DーHEROと共に戦うデュエリスト。 リメイク版 (無言の短パン)
しおりを挟む

プロローグ

皆さんにとって遊戯王とはなんですか?


 俺の名前は未来、遊戯王が大好きだった男だ。

 

 昔は遊戯王が大好きでデュエルが楽しくて楽しくて仕方なかった。

 それに遊戯王のアニメを見るたびにワクワクしていて、無性にデュエルがしたくなった。

 

 いつからかな……デュエルも遊戯王のアニメも楽しめなくなってきたのは? 

 

 そうだ、デュエルが楽しくなくなってきたのは遊戯王の大会に出たあの時からだ。

 

 俺の最強デッキなら勝てると思って大会に出て、手も足でずボコボコにされた。

 それから俺は昔から使っていた大好きなデッキを崩して、勝てる環境デッキを作って大会に出た。

 大会のデュエルは楽しかったけど、何か大切なものを無くした気がした。

 

 アニメは……そうARCーVの時からだ。

 ARCーVは最初は微妙だったけど、中盤からどんどん面白くなって来た。

 魅力的なキャラが多かったし、次の展開にワクワクしていた。

 そして同時期に遊戯王の映画も上映しててその出来も良かったから、遊戯王アニメは永遠に不滅だと思ってた。

 でも乱入が増えたり、アクションマジックの乱用。はては過去作のキャラの冷遇。

 上げればきりがないが、そういうのを積み重ねていって、ARCーVは完全な駄作として終わってしまった。

 

 次のVRAINSは楽しめたけど、もう以前のワクワクは感じなくなってしまった。

 俺の感性が変わったからか遊戯王のアニメがつまらなくなったからなのかそれは分からない。

 でもなんか……無性に冷めちまったんだ。

 だからSEVENSは見る気が起きずに未だに未視聴だ。

 

 それに昔から一緒に遊戯王をやっている知人がどんどん辞めていって、今では遊戯王をやっているのは俺だけ。

 遊戯王をやめた友人が言った

 

「この歳でいつまでも遊戯王はできないだろ。おまえも辞めるんだった早い方がいいぞ。そしていい値段がつく今の内に遊戯王カードを売っておいたほうがいい。遊戯王が終わればほとんどのカードが値段がつかないゴミになるぞ」

 

 がどうしても未だに耳から離れない。

 そいつとは喧嘩別れする形で絶交しちまったけど、あいつが言ってることはただしいんだよな。

 

 箱買いして開封してないパックがいくつあったか……もう覚えてない。

 

 もう完全に遊戯王の熱は冷めてる。だがどうしても辞める気にはなれない。

 

 俺はこれまで遊戯王以上に熱心に取り組んで来たものはない。

 もう遊戯王は俺にとって人生のようなものだと言ってもいい。

 その遊戯王を止めれば、俺には何も残っていない。

 それに今までの人生が無駄だったと否定している気がする。

 

「どうすればいいんだろうな」

 

 遊戯王を続けるか……止めるか。

 ここ数ヶ月は寝ても覚めても毎日そのことばかりを考えていた。

 

 その結果、俺は注意散漫になっていた。

 

「あっ、やべ! 赤信号っ」

 

 それは一瞬の出来事だった! 

 猛スピードの車が俺のことを轢いて走り去っていった。

 俺は吹っ飛ばされて、地面に激突した。

 

(身体中が熱くて痛い。……これはもうダメだな)

 

 

(……なんだよ、俺はまだ答えを出してないんだぞ)

 

 薄れゆく意識の中、今までの人生が走馬灯のように流れてきた。

 

(遊戯王、遊戯王、遊戯王……遊戯王ばっかりだな……)

 

 ふと一枚のカードを当てた時の記憶が蘇ってきた。

 

(DーHERO ドグマガイ……俺が好きだったカード)

 

(本当は……俺……お前と……いつまでもデュエルを……)

 

 そこで俺の意識は途絶えた。




作者は少し前まで、主人公と同じ心境でしたが。
フェッシル・フュージョンのカード化で、止めようなんて気持ちが一瞬で吹き飛びました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 命がけのデュエル。

主人公の性格は前回とは正反対です。


 目を開けると俺は木々が生い茂っている森の中にいた。

 

「どういう……ことだ、俺は確かに死んだはずなのに」

 

 車に轢かれた瞬間は覚えてる。

 俺は確かに車にひかれて、頭を強く打って死んだはずだ。

 だが俺は自分の頭を触ってみたが、痛みはなく、出血もしてかった。

 

 

 

 俺はしばらく、何が起きたのか考えていた。

 そんな時だった。いきなり目の前にでかい昆虫が現れた。

 

「……化け物!? ……いやまさか人喰い虫なのか?」

 

 それは俺が知っている、遊戯王のモンスターカード人喰い虫にそっくりな姿だった。

 人喰い虫は、昔から遊戯王をやっているヤツなら誰でも一度は使ったことがあるモンスターカードだろう。

 強力なリバース効果を持っていたから、遊戯王初期ころはよく使っていた。

 

 ……これは、ヤバくないか。こんな化け物に襲われたらひとたまりもないぞ。

 

「貴様も魔法使いの手先か」

 

 喋っただと! 

 しかも貴様も魔法使いの手先かだと。

 いきなりこいつは何を言っているんだ。

 訳がわからないぞ!? 

 

「沈黙か。まあ貴様が何であれ殺すだけだ」

 

 そう言って人喰い虫は、左手に付けていたデュエルディスクをかまえた。

 もう一度言う、デュエルディスクをだ。

 これはひょとして、デュエルということか? 

 いや待て冷静に考えろ。……やはりデュエルしろということとしか思えない。

 

「俺はデュエルディスクを持っていない。それ以前にデッキも」

 

「何を訳のわからない事を、持っているでわないか」

 

 そう言って、人喰い虫は俺の左手を見た。

 つられて俺も右手を見ると、俺の右手にはデュエルディスクがついていた。

 そのデュエルディスクにはデッキが装着されていた。

 

「なっ、いつの間に? さっきまで付いてなかったのに」

 

「御託はいい、デュエル!」

 

 そう言って人喰い虫は、デュエルディスクを構えた。

 

「デュ、デュエル」

 

 ヤベ、つられて言っちまった。

 何故、俺はデュエルする事になったんだ? 

 そもそもこのデッキは一体何デッキなんだ? 

 分からないことが多すぎる。

 

「先行は貰った。ドロー」

 

「何! 先行ターンはドロー出来ないはずだぞ!?」

 

「訳の分からないことを言うな。ゴキポンを守備表示(800)で召喚」

 

 人喰い虫がデュエルディスクのモンスターゾーンにモンスターカードを置くと、カードに描かれているゴキポンが人喰い虫の目の前に出てきた。

 

「モ、モンスターが実体化しただと!」

 

 しかも人喰い虫は、ゴキポンを表側守備表示で召喚したのだ。

 そして、ライフポイントが4000だ。

 本当になんなんだこれは、夢でも見てるのか? 

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 人喰い虫がデュエルディスクの魔法、トラップゾーンにカードを置くと、人喰い虫の目の前にカードが裏側のまま出てきた。

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

 今、ドローしたカードと、手札を見て理解した。

 これは多分、俺が以前使用していたD-HEROデッキだ。

 大会に出るための環境デッキを作ってからは、たまに新しく出たDーHEROを入れただけのデッキ。

 

「まさか、このデッキを再び使用することになるとは……」

 

 だがどうもおかしい、カードの効果が俺の知っている効果と違う。

 D-HEROデビルガイは、表側攻撃表示の時に相手モンスターを2ターンの間ゲームから除外する。それが俺が知っている効果だ。だがこっちのデビルガイは守備表示でも効果が発動できるみたいだ。

 なぜ効果が変わっているんだ、この効果は……そうアニメだ! 

 アニメの効果そのものだ。

 

「おいどうした、早くしろ!」

 

「分かってる。手札からD-HEROダイヤモンドガイを攻撃表示(1400)で召喚」

 

 デュエルディスクのモンスターゾーンにダイヤモンドガイのカードを置くと、白い光を放出させてダイヤモンドガイが出現した。

 

「D-HEROダイヤモンドガイの効果発動。デッキの上のカードを一枚確認して、それが通常魔法だったとき、そのカードを墓地に送り次のターンのメインフェイズにその魔法カードの効果を発動できる、他のカードの場合はデッキの一番下に戻す。この効果はたとえ、ダイヤモンドガイが次のターン俺のフィールドに居なくても発動できる」

 

「何、なんという効果だ」

 

「俺が引いたカードは、D-HEROディフェンドガイ。効果は不発だ」

 

 まぁ、こんなもんだよな。

 当たったことなんてほとんどない。

 

「手札からデステニー・ドロー発動。手札のDーHERO ディバインガイを墓地へ送ることで、デッキからカード2枚をドロー」

 

「その後、手札から融合カード、フュージョン・デステニー発動。その効果によってデッキのディアボリックガイとダッシュガイを融合。来い、DーHERO デッドリーガイ!」

 

 ディアボリックガイとダッシュガイが融合のカードに吸い込まれていき、その後デッドリーガイが姿を現した。

 

「デッキから融合だと!?」

 

「デッドリーガイの効果発動。手札のDーHERO デビルガイを捨てることで、デッキからDーHERO ドレッドガイを墓地へ送る」

 

「その後、俺のフィールドに存在するDーHEROの攻撃力は、ターン終了時まで俺の墓地のDーHEROの数×200アップする」

 

「俺の墓地に存在するDーHEROは5体。よってDーHEROの攻撃力は1000ポイントアップする」

 

「攻撃力2400と3000だと!?」

 

 

「まだだ! 手札から精神操作発動。その効果で、ゴキポンのコントロールを貰う」

 

「私のゴキポンが!」

 

「ただし、この効果で奪ったモンスターは攻撃出来ず、リリースすることも出来ない」

 

「リリース? 一体何を言っている?」

 

 リリースを知らないのか? 

 かなりメジャーな遊戯王用語だぞ。

 まぁ、いい。こんなお遊び、とっとと終わらせるか。

 

 

 

「バトル。デッドリーガイでダイレクトアタック!」

 

 デッドリーガイは両手の爪で人喰い虫を切り裂いた。

 

「ぐぅう! ……トラップ発動、ダメージ コンデンサー! その効果により、手札1枚を墓地へ送ることにより、受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚できる」

 

「手札を1枚捨て、現れよ! 我が最強のモンスター、鉄鋼装甲虫!」

 

「こいつの攻撃力は2800! ダイヤモンドガイでは倒すことはできない!」

 

 ダメージ・コンデンサーか。

 もっといいカードを伏せていると思ったが、考えすぎだったみたいだな。

 

「ダイヤモンドガイで鉄鋼装甲虫を攻撃!」

 

「何、攻撃力の劣るモンスターで攻撃をするだと! 血迷ったか! 噛み砕いてしまえ!」

 

「手札のダイナマイトガイの効果発動! モンスターが戦闘を行うダメージ計算時にこのカードを手札から捨てることで戦闘で発生する俺への戦闘ダメージは0になる!」

 

 ダイヤモンドガイは鉄鋼装甲虫に突進していくも、噛み砕かれて破壊されてしまった。

 

「それがどうした! モンスターを無駄死にさせただけだぞ!」

 

「ダイナマイトガイの効果には続きがある! その後お互いは1000の効果ダメージを受ける」

 

「お前の残りのライフは1000。これで終わりだ」

 

 フィールド上で大爆発が起こり、爆発によって互いに吹き飛ばされた。

 

 

「バ、バカな──ー!」

 

 

 デュエルが終わるとデッドリーガイは消滅してしまった。

 

「……いっつう! なんだよこの痛みは……」

 

 ソリッドビジョンの痛みって、こんなにすごいのか? 

 遊びの範疇を超えてないか。

 いや、そもそもこのデュエルがソリッドビジョンかどうかもわからないな。

 デュエルディスクやデッキもいつのまにかあったし、分からないことだらけだ。

 

 

「おい、お前には聞きたいことが山ほど……」

 

 人喰い虫を見ると、全身が黄色い光でおおわれていた。

 

「どうした? 大丈夫か」

 

「何を驚いている、デュエルで負ければ死ぬのは当然だろ」

 

 は……こいつ何を言ってんだ? 

 デュエルなんてただの遊びだろ。

 

「冗談言って誤魔化すつもりか。ここは一体どこ……」

 

 俺が喋っている最中に、人喰い虫は完全に消滅した。

 

「死んだのか?」

 

「どういう……ことだよデュエルの敗北で死ぬって……」

 

「今の消え方まるで、アニメGXの異世界編のデュエルで負けて、消滅する時みたいだったよな」

 

 いやまさかな、アニメGXの世界なんてそんな馬鹿な。

 

 でも、もしそうだとしたら、このデュエルディスクはよく見れば、十代が使っていたデュエルディスクにそっくりだ。

 デュエルも、先行ドローできたことや、表側守備表示でだせたのも、昔の遊戯王のアニメではよくやっていた。

 デビルガイの効果もアニメGXの効果に変わっていたし、リリースも知らなかった。

 何より、デュエルで負ければ消滅する事と、たった今人喰い虫が消えた消え方の事など。

 いろいろな事を合わせて考えると、ここは。

 

「アニメGXの異世界……なんでそんなところに来ちまったんだよ……」




この主人公はカードとの絆とか一切信じてません。
ですので、ダイヤモンドガイの効果は基本外します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 ピケルとの出会い。

基本前回登場したキャラは出します。


 人喰い虫とのデュエルで、俺はこの世界が遊戯王アニメGXの異世界だと推測した。

 確かアニメGXには、12次元の世界があったはずだ。

 人間世界。

 十代達がアカデミアごと飛ばされた太陽が3つある砂漠の世界。

 バードマンとデュエルした世界。

 暗黒界が支配していたり、覇王十代が生まれたり、エクゾディアが封印されていたりした、世界。

 ユベルと十代がデュエルした世界。

 消滅した十代の仲間達がユベルによって、閉じ込められた世界。

 ダークネスの世界。

 カイバーマンがいた世界。

 墓守がいた世界は、太陽が3つあったから砂漠の世界と同じなのか? 

 分かっている世界は全部で8か、つまりわかってない世界は4。

 この世界は、太陽が1つだから太陽が3つある砂漠の世界の可能性はない。

 カイバーマンがいた世界はデュエルで負けても消滅はしなかったから違う。

 可能性があるとしたら、バードマンと十代がデュエルした世界、暗黒界が支配していたり、覇王十代が生まれたり、エクゾディアが封印されていたりした世界、わかっていない4つの世界のどれかだろうな。

 

 

「どうしてアニメGXの世界に来ちまったんだろうな……」

 

 昔の俺なら大喜びだったと思うが、今は……厄介な事になったとしか思えない。

 これはなんだ、今流行りの異世界召喚って奴か? 

