人類が滅亡した的な世界で目を覚ましたけどTSしてたんで帰るのやめます (人は誰しもTS願望を秘めているのだ!)
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プロローグ

空が青いぜ。

 

ある日目覚めたら、瓦礫の山の中で少女の姿に立っていました。何を言っているかわからないだって?大丈夫、最初は俺も分からんかった。

 

少し、辺りを散策して俺は度肝を抜かれた。なぜなら、そこは異世界などではなく紛れもない日本の新宿だったからだ。目の前に飛び込んできた、さびれた新宿駅の看板、半壊して崩れかかっている駅の改札口、光を失い倒れ掛かった信号機。かつて人々が乗っていた鉄の蛇は、灰色の鉄塊とかし、技術の象徴たる高層ビルは半数以上が倒壊している。

 

そして————空を飛ぶドラゴン。

 

結論を言えば、ここが異世界ではない確証はなかった。だってドラゴンはいるし、なんか不思議な力を使えるようになっていたし。何より、女になっていたのだからな。ただ、地球ではないと断言することもできなかった。新宿駅に限らず、周りの建物はすべて日本に存在している建物だったからである。だから、一番近い表現があるとすればそれは———人類が滅びた後の近未来の世界だろう。

 

あの日から、3年。俺はこの世界を受け入れることにした。理由はいろいろあるが、大きく分ければ二つだ。一つは、この世界にも人間がいてその上で暮らしていけそうであり、そこそこ愛着を覚えてしまったから。二つ目は、少女の体を気に入ってしまったからである!驚くほどの美少女だったのだ!それはもう、化粧をしなければギリギリ、化粧をすれば確実にSAN値が削れるほどの美少女だったのだ。まあ、あとは元の世界が好きじゃなかったとか、いろいろ事情はあるが正直、少女の体でコスプレとか、大鎌もって崩壊した都市を旅するのが楽しかったというのが大部分だ。

 

銀髪に炎のような深紅の瞳。造り物めいた整いすぎた容姿。未成熟な肢体………最初は、帰る方法を探そうかと思っていた。しかし、だんだんこの体に愛着がわいてきたのだ。

 

目覚めた当初は14歳ぐらいの体で、肉体年齢に引っ張られ中二病のごとく恥ずかしい行動もしていたが、今にして思えば混乱していたからこそあんな奇行に走ったのだ。元々中二病の気があったなんて認めないし。

 

さて、俺は現在いつも通り崩壊した新宿駅にドラゴン狩りに出かけたのだが、そこで予想外のものを見てしまった。

 

少年少女がドラゴン(食料)に追いかけられていたのだ。珍しいな、こんなことろに人が来るなんて。ここは、他の場所と違ってモンスターが多い。そのため、ここに来る人間は基本的には腕に自信のあるやつしか来ない。

 

「まあ、助けないのも寝覚めが悪しどうせ倒すんだしやりますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったい何なんだよ!!!!!」

 

少年たちは、全速力で走っていた。

 

「gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

新宿駅正面に咆哮が轟く。空気が震え、少年たちの耳を劈く。目を覚ませば、訳の分からない場所に降り、現状を全く理解しないままドラゴンに追いかけられるこの状況。少年たちが理不尽を恨むのは当たり前と言えば当たり前だった。我武者羅に走り続ける少年…橋野元太一は、自身と並走する少年と自身の前にいる少女、そしてドラゴンに今にも食べられそうになっている少女に視線を投げる。4人の距離にそれほど差はなく、ドラゴンの餌食になるのは誰が先かという話で、誰一人として助からないのは明白だった。足を引きずっているものの、人間の走る速度と比べれば圧倒的な差があった。

 

「赤い甲殻に覆われたドラゴン。まるで、御伽噺やな!」

 

やけくそ気味に、隣にいた少年が叫んだ。青ざめた顔はひきつり、声は震えている。それは、少年の精一杯の強がりだった。太一が、不意に前を向くと先を走っていた少女が立ち止まっていた。それと同時に遅れて走っていた子が、瓦礫につまずいてこけてしまった。

 

助けるか見捨てるか。一瞬の判断をするまでもなく、太一の体は動いていた。

 

「クソォォォォォォォォ」

 

