超人は龍の護りし星を舞う (蒼葵銀牙)
しおりを挟む

プロローグ 〜光の国〜

まだ、すべてが始まるには時間がある だが、それも少しだけ……
さあ、いそがなければ


「ゼロっ!」

赤と青の体躯の少年。その後ろ姿に、父親であるウルトラセブンが声をかけた。

「親父?どうしたんだよ」

「もう、行くのか?」

ゼロはうなずいた。宇宙を超えることができる彼は、これまでに多くの宇宙を救ってきた。そして今、また他の宇宙を救いに行こうとしている。

「あのノアが、わざわざ向こうで必要になる道具まで創って、俺に救えと言った宇宙だ 早くいかねえと」

その金色の瞳に迷いはない。

そうか、とセブンはうなずいて、

「俺も行く 許可はゾフィーからもぎとった」

そう言い放った。

「は?……いやいや、親父が来てど何すんだよ 向こうじゃうかつに変身できないらしいぜ?ノアが言ってた」

戸惑うゼロに、セブンは不敵に笑って、

「知っている 必要なのは、これじゃないのか?」

ひらり、と見せたのは、一枚のカード。ゼロがセブンに怪訝な顔を向ける。

「なぜ持っている、とでも言いたげだな これはお前が生まれるより昔に他の宇宙から飛来したものだ お前がまた旅立つ、と決めてすぐ、俺が選ばれた」

お前だけじゃ、だめみたいだぞ きっと、セブンはそう言っているのだろう。

(まあ、話し相手ができるのはありがたいか……親父なら、何かあっても頼れるしな)

だからゼロはうなずいた。

「わかったよ、頼りにしてるからな、親父!」

「ああ、任せておけ!」

 

ゼロは、やはりこれもノアからもらったものである、ウルティメイトイージスを起動する。これがあるからこそ、ゼロは宇宙と宇宙を移動できるのだ。

いつもなら一人分で済ませるエネルギーを、今回はセブンの分のために多く取り出す。

これで、しばらくはここに戻ることすらできないほどのエネルギーが消費されるのだろう。

(まあ、どうでもいいけどな)

ノアが頼み込んでくるほどの案件なのだ、そう簡単に用事が済むことはないだろう。だから、しばらく戻れないくらい、どうってことはない。そう思って、ふっと笑う。

(やっぱり、親父がついてると安心感が違うな)

こんなに、まるで旅行にでも行こうとしているかのように、自分の心に余裕があるだなんて。

キラキラと、空間の中に不自然に空いた穴が輝く。さて、穴が小さくなる前に、いかなければ。

セブンを振り返ると、彼は穏やかに笑ってうなずいた。

「なんか……誰かと一緒に宇宙超えるのはじめてで、緊張する……」

「どうした、お前らしくもない 心配せずとも、俺がいる」

気づかない間に、手を繋がれていた。不思議と嫌な感じはしなかった。だから、その手をつないだまま、宇宙を超えた。セブンの驚いた顔が、面白かった。

 

「あれが、この宇宙の地球……」




というわけではじめましたが……正直完結する気がしない 頑張るけども
死ネタなら完結するんだけど、さすがにハピエンにしたいよあたしは……
まだいろいろ設定詰めてないんだよ、オリジナルボーンもタグつけたけどまだ煮詰まってないんだよ……

なので、読んでくださる皆さんによく助けを求めると思いますが、何卒ご容赦ください

はい、というわけで早速助けを求めます。
あたしは今、主役となるウルトラマンゼロはもちろん、ウルトラセブンをボーンファイターにしようと考えています。しかし、セブンのボーンが全く思いつきません。なにかいいのありませんか?ちなみに、ゼロはジャッカロープの予定です。が、本決定ではないので、変更もあるかもしれません。コメント欄以外ならどこからでもいいので、70親子のボーンについて、皆様のご意見お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ 〜地球〜

圭子さんの口調わからない……つうかわかる口調がない……マジンボーン見てたときあたしまだ小学生だったもん、おぼえてないの ごめんなさい

今回、時系列は プロローグ〜光の国〜 よりもあとになります


夏休みが開ける。

2学期の始まりは、学生にとって憂鬱な日の代表格だ。

「はあ〜……」

竜神翔悟は、何度目ともわからないため息をついた。幸い今日は午前中の始業式後、すぐに解散である。しかし、明日から普通に学校があるというだけで嫌になるのは、仕方ないことだ。

去年と変わることがなかった担任、圭子が教室に入ってきた。生徒の視線が自然とそちらに集まる。

「みんな、久しぶりね。実は、今学期からうちのクラスに転校生が来たの …入ってきていいいわよ〜」

転校生 その単語にざわつく教室に入ってきたのは、青みがかった銀髪に金色の目をした少年だった。

ついさっきまで騒がしくしていた生徒はピタリと動きを止め……先に声を発したのは、女子軍だった。

「イケメン!」

黄色い悲鳴が上がる。男子がその意見に反対できないほど、確かに彼の顔立ちは整っていた。キャアキャアと、女子が好奇の視線を人形のような美しい少年に向けた。

その原因である彼はその状況についていけないらしく、「は?え?」と目を白黒させている。

「えっと、自己紹介してもらえる?」

圭子が必死に場を動かす。コクリとうなずいて、少年は教壇の前に立った。

「俺は‘七星 零’ よろしくな!」

翔悟はその時、にっと笑った彼と目があった。気のせいか、とも思ったが、違う。その目が少し、細められた。

 

その、下校後。

早穂を待って校門の柱に背を預けていた翔悟の前で、カラン、と音がした。スマホに意識を向けていた翔悟が足元を見れば、そこには緑色の不思議な石が嵌め込まれた、ペンダントがあった。周りを見ると、転校生の彼がいる。

「なあ、えっと……七星、だよな?これ、あんたのやつ?」

振り返った彼が翔悟の手元を見て、ぱあ、と表情を明るくする。

「うわあ、落としてたのか、俺!これ大事なものなんだ えっと」

零が翔悟の名前を教えてもらいたがっていることを察する。

「オレ、竜神翔悟 同じクラスの」

そう言えば、零は「ビンゴッ」と声を上げて、

「ありがとな、翔悟!……地球の核、ドラゴンボーンの、適合者」

「なっ……!?」

目を見開く。なぜ、知っているのだろう、今日あったばかりの、同い年の少年が。

「なんなんだ、あんた……!」

「ダイジョーブ、少なくとも翔悟の敵じゃねえから」

そう言って彼は笑ってひらりと背を向けて、少し歩いてからまたこちらを振り返った。

「そうだ、俺のことは呼び捨てでいいからな!じゃーな!」

また明日 言い残して、今度こそ彼は走り去った。

 

「……もしもし、ルーク?」

「翔悟か。久しぶりだな、どうかしたか?」

「えっとさ、相談?なんだけど……」




お察しの通り、七星零はゼロです、はい
諸星でも良かったんだけど、あたしがすきなんだよねえこの名前

あの、「こいつの口調はこうじゃない、こうだ!」みたいなのがあったら、どんどん教えてください 正直私もわからなすぎて困っているので……

では、無事続けば、また


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

始業式より帰還しました

今更ですが、(すいません書き忘れてた)マジンボーンは本編終了後のつもり、ウルトラマンはゼロの年が判明した時点から約300年後想定です

今回は特に何も起こりません。ほぼ70親子、最後に少し翔悟がいます


「親父、帰ったぜ〜」

零は、豪邸と言っても差し支えない規模の自宅の玄関を開けた。セブン(現在は諸星ダン)曰く、「ゼロについていくと言ったら、なぜかニコニコした大隊長に拠点代として大金を渡された上、断ることができない雰囲気だった」らしい。家は現金で即購入したものだ。不動産屋の社員の驚愕の顔は今でも思い出せる。

少しして、リビングの方からダンの返事が聞こえた。昼食を作っているのだろう。人間に擬態しているだけのウルトラマンである二人に食事は必要ではない。しかし、このどこの宇宙の地球にも必ずある文化が、二人は好きだった。

自分の部屋に荷物をおいて、ダンのいる場所に行く。

「今日、何?」

「オムライス 前にエースが教えてくれたんだ」

言いながら、ダンはケチャップライスを器用にたまごでくるみ、皿に乗せる。おお、とゼロは声をあげた。

「この前の夜中にめっちゃ練習してたやつじゃねえか」

「なあっ!?み、見ていたのか!?」

思わず、ダンは零を見る。その拍子に、2つ目のたまごが破れてしまった。

「あっ……きれいな方を、やる」

悔しそうに、ダンはきれいにできた方のオムライスを零の席においた。サンキュ、と言いながら、席につく。

「いただきます」

 

「ごちそうさま!親父、料理うまくなったよな〜 あ、そうだ」

「?どうした?」

スプーンをおいて、学校で出会った彼の話をする。

「見つけたぜ、この地球の核、ドラゴンボーンの適合者‘竜神翔悟’ それも運良く同じクラスだ」

「ほう」

「ノリでお前の正体知ってるぜ的なこと言っちまったけど、いいよな?」

「ほう……ほう?……よくない、それはよくない……!」

零の言葉に、唖然とする。

「警戒されること間違い無しじゃないか!」

そう言えば、零はキョトンとして、

「別にいいだろ。どうせ俺達敵じゃねえし、宇宙人ってバレたとしてもあいつらにはすでに耐性ついてんじゃねーの?」

そうだが、そうじゃない ダンはため息をついた。

「まあ、言ってしまったことはしかたない 彼と、いい友人になる努力をしてくれ」

そうすれば、少しは状況も改善するだろうから

零は笑ってうなずいた。

「もとよりそのつもりだぜ!」

(……だったら、そんな仲をこじらせるようなマネはしないでほしかったんだがなあ)

零に、ダンは苦笑いで返した。

 

 

竜神家。

翔悟は、部屋で電話をしていた。相手は、シャークボーンの適合者、ルーク。

『その彼はたしかに、きみをドラゴンボーンの適合者、と呼んだのだな?』

「ああ。というか他に間違えようがないだろ」

『そうだな』

見えないけれど、きっとルークは画面の向こうでうなずいている。カリカリとなっているのはペンだろうか。

「あと、敵じゃないって」

『……敵じゃない、か……まるで、敵が存在するかのような物言いだな』

「たしかにそうだ」

彼は、零と名乗ったあの転入生は、一体何者なのだろう。考えるのは、得意ではない。翔悟は、座っていたベッドに、ボフッと音を立てて、寝転がった。

『こちらで少し調べてみる 近いうちに君のうちにおじゃまするぞ、翔悟』

「ん わかった、ありがとな」




零「あ、親父、ごめんあのペンダント一回落としちまった 壊れちゃいねえと思うけど、わりい、せっかくおやじがくれたのに」
ダン「……気にするな」(おそろいペンダント、落とされた……(´・ω・`)ショボーン)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

不思議な転入生

今日もこれと言ったことは起こりません 強いて言えば、話を進めるのに必要最低限のメンバーが揃うくらいです。


次の日、高校への登校中。「おはよう!」と早穂と翔悟のうしろから声をかけてきたのは零だった。

「昨日ぶりだな、翔悟!そっちの君は?」

「はじめまして、早穂です 七星零くんですよね、転入生の」

「おう」

簡単な挨拶を済ませた零は二人を交互に見て、それから翔悟に

「彼女?」

だなんて聞くから早穂と二人で吹き出してしまって、それから慌てて否定したけれど零はニヤニヤするだけで。

「じゃ、俺は先に」

おまけにそんなことを言って走り去ってしまったものだから、二人の間の空気は変なものになった。

「アレが零くんかあ……ほんとにイケメンだね〜 なんか、王子様みたい」

そういう早穂の顔が輝いていたのは、少し悔しかったけれど。

 

零はどうやら頭もいいらしい。先生の指名を受けて、次々と問題を解いていった。サラサラと黒板の上を滑るチョークが文字を紡ぐさまは、もはや芸術である。

昼には彼の方から翔悟に話しかけてきた。

「翔悟!一緒に弁当食ってもいいか?」

「え?お、おう」

昨日のこともあったけれど、その屈託のない笑みには勝てなかった。

彼のおべんとうはなかなかきれいで、「母さんが作ってくれるのか?」と聞けば、「いや、親父が作ってくれた」と答え、おふくろはいないんだ、と言う。少し前まで自分の家が似たような状況だったこともあり、それ以上の詮索はやめた。一連の流れで彼には全く悪意がないことも感じ取れたため、少しづつ、普通の友人のように接するようにしていく。

「零ってさ、頭いいんだな」

「そうか?」

首を傾げられたので、ノートを見せてもらった。新品のノートには読みやすい、でも何かちょっと違う気がしなくもない日本語がびっしりと書かれていた。

その隙間隙間に、見慣れない、文字のような、記号のようなものが書かれていた。

「なあ零、これなんだ?」

尋ねれば、一瞬彼はぴしりと動きを止めて、それから、

「えーと、えーっと、その……ら、落書きだ!」

「……ふうん」

うろたえたのは、その‘落書き’がバレたせいだろうか。しかしこれは一体何なのだろう。考えている間に予鈴がなったので、考えるのはやめざるを得なかった。

 

(こんなこともあるんだな……これからはノートに光の国の言葉でメモをとるのはやめとこう……)

零は固く心にちかった。

 

 

 

翔悟が家に帰ると、久々にかつての仲間たちが集まっていた。

「あ、ショーゴおかえり!」

まっさきに彼に気がついて手を振ったのは、アントニオだった。それにつられてこちらを見て、仏頂面のままでいつのがギルバート、わらって「お邪魔してます」と律儀に挨拶をするのがタイロン、素知らぬ顔で黙々とアイスを食べているのが、我らがリーダー・ルークである。

「みんな来てたんだ 近いうちにっていうのは昨日ルークから聞いてたけど、早かったな 近いうちにっつーか、すぐじゃん」

苦笑いして、自分も座る。

「……昨日、君が言っていた彼だが」

唐突にルークが口を開いた。

「七星零、という名前は、ボーン研究所が所有するリストの中にはない さらに、君が言っていた彼の特徴なら、それこそインターネット上に出回っているのではとも思ったが、それもごく最近の、ここ2日くらいのものしかない」

ピリ、と緊張が走る。

とそのとき、翔悟の姉、智子が部屋に顔を出した。

「翔悟?友達が来てるわよ」

「友達?」

今日は誰も来る予定ではなかったはずだが。

その‘友達’は智子の後ろから顔をのぞかせた。

「よう、翔悟!早穂ちゃんにここ教えてもらえたから来たぜ!」

それは、

「……零?」




意見、ください。いいんですよ、どんなことでも。
とりま、親子のボーンどうしよう問題を片付けないといけないので、皆さん力を貸してください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これから、始まる

今までよりは長いです、時間があったので。
今回、初めてのの戦闘になります。うまくはないですが、頑張ったので温かい目で見てくださると嬉しいです。


にこ、と笑って現れた零に、翔悟は驚きを隠せない。智子は「ごゆっくり」と言ってこの場を去った

「零?……それは、君が言っていた彼か?」

尋ねるルークに翔悟はコクリとうなずく。そうすると零はなにか気づいたように「すげえ」とつぶやいた。

「え?」

「はは!地球を救ったボーンファイター5人揃ってる!すげえ!」

その顔はとことん無邪気だ。純粋な、興味の、驚きの塊。

「シャークボーンのルーク、ジャガーボーンのアントニオ、レオボーンのギルバート、ライノーボーンのタイロン!」

すごいすごい、と言いながら次々に名前を言い当てる零を見て、シャークは怪訝な顔をする。

「君は、一体……」

それに目をぱちくりと瞬いて、

「七星零 翔悟から聞いてるんじゃねえの?」

その瞳は揺らがない。だからどうすればいいかわからなくて、取り敢えずうなずいた。

が、次の瞬間、どこか、そう離れていない場所から

 

ドオォォン

 

爆音が響いた。同時に、ネポスとの一件を終えてからすっかり沈黙していたボーンカードが輝きだす。

ハッとして、窓の外を見る。

(行かなければ)

去年の間についてしまった、癖。

「零、ここで待ってろ」

翔悟たち5人は、そう言って零一人を残し、外へと飛び出した。

 

 

「あ〜……まあ、ちょっと様子見てみるか」

置いてけぼりになった零はそうつぶやいて、窓からヒラリ、身を宙に踊らせた。

 

 

 

もしものために持っていたリベレーション・コクーンを展開し、爆音の発生源と向き合う。見覚えはないけれど、知っているものに似たものが、3つ

「……ボーンファイターだったか」

シャーク/ルークがそうつぶやいた。それをきっかけにしたのか、相手は何も言わず翔悟たちに襲いかかる。突然のことに戸惑いっていたせいで、そのタックルをドラゴン/翔悟はまともに食らってしまった。質量の大きい相手の、下敷きになる。

「うわあ!?」

「ドラゴン!!」

「何してるんですかあなた!」

レオ/ギルバートが前に出た。鋭いパンチはしかし、更に早い動きで受け止められてしまう。ギリ、と手首を握られて思わず呻くと、彼の手首を掴む腕にジャガー/アントニオのキックがはいり、レオは開放された。

「……ありがとうございます」

「おう!」

コクーンの下を、シャークが泳ぐ。が、突如押し上げられ、地上へと飛び出した。

「敵に水属性がいたか!」

呻く彼に敵は追撃を試みるが、後ろからライノー/タイロンに抑え込まれ、それは叶わなかった。

「すまない、助かった」

「気にしないでください」

ドラゴンは自身を押し倒した敵を蹴り上げ、立ち上がる。5人は中央に集まった。

「どうする?」

「今はひとりひとり相手をしているのでどうにかなっていますが……協力されると、厄介なことになりそうです」

そしてすでに、その‘厄介なこと’になりつつあることが見て取れる。敵もドラゴンたちと同じように集まった。

向き合う。

「……ボーン、回収スル」

敵の初めて発したその声を合図に、両方は激突した。数なら、こちらの方が。だが

「うわあ!?」

「ジャガー!」

最初に押し負けたのはジャガーだった。相手は、さっきドラゴンを押し倒したばかりのボーン。

「体格差を狙ってきたか!」

シャークが気づいた。レオは、コクーン内だとそれなりの質量になるから。他に比べて装甲の軽いジャガーは、簡単に吹き飛ばされ、ボディパーツをボーンクラッシュされた。そしてその上に乗られてしまえば、もう何もできない。

「考えてきましたね……」

それだと、自分は ライノーは構えて思考する。

思考してはいけなかったのかもしれない。考えているライノーの上から、レオのパンチを手首を掴んで受け止めた、動きの早いボーンが躍りかかる。気配に気づいたときには、すでにその拳はすぐそこまで迫っていた。防御重視のライノーボーンは、動きがどうしても遅くなる。だから、それを防ぐことはできなかった。

「ぐああっ!」

ヘッドパーツ、ボーンクラッシュ。

敵の動きに抜け目はなかった。普段は重心が下の方にあるために決して崩れない、ライノーの姿勢。石化して重量が大きくなったヘッドパーツを蹴り飛ばせば、それはあっさり崩れた。

「いくら弱点を突かれたからといって、なんでこんな、あっさりボーンクラッシュだなんて……」

レオが驚愕する。

「それだけ、只者ではないということだろう」

それにシャークは答え、また潜る。

(あの3人の中で私の弱点となるのは、同族のみ)

ほかは、潜ってしまえさえすれば、防げるから。

それは正しかった。しかし、その同族からの攻撃は、防げなかった。

「な!?」

見えないところから、刃が飛んできた。とっさに顔をかばった腕がダメージを受ける。

「下か」

刃が飛んできたのは、そっちからのはず。けれど、何も見当たらない。違ったか?そう思ってあたりを見回すが、やはり何もない。

(……?)

1人首を傾げるシャークを、下からの衝撃が襲った。あっさりとレッグパーツがボーンクラッシュする。

(やはり下だったか!)

では、なぜ先程、何もないように見えたのか。ひとつだけ、可能性を思いついた。

「深海魚モデルのボーンだというのか!?」

シャークボーンのモデルであるサメが感じ得ないほど深くに居られては、そこにいても気づきようがない。

(ここにいても、何もできない)

地上に出るしかなかった。

コクーンのエリア内では、レオとドラゴンが必死の抵抗をしていた。すでに、ジャガーとライノーはうかつに動けない状態にまで追い込まれている。

重量のあるボーンの影に隠れた早い動きのボーンは、死角からの攻撃を繰り出す。それを防ぐ二人のボーンには、少しづつ、けれど着実にダメージが蓄積していた。

「くそっ!」

このままでは勝てない。どうすればいい。レアメタルボーンにはなれるだろうか、魔神は応えてくれるだろうか。

焦りが募る。

 

「やれやれ、仕方ねえなあ まあ頑張ったか」

 

そんな声が聞こえた。

 

 

コクーン内に、今までいなかったボーンが姿を表す。それはトン、と地面に降り立って、ドラゴンたちを攻撃していたボーンを真っ直ぐに見た。ただならぬ気配に、見られた方も攻撃の手を止め、新たなボーンに向き合う。

ドラゴンたちは、様子を見ている他ない。アレが敵なのか、味方なのかもわからないのだから。

「いくぜ?」

そのボーンはそう宣言して、床を蹴った。その拳が襲ったのは、重量のある方。

「!!」

斜め上から頭部を狙って繰り出されたそれ。食らったボーンは叩きつけられるように地に伏した。ボーンクラッシュしたのはヘッドパーツと咄嗟にそれをかばったライトアームパーツのみなのだが、中身の人間が気絶でもしたのだろうか。起き上がらない。

「!……キサマ、何者ダ?」

「何者だと思う?」

疑問に疑問で返しながら、宙に円を描くようにして回された脚が残ったボーンの体に蹴りを打ち込んだ。呻いて、弾け飛ぶ。壁に打ち付けられたそいつに更に一撃を浴びせれば、完全に沈黙した。2体を圧倒したそのボーンは、床に、否、床の向こうに話しかける。

「出てこいよ。お前の仲間はもう俺が倒しちまったぜ?」

挑発するような声音でそう言えば、あっさりとそれは姿を現した。しかしそこは、戦闘不能寸前の5人がいるところで。

「アッ」

やべ、と、さっきまで余裕をぶちかましていたそのボーンが、初めて焦りを見せる。

「いや、大丈夫」

そう言ったのは、ドラゴン。

「炎竜拳!!」

奇跡的にダメージを受けていなかったライトアームから、彼は己の必殺技を繰り出した。それをまともに受けた深海魚モデルのボーンは、ボディパーツをボーンクラッシュさせる。

「おお!ナイス!」

ドラゴンにやられたボーンを挑発した張本人であるボーンはグッと親指を立て、それから追撃をすれば、もうさっきまで5人が苦戦していた敵は残っていなかった。

 

 

コクーンを閉じ、元の場所に戻ってくる。そこには、最初の5人より1人増えた6人がいた。

増えた1人には、見覚えがある。

「七星零」

誰がつぶやいたのかはわからない。けれどそれに彼は おう! と応えて、

「な?敵じゃないって言っただろ、翔悟」




戦闘を書くのは楽しいけど難しい……
あれ、これゼロの無双にならない?大丈夫?次回から弱体化かな?でもどんなアニメもそんなもんだよね?
まだ!ゼロのボーン名出さずに頑張ったので!アイデア出すなら今のうちにお願いします!ほんっとうに悩んでるんで!まあ、次話には名前出すことになると思いますが……ちょっと数日書き溜めさせてください。はい、すいません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

少しだけ、教えてやるよ

書き溜めるって言ったのに投稿できちゃった。びっくりだよ。


「アイサポード、ピッグ、ウッドピッカー……うーん、どれも普通のボーンだなあ」

倒した3人のボーンカードを手に取り、零はつぶやく。それから彼は翔悟たちの方をもう一度振り返って、

「これ、もらっていいか?」

そう尋ねた。それにルークは首を横に振る。

「君の狙いがわからないのだから、そういうわけにはいかない それに、何故か君が知っているように、去年の出来事があってからのこれだ 何があるかわからない ボーン研究所に持っていきたい」

すると零は「まあそうだよなあ」と肩をすくめて、はい、とカードをルークに手渡した。

「……ずいぶんあっさり諦めるんですね」

ギルバートが少し驚いたように言う。

「まあな どうせ俺が持っていても大したことはできないし お前たちが持ってたほうがいいだろ」

ただし、と続ける。

「代わりと言っちゃなんだが、俺もボーン研究所に連れてってくんね?」

零はパン、と両手を合わせ、頼む!とでも言うようなポーズをルークに向けた。困惑する。

「なあルーク、いいんじゃねえの?」

固まった場を動かしたのはアントニオの言葉だった。

「オイラたちはさっきレイに助けられてんだし、本来アイツらを倒したレイが持っていていいボーンカードを譲ってくれてんだ 恩はでかいっしょ?」

うなずいて、タイロンが続ける。

「彼のことを知るいい機会にもなると思いますよ」

そうですね とギルバートも賛同した。

「何より研究所は僕らの本拠地です。彼が敵だとしても、うかつには動けませんよ」

ルークはそれを聞いて少し考え、そして そうだな と口元を緩めた。

「いいだろう 私達と一緒にボーン研究所に行こう」

「やた!サンキュ! いつ行くんだ?」

するとルークは何故か胸を張って、

(あ、やな予感が……)

そう感じる翔悟の思ったとおり彼が口にした日時は、

「今からだ!」

(知ってた)

ポカン、と口を開ける零と何故かドヤ顔のルークを見て、5人はため息をついた。

(こういうところあるんだよなあ、ルーク……)

 

 

「あ、もしもし、親父?」

連れて行ってもらう立場である手前、それはちょっと…… などとは言えず、零はダンに電話をかけた。

『零じゃないか どうかしたのか?』

「あー……あのさ、翔悟の仲間にさ、ボーン研究所に連れて行ってもらえることになったんだけどさ、」

『もうそこまでの友人関係を作ったのか?流石だな、ゼロ!それで、いつからいくんだ?』

「今からだって」

『……今?Now?』

「Yes,now」

零が流暢な英語で答えているのが聞こえたギルバートがギョッとして零を見た。が、気づかれない。

ダンが唖然とする様子が目に浮かんで、零は流石に申し訳無さを感じた。

「……親父、悪い 俺がもうちょっとうまく立ち回れればよかったんだけどよ……」

『いや、大丈夫だ 学校には俺が連絡しておこう 慣れない環境で体調を崩したようです、とでも言って』

「ん、サンキュ」

礼を言ってから電話を切って振り向けば、すでに研究所の方に連絡をしたらしいルークと、翔悟に呼ばれたらしい智恵がいた。

 

 

メルボルン研究所

表向きは製薬会社であるその施設の内部では、ダークボーンとの戦いが終わった今でも、本部・ロス研究所の下につく支部としてボーンの研究が行われている。

「おお、久しぶりだな!よく来たよく来た!」

そこを訪れた7人を出迎えたのは、メルボルン研究所の所長、東尾。

「君が、ルークの言っていた零か」

「お、おう」

研究所の職員と言われて思いつくイメージとかけ離れた様子の東尾に、多少おののく。

まあはいりなさい と促されて入った研究所を見て、零は おお と声を上げた。

(光の国の研究所とぜんぜん違ぇ!)

