色々してたら全員病んだんですけど!? (ロウ・トウヤ)
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【本編】1章 病みと闇の始まり
プロローグ どうしてこうなった


ヤンデレを描いてみたかったんです!
許してください!輝ける世界の方もきちんと更新しますから!


僕は如月準。

単なるアルバイター、ライブハウスサークルにてバイトをしていた、単なる20歳に過ぎない成人男性だった。

 

 

それがいつからだろう。

情報過多で僕の周りが崩壊しだしたのは。

 

〜ある日のバイトにて〜

 

「……あ、あの…」

 

「はいはい?あぁ、Roseliaの…」

 

「白金燐子…です」

 

「キーボードだね、演奏したいなら部屋空いてるよ」

 

「………」

 

「……どうかした?」

 

「…きです」

 

「ごめん、聞こえない」

 

「……好き、です…」

 

「隙です?」

 

「好きです!」

 

「…………何かの、冗談かな?」

 

「私は本気です…」

 

「……1週間考える時間をくれるかい?」

 

〜次の日〜

 

「こんにちはー!」

 

「ん?…あこちゃんか、今日も練習?巴ちゃん来てるけど……」

 

「今日はあこ、別の用があるんです!」

 

「へぇー……ドラムのスティックでも折れた?」

 

「違いますよぅ!……えっと…如月さんのこと……す、す…」

 

「酢?」

 

「好きになっちゃいました……!」

 

「少し時間をくれるかな?」

 

〜更に次の日〜

 

「ソイヤーッ!!」

 

「のわぁッ!……ず、随分と独特な挨拶だね、巴ちゃん」

 

「如月さん!あたし、ずっっと前から言いたい事があったんです!」

 

「塩ラーメンと豚骨ラーメンどっち派って話?」

 

「好きです!!」

 

「嘘でしょ?」

 

「あたしは本気です!」

 

「……タイム」

 

〜また更に次の日〜

 

「如月入りまーす……ん?なんだろこれ……」

 

「……『ずっと前から好きでした、付き合ってください。上原ひまり』

・・・なんで手紙?」

 

 

 

と、言った感じで、絶えず告白が届く日々。

35日経ちようやく収まり。

そして成人している僕のため、全てをやんわりと断り続け、いつか歳の近い彼女を見つけようと考えていた……のだが。

 

「どうして私を避けるんですか?私はあこちゃんより胸だって大きくて…何よりあなたを愛してるのに……」

 

「りんりんよりあこの方が可愛いもんね?…ネ?」

 

「……あこには悪いんですけど、如月さんはあたしが好きですよね?

活発で、明るくて、姉御肌、ぴったりです。

………手を取ってください。今すぐに」

 

「あばばばばばばばばばば………」

 

 

これはまだ序の口で、法に触れかけるようなことをする少女たちもたくさんいて、しかもそれぞれ多種多様な属性を持っているという……。

 

素直、ストーカー、ネガティブ、メンヘラ、ポジティブ、サイコパス、ドMドS、妖艶、クール、ドジっ子、などなどなど……。

 

しかし忘れてはならない、そんな彼女らでも、事によっては簡単に人を殺すのだから……。

 

命の危機さえ感じる僕は、一体どう対処するのか……。

 

 

 

「うん、多分BADENDじゃないかな、僕」

 




え?歳が近いならまりなさんがいる?
……それも,アリだな。


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優しい日菜と、狂った紗夜さん

タイトルこんな感じですけど、結局はヤンデレ、恐ろしき愛という点には変わりありません、外面と内面という話です。

餌を目の前にした腹ぺこライオンが取り繕うかという話ですね(意味不)

がしかし、その餌を尊ぶのもまたライオン。
つまり、如何に相手を求めて焦がれて狂っていても。
相手が本気で拒絶するなら、大人しく退く、それがこの作品に登場する子達の、愛のカタチです。



ギリギリでいつも生きていたいから…。

 

病み娘達の凶行をギリギリで食い止め、日々を過ごすのが日課となってきた今日この頃、宇田川姉妹の勢いは多少なり収まって、代わりに氷川姉妹が入れ替わるように現れた。

 

 

「……すいませーん、日菜ちゃーん、仕事中なんですけどー?」

 

「誰もいないよ?やめればいいのに」

 

「やめたいけど僕も生活がかかってるんですよ」

 

「……あ!分かった!」

 

「何がです?」

 

「私と結婚すればぜんぶ解決するっ!うん!るんっときた!」

 

うーんこれはまずい、思考がポジティブというよりお花畑だ、というかここら辺にいるJKは歳の差をどう考えてるんだろう。

 

「ヒモとか嫌です、あと結婚もしません」

 

「恥ずかしがらなくてもいいのに〜」

 

「そもそも歳があるじゃないですか」

 

「最近法が変わって高校生結婚出来るようになったの知らないの?」

 

「未来の法律適用するのやめてもらえます?」

 

確か何年か後に高校生結婚が可能になった気がする、それとこれとは関係ないけど。

 

「…るんっときた!」

 

「今度はなんです!?」

 

「既成事実作ればいいんだよ!」

 

「………はっ?」

 

どうせ頭おかしい事だろうと聞き流すつもりで対応していたのに、気付けばカウンター越えて押し倒されているのはなぜだろう。

 

「……ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?犯される殺されるぅぅぅ!」

 

なぜこんな少女がこんな発想に至り、そして成人男性たる僕より力が強いのか、これが分からない!考えている場合でもない!

 

「そんな反応されると嬉しくなっちゃうな〜」

 

「なぜに!?どう見ても僕暴れてますよね!?」

 

「……喜んでないの?」

 

「うーん人によっては嬉しいというかJKに迫られるという体験をする大人がどんな行動を選ぶか僕には計り知れないというか」

 

「じゃあ犯すね!」

 

「落ち着いて!?元気にそんな事言われても困っちゃうから!」

 

「……ならもう一回だけ聞くけど。

喜んでるの?」

 

「僕は喜んでないですね!少なくとも僕は!」

 

「……ふーん、そうなんだ。

なら今はいいや、ジュンくんのOK取れたら改めてやるね!」

 

「ぇ、あっ……助かった…?」

 

体にかかっていた多少の重圧が消えて楽になる、見てみると彼女はカウンターの外に出ていた。

 

「あたしねー、ジュンくんに喜んで欲しいから、ジュンくんを愛してるから。こういうことしてるの、だから、ジュンくんが喜んでないなら、今日は帰る」

 

「う、うん……?ありがとう…?

……警察に電話とかしたら?」

 

「邪魔者は消すよ♡例外なく、ね?」

 

「ポリスメンの命を守るしかない……」

 

そして彼女は大人しくサークルから帰った。

 

今考えてみると、あのポジティブ思考で僕の喜ぶことを考えて行動を起こすなら、都合のいい解釈ばかりして、次はもっと酷いことになるんじゃないだろうかと思った。

 

彼女本人曰く、他と比べて純愛と言っていた。

確かに僕の意思を尊重してくれるのは日菜ちゃんぐらいだから……。

純愛といえば、純愛、なんだろうか……?

 

◇◆◇◆◇次の日◇◆◇◆◇

 

「いらっしゃいませー、って紗夜…ちゃん」

 

次の日いつも通り仕事をしていると、真っ先に氷川紗夜、Roseliaのギター担当の子が入ってきた、クールビューティーで男女ともに人気の高い子だ。

……ちょっと前まではそうだったのだけど。

 

「こんにちは、昨日は日菜が迷惑をかけたそうで…」

 

「律儀だね、やったのは日菜だよ?」

 

「いえ、私はあの子の姉なので」

 

「妹の代わりに謝りに来るとは……やっぱり紗夜ちゃんは良い子だね、偉いよ〜」

 

「?…謝りに来た訳ではありません」

 

「……へ?」

 

さも当然のように言ってのける彼女の瞳は、濁っている。

ハイライトはしっかりあるものの、それ以上に濁りが目立つ。

それはなぜか。

 

「日菜にした事と同じことを、私にしてください」

 

「正気ですか?」

 

……妹に対するコンプレックス、劣等感。

彼女はそれゆえに歪んでしまった、そして何より…。

想い人の重なり、それが最後のひと押しになったようだ。

 

「…できないんですか?」

 

「何もしてないんですが?」

 

「日菜にはして私にはしてくれないんですか?」

 

「何もしてないって言ってますよね?ねぇ?」

 

「なぜそのような嘘をつくんですか?

私が日菜の劣化品だからですか?私が日菜より可愛くないからですか?私が日菜より胸が「それ以上、いけない」

ならしてください」

 

正常狂気、という言葉が似合うだろうか。

日菜と自分を比べて、僕に拒否されると毎回こうなる。

ネガティブというより、被害妄想に近いだろう。

 

「……紗夜ちゃんは十分可愛いし、魅力的だよ。

だけどね、僕は本当に何もしてないんだ、信じれないかな?

他の人に聞いたら分かるはずだよ、僕は誰も襲ってないって」

 

 

「誰も襲ってないんですか?」

 

「そりゃもちろん、当然だよ」

 

「なら私が犯します」

 

「そうそう……うん?」

 

そうしてまた気付けば、僕は押し倒されていた。

あれ、こんなの昨日もあった気がする。

 

「あのぅ……犯すというのはつまり…?」

 

「性行為です」

 

「高校では風紀委員と聞きましたが!?」

 

「そんな肩書き捨てました」

 

まずいまずいまずい、日菜と違って彼女は有無関係なしに実行に移す歪愛タイプ!このままでは本気で貞操が失われる!

 

「服を脱がないでくださぁぁぁい!」

 

「これから交わるというのに、隠す必要なんてありませんよ?」

 

「僕の同意は!?」

 

「必要ありません、貴方が日菜を選ぶ前に私が既成事実を作って我がものとします」

 

「そこに愛はありますか!?」

 

「あります(断言)」

 

 

なんで氷川姉妹はこう既成事実を作りたがるんだ!?マーキングか!?

というか、このままでは本当にまずい!

 

「目を開けて、私を見てください」

 

「絶対脱いでるじゃないですか!嫌です!」

 

「私の貧相な身体では満足できないと?」

 

「違いますよ!?」

 

どうしてこの子クールビューティーキャラ捨てちゃったの!?

愛ゆえ?どれもこれも愛ゆえなの!?

 

「……どうして私を拒絶するのですか」

 

「うーん強いて言うなら未成年だからかな?」

 

「ならあと数年待てばいいのですね」

 

「…理論的には?」

 

…あれ、体にかかっていた重みが消えた。

 

性行為(・・・)の有無は意思を尊重します」

 

「は、ハイ……」

 

性行為は?え?それ逆に言えば他のは尊重しないということで…

 

「ちなみに警察とかは」

 

「殺します」

 

「ですよね!」

 

そうして、彼女も一瞬でサークルから出ていった、これまた日菜と同じような紗夜を見ていると、どこか似たものを感じる。

 

そして、サークルのバイト時間始まってすぐだが僕は……。

 

「すいませんオーナー、今日休みます」

 

家に帰る決断をした。

 







ヤンデレってよくわかんない。ガバガバはご愛嬌
とりあえず、如月のことを1番に考える日菜ちゃんと。
如月のことを考えてはいるけど我がものにしたい紗夜さん。

書いてみました。次回あったらもうちょい展開を工夫したいですね、そして次回は。

通い妻ひまり、になると思われ。
自宅に安心があると思うなよ。



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通い妻と書いてストーカーと読む

今更ですが、主人公はキサラギジュンです、フリガナ振らなくてごめんなさい、尚、サークルに来るバンドメンバーとは全員顔見知りです。

そして、今回強調したいのは行き過ぎた好意という事…ですかね。


◇◆◇◆◇帰宅中◇◆◇◆◇

 

 

……家に帰る時も視線を感じるのはなぜなのだろう。

周り見ても誰もいないし、軽くホラーだ、大体こころ専属の黒服さん達が常軌を逸したやり方で監視してるんだけれど。

 

しかし、今回は帰宅中に絡まれたりはしなかった、まだマシである。

 

そうしてしばらく足を進めていると、一軒家の前に到着する、シンプルな構造と、一人暮らしにしては少し広めな家だ。

鍵を差し込んで回し、扉を引くとなぜか開かない。

もう一度回すと、なぜか開いた。

 

「…あれおかしいな、家の鍵は閉めたはずなんだけど」

 

もしかしたら閉め忘れてたかなぁ……と考えながら、「ただいま〜」と誰に対しても言っていない独り言を口にすると。

 

「おかえりなさい♡如月さん」

 

「……不法侵入ですよ、ひまりさん」

 

エプロンをしつつ甘い声音で現れる上原ひまり、もうここまで来ると一周回って落ち着いてくる。

 

「言ったじゃないですか!如月さんに相応しい女の子になるって!」

 

「それとストーカーって関係ある?」

 

「通い妻ですよ〜!」

 

「他人の鍵盗んで合鍵作って不法侵入して勝手に設備使ってその他色々法に触れてるんですけど?」

 

「?、ダメですか?」

 

なんでダメじゃないって思ってるんだろ。

 

「法に触れてる時点で気付いて欲しいですね……」

 

「如月さんの為なら法も破ります、人も殺します」

 

「サラッとヤバいこと言ってる自覚あります?」

 

今目の前で目のハイライトを一瞬消した少女は上原ひまり、Afterglowのリーダー、そして。

自分を通い妻だと思い込んでいるストーカーである。

 

「あっ、そう!ご飯作ったんです!如月さんの為に!

荷物下ろして、来てください!」

 

血とか入ってそう。

 

仕方なく彼女の言う通り荷物を下ろしてリビングへ向かい、美味しそうな匂いを漂わせる食事を流れるようにスルーする。

 

「何入れました?血?唾液?汗?それ以上にヤバいものですか?」

 

備え付けの電話から受話器をとって、一応という事でポリスメンに繋ごうと番号を押す。

 

「そんなの入れてないですよ〜!

……入れたのは、私の、爪や髪の毛(愛情)です♡」

 

「もしもーし!不法侵入……電話線が切れてる!?」

 

迷いなく電話を繋ぐが、先を読まれて電話線が切断されていた、あれこれ詰みでは?

 

「嘘ですよ〜!如月さんの役に立ちたいだけの私が、そんな事するわけじゃないじゃないですか〜!……他のみんなと違って。

……だから、食べてください、ね?」

 

「……分かりました。ひまりさんを信じます」

 

これ以上逆らっても寿命が短くなるだけだと判断した僕は、大人しく料理の並べられたテーブル、その近くのソファに腰掛ける。

 

ハイライトオフからしっかりとオンに切り替えるひまり、その瞳の奥には未だ恐怖するものが見える、簡単に言えば闇。

 

「はい、あ〜ん♡」

 

「自分で食べれます「ナニカ?」

……あ、あーん……」

 

殺される……従わなきゃ殺される……。

でも料理は普通に美味しいというのがなんともまぁ悲しい……。

 

「……如月さん、覚えてますか?」

 

「何がです?」

 

「…覚えてないなら良いんです」

 

うーん?僕が他の人と話してた事かな?それだったら大人しく認めないと殺され……深くは考えないでおこう。

 

「そういえば他のみんなのことなんですけど…」

 

「殺す、とか、消す、とか、歩けなくする、とかやめてくださいよ」

 

「言いませんってば!私は如月さんの一番になれればそれでいいんですから!」

 

まだ良い方でよかった。

 

「如月さん、他のみんなと口聞いたりしてませんよね?」

 

前言撤回。

 

「僕からはしてませんよ」

 

「……誰ですか?」

 

「言いません」

 

「…浮気デスカ?」

 

「いいえ違いますそんな事あるわけが無い」

 

…そもそも結婚とかしてないから嘘は言ってない、言葉の勝利。

 

「ですよね!如月さんは私を1番に考えてますよね!

