ダンジョンに異世界のアイテムを持ち込むのは間違っているだろうか(本編完結) (にゃはっふー)
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第1話・ここから始まるのであった

外伝の12巻でオラリオの冒険者たちも戦うじゃん。なら冒険者全員魔改造してもええやん。

そんな感じで出来上がりました。どうぞ、お付き合いくださいませ。


 どうも俺は転生者です。日本人でコスプレイヤーの人たちやゲーム、アニメ関係で仕事してました。俺もオタクでコスプレはしませんが小道具作りは滅茶苦茶してました。

 

 男でしたが手先が器用で、本職として活動していたら事故で死にました。そして気が付くとあらびっくり。

 

「美少女エルフちゃんに転生してしまったぜ……」

 

 女の子になって色々女の苦労を学びながら、白銀、プラチナと言って良いほど綺麗な白く、銀色に輝く長髪を手入れしつつ、深いサファイヤのような瞳を見ながら、綺麗に仕上げてます。マジで美少女で草。

 

 まあやってる事は女の子らしからぬ仕事してます。鍛冶師です。

 

「よっしゃー、今日も打つぞー」

 

 実は養子な俺、ドワーフの父ちゃんに聞けば親はモンスターに襲われたのだろうか、血まみれで母親が村近くに現れて、自分を託したようです。子供の引き取り手に関しては第一発見者だから自分が引き取ると言って、鍛治師のエルフとして働いてます。親はほどほどに頑固おやじですが仲良しですね。

 

「おう、そろそろ昼飯にするかスピカ」

 

「ほーい」

 

 10にして一人前の仕事ができるようで、まともに働いてはいるが貧乏。まあクワや斧ぐらいしか作らないし、ファンタジー世界特有の武器や防具は時々作る程度ですね。

 

 エルフは自分だけ、後は小人のようなパルゥムと言う種族と人間。後はドワーフだけしか見ていない。

 

 ちなみに名前は『スピカ・シロガネ』。極東生まれのドワーフの家で米喰いつつ暮らしてたんだが、いかんせん金が無い。

 

「父ちゃん、やっぱ俺、オラリオへ行こうと思う」

 

「またその話か……金くらい気にするな」

 

 一応読み書きや一般知識があるのだが、こんな村じゃほぼ意味は無く、オラリオに行けば少しは変わる可能性は高い。

 

 前世で会った事が無いが、この世界には神様たちが暇つぶしに地上に降りていて、神の力を封印し、一部の力を使い、人をモンスターと戦えるほど強化している。

 

 強化された人たちはほとんど神の眷属として、1000年前に蓋をされ封印された地下迷宮、ダンジョンに挑み、富と名声を獲得して暮らしている町があるのだ。

 

「そこなら世界中から人来るから、俺の家族についてわかるかもしれないし、おいしいご飯は腹いっぱい食える」

 

「お前の場合後者だろバカ娘。時々お前がなに考えてるか分からないぞ」

 

 呆れられながら、ふむと考え込む。父ちゃんが心配しているのは、年齢と容姿だ。

 

 神の中にもバカな神はいる。表向きは力を封じたのは人と同じ目線でこの世界を楽しむためだが、全能の力を使えるとつまらないからと言うところもある。

 

 バカな神が力をつけると、面白い者を無理矢理眷属にすると言う話を聞く。自分は見た目美少女なのだ。中身はオタクなオッサンだが、見た目は10の美少女。襲われる可能性は高い。

 

 後は年齢。今年で10歳だが、冒険者になってダンジョンに潜り、モンスターと戦えるかと言われれば微妙だ。迷宮都市に向かうのはほとんど冒険者志願者。年齢も大事だろうな。

 

「………」

 

 父ちゃんはしばらく考え込むが、ふむと考えるのをやめて俺を見る。

 

「はあ、分かった。それなりに準備してからだ。冒険者やその他になるとしても準備は大事だからな」

 

「ああ」

 

「お前のそれの意味も分かればいいな」

 

 それと言うのは、母が持っていたアミュレットらしき紋章だ。こんな村では分からないが、家紋か何からしきの首飾りのお守りを持っていて、これが俺のエルフの家族について分かる唯一の手かがりだ。

 

 まあ正直父ちゃんに育てられたから、生みの親は実感がわかない。ともかく、準備をして迷宮都市へと向かおう。

 

 どんなところか、うまいもんあればいいが、楽しみだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 村にいる父ちゃんと別れの挨拶をしてから町へ、そこから馬車に揺られて数時間。城壁ならぬ市壁に囲まれた都市を見ながら、馬車に揺られる。

 

「次の者!!」

 

 馬車に乗った商人や旅人たちの列に並び、自分の番が来た為に正門から中に入るスピカ。

 

「通行許可証はあるか?」

 

 黒い服、おそらく自由気ままな神の派閥、ファミリアと商人など一般人たちの間に立つギルドの人間らしき人からそれを言われ首を振る。

 

「一応冒険者志願者です、通行許可証は持っていません。問題ありますか?」

 

「いや、君のように冒険者志願者は何百人、何千人もいるからね」

 

 背を向けるように言われ背中を見せると、ランプのような物で照らされ出す。

 

「これは神の恩恵(ファルナ)の有無を確認している。他国や他都市所属の密偵を防止する、検問だ」

 

 魔道具(アイテム)神血(イコル)の反応を見るらしい。確か恩恵(ファルナ)は神の血を利用したものらしいからそれだろう。

 

 問題なしと言われ、魔道具(アイテム)を下ろされた。

 

「冒険者登録をするときはギルド本部に出向いてください。冒険者の説明もそこで受けられる」

 

「団員募集しているファミリアなどもですか?」

 

「ああ」

 

 その話を聞き、門を通るとそこかしこに武装した人たちを始め、多種多様な種族がいた。

 

 村から外れたところで暮らしていたが、エルフもやはりいるんだなと、自分以外のエルフを初めて見ながら、ギルド本部があるバベルの塔へと向かう。

 

 ここで情報を纏めよう。この世界は中世くらいのファンタジーな世界で、モンスターはダンジョンと呼ばれる迷宮から生まれる。地上にいるのは1000年前に地上に出たモンスターが劣化されたものばかり。

 

 神様はその力、神の恩恵(ファルナ)を使い、ファミリアと言う自分の派閥を作り、お金を稼いだりする。

 

 この町のほとんどは神の恩恵(ファルナ)を授かり、モンスターと戦える力を手に入れて、地下迷宮に挑む。命を賭けた博打だな。

 

 さて、そのファミリアに入るには、壁は二つある。年齢と見た目だ。

 

 父ちゃんの言う通り、色目で見る神などはもちろんいるし、この歳で採用される可能性も低いだろう。そもそもモンスターと戦えるか分からない。

 

「まあなるようになれだ」

 

 いざとなれば他のバイトを探そう。世界の中心と言われる町だし、人手不足は多いはずだ。後は家族探しか。これはバベルのギルドの人に聞けば、少しは分かるかな?

 

 そう思いながら歩いていると、突然肩を掴まれた。

 

「ヘイ!!そこのエルフ君っ!!ボクのファミリアに入らないかいっ!?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「ホワイッ!?」

 

 父ちゃん早速ファミリア見つけたよ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 それはある女神のやけっぱちから始まる。

 

 その女神は降りてすぐ、仲の悪い女神と口ケンカをして、神友とも言える鍛冶神の女神に頼み込み、三か月も自堕落な生活をしてから追い出され、その後は下界の洗礼を受けていた。

 

 零細派閥だから誰も入りたがらず、選り好みしていてはいけないと思った女神。何度も何度も断られ、ついにその少女を見つけた。

 

 てこてこと歩く様子に誰だろうと少し観察する女神。自分の背丈より下のショートソードを腰に提げ、荷物がぱんぱんに入ったバックパックを背負ってバベルへと歩く様子に、冒険者志願者とすぐに見抜く。

 

 だから彼女にも声をかけた。結果はもちろん………

 

「えっ、いいんですか?」

 

「ホワイッ!?」

 

 女神の予測を超えて良い返事。すぐにその子をひっ捕まえて、ホームへと招き入れた。

 

 その女神の名前は『ヘスティア』。炉の女神にして、優しき神格者でもある。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 少女スピカはしっかりと不安になるヘスティアから、様々なことを聞いた。自分の所は団員もいない零細派閥であり、ホームはオンボロな教会の地下室。

 

「零細でも土地があるのは凄いですね」

 

 スピカはそう言い、この子良い子だと思うヘスティアは、この子を入れる為に頭を回転させる。まずは恩恵(ファルナ)を授けよう。そう思い、彼女が地下室で荷物を下ろしたところ、ベットの上に座る。

 

「それじゃ、恩恵を授けるから、背中を見せておくれ」

 

「はい分かりました。けどいいんですか? 私が冒険者になる理由聞かなくて?」

 

 あーそれはそうだねーと呟きながら、スピカはともかく、お金を稼げて親探しできれば良い事を告げる。ヘスティアは紋章が刻まれた首飾りを見ても訳が分からず、首を傾げながら見つかると良いなーと思う程度である。

 

 ヘスティアも別段探索も商売も初めてだから、お互いお金を稼げればそれでいい。ヘスティアは派閥の主神として、スピカは団員としてそれらのことを話し終えて、スピカは上着を脱ぎ、ベットに横になり、その上に乗るヘスティア。

 

 イコル、神の血を使い、その背に恩恵を刻む。スピカは自分の身体が神により昇華されているのだが、実感は湧かない。

 

 

 

 そう思っていた。

 

 

 

 刻まれていく瞬間、スピカは膨大な知識の海に投げ出されたような気分になる。

 

 宙に浮き、無数の言葉、この世界の言葉はもちろん、日本語や英語、知り得る限りの言葉が行きかう空間に浮かび、おーと歓声を上げそうになりながら、スピカは知識の中にいた。

 

 初めての恩恵だが、こんな事にはならない。それを知らない二人はスピカの変化に気づかず、恩恵を刻むヘスティア。知識の波に揺られるスピカ。

 

 そして刻まれたものに、ヘスティアは驚愕する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカ・シロガネ Lv1

 

 力・I0

 

 耐久・I0

 

 器用・I0

 

 敏捷・I0

 

 魔力・I0

 

 ・鍛冶I ・神秘I ・魔導I 調合I

 

≪魔法≫

 

【】

 

【】

 

【】

 

≪スキル≫

 

竜物語創造者(ドラクエビルダー)

 

 ・あらゆる道具、武具の想像、創造が可能

 

 ・成功率の把握 ・神秘、鍛治、調合アビリティ獲得

 

 ・道具製作に経験値(エクセリア)獲得

 

精霊加護(リュミエール・スピリット)

 

 ・魔力アビリティ強化 ・魔導アビリティ強化 ・魔導アビリティ獲得

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!」

 

 ヘスティアは混乱した。神秘、鍛治、魔導、調合のアビリティは【発展アビリティ】だから。力などの【基本アビリティ】と違って、これらはランクアップ、レベルが上がらないと習得できないのに、この子はスキルで習得してしまった。

 

 さらに【精霊加護(リュミエール・スピリット)】。これは精霊の加護だ。少なくともこの子は精霊と縁深い者、または血縁者である証拠。それでいまではなんとなく精霊の気配を感じる、気がするヘスティア。

 

 ぼーとするスピカに色々聞くと、意識が定まっていないスピカは、自分が転生者で元男だと言う事を言ってしまい、それに驚愕する。

 

(転生者って、いつの時代だよッ!?大昔ですら問題になるぞ転生させてる神はなにしてるんだよ!? なにより異世界だって!?もうその情報だけでお腹いっぱいさ!!)

 

 この子が他の神に見つかれば玩具にされる。そう思うヘスティアは意識を覚醒させ、スピカに警告する。

 

「それじゃ、この【竜物語創造者(ドラクエビルダー)】は?」

 

「あっ、それ知ってます」

 

 それは前世の彼がこよなく愛したゲーム、その世界観に出て来る物作りのエキスパートと同じタイトル。それになんとなく色々作れる気がする。そう思うスピカ、これほど驚く事は無い。

 

 いまの自分なら、本物のゲーム、アニメの物を作れる気がする。いや、できると確信している。

 

「ふむ、となれば、ボクは切り札を切るしかないようだ」

 

「切り札ですか?」

 

「ああ」

 

 それがこれから活動するヘスティア・ファミリアの、ぶっ飛んだ方向に進むと知らず、ヘスティアは微笑み、スピカは安堵する。

 

「ヘファイストスに聞こう♪」

 

 そして巻きこまれる女神が一人いた………




色々背負う主人公。見た目美少女ですが、丁寧語で俺っ娘です。

それではお読みいただき、ありがとうございます。


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第2話・鍛治神との出会い

最初だから続けて二話。ロリエルフにTSしたコスプレ小道具作りしていた男性日本人。ヘスティアの眷属になり、物作りの力を手に入れた。

だが使い方が分からず、とりあえずヘスティアに言われるがまま行動する。


 ヘファイストス・ファミリアはオラリオで最も有名な生産系ファミリアである。もはやブランドと言って良い、鍛治師、スミスの頂点に君臨する派閥として有力候補の一つであるこの店に、スピカとヘスティアは顔を出した。

 

「凄いですね。一本安くても3000万ですよ」

 

「正直ここに来て後悔し出したけど、ここまで来れば後は聞くだけさ。行こうスピカ君っ、新たなステージへッ!!」

 

「分かりました」

 

 そう言って店の奥へと案内され、主神がいる部屋へと通された。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 赤毛で右目に大きな眼帯を付けた女性は、褐色肌で同じように眼帯を付けた女性と共に、書類を整理していたところ、団員から話を聞き、なにかしらと首を傾げた。

 

 彼女は火の女神と呼ばれる鍛冶神『ヘファイストス』。そのファミリア団長『椿・コルブランド』。

 

 話の内容を聞き、団員ができたから報告にでも来たのかと思い、中へと通した。

 

「ヘファイストス~、スキルで【発展アビリティ】がでたんだけど、これってどうすればいいかな~?」

 

 そしてすぐに後悔した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そうヘスティア様が口にすると、ヘファイストス様らしき人はわなわな震え、ヘスティア様にお説教を始めました。

 

 曰く、ステイタスは同じ派閥の者でも内容を話すのはタブーらしく、他派閥の自分に話すのは何事かと怒っている。

 

「しかもなに!?話を聞けば間違いなく【レアスキル】じゃないの!? そんなものを簡単にしゃべってこの口はあぁぁぁぁ」

 

「ごめんなさいごめんなさいっ」

 

 頬を引っ張られ、ガミガミ怒られるヘスティア様。それに震えていると、団員らしい人、幹部か何かだろうお姉さんがこちらを見る。

 

「手前の名は椿・コルブランド、話を聞けばお前さんの事か?」

 

「はい、鍛治、神秘、魔導、調合のアビリティが生えて」

 

「椿何聞いてるの!?あなたも答えない!!」

 

「すいませんっ」

 

「少しくらい良いではないか」

 

 しばらくお説教をした後、はあとため息をつき、椅子に座って真面目な顔をする。

 

「それで、その子の名前は?」

 

「スピカ・シロガネです」

 

「鍛冶と魔導、調合って……それだけでも珍しいのに、神秘まで……」

 

 ヘファイストスの話では、神秘のアビリティ持ちは5人もいない。いまいて有名なのは【万能者(ペルセウス)】と言う人だけ。

 

「とりあえず、スキルで物作りが簡単になるか、強力な物を作れるスキルですね。まだ分かりませんが」

 

「物作りのスキル、ね……確かに、魔導や鍛治は、幅広く使えるし、神秘なら特別な魔道具(アイテム)も作れるわ」

 

「面白そうだな、一体何が作れる?」

 

「材料を見ないと」

 

「よし」

 

 そう言って俺を担ぐ椿さん、えっと思いながら、ヘファイストスは驚いた顔で立ち上がる。

 

「ちょっ、椿っ!?」

 

「手前の物ならば文句は無いだろう。その四つで物作りする者は少ないからな。少し見せてもらおう。こっちだこっち」

 

「ヘスティア様ーーー」

 

「わーーースピカ君ーーーーー」

 

 俺は椿さん(団長であることを聞き)に攫われ、このまま彼女の工房に連れてかれた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「さあとりあえず用意できる物は用意したぞ、なにか作れるか?」

 

 そう言って鉱石からモンスターの一部らしい材料を並べられ、ヘスティア様共々戸惑う俺ですが、正直に言う。スキルの効果使ってみてええええ。

 

 名前はまんまドラクエだけど、別に他作品の物も作れそうなスキルの効果に、俺は前世の、レプリカを作って売っていた頃を思い出す。それを考えると、正直本物を作ってみたい。

 

 鍛冶師としても父ちゃんに鍛えてもらったし、これらの材料で何か作れないかと見てみると………

 

「ッ!?」

 

 その時、視界が知識の波に埋め尽くされ、頭の棚、そんな物からいくつかの道具のレシピが頭から引っ張られた。

 

「これなら『はやぶさのけん』が作れます」

 

「おー」

 

 ヘスティア様が驚く中、椿さんはどんな物か聞いてくる。頭の中のレシピには木刀のような軽さを誇り、二度斬る事ができる細剣であると分かる為、そう説明する。その頃にはヘファイストス様もやってきて話を聞いている。

 

「なかなか面白そうだ。いまこの場で作れるか?」

 

「えっと……」

 

 その時、頭の中でセレクト、選択肢のようにこんなものが浮かぶ。

 

 はやぶさの剣・改 成功率10%

 

 はやぶさのつるぎ至高 成功率10%

 

 はやぶさのつるぎ優良 成功率15%

 

 はやぶさのつるぎ良質 成功率20%

 

 はやぶさのつるぎ並み 成功率30%

 

「頭の中で数値化されて、一番低い品物作るのに30%の確率でできます」

 

「できるかどうか数値化できるのね」

 

 ヘファイストス様が驚き、えーとつまらなそうな顔をする椿さん。

 

「一番出来が良い物でないのか?」

 

「それだと10%でほぼできません」

 

「なんじゃたわけ、10%もできるのではないか。ならそれで作れ、この材料で」

 

「へ?」

 

 さすがに驚くと、ため息をつき椿と声をかけるヘファイストス様。

 

「別にここに在るのは確かに良質で材料としては第一級じゃ。それでもスキルでどんな物が作れるか見てみたい。最近、どんな武器を作っても同じに見えての、刺激が欲しい」

 

 そう本音を言い、さあさあ作れと迫る。

 

「へ、ヘファイストス~」

 

「ごめんなさい、こうなると完成するまでやめないわこの子」

 

「え~」

 

 俺は驚きながらも、仕方なく決意する。

 

「それじゃ、せめてホームにある道具で作らせてください。冒険者に成れなかった時に備えて、鍛冶屋でも働けるよう、道具があるので」

 

「お主も鍛冶師か?」

 

「田舎でクワや斧ぐらい、時たまに剣作る程度でしたけどね」

 

 そう言って急いで取りに出向き、金づちを装備して工房に来ると、竈に火を入れてすでに準備万端だった。

 

「はあ、よし、やってやる」

 

 それからしばらく打ち続けた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 運がよかった、その一言に尽きる。

 

 ヘスティア・ファミリア、彼らが平凡にぼーとしていられるのは、ひとえにこの言葉に尽きる。

 

 まずはスキルを教えたのが善神でもある人格者、ヘファイストスと、その団員の椿である事。

 

 次に椿の工房近くで人が来なかった事。これもまた運がよかった。

 

 そして次は二人が危険性に気づき、また武器生産の発展に大きく関わるとすぐに見抜いた事だろうか。

 

「できたーーーーっ!!」

 

 16回目の製作に汗だくなエルフが一人いる。サラシを巻いていて、必死に戦い、できたのははやぶさの剣・改。それを見ている椿は、やばい笑顔でその刀身を見ていた。

 

「これは確かに、使われた金属の重みを感じぬ……精々が木刀くらいとは、しかし第一等武装とは言えぬ。だが十分の出来にはなっているな」

 

「失敗した武器は、どちらかと言えば魔剣の失敗作みたいね」

 

 そう呟きながら、失敗したがらくたのつるぎを見て、ヘファイストスは感想をこぼす。

 

「おかしいな……頭くらくらする」

 

「わああ、す、スピカ君大丈夫かい!?」

 

 これはのちに気づかれるが、スピカは精神力、マインドを消費して武器を作っている。ただでさえ集中力が必要な鍛冶に、魔力を食われているスピカ。しかもこの時、限界ギリギリであった。限界を迎える前に成功した奇跡もまた、運がよかった。

 

 水を飲み、一息ついたところで、試し切りを椿がする。

 

「ッ!?」

 

 椿が意気揚々と薪を用意して剣を振るうと、ブオンと空気が鳴り響く。

 

 薪は二度斬られていて、椿は一振りのつもりが二度振っていたことに気づき、これは魔剣か何かかと思いながら、穴が開くまで見続けた。

 

「これは手前もこうしちゃおれん。いや良い物を見させてもらった、これはお主にやろう」

 

「いいんですか?」

 

「手前は手前の物があるからな、ガラクタも熱で溶かせばまあ駆け出しの足しにはなるだろう」

 

「お、お金は……」

 

「別にいいわよ。それよりヘスティア」

 

「は、はい」

 

 驚きながら両肩を掴まれるヘスティア。ヘファイストスは笑顔ではっきりと告げる。

 

「この子の武器は特別だから、何か作るのなら私か椿、いいえ椿も危ないから私を通しなさい、良いわね。それとこの子のスキルは隠せるところまで隠しなさい」

 

「は、はいっ」

 

 こうして新米コンビはヘファイストスの所を後にする。ちなみに剣はまだ預かるヘファイストス。

 

 これからする緊急会議に必要だから。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「なっ、なんですかこれ!? 一振り振っただけなのに!?」

 

「新しい魔剣か何かですか?」

 

「けど壊れる様子は無いぜ。何よりこの硬さ、武器としてしっかり機能してやがる」

 

 そうだろうそうだろうと椿は嬉しそうにはやぶさの剣・改を見ながら、質はともかく、その機能性にヘファイストス・ファミリア幹部全員が驚いていた。

 

 硬さから耐久値を考えれば第三等か第二等武装くらいだろうそれは、明らかに普通では無い力を持っている。

 

 もう一つ、ガラクタのつるぎを見て、椿が考え込む。

 

「ふむ死んでいる。もうこれは再利用しても、精々駆け出しの武器くらいしかならないだろうな」

 

 金属として全て死んでいる。第一級武具を作れる材料が軒並み、駆け出しの武器に再利用するしかないのだ。正確に売るとしたら赤字決定なのだが、それはいまは置いてかれている。

 

「他にもこんな武器作れるのか? あの女神様の眷属は」

 

「ウチにスカウトしますか? 明らかにヴェルフみたいなものでしょうこれ」

 

「そうしたいけど、あの子の初めての眷属だから、奪い取るのはできないわよ。それに駆け出しを贔屓するのもできないわ。だけどあの子たちどこかスキルの凄さに気づいて無さそうだから、こっちが手綱握らないと」

 

「ゴブニュのとこには気づかれたくないな、正直」

 

「この金属でどうすればこんな軽くて丈夫なのを……」

 

「もう一本作らせるか、手元に資料として欲しい」

 

「なら他の材料を見せましょう。他にも面白い物作りそうですぜ」

 

「鍛冶業界に、新しい風が来ている……」

 

 そう話し合う中、ヘスティアとスピカはバベルでの登録を終え、ダンジョンに於ける知識を身に付けた後帰り、ジャガ丸くんをほそぼそと食べていた。

 

「あの金属で、どれくらいお金使ったんだろ……」

 

 スピカの不意の言葉に、気にするんじゃないとヘスティアは熱弁する。彼らは知らないが、第一級の材料も高い。安くてもかなりの値打ちだろうと理解はしている。

 

 どぎまぎしながらヘスティアたちは眠り、ヘファイストスのところでは、如何にどう運搬し、自分たちのところで技術的利益を手に入れるか、朝まで話し合ったと言う………




ここから冒険者たちはパワーアップし出す土台はできた。

お読みいただきありがとうございます。


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第3話・それから月日は流れて

文字数は少なく、変わりに少しはやめに投稿。感想評価募集しております。


 はやぶさの剣・改を作ったスピカはいつの間にかヘファイストス・ファミリアのサポートを受けるようになった。

 

 本人たちはレクチャーされつつ、できた物を見たいんだろうなーとしか考えていないため、ヘファイストスは逆に心配になりつつも自分の欲求、下界の可能性の一つである未知の武具に思いをはせていた。

 

 まずヘファイストスがしたことはある鍛冶師と出会わせる事だ。その鍛冶師の名前は『ヴェルフ・クロッゾ』。魔剣鍛冶師で貴族の出だ。

 

 ここで【クロッゾの魔剣】について説明しよう。初代クロッゾがかつて精霊を助けた時、お礼に血を分け与えられたらしい。その所為か初代クロッゾは魔法が使え、その子孫は魔剣を打つ事ができた。

 

 魔剣の多くは魔法の代理品であり、消耗品である。だが【クロッゾの魔剣】はオリジナルと言える魔法を超えるほどの威力、海を割くほどの力を持っている。

 

 子孫たちはそれをある王国に献上する事で貴族の地位に上り、鍛冶貴族として繁栄していた。

 

 だがエルフの森をその王国が魔剣で薙ぎ払い、灰塵にした時、魔剣が次々に砕け、王国はエルフの報復で弱体化。クロッゾ家も地に落ちる。

 

 そんなクロッゾの出のヴェルフだが、なぜか彼だけ神の恩恵(ファルナ)を得たら魔剣を打てるようになった。オリジナルを超える魔剣を。

 

 ヴェルフは魔剣が嫌いだ。使い手を残し砕け散る魔剣が嫌いだ、魔剣の力に溺れていく者たちを見るのが嫌いだ。そんなこともあり、親族の声を無視してオラリオへと亡命と言う形で流れ着いた。

 

 そんな彼にスピカの面倒を見るように指示したヘファイストス。すぐに彼を含めた幹部たちの会議に新たな情報が舞い込む。

 

「ヘファイストス様、あれはなんなんですか?! 魔剣じゃない、けど火を出す剣なんて」

 

「落ち着きなさいヴェルフ」

 

 スピカがはやぶさの剣・改以外に作ったのは【ほのおのつるぎ】である。これは良くて第三等武装程度の品物だが、オラリオの鍛治師(スミス)たちの度肝を抜く物であった。

 

 魔剣のような効果を持ちながら、ただの剣として使用できる武器。火を纏い、相手を斬るのだ。付加魔法無くそんなことができる物に、彼らは息を飲む。

 

 ヴェルフがその完成品を見せてもらったとき目から鱗だ。自分が求め、望んだ武器が意図も容易く目の前に出来上がったのだ。

 

 悔しいと言う思いより、俺にも作れないかと言う欲求が先に声に出た。

 

 出来上がったほのおのつるぎはよくてけん制する程度の火を放つ程度。それでも彼女スピカはまだ色々作れると聞き、ヴェルフは驚いた。

 

 スキルの力とは言え、それはこの世に、ここにある。ならば自分にも作れるはず。ヴェルフの心は一気に闘争心へと変わり、穴が開くほどほのおのつるぎを見てここにいる。

 

「感覚から言えば、俺のスキルみたいなものだと思います。魔剣を作る俺のスキル」

 

 いま優先するのはほのおのつるぎのような武器を打ちたいと言う欲求。それがヴェルフを饒舌にさせる。曰く、自分のスキルのようにスキルの力を借りて魔剣を作っているように、スピカは物を作っていると。

 

「たぶん、無自覚ですね。ですけど精神力(マインド)を使用して作る辺り、俺たちだと工夫する必要が出ます。ですけどそれだけですッ、それだけであの武器ができたんだ!!」

 

 ヴェルフの言葉にヘファイストス・ファミリアは一丸となり、ヘスティア・ファミリアを囲む事にした。

 

 まずは武器製造だが、これはヘスティアたちはヘファイストスの所を借りなければいけない。材料もそうだ。成功作が生まれるのに時間と資金がかかり過ぎているが、全体的に見てヘファイストスはプラスになっていると確信している。躍起になって周りの鍛冶師の質が上がっているのだ。

 

 安い物も彼らは自腹で材料を集めて作って売っている。売っているのは駆け出しの鍛治師(スミス)たちの売り場であるフロアだ。

 

 スキルの影響か、質は一定の【てつのつるぎ】や【はがねのつるぎ】を売っているスピカ。他にも【やいばのたて】や【やいばのよろい】なる物を作るが、これは研究用に買い取った。

 

「やはり上層と中層の材料だけじゃ、あまりド肝を抜く物はできないな」

 

「だけど深層や下層の材料に触ろうとしないぞ」

 

「困った事に金を気にしているからのう……いつか金を払わないといけないと尻込みついとる。困った奴らだまったく………」

 

「そらそうだろう……」

 

 椿の言葉にヴェルフは呆れた。実はスピカと一緒にダンジョンに潜ったのだが、はやぶさの剣・改の質に舌を巻いた。他にも同伴するヘファイストス・ファミリアの団員がいるが、ほとんどがはやぶさの剣・改を見る為だ。

 

 休憩中見せてくれたり、Lv2以上の冒険者は手入れまでさせてもらい、穴が開くほど見たりしている。すでにある武器が見たいが、幹部たちがほのおのつるぎなど独占しているから見られない。ここしか機会が無い。

 

 不安がるヘスティアを無視して作らせたが、どれもいまのオラリオに無い方法で作られた武器に、ヘファイストスもしばし運営する者では無く、鍛冶師として日々を過ごした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そんなこんなで、それなりの長い月日が過ぎていく。その頃には迷宮都市(オラリオ)には不思議な噂が流れ出した。

 

 曰く、炎を纏う剣がある。

 

 曰く、魔法を秘めたコインがある。

 

 曰く、ヘファイストス・ファミリアが不思議な武器を作っている。

 

 曰く曰く曰く――………

 

 そんな噂に暇を待て余す神々が動き出したり、噂を引っ掻き回したりしていた。

 

 その中でそろそろ、スピカの特異性が表に出始めている。

 

 はやぶさの剣・改を遠巻きに見た冒険者から、ヘスティアがヘファイストスに泣き付いて作らせたと言う噂が流れ出した事に、ヘファイストスは考え込む。この噂は明らかに、自分の所に隠している武器の噂も混じっている。このままだとバレるし、さすがにヘスティアにいらん風評被害が出て可哀想だし、出所がバレるだろう。

 

「というわけで、ヘスティア。今度の神会(デナトゥス)で公になると思うわ」

 

「なにがというわけだい裏切り者ーーーーっ!?」

 

 ヘスティアはついに自分たちがうまく扱われている事を説明され、文句を言う。スピカもやっぱりかとため息をつき、おかしいことに気づく。時間は一年もかかったが。

 

「いつも高い材料見せて、なにかできないか聞いて来たけど、自分たちのためだったのかい!?」

 

「これが下界を生き抜くコツよヘスティア。まあ私情があったのは認めるわ」

 

 魔剣に近い効果を持つ武器たち。魔剣と分ける為に【魔道武具(マジックウェポン)】と(ヘスティアたちは知らずに)名付けられた。

 

「【魔道武具(マジックウェポン)】も大手の派閥に売り込むのヘスティア。少なくとも味方を増やさないと、スピカちゃんがどこかの誰から引き抜かれるわ」

 

「それは困るけど、ヘファイストスの所為じゃないかな?」

 

「まあ、俺もできそうな物作りましたし、責任はこちらにもありますよ」

 

 スピカは【みずのはごろも】など、衣類や防具も作り、大いにスキルを楽しんだ。主にそれらは研究材料としてヘファイストス・ファミリアが回収している。

 

「それで大手って、誰に売り込むんだい?」

 

「うちやうち」

 

 そう言い、朱色の髪の女神と、金色の長い髪のヒューマンが入り込む。その様子にスピカは驚き、ヘスティアはげっと驚く。

 

「ろ、ロキ!? まさかロキのところに売り込んだのかいヘファイストスッ!?」

 

「ロキはオラリオでフレイヤを除けば都市最強じゃない。彼女のところと懇意していると知られれば、手を出すバカはいないわよ」

 

「くっそーーーなんでこんなかわいい子がドチビのところなんや。ファイたんとこに鞍替えすればええのに」

 

「だ、ダメだダメ、スピカ君はボクの眷属なんだーーーっ!?」

 

 泣きながらスピカを抱きしめるヘスティア。スピカもそれに抱きしめ返す。

 

「さすがに俺も無理です、やはり最初に声をかけてくれたのはヘスティア様ですし」

 

「そうか残念。なら、商売の話をしようか」

 

 ロキはすぐに切り替えて、欲しい物を言う。それは、

 

「スピカたんが持っとるはやぶさの剣・改、しかも第一等武装か第二等武装に該当するレベルの品物や」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

 スピカは戸惑い、大声を上げる。それはこれができたのはスキルのおかげで、自分の実力なんてこれっぽっちもないのを自覚している、自力で作れるか分からない。しかも第一級レベル。

 

「で、できると思うかい?」

 

「無理ですよ。材料が勿体ないっ!」

 

「やっぱりそこね、まあ分からなくはないわ」

 

 ヘファイストスも、材料に妥協しないため、その材料不足には常日頃頭を痛めている。それをぼかすか使わせる気は無い。

 

「けど安心せえドチビ。材料があればチャレンジするんやろ?」

 

 確かに、材料費と言う問題が無ければチャレンジしてもいいだろう。それを聞いてロキを見直すスピカ。

 

「まさか」

 

「私が材料を集めてきます」

 

 そう言うのはロキの眷属であり、スピカすら知る有名人。その二つ名【剣姫】『アイズ・ヴァレンシュタイン』である。彼女が欲しがっているから、買う事に決めたらしい。

 

「話を聞けば、物凄く珍しいやないか【魔道武具(マジックウェポン)】。割引も含めてくれれば、ドチビはともかくスピカたんは守ってもええで」

 

「できれば主神も守って欲しいんですが」

 

 そんな会話をしながら、スピカは渋々承諾。はやぶさの剣・改、それも優良な物を製作が始まる。材料はヘファイストス側が肩代わりしたり、アイズたちロキ・ファミリアが入手したりと、条件を決めたりする。

 

 正直断る事は、もしかしたら妙な派閥が自分を無理矢理引き抜くだろうと脅され、断る事ができない。

 

 スピカは戦々恐々しながら、できるかなと自信なく、窓の外を眺めていた。




一年間で作った武器、防具、道具を多く作っていますスピカ。本人は魔剣があるから珍しくないと思い、使えば無くなるが魔法が放てる聖剣伝説の道具も作ったりしてます。

基本的に作ったのはドラクエの店で売られたり、代理品っぽい素材で作れるアイテムが多いですね。スピカは10や11のドラクエ武器なども作れますから、ビルダーズ含めて、オラリオにはチートな品物をたくさん作り、ヘファイストスは裏で研究材料として確保してます。

次回、アイズがはやぶさの剣・改を手に入れる話です。では、お読みいただきありがとうございます。


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第4話・変わり出す業界

ヘファイストスの下で好き勝手物作りをしていたスピカ。ついに暇な神々に存在がバレかけ、バレるのなら仲間が必要と、ロキと接触。ロキはアイズが個人財産からはやぶさの剣・改が欲しいとのことで、それの最も優良な物を買い求む。

スピカたちは流されるままに了承して、これから製作を開始するところであった。

ランキング見てたら短編と連載別々じゃんか、短編日間ランキング1位ありがとうございますッ!!


 とんでもない事になった。ヘスティアはそう思うが、大事な眷属の為に頑張ると心に決めた。少なくともそれくらい大切な家族になったスピカとヘスティア。

 

 今日も地下室で恩恵を更新する。ヘファイストス・ファミリアの人と共に潜り、かつ道具製作で経験値(エクセリア)を獲得するスピカはこんな成長をしている。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカ・シロガネ Lv1

 

 力・B791

 

 耐久・E402

 

 器用・B788

 

 敏捷・D559

 

 魔力・A820

 

 ・鍛冶H ・神秘G ・魔導H ・調合I

 

≪魔法≫

 

【】

 

【】

 

【】

 

≪スキル≫

 

竜物語創造者(ドラクエビルダー)

 

 ・あらゆる道具、武具の想像、創造が可能

 

 ・成功率の把握 ・神秘、鍛治、調合アビリティ獲得

 

 ・道具製作に経験値(エクセリア)獲得

 

精霊加護(リュミエール・スピリット)

 

 ・魔力アビリティ強化 ・魔導アビリティ強化 ・魔導アビリティ獲得

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 なんともこの一年で妙な育ち方をした。いまだ伸びてはいるが、耐久と敏捷が下で、力と器用が二番目、一番はやはり魔力である。薬の調合などしていないから一切上がらず、神秘、鍛治、なぜか魔導に経験が入る。ヘスティアは首を傾げた。

 

「まあ一年だとかなり早いペースだけどね、ここまで来るのに」

 

 常識をヘファイストスに教えられたヘスティア。神の恩恵(ファルナ)のロックの仕方を教えてもらったりと色々だ。

 

「まあロキの所だし、材料は向こうで手間賃はもらえる♪ 気楽に行こう」

 

「はあ……」

 

 スピカはそれでも気が重い。高価な材料がくず鉄と変わらないほどになるのを実感するからだ。

 

 それでもやるしかない。すでに確定していなくても噂が流れ出して、自分を特定する、または関わっている噂まで流れているのだ。時間がない。

 

 そんな話をしながら、ヘスティアは話題を変える為に、別の話をし出した。

 

「それより、親御さんの情報は集まったのかい?」

 

「いいえ、全然ですね」

 

 それに首を振るスピカ。紋章の首飾りについての情報は無い。ヘスティアはそうかと残念がり、スピカは気にせずに気合いを入れる。

 

「優良のはやぶさの剣・改を作る為、気合いを入れて頑張ります」

 

「まあほどほどで良いよ、ほどほどで」

 

 気合いを入れてスピカは宣言し、気にする必要無いと楽観視しながら微笑むヘスティア。むしろロキに大金使わせてやるといじわるなことも考えている。

 

 そんなことを考えるヘスティアであるが、数日して反応が変わるとこの時は知らなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「もう材料もらっても二度としないぞ!!」

 

「藪から棒になんやねん」

 

 ヘファイストスは呆れてため息をつき、ロキは首を傾げ、椿は苦笑いをする。

 

 ヘスティアは涙目でこの調子だし、スピカの眼は死んでいる。ロキはますますわからず、アイズと共に席に座る。

 

「日々高価な材料ががらくたのつるぎになる様子を見て、お金をどぶに捨てているようで精神に来たようよ。これで出来上がったのが13回目だからね」

 

「ああそうか、普通に計算したら億は軽く届いてるからな」

 

「頑張って潜らないと………」

 

 アイズは小さく決意してロキは納得した、内心貧乏性めと思いながら。値段からすれば失敗作を含めれば、ヘスティア・ファミリアが数十回破産しても足りない値段になったのだ。

 

 ヘスティアは最初の内は気にしなかったが、スピカ共々、いつ請求されるか分からない恐怖に胃を痛め、ついに5回目当たり成功するようにヘスティアは神に祈り出すと言う光景を作る。

 

 ヘファイストスから話を聞いて、かなりの値段になると踏んだので仕方ないとロキは納得している。出すのもアイズ個人のお金だ、アイズが文句が無ければ文句は無い。

 

「それで出来は?」

 

「おおこれだこれ、自分から見ても優良、第一等武装として文句なしだ」

 

 先ほどまでヘファイストス含め、ファミリアの鍛治師(スミス)一同が息を飲み見ていた武器をロキたちの前に出す。

 

 一見すればスピカが持つはやぶさの剣・改と変わらないが、鍛治師(スミス)の眼からすれば優良と平均の違いははっきりと出ている。良い材料を使い、鍛冶師の腕もここ一年で上がったスピカの会心の出来だ。それを受け取り、早速外に出て剣を振るうアイズ。

 

 建物の外、少し開けた場所で用意をし出す。その様子は建物の中や遠巻きに駆け出し玄人含めた鍛治師(スミス)全員が見守る。

 

「斬るのはこれで良いだろう」

 

「なにげにがらくたのつるぎやな。鉄やけど斬れるん?」

 

「斬れる。少なくともそれくらいの腕が無いと奪い取る」

 

「頑張ります」

 

 椿は斬れると断言し、アイズも気合いを(見た目変わらないが)入れて、はやぶさの剣・改を抜いて試し斬りをする。

 

 ヴェルフたち駆け出しが息を飲む中、アイズの手元がブレた(・・・)

 

「は?」

 

 次の瞬間、空気が鉄で斬られたような甲高い音を立てて、それと共にがらくたのつるぎが四度(・・・)斬られた。

 

 それにロキも驚き、アイズも無表情ながら驚く。

 

「すっごく持ちやすくて、斬れる」

 

「まさか二度ではなく、四度とは。第一級冒険者とはやぶさの剣・改の特徴が相まってここまでとはな」

 

「これなら大金吹っ掛けられても文句出せへんな。んじゃま、次は支払いやな。ほれドチビ、6000万ヴァリス」

 

「こ、これがヘファイストスを通してボクのファミリアに入るお金……材料を補てんしてたヘファイストスの下に入るお金含めて何億ヴァリスに……」

 

「余計な事考えるなめんどくさい」

 

 震える小鹿のように袋を受け取るヘスティア。全体の値段であの剣にいくらかかっているのか思考が停止する。

 

 その様子を見ながら、ロキとヘファイストスはこそこそと話し合う。

 

「あの様子じゃそう簡単に深層や下層の材料に手を伸ばさないわね」

 

「うちもぽんぽんそう無駄金出せへんし、もう少し安定して欲しいから、可能な武器購入するか。その辺どうなってるん?」

 

「そうね、武器じゃないからウチじゃ意味ないけど、魔力が籠ったコインがあるの。それは消耗品だけど、使えば魔法みたいな現象を起こす道具。それでいいかしら?」

 

「なにしらっとその辺の魔道具作り(アイテムメイカー)がぶっ飛んで来そうなもん作っとるねん。それは買いやな」

 

「しばらくしたらあの子にいらなくなった工房をプレゼントするわ。うちの工房を使っているのも嫌がってるし、これで………」

 

 囲むのにロキまで加わり出し、それに気づかないヘスティアは、大金をどこに置くか思考の海に沈んでいく。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 こうしてロキまでスピカの【魔道武具(マジックウェポン)】に手を出して、神々の間に噂がはっきりと流れ出す。

 

 ヘスティアの眷属は魔剣並みの不思議な武器を作り出す。

 

 もうこの噂が流れる頃、いくつかの鍛冶師ファミリアはヘファイストスを軸に協力関係を築いていて、バカなファミリアに目を光らせていた。

 

 ロキの所は第二等武装クラスの武器は手に入らないが、スピカのお得意様になった。主に買うのは安定し出した【ほのおのつるぎ】をはじめとする属性武器だ。

 