そんな心の声には誰も気づかないが。

あたりを見回して再び正面を向くと、そこには人の顔があった。驚いて一歩後ずさる。

「君が、七星零くんですねえ?」

瞳を輝かせる彼は、服装からして研究員のようだ。コクリとうなずく。

「君のボーンカード、見せてもらえません?」

「別にいいがよ……変なことすんなよ?」

ウンウンとうなずくその研究員に若干の不安を感じつつ、零は自分のボーンカードを手渡した。研究員は礼を言いながらすぐに背を向け、機会のほうへと走った。

「ああ、レナードさんに捕まったのか……」

「え?」

レナードとはあの研究員のことだろうか。翔悟の言葉に零は首を傾げた。

「あの人根は悪くないんだけどなあ……ボーンのことになると、ちょっと……」

「それ……俺のボーンカード無事なのか……?」

 

少しすると、レナードが零の元に戻ってきた。困ったような、何とも言えない顔をしている。

「どうかしたんですか」

彼らしくない ルークが声をかけた。

「ええ、零君のボーンカードなんですが……確かにこれはボーンなんです ボーン以外の何物でもない ですが、どうしても、このカードを生み出した魔神が誰なのか、わからないんですよお……おまけにマジン粒子も検出されないんです。代わりに、なんというか、光エネルギーのようなものをまとっているようなのですが……零君、これは一体何なんです!?」

話してしまえば、先ほどまでとは打って変わったようにレナードは元気を取り戻した。

翔悟たちにとっては、ガタっと音を立ててさっきまで座っていた席を立つ程度には衝撃の事実。それを、零は落ち着いて聞いていた。

「すげーな そこまでわかるんだ」

「……あなた、自分がどれだけ異質なのかわかってます?」

ギルバートが零をにらむ。零は 一応な とうなずいた。

「詳しいことは言えねえけど……」

前置きをしてから周りの人々ををぐるりと見渡す。周囲の目線はすべて零に注がれていた。

零は少し目をそらして、自分はどこまでなら話していいだろうかと考えて、小さくため息をついてから口を開いた。

 

 

俺は、別の宇宙から来た。この宇宙の地球がやばいかもしれねえって、ノアっつー神サマに言われたから。ノアは俺に、この宇宙で戦う術をくれた。というか、作ってくれたの方がいいか?まあ、それがそのボーンなんだよ。本来とは違う方法で生み出されたもんなんだから、イレギュラーで当たり前だわな。

そんでいろいろ調査した結果、今この地球には本来なら存在し得ないはずのボーンが現れていて、そいつらがいずれ良くないことを起こすってことまではわかってる。そのボーンについては言えねえかな……俺を見てればそのうちわかるんじゃねえかとは思うけど。あと、良くないことがどんなことなのかはわからねえけど、まあこの宇宙が滅びる危険は十分にあると思うぜ。ああ、慌てんなよ翔悟。そんなことにならないために、俺がわざわざあの気紛れ神サマの言うとおりにここまで来てんだからよ。

いや、神様に対して軽くないかって言われても、俺あいつにケッコー振り回されてっからな?恨み溜まってんの。

それと、この宇宙を守るためにはこの宇宙を知る必要があるだろ?だからなんやかんやして、この宇宙におけるボーンの役割やら、去年の地球とネポスの争いのことやら、その他諸々を調べたんだ。なんやかんやについては聞くな。その他諸々もな。

今話せるのはここまでかなあ、取り敢えず。おまえたちがこの宇宙を救いたくないわけはないと思うし、俺の邪魔をする理由はないと思ってる。だから、敵じゃない。もしお前たちが俺に協力してくれるなら、俺もできる限りのことをお前たちのためにする。そうなったら、敵じゃない、から、味方、になるな。

 

 

(あーあ、ちょっと話しすぎたか?親父に怒られっかなあ。親父のことは話さなかったけど……そういう問題じゃねぇんだろうなあ)

一通り話し終えて、各々の反応を待つ。

「……嘘を疑っているわけではありませんが、にわかには信じがたい話です」

困ったようにタイロンが言った。まあそうだろうなあ と思う。

「ですが」

(お?)

言葉を引き継いだギルバートの方を見た。

「今の話は、ボクたちを助けたあとに敵のボーンカードに向けて言っていた『どれも普通のボーンだなあ』につながるものがあります 更に言うと、話の所々を隠すのにも信憑性があるのではないですか?」

(ギルバート、丸くなったよなあ)

そう思いながら、翔悟も口を開く。

「たぶんこの中で零といちばん長い間……つってもそんな長くないけど、一緒にいたのってオレだと思う で、零が素直な性格なんだなっていうのは、割と会ってすぐにわかったし、今でもそう思ってる オレは零を信じるよ」

「オイラは助けてもらったときには悪い人じゃないって思った。勘だけど!」

それは僕もそうです とアントニオの言葉に賛同したのはタイロンだった。

「私もみんなと同意見だな 零ほど真っ直ぐな目を見たのは、翔悟についで二番目だ 協力するに値すると思う それに、万が一彼の言葉が嘘だったとしても、側にいればわかることだ」

「さすがルーク、リスクも考えてんだな でもレイを信じようぜ?」

「あくまで万が一の話だ 信じているさ」

あっさり信用されてしまったことに、零は目を見開く。その横で、東尾が笑っていた。

 

かくして、敵ではなかった彼は、味方になった。




……あれ?あれあれ?オリジナルボーンの名前、出なかったぞ?3,000字以上書いたのに……思ったより話が複雑になりそうでならなさそうででもきっとなるから怖い。
次は!ボーンの名前!出す!←これ次話の目標にします

Z「職務はまだでございますか〜」
ちょっと待ってね、ゼットくん。次話はきっとこのスペースで働いてもらうから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仲間

よし書けた!短いですよ!


ポカン、とダンが口を開けている。彼の驚いた顔を見るのは、この宇宙に来てから何度目になるだろうか。気まずくて、零は目の前の父親から目をそらした。

「取り敢えず、悪かった 翔悟たちに話しすぎたよな」

「そうだな、話しすぎたな」

「別の宇宙から来たとか言うべきじゃなかったよな」

「ああ もう少しわかりにくくして適当にごまかすべきだった」

はあ と零は反省と後悔を織り交ぜたため息をついた。やってしまったなあ と思う。

「マンが……いや、マンよりレオがいなくてよかったな」

零のその気持ちがわかっているからか、ダンの声が普段よりかなり優しくなっている。

「……マンは反省すれば許してくれるけど、師匠はそれだけじゃ許してくんねぇしな」

「お前……それがわかるほど怒られていたのか?」

呆れたような声音と言葉と裏腹に、ダンの表情は柔らかい。普段は強がりでなかなか自分の非を認めない零が、ゼロが、人の前で反省の様子を見せているのだ。成長したなあ と思えば、自然と笑みがこぼれた。

「……何見てんだよ、親父」

さて、適当な嘘でも考えるか、違うな、いつも思っていることでも言ってやろう その判断はコンマにも満たない一瞬。思考回路には、戦士として自信があった。

「いや、お前は可愛いなあと思ってな」

「なっっ……に言ってんだ親父!バカ!」

顔を真っ赤にする零を見て、思わず声を出して笑う。いつもは、俺すごいぜ!をアピールをしているくせに、こういう率直な褒め言葉には本当に耐性がない。零はバカを連呼しながらボカボカとダンを殴っている。こんな何にも考えていない攻撃、痛くも痒くもないのに。

(こういうところが可愛いんだけどなあ、わかってないんだろうなあ)

暗い気分が飛んでいっていることには、まだ気がついていない。

 

 

数日前、メルボルンのボーン研究所で自分の目的をところどころ隠しながらも明かした零は、翔悟たちボーンファイターと協力し合う、所謂仲間という関係を確立した。

「で、これが俺のボーン、《ジャッカロープボーン》だ ノアにどんなのがいいって聞かれてさ、思いついたのこれだったんだよ 地球の未確認生物なんだろ?」

ジャッカロープ、別名ツノウサギ。翔悟がスマホで検索すると、画面にはそう表示された。鹿の角が生えた兎のような生き物らしい。

「へえ〜、レイは可愛いのが好きなのか?」

翔悟のスマホを覗き込んだアントニオがそう聞くと、零は露骨に慌てた。

「べべべべ別に?可愛いのが好きなわけでも兎が好きなわけでもねえし?兎みたいなかわいいやつを戦わせるなんて気が引けると思っていい感じに強そうな角持ってたジャッカロープにしたわけじゃねえし?昔知り合いから聞いた話をたまたまそのタイミングで思い出しただけだし?3日間悩んだりしてねえし?」

まくしたてられた言葉にしばらく固まってしまって、それから よく口が回るなあ と思う。零の慌てようがあまりにもわかりやすくて、笑う気も起きなかった。

そのせいで少し場がフリーズしてしまって、零の「わかったな?」に対してうっかり全員首を横に振ってしまったものだから、更に長い言い訳を聞く羽目になったのだけれど。

 

 

 

「零、おはよう」

「ん?ああ、おはよう!」

あの時とは違って、翔悟の方から零に話しかける。最近部活が忙しいらしく、いつも翔悟と登校する早穂は今日いなかった。

零がボーンファイターであるとわかったあの一件以降、正体のわからないボーンの使い手は現れていなかった。

「嵐の前の静けさ、なんだろうけどよ」

零は言って、

「でも、なんにもなくて、やばいボーンだけ回収できたらいいよな」

そうこたえる翔悟の方を見た。

「なんにもないで済むところに俺はいねえよ」

「何そのかっこつけたやつ」

「っるせー」

ぷう、と子供のように頬をふくらませる零に翔悟は吹き出す。

初め、なんだか大人びて、近寄りがたかった気がした零も中身は翔悟と同じくらいには子供で。それを知れたことがまるで、自分を仲間として認めてくれた証みたいな感じがして、翔悟は嬉しかった。

「なあ翔悟」

「何?」

「授業中に敵が来たとき、どうしてたんだ?」

零の問に翔悟は少し考えて、

「そもそも授業中にそんなことはあんまりなかったと思うけど……適当に仮病とか、サボりとか?あんまり覚えてななあ、それどころじゃなかったし」

そっか と、納得したのかよくわからない声を零は発した。これ以上聞いてこないところを見るに、取り敢えずは納得したのだろう。路線を変えて会話は続く。

「でもさ、これから何回もそういう事あったらやばくねぇか?いつも俺達二人が一緒にいなくなるんだぜ?」

「あ〜……テストの点が取れればどうにかなる、と思う」

「お前テストの点取れるのかよ」

「うっ……」

ギクリとする翔悟が面白くて、零は笑った。

「帰ったら自習だな 俺もやる」

これを断ったらきっと、あとから痛い目を見るのだろう。断るに断れない翔悟の肩を、零は楽しそうに叩いた。




2,000字弱って少ないですかね……日を開けたら放置してしまいそうなので短くてもほぼ毎日投稿しようと思っていたのですが、ペース落とすかも知れません
そういえば、マジンボーンにペガサスはいないんでしたっけ おかしいな、すごい出そうなのに

そして新コーナーどうぞ

「はじめまして!自分の名前はウルトラマンゼットだと申し上げます!今回よりこの作品に登場するオリジナルボーンの解説を行う職務をくださいました!
今回はゼロ師匠……ではなくて七星零師匠が使うボーンを説明します!
零師匠が使うジャッカロープボーンは主に銀色の体色だそうです 属性はなく、あえて言うなら光だというそうです! 足の力がウルトラ強いのが特徴で、2本の角はスラッガーのように投げたりできるんだと聞き申しました!
今回はここまで!まだまだ言い足りないけど、それは後日延長戦として行うことをするかもしれません!
それじゃあ、また会いましょう!」

正しい日本語は難しいけど、間違った日本語わざと使うのも難しいよね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1つ目に見つけた捜し物

感想見ながらニヤニヤしてたらアイデアが湧いた やったね


「ショーゴー!あれ?レイもいるじゃん!」

バァン! と音を立ててアントニオが竜神家の居間の戸を開く。彼の前には、涙目の翔悟と彼に勉強を教えているらしい零がいた。

「よう、アントニオ」

片手を上げて零がこたえる。それとほぼ同時に翔悟がパタン、と後ろに倒れた。

「あ゛〜!もう、わっかんねぇよ、一年内容ここで出してくるか!?」

「お前……これそんなに難しいか?」

「なんで零は教科書読んだだけで分かるんだ!」

「教科書ってのはなるだけ簡単に書いてるんだぜ?」

(これオイラいないほうがいいかなあ〜)

自分は勉強さっぱりだし そう思って踵を返そうとすると、さっきまで自分の背後だった正面には、タイロンがいた。

「のわあ!?びっくりしたあ!」

「あっ……すいません、アントニオ君 驚かせるつもりはなかったんですが」

すると倒れたままだった翔悟がバッと体を起こして、

「タイロン!お願い、勉強教えて!」

そう言えば、タイロンは嬉しそうに返事をして二人の隣に腰を下ろした。

 

少しして、ルークやギルバートもやってきた。

問題集を前に唸る翔悟をバカにしたギルバートはしかし零に提示された問題を解けず、アントニオに笑われた。

「ううっ……零、あなた鬼畜ですか?」

「えっ?何がだよ、普通だろ」

それは13,4歳のギルバートには厳しすぎ、ルークがアイスのスプーンをおいて考え込むほどの難問で、それを悩むことなくあっさりと解いた零は紛うことなき天才なのだろう。そう思ってどんな勉強をしているのか、と聞けば、宿題以上のことは故郷でも今でもしていないと答える。

「なんか、先生にはなんで博士課程に行かないんだって毎日のように聞かれたけどな 俺そんな頭よくねえんだけど……」

それは故郷の話らしい。けれど話を聞く限りだと、博士課程へ進むための基準は地球と大差ないようだ。

「これが天才か……」

思わずつぶやく翔悟を零が不思議そうに見ていた。

 

 

ルークが3つ目のアイスを食べ終わり、翔悟が問題集を1単元終わらせたとき、ボーンカードが光を放った。どうやら、またあのときのような敵が現れたようだ。それにしても

「タイミングいいな!?」

誰も大して困らない、最高の数瞬じゃないか 全員がそう思った。偶然であることがわかっていても、ちょっとありがたいな、などと考える。

「さて、せっかくナイスタイミングでお出まししてくれたんだ。全力で応えてやらねえとなあ?」

ニヤリと笑う零の言葉を合図にして、6人は敵のもとへと走り出した。

 

 

今回の敵は、山奥に現れたようだ。幸い、近くに民家は見当たらない。

そこにいたのは二体のボーン。それらが、あるいはどちらかが、探していたボーンだったのだろうか、零が「おっ」と声を上げた。

「こいつ倒したら、ボーンカードはくれよ」

「最終的に君に渡すのは構わないが、先に研究所に持っていくことになるだろうな 何より、まずは彼らを倒せるかどうかだ」

「何いってんだ、余裕だろ?」

その言葉には答えずに、ルークはアミュレットのボタンを押した。

 

カツン、と足音が響く。6人は外を向いて円形に並んだ。敵の姿が見えない。気配からすると、少なくとも一体はきっと、コクーンのエリア外を泳いでいるのだろう。そのことに気づいたシャークはすぐに潜った。

「……動きましょう 隠れているとしたら、このままだと時間がすぎるばかりになってしまいます」

ギルバートの言葉にうなずいて、残っていた5人は散開した。

ジャッカロープはコクーンの壁を背にし、後ろから回り込まれることがないような体制を作ってからあたりを見回した。硬い床の下に気配を感じる。シャークと、敵のものだ。しかし、エリア内のどこにも敵の気配がない。

(気配消してんのか?)

仕方がない、こうなったら捨て身だ ジャッカロープボーンの特徴とも言える強い脚力をフル活用して真上に飛び上がれば、体は天井に触れられるほど高い位置にあった。重力にしたがって落下する前に、急いで周りを見渡す。そして、不自然な影を見つけた。あれは、と思うと同時に目があった。

「みつけた!」

膝を使って落下した衝撃を緩和しながら、ジャッカロープはそう言ってもう一度跳ねる。

「っらあ!」

渾身の蹴りを放った足の下を、敵はくぐり抜ける。

「うそーん」

「どんまいっと!」

ショックを受ける彼の上から、ジャガーが体当たりをするように降ってきた。きっと、跳躍するジャッカロープに気づいて、彼が目指していた菱形のブロックの上に先にいたのだろう。

流石に反応できなかったらしい敵はそのまま床に叩きつけられる。

「うし、これで一体!……んん?」

ジャガーはガッツポーズをして、それから、変だな と思う。敵がヘッドパーツを、否、そこに生えた2本の角をジャガーのボディーに押し付けたのだ。

(何がしたいんだ?)

そう思うのと、彼を衝撃が襲うのは同時だった。なすすべもなく、吹き飛ばされてしまう。

ボディーパーツがボーンクラッシュした。

「オイラこの前も似たことあったよねえ!?」

そんな悲痛な声を上げるジャガーから、ライノーは目をそらした。

「はは、すげえ!ゴモラ超振動波じゃねえか!」

それには目もくれないのは、ジャッカロープ。

「こいつが、ジャッカロープが探してたボーン?」

尋ねるドラゴンは臨戦態勢をとっている。

「あくまでそのうちの一つだけどな こいつは、まあ言うとしたら、ゴモラボーンだろうな」

うなずいて答えると、彼も腰を落として構えた。

「それについて詳しく聞きたいところではあるんですが……教えてくれないんでしょう?」

「わりいな」

ため息をつくレオに一応は謝っておく。

ゴモラボーンが脚を踏み鳴らす。その右腕には赤い鞭のようなものが現れていた。

ハッとする間もなく、それが振るわれる。先程の超振動波よりも威力は落ちるらしくボーンクラッシュとまではいかなかったが、それでもかなりのダメージを受けていることは嫌でもわかった。

「あれは、大回転打、だよな そこまでできるのかよ……」

チッ と、ジャッカロープは舌打ちをした。

(味方たなら頼もしいが、敵となると厄介なもんだな)

けれどのんびり考えている暇はない。すぐに立ち上がって、ゴモラボーンを見据えた。

ふと、シャークの気配がすぐそこにあるのを感じた。ゴモラボーンもそれに気がついているようだが、隠れていたせいでシャークの姿を見ていない彼は、自分の下にまさか水属性の敵がいるなどとは思っていなかったのだろう。ゴモラボーンがシャークの姿を認識したとき、その目の前には手刀が迫っていた。

バイザー部分に攻撃を受け、思わず後退する。

「シャーク、もう一体は!?」

ゴモラボーンといた、もう一体。

「私1人で倒せる強さだった」

倒したのか、と安堵の雰囲気が漂う。ときに慢心を生むそれは今、適度に6人をリラックスさせた。

負ける気がしない、と思える。負けるはずがない、と感じる。

だから、勝てる。

再びその鞭を振るおうとするゴモラボーンにジャガーが足払いを掛け、バランスを崩し隙ができた相手の動きをライノーが封じ込める。鞭はシャークが切り落とした。すげえ と声が漏れたのも無理はないだろう。

どうにかゴモラボーンがライノーの拘束を逃れたとき、既にそのボディーパーツにはドラゴンとジャッカロープ、二人の拳がめり込んでいた。更には援助攻撃も飛んでくる。

「これで終わりだ!」

苦戦するかに思われたその戦いは、ちょっとしたことからあっという間の決着となった。

 

 

「これが、零の探していたボーン……」

そのカードを拾い上げたのは翔悟だった。シャークが倒したフロウンダーボーンは、零の目的のものではなかったらしい。その零は、何故か地面を見ている。

「どうかしました?」

タイロンが声をかけると、彼は顔を上げた。

「いや……足跡がさ、7つしかねえんだよ ここにはさっきまで俺達とあいつら合計8人のボーンファイターがいたはずなのに」

この前はアスファルトの上だったから確かめようがなかっけど、と零は言う。ここは山の中だ。おまけに雨が降ったあとらしく、地面にはくっきり、足跡が残る。数えればそれは確かに7つしかない。一人分、足りないのだ。

「なんでだ?」

首を傾げて考えるが、情報量が少なすぎてわかるはずもない。また同じようなことがあったら考えよう、と決めて、その場をあとにした。

 

「あ、翔悟、帰ったら勉強の続きな お前マジでやばいんだもん」

「嘘だろ……」




ゴモラモチーフのボーンをあえて‘ゴモラボーン’と書いたのは、ゴモラそのものとの混同を避けるためです。これから怪獣をもとにしたボーンを出す際は、最後に ボーン をつけて書かせていただきます。翔悟たちのボーンにはつけません。

ゼロってファンの間で頭いい派と悪い派がわかれるよね〜 あたしは頭いい派なんだけど、全体の割合ってどんな感じなんだろう。


ゼットくん、お仕事ですよ〜
Z「こんにちわ!今日はまず、前に紹介している途中だったジャッカロープボーンの説明を続きから行うでございます
足の力がウルトラ強いジャッカロープボーンは、レオ師匠直伝のキック技を主に使っています ノアからもらってすぐだったときは力加減がウルトラ難しく、思ったように戦うことをするのはできないかったそうですが、今ではうまく使えているんだそうです

続いてゴモラモーンについて話します!
ゴモラの技を使うことができる、不思議なボーン だけど、なぜそれをすることができるかはまだわかっていないんでございます 頭にある角からはゴモラ超振動波を、右腕からは鞭を出して、大回転打のような攻撃をされることができます 属性は地属性だと思われると思います

今日はここまで!また今度お会いしていましょう!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勝てない

親馬鹿っていいよね


「親父、帰ったぜ」

「ん、おかえり」

あれから数日。まだ新たな敵は現れていない。

零はリビングのソファの上のダンの隣に腰掛け、学校での出来事を楽しそうに話した。

「でさ、翔悟が小テストで満点とったんだよ 珍しいことらしくて、先生も本人もめちゃくちゃビックリしてたんだ 点数わかったときの反応がマジで面白くてさ」

「ふふ、そうか…… 学校は、楽しめているようだな」

「おう!すげえ楽しいぜ あ、そうだ、翔悟で思い出した これの解析が終わったから、あいつが渡してくれたんだ」

そう言って取り出すのは、先日彼と仲間たちで倒した、ゴモラボーンのボーンカード。

「これで、3枚だな」

腰を上げて部屋を移動するダンを、零が追いかけた。

 

 

目的の部屋には、厳重なセキュリティが行われていた。虹彩認識をした上で、鍵を使って開けた隠し収納の中の端末にパスコードを入力する。

その先には、真っ白な空間が広がっていた。その中央に置かれたケースも、また厳重に守られている。光の国の言葉で示される3段階のステップを踏んで、ロックをを開けた

そこには、2枚のボーンカードがあった。そこに、零がゴモラボーンのボーンカードをおいた。

「ガンQ、キングジョー、そしてゴモラ……」

「一体あと何枚集めりゃいいんだろな」

はあ とため息をついた。

「でも、この2枚集めたのは親父だもんな まじで助かってるよ、2人でやっと3枚集まるのを、1人でやろうとしたらどうなっていたことか……」

素直に、しかも脈絡なく感謝を伝えられたことに照れてしまって、ダンは目をそらして零の頭をなでた。零は驚きこそしたものの、抵抗しない。

(今日は機嫌がいいな)

ダンはそう思いながら、零を連れてその部屋をあとにした。

 

 

「そういや、親父」

零は、ダンの膝の上から尋ねた。この体勢は、あのあと何故か零の機嫌が良かったために気を良くしたダンが言い出し、冷静になってもお互いやめようとは言い出せなかった結果である。

「何だ?」

「あの2枚回収したとき、あいつらとは戦ったって言ってたよな なんか不思議なことなかったか?」

「いや……特になかったと思うが……具体的には、どんなことだ?」

「例えば、あるはずの足跡がない、とか」

ふむ、とダンは考えて、首を横に振った。

「すまない、そこまでは見ていなかった しかし、どうして急にそんなことを」

「いや、この前さ……」

零はゴモラボーンのときの足跡のことを話した。話を聞いて、ダンはうなずく。

「そんなことが……わかった、次からは俺も注意しよう」

「頼むぜ」

そう言って、ダンの膝からピョン、と飛び降りた。ダンの名残惜しそうな声は無視をする。ダンの親馬鹿に付き合っていたらキリがないことはわかっているのだ。

「んじゃ、俺翔悟の家行ってくる」

「そうか……気をつけるんだぞ」

それに元気よく返事をして、ピグモンの刺繍が入ったカバンを持った零は家を出た。

 

 

翔悟を訪ねれば、彼は快く零を迎え入れる。既にアントニオらがいるらしく、部屋からはいつもの騒がしい声が聞こえた。

「……零か」

その中でいち早く零に気がついたのはルークだ。

「おう、ルーク ボーンカード、サンキュな」

「構わない 君には助けられている」

ルークの返答を聞いてから、智子が出してきたカステラを口に運ぶ。零が子供舌だと翔悟たちが知ったのはつい最近のことだ。甘党のルークとは気が合うらしく、2人での会話が増えている。あそこのパフェが美味しいだの、どこどこの広場には何曜日にドーナツ屋が来るだの、一体どこの女子だろうか。

あ と思いだしたように零が声を上げた。

「ゴモラボーン、なんか変なトコあったか?」

「ああ、それについてなんだが……」

翔悟たちの視線がルークに集まる。

 

あのボーンには私達のボーンと同じように属性がある。が、マジン粒子がない おそらく、何者かがボーンを真似て作った模造品なのだろう。……まあ、構造は普通のボーンと同じようだから、呼称は他と同じようになるんだがな。極めて緻密に再現されているようで、ボーンカードの大きさ、重さまでもが私達の知るものと全く同じのようだ。だが、そんな高度な技術、地球どころかネポスにもない。

 

(やっぱり、この宇宙のものじゃないのか……?)