私が如月さんに尽くしてますし、家庭的、1番如月さんが好きで。

何より他のみんなより胸が大きい!」

 

「僕が貧相な方が好きだったらどうするんですかね」

 

「削ぎ落とします」

 

「やめましょう?」

 

思考が単純過ぎる、相手の好みに合わせるために胸削ぎ落とすとか聞いたことないよ、本当に怖い。

 

「僕はありのままの人が好きですから、そう居て下さいね、まだ」

 

しかし、彼女の通い妻兼ストーカー行為は病みを除けば普通に良いことしかない、それを別の方向に生かしてくれれば、文句は無いのだけれど。

 

「!、はい!わかりました!如月さんの望むことなら、何なりと!」

 

うーんキャラ崩壊。元のひまりを返して。

 

「あっ、私もう帰りますね!」

 

「サヨナラ(歓喜)」

 

あっという間に帰っていったひまり、それはもう嵐と言っても過言ではなく、僕は疲労でソファに体を預けて寝転がった。

 

と、その時、スマートフォンに通知が来た。

 

無視する訳にもいかずスマホを取り出して、ホーム画面を開く。

 

そして、僕は映し出されるメッセージを見て、改めて思い知らされる。

 

『未読のメッセージが561件』

 

……彼女たちは決して、正常では無いことを。

 

 

 

 




言っておきましょう。あくまでこれは息抜き、ヤンデレとか本当によく分かりませんし。

自分の輝ける世界、の方もよろしくお願いしまーす!(露骨な宣伝



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笑顔は幸せな時にだけ見せるとは限らない

遅れたにゃぁ、スマヌス。

今回は予定を変更してはぐみの病みと闇をお送りするよ、薫さん待ってた人はごめんね。

ちなみに今回、如月くん痛い目見るよ、おかしいね笑顔にしようとしただけなのにね。

もう言う必要もあるまいて…評価画面に飛べます。
https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=229678


出会った頃は、純粋な娘だったのになぁ。

 

◇◆◇◆◇

 

僕こと如月準の趣味、それは家でゆっくりする事だ。

 

ひまりの去った次の日、僕は自分の家のリビングでゆっくり本を読んでいた。

ペらぺらとページをめくり、時に手を止めて外を眺める。

 

「誰にも邪魔されない時間。

喜びはない、その代わりに深い絶望も悲しみもない。

『植物のような人生』を、それが僕の人生の目標」

 

ジョジョの奇妙な冒険四部ダイヤモンドは砕けないより川尻浩作のセリフ、あの人は矛盾しているからこそあのセリフはネタに思えるが、僕からすると目指すべき人生だ。

 

だが、そうさせてくれないのが世界、主にバンド娘なわけで。

 

ピンポーン、とチャイムが鳴る、鳴らさずとも分かる、バンド娘だ、あの手この手を使って僕の平穏を邪魔しに来る心を壊した怪物ども。

 

「宅配便でーす!」

 

「今いきまーす!」

 

前言撤回、こういうこともあるだろう。

 

「ハンコお願いします」

 

「はい、お疲れ様でした」

 

「今後ともご贔屓に〜」

 

ごくごく普通の宅配便を受け取る、中はなんだろうか、実家から大量の野菜でも送られてきたのだろうか。

 

そう思ってなかなかの大きさがあるダンボールを室内に置く、重さもなかなか、人1人ぐらい入ってそうだ。

 

「……流石にないよね」

 

中に人が入ってるなんてそんな、有り得るはずがない。

 

「なんか寒気してきた……というか荷物頼んでなかったし、僕実家無かった。

引き取ってもらおう、うん、そうしよう」

 

この判断をもっと早くしていれば、何か違ったのだろうか。

 

「やっ───ほーーーーーー!!」

 

突然ダンボールが内側から開かれ、中から元気な声と共にオレンジ色の髪をした少女が現れる。

 

「すいませんAmazonですか荷物が間違ってました今すぐ引き取り来てください」

 

「何してるの〜?」

 

「何してると思う〜?」

 

「んー……分かんない!」

 

「そっか〜、じゃあなんではぐみちゃんはここに居るの〜?」

 

「きーくんが好きだから!」

 

「愛っていうのは本人と通じあってようやく愛になるんだよ〜?」

 

「通じあってるよ?」

 

「通じあってないよ?一方的な愛の押しつけだよ?」

 

ツウジアッテナイノ?

 

つつつつ通じあってませんよ?

 

こう答えるのが精一杯の抵抗だ、何せもう一言余計に言おうものなら今すぐ絞め殺しにかかってきそうなほど不安定な精神をしている。

事実、以前は絞め落とされそうになった、兎か僕は。

 

「───ナンデ?」

 

目からハイライトが完全に消える、怒っているというよりなんで通じあっていないのか本当に分からないらしい。

 

「分からないってことは心が通じあってない証拠じゃないかな?」

 

「はぐみが通じあってると思ってるんだから通じあってるんだよ?

なんで分かってくれないの?分かってくれないきーくんは、笑ってくれないきーくんはきーくんじゃないのに、なんで?」

 

さすがに踏み込みすぎた感がある、ここは一時バックするべきだ。

 

「はぐみはきーくんに笑って欲しいだけなのに、その為にはぐみときーくんが愛し合わなきゃいけないのに。

 

あっ!分かった!」

 

「……あの、すいません、なんですか?その……包丁?いやナタ?なんで持ってるんです?」

 

手遅れ感がすごい、はぐみは自分の入っていたダンボールの中から刃渡り7センチ程の刃物を取り出すと、逆手持ちにして笑う。

 

「きーくんの口を裂けば、ずっと笑っててくれるよネ?

 

「ジェフザキラーみたいなこと考えますね、とりあえずその刃物を置きなさい危ないから笑ってあげるから僕死んじゃうから」

 

ダンボールを室内を持ち込んだことが仇になった、逃げ場はない、いや、もし逃げたとしても地元ソフトボールエースで運動神経バツグンのこの子から逃げ切れる自信はない、こっちは成人して以来運動などしていないのだ。

 

ナンデ?なんで逃げるノ?はぐみのこと嫌い?

 

とても、嫌いだァ!!と言える空気ではない。

 

「えーーっとね、いいかなはぐみちゃん?」

 

やっぱりはぐみのこと嫌い?

 

「僕、はぐみちゃんのことは嫌いじゃないよ?(好きでもないけど)」

 

そう、闇と病みさえ除けば純粋無垢な恋心を持つ少女なのだ、嫌う要素はないし、言ってしまえば一途だ。

嫌う理由はないと思う、闇と病みさえなければ。

 

「じゃあ、はぐみに笑って見せて?」

 

お望み通り、はぐみに笑ってみせる、初めからこうすれば良かった。

 

「……きーくん」

 

「はい如月です」

 

「はぐみ、きーくんが好き」

 

「知ってますよ」

 

あれ、どうして刃物を置いてくれないんだろう。

 

「はぐみね、きーくんにはずっと笑っててほしい」

 

「……うん?」

 

あれ、なんか不穏だぞ。

 

「だから、はぐみ……やっぱりきーくんの口、裂いちゃうね?」

 

「───え?」

 

笑顔のまま、刃物が振り抜かれる、それと同時に焼けるような痛みが頬に走った。

 

恐る恐る頬、口元付近に手を置くと尋常ではない痛みと血がべったりと付着した手が、あった。

 

斬られた、切られた、裂かれた。

 

遅れて痛みがやってくる、耐えきれずに崩れ落ちる、このまま出血多量で死ぬのだろうか、考えてみれば当然だ。

 

楽観視していた、人の闇というものを、いつか離れようという考えが甘かったのだ、早く逃げて、誰も僕のことを知らないところでやり直せば良かった。

 

いやそもそも、なぜこの娘達は、僕のことを……。

 

意識は闇に沈んだ、血溜まりの中僕は最後に、鳴り響くサイレンを、聞いたのだった。

 

「──コレデヤット、ワラッテクレル、ネ

 

◇◆◇◆◇一ヶ月半前◇◆◇◆◇

 

「地元ソフトボールの数合わせですか?大丈夫ですよ」

 

笑ってない。

 

「勝ちましたか?それは良かった、では僕はこれで」

 

─笑ってない。

 

「今回の演奏、いつも以上に良かったよ。仕事が増えるのは大変だけど、ハロハピはみんなを笑顔にするからね、そこまで苦じゃないかな」

 

──笑顔になってない。

 

「笑顔、ですか?ハロハピはみんなを笑顔にしてますよ。

…僕?僕は別に、笑う理由がありませんしね」

 

───どうして?

 

「僕のことが好き?はぐみちゃんには僕以上にふさわしい人がいるよ」

 

────どうして笑ってくれないの?

 

優しくて、カッコよくて、謙虚で、他人のことを考えて、顔も良くて、それなのに、なんで笑えないんだろ。

 

「──はぐみが、笑顔にしてあげなきゃ。

 

どんな手を、使ってでモ







これを押すと感想画面に飛べます、書いてくれれば投稿頻度が上がる…かも?

https://syosetu.org/?mode=review&nid=229678


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素直という概念に依存せよ

今回の湊友希那回、少し時間かかりました、素直というのをいかに活かして病ませるかや、どうオチをつけるか。
悩んだ末に出た答えはこれです、たぶん、いつもよりガバいかな。

ゲスト出演・白鷲千聖先輩。

追記・白鷲千聖さんをギタリストと間違えて明記しておりましたので書き直させて頂きました、パスパレのギタリストは日菜ちゃんです、間違えてしまい、本当に申し訳ありませんでした。


僕が目を覚ました時、2日経っていた。

 

裂かれた口は目覚めたら治っていた、あれが夢だったのか僕には分からないが、ダンボールが残っていたことを見ると、あれは現実だったと分かる。

 

そして、ダンボールの中には1枚の置き手紙。

 

『いつも貴方を見ています』

 

心当たりがあってしまう自分が嫌になるが、彼女、否、彼女らは僕の生理的なことは見ていないらしい、なので安心、少し感覚が麻痺ってる気もするが。

 

こんな体験をしては嫌になるのが人間というものだが、今のところ僕は彼女らの隙を伺っている、バレたら僕を拉致して監禁する人がいるからだ。

 

がしかし、無事であるのならば不自然さを出してはいけない、その瞬間悪魔たちは僕の自宅へと標的を定め、やってくる、そうなれば生きて帰れない。

 

何故か僕は死なないのだ、となればそれを存分に生かす。

 

僕は邪魔になったダンボールや荷物を片付け、それならばと準備を始める。

 

「……一番壊れてるのは僕、かもしれないな」

 

ぽつりと呟く、いやそんなことはない、周りの環境に慣れたと言うべきだ、僕は壊れてなど、狂ってはいない、事実として僕はバンド娘に難儀しているし、良い感情などミリも抱いていない。

 

「僕が狂ってる、なんて、笑える冗談ですね…」

 

乾いた笑みを浮かべ、僕は作業に戻っていた。

 

◇◆◇◆◇サークル◇◆◇◆◇

 

「聞いてくださいよまりなさーん!」

 

「また?今度はどうしたの?」

「今回はひでえっスよ!死にかけました!」

「また?」「またって言うのやめてもらっていいですか」

 

「だって、これで何回目なの?」

「……指折り数えて3、4回」

「よく生きてるよね」

「それは自分でも思います」

 

「だよねー……。あっ、そうだ。如月くん、呼ばれてたよ、対応してくれる?」

 

「分かりました〜、死の淵から蘇りし如月、行ってきまーす」

 

「逝ってらっしゃーい」

 

◇◆◇◆◇

 

まりなさんの言われた通り、とある練習室に2度ノックをし、中に入る、僕を呼んだ人がいるらしいが、どうせバンド娘だ。

 

「あら?久しぶりね、ジュン」

「余計なことだったら即刻僕は仕事に戻りますので」

 

中にいたのは湊友希那、ではなく、白鷲千聖。

パスパレというアイドルバンドのベーシストであり、その微笑みほど恐ろしいものは無いと言える、一応アイドル。

 

例外なく、病んでいる。

 

「釣れないわね♪今回は貴方に用があって呼んだの、そこでじっとしててくれる?」

「嫌です帰ります」

ナニカイッタカシラ?

 

蛇に睨まれた蛙、聞いたことぐらいはあるだろう。

今僕はホンモノの殺意と憎悪、そして愛情に当てられ、足がすくんで動けなくなってしまった、そういうことである。

 

「うふふ、それでいいのよ……あぁ、ジュンの匂い…♡」

「(諦め)」

 

彼女はそのまま、僕に飛びついて首筋に顔を埋める、くすぐったく、鼻腔を女の子の匂いがくすぐる、しかし反応したら負け、事案である。

 

そのまましばらく、匂いを嗅がれていると、不意に香水らしきものを彼女は手にした。

 

「えっと、それは?」「マーキング用の香水(ジュンに合う香水)よ♪」

 

この隠しきれない悪意と愛情である。

 

抗う間もなく香水がシュッと吹かれる、確かにいい香りだとは思うが、なんだろう、独特の香りがする。

 

「ちなみにどんなフレーバーです?」

「あぁ、それは───。ごめんなさい、電話だわ。

後でいいかしら?」

「え、いや気になるんですけど、待っ──。

 

……普通、自分から絡んで来てそんな話の切り方しますかね」

 

嵐のような人だった、電話に出るなり荷物をまとめて練習室から出ていき、その後は香水のフレーバーさえ教えてくれないまま、どこかへ行ってしまったようだ。

 

「はぁ、なんなんでしょこの匂い……まりなさんに聞いてきましょうかね」

 

すんすんと腕に付いた香水の残り香を嗅ぐが、千聖の匂いと混ざって結局いい匂いに感じてしまう、だがやはり独特な匂いだ。

 

ここに残る理由が無くなり、まりなさんに仕事終わりの報告と匂いの判断をして貰おうと思い歩き出す、静かな練習室に引きこもるのもいいが、単純に仕事をサボることになるのでダメだ。

 

 

 

ガチャリと練習室の扉を開け、僕が外に出るとほぼ同時に隣の練習室の扉も開き、中から銀色の髪をした凛々しい少女が現れる。

 

「……あ」「……準?」

 

言葉をぽつりと零し、名前を呼ばれると僕は練習室に引っ込もうと足を下げた、しかしそんなこと許してくれるはずもなく、気付けば僕はまたもや床に押し倒されていた。

 

「で、デジャブ……」

「今まで何をしていたの?どうしてここに顔を出さなかったの?どうして私に会いに来なかったの?私はここまで貴方を愛しているのに、私は貴方に全てを捧げる覚悟がある、なのにどうして貴方は私に全てを賭けようとしないの?不公平だわ、今すぐ私と──」

 

「あばばばばばばばばばば」

 

落ち着こうの一言さえ出せぬほどの息をつかせぬ猛攻、聞く限りでは僕の安否を心配していたようだが、だんだんシフトしている気がする。

 

その調子でこんな所で襲いかかってきそうな彼女──湊友希那、孤高の歌姫と呼ばれる凛々しい少女は、何かに気付いたようにピタリと動きを止めた。

 

「…何の匂いかしら、これは」

「あっ(察し)」

「他の女の匂い……これは?どういうこと?私を1番に据えずに他の女と遊んでた、そういうこと?」

 

「違います違います、これには訳があるんです」

「そう、なら、貴方を信じる」

「……あれ、意外と素直」

 

「気持ちに素直になることを勧めたのは貴方なのだけど」

「知りませんけど」

「───そう」

 

うーん、病むとこういう妄想をしてしまうのだろうか?そのせいで僕はさんざん振り回されたのだが、まぁ変に否定すると殺しにかかってくるのでやめておくが。

 

「…すいません、馬乗りやめてくれませんか?」

「分かったわ」

 

なんか、やけに素直だ、後が怖い。

 

「おおぅ、服が汚れてしまった……。

そういえば、湊さんはここで何を?」

「貴方を待って──。

……夫を待ってたわ(ドヤァ)」

 

素直だと思っていたがどうやら大嘘つきだったらしい。

 

「はいはい、そうですね。

それだけの為にライブハウスに入り浸るより、勉強した方が先決だと思いますよ?テスト、ダメダメでしょう」

「……」

 

無言の肯定、いや、これはお説教を素直に受け取っているという種の素直……?分からないな。

 

「……はぁ、全く、とりあえず僕は時間が惜しいので、帰りますよ、湊さんも、早く帰った方が──っとぉ!?」

 

流れるように歩きだし、湊さんにも帰宅を促す、しかしそれは逆効果だったようで、サークルの誰もいない入口付近、そこでグイッと手首を引かれる。

 

驚いてくるりと振り向くと、湊さんは僕をじっと見つめ、何かを言いたそうにしていた。

 

「…なんでしょうか?僕は忙しい──」

 

言葉が遮られ、一瞬でハイライトがオフになる、地雷を踏み抜いた自覚はないが、どうやらやってしまったらしい。

 

アナタハイマ、スナオナノ?

