金髪最強オジさんの弟子 (ラッコ21号)
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1.始まりのプロローグ

下手くそです。よろしくお願いします。


 

ピ、ピ、ピ、ピピピピピピピガチャ。

「・・・ん〜!」

目覚まし時計を止めベッドから起きると、いつも通りすぐに朝ご飯を用意し始めた。

「今日はカレーを作り置きしといたから用意が楽だな。・・・は!毎日カレーにすれば、いつでも朝飯の用意が楽なのでは!?」

そんな馬鹿な事を考えているとグツグツとカレーが沸いてきたので皿にご飯を盛り始めた。

「ご飯は一合・・・いや二合にしとくか。」

 うちの師匠、飯のことに関してはいつも以上にうるさいからな。

「ルーとご飯はしっかり分けて盛り付けてっと。いただきます!」

腹も減っていたため勢いよくかき込んだ。

うん、やっぱり寝かしたカレーは絶品だな!

「さてと今日の予定の確認でもしておくか。えーっと・・・うわ、今日定例会議あるじゃん。あれ嫌なんだよな。あずみさんの監視が厳しすぎて上手く答えるのが大変なこと大変なこと。鬼なのかと間違えるほど厳しいからな。出来る限り気配を消しておくとしよう」

 本人が聞けば問答無用で得物を投げてきそうなことを呟きつつ、朝の身支度を進めていった。

「スーツよーし!寝癖よーし!準備完了行きますか!」

自分の身嗜みの確認を終えると部屋を出て職場に繋がるエレベーターに向かった。

「東京支部は地下に部屋があるから職場が近くて助かるよ。その代わりにさぼれないが。」

エレベーターに着くと定例集会が行われる階のボタンを押しかなりの階層があったが一瞬でついた。

「さてと会議がある部屋は、っとあったあった。」

重々しい雰囲気が中から溢れている部屋の前に着いた。会議に参加するのはとーっても気が乗らないが入らないわけにはいかないので

深呼吸をして気持ちを整えると扉を開けて中に入ることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おはようございます。」

俺が扉を開けるとピシッとした姿勢で座っている多くの執事たちが俺の事を見てきた。

(見なくていいから。緊張しちゃうでしょ。)

「神代、おせーぇぞ。」

そんな事を考えていると我らが若手執事筆頭のあずみさんに怒られてしまった。

「遅刻はしてないはずですよ?」

「時間より早く来いって事だ、特にお前はな。ほれ、今日の資料だから目通しておけ。」

 そう言われ、あすみさんから資料を受け取り目を通していく。

(前回指摘事項の反省、今後の九鬼家の活動方針、従者達の序列変動と指摘、諸連絡ってところかな。)

「通し終わりました。俺からは・・・まぁほぼほぼあずみさんが言ってくださると思うので何かあれば諸連絡で発表という事で。」

「少しはあたいの仕事も手伝いやがれ!・・・ったく諸連絡の時にちゃんと言えよ。」

「了解です。あ、あそこの端に座ってますね」

「好きにしろ。」

 あずみさんに許可がもらえたので終わりまでは何もしなくても大丈夫そうだ。

 それからもう少し経ち、全員が集まり終わった。

「全員集まったようだな。では、これより従者定例会議を始める!」

 こうして定例会議が着々と行われていき、序列変動の際に序列を下げられた執事が反論する一悶着があったりしたが、あずみさんの鬼のような反論により今ではすっかり小さくなってしまっている。ご愁傷様でした。

「さて、私からは以上だ。神代、お前から何かあるか?」

 執事君に手を合わせているとあずみさんに話を振られた。どうやらもう諸連絡まできたようだ。さてと仕事しますか。

「はい。皆さま執事の業務お疲れ様です。今回の会議で発表されました今後の九鬼家の方針である東京での活動ですが・・・」

 とりあえず資料に書いてあった事とあずみさんの話を合わせて自分の意見と見解を述べて、それに対しての全員が持つべき心構えと考えを話した。

(咄嗟のことだったから中途半端なことしか言えなかったな。あんまり変なこと言うとクラウディオさんに怒られちまうかな?)

「あ、それと序列764位の方、本日より序列999位に降格とします。では、私からは以上となります。」

 少し言い忘れていた事も言えたので俺が終えると1人の執事が俺に向かって大声で意見してきた。

「待ってください!なんで僕が降格なんですか!?それも100位以上降格だなんて!」

「えーっと、君は元764位の方ですね?理由は思い浮かびませんか?」

 ふむ、顔を真っ赤にして叫んでいるが分からないのだろうか?

「全く分かりませんね!そもそも序列1位の忍足さんに言われるのなら分りますがあなたにそんな権利があるのですか!?この前来たばかりのあなたに!」

「おい序列元764位静かにしろ。」

 元764位君がそう言っているとあずみさんがそう言ってきた。

「ですが!「静かにしろというのが聞こえないのか」っ!!」

 それでも反論すると今度は抑揚のないおっかない声であずみさんがそう言ってきた。

「・・・神代、説明してやれ。」

 一旦間を開けるとあずみさんがそう聞いてきた。あずみさんから伝えてもいいが、ここは発見者である俺が言ったほうがいいだろう。

「では説明させていただきます。元764位君・・・この前匿名投稿型の掲示板に九鬼の機密情報出したよね?」

「なっ!」

「・・・」

 元764位君は驚き、あずみさんはただただ黙っている。

「日時は1週間前、ある匿名掲示板に九鬼の執事を名乗る男が愚痴やら仕事内容を投稿しているのが発見されました。幸いただの釣り投稿だと思われたようで周りからは無視されていました。しかしあまりにも的確に仕事内容を話しているので個人的に調べてみると出てきたのは、あるネットカフェのパソコンの端末でした。一応そのネットカフェに出向きその時間そのパソコンを使っていた客について聞いてみると・・・君の名前が出てきたという事ですよ。元764位君?」

「・・・流石の私もネットまでは完全に把握することが難しくってな。神代に手伝ってもらって一度詳しくネット内を調べてみてもらった結果・・・こう言う事だと神代に報告された訳だが、これは事実か?」

「そ、それは・・・で、ですが!プライベートのことについて調べるのはあまりに横暴なのではないのですか!?」

 経緯について話すとそう言い返してきた。

(はぁ、往生際が悪い野郎だ。そこはクビじゃないだけありがたく受け取っておけよ。)

「この話が事実だとするならお前は即刻解雇。もしくは会社との契約を破った者として九鬼で処置をしなければならない。」

「そんな!ただ投稿しただけなのにそんな事許されていいはずがありません!」

(・・・はぁ全く)

「これについては正式に抗議「少し黙れよ赤子未満が」

 割り込むようにそう言うと赤子未満は息を飲んで黙りこくった。

「こんな事は九鬼で働いている者なら誰もが心掛けていることだ。その後調べてみればさらに前から似たような事をやっていたな?仕事はそこそこ出来るようだが、そのような基礎すらできていない赤子未満のゴミのような者は九鬼家には要らぬ。本当なら上にこのことを上に挙げ、強制的解雇する所をこの俺の温情でこの場で留めてやっているんだ。・・・分かったら黙って結果を受け入れろゴミが!!」

「は、はい!」

「聞こえんぞゴミ!返事すらできぬのか!!」

「はい!申し訳ありません!!」

 体を震わせそう言っているのでどうやら分かったようだ。

「・・・では、これにて失礼いたします。」

「・・・手間かけたな神代。」

 すれ違い様にあずみさんがそう言ってきた。

「今度の飯代おごりで手を打ちますよ」

「ふ、期待しておけ。」 

 あずみさんはそう言うと改めて従者達に話し始めた。あとはお任せして大丈夫だろう。そう思い俺は次の予定に向かうことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えーっと次は・・・序列上位者及び専属の人たちへの情報開示、今度は最上階に行くか。」

 会議室を出た俺はそう思いエレベーターに向かおうとすると、

「神代、少し止まれ。」

 後ろから呼び止められた。まぁ気配を消して近く人なんてあの人だろう。

「・・・なんですか師匠。てか気配消して近づかないでもらえますか?びっくりしちゃいますよ。」

「ふん、その割にはあまり驚いていないようだが?」

「俺に対して気配を消してくる人なんて貴方くらいでしょう?ヒュームさん」

「師匠と呼ばんか!!」

 バァンッと漫画なら字幕が出そうなほどの威圧感を出しながらそう言った。

「そこ拘ります?」

「当然だ。お前は俺が手塩にかけて育てた弟子。つまりお前には俺を師匠と呼ぶ義務がある。」

「まぁ元々そう言ってましたし構いませんが・・・で、要件は何ですか?何も無しに呼び止めたりしないでしょう?」

「ふん、相変わらず可愛げのない弟子だ。それについては言う必要はないだろう?」

「序列764位の失態についてですね。」

「そうだ。」

 まぁどう考えてもバレるよな。何せほぼ俺1人だけで調べられたような内容を九鬼家本部が調べられないわけがないからな。

「それについては既に序列最下位への降格して制裁を下してあります。」

「降格だと?九鬼家に害を及ぼす者には死よりも恐ろしい制裁を下せと教えたはずだが?」

「今の九鬼家は事業拡大中の真っ最中です。そんな時はどうしても人手が不足してしまいます。あの元764位は素行こそ褒められた者ではありませんが、そこは九鬼家の執事。中々事務仕事は出来ようですし何より・・・あの程度の者を九鬼家が扱えないと、そう言うおつもりですか師匠?」

そう言った瞬間に殺気が俺を貫き、俺の体は自然に動いていた。

ドォォォン!!

 お互いの蹴りがぶつかり合い、激しい音と風を起こした。

「・・・ふん、どうやら鍛錬を怠って腑抜けているようでな無いようだな。」

「それ調べるためにいきなり本気で殺しに来ないでくださいよ!」

 そう言うとお互いに殺気を消し、普通の立ち姿に戻った。

「まぁいい。この事は既に揚羽様に報告済みだ。今回のところはお前の早期な対応を考慮して、お前の意見と合わせてこちらでも処置を下す事で決着がついている。だが、次はないと思え。これは明らかにあずみ達若手の部下の育成不足だ。」

「師匠達があずみさんに仕事振りすぎなだけでしょう?」

「あの程度の事が出来なければ九鬼家は任せられん。」

「厳しい事で。」

「お前にも言っているのだぞ神代?」

「ほぼほぼ一ヶ月以上同じ国に定住しない俺がどうやって若手を育成するって言うんですか?」

「そこは考えろ。」

「あまりに横暴!!・・・まぁ元々か。とりあえず最上階行きませんか?情報開示もありますし。」

 そう言うと俺と師匠でエレベーターに向かって歩き出した。

 少しすると先の方に多くの人が見える。多分さっき行われた会議に参加していた若手であろう。

「お、おいあれ!」

 さらに近づいていくと1人の従者がそう言った。すると周りの従者もこちらに気づき、廊下の端により始め廊下の真ん中に道ができた。

(俺らはモーセか!)

