其の想いを届ける因果 (初代小人)
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プロローグ

久しぶりに筆を執る事としました。初代小人です。
と言っても色々と忙しいですので投稿頻度はまばらになるかと思いますのでまたのんびりとお待ちください。


「ねえねえ陸、海人、このツイスタブックの垢*1しってる?都市伝説になってるんだけどさ」

 

そう言ってきたのは俺の幼なじみの山科(やましな)ソラ。珍しく名前はカタカナで、幼稚園から高校まで同じの腐れ縁ってやつだ。

「なになに?毎日夜中の2時34分に愛を呟くbot?なーんだ、こんなのよくある事じゃない。もしかしてソラ、怖いの?」

 

今ソラをからかったのは萬野 海人(まんの かいと)

ソラと同様の腐れ縁の幼馴染でよくこうやってソラにちょっかいをかけて遊んでる。

 

そんで俺の名前が谷口 陸(たにぐち りく)だから周りのヤツらには陸海空トリオとか言われてるけど全く嬉しくない。むしろこいつらと一緒にするとかマジ勘弁って感じ?

 

 

「んなもん誰かのイタズラだろ?ほっとけよ」

「もう!陸はいっつもそうやって面倒くさそうにするんだから!」

「面倒くさそうじゃねぇよ、面倒くせぇの。」

 

「まあまあ、そう言わずにさ。それで?具体的にどう言う内容なの?」

 

「それがね、毎日さっき言った午前2時34分になると、「もう届かないけれど、私は貴女を愛していました」みたいな呟きをするらしくて、内容も何パターンかあるけど「もう伝えられない」と「愛していました」って内容は絶対に入ってるらしいんだよね」

 

「うん、それで?ソラがまさか話だけ持ってくるわけないよね?」

「よく分かったね〜さっすが海人!これってさ、不気味だけど、多分伝えたかった“誰か”が居るんじゃないかなって私は思うんだよね!だからその“誰か”を探してみたいなって!」

「なるほど、伝えられなかった想いを伝えてあげようって事だね、いいじゃないか」

 

「んな訳あるかよ」

そこで俺は漸く口を開く決意をした。

 

 

「他人の事だろ?そいつが本当に伝えたい相手に伝えられなかったのかもわかんねぇ、SNSなんてのは嘘ばっかなんだからよ、いちいちマジんなってどうすんだ?」

「それでも私だったら伝えて欲しいもん!」

「全人類がテメェみたいに脳みそお花畑だったら5秒で人類滅亡するわ!」

「何よ!」

「大体テメェはんな事言って暇なだけだろうが!手前(テメェ)の暇つぶしは手前(テメェ)で勝手にやってろよ!」

 

そこにまあまあ、と海人が取りなしに入る。

気づけばまた好奇の目が俺達を照らしていた。

 

こんな光景が俺達の日常だった。

俺も、海人も、ソラも、当たり前だと思っていた。

 

 

これは、当たり前に明日からも続く毎日だと信じ込んでいた日常のその先の、そしてその前の話。

*1
アカウントの事を指す略語



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其ノ弌

まあ毎週投稿なんて出来ませんよね……すみません。
こんな感じでぼちぼちあげていくんでよかったら見てってください


「んなもんこの中から見つかるわけねぇだろ!」

 

荒っぽい男の声が静まり返った空洞に響いた。

眼鏡をかけた司書が「図書館ではお静かに」と事務的に注意してくる。

 

「そんなの、探してみなきゃわかんないでしょ?ほら、陸も手伝って!」

ソラが声を潜めながら言う。

 

「仕方ないよ、ソラは1回言い出したら聞かないし。付き合ってあげるしかないって」

海斗は苦笑しながら机の上に山積みになった古い新聞紙を手に取った。

 

 

これが俺たちのいつもの流れ。

ソラが動いて、俺が引きずられて、海斗が受け入れる。

こうなったら俺も道連れにされる。

 

いい加減にしてくれ、そう思いながら俺は目の前の紙を開いてみる。

色褪せてこそないが古い字体で書かれた文章は尋常ではなく読みづらい。

 

 

「悪い、帰るわ」

読めもしねぇもん眺めてられっか。

そんな心持ちで俺はカバンを掴んで帰路についた。

 

 

 

─────────

 

 

「おかえり」という聞きなれた声に小さく「おぅ」と返して俺は出かける支度を始める。

 

「今日もバイト?」先程より幾許か細くなった声に、もう一度、「おぅ」、と返す。

そして声の主の顔も見ずに俺は再び自宅を発った。

 

 

カーンという、仏壇の鐘だけが背で寂しげに鳴っているのを、俺は振り払った。

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

「調査結果報告だよ陸!」

 

「要らねーよ、つーかもう2人で勝手にやってりゃあいいのに」

「まあまあそう言わずに。あれから図書館が閉まるまでずっと調べてたんだからさ」

 

 

知らねーよと愚痴る俺をまたも置いて話は進んでいく。

 

「結局図書館では何の成果も得られまへんでした!」

「なんだそれ!」

 

思わず俺ですらツッコミを入れるレベルだった。というかそりゃそうだろうな……

というかどうして急に関西弁なんだ

 

「でもね、有力な情報は見つかったというか、聞けたんだよ」

そう言ってソラは指をパチンと鳴らした。

 

 

「ここからは僕が説明するんだけどね、結局昨日あれからソラは新聞紙と対面しながら割と直ぐに夢の国に旅立っちゃって」

「それは言わない約束!」

「ごめんごめん」

 

 

もう何も言えん……海斗、いい加減に見限ればいいと思うんだが……

 

 

「それでね、僕一人で閉館まで調べてたんだけど、そうしたらあの司書さんがね、興味深いことを教えてくれたのさ。」

「20年弱前にね、似たような都市伝説……というか怪事件があったらしいんだ!なんかね、夜中のうちに隣町の家に無記名のハガキが入ってたらしくて、その内容が丁度今調べてるツイスタとほぼ同じなんだって!しかもハガキが入ってるのも夜中だったらしいよ!」

「なんやかんやで全部言われちゃったけどそういうことらしくて、ハガキの差出人が例のbotの主と近しい人物なんじゃないか、とは思うんだけど、当時は実害がないから記録としては残ってないし、一応実物がないか隣町に探しに行っても見たんだけど皆忘れてるか覚えてても気味が悪いから捨てた、とかばっかりでね……ここらで諦めようかなって僕は思うんだけど」

 

「まだ何か手がかりがあると思うの!だから今日も行くよ!図書館!」

「勝手に行ってろ、寝落ちするやつに付き合ってられっか」

 

 

 

そう言って俺は一人で歩き出した。



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