その瞳に希望を宿して (ノア(マウントベアーの熊の方))
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一章
第1話


初めての方は初めまして、そうではない方はまた私の作品を見ていただいてありがとうございます、どうもノアです。
前書きはいつもダラダラと書きすぎたりすることが多いので今回は特に書きません(もう長い)。

ではごゆっくり、見ていってください!


「はぁ…暇だ…」

 

そんな事を呟きながら、俺…橘 リョウ(タチバナ リョウ)は粗末なクッション性すらないベッドに腰掛け、石で作られた天井、苔の生えた石壁、そして石畳の地面を見回した。

そして再度大きなため息をつきながら頬杖をつき、金属製の分厚いドアを見つめる。

ドアには外から大きな鍵でロックがかかっており、内側から開けるのは困難だ。

いくら俺が"鬼"と呼ばれる種族であっても、壊すことの出来ない鍵…

おそらく、源石(オリジニウム)由来の成分でも入って強化された金属か何かなのだろう。

 

そんな見るからに牢獄といった部屋に閉じ込められて早5年。

理由はもちろん、俺を隔離…いや、俺たちを隔離したいからだ。

なんで隔離されるかって?

俺たちが鉱石病(オリパシー)にかかっちまってるからだ。

 

オリパシーは不知の病とされ、オリジニウムに身体が侵されることで発症する。

長期に渡って源石やその加工品に接触していると感染しやすいらしく、オリパシーに感染した者は『感染者』と呼ばれ、隔離や駆逐、挙句の果てには差別の対象となっている。

ならそんなヤバい石なんて使わなければいい、そう思えるが、これがそうもいかない。

オリジニウムは膨大なエネルギーを秘めており、天災と呼ばれる自然災害を引き起こす主な原因でもある。

しかし、前にも言った通り、膨大なエネルギーを秘めているのだ。

 

そんな物質を人類がヤバいからとはいそうですかと言って見過ごす訳もなく、今では源石術(オリジニウムアーツ)、通称『アーツ』の媒介となり、物質の形や性質を変化させる技術に使用されたり、『移動都市』と言われる、天災が起きそうな時に天災から逃げれるような移動する都市を動かす源石エンジンや、一般生活に使うようなものにまで使われ、もはや人々の生活になくてはならない物になってしまっている。

 

かくいう俺も、日常的にオリジニウムと触れ合ってきた結果、妹と共にオリパシーにかかり、こうして隔離されているという訳だ。

まあまだ幸いなことに、今この村では俺と妹しか感染者はいない。

俺が7つの時に両親もオリパシーになって死んじまったのを考えると、おそらく俺たちもこのまま隔離されて死んでいくのだろう。

まあ幸いにも村のヤツらが飯は出してくれるので、不自由だが生きていけるだけマシというやつだろう。

せめて古い本でもいいから置いていってくれればいいのに、そう思い3度目のため息をつくと、部屋の反対側に置かれたベッドから、妹のイツキが頭の犬耳を垂らしながら、しっぽをゆらゆらさせてこちらを見つめてきていた。

 

「どうした?なんかついてるか?」

 

「ううん、なーんでもない、暇だなぁって思ってただけだよ」

 

「だよなぁ、しかも不快な程にジメジメしてやがる、全く、なんでこんなちっこい辺境の村に地下牢獄なんてもんがあるんだ」

 

「だよねぇ!でもまだ牢獄に隔離するとしても、週に5回でもいいからお風呂入りたいなぁ…」

 

「だな、月一とか頭おかしいんじゃねぇか?」

 

そんなやり取りを交わしていると、地上に繋がるドアが開いた音がし、耳をすませる。

それと同時にイツキの耳もピンと立ち、俺と同じく耳をすませているようだった。

やがて足音が近づいてきたと思うと、いつもの村のオッサンが、2人分の食事を何も言わずに持ってきた。

どうやら昼食の時間だったようだ。

俺たちはそれをドアの小窓から受け取り、部屋の真ん中に置かれた机へと運び、2人して「いただきます」と言って、無言で食べ始めた。

 

スープとパン、そして野菜と肉の炒め物という質素なものなので、気がつくと2人とも食べ終え、空の食器だけが残った。

せめて妹だけでももう少しマトモなものを食べさせてやりたいが、この現状だとそれも叶わないだろう。

そう思い今日4度目というハイペースにも程があるため息をつくと、イツキが心配そうにこちらを覗き込んできていた。

 

「なんでもない、心配するな」

 

「本当?ならいいんだけど…なんかあったら相談してね」

 

「ああ、ありがとう」

 

そんな会話を交わし、わしゃわしゃと妹の頭を撫でてやる。

すると、嬉しそうに擦り寄り、大人しく撫でられてきた。

やはり、俺と違ってペッローとあってか、撫でられるのは好きらしく、よくそのスチールブルーの髪の頭を撫でてやっては癒されている。

 

妹と俺はご察しの通り、血は繋がっておらず、俺が2歳の頃に拾われてきた捨て子だ。

当時はイツキも赤ちゃんだったので、本当の親のことは知らないだろうし、知ったところで、自分のことを捨ててきた親に対しては負の感情しか抱かないだろう。

そんな血が繋がっていないどころか種族すら違う俺たちだが、こうして仲良く暮らしている。

家はこの牢獄だが。

 

親が源石関連の仕事をしていたこともあって、家に源石関連の道具などが沢山あったので、まあそれも必然というものだろう。

こうして閉じ込められるなら暇つぶしに遊べるように、親のアーツ学の本を読んでおくんだった。

流石にわざわざアーツ学の本を読ませて脱獄のリスクを村のヤツらも背負いたくないので、今頼んでも見せてはくれないだろう。

 

感染者がアーツユニット無しでアーツを使えるどころか、アーツ使用能力を増強させるなら尚更だ。

それに、感染者はアーツを使えば使うほどに症状を悪化させ、最終的にはその感染者の死体がさらに感染源となる。

後処理も面倒になるので、いなくなっては欲しいが死なれると困るが本音だろう。

そもそも感染者となった以上、ヤケでも起こすか、必要でない限り、アーツは使わない方がいいはずだ。

妹を置いて死ぬのはゴメンだし、逆に妹に先立たれるのもゴメンだ。

かなり前に感染者とわかった時の症状の進行度合いは俺もイツキもほぼ同じだったので、変なことをしない限りは死ぬタイミングはほぼ同じだろう。

 

現にほぼ同じタイミングで体表に鉱石結晶が現れているのを鑑みると、今も進行度合いは同じといったところだと、俺は思っている。

あくまでも希望的観測でしかないが。

まあそれにしても、病状が進行している割には俺たちは健康そのものだ。

咳もこれといって出ないし、体調不良になることもまあ無い。

その辺、俺たちは運がいいのだろう。

 

「外に出たいなぁ…」

 

そうイツキがぽつりと呟いたのを聞き、俺は妹に何もしてやれないことを悔やんだ。

悔やんだところで何も変わりはしない…そうわかっていても、何も思わなくなってしまうより何倍もマシだ。

悔やんだことで、もしかしたら神様から慈悲を貰えるかもしれない。

まあ、神様が本当にいるのならば、そもそも俺たちを感染者にしないでくれと言ってやりたいものだが。

そんな事考えたって仕方ない、そう思い、俺は身体がなまらないように動かした後、ベッドに寝転がり、眠りについた。

 

───後にあんなことが起きるとも知らずに。




はい、という訳でいかがだったでしょうか?
良ければ評価、コメント等をして頂けると狂ったように喜びます。

今作は思いついたら書くを繰り返していたら1~5話、5~10話で一気に場面が変わるようになってました。
察しのいい方はもう察されたかと思いますが、10話まで書きだめがありますので、10話まではデイリー更新となります。
良ければご愛読くださいませ。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第2話

第2話です。
前書きのネタは特にないので書きませんが、これだけは言わせてください。

☆3にイラスト変化昇進ください!!!!!!

はい。
という訳で今回もごゆっくり、見ていってください。


ある日、いつも通り寝たくなくなってから起き、ベッドに座ってぼーっとして、朝食を待っていた。

 

「ふわぁぁ…お兄ちゃんおはよー…」

 

「ああ、おはよう…もうそんな時間か、今日はメシ遅いな」

 

「だねぇ…いつもならもう来て、お兄ちゃんが起こしてくれてるのに」

 

そんな事を言いながら、イツキは鉄扉の方を向き、頭の耳をピコピコと動かした。

 

「どうした?誰か来たのか?」

 

「ううん、なんか外が騒がしいなぁ…って」

 

そうイツキが言ったので、俺も耳をすませてみると、確かに、微かにだが、外が騒がしかった。

まあ俺たちはおそらく関係ない、そう思っていると、地下牢へと続くドアが開く音がし、外の騒がしさが一層増した。

音を聞く限り、どうやら揉め事か何かが起きているようだ。

そんな事を思っていると、徐々に数人分の足音が近づいてきた。

何か嫌な気がした俺は、イツキのそばに行き、ドアの方向を凝視し続けた。

やがて俺たちの牢獄の前で足音が止まったかと思うと、ガチャリと鍵が音を立てて外された。

咄嗟に身構え、イツキを後ろへと下がらせてドアを睨みつけていると、ギギィ…と軋む音を立ててドアが開かれ、そこから白いフード付きの服を着てフードをかぶり、黒のタクティカルベストをその上から着て、白い仮面をつけ、片手には剣を持った、種族もわからない人間が4人、入ってきた。

 

「…お前たちは、感染者か?」

 

そうその中のリーダー格らしき男が、俺たちを見るなり、そう聞いてきた。

 

「ああそうだ、お前たちは何者だ、何しに来た」

 

そう睨みつけながら聞き返すと、男は、

 

「安心しろ、俺たちは感染者の味方だ……こちら小隊長、感染者を2人発見した」

 

『了解、丁重に扱ってください』

 

「了解」

 

と、トランシーバーで誰かと会話していた。

 

「さあ、着いてこい、出してやる」

 

「は?武器も持った怪しいヤツに着いてこいと言われてついて行くバカがどこにいるって言うんだ?」

 

「……それもそうか、じゃあこれでどうだ」

 

そう男は言うと、他の仲間に目配せし、剣を鞘に納め、両手を顔の横へと上げ、何も持っていないとアピールして来た。

俺はそれを見て、チラッと、俺の後ろに隠れるイツキへと目をやった。

やはり、まだ恐怖を感じているようで、俺に触れている手から、微かに震えが伝わってきた。

 

「……俺たちをどこに連れて行く気だ?」

 

「組織の基地だ、そこで鉱石病の診断を改めて受けてもらってから治療を行う」

 

「…この村へは何をしに来た?」

 

「感染者の保護と物資の補給だ、村人を殺してはいない」

 

「じゃあなぜさっきは剣を抜いていた?」

 

そう俺が尋ねると、男ははぁ…とため息をつき、

 

「何があるかわからないだろう、警戒の意味を兼ねて剣を抜いていた、俺は怖がりなんだ」

 

と、頭をかきながら言ってきた。

 

「…俺たちに危害を加えないと誓えるならば、お前の剣を俺に渡してもらおうか」

 

「それは残念だができない、それで逆に俺たちが襲われたら元も子もないからな」

 

「…チッ、それもそうか」

 

そう言いながらも警戒し続けていると、やがて諦められたのかなんなのか、リーダー格らしき男が、腰に着けた剣を、鞘ごと俺に投げ渡してきた。

 

「ほら、これでいいだろ?俺たちについてきてもらうぞ」

 

そう男は言うと、部屋から出て、俺たちについて来いとジェスチャーしてきた。

 

「お兄ちゃん…私、どうしたらいいの…?」

 

「…ここに居たって仕方ないのは事実だ……今はついて行くしかない、安心しろ、何かあったら俺が守ってやる」

 

そう言ってイツキの頭を撫でて安心させてやり、俺たちは警戒を緩めずに、言われるがままについて行くことにした。

 

「わぁ…久々の外だぁ…!」

 

そう外に出るなり、イツキが嬉しそうに言う。

俺もそれを見て嬉しくなりながらも、俺は前を歩く男について行く。

そしてしばらく歩いて村の外へと出ると、そのまま山の中へと入っていった。

一層警戒を強めながらかなりついて行き続けると、やがて、山の中にポツンと、小さな廃村があり、その中心に古い木造建築の少し大きな建物があった。

 

「ここが俺たち『レユニオン・ムーブメント』の小基地だ、そこにいる医療オペレーターに適切な処置をして貰え」

 

そう言うと、男は遠くにいた、同じような格好をした小柄な人を呼んだ。

トコトコと走って近寄ってきたその人は、俺たちの近くに来ると、仮面とフードを脱ぎ、俺たちにその顔を見せてきた。

見た感じは、白い髪色の、フェリーン族の少女のようだった。

 

「初めまして、医療オペレーターのシロって言います、よろしくお願いしますね」

 

「あ、あぁ…よろしく」

 

「じゃあ早速、こっちに来てください、医務室に案内します」

 

そう言われ、俺たちは大人しくついて行くことにした。

しばらく山の中にしては大きな古ぼけた建物の中を歩くと、やがて『医務室』と書かれた看板がぶら下がった部屋まで着いた。

手招きされて入っていくと、そこには必要最低限の医療道具の並ぶ、簡素な保健室のような場所だった。

 

「本当なら、CTスキャンとかでしっかりと見れるのがいいんですけど…ここにはそんなものは無いので、エコーで臓器の輪郭とかを見させてもらいます」

 

「はぁ…でもどうやって?ここは電気も通って無さそうだが」

 

そう聞くと、女の子はふふっと笑ってから、ポケットから1つの黒い、半透明の石を出して見せてきた。

 

「…なるほど、オリジニウムか」

 

「はい、これはこの辺の山からとれたんですよ、その他にもここの設備はほぼオリジニウムで動いてます」

 

「……そんなに密接に源石を使って、感染が悪化しないのか?」

 

「はい、基本的に源石を使って発電とかしてる場所から宿舎は遠いですし、こうやって使うものでも基本的には別のところに厳重に保管してます」

 

そう女の子は言うと、機械にその源石をはめ込み、検査の準備をし始めた。

しばらくして準備が整ったらしく、俺にベッドに寝転がって上の服を脱ぐように言ってきた。

俺は断る理由も見当たらないと思い、言われるがままにベッドに寝転がって上の服を脱ぎ、検査を受けることにした。

 

しばらく臓器の検査が続いたあと、血液検査がそれに続き、俺の検査は終わった。

その後にイツキの出番だったが、シロに、

 

「女の子の検査なんですから、検査の時は部屋から出ていってください!」

 

と言われ、渋々部屋の外で待機していた。

 

検査の間、俺は廊下から、外を眺めていた。

そうしていると徐々に小さな足音が近づいて来るのが聞こえ、バッとその音の方向を見てみる。

すると、そこにはさっき俺たちをここに連れてきた、リーダー格らしき男が、こちらへと歩いてきているところだった。

 

「こりゃ驚いた、俺はよく影が薄いって言われるんだが…鬼ともなれば五感が優れてるって事か」

 

「…なんか用か?」

 

そうぶっきらぼうに聞き返すと、男は仮面とフードを脱ぎながら、

 

「渡した剣を返してもらおうと思ってな、ここまで何もせずにいるんだ、そろそろ信用してくれてもいいんじゃねぇか?……まあ、感染者ともなればそう簡単に他人を信用しろってのも無理な話だとは思うが」

 

と、苦笑い気味に言ってきた。

 

「…その角、サルカズか」

 

「ああ、カズデル出身の感染者だ、もう感染して5年になる」

 

そんな事を言いながら、俺の隣までサルカズの男は歩いてきた。

そして男は何も言わずに片手を出し、剣を返してくれと無言で訴えてきていた。

 

「…アンタ、名前は?」

 

「俺か?俺はネクロ、コードネームはゴーストライダーだ、一応この基地のリーダーをやってる、お前さんはなんて言う名前なんだ?あのペッローの女の子とはどういう関係なんだ?」

 

「俺は橘 リョウだ、アイツとは兄妹さ、血は繋がってないがな」

 

「ほう、橘って言うと、極東の産まれか?」

 

「親が極東、俺はあの村産まれだ」

 

「そうか……なあ、そろそろ剣を……」

 

そうネクロが悲しそうに言ってきたので、俺はため息をつきながら、渋々剣を返した。

 

「ありがとう、コイツは俺がレユニオンに入ってからの相棒なんだ…そうだ、言い忘れてた、お前さん、レユニオンに入る気はないか?」

 

「はぁ?どういう意味だ?」

 

そう俺が尋ねると、ネクロが苦笑いをしつつ、

 

「まあいきなり連れてきて入る気はないか?って言うのもおかしい話だが…本来なら俺たちレユニオンは、感染者を保護したり協力してもらったりして勢力を拡大してってる、今回はあの村に行った時に村人が無理矢理にでも連れて行けってうるさくてな」

 

「そりゃそうだろうな、感染者が村にいるだけで面倒なことが多い、いなくなって欲しいに決まってるだろう」

 

「ははっ、まあ村人の理由は俺の知ったこっちゃねぇが…俺たちレユニオンは、『感染者は自らの立場に誇りを持ち、積極的に力をつけ、そしてそれを行使すべきだ』、って掲げて活動してる。ほら、お前さんも知ってるだろ?俺たち感染者は隔離や駆逐の対象になって迫害され続けてる、同じ人間なのにな…俺たちは、そんな感染者の権利としっかりとした立場を認めさせるために色々手を尽くしてる。そりゃあたまには手荒い方法だってするさ、そうでもしないとヤツらは俺たちの事なんて何も考えたりしやしねぇからな……どうだ?レユニオンに入れば定期的に補給部から物資も分配される、牢獄にいた頃よりはいい生活ができるはずだ」

 

そうネクロは言うと、俺の後ろに目線を送ってから、

 

「まあ、妹さんとよく話し合って決めてくれ」

 

と、手を振って去っていった。

それを見送った瞬間、後ろから衝撃が来たと思うと、イツキが嬉しそうに飛びついてきていた。

 

「お兄ちゃん!何の話してたの?」

 

「いや…大丈夫だ、これといった話はしてないさ」

 

「本当?それならいいんだけど…」

 

そんな会話を交わしていると、シロと名乗ったさっきの女の子が、

 

「じゃあ、検査も終わったことですし、お昼ご飯にしましょうか!小さな基地なので大したものはないですけど、料理担当オペレーターの方の作るご飯は美味しいんですよ!」

 

と、言ってきた。

それを聞くと同時に、朝食を忘れていたのもあってか、イツキのお腹がぐぅ…と鳴った。

 

「…イツキも腹が減ってる様だし、この際、ご馳走になるか」

 

「良かった!じゃあ食堂まで案内しますね!」

 

そう言われ、俺たちは案内されるがままに、他の部屋よりも少し広い、『食堂』と看板のかかった部屋にたどり着いた。

たどり着いてから、思ったよりもいた他の人の数に驚かされた。

みんなが皆ずっと仮面とフードを被っている訳でもないようで、そのおかげと言うのは少しおかしいが、他にも色々な種族の感染者が集まっているのだと思い知らされた。

 

俺たちはシロに言われるがまま列へと並ぶと、カウンターで美味しそうなカレーライスを出してくれた。

久々に腹いっぱい食べれそうな食べ物を見て、興奮気味にイツキの方へ視線を向けると、やはりイツキも興奮気味に、今にもヨダレが溢れ出るのではないかという表情になっていた。

そのままシロに連れられて席に座り、じっとカレーライスを見つめていると、シロが、

 

「どうぞ、遠慮なく食べちゃってください、おかわりもありますよ」

 

と、言ってきたので、もはや我慢の限界となった俺たちは、実に5年、下手をするとそれ以上の期間食べていないカレーライスをかきこんだ。

そしてすぐに食べ終え、おかわりをもらい、満腹になるまでそれを繰り返した。

 

「はぁ…久しぶりにお腹いっぱいになったよ…幸せ……」

 

「あぁ…確かに腹がいっぱいになったのは久しぶりだな…美味かった」

 

「ふふっ、それは良かったです、じゃあこれから泊まってもらうお部屋にご案内しますね」

 

そう言われ、言われるがままについて行き、俺たちはベッドがふたつある部屋へと案内された。

そしてシロが「ごゆっくりしててください」と言って去っていき、部屋に俺たちだけが残された。

 

「いやー、美味しかったね!久しぶりにお腹いっぱいになったよぉ!」

 

「あぁ…また腹いっぱい食えると思ってなかった」

 

そう短く会話を交わすと、お互いに何も言わず、ただ沈黙だけが辺りを包んだ。

そして辺りを見回し、俺たちは本当にあの牢獄から抜け出しているのだと実感していた。

そうしていると、イツキが落ち着かない様子で、俺のことを呼んできた。

 

「…ねぇ、お兄ちゃん」

 

「どうした?」

 

「もし、ここの人たちの仲間になれば、もうあんな生活、しなくていいのかな?」

 

「…どうだろうな、まあ少なくとも、飯や寝床は保証はされるだろうな」

 

そこで再び沈黙が包み、俺はさっきネクロに言われた言葉を思い出していた。

もし、俺だけでもレユニオンに入れば補給が受けられるなら、俺だけでも入ってイツキにいい飯を食わせてやりたい。

危険なことももしかしたらあるかもしれないが、そんなもの、これからアテもなく生きて野垂れ死にするよりは数倍マシだ。

……なら、もう答えは1つだろう。

 

そう思い、俺はさっきネクロに言われたことをイツキに伝え、俺だけでも入ろうとしていると伝えた。

すると、

 

「そんなの、そんなのダメだよ…だって、お兄ちゃんだけ危険な目に合わせたくないもん……お兄ちゃんが入るなら、私も入る」

 

と、真剣な眼差しを向けてきた。

 

「イツキ……本当にいいのか?どんな事があるかわからないんだぞ?」

 

「うん、わかってる。でも、どんな時でも、お兄ちゃんがいてくれるでしょ?」

 

「……ああ、そうだな」

 

そう答えると、イツキはニッコリと満面の笑みを浮かべて見せてきた。

そんな妹の頭を撫でてやり、俺たちは心機一転、レユニオンとして生きていくことを決めた。




はい、後書きタイムです。
今のところ出てきているキャラのイメージとしましては、
主人公であるリョウは鬼になったエンカク(ちなみにうp主はエンカクは鬼だと思ってました)、
毛並みとモチーフがヨークシャーテリアになったカーディ、
別ゲーになりますがネクロがゴッドイーターのリンドウさんをサルカズにした感じ、
シロがロード画面やらに出てくる感染者の項目でいるアークナイツの世界を表すような画像にでてくる感染者の白い毛並みの女の子です。(語彙力皆無)

ではまた次回、お会いしましょう!


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第3話

前書きネタはないです。
この話からレユニオン編(第1章)本格スタートです。

では今回もごゆっくり、見ていってください。


あの後、俺たちはネクロに、レユニオンに入るということを伝えた。

それを聞いたネクロは喜んで、俺たちがレユニオンの補給部から物資を受け取れる同志として扱われるように即座に手配を始めてくれた。

そしてその次の日、俺たちは兄妹揃って、レユニオンの能力測定を受けることになった。

それぞれ体力面や戦闘における動き、アーツの適正から戦術の立案能力まで、多岐にわたる測定が行われた。

 

その中で驚いたのが、俺もイツキも、アーツの適正が高いという事だった。

測定してる人が言うには、俺は攻撃から汎用、回復系アーツまで使いこなせるだけの潜在能力があると言い、イツキは回復系アーツの適正が高いそうだ。

その他の適正は俺はかなり高い方らしいが、イツキはアーツ以外は普通らしい。

どこまでが本当かはわからないが、まあ高いというのだから高いのだろう。

 

その後、能力測定を終えた俺たちは、自室へと戻り、休憩をとっていた。

イツキは疲れてしまったようで、ベッドで眠りにつき、晩御飯の頃になったら起こしてくれと言ってきた。

流石に部屋に鍵があるとはいえ、女の子が1人だけ寝ているのは危険だと思い、俺も自室に籠っていると、何が起こるでもなく、そのまま晩御飯の時間になってしまった。

なのでイツキを起こし、食堂に晩御飯を食べに向かうと、見覚えのある白い髪の女の子が先にご飯を食べていた。

 

「隣いいか?」

 

そう晩御飯の乗ったトレーを持ちながら、その女の子に聞く。

すると、その女の子はこちらに気づき、笑顔を見せて、

 

「いいですよ、あ、2人ともレユニオンにようこそ、歓迎します」

 

「ああ、よろしく、シロ」

 

そう会話を交して横に座り、俺たちはシロと話しながら、晩御飯を食べていた。

やがて話の話題は俺たちのこれからの話になり、シロの知る限りの情報と併せて教えてくれた。

 

「……なので、多分リョウさんは前衛オペレーターとして、イツキさんは医療オペレーターとして活動してもらうことになると思います」

 

「へぇ…前衛、ってことは戦闘とかもするのか?」

 

「はい、我々レユニオンもしっかりとしたルートで物資を得たりしていますが、たまには略奪や治安維持隊などと戦闘をすることもあります、医療オペレーターの場合も、前線に出て負傷者の怪我の治癒などを行ったりすることもあります」

 

「前線かぁ……怖いなぁ………せっかく牢獄から出れたんだもん、楽しく生きたいから、後方に回ることってできないの?」

 

「イツキさんの能力値ならそれも可能だと思います、第一私も似たようなものですし、多分隊長もそれをわかって後方支援に回してくれると思いますよ」

 

「本当!?やったぁ!お兄ちゃんも一緒にできる?」

 

「……リョウさんは、後方支援には回れないと思います、私が聞く限りだと、隊長に匹敵するかそれ以上の潜在能力をお持ちみたいですし」

 

そうシロに言われ、イツキは耳としっぽを下げ、見るからにしょんぼりし始めた。

 

「イツキ、大丈夫だ、兄ちゃんはそう簡単にお前を置いてどっかに行かねぇよ」

 

そう言って頭を撫でてやると、少しは元気が出てきたようで、嬉しそうに撫でられてきた。

その後は、俺たちは自室に向かうまでずっと雑談し、自室へと戻るとすぐに眠りについた。

 

 

次の日、俺たちは基地の設備をシロに説明してもらいながら、基地の装備庫に向かっていた。

なんでも、隊長から俺は前衛オペレーターに、イツキは医療オペレーターとして活動してもらうことになったから、その装備を受け取ってくれという事らしい。

一通り基地を見て周り、装備庫へと向かうと、そこには数本の刀剣類やクロスボウなどの遠距離武器、そして術士向けの杖が数本、そしてシロやネクロたちが着ている、レユニオンの制服と仮面、そしてタクティカルベストがあった。

 

「さ、この中から選んでください、基本的にレユニオンの術士はアーツユニットを媒介にせずに自身の体内にある源石を媒介にしますが、それだと病状の進行ペースが早いので、アーツユニットを媒介にすれば症状の進行が遅いんじゃないかやって言う隊長の意見で、本部などで不要になったり余ったアーツユニットをここの小隊は使うんですよ」

 

「へぇ……よく上が許可したな」

 

「本当ですよね、隊長はただ頼み込んだだけだって言ってましたけど、本当のところは誰も知りませんし、知ろうと思う人もいません」

 

「まあ、今が平和に過ごせてるならいいじゃないか…で、どれを選んでもいいのか?」

 

「はい、どれでも好きなものを選ばせてやれ、って言ってました」

 

そう言われ、俺たちは自由に装備庫を見ていると、1本だけ、ひっそりとホコリを被った、太めの太刀を見つけた。

それが気になり手に取って刀身を鞘から出してみると、一瞬、刀身が赤みを帯びた気がした。

 

「…よし、俺はこれにする、イツキはどれにするか決まったか?」

 

そう聞くと、イツキは嬉しそうに、先端に翼の装飾の着いた、黒い長杖を見せてきた。

 

「それでいいんだな?」

 

「うん!これ気に入ったんだもん!」

 

そうイツキは言い、杖を嬉しそうに構えて見せてきた。

そしてその後、俺たちはレユニオンの制服一式を受け取り、自室へと戻った。

その後、ネクロが部屋を訪ねてきて、「明日からレユニオンとして正規に活動してもらうから、そのつもりでな」とだけ言って、去っていってしまった。

 

つまり、明日から俺たちは、感染者として、非感染者と、面と向かって対立していかなければならない。

それがどんな未来に繋がるかは、俺たちにはわからない。

しかし、俺は兄として、妹を護ってやらねばならない使命、そして、兄妹そろって幸せな人生を送るという目的がある。

その第1歩としてレユニオンに入り、少しでも平和な生活を送っていくつもりだ。

場合によっては、手を血に染めることだってあるかも知れない。

だが、妹が手を汚さず、幸せに生きれるならそれでいい。

 

そう、俺は覚悟を決めた。




いかがだったでしょうか?
評価やコメント等をして頂けると喜びます。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第4話

(前書きに書くことが)特にないです。

では今回もごゆっくり、見ていってください!