 そんなことを思いながら従者達の間を無言で通りエレベーターについた。

「アテンションプリーズ。こちらは九鬼ビル最上階へと向かいま〜〜す。」

「馬鹿をやってないで早く押せ。」

「・・・はい。」

 うちの師匠はとても厳しかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最上階に着くと序列上位者達が集まっている部屋に着いた。

「おや師弟で仲の良いことで微笑ましいですな。」

「クラウディオさんお久しぶりです!」

「ええ、久しぶりですね。私の教えた事は忘れてませんね?」

「はい、毎日練習してますので前よりも技量は上がってると思います。」

「それは何より。」

 クラウディオさんには執事の心得や技術なんかを教わった第2の師匠でもあるので、話す時は自然と背筋が伸びてしまう。第1師匠であるヒュームさんはそんなでもないんだがこの違いは一体何のだろう?

「おいクラウディオ。また神代に勝手に指導したな?」

「ほほ、教え甲斐があるものでついやってしまいました。」

「ふん、相変わらずだなクラウディオ。」

「褒め言葉と受け取っておきましょう。」

 (お、お互いの間に目に見えない火花がバチバチしているのがわかる。・・・ここにいると巻き込まれるからそっと脱出しよう)

「おやおや神代さんではなりせんか。お久しぶりですね。」

(あちゃータイミングが悪い時に話しかけられてしまった!)

「は、はい桐山さんお久しぶりです。ゆっくり話したいのですが、ただ今取り込み中でして」

「ん?・・・あぁ、なるほどそう言う事ですか。ではではこの場でどちらを正式な師匠とするか明言してしまえばいいのではないのですかな?」

「ほう。」

「それはそれは。」

(桐山様ー!?何燃え盛っている火にガソリンをぶちまけるようなことを!?)

「でだ。お前はどちらを師として仰ぐつもりだ?もちろん幼いころより体術を教えている俺だよな?」

「いえいえ、執事の様々な事を一から教えた私でございますよね?」

「さあ」

「どちらですかな?」

「・・・え、えーっと」

(どう答えればいいんだよ!?どちらもと言えば多分2人から潰されて、どちらかを言えばそのどちらかに潰される。・・・詰んでいる。俺の人生が詰んでしまっている!くそ!ここで腹を括るしかないのか!?)

俺が一世一代の覚悟を決めようとした時

「・・・ほぅほぅほぅ、少しからかい過ぎてしまいましたかな?」

「ほへ?」

「ふん、こんな事下らん事で争うはずがないだろう。お前が2人の師を持つ不貞を働いているから少しからかってやったにすぎん。」

 2人してそんな事を言い始めた。

(・・・いい歳してお茶目けがあり過ぎでは?)

「さて、からかい終わったところでそろそろ始まるようですね。」

 そう言った揚羽さんが俺達の前に現れた。

(流石はパーフェクト執事、タイミングがバッチリだな。)

「ふはははは!九鬼揚羽、降臨である!!皆ご苦労!今日ここに集まってもらったのは他でもない!我々が日々進めていた『武士道プラン』が遂に実行に移す事となった事を知らせるためである!」

 ざわっ!一瞬揚羽さんの言葉に対して多くの人が反応したが、そこは九鬼従者部隊序列上位者達。すぐに静かになり揚羽さんの話を聞き出した。

「皆も知ってる通り長年九鬼が進めてきた武士道プランだが、日本の川神市を中心として展開していく事となる。その為多くの者が日本勤務になるだろう。詳細は追って伝える。今回はこれまで。ではさらばだ!ふはははは!」

「揚羽様ー!!お待ち下さい!!揚羽様ー!!!」

 そう言うと揚羽さんとついでに小次郎さんも出て行った。

(義経、弁慶、与一、清楚。懐かしいな〜最後に島に行ったのは12、3歳くらいだったかな?みんな元気だといいけど、武士道プランが始まるならもしかして会えるかな?)

「おや、何やら楽しそうな顔をしていますね?」

「はい、昔の友達に会えそうなので少し嬉しくて。」

「ああ、義経様方のことですな。本部が川神に移るので我々も赴くことになるので、きっと会えるでしょう。」

「はい!ありがとうございます!」

(そうなると義経達にも護衛がついたりするのだろうか?だったら俺立候補しようかな?)

「神代、行くぞ。」

 そんな事を考えていると師匠がそんな事を言ってきた。

「行くってどこに?」

「武士道プランが始まるのだ。ならばその前に『掃除』を終わらせておくべきだろう?」

「ああ、前に言ってたやつですね?今から向かいますか?」

「そうだ。この集会が開かれた理由の1つが序列上位者達に暗にそれを知らせるためのものだ。」

「大っぴらに言うわけにはいかない・・って事ですね。」

「まぁそう言う事だ。分かったのなら行くぞ。」

「了解です。じゃあ車回してきますね。」

「何を言ってる?ここは日本だ。陸が続いているのなら走ればいいだろう?」

「・・・え、まじで言ってます?川神までまぁまぁ距離ありますよ!?」

「遅れたら今度の鍛錬量は3倍にしてやる。」

「ひょ!?」

(あ、あの鍛錬の3倍!?普通におっ死ぬわ!!)

「嫌なら追いつけ。」

 そう言うとザッという音と共に師匠が消えた。

「ちょ!ズルくないですか師匠!?」

 そう言いながら俺は必死に師匠を追いかけるのであった。

 

 

 




作者のガラスのハートが割れない&気が乗ってる間は投稿する予定です。
よかったらまた覗きに来てください〜!


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お掃除お掃除!

見ていただきありがとうございます。

補足
主人公の容姿を簡単に説明すると
・九鬼家のような白髪
・血のような赤い眼 です。

他の詳しい情報はそのうち書くと思います。(多分)


空は雲1つなく晴れ渡れわたっている。

「・・・はぁ、今日も嫌になる程平和だな、おい。」

「ししょーなんか釣れた?」

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、天使がそんな事を言ってきた。

「釣れてたらいつまでも釣りなんかしてねぇーよ。」

「ししょー使えないなー!」

「うるせぇ!ならお前が釣りやがれ!」

「やだよ。うち、そういう動かないでする事ちょー苦手だし。」

「ったく弟子とは思えねぇやろうだ。なら亜巳が帰ってくるまで我慢しやがれ。」

「やーだ!お腹減った!」

「俺だって減ってるわ!・・・しょうがねぇ辰子起こしてこい。飯奢ってやる。」

「まじで?やったー!辰ねぇ起こしてくる!」

タッタッタッター

「はぁ、今月は亜巳にたかるしかねぇな。・・・あ?」

何かヤバイ気をした奴らが近づいてきてやがるな。

「ししょー!辰ねぇ起こして来たよ!」

「ご飯食べるー」

「・・・天使、辰子構えろ来るぞ。」

「来るって何が・・」 

 そこまで言うと天使は気を感じ取ったのかいつも持ち歩いているゴルフクラブを構えた。

その瞬間2つの影が俺達の前に降り立った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おりゃー!!」

ドドドドザーッ

「はぁ、はぁ、俺の勝ちだな師匠!」

「ふん、貴様の方が0.3秒遅いわ。どうやら鍛錬は3倍のようだな。」

「汚えーぞ師匠!!俺はこの理不尽について断固抗議する!」

「受理はされぬな。」

「くそー!これが現代の格差社会かよ!?パワハラ反対だーー!」

「おいおいなんか俺らを無視して楽しそうだな?」

 そう言われそちらを見ると1人の男性と2人の女性がいた。

「・・・ごほん!えぇー見苦し場面をお見せしてしまい申し訳ありません。あなた方は、釈迦堂様とそのお弟子さん方ですね?」

「そうだけどあんたらは?」

「申し遅れました。私、九鬼家にて従者をしております。神代武命(かみしろ たける)と申します。そしてこちらの人相の悪い金髪の方が九鬼家従者部隊序列0位ヒューム・ヘルシングでございます。」

「どうやら3倍は決定のようだな。」

(元々そうするつもりだっただろう!)

 この後あるであろう地獄が決定していたので少し抵抗をしてみたが逆効果だったようだ。

「神代・・・ってのはあまり聞いたことがねぇが、そっちの爺さんについては知ってるぜ。あの鉄心の爺様と張り合うぐらい強いんだってな?」

「ふん、鉄心などより俺の方が強いがな。」

「はいはい張り合わない。とりあえず仕事しますよ?」

「仕事?まさかまさか俺達は関係ないよな?」

「まさかまさかの貴方達にお話があるんですよ。」

「要は貴様ら街のゴミを掃除しにしたということだ。」

「・・・ほう、ゴミとはそれはまた言ってくるじゃないの?ええ?」

「まぁ九鬼家に害を及ぼす者は全てゴミだとこの金髪おじさんに教えられておりまして。」

「はっ!九鬼家に害なんざ及ぼしてねぇはずだがな?」

「マロード」

「っ!」

(お、やっぱりあの情報はビンゴだったか。)

「何やら心当たりがあるようですね?残念ながらマロードの方には別の者が向かっておりますので、貴方達の計画はもう終わりでございます。」

「・・・流石九鬼家ってことだな。で?それをわざわざ教えてくれる為に来た訳じゃねぇだろ?」

「流石!話がお早い!つまるところ貴方達がこのままの状態でいますと、九鬼家の方々に悪影響を及ぼす可能性がありますので更生プログラムを受けていただきたいのです。えーっと釈迦堂さんは一般の職についていただき、弟子の方々には川神院で、」

 ヒュンッ

 俺がそう話していると俺の顔に向かって釈迦堂さんが拳を振るってきた。

(あーやっぱりこうなったか。避けるのもいいが、ここはある程度対抗した方が言う事聞いてもらえるかもしれないな。)

咄嗟にそう考えると釈迦堂さんの拳を横に逸らす。すると釈迦堂さんは追撃として蹴りを出してくる。

「よっとこしょ!」

「ガッ!」

 蹴りを体を逸らす事で避けた後、空いてる腹部にブローを叩き込んで釈迦堂さんを元々いた位置まで吹き飛ばした。

「・・・結構やるじゃねぇか。」

「先に手を出したのはそちらなのでご理解くださいね。」

「師匠!?テメーよくもやりやがったな!?」

「天使!無闇に突っ込むな!」

 釈迦堂さんの後ろにいた女性がゴルフクラブを振り下ろしてきた。

(ゴルフクラブを叩き折るか?でも大切な物じゃかわいそうだし、気絶だけさせておくか。)

そう結論を出すとゴルフクラブを避け後ろに回ると首元に手刀を落とした。

「きゅ〜」

「おっと危ない危ない。」

気絶させたがそのまま倒れそうだった為受け止める。その瞬間釈迦堂さんが詰めてきた。

「隙だらけだぜ!」

 手の平に浮かんでいる気の玉のようなものを俺にぶつけてきた。

ドドォン!!