 通常の魔剣は使えばいずれ壊れる消耗品であるが、スピカが作る【ほのおのつるぎ】と【いなずまのつるぎ】などや、両手武器などでは【ふぶきのオノ】など。

 

 スピカの作る【魔道武具(マジックウェポン)】は武器として使用すると、火属性や氷属性でダメージを与える為、魔法とは無縁の冒険者たちがこぞって買いに来る。

 

 なにより道具として刻まれた【神聖文字(ヒエログリフ)】を詠唱すると、魔法よりも劣るものの魔法のような現象を起こす。しかも壊れないし、詠唱は買い手が決める辺り好評だ。

 

 いまのところ威力不足以外問題は無く、多くの鍛治師(スミス)や娯楽に走った神が飛びついている。神もまた使用可能なのだ。

 

 さらに【大地のコイン】や【氷のコイン】などの魔法を秘めた魔道具(アイテム)に、冒険者たちは驚愕を通り越して唖然となる。

 

 一度切りの完全な消耗品であるが、魔法を行使する事ができる魔道具(アイテム)。魔剣よりも消耗するが、それでも飛ぶように売れた。

 

 いま迷宮都市(オラリオ)鍛治師(スミス)はその威力を平均の魔剣並みに上げた物を作ろうと躍起になっている。スピカが材料探しに出向いて見つけた【魔宝石】なるものを、自分の【魔道武具(マジックウェポン)】に使用したことにより、いくつかの成功率を上げたとのこと。鍛治師(スミス)たちはそれも取り入れるようになる。

 

「だーーー威力が上がった、質が上がったッ! だが砕ける! 何故砕けるッ!?」

 

 魔剣の質も向上しているが、いまだ【砕けない魔剣】にたどり着いた者はいない。だが誰一人、それは夢物語とは思っていない。

 

「【魔道武具(マジックウェポン)】は性質上魔剣と違う。だが俺には分かる、基本的に魔剣に近い。もしかしたら魔剣が砕けず、あれと同じように使用することが………くそ、打ちたくなっちまう」

 

 駆け出しや玄人含めて、魔剣の研究が活気出す中、その元凶もまた大いに目まぐるしい勢いで鉄を打つ。

 

「私って鍛冶生産ファミリアに入ったんだっけ?」

 

 そう思いながらも打ち続け、可能な限り中層や上層の材料で【魔道武具(マジックウェポン)】を作る。これで一番凄いのは【きせきのつるぎ】だろう。相手から体力と精神力を少し奪い取るそれは、レアモンスターである【ブルーパピリオの翅】が軸である。これの生産はそれほどヘスティアたちの心を痛めず、作られていった。

 

 ちなみにこうして武器を作っているおかげかは知らないが、スピカは一年でLv2へとランクアップした。選んだ発展アビリティはレアな【狩人】だが、表向きは【魔導】にしている。魔導が生えていると魔法を使うとマジックサークルが生まれるからだ。いつ魔法が生えるか分からないエルフなので対策はしておく。

 

 二つ名の命名式は荒れに荒れた。バカな神が【厨二製作者(マジッククリエイター)】や【大穴少女(ダークホース)】などふざけたものから【鍛治妖精(レプラコーン)】などと言う名前が上がり、戦いが始まった。

 

 スピカに付けられた二つ名は【幸福妖精(ブラウニー)】と言う。

 

 そして二つ名と共にスピカの名前が広がりつつある中、ある冒険者の目に留まる。

 

「この髪と首飾りは、まさか……」

 

 こうして迷宮都市オラリオの話題は、いまだ勢いを止めず広がっていく。




ここで原作より魔剣は安い物から、強力な物も安定して売りだされていますね。コインがあるとはいえ、魔剣の需要が無くなるとは考えずらいです。何度も使える物と一度切りですから。

感想評価ありがとうございます。創作意欲が上がる上がる。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第5話・明かされる事と目下の悩み

投稿。スピカが抱えるものがまた明らかになります。


 父に手紙を出す。父は武器職人と言うより、クワなどの生活道具作りに命を燃やす人で、俺も良いもん作るからお前も作れよと手紙が返る。

 

 ヘスティア・ファミリアは表立って【魔道武具(マジックウェポン)】を売りに出すとお金はだいぶ入り、ジャガ丸くんを売るヘスティア様は仕事を辞めて、お金の管理と派閥運営の勉強と共にこなす。

 

 ただ目立つほど強力な武器はまだ出せず、精々が10万ヴァリスほどが高値のラインである。これがヘスティア・ファミリアの本来の実力だ。

 

 ヘファイストス様の手を借りれば一気に100万ヴァリス以上へ格上げされて売りに出される武器。元の世界ではそれほどしないが、やはり【ガイアの剣】は安定しつつ、高額でやり取りされている。

 

 最近になって分かり出したのだが、武器も材料によって変化するらしい。

 

 例えば【ドラゴンキラー】である。これを上層のインファントドラゴンで作ると、精々竜族への攻撃にアビリティが強化される程度だが、より深い階層のドラゴンを材料にするとより強化される事が判明した。

 

 だが我々は断固として深層、下層の材料など使わない。使うほどの腕が無いのに、使うのは間違っている。椿さんたちには諦めると言う言葉を知って欲しい。

 

「いや、正直研究材料にした方が色々はかどるんだよな」

 

「ヴェルフ、そんな言葉言わないでほしいです」

 

 主に鍛冶師ファミリアの誰かが自分と組んでダンジョンに潜る。ヴェルフとはよく潜る仲で、本人も助かってるらしい。

 

「前にも言ったが、俺はアビリティの【鍛冶】が無いのに魔剣が打てるからな。それで色々組んでくれる奴はいないんだ。まあお前のおかげで話したり、時たまに組むけどな」

 

「【クロッゾの魔剣】ですか。私のもそれくらい威力があればいいんですけどね」

 

「それはそれで大変だぞ。いまの状態も大変だろ?」

 

 その通りだ。武器、防具系で何か作ると、すぐにヘファイストス・ファミリアを始めとした鍛冶師たちが買い取る。みんなよりよい物作りの為と言うが、その熱意は恐ろしい。

 

「作ってる俺はどうしてそうなるかも分からないのに」

 

「それは確かに。どう教えればいいんだか」

 

 そう言う意味では、二代目のビルダーを作らないといけない。椿さんたちはそちらの方面でも研究しているので任せるしかない。

 

 ちなみに最近はミアハ様の所で薬も作っている。ナァーザさんから新薬作っても良いんだよと肩をがっしり掴まれて言われてる。ちなみにいまは【せかいじゅのしずく】を目指している。

 

 そんな日々をヘスティア様の下で過ごしていました。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とある場所、城のような建物が建てられていて、その中で勇者の称号を持つ一人の小人族(パルゥム)が書類と戦っていた。

 

「【きせきのつるぎ】は改があるようだけど、できればそこそこ揃えて、常備しておきたいね」

 

「【ガイアの剣】もバカにはできないぞ。中には深層のモンスターとやり合える品物がある」

 

 話し合うは【勇者(ブレイバー)】の『フィン・ディムナ』で、答えるは【重傑(エルガルム)】、ドワーフの戦士『ガレス・ランドロック』。髭をさすりながら考え込む。

 

「他にも斧で【エクリプスアックス】と言うのが面白い。確率は低いが相手を混乱させるらしい。いま使っている【デストロイヤー】も良い」

 

「僕の方も【いなずまのやり】と【きせきのつるぎ】と同じ【えいゆうのやり】を第一等か二等武装の物が欲しいね」

 

 だがそれを作るには倍以上の軍資金と運が必要になる。コストを考えると無い物ねだりするより、安定して出される【ガイアの剣】を平均装備として揃えたい。いま現在、彼らヘスティア・ファミリアの保護を対価に割引されているし、新武器はテストを兼ねて、こちらに渡される事になっている。

 

「いまはそれだけで満足しよう。アイズも【はやぶさの剣・改】を気に入ってるみたいだしね」

 

「本気でない速度で四度斬るか。魔法と本気を加えたらどれほどか」

 

「少なくとも底上げになっている以上、ヘスティア・ファミリアとは友好な関係を築いておく。そう言えばリヴェリアは?」

 

「遅くなった」

 

 そう言って入ってくるのは【九魔姫(ナイン・ヘル)】と言われる、ハイエルフ『リヴェリア・リヨス・アールヴ』。彼女が書類を持って入ってくる。

 

「珍しいね、君が遅れて来るとは」

 

「ああ、確証を持ってから話そうと思ってな」

 

 そう言ってスピカ・シロガネの似顔絵とある書物を置く。

 

 僅かに親指がうずくフィン。なにか重大な話になりそうだと、指を舐めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ギルド本部へと来るスピカ。Lv2になり、ついてくる鍛冶師もしっかりと身元が分かるので、アドバイザーである『エイナ・チュール』に報告しに来る。そろそろ中層アタックして、それなりに幅を広げたいのだ。

 

「エイナさん」

 

「スピカさん、丁度良かった」

 

 エイナと共にいるのは取り巻きのエルフのお姉さんと、ハイエルフのリヴェリアさんである。こうして出会うのは彼女にとって初めてだ。

 

「君がスピカ・シロガネだね?」

 

「はい、俺になにか用ですか?」

 

 また深層など手に入りにくい高価な材料を使い、武器を作らされるかと考える中、リヴェリアは思わぬ事を口にする。

 

「やはり……君はハイエルフのようだな」

 

「えっ?」

 

 それは晴天の霹靂であった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ガチガチに緊張している状態で、待合室で話し合うスピカとリヴェリアたち。取り巻きのエルフの人たちはその様子を心配そうに見て来る。まさかと思ったがと呟くリヴェリアは難しい顔をしていた。

 

「あの、俺がハイエルフと言うのは……」

 

「まずは、君の首飾りはどこで手に入れた?」

 

 首飾りを聞かれ、スピカは正直に答えた。父親は引き取ってくれたドワーフで、エルフの母親らしい人は、モンスターに襲われたのか命を落としている。首飾りを形見として持っている。

 

 その話を聞いて難しそうに頷くリヴェリア。

 

「すまない、辛いことを思い出させて」

 

「まだ赤子でしたから、正直分かりません。それでこれがなにか?」

 

「そこに刻まれた紋章は、あるハイエルフ王家の紋章なんだ」

 

 そう言い、ある書物を取り出して見せると、そこには首飾りと同じ紋章がある。

 

「君の似顔絵とこの紋章を見た時、もしやと思ったが、君は間違いなくハイエルフの血族だ。しかも稀有な存在のね」

 

「そうなんですか?」

 

「この紋章、リュミエール家の紋章と、その髪と瞳の色が独特でね。雪のような銀色の髪に、サファイヤのような瞳。瞳はともかく、この髪の色は白のエルフには存在しないんだ」

 

「白?」

 

「エルフには白いエルフと褐色肌の黒のエルフがいるんです」

 

 取り巻きの人が丁寧にそう言い、銀色の髪は黒いエルフが多いらしい。そしてリュミエールはその二つのハイエルフ同士が結婚して生まれた家との事。

 

 詳しくは知らないが雪の精霊らしき精霊と何かがあり、二人の結婚式に現れて祝福したそうだ。だから髪と瞳の色は、雪を思わせるものとのこと。

 

 嘘だ~と言う顔になりかけるスピカ。中身オッサンなのでどうしたものかと困っている。

 

「まあ遠くないうちに、君の特徴からそう思う者は出てもおかしくない。それだけ珍しい組み合わせだ。ちなみに私が分かったのは、昔に見た絵画の、祝福されて生まれた女性と君が重なったからだな」

 

「ですけどハイエルフって」

 

 王族であるハイエルフに何かあれば、エルフが黙っていない。なのにどうして自分は田舎町のドワーフの下で育ち、こうしている? 分からないことばかりだ。そもそもハイエルフであろう母親が血まみれの時点でおかしな話だ。

 

 それにリヴェリアも頷き、話の続きを語る。

 

「話には続きがある。実はある時期に、とある騎士のエルフとリュミエールのエルフが恋仲になるが、家の都合で婚約はできなかったらしい。そしてある事件を切っ掛けに彼女と彼は姿を消した」

 

「ある事件?」

 

「クロッゾの魔剣で里が焼かれた時だ」

 

「ヴェルフが気にしそう」

 

 つまり駆け落ち、または行方不明になったハイエルフの子孫が自分であると。

 

「そんなこと言われても、困ったな……」

 

「なにか困ることがあるのか?」

 

 スピカが困るのは、実はヘスティア・ファミリアに団員が増えない事と関係がある。

 

 資金があり、話題性がある中、ロキ・ファミリアやヘファイストス・ファミリアと言う大手のサポートがある。見た限り入りやすいのだが、団員試験にこの二つの派閥が顔を出す。

 

 そこは別に構わない。だが入る動機が悪い。

 

 ほとんどの冒険者は【魔道武具(マジックウェポン)】を使い放題だと思って入ろうとしているのだ。

 

 ロキはそんなおこぼれ狙い入れても良い事無いと言い、ヘファイストスも同意している。それだけでなく、スピカ、11歳のエルフを団長として従うかと言う言葉に嘘か、戸惑いなどみせる。

 

「幼くても派閥の稼ぎ頭やし、実際スピカたんが一番ダンジョンに詳しいんやで? その辺の割り切りできない奴は嫌やろ?」

 

「それに関しては同感ね」

 

「はあ、今日も団員ゼロか……」

 

 入団試験でそんな会話がされていて、いまだ団員一名と言う事態なのだ。

 

 他の派閥からの者や新入りの駆け出しも入らず、また新たに火種が投下された。それにリヴェリアも顔を歪ませる。

 

「……ハイエルフと言うだけで、入ろうとするエルフがいるだろう。実際、こちらはそう言うものが多いが……」

 

 それはヘスティア・ファミリアではなく、スピカがいるから入る。さすがに自分のお世話をさせる為に団員を募集している訳ではない。いまだはっきりとした目的は無いが、ヘスティア・ファミリアは探索系の派閥なのだ。そこを間違えてはいけない。

 

「ともかく、この件はしっかりと話し合おう。これから大変になるだろうが、私もフォローしよう」

 

「よろしくお願いします……」

 

 生みの親について少し知れたスピカ。それは前進と見ていいだろうと納得させて今日は別れることにした。

 

「せっかくですので、この本を借りても? 親の家が書かれているのなら、知っておこうと思いますので」

 

「ああ、そうすると良い」

 

 そうして別れた後、鍛治する時は暑いからサラシを巻いただけの格好になるが、これまずくねえ?と思い、俺口調もあると色々考えてしまいながら、今日も殺到する冒険者を振り分けるヘスティアたち。いまだに新たな団員はゼロである。




はい、魔導生やしていたスキルの出どころが発覚です。ちなみに雪の精霊と言われていますが、本人(精霊)はそう名乗ってないです。

この精霊からの祝福はやばいです、スピカに魔導生やすほどですから。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第6話・スピカの日常

スピカは基本売っているのははがねのつるぎなどの通常の武器から、ほのおのつるぎのようなオラリオに無かった属性武器。あとは聖剣伝説の魔法を使えるコインです。

防具はやいばのよろいやみずのはごろもです。スピカは装備をころころ変えて、ダンジョンに潜りますね。

ヘファイストス様の協力が必要ですが、ガイアの剣が収入を助けてます。


 迷宮都市(オラリオ)に来てから一年と少し経つ、とある教会の隠し部屋、主神より早く起きるエルフがいた。その名はスピカ・シロガネ。ドワーフに育てられた娘であり、前世コスプレ小道具作りのオッサンである。

 

 やはり眠るとオッサンが出るのか、ジャージのような姿でソファで眠り、腹を出してよだれを流しながら眠っていたが、すぐに覚醒した。

 

「さてと、朝ごはんはなににしようか」

 

 束ねた髪を解き、着替えて台所を見に行くスピカ。材料を見て、スキルが発動。魚と穀物とバターでムニエルと、野菜炒めとシチューを作れると出ているので作る事に。

 

「なにげにレシピリストと現在作成可能かどうか分かるのが便利ですよね。見ていないといけないけど」

 

 レシピは全て頭の中、それはある意味物凄い事なんだろうと思いながらも、ゲーム感覚で扱っているためにどう凄いか分からない。

 

 しばらくするとヘスティアはあくびをしながら起きて来て、朝食を食べ始める。

 

「今日はどうするんだい?」

 

「【はがねのつるぎ】などのお金を受け取りながら、いくつかコインの製作ですね。まさかコインがここまで売れるなんて」

 

「ボクには分からないけど、神まで魔法が使えるからね。高いけど魔剣よりは安いし、懐に仕舞いやすいからじゃない?」

 

 そんな会話をしながら食べ終え、スピカは畑へと向かう。

 

 このボロボロの教会の土地はすでにカスタムし出している。ヘファイストスには許可をもらい、教会を直しながら別部屋を作ったり、畑を作ったりしているスピカ。スキルさまさまだと思う。

 

 スキルのおかげで作れた畑は野菜を育てたり、休ませるために小さな花を作ったりして交互に使っている。養蜂にも慣れ、ヘスティアはうへーと口を開いて驚いていた。ちなみに養蜂はできるからしているだけで、最初はできるのかと驚いた。

 

 ただ彼女は物作りのスキル持ちである。それで作った物全て普通じゃない。養蜂も人の言葉を理解しているように動いていて、ヘスティアは「養蜂ってこんなんなんだー」と間違えてミツバチを操っている。断じて普段着ている服装で、蓋開けてミツバチを働かせて、終わったら呼んで巣箱に仕舞い、蓋をするようなやり方では無い。

 

 花の蜜を集めて【まんまるドロップ】と【ばっくんチョコ】の準備をする。なぜか売られていたからカカオの若木を買って植えた。カカオをなぜチョイスしたのかは、アイテムを作るために必要だったから植えただけである。けして半月で収穫できるものではないはずだ。

 

 スピカは「異世界すげー」と思い、ヘスティアは「こんなものなのか」と納得して育てている。ツッコミはいないのだ。

 

 お金を受け取りにスピカはフード付きの衣類を着こみ、姿を隠してホームを出る。

 

「いたか?」

 

「ロリ巨乳のホームどこだよ」

 

「くんくん、ロリの香りがするのだが?」

 

「スピカさまー、どこですかー」

 

 ホームを少し出ると、スピカを探すエルフと神々が現れ出す。彼らに見つかると面倒な事にしかならない。ロキ、ヘファイストスと言うビッグネームが背後にいるのに改宗(コンバージョン)を求めたり、勧めて来る。

 

 姿を消すマントなど作れるか作れないか考え込む。いまはまだ作れない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあ、ここまで来るのに時間がかかる」

 

 バベルのヘファイストス・ファミリアからお金を受け取り、自宅になりつつある工房へと帰るスピカ。仕事量によってはここで寝泊まりする。お金は八割ここに預けている。

 

 ここまで来たのになぜか外れない視線を感じながら、何事も無くここに来たスピカは、上半身はサラシを巻いただけの姿になり、竈に火を入れた。

 

「この姿が問題ないエルフの人がいればいいんだけど、いなさそうなんだよな」

 

 最近ハイエルフではないかと言うことが浮上して、エルフたちからかしこまられるようになって困っている。エルフは気難しい種族であり、いまのスピカを見れば倒れそうだなと本人も思う。

 

 だが火の熱気で汗を流しだし、無理な話だと思いながらアイテムを作り出す。

 

 それは魔法を使用する事ができる。聖剣伝説3に出て来るコインたちだ。スピカが聖剣3の魔法をよく理解していないが、しっかり魔法が発動するので気にしていない。

 

 いまのところコインだけだが、爪や石像も作ろうと考えている。石像はチェスの駒くらいなら………

 

「うん作れるな。今度作ってみようっと」

 

 スピカは弱い。ハイエルフと言われているが特別強くない。なら武器を装備して強くならなければいけないと考える。

 

 護身用にいま作っているコインも隠し持っているし、道具も杖をいくつか作っている。まだまだ作りたい物がたくさんある。

 

 こうして大量にコインを作り終え、それをリュックサックに入れてまたこそこそ移動を始める。バベルの塔から視線を感じる気がする………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 やってきたのは『青の薬舗』。ミアハ・ファミリアが経営する店である。

 

「いらっ、スピカっ♪ 来てくれたのね♪」

 

 満面の笑みを見せるのは犬人(シアンスローブ)の『ナァーザ』さんだ。この人のおかげで武具では無い【魔道武具(マジックウェポン)】が売れている。

 

 正直どうかと思うが、コイン系の魔道具(アイテム)はいまのところここでしか売っていない。一応回復薬(ポーション)を始めとした物を売っているので問題は無い。

 

「こんにちは、コインの補充に来ましたよ。いくつないんですか?」

 

「全部」

 

 うへっ?! マジかよ。と言う顔をするスピカ。本人も自覚しているが、こういうところがエルフたちに受け入れられないと思っている。

 

「本当ですか?」

 

「うん。中堅派閥からロキ・ファミリアみたいな派閥まで買うから、はいこれお金」

 

 そう言って分け前のお金を受け取りながら、場所代も支払い、コインの補充をしておく。

 

「スピカは私たちの恩人。スピカのおかげでおいしいご飯が食べられるの。なんでも言ってね、協力するから」

 

「いつものように薬作りを手伝わせてくれればいいですよ~」

 

 嬉しそうに尻尾を振り、頬を緩ませてスピカを見るナァーザ。時々ミアハの次に好きと冗談を言う。

 

 元々ミアハ様のところは借金を背負っているが、いまは順調に返しているらしいのでよかった。

 

「新しい物も用意しようと考えてるんですけど」

 

「ウェルカム」

 

 目を輝かせてスピカの物作りを応援する。その後は薬の調合しながら、スピカはお金を持って帰る。ちなみに時々ディアンケヒト・ファミリアが来ると全力で奪われ無いように抱きしめて威嚇する(向こうもスピカの独占に文句を言うなどしている)

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ホームである教会へと戻ってきたスピカがまずすることは、隠し部屋の金庫にお金を隠す事。ヘスティアは帳簿を取りながら、難しい顔をしている。

 

 お茶と菓子を出した後は、スピカ自身が庭に水を撒く。その為に壺を取り出し、水場に水を入れる。この壺も道具作りで作った特別品。その名を『かわきのつぼ』だ。

 

 他のアイテムも作り、念のために備えている中、ガンガン壁を補強したり、改造したりするスピカ。使うブロックはなにげに『お城ブロック』を駆使してしっかりと作る。

 

 少しずつ強化しながらはちみつを回収して、アイテム製作するスピカ。ついでに昼食も作り、ヘスティアと食事を共にした。

 

「お昼からは何するんだい?」

 

「作れる物の幅を確認しようと思います」

 

 そんな感じでおにぎりをパクパク食べる二人。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ふう、なかなかうまくいかないな」

 

 配線を確認して、エネルギーの稼働率を確かめる。

 

 ヘスティアたちに内緒で借りた倉庫の中、少しずつエネルギーを通して稼働する姿を確認して、全体のバランスを確認していたスピカ。すでに5割は完成しているが、そこから先はうまくいかなかった。

 

 一部は起動するが、残りのパーツがうまく反応しない事に、頭を悩ます。

 

「ん~、やっぱりオイルで動かすのはおかしいな」

 

 そう言いながら【プロトキラー】の様子を確認する。なかなか先に進めない。やはり無謀なのだろうかと思いながら、また一から作り上げるかと、48回目失敗とレポートに書きこむ。

 

「本当なら【キラーマシン】に手を出したいですけど、プロトタイプであるこちらを先に作った方が良いですもんね」

 

 そう言いながら調整しつつ、今度は別エネルギーに手を伸ばすことを考える。なにをエネルギーにするか、考えながらいくつか案を出して試す事にした。

 

 スキルの効果なのか、動かす為の工程などは理解できるが、完成へとたどり着かない。まあ鍛治のように失敗したらがらくたのつるぎにならないだけマシだ。あれは鉄が死んでしまい、駆け出しの武器や防具にしか再利用できないが、こちらは再利用し放題で助かる。

 

 後は暇潰しに、石を積み上げて【ゴーレム】を作るが、うまく動かず、これも何回目かの失敗を刻み、少しずつ前進していた。

 

 その後はかねてより決めていた魔法を使える石像シリーズに手を出して、こうしてまたオラリオに魔法の代理品である魔道具(アイテム)を作り出す。

 

 今度は畑にも手を出して、自給自足し出すスピカ。なぜかいる日本の魚を育てながら食べ、舌鼓を打ちながらスピカは満面の笑みを浮かべ、こんな魚が世界にはいるのかとヘスティアは思って食べる。決してこの世界に日本がある訳ではなく、前世で生きていた地球の世界の魚は存在しないものもいる。誰もそのことを言う者はいないためこのままである。出所を聞いてはいけない。本人は知らず知らず釣り上げ、知らず知らず養殖している。

 

 こうして主神と団員一名でありながら、ヘスティア・ファミリアは強化され、狂化されていくまであった………




スピカ「お魚も秘密の(自身で改造した)場所で養殖してます」

ヘスティア「この世界の海に、こんな魚が生きてるなんて、生命は強いな」

ニョルズ「気の所為か、見たことのない魚が釣れるようになったな……」

やるか分からないですけど、このノリで映画版である人を助けたいと言う衝動が出てます。活動報告でそこんところ呟いてますので、興味のある方はそこでご意見お願いします。

お読みいただきありがとうございます。


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第7話・スピカの日常2

愛されてます。穢れていません、念のため。


 ――私の可愛い子……

 

 ――親友が私の代わりにあの人の子供を産んだの。あなたは私たちの可愛い可愛い子供。

 

 ――たくさんの愛をあなたに上げる。

 

 ――たくさんの祝福を私は上げる。

 

 ――怖がることは無いの、これはあの人を愛する、私の想いだから。

 

 ――可愛いあなた、愛するあなた、私とあの人の愛する子供。

 

 ――あなたに希望がありますよう、私はアナタヲアイシツヅケル………

 

 ――男の子で女の子……アハッ♪

 

 ――アッハハハハッ、男の子、オトコノコッ♪

 

 ――ならねえ、あなたは私の、大事な旦那さんね………

 

「はっ!?」

 

 スピカは突然、真夜中に跳び起きる。せっかく作ったジャージは脱ぎ捨てられ、嫌な汗が身体を伝う。

 

「なんだいまの夢………」

 

 真っ白な人がずっと〝こちらを見ずにこちらを見ていた〟

 

 口元を釣り上げ、ずっと自分の世界に閉じこもり、永遠と愛を語る女性であった。

 

「なんだこれ、変な夢見た。シャワー浴びて寝直そう」

 

 そう言い、側に置いてある『雪の精霊の物語』を少し見る。ご先祖様の物語、精霊とハイエルフの恋物語。

 

 だがなぜだろう、読めば読むほど昼ドラ感がして草である。あるのだが………

 

「草すら生えない気がするのは気のせいか?」

 

 そう呟き、スピカはシャワーを浴びてもう一寝入りする。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 怪物祭(モンスターフィリア)。ガネーシャ・ファミリア主催のモンスターの調教する様子を見せるお祭り。年に一度行われ、ギルドも協力して闘技場丸々貸し切って行われる。

 

 その話を聞いたスピカは【まもののエサ】を作り、ガネーシャ・ファミリアに売る。モンスターのおやつとして最適であるこれは、ヘスティア・ファミリアの新たな収入源になった。ちなみに材料は料理するような物ばかりである。枯れ草は使用されていない。

 

「せっかくのお祭りなのに、作る物が多いし、ハイエルフ認定されてからエルフが面倒」

 

 しくしくと泣くスピカ。ヘスティアもしくしくと泣く。

 

「スピカ君とデートもなにもできないよ~」

 

 ヘスティア・ファミリアに届く注文書を見る。属性武器を始めとした【魔道武具(マジックウェポン)】の注文。祭りを楽しむ時間は無い。

 

「それじゃ、お店に卸してきます」

 

「気を付けてねえ」

 

「今日は樽を使います」

 

 樽の中に隠れながら町を進む。最近ハイエルフかも知れない為、エルフの人たちが面倒なのだ。

 

 神々とエルフに隠れながら、町に繰り出すスピカ。店に品物を卸した後、つい祭り会場の様子を見に行ったのがいけなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「スピカ様~♪ スピカ様どこにおいでですか~」

 

「リュミエール様、いずこに~」

 

 屋台を巡っていたらエルフに見つかり、エルフに囲まれ始めたので逃亡。樽に隠れながら進むスピカ、街並みを見ながら進んでいく。

 

「ふむ、焼きイカうまうま……」

 

 買い食いしながら進む。ヘスティアのお土産としてベビーカステラも用意しながら工房へと帰る中、オラリオの街並みを見ながら考え込む。

 

「………ドラクエ10の装備ははやりそう」

 

 行きかう人々を見て思い浮かべ、能力や性能で様々な姿になるドラクエ10を再現しようとするスピカ。その時、誰かが来る気配を感じて樽の中に入る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ん?」

 

 一人の黒い髪に白い服で素肌を隠すエルフ。彼女の名は『フィルヴィス・シャリア』。ディオニュソス・ファミリアの者で、妙な気配に気づき、樽の前で足を止めた。

 

「?」

 

 それに不信に思い、その蓋を開けると、一匹のエルフ少女が頬袋に食べ物を詰め込みながら中にいた。

 

「スピカ様っ!?」

 

 その言葉と共にスピカはすぐにフィルヴィスを掴み、樽の中に引きずり込む。

 

 わーきゃー言うフィルヴィスだが樽の中に飲み込まれた後、エルフの冒険者が屋根上から飛び降りた。

 

「いまスピカ様を呼ぶ声が」

 

「この辺りのはずだ。探せーーーー」

 

「スピカ様ーーーー」

 

 樽の中でうら若き乙女の小さな悲鳴やら何やら聞こえる中、しばらく沈黙が樽の中に起きる。

 

 しばらくしてエルフたちが立ち去った後、樽が倒れてスピカたちが出て来た。

 

「触り心地はよかった」

 

「なっ、なにをしているのですかスピカ様っ!?」

 

 若干頬を赤く染め、呼吸も浅く、戸惑いながら訪ねるフィルヴィス。スピカはお土産が潰れていないか確認してフィルヴィスに言う。

 

「大声を出さないでくださいな、またエルフの皆さんに見つかってしまいます。胸とか触ったことは謝罪します」

 

「い、いえ。私は」

 

 中身オッサンなのでやったーと内心思うスピカは機嫌が良く、フィルヴィスはハイエルフであるスピカに戸惑いながら視線を反らし、すぐに立ち上がる。

 

「………それでは私はこれで」

 

「ああすいません、それではこれで。これはお詫びの品です」

 

 もう一つ自分用に買ったカステラ袋を手渡して、すぐさま樽を担いで離れていくスピカ。その早業に戸惑いながら、品物を返そうとするフィルヴィスだが、すぐに見失った。

 

「どうしよう………」

 

 フィルヴィスにはフィルヴィスの事情がある。彼女には忌み嫌われるジンクスなど色々背負っており、ハイエルフと関わる資格なぞないと思いこんでいた。スピカに直接会いに行く事などできないし、もらった物を食べる事も選ばない。結局オロオロとして時間を潰すしかなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「柔らかかったなあの人。ああ言う人がいると【えっちなライト】作ってみたくなるんだよ」

 

 見た目美少女のスピカだが、精神はやはり前世に引っ張られている。男より女の子が好きなのだ。ここに来る前の生活でドワーフの会話に参加して、オッサンみたいなことを発言している。育て親は気にしていないが、周りの人はかなり気にしていたことを知りながらも無視している。

 

 ヘスティアの前だと発言を控えているし、ヘスティアは守備範囲から外れている。ちなみに酒はこっそり造って飲んでいた。

 

「さてと、少しばかり探している声が多い。外にいるのがバレてるか、どこかで暇を潰そう」

 

 そう言いながら、やっていそうな店へと逃げ込んだ。

 

 店の中ではお祭りで客は少しいて、なかなか美人美少女がいる店だ。贔屓にしようと思いながら、パスタを注文。エールが出て来てそれをゴクゴクと飲み、一息つく。

 

「良い飲みっぷりだね」

 

「昔から飲んでますから、いただきます」

 

 はむっとパスタを食べながら、ここでのお土産も買うかと思う。女将が感心したようにこちらを見ていて、エルフのウェイトレスさんが二度見して皿を割った。

 

「それじゃお会計を」

 

「はいよ、土産のケーキ。今後ともご贔屓に」

 

「はい、今度は主神と来ます」

 

 そう挨拶を交わして出て行くスピカ。あのエルフいじりがいあるなと思いながら、この店【豊穣の女主人】から出て行く。

 

 綺麗なエルフのお姉さんが女将さんに怒られている様子を見ながら、お気に入りに決めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ただいま戻りました」

 

「遅いよっ!?心配したじゃないか?!」

 

 泣き付くヘスティアをよしよしと頭を撫でながらお土産を渡して笑顔にする。そんなことをしつつ、品物を届け終えて、明日に備えていくつか作りながら、新しい物を作り出す。

 

「今度は何を作るんだい?」

 

「防具類ですね。オラリオを行きかう人たちは、色々な服装の人が多いですから、受け入れられると思うんですよ」

 

 材料は上層のドロップアイテムでは無理なので、ヘファイストス・ファミリアが勝手に置いた材料と、冒険者依頼(クエスト)で集めた物を纏めてみた。

 

 様々な情報に揺られて、作れる物と作りたい物の仕分けをしながら、あと確認するのは成功率と使う材料、それを選別をする。

 

「【まほうのよろい】を初めとしたまほう装備に、魔力が上がる【月のローブセット】をまずは作りますか」

 

 作る物を決めて、材料に触れながら作り出す。まずは成功率が高い物を揃えてみよう。

 

 スキルが発動しているからか身体は的確に動く。その動きを覚え、自分の物にすれば確率が上がる。そんな気がして日々身体で覚えていくスピカ。

 

 最近になって【みずのはごろも】でやればいいと気づき、はごろもが作業着兼ダンジョンアタックの服となりつつある。時たまに他にも色々装備を変えるが、基本ローブ系だろうか。作る様子はなにか不思議な様子だと、ヘスティアは思う。

 

 こうして新商品を作りながら、自分の装備品を増やしていく。

 

「できましたーーーっ♪」

 

 試作品を作って【よろいの置き物】に飾るスピカ。そのままもう一つ、作れるかチャレンジすることにした。

 

「なかなかいい線行くんですけど……」

 

 布製だから静かに物事が進み、静かに集中する。

 

 最後に【まほうの作業台】で調整すれば………

 

「出来上がったーーーーー」

 

 そう言って嬉しそうに、なんてことはない布を掲げるスピカ。その布で首から下を覆い隠すと、姿が消えてしまった。

 

「【顔のない王(ノーフェイス・メイキング)】の完成です」

 

 そう言って自分の姿を覆い隠す、姿隠しの大定番の物を作り出した。それに嬉しそうに飛び跳ね、首だけ姿を出したりと遊ぶ。

 

「これでもう、品物を卸すのに困らない。けど凄いな、気配とかも隠せるか試さないと。本物と同じだとは思いたいですけど、この辺りは要確認ですね~」

 

 そしてハッとなり呟く。

 

「これがあれば、綺麗なお姉さんを覗けるのでは……私の場合、堂々と風呂屋に行けばいいか」

 

 アホなことを言いながら、ヘスティアの分とか、大きめに色々作っておこうと決めて、スケジュールに記載する。さすがに今日はここまでだ。そんな日々をスピカは送りながら、またソファをベットにして眠る準備をする。

 

(さて、寝酒飲んで寝よう)

 

 隠れて作った酒ダルへと入り、作った酒を飲んでから寝るスピカ。ジャージに着替え、満足して眠るのである。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ――変わった子、異世界の生まれ変わり。でも良い愛してあげる、他にも女の人がいるけど構わない。あなたはいずれ私の子を産むのだから。作るのかしら?

 

 ――私の愛した証を上げる。だからあなたはあなたとして生きてね?

 

「はっ!?」

 

 スピカが目が覚める。ここ最近眠りが浅いと思いながら、寝酒を二、三杯飲む。

 

「また妙な夢を見た気がする。俺は男と付き合う気無いから、彼女作るが良いのに」

 

 変な夢ーと思いながらエールを飲み、少し鏡に映った自分を見て、ため息をつきながら自分の胸を触る。

 

「これがもう少し育って他人なら………昼間のお姉さんも綺麗だったな」

 

 そうため息をつき寝直す。明日もまた忙しいのだから、早く寝ないといけない。

 

 女の子だから男の子を好きになるべきと一切思わず、そのまま成長するスピカ。

 

 ヘスティアがその辺りをツッコムのはまだまだ先である………




スピカ「中身オッサンです、綺麗なお姉さんが大好きですの」

ちなみにこの子、それなりの数、とあるライトを隠してます。ヘスティアさまも知らない。

お読みいただきありがとうございます。


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第8話・魔法

誤字報告、感想評価ありがとうございます。

まさか気楽にやったらこんなに人気出て戦々恐々ですが、最後と言うかベル君が来るまではやります。あとオマケ。

今回やらかすよあの子たち。


 ひょんなことから出生に関わる事を知った。まさかのハイエルフの一族に、俺はどうすればいいか、主神と共に頭を痛める。

 

 いまだに派閥に入れば【魔道武具(マジックウェポン)】をタダで使えると思う者がいる。勘違いで済めば良いが、こちらがLv2程度だからと、力づくを行使しようとするバカがいる。その場合、ロキ・ファミリアとヘファイストス・ファミリアが黙っていないのに。

 

 リヴェリアさんとの会話からしばらくして情報が出回り、エルフの人が俺に頭を下げるようになって大変だ。ハイエルフの血統だとはっきりしている訳では無いのに、慕われても困る。中には引き抜きがあるが、自分が最初に声をかけてくれたヘスティア様を大切にしたいと知ると引いてくれる。

 

 ちなみにリュミエール家の話を見ると、精霊がハイエルフの男性を好きになるが、別のハイエルフの人と結ばれ、それでも愛していると祝福する物語らしい。だけど詳しく書かれたこの本を読むと、昼ドラかよと言いたくなる内容になる。

 

 男性と結婚した人も親友らしく、ドロドロしてるなと思いながら本を読んでいると………

 

「魔法が発現した……」

 

 新たな火種が文字通り生まれた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカ・シロガネ Lv2

 

 力・H122

 

 耐久・I80

 

 器用・H135

 

 敏捷・H102

 

 魔力・G232

 

 ・鍛冶G ・神秘F ・魔導G ・調合H ・狩人I

 

≪魔法≫

 

精霊物作り(スピリット・クリエイト)

 

 ・創造補助魔法

 

妖精の種火(トーチ)

 

 詠唱式 ・灯れ、祝福の熱

 

 ・発火魔法 ・神秘の炎、奇跡の火 ・精霊の祝福 ・道具作り強化

 

慈愛の聖水(ヒール)】詠唱式 ・癒える、清浄の水

 

 ・生水回復魔法 ・癒しの力、祝福の水 ・精霊の祝福 ・生物成長強化

 

生命の光(ソウル・ライト)】詠唱式 ・光輝をここに、荒野に息吹を与え、不浄を否定し、絶望を塗り替え、魂に救済を 終わりを覆す始まりの代行者 我が名は命、生命ノ王

 

 ・極煌魔法 ・断罪の光にして鳴動の煌めき ・攻撃、付加可能 脈動する力

 

【】

 

【】

 

≪スキル≫

 

竜物語創造者(ドラクエビルダー)

 

 ・あらゆる道具、武具の想像、創造が可能

 

 ・成功率の把握 ・神秘、鍛治、調合アビリティ獲得

 

 ・道具製作に経験値(エクセリア)獲得

 

精霊加護(リュミエール・スピリット)

 

 ・魔力アビリティ強化 ・魔導アビリティ強化 ・魔導アビリティ獲得

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「雪の精霊らしいのに、なんで火とかもなんだよっ!? 最後長いし!?」

 

 なんか嫌な予感しかしないぞ。一つのスロットで三つの魔法って。ともかく、これは魔法だ、いままであった魔力が生きるはず。

 

「ともかくそれがどんな魔法か、一つは調べておいたら。 火を点ける魔法? みたいだし、竈の方で試してみたらどうだい?」

 

「今日は【はがねのつるぎ】を100ほど作る予定ですし、そうします。詠唱どう覚えろと………」

 

 こうして竈へと移動する。いつの間にかヘファイストス様からもらった俺の工房。ボロボロな教会を修復と拡張しつつ二人暮らししている。

 

 2階建てで自宅にできる工房。よくよく考えればヘファイストス・ファミリアの本気を感じる。そんな我が家。

 

 一階は完全な工房で、俺たちヘスティア・ファミリアの武器類の販売はヘファイストス・ファミリアのフロア、一角でやり取りされている。なにげに主導権を握られていた。

 

 そして火を入れる前に、俺はまず魔法を詠唱する。こうすればいいのか?

 

「【灯れ、祝福の熱】、トーチ」

 

 そう竈に手を向けて呟くと、ぼうっと薪に火が点いた。

 

 火は普通の火のように感じるが、若干温かく、眩しいくらいか。熱をそれほど感じないが、薪の勢いを見ると、熱力は強い気がする。

 

「これは火加減が難しいですね」

 

 そして俺がその火をじっと見ていると、いつものようにレシピが頭に浮かぶ。へ?

 

「なにこれ?」

 

 それは素材的にどうなるか分からない、なのに………

 

「【ひかりのつるぎ】に【おうじゃのけん】? 果ては【はかいのつるぎ】だって?!」

 

 しかも関係する防具まで作れるようになってる。待ってこれは勇者の装備や呪いの装備だよ。そんなん作ってどうするの?

 

 そもそも鉱石がって、あれ?

 

「作れる? 必要な金属を一から作れる?」

 

 頭の中に浮かんだレシピ。合金なのか? 一から鉄をこの火で金と銀を合わせて鋼のように鍛えればいいようだ。成功率も80%と問題ない。だけどこれ下手するとまた大変な事になるんじゃねえ?

 

「だけど………」

 

 俺は自分の【はやぶさの剣・改】を見る。もしもだ。もしここに【はかいのつるぎ】があれば、作れるかもしれない。

 

 正直中層もおっかなびっくりと攻略している最中、火精霊の護符(サラマンダー・ウール)着ながら進んでいる。

 

 ………

 

 作っても良いよね?