零は考えるが、手掛かりのなさに思考は諦めざるを得なかった。

「ん〜……まあ、今はいいか」

とりあえず、今はあのよくわからないボーンを集めることに専念しよう 零はそう思って、テンションを切り替える。

「そーだ!翔悟、明日数学の小テストがあるの覚えてるか?」

「え……あっ忘れてた やっべぇ!」

慌てて教科書を取りに自分の部屋へ走る翔悟を、笑って見送る。

「そう言えば、零 あなたのボーンはどこまで僕たちのものと同じように再現されているんです?」

尋ねるギルバートを振り返って、ノアに言われたことを思い出す。

「強くなるかどうかは俺次第、らしい わかんないけど 始まりの魔神に作られてねえから、たぶんラインは使えない あの気紛れはそこまで面倒見ねえだろ」

「……つまり、今のあなたのボーンは、ホワイト状態、ということでしょうか」

ホワイト状態とは、ボーンの通常形態のことだ。よくわかっていない零にタイロンが説明する。

「レイ、いろいろ調べたっつってたけど、このことは知らなかったんだな〜」

そう言うアントニオに まあな と返す。

「それ、地球で言われてることだろ? ネポスメインで調べてたからな」

(あれ、ネポスにはないんですか?単に見逃していただけじゃ……)

タイロンはその言葉を飲み込んだ。

 

翔悟が教科書を持って降りてきたとき、ボーンカードが光りだした。

「……行こう」

ルークにうなずいて、6人はボーンが示す方へと進んだ。

 

 

そこは、市街地の中にある広場だった。たまたまだろうか、そこに人はいない。

「人が来る前に片付けなけないといけませんね」

ギルバートの言葉にうなずいて、ルークがアミュレットを起動した。

 

 

目の前には、一体のボーン。

黒の体躯に黄色の光が点滅を繰り返している。

ピポポポポポポポ……

「あ」

この音は、鳴き声は、

(知ってる)

そう思うのと、避けようのない距離に火球が迫るのは同時だった。

「ああああああっ!」

「ジャッカロープ!?」

ボディパーツがボーンクラッシュする。

「あいつ……ゼットン……!」

ジャッカロープが忌々しげにつぶやく。

攻撃を受けたジャッカロープに気を取られたライノーの前に突如、ついさっき火球を放ったそのボーンが現れた。

「は」

光線がライノーのレッグパーツを直撃し、そして簡単にボーンクラッシュしてしまう。

「はあああああ!!」

そこに仕掛けられたレオの攻撃は、当たることなく空を切った。おかしい そう思うと同時に、背後からヘッドパーツに衝撃を感じる。

「なんでっ!」

シャークが背後から仕掛けた奇襲は、バリアーによって防がれた。そのバリアーを避けて放たれたジャガーの拳が当たる前に、そのボーンは姿を消した。

「マジで?」

「瞬間移動……いや、テレポートか!」

「ゼットン……あいつは、ゼットンボーン、だ」

立ち上がったジャッカロープが言う。

ピポポポポ……ポポ

その頭がジャッカロープの方を向いて、それからテレポートで眼前に迫る。その脇をすり抜けて、ジャッカロープはヘッドパーツについた2本の角をブーメランのように投げた。

「これなら、どうだ!」

スラッガーを持つウルトラマンであるゼロに、零に、ジャッカロープにとって、それは自分の体も同然だ。器用に操り、ゼットンボーンの意表を突くような攻撃を次々に仕掛けた。投げた角の攻撃のうちいくつかは、狙ったように相手にぶつけることができた。しかし、それが大したダメージを与えているようには到底見えない。

「くそっ」

ゼットンボーンは、その攻撃を行うブーメランがジャッカロープのヘッドパーツの一部分であることに気がついたのだろうか。更にはきっと、さっきテレポートによる攻撃を防がれたことから学習したのだろう。立ち位置を変えないままに、光線を放つ。

ゼットンと言えば、瞬間移動

その考えに囚われていたジャッカロープは、その攻撃を避けきれなかった。ヘッドパーツに光線があたり、ボーンクラッシュする。

その場から動かないゼットンボーンに、ドラゴンが仕掛ける。必殺技であるその攻撃だが、技の名前を叫ぶ余裕はない。しかしそれはいとも簡単にバリアーで防がれた。更に、光弾による攻撃で、レフトアームパーツがボーンクラッシュした。咄嗟の判断で右腕を引けたのが、せめてもの救いだろうか。

次々に放たれる攻撃を、ゼットンボーンは難なく躱し、防ぐ。少しの間に、6人は追い込まれた。コアボーンはかろうじて無事であるものの、このままではコアボーンクラッシュは時間の問題であろう。

ジャッカロープは、ギリ、と歯を鳴らした。

(まずい……このままじゃ……)

このままでは、仲間たちが

(くそ、俺がもっと強ければ……)

ドラゴンたちのように、アイアンボーンの力があれば。

 

〘力が、ほしいか〙

 

声がした。真っ暗な意識の中に響く、へんに透明で、それでいて硬い声。

 

(……ああ、欲しい)

〘なんのために?〙

(あいつを、倒すために)

 

声が低く笑ったような気がした。ドロリ、と何かが纏わりつくような感覚に襲われる。

 

〘いいだろう、力をやる ただし、それをお前が扱えるとは思えんがな〙

 

意識が、闇の中に落ちた。




つ か れ た 何時間かかったかな、これだけ書くのに 続きが大変だよ 頑張らないと
ゼットンボーンの紹介は次回にさせてください。もう疲れた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戻ってこい

短いけど続き書けたの すごくない?


深く、深く、意識が沈んでいく。

初めは鬱陶しく感じていた体に纏わりつく闇には、いつからか心地よさを感じていた。

クツクツと、ナニかが笑っている。

自分が何をしていたのかも考えられなくなって、暗黒に身を任せた。

 

 

 

「う、あ、ああァァ……」

呻くような声を上げる。様子がおかしい そう思ってドラゴンはジャッカロープを見た。そしてハッとする。

回復しているボーンクラッシュしたはずのパーツ。閉じられたバイザー。言葉を形作らない声。なによりも、その体を覆う暗い紫色の揺らめくオーラ。

「暴走、してる……!?」

ドン、と床を蹴ったジャッカロープの拳が避けられることなくゼットンボーンに命中した。今までとは様子が違うジャッカロープにゼットンボーンが困惑しているのがわかる。

放たれたブーメランが慌てて張られたバリアーとゼットンボーンの隙間を縫い、ヘッドパーツをボーンクラッシュさせた。

ピポポポポポポポ……!?

焦ったような鳴き声がする。

「まずい、もう、時間が……」

ルークがアミュレットを見て言う。そのタイマーはそして、00:00を画面に写した。

 

コクーンが消える。

超重量のボーンを装着したまま地球の重力に耐えるのは難しい。既に戦える状態になかった5人が、着装を解く。

「……」

しかし、ジャッカロープはまだそこにいた。

遠心力を活用して回されたその脚が、ゼットンボーンのボディパーツにクリーンヒットした。しかし相手もまだ諦めてはいないらしい。火球を放つ。それの狙いは確かにジャッカロープのヘッドパーツに定められていた。が、ジャッカロープが振るった右腕によって、それはかき消える。ゼットンボーンがたじろいた。

もう一度、蹴り上げられた脚がボディパーツに当たる。暴走し、圧倒的な強さとなったジャッカロープの得意な足技を二度も食らってはボーンクラッシュは免れない。よろめいたところに入ったブーメランが残りのパーツを攻撃すれば、ゼットンボーンは完全にボーンクラッシュした。

ゼットンボーンの姿が消え、ボーンカードが残る。

(あれ?適合者いねえ?)

アントニオが疑問に思う。が、既にそれを口にする余裕はなかった。

対峙していた敵がいなくなったジャッカロープが振り返る。光のないその目の先には、翔悟たちがいる。暴走している彼にとって、相手が生身であろうが何であろうが、生命体は攻撃対象でしかない。

ジャッカロープは踏み出そうとして、動きを止めた。

 

 

翔悟たちとジャッカロープの間に、見知らぬボーンが割って入った。

「目を覚ませ!」

それが叫ぶ。しかし、その言葉の意味がわからなかったのだろうか。ジャッカロープは首を傾げ、そして跳ねた。

上から足技を仕掛けようとするジャッカロープを躱したそのボーンが、着地の瞬間を狙って足払いをかける。

避けきれずに転倒するジャッカロープをそれは抑え込んだ。こうなってはもう為す術もなくやられるしかない。

そう思ってか、有利になった謎のボーンがジャッカロープに声を掛けた。

「なぜお前はここにいる?何を為すべくここにいる?思い出せ!」

「あ……う、ぁ……ぐ、ぁあ……!」

苦しそうにもがく。瞳に光が戻りそうで、まだ戻らない。

 

「お前は、俺の息子だろう!!」

 

 

 

暗黒の中。よくわからないけれど、誰かが自分に呼びかけている。うるさい そう思うのに、必死なその声を無視することができない。誰なんだ? 確かめたいのに、纏わりつく闇がそれを許してくれない。

 

 

 

苦しげな声を上げながらも、ジャカロープはそのボーンを弾き飛ばして立ち上がった。

「が、ああぁ!」

投げられた2本のブーメラン。それの標的となったそのボーンの右手には、いつの間にか槍のようなものが握られている。その槍によってブーメランは弾かれた。

「戻ってこい」

槍が、ジャッカロープのボディに突き刺さる。中身が無事な程度に、細かな力加減で。

 

 

 

落ちていく意識の中に、ふわり、柔らかな光が降ってきた。闇が、消えていく。さっきより鮮明に声が聞こえた。

ナニかが、名残惜しげに、しかし穏やかに言う。

 

〘呼ばれているぞ……行けばいい〙

 

 

 

意識を失った零のボーンの着装が解かれる。彼を倒したボーンファイターも着装を解いた。現れたのは、零と同じ金の瞳を持ち、赤みがかった銀髪の男だった。彼は倒れている零を抱え、そして翔悟たちの方に歩み寄る。

「君が、竜神翔悟くんか」

「え、あ、はい、まあ」

そうか と男は微笑んだ。

「はじめまして 俺は諸星ダン、零の親父だ 息子が世話になっている」




Z「こんにちわ!今回は銀牙の気力の問題により、いきなりボーン紹介を行うんでございます!
今回紹介させていただいているのは、ゼットンボーン!空間属性のボーンなのです!属性の都合で、瞬間移動では無いて、テレポートをするという設定を行いました 技の数が他に比べてウルトラ多く、戦うのが難しい相手でございます!ピポポポポポ、という鳴き声を発するんだと伺っていました ウルトラ面白い鳴き声でございますね〜 今度師匠に真似して見せてみようとかしようかなあ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

償う

セブン(諸星ダン)が使うボーンが決定しました。意見をくださった皆様、ありがとうございました。
それから、これからは敵のボーンのことはダークボーンと表記させてください。表現が難しくて死にそうなんです。


意識を失った零は、メルボルン研究所に送られた。翔悟たちもそれについてきている。

余計な装飾の一切ない病室。規則正しく音を鳴らす機材。人工呼吸器をつけれられている零。その父親、ダンは片時も彼の側を離れようとしない。常に零の片手を握っていた。

「ダンさん」

それに、翔悟が話しかけた。

「ダンさんと零は、なんで名字が違うんですか?」

仮に親が離婚していたとしても、使う名字は親権を持つ方と同じになるはずで、零とダンの名字が違うのは不可解なのだ。そして今、苦しい沈黙を破る話題が思いつかなかった。

翔悟にダンは苦笑で返す。

「気にしないでくれ くだらない理由なんだ」

 

 

 

意識の奥深く。そこに差し込んでいる光をたどって、彼は暗黒から抜け出そうとしていた。さっきまで動きの邪魔をしていた、ドロリとする不快な闇はもうない。ただ、中途半端に落ちすぎた。自分がしていたことが、考える気力がなくて本能に従って動かしただけの体の記憶が、上にあがるほど蘇る。

 

俺は、何をした?

 

考えるのをやめなければ、わずかにでも本能に抵抗しすべてを受け入れられたかもしれない。

底の底まで落ちてしまえば、思い出すこともなかったかも知れない。

けれど、もう遅い。

彼は、知ってしまった。

 

 

 

「ぁ……」

零が目を開ける。

「零!!」

ダンが慌てて声をかける。零は何度か、ゆっくり目を瞬いて、父親の姿をみとめた。

「おや、じ」

ダンは頷いて少し微笑んだ。

少し目線をずらした零の目に、翔悟が、仲間たちが映る。

「っ……!!」

「零?どうかしたか?」

「え、あ……そうだ、おれ……みんな、を……」

こうげき、しようとした……?

突如、怯えているような様子を見せた零をダンは抱きしめ、彼の視界を覆った。研究員の1人、アンナが持ってきた鎮静剤を彼に打ち、もう一度眠らせる。

わけがわからない。そんな空気の中、目を伏せたダンが口を開く。

「……以前、零の仲間から聞いたことがある」

それは、彼の心に深い傷を残した出来事。悪意の塊とも言える存在に体の自由を奪われ、己の仲間を惨殺したという、絶望に満ちた事件。

「こいつは、それをもう一度繰り返すところだった」

 

 

 

それから、数日が経った。日本には帰ってきたものの、零は翔悟たちと会おうとしない。学校を休み、家に閉じこもっていた。事情を知っているダンはそれを咎めることができず、ただできるだけ刺激しないように彼に接した。

(このままじゃあ、だめなんだが……やはりきっかけがないとな)

ため息をついて、ダンは食事の用意ができたと零を呼んだ。

 

 

「ルーク、どうすればいいと思う?」

「……零のことか」

「うん」

あれから、5人は以前のときのようにはしゃげないでいた。出会ってから時間こそ経っていないものの、彼らの中には零を仲間だと思う気持ちが既に強くあった。

「オレも暴走したことはあったけど……それより前に零みたいな体験はなかったからさ どうすればいいんだろって」

ルークの手の中のアイスは、既に溶け出していた。

その時バン、と音を立てて戸を開け現れたのは、意外にもギルバートだった。そちらを見れば、タイロンとアントニオもいる。

「ショーゴ!ボーンカード光ってる!」

「!!ホントだ、今いく!」

自分を呼ぶアントニオに返事をして、ルークと顔を見合わせて立ち上がった。

 

 

ダンは、リビングでボーッとしていた。

自分は零に何ができるだろうか。どこまで彼の心に踏み込んでもいいだろうか。そんなことを考えていた。

ふと、自分のボーンカードが光っていること気がついた。

(いけない、急がなければ)

その時、携帯の着信音が鳴った。切るつもりで画面を見て、目を丸くする。ルークからだ。切るべきではない気がして、電話に出た。

『ダンさん?』

「どうかしたのか」

『ダンさんは、こないでください』

「は?」

どういうことだろう 顔の見えない話し相手は、言葉を探しているようだった。

『零の側にいてほしいんです 彼は私達の友人で、仲間です ですが今、彼を誰よりも理解し寄り添うことができるのは、貴方ですから』

プツリ、と電話を切られる。ダンはしばらくその場に固まって、それからもう何度目とも知れないため息をまた吐いた。ボーンカードは危機を知らせるのをやめ、ダンを後押しするように淡く輝いている。

フッと笑う。

「ありがとう」

さて、父親として、転んだままの息子を立ち上がらせなければ。

 

 

 

展開したコクーンの中に、8人のボーンファイターがいる。ドラゴンを中心とした5人に向き合う、3体のダークボーン。

「……さっさと、片付けなければいけませんね」

レオの言葉に頷いて、5人は駆け出した。

 

 

 

「入るぞ、零」

「……親父」

零はベッドの隅にいた。帰ってきてからずっとそうなのだ。ダンはその隣に腰を下ろして、なるだけ優しい声で話しかけた。

「……何を、考えていたんだ?」

零は三角座りの膝の間に顔を埋め、小さな声で答えた。

「これから、どうすればいいんだろうって」

ダンは黙ってそれを聞き、その言葉の続きを誘う。

「それで、俺……もう、仲間はいらないかなって 過去に一度仲間を手にかけて、もう二度と同じことにはしないって誓ったのに、俺は、また……」

でも と、かすれた零の声は続けた。

「なんか、そう決めたら、こう、心に穴が開いてるみたいな感じがして、何かが足りなくて 仲間なんてもう持つべきじゃないのに、昔みたいに、あの頃みたいにまた1人になるんだって思うと、動けなくて……ねえ親父、俺どうすればいいんだろう」

顔は見せてくれないけれど、すすり泣くような声が聞こえた。話したことで、感情が抑えきれなくなってしまったのだろう。

そんな零を、ダンはそっと抱き寄せた。どうやら彼の負の感情の原因の一端には、かつての自分の行動があるようだ そう思うと申し訳ない気持ちで一杯になって、ダンもしばらく動けないでいた。

けれどすぐに、それではいけないと思い直す。

「零」

腕の中の少年が、ピクリ、と体を震わせた。彼が聞いていることを確かめながら、ダンも言葉を紡ぐ。

「お前が仲間に選んだ彼らは、今のお前の考えを聞いたらなんて言うだろうな」

零は黙っている。

「絆とは、そんなものなのか? 彼らがお前に寄せる信頼はあんなことで容易くかき消えてしまうものなのか?」

「けど、俺はみんなを裏切った!」

未遂と言えど、それは彼の心に残る傷を抉り直すのには十分な出来事だった。

それでも、ダンは諭すように零に語りかけ続ける。

「……お前は、あの出来事を己が罪だと思うのか?」

零は、コクリと頷いた。

そうか とダンは呟いて

「なら、償わなければいけないな」

零が、顔を上げた。それにダンは優しく微笑む。

 

 

 

ガン、と音がする。発生源は、ライノーだった。彼が壁にぶつかるほどの強さで飛ばされたらしい。ドラゴンがライノーを助け起こす。

「大丈夫か?」

「ええ!……と言いたいところですが、そうでもないかも知れません ゼットンボーンとの戦いのときのダメージがかなりキツイですね……」

その横に、ジャガーが来る。様子からすると、一旦引いたようだ。敵に組み敷かれたレオのヘッドパーツがボーンクラッシュしたのが見えた。その敵の後ろからシャークが奇襲を仕掛け、レオからどうにかそれを引き剥がした。しかしその彼のヘッドパーツはすでにボーンクラッシュしている。

苦しそうにシャークが呟いた。

「ダンさんに助けを求めるわけにはいかないんだがな……」

 

 

 

少し驚いたような顔をした零に、ダンは言う。

「お前がプラズマスパークに手を出そうとしたときの罪は、お前が宇宙を救ったことで帳消しに、いやむしろプラスになったというのが警備隊内での一般論だ。では、仲間を裏切ろうとしてしまったお前は、どうやって罪を償えばいいんだろうな」

零は少しうつむいて考え込んで、それから わからない と首を振った。

「簡単なことだ」

至極優しい声でダンは言う。

「お前が傷つけそうになった彼らを、仲間を助けなさい そしてマイナスを埋めて、その上で、彼に償いの方法を求めなさい」

「え……」

「お前が思う償いをしたとしても、彼らがそれで納得するとは限らないだろう?」

零はしばらく唖然として、しばし考えてから力強く頷いて、それから立ち上がった。

「翔悟くんたちは戦っている たぶん、北の方だ お前とルークくんがお気に入りのドーナツ屋が来る、あの広場」

それに頷いて、零は階段を駆け下りていった。

それを見て、ダンは笑う。

「今は俺達は要らなそうだな なあ、《ノーウェルボーン》」




セブンがゼロを強く叱っているところが想像できなかった。のでこうなった。思ってたんと違う。まあいいでしょう、これ以上いろいろやるとあたしが身動き取れなくなっちゃうし。


Z「こんにちわ、ボーン紹介のコーナーを始めるのでございます!今回紹介するのは、ノーウェルボーン! 零師匠のお父様、諸星ダン師匠が使う地属性のボーンで、イッカクという地球の海に生きている動物がモチーフなのだそうです
ついこの前まではホワイト状態だったそうでありますが、零師匠の暴走を止めたいという気持ちだけでアイアンボーンになったそうです。ダン師匠、零師匠が本当に大事なんでございますね、素敵なことだととても思います!
そして、これはなにかの拍子に翔悟たちがいる宇宙からウルトラマンのいる宇宙に迷い込んでしまったボーンとしてあるため、通常のボーンとは特に違いがないんだと仰っておりました
また、ボーンに宿る意志は、零師匠を大切にするダン師匠の思いをよく察してくれるそうです いい、人?……い、いいボーンなんでございますね!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これからも

ルークが使いやすすぎる


ルークと、今度一緒に来よう、と約束した場所。そこに零はいた。この上空に、コクーンがある。

(俺は、この罪を償わなければいけない)

目を閉じて、息を吸った。

「着装!!」

目の前が、真っ暗になる。

 

 

 

〘久しいな いや、そうでもないか?〙

 

声がした。あのとき自分に語りかけたものと同じ声だ。姿は見えない。

 

〘また、力を求めに来たのか?〙

「そうだ」

〘あのときと同じ力か〙

「違う」

〘ほう?〙

 

少し面白そうに、声が笑った。そして尋ねる。

 

〘では、どんな力を、お前は求める?己が敵を圧倒する力ではなく、どんな力を?〙

 

望む力なら、決まっていた。もう決して、彼らを傷つけたくはなかったから。それこそ、罪を償うに相応しいものだと信じて。

 

「みんなを守るための力を 傷つけないための、力を」

 

また、声が笑った。そしてどこか安堵したような声で言った。

 

〘いいだろう、お前が望む力をお前にやる〙

 

意識が光に包まれた。温かいそれが、全身を駆け巡る。

 

〘お前を試させてもらった すまなかったな、ノアからの指示だったのだ ハア、アヤツは本当に……〙

 

(なんだよ あんた、あいつの被害者だったのか)

 

 

 

コクーンに現れたそのボーンは、ドラゴンに当たりそうだったダークボーンの腕を掴み蹴り飛ばした。

「え……ジャッカロープ……?」

それは確かにジャッカロープボーンだった。ただ、ドラゴンたちが知っているものとは違う。その銀色はより輝き、パーツの所々が鋭利になっているのだ。

「アイアンボーン、ですね……!」

ジャッカロープは前に飛び出す。その手の中に現れるブーメランは、彼の意志に従って今までよりも大きく、鋭くなる。ジャッカロープはそれをまるで剣のように構えた。

「あいつらを傷つけさせたりなんざ、させねえよ!」

2本の剣が、次々にダークボーンたちを切り裂く。

圧倒的な力を見せつけられ、敵は逆上したらしい。がむしゃらにジャッカロープへと襲いかる。

高速を誇るダークボーンが、背後からジャッカロープに迫る。しかしそれは振り向きざまの蹴りによって防がれた。そのまま吹き飛ばされ、ボーンクラッシュする。両手に毒針を携えたダークボーンは、死角からの斬撃でボーンクッシュさせられた。見えないところから次々に蔓を伸ばして遠隔攻撃を仕掛けていたダークボーンは、蔓を辿られて隠れていた場所を見つけられ、投げられた剣で沈黙した。

そしてもう、コクーンの中にダークボーンは残っていなかった。

 

 

「零!」

元の場所に戻ってきて、翔悟が彼に駆け寄った。零は振り向いて、そして少し俯いた。

「……俺は、一度みんなに刃を向けた それは、許されていいことじゃないと思ってる これは、俺の罪だ どうか俺に罰を与えて欲しい 罪を償わせて欲しい」

零の言葉に、翔悟は困ったような顔をする。後ろを見れば、仲間たちの反応は様々だ。

翔悟と同じように困ったような表情を浮かべるタイロン、おそらく零の言った意味がわかっていないのであろうアントニオ、相変わらず無表情なルーク、呆れてため息を吐いているギルバート。その中でもルークと目があった。彼は頷く。どうやら心の内は翔悟と変わらないらしい。

目の前の零は唇を噛んでいる。何を言われても受け止める覚悟があるようだ。

(なら、これしかないよな)

こういうことは得意ではないのだけれど 翔悟は言葉を選んで、深呼吸をした。

「それじゃあ、ひとつだけ」

零が言葉の続きを待つ。

 

「あれが罪だなんて思わないで、これからもオレ達の仲間でいてくれ」

 

あれ、これ2つかな なんて言う翔悟に、零は目を丸くした。

「は?」

思わず間の抜けた声が出た。なんで そんな単語が頭の中をぐるぐると回る。

「……翔悟、それ本気か?」

「もちろん」

ルークたちが近くによってくる。

「私達にとって、君はすでにかけがえのない仲間だ あんなことで君を責めようなどとは微塵も思わない それでも君が罰を望むなら、翔悟が言ったことで十分だろう」

「実際ボクらになにかしたならともかく、そういうわけでもありませんし 余計な迷惑かけようとしないでください」

微笑んでルークが言う。それをギルバートが目をそらして続けた。

「むしろオイラたちはレイに助けられてたしな!」

ようやく何が起きているのか理解したアントニオがニッと笑う。

「僕もみんなも、零君を心配こそすれど、罪を背負わせるだなんてことは望んでいませんよ」

穏やかに微笑んだタイロンが言う。

ポカン、と零は立ち尽くす。こんなことを言われるとは思ってもいなかった。少しして、涙が溢れてくる。

翔悟たちは少し驚いて顔を見合わせて、それから5人で思いっきり零を抱きしめた。

「ごめ、なさいっ……!ごめっ……!」

「違う違う、そういうときは謝るんじゃなくて、ありがとう、でいいんだぜ?」

笑ったアントニオがそう言うものだから、余計に涙はとまらなくなって。

「あり、がと……ありがと……う、わあああん!!」

 

 

陰からそれを撮影していたダンが泣き腫らした目の零に追いかけ回されるのは、もう少しあとの話。




零、1日で2回も泣かせてるね、ごめんね(愉しかったとは言えない)
今回ぶっ倒されたのは、退場した順にヘイレンボーン、ツインテールボーン、ボラジョボーンです まともに戦ってないので紹介はしません
Z「えっ出番……」
ので、零の名前の由来の紹介でもしようかな、と思います

Z 「よかった、出番あった……では、零師匠の名前の由来について紹介しようと思うです!
零師匠のフルネームは‘七星零(ななほしれい)’で、‘零’由来については皆も察することをしていらっしゃるのだと思いますが、ゼロ→0→零 が、由来となっているのでございます ‘七星’は、零師匠のお父様、‘ウルトラセブン’から、セブン→7→七 としたのと、セブン師匠が地球人に擬態した際の名字である‘諸星’から一文字もらっているのをくっつけてこうなったのでございます ですが、それだけではないというそうで、地球人が古来から方角を知ることに利用した北極星と呼ばれる星を探すことに用いられた‘北斗七星’という星の列なりの名前の後半2文字を頂いたことで作られることができた名字でもあるそうです
当初は零師匠の名字も‘諸星’とされる予定だったのだと言うそうですが、師匠が、コッチの方がかっこいい! として、変えられたのだと存じているでございます。師匠が自分を貫いて得ることとした名前……ウルトラかっこいいと思うですよ!」

余談
どの怪獣を使おっかなってなんとなくツインテール調べてたら、髪型のツインテールの由来はウルトラマンのツインテールだ、みたいなことを言ってるサイトがあったんですけど……ホントかなあ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

久しぶりだね!

