起きたら『グルド』になったので、取り敢えず歯を磨く事から始めようと思う (ヘルメット助教授)
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1話、朝起きたら息が臭い

誤字脱字ありましたら、報告オネシャス


『シャカシャカシャカシャカ…』

 

背の低い緑色の宇宙人が、洗面所で無心に歯を磨いている

 

『シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ…』

「ぺっ!」

 

歯磨きを終えると、次に口内を殺菌消毒消臭するミント系の某液体みたいなヤツを口に含んで、これでもかと口内を濯いで吐き出す

 

「……くっ…辛ぇ…」

 

終われば、最後の仕上げと大量の水を口中に含んでシェイク

 

それを吐き出すと、最後に口臭レベルをチェックできる機械に息を掛けると、機械は測定を開始した

 

『ピピピピッ…』

 

緊張の瞬間

 

『ビーーーッ』

 

「口臭レベル5か…クソめ」

 

5段階レベルで、機械が叩き出した数字は、最悪のレベル5

 

毒づき、その場で頭を抱える

 

(チキショ~…いったい何がいけないってんだ?

食生活か?体質か?

糸楊枝?歯石取り?

それとも歯槽膿漏か?)

 

口をおもいっきり開いて、正面の鏡で口内を、4つの目で確認するのは宇宙の地上げ屋集団フリーザ軍の誇る特殊部隊・ギニュー特戦隊の隊員『グルド』である

 

彼の戦闘力は特戦隊で1番低く、ギニューは10万超えで、リクームやバータやジースは5万とか

 

しかしグルドは1万か、本やサイトによってはソレ以下な時もある

 

実にあやふやなのは彼の扱いによるものだろう

 

しかし彼は原作では、ほぼ無敵の力を持っている

 

時間停止やサイコキネシスや金縛り等で、使い方しだいではどんな連中も出し抜ける

 

特筆すべきは時間停止能力、ヤクザの親玉のフリーザも、精神年齢がお子ちゃまなセルも、食い気だけの魔人ブウすら、時間は止められなかった

 

は?ドラゴンボール改?超?

なにそれ、リアルタイムでDB見てたオッサン世代には知らない名前だな

 

あとGTは、そん時は中学生だったから色々と忙しくて見てなかったわい!

 

 

 

そういえばセルと、メタル化したクウラが瞬間移動で悟空と追いかけっこしてたような気が…まぁ、そんな特殊能力をフリーザに買われたグルドは、宇宙の中からエリートのみを集めたギニュー特戦隊の隊員にまで抜擢された

 

しかし原作ではナメック星でハゲとボンボン息子に翻弄されまくった挙げ句、奥の手の金縛りまで使って追い詰めても、横からMっパゲの王子に首チョンパされて呆気なく死亡

 

汚い、流石ベジータ、汚い

 

アニメ版では何故か口が臭いと、有り難くない後付けをされてしまい、過去にMっパゲに弄られては逆上して挑み掛かったら返り討ちに近い形でフリーザに邪魔され、それを恨み続けていたという、絵にかいた小者っぷりが拍車を掛けたが、結末は変わらず首チョンパからの『息が臭い』で首を消し飛ばされている

 

ひでぇ……目玉が4つで、肌はイボイボで緑色、スカウターを付けてないくせに気配も読めない、戦闘力は低いし、腹回りはデップりしてて短足、とどめに息が臭い

しかしそんなグルドに、俺は朝起きたら憑依してた

 

ああ、そうだよ

 

普通の会社員の四十前のオッサンが、朝起きたらグルドになってたんだよ

 

…分かるか?

 

グルドだぞ?

 

そこはギニューやフリーザ、クウラやサウザーだったなら分かる

 

それこそガキの頃に夢中になったドラゴンボールの世界に行けたなら、万年ニートの人参やMっパゲ王子にしろとは言わないが、ヘタレな兄貴やクズロット、名も無きサイヤ人でも良かったのに、何故グルド?

 

マジで訳わかんねぇ

 

あと何で口が臭いのかが、1番わかんねぇ

 

フリーザ軍の優れた科学力が生み出した、あらゆる口臭ケアの中から、ザーボンがオススメする色んな商品を試してみたが、結果はこのザマ

 

「はぁ…もうこうなりゃ、彼処に行くしかねぇか」

 

意を決した俺は息をケアする錠剤を呑み、苦し紛れにマスクをすると、地上げ屋の親玉であるフリーザの元へと向かい、戦闘力の底上げを兼ねた修行の為に『地球』へと行かせて欲しいと懇願しに行くのであった

 

このドラゴンボールの世界で修行するなら地球一択、それは常識なのだ

 

亀仙人に弟子入りするか、最初から神様に弟子入りするかは未定だが、このまま何もしないよりは強くなれるのは間違いない

 

それに時期的にも、乗り込むには悪くない頃だ

 

俺は口のケアを試す前に、今は原作のどの辺なのかちゃんと調べている

 

どうもサイヤ人の故郷である惑星ベジータが滅んでから、10年と経過してないらしい

 

ってことは、主人公の悟空は10歳未満

 

ブルマと会うのが、14歳だったから

 

原作が始まるのが4年後か…

 

ってか、グルドってそんなに早くからフリーザ軍に入ってて、戦闘力が上がってねーのかよ!

 

ファイティング・ポーズやらの練習や、他の隊員とパフェ食ったり遊んだりして、全く修行してなかったな!?

 

だから『バカグルド』とか言われたり、死んでもファイティング・ポーズの心配位しかされねーんだよチキショー

 

まぁ、それも終わり

 

地球に行きゃ、俺は殆ど無敵だし、強くなれる方法は幾らでもある

 

しかし本当の目的はドラゴンボールを集めて、神龍に願いを叶えて貰う為だよ

 

あ?俺の願い?

 

そんなもの、決まってんだろ!

 

『口臭を永久に無くしてくれ』、だよ

 

安易に『強くしてくれ』とかは主人公のアレが地球にいる以上、最終的には結局無駄な願いになるし、そもそも外見がグルドだから、世界の流れが俺を殺そうとするだろうから、却下

 

『不老不死にしてくれ!』は、間抜けなニンニク息子のような末路を歩みそうだから、却下

 

ブルマの科学力なら余裕でなんとかなりそうだが、残念ながら俺はグルド、公式で面食いのブルマには相手にすらされない可能性が大だ

 

『俺の言う言葉が全てまかり通るようにしろ』、なんてどっかのエロ本みたいな願いでも良いが、正直な所、ドラゴンボールでムラムラする女キャラそのものが少ないしなぁ。※個人的な感想です

 

クソソソの嫁とかも良いけど返り討ちにあいそうだし、俺的にはRR軍の女将軍とかが好みなんだよ

 

もしくはブルマの家を悟空が尋ねた時に、親切に教えてくれたモブの姉ちゃんか、亀仙人に弟子入りする為に連れてきた人魚の姉ちゃん

 

……ん?待てよ、並みの人間程度の力の女なら、今の俺の力でもヤレそうじゃね?

 

……ぐへへ

 

『プシュー』

 

「おやグルドさん、何か用ですか?」

 

「……フリーザ、様……?」

 

ナチュラルに『様』を付けちまったよ

 

ってか、うん、フリーザだ

 

生フリーザが居る

 

ガキの頃に漫画やアニメでよく見た、あのフリーザが居て、俺をめっちゃ見てる

 

やばい、超こえー

 

無意識に背筋が伸びて、気を付けの姿勢になってますよ奥さん!

 

つーか、それより、あれじゃん

 

俺、地球に着いてからの事だけ考えてて、まだ報告の文句を考えねーじゃんかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

く、くそ!

こうなりゃ自棄だ!

 

「あ、あにょ、あの!

フリーザ様に、おね、おね、お願いしたい事がありやしてですね!」

 

「ほぅ…何でしょう?」

 

やめて、敬語が怖いって!

 

眼光も鋭すぎるし、プレッシャーで背中に汗ががががが…

 

「あ、ああああ…あの実は特戦隊…、特戦隊で一番弱い俺…いや、自分は、前から自分の能力に胡座をかいてるだけの現状に嫌気が差しやしたので、その…フリーザ様やギニュー隊長に迷惑を掛ける前に、どっかの惑星で、武者修行をして強くなり…たい…なぁと思いやして、その、少しの期間だけ休暇が欲しいなぁと…あ、あはははは」

 

「……」

 

うわ、めっちゃ呆れてる

 

あのフリーザが呆れてるよ

 

やべぇ、こりゃ瞬殺か?

 

目がキラッて光ったと思ったら、爆風で消し飛ばされるアレが来るのか?

 

ふっ、思えば短い人生だったぜ

 

あばよ、グルド

 

お前の息の臭さは忘れな

 

「…まぁいいでしょう」

 

「うぇ!?本当ですかい!?」

 

「貴方の能力なしでも攻略できそうな星を、ギニューさん達に手配しておきますので、グルドさんは少なくとも戦闘力を他の隊員と同等か、それ以上にしてから帰って来て下さいね。にっこり」

 

嗚呼、これってつまり

 

『強くなって帰ってこなかったら、星ごとぬっころす』的なヤツですよ奥さん

 

地球、サーセン

 

「しょ、承知しやした

ありがとうございます、フリーザ様」

 

「なに、貴方の能力は宇宙広しと言えど、かなり貴重なものですからね

頑張るのですよ、ほっほっほ」

 

「はい、突然の訪問、失礼しました」

 

「…1つ説明しなさい」

 

「ひぇ!?、な、なんでやんしょか?」

 

「なぜ今さらマスクを?」

 

「いっ!?その、え、エチケット的なヤツでやんす…」

 

「そうですか…、ついでにそっちも治しておくようにしなさいね

下がってよし…」

 

「う、うす…」

 

『プシュー』

 

 

 

「…はぁ~…」

 

フリーザ様の部屋から少し歩き、角を曲がった所で漸く肩の力が抜けた俺は、その場で何度も呼吸を整える

 

やっぱり口が臭いのは、フリーザ様も分かってらしたのね。トホホ…

 

それを今まで、敢えて指摘しないのはあの人の優しさなのか、それは分からんが、とにかく地球行きは叶った訳だから素直に喜ぼう

 

今の戦闘力を5倍にしなきゃならん条件付きだが、DBの世界でなら余裕だろ

 

「さてと」

 

出発前に隊長のギニューと、リクーム達に挨拶はしておくか

 

本来ならフリーザ様の前に隊長に相談すべきだったなぁとは思うが、あの隊長は部下に優しかったから、変に気を使わせて地球行き自体が頓挫する危険性がある、サラリーマンやってたなら、真っ先に同じ部署の上司に相談するのは社会人として当然だが、悪いなギニューよ、スペシャルファイティングポーズには付き合ってやっから、許せ

 

本音を言えば、ドラゴンボールと、RR軍の女将軍の魅力には勝てんのだよ

 

ぶははははははははははははははははははははは!

 




筆休みと気持ちのリフレッシュを兼ねて書いてみましたが、ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。



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2話、地球で最初に会うのがお前かよ

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

「ふぃ~、よっこらせと」

 

窮屈な1人用のポッドで実に、1年もの宇宙移動から漸く解放された俺は、外の新鮮な空気を吸い込みながら、ぐい~っと伸びをする

ベジータとナッパが、同じく1年も地球に着くまで寝てたとか原作にはあったが、まさか1人用ポッドにはコールドスリープのような機能が備わっていたとはな

 

長い宇宙移動で無駄にエネルギーを消費させず、搭乗員を飽きさせない配慮は実に有難い

 

ぜひとも、クソ長い電車移動やフライトで苦しんでいたサラリーマン時代の俺を、その便利機能で救って欲しかったもんだ

 

過ぎた事はさておき、俺はさっそくポッドの着陸で出来たクレーターから飛び上がって、緑の大地に着地、周辺を見回す

 

広大、というか、のどかな光景が広がっているのは、いきなり都とかに宇宙船を着陸させると軽いパニックになり、面倒な騒ぎになるかと思ったらからだ

 

短気で考え無しのナッパのように

『クンッ!』で、街一つを壊滅させる気は欠片もない

 

原作では『クンッ!』をしても良いように、重要人物やドラゴンボールなどを意図的に無くし、サイヤ人の強さを読者に見せ付けるだけで済んだが、俺の場合じゃナッパの規模じゃ済みそうにない

 

え?なぜって?

 

俺はナッパよりも、戦闘力が高いんだぜ?

 

確かに特戦隊の中じゃ一番弱いわ、潜在能力を解放されてイキッたハゲとボンボンには、コイツ大したこと無い扱いされるわ、他にもベジータやキュイには劣るが、バーダック並の戦闘力で特殊能力持ちなんだよ!

 

まぁ、メタな発言はさておき

 

『キョロキョロ』

 

…ヘタレ兄貴の時のように、戦闘力たったの5のオッサンとかは居ない

 

それにしても、本当にのどかな光景だ

 

住宅が点々としていて、太陽は燦々と輝き

 

『ホ~、ホケキョ』

 

へっ、ウグイスが鳴いてら

 

この光景にマッチして、実にいい感じだぜ

 

俺はチラリと、美しい音色を奏でるウグイスを視認しようと振り向けば

 

『ホ~、ホケキョ』

 

「…………は?」

 

そこには、グラサンにタキシード姿の『豚』が木に登り、拡声器でウグイスの真似をしていたのである

 

茫然自失する俺だが、よくよく辺りを見渡すと

 

「空には太陽がニカニカ笑ってて、豚さんはウグイスの如く、ホーホケキョ

まさか…ここは」

 

「わわっ!何だこの穴は!?」

 

振り向けばポマードで頭をピッチリ固めた、俺並みに背の小さな男が車から慌てて出てきていた所

 

…うん、あれは間違いなく、私服状態のスッパマンだ

 

「お前は何者だ!…さてはその外見、そっちの1人用の宇宙船らしきポッドを見るに、この村で悪さをしようとやって来た、悪の宇宙人だな!」

 

「……」

 

ビシィ!っと俺に指を指すスッパマンだが、あながち間違えてねぇから言葉もない

 

しかし、なんか自信満々なのがムカつく

 

原作でもブルー将軍に喧嘩売ってたなコイツ

 

「ふふふっ、この私の名推理に言葉も出まい、だが!

これからが本番だ!」

 

そそくさとその場を離れ、近くの電話ボックスに入るスッパマン(私服)

 

この後の流れをDB世代の俺が知らない訳がない、これ以上こいつに付きあってられるかよ

 

『ジャーーーーン!』

 

「梅干し食べて、スッパマン!

……はれ?悪者が居ない

…………そうか、私に恐れをなして逃げたのだな!

ふふふふっ、ペンギン村の平和はこのスッパマンによって守られたのだ!

はーはっはっはっは!」

 

んな訳ねーだろ

 

遥か上空から、スッパマンの高笑いを見下ろす俺の頭上には、回収されては面倒だとサイコキネシスで浮かぶ宇宙ポッドがある

 

一通り笑ったスッパマンは、車に乗って走り去っていった

 

ふよふよと宙に浮かぶポッドの上に乗り、胡座をかいて1つ溜め息を吐く

 

「この地球で最初に出会ったのがスッパマンとは、幸先わり~なこりゃ」

 

取り敢えずアホの事は忘れ、俺は気を取り直して辺りを見渡す

 

まさか『アラレちゃん』の舞台、ペンギン村に到着するとは

 

DBにもブルー将軍を追っ掛けた悟空が、アラレちゃんと遭遇してたから別に良いのか?

 

……おっ、アイツは

 

遠くに下校中らしき、子供の一団が見える

 

その中に生意気にグラサンをかけた少年と、金髪の少女が居た

 

空豆タロウに、黄緑アカネである

 

うひゃー若ぇ、ってか子供すぎんだろ

 

それは当たり前である

 

何せ今は、DBの原作すらも始まってないければ、ペンギン村の主役である『アラレちゃん』も誕生していない時期だったのだ

 

「ちぇ、アラレちゃんが居ないなら、ここにいても仕方ねぇや」

 

彼女の生みの親である、則巻千兵衛さんは居るだろうが、地球最高の頭脳はブルマ、もしくは父親のブリーフ博士であるからして、サーセン

 

それに俺の口臭問題は専門外だろう

 

まして、下手に千兵衛さんに接触して、アラレちゃんが作られない未来にはしたくはない

 

ここに未来の息子、ターボくんがいれば超能力の上手な使い方をレクチャーして貰いたかったが…

 

俺は仕方なく、ペンギン村を離れて、ある場所を探しに向かった

 

 

 

 

 

「はぁ~い、ようこそいらっしゃいました~」

 

「いきなりだが金はない

だから五人の闘士と戦うので、急ぎ占いババさんに取り次いで欲しい」

 

「分かりました~、こちらへどうぞ~」

 

全身がピンク色で、笠を被った幽霊が出迎え、砂漠の中にデン!と存在する宮殿の内部に俺を案内する

 

ここまで来るのに、少し遠回りをした

 

ペンギン村を飛び去った後、西の都をすぐに目指し、同地でブリーフ博士とブルマの所在を調べあげて2人に接触

 

俺は悟空がナメック星に向かう時に使った、居住区付きで重力発生装置付きの宇宙船を作ってくれないかと依頼した

 

参考までに持参した俺のポッドを見せれば、始めて見る地球外の宇宙船に大変興味を示した博士は、俺が乗ってきたポッドの提供を条件に宇宙船の建造を了承してくれた

 

中古のポッド1つで、居住区付きの宇宙船が貰えるとは

 

流石はカプセルコーポレーションの社長、いやはや太っ腹だわ!

 

気分の良くなった俺は、ついでに息の臭さも治せるかと尋ねれば

 

『口臭は専門外じゃよ』とピシャリと断られたが…

 

ブルマ?

 

まだまだ幼くとも面食いな彼女は、ポッドに近付いても俺に近付きはしなかったよ

 

その代わりなのか、博士の奥さんでブルマのママさんの、長いお喋りに付き合わされたがな

 

「ふむ、1年もあれば満足できるのが作れるじゃろ、それまでは地球でのんびりしてなさい」

 

うっひょ~!

オラ、1年間も地球で遊べるんか~?

 

…なんて言ってる場合じゃねぇ

 

さっさと強くならなきゃ俺は、地球もろともフリーザ様に殺されちまうんだよ

 

修行修行、修行しなきゃ

 

だが、その前にだ

 

博士に宇宙船を任せた俺は、こうして占いババの元へとやって来た

 

理由は俺的にDBの中で一番の美人、バイオレットの所在を見つける為

 

原作で彼女が、この地球の何処に住んでたのか明確に分かっていれば、態々ここに来る理由は無いのだが、原作で数コマしか出て来ないバイオレットの情報は少なすぎた

 

とにかく、RR軍みたいな私設傭兵団、悪く言えば愚連隊みたいなアウトロー連中に女性が籍を置くなんて、よっぽどの訳ありだと思うので、それを未然に防ぎ、更に保護できれば……むふふ♪

 

「占いババさま~、1名さまご案内しました~」

 

おっと、売れない婆と御対面か

 

原作同様に水上に浮かぶ円形リングの中央に、大きな水晶玉に乗った老婆が居た

 

占いババは『グルド』である俺を見ると、面白いものを見たように喜び出す

 

やっぱり悪趣味な婆さんだ

 

「ひょっひょ♪なんもまぁ、奇っ怪な化け者が現れよったわ

ひょっひょひょひょ♪

さて… 本来なら大金を支払った者のみ占ってやる所だが、ワシは闘いを見ることが大好きでの

そこで金が無い者には、これから出て来る五人の闘士と闘って勝ち残れば、タダで占ってやる事にしておる

どうじゃ?やってみるかぇ?」

 

「勿論だ、さっそく始めようぜ」

 

「ひょっひょ、しかし1人では何人まで持つかの

…ドラキュラマン!」

 

占いババの掛け声と共に、奥の建物から勢いよく前宙をしながら、1人の闘士が現れた

 

青い肌に逆立った黒い髪、尖った犬歯を持つ吸血鬼

 

ムエタイか、キックボクシングの格好をした、うん…ドラキュラマンだ

 

うわぁ、懐かしい

 

「けっけっけ!貴様の緑の体から、血を1滴残らず吸い付くしてやるぜぇ」

 

「あっそ」

 

 

 

 

 

「そ、それまで!」

 

占いババが俺の勝利を宣言する

 

戦闘力の差から、勝敗は直ぐに着いた

 

軽やかにステップを踏んで襲いかかってきたドラキュラマンに、俺は軽く、軽~~く、平手打ちすると

 

まるで水切りをする石のように水面を跳ねまくった吸血鬼は、対岸の砂漠の中に突っ込み、脚だけを出して砂中に埋もれていた

 

ピクピクとしているので、死んではいないだろう

 

まぁ、この時期のDBはギャグだからな

 

「お、お主は何者じゃ?」

 

「え?ただの宇宙から来た客ですよ、売れないババさん」

 

「売れないババではない、占いババじゃ!

…次、透明人間のスケさん!」

 

来たか、以外と厄介な奴が

 

原作通り、2番目の闘士は透明人間のスケさん

 

この手にスカウターがあれば、一発でスケさんの位置を探せるが、それでは気配を読む修行を兼ねられない

 

『ボカッ!』

 

いきなり頬を殴られた感触

 

『ドゴッ!』

 

今度は戦闘ジャケットの上から蹴られた

 

『ボゴッ!』

 

う~ん、気配を読むにしても、やり方が分からんから、本末転倒だ

 

『ドゴッ!バキッ!』

 

サラリーマンのオッサンが、いきなり見えない相手の気配を読むとか、やっぱり無理だったんやな…

 

『バシッ!ビシッ!』

 

全く痛くないけど、そろそろ鬱陶しくなってきたな…アレやるか…

 

『ガッ!』

 

止まれ

 

「ふぅ~…よし、掴まえた」

 

「っ!?」

 

「お返しだ、おりゃ!」

 

掴んだスケさんの腕を一本背負いの要領で、優しく、優~~しく投げれば先程のドラキュラマンの横にポッカリと穴が空いた

 

殴られた瞬間に時間を止め、スケさんの腕を掴む作戦、上手くいったぜ

 

「さてババさん、次は誰だい?」

 

呆気に取られている占いババに、俺はそう言うのであった

 

 

 

 

 

 

「つまりその娘の在処を、お主は知りたい訳じゃな」

 

「そうそう、早いとこ頼むよ」

 

「よかろう、少し待つがよい」

 

ババさんは水晶玉でバイオレットの所在を探し始めた

 

スケさんを撃破した俺は、続くミイラくんをデコピンで失神させ、原作には出て来なかった鳥乙女のハーピーちゃん(なかなかの美人)を、サイコキネシスで捕まえてからの熱烈ハグで撃破

 

最後のアックマンには悪党が食らうとヤバい技、『アクマイト光線』に気を付けつつ、時間停止で背後に回ってチョークスリーパーで勝利した

 

五人目を結構警戒してたけど、ハーピーちゃん可愛かったな~

 

パッと見は自信過剰でタカビーなギャルだけど、本当は打たれ弱い乙女とか、マジでオッサン堪らんわぁ

 

抱き心地も良かったし、羽毛もフワフワで、悪魔の便所みたいな場所じゃなけりゃ最高だったのに

 

ただハグの力を強くし過ぎたのか、それともマスクがズレた事で俺の息がかかったのか、直ぐにハーピーちゃんは気絶してしまったがな

 

泡を吹いた美人は、流石のオッサンも欲情できませんて

 

「ほれ、出たぞよ」

 

「おっ、マジかい?」

 

「だが…少々、危険な状況にあるぞよ」

 

「なに?」

 

俺は急ぎ水晶玉を覗き込むと、そこには軍隊に襲撃を受けたと思われる瓦解した街と、倒れる女性の側で泣き崩れる、紫色の髪を持つ少女の姿が写っていた

 

 




補足ですが、グルドの居た星から地球までの到着を1年にしたのは特に理由はなく、ただ単に計算が面倒だからです

あとベジータとナッパが原作だと1年近くもの間、せま苦しいポッドで寝てられるたのは、コールドスリープでもなきゃ、あの短気者達が我慢できる筈がないと思い、本作品ではコールドスリープ機能をポッドに付けてみました

本当ならアラレちゃんに登場して頂き、グルドに面と向かって『オッチャン、口くせーね♪』とか言って欲しかったし、グルドの腕を掴んで引き摺り回して欲しかったし、激しくプロレスごっこをしてグルドをボコボコにして欲しかった

地球を割るパンチがグルドの顔面に直撃して、吹っ飛ぶ構造とか考えると、最高に笑えるのですよ。ゲス顔

あと体を鍛えるなら重力操作は、DBの世界なら当然ですよね

ありがとうございました!




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3話、RR軍

誤字脱字ありましたらスイマセン



占いババ『バイオレットがヤバい』

 

グルド『マジで?』

 

そんな流れで件の地域に全力で飛んで来た俺の眼前には、無惨にも砲弾に破壊された家屋や、瓦礫の側で力なく項垂れる人々で溢れていた

 

俺はこの街を襲撃し、有頂天で高笑いをしながら去っていく軍隊の隊長らしき人物を、ここに来る時に見た

 

アレはどう見ても『チビ』『チビのくせに老け顔』のレッド総帥にしか見えない

 

…成る程、バイオレットは故郷と身内をレッド総帥に潰され、その復讐をする為にRR軍に入ったのね

 

そんで虎視眈々と復讐の時を待っていたバイオレットだが、悟空が本部で大暴れしたので、アニメ版では金目の物を奪ってトンズラしたのか

 

そりゃ最初から忠義心ゼロで復讐心ありあり、形勢最悪になれば誰だってオサラバするだろう

 

金の使い道まではアニメでやってなかったが、彼女の複雑な人生を考えれば悪いようには使われなかっただろう

 

しかし、まずは目の前の救助をせねばなるまい

 

…バイオレットちゃんに少しでも良いところを見せたいしね

 

「…ふんぬっ!」

 

俺はサイコキネシスで人命救助を開始する

 

力を込め過ぎず、細心の注意を払いながら瓦礫を除去

 

初めは俺を怪しんでいた人々も意図を汲んだのか、瓦礫の下で埋もれていた街の仲間を助け出すのを手伝ってくれだす

 

 

 

そして3日後、全てが片付き、野戦病院と化した街の中にバイオレット親子は居た

 

バイオレットの歳は16ほど、まだ若干の幼さが残り、特徴的な紫色の髪は肩くらいの長さ

 

その娘に似た、娘より長い髪を持つ母親は生きていたが、あのままにしていたら間違いなく息を引き取っていたろう

 

しかし彼女は元からの体が弱いのだろう、外傷は大したことはなさそうだが、まだ目を覚まさない

 

デンデのように回復能力があれば…

 

無い物ねだりしても仕方がない、この一件で母親を殺されたバイオレットは、原作通りに進めばRR軍に入る訳だが…少なくとも、それだけはさせねぇよ

 

「母親の具合はどうだ?」

 

「……」

 

念入りに歯磨きをし、目やにやらをチェック、マスクをした俺は万全の状態で、愛しのバイオレットに話し掛けた

 

う~ん…美しい翡翠色の瞳で泣き腫らしていても、その横顔が既に美人の域、垢抜けた感じの登場時の感じも良いが、清純な16歳となると、これはこれで…いかんな、俺はロリコンじゃないぞ!

 

「すまない、もう少し早く来れれば、こんな事態にならずに済んだのだが」

 

「……」

 

返事はなく無言

 

眼前に母親が目を覚まさないので、この反応は仕方ないが、取り敢えず釘は刺させてもらうぜ

 

「ともかく、アイツらの事は俺に任せろ

だから君は、母親が目を覚ますまで側に居てやれ」

 

『こくり』

 

微かに頷いたバイオレットを残し、俺は野戦病院を出て、街の有力者に事の顛末を聞きに行く

 

どうして特に利点も無さそうなバイオレットの街を、わざわざRR軍が襲ったのかが疑問になったのだ

 

 

 

「と言った事情に御座います」

 

「成る程…」

 

事情はよくある話だった

 

この地域では複雑な部族関係のもつれが昔から有り、とある部族の過激派が最近売り出し中のRR軍に、相手側の部族に対して攻撃を依頼

 

最初の見せしめとして、比較的に平和だったバイオレットの街は襲われたのだ

 

わざわざ街の人間を集めて、暴露した小男が居たらしいが…そんな奴はどうでもいい

 

これは、ややこしい話だ

 

境界や領海、部族関係のもつれは、どこの世界でも存在する厄介極まる問題

 

本人達が話し合っても殴りあっても、第三者が加担しようと、結局は永久に決着のつかない不毛な潰し合いにしかならない

 

これが部族同士の殴り合いなら、俺もこれ以上の加担はしない所だが、RR軍を動かしたのは不味かったなぁ?

 

「それで、襲撃をしたRR軍とやらの事は分かりますか?」

 

「あぁ、それでしたら…」

 

俺は有力者にRR軍に関する情報を聞き出すと早速、奴等の殲滅をしに向かう

 

原作崩壊?知るか!

 

アイツ等が滅んで、誰か困るんか?

 

クリリンが結婚できない?

俺を将来、殺す奴の心配なぞ知った事かよ

 

(俺の)バイオレットを泣かした罪は重いぞ

 

特にDr.ゲロ!、アイツは速攻で排除し、隠された施設を全て破壊せねばならない

 

それは戦闘力を上げる事よりも急務だ

 

ただの人間の戦闘力を超サイヤ人に匹敵・凌駕するほどの桁外れな戦闘力に増強する、そんな奴の技術は素晴らしいとフリーザなら喜びそうだが、作った本人も、作られた人造人間達も命令に素直に従うようなタマじゃない

 

Dr.ゲロの性格は正にマッドサイエンティスト、己の頭脳で世界征服を目指す為にRR軍を踏み台にし、その結果、奴の産物は地球を滅茶苦茶にしやがった

 

17号と18号は製作者を騙し討ちしにしたが、もし何らかの形でDr.ゲロが生き残ったとしても、 キャラクターの良いところだけを集めたセルに、恐らくは殺されていただろう

 

だから俺が殺してなんの問題がある?

 

心優しい、はっちゃんや16号はともかく、あの製作者といい残りの人造人間共は…どいつもこいつも…

 

堂々と悪さをするフリーザ様の方が、よっぽど上等な悪党だぜ

 

「覚悟しやがれRR軍…!」

 

 

 

怒りが沸々と込み上げた俺は、RR軍の支部に無差別に襲い掛かり、ついでに奴等の本部の場所を力ずくで聞き出す

 

そして情報を頼りに、RR本部に到着

 

途中の山脈で奴等の防衛システムに軽く妨害されたが、問題なく突破してやったぜ

 

「これはこれは、結構な出迎えで」

 

俺が街で作業をしている間や支部を潰していた間に、チビの軍は全ての部隊を呼び戻していたらしく、戦闘ヘリと戦車やらの群れが俺を出迎えてくれる

 

4つ目を生かして見れば、その群れの中には懐かしのシルバー、ブルー、イエロー、ホワイトといった連中の姿もあった

 

空中で停止したままの俺に照準を合わせ、爆音と共に放たれた大量の砲弾とミサイルが迫り、次々と炸裂する

 

まったく効きはしないが、ふと思い立った俺は超能力の開発を兼ねて防御壁『バリア』を作ってみる

 

サイコキネシスで体の表面から波を発生させたら、それを空中で停止、次から次へと波を作っては停止させる行動を続けると、幾つもの層と層が重なったサイコキネシスの波は、弾丸を阻む『壁』となった

 

…マジか、バリアが出来たよ

 

すげ~なグルドの超能力…ははっ、派手な花火大会が目の前で起こってら

 

 

 

 

 

 

……終わったらしい

 

「なら、お返しだ」

 

バリアを解除し、ぐっ…と掌に力を込める

 

本部を破壊しない程度に集めた気の塊を、地面に向け

 

「かぁ!」

 

その放たれた一発の気弾で、RR軍の地上部隊は跡形もなく吹き飛ぶ

 

残った戦闘ヘリ部隊にはサイコキネシスで無理やり1ヶ所に集結させ、そのまま押し潰してやった

 

シルバー共、みんな仲良く成仏しろよ、リクームのように痛ぶる趣味のない俺に感謝しな

 

「さてと」

 

中庭に降り立ち、チビの居そうな建物以外を次々と消し飛ばしていくと、一際でかい本部ビルだけが残った

 

その建物の大扉を豪快に蹴破り、お邪魔しますした俺に、歓迎の銃を乱射してきた雑兵を軽くいなす

 

そこで隊長らしき人物を捕まえ、尋問を開始

 

「Dr.ゲロは何処に居るのか吐け、さもないと」

 

片手でソイツの首を掴みつつ、俺はマスクを外して直接、臭い息を吐きかけてやる

 

「うぎぎぎぎっ!く、くせぇ!」

 

「ひ~ひっひっ、息を吸うには俺の息を吸い込まなきゃ死んじまうぞぉ~

おらおら、奴の在処を吐きやがれってんだ」

 

「話す!話させて下さい!

だからっ、息をかけないでぇ!」

 

うん、素直でよろしい

 

 

 

「地下ねぇ…」

 

奴の場所を聞き出した俺は、直ぐに地下へと向かうとした

 

成る程、原作だと悟空はドラゴンボールを求めて上を目指したので、地下に居た奴は悟空に遭遇せずに生き延びた訳ね

 

だが俺にはチビの命より、お前の命を奪うのが先決なんだよ

 

「はっはぁ!」

 

めんどうなので階段もエレベーターも使わずに、階層を破りながら地下の研究施設を目指す

 

少しだけ硬い階層を突破すると、そこには

 

「き、貴様は何者だ!」

 

そこには白髪に白髭の爺の科学者、つまりDr.ゲロが居た

 

今まさに本部から逃げ出そうと、荷物をまとめている最中

 

「逃がすかっ!

きえええええぇぇぇぇぇ!」

 

「ぐがっ!なにを…か、体が動かない!?」

 

咄嗟に俺は奥の手、 『金縛り』で逃走寸前の奴を足止めする

 

「さ~て博士、他の研究所の場所、そこに眠る人造人間の事、そしてセルの事を、残らず吐いてもらおうかい」

 

「っ!?、なぜ、それを!」

 

説明はしてやらん

 

金縛りで身動き出来ない奴を、サイコキネシスで引き寄せ、俺は念入りに尋問を開始するのであった

 

 

 

「ぎゃああああ!」

 

Dr.ゲロを跡形もなく消し去り、研究所そのものをサイコキネシスで空中に浮上させる

 

所内には見たこともない人造人間シリーズもいたが、構わずに太陽に向けて発射、全てを燃やし尽くしてやった

 

あ、因みに人造人間8号こと、はっちゃんは殺してないぞ

 

データを調べた限り、はっちゃんよりも古い番号の人造人間ばかりで、はっちゃんの事を幾ら調べても見つからなかった

 

もしかして、はっちゃんは死んでおらず、何処かの地で平和に、人間として生きてるのかもしれない

 

もしそうならば別に良いか…会えなくても

 

はっちゃんが幸せなら

 

「……」

 

太陽に突っ込んだ研究所を見ながら、少しだけ染々とする

 

さて、研究所のマスターコピーは手中にあるので、それをブリーフ博士に見せて更に詳しく奴のデータを調べなければならないが、取り敢えず原作における悪の元凶の1つ、Dr.ゲロは死んだ、まずは良し

 

あとは各地に残る研究所を割り出してブッ壊し…あ、忘れてた

 

RR軍の本部から飛び去る前に、まだ残っていた建物を思い出した

 

「どっっっっっこらせ!」

 

ビルの中へと再突入し、中にレッド総帥やブラック参謀、その他の雑兵が入っている事を確認したら念入りに縛り上げる

 

はっはっは、ブルー将軍のようにサイコキネシスで縄を操り、ギッチギチにすることなど造作もないわ!

 

俺は奴等をそのままにサイコキネシスで本部ビルを浮上させ、それを『キングキャッスル』に持って行く

 

売り出し中のRR軍がビルごとキングキャッスルに、カチコミをかけてきたので犬の国王様は、顎が外れんばかりに驚いていたっけ

 

その後は武装した軍隊が本部ビルに突入、中にいたのがRR軍の連中だと分かると、直ぐに全員を逮捕した

 

ぐはははは!これまで自分達の犯した過ち、特に無関係のバイオレットの街を破壊した罪で貴様ら全員、死刑になるが良い

 

更には部族間のゴタゴタを、最悪のRR軍で解決しようとした愚かな部族も、世界中から叩かれてしまえ

 

これで悪は滅んだ、ぶいっ!

 

 

 

俺は働いた分としてレッドの金庫を丸ごと頂き、それをバイオレットの街へと持って戻るのだが、その前にDr.ゲロのデータをブリーフ博士に渡しに西の都へ向かった

 

到着して直ぐに人造人間計画の話をすると、流石に温厚な博士の顔色も変わる

 

外観は出来上がっていた俺の新しい宇宙船の開発は一旦中止にし、そっちをバラしにかかる博士

 

これでよし、後は待つのみ

 

…それにしても

 

俺は例の宇宙船の中を見てないが、まさか原作同様にスピーカーの位置がどうのこうのと言って、完成してないとか言わないよね?

 

重力発生装置だけでも完成してれば戦闘力を、リクーム達と同じに出来るのだが…

 

まぁ今はゼニーや宝石の入った金庫を、バイオレットの街の復興資金として使って貰う方が先決か

 

 

 

 

 

 

悲痛な泣き声が、簡素な墓地に響く

 

俺が戻った時には、バイオレットの母親は死んでいた

 

息を引き取る間際、母親は娘に何かを伝えたらしいが、それは部外者の俺が知るところではない

 

葬儀への参列は許されたが、彼女の泣き声が胸に響く

 

チラッと、バイオレットの母親を神龍に頼んで生き返らせて貰おうと考えたが、もし生き返らせても母親の体が弱いのならば、どのみち長生きは出来まい

 

なぜなら母親はRR軍の到着前に持病によって倒れ、意識を失ったらしいのだ

 

せっかくRR軍が壊滅したとニュースやラジオで流れても、これではバイオレットが浮かばれねぇ…

 

葬儀が終わると、俺は街に金庫を渡して復興資金にしろと言い、ゼニーの束を1つだけ貰うと街を出ようとした

 

「待って」

 

紫色の髪と翡翠色の瞳を持つ女、バイオレットが立ちはだかる

 

…のだが

 

「…髪を切ったのか」

 

肩まであった髪を切り、原作と同じショートカットにしたバイオレットが居た

 

色々と吹っ切れた顔が、大人びた印象を与える

 

「助けてくれて、ありがとう

貴方が持ってきてくれたお金で、この街も救われるわ」

 

「そうか…そりゃ良かった」

 

「貴方が何者なのか、何処へ行くのかは分からないけど、お願いがあるの、聞いてくれる?」

 

「なんだい?」

 

「私も連れてって」

 

 




ノッてきたーーーー!