少女の体を引っ張り上げることはかなわず、腕を広げる形で少女をかばう体制を取る。目の前に肉薄してくる非現実。轟音と空気の振動を感じながらも、逃げることはせず太一は恐怖から目をつぶった。だが、少年たちにドラゴンが突っ込んでくることはなかった。

 

「やあやあ、前途多難な少年少女たち!無事かな?」

 

天から少女が降り立つ。黒いセーラー服に身を包んだ、銀髪の少女。少年たちは、少女の存在感に目を奪われ、輪切りになっているドラゴンのことにしばらく気づくことがなかった。

 

芝居がかった口調で、少年たちの安否を確かめるセーラー服の少女。少女は呆気にとられる少年たちの反応を見て、得意気に嗤った。

 



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2話

速報、高校生くらいの少年少女を拾う。これだけ聞くと、何が何だかわからないな。少年たちを助けた後、とりあえずドラゴンの死体はそのまま放置して、四人を連れて俺が現在身を置いている神社に向かった。

 

本当であれば、助けて事情を少し聞いてはいさようならって風にするつもりだったのだが、どうやら事情が特殊らしい。なんとなく、この世界に来たばかりのころの俺と反応が似ており、カマを掛ければドンピシャだったためとりあえず新宿で唯一安全と言えるこの場所に案内したというわけだ。

 

居住空間として改造した社務所に、四人を招き各々の事情を聴き、この世界について簡単に説明した。大体の説明は終えた。時間にして40分程。内容的にはそれほど、濃い話はしていないが相手も俺も混乱していたから話が進まなかった。

 

 

「とりあえず、情報を整理しようか。君らは、気が付けばここにいて困惑していると、ドラゴンが現れ追いかけられたと」

 

「はい」

 

「………さっき、説明した通りおそらく君らの知っている新宿とこの新宿は似て非なる別世界だ。っていうか、新宿だけじゃなくおそらくこの世界はその者が君らからすれば異世界ってことになる」

 

「………信じられないですけど、信じる以外の道はないですよね………」

 

「残念ながらね」

 

そう言って、俺は四人を改めて観察する。今もはっきりと受け答えをしている少年が太一君。関西弁を使う糸目の少年が萩原大清。盛大に取り乱して、錯乱した後今は死んだように魂が抜けている女の子が麗華ちゃん。ドラゴンに食べられそうになったというのに、受け答えがはっきりしていた肝の据わった少女は、夕凪というらしい。

 

四人の中だと、太一君が主人公気質で萩原君はちょっとオタク気質だ。ただ彼も彼で、結構肝の据わった子だ。良くも悪くも、麗華ちゃんは普通の女の子と言った感じだ。

 

美少女ボディーの特殊スキルである魅了もどき(勝手にそう呼んでいるだけ)で、相手に安心感を与えるように心がけていたからというのもあるだろうけど、三人ともメンタル強すぎじゃない?

 

 

 

「君たちに提示されている選択肢は三つだ。一つは、もとの世界への帰還を目指して色々模索する道。二つ目は、この世界で生きていくという道。三つ目は、すべてを諦めて死ぬって道」

 

「「「………………」」」

 

「フフ、冗談だよ。そんなに深刻そうな顔をしないでよ。君らも混乱してるだろうからね。今日は休むと良い。詳しい説明は、明日にしたほうがいい」

 

ウインクをすると、太一君や萩原君だけでなく夕凪ちゃんも顔を赤くした。流石は、美少女!これだから、美少女ボディーは捨てられないぜ!!!

 

「一つ質問してもいいですか?」

 

「何かな?」

 

「凛音さんは、どうして俺らを助けてくれたんですか?」

 

「………?」

 

素で首をコテンと傾げる。すると、若干太一君は顔を赤くしうろたえたものの、真面目な顔を作り直して、俺に問いなおす。

 

「あ、いえ。えっと、何でここまで親切にしてくれるのかなって?」

 

………なるほど、まあ確かに俺も最初はだれを信じればいいのかよく分からなかったしな警戒するのは正しい判断だな。

 

「昔、君たちと似たような境遇に置かれたことがあってね。放っておけなかったのさ。まあ、信じるか信じないかは君たちで決めると良い」

 

