鬼滅の刃〜縁壱さんは持ち霊です〜 (ちゃんエビ)
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第1話 初めての合体⁈グーたら娘と変質者

縁壱さんが憑依して戦う作品ってあったっけ?と思い書いてみました
多分あるのでしょうが私の目が節穴なので

プロフィール紹介

麻倉芽衣 グーたら生活を満喫したいこの物語の脱力系主人公

あの世の者、所謂霊と交信の出来るシャーマンの家系に産まれた故
普通に霊と交信が出来るが面倒くさがりなのであまりやりたがらない
実家の麻倉家が代々続くエリートシャーマンの血筋なのか生まれつき巫力が高く芽衣もエリートシャーマンと呼べる素質はあるのだが前述の性格のせいで発揮されていない。

年齢 15歳

髪型 肩先まで伸びるレイヤーボブ
面倒くさがりだが髪の手入れは意外にマメ

クッキリとした顔立ちに愛嬌のある目、所謂容姿端麗それ故にモテる筈だが面倒くさがりなのでモテない

温泉が大好きなので服装は基本浴衣、無地の淡い紫の浴衣の上に黒い羽織りを羽織っていて背中には地元の温泉旅館ふんばり温泉のロゴが描かれている
芽衣曰く常連なので旅館から貰ったとのこと、決してパクったわけではないと本人は主張している




とある昼下がり街道を気怠そうに歩く少女が1人、何やらブツブツと言いながら歩く少女は手荷物から地図を広げると難しい顔をして地図と睨めっこをしていた。

 

「あーもう疲れたよ〜!産屋敷家ってどこなのさ〜!」

 

道端で文句を言う少女の名は麻倉芽衣、大陰陽師麻倉葉王を始祖に持つ由緒正しき霊能一家の彼女は絶賛迷子中であった。

 

「こんな地図でどう探せって言うの?矢印書いてこの辺ってどの辺だよ〜!」

 

芽衣が見ている地図には目的地である産屋敷家の所在地に矢印をつけてこの辺と書かれているのだがその地図は全国図、日本を縮小した地図でのこの辺は広範囲がこの辺でありそんな役にも立たない地図を持たされた芽衣は途方に暮れ、1人寂しく歩いていた。

 

そもそも何故芽衣がこんな目に合ってるのかというとそれは早朝に遡る

 

「芽衣!この馬鹿孫が〜‼︎お主はいつまでグーたらしとるんじゃ!麻倉家たるもの立派なシャーマンになるべく日々精進せにゃいかんのじゃぞ‼︎」

 

「爺ちゃん考えが古いよ?それにシャーマンファイトなんてずっと先じゃん?私の時代じゃ来ないし?ゆっくり過ごそうよ」

 

「何を戯けた事言っとるんじゃ!鬼が跋扈する世でゆっくり過ごせる筈がなかろう?」

 

「鬼?爺ちゃんの足元でいっぱい跋扈してるけど?」

 

「馬鹿タレ!儂が従えてる魑魅魍魎とは違う鬼じゃ」

 

「ふーん、誰かの持ち霊?それとも彷徨ってるはぐれ鬼?」

 

「そうではない、儂らに見えてる鬼とは違う鬼がいるんじゃ!現実に生きている鬼がの」

 

「爺ちゃん、ボケちゃった?伝承や逸話に出てくる鬼って私達が見えてる鬼とかそうゆう存在じゃん?そんな不思議生物なんているわけないよ」

 

「ボケとらんわ!今の芽衣が知らぬのも仕方ない事じゃが麻倉家たるものいずれは知る時が来る」

 

「いやいいよ知らなくていいし、知りたくもない、むしろゆっくりしたい」

 

「この馬鹿孫・・そうじゃ、お主持ち霊はまだじゃったな、お主も今年で15、持ち霊の1人でも見つけて立派なシャーマンになる努力をせんとな」

 

「私の辞書に努力なんて言葉はないよ?」

 

「喧しい!社会勉強も兼ねて儂の友人にお主の事を頼むからな、これはもう決定事項じゃ‼︎」

 

「私の意思は⁈横暴!横暴!」

 

「当主の権限じゃよ」

 

「ズルい!ズルいよ!ズル剥けだよ」

 

「儂の頭の事は言うでないわ!気にしてるんじゃぞ!」

 

「毛生え薬効かなかったんだね」

 

「それ以上言うと儂泣くよ?泣いちゃうよ?」

 

「はぁ〜それで?私はこれからどうすれば良いの?」

 

「うむ、お主にはこれから産屋敷と言う儂の友人宅へと行ってもらう

地図に所在地は記してあるからそれを見て行けば分かる筈じゃて」

 

「え?今から?私が行くの?」

 

「そうじゃ!出発は早い方がええ、今から行けば夜迄には着く筈じゃよ」

 

「面倒くさいよ、明日にしよ?うん!それがいいよ、明日から本気出す」

 

「馬鹿タレ!今頑張れない者が明日頑張れる筈がないじゃろ!今すぐ準備せんか!」

 

「む〜〜、私の本気見せてやんよ!」

 

このようなやり取りがあり芽衣は産屋敷邸へと足を運んでいるのだが

場所が分からない、一度戻って抗議したい所だが啖呵切った手前引き返すのは嫌だ、何よりまた最初から歩き直すのが面倒くさいと芽衣は引き返す事なく歩を進め彷徨い続けて行く。

 

「ま、何とかなるよ」

 

絶賛迷子中の筈だが能天気な事を言う芽衣は役に立たない地図を手荷物の中に仕舞うと近くの木陰で一休みしようと木陰の中に入って行った

 

「あー涼しい〜、もう此処から動きたくないよ〜」

 

涼みながら木の根本に座り込んだ芽衣は衣服をパタパタさせながら服の中に空気を送り込み体を冷やすと、心地良さから次第に居眠りへと移っていった。

 

「ふぁ〜!良きお昼寝日和だったねー」

 

欠伸をしながら体を伸ばす芽衣、彼女が起きたのはあれから数時間が経った夕方であった。

 

「そうだな、日の光はこの世界を優しく包んでくれる」

 

芽衣の独り言に返事をする謎の声、誰もいなかった筈なのに寝てる間に人がいたと気付いた芽衣は恐る恐る声の方へと視線を向けた。

 

「ぎゃーーー‼︎変質者ーー!寝てる間に私にいかがわしい事をしたんだーー‼︎」

 

そう叫ぶと恐怖のあまり全力疾走でその場を走り去る芽衣、慌てるあまり手荷物を置き忘れている事に気付かずその場に置き去りになった手荷物を見つめる声の主はその事を伝える為芽衣の後を追いかけ出した。

 

「ふぅ〜ふぅ〜、久しぶりに全力で走ったよ、もう一生分走ったって言ってもいいよ」

 

全力疾走で街道を駆け抜けた芽衣は偶然見つけた廃墟の中に逃げ込むと

自分の体を調べ始め異変がないか確かめ出す。

 

「着衣が乱れてるよ〜絶対さっきの変質者が何かしたんだ間違いない」

 

着衣が乱れてるのは一心不乱に走っていたせいなのだが、恐怖のあまり

乙女心も羞恥心すら吹っ飛ばしていた芽衣が気付く筈もなく、変質者のせいだと1人騒いでいると

 

「私は何もしてはいない、それに変質者と呼ばれるのは流石に堪える」

 

芽衣の背後から先程の変質者が喋り出し

 

「ぎゃーーー!また来たーー!今度は何されるの?何って言うかナニだよね?」

 

そう叫ぶと芽衣は再び全力疾走で逃げ出した。

 

「もう何なの?私何かした?むしろ何もしてないよ?」

 

全力疾走の最中自問自答をする芽衣、思い当たる節が無いと考えるも変質者は自分を狙ってる、とにかく今は逃げる事だけ考えようとするが

 

「そこの少女私の話を聞いて欲しい、足を止めてくれないか?」

 

芽衣曰く変質者は芽衣にそう呼びかけるが

 

「ぎゃーーー!追って来たーー‼︎これはもうアレだ!狩人の目だ、ひと狩り行こうぜ!的なヤツだ!コンチクショー‼︎」

 

もう既に何が何やら分からなくなってきた芽衣は、思いの丈を叫び倒し

それはもう我武者羅に走っていた。

 

そんな芽衣の逃亡劇と変質者の追走劇は夜まで続き、体力の限界が来た芽衣は走る事も出来なくなりその場に膝をつく

 

「はぁはぁはぁはぁ、もう無理走れない!てか私どんだけ走ったの!何この無駄な体力?いや今回に限っては幸いだけど」

 

普段グーたら生活を送っていた芽衣だが何故か無駄に体力があり芽衣自身も驚いてはいたがグーたら生活を送りたい芽衣には必要ないものだと

思っていたが今の芽衣の状況では無駄な体力が有り難いと考え直していると

 

「ようやく止まってくれたか、少女に伝えたい事が」

 

芽衣の背後には息一つ乱さず何食わぬ顔をして佇む変質者が芽衣に話しかけてきたが、その言葉を遮るように芽衣が叫び出した。

 

「何で追って来るのーー!私汗まみれだよ?泥まみれだよ?汗臭いよ?泥臭いよ?・・はっ⁈もしかしてそうゆう特殊な好みをお持ちで・・いやいや!ない!ないから!しかも息一つ乱してないとか!これから息を乱します、そうゆうわけですかこのヤロー‼︎」

 

もう走れない芽衣と何食わぬ顔をして芽衣を見下ろす変質者、既に何を諦めた芽衣は自暴自棄になり変質者に文句をぶつけると

 

「私は継国縁壱、変質者ではないし既に生者でもない」

 

変質者は自身の名を芽衣に告げると変質者呼ばわりされた事を否定しつつ既にこの世の者でもないと芽衣に告げる。

 

「はい?生者ではない?・・何それ?私一人で勘違いして醜態晒してたの〜⁈黒歴史!圧倒的黒歴史‼︎今すぐ消えてなくなれ〜!」

 

変質者改め縁壱が既にこの世の者ではないと知ると芽衣は今迄の出来事を黒歴史と認定し一人騒ぎ出し、縁壱はどうしたものかと悩みながら芽衣の一人劇場を眺めていた。

 

 

 

 

「さっきは取り乱してごめんなさい変質者と言った事もごめんなさい」

 

芽衣は落ち着きを取り戻すと縁壱に先程の出来事を謝りながら頭を下げる

 

深々と頭を下げる芽衣に目を向ける縁壱だったが前屈みになっている芽衣の胸元がはだけているのを見てしまった縁壱は咄嗟に目を逸らし明後日の方向を見ながら芽衣に話をしだした。

 

「私が君を追いかけのは君が荷物を忘れていった事を伝えたかった事と

もう一つ君には私の事が見えている、いや話も出来ている!私が今の状態になってからこのような事は初めてなんだ」

 

縁壱は芽衣が荷物を置いていった事と自分が死んでから生きた人間と交流するのが初めてだと芽衣に告げると

 

「縁壱さんだっけ?いつ死んだのかは分かんないけど普通の人に霊の姿なんて見えないし話す事も出来ないからね、縁壱さんが驚くのも無理はないよ」

 

縁壱が死んだのは今から400年程前、未練を残し霊となった縁壱は現世を彷徨っていたが霊故に誰からも認識されず孤独な時間を長年過ごしていた、そんな縁壱がふと立ち寄った木陰にいた少女芽衣、彼女の独り言に言葉を被せるように語りかけた縁壱、例え誰からも相手にされなくとも言葉に言葉を被せる、今の縁壱にはそれだけが孤独を紛らす手段だった。

 

だが今回は違った、縁壱の姿を捉え事が出来る、話す事が出来るそんな少女が縁壱の目の前にいる、その事が堪らなく嬉しい縁壱は荷物の件もあって芽衣の後を追いかけていた。

 

そんな縁壱は何故自分が見えるのか?何故自分と話せるのか?気にはなっていたが折角会えた自分と交流出来る少女芽衣に野暮な事を聞くのは控えようとしていたがその理由は芽衣の口から語られた。

 

「私はシャーマンっていうあの世の者と交流出来る能力があるの、まあ霊能力だね。縁壱さんの姿が見えるのも話す事が出来るのもそのシャーマンの能力のおかげだね」

 

芽衣は自分の能力の事をあっさりと縁壱に告げると縁壱は

 

「この世にはそのような力があるのか、今までの私には知りもしなかった世界だ」

 

芽衣の発言に多少の驚きと納得を含めた表情を浮かべた縁壱は芽衣のいる方へ目を向けるが再び目を逸らす。

 

「縁壱さんどうしたの?」

 

縁壱の行動に疑問を持つ芽衣はその理由を縁壱に聞くも縁壱は口を閉ざし視線を逸らす事に神経を注ぐ、そんな縁壱に対し芽衣は縁壱の目の前に立つ、縁壱は再び目を逸らしそっぽを向く、その繰り返しを何度かやっていると縁壱は諦めたのかその理由をぎこちなく芽衣に話し出した

 

「その・・胸元は早く閉じた方が・・風邪を引く」

 

先程まで全力疾走で駆け抜けた芽衣は衣服が乱れ胸元がはだけているのだがそれどころじゃなかった芽衣はその事をすっかり忘れていた為衣服を整えていなかった、お世辞にも豊満とは言わないがそれなりにはあると自称する芽衣の胸元が縁壱に晒され急激に赤面する芽衣は慌てて衣服を整えると縁壱を睨み付け

 

「縁壱さん見たでしょ?」

 

と尋ねるも縁壱は

 

「見てはいない、見えそうだったから咄嗟に目を逸らした何も心配はいらない」

 

と答えるが、そうゆう問題じゃないと芽衣に怒られる。

 

「まあ過ぎた事はしょうがないし私も気を付ける、ところで縁壱さんはどうして成仏出来ないの?どんな未練があるの?」

 

気を取り直した芽衣は縁壱の未練について尋ねてみるも

 

「私には助けたい人がいた、だが私は助けられなかった」

 

縁壱はそう話すと悲しそうな表情になり俯くと

 

「そっかー、私は何も出来ないけど話を聞く事は出来るよ?縁壱さんが少しでも楽になれるなら私に話して?」

 

芽衣は縁壱の目の前に立つと縁壱の顔を覗き込みながら励まそうとする

そんな芽衣の優しさに縁壱は笑顔で

 

「ありがとう」

 

と答えるとその場を立ち去ろうとする

 

「縁壱さん⁈どうしたの?」

 

芽衣は慌てて縁壱に詰め寄るが縁壱は

 

「私の未練に君を巻き込みたくはない、君は幸せに暮らすんだ」

 

縁壱はそう告げると芽衣の前から再び去ろうとするが

 

「こんな所に女が一人‼︎しかもこの匂い!稀血!稀血!稀血の匂いじゃねえかぁ〜‼︎」

 

突如として芽衣の目の前に人とは思えない異形の生物が現れ芽衣を視界で捉えながら歓喜の声を上げる。

 

「何?この生き物?稀血?匂い?ちょっと‼︎私が今汗臭いからって匂うとか言うな!気にしてるんだから」

 

鬼が発した匂いという言葉に反応した芽衣、汗をかいて汗臭い事を気にしていた芽衣にとって言われたくない事を言われ抗議するが鬼はそんな事など眼中にないようで舌舐めずりしながら芽衣に近づいて来る

 

「早く逃げろ!あれは人を喰い殺す鬼!私達人間の敵だ」

 

縁壱は目の前の生物が人を喰い殺す鬼だと芽衣に告げ逃げるように促す

 

「鬼?鬼ってあれが?いやでも・・爺ちゃんが言ってた鬼ってこの不思議生物?」

 

芽衣が知っている鬼はあの世の存在、目の前にいる生物が鬼と言われてもピンとこなかったが祖父に言われた鬼の事を思い出すと目の前の不思議生物が鬼だと理解して咄嗟に走り出す。

 

「ヒヒッ!それで逃げたつもりか?折角見つけた稀血なんだ!誰にも渡さねぇぞ」

 

逃げる芽衣を見ながら興奮を隠しきれない鬼は逃げる芽衣を追いかけ始めると次第に両者の距離は埋まっていき、芽衣はとうとう鬼に捕まってしまう

 

「ヒヒッ!堪んねぇなこの匂い!甘い匂いがプンプンしやがる!」

 

興奮した鬼は芽衣を見ながら今にも喰らい付こうと鋭い牙を見せ、目をギラつかせる

 

「だから匂うって言うな!プンプンするとか酷くない?私女の子なんだよ?」

 

鬼の言っている匂いとは芽衣の思っている匂いとは違うものだがそれを芽衣が知る筈もなく鬼に対し再び抗議をする

 

「お前なんか勘違いしてないか?お前が汗臭かろうがなんだろうが俺には関係ねぇ!お前の血、その稀血が堪らなく匂うのさ!お前を喰えば俺は十二鬼月になれそうだぁ!」

 

鬼は興奮しながら芽衣にそう言うと芽衣は

 

「私を喰べる?もしかして今までもそうやって人を喰べ続けてきたの?」

 

芽衣の質問に鬼は呆れた表情になりながらも芽衣に答える

 

「はぁ?何言ってんだ?お前ら人間は俺にとってただの餌なんだよ?

餌を喰う事に何の疑問があるんだ?お前は餌の中でも極上の餌だがな」

 

鬼は笑いながらそう答えると芽衣を引きづり起こし芽衣の首筋に噛みつこうとするが芽衣は鬼を睨みながら

 

「笑えない!私今まで自由気ままに生きてきた、これからもそうやって生きていきたい!でもこんな簡単に命が奪われる理不尽な世界じゃ私は笑って生きていけない!自由気ままに生きれないよ!私はグーたら生活を満喫したいの‼︎」

 

「安心しろ!お前は俺に喰い殺されて死ぬ!お前の言う理不尽な世界で生きる事はない」

 

そう言う鬼から目を背けると芽衣は縁壱の方へと向ける

 

「縁壱さんごめんね?私縁壱さんのお話聞けそうにないや」

 

芽衣は申し訳なさそうに縁壱に謝ると縁壱は

 

「また私は誰も助けられない!目の前にいる少女一人も助けられない!

鬼と戦う力があっても今じゃそれを振るえない、誰も助けられない」

 

縁壱は自分を責めるように独り言を繰り返し嘆いていたが

 

「縁壱さん‼︎」

 

大きな声で縁壱を呼ぶ芽衣に振り向く縁壱、芽衣は縁壱を見つめながらこう呟いた

 

「助ける力が欲しいの?誰かを助ける為の力が欲しいの?縁壱さん、私が縁壱さんの力になる!だから・・私を助けて縁壱さん‼︎」

 

芽衣は縁壱にそう叫ぶと縁壱は意を決した表情になり芽衣の元へと走り出し芽衣を抱きしめようとする

 

縁壱が芽衣の体に触れた途端芽衣の体が一瞬輝き、それに驚いた鬼は芽衣を手放してしまう。

 

「チッ!なんだ今のは?まあいい、稀血の女は絶対逃さねー」

 

鬼はそう叫ぶと芽衣を再び捉えようと目を向けるが芽衣を纏う雰囲気が変わった事を感じ取り芽衣に近付く事を躊躇ってしまう

 

「なんだ?この空気は?脚が震えている?この俺が!鬼であるこの俺があんなガキ一匹に恐怖を覚えているというのか?ふざけるなふざけるな‼︎」

 

たかが人間それも何の力もない子供に恐怖を覚えたと自分に苛立つ鬼は

その怒りの矛先を芽衣に向け喰い殺そうと身構える

 

そんな鬼を目の前に芽衣は縁壱を見つめながらこう呟いた

 

「縁壱さん、私の持ち霊になって」

 

芽衣の言葉に対し縁壱は頷くと芽衣に寄り添うように近づき芽衣に話しかける

 

「私の力で助けられるのなら君の力になろう、名をまだ聞いてなかったな」

 

縁壱は芽衣にそう言うと芽衣は縁壱に

 

「芽衣!私の名前は麻倉芽衣」

 

縁壱に名を教える芽衣は縁壱に触れると縁壱の姿がデフォルトされた魂の姿に変わり芽衣の手の中に収まる

 

芽衣はそんな縁壱を体に吸い込ませるように手を体に触れながらこう叫ぶ

 

「憑依合体!縁壱!」

 

その言葉と同時に縁壱の魂は芽衣に吸い込まれ、芽衣は縁壱と一つになった。

 

芽衣の体に吸い込まれた縁壱の意識が覚醒すると縁壱は違和感を感じ自分の体を見渡す

 

「これは⁈私の体が芽衣に・・いや芽衣の体に私が入っているのか」

 

違和感の正体に気付いた縁壱は静かに深呼吸をする

 

憑依合体とはシャーマンである術者の肉体に霊を憑依させ霊が生前会得していた技能を現世に再現するシャーマンの術であり芽衣に憑依している縁壱は自身の培った技能を再現しようと深呼吸をしていた

 

「どう?縁壱さん?これが私の力、シャーマンの力だよ」

 

「芽衣ありがとう、私と芽衣2人ならきっと助けられる」

 

芽衣と縁壱は精神世界でそう会話すると縁壱は鬼を見据え構えをとる

 

霊体である縁壱は腰に刀を下げた侍のような居て立ちだったが芽衣に憑依してる今はその刀もなく無手で鬼と対峙していた。

 

「なんだあの女、明らかにさっきまでと様子が違う!何なんだ?脳裏に焼き付くようなこの気配、知らない筈なのに昔から知ってるような」

 

鬼は戸惑っていた。芽衣を見たのは今日が初めて、なのに芽衣から感じる雰囲気は昔から知っている、初めて見る筈なのに何故か知っている

この奇妙な感覚に戸惑い鬼は今まで動けないでいたが、芽衣の体を借りる縁壱が動き出すと鬼は危険を察知してその場から飛び退き距離を置こうとするが縁壱の動きが速すぎてあっという間に距離を詰められる

 

鬼は反射的に手を出して縁壱を攻撃するが、単調な攻撃など当たる筈もなく縁壱の渾身の右ストレートが鬼の顔面に炸裂する

 

「ぶへぁ」

 

そんな声を上げながら倒れ込む鬼は自身を見下ろす縁壱こと芽衣を見上げると頭の中に自分ではない誰かが同じ光景を見ている映像が浮かび上がり鬼は本能的に恐怖を感じて体が震え出した

 

「ま、待て!待ってくれ!約束する俺はもう人を襲わない!お前も襲わない!だから頼む見逃してくれ」

 

恐怖のあまり芽衣に懇願する鬼だが、芽衣に宿る縁壱はそれを聞き入れる訳もなく鬼に歩み迫って行く。

 

「あっ!縁壱さん、鬼が逃げてくよ?どうするの?」

 

「鬼を殺すには日輪刀と呼ばれる特殊な刀で首を斬るか日光を浴びるしか方法がない、だが今の私には日輪刀がない、日が昇るまで戦うしか方法はないのだがこの体は芽衣の体だ、無理はさせたくない」

 

「でもほっとくわけにはいかないんでしょ?面倒だけどやるしかないんだよね?」

 

「・・・少なくとも芽衣の命は守られた、今の私にはそれだけで十分だ」

 

「縁壱さん」

 

恐怖で逃げ出した鬼をどうするのか芽衣は縁壱に尋ねるも縁壱は今は芽衣が助かったそれだけ十分だと自分に言い聞かせ、表情を曇らせながら逃げ出した鬼を見送る。

 

そんな縁壱を心配して芽衣は縁壱に声をかけるが2人の懸念は杞憂に終わる

 

逃げ出した筈の鬼の断末魔が響き渡り、その方向を見つめると首を斬られた鬼が灰になりながら消滅していくのが見える、その奥に刀を持った剣士らしき人物がいる事に気付きその人物を見ていたら剣士らしき人物はこちらに近づき芽衣に声をかける。

 

「おう!たいした怪我も無さそうで安心したぞ、しかしこんな子供が鬼を殴り飛ばすとはな、随分と派手じゃねえか」

 

この剣士らしき人物を見て芽衣はこう思った

 

ゴリラ

 

初見の人物に対し随分と失礼な事を考えていた芽衣、そんな芽衣を見つめるこの人物は芽衣の手を突然握りしめると

 

「お前、よく見たら可愛いな!もう派手にな!お前俺の嫁にならねーか?」

 

突如のプロポーズに芽衣は動揺するが、この状況を冷静に見ていた縁壱はその手を握り返すと赤子の手を捻るかの如く、その人物を組み倒すと

睨み付けながら一言

 

「芽衣はそう簡単に嫁には出さん」

 

何故か父親面をして不機嫌になる縁壱、芽衣に対して何か思うところがあったのだろうか、そんな縁壱を見て芽衣はクスリと笑った

 

「お前、俺を倒すとは派手にやるじゃねーか!」

 

その人物は芽衣にそう言うと、芽衣は突然気を失いその人物に向かって倒れ込む。

 

その人物は芽衣を咄嗟に抱き留め様子を伺うと、寝息を立てて眠っている事が窺える。

 

自分の体に別の魂を憑依させる憑依合体、1つの体に別の魂を受け入れ尚且つその力を引き出す、そのバランスを保つ為には強い精神力が必要で今回の憑依合体で芽衣は莫大な精神力を消費していた。

 

芽衣にとって産まれて初めての憑依合体、慣れない力の行使に疲労はピークに達しており憑依合体が解けた途端、芽衣はその反動で気を失っていた。

 

幸いなのが芽衣と縁壱の相性が良かった事だ、芽衣は縁壱を助けたい

縁壱は芽衣を助けたい、2人の気持ちがシンクロし芽衣は縁壱の能力を十二分に引き出せていた。

 

だが縁壱からしてみれば生前の能力を完全に発揮するには肉体である芽衣の体が不十分、もし芽衣の肉体が縁壱に完全に対応出来る体であったならば縁壱の能力を完全に引き出せる憑依100%状態になれたのだが

体の作りが違う為、今の芽衣にはそれは無理であった。

 

それはさておき、気を失い体を剣士らしき人物に預ける芽衣を抱き抱えたその人物は何か面白そうな事が起きそう、そう思いニヤリと笑うと

その場を後にして自分の屋敷へと芽衣を連れて行くのだった。

 

 




芽衣に求婚する謎の男に連れ去られた芽衣、そこで待ち受ける芽衣の運命は?
次回「当主とゴリラと時々オトン」


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第2話 当主とゴリラと時々オトン

芽衣の持ち霊 

継国縁壱 言わずと知れた原作最強キャラ

???  ヤベエ奴だが意外に寂しがり屋




「おい!早く逃げろ!鬼の子が来たぞ!」

 

「ひっ!化け物!来ないで!」

 

「お前なんか消えちまえ!」

 

「気味悪い子ね」

 

「殺した方が良いんじゃ?いずれ災いをもたらすに違いない」

 

「殺してもまた生き返るかもしれないわよ?ほら、あの子がそうだったでしょ?」

 

「ならば生かさず殺さず閉じ込めておくしかない!捕まえろ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だ!やめてよ!・・・・・はぁ〜〜夢かぁ〜何であんな夢見たんだろ?」

 

芽衣が気を失った夜から一夜空けた翌朝、悪夢にうなされ飛び起きた芽衣は自分の周りをキョロキョロと見渡しながら自分の置かれてる環境を確認する。

 

(ここどこなんだろ?昨日縁壱さんと合体してゴリラみたいな人ひっくり返した事までは憶えてるけど・・あれから私どうなったの?)

 

昨日の出来事を思い出す芽衣はそれからの記憶がなくどうなったのか

気になっていたが、ふと芽衣の横から

 

「芽衣目が覚めたか、うなされてたようだが悪い夢でも見たのか?」

 

縁壱が隣で芽衣に声をかけてくると芽衣は

 

「あ!縁壱さんおはよう!うん・・おかげさまで寝起き最悪だよ」

 

と縁壱に返し再び周りをキョロキョロしだす。

 

「ここは昨日いた男の屋敷だ、芽衣はあれから気を失ってあの者にここまで運ばれたんだ」

 

そんな芽衣に縁壱は芽衣が気を失った後の出来事を説明すると

 

「昨日の・・へっ⁈私に求婚してきたあの人の屋敷⁈私何もされてないよね?」

 

「それなら何も心配はない、芽衣の世話は3人の女性がやっていた」

 

突如求婚するような男性の屋敷に連れ込まれた事で心配になる芽衣だったがその懸念は縁壱の返答で解決されたが一つ疑問が浮かび上がる

 

「女性が3人?御手伝いさんかな?ここ屋敷みたいだし」

 

芽衣の疑問は普通の疑問なんだろうが縁壱が芽衣にとって理解し難い事を言い出した。

 

「いや、あの3人はどうやらあの者の妻らしい」

 

そんな縁壱の発言に芽衣はしばらく放心状態になりやがて

 

「縁壱さんゴメン!何言ってるかわからない」

 

実際には縁壱が言っている事は理解できる、ただ意味が分からない

妻が3人、芽衣にはそのふざけた内容が理解出来ず縁壱にそう答えた

 

「私も驚いてはいる、妻が3人もいようとは・・ちなみに芽衣は4人目らしい」

 

「・・・・よし!今すぐここから出よう!」

 

縁壱も驚いてはいるようだったが縁壱はそこから爆弾を落としてきた

芽衣が4人目、先程の衝撃発言以上の衝撃に芽衣は考える事をやめ即退去へと身を乗り出した。

 

「あっ!起きたようだね」

 

「目が覚めて良かったわ」

 

「ようやく目を覚ましてくれましたよぉぉ〜‼︎」

 

「須磨!アンタは声がデカいのよ!」

 

ーーバチーン‼︎ーー

 

「あーー!雛鶴さん!まきをさんがぶったぁぁ〜‼︎」

 

「はいはい、2人とも静かにしてねこの娘が驚くでしょ?」

 

そんな芽衣の脱出チャンスを邪魔する3人、もとい心配で様子を見に来た3人の女性、素晴らしいビンタをぶちかます女性はまきを、ビンタ係の大声女性は須磨、2人を嗜めるおっとり美人は雛鶴、一連のやり取りで芽衣は自己紹介しなくともこの3人の名前とそれぞれのポジションを把握しこの後どうしようかと悩んでいたが

 

「ま、なんとかなるよ」

 

と今の現状を受け入れ3人のやり取りを見つめていた。

 

 

 

「いや〜悪かったね、朝からドタバタしちまって」

 

「いえ、お構いなく」

 

「二人が騒ぐから萎縮してるじゃない、大丈夫?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「煩くしてゴメンなさーーい‼︎」

 

「気にしてませんから」

 

3人からの声かけに当たり障りのない返事をする芽衣、下手に騒げば面倒になるそんな面倒な事は避けようとしていたがまきをの発言が再び爆弾の導火線に火を付けた。

 

「んで?アンタが天元様の4人目の嫁って聞いたけどどうなんだい?」

 

芽衣はこの時を待っていた、この爆弾を処理するこの瞬間を

 

「私、人間があまり好きではないんです」

 

この瞬間3人は固まった、おおよその返答は予想出来る。肯定か否定か

その返事によって対応する事も変わってくるが想定の範囲内、だが芽衣の発言はそのどちらでもなかった。

 

否定している事には違いはないが天元を否定だとか男性を否定だとかそのような規模ではない。種族として否定、あまりにも斜め上の返答に3人はどうすればいいか分からず顔を見合わせるとコクンと頷き芽衣を抱きしめる。

 

「えっ⁈あっ!ちょっ⁈」

 

そんな3人の行動に驚きの声を上げる芽衣、まきを、雛鶴、須磨の3人は芽衣の反応に構う事なく抱きしめながら頭を撫で始め優しく語りかける。

 

「辛い事があったんだろ?アンタ見てたらわかるよ」

 

「そうね、何があったかなんて聞くつもりはないわ、このままでいさせて」

 

「私は聞きたいですーー‼︎」

 

「須磨うるさい‼︎」

 

「ほらほら2人共、耳元で騒がないこの娘が怯えちゃうでしょ?」

 

そんな3人の行動に芽衣は顔を俯けて少しだけ微笑んでいた。

 

芽衣は人間があまり好きではない、確かにそう言ったがかと言って嫌いというわけでもない。

 

人間には善悪がある、善意があるから善人、悪意があるから悪人そのように割り切ればどんなに楽だろうか、悪人から悪意を向けられるそれはその人はそんなもんなんだと割り切れば良い、だが善人だと思っていた人から悪意を向けられたら?まだ今より幼かった芽衣にとってそれはとても耐え難い事だった。

 

この出来事は今の芽衣を形成する要因になるのだが、以前の芽衣は

努力を惜しまない性格だった、生まれつきシャーマンとしての才能に溢れていた芽衣は麻倉家に恥じぬよう努力を重ね立派なシャーマンとしてその実力を上げていたのだがその努力の成果が災いして芽衣は周囲から悪意を向けらるようになる。

 

芽衣の実家麻倉家には伝説の大陰陽麻倉葉王が残した書物、超占事略決

という書物がある。

 

数々の巫術を記したその書物、中には禁術とも言える巫術も記されており芽衣はその書物を読み解き全ての巫術を会得した事で努力は報われると信じていたが後に起こる悲劇が原因で過ぎた努力は災いの元と達観してしまう。

 

芽衣には友人がいた、小さな頃より親交がありいつでも仲良しの2人だったがある日その友人が行方不明になってしまう、周りの住人は誘拐だ

神隠しだと騒ぎ友人の捜索に大規模な捜索隊を結成し友人の捜索に当たる、結果友人は見つかるのだがその友人は変わり果てた姿で見つかった

 

友人の死体の周りに集まる住人達、山で迷ってる時に熊にでも襲われたんだろうと見解している輪の中に芽衣は潜り込んだ。

 

友人が行方不明になり心配していた芽衣は変わり果てた友人を見ると

死体のそばに友人の霊が佇んでいて自分の死体を眺めていた。

 

そんな友人の霊に芽衣は「まだ生きたかった?」と尋ねると友人の霊は

芽衣にコクンと頷き芽衣もまた友人の霊にコクンと頷くと死体のそばに駆け寄り両手をかざす。

 

住人は友人である芽衣が泣き崩れるのだろうと思っていたがシャーマンであり霊に囲まれて暮らしている芽衣にとって死は身近なものであり特別悲しい出来事ではなかった、故に涙一つ流さない芽衣を不気味に思いつつも住人は芽衣を見ていたがそこで信じられない光景を目撃する。

 

呪禁存思・余程の欠損がない死体、蘇生されたい意志のある霊が近くにいる条件もあるが死んだ者を蘇生させる巫術、超占事略決に記されたその術を行使する芽衣を固唾を呑み見つめる住人達、そんな中死んだ筈の友人は生き返り芽衣はホッと一息付くとたちまち気を失い倒れ込んでしまう。

慌てて駆け寄る友人は芽衣を大事そうに抱きしめると「ありがとう、ありがとう」と何度も口にして涙を流す。

 

そんな光景に歓喜の声が上がる事はなかった、正確には死んだ友人の両親だけは娘が生き返った事で歓喜の涙を流していたが周りの住人達は反応が違った、芽衣に向けられたその視線はまるで芽衣を化け物扱いするような目付きだった。

 

芽衣は友人とその両親から家に送り届けられ、1週間眠りについた。

生まれつき高い巫力を持っていた芽衣、超占事略決の会得もありその巫力は大幅に向上していたが蘇生による巫力の消費は莫大なものであり芽衣の巫力のほぼ全てを費やすものであった為、芽衣の負担は大きくその反動もまたそれに比例するものだった。

 

それから1週間後目覚めた芽衣に待っていたのは住人達の迫害であった、芽衣にとってはつい先日まで親しく接していた住人達、いきなり化け物扱いや鬼の子扱いされ石を投げられたり中には包丁を持ち出し警戒されたりもした芽衣、麻倉家は当然芽衣を庇い住人達を説得するがそれでも恐怖は消えず最終的には芽衣を監禁して一生人目の付かない場所に隔離しようと行動に出た。

 

流石に芽衣の身が危ないと麻倉家は本拠であった出雲から別邸のある帝都まで移住を余儀なくされ芽衣は今に至る。

 

当時10歳の芽衣にとってこの出来事は心に遺恨を残し、過ぎた努力は災いの元、必要な時必要な分だけ頑張ると自ら植え付けその日以来

芽衣は自由気ままなグーたら生活を送っていた。

 

そんな芽衣が人間を嫌いにならないでいれたのは友人のおかげでもある

友人は迫害される芽衣を最後の最後まで庇い大切な友人として居続けた

その友人の両親もまた芽衣を庇い我が子のように大切にしていたがこの家族もまた迫害されていて麻倉家の移住の際、一緒に移住して今は麻倉家の住み込みとして働き共に生活をしている。

 

そんな過去を持つ芽衣、親しい者以外からの真っ直ぐな善意に触れた芽衣はもう少し人に寄り添ってみるのも悪くないと久しぶりに思っていた

 

「あの〜?いつまで抱きしめてるんです?ちょっと苦しいというか」

 

まきを、雛鶴、須磨の長い抱擁にちょっとウザいと思えてきた芽衣は

苦情を言うが正直にウザいとは言わず苦しいと言い換え離して貰うよう頼んでみるが

 

「アンタ、手を離したら消えてしまいそうだから無理」

 

「ええ、いつまでもいていいからね?」

 

「じゃあ4人目ですねーーー‼︎」

 

「だから!須磨大声で叫ぶんじゃないよ!」

 

芽衣の願いも虚しくそれでも抱きしめ続ける3人、芽衣にかける声は本気で芽衣を心配しなんとかしてあげたいそう思える声だった。

 

但し須磨を除く

 

そんな3人にいつしか心を許した芽衣は

 

「エッヘッヘ」

 

と独特の笑い方をして3人に笑顔を向ける

 

「か、可愛い」

 

「笑い方が独特だけど、その笑顔は破壊力抜群ね、笑い方は独特だけど」

 

「私、キュンとしましたよーー‼︎キュンキュンしてますよーー‼︎」

 

「須磨!アンタは恋柱様か!」

 

芽衣の笑顔、その破壊力に当てられた3人はワイワイと盛り上がり時間は過ぎていくのだった。

 

この時、この4人は大事な事を忘れていた

 

まきを、雛鶴、須磨の3人は芽衣が起きたら芽衣を運んだ男性、天元に報告する事を

 

そして芽衣は縁壱を

 

この時縁壱は圧倒的空気、この甘ったるい空間にいた縁壱はこう思っていた

 

とても渋いお茶が飲みたいと

 

 

そんな甘ったるい時間は雛鶴の一言で終わりを迎える

 

「あ!天元様に報告」

 

そんな一言にまきを、須磨も「あっ!」と声を上げて物凄い勢いで天元の元に走り去る3人、取り残された芽衣はそれを見送ると枕元に置かれている自分の着ていた黒い羽織りを纏い服装を正す。

 

縁壱はそんな芽衣を見ながらこう思っていた

 

(背中のふんばり温泉が気になる)

 

芽衣の羽織の背中に描かれたロゴ、ふんばり温泉♨️

 

何故柄の入った羽織ではなく温泉の羽織なんだと芽衣の家は温泉でもやってるのかと考えていた縁壱、そんな縁壱の疑問に気付く事ない芽衣は

縁壱に声をかける

 

「ねえ?縁壱さん、昨日は咄嗟に持ち霊になってと言ったけど縁壱さんはホントに良かったの?」

 

昨日は鬼に襲われ成り行きみたいな形で持ち霊となった縁壱に芽衣はホントに良かったのかと心配になるが縁壱は

 

「昨日も言ったが私の力が芽衣の力になるのなら私は力を貸すつもりだ・・いや私が芽衣の力になりたい」

 

縁壱は芽衣にそう言うと芽衣は

 

「エッヘッヘ、ありがとう縁壱さん」

 

笑いながら縁壱に礼を言う芽衣、縁壱は芽衣を見つめながら

 

(私も芽衣の力が必要だ、芽衣と2人ならば兄上もきっと)

 

心の中でそう呟く縁壱、自分とは違う芽衣の強さ、自分の知らない世界を知っている芽衣の可能性を信じ縁壱は芽衣と2人ならばと自らの未練を思い起こすのだった。

 

 

 

 

「よぉ!目が覚めたみてぇだな!」

 

芽衣が休んでいた部屋に天元と呼ばれる男が入ってくる、その天元に芽衣は頭を下げて昨日の礼を言うのだが、それに一言付け加える

 

「昨日は倒れたところを助けていただきありがとうございました、ですが嫁になるという話は断固拒否します」

 

そんな芽衣に対し天元は

 

「いきなりぶっ倒れたから焦ったぞ、まあ嫁というのは気にすんな半分冗談だ」

 

そんな天元の返事に芽衣は

 

(半分は本気なんだ、まあいいや、なんとかなるよ)

 

と考え、昨日の出来事について聞いてみる。

 

「あの、昨日鬼を斬って殺したように見えましたが貴方は何者なんですか?」

 

そんな芽衣の質問に天元は

 

「お前、鬼殺隊って聞いたことあるか?」

 

天元は芽衣に質問で返すが芽衣は

 

「いえ、知りません初めて聞きました」

 

と答えると一旦間を起き、天元は鬼殺隊について芽衣に説明するのだった

 

「昨日鬼を見ただろう?奴らは人間を餌として喰い荒らし回ってる化け物だ、俺達はその鬼を狩る鬼殺隊って組織に所属してる鬼狩りだ」

 

そんな天元の返答に芽衣は

 

(鬼や化け物か、私も昔そんな扱いされてたな〜!そういえばあの村今頃どうしてるんだろ?)

 

と昔の事を振り返っていたが、

 

「おい!どうした?何処か体調でも悪いのか?」

 

上の空でボーッとしていた芽衣を心配した天元が芽衣に話しかけると

 

「ねえ?天元さん?もし私が鬼とか化け物だったらどうします?」

 

と捻くれた質問を天元にぶつける芽衣、その質問に天元は

 

「なんだそりゃ?派手に意味がわかんねえぞ、お前どう見ても人間じゃねえか」

 

と答えると、芽衣は

 

「ですよね!不思議生物認定されたら流石にヘコみますよ」

 

そう返すが、天元は真面目な顔をしながら芽衣を見据えて

 

「何かあったんだろ?派手にバレバレだ!例えば鬼だとか化け物だとか

言われたんじゃねぇのか?」

 

先程の質問や芽衣の態度に核心を突く発言をする天元、そんな天元に芽衣は冷たい目線を向けながら

 

「だとしたら?」

 

と答えると、天元は呆れた表情を見せ芽衣にこう答える

 

「そんなの言いたい奴には勝手に言わせてろ!仮にお前は鬼だと言われたらお前は鬼なのか?お前はお前だろ!」

 

そう熱く語る天元に芽衣は

 

「・・・これから話す事聞いても同じ事言える?」

 

そう天元に返すと芽衣は自分の過去を天元に話し出すのだった。

 

 

 

 

 

「お前・・・派手にスゲェな!俺の想像の斜め上をいく派手さだ!

にしてもシャーマンか!話には聞いた事あるがここまでスゲェとは思ってなかったぜ!」

 

芽衣の話を聞いた天元は芽衣にそう話すと芽衣は天元の態度に戸惑いを隠せずに

 

「私が怖くないの?普通の人間じゃないんだよ?鬼の子だよ?化け物なんだよ?」

 

そう天元に返すと天元は芽衣の頭を撫でながら

 

「何言ってんだ?それがお前だろ?誰が何と言おうとお前はお前だ!

自分を信じろ!お前が自分を信じねえでどうする」

 

そう優しく語りかける天元、そんな天元の優しさに芽衣は次第に涙を流しやがて号泣、天元にしがみつきなら暫くの間泣いていた。

 

そんな優しい空間の中またしても縁壱空気、先程よりも圧倒的空気

そんな縁壱は芽衣の知られざる過去、そして芽衣のシャーマンとしての実力を知り改めて芽衣に誓うのだった。

 

(芽衣の持ち霊として芽衣を支えよう)

 

 

 

暫く泣き明かした芽衣は天元から離れると

 

「見苦しいところお見せしてすいません」

 

と頭を下げると天元は笑いながら

 

「気にすんな!派手にな!俺の嫁になる気になったか?」

 

と言うと芽衣は笑いながら

 

「いや、なりませんから!」

 

と答える、そんな芽衣の笑顔を見た天元は

 

「とんでもねぇ破壊力だな!こりゃ派手なんて域越えてるぞ」

 

そう言う天元に芽衣は

 

「エッヘッヘ」と笑い出した。

 

「笑い方独特だな」

 

 

そんなやり取りの後、天元は昨日の事について芽衣に聞いてみる事にした。

 

「そういえばお前なんであんな所にいたんだ?」

 

そう質問すると芽衣は天元にとって驚きの回答をするのだった

 

「あっ!そうだ!私、産屋敷って人の所に行く途中だったんだ!天元さん聞いてくださいよ、渡された地図が適当過ぎて全く分からないんですよ?」

 

そんな芽衣の回答に今日一番の驚きをする天元、芽衣がまさか鬼殺隊の当主の屋敷に向かっていたとは知らず天元は動揺するが気を取り直すと真剣な眼差しで芽衣に産屋敷邸に向かう目的を聞くのだった。

 

「その産屋敷って人に何の用事があるんだ?」

 

これまでやり取りで芽衣が悪い事をする人間ではない事は理解している天元、だが産屋敷となると話が変わってくる。

 

産屋敷へ向かう目的が分からない限り芽衣でも産屋敷邸に近付けるわけにはいかない、そう思って聞いてみたのだが芽衣は

 

「私の爺ちゃんが産屋敷って人と友人らしく、私はそこに居候するんです」

 

そんな芽衣の回答に天元はすぐさま鎹鴉を呼び寄せ伝言を伝えると

 

「鴉が喋った⁈不思議生物だ」

 

と芽衣は鴉を不思議生物認定し面白がる、その芽衣に天元は

 

「お館様に伝令を送った、じきに返答が来るから待ってろ」

 

そんな天元の発言に芽衣は首を傾げ

 

「お館様?誰?」

 

と天元に聞くと天元は芽衣に

 

「お前が行きたがってる産屋敷家の当主様だ」

 

そう答える天元、芽衣は天元から言われた内容に一安心した表情になり

 

「あ〜〜もう探さなくて良さそう〜、ゆっくり出来るよ〜」

 

と言いながら一気にだらけ寛ぎ出した。

 

「お前!ユルすぎだろ⁈」

 

唐突に怠け出した芽衣に天元は突っ込みを入れるが

 

「エッヘッヘ、よく言われます」

 

とだらけながら言う芽衣、鴉が戻ってくる暫くの間、芽衣は天元やまきを・雛鶴・須磨と朝食をとりそれはもう寛いでいた。

 

そんな芽衣の元に鴉が戻って来て伝言を伝え出した。

 

カァァァァァ!麻倉芽衣サンニ伝言デス!お館様ガ芽衣サンノ到着ヲ楽シミニ待ッテマス!迎エガ来ルマデオ待チ下サイ!

 

鎹鴉は芽衣にそう伝えると再び飛び立とうと羽を羽ばたかせ始める

そんな鴉を捕まえた芽衣は鴉に向かって

 

「今日はもう遅いので明日行きます!エッヘッヘ」と鴉に伝える

 

「いや!まだ朝‼︎」

 

「アンタ、ユルすぎでしょ⁈」

 

「面白い娘ね」

 

「もうずっとここにいて下さいよーー‼︎」

 

「馬鹿デカいんだよアンタ声が!」

 

 ーーバチーンーー

 

「いやぁぁ!まきをさんがぶったーー!天元様見ましたぁ⁈今ぶたれたの‼︎」

 

「ちょっと見てなかったわ」

 

「ボンクラ‼︎」

 

天元夫妻の騒がしくも楽しそうなやり取りを見ていた芽衣

 

(鬼か・・・こんな日常を理不尽に奪っていく存在、そして鬼殺隊・・・うん!絶対関わりたくない!)

 

そう考えながら芽衣は更に寛ぎ、もう今日はこのまま過ごすそう

そう思っていた

 

そんな芽衣にやがて迎えがやって来る、全身黒づくめの黒子のような格好をした集団、隠と呼ばれる鬼殺隊の事後処理部隊、背中にはそれを表す隠という文字が刻まれていて、その隠の1人が芽衣をおぶろうと背中を向け待機する。

 

その様子を見ていた天元夫妻、背を向ける隠には隠と刻まれているが芽衣の背中にはふんばり温泉、2人の背中を見比べながら4人はこう思っていた。

 

((((ふんばり温泉が凄く気になる))))

 

 

そんな天元夫妻をよそに芽衣は困惑していた、その原因は2つある

 

1つ ゆっくりしたいが為今日はもう産屋敷家へと行く気がなかった事、2つ 見ず知らずの人間におんぶされる事

 

「もう百歩譲って今日出発するのはいいよ、不本意だけど!でもね?

おんぶは無理‼︎自分で歩きます!」

 

そんな芽衣の発言にオロオロしだす隠、そんな隠に芽衣は更に追撃を重ねていく

 

「いきなり知らない人が現れてはいどうぞ!って誰がおぶさるの?

怪しさ全開だよ?もう万世極楽教と同じ位怪しいからね」

 

芽衣は隠にそう注意すると

 

「まあそう言ってやるな、お前の言いたいことはわかるけどなコイツらもこれが仕事なんだよ」

 

そう芽衣に諭す天元だったが芽衣は不服なのか膨れっ面になりながら

 

「見ず知らずの人間に体触られるの嫌なんですけど?・・はっ!それが狙いか!おぶさることで私の胸が背中に!勤務中に淫夢中ですかこのヤロー!」

 

そう叫ぶ芽衣に天元は苦笑いになり、隠に芽衣は客人であり鬼殺隊員ではないから芽衣の意に沿ってやってくれと話し込むと隠も慌てて頷き

芽衣はおんぶを免れる。そんな芽衣に天元は

 

「さっき言ってた万世極楽教って何なんだ?胡散臭い名前だな」

 

と芽衣に話しかけると芽衣は

 

「ああ、辛い事や苦しい事はしなくていい、する必要がないって説いてたから少し興味持って話を聞いたことあったの」

 

芽衣がそう話していると天元は苦い顔付きになり芽衣を見据える

 

(コイツがこんなインチキ臭い宗教に縋り付きたくなる気持ちもわからなくもねえが)

 

「その口ぶりだとその宗教に入ったってわけじゃなさそうだな」

 

天元は頭の中で芽衣の過去を考えながら、芽衣の話し方で入信はしていないと判断してそう返すと芽衣はウンザリした顔で

 

「もうね、そこの教祖がホント胡散臭い教祖でね?死ぬのは誰もが怖いから俺が導いて楽にしてやるとか言い出したんだよ、私の生死の価値観と合わないから即お断りしてきたよ」

 

芽衣は天元にそう返すと天元はホッとした顔で

 

「まあお前はお前だからな、それでいいんじゃねぇか?」

 

と芽衣に返すが芽衣は更に

 

「いやそこからが問題なんだよ、帰り道でその教祖待ち伏せしていてさ

いや何処から現れたの⁈って位見事な待ち伏せっぷりで」

 

そう話す芽衣に天元は

 

「おいおい!大丈夫だったのか?」

 

そう心配する天元に芽衣は更に続きを話し出した

 

「いや正直ヤバかったよ、あの教祖こう言ってきたんだよ?「なら今すぐ俺が君を楽にしてあげる」って何処かしら息も乱れてて不気味だったよ、確実に変質者だね」

 

そう話す芽衣に天元が

 

「いや、お前マジで大丈夫なのか?何かされたんじゃ?」

 

焦り気味に心配する天元、そんな天元に芽衣は笑いながら

 

「それなら大丈夫だって、似非教祖だけど目には目を歯には歯をって事で脅しておいたから、あれ以来一回も見てないよ」

 

そう話す芽衣、とある方法で教祖を脅した芽衣、そんな芽衣には秘密があった。麻倉家ですら知らない芽衣の秘密、これはまだ先の未来シャーマンキングの誕生に繋がる秘密であった。

 

そんな芽衣は天元達に挨拶をすると隠達と共に産屋敷邸へと向かうのだった。

 

芽衣を見送る天元夫妻、手を振り見送るまきを・雛鶴・須磨をよそに天元は芽衣の事を考えていた

 

(鬼の子か・・アイツの力は良くも悪くもこの世界に影響を及ぼす

気を付けろよ、お前の力を狙ってくる奴らが現れるかも知れねぇ)

 

そう芽衣の事を心配する天元、その天元の予想は見事的中する

天元達鬼殺隊にとって因縁の相手に芽衣は狙われていた。

 

そんな事を知らない芽衣は呑気に産屋敷邸を目指す。

 

そして因縁の相手も知らなかった、狙っている芽衣には畏怖すべき存在がいた事を・・・始まりの呼吸・日の呼吸の使い手継国縁壱・・そして

・・・S.O.F

 

 

 

場所は移り産屋敷邸〜

 

「私は君に逢うのが楽しみで仕方がないよ、鬼無辻無惨を生み出したかつての大陰陽師麻倉葉王の再来、麻倉芽衣」




語られた鬼と麻倉家の関係、その時芽衣は何を思う
次回「風呂と刀とお兄ちゃん」


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第3話 風呂と刀とお兄ちゃん

芽衣の持ち霊

継国縁壱 空気 ふんばり温泉が気になるこの頃
本領発揮なるか?

S.O.F(スピリット・オブ・ファイア) 鬼滅にいたらアカン奴
本領発揮したら駄目!



麻倉芽衣 葉王の再来と呼ばれるグーたら娘 過去の出来事により人間があまり好きではない 天元に励まされ少し前向きに?




