俺はヒーローに憧れない (アートレータ)
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フィルムZ
再開
俺は両親に恨みを持つ海賊に攫われたようだ。
目を覚ますと知らない場所にいた。そして見知らぬ人たちが目に入った。
俺が子供だからか縛れるなんてことも無く、海賊達は宴に興じているようだった。しかし、俺は海軍大将の息子だ。子供とは言え両親に憧れて鍛えたりもしていた事が幸いした。宴に夢中な海賊たちを脇目に、俺はチャンスと見て逃げ出すことに成功したのだった。
しかし、建物の外は森の中だった。猛獣の鳴き声なども聞こえたが、どちらにしろここに居ても海賊たちに殺される事になるだろう。そう考えて、森の中へと歩き出した。
それからのことはよく覚えていない。ただ時に猛獣に追われ、時に毒を含んだ木の実を口にしてしまったり、時に島に立ち寄った海賊たちに追われたりしながら生き延びることに必死だったこと。生きるために力が必要だったことは覚えている。
力を求める上で思い浮かべるのは常に父の姿だった。海軍の訓練を見せてもらった時の姿。武装色の覇気と呼ばれるものを纏い、黒腕の両腕で相手をバタバタとなぎ倒していく姿。まさにヒーローそのものだった。
父の姿には憧れた。しかし海軍に憧れた訳では無い。逆に海賊に対する嫌悪感などがあった訳でもなかった。その為、ある程度力を身につけてからは島に立ち寄った海賊たちを相手にした。戦闘の経験を積み、盗める技術を盗んで行った。
そのうち海賊たちの間にはある噂が流れるようになった。
曰く、その島には怪物がいる。
曰く、その島にいるのはただの子供だった。
曰く、その島には六式を使う海軍の手練がいると。
曰く、その島には覇気を極めている大海賊がいると。
正解もあれば、間違いもある。所詮噂でしかないのだ。伝えるもの聞くものによって内容は違っていた。
そんな中で唯一誰もが口を揃えて言った言葉があった。
「軽い気持ちでその島に向かうな!生きていたいのならば!」
♢ ♢ ♢
それから30年あまりの月日は流れた。
少年は青年へと変わり、可愛らしさのあった顔立ちは彫りが深くワイルドな顔立ちへと成長していた。しかし不思議なことに彼の容姿は20代前半のそれだった。
気になることは山ほどあるだろう。30年の内容や彼の容姿がどうして若いのか、など。が今は置いておくとしよう。いずれ話す時が来ることだろう。
そんな彼は現在海の上を船で進んでいた。ある新聞の記事を目にしたからだ。
《“Z”率いるネオ海軍が島を破壊した》
という記事だった。
俺にはそれが父親だとすぐにわかった。そのため会いに行くことにしたのだ。
父親のことは別に引きずってはいない。父親に恨みを持っていた海賊に誘拐されたもののそれを父にあったても意味はないし、探してもらえなかったのも俺は世間からしたら死んでいることになっているので仕方ないと思う。
しかしそれから何があったのか、『ヒーロー』を目指していた『あの父』が一般人を巻き込む事件を起こしているのだ。
単純に『あの父』の一ファンだった者の一人とて気になったのだ。
そんなわけで俺は今、父“Z”に会うために《仲間たち》と共に船を進めていった。
「おい、爆破された島っていうのはこっちで会ってるんだよな、日和」
「ええ、もう少しで着くはずよ。」
俺はもう1人の船員に声をかけた。元々1人で来るつもりだったのだが、正確な父の居場所を特定するために航海術を持つ『日和』だけは連れてきていた。他のもの達も着いて来たがっていたが、島に置いてきた。
「ある程度島に近づけば俺の見聞色で分かるからな。」
「フフ、相変わらず恐ろしいほどの範囲と精度ね。」
「・・・まぁな、生き残るために必要だったから身に付けた。それだけの事だ。」
俺は少し、森の中で生き延びることに必死だった時の事を思い出していた。海からは海賊、森からは猛獣。常に気を抜けない状態が続くため睡眠もままならなかった。そして俺が思いついた方法が《見聞色の覇気で常に島全体を把握する》事だった。無茶だと思いつつも、生き延びるために必死で覇気の練度を高め、島での生活が3年ほどたった13になった頃遂に1日中島全体を把握する事に成功したのだった。
俺がそんな過去に思いを馳せていると日和から声がかかった。
「着いたわ、あの島で間違いないわ。」
「島全体が火山みたいだな」
「ピンク色に光っているのは何かしら・・・あれは!ダイナガン!」
「ダイナガン?確か、海軍が保管してる超強力な爆弾だったか。」
「ええ、でもダイナガンを使って何を・・・?そうか!《エンドポイント》を破壊して新世界ごと燃やすつもりなんだわ!」
「《エンドポイント》?・・・なるほどな、お前のその反応を見る限り実在していたわけか。」
『エンドポイント』それは3つある全てを破壊すると新世界を燃やし尽くすほどの大噴火を起こすと囁かれたが、海軍が嘘と報じて終息することとなった。しかし日和の反応を見る限り実在していたようだ。
となるとだ。既に2つの島が破壊されたようだからここがラストの《エンドポイント》ということになる。
「まぁいい、取り敢えず親父に会いに行くとするか。親父の居場所はもう把握出来てる。」
「フフ、世界の命運がかかっているって言うのに相変わらずマイペースな人。世界のことよりも感動的な再開の方が大事なのかしら。」ニヤニヤ
そんなからかい交じりなことを言いつつも日和は俺に着いてくる。
そんな日和をスルーしつつ進んでいくと火山の頂点に父の背中を見つけた。隣には長身の男が1人と青い髪の女が1人立っていた。おそらく父の部下だろう2人を無視して俺は父に声をかけた。
「久しぶりだな、親父。俺が分かるか。」
その声で始めて俺たちの存在に気付いたようだ。警戒をしながら3人が振り返る。父の顔は年こそ取っているが確かに子どもの頃見ていた父のそれだった。父は『親父』という言葉に訝しげに眉を寄せながら口を開いた。
「・・・俺には妻も息子もいねぇ。誰の許可をとって俺の息子を語る!」
「オイオイひでぇじゃねぇか。俺はしっかり覚えてるぜ。海軍としては優しくも厳しかった親父が、家では厳しさはなりを潜めただただ優しかったあんたの姿を。」
その言葉に目を見開きながら父は口を開いた。
「・・・なぜその事を知っている!・・・家での俺を知っていたのは海賊どもに殺された、妻と息子だけのはずだ!」
「だから俺がその息子だって言ってんだろ。俺はお袋が殺されたあと海賊に飛びかかって気絶させられて、ある島に誘拐されてたんだよ。売るためにな。だが俺は逃げ出すことに成功してこうして生きてる!分かったか、クソ親父!」
俺の言葉を聞いてそれがホントだと分かったのか、その場に膝を着きサングラス越しの目から涙を零しながら震える声で俺の名前を呼んだ。
「ホントに、『ゼニス』なのか!?」
「何回もそう言ってんだろ、クソ親父。久しぶり、だな」
はい、ということで最後の最後にオリ主の名前が出ましたね。
《ゼニス》→Zenith→頂点
という感じで決まりました!《Z》の息子はやっぱり《Z》が入ってないとですからね!
トキについても気になるかと思いますが、どうしてもZ編を書きたかったので書いちゃいました!笑
Z編が一段落したらおいおいで過去編や設定も、と考えています。
とは言っても、次でZ編は終わる予定ですけど笑
処女作ですが、頑張って続けていきますので応援していただければ幸いです!