良かれと思ってウルトラマン追加しまあす!今出さないとたぶんもうチャンスないかな、と
タイロンがうまく使えない


「はあ、はあ……」

零が息を切らせて座り込んでいる。その少し先では、涼しい顔をしたセブンが楽しそうにビデオカメラを眺めていた。

「親父、マジで、ふざけんじゃねえ……!」

「ふざけてなどいないさ ただお前の珍しい場面を記録していただけだ」

「それを!ふざけてるって、ゆーんだよ!」

「あ〜……ちょっといい?」

傍から見たら近づきたいと思えない状況にストップをかけたのは、アントニオだった。視線が彼の方へ集まる。

「言うタイミングがなかったんだけどさ〜」

彼は、先日自分が敵に対して感じた違和感のことを話した。ゼットンボーンの適合者が見当たらなかったことについてだ。

「んで、今回も適合者、見つかってなくね?」

確かに とつぶやいたのが誰だったのかまで考えようとは思わない。

「……すまねえ、俺があんな事したから、気づけなかったし言い出せなかったんだな…」

あの事、とは暴走のことなのだろう。明らかにシュンとする零が可愛くてダンはまた写真を撮ろうとしたが、流石にタイロンに止められた。翔悟が必死に零を励ましている。

「しかし、適合者がいない、か……」

ルークが考え込んでいる。

「ま、オイラにゃ難しくてわけわかんねーけどな」

「いや、それを教えてくれただけでも有り難い」

そうアントニオに言うダンが、本当は親馬鹿で息子に怒られてばかりいるなど誰が想像できようか。零は1人、ため息を吐いて、ハッとして立ち上がった。

「そうだ足跡!」

しかしあれから時間が経ちすぎた。乾いた地面は風に曝され、足跡の形は疎か、あったのかどうかもわからなくなっていた。

 

 

 

学校から帰って、宿題をして、友人と遊ぶ。そんな日々はまた数日続いた。

そんなある日、零の家のチャイムが鳴らされた。翔悟は今日、姉のショッピングに付き合わされるだとか言っていたはずだ。ルークたちは、どちらかと言うと翔悟と行動を共にしたがるだろう。

それなら一体、誰が来たのだろうか。零は不思議に思いながら、彼には大きすぎるドアを体で押し開けた。

「やっほー!久しぶり!」

目の前にいるのは、銀に赤いメッシュが入った髪の青年と、ダンよりも年上に見える青い髪の男。彼らが誰なのか。認めたくないが、直感とそれに対する確かな確信が零にはあった。

「……なんで、ここにいるんだよ メビウス、ヒカリ」

「突然すまないな、ゼロ いや、今は零だったか」

ため息を吐く気力もなかった。

 

 

それは、光の国がある宇宙で、数ヶ月前のこと。

「ヒカリ〜? あ、いたいた はいこれ、頼まれてた資料」

「ん ああ、メビウスか 助かる」

メビウスが探していた彼が根城にしている研究室。メビウスは薬品を倒さないように慎重に、ヒカリのもとへ歩いた。

ふと、メビウスは研究室の奥にあるケースに目をやった。そこには、意識しないと気づかない大きさの、石が2つあった。

「なにこれ」

「それか?それは、たぶん石版だ」

「石版?この大きさの?」

首を傾げるメビウスに、ヒカリは頷いた。

「ずっとこの研究室にあるんだ 別の宇宙から飛んできたのだと思う 形はそうだな、地球人の膝辺りまでの高さの板、といったところか」

言いながら、メビウスに特製の高性能高倍率ルーペを投げてよこす。キャッチしたそれを石版の上で覗き込んで、メビウスは面白そうに笑った。

「すごい、字が書いてある!」

「ああ 俺もはじめて気がついたときには驚いた」

そう言いながらヒカリが何やら、運んでいる途中だった他のケースを持って近づいてきた。

と、そのとき、ヒカリが持っているケースが輝きだした。驚いてメビウスが振り返る。

「ちょ、ちょっとヒカリ!それ何!?光ってていいものじゃないよね!」

「ゼロのブレスレットの光エネルギーを閉じ込めたカプセルだ さっきはここまで光っていなかったんだが」

「なんでそんな物あるの!?そしてなんでそんなに落ち着いてるの!?」

「慌てたところでどうにもならん なるようになるんだろう」

そこまで会話したとき、メビウスの目の前の2つの石版も、ヒカリの持つケース同様に輝きだした。

「え?」

そして石版がケースを飛び出して、1つづつがそれぞれの目の前でより一層強く光り……

 

 

「そして、幸い手元に残っていた俺の特製コンパスのおかげでここがセブンたちのいる宇宙だとわかって、それなりの時間をかけてここに来た それと、俺とメビウスが持っていたカードは、セブンが持つものと起源を同じくするものだ 既に何回か使用経験もある 共にこの宇宙のために戦わせてもらおう」

人間に擬態しているヒカリが、説明する。

ヒカリとメビウス、2人が現れたとき、零だけでなくダンももちろん驚いたが、零よりも早くに状況を飲み込んでいた。そして成り行きで、彼らもこの親子と共に暮らすことが決まった。

「つーか、ここで暮らすんなら偽名いるだろ ヒカリは名字言わなきゃまだいいかもしんねえけど、メビウスは地球人の名前じゃねえよ」

それは零の言葉だ。メビウスが頷く。

「それならもう決まってるよ ぼく、‘耀巡’!ヒカリは?」

「そうだな、せっかくだ ……では、‘科野剣也’とでもしよう」

 

 

 

「っつーわけで、新しい仲間だ!」

零が目の前の翔悟たちに巡と剣也を紹介する。零から予め事情を聞かされていた5人に、2人に対する抵抗はない。

「零の仲間か……よろしくな、巡、剣也」

「何が起こっているのかよくわからない今、協力者が増えるのは有り難い」

そう言ってルークは頷いた。

「頼りにさせてもらいます」

朗らかに、しかし力強くタイロンが言う。

「……足引っ張らないでくださいね」

「ま、しっかり頼むぜ!」

相変わらずつっけんどんなギルバートと眩しく笑うアントニオの対比は見事なもので、零は思わず吹き出しそうになった。

「こっちこそよろしくね」

「微力ながら、力添えさせてもらう」

これならうまくやっていけそうだ ダンはホッと胸をなでおろした。

 

 

剣也がペンを止め、手を顎に当てる。

彼は今、ダークボーンとの戦闘後に見られる不可解な現象について翔悟たちから話を聞いていた。

「足跡がなかったり、適合者の姿が見受けられなかったりする……まあ、おそらくだとは思うが」

どうやら思いつくことがあったらしい。周りの視線が集まっていることに気が付き、剣也はもう一度口を開いた。

「零たちが追う、そのボーンそのものに意志がある、のではないかと」

翔悟とアントニオが首を傾げる。

「適合者はもとからいなくて、ボーンそのものが自らの意志で君たちと戦っていたってこと だよね、剣也」

「そうだ」

巡の説明がわかりやすかったのかどうかはわからないが、取り敢えず翔悟とアントニオはかしげていた首をもとに戻した。

「……確かに、ゴモラボーンなどを解析したときに、あれらが唯の模造品であることはわかっている ありえない話ではない」

ルークが剣也の意見に肯定の意を示した。

「……これ、思ってたより複雑な話になったりしねえかなあ……」

零が、不安そうに呟いた。




というわけで、2人来ました メビウスとヒカリです あたしの趣味です
ボーンファイターこれで合計9人……自分で増やしといてなんだけど、どうやってこんなに沢山使えばいいんだろう

Z「今日も名前の紹介でございます!えーっと……なんて読むんだ……?……‘耀巡(あかる めぐる)’……が、ウルトラマンメビウスの地球人に擬態した際の名前だと言うそうです!苗字と名前、両方に る がついて、なんだか楽しい名前でございますなあ 名前の‘巡’は、メビウスの輪からアイデアとして思いついた名前で、‘耀’は読み方を重視したことで選ばれただそうです!
それから、‘科野剣也(かの けんや)’は、ウルトラマンヒカリが地球人に擬態した際の名前でして、名字の‘科野’は、【科学分野】の最初と最後の文字をくっつけて作るんだそうです ‘剣也’は、【ハンターナイトツルギ】のを由来としているのだと聞き申しているですよ あれ?‘也’は……え?聞かないで欲しい?わ、わかり申した……」

Zくんに言わせるのはなんか違う、と思ったことを自分で言います
耀って、意味はヒカリっぽいんですよね〜 悩んだんですけど、先に 巡 が決まっていたので、韻踏んで面白いかな、と思って通しました
剣也の 也 は、完全になんとなくです 下校中に思いつきました 剣(つるぎ)と言う名前にする案もありましたが、実はヒカリってセブンより年上なので、イタイにもほどがあるかな、と

どうでもいいですけど、ヒカリってすごいイケメンじゃないですか?ウルトラ族の中でどうかはわかりませんけど


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

道の途中で

ウルトラマンゼットの主題歌と、“すすめ!ウルトラマンゼロ”の一番冒頭の歌詞がちょっと似てると気づいて今すごく幸せ。


「なあ、剣也」

翔悟に勉強を教えていたはずの零は、いつの間にかタイロンにバトンタッチしていたようだ。手元のルービックキューブを弄りながら、巡の下敷きになってる剣也に話しかけた。巡は寝ている。

「お前この前さ、ボーンが意思を持って、適合者を選ばずに俺らと戦ってた的なこと言ってたよな」

「ああ、言った なんだ、否定できる根拠でも見つかったのか?」

「いや、そうじゃなくてさ」

零は完成したルービックキューブをコトン、と机の上に置き、寝転がる。

「ゴモラボーンと戦ったあと、確かに足跡は1つ足んなかった けど、敵にはゴモラボーンともう一体居たんだ で、そいつの分の足跡はあったんだよ てことは、てことはだぞ?」

バッと剣也が起き上がった。落とされた巡が「イテッ」と声を上げて目を覚ます。剣也はそのポーカーフェイスに珍しく動揺の色を浮かべている。

「あのボーンとの戦闘、もっと言えばあのボーン達の存在までもが、誰かが故意に行ったことによるものだということか!?」

「え?なになに?どうしたの剣也」

巡が打ち付けたらしい頭をさすりながら、キョトンとして言った。

 

その話はすぐにルークに伝えられた。

「……それは、詳しく調べて見る必要があるな」

それから、私達だけが知っていても何もできまい と、ボーン研究所へ行くことが決まった。

そしてその、車の中。ルークが用意したその中は、9人乗っても余裕がある。

「……ああ、剣也がワクワクしてる……怖いなー」

無表情ながらも雰囲気がお花畑になっている剣也に、巡が不安そうに言う。零にはそれを払拭してやることができない。

「?なぜだ、確かにこの宇宙に存在する技術には興味があるが……」

「お前がそうやって興味を持つのはヤバイことが起きる前兆なんだよ」

零にそう言われたものの、よくわからない、といった顔の剣也が、ダンに視線をやる。ダンは目をそらした。

「剣也さんってなんかあるのか?」

翔悟が尋ねると、零は頷く。

「なんていうか……クールなレナード?」

あの研究者についての話を、零は翔悟から沢山聞いていた。側でそれを聞いていたアントニオが吹き出す。

「それは、なんと言うか……」

タイロンは言葉を探すが、見つからない。彼も、レナードが今まで積み重ねてきたことを知っている。

「ぼく、そのレナードってのがどんな人かは知らないけど、もう剣也の実験台にはなりたくないよぉ……」

「何を言っているんだ巡、俺はまだ何もしていないぞ」

「今はまだ、ね!」

「落ち着け、巡 何言ってもこの人はどうにもならんさ」

ぽん、とダンが涙目の巡の肩を叩いた。

 

ふと、剣也が外に視線をやった。

「どうかしました?」

ギルバートが尋ねるが、彼は答えない。

それから数秒して、呟く。

「……来るぞ」

その瞬間、ボーンカードが一斉に光りだす。

「うっそだろ!?なんでわかったんだよ剣也さん!」

「勘だ!」

ギョッとする翔悟に、剣也はドヤ顔で答える。

ルークが慌てて車を止めた。するとまたも剣也が口を開く。

「何人か……5人位は残って欲しい こちらに戻ってきて、相手に適合者がいるようなら確保してほしいからな」

言われた8人は顔を見合わせる。

じゃんけんぽん!

残ることになったのは、ルーク、タイロン、アントニオ、零だった。

ルークが剣也にアミュレットを手渡す。

「何かあったら迷わず呼んでくれ」

「そうさせてもらう」

 

 

ドラゴンとレオの前には、見たことのない2体のボーンがいる。

「えっと……巡と、剣也さん、だよな」

尋ねるドラゴンに、2人は頷いた。

「ぼくが巡 オセロットボーンだよ」

「スワローボーン、剣也だ」

それから、現れた3体のダークボーンを視界に捉える。

「どうやら見た感じ、普通のボーンのようだが……」

言いながら、スワローがふわりと舞い上がった。風属性らしく、重力にとらわれずに空中を移動する。

ふとオセロットと敵のうち1人の目が合った。相手はフッと笑った。

「……イツノマニ、増エテイタンダ?」

なんのことだ と聞き返そうとして、目の前に敵が迫っていることに気が付いた。慌てて飛び退く。ネコ科の動物をモチーフに作られた彼のボーンは、中身に衝撃を与えずに床に降りた。

「びっくりした!」

オセロットがついさっきまでいた場所に、敵はいる。上空のスワローはそれを数秒の間観察し、首を傾げた。

「……特に変わったところのない、普通のボーンだな」

それから、そう言って背に畳まれていた翼を広げた。その縁は鋭く光っている。滑空する。目標は、先程オセロットに迫った敵。

ガキンと音がして、背を向けていた相手に右翼がぶつかる。そこを支点としてクルリと回ったスワローは、再び上へ昇った。よろめいた敵に、レオが追撃する。

「はあ!」

「グ、フ」

相手が数歩後ずさる。その懐にオセロットが入り込んだ。

「さっきのお返し!」

バイザーの中でいたずらっぽく笑って、手の甲に着いた爪での攻撃を相手のボディパーツに叩き込んだ。

 

ドラゴンはダークボーンと向き合っていた。お互い様子見が続いている。と、ドラゴンの視界に、敵を追い詰めるレオとオセロットの姿が映った。

「オレも急がなきゃ」

呟いて、飛び出す。繰り出した蹴りは読まれていたらしく、体を落とした相手にそれは避けられた。しかし、その体勢をバネに前に出ようとする敵の動きを、ドラゴンもまた読んでいた。後ろではなく、横に跳ぶ。

「ホォ」

少し驚いたように、敵は声を漏らした。そのヘッドパーツに拳を打ち込もうとするが、それは受け止められた。けれどドラゴンはニヤリと笑う。

「頼む、スワロー!」

「承知した」

上から聞こえた声にダークボーンがハッとしたときには、既にその翼が視界を埋めていた。

「む」

しかし、ダメージは与えたものの、まだボーンクッシュには届かないらしい。よろめきながら立ち上がった。そこに、オセロット達が相手をしていたボーンが合流する。

「スワロー、コクーンの残り時間は大丈夫ですか?」

「あと……3分と少しと言ったところか」

答えを聞いたレオは そうですか と頷いて、ダークボーンに向き合った。スワローが翼を畳みながら降りてくる。オセロットが腰を落として構え、翔悟は相手を見据える。相手も、もう力の出し惜しみはしないらしい。雰囲気が先程までとはまるで違った。

「情報ニナイボーンガイルトハネ」

「ヤルコトニ変ワリハナカロウ」

どこか機械音のような声を発する。けれど今はそれを気にしている暇はない。

だから、迷わず飛び出した。

オセロットとレオは、さっきまでドラゴンが相手していたダークボーンに殴りかかる。が、その相手はいきなり不自然に体を丸めた。困惑しつつもその腕は止めず、拳はうまくヒットした。しかし

「うわあ!?」

「これは……」

硬い。至極単純に、硬かった。殴りかかっているはずなのに、こちらのほうがダメージを受けている。上空から重力の助けを借りて蹴りを叩き込んだスワローの反応も同じようなものだった。

「背の側に装甲があるのか!」

それなら スワローにはもう、攻略法が頭にあった。

 

「ん?」

コクーンの外。待機していたルークが、ふと気がついた。剣也が開発したコクーン内に持ち込めるデバイスから、連絡が来ている。

「“ルークだけ来てくれ”……ああ、水属性が必要なのか」

「ルーク?」

「呼ばれた 行ってくる」

アントニオに必要最低限のセリフを残し、ルークの姿はコクーンの中に消えた。

 

コクーンに現れたシャークに、ドラゴンは驚きを隠せない。

「え、なんで」

「呼ばれた」

それだけを答える。その隣にスワローがやってきた。

「……剣也か?」

「ああ 今はスワローと呼んでくれ」

頷いて、自分のするべきことを探す。と、スワローが

「あいつが硬くてな まるで歯が立たない」

そう言って飛び立った。ルークは周りを見渡して、丸まった格好のボーンを見つける。

「あいつのことか」

そう言って彼は、床の下に潜った。

それをドラゴンはぽかんと眺めて、自分がするべきことを思い出す。何を思っているのか、残るもう一体はドラゴンどころか、ボーンを見ていない。

チャンスだ。

一度の跳躍で眼前に迫り、拳を振り抜く。慌てて相手はそれを躱した。

「アア、危ナカッタ」

本気で安堵しているようだ。

「何してたんだよ」

流石に気になってしまって、ドラゴンは尋ねる。

「イヤナニ、目的ノ者ガイナカッタダケサ」

「目的の者?」

「君ガ知ル必要ハナイナ」

(これ以上聞いても教えちゃくれないか)

本当はこれで済ませたくはないのだけれど そう思いながらも、ドラゴンは戦う体制を整えた。

そう離れていない距離から、膝蹴り。ダークボーンは難なくそれを避けた。ドラゴンは相手を通り過ぎて着地する。ダークボーンは次は自分の番だとでも言わんばかりに腕に力を込めた。けれど

「させるか!」

相手が本気を出す前に。そのヘッドパーツに、ドラゴンの後ろ回し蹴りが命中した。予期していなかった攻撃に、バランスを崩す。勝負は決まった。

「炎竜拳!!」

反撃の隙などは、与えない。

「フフ、俺は要らなかったか」

その上空で、スワローが羽を畳んだ。

(ドラゴンが一体、仕留めたようだな)

水中のような空間。コクーンのエリア外にある、いわば地下。シャークはそこで、狙うべき相手の影を探した。水面は揺らめかない。故に上の様子がはっきりとわかる。敵は、すぐに見つかった。丸まり、レオたちの攻撃をほぼ無傷でやり過ごす、そのダークボーン。その真下から飛び出した。

「はっ!!」

「ヌウッ!?」

狼狽えるダークボーンを見て、スワローは一人頷く。

「わざわざ体を丸める理由を考えれば、体の前面の装甲はさほど硬くないはず 思ったとおりだ」

シャークは再び潜る。これでダークボーンは迂闊に丸まれなくなった。必死に思考しながら、ダークボーンは起き上がる。が、その上から何やら攻撃が降ってきた。ドラゴンによるかかと落としだ。

「ドラゴン、そっちは片付いたんですか」

「おう」

尋ねるレオに頷く。

「そっか じゃあぼくも、頑張らないと、ね!」

前に倒れ込みそうになる敵を、オセロットが蹴り上げる。宙に飛ばされれば、スワローの翼で撃ち落とされ、シャークの追撃。レオ、ドラゴンの打撃がそこに繰り出されれば、もう、相手に為す術はなかった

 

「あ」

声を上げたのは零だ。

いきなり目の前に、見知らぬ人が2人、現れた。

「……適合者?」

「……でしょうね」

ほんの少しの間沈黙して、

「確保おおおお!」

零が走り出す。が

「っとお!?」

消えた。文字通りに、その場から。

「どういう、ことだ……?」

 

 

「わりぃ、剣也 うまくいかなかった」

「気にするな まさか消えるとは夢にも思わん」

すぐに、コクーンから仲間か達が帰ってきた。情報交換を行う。

「あのさ」

そう言って手を上げたのは翔悟だ。剣也が視線で続きを促した。

「あいつら、誰かを探しているみたいだった 目的の者がどうのこうのって」

「……そう言えば、情報にないボーンがいる、とかも言ってましたね」

翔悟に続けてギルバートが言う。

「なんか、声が機械みたいだったね なんでだろ」

巡が不思議そうに首を傾げた。

「わからないことだらけだな これから研究所に着くまで何もないといいが」

報告用だろうか、メモをとっていたルークの呟きに、アントニオが フラグ立てるなよルーク と言って笑っていた。




倒されたのは、エレファントボーンとアルマジロボーンです ぶっちゃけモブです

Z「本日もボーン紹介のを始めるでございます!
まずは、オセロットボーン これは耀巡が使うボーンでございますね 火属性のボーンで、手の甲に長い爪という武器があるのです さらに、コクーンの中に浮いている、菱形の物体の側面に立つことができるのだそうです!どういう状態の格好になるのかすごく気になりますなあ……
続いてスワローボーン 燕がモチーフになったとしている、科野剣也のボーンでございます 風属性のボーンで、背中の翼が武器になっているんだとか!コクーンの中を自在に飛んで周り、悪いやつにさっそうと攻撃!すごく強そうですな 零師匠とどっちが強いんだろう」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

剣也の実験、開始の合図

前回について謝罪です。
活動報告でも申し上げましたが、14話にて戦闘組と待機組で別れた際、そしてそれ以降、ダンの存在が消えていました。彼は待機組です。完全なる書き忘れです。申し訳ございません。車の中で零の写真でも眺めていたとでも思って許していただければ幸いです。もう同じようなことが無いよう、今回より気をつけます。本当に申し訳ございませんでした。

では、短いですが15話をどうぞ。


その後、ルークはフラグを見事に折り、一行はメルボルン研究所にやってきた。

「きちゃった……」

巡が泣きそうな声でいう。言葉にはしないが、零も巡と同じ気持ちでいた。

(剣也が怖い……)

すべては、そこに尽きる。

 

 

応接間で東尾に報告をしているとき、アントニオはふと気がついた。

「あれ?ケンヤいねえ」

巡はその言葉にハッとして顔を上げ、辺りを見回す。たしかにいない。

その時扉が開いた。入ってきたのは剣也だ。

「……どうだったよ」

零が尋ねる。手に持ったノートと楽しそうな表情を見れば、何をしていたかはなんとなくわかった。

「なかなか興味深い 光の国にはない発想から造られたものもあった まさかここまで技術が発達しているとはな」

(ああ、もういろいろ終わった)

巡と零は顔を見合わせる。

「剣也さん なにか役立ちそうなものはありましたか」

ダンが尋ねると、剣也はノートを拡げた。。

「そうだな、とりあえずコクーンの時間制限は失くせそうだ 参考になるものがあるのでな」

言いながら、零を見る。

(あ〜……シャイニングウルトラマンゼロのシャイニングフィールドか……)

自分は助からなさそうだな なんて気づいてしまえば、ため息を吐くことしかできない。巡がガッツポーズをしていたのがムカついて、取り敢えず叩いておいた。

「コクーンの制限時間が、なくなる!?」

驚いたのは東尾だ。彼はコクーンに制限時間がある理由を知っている。だから剣也は頷いた。

「今まで取られていたのは、大気圏内に不可視の空間を作るという方法だ 俺は、空間の裂け目を意図的に発生させようと思っている それから上手くいけば、その裂け目の中での時間経過は正常な空間の何分の、いや何十、何百分の一となる」

(あ ヤバイ本気だ)

彼は、シャイニングウルトラマンゼロの力を籠めたカプセルだって作ったことがある。できることを言っているのだろう。逃げる方法を考えておかなければ だなんて考える零のことなど気づくはずもなく、ただ東尾は驚愕していた。

「よくわかんねえけど、剣也さんすごいな」

「そうか?」

翔悟に答える剣也は、今どう見ても機嫌がいい。

「……帰ったら、研究用の部屋、用意しておきますね」

ダンがいう。剣也は嬉しそうに礼を言っていた。

 

少しして、レナードがやってきた。ゴモラボーンより前に零とダンが集めていたボーンと、ゼットンボーンの解析をしていたらしい。

「おう、来たな」

東尾が笑いながら話を促した。それを受けてレナードが口を開く。

「えーとですね、一応ゴモラボーンと大差ありません ですがそれ以上のことはまだ不確実なことが多いです もう少しデータが欲しいですね」

「奴らは誰かを探しているみたいだった ならたぶん、また現れるだろう」

「そうですね データの収集源にはそのうち事欠かなくなりますよ」

「それはそれで微妙だけどね」

ルークにギルバートが同意を示すと、巡が困ったように笑った。

「しっかし、あいつらホント何したいんだろうな」

椅子の背にもたれて、アントニオが言う。

「人探しにボーンは使いませんからね、普通」

タイロンも考え込んだ。

「それも、いずれはわかるはずだろう」

「ああ 剣也もいるしな」

ダンの言葉に零は頷く。一応、彼の科学者としての能力は認めているのだ。

「勿論できることはさせてもらう フフ、研究の成果が出せる日が待ち遠しいな」

その笑みには、全員が恐怖を感じたけれど。

 

 

「うう……」

「ダイジョウブ?」

零の家。ソファにうつ伏せで寝転がる零に、巡が声をかける。

「これが大丈夫そうに見えるのかテメェは」

「ううん全く 剣也かな?」

体制を変えず、無言で頷く。

「迂闊に変身できねぇってノアから言われたっつってるのにあいつ……」

「えっそうなの?それいいの?」

「責任は剣也にある」

そうだけど とは思ったが、口には出さない。剣也は自分たちをいつもいいようにするのだ。抵抗して、その努力が実を結んだことなどない。

(ああでも一回だけ、途中で零が逃げ切れたことがあったな)

それは、光の国での話。度重なる実験でフラフラになったゼロを見たセブンが激怒しヒカリの研究室からゼロを救出したのだ。

(今は無理だろうなあ 実験に明確な理由があるし)

それでも今ダンは全力で零を心配しているらしく、最近食卓にはよく零の好む料理が並んでいる。

「頑張ってね、零!」

「他人事だと思いやがって……!」

零を踏まないようにとソファの隅に座っている巡を、零がゲシゲシと足で蹴る。

「あはははは ぼく助かったし〜〜?」

「テメエ!」

子供のようにじゃれる2人をダンが諌めるまでもう少し。




今日、ゼットに仕事はありません
Z「え」
何も思いつかないからです。
Z「じゃ、じゃあこれだけ!ダンさんは最近仕事を始めたそうです!なんと、民間警備会社を立ち上げたとか!すごいでございますね、流石ウルトラ兄弟!」
でした 一応、ダンの仕事についての設定は最初からあったのですが、出す機会がなかったので
巡はその警備会社の従業員になりました フリーターは、リクのポジションですから 彼は出ないけど

次回は少し先になるんじゃないかな〜 ネタが湧かなくて……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

“新しい”から始めよう

翔悟は剣也に呼び出され、近くの公園に向かった。着いてみると、そこにはルークやアントニオ、タイロンにギルバートもいた。タイロンが翔悟に気づき、声をかける。

「あ、翔悟くん 君も剣也さんに呼ばれたんですか?」

「も ってことは、タイロンも呼ばれたんだ」

「オイラ達みんな剣也に呼ばれたみたいだぜ」

アントニオが笑って横に並んだ。

5人を呼び出した当の本人は、少ししてからやってきた。

「すまない、待たせたな さっき不具合が見つかってしまって、調整をしていたんだ」

「調整?」

「これだ」

剣也がタブレットを取り出した。空色の空間と、そこに立つジャッカロープ、オセロット、ノーウェルが画面に映し出されている。

「これは、俺が開発した新型コクーンの内部だ 中継できるようにカメラも開発した」

「これが……」

得意げに言いながら、画面に見入るギルバートに頷く。

「今はテストも兼ねて、巡と零に軽く手合わせをしてもらっている ダンはストッパーだな」

白熱されると困るから

剣也の言葉になるほど、と相づちを打つ。タブレットの画面では、攻撃を防がれてイラッとしたらしいジャッカロープの回し蹴りがオセロットの顔面にヒットしてしまい、本気の喧嘩になりかけたところだった。

「あっ」

ノーウェルは2人を止めながらため息を付き、そして画面から消えた。

「戻ってきたか」

剣也が翔悟たちの後ろを見て言う。振り返れば、確かにそこには零と巡、そしてダンがいた。

「ひどいよ零!あれは勝負とはいえ試運転の軽い手合わせじゃないか!顔面はないよ!」

「だから悪かったっつってんだろ!てかそもそも手合わせなのに逃げまくる巡が悪ぃ!」

「そりゃあだって、君と何の策もなしに正面から戦って勝てるわけ無いじゃん!」

うち2人は言い合っていた。

「……ああ、二人共 もしまだ喧嘩を続けるというのなら、今度の実験のときは優しくしないからな」

しかし剣也が呆れたようにそう言えば、互いにピタリと口をつぐんだ。

(死ぬ、それは死ぬ)

(普段でさえあれなのに……!)

