砂藤が本気を出したなら (たなぽ)
しおりを挟む

プロローグ
砂藤 力動:オリジン


アニメ見てたら描きたくなりました。


個性

 

 

 

 

中国の軽慶市での「発光する赤児」の報道以来世界各地で超常現象が報告された。

いつしか「超常」は「日常」に、「架空」は「現実」に。

世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つに至った超人社会。混乱渦巻く世の中で今、かつて誰もが空想し憧れたひとつの職業が脚光を浴びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がまだ幼稚園だった頃、その日のおやつであったショートケーキを食べた後に体が飛んでいるような感覚に陥った。小さかった俺はその感覚が怖くて泣いてしまい、早退をし、先生から連絡をもらって駆けつけた母ちゃんと一緒に医者に見せに行ったところ、俺は個性が発現したことを知った。

 

 

 

個性『シュガードープ』

 

 

最初はよく分からなかったが、母ちゃんがお医者さんから聞いた話によると。

 

 

砂糖10グラムにつき通常の5倍の身体能力を3分間発揮できる

 

 

という個性だったらしい。

 

 

 

「ガハハハハハ!!こいつはすげぇ個性だな!」

 

 

「えぇ、ヒーロー向きの個性ね」

 

 

当時の俺は自分に個性が発現したことにすごく喜んだ。

 

父ちゃんはヒーローを目指していたらしい。だけど父ちゃんは“無個性”だった。

それでも父ちゃんも母ちゃんも自分の事のように喜んでくれた。

父ちゃんは“無個性”だったけど、困っている人がいたらそこに利害なんか求めずにどんな事でもすぐに助けの手を差し伸べていた。近所の人達からも父ちゃんはとっても好かれていた。

 

俺にとってはそんな父ちゃんが誰よりも『ヒーロー』に見えていた。

 

 

「父ちゃん!」

 

 

大声を出した俺に驚いた父ちゃんは

 

 

「うわっ!?びっくりするじゃねぇか力動!いきなり大声上げてどうしたんだ!?」

 

 

と聞いてくる。

 

 

「俺は父ちゃんみたいな最高のヒーローになる!」

 

 

「おいおいおい!その気持ちは嬉しいがなぁ。…俺の事なんか気にせずにお前のなりたいヒーローになればいいじゃねえか」

 

 

「知ってる!だから俺の中の最高のヒーローである父ちゃんみたいになるんだ!」

 

 

「か、母さん!俺は今、最高に感動している!…うぅぅぅ、涙が止まんねぇよ…!」

 

 

「良かったわねあなた。ほら、よしよし」

 

 

「かぁさん…グスッ」

 

 

涙を流しながら顔をしわくちゃにしていた父ちゃんを横目に、この日俺はヒーローを目指し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

それから俺はヒーローになるために、父ちゃんと母ちゃんに頼みこんで格闘技をならい始めたり、体づくり、個性の練習など様々なことを始めた。

 

 

「砂藤!今日は俺の家で集まってゲームやるけど来るか?」

 

 

「今日こそ来てくれよ!」

 

 

「悪ぃ!今日もトレーニングだ!すまないなみんな!」

 

 

「じゃぁねぇな〜。その代わり日曜日はみんなでサッカーな!」

 

 

「任せろ」

 

 

「「「絶対だぞ〜!」」」

 

 

同級生の友達は遊びに誘ってくれたりしてくれてたけど、俺は余り行かなかった。

それよりも、日々成長している自分を感じるのが何よりも楽しかったからだ。

 

 

 

 

 

 

個性は未解明な部分が多い

 

 

 

 

 

 

テレビで偉いお医者さんが言っていた。

 

俺の個性は強いが燃費が悪い。俺の個性は個性を使うと決めたらそこから個性が切れるまでは糖分がノンストップで使われるし、途中で個性を止めたり、糖分の消費調整もできない。

 