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ある神々の証言。

 

 ある日の出来事、ロキ・ファミリアとヘファイストス・ファミリアは嫌がるヘスティアとスピカの静止を振り切り、工房の中を確認。数多の武具や【呪道具(カースウェポン)】が見つかる。

 

 ヘスティアの証言は「また物凄いことになりそうだから隠してたんだ~」と涙目で訴え、ロキたちは説教を始めた。尚スピカ氏は【はやぶさの剣・改】を改良した武器【はかぶさの剣】を作り出していて、アイズ氏は目を光らせた。

 

 新たな新魔法(レアマジック)の【妖精の種火(トーチ)】が露見、鍛冶師派閥は驚いた。

 

 その火は精霊の祝福でできた物作りの火である。本能が告げたらしく、火は鍛治派閥に分けられた模様。これによりスピカ・シロガネがリュミエール家のご令嬢であると裏付けられたようなもので、エルフたちは歓喜した。

 

 リュミエール家は白と黒共々大切にされている家である。その血が続いていた事を知り、魔法大国アルテナから手紙が届くが、リヴェリアが全て破れと言っているので破いているとのこと。

 

 露見した武器、防具、道具を確保したオラリオ、業界は震撼して、ついにギルドが動きだした。ヘスティア・ファミリア自体が商売のかじを切らなければいけなくなる。全てをヘファイストスが牛耳るのには無理があるのだ。

 

 だが「ヘファイストス助けてえぇ~」と言う泣き声で、結局はギルドはヘファイストスと交渉しながら、これらの道具はどう扱うか大いにもめた。

 

 特に使わないのに一応作ったとされる【おうじゃのつるぎ】に関しては、フレイヤが「オッタルにぴったりねえ♪」と言って横取りしようとしたため、ロキが邪魔するためにしゃしゃり出たりと、混沌の中に入っていく。

 

 これで分かる通り、ロリ巨乳にはキャパシティーオーバーであり、収拾がつかず次の神会(デナトゥス)に持ち込まれた。

 

 やじ馬たちは大いに発狂しながら、当日を迎える。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 神聖な会議をすると言われている神会(デナトゥス)だが、実際は暇つぶしの神々の集まりが始まりだ。真剣な話からふざけた話まで話し合い、子供たちの二つ名を命名する話し合いをしたりと賑やかだ。

 

 そして今回は大目玉が命名式だけでないため、多くの神々が、野次馬が集う。

 

「はいはーいっ、第何千回目、神会(デナトゥス)始めるよ~」

 

 そう言い、金髪にハットの帽子をつけた優男。ヘルメスが司会進行役を買って出て話し始める。ロキはスタートダッシュはできないかと思いながらヘスティアを見る。

 

『ボクは役立たずです』

 

 と言う看板を提げたヘスティアは、ドレス風の礼服を着て強制参加している。新たなオラリオの目玉にギルドまで利権を取ろうと動きだし、すでにこの神では言いくるめられて良いようにされるがオチなのだ。

 

 前座としてバカな話し合いや王国ラキアがまたくる話などして、ヘルメスは笑顔で手を叩く。

 

「はいはい、それじゃそろそろ本題に行こうか。議題は今話題の【幸福妖精(ブラウニー)】ちゃんだよー」

 

「いっやふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

「待ってました」

 

「スピカたんハアハア」

 

「最後の奴叩きだせ」

 

「それで今度なにしたの?」

 

「んー良いリアクションありがとう諸君っ!! それで本日議題にまで上がるほどやらかした【幸福妖精(ブラウニー)】ちゃんのしたことは」

 

 間を置くヘルメス。ヘスティアはテーブルに倒れ、ヘファイストスを初めとした鍛冶神は静かにしている。

 

「新しい貴金属を作り出したことだ」

 

「は?」

 

「マジで?」

 

「そんなんできるスピカたんのスキルなんなの?」

 

「いや今回は魔法だろ? 遠巻きに見たけど、精霊の加護だよなあれ」

 

「リュミエールって家だろ? 確か昼ドラ的な話が神話化してる」

 

「あれって、あなたの子供は私の子供的になってなくない?」

 

「スピカたん見てるとあり得るなー」

 

 マシンガントークが繰り広げられる中、ヘルメスは指を鳴らして、一部の神々は濃青色の金属を取り出した。

 

「なにそれーーーー」

 

「精霊の加護ぷんぷんしますなー」

 

「こんなん地上にもダンジョンにもあったっけ?」

 

「これは別名【ブルーメタル】。生産方法はスピカちゃんのみ知っている、ミスリル以上、オリハルコン未満の金属らしいよ」

 

 狂乱の歓声が上がり、ヘファイストスは眼帯の眼をかき、他の鍛冶神は沈黙を貫く。

 

 だが内心、新たな金属から新たな武器を作りたい。そう言う顔でこれらを見ている。

 

「見た限り、これはレアマジックとレアスキルで作られたらしいけど。よくもまあ普通の恩恵でできるよね?」

 

「ぼ、ボクが不正したと思うのかい?」

 

「いやそれは無いね。むしろ精霊の加護が強く働いてるからだと納得するよ。ヘスティア、これはハイエルフ確定で良いと思うよ」

 

 ヘルメスがそう締める。レアなスキルと魔法だからって、よくも作れたなーとは思う程度。さすがにヘスティアが【改造】するような神であろうがなかろうが、それよりも純度の高い精霊の力が違うと言っている。

 

「これあれだね、先祖返りとかじゃねえ?」

 

「精霊って子供できるっけ?」

 

「知らん。けど力は与えられるから確実にそれだろ?」

 

「やっぱ子供は私とあなたの物ってメッセージじゃねえ?!」

 

「アルテナ辺りうるさいだろうな、てかうるさい」

 

「ギルドさんも利権関係でうるさいでしょうねー」

 

 好き勝手騒ぎ出す神々に、ぐぬぬと黙るヘスティア。なに言っても無駄だからだ。

 

 しばらく好きに話させてから、ヘルメスが会話を止める。

 

「はいはい、いま言った通り【ブルーメタル】はいまのところスピカちゃんしか作れない金属で、材料ばかりは教えられていないよ。ちなみにこれで武器とか作るとどうなるのか、ヘファイストス」

 

「………」

 

 沈黙を貫いていたヘファイストスは、ブルーメタルを手に取り呟く。

 

「少なくとも第一等武装が飛躍的に向上するわね。ミスリル以上だから、生成できる鍛冶師は限られるけど」

 

「………こっちもそうだな」

 

 ゴブニュが腕を組みながらそう呟く。ヘルメスはだよねーと愛想笑いをして手に取る。

 

「俺の所のアスフィも、これで道具を作れば頑丈な、それこそいままで無理と諦めてた道具が作れそうだと言っている。でだ、ここでの問題は、これはダンジョンから採れるものではなく、一ファミリアしか作れない点だ」

 

 ヘスティアですら感じ取れるほど空気が変わった。

 

「それじゃヘスティア~、みんなが納得する【ブルーメタル】の今後の事を話し合おうか?」

 

 ははっと笑顔のヘルメス、鍛治、道具製作関係の神々から威圧に似た何かを感じる。みんな少しでも多く安く、これが欲しいと言う意思を感じる。ヘスティアは思った。

 

 ボクは探索系ファミリアなのに、どうしてこんな難しい事を考えなきゃいけないんだろう?

 

 いまだ自分の置かれている状況を受け入れない神はそう呟き、長い夜が始まる。




スピカは頑張って製造方法だけは話さなかった。話せば楽ですけど、いまいち配合の具合が話せないですし、こういうのはほいほい話していいものでないと理解したから。

ヘファイストスは今回は敵です。彼女もブルーメタルを数多く手に入れて、可愛い眷属や自分たちで使いたいと思ってます。

なにげに金と銀などの鉱物を使ってます。少し感覚が麻痺って、高い材料を使う事の抵抗は無くなってます。金の延べ棒くらい溶かして使いますたぶん。

ではお読みいただき、ありがとうございます。


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第9話・神様も暴走するのなら

突然魔法が発現したスピカ。その魔法で作り出した精霊の火を使い、新たな貴金属【ブルーメタル】を開発。それで色々作ったら摘発されて、多くの派閥が【ブルーメタル】を安く、多く手に入れようと牙を向けた。

ヘスティアは騙される事も無理する事も無く、穏便に話を収められるか。

神々は大爆笑しながら生暖かく見守った。


 神会(デナトゥス)は野次馬たちにとって、いま最高のショーへと変わった。いま精霊の力をフルに使ったと思われる貴金属【ブルーメタル】の扱いで、我さきにと声を上げる神々と、それを見ている神々に分かれていた。

 

 ヘスティアは交わされる言葉をしっかりと頭の中で整理しながら、どうすればいいかの着地点を必死に考える。ヘファイストスも今回味方では無い、ある意味敵なのだ。

 

 多くの派閥の方針は【ブルーメタル】をどれだけ自分の物にできるかどうかだ。

 

 ヘルメスを初めとした道具作りが得意な派閥も参加して、安く、多く手に入れる為に、ヘスティアにあれこれ言いだす中、やはり鍛冶系の派閥が声を大にする。

 

 はっきり言って、ヘスティアがこれらを仕切るのはキャパオーバーだ。骨までしゃぶりつくされる所の話では無い。

 

 だがこれでも一年、ヘファイストス監修の下、派閥の運営を頑張った子なので、言われるがままでは無かったのは確かだ。

 

「はいはいそれじゃ、今後ブルーメタルの扱いはこんなところかな?」

 

「ぜえぜえ……ぼ、ボクは頑張ったよスピカ君………」

 

 とりあえず無理しない程度に毎月【ブルーメタル】をギルドに売ると言う形と、購入と言う形で適正価格を決めて下ろすことになる。

 

 ギルドも【ブルーメタル】は外交に使用したいと声があり、うまく調整したはずのヘスティア。今後【ブルーメタル】が世界を賑やかせるが、それは後の話だ。

 

「そう言えば、他にもなんかあるんじゃねえ?」

 

「YOU、隠してないで出しちゃいなYO」

 

「それは確かに、隠し事は良くないなヘスティア~」

 

「ぐぬぬぬ………」

 

 面白い物があるなら出せと多くの派閥からの圧力に、隠していた物をいくつか出す羽目になるヘスティア。

 

「飴玉? あっ、おいひい」

 

「このチョコレート、ポーション使ってるの? ふーん」

 

「こいつは体力回復にはもってこいの食材やな」

 

 ロキがそう言いながら【まんまるドロップ】と【ぱっくんチョコ】を見る。実は儲けた金で畑を買い、育てていたカカオなどを使っている。今後【慈愛の聖水(ヒール)】の水で作るのでやばいことになるのだが、これは先の話。

 

「もしかして水も精霊パワーか?」

 

「精霊の愛を感じます(恐怖)」

 

(もう出てるから怖い)

 

 水はスピカが作った壺から出した水なのだが、これも知られると量産させられそうだから言わないヘスティア。デメテルなどがずっとこちらを見ているから目を反らす。

 

 実はこの壺は一度汲むと延々と水、入れた液体を出す不思議な壺で、この後【慈愛の聖水(ヒール)】を汲んで、それを使い出してとんでもない成果を出す。

 

「もう他には無いよ」

 

「そうなのか?」

 

「うむ、ヘスティアは薬作りも手伝ってくれているが、いまのところないな」

 

「ヘスティアーーーーミアハなぞ捨ておいて、儂と組めえええいいいい」

 

 ディアンケヒトが叫ぶ中、スピカを酷使しそうだから嫌だなと思うヘスティア。

 

 色々やらかしたものの、いまはとりあえず見逃されるヘスティア。いまだ多くの未知、娯楽の品物を持っているんじゃないか勘付かれているが、いまは見逃された。

 

 ロキ辺りは戦力アップに色々(安く)買い込む気ではあるが。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ヘスティア様お帰りなさい」

 

「ごめんねスピカ君。これだけギルドに卸した後、各ファミリアにはこれだけ【ブルーメタル】を卸さないといけなくなったよ」

 

 うわっとスピカは少し立ちくらみしそうなほどの量で、しばらく材料集めと鍜治場に籠らないといけない。

 

「材料は冒険者依頼(クエスト)で集める事も視野に入れますか」

 

「後は断っておいたけど、ロキの所で【はかぶさの剣】の購入だね」

 

「アイズさんの使ってる奴の品質落とさずに、質を向上させないといけないのか……」

 

 ため息をつき、お互い白目になる。お金はある、信頼もあるし、実績もできつつある。

 

 だけど団員一名と言う事態、めまいがする。

 

「俺の指示を聞かなくても良いは、派閥的にもう無しですね」

 

「当たり前だよ。ロキたちが言ってた通り、スピカ君は実益を出してる。もう団長としての地位があるんだから、聞いてくれないと」

 

「聞いてくれそうなのがエルフの人しかいないんですけど」

 

「エルフか~……まあ~た君狙いで入ろうとするんだろうな」

 

 精霊の加護があるのはもうはっきりしている。明らかにハイエルフなので、エルフがお世話したいが為に門をたたくが、ここはヘスティア・ファミリア。スピカ・ファミリアでは無いのだ。

 

「そもそも俺のいつもの行動とか見ると、倒れそうなんだよな」

 

 中身がオッサンのスピカ。飲酒はもちろん、綺麗なお姉さんに弱いなど、ハイエルフとしてどうかと思う行動を取る。これはエルフの人たちには我慢できないだろう。

 

 実際エルフから見たらかなり無防備のスピカ。リヴェリアからは普通だと言われ、一般的に見たら普通なのだが、どうしても気になるエルフは多くいる。

 

 一人称も俺と言う辺り、直させなかったドワーフの育て親に文句言いそうだ。

 

「元男だもんね、いまさら女の子らしくすることは」

 

「無理ですよ。丁寧語は前世でこびりついてますけど」

 

 色々と考え、いまはいまのまま頑張るしかない。そう決意して冒険者依頼(クエスト)の準備と材料の選別。明日卸す武具と【ブルーメタル】の準備に入る。

 

「俺もなんか作りたいな」

 

「自重しておくれ~」

 

 そうして半年間、スピカは大人しくしていたのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカ・シロガネ Lv2

 

 力・D546

 

 耐久・E401

 

 器用・C657

 

 敏捷・E411

 

 魔力・A857

 

 ・鍛冶F ・神秘E ・魔導F ・調合G ・狩人I

 

≪魔法≫

 

精霊物作り(スピリット・クリエイト)

 

 ・創造補助魔法

 

妖精の種火(トーチ)】詠唱式 ・灯れ、祝福の熱

 

 ・発火魔法 ・神秘の炎、奇跡の火 ・精霊の祝福 ・道具作り強化

 

慈愛の聖水(ヒール)】詠唱式 ・癒える、清浄の水

 

 ・生水魔法 ・癒しの力、祝福の水 ・精霊の祝福 ・生物成長強化

 

生命の光(ソウル・ライト)】詠唱式 ・光輝をここに、荒野に息吹を与え、不浄を否定し、絶望を塗り替え、魂に救済を 終わりを覆す始まりの代行者 我が名は命、生命ノ王

 

 ・極煌魔法 ・断罪の光にして鳴動の煌めき ・攻撃、付加可能 脈動する力

 

【】

 

【】

 

≪スキル≫

 

竜物語創造者(ドラクエビルダー)

 

 ・あらゆる道具、武具の想像、創造が可能

 

 ・成功率の把握 ・神秘、鍛治、調合アビリティ獲得

 

 ・道具製作に経験値(エクセリア)獲得

 

精霊加護(リュミエール・スピリット)

 

 ・魔力アビリティ強化 ・魔導アビリティ強化 ・魔導アビリティ獲得

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ダンジョンに入らず、黙々と鍛治をしていたら偏ったステイタスになった。鍛治で入る経験値(エクセリア)だけでは、耐久と敏捷が上がりづらい。

 

 そんな日々の中、彼らがついに牙を向けた。

 

「壊れた?」

 

「ごめんなさい……」

 

 アイズの為に深層の鉱石を冒険者依頼(クエスト)で集めて【はかいのつるぎ】を作り出し、さらにアイズが持つ【はやぶさの剣・改】と組み合わせる。

 

 神経を削りながら作り出した優良と言って良い【はかぶさの剣】をアイズに渡した、結果壊れて帰ってきた。

 

「嘘でしょう」

 

「後はこれを」

 

 そう言って渡されたのは【デストロイヤー】などの武器類一覧。まさかと思うが、これを再度購入するのか?

 

「すまないが、その通りだ」

 

 付いてきていたリヴェリアさんからそう言われ、どうするか頭を回転させる。

 

「まず【はかぶさの剣】をあの品質で揃えるのには時間がかかります、お金の問題じゃないです」

 

 ガーンと言うようにショックを受けるアイズ。仕方なく【はやぶさの剣・改】で妥協する。

 

 それと壊れた武器だが、ほとんど斧などの両手武器類。誰だ壊したのは………

 

「ついにクラッシャーどもがスピカたちの所でやらかしたぞ」

 

「むしろよく持ったよな、クラッシャーたち」

 

 えっ、アイズさんたちそんな名前で呼ばれてるの?! そう言う顔をするとリヴェリアは言いづらそうにしていた。

 

 何時の間にか工房の周りにも工房ができていて、朝からカンカンと音が鳴り響くようになっていた。その工房の、ゴブニュ・ファミリアの人やヘファイストス・ファミリアの人たちがそう呟いていた。

 

「レベルを上げなきゃ仕事がさばけないかも」

 

「付き合います」

 

「アイズの場合はそれでいいが、きついのか?」

 

 大量の【ブルーメタル】を卸し、売りだせる量の武器を作る日々。正直きついのが本音だ。

 

 一番は成功率だ。武器の中には50%ぐらいは確保して作れるが、ロキ・ファミリアなどの派閥に売るのはいまだに30%が最大だ。

 

 その中で時々10%の武器を買いたいと言われている。鍛治と魔導など上がり、確実にスキルが強化されるが、レベルを上げるのが確実だ。

 

 これはレベルアップを目指すしかない。

 

 それに団員が増えないと苦労していると考え込む。それがまた新たな火種になる事を知らなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「いまある装備はまあまあな【はかぶさの剣】。それ以外変えながら動いてるな」

 

 そう考えて【やいばのよろい】か【みずのはごろも】など装備する。あと他に何か必要かと考える。はごろもは水精霊の護布(ウンディーネ・クロス)で作れてよかった。精霊関係の道具から数多の装備を作る中、他に何か作れないか考え込む。

 

「いま欲しい物が良いですね」

 

 そう呟いたとき、一番欲しい物を考えた時、電流が流れる。

 

 一番欲しい物、前世の知識、未知の可能性。

 

 それらが知識の海から一つレシピになり、それが頭に浮かぶ。

 

「………いやいやいやいやいやいや………」

 

 それはまずくないかと思う。だがしばらくアイズ、第一級冒険者たちと冒険を約束した。サポーターとして下までだいぶ潜れる。

 

 材料を集められる。そう考えた時、後は行動するだけだ。

 

 手に入らないことを考慮して冒険者依頼(クエスト)の準備をして、後は動く。

 

 これは男のロマンである。

 

「頑張るぞ。おー」

 

 そう呟き、スピカは暴走した。




スピカ「俺は自重を捨てるぞぉぉぉぉぉ」

お読みいただきありがとうございます。


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第10話・魔法の効果

ヘスティア「スピカ君に工房の方で預けてあるお金、まとめ上げないと。そう言えば仕事中の工房に行くのは初めてだな」

ガチャと扉を開けると、スピカが鉄を打ち、スピカが寸法を合わせ、スピカが鋼の応用で【ブルーメタル】を作る………

ヘスティア「す、スピカ君が数十人いるように見えるっ?!」

のちに聞いたが、スキルのおかげでなんか現実では不可能な働きができるらしい。

ヘスティアはそれを聞いて、発言権を強く持ち、無茶ぶりを跳ね除けられるようになろうと強く想った。

スピカ「実は分身を楽しんでるのは内緒にしよう」


 魔法が発現してしばらくして、二つの魔法を確認しているスピカ。【妖精の種火(トーチ)】は竈の火としてとても機能している。武器の成功率が上がる他に、いままで作れなかった武器や防具が打てるようになった。

 

 もう一つの【慈愛の聖水(ヒール)】は簡単な回復薬(ポーション)を生み出すような効果だと発覚。かわきのつぼの中身をこれにしたら畑の成長率が高くなり、高級感溢れる【レッドキャベツ】や【びっくりトマト】。それに【ドデカボチャ】ができたり、サボテンができたりした。それにはヘスティアもスピカも口をあんぐりと開けている。

 

「えっと、食用ですねこのサボテン」

 

「サボテンって砂漠じゃなくてもいけるんだ………」

 

 そんなわけなく、ヘスティア・ファミリアがなにかしないか出待ち、ストーキングしていた暇を持て余した神々がついに畑を見つけて、旬や大きさガン無視した畑を見つけて大騒ぎ。野菜も買う者が現れ、デメテル・ファミリアが畑の秘密を探り出す。

 

 かわきのつぼとその中身をけして知られ無いようにしながら畑の管理をする。そんな中、最後の一つである【生命の光(ソウル・ライト)】と言えば………

 

「と言う訳で試します」

 

 ダンジョン上層でスピカは杖系を背負い、はかぶさの剣を片手に一人でダンジョンに来た。とりあえずLv2であるため、ここまでは一人でこの装備だけで問題ない。

 

「一応【慈愛の聖水(ヒール)】は回復薬(ポーション)の代わりになりますし、使える物はなんでも使わないと」

 

 そして長い詠唱が書かれた紙(普通の紙を作った)を片手に、日本語で書かれた詠唱をゴブリンに向かって詠唱する。

 

 すると光の玉が現れた。

 

「………ん~」

 

 光の玉が現れてから首をしげて見る。ずっと杖を前にかざして、その杖の先端に光の玉が浮かび、杖を動かすと動く。と言うより、思い通りに動く。

 

「うーん、とりあえずぶつけてみましょう」

 

 えいやと光の玉がゴブリンに激突するイメージでやる。

 

 

 

 スパーン!!

 

 

 

「えっ」

 

 気が付くとゴブリンの頭部が消し飛んで倒れ、どさっと地面に倒れた。血が流れ、壁は穴が開いていていた。スピカは口を開いたまま驚き、光はレーザーのような軌跡を描いて飛んだようだ。

 

「れ、レーザー魔法……? 攻撃可能ってすげえ」

 

 他にも使い道が無いか調べてみることにした。

 

「鉄に付加魔法(エンチャント)できるのか、ん~?」

 

 たまたま見つけた上層の鉄、鉱石に付加してみることにした。魔法を唱え、付与するイメージで鉄に重ねると、砕ける変わりに生まれ出た鉱石。新たなレシピが頭の中から湧く。

 

「あれ? 俺、また新鉱石作っちゃった?」

 

 ………

 

 スピカはすぐさまその鉱石を懐に隠し、その場から逃げるように立ち去った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ここ最近は【ブルーメタル】を作っては卸す事を繰り返し、他の【魔道武具(マジックウェポン)】も時折作る程度。新しい物に手を出すのはいまだしていない。

 

「うわ~疲れた~」

 

 鉱石ばかり作る日々は退屈で、ぶっ飛んだ物を作りたい。だけどと思いながら外を見る。

 

『『『………』』』

 

 いくつもの視線を感じる中、外に顔を出すと何事も無い。

 

「一応ギルドにごまをすったし、娯楽に飢えた神々は一応満足してるから、これ以上変なことする奴はいないと思うよ」

 

 とヘスティア様が言う。いまの状況は多少の我が儘は聞いたので、妙に圧力をかける派閥は現れないだろう。ロキ様、ヘファイストス様側も、この程度は仕方ないけど、それ以上するのなら潰しにかかると脅している。神々もそれを恐れ、これ以上の事はしない。

 

「適度にガス抜きしてれば、問題ないらしいし」

 

 結局ヘスティア・ファミリアは団員一名の弱小派閥。この程度できるのならしてガス抜きして、引き抜き合戦に発展しなければそれでいい。

 

 一応ハイエルフの可能性が高く、強力な武器を作り、騒ぎの真ん中にいるからだろうか、ガネーシャ・ファミリアが見回りに来てくれる。

 

「エルフの人たちもホームに乗り込んで来たりしないし、この程度は我慢しないと、物作りを好きにできないか」

 

 工房で昼飯を食べるヘスティア様と俺。実際頑張ったおかげで、日程のスケジュールをしっかりしていれば、休日も作れる。他の神も監視はするがそれ以上の事はしないし、客として物を買う。

 

「実際頭の悪い神ならもう人さらい的な事してるからな。全く、娯楽に飢えた神はめんどくさい」

 

「エルフの人も、ホームに工房に乗り込まなくはなりましたね」

 

「その辺もこの前の事で、手を出さなくなったんだろうね」

 

 そう言う意味では、この前のは良い事だろう。とりあえずいまだのんびりハードモードだが、それだけで済んだのはロキ様たちのおかげだろう。

 

 そう思っていると………

 

「外が騒がしいですね」

 

 そう呟くと戸が叩かれる。俺はすぐパスタを全て食べ終え、急いで出る。

 

「は~い、どなたですか~」

 

 そう言い戸を開けると………

 

「俺がガネーシャだッ!!」

 

 そう言い、象の仮面を付けた男神がポーズを取りながら現れた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「それでなにか御用ですか?」

 

 高い紅茶と菓子を用意してガネーシャに話を聞くと、ポーズを決めて言う。

 

「最近、インパクトが欠けていると思うんだ」

 

「インパクトですか?」

 

「ああっ!!」

 

 インパクトはあるが、それは初見の者くらいだろう。慣れ始めたファミリアの団員からはいまいちな反応しか返ってこない。なら、どうすればいいんだろうか?とガネーシャはスピカたちを頼ってきた。

 

「ならインパクトを強めればいいんじゃないですか?」

 

「どうにかできるのか?!」

 

「はい、丁度いいものがあるので」

 

「お、おいスピカ君。安請け合いしていいのかい?」

 

「ここでガネーシャ・ファミリアに恩を売っておきたいんです」

 

 そう言われ引き下がるヘスティア。ガネーシャはありがとうと言って、笑顔で帰って行く。さて、後は準備をするだけだ。

 

「出ないのなら、出るまで回そう、星5鯖」

 

 そんな意味深かつ嫌な予感がする言葉を最後に、工房へと引っ込むスピカ。

 

「あれ? やってないよねボク?」

 

 嘘は言っていなかった。なら大丈夫だろうと思いながらも、少し不安になる。

 

 ヘスティアはしばらく工房に引きこもり、それでも卸す品物は途絶えさせないスピカに安心しながら、畑を世話をする。

 

 しばらくして時々スピカが精神力(マインド)を回復させるために薬を大量に買って飲んでいる事に気づきながらも、温かく見守った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 フィンたちロキ・ファミリアは遠征資金を稼ぐ為に、18階層にテントを置き、下の階層でドロップアイテムなど集めている。

 

「少し『リヴィラの町』で食料を買い込むか」

 

 フィンがもう少し鉱石を集めたいと思っている。ここ最近オラリオの鉱物の物価は高く、品薄である。故に下層、深層から発掘される物が普段よりも倍の値段で取引されている。

 

 これもスピカのおかげであり、いまのうちに鉱物をメインに手に入れておこうとフィンは資金集めとスピカへの依頼も兼ねて狙っていた。

 

 幹部たちも頷きながら、買いだし班は少しだけ頭が痛い。

 

「リヴィラの町か、久しぶりだな」

 

「とはいえ、あの町で買い物は高いからのお。どう交渉するか」

 

「まあ彼女のおかげで鉱石や下層、深層のドロップアイテムは普段より取引されている。少しの出費は問題ないよ」

 

 フィン、リヴェリア、ガレスはそう会話していた。そうしてリヴィラの町に顔を出すとだいぶ様変わりしている。

 

 天幕や簡単な作りの建物しか無かったはずのリヴィラの町は、いつもよりも強固な壁と武装をしていた。

 

「あれは、バリスタか。壁付近に武装を付けながら、壁の厚みが増してるね」

 

「所々で見たことない道具があるが、なんだろうか?」

 

 そう思いながら、買い物をし出すが、どうも食料が多くある。ここはダンジョンで食料も上から持って来ないといけないから量に限りがあるが、それなりの量が売られている。

 

「まあ、値段は前と変わらんがな」

 

「とは言えなにかあったようだな」

 

「ん~おそらくだけど、僕らが知っている人物が関わってそうだね」

 

「なに?」

 

 リヴェリアが疑問に思いフィンを見ると、フィンは指さしで答える。

 

「スピカの姉御のおかげですよ♪ いつもご贔屓ありがとうございます♪」

 

「うん、他に入用の物は無い? 必要な物と交換したい」

 

「そうですかい? なら【バギバキューム】をいくつか」

 

 スピカがこの町をまとめ上げている、ならず者である『ボールス』に頭を下げられている。

 

 取り巻きたちも笑顔でスピカにへこへこしている。その手には【魔道武具(マジックウェポン)】を持っていたり、纏っていたりしていた。

 

「とりあえず頼まれていた施設の設計図ができましたから、完成させてみましょう。なに、この人数なら10分あれば完成します」

 

「さすがです姉御、お前ら、新しい酒場と宿屋作るぞっ! 手ぇ空いてる奴は面貸せええ!」

 

 歓声を上げるならず者たちは拓けた空き地に次々と集まり、建物を作り出す。

 

「さすが姐さんっ、頭の中にレシピが入ってるみたいだぜ」

 

「これなら俺らでも建てられるぜ♪」

 

「いっやふぅぅぅぅぅ」

 

 瞬く間に簡易の宿屋と酒場が出来上がり、ボールスはよっしゃーっ!と歓声を上げる。

 

 このままボールスの部下はいくつか作る為に散らばって、ボールスはスピカにへこへこしていた。

 

「【大弓】の他に【デインバリア】の設置に入りますから、場所の指示を。その後に取引素材を回収させていただきますね」

 

「へい、わっかりましたっ!!」

 

 ボールスに案内された場所で柱を設置したり、バリスタを設置するスピカ。機を見てフィンたちが休憩中のスピカへと近づく。

 

「あっ、フィンさん」

 

「やあ、君の所は相変わらずだね。ボールスたちを味方にしたのかい?」

 

「はい、リヴィラの町は何度も壊されては立て直されている町ですから、俺のスキルがかなり役に立ちました」

 

 どうもスピカが作ったレシピ、設計図を見ると頭の中に残り、いつでも思い出して作れるらしい。専門の者か信用できる者に建物のレシピを見せて作らせる。それだけで簡易建物がすぐに作れるとのこと。

 

「念のため宿屋、酒場の他に道具屋なども作って、それを後で持ち主がカスタムする形ですね。後は武器ですね」

 

「あの大型のバリスタか?」

 

「ええ、後はモンスターにしか反応しない魔法の壁を発生させる柱と、スイッチ一つで凍結魔法か炎熱魔法を放つ床。飛んでいるモンスターを叩き落す装置です」

 

 それを聞いて、欲しがりそうな人たちを頭に浮かべるフィン。これはまた新商品を作ったなと感心する。

 

 リヴェリアもまた、また騒動の種を作ってと心配してため息をつき、ガレスは豪快に笑う。

 

「それじゃ、帰りはヘファイストス・ファミリアの方とご一緒ですから安心してください」

 

「ああ、君も気を付けて。この前の件で、神々がけん制し合ってるけど、神はなにするか分からない。まあ満足している節があるから、一人で出歩いても問題は無いと思うが」

 

「はい」

 

 そう言って別れた後、フィンはふむと考え込む。

 

「いまのリヴィラの町の様子、スピカが関わっているか?」

 

「おそらくね、彼女自身話してないけど、この食料の多さも彼女が関わってそうだ。建物が簡易とは言え、ボールスたちでも作れるようになっているのなら、畑とかも作られているのかもしれないね」

 

「とりあえずリヴィラの町で食料確保は心配しなくて済みそうじゃな。値段はふっかけられるだろうが」

 

「そうだね」

 

 苦笑してガレスに賛同するフィン。実際その通りであり、スピカ監修の下、岩壁の中に畑を作り、その作物でビールを作ったりして騒いでいる。

 

 細かい事は気にせず、普通より早く収穫できるそれを大いに受け入れ、ボールスがよりこの町を牛耳り、スピカは協力者として長い付き合いになるのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「俺がッ、新ッ、ネオガネーシャだッ!!」

 

 星を思わせる光を放ちながら、鎧姿のガネーシャは道行く人々の目に留まり、人気を集めている。

 

「すっげえええガネーシャさまーー♪」

 

「かっこいいーーー♪」

 

「俺がネオガネーシャだっ!!」

 

 ポーズを取るガネーシャが着込んでいるのは【星神の兜・朱】や【星神の鎧上・朱】。さらに【星神の鎧下・朱】と【星神の盾・朱】。

 

 それを着こみ【星神の剣】を背負うガネーシャを見ない冒険者はいない。

 

 ガネーシャはスピカたちに感謝して、これからもよろしくとスピカは言っておいた。ガネーシャも力強く返事をしてくれた。

 

 そして変わったことがある。工房にまたヘファイストスとロキが眷属たちを連れてやってきて家探しをし出す。

 

「もう何も無いよ~」

 

「嘘つけ嘘を」

 

「あれには【ブルーメタル】とは違う鉱石が使われていた。まだなにか隠し持っているなお主」

 

「黙秘します」

 

 椿の問いかけにスピカは黙秘して神の前では何もしゃべらない。ヘスティアはそもそも知らないから分からない。

 

 一応この程度は別に構わないが、何かする前に相談してほしいと怒られるスピカ。こうしてスピカは時々羽目を外して、楽しく過ごしているのであった。




種火は生み出す力、鍛治の能力アップ。

水は育む力、畑の物を全て最高品に育てる。

光は可能性の力、ほとんどの事が出来て、新しい鉱石がスピカの可能性を開きます。

後スピカ当たるまで引く勢に一度なりました。無茶なことを。

なにがやばいって、これら全てレフィーヤに教えたら、犠牲者が増えるよ。

お読みいただきありがとうございます。


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第11話・材料集め

アスフィ「それでは、スピカ・シロガネの現状を言ってみてください」

ヘルメス「だから言ってるだろ? ロキやヘファイストスを初めとした派閥が目を光らせているからおかしな事はできないし、ギルドにも協力的だから、敵に回すのは得策じゃない。ギルドにまでケンカ売る気は無いよ、よく分かってるさ」

アスフィ「本当に分かってますか!? それだけじゃなく、現状の仕事量で入る資金は確実に第一級派閥と変わらないんです。資金面じゃ完全にロキ、フレイヤ・ファミリアと同格かそれ以上。そんな派閥に手を出さないでくださいね!?」

ヘルメス「別にいいさ、手は出さないよ(出さなくても向こうは勝手に面白いことするんだから、手を出すのは別にいいし)」


エルフたち「スピカ様をお一人で働かせているなんて、私たちが入団して手伝わなければ!!」


ヘファイストス「スピカちゃんたちはまた新しい鉱石作ったみたいだけど、【ブルーメタル】みたいに公にできない。あの時は何かとんでも無い事してると思ったけど、実際してたけど、いまはうかつなことできない………だけど気になる!!」

椿「別の派閥に知られ無ければいいと思う」

ヘファイストス「いまは協力し合ってるからそれはダメっ!!ともかくいまはあの子たちをそっとしておきましょう………私も反省しないと」


スピカ「こことここはどうするか、この辺は【白大樹(ホワイト・ツリー)】ともう一つは宝石樹で組み合わせますか。後は儀式を受肉の形で行い、召喚できるようにして………術式は問題なさそうですね」

ヘスティア「なにしようとしてるんだろう……?」

スピカ「物作りは楽しいな」

現状のオラリオの人々の心境、そして今日は材料集め。


 ロキ・ファミリアの『ラウル・ノールド』は特徴が無いのが特徴の人間だ。

 

 スキル、魔法無し、後輩には追い抜かれ、同期が次々と心折れる中、それでも第一級冒険者たちにしがみ付き、走っている冒険者。

 

 そんな彼もまた【魔道武具(マジックウェポン)】に飛びついた人間の一人だ。ロキ・ファミリアは引き抜きなどの問題に力を貸すのを条件に、幾分か割引されている。

 

 買った【呪印のつるぎ】と言う禍々しい名前の剣を大事に使いながら、今回の冒険の準備をしていた。

 

「今回は【幸福妖精(ブラウニー)】さんとその友人さんが同行するんでしたっけ?」

 

「うんっ、あたしは初めてだな。どんな子か楽しみ♪」

 

 そう喜ぶアマゾネスの双子、二つ名【大切断(アマゾン)】の『ティオナ・ヒリュテ』。その姉である【怒蛇(ヨルムガンド)】の『ティオネ・ヒリュテ』。

 

「あんた能天気に準備してるけど、その子の作った武器八割ダメにしたのあんたよ。大丈夫?」

 

「あー謝らないといけないか~」

 

「今回のだって、ロキ・ファミリアに卸す材料集めメインだし、レフィーヤたち、魔導士用にも武具が欲しいって団長が言ってたのよ」

 

「そうですね、いつも使う物も良いですけど、スピカ様が作る杖も使ってみたいですね」

 

 エルフである【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の『レフィーヤ・ウィリディス』はそう呟く。杖は【いかずちの杖】などが魔導士に売れている。ほどほどに魔法の威力を上げつつ、正式魔法(オリジナル)より威力は下がるが、魔法によるけん制もできる為、多くの冒険者が買い求めている。

 

「けど、安くてだいたい数十万ヴァリスは破格過ぎないっすかね?」

 

 そう、安くてそれくらいなのが【魔道武具(マジックウェポン)】の恐ろしいところだ。だけどそれは準備をしているフィンが説明する。

 

「んーおそらく鍛治的に、適正価格は悩んだはずだよ」

 

「値段を最終的に決めたのはヘスティア様やスピカ様だけど、基本はヘファイストス様が決めてるんでしたっけ?」

 

「ああ。武器としての使用と、魔剣の代理品としての値段を考えて安い物だけど、魔法は正直、上層、中層モンスター相手、下層、深層だと一瞬のけん制ほど。そして武器としての性能は、よほどの業物で無いと中層どまり。スペックを全て合わせて高くてもそれくらいしか付けられない、そう判断したんだろうね」

 

 フィンが数多くのがらくたのつるぎや、目を見張るほどの性能を秘めた物を思い返す。後者ならそう簡単に手を出せないが、平凡的な、スピカで言う成功確率の高い物は高くて100万ヴァリスほどだ。

 

 スピカは半端ない量の仕事を押し付けられているが、そうして得た収入で好き勝手に成功率の低い物を作ったりしている。ロキ・ファミリアに流れるのがその低い物だけである。

 

 ロキ・ファミリアの仕事は引き抜きに関するけん制が主だ。あまり表立って行動していないが、裏で何を考えているか分からない派閥をリストアップして、情報を集めて対処している。

 

 物理的に行動する者や個人で動く者もいるが、一応彼らはスピカがヘスティア・ファミリアに居続けられるように行動をしていた。

 

 前の検査の時などは、ヘスティア側があまりに妙な事をしていたため、表に話が出ても周りの反応と行動は変わらないから行動に移った。リヴェリアがしっかり言い聞かせているが反省の色は無い。

 

 ともかくいまを乗り切れば問題ない。いまはスピカしか作れないが、近いうちに他の鍛冶師も作れるようになる。技術的に広まれば少しは落ち着くだろう。

 

「それに属性武器だけじゃなく【ガイアの剣】もある。正直安定して売れているのはああ言う武器だろうね」

 

「属性武器は良いけど、性能的にはやっぱり良い物が良いですもんね」

 

「属性武器は大小で威力が変わるからね。ヘスティア、ヘファイストス・ファミリアから買う時は良いけど、他の店とかだと威力、詠唱式の確認をしないといけない」

 

 だいぶ【魔道武具(マジックウェポン)】はオラリオに浸透して、その威力や利便性をいかんなく発揮している。Lv2ぐらいの冒険者は一本持っているほどだ。

 

 武器ばかりでは無く、防具の方面にも出来上がり、【魔道武具(マジックウェポン)】のような機能を持つ防具も作り出されている。少なくてもスピカ・シロガネの行動によって、鍛治界は確実に一歩二歩先に進んでいる。

 

「正直彼女がオラリオの闇が活動していない時に来てくれてよかった。彼らなら闇ルートで確実に入手して悪用しているからね」

 

 フィンの本心の言葉を聞きながら、アイズが新しい装備を着て出て来る。

 

「変じゃないかな?」

 

 スピカからのお仕置きで、スピカが用意した防具を着るアイズ。いまは【シュバリエメイル】などの装備を着こむ。

 

「アイズさん凛々しいです~♪(スピカ様さすがです~♪)」

 

 レフィーヤは喜び、アイズも頷くが、少しだけ不安になる。スピカにあまり壊し過ぎると露出が増えると脅されているし、ロキが嬉しそうにしているから。

 

 こうしてゆっくりと全員が準備を進めるのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ロキ・ファミリアが護衛してくれるのはほんと助かるな」

 

 フィン、リヴェリア、アイズ、ティオネ、ティオナ、レフィーヤ、ラウルの他に、数名のエルフの団員が参加して、スピカとヴェルフと合流する。ヴェルフの存在に忌避するエルフはいたが、本人は魔剣嫌いの理由と、スピカの親が下手をすればその騒ぎに駆け落ちしている可能性がある為、その辺りを言ってその後は何事も無く、下層付近で材料集めしていた。

 

「この辺でそれはどんな感触ですか?」

 

「ああ、確実に性能は出ているね。ここの攻略には持って来いだよ」

 

 スピカの言葉にフィンは答える。37階層付近で一度武器を変えて、スケルトン、アンデッド系のモンスターに高ダメージを出す武器を使ってもらっている。効果はあるようだ。

 

 ティオナも武器を使うが、スピカに近づき訪ねて見た。

 

「ねえねえ、大双刃(ウルガ)みたいな武器無いかな?」

 

「それは少し独特ですので、両手武器や斧、鎌のようなものならたくさんあります」

 

 時間を見つけては作りまくる。いずれ自分以外も作れるだろう。そう思いながら好き勝手に時間を過ごすスピカである。

 

「バックパックがいっぱいになって来ました」

 

「材料的にどれほどだい?」

 

「無理をしなければいまあるだけでロキ・ファミリアの分は作れますね。品質を求めるのなら、あと一回潜るくらいです」

 

 スピカ的に助かるのは、こうして深層、下層で安全に探索して、材料が入るのは助かる。ロキ・ファミリアに感謝しながら色々と考える。

 

 実験の為、上の階層まで戻る一行。その時に24階層でそれを見つけた。

 

「あっ、木竜(グリーンドラゴン)

 

「えっ!?」

 

 ティオナの言葉に反応したのはスピカだった。緑の竜である巨体のモンスター。24階層最強のモンスターであり、宝財の番人(トレジャー・キーパー)のように宝石を実らせる木を守る。

 

「宝石樹ですね、結構大きい」

 

「これは良いな、帰り道であれに出会うのは財政が助かる」

 

「マジで宝石樹?! しかも材質も良い!!」

 

「す、スピカ? どうしたんだ?」

 

 テンションを上げるスピカは【いかずちの杖】の準備をしながら、戦う準備をしている。

 

「すいません、あの宝石樹そのものが欲しいんです。木材として道具の材料になるって思って集めてますっ」

 

「ほう、宝石樹の宝石を売る者もいるが、確かに材料として木そのものを売る者もいるな」

 

 リヴェリアは赤や青の宝石を実らせている大樹を見ながら、戦う準備に入る。

 

「奴のドロップアイテムも奴に立つ。どうするフィン?」

 

「スポンサーとしては彼女に色々作って欲しいし、なによりあのでかさは財政を助けてくれるだろう」

 