あれから数ヶ月経った、暑い日だった。

俺たちは、自在にアーツを使いこなせるまでに成長し、俺は戦闘技術においては小隊の中で1,2を争うまでに急成長した。

俺は今までに数回、俺は近場の村へと、物資補給という名の略奪へと赴き、イツキの方はシロと共に、『戦場の双女神』と呼ばれ、怪我をした小隊員や、協力的な感染者の治療を行っている。

 

そんな中、俺たちの小隊は、近場…と言っても、かなり離れた場所にあった、別のレユニオン基地が襲撃され、生存者がこちらへと撤退して来ていると、この辺の小基地を統括している基地から連絡が入り、警戒態勢と医療体制を早急に整えていた。

襲撃してきたのは移動都市から派遣されてきた正規軍らしいので、俺たちも拠点を捨てて撤退できるような準備も整えられ、生存者の保護と追っ手の撃破の体制を完了していた。

 

そんな中、日も暮れ、辺り一面に星空が広がる、夜になった。

俺たちはいつ戦闘しても大丈夫なように、軽く食事を済ませ、必要に応じて食事がいつでも取れるように、携帯糧食としておにぎりを手渡された。

数人体制で見張りをし、友軍の到着を待つ。

しばらく警戒を続けていると、近くの草むらから、ガサガサッと物音がし、慌てながらも冷静に抜刀して警戒する。

すると、そこからは数体の感染生物が、俺たちの姿を見て喜びからなのか、ぴょんぴょん跳ねていた。

 

それを見て困惑していると、それに続くようにして、1人のレユニオンの術士が、肩で息をしながら、よろよろと歩いてきた。

それを見た俺は、急いで納刀し、術士へと駆け寄り、肩を貸してやって、医務室へと連れて行った。

術士は医務室のベットへと横になると、安心したようで、そのまま気絶してしまった。

 

その後は誰一人としてレユニオンの人間は来ず、来たのはこの術士だけだった。

シロとイツキに治療を任せ、俺はまた警戒へと戻ろうとすると、医務室の外で、心配そうにたたずむ、感染生物たちがいた。

おそらくあの術士の管理下にある感染生物なのだろう、そう思い、言葉が通じるかはわからないが、ひとまず安心ということを伝えてみた。

すると、感染生物たちは、ふひゅぅぅ…と安堵の溜息らしき声を発して、溶けるように眠ってしまった。

それを見て少し可愛いと思いつつ持ち場へと戻ろうとすると、ネクロが遠くから、俺の事を手招きしていた。

それに従って近くへ行ってみると、ネクロが、

 

「…あの術士だけしか同志は来てない、お前はこれをどう見る?」

 

と、真剣な眼差しで聞いてきた。

 

「……恐らく、わざと仲間の元へと撤退させ、まとめて叩こうって魂胆…だと思う。確信はないが、おそらく撤退中にまた襲われて1人だけにされてる可能性もある」

 

「流石だな、俺が見込んだヤツなだけある…ああ、その通りだ。俺の記憶が正しければ、今回襲撃された小隊は連携が割と取れてる小隊のはずなんだ、1人……とその下僕の感染生物だけというのは怪しすぎる」

 

「そんな小隊が確定生存者1人だけ…敵は相当な手練みたいだな」

 

「ああ、俺たちも撤退した方がいいかもしれん、その事を持ち場に戻った時に伝えて欲しい」

 

「わかった、ネクロはどうする?」

 

「俺はやる事がある、もしもの時は仲間を頼むぞ。あと…これを持っていけ」

 

「これは?」

 

「地図だ、持ち場へ戻る時にでも目を通しておけ」

 

「……わかった」

 

そう言って別れ、俺は持ち場へと戻り、仲間へとさっきの話の内容を伝えた。

しばらく警戒を続け、俺たちは交代になり、夜食を摂ることになった。

しばらく仮眠も取ったりしていると、やがて日が昇り始めてきた。

 

 

そんな、少し気の緩みかけた時だった。

唐突に多数のアーツや遠距離攻撃が周囲から飛来し、数人の仲間がやられると、そこから数十人規模の敵兵士が、途切れることの無い遠距離攻撃の合間を縫って、襲いかかってきた。

そこから戦闘の火蓋が切って落とされ、レユニオンと敵の軍の、命のやり取りが始まった。

 

俺はすぐさま抜刀し、敵の兵士へと斬りかかり、即座に数人、戦闘続行不能にする。

やられそうな味方を術士がアーツで支援し、前衛は向かってくる敵を斬り伏せる。

そんな激戦の中でも、俺たちの小隊は、ネクロの言いつけを守り、敵を殺してはいなかった。

……いや、正確には殺せるだけのスキがないと言った方が正しいか。

前線を維持する事に精一杯で、全く攻戦へと状況を運べず、自らを守ることに精一杯な仲間の方が多く、このまま行けば軽く殲滅されるだけだろう。

必死に思考を巡らせ、この状況を打開する策を考える。

その間にも、1人、また1人と仲間が倒され、徐々に前線が崩壊しつつあった。

 

そんな中、急に敵の進軍が止まり、全員がその場で呆然と、空を見上げ立ち尽くした。

それも無理はない。

 

何故ならば、先程まで普通だった空が血に染まったかのように紅く染まり、今にも落ちてきそうになっていたのだから。

 

”湧き上がる黒い雲が炎の中で渦巻く時、大地は静寂に包まれ、恐怖が彼らから声を奪うだろう。”

 

”巨大な源石が頭を垂らし、地に落ちる時、地上には死の焦熱が影を落とすだろう。"

 

そう、誰かが言っていたのを思い出し、今、何が起きているのか、嫌なほどに思い知らされた。

 

「……天災だ」

 

そうぽつりと誰かが呟き、辺りは恐怖で逃げ惑う人々や、立ちすくむ人々で埋め尽くされた。

 

最初俺は、恐怖で震えていたが、無理やり平静を取り戻し、医務室へと走った。

 

「イツキ!シロ!今すぐ逃げろ!天災が来るぞ!」

 

「天災……天災って、あの天災……?」

 

「ああ、もう発動するまで時間が無い、急ぐぞ!」

 

「待って!この人は!?」

 

「俺が背負う!」

 

そう言って急いで未だに気絶している術士を背負い、俺たちは急いで外へと走った。

そして、どこか安全なところはないかと考えていると、さっきネクロに貰った地図のことを思い出した。

 

「レユニオン!全員こっちだ!早く!」

 

「ま、待ってくれ!まだ隊長が!」

 

「……アイツなら大丈夫だ!だから早く!」

 

「くそっ…!わかった!」

 

そう言い、生き残ったメンバーをかき集め、俺たちは小基地からほど近い、そこそこ広い洞窟にたどり着いた。

その瞬間、空から大量の源石や、雷、大粒の雹が降り注ぎ、暴風が吹き荒れ始めた。

それを凌ぐために洞窟の奥へと行き、外から音がしなくなるまで潜み続けていた。

 

しばらく物凄い音が続いた後、途端に音が止んだ。

俺が代表して見に行ってみると、辺りの木々は荒れ、辺りには源石が形成され始めていた。

それを全員に伝えると、生き残った事への安堵や、これからどうすればいいのかと絶望する者など、三者三様の反応が帰ってきた。

 

確かに、これからどうすればいいのかは、俺にもわからない。

襲撃されてピンチに陥ったかと思えば、今度は天災によってピンチになり、それが過ぎ去ったかと思えば今度はこれからどうすればいいのかと路頭に迷う始末だ。

 

今までならオンボロ無線機で上に救援を求められたが、それすらままならない。

何か手立ては無いかと考えていると、ポケットに地図を入れていたのを思い出し、僅かな希望を持って、見てみることにした。

 

そこには、やはり、この周辺の地図しかない…そう思いガッカリしていると、その地図に、2枚目があることに気づいた。

なぜ気づかなかったのだろう、そう思いつつも、その二枚目を見てみると、先程の地図よりも広域な地図で、最寄りのレユニオン基地の位置まで書き込まれていた。

それを伝えると、全員の瞳に希望が宿り、士気が高まってきた。

そのお陰もあり、食料は心もとないが、全員で一致団結して、俺たちはその基地へと向かうことになった。




天災って自然現象とは言いますけどなんでチェルノボーグでのレユニオンは上手い具合にタイミングが被ったんですかね……(別ゲーの似たようなシュチュエーションを見つつ)
どうせ裏があるに違いない。

とまあ今回はいかがだったでしょうか?
コメント、評価を頂けると喜びます。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第5話

はい、第5話です。
(前書きネタは今回も)ないです。

では今回もごゆっくり、見ていってください!


あの日から数日後、俺たちはやっと、最寄りの基地へとたどり着くことが出来た。

着いた時は驚かれたが、今は何とか食料などを貰い、やっと一息つくことができるようになった。

やっと休める、そう思った矢先、この基地のリーダーらしき男に呼ばれ、俺たちはそのまま、別の基地に移動となった。

まだ移動には乗り物を使えたのでマシだったが、その別の基地に着くと、「今日からはこの基地で過ごせ」と、一言だけ言われ、男は中くらいの木箱を置いて、去っていってしまった。

 

呆然としながらも言われてみた基地を見てみるが、どう見ても「洞穴に基地としての設備をつけました、はいそれだけです!」と言った感想が正しい場所だった。

まだ洞穴に入ると違うかもしれない、そんな希望を頼りに洞窟へと入るが、いくつかパーテーションがあり、地面に少し布を敷いてその上に布団を敷いただけの、恐らく個室なのだろうという、居住環境もクソもあったものじゃなかった。

今までの基地はたまたま廃村だったので、そのまだいい方の居住環境に慣れてしまっていただけなのかもしれないが、それでもこれは無いだろう。

さっきの基地でもまだベットとかの生活用品があったぞ、そう愚痴りたくなるが、愚痴ったところで変わるわけが無いので、渋々諦めることにした。

 

というか、隊長不在でそもそもどうしろって言うんだ。

生き残りも10数人まで減ってしまったし、この辺りの地形に詳しい訳でもない。

まずは偵察がてらこの辺りを探索するしかない訳なのだが、それを指示する人間もいないとなると、誰かがその代わりを務めるしかない。

 

そこで俺たちは、まずは休憩して体力を回復しつつ、代理のリーダーを決めることになった。

 

「さて、どうする?」

 

「どうする?と言われてもな…とりあえず、この辺の地図すらないんじゃ、決めても何も出来ねぇよ」

 

「ああ、だから偵察しつつ、周囲を調べるしかないんだが…その前に、補給をここでしっかりと受けれるのかって言う問題もある、今までは隊長が何とかしてくれてはいたが…」

 

「そうね、補給がままならないなら、偵察も危険よ」

 

「確かにそうだな…動かずに偵察する方法…か……」

 

そう数人のメンバーで話し合っていると、先程から感染生物に囲まれている、あの時の術士がそっと手を挙げてきた。

 

「……どうぞ、何かあるのか?」

 

「ああ、私は感染生物やドローンを操るのがメインの術士だ、ここは私に任せてもらおう……助けてもらった恩もあるしな」

 

そう言うと、背負っていたバックパックから、一機のドローンとコントローラーを取り出し、配下の感染生物へと指示を出しながら、ドローンで偵察行動を始めた。

 

「このドローンは少し改造されていてな、武装がない代わりに感染生物たちにつけられたユニットを介して周辺の情報を集めることができるんだ」

 

「おお…そんなことが出来るのか」

 

「ああ。…そうだ、まだ名乗っていなかったな、私はアイラ、コードネームはアイリィだ」

 

そう言って、術士は仮面とフードを外して顔を見せてきた。

 

「えぇ!?女だったのか!?てっきり男かt

 

「なんか言ったか?」

 

いえ、ナンデモアリマセン」

 

そうアイラと名乗ったフェリーンの女術士は、男と勘違いして来ていた男の顔の近くにアーツを放ち、黙らせていた。

……なるほど、男に間違うのは地雷か。

俺も男かと思ってたから危うく死にかけるところだった。

いや、言われてみれば声は女性そのものだし、それで気づけよと言われればそれまでなのだが。

それに仮面を外すと確かに可愛らしい女の子だ。

 

まあそれはそうと、偵察もできて地図も作れるとあれば、俺たちは楽もできるし、補給が来るのを待つこともできる。

…それはそうと、あの男が置いていったあの木箱は何なのだろう。

補給物資にしては少なすぎるし、無線機などの用品ならば逆に補給物資はどうなっているのだと聞きたい。

まあとりあえず開けてみない事には中身はわからないので、俺が代表して開けてみることになった。

 

「よいしょ…っと」

 

そう言いながら木箱の蓋を外し、中身を見てみると、どう見てもこの人数だと必要最低限にも程がある量の、補給物資が入っていた。

この量だと、食料は2週間分あればいい方だろう。

もしやほぼ寄越さずに自分たちだけで独占する気なのだろうか、そう思ってしまうほどだが、言いに行こうにも時間がかかり過ぎるので、それも無駄だろう。

 

それよりも、この辺に村でもなんでもいいから物資が手に入る場所があればいいのだが。

そう思いながら全員で物資を片付けていると、アイラが、

 

「私のオリジムシの一体が村を見つけた、ここから近いぞ」

 

と、言ってきた。

 

「本当か!?どのくらいの規模だ?」

 

「小さな村だ、私たちより少し多いくらいの人数しかいないだろう」

 

「そうか…なら物資の補給には向かなさそうだな」

 

「ああ、また何かあったら伝える」

 

そう言って、アイラはまたコントローラーの画面を見つめ始めた。

 

しばらくして物資の片付けも終わると、辺りは既に夜になっていた。

源石で動くランタンに源石をはめ込み、辺りを照らし、俺たちは晩御飯を食べることにした。

…と言っても、今まで食べていた様なものではなく、ただのレーションなのだが。

 

「はぁ…まさかこんな事になるなんてな」

 

「うん…まあ生きてるだけでもいい気がするけどね、お兄ちゃんもこうして元気に生きてくれてるし」

 

「ああ、あの時天災が来なければ危なかったけどな」

 

「だね…でも急だったよね、天災が来るの」

 

「まあ自然現象だからな…雨が降るのと同じなんだろう」

 

そんな会話をしながらレーションを食べ終え、俺たちは無言のまま、これからどうなるのだろうと、物思いにふけっていた。

そんな中、1人のレユニオン隊員が、

 

「…なぁ、とりあえず次の隊長を一旦決めなとかないか?もちろん、隊長が死んだなんて証拠もねぇ、だが今いないのは事実だ、なら統率を取れるやつがいた方がいいんじゃねぇか?」

 

と、言ってきた。

 

「ああ、確かにそうだな…で、誰にするんだ?」

 

そう俺が聞くと、全員が無言で、俺の事をじーっと見てきた。

 

「…え?俺か?」

 

「それ以外に誰がいるんだ、この中で1番戦闘力もあって指揮がとれそうなヤツはお前しかいねぇよ、だから隊長もお前を信頼して地図を渡してきたんじゃねぇのか?」

 

そう言われ、俺は何も言い返せず、困惑していた。

だってそうだろう、俺はまだ新人で、指揮をとった事もないのだ。

そんなヤツを隊長にしたところで、何も出来ないのがオチじゃないのか。

そう思っていると、

 

「私も、リョウさんが隊長になるのには賛成です、だって優しいですし、人望もありますし」

 

と、シロに言われた。

それを皮切りに、他の隊員たちも、同じように賛成してきた。

こうして、急ではあるが、俺はレユニオンの一小隊の隊長として、活動していくことになった。




コイツらよく食料と水もったな…って書いてて思いました。
細かいことは気にしては行けないんです。

この5話から次回の6話の間は時間軸が違います。
予め知っておいてください。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第6話

第6話です。
今回から少し時間軸が飛びます。

では今回もごゆっくり、見ていってください。


それは、1年後の、これもまたまた暑い日の事だった。

 

「今回の補給は…大して代わり映えしねぇなぁ」

 

そんなことを言いながら、俺は届いた物資を整理し、みんなと協力して倉庫へとしまっていた。

この基地に着いてから、さっきも言ったように、既に約1年が経過した。

俺たちは今、可能な限り周辺の村に協力体制を取ってもらい、略奪をしなくて済むようにして生活している。

 

俺たちは戦闘集団という事で、周辺の猛獣の討伐及び加工、村の護衛などを対価として支払い、逆にそれに対して食料や龍門幣などを支払ってもらっている。

もちろん、感染者という事がバレないように、まだ体表にオリジニウムが出てきていないヤツに交渉をしてもらい、レユニオンという名前も極力出さないようにしている。

 

そう平和に過ごしていたが、片付けをしている時にその平和は無くなりそうになってしまっていた。

上層部が俺たちの小隊を含む中隊を使い、大規模な反乱を起こす予定だと、知らせが届いたのだ。

その方法はと言うと、現在とある感染者の集団に対して工作員を派遣し、それによって反乱意識を高め、そこにレユニオンが加わり、大規模な反乱を起こす。

そういう、感染者の差別による怨みや憤りを使い、我々の事を差別して来たやつに思い知らせてやろうという、いかにも安直な考えだった。

俺はもちろん反対したが、他の小隊はやる気らしく、すぐにその意見は跳ね除けられた。

 

作戦は3日後、それまでに指定された座標へと到着するようにと言われ、俺たちは必要物資をまとめて協力体制を取ってくれている村へとしばらく離れると伝えてから、その座標へと全員で向かい始めた。

 

やがて夜になり、その日はその場で野宿する事になり、アーツを使って火を起こし、糧食を温めて各々食事を摂っていた。

代表で数名交代交代に見張りをつけて就寝する事にし、俺も木にもたれかかって、軽く仮眠を取っていた。

やがてその後に何かがあったという訳もなく朝になり、また目的地へ向けて行軍を再開した。

 

その後は休憩を挟みつつ、目的地へと向かい、夕方になる頃に目的地の森の中へと到着することができた。

到着すると、そこには俺たちと同じような格好をした、レユニオンの仲間が、ざっと見て50人を超えそうなほど、そこにはいた。

 

「俺は今回の指揮官に挨拶してくる、みんなは休んでてくれ」

 

そう言い、俺は建てられている簡易テントへと向かい、指揮官へと挨拶へと向かった。

 

「第23小隊、隊長、コードネーム『タチバナ』以下14名、到着しました」

 

「了解、明後日は頼むぞ」

 

「…了解。念の為、作戦時におけるルールを確認してもよろしいですか?」

 

「そんなの決まっている、非感染者には容赦はするな、敵対するやつは徹底的に殺せ、以上だ」

 

「……了解。ではこれで、失礼しました」

 

そう言い、俺は簡易テントから出て、仲間の元へと戻り、はぁ…とため息をつきながら、倒木へと座り込み、頬杖をついていた。

 

「どうしたのお兄ちゃん?元気なさそうだけど」

 

そうイツキが隣に座り、聞いてきた。

 

「あぁ…とことんまでこのレユニオンって組織は非感染者に厳しく当たるんだなって思ってただけだ、元は同じ非感染者なのにな」

 

「そうだね…でも、非感染者の人達が感染者にしてきたことを考えると、それも仕方ないんじゃないかな……」

 

「確かにそうなんだが…なんとかして共存できないもんなのか…?いがみ合うよりはお互いに協力し合ってオリパシーに立ち向かった方がいい気がするが…」

 

「まあ…そうだけどさ、それも難しいんだよ、きっと」

 

そう話していると、仲間のうちの1人が、何かがパンパンに詰まった袋を持って、

 

「まあそんな事気にしてたってキリがないっすよ、そんな事より、村のヤツらから貰ったナッツでも食べましょ、全員分ありますよ」

 

と、嬉しそうに言ってきた。

 

「ああ、ありがたく貰うとするか」

 

そう言い、いい感じに塩分の効いたナッツを食べながら、俺はこれからのことを考えていた。

今は良くしてくれている村のヤツらも、俺たちが感染者とわかれば、縁を切ってくるかもしれない。

だが、このままいくと、まだ鉱石結晶が体表に出ていないやつも、そのうち出てきてしまうだろう。

レユニオンの掲げるように感染者の扱いが良くなるのは、きっと俺たちが生きている間には無理だ。

ならば、俺たちの今の生活環境だけでも良くしたいものだが、他にいい場所もないし、感染者に良くしているという組織も知らない。

たまに『ロドス・アイランド』という組織の名前を聞くが、レユニオンの間での評価はあまり良くない。

聞いた噂だけで判断するのもアレだが、今のところ候補には上がるほどでもないだろう。

 

そんな先の事より、今は2日後の作戦をどうしのぎ切るかだろう。

極力死傷者を敵味方問わずに出さずに終わらせたいが、他の小隊や指揮官がそれをさせてくれそうにない。

かと言って手を抜いて戦えば、それこそ反感を買うどころか、命の危険だってある。

ならば本気で行くしかないが、それだと平和に暮らしていたはずの一般人に死傷者が出てしまう。

ならば無駄な攻撃はせず、防戦一方で戦うしかないのだが……

 

そう考えていると、全員俺の思っていることを悟ってくれたのか、無言で頷いたり、サムズアップをして返してくれた。

アイラのオリジムシたちもぴょんぴょん跳ねながらふっしゅふっしゅ鳴いているのを見るに、彼ら?も察してくれているようだ。

 

「よし!明日は作戦開始に向けて全員で作戦会議だ!」

 

「「「了解!」」」

 