 

「特典はこのデュエルディスクとデッキだけか? ……ショボイなー」

 

 どうせならどっかの小説みたいなチート能力をくれよ。

 頭の中で常にナビしてくれる能力がいいな。

 

「……これからどうすればいいんだよ」

 

 当然チート能力など備わっている筈もなく途方にくれていた。

 すると、近くから女の子の悲鳴と木が倒れる音がした。

 

「イヤ──、こないでー」

 

 俺が声のした方を見てみると、小学生くらいの女の子がとても巨大な昆虫に追われていた。

 追っている昆虫は、あれはデビルドーザーだろう。

 そして追われているのは白魔道士ピケルだ。

 

 今、ピケルは日本語で助けを求めていた。

 つまり、言葉が通じるってことだ。

 ここは助けることで恩を売って、この世界のことを聞いてみよう。ら

 

 さて、どうやって助けるか? 正面から戦えば瞬殺だし。

 そういえば万丈目のおじゃまイエローも、デビルドーザーに追われてたことがあったな。

 あのときは、確かヘルカイザーが無駄にパワー ボンドで召喚したサイバーエンドで倒していたな。

 

「よし、俺も同じようにモンスターを召喚して倒してみるか」

 

 デビル・ドーザーより攻撃力が高いモンスターなら倒せる筈。

 このデッキの中で攻撃力が上回っているのは……あのカードだけだな。

 

「来てくれよ。……ドロー……クソ、来ないか」

 

 その後、デッキから何十枚かカードをドローした。

 

「……ふぅ、ようやく来た。来い、D-HEROドグマガイ」

 

 D-HEROドグマガイ、このカードは俺が最も好きなカードだ。

 こいつは、DーHERO1の攻撃力を持つモンスターだ。

 ……このカード、レア度がアルティメットレアで見覚えのある傷があるな。

 これってもしかして、俺がブラックネオスのパックで当てたドグマガイなのか? 

 

「ドグマガイ、あのデビルドーザーを破壊してくれ」

 

 俺はドグマガイが分かるように、デビルドーザーを指で指した。

 命令を受けたドグマガイは一瞬でデビルドーザーの目の前に移動していた。

 

「消えろ、デス クロニクル」

 

 ドグマガイは腕に装備している2つの剣を出して、その2つの剣でデビルドーザーを斬り裂いた。

 デビルドーザーはあっという間に、光になって消滅した。

 

「喋った! えっ、召喚したモンスターも喋るものなのか?」

 

 俺の質問にドグマガイは答えることはなく、無言のままただ佇んでいた。

 混乱していると、いつの間にかピケルが目の前にいた。

 

「あああの、あの」

 

 ピケルはおどおどしながら、何かを言おうとしていた。

 たぶん怯えてるんだろう。

 無理もないか、さっきまで巨大なモンスターに追いかけられてたんだからな。

 

「わ、私ピケルって言います、魔法使いです。あっ、あと助けていただいてありがとうございました」

 

 そう言ってピケルは頭を下げた。

 ……うん。結構可愛いいな。

 三沢が好きなカードなだけはあるな。

 

「気にしなくていい。俺は未来だ、よろしくなピケル」

 

「よろしくお願いしますです、未来さん」

 

 良かった、ちゃんと話し合うことはできるみたいだ。

 

「なぁ、ピケルはこの世界について詳しいか?」

 

「はい? ……一応、少しくらいなら知ってるです」

 

「それなら……少しだけ聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

 

「聞きたいことですか? 答えることが出来る質問でしたら」

 

「そいつは助かる。ならまず、サンダーボルトってデュエルで使えるのかな?」

 

「サンダーボルトですか! 使えません、使ってはいけないカードですよ」

 

「なるほど、この世界にも禁止、制限、準制限カードってあるのか」

 

「ハイ、あるです」

 

「そうか……それなら次は……」

 

 

 俺はそれからピケルに禁止、制限、準制限カードを教えてもらった。

 それを聞いて確信した、この禁止、制限、準制限カードはたしか2008年3月から8月まで適応されていたルールだ。

 でもおかしいことがある、それは本当なら制限のD-HEROディスクガイや、準制限のD-HEROディアボリックガイやサイバードラゴンをピケルが全く知らなかったことだ。

 試しにピケルに3枚のカードを見せてみたけど、全く知らないと言っていた。

 

 俺はさらにピケルにこの世界について聞こうとした。

 

「貴様ら何者だ!!」

 

「怪しい奴らめ! さては、魔法使いの手先だな!」

 

 いきなり二体のモンスターが俺達に話しかけてきた。

 その二体はどちらも同じモンスターで、俺が知っているモンスターカードだった。

 インセクトナイト。このモンスターは、昆虫族ではレベル4のモンスターながら、なかなかいい攻撃力を持っているモンスターだ。

 

「もう一度聞く」

 

「貴様達は魔法使いの手先か?」

 

 こいつら……息ぴったりだな。

 おっと関心してる時じゃないな、ピケルがめちゃくちゃ震えてる。

 

「魔法使いだったらどうするんだ?」

 

「しれたこと」

 

「デュエルで葬ってやる」

 

 そう言って2体はデュエルディスクを構えた。

 ……やっぱりそうなるのかよ。

 

「そうか……それなら……やれドグマガイ!」

 

「了解した」

 

 ドグマガイは一瞬で、インセクトナイトたちの目の前に移動した。

 

「き、貴様、卑怯だぞ!」

 

「それでもデュエリストか!」

 

 ドグマガイの攻撃によって、インセクトナイトたちはあっという間に消滅してしまった。

 

「ふぅ、ドグマガイを召喚したままでよかった。命がけのデュエルなんてそう何度もやりたくねえよ」

 

「喋ったです? カードのモンスターが喋るには、余程マスターに大切にされて、モンスターがマスターのことを信頼してないと喋ることはないんですよ。そのモンスターは未来さんにとって大切なカードなんですね」

 

「そうなのか? このカードがねぇ」

 

 俺はデュエルディスクからドグマガイのカードを手に取り、まじまじと見つめた。

 

 その割にはさっきドローした時には、全然来てくれなかったんだが。

 質問した時には無視だし。嫌われる気がするんだよな。

 

 

「えーと話を戻すけど。ピケルには、まだまだ聞きたい事がたくさんあるんだが……」

 

 俺は言葉を濁した。辺りが暗くなってきたからだ。

 

「いけないです。もう帰らないと!」

 

 ピケルも暗いのに気ずき、慌てだした。

 

「それでお願いしたいんだけど、ピケルが住んでいる町まで案内してくれないかな。実は俺、この辺に詳しくなくてさぁ、迷ってたんだ。だから、頼む」

 

 俺はそう言って、頭を下げた。

 小学生みたいな少女に、頭を下げる日が来るとは、思わなかった。

 だが俺はこの世界に付いてほとんど知らない。

 少しでもこの世界に付いて知ってるなら、それが例え少女でも、なりふり構ってられない。

 それに、村や町に行けば色々な人(カードの精霊)がいるであろうから、その精霊から聞けばいい。

 最悪なのは、この森にいることだ。

 俺は3体のモンスターを消滅させた。よって、敵討ちされるかもしれない。

 それにこの森にいれば、また確実に変なモンスターにデュエルを強要されるかもしれない。

 その点、ピケルの町なら恐らくこの森よりは安全だろう。

 

「はわわ? 頭を上げてください! そのくらいのお願いなら、頭を下げなくてもいいですよ」

 

「……なら、案内してくれるのか?」

 

「はい、案内しますよ。それに、未来さんはわたしを大きい昆虫から助けてくれた恩人なんですよ。私からの恩返しだと思ってください」

 

「助かるよ、ありがとな」

 

「それでは、私が住んでいる町まで案内するです!」

 

 そう言ってピケルは、進行方向を指差し歩き出した。

 

(さて、これから俺はどうなるのかな)

 

 そんなことを考えながら、俺もピケルに続いて歩き出した。




リメイク前ではインセクトナイトとデュエルしていましたが、今作では無しです。
必要ないと感じたデュエルは省いていきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 クランとの出会い。

 移動の最中、俺はピケルにこの世界に付いて、知ってることをいろいろ聞いた。

 ピケルによると、どうやらこの世界にはたくさんの種族の精霊が暮らしているらしい。

 その中でピケルは魔法使いで、魔法使いの町は、何十もあるそうだ。

 しかし最近、魔法使いを滅ぼそうとしている種族がいるらしい。

 それは、昆虫族、獣戦士族、獣族、恐竜族、その4種族だ。

 昆虫族、獣戦士族、獣族、はデュエルで魔法使いを消滅させているらしい。

 恐竜族、デュエルできない昆虫族、獣族、は力で消滅させるそうだ。

 さらにピケルは、魔法使いの国の王女で、王女はもう一人いるらしい。

 まあ、もう1人が誰かはなんとなく想像がつくが。

 

 

「着きました。ここが、私の住んでいる町です!」

 

 そこはまるで、ドラゴンクエストに出てくる町や村のようなところだ。

 そして、家や建物の先には大きなお城が立っていた。

 

「あの城がピケルの住んでる場所か?」

 

「はい、そうですよ」

 

 さすがにお城まで付いていくわけにはいかない。

 どこか適当な宿屋にでも泊まろう。

 まてよ。宿屋といえば、当然金は取るよな。

 

「なあピケル、お金ってこの世界にあるか?」

 

「はい、何を言ってるんですか? 当然じゃないですか」

 

 そうだよな。俺の世界の金ならいくらかは持ってるけど、絶対使えないよなー。

 試しに、ピケルに俺の世界の金を見せたけど、そんなお金は知らないと言われた。

 まずいな、どうしよう。

 

「浮かない顔をしてどうしたんですか?」

 

「実は俺、この町で暮らす金を持ってなくて……」

 

「へっ、そっそれって大変じゃないですか」

 

「まぁ、なんとかなると思うぞ……多分……」

 

「そ、そんな適当な。……そうです。私のお城にきてください。私のお城なら空き部屋もたくさんあるので!」

 

「えっ! ……いやいや、いいよ。そこまでしなくても」

 

「遠慮しなくてもいいです。お城の人たちも、私を助けてくれた人と言えば、喜んで歓迎してくれるです」

 

 ピケル……良い子だな。

 

「迷惑じゃないなら……お願いしたいけど……」

 

「迷惑じゃないです。なので、私に付いて来てください」

 

 そう言って、ピケルは俺の手を引っ張って歩き出した。

 

 

 しばらく歩くと城についた。城の門には、門番が二人いた。

 

「ピケル様、戻られましたか。クラン様がとても心配してました」

 

 もう一人の門番が俺の方を見た。

 

「む。怪しいやつ、何者だ!?」

 

「ち、違うです。その人は私のお客さんです」

 

 ピケルは慌てて門番の言ったことを、否定してくれた。

 

「し、失礼しました! どうぞ、お通りください!」

 

 そう言って門番たちは、通してくれた。

 

「さあ、ついて来てください。未来さん」

 

 そう言ってピケルは歩き出した。

 

「……あ、ああ」

 

 俺は戸惑いながら、ついて行った。

 お城の中は、とても綺麗だった。

 思わずあたりをキョロキョロと、見渡した。

 すると一人の女の子が 、ピケルを見た瞬間、走ってきて、ピケルに抱きついた。

 

「ピケル! 貴方どこ行ってたの! 心配したんだからね!」

 

「お姉ちゃん! ごめんなさい。私、お姉ちゃんにとっても心配かけて、本当にごめんなさい」

 

「いいのよ、ピケルが無事に帰ってきたんだから」

 

 その女の子は、俺が知っているモンスターカード、黒魔道士クランだ。

 しばらく、ピケルとクランは抱きあっていた。

 しかし、クランは俺を見た瞬間ピケルを後ろに隠して俺を思いっきり睨んできた。

 

「あんた誰? なに勝手にお城に入ってきてるの。早く出ていきなさい!」

 

 あっ、これ完全に不審者と思われてる。

 

「お姉ちゃん、大丈夫だよ。この人は、私が連れてきた人だから」

 

「なっ! あ、あんたピケルに何したの? 私の知ってるピケルなら、こんなおっさんみたいな変な奴、城に連れてこないわよ」

 

「だれが、おっさんだ。俺はまだ17歳だぞ」

 

 そう言うと、クランとピケルは驚いた顔をした。

 嘘だろ、クランだけじゃなくピケルまでも驚いてる。

 そんなに老け顔か俺。

 

「この人、未来さんは私を助けてくれた、とっても良い人だよ。だから疑わなくても大丈夫だよ。お姉ちゃん」

 

「本当なのピケル」

 

「うん。本当だよ。お姉ちゃん」

 

 クランは俺の方を向いた。

 

「ピケルが世話になったようね。ひとまずお礼は言うわ。ありがとう」

 

「俺は何もしてない。ドグマガイのお陰だ」

 

「ドグマガイ? 何よそれ?」

 

「未来さんのモンスターカードだよ」

 

「そうなの。……そうだ、名のってなかったわね。私はクラン。ピケルの姉よ。アンタは?」

 

「俺は未来だ。よろしくな」

 

 そう言って、俺はクランに手を出した。

 すると、クランは持っているムチで俺の手を叩いた。

 

「痛」

 

「あんたどう言うつもり。言っておくけどね、もしピケルに変な事したら、ただじゃおかないから覚えておきなさい」

 

 どうやら、クランはシスコンらしいな。まぁ妹がこんなにかわいかったら分からなくも無い。

 

「未来さん大丈夫ですか。お姉ちゃん、なんて事するの!」

 

「ピケル。こんな奴かばわなくていいのよ」

 

「こんなやつって。そんなこと言うお姉ちゃんは、嫌いです」

 

「な、なんですって。……私が嫌いって。嘘でしょピケル!」

 

「ふん。お姉ちゃんなんて知らないもん」

 

 そう言って、ピケルはそっぽを向いた。

 うん、なかなかかわいいな。

 

「そんな。アンタのせいでピケルに嫌われたじゃない。許さないわ。こうなったら、デュエルよ」

 

 えっ、クランは今なんて言った。

 

「はっ? ……お前……頭大丈夫か? なんでデュエルなんだよ!」

 

「兵士たちとね」

 

 俺は思わずその場でずっこけた。

 自分でデュエルしないのかよ。

 

「さあ、兵士たちとデュエルしなさい」

 

 いつの間にか、たくさんの兵士に囲まれていた。

 

「ちょっと待ってくれよ。そもそも、デュエルで負ければ消滅するんだぞ!」

 

「アンタバカね。デュエルディスクでやるんじゃないわよ。こっちに来なさい」

 

 そう言って、クランは歩き出した。

 俺は兵士に囲まれながら、クランについて行った。

 

「未来さん、ごめんなさいです。お姉ちゃんが迷惑掛けちゃって」

 

 ピケルは俺に謝ってきた。いい子だなぁ。

 こんなかわいくて、いい性格の妹がいるなら、クランの気持ちも少しわかるかもしれない。

 

「いや、ピケルが謝ることじゃないだろ」

 

「着いたわ。この部屋よ」

 

 中に入ると、そこには、たくさんのテーブルと椅子があり、さらにテーブルの上には、遊戯王のデュエルフィールドが広げられていた。

 

「ここは、兵士同士でデュエルして、デュエルの腕をあげる場所よ。アンタはここで、兵士達とデュエルしてもらうわ。兵士達に負けたら、すぐにこの城から出て行きなさい」

 

「お姉ちゃん。未来さんは、今日、宿屋に泊まるお金が無くって困ってたんだよ。私は助けて貰った恩返しをしようと思って、お城に連れてきたんだよ」

 

「だとしたらいいこと思い付いたわ。もし10人の兵士に勝ったらこの城に泊まる事が出来るってことでどう。アンタだって、何も無しに泊まろうだなんて思って無いでしょ」

 

