まちカド真夜中シンパシー (tea(てあ))
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まちカド真夜中シンパシー

 なんだか眠れなくてスマホをいじる。

 幾度目かの寝返りを打つ。隣の良はすやすやと規則正しい寝息を立てている。

 写真をスクロールする。良やみかんさんが写っているのは多いのに、桃がいるのはほとんどない。

 ふとこの前撮った野良猫の写真に、桃がちらりと写っているのを見つけた。こちらを見て普段とは違う柔らかい表情をしている。これはレア!と拡大していると、桃からメッセージが来た。

 〈起きてる?〉

 行動を見透かされているような気がしてどきっとした。既読をつけなければ居留守みたいに寝たフリはできるけど、どうせ眠れないのだし、せっかくだから相手になってもらおう。

 〈起きてますよ。どうしたんですか?〉

 こちらの動揺を隠しつつ、先手を取って質問する。〈別に〉とか〈何でもない〉とか素っ気ない返事が来そう。

 〈別に、何でもないけど、見られてる気がして〉

 ぎょっとした。桃のじっとりした目で、こっちこそ見られているような気がしてくる。

 〈何言ってるんですか!自意識過剰ってやつですよ!〉

 〈確かに、気持ち悪かったね……。シャミ子は何してるの?〉

 まさか事実を伝える訳にはいかないので適当にはぐらかすことにする。

 〈眠れなくてぼんやりしてました。桃は?〉

 〈私も眠れなくて、シャミ子の写真見てた〉

 えっ。と思わず声が漏れる。良が寝返りを打ってこっちを向くので、悪いことをしてるみたいにどきどきした。

 私が桃の写真を見てて、桃が私の写真を見ててって、なんだか、何で、どうして――。

 〈前と比べたらシェイプアップできてる。この調子で頑張ろうね〉

 ――やっぱり桃は筋肉少女だ。逆に安心してしまった。

 〈寝る前に私の写真なんか見て、お望み通り夢に出てやろうか魔法少女!〉

 ちょっとは魔族らしさを押しておかないと忘れられそうなので言っておく。

 返事が来ない。

 待ってる間に良はまたこてんと寝返りを打った。

 寝てしまったのかな。

 元々静かだったはずなのに、急に夜が深くなったようで。

 寂しいような、でもそろそろ眠れそうな……。

 ……と、うとうとしていたら返事が。

 〈出てもいいよ〉

 ……何を言ってるんだ、まったく……このシャどうミストレすゆぅこにかかれば……お前のゆめに入って……すきほうだいして……。

 

 桃はスマホを投げ出して布団をすっぽりと被る。

 暗闇でなければ彼女の耳まで真っ赤なことがよく分かるはずだ。

 「……会えるかな」

 ぽつりと呟くと、桃はまだ落ち着かない心臓をなだめなから、夢の中に潜り込んでいった。



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