どうやら剣也の実験は、喧嘩を止めるほど彼らの心に何やら良くないことをしているらしい。翔悟たちは剣也の実験内容を知らないながら、戦慄した。

 

翔悟−ドラゴンたちはその新型コクーンの中に来た。周りを見渡す。そこは今までのコクーンとあまり変わっていなかった。しかしよく見れば、壁や床がほのかに輝いていることがわかる。その光はまるで、彼らを包み込むように優しかった。

「うわぁ……」

「すげぇよな 俺の犠牲に感謝しろよ?」

感嘆の声を上げるドラゴンに、ジャッカロープが歩み寄る。

「……犠牲?」

「剣也にいろいろされたんだよ、零」

眉をひそめるギルバートに、巡が苦笑いで言う。

「少しいいだろうか」

「どうしましたか、ルーク」

ルークは手元のアミュレットを見せた。

「このダイヤルを動かしたら、コクーンの大きさが変わるそうだ 試したい」

そう言うので、頷いた。

誤作動防止のロックを外し、カチカチと音を鳴らしてダイヤルを回す。それに従い、コクーンの大きさは変化する。

「手ぇ込んでんなぁ」

目を丸くしてアントニオが言う。

「戦闘時の人数規模で大きさが変えられるのはいいな」

ノーウェルの声が心なしか弾んでいる。

突然、ピーピー、と、警戒音のようなものが鳴り響いた。外の剣也から通信が入る。

「剣也?どうかしたの?」

『巡か すまない、敵が現れたみたいなんだが、そっちに行ったみたいだ 俺はボーンカードを家に置いてきてしまってな、すぐに取りに戻るが……頼む』

「リョ−カイ!」

その会話は、周りにも聞こえていた。顔を見合わせて頷く。

「さて」

コクーンの中に、怪しいボーンが3体、降り立っていた。

 

 

「……目標発見 タダチニ殲滅スル」

ダークボーンのその声を合図に、3体は5人に向かって踏み出した。

一体が、潜る。

「水属性か」

シャークもすぐにその後を追った。

「!すごいな」

新型コクーンの地下は、今までよりも鮮明に遠くまでを見渡すことができた。だから、迫る敵も確かに見えていた。しかし

「ぐぅ……!? くそ、速い!!」

認識できても、反応できなければ意味がない。とても追いつけない速さで泳ぐ相手を、彼は捉えられなかった。

 

ヒュン、と音を立てて、ミサイルが飛ぶ。それは尽きることを知らず、決してドラゴンたちを自身に近づけない。だからといって避けることに専念していても、上から風属性であろう敵が攻撃を仕掛けてくる。

「だあぁっ!めんどくせぇ!」

ジャッカロープが、剣のようなブーメランを宙を飛ぶ的に向かって思い切り投げる。勿論それは避けられた。しかしそのことで相手に隙ができたようだ。そこを見逃さず、身軽なジャガーが上を取りそれを叩き落とす。落ちてきた敵には、ギルバートがその拳を振るった。しかし思ったようなダメージは入らない。すぐにダークボーンは再び飛び立った。もう一度ブーメランを投げても、もうさっきのようにはいかない。そちらの方に気を取られていたらミサイルが飛んできて、気が付かない彼の前で高い防御力を誇るライノーが壁となった。爆音が響き、ジャッカロープがハッとする。

「わ、悪ぃ!」

「大丈夫ですよ さあ、気を取り直していきましょうか」

「おう」

少し笑いながら頷いて、しかしすぐに真剣な顔を作る。

(いくっつっても、どうすりゃいいんだ?)

とりあえず、ドラゴンと目配せでタイミングを図り、ミサイルを放ち続けるダークボーンへと突撃した。

「オラァ!」

「はぁ!」

そしてそのまま、攻撃を。しかし突如、相手の放った光弾に2人は飛び退くしかできなかった。

「まだ武器があったんだ ミサイルに光弾……」

呟いて、オセロットはふと気づく。たしかこんな特徴の怪獣と戦ったことがあったことを。

「名前は、確か……」

足元にその敵が放った炎が迫り、それを避ける。そしてその攻撃を見て、確信した。

「わかった!ベロクロンだ!」

「ベロクロン?なるほどそういえば、エースがいつかこんな感じの怪獣の話をしていたな」

ノーウェルがそれを肯定する。

「じゃあ飛んでるやつは?知らねぇか?」

相手の攻撃を避けやってきたジャッカロープが尋ねる。

「んー、わかんないや」

「そっか」

けれどそれがわかったところで、状況が好転するわけではない。

「うわ!」

ドラゴンが、宙を飛び回るダークボーンの放つ強風に吹き飛ばされる。偶然か、彼の背後にいたジャガーが巻き添えを食らっている。相変わらずミサイルは飛んでくるし、時折苦戦を強いられているらしいシャークが上へ上がってきたりしていた。

ジャッカロープは、ミサイルの集中攻撃を食らっていた。ブーメランによる攻撃のせいか、危険だと認識されているらしい。剣でミサイルを次々に切り裂くが、それにも限界がある。

「っ!!」

目の前にいくつかミサイルが迫る。近すぎて、思ったように剣を操れない。

(万事休す、か?)

いままでの攻撃で、これがどれほどの威力を誇るかはわかっている。今の状態で、耐えられるとは思えない。

(まあ、親父達がいれば俺が負けてもどうにかなるだろうけど)

そう思ったときだった。

 

いきなり、体が床から離れる。ふわり、としたその感覚は、確かに空中特有のそれで。

「危なかったな」

「あ、え?……スワロー!」

彼を助けたそのボーンファイターの顔は、上にある。そこで気づく。ジャッカロープは彼に横抱きにされていた。

「!……ん!?」

「ああ、すまない まだあまり慣れていなくてな、片腕で抱えると体の左右のバランスがとれなくなってしまう」

しれっとそういうのがムカついたけれど、助けてもらった立場である以上贅沢は言えない。

「それと」

続けられる言葉に耳を傾ける。

「全く、お前というやつは、諦めようとしただろう」

「う」

はあ、とため息を吐かれる。

「お前が諦めて喜ぶのは、敵だけだ もし己が負けたとして仲間にあとを託すなら、彼らを不安にさせるような真似はするな」

そういうスワローの言葉は、なぜかすんなりとジャッカロープの心に染み込んだ。

「わぁったよ……悪かったな」

プイッと顔をそらしてそう言えば、スワローがクスリと笑ったのが聞こえた。

「……さて、では空を飛ぶテロチルスボーンは俺が相手をしよう ほかはお前たちに頼む」

スワローは、ジャッカロープを浮遊する菱形に下ろすと、ダークボーンの方へ飛んでいった。ジャッカロープはドラゴンたちと合流しようと思って菱形から降りて、思い出したように上を見上げる。

「あのボーン、テロチルスなのか……」

よそ見しながらブーメランを投げたら、軌道が逸れた。

 

ザパリ、と水もないのに音を立てて、シャークは上へあがる。そのボディパーツにはダメージが蓄積し、赤くなっている。

「まずいな」

相手が悪かった。マッハいくつだろうか、そんな速さで動く相手を視認できるほど、人間は優れていない。

突如、間の前をナニかが通過した。見えた。この形状は。

「……ジャッカロープ?」

「あ、悪ぃ……」

両手を合わせる彼を許して視線を戻し、目を丸くした。さっきまであんなに苦戦していた敵が、転んでジタバタしていたのだ。シャークを追いかけてきたものの、ジャッカロープのブーメランにあたってしまったらしい。

(チャンス、なのだろうか)

申し訳ない気もしつつ、シャークは己の技を放った。

 

飛んでくるミサイルにも慣れてきた。幸い追尾型は無いらしく、前ほど相手を強いとも思わない。

「時間制限が無いと、こんなことも起こるんですね」

一番体が重いはずのライノーが、余裕を持ってそう言う。

「炎の射程もそんなにねえしな」

「見たことあるからなあ、これ」

菱形の上でそう言うのはジャガーとオセロットだ。仲間が流れ弾に当たらないよう、ドラゴンとレオが処理をする。

「っと この光弾がまだあんま慣れてないけど、まあそろそろ平気かな」

「油断は良くないですよ……まあでも、余裕はありますかね」

「あそこにジャッカロープが居る」

気づいたノーウェルが言うと同時に、己の技に当たらないドラゴンたちに気を取られていたベロクロンボーンは、背後からのジャッカロープによる斬撃で倒れた。

 

地上を見ていたテロチルスボーンを少し挑発すれば、簡単にその意識はスワローへと向いた。

「さあ、来るといい」

放たれた強風に乗り、間合いを詰める。それから一度蹴りとばして上をとり、抑え込んで床へ叩きつけた。ダークボーンは、鋭いヘッドパーツで反撃を試みる。

(テロチルスのくちばしに当たる部分か)

それが強力なのは知っていた。起き上がろうとする頭を床に押し付けて、あとは殴るのみ。

(少しエグいな)

自覚はあった。

 

「どうだった、新型コクーンでの初戦闘は」

「あんまり変わらない気もしたけど、時間制限がなかったのは良かったかな」

「結構時間経ってましたよね」

「でも戻ってくれば時間はほとんど経ってねえ、と」

否定的な言葉は出ない。剣也は楽しそうに意見を聞いていた。

「……ん?意見聞いてるってことは俺また付き合わされんの?」

零がギョッとする。ノートを見ていた剣也が呟いた。

「地雷装置のようなギミックか……ウルトラダイナマイト?」

聞こえてしまったそれに、巡がサッと顔を青くした。




名前が出なかった敵は、ゲスラがモチーフです

Z「お久しぶりかも知れないでございますね それでは、参ります!
まずはベロクロンボーン!火属性のボーンで、尽きることのないミサイルが主な武器!他にも様々な攻撃を放つことができるのだそうですよ
次にはテロチルスボーン!風属性で、起こす強風の強さには要注意でございます!くちばしが実はすごく強いのでございますが、使われなかったですなあ
最後はゲスラボーン!水属性なんですぞ なんと泳ぐ速さはマッハ8.8!?は、速い……!」
ホント、怪獣選びが毎回大変……


どうでもいいんですけど、誰か聞いて(読んで)
金曜日、現代文の授業で、教科書内容の語句調べの時間があったんです で、たまたまギリシャ神話の神様が少し出てきてたので、その親族関係たどってたんです
そしたらガイアっていたんです
……女神の名前なんですよね
ウルトラマンガイア、おまえ、ウルトラウーマンガイアだったのか?って本気で考えました
ついでにアグルも電子辞書で検索かけてみました アグルはありませんでしたが、アグルート がヒットしました。
北極航路を探して129人全滅した探検隊なんですよね……まさか、由来ここじゃないですよね……?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おかしい 怪しい

これ以上は票が入らなそうだったので、アンケートを終了させていただきました 投票してくださった皆様、ありがとうございました これにより少しですが、この話のおおまかな流れの構想が出来上がりました
そうだ、この前タイトルちょこっと変えたんですけど、気づきましたか?


「……生きてるか?」

床に寝そべる零と巡を、弾がつつく。

「死んでる……かもしれない〜……」

ぐで〜、とした格好のまま零が答える。それに苦笑いを浮かべて、ダンは立ち上がった。

「ほら、起きなさい 遅くなってしまったが、夕飯はカレーにしよう」

そう言えば、さっきまで一言も発さなかった巡ががばりと起き上がる。

上の階から、剣也が階段を下りてくる音がした。

 

夕飯の席はいつもそれなりに騒がしい。

「もー、翔悟が授業中ずっと寝てんだよ どうにかなんねえかな、起こすの面倒くせえってのに」

「では、脳を活性化させるドリンクでも作るか?」

「やめてあげてください……」

「ねえ零、地球の学校ってどんな授業してるの?」

「えーっと……」

過ぎる和やかな時間。その時、ボーンカードが光った。

「このタイミングで、かよ……」

「翔悟には来ないでいいって連絡するか?」

「そうだな 何かあったら来てもらおう」

 

カツン、と音を立ててコクーンに降りる。

既にそこには2体のダークボーンが居た。

それらは顔を見合わせて

「アレガ、目標カ」

「ソウダナ 殲滅、開始スル」

ダッと駆け出した。

「む」

まだやって来たばかりだったノーウェルが慌てて体を捻り、その突進を避ける。と、踏みとどまったダークボーンの下から、もう一体が飛び出した。どうやら水属性のようだ。そして押し上げられた力で飛び上がり、上空のスワローへ拳を振るった。突然のことに対応できず、スワローは壁に叩きつけられる。

「ぐぅ!?」

「スワロー!」

オセロットは驚いて彼を見上げ、そして自身の下にダークボーンが潜っていることに気がついて、慌ててそこから飛び退いた。

「ハッ」

オセロットへの奇襲が不発に終わったダークボーンに向かって、ジャッカロープが剣を振り上げる。が、その腕をもう一体が掴んだ。身動きが取れなくなり、焦る。

「大事な俺の息子だ、離してもらおうか」

ノーウェルが、手の甲から伸びる槍でそれを引き剥がした。

「サンキュ、親父」

それに彼は笑って頷き、逃げ惑うオセロットの方へ向かった。

「わ、わ! なにこれ、アッツ!」

ノーウェルも近づいて理解する。敵の周囲の気温が異常なほど高かった。近距離戦闘を得意とするオセロットには相性の悪い敵だろう。

「ちょ、ジャッカロープ、代わって!」

「え?お、おう」

戸惑いながらもオセロットのいる場所へ向かい、バイザーの中で顔を顰める。

「なんだよ、すげぇ暑ぃな」

ヒュッとブーメランを投げながら後方へ下がった。しかしダークボーンは火球を放ち、それを弾き飛ばす。

「うそーん……」

「うわ、あんな事できるんだね、アイツ」

と、火球が今度はこちらに向けて放たれて、2人は菱形の影に逃げ込んだ。

ジャッカロープは手に戻ってきた2本のブーメランを剣のように構え、ノーウェルと目を合わせた。言いたいことは伝わる。

「オセロット、水属性の方は頼むぜ」

「うん、任せて!」

それだけの言葉をかわし、床を蹴る。ジャッカロープを視界に収めたダークボーンは当然彼を狙った。火球をいくつも放つ。熱さを耐えてそれを切り裂き、ジャッカロープはニヤリと笑った。ダークボーンの背後から、ノーウェルが襲いかかる。が、それは紙一重で避けられた。

「バカメ、コノ程度!……!!?」

「この程度、なんだって?」

ダークボーンの目の前には、ジャッカロープの剣の切先が迫っていた。避けられはしない。

 

「んー、ここからじゃよく見えないなあ」

床の下からの奇襲を狙う敵は、簡単には見つからない。オセロットは高い位置の菱形まで登った。

「俺が探せばいいか?」

「スワロー そうだね、お願い」

そこに声をかけてきた相棒に頷いて、飛び降りる。

オセロットを送り出し、スワローは下を見渡した。上からのほうが全体がよく見える。

「あれか」

それらしき影を見つけた。急降下し、追い立ててみる。

「ノーウェル、ここにダークボーンがいる」

スワローはノーウェルに声を掛けた。地属性のノーウェルボーンは、潜っている水属性のボーンに干渉できるのだ。

敵の影を追いかけるスワローのところまで駆ける。そうして、上のことに気づかない敵にその槍を突き刺した。

「はぁ!」

当然驚かれ、敵はすぐ深くへと潜る。そこにスワローはオセロットを呼んだ。

「おそらくノーウェルを狙って上がって来る そこを仕留めよう」

「わかった」

その予想は的中した。ノーウェルの背後に現れた敵を、更に背後のオセロットが、菱形から飛び降り重力を利用した重い攻撃を命中させた。

「グ、オオォ!?」

ひるんだそこにジャッカロープ回し蹴りが打ち込まれ、ノーウェルの槍に刺され、スワローの拳が振るわれた。

4対1 勝てるはずなどはない。

 

 

「あ〜、……眠ぃ」

「遅い時間だったもんねえ」

くぁ と零から欠伸が漏れた。その横で巡が背中を伸ばす。

「これから実験の続きをしようと思ったのだが」

「やめておきましょうね、剣也さん 今の状態じゃいい結果も出ませんよ」

ダンが剣也を苦笑いでたしなめた。その手には、手に入れたばかりの2枚のボーンカード。しかしそれを見て、零が「ん?」と声を上げた。

「どうした」

「その水属性のやつ……ゲスラ?ついこの前倒したやつだよな」

「あ、本当だ!」

言われて手元を見て、たしかにそうだ と目を丸くする。

「もう一枚は……デマーガか こいつははじめてだな」

「どうなってるんだ……?」

 

 

 

 

 

ここは、どこでもない何処か。

無機質で埋め尽くされたその部屋に、誰かが足を踏み入れた。“誰か”が長年使われているらしい椅子に腰掛けてデスクの上でパソコンを開き、来ていた通知に目を通す。そして深く長くため息を吐いた。

「やぁねぇ、アタシあのボーンの試作品なんて向こうに送っちゃってるじゃなぁい もぉ、やんなっちゃうわぁ……しかもなぁに?今まで送った子たち、みんな殺られちゃったのぉ?うぅん、もうちょっと頑張らなくっちゃ アタシが前線に出るのは当分先の予定だもの アイツに怒られるのは嫌だわぁ」

それから立ち上がって、部屋を移動する。そこには無数の唸り声が響いていた。右から、左から。薄暗い明かりを頼りに、“誰か”は歩く。少ししてから立ち止まり、辺りを見渡した。唸り声は、部屋の中央で薄く笑う“誰か”に向けられていた。

「こうしてみると可愛くなくもないわねぇ♡……ま、所詮みぃんな人工物を生み出すための道具だけれど さぁて、次はどの子に し よ う か な」

数分後。唸り声で充満したその部屋から、何かの悲鳴が上がった。




というわけで、怪しい誰かの登場です オリキャラになります
では、いつものコーナーいってみよー!

Z「はい、では今日もボーンのご紹介を行わせていただきます!
一体目、デマーガボーン、火属性!体の殆どが解けた鉄でできていて、ウルトラ熱いんだそうですぜ!近づきたくはないでございますなあ……
二体目……は、この前紹介したばかりなので要らないでございますね!それでは、また次回お会いしておりましょう!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

何やら良くないものができたかもしれない

まだアタシは消えてない!まだ! でも遅くなりました!待ってた人は居ないかな!?

そうだ、言い忘れに言い忘れを重ねまくってたんですが、スワローとオセロットは既にアイアンです。宇宙飛ばされるときのあのゼロのブレスレットの光エネルギーの恩恵によるものです(あと二体も覚醒させなきゃいけないとかアイデアなさすぎて無理)


零たちはまたも研究所を訪れていた。学校が連休のタイミングだったので、サボっているわけではない。

「確かに、この前のゲスラボーンと酷似していますね……」

「俺はまだボーン関係の機材をあまり持っていなくてな 解析、頼めるか」

「お任せください!」

そんな会話をしているのは、剣也とレナード。どうやら仲がいいようで、時々電話をしているのも見かける。

「そうだ、今後の参考にしたいから少し作業を見せてもらいたいんだが」

「勿論構いません」

(え、まさかこれ以上アイツの実験パターン増えんの?)

傍から聞いていて恐くなって、零は巡と顔を見合わせた。

「……ねえ零 大丈夫かな、僕たち」

どうやら巡も同じことを考えていたらしい。けれどそれには答えずに顔をもとに戻す。巡は「だよねえ」と呟いた。

はぁ、と同時にため息を吐く。

「……しっかりしてくださいね」

ギルバートが言う。彼にしては珍しく、労うような声音だった。ここ数日、剣也の実験が始まってからの2人の疲れ方を目の当たりにしているからだ。

「というかなんでダンは実験台にならねえんだ?」

アントニオが疑問を口にする。

「若いほうがいいだろう?」

答えたのは、戻ってきたらしい剣也自身。そこから少し離れたところで、ダンが明らかにショックを受けていた。

「ふ、ふふ、そうだよな、いくら剣也さんより年下とはいえ、もうこれだけ大きくなった息子がいるもんな……」

「お、親父いぃぃ!」

やがて自嘲気味に笑い始めるダンに零が駆け寄っていった。

 

「で、どうだったんですか、レナードさん」

翔悟が尋ねる。

「そうですね……基本は前のゲスラボーンと変わりませんが……なんというか、造りが雑なんです 今までとは明らかに違う あえて言うなら、劣化版、といったところでしょうか」

「ボーンの劣化版、か」

ふむ、とルークが顎に手をやった。

「やっぱり人為的に作られたものってことですか……」

タイロンが困ったように言う。

「ボーンって作ろうと思って作れるもんなん?」

「そんなわけ無いだろ」

不思議そうなアントニオに翔悟が呆れたように言う。

「こちらでも少し調べてみる が、調べるよりも敵を倒したほうが早いのでは、という感じもする」

「……剣也、自分の研究に自信ねえの?」

零が少し驚いたように言う。

「珍しい いつも、俺に任せとけー みたいな感じなのに」

巡もそれに同調する。

「自信がない、というか……何をどうすればいいかさっぱりわからないからな すべて手探りだ」

剣也が肩を竦めて困ったようにそう答えた。

「そもそもボーン自体が俺にとって未知の塊だからな、かかる時間は膨大だぞ」

そう言いながらも、剣也のその手はノートのページに何やら書き残している。メモのようだ。

「……まあ、大丈夫そうだな」

ダンがフッと笑った。

 

「けーんやー」

帰ってきて数日。零が剣也の部屋のドアを開けた。カタカタとパソコンのキーボードがなっている。側に寄って、剣也の目の前に持っていたコーヒーカップをずい、と差し出した。

「ん、ああ、零か ありがとう」

「ったく、たまには下に降りてこいよ ずっと部屋に籠ってるじゃねえか」

「そうだな わかった、今日の夕飯は一緒に食べよう 可愛い甥っ子が寂しがっているようだからな」

「べ、別に寂しいわけじゃねえ!!」

そんな零に、剣也は笑みをこぼす。最近はずっと部屋の中で画面とにらめっこだったので、人の顔を見るのは久しぶりだった。

「ところで」

剣也の声音が真剣なものに変わる。

「以前聞いていなかったが、捕まえそこねたあのボーンファイター、どんな容姿だった?」

「どんな……あんまし見えなかったけど、普通だったぜ 髪の色も服も、何処にでもいるような感じだった」

そうか、とそれに呟いて、剣也はメモにそれを書き込んだ。

「とすると、個人特定は容易ではないな ボーンカードからも何もわからなかった」

零の持ってきたコーヒーを一口飲んで、「うまいな」と口元を綻ばせる。零は嬉しそうに表情を緩めた。

「まあ、頑張れよな」

「ああ」

そこまで会話して、気がついた。ボーンカードが光っている。下の階から、ダンが呼ぶ声がした。

剣也は立ち上がろうとして、しかし零に止められた。

「俺達で行く この間に休憩しとけ」

「……わかった 頼んだぞ」

頑固な零と今ここで言い争って時間を過ごすわけにはいかない。剣也の言葉に頷いて、零は部屋を飛び出した。

「ああ、そうだ」

残された剣也は何やら思い出しながら、埋もれた資料を引き抜いた。

 

 

翔悟達と連絡を取り、合流する。タイロンとギルバートはいない。タイロンはたまたま少し遠くまで出掛けていて、ギルバートは早穂と買い物(デートではない残念ながら)だという。

目の前には3体、既にボーンを纏った敵がいた。

「目標発見 破壊スル」

「ボーン、状態グリーン 障害、ナシ」

いつもの機械音声。けれど

「まあ慌てるな 数ではこちらが不利なのだからな」

「肉声!?」

聞こえた三番目のその声に驚愕した。今までとは明らかに違う、生きている者の声。翔悟たちの反応に顔の見えない相手はキョトンとしているようだ。そのダークボーンは首を傾げ、何事かを呟いて、それから

「ぇ……ああっ!ボイチェン忘れたぁ!!」

叫んだ。その行動についさっきと同じくらい驚く。

「って、これ一般の人が今の声聞いて集まっちゃうよね!?」

巡がバッとアミュレットを持つルークを振り返った。すぐにルークはそのボタンを押した。

 

目の前のダークボーンは少し俯いて、また何やら呟いている。

「クッソ、ボイチェン忘れちゃったな ヤバイよね、ヤバイよな どうしよ、下っ端に任せて逃げるべきか?いや違うな……」

顔を上げ、様子をうかがうドラゴンたちをキッと見据えた。

「ブッ殺す!!」

ダークボーンは駆け出した。上から飛びかかるようにして、ジャッカロープへ拳を振りかぶる。それはわずかに届かず、2本の剣に受け止められた。力は均衡し、互いに動かない。と、ジャッカロープが一瞬力を抜き、後ろへ跳んだ。力の行き場がなくなり、ダークボーンは蹌踉めく。そこへ後ろから、ドラゴンが殴りかかった。しかし、相変わらず機械音なダークボーンの1体が仲間であるはずのダークボーンを足払いで転ばせる。それによってドラゴンの狙いは外れた。

「痛!何をするんだ!!」

「背後ヨリ敵ノ攻撃ヲ感知 アレハ、危険ダ」

そんな言葉をかわしながらも相手は体勢を整え、迂闊には近寄られないようになっていた。

「うわあ、合流しちゃったかあ」

後ろからそう言って現れたのは、オセロット。その横にはジャガーもいた。

「1体ずつのがやりやすいのにな〜」

残念そうに声を上げる。

「さっき、もう一体いたよな」

ドラゴンが、警戒を解かないようにしながら後ろを振返った。

 

腕を横から振り抜いて、遠心力で重くなった拳を相手に。それは呆気なく避けられる。舌打ちをして、ノーウェルはそこを退いた。彼がいなくなったところから、シャークが飛び出してくる。繰り出された水流を難なく躱して、ダークボーンはそれから前に踏み込んだ。下から引っ掛けるようにして、拳を振り抜く。

「っくぅ……!」

「シャーク!……っ!?」

吹き飛ぶシャークに気を取られている間に迫っていたダークボーンに、ノーウェルは攻撃を受け転倒する。飛ばされなかったのは運がいい。手にした槍を、ダークボーンへ。その刃を閃かせた。

 

シャークとノーウェルの姿を見留め、ドラゴンは視線を戻す。後ろから、ガキン、と金属の音がした。それをきっかけに延々と回る思考を打ち切り、4人はダークボーンへと走り出した。

「ハアァ!」

上半身を捻って、乗っていた菱形から飛び降りたオセロットが爪を振り下ろす。機械音のダークボーンはそれを受け流した。バランスを崩して、それでも受け身をとってすぐ立ち上がる。それから、オセロットの背後、影になって見えないところから、ジャッカロープが飛びかかった。一本の剣をブーメランとして投げ、その処理をしていたところにもう一本で斬りかかる。避けられず、ボディパーツにダメージが入る。わずかによろめいたそこにジャガーが顔面への膝蹴りを打ち込み、押し倒す。

「ジャッカロープ、ちょっとごめん」

「へ?」

着地の衝撃を緩和し膝立ちの状態になってるジャッカロープの肩を踏み台に、ドラゴンが上へ跳んだ。その拳が、奇襲を狙っていたダークボーンを捉え、確実にダメージを与える。