「確かにそうだな。分かった、10人とデュエルして負けたらこの城から出て行く」

 

 俺がそう言うとクランはとても嫌な笑みを浮かべていた。

 おそらく、俺はすぐに負けると思っているんだろう。

 

「そんな。10人に勝つなんて無理ですよ」

 

「心配するな。何とかなるだろ……多分」

 

「そんな適当な」

 

「大口叩くのも、今の内よ。そこのアンタ、行きなさい」

 

 クランが命令すると、一人の兵士が真ん中のテーブルに座った。

 俺はデュエルディスクからデッキを取り出して、同じテーブルに座った。

 あまり、デュエルはしたくないんだが……仕方ないな。

 

「準備OKだ」

 

「なら、デュエルだ」

 

「デュエル」

 

 

 

 

「これで終わりだ。ダイヤモンドガイでダイレクトアタック!」

 

 ダイヤモンドガイのダイレクトアタックによって、相手のライフはゼロになった。

 

「……くそ、完敗だ!」

 

「凄いです。完勝ですね」

 

 初手事故って危なかったけどな。

 相手が弱いモンスターしか出さなくって助かった。

 

「何してるのよ。次、アンタ行きなさい」

 

 

 

 

 

「ドリルガイでダイレクトアタック!」

 

「まっ、負けた」

 

 

「ドローガイでダイレクトアタック」

 

「つ、強い!」

 

 

「ダッシュガイでダイレクトアタック」

 

「ま、参った!」

 

 

「ダブルガイで連続ダイレクトアタック」

 

「む、無念だ」

 

 

「す、すごいです! あっという間に5人に勝っちゃったです!」

 

 

「1人1人相手にしてると、面倒くさいから、2対1で良いぞ」

 

 この程度のカードしか使わないなら余裕そうだし。

 ちゃっちゃと終わらせたい。

 

「ああそう。ならそうさせてもらうわよ。2人でやりなさい!」

 

 

 

 

 

 

「トリニティでそれぞれのプレイヤーのモンスターに攻撃」

 

「2人がかりで勝てないなんて……強すぎる」

 

「しかもワンターンキルだと」

 

「す、凄いです! 2対1なのに、あっさりと勝っちゃったです!」

 

「あと3人だな、クラン」

 

 あーあ、つまらない。

 デッキパワーが違いすぎるな。今までのデュエルで相手が出したモンスターの最高攻撃力が1850のギルティアって。

 

「 に、2対1なのよ! きっとマグレよ。次はきっと勝てるわよ!」

 

 

 

 

 

「ドグマガイとドレッドガイでダイレクトアタック」

 

「ま、まったく歯が立たなかった。強すぎる!」

 

「どうすれば勝てるというのだ!?」

 

「す、凄いです。まさかこんなに強いなんて……」

 

「言っただろ、なんとかなるって」

 

「さぁ、次で最後だな! さあどいつが相手してくれるのかな」

 

 そう言うとクランは何も言わず、兵士達は静かに後ろに下がった。

 

「こいつに勝てるデュエリストなんて……この城には」

 

 クランは絶望した顔をしている。……ちょっとかわいいな。

 

「私が相手をしましょうか、クラン様」

 

 一人の男がおずおずと言った。

 そいつは俺が知ってるモンスターカード、ブラック・エクスキューショナーだった。

 このカードは確か、ストラクチャーデッキ魔法使いの裁きで収録された、魔法使い族のモンスター。

 

「そうだ! そういえば師匠が居たわね。師匠ならきっとあいつにも勝てるわ!」

 

 どうやらクランはブラック・エクスキューショナーのことを、師匠と呼んでいるようだ。

 こいつはなかなか強そうだな。今までの兵士達よりは強そうだ。

 

「では、私とデュエルしようか。だがどうやらキミは、このテーブルのデュエルでは楽しめないようだ。なのでこっちのデュエルディスクでデュエルしようじゃないか」

 

「ちょ、ちょっと待てよ。デュエルディスクでデュエルして、負けた奴は消滅するんだろ。だからこのテーブルのデュエルフィールドでデュエルしてたんだろ。俺、命をかけてまでデュエルはしたくないぞ」

 

「安心してくれ。私が魔法をかければ、命がけのデュエルをしなくてもデュエルディスクでデュエルが出来る」

 

「そうなのか。だったら、断る理由はないが」

 

 俺がそう言うとブラック・エクスキューショナーは、俺と自分に魔法を掛けた。

 おそらくこれの魔法が、命がけのデュエルを阻止する魔法なんだろうな。

 

「これで大丈夫だ。ではそろそろ、デュエルといこうかな」

 

 そう言って、エクスキューショナーはデュエルディスクを構えた。

 

「分かった。デュエルだ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 VS ブラック・エクスキューショナー

「師匠! そんな奴、さっさと負かしちゃてよ!」

 

「先行は俺が貰う。ドロー」

 

「D-HEROダイヤモンドガイを表側守備表示(1600)で召喚! その後、ダイヤモンドガイの効果発動。デッキの上を1枚めくり通常魔法だった時、次の俺のターンのメインフェイズにそのカードの効果を発動できる。俺が引いたカードはフィールド魔法、幽獄の時計塔。デッキの下に戻す」

 

「これで12回連続でハズレよ。あんた、そうとう運がないわね」

 

「当たる時は当たるし、当たらない時は全く当たらない。そんなもんだろ」

 

「カードを一枚伏せる、これでターンエンド」

 

 

 

「私のターン。カード、ドロー」

 

「私は魔法カード、古のルール発動。このカードの効果により、私は手札からレベル5以上の通常モンスターブラックマジシャンを特殊召喚する」

 

 ブラックマジシャンを特殊召喚ということは、いきなりあのカードを召喚するのか。

 

「ブラックマジシャンを生贄にブラック・エクスキューショナーを攻撃表示(2500)で特殊召喚する」

 

 やはり出してきたか。

 ストラクチャーデッキ 魔導師の力の表紙を飾ったモンスター。

 

 

「出たわ。師匠の切り札。もう師匠の勝ちは、決まったようなものね」

 

 

「そして手札から通常魔法、マジックブラストを発動。このカードの効果は、自分フィールドの魔法使い族の数×200ポイントのダメージを与える。私のフィールドには魔法使い族は1体。よってキミに200ポイントのダメージを与える」

 

「さらにブラック・エクスキューショナーの効果発動。自分または相手が通常魔法を発動した時、1000ポイントのダメージを与える。さぁ、受けてもらおう。エクスキューショニックブラスト!」

 

 エクスキューショナーはマジックブラストを打ってきた後に、それよりも一回り大きな魔力の塊を放ってきた。

 

「うわぁー! (4000→2800)……なっ、なんでダメージまで現実のダメージに……」

 

「ん? 当たり前だろう? 何を驚いているんだい?」

 

 この世界のデュエルディスクを使ったデュエルはどんなことをしても、ダメージは現実のダメージになるのかよ。

 先に教えて欲しかった、そういう大事なことは。

 

「行くぞ、バトルだ! ブラック・エクスキューショナーでダイヤモンドガイを攻撃! デス・ブラスター」

 

 ブラック・エクスキューショナーは杖から魔法の塊を、ダイヤモンドガイに放ってきた。

 ダイヤモンドガイはなすすべもなく破壊された。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 

「いきなり師匠のペースね。これはもう師匠の勝ちは決まったようなものね」

 

「お姉ちゃん。まだデュエルは始まったばかりだよ」

 

「……ピケル。もっとデュエルの勉強をしなさい! マジックブラストにはドローフェイズにドローしない代わりに、墓地のマジックブラストを手札に加えることができる効果があるのよ」

 

「えっ……そ、そうなのお姉ちゃん!」

 

「ええ。だから師匠がドローしない代わり、マジックブラストを手札に加えて発動すれば3ターンで勝てるのよ」

 

 

 

 未来のフィールド

 

 モンスター

 無し

 伏せカード 1枚

 手札 4枚

 ライフ 2800

 

 

 相手フィールド

 

 モンスター

 ブラック・エクスキューショナー 攻撃表示(2500)

 伏せカード 1枚

 手札 1枚

 ライフ 4000

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

「モンスターをセット。その後カードを1枚伏せる。これでターンエンド」

 

 

 

 

「私のターン、ドロー。マジックビーストケルベロスを攻撃表示(1400)で召喚させて貰う」

 

 マジックビーストケルベロス。

 確か魔法カードが発動するたびに、魔力カウンターを蓄える効果を持つモンスター。

 

「バトル。エクスキューショナーで伏せられているモンスターを攻撃! デス・ブラスター」

 

「セットされていたモンスターは、D-HEROディフェンドガイ(2700)だ」

 

「エクスキューショナーの攻撃力とディフェンドガイの守備力の差、200ポイントのダメージを受けて貰う。

 

「くぅ! (4000→3800)レベル4で守備力2700だと!?」

 

「だがディフェンドガイには相手のドローフェイズに表側表示で場にいる時、相手にカードを1枚ドローするのを許してしまう効果をもっている」

 

「なるほど、ならその守備力も納得だよ。これでターンエンド」

 

 

 

 未来のフィールド

 

 モンスター

 D-HEROディフェンドガイ(表側守備表示)2700

 伏せカード 2枚

 手札 3枚

 ライフ 2800

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 ブラック・エクスキューショナー(攻撃表示)2500

 マジックビーストケルベロス(攻撃表示)1400

 伏せカード 1枚

 手札から 1枚

 ライフ3800

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

「伏せていた融合を発動。手札のディアボリックガイとドレッドガイを融合。V・HERO アドレイションを融合召喚する」

 

 

 

「攻撃力2800。なかなか強力なモンスターね」

 

「これが融合。始めて見たです」

 

 

「だが通常魔法を発動したことで君には1000ポイントのダメージを受けてもらう。エクスキューショニックブラスト「

 

「ぐぅ! (2800→1800) ディフェンドガイを生贄にダッシュガイを攻撃表示(2100)で召喚する」

 

「その後、アドレイションの効果発動。俺の場に存在するアドレイション以外のHEROモンスター1体の攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了までダウンさせる」

 

「ダッシュガイとエクスキューショナーを選択する。やれ!」

 

 エクスキューショナーの周りを闇のオーラが覆い、攻守が2100ポイントダウンした。

 

「バトル。アドレイションでエクスキューショナーを攻撃!」

 

「それを待っていた! トラップカード、魔法の筒を発動!」

 

 エクスキューショナーの前に2つの筒が出現した。

 

「その効果により。アドレイションの攻撃を無効にし、君にアドレイションの攻撃力分のダメージを受けて貰う」

 

 アドレイションの攻撃は片方の筒に吸い込まれ、その後もう片方の筒から発射された。

 

 

「やったわ! これで、師匠の勝ちね!」

 

「そんな……」

 

 

「伏せていた速攻魔法、ハーフ・シャットを発動! その効果で、アドレイションの攻撃力を半分(1400)にする。ぐぅう! (1800→400)」

 

「攻撃力を減らすことでダメージを減らしたか……だが君が魔法カードを発動したことによりケルベロスの攻撃力は500ポイントアップする」

 

「お返しだ。ダッシュガイでエクスキューショナーを攻撃!」

 

 ダッシュガイは足についているローラーで、エクスキューショナーを真っ二つに切り裂いた。

 

「むぅ。(3800→2100)」

 

「バトルフェイズ終了時に、攻撃を行ったダッシュガイは守備表示(1000)になる」

 

「これでターン終了。アドレイションの攻撃力は元に戻る」

 

 

 未来のフィールド

 モンスター

 D-HEROダッシュガイ(表側守備表示)1000

 V・HERO アドレイション (攻撃表示) 2800

 手札 1枚

 ライフ 400

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 マジックビーストケルベロス (攻撃表示)1900

 手札 1枚

 ライフ2100

 

 

「私のターン、ドロー」

 

「手札から通常魔法、トゥーンのもくじを発動。その効果により、デッキからトゥーンのもくじを手札に加えさせて貰うよ」

 

「この瞬間、マジックビーストケルベロスの効果発動。魔法カードが発動したとき、ケルベロスに魔法カウンターが1つたまり、攻撃力が500ポイントアップする。(1900→2400)」

 

 あぁ、これは……俺の負けだな。

 

「まだだ。私はさらにトゥーンのもくじを発動し、トゥーン・ヂェミナイエルフを手札に加える」

 

「魔法カードの発動により、ケルベロスの攻撃力は500ポイントアップする。(2400→2900)」

 

 何? どうして、トゥーンのもくじを手札に加えなかったんだ? 

 デッキに入ってなかったのか? 

 

「ケルベロスでアドレイションを攻撃! マジカル・ファング」

 

 アドレイションはケルベロスに噛み砕かれて消滅した。

 

「くっ! (400→300)」

 

「攻撃を行ったことによりケルベロスの攻撃力は元の数値に戻る」

 

「トゥーン・ヂェミナイエルフを召喚し、ターン終了」

 

 

 未来のフィールド

 モンスター

 D-HEROダッシュガイ(表側守備表示)1000

 手札 1枚

 ライフ 300

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 マジックビーストケルベロス (攻撃表示)1400

 トゥーン・ヂェミナイエルフ (攻撃表示) 1900

 手札1枚

 ライフ2100

 

 

 

 トゥーンのもくじを手札に加えて発動してれば勝ちだったのに、どうしてやらなかったんだ? 

 舐めプか。

 さっさと俺はこんなお遊び終わらせたいのになぁ。

 

「ドロー」

 

 正直、勝っても負けてもいいが……勝てるなら勝ちに行くか。

 

「墓地に存在するディアボリックガイの効果発動。このカードを除外することによって、デッキからディアボリックガイを特殊召喚する 」

 

「さらに、ディバインガイを召喚」

 

「その後手札から死者蘇生を発動。墓地に存在するドレッドガイを特殊召喚する」

 

「魔法カードの発動によってマジックビーストケルベロスの効果発動。攻撃力がアップする。(1400→1900)」

 

「ドレッドガイの攻守は俺のフィールドに存在するD-HEROの元々の攻撃力を合計した数値になる」

 

「俺の場には800のディアボリックガイ。1600のディバインガイ。2100のダッシュガイが存在する」

 

「よってドレッドガイの攻撃力は4500だ」

 

 

 

「4500!? それって究極竜と同じ攻撃力じゃない!」

 

 

 

「終わりだ! ドレッドガイでケルベロスを攻撃!」

 

 ドレッドガイは強烈な張り手でケルベロスを一撃で粉砕した。

 

「ぐわぁぁー!」(2100→0)

 

 

「未来さんの勝利です!」

 

「そんな……師匠が負けた」

 

 

 

「は、はははー! ……見事なデュエルだったよ」

 

「まさか攻撃力4500のモンスターを出してくるとは思わなかった。強いなキミは」

 

「そうか?」

 

 別に大したことはないと思うんだが。

 攻撃力より強い効果を持ったカードの方がいいだろ。

 

「なぁ、お前……トゥーンのもくじで手札に加えたのがトゥーンのもくじだったらマジックビーストケルベロスの攻撃力を500ポイントアップさせて勝てていたんじゃないか」

 

「さてなんのことかな。私のデッキには2枚しかなかっただけだ」

 

「まぁ、勝てたし別にいいんだけど。あんたは悔しくないのか」

 

「私はクラン様に対戦をすると言っただけで、勝つと約束した覚えはない」

 

「モヤモヤするかもしれないが、君の疑問はあのお2方には話さないでくれると嬉しい」

 

「分かった」

 

「恩にきる。そう言えば、まだ名乗っていなかったな。私の名はブラック・エクスキューショナー。そうだな……ショナーとでも呼んでくれ、未来くん」

 

「あぁよろしくな、ショナー」

 

 俺たちは互いに手を出して握手をした。

 

「クラン様。未来くんはしっかりと10人に勝ちました」

 

「分かてるわよ! いいわよ、この城に泊まるのを許すわ! でもピケルや私に変な事したら、すぐに城から叩き出すから!」

 

「未来さんはすごいですね、先生に勝つなんて」

 

「まぁ確かに……やるじゃない」

 

 舐めプで勝たせてもらっただけだけどな。

 

「……そういえば、ショナーはピケルやクランにとってなんなんだ?」

 

「先生ですか? 先生は私たちに、魔法とデュエルを教えてくれる先生です」

 

「それだけじゃないわよ、師匠はこの城の中で一番強いデュエリストよ」

 

「へー、そうなのか」

 

 この話し方からして、2人はショナーのこと信頼してるみたいだな。

 

「未来くんのデュエルの腕は相当だね。キミはどうやってデュエルの腕を上げたんだい?」

 

「どうやってか。すごいデュエルをしまくったからかな」

 

 ガキの頃は公園や家で、学生の時はショップでフリーやったり大会に出たりデュエル三昧だった。

 あの頃は楽しかったな。

 

「そうだったのか。その年で、大変だっただろうな」

 

 あれ、なんか勘違いされてないか? まぁ良いか別に。

 今はショナーにこの世界のことを聞こう。ピケルよりも知ってそうだからな。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 新たな出会い。

 ショナーとデュエルした後、ショナーに、この世界のことを聞いてみた。

 この世界についてはピケルと同じようなことしか分からなかったが、どうやらこの世界とは別に11個の世界が別の次元にあるらしい。

 この世界を合わせれば12個の次元。やはりここはGXの世界なのか? 

