魔装学園HxH 未来を切り開く者 (アイリエッタ・ゼロス)
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アタラクシアへの到着

「....ちゃん。兄ちゃん起きろって」

 俺は隣に座っている弟、飛弾 傷無に起こされた。

 

「....着いたのか?」

「そうだって。早く降りねぇと乗り越しちまうぞ」

「わかった....」

 俺は渋々といった感じで起き、荷物を持ってリニアモーターカーから降りた。

 

 俺達二人がいるのは、戦略防衛学園アタラクシアと呼ばれる所だった。

 この戦略防衛学園アタラクシアという所は、異世界から現れる魔導兵器から

 メガフロート・日本の防衛を担う軍事施設でもある重要な場所だった。

 では、何故そんな所に俺と傷無がいるかというと、アタラクシアの総司令である姉、

 飛騨 怜悧に呼ばれたからだ。

 

「さて、俺は先に姉貴の所に行くがお前はどうする?」

「じゃあ俺は街を見てからにするよ」

「そうか。姉貴には俺の方から言っておこう」

「サンキュ兄ちゃん。じゃあまた後でな」

 そう言って傷無は街の方に向かっていった。それを見て、俺は姉貴との

 待ち合わせ場所に向かった。

 

 〜〜〜〜

 

「....ここだな」

 俺は姉貴との待ち合わせ場所に着いた。すると、黒髪ロングでスタイルの良い女性が

 俺に近づいてきた。それに気づいて、俺は被っていたフードを取った。

 

「待っていたぞ、真」

「あぁ。久しぶりだな、姉貴」

 近づいてきたのは俺の姉である飛騨 怜悧だった。

 

「....傷無はどうした?」

「街を見て回ってる。一応許可は俺がしたから怒らないでやってくれ」

「そうか」

 すると、急に俺が持っていたカバンが動き出し中からオレンジ色の球体が出てきた。

 

『レイリ、ヒサシブリ! ヒサシブリ!』

「ハロか。元気にしていたか?」

『ハロ、ゲンキ! ゲンキ!』

 その球体の名前はハロといい、俺の大事な相棒兼家族の一人だった。

 

「....すまないな。お前の事情を知っていながらこんな所に呼んでしまって」

 姉貴はハロを撫でながら申し訳なさそうに俺に謝ってきた。

 

「....気にしないでくれ。この世界を守るためだ。ある程度の覚悟はできている」

「そうか....ありがとう、真」

「礼なんていい。俺達は家族だろ?」

「....そうだな。立ち話もなんだ。傷無が来るまでラボの中で話しでも....」

 姉貴がそう言った時、突如警報のようなものが鳴り出した。

 

「....どうやら、話しは後みたいだな」

「....あぁ。すぐに行けるか?」

「当たり前だ。姉貴、荷物を頼むぞ」

 俺は姉貴にカバンを渡して魔装兵器の気配が感じる方に走り出した。

 そして、目視で魔導兵器の姿が確認できると俺はハロに聞いた。

 

「ハロ、行けるな?」

『イツデモ、イツデモ!』

「よし。....来い、ガロス」

 俺が右腕を上げてそう叫ぶと、俺の身体に青と白を基調とし、右腕に巨大な

 剣と銃を合わせた武器を、左腕に青いシールドを装備した装甲を身に纏った。

 そして、顔は装甲で覆われ、耳元にハロの羽根のようなカバーが付いた。

 

『テキ、モクシデゴジュウイジョウ! ゴジュウイジョウ!』

 耳元に付いたカバー部分からはハロの声が聞こえてきた。

 

『そうか....ハロ、アシストは任せるぞ』

『リョウカイ! リョウカイ!』

 俺はハロにそう言って飛び、魔導兵器に向かって右腕の武装からレーザーを放った。

 レーザーは全て魔装兵器に当たっていき、一撃で魔導兵器は爆発した。

 

『サンジノホウガクカラシャゲキコウゲキ! カイヒ! カイヒ!』

 ハロの声を聞き、俺は射撃攻撃を回避しながら攻撃を仕掛けてきた魔導兵器に

 向かって再びレーザーを放った。すると、魔装兵器は剣を構え始めた。

 

『テキセッキン! テキセッキン!』

 俺は右腕の武装を展開させ、巨大な剣に変形させた。そして、俺は接近してきた

 魔導兵器の攻撃を回避しながら剣で魔導兵器の胴体を真っ二つにした。

 

『センメツ! センメツ!』

 ハロはそう言いながら、どんどん敵の場所を教えてきた。俺はそれを見ながら的確に

 魔導兵器を破壊をしていった。そして、二分が経つと俺の周囲から魔導兵器は全て消滅した。

 

『センメツカンリョウ! センメツカンリョウ!』

 すると、突然通信が入った。

 

『真、聞こえるか』

『あぁ、聞こえてる姉貴。何か用か?』

『すまないが、そこにいた魔導兵器を倒し終わったらこのポイントに向かってくれ』

 そう言って、姉貴はある座標のデータを送ってきた。

 

『わかった。すぐに向かう』

『すぐにって....もう倒し終わったのか!?』

 俺の言葉に姉貴は驚いていた。

 

『あれぐらい、俺とハロなら造作もない。それよりも通信を切るぞ』

『ちょ....』

 そう言って、俺は無理矢理通信を切った。

 

『ハロ、ポイントまでの距離は』

『ヤクゴキロ! ヤクゴキロ!』

『そうか....急ぐぞ』

『リョウカイ! リョウカイ!』

 俺はスピードを上げて目標ポイントに向かった。

 

 

 〜〜〜〜

 

『マコト! ゼンポウニテキノハンノウカンチ! テキノハンノウカンチ!』

 目標ポイントの近くに来ると、ハロが俺にそう言ってきた。

 

『数はどれくらいかわかるか?』

 ハロは敵の数の確認を始めたが....

 

『テキノハンノウショウメツ! テキノハンノウショウメツ!』

『なに?』

 ハロは突如そう言ってきた。それと同時に、前方で無数の爆発が起きた。

 俺は気になってポイントに近づいていくと、そこには白色のハート・ハイブリッド・ギアを

 纏った少女が宙に浮いていた。そして、その少女の周りに赤と青のハート・ハイブリッド・ギア

 を纏った少女達が集まった。

 

『アレは、姉貴の言っていたハート・ハイブリッド・ギア・チームか....』

 俺は三人を見ながらそう呟いた。すると、赤いハート・ハイブリッド・ギアを纏った少女が

 俺の存在に気づいて警戒し、刀を俺に向けてきた。

 

『....嫌な予感が』

『ニジノホウコウトクジノホウコウカラコウソクデセッキンスルブッタイヲカンチ!』

『チッ....』

 ハロの言葉通り、俺は高速で飛んできた物体をタイミング良く剣で地面に叩き落とした。

 地面を見ると、赤い剣のようなものが突き刺さっていた。剣が地面に突き刺さっている事に

 三人は驚いているようだった。すると、再び姉貴から通信が入った。

 

『真! 無事か!』

『無事だ。....急に剣が飛んでくるとは思わなかったがな』

『す、すまん。彼女達にまだお前のことを説明できていなくてだな....』

『おい....』はぁ

 俺は姉貴のたまに抜けているところにため息が出た。

 

『本当にすまない....説教なら後でいくらでも聞くから、先程の場所にまで戻ってきてくれ』

『....はぁ、了解した。撤退するぞハロ』

『リョウカイ! リョウカイ!』

 そう言って、俺はこの場所から撤退した。

 その時、俺はある事を考えていた。

 

『(あの赤いハート・ハイブリッド・ギア....何処かで見たような....)』

 

 

 

 

 

 

 

 



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キャラ設定

 飛弾 真

 17歳 A型 175cm

 

 飛騨 傷無の兄、飛弾 怜悧の弟であり、世界で初めて見つかった

 ハート・ハイブリッド・ギア、ガロスの所有者

 実の母、飛騨 那由多の血を強く受け継いだのか、天才的な頭脳を持っている。

 

 幼少期、実の母である飛騨 那由多にハート・ハイブリッド・ギアを埋め込まれ

 人体実験を受けていた。だが、突如那由多に研究所から無理矢理退去させられた。

 その時にハート・ハイブリッド・ギアは完全には完成しておらず、研究所から

 退去させられる時に捨てられていた自身のハート・ハイブリッド・ギアのデータを持ち帰り、

 七年の月日をかけてガロスの外装、システムの改造、追加武装を完成させた。

 そして、その同時期にガロスのサポート用ロボ"ハロ"を作った。

 

 三年前に起きたある事件がきっかけでガロスが覚醒し、同時に家族と一部の人間以外、

 極度の人間不信に陥った。その結果、外に出る時にはフードを被るようになった。

 

 誰よりも家族思いで、怜悧がアタラクシアに行っている間、傷無の面倒は

 全てハロと二人で見ていた。

 

 ある少女との約束を果たすため、人間不信の中、魔導兵器との戦いを続けている。

 

 ハロ

 真が作ったガロスのサポート用ロボで大切な家族の一人

 ガロスのシステムと同調し、ガロスのシステム全ての制御権を持っており

 戦闘時に真のサポートをしている

 戦闘時以外でもガロスのメンテナンス、真の代わりに表に出て情報を真に送るなどと、

 重要な仕事を行なっている

 

 

 ガロス[モデルはガンダムエクシア]

 真のハート・ハイブリッド・ギア

 ロス・シリーズと呼ばれるハート・ハイブリッド・ギア全てのベースとなった機体で

 近距離、中距離、遠距離全てに対応できるオールマイティな機体

 機体には七つの剣があり、接近戦を最も得意としている

 追加武装を装備する事で超遠距離からの射撃、ヒット&アウェイ、超火力の砲撃といった

 戦術を使いこなす

 元々は白を基調とした機体だったが真が改造した結果、青を基調とした機体になった

 他のハート・ハイブリッド・ギアと違い絶対領域(ライフセーバー)や背徳武装は無いが、

 ハイブリッド・カウントの回復が速く、一日で8%〜10%回復する

 

 ロス・シリーズのベースとなった機体なので、ロス・シリーズのデータをガロスに組み込めば、

 ガロスの性能向上、ロス・シリーズの特殊機能を使う事ができるようになる

 

 

 トランザム[TRANS-AM]

 ガロスにのみ使用可能な特殊機能

 機体が赤く光り、一定時間全ての機能を三倍にまで引き上げる事ができる

 さらに、発動中は残像が生まれるほどの高速機動が可能になる

 ただし、使用後の身体への負担は酷く、ハイブリット・カウントの消費が激しいため

 出来るだけ使わないようにしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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総会と説明

 俺は姉貴との待ち合わせ場所に戻り、そこから俺用の部屋に案内された。

 そして今、俺は部屋にある巨大なパソコンの前に座ってハロから送られてくる映像を

 見ながらコーヒーを飲んでいた。

 

「すげぇ人数だな....」

 俺は映像に写っている生徒の数を見て不意にそう呟いた。ハロが今いるのは学園の

 講堂だった。その講堂はかなり広いのだが、殆どが生徒で埋め尽くされていた。

 すると、司会の女が話し始めた。

 