とある場所にて〜

 

「お前は覚えているか?5年前、鬼の子と呼ばれた娘がいた事を」

 

「死者を蘇らせたと噂された娘、確か出雲で」

 

「先日その娘が見つかった、長年探していたあの娘が」

 

「・・・・」

 

「必ず生かして捕らえてこい、いいな黒死牟」

 

「はっ」

 

そう会話する謎の2人、黒死牟と呼ばれる者が退出するともう1人は

興奮しながらこう言い出した。

 

「遂に見つけたぞ麻倉芽衣!忌まわしき麻倉葉王の末裔!」

 

この者こそ鬼殺隊因縁の相手、名は鬼無辻無惨

葉王に恨みを持つ無惨はその子孫である芽衣を狙っていた

そして放たれた黒死牟、芽衣と黒死牟の邂逅は悲しき兄弟対決の始まりでもあった。

 

 

 

 

場所は移り産屋敷邸〜

 

 

芽衣は今1人の女性と話をしていた、女性の名は産屋敷あまね

鬼殺隊現当主 産屋敷輝哉の妻であり神職系の出身でもある彼女もまたシャーマンであった。

 

「こうして顔を合わせるのは初めてね芽衣ちゃん、葉晴さんから話は聞いていたわ」

 

芽衣の祖父である麻倉葉晴、その葉晴から芽衣の事を色々と聞かされていたあまねはいつか芽衣に会ってみたいと思い、こうして芽衣と話せることが嬉しくて芽衣に笑顔を向けていた。

 

「会って早々なんだけど芽衣ちゃんの隣に座っている彼は芽衣ちゃんの持ち霊かしら?」

 

対面している芽衣の隣に座る縁壱、あまねは縁壱に目を向けながら芽衣にそう話し出す

 

「うん!私の持ち霊になってくれた継国縁壱さんだよ」

 

そうあまねに返す芽衣、初対面であるあまねに砕けている芽衣だが天元夫妻には敬語だった芽衣、この違いには訳がある。

 

幽霊が見える人に悪い人はいない!と信じる芽衣は同じシャーマンであり縁壱が見えるあまねに親近感を覚えており取り繕う事なく話していた

 

一方で人間があまり好きではない芽衣は初対面の天元夫妻の人間性が分からず取り繕いながら話していた為敬語だったのだが天元夫妻の優しさ人間性に触れ最終的には砕けて話していた

 

そんな芽衣の返答に固まるあまね、芽衣の砕けた返し方に固まった訳ではない、芽衣の発した内容にあまねは固まっていた

 

「・・・継国・・縁壱」

 

先程と様子の違うあまねに芽衣はどうしたんだろう?と首を傾げながら

 

「ねえ縁壱さん、縁壱さんの名前聞いてあまねさん固まったよ?」

 

と縁壱に聞いてみると縁壱は

 

「私は以前、鬼殺隊に所属していた。もしかするとそれが関係してるのかもしれない」

 

そんな縁壱の発言に芽衣は

 

「縁壱さんもそうだったんだ!私縁壱さんの事まだ何も知らないや、縁壱さんの事私に教えて?」

 

 

そう話す芽衣に縁壱は自分の事を話そうとするが

 

「始まりの剣士、私達鬼殺隊に呼吸を広めた始まりの呼吸の使い手

それが継国縁壱・・私達の前にいる彼が」

 

縁壱が話し出すより先にあまねが話す出すがそのあまねは感極まり涙を流していた。

 

「え⁈あまねさん?何で泣いてるの?」

 

あまねの涙の理由を知らない芽衣はその理由を聞いてみると

 

「芽衣ちゃん!縁壱さんはとても凄い人なの!鬼無辻無惨をあと一歩まで追い詰めた唯一の人なの!」

 

興奮しながら話し出すあまねに若干引き気味になる芽衣は

 

「あ、うん・・縁壱さんって凄い人だったんだ。それでその鬼無辻無惨って誰?」

 

とあまり凄さがわかってない芽衣はあっけらかんとした態度で鬼無辻無惨とは誰なのか聞いてみるのだが、その問いに答えたのは

 

「鬼無辻無惨、今から1000年前に現れた鬼の始祖にして私達鬼殺隊が最も殺したい鬼達の首魁、それが鬼殺辻無惨だよ」

 

そう答えたのは鬼殺隊最高責任者にして産屋敷家97代目当主 産屋敷輝哉、五人の子達を引き連れて部屋へと入って来た輝哉は子供達の補助を受けて芽衣の前へと座ると芽衣に話し出した

 

「君が麻倉芽衣だね、こうして話が出来る事を私は嬉しく思うよ」

 

そう話す輝哉、芽衣は輝哉から感じる人柄の良さを受け警戒する事無く

またもや砕けた口調で輝哉に話返した

 

「うん!私が麻倉芽衣だよ、爺ちゃんの友達の産屋敷さん」

 

そう話す芽衣にクスリと笑みを浮かべた輝哉は自己紹介がまだだったと

芽衣に話すのだった

 

「私は産屋敷輝哉、産屋敷97代当主であり鬼殺隊最高責任者もやっているよ、もう知っていると思うが妻のあまねと私の子達、輝利哉、ひなき、にちか、くいな、かなただよ。我が産屋敷家へようこそ芽衣」

 

そう話す輝利に芽衣は

 

「エッヘッヘ、よろしくね」

 

と笑い掛けると

 

「芽衣は面白い娘だね、私の子達らと友達になってくれないかい?もちろん私達も芽衣の友人でありたいと思うよ」

 

そう話す輝哉、それに対する芽衣は

 

「友達・・・うん!私なんかで良いならもちろん!」

 

友達という言葉に一瞬思い悩むも笑顔で承諾しご機嫌な芽衣

そんな芽衣に輝哉は本題を切り出すのだった

 

「芽衣、君が産屋敷家へ来る事は葉晴さんからの頼みでもあるが私達も

芽衣に来てもらいたい理由があるんだ。芽衣、君を葉王と同じ道に進ませない為に」

 

そう話す輝哉に芽衣は

 

「葉王、麻倉葉王1000年前陰陽道を開き麻倉家を起こした大陰陽師

輝哉さんが私を葉王と同じ道に進ませないって事は葉王の過去と私の過去を知ってるんだよね?」

 

そう話す芽衣、自分の過去を知る輝哉、だがそれを知りながら自分と友達になりたいと言う輝哉に芽衣は冷たい目線を向ける事なく落ち着いた眼差しを輝哉を向けていた、そんな芽衣に輝哉は

 

「知っているよ、芽衣が葉王の再来と呼ばれていた事も芽衣の過去も」

 

と話す輝哉に芽衣は輝哉に向かってこう切り出した

 

「私が人間の絶滅を望んでいるって思ってる?」

 

と輝哉に切り出すと輝哉は

 

「芽衣がそんな娘ではないと私は思ってるよ、だからこそ私達は芽衣の心を支えたい、芽衣の心が折れないように」

 

そう芽衣に話す輝哉、その優しく心に響くような声は確実に芽衣の心へと響き芽衣は穏やかな笑みを浮かべ輝哉に話し出した

 

「ありがと!私は大丈夫!まあ葉王の絶滅思想が全く分からないわけでもないけどね、そこはちゃんと断ったよ?流石に付き合えないって」

 

そう話す芽衣、芽衣の話す内容の後半が意味不明で輝哉は芽衣にどういう意味か聞いてみると

 

「今から一年前葉王に会ったの、夢の中?というか多分黄泉かなぁ?」

 

芽衣の話す内容に落ち着いた輝哉も流石に戸惑いを隠せず焦り気味に芽衣に質問する

 

「葉王に会った?黄泉?私でも理解に及ばない話だね、聞かせてくれるかい?」

 

そう話す輝哉に芽衣はコクンと頷き

 

「爺ちゃん達にも言ってない事だから・・・心配かけたくなくて」

 

そう輝哉達に話すと芽衣は葉王との出来事を話し出すのだった

 

 

 

 

 

一年前〜

 

いつものようにグーたら生活を送る芽衣、日課である昼寝をしようとしていたのだが祖父の葉晴に邪魔され今日は別の場所で寝ようと麻倉家を彷徨いていた

 

そんな芽衣が見つけたのはとある洞窟、麻倉家が封鎖していて普段から誰も寄り付かないこの場所なら誰にも邪魔されず昼寝が出来ると踏んで

その洞窟へと入っていった

 

普段から幽霊に囲まれて暮らしている芽衣、暗闇の洞窟など平気だったのだがこの洞窟は何か違う、そう感じ引き返そうとする芽衣だが自分がどこにいるのか、来た道はどこだったのかすら分からなくなっており芽衣は洞窟で迷子になっていた。

 

「ん〜これ迷った感じ?昼寝どころじゃないな〜」

 

洞窟で迷子になったにも関わらずあまり焦った様子を見せない芽衣、

とりあえず進もうと歩き出し芽衣は暗闇の中手探りで出口を目指すのだった。

 

芽衣が迷子になったいる洞窟、通称黄泉の穴。シャーマンが自分の魂と向き合う修行の場として用いられる洞窟だが心が折れた場所最悪死に至る危険な洞窟でもあった、そんな洞窟に迷子になった芽衣は

 

「あれこれ先の事考えても疲れるだけだし、今は手探りで前に進むしかないよね?そのうちなんとかなるよ」

 

と迷った事も特に気にする事なく歩き続ける芽衣、そんな芽衣にある声が聞こえてくる

 

「やあ芽衣、何やら面白い事やってるじゃないか」

 

と芽衣に話しかける声に

 

「ん?私の他に誰かいるの?私の知り合い?」

 

と返すとその声は

 

「お前は知ってるはずだよ、麻倉芽衣。なんたって僕の子孫なんだからね」

 

そういう声に芽衣は

 

「あ、うん・・よくわからないけどわかった」

 

何言ってんだ?コイツ?と言いたげな返し方で返す芽衣、そんな芽衣にその声は

 

「まあいい、折角魂が繋がったんだ今日はお前に話があってね」

 

そういう声に芽衣は

 

「長くなるなら聞かないよ?面倒くさいの嫌いだし」

 

と謎の声に返すとその声は

 

「お前人間を滅ぼしたくはないか?」

 

と芽衣の話を無視して喋り出す謎の声、その声に対し芽衣は

 

「何で?」

 

と返し突然何を言い出すんだコイツ?と言いたげな顔付きになる芽衣

そんな芽衣にその声はこう話し出す

 

「お前は鬼の子だと疎まれ蔑まれた化け物じゃないか、お前は僕と同類さ、愚かな人間共を滅ぼし僕達シャーマンだけの世界を作るんだ!お前もそうだろ?お前を迫害した人間共を恨んでいる」

 

そう言われた芽衣は自分の過去の出来事を思い出し

 

「恨んでないと言えば嘘になるよ!もしそんな人達が世界中からいなくなったらどんなに楽だろうって考えた事もある!でも滅ぼすって!流石にやり過ぎだよ?それこそホントに化け物になっちゃうよ!」

 

そう自分の思いを打ち明ける芽衣、そんな芽衣にその声は

 

「フフ、いつまでその考えが続くかな?お前もいつか分かる筈さ人間の醜さをね」

 

そう言う声に芽衣は

 

「私は・・・やっぱり嫌だよ、そんな理不尽に人が死ぬ世界なんて・・

そんな世界で私は笑いながら生きたくない、自由気ままに生きれないよ

だからその絶滅思想には付き合えない!」

 

と強く謎の声に返すとその声は

 

「まあいいさ、今から100年後僕は再びこの世に転生する、麻倉芽衣お前のひ孫としてね。シャーマンキングになって僕が人間共を滅ぼす。まあ本題はお前に死んでもらっては僕も何かと不都合でね、お前に僕の持ち霊を貸してやろうって事さ」

 

そう言う声は芽衣に自分が従えた持ち霊を半ば無理矢理貸し与える

 

「そいつは S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)400年前に僕が奪い取った五大精霊の一体だ!世界中の火や炎を信仰する畏敬の念や信仰の念、火を司る神々の原型となった魂の集合体、いわばG・ S(グレート・スピリッツ)の分霊さ」

 

と芽衣に話す謎の声は最後に芽衣にこう告げて消えていく

 

「もしかすると奴はお前を狙ってくるかもしれないね、ちっぽけすぎてどんな奴か覚えてないけどお前なら問題ないはずだよ、僕の再来と言われたお前ならね」

 

そう言われた芽衣は

 

「・・・あれが私達の始祖麻倉葉王?話が長いよ!」

 

と話の内容より話の長さを気にしておりちょっと怒っていた

 

そんな芽衣はそれから3日間洞窟で迷子生活を続けようやく洞窟の出口へと辿り着く

 

「ふぅ〜、なんとかなった。よし!いっぱい寝溜めするぞー!」

 

と惰眠を貪る事を宣言するがそれが叶う事はなかった

芽衣が行方不明、麻倉家では騒ぎになっており戻った芽衣は暫くの間寝かせて貰えなかったのである。

 

 

 

 

芽衣の葉王との出来事が話終わり暫しの沈黙の中

 

「芽衣済まない・・・私の理解の範疇を超えてしまってね、何と答えたらいいか」

 

そう話す輝哉にあまねは

 

「まさか麻倉葉王本人が現れて、五大精霊まで・・縁壱さんといい芽衣ちゃんの周りは凄すぎるわね」

 

と驚きを通り越して呆れているあまねがそう言うと芽衣は

 

「エッヘッヘ!私はゆっくり過ごせたらそれでいいよ」

 

と笑い出すと

 

「一番凄いのは芽衣かもしれないね」

 

と芽衣の気楽さにどこかしら器の大きさを感じた輝哉は微笑むのだった

そんな輝哉は一旦間を置き、芽衣に鬼の事や麻倉家との関係を切り出すのだった

 

「さて、先程私が鬼無辻無惨の事を話したのは覚えているね?」

 

と芽衣に言うと芽衣もコクンと頷くと輝哉は続けて芽衣に話し出す

 

「鬼無辻無惨、彼は1000年前に私達産屋敷家から出た鬼なんだ、それが災いして私達産屋敷家の人間は長く生きる事が出来ない呪いがかかっていてね、私達産屋敷家一族は長い間鬼無辻を殺す事に心血を注いでるんだ」

 

そう話す輝哉、それを聞いた芽衣は

 

「その鬼無辻と麻倉家、ううん葉王が関係してるって事だよね?」

 

と輝哉に返すと輝哉は

 

「その鬼無辻を生んだのは麻倉葉王だと言われている、真相は明らかではないが当時の麻倉家の文献ではそう書かれていてね、産屋敷家の文献と照らし合わせるとどちらも麻倉葉王が関与してるらしくてね」

 

そう話す輝哉に芽衣は

 

「鬼・・葉王・・・そっか・・それで葉王は」

 

と一人で呟く芽衣に輝哉は

 

「芽衣どうかしたのかい?」

 

と声をかけると芽衣は

 

「輝哉さん!鬼無辻って鬼が不思議生物化した原因は分からないけどそのきっかけはやっぱり葉王だよ!」

 

そう話す芽衣に輝哉は当然疑問になりどういう意味か問いかけると

 

「いくら葉王でも生きた生物を不思議生物にする事は無理!でも心は?魂は?葉王もそう、昔鬼から鬼の力を貰って葉王は霊視能力を得た、人の心が読めるの!葉王は言ってた、人が醜いって!麻倉家の文献にも書いてある、葉王は鬼の子だと蔑まれお母さんも殺されたって、それで葉王は人を憎み滅ぼそうとしてた、麻倉家は葉王を止めようとしたけど葉王は消えたって」

 

そう話す芽衣に輝哉も頷くと芽衣に話し出す

 

「そう、葉王は人を憎み人を滅ぼそうとしていたそして鬼無辻と接触した」

 

と話すと芽衣は察したようで頷くと

 

「そして鬼無辻に鬼の力を与え、鬼無辻は何かしらの原因で体も鬼になり今もまだ生きている、鬼が人を喰べるのは葉王の絶滅思想が関係してるのかも」

 

そう推察する芽衣に輝哉も少し驚き、その推察は間違ってないと納得すると芽衣に話しかける

 

「芽衣の考えは間違ってない思うよ、ただ何故葉王が鬼無辻に鬼の力を与えたのがわからないな」

 

と話すと芽衣は

 

「私にもわからない・・だから考えるのは辞める!大事なのは今!不思議生物が人を襲ってる、鬼殺隊はその不思議生物を退治する!でしょ?」

 

と結論付け輝哉に話すと輝哉も頷き

 

「そうだね、私達がやるべき事は人々を鬼の脅威から守る事、そして鬼無辻無惨を討つ!芽衣の言う通りだよ」

 

と話すと芽衣は

 

「私達?それって私も含まれてる?」

 

とまさか冗談だよね?と言いだけな表情で輝哉に問い詰める芽衣

そんな芽衣に輝哉は

 

「どうだろうね?それは芽衣次第ってところかな?」

 

自分達は芽衣に協力しろとは言わない、芽衣が鬼殺隊に協力するという流れを作る輝哉、そんな意図を含んだ輝哉の問いに芽衣は

 

「じゃあ!ゆっくりと過ごすよ〜」

 

と持ち前の呑気さで輝哉の思惑を回避する芽衣、だが芽衣の気持ちとは裏腹に芽衣は鬼との戦いに巻き込まれる、嫌々ながらも巻き込まれる

 

そんな事を知らない芽衣は輝哉に

 

「ほいさ!友達記念の呪詛返し!」

 

と輝哉にかけられた産屋敷一族の呪いを跳ね返す芽衣、芽衣が跳ね返した呪いは

 

 

「ゴフッ‼︎」

 

突如血を吐くワカメヘアーこと鬼無辻無惨、芽衣が跳ね返した呪いは鬼無辻へと飛ばされていた

 

まさか狙っている芽衣に間接的に攻撃されようとは思ってもいない無惨

そしてそれを分かっていた芽衣は密かにほくそ笑んでいた

 

それ以来輝哉にかけられた呪いは消え、輝哉は長生きするのだがそれはまだ先の話

 

そして大事な事が一つ、縁壱ここでもまた空気!

 

鬼殺隊にとって偉大なる人物である縁壱が空気、もはや風景と同化しつつある縁壱を見てあまねは密かに嘆いていたという

 

翌日〜

 

芽衣が温泉大好きと聞いた輝哉は芽衣にとある場所を紹介する、刀鍛冶の里、鬼殺隊が使う日輪刀を打つ刀鍛冶が集まる隠れ里その温泉を紹介された芽衣は早速温泉に行こうと準備をするとまたもや隠達が集まり芽衣をおぶろうと待機する

 

「自分で歩くからいいよ!」

 

と芽衣はおぶられる事を拒否すると輝哉も芽衣は友人であり特別だからと隠に告げ芽衣は隠の案内の元刀鍛冶の里へと向かい出した

 

途中で隠が交代しながら芽衣を案内し丸一日かけて芽衣は刀鍛冶の里へと辿り着くのだが、決して安全な道中ではなかった。

 

夜は鬼が出る時間、街灯に集まる蛾の如く芽衣の稀血に惹かれて寄ってくる鬼が数匹、縁壱は芽衣と憑依合体して応戦しようとするが日輪刀がない、隠もいる中夜明けまで時間を稼ぐのは得策ではないと言う縁壱に芽衣は「刀鍛冶の里って言う所だし、そこで刀は何とかしよう」

と言うと隠と共に全力ダッシュ!正確に言えば芽衣に憑依した縁壱が隠を背負って全力ダッシュ‼︎かつて鬼無辻を追い詰めた縁壱が鬼を背にして全力ダッシュ‼︎なんともシュールな光景だが、客観的に見れば芽衣が鬼から逃げているようにしか見えないので縁壱的にセーフ!だが隠は違った!普段誰かを背負い走る隠が鬼殺隊でもない芽衣に背負われている

その事実に戸惑っていたがすぐにどうでも良くなる。

 

女の子って柔らかい!

 

その心地良さを堪能している隠は天国だったがその後では必死な形相で追ってくる鬼、まさに天国と地獄!隠は今その狭間に立たされていた!

 

 

と芽衣と縁壱の逃走劇もとい隠の堪能劇がありつつもこうして刀鍛冶の里へと着いた芽衣、早速温泉に入ろうと里を巡り歩くとひょっとこの面をした少年が

 

「怪しい奴!貴方は誰ですか?」

 

と芽衣に話しかけ、「ん?」と振り向いた芽衣は

 

「私は麻倉芽衣、君は誰・・というかひょっとこでいいや」

 

と自己紹介する芽衣、目の前の少年が誰なのか気になるがもうひょっとこでいいやと早々に結論付けると少年は

 

「僕は小鉄です!ひょっとこじゃありません!」

 

と憤慨するも芽衣は

 

「だってこの里の人達みんなひょっとこだし」

 

そう答える芽衣、芽衣から見たら里の刀鍛冶は全員ひょっとこ、誰が誰なのかとか覚えるのも大変だと思いまとめてひょっとこと一括りにしていた。

 

「ここは隠れ里です!素顔を晒すわけにもいかないからひょっとこを被ってるんです」

 

少年小鉄はそう芽衣に説明すると

 

「そんなことより温泉!温泉‼︎」

 

ともう温泉に入る事しか頭にない芽衣、小鉄の話もろくに聞かずに

温泉を探そうとする芽衣に小鉄は

 

「貴方鬼殺隊の人じゃないですね?ここは鬼殺隊関係者以外は立ち入り禁止ですよ」

 

と芽衣に話すと

 

「輝哉さんがここを紹介してくれたんだよ?鬼殺隊でいうお館様が」

 

と芽衣は小鉄にそう説明すると

 

「お館様⁈貴方は一体何者ですか⁈」

 

小鉄は芽衣の話に飛び驚くが芽衣は

 

「温泉大好き一般人‼︎」

 

と私は決して鬼殺隊とは関係ないんだぞと強調するような言い方で小鉄に話す芽衣、そんな芽衣に小鉄はただの一般人ではなさそうと判断し

あるものを見せたいととある場所に案内する

 

「温泉?温泉だよね?秘湯だよね?そうだよね?」

 

最早温泉にしか興味がない芽衣、小鉄が案内する秘湯にドキドキワクワクが止まらない芽衣は軽やかな足取りで小鉄について行くのだった

 

そんな芽衣を案内する小鉄は温泉ではなく古ぼけた納屋へ芽衣を案内し

中から絡繰人形を運び出す

 

「芽衣さん、これを見てください」

 

と芽衣に絡繰人形を見せると

 

「温泉は?秘湯は?そんな縁壱さんそっくりの絡繰人形は温泉の後で見るから早く温泉に行こう!」

 

と温泉に入りたい芽衣は縁壱そっくりの絡繰人形に興味を示さず温泉に行こうと小鉄に言うが

 

「温泉温泉うるさい!この縁壱零式は戦国時代の剣士の・・・縁壱さんそっくり?まるで見たことあるような言い方ですね!このアホー!」

 

と芽衣にキレだす小鉄、まさか本人が目の前にいるとは知るよしもない小鉄だが芽衣は見た事あるどころか隣にいますよと縁壱をチラ見すると

小鉄にドヤ顔をしだす

 

「その勝ち誇った顔は何ですか?縁壱零式の凄さはこれからですよ!

この6本の腕で当時の縁壱を再現してるんです!縁壱はそれくらい凄い剣士だったんですよ!」

 

と興奮しながらまくし立てる小鉄、そんな小鉄をよそに芽衣は縁壱に

 

「縁壱さんって腕6本あったの?不思議生物?」

 

と縁壱に聞いてみるが

 

「芽衣、腕が6本もある人間はいないし私は不思議生物でもない、何の価値もないただの人間だ」

 

と寂しそうに語りだす縁壱、それを聞いた芽衣は

 

「今悩んでも結論の出ない悩みは考えない!今出来る事をやればそのうちなんとかなるよ!」

 

と持ち前の持論で縁壱を諭す芽衣、それに対する縁壱は

 

「なんとかなるか・・今の私に出来る事は芽衣の力になる事」

 

そう呟く縁壱、芽衣はそんな縁壱を見つめ考える

 

(温泉もだけど刀もなんとかしないと)

 

そう考えていると

 

「さっきから一人で何を喋ってるんですか!ほら!縁壱零式の凄さを見て下さい」

 

と小鉄は芽衣に縁壱零式を動かす所を見せて驚かせようとするが芽衣は

特に驚く事なく小鉄に提案をしてみる

 

「小鉄君刀ってある?あるなら一本欲しいんだけど」

 

そう言うと小鉄は芽衣に憤慨して

 

「縁壱零式を無視しないでください!それに鬼殺隊でもない芽衣さんに日輪刀を渡せるはずないですよ!」

 

と声を荒げる小鉄、芽衣はそんな小鉄に

 

「私が欲しいんじゃないよ?縁壱さんの為に欲しいの」

 

そう小鉄に話す芽衣だが小鉄は芽衣が何を言っているのか分からず

 

「さっきから縁壱さん縁壱さんって芽衣さんは何を言ってるんですか?

縁壱は戦国時代の『ここにいるよ?縁壱さんは私と一緒にいるの』剣士」

 

と小鉄の声に被せるように話し出した芽衣、ひょっとこで表情は分からないが何言ってんだ?コイツ‼︎と言葉を失い暫し沈黙が流れる

 

「芽衣さんがアホの子だというのはわかりました」

 

と小鉄は失礼だが普通の人から見れば当然の反応を見せるが芽衣は

 

「縁壱零式って訓練用だよね?いくら凄くても本物の縁壱さんには敵わないよ」

 

と小鉄に話すと小鉄は

 

「言いましたね!アホの子!だったら本物の縁壱の力を見せて下さい!』

 

そう言いながら縁壱零式の仕掛けを訓練用を通り越してガチなやつに合わせてドヤ顔(ひょっとこで見えない)で胸を張ると縁壱零式の予備の刀を芽衣に渡し、自称一般人&本物VSひょっとこ&偽物の構図が出来上がる

 

「縁壱さん!刀だよ?縁壱さんの本領発揮だね?エッヘッヘ』

 

と笑いだし緊張感の欠片もない芽衣、縁壱は戦いを前に緊張していない芽衣の態度に安心すると憑依合体を果たし偽物こと縁壱零式を見据える

 

対する縁壱零式、6本の刀をやたらと振り回して芽衣こと縁壱に迫りだす、そんな縁壱零式に縁壱は息を吸い始め刀を構えると

 

日の呼吸 烈日紅鏡

 

縁壱の繰り出した素早い二連撃に縁壱零式は刀ごと粉砕されその動きを止めた

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎縁壱零式がぁぁぁぁぁ‼︎』

 

まさか粉砕されるなんて思いもしなかった小鉄は絶叫しながら縁壱零式へと駆け寄りなんとか修理しようとするが

 

「あれ?縁壱零式の中に何か・・・刀?」

 

小鉄は縁壱零式の中に収まっていた刀を見つけ取り出してみると

 

「それは私が生前使っていた日輪刀・・懐かしいな」

 

と縁壱は軽く微笑み日輪刀を見つめていた

 

「えーと、縁壱零式壊しちゃってゴメンね?」

 

芽衣は小鉄に縁壱零式を壊した事を謝ると小鉄は

 

「芽衣さんアホの子だと思ってたけど、凄く強い人だったんですね!

ホントは鬼殺隊の人、柱なんじゃないですか?」

 

と小鉄に言われ芽衣は

 

「温泉大好き一般人‼︎鬼殺隊とは無関係‼︎柱が何かは分かりません!」

 

と私は決して鬼殺隊とは関係ないと強調する芽衣、当然柱が何なのか分からない芽衣だが小鉄は芽衣に

 

「柱とは鬼殺隊の『よし!これ以上鬼殺隊に関する知識はいらない!私は一般人!ゆっくりと過ごしたいどこにでもいる一般人!』・・・最上級剣士で『ひょっとこ!私は一般人!』・・・縁壱零式をあっさりと壊す一般人がいるわけないでしょう‼︎このポンコツ女‼︎」

 

柱について説明しようとする小鉄に芽衣は私は一般人だから鬼殺隊の説明はいらないと言うが更に縁壱をあっさりと壊す芽衣が一般人なわけがないと言うと芽衣は

 

「エッヘッヘ、細かい事は気にしないほうがいいよ」

 

と笑いだし、小鉄はコイツやっぱりアホの子だと芽衣を再認識した

 

そんなやり取りを行い、小鉄は縁壱零式から出てきた刀をとある刀鍛冶に預け芽衣は再び温泉を探しに巡り歩くのだった

 

それから3日、温泉を満喫する芽衣は持ち前のユルさで里に篭りきり

刀鍛冶達となんだかんだ仲良くなっていたが、さすがに帰らないのはマズイと産屋敷邸へ帰り支度をして刀鍛冶の里のひょっとこ達にまた温泉に入りに来ると告げ里を出ようとすると

 

「芽衣ぃぃ‼︎お前の刀が研ぎ終えたぞぉぉ!」

 

そう叫びながら飛び込んできたのは、鋼鐵という刀鍛冶のひょっとこ

小鉄から見た目ポンコツのアホの子が縁壱零式をあっさりと壊したら刀が出てきたとその刀の研磨を頼み、三日三晩かけて鋼鐵はその刀を研いでいた

 

「あ!忘れてた、ありがとう鋼鐵さん」

 

と鋼鐵にお礼を言う芽衣に刀を手渡す鋼鐵は

 

「いいか!折るなよ!絶対折るなよ‼︎折ったらしばき倒す!地の果てまで追っかけてしばき倒すからな‼︎」

 

と芽衣を脅す(ガチなやつ)鋼鐵に芽衣は

 

「だそうだよ?縁壱さん気を付けてね?」

 

と縁壱任せにすると、受け取った刀を見つめだす

 

「ねえ縁壱さん?この刀の名前ってなんなの?」

 

そう縁壱に聞くと縁壱は

 

「名前などない、ただ単に日輪刀としか」

 

と返す縁壱に芽衣は

 

「そっか〜、じゃあ今日からこの刀の名前は雲黒斎にしよう」

 

と勝手に名付ける芽衣、この芽衣の付けた名前に刀鍛冶一同は

 

ダサい上になんか臭そう、コイツが鬼殺隊になったら絶対刀打ちたくないと皆が同じ感想を芽衣に抱いていた

 

そして縁壱も

 

(私の刀は雲黒斎・・・最初から名前付けてれば良かった)

と芽衣の壊滅的なネーミングセンスに自分で名前を付けなかったことを後悔していた

 

そんな事を知らない芽衣は雲黒斎を手に里を出ると待機していた隠と共に産屋敷邸へと向かうのだった

 

そして半日が経ち夜になると再び鬼達が芽衣に群がる、だが今回は日輪刀もとい雲黒斎がある!

 

芽衣は縁壱と憑依合体すると、群がる鬼達を一瞬で斬り払い隠と共に一安心という時に凄まじい威圧感を感じ気配のする方を振り向く芽衣そこには一人の剣士らしき人物が立っておりこちらを睨みながらこう呟く

 

「何やら懐かしい気配を感じる、今の技、太刀捌き、そしてその呼吸まるで縁壱が乗り移っているかのようだ、そうは思わないか麻倉芽衣」

 

そう呟く剣士、この者こそ黒死牟と呼ばれる鬼、炎のような痣を持ち6つの眼をしたその姿、無惨が送り込んだ最強の鬼、そして縁壱の兄、

その黒死牟を前に縁壱は

 

「兄上」

 

そう呟く縁壱に芽衣は

 

「え?お兄さん?」

 

縁壱から発せられた一言に驚く芽衣、悲しみに暮れ俯く縁壱

そして芽衣に迫る黒死牟、400年の時を経て悲しき兄弟対決が再び始まろうとしていた。

 

 

 




縁壱と黒死牟悲しき兄弟対決に芽衣のとった行動は?
次回「なんとかなる!グーたら娘と六つ眼のオジン」





おまけ

錆兎「さあ始まりました!オサレポイントバトル実況は私鱗滝錆兎がお送りします」

真菰「解説は同じく鱗滝真菰がお送りします」

錆兎「今回のオサレポイントバトル、バトルフィールドは那田蜘蛛山
多数のポイントバトラーが入り乱れるレイド方式となっております」

真菰「まずはオサレポイントバトルのルールをおさらいしていきましょう、対戦中にカッコいい台詞を喋る!相手の攻撃を避ける!技を魅せる!大技は相手より後に使う!等オサレな行動によりオサレポイントが加算されバトル毎に設定されたオサレ値を越えて攻撃すると勝利となっております」

錆兎「なるほど!逆にオサレポイントが減点される行動が気になりますね」

真菰「はい、相手の言動に狼狽る!攻撃を避けられる!等反オサレ行動は減点対象となっております」

錆兎「なるほど!カッコよくスタイリッシュに決める事が勝利の鍵というわけですね」

真菰「それこそがオサレポイントバトルの魅力と言えますね」

錆兎「では早速バトルの中継を観ていきましょう!今回のポイントバトル注目の対戦カード!チーム鬼殺隊期待の新人 竈門炭治郎選手V Sチーム鬼 十二鬼月の一人 累選手だーー‼︎」

真菰「累選手はチーム鬼の中でも上位に入る歴戦の選手です、炭治郎選手がどのようにオサレ行動を魅せるかが気になりますね」

錆兎「なるほど!炭治郎選手には是非頑張ってもらいたい!」

真菰「炭治郎選手は不利ボーナスとしてオサレポイントの加算値が増えます、これを利用出来れば炭治郎選手にもチャンスはあります」

錆兎「では早速バトルを観ていきましょう」

錆兎「炭治郎選手!累選手へと走り・・壱の型を使ったーー‼︎いや折れた!炭治郎選手の刀が折れた!」

真菰「今のは累選手の糸が刀を折った事で累選手にオサレポイントが加算されます、ですが炭治郎選手も刀が折れた事によりバトルを継続するとオサレポイントが加算されます」

錆兎「なるほど!不利な条件で立ち向かう事がオサレ行動になるというわけですね」

錆兎「炭治郎選手再び突進ー!累選手も負けじと応戦!炭治郎選手糸を避ける避けるコケたーー‼︎」

真菰「炭治郎選手避ける事でポイントを稼ぎましたがコケた事で減点になります」

錆兎「いや!これは痛い!あーーっと!累選手、炭治郎選手へ技を使った〜!」

真菰「この技が決まれば累選手ポイントが大きく加算されます」

錆兎「累選手、炭治郎選手を大きく突き放すか?・・・いや!決まらない!炭治郎選手、妹バリアを使ったーー!」

真菰「妹を攻撃される事により炭治郎選手のオサレポイント加算値が増加されます」

錆兎「炭治郎選手、これが逆転への一手になるのか?いや炭治郎選手妹を連れて隠れたーー!これはどうなるのでしょう?」

真菰「妹を庇う行動でポイントは加算されますが狼狽てる事で減点よってポイントの増減はありません」

錆兎「炭治郎選手次なる一手は?ここで出てきた炭治郎選手!妹は・・出てきません!どうやら一人で立ち向かうようです」

真菰「妹を守る兄、これはオサレポイントが加算されます」

錆兎「累選手、何やら喋っていますね・・・あーーー!累選手ギャラリーの姉を攻撃!一体何が?」

真菰「累選手これはオサレポイント減点です」

錆兎「この減点が後に響くのか?あーーっ!累選手、ここで‼︎炭治郎選手の妹を捕らえたーー‼︎」

真菰「炭治郎選手、妹を捕らえられた事による不利でオサレポイントが加算されます」

錆兎「炭治郎選手、どうする?いや、妹が累選手を攻撃ーー!」

真菰「炭治郎選手、連携プレーでオサレポイントが加算されます、累選手は攻撃を受けた事でオサレポイント減点です」

錆兎「期待の新人炭治郎選手、歴戦の選手累選手に食らいついてる!
累選手!妹を吊り上げたーー‼︎」

真菰「妹の太ももがエロいので累選手オサレポイント減点です」

錆兎「個人的には加算してあげたい!さあ炭治郎選手どうオサレポイントを稼ぐ!」

錆兎「炭治郎選手再び突進!累選手に連続斬り!いや累選手全て躱す」

真菰「流石は歴戦の選手、スタイリッシュに躱しています」

錆兎「からの〜反撃!炭治郎選手滅多打ち!いや!殴られた勢いを利用して回転斬り!」

真菰「これはダメージカウンターですね!高等テクニックです」

錆兎「しかしダメージは与えられない!炭治郎選手惜しい!」

真菰「炭治郎選手ダメージ以外のオサレポイントは加算されます」

錆兎「あーっと!累選手の強烈な蹴りが炸裂ーー‼︎炭治郎選手大きく飛ばされたーー‼︎」

真菰「累選手ダメージによるオサレポイントが加算されます」

錆兎「炭治郎選手最早ここまでか‼︎っとここで前半戦終了です」

真菰「10分のインターバルを挟んで後半戦が始まります」

錆兎「両者休憩を・・いや!累選手、炭治郎選手の妹を下ろしている!
水とお菓子も渡してるーー!これはオサレ!流石歴戦のポイントバトラー!普段の行動もオサレなのかー!」

真菰「インターバル中なので加算は対象外です!が個人的には加算したいです」

錆兎「さあ後半戦の開始ですが・・炭治郎選手の妹の準備中です」

真菰「累選手が吊り上げた地点に待機しないと後半戦は始まりません」

錆兎「後半戦いよいよ開始です!炭治郎選手ここからどう出る」

真菰「炭治郎選手、累選手に大きく離されています」

錆兎「炭治郎選手ここで!あーーっと!ここで!拾の型生生流転だーー‼︎」

真菰「回転が増す毎にオサレポイントが増えていくスタイリッシュな大技を使ってきましたね」

錆兎「さあその技で・・累選手の糸を斬って!斬って!突き進むーー」

真菰「このまま決まれば累選手との差も大きく縮みます」

錆兎「対する累選手は・・いや!累選手余裕の表情!冷静に対応しているーー!」

真菰「大技を封じる事が出来れば累選手、オサレポイントの加算で勝利が確定します」

錆兎「炭治郎選手このピンチを凌げるか?」

真菰「炭治郎選手、累選手の技を切り抜ければまだ勝負はわかりません」

錆兎「炭治郎選手何やらブツブツと、何を言ってるのでしょうか?」

真菰「駄目だこの糸は斬れない、まだポイントが足りない!さっきまでとは違う匂いだと言ってます」

錆兎「どんな匂いなんでしょうか?気になる所です!さあ炭治郎選手絶対絶命‼︎」

錆兎「いや!炭治郎選手ここで!ここで!ヒノカミ神楽を発動‼︎」

真菰「絶対絶滅のタイミングで覚醒、これもオサレ行動の高等テクニックです」

錆兎「炭治郎選手この技で糸をーー破ったーー‼︎これはオサレポイント加算間違いないでしょう」

真菰「覚醒により累選手とのポイント差もあと僅かにまで迫りました」

錆兎「累選手ここで初めての狼狽え・・後退したーー!炭治郎選手はスタイリッシュに攻めて行く!」

真菰「累選手負けじと応戦してポイント減点を避けたいようです」

錆兎「だが炭治郎選手の猛攻は止まりません!そこに!出たーー‼︎妹の援護攻撃!妹魅せています!華麗な技を魅せています!太ももも未だに見せています」

真菰「炭治郎選手に連携によるオサレポイントが加算されます、炭治郎選手の勝利も見えてきました。あと錆兎黙れ」

錆兎「実況に黙れとは前代未聞ですが私は黙りません!漢に生まれたからには!っと炭治郎選手妹の技を掻い潜り累選手に攻撃ーー‼︎」

真菰「これはスタイリッシュと魅せを合わせた高等テクニックです、この攻撃が決まれば炭治郎選手の勝利が確定します。この下衆野郎」

錆兎「実況中に下衆野郎と言われた実況は私が初めてではないでしょうか?さあ?炭治郎選手勝利なるかーーー決まったーー‼︎期待の新人炭治郎選手、歴戦のポイントバトラー累選手に何と勝利!」

真菰「後半は炭治郎選手の高等テクニックが決まりましたね、実況チェンジで」

錆兎「真菰!俺が悪かった!ってまだ勝負は終わってなかったーー‼︎
累選手、炭治郎選手の攻撃を避けていたーー!」

真菰「やられたように見せかけて反撃のチャンスを待つ、リベンジカウンターです。これも高等テクニックです。分かればいいんだよ」

錆兎「さあ炭治郎選手再び絶対絶滅!累選手勝利への切符を手にするかー?」

真菰「やはり歴戦のポイントバトラーは伊達じゃないというわけですね」

錆兎「いや!ここで!富岡選手が乱入したーー!」

真菰「この乱入もレイドバトルの醍醐味でもあります」

錆兎「富岡選手、乱入直後に肆の型打ち潮による流麗な太刀捌きで炭治郎選手の絶対絶滅を回避したーー‼︎」

真菰「スタイリッシュかつ魅せる技を一番の見せ場に持ってくる、さすがはチーム鬼殺隊歴戦のポイントバトラー富岡選手、この状況になるまで様子見をしていたのでしょう」

錆兎「あーっと!ここで富岡選手の決め台詞「後は任せろ」が出たー!」

真菰「口数が少ない富岡選手ならではのオサレ行動ですね」

錆兎「対する累選手は、これは!恐らく累選手最大の大技か?」

真菰「いきなり大技は悪手かもしれませんね、富岡選手が破れば累選手不利になりかねません」

錆兎「ですが時既に遅し!累選手、富岡選手に技を出したーーー‼︎」

真菰「富岡選手がどう魅せるか注目ですね」

錆兎「富岡選手は・・・何と!オリジナル!富岡選手オリジナルの技、富岡スペシャルを発動したーー‼︎」

真菰「拾壱の型凪が正式な型名との事ですが、富岡スペシャルで通しましょう」

錆兎「おぉ〜っと!累選手最大の大技、富岡スペシャルの前にあっけなく散る!何が起こったのか私には理解出来ません」

真菰「恐らく物凄く刀を振り回したのでしょうが、あまりオサレ行動には見えないのでスタイリッシュに見せかけたのでしょう」

錆兎「凄いのか地味なのかよくわかりませんが、累選手の技を破った事には違いないでしょう」

真菰「累選手最大の大技を破った事で富岡選手にはオサレポイントが加算されます」

錆兎「累選手最大の大技を破られた事で狼狽えたーー!」

真菰「これはいけません、最大の大技を破られた直後の狼狽えは負けフラグという反オサレ行動の高等テクニックです、累選手オサレポイントが大きく減点されます」

錆兎「富岡選手、累選手に迫り・・すり抜け様に・・・決まったーー‼︎富岡選手オサレに決めて見事勝利を勝ち取り、いや横取りました!」

真菰「これもレイドバトルの醍醐味です、同じチームでもポイント争奪戦はライバルです」

錆兎「試合終了ーー!チーム鬼殺隊V Sチーム鬼、今回の勝利チームはチーム鬼殺隊!」




芽衣「っていう変な夢を見たの」

縁壱「案外正夢かもしれないな」

芽衣「ない!絶対ないから!」






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第4話 なんとかなる!グーたら娘と六つ眼のオジン

芽衣の持ち霊

継国縁壱 日輪刀に雲黒斎と名付けらた悲しき剣士

スピリット・オブ・ファイア 葉王が一方的に貸し出した五大精霊
芽衣が使おうとしない為暇を持て余している



麻倉芽衣 やればできる娘のグーたら娘、壊滅的なネーミングセンスで
日輪刀に雲黒斎と名付ける 付き合う気はないが葉王の絶滅思想に一定の理解を置いている




「ふむ・・妙だな体は鬼狩りと呼ぶには程遠い、だからこそお前の異常さには違和感を感じる」

 

そう冷静に分析する黒死牟、彼が芽衣から感じる違和感

芽衣の体は鬼狩りのように鍛えられた体付きではない、むしろ一般人と変わらない体、故に先程芽衣が見せた動きは異常だと黒死牟は思っていた

 

黒死牟は数多いる鬼の中で鬼無辻に認められた鬼、十二鬼月の中で最も位の高い上弦の壱としてこれまでに数々の鬼狩りを葬ってきた

 

中には柱と呼ばれる最上級剣士も含まれていたが黒死牟から見れば他の鬼狩りに比べれば幾らかマシな程度であり黒死牟の足元にも及ばなかった

 

だからこそ黒死牟は芽衣を異常だと感じた、鬼狩りは鍛え上げた体と呼吸を駆使して鬼を狩る、むしろそうしないと鬼に抗う事すら出来ない

だが目の前にいる芽衣はそうではない、鍛え上げた体でもない、むしろ鬼狩りですらない、そんな芽衣がこれまで葬ってきた鬼狩りより洗練された太刀捌きを駆使して鬼を狩る、黒死牟はこれが異常だと感じる以外に理解する術がなかった

 

「この娘の異常さ、まるで神の恩愛を受けた彼奴のようだ・・忌々しい」

 

そう呟く黒死牟、かつての弟縁壱を彷彿とさせる芽衣の異常さに憎しみに満ちた視線を芽衣に向け芽衣に迫る、黒死牟からすれば今すぐに芽衣を葬りたいところだが無惨の命により生捕りと言われてる為、自身の感情を押し殺して芽衣を捕らえようするが

 

「兄上、何故道を踏み外し鬼となられたのかお労しや」

 

芽衣に憑依する縁壱が黒死牟にそう告げると、黒死牟の逆鱗に触れ

その凶刃が芽衣へと迫る、縁壱はその斬撃を躱しながら黒死牟の頸へと一太刀入れようとすり抜けざまに斬り付けるが、かろうじて黒死牟はその攻撃を止め難を免れる

 

「やはり芽衣の体では生前のようにはいかないか」

 

そう呟く縁壱、生前の縁壱ならば今の一撃で一太刀入れていたのだろう

だが今の縁壱は芽衣の肉体に憑依して戦っている為、上弦の壱相手に一太刀入れるには少し難があった 

 

「・・・そうか・・・まるで縁壱のようだと感じていたが・・今の動き、その口ぶり・・・貴様!縁壱か!死して尚私の前に立つか!」

 

黒死牟は目の前の芽衣が芽衣ではなく縁壱だと悟り、内に宿る憎しみを爆発させる

 

芽衣を見た初見黒死牟は縁壱が乗り移っているかのようだと感じた

だがその感覚は確信へと変わった、先程の攻撃、その口ぶりは縁壱以外にあり得ないと。でなければ芽衣の異常さに説明が付かない、死者を蘇らせる事の出来る芽衣、むしろ何かしろの方法で縁壱を呼び出し乗り移っていると考える方が合点がいく。

 

そう瞬時に考え結論付けた黒死牟、その内に宿る憎しみをぶつけ黒死牟は縁壱が憑依する芽衣を亡き者にしようと再びその凶刃を振るう

 

芽衣の肉体に憑依している縁壱、身体能力が落ちているとはいえ

呼吸により芽衣の体は活性化している事で黒死牟の斬撃を躱す事は出来る、だが決め手になる一撃を入れるまでにはいかない、幸いなのが芽衣の体力が無駄にある事、呼吸法すら知らない芽衣は当然呼吸を使った事はないのだが無駄な体力に比例して肺活量も多く縁壱は生前とはいかないものの呼吸を駆使出来ていた、理想を言えば芽衣の体が鬼狩りとして

戦える体であれば良いのだが芽衣は鬼殺隊とは縁のなかった人間

むしろ憑依して戦っている以上、縁壱は芽衣にあまり負担はかけたくなかった、それ故に今の現状に少し焦りが生じ始めていた

 

「芽衣、兄上は強い!出来れば長引かせたくなはない」

 

縁壱はそう芽衣に言うが芽衣は

 

「・・・・うん・・そうだね」

 

と戦いに集中出来ていない様子だったが、今の縁壱に芽衣の様子を気にする余裕はなかった

 

「無様だな縁壱、以前のお前なら私を斬る事など造作もなかっただろう

安心しろ縁壱その娘は殺さない、あの方に生きて連れて来るようにと仰せつかっているのでな」

 

先程より冷静さを取り戻した黒死牟は縁壱に話しながら刀を構えると

自身の習得している呼吸を駆使し型を放ち出した

 

月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間

 

黒死牟から放たれた無数の斬撃、縁壱といえど芽衣の体では全ての斬撃を躱す事は出来ず僅かながら掠めてしまい、芽衣の体から血が流れ出す

 

「っ!この娘ただの稀血ではないのか!このあまりにも濃厚な血の匂い、まるであの御方のようだ」

 

黒死牟が嗅ぎ取った芽衣の稀血、恐ろしく濃厚なその血の匂いはまるで無惨のようだと感じていた

 

稀血である芽衣、通常の人間の50人〜100人分の栄養があると鬼に狙われている稀血の人間だが芽衣の稀血はそんな域を遥かに超えて鬼の始祖、鬼無辻無惨に匹敵する血の持ち主であった

 

「なるほど、あの御方が血眼になって探す訳がわかった、この娘だけは絶対に捕らえなければならない」

 

そう言う黒死牟は刀を構え縁壱にこう言い放つ

 

「縁壱貴様は邪魔だ!貴様を消してこの娘をあの御方の元へ連れて行く」

 

そう言うと黒死牟は

 

月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映え

 

縁壱へ向けて5連撃の斬撃を飛ばす黒死牟、縁壱はその斬撃を躱そうとするが異変が起きる

 

思うように体が動かない!生前の縁壱ならば問題なく動けたのだろう、黒死牟の斬撃も容易に躱せたのだろう、だが今は芽衣の体!魂だけの縁壱が芽衣の体を動かすには芽衣の意思も必要であり、これまでは芽衣と縁壱の意思が同調していた為問題なかったが、黒死牟と遭遇してから芽衣の様子がおかしい、戦いに集中していない芽衣に気遣う余裕もなかった縁壱は今更ながらにその事を後悔する

 

だがその後悔とは裏腹に黒死牟の斬撃は迫り、芽衣へと直撃する

その瞬間憑依合体は強制的に解除され、縁壱は芽衣の安否を疑う

 

「芽衣!」

 

そう叫ぶ縁壱、400年ぶりに再会した兄、芽衣の負担様々な葛藤が脳裏をよぎり縁壱はまた誰も助ける事が出来なかったと自分を責める

 

そんな中黒死牟もこの現状に驚き固まっていた

縁壱ならば今の斬撃くらい躱せる、仮に躱せなくても擦り傷程度で致命傷には至らない、無惨の命により殺さない程度に痛めつけ抵抗出来ないようにするつもりだったがこの展開は黒死牟でも予想外であり、黒死牟もまた芽衣の安否を疑う

 

「・・・・ホント笑えない!縁壱さんは縁壱さんで勝手に嘆いてるし

縁壱さんのお兄さんは泣いてるし!二人とも兄弟なんでしょ?兄弟喧嘩もそりゃするよね?だからって殺し合いまでする事ないでしょ!このバカチンが‼︎」

 

両者が芽衣の安否を疑う中、これまで沈黙を保ってきた芽衣が口を開く

そんな芽衣を見て両者は驚く、確かに斬撃は直撃した致命傷に至らずとも決して無傷な筈はない!だが芽衣は平然としている、この異様な光景に二人は呆然としていた

 

芽衣が無事だった理由、芽衣は斬撃が直撃して縁壱が強制解除されたわけではない、斬撃が直撃する瞬間縁壱を解除し、瞬間的にもう一人の持ち霊スピリット・オブ・ファイアをオーバーソウルし斬撃から身を守っていた

 

ここでいうオーバーソウルだが霊は物体に宿る事は出来ず、仮に物体に押し込もうなら霊体が物体から溢れ出す、その溢れ出した霊体をシャーマンの力、巫力で具現化した力がオーバーソウルである

 

オーバーソウルには媒介と呼ばれる物が必要だが何でもいいという訳ではなくその霊にまつわる物体、縁の物等相性がありオーバーソウルを形作る際シャーマンのイメージに密接に関係しより強固なイメージほど、より多くの巫力を注ぐほどオーバーソウルは強くなる

 

因みにスピリット・オブ・ファイアの媒介は酸素

 

 

話を戻して〜

 

「芽衣、無事だったか!」

 

芽衣の安否を心配していた縁壱は芽衣が無事だと知ると安堵し芽衣め縁壱に振り向きコクンと頷くと縁壱に話し出した

 

「縁壱さん!ホントはお兄さんと戦いたくないんでしょ?私は今の縁壱さんに合わせる気はないから」

 

と縁壱と気持ちを同調する気はないと告げ黒死牟にも話しかける

 

「お兄さんも‼︎泣きながら戦うって何?ホントは縁壱と戦うのが悲しいんでしょ?」

 

と黒死牟に言うと黒死牟は

 

「私が泣いてる?・・っ⁈何故だ!何故私は涙を流しているのだ‼︎」

 

と自分が泣いている事に気付き動揺しだす黒死牟、そんな黒死牟に芽衣は諭すように話し出した

 

「お兄さんは何で縁壱さんと戦うの?縁壱さんの事が憎い?お兄さんはホントはどうしたいの?」

 

そう黒死牟に語りかける芽衣、だが黒死牟は芽衣に話す事など無いと言うように無言で芽衣に近付くと芽衣を抱え上げ連れ去ろうとする

 

「お前に話す事など何一つとしてない!」

 

そう言うや黒死牟は姿が見えない縁壱に対し一言呟く

 

「哀れだな縁壱!」

 

姿は見えないが戦う術のない縁壱を蔑むとこの場を立ち去ろうとする黒死牟、そんな黒死牟に芽衣は意外な事を言い放つ

 

「あの〜〜〜さっきからお尻触られてるんですけどどうゆう事ですかね?話す事などないって言ってたけど私のお尻から手を離す事などないって意味だったのかな?」

 

この時黒死牟は内心焦っていた。まさかこの状況でそんな事を言われるとは思わなかった黒死牟、芽衣を抱え上げ時手を添えていたのだがお尻に手を添えていた事に気付かなかった黒死牟は芽衣にそう言われて一旦下ろそうか悩むが、抱え上げた芽衣を一旦下ろしまた抱え上げる、あまりにも滑稽な行動だと芽衣を下ろす事を取り止める黒死牟、だがこのままだと芽衣に誤解されたままだと思い黒死牟は取り繕うように芽衣に語りかける

 

「誤解だ麻倉芽衣!私は断じてお前の尻を離さないと言ったわけではない・・いや話そう!私と縁壱の間に何があったのかを」

 

そう語りかける黒死牟、黒死牟は鬼になる前の人生、縁壱との確執を思い出しながら芽衣に自分の過去を話し出すのだった

 

がっつりと芽衣の尻を触ったまま!

 

 

 

 

黒死牟は鬼となる前は継国巌勝という名であった、武家の嫡男として産まれた巌勝には双子の弟がいた。それが継国縁壱、双子である事で将来跡目争いになる事や縁壱に痣がある事で不吉だと殺されそうだった縁壱だが母親に猛反対され縁壱が10歳になれば寺に出奔させるという条件で事なきを得るが巌勝は嫡男として縁壱は忌子として育てられてきた

 

縁壱は幼い頃より喋る事もせずにずっと母親のそばにいた、巌勝は縁壱を不憫だと兄として縁壱に接し父親に叱られても殴られても縁壱に接していたがある時を境にそれは変わっていった

 

巌勝が父親の部下と稽古をしていた時だった、その稽古を見ていた縁壱に気紛れに剣を持たせ少し試してみようとした部下、だがその部下は縁壱にあっさりと打ち込まれ縁壱に天賦の才があると知れ渡り縁壱の扱いが変わりだした

 

自分ではなく縁壱が跡継ぎに、そんな焦りもあったが本当は喋る事が出来た縁壱に話を聞くと世界が透けて視えると、母親に甘えて寄り添っていたのではなく日に日に弱っていた母を支える為にそばにいた事を知ると巌勝は自分にはない縁壱の才に嫉妬の念を抱いていく

 

そんな縁壱はその事を知ってか知らずか、10歳になる頃には自ら寺に出奔すると家を飛び出しその後の行方は分からずじまいだった

 

それから数年後、巌勝は跡継ぎとして家を継ぎ妻を娶り子を成していたがある日戦場で鬼と遭遇し部下を失っていた時、久方ぶりに行方知らずだった縁壱と再会し以後、巌勝は家も妻子も捨て縁壱と共に鬼狩りとしての道を歩む事になるが、自身と縁壱との間にある隔絶とした才能に再び嫉妬を抱くが教えを乞い巌勝も縁壱のように強くなっていくがある問題が起きる

 

痣の代償、当時縁壱の下で教えを乞う鬼殺の剣士達には縁壱と同じように痣があった、痣の発症により身体の能力は上がるがそれは寿命の前借りでもあり剣士達は25にもなると次々と死んでいった

 

それは巌勝にも同じ事だった、縁壱のように強くなりたい!だが残された時間がない!そんな不条理を嘆いてた巌勝、そこに無惨が手を差し伸べる

 

ならば鬼になれば良いではないか

 

そんな無惨の提案は今の巌勝にとって願ってもない提案だった

鬼となり寿命に支配されない無限の時の中で研鑽を積める、力を渇望した巌勝は無惨により鬼となり仕えていた鬼殺隊の当主を殺害、以後無惨の片腕として仕えていたがその60年後、黒死牟となった巌勝は再度縁壱と再会する

 

年老いて尚生きている縁壱、その事実に驚愕する黒死牟だが無惨の片腕として数々の鬼狩りを殺めてきた黒死牟は縁壱も同じように殺そうとするが老いて尚衰えを見せない縁壱の実力に殺されかける黒死牟、何故老いて尚生きている!何故老いて尚衰えていない!驚愕と共に縁壱に対する憎しみが膨れ上がる黒死牟、だが縁壱の実力は紛れもない本物!次の一太刀で終わりを迎えるのだと黒死牟は悟るが縁壱は動かない

 

縁壱は先程の一撃をもってその寿命が尽き、生涯を終えていた

立ったまま絶命している縁壱、黒死牟は鬼となり寿命に支配されない体で研鑽を積んで尚縁壱に及ばない、縁壱が死んだ事で勝ち逃げされた気分になりその膨れ上がる憎悪をぶつけるように死んだ縁壱を斬り刻む黒死牟、バラバラになった縁壱から落ちた包みを見つけた黒死牟はその包みを拾い上げ包みを開くと中には幼い頃自分が縁壱にあげた笛があった

 

縁壱が今でも大事に笛を持っていた、幼い頃の記憶が蘇り自然と涙を流す黒死牟はその笛を懐にしまいその場を後にした

 

 

 

黒死牟は鬼となる前の人生を芽衣に話すとそれを聞いていた芽衣と縁壱は二人とも涙を流していた

 

未だにお尻をがっつりと触られている芽衣だがそんな事気にする事なく

黒死牟に話しかける

 

「お兄さん〜!辛かったね!生きたくても生きれなくてどうしようもなくて、鬼になるしかなかったんだね」

 

芽衣は黒死牟の境遇に理解を示すが

 

「でも!お兄さんは鬼になって沢山の人を殺めた!お兄さんが生きたかったように他の人も生きたかったんだよ?お兄さんは鬼になって人を殺したかったの?」

 

と鬼になってからの行動には懐疑的で黒死牟にそう告げる

 

「私は・・・力が欲しかった、縁壱のように強くなりたかった・・・鬼になってでも縁壱のように・・・そうか・・・私は縁壱になりたかったのだ・・・」

 

芽衣の言葉を聞いて黒死牟は鬼となった経緯を振り返り自分が縁壱になりたかったのだと悟る

 

そんな黒死牟の行動を聞いた芽衣は

 

「じゃあまずは縁壱さんとちゃんと話そ?今までの事、これからの事もちゃんと話そ?強さって何も力だけじゃないよね?心の強さもあるよね?」

 

と芽衣は話すと続けて話し出す

 

「私ね・・人間があまり好きじゃないんだ、人の手に余る力があるから皆んなに疎まれ蔑まれて・・人として生きる事を否定されて・・だったら!その力を使えばいい!鬼の子なら!化け物なら!遠慮しないでその力を振るえばいいと思った!でも私には大切な友達がいた!その子のおかげで私は私でいれた、化け物にならないで済んだ!力に振り回されて鬼の子にならないで済んだ!・・・お兄さんもそう・・鬼になっても力を得ても大事なのは心!憎しみや恨みに囚われて力を振るわないで!」

 

芽衣は自分と黒死牟を重ね、力に振り回されないようにと戒めるように強い口調で黒死牟に話す、黒死牟もそれを聞いて一度縁壱と話してみたいと思い芽衣に問いかける

 

「麻倉芽衣・・どうすればいい?私はどうすれば縁壱と話せる?」

 

と黒死牟は芽衣に問いかけると芽衣は

 

「う〜ん・・・お兄さん、魂抜いちゃっていい?」

 

と少し考え黒死牟に提案すると

 

「・・・は?」

 

と芽衣の発言に思考を停止し意味が分からないと言うような態度をみせると芽衣は黒死牟に説明をし始める

 

「えっとね、お兄さんの体からお兄さんの魂を引っ張り出すの!霊体同士なら縁壱さんと話せるでしょ?あっ!その間お兄さんの体は死んでるけど蘇生出来るから問題ないよ?」

 

と言うと黒死牟は

 

「縁壱・・・麻倉芽衣はお前よりヤバイ」

 

と人間だとか鬼だとかそんな域を超えた芽衣の力を知り、黒死牟は自分が縁壱を目指していた事が大した事ではないんじゃないかと思い始めそう言いながら縁壱に思いを馳せる

 

 

そんな状況を終始見ていた一人の男、芽衣を案内していた隠は黒死牟が現れた瞬間恐怖で固まっていたが戦闘が始まった瞬間生存本能でなんとか体を動かし近くの物陰に隠れ様子を見ていた

 

最初は恐怖で体が震えていたが暫くすると戦いが一旦止み何が起きたんだ?と伺うと黒死牟が芽衣を抱え上げている事が分かる

 

芽衣が連れ去られる!鬼殺隊に至急伝令を!と行動しようとするがある一点を見てその英断は止まる

 

あの鬼、尻を触ってやがる!