とりあえず、Dr.ゲロと人造人間計画をぬっころしときました

いやね、未来御飯を殺す要因を作った奴なので、問答無用でグルドに殺してもらいましたよ

未来トランクスの話は、当時の俺にはキツすぎたんや…

はっちゃんはRR軍に生き返らせて貰ったから感謝しろ的な描写がありましたが、17号や18号、彼等はRR軍によって被害にあった人間の中で、比較的綺麗な死体だったから人造人間にされたんじゃないかなぁと思います

それか自らを人造人間に改造したDr.ゲロが、彼等を拉致ってきたか

もしかしたら後付けで設定が増えてるかもしれませんが、どのみち一切の手加減は必要ないでしょ

さて、バイオレットを強化しなければ!使命感

亀仙人かぁ…、セクハラ攻撃を考えなければ

ありがとうございました!


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4話、バイオレットのビックバンアタック

誤字脱字ありましたらスイマセン


地球の至る所に隠されていたDr.ゲロの研究所を、俺はひたすらシラミ潰しにしている

 

博士は俺が渡したデータから全ての研究所の位置を割り出し、地図に印してくれた

 

製作者の有無を問わずにデータを集める機械は性質が悪く、壊す前には必ずブリーフ博士特製の、コンピューターウイルスで内部のデータを残らず破壊し、それが済むと漸く俺の出番となる

 

木っ端微塵に破壊し、僅かな破片も残らずサイコキネシスで浮上させて、跡形もなく太陽で焼却

 

「けっけっけ、汚物はなんとやらだー!」

 

太陽に突っ込んだ事を確認すると、次の研究所へ向かってまた破壊を行う

 

ウイルスを使うのは、畑違いの俺でもなんとなく分かる

 

コンピューターが勝手に『セル』のような怪物を作り出さないとも限らない。と言う事だろうか?

 

まぁいい、バイオレットを預かってくれている博士の頼みだからな、大人しく従おう

 

バイオレットが街を出る決意を促したのは

 

『自由に生きろ』

 

バイオレットが聞いた、母親からの最期の言葉だ

 

持病に苦しみ、己を看病してくれるあまりに、娘の貴重な十代の時間の殆どを束縛してしまった

 

それを詫びる意味なのだろう

 

言い付けを守るバイオレットは、俺と共に街を出た

 

彼女にはこれから何が待ち受けているのか分からないが、確実なのは俺と一緒に強くならなくては、生きていけない事だ

 

フリーザ軍に入るのかは本人に委ねるが、ただの街娘である彼女の戦闘力は初期のヤムチャにも劣る

 

戦闘力は間違いなく、一桁

 

そんなバイオレットが、俺のハードな修行に付いてこれるのか

 

答えは否

 

しかし望みはある

 

なにせここは、戦闘力がインフレ満載のドラゴンボールの世界なんだからな

 

 

俺は研究所の全てを破壊して西の都に戻ると、バイオレットは博士に人造人間の事を詳しく聞いている最中だった

 

俺が部屋に入ってきて漸く気付く程に、熱心に聞いていたのだ

 

「あっ、お帰りなさい」

 

「おぉ、戻ったぜ

ってか、バイオレット…人造人間に興味があるのか?」

 

「うん」

 

「そうか…あ~博士、研究所は全て破壊したぞ」

 

「うむ、ご苦労さん」

 

即答され、言葉が続かなかった俺は博士への報告に逃げた

 

「それと、宇宙船の方はどうだい?」

 

「そっちの方だが居住区は大体完成したのじゃが、重力発生装置の調整に思ったより時間が掛かりそうじゃの」

 

「わかった、まぁ博士の納得いくマシーンを作ってくれれば俺は満足さ」

 

「うむ…ところで、バイオレットちゃんを人造人間にするとかどうかな?

本人も満更でもなさそうじゃし」

 

「は?」

 

なに言ってんの博士?

 

人造人間になったら永遠に今の姿のままで、老いもせずに子供も産めて、ピチピチギャルのままで、パイ乙は張りのあるままで、ウエストは引き締まって、ヒップはプリンプリンで永遠に可愛くて綺麗でセクシーで愛らしい俺の嫁のバイオレットが出来上がっちまうだけじゃないか

 

「声に出とるぞ」

 

「うぇ!?…出てた!?

いつから…?」

 

「最初から出とった」

 

最初からとか、マジか…

 

( ゜д゜)ハッ!!

 

おそるおそると、俺は視線を彼女の方へと向けると

 

「…///」

 

めっさ赤い顔をしたバイオレットちゃんの

 

「ぐはぁ!」

 

拳が俺の顔面に降り注いだのであった

 

「サイテー」

 

「ん?」

 

聞き慣れない言葉が聞こえ、振り向くとそこには珍しく博士の娘である、ブルマが居た

 

博士が娘の帰りを喜ぶが、そのブルマの手には、1つの宝石が輝いて

 

って、ブルマさん…それめっさドラゴンボールですやん

 

すっごく、ドラゴンボールですやん

 

「父さん、倉庫で珍しいモノ見つけちゃったけど、私が貰っても良いでしょ~?」

 

「ん~…ええぞ~」

 

軽っ!

 

ちょっ、ちょっとお父さん、それ!それはどんな願いも1つだけ叶えてくれる、とっても素敵なヤツですから!

 

娘も、そんな軽くポンポン投げないでーーーー!

 

「なにアンタ、これ欲しいの?」

 

「えっ!?」

 

いきなり!?

 

いや、まぁ欲しいけど、欲しいのは神龍を呼び出せる数に揃えてからが良いッス

 

「(今は)いらねぇ」

 

「なによ~、ノリが悪いわね~」

 

ブルマは気を悪くしたのか、部屋に戻っていった

 

…彼女はこれからドラゴンボールの文献を漁り、その秘密を知るとドラゴンレーダーを作って旅に出る

 

少女が気紛れに自宅の倉庫を漁っていたら、偶然に見つけた宝石

 

なにもかも、ここから始まったのか…偉大なドラゴンボールの物語が

 

 

 

なんか…ブルマも成長したな

 

地球に来た時は、もう少し子供っぽい体型だったけど、今はもうね…色々と出るとこ出てて、マジでオッサン堪りませんよ

 

子供の頃はブルマとか口煩くて苦手なキャラだったけど、今見るとパイ乙がデカい事に気付く

 

しかも普段から際どい服を好むから、とにかくチラチラと見事な胸の谷間やら、張りのあるヒップやらがオッサンのオッサンを刺激するんすわ

 

あの体型は母親に似たのかもしれん

 

となるとブルママ(勝手に命名)のバディも、もしかして…

 

「ちょっと」

 

ぐわし、と頭を掴まれて、無理やり愛しのバイオレットちゃん本人と、御対面される

 

「ブルマちゃんばっかり見てないで、次はどうするのか言ってよ」

 

「あ、はい…」

 

怒ってます

 

俺のバイオレットが怒ってますよ奥さん

 

この後の事ですね!はい、直ぐに答えますです、はい!

 

「ゴホン…俺達はこれから、バイオレットに修行をつけてくれる、ある人物に会いに行く」

 

「誰かに会いに行くって、貴方が鍛えてくれるんじゃないの?」

 

いや、本当は俺が手取り足取り教えてあげたいんすよ

 

だけど中身がただのオッサンでは、バイオレットちゃんを本当の強者に導くなんてマジで無理ッス

 

まだ気のコントロールで、戦闘力を上げる事も出来ないんですから

 

「その人物は武術の達人でな、何人もの強者を鍛え上げた立派な御仁で有名らしい

基礎からミッチリ教えてもらうには、バイオレットには最適だろう

更に達人の言葉となれば、俺にも良いアドバイスになると思ってよ」

 

「そうなんだ…分かった、行こう」

 

「分かってくれたか、ありがとな」

 

本当にゴメンねバイオレット、俺が教えてあげたかったのに

 

あと、よりにもよって、あのスケベ爺に弟子入りさせる俺を、どうか許して

 

 

 

 

 

 

「うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

「「……」」

 

「なんちゅ~ピチピチギャルじゃあああああああああああああああああああああ!!」

 

はぁ~…不安だ

 

俺とバイオレットは亀仙人こと、武天老師に弟子入りすべくカメハウスを訪れた

 

見慣れたカメハウスだが、まだ時系列的に悟空も、クリリンも居ない

 

ランチさんも、ウーロンも、海亀も居ない

 

本当に亀仙人と俺達だけだ

 

「それで武天老師さま、私達を弟子入りさせてくれますか?」

 

『ぐっ!』

 

バイオレットの問いに、でっかい親指を立ててサムズアップする亀仙人

 

キメ顔のつもりだが、鼻血が垂れているのでギャグにしか見えないぞ、このスケベ爺

 

「強くなりたいなら、この亀仙人さまに任せなさい

特にアンタみたいなピチピチギャルは大歓迎じゃよ…ぐへへへへへ」

 

「武天老師さま、涎」

 

俺が指摘すると、おっと失礼とハンカチで涎を拭う亀仙人

 

「さっそく始めましょう!」

 

「待ちなさい」

 

やる気満々のバイオレットを亀仙人が、キリッとした顔で制す

 

「アンタの気合いは分かるが、先に亀仙流の修行スタイルに着替えて貰うぞい

修行はそれからじゃ」

 

来るか、亀甲羅

 

「ピチピチギャルにはこっち、お前さんはこっちじゃ」

 

バイオレットには謎の紙袋を、俺には悟空とクリリンが背中に背負っていた、あの懐かしの亀甲羅が手渡された

 

うひゃー!亀甲羅だよ!

 

薄紫色の、あの亀甲羅だよ!

 

テンション上がってきたああああ!

 

亀仙流の道着じゃないのは、アレだが、いつかはあの道着も着てみたいぜ

 

グルドに似合うかは別として…

 

しかし漸く修行か、となるとザーボンがくれたアレの出番だな

 

『ごそごそ』

 

「なにをしとる?」

 

「いえね、知り合いから貰ったダイエットグッズを使えば、修行をしながら、俺の突き出た腹もスッキリ解消して、一緒に修行するバイオレットの」

 

「ほぅ、あのピチピチギャルはバイオレットちゃんと言うのか…うっひょひょひょ」

 

この爺、バイオレットの名前を聞いたら俺は放置かよ!

 

…まぁいい

 

俺は地球に出発する前にザーボンに貰った(押し付けられた)『特製サウナスーツ』と『体格矯正インナー』を着込み、その上から亀甲羅を背負った

 

すると

 

う゛っ!あ゛つ゛い゛!!

 

南国のジリジリと照り付ける太陽と、湿った波風によって発生した体の熱気が、サウナスーツによって阻まれ、とにかく籠りに籠る

 

矯正インナーは、体が正しい姿勢になるように施されており、背中を曲げたりすると、すげぇパワーで元の美しい姿勢に戻そうとする

 

ピンッ!と背筋を伸ばした、気を付けの姿勢になったまま、止め止めなく汗がダラダラと流れ出る

 

ザーボンの野郎!恨むぞ!

 

やっぱりアイツに、ダイエットや口臭改善を相談したのは間違いだったのかもしれん

 

「バイオレットちゃ~ん、着替えは終わったかのぉ?」

 

「は、は~い!」

 

パタパタと、俺達の前にバイオレットは着替えを終えて戻って来た

 

「「……」」

 

「ど、どうですか、これ」

 

俺も亀仙人も無言で、恥じらうバイオレットの姿を凝視せざるを得ない状況となった

 

バイオレットは足は運動用のスニーカーなのだが、それ以外のインパクトが大変な事になっていた

 

原作では結局お披露目にされなかった生足が、白昼の元に露となって眩しく輝いており、その健康的な二本の美しい脚が俺に『こんにちは』している

ヒップに張り付いたホットパンツが、その脚と合わさって、俺にビックバンアタック級の衝撃を与えてきやがるじゃないか!

だがそれだけでは終わらない、彼女の上半身は袖無しの『ヘソ出しのタンクトップ』のみ、下着はパイ乙を運動で減らさない工夫が施された現代スポーツが産み出した『スポブラ』が、バイオレットの見事なパイ乙をこれでもかと主張させているではないか

 

「武天老師さま…俺、修行がんばります」

 

「うむっ!」

 

俺はここへ来て、初めて亀仙人を尊敬したのであった

 

 




結論、グルドもスケベ

え?知ってた?

またまたぁ~

ドラゴンボール無印をこの歳で見返してみるとブルマって、めっさエロい服してる上に、エロいバディしてやがったんですね!

くっ…ブルマのバディを見抜けないとはこのグルド、一生の不覚っ!

……子供の時はブルマのバディも、バイオレットもなんとも思わなかったのに、オッサンになると気付く事が沢山あるんですね~。染々

とりまバイオレットの服は、袖無しタンクトップにホットパンツでいきます

それと、初めて『多機能フォーム』なるものを使用して書いてみましたが、如何だったでしょうか?

ありがとうございました!


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5話、汗汗汗

誤字脱字ありましたらスイマセン


「ふぅ、ふぅ…」

 

「ひょひょひょ~」

 

「ぜぇぜぇぜぇ…」

 

バイオレット、亀仙人、俺の順番で険しい山道を行く

 

亀仙流ではお馴染みの修行道具、亀甲羅(20キロ)を背負った俺とバイオレットは牛乳配達をしている最中だ

 

並木道をジグザグに走ったり、牛乳ビンを落とさないようにスキップしたり、丸太橋をバランスを取りながら渡ったり、恐竜や猛獣に追われながらと、とにかく亀仙人の指示に従いながら俺達は走り続けた

 

漫画で悟空とクリリンがやっていた内容を、そのまんまやる事になったと言えば分かるだろう

 

バイオレットは慣れない亀甲羅を背負っての配達に、ただただ悪戦苦闘している

 

…20キロの重りも、山中のランニングも、牛乳配達も初めてなのだろう

 

そして周囲からの好色な視線は、初な彼女に堪えたらしい

 

配達の度に牛乳を取りに来た人々(主に男)が、バイオレットのセクシーダイナマイツな格好に度肝を抜かれているのだが、疲労感と視線の慣れによるものか、本人は吹っ切れた様子である

 

それに対して亀仙人は、終始ニヤニヤデレデレと涎を垂らしながら、俺達の修行に同行しつつ、バイオレットの後ろからあれこれと指示と檄を飛ばす

 

バイオレットの後ろからホットパンツをガン見ですね、分かります

 

そのサングラス、没収したろか?

 

と、思っていた時もありました

 

「ひゅ~、ひゅ~…」

 

「ほれほれ、さっさと走らんと配達が終わらんぞぃ」

 

わかってるよ!

 

甲羅そのものは大した事は無いのだが、ザーボンおすすめダイエットグッズが、とにかくエグすぎる

 

熱い

 

暑いではなく『熱い』

 

サウナスーツが熱を全く逃がさないので、本当にサウナに入ったまま走ってる感じだわ

 

滴る汗が下へ下へと流れて靴まで入ってきて、めちゃくちゃ走りにくいわ

 

臭い息を防ぐマスクが汗を吸収し、まったく呼吸が出来ないので、どこぞのロボ超人みたいに『コーホー、コーホー』鳴ってるわ

 

4つの目に汗が何度も入ってきて、鬱陶し過ぎるわ

 

といった具合なのだが、本当に最悪なのは矯正用のインナーだ

 

こいつはとにかく美しい『気を付け』の姿勢をキープさせようとする

 

着用者が何をしていてもだ

 

どういう事か分かるか?

 

俺は山道を走っているのに、インナーはいつでも、強制的に気を付けをさせようとする

 

それも凄まじい程の力で

 

脚を動かすのも、牛乳ビンが入った箱を落とさないように腕でキープするのも、インナーに全力で抗わないと一歩も進めない

 

戦闘力1万の俺が、常にフルパワーでインナーに抗わないといけない

 

フルパワーで体を動かしているのに、このインナーはまったくもって破れる気配はなく、サウナスーツも同じだ

 

これはつまりザーボンさん、俺を殺す気だな?

 

殺す気だろ?

 

なぁ、殺す気なんだろ?

 

なぁ!?

 

しかし怒りや、これらがどういう構造なのか考える余裕は欠片もない

 

俺は自分の魂が肉体から出ないように、精神で繋ぎ止める事で精一杯なのだよ

 

「グルドっ、大丈夫っ?」

 

速度を落としたバイオレットが、並走しながら俺を気遣ってくれる

 

彼女が下がった事で亀仙人は前に出るが、走り方は後ろ向きになっている

 

今度はスポブラで強調された、バイオレットのパイ乙を見ているのだろう

…あ、バイオレットの良い匂いがする

 

美人は汗をかくと、良い匂い成分が発生するんだなぁ

 

あはは、あはははは

 

「ぜひぃ、ぐへぇ、ぼへぁ」

 

にしても、言葉が出ない

 

いや、ほんとに、全く

 

「もう少しでっ、配達もっ、終わるからっ、あと少し、あと少しだからねっ」

 

「バイッ、レッ、す、だ」

 

「うんっ、頑張ろうねっ」

 

明らかに聞こえてないだろうに、それでも励ましてくれるバイオレット、マジ天使

 

根性を振り絞って口から出た訳のわからん言葉は、濡れたマスクで掠れてしまい、まったくバイオレットは聞き取れなかっただろう

 

『バイオレット、好きだ』

 

ふっ…言ってやった

 

しかし悔いはない

 

もう俺は今日、死ぬ

 

サウナスーツの中に溜まった汗と汗と汗にまみれ、俺は死ぬ

 

だから言ってやった

 

嗚呼…、唯一繋ぎ止めていた精神が、バイオレットへの告白を終えた事で、遠退いてく~

 

 

 

 

 

 

「さて、配達は終わりじゃ」

 

「はぁはぁはぁ」

 

「( - _ - )」

 

「約1名、殆ど死にかけておるが…さて、午後の座学までは休憩するとしよう」

 

「はぁはぁ…きゅ、休憩は分かりますが、座学を、するのですか、武天老師さま?」

 

「うむ…修行とは、よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む事

闘ってばかりでは、綺麗な体も心も荒んでしまうわぃ

どっかの中途半端なハゲの拳法のようにな」

 

…意識の彼方から、待ちわびた『休憩』の言葉が聞こえたよう…

 

「……休憩……?」

 

「ん?生き返ったようじゃの」

 

「グルド、大丈夫?」

 

気を付けのままで地面に寝ていた俺を、バイオレットが起こしてくれる

 

嗚呼…なんか頬に柔らかだが、確かな存在感を放つ山の感触と、俺の鼻腔が、素晴らしく良い匂いの園に包まれるじゃあございませんか

 

ここが天国か

 

もう、死んでもよかですばい

 

「起きんかい!」

 

『ドゴン』

 

「ぐはっ!」

 

亀仙人は杖で俺の頭を強打して、無理やり意識を浮上させてきた

 

配達中は常にフルパワーで動いてた事もあり、もう体内のエネルギーはスッカラカン

 

だからかな、亀仙人の一撃が効いたのはよ

 

「動けないの?直ぐに木陰に連れていくからね」

 

依然として気を付けのままの俺を、木陰に運んでくれたバイオレットは更に水分と塩分を補給してくれ

 

更に身動きできない原因の汗だくのサウナスーツとインナーを、嫌な顔をせずに脱がしてもくれた

 

脱がされた瞬間の解放感、圧倒的な解放感に全ての体が喜ぶ

 

「これ、軽く洗ってくるね」

 

「…あり…が……と」

 

自分も疲れているだろうに、バイオレットは俺の服を近くの川に洗いに行ってくれる

 

スーツもインナーも着てないので、上下とも汗で濡れた肌着姿の俺

 

弛んだ腹も見せてしまったが、もう恥とかそんなものは汗と共に流れ出た

 

彼女は簡単に俺のインナーを脱がしたが、どうもこのインナーは着用者以外の者なら簡単に手足を動かせるようだ…マジで、どんな構造なんだろ

 

「むぅ…ワシもバイオレットちゃんに介抱されたいのぅ」

 

…イヤらしい目付きでバイオレットの尻を追いかけてた罰だよ

 

それにしても太ってて良かった。初めてそう思う俺だった…って、あれ?バイオレットが水分を補給させてくれたって事は

 

ハッとして俺は口元に、口臭を防ぐマスクが外されている事に気付いた

 

外した記憶はない、取れた記憶もない

 

となると何処だ、何処へ行った

 

『ギギギギッ』

 

辺りを見回そうとすると首の間接が、錆びてしまったのかという位に動きが悪い

 

マスク、マスク、臭い息を防ぐ、俺のマスク

 

『ギギッ、ギギギギッ』

 

誰か~、俺にク◯556を、くれ~

 

あとマスクを返して~

 

「お待たせ、はいマスク」

 

……あら~、バイオレットちゃんが洗ってくれてたのね

 

「…ん?…これを探してたんでしょ?

もしかして、外しちゃダメだった?

ごめんなさい、勝手に洗っちゃって」

 

「…いや…その、洗ってくれた事は大変ありがたいです、はい」

 

「そう、なら良いんだ」

 

軋む腕でバイオレットからマスクを受け取り、それを装着するのであったが、彼女は普通に俺の隣に座って休憩を始めた

 

あの~バイオレットさん、マスクを着けたので口臭は大丈夫だと思うのですが、俺は汗だくの肌着姿のままなんですよ~?

 

顔は正面を向いたまま、4つ目の1つを同じ木陰で涼む彼女に向けて見ると

 

バイオレットは木に寄り掛かってるだけでなく、あの綺麗な翡翠色の瞳を閉じていた

 

うん、やっぱり美人だわ…じゃなくて、なんスかこの状況は

 

訳が分からないが俺は最優先事項とは、自分をサイコキネシスで持ち上げ、川で丸ごと洗う事だと思い

 

俺は休む彼女に安らかなサイコキネシスの波を当てて仮眠を取らせ、その間に、 我ながら器用にもサイコキネシスで太った体を持ち上げると川にダイブしたのであった

 

 

 

 

 

 

 

亀仙人の下で修行を始めてから、はや2ヶ月が経過した日の朝早く、俺は波打ち際で思いにふけている

 

「…何してるのグルド、こんな朝早くに」

 

俺達は亀仙人の下で修行に励み、厳しい修行にも慣れ始めた

 

「お~い」

 

もうバイオレットは戦闘力が百を突破し、俺も負けじと2万を超え

 

「まだ修行は『2日目』だから慣れない事だらけだけど、今日も頑張って行こうね」

 

「ああ…」

 

こんな感じで回想風に言ってれば、簡単に時間が経過してくれると思ってた時期が俺にもありました

 

ふっ……どうもこの世界では、バトル漫画特有の修行シーンをカットしてくれないようだ

 

編集部に怒られるぞ?

 

 

 




修行シーンは極力省かず、書いていきたい

前回、前々回のアンケートに関して

前々回のグルドの新しい技のアンケート、その現在のトップが『邪王炎殺黒龍波』って、どういう事なのですか?

個人的に奇面フラッシュが来ると思ったんですけどねぇ

グルド、ウーロン、バクテリアン、リクーム、ヤムチャ(歯抜け)で『奇面フラッシュ!』

…見たくないですか?

それにしても、アンケートをやっておきながら『邪眼の力をなめるなよ』をグルドにやれと?

……マジですかい?

邪王炎殺拳は無理ですが、似たような技なら考えつきましたので、それで許してくださいorz

エロについてのアンケートですが、エロがいらないと仰る方も多いので、いっそ本作はギャグとバトルにして、最初からゲスいグルドを主人公にしたR18のエロ小説を別に作ろうと思います

投稿は未定ですが…サーセン

時間停止に金縛りやサイコキネシスを悪用した中身オッサンで外見が醜悪のグルドが、DBガールや他の漫画に出てくる女を『んほぉぉぉぉぉ♥️』させてやる作品にしようかなと

そっちならば変身能力があり、助平なウーロンとタッグを組んで暴れられる筈

ありがとうございました!


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6話、修行とバトル

誤字脱字ありましたらスイマセン




朝飯と昼飯の用意をバイオレットと2人でし、そのあと亀仙人を交えた3人で朝の食事を済ませると、準備体操とストレッチを始めた

 

朝の配達をするにはカメハウスから海を渡らなくてはならないので、移動手段は当然、泳いで渡るである

 

舞空術を使える俺が2人を担げば解決するが、それではバイオレットの為にならない

 

彼女は俺が飛べるのを知ってはいても、俺がそれをしない事と理由を分かっているらしく、何も言わない

 

修行一途なのか?

 

まぁ数ヶ月はこれからやる事をひたすら繰り返し、慣れる頃には戦闘力が百になってるだろう

 

あのスーツとインナーを着て数ヶ月…ふっ、ドラゴンボールで俺を生き返らせて貰う事になるかもしれないな…

「さてと本日は昨日と違い、新聞配達をしてから牛乳配達をする

その後に休憩を挟み、2人の食費を更に稼ぐ意味で道路工事のアルバイト、そして昼飯を食べたら座学をして、街で食材を買ったら帰ってくる

わかったかの?」

 

「はいっ!」

 

「うす」

 

「では昼飯を持って、出発じゃ!」

 

60キロの亀甲羅を背負ったまま、頭に昼飯が入った袋を乗せて口臭を防ぐマスクを装着、例のスーツとインナーの俺は朝の海に入るのであった

 

「ぐはっ!ごべっ!」

 

やはりキツい!

 

朝の海水で体は熱くはないが、強情なインナーが、やっぱりキツい!

 

昨夜、あれだけ飯を食って寝ても、やっぱ1日でそんな劇的に変わる訳がないか

 

寝ると言っても、エロ爺こと亀仙人の、バイオレットに対する覗きや夜這いといった数々のセクハラを妨害しながらだが…

 

まぁ同じ男だからバイオレットのバディにムラムラする、その気持ちは激しく分かるがね

 

そのセクハラはブルマに取っときなさいな

 

あ、因みに亀甲羅の重さが変わったのは俺だけだから

 

なんだか俺が亀甲羅にへばってないのを亀仙人が見抜いたらしく、2日目にしてコイツを背負わされてますよ奥さん

 

う~ん流石に、自分の体重と同じ塊が乗ってると違うね

 

重力が10倍の星とかでも、普通に生活できる俺だから、それでも大した事はないので、重さの修行ならやはりブリーフ博士の宇宙船完成を楽しみにしよう

 

唐突だが現在、俺の体重は60キロ(ザーボンの言い付けで、ダイエットを初めてからチェックし始めた)

 

そんで俺の身長は120センチ(餃子より小さく、ウーロンと同じくらいらしいぜ)なんだが、同じ身長の人間なら、身長120センチなら平均体重は33キロ!

 

つまり半分に体重を落とさなくては、ならないってこと?

 

これは神龍に頼んだ方が、早いような気がしてきた…

 

あ、参考までにジースは160センチ半、ベジータと同じくらい

 

ギニュー隊長は2メートル、ピッコロより小さく、悟空より高い

 

リクームは2メートル半超えで、バータは3メートル超え(あくまで作者の勝手な見解です)

この2人は宇宙人だからで、納得するしかないな

 

ザバザバと一生懸命にクロールする、今日もナイスバディなバイオレットが視界に入る

 

出発する前に、俺だけが重いのを背負うのをバイオレットは嫌らしく、私も背負わせてと言っていたが、20キロに慣れてない彼女では骨が色々とヤバいとの理由で、亀仙人に却下されていた

 

そりゃ戦闘力1万と、戦闘力が一桁じゃな…

 

でも修行を続けていれば、その内に百はいくから

 

頑張れバイオレット

 

 

 

昨日と同じく汗にまみれ、インナーに抗い、マスクに酸素補給を阻害されながら、新聞配達と牛乳配達を終えた俺達は、一時間ほど休憩を終えて道路工事のアルバイトに向かう

 

工事では、お馴染みの黄色いヘルメットを被ると俺がツルハシで次々と地面を掘る役で、後ろに続くバイオレットがシャベルで瓦礫を除去する役が与えられた

 

身の丈と同じツルハシを軽々と振り降ろすと、アスファルトだろうと地面だろうと簡単に砕けていく

 

『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』

 

ふふ~ん、楽し~い

 

『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』『ドガン』

 

モノを壊して金が貰えるとか、最高だな

 

マスク・インナー・サウナスーツに邪魔されながらだが、楽しい事となれば気分的には大違い

 

どんどん掘っていく

 

ほれほれ♪砕けろ砕けろ♪

 

「グルド、ちょ、ちょっと待って!」

 

「うん?……あ」

 

振り向けば、バイオレットが後方で瓦礫の山の除去に追われており、工事のオッチャン達が信じられないモノを見る目で俺を見ている

 

そして俺はもう1つ気付く、本日に予定していた作業終了ポイントまで掘り進んでいた事に

 

「…バイオレット、手伝うぜ」

 

ツルハシを片付けてシャベルを持ち、彼女を手伝おうとする

 

「ダメだよ、これは私の仕事なんだから、グルドは別の仕事をお願い」

 

「…分かった」

 

う~ん、真面目と言うか頑固と言うか…一本気な所も実にイイネ

 

ま、手伝ったら彼女の修行にならないし、断られたんなら仕方ないか

 

俺は現場監督に次の仕事を聞き、今度は誘導員の仕事をする

 

これが中々にキツい仕事、なにせ俺は体が小さいから、結構派手に動かないと運転手に気付いて貰えないからだ

 

腕をブンブン回しながら、チョロチョロと走り回る

 

ぐはっ!やはり汗と負荷がキツくなった!

 

その苛立ちから、たまに誘導に従わない奴には、サイコキネシスでお仕置きをしながら昼まで乗りきる

 

「おう、昼までだったよな、お疲れさん」

 

「バイオレットちゃん!また来いよー!」

 

「バイオレットちゃん!結婚してーーーー!」

 

「バイオレットちゃん!好きだぁぁぁぁぁ!」

 

「あは…はは…、また宜しくお願いします」

 

(俺は無視かよ…)

「チッ……」

 

「さて昼飯にしようかの」

 

亀仙人は現場監督からアルバイト代を貰い、昼飯を食う場所へと向かい3人で食事をして、昼寝をした

 

俺の活躍や、工事のオッチャン達がセクシーなバイオレットの登場に士気が尋常じゃ無いくらいに上がってた事で、予定していたより早く、本日の仕事が終わったのでアルバイト代は少し多めに貰えたらしい

 

よかよか

 

ハンモックで横になりながら、そんな事を思い出す俺はスーツもインナーも脱いで、まったりモード

 

「すぅ…すぅ…」

 

バイオレットの可愛い寝息が聞こえる

 

今日も俺の服やマスクを洗おうとしたバイオレット、だが2日連続で修行に疲れた女の子に洗わせたとあっては、男が廃る

 

俺は自分でやると言いながら飛び去り、手頃な川を見つけると服やらを手で洗いだす

 

洗いながらも、洗濯機があればな~と考えていると、そうだと閃く

 

サイコキネシスがあるじゃんと

 

風呂桶ほどの量の水を空中に浮上させ、その中に洗濯物をブチ込み、グルングルンにかき混ぜてやる

 

いやぁ~便利だわぁ

 

仕上げにサイコキネシスで水気を完全に飛ばして、2人の所に戻ると不貞腐れたバイオレットが居たっけ

 

いやいやいや、臭い服を年頃の女の子に洗わせるとか、俺がクズ野郎になっちゃうでしょ!

 

昼寝を終えて座学をこなし、3人で買い物をしてカメハウスに戻る

 

当然、スーツやインナーを着て、泳いでだ

 

カメハウスに到着すると食材を冷蔵庫に仕舞い、先にシャワーを浴びるバイオレット、すると浴室を覗こうとする亀仙人と、それを阻止せんとする俺との壮絶な攻防が始まる

 

「多重残像拳、見切れるか!」

 

「そんなものが俺の4つの目に通用するかよ!

……そこだ!」

 

「ぐはぁ!…や、やるのぅ

だが、ここからが本番じゃ!」

 

「こいや!バイオレットのバディは誰にも覗かせねぇ!」

 

「ぬぉぉぉぉぉ!

ピチピチギャル・パワーーーー!」

 

「きえええぇぇぇ!」

 

亀仙人が武天老師に覚醒し、様々な技を駆使して俺を排除しようとする

 

しかし俺も負けてられない、時間停止にサイコキネシス、そして金縛りを駆使して防ぎまくる

 

「臨兵闘者皆陣列在…前!

たわけもの!金縛りなぞ、この武天老師に通用するかっ!」

 

「うぉ!?マジか!?」

 

「隙あり!魔封波じゃああああ!」

 

「ちょ、おいっ、てめぇ!

……くぅぅぅぅ!」

 

「ば、ばかな!魔封波に気の波を逆回転に当てて、相殺しよった!」

 

「みたかオラッ!」

 

「……なにをしてるの?」

 

白熱した武天老師との闘い(試合会場は居間)は、湯上がり美人のバイオレットの登場によって、相手が激しく落胆した事で俺の勝利になったのであった

 

だが安心は出来ない、まだ夜戦が残っている

 

夜這いをかけようとする亀仙人との一戦が…

 

「今夜はカレーにしようか、さぁグルド、手伝って」

 

「おう」

 

「…シャワーを浴びるバイオレットちゃんが…見たかったのぉ…しくしく」

 

俺は野菜の皮を剥きながら、ソファーで横になって悲しみに暮れる亀仙人の首に、キラリと光るドラゴンボールがある内は、バイオレットをこのエロ爺から守ろうと、改めて誓うのであった

 

 

 




忘れてましたが、亀仙人ってドラゴンボールを持ってましたね

調べた所では海底で百年前に拾ったとか

グルドとの対決は個人的に気に入ってます

バイオレットの裸を見たいがあまり、魔封波を使用しても亀仙人が死ななかったのは、単純にエロパワーがビンビンだったからです!適当

ほ、ほら!天津飯も魔封波を連発しても生きてたでしょ!

ありがとうございました!



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7話、気のコントロール

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

修行3日目、夜明け前のカメハウスにて

 

「う~む…」

 

グルドこと俺は、波打ち際に座り込んで思案に暮れていた

 

原因は矯正用のインナーではない、くそ熱いサウナスーツでも、多種多様なサプリメントや、毎日チェックしてる体重でもない

 

体重は毎日1キロ程は順調に落ちているので、そっちは良いのだが、問題は

 

「戦闘力の上げ方か…」

 

DBの世界で戦闘力を上げる方法、それは種族関係なしに長い期間での修行による地道な底上げと、サイヤ人に代表される死の局面から復活すると戦闘力が格段に上昇する方法の二種類

 

先天的に戦闘力が高かろうが低かろうが、修行をすれば何とかなるのがDBの世界である

 

怠れば直ぐに戦闘力がヤムチャ化するので、修行をサボる=ヤムチャになるのでそれは嫌だ

 

闘いの最中に気をコントロールする事で、一時的に戦闘力を爆発的に上昇させる方法がある

 

サイヤ人・ラディッツとスカウターの登場は、これまでのDBと違って、相手との強さを数字化する事で読者に分かりやすく『強者』と『弱者』を明確化させた

 

しかし戦闘力を一時的に上げる事で互角に、もしくは弱者が強者の戦闘力を上回る事も可能になる

 

重りを脱ぐ、ピッコロの魔貫光殺砲、御飯の底力などでラディッツはスカウターの数字の変化に振り回され、尻尾を鍛える努力も怠っていたが為に強戦士族の面汚しのような実の弟への必死な命乞いで、その場はなんとか乗りきる事は出来たが、結局は悟空と共に死んだ

 

300ほどの悟空とピッコロが約4倍の、1300のラディッツを倒したのだ

 

スカウターがないから分からんが、現在で戦闘力1万の俺が、5倍のリクーム達を相手に出来る可能性もあるので、気のコントロールは相当に魅力的だ

 

また戦闘力の一時的な変化は勝つ為の常套手段であり、相手を驚愕させて闘いを有利にされる精神攻撃にもなりうる

 

口臭改善はもとより、戦闘力の底上げ(最低5万)と気のコントロールは、この地球への武者修行中で絶対に身につけたい

 

ただ気のコントロールは激しい肉体的な訓練よりも、心を静かにし己の内面と向き合う精神的な修行、つまり瞑想から得られるモノと俺は考えている

 

ピッコロみたいに滝の側でフワフワ浮かびつつ座禅を組んだり、悟空が神様の神殿で座禅を組むのが印象に残るが、今の俺の環境も決して悪くない

 

夜明け前は静かで、暑くもなく、波の音は耳に心地よい

 

…落ち着く

 

「気のコントロール、か」

 

俺は人差し指の先に体内の気、体内エネルギーを集めてみる

 

ポウッ、と淡い光が指先に生まれた

 

集まった気にエネルギーを更に注いでいけば、光はより大きく、より輝きを放つ

 

豆電球ほどだった気の玉がピンポン玉くらいになり、次に野球ボールほどの大きさになる

 

まだまだ体内エネルギーには余裕があるので、その気になればもっと気の玉を大きくできるかも

 

まぁフリーザ様がバーダックもろとも惑星ベジータを花火にした時のような、巨大な気の玉は作れはしないだろうが

 

しかしこれでは、何かが違う気がしてならない

 

ただエネルギーを無駄に、外に外に流しているだけのような…

 

「…外に?じゃあ…中に中にエネルギーを集めていったらどうなる…?」

 

ボソッと呟いて指先に出したエネルギーを体内に戻し、砂浜に胡座をかいていた俺は立ち上がる

 

ダラリと全身の力を抜いて自然体になるとそのまま目を瞑り、体の中心にエネルギーを集めるイメージをしてみる

 

それが心臓の位置でも、へそや腹筋でも、へその下の丹田でも何でもいい

 

集めやすい場所にエネルギーを…

 

………ん?………なんだか、体が熱くなってきたような

 

いや、でも…これも違うな

 

ただ気を集めただけ、さっきの指先に集めたのと大して変わりは無い

 

もっとこう…体の底から沸き上がるような、原作風に言うと額に血管が浮き出るような『力』が感じられない

 

沸き上がらせつつ、体からエネルギーを漏らさずに、留める?

 

風船みたいにか?

 

「ぬんっ……!」

 

俺は体中からエネルギーを放出させつつ、それを体から漏らさず、力一杯に留める

 

「かぁぁぁぁ~!!」

 

溢れ出ようとするエネルギーをギリギリの所、体を覆う皮膚で抑制するイメージ

 

「ぬぐぐぐっ…こうっ、か!」

 

上手くいったら、またエネルギーを放出し、皮膚で抑制

 

それを繰り返す

 

ぐっ!なん、か!

いつもより…力が、増したような気がするぜ!

 

『ゴゴゴゴゴゴゴ…』

 

「……っ!、……っ!」

 

いいぞ…もっとだ、もっとイケる

 

俺の気が高まる、溢れる…!

 

もっとエネルギーを絞り出せば…更に

 

「……!!」

 

『ボカン!』

 

「あたっ!」

 

突然、頭を殴られて我に帰った

 

そこには寝巻きの亀仙人とバイオレットが、必死の形相で立っていた

 

なぜ寝巻き?なぜそんな必死の形相を?

 

あり?これが本日の初顔合わせだったか?