何とかできないものかと試行錯誤を重ねていると、中学生に上がる頃、個性に変化が訪れた。

 

 

身体能力強化の倍率を感覚ではあるが調節できるようになり、10グラムで5倍の時は3分間、2.5倍で6分と糖分の消費量も調節できるようになったのだ。

 

 

 

 

 

個性は成長する。

 

 

 

 

 

その時俺は確信した。

 

 

 

 

 

そこからの3年間が過ぎるのはとても早かった。

 

時間が経つにつれて、個性も身体もどんどん成長していった。

 

個性が使いこなせるようになってくると俺の個性のヤバさが改めてわかった。

 

“身体能力”が倍になるというのは単純に力が倍になる訳では無い。

腕の筋肉も、脚力も、反射神経も“全て”が倍になるのだ。だから実際俺の個性は倍どころではないパワーが出せるのだ。

 

 

 

「お前がもしプロヒーローになったら1番にサインくれよ!」

 

 

「有名になったら女の子紹介しろよな!」

 

 

「砂藤くんなら絶対プロヒーローになれるよ!」

 

 

 

中学に上がっても、余り友達と遊ぶ時間は取れなかったが、そんな俺に対してもみんなは俺と仲良くしてくれた。それがたまらなく嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた中学三年生の冬

 

 

 

 

 

 

 

「ここが雄英高校…!」

 

 

 

俺は雄英高校の門を通る。

 

 

 

これは俺、砂藤 力動が最高のヒーローになる物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




続くかは未定


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学試験1

切りよく終われない。


雄英高校ヒーロー科

 

 

そこはプロに必須の資格取得を目的とする養成校。全国同科中最も人気で最も難しく、その倍率は例年300倍を超えている。

 

オールマイトやエンデヴァー、ベストジーニストなど、偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件とまで言われている。

 

そんな高校の一般入試実技試験に今日俺は挑む。

 

 

(いや、改めて見るとアホみたいにでけぇな…下手したら俺のいた鳥取の町よりも…)

 

 

 

「どけデク!」

 

 

「か、かっちゃん!」

 

 

そんなことを考えていると後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

「俺の前に立つな、殺すぞ!」

 

 

「おっおはよう、が、ガンバロウネ、オタガイ…」

 

 

緑髪のもじゃもじゃの子と金髪の子が話していたようだ。

てかあの金髪の子。「ヘドロ」事件の爆豪なんちゃら君では無いのか?ニュースで見た気がする。それにしたって緑髪の子に対してあたり強すぎだろ…最後スルーしてたし。

 

 

俺の中での彼のあだ名が強面ヤンキー君に決定された。

 

 

(緑髪の子大丈夫だろうか?足がガクガクじゃないか。)

 

 

そう心配をしながら彼を見ると

 

 

ガッ

 

 

彼が転びそうになった。

 

 

(っ!言わんこっちゃない!こんな所でコケるのは縁起が悪いし、さすがに可哀想だ)

 

 

 

「危ない!」

 

 

 

 

 

助けようと手を伸ばした瞬間

 

 

彼が浮いた。

 

 

「わっ!え!?」

 

 

「ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね!」

 

 

どうやら通りかかった女の子が彼を助けたようだった。

 

 

(今、浮いたよな?彼女の個性だろうか?)

 

 

「緊張するよねぇ」

 

 

「へ…あ…えと…」

 

 

「お互い頑張ろうね!」

 

 

放心状態の彼を置いて助けた女子は会場へと向かっていった。

 

 

 

「まぁ助かったならいっか、俺も会場へい…」

 

 

「あ、あの!」

 

 

振り返ると復活した彼がこっちに近づいてきていた。

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

「さ、さっき僕のこと助けようとしてくれましたよね?本当にありがとう!」

 

 

 

地面に頭が着くぐらい腰を折って礼をしてきた。

 

 

