お嬢様はピーキーがお好き (アルキメです。)
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ミカミ・リクがGBNに出会う前【Before】
0.0 頭を使うのは得意でしてよ!


導入もっとスッキリさせろ問題


 ガンプラバトル·ネクサスオンライン。

 通称をGBNと呼ばれるソレは、ネットワーク上で構築された電脳仮想空間『ディメンション』とガンプラバトルを融合、中心として様々なミッションを楽しむことができるオンライン·ネットワークゲームである。

 ダイバーギアさえ用意できればガンプラを持たなくともログインすることが可能であり、従来のガンプラバトルとは違い、リアルガンプラ必須という格式が取り除かれたことでガンプラ製作の得手不得手を問わず、誰でも気軽に楽しむことができるという点が非常に魅力的であった。

 その手軽さ故に元々あったガンプラ人気と相まってアッという間に世界規模の人気を確立していた。

 

 そんなGBNにおいて『ジャイアントキリング』と呼ばれるプレイヤー――GBNダイバーが存在した。

 攻撃力に極振りしたクソデカ武器や防御力に極振りしたクソカタ防具など、あまりにも極端な構成がために必然とピーキーな性能へと仕上がったガンプラを愛用するそのダイバーの名は――

 

 ⁎

 

 地上。山々に囲まれた島。

 まばらに生えたった木々と禿げた大地によって継ぎ接ぎめいた姿を呈する島は現在、苛烈な戦場と化していた。

 ここで行われているのはフォース・サバイバルバトルミッション。

 文字通りメンバーと一組の小隊となって行われるサバイバル・ガンプラバトルである。

 設定は五十組サバイバル。

 三人一組、二人一組、腕に覚えがあるなら一人一組も可能となっている。

 開始してから経過した時間は二十分三十四秒。

 この時点で既に四十八組が全滅している状況であった。

 

「オーッホッホッホッホ!」

 

 甲高い笑い声が戦場に木霊する。

 オープンチャットで恥ずかしげもなく馬鹿みたいな笑い声だ。

 

「くそがっ! 何だってんだ!? もう俺たちだけかよ!?」

 

 フォース『地獄三銃士(ヘル・ガンズ)』の一員、ガン・アトスは悪態を吐いた。

 彼らの駆る黒塗りのデナン・ゾン小隊は射撃偏重の改造を施されており、アトスのデナン・ゾン・ガンズは背部に備え付けたショットランサーと両手に持った二丁のビームライフルでの中距離戦を得意としていた。

 接射を得意とするシャッガン・ルネのデナン・ゾン・アサルト、遠距離主体のキャノン・ボルトスのデナン・ゾン・キャノンと共に今まで生き残ってきた実力派である。

 そんな彼らは、迫る笑い声に対して後退と射撃を繰り返す引き撃ち戦法を仕掛けていた。

 アトスのビームライフルの光条が木々を焼き払い、ボルトスのバズーカが大地を砕く。

 爆炎と土煙に彩られた戦場を貫くように、笑い声の正体が現れた。

 

 それは鮮やかな赤に染め上げられたギャン改。

 しかし、その姿は彼らの知るギャン改とは一線を画していた。

 装甲を削り、正面にのみ集中させたボディ。

 目に見える装備は身の丈以上もある大型ランスとジム・ガードカスタムのガーディアン・シールドのみ。

 特に目を惹くのがフレーム剥き出しの脚部と背部に増設された大型ブースター。

 更にギャン改の特徴的な肩パーツさえブースターに換装されていた。

 腰にはバランスのために二脚のスタンドが取り付けられており、さながら人馬の如き威容。

 見ただけで解る。

 突撃のためだけに設計された機体。

 一撃必殺を体現した装備。

 一撃離脱を理想とした異形。

 あまりにも極端。

 あまりにもピーキー。

 表示された機体名は――ギャン・スピアヘッド。

 それが、笑い声の主であるダイバーが駆る機体の正体であった。

 

「来たぞ! あれが――」

 

 アトスが緊張に染まった声で警戒し、

 

「あいつが!」

 

 ルネが低い女性の声で確認するように言い、

 

「あの機体こそが!」

 

 ボルトスが唸るような声で告げる。

 

「オーッホッホ! そう、私こそ!」

 

 三人の言葉に呼応するようにひと際大きな笑い声を上げて――金髪縦ロール赤眼のお嬢様が高らかに応える。

 

「ジャイアントキリング、キリシマですわーっ!!!!!!!」

 

 ギャン・スピアヘッドの全ブースターが一斉に火を噴いた。

 瞬間的な超加速!

 並のダイバーであればその勢いに気圧されていただろう。

 だが、『ヘル・ガンズ』は並以上を自負しているダイバーたちのフォースだ。

 

「ボルトス!」

「オウッ!」

 

 アトスの叫びボルトスが即座に動いた。

 肩部に備えたキャノン砲を地面に向けて発射!

 土煙を目隠しに、三機のデナン・ゾンが散らばる。

 が、ルネだけが前に出た。

 

「ルネ!?」

「直進距離! 横から撃てば!」

「できるのか!?」

「やるんだよぉぉぉ!」

 

 威勢よく叫び、ルネがショットガンを構えて突撃!

 ギリギリで避け、すれ違いざまに側面に撃ち込めば勝てると踏んでの勇猛。

 事実、キリシマのギャン・スピアヘッドは正面以外の装甲がほぼ無いに等しい。

 直撃を受ければひとたまりもない。

 だが、この時『ヘル・ガンズ』は気分の高揚によって失念していた。

 一人一組として参加し、参加者五十組の内、二十組を破竹の勢いで全滅させたのが目の前の機体であることに。

 

「これ、はぁッ!?」

 

 タイミングは完璧だった。

 避けるまでの猶予はあった。

 ――あったはずなのだ。

 ルネの機動先に合わせて、キリシマが片側のブースターの出力を弱めた。

 ガクリ、と勢いよくギャン・スピアヘッドが傾き、大型ランスがルネの軌道線上――目の前に現れたのだ。

 ルネはすぐにギャン・スピアヘッドが直進姿勢のまま無理矢理、機体を傾けたのだと理解した。

 ルネにとっては最低限の機動で避けようとしたこと、避けやすい形状と判断してランス側に寄ったのが裏目に出た形となった。

 

「お考えがまる見えでしてよっ」

「むちゃくちゃだろッ!?」

 

 咄嗟に頭部を狙ってショットガンの引き金を引く!

 しかし結果は明白。散弾は全て厚い装甲が受け流す!

 

「散弾ではなぁッ!」

 

 そのまま大型ランスが接触!

 ルネのデナン・ゾン・アサルトの半身を砕いた!

 

 シャッガン・ルネ/デナン・ゾン・アサルト――戦闘不能。

 

 ⁎

 

「――フフ、一度は言ってみたかったセリフですの、よ!」

 

 勢いはそのままにキリシマはギャン・スピアヘッドのブースターを器用に吹かしながら軌道を調整。

 軋むフレームを敢えて無視。

 ガーディアン・シールドの内側に仕込んだバンカーを地面に突き立て、半ば強制的に方向転換を成功させる。

 次の目標は遠距離型――ボルトスのデナン・ゾン・キャノン。

 

「次、参りますわよ!」

「厄介と見込んで、こちらに来たか!」

 

 ボルトスとて負けるわけにはいかない。

 先ほどのルネの敗北からも学べるものはあった。

 後はそれを活かし、キリシマを撃破するだけ。

 身構え、残弾数を即座に確認して――ボルトスのデナン・ゾン・キャノンは、上半身を削がれていた。

 

「――は?」

 

 一瞬、理解できなかった。

 距離はまだあったはずだ。

 回避できるように備えたはずだ。

 残弾確認でほんの僅かに視線が逸れた直後の出来事だった。

 

 キャノン・ボルトス/デナン・ゾン・キャノン――戦闘不能。

 

 ⁎

 

 アトスは見た。

 ギャン・スピアヘッドの大型ランスの柄が火を噴いたことに。

 そのまま、右腕マニピュレータから投擲されたことに。

 即ち――ブースト・ランス!

 

「ば、バカじゃねぇか!?」

 

 感動と呆れに混じった声を上げるも、身体は既に行動に移っていた。

 

「唯一の武器を捨てた隙を見逃せるかよぉッ!」

 

 足が止まった瞬間をアトスは見逃さない。

 ビームライフルをフルオートモードに切り替え、連射!

 撃つ! 撃つ! 撃つ!

 片方は動きを制限する牽制のためにわざと外す。

 片方は機体行動を削ぐために足元とブースターを中心に狙う。

 

「良い狙いですわね!」

 

 感嘆。

 キリシマはガーディアン・シールドを構え、ボディへの直撃を防ぐ。

 被弾したブースターを切り離す。

 ゴウッ!

 爆発した衝撃を利用し、無理矢理機動を再開!

 表面が溶けたガーディアン・シールドを捨て、目標はこの場からの離脱――ではなく、躊躇なくアトスのデナン・ゾン・ガンズに向かう!

 

「んな・にぃ!?」

 

 まさか真っ直ぐにこちらに来るとは思わず、判断が遅れた。

 武器もない。

 盾もない。

 それでも機動力だけは健在。

 

「捨て身!? タックルか!」

「否、ですわ!」

 

 煌めくはギャンシリーズ特有の尖った頭頂部。

 

「まさか、おまっ――」

「その、おおまさかですわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 ビームスピアと化したギャン・スピアヘッドの頭頂部が――アトスのデナン・ゾン・ガンズの胸部を貫いた。

 

 ガン・アトス/デナン・ゾン・ガンズ――戦闘不能。

 

 ⁎

 

 この日、一人一組の猛者がフォース・サバイバルバトルミッションを制した。

 

 フォース『ノンプログレム・オブリージュ』(メンバー数一名)

 ダイバーネーム『キリシマ』

 

 ピーキー故に扱いづらいカスタム機を愛用し、初見殺しを得意とする自称エレガントお嬢様。

 時に上位ランカーを撃破してみせることから付いた仇名は『番狂わせ(ジャイアントキリング)』。




わたしピーキー過ぎる機体すき!(バァァァァァァァン


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0.5 一歩を踏み出すプロローグですわ!

もっとシャッキリお書きなさい問題。
因みになんですけれど今後の展開についてアンケート設置してみましたわ。



 GBNのセンターロビー。

 フォース・サバイバルバトルを何とか勝ち抜いたキリシマがそこに居た。

 

「ふぅー」

 

 壁に背を預け、ドリンクを片手に一息ついていた。

 前髪を切り揃えた金髪縦ロール。

 情熱のイメージをそのまま宿したような赤い双眸。

 その二つの特徴をバランスよく調和させる美貌。

 いかにも『お嬢様』と言う表現が相応しい女性であった。

 因みに服装は最近購入したソレスタルビーイング風の女性服である。

 彼女は今回のミッションを脳内で思い返し、反省点を絞り出す。

 

「今日一番の反省点――やはり突進力が足りませんでしたわ」

「いや、問題はそこじゃねーだろ」

 

 キリシマの呟きに応える声があった。

 

「あら、貴方がたは……」

 

 見れば、フォース『ヘル・ガンズ』の三人が立っていた。

 テンガロンハットに葉巻を咥えたカウボーイ風な優男――ガン・アトス。

 迷彩柄のヘルメットを斜めに被ったツインテールで小柄なカウガールー――シャッガン・ルネ。

 バンダナを巻いた、顎髭の濃いガンマン風な大男――キャノン・ボルトス。

 何れも先ほどのミッションで終盤まで生き残るほど中堅Bランカーとして相応の実力を有し、全員がデナン系を始め、クロスボーンのモビルスーツを愛好するマニアックな――それでいてノリの良いダイバーたちである。

 付け加えると周囲からは専らアトス、ルネ、ボルトスと先頭の名前を省かれて呼ばれている。

 

「先ほどは対ありでしたの」

「ああ、こっちこそ。言っておくが次は負けねーからな」

 

 アトスの言葉に、キリシマはにこやかに言い返す。

 

「ええ、わたくしも同じでしてよ。次も負ける気はありませんわ」

 

 バチリ、と両者の視線が重なり、火花が散る。

 

「でもさー」

 

 二人の間に割って入るように、ルネが言葉を挟んだ。

 

「次は負けないは事実じゃない? ま、同じ機体で来たらの話だけどなー」

「――それはそうですわね」

 

 ルネの言葉に、キリシマは重く頷いた。

 『ヘル・ガンズ』同様、キリシマもまた中堅Bランカーである。

 実力はあるのだが、そのプレイリングによって対策がされやすく、毎回大事な場面において敗北を繰り返している。

 例えばギャン・スピアヘッドのように、突撃のために防御を犠牲にして極端なまでに機動力を高めた機体は、フォース・サバイバルバトルのような乱戦が想定されるミッションでは真価を発揮するが、一対一などの所謂タイマンでは性能を発揮しにくい。

 今回、勝利できたのは単純に運が味方しただけだと言っても過言ではない。

 更に言えば、キリシマに全滅させられた二十組の敗因は完全に初見殺しだったためである。

 ほんの僅かにでも気を抜いたりした瞬間には、大型ランスの餌食になっているのだから「こういう戦術もあるのか」と学び、対策を練ってくるだろう。

 

「むぅ、ならばもっと突進力を……」

「だから、そこじゃねーって!」

 

 アトスのツッコミに小首を傾げるキリシマに、ルネとボルトスは「やれやれ」と肩を竦める。

 

「そもそもお前、この間までアレックスだったじゃねーか」

「あ、そーいえばそーだ。一ヵ月ぶりにインしたかと思ったら、久しぶりにギャンのビルド機になって、どしたん?」

「確かに。生涯アレックス宣言なんかもしてたな」

「うっ」

 

 三人の言葉に、一瞬、キリシマは言葉を詰めた。

 コホン、と咳払い。

 

「確かにアレックスはわたくしの知る限りでは元祖ピーキーな機体でしたわ。

 アムロ・レイ専用に調整されたが故の反応性、運動性、それに伴う追従性、どれをとっても一般兵士には扱いづらいピーキーとも言える性能!」

 

 しかし、しかしですわ!

 

「汎用性が――汎用性が高すぎたのですわ!!!!!」

 

 そう高らかに、キリシマは言ってのけた。

 

「えぇ……」

「まぁじでぇ」

「……あれで、か」

 

 流石の『ヘル・ガンズ』の面々も若干ドン引きしている。

 

「なのでわたくしのアレックスは現在、構築を見直すために一時休止し、久方ぶりにギャンを迎え入れたのですわ!」

 

 でも良いですわよね、ギャン!

 白兵戦というコンセプトの潔さがもう最高!

 シリーズが派生するごとに騎士道溢れる外観になっていくエモさ!

 などなど、熱く語りだしたキリシマを尻目に――

 

「あー、なぁお前ら、あいつのアレックスのビルド機って確か……」

「うん。システム・ファブニール搭載型で、チョバムアーマーを質量の塊としてビットしてたやつだね」

「曰く、アーマーナックルビットと命名していたな」

 

 三人は互いの顔を見合わせ、呆れ混じりの溜め息を吐いた。

 チョバムアーマーがアレックスの周囲を飛び回り、近づく者を容赦なく殴りつける光景は中々に忘れがたいものだった。

 しかもチョバムアーマーとして元々の機能も有していたためメチャクチャ堅いのだ。

 恐らく彼女は攻防一体としたその部分を指して「汎用性が高すぎた」と嘆いているのだろう。

 

「やっぱ馬鹿だな。良い意味で」

「うん、良い意味で馬鹿だね」

「右に同じだ」

 

 苦笑を溢しつつ、一通り語りつくしたキリシマを見やる。

 

「よぉ、ようやく落ち着いたか?」

「ぜぇ……はぁ……お、お恥ずかしいところをお見せしましたわ」

「キリシマにも羞恥心の概念あったんだ」

「フ、突撃しか芸のない貴方と違って、わたくしにも一端の淑女らしさ――ありますのよ?」

「お? 巷じゃあその派手な金髪でカテシマお嬢とか猪カテ公呼ばわりされてるのに?」

「おまっ、それ言ったら戦争でしてよ!? このミーシャ娘!」

「んにゃっ!? ミーシャのおっさんは好きではあるけど、そう呼ばれるのは腑に落ちないかな!

 とゆーかアタシ、断然ザビーネ様派なんですけど!?」

「オホホホホホ! 所詮は貴族主義の妄執に囚われ続けた敗北者ですわー!」

「は、敗北者……!? グヌヌ、そんなに戦争がお望みかい猪カテ公ぉ!」

 

 バチバチ、バチリ。

 アトスの時よりも盛大な火花が散る。

 

「はいはい、落ち着け落ち着け」

 

 アトスがルネの頭を押さえて、宥める。

 傍からすれば煽り煽られの喧嘩にも見えるが、実際はこの二人のよくあるやり取りである。

 喧嘩するほど仲が良いと言うやつである。

 行き過ぎた場合は最悪マギーお姉さんのお叱りが入るので無意識にセーブしている部分もあったりなかったりする。

 

「あら、そういえばもうこんな時間でしたのね」

 

 つと、キリシマがロビーに設置された時計を見て呟いた。

 

「何か用事でもあるのか?」

「えぇ、少しばかり。――それではわたくしはこの辺でお暇させていただきますわ」

「次会ったら絶対決闘だかんね!」

「オホホ、精々負けた時の言い訳でも考えておきなさいな!」

「グヌヌヌ……ぜーったいに目に物見せてやるからね!」

「楽しみにしておきますわ!」

 

 頬を膨らませて地団太を踏むルネの姿をハムスターに重ねながら、きっちり三人に「お疲れ様ですわ」と告げてログアウトするのだった。

 

 ⁎

 

 ガンプラが飾られた棚が目立つ一室。

 ログアウトしたキリシマはダイバーギアを外し、凝り固まった身体をほぐすように全身をひねる。

 GBNでは金髪お嬢様なキリシマだが、現実ではそうではない。

 前髪こそ同じように切り揃えているが、髪色は青みがかった長髪である。

 細く吊り上がった目つきと、Vの字に曲がった自信に満ちた口元が彼女の性格を表しているようであった。

 コウゴウジ・キリシマ。

 それが彼女の本名であり、GBNの開発計画に携わり、射出成形機の生産を担うフローレンス工業のご令嬢であったのだ。

 GBN内での自称エレガントお嬢様は決して誇張やキャラ付けなどではなく、事実であった。

 エレガントかどうかは別として。

 

「お嬢様」

 

 キリシマが座っていたGBNプレイ用のゲーミングチェアの後方、やや斜めの側から淡々とした声がかけられた。

 

「あら、ついに来ましたわね」

 

 キィ、とゲーミングチェアから立ち上がり、振り向く。

 そこには一人のメイドが佇んでいた。

 真っ直ぐに伸ばした背筋と、短くキッチリと揃えたボブカットがよく似合う。

 ミカガミ・アズマ。

 それがメイドの名前であった。

 キリシマと同じ華の女子高生でもあるのだが、どうにも大人びているというのがキリシマの素直な評価である。

 そんなアズマは訳あって、キリシマのメイドを兼業としている。

 

「それで、どうかしら? 答えはお決まりになって?」

「――はい」

 

 キリシマの言葉に、アズマは小さく頷き、真っ直ぐに見る。

 アズマの光を宿さない黒い双眸がキリシマを写す。

 そこには情熱も、活力も、気力も感じられない。

 まるで夜闇のようなアズマの双眸の理由をキリシマは知っている。

 

「私も、GBNというものに、触れてみようと、思います」

 

 アズマは言葉を探すように逡巡した後、区切りをつけてハッキリと、そう告げた。

 

 ⁎

 

 これは一人のお嬢様と、心に影を落とした親友との、ほんのちょっと一歩を踏み出す物語。




キリシマお嬢が以前使っていたアレックスは『アレックス・ファブニール』
簡潔に言うなら『チョバムアーマーをオールレンジ兵器にしたアレックス』ですわ。
原作のピーキーさを再現するほどに作り込んだ上でチョバムアーマーを攻防一体にしたビルド機ですわね!

システム・ファブニールについては『いやこれ絶対に違いますわよね?』と思いつつも『こっちではこーゆー感じなのですわ!』と脳内お嬢様が押し通しましたわ!
ところでデスパーダのキット化は何時になりまして?????


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0.9 ガンプラを買いに行きますわよ!

ちゃんと状況書き出しなさい問題。
次回はダイバーズ本編組のあの方とちょっと邂逅しますわよ!


 ミカガミ・アズマはじとっとした目付きで、小さく、しかし最大限の呆れを凝縮した溜息を吐いた。

 そんなアズマは明るめの茶色のブレザーが特徴的な高校の制服を着ていた。

 その下はロンググローブと前腿までを隠すハイソックスという出で立ちだ。

 アズマは現在、校門前でキリシマを待っていた。

 予定の時間はとっくに過ぎている。

 

「人が折角、決意したというのに」

 

 二度目の溜め息。

 学校でのキリシマは思いの外、忙しい。

 特に今の時期は全校ビルダーコンテストが控えており、キリシマの所属している模型部は熱気に満ち溢れている。

 部の方針としては、先輩たちが結果を残した余裕からか後輩に対して注力するようにしており、恐らく今頃は後輩たちから教えを請われているのだろう。

 何せキリシマは、かつて全日本ガンプラ選手権の頂の座を勝ち取り、世界大会総合五位に入った実績を持つハルオキ――ミカガミ・ハルオキから手解きを受けていたことがあるのだから。

 

「……」

 

 かつての師の名を思い出し、苦い感覚が胸に到来する。

 無意識に左手で握った右腕がギシリと音を立てた。

 ピロリン♪

 その時、スマホの通知音が鳴った。

 鞄の中から取り出し、慣れた手つきで素早く操作して、画面を確認する。

 

【ごめんなさい。もう少しばかり時間がかかってしまいますわ!】

 

 送られてきた文章を黙読し、三度目の溜め息を吐いた。

 

【それなら、先に目的地へ向かって待っております】

 

 流石のアズマにも我慢の限界というものがある。

 待つこと自体には慣れてはいるが、ただ何もせずに突っ立っているというのはどうにも落ち着かないものがあった。

 返信がきた。

 

【あうぅ~(汗) お、お待ちになって!】

 

 奇妙な顔文字付きだった。

 

「何が汗ですか」

 

 呆れ半分に呟くが、アズマの表情は薄っすらと笑んでいた。

 既読だけを付け、後は無視する。

 スマホを仕舞うと目的地の道筋を思い浮かべながら歩き出す。

 道中、何度か通知音が響いたが、最後の最後に短く『もうすぐ着きますので』と返して後は完全に無視を決め込むことにした。

 「悪いことをしましたかね」と思いつつも「たまには良い薬になるでしょう」と前向きに考え直すのであった。

 

 ⁎

 

「ここが……」

 

 目的の場所を目前に、アズマは佇んでいた。

 視線の先には――『THE GUNDAM BASE』と看板が掲げられた模型店が在った。

 キリシマ曰く、「ガンプラなら此処でしてよ!」らしいが。

 

「ぜひぃー……はひぃー……」

 

 当の本人はアズマの隣で、息も絶え絶えな状態でうなだれていた。

 あの後、キリシマは猛然としたスピードで駆けて、何とか追いついたのだ。

 そんな彼女を、アズマは落ち着くまで待っている。

 

「飲み物、飲みますか?」

「ぜひ、ぃ……」

「ゼフィランサス?」

「ぜひ、ぜひ……っ」

「ゼクアイン?」

「ぜ、ひぃっ!」

「冗談です。どうぞ」

 

 差し出した水の入ったペットボトルを引っ手繰り、腰に手を当て、一気に飲む。

 

「っつはぁー! 生き返りますわーっ!」

「おじさん臭い所作ですね」

「労いの言葉も欲しいのですけど!?」

「よく頑張りました」

「ちょっと塩対応じゃありませんこと?」

「うるさいですね」

「貴方、一応メイドですのよ?」

「強要ですか? パワハラですよ」

「しゃ、社会問題はごめんですわね! さて、大分落ち着きましたし――さぁ、行きますわよ!」

 

 言って、模型店へ進む。

 今度はキリシマが少し前に行く形だ。

 段々と近づくにつれ、視線に入る詰まれたガンプラの箱が増えていく。

 目前で、アズマの足が止まった。

 

「アズマ?」

 

 聞こえていないのだろう。

 視線が泳いでいる。

 若干、呼吸が荒い。

 何時もの癖で、左手で右腕を強く握っていた。

 ギシリ、と右腕が鳴った。

 

 ⁎

 

 

「……」

 

 アズマからしてみれば理不尽な現象だ。

 心では解ってはいても、身体が動かない。

 ガンプラ――ガンダムが嫌いと言うわけではない。

 むしろ好きだ。好きなはずなのだ。

 だからこそ決意したではないのか、と何度も心の内で言い聞かす。

 もう一度、きちんとガンダムに触れてみようと。

 もう一度、前を向いてガンプラに触れてみようと。

 もう一度――もう一度――

 

『ダメだよ』

 

 つと、声が聴こえた。

 見れば、アズマの横に一人の少女がいた。

 幼い少女だ。

 その声に続くように――

 

『もうあの子はダメだろう』

『可哀そうにねぇ』

『お姉さんも大変でしょうに』

『妹の我儘で巻き込まれて』

『あの時、あんなことを言わなければ』

『大事な腕をあんなにして』

『大切にされた技術を台無しにして』

『折角、見出された腕を無駄にして』

 

 様々な声が、黒い靄とともに聴こえてきた。

 冷や汗が背中を伝う。

 これは幻だ。

 そんなことは理解している。

 何度も見た光景。

 何度も聴いた声。

 無視してしまえばいい。それだけで解放される。

 それなのに身体は動かない。

 

『ガンプラじゃあ、誰も救えないんだ』

 

 ……ああ、どうして私は。

 

「アズマ!」

 

 左手を、握る感触。

 

 ⁎

 

 ハッと我に返れば、アズマの左手をキリシマが握っていた。

 

「お嬢様……」

 

 ロンググローブ越しから伝わる柔らかさと温かさ。

 ……あの時も、この人はこういう風に手を取ってくれた。

 

「そんなにビビらなくてもいいのですわ!」

「――は?」

「まぁ、ほら? アズマはアップデートを止めたオールドタイプですから?

 これほどのガンプラを目にしてビビるのも多少は、たしょーは理解できますわ!

 そりゃ久しぶりに見たら何かものごっそい量のガンプラと、しかも見たこともないモビルスーツがたっくさん詰まれていたら、ちょっと気後れしますものね!」

 

 などと捲し立てるキリシマ。

 別の意味で心配された挙句、ここまで一気に言われれば流石にアズマの癪に障るもので――

 

「は? 何ですかそれ? 確かに最近のガンダムは見てませんでけれども、一応少しでもと調べてはいます。

 そのくらいで気後れなどと、なめないでもらいたいですね。

 最近のは――確かMSV戦記ジョニー・ライデンだったような」

「え、待って待って、逆行! 逆行してますわよ!

 というか何ですその作品!? 帰還のほうではなくて? ソレわたくし知りませんことよ!」

「ネットの情報では、これが最近の作品だと……」

「ネットの最近は、まったく最近じゃありませんのよぉー!」

 

 やいのやいの。

 気づけば先ほどのまでの硬直は嘘のように解けており、少女の幻も消えていた。

 知らずにアズマの表情も、柔らかい微笑みを浮かべていた。

 その顔を知っているのはキリシマだけ。




MSV戦記ジョニー・ライデン、オススメわよ!
次回はビルドダイバーズ一期一話に相当しますので、わたくしも予習しておきますわ!
……オギャッ!? 一挙配信期間終わってましたわ!!!!!!!

因みにアンケート状況を鑑みて、今のところは『がっつり絡まないけど、要所要所で絡みつつ、お嬢様独自の物語を展開する』と言った感じにしようかと思いますわ!
一応、今回までアンケート設置しておきますので、投票よろしくおねがいいたしますわ!
一応活動報告にも『二次創作用改造ガンプラ案』を投稿してありますので、ご意見などはそちらにお願いいたしますわ!
さらに感想下さればテンション爆アゲになりますわ! ギロチンの鈴の音が聴こえるくらいに!


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1.0 ガンダム好き同士は惹かれ合うのでしてよ!

困った時のアストレイ問題。
ナナミおねーさんはこんな感じで大丈夫かしら?
因みにログインするまでが『Before』となりますので、キャラ紹介の次からは『After』へと移行しますわ!


「いらっしゃいませ~」

 

 足を踏み入れた途端、女性店員の声が響いた。

 元気の良い声音だった。

 

「ナナミ様、わたくしが来ましたわ!」

「お、キリシマちゃんですわー!」

「取ってつけたようなお嬢様語尾!?」

「アハハハ! それで今日はどんなご用?」

「おっと、そうですわ!」

 

 ナナミと呼ばれた女性店員の言葉に、キリシマはズズイッとアズマを前に押し出した。

 あまりの素早さにアズマはきょとんとした顔のまま、ナナミと目が合った。

 キリシマは、そんなアズマの左側から顔を覗かせ、肩に顎を置く。 

 

「――うぇぁっ!? あ、あの、お嬢様ぁ!?」

 

 こそばゆい感触と同時に状況を把握。途端にアズマの顔面が真っ赤に染まった。

 いつもの済ました顔が面白いくらいにアワアワと震えている。

 

「あら、通常の三倍速そうですわね」

「からかわないでくださいっ」

 

 グリグリと頬を押して退かされるキリシマ。

 その光景を見て、ナナミは「姉妹みたいね」と微笑んでいた。

 

「っと、こちらはアズマ。わたくしの親友で、GBNデビューが決定したので、本日はその為のガンプラを買いに来ましたの!」

「あの、ど、どうも……」

「はいどうも! アズマちゃんて呼んでも?」

「あ、はい。構いません」

「ん! ありがと、アズマちゃん!」

 

 ニッコリと笑うナナミに、アズマと段々と緊張が抜けてきていた。

 

「ところでナナミ様、例の予約していたガンプラ、入荷しまして?」

「あー、あれね。名前、何だっけ? 確かコロレロ……ザク、レロ……?」

「コルレルですわ!」

「そうそれ! 大丈夫、ちゃんと仕入れてあるから!」

「オホホホ、流石ですわ!」

 

 グッと親指を立てるナナミに、キリシマもガッツポーズで応じた。

 

「じゃあ、ちょっと持ってくるから、待っててねー」

「承知の助ですわ! それではアズマ、わたくしが待っている間に早速ガンプラ探しと洒落込んでていいですわよ!」

「わかりました」

 

 キリシマの言葉を受けて、アズマは足を動かす。

 

「とは言え、実のところ此処に来る前から、ある程度は決めておりまして」

「そうでしたの?」

「はい」

 

 頷き、定めたガンプラのある場所へ。

 アズマのガンダム知識は、大よそ『ガンダムSEED』、『ガンダムSEED DESTINY』および、そこから派生した幾つかの外伝作品で止まっている。

 それ以降の作品は、一応、少しばかりネットの情報から仕入れてはいるが、結局はそれまでだ。

 なので必然的に選ぶガンプラは絞られる。

 それは幼い頃、姉と共に初めて作った思い出のガンプラ。

 遡れば――まだGPDが主流だった頃に姉の知り合いがソレとよく似た赤色のガンプラを自在に操作していたのを見て、ひどく感動したものだ。

 だからこそ前を向くためにあえてソレを選ぼうと心に決めたのだ。

 ゆっくりと手を伸ばす。

 瞬間、幼い少女の幻が現れ、脳内に響くように言葉を繰り返す。

 

『ガンプラじゃあ、誰も救えないんだ』

 

 呪詛のようにアズマを縛り付ける言葉だ。

 もう何度も、何度もアズマを苦しめ、その度に振り払う努力を強いる重力のような幻影。

 しかし――

 

「決めたのです」

 

 強く力を込め、言葉を紡ぐ。

 横に押し退かすように右腕を動かし、幻影を払う。

 哀し気に、あるいは恨めし気な表情の幻影はぐにゃりと歪み、掻き消えた。

 そして、アズマの右手には――ガンプラ。

 

「己が呪縛を一本ずつ、着実に、確実に解いていくのだと」

 

 MBF-P01 ガンダムアストレイ・ゴールドフレーム。

 アストレイシリーズにおける一号機。

 その色はスペシャルを意味するゴールド塗装が施されてたモビルスーツ。

 全ての始めの機体であり、全ての始まりの機体。

 それがアズマの選んだ――かつて一番最初に作り上げたガンプラであった。

 右腕がギシリと鈍い音を立てた。

 ……まったく因果なものですね。

 あの頃はただカッコいいと思ったから。

 今は――どこか似た者同士だと、勝手にシンパシーを感じている。

 

「お嬢様、私はこれに致します」

 

 振り向けば、何時の間にやら戻ってきていたナナミがいた。

 キリシマと並んでアズマを見ている。

 

「――あの?」

「アズマ」

 

 みなまで言わせず、キリシマは手で制した。

 

「そうですわね。アズマも同じ学生ですから、そういう多感な時期もありますわ」

「は?」

「だ、大丈夫よ! さっきのカッコいいと思う! 思うわ――よ?」

 

 そこまで言われて、気づいた。

 

「――出てましたか、言葉に」

 

 恐る恐る尋ねると、二人は一拍の間をおいてから軽く頷いた。

 

「なるほど」

 

 反応を確認し、アズマはその場に屈み込んだ。

 ゴールドフレームのガンプラの箱で顔を隠し、頭頂部からは湯気が立ち昇りだす。

 

「あ、アズマが羞恥のあまりに茹っていますわ!?」

「わわわ、お水かける!? それとも氷!?」

「冷やし方がかなり物理的ですわね!?」

 

 あわあわ。

 忙しく騒ぐ二人のお陰で、立ち直りはしてもすぐには立ち上がることができないアズマであった。

 

 ⁎

 

 キリシマはコルレルを、アズマはアストレイ・ゴールドフレームを購入。

 それぞれ手にしたガンプラを見て、微笑む。

 アズマのは先ほど浮かべた柔らかな笑みではなく、いつも通りなぎこちのない固い笑みであったが。

 

「あら?」

 

 そんな時、キリシマのスマホが着信音とともに震えた。

 画面に表示された相手の名前を確認し、ほんの一瞬、目を細めた。

 

「アズマ」

「ご心配なさらず。お嬢様不在でも大丈夫です」

「そう? ――ナナミ様、アズマを頼めまして?」

「大丈夫。頼まれたわ!」

「えぇ、お願い致しますわ」

 

 頷き、着信に出る。

 

「御機嫌よう、わたくしですわ」

 

 アズマとナナミに軽く手を振りながら、外へ。

 

「――バグ? ラフレシアのアレですわね? え、違うんですの?」

 

 ⁎

 

「よしっ」

 

 キリシマを見送った後、ナナミが口を開いた。

 

「それじゃビルドゾーンに行って組み立ててみる?」

 

 ナナミの提案にアズマは首肯で応えた。

 とは言え、初めて来た場所なので実はよく解っていない。

 

「恐縮なのですが、案内お願いできますか」

「勿論!」

 

 得意気な顔でナナミが応える。

 

「ありがとうございます」

 

 この短いやり取りで、アズマは彼女が面倒見が良い人だという印象を抱いた。

 そして、アズマの視線が――ナナミがいつの間にか抱えていたトマトの山に向く。

 

「それは?」

「あ、これ? 実は此処の屋上でトマト栽培してるんだー」

「それ良いんですか?」

「良いの良いの。ちゃーんと確認も取ってあるから」

「なるほど」

「アズマちゃんも食べる?」

「ええ、後で一つ頂きます。――お嬢様の分を包んでもらっても?」

「もっちろんオッケーよ!」

 

 そんな会話をしている間に、ビルドゾーンに着いた。

 ビルドゾーンと言う作業感のある名称とは裏腹に、白を基調とした清涼感溢れる大部屋である。

 ナナミが先に入り、続いてアズマが。

 ……これから組み立てるのですね。

 緊張しているのだと自覚する。

 同時に、奇妙な高揚感もあった。

 それはアズマが忘れて久しい感覚である。

 

「空いてるところに座ってね」

 

 短い返事を返し、促されるがままアズマは一度、内部を見回す。

 既に二人の少年が席に着いている以外、客の姿はない。

 ……好きな所に座れるということは、却って迷いやすいですね。

 しかし、判断は早い。

 少年たちを目安に、そこから一スペース分離れた横の席を選んだ。

 チラリと横を盗み見れば、アズマの知らないガンダムが組み上がっていた。

 特徴的な肩パーツと、青と白が見事に調和した美しい造形に、アズマはつい見惚れてしまった。

 ナナミが小さく拍手を打っている。

 ……何でしょうあの機体? SEED系列っぽくはないですね。

 

「えーっと、ガンダムオーツー? 酸素?」

 

 ナナミが恐らくそのガンダムを名前を読む。

 ……エコロジーな雰囲気のガンダムですね。

 そう思った矢先に――

 

「ダブルオーガンダム! 店員なんだから少しは名前憶えてよーっ」

 

 即座に眼鏡をかけた少年が反応した。

 ……ダブルオー。そういえばそんなタイトルのガンダム、ありましたね。

 

「アハハ、ごめんごめーん」

 

 ナナミが気圧されながらも軽く謝る。

 それから傍に置いていたトマトの盛られた笊を持ち出す。

 

「上の農園で採れたトマト食べる?」

 

 視線がトマトに集まり、少しの間を置いて少年たちがそれを受け取った。

 そこでナナミがアズマの方に振り返った。

 

「あっ、そうだったそうだった。アズマちゃんにも一つ、はいどうぞ」

「――ありがとうございます」

 

 差し出されたトマトを受け取った。

 ジョニー・ライデン専用機を髣髴とさせる鮮やかな赤色が食欲をそそる。

 サラダに使ったらきっと映えることだろう。

 そんなことを考えて、ふと気づいた。

 少年たちの視線がアズマと――アストレイ・ゴールドフレームに向けられていたことを。

 

「ど、どうも」

 

 トマトを両手に持ったまま、小さく会釈した。




お嬢様は抱える悩みがほぼない状態なので必然的にアズマがメインになってしまいますわーっ!?
お嬢様要素が好きが方にはごめんあそばせですわーっ!
ついでに次回はキャラ紹介ですわ!


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登場人物
キャラクター(8/3更新)


簡易的ですが、登場人物ですわ!
ここから更に増えてきたら『主要人物』と『登場人物』で分ける予定ですわ。


【コンゴウジ・キリシマ】

 GBN開発計画に携わり、射出成形機の生産を担う大企業『フローレンス工業』のご令嬢。

 臨海都市に住む華の女子高校生。

 前髪を切り揃えた青みがかった長髪。吊り目。不敵な笑みが特徴的。

 性格は快活で図太い。

 世界で活躍していたビルダーの一人『ミカガミ・ハルオキ』からビルダーとしての手解きとGPDでの操作技術指南を受けていた。

 ビルダーとしての腕前はアズマの方が上だが、ファイターとしての実力はキリシマの方が上である。

 因みにフローレンス工業は以前にGPDの筐体の他、Gポッドの開発にも協力していた過去があり、またキリシマホビーショップなども経営している。

 ホビーショップの店舗名が自身の名前であることに対して、あまりの親馬鹿さに呆れてはいるものの、愛を感じてはいる。

 (GポッドはGPDより以前の産物で、圧倒的没入感で人気を博したが衝撃のフィードバック機能、ローカル通信のみ、一人一台に関するコスト問題により、次第に一台で複数人という手軽なGPDに取って替わられた。後にGポッドのデータがGBN開発の際にサンプルとして役立つことになる)

 

 GBNでのダイバーネームは『キリシマ』

 金髪縦ロールな豊満な女性アバターで、現在はソレスタルビーイングの女性服を着ている。

 使用ガンプラは様々で、その時々によって変わる。

 確認される中で『アレックス・ファブニール』『ギャン・スピアヘッド』『コルレル・スヴェイズ』など。

 長所と短所がハッキリとしたピーキーな性能の機体を愛好し、使用ガンプラの殆どもピーキーな性能をしている。

 ある意味で意外性を内包した改造機で、時には自分よりも高ランクのダイバー相手に勝利を収めることから『ジャイアントキリング』とも呼ばれている。

 それ以外では『カテジナお嬢』『カテシマ』『猪カテ公』などと呼ばれている。

 実力自体はあるのだが、使用するガンプラの癖やフォースメンバーが自身一人のみであること、さらに自身はそれほど競争に興味がないことが合わさり、未だにBランクで燻っている。

 

 

【ミカガミ・アズマ】

 キリシマの同級生で、コンゴウジ家のメイドとして居候している少女。

 切り揃えた桔梗色のボブカットとじとっとした目付きが特徴的。

 無愛想ではないが、表情の変化が小さい。

 右腕――肘から先が義手となっている。

 性格は物静か。普段は冷静を装っているが、意外と茶目っ気がある。

 世界で活躍していたビルダーの一人『ミカガミ・ハルオキ』の養子。

 その技術を受け継ぐ数少ない人物で、同じ存在として姉のような人物がいた。

 ファイターとしての実力はキリシマの方が上だが、ビルダーとしての腕前はアズマの方が上。

 ある出来事を切っ掛けに『自分の理想のガンプラ』ではなく『姉の理想としたガンプラ』しか組めなくなり、そこから楽しむという気力も欠けて段々とガンプラからもガンダムからも離れてしまう。

 それでもガンダム熱は冷めやらず、それを補うようにガンプラ以外の模型やボトルシップを作っていたりする。

 ハルオキの伝手でコンゴウジ家に引き取られ、そこでキリシマと出会う。

 長年のキリシマの激昂もあり、最近になって少しずつであるが、ようやく向き合う決心をつける。

 メイドではあるが、生粋のメイドではないため割と雑。

 

 GBNでのダイバーネームは『アズマ』

 切り揃えた黒髪短髪の少女アバターで、『ガンダムEXAVS』出典のメイド服を着用。

 現在の使用ガンプラはアストレイ・ゴールドフレームの改造機、アストレイ・ジャグラスナイパー。

 

 

【ミカガミ・ハルオキ】

 かつて全日本ガンプラ選手権で頂を勝ち取り、世界大会総合では五位に入るほどの実績を有するガンプラビルダー。

 同時にGPDが主流だった全盛期には『ガンプラマイスター』と呼ばれる人物を始め、多くのファイターたちと激闘を演じてきたガンプラファイター。

 老体ながらも衰えを見せず、その頃は老いてなお益々盛んな人物であった。

 現在はアズマの不幸から気力を失い、挙句は病に伏し、病院の一室で横たわっている状態にある。

 キリシマ曰く、『技術者としては間違いなく一流』

 

 

【アズマの姉(ミカガミ・ハバキ)】

 ミカガミ・アズマの姉で、ミカガミ家の血を引く女性。

 養子として迎えられたアズマを実の妹のように可愛がり、同時にアズマがガンプラから離れる切欠となった人物。

 ハルオキの技術を継ぐもビルダーとしての腕はそれなり。

 しかし、その分GPDにおいては高い能力を発揮していた。

 使用していたガンプラはアストレイ・ブルーフレームに宇宙世紀のモビルスーツをミキシングした改造機。

 

 

【マスクの女】

 キリシマが稼働テストに赴いた先で開催されていたショップ大会の闖入者。

 Gのレコンギスタのマスク大佐が付けていた仮面で素顔を隠していた。

 フルスクラッチのガンダムヌーヴェルを披露し、参加者のガンプラ魂に更なる火を灯し、自身はバトル終了後に忽然と姿を消す。

 果たしてその正体は……?

 

 

【コンゴウジ・カオル】

 コンゴウジ・キリシマの母。

 若かりし頃はワールドクラスGPD大会バトル部門で世界総合三位にまで昇りつめ、しかし一度も一位を取れなかったことから『無冠の女王』と呼ばれ、今なお一部の界隈で語られるレジェンドファイター。

 普段はお淑やかな性格だが、一瞬でも火が付くと粗暴な口調になる激情家。

 最後に使用したガンプラはSBガンダムX1(アマクサをクロスボーンガンダムX1風に改造し、特徴的なX字スラスターを排除した代わりに真っ直ぐなロッド型兵装を装備した改造機。SBの意味はストレートボーン)

 

 

【ナルカミ・スズメ】

 GBN開発に携わった研究者の一人。小柄な女性。

 作中で名前こそ出ていないが、1.0話でキリシマに電話をかけてきた人物。

 GBNガードフレームの基礎を作り上げた。

 座右の銘は『一人は皆のために、皆は一人のために』

 

【ナルミ】

 ナルカミ・スズメのダイバールック。

 灰色の狐耳とツインテールに結んだ髪、気だるげなジト目、袖の余った白衣を纏った人外系少女姿の合法ロリ。

 一人称は私。二人称は○○助手。三人称は諸君。

 個人Gチューバーとしてバグの調査を主体に活動していたが、中々対応されないバグに苛立ちを感じてしまい、デバッカー権限を付与した状態で社内のGBNブースからログインしていたところ、それがバレてしまい、紆余曲折の末、3ヵ月の休止を経て運営公認Gチューバーとして復帰した経緯を持つ。

 その際に行った『謝罪&経緯説明配信』は今でもちょっとした語り草として話題に上がる。

 『ゼロの旧ザク』イベントの際に入手した『紙一重のニルス』による『50%の確率で射撃攻撃を回避する(発動間隔1秒)』ユニークスキルと、索敵スキルを極めて入手した『隠密看破』による『策敵範囲内のステルスを一体無効化する(発動間隔9秒)』スキルによる索敵役としてはかなりの実力を有している。

 持ち前のマニューバと紙一重で弾幕を掻い潜り、偵察機でありながら泥臭い戦い方で付いた仇名は異能生存体。

 乗機は『ザク・フリッパーB(ボトムズ)』『ワークフレーム』

 

 

【ガン・アトス】

【シャッガン・ルネ】

【キャノン・ボルトス】

 フォース『ヘル・ガンズ』のメンバー。

 テンガロンハットに葉巻を咥えたカウボーイ風な優男がガン・アトス。

 迷彩柄のヘルメットを斜めに被ったツインテールで小柄なカウガールがシャッガン・ルネ。

 バンダナを巻いた、顎髭の濃いガンマン風な大男がキャノン・ボルトス。

 中堅Bランカーとして相応の実力を有し、全員がデナン系を始め、クロスボーンのモビルスーツを愛好している。

 ただし名前の通り機体の特性は全て中距離~遠距離型に偏っており、近接戦に弱い部分を突かれやすい。

 因みにルネはザビーネ・シャル派。



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ミカミ・リクがGBNに出会った後【After】
0.『前夜』


区切りどころ解らない問題。


「へぇー、それじゃあアズマさんもGBNデビューのためにガンプラを?」

「はい。久しぶりですので、最近のガンダムは解らないのですが」

「えっと、SEEDくらいまででしたっけ?」

「そうです。全てを網羅しているわけではありませんが。アストレイまでは一応」

「それでゴールドフレームなんですね!」

「ええ、良いですよねアストレイ。ですが、今は特にこの――」

 

 未開封のガンプラ箱に視線を落とし、

 

「開ける前のワクワク感に勝るものはなく」

「「わかります!!!」」

 

 アズマはビルドゾーンで出会った二人の少年と会話を弾ませていた。

 一人の名前はミカミ・リク。

 中二になったということで念願叶ってGBNデビューすることになったという。

 好きを好きだと素直に語るその姿と、真っ直ぐな眼差しがひどく眩く思えた。

 もう一人の名前はユッキーことヒダカ・ユキオ。

 リクの友人である少年で、豊富なガンダム知識を有し、その語り口からも熱烈なガンダム愛を感じることができるほどだ。

 少し離れた所ではナナミは三人の様子を微笑ましく見守っていた。

 因みにアズマはフルネームでの自己紹介はせず、単に「アズマ」とだけ名乗ったのみだが、三人とも気に留める様子はなかった。

 

「そういえば」

 

 トマトを齧りながら片手で手際よく組み立てるアズマを見ながら、リクがユッキーに問う。

 

「ユッキーは、使うガンプラどうするの?」

「んー。僕はジムⅢで行こうと思うんだ」

「あぁ、それって前にうちの店のコンテストで入賞してたやつ?」

 

 ナナミの言葉にユッキーは「うん」と頷いた。

 

「初めて賞を貰ったガンプラだし、思い入れもあるから。あれを改造して使うつもり」

「あれカッコよかったもんなぁ~」

「――気になりますね。そんなにカッコよく?」

「それはもう! 凄かったですよ、ユッキーのジムⅢ!」

 

 えへへ、と照れて頭を掻くユッキー。

 

「そ、それよりさ」

 

 褒め殺しには敵わないとばかりに、話題を変えようとする。

 

「リッくんもそうだけど、アズマさんもどうするんですか? 改造のほう」

 

 改造。

 その二文字にリクは「ん?」と小首を傾げ、アズマは作業の手を止めた。

 

「――特に考えていませんでした。リクさんは?」

「うーん、俺もまだそこまでは」

「装甲とか武器パーツのちょっとしたミキシング、色替えだけでも自分のオリジナルっぽくなるよ。機体性能も変わるらしいし」

 

 ユッキーの説明に、二人は一度互いの顔を見合わせ、トマトを齧った。

 

「これは課題ですね」

「ですね」

 

 アズマの言葉に、リクは苦笑した。

 

「あのー」

 

 ここでナナミが口を挟んだ。

 

「さも当たり前のようにやってるけど、アズマちゃん、片手で組み立ててるの凄くない?」

「えっ?」

「あっ、そういえば!」

「あまりにも自然体だったから!」

 

 そこから再び、賑やかな時間が始まった。

 

 ⁎

 

「わかりました。わたくしの方でも調査をしてみますわ。――えぇ、それでは」

 

 電話越しでの会話を終えて、キリシマは戻りの道を辿っていた。

 そこで何を思ったか、僅かに顔を上げて、天上を見やる。

 それはキリシマが過去を回想する際に必ず挟む動作であった。

 

 ⁎

 

 思い出すのは小学校の頃。

 まだフローレンス工業が小さな規模だった頃。

 あの頃のキリシマは今ほど活発ではなく、どちらかと言えば大人しい子供であった。

 誰ともつるまず、外で遊ばず、かといって読書を嗜むということもしない。

 ただ己の中の理想を絵として描きだし、それを粘土や紙を使って形にするだけの日々。

 それがキリシマにとっては堪らなく至福の時間であったのだ。

 

『キリシマちゃんは、みんなと遊ばないの?』

 

 同級生にそう言われた時、キリシマは理解できなかった。

 

「これが一番、楽しいですので」

『でも、おかしいよ。みんな友達と遊んでいるのに。ずっとそればっかり』

「――どうして、態々あなたたちと遊ばないといけないの?」

『だって、いつも一人で、普通じゃないもん』

『いっつもいっつもお絵描きとか粘土ばかりじゃない。そんなのつまらないよ』

「わたしは楽しいからいいのよ」

『楽しくないよ』

『可愛くないよ』

「そんなことっ」

 

 今にして思えば、そんなものなのだろうと思う。

 それが子供――小学生の感性だ。

 結局、あのまま口論になって、取っ組み合いになって、結果――独りになった。

 先生にも迷惑をかけたし、親にもこっぴどく叱られた。

 幸運だったのは、キリシマの好きが否定されることはなかったことだろうか。

 けれど、大喧嘩の後に自覚したのは、寂しさであった。

 考えている時は楽しい。

 描き出している時も楽しい。

 作っている時はもっと楽しい。

 完成した瞬間はものすごく嬉しい。

 けれど、風通しの良い寂しさが一陣、胸を吹き抜けていく。

 どんなに出来の良い理想が実現できても。

 どんなに満足のいく夢想が形作れても。

 キリシマの胸は充たされることはなかった。

 認めたくはなかったが、きっとそれは好きを共有できる存在が周りにいなかったからだろう。

 ……そう、あの時までは。

 出会いはいつだって突然だ。

 何時も通り、独りで考え、描き出し、形作る。

 そんな慣れ親しんだ日常。

 けれど、その日は気分を変えて、少し道草をしようと思った。

 何時もは通らない道を選んで、何時もは行かない場所に着く。

 その先に在った小さな模型店。

 名前は何と言ったか、憶えてはいない。

 けれど、そこに飾られていた物はよく憶えている。

 RX-78 ガンダム。

 キリシマはすぐに心を奪われた。

 幼心に出来栄えや細かいところなどはまだ解っていなかったが、それでもソレが素晴らしい完成品であることは直感で理解していた。

 

『だれ?』

 

 窓に張り付かんばかりに食い入って見ていたのがバレたのか、模型店の扉が開いた。

 そこから顔を覗かせ、尋ねたのはキリシマと同じくらいの女の子。

 

「わたし、キリシマ! コンゴージ・キリシマって言うの!」

『え、あ、うん。そうなんだ』

 

 ハキハキと名前を紹介したキリシマに、女の子は一瞬たじろいだ。

 

「あの、これ! この白いの!」

『――ガンダムのこと?』

「それですわ! これ、あなたが!?」

『う、うん……』

「すごいわ! すばらしいわ!」

『そ、そうかな?』

「ええ! そうですわ! ねぇ、あなた、お名前は?」

 

 キリシマの勢いにおっかなびっくりな反応をしつつも、女の子はどこか満更でもないような表情で照れながら、自身の名前を告げた。

 

『――アズマ。アマツ(・・・)・アズマ』

 

 それがアズマとの最初の出会いであった。

 

 ⁎

 

 『THE GUNDAM BASE』に戻ってきたキリシマは、慣れた足取りでビルドゾーンにやって来た。

 

「アズ――」

 

 名前を呼んで踏み込もうとし、思わず隠れてしまった。

 何故なら――

 

「それで、ここからが盛り上がるところで!」

「ユッキー! ネタバレ! そこネタバレだから控えめで!」

「むむむ、平和のために武力を行使するCB……確かに見方によっては正義かもしれませんね」

「矛盾しているからこそ、ファーストシーズンは彼らの動向が気になるんですよ」

「そうそう! 特に世界三大国が団結して行う大規模なガンダム鹵獲作戦なんかは――」

「ユッキー!? そこもネタバレになっちゃう勢いだから!」

 

 見知らぬ少年二人と会話を弾ませているアズマの姿があった。

 その瞳には若干ではあるが光が宿っていた。

 それを見て、キリシマは物陰に隠れたままほくそ笑んだ。

 

「フフ、アズマもああしていれば、ちょっと表情の硬い少女ですわね」

 

 完全に後方保護者面である。

 ここで下手に自分も参加すれば、アズマはキリシマの後ろに隠れようとするだろう。

 ……あの子にはそういうところがある。

 親しい誰かが傍にいると、アズマはその影に隠れがちなのだ。

 人見知りするほど内向的というわけではないのだが。

 

「あ、戻って来てたんだ」

「うひゃひっ!?」

 

 背後からいきなり声をかけられて 素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「な、ナナミ様!?」

「おかえりですわ~。用事は済んだの?」

「ただいまですわ。えぇ、済みましたの。あの子たちは?」

「ん? ああ、リッくんとユッキーのこと?」

「ですわ」

「二人とも旧知の仲でね、アズマちゃんと同じでGBNデビューするのですわ~♪」

「そうでしたの。それは奇遇ですわね!」

「混ざりにいかないの?」

「折角のGBNデビュー者同士ですもの。わざと経験者が割って入るほど無粋ではありませんわ」

「そんなものかな」

「そんなものですわ」

 

 それに、と付け加える。

 

「あんまりわたしくしが傍に居ても、それはそれで妨げになることもありますし」

「ふぅーん。――何だか今のキリシマちゃん、お母さんっぽいよね」

「ブフゥっ!? ご、ご冗談をっ」

「アハハハっ」

 

 思わず噴き出した。

 結局、三人が解散するまで、キリシマはガンプラを見て回った。

 その途中でユメサキ・エモと言う少女と知り合ったりもした。

 

 ⁎

 

 屋敷という表現が実によく馴染むコンゴウジ邸に帰宅した二人は、それぞれガンプラの改造を行うために自室に籠ることになった。

 パタン。

 アズマは扉を閉じて、部屋の電気を点ける。

 内装は壁一面に棚が敷き詰められ、模型やボトルシップが並べられていた。

 ガンプラは殆ど置いていない。

 唯一、作業机の隣に置かれたレトロ調の棚に、写真立てを挟むように数機のガンプラが飾られていた。

 陸戦型ガンダム。

 ジム・スナイパーEX。

 リーオー。

 SDクリスタルガンダム。

 コンバットガンダム。

 アストレイ・ブルーフレーム

 アストレイ・ミラージュフレーム。

 等々、いずれも何かしらの手を加えられたビルド機である。

 アズマは作業机の上に買ってきたアストレイ・ゴールドフレームを置き、写真立てに視線を向けた。

 写っているのは数人の青年。

 小太りでのほほんとした笑顔を浮かべている少年。

 赤髪で、照れ隠しか背を向けようとしている少年。

 角刈りでガタイの良い、太い両腕を自慢気に挙げている少年。

 眼鏡をかけた、少し疲れた顔色で小さくピースしている少年。

 澄ました顔でサングラスを額に上げた銀髪の少女。

 そして――ウェーブがかった桔梗色の、晴れやかに笑う少女。

 

「お姉ちゃん……」

 

 硬い口調とは異なり、どこか幼さを滲ませる呟き。

 視線をゴールドフレームに移し、ユッキーの言葉を思い出す。

 ……自分の、オリジナルですか。

 脳裏に浮かんだ言葉を、しかしすぐに振り払う。

 ……私のオリジナルは。

 

「お姉ちゃんの――」

 

 区切り、

 

「――姉さんが理想としたガンプラだから」

 

 ⁎

 

 一方、キリシマは自身の机で組み上がったコルレルを眺めながら、考えていた。

 

「今回はどういったコンセプトにいたしましょう」

 

 知る人ぞ知るコルレルだが、一般的にはマイナーモビルスーツの枠組みだ。

 運動性を重視した細身のプロポーションは従来のモビルスーツとは一線を画している。

 鉄血系で言うところのガンダムフレームよりもスカスカの腹部がとにかく目を惹く。

 

「ふむ。そうすると、鉄血風味に仕上げるのが楽しそうですわね!」

 

 ガタリ。

 椅子から立ち上がり、乱雑に積まれた雑誌の中から鉄血特集の物を引っ張り出す。

 さらにガンプラの飾られた棚の中で『鉄血ゾーン』と名札が掲げられた段から組み立てられた三機のヴァルキュリアフレームを取り出す。

 これらを参考に、鉄血風コルレルに改造しようという魂胆である。

 目標は決まった。

 

「後は世界観を合わせて武装の選別と、――塗装は渋みがある方が断然らしいですわ」

 

 ここまでくると興が乗る。熱が迸る。

 

「ヴァルキュリアフレームという設定を捏造して……」

 

 開いたノートに理想図を描き、そこから実際のパーツを比べて擦り合わせていく。

 

「持ち前の機動力は落とさず、防御力は増やさず……フフフ、最高にピーキーですわね!」

 

 抑えきれない笑みと怪しげな笑い声を零しながら、キリシマの手はどんどんと物事を進めていく。

 描かれるのはヴァルキュリアフレームへと変貌したコルレル。

 書かれた名称は――コルレル・スヴェイズ(震わす者)

 

 そして夜の帳が上がりゆく。




序盤辺りはがっつり絡む予定なのでご承知くださいませですわ!


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1.0『WELCOME TO GBN/ログイン』

ログインまで冗長すぎた問題。
後半はおまけで書いたお嬢様の一部始終ですわ!


 それは何時の頃の記憶だっただろうか。

 

 息を切らして白い廊下をひた走る

 注意の声すら聞こえない。

 足が痛い。

 わき腹が痛い。

 それでもなお足を止めることは許さない。

 怒られるのは覚悟の上だ。

 目的の白い扉が見えた。速度を緩め、落ち着かせるように深呼吸。

 開けた扉の先、清潔なベッドの上には、包帯に巻かれた少女――アズマがいた。

 

「アズ――ッ」

 

 名前を呼ぼうとして――気づいた。

 アズマの右肘から先が欠けていたことに。

 右腕を失った痛ましいその姿に、キリシマは一瞬、言葉を忘れた。

 ぼんやりと、虚ろな表情のままアズマがこちらを向いた。

 ひどく憔悴しきっていた。

 

「よかった……本当に……」

 

 無事で、とはとても言えなかった。

 ゆっくりと慎重な足取りでアズマの傍に寄り、包むように左手を握る。

 温かった。そして、微かに震えていた。

 

『私は――私が――』

 

 アズマが掠れた声でぽつりと呟いた。

 けれどそれきりで、後は言葉の代わりに涙が零れた。

 ぽろり、ぽろり。

 大粒の涙を流して呻くアズマを、キリシマは優しく、そっと抱きしめた。

 生きている。この子はちゃんと生きているのだ。

 

 それは『呪い』がアズマを縛る少し前の記憶。

 

 ⁎

 

 設定した時計のアラーム音で、キリシマは目が覚めた。

 どうやらあのまま作業机に突っ伏したまま寝落ちしてしまったらしい。

 

「また、あの時の夢を……」

 

 溜め息を吐いて起き上がると、身体のあちこちが痛かった。特に首が。

 薄っすらと有機溶剤特有の臭いが染みついたジャージ姿のまま、軽いストレッチを行う。

 ペキパキと関節が鳴り、筋肉が伸びる感覚が大変心地よい。

 

「ちゃんとベッドで寝ないと駄目ですわね」

 

 着替えを準備しつつ、作業机を見る。

 そこに在るガンプラを確認し、自然と口角が上を向く。

 

「楽しみですわね」

 

 臭うジャージを脱ぎ、下着姿のままシャワーを浴びに行こうと部屋から出る。

 

「おはようございます。お嬢さ――まっ!?」

 

 先に起きて朝食の準備をしていたアズマとバッタリと鉢合わせしてしまった。

 早朝からメイドにとことん叱られるお嬢様の姿がそこにあった。

 勿論、シャワーでさっぱりした後で。

 

「まったく。いくら我が家の中とは言え、お嬢様は少し不用心すぎます」

「わたくしが言うのもあれですけど、今の少しで済みますの?」

「夏祭り、浴衣、下着なし」

「ちょっ!? 黒歴史を晒すのは外道ですわよ!? ノータッチドントアンタッチャブル!」

 

 身振り手振りでストップをかけるキリシマをアズマは華麗にスルーし、用意した朝食をテーブルの上に並べる。

 半熟ベーコンエッグ。

 半盛りのごはん。

 わかめの味噌汁。

 デザートのバナナ。

 お嬢様チックな豪邸に住み、自室以外はお嬢様チックな内装の、お嬢様チックな朝食は――実に庶民チックであった。

 

「バナナは大安売りでしたので」

「わたくし、嫌いではないのですけど、そのままはあまり好きではないですのよ」

「意外ですね。何でも食べるという意味での悪食かと思っていました」

「貴方、時々すごく辛辣なこと言いますわね!?」

「前からです」

「そうでしたわ!!!」

「それでは、いただきます」

「はい!!!!!! いただきます!!!!!!」

「お嬢様、醤油を取って下さい」

「一応わたくし貴方の主なのですけど???」

「それだけ信頼しているということです」

「もうっ、仕方ありませんわね!!!」

「それとうるさいです」

「はい……」

 

 キリシマとアズマの朝食は妙に騒がしく、そして静かだった。

 ……美味、ですわ。

 アズマの手料理に舌鼓を打ち、空腹を満たすのであった。

 

 ⁎

 

 模型店『THE GUNDAM BASE』に寄ると、声が聞こえてきた。

 既に盛り上がっているようだ。

 

「こんにちは」

「アズマちゃん! いらっしゃい」

「「こんにちは!」」

 

 アズマが挨拶と共に入ると、ナナミ、リク、ユッキーの三人が元気よく言葉を返してくれた。

 三人の位置取りからするに何かを囲んでいるようだ。

 囲いの中心には――ガンプラがあった。

 

「ダブルオーガンダム。それがリクさんの――」

 

 その姿は先日見た時とは異なっていた。

 

「はい! これが俺のダブルオー。――ガンダムダブルオーダイバーです!」

「ガンダム、ダブルオーダイバー……」

 

 近づき、腰を曲げてまじまじと観察する。

 記憶している限り素体となったダブルオーとの違いを比較し、その作りに自然と言葉が溢れる。

 

「原型を色濃く残しつつも他のガンプラからのパーツを組み込み、しかしそれが邪魔にならず、さりとて主張し過ぎず、絶妙なバランスによって成立しており、実に正直な作り……出会って日の短い私が言うのもあれですが、実にリクさんらしいガンプラだと感じます」

「へへへへ、ありがとうございます!」

 

 つらつらと述べられたアズマの言葉に、リクは照れ臭そうに鼻を掻いた。

 

「あれ、そういえばキリシマちゃんと一緒じゃないの?」

「はい。お嬢様は自社系列のホビーショップに新しく設置するGBNの稼働テストで、本日は此処ではなく、そのホビーショップからログインするということです」

「えぇ~! そっちにも新しくできるの!? うち大丈夫かな~」

「とは言っても、此処とは離れた場所ですし、問題はないかと」

「まぁ、元々あんまりお客さんきてないから大丈夫なんじゃない?」

「ユッキー!?」

「今日も俺たち以外、殆どいなかったから」

「リッくんまで!?」

「新設祝いに割引券ならびに無料引換券を配布するそうなので、どうでしょう二人とも、一度ご来店しては」

「ちょっとちょっとちょっとぉ!?」

「頑張らないとですね」

「もーっ、もうしてるわよー!」

 

 リクとユッキーにはキリシマのことを簡単に紹介していた。

 本人は気を利かせて先日の会話に混ざらなかったので、二人とも対面はしていないものの、やはりコンゴウジという名前は有名なようだ。

 特にユッキーの食い付きとは凄まじいものであったと憶えている。

 コンゴウジ――コンゴウジ夫妻が経営するフローレンス工業はGBN開発に携わっているものの、こちらはさほど一般的ではない。

 有名なのは射出成型機の生産シェアを半分近く占めていることと、系列のホビーショップではGポッドならびにGPDのバトル台を多く設置していたことぐらいだろうか。

 今では小さな古寂びたゲームセンターや模型店にしか置いていないGPDだが、フローレンス工業のホビーショップでは比較的新しい状態で未だに現役を張っている店舗もあるという。

 そういう部分を含めて穴場としてもそれなりに有名だとはユッキーの言である。

 因みにキリシマ曰く、『娘の名前を店名に掲げるのは止めてほしかったですわ』

 

「まったく、最近の子は言葉の棘が鋭いわねぇ」

 

 ナナミはやれやれと肩を揺らしつつ、

 

「ま、それはそうと、三人とも――」

 

 三角形の板を三枚取り出した。

 GBNにガンプラを持ち込むために必要なアイテム――GPスキャナだ。

 

「初GBN、いっちゃいますか!」

「「うん!」」

 

 器用なウィンクとスマイルと共に放たれたその言葉に、リクとユッキーは期待を多分に含んだ笑顔を浮かべて、アズマは緊張を乗せた顔色で「はい」と少し遅れて頷いた。

 

 ⁎

 

 案内されたGBNのプレイルームは想像以上に近未来的だった。

 メタリックシルバーで彩られた室内はどこかの艦内か基地内を髣髴とさせる。

 左右にそれぞれ三台、計六台のダイバーギアとその筐体が設けられていた。

 

「「わぁー」」

 

 その光景に先を進むリクとユッキーの二人が笑顔のまま感嘆としていた。

 

「これがGBN……」

「そういえば、アズマさんのガンプラ――」

「そういえば、ユッキーさんのガンプラ――」

 

 気づいたように振り向いたユッキーと言葉が被った。

 

「ああ、リクさんのダブルオーに夢中で忘れていました」

「恥ずかしながら僕も同じで」

 

 言って、苦笑しつつ互いのポーチから自身のガンプラを取り出した。

 ユッキーのジムⅢ。その改造機、その名をジムⅢ・ビームマスター。

 オレンジに染められた機体は後衛支援機となっていた。

 アズマのアストレイ・ゴールドフレーム。その改造機、その名をアストレイ・ジャグラスナイパー。

 背部にジム・ジャグラーから流用したボールユニットをセンサーポッドに改造した狙撃機となっていた。

 

「ジム・ジャグラー!?」

「はい」

「凄い……パーツもそれぞれ違和感なく取り付けられているし、チョバムアーマーも一つ一つ手入れされてる……」

「ありがとうございます。腰部にマウントした折り畳み式スナイパーライフルは接続部にマグネットアクションシリーズのマグネットを使用し、多少手から離れてもすぐに吸い付いて元に戻るようにしてあります」

「マグネット! そういう発想もあるのか……」

「ユッキーさんも素晴らしい出来だと思います。特にジムⅢベースで素体の頭部周辺を独自に改修、ビームマスターの名称から察するにビーム兵器を多分に含みつつ、装甲を増やし機体の安定性を確立。堅実でしっかりとしていますね」

「え、えへへ、ありがとうございます」

 

 そこからリクも参加し、改めて三人のガンプラを評価し合った。

 一通り会話を終えるといよいよとばかりに三人は左側の席に並んで座り、ダイバーギアを被ると、GBNが起動する。

 バイザーを通して表示される文字列とシステム音声に従い、セットしたGPスキャナの上にそれぞれをガンプラを設置。

 スキャンが始まり、小気味の良い音と共にスキャン完了の音声が流れた。

 瞬間、視界が吸い込まれるように変化する。

 

「!?」

 

 ビリっとした感覚が全身を奔り、無意識に肩がはねた。

 その時には既に三人の意識はGBNに電脳空間にダイブしていた。

 飛び出したのは青い空間。

 流れるように仮想の身体が構築される。

 右にも左にも上にも下にも何もない。

 奇妙な浮遊感に戸惑うものの、同時に高揚感があった。

 

『WELCOME TO GBN』

 

 目の前に現れた三角形のエフェクトに文字が表示された。

 ……これが。

 その中心に吸い込まれるように否応なく身体が進んでいく。

 不思議と嫌悪感はなかった。

 

『Will YOU SURVIVE』

 

 その表示を最後に、リクが、ユッキーが、アズマが――光に包まれた。

 

 ⁎

 

 一方その頃――キリシマが出向いたホビーショップ。

 

「オーッホッホッホッホッホ!」

 

 馬鹿みたいな笑い声を恥ずかしげもなく店内に轟かせながら、キリシマはGPDをやっていた。

 何とこのお嬢様、この店で偶々催していたショップ大会に乱入、あまつさえGBNの稼働テストを権利として優勝賞品に追加したのだ。

 一応許可は取ってあるので問題はない。

 父親はかなり困惑していたが、母親はめちゃくちゃノリノリでGOサインを出した。

 

『は、速いっ!?』

『だが一発でも当てればこっちのもんだっ!』

「その程度の反応速度っ! ――な、中々ですわねっ!」

 

 キリシマの駆るガンプラはコルレルの改造機であるコルレル・スヴェイズ。

 ナナミに頼み込んで入手したBD発売記念に期間限定で発売されていたコルレルを、鉄血のオルフェンズに登場するモビルスーツシリーズの一つ『ヴァルキュリアフレーム』に似せて作り上げたミキシングビルド機である。

 装甲はそのままに、細長いウィングバインダーを兼ねる剣鞘を腰に八基取り付けていた。

 高速機動と持ち前の運動性でフィールドを疾走しながら、レイピアによる刺突で的確に急所を狙ってくる姿は、青白いカラーリングからまさしく一条の流星の如しであった。

 レイピアが折れればウィングバインダーに収めた新たなレイピアを引き抜き、手早く補充。

 しかもこのレイピア、ただのレイピアではない。

 よくよく見れば薄っすらと両刃となっていた。

 即ち、レイピアの形状は完全なブラフ。

 それは突く以外にも切り裂くことさえ可能としていた。

 

『所詮は細腕っ! この防御力ならばっ!』

 

 立ち塞がったのはFAZZ。フルアーマーダブルゼータではない。

 遠距離型ではあるが、左腕にボルト式パイルバンカーを内蔵したロマン改造を施されていた。

 射撃兵装で遠くの敵を殲滅し、近づかれれば強固に仕上げた装甲で攻撃を弾き、パイルバンカーの餌食とする。

 しかし――

 

「突撃あるのみですわぁぁぁぁぁっ!!!」

『ぬ・お・お・おっ!? はやいっ! 想像よりも、さらにっ!?』

 

 振り抜かれるレイピア!

 FAZZのダブルビームライフルが銃身から斬り飛ばされ、そのまま装甲に届く。

 パキィィン――

 レイピアが半ばから砕け、折れた。

 

「ッ!?」

『もらったぁっ!』

 

 その瞬間を好機と捉えたFAZZが、パイルバンカーをコルレル・スヴェイズ目掛けて射出!

 

『決まったっ!』

 

 確信。

 瞬間、コルレル・スヴェイズが跳んだ。

 

『なっ!?』

 

 まるで羽毛のようにふわりと、しなやかに腰を曲げて。

 射出されたパイルバンカーは虚しく空を貫いた。

 コルレル・スヴェイズは着地と同時、鞘からレイピアを抜かず、そのままパージ。

 鞘に納めたまま、それをFAZZの胸部に突き立てた。

 そして――

 

『なにを……!?』

「ロマンはこっちにもありましてよっ!」

 

 カチリ。

 鞘の内側で起動音が鳴り――

 

「ダインスレイヴっ!!!」

 

 バシュウッ!

 仕込まれていた電磁誘導加速装置により射出されたレイピアがFAZZを貫いた。




因みにコルレルを含むゲテモノ四天王はガンダムXBD発売記念に期間限定で発売されたという設定ですわ。
お嬢様はナナミさんに頼んで独自のルートで仕入れてもらったのですわ!

【アストレイ・ジャグラスナイパー】
型式番号:MBF-P01-JS
全高:17.53m
重量:53.5t
武装:
折り畳み式スナイパーライフル
MMI-M8A3 76mm重突撃機銃
遠隔誘導操作用ボール型センサーユニット
アーマーシュナイダー

アストレイ・ゴールドフレームの改造機。
ジム・ジャグラーから転用したボールをセンサーユニットに改造し、チョバムアーマーを取り付けたミキシングビルド機。
カメラアイ部分にもジムスイナパー用のバイザーを被せてあり、狙撃を主体とした性能となっている。
ボールユニットは原典機の武装こそないが、遠隔操作を可能とした利点を活かし、そのまま相手にぶつけることもできる。


【コルレル・スヴェイズ】
型式番号:NRX-007-VF
頭頂高:17.9m
機体重量:4.9t
武装:
レイピア
ダインスレイヴ

コルレルの改造機。
細長いウィングバインダーはレイピアを収める剣鞘としても機能するように改造し、さらに内部に電磁誘導加速装置の機構を内蔵している。
(厳密にはGPD、GBNで再現できるほどに作り込んでいるだけで、本物の電磁誘導加速装置ではない)
それぞれのユニットはパージ可能。
ウィングバインダー一基につき二本ずつレイピアが収納されている。
外見はヴァルキュリアフレームに似せており、ガンダムXを知らない者からすれば完全に鉄血のモビルスーツだと勘違いされる出来栄え。
装甲は一切増設しておらず、ウィングバインダーで機動力を高めた程度の性能である。
なのだが、その機動力と元々の運動性能にキリシマの操作技術が合わさり、作中では驚異の性能を発揮している。


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幕間①『マスクの女』

本編よりも筆が進んでしまった問題。
後々登場する人物との邂逅ですわ!