「っ……!?」

 

ゾクッとするほどのオーラ、掴まれた手首が少しずつ悲鳴を上げ、苦痛に顔を歪めながら答えを模索する。

 

「す、素直?それはもう、ものすっごく素直ですよ?」

ワタシは、アナタニイワレテスナオニ、ジブンニウソをツカナイヨウニシタノ、アナタは、ワタシにウソヲツクノ?

 

「くっ…」

 

呆気なく見抜かれた、作り笑いで誤魔化せるほど湊さんは甘くない。

 

どうすれば、どうすればここを切り抜けられる?

 

「私は貴方をアイシテル、これはワタシのスナオなキモチ。

アナタはワタシにアイを与えた、答えるのが責務、当然のコト。

スナオニナッテ?ソウスレバ、ワタシは………」

 

言葉から怨念が少し抜けて、カタコトではありながら愛を囁いてくる、掴まれた手はそっと彼女の胸に添えられて、柔らかな感触が堪能出来る。

 

抵抗する気力が、だんだん無くなっていく。

 

「……ネ?結ばれまショウ?アナタがスナオニさえナレバ、ワタシタチはムスバレル───」

 

不意に彼女の力が抜けた、こちら側が認めるのを待っているのかは知らないが、今僕にあるのは恐怖心だけだ。

 

素直という言葉を強要してくる、目の前の病んだ少女に対する、圧倒的な恐怖心。故に僕はこの場から逃げ出した。

 

「っ!ぁぁぁぁあっ!?」

 

情けないと笑え、根性無しと貶すがいいさ。

ただ、この空気に当てられてはいつか本当におかしくなる。

 

サークルから出て、走って、走って、走って。

 

逃げて、逃げて、逃げて───。

 

……不意に腕が掴まれて、声が、かけられた。

 

「どうしたの?悲しそうな顔しないで?ほら、笑って!笑えばぜーんぶ、笑い飛ばせるわ!」

 




湊友希那、ほんとに書きにくい!期待してた人は本当にごめんね!


これを押すと感想画面に飛べます、書いてくれれば投稿頻度が上がる…かも?

https://syosetu.org/?mode=review&nid=229678

以上!終わり!
ちなみに活動報告に新しいヤンデレの募集とTwitterURL乗ってるから、気になった人は見てね!じゃ!


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花咲川の闇深空間

今回は弦巻こころ回だと言ったな。
「そ、そうだ大佐、助けて──」
あ れ は 嘘 だ
「ウワァァァァァァァ!」

※今回はこころ回です

DMにてランキング入りしていることを知り、喜びつつ夜の八時に寝オチ、夜中に目を覚まし確認すればランキングにくい込む我が作品。

どれもこれもこの作品を応援してくれる人のおかげであり、3日でアクセス1万という過去最高の数を記録。

感謝してもしきれません、というわけで早めの投稿です。

今回のこころんはお世話してくれます、良かったな如月。

「で、生きては帰れますか?」

男としての尊厳を失うかもしれんが帰れるぞ、喜べ



壊れてしまった人が居る。

それを治してくれる人もいる。

壊れてしまった人は、それで治った形を保った。

しかし治ってはいなかった。

──なぜか?それは簡単。

 

古傷があり、それを叩く。

表面上は叩かれた傷を癒すが、そもそも古傷の方が深かった場合それは完全に治ったとは言えないわけだ。

 

つまり、彼はもう直しきれないほど、既に壊れてしまっている、ということ。

 

───如月くん、どうなるんでしょうね?

 

◇◆◇◆◇花咲川女子学園◇◆◇◆◇

 

「えー、如月準です、えー、唐突な転入ですが、えー、よろしくお願いします」

 

僕こと如月準は、今女子学園に居る、それも転入生としてだ。

一応補足しておくと、僕は20歳の成人男性ではあるが高校生に見られるほど若く、童顔と言ってしまえばそうだった。

 

しかし、僕がここに転入したのはとあるわけがある、理由とルールを全てねじまげることの出来る頭のおかしい権力の持ち主。

 

──弦巻こころ、である。

 

◇◆◇◆◇

 

あの日、僕はサークルから逃げ出した。

積み重なったものは僕の心を蝕み、今、心の破壊の直前まで行った。

無我夢中で走り抜け、がむしゃらに距離をとった、その先で出会ったのが、弦巻こころだ。

 

「……ここ、ろ───」

「大丈夫かしら?ほら、笑いましょう?」

 

肩で息をする僕の手をそっと掴んで、にっこりと笑ってそう言ってくれる、だんだんと落ち着いてくる、その間、こころはずっと手を握っていてくれた。

 

「…大丈夫、大丈夫よ。

私が守ってあげる、誰にも傷付けさせないから、だから、今は笑いましょう?笑ってるなら、あなたが幸せなら、私もちゃんと守ってあげれるの」

 

暖かく抱擁される、壊れかけた心が修復されるような感覚、僕はこうしてこころに守ってもらった。

─そうでもしなければ、僕の心はとうの昔に砕け散っていたことだろう。

 

──いや、もう壊れていたのかもしれない。

 

◇◆◇◆◇

 

こころは『僕を守るため』と称し、僕を強引に高校生まで戻した。

どんな手段を使ったかは分からない、ただ、あの時、僕は安息を求めるために首を縦に振ってしまった。

 

弦巻こころは、確かに『病んでいる』、それは間違いない。

ただ、動機は他のバンド娘たちと比べていくらかマシだ、『僕を守るため』に動いてくれる、その為ならなんだってするし、国だって動かすことが出来る。

 

最強の味方であり、最凶の敵だ。

冷静に考えれば、こころさえ味方につければ不安要素など一切なくなるだろう。

 

事実、この高校の大人たちは弦巻家に買収されるか、脅迫されて僕の入学を認めてしまった。

 

 

 

「……なんともまぁ、理不尽な話で」

 

今日は転入初日、挨拶を終えすぐ様トイレに逃げ込んだ。

学年は2年、言わずもがな、こころと同じクラスだ。

 

ここには当然男のトイレなどないが、教員用を使わせてもらっている。

教師は黙認、文句など言おうものなら消されるし。

 

「どうなるんでしょうね…」

 

冷静に考えてみれば、弱みに付け込まれたと分かる、あの時弱っていた僕に『守ってあげる』と言って近付いてくる、詐欺師っぽいな。

 

窓から空を眺めて、もう鳥になりたいと考える。

ただ、口に出すと『叶えられる』可能性があるので口には出さない。

 

何を考えているか、現実逃避の域に到達しても、目の前の現実は現状から逃げることを許さない。

 

実際、今学校の授業開始のチャイムが鳴り響いた。

このまま帰っても誰も文句を言わないだろうが、身の危険を感じるので、とりあえず初日は大人しくすることにした。

 

──のだが。

 

〜休み時間(1)〜

 

「元気?元気ね!今日からは私がずっとお世話してあげるから、もう悲しい顔はしなくていいのよ!」

 

〜休み時間(2) 〜

 

「授業はどうだったかしら?長かったから喉が乾いてると思うの、だから飲み物を持ってきたわ!ほら、飲んで?」

 

〜休み時間(3) 〜

 

「もうすぐお昼よ!喉は大丈夫?お手洗いにも行きたくない?

私はあなたをずーっと、お世話してあげるから!いつでも頼って頂戴!」

 

 

周りの生徒がドン引きして僕に近付くことが無くなるほどのおせっかい、そもそも何かと話しかけてくるので他の病み娘たちも僕に近付けない。

 

良くも悪くも、目立ちすぎている。

 

そして、昼休み。

 

 

「お弁当を用意したわ!一緒に食べましょう!」

「アー、スコシオナカイタイナー。ゴメンココロー。

───お手洗い行ってきますね!では!」

 

このままではダメ人間になってしまうと本能が感じ取り、こころを撒きながら教員用トイレへと向かい、また引きこもった。

 

「ここならもう誰もこない、何せ男子用トイレはここにしかないし、生徒はここに入れないからね……あー疲れた…」

 

こころは過保護すぎる、彼女の言う幸せが何かは分からないが、笑顔と幸せを同一視しているのは確実だろう。

はぐみよりはだいぶマシ、と言えばマシだが、五十歩百歩だ。

 

壁にもたれて時間を潰していると、お腹が大きな音を立てて鳴る、そういえば今はもう昼休み、昼飯時だった。

 

「……え?まさか便所飯?嫌なんですけどぉ…」

 

ここから出れないとなれば便所飯。というか、そもそも飯がないのだから便所飯でもない、便所だ便所。

 

悲しいが変に出て病み娘に見つかってもヤバイ、つまり詰みと言うことだ。

 

トイレの窓付近の壁にもたれ、でじっとし続ける。

惨め、あまりに惨め、しかしその時間は、不意に終わりを告げる。

 

「ここにいたのね!早く戻りましょ!」

 

響く声、その声には当然聞き覚えがある。

振り向く、そこには黄色い髪を下げた少女、いや言わずもがな、こころだ。

 

ここは女子トイレでは無いはず、などなどの考えが頭を巡るが、その前に腕を掴まれた。

 

そして、トイレとは基本的に出口は1つしかない。つまり、逃げ場はない。

 

というわけで。

 

「あなたのためにお弁当を用意してきたの!食べましょう!」

「あ、ちょ、待ってぇぇぇ───」

 

強制連行となります。

 

◇◆◇◆◇屋上◇◆◇◆◇

 

屋上、絶好の昼飯スポットかと思いきや誰もおらず、誰かが用意したであろう僕とこころのお弁当しか無かった、そしてこれまた用意されていた敷物の上に腰を下ろすと、こころが卵焼きを箸で挟んで差し出してくる。

 

「ほら、あーん♡」

「いや、自分で食べれるから…」

「ダメよ、喉につまらせたら大変だわ!」

「要りませんって!」

 

自分を子供扱いされるというのは気分が悪く、軽く手で払ってしまう。

守ってもらう、それは結構な事だが、過剰なのはさすがに良いだけのものでは無い。

 

ただ、それは迂闊だったらしい。

 

「あのですね、守ってくれるのは良いんですけど、僕は子供じゃ───っぐっ!?…っ、ぁっ…!?」

 

拒否して、言葉を発す、その空いた口に強引に口付けをされ、液状化した何かが流し込まれる。

恐らくだが卵焼き、吐き出そうと体は動くが、頭を抑えられて吐き出すことが許されない。

 

そしてそのまま、飲み込んでしまう。

 

「──っ、げっほ…!……急に、何をッ…!?」

 

口付けから解放され、涙目になりながら目の前の少女。

こころを睨みつける、しかしそれで見たのは深い深い、ハイライトの消えた、呑み込まれるほどの闇に染まった、こころの目だった。

 

「私はあなたを守る、その結果たとえ。

あなたを傷つけることになっても

 

「……それ、は」

 

声が震える、それは怒りではなく恐怖。

毎回こころは僕を守ってくれていたが、その裏にはこんな考えがあったなんて知らなかった。

 

やはり、僕は甘く見ていた。

 

これは『世話』ではない、『飼育』というものだ。

自分のものを守るように、こころは僕を守ってくれていた。

 

──所詮、モノ扱いだったのだ。

 

「さぁ、食事を続けましょう!

笑って?私はあなたの幸せを想う、私はあなたの笑顔を望む。

ダカラ、ネ?アナタハ、ワタシノオモウママニお世話サレテ、ワラッテ、シアワセニナッテレバイイノ

 

これは──愛なのか?恋なのか?そこに、恋愛という感情は点っているのか?

 

いや、きっと愛だ、守る、庇護心、それは愛から来るもの、恋より出でしもの。

幸せにしたいという考えは、愛以外の何物でもないからだ。

 

──その考えは言葉にならない、彼女の世話を、幸せにされる拒否権は僕にない。

なぜなら、僕は彼女のモノだから。

 

──少なくとも今は、従うしかないのだ。

 

 

◇◆◇◆◇弦巻こころの恋◇◆◇◆◇

 

笑わない人がいて、ずっと疲れているように見えた。

ダカラ、私はそれを笑顔にしようとした。

 

「笑顔ですかー、分かりませんね〜、はぐみちゃんにも聞かれましたけど、笑う意味が無いんです。

幸せがない、とは言いませんよ、僕だって美味しいものを食べたり、素晴らしい作品に出会ったりすれば幸せだと思いますとも。

あ、最近なら優しい人に守られたり、お世話される系の奴に幸せを感じましたね、うん。

 

それは置いといて、僕は仕事は仕事と割り切るタイプでして、つまり。

あなたと言葉を交える。『これも仕事の1つ』ですよ、接客です」

 

───そう、そうね!その通りだわ!

『幸せは人によって違う』んだもの!ええ!それなら私はあなたにとっての幸せを追求してあげる!

 

絶対に、あなたを守るわ!そうすればあなたは幸せを感じる、笑ってくれる!

 

私は、そうやってあなたを幸せにしてあげる。

 

それを邪魔するなら、タトエアナタデモ、ユルサナイ

 

 

 




今回は……なんでしょうね。

これも如月くんの発言が原因なのですが、こころの早とちりが過ぎるというか、これ如月くんと関わった人が歪んでいる気が。

……やめておきましょう。


次回に続く


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幸運の次に来るのは最悪と言えるほどの不運


今回はヤンデレの出番が少なく、そして多少シリアスです。
ご安心を、如月くんは痛めつけられます。
そして次回はエロだったり病みだったり歪んだ愛をマシマシにします、今回は耐えて頂ければ私も嬉しいです…

そして、オリキャラが出現します



◇◆◇◆◇花咲川女子学園◇◆◇◆◇

 

放課後、僕は高校側から呼び出しをくらった。

 

弦巻家から圧力をかけられておいてずいぶんな態度だが、こころ本人は僕さえ戻ってくれば問題は無いらしい、逃亡は有罪とのことだが。

 

 

生徒指導室の前までやって来て、夕焼けを背にして扉を開ける、そして中に入り一言。

 

「失礼します」

「──堅苦しくてつまんねえな、お前は」

「教師と生徒でしょう」

 

椅子2つ、机を挟んでおいてある、向こう側には一般的なスーツを着た男、今の発言だけでは分かりにくいだろうから言葉を加えよう。

 

タバコを吸っているし、スーツは着崩れ、足を組み、教師なのか問いたくなるほどだらしない教師だった。

 

「それもそうか、つまらない生徒を持ったものだ」

「要件は、そもそもこの高校に男の教師が居たことに驚いていますが」

「あぁ、いや何。

弦巻のお嬢さんが『女をジュンの前に出すな』だとよ。ゾッコンらしいじゃねえか、玉の輿だな如月、つまんねえ人生だ」

 

人の気も知らないでこのクソ教師は…!そもそも僕は20歳だっての!