「い、いやちょっと待て!俺は何もしていない。俺の事はいいからまずはもう一度彼女にあってちゃんとお礼を言えよな」

 

 

「それはそうだけど…でも、それでも助けようとしてくれてありがとう!」

 

 

「…そこまで言うなら受け取っとくぜ。俺の名前は佐藤 力動!お前は?」

 

 

「ぼ、僕は緑谷 出久!この時間に会場に来るってことは佐藤もヒーロー科志望だよね?」

 

 

「そうだとも!お互い受かるといいな!頑張ろうぜ!」

 

 

「う、うん!ありがとう!」

 

 

そう言って緑谷と握手を交わして別れた。

 

 

 

(緑谷か。あいつの手凄かったな…)

 

 

 

緑谷の手はとても硬かった。きっとあいつもとんでもない量の努力を重ねてきたのだろう。

 

 

(俺も負けていられないな!)

 

 

こうして俺の入試試験が始まる。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

 

 

シーーン...

 

 

 

(すげぇ!本物のプレゼントマイクだ!…でもまぁ、こうなるよな)

 

 

 

「こいつあシヴィー!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!アーユーレディ!?」

 

 

シーーン...

 

 

(なんかこっちが辛くなってきたな)

 

 

 

そんな受験者の反応も諸共せずにプレゼントマイクはその後、ちゃんと実技試験の説明をしてくれた。

 

途中で緑谷がメガネの子に叱られるという場面があったが、とりあえず無事に説明は終わった。

 

(この試験は明らかに個性で点数に偏りが出るはず…そんなことを分からない雄英では無い。となると他にもポイントが?まぁいい。俺は俺にできることをやるだけだ)

 

 

そう考えながら模擬市街地会場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短くてごめんなさい。明日はもう少し長くするつもり


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学試験2

模擬市街地会場に着いた俺はまずその会場の広さに驚いた。てかこんなんが敷地内に何個もあるとか雄英やっぱすげぇな。

 

 

「殺す殺す殺す殺す…」

 

 

近くでブツブツと呪文を唱えているのは強面ヤンキーくん。誰も彼に近づこうとせず、周りには誰もいなかった。まさか同じ会場だとは思わなかった。

 

 

(さて、俺も集中するか)

 

 

角砂糖を食べながら身体をほぐして、スタートを待つ。

 

(そろそろ合図があると思うが。)

 

 

「はいスタートー!」

 

 

(身体強化2倍!)

 

 

 

ダッ!

 

 

 

「どうしたんだァ?実践じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!っていきの良いリスナーがいるじゃねぇか!ほら!他の奴らも急げよ!賽は投げられんぞ!」

 

 

 

(あっぶねぇ!とりあえずスタートダッシュは成功だな)

 

 

 

「まちやがれ!俺よりも前に行くなクソが!」

 

 

 

「マジかよ!」

 

 

「やべぇ急げ!」

 

 

ドドドドッ!

 

 

俺の次に強面ヤンキーこと爆豪君が、その後に他の受験者たちが動き始めた。

 

 

街の中に入るとすぐに横の壁を突き破ってアニメに出てきそうなロボットが目の前に三体現れた。

 

 

「標的補足!!ブッコロス!!」

 

 

「1P敵!いや口悪ぃな!爆豪くんの親戚かな?」

 

 

一体の仮想敵の攻撃をしゃがんで躱し、右のアッパーを顔面であろう部分に叩き込み、残りのに対しては蹴りで足を壊すと、1P敵は動かなくなった。

 

 

(1Pは2倍で行けそうだな。動きも悪くない。)

 

 

自分の調子を確認した俺は2P敵、3P敵も含めてどんどん倒していった。

 

 

『あと6分〜』

 

 

(かなり倒したはずだ。このままいけ…)

 

 

ドーーン!!