そう一致団結したところで、俺たちはその日を終えた。

 

~~~

~~

 

次の日、指揮官から作戦地域の地図を貰い、それを囲んで作戦会議をしていた。

どうやら、この辺はレム・ビリトンの管轄する銃器製造工場とそこに務める人々の住居があるらしく、恐らくこの工場から銃器を鹵獲するのが今回の作戦の大元の目標でもあるのだろう。

まだそこを占拠しろと言う命令は来ていないが、恐らく明日の総員ブリーフィングで伝えられるはずだ。

 

銃器製造工場があり、そこに務める人々がいるということは、銃器による抵抗が考えられる。

弾丸は貴重だが、自衛用に銃器を持たされている可能性もなくはない。

持たされていないなら、威嚇しながらゆっくりと近づくだけで、武装している俺たちからは逃げていくはずだ。

問題は他の小隊の動きだが、地図を貰いに行った時に、戦力は随時投入していくと言っていたので、そのタイミングによっては、俺たちは他の小隊に関わることはなく、先鋒として突撃か、後始末すればいいだけだろう。

 

そう考えているうちに、やがて、簡素なレーションが、配給として振る舞われた。

それを食べながら俺は地図を眺め、地図を把握し、作戦を立てていた。

今いる人員は俺を含め、医療オペレーター2、前衛オペレーター3、先鋒オペレーター3、狙撃オペレーターが2、重装オペレーターが2、テイマーのアイラを含む術士オペレーターが2人だ。

そこに戦力としてオリジムシが3体と、偵察用ドローンが一機。

後方支援に当たるオペレーターが4人なのに対して、防衛に当たれる重装オペレーターが2人しかいないのを考えると、先鋒オペレーターを防衛に回すしかなくなるだろう。

…となると、攻撃に当たれるのは最大でも6、防衛を固めたいので4~5人と言ったところだろう。

オリジムシたちは機動力がないので、攻撃や防衛にも向かないため、偵察や牽制が主な任務となりそうだ。

 

そう方向性が決まったところで、俺たちは剣や槍の刃の先に布を巻き、宿営地とは少し離れたところで、連携の練習をし、明日に備えることにした。




暑い日はフラグ(適当)

正直感染者でも体表に出てきてない人って言われないとわからないと思うんです。
そんなことよりクルースちゃん可愛い。
幸せに生きて。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第7話

(書くことは今回も)ないです。

では今回もごゆっくり、見ていってください!


作戦決行日になった俺たちは、早めに起きて、集合がかかるまで、軽く動いて体を温めていた。

それを冷ややかな目で周りのヤツらは見てきていたが、寧ろ動く前に体を温めねば、充分な動きができないことや怪我をすることを知らないのだろうか。

そんなことを思いながら、俺は柔軟体操やジョギングなどで体を慣らし、集合がかかるのを待っていた。

 

やがて集合がかかり、俺たちは1列に並び、指揮官から、今回の作戦要項を伝えられた。

作戦要項によると、やはり銃器製造工場を占領し、我々の戦力を上げることが狙いのようだ。

……というより、射撃経験も戦闘経験も充分とは言えない俺たちに、まともに銃を使える人間などいるのだろうか。

いや、もしかしたら周りのヤツらは戦闘経験豊富で、銃火器も手足のように使えるスペックがあるのかもしれないが……

まあ、そんなヤツがいるならば、中隊規模で襲撃しなくても、いくつかの小隊だけで済みそうなものだ。

 

そう思っていると、工場の方から、銃声と叫び声が聞こえ始めた。

恐らく、例の感染者の集団が攻撃を始めたのだろう。

そう思っていると、やはり俺たちとは違う小隊に出撃命令が下ったので、始まったことは確定のようだ。

 

それを知り、俺たちもいつでも行けるように準備をしていると、指揮官が、俺たちは最後に突撃する小隊だと言ってきたので、俺たちは無闇矢鱈に殺生をしなくても済みそうだと思いほっとする。

俺たちが参戦する頃には終わっていて欲しいが、果たしてどうなることだろうか。

そう思いながら座り込み、剣をいじって暇を潰していると、隣に杖を抱えたイツキが座ってもたれかかってきた。

 

「……どうした?不安なのか?」

 

「……うん、ちょっとね」

 

そうイツキは言うと、にへらっと笑ってきた。

 

「無理しなくていい、怖かったらみんなに守ってもらえ、もちろん俺も守ってやるからな」

 

そう言い、俺はイツキの頭にポンと手を置き、安心するようにそのまま撫でてやった。

やがて指揮官から出撃命令が下り、俺たちは陣形を整え、目的地へと向かった。

 

 

工場へ着くと、辺りには怪我人や死人、ボロボロになった機械や住居などで溢れかえり、まるで戦争の後のようになっていた。

俺たちはその光景に圧倒されながらも、陣形を組みながら進んでいっていた。

やがて中心部まで到達すると、曲がり角の方から、何やら叫び声が聞こえてきた。

角からそっと覗き込んでみると、そこには、数人のコータス族の作業員らしき人々と、数人の協力して来ている感染者組織の人間の姿があった。

 

「くそっ…!なんなんだよお前ら!俺たちが何をしたって言うんだ!」

 

「うるせぇ!お前ら非感染者が俺たち感染者にしてきたことを思い出せ!俺たちを差別してきやがって!死ね!」

 

そう彼らは言うと、作業員たちを攻撃し、次々に殺していった。

 

「ひ、ひぃっ、やめてくれ、殺さないでくれ!」

 

そう命乞いするが、彼らはやめることなく、作業員を最後の一人まで殺してしまった。

俺はその光景を見て、どうしてここまでの無差別的な憎悪を持つまでに至ってしまったのだろうと思わされてしまった。

しかし、俺たちにはそれを止めることも、やめさせることもできないことは、火を見るより明らかだ。

もし止められるならば、もうこのレユニオンという組織は存在していないだろう。

 

そう思いながら、俺たちはその場を離れ、他の場所を警戒することになった。

やがて街の郊外までたどり着くと、作業員が数人、身を寄せあって隠れていた。

 

「く、来るな!お前らもアイツらの仲間なんだろ!?」

 

そう言いながら、1人の作業員が、銃を構えて、こちらを威嚇してきた。

俺はどうしたもんかと思いながら、ひとまずその場で、作業員を様子見していた。

やがて様子見しても埒が明かないと思い、俺は全員に合図して、武器を納めさせた。

 

「誰か怪我人はいないか?いないなら早くここから逃げた方がいい、もうすぐ他のやつらも来ちまう」

 

そう俺は言うと、信じられないと言った顔をし、作業員たちは身動きを取らず、ずっとこちらを警戒してきていた。

ならばと思い、重装オペレーターの盾以外の装備を地面に置かせ、俺たちは両手を顔の横に挙げ、攻撃の意思はないと伝えた。

すると、警戒しながらも、作業員たちは移動を開始し、ここから離れていこうとし始めた。

 

「痛っ!」

 

そう1人の女性作業員が、足を庇いながら、その場にうずくまり、動かなくなってしまった。

それを見るなり、イツキとシロが杖を持ち、有無を言わさず、女性作業員へと駆け出してしまった。

 

「ちょ、バカ!今はマズイって!」

 

そう注意したのもつかの間、銃を持った作業員が、2人に発砲しようと、銃を構えた。

俺はそれを止めようと、即座にアーツを使い、小さな結晶を生み出し、その銃を弾き飛ばす。

そんな俺の努力を無視するかのように、2人は女性のそばへ行き、アーツによる処置を始めていた。

 

「これでよし…と、大丈夫ですか?」

 

「は、はい…ありがとうございます」

 

「さ、早く逃げてください、私たちはできる限りこちらへと我々の味方が来ないようにしますから」

 

そう言い、2人はやりきった感満々でこちらへと戻り、何食わぬ顔で陣形を組み直した。

 

「……?どうしたの、お兄ちゃん?」

 

「私たちの顔になにかついてますか?」

 

そう2人がとぼけ、俺ははぁ…とため息をつきながら、2人の優しさと無謀さに感服していた。

 

 

やがて、俺たちレユニオンは工場と居住区を占拠し、大量の銃器とその弾薬類を鹵獲することができた。

その戦利品は俺たちにも回り、狙撃オペレーターの武器がクロスボウとハンドガンという自体になった。

俺もハンドガンと弾薬を貰い、慣れるまで数発、練習で射撃してみる事にした。

 

「心を落ち着けて…腕を銃の内部に繋げるイメージで正確に弾丸の装填状態を感知…そして撃鉄を活性化させて…撃つ!」

 

そうぶつぶつ呟きながら、銃の引き金を引くと、パンと乾いた音とともに、銃弾が、マトへと飛んで行った。

 

「ふぅ…アーツをコントロールして持続させるのが大変だな、弾丸も貴重だし、このくらいにしとくか」

 

そう言ってマガジンを抜いてスライドを引き、薬室から銃弾を抜いて、セーフティをかけ、貰ったレッグホルスターへと銃を収めた。

弾薬も貴重で限りあるし、あまり使うことは無いだろう、そう思いながら、俺は占領した居住区の、俺たちに割り当てられた部屋へと向かった。




銃のシーンは別作品で書いてたりするので専門用語が多いです、すみません()
このアークナイツでの銃の立ち位置は撃針(銃を発射するために必要なパーツ)をアーツで代用してるんだろうな…と思ってます。
あと炸薬の爆発と。
ちなみにあのシーンのセリフはイベント時のリスカムさんがジェシカちゃんに銃を教えてたシーンをモデルに書きました。
わかった人いたりするんですかね……

ちなみに今回は前書きに本編を間違って入れて、本編に後書きを間違って書いてました。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第8話

前書きのネタはないですが言わせてください……

カーディちゃん可愛いから昇進絵ください!!!!!!

はい。
行動予備隊A4はいいぞ。

では今回もごゆっくり、見ていってください。


占領した次の日、俺たちは誰かの家を使わせてもらっている事に罪悪感を抱きつつも、快適な生活を送っていた。

俺たちは合計で2つの部屋を与えられたので、男女にわかれて使っているのだが、男が8人いるのにも関わらず、あまり狭く感じない。

イツキやシロにも聞いてみたが、女子もそんな感じらしく、罪悪感はあるが快適だと言っていた。

もしこの男女比が偏りすぎていたら、多分もっとキツかったのだろう、そう思いながら、俺はベランダから周りを見渡していた。

見渡してみると、楽しそうにサッカーボールで遊んでいるレユニオンの他の小隊のメンバーや、今回の主力となった感染者の集団の一員がいたり、なんとも平和な世界が広がっていた。

 

唯一心残りなのが、元々ここに住んでいた人々の事だ。

かなりの人数が殺されてしまったが、それでも俺たちが逃がした数人以外にも、他に逃げた人々がいるはずだ。

その人々がどこへ行き、今何をしているのかと思うと、心の底から申し訳なくなってくる。

それは俺たちの小隊員全員がそう思っているらしく、先程から軽く雑談はするものの、部屋にこもって無言の状態が続いている。

 

レユニオン隊員にしてはうちの小隊員は全員非感染者に大きな怨みを持っている訳ではなく、心優しい人の集まりなのだと思うと嬉しくなるが、こんな組織に身を置かねば生きていけないという現実に嘆くしかない。

 

他にここよりいい組織があればそこに逃げ込むのだが、感染者に良くしてくれる組織など聞いたことがなく、やはりこの組織にいるしかないように思える。

しかし、食事は何とかならないものだろうか。

他の小隊に聞く限りは、毎日のように配給のマズいレーションを食べさせられ、配給内容がいい時でもカピカピに硬くなったライ麦パンと味の薄いスープだ。

パンはスープにつけて食べないと硬くて食べられたモノじゃないし、スープなんかもただ味の着いた水らしい。

ネクロが隊長をしていた時は何故あそこまでいい物が食べられていたのだろうと疑問に思うが、恐らく裏で上層部に掛け合ったか、極秘裏に周囲の村と俺みたいに協力関係を結んでいたのだろう。

 

俺たちは周りの村のお陰で小隊だけでも食材がある時は、美味しいスープや炒め物が食べれている。

俺たちは感染者ということを隠しながらだが、面と向かって話し合えば何とかなる時があるのではないだろうか。

 

そう思いながら、俺はひとつ大きなため息をつき、何か面白い事でもないかと、部屋を軽く漁ってみることにした。

さすがに金目のものをパクるのは気が引けるので盗らないが、いくつか面白いものが見つかった。

そのうちの一つに、とある事が書かれた、新聞紙があった。

そのとある事と言うのも、こことは別の場所で、感染者の集団が反乱を起こし、小さな街がひとつ乗っ取られ、それをロドス・アイランドがその町を管轄する移動都市と協力し、奪還したという新聞記事だった。

 

そこにロドスの名が出てくるとは思わず、綺麗な2度見してしまったが、本当にロドスとはどういう組織なのだろうか。

ここに書いてある限りでは、鎮圧隊により鎮圧したとあるが、この鎮圧隊は、土地を管轄する移動都市のものでロドスがバックアップについたのか、それともその逆なのか…

注釈には『ロドス・アイランドは現在、国家や組織、あるいは個人が遭遇した感染者問題に応用できる医療プランを研究しており、キャリアや感染の有無を問わず各国の有能な人材を集めている。』とあるが、ならば何故、レユニオンからは『感染者を救うとあるが感染者に武器を向ける、自身の利益しか考えない組織』として知られているのだろうか。

 

そしてもう1つ、記事にはこんな事が書かれていた。

『ウルサス帝国の都市の一つ、チェルノボーグが、感染者テロ組織、"レユニオン"によって壊滅、同時期にチェルノボーグにて天災が発生、生存者は絶望的か』

それを見た俺は、この組織がした、事の重大さを思い知らされた。

そして、世間一般的には、このレユニオンという組織はテロ組織と認知されているということも知り、俺はどうしていいのかわからなくなってしまった。

 

きっと、この組織にいても、感染者に対する対応は変わらない。

それどころか、この組織のせいで、感染者は危険だという認識を持たれる可能性だってある。

そうなってしまったら、今より感染者に対する風当たりは強くなるだろう。

そんな事はあってはならないはずだ。

だが、このレユニオンという組織は、暴力で解決する事しか考えていないように思える。

しかし、俺には何も出来ないのが現実だ。

残念だが、諦めるしかないだろう。

 

そう思いながら、俺はまた大きなため息をつき、ソファーに座って、テレビを見ることにした。

テレビを見ているとやはり、チェルノボーグの事や、俺たちが占領した、この街のことも報道されており、次第にやるせない気分になっていった。

かと言って、占領したので帰りますねと言って帰らせてくれる訳もなく、警備のためと言って残らされているのが現実だ。

 

そんな事を思っていると、インターホンが鳴り、誰かが来たことを告げた。

指揮官や他の小隊のヤツらではないだろうと思いながらドアを開けると、そこにはイツキとシロがいた。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

「あのね…テレビ、見た?」

 

そうおずおずとイツキが言い、俺は何を言いに来たのかを悟った。

恐らく、俺が今見ていたニュースでも見てショックを受けたのだろう。

 

「ああ、チェルノボーグの件か?」

 

「うん…いっぱい死傷者が出たって…あと、私たちの事をテロ組織、って…」

 

「仕方ない、実際俺たちだってひとつの街を武力を行使して占領してるんだ、普通に考えたら立派なテロさ」

 

「それは…そうだけど……」

 

そう言い、しゅん…と、イツキは耳としっぽを下げた。

それを見て罪悪感が芽生えた俺は、何か楽しいことでもないかと考えた。

そして、先程見つけたモノを思い出し、俺は2人に待ってもらい、それを取りに行った。

 

「ほら、これでもやって気分転換しようぜ、技のやり方とかが載ってる本も見つけたから、しばらくは遊べるはずだ」

 

そう言い、俺はプラスチック製のヨーヨーを手渡した。

しばらく2人の頭の上にはハテナが浮かんでいたが、俺が指にストリングをつけて実演してみせると、本人たちも納得したようで、やってみたいと言ってきた。

 

「えーと…こう?」

 

「ああ、そのまま腕を振り下げて…ほら出来た」

 

「やりましたねイツキさん!上手ですよ!」

 

「うん!」

 

そう盛り上がる2人を見てほっとしながら、俺は2人に本を見つつ、ヨーヨーを教えてやっていた。

それをしばらく楽しんでから、俺たちは休憩がてら、その辺を散歩してみることにした。

 

居住区を抜け、作業員向けの小さなショッピングモールへと向かうと、そこは最早廃墟のように荒れ果て、数人のレユニオン隊員がたむろしていた。

中には売り物であろう食品を飲み食いしていたり、物品で遊んだりしている者も居たりして、どう見ても無法地帯そのものだった。

それを見た俺たちは、絶句しながら、その場から逃げるように立ち去った。

 

 

 

~~~~

~~〜

~~

 

ウィィンと音を立てて執務室のドアが開き、1人の少女が入ってくる。

 

「準備はできましたか?」

 

少女はそう、真剣な面持ちで、執務室の外を見ている、私へと聞いた。

 

「…ああ、龍門へと向かう前の前哨戦と行こうか、アーミヤ」

 

そう私は言うと、PRTSと書かれたホログラフウィンドウを閉じた。

 

「はい、行きましょう―――"ドクター"。」

 

そう言われ、私は軽く頷き返し、私たちは戦場へと向かった。




ヨーヨーネタを入れた理由は某元レユニオンの特殊オペレーターを加入させた時に書いたからです。
ハイパーヨーヨー再販はよ。

という訳で最後に出てきたのは一体誰なのか、カンが良くても悪くても名前でお察しでしょうがあの方々です。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第9話

今回はこの一言を言わせていただきます………

ロープちゃんいつか幸せに一人の女の子として生きて(懇願)

はい。(はいじゃないが)
では今回もごゆっくり、見ていってください。


占領してから3日経ったある日、俺たちは窮地に陥っていた。

予想はできていた事だが、この街の奪還作戦が展開されたらしく、幾度も攻撃を受けていた。

各小隊は指揮官の命令に従い、敵の本陣へと進撃を続けているが、地形を上手く使った敵の配置により、簡単にやられてしまっていた。

 

『指揮官より21小隊!次はお前たちが攻撃しろ!前のヤツらよりも上手くやれよ!』

 

そう無線機から指揮官の声が聞こえ、俺は呆れのため息をついた。

 

「23小隊、タチバナより指揮官、戦力の随時投入より一斉投入の方がいいと思われる、如何か?」

 

『黙れ!一小隊のリーダーだからと俺に指図するな!一小隊づつ送り込むのが戦闘の定石だろう!ふざけているのか!』

 

そうわざわざ助言してやったのにも関わらずすぐに跳ね除けてくる愚かさにもう言葉も出ず、俺は何も言い返さず、自分の小隊を指揮する事に専念することにした。

 

「小隊各員、陣形を崩すなよ!敵は少数だ!あの時に比べれば生き残れる!」

 

「「「了解!」」」

 

そう小隊に激を飛ばしながら、俺たちは進撃を続けていた。

 

そんな、もう少しで敵がいるとされる区域に到着しようとしている時だった。

曲がり角に差し掛かり、しっかりとクリアリングしようと顔を出そうとしたその時、ほんの鼻の先を、斬撃が通り過ぎていったのだ。

 

慌てて飛び退き、間合いから離れると、そこには、赤紫色のロングヘアのフェリーンの少女が、再度剣を納め、居合の構えを取って来ていた。

小隊を後方に下がらせ、俺も剣を構えて警戒していると、少女は縮地にも似た速度で距離を詰め、一瞬で俺を間合いに捉えてきた。

 

「クソっ!速い!」

 

そう悪態をつきつつも、咄嗟に太刀でガードし、威力を殺しつつ後退して、再び間合いから離れる。

そうしている間にも再び距離を詰められては攻撃され、それを防いでまた距離を取るをしばらく繰り返していると、小隊の方から、アーツと矢による支援攻撃が飛来してきた。

 

少女はそれを回避するために俺から距離を取り、やっと俺の防戦は一時的に終わった。

それについてホッとする間もなく、俺に向かって、遠距離からアーツと矢が飛来し、回避行動と防御を取る。

そう間一髪の所で防ぎ切ると、そこから間髪入れずにフェリーンの少女からの斬撃が襲いかかり、いずれ押し負ける事は明白だった。

かと言って他の小隊員に手伝ってもらおうにも、ここまで攻撃を近距離でされると、俺にまで攻撃が当たりかねないため、誰も攻撃できずにいた。

 

そこで俺は1度全力で剣をパリィし、ノックバックしている間に、小隊の方へと、バックステップで退避した。

そして小隊の先鋒オペレーターと息を合わせ、4人で突撃する。

しかし、遠距離から飛んでくるアーツと矢の回避と防御のせいで、結局1対1の状況へと持っていかれた。

しかし俺は全力で、術士の援護を受けながら、そのまま突撃を続けた。

そして太刀を振る寸前に刃から峰へと向きを変え、峰打ちとなるように、できる限りの手加減をして振り抜いた。

 

その太刀が直撃しようとした瞬間、右から、イツキによく似た、ゴーグルをつけたペッロー族の女の子が、盾で弾き返してきた。

 

「いったぁ……手がジンジンするよぅ……メランサちゃん!大丈夫?」

 

「うん、ありがとう、メイリィ」

 

そう2人の少女は軽く話すと、2人揃って、俺たちに向かって突撃してきた。

 

「クソっ!こちら23小隊!撤退許可を願う!」

 

そう無線機に呼びかけるが、ザザー…と砂嵐が聞こえるだけで、返事はなかった。

恐らく、既に壊滅したか撤退しやがったのだろう。

つまり、俺たちの選択肢はここで死ぬか、この子たちを倒して逃げるかしか残されていない。

しかし、この子たちを倒すことは至難の業だろう。

 

せめて俺が時間稼ぎをしている間に全員撤退して欲しいが、今も遠距離攻撃が降り注ぎ、その防御に精一杯なのを考えると、俺だけで時間稼ぎしても無駄に終わりそうなものだ。

 

そう考えているうちにも、2人の少女は途切れることなく、俺に攻撃を仕掛けてきている。

まさにジリ貧と言ったところだろう。

ずっと防御をし続けているが、隙を見つけて攻撃しようにもこれといった隙が連携のせいでなく、次第に体力も尽きそうになって来ていた。

 

なんとか距離を取り、軽く息を整えていると、そんな俺に向かって、アーツと矢が飛来してきた。

それを太刀でパリィしようとすると、矢は弾けたものの、アーツが着弾した瞬間に爆発し、俺はその爆風で吹き飛ばされてしまった。

 

「さっきから飛んできてたアーツとは違う…!?」

 

そう驚愕していると、今までよりも早いペースでアーツと矢が飛来し、今度はそれを防御することに必死にならざるを得なかった。

しかし、時折飛んでくるアーツの1つに爆発による範囲攻撃が備わっており、先ほどよりも体力の消費が激しくなっていた。

 

気がつけば小隊の位置まで後退させられ、このままあのアーツを喰らえば、仲間にも被害が来ることは明白だった。

仕方なく俺もアーツを使い、アーツの爆発による黒煙で煙幕を焚き、全力で撤退することにした。

しかし、撤退しようとすると、挟み撃ちのように進撃してきた青い髪のクランタ族の槍使いの女の子と、オレンジ色の髪のペッロー族の盾を持った女の子に背後にまわられ、退路を絶たれてしまった。

完全に袋のネズミである。

 

だが、俺たちも死ぬわけにはいかない。

挟まれたと言っても、希望がない訳では無いはずだ。

何か手はないかとあれこれ考えるが、これまでの防戦で体力を消耗しているので、まともに考えがまとまらない。

そうしている間にも、攻撃は続き、ついに小隊のメンバーに負傷者が出てきてしまった。

 

「クソっ…考えろ…何か方法があるはずだ……!」

 

そう自分に激を飛ばして一生懸命に考えるが、どれも現実味がない作戦しか思いつかず、良さそうな作戦を思いつくことができないでいた。

 

肩で息をしながら、俺は目の前に対峙している敵の動きを見て作戦を練っている時だった。

飛んでくる攻撃を弾くため、太刀を持つ手をグッと握りしめると、刀身が赤く輝き始めたのだ。

それに気づいて驚愕してしまい、ガードがワンテンポ遅れてしまい、覚悟を決め咄嗟に目を瞑る。

 

しかし、痛みを感じることなく、ふと目を開けると、目の前で、オレンジ色の障壁が敵の攻撃を止めていた。

それには敵も驚愕したらしく、驚いた顔を浮かべて飛び退いて行った。

 

ふと太刀に目を向けると、先程と同じく太刀が赤く輝いていた。

恐らく、これがその原因だろう。

効果はいつまで続くかわからないが、逃げるきっかけにはもってこいだ。

 

「よし!全員!俺に続いて全力で走れ!」

 

そう太刀を構えて走り込み、目の前で武器を構え直している2人へと突進する。

そして全力で太刀を振り抜き、迎撃しようと襲いかかってくる攻撃ごと弾き、吹き飛ばす。

やはり俺の思った通りの効果らしく、その間次々に飛んでくるアーツや矢を弾き返していた。

 

これならいける。

 

そう思った時、刀身の輝きは消え、背中から俺の身体に激痛が走った。

その余りの衝撃に吹き飛んでしまい、身体が地に伏せると同時に、俺の意識はそこで途絶えてしまった。

 




戦力の随時投入は(足止めくらいになら)有効な戦術です。
※しっかりとした指揮官なら戦力の随時投入はやめましょう。

という訳で今回はいかがだったでしょうか?
評価、コメント等を頂けると喜びます。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第10話

第10話です。
まさか7月ジャストに投稿が終わるとは思ってませんでした。
今回で書きだめはなくなるのでスローペースになると思います。

では今回もごゆっくり、見ていってください。


俺は、暗い、暗い闇の中にいた。

叫んでも叫んでも誰からの返事もなく、辺りを照らそうにもアーツすら使えない。

装備しているはずの太刀もなく、そもそも俺の体すら、暗くて見えない。

必然的に心細くなり、その暗闇の中を誰かいないかと走り回る。

しかし、足元も当然見えない暗闇の中、俺は何度も躓いて転び、身体中、ボロボロになるのを感じていた。

 

もう諦めよう。

そう思いその場でへたりこんでいると、微かだが、誰かが俺の事を呼ぶ声が聞こえた。

俺は飛び起き、声の主を探すが、やはり何も見えない暗闇が続いているだけだった。

しかし、俺を呼ぶ声は続き、次第に大きくなっていった。

 

もしかしたら、声のする方向へと向かうと何かがあるかもしれない。

そう思った俺は、痛む身体にムチを打ち、声のする方向へと一歩一歩、歩み始めた。

声は時折小さくなったりするが、途切れることなく続き、俺を導いてくれているような気がした。

 

やがて声が聞こえなくなったと思うと、パッと目の前で光が放たれた。

眩しさのあまり手で覆い隠しながら見ていると、その光は俺の方へと伸び、やがて包み込むように、辺りが光に満ち溢れた。

 

そこで俺の身体の感覚は消え、感覚が戻ったと思うと、どこかに寝かされている様に感じた。

ゆっくりと目を開けてみると、見慣れぬ白い天井…そして、ピッ…ピッ…と音を立てて俺の心臓の鼓動を表示している機械と点滴、そして何よりも愛する、妹の姿があった。

 

「お兄……ちゃん?お兄ちゃん!?やった!お兄ちゃんが起きた!」

 

そう言い、イツキは俺へと飛びかかり、一生懸命に抱きしめてきた。

 

「イツキ…おはよう、心配かけたみたいだな」

 

「うん…!本当に、本当にまた目を覚ましてくれてよかった…!」

 

そうイツキは涙ながらに言うと、「ちょっとまってて!先生呼んでくる!」と言って、部屋から飛び出してしまった。

 

待っている間に身体を起こそうとするが、力が上手く入らないわ身体が痛いわで、起き上がることができなかった。

仕方ないのでそのまま寝転がって待っていると、ドタドタと何人もが走ってくる音がし、やがて部屋のドアが勢いよく開けられた。

 

「隊長ォ!起きたって本当ですかぁ!?」

 