 

「──要件は」

「ほんとつまらねえなお前。

…さてお前の言う通り、要件を話そう。っと、その前に…」

 

無言で睨みつけて要件を問い質すと男は立ち上がり、近くの本棚まで向かう、本を数冊抜き取るの本棚の奥の方から、小さいながらも黒光りする機械を取り出した。

 

「これを──こう」

「ッ!?」

 

不信感を募らせていると、男はそれを床に叩きつけて踏み潰す、念入りに何度も踏み潰した後、こちらへと向き直った。

 

「改めてお話だ。

俺は蛇穴(さらぎ) 喜朗(よしひろ)、お前は如月準。

話は至って単純、お前、生徒会入れ」

 

「理由を」

「都合がいい」

「なんの」

「逆に聞く。

ここは女子校であり、お前は弦巻のお嬢さんの仕業で少しばかり待遇が特殊だ、『それはどうしてか』という疑問が湧くのは当然として。

 

不審感が湧くのも、当然だと思わないか?」

 

──ふむ。

 

なるほど、簡単な話だ。

『僕という存在が前提から優秀であるなら、特別待遇も強引に理解させることが出来る』と。

 

 

「こう見えて俺はとーっても頭が良い大学の教授でな。

お前を特別待遇にするぐらい、造作もないのさ」

 

「その話、あなたにメリットは?」

「……細けぇことを気にするガキだな、簡単に話がいかねえのはつまんねえ、けど、メリットの1つぐらいなら話してやる。

──────賄賂だ」

 

この人教師辞めた方がいいんじゃなかろうか。

 

「勘違いするな、これはあくまで理由の一つだ、お前の答え次第で色々と変化する。

オジサンの生活が苦しくなり、お前は弦巻のお嬢さんに永遠に束縛されるか。

オジサンの生活水準がアップし、お前の自由が増えるか」

 

この教師の言いたい事はわかる、ただ別にこいつは僕を助けたいとか、そんな善の感情を持っている訳ではない、つまりこれは交渉に近い。

だが、これは──。

 

男は不敵に笑み、そして言った。

 

「win-winの関係で行こうぜ、如月」

 

 

◇◆◇◆◇

 

あのあと、結局生徒会に入ることになった、自由と人権獲得のためとはいえ言いなりになるのは癪ではあったが、天秤にかければどっちが重いかは明確だ。

 

正門にはこころが待っているとの事であの男、蛇穴から裏口から逃がしてもらった、理由を聞けば、「死なれたら困るから」と言われた。

 

「死ぬほどの事態になる前に止めてくれないんですかそうですか」

 

あの教師とはあくまでwin-winの関係性、片方の利が無くなれば互いに断つことは当然のこと、だからそこまで深入りはしない。

それはお互いに、だ。

 

夕焼けはだんだんと落ちていき、薄暗くなってきた、不審者には気をつけないといけないな。

というわけで、振り向き、電柱に向けて一言。

 

「…出てきてもらえます?」

「………」「市ヶ谷」「!!」

 

出てくる気は無いようなので一言付け足すと、電柱の影から金髪の少女が現れる。

 

「ば、バレた…」

「そりゃバレますよ、何回目ですか」

「数えるほどやってません」

「やってることを認めた時点でアウトだと気づいて欲しいですね」

 

彼女は市ヶ谷有咲、当然の如くストーカーであり、直接的な危害はこちらから関わらない限り加えてこないタイプの病みだ。

なぜか敬語であるため、僕も苗字で呼んでいる。

 

「で、今回の用はなんですか?」

 

残念ながら今この子に構っている暇はない、というか関わりたくない、口を開けば恋だの口にするし。

 

「聞かなくても分かりますよね?」

「分からないから教えて欲しいんですけど」

 

返しを聞くと市ヶ谷はショックを受けたように硬直した、口で伝えなければ伝わらないことだってある、心が通じあってる?バカ言わないで欲しい。

 

…だが、彼女の反応は予想と異なっていた。

 

「つ、伝わっ、て、ぇ、なんで……、きっと、何かの……」

 

青ざめた顔をして額に手を当てている、これは少し過剰だ。

ふむ、これは僕の選択次第では地雷をぶち抜くことになるな、間違いない。

 

「……覚えて、ない?」

「あー、えっと、なんでしょうね」

 

だが経験ゆえに言わせてもらおう。

黙る、答える、誤魔化す、逃げる、如何なる行動を取ろうと。

 

「───どうしてですか」

「あっ…」

 

…地雷というのは、踏み抜かれるものだ。

 

 

 

 

微妙な間が流れる、先ほどまではまだ穏やかな目付きをしていた市ヶ谷も、睨みつけるようにして僕を見ている。

 

「どうして覚えてないんですか?」

 

脂汗が頬をつたう、答えを考え、逃げ方を考え、今取れる最善を思考をフル回転して模索している。

 

どうして、なんですか?

「………」

 

沈黙こそが答え、と自ら宣言できたらどれだけ楽なんでしょうかねぇ!

 

だが現実とは残酷であり、そんな宣言できないまま目線を泳がせ時間を稼ぐ、知らないと、覚えがないと答えることも出来ず、目的などなく時間を稼ぐことしかできなかった。

しかし、その時間は不意に終わりを告げる。

 

「…分かりました」

「?」

 

謎の承諾、それを疑問に感じた瞬間、肩にあった手は首元に移動していた。

 

親指が首を押しつぶす、手加減などない本気の首絞め、咳をして空気を確保しようにもそれさえ押し潰される。

 

「ッ─────!!」

 

悲鳴さえ声にならない、じたばたと暴れても手足が思うように動かず、そのうち抵抗さえも出来なくなり、だらんと手足が垂れ下がる。

 

暴力ではなく、完全に絞め落とすことに特化した動きだった。

それだけは理解できて、理解して、そうして。

──僕は、意識を失った。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

俺は如月が行ったであろう道をなぞる、その先では苦しむ如月とその原因である市ヶ谷有咲が居たが、俺はそれを静観した。

 

──どうやら如月が絞め落とされたようだ、ぴくぴくしていて陸に打ち上げられた魚みたいだな、泡を吹いているのもそっくりだ。

 

如月を絞め落としてそれを抱く市ヶ谷に近付き、俺はとんとんと肩をつつく。

 

「っ…!!」

 

「そう警戒するな、別にお前の手元にある如月を奪おうって訳じゃない。ただ警告しに来ただけさ」

 

「……」

 

「如月はな、『何も覚えちゃいねえよ』、嘘なんてついてない。

だけど、そいつほどヤバイ奴もそうそういない」

 

「何がですか」

 

「…お前だって遠くないうちに気づく、お前は如月を追い込めているように見えてその実逃げ道しか与えていないってことを」

 

「──」

 

「あんまり手をかけさせないでくれよ、オジサンはつまんねえからな」

 

「?────。

…分かりました」

 

 

市ヶ谷と如月に背を向ける、これ以上会話をしていたら他の人に見つかる可能性があると危惧したのだろう、賢い生徒だが、どうにも如月が構うと扱いが危険だ。

 

だが如月はストッパーだ、あの生徒たちは如月が居る限りまだ大人しい、それこそ奴が死んだりなんてしたら暴走する。

 

それは、何としてでも阻止しなければいけない。

 

◇◆◇◆◇

 

 

──昔から、僕は幸運だった。

 

 

 

 




コラボが決まりました。

急展開過ぎて着いていけない?それはすまなかった、何せストーリー性を求められるのが意外だったものでね。

今回の新キャラ、蛇穴喜朗、口癖は「つまんねえ」

以上、次回は病みマシマシ、エロ成分あり、イチャイチャしますよぉ(白目)
そして如月くんが有咲に監禁されます、やったね!


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幸運

こんばんわ、カタリナ騎士です。
今回は有咲回、マシマシにすると言ったな、アレは嘘だ。
厳密にはマシマシというよりマシ程度です、ごめんね。

では、始まります。


運にも色々ある、不運、悪運、幸運、不幸中の幸い。

 

まぁ、似た意味のやつも、それはどうでもいい。

問題は、僕の運がどれかだ。

 

簡潔に答えよう。僕は全て良かった。

 

不運になるが、その中で不幸中の幸いと言うべき出来事が起きる。

ちょっとした出来心でした悪いことも悪運が強く乗り切れる。

 

そして単純に運が良かった。

 

例えば、事故に巻き込まれても自分は傷1つ無かったが荷物がオシャカになったり、アイスの当たりが7連続で出たり、自販機の当たりが2連続したり、馬鹿みたいな運だった。

 

まぁ、だからだ、危機感を感じなくなったのは。

『どうせ死なない』『何となる』とタカを括り、病み娘達の対応も適当になってきた、絶対それが問題ではあるが、そもそも僕には心当たりがないのだからしょうがない。

 

だが、あそこまで執拗に迫られると少しばかり自分に対して疑問を抱くようになってしまう。

そして、最近思うようになってきた。

 

『僕が忘れているだけなのではないか』と──。

 

◇◆◇◆◇

 

まず、縛られていることに気付いた。

 

「……え、何これ、手錠?」

 

目覚めた矢先に気付いたのは、手足が固定されていること。

拷問椅子の棘なしバージョン、と言えば分かりやすいか、それに僕は固定され、座らされていた。

 

うーん、なぜこうなった、思い出せるけど思い出したくない、市ヶ谷に絞め落とされたとか僕は知らない。

 

「やっと目が覚めたな」

「え、誰?」

 

声がして視線を向ける。よく見ればこの部屋は薄暗く視界が良くない、声で分かるが、敬語がないぞ。

 

「───」

 

ゆっくりとこちらまで歩いてくる市ヶ谷……いや、有咲は手を組み、珍しくにっこりと微笑んでいる、怖い。

 

「動機とやり方は分かりますとも、ええそれは分かります。

というわけで僕を家に返してください(切実)」

「ダメに決まってるだろ、今日からお前は私のモノなんだから」

「人は誰のものでもない!!」

 

「うるせぇな…」

 

これが人の本性ですか。

 

「ちなみにここってどこですか?」

「私の蔵の隠し部屋」

「何それ知らない」

 

何度か蔵に拉致られたことはあるが、そんな部屋があるとは知らなかった、いや、元より僕をこうする予定だったならば隠すのが普通か。

 

それより、なんか話通じそうじゃないか?これワンチャン交渉して出してもらえる気が。

 

「言っとくけど、こっから出ようとか考えんなよ?

好きな人を殺し(シメ)たくないんだよ、私も」

 

ダメみたいですね。

 

「じゃあ僕からも言わせて貰いますけど、絶対これ長続きしませんよ、そのうち黒服さん達が僕を助けに来ますからね」

「来ねぇと思うぞ」

「フン、あの特殊部隊顔負けの力を持ち僕を監視している黒服達がここが分からないなんて有り得ませんよ」

 

比喩表現でもなんでもない、正直言ってあの人達ほど頼れる人もいない、常識があり、限度を知り、力があり、技術もある。

そしてなんやかんやで僕の頼み事を聞いてくれる。

やはり僕というか黒服さんに隙はなかった。

 

 

自信満々に視線を逸らす、実際その通りではあるのだが、その通り過ぎるのだが……僕、如月準がタカをくくると、大抵ロクなことがないのだ。

 

「──なら短い間でも楽しむだけだ」

「へ?───ちょ、あ、服を脱がないでくださぁぁぁあい!」

 

なんの抵抗もなく服を脱ぎ始める有咲、直視できないので咄嗟に目を閉じる、しかし手足を固定されているので、逆に言えば目を閉じることしかできない。

 

それはつまり、簡単に剥がされるということ。

 

指が瞼を押し上げ、強引に視界を開けさせられる。

下着に包まれているとはいえ形がよく分かる大きな胸、似つかわしくないとか言ったら殴られそうだが、似つかわしくない可愛らしい下着、そして女の子特有の匂いが鼻腔をくすぐる。

 

「あ、あんまジロジロみんなよ…」

「自分で脱いどいて何その反応、怖い。

 

──げぇ、おぁ…!?ギブキブギブギブキブ!絞め、絞めるのやめて下さァい!死ぬ!死ぬぅ!」

 

率直な感想を述べただけで真正面から抱きしめられ、首に手を引っ掛けられて絞められる、ふくよかな胸に顔が包まれているが苦しみが圧倒的に勝る、マジで死ぬ。

 

必死の訴えと、ばしばしと絞める腕をしばらく叩いたからか腕がほどける、しかし顔に当てられた胸はそのまま。

 

「……その、あの、当たってます」

「当ててんだよ♡」

 

甘ったるい声が耳元で囁かれる、それだけで抵抗の気力は削がれてゆく、我ながら意思が弱いと思うが、男の悲しきサガだ、仕方ない。

 

だが、抵抗する気はなくとも、気になることはある、それを口に出して聞くことぐらい、許されてしかるべきだ。

 

「一つだけ、聞いても?」

「あん?なんだよ」

「女の子らしからぬ荒々しい口調はさておき。

 

どうして、君たちは僕に固執するんですか?」

 

一瞬、彼女の瞳が揺れた。

これは禁忌として決して言葉にしなかった疑問、彼女たちがどんな反応をするか分からないため言わなかったもの、死ぬかもしれないから。

ただ、このままで居てもムズムズして寝付きが悪くなりそうだ、寝れるかどうかは、まぁ別として。

 

 

 

静寂が訪れた、瞳はまっすぐ有咲を捉えている。

対する有咲は僕から視線を逸らしている、気を失う前では取り乱していたはずだが、どこか、儚げだ。

 

「……本当に、覚えてないんだな」

「──えぇ、覚えてません」

 

こんな椅子に縛られた情けない姿で堂々と宣言できるのは、それこそ僕ぐらいだろう。

 

「ポピパがバラバラになりかけた時、お前が手を貸してくれた。

お前にとっては小さな手だったかも知れない、だけど、私はそれを覚えてる。

 

だから、忘れられるのは許せない」

 

うむ、そんなことした覚えがない。

そもそも僕はサークルで働いていただけでバンドの物事に首を突っ込んだ事は無い、ことなかれ主義と言えばその通り。

 

「そう、ですか。

知りません、覚えさえない。

ここで嘘をつくのは簡単ですが、それで帰してくれる貴女でも無いはずだ、そうでしょう?」

 

「当たり前だろ、私はお前を帰さない。

お前は、私だけのものだ

 

そう言い終えると同時に揺らぎと儚さは彼女から消え去り、下着さえ脱ぎ捨てて一糸まとわぬ姿になった。

 

──そこからは、まぁ、お察しである。

 

椅子に座っているという都合上本番までには至らなかったが、精根枯れ果てるまで搾り取られた。

 

そしてそこから……数週間。

 




疲れた、言っとくけどR18は今んとこ出す予定はないよ、一方的に搾られるの俺好きじゃないから。
以上、有咲回は次回のちょっと初めまでは続くよ。

では、また次回【如月包囲網 その零】にて。


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如月包囲網 その零

如月!貴様がどう逃げようと関係の無い処刑方法を思いついた!
「なにィ!」

何人ものヤンデレが貴様を襲うぞ!覚悟していろ!
──次回から、マジでお前を襲いに行く。
(今回はヤンデレ成分ゼロに近いです)


あれ以来、僕は毎日愛を囁かれ続けた。

摩耗する精神、擦り切れるココロ、しかし食事は毎日きちんと与えられ、餓死することもできない。

 

そもそも僕に死ぬ気はないが、このままでは精神が死んで人形みたいになってしまう。

 

ほら、今日も──。

 

 

「…よし、起きてるな」

「───」

 

朝、と思しき時間帯に有咲はやってくる、手にパンや飲み物を持って。

僕の起床を確認して、強引に食事をさせる。

 

人形遊びが意外と好きらしく、何かと僕という人形を可愛がっては頭を撫でる、心地はいいが、居心地は最悪だ。

 

これがおおよそ3週間ほど、精神も病むというもの。

 

しかし僕は無事だ、この時は壊れない強靭な心に感謝した。

 

「よしよし……」

 

ペット感覚だ、何かを愛でるのに慣れているように思える、こう考えると僕は彼女のことを何も知らない。

 

ただ狂っている、病んでいると一括りにして理解を拒んでいる。

…それこそ、唯一の愚行なのでは無いだろうか。

 

彼女は一途だ、僕が抵抗さえしないならきっとよく接してくれる、逆に僕はそれを拒み続け、あまつさえ彼女を傷付けた、それは酷いこと、責任を感じるべきものなのではないか…。

 

「じゃあ、私は行ってくるから。良い子にしてろよ?」

 

そう言い残し有咲は去ってゆく、どこへ、と聞く必要もない、高校だろう。

 

静寂が精神を侵しに来た。

 

思考がぐるぐると堂々巡りをする、あれだ、これだと。

認めることを迫る、受け入れることを迫る、何より、このままであることを拒む。

 

頭がおかしくなりそうだ。

 

僕はひたすらにこの状況からの解放を望む、呑気に考える暇も潰え、ただただそれしか望まない。

 

これも一種のツケだと言うのなら払う、だから、何とかしてくれと。

 

「──ぁ、あ」

 

短い声が喉から零れる、乾いた声だ、先ほど飲み物を口にしたばかりだと言うのに、阿呆のように口を開けていたせいでもうパッサパサになってしまった。

 

 

このまま、死ぬのだろうか。

 

 

そんな考えが頭をよぎる、嫌だ、と脳が反応する。

ならどうやって、否定ができるのは知恵か力があるものだけだと。

 

僕はそれを持たない、なんてことの無い平凡な人生を目指していたから。

 

──それが間違いだったとは、思いたくはない。

 

椅子に拘束された体は動かず、手足はぴったり椅子に縛り付けられている、あぁこれは無理だ、マジックでもしない限り出ることは不可能だ。

 