 GBNの爆発的な流行により、GPDの勢いはすっかり下火となっていた。

 最も挙げられる理由としてはガンプラが受けたダメージがそのままフィードバックされる仕様にあったと言われる。

 丹精込めて作り上げたガンプラがたった一回のバトルで勝敗に関係なく破損してしまうのは、それがそうであると慣れた者たち以外には辛いものがあったのだ。

 とは言え、GPDにのめり込む人間はすべからくそういったことを一切意に介さない。

 壊れれば直し、挑み、また壊れれば直す。

 度重なるGPデュエルの果てに何を失ってでも戦う覚悟を完了した者たちが多かったのだ。

 しかし、現実とは時に非情である。

 壊れると言うことに忌避感を感じる者がいれば、単純に金銭的な面でGPDをまともに楽しめない者もいた。

 そういった層が次第に浮き彫りなっていき、GPDはGBNの発表と共にかつての勢いを完全に喪失。

 多くの者がGBNに移行していき、GPDは衰退していったのである。

 だが、今でこそ悪い部分を的に批判されることのあるGPDであるが、ガンプラを普及させるという一点においては間違いなく多大な貢献を果たしたのは揺るぎのない事実であった。

 それに加え、かつてGPDで活躍したガンプラファイターたちを知る者は、GPDの悪しき部分を認めながらも、決してGPDを蔑ろにはしなかった。

 そういった所を忘れられないためか、はたまた魅せられたままなのか、GBNが主流となった現在でも未だにGPDを稼働させている所もある。

 その一つ、某所のキリシマホビーショップで開かれた小規模なショップ大会にて――奇跡は唐突に現れた。

 

 ⁎

 

 GPDのショップ大会は当初の予想よりも多くの参加者が集まった。

 その人数は――何と三十名近くにも及んだ。

 本来なら十人にも満たないはずのGPDのショップ大会で、だ。

 予定していたトーナメント方式では間に合わないと思い、店長がさてどうしようかと悩んでいた矢先、偶々新設するGBNの稼働テストのためにフローレンス工業のご令嬢が到着。

 何とGBNの稼働テストを商品に、この大会に乱入してしまったのだ。

 二度目のさてどうしようかに頭を抱えた店長であったが、フローレンス工業の奥様も娘さんに似て、とてつもなく乗り気でGOサインを出したので、ええいままよと勝ち残り方式によるロワイヤルバトルを提案したのである。

 そして現在――参加者全員がGPD経験者であったために、激戦激闘を繰り広げながらも、しかし脱落者は未だ数人のみに留まっていた。

 その最中においてバトルの推移をハラハラと見守っていた店長は、三度目のさてどうしようかに見舞われていた。

 しかし三度目の正直。店長は胸を張ってええいままよと応えた。

 

 ⁎ 

 

 バトルフィールドで佇むコルレル・スヴェイズと生き残った参加者たちは、皆一様に手を止め、空を見上げて居た。彼らの視線の先に――ガンプラが現れたのだ。

 眩い光を背に、雲居を晴らして天から降臨するような演出とともに。

 赤と薄紫に彩られ、トサカのような縦長の頭部パーツを有するガンダムタイプ。

 背にはガンダムX系の持つエネルギーコンダクター――サテライトシステムを装備している。

 サテライトシステムの枚数は左右に三枚、内上を向く二枚が真ん中で合わさり五枚に見える。例えるなら紅葉のような形状だった。

 

『あれは……』

 

 参加者の一人――ジム・ストライカーを駆る参加者が呟く。

 それに続くようにキリシマが、

 

「あれは――ガンダムヌーヴェルですわね」

 

 忽然と現れた謎のガンプラの正体を明かす。

 

『それは知っている!』

『私カリスきゅんの夢女子だから解るわ!』

 

 他の参加者が声をあげた。

 それを皮切りにざわつき始める参加者たち。

 あれだけ激しかった戦闘も停止している。

 落ち着きなさい、とはキリシマも言えなかった。

 何故なら、目の前に現れたガンダムヌーヴェルは――

 

「そもそもキット化されていませんことよ!?」

『だが背部のアレは間違いなくガンダムXのもの!』

『でもあれ、私の知る限りじゃ製品版のものとは質感も形状も違うわ!?』

『恐らくキット化されていないディクセン・ホーネットのやつだな』

『じゃあ、もしかしてあれは』

『俺の――いや、俺たちの思っていることが正しければあれは――フルスクラッチだ!』

『しかもあの出来、そんじゃそこらのオーダーメイドとは訳が違うわっ』

「とんだガンプラ馬鹿ですわねっ!?」

 

 感嘆に騒ぐ参加者たちのコンソールに、通信枠が映し出される。

 そこには美しい銀色の長髪を揺らす、『Gのレコンギスタ』に登場するマスク大佐が着用していた仮面で素顔を隠した女性が映っていた。

 

『うわダサッ!?』

『劇中だと似合っているのに実際で見るとダサいなッ!』

『嘘でしょ……まさか本当に付けてる人がいるなんて……』

 

 参加者からのマスクに対する反応は非常に厳しものであった。

 マスクの女性の自信満々な笑みを浮かべた口元がみるみる一文字になっていく。

 

『ウォッホンッ!』

 

 バツが悪そうに大きめに咳払いをし、一同の視線を受け止める。

 

『あー、久々にGPDをやっている光景を目撃してね。つい私もと、乱入させてもらったわけなんだけど』

「大いに結構でしてよ。今は勝ち残り式ロワイヤルバトルですので」

『一応、店長からも許可を取ってあるのよ?』

「ならなおのこと結構ですわ! 皆さんは?」

 

 キリシマの言葉に参加者は渋ることなく快諾を意思を示した。

 

『あんなガンプラ見せられちゃあな?』

『そうそう! カリスきゅんの夢女子として願ってもない展開よ!』

 

 既に敗北し、周囲でベガ立ちのまま試合を見守っていた参加者からも、

 

「手合わせできないのは悔しいが、それはそうと動くヌーヴェルは見たいからな!」

「あーくそっ、油断してリタイヤしちまった自分が恨めしいぜ!」

 

 周囲の声を受けて、キリシマはマスクの女性を一瞥。

 

『ごめんなさいね。そして――ありがとう』

 

それはバトルに突如として乱入したことへの謝罪。

そして今ここにいるファイターたちと戦えることへの感謝の言葉。

 

「いいえ、ここにいるのはこぞってガンプラ馬鹿ですのよ? それより、中途乱入とはいえ、もし漁夫の利狙いであれば、生半可な実力では生き残れませんことよ?」

『フフ、そうね。それは問題ないわ』

 

何故ならば、と区切る。

 

『ガンプラ熱に当てられて来たのだから!』

 

 グッと手を伸ばしコンソールを握る。

 ガンダムヌーヴェルが地に降り立つ。

 同時にコルレル・スヴェイズが、ジム・ストライカーが、アッシマーが、キュベレイ風ベルティゴが、生き残っている参加者全員が身構えた。

 瞬間、サテライトシステムが起動。

 一直線に伸びた光がガンダムヌーヴェルの背面にエネルギーを注ぐ。

 

『ん?』

 

 一人の参加者が気づく。

 

『あいつ、サテライトキャノン装備してないな?』

『む、確かにっ』

『ガンダムヌーヴェル自体にはそもそもサテイライトシステムはないんだけど……』

『いやはや、まさか……』

 

 そのまさかであった。

 直後、ガンダムヌーヴェル――正確にはその改造機のフレームから青い炎が噴出した。

 トサカのような頭部センサーの後ろ側には、その炎が尾のように纏まって伸びている。

 

「エネルギーそのものをっ!?」

 

 サテライトキャノンという強力無比な攻撃方法として利用せず、余剰エネルギーを放出することで機体のあらゆる性能を劇的に向上させたのだ。

 

『あれはっ!?』

「知っているのですかライデン!?」

 

 参加者の一人――ジョニー・ライデン専用ギャプランを駆るライデンが驚愕の声を上げた。

 

『記憶が確かなら、ビギニングガンダムのエネルギー噴出と同じものだっ!』

『つまりは、その機構を再現してるってわけ!?』

 

 驚きに包まれた空気の中で真っ先に動いたのはジム・ストライカー。

 既に奥の手であるEXAMシステムを起動させ、機体性能を上昇させていた。

 さらに近接に一点特化したツインビームスピアーは通常のものよりも遥かに強力な威力を秘めている。

 

『だが尋常に勝負っ!』

 

 ツインビームスピアーを構え、突撃。

 対するガンダムヌーヴェルは――

 

『見せてもらうわっ! その性能をっ!』

 

 腕部に取り付けられたスラッシュシールドから青白い炎がサーベル状に構成される。

 

『サテライトサーベルっ!』

『エグザムスピアーっ!』

 

 両者、真っ向から衝突!

 鍔迫り合いで発生した余波が強風となって周囲を打った。

 それを合図に――ガンプラ魂の火が灯り、全員が一斉に動き出す。

 

 ⁎

 

 その日、小規模のはずだったショップ大会にて奇跡が起きた。

 参加者も、そうでもない者も、ガンプラに疎い者も、ガンプラに初めて触れた子供も、GPDを遠ざけていた者も――皆がその光景に固唾を呑み、手に汗握り、言葉と時間を忘れて魅入られた。

 誰もが魅せられたあの頃のGPDの賑わいが、興奮が、緊張が、その全てが今この瞬間――確かにそこに在ったのだ。

 

 結局、マスクの女はその名も正体も明かさぬまま、エネルギー負荷による強制停止によって勝ち残ることもなく、気が付けばその場から忽然と消えていた。

 ただ一つ――実に楽しそうだったという事実を残して。

 

 因みにキリシマは無事に勝ち残ったものの、勝ち残り八人による決勝トーナメント戦でジム・ストライカーとの激しい攻防の末、回避先に予め用意されていた起きサーベルという離れ技に頭部を斬り飛ばされ――敗れた。




これはもうビルドファイターズでは????? ボブは訝しんだ。
(話の)ネタは(他の方の作品から)拾いましたの!!!!!!(正直な遊星お嬢様)


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1.1『WELCOME TO GBN/お節介と先輩』

アニメだと3分ちょっとの内容ですが捏造追加しつつ文字に起こすと(人によっては)こんなに長くなるのですわ!
え、長くない? それもそうですわね!


 カシュゥ――。

 自動的にドアが開き、アズマは一歩を踏み出した。

 途端、和気藹々とした騒がしさに包まれた。

 ……これが、GBN!

 ラグもなく動く右腕を確認しながら、アズマは目の前に広がる光景を眺める。

 大型のディスプレイには何らかの情報やランキング、はたまたどこかの戦闘場面が表示されており、様々なガンダム作品に登場したコスチュームを着た人々やGBN側で予め用意されていたパーツで様々な姿を構築している人々などが、その下を悠然と歩き、喋り、あるいはディスプレイの映像を見守っていた。

 

「――あの! あのぉ!」

 

 自分の名前が呼ばれていることに気づき、ハッとして顔を横に向ける。

 そこには二人――人型アバターがいた。

 一人はジャージ風な服装の上から軽そうな皮鎧を纏った少年型のダイバールック。

 もう一人はキャスケット帽を被り、首から厚めのゴーグルをかけた眼鏡の少年型のダイバールック。

 一瞬、誰かと目を見開いたが、よくよく見ると面影がある。

 

「リクさんと、そちらがユッキーさん?」

 

 小声で恐る恐る尋ねれば、二人は互いに顔を合わせてから頷いた。

 

「あーよかった~」

「あってたぁ……」

 

 リクとユッキーがホッと胸を撫でおろす。

 

「よく私だと解りましたね」

「その、ディスプレイを見上げたまま呆然としている人がいたので、もしかしたらって」

「そうでしたか。それはお恥ずかしいとこを」

「いえいえっ。ところで、アズマさんのそれは、メイド服?」

 

 アズマのアバター――メイド服を着た黒髪の少女型のダイバールックを見て、リクが小首を傾げた。

 言葉に釣られたかのようにユッキーが横からズズイっと顔を出し、眼鏡をキラリと光らせた。

 

「ああ、リッくんこれは『ガンダムEXAVS』っていう、昔流行ったゲームと連動して『ガンダムエース』で連載されていた漫画作品に登場する服装で――」

 

 主人公のレオス・アロイ――正確には彼の女性体であるレイス・レイスが、諸々あって捕らわれてしまったヒロインのセシアがいるマーズⅠに潜入する際に着用したのがこのメイド服であるらしいことを、作品の概要と共に熱く語りだす。

 その勢いたるやさしものリクも若干たじろぐほどであった。

 

「そ、それよりユッキー、これからどうすればいいんだっけ?」

「え? ああ、そうだったそうだった」

 

 ごめんごめん、と軽く頭を下げるユッキーは一度咳ばらいを挟むと、リクとアズマを手招いて歩き出した。

 初GBNである故に、目に写る何もかもが新鮮で、度々足を止めてはついつい魅入ってしまう。

 

「色んなダイバーがいるんだね」

 

 歓心を露に、リクが呟く。

 アズマも無言で同意を示すように頷いた。

 

「ゲームの進行次第で、色んな服装や外観が手に入るみたいだね」

 

 ワクワクと高い声音でユッキーが説明を聞いていると、粘土で出来たような外観のダイバーが三人の横を通りすぎていった。

 

「あれもダイバー、なの?」

「た、たぶん……」

「――すごく個性的ですね」

 

 ⁎

 

 ガラスの外側でザク・ウォーリアが飛行していくのを横目に、三人は最初の目的地であるGBNのメインロビーへと歩を進めていた。

 

「まずはここのロビーにあるミッションカウンターに行って、遊ぶミッションを選ぶんだ!」

「へぇー」

「初心者ですから、可能なら三人で受けられるものがあればいいですね」

「オンラインですから、その辺りは大丈夫だと思いますよ」

 

 語りながら、次第に遠くにミッションカウンターであろう円柱が見えてきた。

 その時――

 

「よォ、坊ちゃん嬢ちゃんたちィ。何かお捜しかなァ?」

 

 三人の目の前に一人の男がふらりと現れた。

 短い金髪の胡散臭い男だ。

 いかにもチャラついた若々しい顔立ちには、薄っすらと似合わない髭が生えており、飾ったアクセサリの古臭さが絶妙なアンバランスを醸し出し、それが却って妙に似合っていた。

 いきなり馴れ馴れしく声をかけられた三人は困惑と戸惑いの色を浮かべてた。

 

「い、いえ僕たちは――」

 

 リクが断ろうとした矢先、言葉を遮るように男が腰を曲げて顔を突き出した。

 ご丁寧にポケットに手を突っ込んだチンピラスタイルだ。

 

「何だって用意するぜェ?」

 

 ニチャリとした薄ら笑いを浮かべながら一歩近づいてくる。

 

「あの、私たちは――」

「お得なパーツかァ?」

 

 アズマの言葉も遮り、また一歩。

 

「だからあの――」

「レアな報酬品かァ?」

 

 ユッキーの言葉も遮り、さらに一歩。

 

「それとも――」

「あーっ! ヤスの兄さんじゃーん!」

 

 今度は男――ヤスの言葉を遮るように大きな声が聞こえ、人混みの中から少女がトテトテと小走りでやって来た。

中心が少し凹んだアッガイキャップを被った小柄な少女だ。

 外側にはねた明るい茶髪で、少しブカブカな水と白の合わさった合羽のようなパーカーが、幼さを強く目立たせている。

 

「んだよォ、ミナトか」

「まーた阿漕な商売やってるんですかー?」

 

 ミナトと呼ばれたアッガイキャップの少女はニコニコという擬音が良く馴染みそうな快活な笑みを浮かべていた。

 何とも調子の良さそうな少女だと誰もが思うほどに。

 

「バッ!? ちげェちげェ! 慈善事業ってやつだよっ!」

「えー? ホントにぃー? とか言って自作のジャンクパーツ売ってるんでしょー?」

 

 ヤスをからかうミナトは、後ろ手にリクたちに振り返る。

 

「もしかしなくても、新人さん?」

「えっ、あ。はい!」

「そーかー新人かー。そーかー!」

 

 ニヒヒ、としたり顔な笑みを浮かべて、

 

「ボクはミナト!」

「ど、どうも。リクです」

「ユッキーです」

「アズマです」

「うんうん! よろしくよろしく!」

 

 順序に三人を手を握りぶんぶんと振る。

 肩が外れそうな勢いだと思った。

 

「ってことはあれかぁー! ボクがGBN始めてから、初めての後輩! ボクは先輩かぁー!」

「なァーにが『先輩かぁー!』だよ。お前だって初めてまだ一週間も経ってねェじゃねェーか!」

「いーのいーの! 浮かれさせてくれよぉー?」

「ったく調子の良い奴だぜ……」

 

 頭を掻きながら「調子が狂うなァ」とボヤくヤスを余所に、ミナトは胸を張る。

 

「ま、そんな訳だから困ったことがあったら存分にこのボクに頼ってくれたまえ!」

「はい! その時は頼らせてもらいます!」

 

 フフーン!

 鼻を鳴らして宣言するミナトに、純粋なまでにリクは大きく頷いた。

 

「いいんですかね?」

「まぁ、悪い人じゃないようだし……」

 

 その隣でアズマとユッキーは声を潜めていた。

 

「おォっと、俺を忘れてもらっちゃァ困るなァ」

 

 気を直して再びヤスが割って入ってきた。

 

「ヤスの兄さん、まだいたんだ。もう帰っていいよ」

「勝手に帰らすな! ――で、どうだいお三方? 今なら何と一点物のパーツを入荷しててなァ」

「ああいえ、僕たちは別に」

「それに始めたばかりですので手持ちもあまり持ち合わせていません」

「なら、なおさら丁度いい! 何たってこのレアパーツはなァ、選りすぐりの部品アイテムから作り上げた自作ジャンクパーツでよォ」

「ヤスの兄さーん。おーい! ヤスさーん!」

「あー、さっきからなんだよ! ミナトよォ!」

「うしろうしろー」

「あァん? 後ろがどうしたってェ?」

「ヤス」

 

 ドスの利いた声がヤスの耳を打った

 瞬間、ヤスの身体がビクリと跳ねた。

 錆びたネジのようにギギギと恐る恐る振り向く。

 息のかかりそうな距離に――精悍な顔面があった。

 

「あんた、初心者相手に変な商売しないって約束したわよね」

「ひィィッ!?」

 

 ヤスの顔が一瞬で青ざめる。

 

「す、すいやせェェェェェんッ!!!」

 

 言下に踵を返し、瞬く間もなく走り去っていった。

 三人はそれを呆然とした眼差しで見送る。

 ミナトだけは「やっぱりー」と小さく笑っていた。

 

「さて」

 

 ヤスを追い返したダイバーが振り返る。

 紫色の髪、引き締まった腰に逞しい肉体をアバター。

 腰に手を当てた挙措は女性的でもある。

 

「見たところ貴方たち、初めてのようだけど、大丈夫だったかしら?」

「え、ああ、はい……えっと、貴方は?」

「お姉さんはマギー☆」

 

 パチリコ。

 ウィンクから星のエフェクトが飛び出た。

 

「貴方たちみたいな初心者プレイヤーにGBNを楽しんでもらえるよう買って出てるただのお節介よ♡」

 

 言い、プロフィール画面を表示させたコンソールパネルを反転させると、指で突くような動作の後にリクたちに向かってパネルが空中で滑るように移動し、丁度三人の目に入るような位置で止まった。

 リクを中央に置き、左右からユッキーとアズマが顔を覗かせて内容を確認する。

 

「すごい! ワールドランキング23位!?」

「ワールド……つまり世界で、と?」

「うん! 全世界で23人目にすごいってことだから!」

 

 かつて師が激闘を繰り広げ、姉が目指したGPD世界大会と同じものだと考え、アズマは改めて目の前の一見して奇妙な人物が只者ではないと判断する。

 

「それは――確かに凄いですね」

「少しは信用してもらえたかしらぁ~?」

 

 マギーの言葉に三人は首肯で示す。

 

「GBNへようこそ! 案内してあげるわ」

 

 その瞬間に入り込むようにミナトがマギーの横から顔を出し、

 

「そう、ボクたちが案内してしんぜよう!」

 

 エッヘン、とカイゼル髯のアクセサリを付けてえばった。

 

「あのねぇ、ミナト。貴方だってまだ新人なんだからね」

「わーかってますって! ヘヘヘ、迷惑はかけないんで何卒! なにとぞーっ!」

 

 手を合わせて頭を下げるミナトにマギーは「やれやれ」と肩を竦めた。

 ミナトもまたマギーのお世話になったダイバーの一人であり、マギーにとっては記憶に新しいダイバーでもある。

 性格は明るいお調子者で、時々失礼なくらい素直な子だという印象をマギーは抱いていた。

 その分、誰とも隔てることなく話せるのは既にヤスを見て知っている。

 プレイスタイルは性格同様に真っ直ぐ。

 粗があって無鉄砲だが、長く見ればきっちりとした強みになるだろうと考えていた。

 そんな彼女がこうまで案内、と言うかマギーの真似事をしたがるのは、恐らくマギーへの憧れと、解りやすいくらいに自分と同じ新人と出会えたことからきている高揚感からだろうと推測していた。

 要するに――その場のノリというやつである。

 それはそれで心配なところはあるのだが。

 

「あ、あの、マギーさん! 僕たちは構いませんから」

「えっ!? いいの! マジで!? やった! ほらほらマギーさん! こう言ってることだしさー! 本日のオススメですよぉー?」

「んもぅ……解ったわ。でーも、ちゃんと手伝いなさいよ?」

「そりゃもう了解でしてー! それじゃ諸君! このボクに付いてきてくれたまえ!」

「「「よろしくおねがいします」」」

「まったく、調子が良いんだから」

 

 大手を振って案内に意気込むミナトに、マギーは苦笑しつつ保護者の面持ちでリク、ユッキー、アズマの三人を自身の後ろにつかせ、先頭を歩き出したミナトの少し後ろから付いていくのだった。

 誰もが物陰からその様子を窺う影に、気づくことなく。




大よその予定では3話までは原作に沿っていきますわ!
だって皆さんサラちゃんと鬼いちゃんに会いたいでしょう!?
わたくしはお嬢様と鬼いちゃんをバトらせてケミカルさせたいですわ!(本音)


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1.3『WELCOME TO GBN/出撃』

今回は出撃シーンまでですわ。


「ここが、バトルやミッションを受注できるミッションカウンターよ!」

 

 マギーの声がリクの、ユッキーの、アズマの耳を透る。

 一行は頂上に地球のホログラムが映り、多数のデータが表示される円柱――ミッションカウンターにいた。

 ミナトとマギーの案内を受けてやって来たのだ。

 道中、何人かのダイバーがマギーに親しく挨拶をしたり、お礼を言ったりしてきたので、今ではリクたちもすっかり彼女のことを信用していた。

 

「始め立ててでも最初から初級ミッションやフリーバトルも受けられて……えーっと……」

「ミナトの言う通り、最初から初級ミッションやフリーバトルを受けることができるわ。

 でーも、まずはチュートリアルバトルから受けるのをオススメするわ。

 どうしてかって言うと――ミナト?」

 

 説明し慣れずに言葉に詰まってしまったところをマギーが即座にフォローに入った。

 

「――ちゅぅ、じゃなくて、チュートリアルバトルは最も基本が詰まったミッションだから、操作に慣れるって意味でも、とても大事ってこと!」

「よくできました」

「へっへへへぇ~……」

 

 ミナトは頭を小さく下げつつ今度はきっちりと説明できたことに、ふにゃけた笑顔で照れた。

 

「わたし達もギャラリーモードでナビゲートしてあげるから、気楽に選んでみて♪」

 

 言われて、リクを先頭にミッションカウンターの受付の女性NPCに話しかける。

 

【ようこそ。ミッションを選んでOKボタンを押してください】

 

 受付嬢に言葉に従い、マギーとミナトに説明された通りにチュートリアルミッションと表示されている『ガンプラ、大地に立つ』を選択する。

 ホワイトベースの女性通信士の名目で提示された――どことなくセイラ・マスの口調で書かれた概要欄にはリーオー三機の撃破と記されていた。

 

「一人一機、ということですかね」

「そうですね。それなら丁度良いかも」

「よ、よし! やってみよう!」

 

 三人は頷き、リクがOKボタンを押す(タップ)

 短いローディングが挟まり、受注完了を示すフレームが表示された。

 

「オーケィ! それじゃあ格納庫へ行って、三人の機体のチェックをしましょう」

「格納庫?」

「どうやって行くんですか?」

「専用ゲートがあるのでしょうか?」

「フッフッフ……それならボクが案内してしんぜよう」

 

 疑問符を頭上に浮かべる三人に、ミナトがしたり顔でメニューフレームを展開。

 

「見せてもらおうか、三人のガンプラとやらを!」

 

 慣れていないと案外解りづらい場所に配置された『エリア移動』と表示されたボタンに指先を添える。

 押す(タップ)――ミッションカウンターの景色が一瞬にして街中へ。

 押す(タップ)――街中の景色が一瞬にして噴水の設置された中央広場へ。

 押す(タップ)――中央広場の景色が一瞬にして格納庫へと変化した。

 

「うわぁ!?」

「うおぉ!?」

 

 リクとユッキーが驚きの声を上げ、アズマは息を呑んだ。

 格納庫には三人が作り上げたガンプラがハンガーに収納されておた。

 

「うわぁ~!」

 

 ユッキーはジムⅢビームマスターを見上げて感動し、

 

「でっかぁ~!?」

 

 リクもまたユッキーと同様にダブルオーダイバーを見て感嘆の声を漏らした。

 それはアズマも同じで、自身のアストレイ・ジャグラスナイパーを静かに見上げていた。

 声にこそ出さなかったが、しかしその瞳は確かに輝いていた。

 

「ここでガンプラのチェックをするのよ。機体の状態や武装の確認とかね♪」

「ま、そう言ってもこれが初ミッションだから、確認事項はあんまりないけどね~」

「そうね。でもチュートリアルだから、慣れるために一度は項目を開いて確認しておいてね」

「わかりました!」

「えっと、ここをこう、かな?」

「――開きましたね」

 

 三人はそれぞれのメニューフレームを開き、各々のガンプラの状態を確認する。

 ミナトの言う通り、確認以外に特にこれといってすることはなかったが、ステータス化された自身のガンプラを見るのは中々新鮮なものがあった。

 

「確認できたみたいね。それじゃお待ちかねのアレよぉ~! ア・レ☆」

「「「アレ?」」」

 

 マギーの言葉に三人が小首を傾げる。

 その傍でミナトが「アレなんだなぁ~」と感慨深くカイゼル髯を撫でていた。どうやら気にっているらしい。

 

 ⁎

 

 ゴゥゥゥゥン――。

 重い可動音を立てて、カタパルトが動く。

 その上にはユッキーが搭乗したジムⅢビームマスター。

 

「すごい……カタパルトだ……」

 

 興奮と緊張に震える声で呟く。

 ユッキーから見て右側に通信画面が開き、マギーの姿が表示された。

 画面内の下側からはミナトのアッガイキャップがひょっこりとモノアイを覗かせていた。

 

『発進シーンは定番中の定番でしょう!?』

 

 パチコン。

 よく似合う、上手なウィンクと共に大仰な動作で親指を立てる。

 動きを真似たのだろうか、アッガイキャップも揺れていた。

 

『さぁっ、思い切っていっちゃいなさい!』

 

 その言葉にユッキーはニッコリと口角を吊り上げ、息を短く吸い込むと、コントロールスティックを強めに握り――

 

「ユッキー! ジムⅢビームマスター、出ますっ!」

 

 大きく――あらん限りの声量で叫んだ。

 直後、信号が赤から青に変化。

 瞬間、カタパルトが駆動。

 摩擦によって生じたスパークを撒き散らしながら、かかる加速を後押しとし、出撃口からジムⅢビームマスターが飛び出した。

 

 ユッキーに続くようにリクもまたダブルオーダイバーに搭乗し、カタパルトの上にいた。

 先ほどのマギーの言葉に、彼もユッキーと同じように息を吸い込み――

 

「リク、ガンダムダブルオーダイバー!」

 

 ワクワクとドキドキが綯い交ぜになったような笑顔を浮かべて、コントロールスティックを握りしめる。 

 呼応するかのようにダブルオーダイバーのデュアルアイに輝きが灯った。

 

「いきますっ!」

 

 リクの口上ダブルオーダイバーも出撃口から飛び出していった。

 二人の出撃を見届けたアズマも既にカタパルトに乗っている。

 緊張故か無意識にダイバールックの手袋をギュッとはめ直し、コントロールスティックを握る。

 GPDとは違い、実際にガンプラに乗り込んでいるのだ。緊張もするというもの。

 現実と比べると多少の差異はあれど、感覚も機能しているようだ。

 ここでは誰もが一度は夢に見た自分の作ったガンプラに乗り込んで操縦することができる。

 それだけではない。

 ガンダム作品に出てきた地域や建物に行けるし、原作ストーリーを体験することもできれば、NPCとして実装されている原作キャラとの共闘、あるいは対戦することもできるという。さらにifルートを実装した追体験ミッションもあるらしい。

 それら全てがGBNでは可能となっている。

 ……これは確かに、お嬢様が夢中になるわけですね。

 ただ戦い、競い合うだけだったGPDと比べてしまい、GBNが内包する無限の可能性にアズマが内心で打ち震えていると、通信画面が開いた。

 

『さぁ、アズマちゃんも!』

『ババっといっちゃおー!』

 

 マギーとミナトの言葉にアズマは「さてどうしましょう」と恥ずかしそうに薄っすらと頬を赤らめる。

 先の様子を見て発進時の前口上を考えてはいたのだが、実際に自分の番が来てみると何やら気恥ずかしいものがった。

 ……こんな時、お嬢様なら馬鹿みたいに笑って「行きますわっ!」とか言うのでしょうね。

 アズマはその姿を想像し、フフフと笑んだ。

 因みにキリシマは実際やった。

 

「あの」

『なにかしら?』

「クール系に決めても?」

『もっちろん、オーケィよ!』

『君の好きな思い切りを口に出せばいいのだよ~』

 

 自身が映り切っていないことに気づいたのか、ミナトのカイゼル髯がアッガイキャップに付いていた。

 

「では――」

 

 胸に手を当て、フゥーっと息を吐く。

 再び息を吸ってる間にコントロールスティックを握り直し――

 

「アズマ、アストレイ・ジャグラスナイパー。洗濯出動ですっ」

 

 言い切り、飛び出した。

 身体にかかるGは軽減されているものの、それでも微妙な圧力を前面が受け止める。

 ライトで照らされた薄暗い出撃口から一転、青空と街並が視界いっぱいにひろがった。

 

「――」

 

 精巧な世界に、アズマは言葉を忘れた。

 

『アズマさん!』

 

 リクの声が通信越しに届いた。

 見ると、ダブルオーダイバーを先頭に、ジムⅢビームマスターが待ってくれていた。

 あの時――現実で見た時とは違い、実際にバーニアを吹かして動く二機の姿を、アズマはジッと見つめた。

 

『……大丈夫ですか?』

 

 ユッキーの心配そうな声。

 どうやら数瞬、惚けてしまっていたようだと自覚する。

 

「恥ずかしながら、お二人のあまりの格好良さに、少し見惚れていました」

『えっ!? あ、えと、ありがとうございます!』

『アズマさんのジャグラスナイパーも格好良いですよ! ねぇ、リックん!』

『うん! こっちで見てもすごい完成度です!』

「フフ、ありがとうございます」

『よし! それじゃあ、行きましょう!」

「はい」

『了解!』

 

 ⁎

 

『あら、結構可愛いところのセリフ、拾ってきたじゃない♪』

『……クール?』

 

 光点となるほどに遠ざかったリク、ユッキー、アズマ。

 三人が無事に発進したのを見届けたマギーはどこか誇らしげに胸を張っていた。

 ミナトは最後のアズマの発進セリフに些か引っ掛かりを覚えていたようだが。

 

 そんな一行の格納庫から離れた別の格納庫――低い位置に出現した出撃口から飛び出した一つの光点が、三人の後を追うように飛んで行ったのに気付くことはなかった。




次回は初戦闘なので一旦ここで区切らせて頂きましたわ。
あんまり長くなると却って読みにくいのでは、と思いましたの。
……実際どうなのでしょう?

それとこれはわたくしの悪い癖で、投稿後も「やっぱりこうしましょう」なノリで微量、もしくは大幅に加筆したりすることが稀によくありますわ。ご了承くださいまし。


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1.5『WELCOME TO GBN/チュートリアルミッション』

Unknown――少女の声で求められる救難信号。ぐへへへ、ですわ。
戦闘描写のためにガンダム小説を漁るその場凌ぎなお嬢様問題。


 先を飛翔するダブルオーダイバーとジムⅢビームマスターに追従しながら、アズマはアストレイ・ジャグラスナイパーのコックピット内でマギーの言葉を聞いていた。

 

【い~い? 三人とも、ガンプラバトルで強くなるには三つの要素があるわ】

 

 ……三つの要素。

 ワールドランキング23位のダイバーの言葉だ。気にならないわけがない。

 リクとユッキーも聞き入っているようで、二人も無言のままであった。

 

【一つ目はガンプラ作りの腕!】

 

 ……これはGBNでも共通のようですね。

 作り込みが高ければ高いほどGBNでのステータスに何らかのボーナスを得られるのだろうか。

 あるいは原作の再現がより可能にしやすくなるのだろうか。

 そう思い、出撃前に確認したステータス画面を思い出す。

 きっとあれが一つの基準になるのだろうと考えた。

 ただ、それを抜きにしてもガンプラ作りの腕と言われてしまえば無視はできない。これだけは別口だ。

 アズマは内心でグッと拳を握るようにその言葉を強く心に留めた。

 

【二つ目は高い操作技術!】

 

 なるほど、と納得する。

 ……これもGPDと共通していますね。

 単純にガンプラバトルを楽しむだけならば、高い操作技術はそれほど必要とはしない。

 それはロビーの光景を見ても何となく察することができた。

 けれど、強くなること――上を目指すなら避けられないものであろうことも理解できる。

 ……いえ、違いますね。

 かぶりを振る。

 例えバトルに関係なくとも、憧れの機体を乗りこなしたいのあれば、これは自ずと磨かれていくのだろう。

 

【そして最後、三つ目は――愛よ!!! んあぁぁいっ!!!】

「……んん?」

 

 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

 何故そこで愛なのか。否――愛で当然なのだろう。

 かつて師から言われた「ガンプラは魂じゃよ。魂と書いてスピリッツ!」と言う言葉に通ずるものがある。

 ……お嬢様も「ガンプラ魂ですわよ! 魂と書いてスピリッツ!」なんて言ってましたね。

 とは言え――

 

『愛?』

 

 リクの今一ピンときていない反応。

 

【ラブッ! 貴方達は技術も腕もこれからドンドン上がっていく! ――頑張って♡】

 

 やはり概念的な表現故に、曖昧な感じではある。

 ……きっとマギーさんなりの激励なのでしょう。

 愛。

 それは今のアズマには、まだ解らない。

 

 ⁎

 

『なに、あれ?』

 

 暫くすると、ユッキーが何かに気づいて小さく呟いた。

 言葉に釣られて見れば、ドーム状の半透明なバリアのようなものが三人の進む方向にあった。

 レーダーマップを確認すると、目的地を示すアイコンと被っている。

 

【あれはバトルフィールドの境界じゃよ】

 

 今度はマギーではなく、マギーに抱きかかえられるようにして持ち上げられたミナトの姿があった。

 相変わらずカイゼル髯を付けている。やはりお気に入りのだろうか。

 

【あれの境界を超えたらミッション開始、つまりバトルスタートじゃ!】

『ミナトさん、その口調はいったい?』

【こっちのほうがらしいじゃろ~?】

「胡散臭さはらしくありますね」

『あぁー、確かに。わかります』

【え、マジで? やめたほうがいい?】

「いえ、可愛らしいとも思います」

【フヘヘヘ、じゃあもうちょっとこの口調じゃよ~】

【ち・な・み・に♪】

 

 抱えたミナトの横からマギーがズズイッと顔を出す。

 

【チュートリアルバトルは味方の攻撃が当たってもダメージを受けない設定だから、思う存分暴れちゃいなさ~い!】

『そういうことなら! 行こう、ユッキー! アズマさん!』

『うん!』

「はい!」

 

 リクの言葉に返事し、三人と三機がバトルフィールドの境界を超えた。

 

 《MISSION START》

 

 開始を告げる電子音声が流れると同時に、レーダーマップに三つの機影が表示された。

 メインカメラをズームするとリーオーと思わしき機体が三機。

 ドーバーガンを装備した一機を中央に、左右にはそれぞれドラムマシンガンを装備したタイプと長身のライフル砲を装備したタイプの二機。

 情報端末から相手の名称がリーオーNPDと表示された。

 いずれもこちらに向かって飛んできている。

 

【あれが今回の敵よ~! 全機撃破すればミッションクリア!】

「なるほど」

 

 言うが早いか、先に動いたのは――アズマのアストレイ・ジャグラスナイパーだった。

 展開した折り畳み式スナイパーライフルで瞬時に狙いを定め、ロックオンが完了する前に躊躇なくトリガーを引いた。

 淡いライトピンクの光条が一直線に伸び、アストレイ・ジャグラスナイパーの対角線上を飛んでいたリーオーNPDの左肩を貫いた。

 反動で体勢を崩し、みるみるうちに高度が落ちていく。

 

「思った以上に軽い……」

 

 胴体ど真ん中を狙い撃つつもりでいたが、身体に染みついたGPDの感覚は、ここでは少し勝手が違うと感じた。

 

『アズマさん!? 早いっ!? 早いよっ!』

 

 ユッキーが驚愕の声を上げている。

 カイ・シデンの台詞だ。ノリノリである。

 

「――仕留め損ねましたが、相手の陣形、崩れました」

『よぉし、いっくぞぉぉぉ!』

 

 それを好機と捉えたか、リクのダブルオーダイバーが先行し、GNソードⅡをライフルモードに切り替えてビームを放った。

 放たれたビームは惜しくも中央のリーオーNPDを掠める。

 攻撃に反応し、リーオーNPDがドーバーガンを撃ち返した。

 

『うわぁあぁっ!?』

 

 チョートリアルミッションとは言え、狙いは意外と正確。

 ダブルオーダイバーの胸部を狙った一撃は――咄嗟に構えたGNソードⅡが防いだ。

 しかし、ドーバーガンの威力でダブルオーダイバーが翻る。

 追撃に移ろうとリーオーNPDが追い縋る。

 ダブルオーダイバーの援護に回ろうと、ジャグラスナイパーが動き出そうとした刹那、ロックオン警報が鳴り響く。

 

「っ!」

 

 ライフル砲の弾丸がチョバムアーマーを叩き、視界が揺れる。

 ジャグラスナイパーはバランスを崩して地上に落ちていった。

 

『リッくん!? アズマさん!? ――このぉぉぉ!!!』

 

 ユッキーがよくもと言わんばかりの剣幕で前に出た。

 自分に向かってきたリーオーNPDから放たれたドラムマシンガンの弾幕を避けながら、サイドアーマーに装備した大型バインダーを手に持ち、向ける。

 

『いっけぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 大型バインダーに内蔵された拡散メガ粒子砲――フラッシュビームが放たれる。

 文字通り散らばったビームの光条が実弾を打ち消しながらリーオーNPDに降り注ぐ。

 

『わぁっ!?』

 

 しかし、マシンガンの数発が大型バインダーに命中し破壊されてしまう。

 

『くっ、――けどっ!』

 

 反射的に武装を選択。肩部ミサイルポッドを展開、射出する。

 降り注ぐフラッシュビームに加え、殺到するミサイルに行動を制限された瞬間――

 

『そこだぁ!』

 

 その隙を見逃さず、ビームライフルがリーオーNPDを射抜いた。

 直撃を受けて動きが止まったリーオーNPDに残りのミサイルが着弾。

 リーオーNPDは爆発し、一機目の撃破判定が下された。

 

『よ、よしっ! やったぁ!』

『やるなぁユッキーも! じゃあ俺だって!』

 

 機体を制御し、着地。

 ドーバーガンを装備したリーオーNPDもまたダブルオーダイバーの目の前に着地する。

 すぐにドーバーガンの砲口をダブルオーダイバーに向けて――撃つ。

 

『うおぉぉぉぉぉ!』

 

 リクは物怖じすることなく、ダブルオーダイバーを前へ加速させる。

 向かってくるドーバーガンの弾丸はマニューバを駆使して、機体を僅かに傾けることでスレスレで躱す。

 

『てやぁっ』

 

 GNビームサーベルを投げ放つ。

 真っ直ぐに投擲されたGNビームサーベルがドーバーガンの銃口を切り裂き、銃身に深々と突き刺さった。

 過剰なダメージ負荷に耐えきれずドーバーガンが爆発した。

 ダブルオーダイバーはすかさず生じた爆煙に紛れる。

 その一瞬で標的を見失ったリーオーNPDを、爆煙の中から飛び出し様にGNソードⅡで一閃!

 上半身と下半身が泣き別れになったリーオーNPDが爆散し――撃破判定が下る。

 

『いよっしゃあぁぁぁっ!』

 

 拳を突き上げて大いに喜ぶ。

 

「お見事です」

 

 通信越しの歓声にアズマはそう呟きながら、チョバムアーマーをパージ。

 鈍い音を立てて足元に転がる。

 

「まったく迂闊でした」

 

 直撃を喰らってもダメージは全てチョバムアーマーが肩代わりしてくれたことから、チュートリアルというだけあって攻撃力は低いと判断する。

 だが、自身のガンプラはアストレイである。防御力よりも機動力をとった機体コンセプト故に、先ほどのような直撃をもう一度受ければ中破は免れない。

 

「GPDでは直接ガンプラを動かす分、所謂重さがありましたが……」

 

 GBNではガンプラを読み取ってデータとして再現するだけで、実際のガンプラとしての重みは感覚的に軽いものだった。

 

「気分はさながら地球に降りたばかりのキラ・ヤマトみたいですね」

 

 生い茂る木々の隙間からヌゥッとリーオーNPDが現れた。

 ライフル砲を右腕と胴体で挟むように持っていることから、左腕は既に機能していない様子。

 リーオーNPDはジャグラスナイパーを認識すると、ライフル砲で狙いを定め――撃った。

 ……動きをよく見る。基本は絶対。

 即座に片手に持ったチョバムアーマーを射線上に放り投げる。

 ガァン!

 弾丸はチョバムアーマーに命中し、明後日の方向へと逸れた。

 弾かれたチョバムアーマーの向こうでリーオーNPDは光を見た。

 それはスナイパーライフルの銃口に充填されたエネルギーの光。

 あの一瞬の間に、ジャグラスナイパーは既に構えを終えていたのだ。 

 

「誘い込むのは得意なので」

 

 カチリッ。

 トリガーを引くと同時に放たれた光条が一直線にリーオーNPDの胴体を綺麗に貫いた。

 そして三機目の撃破判定は下された。

 

 《BATTLE END》

 

 電子音声が流れ、《MISSION COMPLETE》の文字が浮かび上がる。

 

【エェクセレ~ントっ! やったじゃない三人ともぉ~!】

 

 画面の向こうで親指を立てたマギーがまるで自分のことのように喜んでいた。

 

『流石ですねアズマさん!』

『リッくんも凄かったね! 僕なんか結構消費しちゃったし』

「弾幕を張ることで相手の行動を狭め、回避先をある程度予想して狙い撃つ。実に堅実で理想的な戦術だと思います」

『うん! あれは凄かった! 丁度避けた先にビームライフをさ!』

『そ、そうかな? えっへへへへへ……』

 

 先に戦闘を終えたリクとユッキーに合流し、三人が思い思いにバトルの所感を述べる。

 興奮冷めやらぬと言った感じで二人の声音はいつもより若干高くなっていた。

 アズマも務めて冷静を装っていたが、初のGBNと久々のバトルで無意識の内に二人と同じくらいに熱が入っていた。

 

【や、やるじゃあないか……じゃが帰るまでがミッションじゃよ!】

【そうね。これで後はベース基地戻ってくれば、ミッションクリアよ♪】

『戻るまでがミッションってことか~』

『何だか遠足の時に先生がよく言う言い回しみたい』

「消耗が激しかったら帰還するのは骨が折れそうですね」

 

 しかし三人は気づかない。

 その後ろで仰向けに倒れたリーオーNPDのカメラアイが不気味に点滅したことに。

 表示されている『MISSION COMPLETE』の文字にノイズが奔ったことに。

 ザザ――ザザザ――ザ――ザザザザ――

 

『やっぱり二人とも強いなぁ』

 

 改めて、実感するように呟くリク。

 その直後に異変は訪れた。

 

 《CAUTION》

 

 けたたましい警報が鳴り響き、三人のコックピット内に突如として表示された警告。

 誰もが疑問を口に出す前に――リーオーNPDがサーベルを振り上げて背を向けていたジムⅢビームマスターに飛び掛かってきた。

 

『あっ……』

『えっ!?』

「なっ!?」

 

 不意打ち同然の出来事に三人は面食い、特にユッキーの反応が遅れた。

 しかし――

 

『くぅっ!』

 

 動き出しは同時だった。

 ダブルオーダイバーがGNビームサーベルを引き抜き、リーオーNPDの顔面目掛けて投擲。

 ジャグラスナイパーがアーマシュナイダーを引き抜き、リーオーNPDの右腕の関節目掛けて投擲。

 アーマシュナイダーが肘関節に突き刺さり、腕の動作を阻害。

 次いでGNビームサーベルが顔面――カメラアイを貫いた。

 リーオーNPDは糸が切れたように仰向けに倒れ――爆発。

 エフェクトとともに消滅した。

 

【どうしたの!?】

『倒したはずのリーオーが……』

「急に動き出して襲ってきました」

【えぇ!?】

【そんなことが……?】

 

 マギーとミナトの反応から、ミッション内に仕込まれた設定ではないことが窺えた。

 先輩ダイバーのミナトの「ボクの時はそんなのなかったぁ」という証言から不具合かも知れないと、後でマギーから運営に報告しておくということになった。

 

「なんだ? 今の……」

 

 その光景を木々の陰に隠れて見ていた人影も、唖然として呟いた。

 

 ⁎

 

『でも助かったよ。ありがとうリッくん、アズマさん』

 

 ユッキーのお礼にリクは「へへぇ~」と得意気に笑った。

 

「そういえばユッキーさんの機体、射撃編重のようですが、肉薄された時の為の近接武器は?」

『あ、そういえば』

『ああ、それは――』

 

 言いかけた時、警報とは違う音色が響いた。

 

 《Nearby SOS signal received》

 

 レーダーマップにはそんな文字が表示されていた。

 マップが切り替わり、発信源の位置がアイコンとして表示される。

 表記は正体不明(Unknown)

 それから《Sound Only》という表示とともに音声通信が入ってきた。

 

『たす――けて――』

 

 途切れ途切れではあるが、どうやら少女の声のようだった。

 

『えっ?』

『なに、これ?』

「マギーさん、これは?」

【救難信号ね】

【でも何で?】

『マップに反応が出てる……。とりあえず行ってみよう』

 

 リクの提案に、ユッキーとアズマも異論はなかった。

 三人はマップに表示されたアイコンを頼りに、救難信号の発せられた場所へと向かうのだった。




おかし、お嬢様の出番がありませんわね?
でも大丈夫ですわ! お嬢様が合流するのは2話ですのよ! ご安心なさって!


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1.7『WELCOME TO GBN/アンノウンガール』

わたくしの誤字脱字率は治らない! 加速する!


 マップに表示された救難信号を頼りに三人三機は上空を飛んでいく。

 森林エリアから緑豊かな山を越えれば、ほどなくして雪山エリアへと切り替わった。

 下れば下るほど麓付近は春の陽気に満ち溢れ、逆に登れば登るほど冬の寒気に覆われるという典型的な二重気候エリアだ。

 救難信号の発信源から辿れば――

 

『この辺のはずだけど……』

 

 ユッキーの言葉に、リクとアズマは注視しながら雪山エリアを見渡す。

 こういう時、高度な望遠機能を有するジムスナイパーのスコープバイザーが役に立つ。

 実際、それで小さな影に気づけたのだから。

 

「――リクさん、ユッキーさん、あれは?」

『え?』

 

 指差した方向に、ポツンと人影があった。

 メインカメラをズームすれば白いワンピース状の衣服を纏った少女が雪の上で横たわっていた。

 雪の白さに紛れるような淡い色彩に、一つでも誤れば見逃すところだったとアズマは思う。

 

『女の子?』

「――ですね」

 

 リクが先に着地し、アズマはユッキーと共に後に続いた。

 ダブルオーダイバーから降りたリクが倒れた女の子に駆け寄っていくのを確認しつつ、アズマもアストレイ・ジャグラスナイパーから降りる。

 アズマが雪に足を取られながらも何とか駆け寄る頃には、既にリクは少女に積もった雪を払いのけ、抱き起していた。

 薄い青色の髪をもつ少女だった。

 触れてみると雪の上で倒れていたせいか冷え切っていた。

 かすかに肩が上下しているので気を失っているだけだろうとは思うが、GBNで倒れるということはログインしているリアルの方が心配になる。

 しかし、アズマたちにはそれをどうこうする手段がないため、今はとにかく少女の無事を祈るばかりである。

 

「大丈夫でしょうか?」

「わ、わかりません。息はあるようだけど……」

「とりあえず下に連れていこう!」

「うん!」

「はい!」

 

 ユッキーの言葉に一も二もなく頷いた。

 幸いそこまで標高がある場所で倒れていたわけではないので、マギーとミナトの案内を受けながら日差しの降り注ぐ広く開けた場所まで行くのにそう時間はかからなかった。

 小さな滝が流れる広場に到達した一行は、丸みを帯びた岩に気を失っている少女をもたれかからせる。

 できるだけ暖かな日差しがあたる場所だ。岩肌も程よく温い。

 とは言え、三人ともGBNを初めたばかりなので特に用意できるものなどあるはずもなく、ただ少女が無事に目覚めるのを見守ることしかできなかった。

 目覚めるの待つ間に、アズマはマギーと通信しながら状況を伝えていた。

 

「マギーさんの見解では、感覚を再現するGBNの特性上、ダイバーにかかるデバフ――つまり状態異常を実際の体調不良と錯覚して倒れてしまったのではないか、ということだそうです。

 ただ、絶対とは言えないので、可能なら状態を聞いて報せてほしいそうです」

 

 アズマの口から伝えられたマギーの見解に二人はホッと胸をなでおろす。

 それでも不安というものは拭えず、少女の方に振り返る。

 丁度、目覚めたようで、ゆっくりと少女の目が開かれる。

 

「気づいたんだね! 大丈夫?」

「何かあったの? 君一人で倒れていたけど」

「ご気分が優れなければ安静にしていてください」

 

 三人の言葉に少女は――小首を傾げた。

 まるで自分がどういった状況にあったのか理解していないといった風に。

 そんな一行の背後――ひと際大きな岩の陰に隠れて、怪しい人影が覗いていた。

 何かをブツブツと呟き、

 

「よし、じゃあそろそろ仕掛けるか……」

 

 いやに含みのある表情を浮かべた。

 

 ⁎

 

 リクがマギーへ報告している間、同性という理由でアズマは少女の傍にいることを頼まれた。

 ユッキーも一緒にいるのだが、遠慮してか少し離れた位置にいた。

 意外だったのは、少女は目覚めてからの記憶が曖昧だったことだ。

 否、曖昧という表現は適切ではない。

 

「憶えていない……」

 

 そう答えたのだ。

 見ず知らずで――それも救難信号の通信内容と噛み合わない少女。

 疑問に思うことは多々あったが、とりあえずは無事であったことに安心を覚えた。

 

【とりあえず、ゲストモードでコックピットに保護してあげて】

「わかった」

 

 リクとマギーのやり取りを聞きながら少女のほうに顔を向けると、丁度少女もアズマのほうを向いたところだったのか、目と目が合った。

 

「……」

「……」

 

 言葉が出ない。

 どう接したらいいもの。

 どう話しかけたらいいものか。

 切っ掛けというものがないとこうも気まずいのかとアズマは臍を噛む。

 少女のほうは惚けているのか、困惑しているのか解らない。

 ただその瞳は、アズマの心を見透かすかのように澄んでいた。

 ……こういう時、お嬢様なら。

 きっと図々しくも堂々と話かけたりするのだろう。

 「あなた、お名前は!?」とか「オーッホッホッホ! もう安心なさい! わたくしが来たからには1000%実際安全ですことよ!」とか言うのだろう。それはそれで見てみたい気もするし、見せたい気もする。

 

「あの――」

 

 言葉を絞り出して、声をかけようとした時、先ほど聞いたばかりの救難信号の警報が鳴り響いた。

 

「また救難信号!?」

「今度はどこから?」

「ええっと……場所は――え?」

 

 リクのマップパネルを覗き込む。

 救難信号を受け、マップに表示されたアイコンの場所は――

 

「ここ?」

「ここですね?」

「ここだよね?」

「……?」

 

 何とも奇妙な、と思った矢先――何とも言えない気の抜けるような悲鳴が聞こえた。

 あまりにも近い。

 三人はマップから顔を上げると――救難信号の発信者が目の前にいた。

 和風な青い衣服に身を包んだ丸っこい少年姿のダイバーだ。

 額から伸びた大きな一本角が特徴的であった。

 そのダイバーが丸っこい身体をダンゴムシのようにさらに丸め、お腹を抱えて苦しんでいた。

 だが、それがどうにもわざとらしく、心配よりも先に疑心を抱いてしまう。

 ……あ、今こちらをチラリと盗み見しましたね。

 

「は、腹があぁぁぁぁ! 腹がぁ痛い……痛いのぉ……助けて……たすけぇ……」

「お、おい、大丈夫か?」

「いやリッくん。その人、完全に怪しいよ」

 

 純粋に相手を心配するリクにユッキーが最もなことを言う。

 

「いやそんなことねーよ! めっちゃ苦しんでるよ! 少しは心配しろぉ!」

 

 やはり、何とも言えない。

 アズマのじとっとした視線に気づいたのか、よし激しく足をバタつかせて苦しみだす。

 

「流石に無理が――」

「本当に困ってるみたいだ!」

「えぇ?」

「あ~」

 

 無理がなかった。少なくともリクには。

 思わず零れたユッキーとアズマの声が被った。

 駆け寄り、「どうしたの?」と声をかけている。

 

「ユッキーさん」

「うん、解ってる。優しいんだけど……」

「純粋すぎて逆に心配なると思う日がこようとは」

「うん……」

 

 やれやれ、と肩を竦める。

 その一瞬の間に、少女が動いていた。

 角付きのダイバーに何事かを言われるままパネルを操作しているリクへと近寄っていく。

 気づいた二人も近づこうとして、角付きのダイバーの言葉にユッキーが「ん?」と足を止めた。

 

「リッくん、それってもしかして――」

【ま、まさか!?】

 

 成り行きを見守っていたマギーとミナト――のアッガイキャップのモノアイ――も画面の向こう側でハッと目を見開いた。

 

【リク後輩、それはダメだ!】

 

 ミナトが叫ぶ。

 しかし、一寸遅かった。

 言葉が届くよりも前に、リクはパネルに表示されたOKボタンを押してしまっていた。

 瞬間――電子音声が『Free Battle Mode』と告げ、同時にドーム状の境界が頂部から解けるように崩れていく。

 

「これは……」

 

 変化する状況に、困惑にも似た調子でアズマは呟く。

 そして見た。

 リクのダブルオーダイバーが、見知らぬダークグレーの機体に奇襲される瞬間を。




次回で一話、完ですわ。
大よその流れとして三話までは原作沿いですので、それまではある程度本編組と絡みますの。ご承知くださいませ。


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1.9『WELCOME TO GBN/vsビギナーハンター』

第一話『WELCOME TO GBN』編、これにて完ですわ。


「うわぁっ!?」

 

 突然の変化に、驚愕でリクが後退り、傍に近寄っていた少女ごとダブルオーダイバーのコックピットに取り込まれた。

 直後、獣めいた鋭い爪先のマニピュレータに頭部を掴まれ、地面に押し倒された。

 

「リッくん!」

「リクさん!」

 

 倒れた衝撃で生じた風圧に煽られ、無意識に顔面を防ぎながら叫ぶ。

 

『ウッハハハハ! お陰で元気になれたぜぇ! ありがとよぉ、お人好し!』

 

 角付きのダイバーの声。

 見ればダークグレーを基調に、各パーツが青で彩られたガンプラ。

 アズマの知らない機体である。

 

「見たことのない機体っ!?」

「あれはガンダムAGEに出てきたゼダス! ガフランの上位機種にあたるとされている機体で、高速機動形態にも変形可能な上に強力なビーム兵器を搭載しているんだ!」

「――あの、ええと、なんて?」

「正確には胸部に搭載されたビームキャノンこそが最も強力なんだけど、残りはビームサーベルを兼ねるビームマシンガンだけなんです! けど本編中の当時の技術的観点からすれば強力なことに変わりないんだ! 加えて実体剣としても活用できるゼダスソードもあってビーム対策に気を取られすぎると――あっ、ゼダスソードって言うのは――」

【そんなことよりも!!!】

「うぁぁぁっ!? そ、そうだった、ごめんなさいっ!」

 

 ミナトの張り上げた声がユッキーの言葉を断ち切った。

 状況が状況なだけに言葉を止められたなかったユッキーも申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「ミナトさん、何故いきなりダブルオーダイバーが?」

【あれはフリーバトルモード。許諾してしまえば上位ランクだろうと下位ランクだろうと関係なくバトルできるっていう機能!】

「あれじゃさせられたみたいなものじゃないか! 卑怯だよ!」

【だけどルール上、何も違反はしていないんだよ。事前にバトル云々の表示もされるし。

 これに関しては確認を怠ったボクらの落ち度だ】

「そんな……!」

「しかし、何故リクさんにフリーバトルを?」

【恐らく初心者狩りだろうね。ビギナーボーナスで予め付与されるダイバーポイント狙いの。

 マギーさんが向こうのダイバーに通信で接触を試みてるけど……。

 くそっ、ボクがいればけちょんけちょんにしてやるのにー!】

「なるほど」

 

 歯噛みするユッキーの肩に手を添える。

 経験則からアズマは、イレギュラーな事態に遭遇しても、すぐ傍に誰かがいるという事実があれば人は幾分か落ち着くものだということを知っている。

 理不尽さに震えていた肩が小さくなっていくのを感じる。

 

「――援護はできますか?」

【できる。けど、フリーバトルモードだよ!? 当然ながらフレンドリーファイアは有効になってるし、負けたらダイバーポイントは失われる、と言うか奪われる!】

「リスク有、と」

 

 その間にも状況は進む。

 ついにゼダスがダブルオーダイバーに掌を向ける。

 アズマにはあまりピンとこないが、それはゼダスに備わったビームマシンガンを放つための動作だということをユッキーは知っている。

 

「っ!? リッくんっ!」

 

 言下にユッキーがコントロールパネルを開き、素早く操作する。

 

「ユッキーさん!?」

 

 言うが遅い。

 ジムⅢビームマスタ-に乗り込んだユッキーがビームライフルをゼダスに向けようと――

 

『なんてなっ!』

 

 バーニアを吹かし、ジムⅢビームマスター目掛けて突進。

 既に掌からはビームサーベルを形成していた。

 

「なっ!?」

 

 完全に不意を突かれた形となった。

 ユッキーは咄嗟にシールドを構えるも、一撃目のビームサーベルであっさりと溶断される。

 続く二撃目でビームライフルも溶断された。

 

「まだだっ!」

『見え見えなんだよっ!』

 

 大型バインダーを構えようとしたのを見透かされ、手首ごと刺突されてしまう。

 突き刺したまま横薙ぎに払われたビームサーベルがジムⅢビームマスターの脚部を切り裂き、腹部に蹴りを入れる。

 

「うわあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 大地を削り、岩を砕き、そのまま滝壺まで吹き飛ばされた。

 

「くぅ……あ、脚がっ!?」

 

 大破こそ免れたが、溶断された箇所からバチバチとスパークを散らしていた。

 射撃兵装は全て無力化され、脚部のダメージで立ち上がることもままならない。

 

「ユッキー!」

 

 体勢を直したダブルオーダイバーがGNソードⅡをライフルモードに、背面を向けたままのゼダスに放つ。

 

『そんなんでっ!』

 

 しかし、相手はそれを予期していたようで、振り向きざまにライトアームで防御される。

 そのままダブルオーダイバーに接近し、タックルを喰らわせた。

 

「ぐっ」

 

 持ち堪えられずGNソードⅡがマニピュレータから離れ、地面に突き刺さる。

 ゼダスはすかさず突き刺さったGNソードⅡにビームマシンガンを撃ち込み――破壊。

 

「あぁっ!?」

 

 すぐにGNビームサーベルを使おうとし――先ほどのチュートリアルミッションで使い果たしてしまったことに気づく。

 

『これで有用な武装はなくなったなぁ!』

「リクさんっ」

 

 遅れてアズマがアストレイ・ジャグラスナイパーに乗り込む。

 

『今さら狙撃機なんかでさぁっ!』

 

 ゼダスが方向を変え、ジャグラスナイパーに迫る。

 

「知らぬ機体といえど……真っ直ぐにくるのならっ!」 

 

 レフトアームに持った重突撃機銃を乱射。

 

『チィィッ』

 

 ゼダスが両腕を交差させ、持ち前の装甲で弾く。

 ダメージこそ軽微だが動きを鈍らせることはできる。

 その間に慣れた動作でスナイパーライフルを展開。

 ビームを弾く装甲だろうが、威力の高いスナイパーライフルだ。

 ……この距離ならば撃ち貫ける。

 トリガーに指をかけ――

 

『だけどなぁっ!』

 

 ゼダスが真横に飛んだ。

 

「射線から逃れようとも……っ!?」

 

 引きかけたトリガーからマニピュレータを離す。

 ゼダスが移動した射線上には――ダブルオーダイバー。

 スナイパーライフルの貫通力では、そのままダブルオーダイバーごと撃ち抜いてしまいかねない。

 その一瞬の迷いを突かれた。

 

『甘ちゃんめっ!』

 

 ゼダスがしなるようにテイルを振り抜く。

 ユッキーがあの時、教えてくれたゼダスの武装――ゼダスソードだと直感したが、それがテイルブレードだとは思ってもいなかった。

 反応が遅れ、振り抜かれた一撃がスナイパーライフルを切断。

 即座に放棄。バーニアを噴出させ、寸でのところスナイパーライフルの爆発から逃れる。

 追撃のビームマシンガンに損傷を与えられながらも、ジムⅢビームマスターの横に並ぶように後退。

 機動力を削ぎ落とすことが目的だったようで、ジムⅢビームマスター同様、脚部へのダメージが著しい。

 すぐさま重突撃銃にストックされていた長身バレルに組み替え、バイザーを下ろしてスナイプモードに移行する。

 スナイパーライフルを失った場合の応急措置だ。残弾数は5発。

 元々は牽制用に用意したものなので威力は低いが当たればノックバックさせることくらいはできる。 

 

「っ!」

 

 スコープを覗くも、状況を把握し撃てない。

 

【どうして撃たないの!?】

【違うわミナト、撃たないんじゃない。撃てないの】

 

 マギーの指摘は正しかった。

 ゼダスはわざとダブルオーダイバーの近くを飛び回り、攻撃を加えている。

 それが問題だった。

 下手に撃てば、ゼダスではなくダブルオーダイバーに命中してしまう危険性を内包していたのだ。

 

「あのゼダスと言う機体に乗るダイバー、それを解った上で動いてますね」

【初心者狩りにしては、巧いってわけかっ!】

「ど、どうすれば……」

 

 今のところダブルオーダイバーの防御力とリクの反応力で何とかゼダスの攻撃を捌けているが、それも時間の問題だ。

 

【バトルアウトなさい、三人とも!】

「――バトルアウト?」

【リタイア機能のことよ。仇ならわたしが取ってあげるから、今は一旦退くのっ!】

 

 マギーさんの言葉だ。それは確かに頼もしい言葉だろう。

 

「しかし……」

「でも……」

 

 諦めきれない思いがあった。コントロールスティックを握る力が強まる。

 

「初めてのGBNで……」

「初めてのミッションで……」

 

 こんな形で、負けたという気持ちを持ち帰ったままで終わりたくはない。

 それはきっと今も戦っているリクも同じ気持ちだ。

 しかし、だからといって状況が好転するわけではない。

 ダブルオーダイバーが徐々に追い詰められいるのが目に見えて解る。

 ゼダスはなおも付かず離れずの距離でスナイパーライフルの時の同じように、重突撃銃の狙撃を警戒した動きのままダブルオーダイバーを――リクを追い込んでいく。

 マギーの言う通り、感情を抑えてリタイアをするべきか。

 それが今の最善だという考えが脳裏を過ぎった、瞬間――

 

「諦めないで」

 

 声が聞こえた。あの少女の声だ。

 

「あなたのガンプラは――あなたたちのガンプラは、まだ諦めていない」

 

 ……ああ、そうですね。

 少女の言葉に、アズマはキリシマの言葉も思い出す。

 曰く、「どんな窮地でも、諦めず不敵に構えなさい。それがコツですわ。――換気扇つけずに塗装したのはわたくしの落ち度ですけれど!」と。何か余計なセリフも付いてきた。

 

「ユッキー! アズマさん! ――力を貸してくれ!」

 

 リクの叫びにも似た呼びかけ。

 応えないわけがない。

 

『いい加減耐えやがって――そろそろケリをつけてやるよっ!』

 

 ビームマシンガンを連射しながらゼダスが距離を詰めにかかる。

 腰を落とし、頭部とコックピットを守るように腕を交差させたダブルオーダイバーが、ゼダスの接近に合わせて加速――前進。

 

「いくぞぉぉぉぉぉっ!!!」

『うぇっ!?』

 

 予想外の動きだったようで、ゼダスの動きがほんの僅かに鈍った。

 

『――はんっ! 自分からやられにきてっ!』

 

 流石に切り替えが早い。ビームサーベルを形成し、迎えうつつもりだ。

 しかし、動きが鈍った際の小さな隙間をアズマは見逃さない。

 

「いまですっ」

 

 重突撃銃から一発の弾丸が放たれる。

 それは真っ直ぐに、正確にゼダスの左肩関節を打った。

 

『なんだぁっ!?』

 

 バランスが崩れ、反射的に斬り上げたビームサーベルはダブルオーダイバーの胴体ではなく、右肩部に備えていたGNドライブ一基を斬り飛ばした。

 

『だけどなぁ!』

 

 ビームサーベルでの二撃目が間に合わないと悟るやいなや、ゼダスソードを閃かせる。

 ダブルオーダイバーの顔面を貫かんと迫るゼダスソード。

 リクはバーニアを瞬間的に最大出力で噴射。

 真下へ急速下降。

 ギャリギャリギャリッ!

 金属が擦れる音を奏でながらゼダスソードが頭部装甲を掠めた。

 両腕を解放し、地面に突き刺さんばかりの勢いで上体を支える。

 バーニアを出力を一気に落とし、ゼダスの脇を擦り抜け、四肢をブレーキ代わりにガリガリと地面を削りながら、ユッキーとアズマのもとへ滑り込む。

 

「リッくん!」

 

 ジムⅢビームマスターの膝装甲が展開し、内蔵されていたビームサーベルの柄が現れた。

 チュートリアルミッション終了後にユッキーが言いかけた近接武器である。

 答えず、行動で応える。

 ビームサーベルを掴む。

 再び、バーニアを噴かす。

 

「リクさん!」

 

 アズマの声を合図にしたかのように、ダブルオーダイバーが飛び出した。

 

『ええいっ!』

 

 ゼダスが振り向き、サーベルを突き出す。

 だが――遅い。

 ダブルオーダイバーのほうが僅かに速かった。

 振り抜かれたビームサーベルがゼダスのライトアームを斬り飛ばした。

 

『なぁっ!? こ、このぉ――』

 

 ゼダスの胸部――正確にはそこに内蔵されたビームキャノンが煌めく。

 距離を考えれば、直撃は免れない。

 さしものダブルオーダイバーとて当たれば一撃で撃破されれるだろう。

 だが――

 

「させませんよ」

 

 一発。胸部に弾丸が撃ち込まれる。

 二発。同じ場所に寸分違わず撃ち込まれる。

 三発。ダメ押しとばかりに撃ち込まれ、ビームキャノンの発射口を歪ませた。

 放たれたビームキャノンは勢いこそあれ、その威力は著し低下していた。

 であれば、ダブルオーダイバーが防げない理由はない。

 ビームサーベルを構え、ビームキャノンと激突。

 もはや通常よりも弱々しい出力のビームキャノンはあっさりとビームサーベルに打ち負け、周囲にエネルギーを四散させる。

 歪んだ発射口が負荷に耐えきれず、スパークを散らせる。

 

『そんなっ!?』

 

 一瞬にして自身が不利に陥ったこと、初心者とは思えない正確な狙撃を受けたこと、そしてダブルオーダイバーのプレッシャーに圧されたことが角付きのダイバーの戦意を大きく削いだ。

 ビームキャノンが途切れた瞬間、背後に飛んで離脱しようと試みるも、最後の一発が脚部に飛来。

 浮き始めた瞬間を狙われたゼダスは回避する間もなく弾丸を受け入れ、衝撃とともに前のめりにバランスを崩した。

 その一瞬をリクは逃さない。逃しはしない。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 ビームサーベルの切っ先を向け――加速。

 

『ぅ、ひっ……』

 

 完全にバランスを失ったゼダスは回避することもできず、ゼダスソードでの迎撃も間に合わない。ましてや肩関節に受けたダメージでライトアームが思うようぬ動かせず、防御することもままならない。

 突き出されたビームサーベルが吸い込まれるようにゼダスの腹部を貫いた。

 青白い放電を撒き散らしながら、歪んだ胸部が負荷によって爆発を起こし装甲が散らばる。

 

『俺が……負けた……?』

 

 唖然とした角付きのダイバーの声。

 自身が負けるとは思ってもいなかったのだろう。

 立ち回りの妙とフェイントを加えた戦術は初心者狩りにしては巧いものであったが、そこに根付いた慢心が自らに敗北を呼び込んだのだ。

 

『ふ、ふざんけんな馬鹿ぁ! こんな、こんなの……!』

 

 声が震えている。すすり泣くような調子だ。

 

『百倍にして返してやるんだからぁぁぁぁぁ――』

 

 最後にそう叫び、程なくしてゼダスが爆発四散。

 角付きのダイバーは敗北判定を受けてエリアから離脱したのだろう。

 黒煙が晴れて、周囲には再び春の陽気が戻ってくる。

 リクは、ユッキーは、アズマは――ただ空を見上げていた。

 

「勝った?」

「勝った……」

「勝ち、ました」

 

 リクの呟きを切っ掛けに、確認するように二人も呟く。

 武装も全て失い、大破こそしなかったが中破したガンプラのまま――勝ったのだ。

 リクとユッキーの歓声が重なり、春の青空に響いて消えた。

 久々のガンプラバトルと緊張感から解放されたアズマは、二人の歓声には乗らず、コックピット内で一人静かにほほ笑んでいた。

 その表情は、柔らかかった。

 

 ⁎

 

「よ゛か゛っ゛た゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 

 

 GBNメインロビーに戻ると、マギーとミナトに出迎えられた。

 特にマギーの勢いはとてつもなく、駆け寄られた時には、既に太い腕に三人とも抱きすくめられていた。逃げる猶予さえなかった。

 

「よかったわぁ三人ともっ! よく勝てたわぁっ! ステキよっ! 見てて胸がキューンキュンしちゃったぁ

っ!」

 

 左右に抱えられたリクとユッキーは滝のような感涙を流すマギーに苦笑を浮かべ、間に挟まれたアズマは頬を圧迫されて「あぶぶぶ」と声にならない声をあげていた。

 

「およ? そーいえばあの女の子はどこいったん?」

 

 面白おかしくその様子を眺めていたミナトが、先ほど保護した少女がいないことに気づく。

 

「あら、本当ね?」

「あぶぶぶぶ……」

「ブフッ!? ウククク、なな、なんて?」

「さっきまでいたんだけど……」

 

 見渡しても少女の姿はどこにも見えなかった。

 ログアウトしたのだろうか。

 そういえば名前を訊くのを忘れていたことを思いだす。

 

「三人とも――」

 

 マギーが抱擁していた三人を降ろし、アズマはようやく圧迫感から解放された。

 

「散々なGBNデビューになっちゃったけど、どうだった? GBN、嫌いになっちゃった?」

 

 不安そうな表情でマギーが問う。

 先ほどまで抱擁されていた三人を見て笑っていたミナトも心配そうな表情をしていた。

 マギーの言葉に三人は顔を見合わせる。

 確かに初心者狩りというイレギュラーには遭遇した。

 けれど、ガンプラを見せあい、操作し、戦う。

 自身が作ったガンプラに乗り込み、この世界を冒険できるという神秘と高揚感。

 それらがもたらす答えはとっくに決まっていた。

 

 ⁎

 

 一番から三番までのGBN筐体の表示が《ON LINE》から《OFF LINE》に切り替わる。

 リクが、ユッキーが、アズマがGBNからログアウトしたことを示すものだ。

 アズマはダイバーギアを外して、息を吐く。

 肉体的疲労と言うものは殆ど感じなかったが、精神的疲労は十分に感じられた。

 

「三人ともお疲れさま~」

 

 後ろからナナミが労いを声をかけてくれた。

 

「どうだった初GBN? 楽しかった?」

 

 マギーに訊かれたことと大体同じ質問に、三人はそれぞれのガンプラを手に振り返る。

 

「最高に!」

「面白かった!」

「――です」

 

 初めてのGBNは、多少のアクシデントこそあったものの、三人に大きな満足感を与えて無事に終わることができた。

 

 ⁎

 

 帰り際、GBN内で結局キリシマお嬢様に出わなかったことを思いだす。

 聞いてみればキリシマホビーショップのショップ大会に飛び入り参加し、稼働テストのログインを権利として優勝賞品に置いた挙句、自身は負けた上にコルレルを破損して帰ってきたのだと言う。

 それを聞いたアズマは呆れながらも「お嬢様らしいですね」と苦笑し、晩御飯のデザートを抜きにしたのだった。

 

「アズマ!? これはわたくし的南極条約違反ですことよ!」




「アズマ、GBNはどうだったかしら?」
「それはもう、とても楽しかったです。そうですね――色々ありましたが、久々に童心に帰った心地でした」
「それはよかったですわ!」
「あれほどまでに作り込まれた世界、お嬢様が誘うのも理解できたというものです」
「そうでしょうそうでしょう! 次はわたくしもちゃーんと同行しますわ! そしてあなたのご友人をわたくしにも紹介なさい!」
「それは良いのすが、次はバトルではなくディメンションの探検を約束していまして」
「わたくしはいっこうに構いませんわっ!」
「それとあんまりマウントを取らないように」
「わたくし、そんなはしたない女だと思われて???」

次回、『獄炎のオーガ』

「極旨の……オーガ?」
「お嬢様、その間違いは流石に怒られるのでは?」
「他人の金で焼き肉食べてーですわね!」
「お嬢様?」


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2.0『獄炎のオーガ/前に進む』

第二話獄炎のオーガ編ですのよ。早々に解いていくスタイル。


 ミカガミ・ハルオキと言う人物の話だ。

 若かりし頃からビルダーとしての技術力、ファイターとしての戦闘力は随一で、GPD世界総合大会では常に上位に入り込むほどであった。

 西欧の悪夢(ナイトメア)『ミカーラ・レ・ファニュ』

 北宋の貴公子『サザキ・ジュンヤ』

 無冠の女王(アンクラウン)『フローレンス・カオル』

 USA(アメリカン)玩具の英雄(ホビーヒーロー)『マークス・カラン』

 ブリテンの姫騎士(プリンセスナイト)『ゾアナ・ブリタニア』

 そして――『ガンプラマイスター(シャウアーを継ぐ者)』との決戦。

 強豪たちとの激闘に次ぐ激闘。命すら磨り減らす勢いの死闘に多くの人が魅了された。

 そんなハルオキは何よりも能力と言うものを重視していた。所謂、能力至上主義である。

 齢60を超えてからは何を恐れたのか何よりもそれに固執するようになっていた。

 全国各地を巡り、その中で有望な人材を掻き集め、己の技術を教え込んでいた。

 ――アマツ(・・・)・アズマもまた、ハルオキの目に留まった一人だった。

 物心ついた時には両親は居らず、アマツお婆ちゃんの営む古き良き模型店で育てられていた。

 彼女は幼少の頃からずっと模型を作り続けること以外には興味を示さない変わり者だった。

 天性の器用さはこの頃から遺憾なく発揮されていた。

 ハルオキはこのアズマの才能を見抜き、彼女を養子に迎え入れ、孫娘のミカガミ・ハバキと共に己の技術を余すことなく叩き込んだ。

 将来はさぞかし立派なビルダーになるだろうと、ハルオキも、彼を囲う誰もが思っていただろう。

 アズマがミカガミ家の家族となって三年目の誕生日(・・・)――その日、二人の姉妹を悲劇が襲うまでは。

 

第二話『獄炎のオーガ』

 

「うえぇぇぇぇっ!?」

「オーッホッホッホッホ!」

 

 ユッキーの悲鳴にも似た驚嘆と、キリシマの馬鹿みたいな笑い声が『THE GUNDAM BASE』に響き渡る。

 フルフルと震える身体を支えるため、隣に立つリクの肩を掴んでいた。

 

「み、ミカガミって……あのミカガミ・ハルオキ!?」

「そうですわ!」

「の、元弟子!?」

「――そうです」

 

 フフーン、と鼻を鳴らし、胸を張るキリシマ。

 隣ではバツが悪そうな顔でアズマが頷く。

 ついに都合が合い、リクとユッキーの二人と対面したキリシマであったが、二人はアズマからある程度のことを聞いていたためか「フローレンス工業のご令嬢に知り合えるなんて!」と、まるで芸能人に会うかのような大袈裟な反応だった。

 キリシマはそんな反応を受けてフルスロットルですっかり調子に乗ってしまった。

 さらに自己紹介の際にミカガミ・ハルオキの名を出したことで、ユッキーが目を見開いて驚いたのだ。

 

「えっと、その、ハルオキって? 名前は見たことあるけど――」

 

 詳しくは知らない、と言いかけたリクにユッキーが眼鏡をキラリと光らせた。

 

「知らないのリッくん!? ミカガミ・ハルオキ!

 GPDが主流だった時代に活躍したガンプラビルダーの一人で、全日本ガンプラ選手権で一位を三回も取って殿堂入りした凄い人なんだよ!