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新たな超新星
予約投稿していたのを忘れていました。笑
急いで、次話を書かなければと思いまして書きましたので添削は出来ていません!デデン‼︎
はい、なので誤字とは脱字があるかもしれないので、機を見つけて直しておきます!ごめんなさい‼︎
「ゼニス、お前・・・無事でよかった!」
「まぁな、色々あったがなんとか生きてるよ。」(苦笑)
「お前、今までどうしてたんだ?それになんでここに・・・」
親父が当然の疑問をぶつけて来た。
海賊嫌いの親父に、今海賊であることを伝えるとやはり怒るだろうか?
それとも、いきなり襲いかかってくるだろうか?
どちらも親父ならやりそうだ。しかし、俺は海賊であることに誇りを持っている。嘘をつくことなどありえない。
そう考え、真剣な眼差しで親父を見つめ口を開いた。
「俺は今、海賊旗を掲げてるよよ。ここには、ニュースで親父の事だと分かったから最期に会いに来たんだ。ここで・・・死ぬつもりなんだろう?」
親父は俺の言葉を聞いて、目を見開いた。
果たしてそれは、俺が海賊だと言う言葉に対してのものか?
はたまた、ここで死ぬつもりだと俺が分かっていたことに対してのものか?
それは親父にしか分からないことだろう。
少しの間を置いて親父は口を開いた
「・・・海賊だと?ゼニス、お前は海賊がどう言ったものか身をもってわかっているはずだ。それなのに、何故だ?なぜ海賊何かになった!?」
「確かに海賊は俺からおふくろを奪った。俺自身も何度も殺されそうになった。だが、俺に海軍なんていう組織は狭すぎる。・・・俺は自由に在りたいんだ!俺の道は誰にも邪魔させねぇ、邪魔する奴は倒していくだけだ。
例えそれが、親父であってもだ!」
「俺と、戦うつもりか?」
「邪魔するって言うなら、それも仕方ねぇ」
「ちょ、ちょっとゼニス!」
これまで成り行きを見守っていた日和もこの険悪になりつつある雰囲気にたまらず、口を開いた。だか、俺は自分の言葉を曲げるつもりは無い。例え親父を、殺すことになったとしても。
「・・・そうか、だがここで俺が負けたとしてもエンドポイントはダイナガンによって破壊される。そうすれば、新世界ごと消し飛ぶことになるんだぞ?」
「ハッ、噴火ごときで俺が死ぬかよ。つい最近悪魔の実も覚醒したからな。いよいよ有り得ねぇな、そんなこと。」
「悪魔の実・・・そうか能力者になっていたか。それに、その覇気。随分と修羅場を潜り抜けてきたんだな。」
「さすがに分かるか。まぁな、あんたの口癖だったからな。能力に頼りすぎるな。って部下に向かって言いながら、覇気でなぎ倒していく姿には憧れたもんだ。」
直前までの険悪な雰囲気はなくなり、久しぶりに親子の会話を楽しんでいた。しかし、そろそろ時間が来てしまったようだ。そう思い、改めて親父に向き直る。
「親父、そろそろ時間が来たようだ。なかなか強い覇気の奴がこっちに向かってきてる。親父の客だろうぜ。反対からは、海軍も来てる。大将もいるようだ。」
見聞色の覇気の感知したことを親父に伝えると、親父はそっと目を伏せた。しかし、すぐに顔を上げ口を開く。
「アイン、ビンズ頼んだそ!無茶はするんじゃねぇぞ。」
「「ハッ!」」
部下を向かわせこの場には俺と親父。日和。それから遠くからこちらを見ている元海軍大将クザンだけとなった。
部下の2人がいなくなったのを確認してから、今度は俺を見て口を開いた。
「行くなら早く行け!最期くらいカッコつけさせろ。」
「親父は親父の用事を済ませたけ。俺はちょいと海軍に挨拶してくる。」
「・・・お前が強いのは感じてる。だが、相手には海軍大将もいる。気を付けろよ。」
「ハッ!海軍大将の1人くらいどうってことねぇよ!行くぞ、日和。」
親父に背を向けて海軍がいる方へ歩き始める。それと同時に近くで黙って俺たちを見つめていた日和に声を掛ける。
「え〜私も行くの?私は戦えないよ?しっかり守ってくださいね?」
文句を言いつつも、しっかり着いていくのだからお互いに信頼し合っているのだろう。遠ざかる息子の背中を眺めるゼットには、その背中がとても大きなものに見えていたのだった。
♢ ♢ ♢
「オーオー、ずいぶんとたくさん引き連れてきたもんだな、こりゃー。」
「当然といえば当然よね。新世界が丸ごと消えちゃうかもしれないんだから。私はここで見てるから、気を付けて行ってきてね。」
そんな日和に手をあげて答えながら、俺は1人でバスターコールも真っ青な海軍の大軍に向けて歩き始めた。先頭を大将が歩き、それに続いて十を超える数の中将たち。さらに後ろには少将、大佐、一般海兵。これをかの某大佐が見たらこう言うかさだろう。『まるで人がゴミのようだ』と。
『そんな人数を動かす親父スゲェ』なんて呑気に考えている彼だが、そんな人数を前に自分から向かっていく息子がここにいた。バカ親子ここに極まれり、である。
海軍の先頭を歩いていた大将黄猿が俺に気付いて声を上げた。
「みんな〜、一旦止まりなよ〜」
その一声で数万の海軍たちが一斉に動きを止めた。赤犬が元帥になってから厳しくなったと聞くが、その訓練の賜物だろうか?はたまた、大将という海軍の最高戦力の一角がが持つ影響力ゆえだろうか?『随分と統率されているなぁ〜』と他人事のように眺めているが、肝心の彼はそんな海軍と敵対関係にあるのだ。
呑気に下らないことを考えながらまだ海軍へと歩みを進める彼に海軍のほとんどが身構える中、大将黄猿はこちらも呑気な声でゼニスへと声をかけた。
「ちょ〜っと聞きたいんだけど、君は何者だい?一般人じゃないよねぇ〜。一般人じゃ此処へは来られないはずだ。海賊かい?しかし、君からは微弱な覇気しか感じないねぇ〜。どうやって此処まで来たんだい?」
「質問が多いな、まぁ良いか。一つ目の質問に関してはイエスだ。そう、俺は海賊だ。《ウェルテクス海賊団》船長ゼニスだ。二つ目は置いといて、三つ目の質問だが普通に船で来たぜ?来る途中であんた方の横を通っただかなぁ。」
「《ウェルテクス海賊団》?聞いたことないねぇ〜。横を通ったことにあっしらが気付かなかった、何かの能力かい?それに答えを焦らされると気になるねぇ〜。」
「まぁそうだろうな。旗を掲げてまだ活動らしい事は何もやってねぇからな。能力かどうか、まぁ正解だ。何の能力かはノーコメントで。で、さっきの答えだが簡単な事だ。アンタと俺じゃ強さが違いすぎる。故に俺の潜在能力にまで覇気が届かない。それだけの事だ。アンタでもわかるように、解放してやると!」
ゼニスが少し意識して、覇気を解放してやる。そうするとさっきまでは微弱な覇気しか感じられなかったはずが、強者のそれに変わりビンビンと伝わってくる。黄猿も思わず冷や汗を流してしまう。
別に覇王色の覇気を放っているわけではない。ただ強者としての佇まい、風格がそうさせていた。彼らが今立っているのは、ゼニスに戦う意志がないから。
それ故に立つことを許されているのである。それをしっかり理解できている黄猿は口調こそいつもと変わらないが、余裕なんてない声色で思わず声を上げた。
「これはちょっと、怖いねぇ〜。」
「今の俺に戦う意志はねぇ。ただ挨拶に来ただけだ。これから世話になるから、よろしくなってな。ああそうだ、ゼットの行く末は見送られてもらうぜ。じゃあな。」
それだけ言うとゼニスは日和が待っている方へと歩き始めた。正々堂々と宣戦布告した相手に背中を向けながら。それは暗に『お前らなんかに背中を向けても怖くも何ともねぇ』と語っていた。それを受けた海軍中将の1人が声を上げた。
「ボルサリーノ大将!良いのですか⁉︎ミスミス逃してしまっても!相手は1人ですぞ!今がチャンスなのでは?」
「…確かに危険な芽は早く摘んで置きたいけどねぇ〜。ただこれからゼット先生との戦いもあるからねぇ〜。なるべく戦力は温存しておこうか〜。」
「……わかり、ました。」
大将の判断を受けて、渋々ながらも引き下がった。他の中将も反論する事はなかった。彼らは昔ゼットに師事していた者たちだ。ゼットの強さ、タフネスは身をもって分かっている。それ故の判断だった。
それと同時にゼットの方も決着が付いていた。
それぞれの用事が終わり、遂に最終決戦の舞台に役者が集まっていく。各々の思いを抱えながら、各々の望む結果を夢にみて。
『ウェルテクス』はラテン語で翻訳すると天頂という意味です!