そう考えて、僕はまた、瞼を閉じた。

 

 

 

───そして、乱暴な衝撃によって目を覚ました。

 

「つまんねえ事に付き合わせやがって、このツケは高く付くぜ、如月」

 

手足が動く、縛られていた手足は痕が残っているものの何の問題もなく動く、そして椅子から立ち上がる。

少しよろけ、壁にぶつかる、その壁にもたれかかると段々と足元が安定してきて感覚が戻ってくる。

 

蛇穴(さらぎ)、さん?」

「あんまりにもお前の帰りが遅いから見に来た。

立てるなら帰るぞ。

市ヶ谷に戻ってこられるとここまでの道のりが泡になるし、めんどくせえしつまんねえ」

 

相も変わらずスーツにタバコ、しかしどこか雰囲気が違う、そしてそのまま部屋から階段を昇って出ていってしまう。

 

改めてこの部屋を見渡してみると、無機質な白塗りの壁に照明が1つ、奥の方に階段があり、本当に僕をぶち込むためだけに作った部屋だと理解した。

 

というか、我ながら立ち直りが早い、黄金メンタルは伊達では無いな。

 

そうして部屋の中をうろちょろして見ていると、階段から蛇穴が駆け下りて来た。

 

「お前!早く来いっつってんだろうが!」

「あーれー……」

 

文字通り襟首を掴まれて引きずられていく、さすがに階段は降ろしてくれたが、かなり雑だった、本当に教師やめろ。

 

階段を上がると謎の取っ手の着いた天井を掴んで押し上げた、数週間ぶりの日光、なんてものは無く薄暗かった。

 

だってそこは蔵のはず、蔵の……。

 

「…って、蔵のはずじゃ……?」

「ンなもん嘘に決まってるだろ、蔵に隠し部屋なんてあるか。

ここは地蔵通り商店街の空き家、元からあったモンを利用したらしいな、市ヶ谷は」

 

なるほど、僕にさえ本当のことを言わなかったのか、なんという大嘘つき、愛する人にぐらい本心をさらけ出してもいいんじゃないか。

 

というかサラッと流したが、なぜこの人は蔵の隠し部屋うんぬんを知っているのだろう。

 

「とにかく離れるぞ、お前の家はダメだ、俺の家に匿う」

「あ、はい──なんで僕の家がダメなんですか?」

「説明はあとだ、いいから来い」

 

どこか焦っているように見える蛇穴は窓を開けてそこから出ていく、僕も手を借りてそこから出るが、いまいち理解が追いついていない。

 

裏道をわざわざ好んで歩いていく蛇穴、僕的には日光をもう少し浴びたいのだが、表には出るなと言われた。

 

なに、僕指名手配でもされてんの?

 

「お前が他のやつに捕まってると俺に報酬が入んねえ、いいか如月、俺とお前は良好なウィン・ウィンの関係を築いている、分かるな」

「ええ、分かりますよ、僕にメリットが少ないですけど」

「今にわかる、お前は俺と約束してて良かったってな」

 

ほら、大通りに出るぞと急かされる、正直そこまでの光景は想像していなかったが、僕が見たのは想像以上、いや、想像出来るはずのないものだった。

 

行方不明者捜索の張り紙がそこらじゅうに張ってあり、そこには僕の顔写真とフルネームが。

そしてご丁寧に見つけたら電話くださいの文字と、電話する先の番号まで。

 

そして、大通りに出たことで視線は僕に集まった。

 

「──逃げるぞ!」

 

次々に電話やスマホを手に取る通行人と店の人々、そして蛇穴の一声で僕の心臓は跳ね上がり、つられて走り出した。

 

「ちょちょっと!?これはどういう──」

「お前は自覚症状がねえからタチが悪ぃな!

包囲網だよ!お前はこの街から出られねえ!

そんでもって、お前はお前にゾッコンな奴らに追われる身ってことだ!」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 

──ハンター(ヤンデレ)が、解き放たれた──。





さぁ始まりました【如月包囲網】!
実況はわたくしカタリナ騎士と!
「今回だけで荒々しさが3割増した蛇穴だ」

次回は如月くんが大量のヤンデレに追っかけまわされるぞぉ!というか更新早いねえ!前の投稿いつだっけ!
「知らん。
というか、今回は俺が如月を助けるんだな。
ウィンウィンの関係だし、まぁ当たり前だ。
上げた生活水準ってのは落としにくいからなぁ」

うーんこのロクでなし高校講師とヤンデレコード

次回!如月包囲網!如月絶体絶命!次回もぜってー、見てくれよな!


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如月包囲網 その1【Sとヤンデレ】


【祝!お気に入り450、UA4万、総合評価700突破!】

ありがとうございます!いやほんと!すっごく伸びてて私嬉しい!
これからも頑張って如月くんを痛めつけますので、何卒応援をお願い致します!では!

ちなみに今回、好き嫌い分かれると思います、どっちかというと嫌いな人が多いイメージ、それでもいい方はスライドして進んでくださいね。


「どこまで逃げればいいんですか!?」

「ンなもん分からん!『逃げるだけ逃げる』!」

「んな無茶なぁ!!」

 

今現在、僕と蛇穴は商店街から離れ、廃れた街中をを疾走していた、この街にこんな所があったとは思わなかった。

そして、体力がない僕だが背後にはもう捕まったら間違いなく色んな意味でヤられる人達がいるので全力を天元突破グレンラガンして疾走していた。

 

そしてチラリと後ろを見てみる。

 

笑わないと……きーくんと…笑わないと、はぐみは…

素直になって私と行きましょう、誰もあなたを傷付けたりしない

「あははー、みんなこわーい。

ジュンクンハアタシノモノだから、カエッテクレナイカナ?

ヒナ、ヒナだけには……キサラギサンは…

 

 

うん、これは無理だ、捕まったらバラされる気がする。

 

「ゾッコンだな如月、刺激的な人生だ」

 

何せいつもは余裕オーラをかましている蛇穴でさえ、目が少し死んでいる、ヤンデレ達の放つプレッシャーに当てられては無理はないが。

 

「蛇穴さん、蛇穴さん、逃げ道はどこです?」

「………」

 

あれおかしいな、返答がないぞ、まさか。

 

「悪いな如月、ほとんど潰されてる」

「え」

「逃走ルートをシミュレーションしてから2日だが、バレて潰されたらしいな」

 

走りながら、僕の思考は真っ白になった、だってこれ、詰みって奴だ、詰みってことは僕はこのまま……。

 

「だが、無いわけじゃない」

「あるならそう言って貰えます!?」

「……じゃあ、少し隠れてろ」

「…え?」

 

◇◆◇◆◇

 

しばらくして、ヤンデレ達は曲がり角を曲がって蛇穴を見つけた、蛇穴はどうやら窓に引っかかった如月を押し終わったらしくそのまま自分も窓を越え、どこかへ行った。

 

キークン、ナンデニゲルノ?

……ゼッタイニニガサナイ

 

それを追い、はぐみ、湊さん、さよひなが窓をぶち破って同じくどこかへ行ってしまった。

 

 

 

「……ふぅ、どうにかなった…?」

 

そして僕は、別の廃屋でコソコソしていた。

作戦は至って単純、少しばかりヤンデレと距離をとり、曲がり角を利用して僕が隠れ、蛇穴が囮になった。

 

蛇穴は……まぁ、いい奴だったよ。

 

それよりも、今は蛇穴との再集合場所へ向かうべきだ、やつは簡単に死ぬ器でもないし、ヤンデレ達が僕が居ないと気付けばまた探しに来るのは確定、少なくとも、ここからは離れたい。

 

「誰も居ない…な、よし」

 

廃屋の窓を乗り越えて外に出た、静かな所だ、小声でも少し響く、あまり喋らないようにしよう。

 

色々とびくびくしつつ、僕は廃れた街中を駆け出した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

蛇穴が再集合場所に指定したのは花咲側女子学園、蛇穴の自宅から一番近く、デカいが目立ちはしない建物ということで奴が指定してきた。

 

廃れた街は街と言えるほど広くなく、すぐに出れると思っていた、のだが。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

絶賛、逃走中である。

 

少し前まで呑気に走っていたのだが、角でリサさんと鉢合わせ、踵を返して逃亡すればその先であこと遭遇、別の曲がり角を曲がって逃走すれば別のヤンデレと、どんどん悪化して行き今に至る。

 

今や僕を追い立てるヤンデレは8人を越える、どうやら蛇穴が逃げ切ったらしい、さっきの4人も参戦してら。

 

しかし逃げ足は僕が勝る、身体能力が単純にゴミな僕だが、足の速さだけは負けないのだ。

 

───そして問題は、体力と身体能力が釣り合っていないこと。

 

両足が悲鳴をあげている、普段から運動なんてしていないし、走ってもう30分ほど経つ、もはや限界。

 

あぁ、どうやら僕の冒険はここで終わってしまうらしい、父さん母さん、先立つ不幸をお許しください。

 

「……耳を閉じて!」

「はい?」

 

突然の声が上から響いた、疑問を感じたが聞いたことの無い声だったため一応信じ、遅れて耳を閉じた。

 

 

その瞬間、キィィィィィィッン!!という甲高い爆発音が響く、爆発はしていないようだが、これは…まさか。

 

「スタングレネード…?」

 

スタングレネード、閃光手榴弾とも呼ばれるもの、音と閃光にて人を怯ませる兵器だ、しかしそれがなぜここに…?

 

「驚いた?チュチュから借りてきたんだよね」

「……レイヤさん?」

 

前から足音を鳴らして現れたのはRAISE A SUILENというバンドのボーカル兼ベースを担当している大人びた女性、レイヤさんはその中で僕に対し、唯一闇を見せない人で、困った時は相談に乗ってくれたりと、正に癒し、冗談抜きで僕が1番信頼している人だ。

 

そんな彼女が助けに来てくれた、これはもう勝ち確定だ。

 

「…やっと、捕まえた」

「?……はい?」

「なんでもないよ、ここに居たら危ないし、早く離れよう」

「あ、まぁ、そうですね、そうしましょう」

 

小声で聞こえた言葉は聞き取れないまま、僕はレイヤさんに連れられてその場を離脱することにした。

 

◇◆◇◆◇

 

しばらく連れられるがまま歩いていたが、だんだんと街から離れているような気がして、僕は手を引くレイヤさんに声をかける。

 

「あの、これどこまで…?」

「────」

「……レイヤ、さん?」

 

表情が見えない、どんな表情をしているのか分からない、しかも返事がなく、不穏な空気が流れ始めた。

 

「やっと………2人っきり」

「ッ!?」

 

振り返ったレイヤさんの顔は恍惚に染まっていて、片手を顎に当てていた、歪んでいた、気付けば腕を掴まれて逃げられない状況にされて。

 

「ぐぇ…!ちょ、なんです急に!」

「黙ってて」

「え……」

 

軽く押されて地面に倒れる、文句を言おうと立ち上がろうとするが腹に足を当てられて押さえつけられた。

 

「れ、レイヤさん……?」

「私、ずっと思ってたんだ、マトモなフリをして、準を何度も助けて、準が希望を抱いた時、『それを壊して、その時の表情を見よう』って」

 

突然、何を。

 

「それで、準を徹底的に叩きのめして、痛めつけて、壊しきって、その後、私のものにしよう、ずっと、考えてたんだ」

 

「そんな……馬鹿な、嘘でしょ?さすがに、だってレイヤさんは僕の話や相談に……」

「ふぅん、それで?それもこの時のためだよ」

「────」

 

嘘だ、嘘だろう、レイヤさんは頼れる人だ、困った時、僕が行き詰まった時何度も相談に乗ったり、助けてくれた。

 

「……いい顔、かわいい、でも、準が見てた私はぜんぶこの時のために作ったものだから」

 

心にヒビが入る時があるのなら、それはきっと今。

恐らく今僕はレイヤさんの期待に十分応えるほど、絶望した表情を見せているはずだ。

信頼している人からの裏切りとは、ここまで心にくるものだったか。

 

 

「人は壊れると、何かにすがろうとするんだよ」

「……それが、なんだってんです」

「?──だから、壊せば準は、私に依存してくれるでしょ?」

 

「────は?」

 

その瞬間、横腹に蹴りが入った。

 

「げぁっ…!?」

 

突然すぎるが、痛みだけはしっかりとやって来て悶える、こんなに力強かったのか、レイヤさんは。

 

「ほら、壊れていいよ、壊れちゃえ、それでさっさと私のものになって、そのあとはじっくりと、好きに弄ぶから」

 

連続して蹴りが入る、苦悶の声を喉奥から漏らして悶えるが止まるはずがない、何せこの人は壊すことを目的にしているんだ、止めるはずがない。

 

「っゔぁ…」

「いい顔、濡れて来ちゃう。

でもそろそろ壊れていいよ、十分堪能したから」

 

蹴りがより一層強くなる、その表情は見えないが恐らく今まで僕との会話で見せたことの無いほど、幸せな表情をしているはずだ。

 

───他人を信じたのが、どうやら間違いだったらしい。

 

意識が遠のいてきた、肋骨何本か逝ったかな、苦しい、痛い、どうして僕はこんな目に遭うんだ、身に覚えのない理由並べられて、もはや詐欺じゃないか。

 

そんな考えをしていても、蹴りは止まらない、クソ、ドSめ…。

 

ああ、無理だ、これは意識を……保て、ない…。

 

 

遠のく意識と苦痛の中、僕は最後に言葉を聞いた。

 

「そこまでよ、レイヤ」

 

それを境目とし、僕の意識は闇に落ちた。

 

 

 




正直言ってどんなテンションで書きあげたのか覚えていないぐらい訳の分からないお話となりました今回10話、ドSレイヤさんとかいう需要のないキャラクター、俺が書きたかった。

次回はチュチュ、どんな属性を盛れるのか、お楽しみに。

準くんは唯一病んでいないレイヤさんに安心して全てをうちあけ、それをレイヤさんは親身に聞いている風を装ってタイミングを計っていた、準が自分を信じ、救いだと確信した瞬間に裏切り、叩き落とした。

いやぁ酷い!しかもやり方も酷いねえ!いいぞもっとやれ。


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如月包囲網 その2【ネコミミ・スウィートタイム】

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今回はあんまり痛めつけません、チュチュの性質上、そもそも題名で察して、今回病み要素少なめだよ。

では、始まります。


「骨が何本かいってるわね、OVER kill(オーバーキル)なんて生易しいものでもないわ……」

 

「ええそうよ、パレオ、治療は後回し、今はここから離れましょう。

他の人に見つかったら厄介だもの、特にユキナ、ユキナにはゼッタイ、準は渡せない」

 

……途切れ途切れの意識の合間、聞こえた言葉。

誰の言葉か判断できるほどの気力は残っていないが、人名が出たので予想だけはできた。

 

恐らく、RASのあの二人だろう。

 

◇◆◇◆◇

 

「……おぅ」

 

騒がしい声でも音でもなく、僕は静寂の中で目を覚ました。

立ち上がろうと脚に力を込めても思うように動かず、変な声が出てしまった、もしかして足の骨も逝ったのか。

 

というか、ここはどこだ。

 

不明瞭な視界が定まってくると、ようやく自分が曇り空の下で寝転び、見上げていることが分かった。

 

状況把握に時間を費やしていると、突然ぬっと少女が僕の顔を覗き込む、前髪だけでもわかるカラフルな髪色、そして赤とピンクの入り混じった瞳、特徴としては十分だろう。

 

「目を覚ましましたか?」

「──パレオ」

「はい、パレオです」

 

 

RASのキーボード、パレオ、本名鳰原れおな、中学2年生でありながらとんでもないキーボードの腕を持っている少女。

 

そして、彼女がいるということは。

 

「傷の具合はどう?キサラギ」

 

声が聞こえて、上半身を起こす、それと同時にのしっと腹部に重さがかかる、その方へと目線を向けると身を乗り出して僕の顔を覗き込んでいるチュチュが居た、少し近すぎる気がする。

 

「……とりあえず降りてもらえます?動きにくいんですよ」

 

軽くあしらうと、チュチュは不満げに服の裾を掴んできた。

 

「少しぐらいいいじゃない!最近……できなかったもの」

 

何が出来なかった、と聞く前にチュチュはそれこそ猫のように擦り寄ってきた、ゴロゴロとご機嫌に喉を鳴らす幻聴が微妙に聞こえる。

 

チュチュこと、珠手ちゆは甘えん坊だ、普段強がっている反動が僕に返ってくるというはた迷惑な話だが、悪い気はしない自分のせいでもある。

 

「…ごめんね、パレオちゃん、色々としてもらって」

 

片手でチュチュに預けて、パレオの方へ目を向ける、この人はなんというか、よく分からない人だ。

 

「いえいえ、大丈夫です、私はチュチュ様に言われた通り如月さんを運んだだけですから!」

 

チュチュの言うことには従う、逆に言えばそれだけ、他に何もすることはないし、自由意志があるのかも分からない。

 

だけど、危害は加えて来ないと思う。

レイヤさんの事もあるから警戒して損は無いと思うけど。

 

「ありがとうございます、チュチュと少しの間遊んだら出発するから、そうなったらチュチュの相手はお願いするね」

 

ぺこりと頭を下げる、チュチュは預けられた片手に頬擦りしたり、自分の頭の上に乗せたり、色々としている、頭の上に乗せるのは撫でて欲しいのサインだ。

 

そしてこのまま少し遊んで蛇穴の元へ行かなければと思っていた矢先、パレオがにこりと微笑んだ。

 

「──ダメですよ?」

「え?」

「チュチュ様は如月さんが危ない目に遭うのを、できる限り少なくしたいと考えています、ですから。

如月さんは、チュチュ様のそばに居てもらいます」

 

「…待って、いや待って?パレオちゃん?」

 

傍らに膝を着くパレオ、その目は他の人たちと変わらない程度には濁っていて、これは僕に対する愛ではなく……チュチュに対する、忠誠心?

