階段を降りていく。

 

「もう用がないなら俺は帰るよ。早く戻らないと十香達うるさいし」

 

「・・・あのっ!五河くん」

 

「・・・・今度はなに?」

 

自分を呼び止める折紙の声に士道は振り向くと、折紙は士道に言った。

 

「今週の土曜日なら空いてますので・・・その時、ちゃんとお話しませんか?」

 

折紙からの誘い。士道は一瞬怪しむが、またもない機会でもある。

そんな彼女の誘いに士道は乗った。

 

「いいよ」

 

そう返事をする士道に、折紙は少しだけ顔を明るくすると、メモを士道に渡す。

 

「・・・これ、私のメールアドレスが入ってますのでよかったら登録してください」

 

「・・・分かった」

 

士道は受け取ったメモをブレザーのポケットにしまい込むと、折紙に言った。

 

「じゃあ、また」

 

「はい」

 

士道は折紙にそう言いながら、教室へと戻っていった。




狂三「作者さん作者さん。少しよろしくて?」

作者「ど、どしたの?狂三?すっごい笑顔で怖いんだけど」

狂三「どうして投稿が遅れたのか聞きたいだけですわ」

作者「いやー・・・ちょっと色々とね?」

狂三「言わないつもりですわね?まあいいですわ。貴方にも色々あるでしょうし・・・」

作者「おう、なら・・・」

狂三「ですけど・・・わたくし達を放っておいたのはギルティですのでエアリアルさん。やってくださいまし」満面の笑顔

作者「絶対怒っているのよな!?ちょっ!?俺が逃げられないよう押さえるのは止めて!?エアリアルも掌を振り上げないで!?狂三共々フレッシュトマトになっ───」

掌バチン



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第十一話

投稿!

何処までで切ろうか悩んでました


『向こうから接触してきたって言うの?士道』

 

経過報告で誰もいない学校の屋上で琴里に連絡した士道は、電話越しで疑い半分声を上げる琴里に士道は言う。

 

「うん。土曜日に開いてるからって言われて連絡先もらった」

 

士道は制服のポケットから折り畳まれた紙切れを開けると、恐らく折紙の電話先の番号であろう数字が綺麗な字で書かれていた。

 

『士道からは誘わなかったのよね?───まさか一目惚れって訳でも・・・いや、ありえそうね』

 

そうブツブツと独り言を呟く琴里に、士道は言う。

 

「昔、助けてもらった奴に似てたからって言ってた。五年前に琴里が精霊になって火災が起きた時にあの場所にいたみたいだし」

 

『・・・っ、なるほどね。そう言う訳なら納得がいくわ・・・って待ちなさい。五年前の大火災のとき、“士道にそっくりな人“が鳶一折紙を助けたって言うの?』

 

そう言う琴里に士道は言う。

 

「さっきからそう言ってる」

 

士道はそう言いながら手すりにもたれ掛かると、ふと気配を感じた。

 

「───ん?」

 

『どうしたの?士道』

 

何かしらの反応を示す士道に、琴里は首を傾げるような声音が士道の耳に届くが、士道は琴里に短く言葉を返す。

 

「琴里。話はまた後でいい?誰か来る」

 

『分かったわ。また家で詳しく聞かせてちょうだい』

 

そう返事を返した琴里に士道は通話を切ると、屋上の出入り口付近に視線を向ける。

そして誰もいないが、気配がする方へ士道は言った。

 

「───いるんだろ。出てこいよ」

 

士道がそう言うと、影が蠢いた。

 

「───あらあら。随分と気づくのがお早いですわね」

 

蠢く影の中から狂三が現れた。

 

「やっぱりアンタか」

 

士道はそう言いながらその少女を見る。

士道の視界に現れたのは、士道を五年前の世界に送った精霊、時崎狂三であった。

どうやら見られていたらしい。

 

「うふふ、ごきげんよう士道さん。あの時以来ですわね」

 

そう言う狂三に士道は言った。

 

「・・・もしかして、アンタも覚えてるのか」

 

「ええ、覚えていますわよ。もとの世界のことも。───折紙さんのことも」

 

「・・・・・・」

 

狂三が発した言葉に、士道はまあ当然かと胸内で思う。

 

「じゃあ、アンタはこの場所が変だって気づいてる?」

 

「───折紙さんが精霊になっていた、のですわよね。気づいたのはつい先ほど、ですけれど」

 

「ふーん」

 

士道はそう呟いてから言葉を続ける。

 

「じゃあ、真那が前の事を覚えているのは?」

 

「真那さんも覚えていますの?恐らく【九の弾】の影響ではありません?わたくし自身も【九の弾】を使うことはないのでどれが影響で覚えているのか分かりませんわよ?」

 

そう言う狂三に、士道は小さく息を吐く。

まあどうでも良いことではあるが、狂三自身も分かっていないのであればこれ以上聞く必要はない。

 

「まあ、今の士道さんにとっては今の折紙さんのことを知るのが必要なんでしょう?」

 

「まあ、そうだけど」

 

警戒する士道に、狂三は影の中から一挺の銃が飛び出してきて、その手の中に収まった。

 

「この【十の弾】で折紙さんを撃てば、彼女がこの世界でどのような人生を送ってきたのかを知ることができますわ。まあ無論、全てとはいいませんけれど、なぜ精霊化するに至ったのかに焦点を絞れば、望む情報は手に入るとは思いますわよ」

 

【十の弾】。士道は覚えていないが、それは撃った対象者の有する記憶を、狂三に伝える弾だ。それを使えば何があったのか知ることが出来るのである。

 

「まあ、もっとも“あの”折紙さんに近づいて、【十の弾】を撃てればの話ですけれど」

 

あの反転した折紙に対して悠長な真似が出来るほど余裕などない。なら、ここは士道と協力して士道に折紙を抑えてもらうのが一番効率がよい。

もっとも士道が話に乗るかは別ではあるが。

 

「どうします?士道さん。わたくしと組みません?」

 

狂三は面白がるように銃口に唇を触れさせた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

放課後。一度帰路に就いた折紙は一人、来禅高校へと戻ってきていた。

理由は一つ。下校している途中、いつもつけている髪飾りがなくなっていることに気づいたのである。

別に小さなピン一つ、無くしたところでさしたる痛手にはならなないのだが───それが死んだ母に買ってもらったものであるというのであれば話は別だった。

とはいえ、どこに落としたのかははっきりしない。結局折紙は、歩いてきた道を遡って高校まで戻り、昇降口、廊下、教室と巡って、昼休みに五河士道と話していた屋上前の階段へとやってきていたのである。

 

「あ───あった」

 

折紙はその場にかがみ込むと、床に落ちていたピンを拾い上げる。

どうやら士道と話している時に落としてしまったらしい。恐らく、彼に携帯電話の番号を書いた紙を渡した時に落としたのだろう。

 

「気をつけなきゃ・・・」

 

折紙はそう呟きながら、指先で簡単にピンを拭い、髪につけた。

と、そこで。

 

「え・・・・・?」

 

折紙は、ガラス越しに見える屋上に、二人の人影があるのを目撃した。

一つは、クラスメートの五河士道である。

そしてもう一つは───赤と黒の霊装を纏った、精霊〈ナイトメア〉であった。

 

「あ───」

 

それを認識した瞬間。

折紙の意識は、急に電源を落とすようにぷっつりと途絶えた。




作者「よし、やっと終わった」

電話の着信音

作者「ん?狂三から電話?珍しい」

作者「どうしたの?狂三?」

狂三『今日は小説投稿サボってるのかと思っていましたが、ちゃんと投稿は終わっているようですわね』

作者「えっ?そりゃまあ・・・ていうか、よく投稿が終わったって分かったな」

狂三『ええ。ちゃんと見ていましたし』

作者「・・・・ん?見てた・・・?」

狂三『では、今から入りますわね』

作者「・・・は?入る?」

〈ガチャガチャ!カチャリ・・・

狂三「お邪魔しますわよ。あ、後これは差し入れですわ」

作者「お、おう・・・ってか、玄関の鍵開けっぱなしだったか?」

狂三「ちゃんと閉まってましたから勝手に開けましたわよ」

作者「??????????」

狂三「では作者さん。また詰みプラを崩しますわよ。早くこの量を減らしませんと・・・」

作者「いま一時的に発狂してたところだからちょっと待てや!?」


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第十ニ話

短いですが投稿!


「ん・・・?」

 

士道は、屋上の入り口の方から、キィ、と金屬の扉を開けるような音が聞こえてきた。

そちらへ視線を向けると、そこに一人の少女が顔を俯かせながら立っているのがわかる。

 

「あれ・・・アンタ・・・」

 

そう。顔を伏せていたため一瞬分からなかったが───その少女は紛れもなく鳶一折紙であった。

だが、士道はそんな折紙に警戒の表情を作る。

そんな士道に折紙は顔を伏せ、両腕をだらりとさせたまま、ゆっくりと歩みを進めてくる。

 

「・・・・・」

 

「あら、あら?」

 

士道は不審そうな表情になり、それに合わせるように狂三が眉を歪めた。次いで、一瞬狂三の姿が影に包まれたかのように黒く染まったかと思うと、すぐにまたもとの姿に戻る。

 

「この世界では初めまして・・・になりますかしら、折紙さん?まあ、もしかしたらあなたはわたくしに会ったことがあるかもしれませんけれど───」

 

「精、霊・・・」

 

───と。

狂三の言葉の途中で、折紙が小さく呟いたかと思うと、その身体の周囲に、蜘蛛の巣が張り巡らされるように漆黒の闇が広がった。

 

「・・・・・!」

 

まるで、折紙の周りだけが一瞬にして夜になったかのような光景である。その異常な光景に、士道は直ぐ様戦闘態勢に入った。

次いで、その闇が渦を巻くように折紙の身体に絡め捕われていき、黒いドレスを形作る。

それは紛れもなく霊装だった。

その霊装は以前一瞬だけ目にした反転化した十香と似たような漆黒の衣だ。

途端、周囲に息苦しくなるほどの重圧が満ちた。

だが、士道はそのままバルバトスと共に一気に駆け抜ける。

破壊の権化たる『魔王』。士道も直感的に今の折紙は反転化した十香よりも危険なものだと感じていた。

 

「・・・ふっ!」

 

大型メイスを霊装を纏った折紙へと振り下ろす。

だが、その大型メイスは折紙に直撃することなく、沈黙したままの折紙の周りに浮かぶ巨大な『羽』のようなもの防がれた。

 

「・・・〈救世魔王〉・・・」

 

そして折紙が呟くように言葉を発すると、無数の『羽』たちが、その先端を士道と狂三の方へと向けてきた。

 

「・・・っ!」

 

向けられた羽に対し、士道は大型メイスで身体を隠しながら上空へと急上昇する。

そして先ほどまで士道達がいた場所に『羽』から発された幾条もの光線が放たれ、校舎を削りフェンスを突き破って空へと抜けていく。

そして士道が次に取った行動は早かった。

 

「逃げるよ」

 

「えっ!?士道さん!?」

 

狂三を脇に抱え、直ぐ様学校から高速離脱する。

そんな士道達に折紙は追撃をすることなく、ただバルバトスの後ろ姿をずっと見続けていた。

 





泥棒「ククク。この家施錠してないじゃないか。空き巣にとって良いカモだ。さて、さっきの男が帰って来る前にさっさと盗ませてもらうか。って?誰だお前?いつからそこに・・・?」

?「つい先ほどだ。それよりも貴様───泥棒だな?」

釘バット構えて

泥棒「ちょっ!?待て!!その手に持っているものを置いて話し合おうじゃないか・・・!!」

グシャ!!

作者「あれ?耶俱矢もう来てたの?」

耶俱矢「入れ違いになっていたようだな。というより鍵が開けっ放しだったのは良くないぞ」

作者「あ、確かにすぐそこのコンビニに買い出ししてたから閉めずに出かけてたかも。すまん」

戦車「邪魔するぜ」

狂三「お邪魔しますわ」

夕弦「呼応。お邪魔します」

作者「お、いらっしゃい」

戦車「なあ、ちょっと聞いてくれよ」

作者「どうしたの?」

狂三「先ほど戦車さんと夕弦と一緒に此方に来る際に血まみれの人とすれ違ったんですが」

作者「え?それやばいやつじゃん!」

耶俱矢「通報はしたのか?」

戦車「近くに別の人がやってたから俺達スルーしてきちゃった」

作者「その怪我をした奴は何か言っていたか?」

夕弦「返答。確か、何も見てないとうわ言のように呟いてました」

耶俱矢「ふーん、まあそれならいいか」←小声

作者「うん?今何か言った?」




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第十三話

大変遅れましたぁ!!

投稿です!!


生きてりゃ───良いことあるもんだな。テメェをこの手で殺れるとは

明弘・アルトランド


「ふぃー・・・危なかった」

 

士道は学校からかなり離れた山の高台で着地する。

あの状態の折紙と始めて戦ってみた感想は、面倒な相手といったところだ。

あれの相手をするには最初から本気で戦うことになるだろう。

 

「士道さん!いつまでわたくしを抱えているつもりですの!?」

 

肩で担がれている狂三は士道の肩でそう叫ぶ。

いくらバルバトスの滑らかなカーブを描いた肩部装甲とはいえ、硬く、幅が広いせいで腹部が苦しくなるのだ。

 

「ああ、ごめん」

 

士道は謝りながら狂三を降ろすと、降ろされた狂三は軽く腹部を擦りながら、士道に言った。

 

「助けてやるからいただいたのは感謝しますわ。ですが運び方に問題がありますわよ?」

 

お姫様抱っこ───ではなく、お米様抱っこで運ばれたのだ。

運ぶ方は楽ではあるが、運ばれる方は苦しいのである。

 

「急いでたし、死ぬよりは良いでしょ」

 

士道はそう言いながらバルバトスを消すと、軽く首を回す。

そんな士道に狂三は細く息を吐きながら、来禅高校の方へと視線をやる。

 

「今の折紙さん、どう思われまして?」

 

「別に。相手をするのは面倒だなって思ったくらい」

 

正直、分からないことを考えても仕方ない。今の折紙と殺り合うのは苦戦すると士道は素直な感想を言う。

 

「まあ、士道さんならそう言うと思っていましたわ。一つ確かなのは、【十の弾】を使っての情報収集が困難になった・・・ということでしょうか」

 

「困難になっただけで、やれないことはないでしょ」

 

「無茶を言いますわね」

 

今の折紙の状態を見てやれないことは無いと言う士道に、狂三は溜息をつく。

 

「でもなんでアイツは精霊になってるんだろ?」

 

士道の安直な疑問に、狂三が言った。

 

「それは分かりませんわ。ですが、元の世界とは違って天宮市が反転した折紙さんに容赦なく蹂躙されなかっただけ今のこの状況は『最悪』ではない・・・・・そう思いませんこと?」

 

そう言う狂三に、士道は何も言い返さなかった。

狂三の言う事は間違えではない。

もとの世界で起こったことを考えれば、今この世界は折紙が精霊と接触しなければまだ平和だと言える。

 

「けど、それがずっと続く訳じゃない」

 

あくまでそれは一時的な平和だ。

いつかは元の世界と同じように折紙の手で蹂躙される未来が訪れるだろう。そうなる前に───。

 

「そうですわね。士道さんの言う通り、ずっと続く訳ではありませんわ。それにわたくしも、一つの出来事を変えた際、どのように世界が書き換えられたのか今のこの世界にも興味がありますし・・・───」

 

狂三はそう言いながら士道に向き直ると、身体を石のように硬直させた。

 

「・・・?どうしたの?」

 

士道は不自然に固まった狂三にそう言うが、狂三はその両目を見開いたまま動かない。

そして狂三は始めて、“震える声”で唇を開いた。

 

「“・・・貴方は、誰、ですの”?」

 

「・・・は?」

 

狂三の”言っている意味が分からない”。

先ほど、狂三は『貴女は誰?』と言った。

彼女には自分が“違う誰か”に見えているのだろうか?

 

「・・・俺?五河士道だけど」

 

士道は───“今の自分”の名前を言う。

 

“三日月・オーガス”と言う過去ではなく、今の自分の名前を───

 

「───士道、さん。貴方、気づいていませんの?」

 

「だからなに───」

 

士道がそう言いかけた瞬間、士道は自分の違和感に気づいた。

制服の堅苦しさが感じられない”。

自分が今、“着ている筈の制服の堅苦しさが感じられない”のだ。

士道は視線を下に向ける。

下には、小さな水溜まりが光を反射して夕日を照らしている。そこには自分の姿が───

 

「──────」

 

士道は水溜まりに映る自分の姿を見て目を見開いた。

水溜まりに映る自分のその姿は───

 

「───士道さん。“今の貴方は一体誰ですの?”」

 

五河士道ではなく───“三日月・オーガス”・・・“過去の自分”だった。

 




狂三「さーくしゃさぁ〜ん?」

作者「く、狂三?え、笑顔がスッゴイ怖いんだけど?」

狂三「こ〜の一ヶ月間、何をしていたのか教えて頂きたいのですけれど?」

作者「・・・・(目そらし)」

狂三「言えない理由があるみたいですわね?なら───カミーユさん。やっちゃってくださいまし」

カミーユ「此処から居なくなれーッ!!」

作者「スイカバーをするんじゃねえよ!?俺がシロッコみたいになっ───ぎゃああああ!?」

狂三「放置をする人にもう容赦はしませんわよ!!」

戦車「やべぇ・・・シロッコがブルアカのシロコに聴こえた・・・俺、もう駄目かもしれん・・・」


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第十四話

短いですが投稿です!


狂三は目の前にいる少年を見て、困惑の表情を浮かべた。

先程まで自分は“五河士道”と話していた筈だ。

だが、先程まで五河士道がいた場所に別の少年が居た。身長は五河士道より小さく、狂三よりは少し大きい。

髪は黒髪だが、かなりボサボサな髪で整えた形跡はない。

そして青空のように澄んだ目には力強い意志が感じられた。

 

「本当に・・・貴方は士道さん───ですの?」

 

目の前にいる少年に狂三はそう言うと、少年は答えた。

 

「そうだけど、“今は違う”」

 

“今は違う”。その言葉で狂三は察した。狂三の目の前にいる少年・・・彼は五河士道なのだ。

狂三は信じがたいその状況を一度受け止める。これでも馬鹿げたこの状況を受け入れている訳ではない。あくまで一時的の話だ。

 

「それで士道さん・・・その姿は一体なんですの?詳しく聞かせてくださいまし」

 

五河士道の今の姿に、狂三は疑問を抱く。

一体どういう理由でそのような姿になったのか。

そんな狂三の疑問に対し、三日月は答えた。

 

「“俺にはもう時間がないから”」

 

「・・・どういうことですの?」

 

狂三は三日月のその言葉に眉を顰める。

何故、それが士道の姿が変わるのと意味があるのだろうか?

そんな狂三の返事に、三日月は話を続ける。

 

「多分、バルバトスが俺を此方に居させることが出来なくなっているんだと思う。俺は、ユージンやチョコの人と違うみたいだし」

 

「ちょっと待ってくださいまし。居ることが出来ない?ユージンさんとは違う?それはどういう───」

 

狂三は瞬きをした瞬間、士道の姿は元に戻っていた。

もとに戻ったのに気がついたのか、士道は「戻った」と気が抜ける声を出し、狂三に背を向ける。

 

「ちょっと士道さん?何処へ行くつもりですの?」

 

呼び止める狂三の声に、士道は言った。

 

「帰る。何か今日凄い疲れた。それに帰るのが遅くなると琴里もうるさいから」

 

「なっ・・・士道さん!待って下さ───っ!?」

 

そう言って帰り道へと歩き始める士道に狂三は呼び止めようと、足を踏み出した瞬間、士道の影の中から“複数の赤い目”がジッと此方を見ていた。

士道は一度振り返ると、狂三に言った。

 

「十香達には秘密にしといてよ。多分知ったら、皆絶対に止めにくるから」

 

もし、自分も十香達と同じ立場になったらきっと同じ事をする。

たとえ、身体の半分が使えなくなってもきっと十香達を───家族を助けにいくだろう。

だからこそ信用が出来ない口約束だけとはいえ、しておいて損はない。

昔の自分ならきっとこんなことはしなかった。───けど、この世界に、自分の居場所はない。皆の笑顔を見て、改めて戦うことしか出来ない自分にとって場違いな所だと実感した。オルガと目指した本当の居場所。鉄華団が自分の帰る居場所なのだから。




作者「さてさて、ミカ編をどうしようかな?物理的にミカを消すか、それとも元の士道君出して、ミカをいなくするか・・・どっちがいい?」

狂三「どちらも嫌と答えたら貴方はどうするつもりですの?」

作者「どちらもノーって答えるって言ったら?」

狂三「十香さん達を呼んで来ますわよ?」

作者「それはシャレにならん!!」


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第十五話 記憶

投稿!


「───」

 

「・・・・・」

 

「───!」

 

誰かが自分を起こすような声が聞こえてきた。

が、真那はソレを無視する。

 

(・・・うるせーですね)

 

真那はそう思いながら、睡眠を貪る。

明日は早いのだ。精霊〈ナイトメア〉の情報収集に〈デビル〉の監視。琴里にも許可をとってあるし、兄様もこういう時は起こしにこない。

じゃあこの声の主は誰だと思ったが、今は眠気が勝つせいで真那の思考は朧気だった。

 

(・・・考えるだけ無駄ですね。こういうときはさっさと眠気に任せるに限ります)

 

真那は眠気に身を預け、深い眠りにつこうとしたその時───。

 

「起きろ!真那!」

 

「───痛ぁッ!!?」

 

ズビシッ!!と額に鈍い痛みが走る。

 

「───ちょっ!?誰でやがりますか!?」

 

ジンジンと奔る額の痛みに頭を抑えながら、涙目で真那は身体を起こす。

 

「やっと起きたか。真那、学校に遅れるぞ」

 

「・・・は?・・・えっ?」

 

真那は目の前にいる士道の姿に、目を丸くする。

何故なら、目の前にいる士道は右腕がちゃんと動いていた。

自分の知る兄様は十香を助ける際の後遺症で右腕が動かなくなってしまったというのに。

 

「兄様?その、右腕・・・動くんでやがりますか?」

 

「・・・?何言ってるんだよ、真那。最初から動いているに決まってるじゃないか」

 

なに言ってるんだと不思議そうにする士道に、真那は訳が分からないといった心情だった。

これは───夢なのだろうか?

 

「真那、朝飯出来たから早く準備してこいよ。ミオも待ってるんだから」

 

「・・・は?ミオさん?だから、何を言ってやがるんですか、兄さ───」

 

と。

 

言いかけた瞬間。真那の頭に鋭い痛みが走る。思わず額を更に強く押さえ、顔をしかめた。

 

「う・・・く・・・!」

 

ただの頭痛ではない。───ミオ。その名を口にした瞬間、真那の頭の中に、見たことのない景色が幾つも浮かんできたのである。

友人と遊んだ公園。教室で授業を行う先生。兄の士道が祝ってくれた誕生日。

───そして、髪の長い少女の後ろ姿。

なんだ?この記憶は───

 

「・・・あ、なたは・・・一体、誰で・・・やがりますか!」

 

士道の姿をしたナニカに真那は、自分の拳を叩きつける。

硝子に硬いものを叩きつけたかのように真那の視界がヒビ割れる。

そして───ガシャン!!と甲高い音と共に、視界の全てが暗くなった。

ガンッ!!と硬い音を殴った音と共に真那は目が覚めた。

 

「・・・ッ!!・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

呼吸が荒い。心臓がバクバクする。

真那は大量の汗をかきながら、身体を起こした。

 

「・・・夢?」

 

辺りが暗い。真那は時計を見ると、十一月十一日の午前一時の針を刺していたのを見て、真那は思い出した。

 

「そういえば、十香さん達と兄様と一緒に晩御飯食べて・・・眠くなって・・・」

 

そのまま寝落ちしてしまったようだ。

 

「・・・お風呂入りましょうか」

 

そういえば昨日はまだお風呂に入っていないし、汗でぐっしょりになった身体を洗い流したい。

真那はベッドから身体を起こすと、部屋の扉を開けて音をたてないようにソロリソロリと廊下を歩いていく。

───と。

 

「・・・あれ?」

 

リビングに明かりが灯っている。誰か消し忘れたのだろうか?

真那はそのまま階段を降りていくと、ソファに誰か座っていた。

 

(こんな時間に誰が───)

 

真那は不思議に思いながら、そっと覗くとそこには───

 

「───えっ?」

 

小さく声が溢れた。

カチャカチャと片手で器用に銃を分解し、銃のメンテナンスをする黒髪の少年。

顔は見えないが士道よりも更に子供らしい、自分や琴里と同い年と言っても問題ないくらいの身長の少年だ。

そんな少年は階段に隠れている真那に気付かず、銃のパーツを器用に片手で掃除をしていく。

 

(貴方は───誰でやがりますか?)

 

真那はもっと近くで見ようと身体を乗り出した瞬間───。

ギシッと階段の音が鳴る。

 

(───ッ!?)

 

真那は咄嗟に身を隠すがもう遅い。

 

「誰」

 

低い声で少年が階段にいる真那に向けて言う。

 

「──────ッ」

 

ギシギシと床を踏みしめる音が此方に近づいてくる。

真那は目を瞑り、身体を小さくしてやり過ごそうとした時だった。

 

「あれ?真那。こんな時間にどうしたの?」

 

聞き慣れたその声に真那は顔を上げると、そこにいたのは───

 

目を丸くした士道だった。

 

「兄様・・・?」

 

真那は恐る恐るといった声で士道を呼ぶと、士道はそれに答えた。

 

「なに?」

 

「・・・ッ!そういえばあの人は!」

 

真那はそんな士道に対し、ハッと思い出したようにリビングのソファに視線を向ける。だがそこには誰もおらず、解体されていた銃のパーツが机の上に散らばっていた。

 

「あれ?」

 

誰もいない。

真那はあの少年が先程までいた場所まで歩いていくが、そこには誰もいなかった。

 

「どうしたの?」

 

「兄様・・・ここに私と同い年くらいの男の子を見ませんでした?」

 

「・・・?俺、ずっとここにいたけど見てないよ」

 

「じゃあ、私が見たのは一体・・・?」

 

真那はそう呟くと、士道が言った。

 

「気のせいじゃない?ていうか、真那は何しに来たの?」

 

「あ、そうでした。お風呂に入りに来たんでした」

 

「風呂?」

 

「はい。まだ入っていなかったのと、ちょっと・・・嫌な夢を見まして。それで汗をかいたので洗い流しにきたんです」

 

「ふーん」

 

「そういえば・・・・・兄様はこんな真夜中に何をしていやがったんですか?」

 

真那は机の上にバラバラになった銃を見ながら士道に聞くと、士道は言った。

 

「メンテナンス。最近使ってないけど、何時でも使えるようにやってる。十香達がいる時は出来ないし」

 

真那はそう言う士道に、なるほどと納得する。

銃というのは繊細な武器だ。

ちょっとした汚れや歪みで弾が出なかったり、暴発したりと命の危険に関わることがある。

 

「でも使わないだけいいじゃねーですか。それだけ平和なんですし。それに今日は折紙さんとデートをする日なんでしょう?こんな遅くまで起きていていいんです?」

 

「これが終わったら寝る。真那も早く入って寝たら?明日、真那も早いでしょ」

 

士道がそう言うと、真那は誤魔化すように目を反らす。

そんな真那を見てか、士道は小さく息を吐くと分解してある銃のもとへ戻っていった。

そんな士道の後ろのを見て、真那はあの少年の姿と士道の姿を影絵のように合わせるが、とても似ているとは思わなかった。

 

(・・・気のせい・・・ですよね)

 

きっと変な夢を見たから士道の姿が別の人に見えたに違いない。

真那はそう決めつけ、風呂場へと歩いていった。

と、そんな真那は足を止める。

 

そういえば───

 

「兄様」

 

「ん?」

 

真那は銃のメンテナンスをしている士道に声をかけると、士道は真那の方へ振り向いた。

 

「“ミオ”さんって人、兄様は知っていますか?」

 

夢の中で士道が言っていた女の人の名前を真那は言うと、士道から返ってきた言葉は───

 

「“知らない”」

 

「まあ私も知らねーですし、兄様も知らないのも仕方無いですよね・・・」

 

士道の言葉に真那がそう言うと、士道は真那に聞く。

 

「探してる人?」

 

「なんでもねーですよ」

 

士道の問いに真那はそう答え、風呂場へと歩いていった。




作者「ハッハッハ!」

狂三「凄い楽しそうな顔ですわね・・・何か良いことでもありました?」

作者「バトオペ2のゼク・ツヴァイ楽しー!!」

狂三「ああ、あの大きい機体でしたわね?使いづらいと戦車さんは言ってましたが、作者さんは平気ですのね?」

作者「平気よ?バウンド・ドックよりは」

狂三「ああ・・・なるほど」


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第十六話

投稿!!




十一月十一日、土曜日。

 

士道は一人、天宮駅前に至る道のりを歩いていた。

空は晴天。空気こそひんやりとしているものの日差しは暖かく、もう冬も近い天気とは思えなかった。

 

『───士道。鳶一折紙が《デビル》だってことには変わらないわ。気をつけて行きなさいよ?』

 

「分かってる」

 

右耳に装着された小型インカムから、琴里の声が聞こえてくるが、士道は適当に聞き流す。

士道からして見れば、鳶一折紙とのデートは正直あまり乗り気ではない。

いかんせん前の世界では敵対関係だったのだ。

それに士道の方から距離をとっていたことが多かったので、折紙のことを知らないことが多い。

と、そんなことを考えていた間に、駅前の広場までたどり着く。

折紙と待ち合わせをしていたのは、駅前広場の噴水前だった。ちょうど、十香や狂三とのデートをしていた時と同じ場所である。

 

「ん?───」

 

広場に足を踏み入れた士道は、短く声を発し、その場で足を止めた。

理由は単純。既に噴水の前に折紙の姿があったからだ。

可愛らしい意匠の施されたブラウスに、カーディガン。秋らしいカラーのスカート。士道が知っている折紙ではあまりしないようなスタイルの彼女が噴水前に立っていた。

 

『・・・あら?案外早いわね。予定より十分くらい早いみたいじゃない』

 

琴里の以外そうな声を無視し、士道は止めていた足を噴水の方へと進める。

すると、それに気づいたのだろう。噴水の前に立っていた折紙がふっと顔を上げ、驚いたような顔をしてきた。

 

「五河くん?早いですね」

 

「別に。普通でしょ」

 

集合時間より早く行動する。CGSの時にこれを守らなければ大人に殴られていたし、何よりアトラやクーデリアも良く言っていた。

だからこそ、待ち合わせなどでは普段よりも十分前に動くように身体が癖づいている。

そう言った士道に、折紙は一瞬広場に立てられた時計を見て、恥ずかしそうに肩をすぼませる。

 

「その、待たせてはいけないと思って」

 

「別に気にすることじゃないだろ」

 

士道がそう言うと、折紙は目を丸くした。そののち、どちらからともなく笑いが漏れる。

 

「今日はその、付き合ってくれてありがとうございます、五河くん。・・・でもあの、私、恥ずかしながら、男の人と二人で出かけた経験がないので、もしかしたら至らぬ結果になるかもしれないんですけど」

 

堅苦しい折紙に士道は小さく溜息をつくと、折紙に目を向ける。

 

「・・・別にそんな畏まらなくたっていいよ」

 

「・・・・えっ?」

 

士道のその言葉に、折紙はキョトンとした顔をつくる。

 

「別に歳なんてそんなに変わらないだろ。普通に喋れば?」

 

クーデリアも敬語をずっと使っていたが、それは自分達鉄華団に対する敬意を込めて言っていると言われ、その時は何も言えなかったが、彼女は違う。

相手の気を使うような喋り方だったので、士道からして見れば何処か不愉快な気分になったのだ。

そう言う士道に、折紙はしばし困ったように眉を八の字にしたが、やがてそれを承諾するようにこくりと頷いた。

 

「わかりまし・・・あの、・・・わかった」

 

折紙が、慣れない様子で言ってくる。

 

「・・・・ん。じゃあ、行くよ」

 

「えっ?ちょっと待ってください!?」

 

先に歩き始める士道を追いかけるように折紙も士道の後を追った。




作者「うーん」

狂三「どういたしましたの?」

作者「いやね、ガンダムエボルーションにヘビアew来たからやろうか迷っててね・・・」

狂三「思ったよりしょうもないことでしたわ」

作者「いやでも、ガンダムゲーは俺、掛け持ちしてるから。ガンオペ2しかり、パソコンのSDガンダムオペレーションズも長いことやってるから出来ないのよネ」

狂三「結構掛け持ちしてますわね・・・」


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第十七話

投稿!


「そういえば五河くん、今日は何をするの?」

 

「え?」

 

折紙のその言葉に士道は足を止め、顔を折紙へと向けた。

 

「アンタが呼んだから何にも考えてなかった」

 

「あ・・・そういえば・・・ごめんなさい」

 

折紙は士道のその言葉に謝ると、そんな折紙に士道は言った。

 

「適当に買い物でいいだろ。俺だって買いたいものあるし」

 

「あ、なら五河くんに行き先を任せますね」

 

折紙はそう言いながら士道の横を歩く。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

『いや、何か会話くらいしなさいよ』

 

喋る事がない士道に気まずそうにする折紙。琴里がインカム越しでそう言ってくるが、士道はそれを無視した。

喋ることがないなら喋らない。

それだとデートの意味がないのだが、その辺りは士道に任せるしかない。

 

「どうなるのかしら・・・ホント」

 

琴里は溜息をつきながら艦橋の椅子で士道達を見守るのだった。

 

 

 

そしてそんな士道達を後ろから見守る影が一つ。

 

 

 

「・・・何やってるんですか兄様は・・・」

 

キャップ帽を被り、フード付きのパーカーとスカートにスニーカーといった格好で真那は、人混みに紛れ込みながらズズズッと近くの売店で買った飲み物を啜る。

折紙の監視という名目だが、傍から見ればやっていることは完全なストーカー行為である。

なるべく距離が離れないように、それでいて怪しまれないようにゆっくりと歩きながら真那は士道達の後ろを歩く。

 

「あれじゃあ、気まずくなるだけですのに。折紙さんの方は・・・前の方が積極的過ぎただけでしたか・・・」

 

「なーにが気まずくなるんだって?」

 

溜息を吐く真那に後ろから声が投げられる。

聞き覚えのある声に真那は振り返ると、そこにはユージン・セブンスタークがそこに立っていた。。

 

「あ、ユージンさん。お久しぶりです」

 

「・・・おう。で?なに三日月の後を付けてんだ?それにアイツは誰だ?また“精霊”絡みの厄介ごとかよ」

 

ユージンは士道の隣を歩いている折紙に視線を向けながら真那にそう言うと、真那は頷く。

 

「・・・まあ、そうですね。精霊絡みといえば精霊絡みですが・・・・というか、何故ユージンさんは此処にいるんです?買い物ですか?」

 

真那が士道達から視線を逸らさずにユージンに問うと、ユージンは溜息をつく。

 

「まあな。で、その買い物してた最中でお前等を見つけたって訳だ」

 

「ん?お前等・・・?」

 

真那はユージンのその言葉に疑問を浮かべ、首を傾げる。

そんな真那にユージンは自分達の後ろ側に親指を指した。

 

「アイツらだよ」

 

ユージンが指差す先────そこには電柱で身体を隠しきれていない十香達の姿があった。

 

「・・・本当に、良かったんですか?」

 

『でも、四糸乃も気になってたんでしょー?』

 

「ぬう・・・シドー・・・」

 

「ちょっ!?ここで姿出さないでよ!?」

 

「三日月さんはああいった人が好きなんですかねぇ〜?」

 

「いや、そうではなかった気がするが・・・」

 

「首肯。どちらかと言えば嫌っていました」

 

顔を覗かせる六人(一匹)に真那は顔を引き攣らせた。

 

「あんなの嫌にでも目につくだろうが」

 

ユージンの言葉は正論でしかない。

 

「取り敢えずアイツらと一緒に行動しねえか?流石にアレは目立つわ」

 

「やっぱりそうでやがりますよね・・・流石にアレは目立ちますね・・・」

 

真那とユージンはそんな十香達の元へと足を進めた。




狂三「最近、作者さんはトーリスリッターしか使ってませんわね?」

作者「基本はイクスェスがメインよ?支援居ないときはシェザールジェスタBだけどさ」

狂三「でも作者さん、いろんなコスト対を回っていますわよね?」

作者「基本は650と600ばっかだけどなー」




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第十八話

投稿!!



「そういえば五河くんっていつも、どんなお店で服を買うの?」

 

「・・・?急になに?」

 

そう答える士道に、折紙は慌てた様子で答える。

 

「あっ、そこまでの理由じゃないよ?ただ、五河くんって案外オシャレなんだなーって」

 

「ああ、そう言うことか」

 

今の着ている服。これは言わば琴里や真那、耶俱矢に夕弦、美九が選んだ服であり、自分が選んだ服ではない。

 

「この服、琴里や真那が選んだやつで別に俺が選んだやつじゃないよ。俺が選ぶとだいたい同じやつになるから」

 

「あ、そうなんだ」

 

折紙は士道の言葉に折紙は以外そうな表情を作る。

士道はそんな折紙に顔を向けて言った。

 

「じゃあ、服見に行く?」

 

「えっ?」

 

「買い物しに来たんだから服屋くらい別にいいよ」

 

そう言う士道に折紙は少し考えたような仕草をした後、士道に言う。

 

「じゃあ、ちょっと戻っちゃうけど駅ビルの方に行ってみてもいい?実はあんまり行ったことないんだ」  

 

「わかった」

 

折紙の言葉に、士道は首肯した。そのまま路地裏を抜け、大通りを駅方向に歩いていこうとした時。

 

「───ん?」

 

そしてその時、士道は先程から自分に向けられていた謎の視線の正体に気がついた。

視界の端。隠れるようにいる少女達の影があった。

その少女達の姿に士道は目を丸くする。

 

「───皆?」

 

「え?」

 

士道の呟きに、折紙は小さく首を傾げる。

 

「どうしたの?五河くん?」

 

「・・・何でもない」

 

士道は折紙にそう言って駅ビルの方へと向かっていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・セレクトショップに入ったな」

 

「入りましたね」

 

ユージン達は遠目でその様子を十香達とともに観察する。

 

「・・・ぬぅ」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・いや、アンタ達何か喋りなさいよ」

 

七罪はジッと士道達の姿を観察する十香達に突っ込む。

傍から見れば完全な不審者なのだ。

七罪の言いたいことは分からないでもない。

 

「しっかしまあ、あの三日月があんな風になぁ・・・ちょっと以外だな」

 

「・・・?ユージンさんは兄様の買い物事情を知ってるのです?」

 

真那のその質問にユージンは答える。

 

「ああ、まあな。三日月はアトラやお嬢に連れられて護衛って形で一緒に行くことがあったくらいでよ」

 

「・・・護衛?」

 

ユージンのその言葉に真那は怪訝そうに聞き返す。

護衛。ユージンの口から出たその言葉に、真那は更に質問をしようとしたその時だった。

 

「・・・・うぃ!?」

 

と、ユージンの口からそんな訳がわからない声が漏れた。

 

「ど、どうしたんです?」

 

真那はそんなユージンに聞き返すと、ユージンは顔を引き攣らせながら指を指した。

 

「・・・一体何が」

 

真那はユージンの視線の先に視線を向けると───

 

「・・・・・へ?」

 

真那は折紙のその姿を見て、素っ頓狂な声が零れ出た。

試着室の中にいる折紙の姿。

それはスクール水着に頭には犬耳のカチューシャ、そして首元には革製の首輪が───

 

「な・・・な、・・・!?」

 

真那は折紙のその姿に唖然とした表情をつくる。

そして士道もそんな折紙を見て、一歩。一歩だけだが足を引いていた。

士道が始めて魚を見た時以来の引き具合である。

───と、真那の耳もとのインカムからビーッ!ビーッ!というアラームが鳴り響いた。

 

『真那!十香達の感情値が!』

 

「はい!?」 

 

琴里の声に真那は振り返るとそこには───

 

「し、シドー・・・」

 

目の前の光景に士道の名前しか何も言えない十香。

 

「・・・・・・・!」

 

『四糸乃ー、がっつり見ちゃってるよー?』

 

手で目を被うものの、指の隙間からチラチラと見ている四糸乃。

 

「どうする夕弦?処す?処す?」

 

「首肯。処しましょう。アレは士道に良くないものです」

 

アレは良くないものだと士道の元へと向かおうとする耶俱矢と夕弦。

 

「み〜か〜づ〜き〜さ〜ん?」

 

美九の貼りつけたような笑みが怖い。

 

「ちょっと!?ちょっと!?」

 

そんな彼女等を七罪が抑えようとしているが、まったく抑えきれていない。

 

「あー!もう!なんでこんなことになるんですかぁ!」

 

「知るかよ!てか、それよりもアイツらを抑えねえと!」

 

真那とユージンはそんな彼女達を宥めるべく、彼女達の元へと向かっていった。




作者、戦車「「ヒャッハー!汚物は消毒だー!」」

ゼク・ツヴァイとズサを使いながら

狂三「ああ、ジ・Oとか言う機体が一瞬で・・・」

作者「行くぞ!戦車!汎用と強襲を滅ぼすぞ!」

戦車「おう!」

狂三「何なんですの・・・ホントに・・・」


その日───バトオペの汎用と強襲が二機の機体に滅ぼされた


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第十九話

マルコシアスとあたらしいモビルアーマーの戦闘、格好良かったですねー!
ガンダムハーゲンティという、ラスタル・エリオンの保管していたガンダムがあれかぁ

てか、厄祭戦はあんな戦いばっかだったのか・・・


エアリアル?

まあ、予想してたから衝撃は薄かったけど・・・予想、はずれてほしかったなぁ・・・


「・・・ごめんね。せっかく誘ってくれたのに。私ちょっと今日おかしいみたい・・・」

 

店を去ってからおよそ二十分後。同じビルの上層階に位置するレストランで、折紙は額に手を突きながら言った。

 

「・・・・・」

 

「あっ、ゴメンナサイいつもこんなんじゃないのだからお願い無言のまま引かないで!」

 

慌てたように謝る折紙に対し、士道は顰め面のまま椅子に背を預け、折紙を見ていた。

 

「・・・はぁ」

 

折紙は、士道に勘付かれないよう小さなため息を吐いた。

別に、士道と街を歩くのがつまらないわけではない。それどころか、こんなに気分が高揚したのは久々と思えるくらいに、楽しくて仕方なかった。

それなのに、時折・・・不思議な感覚に襲われてしまうのだ。

自分自身でも理由は分からない。

だが、心の内に波のような衝動をが押し寄せてきたのである。

 

「どうしちゃったんだろう・・・私・・・」

 

もう一度ため息を吐く折紙に合わせるようにして、先ほど注文していた料理が運ばれてきた。

士道の目の前にバジルソースのパスタが置かれ、折紙の手元にシーフードドリアが置かれる。

折紙は目の前に座る士道から話を逸らすように目の前に並べられた料理に目をやった。

 

「ほら、五河くん。冷めないうちに食べよ?」

 

「うん」

 

折紙に促された士道はフォークを手にとってパスタを食べ始める。器用に左手で食べる士道を眺めながら折紙もまた、手元のシーフードドリアに手をつけ始めた。

と、それからどれくらい経った頃だろうか。士道がパスタを半分くらい食べたところで、不意に士道のポケットから音楽がなった。

 

「・・・・ちょっと出る」

 

ポケットの中から取り出した携帯電話を見て、士道は席を立った。

 

「あ、うん」

 

折紙は小さく頷いて士道の背を見送った。

そして士道の姿が完全に見えなくなってから、さらに大きなため息を吐く。

 

「ホントにどうしちゃったんだろ、私」

 

せっかく士道が誘ってくれたというのに、これでは彼に申し訳ない。というか引かれてしまった。もっと気を強く持たなくては。折紙はスプーンを置くと、自分に活を入れるように軽く頬を張った。

パシンッ!と乾いた音と共にジンジンと痛みが頬に奔る。

 

「よしッ!」

 

そして気を張ったその瞬間。

 

「あ───」

 

折紙の目に、とあるものを捉えてしまった。

決意を新たにしたばかりだというのに、またも心が歪むような感覚が襲ってくる。

折紙の目にしてしまったもの。それは───

 

「い、五河くんの・・・フォーク・・・」

 

食事中に席を立ったということは即ち、そこには使用中のフォークがそこに置いてあるということであった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ユージンさん!手を離してください!」

 

「今離したらお前彼処に行くだろうがッ!?」

 

ナイフを片手に折紙の元へと行こうとする真那に、ユージンは冷や汗を流す。

 

「大丈夫です!すぐに終わりますから!」

 

「じゃあそのナイフは何だよっ!?」

 

「なんでもねーですよ。ちょーっと折紙さんをサクッと殺ってくるだけですから」

 

「殺るって言ったよな!?今、殺るって言ったよな!?」

 

真那の十香達と変わらない暴走っぷりにユージンはレストランの中で叫ぶ。

 

「おい!お前等も止めろよ!?」

 

「ふん、何を止める必要がある?ちょうどいい真那よ。ユージンを剥がしてやるからやってくるがいい」

 

「同意。今この状況を邪魔しているのは貴方です」

 

「お前等に聞くこと自体が間違ってたわ!!」

 

耶俱矢と夕弦に声をかけた自分が馬鹿だったとユージンは叫んだ。

他の皆は使い物にならないしどうしたらと考えるユージンに───

 

「───お客様」

 

「あ」

 

レストランの従業員にユージン達は声をかけられた。

 

「他のお客様のご迷惑にならないようお願いします」

 

「す、すんませんでした・・・」

 

最近こんなことばっかりな気がする。

 




作者「あ、美味いわコレ」

狂三「本当ですの?一口頂けます?」

作者「いーよ」

戦車「しっかし・・・何か煩いよな。さっきから」

狂三「何処かで子供が喧嘩でもしているのでしょう・・・あら、美味しいですわね」

作者「だろー。てか、飯の時くらい静かにしてくれよ・・・騒がしいのもいいけど、このレストランはそんなテンションでやる場所じゃないだろ」

狂三、戦車「「同意(ですわ)」」


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第ニ十話 魔王

今の所、モビルアーマーは合計四機出ていますが、一体何種類のモビルアーマーあるんだよ・・・厄祭戦は・・・


時刻は十八時三十分。十一月ともなれば日が落ちるのも早い。街は既に深い夜闇に沈んでいた。

日中の陽気が嘘のように空気が冷たく、息を吐き出せば、うっすらと白い靄が生まれる。

そんな冬の足音が辺りを包む中、士道と折紙は二人、街を一望できる高台の公園に訪れていた。

公園の外縁からは数多の星が煌めき、暗い夜闇を照らす街の光がどこか幻想的でもある。

 

「・・・はぁ」

 

士道の吐いた息が白い靄を作る。

そんな士道に夜景を眺めていた折紙が小さく首を前に倒した。

 

「ちょっと寒いね」

 

「これくらい平気」

 

士道のそっけない返事に折紙は苦笑しながら手と手を擦り合わせる。

昼間こそ色々と暴走した彼女であるが、どうにか此処にくるまで落ち着きを取り戻して・・・はいなかった。

あれ以降もいつの間にか携帯のレンズがこちらに向いていたり、手に何も持っていないのに、士道の飲みかけのコップに何かを注ぐような仕草をしたりしていたのだが、士道自身は鬱陶しがるだけでそれ以上は何もしなかった。

もっとも、士道とした何度か口に出そうとした場面は幾つもあったが。

 

『本当にどうなるかと思ったわ。あの奇行も数々もそうだけど、十香達の暴走もユージンがいなかったらどうなっていたか』

 

真那も色々と面倒臭くなっていたし・・・と、耳元のインカムからそんな琴里の呟きが聞こえてくる。

士道は無言のまま星を眺めていると、ふと隣にいる折紙から声をかけてきた。

 

「ねぇ───五河くん」

 

「ん?」

 

「その・・・聞いて欲しいことがあるの」

 

「聞いてほしいこと・・・?」

 

折紙のその告白に、士道は聞き返す。

すると折紙は数瞬の間、逡巡するように士道から視線を逸らしてから、ゆっくりと唇を動かした。

 

「私がAST───陸自の対精霊部隊にいたことは知っているんだよね」

 

「・・・うん」

 

「でも私、少し前にASTを辞めてるんだ」

 

「・・・ふーん」

 

士道は言葉を濁す。折紙がASTを退職しているということは、既に琴里から聞いている。

 

「なんで辞めたの?」

 

そう言えばコイツが辞めた理由を士道は知らない。

士道が言うと、折紙は、ふっと目を伏せた。

 

「うん・・・いくつかあってね。一つはこの前みたいに貧血で意識が途絶えることが多くなってね。危険な武器を扱う仕事に、その症状は致命的だから。でも───その症状が出てきてからかな。私、よくわからなくなってきちゃって」

 

「わからなくなった?」

 

それはどういうことだろうか?