 

ってことは

 

「……あ、おはようございます」

 

『ズル!』

 

2人が盛大にズッコケた

 

バカモン!と怒る亀仙人

 

なぜ?と俺が問えば

 

寝ていたらいきなり大地震が発生、2人は飛び起きて避難しようと俺を探したら、今回の地震の震源地が波打ち際で轟々と気を放つ俺だった、と

 

ひょいと辺りを見回せば、確かに夜明け前の静けさから一変

 

地震が空気を振動させ、空は黒雲が発生して遠くでは雷が鳴り、厚い雲に呼ばれた風は舞って波はうねる

 

天変地異の様だった

 

「お主はもっと自分の力を知れ!

ワシらを殺す気か!」

 

「う、うす……すいやせん」

 

そんなこんなで朝から、かなりガチ目の説教を受ける俺であった

 

 

 

 

 

さて修行である

 

マスクは呼吸がしづらいし、サウナスーツは相変わらず熱いが、俺は早朝に覚えた『なんちゃって気のコントロール』をやりながら朝の配達をしてみると、我ながら驚いた

 

まだまだコントロールが練習不足なので、長い時間は続きはしないが、動き易さは段違いなんだ

 

今までのようにただただフルパワーで、出さなくても良い箇所からエネルギーを無駄に流すより、動かす箇所のみに放出を厳選、消費された分を体に溜まったエネルギーで補うので無理なく、姿勢よく走れる

 

これかもな

 

これが、気のコントロールに繋がる修行なのかもな

 

……しかし

 

「腹減った…」

 

俺達は朝飯を食べずに海を渡り、2つの配達を終える

 

空腹もそろそろ限界だ

 

そして高い崖の上で亀仙人から、ある物を見せられた

 

なんの変哲も無い石に『亀』と書かれたモノである

 

「2人とも、今のを見たの?」

 

「は、はい見ました」

 

この石、この崖、まさか…

 

「ひょーーーい」

 

ポーンと石を崖下の森に投げた亀仙人、全盛期のイ○ローを彷彿とさせる見事なレーザービームで石は飛び、緑の中へと消えて行った

 

嗚呼…この後の展開が読めたよ

 

「2人とも、今の石を取ってまいれ

でなければ朝飯は抜きじゃ」

 

「「ええええ!?」」

 

やっぱりか、ちきしょー!

懐かしいな!くそっ!

 

原作でもやっていた『亀』と書かれた石を探してこい修行、まさか3日目で来るとは!

 

「行くぞバイオレット!」

 

「うん!」

 

俺達は岸壁を伝って降り、広大な森の中から、手分けして探し出すのであった

 

 

 

一時間後、森の中で何とか石を見つけ出した俺達は崖の上で朝食を取っている

 

「それにしても、割りと早く見つけ出したのぉ」

 

「はい、グルドがこっちだ、こっちだって手を引いてくれたんですよ、そしたら直ぐに石が見つかりました」

 

バイオレットが亀仙人に説明している

 

俺の4つの目は視力に優れているので、石の飛距離はバッチリ抑えていたからな

 

途中で熊や狼、虎に猪やらに邪魔されたが、威圧の意味で気を体内で凝縮、それを一気に爆発させて衝撃波を放ってやったら、猛獣はみんな退散したっけ

 

爆発波、とでも言うかも

 

それにしても、今回は割りと簡単な修行だった

 

森の中で石を探すより、崖の登り降りの方が時間が掛かった位だし、バイオレットはクリリンと違って、修行仲間である俺を蹴落としてやろうとしないからな

 

「ふ~む、これでは今一つ修行にならぬの

では明日から石に『亀』と刻印するとしよう、そしてグルドは、これから目隠しをしながら修行をするのじゃ!」

 

『ぶはっ!』

「ゲホッゲホッ!」

 

「大丈夫?はい、お水」

 

咳き込む俺にすかさず水を渡してくれたバイオレット、それに対して、なんちゅー事を言うのかこの爺は!?

 

「ひょっひょ!視界に頼りきったお主には、ちょうど良い修行となろうて!」

 

……ぬ?

 

あ~成る程、目以外の感性を育てる、そういう修行か…

 

やっぱり武天老師は伊達じゃない

 

「では明日から目隠しをしながら修行に…」

 

「何を言っておる、今からじゃよ」

 

ほれと手渡された黒い布

 

「え~っと、つまり、目隠しをしながら修行と生活しろと?」

 

「無論じゃ」

 

サラッと何、とんでもないこと言うとんじゃい!

 

「凄いねグルド…、私も早くそれくらいの強さになりたいな…」

 

…バイオレットちゃん、もしかして天然か?

 

だがまぁ、亀仙人の言い分も最もだ

 

やれやれと布で視界を塞いだ俺は、もてる触感と嗅覚と聴覚をフル活用し、恐る恐ると朝飯を食べるのであった

 

その後の修行は、いつもより何倍も疲れたと言っておこう

 

道路工事のアルバイトでは危うく自分の足にツルハシを落とす所だったし、真っ直ぐ掘れないので進行は遅い

 

目隠ししながらの昼食は、バイオレットが作ってくれた食べ物を1つも落とすまいと気合いが入るし

 

湖で鮫に追われながらの十往復の水泳では、何度も鮫に噛まれたり、岩にぶつかったりもした

 

体中に痣や瘤を作って帰ると、今度は亀仙人とのバイオレットのシャワーシーン防衛戦が始まる

 

だがバイオレットの入浴を見んとする亀仙人のエロパワーは凄まじく、視界を塞がれた俺は一方的にやられ、バイオレットの肢体は無念にも亀仙人によって拝まれてしまった……無念

 

俺は今までに、どれだけ視力に頼っていたのか痛感する

 

どうにかしないと、このままでは…

 

俺は晩飯を食べ、シャワーを浴び、体重を記録、歯磨きをしたら、今度は夜這い防衛戦である

 

寝静まった夜、俺は毎晩のようにバイオレットの部屋の前に陣取る

 

負けられない闘いが、カメハウスにある

 

……来たか

 

俺は律儀に目隠しをしたままだが、準備はしてきた

 

サイコキネシスで出来た、目には見えない糸『サイコ・ウェブ』を廊下に幾重にも張り巡らせ、敵の到来を読み取った

 

「ほほぅ、どうやら小細工を考えよったらしいが

だがそれだけで、バイオレットちゃんとの添い寝を邪魔できるかな?」

 

「させねぇ、こっちも必死なんでな」

 

サイコウェブは今のところ敵の接近を報せるだけで、敵の位置を正確に教えてくれる訳では無い

 

だがその内、映画に出てきた銀河戦士のように相手を絡め取って動きを封じた上で、エネルギーを吸い取るような技法とか編み出してみたいぜ

 

「…言い付け通り、目隠しをしたままとは誉めておこう、しかし…ワシは遠慮せんぞ?」

 

亀仙人が構えたようなので、俺も構える

 

「はっ!」

 

来た!

 

「ふん!」

 

「うぉ!?」

 

俺はサイコキネシスの波を幾重にも作り、バイオレットの扉の前で『バリア』を展開

 

亀仙人はバリアに弾かれ、元いた位置に戻された

 

「ふむ…なにやら、不思議な壁を作りおったか

だが…その壁はいつまで持つかの?」

 

「……」

 

「答えぬ所を見るに、かなりの集中力が必要な技のようじゃ

ならば、ここは籠城戦といくかの」

 

亀仙人は何処かに行ったかと思うと、何やら雑誌を持ってきて、側でゴロゴロしながら下卑た笑い声をあげ出した

 

…エロ雑誌を読んでやがる

 

「むほほっ、こっちのピチピチギャルは、ええパイパイしとるのぅ!

だがバイオレットちゃんのパイパイに比べると、張りも形も大きさも劣るが

おっと、こっちのギャルは尻がバイオレットちゃんに似とる!ほれほれ~見てみぃ~

こんな感じじゃったぞぃ」

 

こ、このやろ~

 

「おや?どうした事かの

何やら壁が薄くなってきたような…」

 

ぐっ…、意識が…

 

「もう少しで壁が消えるか

どれ…、ほい!」

 

ゴン!という音と共にバリアに亀裂が入ると、そこからは一気に霧散した

 

「ひょっひょーー!バイオレットちゃんとの添い寝は頂きじゃー!」

 

ヤバい!と、止まれ!

 

『ピタリ』

 

息を止めながら、俺は急いで思案する

咄嗟に時間停止能力を使ってしまったが、全くなんの解決方法も考えてない

どうする!?どうする!?

目隠しを取るのは負けた気分になるし、バイオレットとの添い寝はなんとしても防ぎたい!

金縛りは亀仙人に効果が無いしな…くそ!なんかねーのか!

息が…そろそろ…ヤバい頃だ

…………あれ?まだイケる?

前ならとっくに切れてる頃なんだが…って、今はそんなことじゃねぇ!

なんとかしなきゃ、俺なりのやり方で夜這いを掛けるエロ爺を…ん?夜這いを、掛ける?

……うってつけの解決法があるじゃん!

 

俺は息の続く限界まで、ある用意をすると時間停止を解除した

 

すると勢いよく亀仙人は動き出し、バイオレットの部屋の扉を開けると、ベッドに眠る彼女を目掛けてダイブ!

 

しかし…

 

『ボゴォ!』

「めがっ!」

 

掛け布団の中から飛び出した俺が、亀仙人目掛けて頭突きをして、そのまま廊下まで飛び出る

 

どっかの3代目の大泥棒が毎回毎回、どっかの泥棒猫に夜這いを掛ける時の撃退法を思い出した俺の勝ちである

 

気絶した亀仙人を居間まで引き摺り、サイコキネシスの縄で椅子に縛り上げると、漸く俺は安らかな眠りに付くのであった

 

 

 

 




気のコントロールのやり方は作者の勝手なイメージですので、どうか生暖かい目で見てやって下さい

風船みたいに体内で気を増幅させ、その貯めたエネルギーを一気に掌から噴射、強力なエネルギー波を放てる的な感じでいきます

サイコキネシスの応用技、サイコ・ウェブやバリアと言った技を考えるのは楽しいな♪

ありがとうございました!


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8話、夜の海が茶番を隠す

誤字脱字ありましたらスイマセン



4日目の早朝、もはやルーティーンとなった波打ち際での自問自答をしているグルドこと、俺です

 

いやぁ~、昨夜の夜戦は本当に間一髪だった

 

咄嗟に時間停止をした迄は良かったが、そこから先が無かった為に止まった時間の中でかなり慌てたが、どうにかなって良かった良かった

 

これは、どっかの3代目の大泥棒に感謝しなきゃいけないな

 

それにしても、サイコキネシスの糸『サイコ・ウェブ』は、結構いいアイデアだと思ったんだがなぁ…

 

使ってみたら、糸に触れた相手の位置は把握できても強度の問題か、亀仙人が触れたら簡単に切れてしまい、それ以降は張り直さないと察知できない

 

強度を上げて…ブービートラップ用にするとか?

 

糸に触れたら軽い電流のスタンガンで気絶させるとか、頭に重りを落とすとか?

 

いや…いっそ、エロ本を床に置いて亀仙人を罠に誘導してだな…

 

「グルド、おはよう」

 

「おっ、バイオレットか、おはようさん」

 

いつの間に起きたのか、寝巻き姿のバイオレットが朝の挨拶をして、そのまま俺の隣に座り込んだ

 

「……」

 

「……」

 

特に何も話さない

 

ただ時間が過ぎるだけだが、幾度も寄せては引く波の音が心地よく、隣には美人のバイオレットだ

 

文句など、ある筈がない

 

然り気無く、彼女の綺麗な手に触れてみたいと思っていたら、彼女の方から軽いジャブを入れてきた

 

「あのさ、西の都で私が博士に色々と聞いてたじゃない」

 

「人造人間計画の事か?」

 

「…うん」

 

「なりたいのか?」

 

「え?」

 

「人造人間に」

 

「どうなんだろ…前は、凄く魅力的に思えたんだ

人間って、本当は7割以上も力を出してないらしいの

人造人間は、人間の本来持つ力を限界以上に引き出せて、そこに掛かる負担も軽減できる

そこに厳しい修行を加えれば、もっと効率よく強くなれるんじゃないかなって」

 

「……」

 

「今でもそうなんだけど、私は少しでも早く、恩人である貴方の強さに近付きたい一心なの」

 

「……」

 

「亡くなる寸前の母さんには、自由に生きろと言われたから、私はこれからもすきに生きるつもりよ

でも、私は弱い

貴方みたいに強くないし、ブルマちゃんや博士みたいに頭も良くないし、武天老師さまみたいに明るくて賢くもない

…だから人造人間になれれば、早くグルドの力になれるんじゃないかなって…」

 

いつの間にか膝を抱え、頭まで埋もれてしまいそうな位なバイオレットであるが、色々と間違いがあるのでそこは正させてもらうぞ

 

「なぁバイオレット、悪いんだが俺は、所属する軍の全体から見れば酷く中途半端な強さなんだよ」

 

「え?」

 

「俺は、とある軍に籍を置いてて、5人の特殊部隊の隊員に入ってるんだが、そこでの俺の強さを1万で例えると、他の3人は5万、隊長に限っては12万は越えている」

 

「グルドの強さが1万で…、隊長がその12倍!?」

 

「そう、しかし上には上がいて

それも宇宙を丸ごと震撼させるような強大さを持つ男が、最低でも3人もいる

強さはざっと…1億か」

 

「1億……」

 

この場合の3人とはフリーザ様、クウラ、ブロリーの事である

 

魔族やターレス、スラッグやボージャックは上記の3人に比べると些か迷惑度が落ちるので省く

 

それとコルド大王の強さはオッサンになってもよく分からんから、同じく省かせて貰う

 

魔人ブウも入れても良いが、俺としては元凶のバビディを前もって何とか探し出し、RR軍みたいに潰してしまえば良いと考えているので然程、脅威とは言えない

 

ダーブラの強さもよく分からんしな

 

セル?あ~…忘れてたよ

 

とにかく宇宙規模で迷惑をかけているのがフリーザ様や、クウラやブロリーだから名前を挙げただけで、異論は聞いてない

 

「1万の俺など、道端の石ころみたいなもんさ」

 

「…でも、…でもグルドは、それでも強くなることを諦めてないんでしょ?」

 

「勿論だ

バイオレットだってそうだろ?」

 

「うん」

 

「その意気だ

それを決して忘れなければ、あっという間に俺の強さにはなれるぜ」

 

「ありがと…でもグルドは、更にその先に行っちゃうんでしょ?」

 

「まぁな…軍の親玉に、少なくとも仲間と同じ位になる迄は帰ってくるな。と言われちまったたし」

 

「強さを今の5倍にする迄、か

はぁ…私はグルドの何倍、修行をすれば追い付けるのかな」

 

「俺は宇宙人だからな、地球人の体の構造は分からないが

とにかく根気強く修行をして、その修行を克服したら更にキツい修行をし、それを続けていくしかあるまいよ」

 

「うん、……あれ?

グルドは宇宙人なの?」

 

「おろ?言ってなかったか?

でもまぁ、見た目は完全に宇宙人のそれだろ?」

 

「う~ん…それでも私には、命の恩人には変わりはしないけどね」

 

「バイオレット、お前は良い娘だな……」しみじみ

 

「うわぁ、今の言葉と雰囲気、オジサンみたい」

 

「けっ、ほっとけ

だいたい男なんて幾つになっても中身はガキで、スケベなオッサンだよ」

 

「武天老師さまみたいに?」

 

「武天老師さまって……あれ?

もしかして、バイオレットよ

夜中のアレ……まさか気付いてたのか?」

 

「そりゃ起きてるよ、あれだけ毎晩、廊下で騒がしく闘うんだし」

 

「(゜д゜)」

 

「いつも守ってくれてありがと

それにしてもさ…今回は、いきなりグルドがベッドの中に入ってくるんだもん…

一瞬だけだったけど、凄く驚いちゃった…///」

 

きゃー!バレてるぅぅぅ!

 

あかん!これはセクハラで告訴されてまいます!どげんしたらよかとや!オッサンが年若い娘さんのベッドに入り込んだとなったら、最低でも10年は宇宙刑務所にブチ込まれてしまうたい!

 

…そうだ!話題を変えよう!

それしかねぇ!

 

「コホン…ならどうする?

亀仙流を辞めて他所に行くか?

宛なら他にも居るぞ?」

 

よし、クールに言えた

 

「まだ4日目だよ?それに修行は途中で投げ出したらダメ

確かに武天老師さまは、ちょっとエッチだけど、指示はいつも的確だし、仰る事は的を射ているなぁと素直に思うよ」

 

ちょっと……かなぁ

 

「それに私自身が修行で強くなって、武天老師さまを撃退できるようになれば問題ない話でしょ?」

 

「むぅ…まぁ、そうなんだが」

 

「そういう訳で、手合わせして」

 

「うん、……うん?」

 

「手合わせだよ、ダメ?」

 

こっちを向いて小首を傾げるバイオレット、くそ可愛いな

 

「分かったよ、ただし全力で来い

俺は避けるだけだから、安心して攻めて来るんだ」

 

言って俺達は立ち上がり、体に付いた砂を払い、それぞれの修行用の服に着替える

 

俺は例のインナーに目隠し、バイオレットはタンクトップにホットパンツである

 

向かい合って一礼し、構えればそこから始まる

 

「はっ!」

 

視界は一面の闇だが、柔らかな砂地を蹴り、飛び込んで来るバイオレットが耳と肌で分かる

 

『シュッ』

『ゴッ!』

 

「……!」

 

「どうした?次」

 

腹に拳がクリーンヒットしても顔色1つ変えない俺に、攻めた筈のバイオレットが怯んだ気がしたから、俺は次だと指示する

 

『ブォン!』

『ドォ!』

 

横っ腹に蹴りが入ったか

音と感触で何となく分かる

 

『バシッ』『ガッ!』

『ズドン!』

 

今度は頭や腹に連撃を受ける

 

「このぉぉぉぉ!」

 

バイオレットは攻めに攻めるが、宣言に反して俺は一切動かずに全て受けきった

 

避けると前もって言っておけば、容赦なく攻撃が出きるだろうし

 

 

 

そこから少なくとも4分は経過し、バイオレットは攻め疲れてギブアップ

 

彼女は俺に攻撃が効かない事が不満そうだが、俺は別の事に感心している

 

「やるじゃないかバイオレット、4分も連続で攻められるなんて

普通の男でも、4分も休まずに攻撃するなんて、まず無理だ」

 

「はぁはぁはぁ…そ、そうか、な……?」

 

「そうさ!全力ダッシュを4分間やり続けるのと一緒の運動量が、今のバイオレットに備わっているって事だからな」

 

「はぁはぁ…はぁ、はぁ」

 

両膝で上半身を支え、肩で息をする彼女

 

バイオレットは亀仙流の修行により、確かな基礎体力が付いていたのであった

 

 

 

その日も、縄をほどいて起床してきた亀仙人と海を渡り、2つの配達をこなす

 

配達中も目隠しをする俺は当初、バイオレットの尻を追い掛ける亀仙人にサイコ・ウェブを付着させて、道案内をこっそりさせようとしたが、年の割には軽快な亀仙人はひょいひょいと飛び回るので糸が直ぐに切れてしまい、それは無駄に終わる

 

暗闇の中で山道を走れってか?

 

こうなりゃ自棄だと俺は残る五感を頼りに、バイオレットの残り香や、足音の方向と言った僅かな痕跡を絶対に逃がすまいと追い掛け続けた

 

ただやはりと言うか、途中で何度も躓いたり、崖から落ちたりするが、そこは舞空術で乗り切った

 

「うぉ!?またか!」

 

今度は丸太橋から足を踏み外して落下するが、途中で舞空術で浮遊しながら体勢を立て直して、橋に戻った

 

「グルド、大丈夫!?」

 

「…あぁ…問題ない」

 

バイオレットが心配してくれる

 

これでは配達が遅れてしまうな、不甲斐ない

 

まだ目隠しをして1日すら経過してないので、この体たらくは当たり前だ

 

しかし修行とは、地味な作業を諦めずに続ける事が大切

 

継続は力なりである

 

「さぁ、行こうか」

 

仕切り直し、俺達は配達を再開するのであった

 

 

 

 

「では今日も石を探して貰う

見つからなければ、分かっておるの?」

 

「はい!」

 

「おうよ」

 

「では…ひょーーーーい」

 

『ヒューーーー…』

 

『…………ガサガサ』

 

ここまで来るのに、耳に全神経を集中させてきた甲斐もあってか、大体の距離と方角は掴んだ

 

後は崖の正確な位置をだな

 

「行こうグルド、崖はこっちだよ」

 

「おっ、おぅ、ありがと」

 

バイオレットの柔らかな手に突然握られ、崖へと案内される俺

 

はぁぁ!柔らかいなぁ~!

 

そう言えば彼女から手を握ってくれたのは、これが初めてだったか?

 

俺から握ったのは、前回の石探しの時だったのは間違いないが

 

「にやにやしとらんで、はよ行かんかい!」

 

「ぐぇ!」

 

いきなり背中に強い衝撃を受けると、俺は崖下へと落とされる

 

あんのエロ爺!目隠しした俺に、ドロップキックしやがったな!

 

後で覚えてろよぉぉぉぉ!

 

落っこちながら俺は今夜の闘いに、激しく意欲を燃やすのであった

 

 

 

そして夕方、カメハウスにて

 

「ぬふふ、今宵もバイオレットちゃんの見事なパイパイを、じっくりとたっぷりと拝ませてもらおうかの」

 

「させるかよ、スケベ爺

バイオレットはな、俺のもんじゃ」

 

「デカく出よったか、ならばワシを止めみぃ」

 

『シュバババババッ!』

 

亀仙人はわざと音を出しながら部屋の中を、所狭しと飛び回り、俺を撹乱してくる

 

やるな爺、昨日までの俺だったら、これだけでヤられていたかもしれないが、今日の俺はちと手強いぜぇ?

 

サイコ・ウェブ!

 

俺は無数のサイコキネシスで出来た糸を全ての指先から飛ばして、それを動き回る亀仙人の体に次々と付着させていく

 

「こ、これは?体の自由が効かんじゃと?

まさか、金縛りの一種か?」

 

まだだ、まだ終わらんぞ

 

「…そこだ!はぁ!」

 

「ぐほぉあ!」

 

数多のサイコ・ウェブを付着させた事でスピードが落ちた事で、より亀仙人の居場所を完全に特定した俺は、一瞬で背後に周り込むと、渾身の当て身を打つ

 

『ドサリ…』

 

ふぅ、今回はスケベ爺の覗きからバイオレットを救っ

 

「甘いわ!」

 

「ぬがっ!?」

 

突如として背中を指で突かれ、俺は劣勢に立たされる

 

くそ!この爺、残像拳か何かで逃れやがったか!

 

それに…秘孔か何かを突かれたらしい、平衡感覚が狂う

 

上手く、立ってられない

 

「ひょっひょ!今宵もワシの勝ちじゃな

それにしても惜しかったのう、何かが絡まって来たと分かったから、咄嗟にソファーに置いとったクッションで代用しとらんかったら、果たしてどうなっておったか」

 

「く、くそっ、まさかクッションを囮に使うとは」

 

「お主は確かにワシより強いが、圧倒的に経験が不足しとる、敗因はそこじゃよ」

 

「くっ!」

 

「これぞ変わり身の術、ふふふ…年季が違うのじゃ、年季がのう

うひょひょひょひょ!」

 

「グルドをイジメないで!」

 

『ドギャン!』

 

ズレた布の隙間から、俺は見た

 

紫色の髪をタオルで巻いた湯上がり美女が、電子ジャーを亀仙人の頭に投げ付けて気絶させたのを

 

亀仙人のサングラスから目玉が勢いよく飛び出し、グラスを割ったシーンは、原作DBのまんまだった

 

「全くもう…さぁグルド、夕御飯の支度をするよ

手伝って頂戴」

 

「わかった」

 

俺は目隠しを外し、部屋中に撒いたサイコ・ウェブを残らず回収

 

キッチンに立つ前にチラリと亀仙人を見れば、後頭部に大きなタンコブを作った亀仙人が、地面に突っ伏していたのであった

 

バイオレット△

 

 




そろそろ修行シーンを飛ばし、原作をスタートさせようと思います

個人的には超能力のバリエーションを増やしたい所ですが、そこは追々

素手で畑を耕す修行は、回想にしても大丈夫でしょ

フリーザ軍の様子も少し描きたいですが、特に変化は見られないと思いますので、さわり程度で後書きにでも書いてみます

ありがとうございました!


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9話、2年の誤差/宇宙の彼方より…

誤字脱字ありましたらスイマセン

途中で視点がグルドから、定点カメラに変わります


くそっ、どうする?

 

どうすれば良い?

 

『ウロウロ、ウロウロ』

 

「ねぇグルド、何が原因なのか知らないけど落ち着きなよ」

 

「いや、しかしだな…」

 

「武天老師さまが見慣れない『亀』と出掛けたのが、そんなに気になるの?」

 

「う~ん、そっちじゃなくて、中断された修行の事さ~」

 

「あ、なんだぁ

修行の事ね、うんうん

てっきり、見知らぬ亀さんが気になるのかと思っちゃった」

 

と言ったな、ソレは嘘だ

 

凄く気になります

 

だって、俺の予想してたより早く原作が始まってたんですから!

 

何の事か分からない?

 

いやね、亀仙人のペットの海亀がね、松茸狩りから帰って来やがったんです

 

海に帰れなくなってた所を、心優しい男女2人の旅人に助けられたので是非、亀仙人に会ってあげて欲しい的な事を言ってさ

 

亀仙人を対岸に待つ男女2人に…いや、間違いなく悟空とブルマに会わせに行ったのだ

 

これって、おかしくね!?

 

だって悟空が14歳の時にブルマとパオズ山で出会って、そこから原作がスタートするんじゃなかった!?

ブルマとの入浴シーンで、歳を聞かれた悟空が14だと答えて、痴漢だの変態扱いされてたのは記憶にあるんだぞ!

 

俺がグルドになったのは惑星ベジータが滅んで約10年後で、地球に到着するまでが1年

 

そこからRR軍やDr.ゲロの研究所を潰して、亀仙人に弟子入りして修行をして、なんやかんやで1年

 

原作開始まで、あと2年はある筈なのに話が違うじゃないか!

 

一体どーなってる!

 

せっかく…亀仙人の下での修行が6ヶ月は経過、俺の体重はめでたく標準サイズにまで落とせて、さぁそろそろ亀仙流を卒業して本格的な重力修行か、別の人物に師事して貰おうと思ってたのに…

 

俺は視線を下げて、努力と根性と長い時間を掛けて作り上げたバディを見る

 

デップリと出ていた腹には括れと見事なシックスパック、埋もれていた首が現れて二重顎にはサヨナラした

 

つまり…

 

『おめでとう!デブいグルドは、細マッチョなグルドに進化した!』のである

 

うわーい!これでサウナスーツともサヨナラできるやー♪

 

っと喜んでたのに…チキショウめ

 

どうする?マジでどうする?

 

もうすぐドラゴンボールが揃って、ピラフ城で神龍が復活しちまうぞ

 

いっそ亀仙流を卒業して、その時が来るのを空から監視するか

 

愛しのバイオレットは基礎体力が、かなり付いたので今では配達やら道路工事やら素手で畑を耕すのも、余裕でこなせるようになっている

 

そして早朝での俺との特訓では、簡単な気のコントロールと舞空術を覚えた

 

舞空術が使え、腕っぷしもヤムチャを軽く越えているので、バイオレットは地球の殆どの連中に勝てるだろう

 

流石に武天老師やピッコロ大魔王、天津飯や桃白白には劣るだろうが、重力修行を始めれば直ぐに何とかなる

 

だが俺にとって今は修行よりも、ドラゴンボールだ

 

力付くで奪うのは容易いが、原作での知識がある分、下手に悟空やブルマから恨みを買うと後が怖すぎるから、それは出来ない

 

時間停止能力でボールと、ついでにレーダーも頂戴してしまうか?

 

いや、それは泥棒になるから、あの世に行った時に界王さまの所で修行が出来なくなってしまう

 

う~ん…あ、待てよ

 

神龍の前に、確かフライパン山で…かめはめ波を初めて披露するんだったな

 

かめはめ波、ドラゴンボールで代表される最も有名な技

 

原作好きとしては、亀仙人のMAXパワーのかめはめ波は、是非とも目に焼き付けたい所

 

その呼吸法や筋肉の動き、細かな気の流れを毎度便利なサイコキネシスで調べ上げ、かめはめ波を自分のモノにしてみたい

 

せっかく気功波を使えるのなら、かめはめ波もやりたいじゃんか

 

よし、決めた

 

フライパン山で亀仙流の奥義、かめはめ波を見て覚え、最速で使えるようになったら、仮の卒業させて貰う

 

そして神龍が現れる迄、悟空達と一緒に行動するか監視をし、ギャルのパンティを阻止する

 

その後に亀仙流の本当の卒業、武天老師がジャッキー・チュンに扮して優勝した 『天下一武道会』にバイオレットを選手として出場させる

 

バイオレットには兄弟子…いや姉弟子として、悟空やクリリンの前に強敵として立ち塞がって貰うのは面白そうだ

 

ただ、悟空は女だろうと一切の手加減しないのが気になるが…

 

「バイオレット、亀仙人のじい様が戻るまで俺と組み手するか?」

 

「組み手?やるやる、今度こそグルドに片膝をつけさせてあげるんだから!」

 

「おっしゃ、付いて来い」

 

被害が出る事を考慮し、2人でカメハウスから少し離れた小島に移動

 

向かい合ったバイオレットは気を高め、構えると

 

「はああああ!」

 

連続エネルギー弾、いわゆる『グミ撃ち』を放つ

 

動かない俺に次々と当たって、弾け飛ぶ爆心地の中で思う

 

ただの街娘の身で、よくぞここまでと

 

バイオレットの6ヶ月前からの成長ぶりに、亀仙人でなくとも俺は感慨深くなる

 

攻撃が止んで土煙が晴れるとバイオレットが、やっぱりかと言った顔をしていた

 

「肩慣らしはお仕舞い、さぁ…行くよ!」

 

「存分に掛かってこい、バテるまで付き合ってやるぜ」

 

 

 

 

 

 

≪視点切り替え≫

 

 

 

 

 

 

一方その頃、暗黒の宇宙の中を進む光りがあった

 

進むのはフリーザ軍の1人用のポッド、恐らくは1ヶ月ほどでグルドの居る地球に到着する距離にいる

 

搭乗者は強戦士族、サイヤ人の『ラディッツ』

 

しかし歳の方は15程で、まだ少年の面影がたっぷりと残っているが、あと数年もすれば原作と同じ風貌になる事だろう

 

ラディッツはコールドスリープで眠りについており身動きしないが、その特徴的な長髪と額の他には、痛々しい青アザや無数の生傷がある

 

どれも原作には無かったモノだ

 

その傷もそうだが、ラディッツが何故この時期に地球を目指しているのか?

 

話はラディッツの出発前に戻る

 

 

 

グルドが不在となって1年が経過した頃、久しぶりにギニュー特戦隊に出動命令が出た

 

ただ、1人分の欠員を補う為にフリーザはベジータとナッパ、そしてラディッツにも特戦隊が攻め込む星に派遣

 

その星に住まう者達の平均戦闘力は1000~3000であるので、グルド以外が5万を越える特戦隊や、1万後半のベジータには簡単な相手である

 

戦闘力が4000のナッパは相手によってはたまに苦戦もするが、彼はサイヤ人の名門の出である上に昔からベジータに振り回された事で実戦慣れしており、持ち前のタフネスさと爆発力で圧倒する

 

しかし…下級戦士であるラディッツの戦闘力は、たったの1300しかないので攻める側の筈が、反対に蹴散らされてしまう始末

 

2000程の敵達にラディッツは追い詰められ、このままでは殺されると思ったのか、戦士としては最悪の手段に出る

 

その模様をスカウターで聞いていたナッパ曰く、サイヤ人の面汚しだと激怒する程の内容で、ラディッツは命乞いをした

 

まだ成長段階であり、戦闘もベジータやナッパが見向きもしない敵だけしか倒した事が無く、いつも強者に恵まれ無かったラディッツに出来る事は、自分より弱い者をいたぶるだけ

 

たまに強者に出会う時もあるが、その時は戦闘を好むサイヤ人らしく立ち向かう

 

しかし彼の心の奥にある、過去のトラウマが強者との戦闘よりも『死』を恐れさせる

 

実はラディッツは人生で初めて出動が決まった日の夜に、実の父親から瀕死の重症を負わされていた

 

出動が決まり、やっと自分も一人前のサイヤ人になれると非戦闘員であった母親へと報告しに急いで帰れば、そこには珍しく、いつも戦闘で不在の父親が家に居たのだ

 

下級戦士でありながらも幾多の激しい戦闘を乗り越え、エリートのサイヤ人を凌駕する戦闘力を持つラディッツの父親、『バーダック』

 

同じ下級戦士の筈なのに、いつも威張っているエリートの連中よりも圧倒的に強い、そのバーダックの息子である自分にとって、王族に匹敵する父親は憧れだった

 

ただやはりサイヤ人らしく戦闘を好み、家族の情けは薄いので常に宇宙を飛び回り、家を省みない

 

父親らしい振る舞いは1度としてされた事は無く、たまに帰って来ては、いつもの4人のサイヤ人と夜遅くまで飲み明かし、ひどい時には瀕死の重症を負って帰って来ては、決まって母親が悲しみに暮れる

 

そんな毎日を送って来たラディッツに、突如として舞い降りた一人前の証

 

息子の報告を、サイヤ人では珍しく心根の優しい母親は心配そうに聞くが、反応して欲しかった父親は無関心さを貫く上に、晴れて初陣が決まった息子に対して目線もくれない

 

そしてその日の夜、ベッドの中で興奮冷めやらぬラディッツは、いきなり部屋に入ってきた父親によって外へと引き摺り出されると、訳も分からない間に殺されかけた

 

当時、戦闘力が850しかなかったラディッツにとって、実戦慣れした戦闘力が1万近くのバーダックに抗う事は不可能である

 

悪夢のような父親の強さが、ラディッツを襲う

 

異変に気付いた母親が現れた頃には、ラディッツの意識は無く、そして少年の心に深い恐怖心という『傷』が付けられた状態で、星へと送られたのである

 

死を乗り越えた事で戦闘力が増したラディッツは、とくに苦戦する事なく初めての任務を全うしたが結局、胸の傷は未だに癒えていない

 

何故と問う前に、ラディッツの両親は隕石の衝突により母星もろとも死んでしまったからだ

 

そして今回の戦闘で追い詰められたラディッツは、あの時の悪夢を思い出し、怯え、命乞いをした

 

そこに自分の攻略対象を潰して、暇をしていた底意地の悪いリクームがスカウターを通してフリーザ軍の全チャンネルに、ラディッツの命乞いを流してしまう

 

直ぐにキュイがベジータを馬鹿にする通信をしてくると、プライドが高いベジータはこれに激怒

 

即座にラディッツの所へ行くと、憐れに命乞いをするラディッツの周りの連中を消し飛ばすが、それでも怒りが収まらないベジータは、リクームに矛先を向けると襲い掛かる

 

…ベジータには最早、ラディッツは眼中にすら無かったようだ

 

ニヤニヤと笑うリクームはベジータの攻撃を、バレエのポーズを取りながら避けまくる

 

どこまでも舐めやがって!

 

ベジータが咆哮を上げるが、フリーザ軍同士で争うのは流石に不味いとナッパがベジータを、リクームをジースとバータが止め、最終的にギニューの登場によってこの内輪揉めは終結

 

その後は無言で破壊活動をした一同は星を制圧、フリーザの待つ惑星に戻り報告をしたのである

 

そして基地のロッカールームにて、ラディッツは同じサイヤ人のナッパから制裁を受ける

 

壁に叩き付けられると何度も殴られ、倒れる事も許されない

 

漸く終わると、ズルズルと床に倒れるラディッツ

 

しかしナッパは彼の長い髪を掴むと、片手で持ち上げる

 

体が成長しきってないラディッツの脚が、プラプラと揺れている

 

ナッパは髪を掴んだまま、こう言った

 

『けっ、長い髪だぜ…テメーみたいな情けない命乞いをする弱虫野郎は、宇宙最強の戦闘民族サイヤ人の面汚しだ!

いっそ女にでも産まれてくれば、サイヤ人を作る仕事をやらせてやれるのによ!そうすりゃ今よりは役に立つぜ!』

 

言われたラディッツは腫れ上がった眼で、ナッパを睨む

 

『なんだぁ~、その反抗的な目は?

そんな目をしていいのは戦士だけだ!テメーは戦士でも何でもねぇ、ただの弱虫野郎だろうが!』

 

またも壁に叩き付けられ、激しく殴られる

 

『くだらん…ナッパ、そんな奴はもう放っとけ

憂さ晴らしに、どこか適当な惑星はないかフリーザ様に頼みに行くぞ』

 

これまで沈黙を貫いていたベジータが声を上げ、スタスタと部屋を出ていくと、ナッパもラディッツを置き去りにして部屋を出る

 

ボロ雑巾のようにロッカールームに横たわるラディッツを、親切に医務室に連れて行く者は、このフリーザ軍に1人として存在しない

 

このフリーザ軍は完全実力主義である

 

ラディッツが弱いから悪いのだ

 

普通の兵士だったなら、その場で死んでいただろう

 

しかし腐ってもサイヤ人のラディッツはフラフラになりながらも起き上がり、壁伝いに医務室を目指す

 

何とか辿り着き、医療スタッフの面倒くさそうに接する態度を見ながら、メディカルマシーンに入れられるのであった

 

治療液に満たされたカプセルの中で、ラディッツは思う

 

こうなった、そもそもの原因を

 

グルドがギニュー特戦隊にいないから、フリーザが俺達を派遣した

 

ギニューやベジータは、俺の戦闘力の低さを知っているくせにわざと敵中で1人にしやがった

 

あの星の連中に散々にやられ、死を覚悟すると、またあの悪夢が甦りやがった

 

クソ親父め…俺が弱いのは全部アイツのせいだ!

 

ラディッツはこうなった原因を全て他人のせいにし、最終的な原因をグルドのせいにした

 

グルドだ、アイツがいればこんな惨めな思いはしないで済んだのだ

 

地球とやらで武者修行だと?ふざけやがって

 

貴様のお陰で、俺はこの様だ

 

もうベジータやナッパとはチームを組めないし、フリーザ軍では誰も俺に見向きもしないだろう

 

くそっ!

 

こうなった責任を取らせてやる…必ずだ

 

俺も地球に行って、グルドに責任を取らせてやるぞ!