 ガンプラファイターとしてもGPD世界総合大会で毎回五本の指に入るほどの腕前で、当時世界各国の強豪を相手に激闘を繰り広げたんだ! 最後に参加した大会では五位だったんだけど、あの時のアメリカ代表のマークス・カランのGセイバーとの戦いは名勝負としてかなり盛り上がってたんだ!」

 

 早口で熱く語り出したユッキーに圧されながらも、リクはふと気になったことを訊いた。

 

「それじゃあアズマさんも、そのハルオキさんの弟子だったんですか?」

 

 それは何気のない疑問だった。

 リクの言葉にアズマが右腕をギシリと握り、隣に立つキリシマに視線を送った。

 別に嫌な気持ちがあるというわけではない。

 聞かれるのも、答えるのも別にいいのだ。

 理由のない苦みがあるだけなのだ。

 その程度。その程度でしかない。何も躊躇うことなどないはず。

 けれど、もし、もしそれで――

 「どうして貴女なの!? どうしてよっ!!」

 

「大丈夫ですわ」

 

 そっとアズマの左手に添えられる手があった。キリシマの手だ。

 

「――いえ、孫です。弟子でも強ち間違いではありませんけど」

 

 「あと養子ですが」と付け加えた言葉にユッキーが更に驚きの声を上げた。

 その挙動は完全に芸能人を目の前にした一般人のような――あるいは生まれたての小鹿のようであった。

 かつての伝説(レジェンド)の関係者が二人もいるのだから無理もない。

 完全にリクを支えに立っているのがようやくといった様子だった。

 そんなユッキーを落ち着かせながら、リクはアズマを真っ直ぐに見た。

 

「でも良かった。アズマさん、どこか遠慮しているところがあったから」

「――気づかれてましたか?」

「とは言っても、そうかもしれないって程度で、気づいたのは帰宅してからだったんだけど」

「そ、そうだったの!?」

「うん。ユッキーは気づいてなかったの?」

「まったくだよ!」

 

 「アハハ」と短く笑って、リクはアズマに向き直る。

 

「きっと理由があってあんまり言いたくなかったんだと思います。

 何と言うか――正直あの時はまだ壁みたいのが感じられて……。

 今のでこう、壁がなくなった――って言うのは言い過ぎかも知れないけど」

 

 だけど、と。

 だから、と。

 その右手を差し出す。

 

「これからも、一緒に気兼ねなく遊びましょう!」

 

 リクの純粋さが、アズマには眩しかった。

 けれど、嬉しかったのだと思う。考えていた不安も心配も無用だった。

 ミカガミの名前だけで距離を置かれたり、妙に遠慮されるよりは確実に。

 都合が良いことだとは解っている。でも本心だった。

 

「良い子たちですわね」

 

 ヌッと顔を覗かせたキリシマが二人の手を取った。

 あっという間もなく、互いの手をギュッと握らせる。

 

「――はい! よろしくおねがいします!」

 

 アズマは深々と頭を下げた。

 今度こそ、誰もが見た。

 リクも、ユッキーも、キリシマも、ナナミも。

 どこか泣きそうな表情を抑えるように、しかし自然と柔和な笑みを浮かべた彼女を。

 ユッキーもすっかり浮ついていた顔を引き締め「僕も!」と握手を交わした。

 ……良い姿ですわ。

 学校でも友人を作ろうとしないアズマを知っているキリシマからすれば、その光景は望んだ光景だった。

 

「キリシマちゃん、大丈夫?」

「あら?」

 

 ナナミにひっそりと告げられて気づいた。釣られて涙ぐんでいたことに。

 グッと袖で拭い「平気ですわ」と返す。

 形はどうあれ、今のアズマは前に進む機会に恵まれている。

 自分一人ではようやく説得することが精一杯だった。

 ガンプラと向き合い、初のGBNを経て、もう一度――共に笑い合っていた頃の笑顔を少しだけ見ることができたのだ。

 アズマは前に進もうとしている。止めた時間を動かそうとしている。それが堪らなく嬉しい。

 腰に手を当て、ビシッと反るくらいに立てた掌を顔の横に移し――

 

「オーッホッホッホッホッホ!」

 

 盛大に――馬鹿みたいな笑い声を響かせた。

 

「うるさいですよ」

 

 怒られた。割とガチトーンで。

 それと自分の話題がすっかりアズマにかっさらわれたことに気づき、ちょっと不満があった。

 

「わたくしお嬢様ですのよ!?」

「おもしろうるさい人だと認識されているだけでは?」

「そんなまさかでしてよ!?」

 

 後で訊いたら、半分ほどそんな認識であったことが判明した。

 おもしろうるさいお嬢様キリシマ。

 それはそれでアリかも知れないと思うキリシマだった。




終始勢い任せで書いたのですわ!
伏線? 後先? 知らない概念ですわね!!!(思うように書き出せなかった言い訳お嬢様)


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2.1『獄炎のオーガ/おねえさん』

最終回間近にかまけて書き溜めしてなかったお嬢様。


 GBNブースに入室すると、ユッキーがジムⅢビームマスターを持っていないことに気づいた。

 訊けば「今改造中で、今日はガンプラなしでログインなんだ」と言うことらしい。

 元々今回はガンプラバトル以外のミッションも受けてみようと言う約束があったので問題はなかったが、アズマ的にはあのジムⅢビームマスターをキリシマに見せたかったのも事実だ。

 それを伝えるとユッキーは照れくさそうに「次までには完成させてくるよ!」と胸を叩いた。

 

「あれ、そういえばアズマさんのガンプラ、少し変わりました?」

 

 つと、リクがアズマのガンプラを見やる。

 前回と同じアストレイ・ジャグラスナイパーだ。

 アストレイ・ゴールドフレームとジム・ジャグラーを掛け合わせたミキシングビルド機で、狙撃主体の遠距離型である。

 先の初心者狩りに遭遇した際はリクを援護するために針の穴に糸を通すような狙撃を成功させ、ユッキーとともに勝利を確実なものへと導いたのは記憶に新しい。

 その時は折り畳み式スナイパーライフルと重突撃銃、近接用にアーマーシュナイダー1本という少ない武装であったが、今回新たにリアアーマー部分に四丁の小型銃が備えられていた。

 

「ビームピストルですか?」

「リックディアスのものですわね」

「バヨネット付きで接近戦にも対応できるように改造されてる……」

 

 口々に述べられる内容に頷く。

 

「はい。リックディアスのものを流用し、銃剣として活用できるよう調整しました。

 エネルギー効率を良くするためエネルギーカートリッジ式となっております」

「あ、本当だ! 弾倉が付いてる!」

「形状に名残はあるけど、これはもう別物だよ!?」

「弾数制限はありますが取り回しは良いかと」

 

 言って、キリシマに視線を向ける。

 

「お嬢様のは、あのコルレルですか?」

「コルレルなんですか!?」

「コル……レル?」

 

 真っ先に食い付いたユッキーと「聞いたことはあるんだけど」と思い出せないリク。

 その隙を逃すまいとここでもユッキーの眼鏡がキラリと光る。

 

「機動新世紀ガンダムXの登場兵器で、話数にして26話目『何も喋るな』に登場した新連邦軍の試作MSで、極端なまでの軽量化による運動性、機動性を追求した機体なんだ!

 登場当初はグレーのような色合いだったんだけど、白い死神ことデマー・グライフが『色は白がいい』と断言したため、本人の手で白に塗り替えられたんだ。

 それでこのコルレルの最大の特徴はさっき言ったように極端なまでの軽量化による――」

 

 続く熱い語りが終わるのを待たず、キリシマが後を継ぐ。

 

「従来のMSに比べて圧倒的に少ない重量――つまり軽さにありますわ。

 その重量は何と4.5t! ファーストガンダムの重量が43.4tと言えば、その軽さがお解りになって?」

「ええっと……すごいかるい?」

「その通りですわ!」

「その通りだよ!」

 

 被った。声が。

 互いに顔を向けた二人の視線が重なり、火花が一瞬散ったように見えた。

 

「キリシマさん、中々――通ですね」

「オッホッホッホ、貴方こそ随分とお詳しいようで」

 

 一寸の間を置いて、ガシッと二人が腕を交差させた。

 熱い友情の証を示すような交差の仕方だ。

 

「フフフフ……」

「ホホホホ……」

 

 さらに怪しい含み笑いも付いてきた。そんな追加はいらない。

 

「大丈夫……かな?」

「大丈夫です。たぶん」

 

 自信は――正直あんまりなかった。

 ガンダム好き同士――特に語りが長くなるタイプが共鳴すると、時間をアッと言う間に奪われる。幸いブレーキ役のリクがいるので大丈夫だと、根拠はないがアズマは自分にそう言い聞かせることで納得させた。

 

「それで、これがわたくしのコルレルですわ!」

 

 キリシマが緩衝材の詰まったタッパーを学生鞄から取り出す。

 教科書の類がその分、入っていない。置いてきたのだろう。

 あんなんでも成績は割と良い方なのが救いだとアズマは思った。

 

「今なにか失礼なこと考えてましたわね?」

「いえなんのことでしょう」

 

 シラを切った。

 訝しむ視線を無視して、促す。

 タッパーから出てきたのは一体のコルレル。

 名称はコルレル・スヴェイズ。

 鉄血のオルフェンズに出てくるヴァルキュリア・フレームと言うものを意識しているらしく、青と白で彩られたカラーリングは猫背のコルレルをスマートに見せた。

 腰周りには八基の細長いウィングバインダーが取り付けられていた。

 

「よーく見ると、頭部が違うような?」

 

 先に気づいたのはユッキーだった。

 見れば確かに、コルレルの頭部がグレイズのものに置き換わっている。

 機体の雰囲気に合うように改造されているので違和感がなかった。

 

「――改修、間に合いませんでしたか?」

「流石に一日で何とかなるほど甘くはなかったですわ」

 

 アズマたちが初GBNデビューした一方で、キリシマはキリシマホビーショップで開催されていたGPDショップ大会に参戦し、対峙したジム・ストライカーに頭部を破壊されていた。

 綺麗に溶断されていたので修復不可能ではなかったが、それでも元々がプレミアム限定のガンプラだけあって材料的な面も含め修復には時間がかかる。

 

「でも、すっごい完成度……!」

「グレイズの頭部が違和感なく取り付けられていて、原作に出てたような気さえしてくるよ!」

 

 輝かせた目で熱心に食い入るように見つめるリクとユッキー。

 こうなるとキリシマの調子はやはりノンブレーキでフルアクセル。

 リクのガンダムXに関する曖昧な部分を補完しつつも、コルレルがどれほどまでに素晴らしいモビルスーツであるかを語りだした。

 ユッキーもすっかり乗り気である。

 これは不味いと判断したアズマはわざとらしく大きな咳払いをする。

 ゴホンッ!

 アズマが思っよりも大きな咳払いだったのでちょっと驚いたが、どうやら効果はあったようで、キリシマは気恥ずかしそうに話を切り上げた。

 

「さて、準備はよろしくて?」

「さっきまで夢中で語ってた人が何仕切ってるんですか」

「正論は時に人を傷つけるのですわよ!?」

 

 無視してダイバーギアを装着。

 

「では、皆さん、GBNメインロビーで合流しましょう」

「「はい!」」

「お、無視ですか無視ですわね? もしもーし? おーいわよ? ――ちょっとぉー!?」

 

 三人はおもしろうるさいお嬢様の声をBGMに、GBNを起動するのだった。

 

 ⁎

 

「無視は流石にお辛いものでしてよ!?」

「うるさいですね」

「辛辣!? 辛辣ですわ!」

 

 GBNメインロビー。

 無事に合流した四人はミッションカウンターで受注するミッションを選んでいた。

 ダイバールックでのキリシマは、リアルと違い金髪縦ロールなのだが、意外にも三人はこれをキリシマだと確信できたようだった。

 これが絆! 

 これが友情!

 何と素晴らしいことですわ!

 などと勝手に感動していたが、実際はロビーで馬鹿みたいな笑い声をあげていたので、いやでも解ってしまったのが真相だ。

 三人は気を遣ってキリシマに真相を言わなかったので、知らぬが仏というやつである。

 

「採取ミッションだけでもこんなにあるんだ」

「どれがいいかなぁ?」

 

 リクとユッキーもすっかりキリシマのテンションに慣れたようで、特に気に留めることなくミッション一覧表をスクロールしながら迷っていた。

 

「折角ですので、機体性能も試せるようなものがいいですね」

「うん。今日はバトルが目的じゃないから、できるなら戦場から遠いものを選びたいんだけど」

 

 豊富なミッション数は迷いを生む。バイキング形式の料理と同じだ。

 多ければ多いほどどれを選ぼうか解らなくなってしまうというもの。

 悩む三人の背を見て「ここは経験者の出番ですわね」とキリシマは肩をぐるぐる回す。

 その横をスッと一人の少女が横切った。

 ワンピースのような服装を来た、薄い青色の髪を伸ばした少女だ。

 

「見つけた」

 

 少女はうんうんと唸る三人に声をかけた。

 振り返った三人は少女の見て驚きと嬉しさの色を顔に浮かべる。

 ……お知り合いかしら?

 少女と三人のやり取りを眺めつつ、そういえばアズマが奇妙なダイバーと知り合ったということを思いだす。名前を訊き忘れてしまったと言っていた。

 

「そしてこちらがキリシマさん!」

「ほぇ?」

 

 急に自分の紹介されて、キリシマは呆けた声をあげてしまった。

 トコトコトコと少女が近づいて、見上げる。

 

「お嬢様。この子はサラさんです」

「よろしく、おねがいします」

 

 ぺこり。

 お辞儀をされた。初々しいその姿が実に可愛らしかった。

 

「キリシマですわ。どうぞ、よしなに」

 

 微笑みとともに応えた。

 

「僕たち、さっきフレンドになったんだけど、どうする?」

 

 ユッキーがサラに問うと、彼女は「うん」と頷いた。

 先ほど教えてもらったのだろう。

 サラは「これを、こう!」と嬉しそうに呟きながらパネルを操作し、無事にキリシマともフレンド登録を済ます。

 キリシマは表示されたサラのプロフィールを確認すると、ガンプラの欄に表示がなかった。

 今日日ガンプラなしでのログインも珍しくないので特に気にすることもない。

 GBNの良いところは必ずしもガンプラを必要としないところだ。

 

「ところで先ほどミッションについて悩んでいたようですわね?」

「そうなんです。元々今日はバトルミッション以外のをやってみようってことで約束してたんだけど……」

「あまりにも数が膨大で選べないと?」

「はい……」

「お嬢様はGBNをプレイしてて長いですよね。よろしければ御教授願えますか?」

「フフフ、よくってよ!」

 

 得意気に鼻を鳴らし、ミッション一覧を覗いた。

 三人の要望を聞いて詳細検索で条件を絞り、ミッション数を減らしていく。

 『ガンプラバトルなし』で大分減ると思っていたが、それでも既に三桁以上もの数が残った。

 殆どがエリアに制限範囲が設けられていたり、参加可能人数が四人にも満たなかったり、やたらと距離があるものばかりだ。

 加えて物資回収や鉱石収集などガンプラ前提のものが多く、NPDバトルが発生するミッションが大半を占めていた。

 確かにこれで丁度良いミッションを探そうと言うのは酷だろう。

 そして何より――

 

「……ッスゥー」

 

 一呼吸吐いて、固まる。

 

「――お嬢様?」

「アズマ、リク、ユッキー、サラちゃん」

 

 トーンを落とした真面目な声に、サラ以外の三人がゴクリと喉を鳴らした。

 

「わたくし、主にサバイバルバトルミッションばかりをやっていたので、ちょっとこれは――全然わかりませんのっ!」

「「えぇー!?」」

「お嬢様……」

 

 リクとユッキーの驚愕と、アズマの冷たい視線が痛い。

 唯一サラのキョトンとした動作が癒しだった。

 

「駄目な人ですね」

「だめなひと?」

「はい。駄目な人です。――サラさん、今のをもう一度」

「キリシマは、だめなひと」

「ちょぉっ!?」

 

 悪気のないサラの言葉が、心を突き刺した。

 

「困りましたね」

「まさかミッション受注段階でこんなことになるなんて」

「どれも制限とかあるからなぁ……」

 

 詳細検索で条件を足しても中々減らないミッション数に青すじを浮かべる。

 サラはガックリと項垂れるキリシマを「大丈夫?」と慰めていた。

 そんな時――

 

「あらあら、カウンター前でどうしたのかしら?」

 

 初日にお世話になったマギーが現れたのだった。

 

「マギーさん!」

「こんにちは!」

「こんにちわ」

「はぁい、みんなこんにちは♪」

 

 小さく手を振って挨拶を返すマギーは、カウンター前で項垂れているキリシマを慰めるサラに気づいた。

 

「あらぁ! 貴女この前の!」

 

 キリシマの肩に手を添えたまま、サラは顔を上げた。キリシマも顔を上げた。

 

「あらマギーさんじゃあないですの」

「はぁい、キリシマもお久しぶり♪」

「サラちゃんもお知り合いでしたの?」

「うん。優しくて綺麗なおねえさん!」

 

 マギーはサラの言葉に「ん~まぁっ!」と感動した。

 「良い子ね……」と頭を撫でる。

 

「サラちゃん、わたくしは!? わたくしもおねえさんですわよ!」

「だめな、おねえさん?」

「オギャー!!!」

 

 クリティカルヒット!

 オーバーなリアクションで膝をついて沈み込むキリシマであった。

 

「――お嬢様の扱い方を理解している!」

「「えぇ~……」」




だめなおねえさんですわ!(後におもしろだめなおねえさんにグレードアップ)


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2.2『獄炎のオーガ/空中キャッチ』

たぶん隠れた名シーンだと思いますわガンダム作品の空中キャッチシーン。


 GBN内に設けられたハンバーガーショップ。

 キリシマを何とか立ち直らせた一行は、サラの一言ですっかり気を良くしたマギーの奢ってくれるという好意に甘えることにして、ついでにと相談することになった。

 六人用のテーブルに案内され、サラ、キリシマがマギーを挟むように並んで座り、向かい側はユッキーとアズマがリクを真ん中にして座っていた。

 

「つまり、みんなでガンプラがない子がいても楽しめるミッションを探してたのね?」

「うん。一応、僕たちで探してはみたんだけど、結構数が多くて……」

「そうなんです。それに採取と言いつつもNPDバトルありのものが多くて」

「マギーさん、何かありますか?」

「そうねぇ……それなら――」

 

 メニューパネルを開き、数度画面をタップするとツイツイっとスクロールしていく。

 すぐに「これがオススメね」とパネルを反転させ、表示したミッションを見せる。

 『採取は誰のために』

 そう表示されたミッション名に三人の視線が集まる。

 

「ディメンションの全体マップを使った、コレクトミッションよ」

「えっ、全体マップ!? 行けるの? フォース組んでなくても?」

「もちろん♪」

 

 ユッキーの反応を皮切りに、リク、アズマ、サラが「フォース?」と疑問を零す。

 それに対しマギーがフォースの説明から始まり、ミッションの詳細検索の小技や、運営公式のQ&Aコーナーの存在を紹介する隣で、キリシマは退屈そうにメロンソーダを啜っていた。

 他の四人は興味津々に話を聞きながら、「面白そう!」「見たい! 欲しい!」といった反応を示している。

 ……か、蚊帳の外ですわ!

 さながら体育の授業で二人一組を作ってと言われた際に一人だけ取り残されたような感慨だ。

 組みそこなった人と一緒になりましょうと楽観的にしていればいつの間にか自分だけが余っていることが多い。

 ……あれは地獄ですわ。経験したことありませんけど? 本当ですけど?

 あんまり思い出したくない記憶が蘇り、キリシマは一人だけ顔色を青くしたり赤くしたりと忙しなかった。

 

「他にも解らないところがあったら、後でザクムラの動画を確認するといいわよ♪」

「ザクムラ?」

「Gチューブで活動している運営公認のダイバーでね、初心者ダイバー向けの動画を投稿しているのよ」

「へぇ~! そんな人もいるんだ!」

「僕たちも後で見てみようよ!」

「うん!」

「ところで、キリシマちゃんはどうするの?」

「ほぇ?」

 

 つと、マギーに名前を呼ばれて顔を上げる。

 勝手にノスタルジーに浸っていたので一寸、反応が遅れた。

 

「なんですの?」

「あなたも四人のミッションに付いていくのかしらってことよ」

「あぁ、そうですわね。折角ですし、付いていきますわ。わたくしもGBNプレイヤーの先輩の端くれ。傍にいたほうが何かと都合が良いでしょうし」

 

 チラリ、と向かい側の三人の覗けば、視線がキリシマに傾いていた。

 期待の眼差し二つと、不安の眼差し一つ。

 二つは勿論、リクとユッキー。そして一つはアズマのものだ。

 サラはマギーに頭を撫でられている。

 ……いいなぁ、わたくしも撫でたい。

 などと思えば元気の声が重なって聞こえた。

 

「よろしくおねがします!」

「フフフ、お願いされましたわ!

 それに――わたくしも皆さんのガンプラが動くところを見てみたいのですから」

 

 得意気な微笑みを作り、わたくし今すごい頼もしい顔をしていると確信する。

 普段のテンションをよく知るアズマからの不安視は絶えないものの、ここらでGBNの先輩として良いところをお見せしましょうとムフーと鼻を鳴らして、ぐるりと肩を回した。

 ……だめなおねえさんではないですわよ! 頼れるおもしろうるさいおねえさんでしてよ!

 やる気に満ちるキリシマの姿に「きっと仕様もないこと考えてますね」と内心を見透かしたアズマだったが、他の三人がいる手前、奇妙奇抜なことはしないだろうと判断して自分を納得させた。

 既に馬鹿みたいな高笑いをロビーで披露しているので今さらな考えなのだが。

 

「あ、そういえば」

 

 そこでハッとして、何かに気づいたようにリクが呟く。

 

「目的地まではユッキーたちはどうやって行こうか?」

「ガンプラ自体はリクさん、お嬢様、私とありますので、どれかに二人乗りという形で搭乗すれば問題ないと思いますが――」

「ああ、それなら!」

 

 メガネを押し上げ、ニヤリと含みのある笑みを浮かべる。

 

「やってみたいことがあるんだ」

 

 キュピーン!

 光を反射したメガネからそんな効果音が発生した。

 

「やって」

「みたい」

「こと」

「ですの?」

 

 リク、アズマ、サラ、キリシマの順に小首を傾げる。

 

「フッフッフ……それはね!」

 

 やってみたいこと。それは――

 

 ⁎

 

「うわっはぁー!」

 

 口を大きく開け、瞳を光輝かせたユッキーが喜びの叫びを上げた。

 目の前にちょこんと座るサラを支えながらである。

 二人は今、ダブルオーダイバーのマニピュレーター――掌の上に乗っていた。

 

「モビルスーツのマニピュレーターの上に乗る。確かにやってみたいことですね」

 

 ダブルオーダイバーの少し後にアズマのアストレイ・ジャグラスナイパーが続く。

 その掌の上ではキリシマが身を乗り出して馬鹿みたいな高笑いをしていた。

 

「さいっこぉー!」

 

 ユッキーの歓喜にも似た叫びに共感するように、負けじとキリシマもまた高笑いをよりいっそう大きくするが、乾いた風が口内に吹き込み、あっけなくむせた。

 アズマはコックピット内でキリシマを落とさないように操作をしながら、リクに通信を送る。

 

「そちらは大丈夫でしょうか」

『うん。大丈夫。ユッキーはもっとスピード上げても良いって言ってるけど』

「多少なら大丈夫だと思いますよ」

『それなら、よーっし!』

 

 ダブルオーダイバーが加速し、身を翻した。

 流れるような見事なマニューバだ。

 初心者狩りの時にも思ったが、GPD経験者のアズマから見てもリクの操作技術は筋が良い。

 若さというアドバンテージが大いにあるのだろう。それにスポーツ――サッカーをやっていると聞いたことがあるので、それに必要な状況判断能力や瞬発力が十分に備わっているのだと考える。

 加えて突発的な展開に対して臆することなく立ち向かえる度量もある。

 これはガンプラバトルにおいて最も重要なものだ。

 慎重に相手の動きを見極める洞察力も大切ではあるが、時には火中の栗を拾いに行く度量もまた大切なのである。

 

「――ん?」

 

 ダブルオーダイバーの動きが急に変化したのに気づいた。

 ツインアイの向きが下を向いている。

 まさか、と思いすぐにメインカメラをズームさせ掌を確認すると、そこにユッキーとサラの姿はなかった。

 そのまま別に動かしていたサブカメラが落下中の二人を確認する。

 直後、ダブルオーダイバーが落下していく二人を追ってブーストをかけた。

 あの速度であれば間に合うだろう。それに落下中にモビルスーツのマニピュレーターにキャッチされると言うのも、ある種の夢である。

 

「お嬢様」

「何ですの?」

「以前、新約Zガンダムを観ていた時に『わたくしもああいう風に受け止められたいですわぁ』と仰っていましたよね?」

「えぇ、言いましたわ」

「――私もああいうのやってみたいのですが。空中キャッチ」

「えっ」

「落としても?」

「フフフ…‥アズマ、よくお聞きなさい。常識的に考えてダメ以外の答えがありまして?」

「では――」

 

 速度を上げる。

 

「ちょっ!? あず、アズマ!? アズマさぁーん!? アズマしゃぁぁぁぁん!?」

「ていっ」

 

 機体を翻した。

 

「お゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛」

 

 ユッキーとサラを無事にキャッチしたダブルオーダイバーとすれ違う形でキリシマが太い悲鳴をあげて落ちていった。

 

『キリシマさんっ!?』

「大丈夫です」

 

 すぐさま後を追うアズマがそう言い残し、落下中のキリシマを開いたマニピュレーターで慎重に受け止める。

 ゲーム故にある程度のリアルを省略しているとはいえ、実際にやってみると中々どうしてやり難いと感じる部分はあった。

 アズマは先にこれをやってのけたリクの操縦技術が、どれほどに高いポテンシャルを秘めているのかを、改めて痛感する。

 しかし、まさかこのタイミングで空中キャッチをするという夢を叶えられえるとは。

 

「おお、これがガンダム隠れた名物の空中キャッチ……」

「あ、アズマぁ……ちょ、これ、スリリングがすぎ――すぎましてよ!?」

「アムロになれた心地はどうでしたか?」

「……最高ですわね!」

 

 乱れた髪をかきあげながら、キリシマが強気の笑顔を繕って親指を立てた。

 

「ではもう一度やりましょう」

「あー! うそうそうそっ! 冗談、冗談ですわ! わたくしにアムロ心地はまだ勇気が足りませんの!」

 

 青筋を浮かべてかぶりを振るキリシマ。

 たまにはこういうお嬢様も良いなと思うアズマであった。

 

「……貴方、時々結構攻めてきますわよね?」

「偶の仕返しです。根に持ってるんですよ。色々と。先日のGPDの件とかそれなりに」

「あ、あれはデザート抜きで済んだはずでは!?」

「デザートを抜いたくらいで許されるとお思いで?」

「うぐぅ〜……これは今後、迂闊な我儘は言えませんわね……」

「迂闊なって何ですか迂闊なって。――私だって、あの日一緒にGBNをするの楽しみにしていたんですから」

「うっ……す、すまんですわ……」

 

 高度を上げて、ダブルオーダイバーに並ぶと、リクがユッキーに怒られている最中だった。

 

「やっぱりわたくしも怒っていいですわよねこれ?」

「実は反省しています。申し訳ございません、悪ノリが過ぎました」

「……そ、それなら仕方がないですわね! 超許しちゃいますわ!」

「ふふっ、お嬢様のそういうところ、私は好きですよ」

『あ、みんな見て見てっ!』

 

 後半の言葉と被るように、ユッキーの声が届いた。

 視線を上げれば、森を抜けた先にサンクキングダムの町並みが見えた。

 建物の精密な再現度は元よりドロシー・カタロニアが乗っていた愛車のリムジンまできちんと配置されているのを見ると、ユッキーが感嘆するのも解るというものだ。

 

「ん? そうえいばアズマ、先ほどは何て?」

「――いいえ、何も」

 

 GBNだからこそ見ることができる光景を眼下に、一行はサンクキングダムの上を通過していくのだった。



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2.3『獄炎のオーガ/観戦、フォースバトル』

もうすぐ折り返し地点なのに未だにタイトルにあるオーガが出ていないことに気づくお嬢様。


 サンクキングダムの町を通過して暫くすると、次にラクロア王国の城下が見えた。

 ラクロア王国はSDガンダムの代表作『騎士ガンダム』の舞台となっているスダ・ドアカワールドに登場する王国の名称の一つだ。

 初期のジーク・ジオン編で主要な拠点として登場して以降、その後の作品にも多く登場している名称でもある。

 ラクロア王国以外にもアルガス王国、ブリティス王国、ダバード王国などの国も再現されている他、噂ではシークレットエリアとしてリオン・カージやエレナ・ルウムといった場所もきちんと再現されているらしい。

 勿論、武者頑駄無の舞台『天宮(アーク)』やG-ARMSの舞台『マゼラン大陸』もこのGBNの何処かに存在しているのだ。

 

「わぁ~! モラリアもあるんだ!」

 

 ユッキーの言葉の中に、アズマは聞き覚えのある単語があったことに気づいた。

 気づいて、モラリアと呼ばれたエリアを見渡す。乾いた大地の目立つエリアだ。所々にデコボコした箇所が見られ、渓谷を形作っている。

 

『モラリア……確かダブルオーに出てくるという』

「覚えててくれたんですね!」

『えぇ、まあ……まだ詳しくはありませんが』

「モラ……リア……?」

 

 小首を傾げて疑問符を頭上に浮かべたサラの反応に、ユッキーがここぞとばかりにメガネを光らせた。

 

「モラリアはガンダム00に登場する国の名前で、AEU――新ヨーロッパ共同体に所属する新興国のことなんだ!

 国内には4000もの企業がひしめきあってて、その内の2割が民間軍事会社で、戦争をビジネスにして発展してきた国なんだよ!」

「……?」

 

 ユッキーの早回しにも似た説明を受けたサラは、頭上に疑問符を増やしただけだった。

 

「あ、えーと、つまりその……キリシマさん!」

「うぇ!? わたくしですの!?」

 

 唐突に振られたことに面食らい、キリシマはあわあわと居住まいを正すと、コホンと可愛らしく咳払いをする。

 

「そうですわね。モラリアとはつまりどういった国かと言うと――」

 

 チラリと横を見ると、ダブルオーダイバーのマニピュレーターの上から真っ直ぐにキリシマに視線を注ぐサラがいた。

 この瞬間、キリシマの身体に電流が奔った。

 脳裏には一瞬の内に様々な思考が入り乱れてあふれ出す。

 盛大にボケたほうがいいのだろうとか、モラリアを知らないということは00一期を視聴していないことになるし、その手前で『モラリアは何だかんだあってほぼほぼ壊滅しますことよ!』なんて言えばブーイングの嵐に見舞われることは必須であるし、だからといって当たり障りのない部分は大方ユッキーさんが説明してしまったし、人口なんか伝えたところでもっとピンとこないだろうし、それもひっくるめて語りたい欲があるし、と言うか何でモラリアの説明でわたくし思考のドツボに嵌ってるんですの!?

 

「――アズマ、パス!」

『それではお嬢様、もう一度お願いします』

「えぇ!? またわたくせぇ!?」

 

 一切の間を置かず飛んできたカウンターパスに思わず素っ頓狂な声で反応してしまった。

 ユッキーの「逃げ先を誤ったんだな」と言う言葉を言外に含んだ視線と、アズマの「逃がしませんよ」と言う呟きがキリシマの胸に突き刺さるが、そんなことを気にしてはお嬢様など務まらないのですわとばかりに開き直った。

 

「つまりですわね、モビルスーツを沢山持っている国……ですわ!」

 

 その言葉にサラは何度か瞬きをした後、「うん!」と納得したように頷くのを見て、キリシマはグッとガッツポーズを掲げる。

 

「ぅっしゃあ! ――ですわ!」

『説明だけでこんなに勝ち誇った顔できる方、初めて見ました』

「口よりも手の方が解りやすいと言われたわたくしの話術も捨てたものではありませんわよ!」

「それいいのかなぁ……」

『いいんでしょうね』

「いいんですわよ!?」

「ありがとう、だめなおねえさん!」

「オギャー!?」

 

 そんな4人のやり取りを聞きながら丁寧な操縦を心がけていたリクであったが、突如として響いた爆発音に反射的に警戒してしまい、その拍子に機体を僅かに揺らしてしまう。

 

「おわっとと……リッくん!?」

『ごめん、ユッキー! サラも大丈夫?』

「大丈夫」

『よかったぁ。爆発音が聞こえたからつい……』

「爆発音?」

「うん。あ、ほらアレ!」

 

 言って、ダブルオーダイバーの首を動かし、再び響いた爆発音の発生源に視界を傾けた。

 今度はユッキーたちにも派手な音は聞こえたようで、全員がその方向を見ていた。

 視線の先にあったのは森林エリアだった。

 そこで頻繁に爆発が起きていたのだ。

 爆発音以外にも金属同士がぶつかりあったいうな鈍く高い音や砲撃音、果てはビームを射出した際に生じる独特な音があり――それらすべてが戦闘音であると理解するのに時間はかからなかった。

 

「あれって、もしかして……?」

「フォースミッションですわね」

『あれが、フォースミッション……』

 

 フォースを組むことで受けられるようになる専用ミッション。それがフォースミッションである。

 仲間と協力して進行していく討伐ミッションや迫りくる敵軍を退ける拠点防衛ミッションの他にも、原作の大規模作戦に一部隊として参戦できる追体験ミッションなど、その内容は多岐に渡る。

 ミッションを達成すればフォースポイントを貰える上に、ミッションによっては武器データやGBN内で使用できる家具アイテム、ダイバールックを飾る衣装やアクセサリーを報酬として獲得できるのだ。

 フォースを設立する条件はランクD以上であること以外は特にこれといったものはなく、キリシマのようにソロであってもフォースを立てることができるようになっている。

 また入団人数も制限というものがないため、何十、何百人も所属することができる。

 大規模なら『GHC』や『AVALON』と言った有名どころが挙げられるだろう。

 そして現在、リクたちの目の前で起きているフォースミッションは数あるものの中で最もポピュラーなもので、フォース同士の大規模ガンプラバトル――俗にフォースバトルと呼ばれるミッションであった。

 切り立った崖の上に降り立ち、そこからまじまじとバトルの推移を見つめる。

 リクも、ユッキーも、アズマも、出撃前にマギーからある程度の説明を受けていたとは言え、知識として聞いたことと、実際に見るとではやはり大きな差があった。

 三人の熱い視線の先では、突撃をかまそうとする真紅のレギンレイズ・ジュリアのカスタム機の初動を、射撃編重のデナン・ゾン二機とジャベリンが射撃によって潰すことで抑え込んでいる。

 援護に回ろうとした竜の頭部を模した赤いショルダーアーマーが目立つイオク仕様のレギンレイズのカスタム機とグレイズリッターのカスタム機二機を、ガンキャノンとリアルドタンクが交互に放つ砲撃で足止めを行い、じりじりと削っていく。

 AEUイナクトとマグアナック二機はトサカの長いイージスガンダム風ジム・カスタムとショットガンを構えたデナン・ゾンによってかく乱されて満足な動きができないでいる様子だった。

 どうやら四つのフォースが互いに組んで二フォース対二フォースと言う構図で戦っているらしいが、キリシマの見知ったデザン・ゾン三機が連携を取って、こちらも見知ったレギンレイズが得意とする動きを見事に封じている。

 見たところデナン・ゾンとガンキャノン側のフォースは射撃機に偏っているらしく、レギンレイズとAEUイナクトのフォース側の遠近両方を備えたフォースと比べると、一見して不利にも思えるバランスだ。

 しかし、それが必ずしも敗北を招くというわけでない。

 現に相手の長所を真っ先に潰すことで行動できる選択肢を自ずと狭めさせ、数少ない前衛を張れる二機を信用してかく乱を任せている。射撃編重だけあって狙いもほぼほぼ正確だ。

 逆に言えば、その正確な射撃を避けながら突撃の気を窺っている真紅のレギンレイズ・ジュリアの我慢強さもさることながら、AEUイナクトと指示を出し合いながら被害を極力広がらないように努めているイオク仕様のレギンレイズの連携も流石である。

 決め手となる高火力の攻撃だけはしっかりと意識して回避しているので、それ以上の火力に欠けるデナン・ゾンとガンキャノン側と、中々攻め込むことができないレギンレイズとAEUイナクト側で戦況は膠着していた。

 そんな戦況を、崖の上からまさしく高見の見物を決めていたキリシマは――

 

「そこ! そこですわ! あぁー違う! そっちが今がら空きでしてよ! ほらぁ!」

「観客席から野次を飛ばすおじさんみたいですね」

「お嬢様からかけ離れた表現は禁止ですわよ!? だぁっー!? 今の! 今の狙い目でしてよ!!!」

 

 アズマの言葉通り、すっかり厄介な野次おじさんならぬ野次お嬢様と化していた。

 確かに射撃編重のフォースの戦術は今は有効だが、穴がないわけではない。

 それは高所から見て初めて解るものであった。

 砲撃――その殆どは相手のエース機を抑え込むのに集中していて、火力の流れが偏っているのだ。

 つまり、脇が甘い。

 先の二機のレギンレイズ同様、左肩の赤いグレイズリッターのカスタム機が自身へのマークが薄いことに気づき、ブーストを吹かしてギリギリまで接近を試みると、そのまま撃ちだしたライフルの一撃がリアルドタンクに命中。撃破こそできなかったが、怯ませることに成功した。

 直後、報復とばかりにキャノン砲の一撃を受けてグレイズリッターは撃破されるが、その爆炎を振り払いながら、火砲が途切れた瞬間を逃さず真紅のレギンレイズ・ジュリアが突撃を成功させた。

 虚を突かれたリアルドタンクをGNブレイドの一撃で両断すると、すぐさまガンキャノンにGNビームサーベルを投擲しキャノン砲を切断、その隙に突き進もうとして――横合いからイージスMA形態のような姿に変形したキテレツなジム・カスタムが割って入った。

 真紅のレギンレイズ・ジュリアの剣捌きにMA形態のまま四本のアームを巧みに操り剣戟を繰り返す。

 その動きは迎撃を目的としているよりも、真紅のレギンレイズ・ジュリアの有する奥の手を発動させないことを目的としているようであった。

 数度の剣戟の中で袈裟の一撃をアームで弾いたジム・カスタムが、その一瞬を逃さず、組み付いた。

 ジム・カスタムの身体が白く輝きだし、次の瞬間――大爆発を起こした。

 イージスガンダムが劇中でストライクガンダムに行ったあの自爆技だ。今ではイージスを代表する必殺技として定着している節があるが、実際はかなりシリアスな雰囲気で繰り出された行動である。

 間近にいたガンキャノンは持ち前の装甲で何とか耐え抜いてみせたようで、装甲の焦げつきとアンテナを失った程度の被害で済んだようだ。

 自爆特攻を仕掛けられた真紅のレギンレイズ・ジュリアは右腕を失い、脚部もひしゃげ、頭部は半壊し、装甲は溶けて爛れていた。

 奇跡的に撃破判定までには至っていなかったらしく、カメラアイは未だに鈍く灯っている。

 それを認識したガンキャノンがビームライフルを向けるが、後続のAEUイナクトのリニアライフルがそれを貫き、ソニックブレイドで斬りかかるも、砲身を潰されたビームライフルで受け止められた。

 数少ない前衛機であったジム・カスタムがまさかの自爆をしたことで、良くも悪くも状況が大きく動いた。

 片方は厄介な真紅のレギンレイズ・ジュリアを警戒する必要はなくなったが、同時に前衛を担う役割がショットガンを装備したデナン・ゾンに集中したことで抑え切れなくなり、敵の進行を許してしまったのだ。

 背負い投げでAEUイナクトを地面に叩きつけたガンキャノンは振り向きざまに、ヒートホークを振り上げ迫っていたマグアナック二機にダブルラリアットを喰らわせてダウンさせる。

 その間にショットガンを装備したデナン・ゾンは多勢無勢とばかりに攻め立てられ、先ほど撃破されたグレイズリッターとは別の同型機に刺し貫かれて、しかし同時にショットガンで胴体を接射し、相打ちとなっていた。

 一方ではイオク仕様のレギンレイズとの撃ち合いに持ち込まれた二機のデナン・ゾンの内、キャノン砲を携えたタイプが長距離レールガンの直撃を受けて爆散し――瞬間、飛び出したジャベリンが放ったショットランサーによって長距離レールガンを貫かれて破壊される。

 ビームサーベルを抜き放ち、トドメを刺そうと不用意に近づいたジャベリンをシールド裏にマウントしていたハンドガンで不意打ち気味に撃破する。

 一進一退の攻防が続き、中距離射撃機に思えたガンキャノンが格闘術で思いのほか粘り続け、マグナアック一機をジャイアントスイングで振り回し、もう一機に投げつけて弾き飛ばして「アイアムチャンピオン!」とポーズを取って油断していたところで、気を窺って立ち直ったAEUイナクトの奇襲によって撃破され、最後に残っていた二丁持ちのデナン・ゾンもレギンレイズとの撃ち合いの最中に弾き飛ばされてきたマグアナックと衝突しバランスが崩れた瞬間を狙われ、あえなく撃破されたところで勝敗が決した。

 テンガロンハットを被った男性ダイバーと仲間の男女二人がギャラルホルンの制服を纏ったリザードンマンダイバーと握手を交わし、アスラン・ザラ風の女性ダイバーと金髪をポニーテールにした女性ダイバーが何やら言い合っている傍らで、パトリック・コーラサワーによく似たダイバーとその仲間たちが筋肉隆々な大柄な覆面ダイバーと健闘を称え合っていた。

 

「すごかったねぇ」

『良いバトルでした』

「すごかった!」

 

 三人の反応を見たキリシマは自分のことではないにも関わらず、妙に誇らしい気持ちを抱いた。

 リクも言葉にこそ出していないが、きっとガンプラ魂を刺激されたのだろうという確信があった。

 

『俺たちも――』

 

 徐々に観戦していたバトルの熱の余韻から引き戻されたリクが息を吐き出すように呟く。

 

『俺たちも、フォースを作ってバトルやろう!』

 

 段々と勢いがついたその言葉に、ユッキーは「勿論! やろう!」と頷いた。

 

「しかし、フォースを結成するにはDランク以上になることが必須条件ですのよ」

『はい! だからDランクを目標に頑張ります!』

「好ましい心意気ですわね」

 

 コックピット内にいるリクの顔の代わりに、彼の乗るダブルオーダイバーを見上げながらキリシマはほほ笑む。

 彼の意志を表すかのように、ツインアイは微かに光ったのを見逃さなかった。

 ミカガミ師匠の『ガンプラは魂。スピリットじゃよスピリット』と言う言葉を思い出す。

 キリシマはこの言葉を魂を込めたガンプラはその者に呼応してくれると言うものだと考えている。

 所詮は創作の中の都合だと、結局は人の考えたオカルトの類だと一笑に伏されようが、ガンダムと言う作品を知り、好きな者であればそれを容易には否定はできない。

 語るだけならばただの言葉であっても、感じられればそれはある種の力となるのだから。

 故にツインアイの光りを見たキリシマは『良い』ではなく『好ましい』と言ったのだ。

 

「きっと素晴らしいダイバーに成長しますわ。お嬢様人材センサーがおビンビンですもの! 間違いありませんわ!」

『お嬢様、いきなり胡散臭い単語を持ち出して、言葉の説得力を落とすのやめてください』

「オーッホッホッホッ! ――説得力なぞ後から付け足せばいいのですわ!」

『何それっぽい感じで言いくるめようとしているんですか』

『確かに根拠のない自信だけど、俺たちも見習うところがあるかもしれない!」

「リックん?」

『――まさかお嬢様怪力光線に?』

「人を古典SFの有害物質みたいに言わないでくれます!?」

「かいりきこうせん? かいりきこうせんおねえさん?」

「おっとサラさん、的確に心を抉りにくるのはいけませんわよ?」

「あ、ごめんなさい……」

 

 しゅんとするサラに、キリシマは堪らず目頭を押さえて天を仰ぐ。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ゛ 超許しますわ! わたくしは今から怪力光線お嬢様ですわよ!」

「えぇ……?」

「か、軽すぎる……」

 

 困惑するユッキーとアズマを余所に胸を張って言い張るキリシマ。

 掌で馬鹿みたいな高笑いをしでかす彼女を見て、もう一度落としてしまおうかと思うアズマであった。




予想以上に長くなってしまったので区切りですわ!

【真紅のレギンレイズ・ジュリア】
【イオク仕様のレギンレイズ】
【竜の頭部を模した赤いショルダーアーマーをしたグレイズリッター】
 フォース『ドラゴン騎士団』の皆さま。
 今回のフォースバトルではパトリック・コーラサワーのフォースと組んでいた模様。
 珍しく我慢していたが、味方が先に吶喊しかけたので突っ込んだ。
 だが突っ込んだらイージスっぽく変形できるように魔改造されたジムカスに自爆特攻されてしまったそんなエマお嬢様。
 MVPは間違いなく、撃破されたが戦況を動かしたグレイズリッターDのダイバーである。
 (青いカンテラ様のガンダムビルドダイバーズ二次創作品『GBN総合掲示板』に登場するフォースですわ!)


【AEUイナクトとマグアナック】
 皆さまご存知パトリック・コーラサワーと仲間の人たちですわ。


【三機のデナン・ゾン】
 フォース『ヘル・ガンズ』の三人。
 中堅Bランカーとして相応の実力を有し、全員がデナン系を始め、クロスボーンのモビルスーツを愛好している。
 今回は中堅Bランクながらも相応以上の活躍をした模様。
 詳細は本作のプロローグと登場人物紹介に載っていますわ。


【ガンキャノン・レスラー】
 見た目は普通のガンキャノンだが、装甲値鬼盛りの超耐久型。
 ただの中距離砲撃機だと思わせて肉弾戦もできるタフガイ。
 今回は『ヘル・ガンズ』と組んでいたが、最終的にノリでジャイアントスイングした相手のマグナアックが敗因となってしまう。
 ダイバーは筋肉隆々な大柄な覆面男『キャノンボール』
 フォース名は『キャノンマッスル』

【リアルドタンク】
 ガンキャノン・レスラーのフォースメンバー。
 スキル『高速装填装置』で装填率を上げており、リニアキャノンを連射できるようにしていた。

【ジャベリン】
 ガンキャノン・レスラーのフォースメンバー。
 ショットランサーで長距離レールガンを貫く器用さを見せたが、警戒を怠ってビームサーベルでトドメを刺そうとしたのが裏目に出てしまった。

【ジム・カスタムA(イージス)】
 人数が足りなかった際に現れた傭兵枠。ダイバーは『アスラン・ザラ子』
 アスラン・ザラの性別を女性にしたような外見のダイバー。
 本来のフォースは『G-TSGs』。読みは『ジー・ティーエスガールズ』
 ガンダム作品の男性の性別を女性にした特殊なジャンル(所謂TSモノ)の愛好家が集ったフォース。
 彼女はGBNを初めて日は浅い方だが、ジムカスを変形機構付きイージス風に改造できるあたり相当なビルダーであることが窺える。
 操縦技術も割と高いのだが、何かにつけては自爆特攻したがるし、戦闘中はネタキャラと化しているほうのアスランめいて叫びまくるので『サクラン・ザラ子』と呼ばれている。 


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2.4『獄炎のオーガ/ヤナギランのち、遭遇』

あんたはここでふゆとしぬので初投稿ですわ。


 フォースバトルを見届けた一行は再び移動を再開し、ミッションの目的地であるヤナギランの群生地――その手前の森林エリアに降り立っていた。

 理由はリクのダブルオーダイバーの有する特殊機能『TRANS-AM』の起動確認である。

 操縦者であるリクを残し、四人は一度地上に降りる。

 

「とらんす、あむ?」

「いえ、サラさん。正しくはトランザムですわ」

「トランザム……?」

「ええ、そうですわ」

「それは、何をするの?」

「ふふふ、それはですね――」

「そのトランザムを試すんだよ!」

 

 息を吸い、人差し指を立てていざトランザムについて解説しようとした瞬間に――隣に並んだユッキーと言葉が被り、目が合った。

 互いの瞳がキラリと光る。

 

「ふっふっふっふ……」

 

 メガネをくいっと上げて、小さく笑う。

 

「オッホッホッホッホ……」

 

 腰に手を当てて、不敵に笑う。

 

「正確にはトランザム・システム。ガンダム00に登場する動力機関、太陽炉ことGNドライブに組み込まれた特殊なシステムさ!」

「これは起動すると高濃度GN圧縮粒子を全面解放して一定時間、機体の性能を通常の3倍引き上げると言う、言わば時限式強化システムなのですわ!」

「その際に、機体表面が赤く輝くのが特徴で、さらに発動中は機体の残像が残るほどの高機動を可能とさせるんだ!」

「勿論、強すぎる力には代償が伴うものでして、大量のGN粒子を消費するこのシステムは使用後、機体の性能を大幅に低下させてしまうという弱点も持ち合わせておりますのよ!」

「使えば強いけど、使い続けられないと言う絶妙なバランスで、作中ではいかにトランザムを上手く使うかが鍵になる場面が多かったんだ!」

 

 交互に、しかし絶えることなく捲し立てるような二人のトランザムの解説を真面目に受け止めたサラだが、いきなりワッと浴びせられた言葉の洪水に、すぐに理解できるわけもなく――

 

「今の、解りましたか?」

「うーん……?」

「――私もです」

 

 途中から二人の解説を聞いていたアズマの問いに、サラはあまり解っていない様子で小首を傾げた。

 アズマも同じ反応だった。

 

『要するに、短い間だけど、赤く光って強くなると思えばいいよ』

「うん、わかった。ありがとう、リク」

「理解できました。ありがとうございます」

 

 腑に落ちたように同時に頷く。

 そんな二人を見てユッキーとキリシマはしょぼくれた顔でがっくりと肩を落とした。

 二人の反応に気づいて、サラはアズマの袖を引き、顔を見合わせた。

 

「お二人も、教えてくれてありがとうございます」

「ありがとう、ユッキー、怪力光線おねえさん」

「――あ、そこはそのあだ名で呼ぶんですね」

 

 ユッキーとキリシマに顔を向けて、お礼を言う。

 言われた二人は一瞬きょとんとした顔をしていたが、言葉の意味を理解するとユッキーは「えへへへ」照れ笑いを浮かべて自身の頭を撫で、キリシマは「わたくしは怪力光線ですわ~!」と何時もの高笑いで照れを隠した。それでいいのだろうかと思うが、本人が否定していないのならそれでいいのだろう。

 

「よし、それじゃあそろそろ――」

 

 準備を整えたダブルオーダイバーが立ち上がると同時、ピピピピと言う着信音にも似た電子音が響いた。

 

「あら?」

『どうしたんですか?』

「わたくし宛にメールが届きましたの」

 

 開いたメニューパネルを確認しながらキリシマは答える。

 

『リクさんはそのまま続けて大丈夫ですわ」

『わかりました!』

 

 言って、少し離れたところまで移動しながらパネルを操作し、メッセージフォームに切り替える。

 件名には『フォース“パサージュトレイン”より、再入荷のお報せ』とだけあった。

 それを見て、キリシマは口角を吊り上げる。内容を開くと、そこには再入荷した各種アイテムのカタログが載せられていた。

 フォース『パサージュトレイン』

 アイテム収集率だけならば現在のチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』よりも上に位置する蒐集系のフォースだ。

 その名の通り内部をガラス製アーケード風の商業空間に改造したトレイン型の移動拠点を所有し、殆どを移動しながら活動し続けていると言われる変わった特徴を持っていた。

 停車場所と日時を定め、そこで集めたアイテムを物々交換形式で売買するというターミナルバザーなる形態を取っており、一応GBN内通貨のBC(ビルドコイン)でも購入はできるのだが、レア度の高いアイテムとなると金額もそれに見合って圧倒的な巨額となる。

 また欲しい品を希望することもでき――レア度によっては確約こそできないが――入手できた際はこうして再入荷と称して定期的にカタログを送付するなど義理堅いところもあり、そういった面で利用者からも注目されている。

 他ならぬキリシマもまたパサージュトレインを利用するダイバーの一人であり、頻度こそ高くはないが、余裕があれば展示される商品を見物しに行っているのだ。

 

「あら、次のバザーは結構、近日ですわね」

 

 停車場所と日時を確認し、メニューパネルを閉じるのと、悲痛な叫び声が響いたのは同時だった。

 

「ぬわぁんだらら!? なな、な、何事ですの!?」

 

 ⁎

 

 結果を言えばトランザムの起動は失敗に終わった。

 事情を訊けば、最初までは順調だったようにも思えたらしいが、完全起動目前になって不穏なアラートが鳴り響いたそうだ。

 そのまま続けていたらガンプラが壊れてしまいそうな悪寒を感じ、慌てて停止させたそうなのだが、それよりもキリシマの視線は不安げな面持ちで俯くサラに傾いていた。

 あの時、聞こえた叫び声は確かにサラのものだった。まるで我が身のような――そう錯覚してしまうほどに感情的なものであったように思う。

 ……感受性が高いと言うやつですわね?

 アズマから聞いたサラとの出会いの経緯を思い出し、キリシマは内心でそう結論付けた。

 恐らくアズマも、リクも、ユッキーも、そんな風に考えているのだろう。

 

「トランザムは、使わないで……」

 

 俯いたまま訴えかけるサラの表情はひどく悲しそうで、揺れる瞳には不安の色がありありと浮かんでいた。

 リクもそんな彼女を態度に一瞬びっくりしたようで、すぐに宥めるようにトランザムを使わないと答えた。

 気まずい空気が漂い始めそうなところで、数回ほど手を叩きながらキリシマが口を開いた。

 思い出したかのような――と言うよりも思い出させるかのようなタイミングで。

 

「とりあえず、ヤナギランを採りに行きませんこと?」

「あぁ! そうだった!」

「すっかり忘れてた……」

「マップでは、ここから歩いて行ける距離ですね。そうですよね? ユッキーさん」

 

 言い、マップを開きながら確認するアズマとユッキー。

 二人の傍を通り過ぎて、キリシマはリクとサラの肩にそっと手を添える。

 

「サラさんも、一緒に探しに行きましょう。ね?」

 

 問えば、サラの顔が少しずつ笑顔になっていく。

 頷いた彼女にキリシマもまた笑顔で返した。

 アズマとユッキーに小走りで駆け寄っていくサラの背中を見送り、今度はリクに視線を落とす。

 

「……トランザムについては今後の課題ですわね」

「そう、ですね」

「そう気を落とさずに。あなたのガンプラ――ダブルオーダイバーが素晴らしい出来であるのに変わりはないのですから」

「ありがとうございます。でも――」

「納得はできないと言う顔ですわね?」

「わかりますか?」

「もちろん。わたくしも通ってきた道ですのよ」

 

 ガンプラを作ってきた者ならば絶対に通らなければならない道で、乗り越えなければならない壁だ。

 それは、GPDをプレイしてきたキリシマだからこそ言える経験談でもあった。

 

「あの、キリシマさん」

 

 意を決したように何かを言おうとしたリクの口元に、人差し指を添えて止める。

 

「みなまで言わずともわかりますわ。わたくしが見た範囲、知る範囲であるならば、助言は致しましょう」

「本当ですか!?」

「ええ。ただし――」

 

 一拍。

 添えた人差し指を自分の唇の下に当て、片目を瞑る。

 

「ご自身の手で作ったガンプラは、ご自身の手で完成させること。よろしくて?」

「……はい! ありがとうございます!」

 

 リクの真っ直ぐな瞳を受けて、キリシマの口元に笑みが浮かぶ。

 いつの時代においても、前に進もうとする明るい意志は人をほころばせるものなのだ。

 

 ⁎

 

 ヤナギランの群生地への道のりは、いたって平和なものであった。

 リクを先頭にユッキー、サラ、アズマを順に、最後尾はGBN歴が長いキリシマが見守る形でついて行く形となっていた。

 途中、小川にかけられた丸太をサラの手を引きながら渡れば、キリシマが滑り落ちたり、大川では露出した平らな岩を飛び移りながら渡れば、キリシマが思い切り足を滑らせて奇跡的に一回転して綺麗に着地を決めたり、半壊して植物に絡めとられたザクタイプの頭部の上でユッキーとキリシマがザク語りを始めたり、廃れた建物の一部からどこそこの作品に出てきたものかもしれないと議論したりと道草を取りつつも、着実にに進んでいった。

 その広大さと自由さに、ピクニックでもできそうな感じだと感嘆するリクの呟きに、今度こういうミッションを受けた時はお弁当でも用意してみようと提案するユッキーに合わせて、アズマが料理ならお任せくださいとさり気なくやる気を見せたり、サラが楽しみと期待を露にしたりもした。

 GBNの自由度の高さはキリシマも知るところだが、初心者である4人のやり取りを見れば、改めてその自由度に舌を巻くほかなかった。

 のんびりとした進行であったため、思ったよりも時間はかかったが、森を抜けてすぐにヤナギランの群生地が見えた。

 

「ゲームだとは解っているけど……」

「こうして見ても、本物みたいだね……」

 

 眼前に広がるヤナギランの花畑に、リクとユッキーは唖然としながら呟きを漏らす。

 アズマとサラは少女らしく目を輝かせてその美しさに見惚れていた。

 

「行こう、アズマ!」

「え、あ――」

 

 サラに手を引かれて、アズマもヤナギランの花畑へと入って行く。

 少女二人に花畑とはよく似合う構図で、まさしくお嬢様と従者と言った風情だ。

 ……いやわたくしもお嬢様なのですけどね!

 微妙にやきもきした気持ちを抱けば、隣でヤナギランに関するガンダム知識を語るユッキーの声を聞き逃すはずもなく――

 

「そうですわね。経緯こそ見れば、ヤナギランはシャクティの母親役であった方との繋がりを示す記号でもありましたが、それも後々を見れば何と言いましょうか……ですわね!?」

 

 元々ヤナギランは『機動戦士Vガンダム』のヒロインであるシャクティ・カリンの母親――正確には全ての元凶たるフォンセ・カガチが雇った男女の誘拐犯の女性が、シャクティの前から姿を消す前に教えていた花であり、どういう意図があったかは不明だが、一部の間では希薄な愛情の中にもあった確かな愛ではないかと言う考察もあったりなかったりする。あるいは、そういう希望的な考察をひねり出すことで、少しでも心に平穏を見出そうとしたのかも知れない。

 付け加えれば、これが後にウッソたちの希望や愛の認識と言う一つの役割を担っていたりもするのだから、Vガンダムにおいてはこのヤナギランもある意味においては重要なキーパーソンとなっていたりするのだ。

 

「言いよどむ気持ち、僕も解ります。Vガンダムはガンダムシリーズで特に戦争の陰鬱さを全面に押し出したような作風なので、どんな要素にも明るさと暗さが両立しているから」

「ある種、振り切れているとも言えますわね。しかし――」

「しかし?」

 

 グッと拳を固め、叫ぶように吐露する。

 

「それでも登場モビルスーツのデザイン! 戦艦のトンデモさ! 完成された兵器技術!

 ほんっっっっっっっとうに最高ですのよ!!!!!!!」

 

 キリシマの言葉に、ユッキーは激しく頷く。

 

「わかりますわかります! 従来のモビルスーツとは一線を画すザンスカール帝国のモビルスーツデザインなんか最初はビックリしたけど、見ていくうちに段々と癖になると言うか馴染んでくるというか!」

「わかりますか! わたくしもあの猫目にはギョッとしましたが、気づいたら機体デザインの親和性の高さに感動しましてよ!」

 

 ああのこうのとザンスカールのモビルスーツから次第にリガミリティアのモビルスーツへ話題が移り、再びザンスカールのモビルスーツの話に戻れば、今度はモビルアーマーの話題へと変貌していく。

 

「そうでしょうリッくん!?」

「そうですわよねリクさん!?」

 

 グワっと濃い顔つきのまま二人がリクの立っていた場所に顔を向ければ、そこには既にリクの影すらいなかった。

 

「あれ?」

「あら?」

「おーい、二人ともこっちこっちー!」

 

 見れば、サラとアズマと一緒に、リクも花畑の中にいた。

 手を振って二人を呼んでいる。

 二人はリクを見て、それから互いに顔を見合わせ、ふたたびリクを見る。

 

「リクさん、いつのまに?」

「サラたちに呼ばれて。二人にも何回か声をかけてたけど、語るのに夢中になってたから俺だけでもって」

「ぜ、全然気づかなかったよ……」

「わたくしもですわ。でも良いガンダム談義が出来たので、ヨシですわ!」

「ハハハハ……あ、そうだ! 折角だからスクリーンショット撮ろうよ!」

「いいね! 撮ろう! サラ、アズマさん!」

 

 呼ぶと、二人ともリクたちのほうへ顔を向けて、小首を傾げた。

 

「お二人とも、暫くそこにいてくださいまし!」

「ユッキー、どう?」

「ちょっと待ってて。これをこうしてっと……よし、準備完了!」

「はしれー!」

 

 ユッキーがスクリーンショットのセルフタイマーを設定。

 次いでリクの言葉を合図に、三人が一斉に走り出し、サラとアズマの傍へ駆け寄る。

 サラを中央に、右側にはリクとユッキーが互いに肩を組み合い、左側にはアズマとキリシマが並び――アズマはサラの肩に手を添え、キリシマは不敵に胸を張ったポーズでフレームに収まる。

 パシャッ!

 シャッター音が鳴り、撮影を終えた。

 スクリーンショットを確認し、五人はそれぞれの笑みを浮かべた。

 

 ⁎

 

 森の中。

 サラはヤナギラン一本を手に先頭を歩いていた。

 ミッション達成条件はヤナギラン一本以上の採取であるため、二本も三本も持ち帰る必要はないのでそれは良いのだが、本来ならアイテムボックスに収納し、持ち運ぶ手間を省くのが基本となっている。

 しかし、サラはそれにはかぶりを振り――

 

「こうしてたい」

 

 と、短く答えたのだった。

 そう言われてしまえば、否定するものなど何もない。

 微笑ましく、可愛らしい小鳥のさえずりを聞きつつ、先を歩くサラの背中を見守りながら四人はその後に続いていく。

 暫く進んでいると、森が開けた。

 眼前には太陽の麗らかな陽気を反射させて煌めく湖畔があった。

 湖畔と言えばララァ・スンとアムロ・レイが出会った場所を思い出すが、ヤナギランの群生地があったと言うことはポイント・カサレリアの地形を再現したものなのだろう。

 流石に地形までは記憶していなかったので、果たしてポイント・カサレリアにこんな場所があったのかまでは思い出せなかったが、誰かが「ん?」と何かに気づいて歩みが止まったことに気づき、キリシマも足を止めた。

 

「どうしましたの?」

「お嬢様、前を」

 

 アズマに促されるまま、視線の先を追い――

 

「おや?」

 

 そこには、鞘に収めた刀を地面に突き立てた、赤い長髪の額から三本の角を生やした男性型ダイバーと、青い短髪の一本角の小太りな少年型ダイバーは佇んでいた。

 向こうもこちらに気づいたらしく、二人揃って顔を向けた。

 その内の一人、赤髪の三本角をキリシマは知っている。

 打倒チャンプ『クジョウ・キョウヤ』を目標に掲げ、強者との戦いを求めてバトルジャンキーの聖地『ハードコアディメンション・ヴァルガ』にも現れると言う新進気鋭のダイバー。

 名前は確か、と灰色脳細胞を活性化させて思い出す。

 

「ええと、あの方は通称……そう! 極旨の、オーガでしたわね?」

「――お嬢様、知らぬ私でも、それは違うかと思います」

「そうですわね。……そうかも知れませんわ」

 

 聞かれていないだろうかと相手を見れば、心なしか眼光が鋭くなっているような気がした。




折り返しでようやく登場した獄炎のオーガ。
お嬢様と接触することで、果たしてどのような化学反応が生じるのか!?
ドム試作実験機三人衆はこの先生き残れるのか!?(予定調和お嬢様)

【パサージュトレイン】
 ∀ガンダムに登場した列車(トレイン)型フォースネスト『銀河鉄道』を使い、活動しているアイテム蒐集系フォース。
 列車は近代技術を融和させた――所謂スチームパンク風に仕上げられている。
 先頭車両のガイドビーコンからビームレールを生成しながら移動している。
 様々なアイテムを蒐集し、時にそれをターミナルバザーと称して売買している。
 内部をガラス製アーケード風の商業空間に改装しており、人の移送を目的としていない作りとなっている。
 車掌(リーダー)の『フルカニロ』は常にどや顔を浮かべる自称エレガント。
 どんな時でも悠然と構えた、車掌衣装を纏う薄紫の髪の女性。
 使用ガンプラは白と黒に彩られたタキシードカラーのリーオー。
 シルクハットとステッキを装備し、カールを巻いた髯パーツを着用している。
 「事はエレガントに運びたまえよ」


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2.5『獄炎のオーガ/質か、量か』

10月に入っていたので初投稿ですわ。


 獄炎のオーガ。

 バトル系ミッションやヴァルガを中心に活動しているダイバーならば、どこかで一度はその名を聞いたことがあるはずだ。

 フォース【百鬼】の頭を務め、己の強さを磨くために強者とのバトルを求めてバトル系ミッションに現れる戦闘狂。

 獰猛なマニューバから繰り出される攻撃は燃え盛る炎の如く苛烈を極め、既に幾十人ものダイバーが彼の餌食となって、打ち倒されている。

 その中にはオーガよりもランクの高い者もおり、まさしくジャイアントキリングと言う二つ名が似合う男であった。

 しかし、その二つ名を既に頂いている者がいた。

 それこそが、キリシマであった。

 今のGBNにおける【ドラゴン騎士団】のエマ、【F(フロイライン)-ARMS】のヴォルゴ・グラーナに並ぶ三大名物お嬢様ダイバーの一人。

 オーガも、キリシマも、互いに直接会ったことはないが、中継されていた戦闘記録では知っていた。

 故にオーガは、現れた五人の内、二人の少年と何かを言い合っているドージを横目に、キリシマを睨むようにして見ていた。

 キリシマもまた鋭い視線に気づいたのだろう。

 怪訝そうな表情を浮かべたかと思えば、一度髪を払って不敵な笑みを作ってみせた。

 一見すれば挑発にも見て取れる仕草であったが、実際は彼女の何気ない所作の一つである。

 何かを誤魔化すようにわざとらしく大声を上げるドージを手で制し、オーガは自分たちがここにいる理由を確認するために口を開いた。

 

 ⁎

 

「――俺たちを呼び出したのはお前たちか?」

 

 オーガの問いに、キリシマは小首を傾げた。

 察するに、彼は何者かに呼び出されて此処にいるのだろう。

 でなければ、このようなのどかな場所に訪れるような男ではないはずだ。

 そしてあのオーガが此処にいると言うことは、決してバトルとは無縁ではないことを示している。

 少なくとも、キリシマの抱くオーガに対するイメージは、そのようなものであった。

 

「一人以外は、初心者か。用が済んだのならさっさと立ち去れ」

 

 リクや、ユッキーの反応から、自分たちを此処に呼び出したダイバーではないことを察したオーガはそう言った。

 ぶっきらぼうな言い方だが、要は自分たちの事情に巻き込まないためにこの場からの退避を促しているのだろう。

 それくらいは察せられる程度には、キリシマは冷静であった。

 既に目的であるヤナギランも手にしている。断る理由もない。

 しかし、ドージの煽りを受けた直後に、あの高圧的とも捉えられる物言いだ。

 ドージの態度も合わさって、納得のいかない様子のリクとユッキーを宥めていたアズマも、不愉快気に眉根をひそめていた。

 サラを見れば、彼女もまた不安そうな面持ちでいた。

 

「そのような言い方はないのでなくて。ごくうま……ん゛ん゛っ゛、獄炎のオーガ」

 

 一歩を大きく踏み出して、庇うような形で前に出た。

 言い間違えかけた名前を太い咳払いで誤魔化す。多分、バレていないはず。

 視線をキリシマに固定したまま、オーガが首を動かした。

 

「キリングジャイアント……」

「あら意外。ご存知でしたの。もしかしてファンですのね?」

「そんなわけがあるか」

「本当は~? サインなら無料で書いてさしあげますわよ」

「いらん」

 

 バッサリとした答えだった。

 キリシマは微笑んだまま、少しばかり残念そうな表情を作る。

 オーガのほうは、鬱陶しそうに口を歪ませていた。

 

「そう、残念ですわね。そちら、あなたはどうですの? いります? サイン」

「えぇっ!? オレ!?」

 

 いきなり話を振られたドージは、目を大きく見開いて驚いた。

 キリシマのブレない瞳がドージを真っ直ぐに見据える。

 先に聞いた初心者狩りの特徴と、四人――特にリクとユッキーの反応から、このドージこそが初心者狩りの犯人であると判断したからこそ、あえて声をかけたのだ。意趣返し、というやつである。

 しかし、キリシマは知らぬことだが、彼にとっての憧れは兄、オーガである。本来ならば断わっておくべきなのだろうが、それはそれとしてそれなりに有名なダイバーのサインも欲しい、と言う幼くも可愛らしい部分が同時にあった。

 ドージはチラっとオーガを見るが、好きにしろ、と言わんばかりに一瞬、視線を合わせただけだった。

 

「……い、いらねぇよそんなもん!!!」

 

 短くも、十分に迷ってから断った。

 先ほどまでリクたちを小馬鹿にしていたのが嘘のような慌てぶりである。

 

「フフフ、こちらも残念ですわね」

 

 悪戯気に笑ってみせたが、その瞳はすぐにオーガに向けられる。

 キリシマの態度に、自分は眼中にないのだと思い込んだドージは、ギリっと奥歯を噛んだ。

 それが当たり前だと理解していても。

 

「あなたの言わんとすることは解りますわ。ですので、こちらも邪魔になる前に立ち去るといたします」

「いや、待て」

 

 踵を返そうとした瞬間、オーガが言葉を投げた。

 

「……何でしょう? 解っているようですけど、わたくしたちは誰一人、あなたを呼び出していませんわ」

「それは解っている。だが、その前に――」

 

 オーガの口角が自然と吊り上がる。

 それは極上の餌――ディナーを目の前にした、獰猛な獣のように思えた。

 先ほどは立ち去れ、と言ったのに、この気の変わりようである。

 しかし不思議と嫌な感じはしなかった。

 次にくる言葉を予想し、キリシマは僅かに身震いした。

 それは恐怖や、怯えからくる震えではない。緊張と、高揚からくる武者震いだ。

 四人には申し訳ないと思いつつも、今目の前の強者とのバトルを求める気持ちを、偽ることはできない。それが、キリシマと言うお嬢様であった。

 

「ちゃんと来たようだな」

 

 しかし、オーガが次の言葉を紡ぐ前に、別の声が割って入った。

 短い舌打ちをして、オーガが視線を声の聞こえた方に向ける。

 キリシマも、ドージも、その場にいた全員も、同じように視線を向けた。

 そこには、三人の男性ルックのダイバーがいた。いずれもSEED作品に登場する軍服を纏った男たちだ。

 その内の一人、真ん中のダイバーが一歩、前に出た。青みがかった前髪が、片側に寄っているのが特徴的だった。

 

「なんだ? 仲間を連れてきたのか」

「おいガラミティ、あの金髪は……」

 

 キリシマを見て、刈り上げた茶髪を後ろ側に撫でつけたような髪型のダイバーが、最初に口を開いた前髪が片側に寄ったダイバー――ガラミティに声をかけた。

 

「解ってるさ、ニェット。あの巌も削り貫きそうな金髪縦ロールに、今にも馬鹿みたいな高笑いをしそうな不敵な顔、間違いようがない……」

 

 茶髪――ニェットの言葉に返事をしながら、ガラミティはごくりと喉を鳴らした。

 必然であろうが、偶然であろうが、自分たちが呼び出した獄炎のオーガの他に、キリングジャイアントのキリシマがいるのだ。緊張しないわけがない。

 当のキリシマは――

 

「……んん? 今ちょっと馬鹿にされてました?」

「いえ。ただの事実では?」

「多分、本当のことを言っただけだと思うんだけど……」

「この短い時間で、納得してしまうくらい慣れてしまってる自分が怖いよ……」

「さ、流石のわたくしも傷つきますわよ!?」

 

 場違いなほど暢気であった。

 そんな一行を尻目に、オーガが口を開く。

 

「お前らだな? 俺を呼び出したのは」

「ああ。この前のフォースバトルでは世話になったな」

「面倒見てあげたのですの? 意外と面倒見が良いのですわね」

「お嬢様、額面通りの意味ではないと思いますよ」

「ちげぇーよ! この場合はやっつけたって意味だよ! ボコボコにしたんだよ!」

 

 キリシマの言葉に、アズマとドージがほぼ同時にツッコミを入れた。

 二人に同調するように、ヘルメットを被ったダイバーが苛立たし気に腕を大きく横に振って怒号をあげた。

 

「そうだ! 認めるのも癪だが、徹底的に、完膚なきまでに敗けたんだよ! しかも、そのせいで折角のフォースメンバーが二人も抜けちまった!」

「落ち着け、ダー。……これを仇討ちとは言いたくはない。こんなことをしても、意味がないことも重々理解している。だがな――」

「御託はいい!」

「なに?」

 

 片側の口の端を吊り上げ、挑発的な笑みを作ってオーガが言葉を遮った。

 その右手には、鞘に収まったままの刀を握っていた。

 

「かかってこいよ。呼び出しに応じて、態々足を運んでやったんだ。手前らの強さを、この俺に喰わせろ!」

 

 メニューパネルを開くと同時、刀を振り上げる。

 

「ジンクスッ!」

 

 叫び、振り下ろす。

 ぶった切るように刀はメニューパネルを叩き、次いでオーガを包み込むようにガンプラが召喚される。

 それは赤い、鬼めいた姿のジンクス――より正確にはジンクスⅣの改造機――オーガ刃-Xだった。

 

「ちぃっ、相変わらずの戦闘狂め!」

 

 悪態を吐きながら、ガラミティ、ニェット、ダーもメニューパネルを操作し、ガンプラに乗り込む。

 胴体装甲とリアアーマー、そして腕部装甲の一部を赤く塗装したドム試作実験機だ。

 

「中々どうして、渋いチョイスですわね!」

「ジンクスⅣの改造もさることながら、寸分違わず同じ箇所に塗装されたドム試作実験機の統一感の美しさ! すごい、すごいよ!」

「奇しくも同じ赤色塗装に、因縁を感じますわね!」

「二人とも、危ないから下がって!」

 

 目を輝かせて四機のガンプラに見入るユッキーとキリシマを引っ張りながら、リクが叫ぶ。

 その後ろ側で、アズマはこれからこの場で起こる激戦の予感に、不安そうなサラを支えるため、その両肩に手を添えていた。

 そこでサラの肩が震えていることに気づき、優しい声音で言葉をかける。

 

「大丈夫ですよ。あの二人を何とかしてから、我々は離脱しましょう」

「ううん。違う、そうじゃない……」

「違う、とは?」

 

 ふるふると首を横に振るサラに、アズマは頭上に疑問符を浮かべた。

 その時、サラがハッとして顔を上げた。視線の先はドム試作実験機――その後ろを見ていた。

 

「もっとたくさん、くる……」

「いったい、何を――」

 

 言っているのですか、と尋ねる前に、サラの言葉の意味に応えるように、重量を感じさせる音が、木々を、大地を揺らした。

 森の中に潜んでいた鳥たちが一斉に羽ばたいて、空の向こうに消えていく。

 

「あれは……」

 

 生い茂った森の中から、ぬぅっと姿を現したのは――ドズル専用ザクⅡ。

 その後に続くように、次々とガンプラが姿を現した。

 旧ザク、ザクⅡ、サク、グフ、ズゴック、ゲルググと言った一部を除き宇宙世紀作品のモビルスーツばかりだ。中にはキケロガなどのマニアックすぎるガンプラもいた。見たところサイコミュ試験型ザクをベースにジオングなどのパーツを使用しているようだ。

 

『このようなやり方は、本来ならば不本意であるが、ここに集ったのは、お前にやられた奴らだ。そいつらを全員、俺たちのフォースに引き込んだ!』

 

 ハンドサインで指示を出しながら、ガラミティがそう説明する。

 

『ハッ! 質より量ってことか。数だけ集めりゃ、俺に勝てるとでも思ったのか?』

『ああ。だから、あえてこの言葉を言わせてもらう』

 

 ガラミティのドム試作実験機が、手にした大型ヒートホークを、オーガ刃-Xに向ける。

 

『戦いは数だとなぁッ!』

 

 咆えるような怒声を合図に、戦いの火蓋が切られた。




いつも誤字報告助かっておりますわ。ありがとうございます。


因みにドム三人衆、原作アニメと違い、ちょっとした小ネタを仕込んでおりますの。


【F-ARMS】
 ヴォルゴ・グラーナ率いる、謎多きお嬢様フォース。
 通称を冷静なほうのお嬢様、高笑いしないほうのお嬢様、ゲリラお嬢様、戦争卿などなど。
 マゼラン大陸を活動拠点としており、移動型フォースネストを用いて活動しているため、所在不明。
 SDコマンドガンダムや、コマンドガンダム風に改造した陸戦型ガンダムなど愛機としている。
 SDガンダム限定のフォースバトルロワイヤル『グレートパンクラチオン』で三度の優勝を飾って殿堂入りしているくらいには高い技量を有しており、現時点におけるキリシマが乗り越えるべき存在の一人。
 ドラゴン騎士団のエマ、本編主人公のキリシマと共に三大名物お嬢様ダイバーの一人して数えられている。

【ヴォルゴ・グラーナ】
 ロシア風な軍服に身を包んだ栗色の髪の女性ダイバー。
 宝石のように青く美しく瞳をもつ。
 冷静沈着に努め、様々なトラップや武器を扱う。
 近代的な装備を中心にした改造を施したガンプラを扱い、SDやリアルタイプを使い分ける。
 一人称は『自分(わたくし)』 二人称は『貴公』『貴方』など。
 堅実にして堅物なイメージがあるが、その実、分の悪い賭けは嫌いじゃない。 


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2.6『獄炎のオーガ/ジェットストリームアタック』

想定していたよりも逸れたので初投稿ですわ。


 ガラミティの叫びを合図に、打倒オーガを目的に集ったダイバーたちが、それぞれのガンプラに装備した射撃兵器を撃ちだした。

 相手の回避する範囲を制限するために、半円形に展開していたこともあって自然と砲火の方向性は狭まり、オーガ刃-Xに集中していく。

 

『これだけの数だ。さしもの獄炎でも容易には避けられまい!』

 

 ビームバズーカを撃ち止めて、ガラミティは硝煙のカーテンの向こう側で蜂の巣になったオーガ刃-Xを幻視した。

 多勢に無勢とは言え、あのオーガに勝ったのだ。その結果さえあれば十分だと、考えていた。

 しかし――

 

『て、敵影……未だ健在!』

『なにぃ!?』

 

 悲鳴にも似た報告を受けて、ガラミティは驚愕に目を見開く。

 ゴゥッ!