『それでは、今回も敵の襲来を迎撃したハート・ハイブリッド・ギアチーム

 "天地穹女神(アマテラス)"の隊員達です。諸君、盛大な拍手をお願いします!』

 そう言うと、講堂内は割れんばかりの拍手で包まれた。

 

『それでは続きまして、アタラクシアの校長兼総司令からお言葉を頂きます』

 すると、舞台の袖から姉貴が出てきた。

 

『諸君、飛騨 怜悧だ。この度の緊急事態に対する諸君らの冷静で的確な行動は見事なものだった』

 姉貴は家では別人のような様子で生徒達にそう言った。

 

「(姉貴も大変だな....)」

『それでは、ここで新たな仲間を紹介する。転入生だが、訳あってハート・ハイブリッド・ギア

 を宿している。そのため、一人は既に天地穹女神(アマテラス)への入隊が決定している』

 そう言って、姉貴は傷無に手を差し出した。

 

『紹介しよう。高等部二年甲組に転入する、飛騨 傷無だ』

 そう言われ、傷無は舞台袖に向かおうとしたが、隣にいたハロが体当たりをして無理矢理

 舞台の中央に向かわせた。

 

『さて、では今から説明する作戦は最重要であり、最優先すべき作戦となる』

 姉貴がそう言うと、ステージ上の照明が落とされスクリーンにある映像が映った。

 それは、傷無がエロスを纏って白色のハート・ハイブリッド・ギアの少女の胸を

 揉んでいる映像だった。

 それを見て講堂内は悲鳴と怒号で溢れ、俺は飲んでいたコーヒーを吹き出した。

 

「....き、来て早々何やってんだアイツは」

 俺はこの映像に困惑していると、姉貴が生徒達を一喝して静かにさせた。

 

『いいか! これは遊びでも何でもない。れっきとした作戦だ。

 今までハート・ハイブリッド・ギアがエネルギーを消費しても遅々たる自然回復を待つだけで

 補充する手段が無かった。しかし、長年の研究を経て我々は一つの答えを見つけた! 

 それはハート・ハイブリッド・ギアを持つ男女が心と体を一つにし、愛情と快感を

 共有する事だ。それにより、ハート・ハイブリッド・ギアのエネルギーを回復する

『接続改装』を可能とするのだ』

「アイツのギア、そんな機能があったのか....」

 俺は傷無のギアの機能に驚きながらも白色のハート・ハイブリッド・ギアが一撃で魔導兵器を

 破壊する映像を見ていた。

 

『見ての通り、接続改装をした事によって愛音のハート・ハイブリッド・ギアのエネルギーは

 回復しこのような事になった。異世界の敵と戦い続けるために、これから天地穹女神(アマテラス)の隊員は

 エネルギーの補充とパワーアップに努めるのだ! ここにいる飛騨 傷無とエロい事をしてな!』

 それを聞き、再び講堂は阿鼻叫喚に包まれた。

 

「....ご愁傷様としか言えないな」

 俺は映像越しに見える傷無に向かって手を合わせた。

 

『静まれ諸君! まだ話しは終わっていない』

 姉貴がそう言って、再び講堂は静まった。

 

『一先ず、一人目についての話しはこれで終わりだ。今から、もう一人転校生を紹介する』

 そう言って姉貴が指を鳴らすとスクリーンの映像が切り替わり、さっき現れた魔導兵器と戦う

 俺の姿が映し出された。

 

 

 〜〜〜〜

 ハユルside

 

「(そ、総司令は一体何を考えて! あんな破廉恥な方法じゃなくても!)」

 私は総司令の言葉に納得する事ができなかった。

 

「(そ、それに、さっきから彼の隣にいるオレンジ色の球体は一体....)」

 この総会が始まってから彼の隣にいる球体の事が私は気になって仕方がなかった。

 すると、総司令は阿鼻叫喚に包まれていた講堂を一喝で静めた。そして、もう一人の

 転校生を紹介すると言って指を鳴らすと、スクリーンに私がさっき攻撃をした青い装甲の

 兵器が映った。

 

「ア、アレはさっきの....」

「先程の緊急事態の時に目にした生徒もいるだろう。今ここに映っている青い兵器はガロスと

 呼ばれるハート・ハイブリッド・ギアだ」

「なっ!?」

 総司令の言葉を聞き、生徒達や私、ユリシアさん、愛音さんまでもが驚いていた。

 

「(あ、あれだけの数を一瞬で....!)」

 私はスクリーンに映るガロスの戦闘能力の高さに驚きが隠せなかった。

 

「そして、これに乗っているのがもう一人の転校生、飛騨 真だ」

 スクリーンには飛騨くんと似た男性の姿が映し出された。

 

「名前で分かる通り、コイツはここにいる飛騨 傷無の兄だ」

 総司令は飛騨くんを指差してそう言った。

 

「コイツもこれからこの学園に在籍するが 、少々心に深い傷を負っている。そのため、

 基本的に先程のような緊急事態の時か任務の時にしか姿を現さん」

 そう言うと、生徒達は周りの生徒同士で話し合っていた。

 

「だが安心してくれ。コイツもまた、世界を救うために戦っている。だから、間違ってでも

 戦闘時にコイツを攻撃をするような事はしないようにしてくれ」

「....あらら、ハユルやっちゃったわね」

 すると、隣にいたユリシアさんが私にそう言ってきた。私はさっき、敵と勘違いして

 攻撃を仕掛けてしまった。まぁ、その攻撃は撃ち落とされしまったが....

 それを聞いて、私は背中に嫌な汗が流れた。

 

「そして、先程から諸君が気になっていたと思うが、ここにいるオレンジ色の球体はハロという

 飛騨 真のサポート用ロボだ。外に出ている事が多いだろうから、会ったら気軽に話しかけて

 やってくれ」

『ヨロシク! ヨロシク!』

 総司令がそう説明すると、オレンジ色の球体は頭の部分から羽根のような物を出して跳んだ。

 

「(か、可愛い....!)」

 私はその姿を見てそう思ってしまった。

 

「さて、これで総会は終わりだ。諸君、今日はゆっくりと休んでくれ」

 総司令のその言葉で総会は終わった。そして、総会の片付けが終わった後、私は一人

 総司令のもとに向かった。

 

「総司令!」

「姫川か。何か私に用か?」

「あの....飛騨 真さんの部屋は何処でしょうか?」

 すると、総司令は不思議そうな表情をした。

 

「何故そんな事を聞く?」

「先程の戦闘で私....敵と勘違いして攻撃をしてしまったので、その謝罪を....」

「あぁ....その事なら気にするな。アイツも別に怒っていない」

「で、ですが....」

「大丈夫だ。あれに関してはお前達に前もって知らせなかった私に責任がある。姫川は

 そこまで重く受け止める必要はない」

 総司令はそう言うが、私には納得する事ができなかった。

 

「すまないな。今から今回の件についての会議がある」

 総司令はそう言うと、急ぎ足で何処かに歩いて行ってしまった。

 

「ど、どうしたら良いんでしょう....」

 私は謝罪をする事が出来ない事に困りながら自分の部屋に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 



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出会い

「随分と大変なことになったな傷無」

「....兄ちゃん、他人事みたいに言わないでくれ」

 俺と傷無は今、姉貴の仕事部屋にいた。何故ここにいるかというと、総会が終わった後、

 ハロに伝言を頼んでここに来るように言われたからだ。

 

「ていうか、兄ちゃんは姉ちゃんが総司令ってこと知ってたか?」

「ん? あぁ。一応姉貴が何の仕事をしているかも大体知ってる」

「そ、そうだったのかよ。何で教えてくれなかったんだ?」

「....姉貴から口止めされてたからな」

 そう話していると、姉貴が部屋に入ってきた。

 

「すまない二人とも。会議が長引いてしまってな」

「別にそこまで待ってねぇよ」

「それで、俺達に何か用なのか?」

「あぁ。お前達に渡しておく物があってな」

 そう言って、姉貴は俺達にスマホの形をした通信機のような物を渡してきた。

 

「これは?」

「アタラクシア専用の生徒手帳も兼ねた通信用端末だ。まぁ色々なものをその端末で

 全て管理できるぞ」

「説明雑....」

 姉貴の説明の雑さに俺はそう呟いた。

 

「まぁ細かい事は気にするな。それと、お前達二人の端末にある天地穹女神(アマテラス)のアプリを

 立ち上げてみろ」

 そう言われ、俺達はそのアプリを立ち上げた。すると、そこには天地穹女神(アマテラス)のメンバーの

 身長やら体重やらがこと細かに書かれていた。

 

「おい姉貴....思いっきり個人情報じゃねぇか」

「だからお前達しか見る事は出来ないのだ。基本的な生体情報やら位置情報を常に

 リアルタイムでモニターしている。ハイブリット・カウントというのを押してみろ」

 そう言われ、俺はそこの部分を押した。すると、三機のハート・ハイブリッド・ギアの

 エネルギー残量が見る事ができた。

 

「そこに書かれているのが三人のエネルギー残量だ。傷無はイエローゾーンに入る前に

 接続改装を、真はエネルギー残量が少なくなった者の援護をしてやってくれ」

「....はぁ、了解」

 すると、傷無が頭を押さえながら叫んだ。

 

「ちょっと待ってくれよ! もう色々と何が何だかわかんねぇよ! 姉ちゃん! もうちょっと

 俺にも分かるように説明してくれ!」

「....わかった。明日にでもしっかりと説明をしよう。だから今日はゆっくりと休め」

「わ、わかった....」

 傷無は渋々といった表情だが納得した。

 

「さ、傷無は部屋に戻れ。真は少し話がある」

「俺にか?」

「あぁ」

「わかった。傷無、お前は先に帰っとけ。多分長くなりそうだ」

「わ、わかった....」

 傷無はそう言って部屋から出ていった。

 

「....で、俺に話って?」

 傷無が部屋から出て行ったのを確認すると、俺は姉貴にそう聞いた。

 

「実はさっき、姫川がお前に謝罪したがっていてな」

「姫川って....」

天地穹女神(アマテラス)のメンバーの一人で、さっきの戦闘で赤いハート・ハイブリッド・ギア、

 ネロスの所有者だ」

「あぁ....さっきのか」

 俺はさっきの戦闘を思い出しながら天地穹女神のアプリを開いてその少女のデータを

 開いた。そして、俺はデータを見ていると一つ気づいた事があった。

 

「風紀、委員....」

 俺は自分で気づいていないうちにそう呟いていた。そして、俺は彼女の写真を

 ジッと見ていた。

 

「真、どうかしたのか?」

「っ、な、何がだ?」

「....いや、固まったように画面を見ているが、何かあったのか?」

「別に何でもねぇよ....話は終わりか?」

 俺はぶっきらぼうにそう答えた。

 

「....あぁ」

「そうか....じゃあ俺は部屋に戻る」

「....そうか。今日はご苦労だった」

 姉貴の言葉を背中に受けて、俺はフードを被って自分の部屋に向かった。

 

 

 〜〜〜〜

 

「きゃっ!」

「っ!」

 もう少しで部屋に着きそうだったその時、曲がり角で俺は一人の少女とぶつかった。

 

「すまん、大丈夫....!」

 俺はその少女に手を差し出した瞬間、身体が固まった。何故なら、ぶつかったのは先程俺を

 攻撃してきた少女、姫川 ハユルだったからだ。

 

「は、はい。こちらこそすみませ....!」

 姫川も姫川でぶつかったのが俺だという事に気付いて驚いていた。

 

「ひ、飛騨 真さん....」

「姫川 ハユル....」

 俺達はしばらくお互いの顔を見て固まっていた。そして少し経つと....