 

 

 

完全に回復する前にメディカルマシーンから出たラディッツは、青アザや生傷のそのままに恐る恐るフリーザの元へと向かい、地球行きの許可を求めた

 

フリーザは背中を向けながら、基地から飛び立つ2台のポッドを見ている

 

あれに乗るのはベジータとナッパだろう、ラディッツはそう直感した

 

返事が無いので、どうしたものかと悩むラディッツに側近のドドリアが、命乞いをしてさっさと帰れと邪険に扱う

 

しかし思わぬ助け船が出た

 

もう1人の側近であるザーボンが、グルドのサプリメントの補充と雑誌の配達、そしてスカウターを持たないグルドに 修行期間を設けた事の連絡要員として、そこのラディッツを使いましょうと、フリーザに直訴したのである

 

『まぁ、いいでしょう』

 

ザーボンに言われ、漸く反応を示したフリーザはラディッツの地球行きを認めたのである

 

こうして地球行きが決まったラディッツは、ザーボンから渡されたアタッシュケースと共に、ポッドで地球を目指す

 

雑用任務だろうとラディッツは構わない、感情に振り回されての地球行きだが、それでもだ

 

グルドの太った顔面に、1発ブチ込んでやらないと気がすまない

 

例え殺されても、もうどうでも良い

 

失うモノは何もないのだ

 

あの悪夢も消えてしまうのなら、もう構わない

 

ヤケクソ気味に、ラディッツはコールドスリープで眠りに付くのであった

 

 




戦闘民族サイヤ人の血を引く上に、あのバーダックの息子で、あの悟空の兄であるラディッツが、どうして弱いままなのかの理由を考えてみたら、ひょっとして子供の頃になんかトラウマでもあったのかな?と考え、こんな話を作ってみました

色々と設定を盛りすぎた感じはしますが、バーダックが書けるなら良いやと書いてみました。後悔はしてない

昔、ドラゴンボールのゲームで『もしもラディッツがピッコロと戦った際に記憶を無くしたら?』と言うifストーリーをプレイした時の記憶が甦り、フリーザ軍の動きを書くついでにと、ラディッツを出してみました

痩せたグルドのイメージは、『サイバイマン』の体にグルドの頭を乗っけた感じでオネシャス

ラディッツがバーダックにボコられる前の戦闘力は、作者の予想ですので信じちゃダメだぞ

尚、ナッパにボコられたので、地球に向かうラディッツの戦闘力は2100にアップしております

バイオレットは100未満、かな

ありがとうございました!


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10話、亀仙人の本気/やらせない。絶対にそれだけは

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

「武天老師さま、お帰りなさ…ど、どうしました!?

その、鼻血は!」

 

亀仙人のアロハシャツが、本人の鼻血で真っ赤に染まっている

 

あ~…アレか、ブルマにドラゴンボールをあげる代わりに、亀仙人はパンチィを見せてくれと頼んだら、多少は恥じらいながらも豪快に見せてくれた…しかし、前もって悟空がブルマのショーツを脱がしていたので…

 

さぞや豪快に吹き出した訳ですね、分かります

 

今頃、自分がノーパンだったと気付いたブルマが、怒りのマシンガンを悟空に乱射してるんだろうなぁ~

 

 

 

そこから数日が経過したある日、雲に乗った少年がカメハウスにやって来た

 

「オッス、俺グルド」

 

「お、オッス、オラ孫悟空」

 

黒髪のツンツン頭に懐かしの紫色の服、背中には如意棒、サイヤ人の象徴である尻尾をフリフリとさせた、DBの主人公『孫悟空』が目の前に居る

 

やべ~…取り敢えず挨拶しちまったけど、マジ悟空だよ

 

マジで悟空が目の前に居るよ

 

「なぁなぁ、オメ~蛙の妖怪かなんかか?」

 

開口一番に、とんでもない事を言われるが俺は怒らない

 

なんせ相手はデリカシーの欠片もない事に定評のある、あの悟空だからな

 

「…いや、ただの宇宙人だ

蛙の妖怪じゃない」

 

「なんだ~、じゃあ食えねぇのか~」

 

あからさまにガッカリする、う~む…この反応はまさに悟空だな

 

「ところで…孫悟空よ、このカメハウスに何しに来たんだ?」

 

「あ…」

 

 

 

「ほい、到着っと」

 

原作通りドラゴンボールのあるフライパン山の火事を消す目的で、亀仙人に芭蕉扇を借りに来た悟空

 

しかし芭蕉扇は亀仙人が捨ててしまった為、捨てた本人が何とかすると言ったので、フライパン山に向かう事となった

 

俺達は邪魔をしないので、一緒に付いてって良いかとバイオレットが尋ねれば、そこは1発オーケー

 

さてさて、かめはめ波を見られるぞと俺達は筋斗雲の悟空、小さいガ○ラに乗る亀仙人と共に、赤々と燃えるフライパン山の麓に到着したのである

 

途中で舞空術で空を飛ぶ俺達を不思議に思ったのか、オメー達は妖術使いか?と悟空が尋ねてきたりもしたっけ

 

「おーーい!亀仙人のじっちゃん連れて来たぞーー!」

 

到着して直ぐに、悟空が元気一杯の大声で旅の仲間を呼ぶと、バニーガール姿のブルマ、豚のウーロン、でっかいオッサンの牛魔王が現れた

 

「あれ?アンタのその目と肌の色、もしかしてグルドじゃない

それに…」

 

「久しぶりね、ブルマちゃん

…どうしてバニーガールの格好なの?」「グヘヘヘ…ブルマちゃん、もう一回ワシにパンチィを見せてくれんかのう」「見せるか!」「グヘヘヘ…俺、ウーロンってんだ、よろしくな姉ちゃん」「え?あ、よろしくねウーロンくん、私はバイオレット」「おお!武天老師さま!お久しぶりだべ!」「相変わらずでかい声だのう牛魔王」「はぁ~オラ、腹へっちまった~」

 

くっ…うるさい

 

「で?どうやってあの山火事を消すんですか?」

 

少し大きめの声で言えば、騒がしかった者達の中から亀仙人が、ワシが消してやると前に出る

 

ただその代わりにブルマの見事なパイ乙を、ツンツンさせてくれと要求

 

あ、ブルマに殴られた上に、めっさ怒鳴られとる

 

実に原作の雰囲気だなぁ~と端で見ていると、此方を見ている2つの小さな気配に気づく

 

これはそうか…ヤムチャとプーアルだな

 

確かフライパン山に来る少し前までは盗賊をやってて、バズーカでウーロンの車を破壊して邪魔をしたり、悟空とバチバチにやり合ったりと、それなりの悪党をしてたっけ

 

仕掛けて来ないのは知っているので、ヤムチャは放置する

 

あれ?悟空の未来の嫁さんのチチは?

 

……居た

 

幼女に着せるには少々アレな服に身を筒んだチチは、既に悟空を意識しているらしく、悟空を盗み見ては頬を染め、モジモジしている

 

初々しい事だが、アレが後に教育ママになってしまうのだと思うと…ねぇ

 

「では、やるとするかの!」

 

どうやら話は決まったようだ

プリプリとブルマが怒っている

 

「本当にスケベ爺なんだから!

…バイオレットさんも大丈夫?あの爺の所で修行してるんなら、変なことされたりしてない?」

 

「うん、大丈夫だよ

前まではグルドに守られてたけど、最近は自分で何とかしてる」

 

グッと拳を作り、ブルマに笑顔を向けるバイオレット

 

「へぇ~、前まではただのスケベなデブだと思ってたけど、痩せてみたら、そっちの方の気が利くようになったわけ?」

 

ニヤニヤしながら、バニーガールのブルマが上からモノを言う

 

「ふん、痩せてみたらは余計だ

…そんな事よりよく見ておけ、亀仙人の…いや、武天老師の本当の力を」

 

重い亀甲羅を降ろして上着を脱ぎ、お約束どおり

『ワシ、セクシーじゃろ?』とブルマにアピールしたら、亀仙人は瓦礫の上に登ると…

 

「すぅ~~……はぁ!!」

 

「「「げぇ!?」」」

 

気を膨らませた亀仙人の体が、みるみる巨大化していく

 

俺はサイコキネシスをフルに使って、亀仙人の体に今、なにが起こっているのかを見逃さない

 

「なんて…凄い、気

これが武天老師さまの…」

 

この中で唯一、俺以外に気を読めるバイオレットが一番驚いている

 

「バイオレット、亀仙人の呼吸と気の動きをしっかり見てるんだ

あれは滅多に見れない、亀仙人の本気の力だ……!」

 

「うん…!」

 

「か」

 

「め」

 

「は」

 

「め」

 

MAXパワーに達した亀仙人は、腕をゆっくりと回しながら、あの言葉を口にしだす

 

く、来る…

 

「波ああああぁぁぁぁ!!」

 

限界に高めた体内エネルギーを掌に集め、合図と共にレーザー砲のように放たれた光りは

 

やはり山火事ごと、フライパン山を消し去ってしまった

 

 

 

 

 

「武天老師さま、しっかりして下さい」

 

「ぷへへへっ、ワシは幸せもんじゃ…」

 

フライパン山から、ひとまずカメハウスに帰って来た俺達

 

ブルマに化けたウーロンの、パフパフ攻撃によって血が足りない亀仙人は、足はヨロヨロとしながらも顔は幸せそうである

 

「…は~~、長生きはするもんじゃの~」

 

ソファーに座り、ボケ~っと思い出しエロスに浸っているところ悪いが、切り出させて貰うぞ

 

「亀仙人のじい様、実はそろそろ俺達は亀仙流を卒業し、新たな道を進んで行こうと思ってます」

 

「む?」

 

突然の切り出しに、顔が引き締まる亀仙人

 

「バイオレットも最近は修行に慣れ、新たな境地への渇望が沸いてくるようになりました

そこで俺達は『聖地カリン』に赴き、そこに住まうカリン様に修行をつけて貰おうと思います…」

 

「ほぅ…カリン様に修行をな…」

 

「はい、かつて多くの武道家がその地を目指したと言う古い伝説を街で聞きまして、とても興味が沸いたのです」

 

「グルド、お主は元からワシを超えておるので止めはせんよ

しかしバイオレットちゃんには肝心な事をまだ教えてないので、卒業はまだダメじゃ」

 

はい、知ってます

 

上には上がいる、努力を怠るなという事ですな

 

俺にとっての『上』は遥か上にあり、頂きすら見えないのは分かっているけど

 

「武天老師さま、その教えは、この場で聞かせてくれるもので無いのでしょう?」

 

バイオレットも6ヶ月の間、亀仙人の下で修行していた事もあり、その性格は分かっている

 

無闇にしつこく聞いたりしない

 

「無論じゃ…その教えとはワシが口頭で伝えて、バイオレットちゃんの頭では理解したつもりでも、心には何も響かぬモノ

ただし、早朝にやっておるグルドとの組み手で、己の強さが増している事は気付いていようから、視野を広げると言う意味でカリン様の下に行くことを許可しよう

その代わり、8ヶ月後に南の都で開かれる『天下一武道会』に選手として出場して貰うがの」

 

「天下一武道会…あの有名な大会に、私が出るのですか…!?」

 

「止めておくか?」

 

「いえ、武天老師さまやグルドに鍛えられた私自身の本当の強さを確認する為にも、出ます!」

 

「よろしい、では聖地カリンに行くがよい」

 

「はい!武天老師さま、長い間、お世話になりました」

 

「グルド、バイオレットちゃんを頼んだぞい」

 

「うす」

 

 

 

そして俺達は荷物を纏め、カメハウスから旅立つ事となった

 

「御二人とも、お気をつけて~」

 

「たまには帰ってくるが良い

体には気を付けるのじゃぞ」

 

亀仙人と海亀が俺達を見送る

 

「武天老師さまも、どうかお元気で」

 

「エロもほどほどにしとけよ、エロ仙人」

 

「このばっかもん!

さっさと行けぃ!」

 

「へへっ…!

8ヶ月後に、また会おうぜ!」

 

飛び立った俺達が見えなくなるまで、亀仙人達は手を振っていた

 

 

 

「ねぇ、その聖地カリンは、こっちの方角で良いの?」

 

舞空術で飛びながら、バイオレットが尋ねてくる

 

今は彼女の速度に合わせているので、空中でも会話が可能

 

「亀仙人の爺さまに、ああは言ったが

俺はフライパン山から帰って来て以来、気になっている事がある」

 

「…それは?」

 

「ブルマだ」

 

「ブルマちゃん?

どうしてブルマちゃんが気になるの?」

 

「忘れたのか?

あの娘は大企業、カプセルコーポレーションの御令嬢で博士の1人娘だぞ

その御令嬢が、あんな危険な旅をしているのは変だと思わないか?」

 

「そういえば、そうだね」

 

「ブルマは確かに行動力はあったが、今回のは明らかに逸脱している

…何かあってからじゃ遅い、せめて話だけでも聞きに行こう

それに俺は博士に頼み事をしているので、ブルマの身に危険が迫ったら博士に会わせる顔がない」

 

「そう言う事…分かった、私も手伝うよ」

 

「すまねぇな」

 

「でも、肝心のブルマちゃんはどうやって探すの?」

 

バイオレットの疑問に、俺は行動で示す

 

空中に停止し、目を閉じて気を探る事に集中、普通の人間より少し強い悟空の気を探る

 

最後に会った地、フライパン山の方角には2つ、他より少し強い気がある

 

これは牛魔王とチチだろう

 

そこから東西南北に範囲を広げていけば、牛魔王達より少し強い奴と、劣る奴の気を見つけ出す

 

「……いた」

 

「もう見つけたの?」

 

早いねと言うバイオレットを連れ、俺達は悟空の気を感じた方角に飛ぶのであった

 

 

 

「へぇ~、世界中に散らばったドラゴンボールを7つ集めると、願い事をなんでも叶えてくれる龍が現れるのか

すげぇ話じゃないか、なぁバイオレット」

 

「グルド…よくこの状況で落ち着いていられるね」

 

「そうか?」

 

チラリと俺は、同じく煉瓦作りの牢屋に入れられた面子の現在の様子を見る

 

「ふぇ~ん!せっかくここまで集めたのに~!あんな奴に横取りされるなんて最悪よ~!」「くそっ!俺の癖を直すチャンスだったのに!」「だ、大丈夫ですよヤムチャ様!希望を持ちましょう」「神龍って何だ?食えんのか?」「あ゛~俺まだ死にたくねぇよ~!」

 

狭い牢屋に俺とバイオレット、そしてヤムチャとプーアルを加えた悟空達が『ピラフ城』に囚われている

 

賑やかな面子だよ、相変わらず

 

ブルマは泣き崩れているが…仕方ないか、苦労して集めたドラゴンボールは全てこの城の主であるピラフの手中にあり、奴は身分不相応な願いを叶えようとしているのを、確か彼女は知っていた筈

 

そろそろ俺の願いを叶える時か

 

「うわっ!空が暗くなったぞ!」

 

悲観していたウーロンが気付く

 

「アイツ、神龍を呼び出すんだわ!」

 

「こうしちゃいられないぜ!」

 

ブルマが叫んで、ヤムチャが渾身の力で壁を殴る

 

「孫くん!アンタも壁を壊しなさい!」

 

悟空も、ヤムチャと同じく壁を壊そうとする

 

無駄無駄、その壁は悟空の『かめはめ波』じゃないと穴は空かないのさ

 

早いとこ、かめはめ波を撃っちゃってよ悟空ちゃん

 

そんで外に出たウーロンと、俺は修行の合間に覚えた『入れ替えテレポート』で立ち位置を交代、ピラフの願いを阻止し、ついでに俺の願いを叶える作戦って訳よ

 

ワザとあのピラフに捕まるのは少しストレスになったが、まぁいい

 

くくっ…まだだ、まだ笑うな

 

「ブルマちゃん、ここは私も手伝うね」

 

…はい?

 

『ドカーーーーン!』

 

「「「うそ!?」」」

 

「スゲーなオメー!」

 

開いた口が塞がらん

 

バイオレットが煉瓦の壁へ、豪快に蹴りを入れると、その箇所は派手に爆散

 

いや、確かに戦闘力100はあるバイオレットに、煉瓦の壁なんて…いやそんな事を考えてる場合じゃねぇ!

 

「急げ!ピラフの下らない願いを俺達で阻止するんだ!」

 

最もな事を言った俺は、いの1番に牢屋の外に飛び出して、夜空にうねる神龍の元へと全力ダッシュ!

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

誰も追い付かせやしない!

 

ここまで苦労してきた口臭を、絶対に無くしてやる!

 

【さぁ願いを言え、どんな願いでも1つだけ叶えてやろう】

 

うぉ!神龍の声だ!

 

腹にまでズンと響く、あの人の太い声だ!

 

感傷に浸ってる場合じゃねぇ、おっ!地面に光りを放つ地点に、ピラフ達の姿も見えてきたぜ

 

「わたしは…世界を…」

 

待てこらタコこら!それだけはさせねぇぞ!

 

「すぅ~……俺の口臭を永久に消してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

握り拳を天に掲げ、心の底から放った魂の叫びは、ピラフが願いを叶える前に夜空へと木霊したのであった

 

 




『入れ替えテレポート』…自分で考えておいて、ダセぇ

簡単に説明しますと悟空の瞬間移動とは違い、グルドの場所と相手の場所を入れ替える超能力です。そのまんま

有効範囲としましては、入れ替える相手がグルドの視野内に居ること

他の設定としては、生きていること、大きさが違い過ぎないこと

ただしこの超能力はグルド自身が覚えて間がないので、電磁バリアー等、力場は越えられないとします

天下一武道会まで8ヶ月、そして次に目指すは聖地カリン、果たしてグルドとバイオレットはどうなる事やら

ありがとうございました!


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11話、大猿

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

【願いは叶えてやった、さらばだ…!】

 

全身を輝かせた神龍が、再び7つのドラゴンボールに戻って世界中に散らばって行った

 

そして夜のように暗くなっていた空は元々の時刻に、夕方に戻ったのを確認した俺は辺りを見回す

 

俺のダッシュに追い付けなかった悟空とヤムチャが後方に居り、ブルマとウーロンはその遥か後方にてゼェゼェと呼吸を乱していて、バイオレットはプーアルを抱き上げてご満悦

 

…そう言えば、バイオレットはアニメ版で動物には優しい一面があったっけ

 

部下にはアレだったが……

 

それにしてもウーロンが遥か後方にいると言う事は、『ギャルのパンティおくれ』は阻止できたに違いない、流石にあの位置から神龍には遠すぎる

 

つまり俺が1番に願いを言い切り、神龍に願いを叶えて貰ったって事になる

 

やってみるか…

 

もはや習慣となりつつあったマスクを外すと、懐から口臭レベルを表示する機械を出して、センサーに息を吐き掛けた

 

『ピピピッ…』

 

久しぶりの緊張の瞬間

 

『ビビーーーッ』

 

「口臭レベル、感知不能

つまり…0って事か」

 

やった…、遂にやった

 

グルドになった時は、息の臭さに絶望した

 

だが今はダイエットに成功し、バイオレットとも仲良くなり、そして念願の口臭改善も成し遂げた

 

これでベジータの野郎に、息が臭い等と言われずに済む…

 

「ほぇ~、あの姉ちゃんもスゲーけど、オメーもスゲーんだな

とんでもねぇ足の速さだったぞ」

 

感動に震えていると、悟空が話しかけてきた

 

記憶は失っても、やはり純粋なサイヤ人だな、強い奴が気になるんだろう

 

「そりゃ俺とバイオレットは亀仙人の下で厳しい修行してたからな、こんなモノは朝飯前だぜ

それにしても、いいのか?

飛んでったあのドラゴンボールの1つは、亡き爺さんの形見だったんだろ?」

 

「い゛っ!?ああ!

じっちゃんの形見が飛んでっちまった!」

 

どうしようどうしようと慌てる悟空は、後方のブルマに駆け寄り、ドラゴンレーダーで調べようとするが…無理だろうな

 

願いを叶えたドラゴンボールは、一年間は普通の石になったままでレーダーに反応しないのだから

 

やはり映らなかったらしく、なぜと聞く悟空にブルマは説明、他にも色々と知る情報を話すが、悟空の頭では半分も理解できまい

 

…ん?なんか忘れてるような?

 

「き、貴様ら~…よくもこのピラフ様の長年の願いを台無しにしてくれたな~!」

 

「なんだピラフか」

 

なんだピラフか

 

「もう一度、お前達を牢屋に入れてやる!

今度は簡単に脱出できないように、もっと強力な檻に入れてな!

そして明日、全員を処刑してや」

 

「やかましい」

 

『チュドーーーン!』

 

かなり抑え目のエネルギー波をピラフ一味の足元に当て、連中を空の彼方に吹っ飛す

 

殺す事も考えたが、アイツらが死ぬとピッコロ大魔王が復活できず、息子のピッコロが原作に現れなくなってしまう

 

俺は原作好きなので、 ピッコロと悟飯の関係を崩したくない

 

それに、これからの処理が面倒だからピラフに構ってはやれん

 

「ちょっとアンタ!私の願い事をどうしてくれんの!?

それよりも願いが、口臭を治せって何をかんがえてんの!?」

 

「そうだ!俺の願いを邪魔しやがって!」

 

ヤムチャとブルマが詰め寄ってくれる

 

子分のプーアルもヤムチャに参戦したいが、バイオレットの腕に抱かれているのでそれは出来ないでいる

 

…横でスケベな豚が、ニヤニヤとバイオレットのバティを視姦してやがるのが腹立つ

 

やれやれと俺は、詰め寄る2人を原作同様に意識させるべく、まんまと誘導するのであった

 

原作の流れもあってかブルマは素敵な恋人を、ヤムチャは彼女を手に入れた

 

2人は喜びのあまり、手を取って踊っているのが実に微笑ましい

 

…今は喜んでおけよ、ヤムチャ

 

「しかし、暗くなって来ましたね~」

 

プーアルが呑気にそう言うと、みんなが釣られて空を見る

 

もう夕日は地平線に隠れ、東の空には綺麗な満月が…あ

 

『…ドクン』

 

やばい!

 

「悟空!」

 

『ドクン』『ドクン』

 

俺が悟空の名を呼ぶと、全員が尻尾の生えた少年を見る

 

真円を描く満月をひたすら見入り、身動きしない悟空が『大猿化』した

 

『グルルルルルァァァァァァァァァァァ!』

 

 

「うひゃあああ!」

 

「何よこれぇ!?」

 

紫の服を破り、大猿となった悟空は胸を激しく叩いてドラミングし、天に向かって雄叫びを上げた

 

満月によって呼び起こされたサイヤ人の破壊の衝動に刈られたまま、大猿の悟空は手近な建造物であるピラフ城を潰しに掛かる

 

殴り、蹴り、突き破り、踏みつけ、噛み砕く

 

巨石のような大きさの破片が、俺達の周囲にも散らばってくる

 

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

「悟空!なにやってんだよ!俺達を殺す気か!?」

 

「グルド!ど、どうしたらいい!?」

 

「……バイオレット、ちょっとばかり、アイツと闘ってみな」

 

俺はピラフ城で暴れる大猿を指差しながら、そう伝えると

 

「え!?私が…アレと闘うの!?」

 

「大きさに囚われるな、落ち着いてアイツの気を探ってみろ

確かに体はデカいが、気は今のお前と同じ位とみたぜ」

 

「…う、うん…」

 

言われ、バイオレットはプーアルをギュッと抱いたまま目を瞑り、意識を大猿に向けた

 

「……気を高めれば、やれそうだね」

 

「ん、じゃあプーアルを離してやりな」

 

バイオレットは、ぬいぐるみのように抱いていたプーアルを離す

 

「待ってください!

ほ、本当にあの怪物と闘うんですか!?」

 

「バイオレットなら大丈夫だ

お前はヤムチャとブルマ、ついでにウーロンを連れて離れていてくれ」

 

「は、はい!」

 

素早くその場を離れるプーアル

 

バイオレットは再び目を瞑り、両方の拳を握ると

 

「はぁぁぁ…!」

 

彼女の体内エネルギーが全身に満ちだして、力を増幅させる

 

まだコントロールに慣れてないが、気を高めたバイオレットの戦闘力が130なら、大猿となった悟空は原作通りなら100といった所

 

さて…数字は彼女の方が上だが、果たして

 

『ダンッ!』

 

少しの衝撃と共に飛翔したバイオレットは、凄いスピードで城で暴れる大猿の顔面を目掛け

 

「でりゃあああ!」

 

『ゴルガァ!?』

 

渾身の蹴りを見舞った

 

「嘘ぉ!?バイオレットさんがあの怪物を」

 

「け、蹴っちまったぞ

…俺、あの女にセクハラするの止めとこ……」

 

うむ、それが良いぞウーロン

 

それにしても、相変わらず美しい蹴りだ

 

バイオレットの強襲に仰け反る大猿、しかし次の瞬間、彼女に痛恨の平手打ちが炸裂

 

人間が不意に自分の目の前に虫が現れたら手で払う動きをするように、本能で動く大猿も飛んで来た虫を払ったのだ

 

戦闘力では勝るバイオレットだが、その体重と単純な力では流石に体格が大きい分、大猿が有利

 

払われた彼女は空中で急ブレーキ、揺れる意識を精神力で集中させると、再び気を高めて大猿に肉薄する

 

巨木のような腕を何度も避けて、大猿の顔面を打つバイオレット

 

敢えて顔面を狙うのは、大猿のボディは硬い獣毛が生い茂っているので、その獣毛の下にある急所を突くのが難しいと彼女は分かっているのだろう

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

打撃だけと思いきや、今度は少し離れると連続エネルギー弾を撃ち込む

 

『グギャアアア!』

 

不意をつく顔面への気弾の雨霰に、大猿は叫び声を上げる

 

このまま押し切れると、俺以外の誰もがそう思っただろう

 

しかしバイオレットは戦闘力とスピードは確かに勝るが、いかんせんガタイが違い過ぎる為に、次第に苦戦を強いられる

 

すると無我夢中に動いていたバイオレットが、偶然にも大猿の尻尾にしがみ付いた瞬間、暴れていた大猿の動きが鈍った

 

「見ろ!あの怪物は尻尾が弱点なんだ!」

 

ヤムチャが叫ぶと自分もバイオレットに加勢しようとするが、初めての実戦に体力はガス欠気味の彼女の力が僅かに緩んだ瞬間、またも大猿が暴れ、その飛んで来た破片がヤムチャに直撃した

 

うん、やっぱりヤムチャはヤムチャだな

 

尚も諦めず、ちょこまかと動くバイオレットが正面に来た瞬間、大猿は近距離から特大の雄叫びを上げる

 

離れていても耳をつんざく程の轟音、それを間近で聞かされたバイオレットは失神してしまう

 

舞空術が解け、地面に落ちていくバイオレット

 

地面に激突した彼女を見た大猿は助走をつけて豪快にジャンプ、両足でフットスタンプを狙う

 

「あ、ああああ!グルド、アンタなんとかしなさいよ!バイオレットさんが、バイオレットさんが死んじゃうじゃない!」

 

あわてふためくブルマが俺の首を掴んで、ガクンガクン揺らして助けを請う

 

「ほい来た」

 

入れ替えテレポート。

 

『ズズン!!』

 

バイオレットと立ち位置を交代した俺に、いきなり大猿の全体重がのし掛かった

 

『…グガッ!?』

 

「おおっ、流石にちょっと効いた、ぜっ!」

 

ドン!と下から深々と獣毛のボディに体当たり、膝から崩れる大猿を両手で持ち上げ、そのままピラフ城の上空に浮上

 

「もう充分、暴れたろ

なら、おねんねの時間だ」

 

今度は大猿の足の親指を掴み、ジャイアントスイング

 

『ミスミスミスミス』

 

それそれ~、回る回る~

 

回されながらも最初は暴れていた大猿だったが、数分後には完全に意識を失い、それを確認した俺は大猿と共に地上に降り立つのであった

 

 

 

ハサミに化けたプーアルによって尻尾を切られた大猿は元の悟空の姿に戻り、今はウーロンのズボンを履いている

 

意識が無かった間に周辺がメチャクチャになっていて、生まれついての尻尾も無くなっていた事に流石の悟空も驚きを隠せなかったが、『ま、いっか』で納得して全員をズッコケさせた

 

何も覚えていなのかと、悟空にブルマ達が聞いてみれば、育ての親に『満月の夜には怪物が現れるから、見てはいかん』と聞かされた悟空は言い付けを守り、満月を見なかったと言う

 

しかしある夜にトイレで起きた時、偶然にも満月が窓から見え、気が付いたら育ての親である孫悟飯が巨大な怪物に踏み殺されていたと

 

尻尾は切れたが、悟空には絶対に満月を見せるな。それが俺達の暗黙のルールとなった

 

そして悟空達は2つに別れる事となった

 

悟空は故郷のパオズ山に帰り、亀仙人に弟子入りさせてもらって強くなると言い

 

ブルマは新しいボーイフレンドのヤムチャ、お供のプーアル、ついでにウーロンと共に西の都に帰ると言う

 

俺達?

 

西の都にブルマ達を送り、大猿に敗けてしまったバイオレットの傷が癒えてから、聖地カリンを目指す事にした

 

ブルマの護衛としてバイオレットを説得して、わざわざピラフに捕まったんだ

 

途中で投げ出したら、バイオレットが変な気を起こすだろ?

 

それに、初めての実戦を敗北してしまった彼女のメンタル回復もしなくては

 

「…ごめんねグルド、私…勝てなかった…」

 

頬のガーゼやら、腕に巻かれた包帯やらが痛々しいが、彼女が最もこたえているのは心のようだ

 

「な~に、聖地カリンに行けばもっともっと強くなれる

敗北を気にするなとは言わんが、前向きに考える事の方が生産的だぞ?」

 

「でも…私のせいで聖地に行くのが遅くなるんじゃ…」

 

「それなら大丈夫、前から博士に頼んでおいたアレが出来上がってる頃だし、そんな傷は直ぐに癒えるマシーンもある

聖地カリンに行くのは、それほど遅くはならないさ、っと」

 

俺はバイオレットを、ブルマがホイポイカプセルで出した小型の飛行機のシートに座らせ、自分も席につく

 

既に着座していた面々が、それぞれ騒いでいた

 

「ヤムチャ様!飛行機に乗れるなんて凄いですね!」

 

「そうだなプーアル、…この俺が西の都に…き、緊張してきたぜ」

 

「グヘヘ…どんだけピチピチギャルがいるのか楽しみだ

ブルマの母ちゃんは美人だったら良いなぁ~」

 

「皆、シートベルトした?

…じゃあ行くわよ!」

 

ジェットエンジンが唸りを上げると、機体が浮上、俺達は西の都に向かう

 

 

 

「ねぇグルド」

 

「ん?どうした?」

 

「マスク、外したんだ」

 

「あ、ああ、神龍に願いを叶えてもらったから、もう口臭を防ぐ必要もなくなった……変か?」

 

「ううん、そっちの方が私は好きだな

ちゃんと顔が見れるし」

 

「おっ、マジか、サンキュー」

 

「ふふふっ」

 

お互いに自然と笑みが溢れる

 

やっぱり堂々と誰かと話せるって、いいよね!

 

バイオレットも、なんか機嫌が良くなったみたいだし

 

さて、次は聖地カリンのカリン様に弟子入りだ

 

待ってろよ…超神水!

 

 




大猿悟空VSバイオレットが、本作で初めての『真面目』なバトルとなりました

せっかく亀仙人の所で鍛えて、戦闘力が100の大猿が出てくるんなら、バイオレットを闘わせてみようと考えてこんな話を作ってみました

戦闘力だけなら勝ってたけど、それだけじゃ勝てないのよバイオレットちゃん

それと、ジャイアントスイングの効果音は『ミスミスミス』ですよね♪

前回の感想に、神龍の願いで邪悪龍が、と仰る方が大勢いらっしゃったので調べてみたところ、GTの敵に邪悪龍が出てくるんですね

ゲームで超一神龍という奴がいたのは知ってましたが、他の面々や設定はサッパリでした

どうも今回の願いが原因で、邪悪龍の紅一点が生まれる事になるようですね

わりと残念系の美女らしいので、どうしよっかなぁ

GT、マジで知らないんですよね…

ありがとうございました!



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12話、昇れや昇れカリン塔

誤字脱字ありましたらスイマセン

ハートマークがあります、苦手な方はご注意を


 

「で、お前さん誰じゃ?」

 

「グルドっすよ!」

 

「ほ~…宇宙船は、ほれ

あの通り出来上がっとるよ」

 

ブルマの家に到着して直ぐに怪我人のバイオレットがまず注目を集め、次に新入りのヤムチャとプーアルとウーロンが、ブルママから質問攻め、最後に俺は汗と努力の結晶を博士に軽~く流される

 

別の宇宙人と思われる位にスリムになったから、この反応も仕方ないとしよう

 

それよりもピラフ城から西の都に戻ってきたら、悟空がナメック星に向かう時の宇宙船が庭先にドン!と存在していたので、飛行機の中から見つけたらテンション上がったもんだ

 

しかし、思ったよりもデカい

 

博士の家よりデカいんじゃないか?これ

 

原作で悟空の為に作った宇宙船は、こんなにデカくなかったぞ?

 

「博士、コイツ…設計図よりも大きく作ってないか?」

 

「そりゃ1年も猶予があったからの、まして2人で生活できるように部屋も増やせば、必然的に宇宙船そのものも大きくなるわい」

 

「2人…?」

 

「なんじゃ、こいつでバイオレットと、宇宙のハネムーンしに行くんじゃろ?」

 

「んなっ!?」

 

「その反応…、こりゃあの娘も苦労するのぅ」

 

ほっといてくれ!

 

それにしても、俺とバイオレットの2人用だから、こんなにデカくなったわけね

 

…バイオレットと宇宙に帰るか

 

彼女がフリーザ軍の全貌を聞いて、それでも俺に付いてくるならそうしたいな

 

ん?家の方が騒がしいぞ

 

ブルマは宇宙船が気になる様子だったが、先にヤムチャやプーアルとウーロンを学校に行かせる手続きやら、部屋に置く家具や服やらと、あれやこれやと慌ただしい

 

まぁ落ち着いたら、いずれ博士に聞くだろう

 

それよりもバイオレットだ

 

聖地カリンに向かうべく彼女の回復を優先する俺は、博士に出来上がった宇宙船の説明を受けるとした

 

「じゃあ博士、まずはバイオレットを治療する『メディカルカプセル』は何処の部屋に?」

 

「ん、こっちじゃ

2人とも、付いてきなさい」

 

球体の宇宙船の中へ入る

 

入って直ぐの1階は広々とした空間になっており、真ん中には重力発生装置らしき操作盤があった

 

「うわぁ、広いですね

ここが重力発生装置の部屋ですか?」

 

怪我を忘れて、バイオレットが興味深く博士に尋ねる

 

「そうじゃ…簡単に説明すると、重力は1から200倍までタッチパネルで増減可能、使用者の容態に応じて即座に重力が1に戻る非常用センサーが内蔵してあるから、もしもの時にも安心じゃ

それとこの部屋を使用しておる最中は他の者は入室できないシステムになっており、用があれば扉の外からインターホンで呼ぶがよい

激しく動く事を想定して完全防音、温度完備、隣には簡単なトイレ、衝撃への強度も充分にしてある

さて、言われた通りにしたつもりじゃが?

ましてこれだけ広ければ、存分に2人でハッスルできるじゃろ?」

 

「流石だな博士、ありがとう

でもここでするのは修行ね、修行」

 

「ほっほっほ…」

 

「で、メディカルカプセルは?」

 

「こっちじゃ」

 

重力の部屋の扉を抜け、上に通じる梯子を登り、2階に移動

 

そこは宇宙船の操縦や、多種多様なシステムを完備する部屋になっていた

 

難しい事は分からんが、宇宙船を制御するのは2階でやるって事だな

 

2階の部屋の1つの中に、目指すメディカルカプセルがあった

 

原作ではナメック星で、傷付いた悟空とベジータが治療していた奴が2つ、ドン!と存在している

 

俺が地球に来るときのポッドに内蔵されていた『生命維持装置』、その治療液と俺の原作知識、そこにブリーフ博士の天才的頭脳を合わせたメディカルカプセルは製作者の博士曰く、3日で人間の手足や内臓の欠損くらいは再生するらしい

 

ナメック星人ならいざ知らず、こんなもんを作っちゃう博士って一体…

 

ちなみに3階は居住区で、俺とバイオレットの個室にはトイレが備え付けられていて、他には簡単な食堂とキッチン、窓付きの風呂と洗面所、食料庫に倉庫もあった

 

「凄い……どれも最新の電気器具ばかり

掃除機に洗濯機、炊飯器に冷蔵庫、ドライヤーに色んな調理器具もある」

 

「全室エアコン完備に高級ソファー、デカいベッドにテレビにAV機器

……ははっ、至れり尽くせりだな」

 

「グルドの宇宙船をバラしていたら、次々と新しいアイディアが生まれての~」

 

「つまり、カプセルコーポレーションはボロ儲けって訳か?」

 

「ほっほっほ…、まぁそれなりに稼げたので、その礼じゃよ」

 

「ありがとうございます博士

じゃあ、私はメディカルカプセルに入ってくるから」

 

そう言ってバイオレットは傷の治療をしに、2階に降りて行った

 

さてと…俺は彼女の治療が終わるまで、重力発生装置の部屋で修行をするとしますか!

 

 

 

『ピッ、ピッ、ピッ』

 

改めて装置の説明をしてくれた博士を家に戻し、俺は操作盤の前に立って、重力を幾つ増加するか悩んでいた

 

とりあえず最初は、20倍の重力にするか…

 

10倍の重力は、フリーザ様の所で経験済みだし

 

『ピーーッ!

重力、増加シマス』

 

『ズズンっ!』

 

うおおぉぉぉぉ!

 

機械の声の後、全身に目に見えない圧が掛かる

 

「くっ…、いいねぇ!

これだよ、これ!

重力を増しての修行、これぞドラゴンボールの世界!」

 

苦しいのに、重いのに、何故か笑いが止まらない

 

やっと本命の修行を体験できたんだと、心が喜んでいる

 

まずはと、ランニングをしてみる

 

『ズンッ!ズンッ!』

 

ダイエットを始めた頃の、太っていた時のように動きが鈍い

 

今の状態は走るというよりも、大股で歩いてる感じだ

 

膝と腰への負荷が凄いな

 

でも、負けねぇぞ!

 

充分に動いて体が暖まったら、次は簡単なフットワークと打ち込みの練習を始める

 

ゆっくりと動きながら、突きや蹴り、左右に動いたり、飛んだり跳ねたりを繰り返す

 

体を20倍の重力に馴染ませていくんだ

 

いきなり全力で動いて、体を壊したくないからな

 

…しかし思いとは裏腹に俺の心は、

 

「滾ってきやがる…!」

 

この修行を重ねていけば、間違いなく強くなれる

 

そう考えると、楽しくて仕方がない

 

もっともっと強く、激しく動こうと心がせっつく

 

…少しなら良いか?

