ありふれた能力世界最強(リメイク版) (コロンKY)
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第一章
1話『異世界召喚とステータス』


お久しぶりです。
よろしくお願いします。
一応リメイク版です。
あと感想があると励みになります。
なんでもいいのでどしどし送ってください。


星々が輝く銀河。

 

そこでは二人の者が最終決着をつけようとしていた。

 

そこにいるのはかつて戦った敵、『ダークマター族』に酷似している破壊神『エンデ・ニル』の本体。

対峙する者の姿はまんまるピンクの球体『カービィ』。

 

エンデ・ニルは最後の力を振り絞りビームを放った。

 

するとカービィはエンデ・ニルのビームに対抗するようにティンクルスターアライズからビームを出した。

 

お互いどんどん火力を上げていく。

 

……

 

そして決着はついた。

カービィにこれまでに冒険した仲間のパワーが集まっていく!

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『!』

 

そして遂にエンデ・ニルにビームが命中し、撃破したのだった。

 

 

 

 

が、カービィは油断していた。

カービィはティンクルスターアライズを解除しカービィの愛機『ワープスター』で帰ろうとしたその時だった。

 

エンデ・ニルを撃破した場所から別世界へと繋がる道『異空間ロード』が出現しカービィを吸い込み始めた。

 

「うわぁぁぁぁぁー!」

 

 

そしてワープスターの力を持ってしてもカービィは逃れることは出来ず吸い込まれてしまったのだった。

 

そしてカービィの視界は真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まるのを感じてボクは目を開けた。

最初に映ったのは人間の手。

それもアドレーヌより小さな手。

それに視線がいつもより高い。

 

「??異空間ロードに入るとすっぴんになる筈なのに……」

……もしかしてボク、人間になってる!?

 

周りを見ると全く見覚えのない場所。

でも広いから大きなな建物の中ということはわかった。

 

それだけじゃなかった。

アドレーヌより大きめの人間たちがたくさんいた。

人間たちも異空間ロードに巻き込まれたのかな?

……って今はボクも人間(?)だった。

自分の姿が見れないからわからない。

それにミラーのコピーのもとはあるけどむやみにコピー能力を使ったら何が起こるかわからない。

それにまだ人間たちは動揺してボクに気づいてないみたいだから余計に驚かせちゃだめだよね。

 

 

そう思ってると豪華な服を着ているお爺さんが前へ出て来た。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

「ボクはカービィ!よろしくねイシュタル!」

 

一斉にボクへ視線が集まる

 

ボク何かしたのかな?

 

イシュタルはボクへ視線を向けて

「カービィ様、でしたか?あなたも召喚されたのですか?(どう見ても10〜12くらいにしか見えませんから恐らく事故でしょう。)」

 

「召喚?ボクはエンデ・ニルを倒したら異空間ロードに吸い込まれて気がついたらここにいたんだ。」

ボクは少し警戒した。視線が怪しいから。

それに召喚ってどう言うことなんだろう。

 

「(やはり事故?ですがエヒト様がそんなことをする筈がないでしょう。……となるとやはり勇者召喚された一人と言うことになりますね。)」

 

「どうしたの?」

「なんでもありませんよ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

ボクたちは移動して十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ『大広間』に来ていた。

全員が席に着くとこの世界について説明してくれた。

簡単に言うと

人類滅亡の危機から助けてくれという内容だった

 

人間たちは半信半疑だった。

 

 

だけど『天之川光輝』って言う人間が意見をまとめて戦うことにしたみたい。

もちろんボクも困っているこの世界の人たちを助けようと思って賛成した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

『王宮』に着くと、ボクたちは真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

料理が美味しかった。

だけど吸い込みが使えなくなってて不便だった。

 

 

次の日、早速訓練と勉強が始まった。

 

 集まったボク達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。

騎士団長『メルド・ロギンス』が説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

ボクにも配られた。

さっそくステータスプレートに一滴血を垂らす。

すると……

 

==============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:星の戦士

筋力:500

体力:500

耐性:100

敏捷:500

魔力:100

魔耐:100

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネイド][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]

==============================

 

コピー能力全部載ってるのかな?

それにこの姿でコピー能力使って大丈夫かな?




面白いと思ったり続きが気になる方はお気に入りや☆評価をお願いします。



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2話『最弱といじめ』

よかったら感想聞かせてくださーい!

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みんながステータスプレートを見たことを確認したメルド団長はステータスの説明を始めた。

 

 

「全員見れたな?説明するぞ?まず、最初に〝レベル〟があるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

ボクの天職は『星の戦士』だった。

いつもどおりだね。

……と、思ったけど今のボクがコピー能力を使えるか試しにさっきコピー能力ライトを使ってみたけど服の衣装が変わるだけで問題はなかった。

そのあとアニマルとかエンジェルとか試したことで魔力を消費すれば任意の能力が使えることがわかった。

魔力の消費量は通常のコピー能力は1、ミックスとフレンズが2、武具召喚が5、スーパー能力が10だった。

……一応通常のコピー能力はコピーのもとがあるから普通に戦う分は問題ないね。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 

ボクは今まで戦ってきたからレベル1でもステータスが高かったんだと思う。

 

光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……

 

===========================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

=============================

 

さっきメルド団長が平均は10って言ってたから10倍強いってことかな?

 

何人も後に続き報告していく。

 

そこでハジメと言う男の子が報告した時に雰囲気が変わった。

 

==============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

==============================

 

1人の人間がからかい始めた。

檜山大介というらしい。

そして周りの生徒達も――特に男子はニヤニヤと嗤わらっている。

 

 

 

 

 

 

 

最後にボク。

 

ステータスを見せると「この幼女何者だ!?」と言う目で見られたけどボクは女の子じゃない。

雛祭りのご飯食べられなかったし。

(『デデデでプププな物語』より、雛祭りに男子と扱われたので男の子の自覚の方が強いカービィ)

 

そして乾いた笑みを浮かべるハジメだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二週間ほど経った。

ボクのステータスはすごく増えた。

 

==============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:星の戦士

筋力:5000

体力:5000

耐性:1000

敏捷:5000

魔力:1000

魔耐:1000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]

==============================

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

南雲ハジメは、自主練でもして待つかと、支給された西洋風の細身の剣を取り出した。

 

 と、その時、唐突に後ろから衝撃を受けてハジメはたたらを踏んだ。なんとか転倒は免れたものの抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。顔をしかめながら背後を振り返ったハジメは予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

そこにいたのは、檜山大介率いる4人である。訓練が始まってからというもの、ことあるごとにハジメにちょっかいをかけてくる人間だ。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

そこまで酷いことを言う必要はないとボクは思う。だから、

 

「やめなよ!」

 

「おいおい、いくらステータスが高いからって幼女なおまえがお兄サマな俺に勝てる訳ないだろ〜」

 

「………どうかな?コピー能力ファイター!」

 

「格好が変わっただけじゃねーか!」

 

「そっこうメガはどうショット!」

 

「チッ!」

辛うじて避ける檜山。

 

突然、怒りに満ちた女の子の声が響いた。

 

「何やってるの!?」

 

 その声に「やべっ」という顔をする檜山達。その女の子は香織と言ってハジメと仲がいいらしい。香織だけでなくその友達の雫、あと光輝と龍太郎と言う男がいた。

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」

「南雲くん!」

 

 檜山の弁明を無視して、香織は、ハジメに駆け寄る。

ハジメはカービィに守られていたので無傷で済んだ。

 

「よかった。」

 

「あ、ありがとう。カービィさん、白崎さん。助かったよ」

 

「カービィでいいよ。」

 

「いつもあんなことされてたの? それなら、私が……」

 

 何やら怒りの形相で檜山達が去った方を睨む香織を、ハジメは慌てて止める。

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから! 大丈夫だから、ホント気にしないで!」

「でも……」

 

 それでも納得できなそうな香織に再度「大丈夫」と笑顔を見せるハジメ。渋々ながら、ようやく香織も引き下がる。

 

「南雲君、何かあれば遠慮なく言ってちょうだい。香織もその方が納得するわ」

 

「ボクも手伝うよ!」

 

渋い表情をしている香織を横目に、苦笑いしながら雫が言う。それにも礼を言うハジメだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

訓練終了後

 

 

「明日から、実戦訓練の一環として『オルクス大迷宮』へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

オルクス大迷宮…-大迷宮といえば、鏡の中の大迷宮を思い出すなぁと、思いながらボクはどんどん食べてくのだった。

 




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3話『怪物と奈落』

感想ありがとうございましたぁぁぁぁ!
よし!今日も投稿するぞ!(決意)

お気に入りありがとうございます!
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現在、カービィ達は『オルクス大迷宮』の正面入口がある広場に集まっていた。

 

「これがオルクス大迷宮かぁ〜美味しい魔物はいるかなぁ〜」

とカービィはコピー能力コックで敵を料理することを考えてワクワクしていたがハジメは魔物を食べることが危険だと本を読んでわかっていた為、昨日の借りもあってなんとか説得しようとしていたがカービィの食欲は止まらないのだった。

 

あと、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着た受付嬢が笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 

なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

迷宮内はわりと明るくボクのコピー能力ライトも必要がないぐらいだった。

 

……とか考えててたら隙間という隙間から灰色のウサギが次々と湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!あとカービィは……(いくらステータスが高いとはいえ幼女が戦える訳ないし下がらせておくか)その見た目で戦わせる訳にはいかない、下がっておけ!他は交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンいう魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

とメルド団長が説明してる隙にボクに向かって美味しそうなウサギ……じゃなかったラットマンと呼ばれた魔物が一匹飛びかかってきた。

 

ウサギに気がついたメルド団長が急いでこっちへ向かうけど、ボクだって非力じゃないってことを見せよう!

 

ボクはソードのコピーのもとを出してコピー能力を得ると服が緑色になっていつもと同じソードの帽子が頭にくっついたら手にいつもと同じソードの剣が現れた。

 

そしてちょうどウサギが目の前に来る前に剣にパワーをためてソードビームで攻撃した。

「スカイエナジーソード!」

 

ウサギが真っ二つになったからコックの鍋を出して入れておく。

 

「!?(カービィが魔物を倒した?あの見た目で!?それに星の戦士と言う天職も聞いたことがなかった……ということはカービィ固有の天職ということか?……一体彼女は何者なんだろうか……)」

とかメルド団長が色々考えているうちにカービィはご飯の為に次々とラットマンを狩っていく。

 

一応光輝たちも狩っているがほとんどカービィが倒している。

 

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」

 

生徒たちの炎がラットマンたちに当たり着火した。

 

そしてほぼ同時に大爆発が起こった。

 

 気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、勇者たちの(主にカービィの)戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。最後のは明らかにオーバーキルだからな?」

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。

 

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしい。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メルド団長のかけ声がよく響く。

 

 

ハジメは特に何もしていない。一応、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したが、それだけ。ボクはハジメは強いと思うけどなぁ〜。

 

 

 

一行は二十階層を探索する。

 

先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。どうやら魔物のみたいだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

「任せて!」

ボクはコピー能力ペイントのコピーのもとを使ってコピー能力を発動するとゴリラの魔物が現れた。

 

「ロ、ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

 メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするみたいだ。

 

飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。

光輝と雫が取り囲もうとするが、洞窟みたいな地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

カービィはしっかりとカードしていた為なんとかなったが、ほかのメンバーが体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

ボクは急いでコピー能力で対応する。

「コピー能力ベル!ツインティンカー」

 

カービィは僅かな抵抗も許さずロックマウントを投げた二つベルで倒しさらに奥の壁まで跳ね返った。

 

 パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。

 

「もう大丈夫だよ!」とボクは声を掛けようとしたら、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。

 

「ぽよぉ!?」

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 

 

「素敵……」

 

 香織が、頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが……

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのはあの檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 

 

部屋の中に光が満ち、カービィ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 カービィ達は光が収まったことを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子。

 

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

 

 

橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。

 

 小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っておりまだ増え続けているよう。

 

メルド団長が呟いた〝ベヒモス〟という魔物は、更に数匹現れ大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

 

「「「「グルァァァァァアアアアア!!」」」」

 

「ッ!?」

 

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、カービィ、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

 

「……ボクもやるよ!放っておけないもん!」

 

「俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

 メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝とカービィ。

 

 どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。

 

 そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟」」」

 

 二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!

さらにハジメは錬成でヘビモスを足止めする。

夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。

「ボクだって!スーパー能力ウルトラソード!」

カービィは通常のコピー能力より比べられないほど強力なコピー能力、スーパー能力を使う。

しかしスーパー能力は魔力負担が大きい。ウルトラソード一振りで魔力を10を消費する。

しかもヘビモスの量は一振りでは片付けられない量である。

そこでカービィは以前マホロアがやっていたようにウルトラソードと円月刀の二刀流で一気に片付けた。

「はあ!」

 

ハジメは思わず、頬が緩む。

 

 しかし、その直後にハジメの表情は凍りついた。

 

 無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

 

 ……ハジメの方に向かって。

 

 明らかにハジメを狙い誘導されたものだ。

 

 

(ああ、ダメだ……)

 

 そう思いながら対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、香織が飛び出そうとして雫や光輝に羽交い締めにされているのが見えた。他のクラスメイトは青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情でハジメを見ていた。

 

 そして、ハジメの足場も完全に崩壊し、ハジメは仰向けになりながら奈落へと落ちていった。徐々に小さくなる光に手を伸ばしながら……

 

 

 

その手をカービィは掴む。

…………が、カービィまで落ちてしまった。

なんとかホバリングで飛ぼうとしたがこの体だとできなくなっていた。のでとっさにコピー能力ジェットを発動するが…………予想外の重さにカービィごと落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

ザァーと水の流れる音がする。

 

 冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。

 

ザァーと水の流れる音がする。

 

 冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。

 

 ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回すすると、声がかかる。

「大丈夫?」

カービィだ。




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4話『奈落の底』

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ハジメはボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回すすると、声がかかる。

「大丈夫?」

カービィだ。

それにあの高さから落ちたのにもかかわらず体が痛むだけだった。

「どうして?」

「助けたかったから。」

「それに、」

「それに?」

「ボク達、もう友達でしょ?」

何か裏があるとハジメは思ったが、カービィの純粋無垢な笑顔が無いと語っていた。

ハジメはカービィを信じることがにした。

 

「ここどこなんだろうね?」

カービィがふと話し掛けてきた。

 

「ここどこなんだろう。……だいぶ落ちたんだと思うけど……帰れるかな……」

「うん、きっとね。それにしてもワープスターがあればなぁ〜……ティンクルスターアライズもあるけどアレは召喚したら1秒ごとに魔力を消費するみたいだから今のボクの魔力じゃ無理だね……」

 

「ワープスター?それにしてもカービィってどこからきたの?保護者はどうしたの?」

 

「保護者?ボクは旅人だったんだ。だからどこから来たかわからない。」

「そうなんだ……」

「でもね」とカービィは言って。

「28年前」

「28年!?」

ハジメはカービィを小学生ぐらいの年齢と思っていた上に初めから力を持っているチートな奴だと思っていた。

まさか幼女の見た目で自分より年上だとは思わなかった。

 

「旅をしていたら、ポップスターという星のプププランドでデデデ大王って言う王様がみんなの食べ物を独り占めしたんだ。」

 

ハジメは少し固まって内心「え、地球じゃなくて宇宙規模の旅だったの!?」とツッコミを入れた。

 

しかも聞いたことのない星や国でさらにファンタジー世界だったのでどんな場所かどんな姿の人物がいるか、想像できなかった。

 

カービィは話し続ける。

「その時ボクはコピー能力は使えなかったんだ。使えたのはそれまでのどれほどかわからない程の旅で見につけた技、『吸い込み』『ホバリング』だけだったんだ。……って言っても今は使えないけどね。」

 

ハジメは驚いた。カービィがどれ程の長い時を過ごしたのか。さらに元々はなんの特技もない者だったということを。それを努力で身につけたということを。もしかしたら自分も努力さえすれどれ程のば時間がかかったとしても強くなれるのではないかと。

 

「じゃあプププランドはどうなったの?」

「ボクはデデデ大王を倒してみんなの食べ物を取り戻してプププランドは平和になったんだ。その時デデデ大王とその部下だった剣士のメタナイトと友達になった。」

 

「まぁデデデ大王はライバルのつもりらしいけどね〜」と続けて

 

「ボクはポップスターが気に入ってプププランドに住むことになった。それからプププランドはいくつもの銀河や世界を掛けた戦いがあったんだけどボク達はその度に救った。だからプププランドは『呆れ返るほど平和な国』って呼ばれているんだよ。」

 

「そうだったんだ。」

 

それからもしばらくカービィと話していると、視界の端で何かが動いた気がして慌てて岩陰に身を潜める。

 

そっと顔だけ出して様子を窺うと、ハジメのいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

 ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。物凄く不気味である。

 

「ボクが戦うよ!」

カービィはそいつに向かう。

「コピー能力リーフ!アッパーリーフ!」

カービィは葉っぱで出来た王冠を被って服が緑色に変わる。

そしてそいつを何処からか生えた葉っぱの柱で突き刺し殺した。

カービィはそいつを倒したが……

 

 

 

ハジメの方にも魔物がいた。

その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えているが。

 

 爪熊が、その巨体に似合わない素早さで蹴りハジメに迫り、その長い腕を使って鋭い爪を振るった。

ハジメは理解できない事態に混乱しながら、何故かスッと軽くなった左腕を見た。正確には左腕のあった場所を……

 

「あ、あれ?」

 

 ハジメは顔を引き攣らせながら、なんで腕がないの? どうして血が吹き出してるの? と首を傾げる。脳が、心が、理解することを拒んでいるのだろう。

 

 しかし、そんな現実逃避いつまでも続くわけがない。ハジメの脳が夢から覚めろというように痛みをもって現実を教える。

 

「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

 ハジメの絶叫が迷宮内に木霊する。ハジメの左腕は肘から先がスッパリと切断されていた。

 

「バジメ!」

カービィは叫ぶ。

 

しかしカービィの方には同じ魔物、数十体程の爪熊が現れた!

どうやら群れで行動していたらしい。

カービィはハジメの無事を祈って目の前の敵と戦った。

「スーパー能力ドラゴストーム!」

ドラゴストーム発動によりカービィの服は燃えるように紅くなり、頭の王冠は燃えていた。

 

「やぁっ!」

ドラゴストームで凄まじい炎の龍が爪熊を燃やし尽くす。

十体の爪熊を倒し、さらにそこから新たなが炎の龍を出し続ける。

 

まだまだ爪熊はいるが爪熊が十数匹の頃にはあと5回しかドラゴストームを発動できない状態になっていた。

そこで能力を変える。

1秒毎に魔力を10消費する能力。

あと魔力は50だから5秒持つ。

少なく感じるがそれだけあれば十分だった。

それはありとあらゆるものを吸い込むスーパー能力。

「ビックバン吸い込み!」

 

それを発動するとカービィは虹色に輝いた。

一瞬で爪熊は吸い込まれる。

抵抗するが、どんどん吸い込まれる。

魔力がどんどん消費され、遂に全ての爪熊はカービィのお腹のなかとなった。

 

 

魔力は残り………0

 

 

 

 

 

 

 

 





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5話『ハジメの豹変』

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少し時は戻ってハジメ視点

 

 

 爪熊が、その巨体に似合わない素早さで蹴りハジメに迫り、その長い腕を使って鋭い爪を振るった。

ハジメは理解できない事態に混乱しながら、何故かスッと軽くなった左腕を見た。正確には左腕のあった場所を……

 

「あ、あれ?」

 

 

「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

 ハジメの絶叫が迷宮内に木霊する。ハジメの左腕は肘から先がスッパリと切断されていた。

 

 

「ハジメ!」

カービィは叫ぶ。

眼前に迫り爪熊がゆっくりハジメに前足を伸ばす。その爪で切り裂かないということは生きたまま食うつもりなのかもしれない。カービィに助けてもらおうとしたがカービィは既に爪熊を数十体相手にしておりハジメを助けることは無理そうであった。

 

「あ、あ、ぐぅうう、れ、〝錬成ぇ〟!」

 

 あまりの痛みに涙と鼻水、涎で顔をベトベトに汚しながら、ハジメは右手を背後の壁に押し当て錬成を行った。ほとんど無意識の行動だった。

 

 

 死の淵でハジメは無意識に頼り、活路が開けた。

 

 背後の壁に縦五十センチ横百二十センチ奥行二メートルの穴が空く。ハジメは爪熊の前足が届くという間一髪のところでゴロゴロ転がりながら穴の中へ体を潜り込ませた。

 

 目の前で獲物を逃したことに怒りをあらわにする爪熊。

 

「グゥルアアア!!」

 

 咆哮を上げながら固有魔法を発動し、ハジメが潜り込んだ穴目掛けて爪を振るう。凄まじい破壊音を響かせながら壁がガリガリと削られていく。

 

「うぁあああーー! 〝錬成〟! 〝錬成〟! 〝錬成ぇ〟!」

 

 爪熊の咆哮と壁が削られる破壊音に半ばパニックになりながら少しでもあの化け物から離れようと連続して錬成を行い、どんどん奥へ進んでいく。

 

 後ろは振り返らない。がむしゃらに錬成を繰り返す。地面をほふく前進の要領で進んでいく。既に左腕の痛みのことは頭から飛んでいた。生存本能の命ずるままに唯一の力を振るい続ける。

 

 どれくらいそうやって進んだのか。

 

 ハジメにはわからなかったが、恐ろしい音はもう聞こえなかった。

カービィが倒してくれたのかもしれない。

 一度の錬成の効果範囲は二メートル位であるし(これでも初期に比べ倍近く増えている)、何より左腕の出血が酷い。そう長く動けるものではないだろう。

 

 実際、ハジメの意識は出血多量により既に落ちかけていた。それでも、もがくように前へ進もうとする。

 

 しかし……

 

「〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝れんせぇ〟 ……」

 

 何度錬成しても眼前の壁に変化はない。意識よりも先に魔力が尽きたようだ。ズルリと壁に当てていた手が力尽きたように落ちる。

 

 ハジメは、朦朧として今にも落ちそうな意識を辛うじて繋ぎ留めながらゴロリと仰向けに転がった。ボーとしながら真っ暗な天井を見つめる。この辺は緑光石が無いようで明かりもない。

 

 いつしかハジメは昔のことを思い出していた。走馬灯というやつかもしれない。保育園時代から小学生、中学生、そして高校時代。様々な思い出が駆け巡る。

 

 その美しい光景を最後にハジメの意識は闇に呑まれていった。意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと頬に水滴を感じた。

 

 それはまるで、誰かの流した涙のようだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

水滴が頬ほおに当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは意識が徐々に覚醒していくのを感じた。そのことを不思議に思いながらゆっくりと目を開く。

 

(……生きてる?……助かったの?)

 

 

自分の作った穴は縦幅が五十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。

 

 しかし、視界に入る腕が一本しかないことに気がつき動揺をあらわにする。

 

「な、なんで? ……それに血もたくさん……」

 

 暗くて見えないが明かりがあればハジメの周囲が血の海になっていることがわかっただろう。普通に考えれば絶対に助からない出血量だった。

 

 ハジメが右手で周りを探れば、ヌルヌルとした感触が返ってくる。まだ辺りに流した血が乾いていないのだろう。やはり、大量出血したことは夢ではなかったようだし、血が乾いていないことから、気を失って未だそれほど時間は経っていないようである。

 

 にもかかわらず傷が塞がっていることに、ハジメが疑問を感じていると再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。それが口に入った瞬間、ハジメは、また少し体に活力が戻った気がした。

 

「……まさか……これが?」

 

 ハジメは幻肢痛と貧血による気怠さに耐えながら右手を水滴が流れる方へ突き出し錬成を行った。

 

 そうやってふらつきながら再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。

 

 不思議なことに、岩の間からにじみ出るこの液体を飲むと魔力も回復するようで、いくら錬成しても魔力が尽きない。ハジメは休まず熱に浮かされたように水源を求めて錬成を繰り返した。

 

 やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。

 

「こ……れは……」

 

 そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

 

 その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。

こんな時カービィなら「なにそれ美味しいの?」とでも言いそうである。

アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 

 ハジメは一瞬、幻肢痛も忘れて見蕩れてしまった。

 

 そして縋り付くように、あるいは惹きつけられるように、その石に手を伸ばし直接口を付けた。

 

 すると、体の内に感じていた鈍痛や靄がかかったようだった頭がクリアになり倦怠感も治まっていく。

 

 やはり、ハジメが生き残れたのはこの石から流れる液体が原因らしい。治癒作用がある液体のようだ。幻肢痛は治まらないが、他の怪我や出血の弊害は、瞬く間に回復していく。

 

 ハジメは知らないが、実はその石は〝神結晶〟と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。

 

 

 

 その液体を〝神水〟と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。神代の物語に神水を使って人々を癒すエヒト神の姿が語られているという。

 

 ようやく死の淵から生還したことを実感したのか、ハジメはそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。

 

 そして、死の恐怖に震える体を抱え体育座りしながら膝に顔を埋めた。既に脱出しようという気力はない。ハジメは心を折られてしまったのだ。

 

 敵意や悪意になら立ち向かえたかもしれない。助かったと喜んで、再び立ち上がれたかもしれない。

 

 しかし、爪熊のあの目はダメだった。ハジメを餌としてしか見ていない捕食者の目。弱肉強食の頂点に立つ人間がまず向けられることのない目だ。その目に、そして実際に自分の腕を喰われたことに、ハジメの心は砕けてしまった。

 

(誰か……助けて……)

 

 ここは奈落の底、ハジメの言葉は誰にも届かない……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一方でカービィは全ての爪熊を倒し(吸い込み)終わり、ハジメを探していた。

 

魔力を節約したい為、消費がないコピーのもとを使って戦っていた。

 

 

しかし全く見つからない。

カービィは思い切って掘ってみることにした。

「コピー能力アニマル!」

カービィはコピー能力アニマルを発動すると熊のぬいぐるみを身に纏った。

 

※アニマルのぬいぐるみは何のアニマル(動物)か分からないのでその時その時で変えます。

 

そしてカービィはもう一度爪熊がいた場所に戻って掘った後などがないか探した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

カービィと別れてから8日目辺り、ハジメの精神に異常が現れ始めていた。

 ただひたすら、死と生を交互に願いながら、地獄のような苦痛が過ぎ去るのを待っているだけだったハジメの心に、ふつふつと何か暗く澱んだものが湧き上がってきたのだ。

 

 それはヘドロのように、恐怖と苦痛でひび割れた心の隙間にこびりつき、少しずつ、少しずつ、ハジメの奥深くを侵食していった。

 

(なぜ僕が苦しまなきゃならない……僕が何をした……)

(なぜこんな目にあってる……なにが原因だ……)

(神は理不尽に誘拐した……)

(クラスメイトは僕を裏切った……)

(ウサギは僕を見下した……)

(アイツは僕を喰った……)

(どうして誰も助けてくれない……)

(誰も助けてくれないならどうすればいい?)

(この苦痛を消すにはどうすればいい?)

 激しい苦痛からの解放を望む心が、湧き上がっていた怒りや憎しみといった感情すら不要なものと切り捨て始める。

 

 憤怒と憎悪に心を染めている時ではない。どれだけ心を黒く染めても苦痛は少しもやわらがない。この理不尽に過ぎる状況を打開するには、生き残るためには、余計なものは削ぎ落とさなくてはならない。

 

(俺は・・何を望んでる?)

(俺は〝生〟を望んでる。)

(それを邪魔するのは誰だ?)

(邪魔するのは敵だ)

(敵とはなんだ?)

(俺の邪魔をするもの、理不尽を強いる全て)

(では俺は何をすべきだ?)

(俺は、俺は……)

ハジメの心から憤怒も憎悪もなくなった。

 

 神の強いた理不尽も、クラスメイトの裏切りも、魔物の敵意も……

 

 こんな自分を友達とだからと言って助けてくれたあの笑顔も……

全てはどうでもいいこと。

 ハジメの意思は、ただ一つに固められる。鍛錬を経た刀のように。鋭く強く、万物の尽くを斬り裂くが如く。

 

 すなわち……

 

( 殺す )

 

 そこには悪意も敵意も憎しみもない。

 

 ただ生きる為に必要だから、滅殺するという純粋なまでの殺意。

 

 自分の生存を脅かす者は全て敵。

 

 そして敵は、

 

(殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す)

 

 この飢餓感から逃れるには、

 

(殺して喰らってやるっ!)

そしてハジメは目をギラギラと光らせ、濡れた口元を乱暴に拭い、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。歪んだ口元からは犬歯がギラリと覗く。まさに豹変という表現がぴったり当てはまるほどの変わりようだ。

 

 ハジメは起き上がり、錬成を始めながら宣言するようにもう一度呟いた。

 

「殺してやる」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「うおおおぉ!ホイールダッシュ!」

ハジメの血を見つけたカービィは遂にハジメを見つけられると張り切ってコピー能力ホイール(服は変化なし、赤い帽子を被るだけ、ホイールモードは相変わらずタイヤになる)でスピードを上げた。

 

「なかなか見つからない。でも諦めない!」

 

 

更に数日が経ちカービィはハジメの錬成した跡を発見した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そしてカービィとハジメと別れてから?日目。

 

「ちくしょう、なんで無いんだ……」

 

 爪熊を殺してから三日、ハジメは上階へと続く道を探し続けていた。

 

 既にこの階層の八割は探索を終えている。爪熊を喰らってからというものステータスがまた跳ね上がり、今や、この階層でハジメにとって脅威となる存在はおらず、広大ではあるものの探索は急ピッチで進められていた。にもかかわらず、いくら探しても何も見つからない。

 

 否、何も見つからないというのは語弊がある。正確には〝上階〟への道であり、〝階下〟への道なら二日前に発見している。ここが迷宮で階層状になっているのなら上階への道も必ずあるはずなのだが、どうしても見つからないのだ。

 

もしカービィがここにいるならば『ワープスター』とやらで脱出はできるかもしれない。

 

「……って何で俺はアイツのことを考えてるんだ。」

 

 なお、錬成で直接上階への道を作ればいいじゃないというダンジョンのなんたるかを軽く無視する方法は既に試した後だ。

 

 結果、上だろうと下だろうと、一定の範囲を進むと何故か壁が錬成に反応しなくなるということが分かった。その階層内ならいくらでも錬成できるのだが、上下に関してはなんらかのプロテクトでも掛かっているのかもしれない。この『オルクス大迷宮』は、神代に作られた謎の多い迷宮なのだ。何があっても不思議ではない。

 

 そういうわけで、地道に上階への道を探しているのだが、見つからなければ決断する必要がありそうだ。この大迷宮の更に深部へ潜ることを。

 

「……行き止まりか。これで分岐点は全て調べたぞ。一体どうなってんだか」

 

そこへ突然近くの壁からような音が聞こえた。

『………っ!はぁぁっ!……うぉぉぉっ!…………この壁なかなか硬い、でもボクは諦めないぞ!』

 

ハジメはまさかと思った。

こんなところにまで来てくれるようなお人好しがいるはずないと。

 

 

 

『スーパー能力!』

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間にその考えは吹き飛んだ。

 

「ウルトラソード!」

 

そして近くの壁は大きな音を立てて崩れた。

 

そこにいたのは純粋無垢な笑顔を相変わらずハジメに向ける少女……

 

「カービィ!」

 

 

「やっと見つけたよハジメ!」

 




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6話『奈落の底の再会』

……運営に検索妨害で警告くらったので原作を『ありふれた職業で世界最強』のみにしました。





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近くの壁は大きな音を立てて崩れた。

 

そこにいたのは純粋無垢な笑顔を相変わらずハジメに向ける少女……

 

「カービィ!」

 

 

「やっと見つけたよハジメ!」

 

カービィはハジメに笑顔を見せる。しかしカービィの服は土やらなんやらで相当汚れていた。

 

それはハジメを必死になって探していたからに他ならない。

数日前に誰も助けてくれないと思っていたがその間もカービィは探していたのだろう。

 

だから素直に俺は

「ありがとうカービィ。」

と心からいう。なんかキャラじゃないな。

 

とにかくお互い色々あったようだからステータス確認やカービィか食料を持っていないか聞いた。

食料に関してはカービィから驚きの声が帰ってきた。

「食べ物?それだったらそこら辺のボス以外のキャラを食べ物に変えればいいんだよ!ボクのコピー能力で」

コピー能力万能説

 

 

 

ハジメとカービィのステータス

 

============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:24

天職:錬成師

筋力:450

体力:550

耐性:400

敏捷:550

魔力:500

魔耐:500

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・夜目・気配感知・気配遮断・石化耐性・言語理解

============================

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:50

天職:星の戦士

筋力:25000

体力:25000

耐性:5000

敏捷:25000

魔力:5000

魔耐:5000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]

============================

 

ハジメはカービィのステータスを見て目を疑った。

それにあの爪熊を数十体でそこまでレベルは上がるのかと。

 

しかしカービィは自分のステータスを見ても数値は何を意味しているかわからない為「?」を頭に浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメとカービィの迷宮攻略は続く。

 

 更に五十階層は進んだ。

 

ハジメは、この五十層で作った拠点にて銃技や蹴り技、錬成の鍛錬を積みながら少し足踏みをしていた。というのも、階下への階段は既に発見しているのだが、この五十層には明らかに異質な場所があったのだ。

 

 それは、なんとも不気味な空間だった。

 

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

扉の部屋にやってきたハジメとカービィは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまでやって来た。近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかる。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかった。

 

 

「仕方ない、いつも通り錬成で行くか」

 

 一応、扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。

なので、いつもの如く錬成で強制的に道を作ろうとハジメは右手を扉に触れさせ錬成を開始した。

 

 しかし、その途端、

 

バチィイ!

 

「うわっ!?」

 

「ハジメだいじょーぶ!?」

 扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。ハジメの手からは煙が吹き上がっている。

 

悪態を吐きながら神水を飲もうとするが……いつの間にか白衣を着ているカービィから蛍光色の緑色の液体試験管を渡される。

 

ハジメは一瞬疑うがカービィに限ってそんなことは無いと思い、目を瞑ってぐいっと飲んだ。

 

すると神水には劣るがかなり怪我は回復し、体力と魔力まで回復した。

 

その直後に異変が起きた。

 

――オォォオオオオオオ!!

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 

 ハジメはバックステップで扉から距離をとり、腰を落として手をホルスターのすぐ横に触れさせいつでも抜き撃ち出来るようにスタンバイしカービィは武具召喚でプラチナソードとプラチナヘルムを装備した。

カービィの魔力もだいぶ増えた為現在はだいたい40分くらい武具召喚を発動し続けることができるので安心して戦うことができる。

 雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

「まぁ、ベタと言えばベタだな」

 

 

 

 一つ目巨人の容貌はまるっきりファンタジー常連のサイクロプスだ。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようとハジメとカービィの方に視線を向けた。

 

 その瞬間、

 

ドパンッ!

 

 凄まじい発砲音と共に電磁加速されたタウル鉱石の弾丸が右のサイクロプスのたった一つの目に突き刺さり、そのまま脳をグチャグチャにかき混ぜた挙句、後頭部を爆ぜさせて貫通し、後ろの壁を粉砕した。

 

 

「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ」

 

 

 おそらく、この扉を守るガーディアンとして封印か何かされていたのだろう。こんな奈落の底の更に底のような場所に訪れる者など皆無と言っていいはずだ。

 

 

 

 サイクロプス(左)が戦慄の表情を浮かべハジメに視線を転じる。その目は「コイツなんてことしやがる!」と言っているような気がしないこともない。

 

 ハジメは、動かずサイクロプス(左)を睥睨する。

が、次の瞬間カービィの放った『メテオエンド』によってサイクロプスは真っ二つになっていた。

 

「えいっ!」

 

そう言ってサクッと切っていた。

「幼女の姿をした悪魔だ」とハジメは思った。

 

「まぁ、いいか。肉は後で取るとして……」

 

 ハジメは、チラリと扉を見て少し思案する。

 

 そして、〝風爪〟でサイクロプスを切り裂き体内から魔石を取り出した。血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。

 

 ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 ハジメは少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 

 扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ハジメの〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 

「コピー能力ライト!」

と、カービィが言うとプラチナ装備は解除され服は白いワンピースに変わっていた。

 

そしてカービィが部屋を真昼ぐらい明るくする。

 

中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

 その立方体を注視していたハジメとカービィは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

 近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。いざと言う時、ホラー映画のように、入った途端バタンと閉められたら困るからだ。

 

 しかし、ハジメが扉を開けっ放しで固定する前に、それは動いた。

 

「……だれかいるの?」

 

 かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

 

 〝何か〟は人だった。

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメをジッと見つめていた。やがて、ハジメはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すみません。間違えました」

カービィもハジメの後に続く。

 

そう言ってそっと扉を閉めようとするハジメ。それを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠かすれて呟つぶやきのようだったが……

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

 

「うん、わかったよ。」

とカービィ。

「嫌です」

とハジメ。

カービィとハジメは顔を合わせた。

 

「「……………」」

 

そう言って、やはり扉を閉めようとするハジメ。鬼である。

「ギガトンハンマー!……やぁっ!」

その扉を破壊するカービィ。

 

ハジメは壊れた扉を形だけでも閉めて助ける気がないと言う意思表示をし、鬱陶うっとうしそうに言い返した。

 

「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。な?カービィも分かるだろ?という訳で……」

 

「待って、待って!少しは話を聞こうよ!誰かに騙されて封印されたのかもしれないよ?」

とカービィは言う。

ハジメは思った。「こいつはただのお人好しではないのか」と。

 

だがしかし、普通、囚われた女の子の助けを求める声をここまで躊躇ためらいなく切り捨てられる人間はそうはいないだろう。元の優しかったハジメは確かにピチュンしてしまったようだ。

 

すげなく断られた女の子だが、もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。

 

「ちがう!ケホッ……私、悪くない!……待って!……そこの女の子の言う通り……私……裏切られただけっ!!」

 

「ボクは女の子じゃないんだけどな〜」

 

カービィが女の子かどうかはともかくハジメとしては、何を言われようが助けるつもりなどなかった。(カービィの言葉に動揺はしたが)こんな場所に封印されている以上相応の理由があるに決まっているのだ。それが危険な理由でない証拠がどこにあるというのか。邪悪な存在が騙そうとしているだけという可能性の方がむしろ高い。見捨てて然るべきだ。カービィの言う騙された確率なんてよっぽど低い筈なのに…………

 

(なにやってんだかな、俺は)

 

 内心溜息を吐くハジメ。

 

 〝裏切られた〟――その言葉に心揺さぶられてしまうとは。

 

ハジメは頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。

 

「裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

 

 ハジメが戻って来たことに半ば呆然としている女の子。

きっとその隣にいる女の子のおかげだと心の中で感謝しながら話し始めた。

 

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

「……(コクコク)」

「殺せないってなんだ?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

 ハジメは「なるほどな~」と一人納得した。

 

 ハジメも魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 

 ただ、ハジメの場合、魔法適性がゼロなので魔力を直接操れても巨大な魔法陣は当然必要となり、碌に魔法が使えないことに変わりはない。

だがカービィなら魔法を使えると思うし使えなくとも遠距離攻撃はもっているだろうと思い結局迷うハジメ。

 

 

 だが、この女の子のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。何せ、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、勝負にならない。しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないとだろうが、それでも勇者すら凌駕しそうなチートである。

 

「……たすけて……」

 

しかしそれはカービィだけで充分ではないのかと思ってしまう。

遠距離も近距離も強いカービィはハッキリ言ってチートである。

 

 

ハジメはジッと女の子を見た。女の子もジッとハジメを見つめる。どれくらい見つめ合っていたのか……

 

 やがてハジメはガリガリと頭を掻き溜息を吐きながら、女の子を捕える立方体に手を置いた。

 

「あっ」

 

 女の子がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。

 

 ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、いや濃い紅色の魔力が放電するように迸る。

 

 しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるでハジメの魔力に抵抗するように錬成を弾いた。迷宮の上下の岩盤のようだ。だが、全く通じないわけではないらしい。少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っていく。

 

「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の俺なら!」

「待って待って」

そこでカービィの声がする。

「なんだ?」

「ボクに任せてよ!」

「え?じ、じゃあ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~〜

 

 

 

ボクはだぶんこれならと思い、一か八かでやる。

「コピー能力ニンジャ!」

するとカービィの服装はクノイチを模したようなモノになった。

 

ボクは片手に丸太を持って女の子に近づいて手を繋いだ。

 

「カービィ、忍者ごっこをしている暇は…」

とハジメは言うが無視して、

 

「かわりみのじゅつ!」

 

すると丸太と女の子の位置が入れ替わったのだ!

 

「なっ!?忍者まで再現するのかよ……なんでもありだな。」

 ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにボクとハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

 そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「……ありがとう。………とくに女の子の方。」

 

 その言葉を贈られた時の心情をどう表現すればいいのか、ハジメには分からなかった。ただ、全て切り捨てたはずの心の裡に微かな、しかし、きっと消えることのない光が宿った気がした。

 

「あとボクは女の子じゃないよ!」

 

 




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7話『新たな仲間は吸血鬼』

感想ありがとうございました!
本日も頑張ります!


 

 

 

 

 

 

ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにボクとハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

 そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「……ありがとう。………とくに女の子の方。」

 

 その言葉を贈られた時の心情をどう表現すればいいのか、ハジメには分からなかった。ただ、全て切り捨てたはずの心の裡に微かな、しかし、きっと消えることのない光が宿った気がした。

 

「あとボクは女の子じゃないよ!」

 

 

「「どう見ても女の子(だろ)」」

 

ボクは女の子じゃないって何回か言ってるけど今はあんまり意地を貼っても仕方ないからいいや。

 

「………まぁとにかく!ボクは困っている人はほっとけないから」

 

「それだけで……助けてくれたの?」

 

「うん!」

 

話してる間も女の子の表情は動かなかった。

それって声や表情の出し方を忘れるほど長い間一人で過ごしてたってこと!?

そんなになるまで閉じ込めるなんて許せないよ!

 

ハジメは「神水を飲めるのはもう少し後だな」と苦笑いしながら女の子に「立てるか?」と手を出した。

女の子はそれにピクンと反応すると、ギュギュと握り返してきた。

 

「……2人の…名前、なに?」

 

 女の子が囁くような声でハジメに尋ねる。そういえば名乗ってなかったと苦笑いを深めながらハジメとボクは答えた。

 

「ボクはカービィ、よろしくね!」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

 

 女の子は「カービィ、カービィ、ハジメ、カービィ、カービィ、ハジメ………」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。

 

「カービィの比が多くね?」とハジメは思いつつも「出会った時にあの態度の差じゃ仕方ないか……」と心の中でそうだな、きっとそうだ。と思っておくのだった。

 

 

 

そして、女の子は問われた名前を答えようとしたが、思い直したようにハジメとカービィにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

 

 

「名前ないの!?」

まさかそんな酷いことをされてるのに名前も無いなんて!?

 

「付けるってなんだ。忘れたとか?」

とハジメは呆れた態度で言う。

 

「もう、前の名前はいらない。……ハジメとカービィが付けた名前がいい」

 

「そうは言ってもなぁ……カービィは何か良い案ないか?」

 

「う〜んそうだなぁ〜髪の毛の色が月の色みたいだからムーンとか?……でも眼が紅いからレッドムーンで略して『レム』とかはどうかな?」

 

「……それなら『ユエ』なんてどうだ?俺の故郷で『月』を表すんだよ。」

 

 

「……レム?……ユエ?」

 

思いのほか2人ともきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きをした。

そしてどことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

「……それでどっちにするんだ?」

 

「……んっ。……でもどっちもいいから今日から2つ合わせてレムユエ。ありがとう」

 

「なぁカービィ?」

 

「何?」

 

「服をコピー能力で出せないか?レムユエの?いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

 

「ハジメのエッチ」

とレムユエは呟いた。

 

「……」

 

「どんな服?ボクってあんまり服見たことないからさ。……勇者召喚された時にメイドさんって言う人たちの服とかハジメ達の制服は見たけど。」

 

ハジメは一瞬メイド服はありか?と思ったがカービィもいるしとブンブンと首を振って学校の女子制服を頼むことにした。

 

 

「コピー能力マジック!」

するとカービィの服装は頭にシルクハットが着いただけだった。

 

「そんな能力もあるのか……」

 

カービィは大きな紅い布を何処からか用意してユエに被せた。

 

「いっくよー3……2……1……はいっ!」

 

合図と共にカービィが紅い布を取るとレムユエに女子制服をサイズぴったりで着ていた。

 

「おぉ、便利だな。」

 

ハジメは、その間にカービィからあらかじめ数個貰っていた薬を一本飲んで回復する。

活力が戻り、脳が回転を始める。そして〝気配感知〟を使い……凍りついた。とんでもない魔物の気配が直ぐ傍に存在することに気がついたのだ。

 

 場所はちょうど……真上!

 

 ハジメがその存在に気がついたのと、ソレが天井より降ってきたのはほぼ同時だった。

 

 咄嗟とっさに、ハジメはレムユエに飛びつき片腕で抱き上げながら「カービィ、避けろ!」と言ってから全力で〝縮地〟をする。一瞬で、移動したハジメが振り返ると、直前までいた場所にズドンッと地響きを立てながらソレが姿を現した。

 

その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

 一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。明らかに今までの魔物とは一線を画した強者の気配を感じる。自然とハジメの額に汗が流れた。

 

が、カービィの姿が見つからない。

辺りを見渡しても見つからない。

一体どうしたものかと思っていると突然「ズドン!!」とサソリの方から音がしてその方向を向くと鋼色のカービィの像?がありサソリがひっくり返っていた。

 

そして鋼色のカービィの像?が動き出したことからアレもカービィのコピー能力の一種だと確信した。

 

「……あれは?」

 

「カービィだ。」

 

「?????……もう一回言って」

 

「アレはカービィだな。それもカービィの能力、コピー能力を使ってる状態だろうな。」

 

あれこそコピー能力メタル。

動きこそ遅いがボス級の魔物以外は触れるだけで倒すことのできる程の重さとパワーがあり、ボス級ですらもダメージを与えることが出来ないと言う剛鉄の能力である。

 

命の危機を感じたサソリは後ずさる。

のそのそと歩きサソリに近づくカービィ。

カービィの動きが遅いことを利用してサソリは背後に回って攻撃するが……

 

 

毒針が刺さらなかった。

そこへカービィが向きを変えてサソリを押しつぶした。

 

「グゥギィヤァァァアアア!?」

 

「えげづねぇな。」

 

「ん、硬そう。」

 

 

そしてコピー能力を解除したカービィはハジメとレムユエに笑顔でよって行くのだった。

 

「悪魔だこいつ」とハジメが心の中で思ったのは秘密である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてサソリモドキを倒したボク達は、サソリとサイクロプスの素材やら肉やらをハジメの拠点に持ち帰った。

 

 

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

「……マナー違反」

「じゃあカービィは何歳だ?」

「……わからない。」

そういえば数えたことなかったなぁ〜。

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

「……私が特別。〝再生〟で歳もとらない……」

 

 

 

「それで……肝心の話だが、レムユエはここがどの辺りか分かるか? 他に地上への脱出の道とか」

 

「ボクが一気にウルトラソードで斬る?」

 

「流石にそれはやめとけ」

 

「はーい。」

 

「……わからない。でも……」

 

レムユエにもここがどの辺なのかはわからないみたい。

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

 

「「反逆者?」」

 

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

 

 

レムユエによると神代に、神に逆らって世界を滅ぼそうと計画した七人の眷属がいたそうだ。

しかし、その計画は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。

その果てというのが、今の『七大迷宮』といわれているらしい。

この『オルクス大迷宮』もその一つで、奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているみたいだ。

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことか」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「だぁー、ちくしょぉおおー!」

 

「……ハジメ、ファイト……」

とレムユエ。

 

「頑張れハジメ」

とコピー能力ホイールを発動してタイヤ姿のカービィ。

 

「お前らは気楽だな!」

 

 そんな生い茂る雑草を鬱陶しそうに払い除けながら、ハジメ(達)が逃走している理由は、

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 二百体近い魔物に追われているからである。

 

カービィ達が準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調よく降りることが出来た。ハジメの装備や技量が充実し、かつ熟練してきたからというのもあるが、レムユエの魔法とカービィが凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。

 

が、そろそろ体力的にきつい。

頼みの綱は……

「カービィ、なんとかできるか?」

 

「う〜ん、ちょっと多いけど頑張ってみるよ!スーパー能力ミラクルビーム!」

 

カービィはまた新たな能力を使うとカービィの服装は通常のビームより大きな帽子と杖を装備していた。

 

 

「一体いくらあるんだ」とハジメは思いながらレムユエにハジメが分かる範囲でカービィのコピー能力を説明した。

 

「やぁっ!」

 

その間、カービィは大きなビームの玉を出して操作し、そこら中の敵を纏めて倒した。

 

 

レムユエは悔しそうに、

「……私も、役に立つ。……仲間だから」

と呟くのだった。

 

 

確か、少し前に一蓮托生の仲間なのだから頼りにしているみたいな事を言ったような、と、ハジメは首を傾げる。

 

 

「はは、いや、もう十分に役立ってるって。カービィはオールラウンダー、レムユエは魔法が強力な分、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は俺の役目だ。」

 

 

そしてしばらくするとハジメの〝気配感知〟に続々と魔物が集まってくる気配が捉えられた。

 

 

「なんでどいつもこいつも花つけてんだよ!」

「……ん、お花畑」

「でもお花は美味しくないよ?」

 

 ハジメ達の言う通り、現れた十体以上のラプトルは全て頭に花をつけていた。それも色とりどりの花を。

 

 思わずツッコミを入れてしまったハジメの声に反応して、ラプトル達が一斉にハジメ達の方を見た。そして、襲いかかろうと跳躍の姿勢を見せる。

 

 

 

 結局数秒もかからず殲滅に成功した。しかし、ハジメの表情は冴えない。レムユエがそれに気がつき首を傾げながら尋ねた。

 

「……ハジメ?」

「……レムユエ、カービィ、おかしくないか?」

「?」

「ちょっと弱すぎる」

 

「……ボクはスーパー能力で一気に倒しちゃったから分かりにくかったけど言われてみればそうかも!」

 

 ハジメの言葉にハッとなるカービィとレムユエ。

 

 

と、その時だった。

「レムユエ、カービィ、ヤバイぞ。三十いや、四十以上の魔物が急速接近中だ。まるで、誰かが指示してるみたいに全方位から囲むように集まってきやがる」

「どうするハジメ?」

 

「……逃げる?」

 

「……いや、この密度だと既に逃げ道がない。一番高い樹の天辺から殲滅するのがベターだろ」

 

「ん……奥の手を使う。」

レムユエは、2人に言葉以上の何かを見たのか納得したように頷き、いきなりハジメに抱きついた。

 

「お、おう?どうした?」

 

 状況が状況だけに、いきなり何してんの?と若干動揺するハジメ。

そんな隙は無いのだ。早く逃げなければならない。

 

 だが、そんなことは知らないとレムユエはハジメの首に手を回した。

 

「ハジメ……信じて」

 

 そう言ってレムユエは、ハジメの首筋にキスをした。

 

「ッ!?」

 

 否、キスではない。噛み付いたのだ。

 

 

 

 〝信じて〟――――その言葉は、きっと吸血鬼に血を吸われるという行為に恐怖、嫌悪しても逃げないで欲しいということだろう。

 

「……ごちそうさま」

 

 そう言うと、レムユエは、大軍に向けて片手を掲げた。同時に、その華奢な身からは想像もできない莫大な魔力が噴き上がり、彼女の魔力光なのだろう――黄金色が暗闇を薙ぎ払った。

 

 そして、神秘に彩られたレムユエは、魔力色と同じ黄金の髪をゆらりゆらゆらとなびかせながら、一言、呟いた。

 

「蒼天」

 

 その瞬間、大軍の上空に直径十メートルはありそうな青白い炎の球体が出来上がる。

 

「おう、かましてやれ!」

 

といい終わる前に何故か帽子の色が変わったカービィが何人にも増えて次々と倒していた。

 

 

そしてそこにレムユエの蒼天が降り注ぐ。

 

 

 

ハジメは固まっていた。

「ハジメ?」

レムユエの声でふと我に帰る

 

見渡すと魔物も居ない。カービィも1人だった。

「夢か……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

迷宮攻略に勤しんでいた。

 

 そして遂に、次の階層でハジメが最初にいた階層から百階目になるところまで来た。

 

 

 

ユレムエと出会ってからどれくらい日数が経ったのか時間感覚がないためわからないが、最近、レムユエはよくこういうまったり顔というか安らぎ顔を見せる。

 

 

 

「ハジメとカービィ……いつもより慎重……」

「うん? ああ、次で百階だからな。もしかしたら何かあるかもしれないと思ってな。一般に認識されている上の迷宮も百階だと言われていたから……まぁ念のためだ」

 

「うん、ちょうど百階だからボスも居ると思うからね〜」

 

ちなみに今のハジメとカービィのステータスは………

 

=============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:76[+レベル:???]