士道は眉を寄せながら言うと、折紙に気まずげに苦笑した。

 

「・・・空間震の原因である精霊を倒すのがASTの仕事なのに・・・私、それが本当に正しいことなのか、なんて思っちゃって」

 

「・・・・・」

 

折紙のその言葉に士道は少しだけ驚いた表情になった。

それはそうだ。士道が知る鳶一折紙といえば、精霊を憎み、殺すことのみを目的に生きている少女だった。 

やはり親を精霊に殺されたわけでないという要素が大きいのかは分からないが、それでも折紙の口からその言葉を聞くとは思いもしなかった。

しかし折紙は、士道の反応をどう受け取ったのか、申し訳なさそうに眉根を寄せる。

 

「・・・ごめんなさい。本当は精霊は危険な存在なのに」

 

「謝る必要なんてないでしょ」

 

「え・・・・」

 

士道の言葉に折紙は顔を上げる。

士道は自分を見る折紙の目を見ながら言った。

 

「本当に正しいことなんて“自分が決めること”だろ。アンタは自分で考えてASTを辞めた。なら、それでいいじゃん。その考えが悪いだなんて誰が言うの」

 

───自分で決めること。

 

それは前の自分は殆どしてこなかったこと。

自分も鉄華団の皆もクーデリアが来るまではオルガに頼り切りだった。

もしかしたら今も、昔と変わっていないのかも知れない。

今の折紙は自分で精霊を倒すのが正しいのかを考えて、分からないからASTを辞めた。

士道は今の折紙なら大丈夫だと思った。

今の折紙なら十香達と一緒でも大丈夫と。

 

“自分がいなくても”───大丈夫だと

 

「五河くん・・・」

 

士道のその言葉に折紙は震える声で答える。

微かに肩を震わせながら、今にも泣き出しそうな顔だった。

と、その時───

手すりから身を乗り出して空を見上げていた折紙が不意に息を詰まらせたかと思うと、急に士道の左手を握られた。

 

『士道!』

 

警告するかのような琴里の声が、右耳から聞こえてくる。

一瞬士道は首をひねったが───すぐに理解した。

折紙が体重をかけていた部分がメリ、と音を立てて崩落した。

無論、そこから身を乗り出していた折紙の身体も、それに合わせるように、高台の外縁部から放り出された。

 

「きゃあっ!?」

 

「───!!」

 

折紙が甲高い悲鳴を上げる。

士道も一瞬の出来事に動揺したが、力を入れて折紙の身体を引っ張り上げる。その際、壊れた手すりの断面に左腕が擦れたのか鋭い痛みが生まれた。

思いっきり引っ張り上げたせいで折紙の身体が士道にぶつかり、密着する。

 

「・・・平気?」

 

「う、うん・・・ありがとう、五河くん」

 

士道の言葉に、折紙が声を震わせながら返してくる。よほど驚いたのか、押しつけられた胸越しに、彼女の激しい鼓動が伝わってきた。

が───

 

「・・・・?」

 

不意に士道は彼女の様子が可笑しいことに気づいた。

折紙の視線が、士道の顔ではなく、もっと下・・・士道の左腕に向いていたのである。

士道の左腕は、折紙を引っ張り上げる際に生々しい切り傷ができていたのだが・・・その傷を舐めるように、炎が揺らめいていた。

 

『・・・!士道!逃げなさい!』

 

琴里の叫びが鼓膜を震わせると同時───

 

「───精霊・・・」

 

「・・・・・ッ!」

 

士道が動こうとしたその瞬間、折紙の身体の周りに凄まじい霊力が生じ、士道を軽々と吹き飛ばした。

 

「が・・・・っ!?」

 

「な、おい、三日月!?」

 

「兄様!!」

 

「シドーッ!!」

 

「士道・・・さん!」

 

「「士道!!」

 

「三日月さん!!」

 

「士道!」

 

吹き飛ばされた士道に、隠れていた八人が士道のもとへと駆け寄る。

 

「大丈夫、平気」

 

士道はそんな彼女らに身体を起こしてもらいながらも、視線を折紙へと向ける。

折紙を中心として真っ黒い蜘蛛の巣のようなものが放射状に広がり、それが渦巻くように折紙の身体を纏わりついていた。

 

「あれは───」

 

十香が驚いたように折紙を見る。

喪服の如き、漆黒の霊装。

その姿は───紛れもなく。

もとの世界で街を蹂躙し尽くしたあの反転体の姿だった。




作者「狂三、狂三、今日は戦車以外の人が来るから」

狂三「戦車さん以外の?」

作者「そ。前にEXーSガンダムのガンプラ作っただろ?あれ、ソイツに以来されて作ったんだよ」

狂三「そうなんですの?一体誰です?」

作者「エクバにバトオペではEXーS一筋の、この男!」

ネコキング「それがこの俺、ネコキングっだ!!」

狂三「また癖の強い人ですわね!?」


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第ニ十一話 契約

投稿!!

グエル君、主人公になってない?


『霊力値、カテゴリーE!鳶一折紙、反転しました!』

 

『く───やっぱり、令音の仮説が正しかったわね!』

 

右耳のインカムから、琴里とクルーの声、そしてアラームの音がひっきりなしに聞こえてくる。

 

「・・・・・」

 

士道はそんな声を聞きながら、静かに反転した折紙の姿を見据えていた。

戦場では冷静さを欠いたら最後命に関わる。無意識下で発現させてしまった治癒の炎を目撃したことによる反転化であれば、目標である士道が消えない限り、彼女の反転は収まらないだろう。

それに折紙を取り囲むように漆黒の光を放つ幾つもの『羽』───〈救世魔王〉が士道達に濃密な闇を濃縮したような黒い光線を放つ。

 

「───っ!お前等!避けろ!」

 

ユージンのその叫びに皆はそれぞれ散り散りに散開し、回避する。

 

「皆!無事か!」

 

十香のその声に皆は頷く。

そして十香達はそれぞれの限定的な霊装を纏う。

 

「それで───シドー」

 

十香は士道を守るように天使〈鏖殺公〉を構えると、油断なく折紙を睨みつけながら唇を動かした。

 

「・・・凄まじい霊力を感じる。あれは一体なんだ?」

 

「あれ、反転化ってヤツだよ」

 

「・・・反転化?」

 

「精霊の反転化・・・世界に絶望して反転化した姿だった筈です」

 

十香の問いに士道は短くそう答えると、近くにいた真那が詳しく十香に説明する。その説明を聞いた十香は怪訝そうに顔を顰めた。

しかしそれも無理のないこと。この世界の十香達は折紙と顔を合わせてまだ日も浅い。そして何より、あの漆黒の霊装を纏った折紙が自分達もなり得るという可能性があると言われていい気分ではない。

DEMのあの白髪は、反転した精霊を魔王と言っていたが───今の士道達の目の前にいるそれは、その表現が大げさではないと分かった。

士道は足を一歩、前に踏み出す。

 

「シドー・・・?」

 

「兄様・・・?」

 

近くにいた十香と真那が一歩踏み出した士道のその行動に、眉をひそめる。恐らく、危険だと言いたいのだろう。

だが、このまま折紙を空に解き放ってしまったなら、眼下に広がる天宮市は廃墟に成り果てるだろう。

 

「おい、バルバトス」

 

士道は一度目を閉じると、自分の内に燻るバルバトスに───

 

 

 

 

「───“俺の全部やるからお前の全部、よこせ。バルバトス”」

 

 

 

 

 

士道のその言葉にバルバトスは応えた。

バルバトスのツインアイが緑色から赤色に変わり、残光が溢れ出る。

 

「シ、ドー・・・?」

 

「・・・士道、さん?」

 

「士道?」

 

「疑問。あれは・・・一体?」

 

「あの赤い光は・・・」

 

「・・・なんなの?」

 

それぞれがバルバトスの変化に気づく中、琴里と真那、そしてユージンの三人は必死な声で叫んだ。

 

『おにーちゃんッ!!止めてッ!!その力は駄目!!おにーちゃんッ!!おにーちゃんッ!!』

 

士道と真那がつけているインカムから琴里の泣き出しそうな叫び声が響く。

 

「兄、様・・・それは、駄目・・・です」

 

「三日月ッ!お前!!」

 

精霊の皆には伝えていないバルバトスの危険生。三人は知っていた。バルバトスのリミッターを外せば士道がどうなるのかを。

だが、”三日月”はそんな彼等に返事を返すことなく、折紙を見て呟いた。

 

「───正直、俺はお前が気に食わない。けど、お前が悪い奴じゃないのは今日で分かった。それに───」

 

三日月は一度口を紡ぎ、再び喉を震わした。

 

「俺は───“オルガ”に嘘はつけないから」

 

精霊を助けるとオルガに言った。

なら、それに嘘はつけない。

 

「行くぞ───バルバトス」

 

三日月が代償を払ったバルバトスに言葉を投げる。その言葉と同時に、バルバトスのそのツインアイはより強く赤く光を灯させた。

三日月がバルバトスに捧げた代償。それは三日月自身と自分とバルバトスの内側に眠るモビルアーマーの力───その全てだった。




バルバトス「ホントに消えることになるけど、いいの?」

三日月「うん。俺が居なかった事になればモビルアーマーもいなかった事になるでしょ。原作・・・だっけ?元に戻って皆が幸せになるならそれがいいじゃん」

バルバトス「・・・・・」

作者「いや、引き留めようよ!?バルバトスさぁん!?」

狂三「そうですわ!?まだ、わたくしを含めて四人?いえ、あの状態の十香さんを含めればまだ五人残ってますのよ!?」

戦車「お前らメタすぎるだろ・・・」

ネコキング「え?もしかして皆、三日月の事を忘れる落ち?」


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第ニ十二話

短いですが投稿!

ゴールデンウィークは忙しくなるので投稿できるか分かりません!



ボツネタ 八舞テンペスト 十六話の裏側



耶俱矢「───前ッから思ってたのよ!あんたは自分一人で抱え込んで処理しようとして!」

夕弦「反論。その言葉、熨斗とリボンで過剰包装して耶俱矢に突き返します・・・!」

耶俱矢「あんたは優し過ぎんのよ!!せっかく私が主人格の座を譲ってあげようってんだから、大人しく受け取っとけばいいの!」

夕弦「拒否。夕弦は初めから、主人格になる気はありませんでした」

耶俱矢「・・・・ッ、アンタねぇ!!」

作者「ちょっとお前等、動きが早すぎて描写が追いつかねぇんだけど。えっと、今何やった耶俱矢?さっき槍が風を纏って・・・それを夕弦がペンデュラムで受け止めて・・・ああもう耶俱矢少し止まれ!早すぎだ!」

耶俱矢「ちょっと!私の描写ちゃんとしてよ!」

夕弦「不服。私の活躍も描いてください」

作者「だから二人とも早すぎるんだって。少しはスローダウンしろよ」

耶俱矢「本気の戦いにローギアなんてないでしょ、普通。なんとも筆力のない作者ね」

夕弦「首肯。それには同意します」

作者「おいっ!二人とも調子に乗るんじゃないぞ!いいか、その気になりゃキャラの行動どころか心理状態まで描写できるんだぞ!それはつまり、二人の行動も考えもこっち次第なんだからな!」

狂三「それが原因でわたくしがこうなったのですけれど」

耶俱矢「だから何?」

夕弦「返答。ヘタレ三文文士が吠えないでください」

耶俱矢「コイツからやっちゃう?」

夕弦「同意。地の文などはいりません」

作者「何ぃー!二人して地の分を攻撃しようというのか!作者たる俺を攻撃しようというのか!」

耶俱矢 夕弦「「うん」」

狂三「即答しましたわよ?あの二人・・・」

作者「・・・はっ!いいだろう!その勝負受けて立ってやらぁ!昔から言うだろう!“ペンは剣よりも強し”だ!作中のキャラなど、それを描写している作者の思いのままであると証明してやろう!オマエら二人など、指先一つでやれるさ!さあ!どこからでもかかってこ

「とう!」

「ていやー」


なぜだろう? 何も見え

俺 ふし        た

  か ない



     作者なのに・・・

  ぬ?


狂三「作者さぁん!?」


(注・十六話の戦闘シーンは、耶俱矢と夕弦にボコボコにされた作者に変わって戦車が執筆を担当しております)


───『折紙』は、困惑していた。

公園の外縁から転落しそうになったところを士道に助けられたあと、士道の腕に何かゆらゆらと光るものを見つけた瞬間、またいつものように意識が遠くなっていたのだが・・・

気づくと、見知らぬ場所に立っていた。

見渡す限り真っ白な、何もない空間。頭上にあるのが空なのか天井なのか、先にあるのが地平なのかさえわからない。

 

(なに、ここ・・・)

 

辺りを見回し、呆然と呟く。

 

(どう考えても夢・・・よね)

 

折紙がそう判断を下すのに、そう時間はかからなかった。しかしそれも無理はない。このような空間が、現実に存在するはずがないのだ。

と───

 

(・・・・え?)

 

不意に、折紙な目を見開いた。

折紙の視線の先。先ほどまでは何もなかった空間に、いつの間にか一人の少女が現れていたからだ。

闇のような漆黒のドレスを身に纏う、華奢な少女。膝を抱きながらうずくまり、虚ろな表情を作っていた。

 

(あなたは・・・)

 

言いかけて、折紙は彼女を見て気付く。

 

(私───?)

 

そう。そこにいたのは、どこからどう見ても折紙自身だったのである。

いや・・・正しく言うのであれば少し違う。折紙の髪が背の半ばまであるのに対し、目の前にうずくまる自分の髪は、肩口をくすぐるくらいの長さしかない。

とはいえ、逆に言えば、身につけている服以外の違いはそれくらいしかない。まるで鏡を見ているような奇妙な感覚に、折紙は思わず頬に汗を滲ませた。

 

(何なの、これ・・・)

 

折紙は訝しげに眉をひそめたその瞬間。

 

(──────!)

 

折紙の頭の中に、見たことない景色や言葉が、一気に流れ込んできた。

否・・・正確に言うなら、少しだけ違う。

その情報を一瞬に得ると同時、折紙の中には確信めいた感覚が生まれた。

 

(この記憶は・・・私の・・・?)

 

そう。これは。

もしも折紙が、今とは少し違う別の道を歩んでいたら経験したであろう、数年分の記憶だった。

 

 

 

───『折紙』は、心を閉ざしていた。

揺らめく霊力の炎を目にした瞬間、折紙の中に芽生えた情報。それは、折紙が忘れていた、もとの世界の記憶。

それが意識を侵食していくにつれ、折紙は自分の身体が、心が、真っ黒く染まっていくのを感じた。

五年前。

そう。五年前のあの夏の日、折紙の眼の前で殺されたのは、折紙の両親だった。

そして───その両親を殺した精霊こそ、折紙自身だった。

それを思い出してしまった瞬間、折紙は、何も考えることができなくなってしまった。

それはもしかしたら、自己を守るための防衛本能だったのかもしれない。

今まで自分を形作っていた根源的要素。

生きる目的となっていた己の意味。

それらが最悪の形で無に帰してしまったことを感じ取った頭が、自我を完全に壊れてしまわぬように、その記憶を、この世界の折紙から隔離したのだ。

 

もう折紙は、何も思わない。何も考えない。何も感じない。

 

ただ一つ───精霊を殺すことのみに、折紙の力は向いていた。

だが。

そんな、全てを捨てた筈の折紙の頭の中に、小さな光が生じた。

その光は折紙の頭の中に入っていき、それと同時にとある記憶が広がっていく。

 

そう。それは。

 

五年前のあの日───両親が死ななかった世界に生きた折紙の記憶。

 

(───ぁ──────)

 

折紙は、小さな声を発した。

すると、それと同時。

 

『折紙』と『折紙』の意識が、互いを巻き込み渦のように混じり始めた。

 




作者「今思ったんだけどさぁ・・・」

狂三「はい?」

作者「三日月ってメンタル面、歴代ガンダム主人公の中でもヤバすぎない?」

狂三「そういえば・・・そうですわね」


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第ニ十三話 

投稿!エピローグは次かな!


なあ、次は何をすればいい?

そんなの決まってるでしょ

ああ、そうだな

オルガ・イツカ

三日月・オーガス




「───行くぞ。バルバトス」

 

士道のその言葉と同時、バルバトスの背部や脚部のスラスターから蒼白い光が爆発するように放出される。

 

「────えっ?」

 

赤く輝くツインアイの残光が一瞬にして、折紙の真後ろへと移動していた。

 

振り返ろうとした折紙よりも早く、士道は折紙を包み込む霊力の球体へと腕を突きたてる。

だがその腕が折紙に届くよりも先に士道は吹き飛ばれるが、士道は吹き飛ばされた態勢をすぐさま立て直すと、ソードメイスを手に再び突貫する。

 

「一人でやろうってのか!?」

 

「なにっ!?」

 

「すぐに士道を───」

 

耶俱矢と夕弦がすぐに士道の元へと駆けつけようとしたとき、士道が耶俱矢達に言った。

 

「いらない。───邪魔」

 

「・・・し、どう?」

 

夕弦がバルバトスから聞こえてきた声に困惑した声音で呟きを漏らす。

だが、それは十香達も同様だった。

 

「・・・士道さん、声が・・・」

 

「いつもの三日月さんの声じゃなかった・・・ですよね?」

 

「一体、なんなのよ・・・何が起こってるのよ・・・」

 

四糸乃、美九、七罪が変わった士道の声に困惑する。

そんな彼女等に対し、士道は折紙目掛けてソードメイスを勢いよく振り下ろした。

だが、ソードメイスでは折紙を包む球体を作る『羽』を破壊することは出来ず、士道の手に硬い手応えを残して跳ねかえる。

周囲に浮かぶ複数の羽が士道目掛けて、漆黒の光線を放つが士道はそれを器用に身体を捻らせ、最低限の被弾で折紙に向けて一気に加速した。

そして瞬時に球体へと距離を詰めた士道はバルバトスの腕を伸ばし、折紙を球体の中から引き摺り出そうと、折紙の手を掴む。

 

「さっさと出てこいッ!」

 

霊力に耐性があるにも関わらず『羽』が作る球体に突っ込んだ腕に激痛が走る。が、士道はそれに構わず一気に折紙を引っ張ると、折紙がその球体の中から現れた。

周囲に浮かぶ羽が士道とバルバトスを主人から離そうと攻撃しかけてくるが、士道はその攻撃を防ぐことをせず、ナノラミネートアーマーで無理矢理受け止める。

ラミネートアーマーが剥がれたところにビシリと亀裂が入る。

 

「俺の全部をやるからもっと寄越せよ。───こんなもんじゃなかっただろ!お前の力は!!」

 

士道のその声に答えるようにバルバトスの出力が更に上がり、近くを浮遊していた『羽』を掴むとそのまま一気にその『羽』を握り潰した。

赤いツインアイを輝かせ、折紙の天使を握り潰すその姿はまさに悪魔というに相応しい。

 

「──────ッ」

 

この世界で始めて声を荒らげたであろう、士道にこの場にいる全員が気圧される。

彼女達のいや、彼女達が操る“天使達”がチカチカと光を点滅しているのにも誰も気付くことがないくらいには───

虚ろな目で反応も何も返さない折紙に、士道は始めて彼女の名前を呼ぶ。

 

「おい───折紙」

 

だが、折紙は、ぴくりとも反応を示そうとしない。

そんな折紙に士道は───

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

折紙の頭の中で、二つの記憶が混じり合う。

自分の中にもう一人の自分がいるのを、二方向から同時に見ているかのような奇妙な感覚。

その二つの記憶を同時に持ったことで、折紙は全てを理解した。

今日、士道と始めてデートをしたとき。その時に生まれた奇妙な違和感。自分の身体が自分とは別の意思によって動くような感覚は、折紙の身体が、潜在意識が、士道の存在に反応して起こったものだったのだ。

この世界の折紙ともとの世界の折紙。本来、交わることなどないこの現象は士道という存在が折紙の二つの記憶が接触するというイレギュラーを引き起こしてしまったのだ。

 

(私は五年前、お父さんと、お母さんを───)

 

(───この世界では、そんなことは起きていない!お父さんとお母さんは五年前にあの人が───!)

 

折紙の言葉と同時に、ふと疑問が浮かび上がる。

 

あの人って───誰?

 

二人を自分の両親を光線から救ってくれた少年の姿が浮かび上がる。

光が灯っていない右目に、ギプス固定のように固定された右腕。嗚呼、思えばそれは───士道自身だ。

そしてあの時の彼の言葉が頭に残る。

 

偶然助かったみたいだけど、“次”はもうないから

 

ああ。そうだ。

本当だったら五年前のあの時、“偶然”士道に助けられて、本当だったら自分の両親はあの時に死んでいる筈で───

 

(う、ぁ・・・、あ・・・)

 

辺りの景色が燃え上がる。炎に揺らめく街の光景が浮かび上がる。

道に刻まれたクレーターに、散らばる人間の破片。そして空を見上げる幼い折紙。

地獄のような記憶。士道に助けられるという“偶然”が起こらなかった記憶に、折紙な強烈な目眩と嘔吐感を覚えた。

 

(どうすれば・・・私は、どうすれば良かったの・・・)

 

五年前の出来事を『なかったこと』にしなければ良かったのか?あのとき、両親が眼の前で殺されるのを受け入れていれば良かったのか?

だが、それはもう過ぎてしまったこと。どのみち、ここで折紙が全てを受け入れて諦めてしまったなら、まだ何も起きていないこの世界で、折紙はもとの世界と同じことをしてしまうことになる。

きっと幾つもの街が滅びるだろう。何人もの人が死ぬだろう。

この世界の折紙だけでは、もとの世界の折紙を救えない。目を開かせることがせいぜいだ。

そう───折紙には、折紙の背中を押すことしかできない。

外から誰かが、その手を取って引っ張り上げてくれなければ、彼女は前へと進めない。

だが、反転し、世界に厄災を振り撒く折紙に、手を伸ばしてくれる人間など───

 

 

「───折紙」

 

 

(・・・・えっ?)

 

不意に響いた声に。

折紙は、顔を上げた。

そう。何もない筈の世界に響く声は全く知らない声。

だが、その声音がその中にある意思は───覚えがあった。

 

(士、道・・・?)

 

ぴしり、と音がして、真っ白い空間に亀裂が走る。

 

(どう、して───)

 

折紙の声は、きっと彼に届いていない。

だが、彼の声は折紙に呼びかけるように響く。

 

「俺がアンタや皆の前を進み続けるから、生きることを諦めるな」

 

士道の言葉が胸に残る。

 

「お前の居場所はここじゃないだろ。俺が道を切り開くから後は自分で決めろ」

 

まるで士道は折紙を引っ張り上げるように───

 

「──────」

 

その言葉を聞いた瞬間───

 

折紙は、自分の身体が自分とは別の意思で動くのを感じた。

もとの世界の折紙の記憶ではない。この世界の折紙の記憶が、折紙の手を士道に───“黒髪の少年”に向かって手を伸ばさせたように思えた。

まるで──生きてと言っているかのように。

折紙は手を伸ばす。

───何も存在していなかった空間が、音を立てて砕け散った。

 

 

 

それと同時に───

 

 

 

三日月・オーガスの意識は途絶えた。

三日月の朧気な意識が途絶える寸前、自分を呼び止めるような声が聞こえたような気がした。

 

 

 

───ミカ!!と───




作者「イーワックジェガン・・・」

狂三「ど、どういたしましたの?」

作者「いやね、リサチケ後二枚で交換できたはずなのに最後の最後でシスクードが出たせいで交換出来なかったんだよ・・・」

狂三「そ、それはなんとも言えませんわよ・・・」


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第二十四話 エピローグ 彼の居場所 彼等の居場所

投稿!!

次が問題作の三日月の回なんですが、なんと!
三日月は一旦ここで退場です!はい!

狂三「はい!?」


「─────士・・・・道・・・」

 

死体のような顔をしていた折紙の目に、微かな光が灯る。そして折紙は辺りの様子を見るようにゆっくりと目を動かしたのち、バルバトスの腕の中で目を覚ました。

だが、士道は何も反応を起こさない。

 

「シドー!!」

 

十香達が士道と折紙の元へと駆け寄ってきた。

とその時、バルバトスから何か──起動音が作動した。

 

「─────シドー?」

 

「なんだ?さっきの音は?」

 

その起動音に十香と耶俱矢が足を止めると、バルバトスがキラキラと光る光の粒となり消えると同時に、気を失った士道の姿が現れた。

 

「士道、さんッ」

 

「士道!!」

 

「三日月さん!」

 

四糸乃と夕弦、美九は倒れた士道に駆け寄り身体を起こすが、士道は右目から血を流し、目を覚ます様子はなくぐったりとしていた。

 

「・・・っ、令音!士道の血圧が下がっているわ!早く転移装置を使って!」

 

琴里ははそう言って士道の背中にある阿頼耶識を気をつけながら士道を寝かせた。

とその時、七罪の震えた声があたりに響いた。

 

「ねぇ、あれ・・・なに?」

 

「何だよ七罪!今、それどころじゃ────」

 

ユージンは逼迫した様子で七罪に視線を向けると、七罪のその顔は真っ青になっていた。

そして七罪が指を差す先。ユージン達はそちらへ視線を向ける。

七罪が真っ青になる程のもの。そこには────

 

 

────────────

 

 

もう暗くなった夜の展望台に線引くように赤く輝く光があった。

もっと目を凝らすと、その姿はバルバトスと同じガンダムフレームに見える。

だがそれはバルバトスとは違い、翼のように幅広で分厚い装甲を背中に背負っていた。

そして左肩には赤い布をマントのようにはためかせながら此方を見ていた。

そしてソレは背中のバスタードメイスを抜き放つと、十香達に向けて突進してきた。

 

「・・・・こんな時に!!」

 

真那は十香達を守ろうと、ソレの前に出る。〈ヴァナルガンド〉のブレードでバスタードメイスの攻撃を防ごうとしたその時────

 

「・・・えっ?」

 

一瞬で目の前にいたソレの姿が消えた。

そして次の瞬間には自分の懐にバスタードメイスを降り下ろす“悪魔”の姿が見えて────

真那は一瞬で地面へと叩きつけられた。

 

「・・・がっ・・・あッ!?」

 

真那の全身に鈍い痛みが迸る。意識を失わなかったのは奇跡に近い。頭が痛みでうまく働かない中で真那の耳に十香の叫び声が響いた。

 

「真那ッ!!ハァァァッ!!」

 

十香が叫び声を上げると同時に〈鏖殺公〉を振りかぶるが、ソレはなんなく十香の背後に周ると、十香の頭目掛けてバスタードメイスを振り下ろしていた。

 

「なっ!?」

 

驚愕の声をあげ、叩きつけられた十香はぴくりとも動かない。

 

「十香!?この────」

 

「耶俱矢!!」

 

槍とペンデュラムを手に耶俱矢と夕弦は臆することなく悪魔へと向かっていく。

だが、耶俱矢と夕弦も悪魔に接近した瞬間、一瞬で叩きつけられていた。

 

「みな・・・さん・・・」

 

真那は朧気た意識の中で四糸乃を琴里を美九を七罪をそしてまだ封印もしていない筈の折紙でさえ、バスタードメイス一つで蹂躙されていく姿を真那はただ眺めることしか出来なかった。

 

「にい、さま・・・」

 

兄の名前を呼ぶ。

だが、真那のその声に誰の返事もない。

此方へとスラスターを更かしながら真那に止めを刺そうと向かってくる悪魔に真那は何もできない。

 

「誰、か・・・」

 

兄様をユージンさんを十香さんを四糸乃さんを琴里さんを耶俱矢さんを夕弦さんを美九さんを七罪さんを折紙さんを助けて。誰でもいい。なんでもいい。

誰でもいいから───なんでもするから。なんでもあげるから。

 

「───誰か、助けてッ!」

 

「分かった」

 

「──────」

 

真那の叫びに答える声があった。

真那の目の前に一人の少年が立っていた。

 

黒髪の小さな少年。緑色の上着にダボッとしたズボンにブーツ。

その少年が着ている上着の背中には華が描かれていた。

あの時の少年。

その時、真那は声が出なかった。

そんな真那を背に少年は悪魔に言う。

 

「“俺を連れてくだけだろ“。十香達に手は出すな」

 

その言葉を理解したのか、その悪魔は霧のように消えていく。

そしてその少年は真那の方へと振り向いた。

青い瞳が真那の顔を映す。

そして短く瞼を閉じ、そして再び瞼を開けるとその少年は真那に言った。

 

「俺の代わりに十香達を頼むね」

 

「───ぇ?」

 

優しく投げられたその言葉に真那は目を見開いた。

声も姿も全然違う。

だけど、その真那に投げられた言葉の中に含まれていた優しさが兄と同じもので───

 

士道の方へと視線を向ける。未だに目を閉じたまま眠ったように身体を地面へと預けている。

 

「みか、づき・・・」

 

「・・・・!」

 

と、どこからかユージンの声が聞こえてきた。

真那は痛む身体を動かすと、ユージンが這って眼の前にいる少年を見ていた。

この少年のことを三日月とユージンは言った。

では───この人は───

 

「・・・兄、様なんですか?」

 

真那のその質問に三日月は何も答えない。

ただ、三日月の身体はドンドンと透けていっていた。

 

「兄、さま?身体が透けていって・・・」

 

真那の声が震えているのがわかる。

そんな三日月にユージンは叫んだ。

 

「三日月!テメェ、十香達はどうするんだよ!!アイツらを置いてお前だけまた一人でオルガの所に行こうってか!!そんなの絶対に許さねえからな!」

 

ユージンは三日月を必死に呼び止めるように叫ぶ。が、そんなユージンに三日月は言う。

 

「俺の代わりにアイツがいるから十香達は寂しくない筈だよ。それにきっと皆も俺のことも忘れる。だから俺が居なくても大丈夫。それに───」

 

三日月は一つ呼吸を挟んでから言った。

 

「俺の居場所は別にあるから」

 

三日月はそう言って消えていく身を翻す。

 

「三日月!!」

 

「・・・にい・・・さま・・・」

 

名前を呼ぶ二人に三日月は言った。

 

「十香───皆も──“またね”。」

 

「まってください!!にいさま!!」

 

真那のその叫びも虚しく、三日月は泡沫のように消えていった。

その背中だけを彼等へと向けながら───

 

「ああああああああああああああッ!!」

 

真那の悲鳴が夜空が浮かぶ展望台に響き渡る。

真那は先程まで三日月がいた所へと駆け寄った。自分の身体が痛みで悲鳴を上げているが関係ない。

三日月が居た場所には一つの銃が落ちていた。

いつも士道がお守りとして持っていた銃。

その銃を見て、真那は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら叫ぶ。

 

「イヤぁ、イヤぁぁぁぁぁッ!!兄さま!!兄さまぁぁぁぁぁ!!」

 

真那の悲痛な声が誰もいない夜の展望台に響き渡った。

 




なんでマルコシアス出てきたの?

A.バルバトスが三日月をすぐに連れてこなかったから

じゃあ、なんでバルバトスは三日月をすぐに連れていかなかったの?

A.皆とお別れくらいの時間くらいは猶予をあげようと思ってのこと。なお、マルコシアスに三日月はすぐに連れてこらされた。

士道の身体は十香達はどうなるの?

A.人格は原作にそして記憶も原作基準に書き換えられます。
なお、真那にユージン、マクギリスに狂三、ファントムは例外ですが



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三日月オルフェンズ
第一話 新しい血


三日月編第一話投稿!!

この章は真那と夕弦と琴里と十香をとことんイジメます
なんでこのメンバーなのかって?
真那以外は共通点はありますよ?過去の話を見ていればですが




少し昔の話をしよう。

むかしむかしずっとむかしに養護施設に一人の少年がいた。

彼はその養護施設の中でも最も幼かった。

そんな彼には技師の仕事をする両親がいた。

双方共働きで彼は生まれてから一度も両親の顔を見たことがない。

だが彼が五歳の時、両親は死んだ。事故だったらしい。

彼には引き取り先はなかった。

養護施設の中で一番幼く、使えない彼を養護施設の大人達は彼の両親が彼を養護施設で生きていくだけの金を巻き上げて薄汚れた路地裏へと彼を捨てた。

彼は何とも思わなかった。両親が死んだことも。養護施設から邪魔者扱いされ、路地裏に捨てられたことも。

ただ、腹だけが減っていた。

食べ物がなければいずれその辺りで転がっている子供の死体が一つ増えるだろう。

ただ、腹が減っている幼い彼は食べ物を探すだけの体力などなく、その場から動くことなど出来もしない。

このまま野垂れ死にの運命を辿るであろう彼に、差し伸ばされた手があった。

その手は───彼の全てになった運命の手だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『シドー!早く来るのだ!』

 

『走ると危ないぞー十香』

 

『迷子になるわよ?』

 

『ぬぅ・・・それは困る』

 

祭りの会場で十香が士道と琴里の手を引っ張って並んでいる屋台へと駆け足でかけていく。

 

『同意。この人集りの中、探すのには時間がかかります』

 

『だが、我らが探せばすぐよ!』

 

『ねーねー、それよりもさぁ士道君。四糸乃の姿を見ても何にも思わないわけー?』

 

『よ、よしのん・・・!』

 

夕弦と耶俱矢は迷子になってもすぐに見つけると言って見せ、四糸乃の浴衣姿はどう?と士道に聞くよしのんに顔を赤くした四糸乃がよしのんの口を塞いでいた。

 

『四糸乃さん可愛いと思いますぅ!ですよね!だーりん!』

 

『・・・可愛いって言いなさいよ』

 

同意を求めるように美九と七罪が士道に言う。

楽しいなぁ、と真那は思った。

毎日が楽しくて仕方がない。きっとこれからもいろんなトラブルに巻き込まれるだろう。でも、こういう毎日が続くからやっていける。記憶がなくても、私には『帰る場所』があるから不安なんてない。

たとえ今日が終わっても。

明日も。

明後日も。

明々後日も。

きっと、皆でこんな楽しい毎日が続いてくれると真那は本当に心の底からそう思っていた。

けど───彼女は───

 

“崇宮真那は、一人ぼっちでカチカチと小刻みに震えていた“。

 

「・・・なん、なんですか・・・あれ・・・?」

 

輪の中心に“誰”かがいた。

崇宮真那の知らない『五河士道』が“そこ”にいた。

輪を作る皆は、誰も彼もが違和感に気付いていない。

こんなにも。

雰囲気が、言葉遣いが、手癖が、全然違うのにだ。

 

「真那?」

 

───と、不意に声がかけられる。

真那はビクッと身体を揺らしながら顔を上げた。

 

「大丈夫か?どこか気分悪いところでもあるのか?」

 

『五河士道』が自分にそう言う。

差し伸ばされたその手を真那は───

 

「あああああああああああああああッ!?」

 

手を取らず、その場から逃げ出した。

 

「兄様ぁッ!!兄様ぁッ!!何処にいるんですか!?居たら返事をしてくださいッ!」

 

自分が知る兄様がいない。あの口数が少なくて不器用だけど仲間思いの兄様がいない。

 

三日月とユージンさんが言っていたあの兄様が───何処にもいない───

 

がむしゃらに走り抜けた道を振り返ることなく、真那は走り続けた。足の裏が血と泥と汗で汚れても、走れなくなるまで真那は走り続けた。

 

「ハァッ・・・ハァッ・・・ゲホッゲホッ!!」

 

呼吸が荒い。

生きるために最低限な行為すらも、おろそかになっていく。

そう。

そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の知る兄様はもう“何処にもいないのに”




作者「とうとうやって来ちまったよ・・・三日月編」

狂三「原作とかけ離れた内容にすると戦車さんから聞きましたわよ?タイトルも違いますし・・・」

作者「三日月は正攻法でオルガやアトラ以外で攻略出来ると思うのなら手ぇ上げてみ?」

狂三「・・・出来ませんわね」

作者「そう!なら、ヒロインズが三日月を引っ張り出すって話になるかなぁ・・・ハハッ、デートとか関係ねー」

狂三「それを自分でいいます!?」


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第ニ話  原点

精神的に病んじゃいつつある真那ちゃんの登場です


実は三日月編ではありますが、肝心の三日月が当分出てこないから基本的には真那視点になります

勿論、他のヒロインズの視点もありますよ?


それは三日月にとっての原点だった。

 

「ねぇ、次はどうすればいい?オルガ?」

 

「行くんだよ」

 

「何処に?」

 

「此処じゃないどっか。俺達の本当の居場所に」

 

「本当の?」

 

「ん?」

 

「それってどんなとこ?」

 

「えっ・・・んーわかんねぇけど、すげぇ所だよ。飯が一杯あってよ、寝床もちゃんとあってよ、後は・・・えっと後は・・・」

 

「ん?」

 

「行ってみなきゃわっかんねぇ、見てみなきゃわかんねぇよ!」

 

「見てみなけりゃ?」

 

「そうだよ、どうせこっから行くんだからよ」

 

「そっか。オルガについていったら見たこと無い物いっぱい見れるね」

 

「ああ、だから行くぞ!」

 

それは、三日月の全てを変える選択だった。

以降、全てを擲って三日月はオルガの言う場所を目指し続けてきた。

クーデリアにも一度零していたが、それは彼の人生を大きく変え、そして同時に彼の覚悟を完全に決めるものとなった。

故に、止まらない。止まれない。

誰かが死んだとしても、誰かが鉄華団に別れをつげても、オルガに詰め寄ったとしても、その「どこか」を三日月は目指し続けてきた。

ベッドもあって、食べ物もあって・・・行ってみなけりゃ、見てみなけりゃ分からない。

互いに突き動かして、互いに突き動かされて、ただひたすらに歩み進んだ道、その先で辿りついた光景は───。

 

 

───そうだ。俺達はもう辿り着いていた。

 

 

 

 

 

 

       俺達の本当の居場所

 

 

 

 

 

    ───それは三日月にとって───

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「・・・・・・」

 

チュンチュンと鳥のさえずりと共に、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

一階のリビングからは十香達の楽しそうな声がうっすらと扉越しから聞こえてくる。

真那はゆっくりとベッドから身体を起こし、少しの間ボーッとした後、真那はポツリと唇を開く。

 

「・・・兄様」

 

あの日からもう二十日が立った。

折紙さんを助け、街を蹂躙されるのを守った。

五河士道・・・いや、三日月・オーガスと言う少年の犠牲によって。

それからと言うものの日常は真那以外、変わらないで続いている。

人が死ぬことや居なくなることには慣れていた筈だった。

〈ナイトメア〉の犠牲者やジェシカを殺した時も、ただ胸内に靄がかかるだけだったのに。

───なのに。

どうして身近で大切な人が忘れ去られていなくなった時はこんなにも胸が苦しくなるのだろう。

真那はこのどうしようもない喪失感をあの日からずっと、ずっと引き摺り続けていた。

左手首につけてあるミサンガを真那は見つめる。

士道の左手首には自分のを含めて皆が作ったお守りを肌身離さずいつも付けていた。

最初はこんなに要らないだなんて言っていたが、それでもずっとつけていたあたり、大切にしていたに違いなかった。

だが、あの士道が目を覚ました時にはそのお守りはなかった。きっと彼が一緒に持っていったのだろう。

 

「・・・もう一度兄様の声が聞きてーですよ・・・」

 

今、リビングで十香達と朝食を楽しんでいる今の士道ではない。

ぶっきらぼうで───だけど優しいあの声音が心地良かったあの声を。

 

「真那ー?起きてるー?朝ごはん冷めるよー?」

 

琴里の声が扉越しに聞こえてくる。

 

「・・・今行きますよ」

 

真那はベッドから降りると、一度鏡を見る。

頬には涙が流れた跡があった。

今日も偽りの仮面を被って過ごす日になるだろう。

 

兄様と一緒に居た時のいつも元気な崇宮真那に。

 

いつか・・・自分も士道を忘れる時が来るのだろうか?それとも、この思いを抱いたまま擦り切れていつかは潰れるのだろうか? 

そんなことを一瞬考えてから真那は扉を開けた。

 

 

 

十香達を頼む。士道が自分に残した最後の言葉を胸に留めながら。

 




作者「あのー狂三さん?ちょーっと聞きたいんですけど?」

狂三「奇遇ですわね?わたくしもちょっと聴きたかったところですわ」

作者「なんで俺等壁に繋がれてんの?」

ネコキング「それは俺が説明しよう!!」

狂三「あ、出ましたわね変態」

ネコキング「酷ない?」

作者「どうでもいいからはよ話せ」

ネコキング「しゃーないなぁ。で理由なんだが、作者、お前今日誕生日だろ」

作者「誕生日?あ、そっか今日か!」

狂三「忘れていましたの!?」

ネコキング「コイツいっつも誕生日忘れんだよ。で、今日はサプライズでお前等を呼んだって訳」

作者「でも、壁に繋げる理由はねえだろうが」

狂三「そうですわよ!なんでわたくしまで!」

戦車「だってガンダムで誕生日と言えばこうじゃん?」

エラン四号「ハッピバースデートゥーユー・・・」

目の前ピカー

作者、狂三「「え」」

スレッタ、エリー「「ハッピバースデートゥーユー!」」

作者「オマッ!?ちょっ!?今すぐヤメロ!焼きトウモロコシに俺等をするつもりか!?」

狂三「冗談ではありませんわよ!?」

ネコキング「あきらめろ。お前等のことは忘れねえから」

作者「ふざけんなぁ!?」

狂三「さ、作者さん!?なんとかして下さいまし!?」

作者「手足動かせねえもん!無理だわ!」

エラン、スレッタ、エリー「「「ハッピバースデートゥーユー!」」」

作者「ぎゃあああああああああっ!」

狂三「きゃあああああああああッ!」


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第三話

投稿!

ガンダムチャンネルで鉄オルを見ながら投稿している鉄血です。

やっぱりガンダムは面白いネ!