 

「未来くん。キミはこれからどうするんだい?」

 

「分からない。何故、そんな事を聞くんだ?」

 

「いや実は、キミさえ良ければこの城の兵士達にデュエルを教えて欲しいんだ」

 

「は……どうゆうことだ?」

 

「実は。この城の兵士達は、はっきり言ってデュエルが弱い。私が教えたいのだが、多忙でね」

 

「そこで、デュエリストとして実力のあるキミに頼もうと思ってたのだが。どうだい、引き受けてくれないかい?」

 

「俺がデュエルを教えるねぇ」

 

 俺にデュエルを教える資格があるのか。

 長い間まともにデュエルをやってこなかった俺に。

 実力があると言っても、所詮デッキのパワーが強いだけだ。

 まぁ、この時代の遊戯王ならそこまで複雑じゃないし、やれるとは思うが。

 ここで無償で住まわせてもらうんだし、断れないか。

 

「分かった。引き受ける」

 

「では、頼んだよ」

 

 こうして迷いながらも、この城でデュエルを教える事になった。

 

 

 それからしばらくの間、ひたすら兵士達にデュエルの基礎を教えた。

 そしてある日、ショナーから頼まれてこの日はピケルとクランにデュエル指導をする事になった。

 

「未来さん、こんにちわです。今日は1日よろしくお願いします」

 

「ああ。よろしくな、ピケル」

 

「まったく、こんなヤツを雇うなんて、師匠も何考えてるのかしら。言っとくけどもし少しでも変な事したら、すぐに牢屋に入ることになるから、覚えておきなさい」

 

「そんなことしないから安心しろよ。ただ、前者には同意するよ」

 

 なんでこいつはこんなに攻撃的なんだ? 

 ……あぁ、シスコンだからか。

 

「それじゃあ、始めるぞ。なぁピケル、クラン、デュエルで大切な事は何だと思う」

 

「えっえーと…… つ、強いカードを使うことですかね?」

 

「そうだとにかく強いカードでデッキ構築をする事だ。負けたら終わりだからな」

 

「身も蓋も無い事を言うわね」

 

「あれ、でも先生はデュエルで一番大切な事は、デッキのカードを信じる事と最後まで諦めずに戦うことって言っていたです」

 

「後者はともかく前者は完全に迷信だな。頼れるのは自分だけだ」

 

「あんた、いくら運がないからって流石にそれは言いすぎじゃない」

 

「そうです。信じていればデッキは必ず答えてくれるです!」

 

「甘ちゃんの戯言だな。じゃあ相手がショナーでもデッキを信じてればなんとかなるのか?」

 

「無理です」

 

「そうだろ、だから重要なのはデッキが強い事だ。そしてもう一つは知識だな」

 

「複雑なルールやカードの効果やコンボ。これらは知っていればいるだけ武器になる」

 

 

 俺は2人がどれくらいデュエルの知識があるのか聞いてみたところ、クランはそこそこで、ピケルは全然だった。

 その後、2人のデッキを見せて貰ったところ、ピケルのデッキは回復カードがメインで、クランのデッキはバーンカードがメインのデッキだった。

 そして2人とも、魔法使い族のモンスターしか入ってなかった。

 

「おいおい、レアカードや強いカードが全く入ってないじゃん。こんなデッキじゃあまず勝てないぞ」

 

「仕方ないじゃない。レアなカードや強いカードは高いんだから」

 

「そうですよ。私達が貰ってるお小遣いでは、まったく買うことが出来ない値段なんですよ」

 

「そうなのか。カードが無い以上、デッキの強化は無理だな」

 

 どうすることもできないので2人の知識を増やす為にまずスペルスピードについて説明しようかと考えていた時だった。

 俺のデッキから何枚かのカードが飛び出してきた。

 確認してみるとサイレントマジシャン、マジシャンズサークル。氷の女王、ブリザードプリンセス、マジシャンズクロスなど魔法使い関連のカードだった。

 

「すごいです。全部、ウルトラレアのカードてす」

 

「見せつけてくれるじゃない。あんた魔法使い関連のカードもデッキに入れてたの」

 

「デッキに入れたつもりはないな」

 

 そもそもこのデッキのことはよく分かっていない。

 デッキを確認する為に入っているカードが違う。

 まぁ、DーHERO関連のカードは確実に入っているんだが。

 

 このカードはいずれも俺が持っていたカードだと思う。

 今このタイミングで出てきた理由は……まさか、ピケルとクランに使われたいのか。

 

「どうやらこのカードはピケルとクランに使って欲しいらしい。やるよ」

 

「そんな! こっ、これって、ウルトラレアのカードじゃないですか! しかも何10枚も!」

 

「あっアンタ……一体どうゆうつもり!」

 

「どういうつもりもない。そいつらがお前たちを選んだ。それだけのことだ」

 

「そんな! ウルトラレアはとても高くて貴重なカードなんですよ、貰え無いですよ!」

 

「気にするな。どうせ俺には必要ないカードだから」

 

「本当に、本当に貰ってもいいの?」

 

「ああ、大切に使ってくれ」

 

 2人は恐る恐るといった感じて、俺が差し出したカードを受け取った。

 

「あ、ありがとうございます、未来さん」

 

「えっと、その……ありがと……ね」

 

 その後はやったカードの使い方やコンボを細かく教えた。

 

「今日は本当にありがとうございました。未来さんから頂いたカードは、大切に使わせて貰うです」

 

「気にするな、この城に住まわせてもらってる身だし」

 

「まぁ今日は結構ためになったから、感謝するわ。また今度機会があったらデュエルの事いろいろ教えなさいよ」

 

 ああ分かったよ。それじゃ、またな」

 

 

 次の日

 

「なぁ未来くん。たまにでいいから、昨日のようにピケル様とクラン様にデュエルを教えてくれないかな? 2人ともキミにもっと教わりたいと言ってるんだ」

 

「マジで。まぁ、2人が望んでいるならいいが」

 

「そう言ってくれると有難いよ」

 

 

 

 それからしばらくして俺は今、ピケルとクランの2人に誘われて喫茶店のような場所にいる。

 なんでも友達を紹介したいらしい。

 

「あっ、見てお姉ちゃん、来たみたいだよ」

 

「こっちよ!」

 

「ピケル様、クラン様、こんにちは」

 

「やっほー、2人とも久しぶりー」

 

 俺は来た2人を見てとても驚いた。何故なら来た2人が、召喚師ライズベルトと召喚師セームベルだったからだ。

 召喚師ライズベルトはアークファイブ時代に登場したカードでペンデュラムモンスターだ。この世界にいるのは明らかにおかしい。

 召喚師セームベルもゼアルの時代に登場したカードで、やっぱりこの世界に入るのはおかしい。

 ……まぁ、この世界が確実にGXの世界だという確証はないんだが。

 

「こんにちはです、ベルちゃん、ベルトさん」

 

「久しぶりね」

 

「はい、そうですね。……ところで、そちらの人はどなたですか?」

 

「この人は私とお姉ちゃんに、デュエルを教えてくれてている未来さんです。デュエルがとっても強いんです」

 

「あんたデュエルが好きでしょ。冷めた奴だけどデュエルの知識はとんでもないのよ。きっといい話が聞けるわよ」

 

「そうでしたか。……未来さん、どうも始めまして。僕はライズベルトです。こっちは僕の妹のセームベルです。セームベル共々、よろしくお願いします」

 

「あ……ああ……ヨロシク」

 

「よろしくねー、おじさん」

 

 なっ……おじ……さん……だと。俺まだ二十歳そこそこなんだぞ。

 

「こ、こら! 未来さんに失礼だよ!」

 

「き、気にしてないぞ全然……気にしてない……」

 

「……思いっきり気にしてるわね」

 

「思いっきり気にしてるね、お姉ちゃん」

 

 そ、そんな事は……有るな。

 

「ほ、本当にごめんなさい……未来さん」

 

「いや、気にしてないから。……そんなことよりもだ。お前はクランがいってた通りにデュエルが好きなのか」

 

「はい! 大好きです! デュエルは奥が深くて素晴らしいですから!」

 

「そうか」

 

 こいつはあれだ昔の俺みたいだな。

 無邪気にデュエルを楽しんでいた頃のな。

 

「もう! お兄ちゃんは寝ても覚めてももデュエルのことばっかり! あんなのの何が楽しいの!」

 

「すごく楽しいよ。いいかい、数え切れないくらい大量のカードの中からカードを選んで、様々な戦略を考えながら自分だけのデッキを作る。それだけでも面白いよ!」

 

 自分だけのデッキか。

 環境ガチ勢には耳が痛い言葉だな。

 

「そうだ、未来さん。親睦の意味も踏まえて。是非僕とデュエルをして頂けないでしょうか」

 

「デュエル。まぁ、別にいいが」

 

「では早速始めましょう!」

 

「えーなんでそうなるの!」

 

「分かりきってたことでしょ」

 

「そうです。ベルトさんはとにかくデュエルが好きですから」

 

 

 

 

 

「未来さん……僕の負けです。ありがとうございました」

 

 結果は俺の勝ちだった。

 この異世界で会ったデュエリストの中ではかなりの実力だったとおもう。

 まぁ、どんぐりの背比べかもしれないけど。

 

「なぁ儀式ってのはどうしても手札消費が激しいから、あんな序盤で使うべきじゃなかったと思う」

 

「た、確かにそうですね」

 

「まずは相手の出方を伺ってここぞって場面で使うのがいい」

 

「ええ、未来さんの言う通りですね。……僕もまだまだですね」

 

「いや、結構強かったぞ。実際、序盤で怒涛の展開をするのも間違ってはいない。それで勝利することもあるからな」

 

「今回お前に足りなかったのは強いカードだ。マジシャン・オブ・ブラックカオスとサイバネティック・マジシャンの2枚だけじゃあ足りなかった」

 

「その通りですね。ですが、僕はその2枚並みに強いカードはもう持ってはいません」

 

「そうか。それならお前にこのカードをやるよ」

 

 そう言って俺はライズベルトに、デッキから出てきた伝説の爆炎使い、灼熱の試練、高等儀式術などのカードを渡した。

 

「こ、高等儀式術! ……こ、これ……途轍もなく儀式に使えるカードですよ! い、いいんですか!?」

 

「ああ、気にすんな。このカードはお前使われたいらしいからな」

 

「あ……ありがとうございます、未来さん!! ……僕……もっと貴方から、色々な事を学びたいです!」

 

「俺から。まぁ、いいけど」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 また1人……デュエルを教える事になったか。

 少し前までデュエルを止めようか悩んでいたのに、こんなことになるとは。

 俺とデュエルはきっても切り離せないものなのか? 

 

 

 

「お兄ちゃん……楽しそう……私と話してる時よりも……」

 

「べ、ベルちゃん。……そんな怖い顔で未来さんを睨んじゃだめだよー」

 

「そーよセームベル、ピケルの言う通りよ……嫉妬は見苦しいわよ」

 

「お、お姉ちゃんは人の事は言えないと思うよ……」

 

 

 

 

「未来かぁ~。……あははは~、お兄さんを監視してたらおもしろいものが見れたな~」

 

 

 

 

 

 それから兵士達や、ピケル、クラン、ライズベルトたちにデュエルを教え続けた。

 最初の頃はデュエルを教えるのは、気が進まなかったが。

 教えている時には昔の遊戯王をしていた楽しい頃を思い出せて悪くはなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 VS デスサイズキラー

 俺は今、ピケルとクランそしてセームベルとライズベルトと一緒に喫茶店のような店に居た。

 

「未来さん。最近はどんな事を、兵士達に教えているんですか?」

 

「最近は戦士族のサポートカードについてだな。戦士族は増援とか連合軍のようなサポートカードが多い」

 

「城にいる奴のほとんどが戦士族だからそういうサポートカードを使いこなすのが重要だと思ってな」

 

「なるほど、勉強になります。では次はこのハリケーンの使い道や相性のいいカードを教えて」

 

「も──、お兄ちゃん。おじさんとばっかり、難しい話しをしないでよ!」

 

 セームベルは兄の事が大好きで、よく俺とライズベルトが2人で話してるのを邪魔してくる。

 デュエルには全然興味がないらしく、あと俺のことをおじさんと呼ぶ。

 

「セームベル、僕は今、とっても大事な事を未来さんに聞いてるんだよ、邪魔しないで欲しいな」

 

「お兄ちゃん、セームベルの事、嫌いなの」

 

 セームベルは兄との会話で困った時は、いつもこのセリフを言うんだ。

 ライズベルトはかなりのシスコンだから、効果抜群なんだ。

 

「そ、そんなわけ無いじゃないか!」

 

「だったら私と、お話ししようよー」

 

「いやでも。僕は未来さんに聞きたい事が……」

 

「お兄ちゃん……」

 

 セームベルは涙目で、ライズベルトの事を見つめている。

 

「ライズベルト、デュエルの話しは一旦終わりにしよう。疲れた」

 

「えっ、分かりました」

 

「ベルト。貴方本当に、セームベルには甘いわね」

 

「まぁまぁお姉ちゃん。ベルちゃんはまだ幼い子だから優しくしてるんだよ」

 

「違うわよ、シスコンなだけよ」

 

「うぅ、クラン様には言われたくないです」

 

 

 

 俺は4人の会話を聞きながらうたた寝をしていた。

 すると、ふと町が騒がしい事に気がついた。

 

「何だ? 何かあったのか?」

 