 かなり威力のある攻撃で俺は吹き飛ばされてしまったが弟子である女性には当たらないように上手く調整されているようで、俺の代わりに釈迦堂さんが女性を支えていた。

「・・・おいおい、結構本気でやったんだがビクともしてねぇじゃねえか。おじさん・・・傷ついちまうぜ?」

「いえ、かなりびっくりするくらいの威力でした。ただ私がもっと凄まじい威力の攻撃に慣れてるので、このくらいでは怪我すら出来なくなっただけです。」

「言ってくれるね。」

「事実ですので・・・では今度はこちらから参ります!」

 釈迦堂さんにそう伝えると一歩で釈迦堂さんとの間合いを詰め、何度も拳を振るう。

「はっ!舐めないでもらいたいね!これでも川神院元師範代だぜ!この程度『では、もう少しギアを上げましょう!』なっ!」

 その言葉を皮切りに俺は拳のスピードを更に上げた。

「ちっ!くらいな!」

 釈迦堂さんが先ほどの気の玉をもう一度作り、俺に当てようとしてきた。だが2度目も同じ技を出されたらタイミングは完璧に覚えられる。

「ジェノサイドッ!!」

「がっ!!」

 釈迦堂さんの技にタイミングを合わせ、ガラ空きとなった頭部に蹴りを打ち込んだ。

 崩れ落ちていく釈迦堂さん。そのまま片膝をついた・・・かと思われたその瞬間、釈迦堂さんは俺の首元に抜き手を繰り出してきた。完璧なタイミングと見事なまでの油断のさせ方、普通なら直撃するしかない。だが俺は知ってしまっていた、壁を超えたと言われる実力を持った人達はこの程度で倒れる筈がないと言う事を。

 俺は繰り出された抜き手を最小限の動きで避け、伸びたままになっている腕を掴み柔道技の1つである体落としの要領で投げ捨てた。

「ぐっ!・・・よく気づきやがったな坊主。我ながら完璧だと思ったんだがな。」

 釈迦堂さんが地面に転がったままそう言ってきた。

「ええ、確かに素晴らしかったです。ただ私が壁を超えた方々の勝利への貪欲さを知っていたというだけです。」

「はっ!それじゃあ仕方ねぇな!・・・修行を怠ったせいかね。体が思ったように動かねぇな。」

「そうですね。もし、今でも貴方が川神院で修行をしていたなら立場は逆だったかもしれません。」

「かもな。まぁ今回は俺の負けって訳だ。・・・だからこのワイヤー外してくれねぇか?逃げねぇからよ。」

 釈迦堂さんは自分の手首と足首を持ち上げながらそう言った。先程俺が投げ捨てた時に括り付けたものだ。

「そうはいきません。貴方には大人しくしてもらわなければ。」

「つれないね〜。」

 そう言うと釈迦堂さんは諦めたかのように挙げていた腕と足を下ろし大人しくなった。その事を確認した俺は釈迦堂さんから離れて青髪の女性の元に向かった。

「むー天ちゃん虐めちゃ駄目!」

 俺が近づくと青髪の女性が俺に通せんぼをしてきた。理由は明白で奥にいるゴルフクラブを持っていた女性を守る為だろう。

「ご安心下さい。私もこれ以上危害を加えるつもりはございません。それと・・・そちらの女性については申し訳ありません。釈迦堂さん以外の方には危害を加えるつもりありませんでしたが、私の力不足故に気絶させてしまいました。最小限の力で怪我が無いように気を使いましたが、もし怪我などがありましたらこちらの番号に一報してください。全て私が責任を持ちますので」

 そう言って俺は自分の番号が書かれたメモを渡した。この言葉は全て俺の本心である。九鬼家に仇なす者は全てゴミだと教えられているが危害を加えるかは別の話である。釈迦堂さん達は九鬼家に『更生可能』と判断された人達、つまり将来は共に働くかも知れない方達かもしれない訳である。そんな方達を無闇に気付けるのは九鬼家としても損であるし・・・何よりゴミと教えられてるとはいえ女性に一方的に暴力を振るうのは俺があまり好きではないからだ。武人として相対しているなら話は別だが

「・・・天ちゃんに謝ってくれたら許してあげる。」

 青髪の女性は後ろで寝ている女性を見ながらそう言った。

「それで許していただけるのでしたら。」

 そう言うと俺は後ろの女性に近寄りそっと起こした。

「うー・・・うん?」

「お目覚めになりましたか?」

「ッお前ッ!よくもやりやがったな!」

 女性は俺の事に気がつくと拳を振り上げ襲いかかってきた。

 ゴッ!

 キレのあるいいパンチが顎に当たり鈍い音が頭に響く。

「・・・この度は私の不手際により危害を加えてしまい誠に申し訳ありませんでした。」

「はぁはぁ・・・何で避けねぇ!?お前じゃ簡単に避けられたはずだろ!?」

「謝る立場の私が避けるわけにもいきませんので。」

「ちっ本気で殴ったってのにムカつくほど落ち着いてやがって。・・・まぁ一発殴れたからこれでチャラにしてやるよ。」

 ふーんと言う声が聞こえそうなほど不機嫌な顔をしながらそう言った。

「そう言っていただけると助かります。」

 俺は一度頭を下げると師匠の元に戻った。

「・・・少し遊びすぎだ。勝負なら一瞬でかたをつけろ。」

「これは勝負でもなく遊びでもなく仕事です。そして俺の仕事内容はいかに相手に怪我をさせずに納得させるか。・・・仕事としては完璧でしょう?」

「ふん、モノの言いようだけは一人前だな。」

「それ褒めてます?」

「貴様を褒めるなど100年早いわ」

「相変わらず厳しいですね。とりあえずこの場を引き継げば俺達の仕事は一旦終了ですが、他の方の持ち場の手伝いは・・・いりませんね。」

「当然だ。自分に与えられた仕事をこなす事すら出来ない者が従者部隊序列上位に名を連ねられる訳がないからな。」

 師匠は当たり前だと言うようにそう言った。

(何だかんだで皆を信じているのだろうな。全く相変わらずのツンデレだな〜)

「ジェノサイドッ!」

「ごがッ!」

 そんな事を考えているといきなり師匠が蹴ってきた。それもかなり強めに。

「い、いきなり何するんですか!?蹴りの威力が俺じゃなきゃ怪我する強さですよ!?」

「ふっ俺を欺こうなど1000年早いと言う事だ。」

「1000年後は俺死んでると思うんですけど・・・」

「気合で生き残れ」

「それに関しては横暴というより無茶ぶり!」

「俺の弟子ならそれぐらいやってみせろ。・・・む、そろそろ鉄心との時間が迫っているな。神代この場は任せたぞ。」

「了解です。川神院方に向かうんですか?」

「そうだ。何かあれば川神院に来い。」

 そう言うと師匠は跳躍して川神院に飛んで行った。

「・・・さてと、引き継ぎだけしたら俺もちょっと散歩でもしようかな。川神に来るのも数年ぶりだしちょっと楽しみだな。」

 (まぁここに住んだのは1ヶ月ちょっとだけどな。・・・そう言えばあの時遊んだ子は元気にしてるだろうか?九鬼家に支援してもらったから悪いようにはなってないと思うが)

「気になる事は多いけど今はともかく電話電話。」

そう言うと俺は引き継ぎの人員を送ってもらう為に電話をかけた。

 

 

 

 




何とか書けた・・・私は続きが書けるのでしょうか?


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師匠ー!

ご覧頂きありがとうございます。

小説って書くの難しいですね。


釈迦堂さんの拘束を引き継いだ後、俺は少し歩いて川神市内をフラフラ散歩していた。普段からシャキッとして無いといけないのでこういう何でも無い時間は何も考えずに歩くのが好きだからだ。

「・・・しかし都市開発が進んではいるが、昔とあまり変わってないなここら辺は。」

 そう言いながら俺は河川敷や街並みを見渡した。

「昔遊び場にしてた河川敷に、走り回った商店街に住宅街、何もかもが懐かしい・・・そしてこの変態橋もある意味で懐かしい。」

 思い出に浸りながら歩いているとこの川神の名所と呼んでいいか悩みどころである通称"変態橋"についた。

「世界中色々回ったがこんなにもクレイジーとしか言えない場所はここしかないからな。さてさて本日の変態ラインナップは、片足だけ靴下を履きもう片方を手にはめている方と典型的な女王様プレイ中の男と、今にも女学生に襲い掛かろうとしているコートの男・・・あれはアウトだわ。」

 そう判断するとコートの男に速攻で近づきコートにかかっている手を掴んだ。

「申し訳ありませんが、それは流石に見過ごせませんのでやめていただきますか。」

 手を掴みながら優しめにそう言った。

「な、何だね君は!?わ、私はただこの子達と仲良くなろうとしただけだぞ!手を離したまえ!」

 そう言って振り解こうと手を振り始めたのでその手を交差させ、体を捕縛用に使っているワイヤーで縛り上げそして騒ぐであろう口にもガムテープを貼った。

「む?むー!?」

 何が起こったのか分からないのか怒り半分困惑半分と言った表情で騒いでいる。体を動かす事は出来ないのに顔だけで騒がしいとは流石変態橋に出没するだけはある。

 俺は若干変態に感心しながら警察に携帯で電話を終えると

「あの〜先程は助けていただいてありがとうございました!私〜本当に怖くて怖くて!あっ私、小笠原千花って言います!」

「私は甘粕真与って言います!助けてくださってありがとうございました!」

 すると2人の女性がお礼を言ってきた。

(この2人はこの変態に襲われてた被害者か。えーっと背が高い方が小笠原千花さんで背が控えめの方が甘粕真与さんだな。)

「これはこれはご丁寧なお礼ありがとうございます。私の名は神代 武命と申します。お二人ともお怪我などはございませんでしたか?」

「はい!お陰様で無傷です!・・・あの〜よろしければお礼にお茶でもしませんか?」

「いえいえ、そのようなお礼をいただくような事はしていませんよ。それに申し訳ない事に予定が詰まってしまってしますので。」

「え〜でも、ちょっとだけでも・・・」

「千花ちゃん!助けてもらった人を困らせちゃいけません!」

「も〜分かったわよ。」

「仲がよろしいんですね?」

「はい!私と千花ちゃんは仲良しさんです!」

 俺がそう聞くと甘粕さんはとても嬉しそうな笑顔でそう言った。

「もう、恥ずかしいじゃない真与」

 小笠原さんもそう言いながらどこか嬉しそうに口を緩めている。

(友達、いや親友というやつか。義経達はどちらかというと妹や弟のようなものだし友達か・・・っと、らしくもない事を考えそうになったな。さてさて遠くの方でパトカーの音が聞こえてきたから、そろそろ行くか。)

「それでは私はこれにて。そろそろ警察の方がいらっしゃると思いますので申し訳ありませんが状況説明をお願いいたします。」

「任せて下さい!」

「良い返事ですね。それではよろしくお願いします。ではっ!」

 そう言うと俺はその場から飛び上がり1度近くのビルの屋上に着地した。

(えーっと今の時間は・・・そろそろ戻った方が良さそうだな。さてと師匠はどこにいるかな?)