 瞬間、硝煙のカーテンを振り払ってオーガ刃-Xが現れた。

 装甲の一部に、ビームでやや焦げた痕こそあるものの、ほとんど無傷同然であった。

 

『オラオラどうしたぁ! 数だけあってもこんなもんかよぉ!』

『くそっ、撃て! ありったけをくれてやれ!』

 

 一斉射撃がより激しさを増す。

 本来であれば大きく避けるであろう弾幕を前に、オーガは臆する様子もなく突っ込んだ。

 真っ直ぐに、ではない。Z字を描くようにジグザクとマニューバを披露し、大火力のビームはきっちりと避け、避けられないと判断した小規模なビームや実弾は機体の角度を調節し、厚い装甲で弾く。

 自身に集中する目が回るほどの弾幕の中で、飛んでくる攻撃の状態を見切り、即断しているのだ。

 それは、並のダイバーにできる芸当ではない。

 気が付けば、フレンドリーファイヤの危険性が伴う距離にまで、接近していた。

 

『ガラミティ!』

『ええい! 各機、射撃を慎め! ニェット! ダー! ジェットストリームアタックをかけるぞ!』

『了解!』

『やってやろうぜ!』

 

 素早く指示を出せば、周囲のダイバーたちは驚くほど素直に射撃を控えた。

 ガラミティたちとて弱小なダイバーではない。

 むしろ、あのオーガに敗けたとは言え、挑まれた程度には腕に覚えがあったのだ。

 そうでなければ、利害のみで参加しただけの――本来ならば烏合の衆同然の味方に対し、即座に指示を与え、従わせることなどできはしなかっただろう。

 大型ヒートホークを上段に構えたガラミティを先頭に、ニェット、ダーが一列に並びオーガ刃-Xに突撃する。

 列となった彼らを正面から捉えれば、そのシルエットは寸分も狂うことなくピッタリと重なり、まるでそこには一機しかいないように錯覚させるほどであった。

 無論、オーガはその技を知っている。だが、知っていると実際に対処するとでは、厄介さが違うことも承知していた。

 コックピットの中でオーガは、それをより完成度を高めて行ってみせたガラミティたちの技量に口角を吊り上げた。

 

『往年の名技の再現か。ハッ、面白れぇ!』

 

 GNオーガソードを構えて、真っ向から突っ込む。

 射程距離に入った瞬間――

 

『い・ま・だぁっ!』

『なにっ?』

 

 オーガ刃-Xの初動を察知して、ガラミティが右手側へスライドするように急旋回。

 僅かに意識が逸れた瞬間を、ニェットがすかさず斬り込む。

 それに合わせて、ガラミティが大型ヒートホークを振り下ろした。

 

『とったらぁっ!!!』

『ちぃっ!』

 

 オーガ刃-Xの反応も早かった。

 機体を半身に、左手のGNオーガソードでニェットのヒートサーベルと斬り結び、右手のGNオーガソードでガラミティの大型ヒートホークを防いだ。

 

『ダー! 今だ!』

『応とも!』

 

 三機目のドム試作実験機――ダーが弾切れになったマシンガンを投げ捨て、がら空きになった背面へ回り込む。

 ヒートサーベルを引き抜き、水平に構えた。

 脚部の熱ジェットエンジンと背部のブースターを最大までふかし、無防備となったオーガ刃-Xを背後から貫かんと突撃する。

 

『終わりだ、獄炎のオーガ!』

『甘ぇんだよ!』

 

 オーガの決断は早かった。

 機体のパワーをあえて落とし、力の拮抗が傾いた瞬間を狙い機体を半回転させる。

 斬り結んでいたヒートサーベルを大型ヒートホークを刀身で滑らせることで、相手の態勢を崩す。

 

『な・に・をっ!?』

 

 前のめりにバランスが崩れた二機を見て、ダーが反射的に速度を落とした。

 その瞬間を、オーガは見逃さない。

 即座にパワーを戻すと、ガラミティとニェットを振り払う形でブースターを蒸かし、ダーに向かって一直線に加速する。

 

『ぅあぁぁっ!?』

 

 迫りくるオーガ刃-Xに狼狽え、やぶれかぶれにヒートサーベルを突き出す。

 

『遅ぇ!』

 

 それよりも早くGNオーガソードが振り上げられ、ダーのドム試作実験機を腰下から肩までを斜めに両断した。

 爆発が生じ、ダーの機体はテクスチャの塵となってディメンションの大気に散っていく。

 

『ダー!?』

『よくもぉ!』

 

 態勢を整えたガラミティが大型ヒートホークを左手に持ち替え、右肩にマウントしたビームバズーカを撃ちながらオーガ刃-Xに突撃する。

 援護を再開した取り巻きたちの砲撃が大地を砕き、左右への回避ルートを塞ぐ。

 後方に下がろうものならば、その瞬間をガラミティと、少し遅れて続くニェットによる連携技に狙われる。

 ……捌けねぇことはないが、チッ、後方支援が面倒だな。

 直撃コースの砲弾を切り払いながら、オーガは脚部を狙って放たれたビームバズーカの光条を飛んで避けた。

 

『飛んだな!』

 

 それを待っていたかのようにガラミティが、ニェットが、ビームバズーカを構えて放つ。

 当人たちは回避させたと思ったのだろう。

 真っ直ぐに伸びた二つの光条に、しかしオーガ刃-Xはスラスターをふかし、機体を捻じるようにしてスレスレで躱した。

 

『避けたのか!?』

『飛んでやったんだよ!』

 

 さらにブースターをふかせて、ガラミティのドム試作実験機めがけて加速落下。

 頭部を踏みつるように蹴とばし、反動をそのままに、そこから更に飛んだ。

 

『俺を踏み台にしたぁっ!?』

 

 衝撃で仰向けに倒れた愛機のコックピット内部で、原作のように利用されたことへの妙な嬉しさと、良いようにあしらわれたことへの怒りが、ない交ぜになった表情を浮かべて、オーガ刃-Xの背中を見送ることしかできなかった。

 

『か、各機、臨機応変で迎撃しろ!』

 

 それでも気休め程度の指示を送ることができたのは、彼もまた相応に有能であったからだろう。

 

 ⁎

 

 上空から見える範囲で、敵の配置を大まかに把握したオーガは、着地と同時に眼下にいたザクタンクを縦に真っ二つに断ち切った。

 次いでGNオーガソードを地面に突き立て、脚部スラスターの炎で土煙を舞い上がらせ視界を遮りながら、左右に構えていたゲルググとデザートザクを、前腕ごと射出した両手首に仕込んだGNニードルストレートで貫く。

 前腕が戻ると、即座に突き立てたGNオーガソードを引き抜き、土煙を斬り払って飛び出した。

 虚を突かれたグフを通り過ぎ様に横に一閃して撃破すれば、追い縋ってきたヒートホーク二丁持ちのアクトザクとぶつかり合い、四手目の刃であっさりと斬り伏せる。

 そのまま後方で援護射撃を行っていたモビルスーツと、その護衛に徹していたモビルスーツを次々と撃破していく。

 たった数分の間に、あれだけいた打倒オーガのために集ったダイバーたちは、半数にまで減らされていた。

 ニェットの手を借りて起き上がったガラミティは、呆然とその光景を見つめることしかできなかった。

 

『ガラミティ……』

 

 どうする?

 そう言いたげに名前を呼ばれ、ガラミティはハッとして我に返った。

 すぐにコンソールを操作し、残りメンバーと、配置を把握する。

 戦術は間違っていなかった。

 囲うように半円形を形成し、一斉射撃による面制圧と集中砲火で行動範囲を制限を狙ったのだ。どれほどのマニューバであろうと、空間を多数の火力で塗り潰してしまえば、必然的に回避の選択を狭めざるを得ない。例え撃破まではいかずとも、ある程度の損傷を期待できる手筈であったのだ。

 人員も十分だった。

 オーガに負かされたダイバーに片っ端から声をかけ、リベンジをしようにも不安が燻っていた連中を一時的にでもフォースに引き込み、協力体制を築けたのだ。全員ではなかったが、殆どは自身の弱さを自覚した上で、首を縦に振ってくれたのだ。

 役割の割り振りも適材であった。

 自分たちがメインアタックを担当。他のメンバーにはそれぞれの得手不得手を聞き出しつつ、オーガとのバトルリプレイを何度も分析し、この日のために戦術の確認と陣形の配置に関する意見を交わしてきたのだ。

 備えは万全だったはずだ。これならば勝てると思っていた。

 誤算だったのは、オーガの実力が予想の遥か上にあったこと――つまりは完全に見誤っていた。この一点に尽きる。

 

『……奥の手はある』

 

 コンソール画面を操作し、奥の手たるソレを表示する。

 

『これを使えば……オーガだろうと何だろうと!』

『けど、それは』

『解っている!』

 

 これは本来であれば頼るべきものではないことは、ガラミティとて理解していた。

 しかし、ここまで大々的な前準備をして、こうも呆気なく終わってしまうのは、彼にとって度し難いものであった。何より、後に引けないと言う負の感情が、半ば自棄を起こしていた。

 手を伸ばし、ソレを起動するためのボタンをタップしようとして――

 

『ん?』

 

 気づいた。

 フォースメンバーに限定して送ることができる個別通信に、だ。

 既に10件以上もの個別通信――言い換えるならば、メッセージログが残されていた。

 どうせ自分たちに中てた恨み言だろうと思い、それでもメッセージを開いていた。

 

『――これは』

 

 そこに残されたメッセージには恨み言どころか、激昂があった。

 それは「俺たちの仇を取ってくれ!」とか、「何もできずにすまない。あとは頼んだ」だとか、「止まるんじゃねぇぞ……!」などと言った内容だった。

 恨み言も多少はあったが、その殆どが先に撃破されたダイバーたちからの励ましにも似た内容であったのだ。

 ふいに、ガラミティの胸に熱いものが込み上げるのを感じた。利害だけで引き込み、打倒オーガを目標にしただけの協力関係だと割り切っていても、それまでの過程で妙な連帯感が生まれていたのだろう。こういう時、人というものは存外、情にほだされやすい。それが良いか悪いかは解らないが、少なくともこの場では良いほうに転んだのだろう。そう信じたかった。

 ぎゅっと下唇を噛み、鼻から空気を吐いた。

 

『……ニェット』

『どうした?』

『ダーはいないが、やるぞ。俺たちの――俺たちフォースの手だけで』

『……ああ! ああ、やろう! ガラミティ!』

 

 迷いの霧を振り払うようにコンソールを閉じ、コントロールスティックを強く握る。

 ひしゃげたドム試作実験機の頭部が嫌な音を立てるも、ガラミティに応えるように鈍くも、一際強い光をモノアイに灯した。

 見れば、オーガはメンバーの中でそれなりにやり手である旧ザクと斬り結んでいる最中であった。

 今が好機と言うわけではないが、まだ生き残っているメンバーと協力すれば、少しでも食いつけるはずだと思考を前向きに切り替え、熱ジェットエンジンに火を入れる。

 その直後だった。

 オーガとは別方向から、異様なプレッシャーが空気を震わせたのは。

 

『あれは……!?』

 

 それはオーガの仲間(・・・・・・)を撃破するために即席で編成した別動隊が向かったはずの方向だ。

 ガラミティたちはメインカメラをズームさせ、何事かを確認する。

 そこには、禍々しい紫色の薄靄に包まれたドズル専用ザクⅡと、それに対峙するダブルオーガンダムのカスタム機と、サクにペチペチ叩かれている青いグレイズのような改造機がいた。後者はあえて無視することにした。

 

『ま、まさかあいつも持っていたのか!?』

 

 ニェットの言葉に合わせるように、奥歯をぎしりと噛み鳴らしてガラミティは目を細めた。

 それは本当なら自分も辿るはずだった姿だと、陥るはずだった未来なのだと、ドズル専用ザクに自分を重ね、複雑な感情を顔色に浮かべて、苦々しく呟く。

 

『使ったのか、ブレイクデカールを……!』




次回はリッくんとキリシマお嬢様サイドですわ。
地味にオーガとサシで四手打ち合うアクトザク。
原作の流れと違って真っ当な選択をしたおドム三人衆(一人撃破済)
……ライブ感ボローニャですわね!?


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2.7『獄炎のオーガ/紫色の暗雲①』(11/1 改訂)

改訂したので実質初投稿ですわ


 獄炎のオーガとのバトルの火蓋が切られた時、リクたちは巻き込まれないように避難を始めていた。

 タイミング的にかなりギリギリなのだが、これはキリシマとユッキーが寸前まで目の前で次々に現れるガンプラの群に夢中になっていたためだ。

 二人の気持ちも解らないわけではないが、今は状況が状況だ。

 アズマには、先にサラと一緒に遠くまで下がるように伝えておいたので、既にこの場から離れている。

 

「あれはゲルググGですわね! 汚し塗装かつ渋めのデザートカラーで重力下で戦い抜いてきた軍人のダンディズムがドバドバ溢れてますわぁ!」

「ザクデザートタイプとニコイチしてるんだ!? ビームナギナタじゃなくてヒートナギナタなのも拘りが見れて最高だよ! あ、あの動力パイプは太さからするとスクラッチかな!?」

「二人とも! 見ていたい気持ちは解るけど、もう少し早く!」

 

 キリシマとユッキーは走りながらも、早回しのテープのような調子で機体名と、それがどういう工夫で改造されているのかを感想とともに吐き出しながら、熱い語り口を閉じることはない。

 その時だった。一発の流れ弾が三人の傍を掠めて木々を薙ぎ払ったのは。

 

「……うっ、わ」

「……あ、危なかったぁ」

 

 焦げた臭いと、抉れた大地を見て、ユッキーはぽかんと口を開けたまま固まった。

 リクもまた同様で、生身――ダイバーのままで目撃した攻撃の威力の前に、額に青筋を浮かべていた。

巻き込まれても実際に死にはしないが、没入感の高いGBNだからこそ、そのリアリティを纏ったデータで構築された質量と熱の塊の前に、安全と言う意識を忘れてしまった。

 唯一、GBN歴の長いキリシマだけは「あらまぁ」と呑気な様子だったが、すぐに表情を引き締めると、固まってしまったユッキーを脇に抱えるように持ち上げる。

 

「リクさん、わたくしのコルレル・スヴェイズは軽量故に装甲値は紙同然なのですわ。

 さっきまで熱く語っていた手前、ワガママな申し出で申し訳ありませんが――」

「大丈夫です!」

 

 自身を引き戻すように頭を縦に振って、グッと握りこぶしをつくり、真っ直ぐにキリシマの瞳を見据える。

 アイコンタクト、というやつである。

 視線の中で交わされた言葉――即ち、リクが今やろうとしていることは、飛んでくる流れ弾を防ぎ、避難が完了するまでの時間を稼ぐことにあった。

 

「……ありがとうございますわ。すぐに戻りますので!」

 

 言下に走り出し、抱えられたまま何かを言わんとするユッキーをあえて無視して避難を再開する。

 リクはその背を見送らず、戦場に目を向けた。

 メニューパネルを開き、マギーさんから学んだショートカット登録でダブルオーダイバーを呼びだすのと、流れ弾――バズーカの実弾頭が飛来するのは同時だった。

 GNソードⅡを展開し、流れ弾の軌道に合わせてタイミング良く振るい、斬り払う。

 これがビームの光条や速射弾であったならば難しかっただろうが、幸いにも弾速が遅いバズーカの実弾であったため、元々反射神経の良いリクはそれを防ぐことができたのだ。

 

「っ! この攻撃、まさか二人を狙って!?」

 

 故に、その攻撃がただの流れ弾でないことに気づいた。

 計算された軌道の表示は、真っ直ぐに避難経路に向けられていたからだ。

 直後にアラートが鳴り響く。

 

「攻撃!? どこから? 上っ!?」

 

 見上げれば、六発のミサイルが曲線を描いて落ちてくるところだった。

 六発すべてがダブルオーダイバーの周囲に着弾し、爆発する。

 衝撃と巻き上げられた土と木々の破片が装甲を叩く。

 ダメージにこそなりはしないが、聴覚と覆うように絶え間なく伝わる軽い音と、視界を塞ぐ土煙は、多少の不安を煽る材料となる。

 リクはすぐさまメインカメラからレーダーへと視線を移し、接近する赤い光点を認識する。

 

『ハッハァー!』

 

 土煙が落ち着くのを待たずして、ソレは来た。

 新緑に彩られ、金色のエングレービングを施されたカスタムザク――ドズル専用ザクⅡだ。

 ドズル専用ザクⅡは、担ぐように持っていた柄の短い両刃の大型ヒートホークを横薙ぎに振るう。

 

「くぅっ!」

 

 咄嗟にGNソードⅡの腹で防ぐが、パワーの差に押されてしまう。

 このままでは不味いと判断し、両手持ちに変えることで何とか持ち直しを図る。

 原作での機体性能ならば、ダブルオーダイバーがドズル専用ザクⅡに力負けすることはない。

 しかし、ここはGBNだ。原作設定などは、そのまま再現されることはない。

 作り込みによって初めて近しい性能にまで引き上げることができるのだ。

 そしてこの場合、作り込みの差が、パワーの差となって現れたということに他ならない。

 

『お前ら、行けっ!』

 

 ドズル専用ザクⅡから高圧的な男の声が響き、ダブルオーダイバーの左右横をズゴックとサクが、頭上をキケロガが通り過ぎていく。

 進行方向から、狙いは避難している四人であることは明白だ。

 

「しまった!?」

『あのオーガとつるんでたなら、仲間も同然だよなぁ!』

「違う! 俺たちは仲間じゃ――」

『今さら関係あるかよ、そんなの! おらぁ!』

 

 ドズル専用ザクⅡはダブルオーダイバーをパワーで押し負かし、バランスが崩れた瞬間を狙って胸部に蹴りを入れた。

 

「無茶苦茶だ!」

 

 手足のスラスターを激しくふかし、滑るように後方へ下がりながら態勢を立て直す。

 

「パワーでダメなら……スピードで!」

 

 そのままドズル専用ザクⅡに向かって加速。

 Z字を描くように、ジグザクに動きながらライフルモードに切り替えて連射する。

 

『仲間を見捨てたか!』

 

 大型ヒートホークを分割し、二丁持ちとなったドズル専用ザクⅡが赤熱した刃で直撃コースのビームのみをタイミングよく斬り払う。

 大振りにならないように意識を割き、最小限の可動域に留めた動きだ。

 それだけで、ドズル専用ザクⅡもダイバーもまた、並々ならぬダイバーであることを窺うことができる。

 ダブルオーダイバーは、もう一振りのGNソードⅡを近接形態にしたまま、最後のビームが斬り払われたタイミングを狙って飛び込んだ。

 

『素人の動きぃ!』

「ぐぅっ!」

 

 ドズル専用ザクⅡの手首が回転し、大型ヒートホークを半回転させダブルオーダイバーの刺突を防ぐ。

 衝撃がアームを伝って嫌な音を立てる。

 

「ま・だ・だぁ!!」

『なんだと!?』

 

 突き出したGNソードⅡをライフルモードに切り替え、コントロールスティックのボタンを押し込む。

 至近距離で放たれたビームが大型ヒートホークの刃を溶かし、貫く。

 威力は衰退していたが、それでもドズル専用ザクⅡの装甲を溶解させ、小さくな穴を開けた。

 

『うおおおおおおおっ!?』

 

 力任せに半壊した大型ヒートホークの柄を振るい、GNソードⅡを弾き飛ばす。

 そのまま柄を手放し、バーニアをふかし、後方に下がって距離を取った。

 

『こいつ、舐めた真似を――』

 

 頭部を上げると、眼前にはGNビームサーベルが迫っていた。

 慌てて機体を傾けて避けるが、掠めたエネルギーの刃が左側の動力パイプを切り裂いた。

 その隙をリクが、ダブルオーダイバーが見逃すことはない。

 相手の意識がGNビームサーベルに注がれた一瞬を突き、なるべく視界に入らないように腰を低く保った姿勢で懐に潜り込んだ。

 

「これでぇ!」

『む・お・お・お・おっ!?』

 

 GNソードⅡに渾身のパワーを溜めて、思い切り斬り上げた。

 だがドズル専用ザクⅡも寸でのところで反応した。

 ニードル付のショルダーアーマーをパージし、大型ヒートホークを地面に落とすことで重量を減らした。

 即座に全開まで解放したバーニアを噴出。重りがなくなった分、軽くなった上半身を捻る。

 GNソードⅡの切っ先が腰の動力パイプから入り、そのまま斜め上に装甲を切り裂いた。

 

「浅いっ!?」

 

 反射的に相手の反撃を危惧し、ダブルオーダイバーを一度、後退させる。

 ドズル専用ザクⅡはやぶれかぶれに拳を数度、突き出していたが、やがてスパークを散らしながら、膝を突いた。

 

『ぐっ、うぅ……こ、こんな、こんな……!?』

 

 ドズル専用ザクⅡから漏れた呻き混じりの声を聞いても、リクは警戒を怠らない。

 撃破には至らなかったものの、既にダメージは甚大であることは見て解る。

 先のダブルオーダイバーの一撃を回避するために武装やパーツを捨てたことで、まともな戦闘力は残っていないはずだと、落ち着いて判断する。

 注意するべきは、片手でダブルオーダイバーを圧倒したパワーから繰り出される肉弾戦だけだろう。

 

「よし、このまま一気に!」

 

 GNソードⅡを構え、トドメを刺さんと駆け出そうし――

 

『こんな素人くさい奴に敗けるなんて……認められるかよぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 怒号とともに、ドズル専用ザクⅡから紫の靄が衝撃となった噴出された。




Q.キリシマお嬢様、出番ないですわね?

A.大丈夫。次回はキリシマお嬢様vsズゴック&キケロガ&サクですわ!

実際、サクは立体化していませんが、この作品内では『駄菓子コラボで立体化済』と言う設定になっておりますわ。サムも同様に。

書いていてわたくしでも展開がゆっくりすぎて驚きですわよ!!!!!!!!
あと戦翼のシグルドリーヴァくっそかわいいですわね!!!!!! 小説版はぽこじゃか戦死者が出てると聞いてとても不安ですけど!!!!!!


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2.8『獄炎のオーガ/紫色の暗雲②』

ハロウィンだったのに何も書けずじまいだったので初投稿ですわ。


 ダブルオーダイバーをドズル専用ザクⅡに任せ、ズゴック、キケロガ、サクを駆る三人のダイバーはキリシマを追っていた。

 

『なぁ、どう思うよ?』

『何がさ?』

 

 ズゴックのダイバーの言葉に、キケロガのダイバーが反応する。

 

『あいつらがオーガの仲間かってことだよ。ガラミティたちの様子じゃ、オーガ以外の奴らが来ることは予想していなかったようだが』

『さぁね。だけど、キリシマにもしてやられた過去がある。アンタもそうなんだろう?』

『……まぁな』

『それを把握しているガラミティも律義な奴さ。あの場の指示でキリシマともぶつかった奴らだけを選んで即興の小隊を組ませたんだから』

『違いない』

 

 軽口を交えながらも、その視線は森の中に消えたキリシマたちを抜け目なく探していた。

 獄炎のオーガを打倒に参加した彼らだが、同時に彼女にも敗北した経験をもっていた。

 偶然ではあったものの、今日この場にキリシマがいたことで、ガラミティが気を利かせてのだろう、四人一組の小隊を組ませて追撃部隊として編成したのだ。

 指示を出された当人たちにとっては、打倒オーガとために集まったために些か不服ではあったのが。

 

『……あいつら、勝てると思うか?』

『ガラミティはあれでも優秀だけど、想定に満足して詰めが甘い部分があるからなぁ』

『無理そうか?』

『それならそれで、僕たちがキリシマや他の奴らを倒せば釣りくらいにはなるだろうさ』

『半分は納得しないと思うがな』

『二つ名付きを倒したって功績があれば、大体はそれで納得するものさ』

『そんなもんか』

『そんなものさ。ダブルオーの少年にも悪いが、僕たちの糧となってもらおうか』

『世知辛いな』

『それすら一側面さ。ここのね。そうだろ、サクの?』

 

 キケロガのダイバーからの問いに、少し後を追従していたサクは何も答えない。

 ただ伸縮する手足を振るって進むたびに、サク、サク、サクと気の抜けるような効果音が鳴るのみであった。

 この異質なガンプラ――サクは、某ガンダムパロディ漫画に登場した超量産型モビルスーツで、サクサク描けるからサクと言う安直なネーミングと妙に愛嬌のあるデザインがウケて、一部ではカルト的な人気を確立しているという。

 GPDが全盛期だった頃に何をトチ狂ったのか、とある駄菓子コラボにおいて公式のモビルスーツを差し置いてキット化されたことで、ジョークガンプラから異例の大出世を遂げたという経緯がある。

 今で言えば、かつてガンプラもどきと揶揄されていたハイモックの先達と言えるかも知れない存在であった。最も、ジョークガンプラ前提で生み出されたサクと、そうでないハイモックとでは、性能の差はダンチであったが。

 

『サクなんて、今日日、変わった奴だぜ』

 

 呆れを含んだズゴックのダイバーの言葉にも、やはり無言だった。

 代わりに触手のようなアームを上に掲げて、ヒョイヒョイと小さく回して反応を返す。

 無言ロールプレイを徹底しているのか、それともサクそのものになりきっているプレイスタイルなのか、二人には解らなかった。

 ただ確実に言えるのは、ジョークガンプラで参加したこのサクを、二人はまともな戦力として認識していなかったということだけだった。

 

 ⁎

 

 目的の人物――ジャイアントキリングの二つ名で知られるキリシマは、それからすぐに見つかった。

 ひときわ高い木の天辺に、器用に立っていたのだ。

 

「オーッホッホッホッホ!!!!!!」

 

 背筋をしゃんと真っ直ぐに伸ばし、腕を組んだ状態で馬鹿みたいな高笑いをかましていた。

 それを見た三機は何とも言えない感覚を共有して、キケロガが「やれやれ」と首を振る。

 

「よくぞ見つけられましたわね!!!」

『いや見つけられたって言うか、そんな高い所で高笑いしてりゃ嫌でも目につくんだが!?』

『馬鹿と煙が高いところが好きってわけだね』

 

 キリシマはメニューパネルを叩くと、直後に木の天辺から飛び降りた。

 瞬間、自身を中心としてテクスチャが構築されていく。

 そこに現れたのは、バエルのカラーリングを逆転させたかのようなグレイズだった。

 正確にはガンダムXに登場するコルレルをベースとしたミキシングガンプラ――コルレル・スヴェイズなのだが、元々とデザイン性とキリシマの改造により鉄血のオルフェンズに出てきても違和感のない改造を施されていた。

 腰部には、増設された細長いウイングバインダーが八基、ドレスのように取り付けられていた。

 

『グレイズ、か? いや、シルエットがどうにも違うな?』

『腰の細さからガンダムフレームっぽいけど……いや、どちらかと言えばヴァルキュリアフレーム……?』

「あら? もしかしてコルレルをご存知でない?」

『悪いな。こちとら、外伝作品までは完璧に網羅してないんでね』

「外伝……なるほど。まぁ、よいでしょう」

 

 脚部――太腿辺りに佩いた二本の抜身の剣を引き抜く。

 恐らく元はバエルソードであっただろう二振りは、細く整えられ、レイピアのように形に成されていた。

 それを両手に持ち、切っ先を下に向けるように構えた。

 

『そんな細っこい剣で!』

 

 気取るなよ!

 咆えて、ズゴックが先に動いた。

 研ぎ澄ませたアイアンネイルを煌めかせ、コルレル・スヴェイズへと迫る。

 アーム中央部に内蔵されたメガ粒子砲を選択しなかったのは、コルレル・スヴェイズのベース機を鉄血のオルフェンズ系統だと思い込み、射撃類に対して高い防御力を発揮するナノラミネートアーマーを警戒したからだ。

 真っ直ぐに突き出されたアイアンネイルをコルレル・スヴェイズはゆらりと左に動いて避ける。

 

『もらったっ!』

 

 回避先を捉えて、キケロガの肩部大型メガ粒子砲がコルレル・スヴェイズを穿った。

 ナノラミネートアーマーさえも、極限まで収束したメガ粒子砲の前では要の防御力を発揮しきる前に剥離されるほどだ。

 しかし、直撃を受けたはずのコルレル・スヴェイズの姿は、霞のように掻き消えた。

 

『なっ!? 残像っ!?』

 

 驚愕に声を上げるが、しかし動きに動揺はなかった。

 モノアイが忙しなく動かし、コルレル・スヴェイズの姿を探す。

 

『バカっ! 下だっ!』

 

 ズゴックの声を受けて、キケロガは即座にブーストをふかして上空に飛んだ。

 直後、足元の木々を一筋の銀線が奔り、切り裂いた。

 コルレル・スヴェイズが身を屈めて潜り込むように接近していたのだ。

 一寸の判断が遅ければ上半身と下半身が泣き別れていただろう。

 見たところ、コルレル・スヴェイズの武装は手に持った二本のレイピアのみ。

 それであるならば、距離をとって遠距離から攻め立てながら、隙を窺ってズゴックがアイアンネイルで貫けば勝機はあるはずだと、キケロガは思考を巡らす。サクはそもそも戦力として期待はしていなかったので、位置取りに気をつけるだけでいいとも考えていた。

 有線式アームを射出し、それぞれ別の角度から一斉に腕部メガ粒子砲を放つ。

 対してコルレル・スヴェイズは爪先を大地を軽く蹴り、降りかかる光条の透き間を縫って事も無げにすべてを回避してみせた。

 

『オーッホッホッホ! 踊りはあまりお得意ではないようですわね?』

『見てから避けるかよっ!』

 

 耳障りな高笑いに舌打つ。

 

『むおおおおおっ! そこだぁぁぁぁっ!』

 

 光条に隠れて接近したズゴックがレフトアームのアイアンネイルを繰り出した。

 背後からの一撃だ。防ぎようがない。回避をすれば、その一瞬を狙い撃つ。

 しかし、コルレル・スヴェイズはまるで後ろにも目があるかのように、ズゴックに反応した。

 マニピュレータを器用に操作してレイピアをくるりと半回転させて逆手に持ち直すと、そのまま突き出し、ズゴックの繰り出したレフトアームを貫き、紙を裂くように断ち切った。

 

『ぐぁぁぁっ!?』

 

 両断された腕を庇いつつ、後退しようとしたズゴックのモノアイを、振り向きざまにもう一本のレイピアで刺し貫き、そのまま勢いに任せてズゴックの背後へ回り込み、押し出した。

 次の瞬間、コルレル・スヴェイズを狙って放たれたメガ粒子砲の光条がズゴックを呑み込んだ。

 ズゴックは自分が撃破されたことに気付く一間すらなく爆散し、テクスチャの塵へと還っていく。

 

『しまったっ!』

『信用しなさ過ぎでしてよ!』

『くっ、……けどねぇ!』

 

 キケロガは戻した有線式アームのマニピュレータを真っ直ぐに固定し、指先から発振したビームの出力を調整する。

 収束したビームは、段々とサーベルとして形作られていく。腕部ビームサーベルである。

 指の一本一本に内蔵されたメガ粒子によって形成されたそれは、通常のビームサーベルよりも太く、荒々しい輪郭を揺らし、高出力であることを如実に表していた。

 肩部大型メガ粒子砲を拡散モードに切り替え、撃ち放つ。

 無数に枝分かれしたメガ粒子の光条が木々を蒸発させ、草花を溶かし、大地を焼く。

 この時点でコルレル・スヴェイズにナノラミネートアーマーが施されていないことを、キケロガは気づいていた。施されているのならば、先ほどの腕部メガ粒子砲の攻撃をわざわざ避ける必要などないはずだからと。

 残像を残すほどの圧倒的な機動力を封じるために直接狙うのではなく、行動の選択肢を狭めるために周囲を攻撃するという方法は、奇しくもガラミティたちがオーガに対して展開した戦術と似通っていた。

 

『判断は悪くありませんわね』

 

 降り注ぐビームの雨に行動を制限されながらも、コルレル・スヴェイズのコックピット内でキリシマは笑んでいた。

 見た目こそ鉄血風に寄せているが、コルレルはコルレル。一撃でも当たれば、即ち被撃破に直結する。

 それでもキリシマは笑うのだ。それは何故か?

 

『楽しいからですわ!』

 

 残像を軌跡として、コルレル・スヴェイズは真っ直ぐにキケロガ目掛けて加速する。

 キケロガもまた有線式アームを射出し、左右から腕部ビームサーベルの攻撃を仕掛けた。

 

『僕だってBランクなんだよ!』

 

 右側からきた刺突を的確な角度で刀身を当てて逸らし、左側からの斬り払いはレイピアの先端で手首を突くことで弾き返す。さながら流れる水のようにキケロガの攻撃を捌いていく。

 機動力を一切落とすことなく、残像により射撃の狙いを妨害しながら、果せるかなコルレル・スヴェイズはキケロガに肉薄しようとしていた。

 後方に身を退こうにも速度に差がありすぎることを、キケロガは既に把握していた。

 だからと言って、キケロガに諦めるという選択はない。

 直線で向かってくるのなら、それに合わせて肩部大型メガ粒子砲で迎撃する以外にない。

 逸る気持ちを抑え、ギリギリまで引き付ける。

 

『い・まっ!』

 

 コントロールスティックのトリガーボタンを押し込む。

 まさしく絶好のタイミングで放たれた肩部大型メガ粒子砲は、果せるかなコルレル・スヴェイズがウイングバインダーを展開し、身を捻って無理矢理マニューバを変えたことで、胸部装甲を掠めて焼いただけであった。

 

『なんで!? 当たらない! どうして避ける!?』

 

 悲鳴にも似たキケロガの言葉に、キリシマはレイピアを首元に突き立てることで答えとした。

 レイピアは内部を刺し貫き、腰部を突き破ってその切っ先が露わにした。

 そのままもう片方のレイピアを振るう。

 右肩関節からするりと入ったレイピアを動かし、くの字を描くようにキケロガを断ち切った。

 レイピアの刀身をパージし、腹部を蹴って離れる。

 

『――対ありでしたわ』

『くっそぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

 トン、と音を立ててコルレル・スヴェイズは着地するのと、モノアイから光を失ったキケロガが大地に叩きつけられて爆散するのとは、ほぼ同時だった。

 

『さて――』

 

 爆炎を背に、レイピアの切っ先をサクに向ける。

 味方の窮地にさえ一切動くことのなかったサクに、キリシマは奇妙な感覚を抱いていた。

 サクのことは知識にあるが、GBNで見るのは初めてだった。

 弱い、とは聞き及んでいたが、それとて作り込みとゲーム内の強化システムでどうとでもなる。

 

『あなたは、どうしますの?』

 

 キリシマの問いに、サクは無言のまま――行動で示した。

 サクゥ!

 ひと際大きい、気の抜けそうなSEを鳴らしてサクが飛び掛かった。

 

『迂闊に飛び上がる!』

 

 ウイングバインダーに内蔵したレイピアの刀身を素早く装着。

 引き抜くと同時に、突き出す。

 

『っ!?』

 

 息を呑んだ。

 サクは空中で触手のような手足をバタつかせ、スラスターなどを一切介さず、迫るレイピアの切っ先を、身を捩るように半回転して避けてみせたのだ。

 ぎゅるり!

 そのまま手足を伸ばし、突き出したコルレル・スヴェイズのアームに絡みついた。

 

『しまっ――』

 

 振り払う間も置かせず、滑るようにアームを伝って両足を胴に回し、巻き付く。

 両腕のアームを振り上げ、コルレル・スヴェイズの装甲を叩きつけた。

 ペチンッ!

 

『――は?』

 

 ペチン、ペチン、と間の抜けた音が耳を打つ。

 ガンプラの体力を示すゲージ――装甲値が減っている様子はない。つまりは、ノーダメージ。

 

『な、なんですの?』

 

 キリシマは当惑した。

 まさかコルレルの装甲にすらダメージを与えられない攻撃力などと、予想していなかったからだ。

 今も必死に叩いているが、やはり装甲値が減っていない。減る様子もない。

 ただ脚部はがっちりと胴に巻き付いているため、易々と振り払うことはできないだろう。

 試しにレイピアで突いてみるも、その瞬間だけは、やたら柔軟な動きですべて避ける。

 正直、サクのマニューバは悪くない。本来なら宇宙空間で想定されていたAMBAC機動を、重力下でやってのけてたのだから、むしろ良質な部類だった。

 あの柔軟な動作も、触手のような手足もフレキシブル加工されているからこそ可能としたものなのだろう。

 

『あれこれしている暇はありませんわね』

 

 殿に出たリクを案じて、長く考えている時間はないと、サクを巻き付かせたままコルレル・スヴェイズを動かす。

 重量にほとんど変化がないことから、このサクはコルレル同様に超軽量級なのだろうと推測する。

 さらに、そこに柔軟性を付与する謎技術。

 ……何なんですの、本当に。

 考えれば考えるほど謎が増していくサクにペチペチと叩かれたまま、キリシマはリクの元へと向かう。

 その時だった。進行方向の先で、紫色の靄が立ち昇ったのは。

 

 ⁎

 

『リクさん、無事ですわね!』

『キリシマさ――ってそれは!?』

 

 キリシマがリクの隣に降り立ったのは、ドズル専用ザクⅡが紫の不吉な靄に包まれた直後だった。

 明確に味方と呼べる存在にリクは嬉しそうな声をあげて、すぐにサクに組み付かれたまま、ペチペチと叩かれていたコルレル・スヴェイズを見て、驚きの声をあげた。

 

『ちょっとしたアクセサリみたいなものですわ! それよりも――』

 

 視線がドズル専用ザクⅡに注がれる。

 モノアイを怪しく輝くと、大地に落下していたパーツが浮かび上がり、次々とドズル専用ザクⅡの元に戻っていく。

 

『あれは、サイコミュ!? でもそんな機能、使ってなかったはず……』

『でしたら隠し持っていたか、あるいは――』

 

 噂のマスダイバーか。

 その言葉を紡ぐ前に、ドズル専用ザクⅡがゆらりと動いた。

 大型ヒートホークを水平に構え、赤熱する刃に紫の靄が集中していく。

 

『くらえいっ!』

 

 ドズル専用ザクⅡが大型ヒートホークを振るった。

 リクとキリシマとの距離間から、本来であれば刃が届くことはない距離だ。

 しかし――紫の靄が刃と成って射出され、並び立つ二人に迫った。

 

『お飛びなって!』

 

 キリシマの指示に、リクは素直に従った。直感がそうしろと叫んだのだ。

 飛び上がった直後、足元を紫色の刃が奔った。

 直撃こそ避けたものの、そこに生じた衝撃が二人――サクを含めれば三人――を襲う。

 

『くぅぅっ!』

『うわぁぁぁぁっ!?』

 

 機体が重みを増して、足元から掬われるような違和感に苛まれかと思えば、バランスを崩して大地に落ちる。

 キリシマはレイピアを地面に突き立てることで無理矢理、姿勢を維持したまま後方に着地していた。

 意外にもサクの微々たる重量が重りとなって、安定することができたのだ。

 

『なんて威力ですの!?』

 

 すぐにリクの方を見れば、落ちる寸前で受け身をとったのだろう、片膝を立てて態勢を立て直しているところだった。しかし、その動きは緩慢であった。

 

『フハハハハ! こいつぁ良い! 最高だなぁ!』

 

 嬉々とした大声でドズル専用ザクⅡが大型ヒートホークを肩に担いで、大地を踏み砕く。

 自身が放った一撃の威力を見て余裕が生まれたのだろう。

 さらにもう一撃を放とう、大型ヒートホークを両手に持ち、振り上げる。

 

『これでトドメにしてやらぁ!』

 

 瞬間――横合いから飛んできたオーガ刃-Xが、GNオーガソードをドズル専用ザクⅡめがけて振り下ろした。




流れ的には原作沿いなので問題ありませんわ!!!!!!!!!!!


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2.9『獄炎のオーガ/紫色の暗雲③』

ジオンの残光が公開されていたので初投稿ですわ。


 ガラミティは悩んでいた。

 自身が選ばなかった選択肢を取ったドズル専用ザクⅡを見て、である。

 ブレイクデカールなるチートツールを使わないことを意気込んだ、その直後に使われてしまったのだ。傍から見れば面目を潰されたようにも見えただろう。

 だが実際は、そんなことを気にする余裕もなければ、気にしていい立場でもなかった。

 ガラミティがブレイクデカールを入手していたのだから、参加メンバーの誰かが同じく持っていても不思議ではなかったはずだ。だのに、ガラミティはそれを想定していなかった。どころか、獄炎のオーガに勝つためならば、それもまた良しとさえ思ってもいた。

 だからガラミティには、ドズル専用ザクⅡのダイバーを責めるようなことはできなかった。

 

『どう、すれば……なにを……』

 

 それでも現状をどうすべきかを決めるのは自分であることには変わりはない。

 視線の先ではオーガ刃-Xが旧ザクの右肩を叩き切ったところだった。

 旧ザクを庇うように前に出たゲルググGがヒートナギナタを振るって切り結ぶ。

 オーガ相手によくも保つものだ、と他人事のように思考さえしていた。

 

『ガラミティ!』

『っ!?』

『場に呑まれるなよ! やると言っただろう! 獄炎のオーガを! 倒すと!』

 

 ニェットの気を張った声に、ハッと目を見開いた。

 今回の目標は獄炎のオーガを打ち倒すことにあったはずだ。

 戦術を破られ瓦解して尚、それでも果敢に挑み、持ち堪えているのが、誰も諦めていない――諦めきれていない証拠だった。

 

『ああ、そうだ。そうだよな』

 

 自身の両頬を叩き、ガラミティは不安に緩んでいた表情を引き締める。

 コントロールスティックを握り、生き残っているわずかなメンバーを確認する。

 味方は、もはやほとんど残っていなかった。

 

『不粋だと、思われているだろうな』

 

 自嘲気味な苦い笑みを浮かべて、ガラミティはニェットと並走する陣形でドム試作実験機を滑らせる。

 目標は――獄炎のオーガの駆るオーガ刃―X。

 当初の目的であった打倒オーガを優先すると決断したのだ。

 その判断は広義に捉えれば順序的に正しくはないのだろう。それでも、ガラミティは先に倒された仲間たちに報いねばならないという、戦士としての意志があった。

 そしてそれは、ガラミティにブレイクデカールの使用を躊躇わせた理性でもあった。

 

『オーガァ!!!』

 

 回線を全体へオープンにし、大声で仇敵の名を叫んだ。

 オーガ刃-Xの頭部がガラミティたちを向いた。そのカメラアイが鈍く光る。

 この時、ガラミティと、ニェットの胸に緊張はなかった。

 ワガママだとは思ったが、そこにあったのは――驚喜。

 このような状況でもオーガがこちらを認識したという事実に、だ。

 両断したゲルググGを跨いで、ガラミティたちに向かってくる。

 

『二人だけだが、アレをやるぞ!』

『ああ!』

 

 二重らせんを描くように左右の立ち位置を入れ替えながら、ガラミティは大型ヒートホークを、ニェットはヒートサーベルを構えた。

 何かしらを仕掛けてくることは、オーガも察知していただろう。

 しかし、だからといって止まるという選択肢は持ち合わせていなかった。向かってくるのならば正面から迎えうつ。それがオーガという男であった。

 ぐんぐんと互いの距離が縮まっていく。あとほんの数秒で接触するほどになるというのに、一秒が無限に感じられるようだった。

 

『こ・こ・だぁ!』

 

 ガラミティが叫んだ。

 ニェットと交差した瞬間、腰部後方に備えていたスタングレネードを投げた。

 コツン。

 一瞬、軽い音が鳴り、互いの合間に眩い閃光を迸らせた。

 無論、ガラミティたちは対閃光防御をあらかじめ用意していたから、実際に閃光を受けたのはオーガ一人だ。

 

『チィッ!』

 

 オーガ刃-XはGNオーガソードを持ったままライトアームをかざして、閃光を防いだ。

 その些細な仕草の隙を狙ってガラミティとニェットが仕掛けた。

 オーガ刃-Xから見て右側――かざしたアームに隠れるようにガラミティが大型ヒートホークを水平に構えて突撃。

 逆側からはニェットがヒートサーベルを同じく水平に構えて迫る。

 左右からの同時攻撃である。

 本来であればダーも含めた三人による連携技なのだが、ガラミティは即席で二人でも繰り出せるように調整したのだ。

 しかし、ガラミティは一つの穴を見落としていた。

 それは大型ヒートホークとヒートサーベルの重量の違いから生じる、わずかなズレであった。

 それをオーガは見逃さない。閃光で乱れた画面から捉えた少しの視覚情報から、既に見抜いていたのだ。

 右側の脚部スラスターをふかし、機体を斜めに傾けて、左脚を軸に滑るようにその場で回転。

 大型ヒートホークの刃を装甲の薄皮で逸らし、ほぼ同時に訪れたヒートサーベルをGNオーガソードで力任せに弾いた。

 

『こ、こいつっ!?』

 

 ガラミティたちの動きが一瞬だけ鈍った。動揺したのだ。

 二人の間に収まる形になったオーガは、その場で各部に設けたスラスターを全解放し捻りを加え――ひとつの渦となった。

 激流と化した刃がニェットのドム試作実験機のヒートサーベルを切断し、次いで腰から入り、緩やかな曲線を描いて断ち切った。

 ガラミティは大型ヒートホークを盾にすることで、寸前で回避を間に合わせた。

 

『いい反応じゃねぇか!』

『このぉっ!』

 

 すぐさま背部のラックを解除し、放電により青く熱されたヒートサーベルを引き抜く。

 溶断された大型ヒートホークが地面に落下する短い間に、そのプロセスを完了させたのだ。

 回転が止まった瞬間を捉え、ヒートサーベルを振り下ろす。

 一矢でも報いてやる、という強固な意志が宿った、あまりにも真っ直ぐな斬撃。

 放電したヒートサーベルがスパークを散らして、オーガ刃-Xの肩装甲を切り裂く――ことはなかった。

 

『これはっ!?』

 

 驚愕。

 肩装甲から形成された短いビームサーベルが、ヒートサーベルを受け止めていたのだ。

 それがガンダムAGEを参考に設計されたビームスパイクであると理解する前に、返しのGNオーガソードがドム試作実験機の腹部を貫いた。

 

『届かない、か』

『ああ、美味くもねぇ味だった』

『だろうな……』

『だが、歯ごたえは悪くねぇ』

 

 その言葉に、ガラミティは目を見開いた。

 聞き間違いではない。

 言葉に圧こそあるものの、それは少なからずオーガらしい言い回しでの賞賛だったのだろう。

 ガラミティは力の抜けたような、申し訳なさそうな小さな笑みを浮かべた。それはある種、諦めにも似た表情であったが、同時にどこか嬉しそうでもあった。

 

『なら、次は絶対に――』

 

 満足させてやる。

 言葉を告げれると同時に、ガラミティはドム試作実験機ごと爆散した。

 それがオーガに届いたかどうかは解らなかったが、その瞬間だけは、ガラミティは敗れたにも関わらず嫌な気持ちではなかった。むしろ、妙に清々しくもあった。

 ただ一つ心残りがあるとすれば、それはドズル専用ザクⅡのことだった。

 

『……』

 

 それ以上は何も語らず、黙したまま最後のドム試作実験機がテクスチャの塵となって消えていくのを見届けたオーガは、視線をドズル専用ザクⅡと、対峙する二機のガンプラに向ける。

 忌々し気に眉根をひそめると、オーガ刃-Xを三機のいる方向へと向けた。

 余計な手配りをしやがって、と文句を言いたい気持ちもあったが、自身が戦っている合間に目撃したダブルオーダイバーのマニューバに、そんな気持ちは『味わってみたい』という好奇心に上書きされていた。

 同時に、ブレイクデカールの使用に踏み切ったドズル専用ザクⅡに対して、怒りがあった。

 最初は数を揃えただけだと思ったガラミティたちの戦術は、実際に体感してみて悪くはなかった、と思い返す。ジェットストリームアタックを独自にアレンジした連携技は薄味だったものの、不味くはなかった。

 勝つために策を弄すことも、技を洗練することも、オーガは嫌いではない。そういった貪欲さが、人をより強くするのだと知っているからだ。

 だからこそ、彼らの頑張りに泥を塗るような決断を下したドズル専用ザクⅡは、まさしく上等な料理に不粋な味付けを足したような不届き者としてオーガには映った。

 コントロールスティックを動かし、スラスターを全開にドズル専用ザクⅡを方へ直進する。

 

 ⁎

 

 ドズル専用ザクⅡは、自身めがけて振り下ろされたGNオーガソードに寸でのところで反応。

 柄の短い大型ヒートホークで不意の一撃を防いだ。

 

『ぐっ、獄炎のオーガか!』

『クソ不味ぃもん、俺様に見せやがって!』

 

 オーガ刃-Xとドズル専用ザクⅡのパワーが拮抗する。

 リクのダブルオーダイバーと戦っていた時よりも、見るからに反応速度とパワーが更に上がっていた。

 

『どうして!? ガラミティの奴らは!』

『そんなもん、とっくに喰い終わってんだよ! 美味くはなかったが、良い歯ごたえだったぜ!』

『感想など! 余裕を言うか!』

『っ!』

 

 黒いスパークがヒートホークの刃を煌めかせた。

 途端、オーガ刃-Xの動きが重くなったのを感じ取ったオーガは、すぐさまスラスターをふかし、素早く後方へ飛んだ。

 先ほどよりも機体のレスポンスが遅い。

 見れば、機体の関節部に黒いスパークが付きまとうように迸っていた。

 

『関節への負荷に加えて、出力の低減か?』

『さしものオーガも、強制デバフには逆らえまい!』

 

 オーガは「ハッ」と短く笑い飛ばした。

 

『この程度で、もう勝った気でいるのかよ?』

『言ったな!』

 

 叫び、ドズル専用ザクⅡが駆ける。

 手にした大型ヒートホークを振りかぶり、黒いスパークを撒きちらしながらオーガ刃-Xを叩き砕かんとしする。

 

『さっきよりも速いっ!?』

 

 ようやく立ち直ったリクが、ドズル専用ザクⅡの強化された機動力に驚きの声を漏らした。

 もしも自分が今のドズル専用ザクⅡと対面したなら、あれを避けることは難しいと考えた。

 しかし、オーガはそれを苦もなく避けてみせた。

 機体にかかる負荷を素早く把握し、動作の追従にかかるラグを考慮しての動きだった。

 装甲を擦るか擦らないかの絶妙な間合いだ。

 だが、それでも膝にかかる負荷によって機体のバランスがわずかに傾いだ。

 

『もらったぞ!』

 

 ここぞとばかりにドズル専用ザクⅡが大型ヒートホークを返して振るう。

 通常の可動域ではまずありえない、あまりにも柔軟な動きだ。

 一閃。

 オーガ刃-Xが防御に回したGNオーガソードを弾き飛ばした。

 さらに三撃目の斬撃を与えようとし――

 

『やらせませんわっ!』

 

 サクに巻き付かれたままのキリシマのコルレル・スヴェイズがドズル専用ザクⅡの腰部に蹴りを入れた。

 コルレルは紙装甲と言われてはいるが、原作ではガンダムDXに蹴飛ばしても平気だったように、ある程度の衝撃に耐えうる最低限の剛性を有しているのだ。

 サクが両腕を伸ばしてGNオーガソードの柄を掴み取り、オーガ刃-Xへ投げた。

 

『ふふ、今のは中々危なっかしい場面でしたわね?』

 

 GNオーガソードをキャッチしたオーガに向けて、ここは共闘いたしましょう、とばかりに横に並ぶ。

 

『邪魔すんじゃねぇ!』

『はぁ!?』

 

 返事の代わりに、押しのけるようなどつきが返ってきた。

 いくら最低限の剛性があるとはいえ、紙装甲であることに変わりはない。

 今の一撃で装甲値の半分が削られたコルレル・スヴェイズは、衝撃を堪え切れず大きくよろめいた。

 

『おふざけを! 折角、助太刀に来たと言うのに!』

『そんなもん頼んだ憶えはねぇ! 邪魔するなら、とっとと失せやがれ!』

『はぃぃ!? さっき完全にギリギリでしたわよね!? よくもまぁそんな言い方できますわね?』

『それはテメェが勝手に決めたことだろうが!』

 

 睨みを利かせて向き合う両者を、リクははらはらとした気持ちで見守ることしかできなかった。

 流石の彼にも、視線の間で火花が散っていると幻視するほどの、あの間に入り込む勇気は湧かなかった。

 

『よくもなぁ!』

 

 強大な力を発揮してなお不意打ちで蹴り飛ばされた怒りからか、怒声とともの大地を踏み砕いてドズル専用ザクⅡが駆けた。

 「危ない!」とリクが叫ぶ前に、二人は動いていた。

 互いにバックステップで振り下ろされた大型ヒートホークを避ける。

 二人同時に叩きつぶそうと目論んだ一撃は、虚しく空を斬っただけに留まった。

 迸る黒いスパークをオーガはGNオーガソードで、キリシマはレイピアで絡めとるようにして、斬り払う。

 

『お邪魔を!』

『すんじゃねぇ!』

 

 二人は黒いスパークを絡めとった剣を投げ捨てる。

 オーガのオーガ刃-Xの固めた拳が、ドズル専用ザクⅡの装甲の上から肩関節を打ち砕いた。

 キリシマのコルレル・スヴェイズの貫き手が、ドズル専用ザクⅡの首関節を抉り貫いた。

 

『なぁっ!? だ、だがっ!』

 

 それでもドズル専用ザクⅡの動きは止まらない。

 関節を壊されてなお、強化されたパワーで無理矢理動こうと機体がもがく。

 黒いスパークが二機を逃さんと発生した。

 致命的なダメージを受けた影響か、弱々しいものであったが、それでも二機の動作を重くするには十分であったようだ。

 

『胡乱な手まで使ったんだ! せめてでも! 一矢でもとぉ!』

『自爆する腹積もりですの!?』

 

 死中に活を見出さんとしたのか、それともダイバーの執念に応えようとしているのか、モノアイを強く灯してマニピュレータで空を掻くドズル専用ザクⅡの動きには、あまりにも人間臭さがあった。

 しかし――

 

『そ・こ・だぁ!』

 

 滑り込むように、リクのダブルオーダイバーが突っ込んできた。

 GNソードⅡをライフルモードのままに、切っ先を融解して開いた装甲の穴に、ねじ込むように突き刺した。

 そのままトリガーボタンを押し込む。

 零距離で放たれたビームが装甲に開いた穴から入り込み、内部を光熱で溶かし、焼き尽くす。

 どれほどに装甲の防御力を高めていようが、内部まではそうはいかない。

 

『ちっぐしょおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

 強制的に行われた、急激な機体性能の上昇により大きくはない負荷を受けていたドズル専用ザクⅡは、ビームを受けた箇所を中心に加熱でぼこりと膨れ上がり、はち切れるように内部から爆発を起こした。

 爆発の直前――正確にはリクが零距離を浴びせた瞬間、事を理解したオーガとキリシマは咄嗟に後方に飛び退り、間近でインパクトを受けるのを逃れていた。

 

『リクさん!』

 

 爆発が晴れる。

 そこには爆熱によるオーバーヒートで、ダクトや装甲の隙間から煙を吐いたダブルオーダイバーの姿があった。

 ツインアイが鈍く輝き、ギギギと音を立てて動作する。

 その姿を見て、キリシマはホッと安堵の息を吐いた。

 

『だ、大丈夫です』

『まったく、とんだ無茶を』

『あはは』

『でも、助かりましたわ』

 

 呆れたように笑う。

 

『っ!? キリシマさん!』

 

 リクの鋭い叫び。

 キリシマはぞわりとしたおぞ気が背筋を撫でるような感覚に襲われ、直感でコルレル・スヴェイズのウイングバインダーから予備のレイピアを接続。

 視界の端に迫ったプレッシャーに対して振るう。

 それはオーガ刃-XのGNオーガソードだった。

 バヂリッ!

 エネルギーの塊と、ナノラミネートが施された細い刀身が、ぶつかり合う音が響いた。

 

『はいぃぃぃ!?』

『食い足りなかったところだ。口直しも含めて、このまま味わわせてもらうぞ、ジャイアントキリング!』

『あ、悪食! 悪食ですわよそれ!』

 

 オープン回線で届いた嬉々としたオーガの声に呼応するかのように、オーガ刃-Xのカメラアイがひと際まばゆく輝いた。




どうしてケリィさんとの対決シーン全カットなんですか……どうして……


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3.0『獄炎のオーガ/敗北』

書き納めなので初投稿ですわ。


 パワーでは不利とキリシマは即断し、レイピアを傾けることでGNオーガソードから受ける力を流しながら、コルレル・スヴェイズを飛び退らせる。

 

『逃がすかッ!』

 

 オーガ刃-Xは追従するように動き、両腰に内蔵したGNバルカンを連射する。

 紙とも揶揄される装甲をもつコルレル・スヴェイズにとって、バルカンさえも一撃必殺の脅威足りえる。

 爪先が地面に触れるや否や、スラスターと機体の軽量さを活かしてタンッ、タタンッとステップを刻む。

 リズムよく、軽やかに。

 淀みなく、流れる水のように。

 自然体にも似たそのマニューバは、もはや踊り子のワルツのようであった。

 故に当たらない。追いくるバルカンの粒を涼やかに躱し、あるいは刃を以てすらりと弾く。

 動くたびに機体を染めた青色が残像を残して軌跡を描く。

 

『やるなッ!』

 

 GNバルカンを撃ち止め、前腕部の左腕のGNニードルストレートを発振、射出する。

 コルレル・スヴェイズは当然のようにこれを避ける。

 その瞬間を狙ってオーガ刃-Xが駆けた!

 右腕に握りしめたGNオーガソードを振り上げ、一気呵成の勢いで斬りかかった。

 下に振り抜かれた一撃も、難なく躱してみせた。

 

『そんな見え見えの大振りに当たるとでもッ!?』

『だろうなぁッ!』

 

 しかし、オーガの狙いは別にあった。

 それはGNニードルストレートを射出した先――ドズル専用ザクⅡとの戦いで投げ捨てたもう一振りのGN オーガソードだった。

 幸運にも刃先を下に突き立っていたそれの柄を握り、引き抜く。

 合わせてオーガ刃-Xも動いていた。

 キリシマがオーガの狙いに気づき、反応する前に、回避行動を選択することを見越した上でタックルを仕掛けたのだ。

 勿論、コルレル・スヴェイズには防御を取るという選択肢は存在しない。

 オーガの読み通り、キリシマはコルレル・スヴェイズを横に動かしてタックルを躱した。

 追撃は行わず、そのまま引き抜いたGNオーガソードを持った右腕を元に戻す。

 

『まさかッ!?』

 

 気付いた頃には、既にGNオーガソードを連結し終え、GNオーガツインソードを完成させていた。

 ぐるり、と手首を一回転させ、それを継続させる。

 ギュラギュラギュラと空を切る音を響かせながら、オーガ刃-Xが疾風の如く駆けた。

 GN粒子の輝きを纏ったGNオーガツインソードを回しながら、回転斬りによる苛烈な猛攻がコルレル・スヴェイズを襲う!

 

『く・うぅッ!?』

 

 掠める切っ先が装甲を浅く裂き、斬られた風の音が爆ぜ、耳朶を打つ。

 それでもキリシマはコルレル・スヴェイズを器用に操作しながら直撃を躱す。

 ギリギリのタイミングでレイピアをレールのように刃の表面に当て、刃の軌道を逸らして流す。

 一瞬でも集中が途切れれば、その瞬間に回転する刃の餌食になるであろうことは明白だった。

 

『どうしたジャイアントキリングッ!? 避けてばかりで臆したかッ!』

『誰がッ!? わたくしがッ!?』

 

 苛立たし気に怒りを含んだオーガの言葉を受けて、コルレル・スヴェイズの動きが変わった。

 GNオーガツインソードの回転斬りのタイミングを見切り、柄とマニピュレータの隙間にレイピアを刺し込む。

 これにより回転を維持するパワーバランスが崩れ、回転に歪みが生じ、速度が落ちる。

 そのまま捻じった左腕を貫手とし、迷いなく連結部を突き砕いた。

 

『ハハハッ! そうだそれだ!』

 

 柄の一部を砕かれ、連結を解かれたGNオーガソードを空中で再び掴み取り、コルレル・スヴェイズのレイピアと鍔迫り合う!

 

『だが、まだだ! まだ足りない! お前の味を、もっと味わわせろッ!』

『だから悪食なッ!』

『なら本気を出せ、ジャイアントキリングッ!』

『なんてッ!?』

『お前のバトルを見たことがある! あの時のような装甲も、ダメージも、何もかもを鑑みないマニューバは実に美味そうだった! だからあの味を――あの時のお前を、この俺に喰わせろッ!』

『勝手な! ご注文・をッ!』

 

 ギャキィッ!

 コルレル・スヴェイズは手首を捻り、パワーの流れを零すことでGNオーガソードを捌き、オーガ刃-Xから距離をとった。

 

『それとも今の俺には本気を出すまでもないと考えているのかッ!?』

『そんなことを考えてはッ!』

『ならば本気を出させるまでッ! ――トランザムッ!』

 

 瞬間、オーガ刃-Xが赤く発光し、頭部のバイザーが下りる。

 その姿はさながらに一つ目の赤鬼のようであった。

 

『いくぞ、ジャイアントキリングッ!』

 

 怒りにも似た赤色が、煌めいた。

 

 ⁎

 

 それに最初に気付いたのはリクであった。

 あまりの激闘に呆然と見惚れていたが、外側――第三者の視点だからこそ、気づけたのだ。

 

「あの変てこなガンプラが、いない?」

 

 そう、キリシマのコルレル・スヴェイズに巻き付いていたサクが何時の間にかいなくなっていたのだ。

 あまりにも自然にいなくなっていたので、いつそこから離れたかも解らなかった。

 

『ここにいますよ』

「うわぁっ!?」

 

 つと隣から声が響いて、リクは跳ねるように驚いてしまった。

 そこには、膝を立てて揃えた姿勢で座っているサクがいた。体育座り、というやつである。

 

「い、いつのまの……?」

『さっきです。どうも、サクです』

「あ。ど、どうも?」

 

 聞こえてくる声は、女性のものだった。

 サクの愛嬌のある見た目と合わさって、奇妙な親和性があった。

 

『ところで貴方は、行かないの?』

「えっ?」

 

 サクは触手状の腕で指し示した。

 その方向は、今まさにバトルの真っ最中であるコルレル・スヴェイズとオーガ刃-Xを指していた。

 それを見て、リクはこのサクが、否、サクのダイバーが何を訊いているのか理解した。

 『助けに行かないか、それともここでただ見ているだけなのか』ということを訊いているのだろう。

 無論、リクとてできるのならばキリシマの援護に向かいたいという気持ちはあった。

 ダブルオーダイバーも、冷却装置によって大分熱を冷め、動くのに支障はないはずだった。

 それでも、動けないでいたのだ。

 

「……今の俺じゃ、足手まといになるだけだから」

 

 事実を認めるように、自分に言い聞かせるように、リクは呟いた。

 目の前で起きているバトルは、自分にはまだ遠いレベルのものだと、そう思ってしまったからだ。

 普段なら臆すことなく、迷うこともなく行動に出せるはずの足が縫い留められたように動かせなかった。腕が震えて力が入らなかった。指が強張ってコントロールスティックから離せなかった。

 あの二人の間に入る込めるほどの力を、自分は持っていないのだと考えてしまう。

 そんな複雑な心境が幾つにも重なって絞り出された言葉であった。

 

『ふぅん。見てるだけで解るのね。聡明なのね、貴方』

「それは――解りますよ」

 

 サクの見透かしたような声音に、リクは思わず不貞腐れたような反応を返してしまった。

 

「あれだけの動き、俺にはできないって、解る気がするんです」

『でも、このままではいたくない、とも思ってる?』

「……はい」

『じゃあ、動けばいいじゃない。貴方も、その子も』

「簡単なことではないですよ」

『簡単なことだと思うわよ。私は』

 

 スッとサクが立ち上がり、踵を返して歩き去っていく。

 

『自分ができることをやればいいのよ。後悔しない範囲で、未練のないように』

 

 その背中をリクは不思議そうに見つめたが、結局かける言葉を思いつかず、ただ黙したまま見送るのみであった。

 

「自分ができる、こと……」

 

 サクのダイバーの言葉を反芻し、目の前で繰り広げられている激闘を見る。

 赤い軌跡を描いてGNオーガソードを振るうトランザム状態のオーガ刃-Xに対して、コルレル・スヴェイズは先ほどと同様にレイピアを迫る刃の軌道に合わせて刀身で滑らせることで受け流している。

 一瞬でもしくじれば即座に両断されるという緊張感の中に、コルレル・スヴェイズは幾度も神懸かり的なタイミングで攻撃を捌いていた。

 

「けど――」

 

 リクは先ほどまでと違う部分があることを理解した。

 それは余裕だ。

 トランザム発動前のオーガ刃-Xの攻撃を受け流す時、ある程度の指向性を持たせていた。

 そえによってすぐに自分の有利な立ち位置に足を動かし、次の一手に対して余裕を持てるようにしていたのだ。

 しかし、今は違う。

 トランザムによって出力の上がったオーガ刃-Xの攻撃を、ただ受け流すことで手一杯になっているのだ。

 特に受け流した後に挟まっていた足の動作がほとんどなくなっていた。

 あるのは、軋む機体を支えるように踏ん張っているということだけだ。

 それでも余裕があるのように見えるのは、ひとえにキリシマの技量によるものなのだろう。

 いずれにせよ、このままではコルレル・スヴェイズが両断されるのは時間の問題だった。

 

「――ダブルオーダイバー」

 

 喉の奥につっかえていたものを吐き出すように息を吐く。

 そうして戦慄く心を、震える腕を、落ち着かせる。

 指先の力を入れ直し、コントロールスティックを握る。

 

「もう少しだけ、俺の無茶に付き合ってくれ!」

 

 そのままコントロールスティックを押し倒す。

 ブゥン、と音をたててダブルオーダイバーのツインアイがひと際大きく光を灯した。

 

 ⁎

 

 キリシマはコルレル・スヴェイズのコックピット内で焦る心を落ち着かせるように努めていた。

 同時に、目の前に迫るオレンジの刃をレイピアの刀身で受け流す。

 ほんの一寸のズレが、自分と、コルレル・スヴェイズの結末を決めるのだ。

 そう思えばこそ焦る心とは別に、頭脳は冷静に物事に対処するキャパシティを保っていた。

 ……とはいえ。

 出力の差がありすぎる。

 トランザム発動前ならば、多少は余裕を以て捌けた攻撃も、今では捌くことがようやくといった具合であった。

 ただでさえ一瞬の隙が命取りになる上に、オーガ刃-Xの苛烈な攻勢によって攻めあぐねいていたというのに、そこにさらにトランザムと来たものだから余計に防戦一方に陥るしかなかった。

 

『くぅッ』

 

 刃先がコルレル・スヴェイズの装甲を掠め、表面を切り裂いた。

 紙装甲のコルレル・スヴェイズにとってはまさしく『致命傷以外はかすり傷』なのだが、それは同時に相手が自分の動きを捉え始めたことを暗に示していた。

 既に三桁には届きそうなほどの刀身と刀身のぶつかり合い。

 そこでついに、レイピアが折れて砕け、そのまま右腕を斬り飛ばされた!

 

『ッ!?』

『終わりだぁッ!』

 

 刃を新たにしようとしても柄がなければ意味がない。

 ウイングバインダーのダインスレイヴを使おうにもこの距離での反動による被害を鑑みれば迂闊に使用できない。

 万事休す。

 絶体絶命。

 そんな言葉が脳裏を過ぎり――

 

『うおおおおおおおおおッ!!!』

『な・にッ!?』

 

 二人の間に割って入るように突撃してきたダブルオーダイバーが、GNソードⅡでGNオーガソードを受け止めた!

 

『リクさん!?』

『キリシマさん、これをッ!』

 

 言って、片手に持ったソレをコルレル・スヴェイズに向かって放り投げた。

 それはドズル専用ザクⅡとの戦闘の際に、紫色のスパークを絡めとって投げ捨てたもう一振りのレイピアであった。

 

『邪魔をするなッ!』

『ぅ・あッ!?』

 

 GNソードⅡをグググッと押し返し、突き出されたダブルオーダイバーの腕ごと弾きあげる。

 返す刃でダブルオーダイバーの胴体を溶断しようとし――

 

『リクさん!』

『――トランザム!』

 

 瞬間、ダブルオーダイバーが赤く輝きを帯びて、オーガ刃-Xの視界から消えた!

 

『違う、屈んだかッ!』

 

 事実、ダブルオーダイバーは下方――足元にいた。

 オーガ刃-Xの脇をすり抜けるようにスライディングしていたのだ。

 オーガの気が僅かに逸れたことを、キリシマは見逃さない。

 左腕には、リクが回収してくれたレイピアを、切っ先をオーガ刃-Xに向けて水平に構えていた。

 

『チェストですわぁッ!!!』

 

 それを、突き出す!

 渾身の刺突。

 レイピアの切っ先が電子によって構築された空気の層を貫き、オーガ刃-Xに迫る!

 

『しゃらくせぇッ!』

 

 視界の端に迫るレイピアに、オーガ刃-XはGNオーガソードを放し、即座にその腕を防御に回した。

 レイピアはマニピュレータを貫き、衝撃が関節を唸らせる。

 

『ぐ・お・お・おッ!?』

『と・ど・けぇぇぇぇぇぇぇッ!』

 

 肺の空気をカラにするほどの、腹の底からの叫び。

 押しとどめようとするオーガ刃-Xのマニピュレータごと、その頭部を――

 

『――ッ!』

 

 貫けなかった。

 切っ先はオーガ刃-Xのバイザーに刺さり、フェイスの一部を砕いただけだった。

 届かなったのだ。

 ほんの少し、パワーが。スピードが。タイミングが。

 

『キリシマさんッ!?』

 

 リクの声が届いた時には、コルレル・スヴェイズの左腕を断たれ、胴体は袈裟蹴りに斬り捨てられていた。

 

 ⁎

 

 気づいた時には、キリシマは草むらの上で大の字になって仰向けに倒れていた。

 バッと上半身を勢いよく起こすと、ぼやぼやとする頭を小突く。

 

「お気づきになりましたか」

「アズマ……」

 

 傍らに腰を下ろしていたアズマに声をかけられ、キリシマは自分が敗けたのだと思いだす。

 

「皆さんは?」

「安心してください。全員、無事です」

「そう。――リクさんは!?」

「あちらです」

 

 視線で促され、キリシマはその先に顔を向ける。

 そこには、ボロボロになったダブルオーダイバーが上を向いて倒れていた。

 両肩の太陽炉からは黒い煙を燻らせて、浅いながらも各部に切り傷を残している。

 その横ではリクと、ユッキーと、サラが何かやり取りをしていた。

 ただ、遠目からでもリクが決意した顔つきで何事かをサラに告げているのは解った。

 気になるところではあるが、それを後から聞き出そうとするほど、キリシマは不遠慮ではない。

 

「――敗けたのですね」

「えぇ、敗けましたわ。完全に」

 

 ふたたび草むらに上半身を預け、キリシマはふぅっと息を吐いた。

 目に映る青空と、その中を飛んで往く鳥の影を見つめる。

 敗けた。

 勝負ごとにおいて必ず付きまとう結果だ。

 それだけならどうということはない。キリシマは今まで何度も敗けているのだから。

 

「けれど――」

 

 オーガの言葉を反芻する。

 ……あの時の、わたくし。

 それが何時の頃の自分なのか、何となく検討はついている。

 否、思い出したのだ。

 楽しむことばかりを優先して、心の底から本気でぶつかり合うことを忘れていたのだと。

 決して相手を舐めていたわけではない。

 ただ、自分の技量にかまけて、無意識にそういったことを蔑ろにしていたのだろう。

 

「……そりゃ怒りもしますわよね」

「お嬢様?」

「アズマ」

 

 上半身を起こし、親友の名を呼ぶ。

 

「何でしょう?」

「わたくし、強くなりますわ」

「はぁ?」

 

 立ち上がり、髪についた草や土を払いながら、眉根を歪めて釈然としていないアズマを見る。

 

「その上で、アズマ、あなたにもう一度ガンプラの楽しさを、GBNの楽しさを教えてさしあげますわ!」

「何だか、随分と無理矢理な言い方ですね」

「むむぅ……」

 

 アズマも立ち上がり、スカートを軽く払ってから、言葉に詰まったキリシマを見る。

 真っ直ぐに。その瞳を。

 

「ですが、そうですね。私はそういうお嬢様が、らしくて好きですよ」

 

 だから、と一拍置いて言葉を繋ぐ。

 

「教えてください。もう一度、私に――楽しいを」

「ふふふ、モチのロンですわ! 豪華客船に乗った心持ちでいなさい! オーッホッホッホッホッホッホ!」

「あ、じゃあやっぱりいいです」

「アズマァ!?」

 

 大仰に落胆するキリシマの映すアズマの瞳の奥には、知らずの内にキラリとトキメキの輝きが灯っていた。

 

 この日、初めて敗北と挫折を知った少年は、謝罪とともに少女に一つの決意を示した。

 この日、敗北から己の欠落を自覚した少女は、親友と小さな口約束を交わした。

 その後お互いに健闘を称えてからGBNからログアウトした一同は、ナナミに乗せられてガンダムシリーズのコスプレをさせられていたモモカを目撃するのだが、それはまた別の話。




エピローグはもう少し続くのですわね?

【サクのダイバー】
 正体不明の謎のダイバー。
 サクというマニアックなガンプラを使用する。
 軽量であることを利用したマニューバで翻弄するが、攻撃力は皆無。

【コルレル・スヴェイズ】
型式番号:NRX-007-VF
頭頂高:17.9m
機体重量:4.9t
武装:
レイピア
ダインスレイヴ

コルレルの改造機。
細長いウイングバインダーはレイピアを収める剣鞘としても機能するように改造し、さらに内部に電磁誘導加速装置の機構を内蔵している。
(厳密にはGPD、GBNで再現できるほどに作り込んでいるだけで、本物の電磁誘導加速装置ではない)
それぞれのユニットはパージ可能。
ウイングバインダー一基につき二本ずつレイピアが収納されている。
外見はヴァルキュリアフレームに似せており、ガンダムXを知らない者からすれば完全に鉄血のモビルスーツだと勘違いされる出来栄え。
装甲は一切増設しておらず、ウィングバインダーで機動力を高めた程度の性能である。
なのだが、その機動力と元々の運動性能にキリシマの操作技術が合わさり、作中では驚異の性能を発揮している。

キリシマホビーショップでのショップ大会で頭部を破壊されてしまったため、応急処置としてグレイズの頭部に手を加えたものを取り付けていた。
これが原因でコルレルを知らないダイバーからは「鉄血外伝の機体?」と思われがち。
上記の通り『奥の手』としてダインスレイヴを仕込んでおり、まさしく初見殺しな性能を秘めていたが、そもそも近接特化ゆえに発射までのラグや反動が生じるダインスレイヴとは相性が悪く、動きの必ず隙ができる相手ならともかく、今回のモブダイバーやオーガのように隙の小さい相手にはまったく通用しないどころか、そもそも使用するタイミングすら存在しなかった。
以降、ダインスレイヴはオミットされ、純粋な鞘兼バランサーパーツとして作り直された。


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エピローグ『極炎のオーガ/その後に二人』

悩んだのですが初投稿ですわ。


 ドズル専用ザクⅡのダイバー『ズルド』にとって、ドズル・ザビは憧れの存在であった。

 ザビ家という野心渦巻く一族の中に在って、武人として信念を貫き通し、良くも悪くも身内に対して情の深いあの姿が、ズルドにはとても理想的な人物として映ったのだ。

 自分もああなりたいと思った。

 あんな風になってみたいと夢に見た。

 ドズル・ザビのような男になりたいと。

 しかし、現実というものは非情であり、ズルドの性格はとにかくドズル・ザビのような武人肌とはあまりにも縁遠いものであった。

 肉体を鍛えようと頑張っても三日で諦め、せめて信念を貫く意思の堅さを見せようとしても気が付けば妥協に妥協を重ね、自発的に何かを成そうとするわけでもなく、ただ無為に日常を過ごすことの繰り返し。

 せめてGBNではドズル・ザビのようなアバターにしようとも考えたが、自身の現状を鑑みれば、それすらおこがましいものだと思い、憧れとは真逆の小柄で目付きが悪くてずんぐりむっくりな根暗なダイバールックにしてしまったほどだ。

 幸いにも、ズルドにはビルダーとしての技量も、バトルの技量もそれなりにあった。

 醜悪なダイバールックも、愛嬌があると言ってくれた人もいた。

 だからズルドはそこから自分なりに努力して、色んな資料や動画を漁って、ドズル専用ザクⅡを作り上げることができたのだ。

 それからは少しずつ、ほんのちょっとではあるが前に進んだのだと、進めたのだと思った。

 敗けることもあったがバトルも勝利を重ねて、Bランクに昇格する目前にまでいったのだ。

 嬉しかった。楽しかった。憧れにはなれなくても、憧れを心に頑張ることができたのだから。

 

 ――獄炎のオーガに出会うまでは。

 

 それはどうしようもないほどに、圧倒的な敗北だった。

 両腕を斬り飛ばされ、頭部に突き立てれたのは幅の広い刀身のソード。

 コックピットの中でズルドは、ただ茫然とするしかなかった。

 勝てると思っていた。

 何度も反復練習を重ねて、直撃軌道のビームを斬り払うという技を身に付けたのに。

 何度もバトルを繰り返し、自分に合わせた武装を描き、考えて、作り上げたというのに。

 積み重ねてきた努力の一切が通用せず、為す術もなく大地に斬り伏せられた。

 

『食べ応えもねぇ』

 

 倒れ伏すズルドを見下ろしながら、オーガはそう呟いた。

 その一言は、ズルドの心に根深く突き刺さった。

 そして気づかされたのだ。いつの間にか、妥協していたことに。

 憧れになれなくてもいい。ただ好きであればいいのだ。

 憧れになれないのは当たり前だ。仕方がない。

 そういった無意識の妥協が、必然的にズルドを本気から遠ざけていた。

 強くなりたいと言いつつ、強くなるための努力をしながらも、上に――次の段階に進むことから目をそらしていたのだと。

 オーガに敗けてからは今までの覇気を失い、研磨することを放棄し、ただ目的もなくGBNをプレイしていた。

 挫折、と言ってもよかった。

 そんなズルドにとって、ガラミティに声をかけられたことは天啓にも等しかった。

 彼についていけばオーガに一泡吹かせられるかも知れない。

 そう考え、ズルドはガラミティの打倒オーガに乗ることにしたのだ。

 メンバーは自分のようにオーガに散々な敗北を喫した者で溢れていた。

 ガラミティはなるほどよく出来たダイバーだった。

 オーガの性格も含めて、呼びだす場所を決め、その地形を事細かに分析し、メンバーの得手不得手を考慮に入れて配置と陣形を決めていく。

 

『オーガの実力はお前らも知っているはずだ。少なくともタイマンじゃまず勝てない。

 だから俺たちは数で押す。あえて言おう。戦いは数だ、とな』

 

 ガラミティの言葉にズルドは大いに賛同した。

 何せ憧れのドズル・ザビの言葉を引用されたのだ。

 あの瞬間、ズルドの心は確かに跳ね上がったことを憶えている。

 それからは研磨することさえ思い出せず、オーガに勝つ方法を探した。

 もはや何でも良かった。あのオーガに一泡吹かせられるなら、否、勝つには手段は選べないのだと言い聞かせて。

 そうして手に入れたが――ブレイクデカール。

 仲介者を名乗るあるダイバーから紹介された、俗に違法改造ツールとして実際に手にしたソレを、ズルドは初心者救済用ツールだと自分自身を誤魔化して使用した。

 今にして思えば、それが誤った選択だと理解できる。

 自分の心の弱さが、矮小な性格が、自棄になった感情が――ブレイクデカールを使ってしまったのだと。

 

 ⁎

 

「くそッ!」

 

 嫌な過去を思い出し、強制送還によってセントラルロビーに転送されたズルドは足早にその場を後にしようとした。

 すぐにログアウトを選択しなかったのは、それが自分にとって今最もやってはいけない逃げだと思ったからだ。

 

「……」

 

 脳内で先ほどの戦闘が思い起こされる。

 ガラミティが最初にキリシマ追跡に自分を組み込んだ時、腑に落ちなった。

 確かにズルドはキリシマにも敗けたことがある。

 けれど、勝ちたいとは思っていても、その時はオーガほど引き摺ってはいなかったはずだ。

 

「いや、違うな」

 

 見抜かれていたのだろう。

 オーガと戦うことへの、恐れを人一倍抱いていたことを。

 だからガラミティは気を遣って、あえて自分を一度オーガから遠ざけようとしたのだ。

 その結果はどうだ。

 動きの緩慢さからルーキーだと判断し、勝てると踏んだダブルオーガンダムの改造機のダイバーにしてやられた挙句、その現実を、その事実を認めることができず、ブレイクデカールを使用したのだ。

 ブレイクデカールによってもたらされた強大な力に、ズルドは酔いしれた。溺れた、と言ってもいい。

 実際、その効果によってオーガに一撃を入れる寸前までいった。

 キリシマの横槍が入らなければ、あのまま撃破できた可能性だってある。

 しかし、そうはならなかった。

 オーガとキリシマ。あの二人はブレイクデカールの効果によって発現したスパークをあっという間に攻略し、ズルドを返り討ちにしたのだ。

 ブレイクデカールの影響か、普通なら機能停止になってもおかしくないダメージを受けたドズル専用ザクⅡはそれでも持ち堪え、まるでズルドの意地に応じるように動いてくれたが、結局、最後は飛び込んできたダブルオーダイバーにトドメを刺される形で爆散した。

 そうして、今に至る。

 

「どんな顔で出向けばいいってんだよ……」

 

 違法改造ツールにまで頼って、敗けたのだ。足を引っ張った以前の問題だ。

 それくらいの自覚をするくらいには、ズルドの精神はそれなりにまともだった。

 だからこそ、ガラミティたちに顔を向ける勇気も、かといって自ら運営にこの事を報告する度胸もなかった。

 憧れの背中が遠ざかっていくのを感じる。

 後悔と卑屈がない交ぜになった苦々しい表情を浮かべて、頭を振る。

 

「おい! そこのダイバー!」

 

 つと、声が聞こえた。聞き慣れた声だ。

 名前を呼ばれてもいないのに、その声が自分に向けられたものだと直感し、ズルドは思わず顔を向けてしまった。

 ガラミティが、いた。

 

「ズルドだな?」

「な、なんだよ」

「お前、ブレイクデカールを使ったな?」

 

 心臓が早鐘を打つ。

 顔から血の気が引いていくのが解る。

 足元がおぼつかないという感覚に陥り、視界がぐにゃりと歪んだ。

 

「……ああ、使った」

「そうか」

 

 にべもないズルドの短い頷きに、ガラミティは軽蔑を眼差しを向けなかった。

 むしろ、どこか安堵したような、そんな眼差しだった。

 それからバツが悪そうな表情を浮かべて、頭を掻いた。

 

「あ~、そのだな。……実は俺もなんだ」

「――あ?」

「俺も、ブレイクデカールを持ってたんだ」

 

 ガラミティの告白に、ズルドは目を見開いた。

 

「勝つためには手段を選ばなくていい。そう思ってた」

「けど、あんたはソレを使わなかったんだろ」

「まぁ、な」

「だったら俺とは大違いだ。あんたは使わないまま、オーガに挑んで敗けた。

 俺は使って――敗けた。最低な選択を取って、最悪の敗北をしちまった」

 

 拳を作った腕に力がこもる。

 怒りではない。自分自身の行いに対して、苛立ちが先にあった。

 

「そう、だよな」

「何しに来たんだよ。運営に自白しろとでも言いに来たのか?」

「それもある」

「ほらな」

「けど先ずは――ズルド、俺たちのフォースに入らないか?」

「――はぁ!?」

「他の奴にも声はかけたんだ。半分はまぁ、俺たちが先にオーガを倒すとか、諸々の事情で自分たちのフォースに戻っていったりしたが……」

「それで、数合わせで俺ってことか?」

「いいや違う」

 

 ガラミティはハッキリと否定した。数合わせでない、と。

 

「だったら――」

「お前の実力を見て決めたんだ」

「ハッ」

 

 自嘲気味に、短く笑う。

 

「ブレイクデカールを使って、今こうして逃げようとしていた奴に、そんなことよく言えるもんだよ」

「だからこそ」

「あ?」

「だからこそ、って言うのも何だかおかしいが、――やり直そうと思って」

「やり直す?」

「ああ。もう一度、みんなでやり直すんだ」

 

 そう言ってズルドを見るガラミティの眼差しは、真剣そのものだった。

 例えるならばそれは、戦士の目であった。

 このままでは終われないという、終わって堪るかという、そんな意思を宿した、強い目だ。

 

「それで今度こそ、オーガの奴を倒す! そのためにズルド、お前の力が必要だと、そう思ったんだ」

「――俺は」

 

 弱い男だ。

 ドズル・ザビに憧れているにも関わらず、意志は弱く、諦めは早く、すぐに感情に流される。

 そんな奴の力が、果たして何の足しになるというのか。

 けれど、もしも、こんな自分にもそんな機会があるのならば――もう一度、ドズル・ザビの背中を追ってみたい。

 

「……本当にいいかよ。俺で、俺なんかで」

「ああ。勿論だ」

「へ、そうかよ」

 

 ふぅ、と息を吐く。

 

「いいぜ。ガラミティ。あんたの話に乗せてくれ」

「そうか。そうか!」

「けどその前に、俺にはやることがある。あんたもそうだろ?」

 

 ズルドの問うような声に、ガラミティは首を縦に振った。

 

「使おうが使わなかろうが、ブレイクデカールに手を出して、持ち込んだんだ。お互いにケジメはつけないとな」

「そうだな。どんな処分も、きちんと受け止めるさ」

「永久アカウント凍結かも知れないかもよ?」

「その時は、我儘な話だが……諦めるさ。潔く」

「へ、都合のいいこって」

「何にせよ俺たちのやろうとした、やったことは報告するさ」

「……だな」

 

 軽く笑って、ズルドはガラミティの手を取り、握手を交わした。

 その日、二人のダイバーがブレイクデカールを使用したという報告を以て運営に出頭。

 しかし運営は、実際に使用した痕跡やガンプラに異常を発見できず、証拠不十分として処理せざるをえなかった。

 同時に、それが最もブレイクデカールの厄介な性質であると、頭を抱えるのであった。 

 出頭した彼らの意思とは関係なく、電脳の世界に入り込んだ悪夢は、じわりじわりとGBNに広がっていたのである。

 

二人がブレイクデカールの本当の脅威を知るのは、もう少し後の話。




これにて第2章、一応は完結ですわね?

