最近、すごく調子がいい!何で調子がいいかは分かっている。スレッドが帰って来るから。だって会うのは6年ぶりだ。天狼島での6年をプラスすれば約12年。
スレッドはすぐに帰って来ると言って出て行ってから12年。すぐに帰って来ると言って普通、12年も待たせるだろうか。いくら何でも長すぎる。帰ってきたら色々とお説教をしてあげよう!スレッドの事だから真面に話なんて聞いてくれないだろうけど…..。
あ~待ちきれない。ここまで自分のテンションが高いのは何時ぶりだろうか。
「お~い、ミラさん!」
「…….あ、どうしたの?ルーシー」
「いや、さっきから何度呼んでも返事がなかったので…」
どうやらずっと私が返事を返さないから心配になってしまったらしい。
「あ、ごめん。ちょっと考え事を」
「疲れているんじゃないですか?ミラさんも休暇ぐらい取ってみたらどうですか?」
「その提案は嬉しいけど大丈夫かな」
でも、休暇か…….考えた事なかったな。たまにマスターからも休んでも大丈夫だからとは言われているけど私に出来るのはこれぐらいだから。
「ミラさんがそう言うなら無理強いはしないですけど…それよりミラさん」
「何?」
「なんか良い事でもあったんですか?」
何でそんなことをルーシーは聞くのだろうか。
「何で?」
「だってさっきミラさんが幸せそうな顔をしてましたし。だから悪いとは思ったんだけどちょっと気になって声を掛けてみたんです」
あ、そういう事か。私って顔に出ちゃう方なのかな。
「….うん。実はね私の師匠が帰って来るの!」
「え….えええええええええええええええ……」ダーン
ルーシーは叫びながら椅子から転げ落ちた。そんな驚くような事私言ったかな。
「ルーシー、大丈夫?」
「えええええええ......ミラさんに師匠なんていたんですか!????」
「いるよ。私と言うより私とリサーナとエルフマンに接収(テイクオーバー)の使い方を教えてくれた人かな」
そんなに驚くことかな。でも、確かにルーシーにはスレッドの事は話したことなかったかな。
「へぇ~そんな人がいるんだ。どんな人ですか?」
ルーシーは倒れた椅子を元に戻しまた座りながら言った。
「愛想悪くて人に関心が無くて強い人かな。簡単にまとめると」
「ミラさんより強いんですか?」
「強いよ。私なんて足元にも及ばないほどに強い。ギルダーツとスレッドが戦っているところを見たことは無いけどギルダーツと同じ…いや、それ以上に強いと思う」
「ギルダーツより~~~~~~~~~~~あんな化け物より上がまだ居たの~」
でも、私もスレッドが本気を出しているところは見た事はないから何とも言えないけどな。だけどスレッドの強さは尋常じゃないんだよね。
「うん。多分、だけど……..」
「誰が誰より上だって」
ルーシーの右に四席ぐらい離れた先にいたギルダーツが会話に入ってきた。。あ、そう言えば昨日は一晩中ずっとお酒を飲んでいてここで寝てたんだよね。
「うわぁ!!ギルダーツいたの?」
「起きたのね」
「ああ、起きた。そんな話はどうでもいい。誰が誰より上だって?」
まだ酔っているのか絡み口調な感じかな。
「帰って来るのよ。スレッドが」
「….そうか….ってえええええええええええええええええええええええええええええええ、あいつ、あいつが帰って来るのかよ。その話は本当なのか?」
ギルダーツがは普段、驚くことがあまりないが今回の事に関してはすごく驚いている。だって今にも目が飛び出てきそうな感じだもの。こんなギルダーツを見ることが出来るのはスレッドが帰って来る時だけだと思う。
「うん。本当だよ。帰って来るのはもう少し先みたいだけど帰っては来るみたい。スレッドの性格だからいつ帰って来るかまでは分からないけどね」
「そうか。あいつがついに帰って来るか…….今回こそ決着を付けてやる」
そう言い残してギルダーツは席を立ちギルドを出た。
「ねぇミラさん、さっきギルダーツが言ってた『決着』って何のこと?」
「あ、それね。それはギルダーツとスレッドってS級魔導士の中でも飛びぬけて強いのよ。だから実質、マスターの次に強いのはあの二人のどちらかなのよ。って事ギルダーツがどっちが強いか決めようじゃねぇかって言って二人のバトルが始まっちゃったの」
「……..大丈夫なんですか?ギルドNO.2と呼ばれている二人が戦ったらこの辺りが壊れちゃう気がしますけど…」
「正直な事言うと大丈夫じゃないよ。あの二人が戦った後は辺り一面が何も無くなっちゃうから」
「え…辺り一面が…………」
本当にあの戦いだけはどうにかして欲しい。マスターも止めようといつも頑張っているけど止められない。二人ともマスターの言うことを素直に聞くような人たちじゃないから。だけど被害の甚大差は本当にどうにかしないとこの辺りが無くなってしまう。