 

「....とにかく、立ったらどうだ?」

「は、はい。ありがとうございます....」

 俺の言葉に姫川は答え、俺の手を握って立ち上がった。

 

「....悪かった。少し考え事をしながら歩いていた。次からは気をつける」

 俺はそう言ってこの場から急いで離れようとしたのだが....

 

「ま、待ってください!」

 俺の腕は姫川に掴まれた。

 

「っ!」

「あの、先程は味方とは知らずに攻撃してしまい、本当に申し訳ありませんでした!」

 姫川はそう言って俺に頭を下げてきた。

 

「....別に謝罪はいらねぇよ」

「で、ですが! それでは納得できません! 私の勘違いであなたにはとんでもない事を....」

「っ!」

 そう言っている時の姫川の目を見て、俺は昔の事がフラッシュバックした。

 

「(コイツの目、何でここまで似てるんだ....)」

 そして、俺の頭の中には一人の少女の姿が浮かび上がり、俺は頭を押さえた。

 

「あ、あの、大丈夫ですか....?」

 姫川は急に頭を押さえた俺に心配そうに聞いてきた。

 

「....少し疲れているだけだ」

「で、でしたら部屋まで送りましょうか?」

「....大丈夫だ」

 俺はそう言って逃げるようにしてその場から立ち去った。そして、部屋に戻ると

 俺はベッドの上に寝転がった。

 

「クッソ....何で、何であんなにアイツと似てるんだよ....」

 俺はそう呟きながら目を腕で覆った。

 

 

 〜〜〜〜

 姫川side

 

「さっきのは一体....」

 私は飛騨さんが去っていった方を見ながらある事を考えていた。それは、さっき私が

 謝罪している時に飛騨さんがしていた表情の事だった。あの時、飛騨さんは驚いた表情を

 しながらも、どこか悲しそうな表情をしていた。

 

「(どうして、あんなに悲しそうな目を....)」

 飛騨さんは、ものすごく悲しそうな目をして逃げるように立ち去ってしまった。

 

「(もしかしたら、総司令の言っていた心の傷というのが関係を....)」

 私は総司令が総会で言っていた事を思い出した。

 

「(何か、私にできることはないのでしょうか....せっかくこの学園に

 転入されたなら、学園での生活を少しでも楽しんで欲しいのですが....)」

 私は一人、そう考えながらこの場所から離れた。

 

 

 



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整備室とケイ

 次の日の朝、目が覚めた俺は朝風呂に入っているとハロが、昨日姉貴から

 渡された通信端末を持ってきた。

 

『マコト! レイリカラデンワ! レイリカラデンワ!』

「姉貴から?」

 俺はハロから端末を受け取り電話に出た。

 

「もしもし」

『起きていたか真』

「あぁ。で、こんな朝から何の用だ?」

『昨日、お前のギアが整備できる所を教えるのを忘れていてな。今から教えようと

 思うのだが、すぐに外に出て来れるか?』

「....少しだけ待ってくれ。今風呂に入ってるんだよ」

『そうか。なら少しだけ待っていよう』

 姉貴はそう言うと通信を切った。そして、俺は風呂から上がって髪の毛を乾かすと

 外に出る時用の服に着替え、ハロを連れて部屋を出た。

 

 〜〜〜〜

 

『レイリ、オハヨウ!』

「あぁ、おはようハロ。それに真も」

 寮の外に出ると、姉貴がリムジンの前で立っていた。

 

「....ちょっと待て姉貴。何でわざわざリムジンで来た」

 俺はそこそこ値段がしそうなリムジンを見てそう言った。

 

「仕方ないだろう。私が持っている車はこれだけだ」

「....はぁ、何でリムジンなんて買うんだ」

 俺は頭を押さえながらそう呟いた。

 

「文句なら車の中で聞いてやる。それよりも早く乗れ。私もあまり長い時間は

 取れないんだ」

「わかった....」

 俺は諦めて、渋々リムジンに乗り込んだ。

 

 〜〜〜〜

 

「向こうではちゃんと飯は食べていたか?」

「あぁ。ちゃんと毎食食うようにはしていた」

「そうか。なら安心した」

「俺らの心配よりも、姉貴こそどうなんだ? 昨日の総会見てたが、家にいる時とは

 まるで別人だな」

「ぐっ....そ、それは間違ってでも生徒の前で言うなよ! 私のイメージが崩れる!」

「へいへい....」

 目的地に向かっている途中、俺と姉貴はここに来る前の話しなどをしていた。

 ちゃんと寝てるかとか、傷無は勉強していたかとか、普通の姉弟の会話だった。

 すると、リムジンはとある建物の前で止まった。

 

「着いたか」

「姉貴、ここは....」

 俺はその建物に見覚えがあった。何故なら、この建物は俺の母親が俺に人体実験を

 行った研究所だからだ。

 

「あぁ。お前の想像通りだ。とりあえず私について来い」

 姉貴はそう言うと、研究所の中に入っていった。俺も姉貴の後を追いその研究所の中に

 入っていった。

 

 〜〜〜〜

 

「....何だか、昔と比べて小さく感じるな」

 研究所の中を歩いている時、俺はふとそう呟いた。

 

「お前も大きくなったからな。あの時とは違うと感じて当然だろう」

 すると、姉貴はある扉の前で止まった。

 

「私だ。ケイ、入るぞ」

 姉貴がそう言って入ると、中には大量の本棚と本が置かれていた。そして、謎の暖簾を

 潜るとコクピットのような席に座って忙しそうにキーボードを叩いている白衣を着た

 少女がいた。

 

「紹介する。私のたった一人の親友で現在このラボの責任者で技術主任を務めている

 識名 京だ」

 姉貴がそう紹介すると、少女は俺の目をじっと見てきた。そして、キーボードを

 叩くと俺の目の前にウインドウが現れた。

 

『はじめまして。私は識名 京。れーりからあなたの話しはよく聞いている。

 ケイと呼んでくれて構わない。よろしく、飛騨 真、ハロ』

『ヨロシク! ヨロシク!』

「....姉貴、これは?」

 俺は突然現れたウインドウを指差してそう聞いた。

 

「ケイは少々他人とのコミュニケーションが苦手でな。基本的に会話は全てこんな感じだ。

 まぁ、お前はこの方が良いんじゃないか?」

「まぁ、少しはな....」

 姉貴の言葉に、俺は特に否定する事が出来なかった。

 

「ならあまり深く考えるな。....さてケイ、後は任せて良いか?」

 姉貴はケイに聞くと、ケイは首を縦に振った。

 

「じゃ、後はケイの案内に従ってくれ。私は今から学園の仕事があるのでな」

 そう言って、姉貴はこの部屋から出ていった。そして、姉貴が出て行くとウインドウに

 文字が打ち込まれた。

 

『....それじゃあ私について来て。あなた専用の整備室へ案内する』

「わかった」

 俺がそう言うと、ケイは少し驚いた表情をしたがすぐに表情を戻して歩き出した。

 そして、この部屋にあった扉に入って少し歩くと目的地に着いた。

 

『ここが、あなた専用の整備室。中にある物は自由に使ってくれて良い』

「わかった。案内ありがとな」

『....あなた、本当に人間不信なの?』

 俺の目の前に急にウインドウが現れたかと思うと、ケイはそう聞いてきた。

 

「あぁ。まぁ、アンタはあの姉貴の親友だから変に疑う必要がないんだよ」

『....そう』

「ま、これから世話になる。よろしくなケイ」

『こちらこそ。よろしく真』

 そう言って、俺とケイはお互いに握手をした。

 

『それじゃあ私は部屋に戻る。基本的に私はずっとあそこにいるから、

 何かあったらそこに来て欲しい』

「わかった」

『じゃあ、後はご自由に』

 そう言って、ケイは整備室から出て行った。

 

「....さてと。ハロ、始めるぞ」

『リョウカイ! リョウカイ!』

 ハロにそう言い、俺はガロスの整備を始めた。

 

 

 〜数時間後〜

 

「ま、こんなもんか....」

 ほぼ半日整備室にいた俺は、ガロスといくつかの追加武装の調整を終えて整備室を出た。

 そして、ケイのいる部屋に戻ると何故か傷無が姉貴と一緒にいた。

 

「何してんだ傷無に姉貴」

「兄ちゃん! 何でここに!」

 俺がここにいる事に傷無は驚いていた。

 

「ガロスの整備をしてたんだよ。で、お前はここに何しに来たんだ?」

「姉ちゃんに色々と話を聞いてたんだ。俺がここに連れて来られた理由とか」

「そうか」

「それにしても、ちょうど良い時に来たな真。今から傷無のギアの調整を行う。暇なら

 その調整を手伝ってくれないか?」

 すると、姉貴は良いことを思いついたみたいな表情で俺にそう言ってきた。

 

「別に良いが....今からか?」

「あぁ」

「....わかった」

 俺が了承すると、ケイが姉貴の耳元に何かを言っていた。そして、姉貴は傷無にこう言った。

 

「傷無、そのドアの突き当たりが調整室だ。着替えを置いてあるから先に行ってこい」

「わかった!」

 傷無は嬉しそうな表情を浮かべながら部屋を出ていった。だが、逆に姉貴はどこか

 悔しそうな表情をしていた。

 

「....傷無には、まだ言わなかったんだな」

「あぁ....だが、いずれは話さなければならない事だ」

「そうか....ま、姉貴の覚悟が決まった時に言えば良いんじゃねぇか?」

「....そうだな」

 そう話しながら、俺達は傷無が向かった調整室に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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初任務

 次の日の朝、俺は青いパイロットスーツを着てハロと一緒にナユタラボにいた。

 何故パイロットスーツを着ているのかというと、今日は天地穹女神(アマテラス)の任務で

 インドネシア沖近くの無人島の調査を行うためだ。そしてラボにはまだ俺と姉貴、ケイと

 ハロしかおらず、残りの四人はまだ来ていなかった。するとラボの扉が開き誰かが入ってきた。

 俺はガロスの微調整をしていたモニターから目を離して扉の方を見ると、そこにいたのは

 姫川だった。

 

「失礼します」

「いつも通り早いな姫川」

『おはよう』

「はい、おはようございますケイさん、総司令。....それに、ハロさんと

 飛騨さんもおはようございます」

 俺の姿に気づいた姫川は近づいてきてそう言った。

 

「....おう、おはよう」

『オハヨウ! オハヨウ!』

「っ!?」

 すると、さっきまで座っていた姉貴が急に立ち上がりこっちに近づいてきた。

 

「ひ、姫川! ちょっと来い!」

 そう言って、姉貴は姫川を連れて外に行った。その様子を、俺とケイは不思議そうに見ていた。

 

 〜〜〜〜

 姫川side

 

「ひ、姫川! 真と何があった!」

 急に部屋を連れ出されると、総司令は私の肩を掴んでそう聞いてきた。

 

「きゅ、急に何ですか!? 別に飛騨さんとは何もありませんよ!」

 私は見た事がないほど狼狽えている総司令に驚いていた。

 

「冗談はよせ! アイツが私達以外に普通に話すなど....」

「それ、どういう事ですか?」

「っ!」

 すると、総司令はしまったといった表情をして視線を逸らした。

 

「....もしかして、この前の総会で言っていた事が何か関係しているんですか?」

「そ、それはだな....」

 総司令の額には冷や汗が流れていた。そうしてしばらく総司令の目を見ていたその時....