 

「チュチュ様〜?如月さんに何して欲しいですか〜?」

「いやいや、あのねパレオちゃん、チュチュはただ甘えてるだけなんだからそれは失礼じゃないかな?」

「撫でて欲しい……」

「ほら、純粋無垢だ」

「……独り占めしたい」

「チュチュ?」

 

おっと雲行きが不安だぞ、もしもパレオがチュチュの望みを叶えるんだとしたらその望みを叶えることに──。

 

「如月さん」「ハイ」「分かりますよね♪」

「ちょっと分からないです」

 

足が使えないため、引き摺るようにして後ろに下がる、手を握るチュチュが止めてこないのは普通に甘えたいからだろうか。

 

「パレオは気付いたんです、チュチュ様はいつも頑張ってて、その反動が如月さんに返ってくる、でもそれだと、如月さんが疲れてしまう。

──それなら、パレオが如月さんを甘やかせば解決しますよね?」

 

「お前はいったい何を言っているんだ」

 

理論はわかる、何が言いたいか、やりたいかも分かる。

しかし、なぜそんな考えに至ったのかが分からない。

 

というか忠誠心と献身が歪んだ形になった結果か、これは。

 

「という訳で、大人しくしててくださいね♪」

 

足が思うように動かない状態でロクに行動が出来るはずもなく、一瞬でパレオに背後を取られ、優しく膝の上に寝かされた。

 

──あれ、これ膝枕では?

 

「チュチュ様ー、如月さんを好きにできますよ♪」

「────」

「チュチュ?え、何する気?」

 

起き上がるのは肩を抑えられているのでそもそも諦め、ギリギリ目線を上げるとチュチュがごくりと唾を飲んでいた。

 

「……キサラギ」「ハイ、ナンデショウカ」

「今からやる事をユキナに言ったら、捕まえて軟禁するから」

「ほんとに何する気!?」

 

叫び虚しく、チュチュはある事をした。

詳しくは言えないが、猫は飼い主とかが寝転がってるとお腹の上に乗ってくる、それでそのお腹の上に寝転がったりするのだが。

──簡単に言えば、それだ。

 

 

 

 

おおよそ数十分後

 

「なんか、甘やかされつつ甘やかすって新体験でした」

「良かったですね」「良かったじゃない」

 

良かった……のだろうか。

 

ようやく解放されて、チュチュはいつも通りに戻って甘えていた時の記憶を全て消している、都合がいいな。

 

「それで、キサラギはどこへいく予定?」

「花咲川女子学園ですけど、こんな状態じゃ…」

 

聞くだけか、それとも何かしら行動してくれるのか、チュチュの親は富豪だ、タクシーとかとってくれるのが一番有難い。

 

「……パレオ、キサラギをおぶって、連れていくわよ」

「え?いいんですか?独り占めしなくて」

「うるさいわよ!?いいから連れてくの!」

「手段が原始的だなぁ……」

 

甘えていた時の言動を掘り返されるのは嫌いなようでぎゃんぎゃん騒いで描き消すチュチュ、はーい♪と僕を軽くおぶるパレオ、中学2年生の女の子に背負われるのって……。

 

パレオに背負われるとチュチュが僕の背中に触れて、不安そうに、心配そうに、今にも消え入りそうな声で言った。

 

「キサラギ──。

──ワタシを、置いていかないで

 

 

───依存、今回はヤンデレではないが、一歩間違えれば、きっと。

 

いや、考えないようにしよう、とりあえず僕はコクリと頷く、そうするとチュチュは前に出て、花咲川の方へと歩き出した。

 

 

【無理をした少女の発散先、彼が彼女を拒否することがあれば、それこそ彼は終わるだろう】

 

 




如月くんのメンタルを修復する回です、次の次で如月包囲網は終わるかなと。

新しく投稿した話、パステルカラーとろくでなしマネージャー、もご覧下さいね、では!


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如月包囲網その3 【花園ランドディストピア】

当初の予定ではイヴでしたが予定を変更して花園ランドディストピアと致します、ごめんね。


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「……どうしてこうなった」

 

僕はさっきまでパレオにドナドナされていたはずなのに、気付けば1人でさまよっている、片足が折れているというのに無茶だとは思うが動けるということはまだ歩けるということだ。

 

脇腹も時折痛む、肋骨も何本か、いや、僕が考えて分かることでもないか。

 

そもそもとして、なぜこうなっているのか。

 

その理由を知るためには、少し時を遡る。

 

 

 

僕、パレオ、チュチュは廃れた街中を抜け、花咲川女子学園へ向かっていた、人目につかないルートを選び、わざわざ遠回りをしてまで堅実に向かっていたのだ。

 

しかし、突如として気を失ったかと思えば目が覚めた時には街の一角に放置されていた、唖然とするのもつかの間、『とあるヤンデレ』に見つかってとりあえず逃げて、ここにいる。

 

状況を今一度理解しようとしても当然できない、僕の意思など関係なく、物事は発生するようだ。

 

そして、路地裏を抜ける。それと同時にまたもや見つかる。

 

「あっ」「──見つけた」

 

花園、たえ。

 

「オァァァァァァァ!」

「さ、早く行こ、私の理想の花園ランドに」

 

呆気なく首根っこを掴まれて引き摺られる、ちなみに花園ランドとは本人曰く理想郷らしい、一度連れて行かれた、その時の記憶には蓋をしたので何も思い出せない。

 

「あの、見られてるんですけど。

すっごく見られてるんですけど」

 

「大丈夫、ここら辺の人達はみーんな花園ランドの住人だから」

「うわぁほんとだ道行く何人かの目のハイライトが無いや」

 

つまり、この子はこの街自体を花園ランドとして扱っているということか、もはやなんも関係ないよ、都合のいい口実だよ。

 

「あの、花園ランドへの訪問はまた今度ということにはできませんかね」

「逃げるでしょ?」「ニゲマセンヨ〜」「ダメ」

「今回だけは!」

「そんなに花園ランド嫌なの?」

「花園ランドってそもそもなんですかね」

 

「楽園?」「嘘だぁ…」

 

引き摺られながらも普通に会話を交わせるのはまだマシか、いやでもこのままだと花園ランドに連れていかれる、どこかは知らないけど。

 

ズルズルと道を目立ちながら引き摺られていると、唐突に彼女から質問をされる。

 

「──そういえば、その傷どうしたの?」

「レイヤさんにボコボコに───転びました」

「レイがやったの?」

「ぐぇ……間違ってなくはなくはないです」

 

口を滑らせた、誤魔化しは効かないだろう。

首根っこを掴んでいた手は一瞬で手放され振り返る、それで見えたのは案の定ハイライトの消え去った眼。

 

レイガ、ヤッタノ?

 

2人は仲のいい幼馴染だ、僕はその関係を壊したくはない、いや僕の肋骨が何本か破壊されたし仕返ししてもいいのだが、胸糞悪さしか残らない、だからとりあえず隠し通そう。

 

 

◇◆◇数分後◇◆◇

 

 

「──とまぁ、レイヤさんにこんな事をされた訳です」

 

ごめんレイヤさん、花園ランド永住強制チケットとか言われてさすがに言わざるを得なかったっ……

 

話し終わり、少し悩むような動作を見せるたえちゃん、そしてその末に出した結論は─

「─────花園ランド、行こっか」

「なぜに!?」

 

話した!話したよね!?正直に言ったと思うんだけど!

 

「やっぱり、外の世界には君を傷付けるモノがいっぱいある。

なら、私の理想の花園ランドに居た方がずっと幸せ、だから連れて行くの」

 

「嫌だ!僕は死にたくない!」「死なないよ、幽閉するだけ」

「幽閉って今言ったぁ!」

 

何も変わってないぞちくしょう!こんな事なら話聞いてくれてる間に逃げてしまえば良かった!いや逃げれないな!足折れてたわ!

 

◇◆○また数分後◇◆◇

 

どなどなどーなーどーなー、不憫な僕をつーれーてー。

 

逃亡、首根っこ掴まれてる、足が折れてる、不可能。

説得、花園ランドの主、不可能。

撃破、出来るわけねえ。

=詰み、いつものこと。

 

「助けて、助けて蛇穴…」

 

引き摺られながら、もう自分での脱出を諦める、蛇穴さえ来てくれれば何とかなりそうな案件なのにあいつ花咲側女子学園に居るっぽいし、いや僕が遅れてるだけなんだけど。

 

「ジュンって、みんな拒絶してるね」

「そりゃまぁ、年齢という前提がありますから」

「ふーん……みんなのうち、誰かを可愛いとか思ったことある?」

「あります、けど、他の点があまりに邪魔で好きにはなれませんよ」

「病んでるところ?」「分かってるなら改善して貰えます?」

 

「───ジュンのせいだよ」「何度も言いますけど覚えがないんですよ」

 

こうやって、ヤンデレはいつも僕のせいだのなんだの言う、こう聞くと僕がクソ男のように見えるが、本当に覚えはない、彼女たちともバイト中に何度か話した程度だ。

 

それで、というのなら元から病んでいたのか一目惚れか、だ、少なくも僕のせいではない。

 

「ふーん……」

「満足ですか、では離してください」

「ダメだよ、花園ランドは理想郷、ハンバーグと兎とジュンが居れば理想郷どころか楽園、邪魔になる人は全員消さないと。レイ以外は」

「怖いなぁ、淡々と並べるところがまた怖いなぁ」

 

マジでこのままでは色々と収集付かなくなる、もう他のヤンデレでもいいから助けて……。

 

「……花ちゃん?」「─レイ?」「レイヤさん!?」

 

目先の路地裏から出てきた大人びた女性、和奏レイ、言わずもがな僕にこんな傷を負わせた犯人だ。

 

「花ちゃん、それ、どうするの?」

「花園ランドに連れていくよ、レイも来る?」

「久しぶりだし、着いて行こうかな」

「(゚⊿゚)」

「おお、とんでもない顔になってる」

「大丈夫じゃない?簡単には壊れないことは分かってるし」

「そうだね、行こっか」

 

過去一ヤバイ!花園ランドとかいうディストピアに連れていかれてしかもそこにとんでもないドS入り!?死ぬに決まってる!

夢ならばどれほど良かったでしょう……この曲の良さいまいちよく分からんのよな、ピースサインは分かるけど。

 

言ってる場合かァ!!

 

というかレイって僕をボコボコにした犯人なんですけど!?知ってますよね!友情第一かちくしょうめ!

 

 

あーもう仲良さそうに笑ってるよ!信じられるか、今コイツら成人男性拉致ろうとしてるんだぜ?

 

引き摺られてまたもや数分後、人通りが少し多い商店街を抜けて、人が全く居ない通りに来たと同時、行動は起こされた。

 

 

「タエ・ハナゾノ、今すぐキサラギを離しなさい、レイヤもよ」

 

痛みに眠ることも出来ずほぼ意識をシャットアウトしていた時、さっき聞いた声と呼び方、それで察知して目を覚ました。

 

「…チュチュこそ、そこを退いて。

退いてくれるなら何もしない、パレオも居ないでしょ、今」

 

「居ないからなに?ワタシ1人でもキサラギを取り戻すぐらい造作もないわ」

 

「────」「────」

 

チュチュが助けに来てくれた……けど、パレオが居ないんじゃ…。

 

「……いいわ、なら勝負しましょう」

 

チュチュがそう提案をする、勝負?チャージ3回、フリーエントリー、ノーオプションバトルか?知ってる人少ないと思う。

 

「内容は?」「キサラギの知ってることを言い合う」

「───こっちは2人だけど、問題ない?」

「パレオが居ないからって甘く見ないで、早く始めるわよ」

 

どういう勝負?というかなんで僕のこと知ってる前提で話進めてるの?2巡して終わるでしょ。

そもそも何でこの2人たえちゃんの話聞かずに馬鹿みたいな勝負始めようとしてるんだろう、本人の意見を尊重しろ、僕の意見を聞いてくれ。

 

「ぐぇ」「そこで待っててね」

 

少し乱暴に建物の壁に投げられ、声を漏らしもたれ掛かる、この人も乗り気だったわ、ヤバいやつ認定されてるだけはある。

そして、本人が見てる中で僕について知っていることが挙げられる。

 

「ワタシから、『キサラギの好物はマヨネーズ』」

「合ってますよこっち見ないで」

「──次、『寝る時には枕を抱いて寝る』」

「合ってますよなんで知ってるんですか」

 

こんな調子で勝負は続く、いつかネタが尽きるだろうと思っていたが何周しても尽きない、恐ろしい。

 

「『キサラギの嫌いなものはヤンデレ』」

「分かってるじゃないですか」

 

こんな調子でいつまで経っても終わらないのかなぁと思ってまた諦めかけていると、建物の方から声がかかる。

「──おい、如月」

 

「……蛇穴?」「そうだ、逃げるぞ」

 

建物の窓を少しだけ開けて応答してくれているようだ、小声で言葉を返すと上手く言葉を交わせた、それなら初めから助けてくれないかな。

 

「方法は?」「窓を開けて、そこからお前を引っ張り上げる」

「原始的ですね」「つまんねえけどありがたく思え」

 

そんな会話を交わしている中でも、勝負は継続していた。

 

「『キサラギの私服、持ってる服は同じ服の色違い』

「やめてくれませんかそう言うのバラすの」

 

隠してたのにバラされた、これはひどい。

質問が少し繰り返されると、さすがにネタが尽きてきて思案タイムに入る、僕に直接聞くなんてことはしないらしく唸って考えている。

そしてこれをチャンスとみた蛇穴が、指示を出す。

 

「……手を上げろ」

 

言われた通りに手を開けると、窓が一瞬で開いて身体が持ち上がる、ぐらりと揺らいだ視界はひっくり返り、背中から建物に叩きつけられた、苦痛の声は奥歯でかみ殺す。

 

「!?──逃げた!」「花ちゃん!」

 

「おい如月寝ていいとは言ってねえぞ!例の場所まで急ぐぞ!」

「足折れてるんですって!」「鉄パイプでも杖にしろ!逃げるぞ!」

「分かりましたよう!」

 

近くにあった鉄パイプを杖にして軽く走り出す、窓を閉めるのを忘れずに。

 

向かう先は花咲側、逃げ切れるかは──これからわかる事だ。

 

 




次回ッ!如月包囲網終結ッ!!



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如月包囲網 終結【人間の秘密とは簡単には分からない】

評価バーがオレンジになってて悲しいと同時に悔しさを感じ、そして感想を貰ったので早めの投稿を行うことにしました、ロウです。
今回はシリアスっぽい回にしました、ちなみに秘密の全開示はのちのち少しずつやっていきます。

──慣れてないのシリアス!ごめんなさい!