「チィッ!」

「流石にボーンクラッシュはしないよなあ……」

「うわ、後ろに居たのかよ!」

状況を理解し、慌てて振り向いてまた臨戦態勢に戻る。

「こっちは倒したよ」

オセロットがそう言って菱形の上から声を掛ける。

「くそ……!おいアロン!!」

ダークボーンが呼ぶ。と、離れたところに居たもう一体が駆けつけた。シャークとノーウェルの呆気に取られた声がして、それでもすぐに2人もやってきた。

「……アロン、アロンか」

ノーウェルが呟く。

「親父、知ってるのか?」

「ああ いつだったかな、かなり苦戦させられた相手だ」

その会話を聞いていたダークボーンはしばらく考えて、それから

「ふ、ふふふ そうか、お前たちが別宇宙から来たという奴だったか いいじゃないか、消し飛んでもらうぞ」

楽しそうに笑って飛び出した。今までとは比べ物にならないスピード。

「は」

何かが通り過ぎた。ジャッカロープがそう思うと同時に、強い衝撃を感じる。レフトアームパーツがダメージ受け、赤くなっていた。

「ああ、クラッシュしないのか なかなか丈夫じゃないか」

その言葉の主を睨めば、更に背後からの衝撃。アロンだ。掴みかかるそれを、ジャガーとシャークが引き剥がして押さえ込み、至近距離からの強力な攻撃によって完全にボーンクラッシュさせる。その間に2人のパーツにダメージが目立つようになったのは、純粋に相手の強さからだろう。

けれど、相手が減っても、残った1人に歯が立たない。こちらの技はすべて避けられるのに、こちらは相手の攻撃に反応すらできなかった。速すぎた。

「なんだ、弱いじゃないか!これなら手柄は間違いなく俺のものだな」

手柄。何のことだろう。そう思って聞き返そうと思った矢先、そのダークボーンの上になにか球体が落ちてきて、それから

 

コクーンの中を衝撃波が襲った。

 

吹き飛ばされ、倒れ、どうにか耐えて起き上がる。そこに、さっきまでのダークボーンはいなかった。代わりに、その真上の菱形には、翼の生えたボーンが一体。その左手で、なにやら球体を玩んでいた。

「実験終了 少し強すぎたか?」

聞こえるその声に、全員がため息を吐いた。

 

「何してるの、スワロー」




今回、というかしばらくボーン紹介はしないですできないです気力がないですごめんなさい どこかでまとめてやります
ストーリーのアイデア、この先の展開についての妄想等ありましたらお気軽にメッセどーぞー……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

盗難

あ〜〜〜〜〜〜〜 どうにかこうにかやってます〜
宿題少ないわーって余裕ぶっこいてたらピンチかもしれない


下まで降りてきたスワローはバサリ、と音を立てて翼を畳んだ。それから、ツカツカとドラゴンたちの方へ歩み寄る。

「どうだった?」

バイザーに隠されていてもわかる。その瞳がキラキラと輝いていることは。

「どうだったじゃねえよ!巻き込まれてよくわかんねぇよ!俺らがもうちょいダメージ受けた状態だったら最悪コアボーンクラッシュだってあったぞ!?」

「お、落ち着けって……確かに危なかったけど、おかげで助かったんだから な?」

一息でジャッカロープが怒りを顕にする。それをドラゴンが宥めた。その言葉のとおりなので、ムスッとしながらも引き下がる。

「しかし、さっきのは一体?」

「爆弾だな」

ノーウェルの問に、しれっと答える。あんまりあっさり言うので、それを飲み込むまでに数秒を要した。

「……爆弾」

ルークが呆然とその単語を繰り返す。

「え?そんなもんコクーンの中に持ち込めんの?」

「アミュレット持ち込めるしいけるんじゃない?」

首を傾げるジャガーにオセロットが答える。

呆れたようなため息を吐いて、ノーウェルが言った。

「詳しくは後で聞かせてください 取り敢えず戻りましょう」

 

戻ってきて真っ先に目に入ったのは、青年を取り押さえるタイロンとギルバートだった。しばし目を丸くする。

「あ、おかえりなさい 来たら丁度終わったみたいだったので……」

和やかに笑っているが、抑え込んだ手首は痛そうだ。

「これ、何でしょう」

ギルバートが何やら手に持っていたものを剣也に渡した。

「これは……何かの装置だろうか 帰ったら調べてみよう」

しばしそれを見つめて、頷いてポケットにしまう。

「さて、話を聞かせてもらおうか」

「くそ、貴様ら……!」

睨む青年を見下ろし、ルークが言う。と

「ソレハ困ル」

背後から声がした。ハッと振り向くと同時に、地面に叩きつけられる。ルークが見上げたその犯人は、見た目から推測するにどうやらボーンファイターのようだ。わけのわからない間に、そのボーンファイターは青年の上からタイロンを引き剥がして片腕で青年を抱え上げた。

「ドウナルカ分カッテイルナ、チーター?」

「アンティター……ああ、何であれ俺が負けたことに変わりはない」

歯ぎしりをする。

「ハァッ!」

そこに、翔悟が殴りかかる。相手の片腕はふさがっている。チャンスなのは確かだった。それなのに、その拳は簡単に受け流される。アンティターと呼ばれたボーンファイターは、翔悟を思い切り蹴り飛ばした。抱えられた青年が小さな悲鳴を上げるくらいの勢いをつけて。

「うわ!?」

「翔悟君!!」

倒れた彼をタイロンが腕を引いて起こした。フッとボーンファイターが笑う。

「筋ハ悪クナカッタゾ」

そう言って、空いていた手で持っていた見慣れない装置のボタンを押した。その瞬間、青年ごとその姿が消えた。

「あの装置は、さっきのものと同じ……」

何やらまた剣也が呟いていた。

 

「で、忘れないうちに聞くぜ剣也 あの爆弾は何だ」

零が剣也に尋ねる。ああ、と剣也が答えた。

「この前とった巡のウルトラダイナマイトのデータから作ったものだ あくまで仕組みの応用程度だがな」

「あ、良かった、アレ無駄じゃなかったんだ」

巡がホッとしたような表情を見せる。

「なあ、あれの威力をもう少し調節できれば、いい武器になるよな」

翔悟が言う。しかし、剣也はそれを首を横に振って否定した。

「残念だがそれは難しい コストがかかりすぎるんだ、せいぜいあと1,2個作るのが限界だろう」

「使いどころは見極めなければいけない、ということですか」

現場は見ていませんが、とギルバート。それに頷いて、剣也が続ける。

「すまないが、帰っていいか?さっきの装置を解析したい おそらくはテレポートのためのものだが、一応調べておきたいからな」

その言葉で、その日は解散になった。

 

 

 

「あ、があぁァァァ!!!!」

何処にあるのかもわからない場所。

年若い男の悲鳴が、絶叫が響く。その側には、2人。白衣と、アンティター。白衣の右手には、打ち終わった注射器が握られていた。

「ありがと、アンティター 貴方が連れてきてくれたこの子、いいじゃないの 最近は、みぃんなこの注射器見た瞬間に発狂するとか自殺するとかで、使い物にならなかったのよぉ」

「コヤツノ美点ハ、潔イトコロクライダッタカラナ」

その間も叫び続ける男の左腕は、少しづつ変貌し、人のものではなくなっていた。変化はそこだけにとどまらず、少しづつ全身を侵食する。2人の会話を聞いていられないほどの激痛を感じていることは容易に見て取れた。

「というかぁ、貴方、今くらいボイチェン外していいのに」

「ソウイウ訳ニモイクマイ」

硬いわね〜 と、白衣が頬を膨らませ不機嫌をアピールする。それを無視し、アンティターは目の前の光景を見ながらポツリと呟いた。

「我モ負ケレバコウナルノダロウナ……」

それに白衣が振り向く。

「あら、なにか言ったかしらぁ?」

「何モ 全テ終ワッタラ、コヤツニハ花デモ供エテクレ」

「そんなの自分でやりなさいよ 面倒じゃなぁい」

返答に、アンティターはバイザーの中で目を伏せた。

「ソレガ、難シイダロウカラ言ウテオル」

不思議そうに首を傾げる白衣にアンティターは言う。

「我等ガ相手シテオル彼ラハ、マダ強クナル」

それからヒラリと身を翻し、そして消えた。

「……変なアンティター 貴方が負けるなんて、そうそうないわよぉ」

白衣は笑いながら虚空に向かってそう言うと、うめき声を漏らすのみとなった男……否、男だったものに視線をやった。

「さあて、新しい怪獣ちゃん 貴方はどんなボーンになるのかしらね♡」

その表情には、愉悦のみ。

 

 

 

 

リビングのソファの上。何故か巡が嬉しそうにしている。

「……どうしたよ、巡」

「零、聞いて聞いて!剣也がね、もうしばらくは僕で実験しないって!」

その言葉を聞いて数拍。零は「は?」と間の抜けた声を上げた。

「は?マジで?うっわ、なんでだよ 俺まだ改良の余地があるとか言っていろいろやらされてんのに!」

「もうこれ以上必要なデータ無いんだって〜 やった!」

ストッパーとなるダンが仕事で居ないのにも関わらず言い争いになろうかという時、リビングに剣也がやってきた。何枚かの書類を手にしていたが、彼はそれをゴミ箱に捨てた。

「大丈夫なのかよ、ソレ」

「ああ、ミスを見つけてな 既に修正版もある」

「紙とかノート、また買ってきた方がいい?そのペースだと、前のもう無いよね」

「頼む」

巡は立ち上がる。

「零は?来ない?」

「翔悟に勉強教えなきゃいけねぇの」

少しうんざりしたようにそう言えば、巡は頷いて部屋を出た。

 

 

今家にいるのは、零、翔悟、そして閉じこもる剣也の3人。広々と使えるリビングにも飽き、高校生2人は零の部屋に居た。翔悟は、椅子の背にもたれて高い天井を見上げ、長く息を吐いた。

「リビングに負けないくらい広い……落ち着かねえ……集中できねえ……」

「んなこと言って、お前勉強に集中できたことあったかよ」

「ない」

返されたその言葉に、零は苦笑する。机の上にはノートと問題集が、零の手には参考書があった。ボーン研究所に行っていた結果、翔悟は見事に宿題をやり忘れていたのだ。

「仕方ねぇなあ、休憩入れるか ちょっと待ってろ」

苦笑して椅子から立ち上がった零は部屋を出て階段を降りようとし、ふと目の前の光景に違和感を感じた。広い廊下を数歩下がって、全体を見回す。気づいた。

(まさか……)

回収したボーンたちを保管する部屋が開いていた。

(巡も剣也も、入りたいときは言ってくる あいつらは鍵持ってねぇし)

急いで部屋の前に走る。ぱっと見、虹彩認識の機械に問題は見当たらない。では、隠し収納は。

「……!」

無理にこじ開けた痕。ここも開いたままになっている。中の機械を起動しようとして、けれどできなかった。

警戒しながら開きっぱなしの部屋に入る。ケースの中にカードはなかった。残っているのは一枚だけ。ゲスラボーンの劣化版のみだった。

 

 

 

 

地上から遠く離れた上空。1体のボーンが、手にした小さな通信機に話しかけた。

「回収、完了シマシタ」

『そぅ すぐに持ってきてねぇ やりたいことは山ほどあるんだから』

「ハイ シカシ、アレハ本当ニソノママデ良カッタノデスカ?」

『いーのいーの♪ どーせあの星の技術じゃアレから得られるものなんて無いわよぅ』

いや、あの星に違う宇宙から来てるやつがいるんじゃないの?大丈夫なの? そんな疑問をダークボーンは飲み込み、おとなしく自分のいるべき場所へと戻って行った。




おまたせしました
今回は書き途中だった分があったので思ったより早く投稿できましたが、次からはこうはいかないと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急展開

おまたせしました そして待たせた挙げ句謎の急展開 どうしてこうなった

短いですがキリがいいので一旦投稿

ヒカリの人間体は眼鏡してると思うの イメージ的なところもそうだけどさ、年齢とか考えると……


「それは、本当か!?」

「こんなことで嘘吐くわけねえだろ!!」

剣也を部屋から引っ張り出し、零はついさっきまで居た部屋に戻ってきていた。外の様子がおかしいことに気がついた翔悟が零の自室から出てくる。

「零?何かあったのか?」

「盗まれたみてぇなんだよ、今まで集めてたダークボーンのボーンカード」

「マジで!?」

チラと剣也を見れば、彼はどうやら隠し扉を修理し、中の機械を取り外しているようだった。零がヒョコ、と横から顔を出す。

「修理して使ったりしねぇの?」

「新しいものを用意するほうが早い 別に修理して改良してもいいが、セキュリティに関する技術は今までの光の国の研究所の様子から察してくれ」

言われて思い出す、今まで盗まれたアイテムの数々。思わず遠い目になってしまった零を、翔悟が不思議そうに見ていた。

 

連絡をすれば、すぐにルークたちも飛んできた。巡は大急ぎで走って帰ってきたし、ダンは慕ってくれる部下に仕事を丸投げしてきた。

「セキュリティが甘かったんじゃないですか?」

ギルバートが零に向かっていう。不機嫌そうな声は、いつものことだ。

「いや……虹彩認識にパスワード重ねてんだぜ?これ以上って……」

(しかも、俺ら地球人じゃないから虹彩のパターンも地球人のとは違うし……ん、待てよ?)

横のダンを見れば、どうやら彼も零と同じ考えに至ったようだ。

(地球人じゃなきゃ、これはパスできるかもしれない……?)

「……ああ、いや、うん、ザルだったな、お前のいうとおりだギルバート」

「……いきなりどうしました?」

はあ、と思わずため息を吐いてしまう。てっきり反論されると思っていたギルバートが不思議そうな顔をした。

「だがおかげで、一連の出来事のスケールがかなり大きいことが分かった」

「そうだね」

剣也の言葉に、巡が頷く。

「剣也さん、奪還されたボーンカードのデータは」

ルークの問に剣也はニヤリと笑った。眼鏡が光を反射して光る。

「一連のデータは既に書類に起こしてある ハッキングを受けていても大丈夫なようにな」

「わ、流石ですね」

ホッとしたようにタイロンが笑みを見せた。

「でもさ、コイツだけ残されてるのは何なんだろな」

アントニオが劣化版のゲスラボーンのボーンカードを手にして首を傾げる。解析の結果、すり替えられたわけでもないと分かっているそれは、たしかに不可思議だった。

「舐められてんのか……?」

ムス、として零が言った。いや と剣也が指摘する。

「どちらかと言えば、油断されているんだと思うぞ」

「え、意味違うの?」

「ちょっと違いますよ」

首を傾げる巡に、タイロンが教えていた。

 

「一応、残ってたゲスラボーンのボーンカードはボーン研究所の方で保管してもらおう 敵がどういう手口を使ったのかわからない以上、前回と同じ場所に同じ方法でしまっておくのは危険過ぎる 一応セキュリティも強化するつもりではいるが、様子も見たいしな」

剣也の言葉に、全員で頷く。

「それから」

言葉をつなげたのは、意外にもダンだった。

「敵の追跡に関しては、私達に任せて欲しい 勿論正体が分かり次第連絡はするが、それまでは……」

「え、なんで?」

「ダンさん達4人で探すより、私達も動いたほうが圧倒的に効率がいいと思いますが」

キョトンとする翔悟と疑問を呈するルークに、ダンは首を横に振る。

「こちらの都合ですまないが……」

「ま、心配要らねぇよ」

ニッと零が笑った。その表情を見ていると、なんだかそれ以上反対できなくなってしまう。

「何かあったら連絡くださいね」

そう言うギルバートに巡が頷いて、一旦解散となった。

 

 

翔悟達が帰ってから、机の上の開きっぱなしだった本を手に取り、巡は零に話しかける。

「ねぇ零、ちょっと催眠かなんか掛けたでしょ」

「お、バレた?前に親父に教えてもらった暗示だよ 親父、超能力系得意だからな、ほんとすげーと思う」

息子に褒められて、ダンは嬉しそうだ。

「……これで少し動きやすくなったな」

真剣な顔で剣也が言う。笑い合っていた零たちも、纏う雰囲気を変えた。ピリ、と空気が張り詰める。

「ノアの忠告には反することになっけど、仕方ねえな」

「今はまだ一般人への被害はそんなに出てない でも、それが続くわけでもないだろうしね」

「これが、今の俺達にできる最善の選択だ」

口調は変わらないのに、その重さは普段とは比にならない。

 

ダンと零、おそろいのペンダントが光を放ち、ウルトラアイ、ウルトラゼロアイへと形を変えた。巡が持っていた本はメビウスブレスとなり、剣也が掛けていた眼鏡はナイトブレスへ変形する。

「この前のあの謎の機械はワープ装置であったことが既に分かっている 一応行き先の座標を取れるか試してみたが、安定せず上手くいかなかった このことから、敵の基地は常に移動していることが予測される これからそれを探しに行こうとしているわけだが、見つけても手を出すな あくまで情報収集として行って欲しい」

剣也の言葉に頷いて、変身。4つの光が、地球を飛び出した。




次回はもっと早く上げたいけど、この先の展開どうやったら上手くまとまるかな〜
Z「自分を使ってください!!」
やーだ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

探索と寄り道

4人が宇宙へ飛び出して、ほんの少し。音速の数倍の速さを誇る彼らは、互いに遠く離れていた。

「お あれってネポスだよな」

ゼロの視界に映った星。以前、翔悟たちと争いそして和解した、他にはない、多次元宇宙のイレギュラー。

(あんま良くねぇんだけど)

時間はたっぷりあるのだし そう自分に言い訳をして、好奇心に負けたゼロはその星へこっそり降り立った。

 

 

一応サボっているわけだからちょっと後ろめたい気がして、狭い路地あたりからこっそり活気のある場所を覗くことにした。

ちょうど良さそうな場所に身を滑らせる。幸い、ネポスには様々な見た目の人々がいるために、地球人の零としての擬態にも全く違和感はなかった。

「地球より発展してるっちゃしてるのか……」

流れる人の波を見ながら呟く。時折見かける銀色のパックの中身がこの星における主な食料であることは、以前調べて知っていた。建造物の見た目はなかなか斬新な感じがして、そっと辺りをを見れば地球には居ない生物がいる。

「パッと見は似ていても、あの星とはこんなに違う」

と、近くで怪我をしているのか泣いている子供を見つけた。魚人、というような見た目だったので一瞬驚いたが、すぐに近寄ろうとする。しかし零より先に、他の人が声を掛けていた。地球人と変わらない見た目の壮年の男だった。どうやら男は子供に軽い治療を施したようで、笑顔になった子供はすぐに何処かへ走っていった。

「おぉ…… 助け合い、みたいなトコは地球と変わんねぇんだな……」

いいことだ と思ったところで視線に気づく。つい今子供を助けた男からだ。男はスタスタとこちらに歩いてきて、零の前で立ち止まった。

(うわ、しまった、独り言聞こえてたなコレ)

「お前は……」

男が零に話しかける。ああ、やっぱり聞こえてた そこでハッとする。

「……え?」

流石にこの星の言葉までは習得していない。しかし、数文字の単語ではあるものの、地球とそこまで交流が深いわけでもないこの星の民であるはずの彼との言っていることが分かった、ということは、可能性は1つ。

「お前、ボーンファイターなのか!?」

「やはりこちらの言葉が通じたか…… そうだ 私はフェニックスボーンの適合者、シュトルツ」

知っている名前だった。この宇宙で地球に降りる前に調べた中にあった名前だ。

「自分の時間止めて仮死状態になったり、地球の時間止めたりしたっていう……?」

「よく知っているな」

「調べたんだよ、いろいろあってな」

「ほう?是非詳しく聞かせてもらえるか?」

零に興味を持ったらしいシュトルツに頷いて、2人はその場を離れた。

 

 

「なるほど……地球ではそんなことが起こっているのか……」

以前シュトルツが身を隠すために使っていたその場所に2人は居た。

「ああ こっちではなんかあったりしねぇの?」

零の問いかけにシュトルツは少し考える。

「……2ヶ月くらい前、上空でボーンらしきものが一瞬確認されたが……それだけだな 調査はしたが、何もわからずじまいだった ただ……」

視線を外しかけていた零が、もう一度シュトルツを見る。

「同じ場所で、時空のひずみ、とでも言おうか 反物質エネルギーらしきものを放出する穴が見つかった もっとも、すぐに消滅したがな」

「時空の、ひずみ……」

その言葉を反芻する。過去に自分が少なからず関わっていた事件において、それは重要な位置を占めていた。

「心当たりはあるか?」

今度はシュトルツが問う。零はそれにフルフルと首を横に振ってみせた。

「今回に関しちゃ無ぇかな ただ多分、一連の出来事と時空のひずみが無関係ってこたぁ無ぇと思う」

「そうか……ところで話は変わるが」

「ん?」

首を傾げて続く言葉を待つ。

「お前は、何をしにこの星へ来たのだ」

零は幾度かの瞬きの間答えることを躊躇して、それでも重い口を開いた。

「敵の本拠地を探してて…… で、そしたらネポスが見えたから、ちょっとだけ……」

「……サボり、ということか」

呆れたように、シュトルツがため息を吐く。零は反論できない。けれど、そのままなのも嫌だった。

「け、けど、お前に会えたんだから結果オーライだろ!時空のひずみの情報も手に入ったし!!」

必死な少年に苦笑する。

「はは、それもそうかもしれんな では、これもなにかの縁だと思おうか」

言われたことの意味がわからず、零はキョトン、としてシュトルツを見た。ここではじめて、シュトルツはボーンカードを取り出してみせる。

「私も手伝わせてもらおう」

 

 

シュトルツはどうやら、少し後に娘のリーベルトと共に地球を訪れるらしい。だから零とはここで解散だ。

「それじゃ、頼むぜ」

「任せろ」

フッとお互い笑って、それから零は背を向けて走った。やがてその姿は人混みに紛れ、シュトルツからは見えなくなる。数秒語、空の遠いところで何かがキラッと光ったように見えたが、ネポスの民の殆どはそれに気づかなかった。

 

 

 

ネポスを発って、ゼロが向かったのはその上空。シュトルツが、時空のひずみが発見されたと言っていた場所だ。そこには何もない。しかしゼロには、何か、よくわからない、良くないものの残滓が感じ取れた。闇ではない。ましてや光でもない、感情の感じ取れない無機質の何か。そんな感覚だけがそこにあった。

「なんなんだ……?」

考え込んでもわからないので、ゼロはすぐにそこを離れた。

 

 

 

「遅いよ、ゼロ」

「悪ぃ」

予め決めていたポイントに、ウルトラ戦士の4人は合流する。

「さて、手分けして少し探索をしてみたわけだが…… 寄り道したゼロ、なにか収穫は?」

ヒカリが言う。

「寄り道?」

メビウスが首を傾げる。

「あ、バレてた」

「当然だ お前ならそうするだろうと思ってネポスがある区域を任せたんだぞ」

得意げな顔でヒカリが胸を張る。本当か………? とセブンが呟いたが、彼には聞こえてないようだ。

「で、どうなんだ、ゼロ?」

セブンが尋ねる。ゼロは頷いた。

「成果あったに決まってんだろ」

 

エクェスのシュトルツってやつが俺達に協力してくれることになったぜ 娘と一緒に地球に行くってよ

それと、そのシュトルツからもらった情報 大体二ヶ月前に謎のボーンがネポス上空に現れた後、同じ場所に時空のひずみが見つかったらしい ま、すぐに消えたみたいだけどな

 

「ただ、その時空のひずみがあった場所に行った時、なんか変な感じがしたんだよな こう、なんか、良いものじゃないんだけど、感情がないっていうか、生物っぽくないっていうかなんていうか……」

「発生源は?」

「わかんねぇ けど、時空のひずみと関係があるんじゃねぇかとは思う」

そうか、とヒカリは答えた。

「俺も一応行ってみたい ゼロ、案内を頼めるか」

「おう!」

「あ、じゃあぼくも!」

「では俺も」

「……全員かよ!?」

 

 

 

「うふ、ふふ、ふふふ…… やった、やったわぁ!!」

バン、と白衣が机を叩く。

「別宇宙に存在するウルトラ族、その観測! そしてその肉体から微量に放出されるディファレーター光線のデータの入手! これで研究が1段階進むわ……!! ああ、こうしちゃいられない すぐに器具を揃えなきゃ」




ディファレーター光線を浴びてウルトラ族が今の姿になって、で、光線がないと生きてけないってことは普段は体の中で光線使ってなにかしてるってことだよね?で、光線がないと生きてけないのは、出てった分を補充できないからじゃない?違うかな?

いや、この文ようわからんな


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



っしゃあ、ようやっと書けたのだ!短めなのだ!


ネポス上空。時空のひずみのあった場所。

「これは……」

セブンは、得体のしれない感覚に戸惑う。

「親父、わかるか?」

「ああ 一体何なんだ……」

落ち着かなさそうにメビウスがキョロキョロと辺りを見回した。

「うわ……なんか、すごいね…… でも、ここに近づくまで全く何も感じなかったのはどうしてだろう」

「たしかに不自然だな おそらく人為的なものが関わっているのだろうが…… 情報が足りんな」

メビウスの疑問に賛同したヒカリは顎に手をあてて考える。しかしすぐに諦めたらしい。はあぁ、と残念そうなため息を吐いて、手を元の場所に戻した。

「サンプル……とも思ったが、そもそもこの気配の発生源がわからん……なぜだ…… 感覚はこんなにもはっきりとしているのに……」

思ったより上手くいかなかったときにブツブツ独り言を言う大人は、面倒くさい。

 

 

「さて、本来の目的だった敵の本拠地は見つからなかったわけだが……」

「帰ったほうが良いと思う 地球だともう3日くらい経ってるはずだし」

メビウスが手を上げてそう言う。それにヒカリは頷いた。

「そうだな それにゼロのおかげで新たな仲間ができたんだ、ダメ元の探索にしては十分だろう」

4人は地球へと飛び立つ。

 

 

しかしそのすぐ後。ふと、ゼロがその場に止まって後ろを振り返った。真っ直ぐ前を見る3人はそれに気が付かない。光のない宇宙空間で互いの姿を認識するのは、簡単ではないのだ。

(……?)

何かに呼ばれた、気がした。待って、助けて、とでも言われたのかもしれないが、よくわからなかった。

ぶわ、と、目の前にスクリーンのような霧が厚く広がる。その中には、景色があった。

「ッ……!!」

少年。彼と手をつなぐ、青年。顔は見切れてしまっているが、少年の空いた片手を握っているのは、体のラインからすると女性だろうか。歩きながら顔を見合わせて、3人は幸せそうに笑っている。

 

ゼロと、セブンと、それから……

 

親を知らずに育ったゼロが嘗て願った光景が、そこには在った。

嘗て?否、今だってそうだ。 もしも  だったら  であれば   そういった接続詞が彼の頭から離れたことなど、一度たりともない。

(違う、これは幻だ 惑わされるな、俺! 今はちゃんと親父がいるだろ!)

そう光の戦士の本能は、正しく叫んだのだけれど。

 

では、母親は?