「未来さん、どうかしたんですか?」

 

「いや、なんだか外が騒がしい気がするんだが」

 

「本当ですね」

 

「うーん。町で何かあったのかな?」

 

「そう考えるのが妥当ね」

 

「ちょっと外に出てみるぞ」

 

 そう言って立ち上がった瞬間突然、兵士2人が店の入り口から入ってきた。

 

「皆さん大変です。この町に昆虫の大軍が攻めてきました!」

 

「それに加えて恐竜、獣、獣戦士もそれぞれ攻めてきました。皆さん速やかにお城に、避難してください!」

 

 2人の兵士がそう言った瞬間、店の中の人達はパニックになった。

 皆、我先にと入り口に行くもんだから、入り口は塞がってなかなか出られ無くなってしまった。

 

「穏やかじゃないな」

 

「どうするの。これだと、店から出れないわよ!」

 

「あわわわわ」

 

「お、お兄ちゃん。怖いよ」

 

「セームベル。おお、落ち着いて」

 

 4人とも、とても焦って混乱している。

 

「まぁ、一旦落ち着け。こういった時、焦って行動するのは一番危険だ」

 

「そうですね、一旦落ち着きましょう」

 

「すー……はー。すー……はー」

 

 4人は深呼吸をするなどして落ち着きを取り戻した。

 

「でも本当に、これからどうする? 出入り口はまだ塞がってるわよ」

 

「その内混乱は収まって外に出られる。今は出入り口が開くのを待とう」

 

 そう言って、俺は椅子に座った。4人もとりあえず椅子に座った。

 

「この町は、どうなっちゃうんでしょうか?」

 

「数では圧倒的に、向こうが勝ってると思います……だから……」

 

「だからこの町は滅ぼされる、そう言いたいのライズベルト。ふざけんじゃないわよ、そんな事認められるわけないじゃない!」

 

「でも、この町を攻めて来てるのは4種族ですよ。現実的に考えて、僕達が勝てる可能性は限りなくゼロに近いですよ」

 

「先生も今はお城をあけていて居ないです」

 

 ライズベルトとピケルの言葉にクランは黙ってしまった。

 

「出入り口が空いたみたいだ。とにかく今はこの店を出て城に避難するぞ」

 

「そうですね。今は、早くお城に避難しましょう」

 

 俺達は急いで店を出た。

 外に出てみると町の至る所から煙が出ていて、時々物が壊れる音や、人の悲鳴が聞こえた。

 

「酷いわね」

 

 4人は町の惨状に呆然としている。

 

「おい呆然としてる場合じゃない、行くぞ!」

 

 俺の声で4人はハッとした表情になった。

 俺達は城を目指して走り出した。

 

 

 

 

「おい止まれ!!」

 

 しばらく進むと目の前を昆虫達が塞いでいた。

 

「ヤバい、引き返すぞ」

 

「おっとそれは無理だぜ」

 

 何時の間にか、後ろにも昆虫達がいた。

 

「ヤバイ、挟まれたな」

 

「未来さん! 昆虫が僕達の周りに、どんどんと集まってきてます」

 

 目の前はベーシックインセクト、蜘蛛男。後ろにはヘラクレスビートル、クワガタ アルファ、空の昆虫兵が居る。

 そして全ての昆虫達はデュエルディスクを付けている。

 

「そそんな……」

 

「ピケル……」

 

「お兄ちゃん……恐いよ」

 

「くっ……」

 

「さあ、死んで貰おうか」

 

 そう言って、昆虫達は一斉にデュエルディスクを構えた。

 

「デュエルだ!!」

 

 こんな大量のモンスターとデュエルして相手になるはずが無い。

 幸いなことに攻撃力が高いモンスターはいない。

 デッキの強力なモンスターで一網打尽にしたいが一発で引ける気がしない。

 ここは……エクストラのモンスターだな。

 

「よし。来い! ドミネイトガイ。デッドリーガイ。トリニティ」

 

「何! 貴様デュエルを「こいつらをやれ!」ぐわぁぁー」

 

「卑怯だぞ。正々堂々と戦わないなんて!」

 

「それでもデュエリストか!!」

 

 馬鹿か。何でわざわざ5対1でデュエルしなくちゃいけないんだ。

 そもそもデュエルを受けるなんて一言も言ってないし、お前らが一方的にデュエルを申し込んできただけだろ。

 

「俺はデュエリスト。なんて一言も言ってない。どちらかと言うとリアリストだ」

 

 そんなことを言っている間に昆虫達は全滅していた。

 

「ふぅ。別の昆虫や獣達が集まって来るかもしれないから、さっさとここから離れるぞ」

 

「ええそうね、リアリスト」

 

 クソ。「それでもデュエリストか」とか言われたから咄嗟に言っちまった。

 

「くっ、今言ったことは忘れてくれ」

 

「リアリスト。リアリスト。あははは」

 

「未来さんは、リアリストだったんですね」

 

「うるさい! 早く行くぞ!!」

 

 あっヤバイ、今の叫び声でモンスターが集まって来た。

 獣族、獣戦士族、恐竜族、昆虫族、この町を攻めてきた4種族が集まって来た。

 あれはワイルドラプター。あっちはトラコドン。

 キラーパンダにグリフォール。タイガーアックス、ケンタウロス。

 レッグル、ゴキボール、ビックアントも居やがる。

 懐かしいモンスターばっかりだな。

 

「な、何してんのよ。アンタのせいで、また集まって来たじゃない」

 

「未来さんのバカ」

 

「未来さん、どうしましょう?」

 

「どうするも何もモンスターに倒して貰うしかないだろ。こい、アドレイション!」

 

「ほらボサッとして無いで、お前たちも強いモンスターを出せ!」

 

「わ、分かりました。来て、サイバネティックマジシャン、マジシャンオブ ブラックカオス」

 

「出番です。沈黙のサイレントマジシャン、サイレントマジシャンLV8」

 

「氷の女王、ブリザードプリンセス」

 

 俺達の召喚したモンスター達の総攻撃で、雑魚モンスター達をあっとゆう間に全滅した。

 凄いな。こいつら、一発で引き当てやがった。

 俺達は直ぐに、城に向かって走り出した。

 

 

 

 

「よし、城まであと少しだ!」

 

「疲れたです」

 

「よ、ようやくね」

 

 もう大丈夫だと思っていて油断している時だった。

 

「うぐっ!?」

 

 突然うめき声をあげてライズベルトが倒れた。

 

「まずは1人」

 

 いつの間にか、ライズベルトの近くにデスサイズキラーが居た。

 どうやらデスサイズキラーが、持っている鎌でライズベルトを切り裂いたみたいだ。

 

「クソ! やれ、アドレイション!」

 

 アドレイションを召喚してデスサイズキラーの迎撃に向かわせた。

 

「ライズベルト!! しっかりしろ。ピケル、何でもいいから回復するカードを使え!」

 

「は、はい。レッドポーション、ブルーポーション、治療の神ディアンケト」

 

 ピケルの回復魔法は効き目がないのか、ライズベルトの顔色はどんどんと悪くなっていた。

 

「そんな事をしても無駄だ。俺の鎌には猛毒が塗ってあってな。もう、その小僧は助からんよ」

 

「そんな……」

 

「ま、まだです。天使の生き血、恵みの雨、ゴブリンの秘薬」

 

「お兄ちゃん、しっかりして。お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

 

「み、未来……さん。……お願いがあり……ます。僕の、代わりに……セーム、ベルを……守って下さい」

 

「代わりって……何言ってんだよ!」

 

「セームベル……このカードを……受け取って。僕の……大切な……カード……だから」

 

 そう言ってライズベルトはセームベルに、サイバネティックマジシャンを渡した。

 

「その……カードは……僕の……一番好きな……カードなんだ。……だから……大切に……して。ね」

 

 ライズベルトは光になって消滅してしまった。

 

「嫌だ! 嫌だよ! お兄ちゃん。う、うわあああ──────!」

 

「ライズベルト……嘘でしょ」

 

「ベルトさんが……そんな……」

 

 セームベルは大声で泣き、ピケルとクランは、ショックで固まっている。

 

「少々手こずったがこれで終わりだ!」

 

 デスサイズキラーは近くにいた、ゴキポンとゴキボールを切り裂き、アドレイションも真っ二つに切り裂いた。

 

「驚いたか。俺は仲間の虫を殺しただけ、一時的にだが強化されるのだ」

 

 そうかそんな効果を持っていたな。

 奴の周りにはまだまだ虫モンスターがいる、モンスターで倒すのは困難だ。

 ピケル達はこんな状態だ逃げるのは不可能。

 これはもう……デュエルをするしかない。

 

「……よくもライズベルトをやってくれたな。デスサイズキラー。俺とデュエルしろ!」

 

「モンスターで勝てないと見るやデュエルか。……俺。にデュエルを挑むとは、馬鹿なヤツめ。いいだろう、瞬殺してやる」

 

「「デュエル!!」」

 

 こいつは……こいつだけは許さない! 確実に倒す! 

 

 

 

「先行は俺が貰った、ドロー。代打バッターを召喚」

 

「その後、手札から魔法カード発動、殺虫剤。このカードの効果で、俺の代打バッターを破壊する」

 

 殺虫剤が代打バッターに掛けられて、代打バッターは苦しんで消滅した。

 

「代打バッターの効果発動。手札から俺自身、デスサイズキラーを攻撃表示(2300)で特殊召喚する」

 

「まだだ、私はさらにデーモンの斧を俺に装備する。これにより俺の攻撃力は3300だ! 

 

「俺はさらにカード1枚を伏せてターンを終了する」

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

「さぁ、攻撃力3300の俺を相手にどう戦う」

 

「一ついいことを教えてやる、俺の手札には貫通能力を与える装備カード、メテオ・ストライクがある。雑魚モンスターを守備で出せば大ダメージだ」

 

 ブラフだと思ったが、わざわざ手札のカードを見せてくるとは。

 何がしたいんだこいつは? 

 

「手札から魔法カード発動、融合。手札のドグマガイとブルーディーを融合。来いドラグーンディーエンド」

 

 闇のオーラが出現し、その中からドラグーンディーエンドが姿を現した。

 

「攻撃力3000。掛かったなバカめ。メテオストライクの情報を出せば必ず強力なモンスターを出してくると思ったわ!」

 

「伏せカード発動、奈落の落とし穴。これで貴様が召喚したモンスターは破壊され、ゲームから除外される。残念だったなぁ」

 

「残念なのお前だ。ドラグーンディーエンドはカードの効果では破壊されない!」

 

 この効果は、俺の世界のドラグーンディーエンドには無い。

 ドラゴンのような腕から火炎放射を放ち、奈落の落とし穴のカードを破壊した。

 

「何だと! だが攻撃力は俺の方が上だ」

 

「ドラグーンディーエンドの効果発動、相手フィールドのモンスター1体を選択して、選択したモンスターを破壊してそのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

「な、何だと。バカな。なんて効果だ!」

 

「やれ、ドラグーンディーエンド。狙いはデスサイズキラーだ!」

 

 ドラグーンディーエンドの効果をくらいデスサイズキラーは破壊された。

 

「グッグワ──! (4000→700)」

 

 俺の世界のディーエンドは効果を使ったターンに攻撃はできないがこの世界では違う。

 

「俺は効果を発動しただけでまだ、攻撃は行なっていない。バトル!」

 

「昆虫族の中でも実力者の私が、こんなガキに負けるだと。ま、待て、待ってくれ!!」

 

 待てだと。こいつはバカなのか。

 ライズベルトを殺したお前に、情けを掛けるわけないだろ。

 

「奴にダイレクトアタックだ!」

 

「ぐぎぁー!」

 

 ドラグーンディーエンドの攻撃をくらい、デスサイズキラーのライフがゼロになった。

 デスサイズキラーは全身が光りだして、消滅した。

 仇は取った。

 だが……やっぱり、デュエルって本当につまらないな。

 今まで生きてきた中で一番楽しくなかった。

 

 

「馬鹿な! デスサイズキラー様が敗れただと!?」

 

「お前たちも死ね。やれ、ディーエンド!」

 

 

 

 全ての昆虫族を駆逐が終わり、ピケル達に意識を傾けた。

 セームベルはまだ泣いていて、ピケルも泣いていた。

 クランはただ呆然としていた。

 俺が油断していたせいで、こんな事に。

 ……悔やむのは後。とにかく今は、一刻も早く城に行くべきだ。

 

 

 それから俺はドラグーンディーエンドに3人を運ぶように指示を出し、城にたどり着くことができた。

 城の周りには兵士達が、大勢待機していた。

 俺は3人を兵士に預けて状況を聞いてみた。

 

「まさか4種族が同時に攻めて来るとは思わず。またショナー様も不在のため、私達はこの城を守るので精一杯です」

 

「まぁ、そうだよな。4種族も攻めて来たんだ。それが精一杯だよな」

 

「兵士の死亡者は半数以上。一般市民の死亡者は6割を超えています」

 

「そうか……」

 

「ですので、未来様には我々と共に城を死守して頂きたいのですが」

 

「いや、町で逃げ遅れた人が居ないか心配だ。それを確認してくる」

 

「えっ。き、危険ですよ」

 

「心配するな。すぐ戻って来る」

 

 そう言って俺は、城から飛び出した。

 

 

 

 

「何なんだよ。どうしてこの町を攻めて来たんだよ。ライズベルトが……この町の人たが4種族に何したんだよ」

 

 とにかく胸糞が悪い。

 ふと目の前に、昆虫たちの大群がいるのに気がついた。

 こいつらが無性に憎い。やるか。

 

「ドラグーンディーエンド、トリニティ召喚!やれ!」

 

 俺は2体のモンスターを出して、1匹残らず昆虫を消滅させた。

 

「まだだ。こんなんじゃあ俺の気が治んねえ」

 

 俺はそれからひたすら4種族を見つけては消滅させるのを続けた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

VS 究極完全態グレートモス

 あれから城の近くにいた4種族を全て駆逐した。

 今は森の中で引き続き倒しているところだ。

 

「貴様か。我ら4種族を狩っている者は!」

 

 上空から巨大な蛾が目の前に舞い降りてきた。

 

「お前は何だ」

 

「私は昆虫を束ねる長、究極完全態グレートモス。私の同胞達を随分と葬ってくれたな!」

 

 そいつは究極完全態グレートモスだった。

 

「お前らだって町の人たちを殺しただろ」

 

「黙れ! 貴様は許せん! デュエルで痛みつけた後にあの世に送ってやろう!」

 

 奴は数ある足の一本にデュエルディスクを付けており、デュエルディスクを構えて来た。

 

「普段なら命懸けのデュエルなんて受けないが、俺もお前を痛みつけてあの世に送りたい。だから受けてやるよ!」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 このデュエル、絶対負ける訳にはいかない。

 

 

 

「先行は貰う。私のターン、ドロー! プチモスを守備表示で召喚し、その後進化の繭をプチモスに装備する」

 

「これによりプチモスの守備力は2000になる。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 究極完全態グレートモスは進化の繭を装備して6ターン経過したプチモスを墓地へ送って特殊召喚するモンスター。

 さっさと破壊したほうがいいな。

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

 手札がイマイチだな。

 