「….帰ってきてくれるのは嬉しいけどあの戦いだけはどうにかして欲しいな~」
「姉ちゃん~~」
声のした方向に向くと、そこにはエルフマンとリサーナがいた。
「どうしたの?エルフマンにリサーナ」
「スレッドが帰って来るって言うの本当なの?」
リサーナは期待に満ちた目をしながら私に聞いた。こんな目をしたリサーナを見るのは初めてかもしれない。
「うん。本当。確実な日にちだけは分からないけどそろそろ帰って来るみたいだよ!」
私が言った瞬間、二人の目の輝きが最高潮にまで達した気がした。
「よっしゃ~~~~~~~スレッド~~~~~~」
「久しぶりに会えるね!もう勝手にどっかに行かせないようにしないと…」
まあ、6年振りだからこの反応も仕方ない事なのかもしれない。それにエルフマンやリサーナはいつもスレッドの後をずっと付いていたから急にスレッドが100年クエストに行ってしまったと聞いた時は二人とも絶望的な表情をしていた。
一週間は二人とも元の二人に戻る事はなかった。あそこまで落ち込んでいるとスレッドがあの二人の支えになっていた事が改めて知った。
まあ、私はなるべく姉だから普通の顔をしていたけど案外、落ち込んでいた。行くなら行くって言ってくれればよかったと今でも思ってしまう。そしたら二人があそこまで落ち込む事もなかったと思う。
「確かに楽しみだね!」
「他にか…..後はエルザやラクサスの師匠的存在でもある事ぐらいかな」
あの頃はよく三人でスレッドに教えてもらったりしていた。三人がかりで戦っても一度も勝利を収められなかったな。だけどあれはもう6年ぐらい前の話だから今の私たちだったらもしかしたらスレッドに勝てるかもしれない。
「…….ええええええええええええええ~~~~~~~~」ダーン
またルーシーは椅子から転げ落ちた。
「そんなに驚く事かな。まあ、スレッドは自分が師匠なんて思ってないかもしれないけどね」
「どういう事ですか?」
ルーシーは椅子を元に位置に戻してまた座りなおした。この子は何で驚くたびに椅子から転げ落ちるのかな。
「昔はよく私とエルザとラクサスの三人でスレッドを誘って修行を付けてもらった事もあるの。まあ、最後まで一度たりともスレッドに触れる事すら出来なかったけどね」
彼の力は絶対的だ。彼の力に逆らえる人はこの世にはいないと思う。
「ミラさんやエルザたちがいくら幼かったとしても触れる事が出来ないなんて….」
「…それは彼の魔法を見れば分かると思うわよ」
「…魔法を見れば分かる……..あまり強力過ぎる魔法は恐怖が増しそうなのであまり見たくないけど機会があったら見てみます」
その後も会話は続き日が落ちるまで続いたらしい。
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帰還
この町に帰って来るのも何時以来だ。もうずっと帰って来てないかもしれない。だが、ここ最近の記憶の中にないと言う事は帰って来てないという事は確かだろう。
本当は帰って来るのも面倒だから嫌だったが..そろそろ戻らないとマスターから何を言われるか分かったもんじゃないからな。あの人に逆らうと後々、怖いし久しぶりにバカ共に会いたかったという気持ちが0.00000001%あったから。
そんなことを考えながら俺はFARIY TAILがある町の中心部に歩みを進める。もっと寝とけばよかった……
「まだ、帰って来ないのかな~」
もうそろそろ帰って来てもいいと思うんだけどな。だって帰るって書いてあった手紙が届いてからもう一か月は経つしいくら約束の時間を一つも守らないスレッドだとしても…..こんなに帰るのに時間が掛かる訳ないし。
考え始めると不吉な事ばっか頭を過ってしまう。
「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だと思うよ。ミラ姉」
私がスレッドを心配しているのを感じ取ったのかリサーナが私の肩を叩きながら言った。でも、確かにスレッドに限ってそんなことはないよね。
「ごめん。心配掛けちゃって」
「ううん。仕方ないよ。もう6年も会ってないんだし…あ、本当は12年だっけ…」
「まあ、私たちの時間間隔じゃ6年だからね。だけどマカオに聞く限り一度も連絡一つ寄越さないなんて相変わらず人に心配だけは掛けさせるんだから」
「まあまあ、スレッドらしいと言えばスレッドらしい気もするよね」
あの人は勝手にどっかに行っちゃったりするから一日中見張っていないとどっかに行っちゃう。まあ、一日中見張っていても見失ちゃうけど。スレッドは勘が鋭いから尾行とかをしてもすぐにまかれちゃうけどね。