 

疑問文が、頭の中に浮かんでしまう。

(だめだ)

脳が警鐘を鳴らす。

 

目の前の霧が、揺れた。

消えていってしまう。切望し続けてきた、その景色が。

 

「嫌だ」

もっと見ていたいのに。

心のままに、手を伸ばした。

 

かくして彼は、網に掛かった空飛ぶ魚となった。

 

 

 

セブンが、異変に気づく。

「……ゼロ?」

チカリ と暗闇の中、離れたところで何かが光った気がして、辺りを見回した。しかしどこにも愛息子は居ない。

「っ!? ヒカリ博士、メビウス、待ってくれ!ゼロが見当たらない!!」

「何だと?」

「嘘でしょ!?やけに静かだなぁとは思ったけど……!」

姿が見えず、呼んでも応えず、テレパシーを飛ばしても届かない。

「全速力で地球に戻るぞ すぐに捜索をしなければいけないが、広い宇宙で闇雲に探しても見つかるわけはない 体制を整えよう 勿論、全力で」

悔しそうにしながらも、セブンはそれに頷いた。

 

 

地球に戻ってきて、剣也はすぐに作業に取り掛かる。が、すぐにその手を止めざるを得なくなった。

「く……ネポス周辺の座標が安定しなくなっているだと? 時空のひずみか?まさか、ゼロはそれに巻き込まれて……」

「剣也さん、これを使えないでしょうか?」

そんな彼にダンが差し出したのは、緑の石のペンダントだった。

「ゼロのビームランプと連携しています これから向こうの場所を探れるのではないかと」

「試してみよう」

すぐに椅子から立って、解析の準備を始める。ダンはそんな剣也の邪魔をしないよう、そっと部屋を立ち去った。

「……巡」

扉の横の壁に、巡が凭れていた。

「本当に、翔悟たちに手伝ってもらわないんですか?」

俯いて、彼はそう言う。元々この宇宙に居たボーンファイター達に協力は仰がない。地球に帰還する際、決めたことだ。

「ああ」

感情を籠めずに、ダンはそれだけを答える。

「どうして? 彼らも仲間です、全員で協力するべきではないですか ……いつまで、僕たちのウルトラ族としての姿を隠すんですか あまりに一方的な関係ではないですか」

「……そう思うか」

「はい」

「そうか……巡、きっと本当は、お前のほうが正しいのだろう」

巡が弾かれたように顔を上げた。

「けれど」

ダンが言葉をつなげる。

「もしここで本当のことを説明したとして、彼らの反応はどんなものになるのだろうな」

「……仲間を、信じないと?」

「そうじゃない 説明する時間が、惜しいんだ 勿論、騙されていたと、隠されていたと怒る者もいるだろうが……そんなのは些細な問題だろう ただ、この状況で真実を伝えるには、時間がかかりすぎる 今この1分1秒、アイツに何が起こっているかもわからないのに 本当は、今すぐ闇雲にでも宇宙を飛び回ってあの子を探し出したいのに」

 

「……というかそもそも、私は翔悟たちなんてどうでも良い」

続けられたその言葉に、巡は絶句した。

ダンは、ほんの少し微笑んだ。

 

 

 

 

 

私は、ゼロのためなら鬼になれる 仲間なんて、簡単に切り捨てられるんだよ




親馬鹿って良いよね、と思ってたらセブンがヤンデレ気味になってしまったのだ どうしてなのだ…… これからどうすればハッピーエンドになるのだ……?

というか、翔悟たち最近出番ないのだ どうにかしなければなのだ……


どうでも良いけど、皆さんオススメのウルトラマングッズとかあります?
取り敢えずゼロの10周年記念グッズのトートバッグはメッチャ良かったです 布のつなぎ目ちゃんと補強されてるし、底のマチしっかりしてるし 今日、土曜講座で学校あったんですけど、荷物全部入ったし めっちゃオススメですよ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お使い

遅くなってしまいました……いや、今テスト期間なんでホントは投稿なんてしてる場合じゃないんですけどね



「ここの数値の計算式はこうなるから……できた!」

剣也がパソコンから顔を上げた。

「座標、でたの?」

「ああ どうやら時空のひずみの内側のようだから、おかしな数字にはなってしまうが……」

後ろから声を掛けてきた巡に頷いて、パソコンの画面を見せる。

「流石、剣也」

「いや、ダンのおかげだ このペンダントがなければ無理だったさ」

「そっか」

笑って、巡はスマホを取り出した。それを、画面に向けて。

「……ごめん」

カシャ

スマホのカメラ機能。そのシャッター音が鳴った。

「っおい、巡!?それをどうするつもりだ!?」

驚いて大きな声を出す剣也には答えず、巡は部屋を飛び出した。

 

 

走りながら、巡は連絡用アプリの画面を開いた。元々が理系の剣也は、すぐには巡に追いつけない。チャットにさっき撮ったその画像を貼って、文字を打ち込んだ。

 

零を助けて

 

やはり、作業しながらだとどうしても走るのは遅くなる。迫る剣也の足音を聞いて、巡はそれ以上の文章は諦めた。だから、最後の最後、剣也の手が肩にかかるその瞬間。送信ボタンだけを、押した。

「……翔悟たちには連絡しない、と言う約束だったはずだが?」

剣也の低い声が、巡を咎める。

「うん、ごめん でもぼく、どうしても納得できないんだ」

ダンとの会話のことを、話した。

 

時間が惜しいからと、仲間を騙すこと

ダンがそれに罪悪感を感じていないこと

なにより、仲間など切り捨てられるのだと、微笑みすら浮かべてそう言ったこと

 

「ぼくにはまだ子供ってものが居ないからかもしれないけど……でも、やっぱりぼくは、仲間たちみんなで協力したい 助け合って、最後にみんなで笑いたいよ」

最後の方は、泣きそうになって上手く言えなかった。けれどどうやら、剣也ほうがちゃんと聞き取ってくれたようだ。長いため息が聞こえた。

「まあ、やってしまったことは仕方がない お前の言うこともわからんではないしな ……ダンには、内緒にするんだぞ」

「!……うん!!」

 

 

 

目を開けると、知らない場所だった。真っ暗なそこに、ぼんやりとした明かりが無数にある。

(ここは……?)

ゼロが体を起こす。

ジャラ

無機質の重い音がなった。その発生源はどうやら、自分の足首に嵌められている足枷のようだ。

「やっぱり、罠だったか」

誰も居ないと思っての独り言だったのだけれど。

 

「そうよぉ」

 

声が聞こえた。カツカツと、ヒールの音がした。その瞬間、さっきまで静かだったそこに生物の鳴き声が一斉に響き出す。

呻き声、唸り声、叫び声……

聞いたことのない不協和音の洪水に、ゼロは思わず耳をふさいだ。

 

タァン

 

ヒールが大きく踏み鳴らされる。パッと、一面の照明が点いた。見えたのは、壁に埋め込まれた無数の檻。その中には、キメラ、怪獣、知らない生き物。なんでもいた。

「ふふ、すごいでしょ?」

ヒールの正体が姿を見せる。男なのか女なのかはよくわからないが、人間だ。そこでゼロははじめて自分のサイズがおかしいことに気づいた。下を見なくても、人間と目線が合うのだ。

人間がニコリ、と満面の笑みを浮かべた。

「ごめんなさいねぇ、流石に貴方を怪獣と一緒にするわけにはいかなくて 場所がないから、ちょっと縮んでもらったわよぉ この空間にいるうちは、人類やそれに起因する生物は体長2メートル以下になるようになってるの」

なんでも無いことのように言うが、それを今の人間の力でやろうと思うとどれだけの技術力が必要か。というか光の国でもできるかどうか。

只者じゃないことだけは、確かだった。

「……てめぇ、誰だ?」

「名乗るときはまず自分から……と言いたいところだけど、この状況を作ったのはアタシだし、許してアゲル 

アタシの名前はガーベラ はじめまして、ウルトラマンゼロ」

「は?俺の名前……」

「調べさせてもらっちゃった♡ 貴方、結構有名なんだもの 漁れば情報がでてくるでてくる」

表情を変えずに、ガーベラが言う。

「俺を捕まえて、何がしたい」

その笑顔に騙されないよう、ゼロは意識して冷静さを保つ。

「そぉねぇ……取り敢えず、データ取らせてもらうつもり」

答えたガーベラはそれから目を薄く開いて、閉じた口をもう一度開いた。

 

サロメ星人ができなかった、ダークロプスゼロの制御のために、ね

 

 

 

地球。

剣也がダンに声を掛けた。

「ダン、座標がでた どうする、すぐに行くか」

「ああ、当然だ」

「……わかった」

ダンその瞳は今、巡も剣也も見ていないのだと、見ることができないのだと、その言葉で実感する。

(絆の大切さを、一体何時忘れてしまったのか……)

自分の思いは、巡のおかげで新たな仲間に賭けることができた。だから剣也はただ頷いて、本当の姿となりメビウスの待つ宇宙へと飛んだ。

 

 

 

「ダークロプスゼロの制御……!?」

絶句する。ゼロのその様子にも、ガーベラは笑みを崩さない。この反応さえも観察されているのではないかと思うと、ゾッとした。

「この際だもの、教えてあげちゃう♡ 私達はね、別の宇宙から来たの ここに来るまでの道中で、何体かダークロプスゼロを拾ったのよ」

「……で、てめぇらの目的がその制御ってことか?」

「いぃえ」

余裕ぶってそう言うゼロの言葉を否定し、ガーベラは笑みを深くする。

「ダークロプスゼロのことはあくまでアタシの趣味よ 全体の目的については流石に言えないし、なんならアタシもちゃんとは把握してないのよねぇ」

困っちゃうわぁ なんて言うガーベラは、全く困っているようには見えない。

そしてゼロが騒音に慣れてきた頃、もう1人、人間が2人のところに現れた。その顔は、ボーンのバイザーによって隠されている。その姿に、ゼロは見覚えがあった。

「てめぇ……あの時の……」

「アノ時……?」

「タイロンが捕まえてたボーンファイター、てめぇが連れて帰ったんだろうが 覚えてねえとは言わせねぇ」

そのボーンは首を傾げて、それから納得言ったように頷く。

「アア、モシヤアレノコトカ?成程、ウム、ソウダナ、覚テイルトモ オ主ハ、チーターボーンヲ敗北サセタ者ノ1人デアッタカ」

そしてクツクツと笑う。楽しそうだ。

「デハ少シ、自己紹介デモシヨウカ 我ハアンティターボーンの適合者 名ハ言エヌ」

「はっ 自己紹介なのに名乗らねぇとか、ありかよ」

ヤバイ そんな言葉がゼロの頭に浮かぶ。そしてそれは間違っていない。アンティターは本当に楽しそうにしている反面、微かに、しかし確かに、殺気を身に纏わせているのだ。

「ところでアンティター、貴方何をしに来たの?」

ガーベラがアンティターに尋ねた。

「……貴様、定期報告をシテイナカッタダロウ 何ヲシテイルノカト様子ヲ見ニ来タ シカシマサカ、ウルトラ族ヲ捕ラエテイルトハ思ワナンダ ウム、デアレバ、コノ功績ハ報告ノ失念を差シ引イテモ釣リガ来ルナ」

一瞬だけ視線をガーベラにやり、すぐにゼロに戻す。

「コノ気配……ナルホド、オ主、ジャッカロープボーンノ適合者カ」

「は?俺はてめぇと戦ったことねぇと思うけど」

ゼロは自由な首を傾げる。アンティターは頷いた。

「ウム シカシ、何度カ戦イハ見セテモラッテイル 無論、気ヅカレヌ様ニ、ダガ」

(マジか……)

知らなかった と、内心で冷や汗を流す。

(割とコクーンは広く使ってたし、ウルトラ兄弟も全部で3人いたのに?翔悟たちもいたのに?気づかなかったのか?誰1人?)

その焦りを、アンティターやガーベラは逃さず感じ取る。だから、心を落ち着かせなければならない。

「けど、ちょっと違うなぁ」

「ホウ?」

アンティターが、ゼロの言葉に興味を示した。

「ジャッカロープボーンが俺を選んだんじゃない 俺のためにあいつが作られたんだ」

ゼロは不敵にそう、表情筋が存在しないはずの顔で笑って見せる。

 

 

 

 

 

俺はノアのお使いだ このままお前たちの好きにはさせねえよ




というわけで、オリキャラ1の名前判明です ガーベラさんです

ていうか翔悟達マジでそろそろ出さないと……原因はわかりきってるんです シュトルツとリーベルトに対する翔悟の口調がわからないからなんです 誰か教えてください……皆さんがそこは捏造でもいいとおっしゃるならそうします……いやマジで情報が手に入らないんですよ 一応努力はしているんですけどね


ガーベラさんについてのアンケートを設置します フレーバーと言えばフレーバー程度のものですが、これの結果で三人称が変わります ご協力いただけると有り難いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



うわあああん! 遅くなっちゃったよおおおおお!!ごめんなさあああい!!


以下、呼んだほうが人によっては良いかも
1,シュトルツさんとリーベルトさんの口調は捏造させていただきました……
2,しばらく間が空いて、スタイル変わってるかもしれません 自分ではよくわからないけど


翔悟たちは悩んでいた。つい先程送られてきた、巡からのメッセージ。数字の羅列が映った液晶画面と、"零を助けて"の文字。数字の方は後からいろいろ試すとして、問題は文字の方だ。どういうことだろう、と思う。彼になにかあったのだろうか、しかしだとしても一体どうやってそこにたどり着いたのか、そして、自分たちはどうやってそこへいけば良いのだろうか、と思考を巡らせる。

と、その時人の気配がする。2人分だ。

「久しいな、竜神翔悟」

翔悟の前に現れたのは、シュトルツ。その横にはリーベルトもいた。

「……へ?シュ、シュトルツさんと、リーベルトさん!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。それを見て、リーベルトは吹き出していた。

「相変わらずだな、お前は」

「あ、はは……」

頭が追いつかなくて、おかしな返事になってしまう。

「お2人ともどうしたんですか?わざわざ地球にまで……」

タイロンが尋ねる。シュトルツがそれに答えた。

「君の友人……七星 零、だったか 先日彼とネポスで会った その時に地球での話を聞き、協力させてもらうことになったのだ」

「私はまだ実際会っていなくてな 彼が何処にいるかわかるか?」

リーベルトの問いかけに翔悟たちは顔を見合わせる。

「そのことで今、話していたんですよ」

ギルバートがため息を吐きながら、そう言った。

 

2人に今の状況について説明する。ある日出会った親子とその仲間のこと。今まで戦ってきた謎のボーンファイターたちのこと。集めたボーンカードが盗まれたこと。そして今さっき届いたメッセージのこと。

「メッセージの内容について、詳しく教えて欲しい」

そう言うシュトルツに頷いて、メッセージ内容を読み上げる。地球の字を見ても彼にはわからないが、声にすれば、ボーンの適合者の間で言葉が通じるのだ。

「ふむ……その数字、心当たりがある」

「マジで!?」

驚愕する翔悟にシュトルツが頷いた。

「ああ 宇宙空間で使用する座標だ 昔から使われている」

「ということは……ここに来い、と言っているのか……?」

シュトルツの出した答えに、ルークが考え込む。

「ならば」

リーベルトが声を上げる。自然と彼女に目線が集まった。

「私が皆を連れて行こう パンサーボーンの力を使えば、その場所まですぐだ」

 

 

 

セブンたちは、時空のひずみの前に居た。

「この先に、ゼロがいる……」

「油断するなよ、メビウス あのゼロをさらったんだ、強敵であることは間違いない」

「分かってるよ セブン兄さん、落ち着いていきましょうね」

メビウスがそう言うが、セブンは答えない。ヒカリは肩を竦めて苦笑した。そして、周囲の解析を始める。

「……ふむ この中ではこの大きさを維持できなさそうだ せいぜい地球人より少し大きいくらいが限界、か?妨害電波のようなものか?いや、空間そのものの存在を保つために起こった不安定性……?まあいい、二人共、ボーンを使おう いつものように光線技を使うと危ないかもしれない」

今度はセブンも頷いた。

 

 

 

 

ゼロを救うべく、10人は彼のもとへと……

 

 

 

 

「ノアのお使い、ですって?」

ガーベラが、怪訝な顔をする。

ニヤ、とアンティターが笑った気がした。

「ソウカ……オ主ノ強サハ、アノ神ノ加護故デアッタカ……」

ふとここで、ゼロは違和感に気づいた。

「……ノアのこと、知ってんのか」

さっきはつい口にしてしまったその名前。容易に会える存在ではない彼のことをなぜ、彼らが知っているのだろうか。

「知ッテイルトモ! ナニセ我々ハ……」

アンティターが言葉を続けようとしたその時、その空間に轟音が響いた。ゼロを捕らえる足枷に付いた鎖が、音を立てる。

「あらあらぁ、困ったわねぇ」

ガーベラがクスクスと笑う。

「他ノウルトラ戦士カ」

「みたいよぉ 大事な仲間を取り戻しに来たのね」

次の瞬間、ゼロは強い風を受けた。この周囲には、窓どころか空調もない。そもそも宇宙空間に空気はない。では、何処からそれは吹いてきたのか。風上の方へ視線をやる。そこには、見覚えのあるボーンが居た。

「スワロー?」

その横に居たボーンが、前に飛び出す。アンティターへの膝蹴りは、ヒラリと躱された。

「ゼロを返してもらおうか」

「親父……」

「落ち着いてください、ってば!」

さらにもう1体が追撃を試みるが、それも軽く避けられた。

「うぇ?オセロットも居たぁ」

「いるよぉ!」

抜ける空気の勢いに耐えつつそれを見ていたガーベラが、ニヤリと笑う。

「ふぅん、直にあなた達を見たのははじめてだけれど、悪くないわねぇ アタシも混ぜて頂戴」

そして白衣から、ボーンカードを取り出す。

「着装♡」

纏うのは、暗い紫色のボーン。なめらかな曲線を持つ怪しいそのフォルムはさほど不気味ではなく、美しいさえと言えるだろう。

「パピヨンボーン ふふ、久しぶりね、コレを纏うの、は!」

蝶の名を冠するそのボーンは、未だ突入口近くにとどまっていたスワローに躍りかかる。突然のことに唖然としていたスワローは、眼前に迫ったパピヨンにハッとし右腕で頭部をかばった。

「くぅっ……!!」

与えられた衝撃に呻く。ライトアームパーツがダメージを受け赤くなっていた。ゼロはスワローの方に走ろうとして、足元で鳴った音に自分が拘束されていることを思い出す。

「ゼロ!」

ノーウェルが、腕を振ってゼロの拘束具を断ち切った。それからボーンカードを手渡す。

「サンキュ、親父」

ゼロはパピヨンの方へと走るノーウェルに礼を言いながら着装し、オセロットと攻防を繰り広げていたアンティターの背中に斬りかかった。しかし腕を捕まれ、上手くはいかなかった。

「舐メテクレルナ」

そのまま投げ飛ばされる。空中でどうにか体制を立て直し受け身をとるが、アンティターとの距離は大きくなってしまった。その頭上で金属音がなる。スワローとパピヨンだ。時折ノーウェルが斬撃を放つが、空中を自由に飛び回る蝶はそれをものともしない。

「うわぁっ!」

ジャッカロープの横にオセロットが叩きつけられる。

「大丈夫か?」

「うん、どうにか ごめんね、助けに来たのに、やっぱり君がいないとまともに戦うこともできないみたいだ」

「気にすんな そもそも俺が罠にハマったのが悪ぃ」

目も合わさずにそんな会話を躱し、同時に床を蹴った。オセロットの爪が光り、武器をアンティターへと振り下ろす。アリクイのボーンをまとう彼は軽く身体をひねってそれを躱し、そしてバイザーの中で目を見開く。

「オ、主……!!」

「掛かった!」

オセロットの爪は、アンティターの凹凸に絡み、彼の動きを制限していた。ほんの少し遅れて、ジャッカロープがそこに拳を叩き込む。さらに2本のブーメランが追撃とばかりにそこにぶつかっていった。

バッと2人はその場を離れ、様子をうかがう。

「……ナンダ、コノ程度デアッタノカ」

アンティターは無傷だった。ボーンクラッシュどころか、ダメージを受けている様子さえ一切ない。アンティターが床を踏み鳴らす。次の瞬間、ありえない強さの衝撃波のようなものに襲われた。防御しようと思ってできるものではない。2人はさっきと反対側の壁に叩きつけられた。

圧倒的な力を見せる彼の横に、パピヨンが優雅に舞い降りる。

「え」

確か、コイツはノーウェルとスワローが相手していたはず そう思ってチラリとパピヨンがさっきまで居たはずの方を見ると、2人はボーンクラッシュこそしていないものの全身にダメージを受けていた。その状態のまま今までのように突っ込んでは返り討ちにされる、ということくらいは見ただけで分かった。

「ウルトラ戦士って、小さいとこんなにも弱いのねぇ」

ふふ、と笑ってパピヨンが言う。

「まずい」

ポツリ、とスワローが言う。それを否定する者はない。当然だ。いきなり現れた壁は、4人には高すぎたのだ。

 

 

 

けれど、壁が現れるのが唐突であるならば、乗り越えられるのもまた、唐突である。

 

 

 

「炎 竜 拳 !!」

 

 

気配は突然現れた。




ほんと遅くなってスイマセンでした……やること増えたんですよ、最近…… 言い訳にもなんないかもだけど……
次回はもうちょっと短いスパンでいけると、いいな……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無理だ。

遅くなりましたああぁぁぁ!!ごめんなさい!言い訳させてください。戦闘シーン苦手なんです。苦手だから今回すごく短いしキリついてません。本当にごめんなさい。


思わず振り向いたアンティターの顔面に、炎を纏わせたその拳が直撃する。白と赤の、龍の頭部を模した腕。

衝撃に後退って、笑みを浮かべる。

「ク、フフ……ドウヤッテ此処マデ来タノダ、ドラゴンボーン?」

その後ろ。空間に孔が空いて、手が伸びる。リーベルト/パンサーのものだ。が、それはアンティターに簡単に掴まれた。

「っく……」

「アア アア、成程、ソウカ、空間属性ノボーンカ」

それには答えず、ドラゴンはジャッカロープのもとへ走った。

「大丈夫か!?」

「お前……なんで此処に」

「僕が教えたんだよ」

オセロットが言う。向こうでは、シャーク達がアンティターとパピヨンに攻撃を仕掛ていた。

「彼らには伝えないという話だったはずだが」

起き上がれるくらいには落ち着いたノーウェルとスワローも合流する。

「うぐ……ごめんなさい、でも……」

「オセロット、長くなるからそれは後だ ノーウェル、これは結果論に過ぎないが、彼らが来なかったら俺達は確実に敗北していた 違うか?」

「……いや……そう、だな」

わけがわからずにキョトンと3人を見ていたジャッカロープの視線に気づき、ノーウェルは息を吐く。

「愛する息子に代えられるものなど、やはりなにもない」

言うやいなや、アンティターの方へと飛び出した。

「あれは照れてるな 全く、自分で言っておいて」

フッと笑ってスワローも地を蹴った。追いかけるようにオセロットも駆け出す。

「なんなんだ……?」

首を傾げていたジャッカロープも、疑問を後回しに走り出した。

 

 

ノーウェルが、アンティターの背後から奇襲を仕掛ける。それは簡単に気づかれてしまった。しかし行動に移ろうとしたアンティターはノーウェルに気を取られすぎていて、ドラゴンの足払いはいとも簡単に決まった。体制を崩したアンティターはノーウェルに蹴り上げられる。

「グゥ……!!」

吹き飛んだアンティターを、空中でパピヨンが受け止める。

すぐに降ろされたアンティターは、飛ばされるジャッカロープのブーメランを片手でさばいていく。ブーメランは、ジャッカロープの届かないところに突き刺さった。

床に立っていたパピヨンを狙って、タイロンが地を揺らす。飛び立とうとするところに、レオとジャガーが殴りかかる。けれど、そのどれもが受け流された。

「ひどいわぁ、数の暴力じゃない」

不満そうな声で言う。

「ああ、それは確かにすまないな」

パピヨンの上から、声。スワローだった。避けきれない そう判断して、パピヨンは受け身をとる。その間も警戒は怠らない。ついで飛んできたシャークの斬撃は難なく躱された。しかしそれは予測されていて。躱した先にはオセロットが居た。

「ッ……!」

「悪役っぽくてゴメンね」

1対のツメがパピヨンのボーンにダメージを与える。けれどまだ、そのパーツにダメージの蓄積による変化は見られない。

「ああ危なぁい」

その声には笑いさえ含まれている。

「でもアタシだって、やられっぱなしじゃ終わらないわよぉ?」

大きく拡げられた虫の羽が見えた、気がした。風じゃない、何かの力に吹き飛ばされる。焦るジャッカロープの後ろには、ノーウェル達が入ってきた、孔。

「やべっ……!!」

その時、誰かがその腕を掴んだ。ジャッカロープの眼前の空間に空いた孔から出た紫色の腕が、彼をそこにとどめていた。

「大丈夫か?」

声がしたほうを見れば、そこにはパンサーがいる。運良く物にぶつかって、吹き飛ばずにすんだようだ。他の面々も、ダメージの大小はああるものの、どうにか立て直していた。

「なによ、つまんないわねぇ」

パピヨンは不満そうだ。バイザーの中では頬を膨らませているのだろう。

見ず知らずのボーンファイターに助けられて、その存在に少し安堵する。だが、息を吐く暇は与えられない。

「……!!」

目前に迫るその拳はアンティターのものだ。目を見開く。避けられない。確信した。

負ける、と……

(ばんじきゅうす ってやつか……)

先程のパピヨンの攻撃のせいで、仲間たちはジャッカロープを助けられる状態にない。

地に伏したスワローと一瞬、目が合った。思い出す。諦めるな、と言われた。敵を喜ばせるな、残される仲間たちを不安にさせるな、と言われた。

 

 

……無理な話だ。




Z「お久しぶり!Zでございます!
ではでは早速いきますか〜
まずはアンティターボーン!アリクイのような出で立ちで、威圧感満載でございます 素早い動きが特徴的で、手甲の形の刃には要注意!適合者は声から考えるにどうやら初老の男性のようでございますが……なにか拳法をなさっているような動きで戦っておりますなあ
それにしても師匠、大丈夫ですかね……」
パピヨンは次回に回しますぅ……


ちょっと行き詰まってきて、正直いつ失踪するかもわからない状態です。なのでもし、こんなあたしに付き合ってくれる読者様がいたら、応援してくださると嬉しいです。これからもぜひぜひよろしくお願いいたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



アタシはまだは諦めないッ!自分で完結まで持っていくことをッ!
と思って戦闘シーン自分で頑張ったところ、謎のラスボス戦感がでた。まだまだ続くんだけどなー。

いつもより大分長いです。


スワローは、立ち上がろうとする。できなかった。ボーンクラッシュしたボディパーツが重すぎる。今まで幾度も自分たちを助けてくれた翼の形は石化したことで半端じゃない重さを持ち、今ばかりは忌々しい。

アンティターがジャッカロープに襲いかかっていくのが見えた。血の繋がりのない甥の彼と目が合った。諦めているようだった。スワローにもわかる。もう、どうしようもない。距離が近すぎた。ダメージを受けすぎた。突破口は、何処にも見つからなかった。自分の頭脳には、自信がある。

「く、そ……」

諦めるな そう言ったのに、己が今、動けないせいで、彼は諦めざるをえない。

 

 

オセロットは手を伸ばす。届かないと分かっていた。けれど伸ばさずには居られなかった。

「ゼロ……ッ」

思わずその名を呼ぶ。かすれた声は誰にも聞こえない。

彼は自分と歳が割と近くて、全く性格の違うはずの彼の隣はいつだって心地よくて、太陽のようで、大切な仲間で、友人で…… 蓄積されたダメージと落下物に阻まれて動けない状態で、冷静にはなれない。どうすれば、どうすれば、助けられるのだろう。思考回路がショートするくらいに考える。それと同時に、今までの経験から来る勘は告げていた。

あれは、あの攻撃は、助からない。

 

 

ノーウェルはもがく。一度は捨てた息子。けれど、今は大事な愛息子。ボーンクラッシュした脚を引きずって、近付こうとする。間に合わないということを、認めたくなかった。

(これが、罰だろうか)

けれど、おかしな話ではないか。今まで苦しんできた彼が、なぜ今なお苦痛を感じなければならないのだ。

(苦しむべきは、俺の方のはずだ)

無力な自分を呪うことしかできない。そんなことをしたって意味がないのは分かっている。

(自分の息子を助けることさえ、許されないというのか……?)