 

ほんの少しだけ、気を限界まで高めた状態で全力で動いても…

 

「ぬぅぅぅぅ!」

 

『ピンポーーン』

 

『グルドー、治療が終わったよー、扉を開けてー』

 

「……」

 

『あれ?聖地カリンに向かうんでしょー?早くー』

 

「わかった、解除するから少し待っててくれ」

 

本気で動こうとした所で、バイオレットの治療が完了

 

俺は操作盤の所まで大股で歩き、重力を1に戻す

 

『ピッ、ピッーー!

…重力トレーニング、終了シマス、オツカレサマデシタ』

 

『プシュー』

 

「お待たせ」

 

重力が1に戻った事で扉が開き、そこから傷1つない美女が広間に入ってきた

 

「すっかり元通りだな、バイオレット」

 

「ほんと凄いよね

骨にヒビも入ってたらしいのに、たった一時間で治っちゃった」

 

「ヒビ?」

 

「うん、その…裸になってカプセルに入るんだけどね、そこから機械が色々と調べてくれたんだけど、そこで骨に数ヶ所ヒビが入ってたって分かったの

でも、それが一時間で完治しちゃった」

 

「とんでもないハイテクだな…」

 

「ね…、じゃあ、もう行く?

それとも明日にしようか?

ブルマちゃんのお母さんが、今夜はご馳走にするって言ってたし」

 

「そうするか、幾らなんでも宇宙船を貰ったら、ハイさよならは無い」

 

その日、俺は博士の家で夕食会に出席

 

博士、ブルママ、ブルマ、ヤムチャ、ウーロン、プーアル、そしてバイオレットと、楽しく賑やかに食事を楽しむのであった

 

そして次の日の朝

 

挨拶を済ませた俺は宇宙船をカプセルにし、専用のケースにしまうと、それを懐に入れる

 

昨日に知ったが、カプセルコーポレーションで作った純正の製品なら、何度もカプセルにしたり出したりが出来るようだ

 

デカい宇宙船が一瞬でカプセルになるのを見ると、宇宙の法則が崩れるのを目の当たりにしている気分になるが、気にしてはいけない

 

野暮は言いっこなし、下手につっこまない事で平和を保つのも人生では大事なのだ

 

因みに非正規品にも適応できるカプセルは少々値が張り、使い捨てタイプのホイポイカプセルも存在してはいる

 

原作だと、天下一武道会の賞金で水を買いに来たナムさんが、亀仙人から貰ったらカプセルに水を入れて持ち帰るのに利用してたな、アレだ

 

旅と修行を続ける俺達の住居は暫く、この宇宙船がメインになりそうだな

 

「さぁ、聖地カリンに向かうぞ」

 

「うん、行こう」

 

俺達は博士の家から飛び立ち、聖地カリンにある『カリン塔』を目指すのであった

 

 

 

生い茂る原生林の上空を飛び回った俺達は、漸く天高く聳える塔を発見し、着陸

 

「ここに何しに来た?」

 

さっそくネイティブアメリカンな衣装の、筋骨隆々の大男『ボラ』が槍を構えている

 

ボラの後ろに隠れている、息子の『ウパ』も健気に手斧を持っている

 

「私達は決して怪しい者ではありません

ここへはこの『カリン塔』に登り、仙人様に修行をつけて貰いたいだけです

他意はありません」

 

バイオレットが率先して説明をしてくれると、ボラは視線をカリン塔に向けて、また此方を見ると

 

「私はこの聖地カリンを代々に渡って守る者

君たちがこの塔に登り、仙人様に会うというなら止めはしない、行くが良い」

 

「ありがとうございます」

 

「…仙人様が本当に居るのならな」

 

「え……?」

 

守る者とは思わぬ言葉に、バイオレットは不思議がる

 

「生きて塔を降りた者がいないので、仙人様がいるのか私にも分からんのだ

みんな途中で力尽き、下に落ち、死んだ

仙人様とは、もしかしたら迷信かもしれんな…」

 

「……」

 

「何人もの腕に覚えのある者達がこの塔を登ったが、その中に唯一、この塔を登りきった1人の男がいるらしい」

 

「1人…ですか?それで、その人は仙人様に会えたのですか?」

 

「その男が、どうなったのかまでは分からん

登ったが、降りて来なかったらしい

言い伝えでは、仙人になったとか…」

 

「……」

 

「行こうぜ、バイオレット

俺達で確認すりゃいいじゃないか

塔を登りきり、そこに仙人がいるなら修行をつけてもらう、いなかったら飛んで降りればいい

コイツを登るのも、結構な修行になりそうだしよ」

 

これまで黙っていた俺は、そう言って塔の真下に歩み寄り、石で出来た円柱を掴む

 

「グルド、私も行くから、ちょっとだけ待って

えっと…守り人さん、親切に教えてくださってありがとうございました

行ってきますね!」

 

「…無事を祈る」

 

バイオレットはボラに礼を言うと、俺と共にカリン塔を登り始めるのであった

 

「よいしょ、よいしょ」

 

「ふん、ふん、ふんぬ」

 

亀仙人に鍛えられてきた俺達は、どんどん上に登っていく

 

舞空術に慣れた事で高い所で目が眩むことも無く、順調に塔を登っていくが

 

「あ…夕方になっちゃった」

 

「ん?もう今日は休もうか

バイオレット、縄を塔に括り付けて、今夜はここでキャンプするぞ」

 

夜に登るのは危険と判断し、俺とバイオレットは幾つもの縄を塔に括り付けて足場を作ると、寝袋をその上に敷いて寝に入る

 

昔、サラリーマンだった時に断崖絶壁でキャンプするドキュメンタリー番組を見たことがあり、それを真似したのだ

 

まぁ勿論サイコ・ウェブで縄を強化して、絶対に切れたりしないように補強はしてるから、安全性は段違いだがな

 

次の日の朝、俺達は起床したら寝袋の中で朝食をとり、また塔を登り始める

 

夕方になったら寝て、朝になったら起きて、また夕方になるまで登って、それを4回繰り返すと

 

「あ、あれ?あそこに見えるのは?」

 

バイオレットが何かに気付いたようで、俺もそこを見ると、遥か上空にあの特徴的な建物が微かに見えていた

 

「あれだな、仙人様が住む所は」

 

そこからは早かった

 

やる気満々になったバイオレットが、凄い勢いで登りだし、俺もそれに続く

 

ここまで彼女のペースに合わせていたが、この速度、よほど嬉しいらしい

 

「はぁはぁはぁ…つ、着いた」

 

「お疲れバイオレット、よく頑張ったな」

 

「グルドは、まだ全然、余裕、だね」

 

「とりあえず呼吸を整えてから、仙人様に挨拶しようか

この高さだ、空気は薄いみたいだし」

 

何㍍登ったか分からないが、カリン様の家?は高所にあるので空気が薄い

 

バイオレットも呼吸を整えるのに四苦八苦しているが、まぁこれも修行の内の1つだ、頑張れ

 

「よく登ってこれたのぉ」

 

「「え?」」

 

いきなり声を掛けられて俺達は振り向く

 

あ、カリン様だ

 

杖をもった二足歩行をする白猫、仙猫カリン様がいた

 

おっと、まずは挨拶から、そして超神水をどうにかして飲ませてもらわねば

 

あと、少しだけ誤魔化すとするかね

 

「あ、はじめまして、俺はグルド、こっちはバイオレットです

たった今、このカリン塔を登りまして、仙人であるカリン様に修行をつけてもらいに来ました

それで…仙人様はどちらに?」

 

「お主、知っておろうに」

 

「え?」

 

「ワシが仙猫カリン様じゃと知っておるのに、何処と尋ねるとは、ちと滑稽じゃの

にゃほほほほほ♪」

 

げっ…そうだった

 

カリン様は心が読めたのだったな、ぬぅ…これは失敗した

 

でも気を取り直して…

 

「失礼しましたカリン様

では改めまして、俺達に修行をして下さいませ」

 

「修行をして、どうするつもりじゃ?

お主の心には誰々を見返してやる、誰々と仲良くなりたい等と言った浅ましさがある

そこのバイオレットのように純粋に修行に励み、精神から鍛えようとする気持ちが薄い

慣れたら次、慣れたら次と、落ち着きもなく、反省も反復もしない

欲と邪念にまみれた心でこの先、何を掴むつもりじゃ?

そして、お主の背後には巨大な悪の影も見える

巨悪の下で働く者を、ワシは鍛えるつもりはない」

 

「うっ」

 

怒涛のように発せられた一言一言が心に突き刺さり、何も言い返せない

 

「図星じゃろ?」

 

「はい……」

 

「超神水はくれてやる訳にはいかん、さっさと帰るがよい」

 

「……」

 

打ちのめされた

 

完膚なき迄に

 

こんな思いはグルドになる前、サラリーマンだった時に会社で大失敗して上司に叱られたとき以来だ

 

「そこのバイオレットとやらはワシが責任をもって鍛えよう、安心せい

お主はお主のやり方で強くなるが良い、少なくともここには今以上に、お主を鍛えるようなモノは無いわい」

 

えっ?それはどういう意味

 

「か、可愛い…」

 

「「え?」」

 

カリン様と至極まじめな話をしていたら、隣から別の意味で息を荒立てたバイオレットが、カリン様ににじり寄ると

 

「いや~ん♥️喋る白猫~♥️」

 

と言って抱き付いた

 

「にゃ、何をしよる!これ!」

 

「体毛フカフカ~♥️

肉球も大きくてプニプニ~♥️」

 

「にゃははは!く、くすぐったい!」

 

「こちょこちょこちょ♥️」

 

「にゃ!?ゴロゴロ…」

 

「あ~ん♥️ゴロゴロしてる~♥️」

 

バイオレットよ…君は本当に凄いな

 




カリン様『グルドは帰れ!』

グルド『OMG』

まぁ心が読めるカリン様なら、フリーザ軍のグルドを鍛える訳がないですね

バイオレットは何とかなりそう?ですが、さて

超神水は飲んだ本人の潜在能力を更に引き出す劇薬なので、既に強力な超能力を覚えているグルドには不要。という補足をここに書いておきます

原作では悟空が超神水を飲んで死ぬ一歩手前まで行き、サイヤ人特有の能力でパワーアップしてますが

グルドが超神水を飲んでも何も手に入らない、もしくは死ぬだけなので、そこはカリン様が止めたと言う事にしときます

ホイポイカプセルの設定は作者のオリジナルです

カプセルからの出し方は分かりますが、逆に、カプセルへの入れ方ってどうやるんですかね?

バイオレットはこれから超仙水を飲む修行に入りますが、グルドはどうするか未定です

ラディッツもそろそろ飛来するので、バイオレットが超仙水を飲むまではグルドとタッグを組ませますか

ありがとうございました!


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13話、強襲!サイヤ人

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

カリン様から去り際に『仙豆』を貰い、バイオレットを頼みますと言った俺はカリン塔を降りた

 

帰りは1人なので、落下しながらとなる

 

登りに5日かけた塔のてっぺんからの紐なしバンジーは、僅か数分で地面に到達した

 

生きていたのかと、ボラとウパが俺を見ると寄ってくる

 

彼等に、塔の頂きに仙人は確かに居たが生憎、修行を受けられるのは連れの彼女だけで、俺は失格だと言う

 

ボラは短く、そうかとだけ言うとカリン塔を見上げる

 

仙人は居た、代々に渡り自分達がこの地を守ってきた意味があった。それを知れただけでもボラは満足だろう

 

そこから俺は聖地カリンを離れ、絶海の孤島を見付けるとカプセルから宇宙船を出し、そこに居を構える

 

俺用に作られた部屋、そのベッドに横になり天井を見上げながら、 カリン様の言葉を反芻する

 

どれもが的を射た言葉で、反論の余地なし

 

浅ましい、反省も反復もない、欲と邪念にまみれた心で何を掴む、巨悪の下で働く者

 

散々に凹まされたが、何処かヒントになりそうな事も言っていたな

 

俺は俺のやり方で強くなれ、少なくともここには俺を鍛えるようなモノは無い、と

 

超仙水の秘密は知っているから、俺にその修行は意味がない

 

ならばと超神水を欲したのだが、どうもカリン様はそれすら必要ないと言いたいのか?

 

分からん…

 

その後にバイオレットが暴走したが、落ち着いた頃にまたカリン様に、度肝を抜く事を言われた

 

『お主のその体には、別の者の魂が宿っとるようじゃな』

 

どっきんですよ

 

バイオレットがカリン様を抱き上げながら、なんの事?と不思議がっていた

 

『誰かの物語をなぞるのも良いが、いっそ別の世界にも目を向けて、それを参考にするのも面白いと思うがの~

視野の狭い男じゃ』

 

にゃほほと笑っていたカリン様

 

誰かの物語をなぞる。追いかけるだけが全てじゃないって事か?

 

…確かにドラゴンボールが連載していた、あの時代には他にも…

 

成る程、そういう事だったか

 

俺には俺の強みがある、それはサイヤ人にもフリーザの一族にも無い、アニメや漫画の知識だ

 

悟空のした事をまるっきり真似するんじゃなく、あくまで参考にする程度で良かったのか

 

そうとなれば、さっそく色々とやってみよう

 

重力部屋に籠り、動くだけでも修行にはなるからな!

 

「……よっしゃ」

 

俺は初心に帰るべく、久しぶりにあのクソ熱いサウナスーツと矯正インナー、マスクを着けると1階に降りて修行を開始するのであった

 

 

 

「うぐぅ……」

 

20倍の重力の中で、俺は子供時代のヒーロー達の中から使えそうな技を次々と真似してみる

 

とは言っても、大体はグルドには扱えないモノばかり

 

某アフリカで密猟者と戦うパン一のムキムキな人は、アニマルパワーを力の根源にしてるから参考にならず

 

屁の突っ張りは何とかってマスクマンの殺人技は、俺の体格的に合わない

リクームならイケそうな気がするが…

 

他にはどうだ?

 

バスケット漫画、駄目だ

 

世紀末で秘孔を突く漫画、駄目だ

 

花を咲かせる天使、駄目だ

 

たこ焼き好きな魔法使い、駄目だ

 

……競馬、駄目なのねー

 

伊達にあの世は見てない、反り混みの入った探偵の技は真似は出来たが、これだと単発の『どどん波』みたい

 

それなら同じ作品で、サウザーブレードみたいなエネルギー・ソードを持つ、悪運の強いアイツならどうだ?

 

こう…気を、剣状にしてだな

 

『ブォン』

 

出来たよ

 

うっひょーー!

 

まるでどっかの、星の戦争でチャンバラする剣みたいな効果音がするぅぅぅ!

 

『アバ○ストラッシュ!(真似)』

 

『ブラッデ○ースクライド!(真似)』

 

『ゆ゛る゛さ゛ん゛』

 

嬉しさのあまりそのエネルギー・ソードをブンブンと振り回して最後に、もう全部アイツ1人でいいんじゃないか?ってヒーローの決めポーズ

『一欠』をした

 

「はぁはぁはぁ…」

 

決まった……

 

なに?アラフォーのオッサンがポーズを決めるのは恥かしくないのかって?

 

忘れたのか?俺はギニュー特戦隊のグルドだぞ?

 

フリーザ様も固まる、あのスペシャルファイティングポーズをやる特戦隊の隊員だぞ?

 

ポーズが恥ずかしくって特戦隊が務まるかっての

 

まぁ本格的にスペシャルファイティングポーズはやった事ないけど、地球での修行が終わったら、やることになるんだろうなぁ……

 

ま、いっか

 

その時はその時、だいたい俺は今の戦闘力が幾つかを知らないし、あとどれだけの期間この地球にいられるのか

 

『ピーーッ!

メッセージヲ、受信シマシタ』

 

メッセージ?

 

なんのこっちゃと思いつつも気になる俺は、ひとまず重力を戻して修行を中断、メッセージを確認する為に2階の制御室へ上がる

 

メインの液晶画面には確かに、一件のメッセージが受信されていた

 

送り主がどうやって、メッセージを?と思ったが

 

どうやら元々の俺の宇宙ポッドに内蔵されていたメッセージの受信システムが、博士の手で丸ごとこの宇宙船に付けられていたらしい

 

まぁ、そんな事はさておき

 

どれとメッセージを見てみれば、送り主は『ザーボン』とあった

 

は?ザーボン?

 

恐る恐るとメッセージを開封してみると、その内容とは

 

「…ラディッツを今後の連絡要員として地球に派遣した…、好きにこき使え

それと奴には補充用のサプリメントと最新のトレーニング雑誌にファッション雑誌を持たせたので有効に使うこと

因みにラディッツは計算だと、あと数時間で地球に到着する!?」

 

聞いてないぞ!

 

なんでラディッツ!?

 

あいつベジータやナッパと一緒に、あちこちで地上げをしてるんじゃないのか!?

 

いやそれよりも、あと数時間で来るって……どこにだよ!?

 

「くそっ、気は?気は感じられるのか!?」

 

俺は急いで宇宙船の外に出ると、空を見上げ、地球に迫る大きな気はないか探る

 

「………………」

 

意識を地球の外へ向け続け、そして

 

「み、見つけた!

だが、くそっ!落ちる場所が最悪じゃねぇか!」

 

せっかく見つけたラディッツのポッドは、明らかに俺がいる孤島には着陸しない軌道をしていた

 

急いで俺は宇宙船をカプセルに戻して懐にしまうと、『西の都』へと全力で飛翔する

 

速っ!俺の全力、速っ!

 

スーツやインナーを着ての亀仙人の修行、気のコントロールを身に付けた俺の全力の飛行速度は、凄まじい程に強化されていた

 

いつもバイオレットに合わせていたので知らなかったが、こんなに速く飛べる事に自分自身で驚いていると、すぐにラディッツが着陸するであろうポイント、西の都の端に到達

 

そこから再び、ラディッツのポッドの軌道を探り、最終的な着陸地点を割り出した俺はブリーフ博士の家の庭に着陸した

 

「あら?おかえりグルドちゃん」

 

「ママさん…、先日はご馳走さまになりましたッス」

 

庭では博士の奥さん、ブルママさん(勝手に命名)が洗濯物を干していたので、俺は挨拶をした

 

「あらグルドちゃん、バイオレットちゃんは?もしかして破局しちゃった~?」

 

「…違いますよ、バイオレットは俺とは別の修行を…って、違う!」

 

俺はのんびり屋のママさんとの会話を切って、空の彼方を見ると

 

ポツン光る赤い星が、青空にあった

 

「なにかしら~、あの赤い星

……なんだか、次第に大きくなっているわね~不思議だわ~」

 

「ママさん、今からアレがこの家に落ちてくるんス

俺が何とか受け止めてみますけど、念のため博士と一緒に家から避難して下さい」

 

「ぬ?呼んだか?」

 

ブリーフ博士がひょいと現れる

 

ママさんは夫である博士に、今から流れ星が家に遊びに来るんですって、と呑気な事を言うと博士も、では願い事でもしようかと言う

 

「う~んと、ブルマちゃんとヤムチャさんが無事に結婚して、可愛い子供が沢山産まれますように……あと出来ればブルマの弟か妹も欲しいかな~……キャッ♥️」

 

「ほっほっほ、しょうがない妻だの~

それに孫か~、ワシは男の子と女の子の2人が良いの~」

 

き、緊張感が無い夫婦だな!

 

「もう!本当にヤバいんスって!

早く避難を……うわっ!もう来やがった!」

 

赤く燃えるフリーザ軍の宇宙ポッドが、肉眼で見える程に迫っている

 

あれが落ちたら衝撃で博士達の命と家は、いとも簡単に吹き飛ぶだろう

 

散々に世話になった人に、そんな末路をさせてたまるかよ!

 

「ぬんっ!」

 

俺は両手をポッドに向け、サイコキネシスで捕獲すると速度を徐々に落としていく

 

「あら~?流れ星が…」

 

「なにやら、酷く見慣れた宇宙船になってしもうたの~」

 

赤色彗星が白いポッドになり、残念がる夫婦は放っておき、俺はラディッツが乗っているポッドを庭に降ろす

 

『プシュー…』

 

ポッドが開き、中から黒い長髪のサイヤ人『ラディッツ』が出てきた

 

「…ここが地球か…」

 

第一印象は、若く、そして傷だらけ

 

原作のラディッツは既に大人だったが、このラディッツは

 

『ピピピッ……』

「む?スカウターに危険信号…?

い…12000!?

き、貴様何者だ!?

いや…その見た目は、しかし奴にしては…」

 

「あららグルドちゃん、貴方のお友達?」

 

「グルド……だと?

おい、そこの女!コイツは本当にグルドか!?」

 

「そうよ~、ダイエットしたから見た目が変わっちゃったのよね~グルドちゃんは」

 

ナイスですママさん、面倒な紹介を省いてくれて

 

「そう言う訳だラディッツ」

 

「……俺の名前を知ると言う事は、グルドで間違いないのだな?」

 

「ああ」

 

「…そうか…それならば…」

 

そう言うとラディッツは、おっかない顔で俺を睨んでくる

 

ん?

 

なんか怒ってないか?コイツ

 

「おいラディッツ、ザーボンからの届け物をまずは預かろう、話はそれからにしようや」

 

「……ちっ!ほらよ!」

 

ラディッツは己のポッドに入れてあったアタッシュケースを、憎々しげに投げて寄越す

 

やっぱり変だ

 

ラディッツって自分より強い奴にはペコペコし、弱い奴には意気がるイメージしか無いんだが…

 

「…どれどれ…」

 

まあいいやとケースを開ければ、成る程

 

メッセージにあった通り、いつも使っているサプリメントと、お世話になってるトレーニング雑誌、そしてドドン!とザーボンが雑誌のトップを飾るファッション雑誌が入っていた

 

…おいおいザーボンさん、あんたまさか紙面のトップを飾ったのを自慢したいだけなんじゃ…

 

「あらあらあら、どなたかしらこの男前の方~♥️

ねぇ、この方もグルドちゃんのお知り合い?」

 

「え?はぁ……まぁ」

 

「んまぁ!?」

 

ザーボンが載った雑誌に気付いたママさんが俺に、そこんところ詳しくと迫る

 

めったに開かれないママさんの両目が、くわっ!と開眼しちゃってますよ

 

実に凄い食い付きのママさんだが、この反応から察するにブルマの面食いな部分は母譲りかもな…

 

あ~あ、博士は呆れて家に入っちゃったよ

 

これは願い事は叶いそうもないね

 

「おい!荷物は渡した、次は地球滞在期間を伝えるぞ!」

 

「はいはい期間ね、いつまでだ?」

 

「今からあと2年だが、移動する時間を考えると1年しかないからな!」

 

「1年……か」

 

あと1年しか地球に居られないのか……バイオレット、君はどうしたい?

 

フリーザ軍の事を話してもRR軍に街を壊された君だ、きっと俺を見損なうだろう

 

嫌われるのを分かってて、教えに行くのは気が引ける

 

しかし、何も言わずに地球を立ち去るのはなぁ

「用件は済んだ…今度は俺の番だ」

 

青アザが残る顔で、不敵な笑みを浮かべる

 

「ラディッツ、お前なんか変だぞ?

傷だらけだし、そんな好戦的な性格だったか、お前?」

 

「うるさい!覚悟しろ!」

 

『ドォ!』

 

いきなりマジかコイツ!

 

止まれ!

 

息を止め、無音の世界になると俺は、近くに居たママさんを避難させるべく担ぎ上げ、家のソファーに座らせる

 

時間を止めてのサイコキネシスはエネルギーの消耗が激しいので、奥さんのムチムチな体に触れたのは不可抗力だからな!

 

……御詫びを兼ねて目の前のテーブルに、気になっているザーボンの雑誌を置いておくので、それで勘弁してね、奥さん

 

実に良い触り心地だったぞ!

 

……さてと、コイツどうしようか?

 

俺は空中で俺を殴ろうとしたまま停止する、元凶ラディッツを見る

 

時間停止を解除した後に動けなくして、話を聞いてみるか

 

「ぷはぁ」

 

『スカッ!』

「なにぃ!?」

 

「きぇぇぇぇぇ!」

 

振りかざした拳が空を切り、俺はすかさず金縛りでラディッツの動きを止めた

 

「ぎ、ぐがっ!くそぅ!

動け、動きやがれ!」

 

じたばたと抗うラディッツに、俺は近づく

 

「さてと、これで話をしてくれるかなラディッツ?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁ!」

 

「いきなり殴りかかるとか、お前らしくないぞ?

それとも俺が居ない間に、フリーザ軍で何かあったのか?」

 

「何か、あったのか、だとぉ?

貴様だ、全部……貴様のせいだ!」

 

ラディッツは怒気を孕んだ口調で話してくれた

 

 

 

「……」

 

「分かったか……!?

俺がこんな傷を負ったのも、命乞いなぞする事になったのも、ナッパに殺されそうになったのも、全部……全部貴様のせいだ!」

 

……酷いな、そりゃ責任転嫁をする気持ちにもなる

 

ラディッツ自身にも落ち度はあるが、今回は主に地球に修行をしに来た俺が悪い

 

「うおっ!?」

 

俺は金縛りを解くとラディッツに、付いてこいと言って西の都から飛び立つ

 

 

 

ここに来る前の、あの孤島にラディッツを連れて戻ってきた

 

「こんな所に連れて来やがって、つまり俺をここで殺す気か?」

 

「なに?殺す?」

 

「俺は貴様の連絡要員として、惑星フリーザから派遣された

しかし俺は貴様の命を狙い、失敗した

裏切り者は殺される運命なのは知ってる、さっさと殺れ!」

 

「……」

 

「どうした!?なにをしてやがる!」

 

何をそんな、1人で盛り合上がってるのやら

 

「そうじゃない、ここに来たのは街に被害を出したくないからだ」

 

「何、被害だと?」

 

「ラディッツ、俺を気の済むまで殴れ

それで、お前の受けた苦しみをチャラにしてくれるか?」

 

言って俺は、ダランと腕を下げて無抵抗の構えをとる

 

「何を……ふん、そうか、そう言う事なら遠慮はせんぞ!」

 

一瞬だけラディッツは躊躇うが、すぐに拳や蹴りが俺の肉体に刺さる

 

サイヤ人の格闘センスと、長年戦場を渡り歩いて実戦慣れしたラディッツの攻撃は

 

わざと戦闘力を落とした俺に、しっかりと通じている

 

「はははははっ!」

 

「ぐっ!あがっ、んぎ!」

 

「格上を一方的に殴るのは気分が良いぜ!

そら、そら、そら!

どうした!もの足りないか!?

なら……食らえ!

『ダブルサンデー!』」

 

両手から放たれるエネルギー波が俺に直撃し、微かな浮遊感の後、地面で体が削られる

 

朦朧とする視界で仰向けになってると、上空からラディッツが勢いよく飛来し、膝を鳩尾に入れた瞬間

 

俺の意識はそこで途絶えた

 

 

 

「おい、起きろ」

 

「ん、んんんっ」

 

吐き捨てるような言葉で、意識が浮上すると目の前には

 

「…ラディッツ、俺を殺さんのか…?」

 

「けっ、腰抜けの命なぞ欲しくはない

それに久しぶりに全力で暴れたから、少しは気分も晴れたしよ」

 

腕を組み、プイッとそっぽを向いた状態のラディッツはそう言う

 

「そっか、許してくれてサンキューな

じゃあ飯にするか、腹減ったろ?」

 

「ふん……」

 

サイヤ人は戦闘に特化している分、その燃費は全種族の中でも最悪かもしれん

 

つまり

 

『ぐぎゅるるるるる』

 

「……」

 

「……飯が食える所に今から連れてけ

そしたら、今回の一件は水に流してやる」

 

「ふふっ、分かったよ」

 

「…1つ聞かせろ」

 

「何だ?」

 

「この星の有り様は何だ?

俺の知る限り、この星にはサイヤ人の赤ん坊が侵略目的で送り込まれている筈だが?」

 

お前の弟、カカロットの事か

 

「そのサイヤ人の赤ん坊、というか子供には会ったぞ

同じ尻尾をして、満月には大猿になってたから、ソイツで間違いない

ただし、戦闘は好きなようだが性格はサイヤ人に全く似てなく、明るくて優しい子供になって、この星の住人と仲良くやってるよ」

 

「何だと!?

カカロットめ……命令を忘れ、星の住人と仲良くしているなど…… 」

 

「ショックを受けてるようだが、俺としては好都合よ」

 

「……なに?」

 

「俺はこの星が気に入っててな、そのカカロットが星を壊さなくて逆に感謝してる位だ

それに2年後、もしもフリーザ様に認められたら、その褒美として地球を頂くつもりだしな」

 

「……」

 

「結果としてフリーザ軍の所有地になるなら、文句はあるまい?

それに管理するのはフリーザ軍の精鋭、ギニュー特戦隊だ」

 

「……」

 

「カカロットとやらが気になるか?」

 

「黙れ、産まれてすぐ星に送られる最下級戦士なぞ、知ったことではない!」

 

『ぐぎゅるるるるる』

 

しまらないなぁ…

 

俺はラディッツを連れ、またまた西の都の博士の家に行く

 

ラディッツに飯を食わせる目的と、奴が持ってるスカウターを博士に改造して貰う為である

 

家には高校から帰っていたブルマも居たのだが、俺を見るなり母娘でザーボンを指差し、この良い男を紹介しなさいと激しく詰め寄られたのであった

 

 

 




ラディッツの技『ダブルサンデー』ですが、投稿する最後まで名前を呼ぶか否かを悩みましたが、作者の独断と偏見で呼ばせてみました

千葉氏のボイスで脳内再生余裕ッス

他の漫画やらを出すのはマナー違反かなぁと思いつつ、子供の頃を思い出してノリノリで書きました。オッサンなのに

ありがとうございました!






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14話、拳骨

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

「…そういう過去があったのか」

 

「笑いたければ笑え

過去の恐怖に囚われた、この憐れなサイヤ人を」

 

笑えない、全くもって笑えない

 

5才児の子供が父親に訳も分からずボコボコにされて、トラウマにならない奴なんているかよ

 

しかし…

 

「サイヤ人云々より、死の局面で怖じ気付くのは戦士として致命的だな」

 

「……くっ!」

 

う~ん…しかし考えようではラディッツの父親、バーダックはおそらく息子の生存率を上げる為にと、わざとボコボコにした可能性がある

 

惑星を制圧した時も、かなり楽勝だったと本人も言っていたが、ボコボコにされる前の戦闘力で星に送られてたら最悪の場合…

 

だがそれを俺が言っても、コイツは聞く耳を持たないだろう

 

サイヤ人は頑固だからな…

 

「参ったな…戦闘力の底上げや尻尾を鍛える前に、その致命的な癖を直さねばナッパに復讐なんて夢のまた夢になるぞ」

 

フリーザ軍の全員から白い目で見られ、ナッパに殺されかけ、それでも恥を忍んで俺に修行のやり方を乞い、そこから過去のトラウマを話したラディッツ

 

決して順風満帆な人生じゃなく、むしろ落ちこぼれで、今や要らないモノ扱い

 

ただ底辺で生きてきたのはグルドも、中の俺も同じ

 

なんとか協力してやりたい気持ちになったのだが、どうしたもんか

 

第三者の俺の言い分で、コイツが長年こじらせたトラウマは簡単に払拭されないだろう

 

「けっ…では、どうすれば良い?

死んで親父に聞きにでも行くのか?

ナッパに殺されて?

成る程、それは名案だ」

 

……ん?

 

「おいラディッツ、今なんて言った?」

 

 

 

 

 

「オッス、売れないババア

先日ぶりだな」

 

「何度も間違えおって

ワシは占いババじゃ!」

 

またも来ました砂漠の真ん中にあります、占いババの宮殿

 

「おいグルド、本当にここで俺の癖が直るのか?」

 

「直る直る、ついでに戦闘力も上がるしで、一石二鳥だぞ~」

 

ラディッツを占いババの所に連れてきたのは、癖の矯正の為である

 

因みに俺は事前にここに来て婆さんに、ある人物を闘士として呼んで欲しいと頼んである

 

 

 

「……と言った具合じゃ、分かったかの?」

 

「5人の闘士とバトルとは、サイヤ人の俺の敵じゃないな」

 

不遜な笑みを浮かべるラディッツは、次々と出てくる闘士を簡単に蹴散らしていく

 

ドラキュラマン、スケさん、ミイラくん、アックマン

 

分かってはいたが、一撃でKOだ

 

「なんだ、ここの連中は

肩慣らしにもならんぞ?」

 

移動するのが面倒だと、最初の舞台で迎え撃ったラディッツが汗一つかかずに仁王立ちしている

 

占いババも、半ばヤケクソ気味で闘士を呼んでたもんな

 

「はぁ…では最後の闘士じゃ

……出てくるがよい!」

 

「ふん、やっと最後か」

 

来るか……?

 

『…カツーン…』

 

『…カツーン…』

 

宮殿の奥から俺達のいる外に 、誰かが歩いてくる音が響いてくる

 

ゆっくりと、まるで確かめるかのように歩いているようだ

 

「ちっ……」

 

ラディッツの舌打ちが聞こえる

 

「もたもたしやがって…」

 

あ、これはヤバい

 

「さっさと出て来い!

俺を待たせるな!」

 

短気なサイヤ人らしく、ラディッツは強力なエネルギー弾を1発、宮殿の内部に向けて発射

 

『ドゴォォォォン!』

 

爆風と爆音が、宮殿の内部から土煙と共に吹き出て来た

 

「ひぇぇぇぇ!」

「お助けーーー!」

 

占いババも、ピンクの幽霊も悲鳴を上げて逃げ回る

 

宮殿はガラガラと崩れだし、あっという間に半壊してしまった

 

「おいラディッツ!

やり過ぎだぞ!婆さん達を巻き込む気か!?」

 

「けっ、ちんたら歩いて来る奴が悪い

それに、もう終わったろ?」

 

悪びれる様子もなく、ラディッツは崩れかけの宮殿を見て勝ち誇った

 

最後の闘士が歩いて来る筈の廊下が、完全に瓦礫に埋もれている

 

これでは、普通の闘士なら死んだと思うだろう

 

そう…普通の闘士なら

 

 

 

『何が、終わったって?』

 

とてつもなくドスの効いた声が、崩れかけの宮殿の中から確かに聞こえてきた

 

「ぬ、ぐっ!?

な、なん……なんだ、この悪寒は……!?」

 

おお……瓦礫が、簡単に吹き飛んでいく

 

そして粉塵の向こうに揺らめく影は……!

 

『てめぇ…誰に喧嘩売ったのか、分かってねぇな』

 

「ま、まさか……この声は」

 

おお…おお…

 

「荒めの折檻が必要だな、糞ガキめ…」

 

「お、親父!?」

 

たった1人でフリーザに闘いを挑んだサイヤ人、ラディッツと悟空の父親『バーダック』が、宮殿の中から出てきた

 

あかん…もう泣きそう

 

バーダックだよ

 

悟空と瓜二つの黒髪つんつんヘア、頬には十字傷、タンクトップのような緑色の戦闘ジャケット、腕と脛には赤いサポーター

 

仲間の血で染まった鉢巻はしてないが、確かにあのバーダックが目の前に居る

 

「親父ぃ?……俺にはテメーみたいな、腑抜けた攻撃するガキはいねぇな」

 

「腑抜け……だと?

……『ダブルサンデー!』」

 

『ドゴォォォォン!』

 

「ぎゃああああ!」

 

先程よりも更に激しいエネルギー波によって、完全に占いババの宮殿は吹き飛んだ

 

くそ!巻き添えを食らった婆さん達にバリアを張って保護をする、こっちの身にもなりやがれ!

 

「へ、へへっ…ざまあ見やがれ」

 

「誰がだ?」

 

「な……ぐおっ!」

 

いつの間に背後に居たバーダックが、ラディッツの背中に強烈な蹴りを入れて吹っ飛ばす

 

今度はラディッツが宮殿の瓦礫に埋もれる番だ

 

「お前…てんで弱いな

サイヤ人の面汚しめ…その尻尾は飾りか?」

 

ガラガラと音を立て、ラディッツが瓦礫から這い出てくる

 

「サイヤ人の面汚し…、弱い…、うるせぇ…うるせえぞ!クソ親父がぁぁぁぁぁ!」

 

激昂と共に飛び出したラディッツ

 

それを迎え撃つバーダックはラディッツの攻撃を易々と避けると、がら空きの腹に高速の膝蹴りを入れ、無防備な顔面を掴んで上空へとジャンプ、もがくラディッツをそのままに、円形の舞台に叩き付けた

 

豪快に割れた舞台

 

頭から血が出ても、まだだとラディッツは立ち上がり、バーダックにラッシュを打ち込む

 

怒りが恐怖を忘れさせているのか……それとも

 

ラッシュの合間、拳を引くタイミング、その僅かな一瞬をバーダックは見逃さずに重い一撃を当て、ラディッツの攻撃を封殺した

 

「おら来いよ、なんせ久々の娑婆での戦闘なんだ

もっと俺を楽しませろ、この弱虫小僧」

 

「……っ!?

くそっ、くそっ…!

くそぉぉぉぉ!」

 

煽られたラディッツが悔し涙を流し、泣きながらバーダックに立ち向かう

 

それでもラッシュを繋げ、そこからバーダックを強打で上空に打ち上げると、片手にエネルギーを溜め

 

「『サタデークラッシュ!』」

 

上空のバーダックは避けもせずに、それを受けきった

 

直撃し、そして煙が晴れると

 

無傷のバーダックがいた

 

「今のがテメーの全力か?

驚いたな、『あの頃』から大して変わってねぇ……」

 

『ギロリ』

 

浮上した状態で見下ろすバーダックの眼力が、いや気配が変わった

 

来る…終わらせる気だ

 

「泣き虫で、」

 

高速で距離を詰め、ラディッツの顔面に右ストレート

 

「弱くて、」

 

あまりの威力に、後ろに下がったラディッツを空中に蹴り飛ばし

 

「チョロチョロと鬱陶しい、」

 

吹き飛ぶラディッツに一瞬で追い付くと、更に重いアッパーで高々と打ち上げる

 

「アイツも、どうしてこんなガキを産みたかったんだか」

 

またも一瞬で後ろに回り、ラディッツの首に腕を回してのスリーパーホールド、ギリギリと締め上げる

 

「死んでアイツに詫びて来やがれ」

 

既に意識のないラディッツから離れ、ダブルスレッジハンマーで叩き落とす

 

真下は砕けた舞台

 

そのまま墜落したら、いかに頑丈な戦闘民族サイヤ人でも死は免れない

 

「よっと!」

 

俺は勢いよく落下するラディッツを抱き止め、地面に下ろす

 

意識のないラディッツ、死んでないよな

 

息は……ある

 

とりあえず、仙豆を食わすか?

 

いや、まだ仙豆の存在がフリーザ様に知られるのは不味い

 

となれば、やはりメディカルカプセルに

 

「テメーのその外見、確かギニュー特戦隊のグルドだな」

 

うおっ、後ろから声を掛けてくる猛獣の圧がヤバい…

 

「フリーザのクソ野郎の下で働く野郎は、どいつもこいつも俺の…サイヤ人の敵だ」

 

『ブォン!』

 

「うっ!」

 

打ち下ろしの右を何とか回避し、バックステップで距離を取るが

 

「逃がすか!」

 

速い!