 

「ハユルに総司令? 何をしているんですか?」

 急にユリシアさんの声が聞こえてきた。

 

「ユ、ユリシアか。なぁに、ちょっと姫川に聞きたい事があってだな」

「そ、そうですか....」

 総司令は慌てた様子でユリシアさんにそう言った。

 

「さ、そろそろ出撃だ! 早く用意して来い!」

 総司令はそう言うと私の背中を押してきた。その時、総司令は私に耳打ちしてきた。

 

「すまない。アイツの事に関してはまだ話せない。だが、いつかは話すからそれまでは

 待っていてくれ」

 そして、総司令はナユタラボの司令室に戻っていった。

 

「....」

 私はその言葉に何も返せず、総司令が入っていった扉を見ているしか出来なかった。

 

 〜〜〜〜

 真side

 

「全員集まったな。では、今回の任務について話す」

 姉貴が部屋に戻ってしばらくすると、パイロットスーツを着た四人が集まった。

 

「今回お前達にはインドネシア沖にある無人島の調査をしてもらう」

 今回俺達に課さられた任務は無人島の資源調査とサンプルを持ち帰るといったシンプルな

 任務だった。

 

「傷無は初任務だ。周りの意見によく耳を傾けるように」

「わかったよ姉ちゃん」

「そして真。お前にはすまないが、調査機器の運搬は任せるぞ」

「....了解」

「よし、では出撃だ!」

 そう言われ、俺達五人はメガフロートのインドネシア沖に近い所に向かった。

 

 

 



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無人島と警告

『真』

『何だ姉貴』

 目的地へ航行中、突然姉貴からの通信がきた。

 

『傷無のギアの様子はどうだ?』

『....特に問題は無し。調整したから傷無の思うように動いている。性能も

 多少は上がっているはずだ。....ま、傷無本人は嬉しそうにしてるが』

 俺はレーダーで後ろにいる傷無をモニター越しに見ながらそう言った。

 

『....はぁ。後でお前から一言言っておいてくれ』

『はいはい』

 そう言って、俺は通信を切った。そうして飛行を続けていると、目標の島が見えてきた。

 

『(あの島か....てか、後ろ遅いような....)』

 そう思って後ろをレーダーで確認してみると、後ろでは何やら言い争いが起きていた。

 

『(何やってんだか....)』はぁ

 俺は呆れながらも少しずつ速度を落としながら島に着陸した。そして、俺は荷物を降ろして

 ガロスを解除し、設計図通りに調査機器の組み立てを始めた。そうしている間に、四人は島に

 着陸してきた。

 

「兄ちゃん、組み立ては....って、もう終わってた....」

「....お前ら四人、言い争いするのは勝手だが、任務中だって事を忘れるなよ」

「は、はい....」

「す、すみませんでした....」

「ごめんごめん」

「....」

 俺が少し睨んで言うと、傷無と姫川は反省している様だったが、ユリシアと千鳥ヶ淵は

 軽く受け流している様だった。

 

「....まぁ良い。とりあえず、調査には二時間程かかる。その間に手分けしてこの島にある物の

 サンプルを回収するぞ」

 そう言って、俺はサンプルを回収する様な箱を手に取った。

 

「俺は島の反対側に行く。お前らは適当に二人一組になってサンプルを回収しろ」

「に、兄ちゃん一人で大丈夫かよ?」

「アホか。ハロを合わせて二人だ。心配はいらない。....それと傷無、お前に一つ忠告しておく」

 俺は真剣な表情で傷無の目を見た。

 

「な、何だよ兄ちゃん....」

「もしもこの島で衝突面(エントランス)が出た際、お前はすぐに逃げて助けを呼べ。絶対に一人で戦おうと

 するんじゃねぇぞ」

「あ、あぁ....」

 俺の真剣な様子に、傷無は素直に返事した。

 

「....ハロ、行くぞ」

『リョウカイ! リョウカイ!』

 そう言って、俺は島の反対側に向かって歩き出した。

 

 〜〜〜〜

 姫川side

 

「と、とりあえず、どう分けましょうか?」

 飛騨さんとハロさんが見えなくなると、私は三人にそう聞いた。

 

「じゃあ私がキズナと行くわ」

 そう言って、ユリシアさんが挙手した。

 

「良いわよね、二人とも?」

「私は構いませんが....」

「ユリシアの好きにすれば」

「じゃ、そうするわね。行きましょキズナ」

「ちょ、ちょっと待ってくれユリシア!」

 ユリシアさんは、飛騨君を連れて何処かに向かっていった。

 

「....私達も行きましょうか愛音さん」

 私は愛音さんにそう言うが、愛音さんは何か考え込んでいた。

 

「愛音さん、どうかしたんですか?」

「....アイツ、衝突面(エントランス)が出たらって言ってたけど、こんな小さい島に衝突面(エントランス)なんて出るの?」

「アイツって....飛騨さんの事ですか?」

「えぇ。アイツ、衝突面(エントランス)がある程度の広さの土地にしか出現しないって知らないのかしら」

「さ、さぁ....? ですが、一応警戒しておくことは良いと思いますけどね....」

「ホント、ハユルは真面目ね」

 そんな事を話しながら、私達はユリシアさんと飛騨さんと違う方向に向かった。

 

 

 

 



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無人島での戦い

「....」

 サンプル回収を終えた俺は海を見ていた。

 

「かなり潮が引き始めてるな....」

 一時間半前と比べ、海水の高さはかなり低くなっていた。

 

「ハロ、この島の最大面積は衝突面(エントランス)が出現する程の面積か?」

 俺は隣で転がっているハロにそう聞いた。

 

『カノウセイトシテ50%。メンセキトシテハギリギリノヒロサ』

「50%....なら、出てもおかしくないか....」

 俺はそう呟き、衝突面(エントランス)が出た時の対処について考え始めた。そして、30分ほど考えていると、

 ハロに内蔵しているアラームが鳴った。

 

『マコト! ニジカンケイカ! ニジカンケイカ!』

「....そうか」

 俺はひとまず頭の中を整理して、探索機の元に向かって歩き出した。

 

 〜〜〜〜

 

 探索機があった場所に着くと、既に姫川と千鳥ヶ淵がいた。

 

「アイツらは?」

「まだ戻って来ていません。そろそろ時間だと思うんですが....」

 俺は少し考えて、姫川にこう言った。

 

「....なら、お前らは先に帰ってろ。俺が二人を連れて帰る」

「い、良いんですか?」

「どの道探索機は俺が持って帰らなきゃならねぇ。それに、お前らも待ってる時間が

 勿体無いだろ」

「....そうね。ハユル、コイツの言う通り先に帰りましょ。ゼロス!」

 千鳥ヶ淵はそう言うと、ゼロスを纏って空中に飛んだ。

 

「じゃ、じゃあお先に失礼します。ネロス!」

 姫川もネロスを纏うと、サンプルが入った箱を持って飛んだ。そして、アタラクシアの方に

 飛んで行くのを見てから、俺は傷無達が向かっていった方に歩いていった。

 

 〜〜〜〜

 

 しばらく歩くと、傷無とユリシアの姿が見えた。

 

「(何か話してるな....)」

 遠目からでも、二人が何か話しているのが俺にはよく見えた。俺はとりあえず二人に声を

 かけに行こうとしたその時....

 

「っ!」

 突然ユリシアの背後に、巨大な衝突面(エントランス)が出現した。そして、そこから魔導兵器が現れた。

 

「ガロス!」

 俺はそう叫んでガロスを身に纏い、魔導兵器に向かって右腕の武装からレーザーを放って

 魔導兵器を破壊した。そして、俺はユリシアと傷無の前に移動した。

 

「兄ちゃん!」

「飛騨 真!?」

『二人とも、とっととここから撤退しろ。コイツらは俺が潰す』

 俺はそう言いながらも、右腕の武装からレーザーを放って、衝突面(エントランス)から出てくる魔導兵器を

 破壊していった。

 

『早く行けお前ら! 攻撃に巻き込まれて被弾しても文句は聞かんぞ!』

 俺はそう叫んで右腕の武装を剣に変形させると、魔導兵器に向かっていった。すると....

 

「クロス!」

 突然背後からその声が聞こえ、俺の周りにいた数体の魔導兵器が爆発した。俺は地面の方を

 見ると、何故かユリシアが“クロス”を纏って魔導兵器に攻撃を仕掛けていた。

 

『おい....撤退しろって言っただろ』

 俺はクロスに通信を繋いでそう言った。

 

『したわよ。あなたの弟は』

『俺はアイツだけに言ったつもりはないんだが、なっ!』

 俺は通信でそう言いながら魔導兵器の攻撃を躱し、カウンターで魔導兵器を破壊していった。

 そうしている間にも、ユリシアもクロスで魔導兵器を破壊していた。そして数分後、周辺に

 現れた魔導兵器は全て機能を停止した。

 

『(....雑魚ばかりで楽だったな)』

 そう思いながら、俺は姉貴から渡された通信用端末に入っている天地穹女神(アマテラス)のアプリを

 立ち上げた。そして、俺はユリシアのハイブリット・カウントを確認した。

 

『(10%を切ってるな....急いでアイツを撤退させて....)』

 そう思っていた瞬間、突然衝突面(エントランス)から魔導兵器の気配を感じた。俺は警戒して衝突面(エントランス)の方を

 見ると、衝突面(エントランス)から竜騎士の様な赤い魔導兵器が二体現れた。

 

『(増援か....)』

『ユリシア・ファランドール! お前はここから撤退しろ! 今のお前ではコイツには

 勝てねぇ!』

『っ! 冗談言わないで! ここで引くわけには....!』

 ユリシアは俺の言葉を無視し、魔導兵器に攻撃を放った。だが、クロスの攻撃の出力は

 異常なぐらいまで落ちており、レーザーは魔導兵器に当たった瞬間、消滅した。

 

『嘘っ....!』

『(だから言わんこっちゃねぇ!)』

 ユリシアは目の前で起こった事に驚いていた。そして、突然胸を押さえて苦しみだすと、

 地面に膝をつき、クロスが強制解除されていた。

 

『チッ!』

 俺は咄嗟に左腕に装備している盾をユリシアの目の前に投げた。

 

『ハロ! アイツの核は何処だ!』

 そして、俺は目の前の魔導兵器の攻撃を躱しながら

 

『....ケンサクカンリョウ! カクハウエニノッテイルキシノマンナカ!』

 俺はハロの声を聞いた瞬間、右肩にあるビームサーベルの柄を手に取って左腕に

 ビームサーベルを装備した。そして、俺はそのまま魔導兵器の懐に入り込み、右腕の剣で

 槍を弾き、左手のビームサーベルで魔導兵器の中心を貫いた。

 そして、俺は中心を貫いたビームサーベルを突き刺したままその場から離れた。すると、

 魔導兵器には電気の様なものが流れると、その場で大爆発を起こした。

 

『これで一体!』

 俺は破壊したのを確認すると、急いでもう一体の魔導兵器の方に向かおうとした。だが、

 もう一体の魔導兵器の口にはエネルギーがチャージされており、今にもユリシアに

 放たれようとしていた。

 

『(マズい....!)』

 俺がそう思ってユリシアのいる方に向かおうとしたその時....