名前も海賊団名も頂点。天頂。でハードルが上がっていく笑
逆にトキの影が薄い!次回からはバリバリ活躍しますのでご期待ください!
次でゼット編は終わる予定です。ゼット編が終わりましたら、過去を追っていくつもりです。
海賊団のメンバーがまだ悩んでいるので、案がありましたら是非参考にさせてください。
次話は明日には投稿出来ると思います。それではまた明日!
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別れと誓い
前話では誤字の報告ありがとうございました。
今回はしっかり添削も出来ましたので大丈夫です!(根拠なき自信)
視点が難しい!一人称になったり三人称になったり・・・
処女作だけあって経験不足を痛感します。
経験値を貯めている最中ですので温かい目で見てやってください!
それと今回からはキャラ崩壊?が入っています。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それではどうぞ!
俺が親父のところに戻ると、どうやらこちらも決着が付いたようだ。
親父は麦わらのルフィに敗れたのだろう。腕に装着していた武器は破壊され、黒い義手がむき出しになっていた。その姿はまるで、過去の親父の佇まいに見えて懐かし思えた。
親父の横にはこちらもボロボロになった、アインとビンズがいた。彼らの戦いも麦わらの一味が勝利を収めたのだろう。他の一味も問題なくここまでたどり着いたようだ。NEO海軍と海軍の包囲網を潜り抜けて。
なかなかどうして、手応えがありそうな海賊団だことだ。
結果は言うまでもなく、NEO海軍と麦わらの一味の戦いは麦わらの一味の完勝となったわけだ。Neo海軍は決して弱いわけではない。それを下した麦わらの一味に興味が湧くがここで戦うわけにもいかないし時間もない。
『まぁ、今回はあきらめるか・・・』そんな事を考えながら、親父に声をかけた。
「ずいぶんと派手にやったようだな、親父。それと麦わらの一味、今の俺はテメェらと戦うつもりはない。かかってくるようなら相手をしてやっても良いがな。」
「ちょっと!覇気洩れてるよ!抑えて!」
「「ッ⁉︎」」
麦わらの一味は俺の登場に驚き、身構えたため先に釘を刺しておく。が言葉とは裏腹に覇気が洩れてしまっていたようで、逆に日和に釘を刺されてしまった。その言葉に苦笑いで答えてやると、溜め息を吐かれてしまった。
そんなやりとりをしている俺たちに親父から返事が返ってきた。
「無事だったか、ゼニス。俺のほうはそうだな。・・・最期にやりたいように出来たんだ。ケジメはつけるさ。」
「・・・そうか。男が決めた事なら邪魔できねぇな。最期に話せて楽しかったぜ。」
「ぬかせ、お前は海賊なんかになりやがった親不孝のバカ息子だったよ。・・・そんなバカでも俺の息子だ。これからを見届けれないのは残念だ。なぁ、ゼニス。俺が言うのも変な事だが、やるからには頂点まで行ってこいよ?」
「ハッ、たりめぇだ!俺の名前を決めたのは親父なんだぜ。・・・俺を産んでくれてありがとな、親父。それにお袋。お袋に会ったらよろしく言っといてくれ。」
そんならしくない事を言う俺に当てられたのか目に涙を浮かべる親父は、それを隠すように壊れたサングラスをかけた。そしてちょうど到着した海軍に向けて歩き出した。それに合わせて、俺と日和も親父に背中を向けて歩き始めた。その背中に親父から声がかかった。
「バカやろう。アイツは天国に行ってんだろうさ。逆に俺とお前が行くのは地獄だろう。・・・アイツはずっと天国からお前を見守ってるだろうぜ。俺は地獄からでも見守っててやるよ。」
その言葉に鼻で笑ってやる。それきり言葉を返す事はなく、その場を離れて行った。高台の上で見守っていた青キジのところまで行き、一言「頼む」と声をかけると無言でうなずき、能力を発動させた。大きな大きな氷の壁が出来、それは親父と海軍だけを隔離する壁となった。親父は一瞬こっちをみた後、海軍に向かって行った。
大将の攻撃を受けても、中将の斬撃を受けても怯まずに向かっていく。その姿は俺が子供の頃憧れた、男の中の男そのものだった。その親父の姿は何よりもカッコ良かった。
「じゃあな、親父」
1人呟いて背を向けて歩き出す。親父の雄叫びを背に受けて、目尻が熱くなる。そんな時、隣りを歩いていた日和が俺の手を握る。それを受けて、俯きそうになっていた顔を上げ前を見据える。親父との約束を守るために、頂点まで登らなければならないのだ。親父に認められる男になるために。握られた手を握り返し、俺たちは海の方へと歩みを進めたのだった。
♢ ♢ ♢
まだ島の奥では爆発音が響いている。その頃俺たちは船になるでもなく、海辺である海賊船を眺めていた。もちろん、麦わらの一味の船である。最後に少し挨拶をしにきたのだ。宣戦布告とも言うだろう。
「よし、ちょっくら行くとするか。お前はどうする?」
「もちろん行くわ!それじゃあ、よろしくね?」
日和のその言葉に答えて、彼女を抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。そして、麦わらの一味の船目掛けて踏み出した。
次の瞬間には、彼らはすでに船の上に立っていた。それはまるで『踏み出した瞬間から着地までの時が飛んだ』ようだった。麦わらの一味も彼らの存在に気付いていない。抱き上げていたトキを下ろし、まだ彼らに気付いていない麦わらの一味にゼニスは声を掛けた。
「よう、麦わらの一味の諸君。さっきぶり、だな。」
「「ッ⁉︎」」
突然聞こえた声に驚いて一斉に振り返る。ゼニスはついさっきも見たような光景に思わず鼻で笑ってしまった。警戒したり、怖がったり、ムッとしたり、日和に見惚れるバカがいたりとさまざまな反応を見せる麦わらの一味に改めて向き直る。
「こうして話すのは初めてだな。まず、どうやら親父が世話になったらしいからな。あんなに、生き生きした親父の姿を最後に見れて良かった。ありがとう!」
「アンタはさっきの。親父って言うのはゼットのことなの?そんなアンタが何のよう?わざわざそれを伝えに来たとでも言うつもり?」
「ああ、久しぶりに再会したんだが俺の親父は間違いなくあの人だった。そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はゼニスってんだ。ウェルテクス海賊団船長だ。で、こっちが日和。うちの船の航海士をしてもらってる。何の用事か?だったか。まぁ挨拶に来ただけなんだが、やろうってんなら相手になるぜ?」
グル眉の質問に答えていたが、ついつい売り言葉に買い言葉で覇気を出してしまう。親父、海軍大将、そして麦わら。強いやつと向き合っても戦えないことにフラストレーションが溜まっていた。