 

 

生き残っている仮想敵を探していた俺の目の前に明らかにデカすぎるロボットが現れた。

 

 

圧倒的脅威

 

 

そう感じたのだろう。多くの受験生がその場から背を向けて逃げていく。

 

 

「イタッ!」

 

 

その中で転んでしまったのか、1人の少女が動けないでいた。

 

 

「た、助けて」

 

 

受験生が彼女を置いて逃げる中、俺は1歩踏み出した、

 

 

(この仮想敵を倒しても一切メリットは無い!だが、俺はヒーローになりにここを受けに来たんだ!!)

 

 

俺は彼女に急いで駆け寄った。

 

 

「大丈夫か!」

 

 

肩を貸して起き上がらせ、0P敵から離れる

 

 

「あ、ありがとう。それよりも早く逃げて!もう近くまで来てる!」

 

 

「大丈夫。俺が何とかする。その代わり俺が倒れたら安全なところに運んどいてくれるか?」

 

 

「はぁ!あんた何言ってんの!?あんなのどうしようもないでしょ!?」

 

 

「頼む。信じてくれ」

 

 

「…はぁ、わかった。その代わり死なないでよ?恩人が死ぬとかシャレにならないから。」

 

 

「約束する」

 

 

彼女を座らせて俺は角砂糖を3つ口へ含み、0P敵に向かって走り出した。

 

 

「行くぜ0P敵!倍率5倍!時間を3分の1へ圧縮!」

 

 

0P敵の顔付近まで跳躍する。

 

 

 

中学校三年間で俺の個性は成長した。その中でも強力なのが個性の発動時間の圧縮。5倍のパワーを3分間から1分間へ文字通り圧縮する。つまり1分間は“15倍”の身体能力を得ることが出来る。

 

 

 

「シュガーラッシュ!!!」

 

 

 

15倍の身体能力を使い殴る、倒れるまで殴り続ける。

 

 

やがて0P敵が傾きだし、地面に倒れた。

 

 

「ふぅ、何とかなったな」

 

 

「めっちゃすごいじゃんあんた!」

 

 

少し回復したのか、先程の女子が興奮気味に声をかけながらこちらまで歩いてきた。

 

 

「ありがとさん!それでは」

 

 

「ん?」

 

 

「あとは頼んだ!」

 

 

バタッ

 

 

「えっ?ちょっと待ってあんたどうしたの!?は?え!?」

 

 

(守れてよかった)

 

 

そこで俺の入試の記憶は途絶えた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「いよいよ今日か…筆記は良かったと思うが、実技で倒れた時間がどう響くかだな。」

 

 

個性の発動時間の圧縮

 

 

あれを使うと全てを使い切ったように倒れてしまう。しかも今の実力じゃ圧縮は3分の1までが限界。恐らくそれ以上は体が持たないのだろう。

 

 

(あの子、ちゃんと運んでくれてたんだな)

 

 

試験終了後、リカバリーガールによって回復された俺は結局あの子に会うことが出来ずに自宅へと帰った。

 

 

(もしあの子が受かってたら、お礼言わないとな)

 

 

まぁ俺が受かっているかわからないのだが

 

 

「力動!雄英から封筒が来てるわよ!!」

 

 

「まじか!今行く!」

 

 

母ちゃんから封筒を受け取り部屋へ戻って開けてみると、メダルのようなものが光出した。

 

 

「私が投影された!!」

 

 

「うわ!オールマイト!?」

 

 

プロジェクターに投影されたオールマイトによるとどうやらら今度から雄英に務めることになったそうだ。

 

 

「まず筆記はなかなかの好成績!そして実技は敵ポイント49P!おめでとう!合格だ!」

 

 

「…よっしゃぁ!」

 

 

ついつい飛び上がって喜んでしまった。

 

 

「だがそれだけではない。先の入試!見ていたのは敵Pのみにあらず!救助活動ポイント!しかも審査生!!我々雄英が見ていたもう1つの基礎能力!」

 

 

やはり敵P以外にもポイントの稼ぎ方があったわけだ…ん?ということは

 

「砂藤 力動!救助活動ポイント53ポイント!合計102ポイント!文句無しの首席合格だ!…来いよ力動少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!!」

 

No.1ヒーローに褒められたのが嬉しかったのか。それともあの行動が間違えではなかったのが嬉しかったのか。気づけば俺は泣いていた。

 

 

「ど、どうした力動。父ちゃんは雄英とかそんなんは気にしないぞ!」

 

 

「あなた!子供はデリケートなのよ!もっとオブラートに慰めなさい!」

 

 

バキッ!