そして、重い!

これがバーダックか!

 

「この、負けるかっ」

 

やってやる!

闘いの最中に気を高めるのは難しいが、出来ない芸当じゃない

 

「うおおおお!」

 

「くっ、この野郎、段々、打ち込みが強く……」

 

元々の戦闘力は五分、しかし地球で修行を積み重ね、気を高められる俺は、バーダックをじわりじわりと圧倒しだす

 

「調子に、乗るな!」

 

でかい顔を両手で捕まれ、顔中に怒濤の膝蹴りを浴びる

 

「くぅ!」

 

「ここだ、おら!」

 

顔の痛みで眼を瞑った俺にエネルギー波が来たのを、眼ではなく本能が悟る

 

「っ!」

 

「なっ!?あれを避けただと!? 」

 

亀仙人の下で、くる日も目隠しをしていた甲斐があった

 

「眼は見えなくても、俺はやってけるだけの修行を積んだ

このまま行くぜ!」

 

4つの眼に頼らず、相手の気配を読みながら闘う

 

とてつもなく集中力が必要となる技法だが、サイコキネシスや金縛りなどでエネルギーを消費しない分、そっちにエネルギーを回せる

 

この闘いで超能力は使わない

 

理由?知るか!

 

バーダックとは、拳でやり合いたいんだよ!

 

『ドゴォ!』

「くぬぅ!」

 

俺の手足の短さは、超接近戦には有利

 

頬に一撃を貰いながらも体を滑らせてバーダックの懐に入ると、そのボディにピストンパンチ

 

バーダックの戦闘ジャケットにヒビが入り、砕けていく感触が打撃を通して伝わる

 

「ぬぐぐっ!うぉら!」

 

調子にのって引き際を逃した為に、俺は膝と肘のサンドイッチを食らうと意識が軽く飛んだ

 

あ、ヤバい

 

気配を読めなくなった瞬間、頭に強烈な一撃を貰った

 

落ち、落ちてる!

 

何とか空中でブレーキを掛けるが、今度は腹部にスピードと体重の乗った蹴りを食らい、その体勢のまま俺は地面に激突

 

「ぷるへぇ!」

 

腹を蹴ったままの脚が槍のように突き刺さった感じと、魂が口から出るような衝撃

 

は、早く立たないと、次の攻撃が……

 

あっ、空にヤバい気の塊が

 

「吹っ飛ばしてやるぜ…

これで、最後だぁぁぁぁ!」

 

俺は体の痛みも忘れて立ち上がると、両手でソレを受け止めたが

 

つ、潰れ、る……

 

腹を蹴られた事で、全身に力が入らない

 

このままじゃ、マジで、死ぬ

 

あっ……

 

『ドン!』

 

押し切られると思った瞬間、真横から誰かに勢いよく押され、俺は砂漠に突っ込んだ

 

「ぺっ……ぺっ

一体、何が……」

 

眼を開けて見ると、俺が居たであろう場所にはポッカリと、デカいクレーターが出来ていた

 

あそこに居たら、間違いなく死んでたな……

 

ん?バーダックは?

 

それに、誰が俺を助けて…

 

「あっ……」

 

空中でバーダックが、その手にラディッツを掴み上げていた

 

さっきまで意識を失っていたラディッツが、まさか……俺を?

 

あのバカ野郎、テメーの方が重傷だろうに!

 

「ぬぅぅぅぅ!」

 

俺は残った力で立ち上がり、気を高めると

 

「バーダック!」

 

そう叫んだ俺は、再度バーダックに闘いを挑んだのであった

 

 

 

 

 

「おもしれぇ奴等だ、生かしといてやる

更に強くなって、また掛かってこい」

 

俺とラディッツが即席タッグで挑んでも、ボロボロな状態では到底バーダックは倒せず、彼は最後にそう言って魂となり、消えた

 

「くそぉぉぉぉぉ!

くそったれ!くそったれ!」

 

吠えるラディッツが地面を殴り続け、俺は無言

 

バーダックを占いババに呼んでもらい、ラディッツのトラウマを克服させるつもりが、俺も打ちのめされた

 

戦闘力は俺が完全に上まっていた筈なのに、バーダックの格闘センスが桁違い過ぎて…あしらわれた

 

悔しい…

 

「おい、ラディッツ」

 

「はぁはぁ……何だ」

 

「傷を治したら、バーダックにリベンジするぞ」

 

「ふんっ!当たり前だ!」

 

「その前に、じゃろうが!」

 

振り向けば、宮殿を破壊されて真っ赤な顔で怒る、占いババが居た

 

あちゃ~、忘れてた

 

その日から俺とラディッツは、6ヶ月も宮殿の復旧を手伝わされる羽目になったのである

 

 

 

そして6ヶ月後、俺達はリベンジマッチをする事になった

 

ただし、宮殿から離れた砂漠に円形の舞台を運ばされ、そこで闘えと命じられてだが

 

前回のバーダックとの闘いで戦闘力を上げたラディッツと、復旧の合間にスパークリングで実戦経験を積んだ俺

 

 

 

さあ来いとバーダックを待つ

 

しかし、その前に一応の流れとして、4人の闘士が舞台に現れたのだが…

 

「ぐふふっ、久しぶりの生身で闘えるとは、あー!たまんねぇな!」

 

「テメーの太った体でも、やはり恋しいのかよ?

はっはっは」

 

「むしゃむしゃ……」

 

「あんたバーダックの息子だってね、悪いけど手加減するなって言われてるから、遠慮なく行くよ」

 

パンブーキン、トーマ、トテッポ、セリパ

 

バーダックの仲間のサイヤ人が、今回の俺達の相手……だと?

 

マジか?




バーダックとの闘いを書いてる時は、『ソリッドステ○トスカウター』を爆音でかけてます

はい!バーダックと仲間達を出しました!

ラディッツを出す時点で、バーダックを出すのは既に確定してましたから、とても楽しく書けました

今回のバトルでは、サイヤ人の闘いが間近であるのに、宮殿が無事な訳がないと存分にぶっ壊してやりましたが、6ヶ月の復旧はやり過ぎたかな?

半年も無駄にしちゃったZE☆

因みにラディッツの戦闘力は今回バーダックにボコられて2100から、2900にアップしてます

中身がオッサンのグルドにオヤジが負ける訳がないと、かなり贔屓してみましたが…如何でしたか?

グルドがバーダックに殺されなかったのは、ラディッツがグルドを庇ったからです

殺す価値もないと思ったのか、それとも久しぶりの闘いで本能が相手を求めたのか、仲間意識を見て自分や仲間の事を思い出したのか

まだ定かではありませんが、もう少し闘えるなら生かしておいてやるか。的な考えだと思います

オヤジの性格なら、殺意はフリーザ本人に向ける筈でしょうし

ありがとうございました!



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15話、地球がリングだサイヤ人!

誤字脱字ありましたらスイマセン


 

「ぐはははは!

やっぱり闘うと元気になるなぁ!」

 

「ちっ、うるせぇデブ野郎めが!」

 

ラディッツとパンブーキンが、地上戦で激しく火花を散らす

 

ドドリアに似た肥満体ながらも、その体格からは想像できない程に素早く動けるパンブーキンは正に、動けるデブと言う奴か

 

対してバーダックにやられてた事で、戦闘力が2900にアップしたラディッツは、この6ヶ月におよぶ宮殿復旧の合間の修行でもパワーアップ、本人の課題であったナッパを越える戦闘力『4200』に増加、更に原作でも弱点だった尻尾の強化にも成功した

 

尻尾で器用に瓦礫を持ち上げたりと、ラディッツなりに工夫もしていた姿が印象に残る

 

相手のパンブーキンの戦闘力はよく知らないが、殴り殴られと互角の勝負を展開している時点で、ほぼ拮抗していると見る

 

僅かにだが、パンブーキンが押している……か?

 

「……」

 

俺は2人の闘いをバリアの張った宇宙船の上から見つつ、残る3人の動向にも気を配っている

 

水色を強調した戦闘ジャケットに面長の顔立ち、バーダックチームの副リーダー的な立ち位置の『トーマ』

 

サイヤ人に1割も居ない女性型で、ピンクのレオタードのインナーにワンショルダー風な戦闘ジャケット、バイオレットを彷彿とさせるショートヘアの黒髪美女『セリパ』

 

無口で額には3本傷があり、頭の横と後ろに髪を残した禿げ頭、常に何かを口にしている巨漢の『トテッポ』

 

彼等はラディッツとパンブーキンの死闘を、心の底から楽しんでるような実に良い笑顔で観戦し、たまにトーマがパンブーキンに野次を飛ばす

 

天使の輪が頭にあるサイヤ人達の最期は、俺もよく覚えている

 

バーダックが不在の中で惑星に侵攻したが、サイヤ人に危機感を覚えたザーボンの入れ知恵で、フリーザ様が秘密裏に派遣したドドリアと手下によって無惨に殺された

 

駆け付けたバーダックに、息も絶え絶えなトーマがフリーザの裏切りを伝え、事切れている

 

トーマはバーダックに死ぬ間際にあっているが、他の3人は…

 

『ドゴォォォォン!』

 

激しい衝突音に意識がそちらに向く

 

ラディッツとパンブーキンは互いの掌を合わせて力比べ、ロックアップの体勢になっている

 

『ゴンッ!』

 

おぅ!

 

手が封じられた体勢なので、ラディッツに頭突きを打ち込むパンブーキン

 

食らったラディッツも、どうやら怒りの導火線に火が着いたな

 

『ゴンッ!ゴンッ!』

 

2発、パンブーキンにお返しした

 

目付きが変わった2人は、そこから意地の張り合いを展開

 

「おらぁ!」

 

「んなろぉ!」

 

殴っては攻守交代、蹴っては攻守交代を繰り返す

 

全力で殴り、全力で蹴り、全力で張り倒し、思い切りぶち当たる

 

ラディッツとパンブーキンの愚直ながらも、実にわかりやすい直情的なファイトが俺の魂を震わせるが、それは残る3人にも一緒だったらしい

 

「そこだ!押し負けんな!」

 

「バーダックの息子、引くな!

やっちまいな!」

 

「むしゃむしゃむしゃ」

 

気弾の応酬もない、男同士の肉弾戦に魅入っている

 

「このガキぃぃぃ!」

 

「るせぇデブ!」

 

吠える両者は高速で互いに距離を詰め、渾身の右ストレートを放ち合えば

 

メリ、ともボグ、とも違う鈍い音が響く

 

右と右のクロスカウンター

 

膝を付いた両者は、その場に倒れて気を失う

 

「ダブルKOか……」

 

見届けた俺は、健闘を繰り広げた2人をサイコキネシスで引き寄せ、船内のメディカルカプセルに入れる

 

治療液に満たされるカプセル

 

よし、ラディッツはこれで更に戦闘力が上がるだろう

 

一度死んで、頭に天使の輪があるパンブーキンがどうなるかは分からんが、死んだ悟空もあの世で修行してパワーアップしてるから、もしかしたらな……

 

さて……今度は俺の番だ

 

 

 

「へっ…漸く、お出ましか」

 

「ギニュー特戦隊のグルド、相手にとって不足なしだね、トテッポ」

 

「……こくり」

 

宇宙船を出ると、既にトーマ達は待ち構えていた

 

仲間のパンブーキンを俺が拐った形にはなったが、俺が事前にメディカルカプセルで治療すると言ったので襲ってこない所を見ると…まぁいい

 

「場所を変えよう、ついて来い」

 

俺は宇宙船が壊されるのが嫌なので、その場から少し離れ、先に到達すると気を高めておく

 

3人のサイヤ人は俺の戦闘力をスカウターで測り、その数値に驚くが、やはりそこは戦闘民族サイヤ人

 

原作では地球に襲来したナッパの戦闘力を垣間見て、戦意を喪失しかけた地球人のクリリン達と違い

 

強い相手を前にすれば恐怖感が払拭され、高揚感が勝るのがサイヤ人なんだろう

 

笑ってやがる

 

「戦闘力2万近くの敵なんて、滅多にお目にかかれねぇ上物だ」

 

トーマが言う

 

「サシでやるのがルールらしいけど、私らはもう待てない

悪いけど、勝手にやらせて貰うよ」

 

セリパが好戦的な笑みを浮かべ

 

「…フリーザ軍、潰す」

 

発言は短くとも、分りやすいトテッポ

 

戦闘開始のゴングは、3人が動いた事で打ち鳴らされた

 

巨漢のトテッポが突進し、パワーで俺を押さえ込みに掛かり

 

気弾が得意なのか、トーマが中距離からエネルギー波や気弾を放ち、場合によってはトテッポに合わせてラッシュを打ち込んでくる

 

チーム内では撹乱する役目らしい小柄のセリパ、その攻撃は素早く鋭い、気を抜いた瞬間には美貌に合わない荒々しい闘いぶりを見せてくれる

 

なんて感心してる場合じゃない!

 

こ、こいつら…やっぱり強い

 

1人1人の戦闘力は俺に劣るが、誰もが実戦慣れしてるなんて、そんなレベルじゃねぇ

 

連携にそつがなく、阿吽の呼吸で合わせてくる

 

4つの目、気配の読む技法がなければ、成す術もなく畳み掛けられていただろう

 

だが俺も手を出してない訳じゃなく、壁役のトテッポを何度も殴り、トーマのエネルギー波を弾き、セリパを吹き飛ばす

 

しかし3人を同時に相手するので、決定的な一撃が与えられない

 

1人に追い打ちを狙えば、直ぐに他の2人が俺の背後を強襲してくる

 

「ははっ、どうした!

御自慢の超能力とやらは使わないのかよ!」

 

トーマ、気付きやがったな

 

「後でハンデのつもりだったなんて、言うんじゃねぇぞ!」

 

「この…!」

 

俺は体の小ささを生かし、トテッポの股の下をくぐり抜けると、トーマに急接近

 

ロケットのように加速し、頭突きをトーマの腹に食らわせた

 

「おぐっ……」

 

頭突きは戦闘ジャケットを砕き、トーマにも甚大な威力を及ぼした

 

俺は追い打ちとばかりに、彼の顎にジャンピング・アッパーに繋げようとしたが

 

「させるか!」

 

素早く横に回り込んだセリパの、体重が乗ったドロップキックを脇腹に食らって阻まれる

 

ととっ……、やるなセリパ

 

俺を蹴った彼女は、腹を抑えるトーマの側に立つ

 

「油断したね、戦闘の最中でも軽口を叩くのは、昔からあんたの悪い癖だよ」

 

「へへっ、楽しくなると、ついな……」

 

トーマを気遣うセリパの姿は、戦友のそれ

 

くそっ、もう少しで1人をヤれたのに

 

「やるぞ、2人共……」

 

「「おう!」」

 

トテッポの言葉に2人は答え、構える

 

ヤバいな…、苦戦してる筈なのに楽しくなってきた

 

バーダックとの死闘、ラディッツとの実戦でも思ったが、やはりサイヤ人との殴り合いは面白い

 

いずれかはダウンするだろうが、その度に宇宙船のメディカルカプセルで回復すれば今日1日で何回も闘える

 

つまり、今日1日ならサイヤ人と闘いたい放題

 

前までなら占いババの所に呼べる闘士は1日で1人が限界だったらしいが今回、俺達が派手に宮殿を壊したせいで占いババはその枠を増強、最大で5人まで呼べる闘士を増やしてくれた

 

婆さんは口ではどうこう言っていたが、その本心は俺達の闘いを見て、バトル好きの血が騒いだんだろう

 

俺達を砂漠に向かう際には、せいぜい楽しませろと言ってたしな

 

今も水晶玉で観戦してるに違いないさ

 

「ふふっ…死にそうになったら、俺のメディカルカプセルでパンブーキンと同じく回復してやる

だから遠慮なく来い!サイヤ人!」

 

後先を考える必要はない

 

今はただ、彼等との闘いを楽しむ俺とトーマ達であった

 

 

 

 

 

 

「よし…これで全員を仕留めた…ぜ」

 

満身創痍ながらも、俺は3人を叩きのめす

 

手強い相手だったが、勝った

 

初めてかな?殴り合いの実戦で勝ったのは

 

彼等の体をサイコキネシスで浮上させると、痛む体で宇宙船に運ぶ

 

タフなのか、微かに意識のあるトテッポを最後にし、トーマとセリパを先にメディカルカプセルに入れる

 

ラディッツとパンブーキンの時もそうだったが、カプセルに入る際には使用者は『全裸』になるのが鉄則なので

 

不本意ながら、致し方ないから、どうしようもないから

 

気絶するセリパを全裸にひん剥く…いや、これは用法に則った正しい使用法ですのでと心の中で、カリン様の所に居るであろうバイオレットに詫びながら、セリパを全裸にする

 

その模様は省くが、肌が黄色のサイヤ人でも、とりわけ色白のセリパは大変綺麗な肌をしておりましたとだけ、ここに伝えておきます

 

隣でベンチに座ったトテッポが無表情で俺を見てるので、やましい行動は取れませんよ!

 

「ふぅ…治療が終わる迄、約35分か…

すまんなトテッポ、彼等が終わる迄、もう少し待っててくれ

侘びとして、そこの干し肉は食っていいから」

 

「…こくり、むしゃむしゃ」

 

俺が非常用に買っておいた干し肉を、血だらけで噛るトテッポを2階に残し、先にカプセルに入っていた2人が何処に行ったのか探しに外へ出る

 

その途中で、隠し持っていた仙豆で回復するのも忘れない

 

うぷぷっ……

 

噛み砕いて呑み込むと一気に傷が治り、ついでに腹が膨れる

 

一粒で10日は何も食べなくていい仙豆は燃費の悪いサイヤ人向けだが、ダイエットの影響で普通以下の胃袋になってしまった俺には乱用は出来ないかな

 

く、苦しい……

 

腹を抑えて船内から出ると、少し外れた方角より激しい闘いの音が聞こえる

 

これは…この気配は間違いなく、ラディッツとパンブーキンだな

 

「ははっ…あいつら」

 

回復したら即、バトル

 

やっぱりサイヤ人は面白い

 

ぶつかり合う気を探ると、2人とも戦闘力が上昇しているのが分かる

 

やはり天使の輪と肉体がある内は、死んでいてもサイヤ人の特殊能力は健在らしい

 

…トテッポが治る迄、闘いが長続きしてくれないと、カプセル待ちになっちまうや

 

そういえば、あんなに強いトーマ達だがドドリアとその手下には一方的にやられてた

 

まぁ残虐非道なドドリアの事だ、彼等が状況を確認する前に奇襲で圧倒し、なぶり殺したんだろう

 

でなきゃ、俺をここまで苦戦させた彼等が簡単にやられる訳が無い

 

「……」

 

「おい、いつまで俺を待たせてやがる」

 

「げぇ!?オヤジ!」

 

げぇ!?オヤジ!

 

「…俺はテメーのオヤジじゃねぇ、さっさと準備をしろ

パンブーキンとアイツの闘い、トーマ達とテメーの闘いを見てたら、俺も滾っちまったんでな……」

 

振り向けば、凶悪な笑みを浮かべるバーダックが居た

 

既に気迫が満ち溢れ、やる気で目がギンギンになってます

 

バーダックは治療中の仲間を巻き込むまいと、宇宙船から離れる

 

ラディッツとパンブーキンが闘う反対方向に飛んだのも、彼なりの気遣いだろう

 

こう言った仲間意識があるなら、息子にも向けてやれよと少し思うが、まぁそこはバーダック

 

ラディッツの頑固な所はオヤジに似たな

 

……よし、今度は負けねぇ

 

俺はバーダックの後を追い、飛び立つのであった

 

 

 

『ピピピピッ!ボンッ!』

「…戦闘力…2万以上か」

 

「ぬがぁぁぁぁぁ!」

 

仙豆で回復し、疲れも取れた俺は初っぱなからフルパワーになると、バーダックの旧型スカウターは測定不能となって爆散した

 

「バーダックよ、俺はサイヤ人の死の淵を乗り越える度に強くなれる、その特殊な体質を知っている

戦闘力が低いままじゃ俺の相手にならねぇ、ここは手早くボコボコにして、トテッポの横でカプセルに入ってもらうぞ

そうすれば…分かるだろ?」

 

「…へっ、こいつは今日1日、楽しめそうだ」

 

「はぁ!」

 

俺は右へ左へとステップを踏みながら高速で迫り、怒濤のラッシュを入れる

 

「ぬがっ!」

 

次にバーダックの体を踏み台にして、離れると即座に連続エネルギー波を叩き込み、立ち上る土煙の中からサイコキネシスでバーダックを引き寄せる

 

>の字に体を曲げた状況で、土煙の中からバーダックが飛び出してきた

 

「て、てめぇ!」

 

「今回は超能力を使わないとは、言ってないぜ!」

 

俺はクラウチングスタートの体勢から、トーマにやったロケット式の頭突きをカウンター気味に見舞う

 

「うぐぉ……!

な、めんじゃねぇ!」

 

吹っ飛ばされても尚、立ち上がるバーダック

 

砕けかけの戦闘ジャケットを脱ぎ去り、上半身を露にしたバーダックは握り拳を作り、歯を食い縛って力を溜めるようにすれば、俺は変化に気付く

 

気が…上がっている?

 

バーダックめ、無意識に気を…

 

「くっ、ぐぐぐぐっ!」

 

「気を操れるようになったか、バーダック

だが、それは俺の方が上手だぜ!」

 

『ブォン!』

 

俺は気を腕の先に集めて、剣状にした

 

それは『サウザーブレード』、クウラ機甲戦隊のサウザーが使っていた技だ

 

俺は小柄な体格を生かしてバーダックに超接近戦を仕掛け、隙あらばサウザーブレードで斬りつける

 

「ちょこまかと……!」

 

「チビにはチビなりに、闘い方がある!

さっきのセリパを見習ったのさ!」

 

小柄さを生かして敵を翻弄し、鋭い攻撃をする女サイヤ人の闘い方は参考になった

 

そして、俺なりに改良を加えると

 

「そらっ!」

 

『ピカッ!』

 

「なっ!?」

 

俺はサウザーブレードの気を掌に集め、バーダックの目の前で拍手

 

相撲の猫だましは、原作で言うと鶴仙流の『太陽拳』のような輝きを作りだした

 

「くそったれ!目が!」

 

視界を潰され、それでも足掻くバーダック

 

「か」

 

「め」

 

「は」

 

「め」

 

「…波ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

全身の気を掌に集めた亀仙流の奥義が、バーダックに炸裂したのであった

 

 

 

 

その後、俺は瀕死のバーダックを急ぎ宇宙船に搬送する

 

既に回復していたトーマとセリパが俺からバーダックを受け取り、メディカルカプセルにぶち込むと、ずっと食べながら待っていたトテッポもカプセルに入る

 

これを繰り返せば、ラディッツを含めたサイヤ人達の戦闘力は、1日で俺に迫ってくれるだろう

 

「はぁはぁはぁ…」

 

こっちは地道な修行でしか戦闘力を上げられないのによ、全くサイヤ人が羨ましいぜ

 

『『ぐぎゅるるるるる』』

 

「……」

 

まさか……

 

「おい、腹減ったから何か適当に食ってるぞ」

 

「冷蔵庫、開けて良い?

あと、シャワーも借りるから」

 

「はい……どうぞ」

 

ズカズカと宇宙船を行き来するトーマにセリパ、外ではまだラディッツとパンブーキンは闘ってる

 

これでバーダックとトテッポが回復し、外の2人も合流したら、確実に俺の冷蔵庫が空になっちまう

 

そうなったら最悪、占いババに出前でもするかぁ~…

 

 

 

 

 

 

 

 




トーマ達の戦闘スタイルは作者の勝手な想像です

ただパンブーキンのように意外なスタイルを持ってる奴もいるかもですが、作者には想像が出来ませんでした

あと、占いババが呼べる闘士の枠を本作品では『1人』から『5人』に増やしました
トーマやセリパを1人ずつ呼んでたら面倒だし

流石に毎日は呼べないので、1人呼ぶには1ヶ月は待たないとダメにしました

5人を揃って呼ぶには5ヶ月は必要という訳です
( ・`д・´)キリッ!

なので6ヶ月の復旧期間は、サイヤ人の5人を呼ぶ為の期間だったとここで補足させて下さいませ

次は打ち上げ回かなぁ……多分

ラディッツの戦闘力はパンブーキンとの闘いで4200→4700に増加してます

ちなみにバーダック達の戦闘力は大体ですが

バーダック、10000
トーマ、5000→5400
パンブーキン、4500→4850
トテッポ、4000
セリパ、2000→2250

※右側は回復後の数字です

ありがとうございました!


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16話、バイオレットとカリン様

誤字脱字ありましたらスイマセン


散々に暴れ、散々に喰らい、満足したバーダック達と別れると天下一武道会の開催まで、ラディッツとの修行を再開する

 

たった1日だけだったが、瀕死になったら治療を繰り返したラディッツの戦闘力は、俺のフルパワーと同じ2万に到達したと思う

 

スカウターは全部壊れてしまったが、俺のフルパワーが2万だとトーマが言ってたし

 

なにより、ラディッツを含めた1人1人が俺と互角になっていた

 

最終的にはバトルセンスの違いか、やはりバーダックが俺達の中で抜きん出ていた印象を受ける

 

それにしても、やはりサイヤ人は羨ましい

 

激戦を潜り抜け、死にかける度に強化されるなんてさ

 

ただ、無い物ねだりしても仕方がない

俺には俺の鍛え方があるのだから

 

 

 

「よし、今日もやるか」

 

「おう」

 

バーダック達と別れても、俺達のすることは何も変わらない

 

朝起きて飯を食い、宇宙船の一階、重力トレーニングの部屋で修行をする

 

全身に負荷を感じる前に、各々で準備運動とストレッチで体をほぐし、整ったら重力を増加させた状態でバチバチに殴り合う

 

重力は『50倍』に設定、気弾等の遠距離技は無し、超能力無し、インターバル無し、負けた方が2人分の飯を調達し、勝った方は休んでて良し

 

使い走りは御免だと、俺達はマジで殴り合う

 

因みに蓄えていた食料は、残らずバーダック達(主にトテッポ)に食われ、食料庫は空にされた

 

無いなら買えば良いと思うが、サイヤ人の胃袋を考えると一束のゼニーだけでは心許ない

 

だがサイヤ人ラディッツの性格上、バイトは不向きだ

 

賞金稼ぎも考えたが、島の回りは海しかないわ、そもそも街やら人やら賞金首を探すのが面倒だわで、結局は頓挫した

 

仕方なく調達と言う名の狩りで、巨大な魚や野獣を仕留める毎日である

 

 

 

そんな事を繰り返し、半月が経過

 

日に日に重力を上げ、強くなっていく俺達

 

強者とのバトルでトラウマが完全に克服され、戦士として生まれ変わっただけでなく、戦闘力はベジータをも超えたラディッツは、サイヤ人の特殊能力で俺やドドリアを上回る日が割りと早く訪れるだろう

 

ラディッツを幼い頃、何故バーダックはボコボコにしたのか、その理由はバーダック達との打ち上げで判明した

 

酔いが回り、いつもより口が軽くなったトーマにそれとなく聞いてみれば、彼曰く、単純にラディッツの母親が息子の身を案じ

 

その妻の心配する姿を見たバーダックが、ラディッツを強化する目的でボコボコにしたらしい

つまり、俺の見立ては正しかった訳だ

 

まぁ、そこからラディッツがバーダックに、そういった事は口で言え口でと怒り

 

バーダックも、うるせぇクソガキとラディッツの顔面にワンパン

 

それがゴングとなり、宴の上空で2人は本日最後の親子喧嘩を展開、地上の俺達を楽しませてくれたっけ

 

占い婆に連れられ、あの世に向かう寸前まで2人は闘ってたな

 

あれも一種の親子関係の現れ、なのかもしれん

殺気は感じられなかったし

 

『死んだら、あの世でも闘おうぜ』

 

そう言ってバーダック達は魂となって消えれば、何処と無く寂しげなラディッツの横顔が残った

 

あいつは結局、最後まで親父から名前を呼んで貰えなかったな……

 

 

 

 

だが、それはそれ

 

俺は残り少ない滞在期間に、戦闘力をジース達と同じ5万に上げねばならず、誰かの過去を省みる余裕は無い

 

界王拳なしでは戦闘力を爆発的に上げる方法は無く、そこはやはり地道な修行を重ねるのみとなる

 

もし滞在リミットが来ても、ナメック星に向かう悟空のように宇宙空間を移動しながら、ギリギリまで修行をして強くなれば良い

 

重力トレーニングの最大値は200倍、その空間で自在に動けるようになれば、俺の戦闘力はどこまで上がるのか楽しみだ

 

ギニューに匹敵する程になってれば、フリーザ様も満足だろう

 

そしてもう1つの楽しみは、バイオレット

 

彼女は今、何をしているだろう

 

あと1ヶ月と半分で天下一武道会だが、もう超聖水を飲んでいるのか?

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

視点切り替え≪定点カメラ≫

 

 

 

 

 

「……ックシュン!」

 

カリン塔の頂きにて、バイオレットは調理をしながらくしゃみをするが、直ぐに気を取り直して包丁を動かす

 

まな板から発せられる規則正しい音と、味噌汁の鍋と釜が煮立つ音がカリンの調理場に響く

 

 

 

「さて……と

カリン様~、朝御飯が出来ましたよ~」

 

バイオレットがそう言うと、上の階層で地上を眺めていた仙猫カリンが下層に降りてきた

 

「にゃほほ~、飯じゃ飯じゃ

ほぅ…今朝はサンマのフライか」

 

「つまみ食いは駄目ですからね、先に手を洗って来て下さい」

 

「うむうむ」

 

ちゃぶ台に用意された朝食、1人と1匹は互いに向かい合うと、声を合わせ、いただきますをした

酷くのんびりしているが、別にバイオレットは修行を放棄した訳ではない

 

既に超聖水は1ヶ月前に飲んでいるのだ

 

5ヶ月の攻防でバイオレットはカリンの手から超聖水を得て、その真意を理解している

 

師匠である亀仙人が3年、バイオレットは5ヶ月

 

グルドとの組手を重ねてきた甲斐があったと、後でバイオレットはそう漏らしているが

 

ただやはり、3日で超聖水を飲んだ悟空は流石サイヤ人と言えよう

 

 

 

バイオレットが超聖水を飲んでもカリンの元に留まっているのは、単に行く宛てが無く、もしもグルドと合流する必要が出来た場合、勝手に動けば探すのが互いに面倒だから

 

まして最近までグルドは、ラディッツやバーダック達といったサイヤ人とのバトルの真っ最中で、行けば巻き添えを食らうとカリン自身が止めており

 

宛がないなら、天下一武道会の開催までここで修行すればよかろう?と提案される

 

それもそうかと彼女は納得

 

更に食料の調達やバイトに行くのに舞空術を使わず、毎日このカリン塔を登り降りし、聖地カリンを走破し続ければ、それも修行にもなるぞとも付け足される

 

こうしてバイオレットの日常は、朝起きて料理をして飯を食い、そこからバイト先に走って移動

日当を貰うと昼過ぎに戻り、カリンとの修行に精を出し、街で買った食材を料理して食べ、寝る

 

毎日、凄い勢いで塔を登り降りし、森を爆走するバイオレットの姿を見る、守り人のボラとウパの心境はいかばかりか

 

6ヶ月半も空気の薄いカリン塔の頂きで修行や、生活してきたバイオレットからすれば、もう塔の登り降りは呼吸をする位のモノとなっていた

 

森を走破するのも、空気が濃い地上の森では、一切息を乱す事なく走り抜ける

 

 

 

彼女の修行内容は少し特殊で、カリンの首に下げた御守りを掴んだら、バイオレットはカリンを抱き枕にしても良い権利が与えられる

 

…何の事だか分からないが、とにかく動物好きな彼女はヤル気満々であり、付き合わされるカリンはカリンで逃げる気満々

 

中々に白熱した修行光景らしい

 

 

 

「カリン様、7ヶ月もの期間、私に修行をして下さり、誠にありがとうございました」

 

「行くのか…達者での」

 

南の都での開催まで、残り半月となり

 

移動も考えれば、もうそろそろとなった頃

 

バイオレットはカリンに礼を言い、旅立ちの挨拶を済ますと、塔を降りた

 

カリンとしては、バイオレットに

『筋斗雲』を授けるつもりだった

 

良心を持つ彼女なら乗りこなせるとカリンは見たが、本人が走って行くと言うので、仕方なく仙豆を授けるのみに留め

 

筋斗雲は、次にバイオレットが来たときに授ければ良いとした

 

 

 

そうしてカリンはいつものように上の階層に上がり、下界を眺めれば、遥か彼方にある巨大な2つの気が、今日もブツかるのを肌で感じ取る

 

実はカリンは初めてグルドが地球に飛来した時から、逐一監視をしてきた

 

なにしろ戦闘力が最大で数百の世界に、1万の怪物が現れれば監視をするのは当然である

 

グルドが動く度に、カリンは冷や汗を垂らした

 

RR軍を壊滅させた時、ラディッツと邂逅した時、初めてバーダックが現れた時、5人のサイヤ人が暴れた時と、カリンはどの瞬間も見ていたが、グルドとサイヤ人が暴れた時が特にヒヤヒヤしたらしい

 

1日でグルドに匹敵する者達が次から次へと現れれば、地球の終わりだと覚悟を決めたりもした

 

ただグルドは、フリーザという巨悪の下で働く完全な悪者かと思いきや、かつての弟子である亀仙人に弟子入りしたり、バイオレットを鍛えたり、口臭を直したり、然り気無く都の危機を救ったりと、とにかく理解不能な動きもする

 

そこはグルドの体に、別の魂が憑依しているのが最大の理由だと見る

 

(奴の魂に邪念は無い……しかしその体に残る記憶を見たときの、奴の背後に居た悪の気配が恐ろしい

あれほどの悪の気配は、かつての

ピッコロ大魔王の比ではない

う~む…)

 

地球の管理者である『神様』に相談するという手もあるが、もはや神様の力を軽く超えるグルドとラディッツの存在に打つ手があるのか?という考えに至る

 

(あのグルドを導ける存在が近くに居り、そこから流れが僅かにでも変われば、もしかしたら地球や宇宙も少しは救われるかもしれん

バイオレット…あの娘ならば、あるいは)

 

だがそこで、バイオレットの過去を思い出す

 

RR軍によって故郷を破壊され、肉親や知人を苦しめられた娘が、果たして巨悪の下に向かう事が出来るのか?と

 

幾ら好意のあるグルドと行動を共にするとは言え、これは無理かもしない

 

だが、グルドをこのまま悪の下に返せば、事態が良くならぬは確実

 

ましてグルドには、本能的に長いものに巻かれる気質がある

 

「ここで悩んでいても、仕方なしか…」

 

カリンは顔を上げると、遥か上空に意識を飛ばし、神様の遣いに連絡を取るのであった

 

 

 

 




Dr.ウィローの戦闘力は2万近くなのですが…まぁアレは冷凍状態の上に、地球最強が亀仙人だと勘違いしてる変な科学者なので、別に出さなくても良いですよね?

出しても、既に戦闘力が2万を超えているグルドとラディッツに瞬殺されるでしょうし

キシーメ、ミソカッツン、エビフリャーのファンの皆様、申し訳ありません

カリン様には、バイオレットがグルドに問題なく付いて行けるように根回しをして貰おうと思います

これといって思い付いてませんが!

どなたかオラにアイディアを分けてくれぇ。切望

次は天下一武道会の予定です
グルドもラディッツも参加はしませんし、大会の流れもそんなに変わらないと思いますので、あまり期待しないで下さいませ

ありがとうございました!


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17話、天下一武道会前編

誤字脱字ありましたらスイマセン




『皆さーーーん!お待たせしました!

只今より、天下一武道会の本選を開催致しまーーす!』

 

金髪のオールバック、黒のグラサンに黒のスーツを着た、実況・解説・呼び出しを全て1人でこなす天下一武道会の名物ナレーターが高々に宣言

 

爆発的な盛り上がりを見せる客席から、俺はウーロン達と本選を待っている状況だ

 

俺達の位置は言わずもがな、最前線

 

ナレーターがルールの説明をしているが、俺はランチさん(凶暴)が銃を上空に撃ちまくり、モーセの杖のように人込みが開いてた時に、警察は何で来ないんだろうと不思議に思っていた

 

あと何でブルマが、俺達と一緒に居ないんだ?

もう本選が始まっちまうのに

 

『早速参りましょう!

第一試合!クリリン選手対バクテリアン選手!』

 

うおっと、始まるらしい

 

何してんだよブルマ、早く来ないとクリリンの勝ちを見れないぞ

 

寺院を改造した本殿から、剃髪の少年が舞台に出て来る

 

亀仙流の道着を身に纏う、クリリン

 

……うん、クリリンだ

 

そして……うっぐ!

 

く、臭ええええ!

 

バクテリアン、まじバクテリアン!

 

 

 

『勝者!クリリン選手!』

 

「いいぞぉ!クリリン!」

 

原作同様に『他人の屁は臭かった』で勝利したクリリンの試合内容は、俺の記憶通りの展開だったので特に驚きは無いので省く

 

これでクリリンは準決勝で、亀仙人が扮するジャッキー・チュンに

 

『第二試合!

ナム選手対、ジャッキー・チュン選手!』

 

……あれ?

 

ヤムチャは?

 

万年一回戦負けのヤムチャは?

 

んんん???

 

長身の男が本殿から出てきた

 

インドの苦行僧のような衣装に、頭にはターバンを巻いた褐色肌の、ナムさん

 

うん、ナムさんだ

 

悟空相手に接戦した、ナムさんだ

 

いや、いやいや!

 

ナムさんの出番はこの後で、お色気担当のランファンにタジタジ、いや…そんな事はどうでもいい

 

これは一体どうなってやがる!

 

「おいウーロン、ヤムチャは来てないのか?」

 

俺は同じく最前線で本選を見る豚の妖怪に、ヤムチャの所在を尋ねる

 

カプセルコーポレーションで居候をするウーロンなら、ヤムチャの事を知ってる筈だ

 

「は?知らねぇの?

ヤムチャのヤツは予選で敗退したってよ」

 

「予選で、敗退?」

 

「しかも結構な怪我して、ちょっと遠くのデカい病院に入院したって

そんでブルマは彼氏のヤムチャが、看護婦さんに浮気しないか不安だから付いてってる」

 

「へ~……」

 

「ま、おめーは本選開始の時間ギリギリに来たからな

知らないのも無理はねーか」

 

「……」

 

入院は次回の天下一武道会で、天津飯に脚を折られた時じゃ…

 

まてよ…ナムさんがヤムチャの本来のエントリー枠で出るのなら、ナムさんがボコボコにした相手って事になるんじゃないか?