そう言い、緑色の髪に真っ黒な肌をしたザウラ族の少年が入ってきた。

俺はそれを見て固まっていると、後ろからゾロゾロと、どこかで見覚えはある気がするが分からない人達が入ってきた。

 

「イツキとシロとアイラは分かるが…ほかはどちら様…?」

 

そう言うと、全員やれやれと言ったような表情を浮かべてから、白いフードを被り、仮面をつけて見せてきた。

 

「レユニオン第23小隊!全員無事です!」

 

そうザウラ族の少年は言い、全員で敬礼をして見せてきた。

 

「……ああ!お前らか!?仮面とフードを取ったのを見たことないから誰かと思ったぞ……」

 

「でしょうね、俺らも最初そんな感じでした」

 

そうザウラ族の少年…レオンは言うと、みんなの後ろの方から、小型ドローンを追従させた、リーベリ族の女性が、人混みをかき分けて出てきた。

 

「久々の団欒の中失礼するよ、目覚めた感覚はどうだい?」

 

「ああ…悪くない、ここはどこなんだ?そして君は誰なんだ?」

 

「私はサイレンス。そしてここはロドス・アイランドの医務室。君は我々と交戦した後、気絶してここに運ばれたんだ」

 

「ロドス…アイランド……!?」

 

そう言い、バッと飛び起きようとするが、やはり身体中が痛み、起き上がることができなかった。

 

「警戒するのも無理はないさ、1度は敵対してたんだからね…でも無理しない方がいい、君はアーミヤのアーツに貫かれて重症を負い、約3ヶ月、眠りについていたんだから」

 

「3ヶ月…!?嘘だろ?」

 

「残念ながら本当だよ、君も薄々気づいているはずだ、だって筋力の衰えが激しいでしょう?」

 

そうサイレンスは言うと、俺に繋がれた機器を見てなにやらチェックをしてから、こちらを見てきた。

 

「君はこの子たちのリーダーなんだろう?なら、後でドーベルマンが尋問に来るはずだ、その前に今の血中源石濃度を測るために採血させてもらうよ」

 

そう言うと、スっと拒否権はないといったふうな目をして、注射器を片手に詰め寄ってきた。

そして逃げようにも逃げれない身体だと言うことを悟られたのか、無理やり腕を掴んで、採血できる血管を探して、そこを殺菌してから、問答無用で採血してきた。

 

「これでよし…じゃあまた様子を見に来るから、無茶はしないでね。貴方は患者なんだから」

 

そう言うと、サイレンスは部屋から去り、どこかへと行ってしまった。

 

「ここが…ロドス……か。つまり俺たちは捕虜って訳だ」

 

そう俺が言うと、みんなが笑いだし、俺は頭の上にハテナマークを浮かべていた。

 

「お兄ちゃん、私たちが本当に捕虜なら、こんな立派な医務室にお兄ちゃんいないし、なんなら私たちも牢獄に入れられてると思わない?」

 

そうイツキが言い、確かにそうだと思ったが、捕虜を丁重に扱っているだけという可能性もありえる。

そう思っていると、イツキが、

 

「ここの人たちはね、私たち感染者にも優しいし、適切な治療をしてくれるんだよ、ご飯も美味しいし、フカフカなベッドでも寝れるし…何も悪いことはないよ」

 

と、言ってきた。

 

「……そうか、でも、なんで敵だった俺たちにそこまで?普通そこまでしてくれないだろう?」

 

「それはね…そう、3ヶ月前、お兄ちゃんが倒された時まで遡るんだ」

 

そうイツキは言うと、理由を話し始めてくれた。

 

~~~

~~

 

「ガバッ……」

 

そうお兄ちゃんは血を吐いて吹き飛び、その場に倒れてしまった。

私はみんなに隠れていて上手く見えなかったが、建物の屋上から、黒い、源石のようなアーツが飛んできて、お兄ちゃんの身体を貫いたことだけは、嫌という程に、見なくてもわかってしまった。

 

「嫌…嫌だ、お兄ちゃん?お兄ちゃん?!返事してよ!ねぇ!」

 

そううつ伏せに倒れているお兄ちゃんに駆け寄って、表向きに起こすが、お兄ちゃんは目を閉じたまま、そっと息をするだけで、身体から流れる大量の血が、このままだと死んでしまうことを、医療を聞きかじっただけの私に、無慈悲にもその現実を突きつけてきた。

 

「そ、そうだ、早く医療アーツを…!」

 

そう自分に言い聞かせ、杖を取ってアーツを発動するが、血は止まらず、傷口も一向に塞がろうとしてくれなかった。

シロも来てくれて一緒にアーツを使い、止血を試みるが、やはり私たちの技術では、治癒を試みることはできても、無駄だということを思い知らされた。

 

「あんたたちの…あんたたちのせいでお兄ちゃんが…!」

 

そう言いながら、こちらを呆然と見ている、敵の前衛オペレーターに、私が唯一できる攻撃アーツを発動し、攻撃しようとした。

 

「イツキちゃん!危ない!」

 

そうシロの声が聞こえたと思うと、建物の屋上から、アーツが飛来してきた。

私はもうダメだと思い、ぎゅっと目をつぶったが、ガンッ!という鈍い音が、目の前から聞こえた。

何故だろうと目を開けると、そこには、味方の重装オペレーターの人が、私を盾で守ってくれていた。

 

「イツキちゃん、無茶しちゃいけねぇ!感情に流されると敵の思うツボだ!」

 

「でも…アイツらがお兄ちゃんを…!」

 

「それはそうだけども!隊長が生かしてくれた命を無駄にしちゃいけねぇ!何としても俺たちは生き残らなきゃいけねぇんだ!それが隊長のためだろう!」

 

「それはそうだけど……!」

 

そう言い争っていると、私たちの目の前に、茶色い髪のコータス族の女の子が歩いてきた。

その後ろにいる敵たちが必死に引き留めようとしているのを聞く限り、かなり上の人のようだ。

武装は持っていないのを見る限り、感染者の術士か指揮官だろうか。

私たちは警戒しながら、その女の子を凝視し続けた。

すると、

女の子は頭を下げ、

 

「すみません。貴女の大切な人なのに攻撃してしまって…貴女が良ければ、今すぐにでもその人を治療させてください」

 

と、言ってきた。

その時、私は何を言っているんだという憤りや、治療して助かるかもしれないという安堵感などの、色々な感情が一気に押し寄せてきた。

本当は断って、今すぐにでもこの人を同じ目に会わせてやりたい、そう思ったが、お兄ちゃんの命には変えられないと、自分に必死に言い聞かせた。

 

「……わかりました、治療をお願いします」

 

そう私が言うと、その女の子は急いで無線で医療オペレーターを呼び、治療を始めてくれた。

 

後で話を聞くと、この時、お兄ちゃんは大量出血で半分以上死にかけていたが、なんとか命は助かっていたとの事だった。

これはもう、お兄ちゃんの生命力がもはや執念のようなレベルで強かったとしか思えない状況だったそうだ。

 

「これでよし…アーミヤ、治療は終わったよ、でも経過観察が必要かな」

 

「ありがとうございます、サイレンスさん」

 

そう医療オペレーターと会話すると、コータスの女の子は、私の方向へと向き、こんなことを言ってきた。

 

「貴女のお兄さんが再び目を覚ますまで、ロドスに身を置きませんか?もちろん、今回の件は私の落ち度です、衣食住はしっかりと保証させていただきます」

 

私はそれを聞き、驚きながらも、お兄ちゃんと一緒にいれるなら…と思い、それを二つ返事で受けることにした。

これで、みんなと一緒にいれなくなるかもしれない、そう思っていると、

 

「イツキちゃんを連れて行くって言うなら、俺たちも連れて行ってもらおうか、イツキちゃんをしっかり守らねぇと隊長になに言われるかわかんねぇからな」

 

と、みんなが言い、コータスの女の子はほんの少し考えてから、

 

「わかりました、その代わり、我々に危害を加えないことを誓ってください…それでいいですね?」

 

と、みんなが着いてくることを認めてくれた。

これ以上に心強いことは無かったが、みんなに酷い目に合わせてしまうかもと思うと、なんとも言えない気分になってしまった。

 

しかし、ロドスに着くとそれは考えるだけ無駄だと理解した。

何故ならば、衣食住がしっかりと整っているどころか、私たちが感染者ということを知ってから、オリパシーの治療まで始めてくれたのだ。

これには心底驚かされたが、あのアーミヤというコータス族の女の子…いや、このロドスという組織自体が相当なお人好しなのだろう。

感染者のために戦い、感染者が道を間違えると刃を交えてでも止める。

それがこのロドスという組織なのだと、私はこの時思い知らされた。




今回のは自分で書いてて上手く行き過ぎでは…?って思いました()
攻撃するならとことん攻撃して殲滅するのが普通だとは思うんですけど主人公生存ルートで行きたいのでこれしか思いつかなかったんですよね…
まあこの話でのアーミヤはお人好しすぎると言うことでお願いします。

ってか妄想の力ってすごいですよね、メインで書いてるやつより話数が伸びてるんですもん。
この調子で安定してネタが浮かべばいいんですけどね……(遠い目)

ではまた次回、お会いしましょう!


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レユニオン第23小隊隊員情報(キャラクター設定)

アンケートでの結果、別枠で欲しいという意見が多かったので別枠で投稿させていただきます。
普通に書くのも面白くないと思ったので少し書類風に元から書いているやつを改変して書かせてもらいました。
1~10話のレユニオンネームドキャラのみとなっています。
全員書くと人が多すぎるんや……

では今回もごゆっくり、見ていってください。


※この書類を他勢力へと閲覧させることを禁ずる。

 

以下レユニオン第23小隊の情報とする。

 

名前:橘 リョウ

コードネーム:タチバナ

性別:男

年齢:18

種族:鬼

性格:無口

一人称:俺

鉱石病の有無:あり

見た目:黒いインナーに灰色のパーカー、紺色のジーパン、額に黒い1本の角

設定:とある辺境の村に住んでいたが、5年前にオリパシーにかかり、村の中で隔離されていた。

両親は7歳の時にオリパシーで亡くしている。

アーツ適正やその他耐性、適性が高く、攻撃的アーツから汎用アーツ、回復アーツまでこなせる潜在能力を持つ。

体表(左上腕)に原石結晶あり。

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】優秀

【戦場機動】標準

【生理的耐性】優秀

【戦術立案】標準

【戦闘技術】優秀

【アーツ適正】優秀

 

補遺:長年地下牢にいたとの事だが、本人の潜在能力及び種族的特徴から近接戦闘に向いていると思われる。

戦場における判断速度が早く、それを補える瞬発力があるため、強力な相手が来てもしばらくは戦えるであろう。

 

―――コードネーム:ゴーストライダー

 

 

名前:橘 イツキ

コードネーム:イツキ

性別:女

年齢:16

種族:ペッロー

性格:明るいムードメーカー

一人称:私

鉱石病の有無:あり

見た目:白のパーカーワンピースにスチールブルー色の髪。モデルとしてはヨークシャーテリア。

設定:リョウの妹。

元は捨て子であり、リョウとの血の繋がりはない。

本人はそんなことを全く気にしておらず、筋金入りのブラコンである。

回復アーツの適正が高い。

頭を撫でられるのが好き。

体表(右ふともも)に原石結晶あり。

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】普通

【戦場機動】標準

【生理的耐性】普通

【戦術立案】標準

【戦闘技術】普通

【アーツ適正】優秀

 

コメント:今まで医療オペレーターが私1人だけだったので、イツキさんが来てくれて助かってます♪

医療アーツの効果も高く、ひょっとしたらしっかりとした訓練を受ければその道に本当に進める気もしたり………

 

―――コードネーム:シロ

 

 

名前:シロ

コードネーム:シロ

性別:女

年齢:15

種族:フェリーン

性格:臆病

一人称:私

鉱石病の有無:あり

見た目:白い髪に少し垂れた耳

設定:レユニオン第23小隊の医療オペレーター。

怖がりなので前線などには行かず、基地でこもっている。

優しい性格。

回復アーツの適正が高い。

捨て子であるため苗字がなく、10歳の頃から鉱石病にかかっている。

左の頬と足に鉱石結晶がある。

イメージは某有名な画像の感染者の女の子。

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】普通

【戦場機動】標準

【生理的耐性】普通

【戦術立案】標準

【戦闘技術】普通

【アーツ適正】優秀

 

コメント:うちに来た時は本当に人見知りでずっと警戒してるような子だったが、最近は馴染んできてくれて明るい子になってきてくれた。

これはとても喜ばしいことだ。

―――コードネーム:ゴーストライダー

 

名前:ネクロ

コードネーム:ゴーストライダー

性別:男

年齢:20

種族:サルカズ

性格:真面目

一人称:俺

鉱石病の有無:あり

見た目:基本的にレユニオンの制服。顔は黒い髪に2本の黒いツノ。

設定:レユニオン第23小隊のリーダー。

あまり暴力沙汰は好まず、できる限り穏便に済ませようとする。

前衛オペレーター。

存在感が薄い。

 

某国正規軍との戦闘の際MIAとなる。

 

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】普通

【戦場機動】優秀

【生理的耐性】普通

【戦術立案】優秀

【戦闘技術】優秀

【アーツ適正】標準

 

コメント:本部からの補給がうちだけ潤沢だったと知ってから、隊長がどうやってここまでの物資を補給できていたのか、本当に謎です。

何か恨まれるようなこととかがなければよかったんですけど……。

―――コードネーム:シロ

 

名前:アイラ

コードネーム:アイリィ

性別:女

年齢:18

種族:フェリーン

性格:戦闘になると弱気、それ以外は強気

一人称:私

鉱石病の有無:あり

見た目:黒髪に横に垂れた耳

設定:元レユニオン第13小隊のメンバー。

術士であり、感染生物を操るビーストテイマー。

感染者になる前は物静かで弱気な女の子だったが、感染者になると強気な性格が芽生え、二重人格となっている。

記憶の大部分はもうひとつの性格と共有されず、必要な基本情報のみ共有されている。

感染生物に愛されるタイプ。

スレンダー体型。

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】普通

【戦場機動】標準

【生理的耐性】普通

【戦術立案】標準

【戦闘技術】普通

【アーツ適正】優秀

 

コメント:ぷしぷしぷ、ぷしぷし、ぷしぷしぷぷぷ、ぷしぷしぷっぷー!―――オリジムシその1

『アイリィは、優しいし、何より二重人格というギャップがある、もうたまんないよねー!』……だそうだ。そういうものなのか?―――コードネーム:アイリィ

 

名前:カーミー・レオン

コードネーム:レオン

性別:男

年齢:17

種族:ザウラ

性格:陽気

一人称:俺

鉱石病の有無:あり

見た目:緑色の髪に黒い肌

設定:レユニオン第23小隊のメンバー。

まだ体表に鉱石結晶が出ておらず、通信偵察を得意としている。

身体を装備品ごとボヤかせて見にくくするアーツを使い、遠くから見れば見つかることは無いと自負している。

先鋒オペレーター。

レユニオン式能力測定結果:

【物理強度】優秀

【戦場機動】標準

【生理的耐性】普通

【戦術立案】普通

【戦闘技術】標準

【アーツ適正】標準

 

コメント:本人はコミュ力もあり、常にテンションが高く、小隊のムードメーカーになってくれている。

ゴースト兵としての運用に向いているが、偵察中もこのテンションなのでせっかくのステルスアーツが無駄になってしまっている。

しかし、最近は静かに偵察する術を身につけてきているようだ。

―――コードネーム:ゴーストライダー

 

 

レユニオン第23小隊(リョウ隊長時)

 

医療オペレーター2、前衛オペレーター3、先鋒オペレーター3、重装オペレーターが2、狙撃オペレーター2、術士オペレーターが2人。

男が8人、女性が6人。




はい。(はいじゃないが)
ここからは少し補遺に近いものを。
リョウは原作アークナイツで行けば、術剣士隊長(リベンジャーでもいいですがアーツを使うので)、イツキとシロは医療オペレーターですが割り当てるなら術士、ネクロは本当はゴースト隊長に割り当てたいですがそれだと攻撃してくれないので軽装隊長、アイラは普通に術士、レオンはゴースト兵にしたいですがそれだと攻撃してくれないので兵士
という感じです。
そしてあのレユニオンですので、レユニオン式能力測定はロドス式より過大評価をしているという設定です。
過大評価してくれたらそれだけでも士気が少しは上がる気がするので()

また続報などが出る場合はまたこのような感じで作りたいと思います。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第11話

11話です。
前書きのネタはいつものごとくないです()

では今回もごゆっくり、見ていってください。


イツキから話を聞いたあと、俺はドーベルマンと名乗る、ペッロー族の女性から、尋問を受けていた。

それもそうだろう、俺たちはレユニオン、しかも俺はレユニオンの一小隊の隊長なのだ。

聞き出せることが少しでもありそうならそりゃあ尋問をするだろう。

だが、そもそも俺たちに何かあの作戦の時などでも情報が伝わっていたかと言われると、結局は作戦当日に聞かされているだけだ。

めぼしい情報など俺たちは持っていない。

その事を伝えると、ドーベルマンは困惑した様な表情を浮かべ、どうしたもんかと悩んでいた。

 

「場合によってはお前たちを投獄せねばならんが……本当に何も知らないんだな?」

 

「ああ、知ってる情報は既に伝えた通りだ、上層部がどんなヤツらなのかも知らないし、幹部級の人間なんて名前と噂しか聞いたことがない」

 

「…そうか、レユニオンは全員タルラを崇拝していると思っていたんだがな」

 

「生憎と、俺たちは辺境のレユニオン小隊なもんでな、タルラについても俺たちには『すごい力を持っている、我ら感染者を救ってくれる人』って言う気持ち悪い崇拝気味な噂しか聞いてないよ」

 

「…なるほど、わかった。じゃあお前はなぜレユニオンに入ったんだ?」

 

「……俺に妹がいるのは知ってるだろう?アイツにいい暮らしをさせてやりたかっただけだ」

 

そう言うと、ドーベルマンは首を傾げ、

 

「?さっきお前はレユニオンの食事は最低だと言わなかったか?それなのに何故?」

 

と、聞いてきた。

 

「俺がレユニオンに誘われた時の隊長…今はもう居ないが、そいつに誘われた時はまだうちの小隊はいいメシを食えていたんだ、衣食住の食と住だけでも揃っているなら行くあてのない感染者の俺たちにとっては都合が良かった」

 

「…そうか、その前隊長は今どこに?」

 

「さぁ?俺たちが正規軍の連中に襲われた時の天災の時から行方不明だ。だが俺たちは今もその隊長の言いつけを守って殺しだけはしちゃいねぇ」

 

「…とことんお前たちはレユニオンの中でも特殊なヤツらだな、非感染者への憎悪や差別などがまるでない」

 

「だろうな、あの作戦に関わって気付かされたが、俺たちはレユニオンの中でも異端だ。他のヤツらは非感染者への憎悪や怒りだらけの非感染者とは関わりを絶つことを普通とするヤツらだが、俺たちの小隊のメンツは非感染者との関わりを絶たないことを普通に受け入れるからな」

 

「そうか……よし、今日の尋問はここまでにしよう、医療オペレーターから1回を30分以内に終わらせろと厳しく言われているんでな」

 

そう言って立ち去っていこうとするドーベルマンを俺は呼び止め、1つ、起きてから気がかりな事を尋ねてみることにした。

 

「ドーベルマン、1つ尋ねたいことがある。さっき話した護衛してた村の事なんだが」

 

「ほう、なんだ?」

 

「多分俺の着ていたレユニオンの制服のポケットに地図が入っていたと思うが、そこに書かれた村について何か知っているか?」

 

「レム・ビリトン近郊の村という事を他のオペレーターから聞いたくらいだ。それがどうした?」

 

「俺たちが護衛しなくなってから3ヶ月経ったのは確からしいが、良ければあの村へ何かサポートをしてやって欲しい。何か猛獣対策の柵もその猛獣を撃退できる腕っ節のあるヤツもいないのに周囲には猛獣が多いんだ。俺たちが護衛をすると言うととても喜んでくれてな、それだけが気がかりなんだ、それさえ何とでもしてくれれば俺たち、いや、俺だけでもお前たちロドスの捨て駒でもなんでもいいから使われてやる」

 

「……わかった、ドクターに伝えてみよう。だが期待はするな」

 

そう言い、ドーベルマンは俺のいる医務室から出て行った。

 

 

…さて、俺はこれからどうすればいいのだろうか。

身体を動かそうにも力が上手く入らないし、そもそも身体が酷く痛む。

どこかへ行こうにもこれでは無理だ。

イツキたちは尋問があるからとしばらく席を外してもらっているため、終わった今ならもう少ししたら戻ってくるかもしれない。

 

それにしても、監視カメラはあるのだろうが監視の人員がいないとなると、俺たちが何もしない、もしくは何かしても対処できると思われているらしい。

それは舐められている気がして腹が立つが、実際俺は身体が動かせないし、他のみんなも武器を没収されているし、そもそもの戦闘力がロドスと比べれば雲泥の差がある。

 

もう大人しく寝て療養するとしよう、そう思い目を閉じてじっとしていると、医務室の自動ドアが開く音がした。

きっとイツキたちだろう、そう思ってドアの方を見てみると、そこには白衣の上に黒いジャケットを羽織り、黒いマスクとフードで顔を隠している、1人の人間が立っていた。

 

「…誰だ?」

 

「さぁ?私にもわからんよ。ただ他のみんなからは"ドクター"と呼ばれている。オリパシーに対する研究をしていた優秀とされる神経学者だったらしい」

 

そう自分のことをどこか他人事のように言うと、「座ってもいいか?」と聞いてきた。

それを了承すると、俺の寝ているベッドの隣に置いてあった丸椅子へと腰掛け、ふぅと一息ついていた。

 

「ドーベルマンさんから報告を受けてね、君が護衛してた村を気にかけていると」

 

「……ああ、あの村には長いこと良くしてもらっていたからな。まぁ、感染者という事を知られていなかったからかもしれんが」

 

「そうか、まあ仲が良かったならば気になるのも当然か」

 

「何が言いたい?」

 

「いやなに、条件によってはその村へサポートしてやってもいいかと思ってね。ちょうどあの辺の街にオペレーターを送って、外交を図るところだったから」

 

そう言われ、俺は嬉しさと共に、なんとも言えない不信感が込み上げてきた。

もしかしたらとんでもない条件を突きつけられたり、なにか裏があるのでは無いかと思ったからだ。

 

「…条件ってなんだ?」

 

そう聞いてみると、ドクターと名乗った人物はふふっと顔は見えないが笑い、

 

「君をロドスのオペレーターとしてスカウトしたい。もちろん衣食住、そして最適な医療サポートも込でだ」

 

「…俺を?それなら俺以外の奴らはどうなる?」

 

「もちろん君も受けてもらうが、他の人々にも一度テストを受けてもらい、その結果次第でオペレーターとして採用する」

 

「……もしそのテストで落選したら?」

 

「安心してくれ、ロドスで患者として適切に医療プログラムを組ませてもらうさ」

 

そうドクターは言うと、「まあしばらく検討しておいてくれ」と言い、部屋から出ていってしまった。

 




いかがでしたか?
結構短めになってしまってるので長めにしないとな…と思いつつこれ以上話を伸ばせないなと思いつつ……

ではまた次回、お会いしましょう!


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第12話

大変長らくお待たせしました!
12話です!
今回は主に3人視点で進みます。
こらそこ、ネタがなかっただけだろとか言わないの、その通りだから。

という訳で(?)今回もごゆっくり、見ていってください!


あれから数ヶ月後、俺は最低限の日常生活ができるまで回復し、リハビリも進んできていた。

しかし、以前のように戦闘しようとしても体がついて行かず、リハビリとしてやらせてもらった戦闘訓練の結果も散々なものだった。

 

前にドクターとやらにオペレーターとして採用されるという案を出されたが、俺以外の小隊員が次々受かる中、俺は採用試験に落ち続けていた。

これでは隊長としての威厳が丸つぶれになってしまう。

いやもう潰れてる気しかしないのだが、それでもみんなは俺の事を慕ってくれているし、俺なら受かれると言ってきてくれている。

俺はその期待に答えないといけないし、俺には全員を護れるような力をもつ義務が隊長としてある。

 

そんな俺がこんな調子だとダメだ、そう思い、俺は1人、ロドスのトレーニングルームにこもりきっていた。

それにしても、元は敵だった上にまだロドスの一員でもない俺にトレーニングルームを貸してくれている事はありがたいが、一体なぜそこまでしてくれるのだろうか。

そう思いながら筋トレをしていると、ロドスの制服を着て仮面で顔を隠している、ベージュの髪の鬼と思われる種族の男が、俺の隣のトレーニング器具を使い始めた。

 

「…あんた、ロドスのオペレーターか?」

 

「ん?ああ、重装オペレーターをやってる。お前は……ああ、もしかして前に重症で運び込まれたレユニオンの隊長か?」

 

「ああ、もう既にレユニオンでは俺たちが死んだ扱いになってるだろうがな」

 

そう短い会話を交わし、2人して黙々とトレーニングを続けていると、隣の重装オペレーターが、

 

「…そういえば何でお前はトレーニングをしてるんだ?まだ身体も万全って訳じゃないだろう」

 

「……確かに、まだ最低限の事しか出来ない、だが俺には仲間を護る義務があるんだ、早くオペレーター試験にも受からねぇと威厳もクソもない」

 

「なるほどな、なら尚更先に身体を万全にした方がいいんじゃないのか?」

 

「それを待ってる時間がないんだ、早くイツキたちを守れるようにならないと……!」

 

そう俺が言うと、隣のオペレーターははぁ…と大きなため息をつき、

 

「なぁ、そんなに焦ってどうするんだ?焦ってトレーニングしても何も変わらないぜ」

 

と、言ってきた。

 

「焦ってなんかない、ただ俺は…」

 

「…お前はなんだ?」

 

「……俺は、ただみんなを護りたいだけだ」

 

そう言うと、男ははぁとため息をついて、

 

「なら、尚更身体は万全な状態にした方がいい、そんな身体じゃオペレーターになっても誰も護れやしねぇよ」

 

そうオペレーターは言うと、トレーニングしていた手を止め、トレーニングルームに入ってきた、仮面をつけた女性に声をかけた。

そして少し会話した後、その女性と別れると、重装オペレーターの男はタオルで汗を拭きながら、

 

「悪ぃ、ドクターに製造所の仕事頼まれたから行ってくるわ」

 

と、言ってきた。

 

「…ああ、わかった。そうだ、あんた、名前は?」

 

「俺か?俺はノイルホーンだ、まあ何かあったら聞きに来い、先輩オペレーターとして色々教えてやるよ」

 

そうノイルホーンは言うと、トレーニングルームから出ていった。

 