 そう考えると目を閉じ、自分の周辺の気を探った。

(強い気が近くに1体、これは釈迦堂さんかな?そして所々に強い気がいる。流石川神と言ったところかな?でも師匠にしては弱い。ここら辺で一番強い気があるところは・・・川神院に数人の強い気が集まってるな。でも集まりすぎて師匠かどうか分からないな。)

「仕方ない。実際に行ってみるか。」

 そう言うと俺は川神院に向かいはじめた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「コレ!百やめんか!」

「でもよジジイ!こんな強そうな奴と戦える機会なんてそうそう無いんだぞ!私も、もうストレスで破裂しそうなくらい溜まってんだぞ!」

「ふん、所詮は教育が行き届いてない赤子か。いいだろう、俺自らの手で強者とはなんたるかを教えてやろう。」

「ええい!ヒュームもやめんか!」

「鉄心、元はと言えばお前がこの赤子に指導しなかった事が原因だ。俺は今からお前の代わりにこの赤子に指導してやるんだ。むしろお前は俺に感謝するべきだと思うが?」

「た、確かにそうじゃが・・・」

「おいジジイ!何でもいいから早く戦わせてくれよ!」

「ええい!だからやめんか!」

「私はそう言われて今まで何度も我慢した。でも今回だけは駄目だ!我慢できない!」

「ふ、まさに躾のなってない狂犬だな。」

「その挑発には喜んで乗らせてもらう!じゃあまずは私から行かせてもらッ!?」

「・・・強い気の持ち主じゃな。」

「・・・ふ、来たか。」

「来たか、じゃないですよ師匠。時間もギリギリですし、そんなに気を高めちゃって川神院壊す気ですか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(『急募』状況説明求む!!何か師匠迎えに来たら同い年くらいの女性と師匠が気を高めて今にも戦い出しそうなんですが!?)

「鉄心、貴様でも流石に覚えているだろう。数年前に顔を見せた弟子だ。」

「おお!あの時の子か!久しぶりじゃの。」

 そう言われて声のする方を見ると白い髭生やしたご老人がいた。

「鉄心さんお久しぶりです。前にあった時と変わらずお元気そうで何よりです。」

「相変わらず礼儀正しい子じゃな。うちの百とは大違いだの。」

「それはどう言う意味だジジイ。」

「自分の胸に手を当てて聞いているんじゃな。」

「・・・分からないな!」

「はぁ〜〜〜」

 鉄心さんが長いため息をついている。

(鉄心さんと親しげなこの女性・・・)

「・・・鉄心さん、そちらの女性はもしかして。」

「おお、確か前に来た時は会わなかったの。ワシの孫の川神百代じゃ。百、挨拶せんか。」

「川神百代だ。お前も強そうだな。一丁戦ってみないか?」

「コレッ百!」

「はは、元気のあるお孫さんですね。」

「恥ずかしい限りじゃ。」

「うるさいぞジジイ。それで戦ってくれるのか!?」

「申し訳ありませんが時間がありませんので」

「な、ちょ、ちょっとだけでいいから。先っちょだけ先っちょだけ!」

「女性が何を言ってるんですか。それと申し訳ありませんが今日は速やかに「良いではないか。」・・・師匠?」

「お前の言う通り時間はないが・・・一撃程度受ける時間ならあるだろう?」

「・・・まぁそれぐらいなら。」

「ッ!本当か!」

「ああ、こいつに対して今この場で出せる全力をぶつけてこい。」

「師匠、無責任にそう言う事言わないでもらえますか?」

(ったく、相変わらず師匠は師匠だな。はぁ〜気は乗らないけど仕方ないか。)

「すぅ〜はぁ〜〜・・・では、いつでもどうぞ。」

深呼吸をして気持ちを入れ替えて、構えをとった。

「ッ!たまらない闘気だ!では遠慮なく行かせてもらうぞッ!!」

 そう言うと百代さんは一足で俺の近くまで近づき左手を肩の位置、右手を腰の位置に構えた。

(正拳突きか。・・・ならば!)

 こちらも百代さんと同じ正拳突きの構えをとった。

「ッ!面白い、受けれるものなら受けてみろッ!”川神流 無双正拳突き”!!」

 凄まじい音をたてながら百代さんの拳が迫ってくる。

 (流石鉄心さんの孫だ。この正拳突きの威力をみるに、実力は確実に壁越えだな。ならば俺も本気でやらなければならないな。)

「すぅぅぅー・・・シィィ!!」

 腰を沈め深く構えた状態で、迫ってきている拳目掛けて自分の拳をぶつけた。

弾けるような音と共に俺たちの周りの空気が震え、しばらくすると収まった。

「・・・はは!」

 お互いがお互いをしばらく静観していたが突然百代さんが笑った。

(・・・この目は見たことがある。この目は戦いを楽しみを見いだしている奴の目だ。そう言う奴は総じて強く・・・総じて危うい。)

 そんな事を考えていると百代さんが拳を振り上げた。

(こうなった奴は言ったところで聞かないだろうから。実力行使で黙らせるしかないな。)

 俺がそう思った瞬間。

「顕現の四 毘沙門天!!」

 ドォォォン!俺の目の前にいた百代さんが何かに押しつぶされた。何かと思い辺りを見渡すと鉄心さんの後ろに仏像のような形をした気が出ていた。

「あれは?」

「あれは鉄心の得意技の1つ毘沙門天だ。自らの気を形作り殴ると言うシンプル故に強力な技だ。まぁ俺のジェノサイドよりは劣るがな。」

「相変わらずの自信ですね。」

「事実だからな。」

「うひょー天井知らずの自信だー!」

「ふん・・・それよりあの赤子と拳を交わしてどう思った?」

「あーやっぱり百代さんの危うさには気付いてました?」

「初めに会った時からな。今は昔と比べればまだマシだがな。」

「今のでマシですか。怖い怖い。」

 そう言いながら物理的に沈んでいる百代さんを見た。気絶はしているようだがキズは1つもない。

(かなり頑丈なのか?いやでも気絶するほどの威力で無傷は流石に・・・まさか)

「師匠まさか百代さんは・・・」

「気づいたかそうだ。こいつは俺かお前が狩るべき対象だ。」

「・・・不死身ですか。」

「正確には瞬間再生だがな。自らの気を消費する事で瞬間的に体を再生する。まぁ一般人から見れば不死身の化け物と大差ないがな。」

「・・・そうですか。」

(これは思った以上に要注意かもしれないな。)

「すまんの〜百代の歯止めが効かなくなってしまったからつい癖で手が出てしもうての〜怪我はないかの?」

「ご心配ありがとうございます。怪我はないのでご安心ください。」

「それは良かった。」

「っとそろそろ本当に時間がやばいな。鉄心さん申し訳ありませんが我々はそろそろお暇させていただきます。」

「おお、そうじゃったの。今度来た時は茶でも出すからまた来なさい。」

「是非に。」

「鉄心、孫の教育を怠るなよ。」

「・・・分かっとるわい。それがワシの最後の仕事じゃからのぅ。」

「・・・分かってればいい。正しい道に導いてやれ。」

「言われるまでもないわい!それにしても変わったのうヒューム。昔は他人のことなぞ路傍の石程度にしか見てなかっただろうに、弟子のおかげかのう。」

「・・・ふん、行くぞ神代、」

 バンッ「痛ッ!訳がわからず師匠に殴られたんですが!?」

「気にするな。」

「流石に気にするわ!って!ちょっと置いてかないでくださいよ師匠!!」

 俺が話していると師匠が川神院から出て行ってしまったので急いで追いかけた。

「・・・本当に、変わったのぅ。」

 師匠を追いかけようと走り出した時、何だか嬉しそうな声が聞こえた気がしたが、師匠あまりに遠くにいたので追いかけるの事に意識が向いてしまったので確認する事はできなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「師匠、置いてくなんてあんまりですよ〜。」

 あの後とてつもないスピードの師匠に追いつく為に久しぶりに本気で走ったが追い付かず、九鬼に着いてやっと師匠と話すことができた。

「遅い方が悪いだろう?悪いと思うならばやる事は一つだな。ほらやってみろ。」

「何故か立場が逆転してる!?まさか世界線が!?」

「馬鹿な事を言うな馬鹿が。」

「何で!何でそんなに辛辣なの!?」

 (今日の師匠は何故かご機嫌斜めだ。理由・・・分からんな。今度一緒に肉でも食えば機嫌治るだろう・・・あ、前から歩いてきてるのは)

「ハッハッハッ!相変わらず仲がいいのう!」

「これは!お久しぶりです揚羽様!」

 九鬼揚羽様。俺が仕える九鬼家の長女で昔からお世話になってる人で、強く美しい女性だ。

「うむ!久しぶりだな武命!変わらずヒュームにはしごかれておるか?」

「・・・鬼のように!」

「ハッハッハ!それは何よりだ。っと、久しぶりの再会だから少し世間話もしたいが急ぎお前に頼みたいことがあってな。頼まれてくれるか?」

「何なりと。」

「すまんな。実はな武士道プランの本格化に伴いあのメンバーを本社に招く事になったから迎えに行ってもらいたい。」

「あのメンバー・・・もしかして」

「そうだ。お主の旧友達、義経、弁慶、与一、清楚達のことだ。」

 

 




ご覧頂きありがとうございました。

コメント、お気に入りしてくれた方々ありがとうございました。とても励みになります。

お暇だったらでいいので次回もよければ待っててください。


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奴らが来たぞ!

お気に入り150、評価10件突破ありがとうございます!