 

……まさかヤムチャよ、お前は天津飯の時みたいに、初対面のナムさんに中指を立てたんじゃあるまいな?

 

…ヤムチャしやがって…

 

『勝者!ジャッキー・チュン選手!』

 

ありゃ、終わってしまったか

 

気付いたら第二試合は終了しており、ナムさんが場外に出ていた

 

彼は心底悔しそうだが、まぁ…ナムさんは勝とうが負けようが結果は変わらない

 

早くホイポイカプセルに水を沢山入れて、村に持って帰ってやりなさいな

 

 

 

それにしても変だぞ

 

ヤムチャが本選に出てなかったり、ナムさんが第二試合に出てたり

 

これは、もしやバイオレットとアイツが

 

『第三試合!

バイオレット選手対、桃白白選手!』

 

……何?桃白白だと?

 

今、コールされた桃白白は、あの桃白白か?

 

ーーえっ!?

 

ーーた、桃白白だって!?

 

ーーあの世界一の殺し屋が天下一武道会に!?

 

俺と同様に回りの客も、桃白白の名前に驚いている

 

それもその筈、なにせ世界一の殺し屋の名は、原作ではどんな辺境の村にも轟いていたのだ

 

1人殺すのには法外なゼニーが必要だが、その実力は地球人の中では確かで、少年時代の悟空を一度は倒している強豪

 

ーーうわっ!出てきたぞ!

 

誰かが叫ぶと確かにピンク色の中華服に、『殺』のワンポイントをあしらった服に身を包んだ男が舞台に上がり、客席を鋭い視線で睨みつける

 

その気配はまるで、抜き身の日本刀のようだ

 

桃白白の出で立ちに客は固唾を飲むも、奴の闘いが間近で見れると期待しており、誰もその場から逃げようとしない

 

……こいつら

 

『あ、あの桃白白選手、申し訳ありませんが、ルールの再確認をさせてもよろしいですか?』

 

怯えながらも、ナレーターが改めて桃白白にルールの説明をする

 

殺しと、武器の使用は厳禁

 

相手をノックアウト、もしくは場外で勝ちとなる

 

奴も本選まで勝ち残ってきた以上、ルールは分かっている筈だが……まぁ肩書きが世界一の殺し屋だし、そこはな

 

「分かっておる、早く始めろ」

 

『と、ところで桃白白選手は、どうして天下一武道会に出場しようと思ったのですか?』

 

ナレーターが至極最もな質問をする

 

成る程、それは俺も気になる所だ

 

「ふん…来年の『殺し屋さん二十周年記念の半額キャンペーン』の告知だ

なにせRR軍が壊滅して顧客が減ってしまってな、天下一武道会にでも出て優勝すれば、この桃白白の名前と実力が庶民にも広まると思ったのだ」

 

『は、はぁ、では健闘を期待してます』

 

殺し屋さん二十周年キャンペーン、あ~原作でもそんな事を言ってたな、この人

 

「ところで……相手が居らんようだが?」

 

桃白白は本殿を睨む

 

『バイオレット選手、早く舞台に上がって下さい!

でないと棄権とみなしますよーー!』

 

ナレーターもバイオレットの登場を催促しだす

 

どうしたバイオレット、まさか君の身に何かあったのか?

 

「怖じ気づいて逃げか、まぁ仕方あるまい

この桃白白が相手なのだからな」

 

ーーざわざわ……

 

バイオレット、どうした

 

「おいおい、グルド

バイオレットの姉ちゃん、出てこないじゃねえか

俺はあのおっぱいと尻を見に、こんな大会を見に来たんだぜ!?

これ以上、むさいオッサンの闘いなんて見たくねぇぞ!」

 

「うるせーんだよ」

 

「ぐぇ!」

 

ランチさん (凶暴)のエルボーが、ウーロンを黙らす

 

「けっ、あのバイオレットって娘はブルマと一緒に、ヤムチャってヤローを担いで病院に送ってったよ

馬鹿な娘だぜ、本選に間に合わないかもしれないって分かってたらしいのによ」

 

そうなのかバイオレット…、君らしいな

 

「いつまで待たせるつもりだ?

相手が逃げたのなら、私の勝ちだろう?」

 

「誰が逃げたって?」

 

紫色のショートヘアー、バイオレットが上空から飛来した

 

すると男衆の視線が、一斉に彼女に降り注ぐ

 

スポブラに強調された豊かなバスト、ヘソだしのタンクトップから覗く引き締まった腹筋、プリンプリンのホットパンツに美しい生足

 

欲情に満ちた視線が、彼女の肢体を犯しているのが分かる

 

ウーロンも復活し、涎を垂らしてら

 

ん?本殿の影に涎を垂らす、ジャッキー・チュンの姿も見えるな

 

オーケー、後で殴る

 

 

 

バイオレットはどうやらカリン様の所で超聖水を飲んだみたいで、何処と無く雰囲気が違う

 

原作では超聖水を飲んだ悟空は桃白白を圧倒したが、それはサイヤ人の特性とカリン様の修行をした悟空だから出来た結果で、いくらカリン様の修行を受けたといっても地球人である彼女に、桃白白が倒せるのかは俺にも分からない

 

彼女に、やれるのか?と意思を飛ばす

 

気付いたのか、バイオレットは俺を見て微笑んだ

 

可愛い……

 

じゃなくて、彼女はやる気のようだ

 

「亀仙流、バイオレットが相手だ!」

 

「ほぅ……」

 

構えるバイオレットに対し、桃白白は後ろで手を組んで迎える

 

『それでは第三試合、始め!』

 

「はぁ!」

 

開始の合図と共に、バイオレットが桃白白に迫る

 

まずは戦闘力を上げず、ナチュラル・パワーで挑むようだ

 

素早い連続の突きや、相変わらず美しい蹴りが桃白白を襲うも

 

奴はヒョイヒョイと避ける

 

腕は相変わらず後ろに組んだままで、余裕の表情

 

「ふんっ」

 

今度は桃白白の番のようだ

 

下段蹴り、中段蹴り、上段蹴り、変則の蹴りがバイオレットに迫る

 

しかし彼女も顔色を変えずに、捌いたり、受け止めたりしている

 

普通の人間ならば文字通り、即死級の桃白白の蹴りをだ

 

 

 

互いに決定打を与えられず、3分ほどは拮抗状態が続く

 

「小娘……中々やるが、その程度の腕では私を倒すどころか、両手を使わせる事も出来ぬぞ?

本気を出すが良い」

 

汗1つかかずに、桃白白はそう言う

 

「なら、望み通り本気をみせてあげる

……はぁぁぁぁぁ!」

 

おっと、バイオレットが気を高めだした

 

どれどれ……おお……やるな、これで戦闘力は五分五分だぜ

 

「はっ!!」

 

舞台を強く蹴ったバイオレットが突進、桃白白の横っ面を殴った

 

「ぐむっ!?」

 

殴った勢いのまま体を上手く回転させ、浴びせ蹴りを放つバイオレット

 

しかし桃白白は片手で彼女の脚を受け止め、残る片手で体重を乗せた掌底を放ち、彼女を場外ギリギリまで吹き飛ばす

 

「両手、使ったね」

 

「ふん……」

 

「次は本気を出させてあげる!」

 

「面白い……やってみろ」

 

 

 

 

 

 

「この小娘め…手間をかけさせおって…」

 

「……」

 

気弾の嵐からの怒濤のラッシュ、そして狙い済ました『かめはめ波』を桃白白に放ったが、その前に桃白白の必殺技『どどん波』を食らっていたバイオレットに、本来の力やキレは無かった

 

どどん波を食らっても、バイオレットが相手なら大丈夫だと思ってか、桃白白の力の匙加減も相当なモノだ

 

下手したら彼女は死んで、ルール違反で桃白白の敗退が決定する

 

まぁ…バイオレットを殺しやがったら、俺が桃白白に地獄を見せてやるのだが……

 

 

桃白白の必殺技を食らい、頼みのかめはめ波を両手で防がれ、体力も気力も底を付いたバイオレットはキツい一撃を無防備で食らい、意識を失った

 

糸の切れた操り人形のように、舞台に倒れた彼女を見た俺は咄嗟に叫んだ

 

「立つんだバイオレット!

お前ならまだやれる!

頑張れ!桃白白を倒してみろ!」

 

これまで黙っていた俺が叫べば、彼女の体が強張り、何とか立ち上がろうとするが無情にもナレーターが、ダウン・カウントを数え終わってしまった

 

『バイオレット選手、ノックアウト!

よって勝者・桃白白選手!』

 

「当然だじょーー」

 

 

 

意気揚々と本殿に戻っていく桃白白、奴とは正反対にバイオレットは担架で運ばれていく

 

それでも客席からは世界一の殺し屋を相手に善戦したバイオレットに、盛大な拍手と喝采が送られる

 

しかし、4つの眼を持つ俺には見える

 

運ばれて行く彼女が悔しさのあまりに体を震わせ、涙を流しているのを……

 

ジャッキー・チュンこと亀仙人も、彼女が通り過ぎる間際に何か言っていた

 

「おいグルド、あの娘に会いに行かねーのか?

おめーの大事なスケなんだろ?」

 

ランチさん(凶暴)が言ってくる

 

今はガサツだが、意外と勘の良い所もあるんだよな

 

「今はそっとしておいた方が良い

人目があっては、流すものも流せまいて

どのみち次の試合が終われば、今日の試合は終わりだからな」

 

「ふ~ん……」

 

俺としては直ぐにバイオレットの所にいき、あの桃白白に肉薄して両手を使わせ、『どどん波』まで引っ張り出した事を素直に誉めてあげたい

 

だが、彼女は闘士だ

 

今回の敗戦で挫けるような、柔なハートじゃないのは俺がよく知ってる

 

信頼ってヤツだ

 

 

 

『続いて、本日最後の闘いになります!

第四試合、孫悟空選手対、ラディッツ選手!』

 

 

 




ラディッツは出さないと言ったな、アレは嘘だ

バイオレットVS桃白白の闘いは、もう少し掘り下げても良いかと思いましたが、この位が妥当かなと判断

クリリンとバクテリアンの闘いは概ね原作と同じ

ナムさんは亀仙人からホイポイカプセルを貰い、水を持ち帰ってます

ヤムチャを病院送りにしたのは勿論、桃白白で
流れとしましては、予選で合ったヤムチャが対戦相手の桃白白に
『あんたが世界一の殺し屋だって?
はん!消えろ!
ぶっ飛ばされん内にな』
中指を上げてポージング、からの桃白白にボコボコです

ありがとうございました!


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18話、天下一武道会中編

誤字脱字ありましたらスイマセン

途中で視点が定点カメラに替わります


『それでは、本日最後の試合!

孫悟空選手対、ラディッツ選手の闘いを、始めて下さい!』

 

銅鑼の音が響き、舞台の2人が向かい合う

 

黒髪のツンツン頭に亀仙流の道着を着た悟空と、この一年近くで、すっかり原作と同じ風貌になったラディッツ

 

実の兄弟が天下一武道会の本選でブツかる

 

……いやね、なんか感慨深いですよ

 

感慨深いんですが……、これは試合にならないでしょ

 

「あり?どうした?構えねーんか?」

 

ファイティングポーズを取る悟空に対し、ラディッツは腕を組んだまま不動の構え

 

「……」

 

「来ねーんなら、オラから行くぞ!

でりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

駆け出す悟空

 

それに対しラディッツは

 

『バチーン!』

 

「んぎゃ!?」

 

普段は腰に巻かれた尻尾による一撃で、悟空を軽く迎撃したラディッツ

 

原作でクリリンにやった、あの尻尾攻撃によって、悟空は自分が駆け出した位置まで戻される

 

アイツの戦闘力を考えれば、かなり威力を抑えた一撃だろう

 

でなきゃ、今ので試合が終わってる

 

挨拶代わりってヤツか、同じサイヤ人としての

 

 

 

「おちちちち……あっ!」

 

「げぇ!?」

 

悟空も、俺の隣に居るウーロンも気付く

 

ラディッツにサイヤ人の特徴である、尻尾がある事に

 

 

 

ナレーターが試合を一時止めて、その尻尾が本物かどうかを本人に確かめている

 

『な、なんとラディッツ選手には尻尾が生えております!?

本人の体から生えておりますのでルール上、凶器とは認められません、これは試合続行です!』

 

確認の為に中断された試合が再開される

 

「ひぃぃぃ、まさか悟空以外に尻尾があるヤツが居るなんて、き…聞いてねぇぞ」

 

ウーロンは尻尾を見た時から、ガクブルしてる

 

そりゃあ、あの大猿の暴れっぷりを間近で見れば、この反応も仕方ないだろう

 

対して大猿を見たことがないランチさん(凶暴)は興味なさそうで、早く始めろと野次を飛ばしている

 

「ほぇ~たまげたなぁ、オラの他にも尻尾があるヤツがいるなんて」

 

親近感を覚えたのか、試合中にも関わらず悟空がラディッツに話し掛ける

 

「カカロット、貴様の尻尾はどうした?」

 

「ん?カカ……?

オラ、カカなんとかって名前じゃねぇ、孫悟空だ」

 

「…アイツの言ってた通り、本当に記憶が無いのか

おい、貴様は昔、頭を強く打った事はあるか?」

 

「ん?オラ、ものすげぇ昔に頭を打ったみてぇで、今でもその傷が残ってっぞ」

 

「ふん…、それで尻尾はどうした?」

 

話を戻すラディッツ

 

「尻尾は1年くれ~前の満月の夜に、気が付いたら切れてた」

 

「満月の夜…よく覚えておけカカロット、月が真円を描く時こそ、俺達サイヤ人の本領が発揮されるのだ」

 

「サイヤ人?なんだそれ?」

 

「貴様と俺は、宇宙一の強戦士族であるサイヤ人の血を引いている

俺達サイヤ人は闘いこそが最大の喜びであり、存在価値と言っても良いだろう

感じた事はないか?強いヤツを見た時に心の底から沸き上がる、ワクワクするような感じが?」

 

「…オラがサイヤ人…」

 

「この尻尾が何よりの証拠だ

そして俺は貴様の兄、ラディッツだ」

 

「なぁクリリン、兄ってなんだ!?」

 

『ズルッ!』

 

一般的な知識が壊滅的に欠落している悟空が、いきなりに本殿の物陰から試合を見てたクリリンに話を振る

 

サイヤ人の事は何となく本能で理解は出来たみたいだが、そっちの方が分からないとか、流石は悟空

 

あ~そう言えば悟空は、結婚の意味も知らなかったっけ

 

そんでクリリンに聞いてたな~

 

「ば、バカ野郎!兄ってのはだな!

…《クリリン説明中》…」

 

説明が終わると悟空は驚いた顔をしている

 

「オラとオメーが兄弟……」

 

「ついでに教えてやる

父親はバーダック、母親はギネだ」

 

「バーダック、ギネ、ラディッツ

へへっ…なんだぁ、オラにも父ちゃんや母ちゃんが居たんか~

じっちゃんが死んで独りになったと思ってたけど、なんか一気に賑やかになった気分だ~♪」

 

ニコニコ顔で実に幸せそうな悟空だが、ラディッツも弟に真実を伝える時が来るだろう

 

サイヤ人のハートを持つラディッツなら、大した事はないかもしれんが、普通の人間ならキツいものがあるよな

 

「……でも!

例えオメーが兄ちゃんでも、オラは負けねーもんね!」

 

バッと構える悟空

 

うん、そうなるだろう

 

サイヤ人なら

 

「ふん、来い…カカロット」

 

地球に来てから付き合いが長いからか、アイツは心なしか嬉しそうにしてるのが分かる

 

サイヤ人は家族の情が薄いらしいが、仲間意識は強い

 

もしや、バーダックとの拳による会話で心境が変わったのか?

 

いずれにしても、今のラディッツは原作と違って弟を殺す気はないようだ

 

 

 

悟空の攻撃を、ラディッツは尻尾だけで迎撃し続ける

 

あの2人に、それだけ力の差があるのは知ってた

 

ラディッツは器用に己の尻尾を、悟空の腕や脚に絡ませて空中に投げたり、打ち払ったりしてる

 

諦めない悟空は、本人の弱点である尻尾を狙い始めて

 

「にひひ……掴んじゃったもんね~」

 

小柄さを生かし、ラディッツの尻尾を掴むと渾身の力で握る

 

「……」

 

「……あり?」

 

原作ラディッツなら、この時点で命乞いをしてたかもだが、どっこい今のラディッツに弱点は無い

 

「いつまでも弱点を残しておく訳がないだろう!」

 

片手で悟空の体を持ち上げ、投げる

 

 

 

「この程度の力で、俺に負けないだと?

ふん、ならば少しだけ本気を見せてやる」

 

握り拳を作るラディッツが、気を高めだす

 

この試合用にと意図的に下げていた戦闘力が爆上がりして、会場の空気と大地を揺るがせば、クリリンが腰を抜かしてアワアワし、亀仙人は冷や汗と鼻水が垂れている

 

本殿に居る桃白白や、敗れたバイオレットやナムさんも、気の変化を感じ取っている事だろう

 

俺はアイツに、あまり上げすぎるなと念を送ると、ラディッツは2千程度の戦闘力に留めてくれる

 

俺には大した数字じゃないが、200や300そこそこが最強クラスの地球に2千の存在はヤバ過ぎる

 

試合相手の悟空も本能でラディッツのヤバさに気付いたらしく、軽口を閉じており、表情は真剣そのもの

 

 

 

とは言え本気ならば戦闘力が3万に迫る、『2万9千』のラディッツにしたら超手抜きレベル

 

なぜラディッツの正確な戦闘力が分かるのか、それはここに来る前にカプセルコーポレーションに寄り、ブリーフ博士に預けていた『スカウター』で俺達はフルパワー状態での戦闘力の数値を確認し合ったから

 

俺が2万7千で、ラディッツは前述した数値だ

 

因みにスカウターは盗聴防止のシステムが備え付けられ、計測できる数値が最大で『2億』まで上昇している

 

他に変わったシステムは無い

 

ただ、星間距離でも問題なく会話できるスカウターの超高性能なシステムは、博士すら唸らせたそうなので

 

これでまた、カプセルコーポレーションの株が上がるだろう

 

 

 

地響きが凄いので、もう少しだけ抑えろと俺は再び念を送る

 

会話は一方通行だが、俺は『テレパシー』が出来るようになった

 

やり方はモールス信号みたいに、思った言葉をサイコ・ウェーブに乗せて相手の脳内に直接送る

 

まだ界王様みたいに星間距離でも会話できるような高性能なモノでなく、『入れ替えテレポート』みたいに相手が視界に居ないと出来ない

 

原作でも次の天下一武道会で、餃子が天津飯と脳内で会話してたから、意外と簡単なのではと思い、やってみたら出来たのだ

 

流石は超能力者のグルドだぜ

 

「ま、まいったな…オラ、こんなスゲー奴を目の前にしてんのに、ワクワクしてきちまった

亀仙人のじっちゃんの下で修行して、結構強くなったつもりだったけど……上には上がいるんだな」

 

悟空は冷や汗を垂らしながらも、僅かに笑う辺りはサイヤ人だからか

 

上には上がいるか……それが分かっただけでも、ラディッツが出た意味があった

 

しかし、その程度の力では宇宙に蔓延る強大な悪魔は愚か、他に生き残ったサイヤ人にすら勝てないぞ悟空

 

 

 

そこからラディッツは悟空の意識が無くなる迄ボコボコにし、勝利者となると、気絶する弟を小脇に抱えて舞台を後にした

 

途中で悟空の容態を心配したクリリンが駆け寄ろうとするが、ラディッツの圧に負けて近付けないでいたな

 

……さて、天下一武道会の初日はこれで終わりだが、なんか色々と原作と違って疲れたよ

 

桃白白が出たり、バイオレットが負けたり、ラディッツが悟空を殺さないか内心ハラハラしたり

 

悟空はラディッツに任せて、俺はバイオレットの所に行くとするか

 

ウーロンとランチさん(凶暴)に、また明日と別れの挨拶をして、俺は医務室のバイオレットを訪ねるのであった

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

《視点切り替え、定点カメラ》

 

 

 

 

 

極小サイズのカメラ・ロボットが、その日に行われていた天下一武道会の様子を全て撮影していた

 

そのロボットが撮った戦闘データは逐一、何処かの研究機関に電送されており、その研究機関の一室ではメインパネルを睨む3人の姿があった

 

 

 

ボサボサ頭の白衣の男『Dr.マシリト』と、彼のスポンサーになった『ピラフ』、そしてマシリトの助手であろう、老研究員の姿が見える

 

「頼むぞDr、必ずアイツ等に復讐をするロボットを作ってくれ!金に糸目はつけん!」

 

鼻息荒く、ピラフが声を張り上げる

 

「ふははははは!お任せをピラフ様

この超天才科学者であるDr.マシリトが、必ずやピラフ様に納得して頂ける作品を献上しますぞ!」

 

早速とばかりにマシリトは、完成したばかりの自慢の作品を紹介しだす

 

助手の老研究員がリモコンをいじれば、不細工なロボットと、筋ばった生物の融合した様がモノが部屋に現れる

 

ゴテゴテの機械のパーツを纏った群青色の生き物で、背丈は今の悟空やグルドと同じ位に低い

 

赤く、瞳の無い目玉で、口元のマスクからは漏れるような呼吸音をしている

 

「フシュー!

フシューー!」

 

「な、なんだこの気持ち悪いヤツは!?」

 

存外に潔癖症なピラフが、マシリトの作ったグロテスクな作品を見て口元を抑えている

 

手下のシュウとマイも同様に

 

「これぞ私の叡知と助手の作品を掛け合わせて出来た、名付けて『バイオ・キャラメルマン6号』」

 

「み、見た目は悪いが、肝心の強さはどうなんだ?」

 

ピラフが尋ねれば、マシリトは助手に見世物で使われる瓦を持って来させる

 

積まれている瓦の数は、ざっと30枚

 

マシリトの作品『バイオ・キャラメルマン6号』は、それを渾身の力で瓦を1枚残して全て割ってしまった

 

ジンジンと痛む手を後ろに隠しながら、6号は自慢気に胸を反らすが、それ以上に製作者のマシリトは有頂天

 

「どうです?凄いでしょう?

はぁ~はっはっはっはっはっ」

 

大口を開けて笑うマシリト

 

「これは良い!

これならばあの小僧や、あっちの緑色の不細工なヤツにも勝てる!」

 

「「はーはっはっはっはっ!!」

 

笑う2人を見て、シュウがマイに素朴な疑問を投げ掛ける

 

ーーでも…あんなに頑丈な煉瓦の牢屋から逃げたアイツ等が相手なら、瓦なんて参考にならないんじゃ…

 

ーーしっ!言っちゃダメ

 

人差し指を形の良い、紅を差した唇に当てるマイ

 

ピラフとマシリトが更に大笑いをするとシュウとマイも空気を読んで苦笑いをし、笑う機能が無い6号も手を隠しながら大笑いする格好をする

 

『むが~!』『ふが~!』

 

「おおっと忘れていたよDr.千兵衛、そろそろ君も、このピラフ様の世界征服の野望に手を貸す気分になったかね?」

 

部屋の隅に縄でぐるぐる巻きにされ、猿轡を噛まされたまま放置されていた『則巻千兵衛』に尋ねるピラフ

 

しかし千兵衛は頑なに首を横に振る

 

「ふふふ、このマシリトが居ればそんなヤツは無用ですぞピラフ様

なぁ千兵衛、だいぶ頭頂部が薄くなってきてるが、天才科学者なら毛生え薬ぐらい作れるものなのに、なんでそうなったんだ~?」

 

ニヤニヤとマシリトが千兵衛の頭を見ると、彼は怒って猿轡の状態でも怒鳴りつけるが、それは何一つ伝わっていない

 

「は~ん?何を言っておるのか分からんな~

なになに~、俺はハゲになりたいから手伝ってくれだ~?

よかろう、ならば6号!手を貸してやれぇ!」

 

「フシューー♪」

 

マシリトは6号を差し向け、千兵衛の頭から髪の毛を一本一本抜かせる

 

やめてくれと千兵衛はまるで、芋虫のように這って逃げる

 

逃げ惑う千兵衛、追う6号、笑うマシリトにピラフ一味

 

 

 

そんな賑やかな部屋の中、助手の老研究員がラディッツの戦闘力の変化と、その強靭な肉体に着目している事を知るものは誰も居なかった

 

 

 

 

 

その助手の名前は『コーチン』

 

ピラフにマシリトを紹介した、謎多き科学者だった

 

 

 




グルドの戦闘力、2万7千
更にグルドは『一方通行のテレパシー』を覚えました
なぜ一方通行なのか、それは普段からラディッツがテレパシーで話してこられても、普通に言葉に出して会話をする為で、テレパシーの精度が上がらないからです

ラディッツの戦闘力、2万9千
変身後のザーボンさんと、強さは互角くらいです

因みにどこかの地上最強の生物である『範馬勇次郎氏』は瓦を40枚、簡単に割ってました

マシリトやピラフと混じって、一緒に高笑いする6号の姿を想像すると、少し可愛いと思ってしまうのは作者だけでしょうか

バイオ・キャラメルマン6号は略すと『バイオマン』で、マシリトは8号まで作っているそうです

6号の外見はバイオマンに機械をゴテゴテ着けたものを想像して下さい

さて……出てきましたDr.コーチン

果たして彼は何を企んでいるのか?

ありがとうございました!


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19話、戦士達の休息

誤字脱字ありましたらスイマセン


夕刻、大会初日が終わり、原作最初の天下一武道会は明日、準決勝と決勝を残すのみとなる

 

俺とウーロンとランチさん(凶暴)の観客組は、大会に出場していた悟空・ラディッツ・クリリン・亀仙人・バイオレットの選手組と合流すると、タイミング良くメディカルカプセルで回復したヤムチャを連れて戻ったブルマ達と共に、仲良く飯を食いに行く事になった

 

 

 

……のだが

 

「「ガァツ!ガァツ!」」

 

『…………』

 

「「バリバリバリバリ!」」

 

『…………』

 

「「ゴクゴクゴクゴク」」

 

『…………』

 

「ソボボボボボ!」

「ガモ…」「ナポッ」

「バリバキ」「メリィ…」

「カチャカチャカチャカチャ!」

 

「うめ~、おかわりおかわり♪」

「カカロット…貴様、この兄を差し置いておかわりをするなど…」

 

「おいおいおいおい、まだまだ料理はあるんだから仲良く行って来いよ」

 

「おう!」

「ふんっ」

 

俺が言うと空の皿を幾層にも重ね、口回りが汚れた2人のサイヤ人が席から立ち上がれば、店内のスタッフや他の客は『まだ食べるのか!?』と、彼等の姿に驚愕している

 

サイヤ人の食欲を見るのは初めてか?

まぁ、力抜けよ

 

「ほんっっっっと、サイヤ人とかいう奴等は食うわね~

この調子だったら、ラディッツが本当に孫くんのお兄さんってのも頷けるわよ」

 

テーブルに頬杖を突いて呆れ口調のブルマ、ここは彼女が事前に予約していた時間制のバイキング形式の店であるが、常に用意されていく数々の料理は、2人のサイヤ人の胃袋に猛烈な勢いで呑まれていく

 

ラディッツにとって天下一武道会は予選も本選も、普段の修行に比べれば準備運動にもならない規模であったが、それでも腹は減る

 

悟空も、殆ど動けない位にラディッツにボコボコにされたと言うのに、飯を食い始めればケロリとして尻尾をフリフリしながら兄に続く

 

それにしても、店選びが成功したなブルマよ

 

なにせ原作だと決勝終わりの悟空に、亀仙人の優勝賞金がパアにされてたからな、バイキングは正解だ

 

まぁカプセルコーポレーションの御令嬢なら、それこそ屁でも無い金額かもしれんが、普通の人間にとって闘い終わりのサイヤ人を2人も連れて行くのは(財布的に)自殺行為

 

まして悟空もラディッツも、飯を味わって食うようなタマじゃないからな

 

「んなろぉ、負けてたまるか!」

 

2人に取られてなるかと、ランチさん(凶暴)を筆頭にウーロン、そして本選を終えたバイオレットもこれに続き、こっそり出場していた亀仙人も普段より摂取する量が多い気がする

 

彼等や、サイヤ人の見事な食いっぷりに触発されたのか、自然と俺も箸が進む……明日の修行はいつもよりハードにしなきゃ、また太っちまうか?

 

 

「ヤムチャ様、大丈夫ですか?

なにか柔らかいモノでも取って来ましょうか?」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だぜ、プーアル

メディカルなんとかって液体に浸かったら、たったの数十分で傷が完治したのは知ってるだろ?

ふふふ…これからたくさん食って、明日から特訓開始だ

あの桃白白とか言う髭ヤローに、このヤムチャ様を指一本でコテンパンにしてくれた礼をしてやるぜ!」

 

「流石ヤムチャ様!」

 

「な~はっはっは♪」

 

バカ笑いをするヤムチャだが、その相手が世界一の殺し屋だってことを忘れてないか?

 

あとルールがあったから無惨に死なずに……まぁいいか

 

「…そんなに調子に乗って、またあの病院に担ぎ込まれるのが目的なんじゃない?」

 

「んがっ!?

そりゃないぜブルマ」

 

「ふん…終始、美人の女医さんに鼻の下伸ばしてたくせに

アンタが立てなくなる位やられたって聞いて、私がどれだけ心配したか…」

 

「あ、あは、あはは…」

 

マジかよヤムチャ……やれやれ、この場でブルマの機嫌を損なうのは色々とよろしくない

 

 

 

仕方ないな、助けてやろう

 

(おいヤムチャ、聞こえているな

そこは謝る所だ、笑う所じゃないぞ)

 

「えっ?」

 

(俺だ、グルドだ

今、お前の心に直接語りかけてる)

 

「えっ?は?」

 

(悪いと思っているなら、直ぐにブルマに詫びを入れて、その後に感謝を言葉にするんだ

お前を心配して、大会をすっぽかしてまで病院に付いてきてくれた、ブルマの優しさに思う所があるのなら、な)

 

「……す、すまんブルマ!」

 

勢いよく頭を下げて謝るヤムチャに、キョトン顔になるブルマ

 

やれやれ、ブルマも付き合って直ぐだから病院に来てくれたのかね

 

なにせ次の天下一武道会じゃ、天津飯に脚を折られても……

 

「おいクリリン!明日はオラのかわりに頑張れよ!」

 

「……あ、ああ」

 

両手と頭と尻尾に、これでもかと料理を皿に盛った悟空が通り際に大きな声を上げれば、俺を含めた皆の視線が、自然とそちらに向く

 

公になっている選手組ではラディッツ以外で唯一、明日に駒を進めたクリリンが皆から少しだけ距離を取り、静かに食事をしている

 

辛い修行を共に乗り越えた悟空が、ラディッツの圧倒的な力の差によって敗れた。それだけでも彼の心はザワついておろうに、準決勝で当たるジャッキー・チュンがタダ者では無いのが解るのだろう

 

クリリンの回りの空気が張り詰めている

 

果てしなくポジティブで天真爛漫な悟空と違い、少しナイーブな所のあるクリリンは、口を横一文字にして黙々と食事を再開する

 

予選で多林寺時代のトラウマやらを精算したから、武道家としてレベルアップはした筈だが…

 

悟空、ランチさん、ウーロン、ブルマ

ヤムチャ、プーアル、亀仙人

バイオレット、俺

 

既に全員で賑やかにエールを送ってはいたが、彼の表情は変わらない

 

少し、良くないな

 

気負いすぎてる

 

だが、こればっかりは本人が乗り越えるモンだ

 

今も普通に食事をしているバイオレットも桃白白にヤられたが、自力で持ち直した

 

彼女は何も言わないが、翡翠色の眼は敗北を糧にした実に良い光を宿していた

 

だから俺も皆も特に何も言わず、普通に彼女と接している

 

……合流直後にキリリと表情を引き締めていた、バイオレットの顔を思い出す

 

大会のルールがあったとは言え、あの桃白白に必殺の『どどん波』まで引き摺りだした

 

ほんの一年位前まで普通の女の子だった町娘が、世界一の殺し屋に奥の手まで出させたんだ

 

これを成長と呼ばずに、何と言う

 

いやはや、彼女が桃白白にやられそうになった時、思わず声を上げてしまったが、どうにも俺の方が尻が青いようだぜ

 

思えば俺という存在がDBの世界に影響を与えた結果なのか、ヤムチャとランファンとギランは本選トーナメントに現れず、替わりにバイオレット・ラディッツ・桃白白が登場するという、原作を知る奴なら『なんじゃそりゃ?』な展開だった

 

バイオレットが出るのは8ヶ月前から知っていた

 

実弟カカロットが気になるラディッツも、途中まで行動を共にしてる俺に驚きは無い

 

しかし世界一の殺し屋の桃白白が登場するとは、実にたまげたもんだ

 

悟空や天津飯に敗れた時の様子で、いまいち強味は薄れた印象だが、いざ闘う姿を見れば世界一の殺し屋の通り名に偽り無し

 

まるで抜き身の日本刀

 

脱サラして20年の、普通の人間が放てる殺気じゃなかったが、フリーザ様の圧に比べればチワワみたいなもんだけど…

 

 

 

「じゃあ皆、おやすみ」

 

「クリリン、明日は頑張りなさいよ!」

 

店の前で挨拶をし、それぞれの組が別々の方向に歩き出す

 

亀仙人が予約していたホテルに、悟空とクリリンが追従し

 

ブルマとランチさん、バイオレットの女性陣は夜這い対策にと亀仙人とは別のホテルに向かう

 

俺、ラディッツ、ヤムチャ、プーアル、ウーロン、と言った溢れた野郎衆は、ブルマが予約してくれたホテルに行く感じだ

 

野郎同士での中身の無いバカ話で盛り上がりながら、俺は明日の事をラディッツに尋ねる

 

「あん?お前、明日は出ないのかよ?」

 

「そうだ、カカロットには会った、そして残りは雑魚

もはや俺に、あの大会に出る理由が無い」

 

「ふ~ん…まぁ、お前がそうしたいなら、そうすりゃいい

ならば明日から修行を再開するか、俺とお前には時間が無いしな」

 

「ああ、この星での滞在期間も残すところ4ヶ月を切った

貴様は他の特戦隊と同じ強さとなるのが条件らしいが、やれるのか?」

 

「やるさ

でなきゃ、この星もろともフリーザ様に消されちまう」

 

「……」

 

「…どうした…?」

 

「1つ聞かせろ、貴様はフリーザの元に戻った後、どうするつもりだ?」

 

「どう、とは?」

 

「俺は……親父から、サイヤ人の殆どがフリーザに殺された話を聞いた

フリーザの野郎がサイヤ人を利用するだけ利用し、都合が悪くなったら惑星ベジータもろとも消し飛ばしやがった事を」

 

「……」

 

「親父やお袋はどうでもいいが、サイヤ人をなめる奴は許せねぇ」

 

「だから、フリーザ様を倒すと?」

 

「そうだ

俺の体に流れる戦闘民族の血……闘う度、死地から蘇る度に強くなる、サイヤ人の無限の可能性があればフリーザを」

 

「53万」

 

「あ?どうした急に」

 

「53万という数値は、フリーザ様の平常時の戦闘力だ」

 

「なっ!?」

 

「因みにフリーザ様は変身型の宇宙人で、あと3回変身でき、変身をする度に戦闘力が飛躍的に跳ね上がる体質らしい

参考までに言うが、最初の変身で百万超え、その次は忘れたが、最終的に全ての変身を終えてフルパワーとなれば…あ~、ざっと1億か」

 

「1…」

 

「しかし…お前の言うとおり、その体に流れるサイヤ人の血があれば、あるいは可能か……ん?」

 

「……」

 

「……やめとくか?」

 

「だ、誰がやめるものか!

殺されたサイヤ人達の恨みを、俺が晴らしてやるのだ!

王族のベジータでも、エリートのナッパでもない、王族に匹敵する強さを持った下級戦士バーダック、その息子の俺がだ!」

 

「それを特戦隊の俺の前で話すとなれば、さっきの返答次第じゃ、俺を殺すか?」

 

「そうだ、殺す」

 

「殺した後はどうする?

俺が戻らないとなると、ギニュー隊長が直々に地球に乗り込んでくる可能性がデカいぞ?」

 

「ふん、ならばその間に強くなれば良いのだ!

カカロットを鍛え、この星の女にサイヤ人の赤ん坊を産ませ、フリーザ軍を滅ぼした後はこの俺が、全宇宙の支配者となってやるのだ!」

 

「……お前、フリーザ様に兄がいる事を知ってるか?」

 

「何?」

 

「名をクウラ、戦闘力がフルパワーで2億だか3億だかの化け物だ

クウラは弟への情愛は薄く、星の運営は下手くそだが、実力は一級品。同族が殺されたとあれば間違いなく出てくる

あと、フリーザ様の親父も

それでもやるのか?」

 

「くっ、くそ!フリーザの血族はどいつも化け物揃いなのか!」

 

「もし諦めるなら、この話は2度としないことだ

フリーザ様は優秀な部下に対しては寛大な御方だし、こんなに強くなったお前を無下に扱わないって」

 

「……俺は、諦めんぞ」

 

「なら、好きにしな

それがお前の選んだ道なら、俺は止めやしないぜ」

(悟空も鍛えるなら、可能性は0じゃないしよ)

 

ぐぐぐっと拳を強く握り、バイオレットとは違うが良い表情になるラディッツ

 

とてつもない実力差を知っても尚、強者との闘いを求めるのは純血のサイヤ人の血か、それとも性か

 

……なんか、バイオレットにしろラディッツにしろ、目的を持って生きる2人や悟空とクリリンに比べて、流されるままの俺って……嫌、今は目の前の事に集中だ

 

うん、1つ1つを消化していくスタイルは決して悪くない、悪くないぞ

 

だから、俺はラディッツに明日の助言をするのだ

 

「ラディッツ、明日は満月だから悟空共々、夜は外に出るなよ

お前ほど強くなった大猿の相手は、今の俺にはキツ過ぎる」

 

 

 




ラディッツが現在の戦闘力で大猿化した場合、その戦闘力は30万になる予定。しかも下級戦士なので理性は無い模様……そんなの、フリーザ様でなきゃ勝てませんわ

遅くなりまして、大変申し訳ありません

リハビリを兼ねて、やや短めの投稿になりました

ラディッツは悟空と闘って満足したので、大会を棄権

バイオレットは更なるステージを目指し、頑張って欲しい

次回は大会の模様をダイジェストでやり、Dr.マシリトとピラフの凸凹コンビの方を描くか、悟空のドラゴンボール探しをするかを迷ってますが……

ありがとうございました!