~~~

~~

 

「えーと…このお薬がこれで…このお薬がここれ…よし、納品確認終わりました!」

 

「わ、私も納品確認終わりました!」

 

「二人ともありがとう、おかげで早く終わったよ」

 

「いえいえ、私たちに出来ることがあって何よりです」

 

「よし、早めに終わったから休憩にしようか、最近カステラをおすそ分けされてね」

 

そうサイレンスさんは言い、医務室に備え付けられている冷蔵庫から、カステラを取り出し、切り分けてくれた。

そして紅茶も淹れてくれ、私とシロはその好意に預かる事にした。

 

「…そういえば、2人はなんで医療チームの採用試験に応募しないんだい?2人はアーツ適正も医療に対する態度も優秀だけど」

 

「ありがとうございます、でも…私はまだ医療チームに入って正規のロドスメンバーとして活動する気はありません、ごめんなさい」

 

「私も、イツキさんと同じです、ごめんなさい」

 

「そうか、理由を聞いても?」

 

「私は…お兄ちゃんより先に、採用される訳にはいかないんです。お兄ちゃん、ああ見えてプライドが傷つくのを人一倍気にしますから」

 

「私は…1人だけで採用されたら、上手くやっていけるかわからなくて…イツキさんと一緒に採用されるならされたいんです」

 

「なるほど、それなら仕方ないね……」

 

そうサイレンスさんは言うと、そのままうつらうつらとし始め、そのまま眠ってしまった。

 

「あちゃ…また寝ちゃった」

 

「種族的にも昼間の活動は苦手な上にオリパシーが加わって眠気が凄いって言ってましたもんね…」

 

「うん…そう考えると私たちはあまりそういうの無いから良かったよね」

 

「ですね、でもアイラさんはその……オリパシーの被害らしきものが……」

 

「あぁ…戦闘中のアレね……」

 

そんな会話をしていると、外から何やら楽しそうな話し声が聞こえてきた。

気になって外へ出てみると、アイラさんと、ベージュ色のショートカットの、ヴィーヴル族の女性が、なにやらアイラさんのオリジムシを見ながらなにやら楽しそうに話していた。

 

「…何してるんだろう?」

 

「さぁ……?」

 

そうこっそり見ていると、2人はオリジムシの歩くペースに合わせた速度で、どこかへと楽しそうに会話しながら行ってしまった。

 

「……何だったんだろう、あれ」

 

「なんだったんでしょうね……?」

 

「確かにアイラさんところのオリジムシはたまに可愛いと思う時あったけど…慣れたからそう思ってきてただけだろうしなぁ…」

 

「まさかロドスにオリジムシが好きな人がいるわけないですもんね……」

 