 

『ユリシアァァァァ!』

 突然海の向こうから傷無の声が聞こえてきた。そして、現れた傷無はユリシアの前に立って

 絶対領域(ライフセーバー)でユリシアを守ろうとしていた。そして、魔導兵器から炎が放たれた。その炎は、

 俺の盾を風圧で吹き飛ばし、傷無の絶対領域(ライフセーバー)さえも破壊した。そして、傷無とユリシアは

 後方に吹っ飛ばされた。

 

『傷無!』

 俺はすぐに吹っ飛ばされた傷無のもとに向かった。

 

『に、兄ちゃん....』

『このアホ! 無茶が過ぎるぞ!』

『ごめん....それよりも、ユリシアは....?』

『ここよキズナ!』

『そっか....良かった....』

 傷無はユリシアの声を聞くと安心した様な表情になった。

 

『....ユリシア・ファランドール、傷無を頼むぞ』

 俺はユリシアにそう言って、魔導兵器の方に向かった。

 

『ハロ、核はさっきと同じか』

 俺は魔導兵器の前に立ち塞がると、ハロにそう聞いた。だが、ハロの答えは俺にとっては

 嬉しくない事だった。

 

『....カクノハンノウハチガウ! ゲンザイケンサクチュウ! ゲンザイケンサクチュウ!』

『チッ....』

 俺は小さく舌打ちをしながらも、ハロの検索が終わるまで魔導兵器の足止めをしようとした。

 だが、その時....

 

『コウホウデキョダイナチカラヲカンチ!』

 突然、核の検索をしていたハロが俺にそう言ってきた。

 

『巨大な力?』

 俺がそう呟いて背後を見ると、傷無とユリシアがいる場所をピンクと金色の輝きが

 放たれていた。そして、その輝きが収まると、クロスを纏ったユリシアが立っていた。

 

『(まさか....接続改装を?)』

『飛騨 真! そこどいて!』

 俺がそう考えていると、通信からユリシアの叫び声が聞こえてきた。そして次の瞬間、

 ユリシアのクロスの武装が展開して、魔導兵器に向かって無数のレーザーが放たれた。

 

『まずっ....!?』

『キンキュウカイヒ! キンキュウカイヒ!』

 俺はブーストをかけて、その場からすぐに離れた。そして、俺がいた所には無数のレーザーが

 飛び交い、魔導兵器はチリ一つ残らず消滅した。

 

『....どんな威力してんだよ』

 俺は上空から見た島の状況を見てそう呟いた。何故なら、さっきの攻撃で島自体の形が

 変わっていたからだ。

 

『はぁ....とりあえず、任務は完了だな』

 俺は衝突面(エントランス)が消滅した事を確認してそう呟いた。



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帰還後

「コーヒーで良かったか?」

「あぁ。悪いな姉貴」

 無人島から帰還して数時間後、俺は姉貴と司令室にいた。そして、コーヒーを

 受け取ると姉貴は俺の前にある椅子に座った。

 

「まずは、任務ご苦労だったな」

「あぁ」

「そして、ユリシアの事ありがとうな。お前があの時足止めをしたおかげでアイツは

 無事に帰ってこれた」

 そう言うと姉貴は俺に頭を下げてきた。

 

「それは傷無に言ってやってくれ。最終的にアイツが接続改装をしたから無事に

 帰ってこれたようなもんだ。俺はただ、姉貴からの頼みを聞いて動いただけだ」

「....そうか。ま、お前がそう言うならそういう事にしておこう」

 そう言いながら、姉貴は俺の報告書を眺めていた。

 

「お前の身体とガロスの方は大丈夫なのか?」

「身体と機体自体には問題はない。....ただ、シールドとビームサーベルが一つお釈迦になった」

「そうか....とりあえず、お前の身体に異常がないなら良かった」

 姉貴はそう言うと、安心したような表情になった。

 

「そいつはどうも。んじゃ、俺はラボでガロスの整備するから。おやすみ姉貴」

「あぁ。お前もしっかりと休めよ」

 俺は姉貴の言葉を聞くと、司令室から出てラボに向かった。

 

 〜数時間後〜

 

「はぁ、終わった....」

 俺は自分の目の前にある空間ディスプレイを見てそう呟いた。俺の目の前にある

 空間ディスプレイにはガロスの武装であるビームサーベルとシールドが修復中の状態で

 あるという事が示されていた。そして、俺の手元には今回の件の追加の報告書があった。

 

「ハロ、今何時だ」

『ゲンザイ、アサノシチジサンジュップン! アサノシチジサンジュップン!』

「朝かよ....思ったより追加の報告書に時間を食われたな....」

 そう呟きながら俺は近くにあった封筒に報告書を入れてフード付きの上着を羽織った。

 

「ハロ、俺は姉貴のところに行ってくる。お前はしばらく寝てて良いぞ」

『リョウカイ! リョウカイ!』

 そう言うとハロは普段眠っている場所に跳んで行き、羽根と目を閉じて球体に変わった。

 その様子を見て、俺は部屋の鍵を持って部屋から出て姉貴のいる場所に向かった。

 

 〜〜〜〜

 

「(人が多い....)」

 俺は学園に向かう通学路を歩きながらそう思っていた。

 

「(出るタイミング遅らせればよかったな....)」

 そう思っている間にも、俺は学園の前に着いた。

 

「(学園長室は何処だ....)」

 そう思いながら俺は通信用端末を使って学園長室を探した。すると....

 

「飛騨さん....?」

 後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには何かのバインダーを持った

 姫川がいた。

 

「姫川....」

「あの、こんな所で何をしてるんですか? それにその封筒は....」

「学園長室をこれで探してるんだよ。昨日の件の報告書を姉貴に渡すためにな」

 そう言いながら俺は端末と封筒を見せた。

 

「そ、そうだったんですか....でしたら、学園長室まで案内しましょうか?」

「....お前がか?」

「い、いけませんか....?」

「....」

「(....本当に、よく似てやがる)」はぁ

 俺は姫川の変に世話を焼くところがあの子と似ていてため息が出た。

 

「な、何でため息つくんですか!」

「深い理由はねぇよ。....まぁいい。案内してくれるってなら素直に案内してもらうか」

「何でちょっと上からなんですか....」

「知るか。それよりも、とっとと案内してくれ。人が集まってる」

 そう言うと、姫川は周りを見た。俺達の周りには、多くの学園の生徒達が

 何とも言えない表情で俺と姫川を見ていた。

 

「そ、そうみたいですね....じゃ、じゃあ私の後ろをついてきてくださいね」

 そう言って、姫川は校舎の方に歩き出した。そして、俺は姫川の後を追って

 学園長室に向かった。

 

 

 

 

 

 



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お願い

「....どうだ」

「簡潔に言うと、数値が少し上昇してるって言ったところだな」

 無人島での戦闘があった二日後、俺と姉貴は俺専用のラボにいた。そして、俺と姉貴の

 前にあるモニターには傷無のギアであるエロスのスペックが映し出されていた。

 

「数値がか?」

「あぁ。て言ってもほぼ誤差みたいなものだがな」

 そう言いながらキーボードを叩いて少し前のエロスのデータを比較した。

 

「確かに少し上昇しているな....理由はわかるか」

「いや、現状さっぱりだ。しいて言うなら接続改装が関係してるんじゃないかっていう

 仮説は俺の頭にあるが」

「そうか。益々不思議だな」

「そもそもハート・ハイブリット・ギア自体が不思議な物だ。エロスに然り、天地穹女神(アマテラス)

 ギアに然り。ま、俺のギアが一番不思議な物だがな」

 俺はそう言って、自分のギアのデータをモニターに映した。

 

「始まりのギア、ガロス....」

「全てのロスシリーズのベースとなったギア。コイツはまだまだ強くなるぜ姉貴。

 今はデータが少ないからここで止まってるがな」

 そう言いながら、俺は五つのガロスのデータを姉貴に見せた。

 

「通常形態のガロス、遠距離攻撃特化のガロス‐D、高速での動きで敵を翻弄するガロス‐K、

 超火力と防御特化のガロス‐V、そしてトランザムガロス....どれもこれもが一機で国を

 支配できる力だな....」

「それだけの力がなけりゃ、連中には勝てないからな....」

 そう言いながら、俺はキーボードを叩いて画面を消した。

 

「なぁ真。少し頼みがあるんだが良いか」

「頼みか?」

「あぁ。アタラクシアにある生徒達が使う武器とアタラクシアの防衛設備を強化することは

 できるか?」

「武器と防衛設備をか?」

「あぁ。この二つが少しでも強化できればギアを使うお前達の負担が減らすことが

 できるからな」

「なるほど....」

 俺は姉貴の言葉に納得できた。だが....