「おい、誰かがこっちに向かって歩いて来るぞ」
誰かが大声でそう言った。別に仕事が終わって帰ってきた人がギルドに向かって歩いて来ても普通の事だと思うけど。
「それがどうしたんだ?仕事が終わって誰か帰ってきたんじゃねぇか」
私が思った事と同じ事をマカオが言った。
「違うんだ!!!!何でか知らねぇがあいつが歩いた道が凹んでいるんだ!!!」
「え…………それってもしかして」
考えるより先に体が動いていた。だってもしかしたら待ち焦がれたあの人かもしれないから。私は急いで外を見てみるとそこに居たのは
「FARIY TAILって言うギルドはここで会ってるか?」
スレッドだった。
昔の面影も残っていて何より右腕に花柄のブレスレットがある。あれは….私が昔………
「スレッド~~~~~~~~~~~~~~」
私の後ろから叫びながら誰かがスレッドに抱き着いた。
一体、誰かと思って見てみるとその人物はエルザだった。
たしかエルザもスレッドに昔は懐いていた気がする。よく私と喧嘩になっていた気がする。
「重い重い重い重い!!!!!!!死んじまう…….」
「あ…..すまん。つい久しぶりだからな」
エルザは少し申し訳なさそうにしながら抱き着くのを止めた。さすがにあのままだと鎧の重さに耐えかねてスレッドが地面に這いつくばるしか無くなっていたかもしれないし。
「って言うかお前ら誰?ふぁ~」
「「「「「「「「え…え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」」」」」」」」
その言葉は私たちの気を失わせるには十分な言葉だった。
今はスレッドの周りに皆が集まっている。
「いや、別に憶えていない訳じゃねぇが…さすがに12年も留守にしてるとお前らに関しての記憶がうろ覚えでな。いや、マスターだろ…お前はナツか…でそっちが….グレイ…その隣がエルザ….でお前だけは思い出せないんだ」
俺は一人の白髪の女性を指差しながら言った。だが、その瞬間、なんか空気が固まった気がする。
「ふ~ん…エルザは憶えてて私の事を忘れちゃったんだ。それは私よりエルザの方が記憶に残っていたって事だよね」
なんか白髪の女性の後ろからオーラのようなものが出ている気がする。いや、そんなはずがないか。少し俺も歩き疲れているのかもしれないな。
「あ….そう言えば…ミラジェーンはどうしたんだ?あのうるさいミラジェーンなら直ぐにでも俺に喧嘩売ってきそうなだが…..」
周りを見渡してもミラジェーンらしき人物はいなかった。
「あの言いたくないんじゃが…」
「何だ、マスター」
「お主の前にいる女性がお主が言っている…ミラジェーン本人なんじゃが.」
「え…..」
俺はしばらくの間、思考が停止してしまった。だって俺の前にいるこの白髪の女性がミラジェーン….あのうるさくて何事もけちを付けてきたあいつがこんなお淑やかな女性のはずがない。
「嘘を言わないでくれ。マスター。ミラジェーンがこんな大人しいはずがないからな」
その瞬間、なんか殺気に似たものを感じ取った気がした。殺気のした方向を見るとそこには白髪の女性が笑顔をしたままこっちを見ている。ここまで不気味な笑顔を見たのは初めてだ。
いや、だが確かにミラジェーンと言われれば少し面影がしないでもないな。
「もしかしてお前、本当にミラジェーンか?」
「そうだけど…..よく弟子の顔を忘れられるわよね!」
「だって昔のお前はロングの白髪で生意気そうな顔していたから。それに俺はお前の師匠でもない」
「悪かったわね!!生意気そうな顔をしてて!!!!」
ミラは笑顔のまま少し口調を強くして言ってきた。だが、これがあのミラジェーンとは今だに信じられない。ここまで人は変わるものなのか。
「まあ、変わったな。ミラジェーン。少し大人っぽくなったと言うか何というか……うまく言えないが今のお前もお前らしいよ。昔から生意気そうな顔してエルザと喧嘩が絶えなかったお前だがいつも誰よりもギルドの事を思っていたのを俺は知っている。だから今のお前も良いと思う」
それにしても変わりすぎな気もしないでもないけどな。
「…そう…」
何故かミラが少し顔を赤らめていた。
「それよりギルドはこんなに小さかったか?」
俺の記憶によるともう少し大きかった気もするしギルドの場所もこんなところだったかな。まあ、俺の記憶もうろおぼえだから何とも言えないけど。
俺の問いにギルドのメンバーの顔が少しずつ歪んでいく。これはまずい事を聞いた見たいだな。
「いや…こんなところだったかもしれない。記憶が曖昧だから正確な事は分からないけど…..」