そんな会話をしていると、サイレンスさんが起きてきたので、私たちは休憩を終わり、引き続きお手伝いをすることにした。

 

~~~

~~

 

「ドクター?外はこんないい天気なんだし、ちょっと休憩して休もうよぉ〜…」

 

「そうしたいのは山々だが、アーミヤに頼まれた書類がまだまだあってね…これだけは終わらせておかないと怒られるんだ」

 

「そっかぁ…じゃあ私は寝て待っとくねぇ…」

 

「いや…可能な範囲でいいから手伝って欲しいんだが…」

 

「えぇ?嫌だよそんなのぉ…自分でやってよぉ……」

 

「はぁ……仕方ないか」

 

そう言い、私は黙々と作業を続けていた。

しばらくすると、気持ちよさそうなクルースの寝息が、私の執務室のソファから聞こえ始め、微笑ましくなっていた。

その後またしばらくして書類を作り終え、私は自由な時間を手に入れた。

とは言ってもやりたいことは特にないし、今日の分の研究はもう終わってしまっている。

今から少し研究を進めたところで、気がついたら夜中になってしまっているのがオチだろう。

アーミヤからはしっかりとした時間に寝るようにと厳しく言われたので、たまにはその言いつけを守ってやらねばアーミヤが可哀想だ。

 

なら少し読書でもしようと思い、執務室にある蔵書を少し引っ張り出して読むことにした。

読みふけっているとすぐに食事の時間になり、私はクルースを起こして、食堂へ向かった。

 

時間も時間とあってか、食堂には沢山のロドスに関わっている人々で溢れかえっていた。

ロドスの戦闘オペレーターや非戦闘員のオペレーターに感染者の患者たち、ロドスのオペレーターでなくとも様々な業務を行ってくれている人々や、ロドスの研究者たち。

このたくさんの人々が支え合って、このロドスができている。

ロドスは色々な人々に色々なことをやらせているブラック企業だと言う人もいるが、各々の能力よりも高い物事はやらせてはいない。

子供ならば折り紙を折ってオペレーターに渡したりすることでも、オペレーターやロドスにとってメリットになるなら、それをしてくれるだけでも構わない。

そんな事がはっきりと疑問や不信感から確信や安心へと変えてくれるのがこの食堂だ。

 

「さて…何を食べようか」

 

そう言いながら、私は今日のメニューの書かれたモニターを見ていた。

様々な出身地や食の趣向に合わせた料理が並んでいる中、私はウルサス風ビーフストロガノフのセットを注文し、カウンターで渡されるのを待っていた。

そこに注文を終えたクルースが合流し、私たちは雑談しながら待つことにした。

 

「ドクターはぁ、晩御飯なににしたの?」

 

「ウルサス風ビーフストロガノフのセットだ、クルースは?」

 

「私はぁ、サラダのセットにしたんだぁ、ちょっと高かったけど、デザートにリンゴスムージーつけたのぉ〜」

 

「ほう、そんなのもあったのか…私もつければ良かったかな」

 

「そんなこと言ってもぉ、私のはあげないからねぇ〜♪」

 

そんな会話を交わしていると、注文した料理を、食堂の料理人が持ってきてくれた。

 

「あ!ドクター!グムの料理、注文してくれてありがとう!」

 

「やっぱり、グムの担当だったか。注文して良かったよ、美味しくいただくとしよう」

 

「えへへ、ありがとう、じゃあグム、まだ仕事残ってるから戻るね!」

 

「ああ、頑張ってくれ、無理のないようにな」

 

「うん!」

 

そうグムは満面の笑みで厨房へと戻り、再度料理を再開した。

 

「さて…頂くとしよう」

 

そう席に座り、周りのオペレーターと楽しく会話しながら、私は晩御飯の一時を過ごした。




リアルも忙しくネタも出ないという状況で投稿が遅れました…
本当に申し訳ない…
脳死で書ける身内ネタ盛りだくさんの方は更新したりしたのですが、やはり脳死とちゃんと考えてるのではやはり書きやすさが違いますね…

あとケオベちゃん可愛いですね…
最初は興味なかったんですけど運営がBGMの投稿をしてケオベに興味を持ち、CVが可愛ければ引こうと思って聞いたらとても可愛くて…
友達に引いてもらったら☆4たくさん☆5が2人、そしてケオベちゃんという神引きをしてくれました。
本当に感謝。

とまあ後書きはここまでにして、また次回、お会いしましょう!


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第13話

大変長らくお待たせしました、13話です。
ネタが思いつかなさ過ぎました……()
他の小説のネタとかは出てきたりするんですけどね……

では今回もごゆっくり、見ていってください。


数週間後、俺は6度目のオペレーター採用試験を受けていた。

身体の調子も戻ってきていたので、個人的にはいい動きができていた……はずだ。

今度こそ受かっていて欲しいのだが、さてどうだろうか。

 

そんな事を考えながら、俺は戦闘試験でかいた汗を流すため、シャワーを浴びていた。

 

「はぁ…やっぱりちょっと前よりも結晶が増えてきてる…か?」

 

そう、俺の左腕の肩のあたりに出てきている源石結晶を眺めながらぽつりと呟きつつ、シャワーを浴び終えて体を拭き、俺は服を着てこれからどうしようかと考えていた。

今ロドスは龍門と共同戦線でレユニオンと戦っていると聞くし、そもそもロドスにいる1人の患者としてなにかロドスに有益な、なにかしらの手伝いをするしか今はやることがない。

だが今日割り当てられた手伝いは終わり、オペレーター採用試験も受けてもう今日は夕方になりつつあったので、今から仕事を探しても、もう特にないかもしれない。

 

だがまあまだ晩飯の時間まではまだ早いので、俺はロドスを探検しつつ、なにか手伝えることがないか探すことにした。

 

やがてロドスの居住区へとやって来た時、遠くからなにやら誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。

誰かと思ってその方向を見てみると、そこにはベージュ色のショートカットのヴィーヴル族の女の子と、アイラが、誰かを呼びながら探しているのが見えた。

 

「アイラじゃないか、誰を探しているんだ?」

 

「ん?ああ、誰かと思ったら隊長か、いや何、バニラの飼ってるペットが1匹どこかへ行ってしまってな」

 

「ケージの清掃をしてたらいつの間にか開いていたドアから出ていってしまったみたいで…すみません、どこかで見ませんでしたか?」

 

「いや、見ていないな…よし、俺も手伝うよ」

 

「本当ですか!?助かります!」

 

そうバニラとアイラに呼ばれた女の子はにっこりと笑ってお礼を言ってきた。

とりあえず3人でそのペットとやらが行きそうな所を探すことにして、俺たちは居住区の中を探し始めた。

しかし、どこにもその姿はなく、手がかりとなりそうなものも見当たらなかった。

 

「おかしいですね…ドスグロちゃんの足ならそこまで遠くに行かないはずなんですけど」

 

「そうなのか?…って、そういやどんな見た目なのか聞いてなかったな、どんな見た目なんだ?」

 

「えーっとですね、このくらいの大きさで」

 

そう言いながら、バニラは自分の膝近くくらいの大きさを示した。

なるほど、そこそこ大きいようだ。

 

「緑色と黒色の身体で…」

 

……ん?膝近くくらいの大きさで緑色と黒色の身体?

全然想像がつかないぞ……?

 

そんな事を思っていると、目の前の通路を、1匹の緑色の身体をしたオリジムシが歩いていっているのが見えた。

大きさ的にも色的にもバニラが言っているのはアイツだが…そもそもなんでオリジムシがここにいるのだろうか。

アイラのは許可が出て基本的に自室で飼うことになっているはずだし、なにより身体は赤い色をしているのであればアイラのオリジムシではないはずだ。

 

「あ!ドスグロちゃん!やっと見つけた!」

 

そうバニラは言うと、なんの躊躇いもなくそのオリジムシを拾い上げた。

……え?ロドスの人間ってオリジムシ飼ってんの?

戦力として使うでもなく?

…あ、ぷにぷにし始めた。

……いやいやいや、それ感染生物だから対策なしは危ないのでは?

そんな事を思っていると、当たり前のようにアイラもそのオリジムシをぷにぷにし始めた。

……そんなに気持ちいいのだろうか。

 

「あ、あなたもドスグロちゃん触ってみます?」

 

そうバニラに言われ、俺はどうしようかと悩み始めた。

もう既に感染者なので、正直あまり変わらない気もする…しかし、これ以上オリパシーを悪化させるのも…

そう悩んでいると、バニラが少し寂しそうにし始めたので、もう俺は諦め、ドスグロちゃんとやらを触ってみることにした。

 

「……思ってるよりぷにぷにしてるんだな」

 

「触り心地いいですよね!…まあ、あまり接触しすぎるとオリパシーになってしまうのが悩みですが……」

 

「まあ、ここまでオリジムシに愛情を注いでいたら敵のオリジムシを倒すのは心が痛むだろうな」

 

「そうなんですよ!それなのにドーベルマン教官が倒すための訓練とかさせてくるんです!」

 

「……敵は感染生物を使って来るんだからそれは仕方ないんじゃないか?」

 

「それはそれ!これはこれです!」

 

「そっかぁ……」

 

そんな会話をしていると、いつの間にか晩御飯の時間になっていた。

そこで俺たちは雑談をしつつ、食堂へと向かうことにした。

アイラは先に自分の感染生物たちにご飯をやってくると言って別れていき、俺たち2人が食堂に着くと、先に着いていたイツキとシロが合流し、俺たちは4人で晩御飯を食べることになった。

 

「へぇ、リョウさんってレユニオンの小隊長だったんですね!」

 

「ああ、いつの間にか…な、まあ今ロドスが戦ってるレユニオンの連中とは違って略奪とかはしてねぇさ、そんな事をしたらしたで感染者の評判が今以上に悪くなるだけだからな」

 

「なるほど…レユニオンにも色んな人がいるんですね」

 

「ああ、まあ俺たちみたいなやつは少ないけどな」

 

そんな会話を食べながらしていると、食器の乗ったトレーを持った、ヴァルボ族の女性と、ヴィーヴル族の女性がやって来た。

 

「あ!フランカさん!リスカムさん!お疲れ様です!」

 

そうわざわざバニラが立って挨拶をしている挨拶をしている辺り、ロドスの上の地位の人なのだろうか、そう思っていると、

 

「お疲れ様。あれ?バニラが男の人といるなんて珍しいね」

 

「本当ねぇ、ナンパでもされたのかしら?」

 

「ち、違いますよ!ドスグロちゃんが脱走したので一緒に探してくれてたんです!」

 

「ちぇー、面白くないの、ねぇリスカム?」

 

「いや、わたしは別になんとも……バニラ、隣失礼するね」

 

「あ、はい!どうぞ!」

 

そんな会話を聞きながら、俺はどうこの2人に接すればいいのかと悩んでいた。

もしロドスのお偉いさんとかならば、試験に合格すれば上司に当たる存在な訳だし、挨拶はしておくべきだろう。

 

「どうも、俺は橘 リョウって言います、お2人はロドスのオペレーターなんですか?」

 

そう尋ねると、2人は顔を見合わせてからふふっと笑い、

 

「違いますよ、わたしたちはロドスと保安条約を結んでいるBSW…全称を『ブラックスチール・ワールドワイド』という、クルビアに本社のある一企業に所属するオペレーターです。わたしたちは一応在中員として選抜されて来ました」

 

「へぇ…そんな会社があるのか……って事はバニラも?」

 

「はい!…って言っても、私はまだ訓練生ですけど」

 

「そうなのか?てっきり成績のいいオペレーターだけが送られてくるのかと」

 

そう言うと、バニラは少し照れたような表情になりながら、

 

「そんなに私は成績優秀じゃないですよ、先輩たちに比べたら私なんて……」

 

「そんな事ないよ、新人なのに派遣オペレーターに抜擢されたのはすごいことだと思うよ」

 

「そうですかね…ありがとうございます」

 

そんな会話をしながら食事をしていると、今度は黒い髪の、フェリーン族の女の子がやって来た。

 

「あ、リスカム先輩にフランカ先輩!それにバニラちゃんも!皆さんお疲れ様です」

 

「お疲れ様、今日の訓練はどうだったの?」

 

「あはは…ドーベルマン教官にとても怒られました……やっぱりわたしってダメダメですね……」

 

「そんな事ないですよ!ジェシカさんは良くやってますよ、だって最近の戦いだってドクターに選抜されて出撃してたじゃないですか!」

 

「そうだといいんですけど……あ、そうだ、リスカム先輩、隣いいですか?射撃について教えてもらいたいことがあって……」

 

「いいよ、何がわからないの?」

 

そうその女の子とリスカムさんは色々話し合いながら食事し始め、残された俺たちは置いてけぼりを食らっていた。

 

「…あの黒髪の子もBSWの?」

 

「はい、ジェシカさんと言って、実習でBSWにいた頃同じ部隊で、一緒に任務にも行ってたんです」

 

「へぇ…どこかシロに雰囲気が似てるな」

 

そう言いながら、シロに目を向けてみると、こちらの方ではイツキとシロが楽しそうに雑談を繰り広げていた。

…なるほど、実は取り残されていたのは俺とフランカさんとバニラだけらしい。

道理でさっきから会話に参加してこないと思った。

まあ仲がいいのはいい事だし、楽しく生活出来ている証拠なのでこちらとしては嬉しいのだが。

 

「そうだ、あなた割と鍛えてるっぽいけど…ロドスのオペレーターだったり?」

 

「いや、今日6度目の試験を受けた所です、結果はまだわかりませんが」

 

「ふぅん……なんでそんなに落とされてるのにまだオペレーター試験を受けるの?」

 

「それは……仲間や家族を護りたいから……ですかね、その為には守るための力が必要なので」

 

そう言いながら、先程から楽しそうに談笑するイツキとシロを見る。

それに気づいたイツキがニコッと笑顔を向けてくれ、シロもそれに続いて笑顔を見せてくれた。

 

「へぇ……なるほどねぇ……オペレーターになれるといいわね」

 

「はい、今度こそ受かってやります」

 

そんな会話をしながら食事を続けていると、いつの間にか食器も空になり、俺は食器を返しに行ってから、また雑談再開していた。

すると、唐突に艦内放送のアナウンスが鳴った。

『橘 リョウさん、至急ドクターの執務室までお越しください』

 

そう放送で呼ばれ、俺は執務室へと向かった。




いかがでしたか?
ほぼ確実にこれから先もこんな事が多発しちゃうと思うので、ごゆっくりお待ちください。

コメントや感想、リクエストなどはどんどん送ってきてください。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第14話

14話です、本来なら30日に投稿する予定でしたが書き直し点を見つけたので遅くなりました()

では今回もごゆっくり、見て行ってください!


コンコン、そう扉をノックして返事が来てから執務室のドアを開けると、そこにはドクターと茶色い髪の毛のコータス族の女の子がいた。

 

「どうも、あれから身体は大丈夫かい?」

 

「ええ、なんとか回復しました…ところでどうしたんですか?」

 

そう尋ねると、ドクターはとりあえずそこにあるソファに腰掛けてくれと言ってきた。

そのまま言われて座ると、その後にドクターとそのコータス族の女の子が正面のソファに座った。

 

「さて…順序が実技試験と逆になってる気もするが、オペレーターになる上で面接をしておこうと思ってね、アーミヤ?」

 

「はい、改めて自己紹介させていただきますね。私はこのロドス・アイランドのCEOを務めているアーミヤと言います。……あの時は本当にごめんなさい」

 

そう申し訳なさそうに謝罪してくるアーミヤの様子を見るに、あの時アーツで攻撃して来たのはこの少女のようだ。

しかしまさかCEOが戦場に出てきていたとは驚きしかないが。

 

「まあいいさ、あそこは生きるか死ぬか、殺すか殺されるかの戦場なんだ、命を助けてくれただけでもこっちからしたら感謝しかないさ」

 

「本当ですか……?」

 

「ああ、そうでもないなら今頃こうしてロドスのオペレーター試験なんて受けちゃあいないさ、もし信用すらしてないなら仲間をまとめて脱走してる」

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

そんな会話をしていると、ドクターが1つ咳払いをして、

 

「さて…そろそろ本題に移ろうか」

 

と、言ってきた。

そしてそのまま間髪入れずに、そのまま本題に移り、

 

「オペレーターになるにあたって、君の志望する戦闘オペレーターは危険なものだ、どうして志望したんだい?」

 

と、質問してきた。

 

「戦闘オペレーターになって色々な戦場を経験して、皆を…家族を護れるようになりたいからです。それに、他のオペレーターになってバックアップというのは性にあわないんでね」

 

「……なるほど。じゃあ君の志望するオペレーター職はどのポジションだい?」

 

「…レユニオン時代の時に前衛だったので前衛を。アーツも使えないことは無いですが前線で戦いたいので」

 

「なるほど、確かにアーツの使い方と能力は高い方だったね、どこかで習ってたのかい?」

 

「……両親がオリジニウムの使い方やアーツの研究者だったので、その時に」

 

「ふむ、なるほど」

 

そんなやり取りが数分続いた後、面接が終わった。

部屋から出ようとした時、俺はドクターから1枚のメモ書きを手渡され、その場所に行ってみるように、と告げられ、そのまま言われた通りに向かってみると、そこはロドスの一角にある、購買部だった。

 

そこは思ったよりも広く、見た目はコンビニのようで、覗いてみると本に雑貨類、食料や飲み物など、商品もさながらコンビニのようだが、俺の知るコンビニよりも色々なものが置かれており、ロドスでの生活には困らないであろう品揃えのようだ。

いや、ロドスでの生活どころか出先などでも使えそうなものまであることに驚きを隠せない。

なにか些細なものでも足りなくなったら、ここに来れば事足りるだろう。

 

そんな感じでラインナップに驚いていると、突如店の奥の方から、黒いコウモリの羽根のようなものとしっぽの生えた、謎の飛行生物?が飛来し、俺の周りでパタパタと周回を始めた。

……そもそもこれは生物なのだろうか。

そう困惑していると、今度は店の奥から、1人の黒い髪の女性が現れ、こちらに近づいてきた。

 

「どーも、クロージャの購買部へようこそ!レユニオンの隊長さん♪」

 

「"元"隊長ですけどね…」

 

「まあまあ、ドクターに言われて来たんでしょ?こっちに来てもらえる?」

 

そう言って手招きされるがまま購買部を離れて別の一角に案内されて部屋に入ってみると、どうやら戦闘オペレーターたちの装備のメンテナンスを担当する部屋のようだった。

そしてそのまま、また手招きされるがままに奥へと進んでいくと、布に包まれた、1本のなにかが、そこにはあった。

 

「開けてみて」

 

「…わかった」

 

そう答え、その布を外して中を見てみると、そこには見覚えのある、一振りの太刀があった。

 

「これって……」

 

「そ!キミのレユニオン時代に持ってた太刀だよ、まさかレユニオンがこんな高価なアーツユニットを持ってるとは思わなかったなぁ」

 

「そんなにコイツは高価なものなのか?あんなボロボロの倉庫にあったから最初はただの太刀だと思ってたんだが……」

 

「どこでそれを入手したかは知らないけど、キミはその太刀の実力を知ってるだろうし、身に覚えもあるはずだよ」

 

そう言われ、この太刀について思い出してみる。

……確かに、あの時、この太刀が赤く輝き、オレンジ色の障壁を出して俺たちを護ってくれたのは事実だ。

それに俺の知るどの刃物よりも切れ味は高かったのは、そういう事だったのだろうか。

 

「……ところで、何故これを俺に?」

 

「え?なにも聞いてないの?」

 

そう言われ、俺は1つ頷くと、目の前の女性は、

 

「ドクターもなんで説明してないのかなぁ…あたしが説明しなきゃじゃん……」

 

と言ってため息をつくと、

 

「この太刀の所有者として既にキミが登録されてるっぽくてね、他の人だとアーツユニットとして使えないみたいでさ、しかも性能が下がるおまけ付きで」

 

「へぇ…でも所有者として登録した覚えなんてないぞ?」

 

「でも解析してみた結果、キミの生体情報が登録されてたのは紛れもない事実。多分初めて手にした時にでも登録されたんじゃないかな」

 

「なるほどな……でもなんで今俺に?」

 

そう訪ねると、目の前の女性はキョトンとして、

 

「え?オペレーター試験通ったんでしょ?」

 

と、言ってきた。

 

「いや…まだ合否判定は聞いてないんだが」

 

「え?」

 

「え?」

 

そうなんとも言えない空気が漂い、ただ作業をしている他のオペレーターの音と声だけが響く。

そして目の前の女性がはぁ……と大きなため息をついて、

 

「まあいいや、これを渡そうってなったって事はどうせ受かるでしょ!」

 

「えぇ…なんてアバウトな……」

 

「へーきへーき!真夜中にテレビで購買部の催促メッセージ流しまくって怒られた時とは違って怒られるのはドクターだから!」

 

「は、はぁ……ところであんたの名前を聞いてないんだが」

 

「あれ?言ってなかったっけ?あたしはクロージャ、ロドス安心のエンジニアでロドス・アイランドスーパーバイザー兼超優秀システムエンジニアだよ」

 

「は、はぁ…よくわからんが凄いってことだけはわかった」

 

「え?マジメに受け取らないでね!?冗談だよ、冗談!じゃ、あたしは購買部があるから、またね!」

 

そう言ってクロージャは去って行き、後には俺だけが残された。

仕方なくその太刀を受け取って食堂に戻ると、未だにバニラとジェシカ、そしてシロとイツキにアイラが加わり、話を続けていた。

 

「まだなにか話してたのか?」

 

「うん、レユニオン時代のことをね、どんな環境だったのか気になるらしくて」

 

「ああ、だからアイラも混じってたのか、元は別の小隊だし」

 

「いや、私はバニラと感染生物について語り合おうとしてたんだが…気がついたら巻き込まれていた。まあ私の経験が役に立つなら別にいいんだが…ところで隊長はどこに行ってたんだ?私が来た頃には既にいなかったが」

 

「ああ、ドクターに面接に呼ばれてた、あとコイツを返してもらってたんだ」

 

そう言って手に持った太刀を見せると、話をやめて、BSWの2人が俺の太刀を興味津々と言った表情で見てきていた。

 

「それ、見せてもらってもいいですか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

そう言ってバニラに手渡して見せると、バニラはウキウキしたように手に取り、抜き身の刀身を見て楽しんでいた。

 

「なんだか変わった太刀ですね…ちょっと刀身が赤みがかってます?」

 

「へ?俺が使ってた時は普通の刀みたいな刀身だったんだが……」

 

そう言って刀身を見てみると、確かに少し赤みがかったような輝きを放ち、前までみたいな普通の刀のような輝きとは少し違っていた。

 

「…多分、アーツユニットって言ってたし、整備でもされて本調子でも取り戻してるのかもな」

 

「ああ、なるほど、その太刀ってアーツユニットだったんですね」

 

「ああ、そうらしい、なんか所有者が俺で登録されて他の人では満足に使えないらしくてな、それもあって返してくれたんだ」

 

「所有者が登録されるアーツユニットなんですか…高そうですね……おやつ何日分我慢すればいいんでしょう……少なくとも貯金してるおやつ代よりは高いですよね……」

 

「ジェシカはおやつ代を貯金してるのか?」

 

「はい!たまに大量に買い込んだりしてます……弾薬も買わないといけないのに購買部で売られてるおやつが美味しくて……」

 

そうジェシカは言うと、携帯端末を見て貯金を確認し始めた。

 

「ああ、次の作戦用に弾薬を買うとこのくらい減って……はぁ、今月のおやつ代は少なくなりそうです……」

 

「ジェシカは銃を使うのか?ってか、銃弾くらい本部かどこかに頼んで経費で落としてもらえばいいのに」

 

「私の銃はBSWで配備されたものじゃなくて自腹で買ったやつなんです…だから経費じゃ落ちなくて」

 

「貴重な銃を自費で!?しかも弾薬なんてどれも源石加工技術を使ってる高級品だろ?」

 

「はい、でもおやつ代を削ればなんとかなってるので……」

 

「一体どんなおやつを食べてるんだ……!?」

 

「普通のおやつですよ!……ってあ、もうこんな時間…明日の準備がありますので失礼しますね」

 

「…ああ、もうこんな時間か、それじゃあお開きにしようか」

 

そう言って別れ、俺たちは一日を終えた。




ジェシカのおやつ代と弾薬費、果たしてそれはどこから出ているのか…
単に金持ちなだけなんですかね……?

とまあ後書きもこの程度で、また次回、お会いしましょう!


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第2章
第15話


お久しぶりです、風邪ひいてかけてませんでした、ノアです()
前書きのネタも特に思いつかないです()

とまあ、今回もごゆっくり、見ていってください!


太刀を受け取ってから次の日、俺の元に正式にロドスのオペレーターとなる通知が届いた。

明日から業務らしく、ついに受かったと喜んだのはいいのだが、一癖も二癖も強そうなロドスのオペレーター業務だ。

仲間や家族を護りたい一心でオペレーターになったが、うまくやって行けるだろうか。

 

まあそんなことを言っていても仕方がない。

 

俺より先にオペレーターになったレオンに業務内容を聞いたが、完璧に近い適材適所の配置のおかげで、特に苦労はないという事だ。

それを聞いて一安心しながら、食堂へと行くという彼と一緒に、雑談をしていた。

 

「ああそうだ隊長、俺のアーツあるじゃないっすか?」

 

「ああ、あの体を半透明にするやつだろ?それがどうした?」

 

「いやぁ、ロドスに来てから知ったんですけど、上には上がいるんですね、完全に透明になれる人がいるらしいです」

 

「へぇ……そりゃあ凄いな」

 

そんな会話をしていると、唐突に後ろから誰かにつつかれる。

誰かと思って後ろを振り向くが誰もおらず、気のせいかと思って再び前を向いた。

そして歩きだそうとすると、目に見えない何かにぶつかったという事だけがわかった。

 

「?どうしたんですか?」

 

「いや、なんか誰かにぶつかったはずなんだが……」

 

そう言って必死に神経を研ぎ澄ましてみる。

すると、必死に誰かが笑いをこらえているような声が聞こえてきた。

音の方向を割り出し、牢屋にいた頃に暇つぶしで培ってきた感覚を研ぎ澄ませる。

牢屋時代に比べて把握するのに時間がかかっる…だが、鬼の感覚を舐めてもらっちゃあ困るものだ。

 

「そこの壁際、誰かいるな?」

 

そう言って視線を向けると、ヒュゥ…と口笛を吹きながら、1人のザウラ族の男が実体化してきた。

 

「凄いなあんた、まさか気付かれるなんて思ってもなかったぜ」

 

「静かな環境だったのとあとはカンだよ、誰がいるかまではわかるわけが無い」

 

「なるほどな、そりゃあそうだ。ところであんたら、元レユニオンなんだって?」

 

そうその男は言うと、ニシシッっと笑い、

 

「俺もなんだよ!ほら、ゴースト隊ってあっただろ?あそこに所属してたってワケ」

 

「へぇ…ゴースト隊とは俺が最後に参加した作戦の時に初めて共闘したが…アンタ、あそこに所属してたのか…アンタには適任かもな」

 

「よく仲間と発見された回数の少なさを競ってたってもんよ…で、あんたらはなんでレユニオンからここに?元は敵同士だろ?」

 

「俺が作戦中に死にかけてな、俺の妹が必死に助けを求めた結果だ、まあ俺が死にかけた理由が他でもないロドスなんだけどな」

 

「へぇ、なのにロドスのオペレーターに…ねぇ、変わってんな、あんた」

 

「元からレユニオンには大した期待もしてなかったしな、あんなメシを食わされてバカな指揮官に使い捨てられるならここにいた方がよっぽどいい」

 

「だよなぁ、あんなメシは俺ももうゴメンだよ、俺のいたチームなんて主食って言えるもんは石みてぇにかてぇライ麦パンくらいでさぁ…」

 

「そうなのか…俺らは周りの村に協力して貰ってたから少しはまともなものを食えてはいたな」

 

「マジかよ!?くっそー…羨ましいぜ……」

 

そんな元レユニオン隊員同士の会話を久々にしながら、俺たちは本来の目的である食堂へと向かう。

そこで、先輩オペレーターらしいこの男…イーサンに仕事内容を聞いてみることにした。

 

「俺の仕事内容?俺はこのアーツを使って特殊チームに配属されてるよ、たまにドクターに連れられて前線に行ったりもするな」

 

「なるほどな……」

 

「あんたは戦闘系で志望したんだろ?んで戦闘はちゃんとできる…それなら普通にあんたの向いてる部隊に入れられると思うぜ」

 

「だといいんだが…」

 

そんな会話をしてしばらく経ち、イーサンはリーベリ族の女性に、レオンは上司に呼ばれて去っていった。

 

仕方なく自室に戻り、さて何をしよう、そう考えてながら、なんとなく部屋に置いていた、俺の太刀が目に入った。

明日からオペレーターとして活動するし、武器の整備をしてくれた人にお礼を言いに行こう、そう思い、太刀を持って購買部へと向かった。

 

「いらっしゃーい!クロージャの購買部へようこそ!…ってああ、キミか、正式にロドスのオペレーターになったんだってね、おめでとう!」

 

「ありがとう、ところで今回は聞きたいことがあって来たんだが…」

 

「聞きたいこと?」

 

「ああ、コイツを整備してくれた人にお礼を言いたくてな…クロージャが整備してくれたのか?」

 

「いや、私は解析しただけだよ、武器は武器のスペシャリストがロドスにはいるからね、その人が整備したんだ」

 

「へぇ……ってあ、そう言えばロドスの先輩オペレーターなのに敬語抜けてたな…申し訳ない」

 

そう言うと、クロージャがあははっとおかしそうに笑い、

 

「そんなの別にいいよ、昨日も気がついたらタメ口でお互い喋ってたし、そんなの気にする人はロドスにはあまりいないと思うよ?あ、そうだ、そのスペシャリスト、多分戦闘オペレーターとして活動するなら知ってた方がいいと思うから、その人を紹介しとくよ」

 

そう言って場所と名前を教えてくれると、クロージャは、

 

「情報のお礼代はなにかここのを買っていってくれればいいからね!収入がしっかり入ったらたっぷり買って行ってもらうから!」

 

と、満面の笑みで言ってきた。

俺はそれを適当に返してから、適当なおやつをカウンターへと持っていき、

 

「じゃあこれで、どうせこれから先もロドスで生活するから使わせてもらうよ」

 

と言って、それを買った。

 

その後、教えてくれた場所へと向かう。

するとそこには『ヴァルカン』と書かれた部屋のタグがある、とある一室があった。

 

「…ヴァルカンさん、いますか?」

 

そうノックして聞いてみると、中から、

 

「誰だ?…まあいいか、入ってくるといい」

 

と、返事が帰ってきた。

ドアを開けて入ってみると、そこは正しく"鍛冶場"のイメージそのものの部屋で、中では、ガンメタリックのショートカットのフォルテ族の女性と、たくさんの武器を背負ったブロンズのロングヘアのペッロー族の女の子がいた。

 

「何の用だ?」

 

そう、その女性は剣を研ぎながら聞いてくる。

 

「いや、コイツを手入れしてくれた人だと聞いて、お礼を言いに来た」

 

そう言って太刀を見せると、合点がいったのか、「ああ」と言い、

 

「君がこいつの持ち主だったのか、しっかりとした整備ができてない中しっかりできる事はやっていたみたいだけど…アーツを制御するところが壊れていたのは元から?」

 

「ああ、多分そうみたいだ、少なくとも俺はコイツで壊れるような扱いをしたことはない」

 

「確かに、整備状況は錆止めの油とかがないのにも関わらずいい方だった…確か君は元レユニオンだろう?ほかのヤツらも武器は大切にしてるのか?」

 

「俺の小隊のヤツらはしっかりとやれる事はやってたな、ほかのヤツらはボロボロだったりしたが」

 

「……そうか。まあいい、要件はそれだけか?」

 

「いや、1つ聞きたいことがある」

 

そう言い、俺は鞘から刀身を抜く。

すると、それを見ていたペッローの女の子が、背中に持っていた武器をひとつ手に取り構えた。

それをヴァルカンが手で制し、その女の子を落ち着かせた。

 

「あー…すまない、驚かせちまったか?」

 

「いや、ケーちゃん…ケオベは最近まで野生児だったからな、その辺敏感なんだ…で、刀身がどうかしたか?」

 

「いや、俺が使ってた頃に比べて刀身が赤みがかってるんだ、何かあの頃と変わったのかと思ってな」

 

そう言うと、ヴァルカンはああ、と言ってから、

 

「それはその太刀が本当の力を取り戻しただけ、あとはその太刀を信じてアーツを使用すればいい」

 

「太刀を信じてアーツを…か、ありがとう」

 

「どういたしまして、武器の持ち主の疑問に答えるのも鍛冶師の仕事だから、気にする事はないさ」

 

そうヴァルカンが言って会話を終えると、それを待っていたらしいペッローの女の子が、

 

「ヴァルカンお姉ちゃん、お話終わった?」

 

「ん?ああ、どうかしたか?」

 

「おいらさっきから腹ペコでお腹がぐーぐー鳴るんだ…何か食べ物ない?」

 

「そう言われてもな…さっきケーちゃんが食べてたクッキーで最後だ」

 

そう会話しているのを聞き、俺はさっき買ったおやつの事を思い出す。

そしてそれを取り出し、

 

「そこのキミ、これで良ければどうぞ」

 

と言い、さっき買ったおやつを、袋ごと手渡した。

 

「本当!?えへへ、お兄ちゃんありがとう!」

 

「どういたしまして、たんとお食べ」

 