「D-HEROダイヤモンドガイを守備表示で召喚。そしてダイヤモンドガイの効果発動、デッキの上のカードを一枚めくりそれが通常魔法カードの時そのカードを墓地に送り、次の俺のターンのメインフェイズに発動出来る。引いたカードは永続魔法、D-フォーメーション。不発の場合はデッキの一番下に行く」

 

「運がないようだな」

 

「黙れ! カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 

「私のターン、ドロー。手札からゴールデンレディバグの効果発動。手札にあるこのカードを相手に見せることで、自分は500ライフポイント回復する。この効果を使用したターン、エンドフェイズまでこのカードを相手に見せ続けなければならない」

 

 ゴールデンレディバグか、厄介なモンスターだ。

 これで自分のターンの度に、ライフ500ポイント回復か。

 

「更に、インセクトソルジャーを召喚しダイヤモンドガイを攻撃!」

 

 ダイヤモンドガイは腹を貫かれて破壊された。

 

「この瞬間、伏せカード発動、デステニーシグナル。このカードの効果により自分のモンスターが戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキからレベル4以下のD-HEROを特殊召喚出来る。来い、D-HERO ディスクガイ」

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 

 

 未来のフィールド

 モンスター

 D-HEROディスクガイ(表側守備表示)300

 伏せカード1枚

 手札 3枚

 ライフ4000

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 プチモス(守備表示)2000 装備カード 進化の繭

 インセクトソルジャー(攻撃表示)1900

 伏せカード3枚

 手札1枚

 ライフ4500

 

 

 

「俺のターンドロー! ディスクガイをリリースして、ダッシュガイをアドバンス召喚する!」

 

 この攻撃力ならどちらのモンスターでも倒せる。

 プチモスはまだ1ターンしか経ってない、よってまだまだ脅威じゃない。

 ならば狙いは……

 

「バトル! ダッシュガイでインセクトソルジャーを攻撃!」

 

 ダッシュは助走をつけた飛び蹴りをお見舞いし、インセクトソルジャーを破壊した。

 

「ぐうー! (4500→4300)……だが私はその攻撃に対し、速攻魔法ターンジャンプを発動していた。このカードの効果により3ターンの時が進んでいるぞ!」

 

 ターンジャンプ。遊戯がレベルモンスターの攻撃力を上げるのに使ってたな。

 

「ダッシュガイは攻撃を行ったバトルフェイズ終了時に守備表示になる。これでターンエンド」

 

 次の奴のターンで5ターン目。究極完全態は出せないがグレートモスは出せるか。

 

 

 

 

「私のターン、ドロー。ゴールデンレディバグの効果で500ポイントライフを回復する」

 

「その後、伏せカード無謀な欲張りを発動。このカードの効果でデッキからカードを2枚ドロー。更にチェーンしてもう一枚の無謀な欲張りを発動、2枚ドロー。これで私は2ターンの間ドロー出来ない」

 

 無謀な欲張りを2枚使うことで、リスクを減らしたか。

 

「来たぞ、私は6ターン経過したプチモスを生贄に、私自身、究極完全体グレートモスを特殊召喚する」

 

 いやまだ5ターン目だぞ。

 そうか、アニメでは互いのターンを合わせて6ターンだったのか。

 

「さらに装備カード、メテオ・ストライクを私に装備。これで私に貫通能力が備わった」

 

「バトル。究極完全体グレートモスでダッシュガイを攻撃。モス・パーフェクト・ストーム」

 

 グレートモスが起こした暴風はダッシュガイを一瞬のうちに蹴切らし、俺を襲った。

 

「ぐわぁぁー! (4000→1500)」

 

 暴風をまともにくらい、耐えきれず吹き飛ばされた。

 

「はっはっは。どうだ凄まじい一撃だろ。私を倒すことなど不可能だ! カードを4枚伏せてターンエンド」

 

 

 

 未来のフィールド

 伏せカード1枚

 手札3枚

 ライフ3200

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 究極完全体グレートモス(攻撃表示)3500

 伏せカード4枚

 手札2枚

 ライフ4800

 

 

 

「好きなだけ吠えてろ。俺のターン、ドロー。デステニー・ドローを発動。手札からD-HEROディアボリックガイを墓地へ送り、2枚のカードをドローする」

 

「ならば私も、伏せていた、3枚目の無謀な欲張りを発動。デッキから2枚のカードをドローする」

 

「関係ない、手札から融合を発動。手札の……」

 

「無駄だ! 伏せていた永続トラップ、融合禁止エリアを発動。これにより、お互いに融合を行うことはできない」

 

 これじゃあ、ドラグーンディーエンドを融合召喚できない。

 

「これで融合は不発。貫通能力を備えた私から逃げる術はない! 貴様は終わりだ!」

 

「……手札から死者蘇生を発動。ディスクガイを蘇生する」

 

「死者蘇生だと。苦し紛れに墓地に眠る雑魚を蘇らせたところで何になるというのだ」

 

 攻撃力やレベルでしかモンスターを見れないのか、哀れな奴だな。

 

「ディスクガイの効果発動。墓地からの特殊召喚に成功した時にデッキから2枚のカードをドローできる」

 

「2枚ドローだと……何という効果だ。だがどれほど強力なモンスターを出したところで私に勝つ術はない」

 

「ドリルガイを召喚。ドリルガイの効果で手札のダガーガイを特殊召喚する」

 

「その後、墓地のディアボリックガイの効果発動。除外することでデッキからディアボリックガイを特殊召喚する」

 

「デステニー・ドローで捨てたモンスターか。だが、貴様は召喚を行い強力なモンスターは出せない。雑魚モンスターをいくら並べたところで壁にすらならない」

 

「ダガーガイ、ディアボリックガイ、ディスクガイ。3体のモンスターを生贄に手札からブルーディーを特殊召喚する」

 

 3体のD-HEROは薄黒い血となり地面に吸収され、そしてそこから、大量の黒い血が吹き出した。

 そしてその血の中から、ブルーディーが姿を現した。

 

「3体のモンスターを生贄に特殊召喚だと!?」

 

「コイツこそが究極のD-HEROと呼ばれてるモンスター。その強さは究極完全態グレートモスなんか目じゃない」

 

「だが攻撃力では私の方が上だ」

 

「ブルーディーの効果発動。敵モンスターを吸収しそのモンスターの攻撃力の半分とモンスター効果を得る。グレートモスを吸収しろ!」

 

 ブルーディーは一瞬の内にグレートモスを吸収した。ブルーディーの翼の中からグレートモスが顔だけを出して、すぐに引っ込んだ。

 

「なっ、何! 馬鹿な!?」

 

「これでブルーディーの攻撃力は3650。ドリルガイの攻撃力1600を合わせればお前のライフを上回る」

 

「(今私が伏せている、我が身を盾にと王宮のお触れはこの状況では意味をなさない)こんなことが…」

 

「バトルだ。ドリルガイでダイレクトアタック」

 

 ドリルガイのドリルがグレートモスを貫いた。

 

「ぐわぁぁー! (4800→3200)」

 

 ブルーディーのダイレクトアタックが防がれたとしても、まだ伏せカードがある。

 ここは勝負に出る。

 

「これで終わりだ! ブルーディー、ダイレクトアタック!」

 

 ブルーディーは翼から大量の針の形をした血の塊を、グレートモス目掛けて打ちこんだ。

 

「ぐぎぁあ──!! (3200→0)」

 

「終わりか……」

 

 グレートモスはその場に墜落し、身体が光り出し消滅し始めた。

 

「なぁ、消滅する前に聞かせろ。どうしてあの町に攻撃を仕掛けたんだ」

 

「当然、この世界を我々昆虫族の楽園にしたかった。その為に昆虫族以外を滅ぼす必要があった、だから魔法使いの町を攻めたそれが理由だ」

 

「楽園ねぇ。自分の種族しかいない世界が本当に幸せだと思ってるのか」

 

「黙れ! 貴様に何がわかる。弱きものとして虐げられてきた我ら昆虫族の思いが!」

 

 コイツも元はプチモスだった時期があった筈。その時に色々あったのか。

 

「分からないな。だとしたらどうして他の種族と手を組んだんだ」

 

「馬鹿め。今回は利害が一致しただけに過ぎない。他の3種族も私達と変わらない。最後には己の種族存亡を賭け戦っていた」

 

「あぁそうかよ」

 

「おのれ……まさか私が……貴様の様な……若造に……負ける……と……は……」

 

 グレートモスはそう言い残し完全に消滅してしまった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

VS 神獣王バルバロス

「まさか究極完全態グレートモスに勝利するとは思わなかったぞ」

 

「奴は戦闘もデュエルも強い。そんな奴を殺るとは」

 

「お前、相当デュエルの腕が立つ様だな」

 

 

「獣戦士族、恐竜族、獣族の上級モンスター。と言うことは お前らは町を襲った奴らのリーダーか」

 

「いかにも。俺は獣戦士族のリーダー、神獣王バルバロス」

 

「俺は恐竜族の長、スーパーコンダクターティラノ」

 

「獣族の長、森の番人グリーンバブーン様だ」

 

「何の用だ」

 

「しれたこと。俺たちの仲間を狩っている貴様は始末する!」

 

「俺たちはグレートモス並みに強いぜ」

 

「そんな俺たち3人同時に相手して貰おうか」

 

 3匹は一斉にデュエルディスクを構えた。

 

「3対1かよ。種族のリーダーの癖して恥ずかしくないのか!」

 

「何とでも言え!」

 

「勝てばいいんだよ」

 

「グレートモスを倒す実力のある貴様は厄介だ。ここで確実に息の根を止める」

 

 逃げることは難しそうだな。やるしかないのか。

 

「そのデュエル、私も混ぜて貰おうか」

 

 声のした方を見てみるとそこにはショナーがいた。

 

「未来君、城から飛び出したと聞いて心配していたよ。無事でなによりだ」

 

「何、貴様は執行官!」

 

「馬鹿な! 貴様は城を離れていた筈」

 

「何故ここにいる」

 

「貴様達4種族が私の町を襲撃したと聞き急ぎ戻ってきた。随分好き勝手してくれたな」

 

「ぐぅ。おい、俺がコイツをやる。お前たち2人で執行者をやれ」

 

「そうするしかないな」

 

「執行者と言えども俺様とティラノの2人がかりなら勝てる」

 

「だそうだ。未来君、バルバロスの相手を頼む」

 

「分かった。やるしかないみたいだな」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

「先行は俺の物。俺のターン、ドロー。俺は俺自身、神獣王バルバロスを攻撃表示で召喚する」

 

「俺は上級モンスターだが攻撃力を1900にして通常召喚することができるんだよ」

 

「カードを3枚伏せる。俺はこれでターンエンドだ」

 

 いきなりバルバロスを1900にして召喚か。

 伏せカードはスキドレの可能性が高いな。

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

 スキドレを伏せてるかはコイツで探ってみるか。

 

「デビルガイを守備表示で召喚。そしてデビルガイの効果発動。このターンのバトルを放棄する代わりに、相手フィールドのモンスターを2ターン後の俺のスタンバイフェイズまでゲームから除外する。バルバロスを除外する」

 

 デビルガイは右腕からチェーンをバルバロス目掛けて打ち出した。

 

「そうはさせん。伏せカード発動、スキルドレイン。ライフを1000払う事で、全てのモンスターの効果を無効にする」

 

「そして効果が無効化されたことにより俺の攻撃力は元の3000になる」

 

 やっぱり、スキドレか。だがこれで奴のライフは減った。

 ここは一気に融合してドラグーンディーエンドを出す。

 

「手札から融合を発動」

 

「無駄だ! 伏せカード発動、融合禁止エリア。融合は不発だ!」

 

 また融合禁止エリアかよ! さっきのグレートモスといい融合モンスターを警戒してるな。

 手札のドグマガイとブルーディーが腐るな。

 

「わははは。なぜ俺が一対一でデュエルを挑んだと思う。……それは私のデッキが圧倒にお前のデッキと相性がいいからだ」

 

「グレートモスとのデュエルを見たところ、D-HEROはモンスター効果は強力の様だが能力値は低い」

 

「なるほど。確かにスキドレとは相性が悪いな」

 

「融合も封じた。先程のブルーディーとかいう上級モンスターは効果が無効になれば役に立たない。もはや貴様に勝ち目はない」

 

「カードを一伏せでエンドだ」

 

 こいつはスキドレや融合禁止エリアが除去される可能性とかを考えてないのか。

 

 

 

 未来のフィールド

 モンスター

 D-HEROデビルガイ(守備表示)800

 伏せカード1枚

 手札3枚

 ライフ4000

 

 

 

 相手フィールド

 モンスター

 神獣王 バルバロス(攻撃表示)3000

 永続トラップ

 スキルドレイン

 融合禁止エリア

 伏せカード1枚

 手札2枚

 ライフ3000

 

 

 

「俺のターン、ドロー。不屈闘志 レイレイを攻撃表示(2300)で召喚する」

 

 レイレイか。確か攻撃を行った後に守備表示になるモンスターだったはず。

 スキドレとは相性がいいモンスターだな。

 

「バトル。レイレイでデビルガイを攻撃! 雑魚を蹴散らせ!」

 

 レイレイの攻撃でデビルガイは破壊された。

 

「まだ俺の攻撃が残っているぞ! ダイレクトアタックを喰らえ! トルネード・シェイパー」

 

「ぐわぁあー! (4000→1000)……い、いてぇ……」

 

 風を纏った槍をくらい、俺はぶっ飛ばされて地面に激突した。

 

「本来ならば攻撃をしたレイレイはバトルフェイズ終了時に守備表示になるが、スキル・ドレインによりその効果は無効になる」

 

「カードを一枚伏せる。これでターンエンド。お前のターンだ!」

 

 

 まずいな。手札はブルーディー、ドグマガイ、ディフェンドガイ。

 このドローでいいカードを引けなければおしまいだ。

 

 

「俺のターン。ドロー」

 

「手札からデステニードロー発動。D-HERO ブルーディーを墓地に送り、カードを2枚ドローする」

 

 いいカードが来た。これはいけるか。

 

「手札からオーバーロードデステニー発動。こいつは墓地のD-HEROを対象にして、そいつのレベルの半分以下のレベルを持つD-HERO1体をデッキから特殊召喚する。ブルーディーを選択して、デッキからダンクガイを特殊召喚する」

 

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターはターンの終わりに破壊される」

 

「壁にもならない雑魚を呼び出してなんのつもりだ」

 

「ダンクガイの効果を発動。手札のD-HEROディアボリックガイを墓地へ送ることで500ポイントのダメージを与える

 

「血迷ったか! スキル・ドレインにより効果は無効。手札を1枚無駄にしただけだな!」

 

「墓地のディアボリックガイの効果発動。除外する事で、デッキからディアボリックガイを特殊召喚する」

 

「くっ、墓地からの効果は、スキルドレインでは無効に出来ない。このためにダンクガイの効果を使用したのか」

 

「まだ通常召喚はしてない。D-HEROディフェンドガイを召喚」

 

「3体のモンスターを並べブルーディーを召喚するつもりか。だが効果はスキル・ドレインにより無効化される」

 

「スキル・ドレインを除去するつもりなら無駄だ。俺は偽物の罠を伏せている。こいつは罠カードが破壊される時に身代わりになるカード」

 

「手札は1枚。よって頼りになるカードは伏せカードだけだろうが、一枚ではこの状態を崩すことは出来ない。お前は終わりだ!」

 