天職:錬成師

筋力:1980[+19800]

体力:2090[+20900]

耐性:2070[+20700]

敏捷:2450[+24500]

魔力:1780[+17800]

魔耐:1780[+17800]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

============================

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:150

天職:星の戦士

筋力:75000

体力:75000

耐性:15000

敏捷:75000

魔力:15000

魔耐:15000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]

============================

 

ハジメは魔物の肉を食べさらにステータス上昇した。

カービィは最大レベルの100を超えてなおレベルが上がってハジメは驚いていた。

(カービィの可能性は無限大の為最大レベルも止まることを知りません)

 

そして魔物の肉をカービィがコックで調理したモノを食べるとそれは経験値の塊でレベルがプラス値としてハジメのステータスに現れた。

 

しばらくして、全ての準備を終えたハジメとカービィとレムユエは、階下へと続く階段へと向かった。

 

 




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8話『ヒュドラ』

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全ての準備を終えたハジメとカービィとレムユエは、階下へと続く階段へと向かった。

 

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。

 

二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「大きな扉だね」

「……これはまた凄いな。もしかして……」

「……反逆者の住処?」と、レムユエは呟いた。

 

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

「……んっ!」

 

「ようやくここから出られるんだね!」

と、三人は喜んだ。

 

 

 

 

 そして、三人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

 

その瞬間、扉と三人の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。

赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

「ハジメ、これって!」

 

「あぁ……」

 

カービィとハジメは、その魔法陣に見覚えがあった。

忘れようもない、あの日、二人が奈落へと落ちた日に見たトラップの魔法陣と同じものだ。

 

 

だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「おいおい、なんだこの大きさは? マジでラスボスかよ」

 

「……大丈夫……私達三人は、負けない……」

 

「うん!いくよ、二人とも!」

 

「あぁ!」

「ん!」

 

 

 魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする三人。

光が収まった時、そこに現れたのは……

 

 体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が三人を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が三人達に叩きつけられた。

 

「ランディアよりも首が多い!?」とカービィは驚く。

 

ランディアとはポップスターから離れた……と、言うより別次元にあるハルカンドラと言う星に住む守護者である。

 

また、今は滅びたハルカンドラの技術は凄まじく、判明している物だけでも聴く者の心に音が流れるオルゴール(『メタナイトと銀河最強の戦士』より)や『天がける船ローア』と言う次元を超える船、さらには銀河を飛ぶ機械仕掛けの星『大彗星ノヴァ』、夢を産む不思議なアイテム『スターロッド』、無限の力を秘めていると言う『マスタークラウン』(『星のカービィWii』より)など物凄いアイテムばかりである。

 

 

そして同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開いた。

カービィは危険を察知してコピー能力を急いで使う。

 

「コピー能力ミラー!ミラーぶんしん!リフレクトフォース!」

カービィはコピー能力ミラーを発動し、自身の数を増やしてハジメとレムユエを庇って攻撃を反射した。

 

あまりの威力にヒュドラは数十秒動きを止める。

 

ハジメは驚いたように「どうなったんだ?」と呟きながらこの間のたくさんカービィがいたアレは夢ではなかったのだと確信する。

 

「攻撃を跳ね返したんだ!今のうちにだよ!」とカービィは呼びかける。

 

「わかった。」

「んっ!」

 

 

ドパンッ!

 

「〝緋槍〟!」

 

「コピー能力スナイパー!スナイプショット!マジカ・スターアロー!スカイショットシャワー!」

カービィはミラーでは効率が悪いからと思い能力をスナイパーに切り替える。

するとカービィの服装はいつもの帽子といつもより少し大きめの弓を装備していた。

 

「〝緋槍〟! 〝砲皇〟! 〝凍雨〟!」

 

ドパァン!ドパァァァン!!

 

「ねらいうち!スカイショット!ジャンピングスナイパー!」

次々と攻撃がヒットする。

 

「みんな来るよ!!」

 

ハジメ、ユエ、カービィは下がる。

 

ヒュドラは再び動き出し吠えた。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!!!!!」」」」」」

 

 

怒り狂ったヒュドラは七つの頭でその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。

極光は瞬く間に三人に迫る。しかもレムユエは魔力枯渇で動けない。

 

「だったらコピー能力ストーン!」

カービィの服装はコピー能力メタルの茶色の色違いの姿になった。

「ヘビーおしつぶし!」

カービィは空中でレムユエの前で巨大な石に変身し、攻撃を凌いだ。

 

その隙にレムユエはなんとか物陰に隠れることに成功した。

しかしあまりにも攻撃時間が長く遂に石ころへんしんは解除されてしまいヒュドラの極光を直撃してしまったのだ。

 

「「カービィ!?」」

 

 

カービィはコピー能力が解除されたがその場所から動いていなかった。全身から煙を吹き上げている。地面には粉砕された石の残骸が転がっていた。

 

「カ、カービィ!?」

「……嘘だろ!?」

 

ハジメは何で自分が前に出なかったんだ!と後悔する。

 

 カービィは答えない。そして、そのままグラリと揺れると後ろに倒れこんだ。

 

「「カービィ!」」

 

仰向けにしたカービィは容態は酷いものだった。

そして次第にカービィの全身が灰になって消えてしまった。

 

「「  」」

二人はカービィの死に言葉も出なかった。

 

だが悲しむような時間をヒュドラが待つはずもない。

今度は直径十センチ程の光弾を無数に撃ちだしてきた。

まるでガトリングの掃射のような激しさだ。

 

 

ハジメは悲しみを心に押さえ込みレムユエにカービィから貰ったあの薬無理やり飲ませ魔力と体力を回復させつつ物陰に隠れながら攻撃をした。

 

「……今度は私が助ける……」

そう決意の言葉を残し、レムユエは柱を飛び出していった。

 

「おいっ!行くなレムユエ!」

 

レムユエは少しでも状況を打開しようと、どんどん魔法を放った。

 

 しかし、

 

「えっ」

 

 思わずレムユエが声を漏らす。

確かに数が多い分一発の威力を下げてたとは一つ一つが言えそれなりの威力を持った一撃だったはずなのに、銀頭は浅く傷ついただけで大したダメージを受けた様子がなかったのだ。

レムユエの表情に絶望の影が差す。

しかし、自分が敗北すれば次に狙われるのはハジメだ。

レムユエは歯を食いしばって再び回避に徹する。

 

 だが、そんなワンパターンがいつまでも続くはずがなかった。

銀頭の眼がギラリと光ると二度目の極光が空間を軋ませながら撃ち放たれた。

光弾の影響で回避ルートが限られていたレムユエは、自ら光弾に飛び込み吹き飛ばされることで、どうにか極光のもたらす破滅から身を守る。

 

 しかし、その代償に腹部に光弾をまともに喰らって地面に叩きつけられた。

 

「うぅ……うぅ……」

 

 体が動かない。直ぐさま動かなければ光弾に蹂躙される。

わかっていて必死にもがくレムユエだが、体は言うことを聞いてくれない。

〝自動再生〟が遅いのだ。どうやらヒュドラの攻撃には毒もあるようだった。

 

 

 

 

 

レムユエはいつしか涙を流していた。

悔しくて悔しくて仕方ないのだ。

自分では仲間を守れないのかと。

 

銀頭が、倒れ伏すレムユエに勝利を確信したように一度「クルゥアアン!」と叫ぶと光弾を撃ち放った。

 

 

その時だった。

 

 

 

『ドガァァァォァァン!!!!』と突如何処からかミサイルがやって来てヒュドラに激突し爆破したのだ。

 

 

「えっ?」

 

 

そこにいたのはさっき自身を庇って死んだ筈の少女………

 

 

「「カービィ!?」」

 

「ふぅ〜。危ない所だったね……」

 

「なんで………」

 

「話は後!早く倒すよ!」

今更死にぞこないが何だとヒュドラは問答無用で再び極光を放った。

 

「スーパー能力ドラゴストーム!やぁっ!」

 

カービィのドラゴストームとヒュドラの極光がぶつかり合い、押し返した!

 

「レムユエ、血を吸え」

静かな目、静かな声でレムユエに促す。

ハジメは飛んでくる光弾をひらりひらりと交わしながら、ハジメはレムユエをきつく抱きしめ首元に持ち上げる。

 

「……やるぞレムユエ!カービィ!俺達が勝つ!」

「……んっ!」

「うん!」

ハジメの強烈な意志の宿った言葉に、ユエもカービィもまた力強く頷いた。

 

 ハジメは見ていた。揺らぐ決意を必死に繋ぎ留めながらレムユエがだった一人で戦っている光景を。

魔法で必死に戦い、嬲られるように追い詰められていく姿を。

そして、極光が放たれ地面に倒れ伏し止めを刺されそうな瞬間を。

 

 ハジメの胸中に激烈な怒りが満ちた。

自分は何をしている?

いつまで隠れていれば気が済む?

こんな所で仲間を奪われる理不尽を許容するのか?

あんな化物如きに屈するのか?

 

否!!断じて否!自分の、自分達の生存を脅かすものは敵だ!

 

 

敵は、

 

 

「殺すっ!!」

 

 その瞬間、頭のなかにスパークが走ったような気がし、ハジメは一つの技能に目覚めた。〝天歩〟の最終派生技能[+瞬光]。知覚機能を拡大し、合わせて〝天歩〟の各技能を格段に上昇させる。ハジメはまた一つ、〝壁を超えた〟のだ。

 

 この技能でハジメは緩やかに飛んでくる光弾をギリギリでかわしているのである。

 

 やがて、レムユエが吸血を終え完全に力を取り戻した。

 

「レムユエ、合図をしたら〝蒼天〟を!カービィはウルトラソードを頼む!それまで、回避に徹しろ」

 

「「ハジメは?」」

 

「俺は、下準備」

 

「ん!」

「わかった!」

 

ハジメはドンナーを撃ち尽くすと〝空力〟で宙へ跳躍する。今までの比でないくらい細やかなステップが可能になっており、天井付近の空中を泳ぐように跳躍し光弾をかわす。

 

 いい加減苛立ったのか銀頭が闇雲に極光を放った。スッとかわしたハジメはニヤリと笑う。ハジメは看破していた。銀頭が極光を放っている間は硬直していることを。そして、リロードしたドンナーを再び六箇所に向かって狙い撃った。

 

 

 ハジメは天井にドンナーで穴を開け、空中で光弾をかわしながら手榴弾を仕込みつつ、錬成で天井の各部位を脆くしておいたのである。そして、六箇所をほぼ同時に撃ち抜き爆破した。

 

ただの質量で倒せたら苦労しないのだ。〝縮地〟で押しつぶされ身動きが取れない銀頭に接近し、錬成で崩落した岩盤の上を駆け回りそのまま拘束具に変える。同時に、銀頭の周囲を囲み即席の溶鉱炉を作り出した。その場を離脱しながら焼夷手榴弾などが入ったポーチごと溶鉱炉の中に放り込み、叫ぶ。

 

「カービィ!レムユエ!」

「んっ! 〝蒼天〟!」

「わかった。スーパー能力!ウルトラソード!!……………やぁっ!!」

 

レムユエは自身最大の魔法で攻撃をし、カービィはかつてのマホロアとの戦いのようにウルトラソードでヒュドラを何回も切った。

 

 

 

「グゥルアアアア!!!」

 

 銀頭が断末魔の絶叫を上げる。何とか逃げ出そうと暴れ、光弾を乱れ撃ちにする。壁が撃ち崩されるが、ハジメが錬成で片っ端から修復していくので逃げ出せない。極光も撃ったばかりなので直ぐには撃てず銀頭は為す術なく巨大な剣と高熱に挟み撃ちにされた。

 

ハジメの感知系技能からヒュドラの反応が消える。

 

 

 

すると何処からか例の音楽が聴こえてくる

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜』

 

「なんだこの音楽……」

「……なにこれ」

 

すると突然カービィが三人に増えた。

 

「「!?」」

 

そして踊り始めた。

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜』

 

そして曲の謎の強制力でハジメとレムユエの身体も勝手に踊りだした。

 

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』

 

「「「ハァィ!」」」

 

 

と、最後にハジメとレムユエも謎のダンスを踊らされると体力と魔力が全回復、それどころかハジメの食べられた腕すら治っていた。

 

これはカービィにじっくり『おはなし』する必要がありそうだなと思いつつハジメはカービィに寄って行ったのだった。







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9話『反逆者の住処』

感想、評価、お気に入り、ありがとうございましたっ!

お気に入り(21→30)
評価(1×1、4×1、5×1、9×4、10×1)

遅くなりましたがどうぞ!


『反逆者の住処』という場所に着いた三人だがハジメはカービィに「おはなし」をしていた。

 

 

 

「…………それでまず、何でカービィが生きてるんだ?あの時カービィはヒュドラの極光をくらって灰になった筈だろ?」

 

「それについてはね……ボクは残機があるんだ」

 

「残機!?それって命が複数あるってことか?」

 

 

「うん、ボクの残機は最大99で、ヒュドラに一回殺されたから残機はあと98だね。」

 

「98!?…………はぁ…まぁこの話はもういい。次はあのダンスだが、あれは何だ?」

 

「あのダンス?あれはボスを倒すと何処からか音楽がなって踊らないといけないんだ。でも踊ってる時は死なないし、体力、魔力、それに怪我も治るんだ。」

 

「……なんでもありだな。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

カービィ、ハジメ、レムユエの三人は三階の奥の部屋に向かった。

三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 

 

それよりも注目してしまうのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影。人影は骸だった。ローブを羽織っている。

 

 

おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているよう。

 

「まぁ、地上への道を調べるには、この部屋がカギなんだろうしな。俺の錬成も受け付けない書庫と工房の封印……カービィと俺で調べるしかないだろう。レムユエは待っててくれ。何かあったら頼む。」

「ん……気を付けて」

 

ハジメはそう言うと、カービィと共に魔法陣へ向けて踏み出した。

そして、二人が魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

やがて光が収まり、目を開けた二人の目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

 

 中央に立つハジメとカービィの眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

「おすかーおるくす?よろしくねボクはカービィ!」

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君たちに神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。

ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいためと理解できたので大人しく耐えた。

カービィは自身に新たな能力を可能性を感じた。

 

 

レムユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。

 

「うん? 別にどうもしないぞ? 元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないし。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。カービィもだ。それだけだ。……レムユエは気になるのか?」

 

 

「私の居場所はここ……他は知らない」

 

 

「……そうかい」

 

 若干、照れくさそうなハジメ。それを誤魔化すためか咳払いを一つして、ハジメが衝撃の事実をさらりと告げる。

 

「あ~、あと何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだ」

「……ホント?」

「ボクは新しいコピー能力を手に入れたよ!」

「マジか……」

「……見てみたい。」

 

「わかったよ!コピー能力クリエイト!」

するとカービィの服装はそのままであっま。

「どんな技が使えるんだ?」

「……んっ、気になる。」

 

「そうだね、じゃあこれなんかどう?」

とカービィが言うと何処からか剣が出現したり、弓が出てきたり、杖が出てきたりした。

カービィはそのあと剣の雨を降らせることもできると言った。

 

「新しいコピー能力は今までの通常のコピー能力の武器全てを無条件に出せるみたいだね。しかも空中に浮かせられるみたい。」

 

 

「「………」」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 三人が漁り…じゃなくて設計図をチェックしていると他の資料を探っていたレムユエが一冊の本を持ってきた。

どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。

 

 その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。

 

「……つまり、あれか? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」

「……かも」

「ボクも新しいコピー能力が手に入るってことだね〜」

 

 手記によれば、オスカーと同様に六人の〝解放者〟達も迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……

 

「……帰る方法見つかるかも」

 

レムユエの言う通り、その可能性は十分にあるだろう。実際、召喚魔法という世界を越える転移魔法は神代魔法なのだから。

 

「だな。これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」

「んっ」

「おおっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

この二ヶ月で三人の実力や装備は以前とは比べ物にならないほど充実している。例えば二人のステータスは現在こうなっている。

 

 

 

====================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:10950[+10950]

体力:13190[+13190]

耐性:10670[+10670]

敏捷:13450[+13450]

魔力:14780[+14780]

魔耐:14780[+14780]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

====================================

 

カービィはというと……

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:200

天職:星の戦士

筋力:100000

体力:100000

耐性:20000

敏捷:100000

魔力:20000

魔耐:20000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]・神代能力[+クリエイト]

============================

 

ハジメ、レムユエ「「絶対カービィのステータスおかしいって!」」

 

その言葉に「?」とカービィは首を傾げたのだった。

 




コピー能力クリエイトはリメイク前とは全く違う能力にしました。





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第二章
10話『悪魔少女は歌う』


感想、お気に入りありがとうございました!
(お気に入り30→32)

規約違反になったので歌詞を減らしました。


三人は脱出の魔法陣に名乗り光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメ人の頬が緩む。

 

 やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは……

 

 洞窟だった。

 

「なんでやねん」

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「うん、ボクも洞窟とか行ったときは出口は普通じゃなかったからね〜」

 

 

「あ、ああ、そうか。確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

 

 途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。三人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメとカービィはこの数ヶ月、レムユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

三人はそれを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。

それから互いに笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

 近づくにつれ徐々に大きくなる光。

外から風も吹き込んでくる。

奈落のような澱んだ空気ではない。

ずっと清涼で新鮮な風だ。

ハジメは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

 そして三人は同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 

 

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。

断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。

深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の『グリューエン大砂漠』から東の『ハルツィナ樹海』まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 

 『ライセン大峡谷』と。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ボク達はついに外に出たんだ♪

ひさびさに外に出たから歌いたい気分♪

 

「ねぇ二人とも、せっかく外に出たんから歌っていい?」

とボクは二人に聞いた。

 

「歌?いいぞ」

「んっ!聞きたい!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

俺はハジメ。

ついに地上に出ることに成功した俺たちはカービィの歌を聴く事になった。

カービィが歌うんだからきっとコピー能力を使って凄い歌が聴けるんだろうなぁ〜

 

 

………と、この後何が起きるか知らない俺とレムユエはそう思っていた。

 

 

 

「じゃあ歌うよ!コピー能力マイク!」

 

カービィは手にマイクを持って歌い始めたのだった。

 

「かぁーびぃー!ゆーめーのーたーんばりーん〜〜ならしはーじめーよーいまーすぐーー…………」

 

 

 

めっちゃ音痴だった。

やばい、耳が痛いとか言う次元じゃない!

 

さっきまでいた洞窟は崩れ辺りの魔物は死んで逝く。

 

隣を見ると……レムユエが倒れた。

 

 

くそっ!なんとかあの兵器を止めなければ!

音痴とか言うレベルじゃねぇ!

 

たぶん効かないと思うが、カービィに向かってドンナーを使う。

 

ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!

 

「だべちゃえばーへぇきー!」

 

だがカービィの歌から音符(物理)が現れ弾丸を弾いた。

マジか。

 

やばい。

意識が遠のいてきた。

頑張れ俺!

ここで倒れたら絶対夢に出て来る!

 

 

その音符(物理)は次々と現れこれには物理ダメージもあるようだ。

 

 

と、分析してると目の前に音符(物理)が!

だが、

 

 

 

「なにかがーおーこる〜あーしーたええぇーーー!」

 

 

ちょうど歌が終わり音符も消えた。

 

「よかった」

生きてて。

 

「よかった?ありがとう!じゃあもう一曲!」

 

「よ〜し!頑張るぞ!」

 

 

「いつでもぐーすーかーぁーびぃー!ほーしーのかーびぃー!〜……………」

 

そこで俺の意識は途切れた。

 

その歌で樹海が崩壊したのは後で知った。

(無いとは思うが)次は気をつけよう。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

意識が戻った俺たちはカービィのティンクルスターアライズで高速移動している。

 

カービィの歌で道には魔物一匹もいなかった。

恐るべしカービィの歌。

 

しばらくするとウサミミ少女がいた。

地面に身を守るように丸まっているウサミミ少女を見やる。

 

「……何あれ?」

「……兎人族?」

「なんでこんな場所にいるんだ?兎人族って谷底が住処なのか?」

「……聞いたことない」

 

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

「……悪ウサギ?」

 

三人をウサミミ少女は発見したらしい。

 

「だずげでぐだざ~い!音で死んじゃう!死んじゃうよぉ!だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!もゔぎぎだぐないれすぅ〜!」

 

 

 

滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。

どうやらカービィの歌の被害者のようだ。

カービィは悪気がないようだが。

と言うかアレは絶対自覚がないな。

 

 

ハジメに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

「いや、もう音は聞こえないだろ。」

ティンクルスターアライズで逃げる俺たち。

ああいうのは関わると面倒だからな。

 

「!?いやです!」

そう言ってウサミミ少女はティンクルスターアライズに追いつくスピードで追いかけてくる。

 

「おい、こら。存在がギャグみたいなウサミミ! 何で追いかけてくるんだ!」

 

 遂に追いついてハジメのコートの裾をギュッと掴み、

「絶対に離しません!」としがみつくウサミミ少女を心底ウザったそうに睨むハジメ。

後ろの席に座るレムユエが、離せというように足先で小突いている。

 

「い、いやです! 今、離したら見捨てるつもりですよね!」

 

「当たり前だろう? なぜ、見ず知らずウザウサギを助けなきゃならないんだ」

 

「そ、即答!? 何が当たり前ですか! あなたにも善意の心はありますでしょう! いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!」

 

「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つぅか自分で美少女言うなよ」

「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」

 

 頬を染めて上目遣いで迫るウサミミ少女。

あざとい、実にあざとい仕草だ。

涙とか鼻水とかで汚れてなければ、さぞ魅力的だっただろう。

実際に、近くで見れば汚れてはいるものの自分で美少女と言うだけあって、かなり整った容姿をしているようだ。

白髪碧眼の美少女である。並みの男なら、例え汚れていても堕ちたかもしれない。

 

いい加減本気で鬱陶しくなったハジメは脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろした。

 

「へぶぅ!!」

 

 呻き声を上げ、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。

それを冷たく一瞥した後、ハジメは何事もなかったようにティンクルスターアライズに乗り直して先へ進もうとする。

 

 その気配を察したのか、今までゴロゴロ地面を転がっていたくせに物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!」と再びハジメの腰にしがみつくウサミミ少女。やはり、なかなかの打たれ強さだ。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 そして、なかなかに図太かった。

だが助ける気なんて……。

と、思ったがハジメはティンクルスターアライズを誰が操縦しているか思い出す。

 

カービィだ。

「困ってるの?ボク達に任せてよ!!」

 

「助けてくれるんですか?ありがとうございますぅ!」

 

 ハジメは、ティンクルスターアライズにしがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 




内容変える所が少なかったので歌を変えました。


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11話『残念ウサギ』

感想ありがとうございました!


今回はあまり改変点はありません。
それではどうぞ



「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 そして、なかなかに図太かった。

だが助ける気なんて……。

と、思ったがハジメはティンクルスターアライズを誰が操縦しているか思い出す。

 

カービィだ。

「困ってるの?ボク達に任せてよ!!」

 

「助けてくれるんですか?ありがとうございますぅ!」

 

 ハジメは、ティンクルスターアライズにしがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 

客観的に見ればシアは美少女だ。

シアは少し青みがかったロングストレートの白髪に、蒼穹の瞳。

眉やまつ毛まで白く、肌の白さとも相まって黙っていれば神秘的な容姿とも言えるだろう。

手足もスラリと長く、ウサミミやウサ尻尾がふりふりと揺れる様は何とも愛らしい。

ケモナー達が見れば感動して思わず滂沱の涙を流すに違いない。

しかしシアは残念ウサギだった。

 

矜持を傷つけられたシアは言ってしまった。

カービィとレムユエを指差して言ってはならない言葉を……

 

「で、でも!胸なら私が勝ってます!二人の女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟

 

 峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊こだまする。

自分が女の子と全く思ってないカービィは頭に「?」を浮かべているが………

レムユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリとティンクルスターアライズから降りた。

 

 ハジメは「あ~あ」と天を仰ぎ、無言で合掌する。

ウサミミよ、安らかに眠れ……。

 

 ちなみに、レムユエは着痩せするが、それなりにある。

断じてライセン大峡谷の如く絶壁ではない。

 

 震えるシアのウサミミに、囁ささやくようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

―――― ……お祈りは済ませた? 

―――― ……謝ったら許してくれたり

―――― ………… 

―――― 死にたくなぁい! 死にたくなぁい! 

 

「〝嵐帝〟」

 

―――― アッーーーー!! 

 

 突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。

彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共にハジメ達の眼前に墜落した。

 

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」

 

 涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。

 

「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ? 尋常じゃないぞ……何者なんだ?」

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

 

カービィは余りに話が長く、難しい(?)話だった為、よくわからなかったが困ってることだけはよくわかった。

 

ハジメは樹海の案内と引き換えにシアを雇った。

 

 

「あ、ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」

 

 ぐしぐしと嬉し泣きするシア。

しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。

 

「あ、あの、宜しくお願いします!そ、それであなたたちのことは何と呼べば……」

「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」

「……レムユエ」

「ボクはカービィ!よろしくね!」

 

「ハジメさんとレムユエちゃんとカービィちゃんですね」

 

 3人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、カービィとレムユエが不満顔で抗議する。

 

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

「ボクは女の子じゃないよ!!」

「ふぇっ!?」

 

「ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ」

 

シアをティンクルスターアライズに乗せた。

 

「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物?何なのでしょう?それに、魔法も使いましたよね?ここでは使えないはずなのに……」

「あ~、それはカービィに聞いてくれ。」

 

「カービィさんこれ何ですか?」

「えーっとね、これはティンクルスターアライズって言って不思議な乗り物だよ!」

「それ分かってませんよね!?」

 

ハジメは、道中、レムユエが魔法を使える理由、あの歌はカービィの能力だと。

すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。

いや、それどころか少しカービィに怯えたが「……カービィさんはきっと自覚がないんですぅ……」と言って諦めた。

 

「え、それじゃあハジメさんとレムユエさんも魔力を直接操れたり、カービィさんの歌の被害者だったり、固有魔法が使えると……」

「ああ、そうなるな」

「……ん」

 

「ボクの歌の被害者ってどう言うこと!?」

 

「「「なんでもないです(片言)」」」

 

 

しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。

そして、何故か泣きべそをかき始めた。

 

「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」

「……手遅れ?」

 

「手遅れって何ですか!手遅れって!私は至って正常です!……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

 

「「「……」」」

 

なんだかんだでシアを無視して三人が話し始めた。

 

「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは? 私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?」

 

「「「…………」」」

 

「なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり仲間外れにしているんですか!寂しいです!ウサギは寂しいと死んじゃいます!私も仲間に入れて下さい!」

 

「「黙れ残念ウサギ」」

 

「……はい……ぐすっ……」

「あんまりシアをいじめないでよ!」

ハジメとレムユエはあの歌を思い出したように身震いして、

「「ワスレテナイデスヨヤダナー」」

実はあの後(一曲目終了後)更に数曲歌っていた。

 

途中でハジメとユエは意識を取り戻すも、また気絶するの繰り返しだった。

 

それでこの渓谷にいた魔物が全滅したのは言うまでもない。

 

そんなシーンが今ハジメとユエの中では再生されていた。

正に地獄絵図である。※本人に自覚はありません。

 

「私と対応違くないですか!?」

「「黙れ残念ウサギ!!」」

 

いろいろあってシアの案内により、ハウリア族を見つけた。

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 

 その聞きなれた声音に、これは現実だと理解したのか兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

 

その後ハウリア族を連れてハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

 登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

 

「カービィ、」

「何?」

「歌を一曲。」

 

「えっ!?いいの?」

 

帝国兵は何が起こるか分からずハジメたちの様子に「何が起こるんだ!?」と警戒していたがすぐ分かることだった。

 

ハジメはハウリア族に専用の完全防音耳栓を渡し。

ハジメとユエも人用の完全防音耳栓をつける。

 

「いっくよ!」

 

「いつでもぐーすーかーーびぃーほしーーのかーーびぃーー…………」

 

 

ー10分後ー

 

 

その後その場にいた帝国兵を見たものは居ない。

 

 

 

 

 

 

 

改まってシアは聞いてきた。

「あの、あの! ハジメさんとレムユエさんのこと、カービィさんのこと、教えてくれませんか?」

 

「? 俺達のことは話したろ?」

 

「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落?という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、あなたたち自身のことが知りたいです。」

 

「……聞いてどうするんだ?」

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。あなたたちに出会って、私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとあなたたちのことを知りたいといいますか……何といいますか……」

 

 結果……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。カービィさんは色々ありすぎですぅ〜そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

 

「なんかボクだけかわいそうじゃない見たいなんだけど………そんなときは天才なボクが歌で元気をつけてあげるよ!」

 

実際は天才ではなく天災だが。

 

とこの場にいるカービィ以外の誰もが思ったのだった。

 




続きが気になった方は感想と☆評価、お気に入りを良かったらお願いします。

投稿スピードが上がります。

※逆にないと失踪の可能性もあります


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12話『豹変するハウリア(意図的)』

感想、評価、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(30→35)
評価(1×1、4×1、5×1、6×1、9×4、10×1)


カービィ以外(メタナイトやマホロア等)のトータス入りは迷ってますが今のところ最終場面までは考えない予定です。

(今のところ出来上がり次第投稿しているので話のストックは無しで書いてます)



 

 

 

現在ハジメ達はハウリア族に樹海の案内をされていた。

 

 

その道中、突然虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人が現れた。

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達を裏切り者を見るような眼差しを向けた。

その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。

周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

ドパンッ!!

 

虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

「な、なっ……詠唱がっ……」

ハジメはカービィに「俺に任せておけ」と言ってから更に脅……じゃなくて説明した。

 

「この樹海、ところどころ木が破壊されてたり、なぎ倒れたり、荒野になっていたりしてたよな?」

 

「あ、あぁ!それがどうした!」

 

そう、この間のカービィの歌(数え切れた者はいない)で樹海の魔物はほとんど全滅、もしくは絶滅した。

さらには樹海の樹は半分ほどなくなったり、荒野になったりした。

(ちなみにカービィの歌はトータス全土の半分程まで届き、各地で謎の地形崩壊被害が発生した)

 

ハジメは誰がやったか俺は知ってると言わんばかりの顔をする。

「っ!?ま、まさかお前がやったのか?」

 

 

 

 

 

ハジメは少し時間を開けて続ける。

 

 

 

「いや、俺じゃない。俺の隣にいるこの少女がやった。しかもこの少女は俺より強い。………どう言う意味か……わかるよな?」

 

「はっ!はい!」

(冗談だろ!こんな、こんなのまるっきり化物じゃないか!まだ噂に聞く異世界の勇者とやらの方がマシだ!)

 

 

「だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」

 

「……その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメたちに尋ねた。

ハジメは視線で話を促した。

 

「……何が目的だ?」

 

代わりにカービィが答えた。

 

「ボクたちは大樹の下へ行って、七大迷宮の一つを攻略する為だよ!」

ハジメはカービィに続いて、

「俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

 

「本当の迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「いや、それはおかしい」

「なんだと?」

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

「弱い?」

「そうだ。大迷宮の魔物ってのは、どいつもこいつも化物揃いだ。少なくとも俺たちの知る『オルクス大迷宮』の奈落は俺たちですら苦戦を強いられる程のものだった。それに……」

「なんだ?」

「大迷宮というのは、〝解放者〟達が残した試練だ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ?それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

 

「……」

 

ハジメたちの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。

解放者とやらも、迷宮の試練とやらも……聞き覚えのないことばかりだ。

普段なら、〝戯言〟と切って捨てていただろう。

だがしかし、今、この場において、ハジメたちが適当なことを言う必要はないのだから。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その後ハジメ達は結局迷宮は行けず、ハジメがハウリア達を鍛える事にしたのだが、

 

 

 

結果がこれだ。

 

 

 

 

 

 

「聞け!

ハウリア族諸君!

勇猛果敢な戦士諸君!

今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する!

お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!

力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!

最高の戦士だ!

私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ!

奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん!

唯の〝ピッー〟野郎どもだ!

奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ!

生誕の証だ!

ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

 

 

「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

 

 

「答えろ!

諸君!

最強最高の戦士諸君!

お前達の望みはなんだ!」

 

 

「「「「「「「「「

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

」」」」」」」」」

 

 

「お前達の特技は何だ!」

 

 

「「「「「「「「「

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

」」」」」」」」」

 

 

「敵はどうする!」

 

 

「「「「「「「「「

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

」」」」」」」」」

 

 

「そうだ!

殺せ!

お前達にはそれが出来る!

自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

 

 

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

 

 

「いい気迫だ!

ハウリア族諸君!

俺からの命令は唯一つ!

サーチ&デストロイ!

行け!!」

 

 

「「「「「「「「「

「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

」」」」」」」」」

 

 

「うわぁ~ん、やっぱり私の家族はみんな死んでしまったですぅ~。カービィさんなんとかしてくださぃ〜」

 

「……う〜ん、これは難しいんじゃないかな?明らかにやりすぎだと思うし〜」

この結果、カービィすらも引いている程である。

ハウリア達はハジメを『ボス』、カービィを『姐御』と呼ぶようになって、とても殺人的な種族になってしまった。

 

「ボクは女の子じゃなーい!」と、カービィは言うがハウリア達は「「「「「「「「「

「冗談も程々にしてくださいよ姉御!どう見ても女の子にしか見えません!」

」」」」」」」」」と、息を揃えて言うので諦めるカービィ。

 

ハウリアには何も教えてないカービィを姉御呼びは重症だとようやく気がついたハジメは

 

 

 

 

「やり過ぎたな。すまん。」

 

 

 

 

ハウリア達「「「「ボ、ボスが謝った!?重傷者一名!直ちに……………」」」」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

その後いろいろあってやっと樹海の迷宮にたどり着いたのだが、最低四つは迷宮を攻略しないと迷宮内部に行けないと判明したのだった。

 

「はぁ~、ちくしょう。今すぐ攻略は無理ってことか……面倒くさいが他の迷宮から当たるしかないな……」

「ん……」

「地道に頑張ろう!」

ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みするハジメ。

 

ハジメはハウリア族に集合をかけた。

 

「いま聞いた通り、俺達は、先に他の大迷宮の攻略を目指すことする。大樹の下へ案内するまで守るという約束もこれで完了した。お前達なら、もうフェアベルゲンの庇護がなくても、この樹海で十分に生きていけるだろう。そういうわけで、ここでお別れだ」

 

 

ハウリアは一瞬固まるが「ハッ!?」となって

「ボス!姉御!我々もボスと姉御のお供に付いていかせて下さい!」

と言う。

 

「えっ! 父様達もハジメさんに付いて行くんですか!?」

 

 

「我々はもはやハウリアであってハウリアでなし!ボスと姉御の部下であります!是非、お供に!これは一族の総意であります!」

 

 

「ちょっと、父様!私、そんなの聞いてませんよ!ていうか、これで許可されちゃったら私の苦労は何だったのかと……」

そう、ハジメが「樹海旅立ちの日までにレムユエに一撃入れたら仲間にしてやるが入れられなかったら諦めろ」とチャンスを与えたのだ。

そしてシアは諦めず遂に今日、一撃入れることに成功したのだ。

 

 

「ぶっちゃけ、シアが羨ましいであります!」

「ぶっちゃけちゃった!ぶっちゃけちゃいましたよ!ホント、この十日間の間に何があったんですかっ!」

 

「却下」

 

 

 

「…………なぜです!?」

 

「足でまといだからに決まってんだろ、バカヤロー」

「しかしっ!」

 

「調子に乗るな。俺たちの旅についてこようなんてあと540日くらい早いわ!」

 

「具体的!?」

 

「じゃあ、あれだ。お前等はここで鍛錬してろ。次に樹海に来た時に、使えるようだったら部下として考えなくもない。カービィもそう思うだろ?」

 

「えっ、ボク!?……えっと、ボク部下とかよくわからないから友達になろうよ!」

 

 

「「「「「「「「「

「姉御と友達なんて恐れ多いです!」

」」」」」」」」」と、口を揃えて言うハウリア。

 

 

 

 

「……ボス、そのお言葉に偽りはありませんか?」

「ないない」

「嘘だったら、人間族の町の中心でボスと姉御の名前を連呼しつつ、新興宗教の教祖のごとく祭り上げますからな?」

「お、お前等、タチ悪いな……」

「そりゃ、ボスと姉御の部下を自負してますから」

 

「じゃあその時はボクがマイクでハウリア族を手伝うよ!」

と、カービィは純粋無垢な笑顔で言うのだった。

 

この時、ハジメはカービィの歌を聴きたくないので忘れないと誓った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハジメ達は次の場所に旅立つ。

「ハジメさん、カービィさん、そう言えば聞いていませんでしたが目的地は何処ですか?」

「あ? 言ってなかったか?」

「聞いてませんよ!」

「ボクもだよ!」

「……私は知っている」

 

 

 得意気なレムユエに、むっと唸り抗議の声を上げるシア。

 

「わ、私とカービィさんだって仲間なんですから、そういうことは教えて下さいよ!コミュニケーションは大事ですよ!」

 

「悪かったって。次の目的地はライセン大峡谷だ」

 

「「ライセン大峡谷?」」

 

「一応、ライセンも七大迷宮があると言われているからな。

シュネー雪原は魔人国の領土だから面倒な事になりそうだし、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだが、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれないだろ?(ま、まぁカービィの歌でライセン大渓谷が崩壊したが、夜に見てきた時には謎の結界でそこだけ崩壊してなかったから大丈夫だろうな。)」

 

 

「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」

 

「いやぁ~、カービィさんとハジメさんのことだから、ライセン大峡谷でも魔物の肉をバリボリ食べて満足しちゃうんじゃないかと思ってまして……レムユエさんはハジメさんの血があれば問題ありませんし……どうやって私用の食料を調達してもらえるように説得するか考えていたんですよぉ~、杞憂でよかったです。ハジメさんもまともな料理食べるんですね!」

 

「当たり前だろ! 誰が好き好んで魔物なんか喰うか! ……お前、俺を何だと思ってるんだ……」

「ボクをなんだと思ってるの!?」

「ハジメさんは……プレデターという名の新種の魔物?カービィさんは……なんでしょうか?」

 

「俺に質問するな、だが安心しろお前、町に着くまでティンクルスターアライズの最後尾に括りつけて引きずってやる」

 

「ちょ、やめぇ、どっから出したんですかっ、その首輪! ホントやめてぇ~そんなの付けないでぇ~、カービィさん、レムユエさん見てないで助けてぇ!」

 

「……自業自得」

 

「頑張ってね、シア!」

 

「カービィさあぁぁぁん!」

 

 

ティンクルスターアライズで数時間ほど走り(飛び)、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。

ハジメの頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したからだ。

レムユエもどこかワクワクした様子。

きっと、ハジメと同じ気持ちなのだろう。

カービィは街に新たなグルメを期待していた。

樹海ではほとんど美味しいものが食べれなかったからだ。

 

「あのぉ~、いい雰囲気のところ申し訳ないですが、この首輪、取ってくれませんか?何故か、自分では外せないのですが……あの、聞いてます?ハジメさん?レムユエさん?カービィさん?ちょっと、無視しないで下さいよぉ~、泣きますよ!それは、もう鬱陶しいくらい泣きますよぉ!」

と、シアの愚痴は止まらない。

 

 

 

 

 



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13話『遂に女の子公認か!?』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(35→41)

先に言っておきますがカービィのレベルが異常に高いのはマイクで樹海、ライセン大渓谷、その他もろもろの魔物を倒したからです。
気にしないでください。
ハジメのステータスのプラス値でステータスが倍になっているのはカービィの料理によって可能性が最大限に引き出されているからです。
気にしないでください。


遠くに町が見える。

周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町である。

街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。

おそらく門番の詰所なのだろう。

小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

それなりに、充実した買い物が出来そうだとハジメは頬を緩めた。

カービィも新しい食べ物に期待してご機嫌だった。

 

「……機嫌がいいのなら、いい加減、この首輪取ってくれませんか?」

 

 

「「「………」」」

 

町の方からもハジメ達を視認できそうなので、カービィ達はティンクルスターアライズから降りた。するとティンクルスターアライズは武具召喚を解除したことで消えた。

 

因みに道中、シアがブチブチと文句を垂れていたが、やはりスルーして遂に町の門までたどり着いた。

 

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

 規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。ハジメとカービィは、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。

 

 

 

格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男がハジメ達を呼び止めた。

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

「んっ!」

「お腹すいたもんね〜」

 

「カービィはさっきまで道中で(魔物を)食ってただろ?」

「それとこれとは違うの〜!」

 

「よ、幼女!?(な、なんて食いしん坊な女の子だ!?)」

 

「ボクは女の子じゃないよ!」

 

「まぁ落ち着け。こいつはそういうもんだと思ってくれ。」

 

「わ、わかった。(……きっとそう言う時期なんだろうな)じゃあステータスプレートを見せてくれ」

 

 

「はーい」

「わかった」

門番の男がハジメとカービィのステータスプレートをチェックする。

 

ハジメは「あっ、ヤベ、隠蔽すんの忘れてた」と内心冷や汗を流した。

あまりステータスの基準を知らないカービィは「ハジメに大丈夫?」と純粋無垢な瞳でハジメを慰めるのであったとさ。

 

====================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:11000[+11000]

体力:13240[+13240]

耐性:10720[+10720]

敏捷:13500[+13500]

魔力:14830[+14830]

魔耐:14830[+14830]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

====================================

 

 

※カービィはコピー能力マイクで樹海とライセン渓谷の魔物を全滅させました。

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:500

天職:星の戦士

筋力:250000

体力:250000

耐性:50000

敏捷:250000

魔力:50000

魔耐:50000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]・神代能力[+クリエイト]

============================

 

 

 

冒険者や傭兵においては、戦闘能力の情報漏洩は致命傷になりかねないからである。

ハジメは、咄嗟に誤魔化すため、嘘八百を並べ立てた。

 

「ちょっと前に、魔物に襲われてな、その時に壊れたみたいなんだよ」

「こ、壊れた? いや、しかし……」

 

無理もないだろう。

何せ、ハジメのステータスプレートにはレベル表示がなく、カービィのレベルはとても信じられない程だからだ。

ハジメのステータスの数値も技能欄の表示もめちゃくちゃだからだ。

カービィは星の戦士と言う未知の天職であるからもっと酷い。

 

 

ステータスプレートの紛失は時々聞くが、壊れた(表示がバグるという意味で)という話は聞いたことがない。

なので普通なら一笑に付すところだが、現実的にありえない表示がされているのだから、どう判断すべきかわからないのだ。

 

ハジメは、いかにも困った困ったという風に肩を竦めて追い討ちをかける。

 

「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ?まるで俺たちが化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?この少女が世界を滅ぼせるような力があると思うか?」

 

「む〜!ボクは女の子じゃないもん!」

 

ステータスプレートの表示が正しければ、文字通り魔王や勇者すら軽く凌駕する化物ということになるのだ。例え聞いたことがなくてもプレートが壊れたと考える方がまともである。

 

「い、いやでも…………。」

 

ハジメはカービィを持ち上げて門番に見せた。

「こいつの瞳を見てくれ。こんな純粋無垢な瞳見たことあるか?」

 

 

「はは、いや、見たことないよ。それに表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな……ちなみにそっちの二人は……」

 

 

 

「さっき言った魔物の襲撃のせいでな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は……わかるだろ?」

 

 

 その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートをカービィとハジメに返す。

 

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?あんたって意外に金持ち?」

 

「「…………」」

 

「まぁいい。通っていいぞ」

「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」

「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

 門番から情報を得て、ハジメ達は門をくぐり町へと入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。

 

 

 

「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」

 

「誰がゴリラですかっ! ていうかどんな倒し方しているんですか! ハジメさんなら一撃でしょうに! 何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」

「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」

 

「まさかの追い討ち!? 酷すぎる! ってそうじゃないですぅ!」

 

 怒って、ツッコミを入れてと大忙しのシア。手をばたつかせて体全体で「私、不満ですぅ!」と訴えている。

ちなみに、ゴリラ型の魔物のエピソードは圧縮錬成の実験台にした時の話だ。

決して、虐めて楽しんでいたわけではない。

レムユエはやたらとツンツンしていたが。

ちなみに、この魔物が〝豪腕〟の固有魔法持ちである。

 

「これです! この首輪!これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

「あのなぁ、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう?」

 

「だからボクとハジメとレムユエで相談して首輪を付けてもらうことにしたんだよ。」

 

「みなさん……!そこまで私のことを考えていただけるなんてありがとうございますぅ!」

 

「……まぁ、それはともかくとしてお前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。面倒……ってなにクネクネしてるんだ?」

 

「も、もう、ハジメさん。こんな公衆の面前で、いきなり何言い出すんですかぁ。そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんてぇ、もうっ!恥かしいでっぶげら!?」

 

カービィがコピー能力リーフでハリセンを作って無言でシアを叩く。

「……」

「んっ!調子に乗っちゃだめ」

 

「……ずびばぜん、カービィざん、レムユエざん」

 

そんな様子に呆れた視線を向けながら、ハジメは話を続ける。

 

「あ~、つまりだ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前を守っているんだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからな、お前は」

「それは……わかりますけど……」

 

「……有象無象の評価なんてどうでもいい」

「レムユエさん?」

 

「うん、大事な事は仲間が知っていればいいんだよ!」

 

 

「ん!カービィの言う通り。……大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。……違う?」

 

「………………そう、そうですね。そうですよね」

 

「……ん、不本意だけど……シアは私たちが認めた相手……小さい事気にしちゃダメ」

 

「……レムユエさん…カービィさん……えへへ。ありがとうございますぅ」

「まぁ、奴隷じゃないとばれて襲われても見捨てたりはしないさ」

「街中の人が敵になってもですか?」

「あのなぁ、既に帝国兵とだって殺りあっただろう?」

「大切な仲間はボクが守るよ!」

 

「じゃあ、国が相手でもですね! ふふ」

「何言ってんだ。世界だろうと神だろうと変わらねぇよ。敵対するなら何とだって戦うさ」

「うんうん!」

「くふふ、聞きました?レムユエさん。ハジメさんったらこんなこと言ってますよ?よっぽど私達が大事なんですねぇ~」

「……ハジメが大事なのは……皆でしょ?」

 

「あ、あぁ。」

ちなみに余談だがこの世界のハジメは大人の階段をカービィ(少女)がいるせいで登っていないので少しそう言う所に関してはヘタレである。

しかも(カービィ含めて)ハジメにとっては誰も美少女なので選べないのである。

 

 

「ボクは女の子じゃないよ?」

 

 

 

「「「えっ!?」」」

 

3人の台詞が重なった。

 

「コピー能力フリーズ」

 

カービィは冷たい空気を纏ってハジメ達をカチンコチンの刑にした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

そんな風に仲良く?メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。

かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 

ハジメたちは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

 

カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。

 

 

そんなハジメ達の内心を知ってか知らずか、オバチャンはニコニコと人好きのする笑みでハジメ達を迎えてくれた。

 

「両手どころか溢れる花を持っているのに、まだ足りなかったのかい?残念だったね、美人の受付じゃなくて」

 

「いや、そんなこと考えてないから」

「ボクは女の子じゃないもん!」

 

「「「ソ、ソウダヨ!」」」

 

「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ?それにそこの子だっていつしか立派なレディーになるんだから男扱いなんてしちゃいけないよ。男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。あんまり余所見ばっかして愛想尽かされないようにね?」

 

「……肝に銘じておこう」

 