「本当にいいのか?自分で食べるために買ったんじゃ…」

 

そう当の本人とは違って申し訳なさそうなヴァルカンが聞いてくる。

それに対して俺は首を振り、

 

「いや、クロージャがなにか買ってほしそうだったから買っただけだ、懐事情故にあまり無いが、喜んでもらえる人がいるならその人が食べた方がいい」

 

「そうか……よし、君が武器を使っていて何か不便に感じたことはないか?お礼と言ってはなんだが、何とかできるようならしてみよう」

 

そうヴァルカンが微笑みながら言ってきた。

しかし、俺にはこれと言って不便に感じたことは特にない。

強いて言うなら切れ味が良すぎて殺す気のない時に峰打ちしか攻撃方法がない事くらいだ。

 

その事をヴァルカンに伝えると、今度は、

 

「そうか、じゃあお茶でも飲んでいくといい」

 

と言って、研ぐのを中断してお茶をいれに行ってくれた。

なんだか申し訳なくなりつつもそれに甘えて椅子に座ると、美味しそうに俺のあげたおやつをもぐもぐと食べている女の子と目が合った。

 

「…美味しいかい?」

 

「うん!美味しいよ!」

 

「そうか、でもあまり食べすぎない方がいい、もう少しで晩御飯だ。美味しいご飯がおなかいっぱいになって食べられなくなるぞ?」

 

「うぅ…どうしよう、食堂のご飯も美味しいからおなかいっぱい食べたいし……お兄ちゃん、どうすればいい?」

 

そう純粋な瞳で見つめてくる女の子―――ケオベと言ったか―――が、尋ねてくる。

俺はどうしたもんかと考えていると、ちょうどそこに、ヴァルカンがお茶を持ってきた。

 

「ケーちゃんどうした?何に困ってるんだ」

 

「このお兄ちゃんがそろそろ晩御飯だから、晩御飯をたらふく食べたいならおやつはもうやめた方がいい、って……ヴァルカンお姉ちゃん、おいら、どうしたらいい?」

 

そうケオベはヴァルカンに聞くと、ヴァルカンは時計をチラッと見てから、

 

「もうそんな時間か、確かに、晩御飯をたらふく食べたいならおやつはもうやめた方が良いだろうな」

 

「そっかぁ……なら、このクッキーで最後にするよ」

 

そうケオベは言い、勿体なさそうに最後のクッキーを食べた。

俺はそんなケオベを見て、ちっちゃい頃のイツキを思い出しながらお茶を飲み、ふと室内を見回していた。

 

「…にしてもこの部屋は凄いな、ナイフから大剣まで色々ある」

 

「ん?……ああ、どれも私が鍛えたものだ、なにか気になるのか?」

 

「いやなに、俺は小さい頃から男の性というものなのか、剣やら刀とかの武器が好きでね、本物の剣が沢山あるからテンションが上がってるんだ」

 

そう俺が言うと、ヴァルカンはふむ…と言ってから、

 

「そうだ、君、私の作った試作のレビューをしてくれないか?何人かにはしてもらった事はあるんだが、実戦を常に経験するようなクラスの人になると相棒がもう決まってるから戦場で使うとなると普段と感覚が狂って危ないんだ。君ならまだ新人オペレーターだからそんな戦場に出ることもない…それに、その太刀を手入れした時の記憶が正しければ、君は元レユニオン、つまり実戦を経験しているはずだ」

 

「確かに実戦経験は少しあるが…それでも大したことをした訳じゃないし、ほとんど無いに等しいくらいだ……それでもいいって言うんなら、どうすればいいかわからんが手伝わせてもらうよ」

 

「感謝する、訓練の合間でいいんだ、私の使った武器や盾が実戦に足るかどうか、実際に訓練所で使ってみて評価をして欲しい」

 

「…わかった、いい表現ができるかはわからない、それだけは了承しておいてくれ」

 

「ああ、そのくらいのことなら大丈夫だ」

 

そんな会話をしていると、ずっと何事かわかってなさそうなケオベが、首を傾げる。

そしてケオベは、

 

「お話おわった?おいらもう腹ペコだよ…」

 

「よし、じゃあ君が良ければ、今後の事を決めるために一緒に食堂に行くか?……ああそうだ、まだ君の名前を聞いていなかったな」

 

「俺は橘 リョウだ、なんでも好きに呼んでくれ」

 

「橘…と言うと、生まれは極東か?」

 

「いや、親が極東、俺は別のところの生まれだ」

 

「そうか、なら刀の存在は親から?」

 

「まあそんな感じか、模造刀が家にあったんだ、あと小さい頃に本で調べたくらいだな」

 

そう武器トークを再開していると、ケオベが不機嫌そうに、ぶー…とほっぺたを膨らませ始めた。

 

「ああ、ごめんよお嬢ちゃん、ご飯食べに行こうか」

 

「お嬢ちゃんじゃないよ!ケオベだよ!ケーちゃんって呼んで!」

 

「ああ、それは悪い、じゃあケーちゃん、食堂に行こうか」

 

「うん!」

 

こうして、俺たちは食堂へと向かい、晩御飯を食べることにした。

何よりも驚いたのは、底を知らないケーちゃんの食べっぷりと、彼女が上級ランクの術士オペレーターといったことだ。

 

とまあ、こうして俺のオペレーター人生は、幕を開けていくのであった。




いかがでしたか?
そろそろタイトルも仮タイトルから本タイトルにしないとなぁと思いつつ思いつかないという…

まあ後書きもこの辺に、また次回、お会いしましょう!


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第16話

お久しぶりです、やっと書けました()
今回の投稿の際に章を追加してみました。

では前書きはこの程度に、それでは今回も、ごゆっくり見ていってください!


数週間ほど経った頃、俺は手首についたサーべライズマシンのデータなどを元にした、オリパシーの治療を受けていた。

治療…と言っても、今だ治療法の確立されていないオリパシーの治療は、進行を遅らせる程度しか出来ないのが現状なのだが。

 

治療を終えた後、俺は訓練所へと向かい、ドーベルマン教官にしごかれて一通りの訓練をこなし終えた後、疲れた体を動かし、ヴァルカンの工房へと向かった。

 

「タチバナ、疲れてるみたいだが…今日の兵装試験はやめておこうか?」

 

「いや…このくらいどうって事ない、何日も歩き続けるよりマシさ」

 

「……そうか、ならいいんだが。ああそうだ、今日の得物はこれだ」

 

そうヴァルカンは言い、ひと振りの片手剣を見せてきた。

 

「少し重心を先端に寄せてみたんだ、遠心力で威力が出るかと思ってね」

 

そう言って渡してきた片手剣を受け取り、俺は軽く構えてみる。

確かに、訓練などで使う一般的な片手剣より、重心が偏っているようだ。

しかし、構えにくさも扱いづらさも特に感じられず、それだけでヴァルカンの腕の良さを感じることが出来る得物だった。

 

「確かに、重心が若干ズレてるな…だが構えやすい重量バランスだ」

 

「良かった、少し寄せすぎたかと思ってたんだ」

 

そんな会話をしていると、工房にケーちゃんが、袋いっぱいのクッキーを抱えて入ってきた。

 

「こんにちはー!ヴァルカンお姉ちゃん、来たよー!」

 

「こんにちは、今日は迷わず来れたんだな」

 

「うん!えらい?」

 

「……ああ、偉いぞ」

 

そう言ってケーちゃんの頭をヴァルカンが撫でると、ケーちゃんは嬉しそうに笑った。

そして俺の事に気づくと、駆け寄って飛びついてきた。

 

「リョウお兄ちゃん!こんにちは!」

 

「こんにちは、今日も元気だな」

 

「うん!ところで今2人は何をしてたの?おいらもまぜて!」

 

そうケーちゃん言い、隠すことでもないので教える。

すると、

 

「楽しそう!そのれびゅー?ってのにおいらもまぜて!」

 

と、無邪気な笑顔で言ってきた。

どうしたもんか…そう思っていると、ヴァルカンが、

 

「……わかった、武器の扱いなら確かにケーちゃんも上手いからな」

 

「本当!?やったぁ!」

 

そうケーちゃんが喜び、やって欲しい事をケーちゃんにもわかるように伝え、俺たちは片手剣を持って訓練所へと向かった。

 

『仮想敵は最近1番交戦経験の多いレユニオンの一般兵士にセットした。合図があればいつでもスタートできるぞ』

 

そう無線越しにヴァルカンが言う。

 

「わかった、いつでも大丈夫だ」

 

そう俺が言うと、軽く返事があり、その後に訓練システムがスタートした。

 

まず正面からレユニオンの一般兵士…見覚えしかない服装に片手剣を装備した敵が2人現れ、出現と同時に突撃して来た。

先頭を走るヤツの大振りの上からの切りつけ攻撃を横に体を逸らして躱し、足をひっかけて転ばせる。

そして体勢を崩している間にもう1人の兵士の攻撃を弾き、そのまま遠心力を利用して振り回すかのように切り飛ばす。

そしてバックステップで距離を取り、起き上がってすぐに攻撃をしようとしてきている兵士を、相手の持っている剣をへし折るかの勢いで切りつける。

するとさすがに無理だとは思っていたのだが、当たりどころが良かったのか、狙った通りに剣がへし折れ、そのまま兵士は鮮血を吹き出してその場に倒れ、やがて黒い源石のようになって消えた。

 

それと同時に俺を中心に4方向に兵士が現れ、吶喊して来たので、重心を低くし、剣を小脇に抱えるように構える。

そして距離が近くなってきた時に、重心を前方に移動させ、崩れた体勢を利用してその場で回転斬りを繰り出す。

剣の先端重心もあってか思い通りに身体が回転でき、吶喊して来ていた兵士を全て戦闘不能にすることが出来た。

 

『ひとまずはここで終わるが…どうだろう?』

 

そう無線でヴァルカンが言い、俺は片手剣を鞘に収め、ふうと一息つく。

 

「任せる、一応今でも使い心地はレビューできそうだけどな」

 

「わかった、じゃあ今回はこれで…」

 

そこまでヴァルカンが言った時だった。

 

「おいらも!おいらもやるの!」

 

「…そうだった」

 

そう元気よく言うケーちゃんを見てヴァルカンが言い、今度はケーちゃんが訓練所へと向かった。

 

「……この金ピカの武器たちは一体?」

 

そう訓練所のオペレーションルームへと着いた俺は、まず最初に大量に積まれた武器を見てそう言った。

 

「ケーちゃんの装備してた武器…宝物たちだ、いつも背負ってただろう?」

 

「確かに背負ってたが……え?これ全部?」

 

「ああ、あの小柄な身体からは想像できないだろう?」

 

「ああ…にしても、いざ積まれると多いな、本当に」

 

そんな会話をしていると、ケーちゃんが準備完了したらしく、訓練所から元気の良い大声が聞こえてきた。

 

「……無線機を持たせてないのか?」

 

「いや、持たせた…けどやっぱり、まだ使い方がわからないみたいだ」

 

そうヴァルカンが言い、ケーちゃんに無線で訓練開始を告げ、ボタンを押した。

 

最初俺がやった時と同じく、目の前にレユニオンの兵士が2人現れると、ケーちゃんは勢いよく地を蹴り、あっという間に距離を詰めた。

そしてブレーキと同時に勢いよく横に一閃し、そのまま回転、もう1人にも斬撃を浴びせる。

 

『いっけー!』

 

そう兵士が消滅してすぐに四方に兵士が現れたのを確認してすぐに、ケーちゃんは前方にいた兵士に向かって片手剣を投擲して一気に距離を詰め、片手剣が着弾して吹き飛ぶ兵士から片手剣を回収すると、一気に反転し、タックルのように突っ込みながら、近づいてきていた兵士を切り飛ばす。

そして残った2人の兵士の攻撃をバク転で避けると、一気に前方へステップし、2人を一気に切り伏せた。

 

「……なあ、ケーちゃんってオペレーターの分類、なんだっけ?」

 

「?術士だが…どうかしたか?」

 

「…いや……なんでもない」

 

術士にしては戦闘能力と身体能力高すぎでは?と思ったが、ケーちゃんの過去を思い出し、言うのをやめる。

きっと、必死に生きてきたからこそ身についたスキルなのだろう。

彼女の生い立ちも人生も、聞いている限り謎が深い。

どんな人生を送ってきたのかは本人にしかわからないし、本人も対して気にしていないはずだ。

 

「ねぇねぇ!どうだった!?おいら、ちゃんとできてた?」

 

そう笑顔を見せてきている姿を見ると、今の生活が、彼女にとっていい物になっているのだろう。

 

それに、暗い話題を考えていたって仕方がない。

俺たち感染者は、現状、どう足掻いても感染者のままだ。

しかし、彼女のように明るく、楽しく生きていけば、いつか変わる時が来る…と言うのは、考えすぎだろうか。

 

そう思いながら、俺はケーちゃんの頭を撫でてやった。




文字数か少ない上に話の内容が変だったかも知れません()
本当に申し訳ないです()

次回もネタが浮かんだらしっかりと書きますので、これからもよろしくお願いします。
ではまた次回、お会いしましょう!


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第17話

アクナイではお久しぶりです。
タイトルを仮タイトルから本タイトルにしました。
タイトルからアークナイツを抜くかどうか悩んだけどまあいいや…って……

それはそうと、やっとネタとそれまでに繋がるのを思いついたので書けました。
好きなキャラたちと絡ませる方法ならまだネタが出るなぁ…って……

では今回もごゆっくり、見ていってください!


数日経ったある日、俺は休暇になり、イツキたちとロドスを歩き回る事になった。

イツキもシロもつい最近正式にオペレーターになり、訓練を受けているらしく、疲れているようなので息抜きになるかと思ったのだ。

 

まあ、本来ならばどこかに出かけたりするのが良いのだろうが、ロドスは1つの製薬会社の癖して移動都市が本体なのだ。

……本当に、財政力はどうなっているのだろう。

まあそんなことは置いておくが、移動都市ならば、外に出ようと思ったら停泊中にしか降りれない。

なら、艦内を適当にブラつこうという訳だ。

 

「…にしても、広い艦内だな、迷いそうだ」

 

「だねぇ……ってか、ここどこだろう……」

 

「ええっ!?イツキちゃん、道わかってなかったの!?」

 

そうシロが驚き、あわあわとし始める。

昔と違い、言動も柔らかくなり、年頃の女の子っぽくなってきてくれて嬉しいものだ。

…っていや、それはいいんだ。

 

「え?俺もわからないんだが……イツキ、道わからないのか?……マジで?」

 

「うん!全くわからないよ!」

 

「そっかぁ……」

 

そう明るく返事してくる妹のポジティブさに感心しつつ、俺はガックリと肩を落とした。

にしても、道がわからないとなると、まずはここがどこなのか把握する必要があるという事だ。

近くになにか目印や地図のようなものはないだろうか…そう思いながら歩いていると、唐突に後ろから誰かに話しかけられた。

 

『そこの御三方、すみません!シーンお嬢様を見ませんでしたか?』

 

そう声がした方向を向いてみるが、そこには誰もいない。

いやでも声はしたよな…?

でも足音ってしたっけ……?

そう思っていると、

 

『レンズはここです!こーこー!見下げてくださーい!』

 

「へ?」

 

そう言われるがままに見下げてみると、元気?に動く、6輪の小さなロボットがいた。

 

「うわぁぁぁ!?喋ったぁぁぁぁ!?」

 

『ええっ!?今頃ですかぁ!?ってか、その反応は心外ですぅ!』

 

そう言って荒ぶるロボットに軽く謝ってから、俺たちは何をしているのかを聞いてみた。

 

『ああっ!そうでした!シーンお嬢様を見ませんでしたか?』

 

「いや…誰も見てないけど…どんな人なんだ?」

 

『えーっとですね、白い髪の毛で…常におっとりとしていてカメラを持っていて……あとかわいいです!』

 

「お、おう」

 

そう迫真で言ってくるロボット―――レンズと言ったか―――に苦笑いしつつ、俺は記憶の中で当てはまる人があるかを思い出す。

……そう言えば、最近見た風景写真の撮影者がそんな名前だった気がする。

その人だろうか。

まあとりあえず、困っているなら助けた方がいいだろう、そう思い、俺は手伝う事にした。

 

「…よし、探すのを手伝おう。どこへ行ったか心当たりはあるのか?」

 

『本当ですか!?ありがとうございます!そうですねぇ…シーンお嬢様なら、写真を撮るために景色のいい場所によく行きますが…動きがゆっくりなのであまり遠くへは行っていないはずなのです』

 

「なるほど…なあイツキ、ロドスで景色のいい所ってどこだ?」

 

「うーん……屋上の甲板とか?シロちゃんはなにか心当たりある?」

 

「え?私もそこしか思いつかないよ……?」

 

「だよねぇ、じゃあそこ行ってみる?」

 

『わかりました!……ところでここから甲板へ、どういくのでしょう?』

 

「え?道わかって……?」

 

『整備が終わってすぐ爆走してきたので覚えてないです!』

 

「そっかぁ……」

 

そういい、結局俺たちは迷子の状態からわかる道へと出なければどこへも行けない状況から抜け出す手を考え始める。

 

こうなったら誰か道がわかる人を探そう、そう思い、誰かを探しつつ地図があることを祈って歩き始めた。

しばらく進むと、曲がり角の先の部屋のドアが開く音がし、誰かいると認知することが出来た。

そしてその人がこちらの方へと来て目の前を……

 

『あ、レンズさんこんにちは、シーンさんは今日はいらっしゃらないのですか?』

 

そう可愛らしい声でその白くて丸いナニカは言い、目線?をこちらへと向けてきた。

 

『あ、初めましてですね、私はLancet-2と言います。"かわいいクロージャお姉様"に改造された医療プラットフォームです。』

 

「は、はぁ…よろしく」

 

どこからツッコめばいいのかわからず困惑してしまうが、どうやらロドスにおいてロボットはいい声で喋るものらしい。

……まあ、人間ではないが誰かに出逢えただけよしとしよう。

 

「そうだLancet-2、シーンをみなかったか?」

 

『シーンさんですか?すみません、私は見ておりません…』

 

「そうか……ところで、ここから甲板へ行こうと思ったらどう行けばいい?」

 

そう尋ねると、どこかLancet-2が笑顔になった…気がした。

そして、

 

『もしかして迷子ですか?…まあ、ロドスは広いですからね。甲板へならそこの角にあるエレベーターから行けますよ、良ければお送り致しましょうか?』

 

「ああ、出来たら頼みたい……」

 

『わかりました!お任せ下さい!』

 

そうLancet-2は言うと、『着いてきてください!』と言って、俺たちの前を進み始めた。

それについて行き、エレベーターを待ち、エレベーターのドアが開く。

すると、その中から茶色の角張ったロボットと、なんか光ってるロボットが降りてきた。

 

『おや、ここにいましたかLancet-2、ドクター様が発電所を我々に担当して欲しいそうです。一緒に行きませんか?』

 

『わかりました、Castle-3さん。ではこの方々を甲板まで送り届けてからでもよろしいでしょうか?』

 

『もちろん構いませんよ、急ぎではないですからね』

 

『わたくしはこの熱く滾る熱エネルギーを早く活かしたいところですが…まあ困っている人は見過ごしておけませんな。ところでそこの鬼のお方、貴方から素晴らしいエネルギーを感じます、どうですか?わたくしとともに熱エネルギーの素晴らしさについて語るというのは!?熱エネルギーとは素晴らしく熱く、何よりも輝く。そう。未来を見すえて頑張る人々に通じるものがあるのです!さあ、皆さんも共にパワーを、そして熱エネルギーを称e

『Thermal-EX、その辺にしておいて下さい、皆さんドン引いてらっしゃいます』

ンンンッ、これは失礼、少々熱くなりすぎました。しかしこれだけは知っていてもらいたい、熱エネルギーとは素晴らしく、とても神々しいものなのだということを!』

 

「「「は、はぁ……」」」

 

なんだかこのロボットがいるだけでその場所の温度が上がりそうだなと思いながら、俺たち3人とロボット4人?でエレベーターに乗り、甲板までやってきた。

その途中でLancet-2から聞いたが、シーンはいなくなったと思ったら、自分の部屋に帰ってくるまで居場所がわからなくなることが多々あるらしい。

いつもならそこにレンズがいるのでわかる時があるそうだが、今回はいない…となると、探すのが大変になるだろうとの事だった。

 

3ロボに別れと礼を告げ、甲板を歩き始めると、レンズが爆走をし始めた。

俺はそれを追いかけると、そこには3脚にカメラを乗せ、広がる荒野の写真を撮っている女の子の姿があった。

 

『シーンお嬢様ぁぁぁぁ!もう!レンズのメンテナンス中に何も言わずにどこかへ行かないでください!』

 

そうレンズがその子の足元で言うと、その女の子は非常にゆっくりとした動きで、レンズへと屈むと、その頭?を撫で始めた。

そして俺に気づくと、またゆっくりとした動きで立ち上がり、カメラを持ってゆっくりとこちらへと向かってきた。

 

「……いちまい、どう?」

 

そう女の子はゆっくりと喋り、俺に向かってカメラを向けてきた。

 

「お願いしようかな」

 

そう言い、俺はポーズを取る。

…しかし、しばらく経ってもなかなかシャッター音がせず、未だにピントを合わせているようだった。

 

「……レンズ、もしかしてまだかかるパターン?」

 

『シーンお嬢様ですからね…ですが今日は調子が良いようです。あと10分もかかりませんよ。それまでご協力お願いします』

 

「そうか……」

 

少し写真を撮ってもらうことを後悔しつつも、極力動かないようにして、イツキとシロの様子を見てみる。

…2人はどうやら俺が写真を撮ってもらっているのを見たからか、遠くに沈む夕焼けを見て楽しんでいるようだ。

 

それからしばらくして、やっとパシャッという音と共にシャッターが切られた。

 

『ご協力ありがとうございます!シーンお嬢様もご協力頂いて喜んでらっしゃいます♪』

 

そうレンズに言われ、シーンの顔を見てみるが、先程であった時と同じ無表情のように見えた。

そう思ったことに気づいたのか、レンズは追加して、

 

『シーンお嬢様はピロサ族でして、感情が現れるのもゆっくりなんです。シーンお嬢様の笑顔が見たいなら、もうしばらく待つことをオススメします』

 

「ああ、なるほど」

 

そう俺は納得し、もうしばらく待つことにした。

ピロサ族ならば、個人差もあるだろうが、確かに動きもゆっくりになるだろう。

そう思っていると、撮影が終わったことに気づいたのか、イツキとシロが近づいて来た。

 

「お兄ちゃん、撮影終わった?そろそろ晩御飯食べに行こうよ!」

 

「ん?もうそんな時間か?」

 

そう言いながら、スマホを起動し、時計を見る。

確かに、そろそろ晩御飯の時間だった。

 

「お兄ちゃん、スマホの壁紙もその写真なんだ、外に出てからその人の写真好きだよね」

 

「ああ、なんかただ綺麗なだけじゃなくて、無慈悲だけどどこか優しい世界を表してるっていうか……なんか優しさを感じるんだ」

 

『ほうほう、どんな写真ですか?レンズにもお見せください!』

 

「ん?ああいいぞ」

 

そう言ってスマホの壁紙をレンズに見せると、

 

『ふふっ、この写真の撮影者こそ、ここにいるシーンお嬢様でございます!お目が高いですね♪』

 

と言ってきた。

 

「えあっ!?マジでか!?」

 

「お兄ちゃん、えあってなにえあって…」

 

「いやそりゃそのくらい驚くだろ!?イツキで言う好きな絵師さんが目の前にいる感じだぞ!?」

 

「ああ…そりゃそうなるね」

 

そう兄妹で会話していると、シロのお腹がぐぅ…と鳴った。

 

「あっ!?すみません、熱が入ってる会話の最中に……!」

 

「いやいいよ、イツキ、シロと先に飯行っててくれ」

 

「わかった、お兄ちゃんもあまり遅くならないようにね」

 

「ああ、わかった」

 

そう言って2人を見送り、ふと振り向くと、先程まで無表情だったシーンの顔に、天使のような笑顔が浮かんでいた。

 

「ありがとう、わたしのしゃしんがすきっていってくれて」

 

そうシーンは照れくさそうにゆっくりと言い、その足元でレンズが荒ぶっていた。

 

『シーンお嬢様が直接お礼を!?どうしましょうどうしましょう、今日はお赤飯ですかー!?』

 

「いや別にそこまでしなくても……」

 

『でもしっかりとコミュニケーションをシーンお嬢様から取ろうとする人は珍しくて…!そりゃもう数える程しかいないんですよ!』

 

「へぇ……なんか照れくさいな」

 

『こうなったらシーンお嬢様をおんぶして食堂へ向かいましょう!ご飯の時間ですよー!』

 

「どうしておんぶになる……」

 

そうやれやれと思いながらシーンの方を見てみると、シーンがだっこ。とでも言いたそうなポーズを取っていた。

レンズの言うことは一理ある…のかもしれない。

 

「はぁ…わかった、乗りたきゃ乗りな」

 

そう言って背中を向けてしゃがむと、シーンが乗ってくる。

決して大きいとは言わないが柔らかいナニカが背中に当たるが、そういうのはイツキでもう慣れてる。うん。

 

「よいっ…しょ、じゃあ食堂へ行くぞ……ああそうだ、俺は橘 リョウ、まあ適当に呼んでくれ」

 

「うん。わかった」

 

そうシーンは言うと、背中の上で寝てしまい、食堂についてからイツキやシロに弄られたのは言うまでもない。




最近知ったんですけど、ロドスの艦内って小さな商店街あるらしいですね…
やべぇなぁ……

それはそうとシーンちゃんが可愛くてやばいです。
なでなでしたい。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第18話

お久しぶりです、やっとネタが浮かんだので書けました……
とりあえず投稿分と、あともう1話分は書けそう…ではあるんですが、そのネタにどう繋げようかまだ悩んでおります。
多分書けば流れでかけそうですが……()

では今回もごゆっくり、見て行ってください。


とある日、俺はドクターに呼ばれ、次行くことになった任務の情報を共有されていた。

次向かうところは昔俺たちがレユニオンとして活動していた場所の近くの村へ行き、情報収集や村の保護活動をする事になっている。

つまり、俺がロドスに入った時にドクターに頼んだ、昔世話になった村へともう一度行くことが叶うのだ。

メンバーは俺とイツキ、シロに、ロドスの行動隊A4、そしてロープという女の子らしい。

 

A4はその任務当日まで別の任務があるらしく、先にロープとだけでも顔合わせしておいてくれと言われ、俺たちはよくロープがいるという場所へ向かっていた。

 

「紫色の髪のコータスで……盗み癖がある女の子……そんな事言われてもすぐ見つかるのか……?」

 

「紫色の髪ってあんまりいないイメージあるからすぐなんじゃないかな?」

 

「それにコータス族なら大きな耳もあるでしょうし…わかりやすいとは思いますよ」

 

「そうかぁ……」

 

そんな会話をしていると、不意に前から来た女の子とぶつかってしまった。

 

「おっと…すまない、怪我は?」

 

「大丈夫だよ、じゃあぼく急いでるから!」

 

そう言って駆け出す、紫髪のコータスの女の子を呼び止める。

女の子は頭の上に?マークが見えるのではないかと言うほどにキョトンとしているのを見て苦笑いしつつ、

 

「君が盗ったのは小銭入れだ、盗るならこっちにした方がいい……交換でもするか?」

 

「え"っ……バレてた?」

 

「ちょうどポケットに財布とかが入ってないと違和感を感じるズボンでね、ぶつかった後に気がついたよ……ところで、君がロープかな?」

 

「もしかしてぼくを探して……?ああ、もしかして次の任務が一緒の?」

 

「ああ、橘 リョウだ、よろしくな」

 

そう言って手を差し出すと、ロープは俺の財布をチャレンジコインのように手渡しながらその手を取ると、

 

「よろしくね……あと、財布は返すよ、ごめんなさい」

 

と、申し訳なさそうに返してきた。

 

「ドクターから話は聞いてる。………ここに来る前は大変だったらしいな」

 

「まあね。仕方の無いことだけど」

 

「……よし、親睦を深めるついでに、昼飯でも食いに行くか、俺の奢りだ」

 

「え?いいの?……本当に?」

 

「ああ、最近ロドスの商店街で美味い店を見つけてな、食堂と違って金はかかるが、味はとてもいい」

 

そう言い、俺たちは昼飯を食べに、ロドスの商店街へと向かった。

 

ロドスは表向きは1つの製薬会社として存在している。

まあ、裏向きは感染者に関わる様々な事をしているのだが……それは今は置いておこう。

ロドスは1つの製薬会社として先程も言ったが存在している。

それならば普通、どこかの移動都市に研究所などを置いているはずだ。

だが、このロドスアイランドは違う。

研究所に病室、オペレーターやその他職員などの自室、その他多数の部屋や設備……その全てが、龍門などの移動都市には遠く及ばないが、小さな移動都市……少し言い換えると"方舟"のように纏まり、ここだけで生活ができるようになっている。

中でも驚いたのが、この商店街だ。

様々な店が集い、クロージャの購買部とは違った物品やらサービスやらを提供している。

もちろん金はかかるが、そのサービスはどれも1級品だ。

もう1つの都市じゃん。

 

そんな事を思いながら、龍門にも店を構えており、その道では知らないものはいないと噂させる海鮮料理屋……北海へとやって来た。

戦闘力やなにか特化していることがあればスカウトするロドスの中でもある意味異色な男性……ジェイの店だ。

 

「ここって……あの龍門の魚団子スープの名店の……!?本当にこんなとこ、ぼくに奢ってくれるの!?」

 

「ああ、ここは魚団子スープ以外もすげぇ美味いぞ」

 

そう言いながら店に入ると、ちょうど魚を捌いていたジェイと目が合った。

集中していたからか、いつもより顔が怖くなってしまっており、3人とも俺の後ろに隠れてしまった……が、俺が誰か認識したジェイの笑顔でその不安は払拭されたようだ。

 

「誰かと思えば……タチバナの旦那、今日は妹さんと一緒で?」

 

「妹と仕事仲間だ、いつものやつと…今日は贅沢に刺身をおすすめで貰おうかな」

 

「わかりやした、少々お待ちくだせぇ」

 

そう会話をし、俺たちはテーブル席に座った。

そしていい匂いに食欲をくすぐられていると、唐突に後ろから、聞き覚えのある声に話しかけられた。

 

「やぁ、タチバナ。君もジェイの店の常連とはね」

 

「誰かと思えば……ドクターですか……なんかいつもと違って周りに人多いですね?」

 

そう言いながら、俺はドクターの周囲に座る人の顔を見る。

1人は社長のアーミヤだが、残る銀髪のフェリーンの女の子と、黒髪のフェリーンの女性は誰だろうか。

 

「私は前衛オペレーターのブレイズ、んでこっちで必死にスープを冷ましてるのがロスモンティスって言うんだ、今日はドクターの奢りで美味しいもの食べに来ちゃった」

 

「君は私に奢らせるのが好きだな……まあオペレーターの皆が楽しいならそれでいいのだが……」

 

「大将、お話の途中に失礼しやす、タチバナの旦那に頼まれた料理ができたんで持ってきやした」

 

そんな会話をしていると、ジェイが厨房から出てきて、俺たちの机に料理を置いて言ってくれた。

どれも美味しそうで、刺身は見るからに新鮮だ。

 

「さて……ロスモンティスも食べ終わったし、私たちは先に行くとするよ、タチバナ、今度の任務、頑張ってくれたまえ」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

そう言い、ドクターたちを見送った後、俺たちはテーブルに並ぶ料理を食べ始めた。

 

……その後、店を出る時に、俺たちの分もドクターが払ってくれていたと知り、後で俺はドクターにお礼に行くことになった。




ジェイの海鮮料理が食べたい(これの執筆中はお昼)
ジェイって、本当にいいキャラしてますよね、そしてセリフが脳内再生しやすくてものすごく助かる。
ドクターは脳内のCVが津田健次郎さんでした。

最後に文字数についてのアンケートを行っております、エラー吐いてるの気づかずにさっき(0754頃)設定してきましたので、よろしくお願いします。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第18.5話

どうもお待たせしました!

急いで書いた+ネタ切れのためかなり短くなってしまったので19話前の話として扱うことにしました。

それでは今回も、ごゆっくり、見ていってください!


「参ったな………」

 

任務当日の朝、俺は服を入れているタンスを眺めながら、そう呟いていた。

理由はただ1つ、訓練などが大変で洗濯を後回しにし続けていた結果、今日着ていく予定だったロドスの制服が全て、洗濯カゴの中にあるのだ。

 

どうしようかと悩んでいたが、出発までの時間ももうなく、仕方なくドクターに相談することにした。

 

「え?服?なんでもいいよ?」

 

ドクターに相談し、ドクターの口からそうあっけらかんとした口調でそう言われ、俺は回答に逆に困ってしまい、あ、はいとだけ返してしまい、そのままアーミヤに呼ばれたドクターからの通話は切れた。

 

「なんでもいい……か………」

 

そう言いながら、俺は壁にかけてある、ひとつの服を見る。

それは、俺が昔着ていた、レユニオンの制服だった。

他に着るものもない現状、着れるのはこれだけだ。

仕方なくそれをハンガーから外し、レユニオンの制服を着て、いつもの癖で仮面も着けて装備を整えて部屋から出ると、レユニオンのブッチャーのような格好……だが、ブッチャーとは違う人物が歩いていた。

 

「「………え?」」

 

お互いにお互いを認知し、最初に放った言葉が被り、俺たちはなんとも言えない空気に包まれた。

だが、ロドスにいるということは敵ではない……はずだ。

 

「……元レユニオンか?」

 

「ああ、元レユニオン、マドロック小隊のマドロックだ。あなたは?」

 

「元レユニオン第23小隊小隊長、タチバナだ」

 

「第23小隊……噂程度に聞いたことがあるような……ないような………」

 

そうその巨大な鎧を着た人間は思い出そうとしているポーズを取りながら、唸り始めた。