「おはよう、真那。まだ朝ご飯出来てないから待ってて」

 

「あ、おはようございます兄様」

 

私服に着替えた真那がリビングに入ると、台所の方から士道の声が聞こえてくる。

そんな士道の挨拶に真那は返事を返し、自分が座る椅子に腰を下ろすと、目の前の椅子に腰かけていた十香と目があった。

 

「おはようなのだ!真那」

 

「十香さんもおはようです」

 

朝の挨拶をしてくる十香に真那も返事を返すと、士道が台所から料理が盛られた皿を運びながら辺りを見渡す。

 

「そういえば・・・耶俱矢と夕弦は?まだ寝てるの?」

 

「あ、そーいえばまだ見てないね?」

 

「耶俱矢さんと夕弦さんなら後で来ると言ってました。私が見た時は、起きたばかりみたいでしたから・・・」

 

四糸乃のその声に士道は小さく苦笑を漏らした。

 

「何時ものことと言えば何時ものことだけど・・・じゃあ、朝ご飯が冷めるのもあれだからさきに先に食べようか」

 

「うむ!」

 

「はい・・・!」

 

「賛成ー!」

 

士道のその言葉に三人は頷いた。

これが何時もの光景である。

と、そんな何時もの光景を見ていた真那に、士道が真那の様子を見て心配そうな表情をする。

 

「真那?何処か体調でも悪い?元気無いみたいだけど・・・」

 

「・・・へ?いや、特に何でもねーですよ?」

 

急に話題を自分に逸らされた真那は素っ頓狂か声を出しながらなんでもないと返事を返す。

 

「そうか?ここ最近は何処か遠くを見ているようだが・・・」

 

「だからなんでもねーですってば」

 

十香のその言葉に真那は笑顔で返事をした。

 

「ぬぅ・・・そうか」

 

十香はどこか納得のいかない様子だったが、それもすぐに屈託のない笑顔に戻った。

 

「では、シドー頂きますだ!」

 

「うん。いただきます」

 

「いただきまーす!」

 

「いただ、きます」

 

「・・・いただきます」

 

皆で手を合わし、いただきますと言ってから真那達は朝食を取り始める。

 

「そういえば、おにーちゃん達は今日、体力測定の日じゃなかったっけ?」

 

「おう。だから十香もあまり食べ過ぎないようにな」

 

「む?そうか・・・なら八分目辺りにしておく」

 

士道達がそんな談笑をしていると、玄関の方からガチャリと扉の開く音がリビングにまで聞こえてきて、皆は玄関の扉へと視線を向ける。

そしてバタバタとした走る音と共に、リビングの扉が勢いよく開いた。

 

「わ、私の勝ち!!ぜーはーッぜーはーッ・・・」

 

「敗北。私の負けです・・・」

 

「耶俱矢に夕弦、どうしたの?そんなに慌てて」

 

肩で息をする八舞姉妹を見て、驚いた表情をする士道に、夕弦は答える。

 

「返答。どちらが先にリビングに着くか勝負をしていました」

 

「相変わらず勝負好きだねー」

 

「それよりも、だ。士道」

 

「ん?どうしたの?」

 

耶俱矢はジト目になりながら、今の士道達の状況に口を出した。

 

「なぜ、我が来るよりも先に朝食を取っているのだ!」

 

「不満。もう少し待てなかったのですか」

 

「遅れる二人が悪いでしょうに」

 

「ぐっ、それを言われると何も言い返せぬ・・・」

 

真那の正論に言葉を詰まらせる耶俱矢。

そんな彼女に対し、夕弦は椅子に腰を下ろしていた。

 

「耶俱矢。早く食べないと朝食が冷めます」

 

「後でまた聞くからな!!」

 

そして二人も急いで朝食を取り始める。

と、真那が着ている上着のポケットの中からバイブ音と、着信音がリビングに鳴り響いた。

 

「・・・誰でしょうか?」

 

「・・・誰々?」

 

真那の携帯の番号を知っている人はかなり少ない。

しかもこんな朝一に電話をかけてくる人なんてそうそういない筈だ。

真那はポケットの中から携帯電話を取り出すと、画面表示を確認する。

そしてそこに映し出されていた名前は───

 

「──────っ」

 

携帯の待ち受け画面に映し出された名前。それはあの日、兄様がいなくなったあの日から連絡のやり取りをしなくなったユージン・セブンスタークだった。

 

「誰から電話?」

 

琴里のその言葉に真那は───

 

「知り合いから電話が来たのでちょっと席を外します」

 

そう一言皆に言ってから真那はリビングから出て、コールボタンを押す。

 

「もしもしユージンさん?」

 

真那のその言葉と同時に、ユージンの声が真那の耳に響いた。

 

『真那。今日、時間空いてるか?』

 

「ええ。まあ」

 

どうせ《ナイトメア》を探す以外にやることのない真那はそう答えると、電話越しでユージンは言った。

 

『今日、お前に話があるってマクギリスの奴が俺に言ってきやがってな。俺と一緒に来てくれるか?』

 

「マクギリスさんって・・・なぜ、急に?それにユージンさんも───」

 

何故と言う真那の言葉を遮るようにユージンが真那の疑問に答えた。

 

 

 

 

『“三日月とお前について”って言えばいいか?』

 

 

 

その名前に───

 

 

真那は言葉を失った。




作者「皆覚えてなくて、ユージンやマクギリスくらいしか三日月の事を覚えてないの真那ちゃん?どんな気持ち?」

真那「今ここで作者さん殺れば展開変わります?変わりますよね?」ハイライトオフ

狂三「真那さんのハイライトが消えてますわよ?」

戦車「これは俺も庇うことできねえや。一回殺られてこい」

ネコキング「いやー、酒が美味い」


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第四話 

投稿!!

バトオペのアトラスガンダムがキッツいと思う鉄血です

何つかってるのかって?

ジェスタとザクⅣだけどな!!


アイツが命張って作ったチャンスだろうがッ!!

ユージン・セブンスターク


「いらっしゃいませ。お二人様でしょうか?」

 

「いや、待ち合わせなんだが・・・」

 

と慇懃に頭を下げるウェイターにユージンは答え、真那は広い喫茶店を見渡した。

と、すぐに奥まった窓際の席から真那達を呼ぶ声が聞こえた。

 

「こちらだ、二人とも」 

 

スーツ姿のマクギリスに真那とユージンは足早に近づくと、さっさと椅子に腰を下ろした。

即座に横合いからウェイターお冷やとお絞り、そしてメニュー表を差し出す。本革張りと見えるそれを真那達は手に取ると、テーブルの向かいからマクギリスが言った。

 

「ここは私が持つ。好きな物を頼むといい」

 

「言われなくてもそのつもりだっての」

 

つっけんどんに答えたユージンに対し、真那はメニュー表に目を走らせると、メニューの廉価を見て頬を引き攣らせる。

それはユージンも同様だったらしい。メニュー表を見た瞬間に、顔を引き攣らせていた。

 

「・・・高すぎるだろ」

 

そう呟くユージンに真那は同意をしたくなる。

だが、マクギリスは気にしていない様子で此方に笑みを浮かべたままだった。

 

「俺は・・・ブレンドコーヒーにミルフィーユ」

 

「私は、パルフェ・オ・ショコラ?・・・に、ヘーゼルナッツ・カフェで」

 

ユージンと真那の頼んだメニューの合計額は実に三千円近く。正直、頼んだモノの実態は見当もつかない。

 

「かしこまりました」

 

ウェイターが滑らかに退場し、二人はようやく一息をついてマクギリスに顔を向ける。

優雅に紅茶を飲むこの男に呼び出されて来たのだが、場違いにも程がある。

そんなマクギリスは紅茶が入ったカップを置くと、真那達に笑みを見せたまま、口を開いた。

 

「急に呼び出して済まないな。ユージン・セブンスタークに崇宮真那」

 

「三日月についてって言われたら誰だって食いつくだろうが」

 

ユージンのその言葉に真那はチクリと胸が痛む。

そう。真那にとって、自分のことよりも士道の三日月のことについて知りたかった。

 

「さっさと本題に入ってください。兄様について何処まで知っているのかを」

 

「分かった。だが、まずはコレを見て欲しい」

 

「あん?」

 

真那の催促にマクギリスは隣の椅子に置かれていたアタッシュケースから極薄のタブレット型端末を取り出した。

真那とユージンは画面に視線を向けると、そこには士道と同じ顔の青年が映っていた。

 

「・・・崇宮真士?誰だコイツ?てか、コイツ三日月に似てんな」

 

ユージンはそう言うが、真那はその名前を聞いた瞬間、頭に鋭い痛みが走った。

だが、この痛みは前にも感じたことのある痛み。それは二十日前───兄様が別の少年に見えたあの日の夜に。

 

「う・・・く・・・!」

 

「おい!?大丈夫か!?真那!!」

 

頭を押さえる真那に、ユージンは声を上げる。

周りからも心配する声が聞こえてくるが、それどころではなかった。

髪の長い少女の後ろ姿。

そしてミオと言う名前。

それらが脳裏に浮かんだ瞬間、真那は視界が明滅するかのような感覚を覚えた。

なぜだろうか、髪の長い少女の顔が思い出せない。ミオと言う名前。その少女のことを確かに知っている筈なのに───

 

「真那!!」

 

「・・・・・!?今のは・・・」

 

ユージンの声に真那は引き戻される。

額や掌は大量の汗が流れているにも関わらず、とても寒かった。

そんな真那の様子を向かいから見ていたマクギリスは目を細めていた。

そして真那に言う。

 

「どうやら何かを思い出したようだな」

 

その言葉に真那は答えられなかった。

この記憶が、自分の忘れる前のモノだとしたら───それが真那にとってとても恐ろしく感じられたのである。

 

「何を思い出したのか聞かせてくれるかね?」

 

「・・・ミオさん」

 

「ミオ?誰だよ」

 

真那が口にしたその名前にユージンは首を傾げる。

だが、真那にとってもそれは同じことだった。

 

「名前は知ってるんです。ただ・・・顔が何も思い出せねーんです」

 

「顔が思い出せないってそれじゃあ意味ねえじゃねえか」

 

「分からねーです・・・何も分からねーですよッ!?」

 

真那だって知りたい気持ちは一杯だった。だが、これ以上何も思い出せない。まるで記憶に鍵をかけられたように何も思い出せないのだ。

 

「分からないなら今はそれでいい。無理に思い出そうとしても混乱を招くだけだ。それで、崇宮真那。君はこの男を知っているな?」

 

「・・・・・」

 

マクギリスの言葉に真那は答えられなかった。

恐らくだが、自分の兄なのだろうとは理解は出来る。だが、プロフィールに書かれたそれが真那の考えを全てを否定していた。

 

「死亡・・・ってことはコイツはもう“死んでるのかよ”」

 

「ああ。しかも崇宮真那がこの青年の妹だと予想しても彼の死亡年数と崇宮真那の年齢が噛み合わない」

 

プロフィール写真も三十年前の物だと言うマクギリスに真那は顔を暗くする。

では、自分は誰?崇宮真士と自分はどういう関係で、ミオと言う少女は一体誰なのか?

そして五河士道と私は関係は─────

まるで自分は異物ではないのかと真那は思い始め、肩を震わせる。

だがそんな真那に、ユージンは言った。

 

「しっかりしやがれ真那。お前はお前だ。三日月の妹なんだろ?だったらアイツみたい細かい事なんて気にすんな」

 

「ユージン・・・さん」

 

真那はそう言うユージンに顔を向ける。そしてユージンは真那に言った。

 

「お前は三日月が好きなんだろ?だったらシャンとしやがれ。三日月を好きになった奴は皆強かった。アイツがいなくなっても前を向いて生き続けたんだ。そんなアイツらに負けんなよ」

 

アトラにクーデリア。あの二人は三日月が死んだあの日以来、泣くことなんてなかった。

それにクーデリアは俺達鉄華団の約束を果たすべく、ギャラルホルンと『ヒューマンデブリ廃止条約』を締結させたのだ。

 

人が人らしく、皆で笑い合える場所。

 

俺達鉄華団が自分の命を賭けて求めた未来への報酬───形は違ったが、それでも俺達は手に入れた。

他の奴等が忘れても、アトラやクーデリアは忘れなかった。三日月やオルガ────死んでいったアイツらのことを。

 

「だからしっかりしやがれ。次、三日月にあったら文句の一つくらい言えるようにな」

 

「・・・ユージン、さん」

 

目から涙が溢れ出てくる。ずっと───ずっと我慢してきた涙が。

 

「俺だって泣かなかったことなんてねえからよ」

 

あの日のことを今もまだ覚えている。三日月が言ったあの言葉を───

 

 

    

 

 

     

   ───死ぬまで生きて───命令を果たせ───

 

 

 

 

 

 

「・・・ぅぅ・・・ぁ・・・」

 

誰にも聞こえないように啜り泣く真那を横にユージンは思う。

 

 

(ぜってえに連れ戻してやるからな三日月)

 

 

ここにお前を待っている奴がいる。だから勝手に満足してるんじゃねえぞ。




狂三「ひたすらにユージンさんがカッコイイ回でしたわね」

作者「そりゃあユージンはやるときはやるし、カッコイイからね。ヘタレる時はとことんヘタレるけど」

狂三「所で作者さんは反省しましたの?」

作者「そりゃあの後で虚ろな目した真那に返して返して言われながら滅多刺しされたらなぁ・・・アレは痛みより精神にくるぜアレ」

狂三「それにしては平気そうですわね?」

作者「ガンダムだとあるあるじゃん?」

狂三「悪い意味でこの人慣てますわね・・・」


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第五話

投稿!!

ちょっと短いですがね!!


「気は済んだかね?」

 

「取り乱してすみませんでした」

 

マクギリスの問いかけに真那はもう大丈夫ですと答えると、隣に座っていたユージンがマクギリスに言う。

 

「真那については一旦これで終わりだ。ここでまた頭痛を起こされても困るからな。・・・それよりも、だ」

 

ユージンは目つきを鋭くしながらマクギリスを見て口を開いた。

 

「三日月について教えろ。アイツは今どうなってる?俺や真那も三日月について知りたいから此処まで足を運んだんだ。何か知ってんだろ?」

 

ユージンの真剣な表情に合わせて、真那もマクギリスに視線を向ける。

───そう。今日、自分達が来た理由。それは三日月の自分達が知る士道の生存有無だった。

そんな彼等にマクギリスは口を開いた。

 

「まずは三日月・オーガスについてだが、恐らく彼はガンダムバルバトスと共に休眠状態になっていると私は予測している」

 

「休眠状態?」

 

ユージンの疑問の声にマクギリスは頷いた。

 

「ああ。そしてそれは理由があっての休眠だろう。───例えば、“モビルアーマーが現界”するのを防ぐ為と言えば分かりやすいか」

 

「はぁ!?モビルアーマーって・・・・アレが三日月の中にいるのかよ!?」

 

「あの・・・モビルアーマーって何でやがりますか?私にも詳しい説明をしてください」

 

驚愕するユージンに対し、モビルアーマーと言う聞き慣れない単語に真那が首を傾げていると、マクギリスは真那に顔を向けてくる。

そしてその緑色の目を真那へと向けた。

 

「崇宮真那。君は厄祭戦について何か知っているかね?」

 

「・・・厄祭戦って、あのおとぎ話の?」

 

確か宇宙規模で行われた大きな戦争でその戦争で月が物理的に三日月になったと言う話やオーストラリア大陸の一部が大きくくり抜かれたなどと、あり得ない話だと言われている。

 

「でも、実際はない戦争だった話ですよね?地球が壊れるくらいの戦争だなんて・・・」

 

そう言う真那に、マクギリスとユージンは無言のままだ。

 

「・・・どうしたんです?二人とも?」

 

真那がそう言うと、ユージンが気まずそうに口を開いた。

 

「いや、実際にあったんだ。厄祭戦はよ」

 

「えっ?」

 

「では少し話そうか。厄祭戦───人類の敵となった天使とそれを狩る七十二機の悪魔についてな」

 

マクギリスの言葉に真那は厄祭戦の真実を知ることになった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「どうしたの、夕弦?そんな顰め面をして?」

 

「疑問。今日の真那の様子が何処かおかしかったです」

 

「あー・・・確かに。何処か暗かったよねー・・・」

 

今日の朝食の時、真那の様子がおかしいと言う夕弦に、耶俱矢は確かにと頷く。

今日の朝の真那は普段に比べて暗かったのだ。

 

「でも、たまたまじゃないの?ただ、調子が悪かっただけってこともあるし・・・」

 

「否定。ですがあの電話の後、何処かソワソワとしていました。きっと何かあったのでは?」

 

「・・・んー、どうだろ」

 

多分何かあったと言えば、何かあったのだろうがそれがどう言った内容なのか分からない。

耶俱矢は少し考えるような仕草をすると、あっ!と声を上げた。

 

「だったら真那の部屋に行けばいいじゃん」

 

「怪訝。何故そうなりました?」

 

ジトッとした夕弦に耶俱矢が言う。

 

「いや、もしかしたら何か隠しているのかもって。真那本人に聞くのもいいけど、多分はぐらかされるだろうし」

 

「失念。言われてみれば」

 

確かにその通りではある。字面から勝手にやってもいいのかと考えたが、今の真那はきっとはぐらかすだろう。

 

「質問。ですがどちらが真那の部屋にいきますか?どちらかが、真那を連れ出さなければなりません」

 

「あー、だったら私がやる」

 

連れ出さなければならないと言った夕弦に耶俱矢がそう答える。

 

「いやー、前に真那に服買いに行こうって言って以来、忘れてて・・・」

 

「嘆息。忘れていたんですか」

 

何をやってるんだと思いたくなる夕弦は小さくため息をついていると、耶俱矢が言った。

 

「じゃあ、そう言うことでいい?夕弦」

 

「首肯。否定しません」

 

二人は頷いて士道達の後を追った。




作者「さて、厄祭戦について次は語っていくぜ!」

狂三「ガンダム史上でも中々に酷い戦争だと言われてますけれど?」

作者「そりゃ人類の四分の一を殺戮してんだぜ?そら、ヤバいわ。本質は豊かの象徴の為の自動化で戦争までも自動化させたせいで起こったわけだしな」

狂三「自動化もいいものではありませんわね」


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第六話 現実

投稿!!

前々回はユージンがカッコ良かったよね!
じゃあ次は─── 


マクギリスが真那をドン底に叩き落とすよ


「厄祭戦───。その大戦が起こったそもそもの発端は、厄祭戦が勃発する以前、機械の自動化が人類にとって豊かさの象徴であったことに起因する」

 

「機械の自動化による豊かさの象徴?」

 

機械による自動化によってなぜ、豊かさの象徴になるのだろうか?確かに便利だとは思うが、それが豊かさに繋がるとは真那には思えなかった。

真那はそう思いながらも、マクギリスの話を聞く。

 

「ああ。機械技術の発達の結果、やがて各勢力は戦争すら自動化させていった。そしてその中で作られたのがモビルアーマーだ」

 

「ちょっと待ってください。戦争を自動化?そんなことをしたら戦争が終わらないじゃないですか!?」

 

本来、戦争とは消耗戦にしかならない不毛な殺し合いだ。

人と人とが争い、殺し合うことでお互いにこれ以上戦いたくないと思わせることで大半の戦争は終戦する。

だが、その争いあう所を機械で全て補う。

そんなもの戦争ではなく、ただのゲームだ。

 

「ああ。それでは倒すべき勢力の人間を倒せない。当時の人達はその泥沼化した戦争の戦況を変える為、効率的に敵を倒すことに考えを傾けていった」

 

「人を・・・効率的に殺すってことですか・・・」

 

真那のその問いにマクギリスは頷く。

 

「結果、効率化を突き進めていく中で開発されたモビルアーマーは『敵を倒すこと』に忠実な機動兵器から『人を殺すこと』に過剰な殺戮兵器として進化を遂げ、人類の手に余る存在となってしまったと言う訳だ」

 

「・・・で、でもそんなことにならないように制御システムくらいあるんじゃねーですか?それじゃ兵器として破綻してますよ?」

 

真那のその言葉にマクギリスは言った。

 

「言っただろう。当時の考えの主流は機械の自動化だ。制御システムによる停止も全てモビルアーマーに搭載されたAIが行っている」

 

「・・・そ、それじゃあ厄祭戦の発端は───」

 

「ああ。全てを人の手を借りずに機械で完結させてしまった結果というわけだ」

 

厄祭戦が起こった発端に真那は絶句する。 

その結果、四分の一の人間が殺戮され、数多もの文明が滅ぼされたと言う訳だ。

 

「地球規模でそんなに沢山の人が死んだっていうわけでやがりますか・・・?」

 

真那のその質問にマクギリスは答える。

 

「より正確に言うなら太陽系規模だ」

 

「は?」

 

マクギリスのその答えに真那は顔を顔を引き攣らせる。

太陽系規模?今、目の前の男はそう言ったのか?

そんな真那にマクギリスは真剣な表情のままだった。

 

「太陽近辺を始め、地球、火星、水星、月、金星、木星、土星まで戦闘があったと記録が残っている」

 

「・・・・・」

 

厄祭戦の規模を甘く見ていた真那はただ黙っているだけだった。

そんな真那に対し、マクギリスは話を続けていく。

 

「モビルアーマーと人類の闘争の末期、人類は七十二機の機体を作った」

 

「・・・それが、兄様の」

 

───ソロモン七十二柱の悪魔の名前を持つガンダムという存在。

 

「ああ。天使の名前を持つモビルアーマーを狩る為に作られた悪魔の名前を持つガンダムという存在だ」

 

「天使を狩る、悪魔・・・」

 

精霊の力───天使を封印する五河士道の役目とは正反対───天使を殺す為に存在するガンダムを兄様は使っていたのだとマクギリスは言った。

 

「・・・恐らくだが今回、三日月・オーガスが消えた理由は君達・・・〈ラタトスク〉及び、精霊の力の封印が原因だと私は思っている」

 

「・・・・ぇ?」

 

「元々、ガンダムは天使を狩るための存在だ。ガンダム側が精霊の力・・・天使を“敵”として認識している以上、必ずぶつかり合いが発生する。三日月・オーガスが精霊の力を自身の中で封印すると言う事は天使側の力が強くなっていくということ。つまり天使と悪魔・・・その両方を長期間、”彼の中に押し込め続けた場合はどうなる”?」 

 

「オイ、待てよ。それじゃあ三日月は・・・」

 

その質問に真那は察した。

ガンダム側の目的はあくまでも天使の排除を目的として動いている。マクギリス・ファリドが言いたいのは、天使の力を強く持ち過ぎた五河士道から三日月・オーガスとモビルアーマーを切り離すことで天使を排除しようとした。 

 

「・・・でも、それじゃあ、モビルアーマーってやつと関係ねーじゃありませんか・・・」

 

そう関係ない。関係ない筈なのだ。兄様からモビルアーマーだけを切り離すだけでも十分な筈だ。

だが、そんな真那の希望を打ち砕くようにマクギリスは言う。

 

「言っただろう?三日月・オーガスとバルバトスの中にモビルアーマーは存在する。つまり、三日月・オーガスとバルバトス自身が癌細胞と言って過言ではない。五河士道が天使の力を持ち過ぎたことで“此方へモビルアーマーが現界してくる”という侵攻を事前に防いだのだろう。あの時と同じように」

 

「・・・あの、とき・・・?」

 

真那は震える唇を必死に開いてマクギリスに視線を向ける。

 

「覚えていないかね?DEM社を襲撃した時、街を一直線に焼き払ったビーム兵器の光を。君も見ていたと思うのだが」

 

「・・・・ぁ」

 

そうだ。兄様が十香さんを助けに行ったあの時に見た───あの光。

それがモビルアーマーが引き起こす厄災。

 

 

「・・・・あああ」

 

「おい!真那!しっかり気を持ちやがれ!!」

 

ユージンの声をかけるが今の真那には届かない。

つまり、兄様を取り戻すにはモビルアーマーが此方へ現界してくる可能性がある。人類を滅亡の危機に追い込むのを承知の上で呼び戻す手段を考えるか。

それとも、このまま偽りの幸せの中で腐っていくか。

 

「ああああああああああああああああああッッ!?」

 

真那に突きつけられた二つの現実。

それが彼女に与えられた報酬だった。




作者「ハマーン様、バンザーイ!!」

狂三「久しぶりに出ましたわね!?強化人間になった作者さん!!」

戦車「コイツなんとかしてくれよ・・・バトオペでザクⅢ改使ったら頭可笑しくなるんだよ・・・」

狂三「どういう意味ですの?」

戦車「チャー格構えながら万歳突撃しに行くんだよ・・・しかも質悪いことに与ダメとアシストスコアと陽動の三冠取っていくからさぁ・・・前にクイマで陽動48%とか頭可笑しい数字出して個人スコアと勝利もぎ取ったんだぜ・・・質悪ぃよホント」

狂三「大変ですわね・・・」

作者「ハマーン様!!バンザーイ!!」


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第七話 大切なもの

投稿!!
真那虐は一旦ここまで!(終わるとは言っていない)

次に始まるのは夕弦虐になるかも?


「・・・・・・」

 

気がつけばいつの間にか私は五河家の前にいた。

時間は分からないが辺りは暗くなっているのを察するに、もう夜ということはわかる。

だが、私にはもう何もかもがどうでも良かった。

兄様が士道が三日月は───此方へと帰ってきてはいけない。

マクギリス・ファリドにそう言われ、その現実を突きつけられた。

兄様が帰ってくれば、それは厄災を呼び起こす火種にしかならないと。人類滅亡の危機にしかならないと。

それを聞いた私は泣き叫んだ。他に方法はないのかと。本当にまた会える方法はないのかと。

だが、マクギリスは何も言わなかった。それが答えなのだと言わんばかりに。

兄様との繋がりは失った。自分に残っているものは、兄様が肌身離さず持っていた銃と十香達を頼むという言葉だけ。

 

 

これからどうしようかな、と私は考えた。今までは兄様にもう一度会いたいという思いがあったからこそ、この二十日間、自分は生きてきた。

けれど、それは叶わない泡沫になってしまった。

空元気で十香さん達に心配をかけまいと振る舞い続けた。

だが、その気力も最早ない。

しばらく考え続けてから、私は、朝になったらこの家から出ていこうと決めた。兄様と過ごした思い出を兄様に託された思いを捨てることになるけれど、背負い続けて思い続けてズルズルと一生引き摺ってしまうよりは───と私は思った。

一度決めてしまうと気持ちが楽になり、私は玄関前の階段に座ったまま、何も見ず、何も考えずに朝を待った。

最悪の日を迎えた最後の夜にしては、悪くない気分だった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

真那は何も考えず、ただ蹲りながら朝になるのを待った。すっかり周りも静まりかえり、冬の寒さが身を突き刺す。

そんな真那に誰かが近づく足音が耳に響く。

そして誰かが自分の横に座った。

 

「・・・そんな所で蹲って何やってんだ?寒いだろ」

 

「・・・・・放っといてください」

 

知らない男の声に思わず真那はそう返事を返してしまうが、とにかくこの男が鬱陶しくて仕方なかった。

だが、そんな真那に男は喋り続ける。

 

「悪いがそれは出来ねえ。見つけちまった以上はな」

 

そう言う男に真那は今まで心の底に押さえつけられていた激情に身を委ねながら目の前の男に向けて怒鳴りつけていた。

 

「───放っといてくださいよ!・・・…私は、そんなお節介頼んでねーです!」

 

突然視界が歪んだ。頬に、熱い感覚があった。自分の両眼に涙が溢れ、滴っていることに、真那はすぐには気づかなかった。

目の前に立つ背の高い男に、固く拳を握って胸に打ち掛かる。二度、三度、力任せにどんどんと叩きつける。

 

「何も知らないくせに・・・何もできないくせに、勝手なことを言うんじゃねーですよ!十香さんも四糸乃さんも琴里さんも耶俱矢さんも夕弦さんも美九さんも七罪さんも折紙さんも・・・誰も、兄様を覚えていない!あの日の事を誰も覚えていない!大切な人がいた事を誰も覚えていない!そんな中で、貴方に何が出来るって言うんですか!?何も知らない貴方が!!───何をなせるって言うんですか!!」

 

真那はその男の琥珀色の目を見ながらそう叫ぶ。

兄様は帰ってこない。帰ってきたとしても、沢山の人を犠牲にしてしまう。

そんなどうしようもない選択しかない中で、自分に何が出来る?そんなの諦めるという選択しかない。

 

「嫌いです・・・皆、皆、大っ嫌いです!!」

 

真那はそう叫びながら、あとから溢れ出る涙が地面に溢れ落ちる。誰にも泣き顔を見られるのが嫌で、勢いよく俯くと、額をどすんと男の胸にぶつかった。

両手で強く男の襟首を掴んだまま、力まかせに額を押し付けて、真那は押し殺すように嗚咽を漏らし続けた。幼子のように号泣し続けた。

そんな中で、男は真那に言う。

 

「・・・そうか。済まねえな。お前が“ミカをそんなに思ってるなんて”知らなかったわ」

 

「・・・・ぇ?」

 

“ミカ”という言葉に真那は顔を上げる。

その時、真那はその男の顔をはっきりと見た。

白い髪に浅黒い肌。琥珀色の目はまるで猛禽類のように鋭いが、今は申し訳なさそうな表情を作っていた。

 

「なあ、お前は確かタカミヤ・マナで良いんだよな?」

 

「・・・え?そ、そうですけど・・・」

 

突然目の前の男が自分の名前を言ってきて困惑する真那だったが、男の質問に頷いた。

 

「なあ・・・お前は本気でミカと一緒に居たいか?」

 

男のその質問に真那は頷く。

 

「居たいです・・・ずっと、ずっと兄様と一緒に居たいです!皆さんと一緒に買い物に行って、ご飯をまた一緒に食べて、一緒に寝て・・・ずっと!ずっと、兄様と一緒に居たいです!」

 

「これから先、どんな地獄が待っていようと、か?」

 

「はい・・・!」

 

どんなに辛くてもいい。どんな地獄が待っていてもいい。また、兄様に会えるならそれだけで───

 

「───フッ、そうか。そんなことを平気で言うのはあのお嬢様だけかと思ったが・・・お前もか」

 

男は少しだけ苦笑の笑みを溢すと、真那にある物を渡した。

 

「ほらよ」

 

真那は投げられたソレを上手くキャッチした後、ソレに目を向ける。それは機械製のリングだった。

 

「それをお前にやる。ソイツが示すポイントに行け。そしたら何か分かるさ。───ミカにまた会いたいんだろ?」

 

そう言って男は身を翻す。

そして歩き出そうとする男に、真那は呼び止めた。

 

「───これは何なんですか!!それに貴方は兄様のなんですか!?」

 

「俺か?」

 

男は振り返り、真那を見る。

そして、困惑の表情を作る真那に言った。

 

「俺は───鉄華団団長のオルガ・イツカだ。ミカは俺の一番大事な“家族”だ」

 

「──────」

 

オルガ・イツカ。それは兄様がたまに言っていた───兄様の一番大事な人。

 

「どうして、貴方が私に───」

 

こんな事をと言おうとした時、オルガは言った。

 

「お前、さっき言ったじゃねえか」

 

「えっ?」

 

真那はオルガのその言葉に首を傾げる。さっき言った。それはどういう───

 

「───“ミカと一緒に居たいってよ”」

 

「──────」

 

その言葉に真那は何も言えなかった。まさか───それだけの為に?

 

「ミカの家族は俺らの家族だ。だったら───家族のワガママくらい聞いてやるくらいしてもいいだろ?」

 

そう言って、オルガは真那が持つリングに指を差す。

 

「そのリングは本来、大昔に人類が失ったヤツを見つけ出す手がかりのようなモノだ。それを使ってバルバトスと一緒にミカを探し出せ。ただ、お前一人だけじゃ駄目だ。他の奴等も一緒にな。出ないとソイツは手がかりを出さねえ」

 

オルガはそう言って真那を見る。その目は真那に何かを期待しているような目だった。

 

「───ミカはまだ完全に消えちゃいねえ。そのミカを此方に引き止められるのはお前等だけだ。やるからには最後までやって皆でバカ笑いしようぜ」

 

そう言ってオルガは消えていった。

そして一人残された真那は、自分の手の中に収まっているリングを見る。

 

「これがあれば、兄様にまた会えるかもしれない。また、話せるかもしれない・・・」

 

一度は諦めようとしていた。けれど───その希望をあの人がくれた。

もう、失いたくない。もう、離したくない。ずっと皆と兄様と一緒に居たい。

だからこそ真那はもう一度立ち上がる。───大切なものをもう失くさない為に。

暗くなっていた空はいつの間にか太陽が顔を覗かせており、辺りを明るく照らしていた。




狂三「ここでウルズハントネタを組み込んだみたいですわね?作者さん?」

作者「まあ、元から似たような設定を考えてたからウルズハントが出てから土台か固まった感じかなー」

狂三「そういうことですの。まあ、それより真那さんが立ち直ってくれて良かったですわ」

作者「一応先に言っておくけど、まだ真那は苛めるつもりだからね?」

狂三「はい?」


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第八話

投稿!!

ここでまた引っ張り出される真那の黒歴史ッ!!


「あむ・・・ん・・・んぐ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

朝。昨日とは全く別人のように勢いよく朝食を食べる真那に士道と琴里は、自身の箸の手を止めながら真那を見ていた。

 

「・・・ま、真那?そんなに勢いよく食べると喉詰まらせるよ?」

 

「んぐ・・・ぷはっ・・・これくらい平気でやがりますよ。それに昨日の朝から何にも食べてなかったので・・・あむ・・・ほ腹、すひてひるんへふ」

 

行儀が悪い真那に士道達は目を合わせる。

 

士道、昨日真那に何かした?

 

してるわけないだろ!?それに昨日は真那はいなかったんだし!!

 

あらぬ疑いをかけられた士道は心の底から絶叫の声を上げる。

 

「なにアイコンタクトしてやがるんです?」

 

「「ッ!?」」

 

真那の指摘に二人はビクッと肩を震わせると、言い訳をするようにあたふたし始めた。

 

「い、いや、ただ、真那がこんなに食べるなんて思わなくてだな!?」 

 

「そ、そうそう!だからちょっと意外だなって、ね!?おにーちゃん!?」

 

「お、おう!!」

 

「・・・・・・・」

 

二人の慌てぷりを見て真那は絶対に違うこと考えてましたよね?と思っていたが、何も聞かないことにした。

どうせはぐらかされるが落ちである。

真那は最後のソーセージを口の中に放り込むと、そのまま皿を持って立ち上がった。

 

「ご馳走さまです。あ、今日はもしかしたら帰り遅くなるかもしれませんので晩御飯はいいですよ」

 

「お、おう」

 

皿を手際よく洗って水を切る真那はすぐに階段へと駆け上がる。そんな真那の後ろ姿を二人は───

 

「やっぱり何かしたんじゃないの?」

 

「だからしてないって!?」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「・・・・はふぅ」

 

着替えが終わり、一段落した真那は小さくため息を吐いた後、机の引き出しにしまってある銃を取り出し、天板の上に置く。

 

「・・・兄様」

 

───あの日からずっと。兄様が消えたあの日からこれだけは消えなかった。

士道が・・・三日月がずっと持っていたお守り。

これがあったから、私は兄様のことを忘れなかったのかもしれない。

真那はオルガ・イツカという男から貰ったリングをポケットから取り出し、それを太陽の光に当てて眺めて見る。

金属製で一筋の線が入ったリング。

これが三日月を連れ戻すためのヒントをくれると言った。皆が一緒でないとヒントをコイツは出さないとも。

このリングが何なのかは分からない。けれど、これが兄様を連れ戻すための唯一の手がかりでもあった。

 

「・・・とりあえずユージンさんに連絡先を入れねーと」

 

そう。人手は多ければ多い方がいい。

それにまだ真那にはやることが沢山ある。

 

「マクギリスさんにも連絡して、色々と聞かねーといけませんし」

 

あの男。胡散臭いが頼らざるを得ない。

 

「待ってて下さい。絶対に見つけますから」

 

そしたら言ってやるのだ。───お帰りなさいって

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「えっ!?真那居ないの!?」

 

耶俱矢の驚いた声が五河家のリビングに響き渡る。

 

「今日、朝御飯だけ食べてすぐに出ていったよ?何かやることがあるからって」

 

士道がそう言うと、隣にいた夕弦が唇を開く。

 

「説明。やることとは?」

 

「うーん・・・何も言わないで出ていったし・・・」

 

そう言う士道に耶俱矢が言った。

 

「じゃあ、ちょっと真那の部屋に行っても構わないか?」

 

「真那の部屋に?別に俺は構わないけど、なんで?」

 

士道の質問に耶俱矢は言った。

 

「真那に貸したゲームが何時までも返ってこぬからそれを返して貰おうって思ってな」

 

「借りたまま返してなかったのか・・・」

 

勿論それは真那の部屋に入る為の嘘である。

だが、ソレを信じたのか士道は「ああそう言うことなら」と言って二人を中に入れた。

 

「じゃあ、俺はリビングにいるから何かあったら何時でも言って」

 

「首肯。分かりました」

 

夕弦はそう返事を返し、扉を閉める。

 

「・・・さて、と」

 

「呼応。探しましょう」

 

何を探すと言っても、分からないからとりあえず片っ端から探していく。

ベッドの下からクローゼットの中まで隅々と。

 

「・・・ん?写真?」

 

耶俱矢が封筒の中を開けるとそこには写真が沢山あった。

だが、それは殆どが士道の寝顔である。

 

「う、うわぁ・・・」

 

「驚嘆。これは・・・」

 

真那の秘密の一つを知ってしまった二人はすぐに写真を封筒の中へと仕舞い・・・

 

「夕弦。私達は何も見なかった。いい?」

 

「同意。真那さんの尊厳の為にもそうした方がいいです」

 

人の部屋を荒らしてる時点で二人もある意味終わってることに気が付かない二人は最期に机の引き出しを見る。

 

「後は定番の引き出しだけど・・・」

 

「首肯。もうここしか隠す場所はありません」

 

二人は互いに頷いてから引き出しを開ける。

その中には一つの使い込まれた銃が入っていた。

 

「銃?」

 

耶俱矢は机の引き出しに入っていたそれを見て首を傾げる。

 

「同意。なんでこんなものが・・・」

 

夕弦はそう言ってその銃に手を伸ばし、触れた瞬間───

 

「──────」

 

夕弦は意識を失った。




真那「ギャアアアアアアッ!?耶俱矢さん!?夕弦さん!?それは見ないでください!!」

狂三「真那さんが乙女が出してはいけない声を出しましたわよ・・・」

作者「誰だって黒歴史はあるだろ?ネコキングなんて自分が死んだ時は、墓は暴いてもいいけど、パソコンのファイルは暴かないでくれ!って言ってたくらいだし」

戦車「ここの真那って原作と違って色々とやらかしてるよな?」

作者「なんなら色々とやらかしたせいである意味色々と重いし、すねらせてる」

狂三「キャラ崩壊というやつですわね」

作者、戦車「「お前もなッ!!」」

真那「あ、あははは、終わった・・・何もかも・・・」


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第九話 忘れていたもの

投稿!!


夕弦虐はっじまるよーッ!!

なお、真那とは違って精霊組は虐めすぎると反転化しかねないのでほどほどにしますが


「耶俱矢?」

 

夕弦は真っ暗な世界で耶俱矢の名前を呼ぶ。

だが、誰もその夕弦の声に答えるものはいなかった。

 

「疑問。・・・此処はどこでしょうか?」

 

先程まで自分は耶俱矢と一緒に真那の部屋に居たはずだ。そこで彼女の机の引き出しの中に入っていた銃に触れようとした時───

 

「・・・・っ」

 

そうだ。そこから先が何も思い出せない。

耶俱矢とその銃を見てどう思ったのか。───何も思い出せない。

───と、何処からか声が聞こえた。

 

「・・・・?」

 

夕弦は振り返ると、そこにはいつのまにか扉があった。

声はその先から聞こえてくる。

 

「疑問。・・・誰かいるのでしょうか?」

 

夕弦は警戒しながらもその扉のドアノブを握り、ゆっくりと扉を開ける。

その先は薄暗い廊下だった。

そして廊下の先に微かに光が見える。

夕弦はゆっくりと薄暗い廊下を進みながらその光の先へと足を進めていった。

廊下を進み、階段を音を立てないように降りていく。

どうやら光の場所はリビングだったらしい。

夕弦はゆっくりと足音を立てぬよう、リビングへと向かった。

微かにリビングの扉に隙間が開いているのを見て、夕弦はその隙間から覗き込むように顔を近づけた。

そこで引き返しておけば、夕弦は何も知らないままで“幸せ”でいられたかもしれない。

───その扉の先には士道と“自分”がいた。

 

 

『そう言えば耶俱矢は?一緒じゃないの?』

 

『返答。耶俱矢は真那達と一緒にゲームをしています』

 

『ふーん』

 

夕弦のその言葉に素っ気なく返事を返す士道。

 

「・・・し、どう?」

 

夕弦は小さく、だが震えた声をこぼす。

この扉の先にいる士道は自分の知っている士道とは違っていた。

右腕が肩から下げられた布で固定され、右目は光が灯っていない。そして士道らしくない何処か落ち着いたような雰囲気に夕弦は身体をこわばらせる。

 

『・・・で、何の映画見る?』

 

『回答。これを見ましょう』

 

『・・・アニメ?』

 

『回答。前に耶俱矢が借りてきた映画だそうです。気になったので持ってきました』

 

『・・・へぇ。なら、それ見ようか』

 

おかしい。自分はこんな事を士道とした事はない。

では、これはなんだ?

夕弦はここで引けばいいのにも関わらず、その光景を食い入るように夕弦は見続けていた。

扉の先の夕弦は士道の横へと座ると、士道の左腕を取りそのまま身体を寄せると、士道が不思議そうな顔をする。

 

 『何やってんの?』

 

『独占。今夜だけは、士道は夕弦のものです。そして、今夜だけは、夕弦は士道のものです。────そうでしょう?』

 

『・・・好きにしたら』

 

ぶっきらぼうに答える士道に、夕弦は士道の左肩に体重をかけ、映画を見始める。

ああ───そうだ。そうだった。自分はあの時、士道と一緒に映画を見た。

耶俱矢に内緒で勝手に持ち出し、士道と一緒に見た。

夕弦はその場から動けなかった。

なぜなら、これは忘れてはいけない記憶だったのだ。忘れてはいけない筈なのに───

立ち尽くす夕弦に扉の先の二人は映画を見続ける。

そして映画が終わり、首を回す士道に扉の先の自分は言った。

 

『呼掛。────士道』

 

『ん・・・なに?』

 

『感謝。ありがとうございます。おかげで有意義な日でした』

 

『・・・そっか。ならよかった』

 

そう。あの時間はとても有意義だった。士道と二人で一緒に映画を見るだけだったのに、士道の隣に座った時の自分はドキドキと心臓が高鳴り続けていたことをどうして───

     ───どうして忘れていたの?───

 

『追加。今度は耶俱矢と一緒に見ましょう』

 

『うん。今度は三人で見ようか』

 

『予想。きっと耶俱矢は怒ります。なんで今日呼ばなかったのよ!というふうに』

 

『そうかもね』

 

苦笑混じりの会話を聞きながら扉の前で立ち尽くしていた夕弦はその場に座り込む。

 

「・・・・ああ」

 

と、夕弦は呟く。

何となく、知識で知った。

これは。

“五河士道という少年の役目を背負った彼の───三日月・オーガスの思い出なんだと”

 

『確信。耶俱矢は、普段“あんな“ですが、士道のことが大好きですよ。夕弦が言うのだから間違いありません。夕弦と耶俱矢は元々一心同体。夕弦の嫌いなものは耶俱矢も嫌いです。同じように────夕弦の好きなものは、耶俱矢も大好きなんです』

 

『・・・そっか。俺も夕弦達が好きだよ』

 

彼のその言葉が全てを忘れていた夕弦の胸に突き刺さる。

 

『送ってく。もう遅いし』

 

『返答。ではお願いします。それと、耶俱矢は、士道のことをとても気に入っています。だから────耶俱矢のこと、よろしくお願いします』

 

『うん』

 

夕弦は。

自ら望んで、顔を上げた。

眼の前に広がる忘れていた光景を、焼きつけておきたかった。目の前の少年を。私達の為にみずからを犠牲にした少年を。

扉が開かれる。

そして彼の顔は───

 

黒く───塗りつぶされていた。

 

記憶が変わっていく。士道と始めて出会った時。士道に皆とお揃いのお守りをプレゼントした時。そして士道と二人で映画を見たあの時の気持ち。

 

───夕弦ッ!

 

その瞬間、誰かが夕弦を呼ぶ声がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「夕弦ッ!夕弦ッ!」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「───かぐ、や?・・・し、どう?」

 

夕弦が目を覚ますと、視界には二人の顔がいっぱいに入っていた。耶俱矢の目には涙が浮かんでおり、どれだけ心配させたか予想できる。

 

「良かった・・・急に倒れたから心配で・・・」

 

「質問。・・・急に倒れた、とは?」

 

夕弦は小さく首を傾げると、耶俱矢は言う。

 

「覚えてない?夕弦があの銃に触った途端、急に倒れて・・・夕弦?」

 

銃と耶俱矢が言った途端、夕弦は──全てを思い出した。

 

「・・・ぁ・・・」

 

夕弦は小さく声を漏らすと、士道を見る。いや、より正確に言うなら、士道の左手首を・・・だ。

“そこには何もなかった。“士道と耶俱矢と夕弦を繋ぐソレを士道はしていなかった。

 

「夕弦?」

 

様子が可笑しい夕弦に士道が声をかけると、夕弦が震えた声を返す。

 

「質、問。・・・士道・・・私達が、どう出会ったのか、覚えてますか」

 

「えっ?確か・・・或美島で二人の勝負に巻き込まれる形で出会って、“俺が大声を上げるまでは”二人とも止めなかったよね」

 

違う、そうじゃない。士道はあの時、バルバトスを使って私達の動きを止めた。大声を上げて止めたのではない。

 

「それでは、私達が喧嘩をしたときは?士道は・・・なんて、言いって止めました?」

 

「精霊の力を失う代わりに、二人で生き残る・・・だったかな。あの時のこと焦っててあまり覚えてないけど、それは覚えてるよ」

 

そう言う士道に夕弦は顔を俯かせた。

違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。何もかもが自分の知る士道と違う。

 

今だって二人は“一緒に生きている“。なら、そんなどうでもいい決闘なんか止めて二人でこれからも生きていけばいいじゃん

 

士道はあの時、そう言った。真の八舞になることをどうでもいいと一蹴りしたあの士道と違う。

 

「質問。・・・これ、が最期です。・・・士道、“私達の作ったお守り”は何処にありますか」

 

これが最期。自分の知る士道はそのお守りをずっとつけていた。学校にいるときも、お風呂に入るときも、寝るときも。肌身離さずずっとつけていた。

だが、士道の言葉は夕弦の最後の期待を裏切るものだった。

 

「お守り?“二人からお守りは貰ったことない”よ?」

 

その言葉に───“ビシリ”と夕弦の何かにヒビが入る音が嫌にはっきりと聞こえた。




狂三「よりにもよって、原作とはかけ離れたこのシーンを選びます?作者さん?」

作者「人の心をへし折るのはね、まずは追い詰めることなんだよ。まあ、追い詰め過ぎるとヤケ起こして無敵の人になることあるけど」

狂三「・・・夕弦さんは自分で自分の首を締めましたわね」

作者「夕弦の場合は完全な自爆だから・・・」


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第十話

投稿!!

いやぁ!ヒロインズや主人公(今は真那)を虐めるの楽しくなってきて仕方ない!