義経達を迎える為に俺は今、港に来ている。というのも義経達は今の今まで本島から離れた九鬼家所有の島に住んでいたので船で本島に来てもらわなければならないからだ。

(揚羽さんからはもうすぐ着くから急いで行って欲しいって言ってたけど、はてさて何処にいるのかな・・・お、いたいた。)

 港について辺りを少し見回すと見知った顔が数人、船から降りてきているのが見えたのでそちらに向かう事にした。

「さてと、んん・・・皆さま無事にお着きになられたようで何よりです。」

 俺は近づきながらはっきりと、しかしうるさくない程度の声でそう言った。

「あ、タケ兄!おーいタケ兄〜!」

「え?あっ本当だ!武命君ー!」

「ん?兄貴が迎えか。ならば組織の連中も手出しできないか。」

「・・・」

 義経と清楚はこちらに手を振り、与一は前に見た厨二病が悪化しており、弁慶は・・・こちらを見ずにただただ手に持っている川神水を飲んでいる。

 そう思いながら近づくと義経が両手を広げてこちらに抱きついてきた。

「タケ兄ー!」

「おっと・・・義経殿、年頃の女性がはしたないですよ。」

「えへへ、ごめんなさい!」

 そう言うと義経は笑いながら離れた。

(全く、義経は昔から抱きついたりしてきたが、まさか今でもしてくるとは。俺や与一は慣れてるからいいが、もしこれから通う川神学園の男子学生にも無意識にやってしまったら・・・)

「・・・義経殿、くれぐれもこのような事は他の男性にはしませんようお願いします。」

「ん?もちろんだ。義経も知らない人には抱きつかないぞ。」

「ならよろしいですが。」

「 そうだよ武命君。義経ちゃんだって誰彼構わず抱きついたりしないよ。」

「清楚殿、しかし」

「私達も一緒だから大丈夫だって!」

「・・・分かりました。義経殿を信用しましょう。」

「うんうん!信用してあげて。」

「そんなことより兄貴、いつまでもここに居たら組織の奴らが嗅ぎつけてくるぞ。」

 俺と清楚が話し終えると与一が髪をかきあげながらそう言ってきた。

(まぁ確かにいつまでもここに居るわけにもいかないし、与一の厨二病発言に乗ってそろそろ九鬼家に戻るか。)

「そうですね。皆さん長旅で疲れてるでしょうし、あちらに車を停めてますのでそちらに行きましょう。あ、荷物があればお持ちいたしますのでこちらに。」

そういうと俺はスッと清楚達に手を差し出した。

「えっでも・・・」

 ドサッと清楚が言い終わる前に手に重みがつたわってきた。キャリーバックと大きめのバッグが俺の手に掛かっている。重さ的には50kg程度だろうか。こんな重さのバッグをヒョイっと渡してくるのは・・・あいつだな。

「弁慶!ちゃんとタケ兄によろしくお願いしますって言うんだ!」

「・・・よろしく。」

 弁慶は最低限の事を言うと俺が歩いてきた方角にさっさと歩いていってしまった。

「こら弁慶!タケ兄すまない、いつもはあんなじゃ無いんだが・・・」

「大丈夫ですよ。気にしておりませんので。さて、皆さんもお荷物を」

「うう〜色々すまないタケ兄。」

「ふふ、じゃあお願いね武命君。」

「すまねぇ兄貴頼む。」

 そう言い皆から荷物を受け取り俺が運転してきた車に着くと九鬼家に向かって車を走らせた。その間義経はさっきの態度について怒っていたが弁慶は九鬼家に着くまでずっと我関せずな態度で川神水を飲んでいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふははははは!九鬼揚羽 推参である!!武士道プランの子らよ、よく来たな!今からこの九鬼家を我が家のように思って生活をしてもらいたい!何か困ったことがあればそこの武命に言えば万事大丈夫だ!気軽に頼ると良い!」

(最近揚羽さんも俺に対しての無茶振りが増えてきたなぁ〜。きっと師匠に師事してるから性格も似てきてしまったのだろう。・・・はは、数年後に過労死しなきゃいいな!)

「さて、長い話も飽きるだろう。今日のところは旅の疲れを癒すが良い。ではさらばだ!!」

「揚羽様!お待ち下さい揚羽様ーー!!!」

 (小十郎さんは相変わらず小十郎さんだな。さて、俺も案内して仕事に戻るか。)

「では皆様、お部屋に案内いたしますのでついて来て下さい。」

 そう言うと俺は義経達を連れて今後住む事になる部屋にそれぞれ案内した。

「・・・っと一通りこのようになっております。何か不明な点などございますか?」

「すまない兄貴、例えば何か買いたいものがあった時のお金はどうすれば?」

「基本的には我々が月毎にお小遣いとして一定額渡しますのでその範囲内であれば自由です。それ以上に使いたい場合はアルバイトなどで稼いでもらいます。もちろん緊急で必要な場合は我々が用意いたしますのでお申し付け下さい。」

「おー!アルバイト!義経はやってみたいぞ!」

「アルバイトされるのは個々の自由ですが、義経殿には世界中から集まるであろう挑戦者と戦っていただく予定ですので無理なされないようにお気をつけください。」

「そうだった!うーん、流石に厳しいか。」

「あの武命君、本を売ってるお店って何処にあるかな?」

「後ほどリストアップしておきます。」

「ありがとう♪」

「さて、他に何か質問はありますか?」

「「「「・・・・・・」」」」

「無いようですね。また何か不明な点が出てきたら気軽にお聞き下さい。・・・では、私はここで一度下がらせていただきます。」

「うん、何から何までありがとう!また後でお話ししましょう!」

「是非に。」

「うん、また後でタケ兄。」

「はい、また後で」

「兄貴、何か組織のことが分かったら俺に教えてくれ。」

「分かりましたら逐一報告いたします。」

「・・・」

「弁慶殿も何かありましたら私や近くの従者に気軽にお聞きください。」

「・・・ふん」

「弁慶ッ!」

「はは、大丈夫ですよ義経殿。それでは失礼します。」

 そう言うと俺は4人に背を向け歩き出した。後ろから義経の怒鳴り声が聞こえる。

(あまり気にしなくていいんだがな。それにしても、やはり弁慶に酷く嫌われてしまっているな。何かしてしまった記憶はないが・・・いきなり居なくなって寂しい思いをさせてしまったから嫌われても仕方ないだろう。)

 弁慶の態度について結論を出すと、エレベーターに乗り鍛練室がある階に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピーン。しばらくするとエレベーターが目当ての階に着いた。

「さてと、もう始まって「ぎゃぁぁぁ!!」・・・るみたいだな。」

 叫び声で確認すると俺は鍛練室の前まで行き扉を開いた。

「がぁ!」

扉を開けると俺に向かって従者の1人が飛んできた。

「よっと」

従者の1人や2人飛んでくる事は予想していたので俺は慌てず、飛んできた従者の体を回し、直立で立たせた。

「大丈夫ですかな?」

「は、はい!ありがとうございました!」

 飛ばされてきた従者A君はそう言うと、勢いよく部屋を出て行った。

「・・・今日も相変わらず激しいですね師匠。」

 俺は従者A君を見送ると従者A君を放り投げた張本人を見ながらそういった。

「ふ、この程度で激しいなど随分優しいじゃないか神代。」

「皆が皆、俺みたいに師匠の鍛錬についていけるわけじゃないんですから気をつけてくださいよ。」

 九鬼家の従者は定期的に師匠が戦闘指導をするのだが、相変わらず厳しいようで先ほどの従者A君のように逃げ出すものがあとを立たない。

「ふん、知ったことではないな。他に俺に挑む者はいるか!・・・いないようだな。神代、そう言うことだ準備しろ。」

「どんだけ痛めつけたんですか?めちゃくちゃ震えてるんですけど!?」

 俺の他に数人この部屋にいるがその全員が目を泳がせ、小刻みに震えている。

「いつもより多少厳しくしただけだが?」

「はぁ〜、全くその多少が多少じゃない事をそろそろ自覚して下さい。」

「喋ってるようだがそろそろ準備はいいか?」

「少しはこっちの話を聞けぇぇい!」

「そう言いつつ体はほぐしているようだが?」

「師匠がいつ襲ってくるか分かったもんじゃないんでね!」

「ふ、分かっているではないか。」

「もう何年師匠と組み手やってると思ってるんですか?はぁ〜・・・よし、いつでもどうぞ」

 そう言った瞬間、師匠は俺の懐に音も無く入り込み、鋭いハイキックを俺の頭部めがけて繰り出してきた。

「ぐっ!」

 そのハイキックを腕で防ぐが、勢いが強く体が吹き飛ばされ、飛ばされた俺に追い打ちをかけるように師匠は俺の顔面に拳を振るってくる。

「ふッ!オラァ!」

 体勢が崩れて避けられないためその拳を掌で受け流し、溝うちに回し蹴りを入れ体勢を立て直す。

「・・・最初の蹴りで体勢を崩すな。そして、崩れたなら急所に一撃を叩き込む事を意識しろ。」

「体勢をについては立て直したし、その後に溝うちに蹴りを入れたからいいでしょ?」

「結果そうなっただけだ。」

「だけど、結果が戦闘において全てでしょう?」

「・・・ふっ相変わらずの減らず口だなッ!!」

 そういうと師匠は俺との距離をつめ、嵐のように激しい攻撃を仕掛けてきた。

「ちっ!」

「受け流すだけでは俺には勝てんぞ!」

「分かってますよ!」

 師匠の攻撃の隙を突いて俺も師匠に攻撃を仕掛ける。

「一撃が軽い!もっと殺意を込めて攻撃してこい!」

「オラララァッ!」

 俺も師匠のように無数の手数を出しつつ溝うちや人中、喉と言った人間の急所を狙った一撃を混ぜて攻撃を繰り返す。

「そうだ!そして相手の隙に叩き込め!」

「ジェノサイドッ!」

 俺は攻防でガードが下がった師匠の顎に蹴りを叩き込んだ。

「ぬッ!」

 師匠は俺の蹴りをもろに受けると吹き飛び壁に叩きつけられる。激しい音がなり一瞬膝についたが、すぐに立て直し不敵な笑みを浮かべている。

「・・・ふ、今のは中々だったが・・・まだまだ」

「嘘つかないでくださいよ〜今普通に吹き飛んだでしょ?てことは俺の攻撃に反応できなかったってことッばさ!」

 俺がちょっと挑発じみた事をやっていると師匠が矢のように飛んできて、蹴りを入れられ逆に壁に飛ばされた。

「がっぐっ・・・いきなり何するんですか師匠!」

「気を抜いたお前が悪い。実戦ではないとは言え、今は戦闘中だ。」

「うっ師匠にまともな事を言われるとは。」

「蹴り殺すぞ貴様!」

「申し訳ありません!全て私が悪いです!」

「当然だ。さて、続きだ神代。少なくとも後3時間程は続けるぞ。」

「うげっ!いつもより長い!」

「終わった後はいつもの基礎練習を2倍しろ。」

「お、鬼だ!!」

「言っただろう神代?覚えておけと。」

「いつまでも小さい事を・・・よっしゃッ!ここで師匠を叩きのめして鍛錬中止にしてやる!」

「出来るのならやってみろ。最もお前が俺に勝つには後数十年足りんがな。」

「やってみなきゃ分からないでしょう!いきますよ師匠!」

 

〜3時間後〜

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

「・・・今日はここまでだ。」

 そう言うと師匠は鍛練室から出ていった。

「はぁ〜痛ったたたた。師匠も途中からムキになって殺す気できやがって。ちくしょー!今度やる時は確実に戦闘不能にしてやる!・・・はぁ、疲れたし、基礎練終わったらシャワー浴びて寝よ。」