ってか声可愛いなオイ、もしかして中身女性か?

 

「ああそうだ、以前小隊のメンバーが我々に似ている変わり者の小隊があるって言ってきた小隊……だったはずだ」

 

「まあ…その認識で間違ってはないな……」

 

そんな会話をしていると、ふと時計を見たら出発までの時間が迫って来ていた。

 

「悪い!もう時間だ!レユニオン談義とかはまた今度にしてくれ!また今度話そう!うちの小隊メンバー込みでな!」

 

「ああ分かった。どこへ行くんだ?」

 

そう聞かれ、俺はどう答えようか、一瞬言葉に詰まった。

あの場所を上手く言い表せることが出来る言葉……

 

「そうだな………レユニオン時代の実家みたいなところだ」

 

「………そうか。それはいい事だ……よろしく伝えておいてくれ。大地の加護がありますように」

 

「……ああ、わかった!」

 

そう言い、俺はマドロックと別れ、急いで待ち合わせ場所へと向かった。




いかがでしたか?
この作品で2021年の投稿は最後になると思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
良いお年を!


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第19話

お待たせしました……
やっと完成したので投稿です。
締め方が雑くなってしまいましたがまあそこはご愛嬌ということでなにとぞ……()

では今回もごゆっくり、見ていってください!


飛行装置に乗り、数時間後。

夕方になりつつある空の中、着陸できるスペースを見つけたパイロットが機体を降下させ、やがて接地した。

 

「降下よし!俺はここで機体と待機しとく、行ってきな」

 

そうパイロットの男性は言うと、いつの間にか沸かしていたお湯を、カップ麺に注ぎ始めた。

 

それを見て俺は苦笑いしながら機体を降りると、武器の感覚を確かめてながら周囲を見回した。

 

「こうしてまともに任務で顔を合わせるのは始めてだな、元気にしてたか?」

 

そう、後ろから聞き覚えのある声が、俺の肩に手を置きながら聞いてくる。

先程までの飛行中、ずっと寝ていたノイルホーンと、前に会った時にノイルホーンを呼びに来た女性だ。

 

「ああ、なんとかこうしてオペレーターにもなれてる……あんたは疲れてんのか?さっきまでずっと寝てたが」

 

「まあ疲れてねぇわけじゃねぇが……寝れる時に寝るのも重要だぜ?なあヤトウ?」

 

「それはそうだが……少し寝すぎなんじゃないか?」

 

そんな会話をしていると、次々に今回のメンバーが降りてくる。

イツキにシロにロープ、そしてとても眠そうなとても小さい……女性?に、ザラックの老兵だ。

 

「おぬしが今回向かう場所に行ったことのある元レユニオンか、この辺の地形に見覚えはあるかのう?」

 

そうザラックの老兵に声をかけられ、俺はもう一度周りを見回す。

……少し変わっているが、どうやら元ベース基地の近くのようだ。

 

「ああ、多分ここから……北の方に向えば俺たちが使ってた拠点があるはずだ」

 

「それは良かった、ちなみにそこに今もレユニオンはいると思うかのう?」

 

「……いや、いないだろう。元々が流刑の先のように不便なところだし、いるならそろそろ飛行装置を見つけてここにたどり着いてきてるだろうさ」

 

「ふむ……そこのコータスのお嬢さん、なにかが今近づいてきてると思うかのう?」

 

そうその老兵はロープへと尋ねる。

 

「うーん、音もしないし来てないと思うよ?あとぼくの事はロープって呼んでね?」

 

「おやおや、それは悪い事をしたのう。儂は狙撃担当のレンジャーじゃ、今回の任務の間、よろしく頼むぞい」

 

そうレンジャーは無いあごひげを触るような動きをしながら言い、周辺を見渡した。

 

「ふむ……もしかしたら一雨来るかもしれんな、急ぐとしようぞ」

 

そう言い、レンジャーは地図を見ることなく、目標の場所へと歩き始めた。

コードネームの通り、地形の把握は得意らしい。

 

俺もそれについて行こうと歩き始めると、俺の前に眠っている小さな女性?を背負った、ノイルホーンがやって来た。

 

「………まだ寝てるのか?」

 

「ん?ああ、ドゥリンはそういうやつなんだよ、体質らしいから気にしなくていい」

 

「なるほどな…」

 

そんな会話をしていると、見覚えのある村の近くへと来ていた。

そんな中、ロープがぴょこぴょこと耳を動かしながら、何かを聞いているようだった。

 

「ロープ?どうしたんだ?」

 

「んー?いや、なんか獣の息遣いが聞こえる気がするなーって」

 

そうサラッとロープは当然のように言い、ロープの後ろを歩いていたシロとイツキが驚く。

そして2人も耳をすまし始めると、2人の顔がみるみるうちに青くなっていった。

 

「お、お兄ちゃん……?なんかヤバそうな獣の声が聞こえるんだけど……」

 

「リョウさん、これ、確実に肉食そうな声です………」

 

「えぇ…嘘だろ…………」

 

そんな会話をしていると、どうやら前を歩いていた行動隊A4のメンツも気づいたようで、戦闘態勢を取っていた。

 

やがて高らかな咆哮が聞こえると同時に、村の方から悲鳴と叫び声が聞こえてきた。

 

「急ごう!」

 

そう言い、俺は太刀に手を伸ばして走り始めた。

やがて村が見えてくると、そこでは大量の鉱石病に感染しているオオカミが、倒れ込んでいる村人へ襲いかかっているのが見えた。

 

前方に大きくステップして彼我の距離を詰めながら抜刀し、そのままの勢いでその感染生物を斬り飛ばすと、接近してきていた複数体のの感染生物へとなぎ払いを食らわせて吹き飛ばした。

 

「早く後方へ!」

 

そう倒れ込んでいる村人へ言うと、村人は何度も頷き、立ち上がって逃げて行った。

 

それを見て苛立ったのか、感染生物たちは太刀では捌ききれそうにもない量で、俺へと飛びかかってきた。

 

それを見た俺は、太刀を持つ手にグッと力を込めた。

その瞬間、刀身が紅く輝き、俺の周囲をオレンジ色の障壁が包んだ。

 

それに思いっきりぶつかった感染生物たちは悲鳴に似た叫び声を上げると、距離を計ってこちらを観察してきた。

 

その瞬間、建物の影からアーツが感染生物を襲い、それをジャンプで回避した感染生物に空中で矢が突き刺さり、1匹1匹確実に屠られて行った。

そんな中、後ろを逃げていく村人へと、数匹の感染生物がすり抜けて襲いかかりに行くのが見えた。

 

しまった、と言うよりも先に、その感染生物たちへと鉤爪とチェーンがとりつき、そのまま俺の目の前へと引きずられてきた。

 

「今だよ!」

 

そうロープの声が聞こえ、俺はその感染生物たちを一気に切り伏せた。

 

周囲を見回し、他の敵を探す。

しかし見つからず、全ての敵を倒し尽くしたのかと思っていると、もう片方の広めの道があった気がする道から、盾に何かがぶつかる音と、大きな斬撃音が聞こえてきた。

 

急いでそこへと向かうと、大量の感染生物に囲まれている、ノイルホーンとヤトウがいた。

助けに行こうと動き出したのをレンジャーに止められ、2人の方を見てみると、ノイルホーンがヤトウへ攻撃してきた感染生物を絶妙なタイミングでヤトウの間合いに弾き飛ばし、それをヤトウが切り伏せる。

そしてノイルホーンへと攻撃に向かう感染生物をヤトウが切り伏せ、突進してきた感染生物を見るなりノイルホーンの盾を足場にして天高くへ飛んでそれを回避し、その突進してきた感染生物をノイルホーンが盾でアッパーをして空中へと吹き飛ばす。

 

そしてそれをヤトウがいつの間にか出てきていた満月を背に、空中で居合いの構えから、一気に切り伏せ、ノイルホーンの隣へと着地し、刀についた血を振り払い、納刀した。

 

「ふいー、終わった終わったぁ」

 

そうノイルホーンが盾を地面に起きながら、そう先程の戦いっぷりからは想像もできないテンションで言う。

対するヤトウも、ふぅと一息着いたと思ったら、その場で疲れたと言ったふうに身体を伸ばし始めた。

 

「……すげぇ」

 

そう、俺は思わず声に出ていた。

チームワークは俺も得意だと思っていたが、この行動隊A4というチーム……いや、ロドスのチームワークはそんなのなんて比にならないようだ。

 

そんな事を思いつつ、周囲を見渡してみると、イツキとシロが居ないことに気づいた。

 

「2人は?」

 

そう問いかけると、ノイルホーンによじ登って寝る体勢に入りつつあるドゥリンが、

 

「あっちで村人の治療してるよー……はー疲れた、じゃあ私寝るから……」

 

「お前寝てばっかじゃねぇか…もうちょい起きろよ」

 

「えーやだー、私からしたら朝も昼も夜も活動時間外だから……」

 

そう言い、ドゥリンは再び眠りについた。

俺は言われた方向へと向かうと、そこでは村人の治療をしている2人を見つけることが出来た。

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「リョウさん!お疲れ様です!」

 

そう笑顔の2人に出迎えられると、村人の中から、懐かしい顔がでてきた。

 

「久しぶりじゃのうタチバナ、元気にしよったか?」

 

「村長!お久しぶりです、俺たちはお陰様でなんとかやってます」

 

「そうかそうか……で、今回はどうしたんじゃ?見たことの無い者もおるが」

 

そう言う村長の視線の先には、A4のメンツと、周囲を物珍しそうに眺める、ロープの姿があった。

その中からレンジャーがこちらへと歩いてくると、

 

「我々はロドスアイランドの者じゃ、今回はうちのオペレーターが世話になったところが心配だと聞いてのぅ、こうして来てみたというわけじゃ」

 

「なるほど、ロドスアイランドの……タチバナ、お前たちは立派になったなぁ……ところで、どうしてロドスに?」

 

「それは……」

 

そう、俺は言い淀む。

レユニオンを辞めてロドスに就職した、まではいいのだが、大きな理由の一つには、オリパシーの治療もある。

 

……この村の人たちには、俺たちがオリパシーということは伝えていない。

それを明かすと、何を言われるのだろうか。

 

そう怖くなった俺は、なかなか返事をできないでいた。

 

「まあいい、感染生物から村を救ってくれたお礼じゃ、今晩は泊まっていくといい。飯も用意しよう」

 

そう村長は言うと、村人に号令をかけ、準備を始めてくれた。

そして、俺の横を通り掛かる時に小声で、

 

「オリパシーがなんじゃ、"同じ"感染者同士、助け合わねば損じゃろうが。ここにいる皆は住んでいた場所でオリパシーになり迫害を受けてきた者たちじゃ、何も心配はいらんよ」

 

と、言って去って行った。

 

俺は咄嗟に振り向くと、村長は片手でピースサインを作り、「今日は忙しくなるわい」と言って、村人たちの元へと戻って行った。

 

次の日。

前日の辺境の村とは思えないご馳走を振舞ってもらった俺たちは、久々にこの土地で朝を迎えた。

いつもなら静かであろうこの村の朝だが、今日は何やら少し騒がしかった。

 

何事かと思い、俺は泊まらせてもらっていた家から出ると、既にイツキやシロ、ロープに行動隊A4のメンバーが、ドゥリンを除いて揃っていた。

 

「……何があったんだ?」

 

そうイツキに問いかけると、涙目になりながら、とある所を指さした。

そこでは、昨日の襲撃で深手を負っていたのであろう村人………いや、"村人だったオリジニウム"が埋められているのが見えた。

 

それを呆然と見ていると、村長が俺の元へと近寄って来た。

 

「……アレが、この村の現状じゃ。定期的に獣に襲われ、襲われなくともオリパシーで早く死ぬ。ワシももう長くはないじゃろうて」

 

そう言い俺の肩をポンと叩くと、村長はその場から去ろうと歩みを進め始めた。

 

「ご老人、ちょいとジジィの戯言を聞いていってはくれぬか?」

 

そんな村長をレンジャーがそう呼び止めると、村長は不思議そうに首を傾げながら歩みを止めた。

 

「今回、ドクターには情報収集やこの村が必要とするならば"保護"してきて欲しいと頼まれたのじゃが……この保護には"単に用心棒を置くだけでなく、オリパシー患者がいればその者が望むなら連れて帰って来て欲しい"という意味なのではないか、と思っておってのう」

 

「ほう……それで?」

 

「もし望むのなら、じゃが……ロドスに来てオリパシーの治療を受けてはどうじゃ?なに、対価としては自らの得意分野でなにかロドスに対して得になる事をしてくれれば良い。例えば……昨日見せてくれた踊りで場を盛り上げてくれるだけでもいいんじゃ」

 

そうレンジャーが言うと、村長はふむ…と言うと、

 

「それはワシ1人で決めることではない………昼まで待っては貰えんかのう?」

 

と言い、そのまま去って行った。

 

それから数時間後の昼過ぎ。

俺たちは村長に呼ばれ、村長の家に来ていた。

そこには恐らくこの村全員であろう村人が集まり、真剣な表情でこちらを見ていた。

 

「……タチバナ、ロドスはどんなところじゃ?」

 

そう村長に問われ、俺は少し考える。

 

「そうですね……感染者と非感染者が助け合い、和気あいあいと過ごしている……大袈裟に言うなれば、この世の楽園…でしょうか」

 

「この世の楽園、か……」

 

そう村長は考え込むと、周囲の村人と顔を見合せ、頷きあった。

 

「どうせワシらも長くない。最後にそれに賭けるのも悪くないじゃろう………レンジャーよ、ここにいる全員が行けるような場所なのか?」

 

「それは聞いてみんとわからんが……恐らく、行けるじゃろう」

 

「ふむ…ロドスがワシらを明日へと連れて行ってくれる方舟となるか……見ものじゃのう」

 

そう村長が笑顔で言うと、その場に笑顔が溢れた。

 

 

それから数日後。

俺がロドスの艦内を歩いていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 

「なんだこのジイさん!?もう1人でそこそこの範囲を完璧に耕し終わりやがった!」

 

「まだまだ若いのには負けんわ!村のクワを持っとるヤツ全員合わせても勝てぬと言われたクワさばきを見せてやるわい!」

 

「うぉぉぉぉお!なんだこの速さ!?人間トラクターなんじゃねぇのか!」

 

そう言われている楽しそうな村長を見て嬉しくなりつつ、俺は今日も今日とて訓練場へと向かった。




いかがでしたか?
ではまた次回、お会いしましょう!


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第20話

こちらではお久しぶりです……()
久しぶりにまとまったネタが浮かんだのでやーっと書くことが出来ました!
今回ので今後の書き方の展望も少し見えてきたので、もう少し書く頻度を上げて投稿出来たらなと思います!

では今回もごゆっくり、見ていってください!


ある日、俺はヴァルカンと共に、新たな武器防具の意見の出し合いをしていた。

レユニオンだった頃に欲しかったものや、実戦で役に立ちそうなもの。

それらを組み合わせ、図面に描き、試作し……結果としていい物が出来なくとも、失敗からは沢山のことを学ぶことが出来る。

数時間ほど討論し合っていると、お互いに疲労が溜まってきたので、1度お開きとなった。

 

俺はなにか糖分でも取ろうかと、ずっと暇そうにぐでーとしていたケーちゃんを連れて、食堂へとやって来た。

たどり着くなり、厨房の方がなにやら賑やかなことに気づき、俺たちは厨房を覗き込んでみることにした。

 

「おや?誰かと思えば……ケーちゃんと……初めてお会いしますね?俺はマッターホルンと申します、以後お見知り置きを」

 

そう優しそうなフォルテの男性……マッターホルンは礼儀正しく自己紹介してくる。

……これが出来る大人という訳か。

絶対モテるだろうなこの人。

 

「俺は橘 リョウ、コードネームはそのまんまタチバナでやってる………ところで一体何を?」

 

そう訪ねると、奥の方にいた、元気なウルサスの少女がやって来て、

 

「今ね、新しいデザートの研究してるんだ!良かったら味の感想貰えないかな?」

 

と、トレーに乗ったいくつかのケーキを手渡してきた。

 

「わぁい!クマちゃんありがとう!」

 

「どういたしまして、お兄さんもどーぞ!」

 

「ああ、ありがとう」

 

そうお礼を言って受け取り、軽く匂いを嗅いでみる。

……とても甘くていい匂いだ。

 

「すごい!とっても美味しいよ!」

 

そうケーちゃんは既に食べ終え、まだ残っていたものまで貰い始めている中、俺はゆっくり、少しづつ味わう事にした。

 

「うん、甘くて美味いな……疲れた体と頭にに染み渡るよ……余ってたらで良いが、1つ包んでくれないか?ヴァルカンにも渡したい」

 

「良いですよ、お渡ししますね」

 

そうマッターホルンは言うと、手際よくケーキを包み、可愛くリボンを結び、手渡してきた。

 

「ありがとう……ところで、ケーちゃんとあのウルサスの子は大丈夫か?」

 

「えっ?」

 

そう俺が軽く指を指した方向を、マッターホルンは見る。

その先では絶賛、ケーちゃんとウルサスの少女が、多少血の気を感じる追いかけっこをしていた。

それを見たマッターホルンは軽く溜息をつき、

 

「マズイですね、グムはお腹が空きすぎると見境なく噛むんですよ……多分、作ってる時には既にお腹すいてたんでしょうね」

 

「……まだこのケーキ、食べてなかったのか?」

 

「ええ、ちょうどタイミング良くいらっしゃったので……ああ、ですが味見はしてますから、俺たちが食べてないことについては気に病まなくても大丈夫ですよ」

 

「だといいけど……とりあえず、ちょっと止めてくるよ」

 

そう言い、俺は追いかけっこをしている二人の間に割って入る。

その瞬間、グムと呼ばれている少女が飛びかかってくると、そのまま俺の腕に全力で噛み付いてきた。

その痛みに堪えながら、俺は空いている方の手で、腰に着けていたポーチを漁る。

そして干し肉を取り出し、それでグムの気を引き、口を開かせる。

すぐに干し肉を口に突っ込むと、それを食べたと同時に、少し理性が戻ってきたようで、少しボーッとした表情になっていた。

 

「まだ干し肉、食べるか?」

 

「……うん、ありがとう」

 

そうグムは返事をすると、俺の手から干し肉を手に取り口へと運んでいく。

しばらく食べると元の調子に戻ったようで、俺の少し血が滲む服を見るなり頭を下げ、

 

「ごめんなさい!グム、お腹がすいちゃうといつもこうで……」

 

「いや、いいよ………何か大変な事を経験してきたんだろう?そうじゃないとあそこまでならないはずだし、仕方ないさ」

 

「……うん、ありがとう、お兄さん。でも腕の怪我の手当だけはさせて?干し肉のお礼に、さ」

 

そうグムは言い、ポケットから、一般的にも売られている、小型のアーツユニットを取り出した。

そこには名前が書いており、ウルサスでよく使われている文字で書かれていた。

………ああ、この子は、レユニオンのせいで、酷い目にあったんだ。

だから、あそこまで食料に固執するようにまでなってしまったのだろう。

 

……………ならきっと、本来とは違う経験をして、時間ですら癒せない、心の傷があるだろう。

 

 

「わかった………多分、俺なんかじゃ君の心の支えにはなれないと思うが、何かあったら頼ってくれ、君の役に立てるならどんな小さなことでもいい」

 

「………うん、ありがとう」

 

そうグムは悲しそうながらも笑顔で言うと、俺の腕の傷を治してくれた。

しかしまだ落ち込んでいるグムの頭を、もう大丈夫だと信じてもらうために噛まれた方の腕で撫でてやる。

そして、

 

「マッターホルン、ここの食堂は志望すれば配属してもらえるのか?」

 

「ええ、ドクターに伝えれば快くここでの仕事を割り振ってもらえると思いますよ」

 

「わかった………じゃあ、俺もたまにここで世話になろうかな、レユニオン時代からアイディアを出して料理してたから、何かしらの役には立てると思う」

 

「なるほど、厨房のメンバーが増えるのは心強いですね、こちらとしてもお願いします」

 

「じゃあ今日は予定が埋まってるから、明日にでもドクターに言ってみるよ。あとケーキありがとう、この味なら絶対人気出ると思うぞ」

 

そう言い、俺たちは食堂を後にした。

 

「んー?リョウお兄ちゃん、なんだか悲しそうだよ?」

 

「そうか?………まあ、大丈夫だよ、過去は変えられないけど、今は違う。ケーちゃんも昔よりも嬉しいことが多いだろう?」

 

「うん!ヴァルカンお姉ちゃん、ケーキおいしいって食べてくれるかなぁ」

 

そう嬉しそうに言うケーちゃんの頭を撫でてやりながら、俺たちはヴァルカンの工房へと戻った。




いかがでしたか?
この作品を書き出して2章に突入させてから、儚くとも楽しく生活できてるロドスメンバーを書けたらなぁと思っていたのですが、グムたちウルサスメンバーとかのどうすればいいんだ……どうすれば………な子達が多くネタが出づらい状況です()
ですが今回のように直接明るく生活!よりはアークナイツなので少し暗く悲しい感じも追加出来たらなぁ……にシフトしてきたので、文章力が追いつくかはわかりませんが、どうぞ生暖かい目でごゆっくりお待ち頂けたらと思います。

ではまた次回、お会いしましょう!


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第21話

やっと続編がかけました……本当にお待たせしました……
かなり短めですが大目に見て貰えるとありがたいです()
最近アークナイツのストーリーもほぼ読んでない弊害かネタが浮かばないんですよね……

あ、それはそうと最後にアンケートを用意しましたので、入れてもいいよ、という方はよろしくお願いします!

では今回もごゆっくり、見ていってください!


身体が動かない。

いや、正確には半身が何かに埋もれるかのように重いようだ。

 

ゆっくりと目を開け、俺は重たい身体の方へと振り向く。

すると―――

 

「ううん……おいら、もう食べられないよ……」

 

と、俺の身体を抱き枕のようにして寝ている、ケーちゃんの姿が目に入った。

 

「はぁ……びっくりした………ってえ?なんでケーちゃんがここに?」

 

そう1人で周囲を見回し、確認していると、どうやらここは自室ではなく、ヴァルカンの工房のようだった。

 

「ああ、目が覚めたか……ところで最近、寝れてるのか?」

 

「ああ……一応寝れてるぞ、3時間くらい」

 

そう俺が言うと、ヴァルカンはやはりかとでも言いたげな表情で大きなため息をつき、

 

「今日はここまでにしておこう、あとしっかり休むようにするんだ、オペレーターは身体が第1だぞ」

 

「あ、ああ、わかった」

 

そう言うと、俺は起き上がろうと身体を持ち上げ………

 

「………動けないんだが」

 

ようとしたが、ケーちゃんに未だ抱き枕にされ、動けないでいた。

それはまだいいのだが、腕になにか柔らかいものが当たっており、すごくヤバい状態だ。

中身はまだ子供なのも相まってボディタッチが多すぎるのはどうなのだろうか。

 

「………まあ、頑張れ」

 

そうヴァルカンは言うと、そのまま再び剣を鍛え始めてしまった。

 

「あの、ケーちゃん?」

 

「ううん………どうしたの、リョウお兄ちゃん?」

 

「えっと……離してくれたら嬉しいかなーって……」

 

「やだ」

 

「えぇ……」

 

いつもなら素直なケーちゃんが反抗してきた事に少しショックを受けつつ、俺は対策を練る。

というか、どうして俺はこんなところで寝てるのだろう。

そう考えていると、剣を焼入れまでし終えたヴァルカンが、こちらへと近づいてきた。

 

「どうやら、ケーちゃんが離れてくれない理由がわかってないみたいだね」

 

「あ、ああ……何でかわかるのか?」

 

「はぁ……君は今日の兵装試験前のミーティング中、意識を失って倒れたんだ……医療オペレーターに来てもらったが、疲労が溜まってるだけだから寝かせておけばいいと言われてね、ここで寝かせていたら心配したケーちゃんがくっついた、という訳さ」

 

「………なるほどな」

 

そう返し、俺はケーちゃんの方を向き、頭を撫でてやる。

 

「うにゅ……?リョウお兄ちゃん、もう大丈夫なの?」

 

「ああ、心配かけたな」

 

そう言うと、ケーちゃんはようやく離れ、起き上がって目を擦り始めた。

俺も起き上がり、何をしようかと周囲を見回していると、不意に工房のドアが開いた。

 

「あっ!お目覚めになったんですね!」

 

そうトレーを持ち運んできながら、入ってきたサルカズの少女は言った。

恐らく、この子がさっき言っていた医療オペレーターだろう。

 

「ああ……君が診察を?」

 

「はい、倒れたと聞いて飛び出してきたんです……かなり疲労が溜まっていたようで、それによるものだと思うので、しばらく安静にしなきゃダメですよ!」

 

そう注意され、ふと昔を思い出す。

……そう言えば、昔イツキにもそう怒られたっけ。

あの頃から何も変わってないんだなぁと少し凹んでいると、少女が何かを思い出したようにああっ!と言い、

 

「良ければどうぞ、私の作った健康食です!」

 

と、トレーとその上の食事らしきものを手渡してくれた。

 

「ありがとう……これは?」

 

「カフェインレスのお茶に、肉とチーズ、ピクルス、レタス抜きのハンバーガーです!あと、野菜十二種のミックスサラダもありますよ〜!」

 

そう満面の笑みで少女は手渡してくる。

肉、チーズ、ピクルスにレタス抜きハンバーガー……それってケチャップと玉ねぎとパンズしかないのではないだろうか。

流石に嬉しいのは嬉しいが、野菜しかないのは……そう思い、ふとケーちゃんの方を見る。

ケーちゃんなら少しは貰ってくれるかもしれない。

 

そう思ったが、ケーちゃんは苦笑いし、狸寝入りを始めてしまった。

 

え?あのケーちゃんですら嫌がる健康食ってなに?

 

そう思いつつ、仕方ないので出された食事を食べる。

目の前に満面の笑みの少女がいるので、変なリアクションは取れない……そう思っていたのだが………

 

「………いけなくもないなこれ」

 

見た目とは裏腹に、レユニオン時代の野菜過多生活に慣れてしまった弊害なのか、普通に食べれてしまった。

いや寧ろレユニオン時代に食べていたものにとても似ているまである。

なんならサラダにドレッシングがあるだけでこれはもう高級品なのではないだろうか。

 

気がつけばペロッと完食している自分がおり、目の前の少女はとてつもない満面の笑みを浮かべていた。

 

「どうでしたか?」

 

「ああ、美味かった……なんか懐かしさすら感じたよ」

 

「良かったです!また持ってきますね!」

 

そう少女は言うと、手早く片付け、部屋から出て行った。

 

「………大変だったんだな」

 

「…………リョウお兄ちゃん、はちみつクッキー食べる?」

 

「………変に同情しないでくれ、あとケーちゃん、わけてくれるならその心残りしかなさそうな顔をやめてくれ」

 

そんな会話をし、平和な一日が今日も過ぎていった。




いかがてしたか?
いやぁ、書くのは苦痛でもないしなんならこの世界感が好きなんですけどひとつ浮かんだネタにたどり着くまでのストーリーが思いつかず……
そして気がつけば数ヶ月経過していました()
楽しみにしてくださってる皆さんには本当に申し訳ないです()

まだ書く気ではいるので、また次回、お会いしましょう!


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第22話

あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします……
という訳で新年一発目はアクナイになりましたが、実はこれ、去年から書き始めてたりします……
ブルアカに比べてネタが思いつかないんですよね………

では今回も、ゆっくり見ていってください!


休日のある日、俺はやることが無いかと、ロドスの艦内を散歩していた。

すると唐突にブザーのような音が聞こえ始めた。

そして艦内放送が流れ始め、これから天災区域に入ることを告げると、艦全体が天災に備え始めた。

 

間近で天災を見れるとはしゃぐバカもいるんだろうな……そう思いながら歩いていると、急にズシンとした揺れに襲われ、それと同時に廊下の反対側を歩いていた、青いフードの女性が転んでしまっていた。

 

「大丈夫か?」

 

そう言い、俺はその女性に手を差し伸べる。

その女性は、手を伸ばそうとするが何故か躊躇し、途中で手を止めてしまった。

しかしそれをお構い無しに腕を引っ張り、女性を立たせると、女性は目を輝かせて、

 

「い、いま、私に触れてくださったのですか……?も、もう一度、もう一度、お願いできないかしら…?」

 

と、もう一度、今度はしっかりと手を差し伸べてきた。

 

「え?あ、ああ……」

 

そう俺は困惑しつつ、その手を取る。

すると、

 

「『毒物』である私の手を取ってくださるなんて……ドクター以外では初めてですわ」

 

と、嬉しそうにしてきた。

 

「……毒物?」

 

「ええ、私の渾名ですの。戦場で毒を使って戦い、毒物を生成する……そんな私の」

 

「へぇ……でも、触っても大丈夫なんだろ?そうじゃなきゃ手袋かなんかしてるハズだしな」

 

「ええ、私を触ってもなんら問題はありません。……ですが、やはり恐れられているのか、あまり触れてくれる人がいませんの」

 

「なるほどな……ま、俺は普通に接するよ、距離とったりされたら嫌だろうし」

 

「本当ですの!?」

 

そう言い、女性は目を輝かせ始める。

まあ、問題もないなら普通に接しても大丈夫だろう。

毒というもののイメージが良くないのもあって、人から距離を置かれてきていたのだろう、そう思い、感染者というだけで距離を置かれるどころか隔離されていた過去を思い出し、改めて今の生活に感謝を……と思っていたのだが、

 

「……そう言えば、名前は?」

 

そう、お互い名前を聞いていないのである。

 

「あっ……そうでしたわね、私はアズリウス、以後お見知り置きを……貴方は?」

 

「俺は橘 リョウ、コールサインはタチバナでやってる、まあ好きなように呼んでくれ」

 

「わかりましたわ。では……リョウさん、これからよろしくお願いしますわね……では、私はこれで。ケルシー先生に呼ばれてますの」

 

そう言い、アズリウスは嬉しそうに駆けて行った。

 

しばらく歩いていると、見覚えのあるオリジムシが歩いており、俺を見つけるとぴょんぴょんと跳ねて喜び始めた。

 

「……ん?ああ、隊長か」

 

そう、レユニオンの頃の制服の女性……アイリィは言い、足元をうろつくオリジムシとこちらへと近づいてきた。

 

「最近会えなかったが……最近どうだ?」

 

「いい感じだ、ただ……」

 

「ただ?」

 

「戦闘は……やっぱり怖い」

 

「……そうか、まあ無理に戦闘オペレーターをやらなくていいんじゃないのか?」

 

「いや、今私は戦闘オペレーターじゃない」

 

「え?いやでも戦闘って……」

 

「ああ、フィールドワークに出た時に感染生物とかと戦闘になる時があるんだ……うちの子たちやほかのオペレーターが何とかしてくれるが、やはり怖い……」

 

「あー………なるほどな」

 

そんな会話をしていると、とたとたと誰かが走ってくる音が聞こえてきた。

ふとそちらを見てみると、アズリウスが手に蒼と紫色のなにかをお皿に乗せて、走って来ているのが見えた。

 

「リョウさん!お近付きの印にこちらをどうぞ!私の作ったケーキですの!」

 

「ケー……キ………?」

 

そう言いながらよく見てみると、確かにそれはカップケーキのような形をしていた。

……見た目はアレだが。

 

「……まあいいや、ありがとう、いただくよ」

 

そう言いそれを受け取り、どうしようか考える。

さっきからアズリウスの召し上がれの視線が痛いし、今この場でいただくのが正解……なのだろう。

そう思い、俺は意を決して、そのカップケーキを一気に頬張った。

 

「………美味いな!?」

 

「良かったですわ、こう見えて私、お菓子作りは得意ですの」

 

「へー……いや美味いなこれ、何個でもいけそうだ」

 

そう言いながらバクバクと食べていると、気がつけばお皿は空になっていた。

 

「ご馳走様、このクオリティなら店で出せるんじゃないか?」

 

「グムさんもそう言ってくれましたが……やはり色味が悪いのか、あまり皆さん食べてくれませんの……」

 

「あー………確かに色はアレかも知れないが、ベリー系の色だと思えば普通に……いや、バクバクいけるけどな」

 

そう会話していると、俺の足元にアイリィのオリジムシがぶつかって来た。

チラリとそちらを向くと、表情は全く分からないが、『俺たちにもよこせ!』と言っている……ような気がした。

 

「すまんな、お前の分はないよ」

 

そうオリジムシに言うと、悲しそうにしながら、アイリィの足元へと戻って行った。

 

「ふふっ、よろしければ皆さんでビーンストークさんのカフェにでも行きますか?そこのレユニオンのような格好の方も一緒に」

 

「……いいのか?」

 

そうアイリィが言うと、アズリウスは笑顔で頷いた。

そして3人で行くことになったのだが……

 

「かっ……可愛い………!」

 

「でしょー!?貴女見る目が……あらヤダ可愛い!貴女も感染生物を!?」

 

「ああ、まだ自室にも何匹かいるのだが……皆いい子だ」

 

「うふふっ、やはり連れてきて正解でしたわね」

 

気がつけば、俺を除いて女子会が始まってしまったのだった。




いかがでしたか?
次も出来るだけ早く書くつもりではいますので、ゆっくり待っていてください………

ではまた次回、お会いしましょう!


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