これは深くは聞かない方がいいな。100年クエストが終わってからまだ一か月も経っていないんだから流石にこの状況で面倒事だけは勘弁したい。魔力の問題とかは大丈夫だが..暫くは戦闘を控えたいな。いくら何でも100年クエストは疲労が激しすぎる。
一応、途中の街で休んでから帰ってきたけどまだ完全には疲れが取れてない。
「そんな事よりも俺と勝負しろ~~~~~~~」
沈黙を破ったのは…ナツだった。こいつのこう言うところは尊敬する。この状況で声を出すことすら躊躇われる気もするがナツはいつも通りに大声で勝負を挑んできた。
「いつか戦ってやるよ….いつかな…」
いつかがくればな….。
「で100年クエストはどうだったんじゃ?」
「完遂した。流石に完遂するまで時間が掛かっちまったが..どうにか終わった」
「さすがスレッドと言うべきかの。あの100年クエストを完遂するとは」
「あいつは帰ってきてるんだろ?」
「誰の事を言ってんだ?」
「…..ギルダーツ。あのバカも帰ってきたんだろ……」
天狼島の一件については風の噂で何度か耳にしていたから知っていた。だが、詳細に関しては知らなかった。
詳細について分かったのはマスターからの手紙のお陰というべきだ。それで内容を知ったがまさかギルダーツまで巻き込まれているとは知らなかった。
あのバカは一応、強い。それにマスターもいたはずだし聞くところによればS級試験もやっていて今回は試験管としてS級魔導士が呼ばれたらしい。なら少なくてもあの場所にはFAIRY TAILの核となる人物が居たはずだ。
そいつらでもアクノロギアに勝てなかったと言う事だ。って言うことは少なくとも人間が勝てる可能性は限りなく0に近いと考える方がいいだろう。
だが、今の現段階じゃ情報が少なすぎる。だからあいつから少しでも情報を聞き出せればいいんだがな。他の奴らに聞いてもいいがこういう事に関してはギルダーツとかの方が話しやすいしギルダーツには他の用もあるからな。
「ギルダーツなら….そろそろギルドに来る頃じゃないかな…」
まあ、のんびりと待っていればいいか。しばらくはここに留まるつもりだしな。
「まあ….いいや。この13年で見た事ねぇ奴も何人かいるし….多分..俺が忘れていなければ数人いると思うんだが…おい、マスター。この13年のうちに入ってきた奴ってこんなかにいるか?」
「いるぞ。ルーシーにウェンディにシャルルにガジルにジュビアにリリーに他にもいるな….お主の時間間隔で言うと13年のうちにこのギルドも大きくなったと言える。まあ、天狼島にいたものたちに取っては6年しか経過してないんじゃがな..」
「そうか….....ミラ、エルザ、ラクサス…お前らもS級になったんだってな」
噂で聞いた時は驚いたものだ。まさか、S級になるってほざいてはいたが本当になるとはさすがに思わなかった。いや、見区切っていた訳じゃないがS級になるのはそれなりに難しい。
「はい….あなたの教えのお陰でなれました」
エルザは何故か俺に頭を下げながら言った。大した事を教えた憶えは正直ないんだが…。感謝されても困るんだがな。
「別に俺が教えたからと言う事がないだろ。それがお前たちの実力と言うことだな」
エルザは本当に昔と何も変わってない。律儀と言うか生真面目と言うか何かいつも固いよな。俺にタメ口で話し掛けてきた時は一度もなかったと思う。他の二人に関してはいつもタメ口だったけどな。
「…….これからどうするんじゃ?」
マスターは急に顔を強張らせて真剣な口調になった。
「しばらくはここにいるよ。今のFAIRY TAILも見てみたいしな」
「なら俺と勝負しろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「てめぇは大人しくしてろ!!勝負するなら俺が先だ!!!!!」
この二人の喧嘩は12年経っても何も変わらないな。
「いや…私が先だ。貴様らは大人しく傍観していろ」
エルザが言葉を発するとナツとグレイの動きがピタリと止まった。二人はエルザに恐怖心を抱いているのも変わってない。他の奴らも容姿は変わったりしているものの中身は変わってないな。
「それよりミラは本当に変わったな」
正直に言うとこんなに変わられるとミラだか分からない。
「…変わってませんよ」
「だってあの頃のお前なんて毎日勝負、勝負!とか稽古!稽古!ってうるさかったからな。そんなお前が今ではギルドじゃお姉さん的存在なんだろ。今だに信じられない」
「……….ねえ、スレッド」
「何だ?」
「俺に勝ったらどんな願いでも叶えてやるって言ってたよね」
「…昔、昔の話だがな..」
「今でもまだそのルールは適用されているって事で良いのかな?」