「それじゃ」

 

「総員戦闘準備、これで最後だ。アイズ、ティオナ、ティオネを前に」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 宝財の番人(トレジャー・キーパー)を倒して木そのものを手に入れる。エルフたちがハイエルフスピカの為に、スピカの求める長さ、幅に切り取った木材を持って行く。スピカは嬉しさの余り抱き着くほど喜んだ。ちなみに抱き着かれたエルフたちは天にも昇る顔をしていて、リヴェリアは呆れ果てた。

 

「さて、そろそろ例の実験をしようか」

 

「あっはい、皆さん、準備は良いですか?」

 

「だ、だいじょうぶですスピカ様……」

 

 木材など背負うレフィーヤの言葉に他の木材を担ぐエルフたちは頷き、ラウルは緊張する。スピカはある巻物を取り出し、それを広げた。

 

 広げた瞬間、円を描く光の輪がスピカを中心に地面に広がり、全員がその中に入る。

 

「【リレミト】」

 

 そう言った瞬間、その場にいた人たちはダンジョンから姿を消して、地上の、スピカがその為だけに建設したフロアへと出現した。

 

「っと」

 

「24階層でこのメンバーでの移動成功ですね」

 

 アイズたちは少し戸惑いながら辺りを見渡す。特殊なオーブが安置されている祭壇がある部屋。部屋の広さはかなり広く、祭壇以外何も無い。その扉前にはガネーシャ・ファミリアが門番していて、すぐに部屋から出て行く。

 

 その際に門番に今回の人数と階層、時間や状況のデータを報告して、データを集めている。

 

「【リレミトの巻物】か、このオーブがある場所に移動する、転移魔法の巻物(スクロール)

 

「いまのところ問題なく機能しているが、どこまで機能するか分からないからな」

 

 リヴェリアが感心しながら、その性能を考える。スピカが作ったこれには、ギルドを始め、多くのファミリアが驚愕と称賛する品物だ。異常事態、イレギュラーが起きれば全滅もあり得るのがダンジョンだ。即座に地上へ帰れる手段があれば、生存率が跳ね上がる。

 

 ただスピカはダンジョンについてはいまだ知らない事が多い。深ければ深いほどわからない為、こうしてデータを日々取っている。もちろん冒険者依頼(クエスト)で確認したり、ロキ・ファミリアが潜ってくれたりしているため、少しずつ使用可能階層は増えていた。

 

「値段がバカになりませんから、30階層よりも下に潜れる人じゃないといけないのが気がかりですね」

 

「それでも状況に応じて使い分けたいね。遠征じゃ全員分揃えるのも難しいが、僕たち探索系ファミリアには新たな生命線だよ」

 

 ここでスピカの凄いところは、レシピをギルドにタダで渡したところだ。

 

 すぐにギルドは入口にあるフロアの製作を依頼、それには代金をいただき、製作可能な派閥へレシピを渡して製作。効果があるか、様々な方面でデータを取り始めた。お金は少ししか入らないが、スピカにかかる負担は少なく済んでいる。

 

 そんな会話をしながら手に入れた宝石も売ったフィンたち、ロキ・ファミリアの財政は潤い、スピカは作りたい物の材料を集めるのに成功した。

 

 ヴェルフは何か作りたそうにテンションを上げていた事を主神に密告、ヘスティアもそれ経由で聞き、なに作るんだろうとスピカに聞く。

 

「秘密です。楽しみにしていてくださいねヘスティア様っ♪」

 

「う、うん……ほどほどで良いからね」

 

 嬉しそうにするスピカは集めた材料で工房に籠る。ヘスティアはいまのうち勉強しないといけない気がしたので勉強し出す。

 

 こうしてスピカは楽しくオラリオで頑張る中、とんでもない物を作り出す。




スピカ「体格などのデータは自分の身体で代用しよう、美少女でよかったな。大丈夫なにしても問題ないさ……たぶん」

ヘスティア「何を作ってもボクだけはあの子の味方でいなければ」

お読みいただき、ありがとうございます。


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第12話・完成するもの

スピカ「召喚式も受肉も問題ない、もうすぐ完成だ」


 その日は徹夜だった。丸一日二日掛けての工房に引きこもり、何かを作るスピカ。ヘスティアがご飯を用意しても食べずに何かを必死に作る。

 

「なに作ってるんだろう?」

 

 教会の方で作った庭に【かわきのつぼ】から【慈愛の聖水(ヒール)】の水を撒く。カカオなどはこれで最近作っている。

 

「最近【慈愛の聖水(ヒール)】で品質も良くなってるし、この壺があればいくらでも使えるから気を付けないとな」

 

 そして工房へと帰り、様子を見に行くとスピカが倒れていた。

 

「スピカ君!?」

 

「お腹すいた……」

 

 お腹を空かせたスピカが居て、急いでご飯を用意しようとした。だがスピカがそれを止める。

 

「へ、ヘスティア様、それより先にして欲しいことが」

 

「い、一体なんだいそれは」

 

「はい……()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ……ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ヘスティアは困惑した。最初、何かの冗談かと思ったが、詳しい話を聞いてヘスティアはいいねそれと思った。

 

 その後はご飯を食べたスピカと共に恩恵を刻み、それは起動する。

 

「ごきげんようマスター、ヘスティア様♪」

 

 それは白い肌をした人形、銀色の長い髪、小柄な少女の身体。アメジストの瞳。

 

 Fate/シリーズの『ナーサリーライム』と言う少女に瓜二つ。いやナーサリーライムそのものである。

 

 召喚式とリンクして受肉する形での召喚。同意が無ければ無理だっただろうが、OKだったらしいとスピカは喜ぶ。

 

「動いたーーーー動いた、動いたよスピカ君ーーーーっ!!」

 

「はいっ、実験は成功しました♪」

 

 ナーサリーライムは首を傾げ、スピカは洋服を着せて、ヘスティアも団員が増えて頬が緩む。

 

 三人は早速パーティーを始める。ナーサリーライムの誕生日もしっかりカレンダーに刻み、こうしてヘスティア・ファミリアに団員が増えた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「言い訳を聞こうかしら?」

 

 当然の如くロキ、ヘファイストス側に怒られた。

 

「すいませんついできる物だから、後悔も反省も無いです」

 

「スピカ君は悪くないッ!!いまだちゃんとした団員が来ない方がおかしいんだ!!」

 

 スピカたちを囲むのはヘファイストスとリヴェリア。ロキは「うちにも欲しい」と言ってリヴェリアに怒られたので、別位置で正座していた。

 

 ナーサリーライムは前世の知識(この辺は誤魔化しながら)をフルに使い作り出した人形だ。神の恩恵(ファルナ)を刻むことで起動して、冒険者のように成長するよう設計されている。

 

 魔法も使う事ができて、神の恩恵(ファルナ)で成長する少女。こんなことが神に知られればバカのように騒ぐ。そんなものを生み出したスピカは長い時間、正座させられている。

 

 実はもう一体作ろうとしているが、いまは行動しない方が良いと思い心の内に秘めている………

 

「んじゃあ、ナーサリーたんもステイタスあるのかドチビ」

 

「あっうん、いまは恩恵を付けたばかりだからいいか、はいこれ」

 

 そう言って渡した羊皮紙を、ロキとヘファイストスは見ずにろうそくの火で消す。

 

「ドーチービー」

 

「しまっ、つい流れ的に見せてしまうところだったっ」

 

 今回はさすがにやり過ぎなので、二人してお説教時間を伸ばすことにする。

 

 フィンもこの場にいて、んーと困った顔をしていた。

 

「ともかく、もう無かった事にもできないし、このまま小人族(パルゥム)として過ごした方が良いんじゃないかな?」

 

「それしかあるまい。幸い人形だのなんだのは見た限り、関節部分さえ見られなければ問題ない」

 

「まあ放っておくともう一体作りそうやし、そこは厳重にせんとな」

 

「? マスターたちと一緒にいていいんですの?」

 

「ええでええで、好きにせんとなー」

 

 嬉しそうに正座する二人に抱き着くナーサリー。フィンたちも強く言えず、こうしてこの場が終わると思ったときだ。

 

 フィンがふと思いついた。

 

「神ヘスティア、スピカ・シロガネの恩恵は更新したかい?」

 

「? いいや、してないけど」

 

「どうしたフィン?」

 

「いや、曲がりなりにも生きる人形を作り出したから、経験値(エクセリア)はどうなっているのだろうと思ってね」

 

「あーそうだね、確認しようかスピカ君」

 

「はい」

 

 二人は震える足でヘファイストスに部屋を借りて、恩恵を更新を始めるが………

 

「やはりこの二人にはお目付け役が必要だね」

 

「せやなー」

 

 お茶菓子を食べて嬉しそうなナーサリーを見ながら、ヘファイストスはため息をつく。ここでヘスティアたちは、鍛治などの物作りでスピカが経験値(エクセリア)を確保しているとバラしてしまった。

 

 元々おかしいなと思っていたフィンたち。疑問が確信に変わり、少し呆れてしまう。

 

 自分たちは確かに味方だが、隠さなければいけない事はある。まあ不審な行動をすれば調べるが、ステイタスに関しては口を出す気は無い。だが隙あらば調べる、派閥運営なんてそういうものだ。

 

 これも日々、相手より優位に立ち交渉を優位に持って行く為の訓練だ。ヘスティアには成長してもらわなければいけない。今回の件も含めて成長してもらわないといけない。

 

 こうして色々バレてしまい、ヘスティアはノォォォと叫ぶがスピカはLv3へとランクアップ可能になり、様子を見てランクを上げる事にした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 それからしばらくは物作りとナーサリーの経験値(エクセリア)稼ぎをメインに動く。

 

 しばらくは大人しくしようと思い、物作りに励むスピカ。【おうじゃのつるぎ】に【ひかりのよろい】に【ゆうしゃのたて】を作る。

 

 自分で装備できないが、他にも強力な【ふうじんのたて】なども作る。勇者シリーズは作っておいた。

 

 武器、防具作りだけじゃなく、薬関係も製作に入るスピカは【せかいじゅのしずく】を完成して、ミアハを通してディアンケヒト・ファミリアで販売する。振り撒くと仲間たちが回復する為、冒険者パーティの命綱として買い求められていく。

 

 なにげに【エルフののみぐすり】も作り出して、迷宮都市(オラリオ)一の治療師(ヒーラー)の『アミッド・テアサナーレ』がスピカを鍛治師(スミス)から治療師(ヒーラー)に鞍替えさせようとして騒がれた。

 

 さすがにこれだけ【魔道武具(マジックウェポン)】を作り出すと、ついにスピカ以外にも【魔道武具(マジックウェポン)】を作り出す者が出始める。その第一号はもちろん椿だ。

 

 こうなると後は正式魔法(オリジナル)ほどで無くても、通常の魔剣並みの威力を持つ【魔道武具(マジックウェポン)】作りへと時代が変わり、数多くの道具によってか、冒険者の死亡率は少しずつ下がっていく。

 

 そんな日々の中、変わり出す運命はある。ヴェルフは残念ながら壊れない魔剣が作れる可能性を見ながらも、いまだ進んで魔剣の研究をしないでいた。熱意はくすぶっている中、別の少女の運命が変わる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「【縁下力持(アーテル・アシスト)】持ちの募集……」

 

 リリルカ・アーデ、14歳。何か楽な冒険者依頼(クエスト)が無いか確認していた。例え自分にできなくても、色々知っているとで変わるからと思ってだ。

 

 リリルカは主神が趣味神で、団長が小悪党。意識が吹き飛ぶほど酔う【ソーマ】で団員たちの心を縛り付けて、金を集めさせる派閥である。残念ながら両親がソーマに入っているからと言う理由で生まれた時から団員扱いのリリルカは、脱退する為にお金を集めている。

 

 だが冒険者としての才能が無く、サポーターの立場で先輩を自称する冒険者やサポーターを蔑む冒険者から巻き上げられ、巻き上げる日々を過ごしていた。

 

 そんな中で、唯一のスキル【縁下力持(アーテル・アシスト)】持ちを募集する派閥を見つけたのが、彼女の転機である。

 

「嘘、こんなスキルにこんな額払う訳……ロキ・ファミリアにヘファイストス・ファミリアのサイン付き……」

 

 募集するヘスティア・ファミリアは団員数こそゼロに近いが、稀有なレアスキルや魔法で今では迷宮都市(オラリオ)を騒がせるファミリアとして有名だ。

 

 その派閥が自分みたいな者を集めて何をする気だ?と思いながらも、自分が真面目にサポーターしたり、蔑む冒険者に頭を下げたりしても届かない高過ぎる給金に、リリルカは疑いながらもそれを手に取る。

 

「まあ、普通にダンジョンに潜ったり、冒険者を騙すよりマシですね」

 

 バックにロキ・ファミリアがいるのなら、少なくともヘスティア・ファミリアの下で活動する自分に手荒な真似をしないだろうと踏んで、安心安全にお金を稼ぐ為に募集に参加する。

 

 ここでリリルカの生活が一変するとは思いもよらなかった。

 

 まずは契約の前金で纏まった給金をいただけた事、その為にそれを巻きあげたカヌゥたちが調子に乗って、仕事中のリリルカを襲った瞬間だろう。

 

 リリルカがヘスティア・ファミリアの仕事で稼いでいる事はバレている。むしろ知られた方が良いと考えて公言していた。相手はロキにヘファイストスと言った派閥をバックに付けて、その団長であるスピカはハイエルフなのだ。そこに手を出すと言う事は、少なくともエルフたち全てを敵に回すも同然なのに手を出して来た。

 

 彼らはすぐにロキ・ファミリアから貸し出された団員に制圧され、詳しい話を聞いたスピカとヘスティアは激怒した。

 

 さらに仕事の内容もやばかった。ギルドを含めた鍛冶派閥に卸す【ブルーメタル】と言う貴重貴金属を運ぶ仕事なのだ。当然ギルドの耳にこの事件は届いた。

 

 あれよあれよとリリルカですら驚くほど被害者として立場が守られていき、ソーマがギルドに厳重注意されると言う事態に陥った。

 

 その結果、恐るべき酒を販売するソーマと団長の手口が明らかになり、酒作りを禁止され、リリルカのような酒に縛り付けて働かされている団員たちの処遇を正させ始めた。

 

 こうしてリリルカの悪夢はあっけなく終わりを告げた。正直あっけなさ過ぎて実感を感じないリリルカは、ギルドとソーマと話し合いの末、公に決まった脱退資金をすぐに集め、このたびヘスティア・ファミリアに入ることになった。

 

 もちろんソーマからの報復を考えて、安全なこの派閥に入るのだが、ここから副団長兼【ブルーメタル】管理人としてリリルカは活動する。

 

「人生何があるか分かりませんね」

 

 そうリリルカは呟き、大量の【ブルーメタル】を運んでいくのであった。




倫理観ガン無視した場合。

白い髪のとある少女に似たホムンクルスが生まれる。

ロリモードレッド「問おう、お前が俺の母上か?」

スピカ「そうですよモードレッド」

ロリモードレッド「母上っ!!」

こうして幸せに過ごして、のちにマシュも作るのであった。

スピカ「これはさすがにまずいか、美少女人形にしよう」

こうして男のロマンは、可愛らしい生きた人形を作るに変更されました。

しばらく小話を投稿します。そんなに大きい変化ないと思うけど、良ければ読んでください。

それではお読みいただき、ありがとうございます。


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第13話・小話が一つ目、水魔法の凄さ

ナーサリーライム。詠唱式は定まっておらず、その時の気分次第。長ければ長いほど、魔法の効果が高まる。

魔法を使用すると、火を出したりしたり、トランプの兵士などを召喚して戦う。

光の魔法で生まれた鉱石を核にしているためか魔力は膨大。完全な後方支援タイプ。


 とある場所にある『青の薬舗』、忙しい時間帯が終わり、一息つくナァーザ。品物とヴァリスを計算しておく。もうそろそろ来る頃だろう。

 

「いらっ、スピカ♪」

 

 この店の救世主スピカである。いまは【みずのはごろも】を着こみ、バックパックに大量の商品を背負い、リリと共に来た。

 

「景気は良いですかナァーザさん」

 

「スピカのおかげで、毎日ご飯はおかわりできてる♪」

 

 嬉しそうに前に出るナァーザ。ナァーザは実は知っている。スピカは普通のエルフでは無い辺り。まず肌の露出や触れあいの忌避は一切ない、女性の場合むしろウェルカム的な反応を示す。この時はナァーザもまさかなと思ったが、長い付き合いで確信した。スピカは女の子、自分のような大人のお姉さんに弱い。

 

 手に振れたり、抱き着かれたりすると鼻の下は伸びないけど、内心やったーと言う反応はしている。まあ最近はお供の子に邪魔されてしまうが。

 

「スピカ様、他の仕事もあるのですから、早く要件を済ませてください」

 

「はーい」

 

 こうして仕事を早めに終わらせられ、新商品や新しい商品開発もできない。ナァーザは内心困っている。

 

「【エルフののみぐすり】とコイン類、最近の売りだと【せかいじゅのしずく】がいっぱい売れてる。これが売上金、場所代はもう引いてあるから」

 

「それじゃ計算しますので少々お待ちを」

 

 ………一時、場所代をちょろまかそうと考えた時期はあった。だがスピカは長い目で見ればかなり稼がせてもらっているし、ハイエルフと言う噂も相まってそれはしていない。リリが代金確認し出して内心しなくてよかったと思っている。

 

「スピカ、最近調合手伝ってくれなくて、寂しいな~」

 

「ごめんなさい、ここ最近【ブルーメタル】を多く買い求められたり、最上品の【おうじゃのつるぎ】を作らないといけなくて」

 

「そうなの……それじゃ、今度は調合、一緒にしようね」

 

 そう手を取り優しく微笑む。するとスピカの頬が緩み、は~いとデレデレする。

 

 スピカの作った薬は良く売れる。相場の倍でも良く売れるから、本当に助かるし、詐欺じゃないから良心も痛まない。

 

「スピカ様?」

 

「はひっ、な、なにリリ?」

 

「デレデレしないで、別の商談もしておきましょう」

 

「はーい」

 

 リリが横目でじっとりと睨む。この子もスピカの事をよく知っている? そうナァーザが思う中、スピカからの話を聞いてまとめる。

 

 ここ最近、品物の売り場が狭くて苦情が来ている事、一応ミアハ・ファミリア経由でいくつか卸しているが、足りないと言うディアンケヒント・ファミリアがうるさいので、彼らにも同等数の品物を置くと言う話である。

 

(残念、いままではここで泣き崩れて抱き着けばうやむやにできてたけど、商品は多くなったし、お客も対応できなくなるほど来るのは困る。ここは受け入れるしかないか)

 

 そう決めて、ナァーザは手を取りながら微笑む事にした。

 

「いいのスピカ、スピカが私たちのこと気にしてくれるのは分かる。けどいまくらい品物をここに卸してくれるくらいでちょうどいい。借金は返せるし、ご飯もいっぱい食べられるから」

 

「ありがとうございます、ナァーザさん」

 

 リリにずっとバカな事を言われたり、言わないか監視されている。仕方ないと内心ため息をつきながらナァーザはこのままぐらいに留めた。

 

「ああ、けど新商品ができたら、真っ先にうちに売らせては欲しいかな? そうしてくれたら、私は嬉しい」

 

 何事も先手を取るのは良い事だ。スピカに贔屓にされているだけでお金が入る。

 

「えっ、じゃ【せいすい】のテスト終わったら卸していいですか?」

 

「スピカ大好き♪」

 

 そう言って抱きしめる。この時、胸を押し付けておく。

 

 ナァーザは考える、例え中身が男だろうとスピカはスピカだ。この子はもう大切な仲間だ(どんな手を使っても離さないカモネギ)と考える。

 

 こうしてスピカはやっふーと言う心境になるが、リリがお説教して元のテンションに戻り、すぐに【せいすい】が全てのモンスターに効いて、近づいて来ないかテストを早めることにした。

 

「リリ、あれに喜ばない男はいないんだよ」

 

「あんたは女の子でしょうが?!」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「お散歩♪お散歩♪楽しいわ~♪」

 

 鋼の乗り物でナーサリーライムと共に前進する。今日お休みの時間が入り、せっかく作った【シャドウ・ボーダー】の試運転にナーサリーライムを誘ったスピカ。

 

「運転席を私の体躯で動かせるようカスタムしましたが、問題なくドリフトとかもできましたね」

 

「楽しいわ♪楽しいわ♪ モンスターさんが吹っ飛んでしまったわ♪」

 

 モンスターと激突して倒しても問題ない強度、必要無いが虚数空間への潜航はしなくていいだろう。てか神様も乗せたりするかもしれないから、それを考えるとダメな気がする。これ外してなんかカスタムしよう。

 

「他にも即死系、蘇生系の道具をどうするか。さすがに作らない方が良い気がしますね」

 

 即死系は悪用された時が怖い。いまのオラリオが平和だからと言って、善人で溢れている訳では無い。蘇生系は実験ができない。もしもダメだった時が精神的にきつい。そう思いながら進んでいくと………

 

 人がモンスターに襲われかけていたので、ゴルドルフ式ドリフトアタックをかました。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 襲われた人たちは、どうやら麓の川辺に水を汲みに出向いていたので、川で水を確保してから村まで運んであげた。注目を浴びたが、まあ当然なので気にせず水を配る。

 

「ありがとうございます、あなた様は冒険者様ですか?」

 

「まあそうですね、見ての通り、この乗り物の走り心地のテストで、ここまで遠出しました」

 

 戸惑いながら納得する村の人。スピカは気にせず、ナーサリーは村の子供たちと遊んでいる。

 

「ですけど、この村には井戸は無いんですか? さすがに距離があるようですけど」

 

「近くに他の川があるんですけど、この時期モンスターが出やすく、安全の為にふもとまで降りることにしておるのです」

 

 長老らしい人がそう説明しながら、予想より多くの飲み水が確保できた事に感謝される。ボーダーのおかげで、大量の水が運べたのだ。しばらくは大丈夫だ。

 

 しかし、この調子では危険な気がするスピカ。なんとかしたいが、それをする理由は無い。スピカは善人ではあるが、聖人では無い。何か問題を起こすとヘスティアに迷惑がかかるし、この村以外だって水を求めて、こちらに助けを求めるだろう。タダで。

 

 ほいほい助けたり、行動するわけにはいかない。リリに怒られるので、スピカがするのはここまでだ。そう思っていると………

 

「村長さん、大丈夫ですか?」

 

 とんでもない美人が現れた。

 

 栗色のストレートの長髪、白い美しい洋服を着ていて、スピカの好みに入るお姉さん系の存在。慈愛系のそれだ。

 

「おお、すいませんなあ、いつもご心配をおかけしまして」

 

「いいえ、私にもなにかできればいいのですが」

 

「………あなた様はもう十分働いた。いまはお身体と心を休ませる時です」

 

「ですが」

 

「お困りなら俺がなんとかしてあげますよお姉さんっ!!」

 

 そう言っていつものように馬鹿な真似をするのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「マスター、まずはどうするの?」

 

「まずは流れ出る水をスムーズに流れるように計算しないと。水浸しにしては意味が無いです」

 

 村長たちはそんな事ができるのかと驚き、お姉さんが()()()()()()()()と言い、村に作る場所を確保したスピカ。次に水周りをよくして、準備に入る。

 

「ボーダーに一通りの道具と工房を作っておいてよかった」

 

 計算完了、簡易井戸のような場所や飲み水の確保など、いまから手に入る大量の水の行き来を完璧に把握して管理するようにしたスピカ。次は指定の場所に種を植える。

 

「離れますよナーサリー」

 

「わぁーい♪」

 

 種を植え、すぐに離れると芽が出て、一気に大樹へと成長する。

 

「な、なんと……」

 

「まあ……」

 

 村長たちとやお姉さんが驚くと、それは大樹と成り、一気に実った。

 

 大樹から水が流れ、大樹の周りに緑が実る。

 

「大樹の力の安定を確認、これで良し」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 大樹から生まれる水はスピカの【慈愛の聖水(ヒール)】と変わらない、後の調整をした後は、もう帰る予定のスピカ。時々様子を見に来て、何か不具合が無いか確認すると話し終えた。

 

「待って」

 

 そうして準備していると、綺麗なお姉さんが話しかけてきた。

 

「なんでしょうか?」

 

「あなた、精霊とゆかりがあるの? その力でなにがしたいの?」

 

 真剣な顔で尋ねられ、返答に困るスピカ。

 

(あなたが美人だからついとか言っちゃあかん奴だ)

 

 そう思い、答えを考えたスピカは、もう一つの答えを答える。

 

「俺にできるのは物を作る事です。それで幸せにできるのなら、幸せを作る事が俺のするべきことです。だからですかね、その後の事はその後考えます」

 

「………そう」

 

 それをホッとするお姉さん。その様子に近づいて、優しく微笑む。

 

「この力を悪用する事は無いので、安心してください女神さま」

 

「……さすがに気づきますね」

 

「俺の力をすぐに精霊の力と言うのは、オラリオでよく言われてますからね」

 

 そう聞くと、少しだけ複雑そうな顔になる女神様。

 

「………いまのオラリオは、どのような状態ですか?」

 

「そうですね」

 

 正直に自分の周りを話す。ナーサリーも加わり、ナーサリーを抱きしめながら聞く女神様。それに少しデレデレになるスピカ。

 

 その後に別れ、オラリオへと戻る。そろそろ戻らないと、黙って都市を出たことがバレてしまう。

 

「そう言えば、豊穣の女主人の話に食いついてたな女神様」

 

 特にリューさんの話を聞いていた。そんな気がしながら、オラリオへと戻った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 しばらくして、大樹のおかげかモンスターは村に近寄らず、心地よい風が行き来する村。一人の女神がある方角を見る。かつて正義を掲げ、そこにいた都市の方角を。

 

「………元気そうで何よりです、リオン」

 

 そう優しく微笑み、屋敷へと戻っていった………




【みずのはごろも】出典ドラゴンクエスト

水の羽衣、天から降った天露の糸で編まれた一品。スピカは水精霊の護布(ウンディーネ・クロス)で代用。のちに【慈愛の聖水(ヒール)】でさらに品質向上する。


【エルフののみぐすり】出典ドラゴンクエスト

ドラクエのエルフにのみ伝わる飲み薬。MPを全回復する。スピカの場合、上等精神回復薬(ハイ・マジック・ポーション)精神回復薬(マジック・ポーション)の中間くらいの回復量。意外と重宝されている。

ナァーザにも製造可能。中身のほとんどが【慈愛の聖水(ヒール)】やそれで育った大樹から出る水により製造される。


【○○のコイン】出典聖剣伝説3

炎のコイン、大地のコイン、嵐のコイン、氷のコイン、暗闇のコイン、光のコイン、月のコインなどの種類あり、使用すると各アイテムの魔法を使用することができる。

他にも精霊の名前を持つ石像があり、これもまた聖剣伝説の魔法が使用可能。神も使える為、よく売れている。


【せかいじゅのしずく】出典ドラゴンクエスト

世界樹の葉を浸した液体。味方HPを全回復させる。スピカの場合、【慈愛の聖水(ヒール)】で育てた大樹の葉を何日も【慈愛の聖水(ヒール)】に漬けた物がそれである。葉っぱの効果は怖い為、使用しようとも思っていない。


【ブルーメタル】出典ドラゴンクエスト

ロトの鎧などに使われる貴金属、ミスリル以上、オリハルコン未満の濃青色の金属。スピカの場合、合金扱いで使用しているため、【妖精の種火(トーチ)】があれば誰でも作れる可能性あり。


【おうじゃのつるぎ】出典ドラゴンクエスト

勇者の装備の一つ、主にドラクエ3などに出て来る。道具として使用するとバギクロスと言う風魔法が撃てる。スピカはこれを大量生産して稼いでいる。低くても第二等級武装の上位に当る。


【せいすい】出典ドラゴンクエスト

弱いモンスターの出現率を封じる。スピカの場合、Lvの高い冒険者が使用すると、その効果は高まる。アイズが爆買いしてダンジョンアタックに使用している。


【シャドウ・ボーダー】出典Fate/Grand Order

正式名称虚数潜航艇シャドウ・ボーダー。主人公たちの拠点となる大型特殊車両、見た目は装甲車だが船である。

アトラス院が提供した虚数観測機『ペーパームーン』を搭載したことによって、人類史から虚数空間へ潜航する事が可能。中は空間を歪めているため、見た目よりも広い。

スピカがロマンを感じて作った品物、虚数空間に行くと時間の流れが狂う為、神を連れて行くのもまずいし浦島太郎現象を招くとやばいので機能を外して改造中。アトラス院やダ・ヴィンチちゃんにケンカを売れる品物。


女神さまはどこの正義の女神さまだろうか……

スピカは大樹を作りました。葉っぱは薬草と変わらない成分を含み、水はポーションのように体力を癒す。

吹き抜ける風は緑を広め、不浄を浄化する力を持ってます。ちなみにヘスティア・ファミリアの畑にいくつもある。

お読みいただき、ありがとうございます。


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第14話・小話が二つ目、遠征前のロキたちとスピカの関係

小話二つ目、道具人気の話。


 ダンジョン15階層、そこでスピカ、リリ、ナーサリーライム、椿と言うパーティーでダンジョンを進んでいた。

 

「【ゴールドフェザー】」

 

 黄金の羽根を五つ、星の形を描いて【いかずちのつえ】の効果を底上げして放つ。

 

「【真っ赤に燃えて、お花みたいに咲きほこれ】」

 

 ナーサリーライムの魔法も相まって、モンスターたちが纏めて燃える。

 

「また妙な物を作りましたね」

 

 呆れるリリはモンスターから魔石とドロップアイテムを回収して、椿はほうと顎をさする。

 

「また見知らぬ鉱石が使われている気がするが、どうなんだ?」

 

「黙秘します」

 

「それ、もうあるって言ってるみたいなものじゃないですかもう」

 

 リリはそう言い、椿はいずれ尻尾を掴むと燃え上がる。

 

 この【ゴールドフェザー】と【シルバーフェザー】は【生命の光(ソウル・ライト)】で生まれた鉱石をふんだんに使った物。魔法の威力を上げたり、精神力回復できる品物である。

 

 スピカがいま着ている服は【みずのはごろも】。攻撃魔法で【生命の光(ソウル・ライト)】を使いつつ、この階層でナーサリーライムとリリの経験値(エクセリア)を稼いでいた。

 

「そう言えばふと思ったんですけど」

 

「どうしたのリリ?」

 

 休憩にお弁当を広げ、もぐもぐ食べている一向。リリは『いや、ね』と付け加えながら、リリが仕事の都合上自腹で用意した杖を持つ。もちろんこれも【いかずちのつえ】だ。

 

「これで攻撃したり、回復したら、経験値(エクセリア)もらえていますよね?」

 

「うんそうだね、それがどうしたの?」

 

「あーいやスピカよ、それは魔力アビリティなどに経験値(エクセリア)が入っている事を言っているんではないか?」

 

 あーと納得するスピカ。なぜかは知らないが、雀の涙ほどではあるが【魔道武具(マジックウェポン)】での攻撃などでも経験値(エクセリア)は入るのはすでに確認されている。

 

 リリも改めてそれを聞き、通りで人気があるはずだと納得する。

 

「スピカ様の作る【魔道武具(マジックウェポン)】や魔道具(マジックアイテム)が売れるのは、微弱でも経験値(エクセリア)が手に入るからですかね?」

 

「魔剣の場合、さすがに魔力は上がらんからな。砕けぬ魔剣も、その辺りが関係するのやもしれんな……」

 

「椿さんはいまだに砕けない魔剣作りしてるんですよね」

 

「まあな、詠唱付きで【魔道武具(マジックウェポン)】も良いかもしれないが、初心忘れるべからずだな。砕けぬ魔剣が手前の願望だからな」

 

 やばい顔で笑う椿に、少し引くリリ。スピカはヴェルフも気にせず、砕けない魔剣を打ち始めれば良いと思いながら、お弁当を食べているナーサリーのお世話をする。

 

「最近【ブルーメタル】のおかげで、新しい領域に入れた気がする。正直その【ゴールドフェザー】などに使っている鉱石も提供して欲しいのだが」

 

「良い鍛冶師は鉱石だけで領域を開かないはずです」

 

「それを言われると言い返せぬな。まあいい、いまは【ブルーメタル】を味わい尽くそうか」

 

 ぐふふと笑う椿。スピカはいつか見つかるんじゃないかと思って怯える。

 

 こうしてダンジョンアタックしながら、スピカは日々を過ごす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 書類を纏めて、今度の遠征に備えるロキ・ファミリア。様々な問題を解決しつつ、着々と潜る階層を増やしている。

 

「【いかずちの杖】の詠唱がばらけてるっすか?」

 

「そうなのよ、ヘスティア・ファミリアから直接買った奴じゃなくって、団員が格安で用意した奴」

 

「あー、それはたぶんあれっすね」

 

 ラウルは思い当たる節はある。神々が派閥の資金を使い、買いあさった【魔道武具(マジックウェポン)】だろう。のちに団員の手により、転売扱いで売られたりするのだが、詠唱がとにかく長い。

 

 それが良いと言う者もいるのだが、別段短くても長くても威力が変わらないのなら、短い詠唱のが役に立つ。不注意に発動しないように少し長くしているが、十分超短文詠唱扱いのロキ・ファミリア。詠唱がばらけていると問題なので、それは個人に使ってもらおう。

 

「足りない分はすぐにスピカさんに注文出しておくっす。他はっと………」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「あれ? ベートさんブーツの色変えたんですか?」

 

「アァ? まあな」

 

「ベートのいまの【フロスヴィルト】はほぼ純濃精製の【ブルーメタル】でできてるからね」

 

 リーネの問いかけにフィンが答え、ふへぇ~と驚く一同。

 

「【ブルーメタル】も十分超高額貴金属なのに、思い切った行動ですね」

 

 リーネは銀色では無く、銀と青で彩られた長靴を見る。ベートはめんどくさそうではあるものの、変わった得物に対しては満足していた。

 

「椿の野郎が、新しく能力を持たせたらしい。少なくても貯めた魔力を倍加するみたいでよ。【魔道武具(マジックウェポン)】ぐらいの威力でも役に立つ」

 

「満更でもないようで何よりだよ」

 

 フィンはそう言い、ベートは無言のまま、作業に戻る。

 

「うん……今は無理だけど、彼女を遠征に連れて行くのもありだな」

 

 スピカ本人の人気を考えて、遠征に加わっても反感は薄いと判断するフィン。

 

 だが、彼女たちヘスティア・ファミリアが遠征を手伝ってくれるのなら、それなりに【魔道武具(マジックウェポン)】を出してくれるだろう。そうでなくても【せかいじゅのしずく】は本当に助かるので、それだけで十分だ。

 

「確か自分らで使うのは自腹か派閥の資金で賄ってるんだったな。彼女たちも派閥運営を頑張っているようで何よりだ」

 

 そう呟き、自分たちもやるべきことをやる為に、書類の確認し出すフィン。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカが『ロキ・ファミリアが遠征に出かけた際に遠征に役に立つ道具があればいいんじゃないか』と考え色々試行錯誤していた夜の時間帯に、それは現れた。

 

【初めまして【幸福妖精(ブラウニー)】。夜分遅くの訪問、申し訳ない】

 

「………何者ですか」

 

 懐に隠しているコインを手に置き、黒いローブ姿の男か女を見つめる。種族も性別も分からず、警戒するこちらを気にせずに話を続けた。

 

【ただのしがない魔術師(メイジ)さ、君がいま作ろうとしている物に、いささか興味があってね。マップ製作を助ける魔道具(マジックアイテム)か【魔道武具(マジックウェポン)】だろうか】

 

「それがなんなんですか?」

 

【それを作るのをやめてほしい、正確には作っても広めないでほしいかな?】

 

 その言葉に不審に思う。自分の所だけなら話は分かるが、出さないで欲しいはおかしい。スピカは少し疑問に思いながら、工房の道具をチラ見する。

 

「おかしな事ですね、探索系なのに地図製作する道具を作ってなにか悪いのですか?」

 

【君の魔道具(マジックアイテム)は良くも悪くも強力すぎる。それが世に出ると少々困るのだよ】

 

「嫌だと言えば」

 

 そう言って杖を手にしようとした次の瞬間だった。

 

【君の魔法によって新たな鉱石が生まれる。このことの秘匿が条件でどうだろうか?】

 

 それに固まるスピカ。一気に汗が噴き出し、スピカの目が泳ぐ。

 

【それとも君の回復魔法が木々の成長を早め、特殊な大樹からポーションに近い水を生み出すとかかな?】

 

「ストーカーですか!?どうしてヘスティア・ファミリア最大の秘密をそうぽんぽん知ってるんですかあなた?!」

 

【さすがに都市外の畑であの四季を無視して実る畑と、水を流す大樹には驚いた】

 

 スピカはまずいと思う。目撃されたのが発見済みの畑では無く、まさか内緒で作った畑の方だとは思ってもいなかった。ただでさえ自分の魔法は厄介な物が多いのに、それが公になれば仕事量が増えるとすぐに気づく。

 

 ここは自動マッピング機能を持つ道具は諦めようとすぐに決めた。

 

【それと、これは別だが、普通の商談だ。ダンジョン内部で畑を広げる方法を教えてほしい】

 

「それは構いませんが、ぜひヘスティア・ファミリアの秘密をばらさないでくださいね」

 

 こうしてスピカはマップ作りのアイテムは作らず、魔術師(メイジ)を名乗る者にいくつか道具とレシピを売って、事なきを得た。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカの製作物を買うためには、いくつかパターンがある。一つはヘファイストス・ファミリアやミアハ・ファミリアなど彼女が卸した品物を取り扱う店で購入する。もう一つはヘスティア・ファミリアへ直接注文する事だろう。

 

 後は転売されている品物くらいか。信用と信頼が欲しいのなら、なるべくスピカ本人から買い求めるのが得策だ。転売された物は詠唱が無駄に長かったり、サイズが合わなかったりする。それと偽物がある。

 

 スピカ本人に注文を出すのにも、お金がだいぶかかるが、その分的確な物、サイズなどやや余裕ある程度の品物が買える事だろう。

 

 ドラクエ10の装備系をその時にカタログ扱いで【よろいの置きもの】で展示している。主に【ネヴァンメイル】や【アビスセーラー】。それに【ヴィーラのころも】だろうか。

 

 服系は洋服店などでも売れるようにしている。決して洋服店の娘さんが可愛いから贔屓にしていない。

 

 スピカはその所為で、ほぼ毎日鎧や武器など品物を作る日々、新しい物を作る余裕は無いのだろうが、腕が上がるまでは箱詰めである。それでも休息を入れられる辺り、真面目に商売をしているのだろう。

 

 そんな日々の中、ついにスピカ専用の装備、少なくとも普段着は決めた。鍛治する場合は【みずのはごろも】だろう。だがこれは本格的に違う。

 

「これはどうですかリリ」

 

「これはこれは」

 

 それは【極地用カルデア制服】と言う品物であり、幻術を使い回避させたり、味方を回復したり、攻撃を高めたりする基本を押さえた服である。

 

 それを聞き、うわぁーまた大変なの作ったよこの人と言う目で見て来るリリ。スピカは得意げに、ただ胸を揉みながら呟く。

 

「胸辺りもまあまあですね」

 

 そこそこ背丈は伸びたが、胸はまあまあある方だ。リリはやめなさいはしたないと叱り、はーいと返事をするスピカ。

 

「他にも礼装作ったので、リリの分もあるので着てくださいね」

 

「資金はどれほど出せば良いんですか?」

 

 リリも働くようになってそれなりにお金はある。前の派閥にいた頃では信じられないほどだ。基本そこから道具を買って使用しているリリ。だが礼装はテストも兼ねているのでタダらしい。

 

 リリに礼装を着させ使い方を教えながら、今日も今日とて面白い物を作り、オラリオを震撼させるスピカであった。




【ゴールドフェザー】【シルバーフェザー】出典ドラゴンクエスト、ダイの大冒険

破邪の洞窟内で製作された魔法を増幅させたりできる。破邪の秘術が使用されており、ゴールドフェザーは魔法の効果を高める効果、相手を一時的に動けなくさせることもできる。

シルバーウェザーは回復用であり、刺すと痛いが、並みの魔法使いを2、3人満タンに回復させられる。

スピカはそれを【生命の光(ソウル・ライト)】で作り出して、自分の道具の効果を高めて使用している。


【いかずちのつえ】出典ドラゴンクエスト

道具として使用すると雷とされているが、効果的にベギラマと言う魔法として処理されている。先端にオーブと翼を広げたドラゴンの像と言うデザインだったりする。

スピカが愛用している。ちなみにスピカ作品は明らかにベギラマ、炎のような魔法を放つ。


【フロスヴィルト】出典ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

ベート愛用の装備、椿が作った品物で魔剣や魔法の効果を吸収して放つことが可能。

ブルーメタルとの出会いで吸収した魔法の効果を倍増かさせる。さらに貯め込んでいると勝手に限界まで倍増させる為、使用には気を付けないといけないが、ベートはいつもギリギリまで威力を高めて使用としている。


【ネヴァンメイル】【アビスセーラー】【ヴィーラのころも】出典ドラゴンクエスト

ドラクエ10に出て来る装備、自分はドラクエ10をしていないため、細かい説明はできない。オラリオでは全てセットとして販売しているため、キメラ装備みたいにばらけて装備している人は少ない。10の装備はたくさん作っているが、本人も性能はともかく、由来などどういうものか分かっていない。


【極地用カルデア制服】出典Fate/Grand Order

主人公、マスターが着こむ礼装の一つ。第二部で渡されて攻撃力、回復、回避のマスタースキルが使用可能。スピカは他にも制服など作っているが、正直ダンジョンアタックには似合わない物が多い。


自動マッピングは隠れ里を見つける事もできると思うんですよね、ちなみにスピカの周りに不自然な小鳥などが二、三羽は必ずいます。ダンジョン内部では、ここにはいなそうなモンスターか、なぜか襲ってこないモンスターがいたりして。

椿みたいに他の鍛冶師も、その腕を劇的に上げています。ベートの武器が超短文詠唱の魔法を超長文詠唱並みに跳ね上げて、ベートも機嫌が良いです。

それでは皆さん、お読みいただき、ありがとうございます。


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第15話・小話が三つ目、欲望

新魔法習得させます。


 表向き【鍛治】のアビリティを取ったスピカ。色々試す事にして、すでにある【ほのおのつるぎ】などの強化などチャレンジしてみた。

 

「と言う訳で【魔導書(グリモア)】ができました」

 

「できました、じゃないですよっ!?」

 

 リリからハリセンを食らうスピカ。最近リリに怒られる事が癖になってきたと思うスピカ。そのまま赤と青の【魔導書(グリモア)】をヘスティアが持ち上げる。

 

「【魔導書(グリモア)】、魔法の強制発現書。アビリティ【魔導】と【神秘】が無いとできないって聞く物を作って………」

 

「高く売れるでしょうが表向きに【神秘】は持っていないでしょあなたはもう」

 

「ん~リリの愛を感じる……」

 

「変な感想を言わないでください!!」

 

 リリにハリセンで叩かれ続けられるスピカは少し嬉しそうにしている。ナーサリーライムは難しそうな本に興味は無いようだ。

 

「それでどうするんだい? このまま管理するのかな?」

 

「せっかくですから読みたいと思います。リリはどうしますか?」

 

「リリは【ブルーメタル】の管理と言う責任のある仕事があるだけで満足です。ナーサリー様は?」

 

「難しそうでいや」

 

「だそうです。んじゃ読みます」

 

 読み始めた瞬間、文字がページから浮き出て、無数の文字、言葉の海が広がる。これは恩恵を刻まれた時と同じ現象だ。

 

 そう思いながらそれを眺めていたら………

 

『会いに来てくれてうれしい』

 

 そんな呟きが聞こえ、背後から白い腕が優しく自分を抱きしめる。

 

 呼吸が荒く、自分の身体を撫でまわしながら全力で抱きしめていた。

 

(あれ、これってやばない?)