【ズルド】
ドズル・ザビに憧れるダイバー。
本人はドズルほど剛毅な性格ではない。


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三話『ターミナル防衛戦/プロローグ』

ようやく3話目ってマジですの? となったので初投稿ですわ


 ターミナルバザーという催し(イベント)がある。

 運営が直々に開催するイベントではなく、ユーザー同士が集まって行うバザールのようなものだ。

 ターミナルという名が付くそれは、文字通り巨大な駅(ターミナル)で行われるのが最大に特徴となっている。

 元々はアイテム蒐集を生業とするフォース『パサージュトレイン』や売買でポイント稼ぎにいそしむダイバーたちが始めたもので、当初こそは小さな駅を舞台にした小規模であったものが、参加者に開催日時を記したカタログを送ったり、確約こそできないもののリクエストを受け付けたりと徹底したサポートを行う姿勢から次第に人が集まり、結果的に相応な規模なものへと発展していったのだ。

 GBNにある数あるバザールイベントの中でもパサージュトレインが開催するそれは他よりも一線を画していて、彼らが所有する∀ガンダムに登場した列車をスチームパンク風に改造した移動型フォースネスト『銀河鉄道』そのものをバザールの舞台にしている。

 ガラス製アーケード風の商業空間に改造された車内に並べらてたショーケースの中には、比較的手に入りやすいパーツから手に入れるまで困難な確率に挑み続けなければならない希少素材まで、GBN全土に存在するほとんどのアイテムが飾られているのだ。

 その収集率順位(コレクションランキング)だけであれば、フォース『AVALON』のリーダーにしてGBNのチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』よりも現在は上に位置しているほどである。

 キリシマはそんな夢のような空間を構築するパサージュトレインのターミナルバザーが好きであり、この日が来るのを待ち続けていた。

 買えずとも見るだけでワクワクするというのは子供っぽいと思われるだろうが、そういった気持ちは店先に積まれたガンプラの箱を見ているのと同じようなだものだ。

 それはガンダム好きが、あるいはプラモデル好きが持つDNAに刻み込まれた普遍的な本能であると言ってもよいだろう。

 馬鹿みたいな高笑いを響かせ、ドレスの装いを以てハイヒールの靴をコツンと軽快に鳴らしながら、ターミナルバザーへと参加した――そのはずであった。

 

「どうして……」

 

 現在。ターミナルバザー。

 キリシマの目の前に広がる光景は大よそバザールとは程遠いものであった。

 崩れ落ちたドーム状の天井。

 砕かれたホームを覆う壁。

 床の一部は抉れ、列車の外に展開していた露店はすべて吹き飛んでいた。

 バザール目当てでガンプラを持たずにログインしていたダイバーたちは逃げ惑い、パサージュトレインのフォースメンバーたちが声を張り上げて避難誘導に必死となっている。

 ガンプラを持ったダイバーたちは全員が各々のガンプラに乗り込み、迫る脅威に対してターミナルを護ろうという気概を見せていた。

 キリシマもまた例外ではなく、ガブルの改造機である深緑色の動く城壁『ガブル・TF(タートルフォート)』に乗り込んでいた。

 通信からパサージュトレインの車掌(リーダー)である『フルカニロ』の言葉がノイズ混じりに聴こえる。

 

『現在――我々は――非戦闘エリアにて――攻撃を――正体は不明だが――恐らく――である――諸君――協力を――頼み――』

 

 もはや何度目かになる通信は、全て同じ内容だ。

 非戦闘エリア内での長距離砲撃――即ち、攻撃行為。

 その後に現れた正体不明のモビルスーツ群。

 状況から察すれば、最近噂のマスダイバーの仕業であろうことは察しがついた。

 回数を重ねるごとに途切れがちになりつつあるのは、立ち込めてきた霧の影響か、それとも別の理由か。

 耳障りになってきた通信を一度切り、キリシマは前を見据える。

 迫りくるのは統一感のないモビルスーツの群だ。ジムがいて、がいて、モビルジンがいる、

 動きこそバラバラで統率が取れているとは言い難いが、荒々しいマニューバからGBNの中でも荒くれ集団であることが窺える。

 一方、防衛側となったキリシマたちはターミナルバザー参加者で構成された即席の部隊だ。

 演出のために外に佇んでいた警備役は先の砲撃で消し飛んでしまい、数こそ少ないものの質は十分だと思いたい。

 しかし、それとは別の問題がキリシマを焦らせていた。

 

『くそ、ビクともしないぞ!』

『パワー自慢六機でもダメとかどんな構造してんだカテシマァ!?』

『バイフー重いぜ!!!』

『やべぇ関節がイカれた! 重い上にかてーんだよ!』

 

 キリシマのガブルTFが嵌っているのだ。ターミナルの中央入り口に。すっぽりと。

 コントロールスティックを押しても引いてもわずかに揺れるだけで動かない。

 味方に押してもらってもまったく動じないどころか関節の駆動系に負荷をかけてしまうという有様であった。

 このままでは防衛のために陣形を展開することさえできない。

 

「どうしてこうなったんですのぉーーー!!!」

 

 ガブルTFのコックピット内で、キリシマは悲鳴にも似た叫びをあげた。

 同時に、こうなるまでの経緯が脳裏でフラッシュバックするのだった。

 それはキリシマが参加したターミナルバザーで起きた、マスダイバーを相手にした防衛戦に至るまでの記憶である。




次回は数分前に巻き戻りますわ。

【ターミナル】
ターミナルバザーの舞台。
固有名称は不明だが、GBN内ではこのようなオリジナルの施設が幾つか存在しており、デザインや大きさはそれぞれのディメンションによって異なる。
基本的に非戦闘エリアに点在しており、本来であれば破壊不能オブジェクトとして設定されている。
今回のターミナルバザーと舞台となったターミナルは近未来を想定した巨大な建造物で、内部でMSを展開しても収めることができるほど巨大。
徒歩での移動よりも、内部各所で借りられる移動用カートの利用が推奨されている。


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外伝
外伝『公認Gチューバー・ナルミ』(8/3キャラ解説、機体解説追記)


流行りのネタはお嫌いかしら?(ムスカお嬢様)


 GBN格納庫。

 

「はいはいどーも。小さなバグから大きなバグまで、よりよきGBNのためにどこまでもー。

 ナルミだよー。助手の諸君、優良健康でいたかなー?」

 

『こんばんは』『神配信』『初見です。はじめまして』『来たわね』『今日のバグこ』

『初見だ! 囲め!』『大きなバグない定期』『あったら困る定期返し』

 

 下から上へ流れるコメント欄を気だるそうなジト目で追いながら、袖の余った白衣を着た少女が灰色の狐耳とツインテールを揺らしながら配信画面内の下からひょっこりと顔を出した。

 GBN運営公認Gチューバー『ナルミ』。

 活動内容は主に報告されたバグの調査である。

 GBNがゲームである以上、決して避けられぬ不具合事象だが、運営の尽力により一部の例外を除き、凶悪なバグは報告されていない。

 とは言え、ないというわけではなく、多種多様なバグが散見されているのが現状である。

 しかもGBNは広大。中にはダイバーが作り上げたエリアやミッションも存在する。

 それ故に運営側もきちんと把握できていないものがあったり、あるいは対応が後手になってしまっているものもあるのだ。

 運営はこれに対し、少しでもストレスを和らげようとして目をつけたのがGチューバーであった。

 Gチューブ特有のこの文化を舞台に、ナルミはリアルタイムでバグの調査を行い、運営以外の視点や発想をもつ存在――即ち、彼女が助手と呼ぶ視聴者からの様々な意見やアドバイスを以て改善を試みるのである。

 これが想定していたよりも好評を博し、GBNガードフレームが正式に配備されて以降、バグの報告が激減しても活動が続いていた。

 因みに公式ではなく公認なのは、ナルミ自身は初期に個人Gチューバーとして活動していたのだが、最悪なことにこの活動が公式に捕捉――と言う建前で身バレしてしまい、結果そのまま公認される形となってしまったという経緯がある。

 当時のナルミはこう語る。

 曰く、『やはり社内に設置されたGBNブースで配信なんかやるもんじゃない』と。

 

「ま、この前口上も今では完全に形だけのものになったんだけどねー。

 いやぁ、優秀だよねGBNガードフレーム。満足度は体感で95割くらい。そんくらい楽になったねー」

 

『95割? 95割!?』『950%……だと……』『もう神配信』『体感高すぎない?』

『ダイバ忍かなにかやっておられる?』『ここは健全チャンネルぞ!』

 

「ハハハ、諸君こらこら。古のネタ好きすぎるだろう。

 でも実際、デバッカーの真似事してた身としては本当にそれくらいはある」

 

『確蟹』『これは蟹配信』『ファイトクラブきたな』

『あれから細かなバグも殆ど聞かなくなったしな』

『根強かった水中のオブジェクトバグもガードフレーム実装から数日で修正されてた』

『ガードフレームでも数日かかる水中のオブジェクトバグとは』

 

 水中のオブジェクトバグ。

 水中に浮かぶオブジェクトの判定が見た目よりも小さく判定されてしまい、オブジェクトを通過して攻撃を受けてしまうというバグであった。

 ナルミも調査のために再現をしたが、主に二回以上繰り返してそのフィールドで遊ぶ、オブジェクト破壊可能な攻撃を一回当てるという条件でようやく再現できた。

 発生する条件が条件だったため、余程の水中エリア愛好家ではない限り発見し難いバグとして、ナルミの調査で知られるまでは運営も中々手が回せない状態であった。

 

「あれはまぁ、割と深刻――と言うかは他のシステムと思いの外絡み合っててね。

 人間の手数だと丸一年近くはかかる予測だったんだよー」

 

『そんなに』『知らなかったそんなの』『ただのオブジェクトバグではなかったのか』

 

 唖然とするコメント欄を横目に、ナルミは格納庫を歩き出す。

 コツコツ、と規則的な音を立てて。

 

『どこ行く』『あっち』『こっち』『そっち』

『上』『下』『真ん中』『上上下下左右左右BA!』

『どっち!?』『草』『どう見ても右に移動してて草。耳鼻科、ヨシ!』『眼科だよぉ!?』

 

 些細なことに勝手に盛り上がるコメント欄に笑いを零しつつ、第一格納庫に配備されたモビルスーツにカメラを移す。

 そこにはオレンジカラーの――

 

『おぉ?』『なになに』『ガードフレーム!』

『は?』『は?』『は?』『は? 神配信』『プレイアブル化!?』

 

「そうGBNガードフレーム。今回の配信の目的はこれね」

 

 ざわつくコメント欄の流れを確認しつつ、ナルミは言葉を続ける。

 

「何とあのガードフレーム、諸君らの熱烈な要望によってキット化することが決定しましたー」

 

『まぁじでぁ』『まてまてまって』『仕事早すぎて草』

『はい神配信』『毎回神配信ニキいておハーブ生えますわ』

『ハーブネキきたな』『そこまで熱烈だった?』『なんだァてめェ?』

 

「ハハハ、嬉しいかね諸君? 嬉しいよねー。私も嬉しい。

 で、これ、先行して組ませてもらった上に私色に改造した正真正銘のガンプラ版ガードフレームってわけなんだけどねー。どうだ羨ましいだろう?」

 

『いいなぁ』『ちな名前は?』

 

 名前と訊かれて、ナルミは少し逡巡して――

 

「ワークフレームなんて――どうだろう?」

 

『うわぁ』『強いられてそうな名前してますわね』

『働くことを強いられているんだ!』『神配信を強いられている』

 

「おいおい、諸君、私はイワークさんじゃあないんだよ。

 因みに頭部はフルフェイス型とボックスキャノピー型があって、私のは後者のボックスキャノピー型を採用しているよ。実際にそこに乗り込むってわけじゃあないから、そこは気分ということで。

 武装は元々私の活動が調査主体だったから、あんまり戦闘用の武装類は積んでないよ」

 

『太陽の牙ってそう』『鉄の戦士は死んではいなかった!』

『キバっていくぜ!』『違う、そっちじゃない』

『あ、肩の円筒ミサイルポッドじゃなくてフリッパーのスコープカメラ?』

 

 カメラを操作し、足元から上へと写してから、引いて全身へ。

 そこから各部を見せつつ、取り付けられた装備の説明に入る。

 この時ばかりはコメント欄の流れも落ち着いており、リスナーたちはポツポツと短い返事をコメントに打ち込みながら聞き入っていた。

 

「コメントでも指摘されたけど肩のはザク・フリッパーのスコープカメラだねー。

 よく気づいたもんだと感心するがどこもおかしくはないな。

 あとバックパックもフリッパーのを半分ほど流用してて、後はボールのマニピュレーターも組み合わせてアストレイ・アウトフレームのバックジョイントを再現してるんだよー。

 それとエビル・Sの偵察ポッドをハロ風に仕立てたハロポッドも付けてある」

 

『はえーすっごい改造』『ミキシングビルドいいぞこれ!』

『先行して組んだガードフレームがはちゃめちゃ偵察機に改造されてた件』

『アウトフレームのそのままもってくるんじゃなくてボールので再現してるのすご…‥』

『ハロ風偵察ポッドかわいいな』『ちゅーか名前アウトフレームでよかったんじゃ?』

 

「私は働いているから……まだ社会からドロップアウトしたくないから……」

 

『草』『草』『おハーブ』

『社内のGBN端末を使い、デバッカー権限を付与した状態で配信に勤しんでいた時点で結構ギリギリだったのだが』

『運営さん!?』『そーいや一応運営公認だからそりゃ見られてるわな』

 

「いやそれはホント……あの時は魔が差してですね……すみません……」

 

『めちゃくちゃ凹んでて草』『耳が折れてるのかわいい』

『いつもちょっと得意気な顔がとても暗くなっててこれは神配信』

『今は事前に許可を得ているので問題ない。これからも励んでくれ』

『あったけぇ』『やさしいせかい』『運営優しいな』『甘やかすとつけあがるぞ!』

 

 普段はコメントしない運営の唐突なコメントにナルミそっちのけで騒ぎだすコメント欄。

 ナルミもナルミで過去のやらかしを不意に突っつかれたので割と軽くないダメージを負っていた。

 とりあえず何か励まされたので気を取り直す。

 

「と、とにかくだね、諸君! ガードフレームはこのように改造のし甲斐があるので、発売された暁には是非とも購入してくれ!」

 

 ナルミの宣伝にコメント欄はこぞって「買います」の言葉で埋め尽くされた。

 これで一応はガードフレームのキット化を広告するという目的は達した。

 

『ところで、後でハロポッドの作り方を教えてもらいたいのだが』

 

 そこにまたも運営から予想外のコメントが打ち込まれた。

 

「はぁっ!? ――あっ、いや、はいぃ! いいですよー! 教えますとも!」

 

 そんな運営のコメントのナルミは一瞬、素っ頓狂な声を出して呆けてしまった。

 すぐに持ち直したものの、既に数万のリスナーが視聴している中でそれを見逃されるはずもなく――

 

『今の顔草』『スクショ連打しててよかった』『呆け顔たすかる』

『運営もかわいい』『わかる』『ハロしか勝たん』

 

「一応、後日エビル・Sの偵察ポッドをハロポッドに改造する工程も上げますので」

 

『ガードフレームの販促かと思ったらエビル・Sの販促だった』

『これはどちらも買えと言う神の意思!』『神=運営』『ナルミちゃんは神の使いだった?』

 

「くそぅ、油断してた……。時間もそろそろなので配信切りまーす……」

 

『めっちゃしょげてて草』『めげないで』『かわいいからね仕方ない』

 

「今の表情撮った助手は後日予定しているコラボ凸待ちフリーバトル配信で凸してきなさい。

 絶対ボコるので意地でもボコるので」

 

『こわ』『ドズル並の執念が見える』『ニュータイプがいるな』

『コラボって相手発表されてたっけ』『いやまだ』

『前回はダニエルさんだったな』『あれはおハーブでしたわね』『神配信でしたーネ』

『ダニエルさん、言動がヒールなのにナルミちゃんの介護で行動が優しかったの草だった』

 

「うん、諸君らの言う通りダニエルさんはすごく良い人だったよー。

 逆凸配信だったけど、あの後しこたまお礼言われたりしてねー。

 あ、これオフレコだったっけ? えと、まぁ、その、ダニエルさんごめんね!

 それと次回のコラボ相手だけどね、正式な発表はもう少し後なんだけど、一応ほのめかしておくと、某委員長とだけー」

 

『ダニエルさん草』『ダニエルさんの株がトップ高』

『某委員長? まさかな』『そのまさかかも!?』

『イオ……』『地獄を稲妻の如く進んでる主人公のような略し方やめろ』

『一体何リんなんだ……』『もう神配信』『神配信ニキ確定はやすぎて草』

 

「それじゃあ今日はこの辺でー。助手の諸君、優良健康を維持しつつまた会おー。

 ついでに高評価、低評価、チャンネル登録もよろしくねー。――はい、おつかれさまー」

 

『おつかれー』『おつ』『おつかれさまです』『おつですわよ』




ナル(カ)ミ

【ナルミ】
 ナルカミ・スズメのダイバールック。
 灰色の狐耳とツインテールに結んだ髪、気だるげなジト目、袖の余った白衣を纏った人外系少女姿の合法ロリ。
 一人称は私。二人称は○○助手。三人称は諸君。
 個人Gチューバーとしてバグの調査を主体に活動していたが、中々対応されないバグに苛立ちを感じてしまい、デバッカー権限を付与した状態で社内のGBNブースからログインしていたところ、それがバレてしまい、紆余曲折の末、3ヵ月の休止を経て運営公認Gチューバーとして復帰した経緯を持つ。
 その際に行った『謝罪&経緯説明配信』は今でもちょっとした語り草として話題に上がる。
 『ゼロの旧ザク』イベントの際に入手した『紙一重のニルス』による『50%の確率で射撃攻撃を回避する(発動間隔1秒)』ユニークスキルと、索敵スキルを極めて入手した『隠密看破』による『策敵範囲内のステルスを一体無効化する(発動間隔9秒)』スキルによる索敵役としてはかなりの実力を有している。
 持ち前のマニューバと紙一重で弾幕を掻い潜り、偵察機でありながら泥臭い戦い方で付いた仇名は異能生存体。
 ワークフレーム以前の乗機は『ザク・フリッパーB(ボトムズ)』


【ワークフレーム】
型式番号:GBN-GF01-WF
全高:18.0m
重量:45.6t
武装:
ガンカメラ
肩部円筒型スコープカメラ
ハロポッド
 Lトリモチネット弾内蔵
頭部バルカン砲
ビームライフル
ビームサイン

ヘヴィマシンガン
90㎜ MMP-80(サブマシンガン)
 Lグレネードランチャー
ZUX-197 ヤークトゲヴェール(多目的ショットガン)
DS(ダブルスナイパー)ライフル
 Lビーム銃口、実弾銃口を合わせたタイプ。
  状況に応じてビーム・実弾を切り替えられる。
アームバンカー(奥の手)

ナルミが先行して組み立てたガードフレームの改造機。
全身をオレンジカラーに染めたデスペラード風。
頭部はボックスキャノピー型。頭部左右にバルカン砲が確認できる。
背部のバックパックもザク・フリッパーのものを半分ほど流用し、残りはプラ板などで独自に改修しつつ、ボールのマニピュレーターを使ってアストレイ・アウトフレームのバックジョイントを再現している。
バグ調査用のため普段は索敵用の装備とガードフレームの標準装備であるビームライフルと、ビームサーベルから取り換えたビームサインしか装備していない。

索敵範囲はナルミ本人が索敵構成に重きを置いているだけあって広大で、『隠密看破』と相まって『ニンジャスレイヤー(ステルス無効的な意味で)』、『ミラコロメタ』と呼ばれる。

足裏にはローラー駆動とターンピックが内蔵してあり、地上での機動力を底上げしている他、防水処理とザク・フリッパーのバックパックに水中用ジェネレータを搭載することで「フリッパー(水かき)」の名の通り水中適性も獲得。
パーツの換装をせずとも各地形に対応可能となっている。

バトル系ミッションやフリーバトルの際は背部のボールマニピュレーターで再現したバックジョイントをフル活用するために複数の火器を搭載し、ほぼ使い捨て前提で運用している。
因みにアームバンカーは腕をパイルバンカーに仕立て、伸縮することで可能とする一回こっきりの奥の手である。


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外伝『オタクにやさしいギャ〇がいるって本当ですか?』

わからない。わたくしは雰囲気でギャルを書いている!
区切りがわからなくなったのでとりこう(※とりあえず投稿の略)ですわ!
※ファイターズネタを多分に、そして露骨で直球に含んでおりますわ。

▼ならば海賊らしく▼作中に登場するお名前「ザクムラさん」は青いカンテラ様のガンダムビルドダイバーズ二次創作作品『GBN総合掲示板』よりお拝借しておりますわ▼頂いていく▼


 いかにも女子学生的な部屋を再現したフォースネスト。

 ベッドの上にはSDギャンのぬいぐるみが置かれ、ハンガーにはギャンパーカーがかけられている。

 壁にはガンプラフォーストーナメントの歴代チャンピオンのポスターが第1回から第14回まで一枚も欠けることなく丁寧に飾られていた。

 

「ちょりーっす☆ 七つ八つ九つテトラでーっす! オタクくんたち元気してたー?」

 

 配信画面の左側からピースサインを掲げながら女子高生ルックのダイバーが飛び出した。

 小麦色の肌をさらけ出し、淡い金髪を後ろで結び、着崩した白のシャツと紺色のミニスカートを装い、頭部にはピンと先端が尖り立った黒地の虎耳がピコピコと動いている。

 彼女のダイバーネームは『テトラ』。

 ギャルでギャンを愛機としているため、ファンからの通称はオタクにやさしいギャ()系Gチューバー。

 ガンスタでも活動している正真正銘の女子高生ビルダーで、かつてはGPD世界総合大会をギャン一筋でベスト16位に入るほどの実力をもち、さらにサザメスがギャンパーカー(※完全受注生産)を紹介する際にはモデルも務めたことがあるという経歴を持っていた。

 因みにモデルをした縁からか、サザメス提携のイベントではほぼ高確率でゲスト席にいたりする。

 配信中のコメント欄の空気も他とは比べ、時には若々しいコメントも混ざるのが特徴的であった。

 

 『めちゃ元気だしー。てか最近ヤバくね? 新作出まくりじゃん?』

 『新作……ハルファスのことかな?』『ぃゃちげーし(笑) タッピーのことだし(笑)』

 『タッピー?』『タピオカじゃんね』『それな! 柚子ミルクとかマジウケる☆』

 『お、おう』『おじさんには眩しい言葉だ』

 『ぉじさん(笑) 今度ォススメ紹介してぁげるから行ってきなょマジ美味だから』

 

「おー早速盛り上がってんねー☆ でもあんまり失礼なこと言っちゃ駄目だかんね?

 マナーを守って楽しくGBN! これ鉄則っしょ♪

 あーし的には臨海都市にオープンしたガンダムカフェの『アッガイ風コーヒータピオカ』が一押しだから飲んでみてね!」

 

 『りょ!』『りょ?』『りょーかい略したやつ』『へぇー』

 『臨海都市マジでー!? いくいくー(≧▽≦)』『割と近場だな』『アッガイはコーヒー味なのか』

 『ぁそこのカフェ景色ぃぃょねー!』『ゾック風抹茶カフェもエモいからいいよねー』

 

「言葉の表現って時代とともに絶えず変化していくもんだからねー。

 そーそー、超オススメだから騙されたと思って行ってきなってマジで!

 アッガイの色合いがコーヒーっぽいからそんな味なったんじゃねーってのがあーしの見解。

 それなーそれそれ、特にクリアパーツで夕陽を透かして撮ると最高にバエルから試してみなー♪

 ゾック風とか草生えるし、そこザクじゃないんかーいって(笑)」

 

 GBNのショップエリアで購入してきた菓子類や飲み物をテーブルの上に広げながら、コメントに返事をしていく。

 テトラの人気はここにあった。

 単にギャルっぽいダイバールックや過去の経歴に由来するだけでなく、配信中は可能な限りコメントを拾う丁寧さと、その外見に似合わず読書家というギャップが受け、今では3万近くの登録者を間近に控えている。

 少し前までは凸待ち配信を行ったり、または他のGチューバーの凸待ち配信にも積極的に参加し、初心者や中々上に進めず伸び悩む中堅相手には勝敗に関係なくダイバーポイントの返却に加えて積極的なアドバイスを行いながら精力的な活動をしていた。

 だが、上位ランクに突入してからは『格下相手にイキる上位勢の恥知らず』だの『中堅にマウントを取りに来る害悪上位Gチューバー』といった悪意ある切り抜きによる印象操作を受けて体調を崩してしまい、引退も危ぶまれた一ヵ月の休止の後、活動方針を大幅に変更したことで現在では凸待ち配信を行うことも、参加することもなくなり、月に数度の昇格戦時のリプレイ反省会配信を対戦相手の許可を得て行うに留まっている。

 しかし、テトラはこの状況を逆に利用し、都合が合えば対戦相手を自身の配信に招いて一緒に反省会を開くといったことをするという強かさを見せていた。

 とは言えそれでも配信枠は雑談が多くを占め、最近はGBN内で発売されている飲食物を話題の肴に、やれあのお店はだのやれあのガンプラはだのと当たり障りのない日常的な内容となっていた。

 「それがいい」「それもいい」という視聴者がいる一方で、昔のようなガンプラバトル主体のほうが良かったと言って去っていく視聴者も少なくはなかった。

 それでもテトラはそれを受け入れた上で、活動を続けている。

 

『そういえば昇格戦どうだった?』『先週だったっけ』

『勝確じゃないん?』『バトルに勝確はないのじゃ』『マ?』『マ!』

 

「そーそー、先週、昇格戦挑んできたんだよねー。

 バトルは常に不確定要素ばかりだから、よっぽど的確にメタったりしないと勝確なんてないっていうか、ほぼ皆無みたいな?

 反省会の日程は後でツブヤキにも投稿しておくんでー、確認よろしくー☆

 で、まぁー、結果だけ言うとね? ――何とか勝てましたー! いぇーい♪

 ってなわけで前祝い的な? あとさっき言った反省会の告知的な?」

 

『888888』『マ!? 魂アゲなんですけど!』『おぉ! おめでとう!』『おめー!』

『今何位だっけ?』『今回勝てたから16位じゃなかったっけ?』

『16位!? うせやろ!? GPD時代の戦績に追いつくじゃん!』『マジマジのオオマジよ』

『個人ならマギーさんよりも上ってこと? えぇ!?』

『最初期から追っているからおじさんも鼻が高いよ……』

『後方おじさん面ウケるんですけど(笑)』

『vsマギーさんの昇格戦リプライ反省会は、何とマギーさんご本人も招いているので配信アーカイブ見るヨロシ』

『りょ』『りょ!』『りょー』『さっそくつかってっしー(´▽`*)』

 

 歓声に湧くコメント欄をほほ笑みながら眺めつつ、ヒートサーベルアイスキャンディーを開封する。

 ドムのヒートサーベルをモチーフにした棒付きアイスキャンディーで、赤熱状態をイメージしたイチゴ味とオレンジ味から始まり、放電状態をイメージしたソーダ味にレモン味と設定によるカラーが増える度に新しいフレーバーが増えている。

 最近になって色彩が豊富なビームサーベルアイスキャンディーも発売されたが、これにより『連邦がジオンをパクった!』といったネタが生まれてしまったのはまた別の話。

 

「オタクくんたちありがとー☆

 マジマジ、マージ・マジ・マジーロ。いやぁ今回もマージギリギリだったんだわー。

 何度もマジーネって思う場面あったしぃー、一桁台が見えてくると些細なことが完全に分岐点になっからマジヤバイんですけど~!

 そーなのよ、あーし実はマギーさんも乗り越えて16位にいんの。GPD世界総合大会と同じ順位よ順位! エモエモすぎっしょー! 

 とゆーかマギーさんとの対戦、針の穴に糸を通すっつーくらいもう駆け引きばっかで緊張感ハンパなかったしぃ!

 えっ!? 最初期おじさんマジ? いつもありがとね! そんでこれからも応援シクヨロ……じゃなくて、よろしくね☆

 それでねそれでね! マギーさんこっち来てくれて一緒にやった反省会、マジ為になる話ばっかだから上を目指すオタクくんは絶対に見たほうがいいよ!

 いやホント! 騙されたと思ってさぁー! 特にフルバースト掻い潜った後の接近戦の時のアドバイス、マジホント聞くだけでも経験になるから! あ、それとね――」

 

 テーブルに胸が乗っかるくらいにズズイッと身を乗り出して語りだす。

 琥珀色の双眸を無邪気な子供の如くキラキラと輝かせ、食べかけのヒートサーベルアイスキャンディーを舐めることさえすっかり忘れて、溶けて液状となったものが手首を伝い、あるいは垂れて胸元やテーブルに落ちていくことにさえ気づいていない。

 

『後半めっちゃ早口で草』『やっぱ好きなんすねぇバトル』『おめめキラキラしてて草』

『話に夢中で溶けたアイスキャンディー胸元にボタボタ垂れててこれは、まずいですよ!?』

『褐色肌に溶けたアイスエッッッッッッッ』『ぉじさんたち興奮しすぎゥケる(笑)』

『てゅーか話長くなぃ?』『話に夢中になってなはるなぁ』『いやぁ、スイッチ入るとこーなるんですわな』

『でもこーゅーギャップ? ってーゅーの? 私もすきなんだょねー』

『全然わかる』『ワイトもそう思います』『わかるマーン』『ジャガー三銃士きたな』

『……いやもう10分近く喋り倒してるんですけど!?』『もう少し、もう少しこのまま……』『欲深すぎて草』

 

「んぁ? あっちゃー、メンゴメンゴ! すっかり話すのに熱中してたわー!

 でもホントさっき言ったことは――ってか胸ベタベタじゃん!? うわっ、服にまでかかってっしー!?

 めっちゃはずいんですけど!!! ちょっ、ちょちょちょ! あわわっ、シミになってんじゃん!?」

 

『草』『草』『ウケるんですけどー(笑)』『これは草』

『ええもん見れたからワイは気にせへんで!』『関西セクハラおじさん!?』

『だれがセクハラおじさんじゃい! ワシャ女や!』『関西セクハラおばさん!?』

『オネーサンと呼べや!!!!!!!!!!!』『リスナーのキャラ濃ッ!?(; ・`д・´)』

 

「もぉーほんっと……ごめんなさい……関西姐さんも折角来てもらったのに……」

 

 パタパタ動いていた虎耳がしゅんと垂れた。

 

『あ、ちょっと素出た(笑)』『正体現したね』『良い子なんだよなぁ』

『朝昼晩、毎日一回ずつ必ずGBN初心者案内動画やザクムラさんのQ&A動画とかツブヤキで紹介してるからな』

『私アレ見て本格的にGBNやり始めたからめちゃ感謝してる~( *´艸`)』

『しかも他人に紹介する時ふつうに敬語だからなぁ』

『優等生ギャルいいよね』『いい……』『プロ同士もきたな』

『ええんやで。気にしとらんよ。飴ちゃん食べる?』

 

「はぁー!? うちめっちゃギャルだし! 今の素じゃないし!

 ……新規さん増えてるし、これからも増えるといいなーって思ってるから、あーしあの動画紹介するのただの自己満足(ワンコミ)ってだけだし、それにいきなりちょりーっす☆って紹介するの失礼くさくない? だから敬語ってだけだし!

 え、ホント!? ありがと♪ でもあーしだけじゃなくてザクムラさんや動画作ってくれた人たちにも感謝、ね?

 ギャルだってちゃんと勉強してんだかんなー! 優等生ギャルがいたってよくよくよくない? あーしは良いと思う。

 関西姐さんの飴は後で貰うわ。ありがと♪

 ごめん、ちょっと片づけるわー」

 

『語るに落ちすぎる』『ボロ出まくりで草』『忘れずにお礼言うのかわいい』

『わかり哲也』『インコもそう思います』『わかるかもシレーヌ』

『ジャガーマイナー三銃士きたな』『三銃士おおくなーい!?(;・∀・)』

『やっぱええ子なんやなぁ』『それなー』

 

 ワタワタとしながらタオルで溶けて零れたアイスキャンディーを拭きつつ、恥ずかしさからか火照った顔をパタパタを扇いでいる。

 緊急事態だったので暫くはコメント欄を見ることを忘れ、拭きとった後はシミのついた服を着替える。

 GBNはあくまでゲームでデータなのだが、こういった所で普段の生活感が出てしまう。

 没入感に拘っているため感覚を最大限再現しているので、ヒートサーベルアイスキャンディーを味わう味覚を感じることができれば、溶けたアイスのベタベタとした不快感もまた同じように感じることができるのだ。

 そういった部分も相まって案外些細な事を気にしがちなテトラは片づけに没頭してしまうのであった。

 ただ、こうしたハプニングも含めてGチューバーなので、片づけるのに夢中で無防備になったミニスカートの際どいところで盛り上がり、テーブルに広げられた菓子類について談義したりで視聴者も視聴者で楽しんでいたりする。

 暫くして片づけを終えたテトラがようやく配信画面に戻ってきた。

 

「おまたー! うわ、めっちゃコメント進んでんじゃん!

 えーっと……か、語るに落ちてないしボロも出てないしぃ~?

 あとお礼言うの当たり前だかんね! お礼ちゃんと言わないダメだよっておばあちゃん言ってたし!

 それからそれから――ちょ、スカートの中談義とかBAN! 最悪BANされるから!

 いや確かにそこまで作り込まれてるけど! そーゆーのは成人向け……ってかGBNってそっち方面あるのかな?

 ――はぁ!? いやムッツリじゃないし! モデラーさんとかでダイバーしてる人とかそっち拘ってるって聞いたことあるから気になっただけだし! はい次いくよ次!」

 

 コメント欄を遡りながら拾えるものは可能な限り拾いつつ、何時もより手短に返していく。

 

「……って片づけに手間取り過ぎて予定時間迫ってんじゃん!?」

 

『草』『草』『ワラ』『草』

『10分45秒語るのに夢中になってアイスキャンディーを溶かした挙句片づけで更に8分21秒』

『計算ニキ!?』『計算ニキ神出鬼没すぎる』『そんなに』

 

「うっそ、そんなに!? アハハハハ、いやーオタクくんたちごめんねー!

 今度からは気をつけるからさー?」

 

『ええんやで』『かまへんかまへん』『ええもん見れたからの』『超許す』

『関西ネキ増殖しとるがな』『ほんまワラゃん』『マトリックスやんな?』

 

「ん、オタクくんたちありがと。

 んじゃ時間も時間だから、もうコメント拾えないけど、最後に告知すんねー」

 

『おう』『なんや』『なんや?』『いや多いわ!?』

 

 いつの間にか増殖していた関西弁チックなコメントに笑いながら、テトラは日付の書かれた手書きのボードを取り出す。

 丸っこく可愛らしい文字だった。ついでにデフォルメされたペスカトーレが描かれていた。

 

「ほい! このボードに書かれた日付に、何と! 昇格戦リプレイ反省会をしまーす!」

 それで今回、対戦相手だった方もゲストに来るってわけ!」

 

『なんやて!?』『なんやて工藤!』『もろたで工藤!』

『お、結構間が浅いな』『相手の都合に合わせるからこんな時もある』

『ここしばらくはゲストなかったもんなー』『マギーさん以降はあんまりね』

『負けたら即研究&琢磨に没頭するから中々来れないのが多いからね仕方ないね』

『あとリベンジのための対策とかそういうのもあるんだっけ』

『テトラちゃんも二桁上位勢だから、実際かなり激戦区なんだよなぁ』

 

「ゲストはもう知ってると思うけど、フォース『ジェノアスレンジャー』のリーダー、ジェノレッドさんでーす! ひゅーひゅー!」

 

『あの自称熱血美少女系他称ポンコツ脳筋ヒーローダイバーの!?』

『オフの日は芋ジャージらしいな』『芋ジャージとは』

『脳筋は脳筋でもそれで上位にいる時点でただの脳筋ではない』

『私あの人のダイバールックすこなんだー(*´ω`)カックイイ』

 

「後日ツブヤキのほうでも改めて告知するんでー、よろしくねー!

 んじゃま、おっつかれさーん(おっさーん)!」

 

『おっさーん』『おっさーん』『おっさんやで』『おっさんでーすヾ(@⌒ー⌒@)ノ』

『関西っぽぃとょり自己紹介みたぃでゥケる(笑) おっさーん!』




【検証祭り】コラボ五日前緊急検証配信!【ナルミは寝られるのか!?】
次回、ナルミ寝る! ガンプラバトルスタンバイ!

 外伝ネタは誰が使ったっていい(ペコパ)

【テトラ】
 琥珀色の瞳で、淡い金髪を後ろに結び、服装は白のシャツと紺色のミニスカート。
 頭部にはピンと先端が尖り立った黒地の虎耳の、小麦色の肌なJKダイバー。
 一人称は「あーし」 二人称は「オタクくん」
 GPD最後の世界総合大会でギャンを使い続けてベスト16位の昇りつめた若きホープ。
 その実力はGBNでも発揮されており、個人でのワールドランク23位のマギーさんを乗り越えて現在ワールドランク16位。
 過去――上位ランクに入りたての頃、悪意ある煽動によって炎上させられ、その影響で体調を崩してしまい、引退も危ぶまれた一ヵ月の休止を経て、バトル主体の配信から現在の雑談主体の配信へとシフトしている。
 ギャルという風体とは裏腹に他人に気を遣ったり、ギャルが読まないような(偏見)小難しい本を読んだり、おばあちゃんの言いつけを守ったり、ちゃんとお礼を言ったりと所々で育ちの良さが窺える。
 ダイバーの中でも珍しくリアルでも有名なため顔も知られている。
 使用ガンプラはGエグゼス風に改造したEXAM搭載高機動型ギャン『Gエグザム』。
 GBNを始めてから多少の変更はあれど、このGエグザムだけでワールドランク16位にまで昇りつめた。
 細長いビームサーベルを指に挟む形で左右に三本、計六本を装備した戦法『ガンプラ心形流・快刀乱麻』を使用する。
 GPD時代は両腕にナックルシールドを付けたギャンを使い、徒手空拳で戦っていたりもした。
 

【サザキ・コトラ】
 テトラのリアル。
 瞳は黒で、虎耳がない以外はほとんどGBNのダイバールックと一緒の姿をしたギャル系美少女。
 ガンスタグラムで主にギャンを写真におさめた作品を投稿し、さらにサザメスのギャンパーカー紹介ではモデルを務めている。
 この一件からサザメスの提携するGBN内イベントではゲストとして呼ばれることが多い。
 私服は様々なカラーのギャンパーカーを愛着。
 学校でもギャルだが成績のほうも上位に入るくらいには優等生。
 リアルでもGBNでも、自分を偽らない――即ち、自分自身を騙さないことをモットーにしている。


【Gエグザム】
 GエグザムのGはギャン(GYAN)のG。
 Gエグゼス風の改造を施した高機動型ギャンで『ガンダムネットワークオペレーション』に登場したギャンEXAM搭載型を元に、EXAMシステムを搭載している。
 頭部には虎耳パーツ(Iフィールド発生装置)が取り付けられており、何かちょっとかわいい。
 ギャンを象徴するミサイルシールドは肩に取りつけており、肩に装備したサイドアームを可動させることで防御を行う。
 このシールドの強度が異常に高く、vsマギーさんではこれによってフルバーストを潜り抜けることに成功している。
 色合いはGエグゼスとホワイトタイガーを意識して白を基調とし、黒のラインを入れている。
 細長いビームサーベルを指に挟む形で左右に三本、計六本を装備した戦法『ガンプラ心形流・快刀乱麻』を使用する。
 現在は新たな機体案を計画中+新装備案の『Gバード』を開発中。読みは勿論、ギャンバードである。
 因みにガンプラ心形流とは「型に囚われない」「己の心のままに」といった信念を掲げた、自由自在なビルド、及びバトルを追求するスタンスのガンプラ流派の一つ。


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外伝『フォース“ナイトメアハロウィン”/カーミラ』(キャラ、ガンプラ情報追記)

実はガレキの定義よくわかってない問題。

◆ならば海賊らしく◆作中に出てくる一部の名称(お名前)は青いカンテラ様のビルドダイバーズ二次創作品「GBN総合掲示板」からお拝借しておりますわ◆頂いていく◆


 夜の帳が降り、空には赤い三日月が浮かぶ西洋の廃城。

 墓地と奇妙に歪んだ丘が目立つ不気味な此処は、ダークな雰囲気を醸し出すフォース『ナイトメアハロウィン』が拠点としているフォースネストである。

 その廃城の内部――立て付けの悪い扉がギィギィと鳴る一室。

 そこにあった分厚い棺の中から銀色の髪の少女が、ステンドグラスを背景に優雅な動作で登場する。

 ヴァンパイア――つまり吸血鬼をイメージした赤と黒の色合いのドレスは肩と背中が露出する構成となっており、加えてスカート部分は半透明な作りで脚のシルエットが薄っすらと確認できる。

 背中から生えたコウモリのような羽をパタパタと上下に羽ばたかせ、赤い口内から鋭い八重歯をチラチラと覗かせながら、先端がスペード型の尻尾をくねらせる姿は、少女の外見でありながらどこか背徳感のある艶やかさがあった。

 

「今宵も月の光に導かれ、哀れな子羊が迷い込む……。

 眷属どもよ、こんばんダークネス。カーミラよ。元気にしていたかしら?」

 

『こんばんダークネス!』『こんばんダークネス』『こんばんダークネス』

『こんばんダークネス。今宵も麗しゅうございます』

 

 挨拶で埋まるコメント欄を眺めながら「フフン」と鼻を鳴らし、人骨オブジェで組み立てられたチェアーに腰を下ろす。

 ダイバーネーム『カーミラ』。

 フォース『ナイトメアハロウィン』のメンバーの一人で、名前の通り吸血鬼――若干サキュバス要素も含んでいるが――をモチーフにしたダイバールックをしている。

 このフォースの特徴はメンバーが全員、西洋のモンスターをモチーフにしたダイバールックやガンプラを用いていることにある。

 カーミラもまた例外ではなく、デスサイズヘルカスタム(EW版)を女性体形に改造したガンプラ『デスサイズナイトメア』を愛機としている。

 コウモリの羽のように改造したアクティブクロークを象徴として、機動力を中心に消音性とステルス性に特化し、さらに与えたダメージの半分を吸収して回復するドレインスキルを備えていた。

 片側には実体刃、逆側にはビーム刃という組み合わのサイズ武器を巧みに扱い、死角から突如として現れ、一撃で相手を両断するという悪夢を体現した機体である。

 バスターシールドは射出機構をオミットされ、代わりに蛇腹状のヒートロッドに換わっている。

 そんな彼女のGチューブチャンネルでの登録者数は1万人未満と大手と比べると少ないが、吸血鬼という設定上、所謂合法ロリな外見と妖しい仕草で一部では根強い人気を有していた。

 配信自体も少なく、多くて月に3回。配信時間帯はいずれも深夜であり、ある意味で吸血鬼らしいとも言える。

 内容と言えば他のGチューバーと同じ雑談が基本的となっているのだが、彼女の場合は少し違う。

 最初の10分くらいは普通の雑談なのだが、以降からはGBNのホログラムデータを使用したガンプラ改造の計画案を展開するのだ。

 視聴者はカーミラの「こういう風に仕上げたい」「こういう感じに改造したい」という要望を聞き、互いに意見を提案や交換しながらホログラムでパーツを組み替えて計画を纏めていく。

 そうして出来上がったガンプラの『草案』は後にガレージキットとして実際に製作され、GBNで季節毎に一回は開催されるガンプラマーケットイベントで数量限定のガンプラとして頒布されるのだ。

 パッケージイラストもしっかりと再現され、運営にも許諾を得ているので安心安全である。

 また購入を逃した人のために、ガンプラマーケット以降にはクリエイトミッションでNPDとして戦えるように実装し、クリア報酬として用意している。

 さらにこれらのデータを読み取れば射出成型機で実際にパーツとして取り出せ、リアルでも組み立てることが可能なのだ。

 要するに『視聴者参加型のガンプラ開発配信』となっているわけである。

 自身の提案が採用されれば、それがそのままガンプラとして完成するのだから配信告知がツブヤキに投稿されれば瞬く間に拡散されるほどだ。

 とは言え配信時間帯が深夜であるため、登録者数に比べて視聴者数が少ないのも事実であった。

 

「さて、眷属どもよ。

 今宵の前菜となる話題であるが――先月、公式のロードマップで実装予定のダイバー、即ち己自身のダイバールックをNPD登録して同行可能にするというパートナーシステムについてよ」

 

『あれですね』『正直楽しみ』『結構凝ってるっぽいよね』

 

 パートナーシステム。

 それは先月末に運営から公表され、公認Gチューバーのナルミの配信でも告知された次回の大型アップデートVer.1.57のロードマップに盛り込まれていた新機能だ。

 アップデートは第一段、第二段、第三段と分けて行われる予定で、このパートナーシステムは第一段目のアップデートの際に実装される予定となっていた。

 これはGBNプレイヤー自身のダイバールックと使用ガンプラをNPDとして設定、登録することで実際にNPDとしてミッションに連れていけるというシステムだ。

 微量ではあるが連れていくことで5回までは互いにダイバーポイントを獲得でき、フレンドの場合は獲得できるポイントが多少ではあるが増えるという。

 NPD登録したダイバーのAIはダイバー自身の直近一週間内のバトルログから参照され、また設定によって近接優先や射撃優先などのある程度の指向性を決めることもできる。

 セリフに関しては通話ログを参考に、簡易的ではあるが最低限の受け答えが可能であるらしい。

 より細かな設定をしたい場合はミッション開始時、撃墜時、披撃墜時、ダメージ大から小までの被弾時、ミッションクリア時などの予め用意された状況テンプレート欄に好みのセリフ入力することで該当する状況になった際、入力したセリフを発するという。

 ただしあまりに過激なものはAI判断によって登録者本人に警告が飛んだり、また悪質ななりすましの場合は粛々と通報してほしいとはナルミの言である。

 加えてスキルの反映はされるが、バランスを考慮して一部のスキルはNPD仕様として調整されるという。

 

「ナルミちゃんの配信でも説明されたけど、詳しい設定に関しての解説はザクムラ氏が動画として上げるそうよ。楽しみね。眷属どもは登録する予定はあるのかしら?」

 

『wktk』『あれは神配信だった』『今セリフ考えてるわ』

『そういうお嬢は考えてるので?』

 

「無論、我は既にある程度のセリフもパートナー専用のガンプラも計画しているわ。

 汎用、射撃、近接、防御、支援とパターンを分けて仮組みも済ませてあるわ」

 

 フフン、と鼻を鳴らして「すごいでしょう?」とドヤる。

 

『流石に早い』『改造のためにデンドロビウムを三体組み上げた吸血鬼の説得力よ』

『三体とか気が狂ってる……』『人外の暇つぶし』『ひつまぶしたべたい』

『協力体制とはいえ二日という訳の分からん手早さでフルスクラッチのマンモスエキスプレス組み立ててるし今さら今さら』

『クリエイトミッションの為だけにフルスクラッチであのリーオー列車を再現するという狂気』

『バトレイヴのボーンガンダムとガン・オニキスウィッチさえ作ってみせる集団だゾ』

『湯水の如く諭吉を消費する度胸』『無尽蔵の資金いいなぁ……いいなぁ!』

 

「ククク、凡百な人間には到底出来ぬ所業よ。

 眷属どものお陰で我がソロモン(※ガンプラ倉庫)はもはや満杯だけど。

 ちなみに最近マグアナック36機セットを確保に成功したわ。

 ……リーダーにめちゃくちゃ怒られたけど」

 

『草』『草』『草』『草』『草』『草』

『そりゃ怒るわ』『いったいいくら使ったんです!?』

『先月ネオ・ジオングも買ってましたね』

『ブルジョワジィ……』『これが完璧なビルド狂い』

 

「話が逸れているわ。少し時を戻しましょう。

 我としてはパートナーシステムが一人一機しか登録できない所がネックだと感じたわね。

 実際そこまで贅沢は言えないけれど、しかしGBNのミッションの多様性を考えれば特化型よりも汎用型や支援型が重宝しそうと思った次第よ」

 

『あーそれはありそう』『汎用性と言いつつ全部乗せでAIがウロウロするのはわかる』

『登録したいならそのガンプラで一週間ミッションし続けないといけないですからね』

『良い意味で言えば普段使わないタイプを意識して練習できるっていうことくらいか』

『それでも一週間は縛られると考えると、よっぽど好き者じゃないとそこまでやり込まんだろうなぁ』

 

「そうね。恐らくは各々が得意としているタイプのまま登録する眷属が多いでしょうね。

 確か先行登録した運営側のNPDがお試しであるから、多くの眷属はそれを利用して使用感を確かめるのだと思うわ」

 

『ナルミちゃんも先行登録されてるらしいな』『マジで!?』『マジのオオマジオウよ』

『索敵特化だから支援側に分類されるんかな』『ザクムラは!? ザクムラはどうなの!?』

『ザクムラガチ勢きたな』『ザクムラは解説動画で登録するんじゃない?』

 

「配信でも言ってたわね。どういう挙動をするのか、どういった反応をするのかと言った部分を体験してほしいから先行登録してるって。

 確か運営設定でフレンドでなくとも固定でダイバーポイントも貰えるのよね?

 彼女のことだから索敵特化なのは予想できるけど、スキルはきっと調整されるでしょう。でも居ると便利なのよね索敵特化。

 ザクムラ氏はどうかしら? かの眷属のガンプラ、我は結構好きなんだけど」

 

『わかる』『わかる』『わかるマーン』『全然わかる』『ワイトもそう思います』

『ザクミラきてる』『CPニキきたな』『いいやナルムラをあきらめない!』

『テトムラもいいぞ!』『カグヤちゃん×ナルミちゃん』『イオナルもいいぞぉ』

『967たそ×カーミラお嬢はアリですか?』『うーん、ノットギルティ!』『CPニキ湧き出てきたな!?』

『クオンちゃんお散歩配信中の第10回チャンプのテンコ様遭遇からハジマタCPを推す』

『あれで描かれたファンアートのクオンちゃんめっちゃすこ。すこすこのスコティッシュフォールド』

『テンコ様のペースに恐縮しがちなクオンちゃんえがった。テンクオ最高』

『ドマイナーじゃねぇか!?』『なんだぁてめぇ?』

『いやまてカグヤちゃんとテンコ様のCP、アリでは?』『接点がないやり直し』

『同じ狐耳合法ロリ!』『GBNやってる!』『同じコマにいた並の無理矢理感で草』

『CP談義で盛り上がるコメント欄』『なおカーミラお嬢は優雅に喉潤しタイムの模様』

 

 事実、ストレージから取り出した輸血パックに入ったトマトジュースを飲みながら、カーミラはコメント欄の流れを確認していた。

 そこでふと、あるコメントが視界に入った。

 

『でもザクムラ、テトラちゃんが登録したら真っ先に使いそうだよね』

 

 ブオッフォッ!

 盛大に噴き出した。カメラに飛び散り、画面が真っ赤に染まる。

 

『あ』『あ』『たすかる』『これは間接キス=神配信』『草』『草』

『お嬢いっつも噴き出してんな』『だからあれほど配信中に飲むなと……』

『笑いのツボが独特すぎる』『癖になってんだ…配信中にジュース噴き出すの…』

『いやな癖すぎる』『俺は助かってるのでいやじゃない』『これが電脳輸血』

 

 真っ赤な画面の向こうでは「ゲホッ、ゲホッ」とむせ返っているカーミラの音声がひっきりなしに聞こえてくる。

 その間にもコメント欄は流れに流れていく。

 暫くして落ち着いてきたのか、未だ画面半分が赤く染まった向こうではドタバタと動く音に変化していった。

 それから画面が暗転し、再び映し出されると、そこには何事もなかったかのように悠然と人骨チェアーに座るカーミラの姿があった。

 今度は人骨テーブルと、その上にはホログラムビジョンが設置してある。

 

『優雅に座ってはいるがトマトジュースでむせ返った後である』

『いや草』『草』『草』『草』『様式美と化したむせる』

『トマトの匂い染みついてそう』『草』『草』

 

「――ゴホン! 眷属ども、貴方たちは何も見なかった。いいわね?」

 

『アッハイ』『アッハイ』『何も見えてねぇ』

 

「よろしい。では恒例のガンプラ開発計画の時間よ」

 

 言って、ホログラムビジョンにフレーム素体を投影する。

形状からして今回はSDタイプらしい。

 

「今回のお題はそうね――お盆ということで精霊馬をモチーフにしようと思うわ。

概要欄にも書いてあるけれど、この配信で作られたガンプラは次回のGBNガンプラマーケットで実際にガンプラとして出品するからよろしくね、眷属ども」

 

 瞬間、コメント欄がざわつく。

 

『バトレイヴ案件だこれ!?』『はい神配信』『まーたゲテモノを生み出す気だ』

『精霊馬??? え???』『割とかっこよく仕上げてくるから困る困らない』

『去年もお盆ネタでやらなかったっけ?』

『去年はお盆そのものでお盆ダムが生まれた』

『墓石+お坊さんモチーフで卒塔婆ファンネルというキワモノSDタイプだった』

『オランダサーバーではジャパニーズネーデルガンダムとか言われてて草草の草』

『とりあえずなんだ、精霊馬ってナスとキュウリに割り箸刺したやつだよな?』

『いえす』『そうそれ』『ナスはドム?』『ダナジンもいいかも』

『キュウリはザク』『いやサク』『エコロジーMSきたな』

『SDで精霊馬だし精太みたいな感じも良いんじゃない?』『その発想、イエスだね!』

 

様々な提案がコメント欄に流れる。

最初は色合いから連想される機体名を挙げて、それが段々とSDタイプの提案へ移行していく。

カーミラはコメントを抽出しながら該当するガンプラのデータやパーツをストレージから取り出し、ホログラムの周囲に並べていた。

これらを組み合わせて出来た『草案』を基にガレージキットとして仕上げるのである。

 

「なるほどね。あえて非人型のガリクソンのようにするのも悪くないわ。MAでも良いけれど、戦艦という選択肢もアリね」

 

新たに非人型のフレームホログラムを追加し、パーツを取っ替え引っ替えしながらコメントを返していく。

ホログラムビジョンは次々と追加されていき、10分も経たない内にホログラムの数は20個を優に越えていた。

視聴者の提案を反映し、パーツを取り出し組み替える素早さたるや見事なもので、流れる川の如く流麗な所作であった。

ガチなものからネタなものまで、実に様々な『草案』が組まれていく。

色々な作品のパーツを使っているので統一感はないが、形だけはハッキリと出来上がっていた。

この中で一つが改めてガレージキットとして作り出されるのだ。

視聴者にも熱が入る。

誰もが眠気を忘れてあれやこれやと言葉を交わし、一心同体となったかのように提案を出していく。

そうだ、これは此処にいる全員で作り出すガンプラなのだ。

ならばガチであろうとネタであろうと真っ向真面目にやってやろうではないか。

 

 

「眷属たちのお陰で素晴らしい草案が出来上がったわ。感謝するわ、ありがとう。完成を楽しみに待っていなさい。――おつかれさま、眷属」

 

そうして夜が明ける頃、カーミラの配信は終了した。

参加した視聴者――眷属たちの睡眠時間を奪って。




ナルミちゃん検証回? 奴さん死にましたわ。こんな風にね!(バーン)(ぐえー)

【ナイトメアハロウィン】
西洋ホラーをモチーフにしたフォース。
所属メンバーは全員西洋のモンスターをモチーフにしたダイバールック、またはガンプラを持っている。
バトルよりもビルダー気質が強く、自分たちのガンプラを使用したクリエイトミッションなども作っている。
デンドロビウムを三体作ったり、リーブラを自作したり、宇宙要塞バルジを建設したりと良い意味でやりたい放題している。
リーダーである魔王モチーフのダイバー『団長(マオー)』は割とまとも。武装列車に搭乗してミッション攻略しているが。

【カーミラ】
フォース『ナイトメアハロウィン』のメンバー。
一人称は『我』 二人称は『眷属』
フォース内では一、二を争うほどのビルド狂い。
人外っぽさ出すため口調は頑張っているが、生粋のロールプレイング勢ではないため一人称や二人称以外では素が出やすい。
デンドロビウムを三体作ったり、マグアナック36体セットを躊躇なくポチッたり、団長と協力してマンモスエキスプレスをフルスクラッチしたりと正気ではない行動ばかりを起こしている。
ガデラーザも勿論予約した。
フルスクラッチリーブラ(ビルゴⅡ込み)を完成させた際はさしものクジョウ・キョウヤも若干引いていたという逸話がある。

【デスサイズナイトメア】
カーミラの愛機。
デスサイズヘルカスタム(EW版)の改造機。
女性のような細身な体型に仕上がっており、脚部は板のようなハイヒール形状に改造されている。
顔面部にも思い切り手が加えられており、フェイスオープン機構が備わっている。
フェイスオープンの際は開いた口から牙が見えるような形状になっており、至近距離で見ると結構凝っていると同時にかなり怖い。
普段は騎士風のセンサーマスクで隠している。
また側頭部、後頭部からはガンダムナドレから流用したGN粒子供給コードを髪パーツとして垂らしており、より女性的な印象を与える。
何故かセンシティブなイラストが存在している。しかもカーミラよりも多い。

【マオー・エガオー13世】
ナイトメアハロウィンのフォースリーダー。
一人称は『余』 二人称は『配下』
本人はリーダーと書いて『団長』と読んでほしいらしい。
魔王モチーフのダイバールックで赤紫の長髪で、頭部両側から生えた角や赤いマントなどそれらしいパーツで飾っているが、そもそも幼女体型&スク水なので威厳も何もあったもんじゃない。
ビルド狂いが多いメンバーの中ではまともだと自称しているが、宇宙要塞バルジ建設を計画した時点でまともではない。
カーミラの衝動買いによって生じる金銭的問題でかなり怒っている場面やマンモスエキスプレスフルスクラッチ配信の場面から同棲疑惑がある。

【ジェノサイドXプレス】
マンモスエキスプレスの改造機。
MSではなくMAでもなく戦艦でもない。
大型輸送列車である。
クリエイトミッション用にフルスクラッチされたものをマオーがそのまま貰い受けて改造し、使用している。
原作ガンダムWではトーラス輸送任務と偽ってリーオーを搭載していたが、代わりにデンドロビウム三体分の武装を搭載している。
完全な火力お化けで面制圧力は段違いである。
火器管制用にリーオーも搭載しているが、デンドロビウムの武装で圧迫されて原作よりも数が少ない。
デザインもナイトメアハロウィン仕様になっており、リアルな骸骨が先頭車両に取り付けられている。
希少スキル『ユニバーサル・クラフトエンジン』により宇宙や空中でも戦える。

【テンコ】
第10回フォースバトルトーナメント覇者。
フォース『天地神明』のフォースリーダー。
機体名は日本神話を由来にしているものが多い。
一人称は『妾』 二人称は『そなた』『そち』『お主』など。
ダイバールックは白い人狐。合法のじゃロリ。目元に赤い化粧をしている。
白を基調とした和装を金鈴や赤装飾で飾り、神秘的な雰囲気を纏っており、近寄りがたい空気がある。
和風エリアを好んで散策しており神出鬼没。つまりレアキャラ。
その神々しい見た目から海外や一部のダイバーからは神様として認識されている。
フォースランキング10位、個人ランキング10位を維持しており『一桁への壁』として有名。
維持しているだけで本当の実力も不明という謎が多いダイバー。
その性格はかなりマイペースで天然。
おばあちゃん気質とも言えるくらい穏和。
ドラグーンを増設したプロヴィデンスガンダムの改造機『天帝天照』を愛機としており、ドラグーンの他、ifsユニットによる100を越えるエネルギー状のビット――IF(アイフィールド)ビットを全てマニュアルで操作して圧倒する。
ハイランカーの中には彼女に何度もリベンジし乗り越えた者もいるらしい。


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外伝『天地神明/日常の一幕①』

F91が限定公開されていたので初投稿ですわ。


 金魚の影がたゆたう灯籠や、鮮やかな白滝の中を優雅に登り泳ぐ鯉が龍に転じる様を描いたふすまが目立つ畳張りの和室。

 ここはフォース『天地神明』のフォースネストである『天地神社』の一室である。

 家具によって彩られたそこは豪奢ながらも、神秘的な雰囲気を両立していた。所謂、高級感につきまとう嫌味がないのである。

 元々は小さな神社であったのだが、フォースメンバーの一人であるマミが、フォースネストの改装・改築を請け負う工務店の経営者ダイバー『シモダ』と協力し、幾度となく改修されたことにより、今では神社と一体化した旅館めいた施設として機能していた。

 ガラリと気味の良い音を立てて、ふすまが開かれた。

 銀色の髪を揺らして、狐耳の少女が現れる。

 彼女こそ天地神明のサブリーダーを務める個人ランク11位――即ち、ワールドランク11位に座す上位ダイバーの一人にして、12位の『レイブン』、13位の『クオン』らとともに『二桁の壁』の最難関として数えられている存在――クーコであった。

 

「おや、テンコ様は?」

 

 室内を見回しつつ、いつもならのんべんだらりとしていするはずのテンコの姿が見当たらないことに小首を傾げた。

 

「あー、テンコちんなら、さっきマミと一緒に出かけたけど」

 

 その背後で、クーコの疑問に答える声があがった。

 振り向けば、そこには薄く日焼けた肌に赤い紋様を描き、金色と茶色の間の色合いの長髪を垂らした、クーコと同じ狐耳を生やした高長身の人狐の女性ダイバーが小さなあくびをしていた。

 

「イヅナ、それは本当ですか?」

「うぃーす、ほんとーだぜーぃ」

 

 イヅナと呼ばれた人狐のダイバーは、赤を基調とした丈の短い巫女服を現代風にアレンジしたものを揺らして、ひらひらと手を振る。

 イヅナ。

 天地神明の『目』にして、メンバーの中で最も軽薄な性格をしたダイバーだ。

 故にテンコやクーコには似合わない罠に頼ることを是とし、自身は戦場のどこそこに隠れ潜みながら相手を手玉にとる姿から『赤い外道狐』と呼ばれている。

 相手の攻撃の尽くを圧倒的な防御力で無力化してくる『緑の畜生狸』ことマミと並んで『天地神明のマルちゃん』として恐れられていた。字面は可愛らしいのだが。

 

「しかし珍しいですね。マミと一緒にとは」

「それなー。マミなんか普段は金勘定ばっかで、外に出て歩くなんて稀だしよー」

「そうですね。テンコ様とご一緒とは……羨ましい」

「あ、そっちー?」

「何か用事もあったのでしょうか。それなら私の言って下されば喜んで付いていったのに……。ああ、これがつまりは嫉妬というものですね。けしからんです。けしからん……」

 

 ぶつくさと呟くクーコに、イヅナは呆れながら肩をすくめる。

 天地神明の中でテンコと最も親しいのはクーコと、最近復帰したリュウセンくらいのものだが、クーコのそれは何と言うか、すこし過保護に近しいものがあった。別の言い方をすれば、憧れが強い、とも。

 実際に過保護というわけではないのだが、雰囲気がそう思わせるのだ。

 ただでさえ神々しいと呼ばれて近づきがたいテンコの傍にクーコを置けば、普通のダイバーなら恐れ多くて近づけない空気となってしまうのを、イヅナは知っていた。

 テンコも別にクーコが嫌いなわけではないが、そういった悪癖については些か困り顔を浮かべていたことを思いだす。だから、テンコが代わりにマミを連れ立って出かけた理由も解るつもりであった。

 ……それに、今日の目的が目的だからねー。

 

「クオンちんのさー」

 

 イヅナの何気なく発した言葉に、クーコの狐耳がぴくりと動いた。

 クーコにとって、クオンは完全にライバルの一人であった。向こうがどう思っているかまでは解らないが。

 会えばマウントを取り合うが如く戦績を自慢したり煽り合ったり、それですわ喧嘩かと思えばテンコの魅力について語り明かしたりと、仲が良いのか悪いのか解らない、曖昧な関係である。

 当人たちがどう思っているかは不明だが、少なくともイヅナを含む他のメンバーは喧嘩するほど仲が良い間柄だと思っている。

 そう思えばこそ、クオンというダイバーの存在は、どことなく閉鎖的だった天地神明に良い意味での一石を投じてくれたものだと、イヅナは考えていた。

 そして、そんなクオンの名を聞けば、クーコはほぼ必ず反応するのだ。

 

「クオンが、なんです?」

「あー、いやー、クオンちんの作ったミッション、あるじゃーん?」

「ああ、あれですか」

 

 クーコが眉根に皺を刻んで、普段よりもいっそう渋い顔を作る。

 クオンの作ったミッション。

 正しくはクリエイトミッション『終末を喚ぶ竜Ver2.0』のことである。

 6つのステージから成る連戦形式のミッションで、最終ステージにて待つ終末を喚ぶ竜――ジャバウォックver2.0を撃破することがクリア目標として設定されている。

 推奨ランクはB以上とあり、第一ステージはCランクでもクリアできたという情報から一見して簡単そうにも思えるが、実情はまったく異なる。

 ランク詐欺。そう呼ばれるほどに難易度が高いのである。

 イヅナも、クーコも、一応は挑戦し、クリアした猛者であるが、もう一度やりたいかと訊かれればイヅナは即座に首を横に振るだろう。

 それほどまでに、難易度が高いのである。因みに、イヅナの場合はフォースメンバーのキンコとギンコの二人とチームを組んで挑んでみたが、59分ギリギリのクリアであった。今にして思い返せば、あの二人のミノフスキー大爆発が決まらなければ、失敗していただろう。

 クーコはそんなミッションを何度もソロでクリアしており、クリアタイムも最近では15分を切ったらしい。それでもチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』の7分台や、噂では第8回ガンプラフォースバトルトーナメント優勝者の新規アカウントではないかと囁かれている『ムラサキ』の10分台の記録には遠いと嘆いていたのだから、世界とはよく解らないものである。

 

「あれに挑みたいってことでさー」

「テンコ様がですか?」

「んにゃ、どっちもー」

「ほぅ、マミも、とは」

「あいつのことだから、クリア報酬金目当てじゃないじゃないかなー」

「……我々の現状、資金は十分では?」

 

 クーコの疑問に、イヅナは人差し指を左右に振った。

 

「チッチッチ、わかってないなー、あんたもー」

「はぁ……?」

「よいか、クーコちんよー。お金は、たくさんあっても困らないんだぜーぃ」

「それは……そうかも知れませんが」

「真理真理ぃ~」

 

 両手でピースサインをしながら、ニヒヒヒと笑う。

 

「ところでー、クーコちんは、テンコちんに何か用でもあったん?」

「えぇ、私を経由してテンコ様宛に届いたプレゼントがありまして」

 

 言って、メニューパネルを操作し、ストレージを展開する。

 何もない中空に、ぽんっという軽いSEとともに可愛らしいワンピースが出現した。

 大方、以前行われたクオンの登録者6万人記念配信をきっかけにして贈られてきたものだろう。

 あの配信以降、クーコに着せたいものという名目で、実際にはテンコに着せたいであろうサイズのものまで贈られてくるようになっていた。

 イヅナは貰えるものなら貰っておこうの精神で容認していたが、この前、贈られてきた歴代仮面セットのチョイスは正直どうなんだろうかとも思ったりもしたのだが、思いの外テンコが気に入っていたのは意外だった。

 

「……で、それを着せたいがためにー?」

「はい」

「即答かよぉ……」

「ちなみに貴女の分もありますよ」

「はー? ……なんでぇ!?」

「一部では『ギャルきーつね』と呼ばれているそうですよ。それで、そういう層に人気だとか」

「わーぉ……まーじぃー?」

「マジです」

 

 ほらこれ、と長身のイヅナに合わせて選び抜かれた数着の衣服が次々と取り出される。

 セーラー服だったりサマースクールのシャツだったりナース服だったり思い出の夏祭りセットだったりと様々だ。

 積まれていく衣服と、積んでいくクーコを交互に見ながら、イヅナは今すぐにこの場を離れないと酷い目にあうかもしれない――否、酷い目にあうのだと直感した。

 軽薄な笑みを浮かべて、後頭部をカリカリと爪先で掻き、表面上は申し訳なさそうに、しかし裏面ではできるだけ悟られぬように平静でいることを意識しながら、わずかに後退りつつ、何時ものように軽い口調で落ち着いた風を装い、言った。

 

「ごめん、ちょっち急用思い出したから――」

「着ましょう」

「いやー残念だなー、それじゃうちはこの辺で――」

「着ましょう」

 

 踵を返して、踏み出そうしたところで、強く肩を掴まれた。

 

「ちょっ、力つよっ」

「着・ま・し・ょ・う」

「ひぇ」

 

 思わず振り向いたイヅナは、短い悲鳴を上げた。

 不愛想な面のクーコが間近に迫っていたからだ。

 そこでイヅナは気づいた。不愛想な口元が、ほんの少し上を向いて歪んでいたことに。

 その日、イベント告知以外では殆ど動かない天地神明のアカウントからGBNのSNS機能に、様々な衣装を着せられ、顔を紅葉の如く染めて目元を隠したイヅナのスクショが投稿されたことで、一部でちょっとした盛り上がりを見せたのだが、それはまた別のお話。

 

「ふむ、これはこれで……」

「いーや、よくないからぁ! クーコちん、あんたほんっと変に軟派になってきたねー!?」




息抜きでは紹介を兼ねて様々な外伝キャラの短編を描いていきますわ。

【イヅナ】
 赤い紋様を描いた薄く日焼けした肌と、金色と茶色の間の色――クリーム色の長髪の狐耳ダイバー。
 180㎝の高身長で、赤を基調とした丈の短い現代風巫女服を着用。
 軽薄な性格ではあるものの、気ままなマミと違って、言われたことはさり気なくきっちりやるタイプ。外見は狐だが、内面は猫にみせかけた犬と揶揄される。
 天地神明の目――即ち、索敵を担当している。
 自身はフィールドのどこかに身を隠して、索敵と罠で相手を翻弄することを得意としており、その様子から『赤い外道狐』と呼ばれている。
 索敵担当だが、少数精鋭の天地神明に所属しているだけあって、戦闘能力は割と高い。
 クオンのクリエイトミッション『終末を喚ぶ竜ver.20』を、チームを組んでの挑戦であったとはいえ、ギリギリでクリアできた程には高い技量を有する。
 リアルでは『センボンギ・レオナ』という名前の女性。
 漢字表記で『千本木・怜王奈』。キンコとギンコとは姉妹である。

 一人称は『あちき』 二人称は『あんた』『〇〇ちん』
 マミ、キンコとギンコだけは呼び捨て。


【外道飯綱丸】
 バウンドドックをベースにしたガンプラ。
 九尾の狐をモチーフにしており、赤と黒に彩られている。
 背面部に九尾をイメージしたガンバレルの改造武装『サイコミュポッド』を9基装備し、これは攻撃目的ではなく索敵と妨害に特化した性能を誇る。
 砲身の代わりに高性能ガンカメラと、強力な粘性と電離化によって相手の機動や武装を無効化する特殊繊維『天網』の噴出口を内蔵している。
 また外付けではあるが、ビーム発振器を備え付けられており、ビームシールドによる防御を行える。
 またビットにプラ材で造形したパーツを継ぎ足してプチMS風に改造した『式神ビット』を搭載しており、サイコミュポッド同様にサイコ・コントロール・システムによって遠隔での精密な操作を可能としている。
 それ以外は元のバウンドドッグの装備のままだが、少数精鋭の天地神明に所属しているだけあって、本体での戦闘能力も割と高い。
 ただし索敵特化であるため、本来ならば直接的な不向き。


【ムラサキ】
 薄紫のカラーリングを施されたマンダラガンダムの改造機『キラメキガンダム』を愛機とする謎のダイバー。
 クオンのクリエイトミッション『終末を喚ぶ竜ver.20』を10分台でクリアするなど確実な技量を有する。
 相手の背後を取り、アンブッシュめいたバトルスタイルから第8回ガンプラフォースバトルトーナメント優勝者『キラルラ☆パープル(略してキラル)』ではないかと噂されているが真偽不明。


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外伝(GBN総合掲示板出張版)『第一次有志連合編/彼女と後輩』(9/1情報追記)

ナルミちゃんと後輩のリアルでのお話ですわ。

▼この外伝は青いカンテラ様のガンダムビルドダイバーズの二次創作作品「GBN総合掲示版」の第一有志連合編の時間軸に位置しますわ▼

▼作中で名前が出てくる「ハスラー・O」「コガネイ」の両名は、「GBN総合掲示板」のキャラ募集にて応募された逸般People様、試遊様のキャラクターになりますわ▼

▼お嬢様はピーキーがお好きの本編とは直接関係はありませんわ。現状で共通するのはナルミ(ナルカミ・スズメ)のキャラ設定だけになりますわ▼


 カタカタカタ。

 片方の明りが消えた電灯に照らされた一室で、パソコン画面を前のめりの姿勢で睨みながらキーボードを打ち続ける人物がいた。

 小柄な女性だ。

 白髪混じりの茶色の長髪はまともに手入れがされていないのかボサボサで、それでも邪魔にならないよう後ろ側で二つ(ツインテール)にして結んでいた。

 化粧っ気のない顔は齢27を迎える間近だと言うのに未だ幼さを色濃く残していた。

 美女を表す可愛いと言うよりは、小動物を表す可愛いというニュアンスが似合う。

 花柄のブラウスと紺のプリーツスカートに、袖の余りそうな白衣を着て、眼鏡をかけていた。

 ナルカミ・スズメ。

 それが彼女の名前だ。

 リアルではGBN開発者の一人にして、サブシステムの担当者として働いており、GBNではナルミと言うダイバーとしてログインし、現在は紆余曲折あって運営公認Gチューバーとして活動している女性である。

 同僚には彼女の同じGチューバーとして活動しているザクムラと言うダイバーもいて、他にもハスラー・Oと言うダイバーや同じ開発者仲間のコガネイもいるのだが、彼らが集うのはまた別の話。

 集中してパソコンと向かい合っているナルカミに、背後から近づく影があった。

 

「せ~んぱいっ♪」

 

 声と同時に、ナルカミの首筋にキンキンに冷えた缶ジュースを押し当てる。

 

「わひゃあっ!?」

 

 不意に訪れた冷気に総毛立ち、丸まった背をピンと伸ばして固まった。

 

「アハハハハハ! 相変わらずいい反応ッスね先輩!」

「~~~ッ!!! リリジマ、君はぁ~!!!」

 

 直接的な冷気に晒された部分を抑えながら、ナルカミが振り返る。

 そこには缶ジュース二本を片手で持った女性――リリジマがいた。

 左側頭部に編んで垂らした赤茶の髪を揺らして、悪戯気のある顔で笑っていた。ついでに豊満な胸も揺れていた。当てつけか? 揉むか? 