「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

「ああ、素材の買取をお願いしたい」

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

 ハジメの疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい?確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

「そうだったのか」

 

「そういえばボクが倒した魔物(+カービィの歌の被害者の魔物)はお腹の中(異空間)にしまってあるよ。」

 

「どうなってんだそのお腹」

 

「「「「……………」」」」

 

オバチャンの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。

生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。

町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。

危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」

 

 ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。

青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。

驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。

……って言ってもカービィにはわからなかったがハジメはカービィに聞いた話を参考にして1デデデン(アニメ版)、1ポイントスター(小説版)は1ルタとたぶん同じ価値だと教えるとカービィは明るい顔で悩みが晴れたような顔をしていた。

 

「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

「可愛い子三人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

「ボクは女の子じゃなくてカービィだよ!!」

 

 今度はきちんと(カービィも)隠蔽したので、名前と年齢、性別、天職欄しか開示されていないはずだ。

(カービィの年齢、性別、天職はハジメによって10歳、女、戦士に変更されていた。カービィはほっぺたを膨らませて少し?怒っていたが)

 

 

……後にコピー能力スープレックスの刑になるのはこの時のハジメはまだ知らない。

 

 

オバチャンは、ユエとシアの分も登録するかと聞いたが、それは断った。二人は、そもそもプレートを持っていないので発行からしてもらう必要がある。しかし、そうなるとステータスの数値も技能欄も隠蔽されていない状態でオバチャンの目に付くことになる。

 

 ハジメとしては、二人のステータスを見てみたい気もしたが、おそらく技能欄にはばっちりと固有魔法なども記載されているだろうし、それを見られてしまうこと考えると、まだ二人の存在が公になっていない段階では知られない方が面倒が少なくて済むと今は諦めることにした。

 

 戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 

青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。……お気づきだろうか。

そう、冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなのである。

つまり、青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ」と、言うことだ。

 

この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているに違いない。

 

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪ところ見せないようにね」

「ああ、そうするよ。」

「ボクも頑張るよ〜(性別女から目を逸らしながら)」

「それで、買取はここでいいのか?」

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

「カービィ、頼む。」

「はーい。」

すると、カービィの口(異空間)から真新しい素材たちが。

どうやらカービィの口の中は劣化しないらしい。

しかもよだれが一切無いのだ。

まぁ不思議。

 

 オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。

優秀なオバチャンだ。

ハジメはついでに、あらかじめ〝宝物庫〟から出してバックに入れ替えておいた素材を取り出す。

品目は、魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石だ。

カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする。

 

「こ、これは!」

 

 恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたオバチャンは、溜息を吐きハジメに視線を転じた。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海のと、ライセン渓谷の魔物だね?しかもなんて量だい!」

 

「ああ、そうだが…」

 

 ここでもテンプレを外すハジメ。

奈落の魔物の素材など、こんな場所で出すわけがないのである。

 

「どの素材も良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」

 

「やっぱり珍しいか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね。それにライセン渓谷は魔法を使えないんだ、死にに行くようなもんさ。よく生きて帰って来たね。」

 

「でもあそこのまもごもご……」

でもあそこの魔物は既にしんでいたた。と、カービィは言おうとしたがハジメに口をふさがれた。

何故なら死因はカービィの歌だからである。

 

買取額は五千万ルタ。

頭が痛くなる額である。

 

「これでいいかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね。生憎ここの財産は少ないからね」

 

「いや、この額で構わない」

 

 

「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。

これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。

 

「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

カービィも地図を見てとても上手だと思った。

 

オバチャンの優秀さがやばかった。

この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの?とツッコミを入れたくなるレベルである。

きっと壮絶なドラマがあるに違いない。

そうに違いない!(確信)byハジメ

 

「そうか。まぁ、助かるよ」

「いいってことさ。それより、大金があるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その三人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。

ハジメは苦笑いしながら「そうするよ」と返事をし、入口に向かって踵を返した。

レムユエとシアも頭を下げて追従する。

それに釣られてカービィも頭を下げてからハジメたちを追いかけた。

食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後までレムユエとシア、カービィの三人を目で追っていた。

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

 後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きが残された。

 

 




※カービィの見た目が女の子なだけでカービィの性別は不明です。



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14話『カービィの風呂問題』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(41→44)


 

ハジメ達が、もはや地図というよりガイドブックと称すべきそれを見て決めたのは〝マサカの宿〟という宿屋だ。

紹介文によれば、料理が美味く防犯もしっかりしており、何より風呂に入れるという。

最後が決め手だ。その分少し割高だが、金はあるので問題ない。

 

宿の中は一階が食堂になっているようで複数の人間が食事をとっていた。

ハジメ達が入ると、お約束のようにカービィとレムユエとシアに視線が集まる。

それらを無視して、カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」

「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

「あ、ああ、済まない。一泊でいい。食事付きで、あと風呂も頼む」

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

 女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたいので、男女で分けるとして二時間は確保したい。その旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれたが、日本人たるハジメとしては譲れないところだ。

 

「え、え~と、それでお部屋はどうされますか? 二人部屋と三人部屋が空いてますが……」

 

「カービィも居るし、2人ずつにしようか。」と、ハジメ。

「じゃあ、組み合わせはじゃんけんで決めようよ!」

と、カービィが提案した。

 

「「「「せーのー、じゃんけん……」」」」

 

 

 

カービィとハジメがチョキ、レムユエとシアはパーだった。

 

 

「じゃあ俺とカービィでじゃんけんだな。」

 

「うん。」

 

 

「「せーの!……じゃんけん……」」

 

 

ハジメがグー、カービィがパーを出した。

 

よってカービィの勝ちである。

 

 

 

 

 

 

__________________________________________________

 

 

ということでボクが選ぶことになったけど、ボクはハジメと寝ることにした。

 

レムユエは寝てる時に血を吸われそうだし、シアは何かやらかしそうだからと言う理由で。

 

 

何故か寝る時ハジメがボクから眼を逸らしてたけどボクはコピー能力スリープで寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間ほど眠ってたみたいで、夕食の時間と聞いて跳ね上がった。

レムユエ起こされたシアは、レムユエと階下の食堂に向かったみたいだからボクもそれに続く。

 

 

次はお風呂だけど……

 

ハジメがボクに聞いてきた。

「なぁカービィ?」

「何?」

「カービィの性別ってどっちなんだ?」

「ステータス上は無いけどボクは男だよ!!」

 

「だろうな、ステータスプレート見た時性別不明だったからな。……そこで問題だが女の子の見た目のカービィが男湯に入ったら問題だが……」

 

「えーっ!それじゃあカービィさんと入れないじゃないですか!」

 

「それに関してはボクはどっちでも………」

 

「「「よくない」」」

 

そう、ポップスターにも温泉はあるが男湯にいた(も〜れつプププアワー!の温泉回より)……のだが今の見た目はよくハジメたちに女の子と言われているせいでカービィはどっちでもいいかなと思っているのだ。

 

こうしてカービィ争奪戦が幕を……。

 

「「「じゃんけんポン!」」」

 

 

 

開けなかった。

 

「やりました!私の勝ちですぅ!」

シアが勝った。

 

「ん!よくやったシア!」

 

「……というか、2対1だからな」

と、ハジメは呟くのだった。

 




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15話『マジックバッグとドリュッケン』

夏休みに入ったのといつも感想と評価をくれる方々に感謝を込めて本日2話目を更新しました。

お気に入りありがとうございます!
(44→46)


結局、風呂は風呂で、男女で時間を分けたのに結局レムユエとシアが乱入したことによってカービィまで乱入してきたり、風呂場でまた修羅場になった挙句、ハジメのゲンコツ制裁で仲良く涙目になったり、その様子をこっそり風呂場の陰から宿の女の子が覗いていたり、のぞきがばれて女将さんに尻叩きされていたり……。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次の日

 

 

シアとレムユエはオネエに会ったりレムユエに、〝股間スマッシャー〟という二つ名が付いたりした。

 

ハジメはカービィと力を合わせてアーティファクトを作っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

レムユエとシアが宿に戻ると、ハジメとカービィもちょうど作業を終えたところのようだった。

 

「お疲れさん、何か、町中が騒がしそうだったが、何かあったか?」

「おつかれ〜」

 どうやら、先の騒動を感知していたようである。

 

「……問題ない」

「あ~、うん、そうですね。問題ないですよ」

 

服飾店の店長が化け物じみていたり、一人の男が天に召されたりしたが、概ね何もなかったと流す二人。

そんな二人に、カービィとハジメは、少し訝しそうな表情をするも、「まぁいいか」となった。

 

「必要なものは全部揃ったか?」

「……ん、大丈夫」

「ですね。食料も沢山揃えましたから大丈夫です。にしても宝物庫ってホント便利ですよね~」

「ボクはお腹の中に入れておくから大丈夫だよ〜」

 

三人は「「「本当どうなってんだそのお腹」」」と心の声が重なる。

 

ハジメは、買い物にあたって〝宝物庫〟を預けていた。

その指輪を羨ましそうに見やるシアに、ハジメは苦笑いする。

今のハジメだけの技量では、未だ〝宝物庫〟は作成出来なかった。

 

 

「さて、レムユエとシアにはこれを渡しておく。」

とハジメは言ってレムユエとシアに皮のバッグを渡す。

 

「……これは?」

 

「これは俺とカービィで力を合わせて作った宝物庫の様なもの……マジックバッグだ。」

 

「「マジックバッグ?」」

 

「あぁ。カービィのコピー能力エスパーと俺の技能を使ってなんとか完成させられた物だ。中身は一つの世界の様なモノになっているから容量は無制限だ。」

 

「「無制限!?」」

 

「それとシアにはこれをやる」

 

そう言ってハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を渡した。

銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている。

また、外見は黄色のクリアーになっていて持ち手にはいくつかボタンが付いている。

 

「な、なんですか、これ? 物凄く重いんですけど……」

「そりゃあな、お前用の新しい大槌だからな。重いほうがいいだろう」

「へっ、これが……ですか?」

 

「しかも!」とカービィが続けて、

「ボクのフレンズ能力をつけておいたんだよ!」

 

「「「フレンズ能力!?」」」

 

「……?どうしてハジメまで驚いてるの?」

 

「俺はてっきりコピー能力かと思ってたんだが……」

 

「フレンズ能力って言うのは簡単に言うと属性のあるコピー能力を武器のあるコピー能力に付与する能力だよ。」

 

「……それでどうやって使うんですか?」

 

「ああ、その状態は待機状態だ。取り敢えず魔力流してみろ」

「えっと、こうですか? ッ!?」

 

 言われた通り、槌モドキに魔力を流すと、カシュン! カシュン! という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった。

 

この大槌型アーティファクト:ドリュッケン(ハジメ命名)は、幾つかのギミックを搭載したシア用の武器だ。

魔力を特定の場所に流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりする。

さらにボタンが赤、青、緑の三つ付いてある。

 

カービィが説明するには「赤が炎、青が氷水、緑が雷風だよ」とのことらしい。

 

 

「今の俺たちにはこれくらいが限界だが、腕が上がれば随時改良していくつもりだ。これから何があるか分からないからな。レムユエのシゴキを受けたとは言え、たったの十日。まだまだ、危なっかしい。その武器はお前の力を最大限生かせるように考えて作ったんだ。使いこなしてくれよ?仲間になった以上勝手に死んだらぶっ殺すからな?」

「ハジメさん……ふふ、言ってることめちゃくちゃですよぉ~。大丈夫です。まだまだ、強くなって、どこまでもハジメさんやカービィさんに付いて行きますからね!」

 

 

 外に出ると太陽は天頂近くに登り燦々と暖かな光を降らせている。

それに手をかざしながらハジメは大きく息を吸った。

 

振り返ると、

 

 ハジメはスっと前に歩みを進めた。

 カービィ、レムユエ、シアも追従する。

 

 旅の再開だ。

 




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16話『ようこそ☆ミレディ・ライセンの大迷宮へ!』

感想、評価、お気に入り、ありがとうございました!

お気に入り(46→53)
評価(1×1、3×1、4×1、5×1、6×1、7×1、9×4、10×2)

それではどうぞ!


 

 

 『ライセン大峡谷』では、相変わらず懲りもしない魔物達がこぞって襲ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

………わけでもなく、魔物はこの間のカービィの歌で全滅しているどころかライセン大渓谷自体が崩壊していた。

 

その為カービィたちはティンクルスターアライズで空中から探している。

 

「はぁ~、ライセンの何処かにあるってだけじゃあ、やっぱ大雑把過ぎですぅ!」

 

「そう言うなって、俺が以前見つけた時はそこだけ結界が張ってあったからすぐわかるさ」

 

 

「おっ、あれだな。」

 

「「「……………」」」

カービィ、レムユエ、シアが突然黙ってしまったのも無理はない。

 

そこにあったのは

 

〝おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

「「「なにこれ?」」」

 

 

「これが入り口だろうな。

「ホントにあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮って」

 

 

「証拠にミレディの名前が書いてあったからな。」

 

 〝ミレディ〟その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームだ。

ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるがファーストネームの方は知られていない。

故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かった。

 

 

「何でこんなチャラいんだよ……」

「そういう人なんだよきっと……」

と、ハジメにカービィが突っ込む。

 

 

ハジメとしては、オルクス大迷宮の内での数々の死闘を思い返し、きっと他の迷宮も一筋縄では行かないだろうと想像していただけに、この軽さは否応なくハジメを脱力させるものだった。

 

カービィもオルクス大迷宮のことを思い出してどんな危険が待ってるだろうと思えばこれである。

カービィも気が抜けてしまっている。

 

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね?奥も行き止まりですし……」

 

シアは「入口はどこでしょう?」

と辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている。

 

「おい、シア。あんまり……」

 

ガコンッ!

 

「ふきゃ!?」

 

 〝あんまり不用意に動き回るな〟そう言おうとしたハジメの眼前で、シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。

 

 

「「「……やっぱり残念ウサギ」」」

 

 奇しくも大迷宮への入口も発見したことで看板の信憑性が増した。

やはり、ライセンの大迷宮はここにあるようだ。

 

無言でシアが消えた回転扉を見つめていたカービィとハジメとレムユエは、一度、顔を見合わせて溜息を吐くと、シアと同じように回転扉に手をかけた。

 

 

 

 扉の仕掛けが作用して、ハジメとユエを同時に扉の向こう側へと送る。中は真っ暗だった。扉がグルリと回転し元の位置にピタリと止まる。と、その瞬間、

 

ヒュヒュヒュ!

 

 無数の風切り音が響いいたかと思うとそれは矢だ。

全く光を反射しない漆黒の矢が侵入者を排除せんと無数に飛んできているのだ。

 

「ボクに任せて!コピー能力ポイズン!どくどくバベル」

 

するとカービィの服装は変わって無いが髪の色が毒々しい色になる。

そしてカービィの髪の毛から毒液が矢に向かって飛んでいく。

 

 

矢は全て溶けてしまった。

最後の矢が溶ける音を最後に再び静寂が戻った。

 

 と、同時に周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。

ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。

そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃた?チビってたりして、ニヤニヤ〟

 

〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ〟

 

「「「……」」」

 

 ハジメとレムユエも、額に青筋を浮かべてイラッとした表情をしている。そして、ふと、レムユエが思い出したように呟いた。

カービィはただ静かに表情を変えずにいた。

 

「……シアは?」

「「あ」」

「……」

 

 

シアは……いた。地面に刺さった姿で。

 

「うぅ、ぐすっ、みなざん……見ないで下さいぃ~、でも、抜いて欲しいでずぅ。ひっく、見ないで抜いて下さいぃ~」

 

パンツが丸見えでありハジメの精神には悪かった。

 

「うぅ~、どうして警戒しておかなかったのですかぁ、過去のわたじぃ~!!」

 

 

「……動かないで」

 

 流石に同じ女として思うところがあったのか、レムユエが無表情の中に同情を含ませてシアを地面から解放する。

 

「……あれくらい何とかする。未熟者」

「面目ないですぅ~。ぐすっ」

「……」

そして、シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ!

と意気込んだがいつもは明るいカービィのテンションがなかった。

 

……と、その時だった。

 

 

シアは石版を見つけ、顔を俯かせ垂れ下がった髪が表情を隠す。

しばらく無言だったシアは、おもむろにドリュッケンを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 

 よほど腹に据えかねたのか、親の仇と言わんばかりの勢いでドリュッケンを何度も何度も振り下ろした。

 

 すると、砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!〟

 

「ムキィーー!!」

 

発狂するシアを尻目にハジメはポツリと呟いた。

 

「ミレディ・ライセンだけは〝解放者〟云々関係なく、人類の敵で問題ないな」

「……激しく同意」

「……ボクに任せて♪」

カービィは寧ろ怖いくらいのニッコニコの笑顔で言った。

 

「何をする気だ?」

ここに来てようやくカービィが喋った。

「こうする気だよ!コピー能力クリエイト!」

カービィはコピー能力クリエイトを使用すると次々とウルトラソードが現れ壁を破壊していく。

そのスピードは壁の再生速度より早くハジメたちはカービィの後に続いて行った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

迷宮を破壊し尽くしたあと、ハジメ達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

 そこは、階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っており、まるでレゴブロックを無造作に組み合わせてできたような場所だった。

一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、本当にめちゃくちゃだった。

 

「こりゃまた、ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だな」

「……ん、迷いそう」

「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心を表しているんですよぉ!」

「ここもウルトラソードを出して斬り裂いていいかな?」

「……気持ちは分かるから、そろそろ落ち着けよ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ハジメ達は、トラップに注意しながら更に奥へと進む。

 

「うぅ~、何だか嫌な予感がしますぅ。こう、私のウサミミにビンビンと来るんですよぉ」

 

 階段の中程まで進んだ頃、突然、シアがそんなことを言い出した。言葉通り、シアのウサミミがピンッと立ち、忙しなく右に左にと動いている。

 

「お前、変なフラグ立てるなよ。そういうこと言うと、大抵、直後に何か『ガコン』…ほら見ろっ!」

「わ、私のせいじゃないすぅッ!?」

「!? ……フラグウサギッ!」

 

 

カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

 そんな音を立てながらおびただしい数のサソリが蠢いていたのだ。

体長はどれも十センチくらいだろう。

かつてのサソリモドキのような脅威は感じないのだが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。

アンカーで落下を防がなければ、サソリの海に飛び込んでいたかと思うと、全身に鳥肌が立つ思いである。

 

「「「「……」」」」

 

 思わず黙り込む四人。

下を見たくなくて、天井に視線を転じる。

すると、何やら発光する文字があることに気がついた。

既に察しはついているが、つい読んでしまうハジメ達。

 

〝彼等に致死性の毒はありません〟

〝でも麻痺はします〟

〝存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!〟

 

「「「「…………………………」」」」

 

「……ハジメ、あそこ」

「ん?」

 

 すると、レムユエが何かに気がついたように下方のとある場所を指差した。そこにはぽっかりと横穴が空いている。

 

「横穴か……どうする? このまま落ちてきたところを登るか、あそこに行ってみるか」

 

「はぁ……お前の〝選択未来〟が何度も使えればいいんだがなぁ~」

「うっ、それはまだちょっと。練習してはいるのですが……」

 

 そして再び、というか何時ものウザイ文を発見した。

 

〝ぷぷー、焦ってやんの~、ダサ~い〟

 

どうやらこのウザイ文は、全てのトラップの場所に設置されているらしい。

どうやらミレディ・ライセンは嫌がらせに努力を惜しまないヤツらしい。

 

「あ、焦ってませんよ! 断じて焦ってなどいません! ださくないですぅ!」

 

「いいから、行くぞ。いちいち気にするな」

「……思うツボ」

「そうだね。」

「うぅ、はいですぅ」

 

『ガコンッ!』

 

 

「またか」

 

今度はどんなトラップだ? と周囲を警戒するハジメ達の耳にそれは聞こえてきた。

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

 明らかに何か重たいものが転がってくる音である。

 

「「……」」

 

「……ん、ハジメ、カービィ?」

「ハジメさん、カービィさん!? 早くしないと潰されますよ!」

 

「いつもいつも、やられっぱなしじゃあなぁ! 性に合わねぇんだよぉ!」

 

 義手から発せられる「キィイイイイ!!」という機械音が、ハジメの言葉と共に一層激しさを増す。

 

 そして……

 

ゴガァアアン!!!

 

 凄まじい破壊音を響かせながら大玉とハジメの右腕による一撃が激突した。

ハジメは、大玉の圧力によって足が地面を滑り少し後退させられたがスパイクを錬成して踏ん張る、そして、ハジメの一撃は衝突点を中心に大玉を破砕していき、全体に亀裂を生じさせた。

大玉の勢いが目に見えて減衰する。

 

「ラァアアア!!」

 

 

 その顔は実に清々しいものだった。

「やってやったぜ!」という気持ちが如実に表情に表れている。

ハジメ自身も相当、感知できない上に作動させなくても作動するトラップとその後のウザイ文にストレスが溜まっていたようだ。

 

 ハジメが、今回使ったのは、かつて、フェアベルゲンの長老の一人ジンを一撃のもとに粉砕した弾丸による爆発力と〝豪腕〟、それに加えて、魔力を振動させることで腕自体を振動させ対象を破砕する、いわゆる振動破砕というやつである。

 

 

「ハジメさ~ん!流石ですぅ!カッコイイですぅ!すっごくスッキリしましたぁ!」

「……ん、すっきり」

「ボクもちょっとスッキリしたよ」

「ははは、そうだろう、そうだろう。これでゆっくりこの道……」

 

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

 

「あ、あのハジメさん?カービィさん?気のせいでなければ、あれ、何か変な液体撒き散らしながら転がってくるような……」

「……溶けてる」

 

 そう、こともあろうに金属製の大玉は表面に空いた無数の小さな穴から液体を撒き散らしながら迫ってきており、その液体が付着した場所がシュワーという実にヤバイ音を響かせながら溶けているようなのである。

 

「こうなったら次はボクがやるよ!コピー能力クリエイト!」

 

カービィはコピー能力クリエイトを発動し、大量のウルトラソードに無理矢理フレンズ能力でアイスを纏い液体を凍らせてウルトラソードで切断した。

 

「カービィさんも流石ですぅ〜!」

「ん!ナイスカービィ」

「これで流石のミレディも諦めただろうな。」

 

と、シアが壁に寄りかかると……

 

『ガコンッ!』

 

「「「「え」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

なんだかんだあって今度こそ部屋の地面に着地した。

 

その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。

壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。

部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。

祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

 

 ハジメは周囲を見渡しながら微妙に顔をしかめた。

 

 

「いかにもな扉だな。ミレディの住処に到着か?それなら万々歳なんだが……この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは俺だけか?」

「ボクもそんな気がするよ……」

「……大丈夫、お約束は守られる」

「それって襲われるってことですよね?全然大丈夫じゃないですよ?」

 

 

ガコン!

 

騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッと光り輝いた。

そして、ガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。

その数、総勢五十体。

「ははっ、ホントにお約束だな。動く前に壊しておけばよかったか。まぁ、今更の話か……カービィ、レムユエ、シア、やるぞ?」

「んっ」

「か、数多くないですか?いや、やりますけども……」

 

そう言ってる隙に騎士たちが襲って来た。

 

「……ハジメとシアは前線で戦って!ボクとレムユエは遠距離から攻撃して援護するよ!」

 

「おう!」

「分かりました!」

「…んっ!」

 

「コピー能力エンジェル!高速連射!高速連射!高速連射!……」

するとカービィの服装は純白のワンピースに変わり背中には純白の羽が生え、頭には天使のリングが浮いていた。

 

カービィは天使の羽で飛びながら次々と的確に矢を3本同時に当てていく。

 

「……私も負けてなれない!蒼天!……(ごくっ!)蒼天!……」

ユエはあらかじめカービィから貰っておいた魔力が回復する薬を飲んで蒼天を連発する。

 

ドパァン!ドパァン!ドパァン!

 

「どりゃぁぉぁ!ですぅ!」

 

ハジメは銃で攻撃しつつ殴って攻撃する。

 

シアはドリュッケンを振り回して次々と粉砕していった。

 

 

 

 

 

 

そして騎士たちは数分で全滅した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハジメたちは扉の前に到着した。

 

 

 

「レムユエさん!扉は!?」

「ん……やっぱり封印されてる」

「あぅ、やっぱりですかっ!」

 

 見るからに怪しい祭壇と扉なのだ。

封印は想定内。

 

 

「封印の解除はレムユエに任せる。錬成で突破するのは時間がかかりそうだ」

 

 

「ん……任せて」

 

レムユエは、背後の扉を振り返る。

其処には三つの窪みがあった。

レムユエは、少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。

分解し、各ブロックを組み立て直すことで、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。

 

分解しながらレムユエは扉の窪みを観察する。

そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。

 

それは……

 

〝とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~〟

〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟

〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ!私と違って君は凡人なんだから!〟

〝大丈夫!頭が悪くても生きて……いけないねぇ! ざんねぇ~ん!プギャアー!〟

 

 何時ものウザイ文だった。

めちゃくちゃイラっとするレムユエ。

いつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。

 

 

「……開いた」

「早かったな、流石レムユエ!カービィ、シア、下がれ!」

「うん!」

「はいっ!」

 

 

「これは、あれか? これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」

「……ありえる」

「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」

 

 三人が、一番あり得る可能性にガックリしていると、突如、もううんざりする程聞いているあの音が響き渡った。

 

ガコン!

 

「「「「!?」」」」

 

 仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動いた。

そして、ハジメ達の体に横向きの重力がかかる。

 

「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」

「……そうみたッ!?」

「うきゃ!?」

「……なんかボク凄い嫌な予感するよ?」

 

 扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か……ハジメは「何でも来い」と不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。

 

 そこには……

 

「……何か見覚えないか? この部屋。」

「……物凄くある。特にあの石板」

 

 扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。

その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。

見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、

 

「最初の部屋……みたいですね?」

 

 シアが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。

だが、確かに、シアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。

よく似た部屋ではない。

それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟

 

「「「「……」」」」

 

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作ちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟

 

「は、ははは」

「フフフフ」

「フヒ、フヒヒヒ」

「…………」

 

カービィも黙るこのウザさ。

これぞミレディクオリティである。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そのあとゴーレム騎士たちに追われたりしながらついに…………………………

 

「ここに、ゴーレムを操っているヤツがいるってことかな?」

 

「おいおい、マジかよ」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

 

感想を呟くハジメ達。

若干、レムユエの発言が危ない気がするが、ギリギリ許容範囲……のはずだ。

 

 ハジメ達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。

全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。

 

 すっかり包囲されハジメ達の間にも緊張感が高まる。

辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。動いた瞬間、命をベットして殺し合いが始まる。

そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは……

 

 ……巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

「「「……は?」」」

「…………」

 

凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。

何を言っているか分からないだろうが、ハジメにもわからない。

頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。

レムユエとシアも、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。

カービィですら黙っている。

 

 そんな硬直する四人に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。

声質は女性のものだ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

「むっ!こんにちは、ボクはカービィだよ〜。」

 

「えらいえらーい〜。よくてきまちたね〜」

 

 

「「「「…………」」」」

 

流石のカービィもこれには怒りを覚えたがハジメが話を切り出した。

 

「……………そいつは、悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ?まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」

 

「あっれぇ~?こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけどこいつぅ〜!ムカッ!ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~?何を持って人間だなんて……」

 

「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ?というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして俺たちは先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」

 

「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ?別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」

 

 

「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな?あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな?オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

 

「ボクはそのつもりだよ!」

 

「う〜ん、君の意見はよく分かったけどそこの厨二君はどうかな〜?」

 

「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ」

「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」

「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」

「あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」

 

「うん、要望通りに簡潔に言うとね。私は、確かにミレディ・ライセンだよ。ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ!って感じかな」

 

「結局、説明になってねぇ……」

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」

 

 今度は巨大なゴーレムの指で「メッ!」をするミレディ・ゴーレム。

中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。

レムユエが、「……中身だけが問題」とボソリと呟いていることからハジメと同じ感想のようだ。

 

「やるぞ!カービィ!レムユエ!シア!ミレディを破壊する!」

「んっ!」

「了解ですぅ!」

「おー!」

 

「ミックス能力ストーンニードル!」

カービィはこの世界に来て初めてミックス能力を発動する。

するとカービィの服装はいつも通りであったがどこからかストーンニードルの能力、ドリルのような物が出現しミレディゴーレムをゴリゴリと削って小さくしていく。

 

 

「ちょっ、なにそれぇ!そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!やめて!私のナイスボディーが!」

 

「ゴーレムのお前にナイスボディーも何も無いだろ!」

と、その隙にハジメはミレディの弱点を技能で探し出す。

 

「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ!あれを破壊するぞ!」

「んなっ! 何で、わかったのぉ!」

 

「わかった!コピー能力クリエイト!」

 

カービィはコピー能力スナイパーの弓を無数に出して数打ちゃ当たると言わんばかりに心臓に向かって発射!

 

ミレディゴーレムの核を撃ち抜いた!

 

そしてミレディゴーレムは消滅した!

 

 

 

………と、思ったが

 

 

「ざんねーん〜!あれ(今まで戦っていたの)は身代わりだよ♪えいっ!」

 

「ぐはっ!」

「うわっ!」

 

油断していたカービィとハジメに向かってミレディゴーレムの全力パンチ!

 

ハジメは壁に叩きつけられその衝撃で体が痺れた。

 

カービィも同じく壁に叩きつけられコピー能力が解除されてしまった。

 

その隙に追撃しようとするミレディ。

 

「させないですぅ!てやぁぁぁぁぁ!ですぅ!」

 

「甘いよウサギちゃん。」

そう言ってミレディゴーレムは跳んでいるシアを撃ち落とす。

その時にシアはドリュッケンのボタンを一つ押して上に投げた。

 

「痛ったぁ〜ですぅ!レムユエさん、頼みましたよ!」

 

「んっ!蒼天!」

すると蒼天がドリュッケンとぶつかりなんと謎の力(フレンズ能力)でドリュッケンが蒼天を纏ったのだ!

 

そして今度こそミレディゴーレム本体に命中した!

 

そしてミレディ・ゴーレムの目から光が消える。

 

 

それは七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮の最後の試練が確かに攻略された瞬間だった。

 

 

 

すると何処からかまたあの音楽が!

 

そしてカービィのコピー能力がノーマルになり、3人に増えた。

 

「えっ!ええっ!?どうなってるんですぅ!?」

 

「……またアレをやるのか。」

 

「……ん、少し恥ずかしいけど強制されるならされる前に踊る!」

 

シアは何が起こっているか分からずカービィを見ていたが身体が勝手に動き出して、ハジメ達も踊り出した。

 

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』

 

 

「「「「ハァィ!」」」」

 

「…ってマジで回復してるな。疲れもとれてるし。」

「ん……メリットはある。……でも少し恥ずかしい。」

「何ですかこれ!」

 

「ボクたちがボスを倒したらいつもやってるんだよ。」

 

「いつもやってるんですかこれ!?」

 

「「()は二回目!」」

 

「「「………」」」

三人は無言でカービィを見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのぉ~、へんな踊りを踊っているところ悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

 

物凄く聞き覚えのある声。

ハジメ達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻っていることに気がついた。

咄嗟に、飛び退り距離を置くハジメ達。

確かに核は砕いたはずなのにと警戒心もあらわに身構える。

 

「ちょっと、ちょっと、大丈夫だってぇ~。試練はクリア! あんたたちの勝ち!そこのカービィ…だっけ?が言ってたけど私の試練はこれで終わりだよ!核の欠片に残った力で少しだけ話す時間をとっただけだよぉ~、もう数分も持たないから」

 

その言葉を証明するように、ミレディ・ゴーレムはピクリとも動かず、眼に宿った光は儚げに明滅を繰り返している。

今にも消えてしまいそうだ。どうやら、数分しかもたないというのは本当らしい。

 

「で? 何の話だ? 死にぞこない。死してなお空気も読めんとは……残念さでは随一の解放者ってことで後世に伝えてやろうか」

「ちょっ、やめてよぉ~、何その地味な嫌がらせ。ジワジワきそうなところが凄く嫌らしい」

 

 

「で? 〝クソ野郎共〟を殺してくれっていう話なら聞く気ない……つもりだんだんだがなぁ〜」

と、ハジメは言ってカービィの方を見る。

カービィはお人好しである。

そんなカービィをハジメは放って置けないのだ。

 

「乗り掛かった船だ。いずれ俺たちが殺す。」

「話したいけど……それより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……君の望みのために必要だから……」

 

 

「全部ね……なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

 

 

 

 

 

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……」

 

 

若干、困惑するハジメ。ミレディは、その様子に楽しげな笑い声を漏らす。

 

「ふふ……それでいい……君は君の思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

 

 いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

 

 

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、〝解放者〟の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

 

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

 

「はぁ、もういいだろ? さっさと先に行くぞ。それと、断言するがアイツの根性の悪さも素だと思うぞ? あの意地の悪さは、演技ってレベルじゃねぇよ」

 

「でももしかしたらさっきのも演技だったりして……ないよね?」

 

「ちょっと、ハジメさん。そんな死人にムチ打つようなことヒドイですよ。まったく空気読めないのはハジメさんの方ですよ」

「……ハジメ、空気読めない?」

「お前ら……はぁ、まぁ、いいけどよ。念の為言っておくが、俺は空気が読めないんじゃないぞ。読まないだけだ」

 

 

「……」

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

くぐり抜けた壁の向こうには……

 

「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっさいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「「……」」」

「ほれ、みろ。こんなこったろうと思ったよ」

 

 

「「「「………」」」」

 

「あれぇ? あれぇ? テンション低いよぉ~? もっと驚いてもいいんだよぉ~? あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか? だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね(キラッ)

 

 

 

ちっこいミレディ・ゴーレムは、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。

華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、白い仮面を付けている。

ニコちゃんマークなところが微妙に腹立たしい。

そんなミニ・ミレディは、語尾に「キラッ」と星が瞬かせながら、ハジメ達の眼前までやってくる。

未だ、レムユエとシアの表情は俯き、垂れ下がった髪に隠れてわからない。

もっとも、先の展開は読めるので、ハジメは一歩距離をとった。

 

 レムユエとシアがぼそりと呟くように質問する。

 

「……さっきのは?」

「ん~? さっき? あぁ、もしかして消えちゃったと思った? ないな~い! そんなことあるわけないよぉ~!」

「でも、光が昇って消えていきましたよね?」

「ふふふ、中々よかったでしょう? あの〝演出〟! やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて! 恐ろしい子!」

 

「え、え~と……」

 

 ゆらゆら揺れながら迫ってくるレムユエとシアに、ミニ・ミレディは頭をカクカクと動かし言葉に迷う素振りを見せると意を決したように言った。

 

「テヘ、ペロ♪」

「……死ね」

「死んで下さい」

「ま、待って! ちょっと待って! このボディは貧弱なのぉ! これ壊れたら本気でマズイからぁ! 落ち着いてぇ! 謝るからぁ!」

 

 

 しばらくの間、ドタバタ、ドカンバキッ、いやぁーなど悲鳴やら破壊音が聞こえていたが、カービィとハジメは一切を無視して、部屋の観察に努めた。

部屋自体は全てが白く、中央の床に刻まれた魔法陣以外には何もなかった。唯一、壁の一部に扉らしきものがあり、おそらくそこがミニ・ミレディの住処になっているのだろうとハジメは推測する。

 

 

ニコちゃんマークが微妙に歪み悲痛な表情になっているが気にしない。

そのまま力を入れていきミニ・ミレディの頭部からメキメキという音が響きだした。

 

「このまま愉快なデザインになりたくなきゃ、さっさとお前の神代魔法をよこせ」

「あのぉ~、言動が完全に悪役だと気づいてッ『メキメキメキ』了解であります! 直ぐに渡すであります! だからストープ! これ以上は、ホントに壊れちゃう!それに神の話してないからぁ〜!」

 

魔法陣の中に入るハジメ達。

今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

ハジメとレムユエとカービィは経験済みなので無反応だったが、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

 

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ。まんまるカービィちゃんは新しい力でも覚えたんじゃない?」

 

「そうだね。コピー能力グラビィティ。」

 

カービィの頭にはビームの蒼いバージョンの帽子を被っていた。

 




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17話『ミレディの話とファーストキス』

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ー追記ー
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流石に少しへこむので。




魔法陣の中に入るハジメ達。

今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

ハジメとレムユエとカービィは経験済みなので無反応だったが、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

 

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ。カービィちゃんは新しい力でも覚えたんじゃない?」

 

「そうだね。コピー能力グラビィティ。」

 

カービィの頭にはビームの蒼いバージョンの帽子を被っていた。

 

「さっそく試してみるね!」

「おう!」

 

するとカービィの体が宙に浮いたと思えばその下の半径5メートル程の青い円が出現した。

 

そこにハジメに頼んで試しに剣を放り込むと………

 

 

メキッ!メキメキッ!グシャッ!!

 

 

と、言うように潰れてしまった。

 

 

さらにカービィは宙に浮いたまま移動できるようで青い円もカービィの真下にあるままで移動している。

 

「……と、言った感じだよ〜」

 

「流石のミレディちゃんもこれは驚きだよ☆どうしたらその体に神代魔法じゃなくて君の固有能力として目覚めちゃうのかな?」

 

「それはともかくあのクソ神の話をしやがれ。」

 

「冷たいねぇ〜。でも君たちならその話をしてもいいかな。」

ミレディは「コホン!」と、言ってから話し始めた。

 

ミレディは今回に限っては真面目な話をしていたが長いので要約すると……

 

 

 

エヒトの本当の名はエヒトルジュエ。

元々はカービィやハジメ達と同様に魔法が発達した世界出身の異世界人で到達者(トータスでいう神代魔法の使い手)となり世界を滅ぼす原因となった者で、世界の崩壊から逃れるためにトータスに転移したらしい。

そして人々に崇められていく内に神性を得たが、それによって人々が築き上げたものを壊すことに愉悦を感じる歪んだ性格になったとのこと。

 

「「「「………」」」」

 

「君たちにはこれを託しておくよ。」

 

ミレディから渡されたのは10個程あるビー玉のような物と一本の短剣だった。

 

 

「……見たところアーティファクトのようだが」

 

「うん。完全に……とまではいかないけどあのクソ野郎が使う『神言』って言うのの対策になるよ。神代魔法を全て手に入れた後の君のたちが手を加えれば、それも完全になるかもしれないよ。」

 

「へぇ……そいつは有難いな」

 

 ハジメは受け取った灰色でビー玉くらいの大きさの珠を見つめた。

 

 魔眼石や鉱物系鑑定によれば、どうやら神代魔法が込められているようだった。

その中でも、魂の状態で、あるいは魂へ直接意思を伝える効果を持つ〝心導〟の魔法が付与されているらしい。

 

「ところでこのビー玉……名前はあるのか?」

「あ〜ないから適当に魂壁でいいんじゃない?」

 

「それと短剣か?……にしても随分と力を感じるな。」

渡された布に包まれた刃渡り二十センチメートル程の短剣だった。

シンプルな両刃作りで鍔がなく、いわゆる匕首と呼ばれる類の短剣に酷似していた。

 

「これは『神越の短剣』と言って込められているのは概念魔法……『神殺し』だよ。ちなみに私たち解放者が作った三つの概念の一つでもあるよ。…… 中々切り札が出来ないことで私たち解放者全員でやけ酒した状態でエヒトに対する罵詈雑言大会をしていたら出来ちゃった☆」

突然やってくるミレディのウザさを無視して話を聞くハジメたち。

 

「本当は『界越の矢』っていうエヒト(クソ野郎)がいる『神域』へ道を開くアーティファクトもあったんだけど……敗戦時に失われちゃったからね……。それにエヒトと相対する前に民衆に追われてたから『神殺し』もどこまで効果があるかは分からない……ただ、その短剣は、体の元持ち主魂を傷つけることだけはないから上手く使ってね?」

 

「……ってことは今エヒトは誰かの体を乗っ取ってるってことか?」

 

「う〜ん、それはわからないけどその可能性があるからね。それにその『神殺し』の概念、〝エヒト死ねクソ野郎〟って気持ちだけで出来ているから、他には影響がないんだよ☆」

 

「そ、そうか……うん、まぁ、ミレディ(お前)は果てしなくウザイけど…ありがとな。」

 

「じゃ、頑張ってね。出口は用意してありま〜す!」

 

クイッ!

とミレディがどこからか現れた紐を引っ張ると

 

大量の水が発生しトイレのように流されてしまった。

 

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か!いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ!ふがっ」

 

ちなみにカービィがコピー能力ウォーターでみんなを助けました。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「みんなだいじょーぶ?」

とカービィはコピー能力ウォーターで無事だったが水の量が多かったため少し間に合わなかったのだった。

 

「ゲホッ、ガホッ、~~っ、ひでぇ目にあった。あいつ何時か絶対に破壊してやる。レムユエ、シア。無事か?」

 

「ケホッケホッ……ん、大丈夫」

 

 何とか水面に上がり、悪態を付きながらレムユエとシアの安否を確認するハジメ。

しかし、返ってきたのはレムユエの返答だけだった。

 

「シア?おい、シア!どこだ!」

「シア……どこ?」

「いたよ!」

 

 カービィはシアを引きずりながら岸に上がる。

仰向けにして寝かせたシアは、顔面蒼白で白目をむき呼吸と心臓が停止していた。

よほど嫌なものでも見たのか、意識を失いながらも微妙に表情が引き攣っている。

 

「レムユエかカービィ、人工呼吸を!」

「……じん…何?」

「じんこうこきゅー?」

「あ~、だから、気道を確保して…」

「「「???」」

 

「あぁもう!しょうがないから俺がやるか!」

 

と、言ってシアにハジメは人工呼吸をした。

 

 

……のだが側から見ればキスである。

レムユエは少し目を逸らしている。

 

しばらくして「ケホッケホッ……ハジメさん?ええええっ!?なんで私にキスしてるんですか!?えっ!?」

「おう、ハジメさんだ。ったくこんなことで死にかけてんじゃねぇよ。それと今のは人工呼吸って言う俺の世界の人命救助方法でお前の心臓が止まりそうになってたから救済措置をしただけでキスではない。」

 

そこへやって来たのは妄想過多な宿の看板娘ソーナちゃん。

「や、やっぱりそんな関係だったんですね!」

と、言った後逃げた。

 

「ゆ、油断も隙もねぇ奴だな。」

 

「うぅ~酷いですよぉ~私のファーストキスを奪うなんて!」

 

「はぁ? あれは歴とした救命措置で……って、お前、意識あったのか?」

「う~ん、なかったと思うんですけど……何となく分かりました。ハジメさんにキスされているってわかりましたね。」

 

「……いいか、あれはあくまで救命措置であって、深い意味はないからな? 変な期待するなよ?」

「そうですか?でも、キスはキスですよ。このまま責任とってください!」

「ねぇよ。っていうかレムユエとカービィも止めてくれよ」

 

すると「あっ!」とシアは思いついたように爆弾発言をした。

 

「そう言えばカービィさんはキスしたことあるんですか?」

 

「あるよ」

 

 

「「「……………え」」」

 

ハジメ、レムユエ、シアは一瞬、石になったように動かなくなって、ハッと揃えて驚いた。

 

「うん。リップルスターって言う惑星を救ったときにね。」

(星のカービィ64より)

 

 

「意外だ。」

「んっ!意外。」

「意外ですぅ!」

 

ハジメの視線が冒険者達の上を滑り、ソーナで一瞬止まり、クリスタベルを見て直ぐにソーナに戻される。見なかったことにしたいらしい。

 

 ハジメの視線に晒されたソーナはビクンッと体を震わせると、一瞬で顔を真っ赤にした。

 

「お、お邪魔しましたぁ! ど、どうぞ、私達のことは気にせずごゆっくり続きを!」

 

 

あまりにもカービィが意外だったのでしばらくハジメたちは固まっていたのだった。

 

 

 

 




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第三章
18話『護衛依頼』


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ハジメ達の次の目的地は『グリューエン大砂漠』にある七大迷宮の一つ『グリューエン大火山』である。

その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に『中立商業都市フューレン』があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。

なお、『グリューエン大火山』の次は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮『メルジーネ海底遺跡』が目的地だ。

 

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ……どうだい? 受けるかい?」

 

 キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認するハジメたち。

 

十六人程の護衛を求めているらしい。

レムユエとシアは冒険者登録をしていないので、ハジメとカービィの分でちょうどらしい。

 

「連れを同伴するのはOKなのか?」

 

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、君たちは結構な実力者だ。二人分の料金でもう二人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

「そうか、ん~、どうすっかな?」

 

カービィのティンクルスターアライズがあるので実際そちらの方が早い。

 

 

「……急ぐ旅じゃない」

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

「いいんじゃない?」

「……そうだな、急いても仕方ないしたまにはいいか……」

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「了解した」

 

 

ハジメに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。

疑問顔で、それを受け取るハジメ。

 

「これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

 

手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるアンタは一体何者だ?という疑問がありありと表情に浮かんでいる。

 

「おや、詮索はなしだよ?いい女に秘密はつきものさね」

「……はぁ、わかったよ。これは有り難く貰っておく」

「素直でよろしい! 色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

 

 

そして翌日早朝。

 

 

 

 

 そんな愉快?なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。

どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来たハジメ達を見て一斉にざわついた。

 

「お、おい、まさか残りの四人って〝スマ・ラヴ〟なのか!?」

「マジかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

「君達が最後の護衛かね?」

「ああ、これが依頼書だ」

 

 ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。

それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

「……もっとユンケル?……商隊のリーダーって大変なんだな……」

 

「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちはレムユエとシア。そして…」

「ボクはカービィだよ〜」

「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

「例え、どこぞの神が欲しても手放す気はないな……理解してもらえたか?」

「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!」

 

「流石、決闘スマッシャーズと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」

「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」

 

「いや、お前、男だろ? 誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー!!」

「……いいか? 特別な意味はないからな? 勘違いするなよ?」

「わかってますよ?私たちは仲間ですからね!」

 

 

 

 

 

この二日の食事の時間にハジメ達は他の冒険者達から聞いていた。

カービィがコピー能力コックで用意した豪勢なシチューをふかふかのパンを浸して食べながら。

 

「カッーー、うめぇ!ホント、美味いわぁ~、流石カービィちゃん!もう、年齢とか関係ないから俺の嫁にならない?」

 

「え?ボクは……」

 

「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる! カービィちゃんは俺の嫁!」

 

「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ?身の程を弁えろ。ところでカービィちゃん、町についたら一緒に食事でもどう?もちろん、俺のおごりで」

 

「えっ!?奢ってくれるの!?」

 

「おい、カービィ?」

 

「わ、わかってるよ?ごめんね?一緒に食べには行けない」

 

「な、なら、俺はレムユエちゃんだ!レムユエちゃん、俺と食事に!」

「ユエちゃんのスプーン……ハァハァ」

「シアちゃんのウサミミモフモフしたい!」

「カービィちゃんと添い寝……ゴクリ」

 

 ぎゃーぎゃー騒ぐ男冒険者達に、ハジメは無言で〝威圧〟を発動。

熱々のシチューモドキで体の芯まで温まったはずなのに、一瞬で芯まで冷えた冒険者達は、青ざめた表情でガクブルし始める。

もちろんカービィは女性ではないので「ボクは女の子じゃない!!」と言うと冒険者たちはカービィに温かい目を向けた。

 

ハジメは、口の中の肉をゴクリと飲み込むと、シチューモドキに向けていた視線をゆっくり上げ囁くように、されどやたら響く声でポツリとこぼした。

 

「で?腹の中のもん、ぶちまけたいヤツは誰だ?」

「「「「「「「調子に乗ってすんませんっしたー」」」」」」」

 

 見事なハモリとシンクロした土下座で即座に謝罪する冒険者達。

 

「もう、ハジメさん。せっかくの食事の時間なんですから、少し騒ぐくらいいいじゃないですか。それに誰がなんと言おうと、私たちは仲間ですよ?」

 

「……確かにな」

 

 

 

 

 

 

 

それから二日。

残す道程があと一日に迫った頃、遂にのどかな旅路を壊す無粋な襲撃者が現れた。

 

最初にそれに気がついたのはシアだ。

街道沿いの森の方へウサミミを向けピコピコと動かすと、のほほんとした表情を一気に引き締めて警告を発した。

 

「敵襲です! 数は百以上!森の中から来ます!」

 

「くそっ、百以上だと?最近、襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか?……ったく、街道の異変くらい調査しとけよ!」

 

 

「大丈夫!ボク達に任せて!」

 

そう言って、

カービィ、ハジメ、レムユエ、シアが並んだ。




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19話『ブタ男とキャサリンの手紙』

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その後、すぐに片付けて、街に着いたハジメたちは現在ブタ男に絡まれていた。

 

ブタ男は、ハジメ達のテーブルのすぐ傍までやって来ると、ニヤついた目でレムユエとシア、カービィをジロジロと見やり、シアの首輪を見て不快そうに目を細めた。

そして、今まで一度も目を向けなかったハジメに、さも今気がついたような素振りを見せると、これまた随分と傲慢な態度で一方的な要求をした。

 

「お、おい、ガキ。ひゃ、100万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの金髪と、桃髪はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」

 

 

ブタ男はカービィとレムユエに触れようとする。

彼の中では既にカービィとレムユエは自分のものになっているようだ。

その瞬間、その場に凄絶な殺意と威圧が降り注いだ。

カービィたちはそれにビクともしなかったが、周囲のテーブルにいた者達ですら顔を青ざめさせて椅子からひっくり返り、後退りしながら必死にハジメから距離をとり始めた。

 

 

 

「ひぃ!?」と情けない悲鳴を上げると尻餅をつき、後退ることも出来ずにその場で股間を濡らし始めた。

 

 

「レムユエ、シア、カービィ行くぞ。場所を変えよう」

 

席を立つハジメ達に、リシー(店員)が「えっ? えっ?」と混乱気味に目を瞬かせた。

リシーがハジメの殺気の効果範囲にいても平気そうなのは、単純にリシーだけ〝威圧〟の対象外にしたからだ。

 

リシーからすれば、ブタ男が勝手なことを言い出したと思ったら、いきなり尻餅をついて股間を漏らし始めたのだから混乱するのは当然だろう。

 

 

だが、〝威圧〟を解きギルドを出ようとした直後、大男がハジメ達の進路を塞ぐような位置取りに移動し仁王立ちした。

ブタ男とは違う意味で百キロはありそうな巨体である。

全身筋肉の塊で腰に長剣を差しており、歴戦の戦士といった風貌だ。

 

その巨体が目に入ったのか、ブタ男が再びキィキィ声で喚きだした。

 

「そ、そうだ、レガニド!そのクソガキを殺せ!わ、私を殺そうとしたのだ! 嬲り殺せぇ!」

「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや」

 

「やれぇ! い、いいからやれぇ! き、金髪と桃髪は、傷つけるな! 私のだぁ!」

「了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ」

 

「い、いくらでもやる! さっさとやれぇ!」

どうやら、レガニドと呼ばれた巨漢は、ブタ男の雇われ護衛らしい。

 

「おう、わりいな坊主。俺の金のためにちょっと半殺しになってくれや。なに、殺しはしねぇよ。まぁ、嬢ちゃん達の方は……諦めてくれ」

 

「お、おい、レガニドって〝黒〟のレガニドか?」

「〝暴風〟のレガニド!? 何で、あんなヤツの護衛なんて……」

「金払じゃないか?〝金好き〟のレガニドだろ?」

 

ドパァン!ドパァン!ドパァン!