「いや、そんなの良い訳ないだろ。もうかなり昔の話だぞ」
もう昔の事すぎていつにそんな事を俺が言ったのかさえ憶えていない。
「昔の話でも約束をしたよね」
ミラは少し怖い顔をしながら言った。この顔の時は下手に逆らうと何をやられるか分からないからここは素直に従っておくのが得策だな。
「そうだな....したはしたな」
「そうだよね」
その後は言わなくても分かると思うけどミラが戦いを挑んできた。まあ、普通に勝ったけどな。
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リサーナ
この町に戻って来てから一週間という月日が流れた。この町は変わっているようで変わっていなかった。いつもの空気でいつもの騒がしいギルド。どんなところだとしても十年も留守をしていれば何か一つぐらいは変わっていると思ったがまさか、本当に何も変わっていないとはな。
まあ、町は変わっていないがあの……煩くてチビのミラジェーンがあんなお淑やかな人間になるとは思いもよらなかった。エルザに関しては予想通りというか……あのまんま成長した感じだったがな。
ラクサスと雷神衆に関しては…任務の都合で居なかったがあいつもS級魔導士になったとは。S級魔導士として認められるほどの実力を示すとはあの頃では考えられなかった。
それは三人全員に言えることかもしれないけどな。
「弟子の成長は早いな…」
--------
家
今までの俺のことを見ていた人ならほとんどの人が陽気な人間と思ったかもしれないが俺の性格は間反対。決して陽気ではない。クエスト以外では外に出る事もしないし、交友関係も決して広いわけじゃない。
ミラジェーンやギルドの奴らの前ではそれなりに陽気に振舞っているがな。
俺は書斎に行き、椅子に座り、ある人物への手紙をしたためた。俺は月に一度のペースで手紙を書いている。ギルドのメンバーの誰も知らないだろう。マスターマカロフでさえも知らないし、ミラジェーンも知らない。
俺は自分のことを妖精の尻尾の者たちに話したことは無い。だから妖精の尻尾の奴らからすれば僕は謎だろう。私生活が全く見えず、どんな生活をしているのか想像も出来ないと言った感じだろう。
手紙をしたため終わると着替えて町に出ようとドアを開けようとすると何故か外から誰かが俺の部屋の鍵を開けて入ろうとしてきた。誰だと思いながら開いていくドアを見つめていると入ってきたのは…白髪でショートカットの少女だった。
少女を僕を視界に入れると何故か急に泣き始めた。人の家に入って来て俺の顔を見て泣かれたら俺はどんな対処をしたらいいのだろう。そんな事を考えていると少女が消え入りそうな声で言った。
「…本物……だよね………ミラ姉から聞いたけど…本当に本物だね」
僕は今の今までこの白髪の少女が誰なのか分からなかったけど……改めて少女を見ると…知っている。もう十年経っているからかなり成長しているがこの白髪でショートカット。
「お前はリサーナか?」
「………そうだよ」
「そうか。俺が帰った時にお前とエルフマンは居なかったから……何かあったのかと思っていたがその感じを見る限り、只クエストに行っていたというだけらしいな」
俺が教えてあげたんだからそう簡単にくたばるような魔導士とは思っていないけどな。
「うん。本当に運が悪くてさ、スレッドが帰ってきた日の朝早くにエルフマンと一緒にクエストに出たんだよ。だから帰って来て、ミラ姉にスレッドが帰って来たと聞いた時はとても驚いたし、嬉しかったよ」
あの…リサーナがこんな風に成長するとは……ミラジェーンを見たときも思ったが、本当に時の流れを感じさせるな。まあ、これでも天狼島に居たんだろうから六年近くの間、成長が止まっていると思うと六年後は一体どんな風に成長しているのか気にならなくもない。
まあ、それまで俺が生きてられるかは分からないがな。
「そうか。お前らには心配を掛けたな。お前たちに何も言うことなく、S級クエストに行ったことは悪く思っている」
「本当だよ!!せめて一言ぐらい言ってから行ってよね!」
「だが、それを言ったらお前らは付いてきそうだったからな。あの頃はお前たちをS級クエストに連れて行くのはとても危険があったからな」
「……まあ、確かに付いて行こうとしたかもしれないけど………」
「そうだろ。だから、お前らには言わなかったんだ」
弟子が死ぬ姿を見るのは避けたいからね。S級クエストを死と隣り合わせのことが多い。そこにガキを連れて行くのはかなりリスクを背負う事になるからな。
その後もリサーナと久し振りの会話を繰り広げた。
感想などもあれば宜しくお願いします!!