「・・・なんて覇気だっ!」「おいおい〜マジかよ〜」などなどと声が聞こえてくる。
そんな時、隣で待機していた日和から頭を叩かれる。その光景に身構えていた麦わらの一味も唖然としてしまう。
「もう、またそうやって喧嘩腰になって。お礼を言いに来ただけでしょ?それに、他にもやらないといけないことがあるんじゃないの?」
「・・・・・・ああ、そうだな。」
そう言いながら島の方を指差す。すっかり忘れていたが覚えていた風を装って返事をするが、バレているようでもう一度叩かれてしまう。ゼニスは頭を掻きながら、一つ頷いて唖然としたままの麦わらの一味に声をかける。
「そう言うわけで、俺にはまだやることがある。親父の件もあるし今回は見逃してやるよ。次に会う時は、晴れて敵同士ってわけだ。せいぜい出会わない事を願ってるんだな。」
そこまで言い終わると日和に一声かけて、来る時と同じようにお姫様抱っこで抱きかかえる。そうすると日和は俺の首裏に腕を回し抱きついてくる。振り返って挨拶でもしようと思ったのだが、何故か真っ黒な嫉妬のこもった覇気を2つほど感じだため振り返る事をやめる。日和に一言「行くぞ」とだけ告げて飛び上がり月歩を使い島へ向けて宙を蹴ったのだった。
♢ ♢ ♢
次の瞬間には景色が変わる。目の前には親父の墓を建ててその前で涙を流す親父の部下だったアインとビンズがいた。その後ろには親父が好きだったJEREZの酒を持った青キジがいた。彼らは俺たちの登場に一瞬身構えたが、俺たちだとわかるとすぐに矛を納めた。
「おいおい、今どうやって来たの?何も見えなかったじゃないの?それに別嬪さんをお姫様抱っこなんて、羨ましいじゃないの。」
「こいつの能力だ。とだけ言っておこう。それで、それが親父の墓か・・・。親父は最後まで戦い抜いたんだよな?」
「・・・あぁ、カッコよかったぜ。自分の人生に一本筋を通して行ったんだ。まさに男の鏡のような人だったよ。」
「そうか」と一言答え墓へと近づいて行く。墓の前にいた彼らは自然と道を開ける。そうして墓の前までたどり着いた俺は、ドッカリと座り込んで口を開いた。
『海は見ている。世界の始まりも。
海は知っている。世界の終わりも。
だからいざなう。進むべき道へと。
だから導く。正しい世界へ。
痛み、苦しみ、包み込んでくれる。
大きくやさしく、包んでくれる。』
それは、亡くなった海兵を弔う歌であり海賊である俺が歌うのもおかしな話である。しかし親父がよく歌っていたのを耳にしていたので覚えていたのだ。前半を歌い終える。そして、立ち上がるとボロボロになった親父の武器に拳を合わせて改めて誓うのだった。『俺は誰よりも強い男になるのだ』、と。
まずはごめんなさい。今回では終わり切りませんでした!
そのため次回はゼット編?と瞬間移動の秘密?をやって行く予定です。
なるべく早く投稿していけたらと思っていますので、
次回もよろしくお願いします!
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新たな門出
内容はほとんど進んでいませんが・・・意味深
探り探りで書いていますので、意見等がありましたらどんどん頂きたいです。
よろしくお願いします!
では、本編をどうぞ‼︎
「よし。じゃあ、行くか?」
親父の弔いを終えた俺は立ち上がり、後ろで待っていた日和。そして、親父の元仲間アインとビンズに声をかける。
するとら日和は笑顔で頷くが、アインとビンズは頭に?を浮かべていた。当然だろう。仲間というわけでもないのに、突然行くかと言われても戸惑うのは当然だろう。
「ちょっと、順番に話したらどうですか?」
「あぁ、そうだったな。お前ら、俺の船に乗らないか?」
俺がそう言うと、2人はまたしても揃って驚愕の表情を浮かべる。あまりにも表情豊かな2人を見て、ついつい笑ってしまう。しかし、原因を作っている本人が笑うのは失礼だろう。そう思った日和はゼニスの頭をこづいて嗜める。
そのことに咳払いしながら、説明に移った。
「俺はさ、楽しく自由に生きたいんだよ。自由に生きるためには強さがいる。楽しさはより多くの人と共有することでより楽しくなる。だから俺は海に出たんだ。なろうと思えば海賊王にだってなる自信はある。それだけの修羅場を潜ってきた自信も。でも《海賊王》なんで肩書きも、《ワンピース》なんて代物もいらない。ただずっと俺と仲間が笑っていけるならそれでいい。と俺は思ってる。だから、さ。親父が信頼してた奴らだ。俺たちと一緒に楽しもうぜ!」
そこで一度言葉を切ったゼニスは周りの者たちは、先程とは別の驚愕に言葉を失った。他の海賊が聞いたら笑われるだろう。「海賊王になる自信はある。でも、興味がない。」そんな事を言う奴がいたら、何を夢見ているんだ。妄想も程々にしろ。と。
しかし、その場にいるものたちはそれが出来なかった。語ったゼニスの目に確かな自信と決意を感じ取ってしまったのだから。
わずかな、静寂の後これまで傍観に徹していたクザンが思わず声を上げる。
「おいおい、大した自信じゃないの。新世界で海賊として生きていくなら四皇ともぶつかるんだそ?」
「あぁ、その時は倒すまでだ。俺たちの邪魔をするならな。」
「そういや、お前さん。急に移動してたり、現れたりしてたな。なんかの能力かい?」
そう言って能力を尋ねてくるクザンの質問に馬鹿正直に答える必要はないだろう。敵になるかもしれない相手にわざわざ自分の手札を晒すようなものなのだから。しかし、その質問に対してゼニスは言葉を続けた。
「なぁお前ら。3人とも悪魔の実の能力者のようだが、そもそも悪魔の実ってなんだと思う?」
突然のあまりにも抽象的な質問に誰も答えられずにいた。考えたこともなかったのだ。海に嫌われる代わりに超常の力を手に入れる実。それが世界共通の悪魔の実への認識だと思っていた。しかし、求められている答えはそれでは無いと分かる。故に沈黙してしまったのだ。
そして、そんな彼らの反応を分かっていたかのように、ゼニスは言葉を続けた。
「悪魔の実ってのは『世界の法則に干渉する力』だ。法則を無視して形を変え、法則を無視して新たなものを生み出し、法則を無視して世界に干渉する。それが悪魔の実の力だ。だから悪魔の実は世界に嫌われている。その証拠が海に弱いことだ。世界の7割は海でできている。主部分である海に能力者は嫌われているのさ。」
説明を聞いていた者たちは思い当たるところがあったのだろう。自分たちも能力者である故に経験してきた者なのだ。なるほどと思わずにはいられなかった。
「そして、俺の悪魔の実は『トキトキの実』だ。ある人から譲り受けたものだ。能力は『未来への干渉』。ちょうど過去に干渉するお前とは真逆だな、アイン。」
急に話を振られたアインはしどろもどろしながらも返した。
「私の『モドモドの実』は12年単位でしか戻すことができません。えっと、「ゼニスだ」ゼ、ゼニスさんは条件とかはあるのでしょうか?」