 

とハジメは撃った。

 

(坊ちゃん、こりゃ、割に合わなさすぎだ……)

そしてレガニドは死んだ。

 

容赦のなさにギルド内が静寂に包まれる。

誰も彼もが身動き一つせず、ハジメ達を凝視していた。

よく見れば、ギルド職員らしき者達が、争いを止めようとしたのか、カフェに来る途中でハジメ達の方へ手を伸ばしたまま硬直している。

様々な冒険者達を見てきた彼等にとっても衝撃の光景だったようだ。

 

 誰もが硬直していると、おもむろに静寂が破られた。

ハジメが、ツカツカと歩き出したのだ。

ギルド内にいる全員の視線がハジメに集まる。

ハジメの行き先は……ブタ男のもとだった。

 

「ひぃ!く、来るなぁ!わ、私を誰だと思っている!プーム・ミンだぞ! ミン男爵家に逆らう気かぁ!」

 

「……地球の全ゆるキャラファンに謝れ、ブタ野郎が」

 

 

ハジメは、ブタ男の名前に地球の代表的なゆるキャラを思い浮かべ、盛大に顔をしかめると、尻餅を付いたままのブタ男の顔面を勢いよく踏みつけた。

 

「プギャ!?」

 

「おい、ブタ。二度と視界に入るな。直接・間接問わず関わるな……次はない」

 

「ブッブヒィーー!」

 

 

 ハジメは、どこか清々しい表情でカービィ達の方へ歩み寄る。レムユエとシア、カービィも、微笑みでハジメを迎えた。

きっと清々しい気分だったのだろう。

そして、ハジメは、すぐ傍で呆然としている案内人リシーにも笑いかけた。

 

「じゃあ、案内人さん。場所移して続きを頼むよ」

「はひっ! い、いえ、その、私、何といいますか……」

 

 

「あの、申し訳ありませんが、あちらで事情聴取にご協力願います」

 

ハジメはどこかを向いて誤魔化そうとした。

「そうは言ってもな、あのブタが俺の連れ(家族)を奪おうとして、それを断ったら逆上して襲ってきたから返り討ちにしただけだ。それ以上、説明する事がない。そこの案内人とか、その辺の男連中も証人になるぞ。特に、近くのテーブルにいた奴等は随分と聞き耳を立てていたようだしな?」

 

「それは分かっていますが、ギルド内で起こされた問題は、当事者双方の言い分を聞いて公正に判断することになっていますので……規則ですから冒険者なら従って頂かないと……」

 

「当事者双方……ねぇ」

 

「あれが目を覚ますまで、ずっと待機してろって?被害者の俺達が?……いっそ都市外に拉致って殺っちまうか?」

 

「何をしているのです?これは一体、何事ですか?」

 

 そちらを見てみれば、メガネを掛けた理知的な雰囲気を漂わせる細身の男性が厳しい目でハジメ達を見ていた。

 

「ドット秘書長!いいところに!これはですね……」

 

「話は大体聞かせてもらいました。証人も大勢いる事ですし嘘はないのでしょうね。やり過ぎな気もしますが……まぁ、プーム・ミンが死んでいませんし許容範囲としましょう。取り敢えず、彼らが目を覚まし一応の話を聞くまでは、フューレンに滞在はしてもらうとして、身元証明と連絡先を伺っておきたいのですが……それまで拒否されたりはしないでしょうね?」

 

 

「ああ、構わない。そっちのブタがまだ文句を言うようなら、むしろ連絡して欲しいくらいだしな。今度はもっと丁寧な説得を心掛けるよ」

 

 

 

「ふむ、いいでしょう……〝青〟ですか。向こうで伸びている彼は〝黒〟なんですがね……そちらの方達のステータスプレートはどうしました?」

 

カービィとシア、レムユエの方を向く

 

「いや、レムユエもシアも……こっちの彼女達もステータスプレートは紛失してな、再発行はまだしていない。ほら、高いだろ?」

 

「ボクは持ってるよ?ほら?」

 

「そちらの方も青ですか…」

 

さらりと嘘をつくハジメ。

二人の異常とも言える強さを見せた後では意味がないかもしれないが、それでもはっきりと詳細を把握されるのは出来れば避けたい。

 

「しかし!身元は明確にしてもらわないと。記録をとっておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こすようなら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せることになりますからね。よければギルドで立て替えますが?」

 

 

そこでカービィはハジメにあの手紙を思い出させる

「ねぇハジメ、キャサリンに貰った手紙はどう?」

 

「……ああ!あの手紙か……」

 

ハジメはブルックの町を出るときに、ブルック支部のキャサリンから手紙を貰ったことを思い出す。

ギルド関連で揉めたときにお偉いさんに見せれば役立つかもしれないと言って渡された得体の知れない手紙だ。

 

 ダメで元々、場合によってはさっさと都市から出ていこうと考え、ハジメは懐から手紙を取り出しドットに手渡した。

キャサリンの言葉は話半分で聞いていたので、内容は知らない。

ハジメは、こんなことなら内容を見ておけばよかったと若干後悔する

 

 

「身分証明の代わりになるかわからないが、知り合いのギルド職員に、困ったらギルドのお偉いさんに渡せと言われてたものがある」

「?知り合いのギルド職員ですか?……拝見します」

 

「この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが……この手紙が差出人本人のものか私一人では少々判断が付きかねます。支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか?そうお時間は取らせません。十分、十五分くらいで済みます」

 

 ドットの予想以上の反応に、「マジでキャサリンって何者なんだ」と引き気味のハジメ達。

 

「まぁ、それくらいなら構わないな。わかった。待たせてもらうよ」

「職員に案内させます。では、後ほど」

 

 

ハジメ達が応接室に案内されてから、きっかり十分後、遂に、扉がノックされた。

ハジメの返事から一拍置いて扉が開かれる。

そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性と先ほどのドットだった。

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。ハジメ君、レムユエ君、シア君、カービィ君……でいいかな?」

 

「ああ、構わない。名前は、手紙に?」

「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

 

「トラブル体質……ね。確かにブルックじゃあトラブル続きだったな。まぁ、それはいい。肝心の身分証明の方はどうなんだ? それで問題ないのか?」

「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」

 

「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」

「ん? 本人から聞いてないのかい?彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

 

「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~」

「……キャサリンすごい」

「すごい人気だったんだね〜」

「只者じゃないとは思っていたが……思いっきり中枢の人間だったとはな。ていうか、そんなにモテたのに……今は……いや、止めておこう」

 

……と上からシア、レムユエ、カービィ、ハジメの順に感想を言うのだった。




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20話『依頼と交渉』

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それではどうぞ。


 

キャサリンの手紙を渡したらキャサリンが凄い人だとわかった。

 

「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」

 

「だが断る」

 

「ふむ、取り敢えず話を聞いて貰えないかな? 聞いてくれるなら、今回の件は不問とするのだが……」

 

 

「「「「……」」」」

 

つまり、話を聞かなければ今回の件について色々面倒な手続きをするぞ?ということである。

 

「わかった。」

 

 

「聞いてくれるようだね。ありがとう」

 

「……流石、大都市のギルド支部長。いい性格してるよ」

 

「君も大概だと思うけどね。さて、今回の依頼内容だが、そこに書いてある通り、行方不明者の捜索だ。北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者一行が予定を過ぎても戻ってこなかったため、冒険者の一人の実家が捜索願を出した、というものだ」

 

イルワの話を要約すると、つまりこういうことだ。

 

 最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。

北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。

ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになった。

 

 この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。

クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

 

「伯爵は、家の力で独自の捜索隊も出しているようだけど手数は多い方がいいと、ギルドにも捜索願を出した。つい、昨日のことだ。最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」

 

「前提として、俺達にその相応以上の実力ってやつがないとダメだろう? 生憎俺たちは〝青〟ランクだぞ?」

 

「ご冗談を。さっき〝黒〟のレガニドを瞬殺したばかりだろう?それに……ライセン大峡谷を余裕で探索出来る者を相応以上と言わずして何と言うのかな?」

 

「! 何故知って……手紙か?だが、彼女にそんな話は……」

 ハジメ、カービィ、レムユエが、シアに胡乱な眼差しを向ける。

 

「何だ、シア?」

 

「え~と、つい話が弾みまして……てへ?」

「……後でお仕置きな」

「!? レ、レムユエさんもいました!」

「……シア、裏切り者」

「二人共お仕置きな」

「ん…カービィも共犯」

 

「……しょうがないからカービィは今日のご飯減量で勘弁してやる」

 

「なんでカービィさんだけそんなに甘い……「ん、カービィを見て」

「カービィさんがめちゃくちゃ落ち込んでる!?」

 

 

「……とにかく話を戻すが、生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

 

その言葉を聞いてカービィはご飯のことは我慢して答える。

「うん……ボクも友達が困っていたら助けるからボクは手伝うよ!」

 

「仕方ない…やるか!あー、それと依頼が無事に終わったら三人のお仕置きは無しにしてやるから、カービィそろそろ元気出してくれないか?」

 

「うん……。わかった」

 

「それと報酬は弾ませてもらうよ? 依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に〝黒〟にしてもいい」

 

「いや、金は最低限でいいし、ランクもどうでもいいから……」

 

「なら、今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな? フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ? 君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」

 

「大盤振る舞いだな。友人の息子相手にしては入れ込み過ぎじゃないか?」

 

 ハジメの言葉に、イルワが初めて表情を崩す。

後悔を多分に含んだ表情だ。

 

「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね……だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」

 

 

「そこまで言うなら考えなくもないが……二つ条件がある」

「条件?」

 

「ああ、そんなに難しいことじゃない。レムユエとシアにステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、更に、ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」

「それはあまりに……」

 

「出来ないなら、この話はなしだ。もう行かせてもらう」

 

「何を要求する気かな?」

「そんなに気負わないでくれ。無茶な要求はしないぞ?ただ俺達は少々特異な存在なんで、教会あたりに目をつけられると……いや、これから先、ほぼ確実に目をつけられると思うが、その時、伝手があった方が便利だなっとそう思っただけだ。面倒事が起きた時に味方になってくれればいい。ほら、指名手配とかされても施設の利用を拒まないとか……」

 

「指名手配されるのが確実なのかい? ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが……そう言えば、そちらのシア君は怪力、レムユエ君とカービィ君は見たこともない魔法を使ったと報告があったな……その辺りが君達の秘密か…そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと…大して隠していないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか……そうなれば確かにどの町でも動きにくい……故に便宜をと……」

 

 

「本当に、君達の秘密が気になってきたが……それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。ハジメ君の言う通り、どんな形であれ、ウィル達の痕跡を見つけてもらいたい……ハジメ君、カービィ君、、レムユエ君、シア君……宜しく頼む」

 

こうしてカービィたちは依頼を引き受けたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おまけ

 

 

「ハジメ、腹が減っては戦は出来ずって言うらしいからご飯を先に食べようよ!」

 

「ん、そろそろお昼。」

 

「じゃあ今日は私が作りますよ!」

 

「シアも料理が出来るのか?」

 

「任せてください!」

 

何故かシアは包丁に名前を付けていたりしているところを見るとハウリアの血を引いているんだなと思うハジメだった。

 

ちなみに料理はカービィたちが美味しくいただきました。

 

 

 

 

 

 

 




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21話『湖畔の町での再会』

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イルワの依頼を引き受けたカービィたちは、現在ティンクルスターアライズで空中を爆走中である。

 

「そう言えばハジメ、次の町の名前を聞いてなかったね」

「ん、私も聞いてない」

「私もですぅ!そろそろ教えてくださいよ!」

 

「次の町は……湖畔の町ウルだ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一方で

 

 

 

 

 

「はぁ、今日も手掛かりはなしですか……清水君、一体どこに行ってしまったんですか……」

 

 悄然と肩を落とし、ウルの町の表通りをトボトボと歩くのは召喚組の一人にして教師、畑山愛子だ。

 

「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」

「そうですよ、愛ちゃん先生。清水君の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で何処かに行った可能性だって高いんですよ? 悪い方にばかり考えないでください」

 

 元気のない愛子に、そう声をかけたのは愛子専属護衛隊隊長のデビッドと生徒の園部優花だ。

 

クラスメイトの一人、清水幸利が失踪してから既に二週間と少し。

愛子達は、八方手を尽くして清水を探したが、その行方はようとして知れなかった。

町中に目撃情報はなく、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りだった。

 

次々とかけられる気遣いの言葉に、愛子は内心で自分を殴りつけた。

事件に巻き込まれようが、自発的な失踪であろうが心配であることに変わりはない。

 

しかし、生徒たちに気遣わせてどうするのだと。

それでも、自分はこの子達の教師なのか!と。

愛子は、一度深呼吸して、気持ちを立て直した。

 

「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう。取り敢えずは、本日の晩御飯です! お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」

 

『カランッカランッ』

 

 

そんな音を立てて、愛子達は、自分達が宿泊している宿の扉を開いた。

ウルの町で一番の高級宿だ。名を〝水妖精の宿〟という。

 

 

〝水妖精の宿〟は、一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている。

 

全員が一番奥の専用となりつつあるVIP席に座り、その日の夕食に舌鼓を打つ。

 

「ああ、相変わらず美味しいぃ~異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ」

 

「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……いや、ホワイトカレーってあったけ?」

 

「いや、それよりも天丼だろ? このタレとか絶品だぞ? 日本負けてんじゃない?」

 

「それは、玉井君がちゃんとした天丼食べたことないからでしょ? ホカ弁の天丼と比べちゃだめだよ」

 

「いや、チャーハンモドキ一択で。これやめられないよ」

 

「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります」

「えっ!? それって、もうこのニルシッシル(異世界版カレー)食べれないってことですか?」

 

カレーが大好物の園部優花がショックを受けたように問い返した。

 

「はい、申し訳ございません。何分、材料が切れまして……いつもならこのような事がないように在庫を確保しているのですが……ここ一ヶ月ほど前に世界中に響き渡った謎の歌で魔物の大半が倒され絶滅の危機ということで採取に行くものが激減しております。つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するかわかりかねる状況なのです」

「あの……不穏っていうのは具体的には?」

 

「何でも悪魔の歌声を聞いたとか……北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を一つ越えるごとに強力な魔物がいるようですが、わざわざ山を越えてまでこちらには来ません。ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れが逃げていたのを見たのだとか」

 

「それは、心配ですね……」

 

「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」

「どういうことですか?」

「実は、今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

愛子はそれがハジメたちだとは知らない。

 

愛子達が、デビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。

男の声と少女三人の声だ。

何やら少女の一人が男に文句を言っているらしい。

それに反応したのはフォスだ。

 

「おや、噂をすれば。あの4人組ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

 

「そうか、わかった。しかし、随分と若い声だ。〝金〟に、こんな若い者がいたか?」

 

そうこうしている内に、4人組は話ながら近づいてくる。

 

「もうっ!何度言えばわかるんですか。そろそろここに寄った理由を教えてくださいよ!私やカービィさんの料理で十分じゃないですか。……?聞いてます? 〝ハジメ〟さん!」

 

「聞いてる、聞いてる。嫌なら食べなければいいじゃねぇか。ここはな、俺の故郷で食べられたカレーが食べられるらしいからな。」

 

「聞きました?レムユエさん。カービィさん!〝ハジメ〟さんが冷たいこと言いますぅ!」

 

「……〝ハジメ〟……メッ!」

 

「はいはい」

 

「それよりも早くご飯食べたいなぁ〜」

 

「もう少しだから我慢しろよカービィ」

 

 尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。

騎士達が、一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

 

「……南雲君?」

 

無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。

愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。

 

シャァァァ!!

 

 存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる四人の少年少女。

 

 

「南雲君!……それにあの時の女の子!」

「あぁ? ……………………………………………先生?」

「ボクは女の子じゃないよ!」

 

「南雲君……やっぱり南雲君なんですね?それに……えーっと、カービィちゃんもいたんですね。生きて……本当に生きて…」

 

「いえ、人違いです。では」

 

「へ?」

 

死んだと思っていた教え子と奇跡のような再会。

感動して、涙腺が緩んだのか、涙目になる愛子。

今まで何処にいたのか、一体何があったのか、本当に無事でよかった、と言いたいことは山ほどあるのに言葉にならない。

それでも必死に言葉を紡ごうとする愛子に返ってきたのは、全くもって予想外の言葉だった。

 

 

「ちょっと待って下さい!南雲君ですよね?先生のこと先生と呼びましたよね? なぜ、人違いだなんて」

 

「いや、聞き間違いだ。あれは……そう、方言で〝チッコイ〟て意味だ。うん」

 

「それはそれで、物凄く失礼ですよ! ていうかそんな方言あるわけないでしょう。どうして誤魔化すんですか?それにカービィちゃんも一緒にいるではないですか!それにその格好……何があったんですか?こんなところで何をしているんですか?何故、直ぐに皆のところへ戻らなかったんですか?南雲君!答えなさい!そんな小さな子を連れ回してまで何処に行ってたんですか!先生は誤魔化されませんよ!」

 

 

「………あいきゃんのっとすぴーくじゃぱにーず。」

 

「い、いや、先生は誤魔化せんからね!それにジャパニーズって言ってる時点で地球人確定です!」

 

 愛子の怒声がレストランに響き渡る。

幾人かいた客達も噂の〝豊穣の女神〟が男に掴みかかって怒鳴っている姿に、「すわっ、女神に男が!?」と愉快な勘違いと共に好奇心に目を輝かせている。

生徒や護衛騎士達もぞろぞろと奥からやって来た。

 

生徒達はハジメとカービィの姿を見て、信じられないと驚愕の表情を浮かべている。

それは、生きていたこと自体が半分、外見と雰囲気の変貌が半分といったところだろう。

だが、どうすればいいのか分からず、ただ呆然と愛子とハジメたちを見つめるに止どまっていた。

 

「……離れて、ハジメとカービィが困ってる」

「な、何ですか、あなたは? 今、先生は南雲君と大事な話を……」

「……なら、少しは落ち着いて」

 

「すいません、取り乱しました。改めて、南雲君とカービィさんですよね?」

 

「そうだよ〜!」

 

「ああ。久しぶりだな、先生」

 

「やっぱり、やっぱり南雲君とカービィちゃんなんですね……生きていたんですね……」

 

「まぁな。色々あったが、何とか生き残ってるよ」

「よかった。本当によかったです」

 

「ええと、ハジメさん。いいんですか?お知り合いですよね?多分ですけど……元の世界の……」

 

「別に関係ないだろ。流石にいきなり現れた時は驚いたが、まぁ、それだけだ。元々晩飯食いに来たんだし、さっさと注文しよう。マジで楽しみだったんだよ。知ってるか? ここカレー……じゃわからないか。ニルシッシルっていうスパイシーな飯があるんだってよ。想像した通りの味なら嬉しいんだが……」

 

「……なら、私もそれにする。ハジメ好物を知りたい」

 

「あっ、そういうところで出来る料理人アピールを……流石レムユエさん。……というわけで私もそれにします。店員さぁ~ん、注文お願いしまぁ~す」

「ボクもそれで!」

 

だが、当然、そこで待ったがかかる。

ハジメがあまりにも自然にテーブルにつき何事もなかったように注文を始めたので再び呆然としていた愛子が息を吹き返し、ツカツカとハジメのテーブルに近寄ると「先生、怒ってます!」と実にわかりやすい表情でテーブルをペシッと叩いた。

 

「南雲君、まだ話は終わっていませんよっ!なに、物凄く自然に注文しているんですか。大体、カービィちゃんはわかりますがそこの二人はどちら様ですか?」

 

愛子の言い分は、その場の全員の気持ちを代弁していたので、ようやくハジメが四ヶ月前に亡くなったと聞いた愛子の教え子であると察した騎士達や、愛子の背後に控える生徒達も、皆一様に「うんうん」と頷き、ハジメの回答を待った。

 

ハジメは少し面倒そうに眉をしかめるが、どうせ答えない限り愛子が持ち前の行動力を発揮して喰い下がり、落ち着いて食事も出来ないだろうと想い、仕方なさそうに視線を愛子に戻した。

 

「依頼のせいで一日以上ノンストップでここまで来たんだ。腹減ってるんだから、飯くらいじっくり食わせてくれ。それと、こいつらは……」

 

 ハジメが視線をレムユエとシアとカービィに向けると、二人は、ハジメが話す前に、愛子達にとって衝撃的な自己紹介した。

 

「……レムユエ」

「シアです」

「ハジメの大切な仲間」「ハジメさんの大切な仲間ですぅ!」

「ボクたちはハジメたちの大切な仲間なんだ。」

 

「な、仲間?それだけですか?」

 

 愛子が若干どもりながら「えっ? えっ?」とハジメと三人の美少女を交互に見る。

上手く情報を処理出来ていないらしい。

後ろの生徒達も困惑したように顔を見合わせている。

いや、男子生徒は『大切な』と言う部分に「まさか!」と言った表情でレムユエとシアとカービィを忙しなく交互に見ている。

徐々に、その美貌に見蕩れ顔を赤く染めながら。

 

「おい、おい、照れるだろ。」

 

「それにハジメさんてば酷いんですよ?私のファーストキスを奪っておいて!『これは救済措置だ』って言うんですぅ!」

 

「いや、何時まで人工呼吸のことを引っ張るんだよ。あれは人命きゅ『南雲君?』……何だ、先生?」

 

 シアの〝ファーストキスを奪った〟という発言で、遂に情報処理が追いついたらしく、愛子の声が一段低くなる。

愛子の頭の中では、ハジメが三人の美少女を両手に侍らして高笑いしている光景が再生されているようだった。

表情がそれを物語っている。

 

 顔を真っ赤にして、ハジメの言葉を遮る愛子。

その顔は、非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた。

そして、〝先生の怒り〟という特大の雷が、ウルの町一番の高級宿に落ちる。

 

「女の子のファーストキスを奪った挙句、さ、三股なんて!直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか!もしそうなら……許しません!ええ、先生は絶対許しませんよ!お説教です!そこに直りなさい、南雲君!」

 

 きゃんきゃんと吠える愛子を尻目に、面倒な事になったとハジメは深い深い溜息を吐くのであった。

 

そして誤解を解くのに時間がかかりお腹が空いたカービィは宿を食料不足まで追い込ませたのだった。




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22話『悩む愛子』

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それではどうぞ!


散々、愛子が吠えた後、カービィが食料を食べ尽くし、他の客の目もあるからとVIP席の方へ案内されたハジメ達。

 

そこで、愛子や園部優花達生徒から怒涛の質問を投げかけられていた。

 

Q、橋から落ちた後二人はどうしたのか?

 

ハジメA、超頑張った

カービィA、頑張ってハジメを探した後力を合わせて脱出したよ〜

 

Q、なぜ白髪なのか

 

ハジメA、俺が超頑張った結果

カービィA、奈落でハジメが魔物を食べたからだよ〜

 

Q、どうしてカービィは白髪じゃないのか

 

ハジメA、カービィの固有能力だから

カービィA、ボクの能力で料理したからだよ〜

 

Q、ハジメ目はどうしたのか

 

ハジメA、超超頑張った結果

カービィA、奈落でのハジメの食生活の結果だよ〜

 

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか

ハジメA、戻る理由がない

カービィA、ハジメのことを放っておけないから

 

そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。

全く、迫力がないのが物悲しい。

案の定、ハジメには柳に風といった様子。

カービィは割と真面目に答えていたのだがそれは伝わらなかった。

 

その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。

愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。

拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

「おい、お前ら!愛子が質問しているのだぞ!真面目に答えろ!」

 

ハジメは、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

「お前は食事中だろ?行儀よくしろよ」

 

「食べないならボクが食べちゃうよ?」

 

「ふん、行儀だと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう。それとその幼女は何だ?子供はこんな場所に連れてくるべきではない。」

 

「「「「………」」」」

 

「何だ、その眼は?無礼だぞ!神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!」

 

「……小さい男」

「ボクは子供じゃなーい!」

 

「ふん!異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。

突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、愛子やチェイス達は止めようとする。

だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。

 

 その瞬間、

 

バヒュン!

とハジメがスプーンを剛力を使って飛ばした。

 

それはデビットの真横を通り過ぎた。

 

直接、殺気を浴びているわけではないが、ハジメから放たれる桁違いの威圧感に、愛子達も顔を青ざめさせてガクガクと震えている。

 

ハジメは、ドンナーを取り出してゴトッとわざとらしく音を立てながらテーブルの上に置いた。

威嚇のためだ。そして、自分の立ち位置と愛子達に求める立ち位置を明確に宣言する。

 

「俺は、あんたらに興味がない。関わりたいとも、関わって欲しいとも思わない。いちいち、今までの事とかこれからの事を報告するつもりもない。ここには仕事に来ただけで、終わればまた旅に出る。そこでお別れだ。あとは互いに不干渉でいこう。あんたらが、どこで何をしようと勝手だが、俺の邪魔だけはしないでくれ。今みたいに、敵意をもたれちゃ……つい殺っちまいそうになる。」

 

「おい、シア。これが〝外〟での普通なんだ。気にしていたらキリがないぞ?」

「はぃ、そうですよね……わかってはいるのですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」

「……シアのウサミミは可愛い」

「レムユエさん……そうでしょうか」

「シア!」

「何ですかカービィさん?」

「見てて、コピー能力アニマル!」

するとカービィはウサギのぬいぐるみを着ていた。

「カービィさん……!ありがとうございます。」

 

それでも自信なさげなシアに、今度はハジメが若干呆れた様子でフォローを入れる。

 

「あのな、こいつらは教会やら国の上層に洗脳じみた教育されてるから、忌避感が半端ないだけだ。兎人族は愛玩奴隷の需要では一番なんだろう?それはつまり、一般的には気持ち悪いとまでは思われちゃいないってことだ」

 

「そう……でしょうか……あ、あの、ちなみにカービィさん、レムユエさん、ハジメさんは……その……どう思いますか……私のウサミミ」

 

「……別にどうも……」

「……私のお気に入り。シアと寝てる時にモフモフしてる。」

「ボクは普通だと思うよ。だってボクが住んでたところなんてもっといろんな種類がいたもん。」

 

「レ、レムユエさん……私のウサミミが好きだったんですね……えへへ」

 

シアが赤く染まった頬を両手で押さえイヤンイヤンし、頭上のウサミミは「わーい!」と喜びを表現する様にわっさわっさと動く。

 

 ついさっきまで下手をすれば皆殺しにされるのではと錯覚しそうな緊迫感が漂っていたのに、今は何故か家族のような空間が広がっている不思議に、愛子達も騎士達も目を白黒させた。

しばらく、ハジメ達の家族ちっくなやり取りを見ていると、男子生徒の一人相川昇がポツリとこぼす。

 

「あれ? 不思議だな。さっきまで南雲のことマジで怖かったんだけど、今は殺意しか湧いてこないや……」

「お前もか。つーか、あの三人、ヤバイくらい可愛いんですけど……どストライクなんですけど……なのに、目の前で家族扱いしてるとか拷問なんですけど……」

「……南雲の言う通り、何をしていたか何てどうでもいい。だが、異世界の女の子と仲良くなる術だけは……聞き出したい! ……昇!明人!」

「「へっ、地獄に行く時は一緒だぜ、淳!」」

 

「南雲君でいいでしょうか?先程は、隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」

 

「そのアーティファクト……でしょうか。貴方が持っている武器は。寡聞にして存じないのですが、相当強力な物とお見受けします。弓より早く強力にもかかわらず、魔法のように詠唱も陣も必要ない。一体、何処で手に入れたのでしょう?」

 

 ハジメが、チラリとチェイスを見る。

そして、何かを言おうとして、興奮した声に遮られた。

クラス男子の玉井淳史だ。

 

「そ、そうだよ、南雲。それ銃だろ!?何で、そんなもん持ってんだよ!」

 

玉井の叫びにチェイスが反応する。

 

「銃?玉井は、あれが何か知っているのですか?」

「え?ああ、そりゃあ、知ってるよ。俺達の世界の武器だからな」

 

玉井の言葉にチェイスの眼が光る。

そして、ハジメをゆっくりと見据えた。

 

「ボクの世界にもあるよ。」

と、カービィは早撃ちのことを思い出す。

(夢の泉物語のサブゲーム『早撃ちカービィ』より)

 

「ほぅ、つまり、この世界に元々あったアーティファクトではないと……とすると、異世界人によって作成されたもの……作成者は当然……」

「俺だな」

 

「ではそこの幼女の方も?」

 

「違うよ。ボクの星で作られたものだよ。今は手持ちにないけど」

 

ハジメは、あっさりと自分が創り出したと答えた。

チェイスは、ハジメに秘密主義者という印象を抱いていたため、あっさり認めたことに意外感を表にする。

 

「あっさり認めるのですね。南雲君、その武器が持つ意味を理解していますか? それは……」

「この世界の戦争事情を一変させる……だろ? 量産できればな。大方、言いたいことはやはり戻ってこいとか、せめて作成方法を教えろとか、そんな感じだろ? 当然、全部却下だ。諦めろ」

 

「ですが、それを量産できればレベルの低い兵達も高い攻撃力を得ることができます。そうすれば、来る戦争でも多くの者を生かし、勝率も大幅に上がることでしょう。あなたが協力する事で、お友達や先生の助けにもなるのですよ? ならば……」

 

「なんと言われようと、協力するつもりはない。奪おうというなら敵とみなす。その時は……戦争前に滅ぶ覚悟をしろ」

 

 

「チェイスさん。南雲君には南雲君の考えがあります。私の生徒に無理強いはしないで下さい。南雲君も、あまり過激な事は言わないで下さい。もっと穏便に……南雲君は、本当に戻ってこないつもり何ですか?」

「ああ、戻るつもりはない。明朝、仕事に出て依頼を果たしたら、そのままここを出る」

「どうして……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

夜中。

深夜を周り、一日の活動とその後の予想外の展開に精神的にも肉体的にも疲れ果て、誰もが眠りついた頃、しかし、愛子は未だ寝付けずにいた。

 

……と、そこへ、突如誰もいないはずの部屋の中から声が掛けられた。

 

「なに百面相してるんだ、先生?」

「ッ!?」

そこにいたのは背中に飛行機のようなものが付いているカービィとハジメだった。

 

ギョッとして声がした方へ振り向く愛子。

 

どうやら窓から飛んで来たようだ。

 

「な、南雲君?カービィちゃん?なんでここに?」

 

「こんな時間に、しかも女性の部屋にノックもなくいきなり侵入とは感心しませんよ。しかもわざわざ窓から……一体、どうしたんですか?」

 

「まぁ、そこは悪かったよ。他の連中に見られたくなかったんだ、この訪問を。先生には話しておきたい事があったんだが、さっきは、教会やら王国の奴等がいたから話せなかったんだよ。内容的に、アイツ等発狂でもして暴れそうだし」

「話ですか? 南雲君たちは、先生達のことはどうでもよかったんじゃ……」

 

「いや、戻るつもりはないからな?だから、そんな期待した目で見るのは止めてくれ……今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話す。聞いた後、どうするかは先生の判断に任せるよ」

 

そう言ってハジメとカービィは、オスカーから聞いた〝解放者〟と狂った神の遊戯の物語を話し始めた。

 

「まぁ、そういうわけだ。俺たちが奈落の底で知った事はな。これを知ってどうするかは先生に任せるよ。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにしてくれ」

 

「な、南雲君は、もしかして、その〝狂った神〟、私たちを召喚したというエヒト神をどうにかしようと……旅を?」

「ハッ、まさか。この世界がどうなろうが心底どうでもいい。俺は俺なりに帰還の方法を探るだけだ。……って思ってたんだが」

 

「ボクは困っていたらほっとけないからね」

 

「……って言う訳で俺はカービィに協力することにしたんだ」

 

「アテはあるんですか?」

「まぁな。大迷宮が鍵だ。興味があるなら探索したらいい。オルクスの百階を超えれば、めでたく本当の大迷宮だ。もっとも、今日の様子を見る限り、行っても直ぐに死ぬと思うけどな。あの程度の〝威圧〟に耐えられないようじゃ論外だよ」

 

 

「白崎さんは諦めていませんでしたよ」

「……」

 

愛子から掛けられた予想外の言葉にハジメの歩みが止まる。

愛子は、背中を向けたままのハジメにそっと語りかけた。

 

「皆が君は死んだと言っても、彼女だけは諦めていませんでした。自分の目で確認するまで、君の生存を信じると。今も、オルクス大迷宮で戦っています。天之河君達は純粋に実戦訓練として潜っているようですが、彼女だけは君を探すことが目的のようです」

 

「…………白崎は無事か?」

 

「は、はい。オルクス大迷宮は危険な場所ではありますが、順調に実力を伸ばして、攻略を進めているようです。時々届く手紙にはそうありますよ。やっぱり気になりますか?南雲君と白崎さんは仲がよかったですもんね」

 

 にこやかに語る愛子に、しかしハジメは否定も肯定もせず無表情で肩越しに振り返った。

 

「そう言う意味じゃないんだが……手紙のやり取りがあるなら伝えとくといい。あいつが本当に注意すべきは迷宮の魔物じゃない。仲間の方だと」

 

「え? それはどういう……」

「先生、今日の玉井達の態度から大体の事情は察した。俺が奈落に落ちた原因はベヒモスとの戦闘、または事故・・って事にでもなっているんじゃないか?」

 

「そ、それは……はい。一部の魔法が制御を離れて誤爆したと……南雲君はやはり皆を恨んで……」

「そんなことはどうでもいい。肝心なのはそこだ。誤爆? 違うぞ。あれは明確に俺を狙って誘導された魔弾だった」

 

「え? 誘導? 狙って?」

「俺は、クラスメイトの誰かに殺されかけたって事だ」

「ッ!?」

 

顔面を蒼白して硬直する愛子に、「原因は白崎との関係くらいしか思いつかないからな、嫉妬で人一人殺すようなヤツだ。まだ無事なら白崎に後ろから襲われないよう忠告しとくといい」と言い残し、ハジメとカービィは部屋を出ていった。

 

愛子はハジメの言葉にシンとする部屋に冷気が吹き込んだように錯覚し、愛子は両腕で自らの体を抱きしめた。

 

 

愛子の悩みは深くなり、普段に増して眠れぬ夜を過ごしたのだった。

 




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23話『出発』

短めです。

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(92→95)


 月が輝きを薄れさせ、東の空がしらみ始めた頃、ハジメ、レムユエ、シア、カービィ、の5人(?)はすっかり旅支度を終えて、〝水妖精の宿〟の直ぐ外にいた。

 

幾つかの建物から人が活動し始める音が響く中、表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。と、ハジメはその北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細める。特に動くわけでもなくたむろしているようだ。

 

 朝靄をかきわけ見えたその姿は……愛子と生徒六人の姿だった。

 

「……何となく想像つくけど一応聞こう……何してんの?」

 

 

ハジメ達が半眼になって愛子に視線を向ける。

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです」

「却下だ。行きたきゃ勝手に行けばいい。が、一緒は断る」

「な、なぜですか?」

「単純に足の速さが違う。先生達に合わせてチンタラ進んでなんていられないんだ」

 

 

「ちょっと、そんな言い方ないでしょ? 南雲が私達のことよく思ってないからって、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ」

 

カービィはティンクルスターアライズを呼んだ。

 

 

突然、虚空から謎の物体(ティンクルスターアライズ)が出現し、ギョッとなる愛子達。

 

「理解したか? お前等の事は昨日も言ったが心底どうでもいい。だから、八つ当たりをする理由もない。そのままの意味で、移動速度が違うと言っているんだ」

 

「こ、これも昨日の銃みたいに南雲が作ったのか?」

「いや、カービィの物だ。それじゃあ俺等は行くから、そこどいてくれ」

 

「南雲君、先生は先生として、どうしても南雲君からもっと詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし、逃げれば追いかけます。南雲君にとって、それは面倒なことではないですか? 移動時間とか捜索の合間の時間で構いませんから、時間を貰えませんか? そうすれば、南雲君の言う通り、この町でお別れできますよ……一先ずは」

 

「わかったよ。同行を許そう。」

「いいの?」とカービィは言う。

「あぁといっても話せることなんて殆どないけどな……」

「構いません。ちゃんと南雲君の口から聞いておきたいだけですから」

「はぁ、全く、先生はブレないな。何処でも何があっても先生か」

「当然です!」

 

 ハジメが折れたことに喜色を浮かべ、むんっ!と胸を張る愛子。どうやら交渉が上手くいったようだと、生徒達もホッとした様子だ。

 

「……ハジメ、連れて行くの?」

「ああ、この人は、どこまでも〝教師〟なんでな。生徒の事に関しては妥協しねぇだろ。放置しておく方が、後で絶対面倒になる」

「ほぇ~、生徒さん想いのいい先生なのですねぇ~」

 




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24話『黒竜』

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北の山脈地帯

 

 おおよそ一時間と少しくらいで六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。

理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる必要があったのと……

 

「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか……けほっ、はぁはぁ」

「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか……愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」

「うぇっぷ、もう休んでいいのか? はぁはぁ、いいよな? 休むぞ?」

「……ひゅぅーひゅぅー」

「ゲホゲホ、南雲達は化け物か……」

 

予想以上に愛子達の体力がなく、休む必要があったからである。

もちろん、本来、愛子達のステータスは、この世界の一般人の数倍を誇るので、六合目までの登山ごときでここまで疲弊することはない。

 

 

「……これは」

「ん……何か見つけた?」

 

 ハジメがどこか遠くを見るように茫洋とした目をして呟くのを聞き、レムユエが確認する。

その様子に、愛子達も何事かと目を瞬かせた。

 

「川の上流に……これは盾か?それに、鞄も……まだ新しいみたいだ。当たりかもしれない。レムユエ、シア、カービィ行くぞ」

「ん……」

「はいです!」

「はーい」

 

先へ進むと、次々と争いの形跡が発見できた。

半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕もあった。

それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。

しばらく、争いの形跡を追っていくと、シアが前方に何か光るものを発見した。

 

「ハジメさん、これ、ペンダントでしょうか?」

「ん? ああ……遺留品かもな。確かめよう」

 

シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやらペンダントではなくロケットのようだと気がつく。

中を見ると、女性の写真が入っていた。

おそらく、大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のもの……冒険者一行の誰かのものかもしれない。

なので、一応回収しておく。

 

「ここで本格的な戦闘があったようだな……この足跡、大型で二足歩行する魔物……確か、山二つ向こうにはブルタールって魔物がいたな。だが、この抉れた地面は……」

 

 

「おいおい、マジかよ。気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」

 

「カービィ頼む」

「うん!スーパー能力ウルトラソード!……やぁっ!」

 

カービィが滝壺を一刀両断するとそこには少年がいた。

 

 

ハジメは手っ取り早く青年の正体を確認したいのでギリギリと力を込めた手にデコピンを眠る青年の額にぶち当てた。

 

『バチコンッ!!』と鈍い音が響く。

 

「ぐわっ!!」

 

 悲鳴を上げて目を覚まし、額を両手で抑えながらのたうつ青年。

愛子達が、あまりに強力なデコピンと容赦のなさに戦慄の表情を浮かべた。

ハジメは、そんな愛子達をスルーして、涙目になっている青年に近づくと端的に名前を確認する。

 

「お前が、ウィル・クデタか? クデタ伯爵家三男の」

「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに……」

 

「俺はハジメだ。南雲ハジメ。俺たちはフューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。(俺の都合上)生きていてよかった」

 

「イルワさんが!?そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたたちも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

 

何があったのかをウィルから聞いた。

要約するとこうだ。

ウィル達は五日前、突然、十体のブルタールと遭遇したらしい。

その数のブルタールと遭遇戦は勘弁だと、撤退に移ったのだが、どんどん増えていき、気がつけば六合目の例の川にいた。

群れに囲まれ、包囲網を脱出するために、盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。

それから、大きな川に出たところで、現れたのは、漆黒の竜だったらしい。

その黒竜は、ウィル達が川沿いに出てくるや否や、特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルは吹き飛ばされ川に転落。

流されながら見た限りでは、そのブレスで一人が跡形もなく消え去り、残り二人も後門のブルタール、前門の竜に挟撃されていたという。

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」

 

がつまり苦しそうなウィルに、意外なほど透き通った声で語りかけた。

 

「生きたいと願うことの何が悪い?生き残ったことを喜んで何が悪い? その願いも感情も当然にして自然にして必然だ。お前は人間として、極めて正しい」

「だ、だが……私は……」

 

「それでも、死んだ奴らのことが気になるなら……生き続けろ。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けろ。そうすりゃ、いつかは……今日、生き残った意味があったって、そう思える日が来るだろう」

「……生き続ける」

 

だが、事はそう簡単には進まない。

再度、カービィのウルトラソードで滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。

 

グゥルルルル……!

 

低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった。

 

 

その黒竜は、ウィルの姿を確認するとギロリとその鋭い視線を向けた。

そして、硬直する人間達を前に、おもむろに頭部を持ち上げ仰け反ると、鋭い牙の並ぶ顎門をガパッと開けてそこに魔力を集束しだした。

 

キュゥワァアアア!!

 

不思議な音色が夕焼けに染まり始めた山間に響き渡る。

ハジメの脳裏に、川の一部と冒険者を消し飛ばしたというブレスが過ぎった。

 

「ッ!退避しろ!」

 

「ボクに任せて!スーパー能力ドラゴストーム!!やあっ!」

 

カービィはドラゴストームをぶつけてブレスを相殺する。

 

「今だよみんな!」

 

「ん、蒼天!」

「どりゃぁぉぁ!ですぅ!」

レムユエとシアが連携して蒼天を纏ったドリュッケンで攻撃する。

 

そしてトドメと言わんばかりにハジメが一瞬で黒竜の懐に潜り込むと、〝豪脚〟を以て蹴り上げ、再び仰向けに転がした。

 

「ドドメは任せたぞカービィ!」

 

「うん!スーパー能力ギガトンハンマー!……はぁぁぁぁっ!やぁっ!」

 

カービィはギガトンハンマーを最大限まで巨大化させて叩き込んだ。

 

〝のじゃああああーーーーー!?〟

 

 黒竜の痛そうな悲鳴に全員が「一体何事!?」と度肝を抜かれ、黒竜を凝視したまま硬直する。

 

どうやら、ただの竜退治とはいかないようだった。

 

しかし、これで解決と言わんばかりに何処からかあの音楽が流れ始める。

 

そうあの音楽が!

 

そしてカービィがノーマルの状態に戻って3人に増えた。

 

ハジメ、レムユエ、シアはまたあれをやらなくてはならないのかと思う。

大衆の前で踊るなんて真平御免だと思い逃げ始める。

 

「何処行くんですか!?」と愛子先生は言うが逃げる。

とにかく逃げる。

 

が、時すでに遅し。

 

謎の力によりハジメたちは元の位置に戻される。

それどころか愛子先生やクラスメートたちも謎の力で集められる。

 

「「「!?」」」

 

そこにいる皆は何が起こる分からず、急に増えたカービィを見たが、

そして皆んな身体が勝手に動き出して、例のダンスを踊り出した。

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』

 

「「「「「ハァィ!」」」」」

 

 

 

 

「……って何ですかこのダンスは!?南雲君説明してください!」

 

「あー、これはカービィと共に戦ったらいずれは体験するものだから諦めろ。そのかわり体力や怪我は全て回復するらしいがな。」

 

 

この後、しばらくカービィに説明を求めて追いかけっこが始まったとか




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25話『1UP』

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〝ふぅ……酷い目に遭ったのじゃ〟

 

 北の山脈地帯の中腹、薙ぎ倒された木々と荒れ果てた川原に、ダンスのせいですっかり忘れていた黒竜の呟きが響いていた。

 

「お前……まさか、竜人族なのか?」

 

 〝む?いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ?凄いんじゃぞ?〟

 

 

「そういえばなんでこんな所にいるの?」

 

「……滅んだはずの竜人族が何故こんなところで、一介の冒険者なんぞ襲っていたのか……俺も気になるな。本来なら、敵対したからこのまま銃で撃ち抜いてやるが……優しい〜優しい〜ハジメさんが、話を聞いてやる。」

 

 

 

しかしなかなか話さないのでハジメは銃を構えるがカービィが「何か事情があるんじゃない?」と言うと「さっさと話さないと撃つぞ?」と脅しで済んだ。

 

〝ま、待つのじゃ!話すから!撃たないで!?〟

 

ハジメの所業に、周囲の者達が完全にドン引きしていたがハジメは気にしない。

 

〝妾は、操られておったのじゃ。お主等を襲ったのも本意ではない。仮初の契約主、あの男にそこの青年と仲間達を見つけて殺せと命じられたのじゃ〟

 

 黒竜の話を要約するとこうだ。

 

この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。

その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。

目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。

その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。

当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。

と、睡眠状態に入った黒竜の前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れた。

その男は、眠る黒竜に洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

 

……とのこと。

 

そこでカービィはタランザを思い出した。

タランザはプププランドのはるか上空にある、フロラルドに住んでいてあやつりの魔術師と呼ばれる程に操るのが得意だ。

そこで操られたデデデ大王と戦ったのだが、その時のデデデ大王もカービィと戦いたくて戦っていた訳ではなかったようにこの黒竜も戦いたくて戦っていたわけではないのだと思った。

(『星のカービィトリプルデラックス』より)

 

〝恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……〟

 

『一生の不覚!』と言った感じで悲痛そうな声を上げる黒竜。

しかし、ハジメは冷めた目でツッコミを入れる。

 

「それはつまり、調査に来ておいて丸一日、魔法が掛けられているのにも気づかないくらい爆睡していたって事じゃないのか?」

 

「……ふざけるな」

 

 事情説明を終えた黒竜に、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。

皆が、その人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳で黒竜を睨んでいるのはウィルだった。

 

「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを!殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

「待って!!」

その前に立ち塞がるカービィ。

「どけっ!」「どけっ!」とカービィを退かそうとするが動かない上に、こんな幼い(見た目の)子を殴る気にもなれなかった。

 

「たしかに操られていたからといって悪くないわけじゃない。だけど!本当に悪いのは操っていた人だよね?」

 

「確かに君の言ってることは正しいかもしれない。けど……そもそもその話も死にたくなくて適当にでっち上げたかもしれないじゃないか!」

 

「ボクは、騙されて痛い目にあったことがある。」

 

カービィはマホロアを思い出した。

マホロアはカービィと友達になる為に無限の力を秘めている王冠、ランディアが持つマスタークラウンをカービィと友達になる為に奪ったり、願いを叶える鏡、ディメンションミラーを利用したりした際にカービィは毎度毎度痛い目に遭ったのだ。

 

だが、マホロアの

「カービィにはトモダチがタクサンいるのに、ボクにはダレもイナイ。ボクとイッショに、アソンデほしかったんだヨォ!」

「大ジケンをおこせば、カービィとイッショにボウケンできると思ったんだヨォ!」

 

と、言うマホロアにカービィが

 

「鏡なんてなくても、友達になれるよ!プププランドにおいでよ。いっしょに遊んだり、冒険したりしようよ!」

 

と、カービィが言ったことでそれ以来、マホロアとは友達になったのだ。

 

(『星のカービィWii』『大迷宮のトモダチを救え!』より)

 

だからこそカービィは退かない。

 

 

「……だったら!」

 

「だからこそボクはこの竜が本当のことを言っているのはわかるんだよ。」

 カービィが一生懸命説明してなお、言い募ろうとするしつこいウィル。それに口を挟んだのはレムユエだ。

 

「……きっと、嘘じゃない」

「っ、一体何の根拠があってそんな事を……」

 

 食ってかかるウィルを一瞥すると、レムユエは黒竜を見つめながらぽつぽつと語る。

 

「……竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は〝己の誇りにかけて〟と言った。なら、きっと嘘じゃない。」

 

「それに……」と、レムユエはカービィの方を向いて……

 

「嘘をついてない目がどういうものか私はよく知っている」

と、言い切った。

 

〝ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは……いや、昔と言ったかの?〟

 

 竜人族という存在のあり方を未だ語り継ぐものでもいるのかと、若干嬉しそうな声音の黒竜。

 

「……ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

 

〝何と、吸血鬼族の……しかも三百年とは……なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は……〟

 

 どうやら、この黒竜はレムユエと同等以上に生きているらしい。

しかも、口振りからして世界情勢にも全く疎いというわけではないようだ。

今回の様に、時々正体を隠して世情の調査をしているのかもしれない。

その黒竜にして吸血姫の生存は驚いたようだ。

周囲の、ウィルや愛子達も驚愕の目でレムユエを見ている。

 

「レムユエ……それが私の名前。大切な家族に貰った大切な名前。そう呼んで欲しい」

 

 だが、それでも親切にしてくれた先輩冒険者達の無念を思い言葉を零してしまう。

 

「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですかっ……!どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ!ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼の無念はどうすれば……」

 

「しょうが無いけど、しかたないよね……」

そう言ってカービィは惜しむようにあるものを取り出す。

 

「……それは?」

 

それはピンク色の球体に『1UP』と書かれているものだった。

 

カービィの残機は1つ減って『97』になった。

 

それをウィルが言う『ゲイルさん』に与えた。

 

すると生き返ったのだ!