 

 そう思いながら、無数の文字が光り輝きだし、光に飲まれるスピカ。背後から愛している、あなたの世界の魔法が良いわよね? と言う言葉を聞きながら、延々と続く独り言を聞きつつ悲鳴のようなものを上げたスピカ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 スピカ・シロガネ Lv3

 

 力・F393>E401

 

 耐久・F342

 

 器用・F321>F329

 

 敏捷・F311

 

 魔力・E405>E430

 

 ・鍛冶F ・神秘E ・魔導F ・調合G ・狩人H ・耐異常I

 

≪魔法≫

 

精霊物作り(スピリット・クリエイト)

 

 ・創造補助魔法 ・詠唱双極

 

妖精の種火(トーチ)】詠唱式 ・灯れ、祝福の熱

 

 ・発火魔法 ・神秘の炎、奇跡の火 ・精霊の祝福 ・道具作り強化

 

慈愛の聖水(ヒール)】詠唱式 ・癒える、清浄の水

 

 ・生水魔法 ・癒しの力、祝福の水 ・精霊の祝福 ・生物成長強化

 

生命の光(ソウル・ライト)】詠唱式 ・光輝をここに、荒野に息吹を与え、不浄を否定し、絶望を塗り替え、魂に救済を 終わりを覆す始まりの代行者 我が名は命、生命ノ王

 

 ・極煌魔法 ・断罪の光にして鳴動の煌めき ・攻撃、付加可能 脈動する力

 

勇竜物語魔法(ドラゴンクエスト)

 

 ・火炎魔法、氷結魔法、雷撃魔法の習得 ・速攻魔法

 

 ・応用可能 ・付加可能 ・連結可能

 

【メラ】【メラミ】【メラゾーマ】【メラガイアー】

 

 ・火炎魔法 ・速攻魔法

 

【ヒャド】【ヒャダルコ】【マヒャド】【マヒャデドス】

 

 ・氷結魔法 ・速攻魔法

 

【デイン】【ライデイン】【ギガデイン】【ジゴデイン】

 

 ・雷撃魔法 ・速攻魔法

 

【】

 

≪スキル≫

 

竜物語創造者(ドラクエビルダー)

 

 ・あらゆる道具、武具の想像、創造が可能 ・成功率の把握

 

 ・神秘、鍛治、調合アビリティ獲得

 

 ・道具製作に経験値(エクセリア)獲得

 

精霊加護(リュミエール・スピリット)

 

 ・魔力アビリティ強化 ・魔導アビリティ強化 ・魔導アビリティ獲得

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ボクはもう驚かないぞ。ロキんとこでリヴェリア君が九つの魔法使えるけど、スピカ君は14個なんて驚かないぞ。もう一人の子なんか【千の妖精(サウザンド・エルフ)】なんだし普通だね♪」

 

「普通じゃないですよヘスティア様」

 

 ヘスティアは現実逃避していたが、スピカに【魔導書(グリモア)】を作らせない方が良いと言う話でまとまった。

 

 ともかく生えた魔法は、スピカが良く知るゲームで出て来る魔法である。

 

 付加可能と言う謎の言葉に首を傾げ、前世の知識と照らし合わせて使用するのだが、上層で使用したら全魔法が無双そのものであり、最大魔法になると危険レベルであった。いままでスピカが貯め込んだ魔力の高さが原因だ。

 

 そして隠れていたエルフがさすがですと現れ、リヴェリア、レフィーヤと並ぶレアマジック持ちとバレてしまうスピカ。

 

「もうハイエルフ権限でハーレム作って良い?」

 

「良い訳無いでしょうが」

 

 付与と言う物も確かめた。ただの【てつのつるぎ】にメラを付加できるか放つが、メラが当たるだけである。

 

 だがその様子を見たらいつものように思いつき、【メラの矢】なるものを作ることに成功した。

 

 だからだろうか、弓矢使いがいないのにたくさん作り、それを売りだすことにした。武器屋だけでなく、ミアハのところまでなぜか売るスピカ。またデレデレしてとリリはハリセンで叩く。

 

 メラ、メラミ、メラゾーマの矢など用意した。最終魔法は危険すぎてさすがに手を出せない。

 

「ついでですからロキ・ファミリアに日ごろの感謝を込めて、レフィーヤにメラ系を教えておこうと思います」

 

「決してセクハラしてはいけませんよ」

 

「さすがに進んでやるのはちょっと………フィルヴィスさんかリューさんみたいな人ならしますけど」

 

「正直すぎるよスピカ君」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「す、スピカ様っ、本日は私如きの為にありがとうございます」

 

「やめてください、中身はただの鍛冶師ですよ。王族と同列はおかしいです」

 

 それでもあわわあわわするレフィーヤ。リヴェリアはため息をつき、レフィーヤのレアマジック【エルフ・リング】の条件を聞き、メラ系を教える。レフィーヤは二つ分の詠唱と精神力(マインド)の消費で行使可能。メラの説明は紙を通して説明するスピカ。

 

「速攻魔法、スピカが魔法名を呟けば発動する類か。私もうかうかしていられないな」

 

「まだ俺は【平行詠唱】は使えないですし、気にする事は無いのでは」

 

「早いうちにマスターしても問題ないぞ。お前の場合はレフィーヤと同じ、魔力量の多さが強みだろうからな」

 

 鍛錬をサボるなと言われながら、メラが発動するのを確認する。レフィーヤの場合、メラは完全にけん制くらいだろうか。

 

「これでメラミなどの魔法と変えればいいですね」

 

「レフィーヤさんの場合、それとガイアーとその前が使えれば良さそうですね」

 

「メラガイアーはルームを覆うくらい、炎の玉を出すんだったな」

 

 しっかりと威力確認する様子であり、そうなるとスピカも杖を新調した方がいいだろう。まあいまでは色々作れる、杖の一つ二つ問題ない。

 

(ゲームならクソチート過ぎるだろうな)

 

 そう思いながら、リヴェリアから色々話を聞き、スピカは実験にダンジョンに潜る。

 

 そして片腕に大やけどを負うことになる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ急いでポーションを始めとした液体に沈めないとッ!!」

 

「ヘスティア様落ち着いて、火傷が酷いだけで動きます」

 

「それでも女の子は肌が命なんだよ!?」

 

「一体なにしたんですかあーたはっ!?」

 

 リリもナーサリーも心配して治療に入る。ナァーザが駆けつけて、急いで治療に入り、スピカは今回まずいなと思いながら反省する。

 

「【フィンガー・フレア・ボムズ】、撃てたけど制御が甘かった。これは練習あるのみだな」

 

「余り無理しないで……スピカになにかあったら、私、私………」

 

「大丈夫ですよナァーザさん、抱きしめなくても良いですよ」

 

 いつの間にか治療のために現れたナァーザに抱きしめられながら、腕の治療をするスピカ。少し恥ずかしい。

 

「とりあえずスピカ様はお一人で潜るの禁止です。良いですね」

 

「ならしばらくはナーサリーライムと潜ろうか」

 

「わーいです♪」

 

 こうして仕事の調整をしつつ、身体を休ませる事にしたスピカであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そんなスピカの工房に、とある神が眷属を連れてやってきた。眷属は団長『アスフィ・アル・アンドロメダ』と神ヘルメス。

 

「スピカちゃーん、エッチなアイテムとかないかな~?」

 

 開幕からこの神はこの調子であり、スピカもスピカで。

 

「ありますよ」

 

「いや~そうだよねってあるのッ!?」

 

 スピカは日ごろ、リューとフィルヴィスをどう騙して【えっちなライト】がある部屋に連れ込めるか考えながら製作している。いまでは煩悩の数を超えて隠されているが、これを世に出すのはまずい。普通に【あぶないみずぎ】を素で出す。

 

「なんか普通の水着だね~」

 

「他にもありますよ」

 

 そう言い【しんぴのビスチェ】などを買わせてみた。アスフィは着ないからなと言う目線をしていたが、ヘルメスは気にせずありがとうと礼を言う。

 

「しっかし、スピカ君はエルフだけど、男心が分かるねえ」

 

「はあ、まあ褒め言葉と受け取っておきます。ところで例の物は?」

 

「アスフィ」

 

 えっ、これってスピカからの依頼なの!?と主神を二度見するアスフィ。間違いであってほしいと言う顔で例の物を渡す。

 

 それはスピカがヘスティアを始めとした神々に内緒で作った【カメラ】だ。色が付き、音も静かで何枚も取れる品物。それを受け取り、後は現像するだけになる。

 

「中身を見るまで例の物は渡しません。明日の昼頃に」

 

「ああ分かっている。俺もその【カメラ】の性能が知りたいから、後で中身見ていいかな?」

 

「別に隠し撮りなだけで、裸とかじゃないですから良いですよ」

 

 こうしてヘルメスと謎の契約をするスピカ。アスフィが困惑しながら両方の顔を見て、内心自分を騙していると願いながら帰って行く。アスフィのオチを求める顔を見て満足するスピカ。そのまま現像へと入るのであった。

 

 その日からしばらくして、アマゾネスが【あぶないみずぎ】や【しんぴのビスチェ】を買いに来たりするようになり、結果男どもの目の保養になるようになったオラリオ。そして【カメラ】の成果は成功、しっかりとフィルヴィスとリューの写真をゲットしたスピカである。

 

 ちなみにマジでやばいから、ライトと【カメラ】の件はヘスティアは無論、誰にもバレないようにしっかりと宝箱に封印している。宝箱は隠された場所に安置されているが、その数は増えていく。

 

「一度フィルヴィスさんたちにお願いしてみるのも悪くないかもしれない。あの人たちなにげに騙されてライトの下に来てくれそう」

 

 そう【カメラ】を抱きしめながら考えながら、計画を練るスピカであった。




【ほのおのつるぎ】出典ドラゴンクエスト

道具として使えば火ダメージ与える。【はがねのつるぎ】から作られ、最も安く、多く売れている。


魔導書(グリモア)】出典ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

強制魔法発現書、神秘、魔導のアビリティを究めた者しか作れない。スピカが魔法を覚えようすると、どこかにいる精霊の愛を深く感じながら覚える必要性がある模様。


【○○の矢】出典オリジナル

スピカがメラ、ヒャド、デイン系魔法を掛けて作った魔法の矢。応用しやすく、色々やばい物もある。


【フィンガー・フレア・ボムズ】出典ドラゴンクエスト、ダイの大冒険

敵側の魔法生物しか使えない禁断の秘術、メラゾーマを五発同時に放つ。命を持つ者にとって生命に関わるが、スピカの場合は恩恵で使える魔法なので、制御できれば使用可能。メラガイアーでこれをやれそうだが、三発が限界だと感じている。


【えっちなライト】出典ドラゴンクエスト、ビルダーズ

ライトの下に来た住人を水着に変えるライト。スピカの物は男性はブーメランパンツかふんどし、女性はきわどい水着に変える。老若男女関係なく変える、スピカの煩悩が込められている。


【あぶないみずぎ】出典ドラゴンクエスト

ドラゴンクエストの定番、スピカの煩悩によりかなりエロい、いったい誰をイメージして作られたか謎。


【しんぴのビスチェ】出典ドラゴンクエスト

これもドラクエ定番の装備、数多くの種類がある。スピカの場合、魔力による防御などの恩恵が多くある。いったい誰に着て欲しくて作ったのか謎。


今回スピカの欲望の暴走回でした。それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第16話・小話四つ目、最後

誤字報告、評価、感想などありがとうございます。まだまだ勉強不足ですいません、頑張ります。

あの女神様が出番欲しいと言うので投稿。


 最高の出来の【おうじゃのつるぎ】を作り、納品するためにヘスティア様と共にバベルの最上階、フレイヤ・ファミリアがいるフロアへと上がる。

 

「いいかい、フレイヤの事を直接見るんじゃないよ。見たら魅了されちゃう」

 

「一応魅了耐性の装備着こんでますけど」

 

「だからそんな服装なのかい。それでも危ないからダメ」

 

 スピカは【聖賢のローブ】を下に着こみ、その上から【双頭の鷲のよろい】を着て、マントである【大樹のマント】と【ユグノアのマント】を二枚着こみ、アクセサリーに【不惑のネックレス】を二個装備している。ゲームと違い、こんな装備の仕方ができるのは現実だけだろう、変に見えないように調整した服装でスピカはそう思う。

 

 アポを取っているので入口から案内されて中に入り、フレイヤやその幹部たちがいる部屋に入る。入ると幹部たちはスピカたちを見て、女神は微笑んだ。

 

「やあフレイヤ、注文の品物ができたよ」

 

「ありがとうヘスティア、意外と早かったのね」

 

 微笑むフレイヤをチラッと見るスピカは、綺麗と思うよりやばいと思う、膝枕させてくれるあの村の女神様とは違う。

 

「オッタル」

 

「はっ」

 

 控えていた身の丈を遥かに超える大男であるオッタル、都市最強がすぐに剣を受け取り、それを片手で持つ。

 

「………」

 

 静かに振るうだけで雷鳴が轟き、空気を切り裂く。それだけでなく説明を受けて詠唱する、【バギクロス】と言う風の刃を巻き起こした。

 

 室内でいいんだろうかとヘスティア共々思いながら、言われた詠唱を刻んだ【おうじゃのつるぎ】は、空気を切り裂く風を巻き起こし、それを見ていたフレイヤ・ファミリア幹部たちも感心する様子である。

 

「どうオッタル?」

 

「問題なく、フレイヤ様の為に使うに値します」

 

 そう感心して、そのまま腰に提げる。すぐに支払い、値段を説明すると大量のヴァリスが詰まった袋をすぐに渡される。さすがにふええと震えあがりながら思う。

 

(あの金額を不満言わずに払うってどうなんだよっ!?)

 

 ヘスティアはロキと良いフレイヤと良い、お金ぽんぽん使ってと思う。彼ら並みに資金源があるのに、いまだジャガ丸くんや自給自足の品物が食卓に上がるヘスティア・ファミリア、お金の感覚が分からず混乱する。

 

「ああ、そうだわ。アレンたちの分も用意して欲しいのだけど」

 

「ふへぇぇぇ」

 

 スピカは七人いる幹部たちを見る。フレイヤ幹部の【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】や白黒の騎士である二人組のエルフ。四つ子のガリバー兄弟からの注文に驚くスピカたち。

 

 幹部全員分、ファミリアの資金で出すなんてと思う一方、それを用意するまでの時間を考える。絶対に見合う物を作れるかと言われればまだまだである。

 

 この【おうじゃのつるぎ】をスキルで作るまで、いくつもの失敗作があるのだが、フレイヤはそれら全てにお金を出している。まだ出せるらしく、ヘスティア共々驚愕した。

 

「し、支払いは大丈夫なのかい?」

 

 その辺りを心配してしまい聞いてしまったヘスティア。フレイヤはなんてことないように大丈夫と言う。

 

「もし払えなかったら」

 

 そう言っていつの間にかスピカの側まで来ていて、頬を優しく撫でる。

 

「身体で支払って良いかしら?」

 

「良い訳あるかーーーー!!」

 

 すぐさまスピカと引き離して、そのまま帰るヘスティア。スピカは危なかったと怯えつつ、ヘスティアと共に帰宅する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 オラリオより北の位置、ペオル山脈で大枚を支払い、山脈の一部を買ったスピカたち。その下見に外に出ていた。

 

「良い土地ですね、なにもねえや」

 

「広いですの♪ ここで一体何をするのかしら?」

 

「ここで大丈夫なのかいスピカ君?」

 

 ヘスティアが心配する中、ボーダーを走らせてこの場所に来た一行。まずするべきこと、鉱山の有無は確認済みである。

 

「ただ、トロッコなどの施設、滞在する環境、モンスターの有無。それらの問題は山ほどありますが、解決すれば大量の鉱物、金と銀が手に入ります」

 

「金脈と銀脈は共存しましたっけ?」

 

「細かい事は良いんだよリリ」

 

 ともかくここに宿場町を作り、発掘してもらいましょうと、スピカは宣言した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 迷宮都市オラリオから北に位置する山脈に、新たな宿場町が出来上がった。

 

 名も無き宿場町はいまではゴールドラッシュが起きていて、冒険者を挫折した者たちは次にここに夢見て訪れる。

 

 町の一番目立つところに金のモニュメントが目立つ酒場をメインに広がった町は、オラリオに負けず年がら年中賑やかに騒いでいた。

 

「これで金や銀不足は起きないな」

 

「ボクら、なにしてるんだっけ?」

 

「気にしてはいけませんヘスティア様」

 

「金ぴかでお目々はいたいです」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 一定の武器を作ると、よほどの事が無い限り、スピカはロキ・ファミリアに渡しに出向く。性能チェックしつつ、ロキ・ファミリアに守ってもらわないと、スピカ引き抜き戦争が起きるからだ。

 

「今日は【ルビスの短剣】と【聖風の槍】です」

 

「相変わらず、成功率が低い物ができると規格外だね」

 

 そう言い、製作してたまたまできた成功率が低い、最高品質の武器を手に取り、フィンはふむと顎をさする。

 

 ヘスティア・ファミリアは自由な時間に新しい物か、確率の低い物を製作する。まずは成功率が高い物を、そして自分たちの安全を確保する為、こうして低い物を作り、ロキ・ファミリアにタダで卸す。

 

 フィンもバカでは無い。タダだからと言って全部ほいほいもらったりはせず、性能を確かめ、必要な物に関してはより良い物が無いか確認して品物を選ぶ。いまのところそう言う関係がヘスティア、ロキ・ファミリアの関係だ。

 

「【ルビスの短剣】はもう一つ欲しいな、ベート用に使いたいんだけど」

 

「そう言うと思って、同品質の物がここに」

 

「ありがたい、後は性能を詳しく聞かせてくれ」

 

 こうして良い物をよく見て手に入れるロキ・ファミリア。品物を卸し帰るスピカに挨拶したロキが改めて武器を見る。

 

「隠しているもう一つの鉱石やな? 【ブルーメタル】とはちゃう精霊の力を感じるでこれ」

 

「隠すのは仕方ないからいいし、それをふんだんに使った武器も歓迎だよ」

 

 そして改めて幹部会議するときに、武器をそれぞれの得物に合わせて渡して、性能チェックをする。ベートは短剣を腰に提げ、ティオナはいいな~と呟く。

 

「いちいち得物を変えるのはどうかと思うが、あのチビの作品なら使い潰しても問題ないな」

 

「ベートってば性格悪い~、タダでもらったからって壊して良い訳ないじゃん」

 

「ハッ、一番壊してる奴が言うな」

 

 そんな会話の中、アイズも時々片手剣系を渡されるので、スピカが来た時の楽しみにしている。

 

「中にはやはり、スピカ様の武器をメインにする人もいますね」

 

「ああ、物は限りなく良い物を回してもらっているからな」

 

 レフィーヤとリヴェリアの言葉にフィンも頷き、ガレスも髭をさする。

 

「欲を言えば、品質の高さが安定して欲しい所だな。いま手元にある武器を再度手に入れるのに要する時間と金が問題だ」

 

「んーそればかりは彼女の腕、スキルの力が上がることを期待するしかないね。昔より【はやぶさの剣・改】は安定し出したし、彼女も若い。後数年すればその問題も解決するだろう」

 

 そうすれば割引の権利を持つロキ・ファミリアはありがたい。第一等武装の特殊な武器が少しでも安く、多くの団員に渡せられる。それだけでヘスティア・ファミリアの問題を聞いたり、助太刀する価値はある。

 

「いろんな武器だけじゃなくって、薬まで開発するんだもん。凄いよね」

 

「まあね、私たちも助かるし、最近冒険者の死亡率が下がったって話も聞くわ」

 

「だからって、チビの得物を手に入れただけで強くなれるかよ。それだけで強くなったって思う雑魚には困りもんだ」

 

「ベートうるさいなーもう」

 

 そんな会話をしているとき、それは発言された。

 

 けして言ってはいけない言葉、けして考えさせてはいけなかったタブー。

 

 

「なんか頼めばなんでも作ってくれそうだよね~」

 

 

 そうたわいない会話をしつつ、その日の会議は終わりを告げて解散する。

 

 ただ、フィンの親指はなぜか、急に疼き始めていた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ふがっ、あー………びっくりした。自分の寝言で起きちゃった」

 

 夜の時間帯、自作した時計を見てなんつー時間に起きたんだと思いながら、工房のベットでごろごろしていると………

 

「ん?」

 

 なんだろう? ノックしている誰かがいる。こんな時間帯に?

 

 不審に思いながらも、後は静かに鳴り続けている、渋々ドアまで近づき、外の様子を見る。

 

「誰ですかー」

 

「夜分遅くすいません、私です。ロキ・ファミリアの者です」

 

「あーあなたですか」

 

 外の様子を覗き込んでみると、褐色の肌。アマゾネスの姉だと理解して、鍵を開ける事にしたスピカ。

 

 何か盛大に開けてはいけない気がするが開けてしまい、中に上げてしまった。

 

「こんな時間帯にどうしたんですか?」

 

「はい、どうしてもスピカさんに聞きたい事があって」

 

 何か話し方違う気がするスピカだが、はあと相打ちをして、話を進ませる。

 

 そして静かに、暗闇に慣れた目が見たのは………

 

 

「惚れ薬って作れますかッ?!」

 

 

 目がやばい状態のティオネを見て、そう言って両肩をがしっと掴まれた。荒い息を向けられるスピカ。

 

(ああこれ渡しちゃいけない気がする)

 

 そう思い、実はフィルヴィス用に作った物がある。時々お茶に誘ったり、仲の悪いエルフたちの橋渡ししようとしている。決してとある村にいる、リューの話が好きな女神様みたいに膝枕とか、なにか良い感じの事を期待している訳では無い。

 

 フィルヴィスがあまりに断るので惚れ薬的な物を作ったが、俺がしたい事と違うと思って使用を止めたため、丁度運悪く工房にある。

 

 思いとどまった事がまさかの悲劇の始まりだとは、物作りの悲劇であった。

 

「あるんですね?!」

 

「ま、待って、惚れ薬違う。あれはどちらかと言えば、元気になる薬」

 

「むしろウェルカムですッ!!」

 

 あかん、逆効果。そう思ったがすでに遅く、肩がミシミシ言い始めた。

 

「ダメ、心を弄ぶのはいけない。引き返すべき」

 

「ドコニアリマスカ?」

 

 一瞬視線だけがそこを見て、瞬間正確にそれを手に入れた。

 

「なんでわかるの!?」

 

 そしてスピカは丁寧に縛られ、ベットの上に置かれていった。

 

 朝から様子見に来るリリたちがそれを見つけて、急いでロキ・ファミリアへと向かった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とある神々の証言。

 

 何か起きないかなとスピカの工房を見守っていたら、【怒蛇(ヨルムガンド)】が(周りの護衛役を縛り上げて)やって来て、スピカの下から薬を手に入れて走り抜けて行った。これはなにか起こるに違いないとワクワクする神々。程なくロキ・ファミリアで事件が起きる。

 

 【勇者(ブレイバー)】に紅茶とお茶菓子を持って現れた【怒蛇(ヨルムガンド)】、勇者は警戒せず全て受け取った。そんな様子を見せて、実は何も口にしなかった。さすが勇者、何かやばいことに気づいたようだ。だが、その後に現れた【超凡夫(ハイ・ノービス)】が静止も間に合わずに食べてしまい、とんでもないことになる。まさか薬全部をぶち込んだ茶と菓子であったとは。

 

 割と命の危機的にやばい事になったが、ディアンケヒト・ファミリアのおかげで命の危機は守られた。その後、薬の出どころであるスピカ氏は、この薬を二度と作らないとリヴェリア氏に反省文を提出して(書かされて)、世に出回る事は防がれた。

 

 ちなみに効果を薄めた物は他の派閥でも製造可能で、イシュタル・ファミリアに出回り、またヘスティア、ミアハ・ファミリアの財政が潤ったらしい。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ごめんなさい団長ーーー許してくださいーーーーッ!?」

 

 ちなみに今回の事件に関してフィンは大変怒っていて、しばらくスピカの深層アイテム確保に遠征チームが組まれる。ティオネは確定で。

 

「なんで俺らまで尻拭いしなきゃいけないんだ」

 

「ベートさん、今回は私たちが悪いですから」

 

「スピカも妙な物を作るが、基本は向こうの自由だ。反省文は自分から書いているし、こちらも誠意を見せなければいけない」

 

「遠征組は任せたよガレス、リヴェリア。僕は警備の見直しに地上に残るから」

 

 こうしてしばらくスピカから物をもらうのをやめて、彼女の為に下層と深層のアイテム確保に奔走する。何度か地上を行き来する中、ティオネは一か月も団長に会えず発狂するのであった。




【聖賢のローブ】【双頭の鷲のよろい】【大樹のマント】【ユグノアのマント】【不惑のネックレス】出典ドラゴンクエスト11

全部合わせて100%魅了を防ぐ。本来マント二枚装備や、ローブと鎧を同時に着ることはできないが、スピカはゲームでは無いので装備できた。


【ルビスの短剣】【聖風の槍】。出典ドラゴンクエスト、星ドラ

星ドラの装備品、申し訳ないがこれも作者が調べたにわか知識の物、詳しくは説明できません。ただ強力な装備であり、短剣は二刀流可能。

実は星ドラ系は一通り作っているスピカ。封印されていたりしている。


【はやぶさの剣・改】出典ドラゴンクエスト

二回攻撃できるはやぶさの剣の強化版。スピカの物は使用者によって四度斬るほどの速さを獲得できる。一時アイズのサブ武器として活躍していたが、同じ四度振るえて、破壊力がある【はかぶさの剣】に入れ替えられた。


これはスピカが悪いのでしょうか?

お読みいただきありがとうございます。


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第17話・こうして彼女は作り出す

スピカ「物置くところがなくなった。またいくつかロキ・ファミリアとかに上げよう」

ヘスティア「お小遣いが100億溜まったから、ジャガ丸くんたくさん買って来よう」

リリ「なにこの金額……お給金多すぎでしょう。このファミリアの経済面、どうなってるの?」

ナーサリーライム「お菓子をたくさん買ったわ♪ みんなと一緒にお菓子を食べましょう♪」

金銭感覚が崩壊してます。


 恩恵(ファルナ)をもらって二年、Lv3になる。アビリティは【耐異常】であり、団員は自分を含めて三名になった。ナーサリーはリリと共に潜り日々精進している。

 

 リリが入ってくれて助かる。バイト時期も他の子を纏めてくれたりと給金をはずむくらいの働きをしてくれたし、いまもバイト組の冒険者やサポーターを纏めて、卸す品物を確実に運んでくれていた。

 

 そんな平和な時期の中で、最近は下層や深層の材料を使う事に抵抗は無く、表向き【鍛治】を取っただろう状態。ならばと魔剣を作ろうと思い至る。

 

「もともと俺が魔剣作るとなるとどんなんできるか気になるって椿さんに言われてたし、そろそろ俺も自重しなくてもいいと思うんだよね」

 

「よくよく考えれば、リリ的にはヘスティア・ファミリアの裏事情話されて戸惑います」

 

 大量の資金を得てバカな使い方は見た目していないヘスティア・ファミリア。だが畑の拡大、高価なアイテム製作などしまくっている。冒険者依頼(クエスト)も毎日高い金額で発注しているし、リリはお金の使い方にばらつきがあり、ため息をつく。

 

 リリは知らないが、スピカは【カメラ】での盗撮は日常茶飯事(やばいのは寝間着姿程度)にしている。ヘルメス・ファミリアに依頼を出している中で、高価な物で取引している事を知らない。

 

 ヘスティアは時々ジャガ丸くんを買い食いしている。ナーサリーライムはお菓子を近所の子供たちと分けて楽しむ。

 

 正式な団員になったリリの給金もはずみ、リリは昔じゃ考えられない大金持ちになりつつある。

 

「そこはリリを信用してるんだよ。ってかいまのリリがいないと困るくらいだから」

 

「作るのは良いとして、持ち運びに手間取り過ぎですね。好き勝手に考え無しに作り過ぎですよ。よく運営できてましたね」

 

「そこはスピカ君だからとしか、時々星5ッ!!とか叫んでるし。今月の帳簿はっと……」

 

 いまは今月卸す分やダンジョンに潜る日にち、他の派閥の人との連携など、スケジュール決めをしていた。

 

「ロキ、ヘファイストスは分かりますけど、ガネーシャ・ファミリアとも繋がりがあるんですね」

 

「あそこは都市の防衛してくれてるからね。味方にする方が良いって話になってね、武器を卸す事にしてたんだ」

 

「もしや、ガネーシャ・ファミリアが【ひかりのつるぎ】などを持ってたりするのは」

 

「無料提供で頑張ってくださいって渡した」

 

「他にも【まほうのよろい】が人気だね」

 

「【魔道武具(マジックウェポン)】は十分強力ですからね、そうほいほい人に渡したらダメですもったいない!!」

 

「お金は団員三名にしてはいっぱいあるから」

 

「いっぱいあっても足りない物なんですよ。スピカ様が失われかけているハイエルフ、様々な用途があるから狙われていないだけで、本来ならどこぞのファミリアに無理矢理引き抜かれてもおかしくないんです!!」

 

「あーアポロン辺りだね。ロキとヘファイストスたちが味方だから、手を出さずによく道具を買ってる」

 

「フレイヤ・ファミリアにも話があるんでしょう? あまり目立つマネはせず、もう少し我慢と言うものを覚えてください」

 

「フレイヤ様かあ……俺ってどう見られてるんだろう」

 

「んーなんか狙ってそうで、そうでないようなって感じなんだよね。武器もよく買うし」

 

 変な注文は無いし、ロキ・ファミリアが取り寄せない独特の武器を売れるので助かっている。リリにはすでにナーサリーやスピカの事が伝わっていて、フレイヤの話を聞くと考え込むしかない。

 

「向こうが行動を移すまでは静観しましょう。いまはナーサリー様のランクアップやファミリアの規模をしっかり管理しないと、いずれ破綻します」

 

「事務的な仕事を一番求められているからリリを副団長にしているのに、それを理解しない奴ばかりで困るーーーーーっ!!」

 

 事務的に必要な事は伝えているが、12歳のエルフと14歳の小人族(パルゥム)に頭を下げられる冒険者はいない。そんな事でいまだ団員を入れられない。

 

 ロキとヘファイストスも、ここまで話が通じないのは頭が痛いらしい。駆け出しでもそこで躊躇するのなら入れない方が良いが、年々求められる物が増えていく。

 

 いまはロキの眷属が派遣でタダで手伝ってくれている。警護も含めて助かっていた。

 

「とりあえず余計な物を作らず、大人しくしていただきたいです。資金力は高いですけど、冒険者としては完全に後方支援なんですよ」

 

 そう言われて、スピカは自身のスペックを考える。あれらは殺傷力が高すぎるか。

 

「それじゃしばらくはガネーシャさんたちに流す武器でも作りますかね。都市が平和になれば良いですし、ロキ・ファミリアのところは強くなればなるほど、深層のドロップアイテムが手に入りますしね」

 

「タダで渡すんですか?」

 

「別にいいじゃん。ガネーシャ・ファミリアは町の為に、ロキ・ファミリアは深層のドロップアイテム確保や警護」

 

 ヘルメスはフィルヴィスさん写真集の為に。

 

「頑張っていただけなければいけないのです」

 

「気の所為か、全く無駄なことを考えていませんでしたか?」

 

 そう言われても知らんふりするスピカ。そのまま道具作りを楽しみながら、少し昔を思い出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 教会と工房を行き来しながら、リリ、ヘスティア、ナーサリーライム、スピカで四人暮らしをしていた。

 

 教会には畑があり、教会をホームのメインにした方が広いし、他に団員が増えればこちらに泊められるよう部屋数も増やしている。なによりリリとヘスティアは朝から聞こえる鉄を打つ音に慣れないため、時々こちらに避難している。ナーサリーは初めから教会に住み込んでいる。

 

 工房はほとんどスピカの家になり、時々ナーサリーと触れ合う為に教会の部屋で寝ている日々。仕事する為に鉄を打っていると、ふと前世の小道具作りを思い出す。

 

 本物に寄せて作る聖剣など、作るのは大変なのに壊れるのは簡単な道具を作り、日々面白おかしく生きていた事を思い出していた。

 

 ああまたあんな感じで物作りしてみたい。いまも物を作るが、ああいうノリで作りたいと思ったとき、久々に知識の海にその身を投げ出す。

 

 そしてそれを手に取る。

 

 前世に何本も手に取り、様々なコスプレイヤー(使い手)に渡ったそれを。

 

「いいのか?」

 

 知識は何も答えず、ただ手の中にある。だからだろうか、それを作る為に試行錯誤し出す。いままでと違い、成功率では測れない物事だ。

 

 スキルが鼓動する。背中が熱く、心が熱く燃え上がる。

 

 どこまで再現できるか分からない。だが手には、心の中には形があるのだ。自分の心を形にするだけ。

 

 そう血潮は鉄、心は硝子でできている。偽物が本物に叶わないなんて道理はどこにある。

 

 作ろうか、恐れず、前へと進む為に………

 

 この身は無限の剣を生み出す為にある。

 

 作りかけているものだってある。このままでいいはずがない、そう、作るのは何時? いまでしょうっ!!

 

「なにカッコイイ雰囲気出してるんですかやめてくださいスピカ様ーーーーッ!!」

 

 厳重に締め切った扉の前から何かが吠えた。そんな声を聞きながら究極の一を作り出した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 阿鼻叫喚が生まれる戦場、フィンはふむと考え込みながら、前線を見つめていた。

 

 いま迷宮都市(オラリオ)は一つの国と戦争をしていた。相手はラキア王国。軍神『アレス』が率いる国家系ファミリアだ。

 

 この国は軍神アレスを信仰し、アレスは数々の戦略を駆使して数多の国を攻める事を良しとして、多くの国はこの国に吸収されている。そんな国と戦争する迷宮都市(オラリオ)は、最強と名高いフレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアを筆頭に、多くのファミリアの力を借りて対処する。

 

 実際は天地の差であった。

 

「軍神アレスはこの神時代は量より質だと理解できないんだろうか?」

 

 フィンは呆れながら、何百と言う敵を一人で片付けるアイズの様子にただ呆れるだけである。

 

「ただ真正面の戦闘。何か裏があるかな? 一応警戒しておかないとな」

 

「アイズさんはどうします?」

 

「しばらく【はかぶさの剣】の練習台に暴れ終えたら他の冒険者、アイズみたいに【魔道武具(マジックウェポン)】の試しがしたい部隊と交代かな。一応死者は?」

 

「ゼロっす」

 

「ならいいさ。ああけど【ぱっくんチョコ】での体力回復がどれほどかのデータ取りはしっかりしておいてくれ。他にある【はちみつドリンク】も要確認」

 

「了解っす」

 

 怪我を治せないが体力回復にぴったりな、ポーションよりも手軽な体力回復道具。フィンはそちらのデータ取りを優先した。

 

 正直な話、地上のモンスターは劣化している。劣化モンスターから得られる経験値(エクセリア)は雀の涙。ランクアップしてLv2が精々が基本だ。

 

 そんな者たちがLv6や5の前で、何百人集まろう敵では無い。作戦か何かあれば変わるだろうが、いまのところ前と同じ、ただ前から攻める戦闘が繰り広げられている。

 

「だからと言って手を抜く事もできないからな」

 

 戻ってきたフィンにリヴェリアは告げ、ああと他の手を行使していないか情報を集める。

 

「いまのところいつもの変わらない戦法が目立つから注意しつつ、冒険者たちの要望に応えないとな」

 

 今回のラキア戦争で冒険者はいつもと違ってやる気はある。それが【魔道武具(マジックウェポン)】の存在だ。

 

 誰だって新しい武器や防具を使ってみたいのだ。つまるところ、こちら側の感覚はその程度だ。攻め込まれているが気にも留めていない。

 

「今度はガネーシャたちの時間だね。作戦と戦場の流れをうまくかみ合わせないと、今回参加のファミリアたちの練習時間が確保できないな」

 

 作戦を読みながら、各ファミリアが活躍する場を調整するフィン。あえて敵側の作戦を採用して、うまく軌道に乗せて調整したりしている。

 

「北側の部隊は囮だけど放置して策にはまろう。かわりに海上の敵は徹底的に片付けないと」

 

「海路関係はさすがに放っておく訳にはいかないからな。まあ陸路も問題ないように調整しているが、いくつ協力している?」

 

「いまのところ参加しているファミリア全部じゃな。各方面が新武器など、儂らのように道具のデータ取りと躍起になっておるわい」

 

「ヘスティア側が売り込み時って、値段を下げたのもあるからね」

 

 苦笑しつつ、フィンは全体の流れを読みながら戦局を調整する。あっちの部隊はこのファミリアとぶつけるように。こちらの言う通りに動く代わりに、戦う場を用意すると交渉しているフィン。いまのところ順調すぎる為、別の手が無いか地図を見る。

 

「やれやれ、周りのファミリアが言う事を聞いてくれるのは助かるが、考える事が増えるのはな」

 

「まあ仕方ないじゃろう、ヘスティア側もかき入れどきじゃろうし」

 

「ああ、相手を絞るとね。今回は仕方ないさ」

 

 いま商業系ファミリアは、補給路と兵站を真っ先に潰されたラキア軍に物資を売り込んでいる。魔剣も含め、数々の武器防具、回復薬など売り込んでいる。

 

「た、頼む。最近話題の【魔道武具(マジックウェポン)】を」

 

 そう言う兵士がいたのだが、商人がいっやーと少し困ったように微笑むだけだ。

 

 

 

「ヘスティア・ファミリアは【魔道武具(マジックウェポン)】をラキア軍に売りません。転売も不可とさせていただきます。これは私、スピカ・シロガネの言葉ですっ!! どうか私の手でこの都市や冒険者を傷つけさせないでください!!」

 

 

 

 と言うように【クロッゾの魔剣】のような事が起きないよう、注意が行き届いている。エルフたちは率先して【魔道武具(マジックウェポン)】を渡さないように動き回り、スピカの武器が人に向かないように徹底的に動いている。

 

 商人たちも【魔道武具(マジックウェポン)】を高値で吹っ掛けたいだろうが、全エルフを敵に回すのは得策でないため、さすがに【ぱっくんチョコ】ぐらいは売られるが、武器、防具はけしてラキアに触れさせないように動いている。それこそ闇ルートからも手が回っているほどだ。

 

 ロキ・ファミリアも徹底的に協力している。この為に情報集めに何人も走らせている。

 

「ともかく動きに要注意しつつ、前線維持だね。すぐに潰しても困るし、ラキアにはしばらく頑張ってもらわないと」

 

 フィンはそう締めくくり、あるテントを見る。自分の主神ととある神が共にいるテント。そちらは任せて、戦況の維持に手を回すのであった。




リュー、フィルヴィス『時々不審な気配を感じる………』

隠し撮りするアスフィ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」

スピカ「うへへ」

リリ「気のせいかスピカ様が良からぬ事してそう」

お読みいただきありがとうございます。


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第18話・ピンチピンチピンチ

スピカ「いやっふーーー薄着の朝練中のリューさん写真っ♪ あと十年は戦える♪」

リリ「ほーう」

( ゚Д゚)


 ラキア、オラリオ冒険者同盟との戦いの中、軍神アレスは歯がゆい思いで戦場を見る。

 

「バカな、作戦はここまでうまく行ったはずなのに、最後の所で瓦解するだと……」

 

「だから言ってるでしょう!?作戦は読まれてるんですって!!」

 

「バカな事を言うなマリウス!? ここまで成功しているんだ。あと少し、あと少しで侵略できるのだぞ!?」

 

「ですから、今回のハイエルフスピカ・シロガネの確保を目的とした作戦は無謀ですよ!? 数日前からオラリオに派遣した兵士たちとは音信不通ですし、スピカ・シロガネの畑付近に近づく事ですら阻まれてるのに、何を考えて本人を捕まえられると思ってるんですか!?」

 

 マリウス王子、が怒りの声を上げるが、それに耳を貸さない軍神や父親である国王。

 

 マリウスは今回の侵略事態は囮で、本当の狙いは数々の道具を作り出す、スピカ・シロガネと接触して自国の発展に協力させると言う話には、少しばかり悩んだ。

 

 正直に言えばハイエルフと囁かれている、精霊に愛された子と良好な関係になれば、我が国とエルフたちの確執が無くなり発展するのではないかと少しは思ったからだ。攫うと言う話を直前に聞いて、アレスたちを見直した気持ちは砕け散ったが。通りで侵略作戦はするはずだ。

 

 誘拐作戦を成功させるにしても、まだ念入りにスピカ・シロガネの身辺調査をするべきと、散々きつく言った。だが声は届かず、スピカを意識している事はフィンに知れ渡り、オラリオ内部に仕込まれた者たちはすでに捕まっている。スピカはいまはのんびり気楽に物作りしていた。

 

「あのエルフの娘から生み出される兵器の数々を見ただろうッ!! あれをお前の嫁にするなりなんなりして、我が国の力にすればより発展するに決まっている。まずは確保すれば全てが解決する、オラリオ本体へ攻め込むのはその後にする作戦だぞ。うまくいくに決まっている」

 

「自分の嫁にするとかなに勝手に決めてるんですか!? それこそ全エルフを敵に回すからやめてください!!」

 

「今回は快進撃が続いているんだぞ!?いま引くから負けなのだ!! 引かないから勝つんだぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「どこぞのギャンブル依存症の患者みたい言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 勝つまでやると言う軍神にキレた男は、頭を下げて、誠心誠意を見せればどこかの派閥に入り、冒険者をやれただろうかと本気で考える。件のスピカのいる派閥は、スピカ以外の者の命令を聞かないから入れないなど聞くが、いまなら小人族(パルゥム)の先輩を尊敬する事はできると自信がある。

 