ゼロ

無限を秘める名を持つ彼に、何が足りなかったのだろう。きっとそれは……

 

 

ドラゴンはギチ、と歯を鳴らした。目の前の光景をどうにもできないことが、こんなにも辛い。

(なんでッ……!!)

まだ零のことを全然知らない。誕生日も、好きな食べ物も、趣味も、彼が隠している何かのことも。それを知る未来を、ここで終わらせたくない。終わらせて良いはずがない。なのに、かつて力を貸してくれた魔神は今、彼の思いに応えようとはしない。

(なんで地球やこの宇宙を救えて、クラスメイトを、仲間を救えないんだよッ!!)

拳を強く、グローブが破けるのではないかというほど握る。もう、その手は燃え盛る炎に纏われはしない。小さな火が断続的にチラチラと見えるだけだ。

 

 

シャークが、ジャガーが、ライノーが、レオが、パンサーが呻く。その瞳に見え隠れするのは、諦め。

 

 

 

けれどまだ、運は彼らを見捨ててはいなかったようで。

 

 

 

 

 

「……ようやく私のことを忘れてくれたか」

 

 

 

 

その声が響いて、そして、アンティターの時は止まった。

「!!!」

カツカツと踵を鳴らすその正体は、フェニックスボーン。時を司るその力が、アンティターの拳からジャッカロープを救い出していた。ほう、と後ろの方から安堵の声がいくつも聞こえる。

「あらやだ……」

勝ちを確信していたパピヨンが、驚きの声を上げた。

「どうやら、初め私は警戒されていたようだったのでな お前たちの意識が私から完全に逸れるのを待っていたのだ ……大丈夫か」

「え……あ、ああ、サンキュ」

座り込んだ状態になっていたジャッカロープをフェニックスが引き上げる。安全な状態にしてから、アンティターの時を再び動かした。

「……失念シテイタナ」

悔しそうに言う。彼はあっさりと敗北を認めたように見えて、しかし隙は狙い続けていた。流れるように彼から繰り出された蹴り。それを止めたのはパンサー。能力を駆使し、フェニックスに届く寸前だった脚を、その勢いを利用しはたき落とした。

ジャッカロープが助かったことで思考が落ち着いてきたのか、何人かが立ち上がる。万全ではないが、仕切り直すか。

そう思ったとき、パピヨンの脳内に通信が入る。会話の最中に狙われないようにと、大した効果がないことを承知で物陰に入った。

『なにかしら?』

『……一度引け』

『ここから撤退することがどういう意味かは……』

『わかっている そしてその上で言っている』

彼女(正しくは彼であるが言うと殺される)の中に響く声は平坦で、しかし有無を言わせない響きを持っていた。

『……りょーかい』

通信を切って、小さく溜め息を吐いた。

「アンティター、アイツからの命令よ 引け、ですって」

警戒を怠らないままで不満そうな表情を見せるアンティターを横に、彼女は手元の機械を操作する。ふざけたような雰囲気は鳴りを潜め、真剣な眼差しでただ作業をした。

 

「シークレットファイルⅠ及びⅣ、データ&バックアップ オールデリート ファイターデータのみファイルⅨに移行」

その隙にと放たれた攻撃は、全てアンティターによって止められた。フェニックスももう、意識されてしまっては容易く動くことは許されない。邪魔はさせない、ということらしい。

「ポイントMmD管理システム ターンオフ 人造怪獣生命維持装置停止、完全排除」

耳が慣れてしまっていただけで本当はずっと響いていた周囲の声が、苦痛を帯びたものに変わり、そして一気に小さくなった。ただ微かに、せいぜい1体分の、か細い鳴き声が聞こえる。

「……あらぁ?まだ残ってるじゃなぁい 生命維持装置は切ったはずなのだけれど…… ま、いいわ」

いつもの調子に戻ったパピヨンが言う。

「それじゃ、ゲージロックも開放しちゃおうかしら……ハイっと それじゃ行きましょうかアンティター ああそうだ、気をつけてね、この空間そのうち消えるわよぉ」

そして、2人の姿は消えた。

ガチャン

音がしたほうを振り向くと、そこには息も絶え絶えな様子の怪獣が1体。そしてソレは、ドラゴンたちとそう変わらない大きさをしていた。キュウキュウ と、助けを求めるようにソレは必死に声を上げる。

「……ピグモン?」

ジャッカロープが呟いた。

 

 

 

真っ白な広い空間。

そこに突然現れたのは、2人の人間。

「どうしたのよぉ、突然引けだなんて」

部屋のずっと奥に置かれた黒い玉座。そこに腰掛ける誰かに向かって、ガーベラが話しかける。

「……あれは、ウルトラマンゼロだったのだな?」

誰か、は質問に答えず問い返す。ガーベラはため息を吐いて、それから頷いた。

「そうよぉ、一応連絡したでしょう?」

そこまで言って、ふと気がついたように あ と声を上げた。

「ゼロ……ノアのお使い……ああ、そういうことね」

「分かったのならデータを報告しろ 良さげな場面はあったはずだ」

ヴォン、と音を立てて、空中にパネルが浮き上がる。それを軽やかにタップして、ガーベラは目的の画面を開いた。

「……ダメね、反応なし」

「欠片もか」

「ええ」

彼女の答えに、玉座に座った誰かは舌打ちをする。

「愛子が危機に陥ろうとも、相変わらずの気分屋加減……やはり、神など、ノアなど必要ない」

 

 

 

「連れて帰る!!」

「気持ちはわかるがな、ピグモンは希少種族だ 共に暮らすとしても、参考になるものがない現状では全て手探りになる ピグモンのためにもやめたほうが良いんじゃないか?」

「ピグモンがどんなやつかなら知ってるぜ!一緒に暮らしてたんだからな!」

ただ1体残されたらしい怪獣、ピグモンを、ジャッカロープは苦しくないように抱きしめる。柔く反対したノーウェルだったが、言い返されて黙る。

「良いんじゃないか?」

ピグモンに応急手当を施していたスワローが言う。

「このまま放っておいたって良いことはないだろう 幸い君の息子は勝手が分かっているのだから、連れて帰るのは良策だと思うぞ」

ただ、と言葉をつなげる。

「この宇宙の彼らに説明できるなら、だがな」

後ろを振り返れば、ピグモンに対し好奇心やら恐怖心やらの混じった視線を向ける7人が。

「……どうしたんだよ」

ジャッカロープが首を傾げて言う。

「いや……それ、ナニ?」

ジャガーが恐る恐るピグモンを指差す。

「この宇宙にはいないのかな 人間にも友好的な種族だけど」

「いたとしても知っているとは限らないだろう」

疑問を口にするオセロットにスワローが答える。

「見たことも聞いたこともない生き物ですね……皆さんは知ってるんですか」

ライノーの問に頷く。

「俺達の故郷じゃよく知られてるぜ ぬいぐるみとか売ってる」

「買い手は多くないと思うけどね……」

ドラゴンがゆっくり近づいてきて、ピグモンをじっと見つめる。

「そーいや確かに、零の部屋にコイツに似たぬいぐるみあったな……」

「お前、持ってきてたのか……!?」

「キュ?」

ドラゴンからの情報に、スワローが驚いてジャッカロープを見る。ピグモンは、いま繰り広げられている会話がわからないのか、首を傾げた。

「……かわいい」

その様子を見たシャークがポツリと呟く。その言葉は確かにジャッカロープに届いた。

「分かってるじゃねーかお前!可愛いよな!!」

「ああ、かわいい もし彼を……彼女か?わからないが……連れて帰るのであれば、私も全力でサポートしよう」

シャークが力強く頷く。

「はぁ……わかった、連れて帰ろう しかし、まずはここを脱出するのが先だな」

ノーウェルが腰に手をあて上を見る。つられてドラゴン達も同じ方を見れば、ピキピキと空間の端の方にヒビが広がっていっているのが見えた。空間が、元の形に戻ろうとしていた。

 

 

 

「報告はまだあるわよぉ」

真っ白の内側で、ガーベラが話を続ける。

「ウルトラマンゼロの人間体は、七星 零 ノアによって造られたジャッカロープボーン、その適合者」

「以前の報告にあった名前だな、アンティター」

玉座の誰かが、「なぜ気付かなかった」と言外に責める。

「申シ訳アリマセン 父親デアル ウルトラセブンの人間体、諸星 ダン ト姓ガ異ナッテイタメニ、気付クコトガデキマセンデシタ」

ボーンの着装を解かないアンティターが言えば、誰かは始めから大して興味などなかったかのように、そうか とだけ答えた。

「そ・れ・と」

彼女は画面をスクロールした。表示されているのは何かのメーターのようだ。

「この宇宙の魔神達も今回、ノアと同じ様に一切の反応を見せなかったわぁ 過去の記録を考えると、今回の戦闘にも介入してくるものだとばかり思っていたのだけれど」

ちら、と壇上の誰かの方を見る。視線の先の彼は、忌々しそうに呟く。

「コレだから、神というものは……」

それから

「プロジェクトHZはどうなっている?」

ガーベラに尋ねた。彼女は画面をすばやく切り替え、それを壇上の彼に見せる。

「いいペースって言えばいいペースね だけど、γとλはもうダメ 明日にでも処分するつもりよぉ αは調子は良いのだけれど、なかなか安定しないの……でも上手くいけば、間違いなく最高の個体になるわ 今一番良い感じなのはβね これはアンティターが連れてきてくれたコを使ったのだけれど、試験結果は全て良好、観察データにも異常なし 今すぐにでも使えるんじゃないかしら」

玉座に座る彼はそれを聞いて頷く。

「では、βを利用し試験運用としよう 傭兵でも正規戦闘員でもいい、適当に良さげな奴を見繕って合成しろ」

「ああ、それなのだけれど」

ガーベラはまだ続ける。

「今回はちゃんと着装するシステムにしたいの アレは今までとは違うわ ちゃんと内側から制御してあげないとコントロールは絶対ムリ」

「……デアルナラバ」

黙って聞いていたアンティターが声を上げた。2人の視線が彼に向く。

「ガーベラ、我ヲ使ッテハクレヌカ」

「なんですって?」

ガーベラがぎょっとして言う。

「冗談はよせ お前は俺の部下において最大の戦力なのだ わざわざ試験運用などというリスクに手を出すな」

玉座の彼も止める。しかしアンティターは首を横に振った。

「我ガ連レテキタ戦闘員ノ成レノ果テダ。最後クライ、面倒ヲ見ル」

「成れの果てってアンタねぇ……」

「アンティター」

壇上から声がかかった。

「本気なのだな?」

頷く。

「わかった では万が一に備え、軍統括の後任を立てろ ガーベラ、ボーン化の用意を」

「はぁい♡」

「……承リマシタ、殿下」

答えれば、眉をひそめられる。

「アンティター、もう殿下ではないと何度言えばわかる」

「モ、申シ訳アリマセン、セゼル様」

慌てて謝罪する部下に、セゼルと呼ばれた彼はフッと笑う。

「期待しているぞ……ルシュー」

「ハッ」

本来の名で呼ばれたアンティターは、己の職務に向け決意を新たにし、退室した。

 

 

1人残った部屋で、セゼルは呟く。

「最後の一人になるまで、そう長くはなさそうだな……」

左の薬指に嵌っていた指輪を、降り注ぐ照明に翳す。

 

 

「神は、この世に必要ない……そうだろう?」

 

 

 




オリキャラの名前2つはんめーい!
セゼルさん。特に由来はないけど、思いついてからは絶対コレって決めてました。
ルシューさん。由来はルシファー。可愛らしい名前だけど気にしないで。

Z「お久しぶりです!って、今自分ケッコーやばいんですけど〜こんなことしてる場合じゃないんですけど〜(TVシリーズ本編の話)
ま、いいや
えーと、パピヨンボーン!蝶をモデルとしたボーンで、風属性だそうです 優雅に空中を舞って、体中に隠されたナイフでグサッ!ひぃぃ!美しいものにはトゲがあるって、こういうことなんですかねー……
それにしても、プロジェクトHZのHZってなんなんでしょう?」

HZ……大分わかりやすい名前にしたと思います。候補いろいろ探したんですけど、多分これが一番やりやすいな〜、と。まぁ、お陰で処理しないといけない面倒が増えたんですけどね。それでもあたしは諦めない!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

信じる

長らくお待たせいたしました。そろそろ連載を再開していきたいと思います。でも今回はリハビリ的なもので勘弁して下さい。次回から本格的に頑張る。


パンサーの能力で地球へ転移して、今の状況をまとめる。

「貴方がたは、どうやってあそこへ?」

ギルバートの質問がダン達に刺さる。地属性、火属性、風属性、そして属性不明。中身が唯の人間であれば、宇宙空間のど真ん中に行ける理由がないのだ。

(怪しまれるよなぁ……)

俺が捕まったせいだ、と思う。表情には出さないが。

「なぁ、別にそういうの要らなくないか?」

言ったのは、翔悟だった。

「確かにさ、零達があそこに居たのは不自然だ。俺もそう思う。でもさ、元々は別の宇宙?に居たんだろ?俺達が知らないことがあったっておかしくない。秘密にしたいならすればいいと思うんだ。それにさ、なんでわざわざ仲間が聞いてほしくないこと聞くんだよ。必要なことなら、零達は自分から話してくれると思うし、そうじゃないことは、無理やり聞き出しても、仲間割れにつながるだけなんじゃないかな」

「貴方ね……」

ギルバートは翔悟の言葉に苛立ちを隠そうとしない。

「わかってるんですか?これは、貴方が主張しようとしている『仲間との信頼』に関わる問題なんですよ!そもそも、彼らの素性だってはっきりしてないんです。目的だって、不確かなまま。もし僕たちがただ単に『利用されてる』だけだとしたら、どうするんです!?」

「それは……!」

「あ〜……悪いんだけどさ、ちょっといい?」

零が口を挟んだ。翔悟とギルバートは大人しく引き下がる。

「少なくとも俺は、俺とお前たちの間にそこまで絆を感じてない」

「え」

なにか言いたそうな翔悟を、手で制する。

 

「いやまぁ、仲間だっていい出したのはこっちだし、信頼はしてるぜ?ただ、信頼と絆はちょっと違うからな。けど、お前たちの間には、確かな絆がある。特別固い絆が。俺は、そこに賭けたいと思った。だから、言い方としては確かにギルバートが言う通り『利用してる』になるのかもしれない。ああ、俺はお前たちの絆を利用してる。でも、いや、だからこそ、お前たちの絆を壊す原因にはなりたくない。希望をこの手で崩したくない。だから、お前たちが俺を信用できないというのなら、いいぜ、仲間をやめよう。さぁ、どうしたい?」

 

「……仮に仲間じゃなくなったら、あなた達はどうするんです?」

「行動そのものは今までと大して変わらねぇよ。ま、目標くらいは話すか。ただこの宇宙に襲いかかろうとしてる何かを突き止めて……つっても原因っぽいのもう向こうから姿見せてきたけど……で、排除する。この宇宙を守る。それだけだ。それが、俺達の仕事だ」

ギルバートの問に零は間髪入れずに答えた。答えて、ギルバートの答えを待つ。

「……仕事、ですか。随分サッパリしてるんですね……まぁ、僕も別に疑いたくて疑ってるわけじゃ、ないので。だから、まぁ、良いでしょう」

視線を反らして、ギルバートは不機嫌に言った。

「許してくれたってことでいいのか?」

「そう解釈してもらっても構いません」

場の緊張が和らいだ。安堵の溜息も聞こえる。零はニッと笑って、

「んじゃ仲直りついでだ、約束する。俺はお前たちを裏切るようなことはぜってーしない」

そう言って、巡達を振り返る。巡と剣也は笑って頷いた。

「僕も。仲間は裏切らない。そして君たちを信じる。約束だ」

「では俺も誓おう。仲間がいかに大きな存在かは知っている。お前たちに不利益を与えるようなことはしない」

「人体実験は?」

「最終的にはプラスに働くんだから良いじゃないか!」

そして、黙ったままのダンに視線をやる。

「親父、剣也から聞いたぜ。俺を助けに来るときなんて言ったか」

ダンが零と目を合わせた。

「特別扱いは嬉しいけどさ、でも、そうじゃないだろ。仲間ってのはさ、自分の一部なんだ。親父にだってわかるよな?で、だからこそ、できるだけ遠ざけておきたかったとかだろ?気持ちはまぁ、すげーわかる。だけどもうちょっと、置いてかれてる方の気持ち考えようぜ。仲間は必ずしも、守られるだけの存在じゃない。せっかく志を同じくしたもの同士なんだ、皆で戦おうぜ」

零をじっと見つめていたダンはフッと笑って、そして頷いた。

「そうだな、その通りだ。仲間とはなにか……いつの間にか良い答えを見つけたんだな、零。俺も約束しよう。俺達は仲間だ。横に並ぶ存在だ。仲間のために、俺は戦おう。助け合う者として、これからもよろしく頼む」

翔悟達が笑う。雰囲気が和らぐ。誰からともなく雑談が始まる。

 

得体のしれない恐怖は、確かに迫ってきている。それでもここには、日常があった。守るべきものがあった。なんのために戦うか。彼らはもう、それを知っている。




何故今まで更新できてなかったか……凹んでたんです。予定のストーリーに隠れていた矛盾に気が付いたり、日常回とは言え公式設定忘れて変なこと書いてたり、メビウスの人間体にはヒビノ・ミライってのがあるのにすっかり忘れてたことに気がついちゃったり……でもずっとこの話をほっとくわけにもいかないので、頑張っていきます。生暖かい目でも見守ってくだされば恩幸、それより嬉しいことはないです。
アイデアも相変わらず募集中です。そろそろオリキャラの画像貼るつもりなのですが、容姿はこんなのが良いな〜とか有れば是非おしえて下さい。皆さんの好みは?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迂闊だった

お久しぶりです。前回シュトルツさんの存在を本気で忘れていたことを大変反省しております銀牙っす。
書いてて自分でもよくわからなくなってきましたが、取り敢えず放り投げておきますね。そしてアドバイス下さい。戦闘シーンないとマジでつまらんくないかこの話。次は入れよう。
ガーベラさんたちに愛着沸いてきました。画像はもっと彼女(いや彼か)を可愛く描けるまで待って下さい。多分次回になります。


コポコポ……と、液体の中に浸けられた生命体が呼吸する。自分はもうじきこれを纏って戦うのだろうと、考えてルシューは不思議な気持ちになる。

「あらぁ、ここにいたのね」

声を掛けられて振り向くと、そこにはガーベラがいた。

「コイツノコトガ、少シデモワカラナイカト思ッテナ。人デアッタ時ニハ、マトモニ話セテイナカッタ」

「わからないわよぉ。もうコレに意志なんて無いもの。だって、アタシがそういうふうに調整したんだしぃ?」

それは分かっている、と言う言葉は飲み込んだ。ただ、己のせいでこんな姿になった部下を見て少し感傷的になっているだけだ、と。

「ボイスチェンジャー、外さないのぉ?」

「……」

答えずにいれば、ガーベラは肩をすくめる。

「ま、いいわ。それより奴らの居場所、わかったわよ。偶々生き残っちゃった怪獣を連れ帰ってくれたみたいねぇ。貴方も知ってるでしょぉ?この前、ボーンカード何枚か回収したトコ」

「位置情報ガ把握デキルヨウニナッテイルノカ」

「万が一のためにね。」

クスクスとガーベラが笑う。わからない女だ、と思う。

彼女はその科学技術を買われた雇われだ。ルシューと違い、セゼルに忠誠を誓っていない。そのためかある程度の自由を与えられ、今もプロジェクトHZと並行して趣味の研究も行っているらしい。

「貴方とこうして話せるのが、これで最後にならないといいのだけれど」

「ワカランナ。少ナクトモ、我ハ常二最後ダト思ッテ行動シテイルゾ」

「あらあら。本当、漢ねぇ」

からかうように言うガーベラに、ムッとする。

「忘レテハイナイカ。我ラガ挑ンデイル相手ハ、神ナノダゾ」

「わかってるわよぉ。それに賛同してるから、ここにいるんだもの。じゃ、アタシは行くわねぇ。残ってたボーン、まとめて投下することになったから」

そう、神だ。倒さねばならないのは、神。つまり、あんな人間たちやウルトラ族に苦戦している暇はないのだ。改めて、自分そう言い聞かせた。

 

 

 

零が救出されて数日。翔悟らは七星家に居た。戦っている相手の正体を、考えようとしていたのだ。

「で、あの場所に無数の怪獣がいたことを考えると」

話しているのは剣也だ。

「今までのボーンは、それを利用して作ったものと見て間違いないだろうな」

「怪獣って悪いやつのイメージがあるけど、今回は被害を受けた側ってことか……」

微妙な顔をしているのは翔悟。

「でも、君たちって怪獣見てもあんまり驚かなかったね」

「まぁ、宇宙人にも会ってるし今更だろ?」

巡の疑問に笑って答えたのはアントニオ。私達のことか、とつぶやいたのはリーベルト。

「けどあの怪獣たちの中には、本来この宇宙にはいないはずのやつもいた」

零が言えば、ダンも頷く。

「宇宙を超えて集めた、とも考えられるが……」

「怪獣を製造したか。こちらのほうが可能性は高いだろうな。宇宙を超える方法はかなり限られるし、できたとしても制約は多い」

「歪の中で戦ったときに、別の宇宙から来たっつってたぜ」

「ほう?であれば、我々が知っている星の人々である可能性もあるか。しかし、零が言っていたガーベラというやつは、俺の記憶にはない。白衣だったなら科学者だと思うがな……」

剣也は目を丸くした。

「怪獣を、生命体を作る?できるんですか?」

驚いたタイロンが言う。

「それなりに文明が進んでいる星なら割とできる。ちなみに俺の母星には命を固形化する技術がある。俺が開発した」

ドヤる剣也。

「命の固形化、ですか」

興味を示したのはルーク。彼はオーバーテクノロジーの話に食いつきやすい。

「あぁ。当然、滅多なことでは使われんがな」

「俺が知る限り、実際に使われたのは1人……いや、2人だな」

何の話ししてたんだっけ、という零の呟きで、ダンは口をつぐんだ。

「でも、わざわざボーンっぽくしてるのが気になるよね。怪獣そのまま使わないでさ」

「コントロールしやすいんじゃないですか?生き物を思い通り動かすのは難しいでしょう」

ギルバートが見解を述べて、ナルホドと巡は頷く。

「じゃ、レイオニクスじゃねぇってことか。限定的な可能性排除だけど」

「レイオニクス?」

「怪獣を操る力を持ってるやつのことだ」

しばしの沈黙。

「剣也、そもそもこの宇宙に、文明を持つ星はいくつある?」

「そう言われてもな、専門外な上にこの宇宙の特定もできていないんだぞ」

ダンに尋ねられて、剣也は呆れたような顔をする。

「この地球と、ネポスしかねぇ」

しかし、問の答えは零から返ってきた。

「そうなのか?」

てっきり他にもあるものだと……と、翔悟。

「多分、あったんだろうとは思う。だが今は、2つだけだ」

「調べたのか?」

シュトルツが聞けば、肯定の返事。

「こっち来てすぐにな。とにかく文献探したりとか、あとは……まぁ色々。記録は残ってたぜ。こんな星にこんな文明があった。どういう星にどういう生命がいた……でも肝心の星は、1つもなかった。跡形もなく消えてるんだよ」

誰とも知らない、息を呑む音。

「つまり、ネポスのように星ぐるみの行動というのは考えにくいわけですね」

「ネポスだってほぼレボルトしか悪くないぞ??」

「まぁまぁ……」

ムッとするリーベルトをタイロンがなだめる。

「星ぐるみだってあるでしょ。住処を求めて他の星を襲うっての、あったハズ」

「あったな。今回がそのケースの可能性も勿論ある。ただ、それにしてはしてくることの規模が小さい。ボーンが現れる頻度もそこまでだし、範囲も狭いだろう?せいぜい県内だ。この星の人間をどうにかしようとしているとは考えづらい」

「そう言えば、ネポスに現れたボーンの情報を探ってみたのだが」

話し始めたシュトルツに意識が向けられる。

「あの場所の真下には、始まりの魔神を祀る神殿があった。大した情報でなくてすまないが……」

またも沈黙

「……あ〜〜!!やめやめ!!考えたってわかんない!!」

いきなり叫んでバタッとうしろに倒れたのはアントニオ。同調して、翔悟も寝転がった。

と、赤いいきものが部屋に入ってくる

「キュウ?」

「あ、ピーちゃん。部屋から出てきちまったのか」

苦笑いして、零はピーちゃん、と呼んだピグモンを撫でる。

「本当、あの状態からよく回復したな。敵が排除でもしにくるかとも思ったが、それもなさそうだ」

微笑んだルークがそう言って、しかし剣也は、目を見開いた。

「……剣也?どうかした?」

「ピグモン、ちょっと来い。俺の部屋だ」

グイ、と人間とは大分違う形の手を引き、リビングを出る。

「お、おい、何するつもりなんだよ!!」

「考えてみろ、何故奴らは処分しそこねた怪獣を放っておいている?自分たちの高度な技術が解析されてしまうかもしれないのに」

「え?」

タイロンが呆けたような声を出す。

「簡単なこと。メリットがあるからだ、例えば……こちらの位置がわかる、とかな」

ハッとした。

剣也が言い終わると同時に、機械達が数値を弾き出した。

「……当たりのようだな。機械が仕込まれている」

自分の仮説が的中して、しかしその表情は苦々しい。軽く舌打ちして。

「取り出すぞ。軽い手術だ」

 

 

 

「あらぁ?」

デスクに向かっていたガーベラは驚きの声を上げる。

「気付かれちゃった、流石ねぇ。向こうにも技術者がいるのかしら。でもねぇ、もう遅いわ。科学はスピードなのよ。競り勝ったのはアタシ。あなた達を踏み台にして、神に近づかせてもらうわよぉ」

その唇が、弧を描く。

「ワタクシはこの手で、宇宙をつくってみせますの。邪魔はさせませんわ」




ふっ……所詮これが銀牙クオリティ……
あたしってこんなに文才なかったんだって、この小説書きはじめて知ったんですよね。コレが完結する頃にはもうちょい書けるようになってるといいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。