 

「強化するのは良いが、そもそものスペックがわからないことにはどうしようもねぇぞ」

「っ! それもそうだな....」

「(考えてなかったのかよ....)」

 姉貴のどこか抜けてるところに、俺は口に出さなかったが呆れた。

 

「取り敢えず、武器を見せてくれ。話しはそれからだ」

「あぁ、わかった」

 そう言って、俺と姉貴はラボから出て武器が置かれている倉庫に向かった。

 

 ~~~~

 武器庫付近

 

 ラボから出て学園に入り、武器が置かれている倉庫に向かっていると授業中の姫川達が

 グラウンドにいた。

 

「そ、総司令!」

 グラウンドにいた生徒達は姉貴に気づくと敬礼した。

 

「みんな、楽にしてくれて構わない」

「総司令、そちらにいらっしゃる方は....?」

「飛騨 傷無の兄の飛騨 真だ。少し用事があって私が連れてきた」

 姉貴がそう言うと、生徒たちは少し怪しんだように俺を見てきた。

 

「姉貴、さっさと用事済ませたいんだが」

「あぁ。すまないが、銃を一つ持ってきてくれるか」

 姉貴がそう言うと、生徒の一人が銃を一丁姉貴に渡した。

 

「真。一応これが学園で使っている銃だ」

 俺は姉貴に渡された銃を受け取っていろいろと確認した。

 

「....散弾と榴弾系の銃か」

 俺は銃の中にある弾を見てそう呟いた。

 

「姉貴、少し試し打ちするぞ」

 俺はそう言ってガロスの盾を呼び出して少し離れた所に置いた。そして、銃を構えて

 盾に向かって撃った。練習用の弾だったから盾には傷一つつかなかったが、盾は置いた

 場所から1ミリも動いていなかった。

 

「....姉貴。弾は徹甲弾系に変えたほうが良い。散弾や榴弾じゃ敵に対してあまり効果が

 なさそうだ。徹甲弾なら一撃当たれば魔導兵器の装甲が貫けるはずだ」

「そうか。なら、あとで工廠の方に伝えておこう」

「そうしてくれ」

 そう言いながら盾を片づけて銃を姉貴に返した。

 

「授業中に邪魔をしてすまなかった諸君。引き続き訓練を頑張ってくれたまえ」

 姉貴がそう言ってこの場から離れようとし、それについて行こうとしたその時....

 

「そ、総司令! 少しよろしいですか!」

 姫川が姉貴に向かってそう叫んだ。

 

「どうした姫川」

 すると、姫川は意外なことを言った。

 

「その、飛騨さんが良ければいいのですが....私と一度、戦ってもらえませんか」

「何?」

「っ....!」

「私自身、今自分がどれだけ強いのかわかりません。なので、あのような凄い戦いを

 する飛騨さんに一度私と戦って欲しいんです」

「....と言っているが、どうする真?」

「....」

「(....姫川の実力には少し興味があるな)」

「....いくつか条件を付けるが、それでもいいか」

 俺はそう考えながら姫川にそう言った。

 

「条件ですか?」

「戦う時間は15分間。姫川のハイブリット・カウントが5%減った瞬間、もしくは致命傷に

 なると思われる攻撃が当たりそうになった瞬間に勝負は終了。この条件が飲めるなら

 勝負しても良い」

「わかりました。その条件でお願いします」

「....そうか。なら姉貴、審判を頼む」

「....わかった」

 俺は姉貴にそう言うと、姉貴は少し呆れたようにそう言った。

 

「....じゃあ、少し待ってろ」

 そう言って、俺は無線を使ってハロを呼び出して勝負の準備を始めた。

 

 

 

 



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ネロスVSガロス

「二人とも、準備は良いな?」

『はい』

『あぁ』

 姉貴の言葉が聞こえ、俺と姫川はそれぞれ自分の武器を構えた。

 

『ハロ、姫川の戦闘データを取っておけ』

『リョウカイ! リョウカイ!』

「では、試合始め!」

 姉貴がそう叫んだ瞬間、姫川は俺にまっすぐ突っ込んできた。俺はまっすぐ突っ込んできた

 姫川の刀を右腕の剣で受け止めた。

 

『っ! はぁぁぁ!』

 すると、姫川は連続で俺に斬りかかってきた。だが、俺は全ての攻撃を剣で受け流した。

 

『(....速い。だが、攻撃が単調だな)』

弩弓駆剣(ブレイド)!』

 そう思っていると、突然姫川の背後から四本の巨大な剣が俺に向かって飛んできた。

 

『(っ、来たか....)』

 俺は姫川の刀を弾き、飛んできた剣を避けながら姫川よりも上に飛んだ。

 

『追って!』

 姫川の言葉に反応したのか、剣は再び俺に向かって飛んできた。

 

『ハロ!』

『リョウカイ! リョウカイ!』

 すると、俺の目の前にあらゆる方向から飛んでくる剣が順番に見えた。俺は見えた順番に剣を

 躱し、落とせそうな剣を一本地面に叩き落とした。

 

『そんな!?』

 姫川が剣を地面に叩き落とされたのに驚いたの同時に、空中に浮いていた剣の動きが鈍った。

 俺はそれを見逃さず、刀身を折りたたみライフルモードにして浮いていた剣を全て撃ち

 落とした。

 

『嘘....』

 姫川は一瞬にして自分の武装が落とされたことにその場で固まってしまっていた。

 

『....』

 俺は固まっている姫川の顔の横に向かってビームライフルを放った。

 

『っ!?』

『もう終わりか? なら、終わらさせてもらうぞ』

 そう言って、俺は刀身を展開させて切っ先を姫川に向けた。

 

『....まだ、まだ終わっていません!』

 姫川はそう叫び、再び刀を構えて俺に向かってきた。

 

『諦めない心....そこは認める。だが....』

 俺は素直に姫川の諦めない闘志に賞賛しながら、ある言葉を口にした。

 

『....トランザム』

 

 ~~~~

 姫川side

 

『....まだ、まだ終わっていません!』

 弩弓駆剣(ブレイド)は全て落とされ絶望的な状況だったが、私は諦めずに飛騨さんに向かっていった。

 そして、接近して刀を振り下ろした瞬間、飛騨さんのギアが赤く光ったと思うと、私の目の前

 から一瞬にして消えた。

 

『えっ?』

 私は一瞬にして消えた飛騨さんに驚きながらもすぐに辺りを見た。だが、飛騨さんの姿は

 見えず、ネロスのレーダーにも反応はなかった。

 

『(一体どこに....)』

 そう思いながら背後を見ようとした時、私の首筋には冷たい物が触れた。

 

『お前の負けだ、姫川』

『っ!? いつの間に....!』

 冷たい物の正体は飛騨さんのギアの右腕に装備されてある剣で、いつの間にか飛騨さんは私の

 背後にいた。

 

「そこまで! 二人とも、下に降りて来い!」

 すると、下にいた総司令がメガホンで私達にそう言ってきた。飛騨さんはすぐに剣を折りたたみ

 下に降りていった。

 

『....完敗、ですね』

 私は今の自分の状態を見てそう呟くしかなかった。

 

 ~~~~

 真side

 

「この勝負、真の勝ちだ」

 下に降りて俺と姫川がギアを解除すると、姉貴は俺達にそう言ってきた。

 

「....はい」

「....」

 姫川はどこか落ち込んだ様子で姉貴の言葉に答えた。その様子を見て、俺は姫川にこう言った。

 

「姫川、二つアドバイスだ。あの空中に浮く剣の使いどころをもう少し考えろ。最初から使うと

 いざという時に対処される。さっきの戦いみたいにな。もう一つはもっと刀を使って戦え。

 空中に浮く剣に頼りすぎていると個人的に思う。それにその刀、上手く使えば戦いを有利に

 進めれるはずだ」

「飛騨さん....」

「....姉貴、俺は先に戻るぞ」

 俺はそう言って、ハロとともにこの場から去った。

 

 

 

 

 



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ガロス‐D

 姫川と戦った数週間後、俺は整備室で新たな武装を造っていた。

 

「....これで二つか」

 そう呟いた俺の目の前には、姫川のギアの武装である弩弓駆剣(ブレイド)の色と形を変えた

 武装があった。

 

「(あと二つは欲しいが、少し休憩するか....)」

 そう思いながら、俺はイスに深く座り武装のデータを確認した。

 

「(ハロでサポートができるのは四つが限界....正直な話、ビット兵器は数が多ければ

 多いほうが良いが....ビット兵器専用のハロを作るってのもありか....)」

 そう思いながら、俺は空間ディスプレイを消して立ち上がった。

 

「ハロ、少し散歩してくる。寝てても良いぞ」

『ワカッタ! ワカッタ!』

 そう言うと、ハロは眠りに就いた。俺はそれを確認すると部屋の電気を消して部屋から出た。

 

 ~~~~

 

「....」

 外に出て散歩をしていた俺は防壁に登って海を眺めていた。そして、俺はポケットに

 入れていた姉貴から貰った端末とは別の端末を取り出して海の写真を撮った。

 

「綺麗、とは言いにくいか....」

 そう呟きながら俺は撮った写真を見ていた。

 

「やっぱ、撮るのはアイツの方が上手かったな」

 そう思いながら、俺は撮った写真を消して昔の写真をスクロールして見ていた。すると、

 突然近くにあった拡声器から警報が鳴り響いた。

 

「....こんな時間にか」

 俺は警報を聞くとすぐに姉貴に端末で電話をかけた。

 

「姉貴」

『真か。今どこにいる』

「ラボ近くの海岸だ。姉貴、今回は俺一人でやる。援軍はいらないって言っといてくれ」

『お、おいまこ....!』

 俺は姉貴の言葉を最後まで聞かず電話を切ると、俺の後ろからハロが転がって来た。

 

「行くぞハロ」

『リョウカイ! リョウカイ!』

 そういって俺は右腕を前に突き出した。

 

「来い、ガロスーD」

 そう言うと、俺の身体にはカラーリングが緑に変わったガロスが纏われた。そして、

 普段装備している武器は無く、代わりに巨大なスナイパーライフルとビームピストル、

 そしてビット兵器を二つ装備していた。

 

『さぁ、試運転の時間だ』

 そう言って俺は魔導兵器の反応がある方向に向かって飛んだ。

 

 ~~~~

 姫川side

 

「総司令!」

 警報が鳴り響いて数分後、私達はラボに来ていた。

 

「総司令! 私達の出撃はしなくていいとはどういう事ですか!」

「....真がそう言った。今回は一人でやると言ってな」

「でも姉ちゃん! 兄ちゃん一人じゃいくらなんでも危険じゃ....!」

「....」

 飛騨君の言葉に総司令は何も言わずに目を伏せた。すると、突然私達の目の前にあった

 ディスプレイに映像と文字が映った。

 

『れーり、ハロからの通信。真が戦闘を始めたみたい』

「そうか」

 そう言うと、総司令は映像に目を移した。だが、その映像にはおかしな部分があった。

 

「緑色の、ガロス?」

「兄ちゃんのガロスって青色だったはずじゃ....」

「それにあのスナイパーライフル....」

「総司令、あのガロスは....」

「....ちょうど良い機会かもしれんな。真のガロスについて知るには。ケイ、ガロスの

 スペックデータを出してくれ」

『分かった』

 総司令がそう言うと、私達の目の前にディスプレイが現れた。そのディスプレイには

 飛騨さんのガロスのデータが記されていた。

 

「真のガロスは始まりのギアと呼ばれている」

「始まりのギア?」

「あぁ。この世界にやって来た最初のコアで作られたハート・ハイブリット・ギア。

 それが真が纏うガロスだ」

「「「「っ!?」」」」

 総司令の言葉に私達は驚き言葉を失った。

 

「お前達が纏っているエロス、ゼロス、クロス、ネロスは全てガロスがベースとなった

 機体だ」

「そんな事、初めて知ったんだけど....」

「当然だ。これを知るのは私や真のごく一部の人間だ」

「....そうですか。それは何となく理解できましたけど飛騨 真のあの武装は?」

 ユリシアさんはスナイパーライフルを放っている飛騨さんの映像を見ながらそう聞いた。

 

「そうだな。それについて説明しなければならんな。まず大前提だが、真のガロスには

 絶対領域(ライフセーバー)や基本的な装備は存在しない。あの腕に装備していたブレードやビームサーベル、

 シールドは全て真が作り後付けされたものだ。あのスナイパーライフルもな」

「なっ....!? 絶対領域(ライフセーバー)が無いって....それじゃあ兄ちゃん、敵の攻撃が直撃したら

 ヤバいんじゃ!」

「それを防ぐためのシールドだ。それに、真の動きを見てわかるだろう。基本攻撃は

 ブレードで弾くか避けている。それだけガロスは機動力があるんだ。それを可能に

 しているのが背中の装置だ」

 そう言いながら、総司令は戦っているガロスの映像の背中を指差した

 

「真によれば、あの装置から出ている粒子によってガロスの機動力は増している」

「総司令、あの装置は一体....」

「それは私もわからん。真は知っているが私にも教えてくれなくてな。だが、一つだけ

 言えるのはガロスの機動力や性能に直結しているのは間違いない」

「....」

 私はガロスのデータを見ながら飛騨さんの戦いを見た。すると、ガロスの腰の装備が展開され

 ガロスの前に浮かび上がった。その装備は、私のネロスの弩弓駆剣(ブレイド)と酷似していた。

 

「っ! アレは....!」

「真、既に完成させていたのか....」

 飛騨さんは弩弓駆剣(ブレイド)と酷似した装備を自在に操りながらもスナイパーライフルで向かってくる

 魔導兵器を打ち抜いていた。更には弩弓駆剣(ブレイド)と酷似した装備にビームを反射させて敵を

 打ち抜くといった難しそうな技を使っていた。

 

「凄い....」

 私は飛騨さんの戦い方にそう呟いてしまった。そして同時に、今の私ではこのような戦い方は

 出来ず、飛騨さんにあそこまで完敗してしまったのも納得できた。

 

「(弱い....今の私は、あまりにも....!)」

『姉貴、魔導兵器を全滅させた。今から帰還する』

「了解した」

 通信が切れると映像は同時に落ちラボの照明は少し落ちた。

 

「....一先ず、今私が話せることは話せた。まだ残っているが次回の機会に話そう。では、

 全員解散」

 その言葉で今回の件は幕を閉じた。だが、私にはまだやるべきことが残っていた。

 