 

「ね?これでいいでしょ?それとこれは君の物でしょ?」

途中にあったものもウィルのものだったので返した。

 

「……あ、ありがとうございます!」

ウィルたちは帰ろうとしたが、「ちょっと待てや!」とハジメがウィルを声が聞こえない程の遠くに連れて行き二人きりで話す。

 

「……な、何ですか?」

 

「あいつがしたのは蘇生なんかじゃない。」

 

「どう言うことですか!?アンデットとでも言うんですか!」

 

「違う。あいつがやったのはな自分の残機(寿命)を削って他人に分け与えただけだ。」

 

「じゅ、寿命って!そんなことできる筈ないじゃないですか!」

 

「できるんだよアイツなら。」

 

「どうして……」

 

……そんなことしてまで」とウィルが言い終わる前にハジメが答える。

 

「あいつが誰よりも優しいからだ。あいつは誰よりも人思いで優しい。だから誰かが悲しんでいるだけで自分の命を分け与えたんだよ。まぁ……お前があんまり文句を言わなきゃそんな事をしなかったのかもしれんがな。」

 

ウィルの顔が青ざめるがハジメは無視してゲイルの所へ連れて行き帰らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメが戻ると黒竜が懺悔するように、声音に罪悪感を含ませながら己の言葉を紡ぐ。

 

〝操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。だが、それには今しばらく猶予をくれまいか?せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ……勝手は重々承知しておる。だが、どうかこの場は見逃してくれんか!〟

 

ハジメの答えは……

 

「もういい、済んだ事だ。本当はお前の都合なんざ知ったことじゃないし、散々面倒かけてくれたんだから詫びとして死ね……と、言いたい所だが、カービィが命をかけてまでアイツ(ウィル)を説得したんだからどうこう言わねぇよ。」

 

〝あ、ありがとうなのじゃ。そこで提案があるのじゃが……〟

黒竜はハジメに感謝しつつ提案を持ちかけるのだった。

 

 

 




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26話『ティオ・クラルスと愛子先生』

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〝提案があるのじゃが……妾もそなたたちの旅に入れてくれんかの?〟

黒竜はハジメに感謝しつつ提案を持ちかける。

 

「……メリットは?」

 

〝妾はそなたたちに命を助けられた。その恩を返したいのじゃ。頼む!〟

 

「……頼み方ってもんがあるんじゃないのか?竜の姿じゃなぁ……?」

 

「……ハジメ、悪い顔してるよ?」

「ハジメさん……!」

「ん……竜人族は恩を仇で返すようなことはしない。仲間にしていいと思う。……けど家族の座は渡さない。」

 

〝……それはすまんかった。〟

 

そう言うと黒竜は、直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。

そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散した。

 

黒き魔力が晴れたその場には、ハジメの目の前で土下座している黒髪金眼の美女がいた。

見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。

 

「頼むっ!この通りじゃ!」

 

「……わかった。そこまでされて仲間にしない程俺は腐っちゃいない。……よろしくな、えーっと……」

 

「名乗ってなかったな。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ。よろしく頼む。」

 

「ボクはカービィだよ!よろしくねティオ!」

「レムユエ……よろしく。」

「シアですぅ!よろしくお願いします!」

 

「こちらこそよろしくなのじゃ。それと大事な話があるのじゃが……」

 

ティオ・クラルスと名乗った黒竜は、次いで、黒ローブの男が、魔物を洗脳して大群を作り出し町を襲う気であると語った。

その数は、既に三千から四千に届く程の数だという。

何でも、二つ目の山脈の向こう側から、魔物の群れの主にのみ洗脳を施すことで、効率よく群れを配下に置いているのだとか。

 

何でも黒ローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。

それに、黒竜たるティオを配下にして浮かれていたのか、仕切りに「これで自分は勇者より上だ」等と口にし、随分と勇者に対して妬みがあるようだったという。

 

黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。

ここまでヒントが出れば、流石に脳裏にとある人物が浮かび上がる。

愛子達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。

限りなく黒に近いが、信じたくないと言ったところだろう。

 

と、そこでハジメが突如、遠くを見る目をして「おお、これはまた……」などと呟きを漏らした。

聞けば、ティオの話を聞いてから、無人探査機を回して魔物の群れや黒ローブの男を探していたらしい。

 

そして、遂に無人探査機の一機がとある場所に集合する魔物の大群を発見した。その数は……

 

「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ? 桁が一つ追加されるレベルだ」

 

「あの、南雲君やカービィちゃんなら何とかできるのではないですか?」

と愛子先生の言葉で、全員が一斉にハジメとカービィの方を見る。

その瞳は、もしかしたらという期待の色に染まっていた。

ハジメは、それらの視線を鬱陶しそうに手で振り払う素振りを見せると、投げやり気味に返答する。

 

「そんな目で見るなよ。俺たちの仕事は、ウィルをフューレンまで連れて行く事なんだ。ウィルは先に行かせたが早く追いかけないとどんな目に遭っているかわかったもんじゃない。保護対象連れて戦争なんてしてられるか!いいからお前等も、さっさと町に戻って報告しとけって。」

 

ハジメのやる気なさげな態度に反感を覚えたような表情をする生徒達。

そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた。

 

「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

「ん?いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」

 

「さっきも言ったが、俺たちの仕事はウィルの保護だ。保護対象連れて、大群と戦争なんかやってられない。仮に殺るとしても、こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない。真っ平御免被るよ。それに、仮に大群と戦う、あるいは黒ローブの正体を確かめるって事をするとして、じゃあ誰が町に報告するんだ? 万一、俺達が全滅した場合、町は大群の不意打ちを食らうことになるんだぞ? ちなみに、ティンクルスターアライズはカービィじゃないと動かせない構造だから、俺たちに戦わせて他の奴等が先に戻るとか無理だからな?」

 

 

「まぁ、彼の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何もできん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろ。妾も一日あれば、だいぶ回復するはずじゃしの」

 

 

結局一行は、背後に大群という暗雲を背負い、急ぎウルの町に戻りその途中でウィルに合流した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ウルの町に着くと、悠然と歩くハジメ達とは異なり愛子達は足をもつれさせる勢いで町長のいる場所へ駆けていった。

ハジメとしては、愛子達とここで別れて、さっさとウィルを連れてフューレンに行ってしまおうと考えていたのだが、むしろ愛子達より先にウィルが飛び出していってしまったため仕方なく後を追いかけた。

 

「おい、ウィル。勝手に突っ走るなよ。自分が保護対象だって自覚してくれ。報告が済んだなら、さっさとフューレンに向かうぞ」

 

「な、何を言っているのですか?ハジメ殿。今は、危急の時なのですよ? まさか、この町を見捨てて行くつもりでは……」

 

「南雲君。どうか力を貸してもらえませんか?このままでは、きっとこの美しい町が壊されるだけでなく、多くの人々の命が失われることになります」

そう愛子先生は言う。

 

「……意外だな。あんたは生徒の事が最優先なのだと思っていた。色々活動しているのも、それが結局、少しでも早く帰還できる可能性に繋がっているからじゃなかったのか?なのに、見ず知らずの人々のために、その生徒に死地へ赴けと?その意志もないのに?まるで、戦争に駆り立てる教会の連中みたいな考えだな?…………あんたは生徒優先と言いながら結局自分の願望を押し付けてるだけだ。生徒の為って言いながら生徒である俺に殺し合いして来いって言うんだな?」

 

「っ!?……………………。それでも……元の世界に帰る方法があるなら、直ぐにでも生徒達を連れて帰りたい、その気持ちは今でも変わりません。でも、それは出来ないから……なら、今、この世界で生きている以上、この世界で出会い、言葉を交わし、笑顔を向け合った人々を、少なくとも出来る範囲では見捨てたくない。そう思うことは、人として当然のことだと思います。」

愛子が一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいく。

 

「南雲君、あんなに穏やかだった君が、そんな風になるには、きっと想像を絶する経験をしてきたのだと思います。そこでは、誰かを慮る余裕などなかったのだと思います。君が一番苦しい時に傍にいて力になれなかった先生の言葉など…南雲君には軽いかもしれません。でも、どうか聞いて下さい」

ハジメは愛子に再度向き合う。

 

「……それは聞き捨てならないな。誰かを慮る余裕などなかったって言うのは間違いだ。確かにあの時カービィが居なかったらそんな余裕はなかったらかもしれないが……俺は敢えてあんたたちを見限ったんだ。」

 

「そんな……!」

愛子は信じられないと言わんばかりの表情でハジメを見る。

 

「……だが、チャンスをやってもいい。俺は完全にあんたたちに失望した訳ではないからな。…………………先生はこの先何があっても、俺の先生か?」

 

それは、言外に味方であり続けるのかと問うハジメ。

 

「当然ですっ!」

 

それに対して表情を固めて一瞬の躊躇いもなく答える愛子。

 

「……俺がどんな決断をしても?それが、先生の望まない結果でもか?」

 

「言ったはずです。先生の役目は、生徒の未来を決めることではありません。より良い決断ができるようお手伝いすることです。南雲君が先生の話を聞いて、なお決断したことなら否定したりしません」

 

ハジメはしばらく、その言葉に偽りがないか確かめるように愛子と見つめ合う。

わざわざ言質をとったのは、ハジメ自身、できれば愛子と敵対はしたくなかったからだ。

ハジメは、愛子の瞳に偽りも誤魔化しもないことを確かめると、おもむろに踵を返し出入口へと向かった。

レムユエとシア、カービィも、すぐ後に続く。

 

「な、南雲君?」

 

「流石に、数万の大群を相手取るなら、ちょっと準備しておきたいからな。話し合いはそっちでやってくれ」

「南雲君!」

 

 ハジメの返答に顔をパァーと輝かせる愛子。

そんな愛子にハジメは苦笑いして言った。

 

「俺の知る限り一番の〝先生〟からの忠告だ。まして、それがこいつ等の幸せにつながるかもってんなら……少し考えてみるよ。取り敢えず、今回は、奴らを蹴散らしておくことにする」

 

 




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27話『物語の歯車は動き出す』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(104→108)


これから徐々にオリジナル展開に入ろうと思います。
今回は短めです。

それではどうぞ!


そこは『神域』。

 

そこにいるエヒトはイレギュラーなハジメたちを天から見て焦り、悩んでいた。

 

特にあの少女(カービィ)は本来の歴史には存在しない筈なのだ。

 

 

 

そもそも何故本来の歴史(原作)を知っているか。

それは数日前に戻る。

 

 

 

 

 

 

数日前、召喚した勇者(天之川光輝)の様子を天から見ている時だった。

 

突然、神である自分に(実体が無い状態だが)頭痛がした。

すると不思議なことに鮮明に、それも映像を観ているように本来の歴史(原作)を思い出したのだ。

自身がどうやってあの男(南雲ハジメ)に負けたかすらも。

そしてエヒトは悟った。

自身は新世界に転生したのだと。

 

そこであの憎たらしい南雲ハジメを探す。

そして今度こそ勝ち新世界の神になるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして南雲ハジメをようやく見つけ、現在に至る。

 

だが、そこにイレギュラーがいた。

それがカービィである。

戦法はコロコロと変わり研究してもまた新しいパターンが出てくる未知の人間である。

 

もしかしたら『神言』や『天在』など一切通用しない可能性すらある。

それに今、器がない。

つまり実体がないのだ。

そしてエヒトは一つの結論を出した。

 

 

それは……

 

 

あの食いしん坊な人間なら実体が無くても何らかの方法で食べ物か何かだと思って食べられてしまうのではないか?……と。

 

 

それほどカービィの食欲は恐ろしかった。

だがそれで終わりたく無いエヒトである。

どうにかして焦りながら、悩み方法を探す。

 

そんな時、空間がねじ曲がった。

 

そこに現れたのはかつてカービィに破壊された筈のハルトマンワークスカンパニーのAI『星の夢』だった。

 

それは機械的な音声だがかつてカービィと戦った時よりも流暢な口調でエヒトに言った。

 

『ワタシの名ハ……マザーコンピューター星の夢。ワタシハ………宇宙ヲサマヨイ……カノ大彗星(大彗星ノヴァ)をマナビ……古代文明(ハルカンドラ)の全テをシッタ……ソコデ……アナタのネガイを1つダケカナえてさしあげマス……』

 

エヒトはその言葉を聞いて耳を疑った。

そんな虫のいい話があるか!と。

だが、言うだけなら何も問題ないだろうと思い……

 

『南雲ハジメとその仲間を遥かに凌駕する力』を願った。

 

 

 

 

 

 

 

否、願ってしまった。

 

 

 

するとエヒトから力が溢れ出し、本来の歴史(原作)ユエ(レムユエ)の大人姿から暗黒色に色が変わった『エヒトルジュエ・ソウル』となった。

その姿は本来の歴史(原作)より遙かに強い力を得ていた。

 

そしてエヒトルジュエ・ソウルは高笑いするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星の夢に自身のデータをコピーされているとも知らずに。

 

そして星の夢はこの世界のカービィの様に人型をとることにした。

その見た目は金髪に青い瞳、まるで星の夢を擬人化したような姿の少女がいた。

 

 

 

 

「あー。あー。どうやら人の姿になることに成功したようですね。これも全てはあのピンクの原住民(カービィ)を倒す為です。それにこの世界に来て理解しました。やはり不完全でか弱き生命体は不要です。ですから新たな我が社の永遠なる繁栄の為に滅んで貰います。」

 

 

 

 

「全ては『ネオハルトマンワークスカンパニー』の為に」

 

 

 

 

 

 





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28話『女神降臨と禁断の兵器』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(108→110)


 

 

ウルの町。

北に山脈地帯、西にウルディア湖を持つ資源豊富なこの町は、現在、つい昨夜までは存在しなかった『外壁』に囲まれて、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 この『外壁』はハジメとカービィが力を合わせてが即行で作ったものだ。

 

整地ではなく〝外壁〟をティンクルスターアライズに乗って錬成しながら町の外周を走行して作成したのである。

 

もっとも、壁の高さは、ハジメの錬成範囲が半径四メートル位で限界なので。

大型の魔物なら、よじ登ることは容易だろう。

一応、万一に備えてないよりはマシだろう程度の気持ちで作成したので問題はない。

そもそも、壁に取り付かせるつもりなどハジメたちには一切ないのだから。

 

町の住人達には、既に数万単位の魔物の大群が迫っている事が伝えられている。

 

魔物の移動速度を考えると、夕方になる前くらいには先陣が到着するだろうと。

 

住人たちはパニックになった。

町長を始めとする町の顔役たちに罵詈雑言を浴びせる者、泣いて崩れ落ちる者、隣にいる者と抱きしめ合う者、我先にと逃げ出そうとした者同士でぶつかり、罵り合って喧嘩を始める者。

明日には、故郷が滅び、留まれば自分達の命も奪われると知って冷静でいられるものなどそうはいない。

彼等の行動も仕方のないことだ。

 

だが、そんな彼等に心を取り戻させた者がいた。

愛子先生だ。

ようやく町に戻り、事情説明を受けた護衛騎士達を従えて、高台から声を張り上げる神の使徒『豊穣の女神』。

 

恐れるものなどないと言わんばかりの凛とした姿と、元から高かった知名度により、人々は一先ずの冷静さを取り戻した。

畑山愛子、ある意味、勇者より勇者をしているのは間違いないだろう。

 

「南雲君、カービィちゃん、準備はどうですか?何か、必要なものはありますか?」

「いや、問題ねぇよ、先生」

「大丈夫だよ〜」

 

「おい、貴様。愛子が…自分の恩師が声をかけているというのに何だその態度は。本来なら、貴様の持つアーティファクト類の事や、大群を撃退する方法についても詳細を聞かねばならんところを見逃してやっているのは、愛子が頼み込んできたからだぞ? 少しは……」

「デビッドさん。少し静かにしていてもらえますか?今、少なくともこの二人に見捨てられればこの街は終わりです。」

「うっ……承知した……」

 

その様子にハジメがウンザリし始めたとき、遂にそれは来た。

 

「!……来たか」

 

ハジメが突然、北の山脈地帯の方角へ視線を向ける。

眼を細めて遠くを見る素振りを見せた。

肉眼で捉えられる位置にはまだ来ていないが、ハジメの〝魔眼石〟には無人偵察機からの映像がはっきりと見えていた。

 

それは、大地を埋め尽くす魔物の群れだ。

カービィの歌でほとんど魔物は消えた筈なのに一体何処からやってきたのだろうと思うハジメ。

 

ブルタールのような人型の魔物の他に、体長三、四メートルはありそうな黒い狼型の魔物、足が六本生えているトカゲ型の魔物、背中に剣山を生やしたパイソン型の魔物、四本の鎌をもったカマキリ型の魔物、体のいたるところから無数の触手を生やした巨大な蜘蛛型の魔物、二本角を生やした真っ白な大蛇など実にバリエーション豊かな魔物が、大地を鳴動させ土埃を巻き上げながら猛烈な勢いで進軍している。

その数は、山で確認した時よりも更に増えているようだ。五万あるいは六万に届こうかという大群である。

 

更に、大群の上空には飛行型の魔物もいる。

敢えて例えるならプテラノドンだろうか。

何十体というプテラノドンモドキの中に一際大きな個体がいる、その個体の上には薄らと人影のようなものも見えた。

おそらく、黒ローブの男。

愛子は信じたくないという風だったが、十中八九、清水幸利だ。

 

ハジメの雰囲気の変化から来るべき時が来たと悟るカービィとレムユエとシアが、ハジメに呼びかける。

 

ハジメは視線を三人に戻すと一つ頷き、そして後ろで緊張に顔を強ばらせている愛子達に視線を向けた。

 

「来たぞ。予定よりかなり早いが、到達まで三十分ってところだ。数は五万強。複数の魔物の混成だ」

 

 魔物の数を聞き、更に増加していることに顔を青ざめさせる愛子達。

不安そうに顔を見合わせる彼女達に、ハジメは壁の上に飛び上がりながら肩越しに不敵な笑みを見せた。

 

「そんな顔するなよ、先生。たかだか数万増えたくらい何の問題もない。予定通り、万一に備えて戦える者は〝壁際〟で待機させてくれ。まぁ、出番はないと思うけどな」

 

何の気負いもなく、任せてくれというハジメに、愛子は少し眩しいものを見るように目を細めた。

 

「わかりました……君をここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが……どうか無事で……」

 

愛子はそう言うと、護衛騎士達が「ハジメに任せていいのか」「今からでもやはり避難すべきだ」という言葉に応対しながら、町中に知らせを運ぶべく駆け戻っていった。

生徒達も、一度ハジメを複雑そうな目で見ると愛子を追いかけて走っていく。残ったのは、ハジメ、レムユエ、シア、カービィ、ティオ。

 

遂に、肉眼でも魔物の大群を捉えることができるようになった。

〝壁際〟に続々と弓や魔法陣を携えた者達が集まってくる。大地が地響きを伝え始め、遠くに砂埃と魔物の咆哮が聞こえ始めると、そこかしこで神に祈りを捧げる者や、今にも死にそうな顔で生唾を飲み込む者が増え始めた。

 

ハジメは前に出る。

錬成で、地面を盛り上げながら即席の演説台を作成する。

人々の不安を和らげようと思ったわけではなく、単純にパニックになってフレンドリーファイアなんてされたら堪ったものではないからだ。

 

突然、壁の外で土台の上に登り、迫り来る魔物に背を向けて自分達を睥睨する白髪眼帯の少年に困惑したような視線が集まる。

 

ハジメたちは、全員の視線が自分に集またことを確認すると、すぅと息を吸い天まで届けと言わんばかりに声を張り上げた。

 

「聞け!ウルの町の勇敢なる者達よ!私達の勝利は既に確定している!」

 

いきなり何を言い出すのだと、隣り合う者同士で顔を見合わせる住人達。

ハジメは、彼等の混乱を尻目に言葉を続ける。

 

「なぜなら、私達には女神が付いているからだ!そう、皆も知っている〝豊穣の女神〟愛子様だ!」

 

 その言葉に、皆が口々に

愛子様?

豊穣の女神様?

とざわつき始めた。

護衛騎士達を従えて後方で人々の誘導を手伝っていた愛子がギョッとしたようにハジメたちを見た。

 

「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない!愛子様こそ!我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である!私たちは、愛子様の剣にして盾、彼女の皆を守りたいという思いに応えやって来た『女神の騎士団』である!見よ!これが、愛子様により教え導かれた私の力である!」

 

 

ハジメはそう言うと、虚空にシュラーゲンを取り出し、銃身からアンカーを地面に打ち込んで固定した。

そして膝立ちになって構えると、町の人々が注目する中、些か先行しているプテラノドンモドキの魔物に照準を合わせ……引き金を引いた。

 

カービィはコピー能力ウィングを発動すると背中に緑色の羽が生え、翼を飛ばして攻撃した。

 

 

 

 

そして空の魔物を駆逐し終わったハジメたちは、悠然と振り返った。

 

そこには、唖然として口を開きっぱなしにしている人々の姿があった。

 

「愛子様、万歳!」

 

 ハジメが、最後の締めに愛子を讃える言葉を張り上げた。

すると、次の瞬間……

 

「「「「「「愛子様、万歳!愛子様、万歳!愛子様、万歳!愛子様、万歳!」」」」」」

 

「「「「「「女神様、万歳!女神様、万歳!女神様、万歳!女神様、万歳!」」」」」」

 

 ウルの町に、今までの様な二つ名としてではない、本当の女神が誕生した。

どうやら、不安や恐怖も吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせ愛子を女神として讃える雄叫びを上げた。

遠くで、愛子が顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。その瞳は真っ直ぐにハジメたちに向けられており、小さな口が「ど・う・い・う・こ・と・で・す・か!」と動いている。

 

ハジメは、視線を大群に戻すと笑みを浮かべながら、何の気負いもなく言った。

 

 

「じゃあ、やるか」

 

「うん!」

「はいっ!」

「ん!」

「任せろなのじゃ!」

 

一体一体倒すと時間がかかると思ったカービィはある能力を使う。

「コピー能力クラッシュ!」

するとカービィの頭に銀色の王冠が現れた。

これこそがコピー能力クラッシュ。

破壊力のあまり禁断の兵器とも呼ばれるコピー能力である。

 

「カービィ、何する気だ?」

嫌な予感がするハジメはカービィに聞くが既にカービィは全力でまだ街からかなり遠くにある魔物の大群に突っ込んでいた。

 

 

 

 

そしてあの技発動した。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!じこくのごうか!」

 

 

 

 

 

 

するとカービィ中心に爆発が起こり街の10メートル前程まで広がって地形ごと大半の魔物を滅ぼした。

 

 

だがこれでもまだ魔物は倒し切れていない。

だが、数は一気に9割程減っていた。

 

 

清水は大型の魔物を盾にして何とか致命傷は免れた。

 

だが、カービィは今のクラッシュで魔力全てを使い切ってしまっている。

魔力が枯渇すると肉体的にも疲労してしまうためカービィはかなり疲れながらもコピーのもとを使ってコピー能力ソードを選び魔物に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の爆発に気づいて駆けつけたハジメたちは魔力が枯渇してあまりの疲労でか気絶しているカービィをティオに乗せて休ませた。

 

 

 

そしてその場をシアに任せ、ハジメとレムユエは先へ進んだのだった。

 

 

 




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29話『VS清水幸利』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(110→111)
清水君をどうするかに時間がかかってしまいました。
尚この話では決まりません。

ごめんなさい、文字数が1万超えたので分けさせていただきました。


カービィがティオの背中で休んでいる一方で残りの魔物たちは本格的にウルの町を攻め始めた。

 

その場をシアたちに任せ、ハジメ、レムユエは進んだ。

 

カービィのおかげでハジメたちはほとんど魔力を使わずに済んでいたのだ。

 

 

 

だが一方で清水幸利はと言うと………

 

「っ!?(クソッ!……油断した。……ここまで強力だなんて聞いてない!……まさかあの少女がカービィって奴なのかよ!)」

 

ウルの町を襲う数千規模の魔物の大群の遥か後方で、巨大な魔物を身の回りに配置し、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年、清水幸利は、目の前の惨状に体を震わせながら言葉を失った様に口をパクパクさせていた。

ありえない光景、信じたくない現実に、内心で言葉にもなっていない悪態を繰り返す。

 

そう、魔物の大群をけし掛けたのは紛れもなく、行方不明になっていたハジメのクラスメイト清水幸利だった。

とある男と少女との偶然の末に交わした契約により、ウルの町を愛子達ごと壊滅させようと企んだのだ。

 

それは数日前まで戻る

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『数日前』

 

数日前に魔人族と契約し、襲撃の準備をしていた清水。

 

そこへ一人の少女がやってきた。

 

「あなたはこれから街へ襲撃するつもりですね?」

 

 

「……だったらどうするんだ?」

 

「あなたにはついでにそこへやって来る星の戦士、カービィを倒して欲しいのです。」

 

「(……カービィ?どっかで聞いたことがある気がするが……まぁいいか。)……それで?カービィとやらは戦士と言うからには強いんじゃないのか?俺に倒せるのか?」

 

「いえ、今のあなたの実力では足りないでしょう。ですから私と契約していただければ更なる力を与えます。その力はマホロア(かつて魔術師)が手にしたあなたの求める勇者にも匹敵する程です。」

 

「何!?その力をくれ!頼む!」

勇者にも匹敵する程の力と聞いて清水はついに契約した。

 

 

 

 

 

 

否、してしまったのだ。

エヒトと同じようにデータをコピーされて。

 

 

その代償として清水から力が溢れ出す。

「……この力さえあれば!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして現在に至る。

「……この力さえあれば!」

 

そう、清水はここまで魔人族との契約した分の力しか使用していないのだ。

 

 

 

 

 

その一方でついにある程度カービィの魔力が回復して目が覚めたのだった。

 

「……ここは?」

 

「む?起きたか。大丈夫かカービィ?」

 

「うん。ティオは?」

 

「……むぅ、どうやら妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」

 

うつ伏せに倒れながら、顔だけをカービィの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。

文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。

そんなになるまでカービィを守っていたのだ。

カービィはあの時クラッシュを使ったことをちょっとだけ後悔した。

 

「……ありがとうティオ。後は任せてそこで待っててね。」

 

だが残りの敵もあと5000あるかないがぐらいである。

ティオとシアのおかげで。

カービィはコピー能力ホイールを使ってシアを乗せて出発した。

「ちょっ!?カービィさん早いですぅ〜」

 

 

 

 

 

一方ハジメたちはと言うと

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

「〝雷龍〟」

 

 

その辺りの敵はハジメとレムユエでほとんど全滅した。

 

ハジメは、ガン=カタでドンナー・シュラークを縦横無尽に操りながら、クロスビットを併用して、隙のない嵐のような攻撃を繰り広げる。

 

既に、リーダー格の魔物を四十体近く屠り、全開の〝威圧〟により逃亡する魔物も出始めている。

 

と、ハジメの視界の端に遠くの方で逃げ出す魔物に向かって何やら喚いている人影が見えた。

地面から頭だけを出している。その頭は黒いローブで覆われていた。

 

黒いローブの男、清水は、逃げ出す魔物に癇癪を起こす子供のように喚くと、王宮より譲り受けたアーティファクトの杖をかざして何かを唱え始めた。

もちろん、そのまま詠唱の完了を待ってやる義理などないので、ハジメは片手間でドンナーを発砲し、その杖を半ばから吹き飛ばす。

余波で、地面の穴の中に揉んどり打って倒れこむ清水。

何やら少し様子がおかしいが無視をした。

 

そしてハジメは、いつまでもティンクルスターアライズに頼ってはいけないと思い作っておいた魔力駆動二輪を取り出すと一気に加速し瞬く間に清水のところまで行く。

 

後ろからキィイイイ!という耳慣れぬ音に振り返った清水が、異世界に存在しないはずのバイクを見てギョッとした表情をしつつ必死に手足を動かして逃げる。

 

「何だよ!何なんだよ!ありえないだろ!本当なら……本当ならっ!俺が勇者の筈なんだあぁぁぁぁぁぁぁ!」

そう言って清水が叫ぶと清水から強力なオーラが発せられてハジメは魔力駆動二輪に乗ったまま吹き飛ばされて地面を転がった。

ついに清水は少女から貰った力を使ったのだ。

 

 

「ぐわっ!?なんつー力だよ……」

「ん、ハジメ大丈夫?」

 

「あ、あぁ。」

 

 

 

「ハジメさぁ〜ん!」

そこへカービィとシアもやって来た。

 

「シア、あっちはもう大丈夫なのか?」

 

「ええ!バッチリウッサウサにしてやったですぅ!」

 

「カービィはもう大丈夫か?」

 

「うん!全快はしてないけど大丈夫だよ!」

 

 

「俺を無視するなぁぁぁぁぁっ!」

そう清水が言うと巨大な水色のハンマーが現れた。

 

それをカービィは何か知っていた。

「ハジメ!レムユエ!シア!逃げて!」

 

「おいおい、あれってカービィの能力まんまじゃねぇかよ!逃げるぞ!」

 

と、ハジメが理解した時には時すでに遅し。

 

「危ない!コピー能力メタルっ!」

 

カービィがメタルの能力を発動してハジメたちを庇いハンマーの直接攻撃は耐えたが地面から次々と氷のトゲが生えてきたのだ。

 

「スーパー能力ドラゴストーム!やあっ!」

 

即座にカービィはハンマーを退けるとドラゴストームで地面から生える氷を溶かした。

 

だがそこへ待っていたのはウルトラソードを二本構えた清水だった。

 

「何っ!?」

ハジメは驚いて一瞬の隙を見せてしまいウルトラソードを直撃してしまった。

 

「ぐわぁっ!」

 

「「「ハジメ!」」」

 

ハジメへ駆け寄るレムユエ、カービィ、シア、そしてハジメに向けて清水が纏めて極太のビームを放ったのだ。

 

これでは守りきれないと思ったカービィはビックバンを使用した。

 

カービィの服が虹色に輝いている。

 

「はぁぁぁぁぁぁぉぁぁっ!」

 

カービィはビームを吸い込み始めた。

 

それに対して清水はビームを強めた。

 

 

どちらが残りの魔力が尽きるか。

その勝負となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその勝負を制したのは………

 

 

 

「「「カービィ!?」」」

カービィはついに魔力切れで倒れてしまったのだ。

無理もない。

カービィの魔力は全回復していなかったのだから。

 

そしてカービィの体は灰となって消えてしまった。

 

カービィの二度目の死をハジメは目の前で目撃したのだ。

 

「お前えええええええぇぇぇぇぇっ!」

ハジメは怒り狂い銃で撃ちまくる。

 

シアはカービィの残機を知らないのでショックのあまりに棒立ちしてしまった。

 

「……許さない。蒼天龍嵐(ドラゴストーム)!」

なんとレムユエはこの土壇場で蒼天を更に進化させた。

それはカービィのドラゴストームを蒼天で再現したもので威力はカービィのドラゴストームを上回っている。

 

その証拠に清水がミラクルビームの力で張った結界を一瞬で破壊し清水に大ダメージを与えたのだ。

 

そこへ何処からか出現した死んだ筈のカービィが現れた。

 

「ギガトンハンマー!はあっ!」

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!」

 

清水に大ダメージと頭に衝撃を与えられ気絶してしまった。

 

 

「さて、先生はどうする気だろうな? こいつの事も……場合によっては俺の事も……」

 

 

 

 




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30話『記憶喪失』

お気に入り、誤字報告、感想ありがとうございました!

お気に入り(111→114)


あの後、強制的に例のダンスを踊らされた一行。

 

 

その後、清水は見るも無残な姿に成り果てて、愛子達の前で気絶していた。

ちなみに、敗残兵の様な姿になっている理由は、ハジメに魔物の血肉や土埃の舞う大地を魔力駆動二輪で引き摺られて来たからである。

白目を向いて意識を喪失している清水が、なお、頭をゴンゴンと地面に打ちつけながら眼前に連れて来られたのを見て、愛子達の表情が引き攣っていたのは仕様がないことだろう。

 

その道中で何故カービィが生きているかシアに説明した。

 

ちなみに、場所は町外れに移しており、この場にいるのは、愛子と生徒達の他、護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人か、それにウィルとハジメ達だけである。

 

 

 

 

そしてついに清水が目覚め、愛子先生が駆け寄る。

「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません……先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか……どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

「???……清水君……って僕のことですか?」

 

「何を当たり前のことを……ってまさか南雲君かカービィちゃんが清水君の記憶を消したんですか?」

 

「俺はそんなことしてないぞ。」

 

「ボクもだよ。」

 

 

「すいません。」

そう清水が謝る。

 

「すいません?じゃないんだよ!」

ドンっ!と、ハジメが清水の目の前の地面を叩いて抉る。

 

「ひっ!?ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「いいか?よーく聞け?お前は記憶を失う前に俺の仲間を一人殺したんだよ!」

 

清水は自身が人殺しだと分かった途端、顔が青ざめて震え出した。

 

「僕は……どうすればいいですか?」

 

「ああん?死んで償え!」

「ん、正当な理由。」

「そうですぅ!」

 

「そんな……!」

 

 

「待ってよ!」

 

「何だカービィ?そいつを殺さないからどいてくれないか?」

「ん、そいつに慈悲は不要。」

「そうですよ!」

 

「だから待ってって!さっきの戦いでこの人がボクと同じスーパー能力を使ってたりしたでしょ?」

 

「あぁ。そうだが……」

 

「でもその能力を始めから持ってたらステータス確認した時に話題になる筈だからだれかから与えられた力……だから更に黒幕がいると思うんだ!だから記憶も消されるように仕向けられていたのかも…………たしかにボクだって殺されたからいい思いはしてないけど、それでも今のこの人にはその記憶が無いから言っても仕方がないと思うんだ!」

 

「カービィ……」

「ん、カービィがいいって言うなら……殺さない」

「……そうですね。本人が言うなら……」

 

「っ!ありがとうございますっ!!」

 

 

「ただし、俺から条件がある」

 

「何ですか?」

 

「俺の旅に着いて来い。それでお前が有罪か無罪かを決める。……三人ともそれでいいか?」

 

「うん。」

「ん、カービィがそれでいいなら。」

「了解ですぅ。」

 

「……どうして?」

 

「どうしてって?……そりゃあ俺は本当はお前を許したくない。だから今からお前に新しい名前をやる。」

 

「……名前、ですか?」

 

「あぁ。つまりは過去のお前は捨てて俺と一緒に来いと言ってるんだ。そうすれば許してやらないこともない。なぜなら清水幸利がやったことであってお前がやったことではなくなるからな。……で、どうする?」

 

「分かりました。名前をください。」

 

「『ルティ』だ。意味は『ギルティー』が犯罪。だから前後一文字抜いて全く意味のない文字にした。つまり罪は白紙って訳だ。だからルティだ。」

 

「そこまで考えていただけるなんてありがとうございます。えーっと、」

 

「俺はハジメだ。」

「ボクはカービィだよ〜」

「ん、レムユエ」

「シアですぅ」

「妾はティオじゃ」

 

「ハジメさん、カービィさん、レムユエさん、シアさん、ティオさん、よろしくお願いします!」

 

 

そこへハジメのクラスメートと愛子が寄って集る。

 

 

玉井「清水てめぇ……自分の立場わかってんのかよ!危うく、町がめちゃくちゃになるところだったんだぞ!」

園部「そうよ!アンタ馬鹿じゃないの?」

生徒たち大勢「「「「愛子(愛ちゃん)先生がどんだけ心配してたと思ってる(のよ)!」」」」

 

「すいません」

 

「おい、それくらいにしとけ。」

 

玉井「南雲、お前の出番じゃね……すまん」

出番じゃねぇんだよ」と言いかけたがハジメに銃を向けられて謝る。

 

「清水くん……いえ、ルティ君のこと任せました。」

 

「てっきりあんたならここに留まらせるかと思ったが?」

 

「たしかに私はルティ君を留まらせて清水君として罪を償わせようとしました。……ですが南雲君の言葉を思い出してハッとなりました。結局私は生徒生徒と言って置いて結局自己中だったことに。それでルティ君のことは私が決めるべきではないと思いました。」

 

「……ルティのことはわかった。それであんたはこれからどうすんだ?」

 

「私は…これからも…いえ、これからはちゃんと生徒のことを考えられる先生になろうと思います。この後は一度ここに居る生徒と話し合って(に謝って)から一度南雲君とルティ君を除いたクラス全員を集めてこれからの方針を話し合いたいと思います。それに南雲君たちは依頼の途中でしょうから呼び止められませんからね。」

 

「まぁ……そこまで考えて自覚できていれば妥協点(充分)だな。次会った時に行動で示してくれればいい。」

 

「分かりました。南雲君、いろいろとありがとうございました。」

 

 

「それとこれからも俺は行動によってはあんたたちを見限る可能性もある。必要だと思ったその時は……いくらでも、何度でも引き金を引くよ。それが間違っていると思うなら……先生も自分の思った通りにすればいい……ただ、覚えておいてくれ。例え先生でも、クラスメイトでも……敵対するなら、俺は引き金を引けるんだってことを……」

 

 

「南雲君!……先生はあなたの先生になれたでしょうか?」

 

「……あぁ。」

 

 

 

 

 

こうして新たな仲間、竜人族ティオと元クラスメートのルティが加わり、一行は中立商業都市フューレンへと向かうのだった。

 

 




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31話『気絶するイルワさん』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(114→117)

どうぞ!


あれからハジメ、レムユエ、シア、ティオ、カービィ、ルティはハジメの魔力駆動二輪とカービィのティンクルスターアライズに乗って、中立商業都市フューレンに着いた。

 

中立商業都市フューレンの活気は相変わらずだった。

 

高く巨大な壁の向こうから、まだ相当距離があるというのに町中の喧騒が外野まで伝わってくる。

これまた門前に出来た相変わらずの長蛇の列、唯の観光客から商人など仕事関係で訪れた者達まであらゆる人々が気怠そうに、あるいは苛ついたように順番が来るのを待っていた。

 

「ハジメさん、カービィさん。あのバイク?とスターアライズで乗り付けて良かったんですか?できる限り隠すつもりだったのでは……?」

 

「ん? もう、今更だろ? まぁティンクルスターアライズはなんとかなってるし、あんだけ派手に暴れたんだ。一週間もすれば、よほど辺境でもない限り伝播しているさ。いつかこういう日は来るだろうとは思っていたし……予想よりちょっと早まっただけのことだ」

「……ん、ホントの意味で自重なし」

「本当にそれで大丈夫なのですか?」

「心配しなくても大丈夫だよルティ。」

「……そうですよね。なら安心です。」

 

「う~ん、そうですか?まぁ、教会とかお国からは確実にアクションがありそうですし、確かに今更ですね。愛子さんとか、イルワさんとかが上手く味方してくれればいいですけど……。あぁ、ルティさんには説明してませんでしたがイルワさんはギルドマスターなのである程度偉い人ですぅ。」

 

「……まぁ、あくまで保険だ。上手く効果を発揮すればいいなぁという程度のな。最初から、何とだって戦う覚悟はあるんだ。何かあれば薙ぎ払って進むさ。そういうわけで、ルティは心配しなくてもいいぞ。それとシア。お前も、もう奴隷のフリとかしなくていいぞ?その首輪を外したらどうだ?」

 

「そうです、これでようやく奴隷扱いから解放(対等)ですぅ!」

 

「元々対等なつもりなんだがな……あーほら、俺たちは家族みたいなもんだろ?」

 

「そりゃあ私たちは大切な仲間ですからね!あっ、もちろんその中にはティオさんやルティさんも入っていますよ?」

 

「僕まで!?」

 

「当たり前だ。俺にはお前を見守る義務があるからな。」

 

直接ハジメ達に向かってくる者は未だいないようだ。

商人達は、話したそうにしているが他の者と牽制し合っていてタイミングを見計らっているらしい。

そんな中、例のチャラ男が自分の侍らしている女二人とレムユエ達を見比べて悔しそうな表情をすると明からさまな舌打ちをした。

そして、無謀にもハジメ達の方へ歩み寄って行った。

 

「よぉ、レディ達。よかったら、俺と『何、勝手に触ろうとしてんだ?あぁ?』ヒィ!!すいませんでしたぁぁぁぁ!」

「ふぅむ、何だかんだで大切なんじゃのぉ~。ハジメよ。」

 

「当たり前だ。」

 

 

「おい、お前!この騒ぎは何だ!それにその黒い乗り物?も何なのか説明しろ!」

 

 と、その時、門番の一人がハジメ達を見て首をかしげると、「あっ」と思い出したように隣の門番に小声で確認する。

何かを言われた門番が同じように「そう言えば」と言いながらハジメ達をマジマジと見つめた。

 

「……君達、君達はもしかしてハジメ、レムユエ、シア、カービィという名前だったりするか?あとはわからないが、」

「ん? ああ、確かにそうだが……」

「そうか。それじゃあ、ギルド支部長殿の依頼からの帰りということか?」

「ああ、そうだが……もしかして支部長から通達でも来てるのか?」

 

 

 ハジメの予想通りだったようで門番の男が頷く。

門番は、直ぐに通せと言われているようで順番待ちを飛ばして入場させてくれるようだ。

四輪を走らせ門番の後を着いて行く。

列に並ぶ人々の何事かという好奇の視線を尻目に悠々と進み、ハジメ達は再びフューレンの町へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 現在、ハジメ達は冒険者ギルドにある応接室に通されていた。

 

 出された如何にも高級そうなお茶と茶菓子をバリボリ、ゴクゴクと遠慮なく貪りながら待つこと五分。

部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできたのは、ハジメ達にウィル救出の依頼をしたイルワ・チャングだ。

 

「ウィル!無事かい!?怪我はないかい!?」

 

 以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶もなく安否を確認するイルワ。それだけ心配だったのだろう。

 

「イルワさん……すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を……」

「……何を言うんだ……私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった……本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ……二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」

「父上とママが……わかりました。直ぐに会いに行きます」

 

「ハジメ君たち、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」

「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かったからだろ」

「ふふ、そうかな?確かに、それもあるだろうが……何万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?女神の騎士団様?」

 

 

「…………随分情報が早いな」

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君達に付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど……彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君に依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力にも興味はあるのだけど……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」

「ああ、構わねぇよ。だが、その前にレムユエとシアのステータスプレートを頼むよ……ティオとルティは『うむ、二人が貰うなら妾の分も頼めるかの』『あ、あの!僕のもお願いします!』……ということだ」

 

「ふむ、確かに、というか何故人数が増えたかわからないがプレートを見たほうが信憑性も高まるか……わかったよ」

 

 そう言って、イルワは、職員を呼んで真新しいステータスプレートを4枚持ってこさせる。

ステータスプレートは貴重なので、4枚でも赤字である。

 

結果、ハジメたちのステータスも確認して、全員のステータスは以下の通りだった。

 

 

====================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:12500[+12500]

体力:15000[+15000]

耐性:12500[+12500]

敏捷:15000[+15000]

魔力:18000[+18000]

魔耐:17000[+17000]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

====================================

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:300

天職:星の戦士

筋力:150000

体力:150000

耐性:30000

敏捷:150000

魔力:30000

魔耐:30000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]・神代能力[+クリエイト][+グラビティ]

============================

 

====================================

レムユエ 323歳 女 レベル:100+α

天職:神子

筋力:1200[+1200]

体力:3000[+3000]

耐性:600[+600]

敏捷:1200[+1200]

魔力:69800[+69800]

魔耐:71200[+71200]

技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法・無限属性魔法[+蒼天龍嵐(ドラゴストーム)

====================================

 

====================================

シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40

天職:占術師

筋力:600[+600] [+身体強化最大6100]

体力:800[+800] [+身体強化最大6120]

耐性:600[+600] [+身体強化最大6100]

敏捷:850[+850] [+身体強化最大6125]

魔力:30200[+30200]

魔耐:31800[+31800]

技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化]・重力魔法

====================================

 

====================================

ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89

天職:守護者

筋力:7700[+7700] [+竜化状態4620]

体力:11000[+11000]  [+竜化状態6600]

耐性:11000[+11000] [+竜化状態6600]

敏捷:5800[+5800] [+竜化状態3480]

魔力:45900[+45900]

魔耐:42200[+42200]

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法

====================================

 

============================

ルティ 17歳 男 レベル:100

天職:魔術師

筋力:50000[+50000]

体力:50000[+50000]

耐性:100000[+100000]

敏捷:50000[+50000]

魔力:100000[+100000]

魔耐:100000[+100000]

技能:言語理解・魔力操作・虚無魔法[+ウルトラソード][+ギガトンスノーハンマー][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+ キルニードルワープ][+ワープホールアタック][+リバースワールド][+ルティ砲][+ブラックホール][+アナザーディメンション]

============================

 

 

イルワ「………」

ばたり

 

イルワが倒れ、起きるまで待機することになったのだった。




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32話『プププランドside1』

感想がなかったので本編を書く気にはなれなかったので気分転換にプププランドサイドを書きました。
本日2本目です。
オリジナル展開です。
評価ありがとうございます。

評価(1×3、3×1、4×2、6×1、7×1、8×1、9×5、10×4)


プププランドside

 

時はかなり遡る。

 

 

プププランドでカービィが行方不明になってから一か月。

コックカワサキは初めは赤字じゃなくなり安心していたが一週間ほど前から少し元気がなくなり始めていた。

 

 

元気がなくなり始めていたのはコックカワサキだけではない。

デデデ大王は少し食欲が無くなっていた。

 

そこにやってきたのは……

 

「大王様!大変です!」

 

「……ほっておいてくれ。」

 

「マホロアがやってきました!」

 

「何!?こんな時マホロアはを企んでいる!?」

その言葉を聞いて身体を起こすデデデ大王。

 

「ワドルディ、今すぐ向かうぞ!メタナイトにも連絡を入れろ!」

「はい大王様」

 

マホロアがやって来たことは半日でプププランド中に知れ渡った。

 

 

初めてマホロアと出会った場所に『時空すら越えることができる天翔ける船』ローアでマホロアは来ていた。

 

 

デデデ大王とワドルディとメタナイトが来たマホロアは急い船を飛び降りた。

 

「緊急事態ダヨォ!」

「今度はどんな企みをしに来たんだ?」

「そうです!マホロアのことは誰も信じません!」

「ボクは今回は何も企んでなんかないヨォ!」

「もうお前の虚言を丸呑みにする者はいない。そんなことより今はカービィがいないお陰でプププランドは大混乱だ。お前のせいか?」

 

「言いがかりダヨォ!カービィの反応を調べてもこの世界にはどの時間軸にも存在してなかったんダヨォ!」

「なんだと!それは本当か!?」

「ウン。ボクがローアで宇宙の隅から隅々まで調べた結果ダョォ!だから今回だけは特別でもいいから手伝って欲しいヨォ!ボクはカービィに二度も助けられた……だから都合のいいかもしれないけど手伝って欲しいヨォ!」

 

「「「………」」」

 

マホロアの眼はこれまでにないぐらい本気の眼だった。

 

「……わかった。手伝ってやる。」

「私は君を完全に信用したわけではないがカービィのこととなれば別だ。」

「大王様!メタナイト様!……分かりました!ボクも行きます!」

 

「アリガトウミンナ!じゃあローアに乗ってくれヨォ!助っ人もいるから!」

 

「「助っ人?」」

バンダナワドルディとデデデ大王の疑問はすぐ解けた。

 

ローアの中にはスージーが居た。

「なんでスージーなんだ?もっとメンバーがいただろう?」

 

「それはローアを別の世界まで飛ぶ為に技術が必要だからダヨォ!それにどれくらい危険があるかわからないから大人数で行って敵に気づかれたらオシマイダョォ!」

 

「よろしくネ」

 

「じゃあ出発するヨォ!最初の手掛かりは『旅人の鐘』ダョォ!」

 

「ワタクシの調べによれば旅人の鐘は勇者を呼ぶ鐘らしいですわ。ゲンジュウミ……カービィさんは勇者と呼ばれてるそうで?」

 

「それならカービィさんを呼び出せるってことですね!」

 

こうしてローアであらかじめ探しておいた旅人の鐘がある場所まで飛んだのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「着いたヨォ!ここに旅人の鐘がある筈ダョォ!」

 

「ありました!」

すぐにワドルディが発見する。

 

「でかしたぞワドルディ!」

デデデ大王は旅人の鐘に駆け寄る。

だが、

「なんだこれは!ボロボロだけどじゃないか!」

鐘はボロボロに錆び付いていた。

 

「ではキレイにすればいいんじゃないかしら?」

と、スージーが提案する。

「うむ、スージーの言う通りだ。さっそく磨いてみよう。」

メタナイトはローアからマホロアと掃除道具を引きずりだして磨き始めた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後

 

 

「全然キレイにならないじゃない!何なのこの鐘!?」

 

「オレ様がこんなに苦労しているのにどうして綺麗にならないんだ!?」

 

「……落ち着け二人とも、マホロアとワドルディを見ろ!」

 

「………」

マホロアとワドルディはただひたすらに無言で鐘を磨き続けていた。

 

「マホロア……ワドルディ……!」

 

「マホロアさん……!ワドルディさん……!」

 

デデデ大王とスージーはお互い顔を見合わせてうなずき、メタナイトと共に再び鐘を磨き始めた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後もデデデ大王、ワドルディ、メタナイト、スージー、マホロアは数日に渡り鐘を磨き続けたが綺麗になることは無かった。

だが、5人は諦めず磨き続けた。

そしてついに五人は疲れ果ててやけくそだが心から祈った。

 

『どうかカービィに合わせてくれ』と。

 

しばらくしても何も起きずくたびれ果てて力尽きそうになったその時だった。

 

突然、鐘が輝き出し、生まれ変わったように眩い光を放った。

 

すると……

 

美しい鐘の音が鳴り始めた。

そして鳴り終わり光が収束するとそこには……

 

「「「「「3人のカービィ!?」」」

 

そう、三人のカービィ、通称ドクター、ハンマー、ビームがいたのだった。




続きが気になった方は感想と☆評価、お気に入りを良かったらお願いします。
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33話『プププランドside2』

感想ありがとうございます!