なんやかんやで逃げきれた。

 

「暗雲立ちこめる……か」

 

今現在、ヤンデレから逃げ切って花咲側の屋上に居る、今日休校のためヤンデレ達はどうやっても侵入に時間がかかる、しかしここからどうすると言うんだ…?

 

──空が曇ってきた、今にも雨が降りそうだ。

 

「雨はお前の匂いを消す、都合が良いから早く降って欲しいくらいだ」

「あそうなんだ、じゃあ降ってOKですね」

「あと外壁をよじ登ってくるヤンデレの対策にもある」

「否定ができない」

 

実際高校の屋上ぐらいならよじ登って来る人が何人か居る、ブレワイのリンクよろしく雨に濡れた壁は登りづらいだろう、対策になるかは微妙だが。

 

目の前でフェンスに体を預け、タバコをふかしている蛇穴はだいぶ暇そうだ、そういえば、僕はこの人の素性を全く知らない。

「蛇穴さん蛇穴さん、あんたって何者なんです?」

「教師だ、言ったろ」

 

当然と言わんばかりの答えが返ってくる、聞きたいのはそれではない、こいつの教師では無い姿、少なくとも逃亡中は生徒と教師という関係ではなかった、なら、なんだ。

「──ウィン・ウィンの関係だ、お前は俺に金という利を与え、俺はお前に生命維持という利を与える、言うだろ、金は命より重い」

「ホントに思ってます?」

 

タバコを口から離し、少し間を置き、問いに対して彼は答えた。

「思ってるわけねえだろ、命ありゃ金なんぞいくらでも稼げる、金は命を買えるが何千万、何億と支払う価値はねえ、親友は別だがな」

「親友、居るんですか?」

居たよ(・・・)、相手は覚えちゃ居ねえけどな」

「へぇ〜、見るからにろくでなしなあんたと仲良くするなんてモノ好きな」

「ぶっ飛ばすぞ年齢詐称野郎」

「───え?」

 

何気ない会話の最後に言われた一言、意味は1つ。

─バレていた!?いや知っていてもおかしくはないのか…?賄賂を渡していたのが弦巻家だとすると、秘密を知っていても………でも、なんでこのタイミングで…?

 

「如月、お前にちょっとした話をしてやろう」

「なんです急に」

 

突然にんまりと悪い笑みを顔にたたえ、手に持ったタバコを持ち歩いている灰皿に押し付け蓋を閉じる蛇穴、そして言った通り彼は歩みを進めながら何かを話し始めた。

 

「お前は自分の記憶に蓋をしている。

とんでもなく重いモノを乗せた、開くことのない蓋をな」

 

彼の発言に呼応するように、突然雨が降り始めた。

 

◇◆◇◆◇

 

「あの、それってどういう……?」

 

訳の分からない言葉を投げかけられ、それに対する疑問を言葉に乗せ、彼に放った瞬間、屋上のドアが開け放たれた。

 

「やっほー、準、おねーさんが助けに来たよ〜☆」

「──リサ、さん」

「ヒュゥ、狂人のお出ましだ」

 

各々が一言ずつ言葉を零す、1人はうっとりと、1人は絶句して、1人はこの状況を楽しんでいるように。

「あれ?なんか準以外にも人がいるけど───女の子じゃないし、特別に許してあげる、だからほら、準、あたしと行こっか」

「ヘルプ、ヘルプ蛇穴」

 

彼女の言葉からは敵意や害意は感じない、しかし僕は知っている、彼女が僕を女の子にしようとしていることを、女の子にしてやるよ(特殊)である、事実として捕まった時何度も男としての尊厳を踏みにじられた、今度はそうはいかない、蛇穴がこっちにはいるのだ。

 

「了解。如月───逃げっぞ!」「あいよぅ!」

 

掛け声に合わせ、蛇穴が走り出した、それに合わせ僕も駆け出す。

──しかし。

「こう見えてあたし、意外と足早いんだよねー」

「へぇ(゚A゚)?」

 

ぐいっと突然体が引き戻される、何をされたかといえば追いつかれて引き戻された意外にない。

「そういえば僕、骨折れてたんだった───」

 

なぜ自分の体にまつわることを忘れるのかバカか僕は。

あぁ、このまま僕はこの人に連れて行かれ、また男としての尊厳を踏みにじられるのだろうか、嫌だなぁ、また女装させられてボイスチェンジャー付けられたくないなぁ、男として死にたくないなあ。

だがもうどうしようもないと諦めかけ、目を閉じた、だがその瞬間。

 

「待て!今井リサ!」

 

声高らかに、彼女を引き止める声がした。

この中でリサさんを止める人なんて1人しか居ない、そう、バエル──蛇穴だ!

「───ジャマ、シマスカ?

 

対するリサさんは丁寧語を保ってはいるものの殺気を抑え込めていない、この人は珍しく僕そのものを好きになり、その後に女装した方がもっといいという結論に至ったタイプ、趣味嗜好を邪魔されると結構怒る、本人嫌がってるのにとんでもねえな。

 

「いや、ちょっとした提案だ。

今如月は肋骨と足の骨が逝ってるんだ、病院に連れて行かねえと近い内に命を落とすかもしれねえ……。

頼む、退院すれば如月はお前に引き渡す、だから、今は見逃してくれないか?」

 

あ、あの蛇穴が下手に出ている?やっとヤンデレのやばさを再認したのかな、というかそもそも今ボクノカラダハボドボドだから死にはしないけど結構重症なんだよね、肋骨数本と片足だもん。

 

「準、それ本当?」

「間違ってないです、立ってるだけでも辛いし」

「──だ、そうだが?」

 

蛇穴の牽制を受け、悩むような仕草を見せるリサさん、いいぞこのまま押し切って病院に行きたい(切実)

 

「あたしが連れてっちゃダメ?」

「大人が連れて行かないと色々面倒なことになる」

「─お見舞い行くからね」

「来るなら1人でお願いします」

 

悩み抜いた末、その会話を皮切りに僕は解放された、無事ではないことをアピールするため少しよろけて立ち、リサさんが去るのを待つ、蛇穴には感謝しないと。

 

そこからそう経たないうちに、リサさんは名残惜しそうに屋上から去っていった、雨が降り注ぐ中2人残される。

 

というかこの会話の間、ずっと雨に濡れていたからかさすがに寒い、いやそれよりなんか、眠たくなってきた。

……あれ、これ眠いのかな、身体がぐらついてきた。

 

「如月、お前が気を失う前にいくつかの伝えておく。

【お前は不幸中の幸いだった】、そして。

【記憶のプロテクトを外せ】、以上だ。

俺はとりあえずお前を隣町の病院まで送る、その後は自分でなんとかしろ、高校生(偽)」

「誰が高校生(偽)───」

 

呼吸が荒くなってきた、僕のことを変な呼び方をする蛇穴に鋭い視線を向けたが、その瞬間に視界が傾く、これはもう経験済みだから分かる。

 

僕が倒れたのだ。その少しあとに僕はひょいと担がれた。

そして、気を失うまで、僕の頭の中では蛇穴が言っていた2言、不幸中の幸い、そして記憶のプロテクト、という単語を、頭の中で延々と反芻していた───。

 

 

 

 

──あれ、結局 蛇穴って何者なんだ……?

──もしかして、有耶無耶にされたのか──?

 

そんな考えを僅かに抱き、僕の意識は本当に落ちていった──。




いっつもこいつ気ぃ失ってんな。

コホン。秘密、後回し!今回分かったのは。
【如月くんは不幸でも幸運でもなく、不幸中の幸い】であり。

彼は記憶に蓋、プロテクトをしている。だから忘れている、とはならないかもだけど、それが分かったよ!こういう展開慣れてなくて、雑でごめんね!

では、また次回!


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2章 逃れることはできない
入院と状況と温泉と


さて、と、性転換リクエストはコラボの方で消化したし問題は無いよね!

ごめんなさい別で描きます許して。

(こいついっつも気ぃ失ってんな、いい加減パターン変えないと)

今回はギャグ寄りです、シリアスの匂いがありますがギャグです。
あといつもよりキャラ崩壊が酷いです。


「如月さん?」

「──はい」

 

名前を呼ばれて沈み澱んでいた精神が呼び覚まされる、ひどい感覚だ、気分は悪いしくらくらする、足は固定されて上手く動かないし、折れたところは軒並み痛みを訴えている、返答は辛うじてだ。

 

「ここがどこか分かりますか?」

「病院……ですかね」

「はい、ここは病院。私は看護婦です。

昨晩代金だけを払ってあなたをここに置いていった人が居て、怪我も酷くて熱もあったので代金をしっかりと受け取ってあなたを入院させることにしました。急患という処理をしましたが。

 

肋骨数本、右足にヒビ、そして熱、その他細かな外傷が多数見受けられます、何をしたかはお聞きしませんが、今はゆっくり休んでください、1ヶ月の入院代は払われてますから」

 

カルテを見てそれだけ言うと看護婦さんはカルテを近くのテーブルに置いて部屋から出ていってしまう。

 

静寂が訪れ、改めて部屋に目を向ける。ここは個室か、カーテンから日差しが差し込んでることからして恐らく午前10時ぐらいか?

 

ウチの近くに病院があった覚えはないが、探すことは容易だろう、僕が見つけていなかっただけで。

 

さてと、状況把握が済むとお腹が減ったな、昨日有咲の元から逃げてから何も食べていないし当たり前か、病院食って渋いんだっけ?甘いもの食べたいなぁ。

 

「……分かってる、分かってますとも、蛇穴に対しての追求がまだ済んでない」

 

結局ヤツははぐらかして去った、僕を病院に叩き込んでくれたのは感謝したい、でも訳分からんこと言って去っていったのはマジで許さん、次会ったら鉄パイプを探して拾ってぶん殴る。

 

「はぁ……なんだっけ、不幸中の幸いと記憶のプロテクト?何言ってんのあの人?あの歳で厨二病?」

 

?『ころすぞ』

 

あっ、なんかゾワっとした、最後の発言余計だったかも。

 

「……失礼、します」

「あ、看護婦さんですか?手数なんですけど食事とか貰えません?腹減ってまして」

「違います」

 

「ん?」

 

ちょっっと待て、扉を開けて控えめな声で入ってきたからてっきり看護婦の類かと思ったのだが、違う?

僕に女の友達はいない=ヤンデレ?

 

「ど、どちら様で?」

 

シャっと仕切りになるカーテンを閉め切ると、何者かがカーテンの向こう側で停止した。

 

「私です、鳰原れおなです。カーテン、開けてもいいですか?」

「なんだ、れおな……ちゃんか。

開けていいよ、無害だからね」

 

そう言うとカーテンの隙間から手が差し込まれて、シャーッと開く、そこに居たのはカラフルな髪色の面影などない、真っ黒な髪色とメガネを付けた地味な少女、パレオの本来の姿、鳰原れおなだ。

 

「大丈夫ですか?」

「見てわかる通り、僕の身体はボドボドですが?辛うじて上半身が動かせる程度ですよ」

「レイヤさんはRASの皆さんで説得しましたが、色々と厳しいことになりそうで……」

「解散しなかっただけマシ、なんでみんな解散しないんですか、そうしてくれた方がいっそ楽なのに」

 

椅子を引っ張って傍らに座り、安否の確認や状況説明を行ってくれる彼女に少なからず安心感を感じて本音を交えて言葉を口にする。

 

花瓶の水の取り替えをしようとしていた彼女は花を新聞紙を上に置いて、ぴたりと停止する。

 

「如月さん、今、なんて言いましたか?」

「?──解散した方が楽、だと」

 

聞こえなかったかと再度口に出す、至近距離の為聞こえないなんてことは無いはずだ。

 

「如月さんはそんなこと言いませんよね?」

「……ぇ」

 

微笑みの威圧、これは質問ではない、圧力、『言わない』と言わせるための脅しだ、片手に花瓶を持ってるところを見て、言うけど、とか言おうもんならビール瓶の如く叩き付けられるぞこれは。

 

「言いませんよ?今のはほんのジョーク、RASの解散なんて僕が望むわけがない!」

 

我ながらよく嘘が軽くと出るなと思う。

 

「そうですよね、如月さんはばらばらになりかけたRASを1つに戻してくれましたから……」

 

過去の僕は何をしていたのだろう。

 

そして、以前の僕なら戯言とスルーしていただろう、しかし、今回はスルーできない、どう考えても僕には忘れているなにかがある、きっとこれはそれを思い出す鍵となるはず。

 

「れおなちゃん、僕そのこと忘れてるんだけど」

ワスレテル?

 

いいえそんなことありませんとも!

 

へなちょこメンタルとでも、なんとでも言うがいい!でも、でもだよ!

怖いし!何よりも僕このままだと病むよ!怖いし、命の危機に晒されてそんなに時間経ってないんですよ!?

 

「……ですよね、如月さんがあのことを忘れるはずありませんから」

チョロい…

ナニカイイマシタカ?

 

いいえなにも!!

 

恐ろしや、というか真面目な雰囲気どこ行ったのもう、お腹減って頭が回んないのが原因かもしれないけどね…。

 

「そうですよね、それで、私が今日お見舞いに来た本当の目的なんですけど……」

「目的あったの?」

「近々、他ガールズバンドのみなさんも誘って温泉旅行に行くらしいんですよ、それで皆さんが如月さんも誘ってしまおう、と」

 

「普通に嫌です」

「……如月さんはそんなこと」

「すいませんでした行かせてもらいます」

 

ダメだ、彼女の知る僕を理解出来ていない以上、迂闊な発言は死へと繋がってしまう、どんな危険が伴うとしても僕は死にたくないんだ、それが先ず最優先。

 

「分かりました〜♪」

「パレオ出てますよ」

 

満足気に微笑むが今れおななのにそんなこと言っていいのか、と思うのも束の間、れおな……パレオは花の取り換えが済んだらしくものを片付けて、自分のバッグを肩にかけた。

 

「気のせいです。

そして了解しました、ではそれをチュチュ様にお伝えしておきますので、来週には準備を済ませてください」

「出来たらやります」

「来てくださいね?」

「ハイ」

 

脅迫に近い声のトーン、断ることなんてできるはずもなくハイと答える、微笑みは恐ろしいんだ、許せサスケ。

 

れおなが出ていくのを見送りながら、お腹の減りを思い出してナースコールを押した、そして、れおなが去った数分後に看護婦さんはやってきた、そして開口一番に。

 

 

「声が大きいと苦情が来ていますが」

「すいませんでした、そして僕はいつ退院できるのでしょうか」

「5日は必ず入院期間です、外出もできません」

「わかりました………僕のスマホとかは?」

「内部データが破損していましたが」

「僕のアー〇ナイツ(課金額1万超)がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

──やはり僕は不幸なのだと、再度確信した。

 

 

 

今回彼の病室に添えられた花は、『オキナグサ』

 

 

 

◇◆◇

 

「如月さんは私を否定しない。

如月さんのことはパレオがよく分かってる……だから、間違ってたら治してあげないと…」

 




クリックすると評価画面に飛べます、糧になったり投稿頻度が上がったりするので、是非とも評価を。

https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=229678

これを押すと感想画面に飛べます、書いてくれれば投稿頻度が上がる…かも?

https://syosetu.org/?mode=review&nid=229678


すごく眠いけど書き上げました、次回は入院編の続きです。
パレオは1人の時、如月に対して自分の理想を押し付ける典型的なタイプになると言うだけ、でもこれも原因ほとんど如月くんって言う。

まぁ今回はほぼギャグなんで気にしなくて大丈夫です、色々と如月くん忘れてるしねぇ、思い出すんだぞ。

では次回、来訪者にてお会いしましょう。


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来訪者、それはポテトと花

作者、なぜか執筆を頑張る。

コラボ作品も手を抜かないようにしますんで、何卒お慈悲を。

今回はとある人が再登場します、タイトルで察して。


◇◆◇入院生活1日目◇◆◇

 

味薄い……薄くない?