 リリジマ・ミヤコ。

 GBN運営スタッフの一人で、ナルカミやザクムラの後輩にあたる人物だ。

 GBN開発後期、上の都合によって無理矢理な追加発注が起きた際に組み込まれた人材で、現在はGBN内ではガンイーグルの運営アバターを使って活動している。

 先輩であるナルカミたちには結構遠慮がないのだが、決して軽んじているわけでなく、むしろ尊敬さえしている節がある。

 ナルカミが作成したバグ対応表マニュアルなどをボロボロになるまで読み続けているのがその証拠の一つだろう。

 余談ではあるが、以前行った『ネオ・ジオングのサイコシェードに関する誤判定検証耐久配信』ではエナジードリンク『マ・ザイ』を飲んで継続していたものの、徹夜二日目後半戦でついに寝落ちしてしまったナルミの代役として引き継ぎ、ガンイーグルちゃんとしてちょっと話題になったことはまだ知らない。

 因みにこの時、宇宙空間で水面に浮かぶヒイロ・ユイめいてプカプカと浮かびながら寝落ちしたナルミの姿は切り抜き動画で投稿され、かなりの再生数を稼いでいた。

 

「いや~めんごめんごッス! お詫びにこれ上げるッスから」

 

 言って、『アトラのココア』と表記された缶ジュースを差し出す。

 GBNの鉄血のオルフェンズエリア実装記念で発売されて以降、今も売れ続けている人気商品だ。

 元々はGBN内で実装されたものであったが、それを逆輸入してリアルでも発売した経緯がある。

 甘味の中にあるミルクのまろやかさが愛飲者には好評であった。

 

「お詫びって、コレ私が頼んじゃやつじゃないか」

「要らないんスか?」

「要るよ。まったく……」

 

 引っ手繰るように受け取りながら「でもまぁ、ありがとう」と呟いた。

 

「えっ!? なんスか? ちょっと聞こえなかったんスけど~?」

「感謝の言葉を言っただけだよ」

「え~ほんとッスか~? 聞こえなかった感謝は感謝じゃないッスよ~?」

「君は……ありがとうって言ったんだよ」

「んふふ~、よく聞こえなかったッス~♪」

「嘘だ絶対聞こえてたろ顔ニヤけてるぞ」

「本当ッスよ~」

「……どこがどう聞こえなかったか訊いても?」

「えーっと、“君は……ありがとうって言ったんだよ”までしか」

「全部聞こえてんじゃないかぁー!?」

「アハハハハハ♪」

 

 余り袖でペチペチ叩いてくるナルミを適当にあしらいつつ、リリジマはパソコン画面に目を向ける。

 

「……例の、ブレイクデカールってやつッスか?」

「うん? ああ、今はそれで起きたと思わしきバグから色々逆算して修正パッチを作ってるところなんだ」

「逆算って、そんなことできるんスか!?」

「いや、ほぼ推測。って言っても、ややこしいんだよねこれ」

「ややこしいッスか?」

「そうなんだよ」

 

 苛立たし気に前髪をかきあげながら、ナルカミはココアを飲む。

 口の中に広がるミルクの柔らかな甘味と、砂糖で薄めたココアの苦味が程よく混ざり合い、冷えた液体として喉を潤していく。

 

「ブレイクデカールって言うのは、痕跡を残さない厄介な性質があるのは知ってるだろう?」

「今じゃこっちの常識ッスよ。バグのイタチごっこだって」

「ん、ただバグって言われてるが厳密にはそうじゃないんだ」

 

 ナルカミの言葉に、リリジマは「バグじゃないってことッスか?」と小首を傾げた。

 

「バグって言うのはシステム開発時における意図しない動作――つまりは欠陥を指すんだよ。

 それで、ブレイクデカールによって起こされたと思われる事象の数々はそれとはまた別の――つまりはエラーやプログラムの欺瞞と改ざんに近しい類のものだということなんだよ」

「えーっと……?」

「あー……要するに一昔前に流行ったプロアクやセーブエディターみたいなものだってこと」

「ああ、アレ! あのフツーに店頭に並んでたけど、気づいたら姿を消していたってやつッスね!」

「そうそれ。で、ブレイクデカールに至っては明らかに異常は異常なんだけど、それがガンプラに備えられた固有機能かどうかは断定できない。加えてデータ上は何もないから全くのシロ扱い。

 その異常が見られた際に起きたバグは、そもそもその異常が原因がどうかもまともに調べられない」

「はぁー、いつ聞いても厄介ッスね」

「うん」

 

 頷きながら、ココアで一区切り。

 そういえば今日は朝から何も食べていないことを思い出す。

 ……後でザクムラにせがんでみるか。

 

「んでんで、先輩、逆算って?」

「――GBNで確認されてきた不具合と、ブレイクデカールで起きた事象に類似するものを――GPDを始め世界各国の歴代オンラインゲームのものまでとにかく何でもかき集めて、そこから出来る限りの修正パッチを幾つか作ってみたんだ。

 逆算なんて言ったけど、ごめん、要は過去の事象から試験的にワクチンサンプルを作ってるだけだよ」

「――ん?」

「何だい?」

「それって、可能なんスか?」

「現に私がこうして作ってるんだが」

「ああ、そッスね……」

 

 流石にGBN-ガードフレームの基礎を組み上げた人の言うことはよくわからない。

 そいえばサブシステム担当とは言ってたけど最初はメインシステム担当者の一人としても働いていたことを思いだす。

 

「因みに今いくつくらい?」

「108個」

「は?」

「108個。下手な鉄砲数撃てば当たるの精神でとりあえずそれくらいは作ってみた。

 この中の一つでも効けば御の字だけど、最悪全部が全部まったく効力がない可能性もある。

 まぁ、この修正パッチ自体はさっき言ったようにあくまでサンプルみたいなもので、これを作った本来の意味はブレイクデカールの情報が手に入った時に即日対応で作成できるようにするための環境作りなんだけども――」

「あの、先輩」

「うん?」

「馬鹿なんスか?」

「ハハハ、ザクムラやコガネイにもよく言われる」

「やっぱ馬鹿なんじゃないスか!?」

 

 カラカラと笑ってココアを飲むナルカミにリリジマは呆れるしかなかった。

 そもそも現状に置いて打つ手がないブレイクデカールに対して、過去の事象を元手に効果があるのかさえ解らない修正パッチを108個も作成するなんて正気ではない。

 何となくザクムラの「あいつの真似はしないほうがいい」という言葉の意味を理解できたような気がしたリリジマであった。

 

「あれ?」

 

 つと、視線を横の机に移すと、本来置いてある書類の山が全て片付けられていた。

 代わりにガンプラと工具が散らかっていた。

 キット化されたGBN-ガードフレームの改造機『ワークフレーム』と、大型MA『ラング』だ。

 さらに多数のオッゴが整列されていた。

 リリジマもガンプラを作るには作るが、こんな一気に作ったりはしないし、ラングに関してはキット化さえしていない。第一、IGLOOに出てきた『ビグ・ラング』だってまだキット化してないのだから。

 

「先輩、これって……」

「片手間に作ってた」

「それは解るんスけど、いや解っちゃいけないんスけど、あのもしかして――」

 

 キラリッ、とナルカミの眼鏡が光った。

 

「私も参加する。有志連合に」

「はぁっ!? だ、ダメッスよ!? 先輩、カツラギさんからこっちを手伝えって言われてたじゃないッスか!」

「ぶっちゃけさー、もう私これやることやったからいいかなーって」

「いいいかなーって、じゃないッスよぉ!? 人格はアレっスけどそこら辺の腕は信用されてるんスよ!」

「そこはほら」

 

 リリジマを指さす。

 

「君がいるし、何ならコガネイだっている。とても頼りになるし、私がいなくても大丈夫だ」

「うっ、それはそうでしょうけど……えへへ……」

「それに私はこっちの方がしっくりくるようでね」

「……それは元ガンプラマイスターの意地ってやつッスか?」

「そうとも言えるかも。それに……」

「それに?」

「もしかしたら有志連合に参加している有名ダイバーやフォースとお知り合いになれるかもって」

「私利私欲丸出しじゃないッスかぁー!?」

「あ、ブレイクデカールに関するマニュアルは既に作って、そこの棚に置いてあるから」

「へ?」

「それ見てやれば、余程頭イオク様じゃない限り今回の件の対応はある程度できると思う」

「は?」

「ちょっと量は多いけど、大丈夫、君ならできる。優秀だからね」

「あの」

「ついでに焼き肉も奢ったっていい」

「……もう一声」

「丼盛り高級焼肉店鉄火丼の食べ放題コース」

「乗ったッス!」

「乗せた!」

 

 そういうことになった。

 迷うことなく即答だったのだ。

 

「んじゃ、こっちで何とか誤魔化しておくッス」

「よろしくたのむよ。後任の育成も含めて」

「カツラギさん、絶対にこんな時にする状況ではないって怒ると思うッスけどね」

「とは言ってもこっちでできることと言えば全部後手後手になるからねー」

「そーなんスよね。色々備えてはいるんスけど、それだって使わないに越したことはないッスからね」

 

 お互いに頷く。

 

「そういえばそのガンプラ、後で動作テストするんスか?」

「しておこうと思う」

「なるほど。それじゃあ、自分マニュアル借りていくッス」

 

 リリジマは棚から分厚いマニュアルを挟んだファイルを取り出し、扉へと向かう。

 

「先輩」

 

 ドアノブを握ったところで、リリジマが振り向く。

 

「絶対、勝ってきてくださいよ」

「そこはほら、有志連合次第だから」

「うっわ、最後まで締まらないッスね」

「それもよく言われる」

「あっ、あと先輩」

「うん?」

「ザクムラ先輩、ああ見えて褐色ギャル好きらしいッスよ!」

「君、その恋愛脳拗らせた物言い、本当に気持ち悪いからな!?」

「イヒヒヒ、さいならッス~」

 

 リリジマは扉の隙間から顔を覗かせ、悪戯気な笑みを見せてから扉を閉めた。

 一人残されたナルカミは「まったく」と呆れた調子で呟き。パソコンに向き直る。

 ふと、日光を浴びることを忘れて久しい自分の白い腕を見つめた。

 

「……焼いてみるかな?」

 

 一寸。

 

「健康のために」




わからない。わたくしは雰囲気でプログラムとか言っちゃってますわよ!

【リリジマ・ミヤコ】
GBN開発後期にやってきた後輩。
運営スタッフとしてガンイーグルのダイバールックを使用している。
ものぐさなナルカミと違い、プライベート用アカウントを使い分けている。
プライベートでは『ディメンションガイド系Gチューバー・ミヤジマ』として活動している。
「アイネイアース」「魚の骨」といった小型船を使い分けている珍しいダイバー。

【アトラのココア】
鉄血のオルフェンズを舞台にしたエリア『ディメンション・ポストディザスター』開放記念にGBN内で発売された飲食アイテムの一つ。
好評を博したため、リアル側にも逆輸入される形で販売された。
砂糖控えめでミルク多めの甘味。
因み開放記念の際、期間限定でNPDアトラが手渡しで販売していたため、店頭前はカオスと化していた。

【丼盛り高級焼肉店鉄火丼】
『鉄には火が通っている』で同じみの海鮮料理と焼き肉が味わえる高級焼肉店。
丼物が多く、マグロステーキと薄切り和牛ロースの鉄火丼などの丼メニューが大人気。

この時、ナルカミはまだ知らなかった。
リリジマの誤魔化しを看破したカツラギとコガネイの手によって、ナルカミ主催の飲み会に変貌していたことに。
「作戦成功の暁には、ナルカミの奢りで丼盛り焼肉店鉄火丼にて打ち上げを行う運びとなった。各自、割引券を忘れず予定を空けておくように」
割引券を促すのはカツラギさんの良心かも知れない。

【ガンプラマイスター】
ガンプラバトルにおける最高にして名誉ある称号。
またはその称号を頂いた者たちの総称。
ビルダーとしての卓越した製作技術、ファイターとしての高い操縦技術を求められるため、この称号を有する者は非常に少ない。
言わばメイジンと並ぶ誉れ高き称号の一つである。
初出は『ボリス・シャウアー』を名乗る謎の男性から発祥されたもので、当時はこの称号を頂いた者を『シャウアーを継ぐ者』と呼ぶ風潮があった。
ナルカミもかつてはその称号を頂いた人物の一人であるが、現在はそれを返上し『元ガンプマイスター』となっている。
現在ではホビープロショップの『作る楽しさ』を伝えるために、純粋に製作技術と知識を追求した人物のことを指す名称――職業として定着しており、シャウアーを継ぐ者としてのガンプラマイスターは稀有な例として存在するのみとなっている。
因みにシャウアーのほうは『特製サングラス』を記念に贈られるため、多くはこれで見分ける形になる。


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外伝(GHC活動記録出張版)『第一有志連合編/三人寄らば姦しい』

テトラちゃんのリアル側の一幕ですわ。

▼この外伝は青いカンテラ様のガンダムビルドダイバーズの二次創作作品「GBN総合掲示版」の第一有志連合編の時間軸に位置しますわ▼

▼またこのお話の内容は笑う男様のガンダムビルドダイバーズの二次創作作品「GHC活動記録」の「好きを偽らないジブン(前編)」直前にあたるお話になりますわ▼


 夕方。某駅。

 日も傾きかけ始めるこの時間帯は華の金曜日とばかりに仕事を早めに切り上げたサラリーマンや、学校帰りの学生たちで賑わう。

 着崩した白いスクールシャツを着て、染めた金髪と紺色のミニスカートを揺らしながら、いかにもギャルといった風情の小麦色の肌の女子高生が二人の友人と共に帰路についていた。

 サザキ・コトラ。それが女子高生の名前だ。

 GPD最後の世界総合大会では、『北宋の貴公子』と呼ばれた長男サザキ・ジュンヤと共に――部門別ではあるが――兄妹揃って出場。

 両者共にギャンを使い続け、長男はトップ10入りを果たし、コトラはベスト16位に昇りつめるという快挙を成し遂げた過去を持つ若きホープの一人でもあった。

 移行したGBNではフォース『北宋の壺』のリーダー『テトラ』としてプレイしており、こちらでは現在、世界総合個人ランク16位にまで登りつめている上位ランカーの一人でもある。

 またG-TUBE上で流行りのG-TUBERとしても活動している。

 

「くぁ~」

 

 コトラは人混みの波に呑まれないように、できるだけ最後尾の方を歩きながら大きな欠伸を一つかいた。

 目じりに浮かんだ涙をぬぐいなら、肩からずり落ちそうなバッグをかけなおす。

 

「寝不足か?」

 

 つと、少し前を歩いていた友人が声をかけてきた。

 切り揃えた短い黒髪と細く鋭い目つきが特徴的な少女だ。

 ソバエ・マヒル。

 剣道部所属の同級生。好きなガンダム作品は『武者〇伝シリーズ』と言うちょっと渋めなマブダチ。

 コトラとは幼少期からの知り合いにしてGPD全盛期からの付き合いがあり、GBNでも『マヒル』と言う名前でアカウントを持ち、コトラのフォース『北宋の壺』のサブリーダーを任されていた。

 家庭がそれなりに厳しいため学業を優先しがちになっているが、彼女もまた個人ランク490位に位置する強者の一人であった。

 リアルでは髪を伸ばせないからと、ダイバールックは長い黒髪をポニーテールにしている可愛らしい一面もあったりする。

 

「うん、ちょっと昇格戦でね~」

「昇格戦……GBNか?」

「そー」

 

 コトラの気の抜けた返事にマヒルは嘆息すると、腰に手を当てて振り返った。

 

「……夢中になるのは良いが、夜更かしは感心せんな。

 モデルなのだから美貌に気を遣えと言ったばかりだろうに」

 

 女子高生には似つかわしい妙に古臭さの混じった口調でマヒルが言う。

 実際、コトラはサザメスがかつて発表した『ギャンパーカー(完全受注生産)』のイメージガールを務めたことがあり、その一件からギャルモデルとして活動をしている。

 また、そこから結ばれた縁で、サザメスが提携するGBN内のイベントではゲストとして呼ばれることもあった。

 

「とは言っても最近は暇だからなぁ~。ジュンヤ(にぃ)がこっちに来る仕事の依頼とか全部厳選するせいで全然入ってこないっていうかさ、そこら辺ちょっと過保護すぎるっていうか……」

「お前の兄、傍目からでも若干不安になるくらいには心配性だからなぁ」

「あーしも流石に引いてる――ってあんまりそゆこと言っちゃ駄目だよね。マーちゃんごめん今のなし」

「いや、私は別に気にしていないが……そもそも身内の評価ならばもう少し正直になってもいいんじゃないのか?」

「おばあちゃんが言ってたことわざでさ、親しき仲にも礼儀ありって言うっしょ? だから例え家族でもあんまし悪く言うのはどうかなーって思っちゃって」

「……相変わらず良い子だな」

「夜更かししてる時点で良い子じゃないって。そーいえばケーちゃん、さっきから何してるん?」

 

 気恥ずかし気に小さく笑ってパタパタと手を振りながら、マヒルの横でスマホを弄っていたもう一人の友人に声をかける。

 猫背気味で三人の中では一番背が低いその友人は、青みがかった黒色の前髪の隙間から魚眼めいた丸い目付きと三白眼を覗かせてコトラを見上げた。

 

「あ、あの……ここ、この間……み、みんなで、行った……タピオカの、おお、お店……こここ、混雑してないか、見てた、よ?」

 

 どもりながらそう答える。

 サメヤマ・ケイコ。

 元引き籠りで文芸部の同級生。好きなガンダム作品は『PS2版ガンダム戦記』と言うレトロ趣味なマブダチ。

 喋る時には常に頭の中で言葉を整理して喋るため、たどたどしいが、根はとても良い子だと二人は知っている。

 引き籠っていた間は何かに取り憑かれたかのようにひたすらガンプラを作り続けており、ビルダーとして見るならば三人の中で技量は一番高い。

 因みに勉学でも試験結果は常に五位内で一番頭が良い。次点はコトラで、最後は意外にもマヒルである。

 ケイコもまたGBNにアカウントを持ち、憧れのケイワンを意識した『K5』と言うダイバーネームでマヒルと一緒にコトラの立ち上げたフォース『北宋の壺』に入っていた。

 ダイバールックは鼠耳のメガネをかけた女子高生姿をしている。当初はキャラクリにあまり拘りがなかったため、デフォルトアバターを少し弄って適当なアクセサリーを付けただけであるのだが。

 リアルでは喋り慣れていないが、GBN内ではネットスラングや顔文字を多用する少々ギャップの激しい一面があったりする。

 そんなケイコの言葉に、コトラは「マジ~!?」と瞳を輝かせた。

 

「あそこのタッピーのミルクティーさ、マヂヤバイってくらい美味なんだよねー!」

「確かに。しかし良いのか? あれって結構カロリーが高いものなのだろう?」

「豆乳版もあるからへーきへーき♪」

「……だと良いのだがな。コトラは昔から楽観視の強い部分があるから、心配なのだが」

「そ、そそ、それなら……わたし、が、つつ、作った……かかか、カロリー管理……アプリ、あるか、ら?」

「そーそー! ケーちゃんのお陰で先月と比べてまだ2キロしか増えてないしー!」

 

 コトラはケイコの横に並び、肩に手を回す。さり気なく腰を屈めて身長差を解消するあたり気が利いている。

 「んひひひっ」と俯いて不気味に笑うケイコだが、これは解りやすく照れているということをマヒルは理解している。

 元々ケイコは自身の魚眼めいた丸い目付きと三白眼、そしてギザ歯がコンプレックスで人前に出ることを拒んでいた時期があることを知っている。それが引き籠りになった要因の一つであることも。

 今でこそ、こうして外に出て一緒に笑っているが、一度染みついた癖と言うものは中々抜けないもので、今度はそれがもどかしく感じていることを告白されたことがある。

 こればかりはコトラもマヒルも上手い解決法が見いだせなかったので、とにかく笑える時に笑ってみようということになったのだが、以前と比べれば俯き加減が浅いので改善はしているようだ。

 そんなことを考えながらも、マヒルはやれやれと小さくかぶりを振った。

 

「2キロも増えてるじゃあないか」

「うぐっ……!」

「えぅ……!」

「まさか十分に痩せられる範囲内だと思ってないだろうな?」

「いやー、アハハハ……」

 

 バツが悪そうにケイコと一緒に視線を泳がせる。

 

「図星か。まぁ、後で泣きを見るのは私ではないから良いのだが」

「ちょちょちょ、マーちゃん薄情者ぉ~!」

「誰が薄情者か。――仕方がない。増えた分のトレーニングメニューは私が考えておいてやる」

「マヂ!? マーちゃんの厚情者ぉ~!」

「こ、こここ、厚情者ぉ~……?」

「ふん、褒めても何も出ないからな?」

「わーかってるって♪ それじゃ、いっちょタッピー飲みにいこぉ~♪」

「ぉ、おー!」

 

 二人で手を掲げる姿に微笑みを浮かべつつ、しかし目を細め、声のトーンを落として言葉を投げる。

 

「ところで、コトラ」

「うん?」

「お前、他にも悩んでいることがあるんだろう?」

「……」

「あるんだな?」

「えっと、まぁ、あるっちゃあるかな~って」

「やはりそうだろうとは思ったよ」

「バレてた?」

「何年、幼馴染をやっていると思ってる」

「あいやー、流石だなぁ」

「ついでに言うとケイコも気づいてるぞ」

「……マヂ?」

「う、うん。まま、まじ、だよ……?」

「あーしそんなに顔に出てた?」

「出てたと言うより、GBNの話題を振ってあんな気の抜けた返事をしてきた時点でな」

「うん。い、いつもは……あそこから……わわ、話題にしてくるから、ね?」

「あー……あぁー……そっかぁー」

 

 両手で顔を覆い隠す。

 コトラの悩みとは、GBN上では最近マスダイバーと言うチートツールを使用する輩が増えていて、被害者が増えているものに起因する。

 彼女の周囲では、配信に来てくれるリスナー含めて被害に遭ったと言う報告は受けていない。

 学業も両立しなければならない立場上、踏み入って調べる余裕もなく、チャンプこと『クジョウ・キョウヤ』や、もふもふこと『ロンメル大佐』が有志連合を募っていると言う噂を聞いて「何とかなるっしょ」と思っていたのが本当のところだ。

 しかし、ここ暫く配信中に欠かさず来てくれていたリスナーの一人『ユニ』がまったく顔を出さなくなったことに気づき、もしかしたらという不安が心の奥底に生まれた。

 そこから自分は昇格戦をしていて良いのか、他にもっとやるべきことがあるんじゃないのか、もしも自分がマスダイバーと遭遇したらどうするべきかとか、マスダイバーもガンダムが好きならば解り合えるはずだとか、何かにつけては考えるようになってしまい、愛機『Gエグザム』の調整も、新しい装備の制作も手に付かないでいた。

 それでも友人たちには心配させまいと楽観的に振舞っていたつもりであったが、コトラは自分が思う以上に隠し事が下手だったようだ。

 顔を覆い隠していた両手を下げ、長く息を吐いてから、二人を真っ直ぐに見る。

 マヒルもケイコも揺るぎなくコトラを見つめていた。

 

「こう言うのも何だけどさ、訊かないの?」

「此処では訊かない」

 

 それに、と続ける。

 

「今どきの女子高生の華と言えば、タピオカ片手に談笑だろ?」

「わ、わたし……あ、あの抹茶すき……だ、よ?」

「うぅぅ、マーちゃん、ケーちゃん……サンキューだし!」

 

 ガッシリと二人の手を握り、頭を下げる。

 

「よーし、それじゃあ先ずは美味しいものお腹に収めてホッとするっしょ!」

「そうするとしよう。――ああ、そういえばコトラ」

「おうん?」

「お前、配信中は兄のことを『兄貴』と呼んでいるのに、私達の前では『(にぃ)』なのだな」

「んなぁ!?」

「か、かわいい、よね?」

「二人とも忘れて! 忘れて忘れて忘れてぇー!」

「かわいいぞー」

「かわ、かわ……?」

「にゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」

 

 顔を真っ赤にしてあわあわと慌てるコトラをひとしきり弄り倒してから、三人は改札口を抜けて、お気に入りのとなったタピオカ店に足を運ぶのであった。

 この後、自身に到来する出来事など、この時のコトラは知る由もなく。




【サザキ・ジュンヤ】
 コトラの兄でサザキ家の長男。
 家族構成はおばあちゃんサザキ・ハク、長女サザキ・サナエ、次女サザキ・コトラ、三女サザキ・マドカからなる逆ザビ家と言う家族構成。
 『北宋の貴公子』と呼ばれる美貌(自称)と技量(自称)を持った人物で、GPD最後の世界総合大会では部門別で成人の部でシンプルなギャンを使ってトップ10入りを果たしている。
 GBNには移行せず、骨董好きが高じて鑑定家として生計を立てている。
 過保護――と言うわけではないが、妹たちに関して発揮される心配性はかなりのもの。
 コトラがモデルとして活動してだしてからはP面で舞い込む仕事依頼を厳選しているため、コトラからはありがた迷惑と思われている。
 因みに長女は金型メーカー『株式会社サザキG合金』を立ち上げており『輝羅鋼』を現代に完全復活させようと精力的な活動をしている。
 三女はこの時期はまだGBNをプレイしておらず、リライズの頃に本格的にGBNを始めている。

【北宋の壺】
 テトラをリーダーする少数フォース。フォースランクは圏外。
 お洒落な部屋を持ちたいという理由でテトラが立てた。
 フォースネストはファーストガンダムでも出てきた鉱山基地。
 そこにアッザムハウスを建てて活動している。
 メンバー毎に個室が用意されている。
 テトラは個人ランクこそ16位と高いが、フォースランクは意外にも圏外。
 曰く、「フォースはガチ2:エンジョイ8の割合」とのこと。
 メンバーは少なく、いずれもガンダム好きの同級生。
 ただし学業を優先しているため、ログイン頻度は低い。
 ある意味ではレアキャラ。

メンバー
【マヒル(ソバエ・マヒル)】
 サブリーダーを務める凛然とした黒髪ポニテJKという王道スタイル。剣道部。
 生真面目だがカップリング談義になると熱く語りだすオタク気質な一面がある。
 テトラとは幼馴染でGPDからの付き合い。個人ランクは490位と結構高い。
 両親がそれなりに厳しいらしく、学業を優先しているためGBNのログイン頻度は低め。
 使用ガンプラはギャン・エーオースのサムライ風改造機『ギャンブシドー』。
 抜刀術――所謂『居合斬り』を戦術に組み込んでいる。

【K5(サメヤマ・ケイコ)】
 第二次有志連合戦までは短めの青い髪に鼠耳の可愛らしいメガネJK。文芸部の元引き籠り。
 第二次有志連合戦以降はサメのパーカーを着たダイバールックに大きく変化している。
 リアルでは魚眼めいた目付きと三白眼、ギザ歯という身体的特徴がコンプレックスで、そこに更にガンプラに関わる問題(パーツハンター事件)が合わさり引き籠りになっていた時期がある。
 リアルだと脳内で言葉を整理しながら喋るためたどたどしいが、GBN内ではネットスラングを使って割と流暢に喋る。
 三人の中では最も勉学ができる。
 個人ランクは圏外。
 名前の由来は憧れのビルダー『ケイワン』からきている。
 使用ガンプラはギャン・エーオースの索敵兼護衛仕様の改造機『ギャンSG(スコープガード)』。

【パーツハンター事件】
 GPD全盛期に生じた問題で、手っ取り早く強くなるために他者の完成したガンプラを破壊し、ガンプラパーツを強奪するという集団が出てきた小規模ながらも傷痕の深い事件。
 ガンプラバトルで互いのガンプラを賭けてバトルする賭博形式のものは非公式非推奨ながら存在していたものの、こちらはそもそもバトルという前提すらなく、バトルを装った上で反則行為で無理矢理勝利したことにしたり、最悪ビルダーを直接襲撃して奪うという悪辣極まりないものであった。
 当時はガンプラに似せた贋作であるフェイクガンプラ――通称『ガンプーラ』も問題になっていたため、この問題が解決するまでに相応の被害者が出てしまった忌まわしき事件。
 これによりGPDから離れる者も少なくはなく、GPD衰退の一因ともなっている。

 ケイコもこの被害に遭ったビルダーの一人で、その際に自身のコンプレックスを詰られたことで彼女を引き籠りにする原因ともなった。
 コトラとマヒルの尽力で復帰するが、今でもマヒルに真っ向から言われた「可愛い顔じゃないか」という言葉を心に刻んでいる。


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外伝(ビルドライジング出張版)『桜大橋にて雷光は悪魔を照らす/無頼ギャンvsバルバトス・武』

年が明けたので初投稿ですわ。

▼ガリアムス様の二次創作『ガンダム:ビルドライジング』よりアズキさんをお借りさせていただきましたわ。お礼を申し上げます。▼


 ビュゥ、と電脳空間に春の風が吹く。

 厳密にはGBNには季節というものはない。あるのは、そう設定されて移ろいゆく景観だけだ。

 そこに季節という風情を感じるのは、人間としての神経を繋げたままのダイバーならではの知覚によるものであろう。

 

「気分はまるで五条大橋だな」

 

 呟くのは、一人の女性ダイバー。

 ダイバーネーム『マヒル』。

 フォース『北宋の壺』のサブリーダーにして、今や個人ランク90位に座する二桁の魔物の一人。

 そして、フォースリーダーであり、個人ランク4位――一桁の現人神の一柱とされる『テトラ』とはGPDの頃から何度もぶつかり合った幼馴染的存在でもある。

 マヒルは黒髪を後ろ手に結んだポニーテールを揺らしながら、腰には大小を差し、道着袴めいた白と紺の地味目ながらシンプルな意匠の和装をしていた。 

 そんな彼女は現在、日本サーバーに在る、とあるディメンションの一角に訪れていた。

 いかにも和風といった趣の空間で、夕焼けに照らされた桜の木が咲き誇るそこは、通る者の目を楽しませることだろう。

 しかし、今のマヒルにその景観を楽しむという心持ちはない。

 

「MS斬りの悪魔、か」

 

 自身の目的を再確認するように呟く。

 今回のマヒルの目的な、最近巷で噂の『MS斬りの悪魔』に挑戦することにあった。

 曰く、『逢魔が時に現れる悪魔のような容貌の辻斬り』。

 曰く、『太刀一本のみという潔い武装で斬れないものなどあんまりない』。

 曰く、『面白半分で挑んだ知り合いのダイバーが一瞬で武器諸共バラバラにされた』

 そういった噂が一部のダイバーたちの間でまことしやかに囁かれていたのだ。

 マヒルも噂を耳にした一人だが、何も面白半分、興味本位で挑戦しに来たわけではない。

 

「……追いつけるだろうか。自分は」

 

 赤く彩られた大橋を目の前にして、ふとそんなことを呟く。

 思い浮かべるのは一桁へと到達した親友の姿。

 手を伸ばせども、足を前へ動かせども、届くことのない、その背中。

 足掻けども、登れども、二桁に入って解る壁の厚さ。

 いつか肩を並べていたはずの親友の隣に並べなくなったという苦悩。

 何度バトルを重ねても、そんな迷いや不安は晴れることはなかった。

 それからもずっと、暗闇の中に一筋の光を求めるようにバトルを繰り返してきたのだ。

 しかし、それでも胸の内で膨れ上がった居心地の悪い気持ちはなくなりはしなかった。

 「だとしても」と何処かに期待を隠しては、マヒルはこの真宵(迷い)を切り裂くようなバトルを、熱を、刹那を求めていた。

 

「いや、よそう。考えすぎてはただの毒だ」

 

 そんな止め処ない思考を遮るように、マヒルはかぶりを振って大橋に足を踏み入れた。

 既に夕陽は地平線の向こう側にその顔を半分も隠しており、星の輝きが目立ち始めた空に夜の帳が降りてきていた。

 ボッ、ボッ、ボッ。

 大橋の両側に備えられた灯篭の群に火が灯る。

 

「大橋と言うだけはある」

 

 改めて見ると、橋はあまりにも大きかった。

 緩やかに湾曲した和風情緒漂う赤塗りの橋は、ダイバーが通るにはあまりにも太く、厚く、そして広かった。モビルスーツの一機や二機程度なら、余裕で並べそうなほどに。

 

「ん?」

 

 中央に差し掛かった頃、マヒルはそこに佇む人影を認めた。

 近づいていけば、それが和装の女性ダイバーであることが解った。

 長い黒髪の、腰に刀を佩いて、艶やかな袴と着物を纏った、大和撫子のようなダイバーだった。

 近づくにつれ、向こうもマヒルの存在に気付いたようで、真っ直ぐに伸びた背を動かして立ちはだかるように前に歩み出る。

 

「迷い人――ではないようだな」

 

 鈴の音のような、しゃんとした美しい声音だった。

 

「ああ。ここに出ると言う、MS斬りの悪魔に用があって来た」

「ほぅ?」

 

 マヒルの言葉を聞いた途端、女性ダイバーの纏う雰囲気ががらりと変貌した。

 それを察して、マヒルは周囲の空気が粘り気のある緊張感へと変わったのを感じた。

 

「どうやら、話が早いようだ」

「そのようだな」

 

 ニュアンスこそ違えど、どこか似た口調の二人。

 

「やるか」

「やろう」

 

 そういうことになった。

 コントロールパネルを展開し、互いにガンプラを呼びだす。

 電子の空間からエフェクトとともに現れたるは二体の絡繰仕掛の人型。

 女性ダイバーの背後――マヒルの眼前に降り立ったのは、朱に染めたガンダムバルバトス。

 その第二形態をベースに改造したであろう、武士のようなガンプラであった。

 見た限りで確認できる武装は太刀のみ。噂通りならば、それ以外はないはずだ。

 対してマヒルのガンプラは――いぶし銀と黒に塗り分けたギャン・クリーガーを和風に改造したガンプラ。

 ミサイルシールドを薄く削り、形を整えて三度笠に改修し、頭部に被らせたのが特徴的な、武者というよりも流れの剣客のという言葉がよく馴染むシルエットをしていた。

 

『自分の名はマヒル。愛機の名は無頼(ぶらい)ギャン。……始める前に、其方の名を伺っても宜しいか?』

『構わんよ。私はアズキ。そして、バルバトス・(もののふ)

『ありがとう。それでは、アズキ殿』

『ああ』

 

 無頼ギャンが左腰に取り付けた鞘入りの刀の柄に左手を添える。

 バルバトス・武も太刀を構えた。

 

『いざ――』

『尋常に――』

 

 一拍。

 

『『勝負!』』

 

 声が、重なる。

 先に動いたのは――無頼ギャン。

 右腕を自然体に動かし、三度笠を取り外すや否や、バルバトス・武に向かって投げた。

 回転しながら迫る三度笠を、アズキはバルバトス・武の躯体を僅かに捻ることで、最小の動作で躱す。

 

『むッ』

 

 三度笠に追従して、無頼ギャンが懐に踏み込んでいた。

 右腕は既に左腰に取り付けられた刀の柄を握っている。

 ……いつの間に!?

 悠長に考えている暇はない。

 バルバトス・武は下段に構えた太刀を斬り上げる。

 ガキィン!

 金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。

 バルバトス・武の一撃を、無頼ギャンは刀を抜くことなく鞘入りのまま受け止めていた。

 

『鞘で受けるかッ!』

『斬るは須臾の内ッ!』

 

 ぞわり、とアズキの背筋を悪寒が奔る。

 即座に足先で大橋を突くように蹴って、無頼ギャンから距離を取った。

 瞬間、バルバトス・武の眼前を雷のような光が迸った!

 それは鞘から引き抜かれた雷光。鈍い黄色がかった青白い刀身をもつ刀。

 ビームサーベルと言うには容易いが、アズキの直感がそれだけではないと脳内でアラートを告げる。

 

『今の斬り上げ、良い一閃だ。構えと重心の動きから見て、新月流か?』

『……ただのビームサーベルではないようだな』

 

 冷や汗が額を伝う。

 姿勢を整え、ふたたび太刀を構える。

 ……あとほんの一寸、遅れていれば危なかった。

 パネルに表示された機体へのダメージを確認する。

 バルバトス・武の胸部装甲が――裂けていた。

 薄皮一枚ほどの微々たる傷であるが、ビーム属性を軽減するナノラミネート装甲ならば、ビームサーベルの一撃ではこうはならない。

 それだけで、無頼ギャンの持つビームの刀がただのビームサーベルでないのだと判断するに十分であった。

 その間にも無頼ギャンは雷光を鞘に収め、左腰に添えて構える。

 

『抜刀……居合術か』

『然様。是こそは真久部流剣術、須臾の型』

『真久部流? いやしかしそれは……まさか失伝したはずの流派に、此処で出会おうとは』

『しからば、とくと味わうと良い』

『見せられればなッ!』

 

 次に動いたのは、バルバトス・武であった。

 先ほどとは違い太刀のリーチを活かした踏み込みからの刺突!

 マヒルが――無頼ギャンが居合による剣戟を得意とするのならば、それに必要な型を封じればいい。

 鞘で受けた無頼ギャンを認識し、踏み込みから流れるような動作で右腕を狙うように太刀を振るう。

 斬る。

 突く。

 払う。

 三つの攻勢を組み替えながら、人のような柔らかなマニューバで攻め立てる。

 それは武術のにおける『型』を繋げての連続する攻勢。

 水のように流れ、火のように攻める舞うが如き連撃。

 それでも致命打には至らない。

 一撃、一閃が全て鞘によって防がせ、あるいは受け流されていく。

 先ほどの居合を警戒すればこそ、隙のない連続した攻撃に偏っていることを見切られているのだと気づくのに、時間はさほど要さなかった。

 

『はぁぁぁッ!』

 

 裂帛の気合とともに、上段から放たれた斬撃が無頼ギャンをズザァっと後ずらせた。

 あれだけの斬撃を受けてなお、鞘は欠けるどころか、そこに傷の一つも残していなかった。

 否、あらゆる一撃は絶妙な角度を以て防がれていたと思えば、それも当然のことであるのだろう。

 アズキの身体がぶるぶると震えた。恐怖による生理現象ではない。

 それは、まだ己が知らぬ未知たる強敵を目の前にして発生する武者震いであった。

 

『抜く隙がない、か』

『あれだけを受けて、鞘にヒビの一つも入れられぬか』

『何と鮮麗なる太刀筋か!』

『何と神妙たる見切りか!』

『故に――』

『なればこそ――』

 

 構えが、変わった。

 無頼ギャンは深く腰を落とし、辞儀をするように頭を下げた。

 バルバトス・武は太刀を大上段に構え、正面からでは認識できないほど切っ先を垂直に保つ。

 互いに次の一手で勝負を決める気であった。

 構えてから、時が停止したかのように両者の動きがピタリと止まる。

 傍から見れば不可思議な光景であるが、二人にとっては不可思議なことはない。

 機を窺っているのだ。

 先に動くか。

 後に動くか。

 それだけの――そんな些細な差でさえ、勝敗を分けるのだと、知っているからだ。

 ビュゥ、と二人の間を春の風が吹き抜けた。

 風が桜の花びらを散らせ、その軌道に乗せて空へ舞い上げる。

 はらりと落ちた一片の花びらが、大橋の下を流れる川に落ちて流されていく。

 川から突き出た岩肌にぶつかり、飛沫とともにふたたび空中に打ち上げられ、波のようにせり上がった水に呑まれた。

 ザバァ!

 よほど耳を澄まさなければ聞こえないような、桜の花びらを呑み込んだ川の音が――合図となった。

 

『きえぁぁぁぁぁぁッ!!!』

 

 奇声にも思える鬼気迫る叫び声をあげ、無頼ギャンが動と化して駆けた。

 全身に仕込まれた前へと加速するためのスラスターを全開放し、大橋を削って真っ直ぐに往く!

 その姿を認識しても、バルバトス・武はじっと動かずに、構えたままでいた。

 迫りくる無頼ギャンを前に心を落ち着かせ、静と化していたのだ。

 ただ、待つ。

 距離が縮まる。

 動の圧がバルバトス・武を打ち、静の圧が無頼ギャンを打つ。

 身を覆う空気が粘滑に、時の間と間の須臾が永遠にも感じられた。

 それでも――

 

『い・ま・だぁッ!』

 

 その瞬間は訪れる。

 迫る無頼ギャンに合わせて、大上段に構えた太刀を振り下ろす!

 瞬間と瞬間を捉えた、まさしく絶好のタイミングだった。

 無頼ギャンは鞘から雷光を引き抜くよりも早く、バルバトス・武の一閃がその身を真っ直ぐに両断――するはずであった。

 

『ッ!?』

 

 刃の切っ先が届くあと僅か一寸の距離で、無頼ギャンが右脚を突き立てるように踏み込んだのだ!

 急ブレーキ、というやつである。

 それまでの加速による負荷が右脚に一挙に押し寄せ、関節が嫌な音を唸らせ、スパークを上げる。

 バルバトス・武の渾身の斬撃は、無頼ギャンの顔面を通り過ぎ、肘装甲を掠めて、後はただ空を斬ったのみであった。

 

『な・ん・だ・とッ!?』

 

 一瞬、理解が状況に追いつけなかった。

 稲妻が迸る。

 鞘から放たれた雷光がバルバトス・武の胴体に届いた。

 ナノラミネートが瞬時に蒸発し、装甲を紙のように断ち切る。

 アズキのコックピット内では致命傷を訴えるアラートが鳴り響き、ダメージ表記が赤を示す。

 内部にまで入り込んだ雷光の灼熱がフレームを融解させ、バルバトス・武の命を奪っていく。

 勝敗は決した。

 

『――否』

 

 違う。まだ。まだだ、とアズキの身体が、腕が、指が、無意識に動き、入力された意思に応じるようにバルバトス・武のツインアイがひと際まばゆく輝いた。

 

『な・ぬッ!?』

 

 薄皮一枚で繋がった状態のバルバトス・武の右腕が、動いた。

 その数瞬はマヒルにとって予想だにしなかったものであった。

 返した刃が振り上げられ、勝ちを確信して隙を晒していた無頼ギャンの胸部に深々と突き刺さる!

 それはアズキ自身にとっても意外な一撃であった。

 完全な意識外の挙措。無意識のうちに行われた反撃。

 即ち――動作を反射としたのだ(・・・・・・・・・・)

 そして、その一撃を以て、バルバトス・武のツインアイが光を失い、ついに力尽きた。

 同時に無頼ギャンもまたモノアイを数度、点滅させて、ぐらりと膝を突いて動かなくなった。

 僅かに前に傾いだ両機の躯体が、まるで支え合うようにしてその機能を完全に停止させるのと同時、バトルの終わりが告げられる。

 それからマヒルと、アズキの目の前に、引き分けを報せるメッセージが表示されたのだった。

 

 ⁎

 

「アズキ殿。見事な一撃、感服である」

「マヒルこそ、あの瞬間に踏み込んで機体を止めてみせるなど思わなんだ」

「たたらを踏んでいれば、頭部から真っ二つであったがな。無頼ギャンには無理をさせた」

「私もだ。意識しえなかったとはいえ、バルバトス・武には無茶をさせてしまった」

 

 バトルが終わり、傷ついた愛機から降りた二人は互いに健闘を称えていた。

 戦闘の跡が残る大橋の中央で腰を降ろし、星々の輝く夜空を頭上に朱の盃を交わしながら。

 乾いた喉を潤すように酒を流し込む。

 二人が飲み交わしているのは度数が低い『香雅里』と銘打たれた日本酒で、芳醇な香りと、舌の上で広がり、胃に沁みる濃厚な甘さが特徴的な日本酒である。

 リアルならばアルコールやら糖質やら何やらを気にする必要があるのだが、GBNではそういったものに気を遣うことなく味を楽しむことができるため、感覚的フィードバックが鮮明なった昨今、自然とこういった嗜好品の品質が良くなっていたのだった。

 

「……さて、自分はそろそろ去るとしよう」

「む、もう行くのか? もう少し話していたいが……」

 

 飲み干して空となった盃を仕舞い、マヒルが立ち上がる。

 座したままのアズキは彼女を見上げる形で、唇を尖らせた。

 失伝されて久しいと聞いていた真久部流の使い手と知り合えたのだ。もう暫く話をしたいというのが、剣士としての偽りのない気持ちであった。

 

「何、互いにGBNにいると知れたのだ。また会うこともあろう」

「そういうものか。……いや、確かにそうだな」

 

 フッと短い笑いを零し、アズキも立ち上がる。

 盃を仕舞ってからマヒルを見ると、コントロールパネルを開いていた。

 指先でツイっとパネルの表面をなぞると、アズキに向かって手紙のようなアイコンが飛んできた。

 

「自分のフレンドだ。これも何かの縁かと思ってな。不都合がなければ、登録しておいてほしい」

「む、これはありがたい」

「リアルでの都合上、普段はあまりこちらに長居できない身ではあるがな」

「構わんさ。学べるものもあったことだし、何より真久部流については訊きたいことが沢山ある」

「自分もだ。次こそは新月流の奥義の全て、この身で体験してみたいものだ」

「ハハハ、そうか!」

「ああ。それではな、アズキ殿」

「また会おう、マヒル」

 

 いずれまた相まみえよう。

 最後に握手を交わし、マヒルはログアウトの表示を押す。

 去り際に見せた彼女の表情は、夜の中にあってどこか晴れ晴れとしたものであった。




新年あけましておめでとうございますわ。
皆さま、これからもお付き合いよろしくお願いいたします。


【アズキ(ガリアムス様『ガンダム:ビルドライジング』より)】
 長い黒髪に艶やかな和装と大和撫子然とした女性ダイバー。
 『MS斬りの悪魔』の異名で呼ばれ、武装は刀一本のみという潔い装備のバルバトス・武を愛機としている。

 マヒルと戦った時期はケイと出会う前であり、フレンド登録はしたものの、中々都合がかみ合わず、再会できないでいる。
 バトル後はまだマヒルがテトラのフォースの一人であること、二桁の魔物であることを知らなかった。


【マヒル(ソバエ・マヒル)】
 フォース『北宋の壺』でサブリーダーを務めている女性ダイバー。
 凛然とした黒髪ポニテという王道スタイルで、道着袴めいた地味目ながらシンプルな白と紺の和装。
 一人称は『私』『自分』
 二人称は『お前』『貴方』『其方』『~殿』『~さん』など。
 妙に古臭い、時代劇がかった口調が特徴。
 生真面目だがカップリング談義になると熱く語りだすオタク気質な一面がある。
 個人ランクは90位という二桁の魔物の一人。
 フォースメンバーで一桁の現人神の一柱『テトラ』とはGPDからの幼馴染で、それによってマヒル自身の潜在能力も高いものとなっている。
 また同メンバーである『K5』の元で同棲している。
 現在はギャン・クリーガーの改造機『無頼ギャン』を愛機としている。
 正式な名称は出てこなかったが『須臾迅雷』と名付けた超高出力のビームサーベルの刀を武装としており、それ以外の武装は存在しない。
 三度笠のミサイルシールドも、ミサイルをオミットし、三度笠兼シールドという役割に徹底している。
 抜刀術――所謂『居合斬り』を戦術に組み込んでいる。
 彼女のそれは『真久部流』と呼ばれる、既に失伝されて久しいと思われていた流派の技である。

【真久部流】
 かつては「まくべ」と名乗る謎の流離いの風来坊から始まった流派。
 剣術、柔術を始めとした複合的な武術によって遠間とゼロ距離を支配するという「読み」と「詰め」に重きを置いた型を基礎としていたという。
 近年においては一部の資料にその流派こそ記されているものの、肝心の真久部流に関するものは発見できず、失伝されたものと判断されてしまっている。


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外伝(リライズ編)『会戦、空狐と久遠』

リライズ時間軸なので初投稿ですわ。


 ELダイバー『サラ』を巡るGBNの存亡を賭けた変則フラッグ戦――通称、第二次有志連合戦――から早2年の月日が過ぎた。

 この2年の間にサラ以外のELダイバーが確認され、今では87名が保護されている。

 さらにGBNも進化を続け、ディメンション上のダイバーの感覚をフィードバックする新技術により、より臨場感のあるガンプラバトルを楽しめるようになっていた。

 新たなディメンションの開放。

 新たなミッションの追加。

 新たな難易度の解放。

 等々、フィードバック機能以外にも実に多くの『新要素』が大型アップデートによって実装された。

 とは言え、今まであった要素が廃れるということはない。

 ハードコアディメンション・ヴァルガは未だに盛況だし、クリエイトミッションも新機能の実装に伴い大いに盛り上がっている。

 これはそんな新要素とは何ら関係ないとある二人の一幕。

 

 ⁎

 

 ハードコアディメンション・ヴァルガ。

 

 ゴウッ!

 青白いバーニアの軌跡がヴァルガの暗闇に満たされた空を引き裂くように煌めく。

 軌跡の先を駆けるは薄紫と青色で彩られたザンネックの改造機――月華武者ザンキ。

 原典機と比べるとシルエットこそザンネックだが、その細部にはかなりの改造が施され、名の通り武者風の威容を誇っていた。

 特にザンネックの肩後部に備えられた特徴たる開放型粒子加速器は顕著で、ヴォワチュールリュミエールのミキシングされたソレは稼働することで黄金の月のような光輪を形成することで知られている。

 さらに額と胸部に取り付けられたifsユニットによりV2ガンダムの光の翼を安定して再現できるようにもなっており、その性能は破格のものとなっていた。

 そんな月華武者ザンキに搭乗するダイバーは、ランキング10位に君臨するフォース『天地神明』の――『半神半魔』の渾名で有名なあのテンコの右腕として認知されている人狐――クーコである。

 第11回から第14回までのガンプラフォースバトルトーナメントではテンコに代わりリーダーを務め、高い対応力と技術を以て不動のチャンプ『クジョウ・キョウヤ』とタイマンを張り続け、毎回あと一歩のところで些細な不運が重なり敗北を喫するという勝負運のなさから『不運のクーコ』として有名でもあった。

 しかし、そんな不名誉な渾名を付けられていても、彼女の実力が翳ることはない。

 そもそもチャンプとタイマンを張れる時点で十二分に強いのだ。

 入れ替わりが激しいこそすれ、伊達に個人ランク11位にまで昇りつめたわけではない。

 クーコは満月のように改造したザンネックベース『ツキフネ』に乗り、近接にも対応できるようにヒートホークを追加したザンネックキャノン『アマミツツキ』を慎重に構えながら周囲をねめまわす。

 

「――」

 

 小さく短い呼吸を繰り返しながら、眼下を見れば、そこには誰もいない。静寂のみがあった。

 普段であれば、どこもかしこも銃撃や剣戟の喧騒で騒がしいはずなのに、まるで嵐が来ることを予期して避難したかのように人っ子一人も確認できない。

 あの脳内チンパンジーと揶揄される性質の悪いモヒカン軍団も例外ではなかった。

 このような日には心当たりがあった。

 

「ヴァルガの静止した日……」

 

 それは第二次有志連合戦から一年後――今から遡れば一年前に、ヴァルガにて行われたクジョウ・キョウヤの『ガンダムTRYAGEマグナム』とテンコの『天道天照』のフリーバトルだ。

 その時だけはヴァルガ民の誰もが戦闘を止めて、ヴァルガの外縁部に避難するかのように集まり、誰もが静かなまま観客と化していたのを思い出す。

 二人のバトルはヴァルガの地表を抉り、浮かせ、地形を砕き、変え、実際にヴァルガそのものを半壊せしめ――引き分けとなった。

戦闘後は我に返ったヴァルガ民がこぞって集まり、ロールバックされるまで半壊したヴァルガでお祭り騒ぎにも似たドンパチが繰り広げられたのだ。

 今の状況はそれによく似ている、とクーコは思った。

しかし、その考えはすぐに否定される。

 

「否、――これは違いますね」

 

 誰もいないわけではない。外縁部に避難しているということもない。

 地表に刻まれた多数の足跡がある方向に向いているのを認識し、確信した。

 集っているのだ。餌に群がる蟻のように。動物園の猿山のように。

 そしてそれがただの餌でないことをクーコは自然と感じていた。

 アマミツツキを構える。

 開放型粒子加速器が稼働し、両側に黄金色の月を形成する。

 視線の先――微かに明りが点いたり消えたりを繰り返している先に狙いを定める。

 ロックオンは相手に警告を与えるので敢えてしない。

 ツキフネを器用に操舵し、水平に移動しつつトリガーを引こうとして――視線の先が煌めいた。

 

「――!」

 

 直感。

 それが何であるかを確認する前にトリガーを引いていた。

 アマミツツキの砲口から真紅の光条が迸る。

 真紅の光条は向こう側から放たれた強大な光条と激突した。

 さながら災害と災害と衝突。

 衝撃の余波が地表をめくり上げ、周囲に立ち並ぶ岩や廃墟といったオブジェを情け容赦なく砕く。

 

「これ、はぁっ!!」

 

 反動で震えるアマミツツキを両腕で支えながら、呻いた。

 これほどの威力のビームをクーコは知っている。

 それを放った存在も、放たせた者も。

 果せるかなぶつかり合った極太のビームは混じり合うように衝突した空間を中心にギュルリと花のような渦を巻き、最後に周囲を焼き尽くす高熱を周囲一帯に降り注がせた。

 クーコはその中を躊躇うことなく突き進む。

 掠っただけで艦首が消し飛ぶほどのアマミツツキ――ザンネックキャノンと拮抗する威力のビームを放てるガンプラの持ち主なぞ、GBNにそうそういはしない。

 一桁の上位勢を除き、クーコが把握しているだけでも個人ランク39位の災害代表FOE『キョウスケ』、ビルドダイバーズの超火力『ユッキー』、ナイトメアハロウィンのスク水マント幼女『マオー・エガオー13世』、ZA-∀Zのメンズ版プリキュア『アークとゼン』、そして――

 

「相も変わらず威力だけは大したものですね。――クオン!」

「は?」

 

 崩れた山の向こう側に見えたは、群がる蟻を蹴散らす巨大な怪物。

 フォース『エターナル・ダークネス』のリーダーであり個人ランク13位に君臨しているダイバー――終末を呼ぶ竜の端末『クオン』の駆るジャバウォック――そのVer2.0だ。

 クーコとクオン。

 時に勝ち、時に負け、時に引き分けを繰り返し、今に至る妙な因縁を持つ二人。

 

「んん、コホン……我の名を呼ぶ声が聞こえたと思えば、珍しい顔だな。黄金月の妖狐よ」

「私は金色ではないのですが」

「そういう意味じゃないのだけど!? えっと――空色の狐!」

「何だか急にグレードダウンした感じが強いですね。もう少しセンスを鍛えたほうがいいのでは?」

「……喧嘩なら買うわよ?」

「元よりそのつもりで来たのです。――一応、断っておきますが、あくまでもガンプラバトル的な意味合いであった決して本心から喧嘩を望んでるわけではないですよ? これはある種のキャッチボールみたいなもので――」

「長い長い長い!」

「あ、すみません。……ええと、とにかくあれです。討ち取らせて頂きます!」

「ふふふ……まぁ、いいわ。――ならば敢えて言わせてもらおう。返り討ちにしてあげるわ!」

「いざっ!」

 

 クーコのザンキが流星丸を引き抜き、クオンのジャバウォックが見下ろす形で咆えた。

 月の武者対終末を喚ぶ龍。

 その日、昇格戦の名物の一つである『クーコ対クオン』の構図が、フリーバトルの聖地――ハードコアディメンション・ヴァルガにて勃発した。




息抜き。思いついた部分のみ書き出し投稿お嬢様。
二人の戦闘描写は皆さまの脳内で補ってもらいますわ!
(クオンちゃんの口調、いざ書くとなるとめちゃくちゃ悩みますわね。飛影はそんなこと言わない状態になってません?)

この二人に勝ったテトラちゃんとはいったい……(ユニちゃんの応援パワー)(お父さんお母さん、娘さんをあーしに下さい)


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外伝(リライズ編)『ワンナイトハロウィン/ムラ鮫vsガンダムGP-羅刹天』

周囲の作品がシリアス気味なので初投稿ですわ。

GBN総合掲示板のワンナイトハロウィン回( https://syosetu.org/novel/231188/8.html )で登場したナイトメアハロウィン所属Sランクダイバー『シャークサメジマ』と、百鬼の『オーガ』とのバトルになりますわ!


 エターナル・ダークネス。

 ナイトメアハロウィン。

 ナイトレイド。

 GBNで有名な三つのフォースの合同によるハロウィンイベントは盛況の中にあった。

 特に主催フォースのメンバーたちと行えるフリーバトルは大変な賑わいを見せていた。

 制限時間は15分と短いものの、指名制ということもあって「自分も自分も」と大勢が挑戦者という気分で大挙していたのだ。

 

 ⁎

 

 フリーバトル用に用意された特設ステージの上空では、二つの機影がぶつかり合っていた。

 一つはフォース『百鬼』のリーダーである獄炎のオーガの駆る『ガンダムGP-羅刹天』。

 ガンダム試作2号機を改造した鬼ような機体は、金棒型の武装――羅刹金砕棒を振るい、赤い閃光となって火花を散らす。

 もう一つは『ナイトメアハロウィン』のメンバーの一人、シャークサメジマの駆る『ムラ鮫』。

 名前から解るように、ムラサメを改造したサメのような群青色の機体は、クロスボーンガンダムX3から転用したムラマサブラスターの改造武装――シールドと一体化させ、ビーム発振器の代わりに鮫の牙のような実体剣を取り付けた――レイオマノで打ち合うたびに鋼鉄と鋼鉄が激突する衝撃音を轟かせた。

 

『シャーッシャッシャ! あの時の小魚ちゃんが、こんなに大物になってくるなんてねッ!』

『ハーッハッハッハ! あの時の雪辱、晴らさせてもらうッ!』

 

 ムラ鮫のコックピット内で、サメパーカーの少女がギザギザに尖った歯をむき出して笑う。

 それはオーガとて同じだった。

 根本から似た者同士、というわけではないが、バトルを心の底から楽しむという一点においてはどうにも共通していた。

 それに加えて、シャークサメジマは新進気鋭だった頃のオーガに黒星を付けたことがある一人で、それきりリベンジを果たす機会を逃していたのだから、今日この場で挑まない理由などありはしなかった。

 

『オラァ!』

『シャ、アッ!?』

 

 上段から振るわれた羅刹金砕棒の一撃に押し負けて、ムラ鮫が大地に叩き落とされた。

 ガンダムGP-羅刹天は、すかさず両肩のFOBT――フレキシブルオーガバインダー天を展開し、内蔵された広角射撃兵装『GNアイズブラスター』を撃ち放つ。

 

『ふっじゃっ!』

 

 頭上より降り注ぐビームの光点を認識したシャークサメジマは、レイオマノを機首にする形でムラ鮫をガシャンと変形させた。

 翼の生えたノコギリザメのような姿に変わったムラ鮫は地を這うほどの低空飛行のまま、ビームの合間を泳ぐように避けて飛ぶ。そのまま直角に飛び上がり、ガンダムGP-羅刹天めがけて真っ直ぐに突撃を敢行する!

 ガンダムGP-羅刹は羅刹金砕棒をビームバズーカに切り替え、背部の疑似太陽炉内蔵兵装『GNリボルバーバズーカ』を展開し、向かってくるムラ鮫に狙いを定めて撃った。

 ムラ鮫もまたレイオマノの先端に内蔵したビーム砲『ブラスターガン』を放つ。

 ムラマサブラスターの14基のビーム発振器を取り除いた分、エネルギーはすべて先端に残したブラスターガンに集中する構造のため、一見してライフル並に細いビームの光条は、その実リボルバーバズーカに匹敵するほどの威力を内包していた。

 その威力を以てビームにビームを当てるという芸当をやってみせ、エネルギーの灼熱の飛沫を撒き散らしながら次々と相殺していく。

 

『シャ・チィッ!』

 

 四発目のビームを相殺した瞬間を縫って、レイオマノの刃を回転駆動させると同時に柄尻に内蔵したブースターを点火し――射出!

 ビームの光条に紛れるようにして、真っ直ぐにブレることなくガンダムGP-羅刹天に向かって飛んでいく。

 回避のタイミングを失したガンダムGP-羅刹天は、すぐさま羅刹金砕棒を両手に持ち直し、防御行動を行う。

 射出されたレイオマノが激突し、ギャリギャリギャリと金属が削がれるような音が鼓膜を打つ。

 

『ッ!? このッ!』

 

 回転により増した切れ味は羅刹金砕棒を容易く切断し、勢いで背部のGNリボルバーバズーカ一基を削り斬って、レイオマノはそのまま上空へと飛んでいった。

 そのわずかな時間に、MS形態へと変形したムラ鮫が腰に佩いた紺色の波模様が目立つ刀型近接武装『村雨ブレード』を引き抜いた状態で、眼前に飛び出した!

 

『もらっシャーク!』

『させるかよッ!』

 

 突き出された村雨ブレードを、刀身にGN粒子を纏わせたGNオーガソード弐式で防ぐ。

 本来は近接兵装としての印象が強いオーガソードであるが、このように状況に応じて防御も行えるのだ。

 接触の瞬間に生じたスパークが両者の間で迸る!

 重圧な外観のガンダムGP-羅刹天と、細身の外観のムラ鮫とではパワーに差があるように見えるだろう。

 事実、攻撃を受けたガンダムGP-羅刹天が徐々に押し返していた。

 無論そんなことはシャークサメジマは理解している。理解しているからこそ、動いた。

 

『シァァァァク――』

 

 ガキン!

 音を立てて、ムラ鮫の下半身だけを変形させた。半変形、というやつである。

 展開した脚部のブースターを解放し、

 

『スクリュゥゥゥゥゥ――』

 

 ムラ鮫が身を捻り、回転する。

 それはまさしく渦――否、もはやひとつの嵐だった。

 瞬間的な加速と、回転力によって加えられたパワーがガンダムGP-羅刹天を怒涛の勢いで押し返す。

 

『トル、ネェェェェェドッ!!!!!!』

 

 一点に集中した威力が、GNオーガソード弐式を半ばから砕いた!

 その勢いのまま完全に小型の嵐と化したムラ鮫は、さらにブースターを噴出。

 ガンダムGP-羅刹天の右腕を食い千切るかのようにこそぎ落す。

 突き抜け、背後に回ったムラ鮫は回転を止め、再びMS形態に変形する。

 警戒を解くことなく振り返り、村雨ブレードを構え直した。

 

『どぉだッ!?』

『クク……フハハハハハハ! いいぞ! これだ! こうこなっくちゃなぁッ!?』

 

 ガンダムGP-羅刹天の右腕を失ってなお、オーガは笑う。

 

『もっとだ! もっとお前を、味わわせろッ!』

 

 残ったGNリボルバーバズーカをパージし、左腕に掴んだGNオーガソード弐式の切っ先をムラ鮫に向ける。

 

『鬼トランザムッ!』

 

 ガンダムGP-羅刹天の内蔵する特殊トランザムシステム――通称『鬼トランザム』の発動と同時に、頭部バイザーがスライド下降し『鬼ノ目モード』へと変化した。

 トランザム特有の圧縮粒子解放に伴い、機体が赤く発光し、残像を軌跡としながら高速でムラ鮫に肉薄する!

 片腕から繰り出されるGNオーガソード弐式の一撃は重く、鬼トランザムによって強化された出力によって速さも向上していた。

 一撃一撃を受けきることはできないと判断したシャークサメジマは受け流すという選択肢をとった。

 その度にムラ鮫の関節が軋む。パワーの差が広がったためだ。

 それでも最小の動きで機体にかかる負荷を最低限に抑えているのは、彼女がSランクたる証左でもあった。

 しかし、機体の損傷の度合いで言えばガンダムGP-羅刹天のほうが大きいはずなのに、それを気にさせないマニューバは、まさしくオーガの技量によるものだ。

 GNリボルバーバズーカをパージしたのも、重量を軽くすることでバランスを取りやすくしたのだろう、とシャークサメジマは察しをつけていた。

 

『シャーシャッシャ! サメちゃんのフカヒレは安くないよ!』

 

 鬼トランザムのマニューバに慣れてきたシャークサメジマは、コントロールスティックを握り直し、一瞬の間にムラ鮫の構えを組み替えた。

 村雨ブレードの柄を両手で握り、下段に構える。

 

『オラァッ!』

『――シャッ!』

 

 繰り出されたガンダムGP-羅刹天の突きの一撃を、下段からのカウンター気味の一閃で大きく逸らす。

 手首と肘関節のアクチュエータを駆動させることで、振り上げた姿勢から即座に上段の構えに切り替え、振り下ろした!

 ガンダムGP-羅刹天はその身を捻ることで、断ち切りの斬撃を曲線を描いた胸部装甲で受け、流してみせた。

 スラスターで距離を取ると同時にFOBTを展開し、近距離でGNアイズブラスターをエネルギーが尽きるまで斉射する!

 ムラ鮫はすぐさま片手に持ち直し、手首を高速回転させることで村雨ブレードをローターシールドとして機能させる。

 円陣を描くように回る村雨ブレードが迫るビームの群をことごとく斬り払っていく!

 だが、先ほどの打ち合いとシャークスクリュートルネードによって軽くない負荷を蓄積していた村雨ブレードは、最後の一発を受けたところで砕け散ってしまった。

 それを好機と見たか、ガンダムGP-羅刹天が素早く斬りかかる。

 

『もらったぁっ!』

『安くないと言ったはずっ!』

 

 ムラ鮫の腕部アーマーがスライドし、拳を覆うように展開する。

 さながら鮫の顎のように展開したアーマーの先端から、牙を形作るようにしてビームが発振した。

 これこそはシャークサメジマが編み出したガンプラ心形流・海洋鮫拳――その理想の具現化。

 その名も、

 

『シャァァァァァク、ナッコォォォォォォ!!!!!!』

 

 肘にまで伸びた尾ひれようなパーツから炎が噴き出す。

 加速力を増して、下段からアッパーめいて繰り出された右拳の一撃がGNオーガソード弐式と激突する!

 開いた顎が刀身を銜えるように挟み込む。

 バキンッ!

 金属が砕けるような音とともに、GNオーガソード弐式が、シャークナッコウが――割れた。

 

『う・お・お・おッ!』

 

 シャークサメジマが叫び、左拳を打ち出す!

 

『ま・だ・だぁッ!』

 

 ガンダムGP-羅刹天もまた、オーガの叫びに応えるように前腕部に内蔵したビームスパイク――GNニードルストレートを発振させて、打ち出す!

 互いの拳が激突し、周囲に衝撃を轟かせた!

 今のムラ鮫は、シャークナッコウの尾ひれのブースターによって、ガンダムGP-羅刹天のパワーと張り合うほどになっていた。

 それでも限界というものは、ある。

 故に出し惜しみなどは一切しない。今、この時、この瞬間に、全力を注ぐのみ!

 

『ぐ、むッ!?』

 

 異変に気付いたのはオーガだった。

 左腕の出力が不安定であることに気付いたのだ。

 先の打ち合いで突きの一撃を大きく逸らされた際、予想以上の衝撃で関節部が歪んだのだろう。

 目に見えるほどの影響は出ていないが、徐々に押されていることは、肌で感じられた。

 

『ええいッ!』

 

 舌を打つ。

 鬼トランザムの稼働時間も残りわずか。

 このまま拮抗し続けれれば、押し敗けるのはオーガのほうであった。

 しかし、これくらいで慌てるようなメンタルはしていなかった。

 勝負な常に何が起こるか解らないのだ。だから最後の最後まで勝ちを捨てるようなことはしない。

 それに、それはオーガ自身の矜持が許さない。

 故にこそ、さらに気づく。

 

『――ハッ! ここからだよなぁッ!?』

『シャーッシャッシャ! もっちろん!』

 

 言葉とともに、互いの拳が砕けるのはほぼ同時であった。

 瞬間、ガンダムGP-羅刹天はほんの少し残ったエネルギーを絞り出すように、片膝に内蔵したビーム砲から、もはや攻撃力をもたない、目くらまし程度のビームを発した。

 

『まぶ・シャッ!?』

 

 弱々しい光条がムラ鮫のツインアイに直撃し、ほんのわずかな時間、動きを鈍らせた。

 それで十分だった。

 ガンダムGP-羅刹天はバーニアをふかし、宙返りを行う。

 その最中にFOBTの先端に内蔵したオーガクロー天を射出する。

 片方はムラ鮫に向けて、そしてもう片方は――

 

『小手先をッ!』

 

 ビームの刃を発振させて迫ったオーガクロー天を右腕でいなす。

 爪先と踵に内蔵したヒートナイフを発熱させ、ガンダムGP-羅刹天に接近を試みる。

 

『その瞬間を、待っていたぁッ!』

『シャリアッ!?』

 

 機体全体を動かして、もう片方のオーガクロー天を――振り下ろす。

 オーガクロー天の有線を認識したシャークサメジマは、その先を見て驚愕を声を上げた。

 その先端にあったのは――レイオマノ。

 あの時、上空へと飛んでいったムラ鮫の武装の一つ。

 落下中だったそれに気づいたオーガは、オーガクロー天を射出し、掴み取っていたのだ。

 

『し、しまっシャークッ!?』

 

 シャークサメジとて忘れていたわけではない。

 レイオマノが落ちてくるまでに決着がつく。そう踏んだからこそ、あえて気にしなかったのだ。

 それが裏目に出た。

 バトルに熱中するあまりに、レイオマノに内蔵した推進力が切れて、落下するまでの時間を計測していなかったのだ。

 咄嗟に右腕でガードの姿勢を見せるものの、レイオマノの切れ味は羅刹金砕棒を切断してみせたほどなのだ。

 ガンダムGP-羅刹天のオーガクロー天によって振り抜かれたレイオマノは、右腕ごとムラ鮫を両断し、群青色を熱い赤の花に変えた。

 

 そして鷹揚のついた男性チックな電子音声が、オーガの勝利を高らかに告げたのだった。




他にも見てみたい対戦カード、あります?(ワンナイトハロウィン限定)

【シャークサメジマ】
 サメ姿のダイバー。浮遊している。Sランク。
 実はサメ自体は寝袋であり、中身はサメっぽいギザ歯でつり目な少女がいる。
 名前の通りサメをモチーフにしており、毛先の尖った濃い青色の髪をしている。
 元々はヴァルガ民で、自身の作り上げたガンプラがどこまで戦えるのか試すとともに、サメ旋風を巻き起こしていた。
 サメ映画好きでもあるのだが、それ以前ではサムライ映画を観てサムライに強い憧れを抱き、通販で購入した剣術指南書を読みながら、独自の剣術を鍛えていた。
 上段からの斬り下ろし、下段からの斬り上げを素早く繰り返す『天地鮫肌の構え』などは、一見して地味に見えるが、これを素早く繰り返すことで常に攻撃を行う剣術となっており、実際に喰らってみると結構厄介なものであると理解できる。
 一人称は『サメちゃん』 二人称は『小魚ちゃん』など。

【ムラ鮫】
 ムラサメをベースにした改造機。
 原典機の白色の部分を群青色に塗り替え、戦闘機形態となる完全変形と、上半身、もしくは下半身のみを変形させる半変形が可能なギミックが施されている。
 クロスボーンガンダムX3から転用した改造武装『レイオマノ』が特徴的で、これはムラサメのシールドと一体化しており、戦闘機への変形時に機首となることでノコギリザメを連想させる見た目となる。
 14基のビーム発振器の代わりに、鮫の歯のような形状の実体剣を取り付け、先端に残したビーム砲にエネルギーが集中するようになっている。
 そのため、ビームライフル程度に見えるビームの光条は、GNリボルバーバズーカを相殺するほどの威力を内包している。
 その他にも刀型近接武装『村雨ブレード』や、腕部アームが展開することで使用可能になる『シャークナッコウ』、爪先と踵に内蔵した『ヒートナイフ』などがある。
 自身の特性に合わせた武装を搭載した反面、武装過剰にならないようシンプル化が図られており『M2M5D12.5mm自動近接防御火器』やビームサーベルなどはオミットされている。
 宇宙専用のスペースシャークパックや空中戦用のスカイシャークパックなどのオプション装備も存在するが、今回はノーマル形態でバトルしている。


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外伝(リライズ編)『ワンナイトハロウィン/ハロウィン・フェス、エキシビジョンマッチ』

ハロウィンは過ぎましたが初投稿ですわ!

GBN総合掲示板のワンナイトハロウィン回( https://syosetu.org/novel/231188/8.html )におけるエキシビジョンマッチですわ。


 ハロウィン・フェス。

 それはGBN運営が主催となって行われるイベントであり、アミューズメント・パーク・ディメンションの浮島を舞台に設定して開催されている。

 参加者は軽いものから拘ったものまで、実に様々な仮装をしてこのイベントを楽しんでいた。

 因みに運営主催のものとは別に『エターナル・ダークネス』、『ナイトメアハロウィン』、『ナイトレイド』の三つのフォースによる有志の合同ハロウィンイベント『ワンナイトハロウィン』も同時に開催されており、こちらも浮島の一つを舞台としている。

 現在、ハロウィン・フェスの方はただでさえ盛り上がっていた参加者が皆こぞって中継モニターの前に集まり、熱気を帯びた視線を画面に集中させていた。

 視線の先に映るのは、ハロウィン・フェス用に用意された特設のバトルフィールドで戦う四機のガンプラの姿が在った。

 一機はGBN最強と謳われる現チャンピオンでありフォース『AVALON』のリーダー『クジョウ・キョウヤ』のガンダムTRYAGEマグナム――そんな彼と相対するのは、かのブレイクデカールやELダイバーを巡る事件で活躍したフォース『ビルドダイバーズ』の『リク』の『ガンダムダブルオースカイメビウス』、GPD世界総合大会ではベスト16に輝き、GBNでは個人ランク4位に座するフォース『北宋の壺』の『テトラ』の『ザ・ギャン』、GBN最大規模を誇るフォース『GHC』の『アトミラール』の『フラッグP-38Gライトニング』であった。

 彼らが戦っている理由は、これが所謂エキシビジョンマッチであるからだ。

 「三対一とか卑怯じゃね?」と思われるかも知れないが、相手がチャンプであるならば、むしろこれでようやく天秤は五分といったところである。

 例え個人ランク4位のテトラが味方にいたとしても、高い対応力を有するリクがいたとしても、優秀な指揮能力をもつアトミラールがいたとしても、それでようやくなのだ。

 何故ならば、彼らが成長するように、チャンプ――クジョウ・キョウヤもまた、今も成長を続けているからだ。

 

 ⁎

 

『てりゃぁぁぁっ!!!』

『むぅッ!?』

 

 テトラのザ・ギャンからの一撃を回避したチャンプは、反撃に移ろうとした瞬間を狙って斬りかかってきたリクのスカイメビウスのメビウスアロンダイトの一閃を、反撃に使うはずだった左腕のトライアームソードで防ぐ。

 さらにその一瞬を突いて繰り出されたテトラの連撃をいなしながら、互いの隙を補うように放たれる二人のコンビネーションに、防戦を強いられていた。

 意外かと思われるかも知れないが、チャンプとて一人の人間である。

 GBNの頂――一位に座して久しく、常人離れした技量は確かに凄いの一言に尽きるが、それでも無敗ではないし、無敵でもない。

 マゼラン大陸のSD限定大規模バトルロワイアル『グレートパンクラチオン』では優勝したものの満身創痍というギリギリの接戦で、第14回ガンプラフォースバトルトーナメントで優勝するまでは多くの強豪に苦渋を飲まされ、それまでに歴代チャンピオンたちの胸を借り、第二次有志連合戦では様々な要因こそあったものの結果的には敗北している。

 だからこそ、最強の座を目指す誰も彼もがチャンプの打倒を諦めることなく切磋琢磨し続けていられるのだ。

 しかし、そうであったとしてもチャンピオンという称号は伊達ではない。

 防戦一方ではあるものの、その動きに焦りや苛立ちといったものはまったくない。

 むしろ時間を経るごとに二人の攻撃を捌く動作が効率化しつつあった。

 

『二人とも、さらにできるようになったか!』

『そっちこそ、あん時より技量爆上がりしてんじゃん!? ――オタクくん!』

『はい!』

 

 感嘆を乗せたチャンプの言葉に、しかしリクは行動で返した。

 テトラとは違い、そこに言葉を挟む余裕がリクにはなかったからだ。

 それはリク自身がよく理解していた。理解していたからこそ、言葉を行動に代える他なかった。

 

(これがハイランカー同士の戦い!? 着いていくので精一杯だ!)