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過去
幼き頃①
13年前
「スレッド。仕事の方は順調か?」
「………はい」
-
「お前さん。最近仕事詰めだったろう。たまには休暇を取ったらどうだ。儂としてお主の働きには感謝はしているもののお主に倒れられては困るからの~休むのも仕事の内だしの」
「…いや、大丈夫です。心配をしてくださりありがとうございます………」
スレッドは静かに首を左右に振りながら言った。
「じゃがそのままじゃお主の体が持たないだろう。ここはマスターからの命令だと思って頼む!!」
マスターは顔の前で手を合わせて言っている。
「………分かりました…」
「お主にはここまでしないと仕事に行ってしまうからな~.....それでこんな時に言う事じゃないんじゃがお主には少しお願いしたいことがあるんだ」
「それで俺にお願いしたい事って何ですか?」
「あ…そうだったな。あいつらの事なんじゃが」
マスターはそう言いながらある子供たちの方を指さした。その指の先には3人の少年少女が座りながら話をしているようだった。前に来た時にあんな子供が居たか…?だが子供の顔を俺が憶えている訳ないからもしかしたら居たのかもしれないな。
「であいつらがどうしたんですか? 」
「あの子たちはここ最近、ギルドに入ったんだがどうやら接収 を使う者たちのようでな。このギルドで接収 を使うのはお主ぐらいだからな。使い方とかをあの子たちに教えてやって欲しいのだ」
「あの三人が全員
見た感じ髪の色とかから見ても多分、兄弟だろう。
「いや、使えるのはあの中で一人だが前に二人に聞いた事があるんじゃがどうやらあの二人も接収を使いたいらしいからな。だからあの三人に教えてやって欲しいのだ。お主が子どもを苦手としているのは知ってはおるがここはどうにか教えてやって欲しい!」
「………仕方ないですね。マスターの頼みとなればやりますよ」
「そうか!やってくれるか!!」
「ですが、俺は人に教えた事がないから上手く教えられるかは分からないですよ。それでも良いんですか?」
「..ああ、それでよい!」
なら分かった。早速、動くとするか。
俺は席を立ちマスターが指さした三人のもとへと歩みを進めた。マスターが言ったようにあまり子供は好きじゃない。だから接し方もまるで分からないがどうにかなるだろう。
近付いてくる俺の事を警戒したのか三人の中の一人の子供が俺の方に歩いて来た。
「何か用?」
「お前たちに接収の使い方を教えるから俺に付いてきてくれ」
俺はそれだけ言ってギルドを出た。これで付いて来なかったらそれはそれでよかった。正直、教えるのは面倒だからこれで付いて来なかったら教えなくていいと思っていた。
付いて来ちゃったか。来なくてもよかったのに何で付いて来るんだよ。それによくも知らない男の言った通りに付いて来るとか…ふぁ~~。眠すぎる。毎度の事だけどな。
まあ、来ちゃったなら仕方ない。
「ふぁ~~まず、そこの二人は
俺は大きな欠伸をしながら小さい少年と少年の後ろに隠れている少女の方を指さして言った。面倒だがマスターに言われたら仕方ないな。やる気はゼロだがだけやるか。ふぁ~~
「………なりたい。姉ちゃんやリサーナを守れるくらいの力が欲しい!」
少年は声を張り上げるようにして言った。そんな大きな声で態態、言わなくてもいいんだが…..。
「私も使えるようになりたい!」
後ろに隠れている少女が少し顔をこちらに出しながら言った。どうでもいいけど俺ってなんか怖いってイメージでもあるのか。ふぁ~~..やべぇ今日はいつもより眠気が強い….今にも眠りそう…
「それで聞くのを忘れていたがお前は誰なんだ?」
ポニーテールの白髪の如何にも面倒くさそうな少女がこちらに敵意を丸出しにしながら言った。あ、そう言えば..ふぁ~~名乗ってなかったな。
「スレッド。お前らも所属しているFAIRY TAILの魔導士。マスターからお前らに接収を教えて…は..は..ふぁ~~..やるように言われた。だからまぁそこのポニーテールの少女」
俺はポニーテールの少女を指差した。
「なんだよ?」
「面倒だし俺も早く帰りたいから…ふぁ~~.本気で掛かってきて」
時間を掛けるのは面倒だし、只時間の浪費だ。だからなるべく早く終わらせるには実践が一番早いだろう。魔導士に取って口で言うより体で慣れた方が何事も早い。
「はぁ?」
「聞こえなかったのか本気で掛かってきてと言ったんだ。俺は無駄な時間が一番嫌いなんだ。お前ら二人は離れてろ。巻き込まれたくないだろ」