「ダンクガイ、ディアボリックガイ、ディフェンドガイ、3体のモンスターを生贄に現れろD-HEROドグマガイ」

 

 全身に闇のオーラを纏い、ドグマガイが姿を現した。

 

「こいつはD-HERO一の攻撃力3400だ」

 

「攻撃力3400だと! ブルーディー以外にも3体を生贄に特殊召喚するモンスターがいたのか」

 

「(だが俺の伏せているカードは攻撃力を1500ポイントアップさせる効果を持つ罠ライジング・エナジー。攻撃を行った瞬間返り討ちだ)」

 

「さらに、伏せていた装備カード、巨大化をドグマガイに装備。これにより、ドグマガイの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値6800だ」

 

「6800だと! 馬鹿な! (レイレイを攻撃されればライジング・エナジーを発動しても俺は終わりだと)」

 

 この攻撃が通れば勝ちだが相手の伏せがミラフォやシリンダーだったら負け。

 だがもう手札は0。ここは勝負に出るしかない。

 

「ドグマガイでレイレイを攻撃!」

 

 ドグマガイの胸のあたりに紫色の光が集まっていき、やがて紫色の球体状になり、それをレイレイに向けて放った。

 攻撃を受けたレイレイは破壊された。

 

「がぁぁああー!? (3000→0)」

 

「勝てたか。……危ねえ。今回はギリギリだったな」

 

 やっぱり命懸けのデュエルなんてやるもんじゃないな。

 どんなに実力があっても、手札が事故れば終わりだぞ。割に合わなすぎる。

 

「この俺が負けた……だと……馬鹿……な」

 

 そういい残し、バルバロスは消滅した。

 

 

 

「勝ったようだな。無事でなりよりだ」

 

「ショナーも2匹に勝ったんだな。……それも無傷で」

 

「そうだな。奴らはそこまで強くはなかった」

 

 強くはなかったって、戦った奴は恐竜族のリーダーと獣族のリーダーだぞ。

 この世界では相当強い部類だろ。

 俺みたいに未来の強力なカードを持ってるわけでもないのに、2対1で圧勝なんて……こいついくらなんでも強すぎないか。

 

「なぁ、あんたは何者なんだ。デュエルの実力が頭一つ抜けてるぞ」

 

「その強さで何故ピケルやクランの教育係をやっているんだ? 本当は魔法使いのリーダーとかじゃないのか」

 

「魔法使いのリーダーは他にいる。きっと…私の正体はいずれ分かる」

 

 いずれ分かるか。なんだその含みのある言い方。

 近い将来で何かが起こるのか? 

 

「さぁ、今ごろクラン様たちが君のことを心配している。城に戻ろう」

 

「あぁ、分かった」

 

 

 

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」

 

「ベルちゃん」

 

「こんな時にあいつはどこに行ったのよ……バカ」

 

 

 

「……」

 

「いいの〜。あの子、あのままで……」

 

「仕方ないよ。もう、僕の運命は決まった。あの子のことはピケル様たちに任せるよ」

 

「君はどうするんだい?」

 

「私は残りの邪神使いを探すよ〜。目星もついてるしね〜」

 

「それなら僕は同士を集めることにするよ。来たるべき戦いに備えて」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ピュプノシスターとの出会い。そして動き出す運命。

 城に戻ったところ、クランに鞭で叩かれた。何発もだ。

 ピケルやクランたちにかなり心配をかけていたみたいだ。

 申し訳がなかったのでしっかりと謝罪した。鞭で叩かれたのは許さないが。

 

 

 それから数日が過ぎた。

 兄ライズベルトの死が相当ショックでセームベルは未だに塞ぎ込んでおり、今日はピケルとクランに励ますように頼まれて喫茶店のような店にセームベルと2人で居る。

 今町は厳戒態勢のため、2人は城から出ることは許されなかったらしい。

 

「……」

 

 気まずい。どうすればいいんだ。

 大好きな兄ちゃんが死んだんだぞ、そう簡単に立ち直れるわけないだろ。

 どうしてこんなクソ面倒くさいことをしなくちゃいけないんだよ。

 

「え、えーと。セームベル、なにかやりたいことはないか。それか欲しいものはないか? 今ならよほどのものじゃない限り奢るぞ」

 

「……一つだけある……私……デュエルをやりたい……」

 

 セームベルは俺に真剣な眼差しで、そう言って来た。

 

「デュエル? どうしてまた。デュエルに興味が無かったんじゃないのか?」

 

 俺は内心とても驚いている。セームベルは出会った時に、デュエルの事は全然分からないし、興味ないと言ってた。

 俺がライズベルトとデュエルの事を話してると大抵邪魔してきた。そんなセームベルがデュエルを教えてくれとお願いしてきたんだ。驚くのも無理ないだろ。

 

「私は今までずっとお兄ちゃんに守られてた。でも……もうお兄ちゃんは……死んじゃった。……だから私、強くなりたいの!! 天国にいるお兄ちゃんが安心出来るくらいに!」

 

「それにお兄ちゃんが最後に私に託してくれたこのカード。このカードはお兄ちゃんの形見。私、どうしてもこのカードを使いこなしたいの……だから……」

 

 そうか……ライズベルトの死がきっかけで色々思う事があったんだろう。

 

「分かったお前にデュエルを教えてやるよ」

 

「本当! ありがとう、おじさん!」

 

「おじさんじゃない!」

 

 まぁ、少し元気を取り戻したみたいで良かった。

 

 

「まず始めに、聞きたい事がある。セームベルはデッキを持ってるか?」

 

 これは重要な事だ。デッキを持っていればそのデッキに合った戦略を教えたり、カードをあげたりするからだ。

 まぁ、セームベルはまだデュエルを始めてすらいないんだから、デッキは持ってないと思うけど。

 

「うん、持ってるよ。ちょっと待ってね」

 

 そう言ってセームベルは変な呪文を唱えた。するとセームベルの目の前に魔方陣が出て来た。

 そして、その魔方陣の中からデュエルディスクが出て来た。デュエルディスクにはカードが装着されていた。

 

「そのデッキ見せてくれないか」

 

「うん、いいよ。これが私のデッキだよ」

 

「どんなカードが入ってるんだ?」

 

 俺は渡されたデッキのカードを見てみた。

 

 魂喰らい(レベル4、攻1200守0、バニラ)

 はにわ(レベル2、攻500守500、バニラ)

 破壊のゴーレム(レベル4、攻1500守1000、バニラ)

 

 巨大ネズミ、補充要員、レインボーフラワー、ドラゴニックフォース、地を這うドラゴン、正々堂々、スティング、守護霊のお守り、火炎草、ダブルアタック……

 

「……なぁにこれぇ?」

 

 思わず相棒のマネをしてしまった。

 だがそれも仕方ないだろ。セームベルのデッキには、昔のカスみたいなカードしか入ってなかった。

 

「このカードはね、全部拾ったカードなんだよ。ほら、この魂喰らいってモンスターカード、可愛いでしょ」

 

 拾ったカードって……遊星やコナミくんかよ。

 こんな昔の使えないカードばっかり入ってるデッキじゃ誰にも勝てねえよ。

 辛うじて使えるカードは、サイバネティックマジシャンと召喚師セームベルのカードの2枚だけだ。

 

 デッキはどうしようもないな、まずはデュエルのルールから教えるか。

 そう思ってると俺のデッキから何十枚かのカードが飛び出してきた。

 ピケル達にサイレントマジシャンを渡した時と同じ状況だな。

 

「どうやらこのカードはセームベルに使って欲しいみたいだ。やるよ」

 

「えっ! カードくれるの。ありがとう、おじさん」

 

「おじさんじゃねぇよ! カード渡さないぞ」

 

 俺はそれからセームベルに、召喚師セームベルやサイバネティックマジシャンと相性のいいカードや使えるカードを説明した。

 セームベルは、「私は私が気に入ったカードしかデッキに入れない!」とか言って魂喰らいとかのバニラモンスターをデッキに入れたままだった。

 その後俺はセームベルに、デュエルのルールやカードの事を教えた。

 

 

 

 

「じぃ──ー」

 

 俺はふと誰かの視線を感じ、視線の方を見てみると1人の少女が俺たちの事を見ていた。

 その少女は俺が知っているモンスターカード、ヒュプノシスターだった。

 

「なんだ、何か用か?」

 

「……うん……ちょっとね〜」

 

 随分、おっとりとした喋り方をするなぁ。

 

「私、ヒュプノシスター。プノって呼んでくれると嬉しいな〜」

 

「あ、ああそう。俺は未来、よろしく」

 

「ふ〜ん未来ならライライだね〜。よろしくね、ライライ〜」

 

 ライライって。なんか変なあだ名をつけられたな。

 

「おじさん、どうかしたの? ……あ──ーお前は!!」

 

「あ〜、ベルベルだ〜。どうしたの?」

 

「私の事、ベルベルって呼ぶなー! アンタ、いっつもお兄ちゃんをストーカーしてたでしょ!」

 

 そういえば、俺の世界のライズベルトのカードにも確かにピュプノシスターが草陰に隠れてた気がする。

 そうか、アレはライズベルトをストーキングしてたのか。

 

「別にいいじゃない、ベルベル〜」

 

「だーかーらー! 私の事をベルベルって呼ぶなー! もう怒ったよ、ここで私とデュエルしなさい!」

 

 この喫茶店のような店にはデュエルスペースがある。セームベルはそこでデュエルするつもりだろう。

 

「え〜。デュエル〜。……いいよ〜」

 

「私が勝ったら、もう二度と私の事をベルベルって呼ばない事!」

 

「うん、分かったよ〜」

 

 そんな事があり、セームベルとプノがデュエルする事になった。

 

 

 

「……ま、負けた〜」

 

 まぁそうなるよな。

 ルールもうろ覚えの寄せ集めデッキで、高アタッカーが多いサイキック族デッキに勝てるわけ無い。

 

「こ、今回は手札が悪かったから負けたんだよ! アンタが私に勝ったのはマグレなんだよ!」

 

 

「……じゃあ。もう一回デュエルしよ〜よ」

 

「望むとこだよ! 次はコテンパにしてやるんだから!」

 

 セームベル、プノとのデュエル楽しかったんだろうな。

 だってセームベル、さっきよりも凄く楽しそうな顔をしてるし。

 

「また負けた──ー」

 

「あはは〜。勝った〜」

 

 ……セームベルには、まだまだ教える事がたくさん有るみたいだな。

 まぁ、セームベルが元気を取り戻したみたいで良かった。プノには感謝だな。

 

 ライズベルト。お前との約束は守るからな……。

 

 

 

「……いよいよ彼を呼ぶのですね」

 

「……ええ、あなたの報告で決心が付きました」

 

「良いのですが? 彼は確かに素晴らしいデュエリストです」

 

「そして、彼とデッキのカードには確かな絆がある事も確認いたしました」

 

「……ですが、彼の中の心の闇の力は異常です。もし敵が完全に闇に取り込まれてしまった場合、我々の敵になる可能性も」

 

「その心配はいりません。貴方は引き続き、ピケルとクランの事を鍛えてください」

 

「承知しました」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ランドスターとの出会い。

「……きて! ……起きて! ……起きてよ、おじさん!」

 

 何だ? どこからか声が

 

「……仕方ないな……はにわちゃん落とし」

 

「痛っ!」

 

 何だ、何が起こったんだ? 頭が痛え……

 

「ようやく起きたー?」

 

 目を覚ますと、俺の目の前にセームベルがいた。

 

「……セームベル?」

 

「私もいるよ〜」

 

「……プノ?」

 

 

 何がどうなってるだ。確かプノとセームベルのデュエルの後、プノと仲良くなって喫茶店みたいな店で話してたら突然、俺達3人は真っ白な光に包まれたんだっけ? 

 

「ここは、どこだ?」

 

 見渡すとあたり一面は真っ白。恐らくどこか建物の中だとは思うが。

 ピケルやクランの住んでいる城では無い。あの城にはこんな広いスペースはなかった。

 

 

「ここは12ある世界の1つ、天界。そしてここは天空の聖域です」

 

 俺達が途方にくれてると、いきなり上の方からそんな声が聞こえた。

 俺は思わず上を見て、驚いた。馬鹿みたいにデカイモンスターが居たからだ。

 そのモンスターは光の創造神ホルアクティ。

 オベリスクの巨神兵、オシリスの天空竜、ラーの翼神竜の3幻神を束ねる事でのみ誕生するモンスター。恐らく、遊戯王デュエルモンスターズ最強のモンスター。

 

「うわ! デカイ!!」

 

「うわ〜、とってもおっきい〜」

 

 セームベルもプノも、ホルアクティのあまりのデカさにとても驚いている。

 

「身体の大きさなど、私にとっては些細な事です」

 

 そう言うとホルアクティは、あっという間に俺より少し高いぐらいの身長になった。

 

「うわ──! 凄い!! ……貴方は一体何もの?」

 

「私の名はホルアクティ。この天界を収める者であり、この12の世界を創造した神です」

 

「ふーん。……え────! 神様────ー!!」

 

「……ふ〜ん。……ホルアクティか〜」

 

 セームベルとプノはホルアクティが神だと知って、とても驚いているようだ。

 

「そして……貴方、斎藤未来をこの世界に転生させたのは……この私です」

 

 ……は? ……いまホルアクティは俺をこの世界に転生させたのは私だと言ったか? 

 

「何故だ! どうして俺をこんな世界に! ……まさか! あの時俺が車に轢かれたのはお前のせいか!!」

 

「それは違います。あれは完全な事故です。貴方はあの事故で死にました」

 

「そうか……そいつは残念だ」

 

「話を戻しますが。……今、この12の世界は滅亡の危機にあります。ある邪悪なモンスター達が復活する事によって」

 

「邪悪なモンスター……ダークネスか?」

 

「いいえ、違います。それ以上に邪悪なモンスターです。その邪悪なモンスターの復活を阻止して貰うために、貴方をこの世界に呼んだのです」

 

「成る程、だいたい分かった。だが、なぜ俺なんだ? この世界には、俺よりも強いデュエリストなんて無限にいるだろ」

 

 十代、ヨハン、エド、カイザー……挙げればキリがない。

 

「ええそうですね。ですが、強いデュエリストは1人でも多くいた方がいいので、貴方をこの世界に転生させたのです」

 

「そんな理由で、俺をこの世界に……なら他にも俺みたいな転生者が」

 

「いいえ、貴方だけです。今後、貴方以外を転生させることはありません」

 

「なぜ俺なんだ! 俺より強くてカードを持ってる奴なんて幾らでもいるし、デュエルが好きじゃないのに」

 

「おかしなことを言いますね、貴方の死ぬ間際に願ったことを叶えたと言うのに」

 

 死ぬ間際に思った事? 何のことだ? 

 あの時は痛い以外の感情なんて無かったはず。

 

「貴方が覚えていないのならば、これ以上この話は不毛です」

 

 一体、俺は死ぬ間際に何を思ったんだ? 