 

 

「グハッ!」

 

 

 

俺の部屋に入ってくるや否や顔面を殴られる父ちゃんに今度は笑ってしまった

 

 

 

「違うよ!母ちゃん父ちゃん!俺雄英受かったよ!…って父ちゃん!?」

 

 

 

そしてついに俺の高校生活が始まる!!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【雄英高校side】

 

 

 

 

「実技総合成績出ました」

 

 

「救助P0で2位とはなぁ!!こいつはタフネスの賜物だ!」

 

 

「対照的に敵P0で入試8位。アレに立ち向かったのは過去にもいたけどまさか2人もぶっ飛ばしちゃうとはね。思わずyear!って言っちゃったぜ!」

 

 

「しかし、やはり圧巻だったのは」

 

 

「合計103P、総合成績1位。砂藤 力動か。あの子はまだまだ伸びるね」

 

 

「判断力もあり、大事な場面では強大な敵にも立ち向かえる精神力。素晴らしかったわ!」

 

 

「だが、個性を使った後に倒れてました。合理性にかけます。」

 

 

「細けぇことはいいんだよ!俺はあいつを気に入ったよ!」

 

 

 

〜プロローグ完〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




爆豪くんと絡ませられなかった…

次回からは雄英入学時編です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雄英入学編
個性把握テスト1


春。それは高校生活の始まり

 

 

「A組はここか…ドアでけぇ……」

 

 

毎年倍率300を越える雄英には一般入試で36名、推薦入試で4名。20人ずつでなんと2クラスしかない。

 

 

(緑谷も試験の時の女の子も受かってるといいな)

 

 

そう思いながらドアを開ると、まだ1つしか席が埋まっていなかった。

 

 

(ん?あれは説明の時の)

 

 

メガネくんは俺が入ってきたのに気づくと席を立ってすぐさま俺のところへ近づいてきた。

 

 

「おお!ボ…俺は私立聡明中学出身の飯田 天哉だ。君は?」

 

 

手を差し伸べてきたので俺も握手して挨拶をした。

 

 

「俺は江湖中学校出身の砂藤 力動!…それにしても聡明か、飯田はすげえエリート中学から来たんだな!」

 

 

「そんなことはないさ!江湖中だって有名じゃないか!…それにしても鳥取からはるばる雄英に入学したとはすごいな君は」

 

 

「士傑も考えたんだけどな、やっぱりヒーローになるなら雄英だと思ったんだ」

 

 

「そうか。これから3年間を共にするんだ。どうかよろしく頼む」

 

 

「あぁ。こちらこそよろしく頼む」

 

 

それから飯田と雑談をしていると続々と新入生たちが教室へと入ってきた。

 

 

「そろそろ俺達も席に着いた方が良さそうだね」

 

 

「あぁ。そうみたいだな。また後で」

 

 

その後教室へと入ってきた爆豪くんと飯田が言い争っていると、緑谷と試験前に緑谷を助けた女子が教室へと入ってきた。

 

 

「緑谷くん…君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな。俺は気づけなかった…!!すまない!君を見誤っていた」

 

 

「え、いや僕も気づいてなかったというか…」

 

 

緑谷の入室に気づいた飯田は、緑谷へ謝罪をしていた。何か認識を改める何かが試験中にあったのだろう。

 

 

(試験の子、いないな…)

 

 

全員揃ったがあの時の子は見つからなかった。B組にいることに期待しよう

 

 

「今日って式とかガイダンスかなぁ?」

 

 

 

「先生ってどんな人だろう」

 

 

 

「お友達ごっこがしたいならよそへ行け」

 

 

 

((((なんか!!いるぅぅ!!))))