白髪の少年とショートカットの白髪の少女は少し離れたところに移動した。
「さぁー掛かってきて」
こいつがどれほどの力を持っているのかは知らないが早く終わらせるにはこの方法がいい。
「ヤダ!」
「何で?」
「だって暴走するかもしれないし…それで弟とか妹を気付けたくないから」
こいつら兄弟だったのか。だから似ている訳か..初めて知った。まあ、それもそうか。俺は初めてこいつらを見た訳だし。
「…..大丈夫だ。弟と妹の安全は保障する。だから早く本気で掛かってこい」
時間は無駄にしたくない。これで何回、時間は無駄にいたくないと言ったかは分からないけど俺は時間を無駄にしたくない。
ポニーテールの少女も覚悟を決めたのか拳を握りしめ空に掲げた。
「どうなっても私は知らないからな…サタンソウル!」
サタンソウルは悪魔の体を乗っ取り自分の力としてそれを使う事。
「サタンソウルか….こりゃ珍しいな」
俺がそんな事を言っている間にも少女の体は変化し羽が生えしっぽが生えている。もうこれは人間には見えないな。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
サタンソウルは順調に見えていたが急に叫びだした。まだ負担が大きすぎたかもしれないな。自我を失いかけてる。
「少し強引になるがここで止めるか」
俺は暴走仕掛けているポニテの少女のところに行き拳を腹に叩き込んだ。すると少女が纏っていたサタンソウルが消えていき前のめりに倒れてきた。少し力を強くしすぎたかもしれないがこれぐらいしないと気を失ってくれないかもしれないしな。仕方がないか。
「姉ちゃん!!」
「ミラ姉~」
離れていたところに居た弟と妹がこちらに向かって走ってきていた。
やはりまだ制御は無理だったか。だが、見た感じ途中までは自我を持って制御出来ている。あと少しと言ったところだな。だが、
だからこのポニテの子供は多分、次は成功するだろう。このポニテの子は誰よりも兄弟を愛してる。大切に想っている。その気持ちがあればサタンソウルは成功するだろう。
「じゃあ今日はここまでだな。帰るか….ふぁ~~今日は本当に眠いな」
俺は持たれかかっているポニテの少女を抱え上げ、来た道を逆戻りする。後ろから二人の子供が付いて来るのを確認しながら帰った。
この作品は現実と過去編を投稿していきます
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幼き頃②
そしてあれから一週間後
一週間前の事を踏まえて考えると…色々思うことがある。あの後、あいつの弟と妹に家を教えてもらい家に運んでベッドに寝かせて帰った。
普段の俺ならあいつを置いて帰ったかもしれない。だけどあいつは似ている…もうこの世にいない姉に。顔も似ていると言えば似ているかもしれない。だけど性格が似ている。あんな風に兄弟を守ろうと努力をしているところも姉貴に似ている。俺たちを守るために命を張って闘い命を落としてしまった姉貴に。
姉貴もよく家族を守るために強くなりたいとよく口にしていた。
もう思い出したくもないもない過去を思い出すから俺はあいつと関わりたくない。それにあの調子じゃ暴走せずに自分の力で制御が出来るようになるのにどの程度の時間が掛かるのだろうか。それまで俺があいつの修業とやらに付き合ってはられない。俺も時間がそんなに空いているわけではないし後、一週間もすればこの町を出なければいけないだろう。一週間じゃいくら頑張ったとしてもあいつは力を制御できるようにはなれない。これに関しては断言できる。そう簡単に制御なんて出来るわけがない。
それにこの一週間、俺はあいつから修業を付けて欲しいとお願いされても全部断ってきた。それは色々と理由はあるが...一番は面倒だ。ギルダーツとかの方が俺よりうまく教えられるだろう。あの野郎だって帰ってきていると言っていたからな。
まあ、次に俺が帰ってくる頃には制御できるようになっているかもしれない。どれほど年月が経っているかは分からないがな、それにそれは次も俺が無事に帰ってこれたらの話だがな。
僕はギルドの掲示板を眺めながら物ふけっていると誰かに服の袖を掴まれた。袖を掴むような奴はあいつしかいないが俺はあえて気付いていない振りをした。
次に受けるのはどのクエストが一番良いんだろうか。
「ねぇ、聞いてる!!!」
一週間後とはいえそろそろクエストを決めておいた方が良いだろう。
「聞いて!!!!!」