 とりあえず師匠に言われた基礎練を始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「運動後のシャワーは気持ち良き!そして風呂上がりの牛乳をゴクッゴクッ、くはぁ〜美味い!」

(さてさて寝るまで何をするか。読書は今新刊を買ってないから読んだ本しかないし、筋トレは今してきたばっかりだからあんまりしない方がいいし、他は・・・やばいな俺あんまり趣味らしい趣味がないぞ。はぁ〜何か新しい趣味でも見つけるか。今は仕方がないからテレビでも見るかな。)

 テレビをピッとつけると報道特番が映る。番組の内容は川神市周辺の治安改善という内容だ。突然の改善には街のクリーン活動が影響していた!などの文字が書かれており九鬼家についてはあまり触れられずに番組は終了した。

「まぁ九鬼家が関わってることは情報統制されてるから当然だが、意外と面白かったな。また機会があればこういう特番を見てみるか。さて、まだ寝るには早いな。何するか・・・ん、誰か来たか?」

 思いの外面白い内容だった特番が終え、やることがなくなり考えているとドアの前に人の気配を感じた。

「はいはーいどちら様ですか?」

「・・・ノックの前にドアを開けるな。」

「いや〜気づいちゃったんで」

「まぁいい。今日はとりあえず2つお前に言いたいことがあってなか。まず1つ目は個人的な礼を言いにきた。・・・あの従者について調べてもらって助かったありがとな。」

「気にしないでください。あの事については、たまたま俺も見つけただけですから。」

「だが、お前が見つけてくれたおかげで助かったのは事実だ。アタイらで処理してなければ上のジジイ共に何言われてたか分かったもんじゃねぇからな。」

「死ぬ程いじられて言われてたでしょうね。」

(師匠なら嬉々としてやりそうだしな。)

「だろうな。まぁそう言うわけだ素直に礼を受け取ってくれ。あ、奢りの話はもう少し待っててくれ。いい店連れてってやるからよ。」

「それはそれは、めっちゃ楽しみにしてますね。」

「あぁ任せろ。でだ、もう一つの話が本題なんだが・・・神代、明日の夜は義経達と一緒に行動してもらう。」

「義経達と行動と言うと、武士道プランの事で何かありましたか?」

「あぁ明日の夜、川神学園と天神館との東西交流戦が行われる。そこで急遽だが義経を乱入させて、お披露目をする事になった。そのお披露目に神代、お前には付き添いとして義経達に着いて行ってもらう。」

「・・・ついに武士道プランが本格始動ですか。」

「しかも世の中に義経達の存在を示す武士道プラン最初の行動だ。失敗は許されないぞ神代?」

「大丈夫です。俺が完璧にサポートしてみせるので任せてください。」

「・・・ったく人が心配してれば。まぁあのジジイ共に揉まれてりゃあ、そうなるわな。」

「ええ、師匠の無茶振りに比べればそんなに難しくないですし、義経なら上手くやってくれると信じてますから。」

「そういえばお前昔あいつらと一緒に島に住んでたんだっけか?」

「よく一緒に遊んだ仲です。自分は短い期間しかいられませんでしたが。」

「ほぉ〜ならお前に任せれば問題なさそうだな。じゃあ明日の事は任せたぞ。」

そう言うとあずみさんは扉を閉め帰っていった。

「ついに武士道プランが始動か・・・義経達の事もサポートしやらなきゃな。あー明日から忙しくなりそうだ!さてそうなると今日は早めに寝ておくかな。」

 そう考えると布団に潜り込み秒で寝た。

 

 




次からちょっとずつ学園生活の事かけたらいいな〜と考えています。


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交流戦らしい

久しぶりに投稿です。


 前の日に早く寝たおかげで目覚めも早く、いつもより手が空いてしまったため、普段はあまり手伝わない厨房の手伝いなんかもしながら時間を過ごした。そして時間は過ぎ、武士道プラン本格始動まであと1時間。

 

 

「・・・それでは義経殿、本番前に少し体をほぐしておきましょうか。」

「了解だタケ兄!」

 そう言うと義経は刀を抜き構えをとった。

「あくまでアップのようなものですが、何か目標がなくては張り合いもないでしょうから・・・そうですね、私に一撃有効打を当てる事を目標として下さい。」

「それでいいのか?」

「はい、当てるだけでしたら可能でしょうが有効打なるとなると難しいと思いますので。」

「むっ!義経もタケ兄と会わない間に強くなったんだぞ!」

「それを考慮してです。」

「むー!!分かったその条件でやろう!絶対タケ兄にギャフンと言わせてやるぞ!」

「何処で覚えたんですかそんな言葉。」

俺がそう言い終わると義経は目を閉じ、息を大きく吸い吐き出す。そして閉じていた目を開くと先ほどの文句を言っていた義経ではなく、源義経という1人の武人が立っていた。

(並みのものが見ただけで戦意損失するであろう鋭い眼、隙がほとんど無い構え、全てを叩き斬るかと思わせる雰囲気。・・・成長したな義経。前に会った時とは比べものにならないくらいに立ち住まいが洗練されてる。)

 義経の成長を喜びつつ、俺も構えをとり義経に相対した。

「・・・行くぞタケ兄!」

ザッ!義経はそう言うと地面を強く踏み込み、こちらの懐に飛び込み上段から斬り込んできた。

サッ、ブン!

 斬り上げてきた刀を手の甲で弾き、カウンター気味に手刀を脇腹に叩き込んだ。 

「ぐっ!」

 手刀の威力はかなり抑えたが、義経の体重の軽さもあり鍛錬室の端まで滑っていき壁に当たり止まった。

「鋭く良い一撃でしたが、実力差がある相手に胴体がガラ空きになる上段は危険ですのであまりなさらない方が宜しいかと」

「・・・ふっ!」

 義経は俺にそう言われると一呼吸おき、俺の喉にめがけて突きを繰り出してくる

それを俺は払おうと手を出すと、義経は体を捻り刀の軌道を無理やり変え俺の脇腹に振ってきた。

(突きは囮か。単純だが技量の高さゆえに見事な技になってるな。だが!)

バシッ!

「なっ!」

「動きは止めない!」

 俺はそう言いながら義経の手首を掴み、振り回すように地面に投げ捨てた。

「ぐっまだ!」

「いえ、もうお終いですよ。」

 俺は立ち上がろうとする義経の首元に貫手を突きつけた。

「・・・むぅー!悔しいぞ!」

そう言いバタバタと手足を動かしながら義経は唸っている。どうやら負けを認めたようだ。

「ですが前に会った時とは比べものにならない程良くなってますよ。」

「こんな完敗した後に言われても嫌味にしか聞こえないぞ!」

「ふふ、それは失礼しました。」

「むぅー!もう一回だタケ兄!今度は一撃入れてやる!」

「程々にして下さいね。本番でフラフラになったなんて言ったら目も当てられませんから。」

「わかってる!さあ構えてタケ兄!」

「ふふ、承知しました」

 そう言うと俺達はまた組み手を行い始め、ヘリに乗り込む時間ギリギリまで組み手をしてあずみさんに小言を言われたのでした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やぁぁぁぁぁ!!!!」

「ぬっ!」

 スパーンッ、ドゴッ、バギッ

 目の前では2人の武人、いや生徒達が一騎討ちの決闘をしている。片方は相手校である天神館にして西方十勇士の1人の島右近(しま うこん)。そしてもう1人が川神学園の2年F組にして我らが風間ファミリーのマスコット、ワンコこと川神一子(かわかみ かずこ)だ。

「せぇい!」

 ドゴッと一子が振るった薙刀が右近に当たり始めた。

「やりおる!だが儂も負ける訳にはいかんっ!うぉおおお!!」

「ぐぅっ!」

 さっきまで一子が押していたが右近が気合を入れるように叫ぶと、一子を押し返し始めた。

「一子!」

「負け・・・ないわ!皆で勝つって決めたもの!」

「勝つのは儂らだ!」

ブンと大きく武器を振り上げた右近。勝負を決めようと今宵一番の攻撃を繰り出してくる事は目に見えている。直撃すればひとたまりもなく一子は負けるだろう。だが、だからこそ隙が生まれる。

「ッ!今よ!」

 右近が武器を振り上げたその瞬間、一子は右近の懐に潜り込んだ。

「ぬッ!甘いわ!」

 突然の事に一瞬驚くがそこは流石は名の知れた武人。すぐに状況を理解し、武器を懐にいる一子へと振り下げた。不意を突いたというのに一瞬の停滞のみで対応したのは見事としか言うしかない。・・・だがその一瞬が武人同士の戦闘では致命的になる。

「今だ!やっちまえワンコ!」

「川神流""蠍撃ち"ッッ!!!!」

ドンッ!一子が右近の胴体に一撃撃ち込んだ。

大気が一瞬揺れ、しばらくすると決着がついた。

「・・・ぐっ」

バタンと右近が倒れた。

「はぁはぁ」

「やったよ大和!一子が勝ったよ!」

「あぁそうだなモロ。・・・石田!後はお前だけだ!諦めて降参したらどうだ?」

 俺はモロの言葉を受けて現在の戦況を頭の中で整理すると、右近と一子の闘いを見ていた敵大将、石田三郎(いしだ さぶろう)に対し、挑発気味にそう言った。

(現状、石田以外の十勇士は全員俺達が倒した。数的にもこっち側が圧倒的に有利だが・・・さてどうする。)

「・・・ふふ、ふはははははッッ!!」

「何がおかしいんだ石田。」

「これを笑わずにいられるか!他の十勇士を倒したごときで俺を追い詰めた気になっているんだからな!」

「・・今の戦況が分からない程馬鹿じゃ無いだろう?右近は今俺達の仲間の一子が倒して、他の十勇士も俺の仲間達が全員倒した。今はこの場で闘えるのは一子ぐらいだが、すぐに他の仲間も帰ってくる。そうすればお前は人数的に圧倒的に不利・・・この状況でお前が勝つ事は不可能に近いだろう?」

「その考えがまず間違っている。他の十勇士など俺に比べればそこらの雑兵と変わらん。つまりいてもいなくても変わらんという事だ。まぁ、島をやった事は褒めてやらん事もないがな。」

「ボロクソに言ってるがお前ら仲間じゃ無いのか?」

「あいつらは俺の臣下だ。俺が出世街道を行くための駒にすぎん。」

「仲間を駒呼ばわりなんて、あなた最低ね!」

 そう言うと一子は息を整えつつ構えをとった。

「ふんっ!仲間などと言って馴れ合ってるからお前達は出世街道を歩めないんだよ。」

 石田は俺達を見下した目で見ながらシュンっと刀を抜いた。

「島を倒した褒美だ。俺の本気を見せてやろう。」

 そう言うと石田は目を瞑った。

「あいつ一体何をする気なんだ!?」

「落ち着けモロ。・・・けどこの感じ、まずいな。一子!」

「分かったわ!」

 俺の言葉を受け一子が石田に近づき、武器を振り下ろそうとしたその瞬間、

「はぁぁっっ!!」

「きゃぁぁ!」

 石田の体から金色の光が溢れ出し、一子が吹き飛ばされた。

「一子っ!ちっ遅かったか!」

「えっえ、大和どういう事!?」

「あいつが目を閉じた時から、姉さんが気を溜めてる時と同じ感覚がしてやな予感がしたんだ。だからあいつが何かを終わらせる前に片をつけたかったんだが。」

(それは失敗してしまった。それに)

「ふはははは!俺のこの技『光龍覚醒』が終わる前に討ち取ろうとした事は褒めてやる。だがこの技を使わせてしまったからには、もうお前達には勝ち目はなくなったぞ!」

 石田を見ると体から金色の気が溢れ出し、髪が金色に輝きながら逆立っている。

(まずい、不味い不味い不味いぞ!あれは駄目だ!気の大きさが壁越えと言われてる人達に近いぐらい大きい!)