 

黒死牟しては抱え上げた際の不可抗力かつ無意識な行動だったのだが

隠はそうではなかった、あの鬼は年頃の美少女の尻を触ってやがる!

なんて羨ましい・・いやけしからん鬼だと憤慨するが相手は上弦の壱

十二鬼月最強の鬼にどうする事も出来ない隠はただ芽衣の尻を眺める事しか出来なかった

 

そんな隠にとってとんでもない出来事が起きる

抱え上げた芽衣を連れ去ろうと振り返ったのだ!

いや、黒死牟が振り返った事がとんでもない出来事ではない

問題は芽衣だ!黒死牟を正面にして見えていた芽衣の尻、振り返ったら

どうなるか・・隠は見てしまった、いや見えてしまった、というかがっつり見てる!

 

抱えられた事で垂れ下がった芽衣の浴衣、その隙間から覗く自称それなりにはある芽衣の胸!惜しくも全部は見えないが谷間はバッチリ見える

上弦の壱を前に地獄のような状況である意味天国のような光景、上弦の壱から目が離せない故に芽衣の谷間から目が離せないのかはたまた逆かこの異様な狭間にいる隠は行きも芽衣を案内していた隠だった

 

そんな隠だがちゃんとやる事はやっていた!(変な意味ではない)

芽衣の谷間を凝視しながら鬼殺隊本部へと伝令はしていたのだ!

 

上弦の壱出現!、谷間がヤバイ‼︎と一部変な事を報告していたのだが

報告は報告、上弦ともなれば柱が来てくれるだろうと祈りながら

隠は上弦の壱もとい芽衣の谷間を見張り続ける

 

 

そんな隠はさておき

 

芽衣は黒死牟にどうするか聞くと黒死牟は芽衣の提案に乗ると芽衣は黒死牟の体から魂を引き抜く為にある巫術を使う

 

禁人呪殺という巫術で、魂を肉体から引き抜く禁術指定された術を行使する芽衣、黒死牟に触れた手は黒死牟の魂を掴んでおり肉体から魂を引き剥がすように手を動かすと黒死牟の魂は肉体からスルッと抜けてその魂は周囲を見渡す

 

「私は・・っ⁈信じられん!私が肉体から抜け出ている!」

 

黒死牟は自分の肉体を正面からマジマジと見ながら今の状況に驚きつつ

そう呟く

 

「これで縁壱さんと話せるね!思った事全部ぶつけちゃえ‼︎家族なんだから兄弟なんだから、なんとかなるよえっへっへ」

 

そう黒死牟に言いながら笑う芽衣、黒死牟は芽衣の言葉に不思議な安心感を抱き見えるようになった縁壱を見つめ話し出した

 

「こうして再び話をするのは400年ぶりだな縁壱」

 

「兄上・・・私は・・」

 

「縁壱・・私はお前が羨ましかった、私には到達できない才を持つお前が憎かった!何故私は縁壱のように才がないのか!何故お前だけが神に愛されているのだと!お前さえ産まれて来なければと何度も思った!

家を捨て家族を捨て得た物は何もない!私は何の為に産まれたのだ!

私にはそれが分からない、教えてくれ縁壱」

 

「兄上・・私も同じだ!私にも家族がいた守りたい家族が出来た!だが守れなかった、どんな力があろうと大切な人を守れない私は価値のない人間なんだ、兄上の悩みにも気付かず死んで尚悔やみ続ける私にはどうすればいいのかわからない!」

 

力を渇望する巌勝と無力だと嘆く縁壱、どれだけ悩もうと答えの出ない悩みに両者の間に沈黙が生まれる

 

久しぶりの兄弟の会話に水を差したくない芽衣は黙っていようと口を噤んでいたがあまりにも長い沈黙につい口を出してしまう

 

「もう〜‼︎縁壱さんもお兄さんもせっかく兄弟同士で話せるのに、ずっと悩みっぱなしじゃない!いくら悩んでも答えの出ない悩みは考えない

今できる事をやればそのうちなんとかなるから!」

 

と二人に語り出す芽衣、そんな芽衣の言葉に縁壱は

 

「なんとかなるか・・・芽衣が言うと本当になんとかなりそうな気がするのが不思議だ!・・今の私に出来る事は芽衣と共に歩む事、芽衣といればそのうちなんとかなるのかもしれないな」

 

と悩むことを辞め今は芽衣と共に歩むと言う縁壱、そんな縁壱を見て黒死牟は

 

「麻倉芽衣・・不思議な娘だ、楽天的な言葉だが何故か気持ちが楽になる!悩んでいた事が滑稽に見える!・・今出来る事か・・私は鬼だ!人間の敵だ!今の私に出来る事など・・・」

 

と悩む黒死牟、そんな黒死牟に芽衣は

 

「敵じゃない!お兄さんは縁壱さんのお兄さんでしょ?私は・・お兄さんも一緒にいてほしい!縁壱さんと共に私と一緒にいてほしい‼︎」

 

そう黒死牟に懇願する芽衣、そんな芽衣の願いに黒死牟は笑いだし

 

「鬼である私と共にありたいと言う人間はお前が初めてだ麻倉芽衣!

だが私はあの御方の命を受けお前を連れて行こうとしてる鬼だ、そんな私を信用できるのか?」

 

と問い掛ける黒死牟だったが芽衣は悩むことなく

 

「お兄さんはもう私のお友達!・・・あれ?そういえば前に縁壱さん私のお父さんみたいな素振り見せたよね?だったらお兄さんは叔父さんだ‼︎あれれ?お友達でお兄さんで叔父さん・・まあそゆことで宜しくね」

 

と能天気な事を言い出す芽衣、複雑な関係性に宜しくどころじゃない黒死牟は芽衣に

 

「友と兄と叔父では立場が全く違うのだが?それに何故縁壱は父なのだ!縁壱の兄である私の方が父に向いている筈だ」

 

話の論点がずれ始めた黒死牟、そんな黒死牟に縁壱は

 

「兄上!芽衣の父は兄上でも譲れない!」

 

と黒死牟に反論すると黒死牟も何故かムキになり二人で口論を始めた

どちらが芽衣の父かで喧嘩する二人、そのくだらない喧嘩に芽衣は

先程まで命の奪い合いをしていた二人が和解したように見え笑いだし

二人は芽衣が笑っているのを見て一旦喧嘩が収まる、そんな二人に芽衣はこう言い出した

 

「ねえ?私のお父さん普通に生きてるからね?死んでないからね?」

 

と笑いながら話すと二人は

 

「縁壱・・私達は・・」

 

「兄上・・何も言わなくていい」

 

と二人で勝手に盛り上がっていた事が恥ずかしくなり二人で慰め合っていた

 

そんなやり取りがありつつ黒死牟は

 

「麻倉芽衣・・いや芽衣!私は今まで多くの命を奪ってきた、鬼になってまで生きたいと願った私が他者の命を奪う、これほど愚かな事はない

私は最早鬼として生きる気はない!虫のいい話だが私も縁壱と共に芽衣を守らせてくれないか?これまで奪ってきた命に償いたい」

 

そう黒死牟は芽衣に告げると芽衣は

 

「え?お兄・・叔父・・え〜と・・巌勝さんは蘇生する気はないの?」

 

と問い掛けるが黒死牟は

 

「生き返った所で私にはあの御方・・いや鬼無辻無惨の呪いがかかってる、そんな私が芽衣といれば芽衣の居場所を教えているのと同じだ!

芽衣を狙っている無惨に芽衣を渡す訳にはいかない!芽衣の稀血は一滴たりとも鬼に渡す気はない!それに・・・縁壱と共に歩みたい、昔のように兄として」

 

そう黒死牟改め巌勝は芽衣に告げると縁壱は

 

「兄上・・ありがとう」

 

と笑顔で応えると巌勝の姿は黒死牟の姿から人間であった巌勝の姿に変わり縁壱の笑顔に微笑み返し互いに握手を交わす

 

「兄上⁈姿が!」

 

縁壱は巌勝が黒死牟から姿が変わった事に驚いていたがその疑問は芽衣によって解き明かされる

 

「霊体ってねその人の思念で形が変わるんだ!長い間霊体でいると自分が何だったのか忘れて形がなくなっちゃう霊もいたりするんだよ?

そういった意味では縁壱さん結構根に持つ性格だったりしたりして?」

 

と楽しそうに説明する芽衣、芽衣の言う霊体、縁壱や巌勝は各々意思がありその思いの強い姿として霊体の形成がなされる、巌勝は上弦の壱黒死牟としてではなく、縁壱の兄として歩む事を決めた事で姿が人間へと変わったのだが魂の本質は変わらず、黒死牟としての力は残されていた

とはいえ、芽衣が鬼ではない為憑依しても黒死牟が放つ月を模した斬月刃は出す事は無理だった

 

縁壱も老いて死んだのだが、生前若かりし頃の姿でいるのはこの時の未練が強く影響している事で霊体が形成されている為縁壱は若い姿であった

 

そんな説明を受けて何となく納得する二人、巌勝は生前縁壱が笛を持ち歩いていた事を話に出し芽衣の言う通り根に持つ性格かもと楽しそうにからかい始めると縁壱は死んでからあの笛の行方が分からないと告げ

巌勝はその笛なら自分が持っていると縁壱に話す

 

それを聞いた芽衣はなんだかんだ弟思いなんだと楽しそうに笑い未だ抱えている体で黒死牟の体をまさぐり懐からその笛を探し出す

 

芽衣はその笛を見つけ二人の前に差し出すと縁壱は懐かしそうな笛を眺めて涙を流し巌勝も幼い頃の記憶を振り返り微笑ましい顔付きになる

 

そんな中芽衣は大事な事を思い出す、どうやって降りよう!

黒死牟から巌勝の魂を抜いた今、黒死牟の肉体は動かない

つまり拘束されたまま動けない芽衣、何とか降りようと身を捩りながら足掻く芽衣、芽衣が身を捩る度に少しずつ浴衣がはだけ出していく

 

そんな様子を見ていた隠、先程から谷間をガン見していた隠は霊が見えない人には芽衣が一人で喋っているという異様な光景や全く動かない上弦の壱、その上弦の壱の懐をまさぐる芽衣といった普通では考えられない状況でも谷間をガン見する事に集中していた隠は芽衣の浴衣がはだけ出しいくのを見ながらこう思っていた

 

上弦の壱様、ありがとうございます‼︎

 

巌勝は隠がいた事は知っていたが、縁壱との戦いにおいてとるに足らない存在だとして放置していたがその隠の視線がはだけ出しいる芽衣に集中していた事を察すると巌勝の姿から黒死牟の姿に変わり、芽衣に憑依合体をして自分の肉体であった体を無理矢理こじ開けると雲黒斎を拾い上げその体をバラバラに斬り刻み慌てて芽衣の浴衣を正すと、ガン見していた隠に雲黒斎を突きつけこう言い出した

 

「貴様!先程から芽衣を不埒な目で見ていたな‼︎万死に値する!」

 

芽衣をいやらしい目付きで見ていた隠を今にも斬り殺しそうな勢いで迫る黒死牟、元々弟想いの優しい兄であった巌勝はその庇護の対象を芽衣に切り替えると自分の娘を守ろうするように今まで以上に攻撃的になる黒死牟、自分の元の肉体より芽衣の貞操の方が大事と言わんばかりにあっけなく肉体を斬り刻むあたり芽衣に対する親バカっぷりは縁壱以上だった。そんな黒死牟、今はもう元上弦の壱と呼ぶべきなのだろうがその威圧感は健在、圧倒的な威圧感を一身に浴びた隠は恐怖で失神すると芽衣は守ってくれた事を嬉しく思う反面少しやり過ぎだと黒死牟を諫め

仕方なしに隠をおぶると産屋敷邸へと歩き出した

 

 

 

 

 

 

時が経ち芽衣が産屋敷邸へと着く目前〜

 

「上弦の壱が出たって言ってたけど、どこにいるのかしら?それに谷間がヤバイってどうゆう事なんだろう?」

 

そう言いながら胸を揺らし走る一人の女性、谷間がヤバイのは実際この人なのだがそれはさておき、この女性は鬼殺隊の中で最上級剣士の証である柱の称号を持つ9人の剣士のうちの一人、名を甘露寺蜜璃

彼女は隠を通して鬼殺隊本部から伝令を受けこの場に来ていた

 

上弦の壱が現れた、十二鬼月の中で上弦の鬼は目撃情報が少なく遭遇すら稀だというのに現れたのは十二鬼月最強の上弦の壱、気を引き締めて現場に向かった蜜璃だが報告で聞いた谷間がヤバイ、考える限り一番しっくりくるのは谷間という鬼殺隊員が上弦の壱と遭遇、危険なので柱に応援要請が来たと見解するのが納得できる考えなのだが、実際は違った

何もヤバくはなかった、ヤバイのは谷間をガン見していた隠の理性だけ

そうとは知らない一番ヤバイ谷間を持つ蜜璃、そんな彼女が見た光景は驚きを通り越し戦慄する光景だった

 

上弦の壱がバラバラに斬り刻まれている‼︎

 

あまりの衝撃的な光景に蜜璃は思考が停止して暫く立ち竦むがはっ!と我に帰るとこの状況を鬼殺隊本部へと報告するのだった

 

谷間という鬼殺隊員が上弦の壱を撃破!と

 

まさか上弦の壱本人が自分の肉体をバラバラにしたとは夢にも思わないだろうがバラバラになってるのは事実!

 

芽衣の谷間を見た隠から伝わった伝令は間違った解釈で伝わり後に鬼殺隊に所属する谷間という隊員は架空の栄誉を受けるがそれは別の話

 

 

 

 

そんな鬼殺隊の騒動とは無縁の芽衣は産屋敷邸へと着くと元気よくただいまと言うと慣れ親しんだ家の如く上がりあまねと顔を合わせる

 

「芽衣ちゃんおかえりなさい!良かったわ、上弦の壱が現れたって報告を受けて心配してたの・・・・って⁈上弦の壱‼︎」

 

「ん?巌勝さんは縁壱さんのお兄さんだよ!その上弦の壱?って鬼はお兄さんだったからもう安心だね」

 

「・・・・・・うん、芽衣ちゃんならそうよね!・・それが芽衣ちゃんだもの・・・夢でも見てるのかしら?」

 

芽衣が上弦の壱を連れて帰って来た、芽衣ならやりかねないと思いつつも夢かもしれないと混乱するけどあまね

 

鬼殺隊当主の屋敷に元とはいえ上弦の壱が、一方でその上弦の壱が死亡

して不在、この日芽衣によって産屋敷家と鬼無辻は共に混乱させられていた。




継国兄弟が持ち霊となった芽衣、だが巌勝の不満が芽衣を悩ませる

次回「雲黒斎?新たな名前とS.O.S」





原作では悲しい最期を迎えた黒死牟さん、何とか救済してあげたかったんですが結構強引な展開で誤魔化しました 

兄弟力合わせるなら複合甲縛式オーバーソウルとか考えるんですが
ちょっと難しいかな?



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第5話 雲黒斎?新たな名前とSOS

芽衣の持ち霊

継国縁壱 原作最強の剣士、悟りを開いたのかの如く達観しているが
芽衣に翻弄され狼狽る事が増えてきた 最近の悩みは影が薄い事

継国巌勝 元十二鬼月最強の上弦の壱にして縁壱の兄、芽衣と出会い縁壱と和解した 日課は日向ぼっこ

スピリット・オブ・ファイア 火を司る五大精霊 芋焼き係、芽衣の持ち霊になって以降料理は火加減と絶妙なコントロールを覚えた





芽衣達が産屋敷邸に到着した頃鬼の首魁鬼無辻無惨が根城とする無限城では

 

「童磨よ、上弦の壱黒死牟が死んだ!」

 

「いや〜まさか黒死牟殿が死ぬなんて!鬼狩りにもそんな強い奴がいたんだ」

 

「黒死牟を殺したのは鬼狩りではない、麻倉芽衣だ」

 

「麻倉芽衣・・女の子か〜♪黒死牟殿より強い女の子、美味しそう♪」

 

「貴様は私の話を聞いているのか?」

 

「もちろん聞いてますよ無惨様、その麻倉芽衣を捕まえて来いって事ですね」

 

「その通り、だが油断するな!麻倉芽衣は黒死牟を葬った実力を持っている」

 

「もちろん油断はしませんよ・・ところで麻倉芽衣って可愛い女の子なんでしょうか?可愛い女の子なら俺張り切っちゃうけど」

 

「奴の見た目などどうでも良い!だがどのような娘なのか貴様も知らないと探すのも手間だろう」

 

「さすが無惨様!麻倉芽衣って娘の姿が頭の中に入って・・・来なくていいです‼︎」

 

「貴様!どうゆうつもりだ‼︎」

 

「無惨様!無理です!麻倉芽衣は諦めましょう!」

 

「貴様!怖気づいたとは言わせぬぞ!」

 

「いやいや!耳飾りの剣士に怖気づいた無惨様に言われたくないですよ!」

 

「貴様‼︎」

 

「無惨様・・俺の記憶を読み取って下さい」

 

「貴様の記憶を・・・・‼︎麻倉芽衣⁈貴様‼︎何だ‼︎この背後の赤い巨人は‼︎」

 

「俺にも分かりかねますが、赤い巨人はヤバイです!」

 

「・・・・童磨よ・・麻倉芽衣には関わるな・・・絶対にだ‼︎」

 

「言われなくても関わりたくありませんよ、凄く可愛いけど」

 

黒死牟が死んだ事で無惨は次なる刺客、上弦の弐を芽衣に送り込もうと画策するも上弦の弐童磨の猛反対と自身のチキン根性で芽衣捕獲作戦を断念してしまう、芽衣を刺激すればその矛先が自分に来ると怯える無惨

芽衣に関わらなければこれまで通り生き永らえる、芽衣にさえ関わらなければ・・・そう考える無惨だが芽衣は巻き込まれる、鬼と鬼殺隊の戦いに巻き込まれる・・・芽衣の不運は無惨の不運、芽衣は無惨に狙われなくなり無惨は芽衣と関わらない、お互いに利点しかないのだがそれは両者の預かり知らぬところで崩れ去る、だがそれは両者共に知らないのであった

 

 

そんな不運の一人、本人の知らぬうちに無惨から狙われなくなった芽衣

は産屋敷邸で・・・・

 

「あっ!それもう焼けてる?熱っ!お芋はちゃんと焼かないと駄目だよにちかちゃん」

 

「芽衣さんこれは焼けてますか?」

 

「ん〜?どうかなぁ?ちゃんと焼けてる?スピリット・オブ・ファイア?」

 

「・・・・」コクコク

 

「焼けてるって」

 

「あの・・芽衣ちゃん?」

 

「ん?どうしたの?あまねさん?」

 

「庭で焼き芋を焼くのは良いの・・でも流石にスピリット・オブ・ファイアを使って焼き芋を焼くのはちょっと」

 

「駄目かな?」

 

「火に関してはこの世の最高クラスの大精霊に焼き芋を焼かせるなんて恐れ多くて」

 

「スピリット・オブ・ファイアはどう思う?やっぱり嫌?」

 

「・・・・」フルフル

 

「大丈夫みたい!」

 

「もう何でもありなのね」

 

スピリット・オブ・ファイアを使って焼き芋を焼いていた

 

 

 

 

そんな芽衣達の元に一人の隠が駆け寄り、手荷物を丁重に芽衣へと渡すと隠は慌てて走り去り芽衣はその手荷物を確認すると

 

「あっ!私がどこかに置き忘れた荷物!わざわざ探して届けてくれたんだ!」

 

そう言いながら芽衣は鞄を開け中身を確認すると

 

「私のお気に入りの宝物も無事で良かったよ」

 

と一安心してホッと一息をつくと輝哉は芽衣に

 

「どんな宝物なんだい?」

 

芽衣の宝物に興味津々な輝哉は芽衣にそう聞くと芽衣は、ニンマリと笑みを浮かべ鞄から宝物を取り出し輝哉達に見せつける

 

「これ!私のお気に入りの宝物!フツノミタマの剣!麻倉家の宝物庫に眠ってたから私が貰ったの」

 

とドヤ顔で話すと

 

「いや・・これは・・・芽衣・・これ国宝だよ?この国にとって貴重な文化財なんだが」

 

「国宝を道端に置き忘れ・・・目眩がしそう」

 

芽衣が見せたフツノミタマの剣と言う石の短剣、輝哉はそれを見て顔を引き攣らせ、あまねは目眩で倒れそうになっていた

 

「そうなんだ〜、この尖り具合とか長さが肩のツボとかに丁度いいんだよ?」

 

国宝フツノミタマの剣は芽衣にとって丁度いいマッサージ道具、そうあっけらかんとする芽衣にあまねは

 

「国宝をそんな使い方出来るの芽衣ちゃんだけよ」

 

呆れを通り越し諦めの境地に達したあまねは遠い目をしながらそう言いと芽衣は

 

「えっへっへっ」

 

そう笑い出す芽衣に輝屋は

 

「いや決して褒めてないからね」

 

と苦笑いをしながらそう言うと芽衣は顔付きが変わり面白い事を企んだ子供の表情を見せると

 

「んじゃ、雲黒斎も手に入ったしフツノミタマの剣の本来の使い方も見せてあげるよ」

 

とドヤ顔で輝哉達に言うと

 

「ん〜〜、折角だし巌勝さん!合体しよ?」

 

と芽衣の傍で縁壱と共に寛いでいた巌勝に芽衣は声をかけると

 

「芽衣合体は構わぬが雲黒斎とはなんだ?」

 

と嫌な予感を感じながら巌勝は芽衣に質問すると

 

「雲黒斎はこの刀だよ?縁壱さんの使っていた刀」

 

芽衣はそう言いながら傍に置いていた縁壱の日輪刀を指差すと

 

「・・・雲黒斎・・・雲黒斎・・・武士の魂の刀が雲黒斎」

 

巌勝は一人でブツブツと呟きながら刀を見つめていると

 

「巌勝さんどうしたの?」

 

と心配そうに巌勝を覗き込む芽衣、そんな芽衣に巌勝は

 

「芽衣・・刀に名を付けるのは構わぬが雲黒斎は駄目だ!頼むから改名してくれ!私は雲黒斎を握りたくない」

 

と芽衣に不満を言う巌勝、巌勝が芽衣に不満を言った事で縁壱は流石兄上と嬉しそうに巌勝に眼差しを向けると

 

「私も正直雲黒斎はどうかと思っていた、芽衣が嬉々として命名するから言い出せなかった」

 

と巌勝に便乗してくる縁壱、二人の不満を聞いた芽衣は

 

「え〜⁈カッコいい名前だと思うんだけど雲黒斎、駄目?」

 

と雲黒斎を譲れない芽衣はそう二人に聞くと

 

「「頼むから別の名前にしてくれ!!」」

 

兄弟揃って雲黒斎を否定すると芽衣は

 

「・・・叉宗(マタムネ)私の実家に住んでる猫の名前なんだけど」

 

芽衣は麻倉家に住んでる猫の霊マタムネの名前を借りようと呟くと

 

「「それがいい‼︎それにしよう!寧ろそれ以外にない!雲黒斎とか臭そうな刀絶対握りたくない‼︎」」

 

口を揃えて必死に雲黒斎を否定する縁壱と巌勝、息の合った発言を見てあまねは巌勝が元とは上弦の壱である事に不安を抱いていたが芽衣に翻弄され狼狽ている巌勝はもう敵としての上弦の壱ではなく芽衣を守る大切な仲間だと認識し芽衣とのやり取りを微笑ましく見つめていた

 

そんなやり取りを経て芽衣は雲黒斎改め叉宗を抜刀、輝哉達に面白い物を見せると言って少し距離を取ると

 

「いくよ巌勝さん!憑依合体黒死牟in叉宗inフツノミタマの剣‼︎」

 

芽衣は魂魄形態になった巌勝を叉宗に押し込むと巫力を注ぎオーバーソウル、それを更にフツノミタマにオーバーソウルして巨大な刀を具現化させる

 

「オーバーソウル!スピリット・オブ・ソード」

 

芽衣はそう命名して輝哉達にドヤ顔を見せつける

 

「芽衣・・オーバーソウルの二段媒介は凄いが・・その刀禍々しくないかい?」

 

と芽衣の力量に感嘆する輝哉だったが、芽衣の形作るその刀はあまりにも禍々しい見た目だった

 

「うん!巌勝さん・・上弦の壱の黒死牟の刀をイメージしてオーバーソウルしたから見た目はね」

 

と芽衣は説明すると

 

「というとそのオーバーソウルは上弦の壱黒死牟の能力が使えるのかい?」

 

輝哉はオーバーソウルで黒死牟の能力を再現出来るのか気になり芽衣にそう尋ねると

 

「巫力を消費すれば再現出来るよ」

 

そう話す芽衣、鬼でもなければ呼吸も使えない芽衣だが霊の特徴を引き出し具現化するオーバーソウルならば黒死牟の特徴、月輪の斬撃を巫力を消費して再現出来るのだが鬼殺隊に入る気もない芽衣はそれを使う事はないだろうと思っていた・・・巻き込まれる迄は

 

「ふぅ〜、疲れたよ」

 

芽衣はそう言ってオーバーソウルを解除すると

 

「芽衣!今のは⁈昨日の憑依合体とはまた違った感覚だったが」

 

巌勝はオーバーソウルの感覚が憑依合体した時の感覚と違った事を芽衣に尋ねると

 

「オーバーソウルは憑依合体とは違うからね、私の体を借りるのが憑依合体、今のは精霊になった巌勝さんを叉宗にオーバーソウルしてそれを更にフツノミタマの剣にオーバーソウルしたんだよ」

 

と巌勝に説明するが

 

「オーバーソウルというのが今の感じなのはわかった・・・む?精霊?芽衣今精霊がどうとか」

 

実際にオーバーソウルをした巌勝はその感覚を感じ取り理解を示すが先程芽衣が言った精霊という言葉が不思議でならないので思わず聞いてみると

 

「あっ!言ってなかった!縁壱さんと巌勝さんは人間霊から精霊に進化したんだよ!さしずめ刀の精霊ってところかな?」

 

割と重要な事をさらっと告げる芽衣、縁壱と巌勝はそれを聞いて芽衣が何を言ってるのか分からないとキョトンとした顔で呆け、見かねたあまねは芽衣にどうゆう事か聞くと芽衣は最近やる事が多くなったドヤ顔をして

 

「私超占事略決を習得してるからね、私の持ち霊になった時に縁壱さんと巌勝さんは精霊になったの」

 

そう説明すると

 

「「とんでもない事実をざっくりと説明するな‼︎」」

 

自分達が知らぬ間に精霊へと進化していた事など露にも思わない縁壱と巌勝は割とざっくりと説明する芽衣にツッコミを入れると

 

「えっへっへ」

 

と笑い出すと巌勝は縁壱に向き合い

 

「縁壱‼︎昔お前が言っていた事がようやく分かった、確かに私達は大した事はない!私達の才を遥かに凌ぐ者、それが芽衣!縁壱はこれを予期していたのだな」

 

と生前に話していた二人の話を持ち出すと縁壱は

 

「いや・・あんなとんでもない規格外が現るとは思わなかった」

 

と自分の想定する範囲以上の規格外が現れ狼狽る縁壱、そんな中当の本人は・・・

 

「わっしょい!わっしょい!焼き芋わっしょい‼︎」

 

謎のフレーズを口ずさみながらスピリット・オブ・ファイアに焼き芋を焼いてもらっていた

 

「芽衣」

 

焼き芋を頬張る芽衣に縁壱は呼びかけるとウズウズしだし

 

「先程のスピリット・オブ・ソード・・私もやってみたいのだが」

 

と縁壱は自分もオーバーソウルしてみたいと芽衣に言うと

 

「えっ⁈またやるの?縁壱さんの場合叉宗がそのまま巨大化したイメージだよ?」

 

2回もオーバーソウルしたくないんですけど!と言いたげな顔付きで縁壱に返す芽衣、オーバーソウルのイメージを伝えて実践はしませんよ?

と説明で終わらせた芽衣、ウズウズしていた縁壱はガックリと項垂れ残念がると

 

「次やる時に縁壱さん合体しよ?ね?そんなに落ち込まないで」

 

と慰める芽衣、縁壱は仕方ないと了承するとそのやり取りを見ていた巌勝は

 

「ふむ・・・芽衣の発言が卑猥に聴こえるのは私の気のせいか?」

 

と巌勝は芽衣の発言を指摘すると

 

「ちょ⁈卑猥とか言うなし!私まだ生娘だからね?痴女じゃないからね・・って何言わせてるの⁈巌勝さんの変態!節操無し‼︎」

 

と芽衣は取り乱すと巌勝はコイツマジか⁈と言わんばかりに口を開け呆然とし

 

「解せぬ!」

 

私は発言を指摘しただけ、芽衣が勝手に貞操事情を暴露したのではないかと思い抗議しようとしたが人前で芽衣に恥をかかせるわけにもいかないと我慢した巌勝は一言だけそう愚痴るが、産屋敷家や隠は芽衣の発言をバッチリ聞いていてあまり意味はなかったのであった

 

そんな話を聞いていたあまね、彼女は一連のやり取りを聞きながら

 

(縁壱さん影薄いわね、というかスピリット・オブ・ファイアとか上弦の壱とか芽衣ちゃんが濃過ぎて)

 

と縁壱の影の薄さを気にしていた

 

そんな平和?な日常を過ごし絶賛寛ぎ中の芽衣に輝哉はとある提案をする

 

「芽衣、近々輝利哉とかなたが所用で外出するんだが芽衣も一緒に行ってみてはどうだい?」

 

と芽衣に話すと芽衣は

 

「何処に行くの?」

 

キョトンと首を傾げながらそう聞き返す芽衣、芽衣の傍にいた縁壱と巌勝は産屋敷家が外出する用なんて鬼殺隊関係以外にないと分かっていたが芽衣のグーたら生活で暇を持て余していた二人は狩りの解禁を待ちわびた狩人の目付きになり芽衣に輝哉の思惑を教えずにいた

 

そうとは知らない芽衣に輝哉は

 

「山だよ、一年中藤の花が咲く山があるんだ、芽衣も見たくはないかい?」

 

とその山の真実を教えずにあたかも良い観光地だよと取り繕う輝哉

鬼殺隊とは関係ないというスタンスをとってきた芽衣、最低限の知識でも学んでおけばその山がどういう場所か分かっていた筈だがそのスタンスのせいでその山が観光地としか思ってないので心躍らせて快諾する芽衣

 

そんな芽衣の様子に三人は腹黒い笑みを密かに浮かべたのだった

 

 

 

 

場所は移り〜狭霧山〜

 

「駄目だ!まだ修行が足りない」

 

そう呟くのはこの山で鬼殺隊に入隊する為に修行をする少年、名は“竈門炭治郎“一年半前に家族を鬼に殺され唯一生き残った妹は鬼となりその妹を人間に戻す為に日夜頑張っている

 

その炭治郎は鬼殺隊に入隊する為の試験“最終選別“へ向かう許可を貰う為に元水柱鱗滝左近次から言われた大岩を斬れという難題にぶつかっていた

 

「・・・・心折れそう?挫けそう?諦める?」

 

そんな炭治郎に声をかける一人の少女、少女は持参した小さな椅子に座りながら大岩を斬れずに苦悩する炭治郎にそう言うと炭治郎は

 

「諦めない!挫けそうでも!心が折れそうでも!絶対に‼︎諦めない‼︎」

 

炭治郎は自分に言い聞かせるように強く少女に返事をすると

 

「なら頑張って!見かねた兄弟子達が来てるよ」

 

少女はそう言いながら大岩の上を見上げるとそこには狐の面を被った少年が炭治郎を見据え

 

「男がぎゃあぎゃあ喚くな!」

 

狐の面の少年はそう炭治郎に叫ぶと腰に据えた木刀を握り飛び降りながら炭治郎に斬りかかる

 

炭治郎は咄嗟に真剣で受け止めるもそこから蹴り飛ばされ

 

「大丈夫?咄嗟に受け止めたけど余計なことしたかな?」

 

蹴り飛ばされ転げ回る炭治郎を巨大な手が受け止めると少女は炭治郎を心配して様子を伺う

 

「いや助かったよ、ありがとう玉藻」

 

炭治郎は玉藻という名の少女に礼を言うと狐の面を被った少年に向き直し再び刃を交え出す

 

「じゃあ私は先に帰るね、鱗滝さんの御飯も作らなきゃだし」

 

玉藻はそう言いながらその場を後にすると

 

「真菰ちゃん炭治郎君をお願いするね、錆兎君にもよろしく」

 

「うん、任せて玉藻ちゃん」

 

玉藻の呼びかけに真菰と呼ばれた小柄な少女が頷くと玉藻はニッコリと笑い真菰の頭を撫でると

 

「炭治郎君頑張って!私の為に!」

 

玉藻はそう言いながら鱗滝が待つ家に戻り夕餉の支度を始めた

 

それから半年後、炭治郎は錆兎と呼ばれた狐面の少年との修行の末遂に大岩を斬る事に成功し鱗滝から最終選別へ向かう許しを得た

 

「遂にやったね炭治郎君これで炭治郎君は最終選別に行けるね」

 

これまでの努力を鱗滝に認められ泣き崩れる炭治郎にそう話しかける玉藻、彼女は自分の師からこの狭霧山で修行するよう言われ鱗滝を紹介され同時期に鱗滝の元にやってきた炭治郎と共に修行を重ねていた

 

玉藻は鬼殺隊に入隊する為に修行をしていた訳ではないので鱗滝から明確な合格条件を出されていない為炭治郎が修行を終えたら玉藻も修行を終えると鱗滝に伝え2年の時が過ぎていた

 

そんな修行の日々を終え玉藻は自分の家に帰るのだが、帰るついでに炭治郎を見送ろうと最終選別の地“藤襲山“までついて行くと決めていた

 

翌日〜炭治郎は最終選別の地“藤襲山“を目指し玉藻と共に歩き出すと

 

「なあ?玉藻は鬼殺隊に入隊する気はないのか?あんなに強いのに」

 

同じ修行をしていたのに鬼殺隊には入らないと言う玉藻にそう聞く炭治郎、そんな炭治郎の問いに玉藻は

 

「うん、私の修行は別の目的だし鬼殺隊に入る為じゃないから、それに私より強い人なんていっぱいいるよ?私の大切な人がそうなんだ」

 

玉藻は炭治郎にそう言いながら空を見上げ大きく息を吸い込む

 

「私ね、その大切な人の為に強くなったの!だから鬼殺隊には入らない!」

 

玉藻はそう炭治郎に宣言すると炭治郎は寂しそうな表情をして

 

「玉藻が一緒に鬼殺隊に入ってくれたら嬉しかったけど、玉藻がそう決めたのなら仕方ないな!」

 

仕方ないと諦める炭治郎、寂しそうな顔をしてる炭治郎を見て玉藻は

 

「友達!私と炭治郎君は友達だから!また会える!そうだよね?」

 

と玉藻は炭治郎は友達だからまた会えると言うと

 

「そうだね!二度と会えないわけじゃないんだ、生きていればまた会える!」

 

家族を失い二度と会う事が出来なくなった炭治郎、そんな炭治郎は生きていればまた会えると玉藻に向かいそう言うと玉藻は満面の笑みで頷き

二人はやがて藤襲山へと辿り着く

 

炭治郎は山へ続く階段を登り最終選別へと挑む、そんな炭治郎を見送ろうと玉藻も階段を登り始めた

 

 

「ようやく会えるね、待っててね!芽衣」

 

そう一言残して

 

 




遂に始まる最終選別 芽衣を知る玉藻と芽衣の関係は?

次回「修験の極み!最終選別キマシタワー」


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第6話 修験の極み!最終選別キマシタワー

芽衣の持ち霊 

継国縁壱 原作最強の剣士 最終選別では見せ場があるのか?
芽衣関係者での常識人だがどこか達観しておりツッコミが少ない為か影が薄い

継国巌勝 縁壱のお兄ちゃん!芽衣の持ち霊になって以降変化が見られ
時折現代用語を使う

スピリット・オブ・ファイア 火を司る五大精霊 最終選別では芋を焼かない芋焼き係



麻倉芽衣 温泉大好きポンコツ少女 その規格外さとユルさで周りから突っ込まれるが本人も突っ込むポンコツ少女

玉藻 本名 玉村玉藻 芽衣のお友達で炭治郎ともお友達、キャライメージは修験者番長巫女の玉村たまお 白い浴衣に芽衣と同じくふんばり温泉の羽織を着ている




「わぁ!ホントに藤の花が咲き乱れてるね!これ眺めながら温泉浸かれたら最高だね」

 

そう言いながらキョロキョロと藤の花を眺める芽衣、そんな芽衣に呑気だなと内心思いつつ輝利哉は

 

「そうですね、藤の花に囲まれてると安心します」

 

そう返すと芽衣は

 

「そういえば輝利哉君女装似合ってるね!女の子にしか見えないよ」

 

そう言いながらケラケラと笑う芽衣に輝利哉は

 

「僕も恥ずかしいですよ!元々は産屋敷家の男性が呪いのせいで短命だから女性として育てられるのが産屋敷家の習わしだったんですけど、芽衣さんのおかげでその必要も無くなったのに・・・母上も趣味が悪いですよ」

 

そう愚痴る輝利哉、芽衣が産屋敷家の呪いを跳ね返したから輝利哉は女性として育てられる必要は無くなったのだが、あまねは輝利哉の女装が可愛いからとあえて女装姿で最終選別へと向かわせたのだった

 

「でも可愛いから輝利哉はそのままでいいと思う」

 

そんな輝利哉の愚痴にクスクスと笑いながらかなたがそう言うと輝利哉は

 

「かなたまで⁈」

 

かなたにもそう言われ輝利哉も驚くと芽衣とかなたは笑い出し輝利哉は

溜息をつくのだった

 

そうして歩いてるうちに木々が開けた場所に辿り着いた芽衣達、観光に訪れた人達なのだろうか人が集まっているなと芽衣は不思議そうにその光景を眺めていた

 

その頃炭治郎達は〜

 

階段を登りきり広間に辿り着くと炭治郎と同じように最終選別を受ける為に集まった者達が待機しており炭治郎は周りを見渡していると

 

「皆さま今宵は最終選別へお集まりいただきありがとうございます」

 

先程芽衣と話していた時のように砕けた感じではなく産屋敷家の者としてキッチリと喋りだす輝利哉とかなた、そんな二人の後ろに立っている芽衣は

 

(最終選別?何それ?いっぱい人集まってるし何かの行事?)

 

と今から行われる事について訳が分からないと一人首を傾げていた

 

そんな中、輝利哉とひなたに視線が集まり集まっていた者達は二人の話を聞いていたがその中の一人から熱烈な視線が芽衣に向いていのだが芽衣は気付かないでいた

 

やがて輝利哉とかなたの説明が終わり最終選別が開始すると待機していた者達はぞろぞろと山に入って行き炭治郎も気を引き締め山へと入ろうとしていた

 

「玉藻見送りありが『芽〜〜衣〜〜〜‼︎』とう・・玉藻⁈」

 

見送りに来てくれた玉藻にお礼を言おうとした炭治郎だったが玉藻は大きな声で芽衣の名を叫ぶと炭治郎をすっぽかし一目散に芽衣の元へ全力ダッシュ!

 

「芽衣〜‼︎芽衣!芽衣!芽衣!芽衣‼︎」

 

ひたすら芽衣の名を連呼する玉藻、喜びが溢れ出んばかりの笑顔で芽衣へとダイブする玉藻に芽衣は

 

「ほい!巫門遁甲‼︎」

 

玉藻を受け流した

 

「酷いよ芽衣!愛しの玉藻ちゃんの熱い抱擁を受け流すなんて〜!」

 

顔面から地面にダイブした玉藻は涙目で顔をさすりながら芽衣にそう言うと芽衣は

 

「あれ?・・玉藻じゃん!ゴメン‼︎変質者が飛び付いて来たのかと」

 

「・・変質者・・」

 

「縁壱急にどうした⁈」

 

玉藻を変質者と間違え受け流した事を謝る芽衣、縁壱は以前芽衣から変質者呼ばわりされガチ逃げされた事を思い出し落ち込みだすと巌勝は縁壱の急変に驚き縁壱を心配しだす

 

三者三様の様子を見ながら玉藻は再び芽衣に飛び付いて

 

「芽衣〜会いたかったよ〜!修行も頑張ったんだよ〜芽衣褒めて褒めて〜!」

 

喜びを爆発させ芽衣に甘えだす玉藻、そんな玉藻の頭を撫でながら芽衣は

 

「修行頑張ったんだねー偉い偉い!んでミッキーは?」

 

ほぼ棒読みで玉藻を褒める芽衣、さっさと話題を切り替えてミッキーという者について玉藻に尋ねる芽衣(夢の国のミッキーではない)

 

「お師匠様は私を狭霧山に預けたらどっか行ったよ?」

 

と芽衣に答えると

 

「弟子をほっぽり出してまた放浪してるの⁈あの変態仮面は!」

 

怒りを滲ませながらそう言う芽衣、玉藻は苦笑いしながら

 

「あはは、変態仮面って・・否定はしないけど芽衣のお父さんだよ?変態仮面は否定しないけど」

 

変態仮面は芽衣のお父さん!一応気遣うが変態仮面!自分の師匠を庇うようで全く庇ってない玉藻に芽衣は

 

「そんな事より!なんで玉藻がここにいるの?」

 

変態仮面より玉藻がここにいる理由が気になる芽衣はそう尋ねると

 

「ん〜とね、炭治郎君の見送りに来たんだよ!炭治郎君最終選別受けるから」

 

と芽衣に答えると

 

「炭治郎君?誰それ?それに最終選別って何?さっきから気になってたんだよ」

 

芽衣は玉藻にそう言うと

 

「炭治郎君は最終選別に行った・・・ゴメン!まだいた!こっち見てる!凄くそわそわしてる!」

 

炭治郎はもう最終選別に行ったと思っていた玉藻だったが炭治郎はまだ動いていなかった、玉藻がいきなり大声で叫び全力ダッシュからの顔面ダイブという奇妙な行動に唖然とし動けないでいたのだ!

 

「炭治郎君〜‼︎」

 

玉藻は大声で炭治郎を呼ぶと

 

「玉藻煩い‼︎須磨さんか‼︎」

 

芽衣にへばり付いたまま耳元で叫び出した玉藻に、大声からのビンタがお約束の須磨さんを思い出し突っ込みを入れる芽衣

 

「えへへ〜♪芽衣の抱き心地たまらないよ〜・・んん?ふぁ⁈芽衣胸大っきくなったね〜♪どれどれ♪」

 

「ぴぎぃぃぃ⁈」

 

芽衣の突っ込みなどお構いなしに抱き付いたまま胸に顔を埋める玉藻は2年前より芽衣の胸がデカくなったと言いながらいやらしい目付きで芽衣の胸を触ると芽衣は声にならない悲鳴を上げ体を硬直させてしまう

 

「縁壱・・これがてぇてぇというものか」

 

「何処でそんな言葉を覚えたのだ⁈兄上」

 

芽衣とイチャつく玉藻を見ながらホッコリする巌勝と聞き慣れない言葉に戸惑う縁壱、二人が見守る中芽衣は玉藻からのセクハラを受けながら

 

「ちょっ⁈玉藻いい加減に!ぴぎぃぃ⁈ヤダってば!」

 

「ふふ♪2年の修行の成果!全集中の呼吸!この時の為に頑張ったようなものだよ」

 

嫌がる芽衣をよそに全集中の呼吸を使いセクハラしまくる玉藻、努力の方向性を踏み外した玉藻の執拗な攻めに芽衣は

 

「玉藻‼︎これ以上やると嫌いになるからね‼︎」

 

そうビシッと玉藻に告げると玉藻は

 

「ゴメンなさい‼︎もうしませんから最後にペロペロさせてください!」

 

即座に芽衣から離れ土下座をしながら謝る玉藻、謝りつつも欲望を抑える事が出来ない玉藻に芽衣が

 

「怖っ!玉藻怖いよ⁈修験の成果は?煩悩丸出しだよ!」

 

玉藻にドン引きしながらそう言うと

 

「玉藻‼︎」

 

玉藻に呼ばれた炭治郎が芽衣達の元に走って来ると

 

「ちょ⁈玉藻‼︎あの狐の面をしてる男の子何⁈何でこっち走って来るの⁈はっ!まさか玉藻の淫猥な行動に便乗して私の胸を揉みしだくつもり⁈あわよくばそのままナニするつもりなんだ!このヤロー‼︎」

 

こちらに走って来る炭治郎、玉藻に呼ばれ走って来ただけの炭治郎、見送りのお礼も言えず一言お礼を言おうとしただけの炭治郎、そんな炭治郎を盛大な勘違いで変質者扱いし逆ギレして自ら炭治郎に突っ込む芽衣

 

シャーマンとしては規格外の芽衣だが肉体は体力が無駄に多いだけのショボい体、対して炭治郎は2年の修行を経て肉体を鍛え上げた隠れマッチョ、当然芽衣が炭治郎に敵うはずもないのだが・・・

 

「我流麻倉式巫術 巫門遁甲ちゃぶ台返し‼︎」

 

壊滅的なネーミングセンスで付けた芽衣独自の技、単にちゃぶ台返しを再現しただけの技と呼ぶには大袈裟なショボい技を炭治郎にかける芽衣

ショボいのだが巫力の流れを読み取り受け流す事の出来る巫門遁甲を併用し炭治郎をひっくり返す芽衣、だがこの時芽衣は誤った!逆ギレしていた芽衣は忘れていた・・炭治郎はシャーマンではなく普通の人間!巫力を持っていない炭治郎に巫門遁甲など意味がなく・・・

 

「へあっ⁈」

 

「うわっ⁈」

 

某特撮ヒーローのような声をあげる芽衣と普通に驚く炭治郎、ショボい体の芽衣が放つただのちゃぶ台返しが炭治郎を綺麗にひっくり返す事など出来る筈もなく・・・

 

「痛てて・・何だったんだ⁈あの娘?俺をひっくり返そうとしてたみたいだけど・・・・ん?柔らかい・・何だ?」フニフニ

 

芽衣のちゃぶ台返し不発で盛大にこけた炭治郎、さっきのは一体何だったんだと思いながら顔をあげ、掌に感じる柔らかな感触を確かめていると

 

「・・・・・ぴ・・・ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ⁈」

 

炭治郎の真下から芽衣の絶叫が炸裂し、炭治郎はハッと真下に芽衣がいる事に気付く

 

「ああ!ゴメン!下敷きに・・・え?えぇ⁈えぇぇ⁈」

 

芽衣を下敷きにしていた事に気づいた炭治郎は直ぐに芽衣に謝るが炭治郎は自分の手が何を触っているのか理解して大慌てで飛び退き

 

「すいませんでした‼︎不可抗力とはいえ胸を触ったりして、本当にすいませんでした‼︎」

 

毎日練習していたのかと思わせる程の素早いジャンピング土下座で芽衣に謝る炭治郎、そんな炭治郎に芽衣は

 

「はぁはぁ・・やっぱり・・やっぱりそうだった!私の胸を触りに来たんだ!押し倒して大人の階段も登ろうと‼︎」

 

自分から仕掛け失敗したのに盛大な勘違いで炭治郎を変質者扱いする芽衣、その一部始終を見ていた縁壱と巌勝は

 

「胸を触られたのは不憫だが自業自得というか・・あの少年おいたわしや」

 

「そもそも芽衣は何をしたかったのだ?私には理解に苦しむ」

 

芽衣の行動に酷評を出していた

 

 

 

 

 

「あ〜えと・・その・・ゴメンなさい‼︎私の勘違いで変質者扱いしてホントにゴメンなさい‼︎

 

しばらくして冷静さを取り戻した芽衣は縁壱や巌勝から先程の顛末を説明され、あれ?これ完全に私が悪いじゃん!胸触られたのは別だけど!それだけは別だけど‼︎ と反省?して炭治郎に謝ると

 

「いや!こっちこそゴメン!胸を触ったりして・・柔らかかったとか思ってないから・・あ、いやそうじゃなくて!」

 

炭治郎もまた芽衣に謝り直すと

 

「麻倉芽衣・・私の名前、麻倉芽衣」

 

そう炭治郎に自己紹介する芽衣、炭治郎もまた芽衣に

 

「俺は竈門炭治郎、芽衣よろしく」

 

そう言いながら炭治郎は握手をしようと芽衣に手を差し出す

 

「・・・・うん」

 

芽衣は炭治郎との握手に間を置き少し考えてから握手をすると

 

「芽衣は不思議な匂いがするね、暖かくて優しい匂いと冷たくて悲しい匂いが混じってる不思議な匂いだ」

 

人の感情を匂いで嗅ぎ分ける炭治郎は芽衣から感じた匂いを芽衣に伝えると

 

「芽衣!私は昔から芽衣の味方だよ!芽衣があの時助けてくれたみたいに今度は私が芽衣を助けるから!」

 

炭治郎から言われた芽衣の匂いに何かを察した玉藻は芽衣に駆け寄ると心配そうに芽衣を眺めそう言うと芽衣は玉藻を見つめて優しい笑顔で

 

「うん、玉藻がいてくれて嬉しいよ!頼りにしてるからね」

 

そう言って玉藻を抱きしめると

 

「縁壱・・・これはてぇてぇと言うべきなのかキマシタワー!というべきなのか私にはわからぬ、どうすればいい?」

 

「兄上・・おいたわしや」

 

そんなやり取りを見ていた縁壱と巌勝、巌勝からの問いかけに訳がわからないと嘆く縁壱は巌勝を不憫に思っていた

 

そんな二人はさておき芽衣が何故最終選別の地、藤襲山にいるのか気になっていた玉藻は

 

「気になったんだけど芽衣はどうしてここにいるの?最終選別を受けに来たとか・・じゃないよね?」

 

まさか最終選別受けないよね?と不安にしていた玉藻はそう芽衣に聞くと

 

「藤の花が一年中咲く山があるから観光に来ただけだよ?ほら後ろにいる輝利哉君とかなたちゃんと一緒に観に来たの」

 

ここにいるのは観光です!後ろに連れもいるんですよと輝利哉とかなたの二人に目を配らせる芽衣に玉藻は

 

「輝利哉君とかなたちゃん?・・・輝利哉ちゃんとかなたちゃんね芽衣言い間違いだよ?」

 

後ろにいるのは二人の女の子、男の子なんていないから芽衣の言い間違いだと指摘すると

 

「輝利哉君だよ?輝利哉君は『芽衣さん‼︎』」

 

言い間違いじゃなく輝利哉君は男の子、正確に言えば男の娘!そう玉藻に伝えようとするが、黒歴史になりかねない女装をバラされたくない輝利哉は慌てて芽衣を呼び止めると芽衣は

 

「あーー輝利哉ちゃんだったね、私の言い間違い!」

 

黒歴史だもんね!バラされたくないよね?私も黒歴史あるから分かるよ!と輝利哉の内心を勝手に解釈し誤魔化す芽衣、そんな芽衣に玉藻は

 

「芽衣・・この山最終選別の場所だよ?藤の花が一年中咲いてるのは山の中に鬼を閉じ込めておく為、観光に来る所じゃないよ?」

 

そう芽衣に説明すると

 

「え?鬼?・・不思議生物の?・・それに最終選別って!さっきから最終選別最終選別って言うけど何なの?」

 

ちょっと意味がわかりません!内心そう思いながら芽衣は玉藻に最終選別について聞いてみると

 

「芽衣、鬼殺隊って知ってる?」

 

最終選別の話をする前に玉藻は芽衣が鬼殺隊を知っているかを確認する

と芽衣は

 

「うん、それは知ってる」

 

そう芽衣は答えると玉藻は

 

「最終選別はね、その鬼殺隊に入る為の入隊試験なの、鬼が閉じ込められたこの山で1週間生き延びる、それが合格条件」

 

玉藻は芽衣にそう説明すると

 

「へぇ〜そうなんだ・・大変だね」

 

説明を聞いた芽衣はあっさりとした反応を見せる、私は鬼殺隊とは関係ない、観光に来ただけだと思ってる芽衣に玉藻は

 

「芽衣!行こう‼︎修験の成果を見せたいし、芽衣の持ち霊の実力も知りたいな」

 

と芽衣の腕を掴み山の中へと連れて行こうとする玉藻、炭治郎を見送り帰るつもりだった玉藻は芽衣がこの場にいるとは思わず、まさかの再会に修験の成果と芽衣の持ち霊の実力を見てみたいと全集中の呼吸を使い

芽衣を拉致するのだった

 

そんな玉藻に拉致された芽衣は

 

「ちょ⁈玉藻⁈分かったから離して!」

 

芽衣は玉藻にそう言うが離せば絶対行かないと分かってる玉藻は芽衣を無視して強引に芽衣を山の中に引き摺り込むのであった

 

そんな玉藻の暴走を見ていた縁壱と巌勝、なんとかして芽衣を最終選別に参加させたかった二人は色々と思案していたが玉藻の暴走があっさりと解決した為、内心玉藻に感謝しながら二人でハイタッチをすると芽衣を追っていくのであった

 

そして炭治郎は・・・

 

「玉藻〜!芽衣〜!」

 

置いてけぼりをくらい完全に出遅れていた

 

 

「かなた・・・芽衣さんの関係者って」

 

「うん・・変人しかいないね」

 

そう言いながら連れ去られて行った芽衣を見送る輝利哉とかなたであった

 

 

 

「ヒャッハー‼︎久しぶりの人肉だぜ!」

 

「しかも女が二人だぜ!ヒーハー‼︎」

 

「それに一人は稀血でござるよ!デュフフ!」

 

そう叫びながら歓喜する3人の鬼達、どこぞの世紀末に出てきそうな頭髪をしたヒャッハー鬼、毛根が心配な小太りのヒーハー鬼、眼鏡はないのか!オタ鬼が最終選別に巻き込まれた芽衣達に襲いかかろうとしていた

 

水の呼吸 肆の型 打ち潮

 

流れるような太刀捌きで三人の鬼の首を斬り飛ばす炭治郎

 

「玉藻!芽衣!無事か?」

 

そう言いながら2人を心配する炭治郎、一足先に森へと足を踏み入れた芽衣達に先程の鬼が襲いかかり合流した炭治郎が2人を守ろうと修行の末習得した型を繰り出し鬼を撃破すると

 

「炭治郎君!折角芽衣に修験の成果を見せようと思ったのに!」

 

そう言いながら膨れっ面をする玉藻、さっきの鬼を相手に修験の成果を芽衣に披露しようとしていた玉藻は炭治郎の介入で見せ場をなくし少し怒っていた

 

「ああ、ゴメン玉藻!玉藻は刀を持ってないから戦えないんじゃないかと思って」

 

そう謝る炭治郎、玉藻は鬼殺隊に入らない為鱗滝から日輪刀を渡されておらず手ぶらであった、そんな玉藻を心配して助けた炭治郎に玉藻は

 

「でもありがとうね炭治郎君」

 

そう炭治郎にお礼を言うと玉藻は

 

「隠れてないで出ておいでよ錆兎君、真菰ちゃん」

 

そう言いながら玉藻は近くの岩影を見つめると

 

「やはり気付かれていたか」

 

「玉藻ちゃんは気配を探るの上手だからね」

 

そう言いながら玉藻達の前に姿を見せる錆兎と真菰

 

「違うよ、2人に気付いていたのは芽衣、炭治郎君を見守る狐面の2人は誰って」

 

そう2人に告げる玉藻、それを聞いた錆兎と真菰は

 

「芽衣・・玉藻が顔をニヤつかせてよく話していた親友の芽衣か」

 

「あの時の玉藻ちゃん、ちょっと・・ううん結構気持ち悪かったよ?」

 

玉藻に辛辣な2人の反応に玉藻は

 

「気持ち悪いって・・芽衣〜!私気持ち悪い?そんな事ないよね〜」

 

そう言いながら芽衣にすり寄る玉藻、それに対する芽衣の反応は

 

「いや・・気持ち悪いっていうか・・・昔より接触が濃厚過ぎてちょっと戸惑ってる」

 

そう玉藻に返す芽衣

 

芽衣と玉藻は小さい頃からの親友だった、小さい頃から仲は良かったが玉藻は甘えん坊な所はあっても拗らせてはいなかった、5年前までは

 

5年前玉藻は一度死んだ、その玉藻を蘇生したのが当時の芽衣、それ以降玉藻は芽衣を崇めるように感謝して芽衣に執心し拗らせ始めた

 

それでもまだ玉藻は普通だった、芽衣は私の全て、命に変えても芽衣は守るという思いはあってもレズっぽくなかった

 

変わったのは2年前、一度死んで以降芽衣と同様に霊が見えるようになった玉藻、シャーマンとしての素質を見出され芽衣の父、修験者である変態仮面に弟子入りするとその才能をメキメキと伸ばしていた

 

そして2年前、変態仮面の知り合い、修験の道中に立ち寄った狭霧山で出会った仮面仲間、鱗滝に預けられ芽衣と会えない日々を過ごす玉藻

その恋慕が次第に拗れ芽衣限定の煩悩修験者へと変貌していった

 

「我慢する!一日一回一揉みで我慢するから!あ、やっぱりペロペロも追加で!それで手を打つから!」

 

困惑する芽衣に全く自重していない自重をすると言い出した玉藻、そんな玉藻に芽衣は

 

「交渉の余地がどこにも見当たらないんですけど⁈」

 

何も譲歩出来る所がない提案に芽衣はそう突っ込むしかなかった

 

「玉藻が気持ち悪い人だったって事は分かった!そんな事より!錆兎と真菰がいるって!」

 

素直で純粋な炭治郎はオブラートに包む事もなく玉藻を気持ち悪いとハッキリと言うが、そんな事より自分の鍛錬に熱心に付き合ってくれた錆兎と真菰がこの場にいるという事が気になり玉藻にそう聞くと

 

「炭治郎君の言葉が刃のように突き刺さって心が痛い・・うん、いるよ錆兎君と真菰ちゃん!炭治郎君が心配で付いて来たんだと思う」

 

玉藻が炭治郎にそう告げると

 

「錆兎!真菰!ありがとう‼︎俺は必ず最終選別を突破するから‼︎ありがとう!本当にありがとう‼︎」

 

修行していた時にはハッキリと見えていた錆兎と真菰、今はもう姿を見る事が出来ない2人にこれまでの感謝の気持ちを伝えると錆兎と真菰の2人は少し安心した表情を見せるも何か払拭出来ない様子でいた

 

 

そんな中、何処からか悲鳴が聞こえ炭治郎達は悲鳴がした方に駆け寄ると森の奥で蠢く巨大な鬼の姿を見つけ炭治郎は若干青ざめながら木の裏に隠れ様子を見るとその鬼は最終選別に参加していた少年を追っていて

巨体から生えた無数の腕を伸ばし少年を捕まえようとする

 

「うわーあの鬼デカイね!芽衣」

 

「デカイというよりデブ?なんか腕もいっぱい生えてるし鬼ってホント不思議生物だよねー」

 

この状況で割と呑気な芽衣と玉藻、そうしてるうちに少年は鬼に捕まり捕食されそうになると

 

水の呼吸 弐の型 水車

 

少年を助ける為に勇気を振り絞り果敢に鬼に斬り込む炭治郎

 

「炭治郎君がデブに突っ込んだ!」

 

「芽衣、私達も行こう」

 

芽衣達はそう言うと炭治郎の後を追ってデブ鬼もとい手鬼に突貫していった

 

 

突っ込んだ炭治郎に腕を斬り落とされた手鬼、斬り落とした張本人炭治郎に目を向け炭治郎の頭部の狐の面を見るとニヤリと笑い

 

「また俺の可愛い狐が来た」

 

手鬼は炭治郎を見てそう言うと

 

「狐を御所望ならこの子をどうぞ!」

 

そう言いながら炭治郎の元に駆けつける玉藻は式紙を取り出すと

 

「憑依合体”天狐”オーバーソウル‼︎白面金毛九尾の狐」

 

玉藻の持ち霊の狐の神霊”天狐”を玉藻は式紙に憑依させオーバーソウル

某忍者漫画の主人公がツンデレ狐さんを解放したような見た目のオーバーソウルを具現化すると

 

「「は?」」

 

炭治郎と手鬼共に唖然、巨大なガチな狐が出てくるとは思いもしなかった手鬼と炭治郎に玉藻は

 

「これが修験の成果!芽衣〜褒めて〜♪」

 

と目の前の手鬼に目もくれず芽衣に甘え出す玉藻、そんな玉藻に芽衣は

 

「もふもふだー‼︎尻尾がもふもふだよ玉藻!偉い!玉藻偉い!」

 

と玉藻のオーバーソウル、白面金毛九尾の狐の尻尾にモフりながら玉藻を褒める芽衣、そんな芽衣に玉藻の持ち霊天狐は少し困惑気味に

 

「くぅ〜ん」

 

玉藻に助けを求めていた

 

「いや、狐は狐だがそんなガチな狐じゃなく狐の面の・・・稀血⁈稀血がいるのか‼︎これはついてる、狐の小僧と稀血を喰えるなんて俺はなんてついてるんだ!」

 

玉藻のオーバーソウルに戸惑う手鬼だったが、芽衣の稀血の匂いに気づいた手鬼は喜びに震え歓喜すると

 

「あ、ちなみに今明治何年?」

 

とついでに年号を聞いてみると炭治郎は

 

「今は大正だ」

 

と手鬼に答えると手鬼は

 

「年号が⁈年号が変わってるーー‼︎あーまた年号が変わってる!許さん鱗滝!鱗滝ーー‼︎」

 

と怒りで暴れ回り芽衣は

 

(喜んだと思ったら今度は怒りだした、情緒不安定な不思議生物なのかな?)