答えを聞く前に、俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛音が部屋を出てしばらくすると、器用に四つのお盆をもって部屋に入ってきた。瞬間、太一たちの鼻腔を強烈な肉特有の香りがくすぐる。瞬間お腹が警報を鳴らす。

 

 

「「おぉぉ!」」

 

太一と大清はつい声を漏らしてしまった。

 

「おや?麗華さんは寝てしまったのかな?」

 

「はい、疲れちゃったみたいで」

 

そう言って、凛音の疑問に答えたのは夕凪だった。

 

「じゃあ、彼女は私が客室まで運んでおこう。部屋を出て左奥が客を泊めるためのスペースになってるから、食事を終えたら自由に使ってくれ。私は、用があるから食事は共にできない。すまないね」

 

そう言って、軽々と麗華をお姫様抱っこの要領で抱えた凛音は部屋から出ていった。

 

それに呆気にとられながらも、空腹にはあらがえず太一は、食事に向き直る。

 

「「「い、いただきます」」

 

恐る恐ると言った様子で、食事を口に運ぶ三人。瞬間、三人は弾かれた様に顔を見合わせた。

 

「お、おいしい………」

 

肉には味がよく染み込んでいて、口の中に甘辛い味が広がっていく。臭みなど無く、物凄く後を引く美味さだった。

 

レンゲでスープを掬い飲んでみる。これはもうスープだけでメニューに載せられるほどのものだと感じた。大量の出汁が流し込まれたソレは、注意しないと一気に飲んでしまうほど喉越しが良い。あっさり感が半端無い。

 

ものの数分で平らげてしまった3人が満足気に余韻浸っていると、大清が疑問を口にする。

 

「しかし、あの人は何もんなんやろうな?マジで、美人で料理もできて、強くて頼りにもなって、状況が状況なら告白してたわ!」

 

「あははは………太清君結構メンタル強いね」

 

それを聞きながら、呆れたようにも感心したようにも見える夕凪。そんな二人を見ながらも、太一は凛音のことを思い出し顔を赤くしていた。

 

「お、何やねん。凛音さんのことを思い出して悶々としとんのか?若いってええなぁ」

 

「大して変わらないだろ!」

 

そのことに目ざとく感づいた大清は、太一をからかうように声をかける。

 

「そういえば、私たちまだちゃんと自己紹介してなかったよね?」

 

「そうやな」

 

「確かに」

 

「ほな、俺からやな!改めて、萩原大清や。高校2年生。趣味は、ゲーム、読書、弓道や。仲良うしてや~」

 

そう言って、自己紹介を始めた大清に感謝をしつつどうしても気になった部分に突っ込む。

 

「弓道って似合わないな」

 

「太一くん結構失礼やな…」

 

「あ、じゃあ次私がしますね。私は、明日原夕凪です。高校1年生です。趣味は、スポーツ全般と天体観測です。あ、あとゲームも少しします。よろしくお願いします!」

 

「お、年下やん。俺年下好きなんよ」

 

「ナチュラルなセクハラやめろ。ドン引きだぞ」

 

「冗談やって!太一くん、俺へのあたり強ない?」

 

そんな大清の言葉は無視して、太一は自身の自己紹介を始める。

 

「大河原太一だ。学年は、高校2年。趣味は………読書だ。よろしく」

 

「え~それだけなん?太一くんつまんない~」

 

「うるせえ!喧嘩売ってるのか?」

 

「さっきのお返しやって」

 

そうして、三人の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、少年少女を拾った凛音が現在何をしているか言えば………

 

「……自分の身体だけどさぁ、色気半端ないな」

 

鏡の前で、ファッションショーをしていた。凛音は、正直黒セーラーは少し飽きてきたので、新衣装にしようかと思っていたのだが、なかなか決まらない。

 

(しっかし、この体マジで凄まじいよね。どこの二次元キャラなんでしょうって話だよ)

 

動きやすいように改造した浴衣に編み上げブーツを身に着けて、再度鏡の前でポーズをとる。黒を基調とした浴衣は、銀髪によく映える。

 

「決まりだな。………これを見たら、彼らどんな反応するんだろ?」

 

ワクワクと胸を躍らせる凛音。2年前から、美少女ボディーで相手を揶揄うのがやめられない凛音であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3話

「さて、今後の行動方針は決まったかな?」

 