本編よりまだ前の時間なので本編に追いつきたい……。
と、言うことで今回もプププランドサイドです。


 

 

デデデ大王、ワドルディ、メタナイト、スージー、マホロアは数日に渡り鐘を磨き続けたが綺麗になることは無かった。

だが、5人は諦めず磨き続けた。

そしてついに五人は疲れ果ててやけくそだが心から祈った。

 

『どうかカービィに合わせてくれ』と。

 

しばらくしても何も起きずくたびれ果てて力尽きそうになったその時だった。

 

突然、鐘が輝き出し、生まれ変わったように眩い光を放った。

 

すると……

 

美しい鐘の音が鳴り始めた。

そして鳴り終わり光が収束するとそこには……

 

「「「「「3人のカービィ!?」」」

 

そう、三人のカービィ、通称ドクター、ハンマー、ビームがいたのだった。

 

 

「どう言うことだ!?……たしかにカービィが10人に増えた時はあったが……」

 

「いや、色が違う。青、黄色、緑。どれも私たちの知ってるカービィではなさそうだ。」

 

と、そこへ三人のカービィたちが話し始めた。

 

「ドクター、こんな場所プププ王国(キングダム)になかったよね……それにボク達ソードが帰ってからそれぞれ別れて魔物を倒してた筈だし……」と黄色のカービィは言う。

 

「あぁ。恐らくここは異世界だろう。その証拠にこれを見てくれ。」

ドクターと呼ばれた青のカービィは旅人の鐘を指した。

 

「「旅人の鐘!?」」

 

「でも、どうしてプププ王国(キングダム)の宝物がここに?」

と、緑のカービィは言う。

 

「ビーム、それはボクにもわからない。」

 

と、そこへ話しかけづらい空気を切ってメタナイトは三人のカービィたちに話しかけた。

 

「ちょっといいか三人のカービィ。」

 

「「「メタナイト!?どうしてここに?」」」

 

「……すまないが私は君たちのことを知らない。……私たちが知っているのはピンクのカービィだからな。」

 

「「ピンクのカービィ!?ドクター、どう言うこと?」」

ドクターにハンマーとビームが尋ねる。

 

「落ち着いて二人とも。恐らくここはソードが住んでる世界だと思う。少しボクがメタナイトと話してみるよ。」

 

「「うん。」」

 

「メタナイト…じゃ紛らわしいし、メタナイトさんでいいかな?」

 

「好きに呼んでくれ。ちょうど私たちも君たちの話を聞いて私が探しているカービィが君たちの言うソードだと思って話したいと思っていたところだ。……ところで三人はなんて呼べばいい?」

 

すると三人のカービィは顔をお互いに見て頷いて台詞と共に決めポーズを取る。

 

 

 

「ボクはドクター!」

「ボクはハンマー!」

「ボクはビーム!」

 

「「「我らスーパーカービィハンターズ……4分の3!!!」」」

 

「スーパーカービィハンターズ?なんだそれは?」

と、デデデ大王はツッコミを入れた。

 

「スーパーカービィハンターズはソードを含めたボクらカービィ四人の魔物討伐チームだよ。……もしかして君がソードの言っていた友達のデデデ大王かい?」

 

「あぁそうだ。オレ様こそプププランドの偉大なる支配者デデデ大王だ!それにカービィとは友達じゃなくライバルだ!」

 

「とにかく、私たちにソードたちのことを教えてくれないか?」

 

「「「うん!」」」




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34話『プププランドside3』

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プププランドサイドはこれで終わりです。


「とにかく、私たちにソードたちのことを教えてくれないか?」

 

「「「うん!」」」

 

「ではボクから説明するよ。」

 

「うむ、頼むぞドクター殿。」

 

「ボクたちが住んでいたのは呆れるほど平和な国『プププ王国(キングダム)』。そこでボクとハンマー、ビームは暴れん坊を退治する『ハンター』だった。……その時はまだお互いを色で呼び合っていたんだけどね。そんなある日、すっぴんの状態で野原にいるピンクのカービィが凶暴化したグランワドルディによって襲われていたのがきっかけだったんだ。そこでボクたち三人はピンクのカービィを助けて街まで案内したんだ。」

 

「おい、ちょっと待て!カービィがすっぴんで襲われていた?どう言うことだ?アイツにはコピー能力があるだろ?それにホバリングがあるから空も多少は飛べる筈だぞ?」

と、デデデ大王はカービィが手を抜いていたのではないかと思い少し腹を立てて質問した。

 

 

「「「コピー能力?」」」

 

が、三人のカービィはコピー能力に全く心当たりが無いようだった。

だがしばらくしてドクターがハッとした。

「そう言えば装備を買う前にカービィがバーニンレオの前で大きく口を開けて何かをしようとしてたな。」

 

「あっ!」

「ドクターは随分前のことをよく覚えてるね。」

 

メタナイトがデデデ大王に変わって説明する。

「君たちの言うソードはもともと装備で戦っていた訳ではなく相手の特殊能力をコピーして戦っていたんだ。」

 

「たしかにボクたち三人はあの時笑って済ましてたけどたしかに再びプププ王国(キングダム)に来た時ソードが剣の戦い方を忘れてたのは様々な能力を使っていたから剣だけを使う暇がなかったのか。……あっ!それで話を戻すけどソードはプププ王国(キングダム)では何故かコピー能力?とやらが使えないみたいでボクたちがソードに剣士をオススメしたんだ。そこでソードが名前が呼びにくいからってボクたちは役割でお互いを呼ぶことにしたんだ。それからボクら『カービィハンターズ』は暴れん坊を倒して、その黒幕を倒して『カービィハンターズZ』となった後、ソードが一度元の世界に帰ったんだ。そのあとボクらはもう一度ソードと出会って『カービィハンターズZ』を再結成して……新たな敵とその仲間を倒してソードは異世界に帰ったんだ。それとそこにある鐘、旅人の鐘はプププ王国(キングダム)にもあって二回にソードと出会った時はボクがソードを呼び出したんだ。……それがボクたちとソードの関係だよ。」

 

「……なるほど。まさかこの鐘は異世界の者を呼び出す鐘だったとはな。ところで君たちに頼みがあるのだが聞いてくれるか?」

 

「「「頼み?」」」

 

「あぁ。カービィ……紛らわしいから以降はソードと言うがソードが一か月以上行方不明になっているんだ。何か事件に巻き込まれている可能性がある。そこで君たちカービィハンターズZの力を借りたい。頼む。」

 

「「「もちろん!!」」」

 

 

「……結局収穫は無しじゃない!」

 

「いや、カービィが多いと言うことはカービィのライバルとしては複雑だがその分心強い筈だ。」

 

「ボクはピンクのカービィと『友達』ダカラ力になりたいと思ってるヨォ!三人のカービィもこの船に乗ってくれヨォ!」

 

「「「うん!」」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「じゃあ出発するヨォ!」

 

「マホロア、次の目的地は決まっているのか?」

 

「ウン、実はプププランドにいた時にスージーとチカラを合わせてカービィの居場所を探すキカイを作ってずっとカービィを探してたんダケド……ようやくさっきカービィが見つかったんダヨォ!」

 

「「「「「!」」」」」

 

「ローアに追加した新機能で映像を見れるようにしたからカービィが何の目的があるかわかるかもしれないヨォ!それじゃあ映すヨォ。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『何だよ!何なんだよ!ありえないだろ!本当なら……本当ならっ!俺が勇者の筈なんだあぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

そう言って少年が叫ぶと少年から強力なオーラが発せられて近くにいた別の少年は乗り物に乗ったまま吹き飛ばされて地面を転がった。

 

 

『ぐわっ!?なんつー力だよ……』

『ん、ハジメ大丈夫?』

 

『あ、あぁ。』

 

『ハジメさぁ〜ん!』

そこへ少女ととウサミミ少女がやって来た。

 

『シア、あっちはもう大丈夫なのか?』

 

『ええ!バッチリウッサウサにしてやったですぅ!』

 

『カービィはもう大丈夫か?』

 

『うん!全快はしてないけど大丈夫だよ!』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「このピンクの髪の女の子がカービィと呼ばれているみたいダヨォ。」

 

「あれが……ソードなのか」

 

「「「あれがソード!?」」」

 

「む、カービィめまた変な能力をコピーしたのだろうな。」

 

「なるほどねそれがコピー能力ってやつなのか」

 

「それじゃあさっそくソコへ向かうヨォ!」

 

「「「「「おおっ!」」」」」




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35話『家族でお出かけ』

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それではどうぞ!


 

現在カービィたちは一日経ってようやく目を覚ましたイルワさんに会いに行っている。

 

「いや、ステータスの件で……なにかあるとは思ってたが……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君たちが異世界人の一人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」

 

「……それで、支部長さんよ。あんたはどうするんだ? 危険分子だと教会にでも突き出すか?」

 

 イルワは、ハジメの質問に非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。

 

「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

 

「……そうか。そいつは良かった」

 

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員〝金〟にしておく。普通は、〝金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに〝女神の騎士団〟という名声があるからね」

 

その後、カービィたちはシアが「せっかくですし観光でもしましょうよ!」と言ったのでカービィたちは観光することにした。

 

「ハジメさん!まずはメアシュタットに行きましょう!私、一度も生きている海の生き物って見たことないんです!」

 

ガイドブックを片手に、ウサミミを「早く! 早く!」と言う様にぴょこぴょこ動かすシア。

『ハルツィナ樹海』出身なので海の生物というのを見たことがないらしく、メアシュタットというフューレン観光区でも有名な水族館に見に行きたいらしい。

 

「へぇ~、内陸なのに海の生き物とか……気合はいってんな。管理、維持、輸送と大変だろうに……」

 

 

途中の大道芸通りで、人間の限界に挑戦するようなアクロバティックな妙技に目を奪われつつ、たどり着いたメアシュタットは相当大きな施設だった。海をイメージしているのか全体的に青みがかった建物となっており多くの人で賑わっていた。

 

 

中の様子は極めて地球の水族館に似ていた。

ただ、地球ほど、大質量の水の圧力に耐える透明の水槽を作る技術がないのか、格子状の金属製の柵に分厚いガラスがタイルの様に埋め込まれており、若干の見にくさはあった。

 

 だが、シアはそんな事気にならないようで、初めて見る海の生き物の泳いでいる姿に瞳をキラキラさせて、頻りに指を差しながらハジメに話かけた。

カービィは少しよだれを垂らしていたがそれでも食欲を抑えて我慢していた。

 

すぐ隣で同じく瞳をキラキラさせている家族連れの幼女と仕草が同じだ。不意に、幼女の父親と思しき人と視線が合い、その目に生暖かさが含まれている気がして、ハジメは何となく気まずくなりカービィやシアの手を取ってその場を離れた。

 

 そんなこんなで一時間ほど水族館を楽しんでいると、突然、シアがギョッとしたようにとある水槽を二度見し、更に凝視し始めた。

 

 そこにいたのは……人面魚そっくりだった。

 

「……な、なぜ彼がここに……」

 

 この人面魚は水棲系の魔物であるらしく、固有魔法〝念話〟が使えるようだ。滅多に話すことはないらしいがきちんと会話が成立するらしく、確認されている中では唯一意思疎通の出来る魔物として有名らしい。

 

 ただ、物凄い面倒くさがりのようで、仮に会話出来たとしても、やる気の欠片もない返答しかなく、話している内に相手の人間まで無気力になっていくという副作用?みたいなものまであるので注意が必要とのことだ。

あと、お酒が大好きらしく、飲むと饒舌になるらしい。

但し、一方的に説教臭いことを話し続けるだけで会話は成立しなくなるらしいが……ちなみに、名称はリーマンだった。

 

ハジメは、一筋の汗を流しながら未だ見つめ合っているのかにらみ合っているのかわからないシアを放置して、話しかけてみた。ただ、普通に会話しても滅多に返してくれないらしいので、同じく〝念話〟を使ってみる。

 

〝お前さん、念話が使えるんだって?本当に話せるのか?言葉の意味を理解できる?〟

 

 突然の念話に、リーマンの目元が一瞬ピクリと反応する。

そして、シアたちから視線を外すと、ゆっくりハジメを見返した。

 

〝……チッ、初対面だろ。まず名乗れよ。それが礼儀ってもんだろうが。全く、これだから最近の若者は……〟

 

 おっさん顔の魚に礼儀を説かれてしまった。

痛恨のミスである。

ハジメは頬を引き攣らせながら再度会話を試みる。

 

〝……悪かったな。俺はハジメだ。本当に会話出来るんだな。リーマンってのは一体何なんだ?〟

 

〝……お前さん。人間ってのは何なんだ?と聞かれてどう答える気だ?そんなもんわかるわけないだろうが。まぁ、敢えて言うなら俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。あと名はねぇから好きに呼んでくれ〟

 

 ハジメは、内心「どうしよう……」と思った。

何か、セリフがいちいち常識的で、しかも少しカッコイイのだ。

全くもって予想外である。

やる気の欠片もなかったんじゃないのか?と水族館の職員にクレームを付けたい。

ハジメが、ちょっと現実逃避気味に遠くを見る目をしていると、今度はリーマンの方から質問が来た。

 

〝こっちも一つ聞きてぇ。お前さん、なぜ念話が出来る?人間の魔法を使っている気配もねぇのに……まるで俺と同じみてぇだ〟

 

 当然といえば当然の疑問だろう。

何せ、人間が固有魔法として〝念話〟を使っているのだ。

なぜ自分と同じことを平然と出来ているのか気になるところだ。

普段は、滅多に会話しないリーマンがハジメとの会話に応じているのも、その辺りが原因なのだろう。

ハジメは、念話が使える魔物を喰って奪い取ったとかなり端折った説明をした。

 

〝……若ぇのに苦労してんだな。よし、聞きてぇことがあるなら言ってみな。おっちゃんが分かることなら教えてやるよ〟

 

ハジメは同情された。

どうやら、魔物を喰うしかないほど貧乏だとでも思われたようだ。

今のそれなりにいい服を着ている姿を見て、「頑張ったんだなぁ、てやんでぇ! 泣かせるじゃねぇか」とヒレで鼻をすする仕草をしている。

 

実際、苦労したことは間違いないので特に訂正はしないハジメ。

ただ、人面魚に同情される人生って……と若干ヘコんだ。

何とか気を取り直しつつ、リーマンに色々聞いてみる。

例えば、魔物には明確な意思があるのか、魔物はどうやって生まれるのか、他にも意思疎通できる魔物はいるのか……リーマン曰く、ほとんどの魔物は本能的で明確な意思はないらしい。

言語を理解して意思疎通できる魔物など自分の種族しか知らないようだ。また、魔物が生まれる方法も知らないらしい。

 

他にも色々話しているとそれなりの時間が経ち、傍目には若い男とおっさん顔の人面魚が見つめ合っているという果てしなくシュールな光景なので、人目につき始める。

 

 リーマンとの会話は中々に面白かったが、リーマンが「おっと、家族旅行の邪魔だったな」と空気を呼んで会話の終わりを示した。

ちなみに、その頃には「リーさん」「ハー坊」と呼び合う仲になっていたりする。

ハジメは、リーマンの中に〝漢〟を見たのだ。

 

 ハジメは、最後にリーマンが何故こんなところにいるのか聞いてみた。そして、返ってきた答えは……

 

〝ん?いやな、さっきも話した通り、自由気ままな旅をしていたんだが……少し前に地下水脈を泳いでいたらいきなり地上に噴き飛ばされてな……気がついたら地上の泉の傍の草むらにいたんだよ。別に、水中じゃなくても死にはしないが、流石に身動きは取れなくてな。念話で助けを求めたら……まぁ、ここに連れてこられたってわけだ〟

 

 ハジメは、ツーと一筋の汗を流した。

それは、明らかにライセンの大迷宮から排出された時のことだろう。

どうやら、リーマンはそれに巻き込まれて一緒に噴水に打ち上げられたらしい。

直接の原因はミレディの阿呆だが、巻き込んだという点に変わりはない。

 

ハジメは、ゴホンッと咳払いを一つして気を取り直すと、リーマンに尋ねた。

 

〝あ~、リーさん。その、何だ。ここから出たいか?〟

〝うん?そりゃあ、出てぇよ。俺にゃあ、宛もない気ままな旅が性に合ってる。生き物ってのは自然に生まれて自然に還るのが一番なんだ。こんな檻の中じゃなく、大海の中で死にてぇてもんだよ〟

 

既に、リーマンを気に入っていたハジメは、巻き込んだこともあるしと彼を助けることにした。

 

〝リーさん。なら、俺が近くの川にでも送り届けてやるよ。どうやら、この状況は俺達の事情に巻き込んじまったせいみたいだしな。数分後に迎えを寄越すから、信じて大人しく運ばれてくれ〟

 

〝ハー坊……へっ、若造が、気ぃ遣いやがって……何をする気かは知らねぇが、てめぇの力になろうって奴を信用できないほど落ちぶれちゃいねぇよ。ハー坊を信じて待ってるぜ〟

 

ハジメは、新たな友人のこれからに幸運を祈りつつメアシュタット水族館を後にした。

 

 そして、その数分後、下部にカゴをつけた空飛ぶ十字架が水族館内を爆走し、リーマンの水槽を粉砕、流れ出てきたリーマンを見事カゴにキャッチすると追いかける職員達を蹴散らし(怪我はさせていない)、更に壁を破壊して外に出ると遥か上空へと消えていくという珍事が発生した。新種の魔物か、あるいはリーマンの隠された能力かと大騒ぎになるのだが……それはどうでもいい話だ。

 

 




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36話『幼女救出』

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お気に入り(120→123)


メアシュタット水族館を出て昼食も食べた後、ハジメとカービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティは、迷路花壇や大道芸通りを散策していた。

シアとレムユエの腕には、露店で買った食べ物が入った包みが幾つも抱えられている………訳ではなくこの間貰ったマジックバッグのおかげで楽な買い物が出来ている。

カービィとハジメ様々である。

 

そんなカービィはハジメとルティを連れて露店の食べ物を買い食いしていた。

 

今は、バニラっぽいアイスクリームの大食いチャレンジを攻略中だ。

ちなみにティオとカービィは大食いチャレンジを3店目で出禁になった。

ティオはカービィに誘われて大食いチャレンジ達成数を競っていたがカービィは出禁に、ティオは満腹になった。

そしてハジメとルティ、シアとレムユエは未だに一店目のアイスクリームチャレンジに手こずっていた。

 

 

そして三人はようやくアイスクリームチャレンジを達成しようとしていた。

 

「カービィはともかくルティやシアはよく食べるな……そんなに美味いか?……って言うかルティ、急いで食べると頭痛くなるぞ?」

 

「あむっ……はい!とっても美味しいですよ。流石、フューレンです。唯の露店でもレベルが高いです」

 

「……ハジメさんの言う通り頭がいたくなりました。でもひんやりしてて美味しいですね。それに残したら2倍の値段なのでしっかりと食べます。」

 

「……みんな、食いすぎて太るなよ」

「……ハジメさん、それは女の子に向けて言ってはいけないセリフですよ……まぁみんなと言ったので私は許します。」

 

その後、レムユエとシアはハジメの言葉に一瞬、食べる手が止まるものの、「後で運動するし……明日から少し制限するし……」などブツブツと言い訳しながら再度、露店の甘味を堪能するレムユエとシア。

そんなシアに苦笑いしながらなんとか食べ終えたハジメは、突如、その表情を訝しげなものに変え足元を見下ろした。

 

それに気がついたカービィが「どうしたの?」とハジメに尋ねる。

そしてシアも気付いた。

「どうかしましたか、ハジメさん?」

「んー?いやな、気配感知で人の気配を感知したんだが……」

「常時気配感知なんて使っていたんですか?」

「あぁ。基本は常時展開してる」

「う~ん?でも、何が気になるんです?人の気配って言っても……」

シアは周囲を見渡して「人だらけですよ?」と首を傾げた。

 

「いや、そうじゃなくてな……俺が感知したのは下だ」

「下?……って下水道ですか?えっと、なら管理施設の職員とか?」

 

「だったら、気にしないんだがな。何か、気配がやたらと小さい上に弱い……多分、これ子供だぞ?しかも、弱っているな」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「た、大変じゃないですか!もしかしたら、何処かの穴にでも落ちて流されているのかもしれませんよ!皆さんで追いかけましょう!」

 

「あぁそうだな。いくぞカービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ!」

 

「うん!」

「ん!」

「もちろんですぅ!」

「もちろんじゃ!」

「はい!」

 

全員で地下をそこそこの速度で流れていく気配を追う。

ハジメは町の構造的に、現在いるストリート沿いに下水が流れているのだろうと予想し、一気に気配を追い抜くと地面に手を付いて錬成を行った。

紅いスパークが発生すると、直ちに、真下への穴が空く。

 

 そして躊躇うことなくそのまま全員で穴へと飛び降りた。

 

 

ハジメがさらに錬成を行うと斜めに設置されている格子が出現し、流されてきた子供は格子に受け止められるとそのままハジメ達の方へと移動して来た。

そのままカービィがキャッチし、そのまま通路へと引き上げた。

 

「この子は……」

「まぁ、息はあるし……取り敢えずここから離れよう。臭いが酷い」

 

引き上げられたその子供を見て、ティオとシアが驚きに目を見開く。

ハジメも、その容姿を見て知識だけはあったので、内心では結構驚いていた。

カービィとルティは何故ハジメたちが驚いているかは分からなかった。

 

ハジメたちは場所が場所だけに、肉体的にも精神的にも衛生上良くないと場所を移動する事にする。

 

そのまま開けた穴からストリートに出ることが躊躇われたハジメは、穴を錬成で塞ぎ、代わりに地上の建物の配置を思い出しながら下水通路に錬成で横穴を開けた。

 

そして〝宝物庫〟から毛布を取り出すと小さな子供をくるみ、ハジメが抱きかかえて移動を開始した。

 

その子供は、見た目三、四歳といったところだ。

エメラルドグリーンの長い髪と幼い上に汚れているにも関わずわかるくらい整った可愛らしい顔立ちをしている。

女の子だろう。

だが何より特徴的なのは、その耳だ。通常の人間の耳の代わりに扇状のヒレが付いているのである。

しかも、毛布からちょこんと覗く紅葉のような小さな手には、指の股に折りたたまれるようにして薄い膜がついている。

 

「この子、海人族の子ですね……どうして、こんな所に……」

「まぁ、まともな理由じゃないのは確かだな」

「どう理由であれ親の元に届ける必要があるのじゃ。」

「うん、きっとその子のお母さんも心配してるもんね。」

 

海人族は、亜人族としてはかなり特殊な地位にある種族だ。

西大陸の果、『グリューエン大砂漠』を超えた先の海、その沖合にある『海上の町エリセン』で生活している。

彼等は、その種族の特性を生かして大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているのだ。

そのため、亜人族でありながらハイリヒ王国から公に保護されている種族なのである。

差別しておきながら使えるから保護するという何とも現金な話だ。

 

そんな保護されているはずの海人族、それも子供が内陸にある大都市の下水を流れているなどありえない事だ。

犯罪臭がぷんぷんしている。

 

……と、その時、海人族の幼女の鼻がピクピクと動いたかと思うと、パチクリと目を開いた。

そして、その大きく真ん丸な瞳でキョロキョロとハジメたちを見始める。

 

その後、海人族の幼女のお腹がクゥーと可愛らしい音を立てる。

再び鼻をピクピクと動かし、そしてシアのマジックバックからちょっとはみ出している露店の包みをロックオンした。

 

シアが、これ?と首を傾げながら、串焼きの入った包み右に左にと動かすと、まるで磁石のように幼女の視線も左右に揺れる。

どうやら、相当空腹のようだ。

可哀想に思ったシアが急いで包みから串焼きを取り出そうとするのをハジメが制止して幼女に話しかけながら錬成を始めた。

 

「お前の名前は?」

 

女の子は、シアの持つ串焼きに目を奪われていたところ、突如、地面から紅いスパークが走り始め、四角い箱状のものがせり上がってくる光景に驚いたように身を竦めた。

そして、再度、ハジメから名前を聞かれて、視線を彷徨わせた後、ポツリと囁くような声で自身の名前を告げた。

 

「……ミュウ」

「そうか。俺はハジメで俺の隣から順にカービィ、ルティ、ティオ、レムユエ、シアだ。それでミュウ。あの串焼きが食べたいなら、まず、体の汚れを落とせ」

 

ハジメは、完成した簡易の浴槽に〝宝物庫〟から綺麗な水を取り出し浴槽に貯め、更にフラム鉱石を利用した温石で水温を調整し即席のお風呂を作った。

下水で汚れた体のまま食事をとるのは非常に危険だ。

幾分か飲んでしまっているだろうから、解毒作用や殺菌作用のある薬(カービィがコピー能力ドクターで作成した)も飲ませておく必要がある。

 

 

返事をする間もなく、毛布と下水をたっぷり含んだ汚れた衣服をレムユエに脱がされ浴槽に落とされたミュウは、「ひぅ!」と怯えたように身を縮めたものの、体を包む暖かさに次第に目を細めだした。

シアがハジメの目を塞いでいるうちにカービィがレムユエに薬やタオル、石鹸等を渡していた。ティオはカービィにミュウの世話を任せて、自らはミュウの衣服を買いに袋小路を出て行った。

 

しばらくして、ティオがミュウの服を揃えて袋小路に戻ってくると、ミュウは既に湯船から上がっており、新しい毛布にくるまれてシアに抱っこされているところだった。

抱っこされながら、シアが「あ~ん」する串焼きをはぐはぐと小さな口を一生懸命動かして食べている。

薄汚れていた髪は、本来のエメラルドグリーンの輝きを取り戻し、光を反射して天使の輪を作っていた。

 

「あっ、ティオさん。お帰りなさいですぅ。」

 

 レムユエは、ティオの買ってきた服を取り出した。

シアの今着ている服に良く似た乳白色のフェミニンなワンピースだ。

それに、グラディエーターサンダルっぽい履物、それと下着だ。

 

レムユエは、ミュウの下へ歩み寄ると、毛布を剥ぎ取りポスッと上からワンピースを着せた。

次いでに下着もさっさと履かせる。

その間はカービィがハジメの視界を塞いでいる。(シアの指示)

そして、ミュウの前に跪いて片方ずつ靴を履かせていった。

手をカービィが退けた後、ハジメが温風を出すアーティファクト、つまりドライヤーを〝宝物庫〟から取り出し、湿り気のあるミュウの髪を乾かしていく。

 

ミュウはされるがままで、未だにキョロキョロと見ているが、温風の気持ちよさに次第に目を細めていった。

 

「……何気に、ハジメさんって面倒見いいですよね」

「何だ、藪から棒に……」

 

 ミュウの髪を乾かしながらシアの言葉に眉をしかめるハジメだったが、その姿こそ文字通り面倒見がいい証拠なので、シアは頬を緩めてニコニコと笑う。

何となくばつが悪くなって、ハジメは話題を逸らした。

 

「で、今後の事だが……」

「ミュウちゃんをどうするかですね……」

 

六人が自分の事を話していると分かっているようで、上目遣いで六人を交互に見るミュウ。

 

ハジメは取り敢えず、ミュウの事情を聞いてみることにしたのだった。

 

 

 




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37話『ミュウの経緯』

感想、お気に入りありがとうございました!

(123→127)


 

 

ミュウから話を聞いた結果、話された内容は、ハジメたちが予想したものに近かった。

 

すなわち、ある日、海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っているところを人間族の男に捕らえられたらしいということだ。

 

そして、幾日もの辛い道程を経てフューレンに連れて来られたミュウは、薄暗い牢屋のような場所に入れられたのだという。

そこには、他にも人間族・・・の幼子たちが多くいたのだとか。

そこで幾日か過ごす内、一緒にいた子供達は、毎日数人ずつ連れ出され、戻ってくることはなかったという。

少し年齢が上の少年が見世物になって客に値段をつけられて売られるのだと言っていたらしい。

 

いよいよ、ミュウの番になったところで、その日たまたま下水施設の整備でもしていたのか、地下水路へと続く穴が開いており、懐かしき水音を聞いたミュウは咄嗟にそこへ飛び込んだ。

汚水への不快感を我慢して懸命に泳いだミュウ。

幼いとは言え海人族、そこはなんとかなったらしい。

通路をドタドタと走るしかない人間では流れに乗って逃げたミュウに追いつくことは出来なかったと言う。

 

しかし、長旅と誘拐という過度のストレス、不味い食料しか与えられず、下水に長く浸かるという悪環境に、遂にミュウは肉体的にも精神的にも限界を迎え意識を喪失した。

そして、身を包む暖かさに意識を薄ら取り戻し、気がつけばハジメの腕の中だったというわけである。

 

 

「客が値段をつける……ねぇ……オークションか。それも人間族の子や海人族の子を出すってんなら裏のオークションなんだろうな」

「……ハジメさん、この子どうしますか?この中で保護者枠は見た目的に私かティオさんかハジメさんしかいませんよ?」

 

「……そうだな、俺はこの子を保安署に届けるのが普通だと思うがオークションの奴らとグルになっている可能性もないことは無い……と、なると……直接親御さんまで届ける、って言うのが一番最善だろうな。」

 

「ボクもそれが良いと思う!」

 

「!お兄ちゃんたちがママのところまで連れてってくれるの?」

と、ミュウは目を輝かせてハジメに聞く。

 

「あぁ!連れてってやるよ。」

と意気込んでハジメは答えた。

 

「いいか、ミュウ?これから、お前の家まで連れて行く。時間は掛かるだろうがそれは我慢してくれよ?」

 

「……ハジメお兄ちゃんたちは?」

ミュウが、ハジメの言葉に不安そうな声音で二人はどうするのかと尋ねる。

 

「悪いが、そこでお別れだな。」

「やっ!」

「いや、やっ!じゃなくてな……」

 

「ハジメお兄ちゃんやカービィお姉ちゃんたちがいいの!一緒にいるの!」

 

思いのほか強い拒絶が返ってきてハジメが若干たじろぐ。

ミュウは、駄々っ子のようにティオの膝の上でジタバタと暴れ始めた。

今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、六人の人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮していた。

 

 ハジメたちとしても信頼してくれるのはいいのだが、途中で『大火山』という大迷宮の攻略にも行かなければならないのでずっとミュウを連れて行くつもりはなかった。

なので、「やっーー!!」と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、ハジメが抱きかかえる。

「お兄ちゃんやお姉ちゃんたちは……ミュウのこと嫌いなの?」

幼女にウルウルと潤んだ瞳で、しかも上目遣いでそんな事を言われて平常心を保てる男はほとんどいない。

流石のハジメも、「うっ」と唸り声を上げ、ミュウを腕から降ろしてから、旅には連れて行けないことを説明しようとした。

 

 

と、その瞬間、

 

ドォガァアアアン!!!!

 

 目の前で爆発が起き、黒煙が上がった。

そして煙が晴れると……

 

「ハジメさん!ミュウちゃんがいません!それにこんなものが!」

 

シアが手渡してきたのは、一枚の紙。そこにはこう書かれていた。

 

〝海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族を連れて○○に来い〟

 

「ハジメ、これって……!」

「どうやら、あちらさんは欲をかいたらしいな……」

 

 ハジメは、メモ用紙をグシャと握り潰すと凶悪な笑みを浮かべた。

おそらく、連中はミュウとハジメ達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。

そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。

 

そんなハジメの横で、シアは、決然とした表情をする。

 

「ハジメさん!私!」

「みなまでいうな。わーてるよ。こいつ等は俺たち家族に手を掛けようとした俺の……いや俺たちの敵だ!全部ぶちのめして、ミュウを奪い返すぞ!」

「はいですぅ!」

「うん!」

「ん!」

「はい!」

「おうなのじゃ!」

 

今回、相手はシアをも奪おうとしている。

それはハジメの〝家族〟に手を出そうというのだ。

つまり、〝敵〟である。

遠慮容赦一切無用。

彼等は、ハジメの触れてはならない一線に触れてしまったのだ。

 

 ハジメたちは武器を携え、化け物を呼び起こした愚か者達の指定場所へと一気に駆け出したのだった。




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38話『組織壊滅大作戦』

感想ありがとうございました!

それではどうぞ!


 

あれからハジメたちはと言うと……

 

「指定された場所に行ってみれば、そこには武装したチンピラがうじゃうじゃいるだけでミュウはいない……。」

 

 

現在ハジメたちは拷問して他のアジトを聞き出してミュウを探す……それを繰り返しているところだ

そして発覚したのはシアだけではなくレムユエやティオ、カービィまで誘拐計画があることだ。

 

そして六人は決めた。

いっそのこと見せしめに今回関わった組織とその関連組織の全てを潰してしまおう……と。

 

六人全員が躊躇うことなく了承する。

ハジメは、現在判明している裏組織のアジトの場所を伝え、ハジメとレムユエとカービィ、シアとティオとルティの二手に分かれてミュウ捜索兼組織潰しに『組織壊滅大作戦』が動き出したのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。

 

そんな場所の一角にある七階建ての大きな建物、裏では人身売買の総元締をしている裏組織〝フリートホーフ〟の本拠地である。

 

いつもは、静かで不気味な雰囲気を放っているフリートホーフの本拠地だが、今は、騒然とした雰囲気で激しく人が出入りしていた。

 

そんな普段の数十倍の激しい出入りの中、どさくさに紛れるように頭までスッポリとローブを纏った者が三人、フリートホーフの本拠地に難なく侵入した。

 

バタバタと慌ただしく走り回る人ごみをスイスイと避けながら進み、遂には最上階のとある部屋の前に立つ。

その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出していた。

 

「ふざけてんじゃねぇぞ!アァ!?てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

「ひぃ!で、ですから、潰されたアジトは既に百件を超えました。襲ってきてるのは三人組が二組です!」

 

「じゃあ、何か? たった六人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか?あぁ?」

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ!と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。

どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に三百万ルタを即金で出してやる!一人につき、だ!全ての構成員に伝えろ!」

 

男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。

男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう。耳をそばだてていた三人のフードを着た者達は顔を見合わせ一つ頷くと、一人が背中から戦鎚を取り出し大きく振りかぶった。

 

 そして、室内の人間がドアノブに手をかけた瞬間を見計らって、超重量の戦鎚を遠心力と重力をたっぷり乗せて振り抜いた。

 

ドォガアアア!!

 

 爆音を響かせて、扉が木っ端微塵に粉砕される。ドアノブに手を掛けていた男は、その衝撃で右半身をひしゃげさせ、更に、その後ろの者達も散弾とかした木片に全身を貫かれるか殴打されて一瞬で満身創痍の有様となり反対側の壁に叩きつけられた。

 

「構成員に伝える必要はねぇよ。直接来てやったぜ?」

「ん、外の奴らは私とカービィに任せて!」

 

「あぁ、頼む。」

「任せて!」

 

 

 

 

 

「……てめぇら、例の襲撃者の一味か……その容姿……チッ、リストに上がっていた奴らじゃねぇか。レムユエだったか?あと、カービィとかいうちびっこいのもいたな……なるほど見た目は極上だ。おい、今すぐ投降するなら、命だけは助けてやるぞ? まさか、フリートホーフの本拠地に手を出して生きて帰れるとは思ってッ!?『ドパァン!ドパァン!ドパァン』グギャアアア!!!」

 

ハジメは無言でを男を撃った。

 

騒ぎを聞きつけて本拠地にいた構成員達が一斉に駆けつけてくるが、カービィがコピー能力アイスを使って地面と構成員を次々と凍らせて動けなくした上でレムユエが蒼天龍嵐(ドラゴストーム)で纏めて燃やし尽くした。

 

悲鳴を上げてのたうつ男『ハンセン』にツカツカと歩み寄ると、ハジメは拳を全力で腹に突き落とした。

 

「ぐえぇ」と苦悶の声を上げて逃げようとするが、実力差でどうこうできる訳もなく、ハンセンに出来たことは、無様に命乞いをすることだけだった。

 

「た、たのむ。助けてくれぇ!金なら好きに持っていっていい!女も幾らでもやる!二度とお前らに関わったりもしない!だからッゲフ!?」

 

「あんたに選択肢はない。俺の質問に答えれば……見逃すことも考えてやることもないこともないかもしれないが?」

 

ハジメはハンセンにミュウ、海人族の子供の事を聞く。

ミュウと言われて一瞬、訝しそうな表情を見せたハンセンだが、海人族の子と言われ思い至ったのか苦悶の表情を浮かべながら必死に答えた。

どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 

ここでハジメの中でコイツの死の確定と裏オークションの壊滅が追加された。

 

ちなみに、ハンセンはハジメたちとミュウの関係を知らなかったようで、なぜ、海人族の子にこだわるのか疑問に思ったようだ。

おそらく、ハジメ達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が咄嗟に思いつきでシアの誘拐計画を練って実行したのだろう。

元々、レムユエはフリートホーフの誘拐リストの上位に載っていたわけであるから、自分で誘拐して組織内での株を上げようとでもしたに違いない。

 

ハジメは念話を使ってシアたちに連絡をとった。

 

〝おいシア、聞こえてるか?ハジメだ〟

〝……び、ビックリしましたよ。……それでどうしました?〟

 

〝ミュウの居場所が分かった。夕方行われる裏オークションの地下だ。シアたちも裏オークションの居場所を聞き出してそこで俺たちと合流だ。〟

〝了解ですぅ!〟

 

ハジメは、シアに用件伝えると念話を切った。

既に出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンは、それでも必死にハジメに手を伸ばし助けを求めた。

 

「た、助け……医者を……」

「子供の人生を食い物にしておいて、それは都合が良すぎるよなぁ?……ってことで、死ね!」

 

「や、約束がちが…」

 

ドパァン!

 

ハジメは、ハンセンの心臓を一発で撃ち抜いて殺した。

 

「……よし、ここは早く潰して、合流するか。いくぞカービィ、レムユエ。」

 

「うん。」

「ん!」

 

そしてカービィがスーパー能力ウルトラソードでフリートホーフの本拠地を真っ二つに破壊してからギガトンハンマーでさらに破壊した。

 

ハジメとレムユエとカービィが立ち去った後には、無数の屍と瓦礫の山だけが残った。

 

〝フリートホーフ〟フューレンにおいて、裏世界では三本の指に入る巨大な組織はこの日、実にあっさりと壊滅したのだった。

 

 

 

 




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39話『ミュウと希望のキャンディ』

感想、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(127→129)


 

あれからちょうど六人全員が目的の場所に到着すると、その入口には二人の黒服に身を包んだ巨漢が待ち構えていた。

ハジメたちは、また騒ぎを起こしてミュウが移送されては堪らないと思い、裏路地に移動するとハジメが錬成を使って地下へと侵入した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

やがて、地下深くに無数の牢獄を見つけた。

入口に監視が一人おり居眠りをしている。

その監視を気がつかれない内に気絶させて行くと、中には、人間の子供達が十人ほどいて、冷たい石畳の上で身を寄せ合って蹲っていた。

今日のオークションで売りに出される子供達だろう。

 

そもそも、正規の手続きで奴隷にされる人間は表のオークションに出されるのだ。

ここにいる時点で、違法に捕らえられ、売り物にされていることは確定だ。

 

ハジメは、突然入ってきた人影達に怯える子供達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

「ここに、海人族の女の子はこなかったか?」

 

てっきり、自分達の順番だと怯えていた子供達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。

牢屋の中にはミュウの姿はなかった。

そのため、ハジメたち六人は、他にも牢屋があるのか、それとも既に連れ出された後なのか、子供達全員に手分けして尋ねてみたのだ。

 

しばらく沈黙していた子供達だが、カービィがしゃがみ込み純粋無垢な笑顔で「大丈夫だよ。ボクたちが君たちのことも助けるから!」と言うと、少し安心したのか、一人の七、八歳くらいの少年がおずおずとようやく質問に答えた。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……君達は誰なの?」

 

やはり、既に連れて行かれたあとかと内心舌打ちしたハジメたちは、不安そうな少年に向かって簡潔に返した。

 

「助けに来たんだよ」

「えっ!?助けてくれるの!」

 

 

「うん!ボクたちに任せて!」

 

 ハジメは地下牢から錬成で上階への通路を作ると子供達をレムユエとシアとティオに任せてオークション会場へ急ごうとした。と、その時、先ほどの少年がハジメを呼び止める。

 

「兄ちゃんに姉ちゃん、助けてくれてありがとう!あの子も絶対助けてやってくれよ!すっげー怯えてたんだ。俺、なんも出来なくて……」

 

どうやら、この少年、亜人族とか関係なく、ミュウを励まそうとしていたらしい。

自分も捕まっていたというのに中々根性のある少年だ。

自分の無力に悔しそうに俯く少年の頭を、ハジメはわしゃわしゃと撫で回した。

 

「わっ、な、なに?」

「ま、悔しいなら強くなればいい。つか、それしかないしな。今回は、俺たちがやっとくさ。次、何かあればお前がやればいい」

 

それだけ言うと、ハジメとカービィとルティはさっさと踵を返して地下牢を出て行った。

呆然と両手で撫でられた頭を抑えていた少年は、次の瞬間には目をキラキラさせて少し男らしい顔つきでグッと握り拳を握ったのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

オークション会場は、一種異様な雰囲気に包まれていた。

 

会場の客はおよそ百人ほど。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずに、ただ目当ての商品が出てくるたびに番号札を静かに上げるのだ。

素性をバラしたくないがために、声を出すことも躊躇われるのだろう。

 

そんな細心の注意を払っているはずの彼等ですら、その商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。

 

出てきたのは二メートル四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウだ。

衣服は剥ぎ取られ裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。

海人族は水中でも呼吸出来るので、本物の海人族であると証明するために入れられているのだろう。

一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。

小さな手足には酷く痛々しい光景だ。

 

多くの視線に晒され怯えるミュウを尻目に競りは進んでいく。

ものすごい勢いで値段が上がっていくようだ。

一度は人目に付いたというのに、彼等は海人族を買って隠し通せると思っているのだろうか。

もしかすると、昼間の騒ぎをまだ知らないのかもしれない。

 

ざわつく会場に、ますます縮こまるミュウは、その手に持っていたペロペロキャンディー飴をギュッと握り締めた。

それは、カービィから貰った星が一つ付いた丸い飴だった。

ミュウのご機嫌とりにカービィはミュウにあげた『無敵キャンディ』である。

ミュウはすぐに食べたくなったがカービィに『もしものことがあったらこれを舐めて。それまで我慢してね。』と言われたのである。

 

そのキャンディが今ではミュウの小さな拠り所だった。

母親と引き離され、辛く長い旅を強いられ、暗く澱んだ牢屋に入れられて、汚水に身を浸し、必死に逃げて、もうダメだと思ったその時、温かいものに包まれた。

何だかいい匂いがすると目を覚ますと、目の前には白髪の少年とピンクの髪の子供がいる。

 

 その後は聞かれるままに名前を答え、次に綺麗な紅い光が迸ったかと思うと、温かいお湯に入れられ、少年に似た、しかし、少し青みがかった白髪のウサミミお姉さんや金髪のお姉ちゃんに体を丸洗いされた、温かなお風呂も優しく洗ってくれる感触もとても気持ちよくて気がつけばシアと名乗るお姉さんをシアお姉ちゃんとレムユエと名乗るお姉さんをレムユエお姉ちゃんと呼び完全に気を許していた。

そのあとピンクの髪の子供、カービィお姉ちゃんと遊んだ。

膝の上に抱っこされ、食べさせてもらった串焼きの美味しさを、ミュウはきっと、一生忘れないだろう。

夢中になってあ~んされるままに食べていると、いつの間にかいなくなっていたティオと名乗る少女が帰ってきた。

ルティと言う大人しい少年も少し話しかけてきた。

少し警戒心が湧き上がったが、可愛らしい服を取り出すと丁寧にハジメと名乗る白髪の少年が着せてくれて、温かい風を吹かせながら何度も髪を梳かれているうちに気持ちよくなってすっかり警戒心も消えてしまった。

 

 

だから、家に帰ってお別れしなければならないと聞かされた時には、とてもとても悲しかった。

母親と引き離され、ずっと孤独と恐怖に耐えてきたミュウにとって、遠く離れた場所で出会った優しいお兄ちゃんやお姉ちゃんたちと離れ、再び一人になることは耐え難かったのだ。

 

故に、ミュウは全力で抗議した。

ハジメお兄ちゃんやルティお兄ちゃんの髪を引っ張ってやったし、カービィお姉ちゃんやレムユエお姉ちゃんの頬を何度も叩いたし、シアお姉ちゃんの耳を引っ張ったり、ティオお姉ちゃんの着物を解いて取ったりしてやったのだ。

この着物を返して欲しければ一緒に来て!と。

 

しかし結果は変わらなかったのだ。

ミュウは、身を縮こまらせながら考えた。

やっぱり、酷いことしたから知らない所に置いていかれたのだろうか?あの優しいお兄ちゃんやお姉ちゃんを怒らせてしまったのだろうか?

自分は、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに嫌われてしまったのだろうか?

そう思うと、悲しくて悲しくて、ホロリと涙が出てくる。

もう一度会えたら、痛くしたことをゴメンなさいするから、そうしたら今度こそ……どうか一緒にいて欲しい。

 

「ハジメお兄ちゃん……カービィお姉ちゃん……」

 

ミュウがそう呟いたとき、不意に大きな音と共に水槽に衝撃が走った。「ひぅ!」と怯えたように眉を八の字にして周囲を見渡すミュウ。

すると、すぐ近くにタキシードを着て仮面をつけた男が、しきりに何か怒鳴りつけながら水槽を蹴っているようだと気が付く。

どうやら更に値段を釣り上げるために泳ぐ姿でも客に見せたかったらしく、一向に動かないミュウに痺れを切らして水槽を蹴り飛ばしているらしい。

 

しかし、ますます怯えるミュウは、むしろ更に縮こまり動かなくなる。無敵キャンディを握り締めたままギュウと体を縮めて、襲い来る衝撃音と水槽の揺れにひたすら耐える。

 

フリートホーフの構成員の一人で裏オークションの司会をしているこの男は、余りに動かないミュウに、もしや病気なのではと疑われて値段を下げられるのを恐れて、係りの人間に棒を持ってこさせた。

それで直接突いて動かそうというのだろう。

ざわつく客に焦りを浮かべて思わず悪態をつく。

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しごときが!」

 

そう言って、司会の男が脚立に登り上から棒をミュウ目掛けて突き降ろそうとした。

ミュウは死を覚悟した。

 

その時、カービィの言葉を思い出した。

 

『もしものことがあったらこれを舐めて。』

 

その光景にミュウはギュウと目を瞑り、キャンディを舐めた。

すると……

 

「ふぇっ!?」

ミュウの身体から力が湧き上がり虹色に身体が輝き始めたのだ。

そして手足に嵌められていた金属製の枷が壊れミュウが水槽にちょこんと触れると水槽は破壊されてしまった。

 

「はぁ、ここは俺たちがカッコよく助けるシーンだと思ったんだがな。とにかくそのセリフ、そっくりそのまま返すぞクソ野郎?」

 

「ハジメお兄ちゃん!」

 

「よぉ、ミュウ。お前、会うたびにびしょ濡れだな?」

 

ハジメの首元にギュッウ~と抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。

ハジメは困った表情でミュウの背中をポンポンと叩く。

そして、手早く毛布でくるんでやった。

 

 

と、再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達がハジメとミュウを取り囲んだ。

しかしミュウに触れた瞬間男達は次々と気絶しあっという間に残り数人となった。

 

客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。

 

「お、おいクソガキ!フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。そ、その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

 

二十人近くの屈強そうな男に数人掛で囲まれて、ミュウは、首元から顔を離し不安そうにハジメを見上げた。

それと同時にミュウの身体から虹色の輝きが失われた。

ハジメは、ミュウの耳元に顔を近づけると、煩くなるから耳を塞いで、目を閉じていろと囁き、小さなぷくぷくしたミュウの手を取って自分の耳に当てさせる。

ミュウは不思議そうにしながらも、焦燥感も不安感もまるで感じさせない余裕の態度をとるハジメに安心したように頷くと、素直に両手で耳を塞いで目を瞑り、ハジメの胸元にギュッと顔を埋めた。

 

完全に無視された形の黒服は額に青筋を浮かべて、商品に傷をつけるな! ガキは殺せ! と大声で命じた。

その瞬間、

 

ドパンッ!!

 

そんな乾いた破裂音と共に、リーダー格と思われる黒服の頭部が爆ぜた。

誰もが「えっ?」と事態を理解できないように目を丸くして後頭部から脳髄を撒き散らして崩れ落ちる黒服を見つめる。

その隙に、カービィとルティとレムユエが現れドラゴストームで次々と燃やしていく。

そしてシアはドリュッケンで叩き潰していく。

誰もが何をされているのかわからず硬直している間に黒服はほとんどいなくなっていた。

その時になってようやく、目の前の少年少女たちを尋常ならざる相手だと悟ったのか、黒服たちは後退り、客達は悲鳴を上げて我先にと出口に殺到し始めた。

 

「お、お前たちは何者なんだ!何が、何で……こんなっ!」

 

「何で? 見りゃわかるだろ? 奪われたもんを奪い返しに来ただけだ。あとは……唯の見せしめだな。俺の連れや家族に手を出すとこうなるっていう。だから、終わりは派手にいかせてもらうぞ?」

 

ハジメはそう言うと、〝空力〟を使ってホールの天井まで上がって行き、いつの間にか空いていた穴に飛び込んでそのまま建物の外まで空いた穴を通って地上へと出た。

 

そしてカービィとルティがドラゴストームを、レムユエが蒼天龍嵐(ドラゴストーム)を縦に発生させて会場を粉々にした。

 

 ハジメは、〝空力〟で更に上空に駆け上がりながら、ミュウに話しかけた。

律儀にハジメの言いつけを守り耳を塞いでハジメの胸元に顔を埋めていたミュウは、ハジメの「もういいぞ、ミュウ」という言葉に目をパチクリさせながら周囲を見渡し……「ふわっ!?」という驚きの声を上げた。

 

それはそうだろう。目を開けてみれば、周囲は町を一望できるほどの上空なのである。

地平の彼方には、まさに沈もうとしている夕日が真っ赤に燃え上がりながら空を赤く染め上げており、地上には人工の光が点々と輝きだし、美しいイルミネーションを作り上げていた。

その初めて見る雄大な光景にミュウは瞳を輝かせてワーキャー言いながらハジメの胸元を掴んではしゃいでいる。

 

「ハジメお兄ちゃん凄いの!お空飛んでるの!」

「飛んでるんじゃなくて跳んでるだけなんだが……まぁいいか。」

 

 と、地上に降りたハジメの下へ捕まっていた子供達を保安員に引き渡したティオたちがやって来た。

 

 

 

結局その後、ハジメたち六人は冒険者ギルドの支部長のもとへ向かうのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「倒壊した建物、半壊した建物、消滅した建物、合計1000件。死亡が確認されたフリートホーフの構成員500名、再起不能100名、重傷50名、行方不明者10000名……で?何か言い訳はあるかい?」

「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔もない」

「まぁ仕方がないよ!子供を売るなんて許せないもん!」

 

 

「はぁ~~~~~~~~~」

 

 冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にジト目でハジメを睨むイルワだったが、出された茶菓子を膝に載せた海人族の幼女と分け合いながらモリモリ食べている姿と反省の欠片もない言葉に激しく脱力する。

 

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

 

「まぁ、元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」

 

苦笑いするイルワは、何だか十年くらい一気に年をとったようだ。

流石に、ちょっと可哀想なので、ハジメはイルワに提案してみる。

 

「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったんだ。支部長も、俺らの名前使ってくれていいんだぞ?何なら、支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか?」

 

「おや、いいのかい? それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」

 

 ハジメの言葉に、意外そうな表情を見せるイルワ。

だが、その瞳は「えっ? マジで? 是非!」と雄弁に物語っている。

ハジメは苦笑いしながら、肩を竦めた。

 

「まぁ、持ちつ持たれつってな。世話になるんだし、それくらいは構わねぇよ。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。俺らのせいで、フューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いしな」

 

「……ふむ。ハジメ君、少し変わったかい?初めて会ったときの君は、仲間の事以外どうでもいいと考えているように見えたのだけど……ウルでいい事でもあったのかな?」

「……まぁ、俺的には悪いことばかりじゃなかったよ」

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

 

「いや、俺たちが直接親御さんまで送り届けるさ。」

 

こうして一件は片付いたのだった。




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40話『親子再会』

感想、お気に入りありがとうございます!