 

 

 

突然、寝袋が動き出し、中からホームレスみたいなおっさんが出てきた。

 

 

「ハイ、皆が静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 

 

((((先生!?))))

 

 

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 

((((担任!?))))

 

 

俺たちの担任はどうやら個性が強いらしい

 

 

「早速だか体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 

 

 

「「「「個性把握…テストォ!?」」」」

 

 

 

言われるがまま俺たちは体操服に着替えてグラウンドに出ると、相澤先生にグラウンドへ集合した意味を教えられる。

 

 

「入学式のガイダンスは!?」

 

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

 

「…!?」

 

 

「雄英は“自由”な校風が売り文句。それは先生側もまた然り。中学の頃からやっているだろ?“個性”禁止の体力テスト。一般1位は砂藤だったな。」

 

 

“総合1位”

 

一瞬でその言葉に反応した爆豪くん…もう爆豪でいいや。爆豪はこちらを睨み付けできた。

 

「なんでお前が」と言わんばかりの殺気溢れる眼光は、本当にこいつヒーロー志望なのかよと疑いたくなる。

 

 

「砂藤、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

 

「76メートルです」

 

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ。円からでなければ何してもいい」

 

 

先生に指名されて俺はソフトボール投げのサークルに入った。

 

 

(まぁ初めは様子見で、3倍強化でいいか)

 

 

「んじゃまぁ、3倍強化で…どりゃァァ!!」

 

 

俺の投げたボールは中学とは比較にならないくらい飛んで行った。

 

 

「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの基礎を形成する合理的手段」

 

 

相澤先生がもつ測定器には502.6mの文字が浮かんでいた。

 

 

「なんだこれ!?すげー面白そう!」

 

「502メートルってマジかよ!」

 

「個性を思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!」

 

これから始まることが楽しみなのか、皆がザワザワし出した。

 

「…面白そう…か。ヒーローになる為の3年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 

  周囲の空気が一気に変わった気がした。

 

相澤先生は先ほどまでのホームレスのような、疲れたような印象は一気が一気に変わり、まるで氷のような静かで、鋭い殺気のようなものをぶつけられるような感覚に陥る。

 

さっきまで騒いでいた生徒達もその雰囲気を感じたのか黙ってしまう。

 

「よし決めた…トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、

 

 

除籍処分としよう」

 

 

「「「…はァァァ!?」」」

 

 

(あの目は本気だな)

 

 

「生徒の如何は先生の“自由”。ようこそこれが、雄英高校ヒーロー科だ」

 

 

 

入学初日の大試練。さて、どうやって乗り切ろうか。

 

 

 

 




上手くまとめられない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

個性把握テスト2

1巻分終了です


相澤先生の除籍処分宣言の後、先生はすぐに個性把握テストが始まった。

 

 

最初の競技は50m走

 

 

 それぞれ個性を使う為の準備や柔軟体操などを各自行っている中、俺は相澤先生の元へと歩いていく。

 

 

「相澤先生」

 

 

「どうしたんだ砂藤?」

 

 

このタイミングで来た俺に対して、先生は不思議そうな顔をした。

 

 

「この時間中での糖分の摂取はOKでしょうか?」

 

 

「糖分?…あぁ、お前の個性は糖分使うんだったな。まぁそのくらいなら許可する」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

これで全部の種目でMAXが出せる。

 

 

「だが俺は糖分が摂取できそうなもん持ってないぞ?」

 

 

「心配いりませんよ」

 

 

そう言って俺はポケットから角砂糖を数個取り出す。

 

 