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20話、天下一武道会後編。悟空とウパと…

誤字脱字ありましたらスイマセン


桃白白との激闘を制したジャッキー・チュンの優勝で今回の天下一武道会は幕を閉じ、俺達はそれぞれの生活に戻った

 

俺とラディッツは地球滞在期間が迫る中、重力トレーニング室で地球での最後の追い込みをかけ

 

バイオレットはカリン様のテレパシーに呼ばれ、独り聖地カリンに戻った

 

悟空は未だ見ぬ強敵を求めながら、形見である四星球を探す旅に出立

 

亀仙人、クリリン、ランチさんはカメハウスに

 

ブルマ、ヤムチャ、プーアル、ウーロンは西の都に帰っていった

 

因みに満月が浮かぶ決勝戦は悟空も観戦しており、その尻尾の付け根には今でも、 ブルマに作らせたサイヤ人の『大猿化』を防ぐリングが嵌められている

 

決勝戦をどうしても見たいと言って曲げない悟空に、仕方なく俺はブルーツ波やら大猿化のメカニズムをラディッツと共にブルマに説明、ピラフの一件でトラウマを植え付けられた彼女はブリーフ博士と2人でリングを制作したのだ

 

渋るラディッツにもリングを装着させたが、元からアイツは観戦するつもりがないので、宇宙船でトレーニングと言う名の監禁をしておいたから地球は無事である

 

最悪、悟空のリングが効果が無かった場合を考え、俺が大猿悟空を黙らせる算段だったが杞憂に終わっている

 

うむ、上手くいってなにより

 

悟空はともかく、ラディッツの戦闘力が10倍になり、かつ理性が無い状態になったらフリーザ様しか止められないからな

 

それにしても口頭の説明だけで、即日こんなもん作ってしまう親娘って一体…

 

 

 

簡単だが大会の模様を説明しよう

 

亀仙人と桃白白の闘いは亀仙流と鶴仙流、その達人同士の技と技、プライドとプライドを掛けた激戦となり、会場を大いに盛り上げた

 

あまりにシリアスな展開の中でも俺は、まさか桃白白も『排球拳』を使うのか?と内心で冷々してたのは内緒だ

 

亀仙人が優勢で試合を進めていたのだが、原作では大猿悟空を止めるためMAXパワーかめはめ波で、月を消滅させた亀仙人はエネルギーがスカンピンの状態で悟空を相手にしている

 

それが起きなかった今回の流れを考えれば、武術の達人と称される武天老師、脱サラして殺し屋さん19年目の桃白白に負ける筈もなかった

 

ただ亀仙人は次回で天津飯には圧倒されてたけど…、まぁ彼はあの時のラスボス扱いだし、太陽拳からの後頭部に膝蹴りは確実に殺しにきてるよな…

 

準決勝のクリリンは敗れはしたが、原作よりは遥かに接戦していた印象が残る

ジャッキー・チュンの中身が助平爺だと見抜き、油断を誘う『ギャルのパンチィ』は登場しなかったし

横一文字の口元、引き締まった眼差し、体から溢れる気迫を放って舞台上に歩を進めた姿は、一廉の武道家のそれ

試合中にも悟空、バイオレット、ブルマ、ヤムチャ、ランチさん(狂暴)、ウーロン、プーアルの声援に後押しされ、圧倒的な強さを誇るジャッキー・チュン相手に何度も何度も立ち上がって見せた

 

原作と同じく一瞬にして背後に回られ、首筋へのキツい手刀の一撃を食らっても、ダウンカウントのギリギリで立ってきた姿は思わず拳を握った程だ

 

しかしクリリンの精神もそこが限界で、立っているのもやっとの状態になる

 

亀仙人は弟子の成長に一瞬だけ喜んだが直ぐに表情を戻すと、動けないクリリンはあの『萬國驚天掌』を喰らい、涙のギブアップをした

 

しかし仲間とは良いもので、真っ先に悟空が弾けんばかりの笑顔で出迎え、クリリンは持ち直した

 

今はカメハウスで更なる強さを追及し、技と精神を鍛えている事だろう

 

悟空がドラゴンボール探しで不在でも、多分ヤムチャが亀仙人に弟子入りするからスパーリング相手も事足りるしな。多分…

 

 

 

思えば俺の影響か、準優勝の桃白白が出場して原作と違ってしまった

他にも、ヤムチャやギランやランファンが本選トーナメントに出ない展開が生じたが別段、大した問題じゃない

 

どいつも実力はまだまだだし、揃って大して重要性のあるキャラクターじゃない

 

少なくともこれでギランは、タンバリンに殺されるフラグが無くなった訳だ

 

ナムさんは…うん、南無南無

 

変更された中で唯一気になると言えば、ピッコロ大魔王の手先のタンバリンが桃白白と戦ったらどちらが強いか。ぐらいだ

どっちが強いんだろ。まぁいっか

 

 

 

「ぬぐぐぐぐっ!」

 

『ピピピッ…ビーッ!』

 

「戦闘力…3万2千か」

 

今、俺はフルパワーの状態の戦闘力をラディッツに計測して貰っている

 

激しいトレーニングのお陰でラディッツは4万一歩手前に、俺は上記の通りに成長した

 

(ふぅ…これで戦闘力は変身ザーボンさんを上回った訳だ、もう少しだぜ

…しかし、ラディッツは4万一歩手前か)

 

小型で超能力を得意とするグルドの種族と、バトルセンス全振りの戦闘民族サイヤ人の根本的な違いが、はっきりと数字に現われる

 

分かっちゃいたが、差を開けられる事は素直に悔しい

 

最初は俺の1割弱しか戦闘力がなかったのにな、ラディッツ

 

「そろそろ滞在期間も終わるな」

 

重力を戻して整理運動を終え、タオルで汗を拭いながら俺はなんとなく口に出した

 

俺の独り言にラディッツは、そうだなと返す

 

俺は続ける

 

「あと…一月

地球を出て、通達のあった惑星に到着するまでの時間が約一年

移動中は外には出れないから退屈だけど、自主トレをするだけなら問題ない

一年だ、一年全てをトレーニングに費やせばジース達に匹敵するどころか、上回る事だって夢じゃないな」

 

そう、地球での滞在が終わってもナメック星に向かう原作の悟空のように、宇宙船の中でトレーニングを積めばフリーザ様との最低限の約束が果たせるどころか、それ以上の成果を見せられそうなのだ

 

ただ底抜けに明るい修行好きの悟空と違い、短気なサイヤ人ラディッツなら、退屈で窮屈な宇宙船生活はしないだろう

 

コールドスリープに入るだろうから、スパーリング相手がいなくなって張り合いが…

 

「おい、まるで一人でトレーニングするみたいな口振りだが、俺は移動中にコールドスリープをするつもりは無いぞ

貴様同様に、到着ギリギリまでトレーニングをする」

 

「え?そうなの?」

 

まさかの発言に俺は驚く

 

「眠っている間に、貴様に追い越されるのは我慢ならんからな」

 

(ふ~ん、プライドの高いこった)

「そっか、ありがとよ

一年間トレーニングをすればサイヤ人のバトルセンスと合わせりゃ、もしかしたらギニュー隊長とタメ張る位になれるかもな」

 

「ギニューか

おい、奴の戦闘力は幾つだ?」

 

「隊長?

確か…12万だか、そんなだったな」

 

「ぬぅ…奴で10万超えか」

 

唸るラディッツ、まさかお前ギニュー隊長をも超えるつもりか?

 

それは辞めといた方が良いぞ。主にボディチェンジ的な意味で

 

原作で隊長は『界王拳』を発動させた悟空の戦闘力18万に魅入り、ボディチェンジして自ら墓穴を掘ったけど、ラディッツがもし界王拳無しの地力で隊長の戦闘力を上回ったら、果たしてどうなる事やら…

 

スペシャルファイティングポーズを決めるラディッツを今後、俺は隊長と呼ぶのか…?

 

う~む…

 

顔面が男梅になる俺

 

「あ、因みにフリーザ様は」

 

「最低で53万だろ!ケッ!」

 

「うんうん、覚えてるなら宜しい」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

≪視点切り替え、定点カメラ≫

 

「星が五つ、う~ん…四星球じゃなかったか~」

 

一方その頃、育ての親である孫悟飯の形見を探す悟空は、ドラゴンボール探しをしつつ修行を重ねる旅を続けていた

 

RR軍はグルドに壊滅された事で、ドラゴンボール探しは概ね順調の一言

 

雪国では寒さに身震いしながら、現地の少女スノに助けられ

 

ゲンゴロウ島に住む、眼鏡と帽子を被った元気一杯で口癖が『うほほーい!』の少女には『博士を知らない?』と尋ねられ、知らないと答えれば暇潰しにプロレスごっこの相手にされ、体力バカの悟空もキリキリ舞に

 

海賊団のアジトはブルマとクリリン、なぜか宝の匂いに惹かれたランチに助けて貰ったり裏切られたりした位で、残りは自分の力でなんとかしている

 

これで五つ目も空振りとなった

 

願いに興味はないので落胆する悟空だが、聖地カリンの番人ボラが持つ四星球に出会う日も、そう遠くないだろう

 

「んじゃあ、次のドラゴンボールを…あり?おかし~な」

 

懐からドラゴンレーダーを取り出し、次の位置を知ろうとした悟空だったが、それまでに表示されなかった箇所に突如として反応が現れたのである

 

ドラゴンボールは全部で七つ、悟空は五つのボールを所持しているので残るボールは二つ、どちらかが四星球だ

 

「なんでいきなりレーダーに反応があんだ?…ま、いっか

そっちは最後にしちゃお」

 

深く考えない悟空は、軽い気持ちで筋斗雲を前から反応のあった地、聖地カリンに向かうとボラから念願の四星球を貰う

 

これで悟空は、六つのボールを所持する事になった

 

あと一つで神龍を呼び出せる数が揃うのだが、そこは悟空、四星球以外をブルマに預けてしまえと思っている

 

ところで息子ウパに懐かれた悟空を見たボラは、子供の内にウパに外を見せてやって欲しいと悟空に頼む

 

苦もなく四星球を貰った悟空は即決し、ウパと共に突如として反応があった地『ツルマイツブリ山』に向かうのであった

 

 

 

「うわ~悟空さん!アレが全部雪で、あっちが氷の山々ですか!?」

 

筋斗雲の眼下には雪と氷の世界が広がっており、聖地カリンを一度も離れた事がなかったウパはその景色に目を輝かせている

 

二人とも厚手の服を纏い、ここまで来た

 

スノの村で防寒対策の大切さを学んだ悟空は、この地が寒いと分かると筋斗雲をUターン、ウパに合う防寒着を貰いにブルマの居る西の都を訪れ、彼女に無心、渋りながらも防寒着の調達どころか、レーダーのメンテもしてくれたブルマは実に良い女である

 

都でも刺激的なモノは沢山あったが、やはり自然の中で産まれ育ったウパ、雄大な自然の方が喜ぶらしい

 

ウパが雪で遊ぶ間に、ドラゴンボールを探し終えた悟空

 

不自然な迄に放置された一星球を回収すると、そこに悟空の到着を狙ったかのように白衣の老研究員が現れたのであった

 

 

 

『願いは叶えてやった。さらばだ』

 

 

老研究員は『神龍』を呼び出し、氷山の氷をどかして自分の研究所を復活させて欲しいと懇願

 

願いに興味が無い悟空は、老人の願いを聞き入れ神龍を呼び出す

 

それではまたドラゴンボールが、と心配するウパに悟空は大丈夫だと告げるや

 

ボールが各地に飛び立つ前、四星球を目掛けて悟空は高々と跳躍、見事に形見のドラゴンボールを掴み取ったのである

 

「凄いです、悟空さん!

あんなに高くジャンプできるなんて!」

 

「ん?ウパも修行すれば、こんくらいできっぞ?」

 

当然のように言う悟空に、そんな自分なんてと遠慮するウパ

 

「おめ~も良かったな~って、あり?アイツいね~ぞ?」

 

悟空は老研究員に向き直すが、老人は忽然と姿を眩ましていた

 

不思議がる悟空とウパ、すると上空から何かが飛来した

 

「っ!?あぶねぇ!」

 

ウパを庇って悟空はソレを回避

 

二人の立っていた箇所に、群青色の生物と機械が混じり合った『バイオキャラメルマン6号』が強襲したのだ

 

『フシューー!』

 

「な、なんだオメー!?

気持ちわりー面だな!」

 

『フ、フシャーーー!!』

 

気持ち悪い発言に傷付いたのか、6号が雪原を蹴って悟空に迫り連打を繰り出す

 

悟空も応戦する

 

最初は押される悟空だったが、6号の体に矢鱈滅多に取り付けた機械の部分が重心を不安定にさせるので、動きにムラが生じていることに気付くと

 

「ほい!てりゃ!」

 

『グェ…』

 

高速の脚払いからの顎にジャンピング・アッパーで、あっさりと勝負は決した

 

雪原に大の字で突っ伏す6号

 

「おめー見た目は気持ちわりーけど、中々強かったぞ

修行したら天下一武道会に出られっかもな」

 

「ご、悟空さん!」

 

ウパが突如として叫び、悟空が振り向くとそこには、ウパを捕らえたピラフ一味が居た

 

「ふふふ…久しぶりだな小僧!」

 

「誰だ、オメーら!」

 

『ずるっ!』

 

完全に悟空の記憶から抹消されたピラフ一味が盛大にズッこける

 

怒るピラフだが怒っているのは悟空も一緒 、素早くウパを取り替えそうとするが、一瞬早くピラフが悟空にヘンテコな形状の拳銃を抜き、発射

 

「痛てっ!……ん?

ぎっ……!?」

 

悟空の肉体に普通の弾丸は効果は無い。しかしピラフが発射したのは麻酔銃に使われるカプセルのような弾丸で、それが刺さると突如として悟空の動きが鈍り、その場から動けなくなる

 

すると、ピラフが高笑いを始めた

 

「はーはっはっはっ!貴様の弱点を見抜けぬピラフ様ではない!

くふふふ、どうだぁ小僧?

今の気分はー?」

 

「ご、悟空さん!どうしたんですか!?」

 

「ぬぎぎぎぎっ…」

 

ウパが叫べば、やっとの思いで悟空が顔を上げて口を開く

 

「は」

 

「……は?」

 

「腹減った~」

 

「………はい?」

 

そう、ピラフが悟空に発射したのは『食欲増進剤』

 

それも、食べる事が嫌いな人間だろうと、どんぶり飯を3杯は食べないと気が済まないレベルの量をだ

 

只でさえ大食らいのサイヤ人の悟空が、そんなものを受ければ動きが鈍るのは当然である

 

「んなーはっはっはっはっ!

さて、世界を手にする願いは来年に持ち越しだが、貴様を処刑すれば次に邪魔になるのはあの気持ち悪い緑の化け物のみ!

喜べ、小僧!貴様が復活させたドクターのアジトで、たっぷりと前の借りを返してやるからな!

6号、起きろ!小僧を叩きのめせ!」

 

一通り笑ったピラフは6号を起こし、悟空の意識が無くなるまで暴行を加えさせた

 

雪原に鮮血が飛び散り、悟空が身動きしなくなる

 

こうして泣き崩れるウパと共に悟空はピラフ一味に連れられ、神龍によって復活した老研究員のアジトに運び込まれたのであった

 

 

 

一方その頃、グルドの元に招待状を持ったバイオレットが訪れたのは、悟空がアジトに運び込まれた時であった

 

 





お久しぶりでございます。
忙しくなる前に、なんとか投稿できました

Dr.ウィローの手下のバイオマンの戦闘力は元々、集団でも亀仙人に負けるレベルなので、Dr.マシリトに改悪された6号が悟空に勝てる訳がありませんでした

ピラフ一味、悟空とウパを捕獲
更には千兵衛さんも捕獲してるので、果たして彼等は3人をどうするつもりなのか!?

悟空をDr.ウィロー編のピッコロみたいに洗脳してみるのも有りですが、それだと少しだけ可哀想な気分…

らしくないとか言わないで下さいね?

ありがとうございました!



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21話、復讐者達

誤字脱字ありましたらスイマセン


(待ってて下さい、悟空さん!)

 

筋斗雲に乗ったウパが、西の都を目指している

 

ピラフに囚われたウパだったが、己が所持していた干し肉を悟空に食べ与えると、僅かに体力を取り戻した悟空が牢の天井に全身全霊の、かめはめ波を放つ

 

かつて捕まった時の煉瓦の壁よりも強固な鉄製の壁で出来ていたが、傷付いたとて亀仙人の元での修行や、天下一武道会でラディッツに倒された事でパワーアップした悟空を留めておく事は無理だったようだ

 

天井が吹き抜けになると最後の力で筋斗雲を呼び、二人揃って脱出する前に大量のバイオマンが来襲

 

体調が万全なら問題なく撃退できたが、今は立ち上がる事も出来ない

 

ピラフの狙いは自分だと、悟空は自らを囮にするとウパを無理やり筋斗雲に乗せてブルマの元へ送り出す

 

振り返ったウパが最後に見たものは、バイオマンに群がられた悟空の姿だったと言う

 

ブルマの元に到着したウパは直ぐに状況を説明

 

驚き、怒り、心配し、様々な感情を見せたブルマだったが、それらを出しきると冷静さを取り戻す

 

グルドの宇宙船に緊急メッセージを飛ばし、自らは最新のジェット機でウパを乗せた筋斗雲と共にカメハウスに向かう

 

カメハウス到着後、事情を聞いたクリリンは直ぐに亀仙人に出発を促す

 

弟子の危機を見過ごせんと亀仙人は立ち上がり、亀仙流に弟子入りしたヤムチャ、ウーロンとプーアルを連れ、一向は悟空救出に『ツルマイツブリ山』に飛ぶのであった

 

 

 

その頃、ブルマから緊急メッセージを受けとる筈のグルドは今、なぜかバイオレットと共に高級ホテルのレストランに居た

 

「落ち着かないな…」

 

「ね…」

 

ドレスコードであるのでグルドは緑色のタキシード、バイオレットは紫色のドレスを着ている

 

着なれない服装、踏み込んだ事もない高級ホテル、食い慣れないコース料理、オーケストラのBGM、そして何故か客は自分達だけ

 

『高級ホテル1泊2日ディナー付、2名様1組ご招待』

 

くじ引きの特賞を当てたバイオレットがグルドを誘ったのだが、くじ引き屋の店員はどう見てもピラフ一味の変装で、グルドがその場にいたら即座に見破っただろう

 

ところで聖地カリンに向かったバイオレットはカリンに何やら話を聞いたようで、ここまで思い詰めた表情をし続けていたが、BGMが静かな曲調になると口を開いた

 

質問の内容は『グルドは巨悪の下で働き、星を侵略する立場なのか』である

 

 

 

「…本当だったんだ」

 

「あぁ」

 

グルドはバイオレットの問いに背くことなく、やや淀みながらも答えた

 

「グルドは地球を侵略しにきた訳じゃない、だけどフリーザって人の命令を受けたら、別の星に住む人を殺しにいくんだね…」

 

「反抗するは死、それがフリーザ軍の掟だ」

 

「……勝てないの?」

 

「倒せる相手じゃない、フリーザ様は、はっきり言って強い

前に俺が話した、宇宙を震撼される連中の事を覚えているか?」

 

「一億、とかって話だよね?」

 

「そう、そしてその一人が他ならぬフリーザ様なんだ

優秀…といっても本人からしてみればカスみたいな戦闘力の持ち主は手元に置いて、星の運営をさせたり配下にしたりするので器量はあるし、人の話は聞いてくれる、なんなら名誉挽回の機会だってくれる

ただ目指すは力による宇宙統一、それを阻害する者は一瞬で蒸発されてしまう

場合によっては星ごとな」

 

「…そんな」

 

「俺は戦闘力の底上げで地球に来た以上、フリーザ様の待つ星に戻り報告しなくてはならない

戻らないと反逆者として地球もろとも宇宙の塵にされちまうから、それだけは阻止するよ。俺はこの星を気に入ってるからな

ただ、地球滞在の期限はあと一月を切った。一月後に俺はラディッツと共に宇宙に飛び立つ、それは何があろうと揺るがない

バイオレット、いきなりだがこれから先は君自身が決めてくれ

俺やラディッツと共に宇宙に上がるか、それとも地球に残るのかを」

 

「そんな……いくらなんでも色々と急すぎるよ

話す機会なんて今まで幾らでもあったのに…」

 

「すまない、本当に」

 

 

 

グルメの問いにバイオレットは答えられなかった。かつて自分が住んでいた地を滅茶苦茶にしたRR軍、それ以上の規模の悪のフリーザ軍に所属する事に、抵抗を感じずにはいられないのだ

 

彼女は口を閉ざし、手を動かすのも辞めてしまう

 

グルドは気まずい沈黙の中、手早く味のしない料理を食べる

 

すると食べ終えた時、体に異変を感じたのである

 

「ぐっ!?」

 

口を抑え、テーブルに突っ伏すグルド

 

「どうし…くっ!」

 

グルドの異変に驚いたバイオレットが突然、椅子から飛ぶと、彼女の座っていた椅子が真っ二つに割れた

 

「ほう、よく避けたな、小娘」

 

「貴方…桃白白!」

 

バイオレットの前に現れたのは殺し屋、桃白白であった

 

「ぐががが!」

 

「グルド、しっかり!」

 

苦しむグルドを気遣うバイオレット、その姿を見て桃白白が鼻で嗤う

 

「ふん、今から死ぬ貴様がそいつを心配する必要はない」

 

「なんですって…!」

 

「殺し屋がただ、久しぶり!元気にしてた?なんて言いに現れると思ったのか?」

 

桃白白は先の天下一武道会で優勝を逃したのでジャッキー・チュンとバイオレット、この二人を即刻殺さねば己の商売に影響すると判断した

 

ジャッキー・チュンは亀仙人の変装であるので探すのは不可能、バイオレットも基本的に世界を奔走するので居場所の特定は難しい

 

しかし都合よくピラフのグルド捕獲の為に多額の報酬で協力要請され、やれやれと赴いてみればそこにバイオレット

 

これは上手いと桃白白は黒い笑みを浮かべた

 

ピラフの指示で料理人が最後の料理に痺れ薬を混入させ、標的のグルドは痺れさせる事は成功したが、食の進まないバイオレットは最後の料理に辿り着けず仕舞い

 

だが、バイオレットを殺す気満々な桃白白には動けようが動けまいが関係ない

 

「今度はルールに守られる事なく、あの世に送ってやるぞ。小娘」

 

桃白白が構える。最初から本気でいくつもりだ

 

バイオレットは相手の殺気を読むと、覚悟を決めた

 

「グルド…ちょっと待っててね、アイツを倒すから」

 

突っ伏したままのグルドを椅子に寄り掛からせたバイオレットは、長いドレスの裾を破り、両脚を露にして構える

 

「「ハッ!!」」

 

ほぼ同時に絨毯を蹴って、両者が接近戦を開始

 

暗殺拳らしく、貫き手、爪擊が主体の攻撃を桃白白を繰り出し

 

基本に忠実なバイオレットは、オーソドックスな戦闘スタイルで迎え撃つ

 

『ビリリッ!』

 

紙一重でバイオレットが避けると、ドレスのフリルが裂かれて空中に舞う、ただし宙を漂うフリルは両者の拳圧で巻き起こる風によって絨毯に落ちないでいる

 

『バキッ!』

 

相討ちとなり一旦、両者が離れた

 

(この小娘、前よりも確かに打ち込みが強い、あの時は手加減をしてた訳でもなさそうだったが…どういう事だ?)

 

構えたままの桃白白が、バイオレットの強さに違いがある事に気付く

 

それもその筈、前回の闘いの直前にバイオレットはヤムチャとブルマを、遠くの病院まで緊急搬送していたのだ

 

もとより試合に間に合うかどうかの瀬戸際だったが、ブルマの心情を察したバイオレットは試合用のエネルギーを使ってまでヤムチャ達を搬送

 

なんとか試合には間に合ったものの、結果は敗北

 

無茶な舞空術でエネルギーを浪費した状態と万全の状態、違うのは当たり前である

 

「っ!」

 

「な、なにぃ!?」

 

一気に距離を詰めたバイオレットが桃白白もろとも、ホテルの窓の外に飛び出した

 

飛散する窓ガラスと共に、取っ組み合ったまま落下する両者

 

「貴様!相討ちを狙うとは気は確かか!?」

 

ホテルの高さは百メートル以上、そこからの紐無しバンジーを選択したバイオレットに、桃白白は想定外で面食らう

 

取っ組み合った両者の体勢は桃白白が下でバイオレットが上、力ずくで体勢を逆転させたいがバイオレットは譲らない

 

このままでは地面に激突してしまう。舞空術を使えない桃白白は焦る

 

(くっ!小娘め、なんという握力だ!

不味い、不味いぞ!舞空術はまだ兄者から習っておらん!

こうなればホテルの壁で失速を…な!?)

 

意識をホテルに向けた桃白白、そこでバイオレットがまたしても予想外の行動に出る

 

バイオレットは桃白白の腹に蹴りを放って離れると、直下降のスタイルになり、舞空術と落下と重力で一気に桃白白を追い抜いたのだ

 

自由になった桃白白がホテルの壁に平泳ぎで到達、落下するバイオレットを必殺の『どどん波』で狙う

 

(何を考えているのかは知らんが、これで貴様は終わりだが落下死など許さぬ、手加減なしのどどん波で死ぬが良い)

 

バチバチと、桃白白の人差し指が光を放つ

 

その気を背後に感じながらもバイオレットは、静かに気を高める

 

落下しながらとなるが、バイオレットには『たかが百メートルの世界』

 

舞空術に慣れ、カリン塔を毎日昇り降りしていた彼女はこの程度の高さ、この程度の落下では決して慌てない

 

(…来た!)

 

軌道を変えた直後、一閃が体を掠める

 

(また来る!)

 

避け続ける。先程の光より細い一閃が、幾重にも通り抜けていく

 

相手は焦っている。そう睨んだバイオレットは空中で急停止し、今度は急上昇を開始した

 

「舞空術だと!?馬鹿な、なぜ亀仙流の貴様が鶴仙流の舞空術を使える!?」

 

(か)

 

「いや、この際どうでもよい…向かってくるなら餌食にするまでよ!」

 

(め)

 

「小娘!この桃白白と、どどん波をなめるな!」

 

どどん波を乱射する桃白白

 

(は)

「ぐっ!あぅ!」

 

バイオレットの体に無数のどどん波が命中するも、彼女は決して速度を落とさない

 

「はははははは!

死ね、死ね、死んでしまえ!」

 

(め…!)

 

尚も上昇をする間に三発、彼女の体にどどん波が命中するが、バイオレットは止まらない

 

どどん波を乱射する桃白白に本来の殺傷力はないが、それでも威力は凄まじく、バイオレットは意識を手放さないよう、高めた気を下げないよう、命懸けで向かっていく

 

そして我慢比べにバイオレットは勝利した

 

「こ、小娘!」

 

「せーーの、波ぁぁぁぁぁあああああ!」

 

一蹴、最大限に気を高めた状態で桃白白をホテルの壁から夜空に蹴り飛ばすや、バイオレットは亀仙流の奥義『かめはめ波』を放つ

 

どどん波より太く、長い光が夜空に尾を引いた

 

「そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」

 

光に呑まれる桃白白

 

すると、かめはめ波によって桃白白が隠し持っていた手榴弾が暴発、夜空に一発の花火が上がったのである

 

 

「私…勝ったの?…痛っ」

 

激しい痛みを感じ、自分の体を確認するバイオレット

 

紫のドレスは穴だらけでボロボロだが、それを凌駕する位に体の方も傷だらけ

 

(酷くやられちゃった…血も随分ながれ…あ、あれ…?)

 

視界が、ぐにゃりと歪む

 

急降下からの急上昇や無茶な軌道を繰り返し、どどん波を喰らいつつ突進、そして全力のかめはめ波

 

諸々の疲労やらが一気に押し寄せ、バイオレットの意識を刈り取ろうとする

(ダメ…しっかりしなきゃ、グルドは動けないの…気絶してる暇は…)

 

意識を失わず、なんとか舞空術でグルドの居る階層に向けて上昇しようとするが、その姿はいつ落下してもおかしくない程に弱々しい

 

(…これなら一階に降りて、エレベーターを使った方が良かったかな…)

 

そんな事を考えている内にバイオレットのエネルギーが尽きた

 

「…ごめん、もう…ダメ」

 

フッと彼女の全ての力と意識が抜け、無情にもバイオレットは地面を目掛けて落下…しなかった

 

間一髪でグルドが自らの体をサイコキネシスで操り、意識の無いバイオレットを自身に引き寄せると横抱きにしたのだ

 

空中に漂ったままの二人

いまだに痺れ薬は効いているのか、グルドの体は震えたままであり、一方通行のテレパシーを送る事はおろか、声を発する事も出来ない

 

痛ましい姿のバイオレットを見、そして憎々しげにピラフ一味に招かれたホテルを睨むと、グルドは宇宙船を目指す

 

船に到着するとメディカルマシンに彼女を入れ、自らも体内の痺れ薬を除く為にマシンに入ったのであった

 

 

 

 

 

 

ツルマイツブリ山の研究所内部、広間にて闘いが行われている

 

「ほい、ほい、ほりゃ」

 

バイオマンの群れを、亀仙人が年齢を感じさせない柔軟な動きと的確な急所攻撃で、次々と敵を沈黙させていく

 

亀仙人達はウパの案内でこの地に到着するや研究所に突入、この広間に到達するまでに数えきれないバイオマンを倒したが、流石は敵の本拠地、雑兵は幾らでも湧いてくる

 

「む?クリリン、そっちに行ったぞぃ」

 

四体のバイオマンが亀仙人を無視して後ろに回った

 

「お任せ下さい、武天老師さま!

だぁぁぁぁぁあああああ!」

 

言うや剃髪の少年拳士クリリンが飛び出し、一体のバイオマンにカウンター気味に飛び蹴り、壁に吹き飛ばすと続く三体のバイオマンを相手に戦闘を開始

 

クリリンは視野を広く保ち、決して深追いせず、相手の動きを良く読み、的確に一撃一撃を入れていく

 

一体、また一体と地面に突っ伏して沈黙していくバイオマン

 

だが別のバイオマンが一体出現し、クリリンの後方に居るブルマ達に襲い掛かるのをクリリンが気付く

 

「ヤムチャさん、残りの一体を!」

 

「任せろ、狼牙…風風拳!

はああああい!はい!はい!」

 

姿勢を低く、まるで獲物に襲い掛かる狼の様になったヤムチャが己の手を、牙に見立てて爪擊を繰り出す

 

彼が野盗だった頃から使用している擬獣拳『狼牙風風拳』は、一秒間に五発を繰り出せると本人は豪語している

 

「はい!はい!はい!はい!」

 

小柄なバイオマンに対して大柄なヤムチャは、打ち下ろし気味に爪擊を繰り出す

 

手足の短いバイオマンは素早い爪擊の嵐に、前に出ることが出来ず劣勢となる

 

「いいわよ、ヤムチャ!」

 

「ヤムチャ様、頑張って!」

 

「頑張って下さ~い」

 

応援に熱が入るブルマとプーアル、そして大人しいモードのランチ、ランチの側にはウパの姿も見える

 

「調子に乗って足元掬われんなよ~」

 

とウーロンが言った所で、小柄なバイオマンがその言葉に気付いて足払いをし、ヤムチャを盛大にスッ転ばせた

 

「ありゃ?、ぐぇ!」

 

床に転がった所でマウントを取られ、お返しとばかりにバイオマンに殴られるヤムチャ

 

「ウーロン!あんたが余計な事を言ったからよ!」

 

怒るブルマが豚の妖怪の胸ぐらを掴み、ガクンガクンと揺らす

 

「な、なんで俺のせいなんだよ!」

 

「ヤムチャ様!しっかり!」

 

プーアルの声援虚しく、ヤムチャはボコボコにされ気絶してしまった

 

ヤムチャを倒したバイオマンが、照準をブルマ達に向ける

 

「「ひ、ひぃぃぃぃ!」」

 

ブルマとウーロンがくっ着いたまま叫ぶ

 

あらあら大変と、ランチは緊張感の無い反応

 

「な、なんとかしなきゃ!

あ!そうだ、変化!」

 

プーアルは体を胡椒の瓶に変えるや中身の胡椒をランチの鼻先に向けて放出、すると…

 

「は、は、は……くしゅん!

……なんだぁテメー、誰にガンくれてやがんだこらぁ!」

 

くしゃみにより凶暴化したランチは、手持ちのサブマシンガンをバイオマンに乱射

 

射ち尽くすと次に二丁拳銃を見舞い、動きの鈍った所でピンを抜いたグレネードを投擲、バイオマンを木っ端微塵にしてしまった

 

「ざまぁみやがれ!ぎゃはははは!」

 

豪快に笑うランチは中指を天に向けて御満悦、あまりの変わり様にウパは絶句している

 

 

 

『なかなかやりおるのぅ、流石は武天老師じゃわい』

 

いきなりスピーカーから、老人の声が部屋に響く

 

声の主はDr.コーチンである

 

「むっ、誰かは知らんが尻尾の生えた少年、悟空は返してもらうぞ

そちらもこれ以上、建物の中で暴れられるのは不本意じゃろうて」

 

亀仙人が穏便に事を運ぼうとするが、Dr.コーチンは聞き入れず、新たな手先を差し向けた

 

「ビガーー!キシーメ!」

「ぐふ、ぐふ、ミソカッツン!」

「ふぁふぁふぁ!エビフリャー!」

 

「な、なによ、なんなのよコイツら!

とんでもない不細工な顔、あれならウーロンの面がマシに思えるわ!」

 

一目で人間でない者達に、ブルマが反応を示す

 

小柄で緑色の肌に赤い斑点のキシーメ、巨躯でありながらもとんでもない肥満体のミソカッツン、ピンク色の肌に赤モヒカンのエビフリャー

 

『武天老師よ、ワシが作った凶暴戦士の強さ、とくと味わうが良い

やれ!』

 

号令直下、三体の凶暴戦士が亀仙人に襲い掛かる

 

電撃触手のキシーメ、超柔軟な体のミソカッツン、冷凍エネルギーを飛ばすエビフリャー

 

彼等の特殊能力もさることながら、地力の戦闘力は完全に亀仙人を上回っている

 

「なにやってんのよ亀ちゃん!、さっさと倒しちゃいなさいよ!」

 

「か、簡単に言ってくれるわい」

 

経験で勝る亀仙人は直撃こそ免れており反撃もしているが、それらは全く効果がない

 

「武天老師さま、私も加勢します!」

 

残るバイオマンを掃討したクリリンが、師匠のピンチを救おうとする

 

『邪魔はさせんぞパチンコ頭、貴様の相手はコイツじゃい!』

 

Dr.コーチンが叫ぶと、闇から誰かが飛び出し、クリリンを吹っ飛ばす

 

「痛っ…誰だ!

……え!?」

 

クリリンが体勢を立て直して着地、己を攻撃した者を見るや固まった

 

「…ご、悟空?」

 

亀仙流の道着、黒髪のツンツン頭に尻尾の生えた少年、孫悟空がクリリンの前に立っていた

 

ただし両の眼を充血させ、歯を剥き出しにしてだが

 

「悟空…お前、なんで…」

 

「ぐ、がぁぁぁぁああああ!」

 

叫び声を上げて悟空がクリリンに強襲する。その戦い方は亀仙流ではなく、四つん這いになって暴れる一匹の獣の様相

 

迫る悟空に、動揺を隠せないクリリンは防戦一方となる

 

「なにやってのよ孫くん!クリリンを忘れるなんて!」

 

「どうしたんだよ悟空、ふざけてないでさっさといつもの悟空に戻れよ!」

 

「悟空さん!やめて下さい!」

 

ブルマ、ウーロン、ウパが叫ぶも悟空は一切止まらない

 

『ひゃっひゃひゃ、無駄よ無駄、最早そやつに声は届かんよ』

 

Dr.コーチンは捕らえた悟空に洗脳装置を着けたと説明、更に性格が単純な悟空に洗脳装置は極めて有効だったとも

 

「ぐっ!」

 

友を傷付ける事を躊躇うクリリンにキツい一撃が入り、その顔を歪ませる

 

「悟空、しっかりせんか!

ぐおっ、いかん…!」

 

亀仙人も悟空に気を取られ、凶暴戦士のコンビネーションをモロに喰らい、グロッキー状態となる

 

「こ、こら亀ちゃん!勝手にやられるんじゃないわよ!あんた武天老師なんでしょ!なんとかしなさいよ!」

 

「む、無茶を言ってくれるわい…」

 

ブルマの情け容赦のない野次に亀仙人はボヤく

 

『ふむ…まぁ凶暴戦士の調整はこんな所かの

そこのパチンコ頭、もう少しその猿を追い詰めてみよ。その方が研究のし甲斐がある……むっ!』

 

Dr.コーチンが話す途中で何層もの天井を突き破った何者かが、ブルマ達のいる広間に突如として落り立った

 

「こ、こんどは何だよ!」

 

ウーロンやブルマが驚く、その粉塵の中には長く黒い髪に富士額が見え、次第に収まるとそこには眼光を鋭くしたサイヤ人・ラディッツが腕組みで立っていた

 

「ラディッツ!あんた遅いわよ!」

 

ブルマの野次にラディッツは反応しない、寧ろ怒りの表情を崩さずに実弟である悟空を睨み付けている

 

 

 

だが突然の来訪者は、ラディッツだけではなかった

 

『………………ッ!!』

 

何かの音、微かに壁の向こうから聞こえる

 

『………ーーン!』

 

ブルマ達の視線がラディッツから壁に向けられる

 

『……ーーン!』

 

「これって…何よ、今度は何なのよ!」

 

まるで飛行機が空を飛ぶ時に出す、音のようなモノが聞こえる

 

『…ーーン!』

 

「なんか、こっちに近づいて来てねーか?」

 

言いながらランチが銃を向ける

 

壁という壁を壊す音、謎の飛行音の主はすぐそこまで来ると

 

『キーーーーン!!』

 

最後の壁が破壊された

 

「んちゃ!!」

 

粉砕された壁の向こうから、帽子に眼鏡の少女・アラレちゃんが元気に挨拶したのであった

 

 

 

 

 




少し急いだ感じがしますが許して下さいませ

はい、お久しぶりでございます。秋に入り生産も残業もイライラも増え、中々投稿できませんでしたが何とか書けました!



悟空のピンチに『なんて様だカカロット』と言って現れるのは王子や十円だけじゃないって事です

バイオレットVS桃白白
亀仙人VSバイオマン
クリリンVSバイオマン
ヤムチャVSバイオマン
ランチVSバイオマン

終了したバトルの中で一番ノリノリで書けたのは、何気にランチさんだったのはここだけの話です
次点でバイオレットですかね。ヤムチャは…やっぱりヤムチャでしたが、これは修行不足だったので仕方ないですね。そのうち彼にも名誉挽回のチャンスが来る…のか?

グルドに痺れ薬が効いたのは、あの悟空ですら病気で死ぬんなら別に問題ないよなぁ?と思ったからです

ラディッツとアラレちゃん、性格は真逆とも言える二人ですが、果たして…

ありがとうございました!


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