何でこうも後ろがうるさいんだ。俺が何をしたと言うんだ。
「何?」
後ろを振り返るとそこにはミラが俺の服の袖を掴んでいた。それも涙目になってる。今にも泣いてしまいそうな気がする。ガキが鳴くと暫くは泣き止まないんだよな。
「だからこれからサタンソウルを私が制御出来ているか確かめて欲しいから来て」
「そんなの俺じゃなくても大丈夫だろ?あ、そう言えば、ギルダーツが帰って来ていただろ。あいつにお願いすればいいんじゃないか。あいつなら強いからもしもの事があっても大丈夫だろうしな。じゃあ、そういう事で俺は家に帰って寝るわ」
俺は席から立ちギルドから出ようとした瞬間、後ろから何か固いもので殴られた。幸いな事に殺気が駄々洩れになっていたから防ぐ事はそこまで難しくはなかった。だが、その破壊力は尋常じゃなくて防御態勢を取ったんだがギルドの壁をぶち破って外に出された。まあ、受け身を取ったから別に大したダメージはないが..こんな攻撃出来る奴このギルドに居たか?ギルダーツも今はいないはずだしマスターも今日は出ているはずだぞ。
「外には出るつもりだったがこんな感じで出るつもりは無かったんだけどな。 誰だよ?折角、寝ようとしていたのに….」
俺は壊れたギルドの壁から姿を現す者を見ていた。ほこりが舞い上がっていて誰かまでは分からないがどう見ても人間じゃない。だって翼が生えてるし人間じゃねぇだろ。まあ、翼とか生えてるならあいつしかいないだろうがな。
「何で私の話聞いてくれないの?」
まあ、翼とか生やさせる奴なんてミラしかいないだろうし声もミラそのものだ。どうやら普通に話せているという事はサタンソウルの制御は本当に出来るようになっていたようだな。
「俺は寝たいんだが…….まあ、帰らせてくれと言って帰らせてくれそうもないな…」
狂気いや殺気だな。こいつサタンソウルを制御は出来ているはずなのに俺への敵意が半端じゃない。俺なんかこいつを怒らせる事したか。逆にギルダーツに相手してもらえばいいと言っただけな気もするけどな。これまでの発した言葉を振り返っても別に怒らせるような事を言った覚えはないんだが…。
「一回ぐらい私のお願いを聞いてくれてもいいじゃない…」
「俺はいつもお前の願いを叶えてやってる気でいるんだがな」
「….全然、聞いてくれてない。私がどこかに行こうとか言っても他の奴と言ってこいとか言ってくるし修行に付いて来てと言っても面倒だから嫌とか言って付いて来てくれないし…..」
いや、そんな事を言われても面倒だから付き合いたくない。それにその対応は別にお前にだけじゃなくて皆にその対応何だけどな。
「だって単純に面倒だから」
その言葉を言った瞬間、空気が変わった。なんか本当の戦闘見たいに冷たくて嫌いな不意気に変わった。なんかミラの逆鱗を踏み抜いてしまったみたいだな。
「もう絶対に許さない!!エルザの頼みはほとんど聞く癖に私の頼みを聞かないなんて!!!」
エルザ…..別にエルザの頼みも聞いてるわけでもないと思うんだが。
もうミラの目が本気になってる。最近は修行に付き合ってなかったからミラがどの程度やれるかは知らないが….俺の拳骨の怖さも忘れてしまったみたいだから面倒だけど教えてやるか!
そんな事を考えている間にもミラは戦闘態勢に入っている。これは考えている暇は無さそうだな。
最初に動いたのはミラだった。ミラは翼をはためかせながら俺との距離を詰めてくる。態態、そちらから距離を詰めてくれるとは嬉しいね。
そして拳が届く距離になりミラは右ストレートのパンチを俺に向かって打った。だが、それを避け俺は逆に右ストレートのパンチをミラの腹にお見舞いした。
そして呆気なく決着を付いてしまった。
「相手に勝負を仕掛けるなら感情だけじゃダメだな。感情に左右されれば行動が読みやすい。だけど一つ評価出来る点があるとすればこの一週間、俺は一度も最初以外は教えていない。それにしてはよくサタンソールをコントロールが出来ているもんだな。これなら........」
だけどさすがに一人で練習をしていたとは思えないんだよな。こいつが暴走したら町にかなりの被害が出るはずだ。それにしてはそんな情報は来ていない。誰だか知らんがよくこいつにここまでコントロールをさせたな。
一般的に考えて一週間でコントロールが出来るようになることはほとんどない。だが現実問題、ミラは一週間でコントロールが出来るようになっている。よほど教える方に才能があったのだろうか。
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