「…なんで持っているんだ。今回だけだぞ。今度から授業に必要のないものを所持していた場合没収するからな。」

 

 

相澤先生に呆れられたが許可は出た。

 

 

俺は角砂糖の1つを2等分にし、その半分を口へ含み、列に並んで順番を待った。

 

 

「次、上鳴 電気と砂藤 力動」

 

 

(個性発動。角砂糖半分だから、身体能力5倍は30秒持つな)

 

 

位置についての合図で個性を発動させる。

 

 

 

 

「よーい、どん」

 

 

 

地面を強く蹴って勢いよくスタートすることが出来た。

 

 

 

「砂藤 力動 3秒49、上鳴 電気 6秒81」

 

 

 

「すげぇ!!また3秒台が出たぞ!」

 

 

 

「ふぅ、まぁこんなもんか」

 

 

 

「おい!お前すげぇな!」

 

 

なかなかの記録が出せたことに安堵していると、一緒に走った上鳴 電気が話しかけてきた。

 

 

「上鳴だよな?ありがとう!」

 

 

「おう!よろしくな砂藤!てか俺は砂藤がぜってーパワータイプだと思ってたぜ!」

 

 

「僕もだよ。君がまさか、スピードタイプの個性だったなんてね」

 

 

上鳴と話していると、先程の3秒04という1位の記録を出した飯田が話しかけてきた。

 

 

「いや、そういう訳では無いんだがな。色々と応用の利く個性なんだ」

 

 

その後も俺は好成績を残していった。

 

 

だが、他の奴らも好成績を残していく。何せ雄英に入学してきた普通とは違う者たちだ。

 当然、好成績どころではないとんでもない結果が出る者も多い。

 

 

ー握力ー

 

 

「すげぇ!! 540kgて!! あんたゴリラ!? いやタコか!!」

 

 

「タコって、エロいよね……」

 

 

「………………」

 

 腕を数本複製出来るような個性なのだろう長身の少年は、複製したその腕全てで握力計を握っている。

 

 

 そのような者もいたかと思えば、

 

 

「フゥ、まぁこんなものですわね」

 

 

 万力か何かのような機械で限界まで握力計を挟む者も。

 

 

てかそんなんありかよ。

 

 

「…っと俺の番か。ーーーうりァ!」

 

「480kg!?お前もゴリラかよ!」

 

 

 

ー立ち幅跳びー

 

 

 

「…クソが!」

 

 

「すげぇ!爆発の奴どんだけ跳ぶんだよ!」

 

 

「…フンっ!」

 

 

「すげぇぞ!砂藤が砂場超えやがった!」

 

 

ー反復横跳びー

 

 

「ハァァア!!」

 

記録98回

 

 

ーボール投げー

 

 

「どっせい!!!」

 

 

「ア゙ア゙?942.4メートルだと!?」

 

 

「さっきはフルパワーではなかったということか」

 

 

「すげぇな砂藤!」

 

 

「おう!ありがとう!」

 

 

(緑谷、大丈夫だろうか?)

 

 

上鳴からの賞賛に反応をしつつも、やはり緑谷が気になってしまう。

 

 緑谷はこれまでお世辞にもいいとは言えない結果である。

 

離れた場所にいる緑谷の表情は、あまり良い表情とはいえない。

 焦りと不安が顔に出てしまっている。

 

 

「緑谷くんはこのままだとマズいぞ…?」

 

 

近くにいた飯田が話しかけてくる

 

 

「だな。だがどうして個性を使わないんだ?」

 

 

「ったりめーだ!無個性のザコだぞ!」

 

 

「無個性!?彼が入学時に何をなしたか知らんのか!?0P敵を倒したんだぞ!?」

 

「は!?」

 

 

いつの間にか会話に入ってきた爆豪と飯田が言い争いだした。どうやら緑谷は俺と同じで0P敵を倒したらしい。

 

 

(なんで個性を使わないんだ?まさか簡単には使えないほどのデメリットがあるのか?)