 

と他人事のように手鬼を見ていた

 

そんな芽衣の背後では・・・

 

「兄上・・」

 

「図体だけ膨れ上がった雑魚の分際が芽衣に手を出せると思わない事だ!その奢り私達が斬り捨ててやろう」

 

と芽衣の稀血を狙った手鬼に怒りを示し手鬼を睨む2人の更に背後では

 

「錆兎・・アイツ・・私やっぱり悔しいよ!炭治郎に託したけど悔しいよ‼︎」

 

「真菰・・俺も同じだ!だが今の俺達ではどうする事も出来ない!」

 

手鬼を睨みながらそう話す錆兎と真菰、この2人も炭治郎と同じく鱗滝の元で修行をし最終選別に参加したが2人共手鬼に喰われ悔しい思いをしていた

 

そんな2人に

 

「お前達はあの鬼に喰われたのか?」

 

「仇を前に何も出来ない無力感、さぞ辛いだろう」

 

そう話しかける巌勝と縁壱に錆兎と真菰は

 

「ああ、情けないがその通りだ」

 

「アイツ!鱗滝さんの弟子を!私達の兄弟子を執拗に喰べて!仇を討ちたかった!でも駄目だった!悔しい!悔しいよ‼︎」

 

手鬼を前に何も出来ない錆兎と真菰、錆兎は無力感を噛み締めながら静かに肯定し、真菰は号泣しながら悔しさを滲ませると

 

「錆兎君と真菰ちゃんだっけ?悔しいよね、辛いよね!・・・よし!錆兎君!真菰ちゃん!私達であのデブを倒して仇を討とう!」

 

縁壱達と話す錆兎と真菰の元に歩み寄った芽衣は2人にそう話すと

 

「仇を討つ?俺達は『芽衣!私の名前、麻倉芽衣!大丈夫!私を信じて!私達の気持ちを重ねたら何とかなるよ!』・・何とかなるか」

 

「芽衣ちゃん!どうするの?」

 

「憑依合体!錆兎君と真菰ちゃん、私と合体してあのデブを討つ!」

 

「そんな事出来るの?」

 

「出来る!それがシャーマン!私の力!」

 

「やる!皆の仇を討ちたい!助けて芽衣ちゃん!」

 

「芽衣だったな、俺からも頼む!仇を討たせてくれ!」

 

「うん!錆兎君!真菰ちゃん行くよ‼︎」

 

芽衣・錆兎・真菰の3人はそう話すと手鬼を見ながら

 

「憑依合体!錆兎・真菰」

 

芽衣は錆兎と真菰を魂魄形態に変化させると2人の魂を自身に憑依すると

 

「わぁ‼︎錆兎‼︎合体したよ!」

 

「ああ、だが俺の意志で体が動かせないのだが!」

 

「うん、体は一つだからね!右見ながら同時に左は向けないように私も2人同時には無理かな?お互いに主導権を切り替えていこ?」

 

そう芽衣は説明すると

 

「縁壱さん、巌勝さん!良いよね?」

 

今からこの2人と一緒に戦うけど、大丈夫?と聞いてみると

 

「芽衣がそうしたいのなら芽衣のやりたいようにやれば良い」

 

「芽衣の助けたいと思う行動に無意味な事などない!私がそうであったように・・思うようにやれば良い」

 

と芽衣を激励すると

 

「うん!よ〜し‼︎錆兎君!真菰ちゃん!デブに突貫でドッカンするよ」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

芽衣の号令に錆兎と真菰は頷くと芽衣は手鬼に向かって走りだし

 

「炭治郎君!炭治郎も一緒にあのデブを倒して!」

 

「炭治郎やるぞ!男ならやると決めたらやり抜け!」

 

「一緒に行こ?炭治郎」

 

芽衣の口から次々と発する言葉に炭治郎は

 

「錆兎⁈真菰⁈芽衣!今のは⁈」

 

「話は後!デブを倒してから!」

 

炭治郎の疑問に芽衣は話は後からと言うと

 

「芽衣!私を忘れちゃ駄目だよ〜!」

 

と玉藻もやる気を見せると

 

「玉藻も行くよ!」

 

と玉藻に言うと

 

「錆兎君と真菰ちゃんの為に‼︎私の温泉の為に‼︎ゆっくりと過ごす為に‼︎」

 

とほぼ自分の願望を曝け出しながら手鬼に突っ込む芽衣、そんな芽衣に手鬼は

 

「来た来た!稀血が喰われに自ら突っ込んで来た!」

 

ニヤリと笑いながら手鬼は芽衣を捕まえようと無数の腕を伸ばすと

 

「芽衣を触っていいのは私だけ‼︎汚い手で芽衣に触らないで‼︎」

 

そう言いながら玉藻は白面金毛九尾の狐の尾を伸ばし手鬼の腕を弾き飛ばすと

 

「いや玉藻にも触って欲しくないんだけど⁈」

 

「煩悩まみれだな」

 

「玉藻ちゃん気持ち悪いよ」

 

駆け抜けながら3人は辛辣な反応を玉藻に見せると

 

「芽衣ちゃん!錆兎!私から行くね」

 

真菰は2人に声をかけて芽衣の肉体の主導権を切り替えると

 

水の呼吸 参の型 流流舞い

 

素早いステップを刻みながら手鬼を斬り刻んでいく真菰

 

「ちょこまかと!あの時のガキみたいに鬱陶しい奴だ」

 

まさか真菰本人が戦っているとは思わない手鬼はかつての真菰を思い出すが

 

「真菰交代だ!」

 

そう錆兎が言うと今度は錆兎が主導権を握り

 

水の呼吸 捌の型 滝壺

 

宙高く飛び上がった錆兎の渾身の一撃が手鬼の腕を纏めて斬り落とすと

 

「炭治郎‼︎行け‼︎」

 

錆兎は炭治郎にそう叫び炭治郎は

 

「うぉぉおぉぉ‼︎」

 

声を張り上げながら手鬼に突っ込む炭治郎

 

「どのみちアイツに俺の首は斬れない、斬り損ねた所を叩き潰してやるあの時のアイツのように」

 

手鬼はそう言いながらかつての錆兎を思い浮かべほくそ笑むと

 

「芽衣!最後はお前が決めろ!炭治郎と共に!」

 

「芽衣ちゃん頑張って!」

 

と2人に任された芽衣は

 

「嘘でしょ⁈」

 

まさかの出来事!そんな連携プレーいらないと内心思いつつもこの状況で無理ですとは言えず芽衣は

 

「この豚ヤロー‼︎」

 

手鬼に逆ギレしていた

 

「芽衣大丈夫だよ、俺がついてる」

 

そう言いながら芽衣をフォローする炭治郎、あらやだカッコいいとか内心思った芽衣は

 

「よーし‼︎我流麻倉式 何かの呼吸 とりあえず何かしらの型 振り下ろし!」

 

とりあえず見様見真似で呼吸を使った芽衣、しかしただの深呼吸、型でも何でもない素人丸出しのただの素振りを手鬼に当てると

 

「痛い〜〜‼︎」

 

当然手鬼の体など斬れる筈もなく岩にぶつけたような衝撃が芽衣を襲い痛みにのたまう芽衣、そんな芽衣に炭治郎・錆兎・真菰は

 

「「「ええぇぇぇぇぇ⁈」」」

 

その日一番の驚きを見せる3人、しかし炭治郎はそんなポンコツなどほったらかし手鬼に突っ込んで

 

水の呼吸 壱の型 水面斬り

 

芽衣の奇妙な行動に呆然としていた手鬼は炭治郎の振るう刃にあっさりと首を斬り落とされるのだった

 

今まで戦って来た最終選別者の中で歴代最弱、首を断ち斬る事はおろか切り傷すらつけれないポンコツ、刀を叩きつけただけのど素人、自滅の刃で歴代最高の反応をする珍妙な芽衣に呆気にとられた手鬼、もし芽衣がもう少し強ければ、もし芽衣が腕を斬り落とす程度の実力があれば

手鬼はここまで呆然としなかっただろう

 

だが芽衣は弱かった!圧倒的に弱かった!そもそも芽衣と遭遇しなければ手鬼はこんな恥ずかしい死に方をしなかっただろう!だが手鬼は芽衣と遭遇した!玉藻に巻き込まれた芽衣と遭遇した!芽衣の不運は手鬼の不運、手鬼はそんな情けない死に方に悔し涙を流し消えていくのだった

 

 

「・・・・わ、私が隙を作って炭治郎君が斬る!・・・作戦通りだね」

 

そう強がる芽衣、結果的にはそうなのだがただの偶然!寧ろ自滅した芽衣にとって不幸中の幸い!だが芽衣は認めない!あくまでも作戦!醜態を誤魔化す芽衣にその場にいた一同は

 

「絶対嘘だーー‼︎」

 

声を揃えてそう叫ぶのだった

 

 

「芽衣ありがとう!かなり微妙な結末だがアイツを討つ事が出来た」

 

「うん、芽衣ちゃんありがとう!多分炭治郎だけで良かった気がするけどありがとう」

 

そう芽衣に礼を告げた錆兎と真菰、芽衣の醜態に炭治郎だけで良かったんじゃないかと思う2人だが芽衣が2人に戦うチャンスをくれた、それだけは感謝していると

 

「稀血〜‼︎稀血だーー‼︎」

 

「黙れ!稀血は俺のモンだ‼︎」

 

「あ?俺が喰うんだよ!」

 

「稀血は拙者が頂くでござるよ!デュフ」

 

「稀血は儂がペロペロするんじゃ!誰にもやらんぞい!」

 

「芽衣は私がペロペロするの!誰にも渡さないよ」

 

「稀血は私が貰っていくわ、貴方達にはよこさないわ」

 

芽衣の稀血に惹かれた鬼達がぞろぞろと集まり芽衣達の周りにはもう沢山の鬼達が並んでいた

 

皆大好き稀血少女芽衣、この鬼達は芽衣のファンなんだろう芽衣を血走った目で見て涎を垂れ流し熱烈なラブコールを芽衣に投げかけていた

 

一匹何かが混じってはいるが

 

「こんなに鬼が⁈芽衣!玉藻!」

 

「これ全部芽衣の集い?モテモテだね芽衣」

 

「いや・・不思議生物にモテても嬉しくないというか」

 

尋常じゃない鬼の数に炭治郎は怯みつつも立ち向かう決意する中玉藻と芽衣はあまり意に関していなかった

 

「芽衣!この数を切り抜けるのは骨が折れるぞ!俺と真菰をもう一度合体させてくれ」

 

「せっかくアイツに勝ったのに生き残れなかったら同じだよ!芽衣ちゃんも炭治郎も死なせたくない」

 

「真菰ちゃん、私は?」

 

「玉藻ちゃんは狐さんいるし、まだアレ使ってないでしょ?」

 

錆兎と真菰は芽衣を死なせたくないので芽衣ともう一度憑依合体をするよう提案し玉藻がまだ力を隠している事を指摘すると

 

「この場は私達が引き受けよう」

 

「このような雑魚幾ら群れようがとるに足らん」

 

そう言いながら芽衣達の前に出てくる縁壱と巌勝、暇を持て余した2人はストレス発散のチャンスはここしかないと即座に行動、この場は譲らないと強い眼差しで一同を見ると

 

「芽衣の持ち霊の実力見たいし任せるよ」

 

「錆兎!あの2人強いよ!私達なんかよりずっと」

 

「ああ!俺達と天と地程の差がある!」

 

玉藻・真菰・錆兎の3人はそう言うと2人にこの場を任せると

 

「「芽衣!」」

 

「うん!縁壱さん、巌勝さん2人同時憑依合体するよ」

 

芽衣はそう言うと魂魄形態になった縁壱と巌勝を同時に憑依、主導権が縁壱に移ると

 

「赫灼の少年!お前に見せたいものがある」

 

と縁壱は炭治郎に告げ鬼達に向かい歩き出す

 

「芽衣の匂いが変わった・・より暖かくまるで日の光のような」

 

炭治郎は縁壱が憑依した芽衣の匂いが変わった事を言いながら縁壱を見ていると

 

一閃!縁壱の振るう刀、縁壱の流れるような動作、一切の隙のない構え

全てが噛み合い美しい神楽を舞っているかのような錯覚を覚える炭治郎

 

日の呼吸を使い型を次々に繋げていく縁壱、芽衣を襲いに迫りくる鬼達を屠る姿に炭治郎は戦う事を忘れ縁壱に魅入っていた

 

縁壱には生前炭吉という知り合いがいた、その住吉との別れ際に縁壱は自分の耳に付けた耳飾りを託し日の呼吸を見せていた

 

その耳飾りと同じ柄の耳飾りを付けた少年“竈門炭治郎“住吉と同じ竈門性、縁壱は炭治郎が炭吉の子孫ではないのかと判断し炭治郎に日の呼吸と型を披露していた

 

見た目は芽衣だが戦っているのは縁壱、炭治郎はそんな芽衣を見ながら

 

「ヒノカミ神楽・・父さんが舞っていたあの神楽と同じ・・」

 

炭治郎は自分の父が生前、舞っていた竈門家に伝わる神楽と芽衣の舞うような戦い方が同じだと気付きそう呟くと

 

「芽衣!芽衣はヒノカミ神楽を知っているのか⁈」

 

そう言いながら炭治郎も戦いに参加し芽衣と共に鬼を斬っていく

 

「ヒノカミ神楽?何それ?」

 

「あ、いや、芽衣が舞っているようなその動きがヒノカミ神楽と同じで」

 

「そのヒノカミ神楽がなんなのか知らないんだけど」

 

「ヒノカミ神楽は俺の家、竈門家に伝わる神楽で毎年年初めに無病息災を祈りヒノカミ様に捧げる神楽なんだ」

 

炭治郎と芽衣はそう話ながら鬼を斬り結んでいると

 

(芽衣、この少年の言うヒノカミ神楽は私が生前少年の先祖に伝えた日の呼吸とその型だと思う、名は変わっているが代々受け継がれていたのだな、ありがとう炭吉)

 

(そうなんだ、なら後で炭治郎君と話したら?お互い話したい事、聞きたい事あるでしょ?)

 

(そうだな、芽衣済まないが頼めるか?」

 

(縁壱さん!堅い事は言わない!もっと気楽に!私達相棒でしょ?)

 

(ありがとう芽衣)

 

芽衣と縁壱は心の中でそう話すと

 

「炭治郎君、詳しい事は後で!今はこの場を何とかするよ」

 

「ああ!今は生き残る事に集中しよう」

 

そう言うと2人は迫りくる鬼達を次々に斬っていくのだった

 

 

(芽衣!縁壱!私もそろそろ)

 

巌勝がウズウズしながら2人に話しかけると

 

「あっ!次は巌勝さん!」

 

芽衣はそう言って主導権を巌勝に移し

 

「血鬼術は使えぬが問題ない!芽衣を狙う不届き者には死あるのみ」

 

そう言いながら巌勝は次々に型を繰り出し豪快に鬼を蹴散らしていくのだった

 

「芽衣の匂いと動きが変わった⁈」

 

先程の匂いとヒノカミ神楽のような美しい動作から全てを薙ぎ払うような力強い動きに炭治郎は驚くがあまりよそ見は出来ないので目の前の鬼を斬る事に集中し水の呼吸と型を繰り出していくのだった

 

 

そうしてるうちに集まっていた鬼が全滅すると

 

「稀血ーー」

 

芽衣のファン達がまた押し寄せ、芽衣の集い第二回公演が始まるのだった

 

「芽衣の持ち霊の2人やるね!よし、私も見せちゃおう修験の成果!修験の極み!」

 

縁壱と巌勝の実力に感嘆した玉藻はテンションが上がり自分もやるぞと張り切ると

 

「オーバーソウル!大天狗‼︎」

 

そう言いながら玉藻最強の持ち霊大天狗をオーバーソウル、その圧巻の巨体から豪華なパンチを鬼達に振り下ろし

 

「修験の極みを!修験の極みを!修験の極みを!」

 

そう言いながら大天狗の怒涛のラッシュが鬼達を次々と殴り飛ばしていく

 

「大天狗⁈玉藻大天狗まで使役したの⁈いや、それは凄いよ尊敬する」

 

そう芽衣に褒められた玉藻は

 

「よっしゃぁぁ‼︎芽衣に褒められたぁ‼︎」

 

玉藻、芽衣に褒められテンションMAXからの

 

「大天狗!“鎌飯縄“ ‼︎天狐!“狐火”‼︎」

 

玉藻はそう叫ぶと大天狗は無数の鎌鼬を飛ばし鬼達を斬り裂き、天狐は口から凝縮した火球を飛ばして鬼達を焼き尽くす

 

そんな玉藻無双を見た芽衣と炭治郎は

 

「芽衣・・玉藻って前から強かったけどあんなに凄かったんだな」

 

「私だってやれば出来るもん!」

 

と玉藻の無双っぷりに驚く炭治郎とちょっと悔しい芽衣、そんな芽衣は

縁壱と巌勝の憑依状態を解除すると

 

「憑依合体!縁壱in叉宗inフツノミタマの剣!オーバーソウル、スピリット・オブ・ソード‼︎」

 

そう言って芽衣は縁壱をオーバーソウルして巨大な叉宗を具現化する

媒介となった叉宗の漆黒の刀身は赫く染まっておりオーバーソウルにもそれが反映されるとスピリット・オブ・ソードの刀身も赫く染まり芽衣はファン達に渾身のパフォーマンスを披露する

 

「我流麻倉式巫術 日の呼吸 輝輝恩光」

 

そう言いながら芽衣は縁壱の型を再現、というよりオーバーソウル状態の縁壱が再現!その巨大な刀から繰り出される縁壱の型は芽衣のファン達を一気に斬り飛ばすと芽衣は

 

「はい次!巌勝さん!」

 

そう言って芽衣は縁壱から巌勝へとオーバーソウルを切り替えその禍々しいスピリット・オブ・ソードで

 

「我流麻倉式巫術 月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

 

またもや巌勝に再現してもらった型でファン達にサービスする芽衣、オーバーソウル状態の巌勝から繰り出される型は芽衣の巫術により黒死牟の血鬼術も再現されておりそのサービスはより多くのファンに行き届いていた

 

「玉藻!もう一気に決めるよ!温泉に浸かってゆっくりしたい‼︎」

 

芽衣はそう言うとスピリット・オブ・ファイアまでもオーバーソウルすると

 

「芽衣ーー‼︎何で⁈何で五大精霊がいるの⁈」

 

まさか芽衣の持ち霊に五大精霊がいるとは思わなかった玉藻は滅茶苦茶驚くと芽衣は

 

「葉王から借りた」

 

そうあっけらかんと言う芽衣に

 

「・・・芽衣ってそうゆうとこ無茶苦茶だよね」

 

シャーマンとしてのスペックが無茶苦茶な芽衣にそう言うと玉藻は

 

「とりあえず・・・私も芽衣と温泉‼︎あ、ヤバい鼻血出そう!」

 

と芽衣と一緒に入る温泉に興奮、もとい温泉に入る芽衣に興奮し鼻血を噴き出しそうになる玉藻、そんな玉藻に芽衣は

 

「いや・・玉藻とは一緒に入りたくない・・一人でどうぞ」

 

と辛辣な芽衣、玉藻に身の危険を感じた芽衣は玉藻にそう言うと

 

「芽衣!何も!ナニもしないから!」

 

と必死に懇願する玉藻に芽衣は

 

「なんか言葉が怪しかったんですけど⁈」

 

玉藻の発言に妙な含みを感じた芽衣、思わずそう突っ込むと

 

「温泉が大好きな芽衣の安らぎを邪魔なんてしないよ‼︎芽衣が嫌がる事なんて私したくないよ」

 

と悲しげに呟く玉藻、そんな玉藻に芽衣は

 

「玉藻、とりあえずこの場をなんとかしよ?温泉も一緒に入ってあげるから」

 

と玉藻を慰める芽衣、なんだかんだ昔からの親友を蔑ろに出来ない芽衣はそう言ってスピリット・オブ・ファイアでファン達に熱いサービスを開始する

 

その熱いサービスにファン達は熱狂‼︎スピリット・オブ・ファイアの発した炎により一瞬で骨の髄まで残さず焼き尽くされると芽衣はスピリット・オブ・ファイアと共にスピリット・オブ・ソードでその場を殲滅

玉藻もオーバーソウルを駆使して芽衣と共闘して暴れ回る

 

芽衣と一緒に温泉に入る、嬉しさで発狂気味な玉藻はその場だけじゃなく山全体に蔓延る鬼達を蹂躙、スピリット・オブ・ファイアも大天狗達に負けじと鬼達を焼き尽くしながらその魂を捕食する

 

最終選別初日の夜、この日規格外なポンコツとレズの2人によって藤襲山の鬼達が全滅!最終日までの間参加者達は特にやる事もなく暇な時間を過ごしていた

 

芽衣達は最終選別に参加しているつもりはないので帰るつもりだったが炭治郎と共闘、仲良くなった為最後まで炭治郎に付き合ってあげると友達想いの芽衣は決め結局最終日まで藤襲山に残っていた

 

そんな芽衣達の過ごし方は〜

 

「ふぅ〜藤の花に囲まれての温泉は極楽極楽〜♪」

 

「はぁはぁ!芽衣の御神体を眺めての温泉は眼福眼福〜♪」

 

「俺も温泉に入りたい!でも我慢だ!我慢我慢我慢我慢‼︎」

 

オーバーソウル達を駆使して簡易式の露天風呂を作った芽衣達はこうしてのんびりとした時間を過ごしていた

 

 

そして迎えた最終日の朝、芽衣達は最初の広間に戻ると参加者全員が既に集まっており芽衣達を最後に最終選別は幕を閉じる

 

その年の最終選別は奇跡的に全員生存、参加者曰く赤い巨人が鬼を焼き尽くしたとか巨大な天狗が鬼を消し飛ばしたとか九尾の狐が鬼を焼き払ったとか噂され後にこの最終選別は鬼殺隊の中で伝説となるのだがそれは別の話

 

そんな伝説を生み出した張本人、芽衣と玉藻は

 

「あれ?もしかして私達も鬼殺隊に入る感じ?」

 

「え?そうなの?気にしてなかったよ」

 

この2人何も考えていなかった

 

 

 




最終選別を突破した芽衣達、グーたら生活はどうなる?
次回「仮面の集い!変態仮面と天狗のジジイ』


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第7話 仮面の集い!変態仮面と天狗のジジイ

芽衣の持ち霊


継国縁壱 原作最強の剣士 炭治郎に日の呼吸を見せ薄い影に光が差してきた芽衣関係者での常識人 

継国巌勝 縁壱のお兄ちゃん!月の呼吸を乱発して藤襲山の森をはげ散らかしたお茶目さん 

スピリット・オブ・ファイア 火を司る五大精霊 過去の出来事で大天狗に対抗心を宿しており最終選別では暴れ回った芋焼き係、川の水を汲み湯を沸かした事で芽衣から温泉係も任命された



麻倉芽衣 ゆっくり生活が大好きなポンコツ 自分の貞操に関して異常な程反応し盛大な勘違いをするポンコツ シャーマン能力だけは規格外

玉村玉藻 芽衣の親友 芽衣大好きっ娘 煩悩修験者 普段はごく普通の少女だが芽衣に関しては豹変する変態 

竈門炭治郎 原作主人公 厳しい修行の末最終選別に参加したのだが
芽衣達が暴れ回り暇な日々を過ごしていた 特技は匂いを嗅ぎ分ける事と頭突き 某トラブル漫画のようなラキスケ要員ではない



芽衣達が集合場所へと歩いていると他の参加者達からの視線を感じ何だろう?と顔を向けると気まずそうな者達や羨望の眼差しを向ける者達等様々な表情が見え芽衣は

 

「はっ!私もしかして視姦されてる?頭の中であんな事やこんな事を妄想してるんだ!」

 

と被害妄想全開の芽衣は叫ぶと周りの参加達は

 

「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

参加者達の気持ちが見事に一つとなり声を揃えて芽衣にツッコミを入れる

 

「私は視姦より直接!・・・はぁはぁ」

 

その流れに便乗して発情した変態が芽衣にお触りしようと手をニギニギしながら芽衣に近付くと

 

「辞めるんだ玉藻!そんな事したら玉藻は芽衣に嫌われるぞ?」

 

と至極正論を言いながら玉藻を食い止める炭治郎、そんな炭治郎に玉藻は

 

「ヘェ〜炭治郎君ってアレだよね?言ってる事とやってる事が逆というか・・ワザとだよね?」

 

と玉藻は背後にいる炭治郎をジト目で睨みつけると炭治郎は「は?」と

キョトンとした顔で玉藻を凝視していると何か違和感に気付く

 

「・・・この妙に柔らかい感触は・・!わぁぁぁ‼︎玉藻ゴメン!ワザとじゃないんだ!」

 

と謝り出す炭治郎、玉藻を食い止めた炭治郎はその両手でガッツリと玉藻の慎ましい胸を掴んでおり謝っているのだが何故か炭治郎はその両手を胸から離すことはなかった

 

「うわぁぁぁ炭治郎君って最低だね、まさか公衆の面前で・・はっ!まさか衆姦行為がお好みで?うん、いいんだよ?炭治郎君の性癖だもん!

否定はしないけど私の前でヤッてほしくないというか・・・その」

 

芽衣は背後で騒ぐ炭治郎達に目を向けるとまさかの衆姦プレイ!芽衣はドン引きしつつも炭治郎の性癖だからと傷付けないようにやんわりと注意すると

 

「芽衣!違うんだ!ワザとじゃないんだ!芽衣の胸を触った時と同じようにワザとじゃないんだ‼︎」

 

と必死に弁解する炭治郎、未だに玉藻の胸を触ったままそう言う炭治郎、芽衣の胸を触った事など言わなくてもいいのに蒸し返す炭治郎、

真面目なのか天然なのか純粋なのか本人の思惑とは裏腹に人を煽る炭治郎、公衆の面前で恥ずかしい思いをした芽衣と衆姦プレイ中の玉藻は炭治郎に怒りの矛先を向け

 

「全集中水の呼吸弍の型水車背負い投げ」

 

「我流麻倉式何かの呼吸とりあえず怒りの型見様見真似マキヲさん直伝須磨うっさい!頬叩き」

 

そう言いながら玉藻は水車の要領で炭治郎を投げ飛ばすと芽衣が全く意味のない呼吸を使い炭治郎の頬にかつて見た豪快に須磨をビンタするマキヲの必殺技を模倣しバチーンと響き渡る音と共に炭治郎の頬に綺麗な紅葉マークの跡がつく

 

そんな痴話喧嘩を目撃していた参加者の男性一同は血の涙を流し炭治郎を睨んでいたのは別の話

 

そんなやり取りの後、芽衣達の痴話喧嘩のせいで最終選別終了の言葉をいつ言おうかとこっそり様子を窺っていた輝利哉達がヒョコッと出てきて芽衣達を「全くこの人達は」と言いたげな目で睨みを利かせた後参加者達に向かって最終選別終了の言葉をかけるのだった

 

紆余曲折ありながらも鬼殺隊入隊のイロハを話していく輝利哉達、芽衣はまだ小さいのに立派にお仕事をしてて偉いなぁとか、まあ私はそれでもゆっくり過ごしますけどねとかあくまでも他人事のように呑気に構えていたが

 

「まずは皆さんに鴉をつけます」

 

そう輝利哉が言うとどこから飛んできたのか、鴉の群れが一斉に芽衣を含む参加者達に飛び乗り芽衣は

 

「わわ⁈不思議生物・・じゃなかった、喋る鴉が何で私に⁈」

 

思わず驚き芽衣はそう言うと

 

「最終選別を乗り越え鬼殺隊に入隊する方には鎹鴉を付け指令の伝達や報告を担ってもらいます」

 

そう輝利哉が芽衣に説明すると

 

「私鬼殺隊には入らないよ?」

 

そうキッパリと拒否する芽衣、私はゆっくり過ごしたいステイホーム主義でありアグレッシブに不思議生物を探すオカルトハンターではありません!まるでそう言ってるかのような芽衣の表情に玉藻、炭治郎を除く参加者一同は「じゃあ何で最終選別に参加してたんだ?」と言いたげな表情で芽衣を見ていたが芽衣は観光目的で来たのであり決して鬼殺隊に入隊するつもりで来たわけではないので当たり前なのだが、そんな事情など参加者達は知る由もないのでそう思うのは仕方ない事だった

 

「芽衣さんならそう言うと思ってました、そもそも芽衣さんが最終選別に参加するとは思ってませんでしたから!お館様に芽衣さんが参加したと報告したら面白そうだからと放置されてましたからね!心配してたんですよ‼︎」

 

と先程までの事務的な口調から子供らしい口調で芽衣が心配だったと話す輝利哉

 

「焼き芋の巨人がいるから大丈夫だって言ったけど、輝利哉ずっと心配してた」

 

そう言うかなたに芽衣は

 

「心配かけてゴメンね、でも大丈夫!ほら!私はこの通り」

 

そう言いながら芽衣はサムズアップして元気だよとアピールするが

 

「かなたは分かってない!心配してたのは芽衣さんじゃなく、芽衣さんが暴れ回って山が滅茶苦茶になる事だったんだよ!初日で鬼が全滅って何ですか⁈残りの6日間は観光ですか!」

 

そう声を荒げる輝利哉、芽衣は最終選別の日々を思い返し

 

「露天風呂作ってゆっくりしてたよ」

 

それはもうホッコリとした顔でそう輝利哉に話す芽衣、そんな会話についていけない参加者達は

 

「焼き芋の巨人⁈巨人といえば赤い巨人を見たけど焼き芋って」

 

「あ〜やっぱり鬼って初日で全滅してたんだ、いや何にも起きないからただ山で野宿してただけだったな!いや良いんだけどね」

 

「はぁぁぁぁぁぁ⁈鬼って初日で全滅してたんなら早く言えよぉおぉぉぉぉぉ‼︎それにあの狐面の奴!あんな可愛い子達と7日間過ごして露天風呂ぉぉぉぉ‼︎さっきなんかおっぱい触ってただろぉぉぉぉぉぉ‼︎7日間ずっと死ぬ思いでいたのにあいつは可愛い子に挟まれて・・・今すぐ俺に謝れぇぇぇ!そして切腹しろぉぉぉ!鬼殺隊舐めんじゃねぇぇ!」

 

「露天風呂・・・入りたかった」

 

そんな感想を抱く参加者達、割と大半が炭治郎への嫉妬で占められておりそんな嫉妬の感情を匂いで嗅ぎ取った炭治郎は

 

「何で皆俺に嫉妬してるんだろう?」

 

嫉妬される理由がわからない炭治郎は純粋な疑問をぶつけるが、それが嫉妬の炎をさらに燃え上がらせる事になるとは知る由もなく、リア充爆発しろなんて可愛いくらいの怨念が炭治郎へと突き刺さるのだった

 

そんな炭治郎とは関係なく呑気な芽衣と玉藻の2人に輝利哉は

 

「そもそも上弦の『輝利哉!』壱ったい‼︎」

 

輝利哉は芽衣が上弦の壱と戦い仲間にしてる時点でその実力は最終選別程度じゃ何の心配もいらないと言おうとしたのだが、それはこの場で言うのは失言であり芽衣が無闇矢鱈に注目の的にされるのを防ぐ為にかなたは全力で輝利哉の尻を蹴り飛ばし輝利哉は痛む尻を摩りながら

 

「芽衣さん!すいませんでした!」

 

「輝利哉がすみませんでした」

 

そう謝る輝利哉と丁寧に頭を下げて謝るかなた、芽衣は産屋敷家の客人でもありお館様でもある父を始め産屋敷家一同の友人でもある為芽衣に頭を下げるのだが、それはかなたの配慮とは裏腹に芽衣が注目の的になる行為だった

 

参加者達の中には案内人が鬼殺隊当主の一族である事を知っている者もいてその一族が頭を下げて謝る、では芽衣という少女は一体何者なんだ?とそのような疑問は当然出てくる

 

芽衣を擁する麻倉家は古来より陰陽術を用いこの日本國の重鎮はおろか天皇一族にも繋がりを持つ程の権力のある一族なのだが、それが表社会に公表されてる訳でもなく一般人には知らない事であり、参加者達は芽衣が日本國の上層部の娘だとか皇族に連なる家系の娘だとか、ありもしない妄想を掻き立てていく

 

そんな参加者達の視線に気付かない芽衣は

 

「とりあえず私は鬼殺隊には入らないよ、ゆっくりと過ごしたいし」

 

そう言いながら肩に乗る鴉を撫でる芽衣、輝利哉は芽衣が鬼殺隊に入隊する意志がない事など分かっているが、万が一の為にと用意していた鞄を芽衣に手渡す

 

「ん〜?これ何?」

 

鞄を渡された芽衣は何が入ってるんだろう?と鞄を見渡しながら輝利哉にそう言うと

 

「芽衣さん開けてみてください」

 

そう言って鞄を開けるよう促す輝利哉、芽衣は言われた通り鞄を開けると

 

「・・・・・なにこれ」

 

鞄の中身を見た芽衣はおもわず絶句してしまい、ようやく出てきた感想はあまりにも短かった

 

芽衣が見た鞄の中身、それは鬼殺隊なら誰もが着るであろう黒の隊服、

しかも芽衣に合わせた特注の隊服一式が詰まっており芽衣は

 

「うわぁぁ破廉恥な衣装だねぇ・・え?まさか私に着ろって意味じゃないよね?」

 

隊服一式を鞄から出してその場で広げる芽衣、隊服の下に着るであろう白地のシャツは胸元が見えるようワザとボタンをつけておらず、詰襟の隊服もまた胸元が見えるよう開放的なデザインとなっており、下は一般的には袴と脚絆の組み合わせなのだが隊服の製作者の意向で膝上の短いスカート仕様、更には隊服の色に合わせた膝上まで伸びる黒地の足袋と黒色のブーツ、ベルトまでも黒という隊服一式に芽衣はジト目で輝利哉を睨みながらそう言うと

 

「・・・いや・・そんな隊服になってたとは・・・」

 

輝利哉にとってまさかの出来事、そんな破廉恥なデザインになってたとは知らずしどろもどろになりながらなんとか弁明しようとするが

 

「芽衣さんが着たら凄く可愛いです」

 

ここでかなたの助け舟、正直な所かなたもそのデザインはどうかと思っていたが稀血である芽衣は鬼に狙われやすい、芽衣が鬼殺隊に入る入らない関係なく隊服を着る事で少しでも芽衣の身の安全を確保したいかなたはそう言って芽衣を誑かす

 

「その通り‼︎芽衣が着たら絶対似合う!ただでさえ可愛い芽衣がこれを着たらその可愛さはとどまる事を知らないよ‼︎」

 

かなたの言葉にいち早く便乗した玉藻、そう力説しながら芽衣をべた褒めする玉藻、本心は芽衣の胸元や御御足を堪能したいという下心からくる発言だったが芽衣が可愛いと思ってるのも本心であり決して嘘を吐いてる訳ではなかった

 

だがここで終わる玉藻ではなかった!普段温泉に入りたいからという理由で常に浴衣スタイルを貫いてきた芽衣を煽てた所で芽衣が着るとは思えない、芽衣自身も自分の容姿は悪くないと自覚してるだろうが着飾って容姿を磨くより大好きな温泉に入りゆっくりと過ごす事が優先の芽衣にはあまり意味をなさないであろうと判断した玉藻は

 

「ねぇ〜〜!皆もそう思うよねー‼︎芽衣がこの服着たら凄く可愛いし凄く似合うよねーーー‼︎」

 

この場にいる参加者達に向け大声でそう叫び玉藻、この一連のやり取りで注目の的になっていた芽衣に全員の視線が突き刺さり

 

「あの隊服をあの娘が・・非常に良いです‼︎」

 

「全身黒ずくめの隊服から覗く白地のシャツと際どい肌・・最高です」

 

「おっぱいと太もも!おっぱいと太もも‼︎」

 

「どうでもいいけど・・・表が出たから良いと思う」

 

ごく一部を除きこの場にいる全員があらぬ妄想を掻き立て、期待を込めた眼差しを芽衣に向ける

 

「えぇ〜〜と・・・これは間違いなく視姦してるよね?」

 

そう言いながら全員から向けられる期待の眼差しに困惑する芽衣、そんな芽衣に救いの手が差し伸べられる

 

「芽衣が嫌だったら着る必要はないよ、それこそ無理強いは良くない!

でも芽衣は可愛いから何を着ても似合うと思う、作ってくれた人も芽衣の事を考えて作ったのかもしれないね」

 

そう言いながらハニカミスマイルを見せる爽やか炭治郎、確かに炭治郎の言う通り芽衣の隊服を作った製作者は芽衣の事を考えて作った、作ったのだが作った人がヤバかった、通称ゲス眼鏡!前田という者が隊士の隊服を手がけるのだが自分の欲望を隊服にアレンジして主に女性隊士からは不評の声も高い隊服を作る前田、産まれる時代が遥か先の未来ならば受け入れられるデザインなのかもしれないが大正の世ではあまりにも先鋭的、時代がファッションに追いついていないが為受け入れてもらえない悲しきデザイナー前田、図らずもそんな前田を擁護する形になった炭治郎、芽衣は前田のゲスな思惑など知らず炭治郎の言葉と全員の期待の眼差しに根負けし遂に

 

「わかったよ・・着るから・・着るからあまり見ないで」

 

諦めたようにそう呟く芽衣、その言葉に炭治郎、輝利哉、表情の乏しい女の子の参加者以外全員がガッツポーズ、何故かかなたまでもが参加者と同じようにガッツポーズを決めており輝利哉は

 

「何故最終選別を突破した時以上に喜んでいるんだろう?」

 

と目の前の光景を不思議そうに眺めそう呟いていた

 

だが芽衣の発した一言がこの空気を一変させてしまう

 

「でも今は着ないよ?」

 

そうあっけらかんと言う芽衣、当たり前だがこの場で着替えるなんて事はあり得ない、常識で考えれば芽衣の発言は至極正論なのだが何故かこの場で着替えるような空気になっていた一同、盛り上がっていたその空気は芽衣のその発言で一気にぶち壊され、かなたを覗く全員がこの世の終わりのような絶望した表情になってしまう

 

「ああぁぁぁぁ芽衣の御御足がぁぁぁぁ‼︎絶対領域がぁぁぁ‼︎」

 

「いぃぃやぁぁぁぁぁ‼︎死ぬ前に女の子の色んな所見れると思ったのにぃぃぃぃぃ‼︎」

 

その中でも一際落ち込み跪く玉藻と駄々を捏ねたように転げ回る金髪の少年、芽衣は玉藻を見てちょっと可哀想と思う反面、金髪の少年を見て

 

「君!これから鬼殺隊になるんでしょ?君が頑張って不思議生物を倒していけばまた会えるから!」

 

転げ回る金髪の少年にそう告げる芽衣、あまりのオーバーリアクションに罪悪感を感じた芽衣は金髪の少年を励まそうとそう言ったのだが

 

「え?次会えた時は結婚⁈俺頑張るよ‼︎」

 

どう解釈したらそうなるのか、金髪の少年は1人激しく暴走し芽衣は弁明の余地もない程呆気にとられていた

 

「最後に‼︎皆様の刀の材料となる玉鋼を選んでいただきます!」

 

最終選別終了から入隊における手続き諸々がグタグタになってもう面倒くさくなっていた輝利哉は強引に話を引き戻そうとして参加者達に向け大声でそう叫び、参加者一同は若干落ち込みつつも己の刀となる玉鋼を吟味していると

 

「おい‼︎今すぐ寄越せ!鬼殺隊の刀!色変わりの刀‼︎」

 

そう怒鳴り声をあげる人相の悪いモヒカンヘッドの少年、某世紀末漫画のヒャッハーなら良いそうな台詞を吐きながら、かなたへと迫るその少年は

 

「あるんだろ?刀が!早く寄越せ!」

 

そう怒鳴るが、見た目とは裏腹に暴力を振るう事はなかった

 

先程まで意気投合していた間柄、見た目から想像つかない豪快な蹴り

それを踏まえて暴力で訴えるのは良心が痛むのか目で威圧するだけに留まり、芽衣はかなたが困っているだろうとその少年に話しかける

 

「ねぇ?色変わりの刀って何?鬼殺隊の人が持ってる刀って色が変わるの?不思議だね」

 

日輪刀について何も知らない芽衣は、色が変わるという事に興味を持ちそう少年に問いかけると

 

「・・・んだよ・・テメェ・・・近ぇんだよ」

 

見た目に反して恥ずかしがり屋なのか女性に免疫がないのか先程までの勢いをなくし小声でそう呟きながら芽衣から一歩遠退くと

 

「ねぇってば!色が変わるってどうゆう事!教えてよ!」

 

そう言いながら少年に更に近付き教えを乞う芽衣、刀の色が変わるという不思議現象が気になる芽衣の目は好奇心溢れる子供の目をしており少年は赤面しながらタジタジになり芽衣とまともに目を合わせられないでいた

 

「私の使ってる刀はね、真っ黒なんだ!この黒が別の色に変わるんだよね?」

 

そう言いながら芽衣は又宗を引き抜き少年に見せると

 

「ちげぇよ、そういう意味じゃねぇ最初は普通の刀と同じ鋼の色だ!最初に握った奴の特性に合わせてその色が変わるんだよ!色が変わるのは最初の一回だけだ」

 

芽衣の引き抜いた又宗を見ながら少年はそう説明すると芽衣は

 

「そっか、じゃあ又宗はずっと黒いままなんだ、教えてくれてありがとう」

 

芽衣は又宗は見つめそう言うと少年に向かって笑顔でありがとうとお礼を言うと

 

「・・・・・・・・ひゃい」

 

宇髄ファミリーが太鼓判を押す破壊力抜群の芽衣の笑顔に当てられ茹で蛸のように顔を真っ赤に染めた少年は言葉にならない声をあげ固まってしまう

 

そんな少年を尻目に芽衣は疑問が解け晴れやかな表情で又宗を見つめていると

 

「芽衣さんありがとう」

 

そう言いながら子供らしいにこやかな笑顔でお礼を言うかなた、産屋敷の代表としてこの場では感情を見せず淡々と仕事をこなそうとしていたかなただったが、なんだかんだグダグダになった事で取り繕う必要もなくなり芽衣に笑顔を向けると芽衣は

 

「友達だもん、当たり前だよ」

 

そう言いながら芽衣はかなたの頭を撫でながら笑顔を向け、かなたはその笑顔に図らずもドキッとしてしまう

 

「あの!芽衣さん!・・隊服ですがそれは芽衣さんの安全を考えて支給したのであって私達は芽衣さんが鬼殺隊に入る事を望んでいる訳ではありません!誤解させてしまい申し訳ありません」

 

かなたの隣にいた輝利哉は隊服の件で誤解を与えたままだと思い芽衣に頭を下げて謝ると芽衣は

 

「さっきから謝ってばかりだよ?私は気にしてないから顔を上げて、ほら!この隊服の後ろ見てよ!」

 

そう言って輝利哉を励ますと隊服の背を輝利哉達に見せてドヤ顔をしだす芽衣、鬼殺隊が着る詰襟の隊服の背には鬼を滅すると言う意味を込めて滅という字が書いてあるのだが芽衣の為に作られた隊服の背にはふんばり温泉♨️という最早芽衣のシンボルマークともいえる字が書かれていて芽衣はたったそれだけで破廉恥な隊服にも関わらず既にお気に入りの隊服になっていた

 

そんなグダグダなやり取りがありつつも参加者達はそろぞれの玉鋼を選び炭治郎も自分の玉鋼を選ぶと一同は解散し各々帰路につく事になるのだが

 

「君名前なんていうの?」

 

「良かったらお茶して帰らないか?」

 

参加者の数人からナンパされる芽衣、困惑しつつも断わろうとする芽衣にまたしても救いの手が差し伸べられる

 

「芽衣!芽衣を鱗滝さんに紹介したいから一緒に帰ろう」

 

そう言いながら芽衣の手を引き歩き出す炭治郎、炭治郎としては芽衣の窮地を助ける口実と最終選別で世話になったお礼も兼ねて鱗滝に紹介するつもりだったのだが、他の参加者達はコイツ家に連れ込むつもりか⁈

あの娘がアイツの手籠にされてしまう!などプレイボーイ炭治郎に嫉妬の炎を燃やし血の涙を流していた

 

そして唐突に手を引かれ炭治郎についていく芽衣は

 

「はっ!これが噂のお持ち帰り⁈」

 

どんな噂か知らないが芽衣はそんな事を言いつつも、嫌がる素振りをみせず炭治郎と共に藤襲山を後にした

 

最終選別を共に過ごし竈門炭治郎という人間がどんな人間なのか見てきた芽衣、元々人間があまり好きではない芽衣は他人にある程度の信用はするがそれ以上の信用を持たず心を開かないのだが不器用な程真っ直ぐで純粋な炭治郎に知らずのうちに心を開き信頼を寄せていた芽衣、芽衣の家族である麻倉家、親友の玉藻、自らの過去を知りながらもありのままの芽衣を受け入れてくれた産屋敷家や天元夫妻、そして太陽のように暖かい炭治郎、過去の出来事で凍り付いた芽衣の心はその熱で次第に溶け出していくのだった

 

そんな芽衣が炭治郎に放った一言

 

「私帰る所反対方向だから」

 

そう炭治郎に放つ芽衣、え?帰る時倍の距離歩かなきゃいけないの?

早く帰ってゆっくりしたいのに、マジで連れて行くの?そういうニュアンスを含めた一言に炭治郎は

 

「大丈夫!今から行けば半日で着くから」

 

半日歩く位大丈夫!大した事ないだろ?そんなニュアンスを含めた顔でそう言う炭治郎、炭治郎の中では最早芽衣を連れて行く事は確定であり芽衣を連れて行かないという選択肢は全くなかった

 

「半日・・大丈夫じゃない!何も大丈夫じゃないんだけど」

 

そう言いながら落胆する芽衣、温泉に入る為なら半日歩く位平気な芽衣、だが別に温泉に入る為にいくわけではない、なのに半日も歩くのは芽衣にとって苦行でしかないので芽衣は

 

「じゃ!鱗滝さんという人に会うのはまた今度って事で」

 

そう言いながら引き返そうとする芽衣、だがそんな芽衣の手を引きあくまでも連れて行く気満々の炭治郎、どこまでも真っ直ぐな炭治郎、一度決めたらやり通す性格の炭治郎、それは炭治郎の長所でもあるのだが芽衣にとっては災いでしかなかった

 

半ば強引に拉致に近い形で芽衣を連れて行く炭治郎、芽衣は炭治郎が自分を困らせようとか悪意を持って接していない事は理解しているし頑固な一面もある事も理解している為、あ〜これ私も一緒に行かないと延々に終わらないやと察し溜息を吐きながら渋々だが大人しく炭治郎に付いていく事にした

 

そして置いてけぼりをくらった玉藻、慌てて芽衣達を追いかけるのだが

追いかける前に

 

「え?私には誰も声をかけない感じ?」

 

そう言いながら参加者達を見渡す玉藻、声をかけられたからといって応じる気はないのだが、私も女の子だし芽衣に声をかけたんだから私にも声かけないの?と思っていたが参加者達は

 

「さてと、そろそろ帰るか」

 

「おっ!そうだな!」

 

そう言いながら玉藻から逃げるように去っていく参加者、玉藻の容姿が悪いわけではない、むしろ容姿は優れているのだがコイツは何かヤバイ

何がヤバイのか分からないし分かりたくもないがとりあえずヤバイ、そう本能的に察した参加者達は、まるで鬼と対峙したかのような変な冷や汗をかきながら逃げていくのだった

 

「まあ、私は芽衣一筋だから別にいいけどね」

 

そう言いながら少し不貞腐れる玉藻は芽衣達を追いかけようと走り出すのだった

 

「兄上」

 

「縁壱よ・・私達は完全に出遅れてしまった」

 

「俺達も帰ろう、鱗滝さんの所に」

 

「うん」

 

そう話す縁壱、巌勝、錆兎、真菰の4人、グダグダな展開の中4人は特にやる事もないので雑談をしながら暇を潰していたのだが炭治郎の漢気で芽衣が拉致され玉藻も芽衣達を追いかけたので4人は置いてけぼりをくらっていたのだった

 

時は流れ夕刻〜

 

芽衣達に合流した玉藻は拉致った炭治郎を小突きながらなんやかんやで狭霧山へと辿り着く、縁壱達も芽衣に合流し一同は天狗の面を被った炭治郎の育手、鱗滝の待つ天狗小屋へと歩き出すと

 

「はうぁ⁈・・息が・・ぐるじい」

 

そう言って必死に呼吸を繰り返す芽衣、この狭霧山は酸素濃度が薄く満足な呼吸が出来ない為、呼吸を用いて戦う鬼殺隊を育てるにはうってつけの山なのだが、この酸素濃度に慣れていない芽衣にとって地獄のような出来事だった

 

そんな芽衣は必死に呼吸を繰り返すが満足な呼吸が出来ずパフュー!パフュー‼︎と変な呼吸音を立てもがき苦しんでいると

 

「芽衣ちゃん!合体するよ」

 

芽衣はポンコツ!そう理解していた真菰はそう言いながら芽衣に憑依合体を促すと、芽衣は真菰に縋るように合体しことなきを得る

 

「これはもう慣れるしかないよね」

 

芽衣と合体した真菰はそう言いながら苦笑いし、心配していた炭治郎は

ホッと溜息を吐くと

 

「あんなに強いのに芽衣自身は貧弱なんだ」

 

そう炭治郎が言うと芽衣は

 

「貧乳じゃないし!それなりにはあるんだから!」

 

何を勘違いしたのかそんな事を言い出した芽衣は、浴衣の胸元をはだけ出し

 

「ほら!それなりにはあるんだからね!」

 

そう言いながらドヤ顔をする芽衣、そんな芽衣をよそに顔を赤くし顔を背ける炭治郎、芽衣は炭治郎を見て自分が何をしているのか気付き真っ赤な顔でワナワナと震えだすと

 

「これが炭治郎君のやり方ね!私を誘導して美味しい思いをしようと!狡猾!なんて狡猾な」

 

自らの勘違いから自爆したにも関わらずこれは炭治郎の手口だと言うポンコツな芽衣、無論今回の件は自分がやらかしたと自覚してはいるが

そうでもしないと羞恥心に押し潰され顔も合わせない芽衣、炭治郎は思思わぬ物を見てしまった驚きと気まずさで正当な反論も出来ずオロオロとしていると

 

「芽衣!誘ってるんだよね!私はいつでも良いよ!」

 

やたら興奮気味で食いつく玉藻、目は血走り飢えた獣のような玉藻に

 

「玉藻・・誘ってないから」

 

「玉藻はなんか気持ち悪い匂いがするな」

 

今さっきまで恥ずかしい思いをしていた芽衣、美味しい思いをしつつも気まずかった炭治郎、そんな2人を飲み込む程の変態を目の当たりにした芽衣と炭治郎はコイツの痴態よりはマシかもと思い、気を取り直すと天狗小屋へと再び歩き出すのだった

 

ちなみに芽衣に合体していた真菰も芽衣の自爆に巻き込まれ恥ずかしい思いをしていた

 

芽衣達が歩き出して少し経ち、一同は天狗小屋が見える場まで辿り着くと

 

ドン‼︎

 

激しい音と共に天狗小屋の戸が吹き飛び天狗小屋からヒョコョコと竹筒を加えた目々麗しい女の子が歩き出してくる

 

「禰豆子‼︎」

 

その少女を見た炭治郎はそう叫ぶと禰豆子と呼ばれた先程の少女は炭治郎を見て無言のまま走り出し、炭治郎をそっと抱きしめる

 

「お前なんでずっと寝てるんだよ〜ずっと目を覚さないかと思ったんだからな」

 

そう言いながら号泣する炭治郎は禰豆子を抱き返すと、玉藻はその感動の光景に貰い泣きして

 

「うんうん、炭治郎君禰豆子ちゃん目が覚めて良かったね、ホントに良かったね」

 

そう言いながら炭治郎のそばで泣き出す玉藻、それを見て芽衣は

 

(感動の光景みたいだけど全然ついていけない!)