 

 

 

 

「さて、貴方に復活を阻止をしていただきたいモンスターとは、邪神と呼ばれるモンスターです」

 

「邪神! アバター、ドレッドルート、イレイザーの3体か?」

 

「ええそうです。ですが、それだけではありません。さらに邪神アポピス。邪神サウザントアイズサクリファイスの合計5体が、現時点で分かっている邪神と呼ばれるモンスターです」

 

 3邪神に加えて、アポピスにサウザントアイズサクリファイスか。

 サウザントアイズサクリファイスはこの時代では禁止カードの筈だが。

 

「それで、一体どうすれば邪神の復活を阻止できるんだ」

 

「それは……12の世界のどこかに私が言った5邪神のいずれかの邪神を宿している宿主がいます。その宿主を見つけてください」

 

「そいつらがどこに居るのかは分かってんのか?」

 

「いいえ。恥ずかしながら1人もどの世界にいるのかすら分かっていません」

 

 おいおいマジかよ、使えない神だなぁ。

 

「それは……つまり、俺に全ての世界を虱潰しに探せって事か?」

 

「そうなりますね。ですが安心してください。邪神を宿す者を探して居るのは貴方だけでは有りませんから」

 

「俺だけじゃない、どうゆう事だ?」

 

「私の配下にはガーディアンと呼ばれる者が多数存在します。ガーディアンとは12の世界を私に変わり監視する者の事を言い、たまに私に自身が居る世界の事などを報告をしに来ます。もちろん全員がデュエルの強者ですよ。そのガーディアンたちも貴方と同様に、邪神を宿す者を探すのを命じてます。なのできっと、なんとかなるでしょう」

 

 なんとかなるでしょうって随分いい加減だなぁ。大丈夫か? この神様? 

 

「それで、邪神を宿す者を見つけたらどうすればいいんだ?」

 

「そうですね。とにかく私の元に連れて来てください。そうすれば私が取り憑いている邪神を封印するので。ですが邪神を宿す者が素直に従うとも思えませんので、デュエルで倒すのが一番です」

 

 結局そうなるのかよ。

 これ以上、命懸けのデュエルなんてしたくないのに。

 

 

「それで、どうすれば宿主を見つける事が出来るんだ?」

 

「そ、それは……じ、自分で考えてください!!」

 

「おいおいそれは幾ら何でもあんまりなんじゃないか? ……待てよ、お前ひょっとして、邪神のことたいして知らないんじゃねーだろうなぁ?」

 

「はい? ……そ、そんな事は有りませんよ!! ……そ、そうです、貴方にこのカードを渡しておきましょう!」

 

 そう言ってホルアクティは俺に次元の裂け目のカードを渡してきた。

 

「次元の裂け目? こんなカード要らないんだが」

 

「そのカードはただのカードではありません。発動する事で、この12次元世界すべてを自由に行ききすることが出来る優れたカードです」

 

「そいつは凄いな。有り難く貰っておく」

 

 さて、これで別の異世界に行く手段を手に入れたわけだ。後は……

 

「なぁホルアクティ。この2人を元の世界に帰してくれないか? この2人は邪神とまったくの無関係なんだし。そもそもこの2人は明らかに、お前のミスでこの世界に連れてこられたんだし帰すのは当然だよなぁ!!」

 

「み、ミスではありませんよ! ですが、分かりました。その少女達を元の世界に戻しますよ」

 

 そう言うとホルアクティは、呪文を唱えだした。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! どうしてそうなっちゃうの!」

 

「当然だろ! 2人には何も関係ないんだから」

 

「そ、そんな! 私、もっとおじさんにデュエルを教わりたいんだよ!!」

 

「俺以外にもデュエルの知識が豊富な奴はいる。そいつに教わってくれ」

 

「……ねぇおじさん。私、お兄ちゃんが死んじゃった後一人でいると、とっても悲しくてとっても不安だったんだ」

 

「……でもね。おじさんと居ると、とっても楽しくて安心できたんだ」

 

「だから。私、今はおじさんと一緒に居たいよ。……1人は……寂しいのは……やだよ」

 

 セームベルは泣きながらそう言った。

 少し考えて見れば分かる事だ。

 兄も居なくなって、ピケルとクランは王女様だから気軽には会えない。

 ずっと1人ぼっちで心細がったんだろうな。

 

 俺はライズベルトにセームベルの事を頼まれたんだ。仕方ないか。

 

「分かった。……セームベル。俺の邪神探しの旅についてくるか? 

 

「言っとくけど、かなり危険だ。死ぬかもしれないぞ。それでもついてくるか?」

 

「おじさん。……勿論……ついていくよ!!」

 

「それなら、私も付いていくよ〜。ベルベルがついて行っていいなら、私もいいよね〜」

 

「ちょっと! アンタは帰りなさいよ!」

 

「どうして〜? ベルベルは1人は寂しいんでしょ〜。私も一緒に居てあげるよ〜」

 

「アンタなんてお断り!」

 

「おいおい、お前な。これは危険なんだぞ」

 

「あははは〜……そんな事、分かってるよ」

 

 プノは急に、とても低い声でそう言ってきた。……正直かなり恐い。

 さらにプノは、いつもは開いていない額にある赤い目が怪しく開いていた。

 もしかして怒ってんのか? 

 

「分かった。だが……何があっても恨まないでくれよ」

 

「うん、ありがとね〜」

 

 

 

 

 

 

「よし、2人とも次元の裂け目を使うぞ!」

 

「私はいつでもOKだよ」

 

「あはは〜、分かったよ〜」

 

 マイペースな奴らだな。

 

「次元の裂け目発動」

 

 目の前に次元の裂け目が出現した。

 

「行くぞ2人とも。俺にしっかり掴まってろよ!!」

 

 そう言って、俺たちは次元の裂け目の中に飛び込んだ! 

 

 ……あれ、そういえば。この次元の裂け目はどの世界に繋がってんだ? 

 しまった、ホルアクティにもっとちゃんと聞いとくべきだった! 

 

 

「そういえば。次元の裂け目で行くことができる世界は、ランダムに選ばれる事を伝えてませんでした。もしダークネスの世界や魔界にいってしまったなら……まぁ、きっとなんとかなるでしょう。期待してますよ、 未来」

 

 

 

 

「良しドグマガイを特殊召喚! こいつの攻撃で終わりだ!」

 

「これで4連勝! やっぱり、DーHEROは強いな」

 

「こいつらがいれば怖いものなしだ! 俺はいつまでも、このデッキを使っていくぜ」

 

 

 

「……夢……か」

 

 まだ俺が小学生の頃の思い出だな。

 あの頃は純粋に遊戯王を楽しんでいたな。

 毎日、デュエルのことばっかり考えていて。

 アニメの遊戯王を見た後は無性にデュエルがしたくなって。

 あの頃が一番遊戯王を好きだったな。

 

「目が覚めたか?」

 

 声のした方を見てみると、1人の男が椅子に座っていた。

 そいつは俺が知っているモンスターカード、戦士ダイ・グレファーだった。

 ……あれ、そもそもここは何処だ? 

 

「……俺はどうしてこんな場所にいるんだ?」

 

「覚えてないのか? キミは森で倒れてたんだ」

 

「俺が……森で。そうか! 次元の裂け目を使って」

 

「ふむ。もしかして君は私たちと同じように、気がついたらこの異世界に飛ばされて来たのか?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「ふむ、やはりそうか。実は私もキミと同じく、別の世界から飛ばされて来たんだ」

 

「あんたも別の世界から」

 

「あっ、おじさん! 起きたんだね」

 

「無事で良かったよ〜」

 

「2人とも無事だったのか」

 

「うん、この人とか女の人とかが助けてくれたんだよ」

 

「この町は私たちの様な、異世界から飛ばされて来た者たちが集結し出来た町だ。キミも気の済むまでここに居るといい」

 

「それは助かる、何から何まで本当に感謝する」

 

「気にすることはない。そうだ、君の名は何という。私の名はダイ・グレファーだ」

 

「未来だ。よろしく」

 

 

 

「グレファー様。 倒れていた人は目覚めましたか?」

 

 突然部屋の中に男の子が入って来た。それは俺が知っているモンスター、ランドスターの剣士だった。

 

「ああ、目覚めたぞ」

 

「そうですか! それは良かったです。……あっ、 初めまして。僕の名前はランドスターの剣士です。よろしくお願いします」

 

「らうんどすたーの剣士?」

 

「ち、違うよ。ラウンドスターじゃなくて、ランドスターだよ」

 

「ラウンドスター君だね。私、セームベル。よろしく」

 

「いや、だからランドスター」

 

「じゃ〜ラウラウだね〜。私はプノだよ〜よろしく〜」

 

「ラ、ランドスターなのにー」

 

 プノ……お前、絶対ワザとだろ。分かっててそんなアダ名を。

 このままだと可哀想だ。

 俺はきちんと名前で呼んでやるか。

 

「俺は未来だ。よろしくな、ランドスター」

 

「!! ……ハイ! よろしくお願いします! 未来さん!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハイプリーステス、エリアルとの出会い

「へぇー、そうなんだ。セームベルさんたちは天界に行った事があるんだね」

 

「うん、そうだよ。えへへー、凄いでしょー」

 

「あははは〜。ベルベルは大した事して無いのに、そんなに威張れるなんてすご〜い」

 

「コラー! 馬鹿にするなー!」

 

「ふふ。2人はとっても、仲が良いんだねー」

 

「仲良くなんか無いよ! 私はコイツなんて、大っ嫌いなんだから!!」

 

「も〜、ベルベルは素直じゃないな〜。でもそんなところも、ベルベルらしくて私は好きだよ〜」

 

「あ、アンタに好きだなんて言われても、全然嬉しくない!」

 

 名前の事で一悶着あったけど、今では2人ともランドスターと仲良くなれたなぁ。

 

 

「良かったなランドスター、同世代の友達が出きて。では私はそろそろ町を見回る時間なので、しばらくの間は失礼するよ。もし困った事があったらランドスターに聞くといい」

 

 そう言ってグレファーは外に出て行ってしまった。

 

「なぁ、この町には異世界から来た奴らが集まって出来たっていってたけど、そんなに別世界に飛ばされるものなのか?」

 

「まさか、こんな事は今までなかったです」

 

「世界が不安定ですよ……多分。この世界にも覇王とかいう凄く怖い奴も居たみたいですし」

 

 覇王。それはまさか……

 

「王様? いっぱい国があるんだから、怖い王様なんて珍しくも何ともないよね?」

 

「居たって事はそいつは倒されたってことか」

 

「はいそうです。その後も何度か天変地異はありましたが今は落ち着いています」

 

 天変地異ってのはユベルと十代のデュエルの影響か? 

 話を聞くに、ここはgxの異世界編が終わった後の世界みたいだな。

 

 

 

「お目覚めになられたのですね。良かったです」

 

 そう言い部屋に1人の女性が入って来た。

 それはモンスターのハイ・プリーステスだった。

 

「お陰様で。世話になった」

 

「私はハイ・プリーステスと申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

「未来だ。こちらこそ」

 

 

「隠れていないで貴方も入って来てみませんか?」

 

「はい」

 

 恐る恐るといった感じで1人の少女が入って来た。

 それは俺が知っているモンスター、リチュア・エリアルだった。

 

「この子はエリアルと言います」

 

「この子は森の中で倒れており、重症をおっていました」

 

「治療を行い傷は癒えたのですが、記憶喪失のようでして自分の名前以外何も覚えていないのです」

 

「また、人見知りでして。私以外の方には心を開いておらず」

 

「年が近い皆様となら打ち解ける事が出来るかも知れないと思い、この場に連れてきたのです」

 

「迷惑ばかり掛けて……ごめんなさい」

 

「気にしないでください。記憶喪失で不安なのは理解しています」

 

 リチュア・エリアルか。

 端末世界では死んで操られて復活したイメージしかないな。

 本筋にそこまで絡んでこなかったし、復活と操られてたのは後付けみたいなもんだから仕方ないか。

 正直、生きているときも死体の時も、都合のいい駒として利用されていたんだよな。

 

「私セームベル、よろしくね」

 

「プノだよ〜」

 

「未来だ」

 

「よろしく、お願いします」

 

 

 

 

 

「ふーん、エリアルちゃんは名前以外は何も覚えてないんだ」

 

「デュエルの知識も忘れちゃうなんて、可哀想だね〜」

 

「うん、今必死で覚えてる所なんだ」

 

「デッキは持ってるの?」

 

「持ってない。カードはこの町で貰った数枚しか持ってないんだ」

 

「すみません。もっと与えてあげたかったのですが」

 

「町の人たちは何も悪くないよ」

 

「……ねぇ、おじさん。私の時みたいにエリアルちゃんにカードあげれないの?」

 

「そうしたいのは山々だが、俺の意志じゃあ無理なんだよな」

 

 あれはあくまでカードが持ち主を選んだだけだけだからな。

 思ってると俺のデッキから何十枚かのカードが飛び出してきた。

 

「どうやらこのカードはエリアルに使って欲しいみたいだ。やるよ」

 

「へっ! い、いいんですか。貴方のデッキのカードですよ」

 

「あぁ、多分使わないカードだからな」

 

「えっと……ありがとうございます」

 

 

「それで、どんなカードを貰ったの〜。見せて〜」

 

「何このカード、真っ青だよ?」

 

「これは、儀式モンスターじゃないかな?」

 

 そう、エリアルに渡したカードは儀式関連のカードだった。

 ターミナル世界ではリチュアの儀式術を使ってたからその影響かな。

 まぁ、渡したカードはリチュアではなかったが。

 

「儀式……モンスター」

 

「そういえば、まだ儀式に関しては教えていなかったですね。儀式とは」

 

 パイプリーステスが儀式について説明している時も、エリアルは一身に儀式関連のカードを見ていた。

 

「どうしたの? ぼーとして」

 

「儀式関連のカードを見てると、何か思い出せそうな気がするんだ」

 

「え! エリアルちゃんは儀式と何か関係があるの」

 

「もしかしたら」

 

「私とした事が、もっと早く儀式の事を教えるべきでした」

 

「記憶を取り戻すヒントが見つかって良かったですね」

 

「じゃあ、取り敢えずデュエルしてみよう! そうすれば何か思い出せるかも知れないし」

 

「うん、そうだね。……お願いします。……えーと、お手柔らかにね」

 

「ダメダメ。デュエルはどんな時でも真剣勝負。一切、手加減はしないから覚悟してね! 行くよ」

 

 

 

「終焉の王・デミスでダイレクトアタック。……これで私の勝ちなのかな?」

 

「負けたー! フィールドのカードを全て破壊なんて反則だよ!」

 

「デュエルを覚えたて状態で中々やるね〜アルルン」

 

「アルルン。それって、私?」

 

「うん、かわいいでしょ〜」

 

「そうかな?」

 

「ねぇねぇ、今後は私とデュエルしようよ〜」

 

「それなら、僕も」

 

「ちょっと、私は一本勝負なんて言った覚えはないよ! 次も私がやるんだから」

 

「そういう事でしたら。余り強くはないですが私も、立候補してみます」

 

「プリーステスさんまで」

 

「それなら俺は邪神使いの事を町にいる人達に聞いてくるから。皆んなはそのまま楽しんでてくれ」

 

 そう言い、俺は家から出た。

 正直、楽しそうにデュエル姿を見てられなかった。

 

 

 

 

「あの人はデュエルが好きじゃないのかな?」

 

「そんな事無いと思うけど。たくさんカード持ってるし」

 

「でも、デュエルを見ていた時も複雑そうな顔でしたよ」

 

「そう言えば、おじさんはデュエルをしてる時もあんまり楽しそうじゃなかったかも」

 

「昔色々あったのかもね〜」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。