「そうですね、基本的には元の世界に帰る方向性で決まりました」

 

「なるほど。ま、そうだろうね。残念ながら、私は帰る方法を知っているわけじゃないけど、それなりに顔は広いからね。取り合えず、この世界について詳しく教えながら君たちの手助けをしてくれそうな人の所に行こうか」

 

そう言って、俺は四人を神社から連れ出した。この神社は特殊な神社だ。前提として、この神社は元の世界では存在すらしていないはずだ。

 

「この神社はね、新宿で唯一の安全地帯なのさ。立地も他の建物とは違うだろう?」

 

地面からの高さ、広さ、そして木々が生い茂る土地。砂漠にポツンと存在しているオアシスのようなアウェー感。まるでそこだけ別の土地から切り取ってきたかのような、違和感をこの神社に誰もが覚えるだろう。30メートルほど上まで、続いているであろう階段に、通常の三倍はあるであろう広さ。何もかもが異例だ。

 

「確かに、来たときは混乱してたから気にしてなかったけど、特殊な立地やな」

 

そう、まるで………

 

「まるで、ここだけ別の場所みたい」

 

夕凪ちゃんの発言に俺は頷いた。

 

「そうそう。ある意味この神社は別次元にあるともいえる」

 

首をかしげる四人を視界に収めながらかみ砕いて説明する。

 

「君ら風にわかりやすく、説明するならば結界というものがここには張られているのさ。それも結構強力なやつがね。だから、あの土地を管理しているものが許可しない限りは、誰も入ってくることができない」

 

説明をしながら、男性陣にウインクをしてやると面白いぐらい顔を赤くする。マジで楽しい。

 

「どうしたんだい?顔が赤いようだけど?」

 

「え、えっと、あー…………じゃあ、ここから出るのは危険ってことじゃないですか!?」

 

紅くなった頬を見られたくないのか太一君は話題をそらすために声を荒げる。………これだから、美少女ボディーは最高なんだよな。言動一つで、こうも相手を転がせるなんて。

 

「うるさい、きもい。だまって」

 

綺麗な言葉の三段ブローを麗華ちゃんに食らった太一君は一瞬崩れかかりそうになるが、すぐに立て直し麗華ちゃんに視線を向ける。

 

「………麗華ちゃんも少し落ち着けたようで何よりだ」

 

太一くんが突っかかる前に、麗華ちゃんに声をかけ会話を切り離す。太一君の方は、太清君になだめられている。

 

「ご心配をおかけしました………あと、昨日はひどいこと言ってすいませんでした」

 

少し申し訳なさそうに、麗華ちゃんは頭を下げてきた。別に対して気にはしていない。だが、それをここで正直に言うのは面白くない。

 

「いや~私は深く傷ついた~まさか、助けたのに罵倒されるなんて思わなかったしな~どうしようかなー」

 

「ッ………ごめんなさい」

 

凄まじい棒読みで、いかにも傷つきました風の演技をする。四人とも、大して私が気にしていないのが見て取れただろう。ただし、麗華ちゃんは立場的にはいそうですかっというわけにはいかないだろう。

 

「意外といい性格してるんやな………凛音さん」

 

ちょっと引いたように、大清君は声を上げるがそれは心外だ!私の容姿は某ロールプレイングゲームでいうなら、APP18!超絶美少女だぞ!メンタルケアもできる!俺は、長い前髪をかき上げ、麗華ちゃんの顎をクイっと持ち上げる。

 

茶色の視線と深紅の視線が交錯する。

 

「大丈夫、気にしてないさ!………それでも、私に申し訳ないと思うのならぜひとも君の可憐な笑顔を見せてほしい」

 

にっこりと笑顔も忘れない。師匠から、化粧をして本気で着飾ったら、美貌だけで兵器になると言われた笑顔。昔はよく、無自覚に振りまいたものだ。自覚してからは、自嘲していたが………こうした方が、彼女の心を開けるだろう。大して強くない人間が、長時間ふさぎ込んでいるとこの世界ではあっけなく死にかねない。

 

「、ぁ………」

 

ボン!っと、顔を朱色に染める麗華ちゃん。こんな臭いセリフでも、私が言えば問題ない!美少女最高だぜ!