 

そう率直に思う芽衣、芽衣は炭治郎と禰豆子の関係、どんな理由で鬼殺隊に入ろうと思ったのか炭治郎の内情を聞いてない上に芽衣自身も自分の過去の出来事から炭治郎の過去に踏み込むのは炭治郎に失礼ではないかと配慮して聞こうともしなかった為今の状況は仕方ないのだが

 

(玉藻は痴態の権化みたいな娘だし、炭治郎君は公衆の前でお披露目したい性癖だし、あの娘は口枷つけて調教されるのが趣味っぽい娘なのかな?この山の住人は癖が凄いや)

 

と勝手な解釈でそう考える芽衣、玉藻はともかく炭治郎と禰豆子に関しては完全な芽衣の思い違いなのだが、芽衣がその認識の違いを正すにはまだ時間が足りなかった

 

そんな芽衣が炭治郎達を眺めていると天狗小屋の裏から薪を担いだ天狗面の老人が現れ炭治郎達を見つけると動きを止め薪をその場に落としながら炭治郎達に走り出してくる

 

芽衣は天狗面の老人、炭治郎の育手である鱗滝を見て

 

(なんか凄く怪しいのが来てるんですけど⁈)

 

芽衣はそう思いながら体を硬直させ動けずにいたが

 

(芽衣ちゃん、この人は鱗滝さん!私達を育て導いてくれた師でもあり

親みたいな人なの)

 

芽衣と合体していた真菰は、初対面で天狗の面を被った人がいたら驚くよねと思い芽衣に鱗滝の事を教え怪しい人ではないと伝えると

 

(そっかぁ、あの人が鱗滝さん!天狗の面付けてるからてっきり変態仮面の同類かと思ったよぉ)

 

真菰に自分の素直な感想を言う芽衣、仮面を被った奴は皆変態!父の影響でそう思い込む芽衣は鱗滝も父と同類だと思っていたが真菰の発言でそうではないと理解すると鱗滝に対し気持ちを改めて見直すと

 

「良く無事に戻ってきた」

 

そう言いながら鱗滝は炭治郎達を纏めて抱きしめ、天狗の面で分かりにくいが涙を流していた

 

そんな涙ぐましい展開の中、

 

「やあ芽衣久しぶりだね」

 

そう言いながら天狗小屋から出てきた1人の男、鼻のない天狗を模した面を被るその男、褌以外何も身に付けていないほぼ丸裸に近いその男は

全力疾走で芽衣に突進すると

 

「芽衣!」

 

「此奴鬼ではないが人間とは思えん!そのような怪しき者!芽衣には近付けるさせん!」

 

芽衣の近くに待機していた縁壱と巌勝は芽衣に突進してくる怪しい男から芽衣を守ろうと芽衣の前に立ちはだかる

 

「うん!良いね!僕の愛娘を守ろうと即座に行動!君達は芽衣の持ち霊として合格だ」

 

ほぼ丸裸にに近い面の男は縁壱達の前で急停止すると2人を見据えながらそう言って満足そうに何度も頷くと

 

「兄上、この者は芽衣を愛娘と」

 

「うむ、見るからに怪しいが只者ではない!芽衣の父なのだろう」

 

そう話し出す縁壱と巌勝、2人はこの男が芽衣の父だと察すると

 

「芽衣の父上だとはつゆ知らず無礼な真似をして申し訳ない」

 

「芽衣を守る為とはいえ父上殿を不審者扱いしてしまいかたじけない」

 

2人は芽衣の父であるその男に頭を下げて先程の件を謝ると

 

「僕がこの娘の父だろうとなかろうとこんな怪しい格好をしてるんだ!その判断は正解だし寧ろ安心して芽衣を任せられるよ」

 

芽衣の父であるほぼ丸裸に近いその男は、自分の格好が怪しい事を自覚しておりそんな怪しい男が芽衣に近付いてくるのなら持ち霊として当然の反応、何より芽衣を守ろうとする2人の気配から生前は圧倒的な強者だったと察した芽衣の父はそんな2人なら芽衣を任せられると安心し縁壱と巌勝にそう告げると

 

「その愛娘を放っておいてよくそんな父親らしい事言えるねミッキー」

 

そう言いながら芽衣は父親を白い目で見ていると

 

「芽衣、僕がいなくて寂しかったんだね!ほら父さんの胸に飛び込んでおいで」

 

そう言いながら芽衣の父は両手を広げ芽衣を向かい入れるが

 

「いや・・・そんな変態仮面に飛びつくわけないじゃんか・・・せめて服着て面ぐらい外しなよ」

 

芽衣は父親にそう言って飛びつく事を拒否するが、それは褌以外何も身に付けていない変態仮面な父親だから拒否したわけであり面を外しちゃんと服を着ていたのなら飛びつく気でいた芽衣、素っ気ない態度をとっていた芽衣だがそれは寂しさの裏返しでもあり、放浪して普段いない父でも芽衣は父親として慕っていたのである

 

そんな折、両手を広げ芽衣を向かい入れようとしていた芽衣の父を目撃した炭治郎、明らかに怪しい!匂いは芽衣を害する匂いではないがとにかく怪しい!そう思った炭治郎は即座にその場から芽衣の元へ走り出し芽衣の父に向かって

 

「そこの怪しい人!芽衣から離れるんだ!」

 

そう言って芽衣を庇おうとする炭治郎、それに対する芽衣の父の反応は

 

「君はこの娘を庇うつもりかい?鬼の子と呼ばれるこの娘を!庇うのは構わないが君も鬼の仲間とみなし僕が殺さなくちゃいけないな」

 

芽衣の父は炭治郎にそう告げると凄まじい殺気を炭治郎に向け威圧すると炭治郎は一瞬怯みつつも踏ん張り直し

 

「例え芽衣が鬼だとしても芽衣は芽衣だ!お前が芽衣を傷付けるのなら俺はお前を絶対に許さない‼︎」

 

そう言って激昂する炭治郎、仮に芽衣が鬼だとしても芽衣は芽衣だと断言し友達を傷付けようとする目の前の男に食ってかかる炭治郎に芽衣の父は

 

「・・・炭治郎君だったね、芽衣を僕の娘を受け入れてくれてありがとう!芽衣の友達になってくれて本当にありがとう!」

 

芽衣の父はそう言いながら炭治郎に土下座をすると

 

「え⁈えぇ⁈」

 

突然の様変わりに何が起きたのか理解出来ない炭治郎、先程まで殺気を放っていたのに今は大切な人を思いやる優しい匂いを放つ目の前の男、見た目が物凄く怪しいので余計に困惑する炭治郎は困った顔で芽衣に振り向くと芽衣は泣きじゃくっており更に混乱を極める炭治郎、どうしたらいいか分からずオロオロとする炭治郎に玉藻が救いの手を差し伸べる

 

「炭治郎君、あの見るからに怪しい仮面のおじさんは芽衣のお父さんだよ、ちなみに私のお師匠」

 

玉藻は炭治郎にそう言うが、玉藻は変態仮面の紹介をしただけであり目の前の男が玉藻の師匠更には芽衣の父だと知ると炭治郎はますます混乱し思考が停止してしまう

 

そんな原因を作り出した芽衣の父、芽衣が鬼の子だと炭治郎に打ち明けた芽衣の父、実の父が娘の辛い過去を打ち明けるという非情な行動に出たのだが芽衣を思えばこその行動だった

 

炭治郎が芽衣を庇うのはそれは芽衣が人間であるから、では芽衣が鬼の子だと知れば炭治郎も掌を返し芽衣を虐げるかもしれないと判断した芽衣の父は、虐げられるのであれば芽衣と炭治郎の付き合いがまだ浅い段階の方が芽衣の傷も浅いだろうと自ら悪役となり炭治郎の反応を確かめたのだが炭治郎は違った

 

鬼だとしても芽衣は芽衣だと、ありのままの芽衣を受け入れ殺気を向けたにも関わらず芽衣を守ろうとする炭治郎に芽衣の父はこの子は他の人間とは違う、ちゃんと芽衣という人間を見ているんだと理解しそんな炭治郎が芽衣の友達になってくれた事に感謝し炭治郎に土下座をしていたのだった

 

芽衣は芽衣で最終選別でシャーマンの力を披露していた為、炭治郎も自分が普通の人間とは違うという事は理解していただろうと思ってはいたが実際に炭治郎がどう思っているのか怖くて聞けなかったので父が行動に出た時は静止しようとしたが友達である炭治郎を信じたい気持ちが勝り炭治郎を見守っていると、炭治郎は芽衣の信用に応えてくれたので嬉しくて泣きじゃくっていた

 

そんな混乱状況を見兼ねた鱗滝、この場を収めるべく立ち上がると

 

「積もる話もあるだろう、茶でも飲みながら話すといい」

 

そう言いながら鱗滝は天狗小屋に向かうと

 

「やった!やっとゆっくり出来る」

 

先程まで泣きじゃくっていた芽衣、何よりもゆっくり過ごす事が優先な芽衣はコロッと態度を変え猛ダッシュで鱗滝の後を追いかけるとそのまま天狗小屋に消えていってしまう

 

残された一同に変な空気が流れる中芽衣の父が

 

「さ、僕達も中に入ろうか」

 

そう言って芽衣の父は天狗小屋へと向かうが去り際に炭治郎に一言

 

「認めるのは友達だけだよ・・それ以上は・・いいね」

 

そう言いながら芽衣の父も天狗小屋へと消えていくのだった

 

「え⁈」

 

炭治郎はその言葉にまたもや混乱、意味が分からないと困る炭治郎だが芽衣の父は芽衣との関係は友達として、恋仲や夫婦になるような関係まで認めたわけではない、そのようなニュアンスを含めた発言だったのだがそれを炭治郎が理解出来るはずもなく立ち尽くしていると

 

「さてと、私達も入ろうよ炭治郎君」

 

そう言いながら玉藻は炭治郎を連れて天狗小屋へ向かおうとするが

 

「お師匠はね一人娘の芽衣が大事なんだ!炭治郎君が芽衣の友達である事は認めたけど炭治郎君と芽衣が結婚とか認めてないって」

 

歩きながら炭治郎に先程の内容を説明する玉藻、目指す先は違えど苦楽を共にした仲間をフォローする玉藻だったが直後、玉藻はとんでもない事を言い出す

 

「あっ!でも炭治郎君って芽衣を押し倒して胸を揉みしだいてたよね、私の胸も揉んでたし・・お師匠にバレたら炭治郎君・・・ご愁傷様」

 

そう言いながらクスクスと笑い走り出す玉藻、事実とは異なるが炭治郎が胸を揉んだ事は事実であり、そのことを知られたらと思うとゾッとする炭治郎は慌てて玉藻を追いかけるのだった

 

 

そんな炭治郎達が天狗小屋に入って目についた光景は

 

「あーーゆっくり出来るって最高だね」

 

薪をくべた囲炉裏で暖をとりながらまるで涅槃像のように寝転ぶ芽衣の姿だった

 

 




炭治郎に告げられた初の指令、芽衣のとった行動は?

次回「汚い泥水!絶対行きたいふんばり温泉」


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第8話 汚い泥水!絶対行きたいふんばり温泉

芽衣の持ち霊 

継国縁壱 原作最強の剣士 濃いキャラ達に呑まれ存在感が希薄

継国巌勝 縁壱の兄 元十二鬼月最強の上弦の壱 月の呼吸の継承者がいない事が最近の悩み

スピリット・オブ・ファイア 葉王が芽衣に貸し付けた五大精霊の一体
内心葉王より芽衣の方が良いと思っている





麻倉芽衣 一言で表すならポンコツ でもシャーマン能力だけは規格外

玉村玉藻 一言で表すなら変態 コイツも結構な規格外

竈門炭治郎 原作主人公 一言で表すなら石頭 石頭だけは規格外

竈門禰豆子 炭治郎の妹 一言で表すなら鬼 自力で無惨の呪いを外した精神力は規格外




天狗小屋に全員が集合し一同は囲炉裏を囲みながら暖をとる中、芽衣は涅槃像のような格好で鱗滝が淹れたお茶を呑みつつ煎餅をバリバリと貪って1人のんびり寛いでいた

 

その配置は鱗滝とミッキーが隣同士、その対面に炭治郎と玉藻、炭治郎達から見て左側に芽衣、その芽衣と向かい合う形で禰豆子という配置だが何故家主である鱗滝を差し置いて禰豆子が1人でいるのかというと

 

それは芽衣のせいである!涅槃像のように寝転ぶ芽衣、座布団を3枚も敷き詰め寝転ぶ芽衣、その芽衣を見て同じ真似をした禰豆子、座布団を3枚敷き詰め涅槃像のように寛ぐ禰豆子、竹筒を咥えてる為お茶や煎餅は食べられないが終始ご機嫌だった

 

(あの娘は鬼の筈・・稀血である芽衣を前に興奮しないとは・・ふむ)

 

そんな異様な光景を見ていた巌勝は鬼である禰豆子が稀血である芽衣に反応しない事を不思議に思い首を傾げ

 

「縁壱、鬼は例外なく人間を襲う筈だ!あの娘は何故芽衣を前にして何も反応しないのだ?」

 

そんな疑問を隣にいる縁壱に聞く巌勝、縁壱は巌勝の質問に対し

え?そんな事知るわけないじゃん?むしろ兄上の方が詳しい!何でも私に聞くのはどうかと思う!と内心思いつつも口には出さない縁壱は

 

「芽衣だからな」

 

そう一言だけ巌勝に返す縁壱、もう自分達の知識や常識とは違う出来事は芽衣だからという謎理論で片付ける事にした縁壱、実際には禰豆子自身に理由があるのだろうが芽衣だからと結論すれば全ての疑問が解決する、その方が楽だと考えた縁壱に巌勝もまた

 

「なるほど」

 

その思考停止とも言える発言に巌勝も納得し、禰豆子が芽衣に反応しない疑問は解決?する

 

禰豆子は自身の自我により鬼としての本能を抑え人間を家族、鬼を敵だと思う暗示で人間に害さない存在なのだがそれとは別に本来人間を喰う事で成長する鬼の特性を眠る事で代用している禰豆子、無論鬼としての本能で芽衣が極上の餌だという認識はあるが、禰豆子の自我と無意識ではあるが鬼としての本能を上回る、この世に生きる生物としての生存本能が芽衣に手を出すと危険と訴えており禰豆子は芽衣に反応しないのだが他の鬼は芽衣の稀血に反応する!

 

芽衣の稀血に反応する鬼、十二鬼月を始めとする強者の鬼達を除き大半の鬼は過酷なサバイバル生活を送るサバイバーである

 

鬼殺隊という敵に遭遇しないように立ち回り獲物を狩る彼等も必死なのだ!基本群れる事なく一人で活動する彼等、同族は獲物を横取ろうと仲間意識はなく、獲物を狩れなければ上司からパワハラを受け、獲物を狩れば敵が襲いに来る!彼等の日常は常に生存本能が危険を訴えており

芽衣に手を出すと危険とか追加されても今更でもあり寧ろ稀血を喰えば

敵に命を脅かされる心配もなく上司のパワハラも回避出来る!ならば喰うしかない‼︎

 

そんな理由があるのだが、彼等の上司は芽衣に手を出さない!獲物を狩れなくてもパワハラを受けない上司、そのパワハラを執行する上司の生存本能は芽衣に手を出すと危険!と訴えているが部下はパワハラも受けるので互いに生存本能が食い違っていたりする

 

もし上司がブラックではなくホワイトならば、パワハラをしない優しい上司なら部下は芽衣には手を出さなかっただろう、だが上司はパワハラをする!部下の不運は上司の不運!一蓮托生連帯責任!上司は自らの行いで図らずも芽衣に手を出しているのだがそれを知る事はなかった

 

 

 

 

それはさておき鬼にとっての危険人物、麻倉芽衣の現在はーー

 

「ご飯が出来るまで寝ます!」

 

初対面の鱗滝、その住処である天狗小屋に初めて上がったにもかかわらずまるで家主のような行動をとる芽衣、ゆっくりするなら寝るしかないよね?と自論を振りかざし微妙な空気の中、お構いなく眠るのだった

 

 

「・・・いや〜娘がすみません鱗滝さん」

 

そう鱗滝に謝るミッキー、謝るのは当然だが娘である芽衣に注意しないミッキー、修験の旅に出てるとはいえ娘を放任していたミッキーは親らしく芽衣に注意しようものなら芽衣から非難されるだろう、何より娘に嫌われるのが恐ろしい!それ故に芽衣を注意出来ない!ミッキーはこのまま芽衣を寝かせてあげようと見守ることしか出来なかったのだ

 

「いや・・疲れてるんだろうゆっくり寝るといい」

 

そう言って芽衣を労る鱗滝、芽衣が所持していた日輪刀や支給された隊服が詰まった鞄から芽衣も最終選別に参加し生き残った参加者だと理解を示し気遣っていた

 

とはいえ芽衣が上がり込むやいきなり寛ぎ出したのは鱗滝も面を食らっていたが、ある意味大物!麻倉葉王の再来と言われたのも頷けると解釈し容認していたが飯が出来るまで寝ると言われたのは予想外だった

 

そんな芽衣を放置して鱗滝は炭治郎に最終選別の話を振るのだが炭治郎は苦笑いをしながら芽衣をチラチラと見て最終選別の出来事を話していく、鱗滝一門に執着した手鬼や兄弟子である錆兎と真菰との共闘、芽衣の無様な醜態、玉藻や芽衣が暴れ回り初日で鬼が全滅し残りの日程をのんびり過ごしていた事等を伝えると鱗滝は

 

「話の内容が儂の常識の範疇を超えておる、何と言えば良いか・・・して気になるのだが錆兎や真菰は今も一緒にいるのだろうか?」

 

鱗滝とてシャーマンの存在は知っている、イタコや霊媒師は世間に古くから知れ渡る存在でもあるが鱗滝が知っているのはミッキーを筆頭にその弟子であり自らも手解きをした玉藻であり、ある程度の能力は把握していたがよもや鬼を初日で全滅するとは露にも思わない鱗滝、本来最終選別は七日間生き延びる事が条件であり鬼を全て倒す事など必要ないのだが最も簡単にそれをやってのけた芽衣と玉藻に最早言葉などかけようもなかった鱗滝は、話に出てきたかつての教え子錆兎と真菰が芽衣と共に戦ったという話が気になりつい口にするのだが

 

「鱗滝さーん‼︎今芽衣ちゃんと合体してるよー」

 

「真菰、俺達の声は鱗滝さんに聞こえないはずだぞ」

 

未だ芽衣と憑依合体してる真菰が元気よく叫ぶもその声は鱗滝に届かず錆兎がそれを真菰に教えると

 

「鱗滝さん、真菰ちゃんは芽衣の中に、錆兎君は芽衣の後ろに座ってるよ」

 

そう鱗滝に教える玉藻、それを聞いた鱗滝は芽衣に振り向くと

 

「錆兎!真菰!済まなかった!儂のせいでお前達は」

 

鱗滝が現役時代藤襲山に閉じ込めた手鬼、鱗滝に恨みを抱く手鬼が鱗滝一門を執拗に狙う事、最終選別に向かう大切な教え子に生きて帰って欲しいと願い渡した厄除の面が逆効果だった事、もし厄除の面を渡さなければ違う結末があったのかもしれない、そう思うと悔やんでも悔みきれない鱗滝は涙を流し錆兎、真菰に謝り出すと

 

「鱗滝さんは悪くないよ‼︎泣かないで!鱗滝さん泣かないで」

 

「俺達は鱗滝さんを誇りに思っている」

 

そんな鱗滝に必死に呼びかける真菰と錆兎、二人の姿が見えない鱗滝にその声は届かず見かねた玉藻は何とかしようとすると

 

「ゆっくり眠れないよ!真菰ちゃん!錆兎君!鱗滝さん!この際だからちゃんと話そう!言いたい事全部話してスッキリしよう!そして私もスッキリ寝たい!」

 

憑依合体していた為真菰の声がガンガン響いていた芽衣、ゆっくり寝るつもりだった芽衣は3人の状況を放置して寝ても落ち着かないのでまずは3人がスッキリして芽衣も自己満足しながらゆっくり寝たいと思いそう提案し錆兎も自身に憑依させると芽衣は鱗滝と話す時間を作り出した

 

 

 

「ところで君達、芽衣に憑依した時変な事はしてないだろうね?」

 

芽衣に憑依した錆兎を見てミッキーは縁壱、巌勝にそう尋ねる

シャーマンである以上霊を肉体に憑依させるのは分かるが霊だとしても性別は男性、自分の娘に霊とはいえ男性が憑依するのは父親として複雑な心境のミッキーだが

 

「芽衣の父上、私が憑依するのは鬼が現れた時のみ、案ずる事はない」

 

「芽衣の父上殿、我が子を想うその心に私達は応えてみせよう」

 

そう落ち着いてミッキーに答える縁壱と巌勝、芽衣に下心があって持ち霊となったわけではないので動揺する必要も焦る必要もなく堂々としている2人だが、巌勝は芽衣の持ち霊となる前、縁壱と再会した際に芽衣の尻をガッツリと触っていた!だがそれは生前の黒死牟であり精霊へと昇華した巌勝ではないと開き直っていたのであった

 

そんな2人とは対照的にマズイ!と体を硬直する炭治郎、ミッキーに見られたら何がマズイ言ってみろと言われるのは明白であり、正直に白状すると物凄く怖い事になると本能で理解した炭治郎はこの場を切り抜けようと立ち上がり未だ涅槃像のように寛ぐ禰豆子の姿勢を正そうと動き出す

 

だがその炭治郎の足は産まれたての小鹿のように震えており一歩踏み出した途端力なく倒れ込んでしまい

 

「ぴぃぃぃぃぃぃ⁈」

 

隣に座っていた玉藻へダイブする炭治郎、このパターンなら炭治郎のラッキースケベが発動し玉藻に覆い被さっていただろう、だが今回は違った!倒れ込む炭治郎が振り下ろす凶悪な頭部、鬼さえも怯ませる石頭が見事に玉藻の頭部にクリティカルヒットし玉藻は悲鳴を上げながらその意識を手放すのだった

 

 

 

慌てて玉藻を介抱する炭治郎だったがかなり焦っていてあたふたしているとこの状況に笑いを堪えていたミッキーが玉藻を担ぎ隣の寝室として使っている部屋に連れて行くと炭治郎は手早く布団を敷き詰め玉藻を安置するとミッキーは「弟子の面倒を見るのは師匠の役目」と玉藻と同じ布団に潜り込み添い寝を開始するのであった

 

 

その一方で芽衣を通して鱗滝と会話をする錆兎と真菰、今までの事、最終選別での事、鱗滝と話したい事が尽きず色んな話をし鱗滝も自らの想いを語り2人のマシンガントークを一生懸命にキャッチしていた

 

その鱗滝の表情は天狗の面で隠れていたが、孫の話を嬉しそうに聞くお爺ちゃんのようにホッコリしていたらしい

 

因みに炭治郎達のドタバタ劇には気づいていたがそんな事より話がしたいと玉藻の心配はあまりされていなかった

 

 

 

そんな時間を過ごし芽衣達が到着した夕方から夜になると

 

「飯の時間だが、グッスリと寝ておるな」

 

そう言いながら隣の寝室を覗く鱗滝、気を失い眠る玉藻とその布団に潜り込み添い寝をするミッキーに何も突っ込まないあたり鱗滝もミッキーはまあミッキーだからと触れずにいたが

 

「・・・・これ禁人呪殺案件だよね?」

 

この状況を見た芽衣は体をプルプル震わせながらそう言ってミッキーに近づいていく

 

年頃の女の子の布団に潜り込むとか有り得ない!しかも褌一つのほぼ裸!玉藻は変態だけど煩悩修験者だけどそっち系ではない!いやこの場合のそっち系は本来なら正常なんだろうけど玉藻はそっち系じゃなくあっち系、あ!私の被害考えたらそっち系の方がいいです!うん!ならこの構図も・・・はっ!師匠と弟子の真夜中の淫夢!布団の中の絡み稽古!・・・はうあ⁈何考えてたの私!玉藻は親友でミッキーは父親!複雑!凄く複雑‼︎

 

そんな事を頭の中で思考していた芽衣、この状況を打破しようとした芽衣は

 

「寝ます!」

 

鱗滝一門のファミリートークで結局寝れなかった芽衣、この状況を打破しようと考えたが何も思い付かなかった芽衣、そんな芽衣のとった行動は寝る、芽衣曰く寝れば大抵の事は何とかなる!らしく芽衣は玉藻の隣に・・・身の危険を感じた芽衣は玉藻の隣ではなくミッキーの隣、ミッキーを玉藻と芽衣で挟み込む形だが玉藻の隣よりマシだと思って寝る事にした

 

因みに芽衣は玉藻ミッキーペアと同じ布団ではなく隣に布団を敷いて1人で寝ている、芽衣曰く寛ぎの温泉と安らぎの睡眠は誰にも邪魔されたくない‼︎らしい

 

 

そんなこんなでその日の夕餉は鱗滝と炭治郎の2人だけで食べる事になり色んな話をした後、2人もまた就寝するのだった

 

 

 

 

二週間後〜

 

芽衣は未だ産屋敷邸には帰らず天狗小屋に寄生していた

 

理由は2つ、普段放浪して会えないミッキーと一緒に過ごせる事、炭治郎に届けられる日輪刀の色が変わる所が見たい事、その理由で天狗小屋に寄生していたのだが鱗滝は一度家に帰る事を芽衣に薦めていた

 

父親が一緒にいるとはいえミッキーは放浪者、芽衣の家の者も芽衣がいつまでも帰らないのは心配だろうとの配慮だったが

 

「実家?爺ちゃんから産屋敷家に居候しろって言われて今は産屋敷家に住んでるよ?皆友達なんだ」

 

そう芽衣に言われた時は鱗滝も目が飛び出る勢いで驚いていたが、産屋敷家に烏を飛ばし輝哉から芽衣をよろしく頼むと返ってくるとそれ以上何も言えなくなりそのまま二週間が経っていた

 

その間、芽衣もこの山の酸素濃度に慣れていき今では真菰の憑依がなくても普通に呼吸が出来るようにはなっていたので多少の成長はしたのだろう

 

 

そして今日は待ちに待った炭治郎の日輪刀が届く日、炭治郎は自分の刀が届くとワクワクしていたがそれ以上に芽衣がワクワクしていた

 

そんな2人が外で待機していると遠くから鈴の鳴る音が聞こえ始めその鈴の音は徐々にこちらに近付いて来るのが分かる、そうしてるうちに編笠を被った1人の男性の姿が見え、鈴の音はその編笠に飾り付けられてる鈴だったと理解するも芽衣は鈴の音に興味はないので

 

「シャリンシャリン煩いなぁ」

 

そう言ってブツブツと文句を言ってると

 

その男性は猛ダッシュ‼︎芽衣に向かって猛ダッシュ‼︎

 

地獄耳なのだろうか、芽衣はあ、ヤバ!聞こえちゃった?と申し訳なさそうにしていると

 

「芽衣‼︎刀は折ってないだろうな!折ってないだろうな‼︎」

 

と叫び出し芽衣は

 

「アレ?鋼鐵塚さん⁈わ〜久しぶりだね〜!もちろん又宗は折ってないよ」

 

そう言って再会を喜ぶ芽衣、そんな芽衣に鋼鐵塚は

 

「あ?又宗?お前に渡した刀は雲黒斎、まさか折ったんじゃないだろうなぁぁぁ‼︎」

 

そう言ってキレそうになる鋼鐵塚、雲黒斎から又宗に改名してる事など知る由もない鋼鐵塚は名が違う事から芽衣が刀を折ったんではないかと思い行動に移すのだが

 

「折ってないよ?縁壱さんと巌勝さんが雲黒斎って名前が嫌だって、だから又宗に改名したの」

 

そう説明する芽衣に鋼鐵塚は

 

「あ〜アレ臭そうな名前だったからな!自分の研いだ刀とはいえ触りたくないと思った刀はアレが初めてだ」

 

鋼鐵塚は刀を大事に扱ってくれれば文句はなく、持ち主が変な名を付けようとそれは持ち主の勝手だと割り切っていたが芽衣の付けた名前からあの刀は触りたくないと酷評を受けていた

 

そんな芽衣と鋼鐵塚の会話を聞いていた炭治郎、2人は何故知り合いなんだ?と思っていたがそれよりも雲黒斎!確かに臭そうな名前ではあるがだからといってそのような臭いはしない、問題は芽衣のネーミングセンスだと思い炭治郎は

 

「芽衣、雲黒斎という名前は良くない!発音を少し変えればその」

 

そう言ってやんわりと指摘する炭治郎、炭治郎も最後まで説明するのは抵抗があり言い淀んでいたが

 

「だから‼︎今は又宗だよ!私の実家にいる猫の名前‼︎」

 

そう言って今は違うと指摘する芽衣、年頃の女の子が復唱するにはあまりにも下品なその名を芽衣が言わなかったのは良いが、この手の話が出た時点で既に手遅れだった

 

何故なら天狗小屋では

 

「お主達、アレが聴こえてまだ食欲はあるか?」

 

「僕は大丈夫だよ」

 

「流石お師匠!全く羨ましくないけど!私は無理」

 

鱗滝、ミッキー、玉藻の3人はお昼ご飯の最中であった

 

 

そんなやり取りがありつつもなんだかんだで時は流れ、いよいよ炭治郎の日輪刀がお披露目される事になり

 

「私の予想が正しければあの刀は黒く変色するだろう」

 

「ふむ、私は私のような刀に変色してほしいものだが」

 

そう話し合う縁壱と巌勝、縁壱は炭治郎がヒノカミ神楽と名は変わってはいるが日の呼吸を継承している事から彼の適正呼吸は日の呼吸だろうと予想し巌勝は自身の使う呼吸の継承者がいない為、炭治郎に月の呼吸の適正があればと願っていたのだが

 

あれ?もしかして兄上はあの目がギョロギョロとした気持ち悪い刀が色変りでどうにかなるとか思ってない?無理だよ?アレ、日輪刀じゃなく兄上の肉体から出来た刀でしょ?無理だよ?絶対無理だからね!

 

縁壱は正論ではあるが割と失礼な考えをしながら巌勝に暖かい眼差しを向け

 

「兄上・・芽衣に何とかしてもらおう」

 

縁壱は敬愛する巌勝にあの気持ち悪い刀は無理だと言う事が出来ず、無理っぽい事は芽衣に押し付け、もとい任せれば何とかなると腹黒い一面を見せていた

 

そんな思惑をよそに鋼鐵塚から日輪刀を受け取った炭治郎は鞘から刀を引き抜き刀身を見つめていると

 

「おぉぉぉぉぉ‼︎刀が黒く、黒く染まっていくよ‼︎」

 

炭治郎の日輪刀が徐々に黒く染まり出し芽衣は興奮気味に解説すると

 

「むきぃぃぃぃぃぃ!俺は鮮やかな紅い刀身が見れると思ったのにぃぃぃぃぃ‼︎」

 

そう言って発狂する鋼鐵塚、炭治郎が赫灼の子である事から炎の呼吸、すなわち紅い刀身が見れると期待していた鋼鐵塚は刀が黒く染まった事で期待を裏切られ腹いせに炭治郎に関節技を決め出すと

 

「やはりあの少年は日の呼吸の適正があるようだ」

 

「どうやらそうみたいだな」

 

炭治郎が鋼鐵塚に関節技を決められてる事を完全にスルーしながらそう話し合う縁壱と巌勝、嗜める炭治郎が年齢を聞き37歳という鋼鐵塚の年が公開されるも割と重要な事でもないので誰もが触れずにいた

 

そうしてるうちに天狗小屋に3匹の烏がやって来て

 

「カァーー!竈門炭治郎ォ!北西ノ街ヘ向カエェ!鬼狩リトシテノ最初ノ仕事でアルゥゥゥ!心シテカカレェェ!」

 

「カァ!玉村玉藻!俺ハ若村幸之助ェェ!ジャクソント呼べェェェ!」

 

「カァー!ジャクソンダナンテ!異国被レノ恥ズカシイ烏デスワ!麻倉芽衣サン、私ハ小山田まんの子ト申シマスワ」

 

炭治郎、玉藻、芽衣の担当になった3匹の鎹鴉、炭治郎に初の指令を告げた烏の名は天王寺松衛門、玉藻に自己紹介をした異国被れの烏は若村幸之助、お嬢様口調で喋るが名前がセンシティブな烏は小山田まんの子

 

炭治郎は初の指令という事でグッと気合いを入れ任務に意気込もうとするがジャクソンだのまんの子だのふざけてるとしか思えない名前にその気合いを抜かれ

 

「なんて癖の強い烏達なんだ」

 

と苦言を漏らしていた

 

そんな癖の強い烏達が担当になった玉藻と芽衣、玉藻は自分の担当の烏

ジャクソンに

 

「宜しくねジャクソン」

 

そう挨拶しながら頭を撫で始め、芽衣はまんの子を見つめながら

 

「うわー!壊滅的な名前だね誰が名付けたんだろ?顔が見てみたいよ」

 

まんの子というセンシティブな名前に芽衣は可哀想な名前だなと言うような表情をしていたが

 

え?嘘だよね?それお前が言うの?お前のネーミングセンスも壊滅的だぞ?自覚ない?うん!絶対ないよね?その烏の名付け親とお前のネーミングセンス同レベルだからな!類は類を呼ぶって言うけどまさにこれだな!と言うような表情を浮かべ芽衣を白い目で見つめる炭治郎、縁壱、巌勝、鋼鐵塚の4人だったが

 

「ん〜炭治郎君の烏は指令を伝えたけど私達の烏は自己紹介だけだったね」

 

そう言ってキョトンと首を傾げる玉藻、そんな玉藻にジャクソンは

 

「玉藻ト芽衣ハ鬼狩リデハナイ!指令ハ出ナイ」

 

そう玉藻に説明するジャクソンに芽衣は

 

「じゃあゆっくり出来るね、温泉入りたい」

 

最早鬼殺隊など他人事、そんな事より温泉に入りたい芽衣はそう言って

温泉モードに切り替わると

 

「芽衣サン、ココカラ一番近イ温泉ハフンバリ温泉デスワ!私もフンバリ温泉デ羽ヲ伸バシタイデスワ」

 

と言い出したまんの子、現在地から最も近い温泉の案内はもちろんあまり知られていない秘湯までも網羅している温泉大好きなこの温泉烏に芽衣は

 

「ふんばり温泉‼︎私の行きつけ憩いの温泉‼︎」

 

そう言ってワクワクドキドキが止まらない芽衣と

 

「美肌効果!艶ヤカナ毛色!乙女ノ味方!」

 

烏に美肌など意味があるのか分からないがとにかくテンションが上がるまんの子、温泉大好きな芽衣とまんの子は互いに見つめ合うと

 

「「ふんばれ(フンバレ)ふんばり(フンバリ)温泉チーム」」

 

意気投合し温泉同盟を結ぶのであった

 

そんな光景を見せつけられていた残りの面々は

 

(なんだ?コイツら)

 

もう意味が分からんと呆然としていた(玉藻を除く)

 

 

その後、天狗小屋からふんばり温泉の方角は北西だという事で芽衣と芽衣に寄生する玉藻は炭治郎と共に向かう事になり炭治郎は支給された隊服に着替えると日輪刀を腰に差して準備を終わらせると

 

「着替えたよ!私の新たなふんばり衣装」

 

そう言って支給された隊服を披露した芽衣、芽衣曰く私は鬼殺隊ではないので新しい温泉衣装すなわちふんばりスタイルだとドヤ顔をしていると

 

「おほー(о´∀`о)」

 

それはもうホッコリとした顔で芽衣をガン見する玉藻、そんな玉藻を他所に目のやり場に困るミッキー、炭治郎、鱗滝、鋼鐵塚の4人は

 

「色々と露出が多い格好で父さんとしては複雑だよ」

 

「そ、そうですね」

 

「儂のような歳には刺激が強すぎるのう」

 

「あんな格好でまともに戦えるのか?俺の刀折ったりしないだろうな」

 

と言いながら芽衣をチラチラ見たり見なかったりしていた

 

 

そんな出発劇がありつつ芽衣達はふんばり温泉に炭治郎は初指令の為に北西の町へと歩き出すのだった

 

因みに玉藻も芽衣と同じ隊服だったのだが小さな子供を見守る微笑ましい反応に玉藻はドアパンして八つ当たりしていた

 

 

 

「じゃあ私達は早速ふんばり温泉に行くね!炭治郎君頑張って」

 

北西の町に着くや芽衣はそう言って炭治郎と別行動をとる、目的地は同じだが目的は互いに違うので別行動は頷けるが別れを惜しむ事なくそそくさと離れる芽衣、芽衣としては今生の別れでもないし目的地であるふんばり温泉にいるという情報を炭治郎に言ってるわけで用があるなら炭治郎がふんばり温泉に来るだろう、そして何より炭治郎は鬼殺隊として来てるわけで巻き込まれたくないと思いさっさと別れたのだった

 

 

 

そんな芽衣達は町の隅、少し小高い丘に構える小さな旅館ふんばり温泉に辿り着くと暖簾を潜り戸を開け元気な声で

 

「おばちゃーん‼︎温泉入りに来たよーー‼︎」

 

そう叫ぶ芽衣、常識で考えれば迷惑極まりないがこれが芽衣のふんばりスタイル、ふんばり温泉でのルーティンだが

 

ーースパーン‼︎ーー

 

旅館の中に乾いた音が響き渡り

 

「相変わらず煩いわね、まぁゆっくりしていきなさい」

 

そう言って現れたのは芽衣達と歳は変わらない少女、手には自作で作った和紙の扇を持っており、パタパタと扇ぎながら芽衣達にそう告げる

 

「杏奈ちゃんも相変わらずだね、その扇前より良い音出るね」

 

そう言ってにこやかになる芽衣、先程響き渡った音の正体は杏奈なる少女が持つ自作の扇、現代でいうハリセンで芽衣の後頭部を叩いた音であり芽衣がふんばり温泉に来る度に扇で叩く、この一連のやり取りがこの温泉での定番となっていた

 

「より大きな音が出るよう改良したもの、自信作よ」

 

そう言ってフフンとイキる杏奈、そんな杏奈に

 

「うぅ〜2年ぶりだね〜杏奈ちゃぁぁぁぁん‼︎」

 

そう言いながら杏奈に抱き着こうとする玉藻に

 

ーーバチーンーー

 

「ぴぃぃぃぃぃ⁈」

 

マキヲさんも脱帽する杏奈の唸るライトハンドが玉藻の左頬にクリティカルヒットして玉藻は悲鳴を上げながらベーゴマのように激しく回転しそのまま昏倒してしまう

 

「うぅ〜杏奈ちゃん酷いよぉ」

 

そう言いつつもどこか嬉しそうな玉藻、修験で2年間会えずにいたが玉藻も芽衣と同じふんばり温泉の常連でありこのふんばり温泉の若女将杏奈とは旧知の仲であった

 

そんな杏奈は玉藻にたいし

 

「何だか身の危険を感じたわ、久しぶりね玉藻」

 

そう言いつつも懐かしい再会に嬉しそうな顔をする杏奈、立ち話をするのも他の客に迷惑になると杏奈は芽衣達をさっさと温泉に促し芽衣達は温泉に浸かりに行くのだった

 

「アンタは駄目よ」

 

「カァ!俺モ風呂ニ、ジャクソン風呂ニ入リタイ」

 

「あら?ならアンタには厨房のお風呂に入れてあげる、熱熱で気持ち良いわよ」

 

「カァカァ!ジャクソン鍋嫌ァァァァァ!」

 

ただしジャクソンは駄目だった

 

 

 

 

芽衣達が温泉を満喫するかも一方で炭治郎は

 

「この町で鬼が出たんだな、早く解決してあげないと」

 

この町では齢16になった少女ばかりが次々に行方不明に、町の住人は自分の娘もそうなるんじゃないかと不安を募らせていた、鬼殺隊としてやって来た炭治郎はその原因が鬼の仕業だと分かっているからこそ、その元凶を取り除き町の人達を安心させてあげたいと意気込み任務にあたるのだった

 

 

そんな炭治郎が町中を歩いていると町の住人の御近所トークが聞こえて町の住人達はここ最近起きた行方不明事件の話をしていたようで何か手掛かりになればと炭治郎は聞き耳を立てていた

 

そんな時炭治郎とすれ違うように歩いてくる青年、目に生気はなく虚な表情をしながらフラフラとした足取りに炭治郎は視線を移していると

御近所トークの話題はその青年へと切り替わる

 

その青年は和巳というらしく、つい先日一緒にいた婚約者である里子という少女が消えたと聞こえ炭治郎は和巳という青年に声をかける

 

炭治郎の呼びかけに立ち止まり振り返る和巳、炭治郎は和巳に先日の出来事を聞きたいと話し和巳は里子が行方不明になった場所へと炭治郎を案内するのだった

 

「ここで里子さんは消えたんだ、信じてもらえないかもしれないが」

 

そう炭治郎に話す和巳、常識で考えれば人が急に消える事はあり得ない

和巳自身も神隠しのような出来事を話してもそれを間に受ける人はいないと理解していた、里子の両親に先日の出来事を説明しても当然信じて貰えず殴られた和巳、和巳も同じ立場なら当然そんな話は与太話だと否定すると思い食い下がらなかったが消えたのは事実、信じて欲しいと思いつつも信じて貰えないと諦め半分の和巳に炭治郎は

 

「信じます!信じますよ!・・・信じる‼︎」

 

そう力強く信じると宣言した炭治郎、鬼の存在を知らない一般の人ならともかく炭治郎は鬼を狩る組織の一員、この一連の事件の真相が鬼だと知る炭治郎は鬼の痕跡を辿る為自慢の鼻で地面を嗅ぎ出す

 

そんな炭治郎を見て困惑する和巳、信じて貰えないような話にも関わらずその話を信じ一生懸命な姿を見せられて平然としてられる程和巳は冷淡な人ではなかった

 

もしこの場に芽衣がいたら芽衣も平然としていなかったであろう

まるで犬の様に這いつくばり匂いを嗅ぐ炭治郎、芽衣の心の声は

 

え?炭治郎君何してるの?犬?犬の真似?・・は!炭治郎君は公衆の前で披露したい性癖、そうか!自ら犬になって公衆の前に・・・アレ?だとしたら私って炭治郎君を飼うご主人って皆に・・・いやいや!ない‼︎ないから‼︎私そんな趣味ないから‼︎どちらかといえば犬より猫派だから!実家に猫いるから!着物着て帽子被ってキセル咥えてるけど猫だから‼︎猫又だけど猫だから‼︎

 

そんな事を思いながら芽衣は炭治郎と他人のフリをしていたであろう

 

 

当の本人は炭治郎とは裏腹にふんばり温泉で寛ぎ中だが、まさか炭治郎が犬の様真似をしているとは思いもしないであろう

 

その炭治郎は引き継ぎ犬真似をしながら鬼の痕跡を辿っていた

いつまで嗅ぎ続けるのか和巳には分からないが、何か手掛かりが見つかればと和巳は願っていた

 

恐らく炭治郎は手掛かりが見つかるまでは嗅ぐ事を辞めないだろう、火の中水の中は無理だが草の中や森の中は嗅いでいくに違いない、辞めるとしたら事案であるあの娘のスカートの中、憲兵に取り押さえられ任務どころではないのでそれはないだろうが炭治郎はいつまでも嗅ぎ続ける

 

そう思わせる程長い時間炭治郎は町中を嗅ぎ回っていた

そうしてるうちに日は暮れていき次第に夜になると

 

「まだ続けるのか?」

 

「はい!」

 

「もうこんな時間だ僕の事を心配してくれるのは嬉しいが後は明日にして少し休んだ方が」

 

長い時間自分を信じて動いてくれる炭治郎を心配した和巳は少しでも休んで欲しいと願うが炭治郎はその場に屈み込んで

 

「アイツらは夜活動します、だから休みわけにはいかない!ここら辺にも新しい匂いを見つけました、必ず近くに居るはずです」

 

そう和巳に話す炭治郎は周囲を見渡し鬼の気配を探っていると

 

「アイツら・・君はまさか・・本当に」

 

炭治郎の様子から和巳は噂で聞いた鬼を狩る組織鬼殺隊が実在し炭治郎がその一員だと悟る

 

 

 

炭治郎達が町で鬼の痕跡を辿っている中、その鬼はというと

 

「はいお母様、ではおやすみなさい」

 

町のとある邸宅、行方不明が続く事件に外出を控えるよう促す母親に従い就寝前の挨拶をする少女、廊下を歩き自室へと向かう少女の背後

 

ーーズズズーー

 

黒いモヤのような何かが少女を追いかけていた

 

少女は自室に入り羽織を脱ぐとすぐに布団に潜り込み行方不明になった少女達を心配しながら眠りにつくと少女の真下、布団を丸ごと飲み込む程の黒いモヤのような何かから腕が飛び出すと少女の口を塞ぎつつ少女をその黒いモヤのような何かの中へと引き摺り込んでいく

 

これこそがこの一連の事件の真相、狙いをつけた少女をハイレベルのストーキング技術もとい血鬼術で付き纏い自らのテリトリー沼の中に引き摺り込み捕食する鬼、沼鬼の手口であった

 

その沼鬼だが沼鬼は1体ではなく3体、正確には分裂した存在であるが3体の沼鬼はストーキング対象のターゲットを探すには3体の方が効率的とそれぞれでターゲットを物色していた

 

この少女も沼鬼の一体にロックオンされた一人であり不幸な命運ではあるが不幸な命運にあるのはこの少女だけではなかった

 

 

 

「鬼の匂い!鬼が動いたんだ‼︎」

 

鬼が少女をゲットした事で炭治郎の嗅覚センサーに引っかかった沼鬼、

炭治郎はその匂いのする場所へと一目散に走り出すと和巳は炭治郎の足の速さ跳躍力に驚きつつも必死に炭治郎の跡を追いかけていくのだった

 

 

鬼の匂いが濃い場所、炭治郎はこの場に鬼がいると確信し日輪刀を引き抜くと最も鬼の匂いが濃い場所、地中の一点に日輪刀を突き刺した

 

すると日輪刀を中心に沼鬼の展開する沼が広がっていき、沼の表面に女性らしき着物が浮かび上がるのを見て炭治郎はそれを掴み一気に引っ張り上げる

 

炭治郎が引っ張り上げたのは沼鬼の一体に拐われた少女であり気を失ってはいたが命に別状はなく炭治郎を追って駆け付けて来た和巳にその少女を任せ炭治郎は沼鬼と対峙する

 

沼鬼は沼から半身を出した状態で炭治郎を睨み歯軋りをしていると

 

ーーガシッーー

 

突如沼から現れた手、沼鬼は背後から伸びて来た手に頭を鷲掴みにされるとそのまま沼へと引き摺り込まれてしまう

 

「え⁈」

 

突然の出来事に呆気にとられる炭治郎、沼を展開する事から鱗滝が言っていた異能の鬼、最終選別の鬼より手強い鬼だと覚悟をしていたのだがまさかの出来事、炭治郎は沼を見つめていると

 

ーーザバァッーー

 

沼から1人の少女が這い上がり自力で脱出すると

 

「全く随分と舐めた事してくれるじゃない、最近の神隠しは鬼の仕業だったというわけね」

 

そう言いながら濡れた浴衣を絞り出す少女、再び現れた沼鬼の一体が激しく歯軋りをしていると

 

「アンタさっきから煩いのよ」

 

ーーパアァァァァァァン‼︎ーー

 

そう言いながら少女は左手で沼鬼にビンタ、炭治郎でさえビンタの初動も見えなかった幻の左は沼鬼にクリティカルヒットし沼鬼は10m程弾き飛ばされてしまう

 

「・・え⁈・・ええ⁈」

 

まさかビンタ一発で鬼がぶっ飛ぶとは思わなかった炭治郎、鱗滝との初対面で炭治郎はビンタを貰ったが結構痛いだけでぶっ飛ぶわけではない

だが目の前の少女はビンタ一発で鬼をぶっ飛ばした、炭治郎は何か恐ろしい物を見るような目で少女を見ていると

 

「アンタ何見てるのよ」

 

炭治郎の視線に気付いた少女は不機嫌な態度で炭治郎にそう言うと

 

「若女将は相変わらずだね」

 

そう少女に話しかける和巳、少女は和巳を見て

 

「そうよ!私はどんな時でも私よ」

 

そう自信たっぷりにドヤ顔する少女、和巳は炭治郎に

 

「この人はふんばり温泉の若女将杏奈だ」

 

そう言って炭治郎に紹介する和巳、炭治郎はそれを聞いて

 

「ふんばり温泉⁈それって芽衣が言っていたあのふんばり温泉の」

 

ふんばり温泉と聞いて炭治郎は芽衣達が日中ふんばり温泉と言っていたのを思い出しそう言うと

 

「あら、アンタ芽衣達を知っているのね、じゃあアンタが芽衣の言っていた炭治郎ね、鬼殺隊がどうとか言ってたわ」

 

そう言って炭治郎をチラッと見る杏奈、ふんばり温泉で芽衣達から炭治郎という鬼殺隊の少年と一緒に来たと聞いていた杏奈は目の前の少年が炭治郎なんだと理解すると

 

「そんな事よりさっきの鬼、まだ死んでないわよ」

 

そう言ってビンタでぶっ飛ばした沼鬼に視線を戻す杏奈、炭治郎も慌てて沼鬼に視線を戻すも沼鬼は強烈なビンタで痙攣しピクピクしていた

 

「えっ⁈」

 

これには炭治郎もビックリ、自慢の石頭をぶつけても鬼は怯む程度だが杏奈のビンタは痙攣している、芽衣の知り合いだけあってコイツもなんかおかしいと杏奈に戦慄していると

 

「ホント迷惑よね、コイツらのせいで客が減ったじゃない」

 

沼鬼を睨みながら憤慨する杏奈、ここ最近の行方不明事件のせいで客足が遠のき売り上げが落ちた事でイライラしていた杏奈はこの事件の真相を調べようと密かに動いていた

 

そんな杏奈だが沼鬼に引き摺り込まれたわけではなく、ふんばり温泉内でターゲットを物色していた沼鬼の沼を見つけ自ら飛び込んでいた

 

そんな中炭治郎達に迫るもう2匹の沼鬼、背後からこっそり仕掛けようとした沼鬼に

 

「後ろから鬼の匂い!」

 

背後から迫る沼鬼の匂いを嗅ぎとった炭治郎、体を翻すと

 

水の呼吸 弐の型 水車

 

弐の型による迎撃で2匹の沼鬼を蹴散らす炭治郎、ようやく鬼殺隊としての活躍を見せた炭治郎に

 

「アンタ邪魔よ!」

 

そう言って炭治郎に辛辣な態度を見せる杏奈、杏奈自身も背後の沼鬼に気付き幻の左を炸裂させようとしていたが炭治郎が先に攻撃した為不機嫌になったいた、そんな杏奈は

 

「ふんばり温泉の売り上げの邪魔する奴ば例え鬼だろうと人間だろうと容赦しないわ」

 

そう言いながら炭治郎が蹴散らした2匹の沼鬼に歩み寄ると沼鬼達は沼に潜り込んでいき

 

「よくそんな汚い泥水の中に潜れるわね、まあ陰湿な鬼にはお似合いだけど」

 

杏奈は攻撃から口撃に切り替え、沼鬼達を罵倒すると

 

「貴様!汚い泥水だと?俺の血鬼術を汚い泥水だと言ったのか‼︎」

 

「落ち着け!もう1人の俺、アレは挑発だ」

 

杏奈の口撃にキレる沼鬼Bにリーダー格であろう沼鬼Aが挑発に乗るなと言うと杏奈は

 

「アンタ何格好付けてるのよ、不細工のくせに」

 

もう1人の俺とかコイツ頭沸いてるんじゃないかと思った杏奈は沼鬼Aにそう言うと

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈」」

 

これには沼鬼Aも憤慨、長髪に忍装束の俺イケメンじゃね?とか密かに思っていた沼鬼Aのプライドを刺激した杏奈、キレやすい沼鬼Bも俺も同じ顔だから俺も不細工じゃねえかとキレて2匹同時に杏奈に襲いかかると

 

「危ない‼︎」

 

そう言って杏奈を抱き抱え沼鬼達の攻撃を回避する炭治郎は杏奈に

 

「不細工に不細工と言うのは良くない!『顔が優れてないようだが大丈夫か?』と気を遣うべきだ」

 

とフォローしてるようで全くフォローしてない炭治郎に杏奈は

 

「アンタも大概ね」

 

そう言って炭治郎に白い目を向ける杏奈、気を遣ってるようで全く遣ってない、むしろより屈辱感が増す発言をサラッと言う炭治郎、炭治郎は嫌味ではなく本気で心配してそう言うあたりタチが悪いと杏奈は思っていた

 

「杏奈さん!あの鬼達は俺が斬ります!」

 

そう言って炭治郎は鬼殺隊としての仕事を全うしようと意気込むと

 

「アンタ鬼殺隊だったわね、ならさっさと倒してちょうだい!ふんばり温泉の売り上げの為に」

 

そう言って沼鬼達を炭治郎に任せる杏奈、杏奈が鬼を追って来たのはあくまでもふんばり温泉の売り上げの為、その鬼がいなくなるのなら手段は選ばない、寧ろ自分が労力を使わないで解決するならそれに越した事はない、そんな理由で炭治郎に任せたのであった

 

そんな炭治郎、沼鬼達が攻撃の際にしか沼から現れないのなら自分から沼に飛び込めと考え今まで背負っていた禰豆子ハウスを降し沼へとダイブしていく

 

炭治郎が沼に飛び込んだ時、今まで痙攣していた歯軋りの激しい沼鬼Cがようやく復活し杏奈達に襲い掛かろうとしていたが炭治郎が置いた禰豆子ハウスから禰豆子が出てくると禰豆子は沼鬼Cに豪快な蹴りをお見舞いする

 

ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ

 

蹴り飛ばされた沼鬼C、歯軋りの激しい顔面バイブレーションは禰豆子に狙いをつけ再度襲いかかると

 

「アンタ、良い蹴りね!なら次は左手で思いっきりやりなさい」

 

そう禰豆子にアドバイスする杏奈、禰豆子はコクンと頷くと左手で沼鬼Cに強烈なビンタを炸裂する

 

ーードォォォォォンーー

 

禰豆子の荒ぶる左手が沼鬼Cの顔面バイブにヒットすると何故か沼鬼Cの顔面バイブが爆発し赤紫の炎が激しく燃え上がる

 

禰豆子が放ったのは左手のビンタだがただのビンタではなかった、この2週間天狗小屋に寄生していた芽衣、ゆっくり過ごしてはいたが全く何もしなかったわけではない、日中は憑依した縁壱の指導の元炭治郎に日の呼吸の手解きを、夜は巌勝が禰豆子に血鬼術は気合いと根性で何とかなると指導?し竈門兄弟を鍛え上げていた、その禰豆子が放った左手のビンタ、自ら発現した血鬼術“爆血“を纏った爆血ビンタが沼鬼Cの顔面を燃え上がらせていたのであった

 

だがここで終わらせる禰豆子ではなかった!