狂三「ここにクズが居ますわよ・・・」


「今・・・なん、と・・・いいました?」

 

夕弦は先程の言葉が聞き間違いではないのかと、自分に言い聞かせながら士道にもう一度言った。

 

「だから、俺は二人からお守りは貰ったことないよ?」

 

「・・・夕弦、本当に大丈夫?どこも悪いとこない?」

 

耶俱矢が心配そうに夕弦に声をかけるが、その言葉は夕弦のなかに入ってこない。

士道がお守りを持っていない。なら、私のこの記憶にある士道は───

 

「・・・・・・」

 

「・・・夕弦?」

 

身体を震わせる夕弦に耶俱矢は心配そうに首を傾げるが、夕弦は耶俱矢の返事には応えず震えた右腕を上げ、何度か自分の手首を触る。

そこにあった筈のものがないと理解した夕弦は───

 

「────────」

 

バタリと音をたてながら夕弦は床へと倒れ伏した。 

 

「夕弦!?」

 

「大丈夫か!?」

 

耶俱矢は倒れた夕弦を抱き上げるが、夕弦は目を覚ましそうにない。だが、夕弦のその顔はどこか青ざめている。

 

「どうしたのー?おにーちゃん?」

 

琴里が扉の先から顔を出すが、夕弦の様子を見て急に表情を変える。そして直ぐ様リボンを白から黒へと変えると、真剣な様子で士道に言った。

 

「・・・何があったの?」

 

「わ、分からない!ただ、急に倒れて!!」

 

「夕弦!!夕弦!!」

 

耶俱矢が夕弦の肩を必死に揺らすが、目を覚ます様子はなかった。

 

「耶俱矢、今から夕弦を〈ラタトスク〉へ運ぶわ。士道も手伝ってちょうだい」

 

「う、うん」

 

「お、おう!」

 

心配そうな表情をする耶俱矢に琴里はそう言って、士道には夕弦を担いでもらう。

 

「何が起こってるの?一体・・・」

 

真那と夕弦達の異変に琴里はそう呟いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「はぁ!?本当かよ!?お前、オルガに会ったって!?」

 

ユージンの驚愕の叫びに対し、真那は声を荒げる。

 

「だ、か、ら!!何度も言ってるじゃねーですか!!嘘を言ってどうするんです!?」

 

「だってよ、アイツが此処にいるなんてよ・・・」

 

オルガには言いたいことが一杯あった。だが、あの時は俺達も必死で話す時間など限られていたのだ。

落ち着いたらまた話そうと約束した後にオルガが暗殺され、結局ユージンは何もアイツに言えてなかったのである。

 

「さて、話は済んだかね?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「お、おう」

 

真那達の会話を最後まで聞いていたマクギリスは二人に聞くと、真那は頷き、ユージンも釈然としていない様子だったがすぐに頷いた。。

 

「さてこのリングだが・・・解析中に座標が出たとだけ言っておこう」

 

「本当でやがりますかッ!?」

 

「まじかよ・・・」

 

二人はそう言葉を漏らすと、マクギリスは座標位置を真那達に見せる。

 

「それで座標場所についてだが以前、天央祭があったアリーナを指している。この場所に何があるかは予測出来ないが、それでも君達は行くのかね?」

 

マクギリスのその言葉に二人は、何を今更といった様子で拳を自分の手のひらへと打ちつける。

 

「行くに決まってんだろ。三日月を連れ戻せるかもしれねぇチャンスなんだからな」

 

「ええ。私はもう迷わねーです。ぜっーてに何があっても兄様を連れ戻します」

 

「・・・それは、“今の五河士道を殺す”と君は言っていることになるが、それでもかね?」

 

「・・・・分かってますよ」

 

真那はマクギリスのその言葉に対し、心苦しそうに声を漏らした。

 

「それくらい、少し考えれば予想できたですよ。確かに、あの兄様には何にも悪い所はねーです。本当はあの兄様も助けてーですよ。ですけど・・・どっちか選べと言われたら、私は・・・」

 

「・・・すまない。少々、嫌なことを聞いてしまったな」

 

顔を俯かせる真那に、マクギリスはそう言って再び二人に視線を向けて口を開く。

 

「君達がこの座標に向かった時、恐らく悪魔達が妨害をしてくることだろう。前に謎のガンダムフレームに叩きのめされたと聞いたが、大丈夫かね?」

 

「だからこそ、貴方に手伝って欲しいんですよ。確かに私達だけじゃ無理です。また前と同じように叩きのめされるかも知れねーです。でも、貴方なら」

 

「同じガンダムを持つ私なら勝てる、と?」

 

そう言うマクギリスに真那は頷いた。

 

「・・・・・」

 

マクギリスがしばらくの間、無言になる。

正直な話、これは賭けだった。

この件にマクギリスが関わるメリットなど一つもない。むしろデメリットの方が多い。

もし、何かを要求するのであればそれには出来る限り答えなければならない。

緊張が三人のいる部屋を覆い尽くす。

そんな彼等にマクギリスは笑みを浮かべた。

 

「そんな表情をしなくてもいい。無論、私も協力させてもらうとも。彼には私も世話になっていたのでな」

 

「・・・・!!」

 

マクギリスの返事に真那が顔を明るくする。

とその時、真那の電話がポケットの中から鳴った。

 

「・・・取ってもいいです?」

 

「おう」

 

「ああ、構わない」

 

二人の了承を得て、真那は携帯を取り出し通話ボタンを押すと、相手が誰なのかすぐに分かった。

 

『真那。貴女、今何処にいるの?』

 

声の主は琴里だった。どうやら自分を探していたらしい。

 

「今、お昼の最中ですけど、何かあったんでやがりますか?」

 

真那がそう言うと、琴里が言う。

 

『夕弦が倒れたの。───さっき目を覚ましたのだけれど、精神面が今凄く不安定なの。一応何時でも抑えられるように、一度戻って来てくれないかしら?』

 

「夕弦さんが?分かりました。今行きます」

 

真那は電話を切ると、直ぐ様荷物を纏めて立ち上がった。

 

「どうかしたのか?」

 

「夕弦さんが倒れたみてーでして。今、起きたみたいなんですが、精神面がどうも不安定なので、ストッパーとして戻ってきてと・・・」

 

そう言う真那に、マクギリスは何か考え込むような仕草を取る。

 

「・・・もしや、八舞夕弦も“何か思いだした”のではないかね?三日月・オーガスが消えてしばらくは君も似たようなものだったからな」

 

「・・・・!じゃあッ!?」

 

「早く行ってやるといい。彼女は精霊だ。これ以上状況が悪化すると夜刀神十香の二の舞になる可能性がある」

 

マクギリスのその言葉に真那は不安を覚え、すぐに家へと駆け足で走っていった。

真那が居なくなり、マクギリスにユージンは言う。

 

「お前、一体何が目的だ?三日月に世話になったって理由で動くたまか?」

 

鋭い目つきになるユージンにマクギリスは笑みを崩さず、ユージンに言った。

 

「彼に世話になっているのは違いないとも。それに、私も“決着”をつけなければならないのでな」

 

「三日月を?何を考えてやがる?」

 

その質問にマクギリスは───

 

「今はそれだけを知っていればいい。いずれ分かるとも」

 

マクギリスはそう言って、完全に冷めた紅茶を口にするのだった。




作者「いやぁ楽しいね。ヒロインイジメ。サンボルの作者の気持ちがなんとなーく分かった気がする」

狂三「嫌なこといいますわね?夕弦さんのあの状態を見て何にも思わないですの?」

夕弦「・・・・・・」カミーユ状態

作者「・・・やりすぎた?」

狂三「やり過ぎですわよ!」


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第十一話  

投稿!!

水星の魔女の十九話見て思ったこと!

スレッタ・・・お前、腹が減ったからって冷蔵庫漁るなよ・・・ガチモンのたぬきに見えたぞ・・・


「はぁ・・・はぁ・・お、お待たせしました」

 

「遅いわよ」

 

流石に十分近くの全力疾走に息が上がっていた真那は、〈ラタトスク〉の医務室前にいた琴里に一言言われるが、何処か余裕がない様子だった。

 

「夕弦さんは?」

 

「夕弦ならこの先にいるわよ。ただ───」

 

琴里は苦虫を噛み潰したような表情で苦々しく言う。

 

「正直、“なんであんなに取り乱してる理由”が分からないの。士道は───“三日月”は何処って?三日月って誰よ・・・それに何時も隣にいる耶俱矢が居ても効果がないの」 

 

「そんなにですか・・・」

 

マクギリスの予想通りに真那は感心しつつ、琴里に言った。

 

「琴里さん・・・ちょっとだけ夕弦さんと二人で話をしてみても良いですか」

 

「・・・二人で?」

 

「はい」

 

怪訝そうにする琴里に真那は頷いた。

真剣な表情の真那を見て、琴里は小さく溜息をついた。

 

「・・・分かったわ。けど、十分だけよ」

 

琴里は真那にちょっと待っててと言って、医務室へと入っていく。

そして少しした後、琴里は耶俱矢を連れて部屋から出てきた。だが、耶俱矢も不安そうな表情で医務室に視線を向けている。

 

「・・・夕弦」

 

耶俱矢の不安そうな声に私は胸が痛んだ。

なぜなら彼女がこうなった理由を自分がずっと胸内に隠し続けていたから───

真那は不安そうにする耶俱矢を励ましの言葉をかけた。

 

「大丈夫ですよ。私が何とかして見せてみますから」

 

「・・・お願い・・・夕弦を・・・」

 

「任せてくださいよ」

 

耶俱矢は声にならないような小さな声で真那に言う。

そんな耶俱矢に真那は頷き、数度扉をノックをした後、返事がないので部屋に入った。

 

「失礼しますよ・・・」

 

真那はゆっくりと部屋に入った瞬間、誰かが真那を押し倒した。

 

「えっ!?ちょっ!?」

 

押し倒された真那は慌てた様子で自分を押し倒した夕弦に視線を向ける。

だが、今の夕弦の顔を見て真那は顔を引き攣らせた。

 

「質問。・・・“士道は”・・・“三日月は何処ですか”?」

 

夕弦の表情が完全に死んでいたと言えばいいだろうか?

目が完全に虚ろで光がない。前からあまり表情を見せなかった夕弦だったが、それでも普段の夕弦とはまるで別人ではないかと思うくらいの豹変ぷりだった。

何も答えられなかった真那に夕弦が再度聞く。

 

「質問。士道は・・・三日月は何処ですか?」

 

夕弦のその質問に真那は言った。

 

「兄様は・・・私達が知る兄様は消えました・・・」

 

真那のその言葉に夕弦が否定するように言う。

 

「反論。・・・嘘です。士道は・・・三日月は・・・消えてません」

 

夕弦が縋りたい気持ちも分かる。だってかつての私もそうだったから。だけど今は絶望だけじゃない。

 

「嘘じゃねーです。ですが兄様は───っ!?」

 

真那がそう言いかけた瞬間、真那は思いっきり床へと叩きつけられる。そして夕弦の顔が真那の視界いっぱいに覆い尽くし、そしてポタポタと温かいものが真那の頬をつたった。

それは涙だった。夕弦の目から溢れ出していた涙が真那の頬に滴り落ちる。

そして夕弦は小さな掠れた声でポツポツと独り言のように呟いていた。

 

「・・・先程、夢を見てました」

 

「夢・・・でやがりますか・・・」 

 

「士道と・・・一緒に映画を見ていた夢です」

 

「そう言えば・・・夕弦さんはよく兄様と映画を見てましたね」

 

真那のその言葉に夕弦は真那の服を握っていた手を更に力を込める。

 

「・・・その時、士道が言ってくれました。今度は耶俱矢と一緒に映画を見ようと・・・」

 

「・・・・・・」

 

真那は黙ったまま夕弦の話に耳を傾ける。だってそれは夕弦と三日月の大切な約束だから。

 

「一緒に・・・って、約束。・・・しました・・・なのに、どうして・・・」

 

───どうして私達を置いて行くの───

 

そんな本音が真那には聞こえたような気がした。

声を殺して泣く夕弦に、真那は優しい声で夕弦の背中を撫でる。

 

「・・・夕弦さんの気持ち、少しだけわかりますよ。私だってそうでした。兄様がいなくなって誰も、兄様の事を覚えていなくて・・・自暴自棄に・・・なってましたから」

 

夕弦の泣き顔に釣られ、真那も顔をぐしゃぐしゃにしながら必死に声を上げた。

でないと、夕弦と一緒に泣いてしまいそうになるから。

 

「けど、消えてしまった兄様を・・・助けられるかも知れないヒントを見つけましたから」

 

絶望だけじゃないとそう言って真那は夕弦にリングを見せると、夕弦は言った。

 

「それで・・・士道が取り戻せると?士道が帰ってくると?」

 

「分からねーです。兄様が帰ってくるかどうかなんて私だって分からねーです。でも、これ以外に縋る物は私にもねーですよ。だったらほんの少しの可能性でもあるなら私は何だって縋りますし、何でもします」

 

「・・・・・・」

 

真那のその言葉に夕弦は何も言わなかった。ただ、表情が少しだけ何時もの夕弦に戻ったような気がした。

 

「・・・憧憬。私は、真那が少し羨ましいです」

 

「なんで、です?」

 

「真那は私より・・・ずっと強いですから」

 

「当たり前、ですよ」

 

そう言う夕弦に真那はぐしゃぐしゃになった顔で笑って見せる。

 

「だって───」

 

そう。だって私は───

 

「───兄様の妹でやがりますから」

 

血の繋がりなんてもうどうでもいい。

私は───兄様の妹でありたいから。




作者「ねえねえ、真那に妹度で負けて今、どんな気持ち?どんな気持ち?笑」

琴里「〜〜〜〜アンタねぇッ!!泣」

戦車「辞めたげてよぉ!?琴里が一体何したって言うのさ!!」

狂三「幾ら“義妹とはいえ”、可哀想ですわよ」

作者、戦車「「あ」」

狂三「へ?」

琴里「」

作者「コイツ・・・俺があえて触れなかった所に触れて琴里に止め刺しやがった・・・」

戦車「見ろよ・・・琴里死んでるぞ」

狂三「これ、わたくしのせいですの!?」


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第十ニ話 朽ちない『髑髏』

投稿!!
次回から戦闘に入ります!

お楽しみに!


「ユージンさん!お待たせしました!」

 

「おう。・・・てか、なんでお前等が居るんだよ?」

 

夜。

駅前でユージンが真那とマクギリスを待っていると、真那と共に歩いて来た夕弦と耶俱矢を見てそう呟く。

そんなユージンに夕弦が答えた。

 

「愚問。ユージンと真那だけで危険なことをさせられません。私も手伝います」

 

「私は夕弦が心配だからついて来ただけ。てか、アンタ誰よ?夕弦とどういう関係?」

 

「あー・・・」

 

もしやとユージンと真那は思っていたが、どうやら三日月の事を覚えていない以上、ユージンとの関係も全てなかったことになっているらしい。

どう答えようかと考えていたユージンと真那に、夕弦が助け舟を出す。

 

「忠言。士道との関連で偶然知り合いました。それ以外ありません」

 

「・・・士道との?」

 

耶俱矢が疑い深くユージンをジロジロと観察しながら一通り見ると、確かにと呟く。

 

「確かに殿町以外の悪友って考えればいそうだけど・・・アンタ、夕弦に何もしてないわよね?」

 

「するかよ。つか、失礼だよな!?お前!!」

 

ユージンの返答に耶俱矢は信じたのだろう。

耶俱矢は真那を見て言った。

 

「ていうか、ここ天央祭があった時に使った駅よね?一体何処に行くのよ?」

 

「えーっとですね・・・このリングに表示されてる目的地って言えばいいです?」

 

「ふーん」

 

そんな耶俱矢にユージンは夕弦に誰にも聞こえないように顔を近づける。

 

「本当に大丈夫かよ・・・すっげえ疑ってるぞ」

 

「首肯。大丈夫です。耶俱矢はああ見えて結構単純ですから」

 

「お前、なにげに酷いな・・・」

 

「返答。何がです?」

 

首を傾げる夕弦にユージンは溜息をつく。

そんなユージン達に、後ろから聞き覚えしかない声がかけられた。

 

「すまない。またせたようだ」

 

「おせえよ」

 

車の後部座席から一人の男が降りてくると、耶俱矢と夕弦の姿を見て驚いた表情を作る。

 

「おや?彼女達も参加するのかね?」

 

そう言うマクギリスに夕弦が前に出て言った。、

 

「首肯。これは私の意志です。そして三日月にはもう一度、言わなくてはならないことがありますから」

 

そう言う夕弦にマクギリスはフッと笑うと、そのまま踵を返す。

 

「そうか・・・では行こうか。私にもやれねばならない事があるのでね」

 

「あっ!!ちょっと!?待ってくださいよー!」

 

先に歩き始めるマクギリスにユージン達は目的地であるアリーナへと向かった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「あれ?」

 

目的地であるアリーナへとついた五人はリングの座標をもう一度見る。

目的地である座標場所はどうやらアリーナの中らしい。

 

「鍵がかかってやがる」

 

ユージンは数度ガチャガチャとして開かない扉を見て、チッと舌打ちをしていると真那が前に出た。

 

「任せてください」

 

「あん?」

 

そう言いながら扉の前に立つと、真那は〈ヴァナルガンド〉を展開し、扉の鍵を剣で叩き壊す。

 

「こうすれば手っ取り早いですよ」

 

「「・・・・・・」」

 

こうすれば手っ取り早いと言う真那にユージンと耶俱矢が顔を引き攣らせていた。一体誰に似たのだろうか?

 

「行くぞ」

 

マクギリスが鍵が壊れた扉を押し、館内へと足を踏み入れる。

カツカツと足音が夜の静かなアリーナに響き渡る中、先頭にいたマクギリスがふと足を止めた。

 

「どうしました?」

 

真那はそう言うと、マクギリスの先には第三ホールの扉があった。どうやら目的地についたらしい。だがその扉の前に立つと冬寒いのにも関わらず、重苦しい冷気がその扉の隙間から溢れ出ていた。

 

「準備はいいか?」

 

ユージンが声をかけると皆は頷いた。そしてそこからゆっくりと扉を開けた、その直後。

ぶぅん、という奇妙な振動音を響かせて、扉からずっと離れた場所に一つの光が生まれた。

まるでLED電球のように青白いその光が、暗闇を霧散させる。

 

「・・・おいおい・・・ここ本当に第三ホールか?」

 

一度来たことがあるユージンはあまりにも不気味過ぎる空間にそう感想を漏らす。

 

「リングの様子は?」

 

「何も反応はねーですね・・・」

 

目的地の座標を示すだけで他に反応を示さないリングに、真那は青白く光るサークルに目を向けた。

十メートルほど先で青白く光るサークル。罠だと分かっていて近づかなくてはならないのが不安でしかないがやるしかない。

 

「真那・・・」

 

「皆さんは扉のとこで待っていてください。私が近付きます」

 

そう言い残し、真那は慎重な足取り前進を続けた。

青白い燐光に照らされたその床へ真那はゆっくりと移動し───直前で一呼吸入れてから、サークルの中に足を踏み入れたと同時───

 

「・・・・・っ!?」

 

床のラインが青く発光し、同時にその線が一気に部屋全体に広がって部屋全体を凄まじい震動が部屋中を揺るがした。

 

「真那ッ!!」

 

夕弦が叫ぶと同時に、真那はすぐさま後方へと飛び退って皆がいる扉の方へ全力で走り出す。

 

「・・・・・ッ!?」

 

真那は走りながら床に広がるラインに視線を向ける。その広がるラインが真那には紋章に見えた。

 

「これは・・・!?」

 

マクギリスが驚愕で目を見開けた。なぜなら、床に広がる紋章の中央に“巨大な黒い腕”が天高く伸びていたのだ。

 

「おいおいおいっ!?マズイんじゃねえか!?」

 

「ねえ!?扉が開かないんだけど!?」

 

「はぁ!?」

 

耶俱矢の悲鳴にも近い声にユージンが叫ぶ。

そしてそれと同時に非常口看板のライトが一斉に消灯し、あたり一面が紋章の青白い光に照らされていた。

 

「おい、待て・・・まさかこんな“街なか”で───」

 

ユージンは消えるライトを目にして携帯の画面を開けようとするが───携帯は何の反応も示さなかった。

巨大な腕が紋章の中から這い上がってくる。黄色い眼光に髑髏のように見える胴体。そして、黒い巨大な足。

二十メートル以上はあろうかというその巨体に皆は足が竦んで動けなかった。

 

「“ガンダム・・・ダンタリオン”!!」

 

マクギリスがその悪魔の名を呼ぶ。そしてダンタリオンのツインアイが暗闇の中で強く輝きを放ちながら彼等を見下ろしていた。

そしてユージンがダンタリオンを見て絶叫のような声を上げた。

 

「───“モビルスーツだと”!?」

 

天宮市のアリーナに七十一番目の悪魔が顕現した。




作者「はい!と、言うわけで!ガンダムダンタリオンの登場です!いやぁ、ここまで長かった!!」

狂三「ちょっと待って下さいまし。確か、エイハブ・リアクターは街に持ち込んではダメな代物でありませんでした?」

作者「うん。だって───電子機器や交通機関がエイハブウェーブの強烈なジャミングで全部使えなくなるから」

狂三「それを分かっていて良くモビルスーツを街に出しましたわね!?」

作者「死人が出るのはガンダムらしいだろ?それがガンダムだ」


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第十三話

投稿!!


今回は夕弦がメインの回となります!


ダンタリオンが現れたと同時───それは天宮市にもその影響がすぐに現れた。

 

「えっ?」

 

携帯を触っていた一人の女子高生が突如、携帯の電源が落ちたことに困惑の声を上げる。

そして次の瞬間、駅前の照明や暖房、信号に電車までもが一斉に遮断されその機能を停止させていき、天宮市が一瞬にして暗闇に包まれた。

 

「な、なに?」

 

少女を始め、周りの人達も、都市機関が使えなくなったこの状況に困惑や不安そうなどよめきが一斉に街中に響き渡り、少女も不安に飲み込まれそうになりながらも周囲を見回した。

そしてあるものが少女の視界に入る。

 

「───なに・・・あれ・・・」

 

アリーナ方がやけに明るい。だが、それよりも異質なものがそこにいた。それは───“巨人”だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「な───」

 

真那は紋章から現れたダンタリオンを見上げたまま、驚愕で動く事が出来なかった。

そんな真那にダンタリオンが右手に握られた巨大な滑腔砲───〈ケラウノス〉の砲身を真那へと向けた。

 

「真那ッ!!」

 

「・・・・・ッ!?」

 

ユージンの叫び声と同時に真那は〈ヴァナルガンド〉を展開し、その場から離脱しようとするが、〈ヴァナルガンド〉の展開が遅い。

 

「な・・・っ!?」

 

なんで!?───と真那は一瞬動きを止めてしまい、隙をさらしてしまった。

 

「しまっ───ッ!?」

 

ダンタリオンは生身の真那へと滑腔砲を叩きこもうと引き金を引いたその時───

 

「はあああああああッ!!」

 

「呼応。〈颶風騎士〉───!!」

 

耶俱矢と夕弦が〈颶風騎士〉で発生させた暴風の塊をダンタリオンの右腕にぶつけ、射線をずらした。

滑腔砲の巨大な弾丸が放たれる。その弾丸は第三ホールの壁をぶち破りそのまま真っ直ぐ飛んでいき───

 

爆煙を上げながら駅前近くのビルへと直撃した。

 

「───しまったッ!?」

 

「──────っ!?」

 

その光景を見た耶俱矢達は息を呑む。そう。何故なら、“街の方はまだ誰も避難していない”。

街の方で悲鳴や恐怖の声が上がる。

 

「そんな・・・私のせいで・・・」

 

耶俱矢が街の様子を見て表情を曇らせる。だが、そんな耶俱矢にマクギリスが声を上げた。

 

「これ以上ダンタリオンに砲撃を撃たせるな!!下手に砲撃をさせると街への被害が大きくなるぞ!!」

 

その叫びに耶俱矢がはっとする。そしてその隣では夕弦がそんな耶俱矢を落ち着かせるように言った。

 

「耶俱矢。後悔するのは後です。まずはアレを止めましょう」

 

「う、うん」

 

耶俱矢と夕弦は〈颶風騎士〉を握りしめ、ダンタリオンに視線を戻す。

夕弦はダンタリオンの姿を視界に入れた時、凄まじい恐怖が自分の胸内に溢れるのを感じていた。

この巨人は自分達精霊を殺すことが出来る存在だと、直感がそう叫んでおり、今でも身を引いてしまいたい心情に駆られるが───“ここで引くわけにはいかない”。

ここで引いてしまえば沢山の人が死ぬ。そしてなにより士道───三日月に二度と会えなくなる。それだけは絶対に嫌だ。

だからこそ───

 

「宣言。私は士道を───いえ、三日月を“絶対に救い出してみせます”。ですが─────」

 

夕弦はダンタリオンを見る。その悪魔は夕弦達の前を立ち塞がるように見下ろしていた。

 

「彼の人生にあなたは邪魔者です。いつまでも場違いがのさばらないでください」

 

そう。眼の前に立つ悪魔は───私達の邪魔者だ。

たとえそれが厄祭戦という戦争を終わらせた英雄だとしても、私達の居場所は三日月がいて皆がいてこそ成り立っている。

まだ耶俱矢や十香達も三日月の事を思い出していないが、それでもきっといつかは思い出すことだろう。

そうなったら私と同じように錯乱するかもしれない。

でも、その時は私が支えてあげる番だ。真那が私にしてくれたことと同じように。

だが今は───

 

「行くよ!夕弦!!」

 

「首肯。行きましょう」

 

耶俱矢の呼び声に夕弦は答える。

そして夕弦はダンタリオンを見上げて言った。

 

「私達の居場所にあなたの居場所はありません」

 

巨大な拳を振り上げるダンタリオンに夕弦は耶俱矢と共に風を纏いながら翔けていった。




夕弦「私達の居場所にあなたの居場所はありません」←ダンタリオンに向けて

バルバトス「俺の居場所は?」

三日月「多分ないんじゃない?」

作者「つか、バルバトスがなかったら三日月はただの少年兵で多分生まれ変わることないから夕弦達とも会わなかったと思うけど?」

夕弦「───ぇ?」

狂三「それ以上はいけませんわよ?夕弦さんどころか皆さんを本気で反転化させるつもりですの?」


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第十四話 真紅の悪魔

投稿!!

中々ダンタリオンの戦闘にまで行けねえ・・・


「・・・む?なんだ?」

 

微かな轟音に十香が顔を上げる。

 

「どうかしたか?十香」

 

士道が十香のふとした反応に首を傾げると、次の瞬間、明るかった家の中がパッと一瞬にして暗くなる。

 

「おわっ!?」

 

士道が動揺の声を漏らしながら辺りを見回す。と次の瞬間、近くで轟音が轟いた。

 

「な、なんだ!?」

 

士道がカーテンを開けると、夜の天宮市の一部が黒煙を上げ、赤く輝いているのが見える。そしてアリーナの方向に“巨人”がいた。

 

「・・・・そうか」

 

“士道”は妙に落ち着いた様子でダンタリオン見る。

 

「真那達は───“あの人”を選んだんだな」

 

士道はそう呟いて外へと出る。

 

「・・・シドー?」

 

「十香。アレを止めるぞ」

 

「・・・う、うむ」

 

まるで別人のように変わった士道に困惑するそんな十香の横を通り、外へと向かう。

ダンタリオンを止める為───彼女達が求めた“あの人”を呼び戻す為に。

 

「・・・なら俺も“覚悟を決めないとな”」

 

真那達が覚悟を決めたように自分のやるべきことを今、やらなければならない。

 

「・・・ぬ?何か言ったか?シドー」

 

「いや、何でもないよ」

 

どうやら聞こえていたらしい十香に士道は苦笑はした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「だ、だーりんは無事なんですかぁー?」

 

「無事だと思うしかない」

 

美九と折紙はダンタリオンが街中で戦闘を行っている中、急いで五河家へと向かっていた。

都市部の方では大パニックが起こっており、人出が少ない道を通ってきている彼女達の所にまで悲鳴や怒号が聞こえていた。

 

「そ、それにあれは何なんですぅ?あんなの見たことないですよぉ!?」

 

「私も見たことない」

 

そうはいいつつも、折紙の頭の片隅で何かが引っ掛かる。

そう。なにか、とても大事な事を忘れているような・・・

 

「・・・・・でも今は」

 

士道の無事の確認が最優先だ。折紙は美九と共に入り乱れる人混みを掻き分けながら走っていく。

───と、その時。

 

「・・・・・・?」

 

折紙の耳に何かの音が聞こえた。

 

「ちょっ!?ど、どうしたんですかぁ?」

 

突然止まった折紙に美九はぶつかりそうになり、美九はすぐに足を止める。

 

「・・・・上?」

 

そんな中で折紙は顔を空へと向けると、暗闇の夜空に一筋の青白い光が上空に描いていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「いやぁ、なんですかアレ」

 

神無月は進行するダンタリオンを映像で捉えながら《フラクシナス》の艦橋で眉を顰める。

 

「アレから謎の周波が発せられて電子機器が全滅、予備電源で何とかなっていますが、アレは普通じゃない代物なのは間違いないみたいですね」

 

お陰で顕現装置の殆どが使い物にならないせいで戦闘をするのは論外となっている現状に神無月は溜息をつく。

 

「・・・まずはどうにかして顕現装置を元に戻さないといけませんね」

 

そうでないと話にならないと、神無月はクルーに指示を出そうとした時───。

 

「───ッ!!」

 

パッと艦内の照明が突然消灯した。

そして次の瞬間、艦内に激しい震動が走る。

 

「おっと・・・?一体何が起きました?」

 

神無月はモニターをつけようとするが何も映らない。

 

「艦橋の窓を展開して周囲の確認を」

 

「は、はい!」

 

冷静な神無月の指示にクルーが艦橋の窓を開けた次の瞬間、神無月は開いた口が塞がらなかった。

 

「───な」

 

何故なら艦橋の眼の前には───

 

『──────』

 

血のように真紅の装甲を持つ“ガンダム”が手にした巨大な銃の銃口を艦橋に向けたまま、《フラクシナス》を制圧していた。




アスタロト「オレのパーツ何処ー?」

作者「お前、いっつもパーツを無くしてんな」

戦車「復讐劇かと思ったらパーツ探しだからなぁ、アスタロト・・・」

狂三「凄いチグハグですわね?」

作者「装甲と武器の殆ど売られたからな・・・」

グシオン・ウヴァル「俺達よりマシじゃねえか!!」


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第十五話 死神

投稿!!

鉄血で死神と言えばコイツだよなぁ!!


ガンダムダンタリオンは、右拳を高く持ち上げると、耶俱矢たち目掛けて轟然と叩き付けた。

 

「甘いわ!!」

 

「同意。この程度余裕です」

 

それを二人は空中でひらりと躱してみせると、その回避と同時に長槍とペンデュラムをダンタリオンへと反撃の一撃を叩きつける。────が、耶俱矢達の攻撃はダンタリオンの腕の装甲に浅い傷をつけるだけで大してダメージを受けている様子はなかった。

その様子に二人は渋い顔をする。

自分達の武器とダンタリオンのサイズの差がありすぎる。

あくまで人が持てるサイズの自分達の天使とダンタリオンの巨体とその分厚い装甲。その差はまるで針で山を削るような戦闘になっている。しかも、自分達には更にデメリットが存在していた。

 

「まだ避難出来てーねーですかッ!?」

 

そう。天宮市にはまだシェルターに避難出来てない人達がいるのだ。その人達を巻き込まないように意識を割いて戦わなければならないことに、耶俱矢達はダンタリオンを相手に防戦を強いられているのである。

 

「だが、私達はこうやって時間稼ぎはできている。あの巨体ならば私達を捕らえるのは相当苦戦するだろう」

 

確かにその通りだった。

ここにいるメンバーは言ってしまえば機動力が全員ある方であり、その機動力とダンタリオンから見て小指の先もない自分達を捕らえるは相当苦労するのは言うまでもない。

それに他にも対等に渡り合える理由が存在する。

それは地形の差だった。

街中という場所の関係上、ダンタリオンの行動スペースが限られている。その結果、建物を盾にして身を隠せる自分達が有利に戦えているので、ジリ貧ではあるがダンタリオン相手に対等に持ち越している。

これがもし開けている場所での戦闘であれば、ガンダムフレームと阿頼耶識による人間に近い特有の動きで一瞬で自分達は叩きのめされていることだろう。

だが、一つ気になる点が真那の頭にモヤとして残っていた。

 

「ASTやDEMはこんな時に何をしてやがるんですかッ!」

 

そう。対精霊特殊部隊。

たとえダンタリオンは精霊でもなんでもないとはいえ、これほどの被害を出す怪物を放っておく訳にはいかない筈。

たとえ、情報が遅れていたとしても第一先行隊が来ていても可笑しくないくらいに時間稼ぎをしているのだ。

真那は不安と焦りを覚えながらも、ダンタリオンの振り降ろす拳を避ける。

振り下ろされた巨大な拳は建物を容赦なく粉砕し、瓦礫の山へと一瞬で変えていった。

 

「あんなの食らったらひとたまりもねーですよ・・・」

 

ただえさえ、エイハブウェーブによって顕現装置が上手く働いておらず、テリトリーも展開出来ない状態であの拳を食らったらと考えると背筋に悪寒が走る。

 

「早く・・・決定打を撃たせる隙を作らねーと街が!!」

 

ダンタリオンを倒す為の決定打。八舞姉妹が持つ天使〈颶風騎士〉の【天を駆ける者】《エル・カナフ》。

それであればダンタリオンのナノラミネートアーマーを貫けるとマクギリスは言っていた。

一度試そうとしたが、ダンタリオンに察知された瞬間に真那とマクギリスを無視して二人に襲いかかってきたので失敗に終わっている。

だが、それだけ危険視すると言う事はつまり有効打になるということ。

早く。早く来て────と真那は内心で十香達が来てくれるのを待った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

そして同刻────別の場所では悪夢が起きていた。

ASTの隊員がDEMの部隊がたった一体の敵に壊滅させられた。

その異常事態の渦中にいたのは、一体の死神。

 

『────────』

 

炎の中でフードを被った死神が《バンダースナッチ》を手にした鎌で叩き潰す。

いや、あれは鎌と言っていいものか?刃はなく、どちらかと言えばアンカーに近い。片方が破損しているので見た目が鎌に見えるようなっているだけだ。

 

「・・・・化け物」

 

生き残りだろうか?隊員の一人がその死神を見てそう呟いていた。

然り、化け物である。人の形をした兵器であり要塞。どちらにせよ、その死神に常識は通用しない。

《バンダースナッチ》がその死神に手にした武器を振り下ろす。対精霊用の人間であれば過剰過ぎる威力のその攻撃を────

 

『────────』

 

この死神は、先ほどから“一度も攻撃を躱していない”。

無数の銃弾、質量兵器をその身に浴びてなお、その黒い装甲には傷一つ存在しなかった。

死神が一体、また一体と《バンダースナッチ》を手にしたアンカーで屠っていく。

と、そこで生き残りの隊員と死神の目があった。

 

「・・・・ぁ」

 

黄色く輝く二つの目が腰を抜かした彼女を捕らえる。

そしてそんな彼女に一歩、また一歩と足を進めて向かってくる死神に彼女は顔を恐怖で引き攣らせながらも笑っていた。

 

「は、ははははははは・・・」

 

引き攣った笑いを溢す彼女に死神は無慈悲に手にしたバトルアンカーを振り下ろされた。




作者「ガンダムグレモリーはね、クロスレイズでクッソ硬くてびっくりしたんだわ」

狂三「ナノラミネートコートというものですわよね?」

戦車「上から叩くと直立したまま地面に突き刺さるくらいの硬さらしいんだけど・・・」

作者「ダインスレイヴを至近距離で食らってもパイロット無傷で生還するらしいからな。マキオンで言えばアレックスのチョバムアーマーを三千くらいにして近距離戦やってくるって言えばいい?」

戦車「格闘、射撃無効のチョバムをほぼほぼ無制限に使ってくるガンダムとか絶対に相手したくないんだけど」


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第十六話 地獄の連鎖

投稿!!

えー、士道君のせいでタイトル通り地獄が連鎖します


「クソッ!!こんな時に俺は何も出来ねえのかよ!」

 

ユージンは人々が逃げ惑う人混みの中、必死に十香達を探していた。

生身であるユージンにはダンタリオンの相手をすることが出来ない。だから自分が出来ること────それは十香達の増援を呼ぶということだけだった。

今、真那達がダンタリオンを全力で抑え込んでいる。なら、自分は一分一秒でも早く、十香達を探し出さねばならない。

 

「どこだ!!十香!四糸乃!琴里!美九!七罪!折紙!いるなら返事をしやがれ!」

 

自分に対する怒りと一刻も早くという焦りが混じった怒声が瓦礫の山と化した街に響き渡る。

 

「早くしねえとアイツらが・・・ッ!」

 

いくらマクギリスの野郎がいるとはいえ、長くは持たないと思ったその時だった。

 

「ユージン!!」

 

「・・・・・ッ!?」

 

誰かが自分の名を呼んだ。十香達ではない。その声は男の声だったし、そしてなにより聞き覚えがあった。

ユージンは声が聞こえた方へと振り返る。そしてそこにいたのは────

 

「やっと見つけた!!」

 

“五河士道”と十香達だった。だが、ユージンが驚愕したのはそれだけではない。

 

「お前・・・なんで“俺の名前を“────」

 

そう。三日月が消えた時からユージンは五河士道と会っていない。眼の前にいる五河士道は“お互いを知るはずもない筈”なのに。

驚愕で目を見開けるユージンに士道は言う。

 

「今はその話は後!それよりも早く真那達の所に!」

 

「お、おう!こっちだ!」

 

切羽詰まったこの状況でそんなことを考えている暇はない。

すぐ現実に戻されたユージンは士道達を真那達がいる戦場へと案内する。

 

「シドー!アレはなんだ!?一体何が起きている!」

 

「そうよ!というか、その人誰!?士道の知り合い!?」

 

十香と琴里の質問に士道は走りながら答える。

 

「知り合いだよ!信頼出来るし信用も出来る!それにダンタリオンを含めたガンダムは“鍵”なんだ!厄災を封じる為の錠になった彼を開放する為の鍵!」

 

「錠!?鍵!?何よそれ!?」

 

「説明は全部終わってからするから!」

 

ユージンも半分も理解出来ていないその説明に分からないと叫ぶ琴里に士道は答える。そして、先頭を走るユージンに謝るように士道は言った。

 

「本当は“錠”の役目は彼じゃなくて俺がするべき筈だったんだ!だけど、俺には“澪”を止めなくちゃいけないからって残りの役目を俺に押し付けて錠としての役目を三日月がバルバトスと一緒に!」

 

「だから錠ってなんだよ!?澪って誰なんだよ!?それにお前は一体────」

 

なんなんだよ───と、言おうとしたユージンに士道が叫んだ。

 

「俺は“三日月・オーガスが塗り潰す筈だった──消えるべき筈だった五河士道”なんだ!三日月とバルバトスは“俺が原因で”この世界に産まれた被害者なんだよ!」

 

その言葉に────

 

「ねえ・・・それってどう言うこと・・・?」

 

琴里の震えるその言葉を皮切りに、皆が動揺していた。 

 

「「!?」」

 

士道とユージンが目を見開けた。マズい。これは────

 

「その“三日月”って人が私の本当のお兄ちゃんで・・・そのお兄ちゃんが消えて・・・じゃあ・・・私の・・・私のこの記憶のお兄ちゃんは・・・“誰”なの?」

 

偽り続けたその現実が────崩壊した。




狂三「やらかしましたわね!士道さん!」

作者「長いこと三日月の裏側で十香達を見てた士道だからねぇ・・・言うタイミングの悪さよ」

戦車「つかお前、ヒロインズになんか恨みでも持ってんの?」

作者「もってないよ?ただ、原作主人公にはやらかしてもらいたくてね?」

戦車「何かあったっけ?」

作者「原作主人公のCVは?」

狂三、戦車「「・・・あ」」

作者「鉄血ではやらかしまくったよなぁ?」

狂三「その共通点まで引き継がなくてもよろしくありません!?」


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第十七話 鉄の絆

投稿!!

次でやっとダンタリオン戦にいけるわ・・・


「・・・・・」

 

士道は琴里のその質問に答えることなど出来なかった。

なぜなら琴里達が持っている記憶は“三日月・オーガス”が五河士道として生まれなかった記憶である。

ゆえに、お前達の知る士道は別にいて記憶にある今の士道の記憶は偽物だと本人から言われれば動揺するだろう。

 

「ねえ!!答えて!!士道!!」

 

琴里は目の前の“五河士道“に問い糾す。

戦場になった天宮市のど真ん中で士道はほんの一瞬だけ考えるような仕草をしたあと、士道は答えた。

 

「───皆が持っている俺との記憶は“偽物”だよ」

 

士道は“嘘”をつく。本来、こうあるべきである筈の今ではなく、皆が忘れた三日月との記憶こそが“本物”だと。

なぜなら───

これは───五河士道という少年ではなく、三日月・オーガスという少年の“物語”だから。

 

「・・・・・ッ!!」

 

琴里が士道のその返答に顔を勢いよく上げた。キッと睨みつける琴里の目尻には涙が浮かんでいた。

“妹”に“皆”に敵意向けられる事に士道は胸が痛む。

だが、士道はそれでも三日月と同じように前へと進んだ。

 

「だから今は俺に“皆の力を貸して欲しい”。三日月を“助ける為”に!・・・頼むッ!!」

 

皆に申し訳ないと思いながらも、その言葉を発する他なかった。

 

「俺からも頼む!今、これが三日月を取り戻せるかもしれねぇチャンスなんだ!」

 

ユージンも十香達に頭を下げた。

もうこれしか縋るものはない。あの馬鹿野郎を連れ戻す手段などもうこれしかないのだ。

そんな二人に皆は少しの間だけ押し黙る。街に響き渡る悲鳴や怒号、戦場の音が遠くに聞こえ、一秒一秒がとても長く感じられた。

そしてその静寂を破ったのは十香だった。

 

「何を言っている。当然ではないか」

 

言って〈鏖殺公〉を顕現させ、その柄を強く握る。

 

「正直言って私はシドーが言ったことをまだ信じられん。だが、きっとシドーは一人でも行くのだろう?“あのシドーもそうだった”」

 

「十香・・・?まさか記憶を・・・」

 

士道のその問いに十香は首を横に振る。

正直言って十香も記憶に靄がかかったように思い出せていない。 

だが、きっとあの背中のシドーも同じことをする。そう思えたから。

 

「それに私の心が覚えているのだ。シドーの言葉を」

 

十香の全てを変えてくれたその言葉を───

 

 

 

『俺と一緒に行ってみない?俺達の本当の居場所に』

 

 

十香のその言葉に皆が頷いた。

 

「私も・・・約束、したはずなんです・・・士道さんと。だから私もお役に立ちたいです・・・!」

 

「私はなーんか思い出すと嫌なこと思い出しそうだけど・・・ただ、その三日月って奴に一発ぶん殴らないと気が済まないっていうか・・・」

 

「ていうか、私もあの人と何か『約束』したような気がするんですよー」

 

四糸乃、美九が笑いながらそう言い、七罪はなんかムカつくからと言う。

確かに彼女達は三日月と約束したのだ。四糸乃は十香と一緒で本当の居場所に連れていってくれると。美九は彼にずっと歌を聞いてもらうと。七罪は三日月に嘘をつかせたくないのだろう。だって、そんな彼を思う皆のお陰で彼女はこの場に入られたのだから。

 

「私もあの時、士道に何も言えていない気がする。謝らなくちゃいけないこともある」

 

確かに折紙は三日月とは仲が良くなかった。それに自分の事で彼に迷惑をたくさんかけたのだ。結局謝ることが出来ずに彼が消えてしまったことに彼女なりに思うことがあるのだろう。

 

「・・・・・」

 

だが、その中で琴里だけが何も言えなかった。だって自分には皆と同じように三日月との繋がりなんて───

そう思っていた琴里にユージンが小さく息を吐いてから言った。

 

「お前にだってあるだろうが。三日月との繋がりをよ」

 

「なによ・・・私なんて・・・」

 

「ウジウジすんなよ。らしくねえ。三日月は誰よりもお前のこと気にしてたんだぜ?大事な妹だからってさ」

 

「・・・・!」 

 

ユージンのその言葉に琴里はハッと顔を上げた。

 

「三日月の事を思い出せない?だったら思い出せる手段を見つけりゃいいじゃねえか。そんなことで折れるお前じゃないから三日月はお前を信頼してたんだ。だからそんなことでウジウジするんじゃねえ」

 

「・・・ええ。そうね」

 

ウジウジしているのは今の私らしくない。

この黒いリボンを誕生日に貰ってお兄ちゃんと約束したのだ。このリボンをつけている時は強くなるって。

琴里は目をゴシゴシと擦ってからダンタリオンを睨みつける。

 

「無くなった記憶もお兄ちゃんも全部返してもらうわよ」

 

三日月は私達に言った。私達を連れていってくれると。なら、その場所に三日月も居なくちゃいけない。

そんな彼が忘れ去られて終わってしまうだなんて、理不尽に過ぎる。

 

だからこそ───

 

 

「───士道には絶対に約束を守ってもらうんだから。───さあ、私達の戦争《デート》を始めましょう」

 

三日月と彼女達との鉄の絆はそこにあった。




作者「唐突だけど三日月編のバッドエンド√みたい?」

狂三「突然ですわね!?番外編で書くつもりですの?」

作者「未定だけど。ぶっちゃけメンドイし、バッドエンド√は真那の精神がガチで死ぬ」

狂三「どんな展開にするつもりですのよ・・・」

作者「え?真那に三日月を殺させるの。間接的に」

狂三「とんだ畜生ですわね!?」


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第十八話 ダンタリオン

投稿!!

ダンタリオン戦前半です!!
どうぞ!!