「・・・なんだなんだ!今から仮装パーティーでも始まるのか!?はっそんな仮装じゃあ通りすがりの一般人にも鼻で笑われるぞ?」

 頭をフル回転させつつ、少しでも突破口が開けるようにそう言った。

「ふん、見えすいた挑発だ。俺を怒らせ冷静さを失わせて隙を突こうと考えていたのだろうが、この技を発動させた時点でお前達に勝ち目はない。諦める事だな。」

(思ったより冷静だ。高飛車な態度からもっと短絡的な思考だと思ったんだが、こっちの意図まで読んでくるなんて・・・伊達に西方十勇士の総大将はやってないって事か。」

「さて、そろそろいいか?どうやらお前自慢の仲間達は全員近くに来たようだからな。」

(確かに散り散りになってた京やクリス、そして他のみんなも近くで隠れている事はメールで知らせてきたから近くにいる事は分かっていたが・・・気の探知ってやつか。)

「何だ、俺達が集まってくるのを待っててくれたのか?案外優しいところがあるじゃ無いか。」

「はっ!お前達が何人束になろうと俺に勝てぬ事は目に見えているからな!俺を倒したければ川神百代でもここに連れてくる事だ!」

 ブォンッと石田が刀を振るうと離れた位置にいる俺たちにも届く程強い風圧が吹き荒れた。

(一々尺に触る事を言ってくるな。・・・さてどうするか。京にはいつでも打てるようにメールしてあるし、クリスにも石田の裏を取るようにメールしてある。一子も立ち直ってるし攻め手は多くある。だが今の石田を正面から倒すのは難しいだろう。搦め手、もしくは裏をかくような策で倒すしか無い。まずは京に一射打ってもらって様子を見るか。)

 そう思い京にメールで指示を出そうとしたその時

「ッ!なんだ!?」

 石田が空を見上げながらそう言い放った。それにつられ俺も空を見上げる。するとそこには・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おい義経!予定の場所に着いたぞ!準備は万全だろうな!?」

「勿論だ!義経はいつでもいいぞ!」

(・・・とは言ったもののやっぱりちょっと緊張してきた。ここでもし義経がミスをしてしまったら武士道プランも失敗してしまうかもしれない。)

 緊張感に強いことに自負はあるが、弁慶や与一、清楚先輩、それにタケ兄にも迷惑がかかると思うとほんの少しだが手先が震えてしまう。

(大丈夫だ。さっきも手加減してもらってるとはいえタケ兄相手に打ち合うことが出来ていた。きっと大丈夫!)

 自分に言い聞かせながら立ち上がるとヘリの搭乗口で立ち止まり、降下への心の準備を進める。その間も震えはおさまらず、このまま飛び降りようとした時、

「義経殿、手が震えておりますが大丈夫ですか?」

 タケ兄に声をかけられてしまった。

「だ、大丈夫だぞタケ兄!これは、そう!武者振るいというやつだ!義経は武士だったからな!」

「・・・義経殿。」

「む!そろそろ行かなくちゃいけないな!よし、タケ兄義経は行ってくるぞ!」

 そういい飛び降りようと歩き出すが、進むことが出来ない。タケ兄が義経の手を掴んだからだ。

「タケ兄?」

「・・・はぁ、仕事中はこういう事あんまりやらない事にしようって決めたんだけどな。」

 ぽんっと頭に温かいタケ兄の手が乗ってきた。

「・・・義経」

「へ?」

「いいか義経、お前達武士道プラン組はまだ世間に出てきて日が浅いひよっこだ。そんなお前達に今回の武士道プランでの責任を全部押し付けるわけないだろ?ひよっこが一人前の大人になるまで守ってやるのが俺達大人の仕事だ。・・・だから安心して行ってこい。駄目だった時は九鬼家や俺が何とかしてやるよ。」

 そう言いながら義経の頭を撫でてくれた。

「・・・タケ兄は子供じゃないか。」

「そこは社会人の先輩ってことで許してくれ。」

(懐かしいな。昔タケ兄はよくこうして頭を撫でてくれたっけ。)

 それは懐かしい記憶。まだ自分達が何も知らない小学生くらいの歳の頃義経達が一緒に生活していたタケ兄の後ろを着いていた時の事。タケ兄は義経達が勉強を頑張ったりするとこうやってよく撫でてくれた。それが嬉しくってあの面倒くさがりの弁慶ですら勉強を頑張っていた。

(もう一度島に来た時には今みたいに他人行儀な感じになっていて頭を撫でてもらえなかったけど・・・また撫でてもらえて嬉しい!)

「へへ、タケ兄に頭を撫でてもらうなんて久しぶりだ!」

「・・・そうだな。俺も人の頭を撫でたのは久しぶりな気がする。」

「つまり義経がタケ兄の初めての久しぶりを奪ったということだな!」

「難しいこと言おうとして何言ってるか分からなくなってるぞ。・・・さてともう大丈夫そうだな。行ってこい義経。」

「え、・・・あっ」

 そう言われ震えが無くなってることに気がついた。

「・・・うん、行ってくるぞタケ兄!」

 そう言うとヘリの搭乗口から下を見る。すると金色の光が天に向かって立ち上っているのが見える。それは今から義経が倒す敵が出している気であることが感じられ、もしかしたら負けるかもしれない相手だということが分かる。・・・だけどさっきまであった緊張も不安も無くなった。義経は義経の出来ることをすればいいんだから。

 そう考えるとヘリから飛び降りた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いきなり来てもらって悪かったな。」

「いえ、むしろ俺が感謝したいです。義経に励ましの言葉を送る事ができましたので。・・・本当にありがとうございました、あずみさん。」

 俺はそう言うとあずみさんに頭を下げた。

「構わねぇよ。実際手を借りたかったのは本当だからな。義経との組手なんてお前レベルじゃないとガチになっちまうからな。」

「たしかに軽くですが手合わせしてみて、昔よりレベルが高くなってるのは分かりました。」

「あぁ、義経のやつ短期間でかなりレベルを上げてやがる。あんまりうかうかしてると抜かれちまうぞ〜?」

「ふふ、まだまだ抜かれないですよ。」

「ちっ相変わらず生意気だな。」

「事実を言っただけなので。・・・どうやら決着がついたようですね。」

「ん、もうついたのか?流石に早すぎるだろ。」

「いえ、義経殿の相手である石田三郎はかなりの実力者です。いくら義経でも簡単には勝てない相手でしょう。故に取る対策は飛び降りた際に放つ不意の一撃で決めるか、相手が油断しているうちに超短期決戦で決めるのが最も勝ち筋がある手です。実際石田三郎は大層な自信家らしいので義経ならば問題なく短期で決着がつけられるでしょうから。」

 過去の石田三郎の戦いを調べたが全てが相手に攻撃させてから勝負を決めていた。よほど自分の力に自信があるのだろう。

「ほー義経の相手のことをそこまで調べてたのか〜」

「・・・なんですかニヤニヤして。」

「別に〜なんでもねぇよ」

 そう言いながらもまだニヤニヤしていた。尊敬する先輩だが一撃決めてしまおうか。

「そんなことよりも義経を迎えに行ってやらねぇとな。おい!ヘリの高度を下げてくれ!」

 あずみさんがヘリの操縦士に向かってそう言った。

「駄目です!降下予定地に予想以上に生徒が集まってるので、このままヘリが降りると風にあおられてしまう可能性があります!」

「川神学園の生徒がその程度のことで怪我するとは思えねぇが・・・万が一があるか。しょうがねぇ、格好はつかねぇが拡声器で下の奴らを追い払うしかねぇな。おい神代そこら辺に拡声器がないか?」

「拡声器はありますが・・・俺が行ってきましょうか?」

「ん、降りるのは問題ねぇだろうが、この高さを義経担いで帰って来れるか?じゃなきゃ結局ヘリが降りることになるぞ。」

 下を見ると人が米粒以下に見える。大体だが高度500程度だろう。この距離を義経を抱えてこのヘリまで戻ってくるか・・・余裕だな。

「問題なく戻ってこれます。」

「分かった。じゃあちゃっちゃと行ってきてくれ。」

「了解しました。では行ってまいりますッ!」

 あずみさんにそう言うと俺はヘリから飛び降りた。自由落下の速度に身を任せていると数秒で地上にいる義経の姿が見えてきた。

(どうやら質問責めにあっているようだ。正式なお披露目は後日だから早めに連れ戻した方がいいな。)

 そんな事を考えていると地表が迫ってきたので生徒のいなそうな隙間に目掛けて着地をした。

 ズドーンッッ着地の勢いを特に殺さなかったので音が鳴り響いてしまった。

「しまったな。もう少し静かに着地すればよかったか?・・・まぁ良いか。さてと義経はあっちだな。よっ!」

 着地した位置から義経がいる場所にジャンプした。

「あっタケ兄!」

 着地すると義経がこちらを向きながらそう言った。それに釣られるように周りにいる生徒達と思われる面々もこちらを向いてきた。

「誰あの人!?」

「あれは・・・」

「・・・え?」

「おぉ!その顔は我が兄弟、武命ではないか!久しぶりだな!」

 ガヤガヤと色々と言ってる中で俺が使える主人達の1人がこちらに話しかけてきた。

「お久しぶりです英雄様。歩きながらの挨拶お許しください。現在あのプランの情報秘匿の為に行動中のためこのまま失礼させていただきます。」

 俺は英雄様にそう言いながら義経に向かって足を進めた。

「むっそうか。ならば仕方なし!ふはははは!また後ほど語り合おうぞ!」

「謹んでお受けいたします。それでは・・・義経殿失礼します。」

「わっ!」

 そう言うと俺は義経を所謂お姫様抱っこの状態で担ぎ上げた。

「た、タケ兄!?」

「しっ、お静かに。舌を噛みますよ。」

 義経に忠告をすると足に力を込め上空に高くジャンプした。そのまま上空に上がりヘリのヘリのソリ部分を掴むとヘリができる限り揺れないように内部に入った。

「無事回収完了だな。」

「はい。・・・それとすみませんあずみさん。今日はあずみさんも参加するはずだったのに。」

「ま、上からの命令じゃ仕方ないしな。それに英雄様にも腕利きの護衛が影から見守ってるから安心だしな。」

「・・・この後の処理は俺がやっときますので、あずみさんは英雄様のところに戻って下さい。」

「頼むわ。・・・それよりそいつに言ってやることがあるんじゃないか?」

 あずみさんが義経を指差しながらそう言った。そう言われ義経を見ると目をパチクリしながら俺をみている。

(確かに。ちゃんと役割をこなしたもんな。)