禰豆子は右手を天に伸ばし重心を低く構えると腕を引いて右手の甲を前方に向けるようかざし

 

「むむむむむむむむっむむむむむぅぅ!むぅむむむむむむむむむむむむむぅぅぅ‼︎」

 

やたらむぅむぅ叫ぶ禰豆子、杏奈や和巳はおろか大ダメージを受けた沼鬼Cでも何を言ってるのかさっぱりだが、禰豆子曰く私の右手が真っ赤に燃えるぅ‼︎的な某キングオブハートな気合いを入れて爆血を右手に纏い沼鬼に突進、そして禰豆子の右手は顔面バイブを掴み

 

「むぅむむぅぅぅぅ」

 

禰豆子曰くヒートエンド、華麗なフィニッシュを飾るつもりだったが顔面バイブの高速振動がちょっと気持ち良くてうっかり手を離してしまう

 

それでも爆発する沼鬼Cの顔面、爆血の影響で再生出来ないのか沼鬼Cの顔面は酷い有様だったが

 

「アンタ良かったじゃない、不細工に拍車がかかってるわよ」

 

そう言って沼鬼Cに追撃として口撃を仕掛ける杏奈、沼鬼Cは杏奈の口撃に怒り狂い歯軋りをするが禰豆子の爆血!禰豆子フィンガーで歯が無くなっていたのでフガフガしていた

 

一方で炭治郎、沼の中を泳ぎ回る沼鬼ABの攻撃を躱していると沼の奥に何かがいる事に気付き攻撃を躱しながらその何かの元へと泳ぎ出す

 

(なんだ⁈コイツも鬼なのか⁉︎」

 

炭治郎が見たのは今まで炭治郎が見てきた鬼とは全く異質の存在、だが明らかに鬼のような姿、伝承や物語で見た鬼のようだと思いながらその鬼を見ていると

 

(何か抱えてる・・・!女の人だ!あの鬼は女の人を守ってるのか⁉︎)

 

炭治郎が見たのはその鬼と思われる存在が少女を抱き抱え守っているようであの鬼は他の鬼とは違う鬼なのかもしれないと考えていると

 

「昨日攫った女、ソイツのせいで食えない!ああぁぁぁ!女は16歳が最高に美味いんだ!16歳を過ぎれば鮮度が落ちてくる‼︎」

 

そう言って発狂する沼鬼A、16歳という事に固執する理由は定かではないが炭治郎は

 

ああ、コイツは不細工を理由に16歳の女の子に振られたんだろう!と杏奈の影響でそう解釈して憐みを沼鬼達に見せると

 

「貴様ァァ!何だ!その憐みは!」

 

「自分の顔が優れてるからって見下してんじゃねぇぇ‼︎」

 

沼鬼達から向けられるヘイト、リア充爆発しろとでも言いたげな沼鬼達

地上では禰豆子、杏奈という美少女に囲まれたリア充な沼鬼Cは爆発したのだがそんな事は知らない沼鬼AB、一刻も早く謎の鬼を何とかして少女を喰べたい沼鬼達はまずは邪魔者の炭治郎を殺そうと取り囲み同時攻撃を仕掛ける

 

炭治郎は沼の中では地上のように身動きが取れない、だけどこんな状況だからこそ発揮する型があると日輪刀を構え

 

水の呼吸 陸の型 捻れ渦

 

体を捻り回転しながら迫る沼鬼ABを斬りつける炭治郎、沼鬼ABは炭治郎の攻撃によってバラバラになり頸も斬られた事で沼の中で消滅していった

 

 

 

炭治郎が沼鬼ABを撃破した頃杏奈達は〜

 

「夜明けも近くなってきたしそろそろ帰るわ、あの娘朝風呂に入れなかったら不機嫌になるもの」

 

そう言って空を見上げる杏奈、空は既に夜から早朝に差し掛かりうっすらと赤みを帯び始めていた、杏奈は朝の一番風呂に入れなかったら不機嫌になるあの娘、芽衣の事だが目の前の顔面バイブより不機嫌になった芽衣の方が面倒くさいとその場を立ち去ろうとしていた

 

「一つ言い忘れてたわあの娘まだ生きてるわよ、私の式神が守ってるもの」

 

そう和巳に向かって話す杏奈、和巳は杏奈が何を言ってるのか一瞬理解出来ないでいたがそれが行方不明になった婚約者里子の事だと察すると

 

「里子さんが・・里子さんが生きてる・・杏奈さんそれは本当なのか」

 

和巳にとってあまりにも嬉しい話だが未だ半信半疑の和巳、自分でも信じられないが噂程度でしか知らなかった鬼が実在し行方不明の真相がその鬼の仕業だと分かると里子の無事を信じたいがきっと駄目なんだろうという諦め半分だったので杏奈の話に里子の無事の確信が持てず恐る恐る杏奈に確認すると

 

「だからさっき言ったじゃない、私の式神が守ってるって!同じ事を何度も言わせないでちょうだい!」

 

そう和巳に言って少し不機嫌になる杏奈、同じ事を何度も言いたくない

寧ろ一回で理解しろ!と言いたげな杏奈は

 

「アンタ達、昨日・・もう夜が明けたから一昨日ね!ふんばり温泉に来たじゃない、あの娘の後ろに怪しい影、まぁそこの不細工の仕業だけど

影がついて回ってたのよ!だからこっそり私の式神を付けてたの」

 

そう和巳に話す杏奈、和巳と里子の2人は里子が行方不明になるその日ふんばり温泉で温泉デートをしていて杏奈は里子の跡をストーキングする沼鬼の影を見つけこっそりと里子に式神の護衛を付けていたのだった

 

「あぁ・・ああぁぁぁ‼︎里子さんが生きてる‼︎里子さんが‼︎」

 

そう言いながら泣き崩れる和巳、杏奈はそんな和巳に

 

「アンタ達ふんばり温泉の常連だし、あの娘が行方不明になったらもうふんばり温泉に来れなくなるじゃない」

 

そう言いながらフッと笑みを浮かべる杏奈、ふんばり温泉の常連客であるこの2人がふんばり温泉に来れなくなる、つまり売り上げが下がる!

だがこの雰囲気で売り上げ云々の話をするのは野暮だと杏奈は常連客を大事にする美少女若女将な自分をこっそりアピールするのであった

 

その杏奈は沼鬼Cに視線を移すと

 

「そういえばアンタって鬼だったわね・・鬼も舐められたものね!まぁいいわ!アンタに本物の鬼がなんなのか教えてあげる」

 

杏奈は沼鬼Cにそう言うと浴衣の裾から人形を取り出し

 

「オーバーソウル!前鬼!」

 

と自身の持ち霊の一体である前鬼を人形に憑依させオーバーソウル

青色の1本角の鬼、気合いと根性で乗り切るギガドリルに出てきそうな

前鬼が沼鬼Cの前に立ち塞がると

 

ーーフガフガフガフガフガフガフガフガフガフガーー

 

歯が無くなり歯軋り出来ない沼鬼Cは前鬼に怯え震え出し、歯があればガチガチと歯を震わせていたのだろうが歯が無い為フガフガするしか出来なかった沼鬼C、慌てて沼に飛び込み逃げようとしたが

 

「鬼は殺す!それがワシらの役目」

 

そう言いながら沼に逃げ込む沼鬼Cを引き摺り上げ、容赦なくボコボコに殴り潰す前鬼、霊を具現化したオーバーソウルでの攻撃は物理的な破壊もそうだが本来が霊体であるため対象の霊体、つまり魂にも影響を及ぼし沼鬼Cは前鬼の攻撃によって原型を留める事なく肉体も再生される事なく息を引き取った

 

「所詮は作られた偽物の鬼、本物の鬼には到底敵わなかったみたいね」

 

そう言いながらオーバーソウルを解除する杏奈、自身が使役する本物の鬼に偽物が通用するわけない、さも当たり前のように言い放つ杏奈は和巳と禰豆子に視線を移して

 

「アンタ達も帰るわよ、朝風呂の準備してもらわなくちゃいけないんだから」

 

これには和巳も禰豆子もポカン

 

自分達はいつからふんばり温泉の従業員になったんだと呆気にとられる

2人、そんな時沼から這い上がって来た炭治郎・・・は下から這い上がって来た杏奈のもう一体の式神後鬼に

 

「早く上がれ!小童!」

 

そう言われ炭治郎は後鬼の手によって押し上げられ、沼からピョンと飛び出して来る

 

「あら、アンタの事忘れてたわ」

 

沼の中で人知れず活躍したのに完全に忘れられていた悲しき炭治郎、そんな不憫な炭治郎を慰め頭をヨシヨシする優しい禰豆子、ホッコリする光景だが杏奈も和巳もそんな炭治郎達には目もくれていなかった

 

「里子さん!里子さん‼︎」

 

そう叫びだした和巳、炭治郎に続いて這い上がって来た後鬼に抱えられていた少女里子に駆け寄ると嬉し涙を流し里子に擦り寄っていく

 

これには炭治郎や杏奈もニッコリ、自分の手で誰かを助ける事が出来た

大切な命が失われないで済んだ、常連客が1人減らないで済んだ、売り上げが減らないで良かった2人の心中は違えど互いに嬉しそうであった

 

「ほらさっさと帰るわよ!もうすぐ日が昇るわ!その娘鬼でしょ?早く屋内に入らないと大変よ、その娘もお風呂に入れてあげないと」

 

そう言ってふんばり温泉に帰ることを急かす杏奈、禰豆子が鬼であり日が昇る前に屋内に避難させたい事と里子を温泉に浸からせてあげたい事

その理由があって先程禰豆子と和巳に朝風呂の準備の話を切り出していたのだが

 

「勿論入浴料は貰うわよ」

 

金取るんかい‼︎何処までも守銭奴な杏奈に和巳はそう心の中でツッコミを入れていた

 

そんなこんなでふんばり温泉にやって来た炭治郎達

 

「あっ!さっきの鬼達に鬼無辻の事聞けなかった」

 

そう言いながら少しガッカリする炭治郎、鬼の首魁である無惨の事や禰豆子を人間に戻す方法を聞きたかった炭治郎だったが結局聞けずじまいで戦いは終わった為何も情報は得られなかったが

 

「鬼無辻・・・鬼の首魁ね、芽衣なら知ってるんじゃないかしら」

 

そう炭治郎に告げる杏奈に炭治郎は

 

「何で芽衣が鬼無辻を知ってるんだ?」

 

そう言って不思議そうな顔で杏奈を見る炭治郎に杏奈は

 

「それは本人に聞きなさい」

 

そう言いながら杏奈は朝風呂の準備する為にその場から立ち去ろうとすると

 

「杏奈さん!君は一体何者なんだ?」

 

杏奈が芽衣の知り合いだと言うのは知っている、オーバーソウルを使える事から芽衣達と同じシャーマンだというのも理解出来る、だが彼女は恐らく鬼無辻の事を何かしら知っている、芽衣もまた鬼無辻の事を知っていると言うような口ぶり、シャーマンと鬼無辻は何か関係しているのか?仮にそうならば目の前の杏奈は一体何者なんだと疑問に思う炭治郎は杏奈にそう聞くと杏奈は

 

「ふんばり温泉の若女将よ」

 

私はふんばり温泉の若女将それ以外の何者でもない、そう言うニュアンスを含めた口調で炭治郎に告げると杏奈はその場から立ち去って行った

 

一同キョトンとする中和巳は未だ気を失っている里子を温泉に浸からせてやろうと杏奈を追いかけ炭治郎と禰豆子はその場に立ち尽くしていると

 

「ふぁ〜良き寝心地だったね〜」

 

「ふんばり温泉に入って寝るって最高の贅沢だよね」

 

「カァー!オカゲデ肌モツルツルデスワ!」

 

「カァ・・ジャクソンハ風呂嫌イ!風呂怖イィ」

 

そう話しながら朝風呂に入ろうとした芽衣達とバッタリ出会す炭治郎

 

「芽衣!玉藻!」

 

炭治郎の呼びかけに気付いた芽衣達は

 

「炭治郎君おはよう、炭治郎君達も朝風呂入りに?」

 

「ここの温泉は最高だよ」

 

それはもうホッコリとした顔で話す芽衣と玉藻の2人に炭治郎は

 

「芽衣!杏奈さんは一体何者なんだ?それに芽衣が鬼無辻の事を知っているって」

 

真剣な顔付きで芽衣に話しかける炭治郎に芽衣もホッコリ顔から真剣な顔付きに変わり

 

「炭治郎君・・・朝風呂に入れないじゃん!それ話すと長くなるから朝の一番風呂に入れないじゃん!よし!お風呂で話そ!温泉で腹割って話そ!」

 

「え⁉︎ちょ⁉︎芽衣?」

 

どうしても朝の一番風呂に入りたい温泉大好き芽衣、入りたいあまり長い話は温泉に浸かりながら話すと言い出した芽衣、炭治郎と混浴する事になるとは全く考えてなかった芽衣、芽衣の唐突な提案に狼狽える玉藻だったが

 

「ほら!炭治郎君早く!禰豆子ちゃんも!早く温泉入って話するよ」

 

「いや!芽衣⁈ちょっと待って!」

 

「芽衣!一番風呂は里子さんが入ってるぞ」

 

あくまでも温泉、一番風呂に入る事に執着する芽衣は後先考えず炭治郎と禰豆子を引っ張って行き、玉藻がさらに慌てると炭治郎が芽衣にとって衝撃的な一言を言い放ち芽衣は

 

「・・・里子さん?・・・は?・・またアイツかぁぁ!ふんばり温泉常連の通称一番風呂の里子!」

 

そう叫び悔しがる芽衣、行方不明になっていた里子はふんばり温泉の常連、朝一番の一番風呂をこよなく愛する芽衣にとっての朝風呂ライバル

そんな里子に先を越されたと嘆く芽衣、ライバルとはいえ芽衣と里子は仲が悪い訳ではない、寧ろ温泉大好き仲間であり芽衣の心許せる友人の1人でもある

 

「芽衣!里子さんは鬼に拐われて行方不明だったんだ!鬼が作り出した沼の中にいたけど幸い杏奈さんの鬼が守っていてくれて」

 

そう芽衣に説明する炭治郎、その説明に芽衣は

 

「何それ・・私知らなかった・・里子ちゃんがそんな大変な事になってたって知ってたら私も一緒に・・」

 

そう言いながらもの凄く落ち込みその場にへたり込む芽衣、大切な温泉仲間が大変な目にあってた中自分は温泉を満喫していた、知らなかったとはいえ何も出来なった事で無力感に襲われる芽衣、そんな芽衣に

 

「芽衣!だったら今の芽衣に出来る事をしよ?今出来る事を出来る限りやれば後は何とかなる!でしょ?」

 

そう言いながら芽衣を励ます玉藻、炭治郎は芽衣にどう声を掛けたら良いか悩んでたが玉藻は芽衣にアッサリと励ましの言葉を掛ける、長年芽衣の良き理解者として過ごしてきただけあって流石だなと炭治郎は玉藻に感心していたが、でも変態なんだよなって内心思っていた

 

そんな玉藻の励ましを受けた芽衣、玉藻の顔を見て変態だけど玉藻は私の良き理解者で最高の親友だと笑顔を見せると

 

「そうだね、今の私に出来る事をやれば何とかなるよね!エッヘッヘ」

 

そう言いながら笑うと芽衣は里子がいる風呂に全力ダッシュしていくのであった

 

「玉藻・・芽衣の笑い方って独特だな」

 

「うん、独特だね」

 

そんな事を話しながら芽衣を見送る炭治郎と玉藻、炭治郎は一旦外に出て里子達が落ち着くのを待っていようとしたら

 

「炭治郎君・・私も知ってるよ・・私が話そうか?」

 

そう言いながら炭治郎を追いかけて来た玉藻、炭治郎は玉藻に

 

「玉藻も知っているのか・・でも玉藻も一緒に行かないのか?」

 

炭治郎はてっきり玉藻は芽衣に着いて行くと思っていたので思わずそう言うと

 

「うん・・別に芽衣が話しにくい内容とかじゃないんだけどね、私も芽衣の役に立ちたいからさ!それに禰豆子ちゃんも芽衣を追いかけていったから炭治郎君1人じゃん?たまには炭治郎君と2人きりっていうのも悪くないかなって」

 

玉藻そう言いながら炭治郎を追い抜き振り返ると

 

「ほら!鬼退治終わったんでしょ?初任務の達成祝いしよ」

 

そう言って玉藻は炭治郎の手を取り朝の町中に溶け込んでいくのだった

 

 

一方、一番風呂に浸かる里子は杏奈の付き添いで体を温めていると

 

「里子ちゃん‼︎」

 

「むぅむむぅ」

 

里子を心配して風呂に乗り込んで来た芽衣と芽衣を追いかけ来た禰豆子の2人と1匹の温泉烏、既に入浴準備は万全ですと言わんばかりの格好つまり裸で風呂場に突入するとまずは掛け湯、どんな時でも入浴マナーは守る!これ大事‼︎温泉大好き芽衣は入浴マナーを守ります!を実践すると芽衣と禰豆子とまんの子は温泉に浸かり「はぁ〜(むぅ〜)『カァ〜』」とホッコリ顔・・からの

 

「里子ちゃん大丈夫⁈」

 

ホッコリ顔から心配そうな顔への切り返し、そんな芽衣に杏奈は

 

「アンタ何がしたいのよ」

 

と芽衣の珍妙な行動に割と辛辣な態度になる杏奈、命に別状はないとはいえ流石に直ぐには目覚めないだろう里子を見ながら杏奈は

 

「死んでないからそのうち起きるわ、アンタが心配するのは分かるけど

ゆっくり休ませてあげなさい」

 

そう言いながら里子から芽衣へと視線を移す杏奈は

 

「炭治郎っていってたわね・・彼は鬼殺隊・・アンタも同じ格好だったけどまさか入隊した訳じゃないでしょうね」

 

そう言いながら芽衣に厳しい視線を向ける杏奈、芽衣はそんな杏奈の言葉に

 

「ううん私は鬼殺隊には入らないよ、ゆっくり過ごしたいし」

 

と芽衣は杏奈に返すと杏奈は

 

「そう・・ならいいわ、アンタが一番分かってるでしょうし・・私達の本当の敵が誰なのかを」

 

そう芽衣に話す杏奈、芽衣は杏奈の発言に暫くの間黙り込み

 

「うん・・分かってるよ・・・分かってる」

 

そう言いながら芽衣は再び沈黙して

 

「葉王の馬鹿」

 

芽衣は杏奈にも聞こえない小さな呟きを漏らすのだった

 

 

 

そんな芽衣達とは裏腹に炭治郎と玉藻の2人は朝から賑わう市場で色々買っては食べ買っては食べの大正グルメツアーを満喫しひと段落すると近くの川土手に座り玉藻は炭治郎に芽衣と鬼無辻の関係を話すのだった

 

「玉藻教えてくれて有難う!そっか、芽衣と鬼無辻が直接関係してる訳じゃなかったんだな、それにしても麻倉葉王・・芽衣の先祖はあの有名な麻倉葉王だったなんて正直驚いたよ」

 

そう話す炭治郎、玉藻は炭治郎に芽衣が希代の大陰陽師麻倉葉王の子孫である事、その葉王が1000年前鬼無辻に鬼の力を分け与えた事等を話し芽衣と鬼無辻の関係を教えると

 

「あと杏奈ちゃんはふんばり温泉の若女将!・・ってだけじゃ納得しないよね、別に悪い人じゃないよ?私の味方だし!」

 

玉藻はそう炭治郎に話し杏奈の事はあまり触れたくないようだが

 

「杏奈さんが悪い人じゃ無い事は俺も分かるし信じられるよ、色々と怖い人だったけど」

 

そう言いながら炭治郎は苦笑いをすると玉藻は

 

「杏奈ちゃんは怒らせると凄く怖いし怒らせなくても怖い最恐若女将だからね!」

 

そう言って玉藻も苦笑いを浮かべると

 

「ねえ?炭治郎君・・私鬼殺隊には入らないって言ったよね?何で入らないか分かる?」

 

そう炭治郎に質問する玉藻、その質問に炭治郎は

 

「芽衣を守る為だったね」

 

そう返した炭治郎に玉藻は

 

「何から?鬼?鬼なら私鬼殺隊に入っても問題ないんだよね、いや芽衣に逢えないのは大問題だけど」

 

そう話しながら空を見上げる玉藻、そんな玉藻を見つめながら炭治郎は

 

「鬼以外に何かいるのか?」

 

そう真剣な表情で聞き返す炭治郎、玉藻も真剣な表情で

 

「いるよ・・私達の敵!鬼なんかよりずっと厄介な私達の敵が」

 

空を見上げていた玉藻はそう炭治郎に話すと炭治郎に視線を戻し

 

「麻倉杏奈だよ!杏奈ちゃんの名前・・芽衣の従姉妹なんだ!」

 

そう炭治郎に話すと玉藻はもう話す事はないよと言うような顔になり炭治郎も杏奈が芽衣の従姉妹だと分かると色々と納得出来る部分もあり

それ以上に追求はしなかったが

 

「玉藻・・最後にするけど玉藻達の敵って一体何なんだ?杏奈さんと何か関係してるのか?」

 

炭治郎は最後の質問として玉藻に玉藻達の敵について聞いてみるが

 

「杏奈ちゃんは関係ないけど全くの無関係じゃないというか・・ゴメン!私から話しといて悪いけどこれ以上は言えないや!」

 

そう言って申し訳なさそうにする玉藻、炭治郎は玉藻のその表情でこれ以上追求したら駄目だと察し

 

「いや!俺も無理に聞いて悪かったよ、とりあえずこの話はお終いにしてふんばり温泉に戻ろう」

 

そう言って炭治郎は話を切り上げ玉藻と共にふんばり温泉に戻って行くのだった

 

 

 

その後、無事に目覚めた里子は風呂場の大広間で待機していた和巳と再会、涙の抱擁を見せつけると芽衣は里子と幻の秘湯に行く話を、芽衣曰く温泉案内人の和巳とは幻の秘湯に向かうプランを立てると和巳と里子は炭治郎に頭を下げ物凄く感謝の言葉としつこいくらいの温泉同行を提案すると

 

「カァーー!次ハ浅草!浅草ニ向カエェ!」

 

はい!休憩終わり!次の仕事に行こう!と松衛門が次の指令を炭治郎に伝えると

 

「カァ!松衛門ワーカーホリック!ジャクソンソウ思ウ」

 

「カァー!余裕ノナイ男ハ嫌ワレマスワヨ!」

 

そんな松衛門にダメ出しするジャクソンとまんの子、そんなゆるい烏2匹に松衛門は

 

「お前達ハ何モ働イテナイ!働ケェ!働ケェェ‼︎」

 

そんな松衛門を芽衣は鷲掴みにすると

 

「浅草温泉!次は浅草温泉だね‼︎」

 

芽衣の中ではこれは温泉巡り!温泉しか考えていない芽衣に松衛門は

 

「モウ温泉デイイ!」

 

コイツらとまともに付き合うのは疲れると思った松衛門は早々に諦めそう芽衣に言うと芽衣は松衛門を解放すると

 

ーーズボッーー

 

「カァーー!極楽極楽ゥゥ」

 

松衛門、芽衣から解放されるや芽衣の谷間にダイブ!至福の時を感じそう声を上げると芽衣も烏だからとそのまま放置、それを見たジャクソンは

 

「カァ!ジャクソンモ!ジャクソンモ!」

 

そう言って羽根をバタバタさせるジャクソン、玉藻はジャクソンがちょっと可哀想だと思い自分に入る?と聞いてみると

 

「玉藻ハナイ!挟マレナイ!ジャクソン玉藻ジャ癒サレナイ」

 

そう言われた玉藻は大天狗と天狐をオーバーソウル

 

「ジャクソン?どっちに癒されたい?ねえ?どっちに癒されたい?」

 

顔は笑ってるが目が笑ってない玉藻、マジギレした玉藻の提案にジャクソンは

 

「嫌ァァァァ!ジャクソンノ丸焼キモ、ジャクソン煎餅モ嫌ァァァ!」

 

そう言いながらジャクソンは慌てて逃げ出すのだった

 

 

 

 

「杏奈ちゃん!またね!」

 

「芽衣!次はもっとゆっくりしていきなさい!ふんばり温泉の売り上げの為に‼︎」

 

芽衣は杏奈とそう話しながら別れを済ませ一同は次の目的地、浅草温泉へと歩みを進めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「巫力70万か・・神クラスじゃない・・流石ハオの再来と言われてるだけの事はあるわね麻倉芽衣」

 

芽衣は知らなかった・・とある誰かに監視されている事を

 

そして後に芽衣を取り巻く環境が大きく変わる事も今の芽衣には知る由もなかった

 

 

 




浅草に訪れた芽衣に迫る最大の窮地、芽衣は一体どうなる?

次回「漂うワカメ!グーたら娘とグータッチ」


今回のゲスト

里子さん 沼鬼に拐われた温泉大好き同盟の会員 通り名は一番風呂の
里子

和巳さん 温泉大好き同盟の会員 通り名は温泉案内人

沼鬼さん リーダーのA すぐキレるB 顔面バイブのCの三体

麻倉杏奈 芽衣の従姉妹 ふんばり温泉の若女将 怒ると凄く怖い 怒らなくても怖い最恐若女将 必殺技は幻の左 守銭奴


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第9話 漂うワカメ!グーたら娘とグータッチ

芽衣の持ち霊

継国縁壱 常識人だがツッコミが弱く濃いキャラ達に埋もれがち 

継国巌勝 常識人っぽいが別のベクトルに片足を突っ込み時折ツッコミ不可能な発言をするお兄ちゃん

スピリット・オブ・ファイア 葉王より芽衣の方が好きな五大精霊





麻倉芽衣 グーたら生活を満喫したいポンコツ、ゆっくり過ごす為にやるべき事は最低限頑張る 胸は割と大きい

玉村玉藻 芽衣にだけ豹変する煩悩修験者、見た目は可愛らしいロリ
胸は残念な人

竈門炭治郎 素直で努力家の長男 庇っているようで煽っているという話術の持ち主 胸は筋肉

竈門禰豆子 心優しい長女 寝る子は育つを体現する熱きファイター
胸はTPOに合わせる






芽衣達が浅草温泉へと歩みを進めてる頃無限城では〜

 

「童磨‼︎童磨‼︎」

 

そう叫びながらブルブルと震える無惨、顔面蒼白で冷や汗もダラダラ流す無惨は童磨早く来い!と願いながら童磨を待っていると

 

「お呼びですか?無惨様」

 

そう言って用件を聞こうとする童磨、無惨の状態異常には気付いていたが、あぁまた麻倉芽衣だなと察し面倒臭いのでスルーしていると

 

「麻倉芽衣の危険度が上がった」

 

そう言いながら更に青ざめる無惨、童磨は上がるも何も最終から危険度MAXなんですが?遠隔じゃなく直接見てほしい、寧ろバッタリ遭遇してほしいその方が絶対面白いと内心思いつつも

 

「無惨様、具体的にどう危険なのかわかりません」

 

そう無惨に返すと無惨は

 

「貴様!私に麻倉芽衣がどう危険なのか言わせるつもりか‼︎」

 

そう言いながら機嫌が悪くなる無惨、自らの脅威になる者にはビビるくせに部下には態度がデカい無惨に童磨は

 

うわぁ〜なんなんコイツ?自分から振っといてこれはないわ!本当は言いたくて仕方ないけど、相手がどうしてもというから仕方なく言ってやる!みたいな流れにしたいんだろうな!と考え

 

「無惨様!俺は無惨様が言いたくないのだったら聞きません」

 

そう無惨に返した童磨、俺は別に聞きたくないし無惨様がどうしても言いたいのなら仕方なく聞いてあげよう

 

そのようなニュアンスを含めた返しに無惨は

 

「そうか童磨よ!そんなに麻倉芽衣の事が聞きたいか‼︎」

 

そう言いながら機嫌が良くなる無惨、本当は言いたくて仕方ない無惨は脳内で言いたくないのなら聞きませんを聞きたいから言って下さいに変換、自己都合もいいとこだが無惨は何も間違えない!無惨はいつも正しいので童磨のえっ⁈コイツ脳に蛆虫湧いてるんじゃないかという顔付きに気付く事なく芽衣の危険性を語り出そうとすると

 

「最近俺が教祖をしている宗教に可愛い娘が入信したんですよ、麗愛桜って変わった名前だけど妖艶な娘で喰べるのが勿体ないくらいで」

 

そう言って話の流れを自分の流れに持ち込む童磨、自分のペースに巻き込めば無惨はうざがって何処かに消えるだろうと童磨はお喋りを続けていくのだった

 

童磨は自分の教祖をしている胡散臭い宗教、万世極楽教に最近入信した麗愛 桜(うらあ さくら)という少女を気に入っており、無惨に延々とその少女の事を語り出す童磨、女の子の話ならばキワモノの芽衣よりお気に入りの女の子の方が童磨としては断然良いので饒舌になる童磨に無惨は

 

「そろそろ時間だ・・私は浅草へ向かう」

 

そう言いながら童磨の元から立ち去る無惨、いつもならキレる無惨だが今キレたら本当は言いたくて仕方ないとバレるのでグッと堪えてプライドを保つ無惨は少し大人になったのだろう

 

そんな無惨が立ち去ったのを見て童磨は

 

「んじゃ俺も帰ろうかな」

 

そう言いながら機嫌が良い童磨は万世極楽教へと帰っていくのだった

 

 

 

 

 

ところ変わって浅草温泉を目指す芽衣一向は道中芽衣のお昼寝タイムを挟みながらも歩を進め、ようやく浅草に着いた時には既に夜になっていた

 

「ふぉぉ!浅草は夜でも人が多いね」

 

「そうだねぇ〜、迷子になったら大変だね」

 

そう話す芽衣と玉藻の2人、浅草は夜でも人が多く煌びやかに明るい街並に感嘆していると

 

「人が多い・・夜なのに街も明るい」

 

そう言いながらゲッソリする炭治郎、山育ちの炭治郎には浅草の雰囲気が馴染めず人混みに酔うと人の少ない裏通りに避難しようと歩き出す

 

「おほー(о´∀`о)路地裏で絡み合う背徳の大正浪漫!」

 

「うわぁ〜!芽衣見ちゃ駄目だよ‼︎」

 

「すいませんでした‼︎」

 

路地裏に逃げた炭治郎達は路地裏でイチャつくカップル達を目撃してしまい、頭の中が思春期な芽衣は興奮してゴシップ雑誌のような見出しを語り出すと変態なのに正論を言って芽衣を引き連れ逃げ出す玉藻ととりあえず謝る炭治郎、この路地裏は駄目だと別の路地裏を探していると大通りから外れた街道の人通りが少なくそこで落ち着く炭治郎はふと先を見て営業中の屋台を見つけ

 

「ここまで何も食べてなかったな」

 

そう言いながら炭治郎は屋台に近付いて行くと

 

「へいらっしゃい‼︎」

 

そう元気よく営業を開始する屋台の店主、屋台にはうどん・そばと書いてあり炭治郎は何にするか少し考えると

 

「山かけうどんで」

 

そう言って山かけうどんを注文すると

 

「はいよ!お嬢さん方は何にしやす?」

 

店主は炭治郎の後ろにいた芽衣達に注文を尋ねると芽衣と玉藻は

 

「カレーうどん」

 

「じゃあ私は芽衣の食べたカレーうどんの残り汁を」

 

芽衣は以前、巷で話題になっていたカレーうどんを食べに連れて行って貰って以来カレーうどんが好物となっており店主にカレーうどんを注文し玉藻は好物の芽衣が食べたカレーうどんの残り汁を注文ではなく所望すると

 

「ウチはカレーうどんはやってないんだわ、すまねぇ!あとそこの嬢ちゃん!客にこんな事言うの失礼だがちょっと気持ち悪いな」

 

そう返す店主、数年前にカレーうどんが考案され話題になり店主もカレーうどんを食べた経験はあるのだが自分の屋台に取り入れる気はなくカレーうどんを注文した芽衣には申し訳なく思っているが玉藻は注文ではなく芽衣が注文した品の残り汁、それを迷いも無く言い出した事で店主はコイツ気持ち悪っ‼︎とその感情を少しマイルドにして伝えると

 

「エッヘッヘ、玉藻良かったね」

 

「いや、良くないよ!」

 

「いや普通に注文すれば良くないか?」

 

それが玉藻のデフォルトです!そんなニュアンスを含めた芽衣の笑いに玉藻は否定するも気持ち悪いのは事実であり、炭治郎は最初から普通に注文すれば良かったのにと思いそう言うと

 

「じゃあ‼︎山かけうどんで‼︎」

 

はいはい!普通に注文すれば良いんでしょ?と何故か憤慨しながら注文する玉藻、芽衣は少し悩んだ末に

 

「じゃあ私は全乗せネギ増しまし麺固めで!」」

 

なんと芽衣が注文したのは全てのトッピングを乗せたうどん、どこぞのラーメン屋の常連の如くネギの増量をサラッと言い出すあたりコイツ食い意地半端ないと店主は思いつつも

 

「はいよ!山かけうどんと全乗せネギ増しね!」

 

まあ普通に?注文してくれてるから野暮な事は控えようと営業スマイルで対応する店主、チャチャっと麺を茹で山芋を擦り下ろすと

 

「はいよ!やまかけうどんあがり!」

 

そう言いながら炭治郎と玉藻に手渡すと炭治郎は先に熱々の汁を啜り玉藻は麺をチビチビと食べ始める

 

芽衣は全乗せネギ増しましの注文なので提供できる時間も長くとりあえず寛ぎながら待っていると

 

「はいよ!全乗せネギ増しましお待ちどう‼︎」

 

店主からの掛け声に芽衣はうどんを受け取ると箸を取り

 

「頂きます!」

 

そう言っていざ実食!・・のタイミングで炭治郎が

 

「この匂い・・・」

 

そう言って固まる炭治郎、芽衣はどの匂い?はっ!まさか私のトッピングを横取るつもり?駄目だから!全部私のだから!食べたければ自分で追加して!と内心思いながら炭治郎をチラッと見ると炭治郎は手に持つ器を落とし動揺を隠し切れない表情で辺りをキョロキョロして急に走り出す

 

芽衣は炭治郎に何かあったのかと心配になり追いかけようとするがまだうどんは一口も食べていない、ほんの少し葛藤の末芽衣は

 

「玉藻!うどん食べながらそこで待ってて!禰豆子ちゃんよろしく!」

 

そう言いながら芽衣はうどんを手に炭治郎の後を追いかける!

ただし!歩きながら!うどんを食べながら!

 

そんな芽衣が炭治郎に追いつく筈もなく、芽衣は・・・迷子になった

 

 

 

 

一方の炭治郎は匂いの元凶、自分達の家族を殺した張本人無惨と浅草の大通りですれ違う、無惨はすれ違いざまに通行人の首筋に血を流し込み鬼化させる事で騒ぎを起こすと連れの親子と共にその場を去って行った

 

無惨を追いかけたい炭治郎だが目の前で鬼化した青年を放っておく事も出来ず青年を押さえつけながら無惨に必ず刃を突き立てると宣言するのだった

 

そんな騒ぎが起こる中迷子なった芽衣は、

 

「私迷子になった?・・まぁいっか何とかなるよ!うどん旨っ!」

 

割と気楽な芽衣はうどん食べながら歩き回り

 

「あっ!浅草温泉探さないと!あと炭治郎君も」

 

炭治郎を追っていた筈がいつの間にか温泉へとシフトした芽衣、炭治郎はついでとばかりな芽衣に迫る1人の男性、その男性は芽衣に

 

「 Excuse me. May I ask you something?」

 

そう英語で話しかけてきた異国の男性、うどんを手に歩く芽衣は凄く目立つので声をかけたのだろう、男性は道を聞きたいのだが芽衣は

 

「ペ・・ペペペ」

 

突然の英語に戸惑う芽衣、勿論英語など喋れない芽衣はどうやって話したらいいか悩み必死に言葉を紡ごうとするが

 

「pe pe pe?」

 

芽衣のトンチキな発言を復唱する異人の男性、流石に言葉の壁までは何とかならないので芽衣は

 

「ぺらぺ〜らぺらぺ〜らぺらぺ〜らぺらら〜」

 

とりあえず何ちゃって英語を話す芽衣、しかし英語にかすりもしない上に日本語ですら通じない全く無意味な芽衣の発言に

 

「縁壱!芽衣の言ってる事は無視するとしてあの異人は何と言ってるのだ?私に分からぬ、教えてくれ縁壱」

 

芽衣の発言を理解するのは不可能、考えるだけ無駄と即座に理解した巌勝は異人の言葉の意味を縁壱に聞くが

 

「兄上・・この際だからハッキリ言わせて貰うが、私は異国の言葉など一切知らない!私に聞かれても困る」

 

そう巌勝に返す縁壱、麻倉葉王の再来と呼ばれ規格外のシャーマン能力を持つ芽衣、鬼殺隊に呼吸を広めた始まりの剣士である縁壱、十二鬼月最強の上弦の壱であった巌勝、その3人がかりでも歯が立たない言葉と言う名の壁を相手に芽衣達はかつてない窮地に立たされていた

 

 

そんな時だった!異国の男性の背後から

 

「その娘に道を聞いても分からないわ、だってその娘も迷ってるのだから」

 

その声は少女の声だった、少女が何者かは分からないが芽衣達にとって藁にもすがりたい程の助っ人、芽衣は異国の男性の背後にいるであろう少女に、異国の男性は声のする背後の少女に振り返り両者の視線が少女に向けられると

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

芽衣、縁壱、巌勝、異国の男性共に沈黙、人は未知なる存在に遭遇した場合どんな行動を取るのだろうか?反応は人により差異はあるだろうが

この4人の反応は沈黙、完全なる沈黙!僅かな知識でもあれば思考を巡らせ自分なりの解釈をする為に沈黙し考え込むのだろう!だがこの4人の沈黙は思考停止、あまりの出来事に状況を理解する事を拒みただ立ち尽くす4人、この未知なる存在との遭遇はあまりにも衝撃的だった

 

少女だと思っていた4人が目にしたのは・・・宇宙人‼︎

見た目は完璧なグレイタイプ、体躯は小さいがそれに比較して頭部がデカいその宇宙人、少女だと思っていたのに宇宙人、無論芽衣達は宇宙人の知識も見聞もないので目の前の存在が宇宙人だと思う事はなく

 

「不思議生物・・だよね?」

 

「不思議生物・・だと思う」

 

「不思議生物・・の筈だ」

 

芽衣達が言うこの不思議生物、普段なら芽衣が鬼に対し使う言葉ではあるが今回のそれはガチの不思議生物、UMAに対して言ってるのだが

とにかく訳が分からない、3人共歯切れの悪い確認をしていると

 

「うわぁ〜‼︎化け物ぉぉ‼︎」

 

そう言いながら逃げ出した異国の男性、芽衣はそれを見て

 

「日本語使えるなら最初から使ってよ!」

 

そう言って異国の男性に憤慨していると

 

「それは私の能力、私の持ち霊グレイソーサの能力よ」

 

そう芽衣に話しかけてきた宇宙人、この宇宙人もシャーマンらしく持ち霊のグレイソーサの能力だと芽衣に話すと

 

「私の持ち霊グレイソーサは宇宙からの来訪者、この星の言語全てを理解するより全ての言語を共通化する方が簡単ってグレイソーサが言ってた」

 

そう芽衣に説明する宇宙人、曰く一定の範囲内の言語を共通化する事で意志の疎通を図れると芽衣に説明する宇宙人、先程の異国の男性が日本語を使っていたが本人は英語を使っており芽衣にはそれが日本語に聞こえていたという大変ご都合主義な便利能力だと宇宙人は芽衣達に話すと

 

「私はラザニー、貴方をずっと見ていたわ!ハオの再来麻倉芽衣」

 

そう言いながらラザニーと名乗る宇宙人は芽衣を興味深く観察していると

 

「何が目的なわけ?私今から温泉行くんだけど」

 

温泉行きたいから手短にね!そんなニュアンスを含ませた芽衣の返しに

ラザニーは

 

「目的は2つ、ハオの再来と呼ばれる貴方が危険なのか見極めさせて貰うわ、危険だと判断したら貴方が従えてるスピリット・オブ・ファイアを奪い返し本来の場所に還すわ!まあ巫力70万の神クラスを相手にするのは骨が折れるけど」

 

ラザニーは芽衣を真っ直ぐ見つめながらそう話すと

 

「2つ目の目的は・・まだ貴方には言えないわ!」

 

そう話すラザニーに芽衣は

 

「再来再来って!私は葉王じゃないし!私は麻倉芽衣!ゆっくり過ごしてマッタリしたい麻倉芽衣だから!」

 

そう言って憤慨する芽衣、芽衣がシャーマンとして結果を残せば流石葉王の再来、何かあれば葉王の再来だからと芽衣本人としてではなく葉王の偶像として見られてきた芽衣、ラザニーの発言にまたもや自分が葉王の偶像として見られてると思いそう言ったのだが

 

「貴方はハオじゃないわ!貴方は貴方、麻倉芽衣という1人の人間、私は麻倉芽衣という人間を見極めに来たパッチの祭司よ」

 

そう芽衣に話すラザニー、シャーマン界では有名な葉王とハオ、その葉王の再来と呼ばれても麻倉芽衣は麻倉芽衣という1人の人間、決して葉王でもなければハオでもない!だからこそ葉王の再来とまで呼ばれる麻倉芽衣という人間がどんな人間なのかを確かめに来たラザニーは正直にそう芽衣に話すと

 

「エッヘッヘ!ラザニーは良い・・不思議生物だね」

 

芽衣は自分を葉王の偶像ではなく麻倉芽衣という1人の人間として見てくれたと気付き笑いながらラザニーを良い人と言おうとしたが人なのか分からないので不思議生物だねと言うと

 

「それにしても巫力70万か、産まれつき巫力は多いと思ってたけど何で私の巫力が分かるの?」

 

そうラザニーに質問する芽衣、芽衣は立て続けに

 

「それに神クラスって?パッチって何?」

 

芽衣の質問攻めにラザニーは

 

「教えるのは良いけど私達目立ち過ぎじゃない?」

 

そう芽衣に話すラザニー、街中に奇妙な生命体とうどんを持ち歩く少女の組み合わせは良くも悪くも目立ち過ぎで周りからの視線が痛かったラザニーは

 

「とりあえずどこかゆっくり出来る場所で話しましょ?」

 

そう芽衣に提案するラザニーに芽衣は

 

「よし!ゆっくりするなら勿論温泉!温泉といえば私、ゆっくり大好き麻倉芽衣!」

 

温泉大好きな芽衣はラザニーにそう言って温泉に向かおうとすると

 

「カァー!芽衣サン!温泉トイエバ私モ忘レテハ困リマスワ」

 

そう言って慌て出す温泉大好きな温泉烏のまんの子、ラザニーはまんの子を見て

 

「烏って喋れるのね、珍妙だわ」

 

そう言ってまんの子を観察するラザニー、そんな様子を見ていた縁壱と巌勝の2人は

 

((お前が一番珍妙何だが))

 

見事に感想が一致していた、流石双子!

 

そんなラザニーを引き連れ芽衣は浅草温泉を探しに歩き出す

 

そんな芽衣達!(ラザニーを除く)は大事な事を忘れていた!

 

ーー炭治郎ーー

 

 

その炭治郎はといえば

 

「あれ⁉︎芽衣は⁈」

 

「芽衣なら炭治郎君を追って・・追ってたのかな?あれ」

 

屋台で玉藻達と合流していた

 

炭治郎は騒ぎに駆けつけた憲兵達と青年を取り合う問題に直面していたがそこに助けが入りその人物と後程落ち合う約束をしていた為、待ち合わせの場所へと行くのだが芽衣の捜索も追加されると

 

「芽衣なら多分大丈夫だと思う」

 

芽衣の事だからきっと何処の温泉に入ってのんびりするだろうとあまり重要視していなくそのうち合流出来るだろうと楽観視していた

 

そんな芽衣達、浅草温泉を探し歩いていると

 

「芽衣サン!温泉業界デコノ烏アリト謳ワレタ私ノ一押シノ温泉ガ近クニ有リマスワ」

 

普段この烏は何をやっているのだろうか?芽衣の担当だけあって何かとユルい温泉烏はそう言って芽衣達を自分の一押しのも温泉へと案内するのだが

 

「芽衣サンコノ路地ヲ抜ケレバ近道デスワ」

 

まんの子はそう言って芽衣達を路地へと通すのだった

 

 

 

 

 

一方騒ぎを起こして炭治郎を撒いた無惨の現在はーー

 

「青白い顔しやがってよぉ!今にも死にそうだなぁ!」

 

チンピラに絡まれていた!

 

何故絡まれていたかというと時は10秒前に遡る

 

遡るほど大して巻き戻っていないのは無惨が路地に入った直後チンピラに絡まれたからだ!

 

酔ってる奴程酔ってないと言うがこのチンピラもそうなのだろう、路地裏のゴミ捨て場で寝ていてもおかしくないこのチンピラは酔いに任せてバックステップからのムーンウォークを練習していたのかタイミングよく路地裏を歩いてきた無惨に接触、実際にはムーンウォークでもバックステップでもなくただの酔っ払いの千鳥足だがとりあえず無惨に接触

酔うと気が大きくなり他人に絡む迷惑極まりないタイプなのだろう、このチンピラは無惨に絡み出した

 

無惨はTPOをわきまえてちゃんとすみませんと言えたのに絡み出したロン毛のチンピラ、無惨はそれでも急いでいると言って相手にせず大人の対応を見せたのだが、それでも尚絡むチンピラ!

 

正直言ってキレても良いと思う!だってウザいもん!

 

無惨はそれでも我慢した、だけどどうしても我慢出来なかった!

 

「青白い顔しやがってよぉ!今にも死にそうだなぁ!」

 

これには無惨も我慢出来ない!チンピラをワンパンしようと拳を握り締めたその時‼︎

 

ーーズズッズルズルーー

 

「うへぇ〜!うどんの麺伸びちゃってるよぉ」

 

無惨から見て真正面、チンピラの兄貴分と連れの女の更に向こう、うどんを啜りながら愚痴を吐きこちらに歩いてくる見覚えのある顔が‼︎

 

忘れたくても忘れられない!無惨にとって最大の脅威‼︎麻倉芽衣‼︎

 

無惨は震えた、それはチンピラに対する怒りではない!いやチンピラに対する怒りはあるがそんな事すら霞むほど麻倉芽衣が怖い‼︎

 

先程チンピラが言った言葉はある意味正しい!

無惨は青白い顔をしている!今にも死にそうな顔をしている!

 

「何だぁ?何とか言えよ!」

 

そんな無惨の状況を知らないチンピラは無惨に執拗に絡むも無惨はチンピラをどうこうする余裕はなくこちらに歩いてくる芽衣に釘付けになったままだったが

 

「あぁん⁈可愛い女だなぁ!俺がお持ち帰りしちゃおうかなぁっと!」

 

チンピラはそう言って近くまで歩いて来た芽衣に触ろうとすると

 

「うどんが溢れるからぁ!」

 

芽衣はチンピラにそう文句を言うがチンピラはお構いなしに芽衣を触ろうとする

 

ーードゴォーー

 

「うぼっ⁈」

 

そんな時だった、芽衣を触ろうとするチンピラの顔面に無惨の裏拳が炸裂しチンピラは一撃でKOされる

 

芽衣が目の前にいる為殺すのは非常にマズイと判断した無惨の手加減で幸いにも一命を取り留めたチンピラ、無惨がチンピラをワンパンした事で兄貴分のハゲたおっさんが無惨に絡み出してくる

 

「おい!俺の弟に何しやがった⁈」

 

そう無惨に文句を言う兄貴分、兄貴分なら弟のヤンチャを窘める事も兄貴分の役割だと思うが見過ごした挙句、制裁を受けた事だけを咎めるのは筋違い、そんな兄貴分は無惨にテレフォンパンチをお見舞いしようと拳を振りかぶると

 

「見苦しいわよ!」

 

そう言って無惨と兄貴分の間に割り込んできたラザニー

 

ラザニーは小さな拳を握り締めると

 

「ラザニーのグータッチ」

 

ラザニーはそう言って兄貴分をジャンピングアッパー、確かにグーでタッチしてるのだが可愛いらしい名前とは裏腹に兄貴分はえげつない飛距離を舞い上がりそのまま地面にダイブ、幸い生きてはいるが病院送りは免れないだろう兄貴分にラザニーは

 

「死ぬよりマシでしょ?」

 

そう言いながら手をパンパンとはたき芽衣の元に戻って来ると

 

「あの?大丈夫ですか?酔っぱらいに絡まれてたようですが」

 

芽衣は無惨にそう声をかけて心配そうに無惨を見つめる

 

無惨は青白い顔をして冷や汗を流し足もガクガクと震えているので芽衣はチンピラに絡まれて怖かったんだろうと心配しているのだが、まさか自分が怖がられて震えているとは思わない芽衣は

 

「顔青白いですよ?大丈夫ですか?」

 

芽衣の心配は尽きず無惨を気遣うが

 

大丈夫じゃない!全く大丈夫じゃない‼︎顔が青白い?そうだろう!今にも死にそう?その通りだ‼︎だから頼む!麻倉芽衣!早く何処かに行ってくれ!

 

無惨は内心そう思いながら芽衣をチラッと見て

 

「大丈夫です!私の持病でして、今近くの病院に行く所なんです」

 

無惨をそう言い訳して芽衣から目を背け・・・ラザニーと目が合ってしまう

 

無惨は芽衣が怖いあまりぶっ飛んだ貴方分もラザニーにも気付かないでいたがやっと逃れると少し安心した為、この珍妙な宇宙人に気付いたのだった

 

そんな無惨、ラザニーを見て

 

なんだこの珍妙な生物は⁇明らかに人間じゃない!ましてや鬼は有り得ない!こんな珍妙な生物が鬼なわけがない!・・麻倉芽衣!赤い巨人の他にもこんな珍妙な生物までいるのか⁉︎コイツには絶対関わりたくない!頼むから早く何処かに行ってくれ‼︎

 

無惨は必死に祈りながら芽衣達が去って行くのを待つが

 

「あの?動けないんですか?持病ってそんなに悪いんですか?」

 

その場から動かない無惨を見て芽衣は動けないほど持病が悪いのかと心配し無惨を見つめるが

 

麻倉芽衣!頼むから早く何処かに行け‼︎私の持病はお前だ!お前がいなくなれば良くなるんだ!心配する振りをして私を苦しめるとはなんて恐ろしい奴だ!

 

そう内心思いながら必死に耐える無惨、そんな無惨に非情なる言葉が突き刺さる

 

「鬼無辻無惨?」

 

そう言ったのは芽衣、無惨は芽衣に名前を呼ばれた事でコヒュッと過呼吸気味になりまさかバレたのかと顔面蒼白になるも

 

「お嬢さん私の名は月彦と申します、きっと誰かと間違われているのでしょう」

 

そう必死に演技をして誤魔化す無惨、そんな無惨に芽衣は

 

「縁壱さん!巌勝さん!違うって言ってるよ?」

 

そう縁壱と巌勝に話す芽衣、実は縁壱と巌勝の2人は目の前の男が無惨だと気付き芽衣に無惨だ!コイツは無惨だ!と騒ぎ芽衣は無惨の名を口にしただけだったのだが

 

「お嬢さん何を言ってるのですか?その縁壱さんや巌勝さんとやらは何処に?」

 

縁壱と巌勝の姿が見えない無惨は当然芽衣の発言に疑問を持つが芽衣は

 

「私の後ろにいます!」

 

そう無惨に言うが無惨は

 

「すみません私にはどうやら見えないみたいで、どんな方なんです?」

 

芽衣にその2人はどんな人なのか質問する無惨、芽衣はそんな無惨に止めを刺す答えを話し出す

 

「縁壱さんは始まりの剣士と呼ばれた人で巌勝さんは縁壱さんのお兄さんで上弦の壱だったんです。あ!こんな事言っても分かんないですよね」

 

そんな芽衣の発言に無惨は

 

「そうか・・私を殺しに来たか麻倉芽衣」

 

突如様変わりした無惨の態度に芽衣は

 

「はい?」

 

いやいきなり何言ってんだコイツ?そんな顔をして無惨を見る芽衣、そんな芽衣に対して無惨は

 

「だが私とてそう易々と殺される訳にはいかないのでな」

 

そう言って無惨はいきなり戦闘態勢に入ると

 

「騒ぎを起こすと色々と面倒!だから駄目!」

 

そう言ってラザニーは無惨の周囲の重力の負荷を上げ無惨を地面に叩き伏せる

 

「グォォォ!何だ!体が重い‼︎押し潰される」

 

ラザニーの能力によって這いつくばる無惨、そんな無惨にラザニーは

 

「貴方から人間の気配を感じないけど、貴方の中からハオの・・パッチの悪魔の気配がするわ」

 

そう言いながらラザニーは無惨を睨みつけ

 

「ねえ?麻倉芽衣、貴方は何か知ってる?」

 

芽衣が何かしら知ってるんじゃないかと思ってそう聞くと

 

「知ってるけど・・パッチの悪魔って何?葉王がパッチの悪魔?よくわかんないや」

 

芽衣は葉王と無惨の関係は知っているがラザニーの言うハオもパッチの悪魔も知らない為、そう答えるのだが

 

「なるほど!まずは私達の認識を照らし合わせないといけないわね」

 

ラザニーはそう言って無惨の重力を解除すると

 

「貴方にもついて来て貰うわよ?」

 

無惨にそう伝えると無惨は

 

「貴様‼︎」

 

逆鱗に触れたのか無惨はラザニーを爪で斬り裂こうとするも

 

ーーガキィィィンーー

 

無惨の強靭なその攻撃がラザニーを貫通する事はなく

 

「あぁ!これオーバーソウルだから単純な物理攻撃は一切通じないから

無駄よ」

 

そう無惨に告げるラザニー、宇宙人の姿はラザニーのオーバーソウルでありオーバーソウルはオーバーソウルなどの巫力をもってしか破壊出来ない為、巫力を持たない無惨の物理的な攻撃はラザニーにとって痛くも痒くもないのでありラザニーは特に驚く事もなく淡々としていた

 

因みにラザニーのオーバーソウルはオーバーソウルの最終形態、甲縛式オーバーソウルである

 

無惨は自分の攻撃が通用しない事を理解すると

 

「それで話とは何だ?特別に聞いてやろう?」

 

態度こそデカイが掌を返した行動に出た無惨、下手に逆らうより大人しくした方が身の為だと察した故の行動だが、そんな無惨に芽衣は

 

「やっぱり貴方が無惨だったんだね、縁壱さん達が言ってた事は間違いじゃなかったんだねエッヘッヘ」

 

芽衣は目の前の男が無惨だと分かり縁壱達が間違ってなかったと笑うと

 

「麻倉芽衣!貴様は何を考えている?私の命を握っているからとふざけてるのか」

 

そう言ってビビりながらもちょっと怒ってみる無惨、そんな無惨に芽衣は

 

「え〜と・・・何を言ってるの?私鬼殺隊じゃないし別に命を奪いたいとか思ってないよ?まぁ襲われたら別だけど、私はゆっくり過ごしたいし貴方が何もしないなら私も何もしない」

 

そんな芽衣の返答に無惨は

 

「その言葉を易々と信じる程私は愚かではない!貴様の先祖が私に何をしたか知っているか?私は貴様ら麻倉家を信じない!」

 

そう芽衣に返す無惨、芽衣は沈黙すると

 

「芽衣!あの男に情けをかける必要はない!」

 

「奴が生きてる限り悲劇は繰り返される」

 

無惨の存在が悲劇を生むと主張する縁壱と巌勝、それは事実ではあるが

真実ではないと芽衣は考え無惨に詰め寄ると

 

「葉王の馬鹿のせいで酷い目にあったんだよね?ごめんなさい‼︎私が謝っても意味ないのかもしれないけど、ごめんなさい‼︎」

 

芽衣はそう言いながら無惨に頭を下げて一生懸命に謝罪をする

 

縁壱達は何故芽衣が無惨に謝る必要があるのかと憤るが芽衣は

 

「全ての悲劇の元凶が私の先祖麻倉葉王のせいだから!この人も葉王の被害者、だからといって悪い事が許されるわけじゃないけど話をすればきっと何とかなるって!私は思う」

 

そう真剣に訴える芽衣に縁壱や巌勝は

 

「兄上・・憤りはあるが私は芽衣の意図を汲んで様子を見るのも悪くないと思う」

 

「・・・ふむ・・・私も無惨をどうこう言える立場ではなかったからな、芽衣ならば鬼狩りとは違う道を見つけるのかもしれん」

 

そう話し合う縁壱と巌勝、確かに無惨は人を鬼に変え悲劇を生み出した張本人、憤りはあるが鬼狩りのように鬼を殺して解決する以外の道もあるんじゃないかと考える縁壱、その考えを否定するのなら巌勝とは和解出来なかった、鬼となった巌勝を、上弦の壱黒死牟を斬って終わりにしても縁壱と巌勝の悲しみは拭えないままだっただろう、だからこそその道を見つけてくれた芽衣の意図を汲みたいと考える縁壱、巌勝もまた縁壱と同じ考えであり芽衣の意図を汲んでみようと考え

 

「芽衣!お前ならきっと何とか出来る」

 

「私達はお前の持ち霊だ、お前を信じよう」

 

縁壱と巌勝は芽衣にそう言うと芽衣は

 

「エッヘッヘ」

 

と2人に笑い出して

 

「よし!ラザニー!無惨さん!温泉行こう‼︎」

 

そう言い出した芽衣、そんな芽衣に無惨は

 

「麻倉芽衣!貴様は馬鹿なのか?何故私が貴様と風呂に入らなければならない?」

 

芽衣の提案に憤慨する無惨、芽衣は無惨の手を掴むと

 

「温泉は心の洗濯、裸の付き合いは心のぶつけ合い、腹割って話そ?」

 

そう話す芽衣だが無惨は

 

「貴様には羞恥心はないのか⁉︎まさか混浴する気ではないだろうな?」

 

そう返した無惨に芽衣は

 

「・・・・あっ‼︎」

 

すっかり忘れていた芽衣、無惨は芽衣を見て

 

「貴様・・ポンコツではないか‼︎」

 

そう突っ込む無惨、これには縁壱も巌勝も同調しウンウンと頷く2人

無惨は芽衣の雰囲気に呑まれいつの間にか震えもなくなり恐怖を感じなくなっていたが毒気を抜かれツッコミキャラへと変わっていた

 

「麻倉芽衣・・ポンコツ」

 

芽衣を見極めにやって来たラザニーの芽衣に対する認識もポンコツと刷り込まれた

 

 

 

 

 

 

その頃炭治郎は〜

 

「芽衣がいないと寂しいよぉ」

 

「むぅぅ」

 

「おい!醜女が煩いぞ!」

 

「醜女は失礼だろ!玉藻は気持ち悪いけど醜女は失礼だ!」

 

「いや・・お前も大概失礼だと思うが」

 

そんな会話をする炭治郎、炭治郎は一応芽衣を探しながら待ち合わせの場所に向かいそこで愈史郎という鬼の少年と合流し珠世という女性に会うのだが、道中愈史郎が玉藻達を見て醜女と言うと炭治郎は醜女とは醜い女の意味だと理解し「いや玉藻の見た目は悪くない!」と完全に禰豆子は除外する炭治郎、炭治郎曰く禰豆子は町一番の美人だと称しており醜女=禰豆子と結びつかないので消去法で玉藻になるのだが、炭治郎は玉藻は気持ち悪いけど見た目は悪くないと思っていて愈史郎から醜女が煩いと言われた時は素直に玉藻は気持ち悪いが見た目は悪くないと庇うのだが愈史郎から見れば炭治郎も相当失礼な事を言っており全く自覚がないのでちょっと玉藻が可哀想だと思っていた

 

そんなやり取りがありながら炭治郎達は珠世の待つ診療所へと案内されるのだった

 

 

「良く来てくれました、私は珠世と言います」

 

「私は玉藻と言います」

 

「おい!玉藻様がご挨拶してる時に邪魔するな」

 

「・・玉藻・・様?」

 

「あぁぁ!珠世様と醜女の名前が似てるから間違えてしまったではないか!」

 

「愈史郎、女性に醜女など言ってはなりません」

 

「はい‼︎言いません‼︎」

 

こんな展開が起こりつつ炭治郎達は珠世達と色々な話をするのだった

 

 

 

 

一方で芽衣達は〜

 

「仕方がない、これなら問題あるまい?」

 

そう言い出した無惨はどこに隠していたのか、着物に早着替えして女性の姿に変わると

 

「これならば女湯でも問題はない」

 

そう言ってドヤ顔になる無惨、そんな無惨に縁壱と巌勝は

 

「兄上・・・私は鬼無辻の性癖を垣間見てしまった」

 

「いや・・たまにあの格好をするのは見た事あるがまさか女湯に入る為に使っていたとは」

 

そう言ってドン引きする2人、まさか女装癖があり女湯に入る為に使っているとは思いもしない2人の発言に弁明出来ない無惨、2人が見えていたら弁明出来たのだろう、だが無惨は2人が見えないので誤解されたままだった

 

偶然だが芽衣と遭遇し命を狙われないと知った無惨、無惨にとって幸運ではあるが代わりに変態のレッテルを貼られた無惨、無惨としては変態のレッテルの方が命よりマシかもしれないが後に無惨はとある変態によって死んだ方がマシだと思う事になるがそればまだ少し先の話

 

何だかんだ温泉に行く気になっていた無惨は1人だと心細いので

 

ーーパチンーー

 

と指を鳴らして

 

「お呼びでしょうか」

 

「・・・・・」

 

2人の部下を呼び出し

 

「私はこれから温泉へ向かう、ついて来い」

 

「「はっ」」

 

そう言い出した無惨に従う2人の部下

 

1人は女性の鬼、名は朱紗丸もう1人は男性の鬼、名は矢琶羽

朱紗丸と矢琶羽は無惨に付き従い温泉を目指すのだが

 

「貴様は男だろう?まさか女湯に入るつもりじゃないだろうな」

 

無惨にそんな事を言われた矢琶羽、矢琶羽は内心で

 

え⁈男湯に入るつもりですが、まさか!貴方様は女湯に入る気ですか⁈

 

そう思っていると

 

「私が女湯に入る事の何が悪い!私は女だ!私が何か間違っているか?