 そんなやり取りでアレスは諜報員を全てオラリオに向かわせ、情報集めに使い出し、戦場の眼を減らしてどうするんだと叫ぶマリウスの言葉を無視した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とある陣地のテントでつまらなそうにしている女神が二人いる。一人はロキであり、もう片方、銀髪の美の女神はフレイヤである。

 

「暇やな」

 

「そうね」

 

 彼女たちが実質迷宮都市(オラリオ)の最強派閥。その派閥が前線に出ないと相手が調子に乗る為、渋々前に出なくてはいけない。今回は物資の運営のテストを兼ねているから、ロキ側はまあいい。だがフレイヤ側がどうなのか分からない。

 

「もうストレートに聞くけど、自分、スピカたんの事どう思っとるん?」

 

「えっ、くれるのかしら?」

 

「やるかボケエ」

 

 それにえ~と頬を膨らますフレイヤ。その反応にいまいち確証を持てない。

 

 フレイヤは気に入った子は、他人の眷属だろうと引き抜く色ボケ女神だ。その事実は変わらず、フレイヤは気に入った子供をけして逃がさないだろう。

 

 それではスピカは? そう思うロキが探りを入れると、なんとも曖昧な反応しか手に入らない。いい加減に飽き飽きだ。

 

「ぶっちゃけ聞かせろ。スピカたんのことどう思っているんや?」

 

「惜しい子よ。正直な話ね」

 

 その言葉に首を傾げる変わりに飲み物を口に含み、戦局をつまらなそうに見ている女神の顔色を覗く。

 

「正直珍しい子と思うわ。私が出会った事の無い子、だけど、私が求めているものではない。それだけは確かよ」

 

「……まさか、気に入っているが、引き取るほどじゃないってことか?」

 

「ええ。あの子はヘスティア、もといいまの場所にいて、それを愛でるだけで十分よ。無理にあの場所から引き離しても面白くないし、つまらないもの」

 

 気に入っているはいるが、いままでと違い、眷属に引き抜くほどでは無い。フレイヤを知るロキからすれば珍しい反応だ。気に入ったら全部自分の物にしたがる癖に。

 

「それにこの都市にいる限り、私の眼から逃れられないもの。ならヘスティアの下でのびのびさせておくのも悪くないわ♪」

 

 満面の笑みでそう言うフレイヤに、ロキは呆れ果てる。結局、すでに自分の物認定していて、後は好きにさせているだけだった。

 

 先ほどの発言も、来るのなら喜んで迎え入れる気なんだろう。まあ無理矢理引き抜く気が無いだけマシかと思い、後でヘスティアを囲む面々に話すと決めて、戦局を見る。

 

「しばらくはこの茶番続けないとな」

 

「ええ、うちの子たちも、あの子の作品は気に入ってるの。遊び相手に打って付けね」

 

 戦場は激化するが、主神たちは気にせずのんびり見届ける。なにかあればそれに対処すればいいと思い控えていた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ん……?」

 

 変化に気づいたのはやはりこの男、勇者の称号をもらい受けたフィンである。

 

「ラウル、この団体の裏付けは取れているかい?」

 

「はい? ちょっと待ってほしいっす」

 

 ふと迷宮都市(オラリオ)を行き来する団体の中に、不審な物を感じ取ったフィン。親指がうずき、ラウルに確認を取らせている。

 

「ああ、それはおそらく商人の団体っすね。ラキアとは無関係ってなってます」

 

「無関係……別組織か派閥の者かい?」

 

「そうっす、えっと………あああった。魔法大国アルテナの人っすね」

 

「………」

 

 それを聞いても親指はいまだにうづき、しばし人の行き来を調べるフィン。その様子を見た団員たちも不穏さに気づき、フィンの言葉を待つ。

 

「まさか、いや、まずい」

 

 そう呟いた瞬間、伝令役のティオナが走り込んできた。

 

「フィン大変っ。ラキア兵が別の兵士の人たちに襲われてるっ。ど、どうしよう?」

 

「くそ、ここで動くかっ!?」

 

 フィンは頭を痛め、すぐに動ける者とそうでないものたちを分けて、指示を出す。

 

「ティオナ、左舷にいるベートの部隊を使って、ラキア兵を助けろ。今回死者を出すわけにはいかないからね、彼らを助けておかないと。君もそのまま手伝って、ラキア兵と引き上げたら陣地に戻ってくれ」

 

「わっ、分かったよ」

 

「ラウル、すぐにアイズ、リヴェリアの部隊を引き戻してくれ。ガレスにここの指揮を任せる。リヴェリアたちの部隊をそのまま僕と共にオラリオへ帰還する」

 

「い、いいんっすか?!」

 

「構わない。これはラキア兵との戦闘では無いからね」

 

 ラキア兵との戦闘では無い!? そう驚きながらも大急ぎで指示に従う。フィンはいずれあるかと警戒していたが、まさかラキアが動く時に動くと思っていなかった。

 

「ロキに報告だ。神ヘスティア、スピカ・シロガネが危ない」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 一方その頃、スピカは仕事の振り分けが終わり、少し休憩していた。

 

「売り物もリリに任せているし、神様はナーサリーの面倒見てるし、いまは忙しさの中の暇だな」

 

 上着をしっかり着こみ、ベットで横になる気も起きないため、工房で座っているスピカ。その工房の扉が叩かれた。

 

「なんでしょうか?」

 

 そう思い、表に出て来ると、エルフの人たちが慌てている。

 

「なにかありましたか?」

 

「申し訳ございませんスピカ様っ!! ラキアに【魔道武具(マジックウェポン)】が使われた模様です」

 

 その時のスピカの顔は苦虫を砕くほど歪め、ローブを着こむエルフの言葉を聞く。

 

「申し訳ございませんが、ラキアが冒険者たちにどんな【魔道武具(マジックウェポン)】を使っているのかわからず、戦局は混乱、対処に時間がかかっており、前線のフィン殿があなた様を呼んでいます。どうかご同行を」

 

「………ああそうですか、わかりました少しお待ちを」

 

 少し準備をしてからスピカは馬車に乗り、エルフたちと行動する。馬車に乗ったスピカ。馬車は少し大きめの個室で二頭の馬が引き、スピカが乗った途端に走り出す。無表情で馬車に揺られ、町の外へと出向く。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「申し訳ございませんスピカ様、お手数をおかけして」

 

 迷宮都市(オラリオ)の外に出てしばらくして、俺に豪華なローブを着こむ老人エルフが話しかけて来る。それに俺は顔を上げて反応する。

 

「いえいいです、それで一体何の用ですか?」

 

「? 前線でフィン殿があなた様を呼んでいるので、それで」

 

「嘘です」

 

 そう言った途端、空気が変わる。

 

「はて、嘘とは?」

 

「フィンさんが敵側が使う【魔道武具(マジックウェポン)】を理解していないはずがない。あの人は俺が世に出す【魔道武具(マジックウェポン)】を、利便性などを含めて一番に把握してます。敵が使ってどんなものか分からない。それだけで俺を呼びません」

 

 その言葉に真剣な面持ちで俺を見る老人。俺はそのまま続ける。

 

「それと、フィンさんたちの前線は陸路です。南西側、港方面に出て、何が目的です?」

 

「そこまでお分かりで、どうして我々に付いて来たのです?」

 

「あなたたち、あの場で自分を攫えなかったら、実力行使に移っていたでしょう? わざわざLv2をたくさん用意して。あそこには恩恵(ファルナ)を持っていない人もいるのに、詠唱をしていた者がいますね?」

 

 その言葉にやれやれと首を振り、静かに頭を下げる。

 

「お見逸れしましたスピカ様。まさかあの場でそこまで読まれていたとは。安心してください、使う魔法はあなた様の意識を狩るだけのもの。被害を出すつもりはありません」

 

「本当かどうかは置いておいてあげます」

 

「ありがとうございます。それでは、我々があなた様を攫った目的ですが、あそこはあなた様の居るべき場所ではございません」

 

 老人が話す言葉はどれも俺の血族、リュミエールの血筋が凄いとの事である。

 

「本当にリュミエール家の者か分からないのに、それでも俺を攫うと?」

 

「俺なぞと言葉を使ってはなりません。全く忌々しいドワーフめ」

 

 少し苛立つがいまは我慢だ。馬車はLvは下だろうが数が多い、機を見ないといけない。

 

 少なくとも彼らから見たら、俺はリュミエール家のエルフで間違いないらしい。その髪と瞳、雰囲気は全て先代、精霊に祝福されて生まれたリュミエールと瓜二つ。

 

 なにより持っている首飾りは当主の証その物とのこと、一応判断させるために渡したが、間違いないと涙すら流しながら返してくれた。

 

「これでお間違いなくあなた様はスピカ・リュミエールでございます。貴方のいる場所はオラリオなどと野蛮なところでは無く、我ら魔法大国アルテナでございます」

 

「ですけど、俺はエルフの情勢は知りません。突然出て来た身元が不確かなエルフを王家に招き入れるんですか?」

 

「その心配はしなくてもよろしいです。あなた様はそのままアルテナに渡り、王家の者と婚姻していただきます」

 

「嫁入りしろと? 12の娘を?」

 

「お相手はリュミエール家の者で、これで血筋があるべき場所に戻り、皆幸せでございますよ」

 

 にっこりと微笑む老人エルフ。

 

 ふ………

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 スピカはそこから暴れ出し、Lv3の実力をいかんなく発揮するが、数の差で無理やり羽交い絞めされて、ミスリル製の手錠をかけられる。

 

「知ってるぞ、いまのリュミエール家は祖父くらいに歳が離れた人しかいないの。どこぞのじじいのもとに嫁ぐ気なんてねええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

「忌々しいドワーフめっ! このような乱暴な娘に育てよって。丁寧に扱え、この者はリュミエール家の希望だぞ」

 

「勝手に決めるなッ! どうせアルテナに行ってもやることが変わらないんだろうが、離せ、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 こうしてラキアの戦争途中、アルテナの乱入が始まり、三つどもえの戦争が始まるのであった。




アレス「ふっはははは、いまのところ問題なく、作戦は成功する」

マリウス「戦場の情報が来ない、本当に大丈夫か………」

兵士「報告します、我が軍はいま未知の戦力に襲われ、前線ガタガタですっ!」

兵士「さらに報告、スピカ・シロガネが攫われた模様。オラリオにいません!」

( ゚Д゚)

( ゚Д゚)


???「待っていてくださいマスター」


お読みいただきありがとうございます。


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第19話・派手に行こうぜ

ダンメモからの情報でアルテナにハイエルフの王族がいない可能性があるようです。私はエルフの国と勘違いしてました。リュミエール家はアルテナ側の王家がハイエルフの嫁を得ようとする設定でよろしくお願いします。


スピカ(ちくしょう魔法使えないようにミスリル製かよ!? 時間かけ過ぎてもやばいから、ほとんどなにもできねえ。やっぱり救援を信じるしかないけど………)

???(マスター)

スピカ(……いま声がって、間に合った!! しばらく様子見、機を窺ってくれ!!)

???(御意、念話は魔力を食うので、これからは信号にて連絡します)

スピカ(後は手紙が届けばいいなー)


 神ヘスティアとリリが工房に顔を出すと、おかしな事に気が付いた。

 

「スピカ君?」

 

「スピカ様?」

 

 首を傾げて辺りを見渡す。鍵が掛けられていて、なにもおかしくないのに、何かが変だとヘスティアとリリは思う。

 

 ロキ・ファミリア、護衛の人員はいない。確か戦争でお呼びがかかり、手薄になるから気を付けろと言われているから、もしかしたらいないのかもしれない。それはいい、前もって知らされているし、大人しく工房に引きこもる話だったたはず。

 

 なのにスピカがいない。二人はどうしてと首を傾げた。

 

「神様神様」

 

 ナーサリーが呼び、置き手紙らしい物を渡して来る。ヘスティアはありがとうと応えてから、それを読んだ。

 

『ヘルプ』

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!?」

 

 とても簡単なスピカからのSOS、相手が何するか分からないから捕まることを前提にした手紙に全てを託したスピカ。ヘスティアは絶叫して、リリはあの人はもうと叫ぶ。間をおかずに外が騒がしくなる。

 

「今度はなんですか!?」

 

 リリが表に顔を出すと、フィンを始めとしたロキ・ファミリアの冒険者達が武装したエルフたちを倒していた。スピカは考え無しに付いて行ったが、もしも誘拐犯に無抵抗で付いて行かなければここで関係ない者たちを巻きこんでの戦闘になるところであった。武装したエルフの鎮圧を確認してロキは真剣な顔つきでヘスティアたちを見る。

 

「ドチビ、アルテナが動いた。これだけで意味分かるな?」

 

「アルテナ?! まさか武力行使に出たのかい!?」

 

「気付くのが遅れてしまった。もう彼らは既に都市を出ているだろう。護衛の彼らがすぐ側で捕まっていた事から、恐らくLv3もいるだろうね」

 

 オラリオの外でLv3の眷属は貴重だ。そんな戦力が組み込まれるとは思わず、少し考えが浅はかだったかとフィンは悔い、すぐに切り替えて動く。

 

「どこ行ったと思う?」

 

「神様」

 

「どうしたんだいナーサリー君?」

 

「これ、お手紙と一緒に置かれてた、発信機ですの」

 

「発信機!?」

 

「そう言えば誰かを追跡するのに最適とか言って作ってから、自分は何を追跡するつもりだったんだと言って頭を抱えてましたね、あの人」

 

 コンパスは先ほどからメレンの方角を指し示している。スピカができた唯一の事である。

 

「考えられる移動手段としても港町メレンしか無いだろうね。人の往来から察するに、あの町にアルテナ関係者が多く潜伏しているだろうからね」

 

「アレスのアホばかりに気が行ってしもうたな。彼奴らラキアまで巻きこむ気か?」

 

「おそらくラキアを利用したんだろうね。魔剣の事でいまだラキアを目の敵にするエルフは多い。これが計画的であれ突発的なものであれ、彼女はいま海路でアルテナに向かおうとしているところだろう」

 

 すぐに準備するヘスティアとリリ。こちらについてくる気まんまんである。だがフィンにしてもロキが来るので変わらない。むしろ人質にされても困るので一纏めにして同行させることにした。

 

「急ぎましょう、門や町の方は私の眷属()が見ておくわ」

 

「なんでフレイヤまで?」

 

「ほんまなんでやろな。まぁ、いまは気にするな」

 

 ロキが同行するのは面倒な手続きをカットするためで、フレイヤまでいる必要は無い。だがフレイヤの眷属が町に潜む者たちをあぶり出す為に動いてくれている上に、幹部である都市最強の冒険者オッタルと、フレイヤの戦車【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】であるアレンが何人も運べるように荷馬車の用意をしてくれている。

 

 まさかの第一級、しかも最前線に立つ者が引く荷台に乗り込むとは思わなかったヘスティア。アレンはフレイヤ以外の為に足を使う事に苛立っているが、フレイヤたっての希望に渋々従っていた。ヘスティアはそれにどう反応していいか分からない顔をした。

 

 そしてなぜかナーサリーを抱きしめて指示を出すフレイヤ。ロキもヘスティアたちもそれに乗り込む。

 

「色々言いたいことがあるけどいまはいい、ともかく急がないと」

 

「おそらく出てからそんなに時間が経っていないはずです」

 

 真剣な顔で語り、その背に背負う大剣を見るリリ。スピカが作った特製であり、他にもスピカが作ったやばいものがあることを思い出す。

 

「あの人はもしかしたら追いかけてるかも…。いえ、スピカ様、あの人がすぐに追ってくると判断したからわざと捕まりましたねコンチクショウ。後は任せましたよ……」

 

 そう呟き、制止するギルドを無視して神三柱と眷属たちが疾駆する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 船の一室に閉じ込められ、魔法を使う道具など全て回収されたスピカ。手錠こそ外されているが、大きな魔法を使うのは躊躇われた。捕まる時も人を殺さないために使用しなかったし、威力の高さが使いにくくしている。窓を叩いて窓の外を見る。

 

「意外と人が多い…これだけの人数が下手に暴れたらメレンが危ないな。逃げ出すタイミングを間違えるのはまずい」

 

 そう呟きながら窓をずっと叩く。リズミカルに、静かに………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「スピカ様のご様子は」

 

「ずっと窓を叩き、外の様子を見ています」

 

「ふむ。マリッジブルーと言う奴か」

 

 それは違うが誰もなにも言わない。ここにいる者たちはこれが一番正しいと信じて疑わない。スピカが逃げ出せばオラリオとの戦争も辞さないほど妄信している。

 

 スピカが憂慮した通り、彼らはスピカが本格的に抵抗していたら町中であっても魔法を行使し、町の人々を巻き込んででもスピカを確保する気でいた。彼らは血筋を、それも精霊に愛された初代と瓜二つのスピカを招き入れることに執着していた。船内に囚われた今となっては遅いが、スピカは町の外を移動していた時にこそ大暴れするべきだった。

 

 そんな雰囲気の中、船が出港する。それに老人はほっとする。船が出てしまえば例えLv6であろうと追ってこれない。都市に火を放ち、できる限り追っ手の手を割くように指示していたから、ここまで来れば問題ないだろうと安心する。

 

「次に火をつけるはメレンだ。ここも念のために襲撃し、混乱させておく」

 

「そこまでするべきでしょうか……?」

 

「ラキアを見よ、Lv差のあまりに蹂躙されている。奴らは我らの宝を奪おうと必ず追ってくる。二手三手打っておくべきなのだ」

 

「はっ!! 砲撃用意ッ!!」

 

 砲身が港へと向けられる時、さすがに不審に思う漁師や港にいる人々がこちらを見る。彼らは躊躇いなくそちらに砲身を向けて………

 

 爆発が起きる。

 

「なっ、なんだ!?」

 

 メレンを管理するニョルズ・ファミリアの主神ニョルズが、爆発音に反応して吠え、海の方を見た。

 

「こ、これは。船が、沈んでいる(・・・・・)っ?!」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「あいつら、メレンを攻撃しようとしてたな……タイミングを間違えれば危なかった」

 

 エルフが全員船に乗り込み、船が港から十分な距離を取ってから神速メラガイアーを放ち、部屋ごと爆破したスピカ。

 

 そのスピカをお姫様だっこして、沈む船から駆け出すのは、一人の眷属。

 

「そうですね。マスターの指示通り、エルフの者が全員搭乗してから動きましたが、一歩遅ければここは………」

 

「モールス信号、決めておいてよかったよ」

 

 難しい顔をするスピカをお姫様だっこするのは、流れるような綺麗な黒髪を持ち、人間らしい瞳を持つ、紅の着物を纏う女性である。

 

 一部機械のような手足を持つ彼女の名前は『加藤段蔵』。スピカを港に下ろし、スピカは静かに汗を拭いた。

 

「ともかく氷結系で、海から上がろうとする者を捕まえます。段蔵はこの町のファミリアに話を付けてください」

 

「承知」

 

 スピカが最終再臨の霊基をイメージして作った、生ける絡繰り人形。魔力を用いて忍術を使役する忍少女。

 

 バレたら方々からしこたま怒られるだろうからヘスティアと揃って存在を内緒にしつつ、内密に情報収集活動させていた存在である。むしろ作らない方がおかしいよな。

 

「さてどうしよう」

 

「さてどうしよう、ではないぞスピカ。後で話を聞かせてもらおうか?」

 

「スピカ君が無事でよかったけど段蔵君がバレたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「後輩だわ後輩だわ♪素敵なパーティを開かなきゃいけないわ♪」

 

「あら、それは素敵ね♪」

 

 背後からリヴェリアがスピカの首根っこを押さえ、スピカは顔芸(ムンクの叫び)を披露する。

 

 ヘスティアは秘密の露見に絶叫し、ロキはリヴェリアに黙って製作依頼を出す気満々である。

 

「ともかく、船に乗っている彼らを捕まえようか。アイズ」

 

「うん」

 

 フィンの号令でアイズや彼らに付いて来たロキ・ファミリアが動く。こうしてスピカ誘拐事件は防がれた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 無抵抗で捕まった件に対する説教を後回しにして事情聴取を行ったリヴェリアは、スピカに対するアルテナのエルフ達の考えに完全にぶちギレた。

 

「ふざけているのか!? この子はまだ12の子供だぞ!!」

 

 ここまで来るのにも手下を配置して、少しでも時間を稼ごうと暗躍していたらしい。幸い都市の方はフレイヤ・ファミリアが動いているから問題ないが、火を起こして混乱を起こす行動に声を高くして叫ぶ。

 

「ちなみにそんな事して、リュミエール家は大丈夫なんですか? 存続とかそう言うの」

 

 リリが彼らの執着に疑問を抱き、リヴェリアに訪ねるが首を振る。

 

「いいや、少し前に子供が生まれたという報告があった。スピカの件もあって色々調べたからな。確かな情報だ」

 

「ンー、やっぱり精霊に愛されているかが一番なんだろうね。神々ですらスピカ・シロガネの異常性は精霊の加護だと言ってるくらいだし」

 

「間違いないわよ。仮にヘスティアが不正してもこうはならないだろうし、精霊が関わってる方が自然なのよ。この子の力はね」

 

「色ボケに同意しとうないが、まあそれしかないやろなー」

 

 二柱の神の言葉に、フィンたちはなるほどと納得した。騒ぎに駆け付け、捕らえたエルフらの事情を聞いたニョルズも同意している。

 

「しかしラキアの騒ぎに関わるなんてな」

 

「ともかくまだこいつらから話を聞くか」

 

 三人の神に囲まれた老エルフは縛られてもなお、険しい顔でスピカを見る。ヘスティアがスピカを抱きしめ、ナーサリーを抱きしめるスピカ。

 

「精霊に愛された彼女は、アルテナにこそふさわしい。オラリオなぞに置いておく理由は無い」

 

「それを決めるのは本人や、まあ答えは出てるけどな」

 

「くっ……ラキア兵だけか」

 

「ん……ラキア兵だけとはどういうことだい?」

 

「大変ですニョルズ様ッ!!」

 

 慌てて駆け付けた漁師のから報告を聞いたニョルズは、顔を歪めていた。

 

「どうしたん?」

 

「ラキアの艦隊がこちらに向かっている上に、その後ろからラキアの倍にも及ぶアルテナの艦隊が来ているらしい」

 

 その知らせに全員が嫌な顔をする。リヴェリアはため息をつき、フィンは思考する。

 

「どうあっても、スピカ・シロガネを自国に連れて行く気か。別にここで対処はできるが」

 

「なにがなんでもスピカ様は国に連れて帰る。それができないのなら、せめてラキアへの積年の恨みを晴らしてくれよう」

 

「それは陸地での話だな。スピカを餌にラキアをメレンに誘き寄せ、港湾を戦場にする事で逃げ果せる気だったか。メレンに被害を出さずに片付けるとなると、湾の外で抑えるしかない」

 

 その言葉にリヴェリアの魔法で一掃する事も考えるが、もう少し欲しいところ。死者無しに事を終えるには手が足りない。

 

 そんなことを考えていると、ふとした疑問がフィンの脳裏をよぎる。まさかと思い聞いてみた。

 

「スピカ、君のところに殲滅用のマジックアイテムはあるかい?」

 

「あっ」

 

 その言葉に反応するスピカ。どうやら事態は解決するらしい。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 海の上を進む船の上、リリはため息を吐きながら海面を白目で見る。

 

「どうして知られると厄介な物を使わないといけないんですかね…」

 

「リリ、一本は任せたからね」

 

「もうやけっぱちです」

 

「見えてきたぞ」

 

 リヴェリアの言葉に、既にボロボロのラキア艦隊と意気軒昂なアルテナ艦隊が見える。ラキア兵はそれでも諦めずに陸地で戦う気か、上陸準備を始めている。どちらの艦隊もメレンを巻きこむ気満々だ。このまま彼らの上陸を許すと、確実に町の人々に死者が出る。だからこそ海上で叩き、無駄な争い終わらす必要がある。

 

「準備はいいですかリリ」

 

「ええ」

 

 リリとスピカは一本の剣をそれぞれ握りしめ、呟いた。

 

「「真名解放」」

 

 そう呟き、リリは続けて詠唱する。

 

「【この灯りは星の希望、地を照らす命の証】―――」

 

「【十三拘束解放(シール・サーティーン)】――【円卓議決開始(ディシジョン・スタート)】」

 

≪――承認――≫

 

 スピカの持つ剣から無機質な声が響き渡る。

 

心の良い者に振るってはならない(ガウェイン)是は、生きるための戦い(ケイ)是は、己より強大な者との戦いである(ベディヴィエール)是は、人道に背かぬ戦いである(ガヘリス)是は、精霊との戦いでは無い(ランスロット)是は、邪悪との戦いである(モードレッド)是は、私欲なき戦いである(ギャラハッド)

 

「行きます」

 

是は、大切な家族を守る為の戦いである(スピカ)

 

 詠唱が終わり、二人の持つ剣が天を貫く光を放って雲を吹き飛ばす。

 

「「【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】」―――ッ!!」

 

 ヘスティアは思う。よくもこうポンポンポンポンとんでもない物作るよな~と。

 

 自分ですら不正を疑いそうなスキルのチートぷりに頷きながら、二つの光の柱が艦隊を薙ぎ払い、沈ませていく。

 

 リヴェリアは目頭を押さえ、苦悶の顔で危ない物をポンポン生み出す事に対してどう説教するか、頭を悩ませる。フィンはあれも買えるなら買わないとな、と派閥の財政と見合わせてそろばんを弾きつつ、ラキア・アルテナの兵士たちが溺れ死んでも困るため救助の準備に入る。

 

 こうしてスピカ誘拐事件と共に行われたアルテナ襲撃事件は、漸く幕を下ろしたのであった。

 

「………もう一本作ろう♪」

 

 そうスピカは嬉しそうに宣言した。




【発信機】出典オリジナル

 とあるエルフの魔法剣士と仲良くなりたいから作り出された宝石とそれを指し続けるコンパス。作り出して何か違うと思い至り、工房に置いておいた品物。

星の聖剣(エクスカリバー)】出典Fate/

 アルトリア・ペンドラゴンの聖剣を完璧を模造した聖剣。鞘は再現不可能である為、断念している。ただの鞘ならある。


十三拘束の聖剣(エクスカリバー)】出典Fate/

 アーサー版の聖剣。鞘の拘束解除は13個では無く、14個になっている。スピカが勝手に拘束解除コードを増やした。


次回最終回、のちダイジェストで物語を進めるオマケ編です。映画版もあります。

ベル君とアイズの物語に、彼女が活躍する場は少ないんです。オマケだから許して。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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第20話・最終回

 アルテナ乱入ラキア戦争と後に呼ばれる戦争。オラリオへいつものように攻め入ったラキアを隠れ蓑に、スピカを攫う計画が練られたが、計画は勇者(ブレイバー)の活躍で破綻。

 

 アルテナはそのような者たちは知らないと言い張り、捕らえられたエルフたちも詳しい事は語らず、中には独断と言う者もいた。

 

 彼らの処罰にギルドは本格的な交渉を彼の国とする始末。だがリヴェリアなど関わった者たちはアルテナに憤り、彼の国にスピカ接触を禁止するように話しを持ち上げ、ギルドは大国と事を構えないように必死になる。以後手紙などのやり取りですらリヴェリアが責任を持つと前面に出る。

 

 ギルドは関係の悪化に胃を痛めつつも、作戦内容に都市に火を放つなどの作戦がある事を知り、いまだアルテナとギルドの論争は続いている。

 

 今回の件は国が関わっているのは間違いないが、決して彼の国は関わっていないと否定する。だが誰が見ても明らかなので、しばらくは他の国との関係含めて荒れる事は明らかであった。

 

 捕まえた捕虜扱いのLv3を初めとしたエルフたちの引き渡しなど、ギルドは被った被害額以上を彼の国から奪い取る為に動き、スピカ騒動は一応これで終わりとなる。

 

 作戦の中、スピカの作品の中に神の恩恵(ファルナ)を刻む事で活動する戦闘人形がある事と、正式魔法並みの威力を持つ【魔道武具(マジックウェポン)】、通称【宝具】の完成が露見した。

 

 この報告に都市が震撼して「戦争してる場合じゃねえや」とすぐにラキア軍を叩きのめして、緊急神会(デナトゥス)が開かれるほどである。

 

 すぐに追い返されたラキアはこれに懲りず、また大層な妄想をしてオラリオ、またはスピカを狙うのだがこれは考えても仕方ない。

 

 ヘスティアは泣きながら強制参加させられ、事の次第を説明する。いわく団員が欲しかったとのこと。

 

 ヘスティア・ファミリアの今後の【宝具】の扱いについてだが、ぶっちゃけ考え無しであったため、ロキはさすがにツッコミを入れた。この事でバカな行動を取ろうとする輩が出始めたので、ロキ・ファミリアが迅速に片付けたりと、忙しなく駆け巡る日々が始まった。

 

 段蔵たちを見たとある聖女様からこれらの技術で、欠損した肉体の代理品を作れないか相談されて作り出すスピカである。

 

 砕けない魔剣と類似する【宝具】の開発に関して、ヘファイストス・ファミリアを始め多くの鍛冶系ファミリアがその詳細なデータを解析し出す。

 

 ちなみにスピカが作り出した戦闘人形はナーサリーと段蔵の二人。そして【宝具】に至っては【星の聖剣(エクスカリバー)】と【十三拘束の聖剣(エクスカリバー)】の他にもある事が発覚。

 

 ちなみに【十三拘束の聖剣(エクスカリバー)】は椿が主神の静止も聞かずにスピカの下へ押し入り、貸してくれなきゃ改宗(コンバージョン)するとか言い出し始めたため、スピカはまあいいかとヘファイストス・ファミリアに渡した。ヘファイストスは大きな借りを作ったと頭を痛めた。

 

 残る宝具は先の二振りの姉妹剣たる【輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】と厳めしい大剣【射殺す百頭(ナインライブス)】。【射殺す百頭(ナインライブス)】はフレイヤ・ファミリアに救助に来てくれたお礼に渡す。

 

 その後【幻創大剣(バルムンク)】を創造してからは、多くあっても困るし、それを使いたがる者が入団しようとするから作るなとリリに言われ、渋々作る事はやめると表向きに言っていた。

 

 多くのアイテムを生み出すスピカの存在は、都市を活気づけ、賑やかせている。医療、道具、鍛治界にその名を轟かせるスピカ。

 

 多くの鍛治師(スミス)は、精霊の加護があると言えども砕けぬ魔剣を作り出してみせたスピカに羨望と嫉妬の眼を向け、更なる高みへと目指す。

 

 ほかの業界も負けじと努力していく中、スピカはようやくなりを潜め、それでも色々とやらかす日々。そんな激動の時代が過ぎていった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「なにを考えているんですかスピカ様!?またややこしい物をお作りになられて!!」

 

「男のロマンだよリリ」

 

「いまは女の子でしょうあなたは!?」

 

 とある日、スピカの力とヘスティアたちの努力で広くなった教会ホーム。その中でリリに怒られるスピカ。正座させられリリにガミガミ説教を受ける。スピカは新たに【風王結界(インビジブル・エア)】を作り出し、リリに没収された。なにげに【宝具】を作る辺り、スピカは一向に懲りていない。

 

「我慢して【死棘の槍(ゲイ・ボルク)】を作らないだけマシでしょうに」

 

「それを作ったらフレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアがうるさいですから頭の中に仕舞っておいてくださいねっ!!」

 

 リリが喚き、スピカは怒られているのに嬉しそうにする中、教会の扉が開く。

 

「スピカ、また相談なんだが……って、説教中か」

 

「ヴェルフ様、またでございますか?」

 

 ヴェルフは砕けぬ魔剣が生まれると知り、砕ける魔剣を嫌悪する心に変化が起きた。スピカの【宝具】があるならば、自分も砕けぬ魔剣を打てばいい。そう考えて試行錯誤している。

 

 砕けてしまう魔剣はスピカにしか預けられない。売る訳にはいかないし、自分で使うのも嫌だ。だからと言って腐らせるのも勿体無いので、優れた鍛冶師でありハイエルフでもあるスピカに一任してもらっている。時々ロキ・ファミリアの遠征に付いて行くスピカらは、その時に使用したりして遠征に貢献したりしていた。

 

「段蔵たちもそろそろ帰ってくる頃ですね。あの二人もそろそろLv2になってもおかしくない、だいぶファミリアとして活動し出しましたね」

 

「いやだいぶ異色だと思うぞお前ら。金とコネだけは第一級並みなのに、いまだに団員いないのかよ……」

 

 ヴェルフが呆れる中、スピカもしゅんと落ち込み、リリもため息をつく。

 

「どうしてもスピカ様が作るとんでも兵器が魅力的過ぎるのです。もしもファミリアに入る人がいるとしたら、憧れていても良いですが、それに見合った実力を付けたい人でないと」

 

「ところがどっこい見つけてきたんだなこれがッ!!」

 

「か、神様引っ張らないでっ」

 

 そう話し合っていると、ヘスティアが白い髪に赤い瞳、ウサギのような雰囲気の少年を連れてきた。

 

「ヘスティア様、彼は?」

 

「新しい団員さ」

 

 どや顔で決めるヘスティアに、全員が驚きの声をあげ、少年をびくりと驚かす。

 

「年下の団長や副団長に文句を言わず」

 

「えっ、は、はい。よろしくお願いします団長」

 

「【魔道武具(マジックウェポン)】や【宝具】を欲しからず」

 

「少し、いやかなり興味ありますよ。ですけど頑張って許可が下りるよう頑張ります」

 

「コネ以外の力の無いファミリアなのに」

 

「ええっと、つまり僕らで頑張ればいいってことですよね?」

 

『採用ッ!!』

 

 こうして少年『ベル・クラネル』はヘスティア・ファミリアに入る。

 

 彼が入った事でまずは歓迎会、駆け出しでも手伝えるファミリアの仕事の確認。ベル個人が冒険者としてやる事を決める。出会いを求めて来る辺りでリリたちは呆れたが、考え無しでここまで来たスピカはあえてなにも言わなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「なんじゃい、滅茶苦茶楽しんでんな」

 

 とある田舎町、ドワーフは嬉しそうに手紙を読みながら、大事に作ったクワなどに囲まれていた。

 

 手紙にはまだ父ちゃんの作ったクワたちみたいな物は作れていない。と嬉しい事が書かれているが、だいぶやんちゃしているところで苦笑した。

 

「さてと、儂も負けないようにいいもん作らなきゃな」

 

 そう言って手紙を大事に木箱の中に仕舞い、ドワーフは仕事場に戻る。

 

 ちなみに………

 

「父ちゃんへ手紙を出すたびに毎度ロキ・ファミリアが駆けまわるの、さすがに申し訳ないと思うな」

 

「エルフにお父さんの居場所バレると、絶対にややこしいことになりそうですから、仕方ないですよ。フィンさんも気にしないでほしいと言っていたじゃないですか」

 

「早くロキの手助け無しに活動したい」

 

 ヘスティアはそう言いながら、スピカは安心して育ての父親に手紙を出すのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 仕事場でこの三年間を思い返すスピカ。

 

 女の子に転生して、ハイエルフで鍛治師をして。

 

 様々な人と出会い、仲間になり、家族になる日々。

 

「二度目の人生もなかなか楽しいですね」

 

 そう満足そうに微笑み、ハンマー片手に今日は何を作ろうか考える。

 

 はかぶさの剣は細剣使いでは当たり前になり、サブかメインに使われていたり、コイン系、石像系の魔法魔道具(アイテム)は念のために買われてミアハ様の借金が無くなった。

 

 勇者装備を着こむガネーシャ・ファミリアの方々が町を守り、せかいじゅのしずくが人々を癒す。

 

 なんかよく考えたら外ではドラクエ10装備や武器着こむ人々が行きかう世界。

 

「ん~ん、やり過ぎたなドラクエ。他に何かないっけ?」

 

 そう呟き考え、まだまだあるからと口元を吊り上げる。

 

「さて、宝具ギリギリのアイテムは、オキタ・J・ソウジでしょうか」

 

 彼女の所為でオラリオの一角は、季節感が無くなるような畑が広がり、デメテル・ファミリアのような派閥が、探りに来たりする。その度にロキ・ファミリアが駆けまわり続ける。

 

 隠された倉庫はいくつもあり、大量の写真やえっちなライトが隠されていたり。

 

 このエルフは何も気にせず考えず、好きな物を好きな時に作り、ハチャメチャな騒動を起こそうとする。

 

 そんな危険信号点滅な呟きに、教会にスタンバイしてたリリは反応してハリセン片手に走り出す。本人的にはご褒美と知りながら、それでもハリセンで叩くしかないのであった。

 

 そんなことを知らずに何を作ろうか考えながら、スピカは毎日楽しく、過ごすのである。

 

「と言う訳でアイズさんどうですか?」

 

「慣れれば空飛べて助かります」

 

 アイズはジェットを付けて飛び、スピカは満足する。




と言う訳で次回からベル君やアイズの物語。ダイジェストでお送りするオマケ話になると思います。

あまり変わらないところは変わらないので、その辺をカットしてお送りします。いまのところ、ウォーゲームまでやるつもりですね。それ以外は分かりません。

それではスピカが軸の物語はこの辺で終わりとされていただきます。Lv3、それなりに高くしたし、荷物にはならないでしょう。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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オマケ・ベルとアイズの物語に関わる星
ロキ・ファミリア


オマケの初めはロキ・ファミリア。


 ベル・クラネルが入団する少し前。

 

 お城のような館、ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館で、フィンは部下の報告を聞いていた。それはスピカの警護に関わる話。

 

「また彼女の父親の居場所を突き止めようとしたエルフがいたのか……」

 

「はい、どういう理由であれ、碌な事じゃないと思います」

 

 彼女はエルフにしてはかなりフレンドリーと言うか、考え無しと言うか、その辺は無頓着だ。エルフが見れば卒倒しそうな事を平気でしたりする。

 

 一人称が俺であったり、お酒をぐびぐび飲んだりすると言う報告もあった。後半のは年齢的にグレーだから、ヘスティアに任せるしかない。だがハイエルフを神のように見る者からすれば、我が目を疑うレベルらしい。

 

 こと酒に関してはガレスと意気投合し、他の飲兵衛とも仲良くしていたりするし、ロキと同じように綺麗な女の子の話で盛り上がるなど様々だ。

 

 提携関係にあるからか、時にはロキ・ファミリアに、ドワーフの育て親に抗議しようと言う謎のクレームが入り込むが、これも警護の仕事の一環として対処していた。

 

 彼らに掛かる火の粉は代わりに振り払う。限度はあるだろうが、いまのところ恩や借りが多いのはこちらなので、文句を言わず対処するのが筋だとフィンは思っている。

 

 そんなフィンの思いとは裏腹に、エルフで無い団員の中にはスピカを軽く見る者もいて、フィンの頭痛と溜め息を増加させる要因となっている。中には自分たちが名前を貸しているのだから武器の提供ぐらい当たり前だと宣う団員も居て、彼らに言い聞かせたり思い違いを(物理で)糺したりと、フィンは自派閥内部への対応にも四苦八苦している。

 

 リヴェリアもリヴェリアで、エルフたちの暴走に目を光らせている。エルフ族にとって彼女は古から続くリュミエール家、それも白と黒の王家双方の血を継ぐエルフの姫であり、しかも精霊から祝福された子供だ。そのせいで王家を崇拝するエルフのみならず、精霊を神聖視する者まで湧いて出る始末。そうした謂わば狂信者を払いのけたり、彼女宛ての手紙や縁談話など、本人の代わりに捌いている。

 

「ふう、書類仕事は多いが、まあ仕方ないことだね」

 

「団長、紅茶です」

 

「ありがとう。ただどこから入ってきたんだいティオネ?」

 

「反省と愛の結果です♪」

 

 それに苦笑しながら紅茶を飲む。できればスピカに自分の部屋を改造してもらいたいが、それを我慢して彼女関係の書類と他の書類、それらを片付ける為にひたすらに手を動かす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあ」

 

 重いため息をつくリヴェリアに、ガレスが何が起きたのか気になって尋ねてみた。

 

「スピカの事でな。この前の事件、アルテナがリュミエール家を抱きこもうとしたのを機に、見合い話まで舞い込むようになって来てな」

 

 ギルドに届く、スピカ宛ての手紙を見ながらため息を吐くリヴェリア。世の中にはそんなバカがいるのかと呆れるガレス。

 

「………ご苦労さんだの。さすがにそっちの手伝いはできんぞ」

 

「ああ分かっているさ。しかしこうも見合い話が舞い込むとはな。当の本人も王位も貴族籍も無用と言っているのに、まるで求めている事を前提に話を持ち込まれるのは、少し堪える」

 

「どいつもこいつも、あの娘っ子が権力欲しさに自家の者と結婚したがると?その気になればオラリオの大多数の派閥よりも金も権力も容易く得られる様なあの破天荒娘がか?」

 

「だからこそ、あの娘を欲しがるのだろうな。しかも彼女が零細派閥だから付け入る隙があるに違いない、と言う意思が見え見えだ。旨い話を持ち込めばほいほい来るとでも思っているのだろうな」

 

 リヴェリアはため息をつき、ガレスも少しばかり憂鬱になる。

 

「あの娘っ子は成長方針的に、伸び伸びやらせた方が良いじゃろう。まぁ少しオーバーワーク気味と思うが、まるで気にせず喜々として仕事しておるしのう」

 

「その通りさ。好奇心旺盛な子供がしたい事を全力で取り組める様に、面倒ごとは全て我々大人が始末する。せめてそれ位の防波堤として事に臨まなければ、先達としての最低限の面目も立てられないからな」

 

 まあ好き勝手にやり過ぎて、娯楽に飢えた神々が狂喜しそうな物を作るのだけは、やめてほしいと思うリヴェリア。それもいまさらじゃろうと、苦笑するガレスであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「お二人とも、そろそろ休憩入れるっす」

 

「はい分かりました」

 

「はーい♪」

 

 加藤段蔵は律儀に頷き、ナーサリーライムは子供のように微笑む。ラウルとアキの二人は、彼女たちの経験値稼ぎの為、こうしてサポーターとして随伴していた。

 

「やはりいまの段蔵では、ミノタウロスの肉質は断てませんね」

 

「さすがにスピカさんの刃物でも、そうやすやすとLv差は覆せないっすね」

 

「私の魔法なら花火のように吹き飛ばせるわよ♪」

 

「だからって油断しちゃダメよ」

 

「はい。〝護衛〟いつもありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

 段蔵ならここから離れた位置で他の仲間が警護している事に気づいていそうだ、と思いながらそれとなく段蔵を見るアナキティ。

 

 段蔵たちは神々から見たら極上のオモチャだ。欲しがる神は数知れず。あまつさえ時々後を尾けてくる冒険者までがいる。この二人は早急に成長しなければ危険だろう。

 

 それまでは、こうしてばらけて護衛して見守る必要はある。彼女たちも成長するのには積極的だし筋は良い。人形だからだろうか、Lv1にしては動ける方なので、早い段階でランクがあがると思われる。

 

 こうして大勢の冒険者に護衛をしてもらいながら経験を積む段蔵とナーサリーライム。それに時々リリも混じり、彼らは成長するのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「いつもありがとうございますね」

 

「ううん、これがあたしたちの仕事だからね~」

 

 ティオナはそう言い、リリはバイトの子たちに指示をしながら、ギルドに卸す品物を渡していた。

 

(それに基本あたしいるだけの仕事だからね)

 

 現在のところ、ティオナがいる状態で絡んできたのはソーマ・ファミリアだけだが、他のファミリアも裏で何するか分からない。

 

 影で護衛する団員はそこそこいる。量によっては時々品物運びも手伝うほどだ。

 

(それでも数が減らないから大変なんだけどね~)

 

 護衛が目に見えてあちこちにいるのに、何かしらの接触を計ろうとする者は後を絶たない。商人のように商談ならまだマシな方で、中には運搬要員が自分より弱いサポーターだから盗もうとする者もいる。そうした手合は稀だが、必ずいる。

 

 そう言う時こそ自分たちの仕事であり、これまでの武具アイテムのお礼をする番だと、ティオナは張り切ってぶっ飛ばすことにしていた。

 

「はい、給金は振り込みと、分割で分けますので、ちゃんと確認してギルドに報告してください」

 

 直接渡すとその後に襲われる。それはさすがにまずいので、金銭の受け渡しは複雑化している。ティオナはそちらを覚えるのに苦労した。

 

 多くが冒険者をやれないサポーターの人たちだが、きちんと仕事をするのだから守られるべき仲間だ。きちんと受け渡しをしながら、ティオナもきちんと仕事しようと、軽く意気込んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「これが新しい装備か」

 

「スピカ様が用意した、後衛の装備らしいです」

 

 ロキ・ファミリアの一室でリーネ、エルフィ、アリシアが話し合っていた。装備を見ながら、そう言えばとエルフィは思う。

 

「そう言えばいくつかサイズぴったりだけど、どうしてだろう?」

 

「それはな」

 

 突然現れたロキが、それに答える。

 

「うちがきっちり団員たちのサイズ、教えているからやで」

 

 それにえっと言う顔をするが、まあと付け加えるロキ。

 

「スピカたんからは、『女の人いるんですから、細かいのはいいです』って言われてるけどな」

 

「ああさすがスピカ様、ご配慮ありがとうございます」

 

「『男は別にいいでしょう』とも言ってたで」

 

 苦笑するリーネとエルフィ。確かに嫌がりそうな男性は思いつかない、男はその辺は無頓着だろう。

 

 エルフィは礼装を持ち上げて、これにしようか悩んでいる。

 

「装備で火を防いだりするのは、精霊の護符とかで分かるけど、魔法も使えるのが凄いよね」

 

「はい、テストもかねているからと言う話ですけど、かなり融通してくれて助かりますね」

 

「これはなんとしてもご期待に応えなければ」

 

「水着とかで同じ効果の礼装もあるらしいでアリシア」

 

「……エルフィ、リーネ」

 

「わ、私たちが着るの!?」

 

「水辺ならまだ分かりますが、さすがにダンジョンアタックの中で着るのは少し」

 

 アリシアは自分で着て行くか悩む中、さすがにこれのデータ取りはいいかとお蔵入りしている事を、ロキはあえて言わなかった。

 

 リヴェリアを守るフェアリー・フォースは、少しずつスピカも巻きこみ始めていた。スピカは果たしてお世話されて喜ぶかどうか………

 

(なにげに思考がうちよりだから、喜びそうやな)

 

 と考えながら、その場を去って行った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 適当にアニソンを鼻歌で歌うスピカ。今日も元気に畑の世話をしている。

 

「よくフィンさんから仕事のし過ぎとは言われますが、時間を作れるんですよねこれが」

 

 そう思いながらロキ・ファミリアに感謝をする。面倒な話はリヴェリアが片付けてくれているし、他にも問題になるものを片付けてくれる。

 

 後は少ない人員をカバーしてくれて、スピカは感謝している。そのお礼に装備を渡したりしているが、実際は置き場所に困ったり、通用するか分からない物だ。

 

「少し悪い気もしますが、それが派閥の関係なら仕方ないですね」

 

 そう思いながら、今日ものんびり好き勝手に物作り。スピカは過ごす。

 

 ただ、いずれロキと結託して、あることをしようと考えている。

 

「エルフィさんはとある中学生のコスが似合いそうですよね」

 

 ぼそりと呟いた言葉は、見目美しい、可愛い団員たちを思い出す。

 

 その内、声とかに合わせたりと服を着てもらおう。ロキと相談して着させようと思う。アイズはアルトリアが似合いそうだと、物作り、前世の技術を使ったものを使用しようとしていた。

 

 これはいつかロキ・ファミリアを巻きこんだコスプレ大会を画策する、スピカの一日であった。




ダイジェストで一気に18階層の話まで持って行くけど、最初映画版がいいかな?