「・・・お疲れ様、義経。」

「っ!・・・うん!」

 義経は満面の笑みを浮かべながら俺にそう言った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あれから九鬼家に戻り自室に帰るとマスコミ関係への情報規制及び必要な情報の拡散。義経達の住民票の獲得。川神学園への転入準備など様々な案件をこなし、気がつくと夜が明けていた。

「んーとりあえず1段落っと。だけどこれから武士道プランが本格始動だから俺も忙しくなりそうだな。」

(義経達だけではなく紋白様も転入するらしいからな。確か紋白様には専属の従者がまだいなかったから誰がつくんだろうか?実力で考えるとやっぱり師匠か?それとも執事力でクラウディオさん?まぁどっちがついても大丈夫か。)

 眠気覚まし用のコーヒーを淹れながらそんな事を考えていた。すると部屋の入り口からノックがした。

(ん?気配はしなかったけど誰だ?・・・候補は数人いるけど最有力は)

 そう考えながらドアを開けると、いきなり足が飛んできた。

「やっぱりーー!」

 俺はその足に吹き飛ばされながらそう言った。

「ふ、この程度止められぬとは一から修行し直しだな。」

「・・・朝っぱらからやめてもらえます師匠?部屋が汚れますし片付けめんどくさいんですよ?」

「そんなことは些事だな。」

「俺は些事ではないんですが!?・・・んで何のようですか?もうやるべき事は終わらせた筈なんですか?」

「何、要件簡単だ。武命、お前は紋白様達と共に川神学園に入学してもらう。」

「・・・えっ俺も?あっ、もしかして紋白様の護衛役ですか?」

「いや、その役目は私一人で十分だ。」

「やっぱり師匠が紋白様の専属従者になるんですか。あれ、じゃあ俺は何の為に?」

「それは・・・当日説明する準備だけしておけ。ではな。」

「ちょっまっ」

 俺が言い終える前に師匠はドアを閉めた。

「・・・準備って何すればいいんだ?」

 とりあえずあずみさんなどに必要なものを聞きながら必死に準備をし、紋白様達が入学する当日を迎えた。




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入学

おっほん!・・・さて今日は集まったのは他でもない。分かってる者もいるじゃろうが昨日より発表された『武士道プラン』に関係する話じゃ。」

 

「おーい大和、武士道プランって何だ?」

 

「昨日の夜からニュースでやってただろ?ガクトは何で知らないんだ?・・・武士道プランは現在の人材難を歴史上の偉人のクローンを使って解決することを目的とした九鬼の一大プロジェクトだ。これくらいは常識として知っておけよ。」

 

「歴史上の偉人ってことは・・・美人の有名人とかか!?」

 

「残念だけど発表された偉人は『源義経』『武蔵坊弁慶』『那須与一』とあと1人はまた後日って話だけど聞いた限りは男の偉人ばかりだったね」

 

「なんだよ〜野郎の偉人ばかりかよ。あ〜、一気にテンション下がったわ」

 

 モロに告げられるとガクトは側から見ても分かるほどテンションが下がっているが、どうでもいい内容なのでほっておこう。それにそろそろ話を聞かないと喝を入れられるからな。

 

「というわけで九鬼家がはじめた武士道プランじゃが、その試験運転として川神学園が選ばれたわけじゃ。今日はその武士道プランに関係する者たちが転校するでの、そのお披露目を兼ねた集会ということじゃ。では、入ってきなさい!」

 

 学長がそういうと数人の人影が現れ、俺たちの前に一列に並んだ。顔を見ると美少女や明らかに学生の年齢じゃなさそうな人がいるが、それよりもなぜか1人の男が気になった。白い髪に赤い眼、執事のような服に身を包んだ俺たちと同じ歳くらいの男。

 

「えーでは、わしに近い順に自己紹介をしなさい」

 

「義経は源義経という!島から出てきて分からないことだらけだが、仲良くしてくれると嬉しい!」

 

 学園長の一言で源義経から順に自己紹介していき、最後に俺が気になっていた男が自己紹介を始めた。

 

「皆様、お初にお目にかかります。私の名前は神代武命と申します。先程紹介されましたヒュームヘルシングと同様、九鬼家従者部隊に名を連ねる者です。以後お見知りおきを。」

 

 そういうとその男は絵になるようなお辞儀をした。

 

“あのひとかっこよくない!!?”

“あの男・・中々出来る”

“うほっ!イケメン!”

 

 そんな事をあの男がすれば女子が黙ってないだろう。実際今も周りの女子達が騒いでいるしな。あと今ゴリラいなかったか?

 

「静粛にッッ!!!・・・全く元気なのは良いが静かにしなさい。それとあと1人いるはずなんじゃが「それについては皆さま方、あちらをご覧ください」

 

 学園長の言葉に答えるようにあの男・・神代が校門側を示しながらそういうと皆つられるようにそちらを向いた。そこにいたのは

 

「ハッハッハ!!九鬼紋白、降臨である!!」

 

 多くの大人が四つん這いなっている上を歩く幼女の姿だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先程の朝礼が終わり、転入生達は一旦職員室に集められると学校生活についての簡単な説明をされ、それぞれの教室に移動することとなった。

 

「神代、お前のクラスはFクラスになる。さらに言うならお前はこの学園に通ってる間は護衛を義務ではなく目標にする。・・・と言う命令が来てるわけだ。」

 

 移動していると師匠からそんな事を言われた。

 

「いや、聞いてないんですがそんな話」

 

「帝様からの直々のご命令だ。断ると言う選択肢は存在しないぞ。」

 

「帝様から?」

 

 普段あまり直接命令などしない帝様が、俺に対して命令したと・・・何か思惑があると言うことか?

 

「ふっ己に課された命令すら把握してないとは、従者失格だな神代。」

 

「元はと言えば昨日の夜にいきなり言ってきた師匠の報連相が出来てないのが問題では?」

 

「己のミスを他人に擦りつけるとは・・・師匠として恥ずかしいぞ。」

 

「よく抜け抜けと言えますね師匠。」

 

「まあまあ、2人共無事に入学出来てよかったじゃあないか。義経はこれから会う同級生達との交流が楽しみだ!」

 

 などと師匠に対して抗議していると義経がそう言ってきた。

 

「それは良かったです義経殿。皆さんには我々からの指令がない場合は普通の学生として過ごしていただきたいですので、他の学生の皆さんと仲良くしていただくと、我々としても助かります。」

 

「ふん、どうでもいいけど早く進んでくれない?邪魔なんだけど。」

 

 俺たちが話していると弁慶がそう言ってきた。

 

「弁慶・・」

 

「申し訳ありません。それでは他の皆さんも待たせていますので少し急ぐと致しましょう。」

 

 弁慶に促され俺たちは歩くスピードを早める。しばらくすると自分達の教室の前に着いた。

 

「神代、ここでお前とは別れるがくれぐれも九鬼家の品位を下げるような行いは避けろ。」

 

「言われなくてもそうしますよ師匠。それでは義経殿、弁慶殿、与一殿、清楚殿・・・それと師匠、良い学校生活が送れますようサポートさせていただきますので、いつでもお声がけ下さい。それではまた後でお会いしましょう。」

 

「うむ!また後でだタケ兄!」

 

「・・・ふん」

 

「あぁ、心配はいらないだろうが兄貴も学校生活を楽しめよ。じゃあまた後で。」

 

「うん!武命君もいっぱい学校生活を楽しんでね!また後で!」

 

「ふん、お前に言われるまでもなく完璧にサポートしてやろう。・・・それと神代」

 

「はい?」

 

「紋白様がお前と会いたがっていたぞ。一通りのことが落ち着いたら一度顔を見せに行け。」

 

「あー・・・了解致しました。」

 

「では我々は行く。せいぜい頑張れよ。」

 

 そう言うと師匠を先頭にSクラスの方へと進んでいった。

 

「・・・さてと、俺は担任の先生殿が来るまで待機だったな。」

 

 異例の大量編入のせいで先生方もバタバタしているようで少し待ち時間が発生しているようだ。

 

「・・・しかし俺だけ違うクラスの編入に、帝様からの命令。何が裏で起こってるのか?」

 

 九鬼家なら外聞がよろしくないが、1人程度のクラスの調整も可能なはず。未然の脅威に対して準備するなら俺もSクラスに編入した方が確実だ。

 

「まぁ、師匠だけでも大丈夫と判断したのかね?あずみさんも同じクラスの筈だし。となると俺がFクラスなのに意味がある筈なんだが、他のクラスの脅威チョックとかか?・・・駄目だな〜分からん。クラウスさんに叱咤されちまう。」

 

 そこから俺は少し現状について考えることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 考え出してからしばらくすると自分に向かってくる歩いてくる気配に気がついた。

 

「Fクラス担任の小島梅子殿ですね。初めまして、神代武命と申します。以後お見知り置きを。」

 

「ああ、話は聞いてるぞ神代。それと私のことは小島先生と呼べ。」

 

「了解致しました小島先生。」

 

「宜しい!では、早速だが自己紹介をしてもらう。私の後ろについて教室に入ってこい。」

 

 俺は小島先生が扉を開けると一緒に入り教団の前に立った。

 

『ねぇ朝のイケメンじゃない!やったー!!うちのクラスに来たんだ!』

 

『てかチョーイケメンじゃん!』

 

『ちっ、またスイーツ共が騒がしいな。』

 

『・・・』

 

 反応は様々ではある。俺に対して敵意を持っている者もいれば、好意的な者もいるようであるが、殺意などの危険な視線や気配は今のところ感じていない・・・ん、あの子は

 

「それじゃあ神代自己紹介しろ。」

 

「はい。皆さん初めまして、九鬼家従者部隊所属、神代武命です。以後お見知り置きを」

 

 いつものように会釈をしながら挨拶を行うと拍手をもらえた。

 

「よし、それじゃあ神代の席は・・」

 

「先生!」

 

 小島先生が俺の席を決めようとすると赤髪の女性が元気よく手を上げた。

 

「なんだ川神。」

 

「川神?」

 

「先生!私、武命君と決闘をしたいです!」

 

 




読んでいただきありがとうございました。


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