「まぁ当然の疑問だな。勿論ある。まず、『未来にしか干渉できないこと』言葉の通り現時点から未来への移動しかできない。二つ目が『一つしか干渉出来ないこと』複数を同時に未来へ飛ばすことはできない。例えばここにいる全員を飛ばすとなると、丘の上という指定をした上でなら飛ばすことができる。三つ目が『他の物体には干渉出来ないこと』物体にも未来の形がある。故にそれに干渉することは許されない。以上の3つを守った上でなら干渉は可能ってわけだ。」
説明を受けたがいまいち理解できないアイン、ビンズ、クザンの3人は首を傾げていた。それを見ていたゼニスと日和はまぁそうかと思いつつ、苦笑していた。
「まあ分からんよな。ビンズ、例えば剣士が相手を切るまでにどんな行動を挟むと思う。」
「拙者ですか?相手が定まったらまず剣を構えて、そこから間合いを詰めて、剣を振るって、相手を切るでは無いのですか。」
「その通りだ。それが俺の場合、切るという意思を持ったところから剣を振るという過程を飛ばすことができる。だが、他の物体に干渉出来ないため切るという結果は持ってくることはできない。そういう力だ。」
「おいおい、ずいぶん強力な力じゃ無いの。相手からしたら距離を置いていた敵が気づいたら目の前で剣を振ってたなんてことになるわけだろ?」
説明を聞いたクザンがあまりにも凶悪な能力に冷や汗を垂らしながら口を開いた。他の2人も言葉にこそしなかったが、その場面を想像したのか軽く青褪めていた。
「そんで持ってこれが相手に干渉すると。クザン、そこからあっちに歩いてみろ。」
クザンに頼み事?をした後に能力を行使する。すると、クザンは一瞬にして指示した場所へと移動していた。そのことにクザンは口を開いたまま愕然としていた。そんなクザンを放置して2人に説明をする。
「まぁこんな感じになるわけだ。移動するという意思があったから移動できたわけで、黙って立ってるやつの時間を飛ばしても何も変わらない。そんなもんだ。」
そこまで説明すると戻ってきたクザンが文句を言うがスルーしてやる。すると、諦めたの溜息を吐いて大人しくなった。それを傍目に改めて2人を勧誘する。
「それで、お前らどうする。俺たちと来ないか?」
そういって、手を差し出すがまだ迷っているようでなかなか踏み出せずにいた。そんな2人に日和が助け舟を出す。
「一緒に行きましょう?船はみんないい人でいつも賑やかで楽しいわよ?」
「そ、それではよろしくお願いします。」「拙者も、お願い致す」
手を握り返した2人に笑顔で頷きながら、全て丸く収まったことに安堵のため息をついたのだった。そして・・・
「クザン、あんたはどうする?親父が気に入ってた奴だ、信用はしてる。が、もし黒ひげのところに情報を持ち帰ろうってんなら返すわけにはいかないな!」
そう言って俺は覇王色の覇気を解放する。それは海軍の中将出会ったとしても人によっては気絶してもおかしく無い。そんな覇気だった。こっそりと、その場を離脱しようとしていたクザンは覇気に当てられて一瞬ビクッと反応したのちにゆっくり振り返った。
「あららら、そう上手くはいかないか。あーまぁーなんだ、俺もまだ死にたくねぇのよ。ティーチには黙っておくよ。」
「まぁ賢明な判断だな。今回は見逃すが、次に敵としてあった時は容赦はしねぇぞ。」
「おーおっかねぇ、おっかねぇ」と肩を落としながらその場を去っていったのだった。それを見送った後ゼニスは、 おもむろに懐を探り出し一つの『麦わら帽子』を取り出した。それを見ていた日和は頭を抱え一つため息をつき、それを見た俺は笑ってやるのだった。そんな俺たちにいまいち状況を掴めないアインとビンズは俺たちを交互に見たのち控えめに声をかけてきた。
「あの、ゼニスさん。これからどうするのでしょう。船も見当たらないようですが・・・」
「ああ、仲間を呼ぶからちょっと待っとけ。そのあと麦わらに改めて宣戦布告しにいく。俺の仲間であいつに会いたいって奴もいることだし。お前らの紹介はその後になるだろうが・・・大丈夫か?」
「はい、私の命は既にあなたのものですから」「拙者は主人と定めたあなたに忠を尽くすのみ」
「はっはっは!ありがとよ。だけどな、そんなに堅苦しくなるな!楽しくやろうぜ!」
どう接していいのかまだ戸惑っている2人に「徐々に慣れていけばいい」とひと声かけると、2人は小さく頷いた。とりあえず話がまとまったところで、仲間を呼ぶためにでんでん虫を取り出した。
「もしもし、ゼニス!?どこほっつき歩いてるのよ!」
「はっはっは、まぁ落ち着けよヴィオラ。お前なら分かってるだろう。用事も済んだから迎えにきてくれ。」
怒っているヴィオラに全く耳を貸さず自分の要件だけを伝える。そんな勝手なゼニスにでんでん虫越しのヴィオラはため息を吐いた。そのやり取りに近くで聞いていた日和はついつい笑ってしまう。心無しかでんでん虫目つきが悪くなった気がしたが気にしない。
「はぁ〜分かったわ。迎えにいくからいつものよろしくね。今はアジトにいるから。」
そう一言残してでんでん虫は切れる。それを確認した後俺たちも海岸へ向かって歩き出す。それと同時に能力を行使する。すると、何も無かった海岸に一隻の船が現れた。その船からは先程連絡をとったヴィオラに耳たぶの長い長身の男、左眼に傷痕の残るゴーグル付きの帽子を被った男、異様に首が長い白い男、金髪のお腹にタトゥの入った柄の悪い男、そして世界一の大剣豪と名高い長剣を背負った男。まぁ癖の強い仲間たちが現れた。
そんな彼らに一言声をかけて日和、アイン、ビンズを連れて船の中に入っていくのだった。後ろから眺めていた日和には、ゼニスの自然な振る舞いの中に強者(仲間たち)を引き連れる王の姿を幻視するのだった。
す・み・ま・せ・んでした〜‼︎
気分屋で飽き性な自分はまたしても悪ぐせが出てしまいました!
今回の再開のきっかけは『イセリアルさん』の感想のおかげと言っても過言ではありません。本当に励みになります。本当にありがとうございます。
処女作で感想も初めてなので、是非是非お願い致します!
仲間についてですが、『ミホーク』と『サボ』はすごく悩みましたが仲間にすることにしました。最強(ゼニス)の仲間ということもあり、結果的に入れました。賛否はあるかと思いますが、今作はこれでいこうと思います。
次回はなるべく早く投稿できるよう頑張りますので、今後とも宜しくお願いします。
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宣戦布告
コボルト☆さん、イセリアルさん、覇道神さん
感想、意見ありがとうございます!
拙いところが多々あるかと思いますので、指摘してくださるととても勉強になります!
とりあえず蛇足しかなかった『ゼット編』はこれで終わりです!