 

「〈颶風騎士〉────【穿つ者】!!」

 

耶俱矢は自身が今出せる天使の力をフルスロットルに稼働させ、莫大な暴風を自身に纏わせながらダンタリオン目掛けて突貫した。

 

「こっんのおおおおおッ!」

 

耶俱矢の雄叫びと共に凄まじい暴風がダンタリオンを襲い、七十トン近い重量のダンタリオンの身体が大きく傾く。

 

「「はああああああッ!!」」

 

大きく傾いたダンタリオンのその隙を真那と夕弦は逃さず、片足だけで支えていたダンタリオンの右足に全力で攻撃を叩き込むと、その巨大な身体がビルに倒れ込んだ。

凄まじい轟音と共に瓦礫が崩れ、砂煙が宙を舞い、倒れたダンタリオンの姿が見えなくなる。

 

「よしッ!!これなら・・・夕弦!!」

 

「応答。かぐっ!?危ない!!」

 

これならと叫ぶ耶俱矢に、夕弦は悲鳴を上げながら耶俱矢を突き飛ばした。

そして次には耶俱矢がいた場所にダンタリオンの巨大な手と、その巨大な手に腰あたりを握り掴まれた夕弦の姿が真那の目に飛び込んできた。

夕弦は抜け出そうとするが、ギリギリと嫌な音を立てながら締めつける手が脱出することを許さない。

 

「夕弦ッ!?今助けるから!!」

 

「あ・・・・くっ!!」

 

「────なっ!?」

 

息を呑んで凍り付く真那に対し、ダンタリオンの手から夕弦を助け出そうとする。・・・が、それは耶俱矢目掛けて飛んでくる左腕のストレートにより断念せざるを得なかった。

だが、それより恐ろしかったのはダンタリオンの態勢の復帰時間だった。

“あの短時間”であの巨体が起き上がるのは異常過ぎる。

あれだけの質量を持つなら起き上がるだけでもかなり時間が掛かるはずだ。だが、ダンタリオンは倒れてから起き上がるまで十数秒と立っていない。

そう言えば、ダンタリオンはあの巨体にも関わらずどうして“私達の動きについてこれた”?

 

「どうなってやがるんですか・・・あの反応速度・・・普通、あんなに身体が大きかったら早く動けない筈でしょう・・・!」

 

真那が歯噛みをしながら無意識にそんな言葉を漏らすと、それに答えたのはマクギリスだった。

 

「それはガンダムフレーム特有のフレーム構造と阿頼耶識システムに理由があるからだ」

 

真那はその言葉にマクギリスの方へと振り返ると、ガンダムバエルによって見えない口から乾いた声が流れた。

 

「元々ガンダムフレームは阿頼耶識システム前提で作られたフレームだ。人体の柔軟な動きを再現出来るように稼働するフレーム構造に、阿頼耶識システムによって機械らしくない生身の人間の動きをガンダムフレームは再現できる。つまりダンタリオンがあそこまで早い態勢復帰や私達の動きについてこれたのは・・・」

 

「元々人間に近い動きをすることができたから・・・」

 

無意識に漏れ出たその答えに真那はその先の言葉を失う。

究極の人機一体。ダンタリオンを含む今まで見てきたガンダムが機械らしくない動きをしていたのもそれが理由だった。

それはつまり兄様とバルバトスも例外ではなく───

 

「いくら厄災を終わらせる為だからってこんなの・・・」

 

人間を使い捨てのパーツにした究極的な強さ。

真那は目の前のダンタリオンが恐ろしく見えた。

DEMがジェシカを再調整し、寿命と引き換えに自身と渡り合える強さを手に入れていたし、兄様は力の代償として右目と右腕がバルバトスと物理的に繋がっていないと機能しなくなった。

違いは多少あれど、やっていることは同じだ。

もしかしたらあの時のバルバトスと同じように、ダンタリオンもあの悪魔のような強さを発揮するのだろう。

どうすればいい。どうすればこの状況から───

 

「くぁ・・・・ッ!?」

 

何度かの驚愕に停止しかけた真那の思考を、夕弦から発せられる苦悶の声が鋭く突き刺す。

このままだとダンタリオンによって霊装が砕かれ、夕弦が握り潰される。

 

「この!離せ!離してよッ!!」

 

「か、ぐや・・・」

 

必死にダンタリオンの手から夕弦を引っ張りだそうとする耶俱矢に、夕弦は苦しそうな表情で耶俱矢を見る。

 

「忠言。・・・耶俱矢、手を離してください」

 

夕弦の覚悟を内包した決然たる言葉に、耶俱矢が激しくかぶりを振る。

 

「いやだ!!絶対・・・絶対助ける!!」

 

そうだ、諦めてはいけない。だって士道は───三日月は“絶対に諦めなかったから”!!

 

「夕弦を・・・・・殺させて、たまるかああぁぁぁ─────ッ!!」

 

勇猛な雄叫びを迸らせ、耶俱矢が《颶風騎士》をダンタリオンに突き刺そうとしたその時───

 

「身を屈めろッ!!」

 

「!!」

 

その声が耶俱矢の耳に突き刺さり、反射的に耶俱矢は身を屈める。

そして次の瞬間───

 

「はあああああああああああああッ!!」

 

雄叫びと共に、霊力で出来た巨大な斬撃がダンタリオンに叩き込まれ、その一撃で大きく身を揺らいだダンタリオンに対し、光輝く砲撃が追撃する。

その攻撃をもろに食らったダンタリオンは夕弦を握っていた手を離すと、そのまま再び地面へと倒れていった。

 

「夕弦ッ!!」

 

耶俱矢が直ぐ様夕弦を抱きかかえるようにして助け起こす。

 

「・・・・・耶俱矢」

 

「怪我はない?大丈夫?」

 

泣きそうになっている耶俱矢に夕弦は微笑んだ。

 

「返答。大丈夫です。怪我はありません」

 

「・・・・・良かった」

 

夕弦の返答に耶俱矢は泣き出してしまう。そんな耶俱矢に夕弦は頬を撫でつつも、口を開く。

 

「ですがまだ喜ぶのはもうちょっと先です。耶俱矢」

 

夕弦のその言葉に耶俱矢が顔を上げる。目には涙が浮かんでいたが、その顔は真剣だった。

 

「───大丈夫か!!耶俱矢!夕弦!」

 

と、直ぐ側に十香が降り立つ。どうやら先程の斬撃は十香が放ったものらしい。

駆け寄る十香に夕弦は耶俱矢の肩を借りながら立ち上がると、十香に平気そうに言う。

 

「首肯。この程度へっちゃらです。それと・・・助けてくれてありがとうございます」

 

「ああ。無事ならそれでいいのだ」

 

そう十香に真那がそんな三人の元へと駆け足で合流した。

 

「夕弦さん!大丈夫でやがりましたか!戦えそうでなかったら休んでください!ここは私が───」

 

夕弦さんの分まで頑張りますからと言いかける真那に、夕弦は首を振る。そして力強い目を真那に向けながら答えた。

 

「否定。私はまだ戦えます」

 

「・・・無茶はしてねーですか」

 

「返答。真那が味わった苦しみよりはへっちゃらです」

 

「・・・それを言われては私の立つ背がねーですよ」

 

そう返事を返す夕弦に真那は小さく苦笑して、ブレードの切っ先を夕弦達の前へと差し出す。

 

「・・・一緒に兄様を助けましょう」

 

「はい」

 

「ええ!」

 

「うむ!」

 

三人は真那が差し出したブレードの切っ先に互いの天使の切っ先を当て合い“チンッ”と音を鳴らす。

もう迷いはない。

 

後は───前へと進むだけだ。




作者「ダンタリオン戦だけでここまで必要になるかよ。まだ他のガンダムフレームとの戦いも書かなくちゃいけねえのに。原作だと一部作よ?このペースだと二部作になっちまうわ!!」

狂三「ストーリーを考えたのは貴方でしょうに。文句は自分で言ってくださいな」

作者「まさかここまで長くなるとは思わなかったもん」

狂三「男でもんって言わないでくださいまし!?鳥肌が立ちましたわ!?」

作者「酷え!!」


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第十九話 【天を駆ける者】

投稿!!

ダンタリオン編終了です!


「それで───奴には弱点はあるのか?」

 

十香が起き上がってくるダンタリオンを見てそう声を漏らすと、真那は首を横に振る。 

 

「・・・いえ、まだ探している最中です。それに装甲が分厚くてあの装甲を突破するには耶俱矢さん達の《颶風騎士》でないと突破出来ないとマクギリスさんが・・・」

 

「そうか・・・」

 

苦々しく言う真那に、十香は少し考えるような仕草を取った後、耶俱矢達に視線を向けた。

 

「耶俱矢、夕弦。〈ラファエル〉を最速だとどれくらい時間がかかるのだ?」

 

十香のその問いに夕弦が答えた。

 

「返答。およそ三十秒あればあの装甲を突破出来るだけの出力を出せます。ただ・・・」

 

「私達が素振りを見せると、アイツ真那達を無視して私達を攻撃してくるのよ」

 

そう吐き捨てる耶俱矢に十香は頷いた。

 

「“三十秒だな”。なら、それまでは“私達が”時間を稼ぐ」

 

「・・・私達?」

 

耶俱矢が首を傾げると、十香の遥か後ろから光線がダンタリオンが起き上がろうとした場所へと降り注いだ。

 

「あの光・・・まさかッ!?」

 

見覚えのある光線に真那が目を見開いて光線の放たれた場所に目をやると、そこにたのは霊装を纏った折紙が宙を浮いていた。

 

「折紙さん!!」

 

『折紙ちゃんだけじゃあないよー』

 

「そうですよー。私達も忘れないでくださいー」

 

「四糸乃さんに美九さんまで!!」

 

真那のその声に答えるように四糸乃や美九達も姿を現すと、真那は驚いたように表情を緩ませる。

 

「よお、待たせたな・・・!連れてきたぜ!」

 

「ユージンさん・・・ありがとうございます!」

 

真那は笑顔でユージンに礼をした後、横にいた士道を見て表情を強張らせ、小さく呟いた。

 

「・・・兄、様」

 

真那のその反応に士道は少しだけ寂しそうな笑みを浮かべたが、すぐに真剣な表情に戻り、立ち尽くした真那の肩に手を置いて言った。

 

「三日月を助けるんだろ?だったら、今はそれに集中してくれれば構わないよ」

 

「・・・・はい」

 

二人の間が気まずい雰囲気になるが、士道のその言葉に真那は前を見て、十香達に叫んだ。

 

「勝負の決め手は耶俱矢さん達になります!なので全力で耶俱矢さん達をアイツから守ってください!」

 

「ああ!分かった!」

 

十香はそう応えると、《鏖殺公》を柄を握りしめダンタリオンに剣先を向ける。同時に周りの皆も天使を顕現させてそれぞれ己の武器を振りかざす。

 

「──コイツを倒して、三日月さんを助けましょう!!」

 

真那のその声に───

 

 

「「「おう(はい)!!」」」

 

という勇ましい雷声が応えた。それに反応したかのように、ダンタリオンがズシンと右足を前に踏み出した。

そんなダンタリオンに対し、耶俱矢が叫ぶ。

 

「ラファエル《颶風騎士》───【穿つ者】!!」

 

耶俱矢のその声と共に、彼女の身の丈を超える巨大な槍が風を纏い始め、それと全く同時に、夕弦も自身の天使に再び風を纏せ始める。

 

「呼応。ラファエル《颶風騎士》───【縛める者】」

 

それを見たダンタリオンは右手に握られた滑腔砲を耶俱矢達へと標準を合わせると、そのまま引き金を引く。

“ズドン”!!と、撃ち出される巨大な弾丸を四糸乃と七罪、そして美九が全力で防ぎにいく。

 

「ガブリエル《破軍歌姫》!───【輪舞曲】!」

 

美九は自分の周りに展開していた光の鍵盤に指を滑らせ、流麗な曲調を奏で始めると、それに合わせてダンタリオンが放った弾丸が動きを止めた。

その弾丸の様子を見たダンタリオンは自身の巨大な右腕を大きく振りかぶると、そのまま耶俱矢達目掛けて突き出した。

 

「───ザドキエル《氷結傀儡》!」

 

四糸乃の声と共に巨大ウサギ型の天使が口を開け、辺りに冷気を充満させて耶俱矢達の前に巨大な壁を作り上げ、その拳を止めようとするがビシビシッ!と音を立てながら氷の壁は罅割れていく。

その様子に慌てることなく七罪が叫んだ。

 

「ハニエル《贋造魔女》!───【千変万化鏡】!!」

 

瞬間、七罪が掲げた箒型の天使が柔らかな粘土のようにぐにゃりと歪み、銀筒と鍵盤を形作る。

 

「えっ!?それは・・・!」

 

鍵盤を叩いていた美九が、驚愕の表情を作る。それはそうだ。七罪が顕現させたのは、美九の《破軍歌姫》とまったく同じ形をした天使だったのだから。

 

「ちょっと借りるわよ!実は前に見たときから、一回『真似』してみたかったのよね!」

 

 

言って、七罪は両手を使い、力強く鍵盤を叩いていく。

 

「【行進曲】!」

 

奏でられる勇猛なその調べに四糸乃達の身体に、気力が漲ってくるのがわかった。

 

「───ザドキエル《氷結傀儡》!」

 

四糸乃が溢れ出るその気力に任せるようにダンタリオンに砕かれそうになった氷の壁を更に分厚くする。

 

「あーん!七罪ちゃんたら真似っ子ですー!」

 

「いいじゃない。これも士道の為なんだから」

 

攻守の《破軍歌姫》が存在するのは、真那達にとって非常に大きな力となった。動きを止めたダンタリオンに真那達が追撃する。

 

「私達も攻めますよ!」

 

「うむッ!」

 

十香に合図し、真那は空を翔ける。大木のように太い左腕による薙ぎ払いを掻い潜りながら、真那と十香は一瞬でダンタリオンの頭部へと辿り着くとそのまま剣を叩き込む。

 

「はああああああッ!」

 

「ふ───ッ!」

 

十香のサンダルフォン《鏖殺公》と真那の《ヴォルフテイル》がダンタリオンの頭部を捕らえると、その衝撃でダンタリオンの頭部の装甲にビシッ!と、罅が入った。

 

「───ッ!十香さん!」

 

「分かった!」

 

真那の叫びと同時に、十香は《鏖殺公》を罅割れた頭部へ向けて今出せる全力の力を叩き込むとバキッ!!と、ダンタリオンの頭部の装甲が砕け、剥がれ落ちた。だが、剥がれ落ちたその装甲の下にあったのはガンダムダンタリオン本来の骸骨じみた顔だった。

本当の姿を表したダンタリオンは真那と十香の姿をそのツインアイに捉えると、そのまま左手を十香達目掛けて平手で腕を振り下ろす。

 

「当たらねーです!」

 

「当たるものか!!」

 

大ぶりに振りかぶられるその腕を二人は最低限の動きで回避をし、真那は耶俱矢と夕弦に向けて大きな声を上げて叫ぶ。

 

「耶俱矢さん!!夕弦さん!!今です!最後は派手に決めてください!!」

 

そう言われては、出し惜しみは出来ない。

 

「行くよ!!夕弦!!」

 

「首肯。最大出力でいきます」

 

二人の片翼の羽が合わさって弓のような形状を作り、夕弦のペンデュラムが羽と羽の先端同士を結び───耶俱矢の槍が、巨大な矢となってそれに番えられる。

二人は互いの右手と左手でその矢を引き絞ると、ダンタリオンにその先端を向けた。

ダンタリオンの振り抜かれる巨大な右腕が二人の目の前に迫る。黄色い両目が、空中で浮遊する二人にピントを合わせていた。

 

『──────!!』

 

まるで咆哮するようにツインアイを更に輝かせるダンタリオンに、その圧力を突き破るべく耶俱矢と夕弦も叫んだ。

 

『ラファエル《颶風騎士》───【天を駆ける者】!!』

 

二人が、まったく同時に手を離し、その巨大な矢をダンタリオンに撃ち放つ。

 

「これで・・・・・ッ!!」

 

「終わりだあああああああ─────ッ!!」

 

この一撃の進行を止められるものなど存在しない。

絶対にして無敵の一点集中攻撃。

その最強の矢とダンタリオンの拳がぶつかり合い───一瞬のせめぎ合いの後、その拳は《颶風騎士》の矢に貫かれ、そしてそれとせめぎ合ったダンタリオンを貫いた。

そして七十一番目の悪魔───ガンダムダンタリオンは、その巨体もろとも地へと倒れ伏していった。




作者「ダンタリオン編しゅーりょー!!かと思ったか!!まだ終わるかよ!」

狂三「はい!?終わったんじゃありませんの!?」

作者「狂三ぃ・・・何か忘れてないかい?」

狂三「な、なんですの?」

作者「ガンダムフレームといえば、ボロボロになってから本番よ」

狂三「ま、まさか!?」

作者「皆が喜ぶ中でのリミ解じゃあ!!」

狂三「やってくれましたわね!?」


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第二十話 また会えたら

投稿!!

後書きで真那がぶっ壊れます


「やった・・・?」

 

倒れ伏し動かないダンタリオンを見て誰かがそう呟く。

 

「・・・終わった・・・」

 

と掠れた声で真那が呟くと、その一言がきっかけとなり───。

十香達が、一気に歓声を爆発させた。

 

「「「「や、やったああああああッ!!」」」」

 

真那もそこに加わりたいのはやまやまだったが、急にふーっと意識が遠ざかるほどの疲労感に襲われ、地面に座り込む。立ち上がろうとするが全身に力が入らない。そんな真那の目の前に白い手が差し出された。

 

「歓喜。お疲れ様です。真那」

 

「・・・ええ。お疲れでやがります。夕弦さん」

 

差し出されたその手を握り、真那は引っ張ってもらって何とか立ち上がり、既に天使を収めて微笑んでいる夕弦と、軽く腕をぶつけあって勝利を祝う。

 

「想起。前にも士道とコレをしたことがありました」

 

「・・・・そんなこともありましたね」

 

確かユージンさんと兄様がやっていたのを十香さんと一緒にゴネてましたっけと談笑をしながらダンタリオンを見る。───が、そこに“ダンタリオンの姿はなかった”。

そして喜ぶ十香達を覆う巨大な黒い影。その瞬間、五河士道が焦りを含んだ声での絶叫だった。

 

「皆!!そこから離れろおおおおぉぉッ!!!」

 

「「「ッ!!?」」」

 

その絶叫に十香達は散開し、先程まで十香達がいた所に巨大な手が振り下ろされる。凄まじい震動と土煙に真那は一瞬思わず目を瞑ってしまい、その全容を詳しく把握出来なかったが、間違いない。あの手は───

 

「なん、で・・・・?」

 

真那は掠れた声で目の前で立ちあがる“ダンタリオン”に、そう呟いていた。

そう。だってあれはさっき倒した筈だ。八舞姉妹の【天を駆ける者】によって貫かれた筈なのだ。

それなのに───

そんな呆然と絶望にぺたんと地面に膝をつく真那に、ガンダムダンタリオンは赤く輝くツインアイで真那達を捕らえる。

物を言わぬダンタリオンにあったのは怒りだった。

“天使”がよくもやってくれたな───と。

 

ダンタリオンにとって十香達“小娘”はもとより眼中にない。ただ、“彼女等の中に眠るあの女が持っていた天使”にだけダンタリオンは“敵意”を向けているのだ。

 

ダンタリオンは破損したハーフTカウルの右腕をパージし、その中に収納された本来の腕にベイオネットライフルを装備すると、そのままソードモードに切り替え、叩きつけるように十香達に振り下ろす。

 

「ッ!!回避!!回避!!」

 

ユージンの声に皆がバラバラになってダンタリオンの振り下ろされたベイオネットを避ける。だが、そんな彼女等にダンタリオンはベイオネットライフルの銃剣を地面を削り取るように一気に薙ぎ払いつつ、スラスターを吹かしながら一気に加速し、そしてそのまま巨大な左腕を振り上げた。

 

「・・・・ぁ」

 

振り上げた拳の先には膝をついて座り込んでいた真那がいた。

 

「真那ッ!!」

 

「真那さんッ!?」

 

「逃げてください!!」

 

士道が四糸乃が夕弦が座り込んでいた真那に逃げろと叫ぶ。

その声に真那は逃げようと足を動かそうとしたが、真那の足は石になったように動かなかった。

ダンタリオンの拳が真那に目掛けて振り下ろされる。迫るその巨大な拳に、真那は自分は此処で死ぬのかと思った。

あの拳に直撃したら私はきっと跡形もなく潰れて死ぬだろう。兄様にもう一度会うこと出来ずに。

そんなのは嫌だと内心は思っていても、身体が限界なのか動いてくれない。

───死にたくないと私は思った。兄様とずっと一緒に居たい。皆と一緒に居たい。やりたいこともいっぱいある。そんな毎日を兄様や皆と過ごしたかった。

だが、目の前に迫る自分の死に私はただ受け入れるしかなくて───

 

(死んだら───兄様に会えるんでしょうか?)

 

死んだ奴には死んだ後で何時でも会えると言っていた兄様に、私はその時は何も言えなかったが、もしここで私が死んで兄様に会えるのなら───

 

(───もう・・・それでも良いです)

 

真那は襲いかかってくるであろう衝撃に備えて目を閉じる。

 

ごめんなさい皆さん。私、約束守れそうにねーです。

ごめんなさいオルガさん。私はうそつきでした。

 

 

 

 

 

兄様───もし、そっちで会えたら・・・真那をいっぱい怒ってください。

 

 

 

 

 

「真那あああああああッ!!」

 

 

皆の叫び声と共にダンタリオンのその拳は真那を押し潰そうとして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガアアアンッ!!───と。

 

拳と“大型メイス”が凄まじい音を立てて衝突した。

 




作者「さてさて───真那ちゃん。頑張った君にほんの少しだけ飴を与えよう」

狂三「今の真那さんにとって絶対に手放したくない飴ですわね。というか、ここで与えても良かったので?」

作者「まあ、虐めてばかりだと流石にね?でも、さ・・・これはヨソウガイダッタナー・・・」

ミカ「・・・真那大丈夫?」

真那「兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様ニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマニイサマ・・・・」

狂三「真那さん、三日月さんからカレコレ二日間寝ずに離れてませんわよ?」

作者「真那ちゃんが壊れちゃった・・・」


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第二十一話

投稿!!


ダンタリオンの拳を振り下ろされた時、私は死んだかと思った。

でも私は死んでいない。それは何故か?何故なら私の目の前には───

 

 

 

土煙が晴れる。真那の目の前にはダンタリオンの以外にも巨大な影が一つあった。

 

「──────」

 

その影の正体に誰もが言葉を失う。なぜならその影の持ち主はこの場にいる誰もが知っていた。自分達が取り戻そうとしていた人が使う悪魔。

そうそれは─────

 

「バル・・・バトス」

 

ガンダムバルバトス。三日月が使役する悪魔。

 

「にい、さま・・・」

 

真那はバルバトスを見て、無意識にそう呟く。なぜ、どうしてこのタイミングで現れる?だって夕弦が危なかった時は姿を現さなかったのに。

そんな彼女達の思惑に対し、動きを止めるダンタリオンとバルバトスはとてつもなく長く感じる数瞬の対峙の後、動きがあったのはダンタリオンの方だった。

ダンタリオンが影のように消えていく。そんなダンタリオンを見送るようにバルバトスはただ、ジッと見つめるだけだった。

そしてダンタリオンが完全に消え去った後、バルバトスが十香達の方に頭部を此方へと向けた。

 

「シドー!!シドーなのか!?」

 

十香が叫ぶ。その叫びにバルバトスは反応した。

 

「・・・えっ?」

 

その言葉を漏らしたのは誰だったか。自分だったのかもしれないし、十香達の誰かだったのかも知れない。

バルバトスの“コックピットが開かれる”のを見て誰しもが思ったこと。それは─────

 

「誰も・・・乗っていない?」

 

誰もいないコックピットに真那達は困惑する。そしてバルバトスはコックピットを開いたまま、しゃがんだ姿勢になる。その姿はまるで誰かが乗り込むのを待っているようだった。

 

「・・・・行こう真那」

 

士道は真那にそう言って、バルバトスへと足を動かした。

 

「・・・・・」

 

真那はバルバトスへと向けて歩く士道の後ろ姿を追えなかった。

ここまで来た。ここまで来たのに、真那はその先に進むことが出来ない。何故なら知りたくないことまで知ってしまいそうになりそうな恐怖があったからだ。

前に進みたくても進めない真那に誰かが背中を押した。

 

「・・・・ぁ、四糸乃・・・さん」

 

真那の背中を押したのは四糸乃だった。いつもこういったことをしない四糸乃に、真那は困惑しながら顔を四糸乃に向ける。

困惑する顔を向ける真那に対し、四糸乃がおずおずとした様子だったが、『よしのん』ではなく自分の口で四糸乃は真那に言った。

 

「行って・・・ください。本当は、私も行きたいですけど・・・きっと私達じゃ・・・三日月さんを、説得できませんから・・・」

 

「・・・四糸乃さん」

 

きっと四糸乃にも三日月に言いたいことは色々とあるのだろう。だが、今、三日月を呼び戻せそうな人など真那くらいしかいないと四糸乃は思って真那の背中を押した。

 

「だから・・・私達の代わりに・・・行って、ください」

 

四糸乃のその言葉に皆が頷く。

そして真那は少しだけ目を閉じた後、すぐに強く頷いた。

 

「分かりました。なら、私が皆さんの代わりに行ってきます。そしてぜっーてに兄様を・・・連れ戻してやります」

 

真那は皆にそう言って、士道の元へとかけていく。そしてバルバトスのコックピットへよじ登ると、そこには既に士道がいた。

 

「・・・始めるけど、いい?」

 

「私のことはいいです。ですけど、貴方は?阿頼耶識がねーとバルバトスは─────」

 

そう言いかけた真那に、士道は言う。

 

「俺の身体はもともと三日月が使ってたものだから、阿頼耶識自体はあるから心配はいらないよ」

 

「・・・そうでやがりますか」

 

少し複雑な気分になる真那に、士道は口を開く。

 

「ゴメンな。真那」

 

「な、なんでやがりますか?急に・・・」

 

急に謝り始めた士道に真那は困惑する。

困惑する真那に士道は言う。

 

「“俺達のせいで”真那達に迷惑をかけたことに──かな」

 

「・・・・気にしてねーですよ」

 

そう答えてソッポを向くそんな真那に士道は苦笑してモニターに触れると、コックピットハッチが閉じていく。

 

「じゃあ─────行くよ」

 

「・・・・・はい」

 

士道はそう言って密室になり、暗くなったコックピットの中で士道は呟いた。

 

「─────網膜投影スタート」

 

その言葉と同時にバルバトスのコックピットの中が輝く。そしてそれと同時に─────

真那と士道はバルバトスの“中”へと取り込まれた。




作者「ガンダムキャリバーンって箒を持った魔女をモチーフにしてるって聞いて確かにそうだわって思ったわ」

狂三「中々独創的なデザインでしたものね」

作者「でもね、同時に思ったのが七罪の天使って箒型だし、魔女がモチーフだから・・・」

七罪「もしかしてアンタ、私を殺す気じゃないわよね!?」

作者「いや、しねえよ?ただ、七罪の天使ならキャリバーンごっこ出来るんじゃないかなってさ・・・」

狂三「なんですの?それ・・・」

作者「真那にハニエルを貸してバルバトスと勝負するとか見てみたくない?」

七罪「絶対に貸さない。何か嫌な予感する」

狂三「まず、それをすると真那さん死にますわよね?ただでさえ、DEMのせいで身体をいじられて寿命が10年ほどしかありませんのに、それを更に加速させるつもりですの?」

作者「真那がちゃんと治療してれば少しでも長生き出来るんだけどね?それサボって兄様兄様って言ってんのがうちの真那ちゃんだけど」

七罪「アイツ、私の体調とか気遣う前に自分の体調を気遣いなさいよ!?」

作者「因みにこれかなり先になるけど、三日月はもっと寿命短いよ?」

狂三、七罪「「は!?」」

作者「ガンダムフレームって乗ってるパイロットってガエリオ以外全員死んでるからね?月鋼も一人死んでるし」

狂三、七罪「そうでしたわ!?」「そうだった!?」」


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第ニ十二話 まだ帰れない

投稿!!


「・・・ん・・・んぅ・・・」

 

真那の寝苦しそうな声が狭いコックピットに響き渡る。

 

「んにゅ・・・ぅ?・・・ここ、は・・・?」

 

真那はゴソゴソと身体を動かしながら伸びをすると、「あがっ!?」と情けない悲鳴とともに真那の掌に鈍い痛みが走った。

 

「え」

 

真那はその悲鳴が聞こえた後ろ側に顔を向けると、そこには口もとを抑える士道がいた。

 

「な、な、な!うにゃああああああああああッ!?」

 

「ちょっ!?まっ!?」

 

真那のそんな悲鳴とともにバチーン!と痛々しい音がコックピットに響き渡った。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ごめんなさい!ほんっとうにごめんなさい!!」

 

「だ、大丈夫だから・・・」

 

必死に謝る真那に対し、士道は頬を真っ赤に腫れさせながら大丈夫と答えると、士道は周りを見渡した。

 

「それにしても・・・ここは何処だ?」

 

「格納庫・・・ですかね?」

 

開かれていたコックピットの先に広がっていた格納庫らしき場所でバルバトスがしゃがんだ姿勢のまま鎮座しており、自分達以外誰もこの場所にいなかった。

真那達はコックピットからおそるおそる顔を覗かせていると、真那達の上から声が響く。

 

「あ、起きた?」

 

「───ぇっ?」

 

その声に真那は身体を強張らせた。

恐怖ではない。なぜならその声は真那にとって一番会いたかった人の声で───

真那はゆっくりと顔を上へと向けると、そこにいたのは

 

「ぁ───」

 

黒い髪に青空のような目を持つ少年だった。

 

「“おはよう。真那”」

 

「・・・にい、さま」

 

無愛想だけど優しいその声を聞いて真那の視界がボヤけ、目に涙が溢れ出る。

そして真那が今まで我慢してきたモノが決壊した。

 

「にいさまっ・・・にいさまっ!!」

 

真那はすぐにコックピットハッチをよじ登り、座る三日月の胸に飛込むと、真那はそのまま胸の中で声を上げて泣き出した。

 

「にいさまぁっ!!・・・にいさまぁ!!」

 

「・・・ん」

 

顔をぐしゃぐしゃにして胸内に泣きつく真那をなぐさめるように、三日月は彼女を抱きしめながら背中をポンポンと叩く二人の姿を見て、士道はどこか安堵したような表情をした。

今の今までずっと我慢してきたのだ。今のこの瞬間、邪魔をするのは野暮というものだろう。

嗚咽を漏らす真那を三日月は撫でながら士道に顔を向ける。───その目はどうして来たのかと訴えているように見えた。

 

「なんで来たの?」

 

そう言う三日月に、士道は言った。

 

「俺が三日月の代わりになる為だよ」

 

「俺の代わり?・・・なんで?」

 

そう言う士道に、三日月は訳が分からないと言った様子だった。

 

「元々のことの発端は“俺達”のせいなんだ。だったら俺達の問題に巻き込んだ三日月には十香達と一緒に───」

 

「“別にアンタらのせいじゃないでしょ”」

 

「違うッ!!」

 

そう言う三日月に士道は違うと叫ぶ。

 

「元々“澪”が俺を───」

 

「悪いけど“今のアンタ”じゃ俺の代わりにならないよ」

 

士道がそこまで言った所で三日月はそう言って、真那を士道へと受け渡した。

 

「にい───」

 

涙で目元を赤くした真那が三日月から離れたくないと手を伸ばすが、そんな真那に三日月は言う。

 

「───真那の帰る場所はそっちでしょ。だからこっちに来たら駄目だよ」

 

「嫌です!!待ってくださいッ!!私はまだ──ッ!!」

 

一緒に居たいと言う前に士道達は現実に引き戻された。

引き戻される彼等を見て三日月は呟く。

 

「俺はそっちには戻れないよ。───俺にはやることがあるから」

 

三日月の視線の先には六つの巨大なマニュピレーターと一つ目の赤色の単眼が輝いていた。

その一つ一つがモビルスーツと同じ大きさで鋏のような形状のマニュピレーターが三日月を視界に入れると同時に赤く光輝く。

 

『─────────』

 

「うるさいよお前」

 

三日月のその言葉と同時にバルバトスは地を駆け抜けた。




狂三「作者さん!?これ大丈夫なやつですの!?」

作者「大丈夫大丈夫!これさえあればビームに強い機体でも一発だぜ!」

狂三「破壊力の向きが敵だけではありませんわよ!?」

作者「大丈夫大丈夫!俺が支えてやるから!」

狂三「絶対生身で撃ったらマズイ代物ですわよね!?」

作者「狂三ならビームマグナム撃てるから大丈夫だって」

狂三「絶対に反動で死にますわよ!?」


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第ニ十三話  鍵

投稿!!
来週はもしかしたら投稿できないかもしれません・・・

なぜかって?書ける時間がねえ・・・


「おわっ!?」

 

「・・・・ッ!?」

 

士道と真那の意識が無理矢理覚醒させられ、目を覚ました。そしてバルバトスのコックピットから追い出されるように二人はコックピットの中から吹き飛ばされる。

 

「士道!?」

 

「真那!!」

 

コックピットから吐き出された二人のクッションになるようにユージンと琴里達が二人を受け止めた。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「怪我はない!?真那!」

 

二人の心配をするユージンと琴里に対し、真那達は自分達の身体の心配よりも自分達を吐き出したバルバトスを見上げた。

ゆっくりと立ち上がりながらコックピットを閉じ、バルバトスは真那達を一度見下げた後、そのまま靄が晴れるように消えていく。

 

「待って!待ってください!兄様!にいさまっ!!」

 

追いすがるようにバルバトスに手を伸ばす真那。

 

「逃がすかぁ!!」

 

「呼応。逃がしません!!」

 

耶俱矢と夕弦は消えていくバルバトスを引き止めようと、全力で駆けてゆく。

 

 

─────だが。

 

「んなッ!?」

 

「───ッ!?」

 

八舞姉妹の前に“フラウロス”と“グシオン”が立ち塞がる。

 

「邪魔だぁ!!」

 

「呼応。どいてくださいッ!!」

 

二人は《颶風騎士》を構えながらフラウロスとグシオンに突撃するがそんな二人を歯牙にもかけず、ハルバートと蹴りで二人を吹き飛ばした。

 

「耶俱矢!夕弦!」

 

「耶俱矢さん・・・!夕弦さん・・・!」

 

十香と四糸乃はそんな二人のもとへと駆け出すが、そんな二人の前に“二機のガンダムが”手にした武器を振り下ろす。

 

「きゃっ・・・!?」

 

「な、誰だ!!」

 

二人は突然攻撃してきたその二機を見上げると、そこには真っ黒な装甲をフードのように被り、バトルアンカーを振り下ろした姿勢のままでいるガンダムグレモリーに、グラントンファーを構えるガンダムアスモデウスが十香と四糸乃の前に立ち塞がっていた。

 

「な、なんですかぁ!?これぇ!?」

 

続々と現れる悪魔達に美九が叫ぶ。そして美九と七罪、折紙の前に三機の悪魔が地に足をつけた。

 

「な───ッ!?あれは───」

 

三機の内の二機にマクギリスは見覚えがあった。あれはセブンスターズの───

 

「“ガミジンとハーゲンティ”だと!?」

 

ファルク家のガンダムガミジンにエリオン家のガンダムハーゲンティ。それらはセブンスターズが保有するガンダムフレームだった。

ガミジンとハーゲンティ───そしてウヴァルはリボルバーガンアックスとカタナ・ブレード、ハルバートチョッパーを構え、美九達を動かせないように牽制する動きをみせる。

 

「この───」

 

カマエル《灼爛殲鬼》を纏おうとした琴里の後ろから、不意討ちをする悪魔がいた。

 

『────────』

 

「──────ッ!?」

 

振り下ろされた攻撃を琴里は間一髪の所で回避するが、不意討ちを回避した琴里に赤い眼光が琴里達を射貫く。そして“琴里を殺すつもりの一撃”を繰り出した“ガンダムマルコシアス“が手にした大太刀を構えた。

───ゾクリと皆がマルコシアスの殺気に当てられ、鳥肌が立つ。

動けない皆を他所にバルバトスは完全に消えていた。

そして完全に消えたバルバトスを悪魔達が確認すると、そのまま彼等も、十香達に何も危害を加えることなくその場を去っていった。

そして残された彼女等はその場から動けずに、悪魔達との戦闘は終わった。

 

───彼女達に目に見えない傷を残して。




作者「狂三、狂三。三日月編が終わったら万由里編やろうかなって考えてる」

狂三「はい!?でも万由里さんが出てくるのは七罪さんよりさきですわよ!?というか、万由里編はやらないと思っていたのですけれど!?」

作者「実はね、その辺はもう考えてあんのよ?因みにやろうとしたきっかけはね、“メッセージボックス”でやってほしいって人が結構いたから」

狂三「結構いたのですのね!?というか、万由里さんそこまで人気でしたの!?」

万由里「ん。これでも結構人気」

狂三「万由里さん!?」

作者「万由里って性格というか、喋り方が三日月となんか似てるんよね・・・。つか原作の映画、探すの大変だったわ・・・」

狂三「わざわざ探しにいったのですのね!?」

作者「読者に答えるのが作者のモットーだぜ?」


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第ニ十四話 厄祭の前触れ

短いですが投稿!!


サブタイトルで分かった方。もしかしたらその通りかも?


ガンダムとの戦闘から一夜が経った。

真那達は五河家に全員が集まりながらも、それぞれ自由に時間を過ごしている。 

ベッドで泣き寝入りしてしまった真那と四糸乃に、その横で腕を枕にしながら寝ている七罪と美九。ソファで横になっている耶俱矢と一緒に眠っている夕弦。そして珍しく士道の部屋で折紙と一緒に寝ている十香の姿があった。

そんな十香達を一通り見てきた士道は静かに家の外へと出ようとすると、キィと音が立つが、皆疲れているのだろう。誰もその音で起きることはなく、そのまま外に出る。

遠くの方では慌ただしくサイレンの音が響き渡っているそんな中、士道の家の前で朝早くから一人の男がそこに立っていた。

 

「・・・おう。アイツらはもう寝たのか?」

 

ユージン・セブンスタークが寒い冬の夜空の下で短く士道にそう聞き返すと、士道は小さく息を吐きながら答えた。

 

「・・・うん。やっと寝たところ。十香達も疲れてたみたいだから」

 

「・・・そうかよ」

 

その返事を聞いてユージンは少しだけ目を伏せる。

そしてユージンは士道に言う。

 

「・・・・リングに出た次の目的地にマクギリスの野郎と行ってきた」

 

「・・・!!どうだったんだ?」

 

聞き返す士道にユージンは気難しげな顔をする。

 

「場所はアイツと七罪が最初に会った遊園地の廃墟だったんだが・・・そこに“マズイヤツ”があったんだよ」

 

「マズイヤツ?」

 

そう言って首を傾げる士道にユージンは頷いた。

 

「・・・“プラント“だ。ピラミッドみたいな形のとんでもなくデケえプラントが“二つ”もな」

 

「・・・それって!!」

 

「“モビルアーマー”の生産プラントだ。しかも私も見たことのない形のプルーマのな」

 

マクギリスが厳しい表情で士道達のもとへと歩きながらそう答える。

 

「あの周囲に蜂のような形をしたプルーマがいくつも散乱していた。そして生産プラントの奥からも微弱ながらエイハブウェーブの反応がある。おそらく今は休眠状態のようだが、もし“アレ”が起動するような自体になれば───」

 

「天宮市どころか───」

 

「周囲の街や都市が滅ぶことになる」

 

そう答えたマクギリスに士道が言う。

 

「でもなんで今、モビルアーマーが!?それを出さないようにするのが錠の役目なのに・・・!」

 

「そりゃあお前───“試している”んだよ。“お前等が”自分達の役割である鍵の役目を果たせるのかどうかをな」

 

「「「・・・ッ!!?」」」

 

第三者の声に三人は声が聞こえた方へと振り向くとそこには───そこにいたのは───

 

「・・・オル・・・ガ・・・」

 

ユージンが掠れた声でそう呟いていた。

そしてユージンのその声にオルガが少しだけ笑う。

 

 

「おう。“久しぶりだな───ユージン”」




マルコシアス「モビルアーマーを討伐出来る実力あるなら三日月を返してやるのを考えてもいいよ」

作者「モビルアーマーを単機討伐で二機同時相手にボッコボコにしたお前に勝てるやついるの?」

マルコシアス「アグニカ。セブンスターズの頭可笑しい奴ら」

万由里「化け物相手に化け物をぶつけると?確かに理に叶ってます」

狂三「無理難題吹っ掛けているの自覚あります!?」


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第ニ十五話 

投稿!!

にしても万由里、人気だよなぁ。メッセージボックス読み返したら10件近くあったわ・・・


士道達二人は目の前に立つ男───オルガ・イツカの姿を見て驚愕していた。

唯一マクギリスはオルガの存在を知っていた為、そこまで驚きはしなかったものの、それでも彼等の前に姿を現したことに驚きを隠せなかった。

だが、マクギリスは驚愕で言葉が出てこない彼等の代わりにオルガに言った。

 

「“試している”と言ったな。鍵の役目を果たせるかどうかと。それはどういう意味なのか聞かせてくれるかね?」

 

マクギリスの問いにオルガは口を開いた。

 

「・・・ガンダムの役割ってのはな、どこぞの馬鹿野郎がバルバトスと一緒にモビルアーマーを“再現”しちまったせいで、そのモビルアーマーがこっち出てきた時にソレを破壊する。ってのが役割って言えばいいか」

 

「・・・“再現”だと?」

 

その言葉に眉を潜めたのはマクギリスだった。それと同時に士道も少しだけ顔を暗くする。

 

「ああ。しかも原初の精霊を名乗っておきながら“自分で力で再現したくせに、自分で制御出来ていない”奴らを再現しちまったせい・・・それの尻拭いをミカとバルバトスがやってんだよ」

 

「原初の精霊?なんだよそりゃあ・・・」

 

色々と言いたそうな顔をするユージンだったが、原初の精霊と聞いてオルガに聞き返す。

 

「文字通り最初の精霊って奴だ。まあ、ソイツが碌でもない事をした結果、バルバトスとモビルアーマーがこっちに存在することになった・・・って言えばいいのか?わりぃ。上手く説明出来ねえ」

 

謝るオルガに今度は士道が言う。

 

「じゃあ“鍵”の役目を試しているってことは誰が“鍵”の役目を・・・?」

 

「───彼奴等だよ」

 

士道の質問にオルガは親指を家に指差す。

 

「───とお、か達が・・・?」

 

呆然とする士道にオルガは片目だけ瞼を閉じると、そのまま口を開く。

 

「───”ミカを返して欲しけりゃ実力を見せろ”って言うことだ」

 

ガンダムの役割とはモビルアーマーを破壊すること。

彼女等が“モビルアーマーを殺せるなら”鍵としての役割を最低限クリアしている。だが、その後は?

 

「“その後は・・・どうなるんだ”?」

 

震える声を上げる士道にオルガは───

 

「“ガンダムとの殺し合い”に勝てって言えばいいか?」

 

その答えに士道は怒声を上げる。

 

「殺し合いって・・・どうしてそうなるんだよ!」

 

その声と共に士道はオルガをキッ!!と睨みつけた。

だが───

 

「───“俺達の場所”はそんな綺麗事ばっかりじゃあ通用しねえよ」

 

「──────ッ!?」

 

そう言うオルガに士道は気圧されながら、足を一歩後ろに引いた。そしてそんな士道の胸ぐらをオルガは掴むとそのまま顔を士道に近づける。

鋭い猛禽のような目が士道を映す。

 

「いいか。俺やミカ、ユージンは最初からお前みたいに良いところの生まれなんかじゃねえ。家があって飯もあって寝る所もある。お前は戦場で生きてきた俺等なんかと違って俺等の欲しかったものを最初から持ってるじゃねえか」

 

「・・・がはっ!?」

 

「おい!?オルガ!?」

 

オルガはそう吐き捨てるように士道を突き飛ばすと、尻もちをつき、苦しそうに息を吐き出す士道に言った。

 

「これはな“お前”が決めることじゃなく、“あいつら”自身が決めることだ。───ミカと一緒に居たいって言った家族の言うことをお前は否定すんのか?」

 

「・・・それは───」

 

オルガの言葉に士道は何も言い返せない。オルガはそんな士道にはもう何も言うことはないと言わんばかりにマクギリスとユージンに振り向く。

 

「ユージン、マクギリス。モビルアーマーを破壊するなら明日以降には終わらせろ」

 

「・・・は?どういうことだよ。オルガ?」

 

「なにか理由があるのだな?」

 

そう聞き返す二人にオルガは険しい顔で言った。

 

「───ああ。“DEM”の奴等がモビルアーマーに気付き始めやがった」




作者「因みになんだけど、万由里√考えてる件で君たちはどっちがいい?」

狂三「どっちとは?」

戦車「ああ、確か映画だと消えるんだっけ?」

作者「そうそう。だから生存√でいくか、原作ムーブでいくか。ぶっちゃけた話俺はどっちでもいいんだけどね?生存√だとうちの真那ちゃんや夕弦みたいにミカにダダ甘になるけど」

狂三「あの万由里さんがですの?」

戦車「いや、想像出来ねえ・・・いや待て、確かアイツが主人公ズと戦った理由って・・・」

作者「主人公とヒロインズのデートを見ての羨みと嫉妬なんだよなぁ」

狂三、戦車「「割りと湿度が高かった!?」」


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第二十六話 darkest armour

投稿!!

サブタイトルの通り、アレが登場です!