ウォーゲーム、映画辺りは短くても前中後編でやろうと思っているのでお待ちくださいね。

それではお読みいただきありがとうございます。


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ダイジェスト1

映画版を先にやろうと思いますが、そこまでの話をダイジェストでお送りします。

18階層、ベル君が向かう前にゴー。


「そうか、ようやく新人を入れられたか」

 

 フィンたちの遠征間際、道具を卸す際に新人加入の報告をするスピカ。リヴェリアは安堵しながら、補充した物を確認する。

 

「ですけど、リレミトは残念ですね」

 

「実験したいが、50階層で何かしら不具合が起きたら怖いからな。お前の道具だから、問題ないと思いたいが、今回は見送りだ。変わりに【せかいじゅのしずく】などを持って行こう」

 

 リリが受け渡しをしながら、スピカは道具をいくつか渡す。

 

「【宝具】は良いですか?」

 

「それも問題ないだろう。なに、退くべきときは退くから、そんな心配するな」

 

 程なく彼らは出発して、スピカは少しばかり心配するものの問題ないか、と考える。

 

 帰還した彼らの武器が新種のモンスターによって溶かされ、大量の武器の補充依頼が入るとも知らずに。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ベル・クラネルが入団してから間も無く、スピカたちは困った事になった。

 

 まずベルがレアスキルを発現した。その名も【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】。早熟する、懸想(おもい)が続く限り効果持続、懸想(おもい)の丈により効果高上と言う内容。

 

 どうも細かく調べるとベルはアイズに恋をして、その想いで発現したようだ。

 

「若いですね」

 

 リリはくすっと微笑み、ヘスティアはむきーと憤る。ロキといまだ仲が悪い為、アイズの悪口は言わないが、ロキはダメらしい。

 

「って言うか遠征帰りで【はかぶさの剣】を始めとした【魔道武具(マジックウェポン)】が溶けたって………」

 

 白目を剥くスピカ。まさか【ブルーメタル】製じゃない武器が軒並みダメになったらしい。幹部勢はほとんど【ブルーメタル】製や魔法で作る鉱石だから問題なかったが、サポートする団員達や他の備蓄がやられて撤退した。新たに補填するために、また製作しないといけないらしい。

 

「ともかく問題はベル君だ、これはもう成長じゃなくって飛躍だ。なんとかしないといけない」

 

「ベルはナイフ使いですけど、これじゃ成長する前に先に進みそうですね」

 

「なら武器を渡しますか? スピカ様のでなければ、問題ないかと」

 

「それだリリ君!! 今度の神の宴に出て、ヘファイストスに頼んでみるよ」

 

「いいですが、決してスピカ様の魔法や第二の鉱石の存在はバレてはいけませんよ」

 

「【ブルーメタル】でもう手いっぱいなのに、魔法で作れる鉱石まで卸すようになったら死ねる」

 

「分かったよ二人とも♪」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 神の宴でヘスティアはヘファイストスと交渉して、二億ヴァリスで製作が決定した。

 

「ヘスティア・ファミリアには【宝具】で大きな借りがあるからね。タダにはできないけど、作るのなら問題ないわ。けど値段はこれだけど大丈夫?」

 

「二億ヴァリスだね、即金で払うよ」

 

「………あんたからそんな言葉が聞ける日が来るなんてね」

 

 こうしてベル用の装備は作られ、時は怪物祭(モンスターフィリア)に移る。

 

 祭りの日、スピカは久しぶりの休日で、祭りに顔を出していた。姿は【風王結界(インビジブル・エア)】で姿を隠して回っていた。

 

 だが祭りの目玉、調教される予定のモンスターが逃げ出したので、スピカが前に出て倒すことになる。

 

「怒りのメラミ」

 

 そう唱えながら、ロキ・ファミリアと共に食人花と思われるモンスターを退治した。こんなモンスターがガネーシャの下にいるのかという疑問に包まれながら、祭りは終わるのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 18階層、一人で来られるようになったスピカ。段蔵やナーサリーライムも単独であったり、ベルと組んだりして上層モンスターと戦う中、スピカはリヴィラの町へと様子を見に行くと、殺人事件が起きていたらしい。

 

「えっ、本当ですか?」

 

「はい、正確には未遂ですね。できればスピカの姉御が来たら詳しい話を聞きたいとのこと」

 

 話を聞くと、ガネーシャ・ファミリアLv4の冒険者が殺されかけたらしい。不意打ちとは言え、第二級冒険者が殺されかけた。

 

 助かったのは石像アイテム。精霊の名を持つこの石像で相手を吹き飛ばした後、逃げる事には成功したかららしい。

 

「これは」

 

 石像はいくつも同時に使用した形跡がある。話を聞くと、裸の状態だったハシャーナ氏は殺されると思い、いくつかのコインが入った袋だけ持って、その場から逃げ出したらしい。それを追いかけることも無く、女は逃亡したらしい。

 

「それで、君の意見が聞きたいが、これは特製品かい?」

 

 天然洞窟は一部崩れていて、後に残ったのはハシャーナの私物らしき物ばかりだが、フルアーマーの、スピカが作った【ひかりのよろい】などがそのままだったらしい。

 

「そうですね、ガネーシャ・ファミリアに渡した物です。盗まれ無かったんですか?」

 

「俺も【ひかりのよろい】と同列の兜とか着ていたから、盗まれていると思ったんだが」

 

 それらは一切手を付けられず、何かを盗もうとして失敗したらしい。ハシャーナはローブを着こんだ黒い魔術師からの依頼と聞き、深層からある不気味な宝玉を回収したらしい。スピカは時々自分の魔道具(マジックアイテム)を買いに来る人物を思いつくが、あえてなにも言わなかった。

 

「もう運び屋に渡してあるから、俺の手元には無い」

 

「誰に渡したんだい?」

 

 犬人の褐色肌で、女性らしい。ポールスもそれを聞き、面倒だなと思い始める。

 

「スピカの姉御、どうしますか?」

 

「Lv4を不意打ちで殺しかけたんですよね?」

 

「【せかいじゅのしずく】が無ければ、死んでました」

 

「なら町を挙げてでも見つけた方が良い。いまのところLv6が二人に、5が数名います。倒してくれますかフィンさん?」

 

「それより君が町を仕切っているように会話が進んでいるね」

 

 ボールスはLvが数年で同じになったが、スピカは弁えているからと言って嫌わず、こうした関係になっている。

 

 町を上げて人を集め、秘密裏に犬人の冒険者を見つけて接触しようとして、謎の食人花が現れた。

 

 だがスピカ特製のバリスタや【デインバリア】に引っかかったりして、事なきを得る。

 

 アイズたちによって退けられた赤髪の女はブラックリストに載せられ、事件は終わった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 飛躍するベルにリリと段蔵が驚く中、スピカに依頼が舞い込んだ。

 

 内容は24階層でモンスターの大量発生の調査であり、依頼主である魔術師は【リレミトの巻物】があれば助かると言って、その分の資金と依頼料を払い、スピカは(聞いてもらえないと魔法で生み出されている鉱石の存在を言うと脅され)依頼を受け、ヘルメス・ファミリアと、アイズと共にダンジョンへと潜る。

 

「あるよあるよ~コインに精霊の石像、一応フル装備までまだまだあるよ~」

 

「助かります【幸福妖精(ブラウニー)】」

 

 アスフィから感謝される程、数多くの魔道具(マジックアイテム)を分け与えた。最終的にとんでもないダンジョンの様子を目にするスピカ。これを聞いたヘスティアは驚愕するほどであり、最後に出て来た宝玉らしい物も、やばいとしか言えない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ベル様ですが、ヴェルフ様の作品を着こんで冒険者として活動してますね。何故か【魔導書(グリモア)】で魔法を発現してますが」

 

「誰だろう、わかるのが怖い」

 

 なんとなくバベルの頂上にいる銀髪の女神が脳裏をよぎるがスピカ、リリ、ヘスティアはなんとも言えない顔でスルーしかない。

 

 今度リリが共にダンジョンに潜るようで、スピカは仕事をしていた。ナーサリーライムと段蔵がLv2にやっと成れたと言うのに、まさかベルが普通とは違うミノタウロスと戦ってこれを倒し、Lv2に最短で成るなどと夢にも思わずに。

 

 その前に、スピカに頼みがあるとロキたちから交渉が入る。遠征に、50階層までついて来てほしいらしい。

 

 さらに隠している物でもいいから、溶かされない装備も欲しいと言われたので、いくつか出してあげた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 こうして50階層に来たスピカは色々探索、ついでに何かできないか調べ回って、フィンと合流して帰ることになる。

 

 途中で劇毒を持つモンスターが現れたが、エルフたちが壁になってわざわざ当たりに行ってくれたおかげで無傷。18階層で足止めを食らうが、スピカ経由なので食料問題だけは無かった。

 

 さすがに何も無いところから特殊な解毒薬を作れないスピカ。ミアハのとこにいくつも作って卸したことを伝え、ベートが地上へ走り、スピカは18階層で適度に過ごす。

 

 ベルが来るまで、落ち着いて過ごしていた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ベルはイレギュラーで階層をぶち抜いて下に降りてしまい、18階層、安全階層まで逃げ込むと言う選択肢を取り、これに成功した。

 

「とりあえず段蔵たちの身体は無事ですね。頑丈なのは良いですが、壊れると厄介ですからね」

 

「ありがとうございますマスター」

 

「しかしヘスティア様まで来るなんて」

 

 更にはヘスティアがヘルメスと共に18階層へやってきた。それにため息をつき、リリがやってくる。

 

「スピカ様、皆さんが水浴びをするようですが、スピカ様はどうします?」

 

「魅力的な誘いですけど、毒に冒されているエルフの人たちがゾンビのように動きだしそうですから、俺はパスです」

 

「まあそうですね」

 

 スピカが水浴びをする時は一人でエルフに囲まれている時である。それを聞き、それはよかったですと、スピカが元男と知るリリは呟き、段蔵たちと共に水辺に移動する。

 

 スピカは仕方ないのでその辺をぶらつくことにした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「んぐ~♪」

 

 スピカはエルフたちに隠れてキャンプ地を離れて【水晶飴(クリスタルドロップ)】を口いっぱいに入れて、その辺をぶらぶらしていた。

 

「あれ?」

 

 その時、よく見る白い髪の兎のような髪を見つける。なにしてるんだろうと言う思いと、びっくりさせようと気配を消し、後ろから接近するスピカは………

 

 

 

 エデンを見た。

 

 

 

 妖精の裸体を見たスピカはすぐに脳内に録画を始め、全能力を使い精細に情報を纏め、それを見ていた。

 

何者(だれ)だっ!?」

 

 眼前へと迫る白刃よりも正面の光景を録画する事を決意するスピカ。だが刺さると即死する一撃に、身体は大きく後ろへのけ反り、樹に激突する顔面。

 

「クラネルさんと………」

 

 裸の妖精、リューは自分がした行いに血の気が引く。いままさにハイエルフであるスピカを殺しかけ、スピカはスピカで避ける時に背後の樹にキスをする始末。その時の音か、白刃が樹に激突した音か不明だが、物凄い音が響いたとベルは思った。

 

「だ、大丈夫ですか団長っ!?」

 

 やや樹にめり込んでいる顔を外して、静かに起き上がるスピカは………

 

「平気です」

 

 鼻血を吹きだしながらリューやベルから視線を外さない。

 

「も、申し訳ございませんっ!!」

 

「いえ、突然の事ですから仕方ないです。それよりベルがいますから服を着た方が良い、話はそれからです」

 

 そう言いながら鼻血がドクドク出ているスピカ。リューも羞恥心などで顔を赤くしながら急いで服を着る。ベルの目を隠しているスピカだが、リューの事を見ていて鼻血がずっと出ている。

 

 そして体力が削れたので、二人より早くキャンプ地に戻る事にする。リューが心配するも、平気と言って戻る途中、スピカは一言………

 

「白かったな下着」

 

 見た景色を忘れないために心に刻み、何事も無く自分のテントで着替える。

 

 その日の夜、ベルとレフィーヤが見つからない時に起きる出来事にも首を突っ込み、モンスターの溶解液で服を溶かされたレフィーヤを目撃する。その日は運が良かったと心底思いながら、上着をレフィーヤに着るように命令して貸した。

 

 後に「我が生涯一辺の悔いは、フィルヴィスのを見たいなこの野郎」と叫ぶスピカである。




というので大幅カット申し訳ありません。ベル君とアイズの物語に大幅な変化は与えられませんでした。

ベル君の水浴び覗き事件に段蔵がいるため、ヘルメスは現行犯で捕まりました。ベル君はその隙に逃げちゃう。

ヘルメスはボコられるが争いは何も生まないと賢者のような状態のスピカの説得で、ベルとヘルメスは許されます。リリとヘスティアは何かあったなと勘付きますね。

この後は黒いゴライアスと戦い、18階層から帰還します。

次回は映画版、アルテミス様の物語でスピカが何をするかお楽しみに。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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映画版1・始まり

それでは18階層の話はひとまず置いておき、オリオンの物語を始めましょう。


 彼女はとある工房でそれを作った。

 

 真夜中だと言うのに金属音が鳴り響いても誰にも気づかれず、ただ一人、黙々と作業する。

 

 そして作られたそれを手に取り、僅かにがっかりした作り手。

 

「できたけど中身が無いとホント役に立ちませんね」

 

 せっかく作った作品にそう告げて、中身をどうするか考えながら、すぐにできないなと思い、お蔵入りする事を決めた。

 

 それがまさかの事態を呼び、奇跡を起こすとこの時は気づかず………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「たまの休みを手に入れたぞーーーーーっ!!」

 

 スピカ、ヘスティア、リリはイエーイとテンションを高め、い、いえーいと付き合うベル。鍛冶の仕事こそ時たまにしか手伝わないが、ベルは冒険者らしくダンジョンに潜って稼いでいる。装備はヴェルフが作った軽装の鎧に、ヘスティアがヘファイストスに依頼して作ってもらった【ヘスティア・ナイフ】(ヘスティアのお小遣いから即金で払った)を使っている。

 

 リリがサポーターとして付き合う中、Lv2にすぐになったベルは戦力としてよく働く中、全員が纏めて休める日は何時ぶりだろうかと言う状態。奇跡の休みと祭りの日が合致して、こうして祭りに繰り出していた。

 

「神様たちは【神月祭(しんげつさい)】は初めてですかね?」

 

「しんげつさい?」

 

「はい、神様たちがご降臨する前からある祝祭の日です」

 

「確か、月を神に見立てて、モンスターの魔の手から無事を祈る、だったかな?」

 

 せっかくなのでベルと契約した鍛冶師であるヴェルフと共に、祭りの都市を歩く一向。タコ焼きなど買って食べながら楽しく歩く。

 

「段蔵さんたちも、食事ができるんですか?」

 

「そうですね。段蔵たちは食べたり寝たりすることで、エネルギーを増やしたりしていますので」

 

「おいしいわおいしいわ♪」

 

 段蔵とナーサリーライムとも仲良くしているベル。神ヘスティアがベルを連れまわしてリリたちが呆れる中、それを見つけた。

 

「さあさあお立会い、遠き者は音に聞け、近き者は目にも見よ!」

 

「あれは、ヘルメス」

 

 神ヘルメス。何がしたかったのか、ベルの急激な成長に興味を持ったか知らないが、妬む冒険者をけしかけてヘスティア誘拐の容疑をかけられた神だ。

 

 スピカは半眼になり、リリも胡散臭い物を見るように見ていた。

 

「どうやら【槍】を引き抜けるかどうかの見世物のようですね」

 

「だな。選ばれし者にしか引き抜けない槍ねえ。スピカなら作れそうだな」

 

「ええ、丁度一本ありますよ」

 

「作らない作らない」

 

 リリに止められるスピカ。ナーサリーライムと手を繋ぐスピカは悪い顔をしていた。ベルは苦笑しながら、ヘルメスが用意した舞台にある槍を見る。何とも不思議な槍だと思いながら、次々と腕自慢がその槍を引き抜こうとしていた。

 

「あれ?」

 

 そうベルが気づくと、レフィーヤが引き抜こうとしてすぐにギブアップ。次の人はアイズと言う状況であった。

 

「アイズさん」

 

「むむむっ」

 

 ヘスティアが嫉妬の目線でアイズを見る中、憧れの人が舞台に上り、興味を持つベル。レフィーヤたちもこちらに気づき、軽く手を振る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「さーて次の挑戦者は!?」

 

「あっ、はい僕です」

 

「これはこれこは、泣く子も黙るヘスティア・ファミリアで急成長している、【リトル・ルーキー】ベル・クラネルだーーーーっ?!」

 

 ベルは舞台に立ち、頭を観客に下げながら【槍】の側へと近づく。

 

 舞台の側でスピカはジッと睨むようにそれらを見る。別にスピカは悪いことをする気は無い。もしもこの神が変な事していたら糾弾(ズドン)してやろうと思っているだけ。ベルやヘスティアにした事を許していない。

 

 ヘルメスの言う【槍】は結晶のようなものに刺さっていて、ベルは【槍】に手を触れる。

 

(この辺り、妙な細工はありませんね)

 

 そう思い、手に触れた瞬間………

 

『………見つけた………』

 

 声が響いた。ベルは驚くと結晶は砕け散り、【槍】が引き抜けた。

 

 尻餅をつき、驚愕するベル。【槍】を手に持ち、それを間近で見る。

 

「【槍】?」

 

(そうか……運命は君を選ぶのか………)

 

「やったーーーベル君ーーー♪」

 

「素敵だわ素敵だわ♪」

 

 嬉しそうなヘスティア、ナーサリーに抱き着かれるベル。スピカたちもおめでとうと言い、舞台の外で拍手をする。

 

 観客も歓声を上げ、ベルの功績をたたえる中、ヘルメスが尻餅をつくベルに手を伸ばし、手を受け取るベル。

 

「おめでとうベル君」

 

「よく分かりませんね、なぜ抜けたのでしょうか?」

 

 そう言いながら【槍】を見るスピカ。ベルも分からずに【槍】を見つめていた。

 

「それじゃあ、今回の旅のスポンサーのお出ましと行こう」

 

「あっ、神ヘルメス。ちょっとま」

 

 実はこの催しは豪華観光ツアーが付いてくる話なのだが、スピカたちは断ろうとしている。ヘスティア・ファミリアは年中スケジュールが埋まっている。遊びに出かけている時間は無いのだ。

 

 スピカが何かを言う前にその人物、神は姿を表した。

 

「アルテミス、アルテミスじゃないか♪」

 

 ヘスティアの歓声に、ふへっとスピカはそちらを見る。青い髪をした女神がそこにいて、その美しさに魅かれるスピカ。

 

 嬉しそうに駆け寄るヘスティア。向こうも走り出し、駆け寄ったその時、ヘスティアを通り抜け、ベルへと駆け寄るアルテミス。

 

「へっ?」

 

「見つけた♪私の【オリオン】」

 

 ベルを抱きしめるアルテミス。それにヘスティアがなんじゃそりぁーーと叫び声を上げた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「どういうことだヘルメスっ!?これがアルテミスだって?!」

 

「アルテミスも下界の暮らしに染まったってことじゃないかな?」

 

 あの場で話し合うのもあれなので、教会のホームへと移動した面々。ヘスティアはアルテミスの変わりように叫び声をあげ、ヘルメスは気にせずにそう呟く。

 

 ヘスティア曰く、アルテミスは不純異性交遊撲滅委員長。大の恋愛アンチ。

 

「それがどうしてこうなったぁぁぁっ?!」

 

「それで、どうしてそんな人と言うか神が旅のスポンサーに?」

 

「実は、オラリオの外にモンスターが現れたのさ」

 

 ヘルメスが真面目な話をし出す。曰く、オラリオの外でとあるモンスターが出現した。

 

 アルテミス・ファミリアが発見したが、それは劣化したモンスターと違う、危険な厄災である。

 

「つまり観光ツアーとは名ばかりで」

 

「ただのモンスター退治ですか?」

 

「そう言うことさ」

 

 それに呆れるスピカ。すぐにそれを口にする。

 

「ヘスティア・ファミリアはそんな依頼受けられません。明日のスケジュールはすでに組まれています。アイズさんたちロキ・ファミリアなんかに話を」

 

「それじゃダメなんだ【オリオン】」

 

 そう言ってベルを見つめるアルテミス。そう言われてもとスピカは困った顔をする。

 

「【ブルーメタル】だって卸さないといけないし、信用問題に関わるんですけど。あと彼はベル・クラネル。オリオンでは無いですよ」

 

「いいや、あなたは【オリオン】。ずっとあなたを探していた。私の希望」

 

 そう言い、スピカとベルは困った顔をしていた。

 

「どうして僕なんですか? 僕よりもアイズさんとか強い人は大勢います」

 

「この【槍】を使うのは強さではない。穢れを知らない純白な魂」

 

 そう言って【槍】を手に持つアルテミス。どうも引く気が無いし、かなり厄介な問題らしいと、頭の中でスケジュールをどうするかやりくりしていた。

 

「ヘルメスさま、この【槍】って」

 

「言っただろ伝説の槍だって、ヘファイストスお墨付きの槍だぜー♪ 君は【槍】に選ばれたんだよベル君」

 

 そんなこんなで、ヘスティア・ファミリアのホームと工房をヘファイストスに預け、ヘスティアたちは冒険者依頼(クエスト)を受ける出会った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 城壁ならぬ市壁の上、スピカは旅に出ると聞き、意気揚々とある物を持ってきた。

 

「それがこれっ♪【超スーパーカー】です」

 

「うわあぁぁぁっ♪」

 

 それを見たベルは驚き、リリはまた変な物をと言う目でスピカを見る。念のためにフル装備で出たかったため、スピカはありとあらゆる準備をした。

 

「こいつには多くの【魔道武具(マジックウェポン)】を持ち込み、さらにどんな道だろうと走る事が可能の品物さ♪」

 

「スピカ君、悪いけど行きは空路の予定なんだ。すまないがそれは」

 

「あっ、ついでに飛べます」

 

「飛べるのそれ!?」

 

 ヘルメスも目を輝かせて、空を飛ぶ【超スーパーカー】に興味を見出す。

 

 色々用意をしたスピカは空を飛ぶ【超スーパーカー】に乗り運転する。飛竜を連れてきたガネーシャがびっくりする中、スピカ、ヘスティア、ナーサリーライムは【超スーパーカー】に乗り、飛竜はアルテミスとベルが、リリは段蔵、ヴェルフはヘルメスを乗せて空を飛ぶ。

 

「マスター、これにはどんな物を乗せてるの?」

 

「………色々です」

 

 スピカはナーサリーライムの眼を見ずに答え、空へと飛ぶ。

 

 誰かに見つかる前に、スピカたちヘスティア・ファミリアは旅立つ。

 

 ホームの前に《全てヘルメスの所為》と言う書置きを残して………




【ヘスティア・ナイフ】出典ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

ヘスティアの神血が混ざって、神聖文字が刻まれた黒いナイフ。ヘファイストスに作ってもらい、ヘスティアが自腹を出して即金で作ってもらった。


【超スーパーカー】出典ドラゴンクエスト ビルダーズ2

空を飛び、どんな悪路も進み、バリアやビームも出せるその名の通り超スーパーな車。

スピカの物は二台あり、この二台使いボーダーと合体して空を飛ぶことも可能。やりたい放題である。

さて冒険が始まりました。ベル君に待ち受ける運命は?

お読みいただきありがとうございます。


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映画版2・激戦

スピカ「前回、ヘルメスの胡散臭い依頼を受けてオラリオの外に出向く。念のために色々持ち出したけど、まあなんとかなるか」

足りなきゃ作れば良いしね。

リリ「………気のせいか、妙な事を考えてませんかスピカ様?」

スピカ「リリに心の中を見透かされながら、空の旅は続いております」


 オラリオから遥か離れた大地の果て、エルソスの遺跡へと向かう。

 

 途中見たことのないモンスターに襲われた親子を助けながら、その遺跡に眠るモンスターについて詳しい話を聞く。そのモンスターの名は【アンタレス】。陸を腐らせ海を蝕み、森を殺し、あらゆる生命から力を奪う。

 

 古代、大精霊によって封印されたモンスター【アンタレス】。あの【槍】で無ければ倒せないと言うモンスター。それを使えるベルに白羽の矢が立つ。

 

 気合いを入れて飛んでいく彼らの眼に広がったのは見慣れた森、では無かった。

 

「森が死んでる……」

 

 まるでがらくたのつるぎを見た時のような感触をヘスティア・ファミリアは感じる。森から命と言う物を感じられず、紫に変色したりとがらくたのつるぎより酷いそれを見て驚く。

 

 エルソスの遺跡を目視した時、光の矢のような雨が降り注ぎ、みかがみバリアで全て防いだが、長くは持たない。

 

「なんか凄い事してませんかスピカ様っ!?」

 

 すくに地上へと着地して謎のモンスターに襲われるも、リュー・リオンが駆けつけて来てくれたおかげで助かり、詳しい話をヘルメス・ファミリアのキャンプ地で聞く事になる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 途中水浴びしていい思いを(リリがスピカの視界をガードするが)したスピカ。覗きに来たヘルメス、男たちをしばいて一休みした。

 

 そしてそれを目撃する。

 

 ヘスティアが【槍】を捨てようとして、ヘルメスが止めている場面。

 

「なにをしているんですか」

 

「スピカ君……」

 

「その【矢】をどうするんですか?」

 

 その言葉にヘスティアとヘルメスの顔つきが変わり、スピカは静かに見据える。

 

「道具作りのスキルを舐めないでください。俺にはそれは初めから矢として見えていました。それはなんなんですか?」

 

「………神を討つには、これしか方法が無いからさ」

 

 ヘルメスが言うには、あのアルテミスは、アルテミス本人では無いらしい。この神殿を封印していたのはアルテミスの眷属とも言える精霊であり、長い年月【アンタレス】を封印していた。

 

 だがその封印を突破して地上に君臨しようとした奴に、アルテミス・ファミリアが挑むも全滅。その時、神アルテミスは取り込まれた。

 

 神アルテミスは自分を取り込む【アンタレス】を倒す手段に、天界から矢を召喚して、矢に自分の意識を一部残したとのこと。

 

「【アンタレス】はいまアルテミスの力、神の力(アルカナム)を使用して、地上を焼き払う気だ。それを止められるのはベル君しかいない」

 

「ベルに神殺しを、アルテミス様を殺せと言うのですか?」

 

「違う。少女を助けてもらうだけさ」

 

 ヘルメスはそう言い、ヘスティアは何も言えず矢を持つ。それに対してスピカはため息を吐き、そして。

 

「ざっけんなよくそ神」

 

 その矢をLv3のスペックで取り上げ、そして宣言する。

 

「テメェらのシナリオ通りに世界は回ると思うな。俺が、スピカ・シロガネの名に懸けて、アルテミス救出と【アンタレス】討伐。それを同時にこなして見せる」

 

「スピカ君それは、でも」

 

「できる。切り札を、使います」

 

「切り札だって」

 

「勝率100%だ、神なら俺が嘘を言っているか分かるはずだろ? 俺の作戦に手を貸せヘルメス。必ず成功させる」

 

 ヘルメスは迷う。これは世界の一大事を決める話だ。

 

 少女を救う為に世界を危機にさらすかどうか。だが………

 

「やれやれ、冒険者に俺が勝てるはずないだろ。仕方ないな………代わりに君は何を成す?」

 

「全てを以ってハッピーエンドを作り出す」

 

 嘘偽りも無い言葉に、ヘルメスは笑い、ヘスティアは希望を見つけたようにスピカを見る。

 

「できるかいスピカ君、全てを救う事が」

 

「分かりません。アルテミス様の場合、地上のルールがあります。死なないだけで、地上から姿を消すかもしれません」

 

「………なら頼む、ボクの神友を救ってくれ」

 

「はい」

 

 少し迷うヘスティアだが、すぐに自分の眷属を信じる。静かに決意するスピカ。いま全ての枷を外す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 一か八かの作戦だ。これが成功するにはまずはここからだ。

 

 召喚陣を描き、代用する品物を全て並べても、向こうが応えなければ意味が無い。

 

「だけど俺の知識通りなら」

 

 この世界に来て、空想の世界の物を実体化させる力に目覚めた。ならば逆説、その空想の世界は本当はあるのではないか?

 

 現にナーサリーライムと段蔵は召喚、受肉と言う形でここにいる。ならばと覚悟を決める。そこから逆算してできるとスキルが告げる事をするスピカ。

 

「まずはこれで、彼を呼べるかが勝負………【告げる】」

 

 こうして一世一代の儀式を始め、魔獣【アンタレス】を討つ作戦を作り出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ヘルメス・ファミリアはスピカが用意していた【魔道武具(マジックウェポン)】に身を包み、戦闘準備をした。彼らは囮を引き受け、遺跡から溢れるモンスターを討つ準備を終えた。

 

「ポット、良い装備着てはしゃぐなよ」

 

「ホセこそ、こんな装備めったにないよな」

 

 盾を構えるドワーフの女性も遥か各上の装備に胸を弾ませ、双子の姉の小人は微笑む。

 

 作戦が始まる時、ついに動きだす【アンタレス】。遺跡から湧きだすモンスターに、それは真正面からぶつかった。

 

「な、なんだあれぇぇぇぇぇ」

 

 犬人のルルネと言う少女が驚く。それは【つばさの勇車】と言う、笛一つで呼び出せる、スピカの秘密兵器の一つ。けして他人にばれてはいけなかったが、リリに任せて使用した。

 

 空を飛ぶ戦車のような要塞、【つばさの勇車】からミサイルや鉄球、彼らが手に持つ武器と変わらない一級品が放たれ、地上に【スーパーキラーマシン】たちが降りて来る。

 

「全くもう、全ての制御をリリに任せて」

 

 リリが愚痴りながら、全ての指示を【つばさの勇車】内部で取り扱いながら、流れをこちらに持ってくる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 遺跡内部で物語の真実を聞くベルたち。だがアルテミスもまた、ヘスティアたちの作戦を聞いて驚いていた。なにか策があろうと、理を覆す矢で無ければいけないのに、彼らは手に持つ武器を握りしめる。

 

「ベル君、君がするべきことは槍を使う事じゃない。これで【アンタレス】を倒すんだ」

 

 そう言って一本の聖剣。名を【輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】。太陽の剣を渡す。

 

「トドメはスピカ君が用意している。彼女は賭けに勝った、応えてくれた者がいる。頼む、後は君が、君たちがするしかないんだ」

 

 槍はそこにある。それを矢として放てば全ては決着する。それでもベルは【輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】を掴み上げ、走り出した。

 

「援護するぞ段蔵っ!!」

 

「はいっ!!」

 

「【オモチャの兵隊さん、出番です】」

 

 ナーサリーライム、段蔵、ヴェルフも走り出す中、リューとアスフィも駆けだす。

 

「ベル君、その剣の力を開放して、君のスキル、英雄の一撃に全てをかけてくれ!!それがスピカ君からの団長命令だ!!」

 

「真名、解放ッ!!」

 

 鳴り響く鐘の音と共に、光が集まる。それに反応する【アンタレス】だが、ヴェルフたちが妨害する。

 

 そこに遺跡の天井が崩れ、ゴーレムが入り込む。

 

『間に合った』

 

 リリの声が響き渡り、手動でしか動かないゴーレムを動かし、動く【アンタレス】と激突する。その身体が一部結晶化していて、その中にアルテミスの身体がある。

 

 側でヴェルフへゴーレムはカプセルを渡す。身体を回収できれば、できればそこに入れてほしいと言われていた。

 

「こいつは何があっても守る。行けベルッ!!」

 

 その手に【幻想大剣(バルムンク)】を握りしめ、ナーサリーライムが作り出した軍隊を従えるヴェルフ。回収の為に段蔵は混乱の中で、風王結界で姿を消す。

 

 準備は整いつつある。

 

 ゴーレムで戦うリリ、敵もまた高まる力に警戒する。無数の【アルテミスの矢】を放とうとして、それをリリが前で受け止める。

 

「『みかがみバリア』ッ!!」

 

 それで全て反射され、【アンタレス】が大きく倒れる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 最大まで溜める力、引きだす引き金(トリガー)は、太陽の騎士ガウェイン。

 

『この剣の本来の持ち主でね、これはレプリカなんだ。こんな騎士が持っているんだ』

 

 太陽の下では無敵と言われ、王の懐刀にして最強の一角。

 

 礼節を重んじる忠義の騎士。

 

『いいでしょう、私もあなたに力を貸そう』

 

 そんな声が響いた気がする。

 

「『【この剣は太陽の映し身、もう一つの星の聖剣】』ッ!!」

 

 声が重なる。太陽の騎士とベルの言葉が重なり、身体を崩した【アンタレス】へと迫る。

 

「『【あらゆる不浄を清める(ほむら)の陽炎】』!!」

 

 白い情景と太陽の焔が重なり合い、振り下ろされた。

 

「『【輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】』」

 

 静かに告げた一撃は【アンタレス】を飲み込んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「時は来た、準備は良いですか!?」

 

 叫ぶスピカは太陽の聖剣により、【アンタレス】の動きが止まったのを確認した。

 

「もちろん!!」

 

 少し離れた位置、空高く飛ぶ【つばさの勇車】に乗り、リリが侵入した入り口で光景を見る。

 

 スピカよりも遥かに巨体な大男、手に持つスピカがギリギリまで時間を使い作った弓と矢を握りしめ、此方を見据えた。

 

 矢は【メラガイアー】と【マヒャデドス】を重ね合わせてぶつけ合い、爆発して生まれた極大消滅魔法の矢。【メドローアの矢】だ。

 

「アルテミスに愛されるのは許そう、異世界のだからな。アルテミスを愛するのは許そう、むしろ愛してやってほしい」

 

 だがッ!!と叫び、巨漢の男は【アンタレス】を睨む。

 

 

 

「アルテミスを落とす役目は譲れないッ!!」

 

 

 

 巨漢から放たれる意思の力を感じながら、男は弓矢を構えて【アンタレス】を睨む。

 

 アルテミスは結晶の中に閉じ込められている。だがそこから助け出すにはいましかない。

 

 太陽の光が迫る【アンタレス】は、不気味な雄たけびを上げて対抗する。

 

 だからこそ、この男が全てを落とす。

 

「【全ての令呪を以て命ずる、その身全てを使い、禍月を落とせ三星の狩人(トライスター)】ッ!!」

 

 令呪が三つ、狩人の力を引き上げ、雄たけびのように叫ぶ。

 

 全力が弦を引き上げると共に光が矢に収束していく。狙うは一点、魔獣と月女神の境目。

 

 

「【我が矢の届かぬ獣はあらじ(オリオン・オルコス)】!!」

 

 

 轟音が鳴り響き、戦場を一瞬止めてしまうほどの音が飛来する。

 

 叩きこまれる【我が矢の届かぬ獣はあらじ(オリオン・オルコス)】は、如何なる魔性の獣も、彼の狩人の手から逃れられない。

 

 さらにスピカが作った弓矢は全て、この為に用意した【宝具】である。

 

 存在する為の全ての要素を全て使い、狩人は【アンタレス】の水晶を射貫き、月女神を閉じ込める水晶が砕け散る。その瞬間、隠れていた段蔵がそれを救い出し、余波で弱った魔獣へ、不浄を焼き払う聖剣が全てを飲み込んだ。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」

 

 三星の狩人(トライスター)はここで終わらず、続けて二射目が放たれる。それもまた始めに撃ち放つ物と大差ない一撃。それが焔の中にいる魔獣を射貫く。

 

 強大な爆音が響き渡り、魔獣の姿は欠片も無く、静寂が世界を包み込んだ………




【つばさの勇車】出典ドラゴンクエスト スライムもりもり

主人公のスライムとそのライバルが乗る要塞戦車が合体して生まれた物。魔王すら倒して世界に平和をもたらしたこれを大改造して作ったスピカ。笛でどこにでも呼べて、中には数十体のキラーマシン、スーパーキラーマシンなど内蔵している。


輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】出典Fate/

太陽の騎士ガウェイン卿が持つ、勝利の剣の姉妹剣。スピカが作ったこれは限りなく本物に近い。

【乗り込み式ゴーレム】出典ドラゴンクエスト

 スライムもりもりに出て来た乗り込むタイプのゴーレム。みかがみバリアやロケットパンチなど好き勝手付けている。操縦者は一名のみ


【メドローアの矢】出典オリジナル

火と氷の魔法で作り出した究極兵器。ただのメドローアでは魔法反射の呪文に弱いが、これには物理効果が付く為、対象外になる。


………英霊召喚しました。アルテミスはどうなるか、お楽しみに。

お読みいただきありがとうございます。


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映画版3・終わり

戦いは終わり、後は女神の救世のみ。


 魔獣【アンタレス】を討ち滅ぼし、人々が歓声を上げる中で、飛翔する【つばさの勇車】で彼女は英雄に頭を下げた。

 

「あなたのおかげで助かりました。聖杯が手に入らないのに、よく来てくれましたね」

 

「全くだ、って言うか俺が聖杯になるの込みの召喚だなんて、二度とごめんだ」

 

 狩人は黄金の粒子になりながらスピカに文句を言い、スピカはそれでも来てくれた事に感謝しながら、黄金の輝きを宿す杯を手に取る。

 

「………そいつでどうにかなるのか?」

 

 神妙な顔でスピカを見る。英霊がいま一体、座に帰還するエネルギーを貯め込む。スピカは静かに真実を告げた。

 

「どうにかします、それがあなたとした契約です」

 

 スピカの真剣な面持ちに、そうかと満足そうに笑い消えて行く英雄。

 

 その英雄を形作る魔力を貯めた聖杯を手に、スピカは仲間の下に走り出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 カプセルの中にいるアルテミス。すでに槍に宿るアルテミスは姿を消している。

 

「どうなってるんだい?」

 

「いま私が作った【天使の聖杯】や【せかいじゅの葉】でうまくごまかしています。そろそろ限界ですのでこの【聖杯】を使って、彼女を蘇生させ、かつ地上降臨状態へと変えます」

 

「もしもできなかったら」

 

「アルテミス様は下界のルールによって天界行きです」

 

「スピカ君、アルテミスはこれからなんだ。例え生き残っても、地上とお別れなんてダメだ。後は頼む」

 

「分かりました」

 

 聖杯を使うだけでは足りない。やはり【アルテミスの矢】を使用しよう。矢と聖杯、二つの聖遺物を使用して神の力(アルカナム)を使用した事実を消す。

 

 そして下界のルール、それを聖杯の力で覆す。事実、アルテミスは神の力(アルカナム)を使っていない。使ったのは【アンタレス】とする。だからルールを破っていないと神の理(ルール)に言い聞かせる。

 

 矢の召喚をカウントされてしまえばそれまでだが、それも【アンタレス】として誤魔化して世界を欺く。聖杯ならそれくらいできるが、英霊一人分でどこまでやれるか分からない。

 

 だがオリオンは冠位英霊の資格を有するアーチャーだ。一体のエネルギーは遥かに超えているはず。

 

 自分が呼び出した者の凄さにおののくのは後だ。スピカは全集中して魔力を操作して、因果を誤魔化す。

 

 聖杯が砕け散り、運命は決定する………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

『やはり私は』

 

 暗闇の中でうつむくアルテミスに、一条の光が話しかける。

 

 ――それでいいの? もう地上には降りられないのよ?