私は女じゃないか?」

 

矢琶羽の心を読んだ無惨は矢琶羽にそう言って圧力をかけると

 

「いや男でしょ?流石に女湯に入るのは・・はっ!そうか!女装して女になりすまして堂々と女湯を除く、そうゆう性癖なんだ!ウンウン!性癖は人それぞれ!否定はしないけど流石に迷惑かかるからやめた方が良いかと思うけど」

 

そう突っ込む芽衣、縁壱と巌勝はウンウンと頷き朱紗丸は無惨を白い目で見つめ矢琶羽は芽衣に尊敬の眼差しをラザニーは宇宙人のオーバーソウルの中で無惨を軽蔑し居心地の悪い無惨は

 

「私もたまには冗談ぐらい言う、本気にするな」

 

そう言い訳する無惨、そんな無惨に対し一同は

 

(絶対本気だった)

 

そう心の中で突っ込む芽衣達、とりあえず温泉に行こうと芽衣が出発すると

 

「カァー!芽衣サン芽衣サン!ソウユウ事ナラトッテオキノマル秘スポットガアリマスワ!」

 

そうゆう事が何なのかわからないが、まんの子は烏のくせに[誰にも教えたくないマル秘スポット!自然が生んだ秘境の湯]という自作のガイドブックを持ち出し芽衣達をマル秘スポットへと案内し始める

 

「麻倉芽衣・・あの烏は何なのだ⁈」

 

「ふんばれふんばり温泉チームの一員、温泉烏のまんの子だよ」

 

まんの子に対する無惨の疑問にそう答える芽衣、だが芽衣の答えた内容も無惨にとって意味不明であり

 

「更に意味が分からなくなってきた」

 

そう言って考えることを辞めた無惨、やけに温泉に詳しい烏とポンコツだが規格外の化け物、意味不明な珍妙な生物、鬼が3人という普通ではない組み合わせも考えるだけ無駄だと察した無惨だった

 

 

そんな芽衣達、浅草から少し離れた山の中に入ると

 

「ケケケ!稀血の匂い!美味そうだァ‼︎」

 

そう言いながら芽衣に襲い掛かろうとする名も無きモブ鬼が現れ

 

「貴様!誰が麻倉芽衣を襲って良いと言った!」

 

そう言ってモブ鬼に圧力をかける無惨、モブ鬼は目の前の鬼が誰なのか一瞬で察すると突然震えだし今にも死にそうな顔になると

 

「ももも申し訳ありません!申し訳ありません‼︎」

 

そう言いながら土下座して命乞いをするモブ鬼、だが無惨の怒りは消えずモブ鬼は無惨の手によって亡き者にされるのであった

 

「無惨さんって案外優しいんだねエッヘッヘ」

 

無惨が助けてくれたと思った芽衣はそう言いながら笑うと

 

「勘違いするな!私は私の命令に逆らった愚か者を始末しただけだ、勘違いも甚だしい」

 

無惨は芽衣にそう言うと

 

「それでも助かった事に変わりないからさ、ありがとう」

 

芽衣は理由はどうあれ助かった事に変わりないと無惨にお礼を言うと

 

「貴様!そもそも貴様は私がいなくても赤い巨人や始まりの剣士、黒死牟がいるのだろう!」

 

無惨は自分がいなくても芽衣なら何の危険もないと言って照れ隠しすると

 

「エッヘッヘ」

 

とだけ笑って無駄の元から離れていった

 

「麻倉芽衣、貴様がいると調子が狂う」

 

離れていった芽衣を見て無惨はそう呟くのだった

 

 

そんな芽衣達、まんの子の案内で秘境の湯に辿り着くと

 

「温泉だぁぁぁぁ‼︎ふげっ⁈」

 

そう叫びながら芽衣は全力ダッシュ・・・からの転倒で温泉にダイブ

 

一同はそんな芽衣を見て

 

(なんて阿保なんだコイツ)

 

そう思っていた

 

 

そんなコントじみた芽衣は温泉から這い上がると

 

「ふっ(´∀`=)これが我流麻倉式温泉術・・え〜と・・水の呼吸だよ」

 

よほど恥ずかしかったのだろう、芽衣はカッコつけて言い訳をするものの何も思い付かず温泉=お湯=水=水の呼吸と連想してとりあえず誤魔化そうとすると

 

「パッチ式温泉術、ラザニーの水の呼吸」

 

なんか面白そう!ラザニーはそう言って芽衣の真似して温泉にダイブする

 

「カァー!まんの子流温泉術!カットバッグドロップターンデスワ」

 

温泉好きとしては譲れないまんの子は垂直に飛び上がるとそう叫び空中で急転直下、そのまま垂直に落下して温泉にダイブする

 

最早温泉で遊んでるとしか思えない2人と1匹に無惨達は

 

(大人しく温泉入ろ)

 

このままだと巻き込まれると判断した無惨達はそそくさと脱衣所に逃げ出すのだった

 

そんな珍劇がありつつ芽衣達は温泉に浸かりマッタリしだすと芽衣は

 

「あぁ〜〜〜あたまるぅぅ〜」

 

あぁ温まると言いたいのだが温泉で蕩けきった芽衣に語彙力はなく物凄いホッコリした顔でそう呟くと

 

「あたまる〜」

 

ラザニーもこれが正しい表現なんだろうと芽衣の真似をしてそう呟くのだが

 

いや!お前は誰だよ‼︎

 

そんな視線をラザニーに向ける一同、ラザニーは温泉に入るという事でオーバーソウルを解除して姿を晒していたのだ

 

歳は芽衣より少し下なのだろう、長めの黒髪が靡く小柄の少女、その手の少女が好きな輩は「メラァ」と喰いつくほどの美少女ラザニーは

 

「ふぅ、貴方が知りたい事を教えてあげるわ麻倉芽衣」

 

芽衣の顔を見ながらラザニーはそう言うと芽衣が知りたかった事を話し出すのだった

 

「私はグレートスピリッツの意志に従いシャーマンファイトを取り仕切る一族パッチ族のラザニーです、私が何故貴方の巫力値が分かるかというとパッチ族の伝統工芸の1つ、オラクルベルが貴方の巫力値を測定したから!」

 

ラザニーは芽衣にそう説明すると、

 

「なるほど!ちょっと説明が長いけど!ラザニーはパッチで伝統工芸って事だね」

 

ちょっと説明が長いと愚痴りつつなんとなく説明を理解したようであまり理解していない芽衣はラザニーにそう返すと

 

「麻倉芽衣‼︎いやポンコツ‼︎貴様の頭は何故こうも緩いのだ‼︎いいか!この娘はパッチ族という一族の娘で、そのパッチ族の伝統工芸のオラクルベルという何が貴様の巫力とやらを測定したとこの娘は言っているんだ」

 

無惨はラザニーの説明をあまり理解していない芽衣に呆れ、ラザニーの説明を復唱すると

 

「なるほど!最初からそう言ってくれたら分かったのに」

 

「・・・・最初からそう言っていた筈だが?」

 

今度は説明の内容を理解した芽衣は、自分のポンコツ頭を棚に上げて文句を言うと無惨は芽衣のあまりのポンコツ具合に怒りを通り越して呆れ果ててしまう

 

そんな芽衣と無惨のやり取りを静観していたラザニーは

 

「じゃ次進めるよ、オラクルベルが表示した麻倉芽衣の巫力値は70万

巫力が50万を超えるシャーマンは神クラスと呼ばれるわ、まあ神クラスのシャーマンなんて世界中探しても一握りしかいないけど」

 

ラザニーはそう淡々と芽衣に説明し芽衣は

 

「ふむふむ・・それって凄いの?」

 

今度の説明は理解した芽衣だが、それがどのくらいの凄さなのか実感出来ていない芽衣はラザニーにそう聞くと

 

「シャーマンファイトに出場したら間違いなく優勝候補ね、神クラスのシャーマンの持ち霊は神や神に準ずる階級の霊だもの、まぁスピリッツ・オブ・ファイアはそれ以上の存在だけど」

 

シャーマンは世界中にいるが個人の才能や経験で巫力値は様々だがごく普通のシャーマンならば巫力値は数百、良くて数千、優秀なシャーマンならば万を超えるシャーマンもいるが神クラスと呼ばれるほどの巫力を持つシャーマンはごく僅かであり、持ち霊も神や神格化された霊が殆どで芽衣の従えてるスピリッツ・オブ・ファイアはそれ以上の存在なのだとラザニーは芽衣に教えると芽衣より先に無惨が反応しラザニーに問いかける

 

「小娘!貴様の言っている『私はラザニーです!』貴様の名前などどうでも『私の名前はラザニーです‼︎ラザニーです‼︎』ラザニー」

 

無惨に名前を呼ばれない事にちょっとムカついたラザニーの圧力に押されつい名前を呼んだ無惨、ラザニーは満足そうに頷くと無惨の質問を聞き始め

 

「ラザニーの言っているシャーマンファイトやグレートスピリッツとは一体何なのだ?」

 

そうラザニーに質問する無惨、ラザニーは無惨と芽衣を見やると

 

「ここからが本題、まずはシャーマンファイト!シャーマンファイトはこの星の王たる存在シャーマンキングを決めるシャーマンによる戦いよ500年に一度開催されシャーマンキングになった者はグレートスピリッツを持ち霊に出来るわ」

 

そう芽衣達に説明するラザニー、シャーマンである芽衣はラザニーの言っている内容を理解してふむふむと頷き、シャーマンではないが無惨には思うところがありラザニーの話を静かに聞いていると

 

「次のシャーマンファイトの開催は100年後、つまり前回のシャーマンファイトは400年前に開催された」

 

ラザニーはそう言うと芽衣が

 

「その400年前にラザニーの言っていたパッチの悪魔が?」

 

そう話しかけた芽衣にラザニーはコクンと頷くと

 

「パッチの悪魔ハオ、ハオはパッチ族が管理していた五大精霊の一体スピリット・オブ・ファイトを奪ってシャーマン達を次々に殺し自らがシャーマンキングになろうとしたわ」

 

そう語り出すラザニー、芽衣はラザニーの話を聞いて、はっ!と自分の中で合点があいラザニーに

 

「その悪魔のパッチが葉王!私にスピリッツ・オブ・ファイトを押し付けた時400年前に奪ったって言ってたし・・100年後に転生するって」

 

そう語り出す芽衣にラザニーは

 

「そう!ハオはシャーマンファイトが開催される500年の周期に転生しシャーマンキングを狙ってる」

 

とラザニーが言うと芽衣は

 

「シャーマンファイトの周期が500年・・前回が400年前・・・前々回は・・・あれ?葉王って1000年前の」

 

そう呟いた芽衣、葉王が麻倉家を興したのが1000年前、前回のシャーマンファイトが400年前ならば前々回のシャーマンファイトは900年前

つまり葉王のいた時代から100年の空白があり芽衣はどういう事なんだと思案していると

 

「その100年の空白こそが私が鬼になった原因・・いや麻倉葉王によって鬼にされたと言うべきか」

 

今まで沈黙を保っていた無惨がそう呟くと芽衣は

 

「葉王に鬼の力を与えられたって事は麻倉家の文献にも記載されてるけど・・それだけじゃないの⁈」

 

麻倉家の文献に記されていた事実しか知らない芽衣は、無惨の発言にまだ知らない真実が隠されていると驚くと

 

「私は今から1000年前鬼になった、鬼狩り共ならそれくらいは知っている筈だが、私は鬼になりたくてなった訳じゃない!私はただ生きたかった!そしてその願望を麻倉葉王に利用された」

 

そう語り出す無惨、無惨は自らが鬼となった理由を芽衣達に打ち明ける

 

今から1000年前、無惨はとある貴族の若者だった、だが生まれつき病弱で常に死の影に脅かされいつ死んでもおかしくないと周りからは言われ無惨は自分の不幸を嘆き世間を憎みいつしか傲慢な性格へと変わっていった

 

そんな無惨だったが両親は無惨の病状が少しでも良くなるようにと色々と手を尽くすが無惨の病状が回復する見込みもなく両親は途方に暮れていた

 

当時は病や災いは鬼や物の怪の仕業だと信じられていたので両親は都で大陰陽師として名を馳せていた麻倉葉王に厄除けを依頼、葉王はその依頼で無惨と対面するのだが、無惨の世間を憎む心に葉王は興味を持ち自分と同じ鬼の力を無惨に与えると葉王は両親に知り合いだという医者を紹介し屋敷を立ち去っていく

 

無惨は葉王から鬼の力を与えられた結果人の心が視えるようになり、世間だけじゃなく人間そのものも憎み始めていた

 

そんな無惨の元にやって来た医師、彼は無惨の病状を本気で回復させようと親身になってくれる善良な医師だったが為に無惨も態度こそ不遜ではあるが邪険にはせず主治医として無惨に献身していた

 

ある日その主治医は葉王から万病に効くといわれるとある花を渡されその花を調合し無惨に投与した、主治医は知り合いでもあり大陰陽師と名高い麻倉葉王がくれた物だから間違いないと心の底から信じ無惨も主治医の心を視て信じた為薬を飲んだのだが病状は一向に回復しない

 

信じたのに裏切られた!人の心が視え人を憎む無惨が信用できる数少ない人物に裏切られた!無惨がそう思うのも無理はなかった

 

長い間死の影に怯えていた無惨がようやく回復すると期待したのに結果何も変わらない!喜びは怒りに信用は憎みに、無惨の心はこれを機に爆発!衝動的に主治医を殺めたが無惨の憎みは消える事はなかった

 

だが無惨の体には異変が起きていた、病弱故まともに歩く事も出来なかった無惨、病弱だった事が嘘のように回復し健康体になった無惨、主治医を殺めた事は悪かったと思いつつ喜びに満ち溢れるがそれもすぐに消え去った

 

健康体になった筈の体は何故か日光を浴びると全身が灼け無惨は二度と日の光を浴びる事が出来なくなってしまった

 

当然無惨は憤るが自らが主治医を殺めたので追求する事も出来ず怒りを募らせていると

 

「やはり此度の措置も失敗か」

 

そう声が聞こえ無惨は睨みながら背後を振り返ると

 

「麻倉葉王!失敗とはどうゆう事だ‼︎」

 

怒りに震える無惨は葉王に向かって怒鳴りつけると

 

「僕の延命措置の変わり身だよ、そなたは少し面白そうだったからね!

僕の鬼の力を与え延命出来るか試したのさ、失敗だったという事が判明したしそなたも少しは僕の役に立ったようだ」

 

葉王は自身の延命措置の実験台として無惨を使い、失敗という事実の判明は無惨のおかげだと皮肉を言うと

 

「貴様‼︎」

 

当然怒り狂う無惨、葉王の実験によって日の光を浴びる事が出来なくなったのだから葉王に怒りをぶつけるのは当たり前なのだが

 

「何の価値もない薄汚い人間風情が僕の役に立ったんだ、寧ろ感謝してほしいくらいさ」

 

幼少期に母を殺され人間を憎む葉王、そんな葉王にとって人間はシャーマンである自分とは対等ではなく使い捨ての駒、葉王にとって無惨の命は自身の目的の為の駒としか思ってなく、無惨にそのような口ぶりで喋ると

 

「失敗したとはいえ、そなたは死に怯える事のない永遠の生を得た筈だ!日の光に当りすらしなければね」

 

そう無惨に告げる葉王だが、その目は全く興味のない物を見るような蔑んだ目だった

 

「日の光に当れない体など何の意味がある!私はただ生きたかっただけだ!永遠の命など求めてはいない!」

 

そう嘆く無惨に葉王は

 

「100年後、僕はシャーマンキングになって人間共を1人残らず滅ぼす

その時はそなたも滅ぼしてやろう!」

 

用済みとなった無惨がどうなろうと知った事ではない葉王はそう無惨に告げると

 

「麻倉葉王‼︎貴様のせいで‼︎」

 

そう激昂し葉王に襲いかかる無惨、葉王は虫ケラを見るような目付きで

 

「降魔調伏」

 

そう言って鬼を従え式神とする巫術を駆使し無惨を抑えつけると

 

「鬼の力を与えたんだ、僕に逆らえる筈もないだろう!だが下賤な人間風情を従える気はない・・・いや!鬼の力を与えた際僕の人間を憎む思念も与えていたな、体も醜い鬼のようだ!・・面白い提案をしよう」

 

『人間を喰え!人間は鬼の餌だ!』

 

葉王は鬼の力を得ているとはいえ無惨を従える気はなく、命令ではなく暗示という形で無惨の意識に刷り込ませると

 

「もう会う事もないだろう、名も知らぬ哀れな傀儡よ」

 

そう言いながら葉王は無惨の元を去り二度と会う事はなかった

 

 

 

 

 

「笑えない!理不尽の極み‼︎葉王最悪だよ‼︎」

 

「まさに悪魔のパッチ」

 

無惨から鬼となった経緯を聞かされた芽衣達はそう言いながら憤ると

 

「私は麻倉葉王の呪縛に縛られる生きた傀儡」

 

そう呟き目を閉じる無惨、そんな無惨に芽衣は

 

「ほいさ!呪詛返し・・・って葉王の呪縛強すぎ!三日月ノ祓」

 

芽衣は無惨に触れ葉王の呪縛を解こうと呪詛返しを試みるも葉王の呪縛が思ったよりも強く、無惨を解き放つどころが芽衣が呑まれそうになったので芽衣は慌てて三日月ノ祓という巫術、オーバーソウルなどの巫力で構成された力を強制的に無効化する術で葉王の呪縛を無効化し無惨を葉王の呪縛から解き放つ事に成功する

 

「ふぅぅ何とかなったよ」

 

そう言いながらひと息つき一安心の芽衣、葉王の呪縛から解き放たれた無惨はそんな芽衣に

 

「麻倉芽衣、私に何をした⁈私の中で蠢いていた麻倉葉王の憎悪が完全に消え去ったが」

 

そう芽衣に話し驚きを隠せない無惨に芽衣の反応は

 

「エッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘ」

 

独特の笑いを連発する芽衣、正直なところ気味が悪いのだが

 

「エッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘエッヘッヘ」

 

何故か芽衣の真似をしだすラザニー、2人の奏でる不協和音に無惨は

 

何故だ⁈温泉とは本来疲れを癒し心安らぐものではないか、鬼であるが故に疲れる事もない私がその温泉でもの凄く疲れてる、心も安らぐどころか激しいストレスで胃に穴が空きそうだ

 

そう思いながら無惨は必死に耳を塞ぐがそれでも不協和音は響き無惨は

温泉に潜りやり過ごそうとした

 

「エッヘッヘエッヘッヘ、あ‼︎温泉にワカメが漂ってる」

 

そう言い出した不協和音その1、温泉に潜った無惨の頭髪、ワカメヘアーが温泉に漂っているように見えた芽衣はラザニーに

 

「ラザニーラザニー!あれが有名な温泉ワカメだよ」

 

温泉にワカメなど生える筈もないのに、あれが有名な温泉タマゴだよみたいなノリでイキりだす芽衣、そんな芽衣にラザニーは

 

「温泉ワカメって美味しいの?」

 

ちょっと食べたそうにしながら芽衣に尋ねるラザニーに芽衣は

 

「温泉で良い感じに茹でてるからうどんの中に」

 

そう言って芽衣は温泉のそばに置いていたうどんの器を手にする

 

なんだかんだでうどんをあまり食べてなかった芽衣、器にはうどんの麺が未だ健在、汁を吸い尽くしうどんから餅のような何かに変貌したそれにワカメを乗せようとする芽衣

 

「麻倉芽衣‼︎私はワカメなどではない!私は鬼だ!ワカメなどではない‼︎」

 

慌てて温泉から飛び出して叫びだす無惨、まさかワカメ扱いされるとは思いもしない無惨に芽衣は

 

「エッヘッヘ!無惨さんずっと潜ってるから」

 

と笑う芽衣、無惨が潜って相手にされなくなったのでちょっとからかっただけの芽衣だったが

 

「ワカメが・・温泉ワカメが・・」

 

芽衣の冗談をガチで信じていたラザニー、涙目でそう嘆くラザニーに

 

(ゴメン!なんかゴメン!」

 

(私がワカメではないのが申し訳ない)

 

心の中で謝る芽衣、傲慢な無惨でさえも申し訳ないと思うほどラザニーの涙目は心にグサッとくるものがあった

 

そんなやり取りの後芽衣は無惨に

 

「とりあえず無惨さんの中の葉王の呪縛は私が跳ね返したから」

 

そうあっけらかんと話す芽衣、こいつマジか⁈と驚く顔の無惨に芽衣は

 

「ねえ無惨さん・・無惨さんが今までやってきた悪い事は葉王が原因、葉王のせいで無惨さんも苦しめられた・・でもね!だからって無惨さんは何も悪くないよってのはちょっと違うと思うんだ!今までに死んでいった人達、大切な人を失った人達がなら仕方ないよねって納得出来ないと思うんだ!だからね!ちゃんとごめんなさいしよ?ちゃんと話してちゃんと謝れば・・・きっと何とか・・・・なると思うから」

 

そう無惨を諭し出す芽衣、無惨のこれまでの所業は葉王が元凶、葉王によって苦しめられた無惨も被害者ではあるが、鬼に家族や友達を殺された人達はその真実を知って納得出来るかといえば間違いなく納得などしないだろう、仮に無惨や鬼の所業に折り合いをつけれる人がいたとしてもその憎しみの矛先は元凶である葉王に向かうのだろうが葉王という存在はこの世にいない、ならばやはりその矛先は無惨へと向けられる事になる。では大人しく報復を受けろ!と言われて大人しく従えば良いのかと問われたら疑問が出る、確かに無惨の所業は許されない事だがその元凶は葉王、葉王が何も罰せられないのに無惨だけが報復されるのはちょっと違う、そう考えた芽衣は無惨に報復以外の道、話し合い謝る事で違う道も開けるんじゃないかと考えそう話したのだが、鬼殺隊をはじめ鬼達に復讐する為に命まで賭すような人達と和解出来るのかという不安は残り何時もように何とかなるとは言いにくかったのだった

 

芽衣の言う“何とかなる“これは物事を楽観視し気楽な態度をとっていると思われがだがそうでない、必要な時に必要な分だけ頑張れば結果はおのずとついてくる、慌てたところで何か変わるわけでもないのなら信じて待つ!このような意味が込められており、芽衣の真意を理解出来ない者からはユルいと思われがちなのだが、今回ばかりは芽衣自身も不安が拭いきれないでいた

 

輝哉にかけられた短命の呪いは芽衣が跳ね返し産屋敷家が無惨を殺す事に妄執する理由はなくなったのだが、それは理由の1つであり鬼が人々を襲うという根本的な問題がある限り輝哉も納得しないだろうと芽衣は考えていた、芽衣は鬼殺隊ではないし鬼殺隊についての知識も殆ど知らないが鬼殺隊に所属している隊士の多くが家族を鬼に殺された者達と輝哉から聞かされていた為、自らの人生を鬼への復讐に費やすほど強い恨みを持つ者達が掌を返す事などあり得ない、無理を言って輝哉を説得し輝哉から無惨を許すような発言があれば隊士達は従うのかもしれないが

それは隊士達の覚悟を真っ向から否定する事であり芽衣はそれ故に思い悩むが考えても答えが出るわけでもないので

 

「とりあえず今は温泉」

 

と思考を切り替えるのだった

 

「ほう・・貴様は私に謝れと言うのか、何故私が謝らなければならぬ

私は謝らなければならない事をしたと、貴様はそう言いたいのか?」

 

そんな芽衣に不遜な態度で謝る事を拒否する無惨、芽衣はそんな無惨を見ながら

 

「うわぁ〜!性格の悪さは元々だったんだ!・・・う〜ん・・まぁ鬼殺隊と無惨さんの問題だし私がそこまで関与する事じゃないよね!うん!

私もゆっくり出来るし後はご自由に‼︎」

 

性格の悪さは無惨本来のもの、芽衣はちょっと引きながらそう言って謝るも謝らないも無惨の自由だと告げる

 

芽衣は無惨が謝る事を提案し色々考えてはいたが本来は芽衣自身の問題ではなく鬼殺隊と無惨の問題、麻倉葉王という先祖が元凶であるが故に芽衣は全く無関係ではないのだが1000年前の人間の責任を芽衣が背負う必要はなく、それでも芽衣は葉王の呪縛を解く事で一応の責任は果たし後は鬼殺隊と無惨の問題だと割り切ってすっかり関心をなくしていた

 

「麻倉芽衣・・貴様はそれでいいのか⁈」

 

と無惨が芽衣に詰め寄る、てっきり謝るよう説得するかと思っていた無惨だったが芽衣がこうもアッサリと引いた事で拍子抜けし思わずそう言うのだが

 

うわぁコイツ面倒臭い奴!というような顔で無惨を見た芽衣は

 

「いいも何も私鬼殺隊じゃないし、後は鬼殺隊と無惨さんの問題でしょ?無惨さんが謝る気がないならそれでいいんじゃないかな?私は謝る事で今までとは違う道があるんじゃないかと思ったけど」

 

そうアッサリと言う芽衣、無惨が謝るのなら芽衣も何とかなるように頑張るつもりでいたが謝らないのならそれは本人の責任、そこまで面倒見る気はないと突き放す芽衣に

 

「麻倉芽衣・・貴様は私にどうしてほしい」

 

そう芽衣に尋ねる無惨、葉王の呪縛から解き放たれ以前のように人間を見下すような気持ちは薄れてはいるが無惨本来の性格やプライドが謝る事に難色を示しさっきは謝る事を拒否したが謝る事も必要だと理解はしていたので無惨は芽衣が謝れと言えば謝ると、あくまでも芽衣が言うから仕方なく謝るというスタンスでいこうとしていたのだが

 

「出来ればあまり関わらないでほしい」

 

もうコイツホント面倒臭い!そう思った芽衣は無惨と距離を置きたがるが

 

「待て!麻倉芽衣!貴様がいなければ私はどう謝るのだ‼︎私には貴様が必要だ!私を突き放すな‼︎」

 

そう言ってガチで焦る無惨、無惨の中では芽衣が付き添いとしている事を前提に謝ろうと考えていたので芽衣の発言は堪えたのだろう

 

そんな無惨を静観していた縁壱と巌勝は

 

「縁壱よ!これがバブみがなくてもオギャりたいというやつだ」

 

「兄上・・いや!ポンコツ、お労しや」

 

ある意味道を踏み場した巌勝を嘆く縁壱、敬愛する兄上からポンコツへと格下げされた瞬間であった

 

そんな縁壱達はさておき、今まで空気のように存在感を消していた朱沙丸と矢琶羽の2人、無惨が恐ろしいのは当然だがそんな無惨と対等に、寧ろ手綱を握りつつある芽衣となんだがよくわからない奇妙な生物ラザニーの2人を完全にヤバい奴等と認識し自分達は認識されないよう空気になる事を務めていた

 

 

そして無惨にオギャられたバブみのない芽衣は

 

「はぁ〜〜ゆっくり過ごしたいのに・・・う〜ん・・・とりあえずさ、私の」

 

ゆっくり過ごしたい芽衣はそう愚痴を吐きつつ無惨にとある提案をしようとするが急に喋る事を辞めて静かになる

 

「麻倉芽衣どうしたのだ⁈」

 

様子のおかしい芽衣にそう話しかける無惨だったが芽衣は温泉の傍に置いていた又宗を持ち出し

 

「やっぱり来たか!無惨さん・・あれが本物の悪鬼、怨念の塊だよ」

 

そう言いながら空を見上げる芽衣、無惨も空を見上げると

 

「何だあれは⁈私のようだが私ではない!あれは何なのだ⁈」

 

空に浮かぶそれを見て驚愕する無惨、無惨が見たその姿は無惨瓜二つ、だが自慢のワカメヘアーの面影はなく白滝のような長髪へと伸びていた

 

イケメンがイメチェンした!簡単に言えばそうなんだろうが全裸はイメチェンしすぎではないだろうか?温泉に入っている無惨もタオルを腰に巻いているだけのほぼ全裸に近い姿だが普段はちゃんと服を着ている、名も無きモブもちゃんと服を着ているので鬼は服を着るという意識が刷り込まれていたのだろう、だがイメチェン無惨は服を着ていない!どんなに服が破けてもズボンのとある一部だけは無事というTPOをこのイメチェンによって覆したのかイメチェン無惨はとにかく全裸だった

 

「おい!麻倉芽衣‼︎さっきから奴と私を見比べてるが一体何だというのだ!」

 

 

と芽衣に叫ぶ無惨、芽衣は無惨とイメチェン無惨のとある一部をキョロキョロと見比べ

 

「ふっ(´∀`=)そこはまぁ・・自分で何とかしてね」

 

そう鼻で笑う芽衣、何故笑われたのか分からない無惨は芽衣に

 

「麻倉芽衣!貴様は何を言っている?」

 

そう疑問になる無惨に芽衣は

 

「ナニって・・別にナニも」

 

とはぐらかす芽衣だが発音が若干おかしく意味深な言葉に聞こえるが

 

「あの怨念の塊はナニ者?ワカメさんにそっくり」

 

と芽衣に聞くラザニー、ラザニーの中で無惨はワカメ!らしくそう芽衣に聞くのだがラザニーも発音が若干おかしく意味深な言葉に聞こえ

 

「貴様ら!さっきから発言がおかしいぞ」

 

そう叫ぶ無惨をよそに芽衣は

 

「あれは葉王の呪縛によって膨れ上がった怨念の塊、跳ね返したけど葉王がいないから跳ね返らなかったみたい」

 

そう言いながらイメチェン無惨を見上げる芽衣、芽衣が跳ね返した呪縛は本来なら術者である葉王へと跳ね返るのだがこの世に葉王が存在しない為、葉王の呪縛は再び無惨の元へと還ってきたのだが

 

「私は限りなく完璧に近い存在になった、日の光に当たれぬ出来損ない体など最早私には必要ない!」

 

そう無惨に言い放つイメチェン無惨、1000年もの長い時間をかけて蓄積した怨念の塊であるイメチェン無惨、術者である葉王の巫力で具現化されたイメチェン無惨の存在は所謂オーバーソウルであり弱点であった日の光すら最早脅威ではなかった

 

「何が完璧な存在だ、私から抜け出ただけの紛い物風情がどの口を叩く

身の程を弁えろ」

 

そうイメチェン無惨に言い返す無惨、イメチェン無惨は無惨の反論に

 

「私が紛い物なら貴様は私の脱け殻だ、今の私には鬼狩り共が振るう刀も日の光すら脅威ではない!私の存在こそ貴様が求めていた姿ではないか!この世に私は2人も要らぬ、脱け殻は脱け殻らしく消えるがよい」

 

と無惨に反論するイメチェン無惨、無惨はそれを聞いて激昂し

 

「消えるのは貴様の方だ!」

 

そう言いながら無惨は腕を触手化しイメチェン無惨を捕食しようと伸ばすが

 

「私の体は血肉を持たぬ体、貴様の攻撃など私には届かぬ」

 

無惨の捕食攻撃を避けもせずにワザと捕食されるイメチェン無惨、だがオーバーソウルである体を破壊する事は出来ず、触手の中でイメチェン無惨は背中から9本の触手を生やし無惨の触手を破壊、軽々と脱出し無惨にそう言うとイメチェン無惨は触手を伸ばして無惨に攻撃を仕掛ける

 

我流麻倉式巫術 月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月

 

無惨に9本の触手が迫る中、無惨とイメチェン無惨の舌戦をちょっと面白いと静観していた芽衣が巌勝をオーバーソウルして乱入、黒死牟の技を放ちイメチェン無惨の触手を切り刻むとスピリット・オブ・ソードをイメチェン無惨に向け

 

「オーバーソウルなら攻撃は届くよ?」

 

とイメチェン無惨に言い放つ芽衣、イメチェン無惨は芽衣を睨みつけながら

 

「やはり私の脅威は貴様か!麻倉芽衣!」

 

そう言いながら背中の触手を再生するイメチェン無惨

 

 

 

今ここにバスタオルという名のセンシティブアーマー(派手に動けば勝手にパージする機能付き)を纏った芽衣と全裸による戦いが温泉で巻き起こるのだった

 

 

 




激戦の末に芽衣は無惨にある提案を!そして芽衣達の敵が遂に動き出す

次回「表と裏!猫とワカメとハゲジジイ」


今回のゲスト

豊さん うどん屋の店主 芽衣が器を返してない事を気にしている

ラザニー パッチ族の祭司 グレイソーサという宇宙人が持ち霊の少女
後のラザホーの曽祖母 キャライメージはラザホー

朱沙丸さん 鞠を投げる鬼の女性 ドッチボール選手に向いてそう

矢琶羽さん まんの子曰く「神経質ナ男ハ嫌ワレマスワヨ」と言われた綺麗好きな鬼

イメチェン無惨さん 原作ラスボスの無惨さん 終盤で変身した最終フォーム、オギャりフォームは未実装


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第10話 表と裏!猫とワカメとハゲジジイ

芽衣の持ち霊

継国縁壱 原作最強の剣士 兄と共にちょっと頑張る

継国巌勝 元十二鬼月最強上弦の壱 弟と共にちょっと頑張る

スピリット・オブ・ファイア 葉王が貸し与えた五大精霊 



麻倉芽衣 ポンコツ 

玉村玉藻 変態 

竈門炭治郎 頭硬い

竈門禰豆子 むむむ

鬼無辻無惨 貴様‼︎

ラザニー ワカメ


「縁壱さん!私に憑依して!ラザニーも力を貸して」

 

芽衣はイメチェン無惨に視線を向けたまま縁壱とラザニーにそう言うと縁壱は芽衣にすぐさま憑依しラザニーもオーバーソウルを纏いイメチェン無惨と対峙する

 

「芽衣!奴は私が対峙した時の鬼無辻より危険だ!気を付けろ」

 

縁壱は芽衣にそう忠告し気を引き締めると

 

「うん!ここで何とかしないと何ともならないよ」

 

芽衣もそう言ってイメチェン無惨に集中すると、イメチェン無惨は背中の触手を伸ばし芽衣達に襲いかかる

 

我流麻倉式巫術 日の呼吸 烈日紅鏡

 

芽衣は迫りくる触手を全て斬り落とすと、スピリット・オブ・ソードを一旦解除しオーバーソウル状態の又宗の切っ先を真下に向け再度スピリット・オブ・ソードを再構築する

 

垂直に立つスピリット・オブ・ソード、それを握る芽衣はイメチェン無惨よりも上空に位置し、芽衣は落下運動を利用して

 

我流麻倉式巫術 日の呼吸 碧羅の天

 

芽衣に憑依した縁壱自身が繰り出す型、巨大なスピリット・オブ・ソードが巨大な日輪を描きながらイメチェン無惨に斬りかかるとイメチェン無惨は

 

「貴様の能力も巨大な刀も厄介だが斬られなければ良いだけだ」

 

自身を構築するオーバーソウル体を細かく分散し弾け飛ぶイメチェン無惨、芽衣に憑依した縁壱は細かく分散したイメチェン無惨のオーバーソウル体を切り刻もうとスピリット・オブ・ソードを振るうが分散したイメチェン無惨の無数のオーバーソウル体から触手が生え襲いかかると流石に斬り落とせないと咄嗟に回避するもあまりの数の多さに完全に躱しきれず僅かではあるが芽衣の腕を掠めてしまう、イメチェン無惨はその隙に体を構築すると

 

「麻倉芽衣、貴様は運が良い!もし私が血肉を持つ体だったならば貴様は私の血による急激な細胞の変化に耐え切れず死んでいただろう」

 

と芽衣に話し

 

「それに貴様の血も今の一撃により私が吸い取った、血肉を持たぬ今の私には何の役にも立たぬが使い道はあるだろう」

 

イメチェン無惨は立て続けに芽衣に言うと

 

「芽衣済まない!私のせいで芽衣に傷を」

 

縁壱は自分の不覚で芽衣に傷を付けたと芽衣に謝るが

 

「あの気持ち悪い触手が一杯伸びて来たんだし、寧ろこの程度で済んで良かったよ」

 

芽衣は気にしてない素振りで縁壱にそう言うと

 

「まぁアレが不思議生物ならヤバいけどオーバーソウルなら何とかなるよ」

 

芽衣はそう言ってイメチェン無惨を見据え

 

「そう言う貴方は運が悪いね!もうその気持ち悪い触手は当たらないよ

私には通用しない」

 

そう自信ありげにイメチェン無惨に言い放つ芽衣、イメチェン無惨は

そんな芽衣に触手を伸ばし攻撃しようとする

 

「芽衣!」

 

迫りくる触手に対し反撃による応戦はおろか避けようともしない芽衣に

そう叫ぶ縁壱、だが芽衣は

 

「大丈夫!何とかなるよ」

 

そう言ってニッと笑みを浮かべる芽衣にイメチェン無惨の触手の雨が降り注いでいく

 

「麻倉芽衣‼︎」

 

芽衣とイメチェン無惨の攻防に手も足も出す事が出来なかった無惨、ほんの僅かな攻防ではあったがイメチェン無惨や芽衣の応酬に今の自分はついていけないと悟り静観していたが芽衣が突如イメチェン無惨の攻撃を受け入れた事で無惨は驚愕しながら芽衣の名を叫び土煙が舞う中芽衣の安否を確認しようと駆け寄ると

 

「麻倉芽衣⁈貴様無傷なのか⁈」

 

そう言いながら驚く無惨、無惨の視線の先にいる芽衣は全くの無傷、その場から微動だにせずイメチェン無惨の触手ラッシュを全ていなした芽衣は

 

「ふぅ!ほら、何とかなった」

 

そう言ってニッコリする芽衣、そんな芽衣に攻撃をいなされたイメチェン無惨は

 

「麻倉芽衣貴様何をした⁈」

 

この状況を理解出来ないイメチェン無惨はそう芽衣に叫びながら意味がわからないと狼狽えると

 

「何もしてないよ?」

 

そうあっけらかんと話す芽衣、芽衣は確かに何もしていない!寧ろ何もしないという事を実行した芽衣、だがその何もしないという事が大事だった

 

イメチェン無惨の攻撃は決してヤワな攻撃ではない、触れれば確実に致命傷へと至る危険な攻撃であり本来なら避ける事も困難だがそれでも避けるべきなのだろう

 

鬼殺隊ならば避けるという選択以外にも斬り落とす等の対処も可能なのだろうが避けるにせよ斬り落とすにせよ命の危険は伴うので精神面では僅かながらでも攻撃に対する恐怖は生まれるのだがその恐怖は生存本能から来る恐怖であり正常ではあるが鬼殺隊はその恐怖を上回る信念や復讐心で鬼と戦うが芽衣は鬼殺隊ではない

 

そんな芽衣が避ける事も斬り落とす事もせずただ立ち尽くす、自殺行為にも等しい行動だが芽衣とってそれこそが窮地を脱するに必要な事だった

 

それに対し恐怖がないのか?と言われたら勿論恐怖はある、だが芽衣は自分が“何とかなる“と信じたら迷いも恐れも捨て自分を信じ心を無にする、それが芽衣の強みでもあり芽衣のシャーマンとしての信念でもあった

 

そんな芽衣だからこそ使える巫術“巫力受け流し“

巫力を無効化こそ出来ないが自分へと向かう巫力の流れを変える芽衣の巫術、オーバーソウル体であるイメチェン無惨の触手攻撃は全て巫力による攻撃であり受け流すことが出来れば脅威にもならないのであった

 

「麻倉芽衣!貴様と言う奴は」

 

そんな芽衣に驚きと共に頼もしさを感じる無惨は芽衣に話しかけるが

 

「無惨さん、ここから先は私達シャーマンの戦いだから!」

 

巫力を持たない者は戦えない、そんな意味を含めた芽衣の発言に無惨は

自尊心を傷付けられ怒りに震え

 

「麻倉芽衣、貴様は私が役に立たない無力な存在だと、何の価値もない存在だと言いたいのか?」

 

そう芽衣に話しかける無惨だったが

 

「ワカメさんもシャーマンになればいい、ワカメさんにはシャーマンの素質があるもの」

 

震える無惨の真横にスッと入って来たラザニーがそう告げると

 

「私も麻倉芽衣のようになれるというのか⁈」

 

目を見開きながら興奮気味にラザニーに食い付く無惨

 

「さあ?それはワカメさん次第、でも!少なくとも同じ土俵に立つ事は出来る」

 

ラザニーは芽衣に視線を向けたまま無惨にそう伝えると

 

「聞いたか!麻倉芽衣‼︎私もシャーマンとやらになってやろう」

 

興奮気味にそう芽衣に話す無惨だったが

 

「あ、うん」

 

無惨に興味を示さない芽衣の素っ気ない対応、イメチェン無惨と対峙している最中において今そんな事言われても正直困る、そんな芽衣の対応に

 

「貴様!反応が薄いぞ‼︎」

 

ヨイショして貰いたかった無惨は芽衣に憤慨するも

 

「あーもう!ワカメうっさい」

 

もうお前黙れと言う芽衣の塩対応、まさか芽衣にまでワカメと言われると思わなかった無惨は衝撃で固まってしまい

 

くぁwせdrftgyふじこlp

 

怒りなのか動揺なのか震えながら何言ってるのか分かりません状態の無惨、そんな無惨を見たラザニーは

 

「グレイソーサーの共通言語化が通じない・・ワカメさんは不思議生物」

 

某ネットスラング用語をリアルで口にする奴などいない、グレイソーサーも100年後以降のネット世界をサーフィンすれば意味を理解出来るのだろうが今は大正、誰にも理解出来ない言語を話す無惨を不思議生物と認定するラザニーだった

 

そんな気の抜けたやり取りを呆然と見ていたイメチェン無惨、何かしたようには見えなかったが自分の攻撃の全てが意味のないものになり内心苛立つも次の手を考えねばと思考を巡らせると全身が一瞬発光、刹那イメチェン無惨から凄まじい衝撃波が迸り芽衣達を呑み込んでいく

 

「貴様が何をしようが関係ない、逃れられぬ衝撃で肉片一つ残さず消えるがいい」

 

イメチェン無惨はそう言うと先程の衝撃波よりも威力を高めた衝撃波を再度放ち周囲一帯が破壊されると土煙が巻き起こる

 

「麻倉芽衣といえど完璧な存在となった私には到底敵わぬ!」

 

強大な力を手にしたイメチェン無惨は自らの勝利を疑う事なく勝ち誇るように叫びだすと

 

「怨念の塊が巫力で具現化しただけの存在が完璧な存在?それはグレート・スピリッツに対する冒涜と同じ!」

 

そう声が聞こえると土煙の中からグレイスーツのオーバーソウルを纏ったラザニーが現れ

 

「キャトルミューティレーション」

 

ラザニーは宙に佇むイメチェン無惨に左手を翳しそう言うと引力操作でイメチェン無惨を自身に引き寄せ

 

「ラザニーの重加速拳(グーパンチ)

 

重力操作でパンチの速度と威力を底上げしたラザニーの右拳がイメチェン無惨の腹に炸裂しイメチェン無惨は凄まじい速度で殴り飛ばされてしまう

 

「この世で完璧な存在!唯一無二はグレート・スピリッツだけ!」

 

グレイスーツの中でラザニーはドヤ顔をしながらそう言うが

 

「貴様ァァ‼︎」

 

ラザニーの右拳で腹に風穴を空けられたイメチェン無惨は腹の穴を再生しながら激昂し背中の9本の触手、更には腿からも8本の触手を生やし

ラザニーへ向けて一斉に襲い掛かる

 

その凄まじい速度はラザニーの眼では追うことが出来ず直撃を受けてしまう、芽衣はオーバーソウル中縁壱か巌勝どちらかが芽衣に憑依している影響で対応する事は出来るがラザニーの持ち霊グレイソーサーには荷が重すぎたようだ

 

だがラザニーのオーバーソウルは巫力の密度が圧縮された甲縛式オーバーソウル、並大抵のオーバーソウルでは破壊する事は困難でイメチェン無惨の触手攻撃ですらラザニーのオーバーソウルを破壊するには至らなかった

 

「はぅ〜!時間稼ぎはしたよ麻倉芽衣!そろそろ動けそう?」

 

そう言ってラザニーは未だ立ち昇る土煙に視線を移すと

 

「もう大丈夫!まんの子に服持ってきてもらったから」

 

土煙の中から芽衣の声がすると、隊服を着た芽衣が飛び出して来る

 

「いや〜ビックリしたよ〜‼︎なんか凄い衝撃が来たからスピリット・オブ・ソードを盾にしたけどまさかバスタオルが弾け飛ぶなんて・・なんていやらしい攻撃・・・はっ!まさか今までの攻撃は全て私の裸体を拝む為の・・そして触手で私を縛りあげてあんな事やこんな事を!変態‼︎ド変態‼︎」

 

そう言ってイメチェン無惨を睨みつける芽衣、イメチェン無惨の衝撃波に呑まれた芽衣達だが芽衣は咄嗟にスピリット・オブ・ソードを盾にして衝撃波の直撃を防いでいた

 

芽衣だけならば巫力受け流し或いは巫門遁甲で何とかなったが芽衣の背後には無惨達がいた、流石に無惨達まで受け流せないので芽衣はオーバーソウルによる防御で事なきを得るがイメチェン無惨の2発目の衝撃波は凄まじく直撃こそ防ぐが衝撃の余波は伝わり芽衣達の身を包む防御力皆無のセンシティブアーマーは無残な姿へと変貌、幸いにも土煙で裸体を晒す事は免れたがこれでは身動きが取れない、土煙が晴れてしまえば色々とアウトな状況でまんの子が動く

 

「芽衣サン!急イデ服ヲ持ッテキテ差シ上ゲマスワ!」

 

まんの子はそう言って脱衣所へとかっ飛び芽衣の隊服を運びだす

 

「麻倉芽衣、私が時間稼ぎするからその間に服着て。あとワカメさん達は避難して!全裸で彷徨かれたらちょっと困る」

 

自分も全裸のラザニーはそう言うがラザニーは即座にグレイソーサーをオーバーソウル、全裸じゃなくなったラザニーは一足先に土煙から飛び出しイメチェン無惨と交戦そして今に至る

 

「麻倉芽衣‼︎貴様!」

 

殺したと思っていた芽衣が普通に生きている、その事実を許せないイメチェン無惨は芽衣に怒声をあげるが

 

「はぁぁぁ〜・・・いきなりキレだすとか大丈夫⁈そもそも裸にひん剥かれてキレたいのはこっちだよ‼︎」

 

と言いながら自分もキレだす芽衣、そんな芽衣は

 

「もう頭に来た!ちょっと本気出す‼︎」

 

芽衣はそう言うと

 

「憑依合体!縁壱&巌勝in又宗inフツノミタマの剣!」

 

芽衣は縁壱と巌勝の2人を又宗にオーバーソウル、それを更に丸ごとフツノミタマの剣にオーバーソウル

 

スピリット・オブ・ソード明星(あけぼし)

 

そう言いながらイメチェン無惨と対峙する芽衣だが

 

「複霊甲縛式オーバーソウル、麻倉芽衣の実力の一端が見れる」

 

そう言いながらフフッと笑うラザニーの見つめる先、新たなオーバーソウルを展開する芽衣の姿が見える。あまりにも巨大な刀だったスピリット・オブ・ソード、その刀は芽衣の身長程に縮小されてはいるが以前と違い二振りの刀となっており右手側に又宗を模した黒刀が左手側に黒死牟の刀が、それを芽衣が纏う日輪と月の紋様の入った着流し風のオーバーソウルの左右に展開する継国兄弟の炎のような痣の意匠の漆黒の籠手が刀を握りしめ、まるで2人が左右から芽衣を包むような芽衣の複霊甲縛式オーバーソウル“スピリット・オブ・ソード明星“芽衣はイメチェン無惨に向かって走り出すと

 

「麻倉芽衣!貴様‼︎」

 

先程の巨大な刀もそうだが今の芽衣が纏うオーバーソウルは明らかに危険だと察したイメチェン無惨は芽衣に向かって叫び出すと

 

「さっきから麻倉芽衣とか貴様とかうっさい‼︎」

 

馬鹿の一つ覚えみたいに同じ事を叫ぶイメチェン無惨に辟易していた芽衣はそうイメチェン無惨に言うと

 

我流麻倉式巫術 日の呼吸 灼骨炎陽

 

芽衣は右側の刀で日の呼吸の型の一つである灼骨炎陽を無惨に放ち斬りつけるが無惨はまたもやポップコーンのように弾け芽衣の攻撃を回避する

 

「うわぁ〜気持ち悪っ‼︎」

 

眼前で飛び散る肉片を目の当たりにした芽衣は気持ち悪がりながら

 

我流麻倉式巫術 月の呼吸 捌の型 月龍輪尾

 

芽衣は左側の刀で月の呼吸の型である月龍龍尾を放ち飛び散る肉片を斬り裂くと

 

我流麻倉式巫術 日の呼吸 日暈の龍・頭舞い

 

立て続けに日の呼吸の型である日暈の龍・頭舞いを繰り出し追撃する芽衣、肉片が更に細切れになりイメチェン無惨も終わりかと思いきや

 

「貴様がいくら私を切り刻もうとも私は何度でも再生する」

 

バラバラに斬り刻まれたイメチェン無惨はオーバーソウル体を再構築すると誇らしげに芽衣に叫ぶ

 

「麻倉芽衣、気にせず何度もやっちゃえ!」

 

ラザニーは手にするオラクルベルを見てニヤリと笑みを浮かべ芽衣にそう話すと

 

「何か考えがるの?ラザニー?」

 

イメチェン無惨が何度再生しようが別に気にしてなかった芽衣はキョトンを首を傾げながらラザニーにそう聞くと

 

「まあそのうち分かるわ」

 

とラザニーは簡潔に答え

 

「そっかぁ〜、うん!ならやってみよう」

 

考えても分からないならまずはやってみる、芽衣はラザニーにそう言ってイメチェン無惨に攻撃を仕掛ける

 

我流麻倉式巫術 日の呼吸 火車

 

我流麻倉式巫術 月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮

 

芽衣のオーバーソウル“スピリット・オブ・ソード明星“基本的な制御は芽衣が操作するものの、2対の籠手と刀は縁壱と巌勝がそれぞれ遠隔操作しており芽衣が刀を握る以前のスピリット・オブ・ソードよりも洗練された型を繰り出せるようになっていた

 

そんな縁壱と巌勝の放つ型、縁壱の繰り出す火車がイメチェン無惨の背後から縦に斬りつけ巌勝の闇月・宵の宮がイメチェン無惨を真正面から横一閃に切り裂きイメチェン無惨のオーバーソウル体は十字に切り裂かれると即座にオーバーソウル体を再生し

 

「血肉なき体といえど鬼である私の体は幾らでも再生する、貴様が何度私を斬ろうが無意味だ」

 

そうイメチェン無惨は芽衣に話し芽衣の行動の無意味さを説こうとするが

 

「無意味かどうかはやってみなくちゃわかんない、最初から何もしないで諦めたら私は楽になれないからね」

 

そう言って芽衣はイメチェン無惨の話を否定すると再びイメチェン無惨に攻撃を仕掛ける

 

だがイメチェン無惨も無抵抗で斬られる筈もなく背中、腿からの触手に加え腕も触手と化して芽衣に総攻撃を仕掛けると芽衣は身に纏う着流し風のオーバーソウルを前方に翻し迫る触手を防ぐと

 

我流麻倉式巫術 色即是空空即是色

 

芽衣が合掌のように両手を合わせると2対の刀もそれに呼応するかのように合わさり一本の巨大な刀へと姿を変える

 

その刀を両籠手が握ると芽衣を起点に螺旋回転、斬撃が波紋のように広がると芽衣を中心に周囲一帯が光輝き景色は白一色に包まれる

 

やがて光が消え景色が戻ると

 

「何をした・・麻倉芽衣・・・」

 

信じられないと驚愕するイメチェン無惨、そのイメチェン無惨を構成するオーバーソウル体は完全に消え去っており、怨念の塊となったイメチェン無惨は再度オーバーソウル体を構築し始めると

 

我流麻倉式巫術 色即是空空即是色

 

芽衣は先程の巫術を再度使用し、イメチェン無惨のオーバーソウル体を強制的に解除する

 

「麻倉芽衣!貴様は一体なんなのだ⁉︎」

 

一度ならず二度もオーバーソウル体を強制的に解除されたイメチェン無惨は驚愕を通り越しまるで化け物を見ているかのような怯えた目で芽衣にそう問いかけると

 

「麻倉芽衣15歳!温泉とゆっくり過ごす事が大好きなどこにでもいる普通の一般人」

 

と何故か自己紹介をする芽衣だがそんな事を聞いている訳じゃないイメチェン無惨は

 

「貴様のような一般人がいてたまるかぁー‼︎」

 

的外れな芽衣の返しにツッコミを入れながらキレるイメチェン無惨

芽衣は何で?と言うような不思議な顔をすると

 

「そっちが何者か聞いてきたんでしょ?すぐキレるよね?いい年なんだから落ち着きなよ」

 