因みに昨日が、四年前にこの作品を投稿し始めた日になりますね・・・早いなぁ


「・・・・・本当に私が行かなくても良かったのですか。アイク」

 

「ああ。君が行く必要はないよ。今は様子見だ」

 

ウェストコットはそう言って椅子に深く腰を降ろす。

そして外を眺めながらアイザックは笑みを浮かべた。

 

「精霊とは違うものが突如として現れたんだ。誰だって興味を持つさ」

 

「だからと言って昨日の件もあります。不用意に近づくのも問題があるかと」

 

そう呆れるエレンにアイザックは言った。

 

「それでも───”知りたいものもあるのさ”」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「本当に何なんでしょうか?これは・・・」

 

一人のDEM隊員が二つの巨大なピラミッド型の構造物を見上げてそう呟くと、その隣にいた隊員が言った。

 

「さあ?けど、周りには機械で出来た蜂っぽい形の何かが散乱してたし、コイツ等は乗り物か何かなんじゃない?それにしてはコックピットらしき場所が何処にも見当たらないんだけどさ」

 

「コックピットがない?・・・ますます謎ですね」

 

そんな会話をする二人に隊長らしき女が叫ぶ。

 

「そこ!!話してないで手を動かしてよ!!今からこの蜂みたいなのを船に運ぶ準備をするからリアライザ《顕現装置》を起動させて!」

 

「あ、はーい!」

 

「げ、りょ、了解」

 

二人はそう言うと、リアライザ《顕現装置》を起動させた。

 

「さ、さっさと運んじゃおう」

 

「そうですね」

 

二人はそう言って、テリトリー《随意領域》を展開したと同時───

 

 

 

 

 

 

 

〘────────────〙

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん?なんだ?」

 

「リングが・・・」

 

「ここで新しい情報だと?」

 

「・・・・!!ユージン!」

 

 

ユージンが手にしていたリングが発光し、“厄祭の天使が目を覚ました”。

 

 

 

 

 

 

エイハブリアクターが駆動する。そしてその駆動と同時に、廃墟と化した遊園地施設を中心にゴーストタウンと化している天宮市南端部全域をエイハブウェーブが覆い尽くした。

それと同時にDEMの隊員達が装備していたリアライザ《顕現装置》を含め、全ての電子機器が一斉にシャットアウトする。

 

「リアライザ《顕現装置》がシャットアウト!?」

 

「ちょっ!?な、なんで!?」

 

慌てる隊員達に関係なく、周囲の状況は変化し続ける。何故ならリアライザのシャットアウトと同時に、蜂型の”プルーマ“が一斉に起動した。

 

〘──────〙

 

赤い単眼のカメラを光らせながらプルーマはその巨体を生き物のように動かしながら立ち上がる。

 

「な、なんで急に!?」

 

「しかもなに!?この数!?」

 

「退避!退避!」

 

逃げる彼女等に対し、プルーマは周囲を見渡す。そしてその赤い目が逃げる彼女等を捉えた。

 

〘──────〙

 

プルーマがスラスターを吹かしながら逃げる彼女等目掛けて突撃する。

そして尖端の鋭角で隊長の女を突き刺した。

 

「───ゴフッ!?」

 

「隊長!?」

 

一人の隊員が叫ぶが、プルーマはその女を突き刺したまま空高く飛んでいった。

そして周囲に飛んでいたプルーマ達も逃げる隊員に気付いたのか、次々と此方へと向かってくる。

 

「なんなの!?コイツら!?一体なんなの!?」

 

そう叫びながら逃げ回る隊員の視界に謎の巨大な建造物が徐々に開いていくことに気がつき、そしてその“中”に入っていたモノに彼女は絶句し、足を止めた。

 

「───は?」

 

巨大なピラミッドの中に収まっていたモノ。それもまた巨大だった。だが、それは周りにいるコイツらよりも遙かに大きい。

見た目は昆虫と人を足して二で割ったような見た目だった。黄緑色の装甲に六本の大きすぎるマニュピレーター。そして顔らしき部分は周りを飛んでいる蜂型のプルーマと同じ赤い単眼が隊員をジッと彼女を見ていた。

そしてその巨大なバケモノは大きすぎるマニュピレーターを彼女に向けた。

ピンク色の光が収束する。それを見た隊員は自分は此処で死ぬんだと理解して───

 

〘────────────────〙

 

彼女の意識はそこで途絶えた。

 




作者「モビルアーマー、ハラエルの登場!!ハラエルって実際、ハシュマルより階位等級はだいぶ低いけど、鉄血だとどうなんだろ?」

狂三「知りませんわよ。というかモビルアーマーにしては大きすぎません?ハシュマルより大きいですわよ?」

作者「モビルスーツの頭頂部でハラエルの足首くらいまでしかなかったり、六本のマニュピレーターのサイズがモビルスーツとほぼ同じサイズだから・・・パッと見て全高百メートルは有に超えてるよな?そんなのをマルコシアスは一機でハラエル二体とやり合ってるんだから厄祭戦ってどんな地獄だよ。ハシュマルだって複数いたらしいし」

狂三「最終的にはモビルアーマーを生産するモビルアーマーがいたりするかもしれませんわよ?」

作者「どんだけデカイモビルアーマーだよ!!それ!!」


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第ニ十七話

短いですが投稿!!

作者「狂三、狂三。三日月にトリックオアトリートもうした?七罪編の時に、皆が三日月にお菓子じゃなくイタズラをねだってた面白い光景見れたんだけど」

狂三「やってませんわよ・・・というか、その頃にはわたくしは此方にいたでしょう?」

作者「そっかー。因みに、真那ちゃんが三日月からいたずらしてもらおうとして、三日月に生殺し食らったの知ってる?因みに耶俱矢に夕弦、琴里に美九も同じように生殺し食らってた」

狂三「なんてことしてますの・・・皆さん。って、生殺し?どういうことですの?」

作者「それはね・・・」


「ここで新しい情報だと?」

 

マクギリスの呟きと同時に、青く晴れた空に一条の光が迸る。それを見て、この場の全員が目を見開いた。

 

「おい!?ありゃあ・・・!?」

 

「ビーム兵器・・・!?」

 

ビーム兵器による破壊の光。それと同時に、空にナニカが多数広範囲に飛んでいくのが見える。

 

「あれは・・・プルーマか。五河士道、ユージン・セブンスターク。すぐで悪いが彼女達を起こしてくれ。今回のモビルアーマーの討伐・・・・・どうやら”私は行けないらしい“」

 

「なに?」

 

オルガの鋭い視線がマクギリスに突き刺さる。が───その理由が“目の前”にいた。

 

「・・・・ッ!?」

 

士道は”ソレ“を見て、思わず身を一歩後ろへ引く。

巨大なドリルランスに西洋甲冑を思わせる装甲。

そして両肩に装備されたシールドの片側に描かれたスレイプニルの紋章。

そう。───それは───

 

「キマリス!?」

 

士道の驚愕する叫びと共に、キマリスヴィダールはドリルランスをマクギリスへと向けた。

 

「どうやらキマリスの目的は私のようだ。私が居ては彼女達の試練にならないらしい。私が奴を引き連れる。早く皆を連れてモビルアーマーの元に行きたまえ」

 

マクギリスはそう言うと、キマリスを見てフッと笑うと───

 

「──────ッ!!」

 

双剣とドリルランスが激突し、火花が散る。

 

「───フッ。やはりか」

 

バエルを纏ったマクギリスの顔は見えないが、どこか笑っているようにも見えた。

目に見えないほどの高速戦闘でバエルとキマリスがこの場から離れていく。

一瞬にしていなくなってしまったマクギリスを後に、ユージンが士道に叫んだ。

 

「おい五河!早く十香達を起こしにいけ!!俺は車を回してくる!モビルアーマーが街に来たらヤバいどころの話じゃねえ!」

 

「お、おう!」

 

もう走り出したユージンに、士道も慌てて家の中に戻ろうとする。───と、そこでオルガと目が合った。

そしてオルガは士道に言う。

 

「ここからが正念場だ、気を引き締めろよ」

 

「そんなの、言われなくても分かってるよ!」

 

十香達を起こしに家の中に戻る士道を見送りながら、オルガはビームの光が見えた方向に目を向ける。

 

「───ミカ」

 

オルガは此処にはいない三日月の名前を呼ぶ。

そして誰もいない道の真ん中でオルガは三日月に言った。

 

「まだこっちには来るな。ミカにはお前を待ってる奴がここにいるんだからよ」

 

───と、遠くから車の音が聞こえてくる。どうやらユージンが車を持ってきたらしい。

そして車を持ってきたユージンは五河家の家の前に車を止めると、そのまま扉を勢いよく開けた。

 

「おい!オルガ!お前もさっさと───って」

 

ユージンが戻ってきたときにはオルガはそこにいなかった。

 

「・・・くそっ」

 

ユージンはガンッ!!と車のボディに拳を叩きつける。

色々言いたいことがあった。

あの時のことも。鉄華団のことも。

 

「次あったら一発ぶん殴ってやるからな!オルガ!」

 

とりあえず今はこれだけに勘弁しといてやる。

次会う時は容赦しねえからな。




真那「兄様!トリックオアトリートです!」

狼男の格好の真那

ミカ「チョコレートでいい?」

真那「むう・・・持ってやがりましたか。まあ、いいです。それよりも・・・兄様」

ミカ「?」

真那「私に言う事はねーですか?ほら、今日はハロウィンでやがりますよ?だから兄様も!」

ミカ「あー・・・トリックオアトリート?」

真那「じゃあ、悪戯でお願いしやがります!!」

ミカ「悪戯?じゃあ目瞑って」

真那「はい!」

ミカ「・・・・」

身を翻す三日月

真那「え?兄様?い、悪戯は・・・」

ミカ「やってるじゃん。悪戯しない悪戯」

真那「え”」

スタスタと歩いてく三日月

真那「そ、それはねーですよ兄様!?悪戯を期待させといて悪戯しないだなんてどんな生殺しでやがりますか!?兄様!兄様ぁ!?」



作者「こんな生殺し。如何せん、折紙っていう爆弾がいるから三日月が覚えた対抗策」

狂三「折紙さんがぶっ飛び過ぎて三日月さんも避けてますものね・・・」


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第ニ十八話 災いの

投稿!!

次かな?モビルアーマーの本格的な描写は


「・・・で?聞かせて貰おうかしら真那。モビルアーマーって一体何なの?全部聞かせて頂戴」

 

琴里は揺れる車の中で真那を問い詰める。

 

「頼む。教えてくれ」

 

十香達全員の視線が助手席に座っている真那に向けられると、真那はそんな十香達に答えた。

 

「・・・皆さんは厄祭戦は知ってやがりますか」

 

「・・・厄祭戦?それはなんだ?」

 

首を傾げる十香達に琴里は答える。

 

「大昔にあったって言われてる大きな戦争よ。その戦争で月が物理的に三日月になったとか、当時の人口の四分の一の人間が死んだって言われているけれど、それはおとぎ話の筈よ?」

 

「・・・聞いたことある。元々は国の豊かさの象徴の為に全てを機械で自動化したのが理由の戦争だと」

 

琴里と折紙の説明に真那は言った。

 

「二人の説明は大体あってます。機械技術の発達の結果、やがて国同士は戦争すら自動化させていったんですよ」

 

「戦争を自動化って・・・」

 

琴里はそんな馬鹿なと言った表情でそう呟く。

だが、それは他の皆も同様で絶句する者や動揺する者もいた。

その中で折紙は真那に言う。

 

「けれどそれは欠点がある」

 

折紙のその返答に真那は頷いた。

 

「・・・ええ。それでは倒すべき勢力の人間を倒せねーですから。ですから当時の人達はその泥沼化した戦争の戦況を変える為に、効率的に敵を倒すことに考えを傾けていったんです」

 

「敵を・・・効率的に倒す?それって・・・」

 

琴里の呟きの答え合わせをするように真那は説明する。

 

「結果、効率化を突き進めていく中で開発されたそのモビルアーマーは『敵を倒すこと』に忠実な機動兵器から『人を殺すこと』に過剰な殺戮兵器として進化を遂げて、人類の手に余る存在となってしまったんです」

 

「人を殺すことって・・・それに機械なら停止スイッチくらいあるんじゃないですかぁ・・・?それで停止くらい簡単に・・・」

 

効率的に人を殺すと聞いて顔を青褪める美九に真那は首を横に振った。

 

「当時の考えの主流は機械の自動化です。制御システムによる停止も全てモビルアーマーに搭載されたAIが行ってやがったんですよ」

 

かつてマクギリスに言われた説明を琴里達に教えると、皆は顔を青褪める。

 

「そして、そのモビルアーマー達には十香さん達と同じ”天使“の名前を持っていたとあの男が言ってました」

 

「てん、し・・・」

 

天使の名を与えられた殺戮兵器モビルアーマー。

自分達の扱う“天使”と同じもう一つの天災。

その存在が相手だという真那に士道が言った。

 

「だけど、厄祭戦は終わったんだ。それは人類がモビルアーマーとの戦いに勝ったから。七十二機の悪魔達の力によって」

 

「・・・その内の一機がバルバトスって訳ね」

 

琴里のその答えに士道は頷いた。

 

「シドーの・・・?」

 

十香達が士道に目を向ける。

それは純粋に知りたいという好奇心と疑問。

それに士道は答えた。

 

「ああ。”天使“を狩る“悪魔“。お互いがお互い敵同士だ。だから俺の身体に十香達の天使が増えていけば、その天使を敵だと認識したバルバトス達が力を封印した十香達に襲いかかってくる。俺達は知らなかったとはいえ、この現状を作り出してしまった原因でもあるから」

 

「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」

 

原因は俺達だと言った士道に皆が顔を暗くして押し黙る。そんな状況を運転席で運転していたユージンは、バックミラーで彼等をチラッと見てから口を開いた。

 

「・・・別にお前等のせいじゃねえよ」

 

「・・・・!!」

 

顔を上げる十香達にユージンは運転をしながら言った。

 

「全部悪いのはこんな面倒くせぇ事を全部俺達に押しつけるだけ押しつけてトンズラしやがった原初の精霊って奴のせいだ。お前等は悪くねえよ。まあ、俺達に何にも相談しなかった三日月も三日月だけどよ」

 

「・・・ユージン」

 

士道は十香達を励ますユージンを見る。そんな士道を見て、ユージンは言った。

 

「これでも鉄華団の副団長をやってたんだ。仲間が困ってんなら引っ張ってやんのも俺等のやることだろ」

 

「・・・ああ。そうだな」

 

そうだ。いつも彼等がやってきたことだ。引っ張って引っ張り返して。押して───前へと進み続けた。

十香達が立ち止まっているなら押してやらねばならない。後ろから皆を押す。それが彼の役目だったから。

ユージンは暗い雰囲気の彼女等を励まそうとあれやこれやと三日月や鉄華団の事を話していく。

 

 

 

そして───“口が滑った“

 

 

「んでな、俺が一番驚いたのは三日月とアトラとの間に“子供“がいたってことでよ。名前が暁って言ってコレがまた三日月にそっくりで・・・・さ・・・・」

 

ユージンが笑みのまま顔が固まった。

 

「・・・へえ。“お兄ちゃん“に“子供“がねえ?・・・・へえ・・・」

 

「・・・あっ、ヤベっ」

 

ユージンが顔を青くする。これはまずい。

 

「・・・質問。三日月に子供がいると?」

 

「・・・聞かせてもらおうか?ユージンよ。全て言うまでは返さぬと思えよ?」

 

八舞姉妹が此方を睨んでくる。

 

「ふ、ふふふ・・・ふはははははは・・・」

 

七罪が不気味な笑い溢していた。ぶっちゃけ凄く怖い。

 

「・・・・・!?・・・・・!?」

 

『やー、三日月君に子供がいるとはねえー。大人だねーやっぱりダイタンに攻めたのかなー?』

 

顔を赤くする四糸乃によしのんが考えぶかそうに腕を組んでいた。

 

「どういうことですかぁ?詳しく教えて貰っても?」

 

「・・・詳しく話して」

 

「聞かせてもらうぞ。ユージン!」

 

美九と折紙、十香がユージンに迫る。

 

「おい、ま───」

 

真那に助けを求めようとユージンは真那に声をかけるが・・・駄目だった。

 

「・・・ユージンさん?

 

顔は笑っている。───が、目は死んでいて真っ黒だ。真っ黒くろすけだ。

あと、その剣を閉まってくれ。

 

オルガ・・・俺、そっちに逝くぜ。

自分の死をユージンは覚悟したその時───

 

 

〘─────────!!〙

 

 

ビームの光が空を切り裂いた。





ユージン「死んだわ、オレ」

真那「詳しく」

作者「ゆ、ユージンwww!!」

狂三「皆さんの目が凄く怖いのですけれど!?」

戦車「これ、三日月もヤバくねえ?」

ネコキング「帰ってきたら問い詰められるわww」


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第二十九話 step to Light

投稿!!

来週から仕事関係で八月一杯まで投稿がガクンと落ちますが気長に御楽しみください!

作者「鉄血の強襲艦見てて思ったのがさ、アレ、プルーマに組み付かれないようにあんな突撃に特化したんじゃねえのかなって。でないと阿頼耶識なんか戦艦に装備されないだろ」

狂三「つまり、戦艦ごとガンダムでモビルアーマーに突貫したと言いたいですの?まあ、艦首が収納出来る時点で有りえないとはいい気れませんが・・・」

作者「その辺はどうなんだろうね?」

狂三「わかりませんわよ。そんなこと」


 

「「「「「「「「・・・・・ッ!?」」」」」」」」

 

青い空に一条のピンク色の光が空を切り裂く。

それと同時に士道達が乗った車がトンネルに差し掛かった。

 

「急いでくれ!何か嫌な予感がする!」

 

「分かってるっての!」

 

天宮市の南側は五年前の大火災以来、放置され廃墟となった街やビル等が立ち並ぶ。

このトンネルも昔はよく使われいたのだろうが、今は対向車線を走る車は一台もいない。それを利用して、ユージンは一気にアクセルを踏み入れる。

 

「もうすぐ出口です!」

 

真那の言葉と同時に士道達が乗る車がトンネルを抜ける。

真那達は外の光に一瞬目を瞑るがすぐに慣れる。そしてトンネルを抜けた“目の前の光景”を見て全員が絶句した。

 

〘──────ッ!!〙

 

目の前の光景───一言で言うなら地獄だった。

DEMやASTの仮設設備が黒煙を上げている。

そして何よりも自分達の目の前にいるソレに皆は目を奪われていた。

全高だけ見てみればザッと見ても百メートル以上ある。二足歩行でホバー移動するソレは六本の触手のようなマニュピレーターをまるで生き物のようにゆらゆらと動かしながら隊員達を”殺していた“。

そしてマニュピレーターの一つが十香達が乗る車を視界に捕らえると、尖端の巨大なクローアームが口のように開き、中心のカメラが赤く発光する。

 

「・・・ひっ!?」

 

四糸乃がマニュピレーターのおよそ機械らしくないその不気味な動きに小さく悲鳴を上げる。

だが、そんな四糸乃の悲鳴を聞いているのかいないのか、そのマニュピレーターのカメラ部分からバチバチとピンク色の光が収束し始める。

 

「・・・ッ!?お前等、早く逃げる準備をしろ!!」

 

「え?」

 

「いいから早く!!」

 

ユージンの指示に従い十香達は霊装を纏うと、士道とユージンを担ぎ上げ、車を乗り捨てると、モビルアーマーは先程まで彼等が乗っていた車に目掛けて極太のビームを発射した。

 

〘──────!!〙

 

車が一瞬にしてビームの光に飲み込まれる。

 

「あっつっ!?」

 

ビームの灼熱の本流と共に十香達が居た場所は一瞬にして火の海と化した。

ドロドロに溶けた鉄にコンクリート。先ほどまで道だった所は溶けており、自分達が逃げ遅れたらどうなっていたかと想像したくない。

だが、その驚愕もすぐだった。

 

「ちょっ!?なによコイツら!?」

 

「驚愕。これは・・・!」

 

「・・・・!?」

 

耶俱矢のその声と同時に蜂のような見た目の機械がいきなり襲ってきた。

蜂のような形をしているが、大きさだけでも戦車と同じくらいのサイズだ。高速移動しながら襲ってくるソレらを、耶俱矢と夕弦は手にしたラファエル《颶風騎士》で一機を破壊する。

だが、それは数百機の内の一機を破壊しただけに過ぎない。空には大量の蜂型機械が生き残っている隊員や基地、廃墟跡の工場をその数の暴力にモノを言わせていた。

 

「コイツらはプルーマだ!!モビルアーマーを破壊しないといくらでも増殖してくるぞ!!」

 

「じゃあ、モビルアーマーを破壊する」

 

ユージンの説明を聞いた折紙は滑空したままモビルアーマーへと向かっていった。

 

「───メタトロン《絶滅天使》」

 

その声に呼応するように、折紙の頭上に幾つもの大きな『羽』が連なった王冠のような天使が顕現する。

メタトロン《絶滅天使》は折紙が手をかざすと同時にバラバラに分解し、それぞれの先端からモビルアーマー目掛けて光線を放った。だが───

 

〘──────〙

 

その光線はモビルアーマーの装甲に直撃した瞬間、四方に拡散した。

そしてその攻撃に反応してか、モビルアーマーもお返しとばかりにマニュピレーターの尖端からビームを放つ。

 

「──────ッ!!」

 

そのビームを間一髪躱した折紙は顔を顰めていた。

 

「───効いていない」

 

「モビルアーマーもバルバトスと同じナノラミネートアーマーだ!だから仕留めるには大質量兵器で仕留めねえと装甲を突破出来ねえぞ!!」

 

「───なッ!?」

 

その後略法に真那は無茶苦茶だと思った。

あの巨体で近接戦を仕掛けたとしても、自分達が持つ武器ではかすり傷程度にしかならない。

そんなのどう攻略すればいいのだ。

 

「───なら!」

 

「呼応。───私達が突破します」

 

耶俱矢と夕弦がラファエル《颶風騎士》を構える。おそらく【天を駆ける者】でダンタリオンの装甲を突破したようにモビルアーマーを穿とうと言うのだろう。

 

「少しだけ時間稼ぎお願い!!」

 

「分かった!!」

 

十香達が八舞姉妹に襲いかかるプルーマを次々と撃ち落とし、凍らせていく。

そして耶俱矢と夕弦の手に握られた巨大な槍が風を纏いそしてモビルアーマーに狙いを定める。

 

「「ラファエル《颶風騎士》───エル・カナフ【天を駆ける者】!!」」

 

ダンタリオンの堅牢な装甲を突破した一撃がモビルアーマーへと一直線に進んでいく。

モビルアーマーの装甲を突破できる数少ない一撃。それがモビルアーマーに───

 

 

「「「「「「「「・・・・・ッ!?」」」」」」」

 

 

 

───“直撃しなかった“。

二人の必殺の一撃を、モビルアーマーは“避けた“。

その巨体に似合わぬ反応速度で。当たる直前に。

絶句する皆に対し、ハラエルは先ほどの攻撃が脅威だと判断したのか、プルーマの全体八割を十香達に差し向ける。

天使と天使との戦いが始まった。




作者「モビルアーマー戦書いてて思ったんだけどさ、鉄血のモビルアーマーヤバ過ぎるだろ。ハシュマル発掘シーンでダインスレイヴが何本も埋まってたから思うんだけどさ、ハシュマルって誘き出してあそこにダインスレイヴ撃ち込んで埋めたんじゃない?出ないとフラウロスと埋まってた理由がそれくらいしかないんだわ」

狂三「そう言えば、ボードウィン家の管理する廃棄コロニー周辺の太陽の光が届かないデブリ帯の最奥に巨大な氷の大地の中にエイハブリアクターの反応とプルーマが何機か埋まっていた話がありましたわね?もしかしてあの氷の中にもいるんじゃありませんの?」

作者「ハラエルがクジャン家の廃棄コロニーに封印されていたことといい、一体何があったんかね?」


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第三十話 マルコシアス

投稿!!

内容はサブタイトルの通りです

カルタに妹らしき人物がいてびっくりだわ


〘──────〙

 

ハラエルのモビルスーツと同じサイズのクローアームが機械とは思えない不規則な軌道を描きながら一気に加速する。そしてハラエルに一番近かった夕弦にハラエルは目をつけた。

 

「───くっ!」

 

その巨大なマニュピレーターに似合わない速度でハラエルの一基のマニュピレーターは夕弦を執拗に追いかけ回す。

 

「夕弦ッ!!」

 

「助けにいくぞ!!」

 

〘──────〙

 

耶俱矢はそんな耶俱矢を助けようとするが、ハラエルの他のマニュピレーターやプルーマ達が助けに行こうとする耶俱矢達に襲いかかる。

 

「はああああッ!!」

 

十香は《鏖殺公》をハラエル目掛けて振るい、剣撃を飛ばす。だが、その剣撃を直撃したハラエルの装甲に軽い傷がつくぐらいで剣撃を飛ばした十香にプルーマ達が向かってくる。

上段、下段、中段。様々な角度から十香は斬撃を放つが、プルーマ達は幾ら破壊されようが、十香を追いかける。

プルーマを引きつける十香の横を耶俱矢はすり抜け、夕弦のもとへと向かう。だが、その前にハラエルのマニュピレーターが耶俱矢に襲いかかった。

 

「この、邪魔だああああッ!!」

 

耶俱矢の怒声にも近い叫びと共に手にした《颶風騎士》を振り回す。

だが、ハラエルの圧倒的なマニュピレーターの質量の前では精霊の天使の力でも無意味だった。

 

「───ッ!?」

 

先端のクローアームと《颶風騎士》が激突する。だが、その激突で吹き飛ばされたのは耶俱矢の方だった。

吹き飛ばされた耶俱矢はそのまま廃墟ビルに突っ込むと、そのまま瓦礫に埋もれてしまう。そしてそこにプルーマ達が埋もれた耶俱矢に向かって群らがるように飛んでいく。

 

「────ッ!!行かせねーです!!」

 

群がるプルーマ達を真那は一機、また一機と反応が悪いヴァナルガンドでプルーマのレンズ部分を破壊し、行動不能にしていくが、それでも数は減るどころか増えていくばかり。それどころか────

 

「ちょっと!?そんなのありですかぁ!?」

 

美九の甲高い悲鳴が上がる。

 

「────ッ、なんですか!!」

 

真那達が美九の甲高い悲鳴を聞いてそちらに顔を向けると、そこにはとんでもない光景が彼女達の目に入った。

 

「プルーマが────」

 

ハラエルの中心部から“プルーマ達が次々と戦場に投入されていく”。投入されていくプルーマの数はそれほどの数ではないし、ユージンからプルーマが作られるということは聞いていた。だが、それだけではない。

DEMの仮設基地や廃工場跡から戻ってきたプルーマ達ハラエルに群がり、ハラエルの破損した装甲部分を”直して“いるのだ。

 

「自己修復機能!?プルーマにそんな機能がありやがるんですか!?」

 

プルーマが持つ自己修復機能にモビルアーマーが持つ自己生産機能。つまりモビルアーマーとプルーマを分断させなければ時間が許す限り、永遠とプルーマが生産され続け、モビルアーマーを破壊しようにもプルーマ達がモビルアーマーを直す。そして永遠と人を殺し続けるのだ。人類がいなくなるその日まで。

 

「わーッ!!」

 

「よしのんッ!!」

 

四糸乃や美九はユージンや自分の身をプルーマ達から守るために此方に手を回せない。

 

「なんなのよ!こんなの精霊以上の化け物じゃない!」

 

「────これじゃあ何時まで経っても倒せない!」

 

「ああもう!!しつこい!!」

 

琴里や折紙、七罪も他のマニュピレーターやプルーマ達を相手どってそれどころではない。

 

「・・・・・狂ってる」

 

真那は無意識にそう呟いていた。こんな化け物──“居てはいけないものだ“。

精霊も最初は化け物だと思っていた。だが、こうやって皆と触れ合って自分達と同じ生きている人間なんだと分かってから、そんな目で見なくなった。

だが、コイツは違う。

豊かさを求めた人々が作った殺戮兵器。人を効率的に殺すだけの化け物。

と、次の瞬間───更なる絶望が彼女達を襲う。

 

「────えっ?」

 

遙か先の廃墟の遊園地。“もう一つのピラミッド“がゆっくりと開いていく。そしてその中から“もう一機“のハラエルが顔を覗かせていた。

 

「もう・・・一機?」

 

ただでさえ手がつけられないこの化け物がもう一機。

真那はヴァナルガンドのブレードを力無く降ろす。もう───どうしようもない。

 

「こんなの・・・こんなのあんまりですよ・・・」

 

真那はそう呟き、もう一機のモビルアーマーを見る。

こんなのいくらなんでもあんまりだ。

試練だから。鍵になる実力を見せろ。

だからって────だからって────

 

「なんでなんですか・・・私達が兄様が何をしたって言うんですか・・・」

 

真那に目掛けてビームを放とうとするハラエルを無抵抗で受け止めようとしたその時────

 

ハラエル達が突如、顔の向きを変えた。

 

「な、なんだ?」

 

突如動きを変えたハラエル達に十香達が困惑する。

だが、すぐにその理由が分かった。

廃墟ビルの屋上。“赤いマント“が靡いていた。

 

「・・・あれ、は・・・」

 

あれは兄様を連れていった────

 

赤いツインアイが眼光のように光輝く。

巨大な翼を思わせる二対の大型のバインダー。腰にも大きなバインダーが装備されており、四枚の翼を持っているようにも見えた。

その悪魔が背中に装備されたバスタードメイスから大太刀を抜き放つ。

 

 

───ASWーGー35 ガンダムマルコシアス

 

 

モビルアーマーを単機討伐をする化け物がモビルアーマーに決闘を申し込んだ。

 




マルコシアス「なんか討伐できそうにないから一体だけ討伐しにきた」

作者「ちゃんと言ったら?見ててあまりにも情けないから一体討伐ともう一体を半壊にしにきたって」

狂三「生身でアレを倒すなんて無茶苦茶ですわよ!?」



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第三十一話 Red vs Blue

ASWーGー35 ガンダムマルコシアス

機体コンセプト 

「(多数のモビルスーツを投入することが前提の)モビルアーマーに単体で(ある程度の)近接戦闘を行う」

・・・マルコシアスの初代パイロット頭可笑しくなぁい?


〘────────〙

 

「・・・・・ッ!?」

 

マルコシアスが一瞬だけ真那達に真っ赤に輝いたツインアイを向けると、その場にいた全員の背筋が凍りつくような寒気が襲う。

まるで“そこで見ていろ”と告げるように向けられたマルコシアスのツインアイはハラエルへと向けられた。

三百メートル以上距離が離れているにもかかわらず、ハラエルとマルコシアスは睨み合うように動かない。

そして先に行動を起こしたのはマルコシアスだった。

マルコシアスがビルの屋上から三百メートル先のハラエルに向けて跳躍する。

 

〘────────!〙

 

ハラエルもプルーマ達を牽制に使い、左右のマニュピレーターでマルコシアスを迎撃しようとするが、そんなハラエルに対し、マルコシアスは一機のプルーマを空中で踏みつけながら更に加速する。そしてハラエルが左右のマニュピレーターを前に突き出していた頃には、懐に飛び込みながらハラエルの頭部を大太刀で叩きつけるマルコシアスの姿が天使のカメラに映っていた。

大太刀で叩きつけられた衝撃でハラエルの巨体が地面に叩きつけられた。

 

「・・・・は?」

 

 

その一瞬の攻防に真那達は何が起きたのか分からない。

一瞬でマルコシアスが三百メートル以上先のモビルアーマーの懐に飛び込み、モビルアーマーを一撃で地面に叩きつけたのを視界に捉えただけ。

土煙を巻き上げながら倒れるハラエルに対し、マルコシアスは先の大地に着地すると、そのすぐ真横をモビルアーマーのビームが通り過ぎると凄まじい砂塵が宙を舞う。

砂塵が巻き上がるのと共に、その砂煙の中から赤い眼光を光らせたマルコシアスが赤いマントをはためかせながら現れるその姿は、まるでおとぎ話の勇者のようだった。

 

〘────────!〙

 

そんなマルコシアスよりも数倍大きな身体を持つハラエルは六本のマニュピレーターを一斉にマルコシアス目掛けて射出する。

不規則に動くマニュピレーターをマルコシアスは大太刀を構えながら一気に跳躍した。

一つ目のマニュピレーターを身体を捻るように避け、二つ目を空中で足場にし、足場にしたマニュピレーターに蹴りを入れて勢いをつけながら一気に三つ目と四つ目を乗り越え、五つ目と六つ目がマルコシアスに辿り着く前に、右側のマニュピレーター二本を大太刀でモビルアーマーの装甲をフレームごと叩き斬る。

そしてそのまま着地したマルコシアスはハラエルの装甲が薄い部分である右脚部フレームの付け根を大太刀で一閃すると、片足を両断されたハラエルは勢いよく地面に崩れ落ちた。

大量の砂埃がハラエルとマルコシアスに覆い被さり、マルコシアスの姿が見えなくなる。

 

「・・・うわッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「・・・・・!」

 

 

大量の砂埃が舞い、皆が咳き込みながら目を閉じる。

そして少しだけ目を離し、真那達が次にマルコシアスの姿を捉えた時に見たのは────

赤い眼光はそのままに六本のサブアームを展開し、阿修羅のような姿になったマルコシアスと─────

 

「・・・・う、そ・・・・」

 

本体の中枢区を大太刀で突き刺され、機能停止させた一機のハラエルとプルーマの姿だった。




マルコシアス「見本になった?」

作者「なるわけないやろうがい!?」

狂三「なるわけないでしょう!?」

作者「書いてて思ったわ!!空中でマニュピレーター蹴って、そのままモビルアーマーの反応速度を超える速度で懐に飛び込む!?そんなもん出来るか!?」

狂三「マニュピレーター避けたら後は楽みたいなノリでやりましたわよ!?」

作者「スタジェみたいにファンネルの直撃コースをガードして突っ込んで近接戦仕掛ければいいよね?じゃなくて、ファンネル踏み台にしながら加速して本体殺ればいいよね?だよな!?お前の場合!!」

狂三「昔のガンダム乗り、頭が可笑しかったんじゃありませんの!?」


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第三十ニ話

鞠奈「ねえ」

作者「ん?どしたん?出てくるなんて珍しい」

鞠奈「そっちで動ける身体が欲しいんだけど」

作者「あー、確か妹ちゃんと一緒で、ラタトスクのネットワークでしか動けないからか」

鞠奈「そうよ。だからあんたなら作れるんじゃない?一応、ロボットも作れるみたいだし?」

作者「趣味で作ってるロボットであってパーツも予算もなにもねーっての!!一応、仮のボディ用意してやるから待ってろ」

鞠奈「ホントに?なら待つわ。期待してるわよ」

作者「期待するなよ・・・」


───道化は笑う。───道化は笑う。己が願いが叶うと確信したがゆえに。

 

 

───少女達は踊る。───少女達は踊る。大切なモノを取り戻す為に。

 

 

───少女達と踊る。───少女達と踊る。少女達の───一人の少年の願いを叶える為に。

 

 

 

───そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分達を利用した道化の計画を破産する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────う、そ」

 

真那達は目前に起こった光景をあり得ないといった表情で眺めていた。

自分達が殆ど傷を与えられずにいたモビルアーマーを一瞬で屠ったマルコシアスに戦慄と得体の知れなさを覚える。

だが、それも無理もない。

本来──モビルアーマーとは”単機”で倒す前提ではない化け物だ。

あの三日月でさえ、モビルアーマーを撃破するのにバルバトスを大破寸前まで酷使したが、マルコシアスは一瞬でほぼ無傷の状態でモビルアーマーの一機を撃破した。

 

化け物を超えるバケモノ。

 

もはや人としての強さではなく、まさに人間を辞めた強さと言って過言ではない。

マルコシアスが仕留めたハラエルから大太刀を引き抜き、真紅に染まったツインアイで真那達を見る。

 

「「「「「「・・・・・・ッ!?」」」」」」

 

マルコシアスに見られた瞬間───”ゾクリ”と彼女達の背筋に寒気が走った。

───殺される。

 

マルコシアスから向けられたもの。それは──殺気。

 

十香達が天使を使う以上、マルコシアス含めガンダム達にとっては天使とは殺すべき相手なのだろう。

だが、今のマルコシアスは十香達を見ても襲うような素振りは見せない。

硬直する真那達を見下ろすマルコシアスはもう一機のモビルアーマーに視線を変える。

ハラエルはマルコシアスに見られた瞬間、胴体部に装備されたカメラが点滅し、おかしな挙動を取る。

それはまるで”マルコシアスに恐怖しているような”挙動だった。

だがそんなハラエルにマルコシアスはこれ以上関わるつもりはないのか、背中と腰のスラスターを吹かしながら一気に跳躍し、かなり離れた廃ビルの屋上に着地すると、そのまま溶けるようにその場から姿を消した。

 

「ちょっ・・・!?なんでアイツは攻撃しないのよ!?」

 

七罪はマルコシアスがもう一機のモビルアーマーに攻撃せずに消えたのを見て、そう叫ぶ。

七罪のその疑問に答えたのは士道だった。

 

「・・・試練だ」

 

「なに?」

 

士道が溢したその声に十香は士道に顔を向ける。

 

「どういうこと?」

 

琴里がそう言うと、士道は琴里達を見て言った。

 

「マルコシアスは俺達が”モビルアーマーを倒せるかどうか”を見極めているんだ。最低でもモビルアーマーを倒せなくちゃ十香達に”鍵の役割”を任せられない。三日月は返せないっていうことだと思う」

 

「な───ッ!?」

 

「そんなの無茶苦茶よ!?」

 

ただでさえ、あの巨体にダメージを与えるだけでも苦労するのに、それを倒す。

無理難題と言ってもいい。だが───

 

「けど、倒し方は教えてくれた」

 

折紙は残骸となり、消えつつあるハラエルに指を指す。

 

「多分、あの中心にあるカメラ部分が弱点なんだと思う。そこを攻撃すれば・・・」

 

「正確にはモビルアーマーの制御中枢区を破壊すりゃいいんだよ」

 

折紙の言葉を遮るようにユージンは口を開く。

そして皆が一斉に振り向いた。

ユージンは振り向いた皆に言う。

 

「ヤバい状況だったから言えなかったんだが、モビルアーマーは基本的にAIが搭載されてんだ。あの頭の奥にある制御中枢区をぶっ壊せれば・・・」

 

「倒せる可能性はある!!」

 

「でも、どうやってあそこまでいくのよ?プルーマ達も周りに飛んでいるのよ?」

 

琴里の問いにユージンは答えた。

 

「分断するんだよ。俺達でな」

 

「分断?」

 

「ああ。モビルアーマーの本体を叩くのは十香と耶俱矢、夕弦、真那。お前らだ。で、残りはプルーマの足止めをしてもらうしか策はねえ」

 

そう言ってユージンはモビルアーマーを見る。

あの巨体をゆっくりと地面から起き上がろうとしており、完全に起き上がったら天宮市に向かうだろう。

そうなる前にアイツを倒さなければならない。

 

「いいか!十香達はモビルアーマーの攻撃を掻い潜って一点突破!プルーマは出来る限り無視しろ!そんで琴里達は周りのプルーマを破壊か足止めをしてくれ!!俺の護衛はしなくてもいい!」

 

「でも、それじゃあユージンさんは!?」

 

「自分の身くらい自分で守れるっての。・・・だから言ってこい」

 

「・・・わかりました。ぜってーに死なねーでくださいね。皆で帰るんでやがりますから」

 

「・・・おう」

 

真那の言葉にユージンは頷く。

真那は剣の切っ先をモビルアーマーに向け、叫んだ。

 

「モビルアーマーを倒して皆で生きて帰りましょう!」

 

 

「「「「「「「おう!(はい!)」」」」」」




鞠奈「・・・ねえ、作者」

作者「なんだよ?」

鞠奈「どーしてコレなのよ!?他になかったわけ!?」

作者「可愛いだろ?等身大デラックスホッツさん」

鞠奈「しかも身体動かないし!最悪よ!!」

鞠亜「可愛いと思いますよ?鞠奈」

鞠奈「てか、なんで鞠亜は普通の身体なのよ!?こんなの贔屓よ!贔屓!!」

万由里「・・・・・」ジーッ

鞠奈「な、なによ・・・」

万由里「・・・・可愛い」


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第三十三話 【凍鎧】

今月は最後の投稿になるかも?

では、どうぞ!


モビルアーマーの六本のクローアームが空を泳ぐようにうねりながら十香達に襲いかかる。それと同時に少数のプルーマ達が十香達に目がけて先行した。

 

「はああああッ!」

 

十香は雄叫びを上げながら魔力を込め、振り上げたサンダルフォン《鏖殺公》を先行するプルーマに目がけて振り下ろした。

《鏖殺公》から放たれた魔力の斬撃がプールマに目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。

その斬撃は複数のプルーマを破壊し、そのままハラエルまで突き進むな、その斬撃はハラエルのナノラミネートアーマーによって防がれてしまう。が、斬撃が直撃した部分が凹んでいた。

 

「・・・・ッ!皆さん!十香さんが攻撃したあの凹んだ部分を狙ってください!彼処を集中攻撃すれば突破出来るはず!」

 

「分かった!!だけどまずは───!」

 

「了承。足を破壊します」

 

モビルアーマーの機動力を落とす為、耶俱矢と夕弦は今出せる最高速度でハラエルに突貫する。

襲い掛かるプルーマ達を二人は掻い潜りながら一気にモビルアーマーに詰め寄り、マニュピレーターの猛攻が薄い股下へと潜り込み、そのままラファエル《颶風騎士》をナノラミネートアーマーがない装甲の隙間に叩きつけた。

だが、それでダメージを与えられるほどモビルアーマーも柔ではない。

 

「・・・・っ!?固ったぁ!?」

 

「驚愕。───中のフレームもかなりの硬さです」

 

耶俱矢と夕弦はモビルアーマーのその異常な硬度のフレームに苦い顔を作った。だが、それも無理はない。

モビルアーマーを含め、モビルスーツに使われているフレームの材質はモビルスーツの武器にも使用されるほど強固で耐久性がある金属だ。

錆びにくく、耐熱性もあり、変形しにくい。

マルコシアスは大太刀で簡単に切断をしていたが、それはあくまでガンダムフレーム特有のとんでもない出力から発生するパワーと、同じレアアロイで生産された大太刀の斬れ味と耐久による力技で為されたゴリ押しである。

───非力までとは言わないが、ガンダムと同じパワーを持っていない精霊の彼女等ではフレームを破壊することは困難極めるだろう。

モビルアーマーの懐に潜り込んだ二人を追い出すようにプルーマが襲いかかる。

 

「ああ、もう!」

 

「不快。邪魔です」

 

群がるプルーマから距離を取り逃げ回る二人に目掛けてマニュピレーターが極太のビームを放つ。

 

「あーもう!熱っついし、やられっぱなしだと性に合わない!!」

 

「同意。ですが耶俱矢。流石にもう一度、懐に飛び込むのは厳しそうです」

 

〘──────〙

 

ハラエルの赤い眼光が十香達を睨むように発光する。

どうやら八舞姉妹に一度懐に入られたことでかなり警戒され、それぞれのマニュピレーターが纏まって十香達を捉えていた。

そんなハラエルに対し、四糸乃が動く。

 

「四糸乃さんッ!?」

 

〘──────ッ!〙

 

先頭に立つ四糸乃に、ハラエルのマニュピレーターが一斉に動きだすと、四糸乃目掛けて六つの内蔵されたビーム砲が一斉に発射された。

 

「う・・・・、っうう───っ」

 

『うぐぉぉぉ!あっついねこりゃー!』

 

「四糸乃、よしのん!大丈夫か!」

 

「大丈夫・・・です・・・・!」

 

四糸乃はそうは言っているが大量の汗を流し、頬に火傷を負いながら苦しげに返すその姿は、とても大丈夫そうには聞こえなかった。

しかし、四糸乃は視線を鋭くすると、両手を握り、ザドキエル《氷結傀儡》の身体を丸めた。

 

「私は・・・弱虫で、泣き虫で・・・士道さんや、皆さんに守られてばかり、でした」

 

───《氷結傀儡》と四糸乃の全身が、淡く輝いていく。

 

「───だから今度は皆さんを・・・!」

 

四糸乃が、両手を大きく広げる。五指から《氷結傀儡》の背に伸びた操り糸が、キラキラと蒼く輝いた。

 

「ザドキエル───【凍鎧】・・・・っ!」

 

その名を叫んだ瞬間、ザドキエルの巨体がぐにゃりと歪む。そして四糸乃の指に繋がった操り糸に吸い込まれていく。

そして、濃密な光を蓄えた操り糸が、四糸乃の身体を覆うように巻き付いていく。

 

「四糸乃さん・・・!?」

 

見たことのない光景に、真那は思わず上擦った声を出す。

しかし、それに対して返されたのは───

 

「───はい、真那さん」

 

確かな意思に彩られた、力強い四糸乃の言葉だった。

光が収まり、ようやくその姿が見取れるようになる。

 

「鎧・・・?」

 

呆然と、真那はそう呟いていた。

そう。そこにいたのは、白銀の鎧を纏った四糸乃だった。

いや、正確にはソレを鎧と呼んでいいのか分からない。金属とも樹脂とも取れない不思議な物質が、透き通った氷と一体となり、霊装の上からザドキエルを纏っているかのような姿を形作っている。

 

「ん・・・・・っ!」

 

四糸乃は全身に冷気を纏わせると、両手を前方に突き出し、指を組み合わせた。

白銀に覆われた両腕を中心に吹雪が螺旋状に渦巻き、巨大な円錐が形成される。

 

「あああああああああああ・・・・・っ!」

 

四糸乃は組み合わせた両手を力一杯捻る。瞬間、四糸乃の手の周りでうず巻いた冷気の錐が、ドリルのように発射された。

だが、見えている攻撃を無防備で受けるほどモビルアーマーも甘くはない。

その錐が発射された瞬間、ハラエルはその巨体に見合わない俊敏な反応で回避行動を取ろうとするが、ハラエルはその場から動けなかった。

 

〘────────〙

 

ハラエル本体の目が足元を捉える。

その足もとには分厚い氷がハラエルを固定していたのだ。

足もとが動かせない状態でハラエルは冷気で出来た巨大な錐の迎撃を選択した。

マニュピレーターの一つが迫ってくる巨大な錐目掛けてビームを放つ。

巨大な錐と灼熱の光線が激突するが、巨大な氷の錐の進軍は止まらない。

枝分かれするビームは周辺を破壊するが、それでも氷の錐を溶かし、破壊することなく───

氷の錐はモビルアーマーのマニュピレーターに直撃した。

 

バキバキバキッ!!