それでは本編をどうぞ‼︎
仲間たちを連れて船の中に戻ってきた俺はまず他の仲間たちも呼び、全員が揃うと改めて姿勢を正して一つ、咳払いをした。そんな俺を訝しげに見つめる仲間たちをスルーして口を開いた。
「まず、集まってくれてありがとう。」
「急な行動はいつものことだろう?なんだ、熱でもあるのか?」
珍しく(自覚あり)真面目な俺に早速仲間たちからの茶々が入る。そして、その言葉に頷き同調する者、笑う者、オラオラする者、不遜な態度に怒るもの。
そんな賑やかな場が何よりも大切に思える。昔の1人で戦っていた頃には考えられないことだ。ただただうるさく騒いでいるのを賑やかで楽しいと感じるものもいるだろうが、俺はみんなが自然に振る舞えるこういう空間が賑やかだというのだと思っている。
話が逸れてしまったが、咳払いを一つして場を整える。
「この場のこともそうだが、この船に集まってくれてありがとう。1人で戦い続けていた頃からは考えられない。今が楽しいと思えるのもお前たちのおかげだと思ってる。本当にありがとう。」
真面目な顔でそういう俺に一同は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにしていた。そんな仲間たちに微笑みながら言葉を続ける。
「俺はこのままみんなと楽しく過ごしていれば、他に何もいらないと思ってた。今もそう思ってることも否定しない。でもさ、親父と再会して見送って一つ思い出したことがあったんだよ。『ロックス海賊団』。ほとんど知らないだろうが、一昔前最強だった海賊団だそうだ。船長ロックスが率いる、当時のカイドウ、ビッグマム。他にも凶暴な海賊たちで構成された団で、船長ロックスは世界の王を目指していたそうだ。だがそれを拒んだのが、ゴールドロジャー、ガープ、そして親父だった。」
そこで一息ついて、仲間たちに視線を向ける。あまりに大きな話に四面楚歌しながら聞いていた仲間たちは、俺に視線を向けて続きを促す。
「その戦争は船長ロックスの死と戦争のあった島ゴッドバレーの消滅をもって終戦したそうだ。結果から行くと、ロックスの世界の王という野望は夢半ばに立ったわけだが…。親父の墓参りしてる時にふと思ってさ。ロックスは暴力を持ってして『世界の王』を目指した。それを拒んだゴールドロジャーが世界を制し、『海賊の王』となった。そして、今の大海賊時代を築いた。その結果、世界は変わった。」
ーーーここにいる俺たちもそれに少なからず影響を受けて海賊になったのだから。
言葉に出さずとも皆同じ事を考えていた。名前は違えど同じ王という立場を目指した男たち。そして勝者は世界を動かした。一海賊団としては、とてつもなく広大な話だ。同時になぜこんな話をするのかも疑問に思う。そんな仲間たちの考えを読むかのように俺は話を続けた。
「だが、変わらないものもあった。それは『世界政府』だ。『天竜人』だ。あいつらいつも自分のことしか考えていない。今も昔も。世界政府の動きが活発化した?それは海賊から自分たちの命を、権力を、富を守るためだ。俺はそれを変えたい。と、ふと思ってさ。」
そうおちゃらけていうと、みんな笑って応えてくれた。その姿が何よりも頼もしかった。何よりも信頼できた。だから俺も、はっきりと言葉にする。
「なろう!俺たちらしい、『世界の王』に‼︎」
その頃
「おい、ルフィ。お前、帽子はどうした?」
「え⁉︎ない、ない、ない!帽子がねぇ〜!」
「おいおい、帽子を取り戻すためにここまで来たんだろ?なのに肝心の帽子を忘れてどうすんだよ〜。」
「アレ〜しっかり持ってきたはずなんだけどなぁ?」
「はぁ仕方ないわね〜。フランキー、旋回してちょうだい!一回あの島に戻るわよ!」
「アーオ!了解だ!」
麦わらの一味はルフィの帽子を回収すべく、島へと戻っていくのだった。こちらに一隻の船が向かっていて、彼等の思い通りに動いてしまっているとは知らずに…。
場所はウェルテクス海賊団の船に戻る
「まずは世界に俺という存在を知らしめる。そのために四皇の一角、黒ひげを落とそう。元々、あいつのことは気に入らなかった。俺たちの名を売るための踏み台になってもらおう!」
ニヤッと悪人も真っ青な悪人顔で言う。ノリのいい仲間たちはゼニスに同調して笑う。ようやくこの時が来たのだと。ゼニスには王の器がある。1番近くで見てきた自分たちが1番知っている。そして、王を支えるのが自分たちの役目なのだと心に刻む。
「その前に一つやる事がある。これを返しに行く。」
そう言って、懐から再び一つの麦わら帽子を取り出した。それに数名が反応を示す。ある者は初めて自分を負かした相手を思い出し、ある者はライバルを思い出し、ある者は兄弟の盃を交わした過去を思い出して…。
「予め言っておくが、今回は戦いに行くわけでは無い。親父の件もあるしな。それで、挨拶に行きたいやつは?」
「ヤハハ、私は行こう。あのゴム人間には感謝している。私に新しい世界を見せてくれた事を。あって礼を言いたい。」
「……おれも行こう。あの強者たちに久しく会っていない。敵対する前に一度挨拶がしたい。」
「ウシシ、私も会いに行くわ。久しぶりあいつに会っておきたいもの。」
「キシシシ、俺も会おう。俺もアイツには恩がある。」
「………サボはいいのか?」
「……オレは。………今回は見送るよ。今は会う時じゃ無い気がするんだ。」
「そうか、それじゃあ船内に入っていろ。それじゃあ行くか。いや、その必要はなさそうだな。」
一人そう呟く。それと同時に周りを見張っていたヴィオラから声がかかる。
「ゼニス!麦わらの船がこっちに向かってきているわよ!」
「…見聞色の覇気か?相変わらず化け物のような精度だ。」
俺の呟きが聞こえていたらしいミホークは、ヴィオラの声でその意味を理解したらしく俺にそう声をかける。これも子供の頃の生き残るための術の一つとしか思っていなかったのだが…。そんな事を思いながらミホークに苦笑を返して、みんなに声をかける。
「お前ら!聞いての通り麦わらが来たようだ!会いたいやつは甲板に残って、それ以外は船内に入っておけ!」
「ルフィ〜!前方に海賊船を確認!見たことない旗だ!」
「なに〜⁉︎敵船だと〜!ギャー!さっき戦いが終わったばっかりだってのに〜‼︎」
「おい!船首に立ってるアイツ、さっきの奴じゃねぇか!ん?手に持ってるのは……。あれはルフィの帽子じゃねぇ〜か!」
「なに〜⁉︎アイツ、いつの間に!おい、お前ら!取り返しに行くぞ‼︎」
「親父の次はその息子に取られてんのかよ…。しっかりしろよ、船長。」
「さっきぶりだな、麦わら。いや、今は俺の手元に麦わら帽子があるし、ただのゴム人間か?」
「おい、お前!俺の帽子を返せ‼︎」
「あぁ、いいぞ。帽子はお前らを誘き寄せるための物だったし。それより、お前らに会いたいって言う仲間がいるからな。」
「俺に?俺はお前の仲間何かしらねぇぞ?」
ーーーだってよ、お前ら!
そう声をかけると奥で俺たちのやりとりを見ていた仲間たちが出てくる。その姿を見て麦わらの一味はさまざまな反応を見せる。戦闘態勢に入る者、驚愕に目を見開く者、青ざめる者。そして……鼻血を流す者。そんな彼等に仲間たちは声をかける。
「ヤハハ、久しぶりだな!青海のゴム人間よ!」
「2年前の戦争以来か。久しいな麦わら。」
「ウシシ、貴方がナミが乗った船の船長ね?」
それから数分。ゴタゴタしたがそれぞれが再会の挨拶を済ませ落ち着いて来た頃、後ろで様子を見ていたゼニスに声が掛かる。
「お前スゲェ〜な!こんなつえ〜奴等の船長なんだろ?奥の方からもつえ〜気配がびんびん感じるしよ!やっぱお前もつえ〜のか?」
「ヤハハ、当たり前だろう?我らの船長だ、まさに怪物よ。我らの海賊団でゼニス対他の全員でやっても勝てまい!」
それに答えたのはゼニスでは無く、エネルだった。その言葉に麦わらの一味は戦慄する。ただでさえ強くプライドが高かったエネルがはっきりと勝てないと口にした事に、そして見聞色を使えるルフィ、ゾロ、サンジは船内から感じる強者の気配が纏まってもゼニスには勝てないと言うことに…。沈んだ空気の中、ゼニスは立ち上がるとそれに伴いエネル、ミホーク、カリーナも立ち上がる。
「最初に言った通り今回は挨拶に来ただけだ。次あったら敵だろうが、今はこのまま去ろう。そうだな、10日後の新聞でも楽しみにしてるといい。次に会う時はもっと強くなってる事を期待してるよ。それじゃあ行くぞお前ら!」
そう言い、背を向けて去っていくゼニスの姿を麦わらの一味はただ見ていることしかできなかった。「次あったら敵」その言葉が長い間その場を支配していた。
そして、宣言の10日後の新聞では…。
「お前ら!アイツが乗ってるぞ‼︎なになに・・・
『海賊ゼニス率いるウェルテクス海賊団は新四皇の黒ひげを打倒!新たな四皇として君臨した‼︎懸賞金は初頭額にして28億4800万ベリー‼︎』
どうでしたでしょうか?ゼニス君の強さは感じていただけたでしょうか?