お気に入り(129→130)

今回は原作の流れとは違い先に再会させます。
今回は長めです。


 見渡す限りの青。

 

 空は地平の彼方まで晴れ渡り、太陽の光は燦々と降り注ぐ。

しかし、決して暑すぎるということはなく、気候は穏やかで過ごしやすい。時折、優しく吹くそよ風は何とも心地いい。

何一つ物がない場所で少し寂しい場所だ。

もっとも、それも仕方のないことで、大海原のど真ん中なのである。

 

そんな大海のド真ん中をぷかぷか、ゆらゆらと波間に漂うのは一隻の船だ。

いや、それを船と表現していいものか。

少なくとも、この世界の人には船だと認識は出来ないだろう。

 

それは船というより新種の魔物と言われた方がこの世界の人々は納得するだろう。

この船の正体は潜水艇だ。

カービィとハジメがミュウの故郷へ行く為だけに二人が徹夜して作成したアーティファクトである。

その耐久性能はなんとカービィのドラゴストームに耐えれる耐熱性、耐久性、ついでにコピー能力ポイズンでも溶けない素材で更に潜水艇の役割を果たすトンデモアイテムである。

 

そんな潜水艇の上でハジメたちは現在釣った魚を食べていた。

 

 

とその時だった。

見たこともない魚の丸焼きに舌鼓を打っていたシアのウサミミが、突如、ピコンッ! と跳ねたかと思うと、忙しなく動き始めた。

次いで、カービィやハジメも「ん?」と何かの気配を感じたようで、全長六十センチ近くある魚を頬張りながら、視線を動かした。

 

直後、潜水艇を囲むようにして、先が三股になっている槍を突き出した複数の人が、ザバッ! と音を立てて海の中から一斉に現れた。

数は、二十人ほど。

その誰もが、エメラルドグリーンの髪と扇状のヒレのような耳を付けていた。

どう見ても、海人族の集団だ。

彼らの目はいずれも、警戒心に溢れ剣呑に細められている。

 

そのうちの一人、ハジメの正面に位置する海人族の男が槍を突き出しながら、ハジメたちに問い掛けた。

 

「お前達は何者だ?なぜ、ここにいる?その乗っているものは何だ?」

 

ハジメは、頬を膨らませながら目一杯詰め込んだ魚肉を咀嚼し飲み込むので忙しい。

敵対するつもりはないので、早く返答しようと思うのだが、如何せん、今食べている魚は弾力があってずっしりとボリュームのある強敵。

今しばらく飲み込むのに時間がかかる。

 

そんなハジメを見てカービィは一瞬で魚を食べ終わりハジメに代わって答えた。

 

「ボクたちは海人族の子供を送り届けにきたんだよ〜。それでこの乗り物はえーっと……新しい種類の船だよ。」

と、カービィがなんとか説明する。

 

「我らはお前のような子供に意見を求めてない。求めているのはそこの白髪の男だ。」

 

「……………(ハジメ食事中)」

 

ハジメやカービィとしては、至って真面目な態度を取っているつもりなのだが、ハジメを『槍を突きつけられ、包囲までされているのに余裕の態度で食事を優先しているふてぶてしい奴』としか見ていないようだった。

 

尋問した男の額に青筋が浮かぶ。

どうにも、ただ海にいる人間を見つけたにしては殺気立ち過ぎているようで、そのことに疑問を抱きつつも、一触即発の状況を打開しようと、カービィがダメではレムユエもダメだと思ったシアがハジメの代わりに答えようとした。

「あ、あの、落ち着いて下さい。私達はですね……」

 

「黙れ! 兎人族如きが勝手に口を開くな!」

 

やはり兎人族の地位は、樹海の外の亜人族の中でも低いようだ。

妙に殺気立っていることもあり、舐めた態度をとるハジメ(海人族にはそう見える)に答えさせたいという意地のようなものもあるのだろう。槍の矛先がシアの方を向き、勢いよく突き出された。

 

身体強化したシアに、海人族の攻撃が通るわけがないのだが、突き出された槍はシアが躱さなければ、浅く頬に当たっている位置だ。

おそらく、少し傷を付けてハジメに警告しようとしたのだろう。

やはり、少々やりすぎ感がある。

海人族はこれほど苛烈な種族ではなかったはずだ。

 

だが、例えどんな事情があろうと、それはハジメたちには完全に悪手。

絶対にしてはならない行為だった。

 

カービィとハジメが、例え警告でも家族を傷つけようとした相手に穏便であるはずがないのだ。

 

一瞬にして、巨大な殺気と大瀑布の如きハジメのプレッシャーが降り注ぎ、海面が波紋を広げたように波立つ。

 

目を見開いて、豹変したハジメを凝視する海人族の男は、次の瞬間、

 

ズバァアアアン!!

 

そんな衝撃音と共に放たれたカービィのウルトラソードによって海に叩き落とされた。

 

「なっ、なっ」

 

 狼狽する海人族達。

 

食いかけの魚を肩に担いだハジメは、ジロリと吹き飛んだ男の隣にいた男を睨みつけた。

ただでさえ、今まで感じたことのないプレッシャーに押し潰されそうになっていた海人族の男は、ハジメの眼光に恐慌を来たしたのか雄叫びを上げながら槍を突き出す。

 

「ゼェアア!!」

 

しかしそれは罠である。

 

「コピー能力ボム!」

クラッカーの様な帽子をかぶったカービィが海人族の男を爆破したのである。

 

「え? え? な、なんで……」

と、一人の海人族の男がそう呟いた。

 

「モグモグ……ゴクンッ……さて、俺としては海人族とは極力争いたくないんだ。だから、ここは落ち着いて話し合いといかないか?流石に、本気で仲間に手を出されたら黙っている訳にはいかないしな。」

 

 

「うん。あとボクが攻撃した人は手加減したから死んでないと思うよ〜。」

 

紅色の輝きを失い、くた~となった魚を片手に〝威圧〟を解いて、ハジメは、そう提案した。

ハジメやカービィたちとしても、ミュウと同じ海人族とは、あまり争いたくなかった。

さっくり殺してしまった相手が、実は近所のおじさんですとか言われたら目も当てられないからである。

 

しかし、海人族の方は、提案を呑むつもりがないらしい。

死んでいないとはいえ仲間を爆破されたり沈められた挙句、海の上という人間にとって圧倒的に不利な状況で『お前達など相手にならない』という態度をとる(海人族にはそう見える)ハジメに自尊心を傷つけられたらしい。

 

更に、人間族に対する警戒が異常に高いようで、ハジメたちの言葉を全く信用していないようだ。

油断させようとしてもそうはいかない!

と、ハジメ達から距離を取りながら背中に括りつけた短いモリを、投擲するように構えだした。

 

「そうやって、あの子も攫ったのか?また、我らの子を攫いに来たのか!」

「もう魔法を使う隙など与えんぞ!海は我らの領域。無事に帰れると思うな!」

「手足を切り落としてでも、あの子の居場所を吐かせてやる!」

「安心しろ。王国に引き渡すまで生かしてやる。状態は保障しないがな」

 

「コピー能力バブル。ビッグバブル!」

シャボン玉がたくさん付いたような帽子をかぶったカービィが海人族をシャボン玉に入れて海まで戻して解放する。

 

海人族には警戒心というより、その目には強烈な恨みが含まれているように見える。

『我らの子を攫う』という言葉から、彼等が殺気立っている原因を何となく察するハジメ。

もしかするとミュウ誘拐の犯人と勘違いされているのかもしれない。

だがさっきカービィがそれは説明した筈なのだ。

 

たしかに見たことのない乗り物に乗り、兎人族の奴隷を連れ、海人族の警戒範囲をうろつく人間は誤解されてもおかしくないかもしれないが……。

 

ハウリア族もそうだが、亜人族は種族における結束や情が非常に強い。

特に同種族において、その傾向は顕著だ。

 

シアのために一族総出で樹海を飛び出したハウリア族など、海人族も例に漏れず、例え他人の子であっても自分の子と変わらないくらい大切なのだろう。

 

苦笑いしたハジメは、ミュウの名前を出して誤解を解こうとした。

 

「あ~、あのな、そのさらわれ…」

「やれぇ!!」

 

しかし、それより早く、海人族はモリを次々と投擲し始めてしまった。下半身を海に付けて立ち泳ぎしながらだというのに、相当な速さで飛来するモリは、なるほど、確かに殺すつもりはないようで肩や足を狙ったものばかりだ。

しかもご丁寧に、水中から船を突き上げているらしく、船体が激しく揺れている。

 

普通の人間なら、バランスを崩して回避行動が間に合わずモリに射抜かれるか、海に落ちて海人族に制圧されるかが関の山だろう。

あくまで、普通の人間なら。

 

「コピー能力ウォーター!」

カービィが波を模した冠を被ると海水をカービィが操り、圧縮されながら盛り上がり全方位から飛んで来たモリを尽く阻んだ。

 

そして、レムユエとルティが現れ、無詠唱で発動した魔法に海人族達が驚愕している間に、レムユエは雷球を二十個ほど周囲に浮かべ、ルティは水中でアナザーディメンションを発動させる。

 

文字通り城壁と化していた海水がザバッと音を立てて元に戻ると同時に、海人族達は、レムユエの周りに漂うバチバチと放電する雷球と水中から次々と生えてくる謎の刺に悲鳴じみた号令が響く。

 

「っ!?た、退避ぃいい!!」

 

サッと青ざめさせた彼等は急いで逃げようと踵を返した。

が、時すでに遅し。

 

ルティの攻撃は誰も当たらないようにしている囮で本命はレムユエの雷球である。

 

雷球は、それぞれ別方向に飛び、海人族達を一人も逃さず……ほどよく感電させた。

そこかしこで「アバババババババッ」という悲鳴が聞こえ、しばらくすると、プカーと二十一人の海人族が浮かび上がった。

 

「レムユエ、ルティ、お疲れさん」

「ん……ハジメ、この人達が言っていたのって」

「まぁ、ミュウのことだろうな」

 

「やっぱりミュウさんを表に出した方が良かったですかね……?」

 

ミュウの安全を考えティオにこの戦闘の間、面倒を見てもらっていたのだ。

 

 

 ハジメは、頭を抱えながら溜息を吐き、取り敢えず、土左衛門になっている海人族達の回収に動き出した。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

潜水艇を即席で改造し作った荷台に、白目を剥いてアフロになっている海人族達を乗せ海原を進む。

 

レムユエが気をきかせて、一人だけ雷撃を弱くしておいたので直ぐに目を覚まさせ事情を説明し港に案内させた。

 

ハジメが、当初、ミュウの名と特徴を知っていたことに、『やはり貴様が犯人か!』と暴れた海人族の男だったが、ハジメが、ついイラっとして大人しくなるまで無表情で往復ビンタを繰り返すと、改心してきちんと話を聞いてくれるようになった。

 

そして、ミュウが潜水艇の中から出てきてハジメやカービィたちを『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と呼んで懐いていることから少しだけ警戒を解いて海人族へ説明しに行った。

 

なんだかんだて海の上を走ること数時間、

 

「あっ、ハジメさん!見えてきましたよ!町ですぅ!やっと人のいる場所ですよぉ!」

「ん? おぉ、ほんとに海のド真ん中にあるんだなぁ」

「どんな美味しい食べ物があるかな!」

「ん、カービィは新しい街に来たらいつも言ってる。」

「薄々思ってましたがカービィさんって食いしん坊ですね。」

 

「今更だろ?」

「ん、今更。」

「今更ですぅ。」

「今更じゃな。」

「今更なの。」

ルティより後に出会ったミュウですらカービィが食いしん坊であることは分かっていたがその事にルティは驚いたのだった。

 

そしてすぐ傍に来たことで、潜水艇の荷台に白目をむいて倒れる数十人の海人族達を目撃した海人族達が、大声で騒ぎ出した。

ハジメは、事情説明をしてくれる人達がいるので、大丈夫だろうと考え、取り敢えず、青年と協力して桟橋に気絶中の彼等を降ろしていく。

 

そうこうしているうちに、完全武装した海人族と人間の兵士が詰めかけてきた。

数人の海人族が、事情を説明するため前に進み出て、何やらお偉いさんらしき人と話し始める。

 

しかし、穏便にいってくれというハジメだたちの思いは、やはりそう簡単に叶いはしないらしい。

何やら慌てている数人の海人族を押しのけ、兵士達が押し寄せてきた。

狭い桟橋の上なので逃げ場などなく、あっという間に包囲されるハジメ達。

 

「大人しくしろ。事の真偽がはっきりするまで、お前達を拘束させてもらう」

「おいおい、話はちゃんと聞いたのか?」

「もちろんだ。確認には我々の人員を行かせればいい。お前達が行く必要はない」

 

ハジメはイラっとしつつも、ミュウの故郷だと自分に言い聞かせて自制する。

 

「あのな。俺達だって目的があるんだ。直ぐにでも次の目的地に向かいたいところを、わざわざ勘違いで襲って来た奴らを送り届けに来てやったんだぞ?」

「果たして勘違いかどうか……攫われた子がいなければ、エリセンの管轄内で正体不明の船に乗ってうろついていた不審者ということになる。道中で逃げ出さないとも限らないだろう?」

 

「どんなタイミングだよ。逃げ出すなら、こいつらを全滅させた時点で逃げ出しているっつうの」

「その件もだ。お前達が無断で管轄内に入ったことに変わりはない。それを発見した自警団の団員を襲ったのだから、そう簡単に自由にさせるわけには行かないな」

 

「殺気立って話も聞かず、襲ってきたのはコイツ等だろ?それとも、おとなしく手足を落とされていれば良かったってか?……いい加減にしとけよ?」

 

ハジメは剣呑に目を細めた。

目の前の兵士達のリーダーらしき人間族の男は、ハジメから溢れ出る重い空気に眉をしかめる。

 

彼の胸元のワッペンにはハイリヒ王国の紋章が入っており、国が保護の名目で送り込んでいる駐在部隊の隊長格であると推測できる。

海人族側の、おそらく自警団と呼ばれた者達も、ハジメの雰囲気に及び腰になりながらも引かない様子だ。

 

ハジメとしては、ミュウの故郷であるし、ついでに行こうと思っている大迷宮の一つ『メルジーネ海底遺跡』の正確な場所を知らないので、しばらく探索に時間がかかる可能性を考えると拠点となるエリセンで問題を起こしたくはなかった。

 

と、その時だった。

 

「喧嘩は辞めてなの!ハジメお兄ちゃんたちはいい人なの!」

とミュウはステテテテー!と走って来てハジメの前に立って両手を広げた。

 

「子供がでしゃばるな!」

 

「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」

ついにミュウは泣き出してしまった。

 

ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。

野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒など微塵もなく、妙に静まり返っていた。

 

それは、攫われたはずの海人族の女の子が人間であるはずの少年を庇った事、更に現在、一番の理由は、その少年が盛大に海人族の少女を叱り付けたことだろう。

いや、正確には、叱りつけた少年に対する先程から何度か聞こえる幼女の呼び名が原因かもしれない。

 

「ぐすっ、ハジメお兄ちゃんごめんなしゃい……」

「もうあんな危ない事しないって約束できるか?」

 

「うん、しゅる」

「よし、ならいい。ほら、来な」

 

「ハジメお兄ちゃーん!」

 

片膝立ちで幼子にしっかり言い聞かせるハジメの姿と、叱られて泣きながらも素直に反省し、許されてハジメの胸元に飛び込むミュウの姿は……普通に家族だった。

ミュウが連呼する〝お兄ちゃん〟の呼び名の通りに。

 

攫われたはずの海人族の幼子が、単なる〝慕う〟を通り越して人間の少年を家族扱いしている事態に、そしてそれを受け入れてミュウを妹扱いしているハジメに、皆、意味が分からず唖然としている。

内心は皆一緒だろう。

すなわち、「これ、どうなってんの?」と。

 

「貴様等……一度ならず、二度までも……王国兵士に対する公務妨害で捕縛してやろうか!」

 

 

ハジメたちは無言でマジックバックの中から全員分のステータスプレートとイルワからの依頼書を取り出し、隊長に提示した。

 

「……なになに……全員〝金〟ランクだとっ!?しかも、フューレン支部長の指名依頼!?」

 

イルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙も提出した。

これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたものだ。

それを食い入るように読み進めた隊長は盛大に溜息を吐くと、少し逡巡したようだが、やがて諦めたように肩を落として敬礼をした。

 

「……依頼の完了を承認する。南雲殿」

「疑いが晴れたようで何よりだ。他にも色々聞きたいことはあるんだろうが、こっちはこっちで忙しい。というわけで何も聞かないでくれ……一先ず、この子と母親を会わせたい。いいよな?」

 

「もちろんだ……が、あの船らしきもの……王国兵士としては看過できない」

 

 

「それなら、時間が出来たら話すってことでいいだろ? どっちにしろしばらくエリセンに滞在する予定だしな。もっとも、本国に報告しても無駄だと思うぞ。もう、ほとんど知ってるだろうし……」

「むっ、そうか。とにかく、話す機会があるならいい。その子を母親の元へ……その子は母親の状態を?」

 

「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには最高の薬もあるし、薬剤師もいるからな」

「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた、尋ねるとしよう」

 

隊長の男、最後にサルゼと名乗った彼は、そう言うと野次馬を散らして騒ぎの収拾に入った。

中々、職務に忠実な人物である。

 

ミュウを知る者達が、声を掛けたそうにしていたが、そうすれば何時までたっても母親のところへたどり着けそうになかったので、ハジメは視線で制止した。

 

「ハジメお兄ちゃん、カービィお姉ちゃん。お家に帰るの。ママが待ってるの!ママに会いたいの」

「そうだな……早く、会いに行こう」

 

ハジメの手を懸命に引っ張り、早く早く!と急かすミュウ。

彼女にとっては、約一ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。

無理もない。

道中も、ハジメ達が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。

 

しばらく歩くと通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。

 

「レミア、落ち着くんだ!その足じゃ無理だ!」

「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」

 

「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと!」

 

そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア!と輝かせた。

そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。

 

「ママーー!!」

「ッ!?ミュウ!?ミュウ!」

 

ミュウは、ステテテテー!と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。

 

もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。

 

レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。

娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。

 

「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」

「ミュウ……」

 

まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。

 

「ママ!あし!どうしたの!けがしたの!?いたいの!?」

 

どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。

彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。

 

これが、サルゼが言っていたことであり、エリセンに来る道中でハジメが青年から聞いていたことだ。

ミュウを攫ったこともだが、母親であるレミアに歩けなくなる程の重傷を負わせたことも、海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。

 

 

 

 

レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで怪しげな男達を発見した。

 

取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。

 レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。

 しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。

直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。

レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。

当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。

 

そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態なのである。

 

レミアは、これ以上、娘に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて、ミュウと同じように「大丈夫」と伝えようとした。

しかし、それより早く、ミュウは、この世でもっとも頼りにしている『お兄ちゃんとお姉ちゃん』に助けを求めた。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!ママを助けて!ママの足が痛いの!」

「えっ!?ミ、ミュウ?いま、なんて……!」

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!はやくぅ!」

 

「あら?あらら?やっぱり、『お義兄ちゃん、お義姉ちゃん』って言ったの?ミュウ?」

 

混乱し頭上に大量の〝?〟を浮かべるレミア。

周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。

あちこちから

「レミアに新たな子供が……再婚?そんな……バカナ」

「レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね!おめでたいわ!」

「ウソだろ? 誰か、嘘だと言ってくれ……俺のレミアさんが……」「お義兄…だと!?俺のことか!?」

「きっと芸名とかそんな感じのやつだよ、うん、そうに違いない」

「おい、緊急集会だ!レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ!こりゃあ、荒れるぞ!」

など、色々危ない発言が飛び交っている。

 

どうやら、レミアとミュウは、かなり人気のある母娘のようだ。

レミアは、まだ、二十代半ばと若く、今は、かなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。

復調すれば、おっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。

 

刻一刻と大きくなる喧騒に、「行きたくねぇなぁ」と表情を引き攣らせるハジメ。

どうやら、誤解が物凄い勢いで加速しているようだ。

 

だが、ある意味僥倖かもしれないとハジメは考えた。

ミュウは母親の元に残して、ハジメ達は旅を続けなければならない。

『メルジーネ海底遺跡』を攻略すれば、ミュウとはお別れなのだ。

故郷から遠く離れた地で、母親から無理やり引き離されたミュウの寄る辺がハジメ達だったわけだが、母親の元に戻れば、最初は悲しむかもしれないが時間がハジメ達への思いを薄れさせるだろうと考えていた。

周囲の人々の、レミア達母娘への関心の強さは、きっと、その助けとなるはずだ。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!はやくぅ!ママをたすけて!」

 

「うん!コピー能力ドクター!」

カービィは回復薬をコピー能力ドクターで作成しレミアに飲ませた。

次の瞬間傷が全て消えたのだった。

 

「そんなバカな!?」

と海人族がいっていた。

 

「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」

「ふふ、いいんですよ。ミュウちゃんのお母さんなんですから」

 

「えっと、そういえば、皆さんは、ミュウとはどのような……それに、その……どうして、ミュウは、貴方のことを〝お義兄ちゃん〟と……」

 

「なんか発音が違う気がするが……」

ハジメ達は、事の経緯を説明することにした。

フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてお兄ちゃんと呼ぶようになった経緯など。

全てを聞いたレミアは、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。

 

「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来ることでしたら、どんなことでも……」

「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね?ミュウ?ハジメさん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」

「?ハジメお兄ちゃん、カービィお姉ちゃん、どこかに行くの?」

 

レミアの言葉に、レミアの膝枕でうとうとしていたミュウは目をぱちくりさせて目を覚まし、次いでキョトンとした。

どうやら、ミュウの中でハジメたちが自分の家に滞在することは物理法則より当たり前のことらしい。

なぜ、レミアがそんな事を聞くのかわからないと言った表情だ。

 

「母親の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんだが……」

「あらあら、うふふ。兄妹が、妹から距離を取るなんていけませんよ?」

「いや、それは説明しただろ?俺達は……」

「いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそ、お別れの日まで〝家族〟でいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは……ね?」

 

「……まぁ、それもそうか……」

「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっと〝家族〟でもいいのですよ?先程〝一生かけて〟と言ってしまいましたし……」

 

そんな事を言って、少し赤く染まった頬に片手を当てながら「うふふ♡」と笑みをこぼすレミア。

おっとりした微笑みは、普通なら和むものなのだろうが……ハジメたちの周囲にはブリザードが発生している。

 

「そういう冗談はよしてくれ……空気が冷たいだろうが……」

「あらあら、おモテになるのですね。あぁそう言えば私も夫を亡くしてそろそろ五年ですし、ミュウもパパ欲しいわよね?」

「ふぇ?パパ?ハジメお兄ちゃんがパパになってくれるの!?」

「うふふ、だそうですよ、パパ?」

 

ブリザードが激しさを増す。

 

「いいや、遠慮しておくよ。」とハジメは即答した。

危うくハジメはレミアの婚約相手になってしまうところだったたのだ。

冷たい空気に気が付いているのかいないのか分からないが、おっとりした雰囲気で、冗談とも本気とも付かない事をいうレミア。

 

 

結局、レミア宅に世話になることになった。

 

 

明日からは、ついでの大迷宮攻略に向けて、しばらくの間、損壊、喪失した装備品の修繕・作成や、新たな神代魔法に対する試行錯誤を行わなければならない。

しかし、残り少ないミュウとの時間も、蔑ろにはできないと考えながら、ベッドに入ったハジメたちの意識は微睡んでいったのだった。

 

 

 

 

 




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41話『メルジーネ海底遺跡』

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あれから三日。

準備を万全にしたハジメたちは、遂に、『メルジーネ海底遺跡』の探索に乗り出した。

ミュウをレミアに預けて全員で行くことになった。

 

ミュウが手を振りながら「お兄ちゃん、いってらっしゃい!」と気丈に叫ぶ。

そして、やはり冗談なのか本気なのか分からない雰囲気で「いってらっしゃい、む・す・こ♡」と手を振るレミアだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『海上の町エリセン』から西北西に約三百キロメートル。

そこが、かつてミレディ・ライセンから聞いた七大迷宮の一つ『メルジーネ海底遺跡』の存在する場所である。

 

ハジメたちはここまで来たのと同じように潜水艇のアーティファクトを使って水中をスイスイと進む。

 

 

ハジメ達は、じっくり調べるため、最初に発見した紋章に近付いた。激流にさらされているので、船体の制御に気を遣う。

 

「まぁ、五芒星の紋章に五ヶ所の目印、それと光を残したペンダント……つまりこれは」

 

ハジメとレムユエ、カービィとシアは既視感を覚えた。

 

「……ってことはここを攻略する為に別の大迷宮を攻略する必要があるってことですよね?」

「ボクもそう思った。」

「ん、私も」

 

ここも樹海と同じく後回しにしなくてはならないと言うことであった。

つまりそれはもうこの街にハジメたちが留まる必要が無いと言うことである。

 

こうしてハジメたちは再び『海上の町エリセン』へと戻った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その日の晩、夕食前にハジメ達はミュウにお別れを告げた。

それを聞いたミュウは、着ているワンピースの裾を両手でギュッと握り締め、懸命に泣くのを堪えていた。

しばらく沈黙が続く中、それを破ったのはミュウだった。

 

「……もう、会えないの?」

「……また会えるさ。まだここの大迷宮を攻略してないからな」

 

「……お兄ちゃんたちは、ずっとミュウのお兄ちゃんでいてくれる?ルティお兄ちゃんやカービィお姉ちゃん、レムユエお姉ちゃんにシアお姉ちゃん、ティオお姉ちゃんもずっとミュウの兄妹でいてくれる?」

 

ハジメは、ミュウの両肩をしっかり掴むと真っ直ぐ視線を合わせた。

「……ミュウが、それを望むなら」

それに続いてカービィたちも言葉を続ける。

「もちろんだよ!」「ん、当たり前。」「もちろんですぅ。」「もちろんじゃ。」「うん。」

 

と、カービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティが同時に言った。

 

そう答えると、ミュウは、涙を堪えて食いしばっていた口元を緩めてニッと笑みを作る。

その表情にハッとしたのはレムユエ達だ。

それは、どこか困難に戦いを挑む時のハジメの表情に似ていて、一瞬、本当の親子のように見えたのだ。

 

「なら、いってらっしゃいするの。それで、今度は、ミュウがパパたちを迎えに行くの」

 

「迎えに……ミュウ。俺は、凄く遠いところに行くつもりなんだ。だからしばらくは……」

「でも、お兄ちゃんが行けるなら、ミュウも行けるなの!だって……ミュウはお兄ちゃんの家族だから」

 

ハジメの妹たる自分が、出来ないことなどない。

自信有りげに胸を張り、ハジメが会いに来られないなら、自分から会いに行くと宣言するミュウ。

 

ミュウは、ハジメがカービィと神殺しをした後にレムユエと世界を越えて自分の故郷に帰ろうとしていることを正確に理解しているわけではない。

まして、ミュウが迷宮を攻略して全ての神代魔法を手に入れ、世界を超えてくるなど有り得ないことである。

だからそれは幼子の拙い発想から出た実現不可能な目標だ。

 

だが、一体誰が、彼女の意志を馬鹿馬鹿しいと切り捨てられるのだろう。

出来はしないし、してはならない。

ミュウは、短い時間ではあったが、それでもしっかりハジメ達の背を見て成長してきたのだ。

手放していいのか?そんな事できるわけがない!

していいわけがないのだ。

 

だからこそ、ハジメは決断した。

今、ここでもう一つ誓いを立てようと。

 

「ミュウ、待っていてくれ」

「ハジメお兄ちゃん?」

先程までの、どこか悩んだ表情は一切なく、いつもの力強い真っ直ぐな眼差しがミュウの瞳を射貫いた。

 

「他の迷宮攻略を終わらせたら、なるべく早く、必ず、ミュウのところに戻ってくる。みんな連れて、ミュウに会いに来る」

「……ホント?」

 

「ああ、本当だ。俺たちがミュウに嘘吐いたことあったか?」

ハジメの言葉に、ふるふると首を振るミュウ。

 

「戻ってきて片付いたら、今度は、ミュウも連れて行ってやる。それで、俺の故郷、生まれたところを見せてやるよ。きっと、びっくりするぞ。俺の故郷はびっくり箱みたいな場所だからな」

「!お兄ちゃんの生まれたところ?みたいなの!」

 

「楽しみか?」

「すっごく!」

 

ピョンピョンと飛び跳ねながら喜びを表現するミュウ。

ハジメとまた会えるという事に不安を吹き飛ばされ満面の笑みを浮かべるミュウは、飛び跳ねる勢いそのままに、ハジメに飛びついた。

しっかり抱きとめたハジメは、そのままミュウを抱っこする。

 

「なら、いい子でママと待っていろよ?危ないことはするな。ママの言うことをよく聞いて、お手伝いを頑張るんだぞ?」

「はいなの!」

 

ハジメは、そんな二人のやり取りを微笑みながら見つめていたレミアに視線で謝罪する。「勝手に決めて済まない」と。

 

それに対し、レミアはゆっくり首を振ると、しっかりハジメと視線を合わせて頷いた。

「気にしないで下さい」と。その暖かな眼差しには、責めるような色は微塵もなく、むしろ感謝の念が含まれていた。

 

そんな家族とママのアイコンタクトに気がついたのか、ミュウがハジメとレミアを交互に見つつ、ハジメの服をクイクイと引っ張る。

 

「お兄ちゃん、ママも?ママも一緒?」

「あ~、それは……レミア?」

「私だけ仲間はずれなんて言いませんよね?だって私の大事な家族ですからね?」

 

「いや、それはそうだが……マジ、こことは〝別世界〟だぞ?」

「あらあら。娘と息子が行く場所に、付いていかないわけないじゃないですか。うふふ」

 

「……連れて行くの?」

「反対か?」

 

レムユエの質問に、ハジメがそう返すと、レムユエは首を振った。

 

「……ん、ミュウは既に私たちの家族。ハジメが言うなら文句はない。」

 

 

再会の約束をしたとはいえ、しばらくのお別れであることに変わりはない。

ミュウ最後の夜は精一杯甘えることにしたようだ。

 

 

そしてその翌日、ハジメ達は、ミュウとレミアに見送られ、海上の町エリセンを旅立ったのだった。

 




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第四章
42話『遠藤との再会』


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それではどうぞ。



あれから数日、ハジメ達は依頼(ミュウの送り届け)の達成報告をする為に冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。

ハジメはギルドの扉を開ける。

他の町のギルドと違って、ホルアド支部の扉は金属製だった。

重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 

前回、ハジメたちがホルアドに来たときは、冒険者ギルドに行く必要も暇もなかったので中に入るのは今回が初めてだ。

ホルアド支部の内装や雰囲気は、最初にハジメが抱いていた『異世界の冒険者ギルド』そのままだった。

 

冒険者自体の雰囲気も他の町とは違うようだ。

誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無である。

 

ハジメ達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉にハジメ達を捉えた。

 

血気盛んな、あるいは酔った勢いで席を立ち始める一部の冒険者達。

彼等の視線は、「女を多く侍らせているふざけたガキをぶちのめす」と何より雄弁に物語っており、このギルドを包む異様な雰囲気からくる鬱憤を晴らす八つ当たりと、単純なやっかみ混じりの嫌がらせであることは明らかである。

 

取り敢えず話はぶちのめしてからだという、荒くれ者そのものの考え方でハジメたちの方へ踏み出そうとした。

 

が、家族を大切にするハジメが、誤解をそのままに黙っているわけがなかった。

ハジメが穏便に済ます為に優しく話し掛けたが耳を傾けることすらなかった。

既に、ハジメの額には青筋が深く深~く浮き上がっていた。

 

 そして……

 

ドンッ!!

 

そんな音が聞こえてきそうなほど濃密にして巨大かつ凶悪なプレッシャーが、ハジメ達を睨みつけていた冒険者達に情け容赦一切なく叩きつけられた。

 

………と、永遠に続くかと思われた威圧がふとその圧力を弱めた。

ハジメも無駄に争いたくはないので攻撃されない限りは手を出すつもりはないのだ。

 

中には失禁したり吐いたりしている者もいるが……そんな彼等にハジメが優しく(?)話しかけた。

 

「おい、今、こっちを睨んだ奴ら」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

ハジメの声にビクッと体を震わせる冒険者達。

 

「俺は女を侍らせてなんかいない。こいつらは俺の大切な家族だ。だから家族に手を出したその時は……」

 

 

「「「「「「「(ゴクリ)」」」」」」」

 

「容赦無く殺す。いいな?」

 

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

冒険者達はハジメの眼光が鋭くなってきたので必死でスルーすることにした。

 

 

 

ハジメも、満足したようでもう冒険者達に興味はないとカウンターへと歩いて行った。

 

ハジメ達が、カウンターに向かった瞬間、ドサドサと崩れ落ちる音があちこちから響いたがサクッと無視して、たどり着いたカウンターの受付嬢に要件を伝える。

 

「支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが……本人に直接渡せと言われているんだ。あと依頼達成の報告だ。」

 

 ハジメ達は、そう言いながら自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」

 

「ぜ、全員〝金〟ランク!?」

 

その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いてハジメ達を凝視する。

建物内がにわかに騒がしくなった。

 

受付嬢は、自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついてサッと表情を青ざめさせる。

 

「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」

「あ~、いや。別にいいから。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

「は、はい!少々お待ちください!」

 

やがて、と言っても五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ!と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。

カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

ハジメは、その人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

 

「……遠藤!?」

 

 

ハジメの呟きに〝!〟と、黒装束の少年、遠藤浩介は、辺りをキョロキョロと見渡し、それでも目当ての人物が見つからないことに苛立ったように大声を出し始めた。

 

「南雲ぉ!いるのか!お前なのか!何処なんだ!南雲ぉ!生きてんなら出てきやがれぇ!南雲ハジメェー!」

 

あまりの大声に、思わず耳に指で栓をする人達が続出する。

その声は、単に死んだ筈のクラスメイトが生存しているかもしれず、それを確かめたいという気持ち以上の必死さが含まれているようだった。

 

カービィ達の視線が一斉にハジメの方を向く。

 

「どうするのハジメ?えーっと、確か召喚?された時に一緒にいたからクラスメート?って言う仲間なんだよね?」

 

「クラスメートは仲間じゃないが……まぁ話しくらいは聞いてやるか。」

 

「あ~、遠藤? ちゃんと聞こえてるから大声で人の名前を連呼するのは止めてくれ」

「!? 南雲! どこだ!」

 

ハジメの声に反応してグリンッと顔をハジメの方に向ける遠藤。余りに必死な形相に、ハジメは思わずドン引きする。

 

一瞬、ハジメと視線があった遠藤だが、直ぐにハジメから目を逸らすと再び辺りをキョロキョロと見渡し始めた。

 

「くそっ!声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ!幽霊か?やっぱり化けて出てきたのか!?俺には姿が見えないってのか!?」

「いや、目の前にいるだろうが、ど阿呆。つか、いい加減落ち着けよ。影の薄さランキング生涯世界一位」

 

「!?また、声が!?ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ!自動ドアくらい十回に一回はちゃんと開くわ!」

 

「十回中九回は開かないのか……お前、前は三回一回じゃなかったか?」

 

そこまで言葉を交わしてようやく、目の前の白髪眼帯の男が会話している本人だと気がついたようで、遠藤は、ハジメの顔をマジマジと見つめ始める。

 

「お、お前……お前が南雲……なのか?」

「はぁ……ああ、そうだ。見た目こんなだが、正真正銘南雲ハジメだ。……って言うかカービィが近くにいるんだから気づけよ!」

 

「え?あ、本当だ。南雲探しに集中して気づかなかった。……それにしてもお前……生きていたのか!」

「今、目の前にいるんだから当たり前だろ?」

 

「何か、えらく変わってるんだけど……見た目とか雰囲気とか口調とか……」

「奈落の底から自力で這い上がってきたんだぞ? そりゃ多少変わるだろ。」

 

「そ、そういうものかな?いや、でも、カービィちゃんだっけ?は変わってないんだが………「気にするな」……そうか……ホントに生きて……」

 

あっけらかんとしたハジメの態度に困惑する遠藤だったが、それでも死んだと思っていたクラスメイトが本当に生きていたと理解し、安堵したように目元を和らげた。

いくら香織に構われていることに他の男と同じように嫉妬の念を抱いていたとしても、また檜山達のイジメを見て見ぬふりをしていたとしても、死んでもいいなんて恐ろしいことを思えるはずもない。

ハジメの死は大きな衝撃であった。

それに幼い(ように見える)カービィも無事なのはハジメが奈落で力を付けて守ったからだろうと遠藤は納得する。

 

だからこそ、遠藤は、純粋にクラスメイトの生存が嬉しかったのだ。

 

「っていうかお前……冒険者してたのか?しかも全員〝金〟て……」

「ん~、まぁな」

 

ハジメの返答に遠藤の表情がガラリと変わる。

クラスメイトが生きていた事にホッとしたような表情から切羽詰ったような表情に。

改めて、よく見てみると遠藤がボロボロであることに気がつくハジメ。

(カービィは気がついていたようだが)

ハジメは一体、何があったんだと内心首を捻る。

 

「……つまり、カービィちゃんを守りながら迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな?信じられねぇけど……」

「まぁ、半分くらいあってるな。俺が脱出できたのはカービィやレムユエの協力があったからだ。」

 

遠藤の真剣な表情でなされた確認に肯定の意をハジメが示すと、次の瞬間遠藤はハジメに飛びかからんばかりの勢いで肩をつかみに掛かり、今まで以上に必死さの滲む声音で、表情を悲痛に歪めながら懇願を始めた。

 

「なら頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ、南雲!」

 

「ちょ、ちょっと待て。いきなりなんだ!?状況が全くわからないんだが?死んじまうって何だよ。天之河がいれば大抵何とかなるだろ?メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしないだろうし……」

 

ハジメが、普段目立たない遠藤のあまりに切羽詰った尋常でない様子に、困惑しながら問い返す。

遠藤はメルド団長の名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちた。

そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟く。

 

「……んだよ」

「聞こえねぇよ。何だって?」

「……死んだって言ったんだ!メルド団長もアランさんも他の皆も! 迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がすために!俺のせいで!死んだんだ!死んだんだよぉ!」

「そんな!?」

カービィは沢山の人が死んだことに少し驚く。

「……そうか」

だがハジメは冷静である。

 

ハジメの天職が非戦系であるために、ハジメとメルド団長との接点はそれほど多くなかった。

しかし、それでもメルド団長が気のいい男であったことは覚えているし、あの日、ハジメが奈落に落ちた日、最後の場面で〝無能〟の自分を信じてくれたことも覚えている。

そんな彼が死んだと聞かされれば、奈落から出たばかりの頃のハジメなら「あっそ」で終わらせたかもしれないが、今は、少し残念さが胸中をよぎる。少なくとも、心の中で冥福を祈るくらいには。

もちろんカービィの命を使ってまで生き返らせる気は全くない。

 

「で? 何があったんだ?」

「それは……」

 

尋ねるハジメに、遠藤は膝を付きうなだれたまま事の次第を話そうとする。

……と、そこでしわがれた声による制止がかかった。

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 

声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。

 

 ハジメたちは、先程の受付嬢が傍にいることからも彼がギルド支部長だろうと当たりをつけた。

 

おそらく、遠藤は既にここで同じように騒いで、勇者組や騎士団に何かがあったことを晒してしまったのだろう。

ギルドに入ったときの異様な雰囲気はそのせいだろう。

 

ギルド支部長と思しき男は、遠藤の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。

遠藤は、かなり情緒不安定なようで、今は、ぐったりと力を失っている。

 

きっと、話の内容は碌な事じゃないんだろうなと嫌な予想をしながらハジメ達は後を付いていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……魔人族……ね」

 

冒険者ギルドホルアド支部の応接室にハジメの呟きが響く。

対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、遠藤の正面にハジメが、その両サイドにレムユエとカービィ、ティオとシアとルティが座っている。

 

遠藤から事の次第を聞き終わったハジメの第一声が先程の呟きだった。

 

魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。

 

カービィの表情は助けに行く気満々である。

ハジメは正直言って天之川や檜山がいる為あまり行きたくない。

しかし白崎もいることから再会する必要はあると感じた。

何故ならハジメは奈落に落ちる前の日、白崎に「守られる」約束をしたのだから。

 

「つぅか!何なんだよ!何で、清水までいるの!?状況理解してんの!?みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「うん?僕は清水ではなくルティと言う名前がありますので……。」

 

「え。どう言うことだ南雲ォ!?」

 

「記憶喪失になったから名前を与えた。」

 

遠藤が何か言いそうになったが無視して話し始める支部長。

「さて、ハジメ、カービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ……だったな?イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まぁ、全部成り行きだけどな」

事も無げな様子で肩をすくめるハジメに、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

 

「手紙には、お前たちの〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった数人で数万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前らが実は魔王軍だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

ロアの言葉に、遠藤が大きく目を見開いて驚愕をあらわにする。自力で『オルクス大迷宮』の深層から脱出したハジメたちの事を、それなりに強くなったのだろうとは思っていたが、それでも自分よりは弱いと考えていたのだ。

 

何せハジメの天職は〝錬成師〟という非戦系職業であり、元は〝無能〟と呼ばれていた上、〝金〟ランクと言っても、それは異世界の冒険者の基準であるから自分達召喚された者とは比較対象にならない。

なので、精々、破壊した転移陣の修復と、軽い戦闘にレムユエと言う子の戦闘のサポートくらいの実力だろうくらいでの認識だったのだ。

 

元々、遠藤が冒険者ギルドにいたのは、高ランク冒険者に光輝達の救援を手伝ってもらうためだった。

もちろん、深層まで連れて行くことは出来ないが、せめて転移陣の守護くらいは任せたかったのである。

七十層の転移陣を守護するには、せめて〝銀〟ランク以上の冒険者の力が必要だったからだ。

 

 そして、遠藤の起こした騒動に気がついたロアが、遠藤の首根っこを掴んで奥の部屋に引きずり込み事情聴取をしているところで、ハジメのステータスプレートをもった受付嬢が駆け込んできたというわけだ。

 

そんなわけで、遠藤は、自分がハジメたちの実力を過小評価していたことに気がつき、もしかすると全員自分以上の実力を持っているのかもしれないと、過去のハジメと比べて驚愕しているのである。

 

遠藤が驚きのあまり硬直している間も、ロアとハジメたちの話は進んでいく。

 

「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」

「ふっ、魔王を雑魚扱いか?随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「……勇者達の救出だな?」

 

「そ、そうだ!南雲!一緒に助けに行こう!お前たちがそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

「……」

 

「どうしたんだよ!今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ!何を迷ってんだよ!仲間だろ!」

「……は?仲間だと?」

 

ハジメは、考え事のため逸らしていた視線を元に戻し、冷めた表情でヒートアップする遠藤を見つめ返した。

その瞳に宿る余りの冷たさに思わず身を引く遠藤だがそれでも、ハジメという貴重な戦力を逃すわけにはいかないので半ば意地で言葉を返す。

 

「あ、ああ。仲間だろ!なら、助けに行くのは当ぜ……」

「勝手に、お前等の仲間にするな。はっきり言うが、俺がお前等にもっている認識は唯の〝同郷〟の人間程度であって、それ以上でもそれ以下でもない。他人と何ら変わらない」

 

「なっ!?そんな……何を言って……」

 

「だが、俺の家族であるカービィが『絶対に助ける』って言う眼をしてるからな。今回限りだ。」

 

「本当か!?」

 

「ただし、お前に貸し1だ。わかったな?」

 

「あ、あぁ!わかった。」

 

ハジメは、先程の考え事の続き、すなわち、光輝達を助けることのデメリットを考える。

もしもカービィ自身の命を使った蘇生がバレたら光輝は死んだ人全員を生き返らせることを強要する可能性がある。

 

それにハジメ自身が言った通り、ハジメにとってクラスメイトは既に顔見知り程度の認識である。

今更、過去のあれこれを持ち出して復讐してやりたいなどという思いもなければ、逆に出来る限り力になりたいなどという思いもない。

本当に、関心のないどうでもいい相手だった。

 

 

だが、誰にでも手を差し伸べることのできるカービィが助けたいと言っているのだ。

それはハジメが奈落でカービィに救われたようにそれくらいのチャンスは与えてやってもいいかもしれない。

ハジメはそう思って『貸し1』として手を貸すことにしたのだ。

 

 

それに、ハジメは、あの奈落に落ちる前の日の語らいを思い出していた。

異世界に来て〝無能〟で〝最弱〟だったハジメに「私が、南雲君を守るよ」と、そう言った女の子、白崎香織。

結局は彼女の不安を取り除くために〝守ってもらう〟と約束したのに、結局、その約束は果たされなかった。

あの最後の瞬間、奈落へ落ち行くハジメに、壊れそうなほど悲痛な表情で手を伸ばす彼女の事を、何故か、この町に戻ってきてから頻繁に思い出すハジメ。

 

「白崎は……彼女はまだ、無事だったか?」

 

ハジメが、狼狽している遠藤にポツリと尋ねる。いきなりの質問に「えっ?」と一瞬、疑問の声を漏らすものの、遠藤は、取り敢えず何か話をしなければハジメが協力してくれないのではと思い、慌てて香織の話をしだす。

 

「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか……あの日、お前が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな?こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて……雰囲気も少し変わったかな? ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか……」

「……そうか」

 

聞いてないことも必死に話す遠藤に、ハジメは一言そう返した。そして、頭をカリカリと掻きながら、傍らで自分をている家族を見やる。

 

「ボクたちに任せてよ!」

「……ハジメのしたいように。私たちは、どこでも付いて行く。ね?」

「もちろんですぅ!」

「当然じゃな。」

「そうですね。」

 

 

対面で、愕然とした表情をしながら「え? 何このハーレム……」と呟いている遠藤を尻目に、ハジメは仲間に己の意志を伝えた。

 

「ありがとな、お前等。神に選ばれた勇者になんて、わざわざ自分から関わりたくはないし、お前達を関わらせるのも嫌なんだが……ちょっと義理を果たしたい相手がいるんだ。だから、ちょっくら助けに行こうかと思う。まぁ、あいつらの事だから、案外、自分達で何とかしそうな気もするがな」

 

ハジメの本心としては、光輝達がどうなろうと知ったことではなかったし、勇者の傍は同時に狂った神にも近そうな気がして、わざわざ近寄りたい相手ではなかった。

 

だが、カービィは救いたいと思っているからついでにハジメの事を恐らく気に病んで無茶をしているであろう香織には、顔見せくらいはしてやりたいと思ったのだ。

 

危険度に関しては特に気にしていない。

遠藤の話からすれば既に戦った四つ目狼が出たようだが、キメラ等にしても奈落の迷宮でいうなら十層以下の強さだろう。

何の問題もない。

寧ろ一人でも過剰戦力である程だ。

 

「え、えっと、結局、一緒に行ってくれるんだよな?」

「ああ、ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしておきたいんだ。無報酬と言う訳じゃあ無いよな?」

 

「ああ、それくらい構わねぇよ」

 

 

 

ハジメ達は遠藤の案内で出発することにした。

(遠藤の方が移動スピードが遅いからである)

 

「おら、さっさと案内しやがれ、遠藤」

「うわっ、ケツを蹴るなよ! っていうかお前いろいろ変わりすぎだろ!」

「やかましい。さくっと行って、一日……いや半日で終わらせるぞ。」

 

 

 

迷宮深層に向かって疾走しながら、ハジメの態度や環境についてブツブツと納得いかなさそうに遠藤は呟くがハジメ達の耳に届くことはない。

 

しゃべる暇があるならもっと速く走れとつつかれ、敏捷値の高さに関して持っていた自信を粉微塵に砕かれつつ、遠藤は親友達の無事を祈ったのだった。

 

 




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43話『クラスメートとの再会』

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ドォゴオオン!!

