魔弾の愚者 (雑音)
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始まりの日

 

 

真っ白な空間

その空間の中に薄ら道路が写っている

だが、トラックが標識にぶつかって潰れている部分

周りには救急車があり、血塗れの人が運ばれて行く

 

「死んだのか・・・俺」

 

コツ、コツ

靴を鳴らしながらこっちに近づいて来る影

あくまでも影が近づいてくるだけで相手の姿は見えない

 

「ご名答」

 

この声の主の姿が見えない

辺りを何度も見渡したが恐らく喋ってるのはこの影だ

そうとしか思えない

 

「君が選べる進路は転生か天国。それしかもう無いんだ」

 

淡々と告げる影は非常に冷酷だと感じた

 

「君がハマっていたアニメは・・・ツイステッドワンダーランドだね」

 

いきなり何を言い出すんだろ

確かにツイステは好きだ

だけどな、特定の推しを聞かれるとみんな好きだから何とも言えない

 

「しかも箱推しか。特定のキャラが好きという訳では無いし嫌いでも無い。うん、良い傾向だと思うよ」

 

なんか、ありがとうございます?

反応がし辛い事を言われて困るが影は何かをテキパキとこなしている

 

「男の娘らしく銃や剣なんか出てくる世界観が好きなんだね」

 

「今絶対、男の娘の方を言いましたよね?一応、言いますけど男ですよ、俺は」

 

そんな事はお構いなしに何かを積み上げて行く影

というか、いい加減に影から出てこいよ

顔を見て会話するもんだろ、人間

 

「よしっとこれで良いか。それじゃ私は忙しから。後、私は神様」

 


 

とまぁ、こんな感じで転生させられていたようだ

記憶は今日の朝に取り戻したばかり

 

憂鬱になりながら、バスに乗り込む

 

言いたいことがあるんだが・・・雑

とにかく雑すぎないか

流石に酷くない?

男の娘よばわりした所とか特に

 

確かに身長は低かった

だが、規則正しい生活や食事

それらによって身長は170cmになっている

 

東京武偵高校

レインボーブリッジに浮かぶ南北およそ2キロ

東西500メートル

長方形の形をした人工浮遊島(メガフロート)

 

武偵とは凶悪化する犯罪を取り締まる国家資格の事

国家資格なので当然だけど免許がある

その免許を持っていると武装を許可

しかも警察に準ずる形で逮捕権を保有している

 

何をとち狂ったのか知らないがその入学試験

それに俺は何故か応募しているのだ

 

いや、マジでどうしたのかわからない

“刺激が欲しい”

そんな理由で入学試験に挑もうとしてたらしいけど馬鹿じゃないか

 

父はIT会社の社長で母は弁護士

経済面に置いてはかなりの余裕はある

それなのにわざわざ危険を犯すだなんて本当に馬鹿

2人とも海外に居るので最近はあっていないが元気にしている写真が届く

 

本当に・・・なんでよりによって武偵なんだ

 

金さえ貰えば武偵法の許す限りでなんでもする“便利屋”

これが俺の知っている武偵

犯罪者に立ち向かって行く度胸が俺にある訳ないだろ

このバスは謂わば地獄への直行便

 

試験では死ぬ事は無いだろうし適度に落ちよう

 

受験で落ちる為に向かう生徒なんて居ないだろうけど

 

───ピコン♪

 

明るい雰囲気の着信音が鳴る

俺の着信音じゃ無い

だが、やけに近くで聞こえたので念の為に確認する

ポケットから、携帯を取り出すと着信が1件届いていた

 

差出人は・・・・神?

 

なんの悪戯だ

普通の受験生なら激怒だぞ

まぁ、内容くらい見てやらん事も無い

 

真っ白な画面にずらりと並ぶ文字

その割には結構短そうだな

気楽な気分でメールを見て行く

 

【受験生になりましたね】

 

そうだな

まぁ、言うのが遅いと思うけど

 

【そろそろ、記憶も戻りつつあると思うので転生特典の能力の使い方は頭に()()()()()()()()()()()

 

刷り込ませて頂きます?

 

下に勝手に画面がスクロールされ、妙なQRコードのような画像

 

普通の物とは違い虹色に段々、変わっている代物であり目を離す事が出来ない

 

後ろから真っ直ぐ黒い手が伸びてくる

 

背中に目がある訳じゃ無いのにその様子が分かるのだ

この手は何かわからないがあまり良く無い物かもしれない

そう考えて体を動かそうとするが、動かない

 

黒い手の指先は真っ直ぐ俺の頭に触れた

 

そして骨の髄まで染み入るような激痛に襲われた

 

ジタバタしたいし泣きたい

だが、泣く事も叫ぶ事も出来ないのだ

 

目の前の景色が歪み、黒や緑や紫・・・

そんな色が混ざりあって視界がぐるぐる回り出した

 

「・・・が・・・こ・・・おい、五十嵐 光雅!!!」

 

突然の大声に体がビクッと反応

急いで隣を振り向くと女教論と見られる先生が額に青筋を立てていた

ヤバイ、怒られる

 

「もう、入試まで時間が無いんだから早く行くぞー。バスから早く降りろ」

 