 

 あの頃と比べて技量が上達したという自覚はある。強くなったという自負もある。

 それでもリクが成長するのと同様に、チャンプもまた成長しているのだ。

 ただ、そうであっても、即席で組んだテトラとの連携を目立った粗もなくこなしてみせるのは、流石のものであった。

 前衛をテトラ、中衛をリク、後衛をアトミラールが徹底することで、明確化した役割でどう動けばいいのか、自然と頭が理解していた。

 それはアトミラールの指示と、テトラの勇猛果敢な斬り込みがあって成立するものだ。

 突き出したアロンダイトの刺突を避けられながらも、スラスターを噴射すること機体を制御し、淀みなく横からの斬撃と繋げる。

 しかし、チャンプはこの一撃さえも斥力推進によって生じるエネルギーを転用し、フィールドとして腕に纏わせることで素手で掴み取った。

 

『くっ!』

『いい一撃だが、まだ遅い!』

『うあぁ!?』

 

 膝に蹴りを入れてスカイメビウスの態勢を崩し、アロンダイトを掴んだその手で振り回すことで助けに入ろうとしたテトラにぶつける。

 

『うっそぉ!?』

 

 衝突の寸前、テトラはビームサーベルのエネルギーを切り、刃を消失させることで同士討ちを免れる。

 機体装甲表面が擦れ合い火花が散る。

 金属と金属がぶつかりあう鈍く高い音が響く。

 二機の態勢が完全に崩れた。

 追撃をしようと即座に背面腰部に懸架したトライドッズライフルを構える。

 瞬間――

 

『させんよッ!』

 

 頭上からアトミラールのフラッグP-38Gライトニングがチャンプの頭上を陣取り、76.2㎜リニアマンシンガンを浴びせかかった。

 原型機の単発モードをオミットした代わりに、速射モードに絞り込んで強化を施したこの武装は、速射のまま単発モードの2倍の威力を発揮することができる。

 しかし、チャンプの斥力装甲を貫くには至らない。

 それはアトラミールも重々承知している。悔しいが、それほどまでに性能差がありすぎるのだ。

 だが、彼の狙いのチャンプに手傷を負わせることでも、ましてや撃破することはでない。

 あくまでもアタッカーとしての役割をこなすテトラとリクの二人をサポートすることが、アトラミールが自身に課した役割だった。

 だからこそ、欲張る必要はないと落ち着いた行動ができるのだ。

 

『その速射性と威力……厄介だな! やはり!』

『何発も受けて平然としているのによくも言う! だがな――』

 

 雨あられの如く降り注ぐ76.2㎜リニアマシンガンの弾丸が射線を変え、トライドッズライフルに注がれる。

 いくら堅牢なチャンプのTRYAGEマグナムとて、備えた武装まで堅牢とは限らない。

 特に攻撃に用いる武器は、剥き出しの牙だ。

 

『こちらが狙いか!?』

『そうともさッ!』

 

 弾丸の火力と纏った電磁が内部でトライドッズライフルのエネルギーと接触し、内側から暴走させる。

 チャンプはそれを手放し、背面に装備したトライホルダーフレームから展開したビームマントを翻すことで爆発の衝撃から身を守った。 

 アトミラールはそれ以上の追撃を止め、変形してチャンプの射程外へと離脱する。

 

『引き際も心得ているか』

『流石に一人で相手取るほどの度胸はなくてね!』

『物は言いよう、かッ!』

 

 体勢を立て直したテトラのザ・ギャンが迫る。

 手にはビームサーベルではなく、細身の小型ビームサーベルが握らていた。

 指と指の間に挟んで持てるように削られたそれは左右にそれぞれ四本ずつ、合計八本も持てるようになっている。

 一本一本は小型であるが、ビームサーベルよりも出力が低いということはなく、むしろ作り込みによって通常のものよりも高い出力を発揮していた。

 かつてはビギニングガンダムの使い手が編み出したとされる、その技の名を取って――

 

『ガンプラ心形流――オロチの型ッ!』

 

 片手で振るわれる斬撃は一度に四つ。両手ならば八つの脅威。

 一度でも受ければ連続したビームの刃によって押し切られるのは明白。

 そう簡単に受けるわけにはいかないと、回避を選択する。

 だが、それは――それこそテトラの領分だ。

 

『やはりかッ!』

 

 回避先には、斬撃が置かれていた。

 須臾とも言えるほどの隙間の中で設置された先の先の一撃。

 テトラの持ち得る直感と技量、そして親友『マヒル』の修める真久部流から学び取って可能とさせた御業である。

 チャンプでさえそれを明確に見切ることは未だにできないでいた。

 だが――

 

昇格戦(あの時)は多少面食らったものだが!』

 

 チャンプのマニューバを予測し、回避先に置かれたビームサーベルの残撃に対し、見切るのが困難であるのならばあえて真正面から打ち破るというパワープレイで応じた。

 斬撃が届く前にビームマントを翻すことで、ビーム斬撃の輪郭を歪ませて無力化する。

 その一瞬を狙って放たれたスカイメビウスのビームライフルの一撃も、跳ね上げた爪先で当然のように砕いて散らす。

 

『二度も同じ手は喰わんよ!』

『だっしょー!』

 

 正面から繰り出されたチャンプの攻撃を頑強なシールドで防ぎながら、テトラは大きく横に移動した。

 

『これは!?』

 

 視線の先――ザ・ギャンのシルエットに隠れるように位置していたスカイメビウスがハイマットフルバースト形態で構えていた。

 チャンプは向けられた砲口の射線から外れようしたが、置かれた斬撃によってマニューバを大きく制限されてしまう。

 それならば斬撃の置かれていない空白から離脱しようとするも、ここぞとばかりにアトミラールの76.2㎜リニアマシンガンが連続するスパーク音を立ててそれを阻止する。

 

『いっけえぇぇぇぇぇぇッ!!!』

 

 リクの叫びと同時に、スカイメビウスの全砲門が吼えた。

 吐き出されたビームの光条の群が、チャンプに殺到する。

 今さら避ける時間はない。

 

『ならば正面から受けるッ!』

 

 ビームマントの出力を上げて、上半身を捻って展開する。

 チャンプを釘付けにするために射程内に留まり続けたテトラは、持ち前のシールドの頑強さを以て自身に流れてきたビームを防ぐ。

 マントとビームの束が衝突し、衝撃がチャンプの臓腑を揺らす。

 

『この威力……トランザムインフィニティを併用しているのかッ!?』

『その通りですッ!』

 

 エネルギーゲージがオーバーヒートするまで撃つのを止めない。

 一発一発が強力なビームの光条でチャンプの動きを止める。

 古今東西、上から下まで有効な戦術――それは機動力を削ぐということだ。

 かつて第10回ガンプラフォースバトルトーナメントでテンコがドラグーンとifsビットを用いて鳥かごめいた包囲網を敷いたように、第14回でロンメルが狭い建物内に誘い込み回避困難な範囲攻撃で追い詰めたように、アトミラールの分析データを最大限に利用したテトラの先読みとリクの予測撃ちでチャンプの動きを制限する。それが大方の狙いであった。

 そして――

 

『――テトラさんッ!』

『ま・か・さ・れ・たぁッ!』

 

 言葉が発せられる前にテトラは、チャンプの背後にいた。

 ビームの威力に押し流されていくように見せかけながら、徐々にそこまで移動していたのだ。

 右手の四本のビームサーベルを爪のように見立て、斬りかかる。

 

『想定済だッ!』

『ッ!?』

 

 殺到するビームの束を隠れ蓑にして射出していた二基のTRYファンネルが殺到し、鳥のような自在なマニューバで一基目が振りかぶったザ・ギャンの腕に突き刺さり、二基目も左胸部に突き刺さる。

 

『テトラくん!?』

『モーマンタイっしょ!』

 

 アトミラールの声にテトラは堪えた笑顔を浮かべた。

 痛くないダメージを受けても、テトラは止まらない。

 突き刺ささったTRYファンネルを意に介さず――次に飛来したメビウスビームキャノンの直撃コース上に躍り出た。

 

『同士討ち? いや、これは――』

 

 テトラのザ・ギャンはその徹底的な作り込みによってヨノモリ塗料やクロマル塗料を不使用のまま、ヤタノカガミの如くビームを反射するほどの装甲性能を有していた。

 勿論、これはシールドも例外ではない。

 そんな性能を有するザ・ギャンにシールドにメビウスビームキャノンが直撃すればどうなるか?

 その答えは直撃したメビウスビームキャノンの一撃が示した。

 

『ぐぅッ!』

 

 ザ・ギャンの光沢を放つシールドを介して反射、角度を調整して拡散されたメビウスビームキャノンがチャンプに降り注ぐ。

 既に正面からのハイマットフルバーストの猛攻に加えて、背後からの跳ね返されたビームの雨。加えて万が一に備えているアトミラールという布陣。

 その光景に、観客の誰もが固唾を飲んだ。

 「もしかしたら、もしかするのではないか」という一縷の期待が、皆の胸に芽生えた。

 

『……それでも、なおまだ健在とはな』

 

 上空から俯瞰する形で、戦況データを送り続けながらアトミラールは苦々しく呟く。

 これだけの火砲に挟まれながら、チャンプはビームマントとトライアームソードを使い、凌いでいる。

 けれど、その全てを凌げているわけではない。

 既にTRYAGEマグナムには少なくない損傷が見て取れる。

 しかし、それはテトラのザ・ギャンも同じだ。

 いくらビームを反射できようが、それにだって限界はある。

 リクのスカイメビウスにもオーバーヒートによる強制排熱と打ち止めがくるだろう。

 一見して三人に有利な状況に見えるが、要は根競べといった状態にある。

 

『厄介なTRYファンネルは二基、テトラくんに突き刺さっているが――』

 

 そこで気づいた。

 TRYAGEマグナムの肩に残っていたはずのもう二基のTRYファンネルがなくなっていたことに。

 

『まさか!?』

 

 狙いはリクかテトラか、それとも両方か。

 TRYファンネルによって切り裂かれる二人を幻視して、アトミラールは警告を込めて通信を開こうとし――予想の斜め上をいく光景に、一瞬、戦いを忘れた。

 

『攻撃が――』

『――届かないッ?』

 

 テトラとリクも、状況の異変に気付いた。

 理由は明白だった。

 円を描くように高速で飛び回る二基のTRYファンネルが、直撃コースのビームの雨をことごとく切り裂いていたのだ。

 普通であればありえない光景だが、それを行っているのがチャンプであるならば、認めたくはないが納得はできる。

 加速を乗せて鋭利な空飛ぶ刃と化したTRYファンネルが、メビウスビームキャノンの熱さえ切り裂いて払う。

 

『三人だからこそ成せる連携の技。確かに見事だ。流石に焦りを感じてしまったよ』

 

 バサリ、とビームマントがはためく。

 チャンプもまた決して軽くない損傷を与えられていた。

 コンビネーションに押されて防戦を余儀なくされ、トライドッズライフルを破壊され、得意のマニューバさえ制限されたのだ。

 さらにハイマットフルバーストからの一斉射撃の中で接近戦を仕掛けてくることは想定していたが、まさか味方の攻撃を利用してくるとまでは見抜けなかった。

 お陰でTRYAGEマグナムの装甲の一部は焼け、溶け、焦げていた。

 

『だからこそ、私も全力で応えねばならない』

 

 TRYAGEマグナムのツインアイが力強く輝いた。

 チャンプの意思に呼応するように、排熱による熱風がダクトから零れる。

 背部のトライホルダーフレームが取り外され、変形と同時に手に握られる。

 その時にはビームマントは集束し、ビームで形成された巨大な光刃を伸ばしていた。

 トライホルダーフレームの攻撃形態――トライスラッシュブレイドだ。

 

『――来るッ!』

 

 誰もが予感した。

 機体を捻るようにし、トライスラッシュブレイドを水平に構える。

 そのまま引き抜くように、横薙ぎに振るった。

 瞬間――剣圧によって生じた衝撃が降りかかるビームの雨を消し飛ばした。

 衝撃はアトミラールのフラッグをよろめかせ、リクのスカイメビウスをも怯ませて、そして最も近くにいたテトラを打った。 

 

『んなぁッ!?』

 

 先に狙われたのはテトラだった。

 チャンプは振り向きざまにブースターを噴射し、急接近をかける。

 一連の動作があまりにも流麗で、気が付けば一瞬でテトラを間合いに収めたようにしか見えなかった。

 それでもテトラは反応した。彼女もまた伊達に個人ランク4位にはいない。

 スラスターを噴射し素早く崩れかけた態勢を整えると、シールドを構えてチャンプを迎えうつ姿勢をとった。

 右腕がTRYファンネルによって機能しないことに不安はあったものの、それを気にしているほどの余裕はない。

 シールドからミサイルを発射し、迎撃を試みるが、今さらミサイル程度で止められるなど考えていなかった。

 事実、チャンプは速度を緩めることなく、一度の斬撃でミサイルを全て斬り払ってみせた。

 

(右腕は使えない……ダメージ比率も二人より高い……あーしができることは……)

 

 防御に集中し、引きながら時間を稼ぐこと。

 そうと決まればやることは単純だ。しかしそれはこの中にいてテトラにしかできない役割でもあった。

 迫るトライスラッシュブレイドの刺突をシールドの曲面に乗せて逸らす。

 衝撃で指に挟んだ小型ビームサーベルが滑り落ちた。

 スラスターを噴射しながら次の一手に備えて姿勢制御を即座に完了させ、突きから払いに転じた斬撃をシールドで受け止める。

 

『片腕でこうもやるとはッ!』

『伊達に研究はしてないっしょ!』

 

 シールド裏に備えた小型ビームサーベル八本をパージ。

 ビットやファンネルほどではないが、間近の距離ならばある程度の遠隔操作も利く。

 コントロールスティックを操作し、小型ビームサーベルを起動させる。

 発振したビームの光条は、しかしサーベルではなく、ウィップを形成した。

 

『ビームウィップッ!』

 

 文字通り、伸びたビームの鞭が四方からチャンプを絡めとらんと殺到する。

 蛇のようにのたうつ奇抜な軌道は、遠隔操作であってもテトラの操作に可能な限り応えたものだ。

 一本を回避しようと二本目が、二本目を防ごうが三本目が――それが八本ともなれば、まさしくヤマタノオロチと言えよう。

 自在な軌道を描きながら迫るビームウィップに囲まれながらも、チャンプは冷静に状況を捉える。

 トライスラッシュブレイドの集束率を下げ、拡散することで刃の形状がマントのように揺らめく。

 ガキン、と刃を形成するための実体パーツが可動し、扇状に展開。

 それに合わせてブレイドとマントの中間の拡散率となったトライスラッシュブレイドを機体ごと回転させる。

 マントのような柔らかな軌道に、ブレイドの鋭利さを保持した一撃が、瞬間的にビームウィップを本体の柄ごと斬り飛ばした。

 

『ま・じ・でッ?』

 

 あの一瞬でそこまで判断して、なおかつ実行してみせる度量と技量に引き攣った笑みを浮かべる。

 テトラもまたユニの応援を受けていた手前、易々と墜ちる気はないが、さりとてこれ以上戦力となれるほど万全とも言い難い。

 厄介な相手から倒す、というのがチャンプの目的なら、最も距離が近く、片腕を失っても厄介でなおかつ余力があるテトラを真っ先に狙うのが丁度よかったのだろう。

 釘付けのための行動がここで裏目にでた形だ。

 

『でも、まぁ、時間は稼げた的な?』

 

 シールドに内蔵したワイヤーを伸ばし、チャンプ目掛けて投擲する。

 だが狙いは眼前のチャンプではない。

 投擲されたシールドはあっさりと躱され、再び集束したトライスラッシュブレイドの一太刀で、ザ・ギャンは斜めに両断された。

 

『後は任せたっしょッ!』

 

 ワイヤーごとシールドを切り離し、叫ぶ。

 応えるように未だに持続しているトランザムインフィニティ状態のまま、リクのスカイメビウスが脚部に備えた武装スカイレガースのビームフィールドを発振させて投擲されたシールドに向かう。

 嫌な予感を覚え、二基のTRYファンネルを迎撃にあてる。

 

『その脚を切り落とさせてもらおうッ!』

 

 テトラという強力な前衛が墜ちた今、チャンプには若干の余裕ができていた。

 

(恐らくはあのシールドを蹴り返すことで、ほぼ破壊不能な質量弾として利用するつもりなのだろうが)

 

 ザ・ギャンのシールドの剛性はチャンプも知っている。

 EXカリバーの一撃を防ぎ切るほどのあの防御力を、ある種の攻撃力として転化すれば確かに厄介ではある。

 しかし――

 

(本当にそれだけか?)

 

 あまりにも単純すぎる。

 ましてやシールドを蹴り返したところで回避するのはチャンプには容易い。

 ここにテトラの置き斬撃と先ほどの予測撃ちがあれば話は変わってくるが、あれはどちらか片方では成立しない。二つ揃って初めて脅威となる戦術なのだ。

 

『――ブラフかッ!』

 

 疑問は確信に変わる。

 スカイメビウスは直前で身を捻ることでシールドを回避――だけに留まらず、踏み台として蹴ることで加速に利用する。

 

『ここだッ!』

 

 スカイレガースの腕部版とも言えるスカイブレイサーをマルチクローモードにして展開。

 マニピュレータをビームフィールドで覆い、迫りくるTRYファンネルを掴み取った。

 そのままTRYファンネルを砕き、スラスターを噴射することで速度を重ねる。

 

『来るかッ!』

 

 トライスラッシュブレイドを構え直す。

 同時に肩のTRYバードを分離し、上空に飛ばす。

 

『見えていたかッ!?』

『見えてはいなかったッ! さっきまではッ!』

 

 頭上からの奇襲をかけようとしていたアトミラールの迎撃にあてたのだ。

 だが、アトミラールもそれを理解した上で六連装空対空ミサイルポッドを放ち、さらに十六連装無誘導ロケットランチャーを放った。

 TRYバードはTRYファンネルほどの迎撃能力はない。ビームガンを連射するも、全てのミサイルを撃ち落とすには至らない。

 むしろ貫いたミサイルの爆炎が妨げになってTRYバードの追尾性能ではその全てを認識が困難であった。

 TRYバードを通りぬけたロケットランチャーが周囲に着弾し、盛大な爆発とともに炎を煙を巻き上げる。

 目隠し。最も解りやすい手段だ。

 無論、アトミラールはチャンプにそれが通じるとは思っていない。

 

『それでも! 視界を一瞬でも塞げたのであればッ!』

 

 フラッグP-38Gライトニングを高機動状態のままMS形態に空中変形させ、流れるような動作で柄を引き抜くと、発生したプラズマを集束させてプラズマソードを形成し、すれ違いざまにTRYバードを斬って落とす。

 さらにビームローターをビームシールドとして、もう一基のTRYバードから放たれたビームガンを防ぎ、カウンター気味に連射した76.2㎜リニアマシンガンを浴びせて撃破した。

 だが、撃破の寸前、TRYバードが最後に放ったビームガンが76.2㎜リニアマシンガンを撃ち抜いた。

 舌打ちを我慢し、76.2㎜リニアマシンガンを投げ捨てる。

 

『ここまで接近するのに稼いでもらった時間、無駄にはすまいッ!』

 

 黒煙を切り裂いて頭上から迫るアトミラールのフラッグP-38Gライトニング。

 爆風で舞い上がった土煙を突き抜けて正面から迫るリクのスカイメビウス。

 二機によるほぼ同時の攻撃。

 TRYバード、TRYファンネルを失ったチャンプにとっては厳しい局面だ。

 

(TRYバードはああもあっさり墜とされるとは……。それに、どちらか片方に集中すれば、もう片方からの攻撃を受けるこの状況……)

 

 それでもチャンプは焦ることはない。

 カメレオンのように視線を動かして、思考の中で最適解を模索する。

 

『――ならば同時に対応するのみッ!』

 

 アトミラールの軸に合わせて頭上に掲げたトライスラッシュブレイドの出力を上昇させる。

 ブゥン、と音を立てて、ビームの光刃をさらに延長させた。

 

『なにッ!?』

『トライホルダーはこうも使うッ!』

 

 突如としてリーチを伸ばしたトライスラッシュブレイドに、アトミラールは完全に反射で反応した。

 ビームシールドに切り替え、光刃を防ごうとしたのだ。

 しかし、出力の差がそれを圧倒する。ビームシールドを突き破り、フラッグP-38Gライトニングを半身に突き刺さる。

 このままリクに向かって振り抜くつもりなのだろう。

 

(このままでは――)

 

 先ほどのテトラの活躍を思い返す。

 彼女が持ち堪えて時間を稼いでくれたお陰で、ほぼ安全に接近できたのだ。

 被弾することなくTRYバードを撃破できたのも、TRYバードが完全に加速を得れる距離ではなかったからだ。

 

(それでもああも綺麗に撃破できるとは、自分でも思わなかったが)

 

 自嘲気味に小さな笑みを浮かべる。

 しかし、その瞳には諦めの色はなかった。むしろ、熱い闘志の炎が灯っていた。

 ダメージを報せる警告音を叩いて黙らせ、コントロールスティックを握る。

 

『ま・だ・ま・だぁッ!!!』

『むッ!?』

『アトミラールさんッ!?』

 

 嫌な音を立ててスパークを散らすフラッグP-38Gライトニングも、アトミラールの声に、そこに宿った意志に呼応するように、メインカメラを輝かせる。

 突き刺さり、今なお身を焼くトライスラッシュブレイドの光刃をそのまま道筋に見立て、スラスターを最大まで噴射して加速する。

 振り抜かれるまでの一瞬の行動。意志と意志と読み合いの攻防に――アトミラールはチャンプの一枚上をいったのだ。

 

『勝ち筋は潰させはしないと言うのだッ!』

 

 ついに完全に断たれた半身を横目に、残った身体でチャンプのTRYAGEマグナムに組み付いた。

 特にトライスラッシュブレイドの柄を強く握る右腕をガッチリとようやく動く片腕で絡めとる。

 それが可動域の妨げになり、チャンプはトライスラッシュブレイドを振り下ろせないでいた。

 

『くっ!』

 

 この瞬間、チャンプの目が細まった。

 そして、すぐに行動を変える。

 トライスラッシュブレイドの柄から手を放し、トライアームブレードを最大出力で発振。

 手負いのアトミラールが発揮する底力を、余裕のあるパワーで凌駕し、組み付くフラッグP-38Gライトニングを無理矢理引きはがし、トライアームソードで切り裂く。

 

『くそぅッ! すまない、後は頼んだぞ……!』

 

 アトミラールの苦々しさを含んだ声を聞き届け、すぐに来るであろう後を頼まれたリクのスカイメビウスに目を向け――眼前に迫ったシールドを認識する。

 

『な・にっ?』

 

 ゴガァン、と激しい音を立てて激突したシールドがTRYAGEマグナムの右顔面を砕き、衝撃に怯んだことでトライホルダーフレームを取り落としてしまった。

 砕いたシールドの正体がザ・ギャンのものであることは、あの一瞬で判別できた。

 

(だが何故!?)

 

 答えは簡単だった。

 切り離されたワイヤーを利用して、チャンプに向かって投擲したのだ。

 あの時、ただ足場にするのではなく、ワイヤーを掴んでいたのだろう。

 それが果たして本当の狙いであったのか、それともリクの咄嗟の対応だったのかは解らない。

 だが――

 

『してやられたかッ!』

 

 乱れるメインカメラの視界の中でも、トライアームソードを振るう。

 対して、スカイメビウスはスラスターを噴射し、トライアームソードを避けると同時に、右側面で回り込んだ。

 

『その動きッ!? それが――』

『これが、ラッシュポジションですッ!』

 

 ラッシュポジション。

 スカイメビウスのバックパックを腰部に下げた格闘に特化した形態である。

 これにより機体のもつ重心を変化させ、パワーを代償にスピードを上げることで、より柔軟でしなやかなマニューバを可能とさせている。

 反面、通常時と異なる技量を要求させるため、リク以外には十全に扱えない性能となっていた。

 リクはこの形態を用い、カメラとしての機能をほとんど喪失したであろう右側に素早く回り込んだのだ。

 

『もらったッ!』

 

 半身に構え、右拳を突き出す。

 パワーは下がっているとはいえ、スカイブレイサーによってビームに覆われた拳だ。

 直撃すればチャンプのTRYAGEマグナムとて無傷ではいられまい。

 そう、直撃すればだ。

 

『たかがメインカメラをやられただけでッ!』

 

 右腕を可動させ、トライアームソードが繰り出された右拳とぶつかりあう。

 灼熱の火花が散り、二機を照らす。

 

『この程度のパワーならば、押し返せないことはないッ!』

『くっ!? だけどこれなら――』

 

 右拳――その指と指の間に挟んだ一本の隠し玉を使う。

 

『それはッ!?』

 

 チャンプの目が見開かれる。

 それは細身の小型ビームサーベル。

 テトラのザ・ギャンが使っていたものだ。

 

『アトミラールさんのお陰ですッ!』

『な・にっ? ――あの爆風かッ!?』

 

 あの時、チャンプの周囲に着弾した16連装無誘導ロケットランチャーによる爆風。

 それにより土煙とともに舞い上がった小型ビームサーベルを、リクは回収していたのだ。

 GBNでにおいて撃破された機体の武装は、完全に消えるまで暫くの猶予が存在する。

 これによって『武器を拾って戦う』という戦法も、できなくはないのである。

 ただしそれは拾った武器が機体に合うかどうか、使い勝手を知っているかどうかで話は変わってくる。

 今回の場合、小型ビームサーベルはザ・ギャン以外も使用できるものであったこと、用途がシンプルであったことから、リクも使い方を把握していた。

 柄の底部に存在するトリガーを手の平で押し込み、ビームを発振させる。

 突き出るように伸びたビームの直線がトライアームソードの刀身を避けて、マニピュレータを貫いた。

 

『やったッ!』

『いいや、まだだッ!』

 

 右腕を貫けれてなお、チャンプは冷静に思考を切り替え、TRYAGEマグナムを半回転させてリクを蹴り飛ばす。

 予想以上のダメージを受けてしまったが、いずれも致命に至るほどではなかった。

 ならば、と考え、残った武装と状況を照らし合わせ、後は純粋に――技量で圧倒するのみとした。

 リクがスラスターを噴射し態勢を立て直した時には、既にチャンプが肉薄していた。

 警戒すべきは左腕のトライアームソードだけだと判断し、突き出されたそれを回避し、ビームバリアで覆ったマニピュレータで伸びきった腕を掴み取る。

 

『取ったッ!』

『良い反応だが、まだまだ詰めが甘いッ!』

 

 言うが早いか、スカイメビウスの膝関節に爪先に蹴りによる突きを見舞い、脚部を破壊する。

 

『こっちがッ!?』

『本命だッ!』

 

 怯んだ隙を突いて、貫かれた右腕で殴りつける。

 さながらサザビーを殴りνガンダムの如くに。

 衝撃で緩んだ腕の拘束から抜け、次にリクが反応する前に全身のスラスターを噴射し、一回転と同時にトライアームソードで逆袈裟に両断した。

 

『お見事……です……』

『君たちも、実に素晴らしいバトルだったよ』

 

 感嘆と悔しそうな感情が混ざった声音でリクが呟き、スカイメビウスのがテクスチャの塵となって消えていく。

 この瞬間、バトルの終了を告げる音と勝者を告げる電子音声が会場に鳴り響いた。

 会場は最高潮に達した熱気と大歓声に包まれながら、互いに健闘を称え合う四人の記念スクリーンショットタイムを迎えた。

 

 GBN運営主催のハロウィン・フェス。

 クジョウ・キョウヤvsテトラ&リク&アトミラールによるエキシビジョンマッチは、キョウヤ――チャンプの勝利で幕を閉じた。

 

 この後、テンコ様が参戦したことでハロウィン・フェスの舞台である浮遊島が大変なことになるのだが、それはまた別の話。




塩試合? 結果的に見ればチャンプは右腕と右顔面、そして武装以外は割とピンピンしていたので塩試合ですわね???

笑う男様の二次創作品「『GHC』活動記録」からアトミラールさんをお借り致しましたわ。感謝致します。

次回、ワンナイトハロウィン。
ナイトメアハロウィン団長『マオー・エガオー13世/魔王ガンキラー・ジ・エンド』vsビルドライジングリーダー『ケイ/ガンダムAGE-1スタートダッシュ・フルビルド』

『終わり』と『始まり』の戦い。


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気紛れ人物紹介
人物列伝1『テンコ』(R3 10/1修正)


◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【テンコ】

 ダイバールックは小柄な少女姿。身長は150㎝前後。

 白い髪と真っ直ぐな狐耳が特徴。

 目元には紅い化粧を施している。

 結んだ髪を両側頭部から垂らし、椿の頭飾りを着用。

 服装は袖が長く、肩と脇の部分が切り抜かれた巫女めいた和装。横乳!

 金鈴や赤装飾で飾り、神秘的な雰囲気を纏っている。

 下袴は赤く、スカート状で、腰には狐面を提げている。

 首元には白いモフモフアクセを巻いている。

 尻尾もあるが、邪魔にならないよう普段は隠している。

 一人称は『妾』 二人称は『そなた』『お主』など。

 性格はマイペースで天然気質。あるいはおばあちゃん気質とも言えるくらい穏和。

 言い慣れた横文字はそれなりに流暢に発音できるが、普段あまり言わない横文字に対しては全て『ひらがな表記』になる。

 

「妾はテンコ。フォース『天地神明』の頭を務めておる者じゃ。よしなにの」

「くふふ、初いの若いの。よいよい、好ましい青さじゃ」

「言葉とて、ただ聞き、応えるだけでは意味はなし。じゃが、感じられれば、それは力となる。……友の受け売りじゃがの」

「むぅ、さらに出来るようになったの」

「お主のプラモスピリットを見せてみよ!」

 

 

――ダイバーズ編――

 フォース『天地神明』のリーダー。

 ガンプラフォースバトルトーナメント覇者、つまり歴代チャンピオンの一人。

 個人ランク、フォースランクともに10位に位置するハイランカーでもある。

 通称を『半神半魔』『現人神』『神的災害』。

 敢えて10位を維持しており、昇格戦において一桁台に昇ろうとする挑戦者の『一桁への壁』として立ち塞がる。

 普段は和風エリアを好んで散策しているが、遭遇率は稀。つまりレアキャラ。

 その神々しい見た目から海外や一部のダイバーからは神様として認識されている。

 優勝以降、第14回までは不在だったため、今のクジョウ・キョウヤとの決着は果されていない。

 

 昇格戦以外では滅多にバトルミッションに参加しないため『災害』と呼ばれる上位ランカーたちと比べると大分おとなしい印象を与える。

 ――のだが、ごく稀に散歩と称してハードコアディメンション・ヴァルガにふらりと出没することがあり、ヴァルガに降らぬはずのない『明るい雨』を降り注がせる。

 

 ダイバー『クオン』とは彼女のお散歩配信中に邂逅し、そこから出来た縁から殆ど意識していなかった交流の幅が広がる。

 無自覚な仕草で何度もクオンを蒸発させているが『変わった子じゃの』という認識で実はあまり自覚していない節がある。もしくは本人なりの悪戯心かもしれない。

 またクオンの設定から着想を経て、オデュッセウスガンダム+ペーネロペーユニットの改造機『禍津天照』を密かに製作し、第二次有志連合戦で投入したのだが、これを後にフォースメンバーである『クーコ』によってクオン本人の目の前で配信中に暴露されたことがある。

 これにより「実はあの時、ちょっとノリノリだったのでは?」という疑惑が浮上。

 

 彼女に纏わる都市伝説があり、かつて悪質なゴシップダイバーがテンコのリアルを暴こうとあの手この手で入手した情報を元手に、スレを立てて実況しつつ凸するも、そこには山奥に佇む寂れた神社しか確認できず、そのゴシップダイバーは翌日、気を失った状態で保護されたというもの。

 真偽こそ不明ではあるが、当時のスレを実際に見たという情報が多数あり、実況は神社を見つけたという報告以降途切れて落ちたという。

 

 ――リライズ編――

 第二次有志連合戦から2年後も変わらず10位に君臨している。

 あれ以降、どこか吹っ切れたようで少しずつだがバトルミッションへの参加頻度も上がっている様子。

 また2年の間には、決着をつけるため、ヴァルガを舞台にしたチャンプのガンダムトライエイジマグナムとテンコの天道天照のバトルではヴァルガが半壊するほどの激闘を演じ、最終的に引き分けに終わっている。

 その日だけは喧騒に満ちるヴァルガは静寂に包まれ、集ったダイバーたちもバトルを忘れて外縁部に観客として避難したこの出来事は『ヴァルガの静止した日』として語られているとか何とか。

 本当の決着は後のガンプラフォースバトルトーナメントで果されることになる。

 

 

 ――使用ガンプラ――

 使用ガンプラは何れも和風的な改造を施され、『天照』と言う名前が付き、大部分をクリアパーツで形成した日輪を背負っているのが特徴。

 殆どは白銀を基調とし、各パーツを赤く彩っている。

 全てにifsユニットが搭載されており、攻防一体の性能を発揮する。

 

【天照水晶】

 最初期に使用していたガンプラ。

 SDZガンダムをベースにし、装甲全てがクリアパーツという特殊な機体。

 GBN内では紙装甲と言っても過言ではないほどの防御をifsユニットの攻防一体で補っていた。

 

【天帝天照】

 第10回から使用し続けているプロヴィデンスガンダムの改造機。

 ドラグーンを増設し、ifsユニットによる100を超えるifsビットを全てマニュアルで操作し圧倒する。

 オールレンジ兵装による射撃編重かと思わせておきながら、実はプロヴィデンスガンダムが元々近接機であったことをそのまま利用した4本の大出力ビームサーベルを装備している。

 背部のドラグーンユニットは色味が異なる三重構造のクリアパーツの日輪に置換されており、その周囲をドラグーンが囲う形になっている。

 

 

【天照大稲荷】

 第一有志連合戦で使用したゲーマルクの改造機。

 支援機としての機能に特化しており、アブソーブ/ディスチャージを搭載している。

 頭部アンテナを廃し、代わりに狐耳アンテナを取り付けている。

 本来メガ粒子砲が備わっている胸部や股間部、肩部、両脚部には球体型の緑色のifsユニットを埋め込み、自らのトレードマークであるクリアパーツで形成された日輪を背負っている。

 特徴はマザーファンネルの改造兵装『マザーifsファンネル』とリペアビット群。

 補給機材を内蔵したビット群で、搭載された狐耳ハロが自動で補給を行う。

 またifsユニットによる防御フィールドを形成できる。

 

 

【禍津天照】

 第二次有志連合戦で使用したオデュッセウスの改造機。

 一部にマスターガンダムやプロヴィデンスガンダムのパーツを使ったミキシングビルド機。

 和風的であることは勿論、色合いは黒と紫に彩られ、禍々しい姿はラスボス然としている。

 額、胸部、両肩部、両膝部にifsユニットを搭載。アンテナは廃し、エネルギーがアンテナを形成する。

 自身の象徴とも言える輝かしい日輪も『マガツヒノカミ』として不気味に鈍く輝く。

 実はクオンの設定から着想を経て製作されたもので『テンコ版終末の怪物』である。

 

『禍津矛盾(マガツホコタテ)』

 名前以外は元キットのビームユニットそのまま。

 ビームサーベルとメガ粒子砲を内蔵している。

 

『禍津烏(マガツカラス)』

 ペーネロペーの由来であるフライトユニットの改造武装。

 三本のクローアームに加え、ドラグーンとifsユニットを搭載している。

 また原点同様ファンネルミサイルを内蔵。

 独立した支援ユニットで、マザーファンネルの役割を担う他、ifsユニットで操作した力場を纏って突撃することができる。

 禍津天照と合体することが可能で、その姿はさながら『黒魔神闇皇帝』のよう。

 加えて分離したパーツで対象を拘束することも可能。

 

『禍津日神(マガツヒノカミ)』

 展開式の6基のソードユニットからなる背面武装。

 ヴォワチュールリュミエールとゴッドガンダムのバックパックを参考にしており、全てのソードユニットには球体状のifsユニットが埋め込まれている。

 稼働することで禍々しい紫の日輪が形成される。

 最大出力では紫の日輪の外側に更に白い日輪が形成された二重日輪となり、さながら日蝕のような外見となる。

 ヴォワチュールリュミエールとしての推進力、強力なバリアフィールド、特殊属性故に特定の装甲に防がれない攻撃――と言った驚異的な攻防一体を発揮する。

 また余剰エネルギーを放出する際、九本の尻尾のような形状となる。

 

『ダークネスフィンガー』

 手首部分をマスターガンダムのものへと置換しているため、発動できる。

 

 

【天道天照】

 天帝天照に代わるテンコの新しいガンプラ。ガンダムレギルスをベースにしている。

 原典機のアンテナを廃し、額に埋め込んだifsユニットがエネルギー状の狐耳を形成する。

 背部にはクリアパーツで形成された日輪を背負い、胸部や肩、掌や額にも同様にifsユニットが埋め込まれている。

 レギルスキャノンはオミットされており、代わりにエネルギーで構築された九本の尻尾が放出される。

 

『ヤサカニノマガタマ』

 両腕、両脚に備わったレギルスビットを放出するためのシールドアーマー。

 レギルスシールドを削って作られた装備である。

 

『アメノサカホコ』

レギルスビットを極限まで収束させて放つ光の槍。

(初出は守次奏様の二次創作品『ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ』より)

 

『アマノイワト』

 レギルスビットを、自身を包むように展開する防御形態。

 

『アマノムラクモ』

 大型弓に改造したレギルスビームライフルの名称。

 弓の両側がコの字型に展開することで大型サーベルにもなる。

 

『マフツノカガミ』

 2年越しに明かされたifsユニットの日輪の正式名称。

 アブソーブ/ディスチャージ機能を備える。

 頭上に掲げることで集束したエネルギーを落とすように放つ必殺技『天道神柱』を放つ。

 所謂極太のソーラーレイ。

 その光景はさながら天から指す光の道柱のよう。

 

 

【天照神威】

 アルス戦にて披露された決戦用のガンプラ。

 天道天照――ガンダムレギルスをベースにゴッドガンダムを掛け合わせている。

 背部には日輪と組み合わせたゴッドガンダムの背部スタビライザーを、胸部にはエネルギーマルチプライヤーシステムを使用し、より自在にエネルギー操作を可能としている。

 さらにジャンダルムの羽衣ブースターを九基スクラッチし、物理的に九尾を再現。折り畳むことも可能で邪魔にならない工夫も施されている。

 柔軟性のある金属素材を使用しているらしく、生物的な動作を実現している。

 原典艦同様にIフィールドにより単独で大気圏での飛行を可能としている他、これ自体が接近戦の武装、並びにビーム砲として機能する。

 テンコが付けた名称として『クサグサノモノノヒレ』とあるが、あまりにも長いのと言いにくいため、周囲からは専ら『ハゴロモ』と呼ばれる。

 基本的には推進器としての役割が強い。

 

 またSFSとしてファルシアベースの改造機『タルタマ』があり、五基のファルシアビットを内蔵している他、外縁部周囲に存在する三基の球体型ifsユニットを軸に花弁のようなビームフィールドを発振させることで太陽花めいた状態となる。

 クーコの月華武者ザンキのツキフネを参考にしており、シールド兼ブースター兼アタッカーとして機能する。

 

 その他の装備は天道天照と変わりはないが、リアアーマーに『ヤサカニノマガタマ』が増設されている。

 アルル戦時は未完成だったため、ゴッドガンダム特有のゴッドフィンガーなどの必殺技は使用できなかったが、後に完成したことで使用できるように。

 またエネルギーマルチプライヤーシステムを応用して『烈日モード』を発動でき、これは全身に気を巡らせることで機体性能を向上させるというテンコ版ハイパーモードである。その際には機体全身がガンダムレギルスRのような赤に変色する。

 第15回ガンダムフォースバトルトーナメントではこれを用いチャンプと対戦。

 一進一退の激しい攻防の末――?

 

 チャンプが一作品の機体をとことん作り込むのなら、こちらは他作品の要素を組み合わせたガンプラならではのミキシングで作り込んでいる。

 

 

【天照太陽】

 SDガンダムレギルスをベースにしたテンコのもう一つのガンプラ。

 上位ランカーとしてではなく、一人のダイバーとしてGBNを楽しむ際にはこちらを使用している。

 原典機同様、スリット状センサーをしているが、展開するとSDガンダム特有の瞳付きツインアイが現れる。

 額にifsユニットの日輪を掲げ、左右から真っ赤なエネルギーアンテナが迸る。

 レギルスキャノンをベースに、マフツノカガミと輝羅鋼を組み合わせた日輪から翼の生えた鳥型支援ユニット『光輝鳳凰』を背部に装備。

 ヤサカニノマガタマをリアアーマーにも増設し、更に錫杖型の武装『アメノホヒ』を新たに装備している。

 環状の先端からifsユニットを用いたビームサーベルを自在に形成することで薙刀、槍、鎌の三種の機能を発揮することができる。

 また持ち手をスライドさせながら戦うことで、攻防の移行をスムーズにし、間合いを掴みにくくする技術でSDの弱点であるリーチ不足を補っている。

 見た目は完全にSD武者のソレだが、ifsユニットの配置は天道天照のままで変わっていない。

 必殺技は放出したエネルギーを前進に纏い、自身を太陽の化身『白い烏』として突撃する『太陽鳥(サンバード)』。命名はクーコ。

 大本のモチーフは『太陽龍頑駄無』であるが、上記の通り龍ではなく鳥を採用している。

 

 

【新世天照大将軍】

 新世大将軍をベースに改造を施されたテンコの新機体。

 派手なアンテナ部は取り外され、ifsユニットである球体パーツが埋め込れており、起動時に赤と青のエネルギーが放出される。

 胸部中央には三色の玉『心技体の結晶』を内蔵したエネルギーマルチプライヤーシステムを採用している。

 クリアパーツで構築された九本の『羽衣九尾』が存在し、これら全てが分解することで肉眼では無数にも見えるほどの細かな結晶体となる。

 テンコの意思に応じて様々な形状を構築する他、ifsユニットとは違う『特殊な力場』を形成することで攻撃力や防御力を強化し、果てには推進力ともなる。

 日輪『マフツノカガミ』は従来よりも厚くなっており、中心から縦に分割することで半円形状の翼に変形するギミックが施されている。

 肩部、腕部、脚部に『ヤサカニノマガタマ』を装備し、レギルスビットによる攻防も健在である。

 背部両側には長方形の和風ヴェスバー『破邪陽光砲』を備え、両脇から伸びる形で展開する。

 手持ち武装に軍配型の装備『太陽軍配』があり、中心に埋め込まれたクリアパーツによりエネルギー弾を放ったり、刃を形成して近接戦闘に用いられる。

 エネルギーマルチプライヤーシステムで全身にエネルギーを漲らせることで黄金色に染まる『真・烈日モード』と呼ばれる強化形態も備える。

 必殺技は三つあり――

 拳にエネルギーを集中させて殴る『破邪豪爆・火守斗(ビスト)神拳』

 胸部にエネルギーを集中させて放つ『破邪滅却・太陽砲(サンブラスト)

 全身にエネルギーを纏い突撃する『魔却消滅・太陽炉心(サンドライブ)』などがある。

 また必殺技使用時にはバイザーが下りたり、強化形態時にはフェイス部分が展開するなどのギミックも仕込まれている。




筆詰まりしているので息抜きの投稿お嬢様。

設定上に言及されている『クオン』は青いカンテラ様のビルドダイバーズの二次創作小説『GBN総合掲示板』に登場するキャラクターですわ。かわいいので一読をオススメわよ!

フォース名:天地神明
フォースランク:10位
フォースリーダー:テンコ
概要:
第n回フォースバトルトーナメントを制したフォース。
フォースネストはアジアンサーバーの霧に包まれた山の奥に佇む神社。
メンバーの一人『マミ』が、フォースネストの改築などを行うダイバー『シモダ』と協力し、幾度と改築を繰り返した結果、現在では神社と旅館が一体化したような施設となっている。
温泉や宴会会場なども完備し、近場には露天風呂が湧き出ている。
実際に宿泊することもでき、予約制ではあるものの、天地神明と親しいダイバーたちが泊まりにくることがある。
フォースは和風要素で統一されており、メンバーのガンプラも基本的に日本神話や妖怪に由来する名前が付けられているのが特徴。
優勝以降の第14回まではテンコ不在で、サブリーダーを筆頭に参加するも、毎回惜しい所で敗退している。
メンバーが決して弱いというわけではなく、テンコの実力がそれほどまでに高いのだ。
そういった面では『AVALON』に似ているとも言えるが、少数精鋭であるため、メンバーの熟練度は平均以上が多い。
フォースメンバー新規加入者募集も担うフォースイベント『天地神社大祭り』を季節毎に一回行っている。
数多の露店が立ち並ぶ様は、日本人ならかつての子供心をくすぐられることだろう。

――フォースメンバー――
【クーコ】
 サブリーダー。個人ランク11位。空色の髪の人狐の少女。
 第14回までのフォースバトルトーナメントでテンコの代わりを務めた。
 チャンプと渡り合うほどの実力はあるのだが今一勝負運がない。
 使用ガンプラは二種類。
 フォース戦ではスターゲイザーの改造機『星光月夜見(セイコウ・ツクヨミ)』
 個人戦ではザンネックの改造機『月華武者ザンキ』
 リライズの頃はSDスターゲイザーの武者風改造機『月夜見丸』を使用している。


【カイラ】
 毛先の尖った赤色の髪の狼耳の少女。八重歯で太眉。鋭い目つきの三白眼。
 テンコと殆ど同じくらいに背が小さい。145㎝くらい?
 ノースリーブの和装に、下はスパッツを履いているのみ。
 籠手や臑当を着用し、右腕には鉢巻を巻いている。
 太眉は逆八の字を描いている。
 一人称は『あたし』 二人称は『あんた』『お前』など。
 口調は小生意気、というよりも勝気で強気。

 第n回ガンプラフォーストーナメントを制した『天地神明』の最古メンバーの一人。
 攻勢に特化した野性的なバトルスタイルを最も得意としている。
 少数精鋭の天地神明のメンバーだけあり、その技量は確か。
 クーコと違い、ほぼほぼ直感と勘どころ頼りなのだが、それが却って相手の意表を突くトリッキーなマニューバに繋がることが多い。
 主に同型のガンプラを複数体組み合わせた多腕の異形ガンプラを使いこなす。
 ガンプラフォーストーナメントではエミリアとカルナを相手取ることが多かった。
 第一次有志連合戦はテンコの言葉を受けて待機し、第二次有志連合戦では無断で出撃しようとしたクーコの足止めに出るが、決意が揺らいでいたために、頑なな決意のクーコの前に成す術もなく敗北している。
 2年の間では、どこからか拾ってきた新メンバーの『ヤコ』の世話係を任されており、彼女の『身体造り』も行った。
 リアルではガンプラバー『やきんどうえ』で働いているらしいが?
 使用ガンプラはスサノオの改造機『阿修羅素戔嗚(アシュラ・スサノオ)』
 スサノオ三体を組み合わせた機体で、三つの顔、六本の腕、四本の脚を有する。
 これに伴いシルエットも大型化している。
 腰の可動域に拘り、360度全方位を向けるようになっている。
 武装自体は原典機のものをそのまま使用しているが、腰周りの改造に伴い疑似太陽炉は背面に移植されているものの、原典機と違い一基のみとなっている。
 その他にはハイモックのSD頑駄無を意識した改造機『鉄鬼丸』など。


【マミ】
 太すぎず細すぎない『ふっそり』とした体型をした人狸の眼鏡女性。
 青緑色のセミロングで、緑の着物をまとい、やや垂れた糸目。
 人畜無害そうなのほほんとした微笑みをいつも浮かべている。
 京言葉のような訛りが目立つ。
 一人称は『ウチ』 二人称は『○○はん』『あんた』『あにさん』『おねさん』など。
 外見通りのほほんとした性格でマイペース。
 群よりも個な人物で、ゆるゆるしている。
 ただ金勘定が好きなようで、お金はあればあるほど良いと豪語している。たくさんガンプラ買えるし。
 堅牢な防御力で攻撃を尽く無力化し、その防御力で押しつぶす姿から、通称を『緑の畜生狸』と呼ばれている。
 イヅナと二人で『天地神明のマルちゃん』として恐れられている。
 使用ガンプラはジ・Oの改造機『万福思金(マンプク・オモイカネ)』
 ifsユニットを搭載した二基の番傘型の攻防兵装を活用する。
 スラスターを増設しており、原典機同様に見た目に割に機敏。動けるデブ。
 深緑色を基調とし、各部を茶色で彩っている。
 リアルでは旅館『竹屋』を経営している若女将『ヤサカ•マサミ』。
 伝説のガンプラビルダー『プラモ狂四郎』を始めとした著名な人物たちが宿泊したことがあるなど、ビルダーたちの間では聖地として認識されている。
 因みに旧姓は『クロマル』であり、叔父『クロマル・イッペイ』はプラモ狂四郎の弟子であったとされる。
(正確には直接的な師弟関係ではなく、プラモ狂四郎が残したプラモ秘伝帳を授かっただけである)

「ウチはマミ言います。よろしゅーに」
「まいどー! 呼ばれて飛び出てマミちゃんどすえー」
「おおきにー。ま、借りは借りたまま踏み倒すのがウチなんやけどね。……冗談やんね。そう睨まんといて」


【イヅナ】
 赤い紋様を描いた薄く日焼けした肌と、金色と茶色の間の色――クリーム色の長髪の狐耳ダイバー。
 180㎝の高身長で、赤を基調とした丈の短い現代風巫女服を着用。
 軽薄な性格ではあるものの、気ままなマミと違って、言われたことはさり気なくきっちりやるタイプ。外見は狐だが、内面は猫にみせかけた犬と揶揄される。
 天地神明の目――即ち、索敵を担当している。
 自身はフィールドのどこかに身を隠して、索敵と罠で相手を翻弄することを得意としており、その様子から『赤い外道狐』と呼ばれている。
 索敵担当だが、少数精鋭の天地神明に所属しているだけあって、戦闘能力は割と高い。
 クオンのクリエイトミッション『終末を喚ぶ竜ver2.0』を、チームを組んでの挑戦であったとはいえ、ギリギリでクリアできた程には高い技量を有する。
 リアルでは『センボンギ・イズナ』という名前の女性。
 漢字表記で『千本木・出雲奈』。キンコとギンコとは姉妹である。

 一人称は『あちき』 二人称は『あんた』『〇〇ちん』
 マミ、キンカとギンカだけは呼び捨て。

 使用ガンプラはバウンド・ドックの改造機『外道飯綱丸(ゲドウ・イヅナマル)』
 九尾を模した多機能ビットを使用する。


【キンカ&ギンカ】
 金髪と銀髪の犬耳の少女。狛犬。メンバーの中で最も幼い見た目。
 一人称は『キンカ『ギンカ』『我々』 二人称は『○○様』『貴方様』など。
一人の時は口数は少ないが、二人の時はちゃんとしゃべる。
 幼さを残しつつも『~でございまする』など、微妙に古臭い感じの敬語で交互に喋る。
 使用ガンプラはガズアル、ガズエルの改造機『風神&雷神』
 脳内Gの影忍幼女。必殺技は『ミノフスキー大旋風』
 「吹けよ風ーっ!」「呼べよ嵐!」
 「「ミノフスキー大旋風ーっ!」」


【ヤコ】
 茶髪の片目が隠れた人狐。唯一のBランク。
 牡丹柄の赤茶の着流しを愛着している。灰色の瞳。
 因みに狐耳は生えているのではなく、付け耳。
 一人称は『わたし』 二人称は『きみ』
 使用ガンプラはイフリート改の改造機『野狐霧(ヤコキリ)』
 鋸状の刀を腰に2本と、鎌状の刀を肩に2本、長刀を背面に2本、太腿のウェポンラックに短刀を2本の計8本を装備した純近接仕様。
 肩と胸部に内蔵した特殊ミスト散布機構『煙霧』によって周囲一帯に発生させた霧に紛れて斬り捨てる戦術を用いる。
 このミストは範囲を自機周囲にのみ絞ることでビームかく乱膜としても機能する。
 第二次有志連合戦以降の2年の間に加入した新入りで、その正体はヴァルガで保護された8人目のELダイバー。
 『8人目の子』だから『ヤコ』らしい。
 『バトルを楽しみたい』という想いから生まれた存在。
 早期に保護されたものの、他のELダイバーと比べて言語リソースが低いのか、口調は大分幼い。
 オーガと似て戦闘好きだが、別ベクトルでの戦闘好きなので、所謂戦闘狂までとはいかないらしい。
 ただ周囲からすればそんなに変わらない。何故かモノアイも好き。
 生まれた場所であり、制限のないヴァルガが肌に合っているらしく、カイラの都合さえ合えば彼女を保護者にして入り浸っている。
 ふいに霧が濃くなってきたらヤコが出現した合図。背後に気をつけよう。
 そのバトルスタイルから『煙霧の辻斬』と呼ばれている。
 ヴァルガでの主な活動時間帯は午前が多いことから『朝霧のヤコ』とも。

「ヤコ。わたしのなまえ。きみは、だれ?」
「たたかうは、たのしい。つよくなる、ただしい?」
「わたし、たたかうの、すき。かつと、うれしい。まけるは、いや。いたいの、がまん」
「むりすると、おこられる。しんぱいさせるのは、だめなこと。わたしかしこい!」


【テンソ、リュウセン】
 鼠耳の少女と龍角の女性。第二次有志連合戦までは休止中。
 2年後に無事に復帰しているが。リアル優先なのでログイン頻度は低い。
 そのため、どちらもランクA止まりで個人ランクは圏外。
 テンソはウァッドの工兵仕様『スクナネズミ』を、リュウセンはレッドフレームをベースにした改造機『獣王武神·破牙丸(バキマル)』を使用する。
 両名とも次元覇王流を含む様々な武術の使い手らしいが――?


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人物列伝2『クーコ/ヒムロ・ソラ』(修正中)

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【クーコ】

 ダイバールックは空色の髪を後ろ手に束ねた人狐の少女姿。

 テンコよりも一回り背が高い。160㎝くらい。

 丈の短い袖なし巫女服。下袴は青く、スパッツを履いている。

 背に二本の刀アクセを着用。

 前髪で右目が隠れている。頭部には斜めにかけた青い狐面。

 眉は八の字。口はへの字。

 一人称は『私』 二人称は『貴方』など。

 口調は敬語だが、言葉遣いは割と軽い。

 真面目そうな反面、変なところで律儀だったり大雑把だったりする。

 

 ランク10位のフォース『天地神明』のサブリーダー。個人ランク11位。

 第11回~第14回フォースバトルトーナメントではテンコ不在で敗北を重ねており、その結果で実力自体は低く見られがち。

 しかし、天地神明のサブリーダーだけあって実力はかなり高い方である。

 対AVALON戦では高い対応力で斬り込み隊長としてチャンプと幾度となくぶつかり、時にはフラッグ機が落とされるまで足止めし続けたほど。

 第11回は弾いたビームの流れ弾がフラッグ機に直撃し敗北。

 第12回は半壊させたFファンネル一基を見落とし、フラッグ機を貫かれて敗北。

 第13回は必殺技が衝突した余波にフラッグ機が巻き込まれ敗北。

 第14回は自身をフラッグ機に設定しチャンプとタイマン。相打ちに持ち込もうとするもコンマの差で敗北(ZZvsキュベレイの再現みたいだとちょっと話題に)

 等々、毎回あと一歩のところで敗北している。

 その為か周囲からは『不運のクーコ』と言う渾名を付けられてしまう。

 そういった経緯で『テンコありきのフォース』という印象を拭えず、フォースの新規加入者も少ないという現在に繋がっている。

またテンコのリアルを知る人物でもある。

 

 クーコ本人の技術・技量はGPDから積み重ね続けた努力の賜物。

 テンコの隣に並ぶために努力し、学び、琢磨し、研究を繰り返してきた。今も、そしてこれからも。

 

 第二次有志連合戦後、クオンの配信にテンコと共にお邪魔して、禍津天照がクオンをリスペクトして作られたもの――言わば「テンコ版終末を呼ぶ怪物(妖狐)」だと暴露し、クオンを蒸発させ、テンコを赤面させた。

「どうです。今度はお二人で乗るタイプのものを作っては?」

 

 個人11位ではあるが、入れ替わりが激しいランク帯であるため、常に11位を維持できているわけではない。ただ誰よりも長く維持し続けている期間が長い。

 その過程で個人ランク13位の『クオン』とは幾度となくぶつかりあう仲となっており、昇格戦では一種の名物バトルとして定着しつつある。

 テンコとは違い、ガンプラの数を絞って改造しているため、GBNに用いるための新しいガンプラはあまり作らない指向にある。

 物持ちが良いとも愛着が強いとも言う。

 

――リアル――

 『ヒムロ・ソラ(氷室・空来)』と言う名前の女性。

 元を辿れば戦時に発足し、戦後も幾度かの縮小や改変を繰り返してきた各地の忍者で構成された諜報組織『氷室機関』の末裔にあたるらしい。

 今でもこの氷室機関は裏側で動いているという都市伝説こそあるが、とうの本人はそんなことなど知ってか知らずか、ただガンプラとGBNを楽しむ日々を過ごしている。

 そもそも彼女のおじいちゃんおばあちゃんは実家で小さな雑貨店を営んでいるので完全に眉唾物である。

 若い頃はG研に所属しており、そこで天地大河、豪多亜留、杉本ヒロシを師匠として鍛えられた。

 

 現在はフローレンス工業同様、GBN開発にも携わった過去をもち、独自の立場を有する『アマツチ(天地)家』と親交があったため、上京の際に保有する山の中に建つ『天地神社』の巫女という体裁で住まわせてもらっている。

 外見もダイバールックと同じく前髪で右目が隠れている。髪色は青みがかった黒。

 この隠れた右目だが、実は義眼であり、周囲には薄っすらと傷跡が残っている。

 定期的に参拝にやってくる『古風な喋り方をする白髪の少女?』とは親しい様子。

 

 そもアマツチ家自体、大きすぎもしなければ小さすぎもしない規模と影響力を有し、そこに確かに存在しているという謎の多い一族で、かつて『G研』と呼ばれる組織を運営していたこと、古今東西の珍品を集めている『蒐集家の一族』であること、GPD以前のガンプラバトルシステム『プラモシュミレーション』『バトルシュミレーター』のシステムや『バトルボール』や『Gポッド』などの現物を保有、保管していることで知られている。

 『アマツチ幻想館』なる博物館と模型店を一体化させた建物を開放しており、既に絶版して久しいガンプラや、過去に行われた『ジャパンカップ95』や『BCPC(バイオチップ・プラモ・コントローラー)』『ガンプラスピリット理論』『ホビートピアAI暴走事件』などのガンプラバトルに関する歴史的資料を(公開できる範囲で)公開している。

 館内では様々なハロがガイド役を務めている。

 平日はクーコもここで働いている。

 

【コンピューターG3】

 幻想館の最奥に存在するハロ型のGポッドver1.05。

 厳密にはスーパーコンピューターであるとされる。

 内部はすっかり改造されており、ダイバーギアや立体ホログラムを内蔵した白い狐ハロが接続されている。

 その中身はクラフト・マンと呼ばれる自意識を有したゴースト『ver1.05(テンコ)』。

『SF――近代科学の行きつく先、ある種の特異点。あるいは我々が生み出した、ガンプラ魂による新しい生命の在り方。彼女はそういう存在かも知れない。

 ――しかし、それはあくまで我々の希望を内包した憶測でしかない。

 もしかしたらゴーストとして宿る前から彼女は既に存在していて、偶々こちら側に来れる条件が揃ったからこそ、我々の前に現れたのかも知れない。

 大昔の人々に倣うのならば、それは神様というものだと考えてもいる』

(19××年、K.K(カワグチ・カツミ)と名乗る人物の書き置きより)

 

『ってことは、おれたちは初めて神様にガンプラを教えた人間ってことになるのかー!?』

 (19××年、G研所属、天地大河のメッセージより)

 

 

【月華武者ザンキ】

 ザンネックを武者風に改造したガンプラ。

 薄紫を基調とし、各パーツを青で彩っている。

 頭部は甲冑風に整えられ、額と胸部にifsユニットを内蔵している。

 額のifsユニットからは黄色いビームが三日月状となって放出される。

 両肩には鬼を顔を思わせるパーツ配置を施した鬼面盾を装備。

 強い、固い、デカい、怖いの四拍子を揃えた災害。

 

・アマミツツキ(天満月)

 ザンネックキャノンの改造武装。

 柄尻の湾曲パーツが斧のようになっている。

(ヒートホークを取り付けたとも表現される)

 斧部分は高熱により赤く輝く。

 『ミニカイラスギリー』と呼ばれたように、その威力はチャンプのEXカリバーと拮抗するほど。

 ビームの色は真紅。

 原作同様チャージに時間がかかるため、近接にも対応できるように改造されたものと思われる。

 砲身を折り畳み腰後部にマウントする。

 

・ツキカガミ(月鏡)

 両腕に取り付けられた細長いコの字型のアブソーブシールド。

 

・ムーンライト(月光)

 ツキカガミに内蔵された青いビームサーベル。

 コの字の間から形成される。ビームウィップにもなる。

 何故かこれだけ横文字なのは、ゲッコウの名称が安直すぎたのではと思ったため。

 

・ツキフネ(月船)

 満月のように改造されたザンネックベース。

 アブソーブ機能とビームシールドを内蔵し、降下時の迎撃から機体を防御する。

 また機体から離れても遠隔操作可能。

 更には外縁部にビームリングを形成し、これを敵機に接触させる体当たり攻撃も可能となっている。

 シールド兼ブースター兼アタッカーとして機能し、無駄なく多機能で隙がない。

 

・ツキガサ(月暈)

 肩後部に存在する三日月状の開放型粒子加速器。

 ヴォワチュールリュミエールとミキシングしており、稼働時は黄金色の粒子が光輪を形成する。

 折り畳んだ状態で稼働することで光の翼を再現可能。

 ifsユニットにより弱点としての部分を補い、また粒子を刃状に形成し、ソードビットとしても扱える。

 

・流星丸

 腰に佩いた長刀。

 実際に隕鉄で作り上げたガンプラ版流星刀。

 摩擦熱で赤熱させることで攻撃力を上げる。

 

・月影

 腰に佩いた短刀。

 流体金属でできており、抜刀時に刃を形成する。

 切れ味も優れ、流体故の可変性を以て多彩な攻撃を可能としている。

 

・鬼面盾

 両肩部に装備した盾。

 配置的に鬼の面に見えるようになっている。

 鬼の目の部分はビーム砲であり、口にはビームを喰らうアブソーブ機能を搭載。

 

・サイコミュソナー

 サイコウェーブを増幅・発信することで常識外の索敵能力と得ることができる。

 この見えない波に僅かでも引っかかった対象の情報を反映する。

 これにより超長距離精密射撃を可能としている。

 またサイコミュ系を相殺、中和することもできる。

 

・音叉装甲

 一時猛威を振るったDG細胞やELSなどの侵食系への対策として生み出された機能。

 超音波と超振動によりそれらが付着する前に弾き払い無効化する。

 物理系にも有効で弾いたり逸らしたりもできる。

 

 

【星光月夜見】

 スターゲイザーの改造機。出番がないため詳細不明。

 悲しいかな『使うと負ける』と言うジンクスがある。

 

 

【月夜見丸】

 正式名称は『天星武者・月夜見丸』。白銀に青のカラーリング。

 SDスターゲイザーをベースに『初代頑駄無大将軍』や『豊臣秀吉頑駄無』などをミキシングしたガンプラ。

 初代頑駄無大将軍の光輪を中心にヴォワチュールリュミエールを組み合わせた『二重月輪(フタガサネゲツリン)』を装備し、ハードポイントを備えた細長い三角形型の大型ファンネル『トツカノツルギ』が計10基、周囲に配置されている。

 大型ファンネルはコの字型のグリップを採用したダブルバレルライフルの上からソードフレームを装着した構造をしており、ソードフレーム先端に二つの銃口が覗いている。分離してソードファンネルとしても使用できるが、グリップ部分を手に持つことで銃剣としても活用可能。更にファンネルは分割することが可能で、ファンネルを狙った攻撃をこの機能で回避することができる。

 特筆すべきはファンネル同士を組み合わせることで様々な武器へと形態を変えることができる点。

 大型剣、槍、斧はもとより、弓や砲塔、盾にもなる。

 ただしあらゆる状況で最適な形態を瞬時に選択しなければならないと言う対応力を求められるため、恐らくクーコ以外には十全に扱い切れない仕上がりとなっている。

 額にはifsユニットを埋め込み、エネルギーが三日月状に形成される。最大稼働時は満月となる。

 加えて両肩部にもifsユニットを搭載し、エネルギーで形成された翼のような刃が放出される。

 武者とあるが、装甲自体はそれなりに丸みを帯びているため、従来の武者頑駄無と言うよりは『武者○伝』のデザインに近い。

 頭部からは狐耳アンテナを取り付け、腰には愛刀『SD流星丸』と『SD月影』を佩いている。

また臀部にフレキシブル構造の狐の尻尾を取り付けており、これは複数のスラスターを搭載し、より機敏なマニューバを可能としている他、先端にサーベルとライフルを切り替えられるビーム発振器を内蔵している。

必殺技は束ねたエネルギーを矢にして放つ『月光弓』である。

 アルス戦の際に初披露されたクーコの新たな新機体であり、今までの『テンコの代わり』ではなく、自分自身の得意とする『本来のクーコ』という形で作り上げた。

 これにより彼女がリアル系よりもSD系が得意なSDガンダム使いであることが判明した。

 

【天星武神・天壌夜叉】

星光月夜見―――スターゲイザーを更に改造したクーコのガンプラ。

月夜見丸のリアルグレード版と言うコンセプトで基本的な部分は共通している。

相違点として小型ファンネルが5基追加されていることと、二重月輪がヴォワチュールリュミエールを二つ使用したものになっている他、胸部に狐面を模した飾りが取り付けられている。




元ネタは大体狂四郎だったりG野郎だったりするのですわセバス。


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人物列伝3『テトラ/サザキ・コトラ』(R3.6/2追記)

ギャンクリーガーネタが被ったので初投稿ですわ。

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【テトラ】

 琥珀色の瞳。八重歯。淡い金髪を後ろに結び、服装は白のスクールシャツと紺色のミニスカート。

 頭部にはピンと先端が尖り立った黒地の虎耳で小麦色の肌なJKルックなダイバー。

 G-チューバーとしても活動している。

 一人称は「あーし」 二人称は「オタクくん」

公の場では敬語になったり、一人称が『私』だったり、二人称が『〜さん』だったりと至って標準的な口調になる。

 

 GPD最後の世界総合大会で兄『サザキ・ジュンヤ』と共に出場し(部門別)、兄同様にギャンを使い続けてベスト16位に昇りつめた若きホープ。

 その実力はGBNでも発揮されており、個人でのワールドランク23位のマギーさんを乗り越えて、現在ワールドランク16位。

 過去――上位ランクに入りたての頃、悪意ある煽動によって炎上させられ、その影響で体調を崩してしまい、引退も危ぶまれた一ヵ月の休止を経て、バトル主体の配信から現在の雑談主体の配信へとシフトしている。

 ギャルという風体とは裏腹に他人に気を遣ったり、意外と小難しい小説を読んだり、おばあちゃんの言いつけを守ったり、ちゃんとお礼を言ったりと所々で育ちの良さが窺える。

 ダイバーの中でも珍しくリアルでもそれなりに有名なため顔も知られている。

 使用ガンプラはGエグゼス風に改造したEXAM搭載高機動型ギャン『Gエグザム』。

 GBNを始めてから多少の変更はあれど、このGエグザムだけでワールドランク16位にまで昇りつめた。

 同級生同士でフォース『北宋の壺』を組んでいる。

 第一有志連合戦の時期には自身のファンである『GHC』所属のダイバー『ユニ(クレダ・ユニ)』とリアルで知り合うことになる。

 おねロリはいいですわよぞ。

 

 

 ――リライズ編――

 第二次有志連合戦から2年後では数多くの激闘を通して成長し、個人ランク4位。

 一時は2位にまで昇り、『ザ・ギャン』を以てチャンピオンに挑むも、激闘の末、あと一歩届かず敗北している。そしてその一歩が果てしなく遠いことを痛感する。

 全力を出し切った反動からか、その後の昇格戦で敗北を重ね、4位に降格してしまう。

 外見も大人びたものへと変化しており、淡い金髪を片側に結び、着崩した白シャツと紺色のホットパンツを履き、腰に上着を巻いた姿。

 小麦色の肌と琥珀色の瞳に八重歯、頭部の先端が尖った黒地の虎耳はそのまま。

 

 

 ――リアル――

【サザキ・コトラ】

 サザキ家の次女。

 瞳は黒で、虎耳がない以外はほとんどGBNのダイバールックと一緒の姿をしたギャル系少女。

 ガンスタグラムで主にギャンを写真におさめた作品を投稿し、さらにサザメスのギャンパーカー紹介ではイメージモデルを務めたこともある。

 この一件からサザメスの提携するGBN内イベントではゲストとして呼ばれることが多い。

 私服は様々なカラーのギャンパーカーを愛着。

 学校でもギャルだが成績のほうも上位に入るくらいには優等生。

 リアルでもGBNでも、自分を偽らない――即ち、自分自身を騙さないことをモットーにしている。

 長男『サザキ・ジュンヤ』

 長女『サザキ・サナエ』

 三女『サザキ・マドカ』からなる逆ザビ家。

 因みにおばあちゃんの名前は『サザキ・ハク』である。

 

 二年後では既に高校を卒業しており、成人を迎えている。

 リアルの都合で学生時代と比べてログイン頻度は減っているが、熱量は衰えておらず、ますます盛んとなっている。

 この頃には妹のマドカもGBNを始めており、時々ミッションの手伝いに駆り出されている姿が目撃されている。

 

 また第一有志連合戦の時期にある出来事でリアルで知り合うことになった『ユニ』こと『クレダ・ユニ』とは付き合っており、すっかり恋人同士である。おねロリいいよね……。

 

 

 ――ガンプラ――

【Gエグザム(初期)】

 GエグザムのGはギャン(GYAN)のG。

 Gエグゼス風の改造を施した高機動型ギャンで『ガンダムネットワークオペレーション』に登場したギャンEXAM搭載型を元に、EXAMシステムを搭載している。

 頭部には虎耳パーツ(Iフィールド発生装置)が取り付けられており、何かちょっとかわいい。

 ギャンを象徴するミサイルシールドは肩に取りつけており、肩に装備したサイドアームを可動させることで防御を行う。

 このシールドの強度が異常に高く、vsマギーさんではこれによってフルバーストを潜り抜けることに成功している。

 色合いはGエグゼスとホワイトタイガーを意識して白を基調とし、黒のラインを入れている。

 細長いビームサーベルを指に挟む形で左右に三本、計六本を装備した戦法『ガンプラ心形流・快刀乱麻』を使用する。

 実はシールドはテトラの兄、ジュンヤ謹製の逸品。

 必殺技はシールドを相手に叩きつける『GXガードクラッシュ』

 応用技として衝撃波を発生させることも可能。

 

『ビームサーベル』

『シールドミサイル』

 いずれも元キットの武装。

 

『小型ビームサーベル×6』

 指に挟むことで左右に3本、計6本を同時に扱える。

 通称『ガンプラ心形流・快刀乱麻』

 

『EXAMシステム』

 発動中は機動力、追従性の劇的な向上に加え、ブースト消費量の半減などを恩恵を受けられる。

 ただし効果時間が過ぎると一時的にブースト消費量が増大するなどのリスクも伴う。

 

 

【Gエグザム(第一有志連合版)】

 見た目は特に変化はないが、支援機として新たにGバードを備え、シールドを二枚に増やしている。

 

『ビームサーベル』

『シールドミサイル』

『小型ビームサーベル×6』

 

『Gバード(未完成)』

 ネオガンダムの武装「G-B.R.D」を改造したもの。

 左右に増設したフレキシブルアームの先端に取り付けた二基のギャン盾を翼に見立てた支援機。

 Gバードそのものは巨大なビームランスを形成することができ、またブースターと一体化しているため驚異的な突進力を発揮する。

 

『EXAMシステム改』

 リミッター搭載型。

 機動力と追従性を強化し、オーバーヒートを起こさないように抑えられている。

 その分、元々のEXAMシステムより性能は控えめ。リミッターは解除可能。

 

 

【Gエグザム(第二次有志連合版)】

 EXAMの派生である妖刀システムを元にした『KATANAシステム』を搭載している。

 

『ビームサーベル』

『シールドミサイル』

 いずれも元キットの武装。

 

『小型ビームサーベル×8』

 指に挟む形で左右に4本、計8本を同時に扱える。

 通称『ガンプラ心形流・オロチの型』

 

『Gバード(完成)』

 ネオガンダムの武装『G-B.R.D』二基を改造した背面装備。

 二基をH状に並列接続し、後部には推進器に作り替えたヴェスバーを備え、左右に増設したフレキシブルアームに取り付けた二基のギャン盾を翼に見立てた支援機。

 Gバードそのものは巨大なビームランスを形成することができ、また増設したヴェスバー型ブースターと一体化しているため、以前と比べるまでもなく驚異的な突進力を発揮する。

 合体後、シールドは両肩のサブアームに移設する。

 

『KATANAシステム』

 妖刀システムのリミッター搭載型。

 極端な機動力上昇と、システムの波動により放てる真空刃が必殺技。

 

 

【ウィン・ギャンD-S】

 テトラがユニの『ギャン・ダムA-10S』に合わせて設計した空陸両用近接機。

 基本的にはユニのギャン・ダムと共通しているが、肩や膝装甲を曲面のある丸みを帯びたものにしているため、こちらは若干スマートな印象が強い。

 背部にはジェットストライカーのテトラ仕様『ドラグナーストライカー』を装備。

 これはプロペラタンク以外の装備を廃し、機動性を向上させている。

 両腰に連結可能なビームサーベルを2基、両腰アーマーは従来のものよりも大型化し小型ビームサーベル8基を収納している。

 シールドはユニから贈られた『攻盾タイプU』を使用。

 内側にスティレットを備え、先端にはU字型の二又の打突ブレードがあり、中央部にはビームランサーを形成する発振器が内蔵されている。

 この先端部には回転ギミックも組み込まれており、高い貫通性を発揮する。

 また発振器は射出することも可能。

 機体名の読みはジェットストライカー同様に『ドラグナーストライカー』と読むが、ユニと同様に複数の意味がかかっている。

 因みにユニのギャン・ダムA-10Sとは互換性があり、お互いのパーツを付け替えることができるようになっている。

 テトラ曰く、「当たると痛いっしょ!」

 

『ビームサーベル』

 両腰に1本ずつ備えられている。

 形成されるサーベルは細身だが、その威力はナノラミネートを瞬時に蒸発させ、対ビームコーティングの抵抗を受けても易々と切り裂いてしまう。

 また二基の柄尻を連結させることでツインビームサーベルともなる。

 マウント状態ではビーム砲としても機能する。

 

『小型ビームサーベル』

 両腰アーマーに4本ずつ収納されている。

 マニピュレータ――指の間に挟むように持つことで左右に4本、計8本を同時に扱える。

 サーベルは鞭状に変形させることもできる。

 遠隔操作にも対応しており、ある程度なら手放しでも操ることが可能。

 

『攻盾タイプU』

 ユニからテトラに贈られた細長いシールドユニット。

 形状こそウィンダムのそれだが、対ビームコーティングを始め高い剛性を誇る。

 先端にはU字型の二又の打突ブレードがあり、中央部にはビームランサーを形成する発振器が内蔵されている。

 この先端部には回転ギミックが組み込まれており、回転することで装甲を貫く高い貫通性を発揮する。

 また発振器は射出することも可能。

 

『スティレット』

 正式名称はスティレット投擲噴進対装甲貫入弾。

 爆弾としても機能する小型のナイフで、攻盾タイプUの内側に8本ほど備えられており、時と場合に応じてアーマーシュナイダーとしての役割もこなせる。

 

 

【ザ・ギャン】

 機体自体に余分な改造を加えず、ひたすらに作り込みを追求したギャン。

 見た目こそただのギャンだが、内に秘めた性能は計り知れない。

 カラーリングはホワイトカラーに赤。白磁の壺とギャン改を意識している模様。

 テトラ自身の力でどこまで戦えるかと言う答えの一つ。

 曰く、「今のあーしが持ち得る技術と愛を形にした最高最愛のギャン」

 多機能美になりやすい改造とは真逆の原作に近づけたシンプルな改造。

 必殺技は『GXシールドバッシュ』

 

『大型ランス』

 物理属性ヒートランス。

 実際は鞘でランス自体はある種のブラフである。

 

『ビームソード』

 大型ランスに内蔵されているビーム兵器。

 柄から引き抜くことで使用できる。

 見た目はギャンのビームサーベルと同形だが、その威力は馬鹿にならないほど高い。

 

『ビームサーベル×16』

 腰部に8本、シールド裏に8本マウントした細身のビームサーベル。

 ビーム部分がウィップ状に変形することで射程を伸ばすことができる。

 ウィップは対オールレンジ兵器用に編み出された。遠隔操作も可能。

 

『ミサイルシールド』

 ギャンを象徴するシールド。彼女のはチャンプのEXカリバーを真正面から耐え抜くほど堅い。

 ワイヤーが仕込まれており、射出すると同時、サーベルやミサイルを乱れ撃つことができる。

 

【Gウェイン】

正しくは『ギャウェイン』。

ギャンクリーガーをベースにした白亜の騎士ギャン。

ネオジオンのエンブレムをモチーフにした巨大なブーストランスを背部に装備し両肩にギャン盾(ミサイル部分はブースターに置換)とABCマントを装備した重装甲と高機動を両立させたテトラの機体。

ブーストランスの羽となる部分は全て連結したフィン型ビームサーベルであり、分離してオールレンジとしても機能する。

またランス自体が『鞘』であり、その内部には巨大な剣身――エネルギーを太陽の如き黄金として纏う宝剣『Gティーン』が隠されている。

Gはギャンともガラとも読む。

小型ビームサーベルはないが、手首に連結式の細長いビームサーベルを内臓。

両腰にはヒートサーベルを改造したクリアサーベルを装備している。また手足に増設した装甲はそのまま殴りあいにも利用可能な頑強さを誇る。

 