 

あのあと看護婦さんも持ち場へ帰っていって、その後別の人がお盆に乗った食事を持ってきた、固形物はあるのだが味がとんでもなく薄い、これもう生でしょ。

 

だが用意されたものは食わないと失礼という精神に則り、食事を終える、幸いにも折れたのは片足のみなので杖を使えば歩くことは可能だ、肋骨?もう治ったでしょ(適当)

 

ヒュッ、と息を吸うと脇腹が痛む、まぁ些細なことだ、寝違えと同じようなもの。

 

 

「外出禁止とか言っておいて杖を置いておくのはどうなんだろ」

 

ベッドに立てかけてあった杖を手にして、ギプスの着いた片足を上げる、痛みはない、ヒビは大したものじゃなさそうだ。

そのままベッドから片足を落として、杖を着いて立ち上がる。

 

酷い有様だ、備え付けの鏡に映る姿はまんま怪我人、いや怪我人なんだけども、いかんせん自覚がない。

 

 

そのまま扉に手を掛け、部屋を出る、通路と言うだけあって人がそれなりに多い、大半は老人、子供がちらほら、そして見回りや書類を運ぶ看護師もちらほらだ。

 

触れるべきところはない、至って普通だ、病院には来たことがあまりないが。

 

「……」

 

知り合いの顔は当然ない、立ち止まっていても注目されるだけだ、どこかへ移動をしよう、何より、目的を持たないと心が壊れそうだ。

 

 

 

◇◆◇中庭◇◆◇

 

 

どうやら僕が居た病室は2階だったようで、階段を下りると仕切りのガラスに阻まれた先に、もはや1つの公園と言っていいレベルの広さの中庭があった。

 

あるのはベンチ程度だが、行き先をそこに決めて入口を探す。

 

 

どうやら仕切り硝子のどこかに扉があるらしい、紛らわしいな、見つけにくいし、覚えろということか。

 

 

硝子の1つに取っ手が着いていて、それを持って引っ張る。

 

──あっこれ押すタイプだ。

 

「見られてませんよーに…」

 

完全に恥をかいたがまぁ気にしない、限界まで開けると中庭に出る、地面に生えた草は裸足でも特に問題はなく、すぐにベンチまで移動すると腰を下ろす。

 

外から中を遮断するように生え揃った木々は風が吹く度葉っぱを揺らし、まるでさざなみのような音を立てている、静か、と言えばその通りだが、木々のざわめきはそれをかき消していた。

 

 

しばらくたった頃だろうか、僕の座っている位置のすぐ横に、缶コーヒーが放置されていることに気付いた。

 

それを持って軽く揺らすと、中に液体は入っていない、空だとすぐにわかった、前へと目をやると近い位置にゴミ箱があるのが見え、立つのも面倒だと考えて、缶を投げる体制に入る。

 

多分、投げても届くだろうと缶を投げた、途中までは良かったのだが、不運なことに風が吹いて大きく軌道を逸れる、非常にまずい。

 

手を伸ばす、まぁ届かない。

このまま缶は地面に落ちるのか、と思って目を逸らしたが、缶が地面に落ちる音はしなかった。

 

妙に思って視線を移すと、そこには見知った少女がいた。

 

「……紗夜、さん」

「お久しぶりです、如月さん」

 

 

 

 

◇◆◇

 

少女は微笑んでいた、目のハイライトはある。

いや、それより、逃げられないという事実が僕を追い詰める。

 

「え、えっと?なにか、御用で?」

「お見舞いに来ただけです、入院した、と聞きましたので」

「それは良かった(?)」

 

やった今回は殺されない、というかそもそも病院内だから手を出そうもんなら色々と問題が発生する、今回ばかりは問題なさそうだ……。

 

缶コーヒーをゴミ箱にしっかりと捨てて、隣に腰掛けてくる、恐怖はまだ感じない、でも期待はしないよヤンデレだし。

 

「その怪我は、どうして?」

「レイヤさん」「RASですか?」

 

「階段から転げ落ちました!!」

 

僕の意思は関係ない、ただ、RASにもいい人達は居るんだ、悪い人が居るだけで、それが巻き添えになるのは解せない、悪のせいで善が傷つくのはあってはならないのだ。

 

故に僕は嘘をつく、決して怖いからじゃない。

 

「そうですか、それなら良かったです、如月さんに手を出す人は消す必要がありますから、如何なるもの、如何なる理由でも」

「やだ恐怖。

お見舞いに来てくれたところなんだけど、僕そんな酷い怪我でもないし、5日後には退院できるよ?」

「なら、温泉には間に合いますね」

「まーた温泉ですか」

 

温泉温泉、僕の自由意志を剥奪しておいてよくそんなことペラペラと言えるな、でもこれは僕の記憶を探ることとして外せない行為だ、前のれおなから見て、もっと優しい人じゃないと恐らく殺される。

 

友好関係を築きつつ、刺激しない程度に接していこう。

 

「当日は私が迎えに来ますから、ニゲナイデクダサイネ?

「取引をしましょう(焦)」

「……何か?」

「ポテトを沢山あげます」

 

 

──静寂!ポテトという得には弱い!それが氷川紗夜なのだ!

 

 

「1日、私とデートをしてくれるなら」

「ええいいでしょうとも!───ん?」

 

小声で提示された条件、今、彼女はなんて言った?そして僕はなんて答えた?勢いで答えたのか?もしかして。

訂正だ、訂正を─。

 

「言質はとらせてもらいました。

今更、冗談だとは言わせません」

 

ふむ、忘れていた、僕に決定権はないし、自由意志も剥奪されている、今回に限っては足まで折れているのだ、接近されても迂闊に離れることは出来ない。

 

ベンチの上にぺたんと置いていた手に手が重ねられ、絡む、なんとも言えないような感覚が僕を襲い、すぐさまそれは消えてなくなる。

 

「以前、性行為の有無は尊重すると言いました」

「あ、はい、それだけですけどね」

「撤回します、今後は機会があればいつでも奪い去ります」

「はぁ?いやいやいや、そんな都合のいい話がまかり通るわけないでしょう、自分の言ったことさえ守らないとか人として終わってますよ」

 

「──それは、如月さんの方です」

 

「……え?」

 

「言ったことを守っていないのは、如月さんの方です」

 

冷静に言葉を並べられ、気圧された、これはきっと、以前の僕が紗夜さん相手に約束をしてしまったに違いない、でも彼女は僕の記憶消失の件について全くもって理解がない。

 

つまり、言ったことを守っていない状態になるのだ。

 

──理不尽すぎない?

 

「い、一応確認しておきたいんだけど、僕って何か約束してたっけ?」

「はい、いつか日菜ではなく私の元へポテトの束を持ってプロポーズに来ると」

「何を言っているんですか???」

 

頭大丈夫かなこの人、真面目に何言ってんの?ポテトの束って何、食べるの?花束の代わりを?何そのプロポーズぜんぜんロマンティックじゃない、僕そんなことしたくない。

 

まぁ、少し考えればありえないと分かる。

 

「…人の記憶捏造するのほんとやめて欲しいんですけど、ほんとに、困るし、混乱します」

「後半は冗談ですが、前半は事実です、日菜ではなく私を選んでくれる、と」

 

「……まじ?」

「事実です」

 

 

彼女の目のハイライトは薄く消え始めた、これは『疑ったら殺す』の意である、これからヤンデレと関わる人は気をつけよう、ミス1つで身体に傷が付くぞ。

 

「えっと、それはどのような時に───」

 

なぜ昔の僕はそんなことを言ってしまったのか問い質す直前に、けたたましい着信音が中庭に鳴り響いた、僕のスマホはお釈迦になっているので当然紗夜さんのものになる。

 

「……はい、はい。

…分かりました、今行きます」

「えっと、何か?」

 

「Roseliaの今後について至急話し合うと、これ以上は話せません」

「タイミングェ……」

 

「……帰る前に、これを」

 

聞きそびれることになることに落胆していると、空いている手に1つの花を渡される、丁寧な包だ、これは……僕は花に詳しくない、紫色?

 

「紗夜さん、これはって、行っちゃった!?」

 

少し花を眺めているうちに、紗夜さんは仕切りガラスの向こう側へ行ってしまった、残されたのは花と杖、そして何故か紗夜さんの居た位置にマ〇クのポテト。

 

いやなんで?なんで入院患者にポテト置いてくの?貰ったからには食べるけどさ、失礼だし。

 

 

その後、しばらくポテトを齧っていると何故か看護婦さんに止められ、精密検査を受けさせられた、その時に花は没収されたが、病室に戻ると花瓶に添えられていてホっとした。

 

 

 

今回、彼の病室に添えられた花は『紫のアネモネ』

 

 

◇◆◇

 

〜過去の如月〜

『え?あ、はい。

そりゃ日菜ちゃんより紗夜ちゃんをとるけど。

 

 

だって仕事の手伝いでしょ?真面目な紗夜ちゃん選ぶに決まってるじゃん、勘違いしてない?』

 

 




また深夜投稿かお前。

そうだよ。
今回のはまぁ、伏線じゃないです、ストーリーの大筋に影響しないんで、キャラ1人に対する小ネタみたいなもの、ですかね?

今回は紗夜さん再登場回でした。
え、なに?既存キャラ消化されてないのに復刻?ポケマスかよ?

やめるのです、作者は全キャラを完全に把握している訳では無いのです。
故に次の投稿は1週間ぐらい空くのです、ストーリー本格的に進めるから。

では、また次回。


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地獄の沙汰も病み次第

「半年以上の投稿期間だぞ!
確実にサボりたかったんだろ!!」

すいませんでした、そしてお久しぶりのトウヤくんです。
リハビリ中です、細かな話はあとがきで。

では、ご覧ください。



どうも皆さん、如月です、突然ですが僕は今温泉旅館に来ています。

というか連行されました、黒服さんズによって。

 

そして今、僕はたった1人のヤンデレに追い詰められています。

 

「スゥ……この状況、なかなかどうして…辛いものが……」

「…如月さん?」

「ッ──!!(声にならない悲鳴)」

「わ、びっくりさせちゃいましたか?すいません」

「つぐみチャァン……なに?今アレから逃げてるんだけど」

 

曲がり角に隠れて様子を伺う僕に、背後から声がかかって悲鳴を噛み潰し飛び上がる、声をかけてきたのは羽沢つぐみ、マトモに見える女の子だ、見えるだけ。

 

そして僕がそっと指さしたのは曲がり角の向こう側、今は僕に背を向けているが、星……というか、猫耳のような髪型からもすぐに分かる。

…戸山香澄だ、ハイライトの消えた瞳で旅館をうろつく通称スターマン(勝手に呼んでる)

 

それだけならまあ逃げる必要もない…いやあるな、ヤンデレだし。

………まぁ、とにかく、僕は彼女だけには見つかってはいけないのだ。

 

「なんで逃げてるんですか?香澄さんって……」

「僕を抱いて共に星になろうとしてる危険思考のサイコパスですが」

 

やがて星になる(天に昇る)

つまり道連れだ、心当たり無いのだがそれはいつも通りとして、捕まる=死に直結する今回、捕まるわけにはいかない。

その結果、他のヤンデレに捕まったとしても!!

 

 

 

え?なんでこんなことになったか?

 

仕方ないなあ説明してあげよう、そう、あれは今から1時間ほど前──。

 

 

 

『如月様、こちら、日替わりヤンデレシステムです』

『一体何を仰っている??』

『簡単にご説明しましょう。

この旅館は現在弦巻家によって貸し切り状態が7日続きます。

7日経つまでの1日ずつ、まず如月様とこころ様一同には鬼ごっこをしていただきます。

 

1番初めに如月様を捕まえた人に、その1日、如月様を独占する権利が与えられます、尚、傷を付けるのは禁止、殺害も禁止、基本肉体的苦痛を感じることはありません』

 

『それはいいんですけどぉ……いやよくないな、でも僕に選択権無いしなぁ。

…あー、もしかしてアンタらも相当頭のネジぶっ飛んでますね?もう誰も信じませんよぼかあ』

『私たちも被害者なのです、突然こころ様が言い出したことでして、ご理解して頂きたい』

『なんでそんなこと言い出しちゃうかなぁ……』

『口調の荒い男に唆されていました』

『蛇穴ィ!!!』

 

悲痛な叫びを残し、僕は旅館に放置された。

 

 

…そして、今に至る。

 

 

 

 

 

 

「クソ……殺害は禁止なのでは…」

「『殺害』じゃなくて、『心中』ですから……扱いが違う?って言うんですかね…?」

「判定がガバガバ過ぎる、例えるならブラッドボーンの黒獣パールの引っ掻きぐらいガバガバだ、何言ってんだ僕は、ふざけやがって(半ギレ)」

 

いやそもそも、こんなことが許されていいのだろうか、僕のような誠実な成人男性が病んだ女子高生に命を狙われる、許されていいはずがない、日本の法律はどうなっている(全ギレ)

 

「…そういえば、つぐみちゃんは僕を捕まえなくていいのかい?」

「? 必要ありませんから、私と如月さんは運命の赤い糸で繋がれてます」

「あーはいはい、いつものですね」

 

例え全ギレしていても、ヤンデレは下手に刺激しないようあしらう、この子は本当に普通だ。

普通に狂っている、特筆した病みポイントは無いし、スタンダードなヤンデレと言える。

 

…ヤンデレの時点でスタンダードではないのだが。

 

「んー、ところでさ、つぐみちゃん」

「はい、なんですか?」

「キミが持ってるの……なに?」

「? 何って……包丁ですよ」

「ぶぶぶ武器までスタンダードなんだね(震え声)」

 

淀んだ瞳が僕を捉える、この距離ではどう考えても逃げ切れない、例え逃げたとしても足音で他のヤンデレに感知されてエンド、死ぬよかマシだろうが………いや死んだ方がマシかもしれない。

 

「大丈夫ですよ如月さん、傷を付けるのは禁止ですから」

「……ならその包丁はなんのために?」

「脅迫です」

「ガバガバ判定!!!」

 

悲痛な叫びと共に勢いよく立ち上がり、濁った瞳から目を離さないようにして廊下の方へ後退りする。

しかし大声を出したせいか、別の場所からも足音が近付いてきた、十中八九僕を探していたスターマン(戸山香澄)だ。

 

いやまだ舞える、見つからない可能性もあるし

「あー!居た!如月さん!!!」

「対戦ありがとうございました(諦め)」

「如月さん……?どうして逃げるんですか…?私は戸山さんと違って如月さんを傷付けないのに……」

「アッアッアッアッ」

 

前方通路にはつぐみちゃん、右の通路にはスターマン。

そして左は行き止まり、背後は壁。

……これは、詰みじゃな?

 

「……戸山さん、如月さんに何をするつもりですか」

「えー?星になるんだよ!キラキラでドキドキな星に!!」

「それ言っときゃなんとかなると思ってません?」

ナニカイイマシタ?キサラギサン?

「黙ります」

 

2人の少女が火花を散らす、なぜか当の本人が横槍を入れるとソッコーで黙らせられてしまった、私のために争わないで欲しい.。

というか私を真ん中において争わないで欲しい。

 

散らす火花に当てられて気が滅入りそうになる中、僕はあることに気が付いた。

 

僕、『如月準』に傷を付けることは禁止されているが、少女達に関しては一切言及されていない、ということに。

まぁつまり、彼女らが殺し合おうことは許されている、ということだ。

 

「如月さんのためなら、私は人殺しにでも何でもなります」

「私もなるよ、キラキラドキドキは命より大切だから」

 

つぐみちゃんは包丁を、スターマンは……なんですかあれは。

……え、素手?素手!?

 

「……如月さんはそこで見ててください」

「血で血を洗うデスマッチだあ」

「これが終わったら、一緒に星になりましょう……ネ?」

 

僕に人権はない、悲しいがそれが現実である。

そして戦闘が始まる…………と、思った、その瞬間に。

 

「ウェッ!」

 

ガシッ、と音が聞こえそうなほど綺麗に僕は何者かに両肩を捕まれ、暗闇に引きずり込まれるのだった…。

 




あーもうめちゃくちゃだよ………失敬。

数ヶ月ぶりに筆を握った作者です、本当に申し訳ない、進展のないリハビリ作品になってしまいました。

色々あったのです、だいたい骨折が悪い。
でも責任転嫁しても事は進まないのでこれからの説明をば。

投稿はゆっくりですが進めていきます、まずリハビリがてら旅館編を終わらせます、頑張ります。

ツイ垢はこれから復帰すると思います、頑張ります(2回目)

これで話は終わりです、簡潔ですね。
では、これからのトウヤくんに乞うご期待!また次のお話で!!


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