 

と、音をたてながらハラエルのマニュピレーターの一つが一瞬で凍りつく。

 

〘──────〙

 

凍り付いた自身のマニュピレーターを見て、顔らしき部分の一つ目が動揺するように点滅する。

だがそれでも六つあるうちの一つが使えなくなっただけ。

ハラエルのマニュピレーターはプルーマ達と共に蠢く。

そしてそんな中で宙から───

 

「・・・えっ?」

 

真那達の目の前に何かが突き刺さった。

黒く緩やかに曲がった長い刀身。柄の部分には持ち手がなく、刀身の根本部分の金属が剥き出しになっている。

それは刀身の長さ的に太刀と呼ばれるモノであった。

 

「これは・・・バルバトスの・・・」

 

「兄様の・・・」

 

ユージンはその太刀の形状を見て思い出す。

そう。これはバルバトスが一時期使っていた武器だ。

三日月にとって自身の戦闘スタイルに合わず、バルバトスが改修された際には使わなくなった武器でもある。

だが、もし───この剣があれば

 

「・・・っ!確か、この武器もモビルアーマーのフレームと同じ高硬度レアアロイで出来た武器だ!三日月もこれでモビルスーツの装甲をフレームごと叩き斬ったつっていたからもしかしたら・・・!」

 

「モビルアーマーのナノラミネートアーマーを突破できるかも知れないと言うわけでやがりますね!」

 

真那は《ヴァナルガンド》のブレードを投げ捨て、代わりに地面に突き刺さった太刀を抜く。

 

「・・・・っ」

 

真那の小柄な体格には似合わない大きさと見た目によらず重量のある武器に一瞬よろけそうになるが、真那は気合いでよろけまいと地面を踏みしめ、その太刀の尖端をハラエルへと向けた。

そして真那は目を閉じ、祈るように小さく呟く。

 

「・・・兄様。真那や皆さんを見守っていてください」

 

そして真那達は未だに勢いが途絶えないモビルアーマーへと立ち向かっていく。

 

 

 

───天使狩りが始まった。




真那「えへへ〜」

夕弦「要求。もっと撫でてください」

三日月「こう?」

狂三「今の真那さんと夕弦さん、もの凄くだらしない顔をしていますわよ?如何にも今、一番幸せですと言わんばかりに」

作者「なんかバグってない?二人とも」

真那「兄様、兄様!真那にあれやってくだせー!あのライオンに指を食べられたおじいさんが動物を可愛がるやつ!」

夕弦「要求。三日月、私もお願いします」

三日月「・・・・こうするんだっけ?」ワシャワシャナデナデ

真那「むふ〜」

夕弦「・・・ん」

作者「なあ、狂三」

狂三「・・・奇遇ですわね。ちょうど私も同じ事を考えておりましたの」

真那と夕弦を見て

作者 狂三「「三人とも部屋でやれッ!」」


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第三十四話 ハラエル

投稿!!

次の投稿はわかんない!!


モビルアーマーとは“神“なのだと誰かが言った。

 

人智に及ばぬものを、人々は神と呼ぶのだと。

 

人の手によって生み出され、それは人の手を遠く離れ、強大過ぎる力を持った。

 

そして“神“にも等しいその力に対抗するには人は──人であることを捨てなければならない。

人は阿頼耶識システムによってモビルスーツに“心”を移し、“神”に対抗しようとした。

 

その究極の形───それが悪魔の名前を持つ七十二機のガンダム・フレーム。

人が自ら悪魔となり、天使の名を持つ”神“を殺すべく戦う───新世界創世の神話なのだと。

 

 

そして誰かが言った。

すべてのモビルアーマーを“統率”し、自らの意思で人類に敵対した”上位の個体“が存在しているのだと。

 

セブンスターズの中でも最多のモビルアーマーを狩り尽くしたイシュー家の禁足地。

 

そこに何かがある。

“彼女”も知らない何かが。

だが、”ソレ“を知るのはまだ先の話。

何故なら彼女等はまだその場所には立っていない。

もし、彼女等がそのタブーを知る時が来たのならば───

 

 

 

 

いや、それは語らない方がいいか。───これは彼女等と彼の物語なのだから。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

〘──────〙

 

ハラエルのうねる五本のマニュピレーターがそれぞれのカメラアイを発光させ、真那達を視界に捉えた。

そんなハラエルに対し、真那達が取る行動は一つ。

 

「ああああああああああああッ!!」

 

それはプルーマを分断しつつの突撃だ。

各個撃破ではプルーマだけでジリ貧だ。なら、そうなる前にモビルアーマーを叩く。

それが一番の最適解。

 

「はあああああああッ────!!」

 

十香が叫びながらサンダルフォン《鏖殺公》を振りかぶる。

振り下ろした《鏖殺公》から霊力で出来た斬撃がハラエルへと向かっていく。

だが、その斬撃を遮るようにプルーマ達が盾になった。

斬撃はプルーマを数機破壊すると、ハラエルに届く前に霧散する。

 

「これでも喰らいなさいッ!!カマエル《灼爛滅鬼》────【砲】!」

 

琴里の声に応えるように、刃を失い棍部分のみになった《灼爛滅鬼》が蠢動した。

柄の部分が本体に収納され、琴里が掲げた右手を包み込むように着装される。

その姿はまるで、戦艦に備えられた巨大な銃砲。

《灼爛滅鬼》がその体表を展開させ、赤い光を放つ。

そして琴里の周囲にまとわりついていた焔が、その先端に吸い込まれていき、装填が完了した。

 

〘────────!〙

 

ハラエルのマニュピレーターが琴里に向けて極太のビームを放つ。しかし琴里は避けなかった。灼熱のビームが琴里を捕らえ、その身体を灼き尽くす。

 

「琴里ィィィィィィィィッ!!」

 

「琴里さんッ!?」

 

「琴里ッ!!」

 

「琴里!」

 

士道が真那が十香が折紙が琴里の名を呼ぶ。

ジュウゥゥ!と身体の肉が焼ける音とタンパク質の焼ける嫌な匂いが立ち込めるが、琴里は笑っていた。

焼けた琴里の身体から炎が灯り、その傷を治癒させていく。

そして────

 

「灰燼とかせ───《灼爛滅鬼》!」

 

〘──────!〙

 

次の瞬間──琴里の構えた《灼爛滅鬼》から凄まじい炎熱の砲撃が、再び放たれたハラエルのビームを押し返し、砲撃を放ったまま縦に振った。溶断ブレードと化したその砲撃はハラエルの凍ったマニュピレーターと残りの二本のマニュピレーターをその熱量で両断する。

 

〘─────〙

 

三本のマニュピレーターを一気に両断され、ハラエルはその巨体のバランスを崩し、その巨体が地面に倒れ込む。

 

「・・・・真那!!今よ!!」

 

「・・・・!はい!」

 

琴里のその声と共に真那は倒れたハラエルへと突貫する。

 

残り三十メートル

 

だが、まだハラエルには残り三本のマニュピレーターとプルーマ達がいる。

その三本のマニュピレーターとプルーマ達は突貫する真那を止めようと動くが─────

 

「・・・やらせるわけ!!」

 

「・・・・ない!」

 

 

 

「アンタは私達の邪魔なのよッ!」

 

「同意。・・・邪魔です!」

 

「さっさとやられてください!」

 

七罪と折紙がマニュピレーターを吹き飛ばし、耶俱矢と夕弦、美九がプルーマを破壊する。

そしてその隙間を縫いながら真那は太刀をハラエル目掛けて振り上げた。

 

残り二十メートル

 

自分よりも何倍も大きいハラエルの赤いレンズが太刀を振り上げた真那を映す。

ハラエルの本体がビームを収束しようとするが、此方の方が早い。

 

残り十メートル

 

「はああああああああッ!!」

 

真那が声を上げる。そして両手で持った太刀を───

 

〇メートル

 

「終わりだあああああああッ!」

 

ハラエルの赤い目に真那は太刀を思いきり突き刺さした。ハラエルの何重にも重なったナノラミネートアーマーを貫き、制御中枢区を両断した。

 

 

〘─────────ッ!!〙

 

 

ハラエルのマニュピレーターが最後、咆哮を上げるようにビームを空へと放つ。空気を震わせながら放たれた一条のその光は消えていった。

それと同時に他のマニュピレーターやプルーマ達が機能を停止していく。

ボロボロになった真那達は破壊され、消えていくハラエルとプルーマの残骸を眺めながら真那は尻もちをついて、呟いた。

 

「・・・終わっ、た?」

 

その呟きと同時に歓声が上がる。

 

「やっ・・・たああああああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

天使との殺し合いに勝ったのは───彼女達だった。




作者「モビルアーマーに上位個体が存在していた件について。アレかな?水星のエリクト、エアリアルポジかな?モビルアーマーが自律式ガンドノートみたいなもんで」

狂三「もし、それが本当ならセブンスターズはとんでもないものを封印していますわよ!?」

作者「封印・・・ね?今の三日月みたいだね!」

狂三「物凄く嫌な顔をしていますわよ!?」


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第三十五話  

投稿!!


「・・・・・」

 

皆の嬉しそうな歓声が廃墟の街に響き渡る。

そんな中で、真那はモビルアーマーを倒したのだという実感が湧かず、それどころかポカンとした表情でペタンと地面に座り込んでいた。

 

「お疲れ様。立てる?真那」

 

琴里がそういうと、真那は笑う。

 

「大丈夫でやがりますよ。真那を何だと思ってやがりますか。それよりも琴里さんが大丈夫でやがります?」

 

「アレくらい貴女に比べれば平気よ」

 

互いにそんな事をいいつつ、二人は消えつつあるモビルアーマーの残骸を見る。

 

「・・・とんでもない強さの化け物だったわね。あんなのが二機も出た時は死んだかと思ったけれど」

 

「マルコシアス・・・でしたっけ。あのガンダムの援護とコレがなかったらどうなっていたことか」

 

真那と琴里は黒く光る太刀を見る。

斬れ味もそうだがモビルアーマーにぶっ刺しても折れないその耐久性には驚きを隠せない。

 

「もしかしたら・・・おにーちゃんが見ていたのかもしれないわね」

 

「・・・ええ」

 

二人は手の中にある太刀を眺めていると、二人のインカムからアラームが鳴り響いた。

 

「ちょ・・・なによ!?」

 

「な・・・これは緊急アラーム!?」

 

「どうしたのだ?二人とも?」

 

十香達が目を丸くする中、二人は叫んだ。

 

「皆!戦闘準備して!」

 

「何かが来ます!」

 

「・・・・・!!」

 

二人のその声に十香達はそれぞれの天使を顕現させた瞬間──

 

『─────────ッ!!』

 

狼の咆哮のような音が響き渡る。

 

「・・・・ぇ?」

 

真那達は向かってくる“ソレ”を見て、力が抜けた。

 

「なん、で・・・?」

 

折紙がその機体に心が揺らされる。

何故なら───

 

 

『──────ッ!!』

 

 

ソレは真那達にとって見覚えしかなかったなら

 

 

 

『──────』

 

崩れ落ちるモビルアーマーの様子をマルコシアスは遠方の廃ビルで眺めていた。

 

これで諦めるかと思っていた。

あの少女達に勝てるはずのないモビルアーマーを接敵させ、戦意を無くすつもりだったのだがどうやら予期せぬ自体に指揮が上がり、マルコシアスの予想が外れて天使を討伐してしまった。

マルコシアスは高宮真那を見る。

一人を覗く他とは違い、唯一ただの人間でモビルアーマーと戦った少女。

 

『──────』

 

マルコシアスが背に担がれた大太刀を鞘の代わりになっているバスタードメイスから抜き放つ。

 

高宮真那───お前に資格があるか確かめさせてもらう。

 

そしてマルコシアスが動き出そうとした瞬間────

その横から何かがマルコシアスの横を横切る。

マルコシアスはその横ぎったソレを見て、大太刀を鞘に納めた。

どうやら“奴”自身が彼女等に引導を渡すらしい。

 

バルバトスのパイロットは彼女達を自分達の都合に巻き込ませないように今回、出陣したようだ。

マルコシアスはその様子をビルの上で傍観する。

 

バルバトスと真那達の矛盾した戦いが始まった。




作者「次回!バルバトス対真那達!!どうなる真那!君の大好きなおにーちゃんは君たちを守る為に君たちを倒そうとするけど、真那達はどうなるの?次回!!真那達、死す!」

狂三「勝手に真那さん達に殺さないでくださいます!?」


真那「・・・殺してやります!いま、ここで殺してやります!作者!!」


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第三十六話 これだけは

投稿!!

大事なものだからこそ傷つける


バルバトスの三次元な高速移動が真那達を翻弄していた。

 

『──────』

 

十香達を捕らえたバルバトスが両腕部に内蔵された砲身を展開し、牽制による射撃を行う。

 

「───ッ、やめてください!兄様!」

 

「シドーッ!!」

 

「・・・士道、さん!」

 

十香と四糸乃のバルバトスにバルバトスを操っているであろう三日月に声をかけるが、その声も虚しく空を切る。

 

「士道!ううん、おにーちゃん!話を聞いて!」

 

琴里も話を聞いて欲しいと叫ぶが、バルバトスは身の丈程ある大型メイスを振り上げ、琴里の手に握られているカマエル《灼爛滅鬼》を手から叩き落とす。

 

「───ッ!おにーちゃん!!」

 

琴里はバルバトスに呼びかける。が、バルバトスはカマエル《灼爛滅鬼》を落とし、無防備になった琴里の腹部目掛けて霊装越しに貫手を叩きこむ。

 

「あが───ッ!?」

 

「琴里ぃィィィィィィィィ!!」

 

「琴里さんッ!!」

 

下にいる五河士道と真那がバルバトスのレクスネイルによって貫かれた琴里を見て叫ぶ。

 

「───琴里!!」

 

「───三日月!」

 

耶俱矢と夕弦が琴里を助けようと駆けつけるが、そんな二人の行動を把握していると言わんばかりにバルバトスは琴里を盾にするように二人の前にかざす。

 

「───ッ!?士道!アンタ、そこまで落ちぶれたの!」

 

「懇願。三日月、お願いですから止めてくださいッ」

 

琴里を盾にされ、二人は”動きを止めてしまった“。

バルバトスは動きを止めた八舞姉妹目掛けて盾にしていた琴里を蹴り飛ばす。

 

「───なっ!?」

 

「───琴里ッ」

 

蹴り飛ばされた琴里を二人は受け止める。そしてそんな二人の目の前に大型メイスを盾にするように強襲してくるバルバトスがいた。

 

「──耶俱矢ッ!!」

 

夕弦が耶俱矢と琴里を庇おうとするがもう遅い。

バルバトスはそのまま三人を連れ去るように遠方の廃ビルまで突っ込み、鉄筋とコンクリートで出来たビルの壁に三人を勢いを殺さず叩きつける。

 

「耶俱矢さん!夕弦さん!」

 

「二人とも!!」

 

「───っ、私がいく・・・!」

 

凄まじい轟音と共にビルが崩れ落ち大量の砂塵と破片が舞う中で、折紙が崩れたビルの場所まで飛翔するが、砂塵の中から折紙目掛けてテイルブレードが勢いよく飛び出してきた。

 

「・・・・っ!」

 

「・・・折紙さん!後ろ!」

 

間一髪の所で折紙はテイルブレードを躱す。だが、そんな折紙の不意をつくようにバルバトスが折紙の背中に大型メイスを叩きつけた。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

ゴシャッ!と折紙の身体の内から嫌な音が響き、激痛が折紙の全身に襲う。

 

「折紙さん!」

 

「折紙!!」

 

「折紙ッ!」

 

「助けなきゃ・・・!」

 

「ちょっと四糸乃!」

 

墜落していく折紙に四糸乃と七罪が向かい、十香と真那が折紙達を救出する四糸乃達にバルバトスが行かないよう足止めをしようと斬りかかった。

 

「はああああああッ!!」

 

「・・・ごめんなさい。兄様!」

 

サンダルフォン《鏖殺公》を振りかぶる十香と太刀を握った真那が左右からバルバトスを挟撃しようと挟み込んだ。

 

『──────』

 

挟撃を狙う十香と真那にバルバトスは左腕の大砲で真那を牽制しながら大きく飛び上がり、そのまま十香を上空から奇襲する。

上空から襲いかかるバルバトスを迎撃しようと十香は顔を上げる。だが、それは悪手だった。

 

「───くっ!」

 

太陽の光による眩しさによってバルバトスとの距離感が掴めず、十香は思わず目を細めてしまった。

太陽の光で怯んだ十香の一瞬の隙をバルバトスは逃す訳もなく、スラスターを吹かすことで一気に急降下することにより、十香が迎撃出来ない懐にまで一気に飛び込む。

 

「なっ、しまっ───ッ!?」

 

接近を許した十香の腹部に左足で踏みつけるように蹴りを入れ、そのまま十香の顎を右足で蹴り飛ばす。

 

「───ガッ!?」

 

その脚力による一撃によって頭を揺らされた十香は一撃で昏倒してしまい、そのまま先の折紙と同じように地面に目掛けて落ちていった。

 

「十香さん!!」

 

「十香ぁぁぁぁぁッッ!!」

 

真那と士道は落ちていった十香を見て絶叫する。

 

「おい真那!三日月から目を離すんじゃねえ!」

 

「───ッ!?」

 

『──────』

 

十香に目がいって足を止めた真那にユージンが声を上げ、真那がバルバトスに目をやろうとした瞬間、真那の目の前にバルバトスがいた。

 

「真那さん!?」

 

唯一戦闘に参加していなかった美九が今の真那の状況に悲鳴を上げる。

そんな中で真那はジッと自分を見るバルバトスを見て、顔をくしゃくしゃに歪めた。

 

「どうしてでやがりますか・・・兄様・・・」

 

真那の手から力が抜ける。

握っていた太刀が手の中から抜けて音を立てながら地面に落ち、真那の両目から沢山の涙が溢れ出てた。

 

「どうして・・・十香さん達を傷つけてまで・・・兄様はなんでそんなに・・・」

 

そう言葉を漏らしながら真那は目から溢れ、止まることをしらない涙を拭う。

そんな真那に───

 

「それは皆が俺の大切なモノだからだよ」

 

「・・・・・!」

 

真那が顔を上げる。

 

「・・・・ぇ?」

 

「士道・・・?」

 

「あれっ、て・・・」

 

「・・・・なんで」

 

「三日月が・・・」

 

皆の目の前にいる少年。黒いボサボサの髪に空のように青い目。上着をはおり、タンクトップにブカブカのズボンとブーツといった姿の少年。

四糸乃達は初めて見るが、真那と士道そしてユージンは初めてではない。三日月の本当の姿。

目を赤くし、腫れぼったくなった真那の頭を撫でながら三日月は言う。

 

「俺は・・・皆のこと大事だって思ってる。今でも大事な家族だって思ってるよ」

 

「なら・・・!」

 

そう言う三日月に真那はならと言った。

どうして私達と一緒に居てくれないんですかと言おうとした真那に、三日月は真那を抱きしめる。

温かい。そして三日月らしい不器用な優しさだった。

 

「けど、俺は皆と一緒には居られない。俺はバルバトスが無いと生きられないし、それに大切な家族を・・・巻き込む訳にはいかない」

 

そう言って三日月は真那から離れ、バルバトスとなり、真那達から背を向ける。

 

「───にいさ・・・」

 

「・・・士道さん!」

 

「何が・・・迷惑ですって・・・」

 

「そんなの・・・」

 

「・・・誰が決めたの」

 

立つだけでも辛い筈なのに十香達は立ち上がる。

そして去ろうとする三日月に十香が言った。

 

「シドー・・・私達にもシドーに譲れぬものがある。いくらシドーでもこれだけは・・・譲れないぞ!」

 

「十香、さん・・・」

 

十香達の譲れないという意思に、三日月は少しだけ悲しそうな顔をして───

 

「なら、次会う時は容赦しない」

 

短くそして、冷徹にそう言った。




戦車「おい!誰が作者を止めろ!Sガンダムに慣れてくっそ大暴れしてやがる!両ダブやアトラスでも止められねえ!」

ネコ「もとよりアイツってホバー機が得意だからコツを掴むのは早かったんだよ。バイカスしかり」

狂三「エースマッチって言うもので与ダメとアシストと陽動がどうとか言ってましたわね」

戦車、ネコ「「アイツまさかエースにならないでその三つのトップスコアを取りやがったな!?」」

作者「ヒャッハー!楽しー!」ベーシックのSガンダムで10キル、一ダウンをして戦車とネコに引かれたヤベー奴


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第三十七話 

み、短いですが・・・投稿!


「・・・クソっ!」

 

ユージンは苛立ちと自分の不甲斐なさに壁を殴る。

壁を殴った拳の皮が破れたのか血が滲む。

 

「ユ、ユージンさん・・・」

 

「悪ぃ四糸乃。今は一人にしてくれ」

 

「・・・はい」

 

四糸乃はユージンを心配するが、そんな四糸乃にユージンはそう言って皆から離れていく。

 

「・・・あの馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」

 

耶俱矢が怒りの感情を爆発させているが、目には涙を浮かべて巨大な槍を手当たり次第コンクリートの壁へと突き立てる。

 

「・・・・ッ!・・・・ッ!」

 

夕弦は顔を隠すように座り込み、嗚咽を漏らしていた。

 

「・・・夕弦さん」

 

美九がそんな夕弦を慰めるように背を撫でるが、夕弦の様子は嗚咽を漏らしたまま変わらない。

 

「ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!なによ!私達の為って!余計なお世話だって言うのよ!ホント、ムカつく!」

 

「それは分かるけれど、あまり感情を表に出さないでくれないかしら?七罪。・・・私も・・・今、何かに物凄く当たりたい気分だから!」

 

七罪は怒りにまかせ崩れた壁を蹴り、その様子を見て琴里が手に炎を燻ぶらせる。

 

「・・・士道」

 

「シドー・・・」

 

折紙は辛そうな顔で身体を横にしながら拳を強く握りしめ、十香は手にしたサンダルフォン《鏖殺公》をギリッと柄を握った。

 

「・・・兄様」

 

真那は虚ろな座り込んだまま太刀を見つめる。

 

大切な家族だから巻き込みたくない。

 

その言葉が頭の中から離れない。

大切だから巻き込みたくない。それは分かる。だってそれは真那達も三日月が、兄が危険な場所に行くのなら絶対に止める。

だが三日月がした事はただの拒絶だ。

 

巻き込ませたくないから自分から距離を置く。

私達だって自分勝手だが、人の思いを聞く耳を持たないで距離を置くだなんていくらなんでも自分勝手過ぎる。

 

「どうして真那達の話を聞いてくれねーんですか・・・勝手です・・・勝手ですよ・・・兄さま・・・」

 

「・・・真那」

 

ボロボロと何度目かもうわからない涙が真那の両目から溢れ出る。

 

「・・・自分勝手でやがりますよッ!!兄さま!!」

 

真那がそう叫んだその時だった。

 

 

 

 

 

 

「・・・うんそうだね。自分勝手過ぎるよね」

 

「・・・・・・ッ!?」

 

皆がその声に顔を上げる。

そして皆はその声が聴こえた方へと顔を向けた。

そこには”一人の少女“がいた。

肩を擽るくらいのピンク色の髪に赤い瞳。歳は士道と同じくらいだろうか?それに”どこか“で見たことが・・・

 

「凛───」

 

「はいストップ。駄目だよ?士道。それ以上は言っちゃ駄目。それに“今“の私は士道が知っている“私”じゃないの」

 

「・・・・っ!」

 

言葉が詰まる士道に対し、真那は泣き晴らした顔でそんな彼女を見る。

 

「もう三日月ったら・・・大切な家族を泣かせちゃ駄目って言ったのに。・・・ごめんね。私が謝って済むことじゃないけど」

 

「あなた・・・は?」

 

そう言う真那に彼女は困った顔を作りながら答えた。

 

「・・・私?私の名前は・・・“凛音”。ちょっとだけ”団長さん“に無理を言って来たの。三日月を・・・今度は助ける為に」




狂三「かれこれ十日間投稿していませんでしたけれど・・・何をして・・・ま、した・・・の?」

作者「」

戦車「マジで休ませてやってくれ。リアルでコイツほぼ三週間、休みなしでクソ暑い中、仕事してたから」

狂三「だ、大丈夫ですの?」

戦車「多分。二週間くらいしたら回復するんじゃねえの?コイツ、結構回復するの早いし」

狂三「そ、そうですの?」


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第三十八話 散らない華

に、二週間ぶりの投稿です。

なにをしてたかって?久しぶりの連休を貰い、ずっと寝てたか、たまにアーマードコアをやってました・・・

その間に新しいガンダム・フレーム出てきてびっくりだわ
ファリド家のガンダム・ムルムルって完全に女性用じゃん!あんなんにマッキーが乗ったら笑えてくるわ!



因みに作者はガンダム・ムルムルを見て万由里か折紙の霊装にどこか似ているような・・・と首を傾げてました


「兄様を・・・助けるため・・・?」

 

「うん、そうだよ。だって・・・三日月はいっぱい辛い思いをしたもん。だから“次”は幸せになって欲しいの」

 

そう言って凛音は真那達を見る。

 

「けど・・・皆は三日月の事をちゃんとは知らないよね。三日月の・・・”私達“の過去を。だからもし・・・”私達“の過去を見て───それでも三日月と一緒に居たいって言うのなら・・・“私達”が力を貸してあげる」

 

「・・・な・・・あれって!?」

 

七罪の叫び声と共に凛音の上空に巨大な船が現れる。

それは皆が見たことのあるものだった。

その船を見て、ユージンが声を小さく漏らす。

 

「・・・イサリビ」

 

イサリビ。

鉄華団の旗艦にしてユージンにとっても一番馴染みのある船でもあった。

そしてユージンはあることに気づいた。

凛音は先ほどの“私達”と言った。

もしかして彼女は───

 

「・・・お前、まさか───」

 

ユージンは恐らく彼女の”本当”の名前を口にしようとした時───。

 

「──────」

 

凛音はユージンに気付かないでいて───と、しーっと言うように人差し指を自分の口もとに当てていた。

 

いっちゃ駄目。だから気づかないフリをしてて。

 

そう、彼女が言っていたような気がしたのである。

 

「・・・・・・」

 

ユージンの予想通りなら、目の前の凛音と言う少女はきっと”彼女”だ。恐らく三日月が士道だった時と同じ状態で今、自分達の目の前に立っている。

自分の“存在”を変えてまで“彼女”は三日月をずっと見守っていた。

一番───三日月と一緒に居たい筈なのに。

お前だって三日月に言いたいことがいっぱいあるだろ。

 

なのにお前は───なんで───

 

十香達の前に立つ彼女にユージンは顔をそらす。

今のみっともない自分の顔を彼女に見られたくはなかった。

我慢し続けた自分とは違って彼女は三日月の言葉通り前を見続けた。

だからこそのこの選択なのだろう。

隣が自分でなくてもいい。自分を認識してくれなくてもいい。ただ───三日月には辛かった分、新しい家族といっぱい幸せになって欲しい。

 

私は三日月にいっぱいもらったから。

 

「───《エデン》凶禍楽園」

 

「・・・・・ッ!」

 

彼女の天使が現れる。そして彼女の服が制服から淡く輝くドレスへと変わった。

 

「・・・・・えっと、本来の使い方をする訳じゃないから上手くいくかどうか分からないけれど・・・失敗したらごめんね?」

 

「「「「・・・はい?」」」」

 

いまなんと言った?

 

「今・・・なんて?」

 

真那は苦笑いする凛音にギギギッと泣きそうな顔から一気に顔を引き攣らせたような顔を作る。

 

「だ、大丈夫だと思うよ?・・・多分」

 

「それは大丈夫の台詞じゃねーですよ!?」

 

「そうよそうよ!自分の力を把握してないでやるつもり!?」

 

ギャーギャーと喚く皆にユージンは凛音───彼女に言った。

 

「・・・頼むぜ。”お前”も三日月やオルガと一緒で無茶をする時はするが失敗したことはねえからな」

 

ユージンのその言葉に凛音は目を丸くし、だがすぐにどこか苦笑しながら───

 

「・・・うん。任せて」

 

凛音はそう言って十香達に触れる。

 

「これは”私達“鉄華団の思い出。そして“三日月”と“団長”さんの始まり。今の私は思い出の再現しか出来ないし、これは私達の望んだ結末じゃないけれど・・・三日月のことをもっと知ってあげて。三日月が仲間を・・・大切な家族をもう失いたくないって気持ちを」

 

「質問。・・・それは、どういうことですか?」

 

泣きそうな顔で笑う凛音に真那達は顔を向けた。

 

「それはすぐに分かるよ。──だからいってらっしゃい」

 

夢の中へと囚われる彼女達を見送り、その場所には凛音だけになった。そして一人の青年が凛音に歩んでくる。

そして凛音の隣で足を止めたオルガは言った。

 

「よかったのか?“アトラ“。お前はこっち側で。ずっとミカを見守るだけだぞ」

 

オルガのその問いに凛音───いや、“アトラ“は頷いた。

 

「・・・うん。私は三日月に生きていて欲しいの。それに二度と三日月に会えなくなる訳じゃないから」

 

「・・・・そうか」

 

その返答にオルガは短く応える。

 

「この人にも後でお礼しなくちゃ。身体を貸してくれてありがとうって」

 

「・・・ああ。そうだな」

 

「それでね、新しく出来た三日月の家族にもね・・・またお礼を言って・・・それで・・・」

 

「・・・・・・」

 

泣きそうな声で彼女は言葉を続ける。

一番会いたい人の近くにいるのに会えない。ただ、結末を見ているだけの選択を彼女は選んだ。

だからこそなのだろう。

彼女は言う。

 

「・・・泣いてないよ。・・・泣いて、なんかないもん。あの日からもう泣かないって、決めたんだもん」

 

ユージン達も泣かなかった。死んでいった仲間に恥ずかしくない所を見せたくないと。

 

「だから、私も・・・・」

 

三日月はまだここで生きている。だから今度は私達が三日月達を見守るのだ。

そして彼等が此方へときた時、その時はいっぱい話そう。

 

 

私達が愛した───たった一人の少年の話を。




作者「あ、頭の中からブルートゥのネットリボイスが離れねぇッ!!」

狂三「誰ですの?その、ブルートゥという人は?」

作者「えっ?気持ち悪いヤバイ奴」


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第三十九話 忘れられない記憶

投稿!!


 

 

PD315

 

 

 

パンパンッ!!

 

銃の乾いた発砲音が夕日が差し込む路地裏に響き渡る。

その路地裏には腕や額から血を流す白髮の少年と、死んだ男から奪った銃で人を殺した黒髪の少年がいた。

 

「つってぇ・・・・」

 

「ぐうぅ・・・・」

 

血と金を散らばせながらピクリとも動かない男を他所に、返り血を浴びた少年が言った。

 

「ねぇ・・・次はどうすればいい?・・・・オルガ」

 

その少年の問いにもう一人の少年は言った。

 

「行くんだよ」

 

「何処に?」

 

「此処じゃないどっか。俺達の本当の居場所に」

 

そんなもう一人の少年の回答に少年は首を傾げる。

 

「本当の?」

 

「ん?」

 

「それってどんなとこ?」

 

そんな質問が返ってくるとは思いもしなかったのか、少年はこまったように指を折り始め、数えながら思いつく限り言っていく。

 

「えっ・・・んーわかんねぇけど、すげぇ所だよ。飯が一杯あってよ、寝床もちゃんとあってよ、後は・・・えっと後は・・・」

 

「ん?」

 

白髮の少年は血で真っ赤になった手のひらを少年の前に出しながら笑った。

 

「行ってみなきゃわっかんねぇ、見てみなきゃわかんねぇよ!」

 

「見てみなきゃ?」

 

「そうだよ、どうせこっから行くんだからよ」

 

ここから行く。その言葉を聞いて黒髪の少年は少しだけ笑うと、ゆっくりとした動作で血で真っ赤になった手を取った。

 

「そっか。オルガについていたら見たこと無い物いっぱい見れるね」

 

「ああ、だから行くぞ!」

 

黒髪の少年の手を取り、オルガは引っ張り上げる。

これが───全ての始まりだった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「う、そ・・・でしょ?」

 

真那達は目の前の光景に衝撃を受けていた。

それは無理もない。三日月の幼少期であろう黒髪の少年が人を殺したのだ。

しかも、まだ十歳にもなっていないであろう歳で。

 

「士道ッ!!アンタッ!!」

 

七罪が怒りに身を任せて幼い三日月を掴もうとした時、七罪の身体がすり抜ける。

 

「・・・なっ、なんで!?」

 

「それは───もう“終わったこと“だからだよ」

 

すり抜けた七罪は振り返ると、そこには凛音がいた。

 

「終わったことって・・・どういうことかしら?」

 

琴里は鋭い目で凛音を睨みつける。

そんな琴里に凛音は申し訳なさそうな顔でいった。

 

「ごめんなさい。これは・・・団長さんの思い出なの。私達が三日月に会う前の・・・二人で生きていた時の記憶だから」

 

「オルガと三日月がCGSに入る前・・・ってことか。それなら納得だ」

 

「ユージン!何を納得して・・・ッ!?」

 

琴里はユージンに噛みつこうとするが、今のユージンの表情に息を呑む。

まるでこの光景がまるで当たり前だと言わんばかりに受け入れていた顔だったからだ。

 

「俺もそうだからな。俺も生まれ変わる前はこのオルガや三日月みたいに生きる為に必死だった。殺しや盗みもして逃げ回って・・・金を稼ぐ為に少年兵になって。それが俺達にとっての当たり前だったからな」

 

「何を言って・・・」

 

目の前のこの光景が俺達にとって当たり前だったというユージンに、琴里は足を一歩ひく。

 

「ほら、まだ”俺達”の話は終わってねえ」

 

そう言うユージンに真那達は過ぎゆく光景を見始めた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「はぁ・・・?俺達がお嬢さまの護衛?」

 

「お嬢さまって・・・いい匂いするんだろうな〜!なぁ!三日月!」

 

「お嬢さまっても同じ人間なんだしそんなの変わんないだろ」

 

「はあああああ〜ん!?」

 

「女に飢えてない三日月さんにそんなこといっても無駄っすよ」

 

「ああッ!?それはどういうことだよ!ダンジ!」

 

 

 

「・・・そういや、こんなこともあったな」

 

若い頃は向こう見ずでいた自分を見てユージンは思い出したように笑う。

いま思えばこの時が一番楽しかった。オルガがいて三日月がいて、シノがいて、昭弘がいてビスケットもいた。

飯も今と違ってクソ不味いのに、彼奴等といたときが一番楽しかったと今でも鮮明に思い出せた。

でもそれも長くは続かないことをユージンは知っている。

 

「止めろぉーッ!!そこには仲間が!!」

 

ダンジが駆るモビルワーカーがグレイズに単身で砲撃しながら突撃する。だが、ナノラミネートアーマーで覆われたモビルスーツではその攻撃も豆鉄砲に等しく、そのままボールのように───

 

「・・・ひッ!?」

 

「四糸乃!!」

 

蹴り飛ばされ見るも無惨な姿になったモビルワーカーを見て、四糸乃は恐怖による反射的な悲鳴と共に目を瞑る。

それらを見ていた十香達も同じだったようで、口もとを抑えて震えている者やその光景に身体を強張らせる者などそれぞれだった。

 

 

 

「まだこんなところじゃ終われねぇ!だろ!ミカァ!!」

 

オルガが叫ぶ。

それと同時に地面から土煙が上がり、その中からガンダムバルバトスがメイスを手に現れた。

 

「うん行こう。───俺達・・・皆で」

 

 

それは彼等が最初に進み始めた一歩。

 

鉄華団として───人間として彼等は進み出す。 

皆が安堵する中、ユージンと凛音だけは黙っていた。

 

「・・・・・」

 

ユージンと凛音は知っている。この先がどうなるのかを。




作者「さあ、これから鉄華団全員(モブも含めて)の死亡シーンを見せてヒロインズ全員を曇らせていくぜ!」

狂三「ここに外道がいますわよ!?」


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第四十話 記録

投稿!!

さあ、曇らせ要素満載の三日月と鉄華団の記憶をどうぞ!


「まッ───!?」

 

パンパンッ!

今まで自分達を虐げていた大人を殺した。

 

「ありが───」

 

パンパンパンッ!

決闘で負けた瀕死の男を殺した。

 

「先に行って・・・確かめてくるね。あに、き・・・。兄ちゃん」

 

「まさひろぉぉぉぉぉッ!!」

 

家族の弟が死んだ。

 

「お前楽しんでいるだろ!!人殺しをよお!!」

 

「はぁ?」

 

(俺が楽しんでいる?)

 

「まあ、いいか。───コイツは死んでいい奴だから」

 

「ああああああああああああッ!!?」

 

家族の弟を殺した男を殺した。

 

「もう───それはフミタンじゃない」

 

家族を助けられなかった。

 

「お前が───」

 

「おい!ビスケット!返事をしろ!ビスケット!」

 

「オル・・・ガ。俺達で・・・鉄華団を」

 

「ビスケッ・・・ト」

 

「──────」

 

「く、う・・・ああああああああああッ!!」

 

ビスケットを───助けに行けなかった。

 

「後、何人殺せばいい?後何人殺せばそこに辿り着ける?教えてくれオルガ。俺は後、何人───殺せばいい?」

 

三日月は俺にそう言った。後何人殺せばいいと。

 

「ねえ、次は誰を殺せばいい?何を壊せばいい?オルガが言うなら何だってやってやるよ」

 

俺達は止まれない。俺が皆の先頭に立ち、ミカが後ろで俺を押す。

 

「あと少し!あと少しで───」

 

仲間が家族が死んでいく。

だが、それでも俺達は前へとただがむしゃらに進み続ける。これまで死んでいった家族の為にも。

 

「だって───死にたくないって思いながら死ななくちゃいけないんだからな・・・」

 

「アストンッ!!」

 

「でも───ありがとう」

 

アストンが目の前で死んだ。

 

「おい───バルバトス。これはお前の獲物だろ。余計な鎖は外してやるから見せてみろよ。お前の力」

 

厄祭の天使と死闘を繰り広げた。

そして三日月は────半身を失った。

 

「分かりやすくなったから」

 

「分かりやすくなった?」

 

「うん。クーデリアが俺達が戦わなくていい世界を作るって言ってて、考えてもよく分からなかったけど・・・もう何も考えなくていい」

 

「俺はバルバトスがあればまだ戦える。オルガ。俺を連れて行って。───謝ったら許さない」

 

「ああ、分かってる」

 

この時に誓った。ミカを本当の居場所に連れていくと。

 

「───女は太陽なのさ。太陽がいつもも輝いてなくちゃあ男って華は萎びちまう」

 

俺達や家族の為に兄貴や姉さんが死んだ。

 

「ぎゅー!!」

 

「・・・・・ッ!」

 

「こんな気持ちになったのは初めてだよ。・・・昭弘」

 

昭弘にとって大事な人が死んだ。

 

「オルガ。俺等を引っ張ってお前が作ってくれた道の先のゴールがそこにあるんだろ。一緒に見せてくれよ。そのゴールの先をよ!」

 

 

「シノォォォォォッ!!」

 

オルガを信じて特攻したシノの最後の一撃は───

 

「クソがあああああああッ!!」

 

砲撃を逸らされ艦橋を掠めるだけで───

 

「ちっくしょおおおおおおおおおッ!!」

 

シノが死んだ。

 

ミカ。やっと分かったんだ。俺達には辿り着く場所なんていらねえ。ただ、進み続けるだけでいい。止まんねえ限り───道は続く。

 

だからよ───

 

「オルガ?」

 

三日月にとって一番大事な人が死んだ。

 

「俺の中にオルガの言葉はまだ生きている。死ぬまで生きて命令を果たせ」

 

それでも三日月は進み続ける。まだ三日月の中にその言葉が生きているから。

 

「三日月さん・・・行ってください。ここは・・・俺の持ち場です。ぜってえ追いつくんで・・・だから止まんない・・・でくだ、さ・・・」

 

「分かった。ここはお前に任す。頼んだぞ、ハッシュ」

 

なんだ───いつも見ていてくれたのか

 

「俺は───止まらないから」

 

ハッシュも死んだ。最後の最後に笑って満足そうに。

 

「このイオク・クジャンの裁きを受けよ!!」

 

「その名前───ッッ!!オマエかぁぁぁぁッ!!」

 

「な、なんだと!?う、うわぁぁぁ!?」

 

「オマエがあぁぁぁぁッ!!」

 

「あ、わ、わたしは、こんなところで!?」

 

「生きてりゃ良いことあるもんだな。テメェをこの手でやれるとは・・・いい、土産話ができ、た」

 

昭弘は最後の最後でタービンズと・・・そしてラフタの敵を討てて満足そうに逝った。

 

「俺には意味なんてない。けど───」

 

「俺にはオルガがくれた今がある。何にも持っていなかった俺のこの手の中に、こんなにも多くのモノが溢れてる」

 

半壊したバルバトスが真那達を見る。

まるで自分達は全力で生きたと言うように。

 

「そうだ───俺達はもう、辿り着いていた」

 

俺達の本当の───居場所

 

バルバトスはレギンレイズに食らいつくようにぶつかった。

 

だろ?───オルガ

 

ああ。そうだなミカ

 

 

コックピットを狙わなかったのはパイロットに思う所があったのだろう。

そして切り飛ばしたバルバトスの頭部を天高く掲げた。

 

『今、ここにアリアンロッド艦隊指令、ラスタル・エリオンの威光の元に悪魔は討ち取られた!』

 

『おおおおおおおおおッ!!』

 

 

 

これが鉄華団の───三日月の記憶。

戦場でしか生き方を知らなかった少年達の物語。

 

この記憶を見て真那達は───




作者「おーい?真那ちゃん?大丈夫?」

真那「・・・兄様」

狂三「真那さんのハイライトが消えてますわよ・・・」

戦車「それは他の皆もそうだから。・・・十香だけは呆然としてるけど」

作者「三日月の過去って重すぎるからなぁ」


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第四十一話 大切な家族

短いですが投稿!!

そしてイオクの所のガンダム・フレームが遂に判明!

ガンダム・ゼパル

盾を持ったバエルじゃねえか!!


「これが・・・兄様の・・・」

 

「・・・うん。三日月と私達の思い出なの」

 

暗い声でそう呟く真那に凛音は頷いた。

 

「全部、本当にあったこと。私はね、三日月にずっと生きていて欲しかったの。けど、三日月は団長さんが残した最後の言葉を果たす為に戦ったの。・・・止まるなって。前に進み続けろって・・・」

 

凛音は泣きそうな顔になりながらも笑みを浮かべる。

 

「私ね・・・団長さんが羨ましかった。私は三日月の一番にはなれなかったの。戦いに行かないでって言っても、私を守れないからって三日月は足を止めてくれなかった」

 

「・・・凛音、さん?」 

 

「泣いて・・・いるのか?」

 

ポロポロと凛音の目から涙が零れ落ちていく。

そんな真那達の問いに凛音は首を小さく振った。

 

「泣いて、ないよ。泣いたら・・・三日月が心配するんだもん。だから・・・泣いて、なんかないよ」

 

そう言って凛音は笑う。

 

「だからね、十香ちゃん───真那ちゃん。それに皆も。三日月にもう一度・・・幸せを教えてあげて。私には力が無くて三日月に守られることしか出来なかったけど・・・皆なら大丈夫。だから・・・諦めないで」

 

その言葉と同時に凛音の身体は光となって透け始めていた。

 

「・・・凛音さん?手が・・・透けて・・・」

 

「手?あ、本当だ」

 

団長さんや三日月とは違って、鉄華団の皆の記憶で編まれていた「私」は力を使えば簡単にほどけてしまう。

 

結び直すことももう出来ない。

 

凛音に残された時間も・・・もう、無い。

だからこそ、真那に新しくできた三日月の家族に言った。

 

「真那ちゃん。私はね、皆に三日月の事を知って欲しかったの。それでね、皆に知ってもらえた」

 

優しく真那の手を取り、凛音は言う。

 

「だからこうして消えていくんだよ」

 

私はやりたい事をした。

あとは・・・彼女達がどう進むのかを見届けるだけ。

 

「質問。凛音さん・・・あなたは本当は誰なんですか?」

 

夕弦が凛音にそう問いを投げる。

 

「この思い出を私達に見せに来て・・・」 

 

 

 

「私は・・・」

 

凛音は小さく唇を噛む。

 

全てを打ち明けたくなった。

 

自分は誰なのか。

 

どうしてここにいるのか。

 

全部・・・

 

だけど・・・そんなことできるわけがない。

凛音は夕弦のその問いに───言いたい言葉を飲み込んで、小さく笑った。

 

「私は凛音だよ」

 

そう答えた。

 

「・・・・凛音」

 

身体が零れていく。

凛音をこの世界に繋ぎ止めていた鉄華団の記憶が、イサリビに帰っていく。

 

「あ、そうだ。真那ちゃんに渡さなきゃいけないものがあるの」

 

「・・・ぇ?」

 

涙を溢す真那に凛音は制服のポケットから黒色の紐で編まれたミサンガを真那の手に握らせた。

 

「お守り。本当は三日月のだけど真那ちゃんにあげる。きっと、真那ちゃんを守ってくれると思うから」

 

そう言って凛音は皆に微笑んだ。

 

「三日月を・・・お願い。士道にも嫌な役を押し付けてごめんなさい。ユージンも、元気でね」

 

「・・・俺も、これは自分で決めた事だから」

 

「・・・・おう」

 

ユージンの返事を聞いて凛音は頷いた。

そして夜空に三日月が浮かぶ空を見て───

 

「三日月・・・・・またね」

 

凛音は・・・”アトラ”は消えていく。

三日月の幸せを願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よかったの?

 

うん。だから一緒に皆を待とう?それで今度は皆で───




真那「・・・・・」

作者「ま、まなちゃーん?な、泣いてるの?」

戦車「コイツ、泣かしやがった」

狂三「最低ですわね」

作者「えっ!?俺のせい!?」

ネコ「お前以外誰がいんだよ?」

作者「ですよネー!!」


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第四十ニ話

投稿!!