 

「………直接見たわけやないから、断言はできへんけどたぶんあの美貌であのセリフは一種の兵器やと思うんよ」

 

「ああ、同感だ」

 

麗華ちゃんの意識が戻るまで、10分ほどかかりました。

 

 

 

 

 

 

神社から外に出ると、そこには一台の車らしきものがあった。車にしては少し歪だ。

 

その車らしきものは鱗のようなものに覆われており、朱色淡い光を放っている。

 

「乗ってくれたまえ、大丈夫危険はないよ」

 

太一たちが恐る恐る車に乗り込むと、その中は自身が知る車の内部とほとんど同じだった。よくある、6人用の車。違う点がるとすれば、椅子がゴワゴワとして硬いことと見覚えのないボタンが運転席に多数存在していることだろう。

 

「この車の説明も詳くしよう………だが、その前に機能の説明を少しおさらいしておこうか」

 

凛音は、全員が乗り込んだことを確認しレバーを引く。ゆっくりとだが、車体が目に進みだす。

 

「この世界は君たちの知っている場所とは違う。まあ、いわゆるパラレルワールドと言ったところだろうね?君たちの世界がどうかは知らないが、この世界では25年前に人類が滅ぶような何かが起きた」

 

「えっと、昨日も確認したんですけど、何が起きたのかはわかってないんですよね?」

 

「そうだね。夕凪ちゃんの言う通り、詳しく何が起こったのかはわかっていない。まあ、知っている人間が口を開かないっていうのもあるんだけどね。

 

「え?」

 

「いや、何でもない。まあ、結果として君らも見たであろうモンスターが跋扈する世界になってしまったというわけだ。ちなみに、モンスター以外にも変な機械人形がいたり、亜人がいたりと様々だけどね」

 

「めちゃめちゃカオスな世界観やな~ってことは魔法もあったりするん?」

 

「君たちの指す魔法が、どういったものかは測りかねるけど特殊な能力を持っているものは数多く存在する。っというか、大半の人間は持っているよ」

 

「「おお!」」

 

目を輝かせる男性陣。その反応を見ながら、凛音は微笑んだ。

 

「たぶん、君たちもそのうち使えるようになるさ。この世界に、いる限りはね」

 

「………」

 

「さて、おさらいは終わりだ。質問タイムと行こうか」

 

「では、少しいいですか?」

 

夕凪が、まっすぐと手を上げる。それをバックミラーで確認しながら、凛音は答える。

 

「何かな?」

 

「2つ聞きたいことがあります。まず、一つ目。この乗り物が安全なのかについて。二つ目は、この世界の文明レベルについて。それと——————「一つ一つ答えよう」」

 

「………はい」

 

「一つ目の質問についてだけど、答えはyesでありしnoでもある」

 

「いったいどういう………」

 

「これは二つ目の質問にも関係することだけど、基本的にこの世界の文明レベルは下がっていると言える。昨日の君たちの話を聞く限り、滅びる前の世界では君たちの数十年先の文明レベルだったのだと思うよ。だけど、25年前の厄祭から文明レベルはガクンと落ちた。ただ………ここ10年で技術革新みたいなものがって、もとの文明とも君らの文明とも違うベクトルで成長してる」

 

「それが、この車だっていうんですか?」

 

「それだけじゃなくて、凛音さんが持っていた大鎌もそうですよね?」

 

「イグザクトリー、その通りだよ」

 

凛音は、夕凪と太一の言葉にハンドルを持ちながら器用に拍手を送った。

 

「まあ、詳しくは今向かっている場所についてから話した方がわかりやすいと思うから控えるけど、簡単に言えばこの車には車体を透過させる機能があってね。その上、ほぼ無音で走ることができる。後そこそこ頑丈にできてる。けど、完全に無音ってわけじゃないし、車体自体は透過できても雨なんかが降ればバレる。だから、夕凪ちゃんの質問に答えるなら、徒歩で移動するよりは格段に安全だけど見つからない保証がないわけじゃないってところかな」

 

「なるほど………わかりました」

 

「はいはーい、次は俺が質問してもええですか~?」

 

「ああ、構わないよ」

 

そう言って、凛音は許可を出す。大清は、少し間を開けた後助手席に座る太一にアイコンタクトを取り、切り出した。

 

「もしかしてなんやけど、凛音さんって——————俺らと同郷ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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