 

 

 

「――でぇい!!」

 

 

 

 必死の形相で投げられたボール。

 飯田が言ったことが事実なのならば、俺と同様、もしくはそれ以上の大投球になっているはずだ。

 

 

だがー

 

 

「ー48m」

 

 

「だから言っただろうが!」

 

 

「な!?どうしたんだ緑谷くん…」

 

 

 立ち尽くしている緑谷と、何かを緑谷に向かって話している相澤先生を見て、心配する飯田。

 

 

「大丈夫。ソフトボール投げはあと2回ある。緑谷を応援しよう」

 

試験会場で見た緑谷の手。あれほど努力を重ねているだろう人間がこんな所で終わるはずがない。

 

 

 緑谷なら大丈夫

 

 

頑張れ緑谷。心の中で何度も応援する。

 

 

 もう一度円の中心に立った緑谷の顔は、未だ冴えない。

 

 

 「…」ブツブツ

 

 

「指導を受けていたようだが」

 

 

「除籍宣告だろ」

 

 

「ダメだ…ダメだ…!!」

 

 

緑谷が振りかぶる

 

 

「今!」

 

 

 

 バコーンッ!!

 

 

 

 ボールは大空へと飛んで行った。

 緑谷の方を見るとの指は腫れ上がっていた。それでもその痛みに耐え、拳を握りしめながら、相澤に向かって言った。

 

 

 

「先生……まだ、動けます!」

 

 

 

 「…かっこいいじゃねぇか緑谷」

 

 

先生に向かって顔をあげ、そう言った緑谷は、とてもかっこよく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ての個性把握テストが終わった。

 

 

 

 皆全力を出し切っただろう。俺も今出せる全力を出したつもりだ。

 

 

「んじゃ、パパっと結果発表。

 トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する。」

 

 

 

俺の成績は2位だった。さすがにあの創造女子…八百万という子には勝てなかった。

 

 

 ーー相澤先生が最初に提示した「最下位除籍」。

 

 

緊張感は間違いなく皆同じだろう。

 

 その緊張感を壊すかのように

 

 

 「ちなみに、除籍はウソな。

 君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 

「「「………はぁーーーーー!!???」」」

 

 

「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ」

 

 

 

 前に立っていた飯田や緑谷が絶叫を上げる。

 

 信じていなかった者はですよねーといい感じだが、信じていた者は緑谷程ではないにしても驚いている。

 

 

「びっくりしたよな砂藤。教師が嘘で鼓舞するなんて」

 

 

「あぁ。でもあれは」

 

 

嘘ではなかったような気がする。

 

 

 

 俺は成績の一番下の欄に記された名前を見る。

 

 

 

ーー20位 緑谷出久

 

 

 

もしかしたら先生も、緑谷に何か感じるものがあったのでは無いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰るか」

 

 

高校生活一日目が終わり、俺は帰宅しようと教室を出た。

 

 

「おい待てって砂藤!一緒に帰ろうぜ!」

 

「俺もいいか?」

 

 

上鳴と先程テストの後に話しが合い、仲良くなった切島と帰ることになった。

 

 

「しかし、お前の個性マジチートじゃねぇか!」

 

 

「マジでそれ!俺なんて雷出すだけだぜ?…出しすぎるとバカになるし」

 

 

「いや、そんなことは無いぞ。近くに糖分がなければ何も使えないからな」

 

 

緑谷を見て改めて思った。出来ないことを出来ないままにしていてはダメだ。俺ももっとデメリットを克服するためにはどうしたらいいか考えないといけない。

 

 

もっと頑張らなければ

 

 

 

でも

 

「でさ、トイレが見つからなくてよ」

 

「うわ、お前案内図読んどけよ…」

 

 

友達と帰るこの時間だけは楽しむとしよう

 

 

 




次回からは2巻の内容です


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。