 ~~~~

 

「あの、ケイさん」

『どうしたハユル』

「先程の飛騨さんの戦闘映像を私にいただけませんか?」

 私以外のメンバーがいなくなった後、私はケイさんにそう頼んだ。

 

『別に良いけど、どうして?』

「飛騨さんのあの装備は私の弩弓駆剣(ブレイド)と酷似していました。もしかしたら、私の戦術の幅が

 増えるんじゃないかと思って....」

『そういう事....はい、映像は送った』

 すると、私の端末にファイルが送られてきた。

 

「ありがとうございますケイさん!」

『構わない。頑張って』

 私は一礼してから自室に戻り、飛騨さんの戦闘映像を見た。

 

「武器が違うのにこんなに戦えている....やっぱり凄い」

 飛騨さんの戦いには無駄な動きが少なく、正確に、そして確実に魔導兵器を倒していた。

 

「私がこのように戦うためには....」

 その後、私は映像を見返しながら私ができる戦い方を研究した。

 

 



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少しのアドバイス

 ガロスーDの試運転が終わった一週間後、俺は部屋で三機目のビットを造っていた。

 

「よし。後はデータの送信が終われば完成だな」

 そう呟き、俺はパソコンを立ち上げたまま整備室を出て天地穹女神(アマテラス)の待機室に向かった。

 

 ~~~~

 待機室

 

 待機室ではケイが忙しそうにパソコンと向かい合っていた。

 

「おう。お疲れ」

『お疲れ様。何か用?』

「あぁ。天地穹女神(アマテラス)の戦闘データを纏めてるファイルってあるか?」

『それならあそこのファイル棚。一番上がゼロス、中段がクロス、一番下がネロス』

「そうか。しばらくこの部屋で見させてもらうぞ」

『分かった』

 そう言って、俺はいくつかファイルを取ってソファでデータを見ていた。

 

「(....撃破数はクロスとネロスが多いな。中遠距離が雑魚には有利か)」

 そう考えながらしばらくデータを観察していると誰かが部屋に入って来た。俺が扉の方を

 見ると、入って来たのは姫川だった。

 

「っ! こ、こんにちわ、飛騨さん」

「....おう。姉貴かケイに用事か?」

「は、はい! あの、総司令はどちらに....?」

「ケイ! 姉貴は?」

 俺はケイにそう叫んだ。すると、俺と姫川の前にウインドウが浮かび上がった。

 

『れーりなら飛騨 傷無と話しがあるって出ていった』

「....だそうだ」

「そ、そうですか....じゃあ、少し待たせてもらいますね」

 そう言うと、姫川は俺の隣に座って来た。

 

「....何で横に座る」

「い、良いじゃないですか....それよりも、何読んでるんですか?」

天地穹女神(アマテラス)の戦闘データだ。お前らの実力はどんなものなのか気になってな....」

「そうですか....飛騨さんから見て、どういう感想がありますか?」

「....まぁ悪くないと思う。ただ、全員に言える事が絶対領域(ライフセーバー)に頼り過ぎだ。無駄に

 カウントを減らしている。後は、前にも言ったが姫川は弩弓駆剣(ブレイド)に頼り過ぎだ。

 敵に動きが読まれたらせっかくの武器も逆に弱点になる」

「そうですか....では、どうしたら良いですか?」

「それは自分で考えろ、って言いたいが....弩弓駆剣(ブレイド)はどんなタイミングでも自在で

 飛ばせるのか?」

 俺はファイルを見て思った事を姫川に聞いた。

 

「はい。私の合図でいつでも飛ばせます」

「そうか。なら、奇襲に使うのが良いだろうな」

「奇襲に、ですか?」

「あぁ」

 俺はそう言って自分の端末を動かし、少し前に俺と姫川が戦った映像を空中ディスプレイに

 出した。そして、俺はある部分で映像を止めた。

 

「例えばこの時、俺の背後はガラ空きの状態だ。そんな時に相手が弩弓駆剣(ブレイド)の攻撃を

 知らなかった場合、弩弓駆剣(ブレイド)の攻撃を躱すか防ぐのはかなり難しいはずだ」

「なるほど....そういう戦い方もあるんですね」

「まぁこの戦い方にあっているのは、人間か相手の攻撃をラーニングする兵器だな。

 それ以外の敵には、姫川の戦い方の方が早くケリがつくだろうな....まぁ状況ごとに戦術を

 変えるのが一番良いな」

「そうですか....勉強になります」

「....そうか」

 そう話していると、突如スピーカーからアラームの音が鳴った。

 

「....敵襲か。姫川、お前は姉貴の指示を聞け。俺は先に出る」

 そう言って、俺は先に出撃した。

 

 

 



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襲撃

『バカデカいやつが来やがったな....しかもおまけも大量に』

 俺は通常形態のガロスで大艦隊の前に飛んでいた。

 

『(あのデカいのを潰せば退きそうだが....おまけが邪魔だな。それにあの戦艦、

 何かあるな....)』

 俺は戦艦から感じる何かを感じ取っていた。そう考えていると....

 

『飛騨さん!』

 背後から傷無以外の三人が来た。

 

『目視で確認すると凄い数ね....』

『あぁ。正直結構面倒になるな』

 俺はそう言いながら形態をDに変えて自身の周囲にビットを浮かせた。

 

『まぁあのデカい戦艦を潰せば連中は退くと思うが....』

『じゃあさっさと潰せば良いだけね』

 そう言うと、千鳥ヶ淵が戦艦に向かって一直線に向かっていった。

 

『っ! 待て! 無策で突っ込むんじゃねぇ!』

 俺はそう叫んだのだが、千鳥ヶ淵は意に介さず戦艦に向かっていった。

 

『あの野郎....!』

『愛音にそう言うこと言っても聞きやしないわよ』

『それよりも、私達も愛音さんを援護しましょう。十五分以内にあの戦艦の主砲を破壊しないと

 アタラクシアが火の海になってしまいます』

 そう言いながら、姫川とファランドールはそれぞれの武器を構えていた。

 

『おい二人とも、一つ言っておく。あの戦艦には気を付けろ』

『気を付けろって主砲の事?』

『それもあるが....あの戦艦、何かある』

『何かって、何ですか?』

『それはわからん。だが、主砲よりもヤバイ何かがある。俺の勘がそう言ってる』

『勘って....まぁ一応覚えておくわ』

『....わかりました』

『OK。じゃあこっちも始めようか』

 俺はそう言って背中に装備されたスナイパーライフルを構えスコープを覗いた。

 

『ハロ、バックアップ頼む』

『リョウカイ! リョウカイ!』

 すると、俺の目の前に敵の姿と照準があった敵の姿が見えた。

 

『ガロスーD、敵を狙い撃つ!』

 俺はそう叫び、ライフルの引き金を引いた。ライフルから放たれたビームは魔導兵器のコアに

 直撃し、周囲の魔導兵器を巻き込んで爆発を起こした。ビットから放たれるビームでも

 魔導兵器のコアは撃ち抜かれ、至る所で爆発を起こしていた。

 

『次!』

 俺は照準があった敵をひたすら撃ち続けていった。そんな時....

 

『すみません飛騨さん! 抜けられました!』

 突然姫川からそんな通信が入った。俺は魔導兵器の攻撃を回避しながら姫川の方を見ると、

 姫川の背後にアタラクシアに向かっている魔導兵器の姿が見えた。

 

『(狙い、いやズレたら面倒だな....こういう時のアレだな)』

 そう思い、俺はあるコマンドを手元に出した空中ディスプレイにあるコマンドを打ち込んだ。

 すると、突然アタラクシアの外壁の防衛システムが起動した。防衛システムからは徹甲弾と

 無数のマシンガンが放たれた。直撃した魔導兵器は空中で大爆発を起こしていた。

 

『(防衛システム、問題なく動いたな....)』

 そう思いながら、俺は寄ってきた魔導兵器を破壊した。

 

『さて、システムは良いが問題はこっちだな....』

 俺は戦艦の方を見た。すると、気づけば三人はかなり前線の方にいた。

 

『(前行き過ぎだ全員!)」

 そう考えていると、ファランドールと姫川の前に少し前の調査で現れた竜騎士の様な

 魔導兵器が立ちふさがった。

 

『(アレは....どんどん面倒が増えてくるな....)』

 そう思って照準を合わせようとしたのだが、それよりも前に厄介な事態に気づいた。それは、

 魔導兵器の攻撃を受けて海に落ちていく千鳥ヶ淵の姿がスコープ越しに見えたことだった。

 

『っ! だから言ったんだあのバカ! トランザ....!』

 俺はトランザムを発動させてキャッチしに行こうとしたのだが、それより早く....

 

『千鳥ヶ淵ィィィ!』

 エロスを纏った傷無が全速力で駆け付け千鳥ヶ淵をキャッチしていた。だが、その背後では

 魔導兵器が傷無達に向かって攻撃を放とうとしていた。

 

『させるか!』

 俺はすぐにライフルのトリガーを引いてビームを放ち、魔導兵器を破壊した。

 

『傷無! さっさとそこから千鳥ヶ淵連れて撤退しろ!』

 俺は傷無の通信に向かってそう叫んだ。

 

『了解!』

 傷無はそう言うと高速でアタラクシアの方に戻っていった。

 

『さて....こうなると俺も前線に行った方が良いか....』

 俺はあまり気乗りしなかったが、状況が状況なため仕方なくガロスを通常形態に戻した。

 そして、右腕の装備とシールドを消して腰の装備から二本のビームダガーを手に取った。

 

『....()()は、まだ動かさない方が良いな』

 そう呟き、俺は姫川達が戦っている竜騎士の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 



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襲撃の決着

 姫川side

 

『くっ....』

『(仮にもA級魔導兵器! 他の魔導兵器と違って厄介ですね....それに他の魔導兵器の攻撃を

 回避しながら戦うとなると流石に....)』

 私は他の魔導兵器の攻撃を回避しながらA級魔導兵器の竜騎兵(ドラグリエ)と戦っていた。

 

『ハユル後ろ!』

『っ!? しまっ....』

 そう考えながら戦っている時、背後からの魔導兵器の攻撃に反応が遅れた。そのまま私に

 魔導兵器の攻撃が直撃すると思ったが、魔導兵器は突如私の頭の上で剣を止めていた。

 そして次の瞬間、魔導兵器は竜騎兵(ドラグリエ)に向かって蹴り飛ばされた。何が起こったのかと

 思っていると、魔導兵器がいた背後には通常形態のガロスを纏いビームダガーを持った

 飛騨さんがいた。

 

『飛騨さん!』

『ギリセーフ....無事か姫川』

『はい! ありがとうございます』

『礼は後で良い。それよりも来るぞ』

 そう言って、飛騨さんは竜騎兵(ドラグリエ)の方を見ていた。竜騎兵(ドラグリエ)は飛騨さんの方を見ると、竜の口から

 火炎放射を放った。だが、飛騨さんはその攻撃を軽々と躱していた。そして、飛騨さんは

 竜騎兵(ドラグリエ)に接近すると竜の上に乗っている騎士の刀を弾き飛ばした。

 

『今だ姫川!』

弩弓駆剣(ブレイド)!』

 私は飛騨さんの言葉を聞き、弩弓駆剣(ブレイド)を動かして竜騎兵(ドラグリエ)を攻撃した。竜騎兵(ドラグリエ)の核に直撃した

 のか、竜騎兵(ドラグリエ)は爆発を起こした。それと同時に、ユリシアさんが戦っていた竜騎兵(ドラグリエ)も爆発を

 起こしていた。

 

『全く....竜騎兵(ドラグリエ)まで来るなんて。向こうも随分と本気ね....』

 竜騎兵(ドラグリエ)を倒したユリシアさんは一度私達の方に近づいてきた。

 

『で、ここからどうするの飛騨 真。このままだと押し切られかねないわ』

『....戦艦を潰したいが周りの船が邪魔だ。通常の遠距離攻撃じゃ威力は足りず、近距離では

 弾幕で近づけない....かなり厄介な状況だな』

『何か策はないわけ?』

『....まぁ、あるにはあるが。少しチャージに時間がかかるな。その間、二人で足止め

 行けるか?』

『....チャージの時間は』

『最短で三分』

『三分ね。なら、何とかして稼いで....』

 そう言って、ユリシアさんは背中の装備を展開させようとしたのだが....

 

『その必要は無いわ!』

 突然私達の無線に愛音さんの声が聞こえてきた。後ろを見ると、そこにはゼロスの鎧が

 変わった愛音さんと、ギアの色がゼロスに似たエロスを纏った飛騨君がいた。

 

『愛音さん! それに飛騨君まで!』

『おまっ....! 何で来た! てかそのエロスの状態はどうした!』

 飛騨さんは飛騨君の姿を見るとそう叫んでいた。

 

『説明は後でするから! それよりも三人とも! 愛音に魔導兵器が近づかないよう

 引き離してくれ! 俺も出来るだけやってみる!』

 そう言うと、飛騨君は魔導兵器の方に向かっていった。

 

『む、無茶よキズナ! キズナの装備じゃ魔導兵器は....!』

 ユリシアさんは飛騨君を止めるようにそう叫んだのだが、飛騨君は真っすぐ魔導兵器に

 向かっていった。そして、飛騨君は魔導兵器を殴ったのだが....

 

『えっ!?』

『なっ....!』

『嘘....!?』

 魔導兵器の装甲は破壊され、そのまま海に落ちていった。

 

『どうして魔導兵器の装甲が....』

『っ! 考えるのは後よハユル! アイネに魔導兵器が近づいている!』

 私は飛騨君のギアの事を考えようとしたが、ユリシアさんの言葉で我に返った。

 

『仕方ねぇ....今は傷無の言葉を信じるか。俺は左側を潰す。二人は右側を潰せ』

 そう言うと、飛騨さんは全速力で左側にいた魔導兵器の群れに突っ込んでいった。私も剣を

 構えてユリシアさんと共に右側にいる魔導兵器に向かっていった。そして、愛音さんと

 護衛の船までの道に魔導兵器が一体もいなくなった。

 

『さぁ、ブチかますわよ!』

 そう言った愛音さんの右腕には巨大な銃のようなものが装備されていた。

 

全時空破枠(バルバライザー)!』

 そして、銃のようなものから巨大なビームレーザーが放たれた。ビームレーザーの射線にいた

 魔導兵器はあっという間に粉砕され、護衛の船の一隻は大爆発を起こして海に落ちていった。

 

『(な、何て威力ですか!?)』

 私はビームレーザーの威力に言葉を失った。

 

『もう一発!』

 そう言って、愛音さんは一番巨大な戦艦に向かってレーザービームを放った。その一撃は戦艦に

 直撃し大爆発を起こすと思ったのだが、突然戦艦の前でレーザービームは何かによって直撃を

 防がれていた。

 

『っ!?』

『噓でしょ!?』

『今の一撃を防ぐなんて....!?』

『一体何が....』

『....』

 レーザービームが防がれたことに私達は様々な驚きの反応をしていたが、飛騨さんだけは

 驚いた様子がなくじっと戦艦の方を見ていた。そして煙が晴れた瞬間....

 

『っ!』

 何かに気づいたのか一直線で戦艦の方に向かっていった。

 