イシュー家の聖域の名前を聞いて笑った鉄血です。


聖域ラタトスクて・・・

琴里達の組織と被ってんじゃん!


凛音が消えた後、真那達はもとの廃墟跡にいた。

 

「アトラ・・・」

 

ユージンは誰にも聞こえない声で小さく消えていった彼女の名前を溢す。

わがままだと彼女も分かっていた筈だ。三日月の・・・俺達の過去を見せて断られるかもしれない筈なのに、三日月を幸せにして欲しいという自分の願いを彼女達に託した。

 

「お前だって・・・アイツに我儘言いたかっただろ」

 

ユージンは少しだけ感傷に浸るように目を細めてから真那達を見る。

顔を伏せ、表情が分からない彼女達にユージンは言った。

 

「・・・で?お前等はどうするつもりだ?俺は三日月のやつを助けにいくぞ。それがアイツの頼みでもあるからな」

 

俺はもう決めているというユージンに真那と十香が顔を上げた。

 

「そんなの決まってます」

 

「そんなこと決まっている」

 

皆は顔をあげ、そしてユージンを見る。

 

「・・・私は」

 

十香は、独白するかのように呟く。

確かに、士道・・・いや、三日月には大恩がある。それこそ、一生かかっても返しきれないくらいのものを。

三日月の過去がどれだけ血で塗られ、犯罪者だと罵られようとも、彼にも守りたい家族がいた。

そんな優しい男が救われないままいるだなんて間違っていると思う。

だけれど。十香や真那、そして皆が足を進めている理由は、それだけではなかったのだ。

どんな苦難を苦痛を突きつけられようと、諦められないという感情が、皆の中に確かにあった。

 

「私は・・・”シドー”が好きだ」

 

目の前に立つ士道ではない。もう一人の・・・私達の知る”シドー”。

 

十香や四糸乃、琴里に耶俱矢、夕弦に美九。そして七罪や折紙。そして・・・真那。

皆、シドーが好きだから。愛しくてたまらないから───助けたいと思うのだ。

 

「だからこそ私は諦める訳にはいかぬ!シドーを必ず助け出してみせる!」

 

「・・・・・ハッ」

 

その言葉にユージンは笑った。

そして十香達に笑みを浮かべながらユージンは言った。

 

「それじゃあ、さっさとガンダムをぶっ潰してあの馬鹿に文句や我儘の一つくらい言ってやろうぜ!」

 

「・・・うむ!」

 

「・・・はい!」

 

皆が力強く頷いたその瞬間、真那が持つリングが眩く発光した。

 

「・・・ッ!リングが・・・」

 

「次の座標は何処だ!!」

 

ユージンがそう叫ぶと、真那はリングが示すその座標に眉を潜めた。

 

「・・・重なっている?」

 

そう。座標が自分達がいる場所と重なっているのだ。

 

「どういうことだよ?」

 

ユージンはそう言った瞬間、月明かりで明るかった廃墟が一瞬で暗くなる。

 

「・・・なんだ?」

 

暗くなった夜空にユージン達は顔を上げる。

そして”ソレ”を見た。

 

「─────────」

 

夜空に浮かぶ”ソレ”は巨大な船だった。

 

「なッ・・・・」

 

ラタトスク保有する《フラクシナス》よりも倍あるその船に皆が絶句する。

 

「あれは・・・」

 

あの戦艦は───

 

「───スキップジャック級・・・」

 

ヨルムンガンドの紋章を見てそれがエリオン家のモノだとユージンは理解した。

 

「───ッ!」

 

ユージンが歯を食いしばると同時、空から一機───”赤い機体”が真那達の目の前に降り立った。

 

『──────』

 




作者「はぁ・・・次の投稿はもう少し先になるかなぁ。けど、もう少し投稿を早くしないとなぁ・・・」

ピンポーン

作者「ん?誰だ?」

ガチャ

作者「はーい。どちらさ───」

ゴッ!!

作者「ま───」

?「・・・これで・・・兄様を・・・」

?「よくやったわ。さ───あの三人が来る前に始めましょう」

?「分かってます」


彼女達をイジメ過ぎました


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第四十三話 撤退

とうとうイシュー家のガンダム、ガンダム・ザガンが登場しましたねー!
あと、ギャラルホルンのハーフビーク級(300メートルくらいの戦艦)を吹っ飛ばす戦艦サイズのビーム砲を持つ馬鹿でかいモビルアーマーも出ましたねー!

ウルズハント、楽しみですわ!


「───なんだッ!?」

 

十香が《鏖殺公》を砂煙が上がる場所へと切っ先を向け、警戒する。 

 

「───ッ!」

 

十香に続くように真那や折紙達もそちらへとそれぞれの武器や天使を構えた。

そんな彼女達に対し、砂塵の中から緑色のツインアイが十香達を捕らえると、周囲に広がる砂塵を“ソレ“は手にした剣で切り払った。

 

『─────』

 

赤い装甲に梟を思わせる頭部。そして一本の剣と一つのラウンドシールドというシンプル過ぎる武装だが、ソレが逆にその悪魔の実力がどれだけのものかを無理矢理理解させられた。

 

「・・・・ッ」

 

皆が息を呑む。

ひしひしとその赤い悪魔から溢れ出る見えない重圧が十香達を襲う。

だが、その悪魔・・・ゼパルは十香達を見ても剣先を向けずに地面に剣を突き刺さし、待つような姿勢を取ると右肩につけられた赤い布“をバサリとはためかせた。

 

「アイツ・・・まさか“決闘“を申し込んでやがるのか?」

 

ユージンのその声に応えるようにゼパルは剣先を再度、地面に突き刺さす。

 

「決闘って・・・そんなの皆でアイツをやっちゃえばいいじゃない」

 

耶俱矢がそう言うと、折紙は首を横に振る。

 

「それは・・・無理みたい」

 

折紙が辺りを見回すと、廃ビルの屋上やビル影から悪魔達が顔を覗かせていた。

 

「・・・ッ!いつのまに・・・」

 

ゼパルを筆頭にガミジン、グシオン、アスモデウス、アスタロト、ハーゲンティ、ウヴァル、ムルムル、グレモリー、フラウロス、そしてダンタリオンが真那達を囲うように見下ろしているのだ。

そして姿こそ見えないが、そこにマルコシアスとキマリスが存在する。

実力でも数の差でも負けている時点で真那達に勝ち目はない。

絶体絶命と思われたその時────

 

「行きなさい。わたくし達」

 

『────────』

 

「・・・・・ッ!?」

 

その声と同時に悪魔達が反応する。

そして悪魔達がいたところに弾丸が叩き込まれた。

 

「きひひ、ひひ」  「ひひひひひ」

 

「あらあら」   「お強そうですわねぇ」

 

「ナイトメアッ!?」

 

「狂三か!?」

 

突如現れた狂三の分身に真那と士道は驚愕の声をあげる。

だが、それだけではない。

 

「早く逃げませんの?これ以上わたくしでは押さえ込むのは出来ませんわよ。それに─────」

 

そう言いながら狂三は視線を明後日の方向へ向けると、眉を顰めた。

 

「”アレ“の相手はしたくありませんわよ」

 

それと同時に”黒い機体”が狂三の分身体がいる方へと突貫していくのが見えた。

 

「・・・あら?」

 

分身体の狂三の一人がその存在にいち早く気付き、そちらへと銃口を向け、引き金を引く。

だがその弾丸は前面に盾のように展開された装甲によって弾かれ、そのまま前面の装甲が盾のような形状から巨大な両腕へと変形した。

そしてスラスターを吹かせ、狂三の分身体へと一気に距離を詰めると、銃を持っていた手を掴み、すぐに下に向けさせることによって狂三の攻撃を無力化し、そして鋏状のサブアームの尖端を狂三の首もとに目掛けて振り下ろした。

 

「─────ッ!?」

 

悲鳴を上げるまでもなく、一瞬で頭部を損壊した狂三の分身体を見て、真那達は顔を青くする。

だがそんな真那達を気にすることなく”ザガン”はもう一人の分身体へと突撃し、背部の大型サブアームで狂三を一瞬で頭部を挟み潰す。

潰れたトマトのように狂三の分身体がはさみ潰され、グロテスクな光景を生み出す中、ザガンは近くにいた分身体をサブアームで拘束すると、そのまま左手首が回転し、そのまま大型化した腕部で勢いよく殴りつけた。

ゴッ!と嫌な音がここまで聞こえてくる。そして何かが真那達の眼の前にビチャッ!とみずみずしい音をたてて落ちてきた。

 

「へっ?」

 

そしてソレをじかで見た七罪が素っ頓狂な声をあげながら

 

「う・・・うぶ・・・うおぇぇぇぇ!?」

 

吐いた。

七罪が見たもの。それは顔を抉られ、原型を留めていない狂三の分身体だったものだ。

そしてソレをみた他の面々も顔を青ざめさせ、口もとを押さえる。

その中で一番冷静な対応をするのはユージンだ。

 

「お前ら!!彼奴等が今、アイツに夢中な内に撤退するぞ!今、消耗した状態で戦っても死ぬだけだ!」

 

「分かりました!」

 

「分かった!」

 

真那と十香は頷いて皆を連れてこの場所から離脱する。

ユージンは一瞬だけ悪魔達に一瞬だけ視線を向けた後、十香達の後を追うように走り始めた。

誰も逃げる彼女等を追うものはいない。

ただ、マルコシアスだけは逃げる彼女達の背中をジッと見つめていた。




作者「あのモビルアーマーデカ過ぎん?戦艦が子供みたいに見えるくらいデカイんやけど?」

狂三「ビーム砲も戦艦を飲み込むくらいのサイズの大きさでしたわよ?」

作者「・・・あのモビルアーマー出す予定だったけど、辞めようかな?流石にデカすぎるわ・・・」


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第四十四話

投稿!!
今回は狂三回です!


「まったく・・・ギリギリのところでしたわね」

 

そう言いながら狂三は士道達を見て言った。

 

「お久しぶりですわね士道さん。いえ、ここでは始めましてと言うべきですわね」

 

「・・・!狂三、お前は・・・」

 

笑みを浮かべる狂三に士道は目を見開く。

どうやら今の士道が自分が知る士道ではないと見抜いていたらしい。

驚愕で目を見開く士道に狂三は唇を開く。

 

「そんなに驚かさないでくださいまし。これでもわたくしは逃げることは得意ですの。あの悪魔達から逃げ切ることも造作・・・ということもありませんが、それでも今の今まで逃げきることは可能ですもの。それに士道さん達に今、あの場所で死なれるのはわたくしも困りますもの」

 

「そうか・・・でもありがとう。狂三」

 

そう言って笑う狂三に対し、真那と琴里は険しい表情で狂三を睨みつける。

何故、あの《ナイトメア》が自分達を助けたのか。その理由が分からない。

恩でも売って自分達を体良く利用しようとでも考えているのだろうか?

そう考える真那と琴里に答えるように狂三はカツカツカツッとブーツを鳴らしながら二人を見た。

そしてニィと笑みを浮かべて狂三は言った。

 

「なにか企みがあるのでは?と言う顔をしていますわね。まあ、何か考えていると言うのは否定しませんわ。元々そのつもりで此方に来たのですもの」

 

「「「・・・・・ッ!」」」

 

狂三のその返事に皆は警戒する。

狂三はもともと士道が目当てで此方に接触してきたのだ。今の士道が三日月でない以上、狂三にとって恰好のエサに過ぎない。

全員がピリピリとする雰囲気の中、士道が狂三の前に出た。

 

「士道さん・・・ッ!?」

 

「大丈夫」

 

真那が目を見開いて士道を見る。

だが士道は真那にそう言って、狂三を見た。

 

「それで、狂三・・・お前の目的はなんなんだ?俺が目当てなんだろう」

 

「そう・・・といいたいのですけれど、今回の要件はまた別ですの」

 

「・・・別の要件?それはいったい───」

 

士道がそう言おうとした瞬間、狂三は士道達を見る。

 

「要件は二つ。まず一つ目は暫くの間、”わたくしが自分から接触する以外に干渉しないこと”。少々此方にも事情が出来ましたので暫くの間、邪魔をされたくないですの」

 

「そんなの───」

 

「分かった。その要件は飲む」

 

「士道───ッ!」

 

「本当は見過ごせない。けど、今はそれどころじゃないんだ。頼む・・・琴里」

 

「・・・・・分かったわ」

 

士道の言うことも分かる。今は三日月の救出を優先することに集中しないといけないのだ。それに時間もない。

 

「・・・それで。二つ目は?」

 

「二つ目は“天宮市の被害を最小限に留めることですわ”」

 

「はい?」

 

狂三の二つ目の要件に真那は丸くする。

ナイトメアは元々人間を襲うことがある精霊だ。そんな精霊が天宮市の被害を最小限に留めると言ったことに疑心暗鬼になる。

 

「ナイトメア。テメーは何を考えてやがりますか?今まで人を襲っていた貴女が天宮市の被害を最小限に抑えるだなんて・・・信じられねーですよ」

 

疑いを隠さない真那に狂三は指を口もとに持っていきながら笑う。

 

「わたくしは言いましたわよ?此方にも事情がありますの。それともわたくしを信じられなくて?これでも約束は守る方ですわよ?」

 

「・・・・・」

 

確かに狂三は約束は守る。それは美九の時に彼女が約束は守ることを見てきた。

だが、今になってなぜ?

疑いと疑問を隠せない真那に対し、士道は頷いた。

 

「分かった。それも飲む。元々、二つ目に関しては俺達もそのつもりだ」

 

「交渉設立・・・ですわね。なら約束を守ってもらう代わりにわたくしも出来る限り三日月さんの救出をお手伝い致しますわ。三日月さんがいないとわたくしもつまらないですもの」

 

「本当かっ!?」

 

「ええ。嘘はつきませんわ」

 

「だがまだ戦力が足りねえ。数もあっちの方が多いがどうする?」

 

「そうね・・・フラクシナスも使ってもまだ戦力が・・・」

 

「戦力が足りないのならわたくしが用意しますわ」

 

「・・・あなたが?」

 

戦力なら自分が用意すると言った狂三に、怪訝そうな表情を琴里は作る。

 

「ええ。ただ、時間がかかりますわよ。それにあの巨大な戦艦に行かないといけませんし」

 

「・・・それはどういう?」

 

皆が首を傾げる中で、狂三はニィッと笑みを再び作りながら言った。

 

「三日月さんを起こしますの。士道さんと真那さんで───」

 




狂三「さあ、作者さん。行きますわよ」

作者「は?行くってどこに・・・」

狂三「勿論、真那さん達のところですわよ」

作者「おいまてや。まさかお前、三日月以外の戦力って・・・」

狂三「もちろん、作者さんですわよ?」

作者「ちょっ!?おまっ!?作品に出る作者ってどうなんだよ!?冗談だよな!?」

狂三「もちろん冗談ですわよ」

作者「そりゃそうだよ!!」


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第四十五話 正面突破

投稿!!


作者「うーん」

狂三「どうしましたの?」

作者「いや新しいモビルアーマーさ、メハイアって言うんだけどコイツ、プルーマの生産特化みたいなヤツだわ。しかもサイズとプルーマが有線式だからかなりの旧式じゃねえのかなって」

狂三「つまり、大きいだけの見掛け倒しだと言いたいですの?」

作者「いや見掛け倒しとまでは言わないけど、恐らくハシュマルがヤバいんだよ。ハシュマルは絶対に後期型だわ。ネマミアより大きいけど、他の出たモビルアーマーより小さ過ぎるし、運動性能がヤバイ」

狂三「モビルアーマーの中でも下の方と言うわけですのね・・・あの大きいのは」

作者「タブンね」


「兄様を・・・」

 

「ええ。でなければわたくし達だけであの悪魔には勝てませんもの」

 

「・・・それは」

 

狂三の正論に琴里は表情を歪めると、七罪は言う。

 

「けど、あの馬鹿は私達の話を聞いてくれないのよ!?今のアイツに説得なんて出来るわけないじゃない!!」

 

そう叫ぶ七罪に士道は首を横に振った。

 

「だけどそれ以外方法がない。俺は・・・やるよ」

 

「・・・アンタねぇ」

 

「士道さん・・・」

 

俺はやると言った士道に七罪と四糸乃がどこか思い詰めた表情をするが、その言葉を聞いて琴里は小さく眉顰めながら士道を見る。

 

「でもあの船までどう行くつもりよ?まさか・・・一人で行くって言わないでしょうね?」

 

「それは・・・」

 

言い詰まる士道に琴里は小さく溜息をつくと、真那は皆の前で言った。

 

「私はやりますよ。そして兄様を助け出すんです」

 

「真那・・・」

 

「うむ。私もシドーに大恩がある。それに・・・この裡にある思いを伝えなければ」

 

「同意。私も行きます。士道・・・三日月に約束を守ってもらってません」

 

「夕弦に賛成。私もあのバカに何も返せてないし」

 

「私も・・・やります。どうしても、士道さんに会いたいです」

 

「そうですねー。私も三日月さんに言いたいことがありますしー」

 

「ええ。あの馬鹿には一発ぶん殴らないと気が済まないわ!」

 

「私もまだ三日月に何もしていない」

 

「・・・ったく。仕方ねえな」

 

ユージンは皆のその言葉を聞いてゆっくりと立ち上がり、士道達を見て言った。

 

「なら、俺が一肌脱いでやろうじゃねえか」

 

ユージンは笑いながらそう言って、十香達を見る。

 

「あの船に向かうつもりなんだろ?だったら俺に良い提案がある」

 

「良い提案?」

 

訝しげな表情をする琴里にユージンは笑みを浮かべる。

 

「ああ。俺達らしいやり方でな」

 

そう言ってユージンは琴里を見る。

 

「お前の船を借りるぞ。最悪ブッ壊しちまうかもしれねえがそれでもいいか?」

 

「《フラクシナス》をぶっ壊すって・・・あなたどんな使い方をするつもりよ?」

 

顰めっ面で腕組みする琴里にユージンは言った。

 

「そりゃあもちろん。正面突破だ」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『──────』

 

ガンダム・アスタロトオリジンが対艦ライフルでDEMの艦隊を次々と轟沈させていく。

もともと機動力のあるモビルアーマーに対し、強襲突貫をし、一瞬で仕留めることをコンセプトとしたアスタロトにとってナノラミネートアーマーを持たない戦艦を数隻落とす程度など造作もないことだ。

DEMの隊員やバンダースナッチもアスタロトと一緒にいたウヴァルユハナによってほぼ壊滅状態に陥っており、もはや軍としては機能していない。

アスタロト達の目的はあくまでもモビルアーマーの封印だ。

ただバルバトス自身は乗り気ではないらしく、”誰かを待っている”ようにこの”場所”に留まっているが、アスタロト達からすればそうもいかない。

なんせ”モビルアーマー”が此方へと来てしまえば対処手段が殆どないこの世界では一瞬で人類が終わる。

だが、その前に───

 

『──────』

 

アスタロトとウヴァルが明後日の方向へと顔をむける。

そのツインアイには一隻の戦艦を写していた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「おっしゃいくぜ!オラァ!!」

 

ユージンのその叫びと同時、《フラクシナス》の艦橋で琴里と七罪の絶叫が上がる。

 

「無理無理無理無理無理無理無理無理!!お願いだからスピード落として!!」

 

そう叫ぶ七罪に対し、ユージンは映し出されたモニターを見ながら叫ぶ。

 

「こうでもしねえとすぐに迎撃されて落とされるだけだ!ほら、奴さんがもう目を付けて来やがった!」

 

モニターに写るアスタロトは大空を飛翔しながら段々と此方へと迫って来ており、その手に握られた対艦ライフルの銃口をフラクシナスへと狙いを定める。

そして対艦ライフルが火を吹いた。

 

210ミリの弾頭が《フラクシナス》へと真っ直ぐ突き進み、そのまま艦の装甲を喰い破る。

弾頭が突き刺さったフラクシナスに大音量と大振動が艦内に響き渡り、艦内が大きく揺れた。

 

「きゃあっ!?」

 

「ちょっと!?このままじゃ落とされるわよ!?」

 

叫ぶ七罪にユージンは笑う。

 

「ハッ!!ただ無防備で撃ち落とされてたまるかよ!!おい!神無月のオッサン!!艦の制御も俺に渡せ!」

 

そう言うユージンに琴里と神無月は目を見開かながら琴里は眉を歪めながら怒鳴るように言う。

 

「馬鹿言わないで!折紙がホワイト・リコリスを使った時とは違うのよ!?リアライザのテリトリーを展開したフラクシナスの艦の制御まで貴方に渡したら本当に脳が焼き切れるわよ!!そんな無茶、真那にも出来ないしさせられないわ!!」

 

脳が焼き切れると叫ぶ琴里にユージンは真剣な表情で叫んだ。

 

「お前等が前線で戦ってんのに俺がオメオメと後ろで要られるかってんだ!いいから寄こせ!」

 

「・・・馬鹿!もう勝手にしなさい!!神無月!」

 

「よろしいので?」

 

「ええ!もうあの馬鹿の好きなようにさせなさい!」

 

「わかりました」

 

そう言って神無月は《フラクシナス》の制御を機械からユージンに受け渡すと、ユージンは頭が割れるような感覚に陥る。

 

「ガッ!?」

 

ユージンの鼻孔から血が噴水のように吹き出し、身体を大きく仰け反らせる。

 

「ユージン!?」

 

「ほら見なさい!!だから艦の制御なんて!」

 

そう叫ぶ二人にユージンは目に涙を浮かべながら笑みを浮かべ、モニターを見る。

 

「大丈夫だ問題ねえ!!お前等!早く準備しろ!」

 

『本当に大丈夫なんでやがりますか!ユージンさん!?』

 

「ああ!だからあの馬鹿を連れ戻してこい!」

 

そう言ってユージンは皆に言う。

 

「総員!対ショック準備!」

 

そう言ってフラクシナスのテリトリーを前面に一極集中させ、そのままスキップジャックに体当たりをブチかました。

 

「オワッ!?」

 

「きゃあああああッ!?」

 

「こんのぉ馬鹿ぁぁぁぁ!!」

 

ガリガリガリ!とスキップジャック級の巨体を滑るようにフラクシナスは後方へと離脱する直前、真那と士道はスキップジャックに乗り移る。

そして離脱するフラクシナスを追うようにアスタロト達が此方へと向かってきた。

 

「皆!迎撃準備!二人が戻るまで時間を稼ぐわよ!」

 

琴里がそう言うと、十香達が躍り出てそれぞれが悪魔達に向かう中、琴里と七罪はユージンに顔を向けた。

 

「やるじゃない!後はわたし達がやるからアンタは休んでなさい!」

 

「な、なあ・・・」

 

「どうしたの?」

 

琴里がそう言うとユージンは顔を上げる。

 

「俺・・・カッコいいか?」

 

それと同時、ユージンの鼻から大量の血が吹き出し、床に赤い水溜まりを作り上げた。

 

「「ユ、ユージーンッ!!?」」

 




狂三「あら?」

作者「どしたん?」

狂三「いえ、わたくしの本体が悲鳴を上げてますの」

作者「お前が悲鳴を上げるって・・・いや、わりとあったわ」

狂三「主に貴方と三日月さんのせいですわよ!?」

作者「たまに本編にも俺が出たりするからなぁ。番外編含めて二話だけだけど」

狂三「ちょっと待ってくださいまし。え?貴方、本編に出てましたの?」

作者「出てたよ?めちゃくちゃ短いけど」

狂三「嘘ぉ!?」


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第四十六話 バーサス

前半はマクギリス、後半は十香と?の戦闘です!

ではどうぞ!


「始まったか」

 

遠方で轟音が響き渡り、無人の戦場となった天宮市でマクギリスは目の前のキマリスヴィダールに視線を逸らすことなくそう呟く。

精霊と悪魔・・・どちらが勝つかと言われたらそれは悪魔の方だろう。何故なら彼女達はまだあの悪魔を倒すだけの実力がない。

ウヴァルやフラウロスと言った支援型に近いタイプのガンダムには勝てる要素はあるが、それでもと言った所。

セブンスターズのガンダムにはどう足掻いても勝てはしないのだから。

それでも。彼女達ならば“彼”を三日月・オーガスを取り戻せるのではないか?と言う期待はある。

だからこそ私はこのバエルと共に道を切り開いてみせよう。

だがまずはその前に───

 

「“お前との決着が先だな“。ガエリオ───いや、今はただの亡霊とでも言おうか」

 

目の前に立つキマリスを見て、マクギリスは二振りの剣を構える。

過去の因縁をここで断ち切らせてもらう!

 

「お前とは別の形で決着をつけたかったものだが・・・私はまだここで退場する訳にはいかんのでね。此処で因縁を断ち切らせてもらおうか。───亡霊」

 

『──────ッ!』

 

親友と親友が互いの得物を持ち───激突した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「はああああああッ!」

 

十香が《鏖殺公》を悪魔目掛けて全力で振りかぶる。

近接質量武器に弱いナノラミネートアーマーを突破することの出来る数少ない武器を持つ十香はガンダムにとっては天敵だ。いくら遠距離攻撃に対して無敵に近いナノラミネートアーマーでも十香の攻撃を一撃でもくらえば大ダメージを与えることだろう。

 

その相手が”ガンダム・グレモリー”でなければだが。

 

ガキン!と甲高い不協和音と共に十香の鏖殺公とガンダム・グレモリーの装甲が激突し、火花を散らす。

 

「───なッ!?」

 

十香が目の前で起こった光景に目を見開いた。

十香の渾身の一撃が”跳弾するように弾き返された”。

ビリビリと硬いもの殴った感触が腕に伝わる。顔を歪め、十香が晒した一瞬の隙をグレモリーは逃すわけもなく、手にした片折れのバトルアンカーでお返しとばかりに振り回した。

 

「───くッ!!」

 

カウンターを受ける訳にはいかないと十香は全力で身体をひねり、グレモリーのカウンターを回避する。

そして一気にグレモリーから距離を取った。

 

「なんだ?あの硬さは・・・」

 

ガンダム・グレモリーの異常な装甲の固さに十香は眉を顰める。

これは十香達はしらないことだが、ガンダム・グレモリーにはナノラミネートコートという特殊な装甲が採用されている。

本来、ナノラミネートアーマーとはエイハブ粒子に反応した金属塗料が硬化することによってビーム及び、衝撃に強くなるという装甲だ。

だがナノラミネートコートの性能はその更に上をいく。

本来、ナノラミネートアーマーは近接武器による大質量兵器には弱い。それは大質量兵器から放たれる衝撃をナノラミネートアーマーが受け止めきれないからだ。

だがガンダム・グレモリーのナノラミネートコートはそのナノラミネートアーマーを何重にも重ねた塗りした結果、弱点だった近接質量兵器による衝撃すら受け流す耐ショック性能を得たのだ。

だからこそ、十香とガンダム・グレモリーとの相性は最悪と言ってもいい。

だが、それでも十香は諦めない。

此処で諦めたら”必ず後悔”するから。

 

「〈鏖殺公〉───【最後の剣】!!」

 

十香のその叫びと同時、足元に顕現していた玉座に亀裂が走り、バラバラに砕け散りながら十香が握っている剣へと集約していき、そのシルエットをさらに大きなモノへと変換していく。

全長十メートル以上はある巨大な大剣。

それを十香は目の前に立つグレモリーに向かって振り下ろした。

 

『──────』

 

今の十香が出せる最大出力の攻撃。

その一撃は大地を縦に両腕しながら直線上にいるグレモリーへと向かって突き進む。

そして次の瞬間、凄まじい爆発がグレモリーを襲った。

 

「・・・・・」

 

直撃した手応えはある。

だが、十香の野生的な直感が”倒しきれていない”と訴えていた。砂煙が舞う中で、グレモリーのツインアイが十香を睨みつける。

そして砂煙の中から現れたガンダム・グレモリーは───

 

「───な」

 

十香が砂煙の中、再び現れたグレモリーを見て驚愕した。

”無傷”。

【最後の剣】が直撃した上半身を覆う黒い装甲に傷らしい傷が見当たらない。

驚愕で目を見開らく十香に対し、グレモリーはなんともない動作でバトルアンカーを肩に担ぐと、そのまま十香に目掛けて突撃した。

 

 

十香が挑むのは最硬度を誇る要塞にして天使狩りの死神。

剣と錨が火花を散らした。




作者「ガンダム・グレモリー硬いよねー。あの装甲はやっぱり反則でしょ」

狂三「他のガンダム・フレームなら倒せたのではないですの?あの一撃で」

作者「”直撃”すれば倒せるよ?相手がグレモリーだと受け止められるけど」

狂三「ダインスレイヴを持ってきてくださいまし。グレモリーに撃ち込みますわ」

作者「多分、耐えると思うよ・・・あの装甲なら」


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第四十七話 

作者「ウルズハントがサービス終了ってまッ!?月鋼みたいに俺達の戦いはこれからだ!エンドとか最悪じゃん!!」

狂三(荒れてますわね・・・まあ、わたくしには関係ありませんけれど)


『四糸乃ー。大丈夫?』

 

「・・・大丈夫。よしのん」

 

四糸乃は自分を宥めようとするよしのんにそう応えると、自分達の目の前に立つアスモデウスを見る。

 

「・・・・・っ」

 

アスモデウスの恐ろしげな見た目に四糸乃は一歩後ろへと仰け反った。

四糸乃が後ろへ仰け反ったその一瞬だった。

アスモデウスが四糸乃に目掛けて一気に距離を詰める。

そしてそのまま右腕のグラン・トンファーを四糸乃の頭目掛けて振り下ろす。

 

「・・・・・っ!?」

 

ブゥンッ!!と、空気を破りながら振り降ろされるグラン・トンファーを四糸乃は間一髪の所で避けた。

振り降ろされたグラン・トンファーはそのままビルの柱へと叩きつけられ、そのビルは一気に倒壊した。

腕力だけでビルを倒壊させるその威力を前に四糸乃は顔を青くする。

あんなものが直撃したらひとたまりもない。

 

『やー危なかったねー!危うく当たる所だったよー!』

 

そう言うよしのんに対し四糸乃は答える余裕はない。

腰部に装備されたライフルを四糸乃に向け、アスモデウスは引き金を引く。

火薬による轟音が街中に響った。

逃げる四糸乃をライフル弾が掠め、チリッと四糸乃の頰を灼く。

 

「───ザドキエル《氷結傀儡》!」

 

四糸乃が天使を顕現させると、同時に四糸乃とアスモデウスの間に巨大なウサギの人形が冷気を放ちながら現れた。

 

『──────』

 

アスモデウスは現れたその天使を見てライフルを腰部に戻すと、両腕のグラン・トンファーを展開し構える。

 

「私───士道さんに、助けてもらってばかりでした。だから・・・今度は四糸乃が士道さんを助けますっ!」

 

『うんうん。よしのんも士道くんとお話をいっぱいしたいしねー。よしのんも頑張っちゃうよー!』

 

アスモデウスは覚悟を決めた四糸乃目掛けてグラン・トンファーを振りかぶる。

臆病で逃げてばかりの私は今日でお別れ。

私はもう───逃げない。

 

「ああああああああああっ!」

 

さあ少女よ。───立ち向かえ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「さてさて・・・わたくしの相手は誰か楽しみですわね」

 

狂三は戦場となった天宮市で他の精霊と悪魔達の様子を見ていると、上から銃弾の嵐が狂三のいる場所を襲った。

大量の砂塵が宙を舞う。

その砂塵を見下ろすようにその悪魔は左手に握られたガトリング砲をゆっくりと降ろした。

 

『──────』

 

モスグリーンの分厚い装甲に赤いツインアイが狂三がいた場所を射貫く。

 

ガンダム・ガミジン

 

四番目の悪魔にしてセブンスターズの称号を持つ悪魔。

ガミジンは警戒するように薄れつつある砂塵の中を見る。

バンッ!と、ガミジンの背後から発砲音が響いた。

 

『──────』

 

背後から放たれた影の弾丸をガミジンはリボルバーガンアックスで叩き落とす。

 

「あらあら・・・撃ち落とされてしまいましたわね」

 

狂三は叩き落とされた弾丸を見ても焦ることなく、ガミジンを観察する。

分厚い装甲に大型のリボルバーが装着された斧を見て、狂三は目を細めた。

 

「・・・何かしらのギミックがありますわね」

 

普通の斧にあんな巨大な金属の塊は必要ない。となるとアレには何かしらのギミックがある筈だ。例えば───

 

「・・・叩けば火薬か何かが炸裂して分厚い装甲を粉砕する・・・といったところでしょうか」

 

そういう狂三はガミジンの背中に背負うガトリング砲に目を向ける。

そして狂三の脳裏に───何故かピエロマスクの馬鹿の顔が浮かんだ。

 

「・・・・・考えないようにしましょう」

 

四門のガトリング砲でハチの巣にしながらアクロバティックな動きでミサイル爆撃をすることは流石にしてこないだろう。

 

「まあもっとも、わたくしはわたくしの目的の為に戦うだけですわ」

 

カチャリと両手に握られた単発銃を構えながら狂三はニィと笑う。

 

「さあ悪魔さん。わたくしと一曲、踊ってくださいまし」




狂三「作者さん?」

作者「いや、狂三さん?ちゃうんですよ?」

狂三「問答無用ですわ!」

作者「ぎゃああああああああッ!?」



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第四十八話

投稿!!

作者「ウルズハントアニメ化おっしゃあ!!」

狂三「テンションが昨日からハイですわね・・・」



赤と紅がぶつかり合う。

長剣と戦斧が火花を散らしながら一体と一人は空を駆けた。

 

「───はぁっ!!」

 

『──────!』

 

五河琴里とガンダム・ゼパルは何度も互いの戦斧と長剣を斬り結びながら睨み合う。

 

「こんのおぉぉぉッ!!」

 

琴里は叫びを上げながら手に握られた戦斧を振るう。

だが、ガンダム・ゼパルは琴里の一撃を難なく受け流し、そのまま剣を一閃する。

 

「このっ!」

 

琴里はその神速の一閃を危なげに戦斧で受け止めるが、ガンダム・ゼパルは琴里が攻撃を受け止めるのを予想していたかのように、剣を滑らせながら戦斧の返しの部分に剣の切っ先を引っ掛け、そのまま払うように琴里が握っていた戦斧を払い飛ばした。

 

「───っ!?──まだこんなもんじゃないわよ!」

 

一瞬、琴里は払い飛ばされた戦斧を目で追うが、すぐにガンダム・ゼパル目掛けて拳を振りかぶる。

拳を振りかぶる琴里にゼパルも剣を握ったまま、琴里の振りかぶられた拳を自身の拳で受け止めた。

 

「なっ・・・!?」

 

ゼパルに腕を掴まれた琴里は驚愕するが、そんな琴里にゼパルは琴里に目掛けて頭突きをブチかます。

 

「・・・・くぅ!?」

 

ゼパルの強烈な頭突きにふっ飛ばされた琴里は、涙目になりながら自身を見下ろすガンダム・ゼパルを見上げた。

 

強い

 

琴里は自分とは全然違う戦い慣れたガンダム・ゼパルの動きを見て顔を歪める。

苦戦で顔を歪める琴里に対し、ゼパルは剣とシールドを構えたまま此方が動くのを待っている。

そんな強者の余裕に、琴里は怒りを燃やした。

 

「・・・やってやろうじゃない。舐められたままじゃ私もむかつくのよッ!!」

 

「灰燼とかせ───カマエル《灼爛滅鬼》!」

 

そう叫ぶと同時───琴里の周りに焰が纏わりつく。

そして琴里の身の丈ほどの巨大な大砲が姿を現した。

 

「絶対に・・・おにーちゃんを取り戻すんだから!」

 

『──────』

 

来い

 

ガンダム・ゼパルは自分にそう言ったような気がして──

 

「カマエル《灼爛滅鬼》───メギド【砲】!!」

 

ガンダム・ゼパルに焔の砲撃が放たれた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

フラウロスとグシオンの正確な砲撃と狙撃が高速で空を駆ける二人の肌を掠める。

 

「危なっ!?」

 

耶俱矢は肌を掠める弾丸に冷や汗を流す。

いくら最強の鎧である霊装を纏っているとはいえ、あんな大口径の弾丸が直撃すれば致命傷まではいかなくとも、戦闘不能になりかねない。

 

「耶俱矢!」

 

「────ッ!」

 

夕弦が耶俱矢を呼ぶ。

その瞬間、フラウロスの背部レールガンの弾丸が耶俱矢の目の前を通り過ぎた。

そして通り過ぎたその弾丸は、遙か遠くの建物の上半分を吹き飛ばす。

その威力に二人は顔を青くした。

 

「・・・嘘でしょ?」

 

「驚、愕。この威力は・・・」

 

ガンダム・フラウロスのレールガンの威力はどれほどのものか一度見ている。

自分達が死力を尽くして破壊した隕石を単機で破壊するほどの馬鹿げた威力だ。油断はしないとは決めていたが、変形していない状態でこの威力は洒落にならない。

だが、問題は別にある。

 

『────ッ!』

 

グシオンが足を止めた二人にハルバートを手に距離を詰めてきたのだ。

 

「ああもうッ!」

 

「回避。当たりません」

 

振り降ろされるハルバートを二人は避けると、その回避したタイミングを狙ってフラウロスが砲撃をしてくる。

 

「・・・・っ!!」

 

ソレを身体を捻ることで回避した夕弦にグシオンは逃すわけがなく、追撃しようとするが────

 

「夕弦に・・・何してんのよこらー!!」

 

巨大な槍を手に耶俱矢が突撃しその追撃を間一髪弾き返す。

 

「夕弦!大丈夫!?」

 

「耶俱、矢・・・平気です」

 

「よかった・・・」

 

平気と答える夕弦に耶俱矢は安堵の声を漏らすが、すぐに険しい表情でフラウロスとグシオンを睨みつける。

 

「話には聞いていたけどあの連携、厄介過ぎるでしょ」

 

「返答。三日月があの二人に背中を任せるだけの実力は伊達ではないみたいです。耶俱矢」

 

「・・・うん。ちょっと羨ましいかも」

 

自分達もあれだけ強ければと少しだけ考えてしまう。

だが────それでも。

 

「勝つのは私達です。三日月は渡しません」

 

「それには同意。今さらあの馬鹿が謝ったって赦してあげないんだし。それに・・・」

 

「「士道(三日月)にはあの時自分達が助けてくれたように今度は私達があのときのように助ける番だから!」」

 

そう宣言する二人にグシオンとフラウロスは────

 

『────』

 

『────』

 

少しだけ、そのツインアイを輝かせた。




作者「そう言えば・・・キャラ紹介してなかったよね!次の回にしようか!」

狂三「唐突ですわね!?やるにしても誰からしますの?やはり、三日月さん?」

作者「んにゃ今主人公をやってる真那ちゃんから」

狂三「く、黒歴史とブラコンすねらせた真那さんですの?」

作者「次、真那ちゃん呼ぶけどそれ、絶対に本人の前で言うなよ?」


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第四十九話

投稿!!




「わーッ!!」

 

少女が限りなく限界に近い声を上げ、彼女の命を刈らんとする弾丸を迎撃する。

その少女の声は音の防壁をつくり、少女の目の前で悪魔が放った対艦ライフルの弾丸を弾き返した。

 

『──────』

 

ガンダム・ウヴァルユハナは少女の目の前で弾かれたライフルの弾丸を見て、バイザー奥に隠されたツインアイを発光させた。

どうやら彼女の前に見えない壁があると判断したウヴァルは、腰にマウントされたハルバート・チョッパーをその手に握り、美九へ向かって突撃する。

 

「ちょっ!?それは駄目ですよー!」

 

振りかぶられたハルバート・チョッパーに、美九は顔を青くしてウヴァルのその攻撃を避ける。

地面に叩きつけられたその攻撃は、コンクリートで舗装された道路を粉砕し、砂塵とその破片が美九を襲う。

 

「わッ!!」

 

だが美九は声を出すことによって砂塵と破片から身を守り、それと同時───砂塵を裂くように現れたハルバート・チョッパーの攻撃に運良く反応出来た。

 

「きゃっ!?」

 

重い空気を裂く音と同時に美九が身を屈める。

そして先ほどまで美九の頭があった場所に、肉厚の刃が美九の長い髪を数本巻き込みながら通り過ぎた。

そして美九は慌てるようにウヴァルから距離を取ると、荒くなった息を整えるように大きく息を吐く。

 

「・・・はぁ・・・本当に私と相性が最悪じゃないですかー。私の攻撃は効かないですし、向こうの攻撃を喰らえばひとたまりもないですしー」

 

冷や汗が彼女の頰に流れる。

一度、三日月と戦闘をしたことがある彼女にとってガンダム・フレームとは天敵だ。

向こうの攻撃をまともに喰らえば致命傷になり、なおかつ此方の攻撃はほぼ通らない。

あくまで、サポートや声による精神攻撃が主になる彼女の天使では相手にならないのが現実だ。

今は逃げ果せているが、それもいずれ限界が来るだろう。

 

「まあでも・・・逃げるのは得意ですしー。それに・・・」

 

美九は自分自身に対し、苦笑いするように呟いた。

 

「三日月さんに会うまでは死ねませんからー」

 

それだけを気力に美九は襲いかかるウヴァルをその声で弾き飛ばした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

『──────』

 

「こんっのおおおおおッ!!」

 

ダンタリオンのハーフTカウルと七罪が〈贋造魔女〉で作り上げたハーフTカウルの拳と拳が激突する。

ビリビリッ!と空気を震わせながら打ち合わされたその一撃は、七罪を勢いよく吹っ飛ばした。

 

「カ──ハッ──!?」

 

建物という建物を次々と突き破りながら七罪の華奢な身体はボールのように飛んでいく。

そして数度地面にバウンドした七罪は、全身がボロボロになりながらも立ち上がる。

 

「ゲホッ───ああ、もうムカつく!」

 

それは誰に向けていったものか、七罪自身も分からない。

目の前に立つダンタリオンに向けてなのか、この場にいない三日月に言ったモノなのか・・・それとも不甲斐ない自分自身か。

先の一撃で何本か骨やられたのか全身が痛い。

だが、それでも七罪はダンタリオンを睨みつける。

 

『──────』

 

そんなヤケクソじみた状態の七罪に対し、ダンタリオンは拳を構えながらも、その場から動かない。

 

「やってやろうじゃない───!あたしだって皆の役に立てるんだから!」

 

七罪は〈贋造魔女〉でもう一度ハーフTカウルを創り出す。

ダンタリオンに対して有効打を与えられるのは十香の〈鏖殺公〉か八舞姉妹の〈颶風騎士〉しかないのだ。

だったら相手の武器を真似てやればいい。

斬ったり、刺したりするより殴り合いの方が自分の性にあっている。

 

「あの馬鹿を殴ってやらないと気がすまないのよ──!」

 

拳と拳が──激突した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・・ッ」

 

『──────』

 

ガンダム・ムルムルのサージカルフェザーが折紙に群がるように飛翔した。

それは身の丈以上もある巨大な刃だった。

それをまるで身体の一部とでもあるかのように、複雑な機動を描きながら折紙に喰らいつこうとする。

 

「────っ!!」

 

逃げる折紙にサージカルフェザーがしつこく追いかける。 

 

「・・・・メタトロン〈絶滅天使〉!」

 

折紙のその言葉に反応して折紙の頭部に浮かぶ羽が、それぞれサージカルフェザーを迎撃しようと動き始めた。

数は此方の方が多い。が、大きさとその羽の動きは向こうが上だった。

サージカルフェザーの質量の前に〈絶滅天使〉の羽は全て弾き飛ばされ、ムルムルが握っていたライフルに一部叩き落される。

此方も此方で相性が悪い。というよりも、出力が違う。

フルパワーの此方よりもあちらの方がパワーが上だと言うのを無理矢理理解させられる。

ガンダム・バルバトスにパワー負けした時点で分かってはいたが、それでも折紙にとって歯噛みせざるをえない。

 

もし勝てる手段があるとすれば────

 

「・・・・・駄目」

 

ふと、脳裏に浮かんだ”魔王化“に折紙は首を振った。

確かにアレなら勝てる可能性があるかもしれない。だが、アレを制御出来ると思わないし、そしてなにより魔王になったら──

 

「──自分を抑えられない」

 

皆が死ぬ可能性を想像したくない。

その最悪の可能性を否定しながら、折紙はムルムルへと刃を振るった。




作者「登場人物しょうかーい!今回は!三日月編の主人公である崇宮真那ちゃんを紹介したいと思いまーす!」

狂三「では、プロフィールは・・・と」

作者「あ、コレね。崇宮真那。年齢は・・・一応、プロフィールでは琴里の一つ上。好きな物は・・・うん。まあ、ね?で、嫌いな物は美九・・・嫌われてんなぁ・・・。元々はDEMのNo.2だけど、ウチの真那ちゃんは原作と違って辞退とどけだして辞めてる」

狂三「そう言えばそうですわね」

作者「で、性格はと言うと・・・原作でもブラコンだったけど、ウチの真那ちゃんはそれにハッシュ君とラウダ君を足して二で割れなかったのよ・・・」

狂三「つまりは感情的で、三日月さんに対しては忠犬でもあり、そのブラコン性が重くなっちゃいましたのね」

作者「そうそう。だから下手に三日月に変なことをしようとすると流れ弾が飛んでくるよ?」

狂三「あ、それは面倒臭いですわね」

作者「あと、原作とは違って真那ちゃんには黒歴史があって・・・」

狂三「・・・ああ。あの写真・・・」

作者「そうそう。寝顔コレクション。因みに他にも黒歴史はあるみたい」

狂三「他にもありますの!?」

作者「後は・・・ああ。私生活は普段はだらしないよ。特に自分だけの時はね」

狂三「真那さん・・・」

作者「例えば・・・三日月がいない時は風呂上がりに真那ちゃん、下着を下だけ履いて出てくるのよ。三日月はズボンもちゃんと履いて出てくるけど」

狂三「うわぁ・・・」

作者「因みに耶俱矢はもっと酷いけど」

狂三「え?」

作者「後は・・・三日月を好きになった理由は三日月の優しさを間近で受け続けたから。後これは少しネタバレになるけど、真那ちゃんが三日月を選んだせいで澪の計画が全部破綻したことくらいか」

狂三「今スゴイことを言いましたわよ!?」




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