そう言いながら呆れた目でイメチェン無惨を見る芽衣に

 

「貴様ぁぁぁ‼︎」

 

更にキレるイメチェン無惨、芽衣はもう関わりたくないと思っていると

 

「麻倉芽衣!もしかして今の巫力無効化?私のオーバーソウルまで解除されたんだけど」

 

そう言いながら芽衣の背後からヒョッコリ出てきたラザニー、芽衣の巫術に巻き込まれオーバーソウルを強制的に解除されたラザニーはまんの子に自分のパッチ着を運んでもらい全裸回避をしていたが

 

「あっ!ラザニーゴメンね?巫力無効化だけど縁壱さんや巌勝さんと相談して私なりに改良した巫術だよ。波紋状に飛ばした斬撃の範囲内の巫力を無効化するんだ」

 

とラザニーに説明する芽衣はドヤ顔になると

 

「そっかぁ〜、麻倉芽衣合格!」

 

ラザニーは芽衣にそう言いながらオーバーソウルしてグレイスーツを纏うと

 

「とりあえずこの怨念を始末しないと」

 

そう言ってイメチェン無惨を見据えるラザニー、芽衣は

 

「麻倉式陰陽術ならなんとかなるよ」

 

そうラザニーに話す芽衣、イメチェン無惨はその隙にオーバーソウル体を構築しようとするが

 

「・・・・⁉︎何故だ‼︎何故再生しない!」

 

オーバーソウル体を構築出来ないイメチェン無惨は焦りながらそう叫ぶとラザニーは

 

「オーバーソウルを作る巫力が残ってないからよ、麻倉芽衣の攻撃で破壊される度に構築に必要な巫力が減っていたもの。何度も再生して破壊されれば巫力が尽きるのも当たり前よ」

 

そうイメチェン無惨に説明するラザニー、オーバーソウルを作るには巫力が必要であり、破壊される度に注いだ巫力は消えオーバーソウルを型作る巫力量が多ければ消費する巫力も比例するのだが、イメチェン無惨の巫力は葉王が残した巫力でありそれが尽きればオーバーソウル体を構築する事が出来ないのは当然であった

 

「馬鹿な!私は完璧な存在だ!鬼である私が再生出来ないなどあり得ないだろう!」

 

現実を受け止められないイメチェン無惨は焦り気味にそう叫ぶが

 

「自らの奢りが招いた結果よ」

 

そう言ってドヤ顔になるラザニー、ラザニーはオラクルベルでイメチェン無惨の巫力値を計測しいずれこうなる事が分かっていたので芽衣に攻撃を続けろと言い読み通りの展開だったのだが、まさか自分のオーバーソウルまで強制解除する攻撃手段があるとは予測出来ないラザニーであった

 

そんなイメチェン無惨に

 

「麻倉式陰陽術 急急如律令」

 

芽衣は麻倉家に伝わる陰陽術でイメチェン無惨の怨念を強制成仏しようと護符を飛ばすが

 

「そこまでだよ!芽衣」

 

突如芽衣の前に現れた少年が芽衣の飛ばした護符を握りつぶしイメチェン無惨の窮地を救うと

 

「やあ!君が鬼無辻無惨だね?」

 

少年はイメチェン無惨に振り返るとニッコリと笑いながらイメチェン無惨にそう話しかける

 

「貴様は何者だ」

 

ニッコリと笑みを浮かべる少年だがイメチェン無惨は少年の異常な不気味さに警戒をしながらそう返すと

 

「僕は麻倉葉真(ようま)、君の味方さ」

 

葉真と言う少年はそうイメチェン無惨に言うと芽衣に振り返り

 

「久しぶりだね芽衣!」

 

笑顔で芽衣にそう話す葉真だが芽衣は

 

「挨拶なんてしなくていいよ、貴方が私の前に現れたって事はそうゆう事でしょ?裏麻倉家」

 

葉真に素っ気ない態度をとる芽衣に葉真は

 

「随分と冷たいじゃないか芽衣、僕と君の仲じゃないか!」

 

そう言いながらヘラヘラと笑う葉真、芽衣は葉真を警戒しながら

 

「許婚の関係はもう解消されたけど?」

 

芽衣は葉真にそう言うと

 

「それは君のお爺様が決めた事、僕となんの関係が?」

 

そう言ってヘラヘラと笑う葉真、葉真は未だ芽衣と婚約関係にあると主張するが

 

「爺ちゃんハゲだけど一応現麻倉本家の当主だよ?」

 

別にハゲの事など言わなくてもいいのだが芽衣の中では祖父=ハゲ

余計な事を付け加え葉真にそう話すのだが

 

「芽衣大丈夫だよ、僕等裏麻倉家が現麻倉本家を潰して麻倉本家となる。現当主に縛られた芽衣を救い出してあげるからね」

 

ニッコリと笑いながらそう芽衣に語りかける葉真、芽衣は顔を痙攣らせながら

 

「葉真はそんな事の為に葉王の復活を目論んでるの?」

 

そう葉真に聞く芽衣だが

 

「葉王様の復活を望んでるのは僕じゃなく現裏麻倉家当主麻倉葉冥(ようめい)さ」

 

そう芽衣に話す葉真は護符を取り出すと

 

「というわけで君は式神になってもらうよ」

 

そう言って葉真は背後のイメチェン無惨に護符を飛ばし

 

「麻倉式陰陽術 式神転生」

 

葉真は陰陽術の力を行使しイメチェン無惨を式神へと作り変え

 

「フフッ!鬼の首魁である鬼無辻無惨は僕達裏麻倉家の配下、どういう意味か芽衣ならわかるよね?」

 

ヘラヘラと笑いながらそう芽衣に話す葉真、芽衣は葉真を睨みつけながら

 

「今ここで葉真を倒せば裏麻倉家の計画も終わりって事だね」

 

裏麻倉家の計画、現麻倉本家を潰す為に葉王の復活を目論む裏麻倉家その計画の一つが鬼無辻無惨の確保なら葉真を倒しイメチェン無惨を成仏させれば計画を潰せると芽衣は葉真に攻撃を仕掛ける

 

「フフッ!いいよ芽衣おいで!」

 

ニヤリと笑みを浮かべ葉真は両手を広げると合掌のように手を合わせ

 

我流裏麻倉式巫術 澌尽灰滅 (しじんかいめつ) 

 

両手を叩いて生み出した衝撃波が葉真に近づいていた芽衣のオーバーソウルを強制解除し葉真は丸腰になった芽衣に肉薄すると左手で芽衣の右腕を掴み右手で芽衣の頬に触れながら

 

「フフッ!芽衣忘れたのかい?君が僕に超占事略決に記された巫術を教えてくれたのを」

 

そう言いながら葉真は顔を芽衣の顔に近づけ唇を奪おうとすると

 

「マキヲさん直伝‼︎須磨うっさいビンタ‼︎」

 

そう言いながら空いた左手で葉真の頬にビンタをぶちかます芽衣、思わぬ芽衣の反撃で葉真は芽衣の拘束を解いてしまうと芽衣はその隙にラザニーの後ろに逃げ込み

 

「ラザニー交代!アイツ気持ち悪い」

 

そう言ってラザニーにバトンタッチするが

 

「嫌!私もアイツ気持ち悪い」

 

とラザニーも葉真を気持ち悪がり拒否、芽衣は咄嗟に

 

「無惨さん出番だよ‼︎」

 

今度は無惨にバトンタッチするが

 

「ワカメさん達は着替え中!」

 

無惨達は全裸のまま彷徨くのは嫌なので服を着ようとこの場を後にするのだが朱沙丸はビビって出てこず矢琶羽は土煙で汚れるのが嫌だと隠れ無惨は身嗜みに気を使い未だ着替え中であった

 

そんな無惨達の有り様に芽衣は

 

「肝心な時に〜‼︎」

 

そう言いながら憤慨する芽衣、そんな芽衣に

 

「フフッ!僕との口付けに照れてるんだね?」

 

そう言いながら芽衣を見つめニヤリと笑みを浮かべる葉真、芽衣とラザニーはゾッとして鳥肌を立てながら

 

「葉真と接吻するくらいなら玉藻とした方がマシだよ」

 

「私もそう‼︎」

 

そう葉真に返す芽衣とラザニー、玉藻が聞けば発狂レベルだが客観的に見ればどっちもどっち、そしてラザニーは芽衣と葉真の関係に無関係なのだが何故か自分も接吻されると思い込み見ず知らずの玉藻を選ぶのだった

 

そんな芽衣達の返しに

 

「玉藻?ああ、君が蘇らせた親友だっけ?ならその娘を殺せば芽衣は僕だけの物になるわけだね」

 

そう言い放つ葉真、その言葉に芽衣は

 

「今何て言ったの?」

 

葉真の言葉に怒りを露わにした芽衣はそう葉真に尋ねると

 

「芽衣大丈夫だよ?君の親友を殺したら二度と蘇る事がないようにしてあげるからね」

 

これは芽衣の為だよと言わんばかりの笑顔を芽衣に向けてそう言い放つ葉真、これを聞いた芽衣は

 

「・・・ハハッ!じゃあ二度と私達の前に現れないよう・・・私が滅ぼしてあげるよ」

 

そう話す芽衣、ラザニーはそんな芽衣を見て

 

「悪魔のパッチ・・ハオ」

 

芽衣の豹変に何故かそう言ってしまったラザニー、ラザニー自身ハオを直接知っているわけではないが芽衣の巫力は明らかに異質、まるで全てを滅ぼさんとする冷酷な巫力を感じたラザニーは

 

「麻倉芽衣!怒りに呑まれちゃ駄目!このままじゃ本当にハオの再来になるよ‼︎」

 

そう言って必死に芽衣にしがみつき止めようとするラザニー

 

「スピリット・オブ・ファイア!葉真を消して」

 

芽衣はラザニーを無視しスピリット・オブ・ファイアにそう命じると

スピリット・オブ・ファイアを即座にオーバーソウル、突如背後から現れたスピリット・オブ・ファイアの鋭利な爪が葉真に突き刺さる瞬間

 

オーバーソウル 大太法師(だいだらぼっち)

 

葉真は自身の持ち霊大太法師をオーバーソウル、スピリット・オブ・ファイアをも上回る巨大な巨人がスピリット・オブ・ファイアの鋭利な爪を防ぐと

 

「まさか君が五大精霊まで持ち霊にしているとはね、僕の持ち霊でもキツイな」

 

そう言うと葉真は大太法師に掬われ

 

「とりあえず目的は果たしたし今日のところは退散するよ、芽衣また会おうね」

 

葉真はそう言って大太法師の力で地形操作すると芽衣達の地盤を落とし巨大な落とし穴を作る

 

芽衣達が落とし穴に落ちた隙にその場を後にした葉真は

 

「麻倉本家を潰す前に協力関係にある鬼を狩る組織を潰さなきゃね」

 

そう言って姿を消すのであった

 

 

一方落とし穴に落ちた芽衣達は

 

「麻倉芽衣!貴方はハオのように全てを滅ぼす悪魔になりたいの?」

 

そう言って芽衣を説得するラザニー、だが今の芽衣にラザニーの声が届く事なく

 

「滅ぼさなきゃ玉藻が死ぬ、玉藻が死ぬくらいなら滅ぼした方がマシだよ」

 

独り言のように呟く芽衣だが芽衣の目は生気を失ったように虚で下手に触れば危険だとラザニーは思い悩んでいると

 

「異国の少女よ」

 

「ここは私達に任せてもらおう」

 

縁壱と巌勝はラザニーにそう言うと芽衣に強制的に憑依合体し芽衣の心に呼びかけ始める

 

「「芽衣‼︎」」

 

2人が声を揃えて芽衣に呼びかけると

 

「何?」

 

2人の声が芽衣に届いたのか、芽衣は素っ気ないものの2人に返事をすると

 

「芽衣、怒りとは難しいものだな」

 

『ああ、一度怒りに呑まれればそこから抜け出す術が見つからぬ』

 

「その先に待つのはやり場のない怒りをぶつけるだけの虚しい人生だ」

 

『かつての私も怒りに呑まれ虚しい時の中を生きてきた』

 

「だがそんな私達に一筋の光が現れた」

 

『その光は1人では抜け出せぬ怒りという闇から私達を救ってくれた』

 

「芽衣、お前は決して1人ではない」

 

『お前には私達がいる、お前を想ってくれる友がいる、仲間がいる』

 

「あの鬼無辻でさえもお前は変えたのだ」

 

『芽衣、お前も変わるべき時が来たんだ』

 

「過去に囚われず未来へと進む時が」

 

『芽衣お前ならやれる』

 

「お前が私達を救ってくれたように私達がお前を救おう」

 

『私達継国兄弟は生涯お前の持ち霊だ』

 

「芽衣信じているぞ」

 

『ああ、どんな困難な状況でもお前なら』

 

「『何とかなる』」

 

と継国兄弟は芽衣に呼びかけると芽衣は

 

「2人とも・・・・話が長いよ‼︎もっと手短に!例えばこう「芽衣!何とかなる!」ってくらいに省略しないと。多分いるよ?もっと省略してる人、いや省略しすぎても駄目か!逆に分かんない。皆まで言わずとも分かっているだろ?的な感覚で省略されても何言ってるか分かりませんってなるしね!うん!程々が良いよね!」

 

自分の話はクソ長い事を棚に上げて2人に話が長いと愚痴る芽衣、だが2人の言葉は芽衣の心に響いており落ち着きを取り戻した芽衣は

 

「2人共ありがとう!これからもよろしくお願いします」

 

と2人に言うと

 

「ああ」

 

『うむ』

 

2人もそう返し3人で笑い合うのだった

 

そんな芽衣だが後に省略しすぎて何言ってるのか分かりませんとなる人物がいる事を、そしてその人物に出会う事になるのだが今はまだ知る由もなかった

 

 

 

「ラザニー心配かけてゴメン!私はもう大丈夫」

 

先程の暴走の件をラザニーに謝る芽衣、しっかりと45度の角度でお辞儀をする芽衣に巌勝は

 

「馬鹿な⁈あの芽衣が礼儀作法を知っているというのか!」

 

割と失礼な偏見で芽衣を見る巌勝、普段の生活を見る限り仕方ないのだが麻倉本家という事もあり最低限の礼儀作法は学んでいる芽衣はいざという時はちゃんとする奴だった。

 

そんな芽衣の謝罪を受けたラザニーは

 

「麻倉芽衣がハオみたいになりそうで怖かった」

 

と涙目のラザニーが芽衣にしがみつくと

 

「この大きな穴からそろそろ出たいんだけど」

 

そうラザニーが話すと

 

「葉真の奴、馬鹿みたいに大きな穴作るんだから!」

 

そう愚痴を零す芽衣、葉真の作り出した穴は直径10m深さ50mという縦穴式で脱出も一苦労だと嫌気をさす芽衣だが

 

「麻倉芽衣、私のオーバーソウルに乗って」

 

とラザニーが話すとラザニーは足元に小型の飛行物体所謂UFOをオーバーソウル、芽衣はラザニーにしがみつかれたままUFOの上に足を乗せるとUFOはフワリと浮き上がり穴の出口目指して駆け上っていく

 

ちょうどその頃タイミング良く出てきた無惨達、轟音がしていたがまさか巨大な穴が空いていたとは知らない無惨達は恐る恐る穴を覗き込むと

 

「「「何か浮いてる⁈」」」

 

UFOに乗る芽衣達と無惨達が鉢合わせ、無惨達は驚きで口をアングリしていると

 

「いや〜世の中には便利な乗り物があるんだね〜」

 

そう言いながらホクホクしている芽衣、そんな芽衣に無惨は

 

「コイツには世間の常識が通じない」

 

いくら文明が開化したとはいえ常識的に考えてそんな乗り物は存在しない、コイツはそんな事も知らないのかと唖然としていると芽衣達が穴から脱出し地に足をつけると

 

「さてと・・一旦家に帰らなきゃ!無惨さん達も付いてきて」

 

芽衣はそう言いながら足早にその場を後にしようとすると

 

「麻倉芽衣!一体何が起きたのだ」

 

事情を飲み込めない無惨はそう芽衣に尋ねるが

 

「裏麻倉家が動き出した、無惨さんの怨念の塊は裏麻倉家の配下、式神にされた」

 

と簡潔に説明する芽衣、だが裏麻倉家の事やイメチェン無惨が配下にされた事など知る由もない無惨はその説明だけで把握など出来るはずもなく

 

「裏麻倉家とは一体何だ?配下にされたとはどういう意味だ」

 

再度芽衣に尋ねる無惨だったが

 

「とにかく‼︎詳しい事は麻倉本家で話すよ‼︎」

 

質問に答える余裕もない芽衣はそう言いながら歩き出すと

 

「麻倉芽衣!これを!」

 

芽衣の後を追ったラザニーはそう言いながら芽衣にオラクルベルを手渡し

 

「私も麻倉芽衣に協力してあげたいけどパッチの使命があるから一緒には行けないの、でもオラクルベルがあれば星の導きによりまた逢える」

 

申し訳なさそうに芽衣に話すラザニー、芽衣は残念そうな顔になるがラザニーにはラザニーのやるべき事があると割り切り

 

「そっかぁ!じゃあまた逢おうねラザニー!私達はもう友達だよ」

 

そう言いながらはにかむ芽衣は握手をしようとラザニーに右手を差し出すと

 

「友達・・私と麻倉芽衣は友達・・・うん!私と芽衣は友達‼︎」

 

友達と言われた事が意外だったのか独り言のように呟くラザニーは少しの間思案すると今まで見せなかった笑顔を見せながら芽衣と握手をし

 

「芽衣持ち霊を大切に!あの2人がいればきっと芽衣は大丈夫」

 

ラザニーは芽衣を見つめてそう話し芽衣はコクンと頷くと

 

「芽衣急いでるんでしょ?街まで送ってあげる」

 

ラザニーはそう言いながらUFOをオーバーソウル、だが先程より巫力を多く注ぎ込み一回り以上大きな巨大UFOを作り出すと

 

「ワカメさん達も乗って!」

 

そう言ってラザニーはUFOの扉を解除しUFOの中に消えると

 

「私は限りなく完璧に近い生物だと思っていた、鬼が人より優れているのが当たり前だと・・だが!コイツらを見て私の中の常識が崩れてしまった」

 

無惨はUFOを見ながらそう話し

 

「謎の飛行物体に早く乗るぞ‼︎」

 

それはもうワクワクドキドキが止まらないというような好奇心に満ちた表情でUFOに猛ダッシュする無惨、ぶっちゃけあんな得体の知れない物体に乗りたくない朱沙丸と矢琶羽は困難するが無惨が颯爽と乗り込んだので乗らないわけにはいかずしぶしぶ乗り込むのであった

 

「縁壱さん!巌勝さん!お願いがあるの‼︎」

 

「芽衣どうした?」

 

「芽衣から願い出るとは珍しい」

 

芽衣はUFOに乗る直前縁壱と巌勝にとある願いを話し一同は浅草へと飛び立つ

 

因みに浅草に謎の飛行物体現ると新聞になるのだがこれは別の話

 

 

 

 

一方浅草で特にやる事がなかった玉藻一行、芽衣がいないという欲求不満が爆発した玉藻は浅草中の温泉を駆け巡り芽衣を探し回るのだが芽衣は浅草から少し離れた秘境の湯にいたので見つからずじまいだった

 

芽衣が見つからず途方に暮れる玉藻、そんな時浅草上空に謎の飛行物体が現れ玉藻は

 

「あの変な物体から芽衣の芳しい匂いがする」

 

玉藻だけが有する無駄技能芽衣センサーが発動し謎の飛行物体に芽衣がいると察した玉藻は飛行物体を追跡、飛行物体が降り立ち芽衣達が出てくると

 

「芽〜衣〜‼︎芽衣芽衣芽衣芽衣‼︎」

 

そう叫ぶながら芽衣に猛ダッシュする玉藻、飢えた野獣が突っ込んでくるのを見た一同は

 

「何かヤバいの来るよ!」

 

「麻倉芽衣!貴様の知り合いにマトモな奴はいないのか!」

 

そう言って玉藻を警戒するラザニーと無惨、芽衣はあれが玉藻ですと何故かドヤ顔になり

 

「ほいさ!巫門遁甲」

 

そう言って突っ込んで来た玉藻を躱す芽衣、玉藻はまたもや地面に顔面からダイブすると思いきや

 

「私も巫門遁甲」

 

同じ過ちは繰り返さない、何故なら芽衣を堪能したいから!そんな気迫で玉藻は巫門遁甲を駆使して芽衣の受け流しを受け流し芽衣の背後に回り込むと

 

「芽衣いただきま〜す」

 

手をワキワキしながら卑猥な事をしようとした玉藻、芽衣に飛びかかるが

 

ヘビーG

 

ラザニーは重力操作で玉藻に重力をかけ押し潰すと

 

「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 

強力な重力負荷に悲鳴を上げる玉藻、芽衣は仕方ないなぁと溜息を吐くと

 

「ほいさ!これに懲りたら玉藻は無闇矢鱈に私に抱きつかない」

 

芽衣はラザニーの重力操作を巫力無効化で解くと玉藻を引き起こしそう説教しだす

 

「うぅ〜」

 

不満はあるもののラザニーの重力操作に懲りたのか項垂れる玉藻だったが

 

「はっ!珍妙な生き物と・・鬼⁈」

 

芽衣の周りにいたラザニーと無惨達に漸く気付いたのかそう叫ぶ玉藻

芽衣はそんな玉藻に

 

「え〜と、珍妙な生き物は私達と同じシャーマンでパッチのラザニー、こっちは無惨さんと・・誰だっけ?」

 

そう玉藻に紹介する芽衣、ここまで空気のように撤した朱沙丸と矢琶羽の2人は芽衣に名前を覚えられてないのだが

 

「朱沙丸です」

 

「矢琶羽です」

 

何故か従順に自己紹介する朱沙丸と矢琶羽の2人、曰くあの御方と同等かそれ以上の存在と感じ取った2人は大人しく従おうと芽衣の知らぬ間に忠誠を誓っていたのだった

 

「・・・・ふぇ⁈無惨・・さん?・・・芽衣ちょっと待って!意味が分かんない!パッチのラザニーは分かるよ・・・・ゴメン!やっぱり分かんない・・・もうこの組み合わせが意味分かんないよ」

 

芽衣がまさかの無惨と一緒にいる、理解不能な出来事にパニックになる玉藻はチラッとラザニーを見て理解出来ると言うがラザニーはグレイスーツを纏っている為見た目は宇宙人、やっぱり理解出来ないと言い直すと更にパニックなると

 

「玉藻落ち着きなよ」

 

と、のほほんとした芽衣が言うと

 

「芽衣ユルすぎだよ!」

 

そう声を荒げる玉藻、玉藻自身鬼殺隊でもなければ無惨に恨みや因縁があるわけでもない、だが鱗滝の元で炭治郎と共に修行した際炭治郎から家族が殺された事を聞いていた玉藻は無惨に憤りを感じそんな無惨と芽衣が一緒にいる事に納得出来ないでいた

 

「玉藻〜‼︎」

 

「むむむぅ〜」

 

そんな時遠くから玉藻を呼ぶ炭治郎と禰豆子の声がすると

 

「無惨さん‼︎土下座の準備‼︎」

 

芽衣は慌てて無惨にそう言うが

 

「私が何故土下座などしなければごぶぅ⁈」

 

土下座を拒否する無惨だったがラザニーがヘビーGで無惨を押し潰し土下座ならぬ土下寝の格好で這いつくばらせると

 

「準備OK」

 

ラザニーが芽衣に親指を立て合図を送ると芽衣はコクンと頷くと

 

「鬼無辻無惨‼︎」

 

無惨の匂いを嗅ぎとった炭治郎が怒りを露わにして猛ダッシュ、芽衣達に近付いて来ると

 

「芽衣!そこから離れろ‼︎」

 

そう言って芽衣を避難させようとする炭治郎だったが

 

「コレはワカメです」

 

と何故か無惨を庇いだすラザニー、いきなり珍妙な生物が訳の分からない事を言い出し炭治郎は目をパチクリさせるが匂いは間違いなく無惨の匂い、そしてその無惨は地に這いつくばっているそんな状況に炭治郎は困難し

 

「コレは一体どういう事なんだ⁈」

 

どうなってるのか分からない炭治郎はそう呟くと

 

「麻倉芽衣‼︎どういう事だ?何故鬼狩りがいる」

 

そう芽衣に叫ぶ無惨、まさかこの場に鬼殺隊員が現れるとは思わなかった無惨だったが

 

「浅草には炭治郎君達と一緒に来たんだから、別におかしなとこはないよ」

 

そう無惨に返す芽衣だったが

 

「貴様!私を騙したのか⁈」

 

芽衣が鬼狩りと共に行動しているとは知らなかった無惨、騙されたと激怒するが

 

「はい?」

 

コイツいきなり何言ってんだ?というような顔になる芽衣、確かに芽衣は無惨に炭治郎と共に行動していたとは言っていない、だが逆に行動していないとも言ってない寧ろ何も聞かれていない、仮に芽衣が鬼殺隊員と一緒にいたと言っても無惨と遭遇した時点でラザニーしかいなかったわけで芽衣にとって言いがかりもいいとこだった

 

「私に取り入って油断させたところを鬼狩りに襲わせる!そうゆう魂胆だったか‼︎」

 

と被害妄想全開の無惨、芽衣はいやコイツマジで何言ってんの?と呆れた様子で

 

「あーもう‼︎ならそれでいいよ!だったら私と無惨さんの関係はこれでおしまい!後はご自由に」

 

コイツ面倒臭いから放置しようと考えた芽衣は無惨にそう言うと

 

「待て!麻倉芽衣!私が悪かった!だから私を見捨てるな」

 

芽衣の態度に焦り態度を急変させる無惨、そんな様子を見ていた玉藻は

 

「え〜と、コレどうゆう事?」

 

何故か芽衣の尻に敷かれている無惨に戸惑いを隠せない玉藻、戸惑いながらも警戒と敵対心を解かない炭治郎は

 

「鬼無辻無惨‼︎俺はお前を許さない‼︎」

 

そう無惨に叫ぶ炭治郎だったが

 

「コレはワカメです」

 

と炭治郎に話すラザニー、ラザニー曰く無惨はワカメと認識しており炭治郎にそう言っていたのだが

 

「ふざけるのも大概にしろ‼︎」

 

とラザニーに叫ぶ炭治郎、無惨は鬼でありワカメではない、言っている事も見た目もふざけてるとしか思えない、何より無惨は自分達の家族を殺した張本人、この状況で炭治郎が怒るのも無理はなかった

 

炭治郎に怒鳴られたラザニーは体をビクッとさせ慌てて芽衣の背後に逃げ込むとそのまま芽衣にしがみつく

 

オーバーソウルで表情は見えないが確実に涙目になっているのだろう

そんなラザニーをあやす芽衣とラザニーが羨ましいとキィィーと悔しがる玉藻、元々理解出来ない状況だったが炭治郎はこの状況を理解する事より無惨を討つ事を優先し日輪刀を引き抜くと

 

「お前がいなければ俺の家族が死ぬ事なんかなかった!禰豆子が鬼になる事もなかった!今こうして刀を握る事もなかった!お前が!お前がいなければ‼︎」

 

そう言って激情を露わにする炭治郎とそんな炭治郎の言葉を黙って聞き続ける無惨、以前の無惨ならば炭治郎の言葉など歯牙にもかけず自らの行いの正しさを説いていたのだろう、だが未だ傲慢な性格とはいえ自分が行ってきた行動の結果目の前の少年に過酷な運命を背負わせた事実は認めており無惨は炭治郎に向かって

 

「私が悪かった」

 

未だラザニーによって地に這いつくばっている無惨は炭治郎にそう一言謝るが

 

「謝れば今までの事が許されると思うな!殺された俺の家族はもう戻らない‼︎もう昔のように家族と過ごす事は出来ないんだ‼︎」

 

そう言いながら泣き始めた炭治郎、そんな状況で芽衣が

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

と大号泣、炭治郎の境遇もそうだが一言とはいえ絶対に謝らないと思っていた無惨が謝った事色んな感情が入り混じり泣き始めた芽衣、これには無惨や炭治郎も取り乱し

 

「急にどうした⁈麻倉芽衣」

 

「芽衣!どうしたんだ⁈」

 

と芽衣を心配していると

 

「芽衣が泣いちゃったら私も泣きたくなるよ」

 

と玉藻も便乗し大号泣、そしてラザニーも大号泣、ついでに禰豆子も大号泣、周りでワーワー泣き喚かれ困惑する無惨と炭治郎、無惨は炭治郎にどうすべきか話しかけようとするが

 

「もげらっ⁈」

 

大号泣するラザニーが重力の制御を誤り無惨に更なる負荷が掛かると無惨は陥没する地面に陥没し今にもペチャンコになりそうだった

 

「今すぐ辞めるんだ‼︎」

 

家族の仇とはいえ性根が優しい炭治郎、簡単に許す訳にはいかないが一応の謝罪をした相手が無抵抗かつ一方的にやられている、流石にやりすぎじゃないかとラザニーに叫ぶが

 

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

先程炭治郎に怒鳴られたラザニーは炭治郎恐怖症に陥っており炭治郎の大声は最早ラザニーにとって恐怖そのもの、更に号泣するラザニーと比例するように無惨に掛かる負荷も高まり遂に無惨は

 

「ひでぶぅぅぅ‼︎」

 

某世紀末ヒャッハーのような断末魔をあげながらペチャンコになってしまった無惨、炭治郎はグロテスク化した無惨を見て

 

「やってしまった」

 

一応助けてやろうとしたが逆にとどめを刺す結果になってしまった事で悲壮感に暮れるが元は家族の仇、ある意味やり遂げた感のある炭治郎は

 

「次は善人として生まれ変わりますように」

 

そう言いながら無惨に合掌、しばらく黙祷していると

 

「かっ・・勝手に殺すなっ・・・それと・・・これ以上ラザニーを刺激するな」

 

流石に鬼である無惨はこれぐらいでは死なないが、重力に押し潰されている今の状況では再生するのも一苦労らしく、ラザニーを刺激しないよう炭治郎に懇願すると

 

「ラザニー‼︎」

 

と名前を呼ぶ炭治郎、するとラザニーは

 

「・・・・怖いぃぃぃ‼︎」

 

そう言いながらパニックになるラザニーは小型UFOをオーバーソウル、それに慌てて飛び乗ると一目散に空の彼方へと消えていくのだった

 

「た・・助かった・・礼を言ってやろう」

 

ラザニーが逃げた事で重力の枷から解き放たれた無惨はホッと一息つくと偉そうに炭治郎にそう言うが

 

「・・・・・」

 

無言で炭治郎から白い目で見られる無惨、家族を殺した私への恨みが消えるわけではないと考えるが

 

「早く服を着るんだ‼︎」

 

そう慌てる炭治郎、無惨はふと自分を見渡すと

 

「・・この私に恥をかかせたなラザニー‼︎次にあった時は貴様も同じ裸にひん剥いてやる‼︎」

 

と事案要素しかない発言をする全裸の無惨、肉体を再生する時服を着れなかった無惨だったが無惨は腕を触手化し素早い手付きで服を着直すと

 

「貴様、名は何という」

 

そう炭治郎に話しかける無惨、正直なところ鬼狩りと話などしたくないのだが芽衣達をどうにかする方が面倒なので炭治郎に話しかけたのだが

 

「俺は長男だ」

 

そう言いながら落ち込む炭治郎、これまで炭治郎は長男として家族を支えて兄弟達に慕われてきた、それ以外にも麓の町の住人達とも懇意にし色々と頼られてきた炭治郎、そんな炭治郎に対し怖いと泣き叫ばれ逃げ出したラザニー、炭治郎にとって初めての出来事で長男メンタルにクリティカルヒットした事で落ち込んでいたのだが

 

「長男か、変わった名前だな」

 

そう呟く無惨、炭治郎はふと真顔で

 

「何を言ってるんだ?俺は竈門炭治郎だ」

 

そう無惨に名を告げる炭治郎、無惨はちょっとイラッとしたが

 

「竈門炭治郎か」

 

ラザニーを追い払った恩もあるのかキレる事なくそう呟く無惨は

 

「ラザニーが私をワカメと言うのは麻倉芽衣のせいだ!奴が温泉で私を温泉ワカメだとラザニーに吹き込んだのが原因だ!」

 

とラザニーを擁護する無惨、炭治郎はラザニーに申し訳ない事をしたと思いつつ芽衣を軽く睨むと

 

「鬼無辻無惨、俺はお前をすぐに許せそうにない!」

 

無惨を見据えながらそう話す炭治郎に無惨は

 

「私は許しなど請わぬ。竈門炭治郎、私が憎ければ貴様も鬼狩りらしくその刃を私に向けたらどうだ?」

 

そう炭治郎に話す無惨、明らかに挑発している発言だが無惨の真意は幾ら謝罪をしようと今更過去の精算など出来る筈もなく、逆に炭治郎が復讐心を自分にぶつけ気が楽になるならと意味で炭治郎に話したのだが

 

「俺は・・俺は憎しみや復讐に囚われて刃を振るう事はしないよ、俺が鬼殺隊になったのは禰豆子を妹を元に戻す方法を探す為であって決して復讐の為なんかじゃないんだ」

 

そう無惨に話す炭治郎、無惨はそれを静かに聞くと

 

「では貴様は私に復讐しないと?家族の仇だろう?」

 

そう炭治郎に尋ねる無惨、炭治郎は無惨の言葉に対し首を横に振ると

 

「仇を討つ事も考えたよ、だけど芽衣と出会って芽衣の過去を知り俺は仇討ちじゃなく悲しみの連鎖を断ち切る為に刃を振るうと決めたんだ」

 

と無惨に返す炭治郎、無惨はフッと笑うと

 

「ならば尚のこと私を斬るべきじゃないのか?貴様の言う悲しみの連鎖の元凶は私、私を殺せばその悲しみの連鎖は断ち切れるのではないか?」

 

そう炭治郎に話す無惨、炭治郎は無惨をジッと見つめると

 

「匂いが違うんだ・・今のお前は悲しみの匂いがするしお前を斬ったとしてもきっと悲しみの連鎖は変わらない・・それに・・・今こうして話し合えてる相手に刃を向ける事は出来ない」

 

炭治郎はそう無惨に話すと無惨は暫くの間無言で佇み

 

「貴様の考えは甘すぎる!私が貴様を殺さないと言ったか?」

 

無惨はそう言いながら炭治郎を睨みつけると

 

「殺さないよ、さっきも言ったけど今のお前は匂いが違う。それに芽衣が一緒だったという事は・・そういえば何で芽衣と一緒にいたんだ?」

 

そう話す炭治郎、無論無惨も炭治郎を殺す気などないが炭治郎は鬼殺隊、立場上敵対関係の為敢えてそう言ったのだが炭治郎は迷いなく言った為これ以上追求はしなかったが芽衣が一緒だとなんだ?と気にはなっていた

 

そんな無惨は炭治郎に芽衣と一緒にいた訳を炭治郎に話す、ウザい酔っぱらいに絡まれた事、うどんを食べながら歩く芽衣と遭遇した事、なんだかんだで温泉に行った事、芽衣が自分から怨念の塊を祓った事、その怨念の塊が具現化した事、芽衣と敵対する者が現れたらしい事等を炭治郎に話すと

 

「俺達と離れている間に凄い事になってるな」

 

色々ありすぎて何と言っていいか分からない炭治郎だったが

 

「芽衣達の敵って前に玉藻が言っていた」

 

そう呟く炭治郎、無惨は炭治郎の言葉に追従し

 

「麻倉芽衣は裏麻倉家と言っていた」

 

と話す無惨、あの時無惨はお洒落着タイム中であの場にいなかったので詳しい事は知らない、無惨は炭治郎を見ながら

 

「私達はその裏麻倉家を含め今後の事を話に麻倉芽衣の家に行く、貴様はどうする?」

 

と炭治郎に尋ねる無惨、炭治郎も芽衣達の敵というのが気になるので

 

「俺も行くよ」

 

そう話す炭治郎だったが

 

「カァ〜〜!炭治郎次ノ任務ガアル!夜明ケト共二出発セヨ」

 

と炭治郎の同行より次の任務を優先させる社畜鴉、炭治郎はあからさまに嫌そうな顔をすると

 

「カァ!松衛門!炭治郎過労死!ジャクソンソウ思ウ!」

 

と炭治郎を労るジャクソンに松衛門は

 

「コイツハ今回何モシテイナイ!マダ働ケル‼︎」

 

とジャクソンに反論、ジャクソンは

 

「松衛門パワハラ松衛門パワハラ!ジャクソンソウ思ウ」

 

そう松衛門に叫ぶジャクソン、このやり取りを見ていた炭治郎と無惨は

 

(パワハラって何だ?)

 

まだ大正には馴染みのない言葉に疑問を浮かべていたが

 

「カァ〜!松衛門トジャクソン!私ガ自慢ノ小山田伝令網ヲ駆使シテオ館様カラ伝令ヲ貰イマシタワヨ」

 

と謎の情報網を持つまんの子がお館様から伝令を貰ったと報告、松衛門

とジャクソンはお館様からの伝令と聞きまんの子の言葉に耳を傾けると

 

「隊士竈門炭治郎、鬼ノ首魁鬼無辻無惨及ビ鬼ノ少女禰豆子ヲ連レ麻倉本家二集合セヨ‼︎ト申サレテマスワ」

 

そう伝令を伝えるまんの子、炭治郎はお館様って誰だ?と疑問を浮かべ首を傾げ無惨は鬼殺隊のトップにもう情報が回っている事で小山田伝令網恐るべしと驚愕していると

 

「カァ!ジャクソンモ!伝令網アル!小山田伝令網二負ケテナイ!」

 

と何故かまんの子に対抗意識を燃やすジャクソンは

 

「カァ!カァ!カァ!梅村(バイソン)大村(ダイソン)下村(アンダーソン)竹村(バンブーソン)集合‼︎」

 

ジャクソンはそう言って異国被れ仲間を呼び寄せるが

 

「ジャクソン誰モ来マセンワヨ」

 

そう言いながら優越感に浸るまんの子、ジャクソンが呼んだ仲間達はまだ夜も明けてないので各担当に付いて任務中だった事から来れないのだが

 

「私ヲオ呼ビデスカナ?」

 

そう言いながら飛んで来た一羽の鴉、ジャクソンはその鴉に

 

「カァ!ジャクソン蔵臼(クラウス)呼ンデナイ!」

 

と叫ぶジャクソン、そんなジャクソンにクラウスは

 

「私ガジャクソン如キノ召集二応ジル訳ナイデショウ!私ハ姫二呼バレ参上シタンデス」

 

そう話すクラウスはまんの子に向かい合うとお辞儀をして

 

「姫!クラウス参リマシタ」

 

とまんの子に言うと

 

「クラウス御苦労様デスワ!引キ続キ部下ヲ使イ情報ノ収集ヲ願イシマスワネ」

 

まんの子はクラウスにそう話すと

 

「ハッ!姫ノ頼ミトアラバ」

 

そう言ってクラウスはまんの子にお辞儀をしすぐさま飛び立っていくと

 

「誰モ来マセンワネ?ジャクソン」

 

未だ来ないジャクソンの仲間達、まんの子は優越感に浸りながらジャクソンにそう言うと

 

「ジャクソンハ!ジャクソンハネ‼︎」

 

と泣き叫び空の彼方へと逃げ出したジャクソン、そんな鴉業界の格差を見せられていた炭治郎と無惨は

 

((癖が強過ぎる))

 

となんとも言えない表情をしていた

 

そんな茶番を繰り広げている中、いつの間にか泣き止んだ芽衣達がやって来ると

 

「芽衣サンオ待チシテオリマシタワ!麻倉本家へ参リマショウ」

 

とまんの子が芽衣に話しかけると

 

「何か有耶無耶になってるけどどんな流れでこの状況なの?」

 

何故無惨がこの場にいるのか、何故炭治郎と無惨が2人でいるのか碌な説明もないまま麻倉本家に向かう流れに玉藻はそう苦言を漏らすと

 

「玉藻!裏麻倉家が動き出したの!爺ちゃんに知らせないと」

 

と玉藻に話す芽衣、玉藻は一瞬目を見開くが何も言わずに頷くと

 

「芽衣急ごう‼︎」

 

と麻倉本家へ帰る事を優先させる玉藻、芽衣も頷くと

 

「さあ皆で私の家、麻倉本家へ行くよ」

 

芽衣の号令で一同は麻倉本家を目指す、その道中無惨は玉藻や炭治郎に自分が鬼になった経緯を話すと炭治郎と玉藻はやるせない気持ちになり表情を歪ませる

 

炭治郎にとって無惨は家族の仇、だが無惨と話し合えた事で炭治郎は無惨に直接刃を向ける事はなくなったが家族を奪った事実は消えない、それ故に炭治郎は無惨を許す事は出来ないがその無惨もまた麻倉葉王によって人生を変えられ千年もの間苦しめられてきた被害者であり本当の元凶が無惨ではなく麻倉葉王という事実に葛藤していた

 

芽衣と出会う前の無惨であるならば炭治郎は悲しみの連鎖を断ち切る為に刃を向けていたのだろうが今の無惨は違う、無惨を斬ったとしても悲しみの連鎖は変わらない、だがその悲しみの連鎖の元凶である葉王は千年前の人物であり今はもういない、ならその悲しみの連鎖はどう断ち切ればいいのかわからない、無惨の話が嘘であるならば考えようがあるのかもしれないが無惨の話に嘘がないと炭治郎は匂いで分かっていたので炭治郎は答えの出ない悩みに頭を悩ませていた

 

一方の玉藻も悩んでいた、無惨に対し直接の因縁はないものの炭治郎の家族を奪った張本人、その事実は変わらないがその無惨に鬼の力を与え挙句無惨を鬼と化した元凶が麻倉葉王、麻倉家の家系ではないが麻倉家に縁のある身としてその事実は衝撃的で葉王が無惨と接触しなければこんな悲劇は起こらなかったと思うがそれは過去の話であり今更どうしようもない事だと理解している為玉藻はならばこれからどうすべきかと頭を悩ませていた

 

「悩んでも答え出ないでしょ?私も分かんないエッヘッヘ」

 

無惨の話を聞いて頭を悩ませる2人にそう言って笑い出す芽衣、玉藻は芽衣の思考を熟知しているからか何も言わないが

 

「芽衣はそれでいいのか?ちょっと考えが足りないんじゃないのか?」

 

芽衣のユルさ加減にそう苦言を漏らす炭治郎、炭治郎から見れば芽衣は何も考えてないように見えるが

 

「それに芽衣達の敵が現れたんだろ?どうするべきかちゃんと考えるんだ‼︎」

 

と芽衣に話すと

 

「悩んでも答えの出ない悩みは考えない、それに先の見えない状況を悩むより今が大事だと私は思うよ」

 

と芽衣は炭治郎に返すと

 

「炭治郎君はどうしたいの?どうするべきかじゃなくどうしたいの?」

 

そう炭治郎に話しかける芽衣、芽衣曰く先の見えない状況に悩みあれこれ考えても仕方ない寧ろ今をどうするかが大事、それに悩んだ結果その選択が正しいかはその時にならないと分からない、だからこそ後悔しないよう自分の気持ちに素直になる事が大事だと芽衣は炭治郎に伝えると

 

「俺は禰豆子を元に戻したい!人間に戻って幸せな人生を送ってほしい」

 

と素直な気持ちを吐き出すと

 

「なら炭治郎君がやるべき事は今と変わらないね!」

 

芽衣はニッと笑いながら炭治郎にそう言うと

 

「正直なところ裏麻倉家がこの先どう動くかなんて分かんない、私が悩んだところで何か変わるわけでもないしね、私が今やりたい事はこの事を爺ちゃんに話して皆でどうにかするって感じかな?私1人じゃ何ともならない事も皆がいれば何とかなるってね」

 

そう言いながら妙な落ち着きを見せる芽衣は

 

「だからさ!無惨さんの事も皆で考えよ?」

 

と話す芽衣、炭治郎と玉藻は芽衣の言葉に頷くと

 

「おい!麻倉芽衣走るんだ‼︎急がないと私が死ぬ‼︎」

 

と急に無惨が焦り出し芽衣に急ぐよう急かしだす

 

芽衣達が浅草を出発したのはまだ夜が明ける前だったが道中の無惨1人トークショーが時間を食い気が付けば空が薄っすらと明るみ始めたていた事で無惨は死期を悟り慌てふためいていたのだが

 

「え⁉︎走るのキツいよ?」

 

と走りたくない芽衣は拒否ると

 

「頼む‼︎麻倉芽衣‼︎頼む‼︎」

 

そう言いながらガチで懇願する無惨と芽衣と無惨の妙な上下関係に困惑する玉藻と炭治郎、芽衣は玉藻をチラチラと見続けそれに気付いた玉藻は仕方ないなと溜息を吐き

 

「憑依合体天狐!オーバーソウル白面金毛九尾の狐」

 

そう言いながら天狐をオーバーソウルし巨大な狐な狐が具現化されると

 

「九尾の狐⁉︎おい!麻倉芽衣‼︎貴様の連れは妖怪か⁉︎」

 

そう言ってビビる無惨、無惨が日本三大妖怪の一つ九尾狐に間違えるのも無理はないが天狐は妖怪では格の高い狐の神霊、自分の持ち霊を妖怪扱いされた玉藻は無惨に

 

「妖怪じゃなーーい‼︎」

 

と憤慨する玉藻は、自分の持ち霊自慢を無惨に話しながら胸を張るが玉藻は胸が慎ましいので何も誇張されていなかった

 

そんなやり取りがありつつ芽衣一行は天狐に乗せられ

 

「天狐!最短距離で最大速‼︎」

 

と玉藻が叫ぶと天狐はコクンと頷き一気に急加速、振り落とされまいと必死にしがみ付く芽衣と何故か平気な炭治郎や無惨達、天狐は街道を逸れ野山を駆け上り時には農村を駆け抜け最短距離で麻倉家を目指す

 

 

そんなこんなで無事朝陽が昇る前に麻倉家に到着した芽衣一行は

 

「人ってこんな広い土地に住めるんだな」

 

と言いながら呆然とする炭治郎、炭治郎の目の前に広がる麻倉家の敷地のあまりの広さに驚くが

 

「でもここは別邸だし、本邸の方がまだ広いよ?」

 

と芽衣が一言、芽衣曰く出雲に構える麻倉本邸の方がまだ広いらしく玉藻もうんうんと頷くと

 

「そうなんだ」

 

流石に言葉にならないようでそう一言だけ返す炭治郎、その時

 

「おや?明朝から誰かと思えばこれまた不思議な組み合わせ」

 

そう声が聞こえ炭治郎達はその声がする方へ振り向くと

 

「芽衣さん、少し見ないうちに不思議な縁を持ちましたな」

 

と芽衣に声をかけると芽衣は

 

「あ〜〜〜‼︎マ・タ・ム・ネ〜〜‼︎」

 

パァァと喜びを浮かべながら芽衣は麻倉家に仕える猫又のマタムネに抱きつくと

 

「はぁぁん!芽衣の抱擁!羨ましいぃぃ‼︎マタムネ変わって‼︎」

 

と嫉妬と羨望に身を焦がす玉藻、マタムネはそんな玉藻に

 

「おや?お久しぶりです玉藻さん、以前より低俗な存在に成り下がってますが修験の成果は如何程に」

 

玉藻の煩悩にそう皮肉を言うマタムネ、玉藻はそんなマタムネに

 

「マタムネ辛辣すぎだよ!修験の成果はバッチリだよ!もう色々と強くなったんだからね」

 

と無い胸を誇張しながらドヤる玉藻、そんなやり取りを見ていた炭治郎達、言葉を忘れてポカンとしていたが

 

「「「「「「猫が喋ってるぅぅぅぅ⁈」」」」」」

 

「むむむむむむっむむぅぅ」

 

芽衣と玉藻を除く全員がそう突っ込みながらアタフタすると

 

「貴様等、猫とは喋る生き物だったか?」

 

「いえ!猫は喋ったりしません」

 

「はい!ましてや着物や帽子、キセルを咥えたりする二足歩行の猫など存在しません」

 

「俺が知ってる猫はニャーとかニャンとかニャニャニャとかゴロニャーとか鳴く猫だけだ!」

 

「むむ、むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむ」

 

無惨の質問に朱沙丸、矢琶羽、炭治郎、禰豆子がそれぞれ答える、禰豆子曰く『でも、喋る鴉もいるし喋る猫がいてもおかしくないよ』と言っているが言葉が理解される筈もなく、それを差し引いても目の前の猫があまりにも異様だと一同は理解していた

 

「兄上、あれが芽衣の言っていた猫又のマタムネらしい」

 

「ふむ、刀の銘にした際芽衣から聞いてはいたがよもや喋るとは思わなかった」

 

「猫又というように私達の知り得る猫とは違うようだ」

 

「世界とはこうも広いのだ、この世にはまだ私達の知り得ぬ事が沢山ある。生死に捉われた矮小な世界で尊大になっていた生前ではこのような出来事など有り得なかっただろう」

 

と霊である縁壱と巌勝はマタムネに驚きつつも達観しておりマタムネを見つめていると

 

「失礼!紹介が遅れて申し訳ない小生麻倉家に仕える事約千年、縁あって芽衣さんの巫術指導を仰せつかっていた猫又のマタムネと申す・・・好きなものはマタタビ」

 

芽衣の抱擁から解き放たれたマタムネは炭治郎達に向き合いそう自己紹介すると

 

「マタムネは私の師匠なんだよ〜」

 

とホクホクの笑顔で話す芽衣、マタムネは芽衣をチラッと見て

 

「小生が到らぬせいで芽衣さんには辛い業を背負わせてしまった、師匠と呼ばれる資格など小生には到底ござらん」

 

と申し訳なさそうに呟くマタムネ、芽衣はそんなマタムネを抱きしめると

 

「マタムネは悪くないよ?あの時玉藻を助けたいと思ったのは私の意思

私がやりたいようにやった結果だから」

 

と話す芽衣、それを聞いていた玉藻は

 

「それじゃ芽衣が悪いように聞こえるよ‼︎あの時私が死ななければ芽衣があんな辛い目にあう事もなかったんだよ‼︎」

 

と泣きながら叫ぶ玉藻、芽衣は玉藻が自分自身を責めているのを見て

 

「玉藻は何も悪くない‼︎それに村の皆も悪くない!」

 

芽衣は真剣な顔付きで玉藻を見つめそう言うと

 

「じゃあ誰が悪いの⁉︎何が悪かったの⁈」

 

と反論する玉藻、これだと芽衣1人が悪いと背負い込んでいるように聞こえ玉藻は堪らずそう返すのだが

 

「結局のところ誰も悪くないし何も悪くないんだよ。先の見えない事より今が大事だと言ったけどそれと同じように過ぎた過去より今をどう生きるかが大事だと私は思う。確かに昔の出来事は辛かったよ?そのせいで人をあまり好きになれなかったけど、私には家族もいるし玉藻もいてくれる!それに!縁壱さんや巌勝さん‼︎炭治郎君や禰豆子ちゃん‼︎鬼殺隊の人達に出逢って私も前へ進もうと思えた、いつまでも過去に囚われて何も出来ないままじゃ何とかなる事も何ともならないからね」

 

芽衣は真剣な顔付きだが何処かスッキリとした表情で玉藻にそう話すと

 

「芽衣!私ね?怖かった!芽衣がいつか私なんか助けなければ良かったって言われると思った、私なんかいらないって言われるって思ってた!

そうならないよう必死に!必死に修行して強くなって芽衣に必要だと思ってもらえるよう頑張って・・あれ?私こんな事芽衣に言うつもりじゃ・・泣かないようにしたのに!弱音吐かないようにしてたのに」

 

と芽衣の心の成長を感じた玉藻は思わず本音を漏らしてしまい泣き崩れると

 

「玉藻ありがとう!私ね?玉藻がいてくれたから私は私でいれた、もし玉藻がいなかったら私きっと葉王のように人を憎んで本当に鬼の子や化け物になっちゃうとこだった!玉藻は私が助けてくれたって言うけど私も玉藻に助けられてるんだよ?玉藻が私を必要としてくれてるように私も玉藻が必要なんだよ?だからさ!これからも一緒にいてね!」

 

そう言いながら芽衣は玉藻を抱きしめ頭を優しく撫でると

 

「うぇぇぇぇぇぇ!芽衣ぃぃぃ‼︎」

 

玉藻更に大号泣、芽衣に抱きつきながら

 

「じゃあ芽衣ペロペロも解禁?」

 

とこれまでの流れをぶち壊すトンデモ発言を繰り出した玉藻、芽衣は

優しい顔付きから真顔へとシフトし

 

「あ、それとこれは別の話だから」

 

と玉藻を拒否ると

 

「そこは仕方ないなぁって折れるとこだよぉ〜!」

 

と冗談半分で話す玉藻、そんな芽衣と玉藻のやり取りに

 

「シャーマンに最も必要なのは莫大な巫力でもなく強力な巫術やオーバーソウルでもなく何事にも揺るがない心の強さ、小生では教える事の出来なかったシャーマンの要、芽衣さんは仲間と通じ合う事でまた一歩成長したようです御当主」

 

そう言いながら芽衣を見つけるマタムネ、そのマタムネの横には

 

「そうじゃのう!なまじシャーマンの素養が高い為に小手先の技術ばかり覚えよって、彼奴はシャーマンとしてはまだ半人前!世を知り人を知りやがて自らの信念を見出すものじゃ!じゃがあの様子を見る限り産屋敷殿の元に向かわせた事は間違いではなかったようじゃな」

 

そう言いながらマタムネの横で嬉しそうに微笑む芽衣の祖父麻倉葉晴

 

葉晴が芽衣を産屋敷邸へと向かわせた目的、芽衣には社会勉強と言ったがその裏に潜む真の目的は芽衣がシャーマンとしての信念を見出しそれを貫き通す揺るがない心を持ってもらう事だったがそれは芽衣が自身の過去と向き合い乗り越える事を意味していたのだが産屋敷ならば境遇こそ違えど辛い過去を持つ鬼殺隊と触れ合い芽衣に何かしらの影響を与えてくれると、芽衣ならばきっと過去を乗り越えシャーマンとして一歩成長してくれるだろうと信じていたが葉晴も人の親、なんだかんだ孫が可愛いので心配が尽きずこうして無事に顔が見れた事にホッと一安心してはいたのだが

 

「じゃがのう・・彼奴何故鬼まで引き連れておるんじゃ⁈しまいには鬼殺隊まで一緒におるではないか」

 

と芽衣御一行の組み合わせに頭を悩ませる葉晴、鬼と共に行動している事も理解し難いが鬼殺隊と鬼が共に行動している事が一番理解出来ない葉晴にマタムネは

 

「芽衣さんが他者に触れ心の持ちようが変わるように、あの者達もまた芽衣さんに触れ何か変わったのかもしれません」

 

と葉晴に話出すと

 

「そんなもんかのぉ〜」

 

と一言、そんな会話をしている葉晴とマタムネをよそに芽衣はマタムネを探し周りをキョロキョロと見渡していると

 

「あっ!マタムネそんなところに・・・ハゲがいた」

 

マタムネを見つけたもののその横にいた葉晴にやっと気付いた芽衣

そんな芽衣の一言に葉晴は

 

「誰がハゲじゃ!この馬鹿孫が‼︎」

 

と怒鳴り散らす葉晴、炭治郎達はその怒声に体をビクッと震わせながら葉晴へと振り向き

 

「だって存在感薄かったじゃんか!髪が薄いから存在感も薄い!あっ!私今良い事言った」

 

と謎の格言に満足する芽衣だったが

 

「良くないわ!何一つとして良くないわ!儂の頭を見てみぃ、ちゃんと髪が生えてきとるじゃろうが‼︎」

 

そう言いながら頭頂部を芽衣に見せる葉晴

 

「わあ!爺ちゃん凄い!髪の毛が生えてきてるよぉ〜!一本だけ」

 

と祖父の育毛状況に喜ぶ芽衣、そんな祖父と孫の会話を眺めていた炭治郎は

 

「なぁ玉藻、これいつまで続くんだ?」

 

「さあ?触れぬ髪に祟りなしって言うしそっとしておこ?」

 

と小声で話す炭治郎と玉藻にマタムネが近寄り

 

「御当主と芽衣さんの茶番に付き合わせて申し訳ない、小生達は先に屋敷へと参りましょう」

 

と葉晴と芽衣の会話に皮肉を漏らしながらマタムネは炭治郎達を麻倉家の屋敷へと案内するのであった

 

 

 




麻倉家に帰省した芽衣は後に懐かしい人達と再会する

次回「須磨うっさい!嫁とビンタと若女将」



今回のゲスト

麻倉葉晴 芽衣の祖父にして現麻倉本家当主 悩みはハゲ

マタムネ 麻倉芽衣に仕える猫又 好きなものはマタタビ

麻倉葉真 裏麻倉家の1人 芽衣の元許婚 芽衣に異常な執着を見せる玉藻レベルのヤバい奴 持ち霊は山の土地神“大太法師“



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