 ~~~~

 真side

 

 千鳥ヶ淵の一撃を防いだ何かを確認するため、俺はじっと戦艦の方を見ていた。そして煙が

 晴れると、戦艦には緑色の装甲を纏った女が立っており、戦艦の前には盾の様な物が

 浮いていた。

 

『(違和感の正体はアレか!)』

 俺はそう思い戦艦に最速で一直線に向かった。

 

『(試してみるか....)』

 そう考えながら、俺はブーストをかけて一瞬にして女の背後に移動してビームダガーを

 振り下ろした。だが、ギリギリのところで五枚の盾が俺のビームダガーを受け止めていた。

 

『(ギリギリで防がれたか....!)』

 俺はすぐさま距離を取ってビームダガーからビームサーベルに変えて女に突っ込もうとしたが、

 それよりも早く背後から無数の魔導兵器が俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

『チッ!』

 俺は攻撃を仕掛けるのを止め、魔導兵器の攻撃を躱して攻撃してきた魔導兵器全てを

 ビームサーベルで破壊した。そして、すぐさま女に攻撃を仕掛けようとしたが、女が乗っている

 戦艦は既に衝突面の中に半分入っていた。それと同時に、残っていた魔導兵器や護衛の船も

 衝突面の中に撤退していた。

 

『(下手に追えない....ここまでだな)』

 そう思い、俺はビームサーベルをしまった。

 

『ハロ、映像は撮れたか』

『カンペキ! カンペキ!』

『そうか。なら、俺達も引き上げるか』

 そう言って、俺は姫川達がいる方に戻った。そして、戻る時に俺はこう考えていた。

 

『(あの女の纏っていたのは間違いなくギア....作ったのは向こうの人間か、それとも....)』

 

 

 

 



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パーティーの一幕

「はぁ....この一件が片付いた後に政治的な事など....めんどくさくてやってられるか」

 そう呟きながら、私は持っていたワイン瓶をラッパ飲みした。

 

「(....今回の襲撃で死者が出なかったのは真の防衛システムのおかげだな。後で何か

 欲しい物でも買ってやるか)」

 そう考えていると、背後で足音が聞こえた。

 

「あれ、姉ちゃん」

 背後にいたのは傷無だった。

 

「傷無か」

「何やってんだこんな所で」

「政治的な話が面倒だったからな。ここで大人しく酒を飲んでいる」

「こんな姿見られたら生徒に幻滅されるんじゃないか?」

「知ったことか。私もストレスは溜まるのだ。....それより、真はどうした。一緒じゃ

 ないのか?」

「わかんねぇ。探したけど会場のどこにも見当たらねぇんだ。携帯鳴らしたけど多分電源

 切れてて出ねぇし」

「....そうか」

「(あいつめ....一応顔は出しておけって釘は刺したんだがな....)」はぁ

 私はため息をつきながらワインを飲んだ。

 

「まぁ兄ちゃん、こういう人が多いパーティーは苦手だもんな」

「そうだな....まぁ、腹が空いたらそのうち来るだろう。お前も羽目を外しすぎないよう

 楽しむことだ」

 そう言って、私はワイン瓶を持ってこの場から離れた。そして、下の階に行き次のワインを

 選んでいると、ハロが料理を皿に乗せているのを見かけた。

 

「ハロ。何をしているんだ?」

『マコトノゴハン! トッテキテッテイワレタ!』

 そう言いながら、ハロはどんどん料理を皿に乗せていった。すると....

 

「総司令? それにハロさん?」

 後ろから姫川に声をかけられた。姫川は何故か赤い振袖を着ていた。

 

「姫川か。どうしたその振袖は?」

「その、広報部の人達が用意してくれたみたいで....それよりも、お二人はここで何を....」

「私は酒を取りにだ。ハロは真に頼まれて料理を取りに来たらしい」

「そうなんですか。ということは、飛騨さんはパーティーの方に参加していないんですか?」

「まぁそうなるな。一応来るよう釘は刺したんだが....」

「そう、なんですか....」

「まぁ、ハロが料理を取り終わったら少し様子を見に....」

 行こうと言おうとした時、私の端末が鳴った。画面を見ると、連絡は祝勝会の実行委員会から

 だった。

 

「(見に行く余裕は無いか....)」

 どうしたものかと考えていると、今自分の目の前にちょうどいい人物がいることに気づいた。

 

「姫川、今時間に余裕はあるか?」

「あ、ありますけど....」

「そうか。なら一つ頼まれてくれないか?」

「何をですか?」

「真の様子を見に行ってほしいんだ」

「わ、私がですか?」

「あぁ。....お前とは、会話をしているようだしな」

 私は以前、姫川に真がアドバイスをしていたというのをケイから聞いていた。

 

「それはどういう....」

「それは、まぁ今度にしよう。ハロ、姫川を真のいる所に案内してやってくれ。すまんが、

 後は頼んだぞ」

 そう言って、私はこの場から離れた。

 

 

 

 

 



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