 

【ギャンハッド】

 騎士風のギャン。ベースはギャン(テトラ仕様)。詳細不明。




【サザキ・ジュンヤ】
 コトラの兄でサザキ家の長男。
 家族構成はおばあちゃんサザキ・ハク、長女サザキ・サナエ、次女サザキ・コトラ、三女サザキ・マドカからなる逆ザビ家と言う家族構成。
 『北宋の貴公子』と呼ばれる美貌(自称)と技量(自称)を持った人物で、GPD最後の世界総合大会では部門別で成人の部でシンプルなギャンを使ってトップ10入りを果たしている。
 GBNには移行せず、骨董好きが高じて鑑定家として生計を立てている。
 過保護――と言うわけではないが、妹たちに関して発揮される心配性はかなりのもの。
 コトラがモデルとして活動してだしてからはP面で舞い込む仕事依頼を厳選しているため、コトラからはありがた迷惑と思われている。
 因みに長女は金型メーカー『株式会社サザキG合金』を立ち上げており『輝羅鋼』を現代に完全復活させようと精力的な活動をしている。
 三女はこの時期はまだGBNをプレイしておらず、リライズの頃に本格的にGBNを始めている。

【レイブン】
 個人ランク12位のダイバー。
 鳥をモチーフにしたメカニカルな人型に、黒い外套を羽織っている。
 12位にいるにも関わらず影が薄く、男性アバターであることから『百合の間に挟まる男』と言う不名誉なあだ名で親しまれている。
 乗機は黒く染めた『Zプラス』
 二年後では父親から受け継いだGセイバーを改造した『Gセイバー・レイブン』を使用している。
 Zプラスでは変形機構を組み込んだトリッキーなマニューバで翻弄する。
 Gセイバーでは二重関節機構(ダブルジョイントフレーム)によって、防御力を犠牲にした代わりに高い柔軟性と自身の持ち得る反射神経を合わせた高速戦闘を仕掛ける。
 彼を象徴する武器に『手持ち式に改造したヴェスパー』があり、射撃音も『カァオ』と特徴的。
 リアルはGPDアメリカ代表『マークス・カラン』の娘『レイヴェン・カラン』


 ――フォース&メンバー――
【北宋の壺】
 テトラをリーダーする少数フォース。フォースランクは圏外。
 お洒落な部屋を持ちたいという理由でテトラが立てた。
 フォースネストはファーストガンダムでも出てきた鉱山基地。
 そこにアッザムハウスを建てて活動している。
 メンバー毎に個室が用意されている。
 テトラは個人ランクこそ16位と高いが、フォースランクは意外にも圏外。
 曰く、「フォースはガチ2:エンジョイ8の割合」とのこと。
 メンバーは少なく、いずれもガンダム好きの同級生。
 ただし学業を優先しているため、ログイン頻度は低い。
 ある意味ではレアキャラ。

メンバー
【マヒル(ソバエ・マヒル)】
 サブリーダーを務める凛然とした黒髪ポニテJKという王道スタイル。剣道部。
一人称は『私』『自分』 二人称は『お前』『貴方』『其方』『~殿』『~さん』など。妙に古臭い、時代劇がかった口調が特徴。
 生真面目だがカップリング談義になると熱く語りだすオタク気質な一面がある。
 テトラとは幼馴染でGPDからの付き合い。個人ランクは490位と結構高い。リライズの時期は90位に到達しているが、そこから先に進めないでいる。
 両親がそれなりに厳しいらしく、学業を優先しているためGBNのログイン頻度は低め。
 2年後では両親の反対を押し切り、サメヤマ・ケイコの元で同棲している。
 使用ガンプラはギャン・エーオースのサムライ風改造機『ギャンブシドー』。
2年後ではギャンクリーガーの改造機『無頼ギャン』を使用している。
 真久部流の抜刀術――所謂『居合斬り』を戦術に組み込んでいる。

【K5(サメヤマ・ケイコ)】
 第二次有志連合戦までは短めの青い髪に鼠耳の可愛らしいメガネJK。文芸部の元引き籠り。
一人称は『わたし』 二人称は『あなた』など。
 第二次有志連合以降はサメのパーカーを着たダイバールックに大きく変化している。
 リアルでは魚眼めいた目付きと三白眼、ギザ歯という身体的特徴がコンプレックスで、そこに追い打ちをかけるようにガンプラに関わる問題(パーツハンター事件)が合わさったことで引き籠りになっていた時期がある。
 脳内で言葉を整理しながら喋るためたどたどしく、言葉の最後が必ず疑問形のニュアンスになってしまう。
 GBNだとチャット機能もあり、時たまネット用語などを用い、多少は流暢になる。
 引きこもっていたため、留年しかけたり、勉強差が出てしまうのではと心配されていたが、現在では三人の中では最も勉学ができる。
 テトラやマヒルに関しては深い恩義を感じており、マブダチと呼ばれる間柄であっても、さん付けで呼び親しんでいる。 
 2年後はソバエ・マヒルと同棲している。
 個人ランクは圏外。
 名前の由来は憧れのビルダー『ケイワン』からきている。
 使用ガンプラはギャン・エーオースの索敵兼護衛仕様の改造機『ギャンSG(スコープガード)』。
 2年後はギャンキャノンの改造機『ギャンGS(ガーディアンスナイパー)』を使用。
 堅実な守りと的確な射撃で後方支援としてはかなりの実力の持ち主。
 特に相手の動きをジッと観察してマニューバの癖を見抜いたり、そのガンプラの弱い部分をある程度絞り込んだりできる。
 僚機がいてこそ真価を発揮する反面、タイマンになると途端にヨワヨワになってしまう。


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人物列伝4『マオー・エガオー13世』(修正中)

スク水幼女なので初投稿ですわ。

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【マオー・エガオー13世】

 赤紫の揺らめく髪と頭部左右に赤黒い結晶のような角を生やした幼い少女姿のダイバー。

 ダイバーズの頃は赤いマント、リライズの頃は内側に宇宙のエフェクトが漂うマントを羽織っている。

 服装はスク水。ネームには平仮名で『まおぅ』とある。

 一人称は『余』 二人称は『貴様』『配下』など。

 ダイバーランクはAランク。

 

「ヌハハハハハ! 余だぞ! マオー・エガオー13世である!」

「ランクが全てであると思うなよ! とくと味わえ、魔王の力!」

「貴様らに頑張っていただく。しかし無理はするな。労わるのだぞ」

「敗けて悔しくないわけがない……が、清々しくもある! ヌハハハハ!」

 

 ――ダイバーズ編――

 フォース『ナイトメアハロウィン』の団長を務める。

 デンドロビウム三体分の武装を搭載した大型輸送列車マンモスエキスプレスの改造『ジェノサイドXプレス』や両肩に二分割したバルジ(分離・合体することでバルジ砲を放てる)を装備した『サイサリスバルジ』、リーブラで再現した『デビルガンダムJr(リーブラ)』などの主に既存のガンプラとスクラッチを掛け合わせたキテレツガンプラで有名。

 

 本人はまともを自称しているが、『負けた数だけリーブラ作る凸待ち配信』で13体近くものリーブラをフルスクラッチで製作しているので、やはりまともではない。

 その時の配信ではルールを知った視聴者たちが割とガチ寄りのガンプラで凸し、さらにはアヴァロンのカルナに連れられたヒロトとも対戦して惜しくも敗北を喫している。

 因みにこれ以降、ナイトメアハロウィンでのペナルティ付き凸待ち配信は『リーブラ配信』と呼ばれるようになる。

 ペナルティで作ることになった機体はリアルとGBN内でそれぞれ製作しているのでマジで狂ってる。

 しかもその様子を嬉々として他メンバーが配信したりしている。

 また配信時のやり取りからカーミラとの同棲疑惑が、否定はしていないので、二人の絡みはてぇてぇ扱いされている。

 

 

 ――リライズ編――

 相変わらずメンバーのビルド狂いが過ぎてフォーストーナメントでは規定人数が集まらず不参加だったり、金銭的な面でチャンプから心配されたり、『帰ってきたリーブラ配信! グランザム編!』では元祖ビルドダイバーズと対戦し、コーイチに感心されながらも一切妥協のないフルスクに割とガチで引かれたりしている。

 サラちゃん曰く、『全部に熱い想いが込められている』とのこと。

 配信後、9体ものグランザムが誕生することになった。

 そしてメンバーが『折角だから』とGBN内でオールズモビルを各機20機ほど作り上げ『火星大決戦!』というクリエイトミッションを発表している。

 ロータスチャレンジver.エルドラの時間軸では『アニメに出た数だけリーオー組立耐久リレー配信』というトチ狂った企画を実行していた。

 また一年半を費やし、メンバー総出でエンジェルハイロゥを完成させて聖地ペリシアで公開したりもした。

 

 

 ――フォース――

【ナイトメアハロウィン】

 墓地と奇妙に歪んだ丘が目立ち、赤い三日月が浮かぶ不気味な西洋の廃城をフォースネストにしている。

 メンバーは全員、西洋のモンスターをモチーフにしたダイバールックやガンプラを用いている。

 最大の特徴は、この全員が何らかのビルド狂いであること。

 その理念、信念は『無ければ作ればいい』『とにかく何か作りたい』からきている。

 一部では量産型カイザー軍団だとか言われたりする。

 所謂バトルよりもビルダー気質が強い集団であり、GBN内でも、リアルでも、ガンプラ製作の依頼を受け付けている。

 また、積極的にクリエイトミッションなどを配布しており、その殆どはNPDが操作する原作モビルスーツとの共闘タイプが多い。

 基本的にCランクから受けられるものが多いが、内容の一部は高難度を極めており、ランク詐欺ミッションとも呼ばれている。ただし味方NPDもかなり強いので、連携すれば意外とクリアできるようになっており、連携の重要性、得意分野によって見方が変化する立ち回りなど、それなりに学べたりする。

 彼らのようなビルド狂いは『頭ナイトメアハロウィン』と親しまれている。

 クオンのフォース『エターナル・ダークネス』にアライアンスを申請し、後に成立している。この時に行ったコラボ配信で、テストプレイとして公開した『甦る不死鳥の羽ばたき』は、色々な意味でカオスと化したのはまた別の話。

 フォース創設者は『C&C』と言うダイバーだが、既に脱退しており、後を引き継ぐ形でマオーが団長となった経緯がある。

 

 G-TUBEでも活動しており、主にメンバーの一人である『カーミラ』がG-TUBERとして配信を行っている他、メンバー毎に製作動画をアップロードしている。

 配信の主な内容は雑談から始まり、視聴者の意見を取り入れつつオリジナルガンプラの設計図案を製作するというもの。

 この配信で製作されたオリジナルガンプラは、実際にガンプラとしてGBN内で組めるデータキット化され、季節ごとに行われる大規模なイベント『GBNガンプラマーケット(GGM)』で展示、配布される。

 箱もイラストレーターに依頼して描いてもらうなど徹底している。

 頻度は高くないが、凸待ちバトル配信も行っており、この際、負けた数だけ〇〇を作ると言うルールを課していることが殆どで、代名詞となっているのが負けた数だけリーブラを作る配信――通称『リーブラ配信』である。

 

 ――主な配布ミッション――

『火星大決戦!』

 オールズモビルの軍団を相手に戦う『第一次オールズモビル戦役』を誇張し、再現した大規模乱戦ミッション。推奨ランクはC。最大参加人数は7人。クリア報酬金は50万BC。

 基地外部、基地内部に分かれており、基地最深部には、やたらめったら強い『F90火星独立ジオン軍仕様(ボッシュ搭乗)』が待ち構えている。

 大枚はたいてレンタルNPDをきっちり搭乗させている辺りかなり拘っている。

 このミッションの最難関の一つは『グランザム』9体による圧倒的な火力地獄。

 この所為でミッション内容はさながら渾沌と化し、慣れていないダイバーはその厚すぎる光条の弾幕に呑み込まれてしまう。

 幸い、味方にもやたらめったら強い『F90フル装備(デフ搭乗)』と仲間たちがいるので、連携すれば勝てるように調整されている。

 因みにチャンプは一度に三機のグランザムを切り裂いた。クリア後に語呂が似ているからとグランザムにトランザムを付けたらどうだろうと提案し、見事に採用されてしまう。チャンプはさぁ……。

 

 

『激突! リーブラ大戦争!』

 13体のリーブラを全て撃破する殲滅ミッション。推奨ランクはC。最大参加人数は5人。基本報酬金は100万BC。

 五人のガンダムパイロットと共闘する。

 物量がとにかく半端ない以外は、至って普通のミッション。普通?

 クリア報酬のBCが大量な上に、撃破数ボーナス(リーオーなら2千、トーラスなら5千、ビルゴなら1万、ビルゴⅡなら1万5千など)も加算されるため、お金稼ぎには打ってつけと評判。

 味方NPDも五人と多く、きちんと強いので、突出し過ぎなければちゃんとクリアできる。

 ただしプレイヤーが撃墜されると報酬金がマイナスされたり、NPDが撃破した場合はボーナスは入らないので、できるだけNPDよりも先に撃破する必要がある。

 また、敵に配置されているガンダムエピオンがやたらめったらに強いので、これに関しては完全に初見殺し。

 あと何故かマスターガンダムもいる。多分GジェネNEOの再現。

 この二機に関してはボーナス額は一機50万BCと破格だが、あまりにも強いのでNPDに任せっきりになってしまい、結果ボーナスを取り逃がす挑戦者が多い。

 

 

『蘇る不死鳥の羽ばたき』

 Gジェネシリーズの奇妙な空間を舞台にした一本道型の特殊タイムアタックミッション。推奨ランクはB。最大参加人数は9人。基本クリア報酬金は300〜1万BC(クリアタイム、フェニックスガンダム被撃墜数、プレイヤー被撃墜数によって変動)

 自己再生、自己増殖を繰り返すレギナの軍団と、異様な火力を誇るバルバドロを退けながら、最深部に居座るGジェネのバルバトスを撃破するというもの。

 味方には11回蘇生するNPDフェニックスガンダムがおり、オールレンジ機体との基礎的な連携を学べる。

 とは言え、やはりランク詐欺な難易度であり、テストプレイに応じてくれた『クオン』もクリアするのに10分以上かかったくらいにはNPDがやたらに強い。

 フェニックスガンダムも11回蘇生するからと言って放置してたら何時の間にか残機を使い果たしていたなんてこともあり、嫌でも連携を意識させる作りとなっている。

 

 

 ――主なガンプラ――

【ジェノサイドXプレス】

 ガンダムWに登場した大型輸送列車『マンモスエキスプレス』のフルスクラッチ改造機。

 全10車両からなり、先頭車両に被せられたドクロはやけにリアル。

 デンドロビウム3体分の武装を積んでおり、面制圧力はブライトさんもニッコリに弾幕を誇る。

 また脱出用に黒塗りの装甲を増設したサタンリーオーを搭載している。

 こちらの基本武装はリーオーMDと同じ。

 背部にリーブラウイングを装備しており、エピオンのビームソードとシールド、ヒートロッドを装備している。リーブラは小型化の弊害で武装は搭載されていない。

 第一有志連合戦でも、この列車に乗って参加している。

 

『メガ・ビーム砲』×3

『Iフィールド・ジェネレーター』×3

 L第1~第3車両に内蔵。BDで強化されたビームでも貫けない強固さを誇る。

 

『クロー・アーム&大型ビームサーベル』×6

 L先頭~第6車両上部に装備。ビーム砲を内蔵。

 

『武器コンテナ』×6

 L規格化された48基のウェポンスロットを内蔵。

 デンドロビウム三体分の火力は伊達ではなく、面殲滅における火力は凄まじい。

 

『リーオーMD』×40

 L第7~第10車両に搭載されたモビルドール版リーオー。

 自動制御のビット扱いとして登録されている。どうやって? 

 ビームライフル、ハイパーバズーカ、フォールディング・バズーカ、フォールディングシールドなどを装備しており、これらの武装のみ射出成型機で取り出し全機分作成されている。

 

『グランノヴァ砲』

 L先頭車両ドクロの口内に内蔵された隠し玉。

 

『超ド級攻撃戦術(ドレッドノートタスク)』

 L全武装系統を統一して管制・制御する特殊戦術システム。これによりMD――モビルドールを操作可能としている。

 ゼロシステムを応用して製作された――という設定。つまりはビルゴⅡに用いられた管制システムである。

 

『サタンリーオー』

 L脱出用に備えた、黒塗りの装甲を増設したリーオー。

 背部にリーブラ型のウイングを装備しており、エピオンのビームソードとシールド、ヒートロッドを装備している他、リーオーMDと武装を共有可能。

 

 

【サイサリスバルジ】

 サイサリスの両肩に、スケールダウンしたバルジを二分割して装備した改造機。

 バルジが肩から分離し、合体することでバルジ砲を放てる。

 黒と緑を基調としたカラーリング。

 

 

【デビルガンダムJr.(リーブラ)】

 デビルガンダムをベースに改造したデビルガンダムjr.の上半身とスケールダウンしたリーブラを組み合わせた改造機。

 リーブラの主砲はオミットされている。

 

 

【魔王ガンキラー】

 真面目な時に使用するガンプラ。

 リアルタイプガンキラーをスクラッチし、そこから更に改造を重ねた一品。

 原型が頭部の風貌しか残っていないほどに魔改造されている。

 禍々しい中世の鎧めいた装甲に加え、背中にMSが背負えるサイズまでスケールダウンさせたグランシャリオを大型実体剣として背部中央に背負い、それを中心に分割したリーブラを羽のように配列している。

 胸部にはリーブラの主砲を移植している。

 色合いは黒を基調とし、紫と金で彩られている。

 リーブラウィングは分離することでファンネルのように扱うことも可能。

 

『魔王剣グランシャリオ』

 グランシャリオそのものを剣として扱うもので、グランノヴァ砲としても使用できる。

 対空レーザー砲はオミットされている。

 あまりにも分厚いので盾としても機能し、その性能はもはや鈍器。

 言ってしまえば大型実体剣とバスターライフルの機能を併せ持った武装である。

 

『撃滅魔王弾』

 リーブラに搭載された二連装ビーム砲。

 連射性がとにかく高く、弾幕を張ることで近接機を寄せ付けないほど。

 ただし連射には一定のパターンがあり、穴がないというわけでない。

 

『殲滅大魔王砲』

 胸部に内蔵したリーブラの主砲。

 非常に強力ではあるものの、一発撃つごとに体力が減るというデメリットが存在する。

 最大二、三発が限界。

 

『リーブラウィング』

 リーブラのパーツをウィング状に配置した装備。

 分離することでファンネルのように扱える。

 

『サタンスピア』

 手の甲と掌から伸びるニードル状の武器。

 元ネタはガンキラーのキラーソードである。

 

『サタンギロチン』

 両肩に備わった十字手裏剣型のバグ。

 元ネタはガンキラーのギロチン・バグ。

 

『魔王防壁プラネット・デフェンサー』

 プラネイト・ディフェンサーことである。

 語呂が良いからと勝手に改名してこの名で呼んでいる。

 円形ではなく球体状になっており、防御の他、アッザムリーダーめいた活用もできる。




――フォースメンバー――
【カーミラ】
 銀色の髪の少女ダイバー。Sランク。
 纏う赤と黒の色合いのドレスは、肩と背中が露出する構成となっている。
 スカート部分は半透明な作りで脚のシルエットが薄っすらと確認できる。
 背中から生えたコウモリのような羽が生えており、赤い口内から鋭い八重歯を覗かせる。先端がスペード型の尻尾もある。
 一人称は『我』 二人称は『眷属』
 フォース内では一、二を争うほどのビルド狂い。
 人外っぽさ出すため口調は頑張っているが、生粋のロールプレイング勢ではないため一人称や二人称以外では素が出やすい。
 デンドロビウムを三体作ったり、マグアナック36体セットを躊躇なくポチッたり、団長と協力してマンモスエキスプレスをフルスクラッチしたりと正気ではない行動ばかりを起こしている。
 ガデラーザも躊躇なく予約して怒られた。反省はしていない。
 フルスクラッチリーブラ(ビルゴⅡ込み)を完成させた際はさしものクジョウ・キョウヤも若干引いていたという噂がある。

 使用ガンプラは『デスサイズナイトメア』
 デスサイズヘルカスタム(EW版)の改造機。
 女性のような細身な体型に仕上がっており、脚部は板のようなハイヒール形状に改造されている。
 コウモリの羽のように改造したアクティブクロークを象徴として、機動力を中心に消音性とステルス性に特化しており、与えたダメージの半分を吸収して回復するドレインスキルを備えている。
 片側には実体刃、逆側にはビーム刃という組み合わのサイズ武器を巧みに扱い、死角から突如として現れ、一撃で相手を両断するという悪夢を体現した機体である。
 バスターシールドは射出機構をオミットされ、代わりに蛇腹状のヒートロッドに換わっている。
 顔面部にも思い切り手が加えられており、フェイスオープン機構が備わっている。
 フェイスオープンの際は開いた口から牙が見えるような形状になっており、至近距離で見ると結構凝っていると同時にかなり怖い。
 普段は騎士風のセンサーマスクで隠している。
 また側頭部、後頭部からはガンダムナドレから流用したGN粒子供給コードを髪パーツとして垂らしており、より女性的な印象を与える。
 何故かセンシティブなイラストが存在している。しかもカーミラよりも多い。


【マミー・ポコタ】
 包帯を全身に巻いたミイラ男。Aランク。
 ねちっこい口調がいやらしいが、本人は至って紳士的な人物。
 一人称は『ワタクシ』 二人称は『アナタ様』『~様』など。
 使用ガンプラはファラオガンダムⅣ世をベースに包帯型のフィンプレートを両肩や腰から多数垂らした『ファラオガンダム・ハムナプトラ』
 このフィンプレートと手首に内蔵したヒートロッド以外、手持ち武装は存在しない。
 モチーフはバロンズゥ。
「ワタクシはマミー・ポコタと、申します。ふざけた名前でしょう? ですが、こういった名前で案外、油断してくれたりするんですよぉ」

【ウォー・ウォール】
 狼人間姿のダイバー。もふもふ枠。ジュピトリス大好き。木星帝国大好き勢。拘る派なので製作時間は誰よりも長い。Bランク。
 緊張しいなので、親しい人意以外ではぼそぼそと喋る。
 一人称は『オイラ』 二人称は『キミ』など。
 使用ガンプラはヨルムンガンドをジュピトリス風に仕立てた『ヨルムンガンド・ジュピトリス』、あるいは一年を費やして作り上げた傑作機『ヴァゴン改』
 ヴァゴン改は一見してヴァゴンそのものだが、アンカーワイヤーなどを装備しており、立体的なマニューバを実現している他、タイヤ内部にビーム発振器を備え、ビームギロチンやビームバリヤとしても機能する。
「オイラは……ウォール。うぉ、ウォー・ウォール。その、よろしく……」

【リリン】
 サキュバス姿のダイバー。Bランク。
 ネネカ隊制服(水着)の上からビキニアーマーを纏った露出度の高いルックス。
 一人称は『おねーさん』 二人称は『あなた』など。
 サキュバスロールなのか、お姉さんぶってはいるが、若干腐っている一面がある。
 使用ガンプラはサキュバスをイメージして悪魔風に改造したノーベルガンダム『ノーベルリリン』
 肌色と黒紫を合わせた人間味の強いカラーリング。
 腰辺りにコウモリを模した小型の翼パーツを備え、臀部にはテイルブレードを装備。
 円形の小型シールドと一体化したボウガンを二丁と三叉の槍(トライデント)で武装している。
「はぁ~い♪ おねーさんとイイコトしな~い?」 

【シャークサメジマ】
 サメ姿のダイバー。浮遊している。Sランク。
 実はサメ自体は寝袋であり、中身はサメっぽいギザ歯でつり目な少女がいる。
 名前の通りサメをモチーフにしており、毛先の尖った濃い青色の髪をしている。
 元々はヴァルガ民で、自身の作り上げたガンプラがどこまで戦えるのか試すとともに、サメ旋風を巻き起こしていた。
 一人称は『サメちゃん』 二人称は『小魚ちゃん』など。
 使用ガンプラはシャークビットを搭載した『エレゴレラ・シャークネード』
 サメっぽいカラーリング。
 原作機そのままの武装を再現しつつ、そこにサメ型の小型ビット『シャークビット』を追加したというもの。
 脚部に合計六基を搭載しており、強靭な顎のより噛みつきや、上ヒレのビームサーベル、胸ヒレのビームシールド、口内のビーム砲などを内蔵している。
その他にもサメペイントが施された巨大ザメルの『サメル』や、サメカラーにチェーンソー内蔵シールドを装備したラムズゴックの改造機『アサイラム』、スカイシャークパック(!?)を装備したムラサメの改造機『ムラ鮫』、ハンマーヘッドシャークに変形するアビスガンダム『アビスシャーク』、サメ風エスペランサ『ディープシャーク』など多彩なサメガンプラを扱う。
「シャシャシャーク! サメちゃんだぞー! 食べちゃうぞー! ガブっといくぞー!」

【オルトス】
獅子男をモチーフにしたダイバー。Bランク。
ウォールと違いごわごわしている。
OZ軍服にマントを羽織った服装。
一人称は『我輩』 二人称は『貴公』など。
あまり細かいことは気にしない性質なため、ビルド関連以外のことは割とすぐに忘れるため、エリートチックな外見と裏腹に普段の知能指数は低め。
レースイベントを中心に参加しており、キテレツなガンプラで駆けて往く姿から『数奇卿』と呼ばれている。
使用ガンプラは『ガンダムレーサー』『テンマガンダム』『トラムガンダム』『ガルウィングガンダム』など、バトレイヴ系が多い。
「我輩にスピードで挑むとは、即ち――何であるかな!?」

【ドロテア】
魔女っ娘。栗色の長髪と緑目。Cランク。
全体的に紫色なとんがり帽子とローブ姿。
一人称は『あたし』 二人称は『あんた』
メンバーの中では比較的新参者。
感性もかなり一般人寄りで、フォースの狂気的な企画では一番最初に根を上げる。
しかし言うべきところはしっかり言うので、何だかんだで団長よりも周囲をまとめていたりする。
そのため、ナイトメアハロウィンの良心として認識されている。
使用ガンプラはノーベルガンダムを魔女風に改造した『ガン・オニキスウィッチ』
バトレイヴに収録されていたガン・オニキスウィッチを独自に再現したものである。
ブースターとハイパーメガバズーカランチャーを一体化させた箒型の武装を装備しており、長距離火力がとにかく高い。
他にも魔導書型のシールドや、羽ペン型のビット、髑髏の付いた杖型のサタンロッドなどを装備している。
「常識的に考えて無理でしょ!? バカなの? バカだったわこいつら!!!」


【フラン・クラン】
 フランケンシュタインのモチーフにしたクラシックなメイド服の女性ダイバー。
 頭部左右にボルトアクセをぶっ刺した、青肌と白肌を継ぎ接ぎしたような不気味な外見をしている。
 一人称は『私』 二人称は『貴方』『お客様』など。
 メイドという役割を徹底しており、口数も少なく、常に裏方に務めている。
 そのためか、自己表現などの全てはガンプラに現れやすい。
 ダイバーランクA。通称を『年中無休のハロウィンメイド』。
 クロスボーンガンダムX1をベースにX2、X3の要素を継ぎ足した『XBGトリニティパッチワーク』を使用。
 実際にパーツを切り取り、そこに別パーツを継ぎ接ぎするという、かなり手間暇のかかった工程で製作されている。
 継ぎ接ぎした部分を明確化するために、縫ったようなペイントを施している。
 性能自体は『クロスボーンガンダムよくばりセット』だが、実際は継ぎ接ぎした分、劣悪なバランスとなっており、十全に扱うにはかなりの技量が必要となっている。
 またスラスター部分がサブアームに置換されており、元の腕を合わせて合計6本のアームを備えている。
 武装はバスターランチャーとショットランサーを一体化させた『バスターランサー』や、ザンバスターをリボルバー型のバヨネット付き実銃にした『ザンリボルバー』、ピーコックスマッシャーのビーム砲を鮮やかなニードルを射出する機構に置換した『ピーコックニードルガン』、ムラマサブラスターをチェーンソー仕様にした『ムラマサチェーンソー』など、物理系を主体としたものとなっている。


【アラクネ】
 日本式のゴシックロリータ風味の紫髪の少女ダイバー。
 人型の上半身に、背中から六本の蜘蛛脚が生えている。
 目は丸っこく、目元には小さな目が六つ並んでいる。
 気持ち悪くも思えるが、宝石のように美しい瞳のため、意外にも嫌悪感を煽ることはないらしいが、それでも苦手は人は苦手な部類。
 一人称は『わたくし』 二人称『あなた』など。
 メンバーと比べると一歩引いた、冷めた態度でいることが多い。
 常に落ち着き払い、素早く判断を下すナイトメアハロウィンの参謀。
 ただ少しナルシストな一面があり、自己陶酔しやすい。
 ダイバーランクはA。シャークサメジマとはほぼ同期だが、ランク上げよりも自身のガンプラを眺めることが好きだったため、聖地ペリシアなどに足しげく通っていた。
 ジャイオーンの改造機『Gアルケニー』を使用する。
 ビッグアームユニットと手の平部分をオミットし、フレキシブル加工した指先パーツだけで構築された『アルケニーユニット』が最大の特徴。
 またキュベレイから流用したリアスカートに搭載したファンネルなどを備え、オールレンジ主体の性能となっている。
 頭部は原典機のものから変更され、モノアイ式となっており、顔面、頭部、両肩、両腕、両脚の各所に備えられたそれらによって広範囲を察知できる。
 またスクラッチした専用のゲルズゲーの下半身とドッキングすることでより蜘蛛めいた外見となる。


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人物列伝5『C&C』(修正中)

息抜きなので初投稿ですわ。

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


C&C(カンパネルラ・クラウン)

 肌を白粉で染めたような色白な女性ダイバー。

 白手袋、縞模様のソックス。服装は黒のサスペンダーで子供らしさを演出。

 頭部に王冠型の帽子を被っている。

 髪型は切り揃えた紫色のセミロング。

 糸目で常に張り付けたような笑顔を浮かべている。よく舌を出す。

 リボンを結んだ、先端が菱形の尻尾が生えている。

 モチーフは悪魔とデュラハン。頭部は任意に外すことが可能。

 第一有志連合戦までは身長180㎝の長身痩躯だったが、その後は『背伸びをすると感覚が狂う』と言うことでリアルの身長に近い160㎝に変更している。

 

 本性を現すと目が開く。黒く染まった白目に渦を描いた三白眼。ギザ歯。

 普段の笑顔からは想像もつかないほど悪魔めいた攻撃的な笑みを浮かべる。

 逆にそれが良いという者もいる。

 一人称は『ワタシ』 二人称は『アナタ』など。

 性格は胡散臭く、嫌味な言い方が多い。声は低め。

 腕は良いが性格が悪い、というのが彼女を知る者の共通認識。

 なのだが、たんに口が悪いだけで、存外世話焼き気質が強い。

 この他にもマナーの悪いダイバーやマスダイバー相手をにしていたり、意外にも初心者を案内したりアドバイスを与えたりしていた。

 「性格が悪いのはもしやキャラ付けなのでは?」という周囲の疑問は、胡散臭い笑みとダーティな戦法で誤魔化している。

 

「はぁ~い呼ばれて飛び出てジャンジャジャ~ン♪ C&C、ここにあり~★」

「ワタシは卑怯が売りだけどぉ? BDみたいなぁ、あーんな体の良い卑怯は好きじゃないんでぇ~す♪」

「こぉんなのがお好きなんてぇ、とんだ変態さんですねぇ~★」

 

 

 ――ダイバーズ編――

 ビルド狂いで有名なフォース『ナイトメアハロウィン』の創設者。

 単純にリーダーと言う役柄が苦手で、創設後は間もなくリーダー権をマオー・エガオー13世に押し付ける形で出奔。

 その後は『無限蛇』を始め、『鉄騎団』『ファントムフール』『GHC』を含む様々なフォースを渡り歩き、紆余曲折あって『ナイトレイド』に身を寄せている。

 ルールの範疇であれば不意打ちや搦め手も厭わないダーティな戦法を主体としたバトルスタイルで『正々堂々とした卑怯』を売りにしている。

 言い換えれば相手の弱い所や隙となる癖を見抜き、それを的確に突いてくるという高い洞察力に裏打ちされたスタイルであると言えよう。

 ただそういった戦法を主体としているため一部では恨みや反感を買いやすく、また勘違いもされやすいといった部分もあり、迷惑がかかると判断した段階でフォースを抜けることを繰り返している。

 ソロでもいいはずなのだが、何かと彼女の有用性を見出したフォースから声をかけられることがあり、それを無碍にすることもできず、脱退前提で入団することが多かった。

 バトルもするが主にビルドとクリエイトミッションを作り上げ、苦しむダイバーたちの姿を高所で見下ろすのが日課。

 ビルダーとしての技術は相当なもので、キット化されていないガンプラを中心に自身の手で作り上げている。

 メンバーからは『しーちゃん』『シーツー』などの愛称で呼ばれており、当初は悪態を吐いていたが、呼ばれると必ず反応するので照れ隠しだった模様。

 第二次有志連合戦ではメンバーに要らぬ風評による迷惑がかからないよう、無断でフォースを抜けたのだが、その後こっぴどく叱られた上に無事に連れ戻された。

 

 

 ――リライズ編――

 すっかりナイトレイドに腰を落ち着かせている。

 本人はランキングといったものに関心はなく、ビルドと意地の悪いクリエイトミッションを製作に勤しんでいる他、ロック学園長のフォース『ガンプラ女学園』を始めとした様々なフォースなどからゲストとして呼ばれては、そこでガンプラと楽しさを広めることに協力している。

 この頃にはすっかり『口の悪い世話焼き』として定着しており、掃除洗濯料理などの家事全般をそこそここなせることが発覚したことで、ナイトレイドのメンバーからは温かな眼差しで見守られいる。

 Gガン好きであることも公然の秘密となっている。

 

 

 ――ナイトメアハロウィンとの関係――

 元々は数人とリアルで面識があったことから創設したというもの。

 初期のナイトメアハロウィンの面々(マオー、カーミラ、ポコタ、ウォール)からは先生呼びされている。

 リアルでは教師だったのだろうか?

 

 

 ――リアル――

 正体はGPD世界総合大会無差別級7位。西欧の悪夢『ミカーラ・レ・ファニュ』

 高い洞察力から相手の弱点を突いてはガンプラの屍を山を築きあげる姿から『ナイトメア』と呼ばれていた。

 表舞台から姿を消してからは『ガンプラ心形流』なるものに師事していたらしい。

 リアルではライトグリーンのショートボブをした中性的な顔つきの、薄紅色の瞳の女性。頭頂部からは二本の細いアホ毛が伸びている。 

 スーツを着れば美丈夫、ドレスを纏えば清楚な女性。

 所々に嫌味っぽい口調はあるものの、基本的にはお淑やか。

 GBNでの姿とはまったく異なるためオフでの彼女を知った者は大抵驚く。

 所謂、良いところのお嬢さん。訳あって日本で過ごしている。

 ガンプラ塾に通っていたらしいが詳細は不明。

 

 

 ――ガンプラ――

【J&J】

 読みは「ジョーク・ジョーカー」

 フルスクラッチのシャッフル・ジョーカーをベースにしたガンプラ。

 見た目にはそれほど手を加えられておらず、道化師の仮面を着用している程度。

 旧シャッフル同盟をモチーフにした武装を装備しており、近距離・中距離に特化している。

 非常にシンプルで手堅くまとまった性能。

 第二次有志連合戦ではABCマントを纏い、また肩と膝部分が銀色に塗装しており、以降もそれは変わっていない。

 

『スペードチェーン』

 手首外側に内蔵された先端にスペード型のブレードが付いた鎖。

 テイルブレードして尻尾型のタイプもある。

 実はビットとしての機能があり、変幻自在の軌道を描く。

 

『ダイヤシールド』

 両腕に装備した菱形の分厚い盾。

 ウェポンパックでもありブレード、レイピア、バルカン砲、二連装ビーム砲、火炎放射などを内蔵している。

 

『クラブディフェンサー』

 左右のリアアーマーに取り付けられたクラブ型のパーツ。

 クラブを構築する三つの円形パーツはプラネイト・ディフェンサーである。

 

『ハートナックル』

 手の甲に装備されたハート型のヒートナックル。

 単純な破壊力だけなら随一の武器。

 

『ジョーカーハーケン』

 両肩のハードポイントに取り付けられた二基のJ型の鎌。

 片手持ちタイプ。柄尻を連結してアビゴルのビームサイスのように、ダブルハーケンとなる。

 手首部から高速回転させることで高威力の斬撃を発揮する他、ビームシールドの代替としても使用できる。

 

『リフレクトランプ』

 手首内側に内蔵したトランプ型のビット。

 縁は鋭く、表面はコーティングされ堅い。

 言わばソードビットのような役割を有し、また防御としても機能する。

 一枚でも頑丈だが、それが集まって様々な形状のシールドとして形成することが可能。

 

『デッドクロス』

 ビームで形成された布状の武器。

 

『ワイルドハント』

 頭部の特徴的なクラウンパーツが分離し弓となる。

 放たれる赤紫のエネルギーは強力。

 

『Jスラッシュハリケーン』

 Jハーケンを高速回転させることで生じる斬撃の竜巻。

 デッドクロスでも使用可能。

 

『シャドウダンス』

 最大13体の分身を作り出せる。

 

『デッドハンドフィンガー』

 エネルギー波を纏った掌で打ち砕く必殺技。

 発動時はハートナックルが手の甲を覆うように変形し、指の関節が伸び、掌のスリットから赤紫の炎が迸る。

 フィンガーショットも可能。

 命中時には『死手指先』というエフェクトが刻まれる。

 

『超級覇王電影弾』

 エネルギーで全身を渦巻き状に包み込み、突撃する必殺技。

 最後に「爆発!」と叫ぶことで大爆発を起こす。

 

 

【J&C】

 読みは「ジェスタークラウン」

 デスティニーガンダムをベースに作り上げたジェスターガンダム。

 人型の状態は原作のジェスターガンダムを再現した姿をしているが、V字アンテナは撤廃され、起動時にエネルギーがアンテナの形状を取るようになっているなどの微妙な違いが見受けられる。

 トップモードに変形時は、逆さから見ると三叉の王冠に見えるような作りとなっている。

 

『マシンキャノン』

 頭部と胸部、計四門ある射撃兵器。

 近、中距離での射撃戦で使用されることが多い。

 

『バルーンビット』

 様々な色がある風船型のビット。

 ビットとしての基本機能は勿論、ファンネルボムとしての役割も有する。

 

『ビームストリングス』

 指先に内蔵した電撃を通す特殊ワイヤー。

 通電時にビームのように発光するためこの名で呼ばれている。

 攻撃力こそ低いものの、相手の機動を制限したり、置くように射出しておくことでトラップとして機能するなど、かなり厄介な性質をもつ。

 

『ビームホログラム』

 予め記録した武装をホログラム投影、ビームをIフィールドで形成することで使用できるようにするというもの。

 射撃武器にも対応しており、実際に撃つこともできるが、全てビームになってしまう。

 Gガンにありそうな機能をモチーフとして搭載されたシステム。

 

『一輪車』

 その名の通り一輪車。

 陸上での移動時に用いられるほか、車輪を横にすることで飛行も可能。

 ビームシールド発生器も内蔵しており、盾にもなる。




所属フォース『ナイトレイド』に関しては青いカンテラ様の二次創作小説『GBN総合掲示版』内の『フォース名鑑』を要チェックですわ!


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人物列伝6『マドカ/サザキ・マドカ』

先に妹の設定ができたので初投稿ですわ。

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【マドカ】

 琥珀色の瞳。ギザ歯。淡い金髪を両側で結び、服装は白のスクールシャツと紺色のミニスカート。

 腰にはジャージの上着を巻ている。

 頭部には先端が丸い黒地の虎耳が生えている小麦色の肌なギャル風ダイバー。

 全体的に『テトラ』のJKダイバー時代の外見を踏襲している。

 

 一人称は「アタシ」 二人称は「おにーさん」「おねーさん」「おじさん」「オタクくん」「キミ」など多彩。

 ただし年寄な外見のダイバーには「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ぶ。

 

 「いう」を「ゆー」に変換したりなど、今どきの若者らしい言葉遣い。

 語尾に「~(だ)し」をよく使う。

 風体こそギャルを意識しているが、素では人称が『私』や『~さん』だったりと、実際は標準的な言葉遣い。

 「何事も勢いが大事」を信条としており、多少悪ノリしてしまうところがある。

 

「アタシ、マドカってゆーんだし! ま、よろしくねってことで!」

「やったし! マジラッキーってやつっしょこれ!」

「ま、まだ負けたわけじゃないし! これからだし!」

「うぐぐ……負けたし……悔しいし……」

「やっぱ勝ち目が見えると嬉しいっしょそりゃ!」

 

 

 ――ダイバーズ編――

 この頃はまだGBNを始めていない。

 

 

 ――リライズ編――

 アルス戦から数ヵ月後、中学二年生となり、念願叶ってGBNデビュー。

 姉であり、個人ランク4位であるテトラに憧れており、いつしか自分も上位に入ることを目標にしている。

 バトルスタイルはアグレッシブで、実によく動き回る。

 特に攻勢はテトラの近接戦闘から基本戦術を学んでいるため、一度相手に接近すると、付かず離れずの距離を保って果敢に攻め込んでいく。

 そこから更に個人ランク490位『マヒル』の抜刀術を組み合わせているため、パワーファイターに見せかけた技巧派。

 しかし、防御が疎かになりやすいという弱点があり、一度防御に転じると勢いがなくなってしまう。

 時おりテトラを呼びだしては、一緒にミッションに挑んでいる姿も目撃されており、姉妹仲は良好である様子。

 マドカがテトラの妹であることを知らないダイバーからは「4位を呼びだす謎のちびっこギャル」として認識されているためか、注目度の影響でバトルロワイアル系ミッションでは優先して狙われやすい。

 当の本人は自慢の姉と一緒にいられるので自慢気に胸を張っているのが余計に引き金となっていたりする。

姉のようになりたいという憧れが強いせいか、自身の実力を考慮せず突出しがちな独断専行を繰り返してしまうこともあり、後述する傭兵としての評価は芳しくない。

『勢いはいいが、マニューバが正直すぎる』

『前に出すぎる上に一人で何でもやろうとして足並みを乱してくるのがたまに傷。囮としては丁度良い』

『ガンプラの作り込みの割には技量が追い付いてない。動きは良いがそれも結局テトラちゃんの猿真似の域を出ない』等々、磨けば光るものはあるが、概ね自信過剰が否めないものとなっている。

 

 マドカ本人はフォースなどには加入しておらず、見聞を広めるために傭兵ロールを行っている。

 因みに姉のフォースメンバーである居合抜刀術を扱う武者風ギャンの使い手『マヒル』を抜刀師匠と呼び、ビルダー能力が高い『K5』をケーコ師匠と呼んでいる。

 姉のファンであるザクムラに対しては『ザクムラのおじさん』呼び。

 

 ――リアル――

【サザキ・マドカ】

 瞳は黒で、髪色は明るい茶髪であること以外はGBNのダイバー姿と酷似している。

 テトラこと『サザキ・コトラ』のギャルファッションにも憧れているため、大人びた態度をとろうとするが、内面はまだまだ子供なので、背伸びしたがる姿はかわいらしくもある。

 コトラのような金髪に染めたいと常々思っているが、まだ早いと禁止されている。

 かわいいものよりもかっこいいものが好きな指向にあり、中学生ということもあってか部屋には円卓の騎士や魔術資料など、所謂そっち側御用達のものをよく集めている。

 長男、姉妹同様にギャン好きなのは相変わらずだが、特にギャンの発展型MSであるR・ジャジャを好んでいる。

 

 ――ガンプラ――

【ラモラック】

 正式な名称は『円卓の聖騎士ラモラック・ジャジャ』

 文字通り円卓の騎士の一人『ラモラック』をイメージして改造したR・ジャジャ。

 青みがかった銀色を基調とし、各部を赤に染め上げた西洋の騎士のような風体をしている。

 両肩部に設けたサブアームにミサイルシールドを装備している他、赤く染めたABCマントを背部になびかせている。

 ショルダーミサイルはオミットされており、代わりに金属パーツで埋められている。

 

『トンファーランス』

 ゴトラタンのビームトンファーをベースにし、ランスを組み合わせた二振りの近接武装。

 前面部にランス、後面部にビーム発振器を備えており、ゴトラタンのそれと同様にビームサーベル、ビームシールドの機能も使用可能。

 エネルギーをランスに回すことで、ビームランスとしても使用できる。

 

『銃剣付きビームマシンガン』

 銃身下部にヒート剣を取り付けた射撃武装。

 ギラ・ドーガのものを流用している。

 

『ビームセイバー』

 片刃状のサーベルの形をした独特な近接武装。

 柄部分にはD字型のナックルガードがある。

 通常のそれよりも高出力であるため、一撃が必殺の威力と化す。

 普段は腰部にマウントされたチャージホルダーの役割を有する鞘に収められている。

 

『バリアブルシールド』

 原型機からそのまま引き継いでいる可動式盾。

 内側にスラスターを増設しており、より機敏なマニューバを実現できる。

 

『ジャジャホース』

 じゃじゃ馬。

 サブフライト・システムであり、風雲再起をベースに改造したもの。

 二本のサブアームを設けられ、右側に『マシンキャノン内蔵ヒートランス』を、左側には『カイトシールド』を装備することが可能。

 カメラアイがモノアイに置換されている他、頭部は分離し、腕に装着することで『ドリルホーンランス』として利用できる。電童かな?

 また合体機構も追加されており、前半身が切り離され、本体腰部後方と残った後半身が合体することで四脚状態となる。

 この際、本体の脚部を変形し、馬の脚のような細さになる。

 切り離された前半身は追加装甲として後半身を守るシールドとなり、前脚はブースターユニットとして機能する。

 簡易的な合体機構ではなく、かなり凝った合体機構であるが、トライオン3のような複雑さはない。



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人物列伝7『レイブン/レイヴェン・カラン』(修正中)

中々筆が進まないので初投稿ですわ。

◆フリー◆これらの設定はビルドダイバーズ、及びリライズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ◆ダム◆


【レイブン】

 鳥――カラスをモチーフにした灰色の機械的な人型の男性ダイバー。

 いわゆるアンドロイドと呼称されるタイプの外見。

 190㎝ほどもある躯体は人工筋肉により引き締まり、各所に青く点灯するラインが奔っている。

 カラスの骨のようなフェイスカバーをしており、その下はモノアイ型ののっぺりとした顔面となっている。

 フェイスカバーは上に上げることができる。

 耳に当たる部分には羽根型のイヤーインカムが取り付けられている。

 躯体に上から黒色のコートを纏い、同色のジーンズを穿いている。

 

 一人称は通常は「ワタシ」 親しい相手には「オレ」

 二人称は「キミ」「少年」「少女」 親しい相手には「オマエ」「呼び捨て」など。

 性格は見た目通りどこか無愛想な雰囲気が漂っている。

 実際は外見を意識して『クールでカッコいい奴』を演じているだけで、内心は熱いプラモ魂を持ったガンプラ馬鹿の一人である。

 時々女子っぽい仕草をすることがある。

 

「ワタシはレイブン。ありきたりな名前だが気に入っている。よろしく頼む」

「強襲は得意分野でな。悪いが押し付けさせてもらおう!」

「援護は任せてもらおうか。心置きなく前を向いて進め!」

「伊達や酔狂で12位にいるわけではない!」

「影が薄いとは承知こそしていたが、よもやここまで薄いと、流石に堪えるな……」

「誰が百合の間に挟まる男か! 好き勝手な呼称をつけやがってからに!」

「できるのか、できないのかは建前に過ぎん。結局のところは、やるか、やらないかだ」

「悔いのない選択などははない。あるのは悔いのないように行動する、ということだけだ」

「声を感じるのであれば、カメラなどに頼らずとも視ることはできる!」

 

――ダイバーズ編――

 個人ランク12位に座す上位ランカーの一人。

 11位『クーコ』と13位『クオン』と連なって二桁の最難関とされている人物。

 クーコとクオンの間に位置することから『百合の間に挟まる男』という不名誉なあだ名で親しまれている。

 しかし二人と比べると上位ランカーとしては影が薄く、ダイバーネーム自体も割とよくある中二チックなものであるため、彼を12位のレイブンだと気づける者は意外と少ないらしい。

 近、中、遠距離のいずれもこなせるマルチアタッカーで、本人は強襲を得意としている。

 ガンプラも主に高機動を主軸にしたものが多い。

 圧倒的な速度と反射神経、そして先が見えているようなニュータイプめいたマニューバで上位ランカーとしての強さを有するも、それでも一桁にまだ届かないことから、一桁台の魔境っぷりをより強く印象付けている一因。

 

 特定のフォースには所属しておらず、フォースランキングには載っていない。

 所謂『傭兵』というロールをこなしており、その評判は『雇った時点で勝ち』。

 絶対とはいかないが、勝率の高さは随一であるためか、大事なバトルのために是が非でも彼を雇おうとするフォースが現れる。

 雇用側からすれば実に頼もしい存在だが、雇用側と対峙した者からは「クソゲー」とすこぶる評判は悪い。

 

 この頃の最も有名な話は、配信中のG-TUBER『967』の企画で夏限定ミッション『強襲! チョパムグリル!』に最速で凸してきたことが語られる。

 元々このミッションは30vs30という、一戦ごとにランダム生成されるバカンス島を舞台にした期間限定ミッションで、防衛側はチョパムグリルを脱出ラインまで守りながら運び、強襲側はそれを回収エリアまで奪って運ぶというもの。

 967の視聴者参加型配信時、レイブンは『黒塗りのディンレイブン』による上空からの偵察と囮を一人で請け負い、上空からの砲撃で敵の位置取りを操作しながら、967の進行ルートを確保、そのまま一気に強奪させて圧勝という12位の実力を遺憾なく発揮して見せた。

 なお大半の視聴者からは『誰が967ちゃんの見せ場をなくせといった!』と怒られて落ち込んだ。

 その時の言い訳である『だって967ちゃんに良いカッコ見せたかったから……』は今でも弄りネタとして活用されているとかなんとか。

 

 

――リライズ編――

 相も変わらず12位が定位置となっている。

 時にクーコを倒して11位になったり、クオンに敗けて13位になったりと時々変動することはあるものの、最終的には12位に戻っている。

 すっかり967ちゃん推しであることが知れ渡っており、967ちゃんファンの最高戦力の一人となっている。

 Gセイバーに乗り換えてからは、焦燥感から何時もよりも動きが悪いらしいが?

 

 第二次有志連合以降では967やクオンのようにG-tuberにはなっていないが、動画を上げるようになっている。ただし告知も何もしていなので、再生数は少ない。

 内容は『アクシズ内部をWR形態で飛行してみた』や『ソロモンデブリ帯を高速飛行してきた』などのジェットコースター、あるいはパルクールめいたものが多い。

 他にもZレイブンの形態解説や、キットに別キットのガワを被せる製作説明動画などもあげている。

 解説動画の場合、ガンプラは『パーフェクトGオング』を使用している。

 『手の内を明かしていいのか?』というコメントに対し『手の内を明かしたくらいで負けるようなら12位にはいない』と返したり、動画内で『こういった手法はサッキー・タケダに教えてもらった』と言及したことで一時視聴者を騒然とさせたこともある。

 

 

――リアル――

 

「ヘイ! オレオレ! オレがレイブンだぜ!」

「ヘヘヘ、マスター、また新しい改造案が出来たからお邪魔しにきたぜ」

 

【レイヴェン・カラン】

 毛先にいくほど赤く染まったブロンド髪を三つ編みにした少女。

 ウェスタンスタイルな格好をしているのが特徴。

 父親に憧れており、男性的な口調や態度を意識しているが、素では少女らしい一面があり、レイブンの時と比べると押しに弱い

 その父親こそGPDアメリカ代表『マークス・カラン』その人である。

 実際に血の繋がりがあるわけではなく、マークスが孤児院から引き取った養子。

 元々レイヴェンは『ガンプラの魂の声が聞こえる』という特異体質の持ち主で、それが原因となって周囲から気味悪がられて距離を置かれていた。

 故に声が聞こえるガンプラを友達として製作し続け、孤児院のガンプラ馬鹿として知られていた。

 そんなある時、ガンプラを楽しく作る彼女を目撃したマークスによって養子に迎えられたという経緯がある。

 マークスからガンプラの制作技術とGPDの操縦技術を、後に出会った『サッキー・タケダ』と名乗る人物からガンプラ以外のパーツを応用した製作技術を学んだ。

 GPD最後の世界総合大会で父親を倒した日本を研究するため来日し、現在ではすっかり住み慣れてしまった。

 時間がある時は、とある喫茶店(ガンプラ喫茶センチュリー)に通って軽食を摂りつつ、店内の隅っこに設けられた製作コーナーでガンプラを作るのが習慣となっている。

 父親と会えない寂しさはあるものの、日本にいれば最先端のガンプラ技術に触れられることからホームシックになったことはないということ。

 日本に来てからは知り合いはいるものの、友人らしい友人がおらず、そのために時間がある時は喫茶店で大半を過ごすなど、結構自堕落。

 

 2年後では父親からGセイバーを送られてきたことで、父親がGPDから完全に引退すること、GBNに移行する気はないということを察し、意志を継ぐことを決意。

 しかし、12位から中々上にいけない自身の実力に思い悩み、父親のようにGセイバーを上手く扱えないことに不安を抱き、さらにガンプラの魂の声と噛み合わず焦燥感を募らせてしまい、それはGBNでのマニューバに知らず知らずのうちに影響を与えるほどであった。

 

 

 ――ガンプラ――

【ディンレイブン】

 ディンレイブンを再現した黒塗りのディン。

 ミラージュコロイドシステムによる高い隠密性を備え、長距離射撃用に実弾仕様のスマートガンを装備。

 実際は967の配信に参加するために、Zレイブンにわざわざスクラッチしたディンのガワを被せたもの。

  

【Zレイブン】

 黒塗りのZプラスC4型。

 実際はZプラスではなく、ZガンダムをベースにZプラス風に改造した機体。

 ビームライフルを内側に収納できる、メガ・ビームランチャー内蔵大型サブユニットシールドを装備。

 高機動は元より、スムーズな変形による戦術でレイブンを12位にまで昇り上げた相棒。

 Gセイバーに乗り換えるまでは原典機のように様々な形態を披露した。

 

【Zレイブン・レイザーエッジ】

 Zレイブンの近接特化形態。

 バルカン砲、太腿部ビームカノン以外の射撃武装は取っ払い、ビームサーベルを始めとした近接兵装を取り付けている。

 ウィングソードユニットと名付けた、WR形態時は翼に、MS形態時は二振りのヒートブレードとなる特殊武装が特徴。これは連結することで弓形状の双刃となる。

 エネルギー節約用にヒートナタなども装備している。

 

【Zレイブン・アクアマリン】

 Zレイブンの水中戦特化形態。

 ハイドロジェットを搭載し、シュノーケル形状のバイザーパーツを着用。

 炸裂式ハープーンガン、偏向ビームライフル、魚雷ポッド、対空ミサイルなど水中戦に集中した装備となっている。

 腰部にはワイヤーアンカーを備えている。

 WRへの変形も可能で、耐水性と耐圧性を重視して関節部への強化が成されている。

 

【Zレイブン・サベイランス】

 Zレイブンの索敵・電子戦形態。

 レドームユニットを搭載し、十字型のモノアイバイザーパーツを着用。

 撃ち込んだ対象に電磁波を流し機能停止させる電磁弾を内蔵したスマートガンの他、電磁ミサイルや特殊粘着性ワイヤーネットなど、相手の機動を阻害する武装が多い。

 また近接用に、放電で青白く発光するスパークランスを装備している。

 

【Zレイブン・ドミナンス】

 Zレイブンの空戦特化形態。

 言ってしまえば「軽量化したZレイブン」というマイナーチェンジであるが、通常のZレイブンよりも空中適性が高い。

 ただしZレイブンの上位互換かと言われればそういうわけではなく、軽量化故にパワーは劣っている。

 取り回しを考慮して射撃武装は銃身は短いものに変えている。

 特にビームリボルバーガンを二丁持ちしたガン=カタめいた武術を用いる。

 ビームサーベルはνガンダムなどが使用した斬りかかる時のみにビームが発振するオートパワーオン機構を採用している。

 

【Zレイブン・ハウザー】

 Zレイブンの射撃特化形態。

 下部にグレネードランチャー、ヒートブレードを内蔵した大型ビームランチャーを装備。

 サブユニットシールドにはガトリング砲を内蔵。

 またパージ前提であるがミサイルユニットを搭載し、爆撃用の各種ミサイルを内蔵している。

 さらにZプラスA2型のように頭部にメガキャノンを搭載しているのも特徴。

 チョパムアーマーを取り付けており、一時的に機動力は落ちるものの防御力も向上している。

 

【Zレイブン・バレットバラード】

 Zレイブンの実弾特化形態。

 エネルギー兵装を全てオミットし、全身を実弾兵装で固めたロマン機体。

 特に連射系が大半を占めており、その殆どは外付けのパージ前提である。

 所謂『Zプラス版フルバレットザク』

 勿論、頭部にはヒートブレードを搭載している。

 その充実性は以下の通り――

 30㎜滑空砲、右腕部ガトリング砲、左腕部グレネードランチャー、太腿部ミサイルポッド、膝部速射砲、胸部バルカン砲、肩部内蔵破砕砲、背部ガトリンガン、頭部バルカン、頭部ヒートブレード。

 

【Zレイブン・ハミングバード】

 Zレイブンの高速戦闘特化形態。

 名前の通りハミングバードを再現した形態で、Sガンダムのブースターユニット4基を肩部・脚部に装着。

 武装もSガンダムのものに置き換わっているが、頭部はメガキャノンで、インコムはリフレクターインコムとなりリアアーマーの両側に搭載している。

 

 

【Gセイバー】

 父親が愛用していたガンプラ。

 何回、何十回も、何百回も作り直されており、初期のものより装甲が厚くなっている。

 それ以外は原型を留めており、非常に愛されていたことが窺える。

 二重関節構造(ダブル・ジョイント・フレーム)を採用しており、柔軟な可動を実現している。

 レイブンはこれを黒塗りにし、GBNで使用したが、父親のようにうまく扱えないことから自分の今の実力に不安と疑問を抱き始めてしまう。

 30㎜バルカン、ビームサーベル、ビームシールド、ビームスマートガンと武装はシンプルに纏まっている。

 

 

【Gセイバー・レイブン】

 Gセイバーを自分に合わせて改造したミキシングビルド機。

 ゲーム版に登場した『レイブン』と一体化したという設定で、セイバーガンダムのバックパック(アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲)や、ジンのバックパックを肩部に移植するなどして、Gセイバーをベースにしながらもレイブンの要素を再現した改造となっている。

 簡易的な変形機構を有し、よりスムーズな変形を可能としている。

 コの字型のグリップの手持ち式に改造したヴェスバーを二丁装備しているのが特徴。

 グリップ下部からエネルギーチューブを接続し、高火力と連射性を両立している。

 独特な『カァオ』と聞こえる発射音も特徴的。

 それ以外の武装は30㎜バルカン、ビームライフル、腰部ビーム砲、ビームシールド兼ビームサーベル、ウィングソードユニット、腕部ガトリンガン、バスターキャノン(アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲)など。

 

 

【パーフェクトGオング】

 まだアメリカに居た頃『サッキー・タケダ』を名乗る人物から指導を受けた際に製作したガンプラ。

 一見してジオングだが、中身はガンダムのフレームを使用したもの。

 サイズもガンダムサイズとなっている。

 肘から先を射出する有線式アームは、手首から先を射出するように改造されている。

 近接武装に三叉のビームスピアを装備している。

 この他キットに別キットの装甲を被せて外見を変える技術は、後にディンレイブンで用いられている。




サッキー・タケダ……いったい何者ですの……?

【マークス・カラン】
 アメリカン・ホビーヒーローと呼ばれ絶大な人気を誇るGPDプレイヤー。
 アメリカのガンプラブームを盛り上げた人物で、孤児院を含む様々な施設に訪れてはガンプラを布教し回っていた。
 アメリカ代表として何度もGPD世界総合大会に出場し、強豪たちの激闘を繰り広げ、多数の優勝を飾っている。
 しかし、最後の世界総合大会では上位5位内に入ったものの、最終的には4位という、無冠の結果に終わってしまった。
 ある孤児院を訪れた際に目撃したレイヴェンを養子に迎え、彼女の体質を知るも、それを決して気味悪がることはなく、むしろ素晴らしい才能だと、優しい力であると受け入れている。
 Gセイバーを愛用し、その実力は非常に高い。
 シンプルな武装から繰り出される巧みな高速戦闘を得意としていた。


【サッキー・タケダ(サキ・ヒジリ)】
 レイヴェンが来日する以前、アメリカで出会った謎の人物。
 独特な形状のサングラスをかけたモデラーで、その腕前はかなりのものであったとレイヴェンは記憶している。
 その正体は『プラモ狂四郎』に並ぶレジェンドビルダーの一人で、父親が遺したシュミレーションシステム原型からGBNやGPD以前に存在していたガンプラバトルシュミレーションの基礎を作り上げた『サッキー・タケダ』その人である。
 この頃のレイヴェンは有名な人物に関する情報にまだ疎かったため、彼がその道で有名な大御所であるとは気づくことはなかった。
 父親に次いでレイヴェンの自慢となっている。


【クーコ】
 個人ランク11位に座するハイランカー。
 機動力を伴う技量はレイブンが勝るが、咄嗟の対応力に関してはクーコのほうが勝るといった具合にパワーバランスが拮抗している。

【クオン】
 個人ランク13位に座するハイランカー。
 小型化高機動と大型化重装攻撃という真逆のコンセプトのため、上位帯では珍しく相性の差が顕著となるバトルが多い。
 ただし一発でも当てられたり、足を止めた瞬間に一気に勝敗が傾くので、ある意味で最もスリルがある。
 (※クオンちゃんの設定は青いカンテラ様の『GBN総合掲示板』からお拝借致しましたわ!)

【967(クロナ)】
 フリルのついた黒いドレスを纏い、犬耳と尻尾を生やした少女ダイバー。
 雑談やミッション攻略、凸待ちバトル配信などを行っているGチューバーでもある。
 レイブンは967ちゃん推しで、あまりコメントは打たないがしっかりと視聴している。
 (※967ちゃんの設定は青いカンテラ様の『GBN総合掲示板』からお拝借致しましたわ!)

【ガンプラ喫茶センチュリー】
 都内某所にひっそりと佇む喫茶店。
 店内には様々なガンプラがショーケース内に飾られており、ガンダム好きであれば飽きることのない素敵な空間が広がっている。
 店内の隅っこほうには、ガンプラの制作コーナーも併設されている。
 店長は糸目な長身男性。
 (※ガンプラ喫茶の設定は青いカンテラ様の活動報告『GBN総合掲示板設定追加8』よりお拝借致しましたわ!)


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人物列伝⑧『ミト・アオイ/アオイ模型荘管理人』

見直し中の初投稿ですわ。

アオイ模型荘入居者募集中【https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=258847&uid=116340】

◆フリー◆アオイ模型荘の人物、設定等はダイバーズシリーズの二次創作に限り、良識に沿った範囲内でご自由にお使い頂いて構いませんわ(※ミト・アオイ、ヒムロ・ソラ以外の入居者に関しては発案者様に許可を得ますようお願い致しますわ)◆ダム◆


【ミト・アオイ】

 漢字表記は『三戸・葵』。

 一人称は『私』『うち』『お姉さん』 二人称は『あなた/きみ』『~ちゃん/くん/さん』

 模型店兼アパート『アオイ模型荘』を受け継ぎ、経営している管理人の女性。

 未だに学生制服が着れるのが自慢の年齢不詳のお姉さん。

 住人からは本名で呼ばれることは少なく、専ら『大家さん』や『管理人さん』という愛称で呼ばれることが多い。

 温和で良くも悪くもマイペースな性格。

 感性が少し古く、時おりおばちゃんっぽい部分がある。

 料理も洗濯も掃除もこなす家庭的な一面がある一方で、一度やる気が尽きると大雑把になるなどマイペースゆえの頼りなさを晒してしまうことも。

 また人の甘い面もあり、そこをつけこまれることもあったりなかったりする。

 特に住人に対しては非常に甘く優しく、頼まれればあまり断らないという面倒見の良さを発揮してしまう。

 普段は激したりはしない彼女だが、怒る時は静かに怒るため非常に怖い――とのこと。

 完全に怒った時の顔は誰も知らない。怒ること自体が稀な上、見た者はその時の記憶が抜け落ちているからである。

 年齢を訊かれると『悪寒を感じる微笑み』を浮かべる。

 実はコスプレ趣味があり、制服もコスプレ用に自作したものである。

 管理人部屋と一体化したアオイ模型荘の模型店部分(一階)に住んでいる。

 どことなく間延びしたような、聞き取りやすいゆったりとした口調でのんびりと喋る。

 お酒には強いが、一度寝てしまうと中々起きないという悪癖がある。

 休日はマギーさんのお店にいることも。

 

 外見は学生に見えるほど若々しいとは本人の言。

 髪型は青みがかったミディアムのハーフアップ。

 糸目。普段は裸眼だが、作業中は眼鏡をかけている。

 目を開けていることが殆どないため、寝ているのではないかと勘違いされることも偶にある。

 目を開けるとやや吊り目がちで、細い目つきであることが判る。瞳の色は赤みがかった黒。

 この状態で笑うと人相が悪く見られがちなのが悩みらしい。

 180㎝という背が高くスリムな体形で、過去の出来事から鍛えており身体能力もそれなりに高い。

 服装は基本的にジャージ、もしくはノースリーブニットにジーパンを着て、星条旗柄のエプロンという組み合わせ。

 

 かつては日本で最大を誇った模型店『アオイ模型店』の会長であった『三戸・広右衛門(ミト・コウエモン)』の孫娘。

 コウエモンのよしみでプラモ狂四郎こと京田四郎には子供の頃にお世話になっており、神棚には彼直々に製作したオリジナルの『SD武者ガンダム』とサイン色紙が飾られている。

 またかつてはアオイ模型荘で暮らしていた有名ビルダーもそれなりにおり、お店にはそんな彼らの記念ガンプラやサインが飾られている。

 ビルダーとしては特にSDに関する製作技術は高いが、意外にもガンダムアニメの知識はあんまりなかったりする。

 愛読書はかつで住人であった『テヅカ・コウイチ』の漫画が連載しているコミックバンバン。

 また京田四郎が考えたオリジナルガンプラや改造術を記した『プラモノート』を所有し、大切に保管している。

 

 GPD以前からのガンプラバトル経験者という古参。

 現在主流のGBNもやっているらしいが、普段は店の経営をしているためログイン頻度は低い。

 現役時代の彼女を知る者からは『百面女帝』という二つ名で畏れられている。

 これはどのようなガンプラでもそつなく使いこなすからという意味が含まれているとのこと。

 

――GBN――

 ダイバーネームは『アオイ』。

 ダイバールックはキャスケット帽子を被ったボーイッシュなスタイル。

 現在の使用ガンプラは不明。

 (初ログイン時はガンダムMk.Ⅱ風に改造した『RX-78 ガンダム』を使用していた)

 

 

――物件――

【アオイ模型荘】

 かつては日本最大規模の模型店を経営していた「三戸・広右衛門(ミト・コウエモン)」の孫娘「三戸・葵(ミト・アオイ)」が経営する模型店兼アパート。

 都会の中でノスタルジーを醸し出す古き良き木造二階建て。

 (正確には一度大規模な改築をしており、現在はOz製特殊プラ材を組み入れた積層構造となっている)

 一階は引き戸の模型店で、二階は貸室。

 貸室は15部屋。トイレや台所、お風呂が付くが狭くて小さい。

 一階にも台所や風呂場が存在し、こちらはちょっとした銭湯並に広い。

 何故か換気扇が五つも備えられている。

 一時期は漫画家モデラー『てづか虹一(テヅカ・コウイチ)』やスポーツモデラーの『富田(トミタ)』、アニメモデラーの『阿野世・清四郎(アノヨ・キヨシロウ)』といった著名なモデラーたちが住んでいたことで有名。

 コウエモンが保有していた膨大な数の旧キットやSDガンダムを中心に扱っており、レトロ趣味やSD好きたちの間では穴場として知られている。

 ガンダムメンコやガン消しのガシャポンが現存している数少ない場所でもある。

 因みに貸室の台所や風呂場が狭く小さいため、一階のものを共同として開放している。

 

――サンプルセリフ――

「どもどもどもぉ、ここの管理人をしているミト・アオイです。ま、よろしくねぇ~」

「んふーふ、私もまだまだ十分いけると思うんだよねぇ。学生として」

「やぁやぁやぁ、君が入居希望の子? いいよいいよいいよぉ、大歓迎だよぉ」

「おはよぉ~。今日も元気だねぇ。うんうんうん、大家さんは嬉しいよぉ。元気が一番だからねぇ」

「んふーふ……知ってるかなぁ。笑顔って本来は攻撃的なものらしいよぉ?」

「またかぁソラちゃん……いまりちゃんの詰めの垢を煎じて飲ませたいねぇ……」

「ごめんねぇいまりちゃん。うちにダメな大人しかいなくて」

「ウミノちゃんがよければうちで雇いたいよねぇ。私も独り身が長いからねぇ、きみのような可愛い子がいてくれればいいなぁって」

「ミヤコちゃん。もうすぐ家賃徴収だけど大丈夫かなぁ? いや信用してないわけじゃないんだけどねぇ。ほら、一番ダメな例が身近にいるから余計な心配しちゃうんだよねぇ」

「アッハッハッハ、久々にそのあだ名で呼ばれたなぁ。いやぁ若気の名残ってやつだねぇ。……いや実際にまだ若いんだけども。ねぇ?」

「己を知ること。何が出来て、何が出来ないのか。けどそれだけじゃ完全ではないんだよねぇ。だってそれはただ知っただけで、気づいてないから。まだ気づいていない本当の自分に気付いて、まだ知らない新しい自分を知ることが大事なことだと、お姉さんは思ってるよぉ。んふーふ」




入居者は募集中ですわ。

――主な入居者――

【ヒムロ・ソラ】
 漢字表記は『氷室・空来』
 長髪を後ろ手に束ね、前髪で右目を隠している。髪色は青みがかった黒。
 この隠れた右目だが、実は義眼であり、周囲には薄っすらと傷跡が残っている。
 口調は敬語だが、言葉遣いは割と軽い。
 真面目そうな反面、変なところで律儀だったり大雑把だったりする。
 若い頃は『G研』に所属しており、そこで天地大河、豪多亜留、杉本ヒロシなどの名ビルダーたちを師匠として鍛えられていた。
 現在は『アオイ模型荘』の一部屋を借りて暮らしており、ずぼらな生活を送っている。
 GBN上では『天地神明』の右腕『クーコ』として、いかにもできるダイバーというイメージだが、リアルでの彼女はダメ人間とも言える部類で、ガチャポンの前でレアを求めて祈祷したり、近所の子供たち相手に大人気ないやり口で勝負に勝ったり、自炊が面倒だからとカップラーメンで済ませたり、外出しない日はお古のジャージで一日を過ごしたりと、かなりだらしない。
 ただし妙なところで運が良く、またダメ人間ではあるがガンプラに関する情熱は本物であるので、大人気ない部分はあれど子供達からも何かと懐かれている。
 飲酒はするが特段強くも弱くもないので、飲み過ぎないように心掛けている。
 欲に負けてガンプラを買ってしまうため、毎月金欠気味であり、家賃を滞納している。
 そのため何とか猶予を貰うため恥も外聞も捨てて管理人さんに土下座をしている姿を他の入居者に目撃されている。
 入居者であるいまりちゃんには飯をたかりにいくことも。

 GBNでは『クーコ』というダイバーネームで活動している。
 フォースランク10位『天地神明』のメンバーでありサブリーダー。
 自身は個人ランク11位に座するほどの実力をもつ。
 リアルでは妙に運がいい彼女だが、ガンプラバトルにおいては『不運のクーコ』と呼ばれてしまうくらいに勝負運が悪い。
 使用ガンプラはザンネックの武者風改造機『月華武者ザンキ』。
 SDではスターゲイザーの武者風改造機『月夜見丸』を使用する。

――サンプルセリフ――
「SDのことならこの私、ヒムロ・ソラにお任せを」
「あの、家賃のことですが……どうかもう暫くお待ちいただけないでしょうか……! この通り! この通りですから!」(土下座をかましつつ)
「ふふふ、少年たちよ。大人の力を侮らないことです。見せてあげましょう。これが大人の財力! 大人買いというやつです! ……あ、管理人さん、いえ、これはそのですね……」
「いまりさんには本当に助かっております。お嫁さんにほしいくらいですね。ど、どうしたんですか皆さん、そんな哀れむような視線を私に向けて!?」
「ミヤコさん、私たち仲間ですよね? ……どうして目を逸らすのですか!? ミヤコさん? ミヤコさーん!」
「ウミノさん、私もマジックを習得してきましたよ。その名もみかん浮遊マジック! 決して正面以外から見ないでください!」

【タマキ・イマリ】(青いカンテラ様案)
 漢字表記は『環・いまり』。
 都内の高校に通う16歳。容姿は狐耳と尻尾が無い以外はアバターとほぼ同じ。部屋着はジャージ。黒髪を短めのポニーテールにしている。高校に通うために親元を離れ、アオイ模型荘で一人暮らしをしている。
 性格は明るくポジティブ。好きなものは忍者といなり寿司。GBNで使うガンプラ
 SDを選んだのは『小さくてかわいい』から。時々同じアオイ模型荘の住民たちに手料理を作っている。
 
 GBNでは『イマリ』というダイバーネームで活動している。
 派手な色合いの振り袖に紺色のミニスカート、足首まで覆う編み上げブーツという服装の少女ダイバー。
 先端が白くなっている黒い狐耳と尻尾がある。身長160㎝。
 使用ガンプラはSD『G参ジースリー影丸』。
 〝GBN最高のシノビ〟になるべく、日々ミッション攻略にフリーバトルに明け暮れている忍者少女。そのアバタールックや搭乗機の(元ネタ)通りに、バトルでは様々な〝忍術〟を使って戦う。しかし成功率はさほど高くないようで、失敗することもしばしば。

――サンプルセリフ――
「ニンニン♪」
「忍法、ミノフスキー隠れの術! ……あ、あれ? あれれ? し、失敗しちゃいました!?」
「イマリの夢ですか? それはもちろん! GBNで最高のシノビになることです!」
「え、明日のテスト対策は大丈夫なのかって? ……ひゅー、ふひゅー」
「もう、じーさんじゃなくて、ジースリーです! じ・い・す・り・い!」
「どうですか、いまりの手料理。……美味しい、ですか? えへへ、お口に合ってよかったです!」


【ミヤモリ・ミヤコ】(守次奏様案)
 漢字表記は『宮守宮子』。
 アオイ模型荘の住人の一人であり、南の方から上京してきた美大生。
 座右の銘は『目指せ日本のシャフリヤール』であり、実際それに見合った受賞歴を誇る凄腕のビルダー。
 ガンプラの製作費で常に家計が火の車なので、家賃こそ滞納しないものの月末はいまりによく飯をたかりに行く。
 
 GBNでは『ミヤミヤ』というダイバーネームで活動している。
 ペリシアにガンプラを飾るためだけにCランクまでキャリーしてもらった程度の腕前。

 使用ガンプラは『ディスティニー・アルビオン』。
 両方ともアロンダイトに換装し、ストライクフリーダムのような白と金に塗り替えたデスティニーガンダム。
 フレームの新造など多くの改造が施されているが機体の性能に腕が追いついていないのでその機能のほとんどは活かせていない。

――サンプルセリフ――
「どもども〜、目指せ日本のシャフリヤールこと宮守宮子、気軽にミヤミヤって呼んでくれてもいいよ?」
「いまっちのご飯で私は生きられているのさ……いまっちは神様仏様天使様だよ〜」
「家賃だけは……家賃だけは払わないとソラさんみたいに管理人さんの前で土下座することになるから……!」


【クモヨリ・ウミノ】(X2愛好家様案)
 漢字表記は『雲由・海乃』。
 地毛の金髪を活かしてギャルになる事も出来ず、染めて陰キャになる事も出来ず、結果的に完全にクラスの中で孤立した悲しきJK。
 学校に持ち込めるギリギリの道具であるトランプが唯一の友達という陰キャでもないのにボッチな女。
 トランプタワーと簡単な手品が得意技。
 アオイ模型荘で披露する手品は好評な為、学校を卒業したらアオイ模型荘の専属マジシャンになる等トチ狂った発言をする程には友達が居ない。
 最近では『いまりちゃんが同じ学校なら良かったのに』が口癖になりつつある。
 家事全般は得意でもなければ苦手でもない。

 GBNでは『シーエオ』というダイバーネームで活動している。
 微妙な手品・マジックをする事で一部に有名。
 『GBNで手品見てもなぁ』と言われ、大抵の客は途中で帰るかそもそも集まらない。
 また常連も手品というより彼女のダイバールックを見たいのと失敗してアタフタする様子を愛でたいだけだったりする。
 唯一、自分な真剣に向き合ってくれ、手品を素晴らしいと褒めてくれた謎のナラティブガンダムには感謝しているらしい。
 ダイバールックはピエロとバニーガールを足して2で割ったような、やや際どい衣裳。
 使用ガンプラは法術士ニューを目指していたら別物になってしまった悲劇(喜劇?)の機体『奇術士ローニュー』。

――サンプルセリフ(リアル)――
「ボッチJKのトランプタワーRTAハージマールヨー……何やってんだろ……(淀んだ瞳)」
「はいーあなたが選んだカードはこれですね?」
「ただいまー(誰かの返答)あぁ人の暖かみ……」
「いまりちゃんが同じ学校なら良かったのに」

――サンプルセリフ(ダイバー)――
「りぇディースエーンジェントルメーン」(出だしから噛んだ最悪!)
「ちょっ、何で成功したのにガッカリしてるの!?」
「種も仕掛けもございません、が!」
「直接戦闘は専門外なのですが!? ヘルプミー!!!」


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