・・・わかりませんよね?苦笑
ミホーク、エネル、サボ他にも大勢の強者を相手に一人で勝てる強さて・・・
ちなみにタイトルは世界への宣戦布告のつもりです。ついでに麦わらにも。
サボとルフィを合わせなかったり、再会シーンをサクッと終わらせたのは作者の力不足ゆえです。
描き始めると終わらなくなる気がして…。
次からは気になる10日間を書いていきます。
全くの無計画で行き当たりばったりで書いてますのでどうなるかは作者もわかっていません笑
次回もなるべく早く投稿できるよう頑張りますのでよろしくお願いします!
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設定
【本作主人公】
ゼニス(日本語訳:頂点)
【海賊団】
ウェルテクス海賊団(日本語訳:天頂)
【海賊団クルー(増えるかも)】
ミホーク、エネル、テゾーロ、モリア、サボ、バレット
日和、ヤマト、ヴァイオレット、アイン、カリーナ、レベッカ、ステラ
【覇気】
武装色ー武装・硬化習得済み、内部破壊習得済み
見聞色ー範囲・約半径20マイル四方(1マイル約1.6km)、未来予知・最大6秒(カタクリを3秒と仮定)
【悪魔の実】
トキトキの実(覚醒済み)
現在【0】〜未来【0以上】にかけて時間を飛ばすことができる能力。
対象を指定して、その対象を未来に飛ばすことができる。その場合指定された対象が飛ぶのは同じ位置の未来に飛ぶこととなる。
例・・・A地点にいる指定された対象が飛ぶのは10年後のA地点であり、10年後のB地点に飛ぶ事はできない。
覚醒後の能力は、指定できる対象は一つに限定されるが指定した対象の飛ぶ場所も指定することができる。(対象1つとしても、指定の仕方によって規模は変えることができる。1人がもう1人を抱えてそれを1つと指定したり、船一隻と指定して船員ごと飛ばしたりなど…)
ゼニスはこれを応用して過程を飛ばして結果を持ってくる。という形で戦闘に応用している。
【技等(模索中)】
瞬歩ー某アニメとは違い文字通り、一瞬を渡り歩く歩法。トキトキの実を使い移動する工程を飛ばして結果を持ってくる事によって一瞬での移動が可能となった。
時空足ー足場の時間を0として、時間飛ばしの副作用(飛ばしたもの以外は時間が流れていることから、飛んでいるものの時間は知覚できないだけで空間ごと止まっていると考えられる。)である一瞬の時間停止で足場の時間を停めることができる。超高等技術であるが、先頭に応用することで空中戦を可能とする。
時穿ちー剣を振るった後に斬撃を残すことで未来の空間に影響を与えることが出来る。斬撃が残っているためそこに敵が入った瞬間に敵にダメージを残すことが出来る。
次元斬ー通常は剣士が刀で敵を切るまでに、《剣を抜く》《剣を構える》《間合いを詰める》《剣を振る》《敵を切る》の5工程となるが、これをゼニスは能力を使う事によって、間の3工程を行う自分を飛ばすことで《剣を抜く》《敵を切る》の2工程で行うことが可能である。ただしあくまでも干渉できる物体は一つである為、自分に干渉している間は刀を振って相手に当たるところまでしか飛ばすことができなず、切る事はできない。(十分以上にチートだが…)
次元斬・裏ー自分では無く相手が動いたらそれに合わせて相手に能力を使う事によって自分のタイミングで相手が間合いに入ってくる事になる。それを見聞色の未来視で把握して合わせて刀を振るう事で相手を切る。
綿々時奪ー相手に触れて触れた箇所の時間のみを飛ばす。人体の行く末は皆、ミイラである。それを意図的に行う最恐技。ただし奪うことができるのは1秒のタッチで10年であるため、有効だとなるのは10秒近く触れる必要がある。解除するまでは継続されるため、長時間の戦闘又は格下との戦闘で威力を発揮する。
最終奥義・
トキトキの実の最終奥義である。使用者が臨んだ未来の結果を強制的に一つだけ現実世界に持って来ることが可能である。指定対象の永遠の命、逆に指定対象の死など、どんな事でも未来があるものには結果を持って来ることが出来る。しかし、使用後は使用者の生命活動は強制的に停止する。文字通りの『最終』奥義である。
【経歴】
元海軍大将ゼファーの息子として、マリンフォードで生まれる。10歳の時にゼファーが任務で外出中、ゼファーに恨みのある海賊によって母親は殺されゼニスはある島に誘拐された。しかしその島は海賊も海軍も滅多に立ち入れないほど危険な島であり、そのことを知らなかった海賊はその島の猛獣に襲われ殺された。隠れて難を乗り越えたゼニスは早くその場から離れるため走り続けると辿り着いたのは島の中心部だった。
ゼニスは島を脱出するために幼いながらも毎日特訓に費やし、たまに島に現れる海賊や島の猛獣を相手に経験を経て、3年後ついに島を出る事に成功する。賞金稼ぎとして世界を転々としていたがある島で生死の境を彷徨うこととなる。それをある1人の女性に助けられ、その後その女性のもとで匿われていたのだが、ある事件をきっかけにゼニスの物語は再び動き始める。ゼニスは事件をきっかけに更なる力と仲間を増やしながら海賊団設立を目指す。
それから約30年後仲間を集めていたゼニスは父ゼファーの新聞記事を目にし、表舞台へと姿を表す。父ゼファーと再開そして別れを済ませたゼニスは、絶対的な力と頼もしい仲間たちを引き連れて動き出した。海賊王にもワンピースにも興味を示さなかったゼニスだが、ゼファーとの会話の中に目的を見出していた。ゼニス率いるウェルテクス海賊団は世界政府が頂点の今の世界を変えるために世界の王となるべく目指して動き出したのだった。全ては自由に生きる為に…。
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新時代
道と未知
全然進んでいません。
スローペースですが、何とか続けていきますのでお願いします。
では、本編はどうぞ‼︎
「よし、お前ら!黒ひげをやりに行くぞ‼︎」
麦わらの一味と分かれて、落ち着いてすぐの事。いつもの事とはいえ船長の突飛な発言にはいつも振り回される。そう思うのはみんな同じようで揃ってため息をつく。
いつもはバラバラなこの海賊団が纏まるのはいつもゼニスが絡んだ時だ。そういう意味ではやはりさすが船長と言えるのかもしれない。決して誰も口には出さないが…。褒めているかは微妙なところだが。
「黒ひげのアジトは『海賊島ハチノス』だ。さっき話した、ロックス海賊団が拠点にしていた島らしい。が今はそんな事はどうでもいい。問題はどこにあるか…。だが、こっちも問題ない。何故なら俺は一度その島に行った事があるからだ。」
いきなり告げられた衝撃の事実に誰もが驚愕する。海賊島といえば「デービーバックファイト」の発祥の地であり、海賊たちの楽園と呼ばれて強者が集まることでも有名な島である。まだ若い方であるゼニスがその島に行った事があり、今こうして生きている。その若さでどれほどの修羅場を潜り向けてきたのか。想像することも烏滸がましいほどの修羅場を潜り抜けてきたに違いはなかった。