先程までの雰囲気までとは打って変わりなんか怠そうだ

その言葉に従って直ぐにバスから降りて校内に走って入った

 




主人公・五十嵐 光雅
性別・男
武偵高校に入試に来たら最初に綴先生に怒鳴られビビる

前世でも今世でも女性のように愛らしい見た目をしており、中学校では男女問わずに人気が高い
だが、人気が高い割にはいつも1人である


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入試

 

「全員、揃ったところで実技試験を始めるで!」

 

関西弁の先生

なんかよくわからないがすごいな

初めて見た

それにしても顔面偏差値高いな

さっきの女の先生といいこの先生といい美人だ

 

実技試験の内容は対人戦

強襲科(アサルト)目当ての生徒で徒手格闘や銃撃戦

なんでもありの乱闘だ

 

本来ならここで体調不良という事で帰りたい

だが、帰ったら間違いなく死ぬ

先程のメールには続きがあったのだ

 

【mission:その1】

 

その1という事はその2もあるのだろうか

とにかく、なんとも避けては通れる道で内容が怖すぎて合格するしかない

 

【受験に合格しなければその場で爆死させます】

 

この文面から行くと俺は受験で合格しないと死ぬ

死んだ後にどうなるのか書いていないので何をされるのかわからない

そんな恐怖で冷や汗をかいた

 

試験会場へと向かうと黒髪の暗そうな男子と随分前に1人が歩いている

 

銃は学校側で用意した装弾数8発

しかもその弾は全て麻酔弾

相当、当たりどころが悪くない限りは死なないようにしてる配慮が見える

 

───チャッキ

 

嫌な金属音が聞こえる

まだみんなあまり慣れていないようだ

慣れている方がおかしいんだが

 

愚者の行進(ラフ・ウィズ・ミー)

 

相手に自分と同じ動きをさせる能力

複数人にかけると身体的にキツイらしいが1人なので助かった

 

相手の場所がわからない事には何も出来ないからな

 

「よし、取り敢えずこれを撃ち込んだら勝ちだよな」

 

──ガンッ!

 

急いで物陰に隠れる

必然的に相手も物陰に隠れた

 

なんだ、今の音は

ギリギリ外れたみたいだけど・・・

 


 

走る、走る、走る・・・・

 

ただの愚策でしか無いが取り敢えず相手の弾切れを狙うしか無いのだ

さっき、愚者の行進を使った

それをもう一回使えば解決する

だが、それだとこちらが負ける可能性が高い

 

「お前、名前は!?俺は遠山 キンジ!」

 

物陰から物陰に移りながら聞いてくるキンジ

今、聞くのかそれ

 

「五十嵐だ!」

 

近寄って来たキンジに俺は答えた

作戦会議だろうか

ものによるが良い作戦なら乗るぞ

 

「お前、なんとか出来ないか?」

 

なる程、最初から丸投げか

出来ない事も無いだろうけど・・・

 

「不可能」

 

結論的にはこうとしか言えない

愚者の行進は相手も俺と同じ動きをしなければならないんだ

俺と同じ方向を向くかと聞かれるとそうでは無かった

それは先程の遠山で検証済み

麻酔弾入りの弾丸を俺が撃っても当たるかわからない

近くに行ってもし、効力がキレたらもう最悪だ

 

「なぁなぁ、眼鏡を掛けた君、可愛いなぁ。()()()()に来ない?」

 

きっしょ

普通に気持ちが悪い奴だな

というか良く高校生になろうと思ったな、お前

 

「きもい!!」

 

生憎、野郎は好きじゃ無いんだよ

可愛い女の子とかなら大歓迎だけども

 

近くに居るのも嫌になって素早く立ち上がった

 

「ちょっと待て五十嵐!!」

 

靴紐が解けていてその靴紐を遠山が踏んでいた

振り返った時にバランスを崩し、遠山に壁ドンの座ってるバージョンをしている状態になった

 

ち、近い

 

鼻と鼻がぶつかりそうな距離

相手の顔が急速に赤くなっていく

 

「五十嵐・・・後ろに少し下がってて。銃なんて振り回すのは俺だけで良いだろ?」

 

急に目つきが変わった気がする

それに、なんというかさっきと雰囲気が違う

あと、なんかキザって言うのかな

なんというか見てるこっちが恥ずかしい

 

さり気なく、俺を少し後ろに押しで退けて立ち上がったキンジ

それに釣られて俺も立ち上がる

 

「は?何言ってんだ。頭でも打ったのか?」

 

「心配してくれてるのかい?優しいね、五十嵐は」

 

本当にどうした、お前

多重人格者?

いや、こんな状況で好んで変わる奴なんて居ないだろうし

 

・・・・キャラ作ってたのか

この性格なら学校に居ても友達居なそうだし

なんか、暗い雰囲気だったのも納得がいく

 

「なんでも、良いか。遠山、アイツの動きを抑えたら麻酔弾撃ち込める自信はあるか?」

 

「五十嵐がやれと言うならなんでも成功させて見せるよ」

 

「はいはい、そういうのいいから」

 

この異常者2人(約1名は味方)

中々におかしくなってるな

特に遠山

今度、カウンセリングに連れて行こうかな

 

まぁ、まずはここで生き残るのが先決だ

 



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