 

『私は下界のルールを破っている。それは間違いないんだ』

 

 ――それでも、あなたは納得できる?

 

『………私は』

 

 ――いいじゃない、神様なんて自分勝手なんだから。いまは他の神の子だけど、地上にいればまた出会える。そしてそこから始まる物語があるのよ。

 

『………本当にいいのだろうか?』

 

 ――それを決めるのは私じゃない。ただ一つ言えるのは、私のダーリンはあなたを救うために燃料になったし、あなたは別世界の私。オリオンを離しちゃダメ。

 

『羨ましいな、オリオンのいるあなたは』

 

 ――うふふ、駄目よ。ダーリンは私のオリオン。貴方のオリオンは、いまあなたの目覚めを待っている。

 

『………私は』

 

 ――そう決めた子たちはいる、それを願い、必死になる人たちがいる。なら、あなたのするべきことはなに?

 

 その言葉にアルテミスは光の中に飛び込み、月女神はアルテミスに微笑んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「なあギルドや他の神には言わないから、君が最後に使った物はなんだいスピカ君? 気になって夜も眠れないよ」

 

 ヘルメスはそうにこにこしながら話しかけて来る。胡散臭いその笑顔に、聖杯の事は決して言えないとスピカは思い、ヘスティアたちも追及する事はしない。

 

 アルテミスは【アンタレス】に取り込まれたが〝運よく〟助け出され、これまた〝運よく〟下界に留まっている。

 

 傍にいた神々はそれでいいと納得して、眷属たちもそういうものかと納得させた。ヘルメス・ファミリアはいま、スピカから譲ってもらった【魔道武具(マジックウェポン)】を身に付けていた。

 

 ここまで来ると【つばさの勇車】はアルテミスに渡してしまおうと、リリと相談したスピカ。当たり前だがバレると面倒なので【スーパーキラーマシン】や乗り込み式【ゴーレム】はアルテミスに渡すことにする。

 

「今回はすまなかったオリオン、私の為に」

 

「い、いえ、僕がしたことは些細な事です」

 

「些細な事か」

 

 微笑むアルテミス。いま【つばさの勇車】の扱いなど教えてもらいながら、ベルたちは帰還の準備に入る。

 

 ベルと話し合うアルテミスは微笑み、そしてヘスティア含めたヘスティア・ファミリアに感謝した。

 

「ありがとうヘスティア、ありがとう神友の眷属たち。私はここから、また一からやり直すよ」

 

「はい、アルテミス様もお元気で」

 

「ああ、そうだベル」

 

 最後にベルを優しく抱きしめるアルテミス。ヘスティアが憤慨するがスピカとリリが抑える。

 

「来世では私に恋を教えてほしい」

 

「へっ?」

 

 頬を赤く染めて耳元で囁くアルテミス。そのまま頬に口づけを交わして、頬を赤く染めて【つばさの勇車】に乗り、飛翔していく。

 

 ヘスティアがわんわん泣きわめくが、結局最後に笑顔になり、彼女に手を振った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 帰ってきたスピカたちは、すぐに貯まった仕事を片付け初める。ヘルメス? 彼奴は良い神だったよ、アスフィは良い眷属だから問題ない。その中でリリはスピカに問いかけた。

 

「スピカ様、結局聖杯? はこのままでいいんですか?」

 

「作った時、中身が無くて断念したけど、あれは作らない方が良い物だと、今回理解したよ。さすがにもう一個、作る気は起きないな」

 

「それはよかった。リリは失ったからまた聖杯を作るスピカ様を幻視してしまいました」

 

「もうリリったら、俺の事をよく理解してくれて嬉しい♪」

 

「寝言は寝てから言ってください」

 

 笑顔の言葉を笑顔で返すリリ。いけずとスピカは残念がる。ちなみにヘスティアも側で聞く耳立てていたので、この言葉に嘘は無いと後でリリに報告する。

 

 もう一個、聖杯を作る気は無い。それは正しい、スピカはもう聖杯を作らない。

 

「神様リリ団長ッ! ガネーシャ・ファミリアが倉庫含めて家探しするようですよ」

 

「大丈夫、危ないのは隠してあるから」

 

「隠すもんがあるのかお前」

 

 ベルがエイナから言われた言葉を言いに来て、笑顔で答えるスピカ。ヴェルフは呆れ、ヘスティアとリリはジト目でスピカを見る。

 

 段蔵は苦笑して、ナーサリーライムは笑顔で微笑む。

 

 またやってきた日々に満足して、今日もヘスティア・ファミリアは元気である。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とある地下施設、そこはどこかにあり、明確な場所は記されてはいけない。

 

 スピカはそこにいて、静かに何かをしている。それは新しいやばい物、弓を隠しに来たのだ。

 

「やっべええ、仕方ないとは言え【宝具】レベルのもん作っちゃったからな。隠しておかないと」

 

 グランドアーチャーしか使えないが、だからと言ってギルドにバレると面倒だと、ここに隠しに来た。ここはヘスティア様やリリすら知らない。スピカヤベーもんシリーズが隠してある場所だ。

 

「聖杯も役に立ったし、中身あれば役に立つなこれ」

 

 そう言って【聖杯】を手に取るスピカ。

 

 もう一個作る気は無い。すでにあるのだからたくさん。

 

 嘘は言っていないため、追及されていないし、直前でしていたグランドサーヴァント召喚陣も封印されている。

 

「オリンポス、アトランティスまでしていてよかった。まさか呪式が存在すると知っているから、俺のスキルで製作できるって反則だよな」

 

 行き当たりばったりで考えた作戦だが、うまく行ってよかった。最後にはハッピーエンドになったのだからそれでいいとスピカは聖杯を仕舞い、その場を後にしようとする。

 

 その時、ふと、考えた。

 

「ここ特異点扱いとかにならないよね?」

 

 フラグな気がしたが、サーヴァントはいないのだから問題ない。そう考えてここから離れていく。




【聖杯】出典Fate/

願望機、結果を省き、答えにたどり着く道具。スピカの場合、七騎の英霊を燃料にしなければいけない。今回はグランド・アーチャーを燃料にした。


【天使の聖杯】出典聖剣伝説

蘇生アイテム。スピカが念のために作っているが、世に出る事は無い。


【せかいじゅの葉】出典ドラゴンクエスト

蘇生アイテム。スピカが作る大樹の葉。これで人を蘇生できるか分からない。


スピカの英霊召喚、しかも冠位はオリオンだからできました。後は縁ですね。

特異点化は無しですね。さすがに。

それでは次は戦争遊戯です。お読みいただきありがとうございます。


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戦争遊戯・前編

アルテミス編で飛ばした18階層の話込みで、アポロン編です。どうぞー


 18階層、神ヘスティアが攫われ、それに呼び出されたベル・クラネル。Lv1でミノタウルスと対峙して勝利してLv2へとランクアップした期待のルーキー。そのやっかみの戦いだが、ロキ・ファミリアがいる状態ではすぐに問題は片付いた。

 

「さてとどうしてやりましょうか」

 

 ヘスティア・ファミリア団長のスピカはそう呟き、ロキ・ファミリアの精鋭に囲まれて震える冒険者たちを見下ろす。ちなみにフィンはと言えば、ベルと首謀者の冒険者の決闘を見ていた。

 

 最初は姿が見えなかったが、ベルの攻撃で姿を消すアイテムが壊れて、ロキ・ファミリアを見て青ざめながらも、いまだに戦う意思があるベルに対して、戦闘を続けている。

 

「向こうも決着が付くね。姿を見えなくするアイテムか、君でないとすると、ヘルメス・ファミリアかな?」

 

 向こうは姿を消すアイテムで先手を取るが、気配と視線から位置を把握して戦うベルに逆転される。その様子にリヴェリアたちも頷いている。

 

「神ヘルメスはベル・クラネルをいたく気に入ったのだろうか? それにしたって」

 

「儂らがいる状態で神ヘスティアを攫えばどうなるか、すぐに分かっただろうに」

 

 ヘスティアが攫われたのはロキ・ファミリアの失態だ。いまのヘスティアはスピカのおかげで稼ぎ頭であり、スピカと言うカードを操るには必要不可欠だ。攫われたら急いで救出するために、予定を変更だってするだろうにとフィンたちは考える。

 

「まあ、ベル君と彼との試合に手を出さないと踏んだからだけど、ははっ、やっぱこっちの仕業ってばれてる。やだなー怒られるの」

 

「だから私は反対したんです」

 

 アスフィは震えながら、この後に来る問題を考える。裏で自分たちが関わっていると知れば、確実に扱える【ブルーメタル】の量が減る。それを笑ってごめんごめんとヘルメスは言う。

 

 けどもう少し試練が欲しいなと思い、少しだけ神意を放った。

 

「まだ少し試練が必要だけど、これで軽くモンスターが生まれて……ん?」

 

 そして予想よりも高い災厄が牙を向く。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 黒いゴライアスが二匹現れて(・・・・・)、一体はロキ・ファミリアが全戦力で対応している中、多くの冒険者はもう一体を足止めしていた。

 

 18階層にある冒険者たちが押し寄せて、大量の【魔道武具(マジックウェポン)】をぶつけたりして、魔法により集中攻撃を繰り返す。

 

「いいですか!? 敵は自己再生持ちですので攻撃の手を休めないでください!!」

 

 スピカの号令にエルフたちは一丸となって戦い、負けずと他の種族の冒険者も攻撃を繰り返すが決め手に欠ける。

 

「スピカの姉御に続けお前らぁぁぁぁぁぁ」

 

 リヴィラの町の冒険者たちも数々の【魔道武具(マジックウェポン)】や設置されていたバリスタなどを手に持ち、黒いゴライアスに襲い掛かる。

 

「フィンさんそちらは使いますか? こちらは使いますよ」

 

「ああ、アイズッ!!」

 

 アイズは頷き、自分が持つ【はかぶさの剣】と【不壊剣(デスペレート)】では無く、スピカが作り出した風の鞘である【風王結界(インビジブル・エア)】から剣を握りしめる。

 

 風の鞘で透明であるが、アイズには知覚できていて、それを片手にスピカは両手剣を構えながらヴェルフに言う。

 

「ヴェルフは魔剣良いですか!?」

 

「まさか俺が使うのか、しゃあねえ折られてもらうぞ!!」

 

「ベル様はもしもの時の追撃を、ロキ・ファミリアの方と共に担当してください」

 

 走り出すアイズに、スピカもまたLv3の力で走り、隙を見せたゴライアスたちに段蔵は【宝具】を放つ。

 

「これで……」

 

 本来なら風で敵を飲み込み切り刻む宝具の為に、足止め程度にしかならない。だが詠唱する準備が稼げた。

 

「【邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る】」

 

「【この灯りは星の希望、地を照らす命の証】」

 

 鐘の音が鳴り響く中、二つの柱が立ち上り、真名は解放される。

 

「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』」

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」

 

 光の柱がゴライアスを飲み込み、魔石を剥き出しにさせた。その瞬間、ベートとベルがトドメを刺した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 問題が解決後、スピカのレシピによりリヴィラの町は復興して、地上でお祝いを開くヘスティア・ファミリア。そんなヘスティア・ファミリアにいちゃもんを付けた者がいた。

 

 スピカが数々の暴言にキレようとする前に、エルフが悪口を言う輩を殴る。

 

「スピカ様の悪口を言うのか貴様かアポロン・ファミリアぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 エルフがどこからかわらわら現れて乱闘騒ぎになり、スピカはそれを止める為に奔走、怒りを晴らす事はできなかった。

 

 その後、そのアポロン・ファミリアが神の宴を開く為、渋々行くことになる。なぜかと言えば、話を聞いたロキが絶対いちゃもん付けるから、様子を見た方が良いと言うから。スピカはしっかりとロキ・ファミリアのエルフたちに綺麗にされて、ヘスティアと共にアポロンの下に行くとケンカを吹っ掛けられる。

 

「我々が勝てばベル・クラネルの身柄をもらおうかっ!!」

 

「ふざけんなッ!!」

 

「ダメやスピカたん、口車に乗っちゃあかん」

 

 ロキ、フレイヤ、ヘファイストス、ガネーシャが前に出てもふふっと余裕の顔をするアポロン。いくらなんで戦争遊戯、ウォーゲームにまで君たちが顔を出すのかいと言う。

 

「んなもん決まってるやろ。内容しだいじゃ、口挟むで」

 

「………なに?」

 

「お前、なに勘違いしているか知らんけど、スピカたん以外でも、それこそリリルカ・アーデって子でもうちらは口挟むで。スピカたんの仕事を支える団員やし、ベルちゅー新入りは分からないのが本音やけど、助ければスピカたんに色々恩返しできるからな」

 

 アポロンはそれを聞き、スピカに手を出さなければ他の派閥が口出ししないと思っていたのか、色々難癖をつけだす。乱闘の件を無理矢理ヘスティア側が手を出したと駄々を捏ねだすほどだ。

 

 何人かの神は少し早急な動きでしたな~とアポロンをからかいながらも、新たな『戦争遊戯(ウォーゲーム)』見たさに味方する者もいる。それにロキたちがめんどそうにして、その場はヘスティアは無視すると言う形で幕を閉じた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 だがアポロンは動いた。

 

 ヘスティアたちのホームに攻撃を仕掛け、崩れる建物から脱出するスピカたち。三年かけて直したスピカの傑作を壊され、怒りながらもバベルへと逃げる。

 

 その途中、何人かに分かれ、レベルの高いスピカとベルが神ヘスティアを連れて逃げ出して何度も襲撃に遭う。段蔵とナーサリーは別の道を進んで逃げていた。

 

「貴様らなにをしているッ!?」

 

「スピカ様を守れッ!!」

 

 フィルヴィス・シャリアを初めとした他派閥のエルフがその道のりを守る中、腕を壊してヴェルフに担がれている段蔵が現れる。

 

「………段蔵?」

 

「申し訳ございません。リリ殿とナーサリーを守るのに、この身体を使いました……」

 

 リリがアポロン、ソーマ・ファミリアに攫われた。

 

「堪忍袋の緒が切れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 アポロンもどうやら何人かの神を味方に、戦争を仕掛けてきたらしい。通りで冒険者が多いと思った。キレたスピカはヘスティアと共に手袋を投げつけて、これにて『戦争遊戯(ウォーゲーム)』が始まる。

 

 アポロン側は、如何にロキ・ファミリアやガネーシャ・ファミリアの力をそいで、ヘスティアと一騎打ちするかと画策しているが、スピカはキレた。

 

「いいでしょう、ヘスティア・ファミリアに妥協と良識が無くなればどうなるか教えてやります」

 

 そうスピカは宣言して、こうしてヘスティア対アポロンで『戦争遊戯(ウォーゲーム)』が始まる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 すぐにスピカは攫われたリリを助けに出向く、ソーマとの戦闘にスピカたちは勝利した。『戦争遊戯(ウォーゲーム)』前にソーマからリリを取り戻すために動いた。どうやら何人かがアポロン側に回り、ソーマから【ソーマ】を手に入れようと画策しているらしい。

 

 残っていた【ソーマ】を飲んだリリが酔わず、ソーマに戦闘の停止を頼み、ソーマに少しの変化があったようでだいぶ落ち着いた。

 

 逃げ出したソーマ・ファミリアはその名前だけ借りたまま、アポロンと組んで動くらしい。それを知りながらスピカはヘスティアと話し合い、動く事にした。ちなみにロキたちもいる中で、話を聞いて全員が了承している。

 

 緊急神会(デナトゥス)でアポロンは勝ち目があると僅かに笑う。

 

 ギルドに承認させた後は会場となる場所を確保しなければならず、それにガネーシャ・ファミリアは駆り出されるだろうと踏んでいる。

 

 ヘファイストスは戦闘向きでは無い、フレイヤは出て来るか分からないが、無粋な真似はしないだろう。アポロンはロキに対して警戒していた。

 

 それは大きな間違いであると知らずに………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 話し合いと厳選なくじの結果で『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の内容は『攻城戦』になり、アポロンは一柱で戦うことになるが、ロキ・ファミリアに参加する団員を出さず、ヘスティアと戦うことができた。

 

(ふん、勝ったな)

 

 アポロンは内心笑う中、ヘスティアは静かに激怒していた。

 

「覚悟しろよ、我慢しなくなったスピカ君を敵に回したこと後悔させてやる」

 

 こうしてヘスティア対アポロンの戦いが始まる。

 

「はいそれじゃ、ルールの確認だ」

 

 他派閥が持つ【宝具】を借りない。

 

 増援は基本的に無しだが、改宗(コンバージョン)のみ増援可能。

 

 守り側はアポロン、攻め側はヘスティア。アポロンは団長のヒュアキントス撃破で敗北、ヘスティア側は三日間で勝利条件未達成で敗北。

 

 こうしてルール説明が終わりかけたとき、ヘスティアが手を上げて聞く。

 

「道具は好きに使っていいんだね?」

 

「は? あっ、ああ別に構わない。覆せるものなら覆してみろ」

 

 これで数の差で勝てるとアポロンは思い、スピカが念入りに確認するように聞いた言葉を飲み込んだ。

 

 ヘスティアはそれを聞き口元がつり上がりかけたが我慢して、ロキはあーあと面白そうに内心笑う。

 

 ヘファイストスはなにも言わず沈黙を貫き、ガネーシャはガネーシャ言っていた。

 

 こうしてのちに、ヘスティア大戦と言われる物語が幕を開ける。




風王結界(インビジブル・エア)】出典Fate/

アルトリアが持つ風の鞘。作ったのを一時的貸している。

アポロンが凄いミスしてますが、彼は武器しか作れないし、人形を大量に作れないと思いこんでます。だから問題ないと思いこんでます。

お読みいただきありがとうございます。


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戦争遊戯・中編

ヘスティア陣営。

大将スピカ・シロガネ。

団員リリルカ・アーデ、ナーサリーライム、加藤段蔵、ベル・クラネル。

新団員ヴェルフ・クロッゾ、ヤマト・命。

そして道具使用可能。宝具ぶっ放すのもいいが、スピカはこれを選びました。


 アポロンへの戦いに備えてベル・クラネルは訓練に励み、ロキ側はそれに全面的に協力した。

 

「おら立てっ!! テメェの本気はここまでか?!」

 

「まだ……まだッ!!」

 

 ベートにしごかれるベル。アイズも協力する中、フィンは戦局を見ていた。

 

「最後の決め手は彼に任せる、か。ヒュアキントスに苦渋を飲まされたらしいが、挽回できるかな?」

 

「やっていただかないと困りますッ!!」

 

「スピカ様からの指示ですよ、頑張りなさい人間(ヒューマン)!!」

 

 エルフたちからそう言われながら回復されつつ、格上相手にベルは特訓する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「友の為に」

 

 スピカと言う友人と、自分が作った武具を着こむベルの為に、ヴェルフは改宗(コンバージョン)を決意する。

 

 真剣な顔でヘファイストスを見るヴェルフに、ヘファイストスは静かに告げた。

 

「条件があるわ」

 

「それはなんですか?」

 

 真剣な言葉に真剣な言葉で返すヴェルフだが、次の瞬間砕け散る。

 

「ヘスティアが隠しているもう一つの鉱石を見つけたら報告しなさい」

 

「せこいですヘファイストス様っ!?」

 

「いいから!どう考えてもルビスの装備とか新しい鉱石使ってるから!あの子たち、絶対に隠しているからッ!」

 

「なんなら手前が行こうか?」

 

「あんたは団長だろうが!?」

 

「いつも言ってるけど【宝具】を置きなさい椿っ!!」

 

「自分も【宝具】を、砕けない魔剣を打つぞッ!!」

 

 二人からのツッコミもものともせず、いつも【宝具】を持つ椿からも物凄く鉱石のことを言われ、渋々了解させられて送り出された。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 とある場所にある要塞で、着々と準備をするアポロン・ファミリア。その中で一人の少女が天に祈る。

 

「いい加減にしなさいカサンドラ」

 

「ダフネちゃん、もうやだ、逃げようよ~」

 

「いい、相手は人形をいれても七名よ? いくら無尽蔵に【魔道武具(マジックウェポン)】や【宝具】を用意しても、この数をなんとかするのは無理よ」

 

 気を付ければいいのは【宝具】だけ。そう考えるダフネにカサンドラは首を振る。

 

「夢で見たの~エルフの精霊を怒らせたら、軍隊が攻め込んで、ウサギが太陽を丸のみにするの。太陽の剣も向こうにあるし、怪我だけじゃすまないよ~」

 

「はいはいいつもの夢ね」

 

「ああ、もう逃げられない………」

 

 カサンドラは泣き崩れ、誰にも信じてもらえない予言に震えるしか無かった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「時間だ」

 

 開戦のドラの音を聞き、アポロン・ファミリアたちは楽観視しているものの、油断なく警戒していた。

 

 相手には【幸福妖精(ブラウニー)】がいる。魔法を秘めた魔道具(アイテム)や数多くの【魔道武具(マジックウェポン)】がある。油断できない。

 

 そう思っていた、はずだった。

 

「おい」

 

「ん? なんだあれ?」

 

 少し離れた位置、目先の景色が揺れた。

 

 そう思ったのも束の間、バサリと幕が上がるような音と共にそれらが現れた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 彼女達は宝具の一つ、【顔のない王(ノーフェイス・メイキング)】を大きな幕の様に広げて前進していた。そしてここまで来ればもういいだろうと、幕を上げた。

 

「前進せよ、鋼の軍団」

 

 段蔵がそう指示すると、無数の【キラーマシン】たちが前進する。中には【キラーマシン2】や【メタルハンター】。少数だが【サージタウス】や【スーパーキラーマシン】。これらが津波のように押し寄せ、右の城壁を攻め始めた。

 

「に、人形兵!? こいつら、Lv1の強さじゃないぞ!?」

 

「おい!!数もそうだが、Lv1にしちゃ頑丈すぎる!?」

 

 特殊なエネルギーを核に動く。段蔵たちとは違う人形兵士。機械の軍団を平然と使うスピカ。アポロンは口を開いたままで、ヘスティアは嘘は言って無いだろと開き直る。

 

「フェーズ2、スタートっ!!」

 

 もう一つの幕が上がり、今度は左から鉱物の軍団が現れる。通常の【ゴーレム】や【カッパーマン】など、なにげに金と銀がいない。しっかりと【暗黒の魔人】もいるゴーレム軍団が反対側から出て来た。

 

「怯むなーーーーっ!! 押し返せばいいだけのことだろう!!」

 

 叫び声を上げるアポロン団員。だが【プロトキラー】が壁にしがみ付く。

 

『メ・ガ・ン・テ』

 

 そう音声が響くと突然光を放ち爆発した。

 

「なんだ!?」

 

 爆発が起き、壁の一部が壊れるのを切っ掛けに、ゴーレム兵と機械兵が壁に密着し出す。

 

『『『メ・ガ・ン・テ』』』

 

 そう一斉に鳴り響くと共に爆発して城壁が吹き飛び、中に流れ込む。流れ込んだ兵士は戦いだし、しばらくすると団員を捕まえて爆発する。

 

「おい………おいおいおいおいおいッ」

 

「ま、まさか、こいつら全部………」

 

 戦慄するアポロン団員達に、無情にも動き続けて爆発する機械兵とゴーレム兵。中にはLv1以上のスペックで戦うそれらに、段蔵は事実だけを呟く。

 

「そう、段蔵以外全て使い捨てでございます」

 

 巨大な爆発が鳴り響き、右舷、左舷の城壁が崩れ、中に入る軍団。剣や弓は効かず、魔法を喰らっても動き、中で大爆発する爆発物。動く爆弾に対して、悲鳴が響き渡る。

 

「落ち着けえぇぇぇぇ、陣を崩すな!!押し返せ!!」

 

「無理言うな!爆発はLv3ほどの火力で、こっちを捕まえてから爆発するんだぞ!一人ずつ確実に殺す気だ向こうッ!?」

 

「固まってくれてありがとう」

 

「!?」

 

 そう言って突然現れたスピカは、躊躇いも無く背負っている【クロッゾの魔剣】を使用して吹き飛ばした。

 

 その様子を見ていたリッソスと言う、ここの守りを任されていたエルフの男は驚愕する。

 

「スピカ様っ!? よりにもよってなぜあなた様がクロッゾの魔剣なぞ」

 

「使いどころを間違える気はありません。あなたたちは私を、ヘスティア・ファミリアを怒らせた」

 

 スピカの姿は普段の礼装装備では無く、とある選別の杖を手にした王の礼装に酷似した服装である。

 

 接近する団員に対して、浮遊する剣。【影踏みのカルンウェナン】、【稲妻のスピュメイダー】、【神話礼装マルミアドワーズ】で切り払う。

 

 手には無数のコインが握られ、即座にそれを使用していくつもの魔法を放つ。

 

「町の中で襲撃して、町の人を危険にさらし、団員のベルをボコボコにした」

 

 石像を使い、コインより強力な魔法が団員に襲い掛かる。強力な魔法や浮遊する杖と言う名の大剣を振るう。

 

「しかもそれをした者の中には、私が作った武具を着こんでいる者もいる。いまもなお、ね」

 

 売られているため、アポロン団員にもスピカの物を着こむ者もいる。仕方ないとはいえ腹が立つ。躊躇いも無く魔剣を振るい、砕けたら次の魔剣を使用する。

 

「ファミリアの悪口も、本当なら見逃す気はありませんでした。ここでこちらにケンカを吹っ掛けたこと、全て反省させる。覚悟は良いかアポロン・ファミリア?さあ、戦争を始めようか?」

 

 スピカの足元から樹が生えていく。それが大樹と成り、竜のような頭部を持ち、巨大な姿を表す。

 

「【エグドラシル】、俺が苗から作りました」

 

 その様子を【神の力(アルカナム)】で見ている観客からは歓声が上がり、それに後押しされるかの様にそれは前の門に襲い掛かる。

 

 ルール上、あらゆる道具の使用は禁止されていない。スピカはルール違反していないことを司会者が叫び、観客は開いた口が塞がらない。

 

 暗黒の魔神に捕まり、爆発に巻き込まれる団員たち。全てが死兵であり、アポロン・ファミリアの団員のほとんどを、スピカと段蔵が相手取る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「いまのうちですね。いま着陸します」

 

「リリスケ、お前も共犯か?」

 

「リリは戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まるまでどれも知りませんでしたよあんな大軍隊!! これの操縦も昨日から丸一日使いましたっ!!」

 

「リリ殿もう少し静かに、あまり動かれれば【風王結界(インビジブル・エア)】が解けてしまいます」

 

 全体を覆う風の結界により、空を飛ぶ乗り物は隠されていた。これで【アンタレス】を倒しに出向いたときは驚いた。

 

「この【超スーパーカー】で全員乗りできるうえに、まさか空を飛ぶんだもんな」

 

「しかもそのままアルテミス様が天界に送還されないように裏で色々したみたいですし、あの人のスキル何でもあり過ぎます」

 

「ま、まあアルテミス様はアンタレスを倒して、肉体を確保できたかららしいよ?」

 

 ベルたちの冒険譚に命は驚きを隠せず、そして【超スーパーカー】に驚いた。

 

 そのまま静かに着地したリリたちは、結界を解き、ナーサリーライムが準備する。

 

「【オモチャの兵隊さん、出番ですの。さあさあ幕を上げて上げて】」

 

 そう子供らしく呟くと、ナーサリーライムの見た目とは打って変わり、凶悪な悪魔が姿を表し、わざとらしく驚き、そのまま詠唱を呟く。

 

「【あらいやだ、間違えて悪魔を呼んじゃったっ!? ジャバウォックさんジャバウォックさん、どうかお帰りくださいな】」

 

 そう言われても雄たけびを上げて飛翔して、ジャバウォックは内部で暴れ出し、ナーサリーライムは無邪気に笑う。

 

 ナーサリーライムを肩に乗せ、命はスピカから渡された刃を手に取る。

 

「【命竜刀】……スピカ殿が丹精込めて作った最大の自信作。まさかこの手に使わせていただくとは感無量。これに恥じぬ働きをさせていただきます」

 

 神々しいオーラを放つ刀を手に命が走り出し、リリは結界を張りながら飛翔する。

 

「ではリリはこれでかく乱作戦にかかります。ヴェルフ様とベル様も気を付けて」

 

「おう、こっちも一応スピカの特性武器下げてるんだ。こっちのことは任せろ」

 

 そう言い【宝具】である【輪廻する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)】を担ぐヴェルフ。ベルの装備はヘスティア・ナイフとヴェルフの軽鎧。ヴェルフと契約鍛冶師の関係なのだからと、スピカはあえてなにも渡してないし、ベルも受け取る気は無かった。

 

「行こう」

 

 こうして数多くのとんでも兵器を人前で使うスピカ。新たな武勲を作るのである。

 

 それでもメドローアなどの魔法や、新たな【宝具】を作らないだけ手を抜いている。ベルが決着を付けるまで、スピカの軍隊が要塞を破壊して、ベルが勝つ頃、要塞は跡形もなく軍隊に制覇されるのであった。




顔のない王(ノーフェイス・メイキング)】出典Fate/

ロビンフットが使う姿を隠す宝具(スピカのは宝具では無い)。大量生産されている。


【キラーマシン】【キラーマシン2】【メタルハンター】【サージタウス】【スーパーキラーマシン】出典ドラゴンクエスト

ドラクエシリーズ出て来る鋼の軍団。光魔法で作る鉱石を核に動き、自動的に自爆する。プログラムでよく動くが、スピカは死兵に使った。ちなみに数は暇の数だけ作ってある。


【ゴーレム】【カッパーマン】【暗黒の魔人】出典ドラゴンクエスト

石材系のモンスターたち。スピカが怒りのまま量産した。全てLv2に届くスペック。


【影踏みのカルンウェナン】、【稲妻のスピュメイダー】、【神話礼装マルミアドワーズ】出典Fate/

 アルトリアキャスターが操る宝剣類。スピカもまたいくつか操り、自分の杖として使用する。


【エグドラシル】出典ドラゴンクエスト

植物の巨大モンスター。この子は普段、隠された畑を背負って移動しながら隠れている。大樹を背に乗せ、実りの風を荒野に吹かせているため、この子の通った場所には緑に満ち溢れる。


【命竜刀】出典ドラゴンクエスト 星ドラ

スピカによるカスタム強化を繰り返して生まれた最大の一品。いつかアイズに渡そうとしていたが、命の手に渡ることになった。自分で使う物と同じ、強化は最大。


妖刀を命に渡すのはやばいので無しです。

宝具じゃなく、メガンテ祭りや。おろもいだろ? 一人一人捕まえて至近距離で爆発するんだ。

ベル君の戦いは変わらずカット、次回アポロンに下される命令や、落ち着くスピカたち。最終回ですねさすがに。

それでは、お読みいただきありがとうございます。


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戦争遊戯・後編

スピカ「ベルが団長を倒したし、要塞も破壊したし、残りは撤収するよ急いで」

リリ「この数を隠せるとお思いですか!? 諦めてください」

スピカ「嫌だ嫌だ、せっかく作って自爆から助かった子は再利用して門番とかにするんだ」

リリ「我が儘を言わないで、大人しくお縄に付きなさい!!」

カサンドラ「ダフネちゃん大丈夫……私は怖かった………」

ベル「この大きな樹、動くし流れる水は回復薬みたいだ」

スピカ「このおかげで死者はゼロだぜ!」

のちに聖女様が本格的にヒーラーになるように言い寄られるが、彼女は好みでは無かったためスルーされる。


 爆発作戦はエグドラシルが流す清水のおかげで死者は出ていない。殺すつもりは無かったスピカは、勝負が付いたので話を進めた。

 

 ヘスティア側の勝利の場合、アポロン・ファミリアは何でも聞くと言ってしまい、何でも後付けでできる。アポロンは以下の事を承諾させられた。

 

 ・アポロン・ファミリアの所持している土地、資金、物資など全てヘスティア・ファミリアに譲渡する。

 

 ・団員に脱退権限を与え、脱退する者をしっかりと送り出す。資金も出してあげる事(資金は払う前に捻出する事)

 

 ・今後ヘスティア・ファミリアへ無条件で味方する事。

 

 ・アポロン・ファミリアはヘスティア・ファミリアの傘下に下り、オラリオの治安維持に尽力する事、ガネーシャ・ファミリアと仲良くする事。

 

 ・今後、アポロンは相手の了承無く、下界の人類(子供)たちに手を出してはいけない。

 

 これらを破った場合、アポロンは天界へ送還される。そう言うルールに驚きはしたものの、アポロンはオラリオから追放されずにすんでホッとする。団員は減ったが、その分、眷属(子供)たちの愛は深まった気がするアポロン。住む場所もヘスティア・ファミリアが最低限用意した場所に引っ越した。

 

 一応ヘスティア・ファミリアの奴隷と言われても仕方ないが、戦争遊戯(ウォーゲーム)の傷も治してくれたし、文句は言わずに過ごす。

 

「少し甘くないかドチビ?」

 

「向こう何年もボクの派閥の命令聞くんだ、スピカ君がいなくてもね」

 

「………まあ長い目で見れば十分か」

 

 スピカはいない。いまの地位を維持できなくてもアポロンはヘスティアに付いて行くしかない。それなら良いかとロキも納得する。スピカの技術はスピカだから用意できるのだ。この先、どうなるか分からない以上、保険はいくつあっても足りない。

 

 そして新しいホームだが、スピカが一から立て直している。

 

「一日で半分以上終わっとる………」

 

「まあこの感じだから、ホームの事は安心してくれ」

 

 ロキを始めとした、スピカの味方の神々は元アポロンホームを平地にして、新たにヘスティア・ファミリアのホームが建つ様子に少し驚く。工房もしっかり作り、ニューホームはすぐそこである。

 

「ベル君もボクのために勝利してくれたし、今回は満足だよ」

 

「そうねヘスティア、絶賛スピカが着こんでいる物の出どころが聞きたいわね」

 

「へ、ヘファイストス怖いよお………」

 

 こうして色々な事が過ぎていく。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 半分完成したニューホームで寝泊まりするヘスティア・ファミリア。今後について確認する。

 

「ついに命竜シリーズもバレてしまい、もうここまで来ると隠す物が無いんじゃねえ的になってきました」

 

「けどまだあるんでしょう」

 

「ありますねえいっぱい」

 

 ベルと命がええっ!?と驚き、ヴェルフはやっぱりかと言う顔をする。ヘスティアも知っているのか、あまり驚かない。

 

「まあまあ、実は成功率低いのは心に来るけど、一日一回チャレンジして、第一級冒険者並みの装備がいくつかあるんだよ」

 

「三年間こつこつチャレンジしてました」

 

 それもいま拡張された隠し場所、秘密の地下室に安置されている。ヴェルフはそれも報告するのかと頭を痛め、ベルはへえと感心する。

 

「命はウチにいる間は【命竜刀】は自分の物と思いなさい、持ち帰りたい場合、この値段分働いてくださいね」

 

「わっ、分かりました」

 

 命もタダでもらえたりするより、こうしてくれた方が助かるので嬉しい話だ。なかなかに高いが、スピカ製作での最高品にしては安い方だ。一年後、タケミカヅチ・ファミリアに戻る時、必ず持ち帰ると心に決める。

 

「これから先、数々のシリーズが日の目を見ることになりそうですが、今はさておき、どうしましょうかね」

 

 庭には一面の鋼の軍隊と石の軍隊がある。実はガネーシャ・ファミリア、団長が険しい顔で見ていたのだが開き直っておこう。

 

「とりあえず防衛機能として働いてもらいましょう。キラー系は畑を耕す機能もありますし、役に立ちます」

 

「多様でございますね………」

 

「あの~、あの大きな木のような物はどうしたんですか?」

 

「エグドラシルは都市外で畑背負ってますから、問題ありません。あれ自体が自然の要塞として機能するように育てました」

 

「お前のスキルおかしすぎるだろ」

 

 ヴェルフが呆れる中、エグドラシルは都市外のどこかで移動しながら畑を守っているらしい。

 

「次にせっかく広々としたホームが手に入ったので、団員を集めたいと思いますが、正直やめた方が良い気がしますね」

 

「あーうん………」

 

「えっ、どうしてですか!?」

 

「纏めると面倒なだけですから」

 

 他派閥に隠しているあれやこれやの有無。ハイエルフであるスピカの存在。大量に披露した【魔道武具(マジックウェポン)】と言う存在。

 

「一番最後が問題ですね、勝たなきゃいけない勝負なので、普段のルール。【魔道武具(マジックウェポン)】は自腹を撤回しましたからね」

 

「スピカ様もしっかり使用した分は払うんですが、今回は撤回しましたからね。適当な理由を付けては、タダで【魔道武具(マジックウェポン)】など使用しようとする団員が流れ込むでしょう」

 

「命君みたいに、特製シリーズの武器をちゃっかりもらおうとする子も出るだろうね」

 

「ヘスティア・ナイフが特別扱いとか言われそうですね」

 

 ヘスティア・ナイフは飛躍するベルに合わせて、ヘスティアの独断でヘファイストスに依頼した武器だ。もう即金で払い終えているので問題ないが、そう言う事を狙う団員が流れ込む事を危惧する古株たち。ヴェルフとベル、命は何も言えずに話を聞いた。

 

「もしも団員を入れるなら、その辺りの線引きができる人ですね。ホーム新装もタダでしている訳では無いので、しばらく俺は【ブルーメタル】製造です」

 

「リリは【ブルーメタル】を卸すので、ベル様とヴェルフ様、命様はナーサリー様と段蔵様と共にダンジョンアタックを。ヘスティア様は全体の資金の管理をしていただきます」

 

 頷き合う仲間たち。後日、元アポロン・ファミリアのカサンドラとダフネが入るのだが、それは後のお楽しみ。

 

「ついでにいままで団員数から取りかからなかった問題、エンブレムですけど、火に星をあしらった物にします。もういい加減にエンブレムぐらい作らないとね」

 

 こうしてファミリアとして大きくなるヘスティア・ファミリア。これから新たな問題に差し掛かったり、カジノで色々あったりするのだが、それは別の物語。

 

「サーアスカラマタコウセキツクルゾー」

 

「お願いですから鉱石だけにしてください。フリではありません、まともな物を作ってくださいね」

 

「スピカ君、罰則(ペナルティ)の罰金を忘れないでくれ。あれで派閥のお金は半減してるから」

 

「あの時のギルド組織長の顔は忘れんぞ」

 

 大金を奪い取れて嬉しそうにするエルフの豚にヘイトを貯めて、しばらくは大人しく働くスピカである。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「それじゃ、なんか無いかくまなく探してなー」

 

「ふざけるなロキっ!! なんで新居完成したら強制捜査入るんだいっ!?」

 

 ロキ、ヘファイストス・ファミリアの団員がゴブニュ、ガネーシャ・ファミリアと連携して、完成したヘスティア・ファミリアホームの捜索が始まった。ちなみに野次馬に神々などが外から見ている。

 

「だってスピカたん、見た事も無いもん着てるとかはええんやけど、あないやばいもん作られてるんやもん。せめて把握させてくれへんと、こっちもフォローできへん。一から建てたホームなら隠し部屋の一つ二つ作りそうやもん」

 

「地下拡張などの情報を、ギルドから念入りに聞いているのは裏付けは取れた。ちなみに俺はガネーシャだっ!!」

 

「黙秘します!!」

 

 こうしてヘスティア・ファミリアの新たな門出は拓かれ、フィルヴィスとリューの隠し撮り写真が大量を発掘され、スピカはNOッ!!と叫び声を上げる。

 

 カメラがオラリオに広まるのも時間の問題であった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そしてとある場所でロキとスピカが密会していた。

 

「なんでリューさんたちの写真見つけてるんですか!? そこは計画にありませんでしたよね?!」

 

「いっや~アイズさんの天然センサーに反応したからしゃーないやん。ともかくキラーマシン? とかの所持はガネーシャたちに納得させられたし、本当にやばいもんは見つけてないんやろ?」

 

「ええ、今回はやばいことしましたからね。わざと家探しさせて、他の神々にはもう無いと思わせる。必要なことでしたが犠牲が大きい」

 

 ですが噂を聞いたフィルヴィスさんとリューさんの顔は見てみたいものです。

 

「自分、妙なこと考えてへん? ともかくこれでアホウな神は遠巻きで見るにとどめるやろう。あのまま家探しなしにすると、忍び込もうとする奴出てたはずやし」

 

「これから先はどうなるか、ベルもLv3になるし、このままじゃ追い抜かれるからLv4にならないと」

 

「これ以上進化したらスピカたん、なにになるんやろう?」

 

 こうしてガネーシャたちを欺き、スピカは本当に隠している隠し部屋で好きな物を作れることになる。

 

 ちなみにカメラをロキに渡して、アイズの写真を撮れるようにした。水に濡れると壊れる仕様なので盗撮には使われ無いはずだ。

 

 隠し部屋にはキラーマシンの上位種など収めていて、最悪な事態になると発進する仕組みにしてある。こんなものを隠し持つのがバレれれば面倒だが、これでバレることはないだろう。

 

 スピカはこうして自由な時間を手に入れて、最終的にキラーマジンガを作るのであった。




アポロンはヘスティア・ファミリアの下につかせました。主にガネーシャの下で働かせます。

今回の探索は外にいる神々に変な物は無いとアピールする為、ロキたちと裏で組みしました。今回はインパクトあり過ぎて、忍び込もうとする奴が現れるだろうと考えたからですが、アイズさんが天然センサー使い、余計な物を見つけました。

思いつく限り、スピカの物語はここまでです。残りは断片的しかないし、駄文が続きそうですのでここまでです。

この後のスピカはウィーネを拾い、ゼノスの支持者になるくらいですかね。後は邪神エニュオを倒す話ですね。やろうとするとカットと誤字の多さに、さすがに続ける気はおきませんでした。

これ以上は邪足でしょう。スピカの物語に付いてきていただき、ありがとうございます。

それではこれで

ヘスティア・ファミリア『お読みいただきありがとうございます』


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