「よっていく事はそう難しい事じゃない。だが、相手は腐っても四皇の一角だ。そして俺たちは相手の土俵で戦うことになる。何が起こっても不思議じゃないんだ。」
その言葉に多くのものが神妙な顔を浮かべる。全くもってその通りだからだ。真っ向から戦った場合であればゼニスが、ウェルテクス海賊団が負ける事はまずあり得ないだろう。それだけの信頼を仲間達はゼニスに寄せている。
だが、ただでさえ何が起こるか分からない新世界である。その中の敵の拠点に攻め入ることになるわけだ。準備をしておくに越した事はないだろう。それゆえ、仲間たちはゼニスの次の言葉に耳を傾ける。
「相手は形はどうあれ、結果的に白ひげを殺して『グラグラの実』を奪った相手だ。用心しておくことにこした事はない。そこで、協力者を募ろう。候補として、赤髪が理想だ。だが四皇を狩るのに同じ四皇が出しゃばるのは色々とまずい。そこで、元白ひげ海賊団の奴らを募ろうと思う。アイツらからしたら黒ひげは文字通り親の仇だ。快く協力してくれるだろう。使えるものは何でも使っておくに限る。」
そう言って、いつもの黒い笑顔を浮かべた。こう言うところはいつもの事であり、慣れている仲間たちはなるほどと言う感じで頷いて見せた。
だが、一部納得いかないものがいた。それはつい先程仲間になったアインとビンズだった。
「待ってください!それって元白ひげ海賊団を利用するって事じゃないですか⁉︎」
「モサ!その通りでござる!そんなやり方拙者は納得できないでござる!」
もっともな意見だった。アインとビンズは何も間違った事は言っていない。善良な一個人としては正しい言葉である。だがそれが通じるのは善良な一個人としては、である。彼等は海賊なのだ。そんな言葉がまかり通る位置には既にいないのである。それに…。
「俺は、元白ひげ海賊団の気持ちより、命より。お前らの命の方がずっと大切なんだ。」
その一言にゼニスな全ての想いが詰まっていた。相手にはどこまでも非情。他人はどこまで行っても他人。しかし、仲間たちは家族である。どちらを取るかは言うまでもなかった。そんなゼニスだからこそ、仲間たちはゼニスに信頼を寄せるし、ついていこうと思うのだ。
そして、その言葉を聞いてまだ言葉を続けようとしていた2人も黙るしかなかった。そう、2人はすでにウェルテクス海賊団の一員なのだ。船長にそんな事を言われてしまっては何も言い返す事はできなかった。そこまで思われている事にうれしさすらかんじてしまうのだった。
そして、元白ひげ海賊団に会いにいく事になった一行であったが、もちろん場所がわかるわけもなく…。いつものように行き当たりばったりで行動するゼニスの悪ぐせが出ていたのだった。そんなこんなで早3日何もないまま過ぎていた。その日も食料調達できる島を求め海を彷徨っていた。
そんな時は突然やってきた。
「ゼニス!2時の方角に海軍の船!大将黄猿も乗ってるわよ!」
「黄猿が乗ってる?大将が出張るほどの事、か。きな臭いな。よしお前、次の予定が決まった!目標、海軍の船!ちょっくらシメて情報を聞き出すぞ!」
唐突に決まった次の目的。それも大将の乗った海軍の船である。普通の海賊であれば迷わず逃げるだろう状況。しかしゼニスは、ウェルテクス海賊団の一味は決して逃げ出す事はなかった。むしろ向かって行く。ほとんどのものは自身の力に自信があり、自身の力に自信がないものは仲間の、船長の力に信頼を寄せる。そうやってどんな事も乗り越えてきた。そしてこれからも乗り越えて行くだろう。
そうして、海軍の船に向かって行く海賊の船と言う妙な構図が出来上がった。当然向かって来ている海賊船を見逃すはずがなく、気付いた海賊もウェルテクス海賊団の方向へと舵をきる。全く見た事もない海賊旗に下っ端の海兵たちは若干の気の緩みを見せる。逆に中将や大将クラスはいくつもの七武海クラスの気配に気を引き締めるのだった。
遂に船と船との距離がなくなり、対面する。まず最初に出てくるのはウェルテクス海賊団の戦闘部隊。錚々たる面々を目にして海軍たちは驚愕し無意識に足が後退を始める。
「お〜これは、怖いねぇ〜。元王下七武海『鷹の目』に『ゲッコーモリア』。それに加えて、さらに七武海クラスが3人。そして……。」
冷や汗を流しながら戦力分析していた黄猿の目が後から出てきたゼニスにむく。ゼニスはそんな視線など気にした様子もなく堂々とした振る舞いで戦闘部隊の間を抜けて前へと出てくる。そんなゼニスに黄猿はある記憶が蘇っていた。それはまだ中将だった頃の黄猿が、当時の大将たちを相手にしていたゴールドロジャーの面影を見ていたのだった。
海兵たちは大将黄猿の指示がない事に戸惑い、ウェルテクス海賊団の面々はゼニスの合図ですぐに戦闘を始められるように戦闘態勢をキープしていた。緊張状態が続くなか、先に口を開いたのはここでもゼニスだった。この邂逅の主導権は既にゼニス1人が握っていると言っても過言ではなかった。
「先日ぶりだな!会えて嬉しいぜ、ボルサリーノ!」
気さくな調子でわざと名前で呼ぶことでより、フレンドリーに大将黄猿に声をかけるゼニスに海軍の面々が戸惑う中、黄猿は返事を返す。
「わっしは会いたくなかったけどねぇ〜。それで、わざわざ近付いてきた理由を聞かせてくれるんだろ〜ねぇ〜。」
「つれねぇなぁ、まぁいい。俺たちも急いでるんだ!麦わらに1週間とか言っといて1ヶ月とか掛かったらださいったらない。っと、そんな事はどうでもいい。お前らこれからどこに向かうんだ?態々大将まで出張るんだ。厄介がとか?」
「それを聞いてどうしようってんだい〜?」
「関係ないだろ。と言いたいところだがこっちは聞いてる身だしなみ。……ちょっと探してる奴らがいたな。そいつらの情報の手掛かりになれば、と思ってな。それでどこ行くんだよ?」
聞いてる身、と言ったところで後ろから「尋問の間違いだろ」とかなんとか聞こえたが気がしたがまぁ今回は許そう。
『なんたって俺様は寛大な男だからな!』とか1人心の中でコントをしている時、そんなゼニスに黄猿はその真意を測りかねていた。
『探してるやつ〜?一体誰だろうねぇ〜。ただでさえ恐ろしい海賊がゴロゴロいる海賊団。もし、新たな仲間を探してるのだとしたら〜。想像するだけでも恐ろしいねぇ〜。そして1番不気味なのは……。』
そこまで考えてゼニスと視線を合わせる。黄猿は真意を読み取ることができない、未知の海賊であるゼニスに不気味さを感じているのだった。
実際は行き当たりばったりで行動しているため何も考えていないだけなのだが………。
「“一献の酒のお伽になればよし”
“煮えてなんぼのォ~~~~”」
「「「“おでんに候”!!!!」」」
ヴッ!おでん、カッコ良死する‼︎
と言うのを言いたい為に本日投稿しましたww
本当にこの場面好きで、格好良さランキングかなり上位に位置してます。涙しながら見てました!また1人勿体ない漢を世界は失った…。
戦闘シーンかけねぇ〜………。
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