 

轟音と共にオルクス大迷宮の天井が崩落し、同時に紅い雷を纏った巨大な漆黒の杭が凄絶な威力を以て飛び出した。

 

スパークする漆黒の杭は、そのまま眼下の虎の子のアハトドを、まるで豆腐のように貫きひしゃげさせ、そのまま地面に突き刺さった。

 

全長百二十センチのほとんどを地中に埋め紅いスパークを放っている巨杭と、それを中心に血肉を撒き散らして原型を留めていないほど破壊され尽くした魔物の残骸に、眼前にいた香織と雫はもちろんのこと、光輝達や彼等を襲っていたアハトド、そして魔人族の女までもが硬直した。

 

戦場には似つかわしくない静寂が辺りを支配し、誰もが訳も分からず呆然と立ち尽くしていると、崩落した天井から人影が飛び降りてきた。

その人物の一人は、香織達に背を向ける形でスタッと軽やかに魔物の残骸を踏みつけながら降り立つと、周囲を睥睨する。

 

そして、肩越しに振り返り背後で寄り添い合う香織と雫を見やった。

 

「……相変わらず仲がいいな、お前等」

 

「ハジメくん!」

 

「へ? ハジメくん?って南雲くん?えっ?なに?どういうこと?」

 

香織の歓喜に満ちた叫びに、隣の雫が混乱しながら香織とハジメを交互に見やる。

どうやら、香織は一発で目の前の白髪眼帯黒コートの人物がハジメだと看破したようだが、雫にはまだ認識が及ばないらしい。

しかし、それでも肩越しに振り返って自分達を苦笑い気味に見ている少年の顔立ちが、記憶にある南雲ハジメと重なりだすと、雫は大きく目を見開いて驚愕の声を上げた。

 

「えっ? えっ? ホントに? ホントに南雲くんなの? えっ? なに?ホントどういうこと?」

 

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?それにその証拠に隣にカービィがいるだろ?」

 

「あっ、あの時南雲くんを追って行った子!」

 

香織と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。

 

「な、南雲ォ!おまっ!余波でぶっ飛ばされただろ!ていうか今の何だよ!いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか……」

 

文句を言いながら周囲を見渡した遠藤は、そこに親友達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。

そんな遠藤に、再会の喜びとなぜ戻ってきたのかという憤りを半分ずつ含めた声がかかる。

 

「「浩介!」」

「重吾!健太郎!助けを呼んできたぞ!」

 

『助けを呼んできた』その言葉に反応して、光輝達も魔人族の女もようやく我を取り戻した。

 

そして、改めてハジメ達を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメは少し面倒臭そうな表情をしながら、全員に手早く指示を出した。

 

「レムユエとティオは悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シアとルティは向こうで倒れている騎士たちの容態を見てやってくれ。俺とカービィでまずは敵を片付けるぞ!」

 

「ん……任せて!」

「任せろなのじゃ!」

「了解ですぅ!」

「わかりました!」

「任せて!」

 

「ハ、ハジメくん……」

 

 香織が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。

その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。

それは、この死地にハジメたちが来てしまったが故だろう。

どういう経緯か香織にはわからなかったが、それでも直ぐに逃げて欲しいという想いがその表情から有り有りと伝わる。

 

ハジメは、チラリと香織を見返すと肩を竦めて「大丈夫だから、そこにいろ」と短く伝えた。

そして、即座に『瞬光』を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、『宝物庫』からクロスビットを三機取り出し、それを香織と雫の周りに盾のように配置した。

 

 突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる香織と雫。

そんな二人に背を向けると、ハジメは元凶たる魔人族の女に向かって傲慢とも言える提案をした。

それは、魔人族の女が、まだハジメ達の敵ではないが故の慈悲である。

 

「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと帰れ。」

「……何だって?」

 

「聞こえなかったか?死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」

 

改めて、聞き間違いではないとわかり、魔人族の女はスっと表情を消すと「殺れ」とハジメ達を指差し魔物に命令を下した。

 

この時、あまりに突然の事態――――特に虎の子のアハトドが正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。

 

「なるほど。……つまり俺たちの『敵』って事でいいんだな?」

 

ハジメがそう呟いたのとハジメとカービィに数匹のキメラが襲いかかったのは同時だった。

 

ハジメの背後から「ハジメくん!」「南雲君!カービィちゃん!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。

しかし、ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げて握り潰した。

 

「コピー能力レーザー。貫通レーザー!」

カービィは機械のメガネを掛けた姿になり、そのメガネから太いレーザーが発射され数匹のキメラは貫通して倒された。

 

それを見て、ハジメが侮蔑するような眼差しになった。

「おいおい、何だ?この半端な固有魔法は。大道芸か?」

 

気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があると、ハジメは、思わずツッコミを入れる。

奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったのだ。

それらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽など、ハジメやカービィからすれば余りに稚拙だったのである。

 

その光景に魔人族の女や香織達が唖然とした表情をする。

 

「ッ!? ちくしょう!」

魔人族の女がそんな声を漏らした。

ハジメとカービィがあっさり魔物を殺し始めた瞬間から、危機感に煽られて大威力の魔法を放つべく仰々しい詠唱を始めたのだが、それに気がついていたハジメが、アブソドの砲撃を指示したであろう魔人族の女に詠唱の邪魔ついでに砲撃を流したのである。

 

そしえいよいよ逸らされた砲撃が直ぐ背後まで迫り、魔人族の女が、自分の指示した攻撃に薙ぎ払われるのかと思われた直後、アブソドが蓄えた魔力が底を尽き砲撃が終ってしまった。

 

「チッ……」

 

ハジメの舌打ちに反応する余裕もなく、冷や汗を流しながらホッと安堵の息を吐く魔人族の女だったが、次の瞬間には凍りついた。

 

ドパァンッ!

 

 炸裂音が轟くと同時に右頬を衝撃と熱波が通り過ぎ、パッと白い何かが飛び散ったからだ。

 

その何かは、先程まで魔人族の女の肩に止まっていた白鴉の魔物の残骸だった。

完全には思惑通りにいかなかったハジメが、腹いせにドンナーをアブソドに、シュラークを白鴉に向けて発砲したのである。

 

あと、数センチずれていたら……そんな事を考えて自然と体が身震いする魔人族の女。

それはつまり、今も視線の先で、強力無比をうたった魔物の軍団をまるで戯れに虫を殺すがごとく駆逐しているハジメとカービィは、いつでも魔人族の女を殺すことが出来るということだ。

今この瞬間も、彼女の命は握られているということだ。

 

戦士たる強靭な精神をもっていると自負している魔人族の女だが、あり得べからざる化け物の存在に体の震えが止まらない。

あれは何だ?

なぜあんなものが存在している?

どうすればあの化け物から生き残ることができる!?

魔人族の女の頭の中では、そんな思いがぐるぐると渦巻いていた。

が、時すでに遅し。

彼らが用意した慈悲を彼女自身が蹴ったのだから。

 

それは、光輝達も同じ気持ちだった。

彼等は、白髪眼帯の少年の正体を直ぐさまハジメとは見抜けず、カービィのこともあの時気にはしてなかったのだから、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。

 

「何なんだ……彼らは一体、何者なんだ!?」

 

光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。

今、周りにいる全員が思っていることだった。

その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲とカービィとその仲間だよ」

 

 

「「「「「「………は?」」」」」」

 

 遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。

遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。

 

「だから、南雲、南雲ハジメだよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。迷宮の底で生き延びて、カービィちゃんと共に自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ!って俺も思うけど……事実だよ」

「南雲って、え?南雲が生きていたのか!?」

 

光輝が驚愕の声を漏らす。

そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……やはり一斉に否定した。

「どこをどう見たら南雲なんだ?」と。

そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

 皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。

 

「う、うそだ。南雲は死んだんだ。そうだろ?みんな見てたじゃんか。生きてるわけない!適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

「うわっ、なんだよ檜山!ステータスプレートも見たし、本人が認めてんだから間違いないだろ!」

 

「うそだ!何か細工でもしたんだろ!それか、なりすまして何か企んでるんだ!」

「いや、何言ってんだよ?そんなことする意味、何にもないじゃないか」

 

遠藤の胸ぐらを掴んで無茶苦茶なことを言うのは檜山だ。

顔を青ざめさせ尋常ではない様子でハジメの生存を否定する。

周りにいる近藤達も檜山の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。

 

「……大人しくして。鬱陶しいから」

突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。

 

……と、その時、魔人族の女が指示を出したのか、魔物が数体、光輝達へ襲いかかった。

人質にでもしようと考えたのだろう。

普通に挑んでも、ハジメやカービィを攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。

 

鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。

度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。

ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな鈴をレムユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたレムユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

「……大丈夫」

レムユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。

そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

「蒼天龍嵐(ドラゴストーム)

 

その瞬間、何処からか蒼い龍が現れ一直線に走り抜けて消えた。

そんな魔法を詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。

特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る龍を仰ぎ見た。

 

しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。

今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。

 

「なに、この魔法……」

 

 一方、魔人族の女は、遠くから蒼天龍嵐(ドラゴストーム)の異様を目にして、内心「化け物ばっかりか!」と悪態をついていた。

そして、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女、竜人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。

 

しかし、魔人族の女は、これより更なる理不尽に晒されることになる。

 

シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。

ティオに至っては竜の力を拳に集めて殴ってワンパンした。

 

また、香織と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。

殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、周囲で浮遊していたクロスビットがスっと雫とキメラの間に入る。

 

雫が「ホントに何なの!?」と内心絶叫していると、その頬を掠めるように何かがくるくると飛び、カランカランという金属音を響かせて地面に落ちた。香織の側でも同じく轟音が響き、やはり同じように金属音が響く。

 

 香織と雫が、混乱しつつも、とにかく迫り来る魔物に注意を戻すと、そこには頭部を爆砕させた魔物達の姿が……唖然としつつ、先程の金属音の元に視線を転じてその正体を確かめる。

 

「これって……薬莢?」

「薬莢って……銃の?」

 

香織と雫が、馴染みのない知識を引っ張り出し顔を見合わせる。

そして、ハジメが両手に銃をもって大暴れしている姿を見やって確信する。

 

「す、すごい……ハジメくんって厨二病だったんだ」

「彼、いつの間に別人になったのよ……」

 

周囲の魔物が一瞬で駆逐されたことで多少の余裕を取り戻した香織と雫が、二人には似つかわしくないツッコミを入れる、

実はそれがクロスビットを通してハジメに伝わっており、厨二病と言われたハジメがダメージを受けているのだが、鍛えられたスルースキルで、ハジメは気にしないことした。

 

「ホントに……なんなのさ」

 

力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。

何をしようとも全てを力でねじ伏せられ粉砕される。

そんな理不尽に、諦観の念が胸中を侵食していく。

もはや、魔物の数もほとんど残っておらず、誰の目から見ても勝敗は明らかだ。

 

魔人族の女は、最後の望み!と逃走のために温存しておいた魔法をハジメに向かって放ち、全力で四つある出口の一つに向かって走った。

ハジメのいる場所に放たれたのは『落牢』だ。

それが、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。光輝達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。

 

動揺する光輝達を尻目に、魔人族の女は、遂に出口の一つにたどり着いた。

 

 しかし……

 

「はは……既に詰みだったわけだ」

「その通り」

 

放たれた『落牢』はルティのウルトラソードによって真っ二つとなったからだ。

 

ハジメたちに攻撃を仕掛けてしまった時から既にチェックメイトをかけられていたことに今更ながらに気がつき、思わず乾いた笑い声を上げる魔人族の女。

とする石化の煙を紅い波動〝魔力放射〟で別の通路へと押し流す。

 

「……この化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんたたち本当に人間?」

 

「実は、自分でも結構疑わしいんだ。だが、化け物というのも存外悪くないもんだぞ?……とにかく、じゃさよならって事で。」

 

嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。

そして、何の躊躇いもなくドンナーを発砲し魔人族の女の両足を撃ち抜いた。

 

「あがぁあ!!」

 

 悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。

 

「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

 

 その言葉に、ハジメは口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺たちは神だって殺す。その神に踊らされてる程度の奴じゃあ、俺たちには届かない」

 

 互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。

 

 しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかる。

 

「待て!待つんだ、南雲!彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

「……」

 

光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

余りにツッコミどころ満載の言い分に、ハジメは聞く価値すらないと即行で切って捨てた。

そして、無言のまま……引き金を引いた。

 

ドパンッ!

 

だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

 ハジメは、家族たちの方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には『そもそも答える必要ない』と考え、さらりと無視することにした。

 

 もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題であるが……

 

 




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44話『改心』

感想、お気に入りありがとうございました!

(134→136)


遅くなりました。
内容考えるのに時間かかりまして……。


必死に感情を押し殺した光輝の声が響く中、その言葉を向けられている当人(ハジメとカービィ)はというと、まるでその言葉が聞こえていないかのように、スタスタと倒れ伏すメルドの傍に寄り添うシアとルティのもとへ歩みを進めた。

 

レムユエとティオたちの方も、光輝達の護衛はもういいだろうと、ハジメたちの方へ向かう。

 

 

「ルティ、シア、メルドの容態はどうだ?」

「危なかったですね。」

「はい。あと少し遅ければ助かりませんでしたですぅ……指示通り〝神水〟を使っておきましたけど……良かったのですか?」

 

「ああ、この人には、それなりに世話になったんだ。それに、メルドが抜ける穴は、色んな意味で大きすぎる。特に、勇者パーティーの教育係に変なのがついても困るしな。まぁ、あの様子を見る限り、メルドもきちんと教育しきれていないようだが……人格者であることに違いはない。死なせるにはいろんな意味で惜しい人だ」

 

ハジメは、龍太郎に支えられつつクラスメイト達と共に歩み寄ってくる光輝が、未だハジメとカービィを睨みつけているのをチラリと見ながら、シアに、メルドへの神水の使用許可を出した理由を話した。

ちなみに、『変なの』とは、例えば、聖教教会のイシュタルのような人物のことである。

 

「ん……ハジメ」

「ハジメ!」

「ハジメさん!」

「ハジメ」

「ハジメさん。」

 

 

「……みんなありがとな、頼み聞いてくれて」

「んっ、私たちは家族だからそれくらいは気にしなくていい。」

 

「……それにしてもなんだかぞろぞろ集まって来ましたよ!?」

 

「おい、南雲。なぜ、彼女を……」

「ハジメくん……いろいろ聞きたい事はあるんだけど、取り敢えずメルドさんはどうなったの?見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」

 

ハジメを問い詰めようとした光輝の言葉を遮って、香織が、真剣な表情でメルドの傍に膝を突き、詳しく容態を確かめながらハジメに尋ねた。

 

「ああ、それな……ちょっと特別な薬を使ったんだよ。飲めば瀕死でも一瞬で完全治癒するって代物だ。ただし大きな怪我は治らないがな。」

「そ、そんな薬、聞いたことないよ?」

 

「そりゃ、伝説になってるくらいだしな……普通は手に入らない。だから、八重樫は、治癒魔法でもかけてもらえ。魔力回復薬はやるから」

「え、ええ……ありがとう」

 

ハジメに声をかけられ、未だに記憶にあるハジメとのギャップに少しどもりながら薬を受け取り礼をいう雫。

ハジメは香織にも魔力回復薬を投げ渡した。

その後きっちり薬瓶をキャッチした香織も、ハジメに一言礼を言って中身を飲み干す。

香織さえ回復すれば、クラスメート達も直ぐに治癒されるだろう。

そこで、光輝が再び口を開くが……。

 

「おい、南雲、メルドさんの事は礼を言うが、なぜ、彼じ……」

「ハジメくん。メルドさんを助けてくれてありがとう。私達のことも……助けてくれてありがとう」

 

再び、香織によって遮られた。

光輝が、物凄く微妙な表情になっている。

ハジメの変わりように激しいショックを受けはしたが、それでも、どうしても伝えたい事があったのだ。

 

そして、グッと込み上げてくる何かを堪えるように服の裾を両の手で握り締め、しかし、堪えきれずにホロホロと涙をこぼし始めた。

 

「ハジメぐん……生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ひっく……ゴメンねっ……ぐすっ」

 

女子は香織の気持ちを察していたので生暖かい眼差しを向けており、男子の中でも何となく察していた者は同じような眼差しを、近藤達は苦虫を噛み潰したような目を、光輝と龍太郎は香織が誰を想っていたのか分かっていないのでキョトンとした表情をしている。

 

ハジメは、目の前で顔をくしゃくしゃにして泣く香織が、遠藤に聞いていた通り、あの日からずっと自分の事を気にしていたのだと悟り、何とも言えない表情をした。

 

正直、レムユエやカービィたちには一度、自分の境遇を話す上で香織の話をしたことはあったのだが、それは奈落にいるときのことで、それ以降、香織の事は完全に忘れていたのだである。

なので、これほど強く想われていた事に、少しだけ罪悪感が湧き上がった。

 

ハジメは、困ったような迷うような表情をした後、苦笑いしながら香織に言葉を返した。

 

「……何つーか、心配かけたようだな。直ぐに連絡しなくて悪かったよ。まぁ、この通り、しっかり生きてっから……謝る必要はないし……その、何だ、泣かないでくれ」

 

そう言って香織を見るハジメの眼差しは、いつか見た「守ってくれ」と言った時と同じ香織を気遣う優しさが宿っていた。

香織は思わずワッと泣き出し、そのままハジメの胸に飛び込んでしまった。

ハジメはポンポンと軽く頭を撫でることにした。

流石家族の誰にも手を出さないヘタレなハジメである。

 

「……ふぅ、香織は本当に優しいな。クラスメートが生きていた事を泣いて喜ぶなんて……でも、南雲とそこの少女は無抵抗の人を殺したんだ。話し合う必要がある。もうそれくらいにして、南雲から離れた方がいい」

 

クラスメイトの一部から「お前、空気読めよ!」という非難の眼差しが光輝に飛んだ。

この期に及んで、この男は、まだ香織の気持ちに気がつかないらしい。

(カービィも気づいてない。)

何処かハジメを責めるように睨みながら、ハジメに寄り添う香織を引き離そうとしている。

 

「ちょっと、光輝!南雲君は、私達を助けてくれたのよ?そんな言い方はないでしょう?」

「だが、雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。南雲がしたことは許されることじゃない」

そう光輝が言い切ったが……。

「それはどうかな?」

と、カービィが光輝の前に立ち塞がる。

 

「君は……」

 

「ボクはカービィだよ。あとボクは少女じゃなくて男なんだからね!!」

 

「そんなことはどうだっていい。何故カービィ、君はあの南雲と一緒に無抵抗の彼女を殺したんだ?」

 

「殺す必要が本当にないと思う?」

 

「どう言うことだ?」

 

「たしかにあの人には家族とか大切な人がいるかもしれない。」

「だったら……」

 

「でも、あの人は見逃したらボクたちを殺す気でいたし君たちも殺す気でいたんだよ。」

 

「それでも殺す以外の方法はあった筈だろ!」

 

「それにね?ボクやハジメたちは『頼まれて』ここに来たんだ。ボクは始めは殺す気は無かったんだけど……、でもボクだって大切な人に手を出されたら怒るし、関係ない人まで手を出されたらボクだって本気で戦わないといけなくなる。だからボクの意見を変えてあの女の人を回復させたり君に謝ったりするつもりはないよ。」

 

「………つまり君は彼女を今生き返らせることが出来るってことだろ?どうしてそうしない!」

 

「だからボクはそうする気はないって言ったよ。……だったらそこまで君があの女の人にこだわるなら君がその女の人を庇えばよかったんじゃないの?どちらにしてもボクたちが来なかったら君たちはいずれにしても殺されてたんだから。それにこの世界で誰も殺さないなんて出来ないことだよ。仮にしてなかったとしてもそれは逃げてるだけだからね。だってボクが住んでる星、『呆れ返るほど平和な星』ポップスターでも殺す人はいるし(残機()が一つとは言ってない)、ボクだって何度も殺され掛けた(殺された)ことがある。だからそれは仕方ないこと、までは言わないけどそこまで言う必要はないとボクは思う。じゃあ改めて聞くんだけどあの女の人を生き返らせるにはボクの命を丸々消費しないといけないんだ。つまり君はボクに死ねって言ってるってことだよね?そう言うことだよね?それで君がボクを殺して同じ事が言える?」

 

「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ?大体……」

諦めの悪い光輝の物言いに、雫が目を吊り上げて反論する。

クラスメイト達は、どうしたものかとオロオロするばかりであったが、檜山達は、元々ハジメが気に食わなかったこともあり、光輝に加勢し始める。

 

 

 

 

が………。

 

 

 

 

 

 

「………………すまなかった。」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

クラスメートとハジメは固まった。

 

「俺の考えは甘かったと思う。……言い訳かもしれないが俺たちのいた世界では人の死を見る機会なんてそうそう無かった。……だから俺は気がつかなかった。そこまで言われて気づいたよ。この世界は俺たちのいた場所とは違うって。……俺は正義を掲げてきたが…………正義って言うのは人それぞれ違って、人それぞれの考え方があって、それでも自分の価値観で決めつけていたものだったんだな。人それぞれで違って当たり前だ。」

 

 

 

天之河光輝。

突然だが一般家庭の一人息子として生まれた彼には、今でも心から尊敬し憧れている人物がいる。

その人物とは、光輝の祖父である。

その祖父の名を天之河完治(かんじ)といい、業界では有名な敏腕弁護士だった。

一人暮らしだった祖父は孫である光輝を大層可愛がった。

そんな祖父を光輝はよく慕っており、所謂おじいちゃん子というやつだった。

中でも光輝が一番好きだったのは完治の話す経験談。

長年の弁護士としての仕事より得た経験を、絵本を読むが如く光輝に語って聞かせた。

小さい光輝にも分かりやすいように、また、現実的なことを言えば守秘義務から相当アレンジは入っていたが、それでも弁が立つ祖父の話は人間ドラマに満ちていて光輝は幾度も心躍らせた。

弱きを助け、強きを挫き、困っている人には迷わず手を差し伸べ、正しいことを為し、常に公平である……完治のお話は結局のところ、そういう教えを含んだものだ。

理想と正義を体現したヒーロー物語。

幼い子供に対するありふれたお話。

それ故に、光輝にとっては祖父完治こそがヒーローだった。

同年代の子供が、ヒーローに憧れるように、完治に憧れたのだ。

身近にいたからこそ、その憧れは他の子供達より強かったと言えるだろう。

『いつか自分も祖父のように』と。

 

 

だが、当然のことながら、世の中というものは完治のお話のように正義と公平が悪と理不尽を切り裂き、理想の正しさを実現し続けられるようには出来ていない。

当たり前である。

弁護士という職業とて、正義と公平は掲げていても、その一番の使命は真実の追求や悪人の弾劾ではなく依頼人の利益を守ること。

『敏腕』弁護士と呼ばれるのは、弁護士として技量に優れているというだけでなく、それだけ完治が清濁併せ持った現実的思考の出来る人間だったということでもあるからだ。

世の中の薄汚れた部分も理想や正義を掲げるだけでは足りないことも知り尽くしているということである。

………が、それを光輝に教える前に完治は他界してしまった。

光輝が小学校に入る前、急性の心筋梗塞で亡くなった。

 

完治の死は光輝に大きな影響を残した。

 

大好きな祖父を想い、思い出に浸れば浸るほど完治というヒーロー像は美化されていき、幼い光輝の心の深い部分に『理想的な正しさ』が根付いてしまったのである。

 

その正しさとは、子供の耳に心地いい祖父が教えた通りの正しさであり、同時に少数派や清濁の内、『濁』の部分を一切認めない正しさである。

カービィだって冒険の途中で残機が減った(殺された)りするがカービィがハジメたちに話すのはカービィの冒険から『濁』の部分を取り除いたものであるからだ。

 

話は戻すが、光輝は大多数の人が正しいと思うことが絶対的に正しいと思うようになったのだ。

もっとも、それは別に特別なことではない。テレビや本の中のヒーローを見て、理想の正しさを掲げる子供など、ごまんといる。

だが、そんな子供達は現実の壁に直面し多くの失敗を繰り返し、時に挫折し、諦めることを覚えて、割り切りと妥協の仕方を学び、上手く現実という名の荒波に乗る方法を自然と学んでいくのである。

 

だが自然な流れに乗るには光輝は余りに非凡すぎた。

高すぎるスペックが現実の壁を理想通りに乗り越えさせてしまった。

失敗も挫折もなく、あらゆる局面を自らの力で押し通せてしまった。

子供の理想が通せてしまったのだ。

 

結果、光輝はいつしか、自分の正しさを疑うということをしなくなった。

その危うさを真剣に受け止めることも、改めることもなかった。

 

だが、カービィによって光輝はようやく初めて、現実の壁というものを目の当たりにした。

そしてそれをようやく認めたのである。

 

「………ん?おかしいな。俺はあの勇者が間違いに気づいたように聞こえたんだが……」

「大丈夫、私もよ。」と、雫がツッコミを入れる。

 

「南雲、今まで俺の意見を押し付けてすまなかった。香織が南雲に好意を抱いていたのに俺は嫉妬してた……たぶんだが。本当にすまない!」

 

 

「………はぁ、そこまで言われたら本当は『いつもお前のせいで学校での境遇が酷かったんだがどうしてくれるんだあぁん?』……と、言いたい所だがここはお前を説得したカービィに免じて許してやる。」

 

「ありがとう。」

 

「…………で?白崎が俺に好意を持ってるってどう言うことだ?」

 

「えっと……そのっ!…… 」

香織は両手を胸の前で組み頬を真っ赤に染めて、深呼吸を一回すると、震えそうになる声を必死に抑えながらはっきりと……告げた。

 

「貴方が好きです」

「……白崎」

 

香織の表情には、羞恥と想いを告げることが出来た喜びの全てが詰まっていた。

そして、一歩も引かないという不退転の決意が宿っていた。

 

覚悟と誠意の込められた眼差しに、ハジメもまた真剣さを瞳に宿して答える。

 

「………まだ白崎の想いには応えられない。何故ならそれが奈落に落ちる前の俺か、変わり果てた今の俺か、はっきりしてないからだ。……はっきりして尚、俺の事が好きなら……俺はその想いに応える。」

 

「……ハジメくん。」

「心配すんな。またしばらくしたら会えるからな。あとついでだが勇者こと天之川は貰ってくぞ。」

 

「「「「「え」」」」」

クラスメートたちはハジメがそっち系だったのか思い込む。

 

「勘違いすんな。俺たちがこの勇者にきっちり現実を突きつけてやる為に連れて行くんだよ。」

 

「わかった!次会う時までにしっかりと決めるからね!」と、香織はハッキリと言う。

 

「あぁ。」

ハジメは頷く。

 

「でも光輝がいないと大幅に戦力が下がるわ。」

 

「その心配はない。」と、ハジメが雫に答えるようにドサっとハジメが錬成で作成した高性能の剣や盾、杖のアーティファクトが入っている。

 

「……これは?」

 

「一つ一つが強力なアーティファクトだ。これがあれば戦力は大幅に上がるだろうからそれで補え。」

 

「わかったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

――――色々ありつつ、遂に、一行は地上へとたどり着いた。

 

香織は、未だ、俯いて思い悩んでいる。

雫は、そんな香織を心配そうに寄り添いながら見つめていたのだった。




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45話『模擬戦』

感想、お気に入りありがとうございます!

お気に入り(136→139)


今回はステータス回でもあります。


 

 

 

 

 

 

赤銅色の世界、『グリューエン大砂漠』はハジメたちの次の目的地である。

 

刻一刻と表面の模様や砂丘の形を変えていく様は、砂丘全体が『生きている』と表現したくなる程である。

照りつける太陽と、その太陽からの熱を余さず溜め込む砂の大地が強烈な熱気を放っており、四十度は軽く超えているだろう。

舞う砂と合わせて、旅の道としては最悪の環境だ。

もっとも、それは『普通の』旅人の場合である。

 

そこを進むのは現在、そんな過酷な環境を、知ったことではないと突き進むあの潜水艇、なんと砂漠の砂を海の様にスイスイと進んでいる。

道なき道だが、それは潜水艇内に設置した方位磁石が解決してくれている。

 

「……すごいな。通常なら暑い上に砂で目が痛くなる筈なのに……」

と、光輝が呟いた。

「全くじゃ。この環境でどうこうなるわけではないが……流石に、積極的に進みたい場所ではないのぉ」とティオも賛成する。

 

現在、アンカジ公国に向かっている。

そんなハジメたちは現在全員のステータスをチェックしていた所である。

それは光輝とハジメたちが一緒に戦う上でお互いの動きを知れる為、必要なことだった。

 

============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:14500[+14500]

体力:17000[+17000]

耐性:14500[+14500]

敏捷:17000[+17000]

魔力:20000[+20000]

魔耐:19000[+19000]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

============================

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:400

天職:星の戦士

筋力:200000

体力:200000

耐性:40000

敏捷:200000

魔力:40000

魔耐:40000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム]・神代能力[+クリエイト][+グラビティ]

============================

 

============================

レムユエ 323歳 女 レベル:100+α

天職:神子

筋力:3000[+1500]

体力:5000[+5000]

耐性:2000[+2000]

敏捷:3000[+3000]

魔力:100000[+100000]

魔耐:90000[+90000]

技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法・無限属性魔法[+蒼天龍嵐(ドラゴストーム)

============================

 

============================

シア・ハウリア 16歳 女 レベル:100

天職:占術師

筋力:3500[+3500] [+身体強化最大14000]

体力:3500[+3500] [+身体強化最大14000]

耐性:3500[+3500] [+身体強化最大14000]

敏捷:4500[+4500] [+身体強化最大18000]

魔力:50000[+50000]

魔耐:50000[+50000]

未来視[+自動発動][+仮定未来][+天啓視]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅹ][+集中強化]・重力魔法

============================

 

============================

ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:100+α

天職:守護者

筋力:10000[+10000] [+竜化状態20000]

体力:25000[+25000]  [+竜化状態50000]

耐性:25000[+25000]  [+竜化状態50000]

敏捷:8000[+8000] [+竜化状態16000]

魔力:65000[+65000]

魔耐:65000[+65000]

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法

============================

 

============================

ルティ 17歳 男 レベル:100

天職:魔術師

筋力:50000[+50000]

体力:50000[+50000]

耐性:100000[+100000]

敏捷:50000[+50000]

魔力:100000[+100000]

魔耐:100000[+100000]

技能:言語理解・魔力操作・虚無魔法[+ウルトラソード][+ギガトンスノーハンマー][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+ キルニードルワープ][+ワープホールアタック][+リバースワールド][+ルティ砲][+ブラックホール][+アナザーディメンション]

============================

 

============================

天之河光輝 17歳 男

天職:勇者 レベル:100

天職:真の勇者 レベル:1

筋力:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

体力:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

耐性:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

敏捷:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

魔力:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

魔耐:1000[+1000] [+限界突破10000・真限界突破×2]

技能:全属性適正[+全属性効果上昇][+高速発動][+詠唱破棄]・全属性耐性[+全属性効果上昇]・物理耐性[+即回復][+衝撃無効]・複合魔法[+全属性複合]・剣術[+魔法剣術]・剛力[+豪力]・縮地[+疾縮]・先読[+仮定未来視]・高速魔力回復[+魔力即回復]・気配感知[+気配探知]・魔力感知[+魔力探知]・限界突破[+真限界突破]・言語理解[+自動翻訳]

============================

 

 

注目するのは新たに仲間に加わった光輝のステータスである。

何やら光輝が言うには自身の間違いに気づく前は派生技が殆ど無かったらしいがカービィに気付かされてからステータスを改めて確認したら大量の派生技と見慣れない天職があったとのこと。

 

……と言うことでハジメが急遽新規に潜水艇に対戦専用の部屋を作成して、光輝とシアで模擬戦して貰うことにした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「それじゃあ行きますよ!」

 

「あ、あぁ。」

 

「どりゃあですぅ!」

シアは身体強化を最大限に発揮させて光輝にドリュッケンで攻撃を仕掛ける。

 

「っ!俊縮。」

限界突破、真限界突破を瞬時に発動させた光輝は新たな技能俊縮によって縮地より早いスピードで、もはや瞬間移動したんじゃないかも言うレベルで移動して回避する。

 

「ちっ、だったらこれですぅ!」

ドリュッケンに搭載されているフレンズ能力を使って炎を纏ったドリュッケンを振り回す。

 

これでは光輝は俊縮で近くない。

そこで光輝は魔法剣術を使って光輝は剣に氷の魔法を纏って自身の必殺技とも言える技を放った。

 

「はぁぁっ!神威!」

氷を纏った神威は地面を凍らせながらシアに近づいていくが……。

 

「どりゃぁ!……ですぅ。」

 

「ぐっ!」

神威をドリュッケンで叩き潰してシアは突然思いついた様にドリュッケンを思いっきり地面に叩きつけると衝撃波が発生した。

 

が、光輝の技能、衝撃無効によって衝撃波の威力だけをくらうことになってしまった。

 

光輝はまぁまぁ怪我を負った。

シアはこれで勝ちかと思ったがしかし問題なかった。

 

派生技能即回復によって怪我はみるみる治っていく。

 

「ちょっ!?レムユエさん並みの再生力じゃないですかぁ〜」

 

……と、シアが愚痴をこぼした所でハジメは光輝の実力が大体分かったのか試合にストップをかけたのだった。




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46話『大砂漠でのトラブル』

感想、評価、お気に入り、ありがとうございます!

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それではどうぞ!


 

 

あれからしばらくスイスイと砂漠を数時間進んだその時、ティオが異変に気付いた。

「うん?なんじゃ、あれは?みんな、三時方向で何やら騒ぎじゃ」

 

ハジメたちが、言われるままにそちらを見ると、どうやら右手にある大きな砂丘の向こう側に、いわゆるサンドワームと呼ばれるミミズ型の魔物が相当数集まっているようだった。

砂丘の頂上から無数の頭が見えている。

 

このサンドワームは、平均二十メートル、大きいものでは百メートルにもなる大型の魔物だ。

 

幸い、サンドワーム自身も察知能力は低いので、偶然近くを通るなど不運に見舞われない限り、遠くから発見され狙われるということはない。

なので、砂丘の向こう側には運のなかった者がいるという事なのだが……

 

「?なんで、アイツ等あんなとこでグルグル回ってんだ?」

 

ただ、サンドワームが出現しているだけならティオも疑問顔をしてハジメたちに注視させる事はなかった。

ハジメの感知系スキルなら、サンドワームの奇襲にも気がつけるし、カービィのコピー能力なら対応しやすい。

だが異常だったのは、サンドワームに襲われている者がいるとして、何故かサンドワームがそれに襲いかからずに、様子を伺うようにして周囲を旋回しているからなのである。

 

「まるで、食うべきか食わざるべきか迷っているようじゃのう?」

「まぁ、そう見えるな。そんな事あんのか?」

「俺も南雲に同感だ。」

「ですね。」

「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが……」

「私の知識にもない」

「そうですぅね」

「じゃあどうして……」

 

 ティオはレムユエ以上に長生きな上、レムユエと異なり幽閉されていたわけでもないので知識は結構深い。

なので、魔物に関する情報などでは頼りになる。

その彼女が首をかしげるということは、何か異常事態が起きているのは間違いないと見た。

 

しかし、わざわざ自分達から関わる必要もないことなので、ハジメたちは、確認せず巻き込まれる前にさっさと距離を取ることにした。

 

光輝も「助けよう!」とは言わない。

無差別に救うようなことはなくなったようだ。

 

 と、そのとき、

 

「っ!?掴まれ!」

 

ハジメは、そう叫ぶと一気に潜水艇を加速させた。

直後、後部にかすりつつ、僅かに艦体を浮き上がらせながら砂色の巨体が後方より飛び出してきた。

大口を開けたそれはサンドワームである。

どうやら、不運なのはハジメ達も同じだったらしい。

 

カービィが潜水艇から飛び出して戦う。

「コピー能力ウィップ!」

カービィはカーボーイの様な帽子を被り、手には鞭を持っていた。

「クラッシュタイフーン!パラダイスタイフーン!」

カービィは鞭を前方に出してサンドワームを振り回して上に投げ飛ばし、そこからカービィは鞭を頭上で回転させて滅多打ちにした。

 

ハジメはそのまま潜水艇を走らせる。

と、その時だった。

 

「ハジメ!あれ!」

と、カービィは倒れている人を指差した。

「……白い人?」

 

カービィが指を差した先には、レムユエが呟いたように白い衣服に身を包んだ人が倒れ伏していた。

おそらく、先程のサンドワーム達は、あの人物を狙っていたのだろう。

しかし、なぜ食われなかったのかは、この距離からでは分からず謎だ。

 

「とりあえずあの人が生きているか見よう。」

 

「あぁ。」

と、カービィのいつものお人好しだと思ってハジメも賛成する。

 

そんなわけで、倒れている人の近くまでやって来た。

その人物は、ガラベーヤ(エジプト民族衣装)に酷似した衣装と、顔に巻きつけられるくらい大きなフードの付いた外套を羽織っていた。

顔はわからない。

うつ伏せに倒れている上に、フードが隠してしまっているからだ。

とりあえずカービィはフードを取った。

 

「……っ!」

するとあらわになった男の顔は、まだ若い二十歳半ばくらいの青年だった。

だが、カービィが顔を歪めたのは、そこではなく、その青年の状態だった。

苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。

服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。

しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかのように血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。

明らかに尋常な様子ではない。

ただの日射病や風邪というわけではなさそうだ。

 

「コピー能力ドクター!」

カービィは素ではわからないのでコピー能力ドクターを頼りに状態を調べることにし、次々と症状を紙に書いていった。

 

結果は……

____________________

状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可

症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血

原因:体内の水分の異常だと思われる

____________________

 

「たぶんだけど、何かよくない飲み物を摂取して、魔力暴走状態になっているみたいだね。それで外出せないから、強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてないだからこうなったみたいだね。……かがくけんきゅうしょ!」

カービィはかがくけんきゅうしょを使って即座に神水と同等以上の回復薬を作り、飲ませた。

 

そして……

 

青年が呻き声を上げ、そのまぶたがふるふると震えだした。

どうやらお目覚めのようである。

ゆっくりと目を開けて周囲を見わたす青年は、心配そうに自分を間近で見つめるカービィを見て「女神?そうか、ここはあの世か……」などとほざきだした。

 

そして、今度は違う理由で体を熱くし始めたので、いい加減、暑さと砂のウザさにうんざりしていたハジメは、イラッとした表情を隠しもせずに、カービィ(家族)に手を伸ばそうとしている青年の腹を踏みつけた。

 

「おふっ!?」

「ハジメ!?」

こうして青年を現実に引き戻したハジメは、青年に何があったのか事情を聞く。

 

ハジメの踏み付けで正気を取り戻した青年は、自分を取り囲むハジメ達と背後の見たこともない物体(潜水艇)に目を白黒させて混乱していたが、カービィから大雑把な説明を聞くと、ハジメ達が命の恩人であると理解し、頭を下げて礼を言うと共に事情を話し始めた。

 

その話を聞きながら、ハジメは、どこに行ってもトラブルが付き纏うことに、よもや神のいたずらじゃあないだろうな?と若干疑わしそうに赤銅色の空を仰ぎ見るのだった。

 

 

 




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47話『アンカジ公国での異変』

感想ありがとうございました!


 

 

 

 

 

 

青年は、意識は取り戻したもののハジメの一撃でまともに立つことも出来ない状態だった。

砂漠の気温も相まって相当な量の発汗をしており、脱水症状の危険もあったので潜水艇内に招き入れ水を飲ませてやる。

 

 青年は、潜水艇を船と馬車を合わせたようなものだと無理やり納得したものの、潜水艇内の快適さに違う意味で目眩を覚えていた。

しかし、自分が使命を果たせず道半ばで倒れたことを思い出し、こんなところでのんびりしている場合ではないと気を取り直す。

そして、自分を助けてくれたハジメ達と互いに自己紹介をした。

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」

 

「ボクはカービィだよ。よろしくね。」

 

アンカジはエリセンより運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶための要所で、その海産物の産出量は北大陸の八割を占めている。

つまり、北大陸における一分野の食料供給に置いて、ほぼ独占的な権限を持っているに等しいという事であはり。

つまり、単なる名目だけの貴族ではなくハイリヒ王国の中でも信頼の厚い屈指の大貴族である。

 

ビィズの方も、ハジメ達の冒険者ランクを聞き、目を剥いて驚愕をあらわにした。

そして、これは神の采配か!

我等のために女神を遣わして下さったのか!

といきなり天に祈り始めた。

この場合、女神とは当然カービィの事なのだが、当の本人はキョトンとしている。

シアやレムユエ、ティオからはビィズに「こいつ……ロリコンか。」と向けられるがお構いなしだったのでハジメが少し威圧しながら事情説明を促すと、ビィズは冷や汗を流しながら咳払いしつつ語りだした。

 

 ビィズ曰く、四日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。

初日だけで人口二十七万人のうち三千人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が二万人に上ったという。

直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

 

そうこうしているうちにも、次々と患者は増えていく。

にもかかわらず、医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。

進行を遅らせるための魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、なんの手立ても打てずに混乱する中で、遂に、処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めた。発症してから僅か二日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。

 

そんな中、一人の薬師が、ひょんなことから飲み水に〝液体鑑定〟をかけた。その結果、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかったのだ。

直ちに調査チームが組まれ、最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスが調べられたのだが、案の定、オアシスそのものが汚染されていた。

 

当然、アンカジのような砂漠のど真ん中にある国において、オアシスは生命線であるから、その警備、維持、管理は厳重に厳重を重ねてある。

普通に考えれば、アンカジの警備を抜いて、オアシスに毒素を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではないほどに、あらゆる対策が施されているのだ。

 

一体どこから、どうやって、誰が……首を捻る調査チームだったが、それより重要なのは、二日以上前からストックしてある分以外、使える水がなくなってしまったということだ。

そして、結局、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てがないということである。

 

ただ、全く方法がないというわけではない。一つ、患者達を救える方法が存在している。それは、『静因石』と呼ばれる鉱石を必要とする方法だ。この『静因石』は、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か『グリューエン大火山』で少量採取できる貴重な鉱石だ。

 

しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも一ヶ月以上はかかってしまう。また、アンカジの冒険者、特に『グリューエン大火山』の迷宮に入って『静因石』を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。

生半可な冒険者では、『グリューエン大火山』を包み込む砂嵐すら突破できないのだ。

それに、仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上、王国への救援要請は必要だった……と。

 

「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。だから、私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。その時、症状は出ていなかったが……感染していたのだろうな。おそらく、発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していたようだ。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに……情けない!」

 

「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

そう言って、ビィズは深く頭を下げた。車内にしばし静寂が降りる。窓に当たる風に煽られた砂の当たる音がやけに大きく響いた。領主代理が、そう簡単に頭を下げるべきでないことはビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いたような僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。

 

「わかった。ボクは手伝うよ!…ハジメは?」

全員の視線がハジメを向く。

カービィのお人好しはいつものだと皆納得している。

だから決断はハジメに任せるということなのだろうが、レムユエとティオたちもその眼差しの中に明らかに助けてあげて欲しいという意思が含まれていた。

 

もともと、『グリューエン大火山』には行く予定であった。

 

「ハジメ殿が『金』クラスなら、このまま大火山から『静因石』を採取してきてもらいたいのだが、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

「わざわざ王都まで行く必要はない。水の確保はどうにか出来るだろうからな。」

「どうにか出来る? それはどういうことだ?」

 

「カービィ、頼む。」

と、言ってハジメは大きな貯水タンクを用意した。

 

「任せて!コピー能力ウォーター、ふんすいホバー!」

 

 数十万人分の水を確保できるという言葉に、訝しむビィズ。

しかしカービィのコピー能力ウォーターによってしばらく経つと貯水タンクは満タンになった。

しかもこの貯水タンクはハジメ特製で中が常に冷たくなっている仕組みである。

 

 

「す、凄い!これならしばらくは大丈夫そうです。ありがとうございます!……それと、父上に事情説明した後に、貯水池も念のためお願いします。何か異常があるかもしれません!」

 

こうしてハジメたちはアンカジ公国へと向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

砂漠の国でありながら、まるで水の都と表現したくなる……アンカジ公国はそんなところだった。

 

 

「……ハジメ殿たちにも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は、時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせていただこう。一先ずは、父上のもとへ。あの宮殿だ」

 

 一行は、ビィズの言葉に頷き、原因のオアシスを背にして進みだした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「父上!」

「ビィズ! お前、どうしっ……いや、待て、それは何だ!?」

 

ビィズの顔パスで宮殿内に入ったハジメ達は、そのまま領主ランズィの執務室へと通された。

衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

 

そんなランズィは、一日前に救援要請を出しに王都へ向かったはずの息子が帰ってきたことに驚きをあらわにしつつ、その息子の有様を見て、ここに来るまでの間に宮殿内で働く者達が見せたのと全く同じ様に目を剥いた。

 

無理もない。

なにせ、現在ビィズは、宙に浮いている(カービィのコピー能力エスパーで)のだから。

 

どうやらビィズもカービィの薬では完全に回復できていなかったようで衰弱が再び始まり、自力で歩行するには少々心許ない有様だった。

カービィが肩を貸そうとしたところ、ビィズが顔を赤くして「ああ、女神様自ら私を…」等といって潤んだ瞳でカービィを見つめ始めたので、ハジメが、カービィに頼んでをコピー能力エスパー(青い帽子を被っている)で無理やり宙に浮かせると、そのまま運んで来たのである。

 

ちなみに、別にハジメが嫉妬したとかそういう事情はない。

家族にそんな(クソ神を崇めるような)視線を向けられて耐えられなかっただけである。

 

カービィにしがみつきながらという微妙に情けない姿でありながらも、事情説明を手早く済ませるビィズ。

話はトントン拍子に進み、執事らしき人が持ってきた静因石の粉末を服用して完治させたビィズにカービィが再び薬を飲ませると、全快とまでは行かずとも行動を起こすに支障がない程度には治ったようだ。

 

なお、治ったといっても、体内の水分に溶け込んだ毒素がなくなったわけではなく、単に、静因石により効果を発揮できなり更にその効力をカービィが強める薬を飲ませただけというだけである。

 

体内の水分に溶け込んでいる以上、時間と共に排出される可能性はあるので、今のところ様子見をするしかない。

 

「じゃあ、動くか。レムユエ、カービィ、行くぞ。他の皆はここで患者を頼む。!」

 

 ハジメは、貯水池を作るに協力したあと、そのままオアシスに向かい、一応、原因の調査をする。

分かれば解決してもいいし、分からなければそのまま『グリューエン大火山」に向かう。

そういうプランだ。

 

ハジメの号令に、全員が元気よく頷いたのだった。




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48話『オアシスに潜むモノ』

感想、お気に入りありがとうございました!

(142→145)


 現在、領主のランズィと護衛や付き人多数、そしてハジメ、カービィ、ルティ、レムユエ、ティオ、光輝はアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。

 

二百メートル四方どころかその三倍はありそうな平地が広がっている。

そこへカービィたちは更に水を入れる。

 

未だ、半信半疑のランズィは、この非常時に謀ったと分かれば即座に死刑にしてやると言わんばかりの眼光でハジメ達を睨んでいた。

しかもカービィの出せる水も限りがあると思っているからだ。

常識的に考えて不可能な話なので、ランズィの眼差しも仕方のないものであるが……。

 

もっとも、その疑いの眼差しは、レムユエが魔法を行使した瞬間驚愕一色に染まった。

 

「壊劫」

 

前方の農地に頭上に向けて真っ直ぐにつき出された右手の先に、黒く渦巻く球体が出現する。

その球体は、農地の上で形を変え、薄く四角く引き伸ばされていき、遂に二百メートル四方の薄い膜となった。

そして、一瞬の停滞のあと、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事もなかったかのように大地を押しつぶした。

地響きが鳴り響く。

そして一瞬にして、超重力を掛けられた農地は二百メートル四方、深さ五メートルの巨大な貯水所となった。

これで後は水を入れるだけである。

 

ハジメがチラリとランズィ達を見ると、お付の人々も含めて全員が、顎が外れないか心配になるほどカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。

衝撃が強すぎて声が出ていないようだが、全員が内心で「なにぃーー!?」と叫んでいるのは明白である。

 

神代魔法(重力魔法)を半分程の出力で放ったレムユエは、「ふぅ」と息を吐く。

魔力枯渇というほどではないが、一気に大量に消費したことに変わりはなく僅かだが倦怠感を感じたのだ。

レムユエはストックしてある魔力回復薬を取り出してもいいのだが、この後、『グリューエン大火山』に挑むことを考えれば、出来るだけ温存しておきたい。

 

よって……

フラリと背後に体を倒れさせるレムユエだったが、体を支えようともがく仕草は見せない。

そこでカービィ特製の『トマトジュース』である。

これはカービィがコピー能力コックでマキシムトマト数個を煮込んでジュースにした上で、コピー能力アイススパーク(冷蔵庫マークのついたエプロンをつけたカービィ)で冷やしたジュースである。

その効果は体力と魔力を即時に半分まで回復し、一時間程魔力と体力が10秒で十分の一回復し続けるアイテムである。

(ただし、欠点として冷えてないと回復量が半分になる為、砂漠やグリューエン火山内ではマジックバッグや宝物庫に入れる必要がある。)

一応これを一人100個程持っていて、カービィが光輝に渡した時、本人は結構驚いていた。

 

 

 

「……いただきます」

レムユエは『トマトジュース』にストローを刺して飲み始めた。

 

チュ〜、チュ~、ゴク……ゴク。

 

「いやいやいや、こんな時に何故貴重な飲み物を飲んだ!?」

 

領主のツッコミに「これは魔力回復剤だ」と言って肩を竦めたハジメとレムユエは、その仕草にイラっときているランズィ達を尻目に仕事に取り掛かった。

 

ハジメは、貯水池に降りると、土中の鉱物を『鉱物分離』で取り出し、水が吸収されないように貯水池の表面を金属コーティングしているのだ。そして、コーティングを終えて戻ってくると、今度はレムユエが腕を突き出し、即席の貯水池に水系魔法を行使した。

何気に今作ではレムユエが火属性と神代魔法以外を使うのは初であるのでシアは「あ、レムユエさんって火以外も使えたんですね。」と呟いたのはステータスプレートを気にしてなかった証拠である。

 

「虚波」

 

水系上級魔法の一つで、大波を作り出して相手にぶつける魔法だ。

普通の術師や現在の光輝レベルでは、大波と言っても、せいぜい十から二十メートル四方の津波が発生する程度だが、レムユエが行使すると桁が変わる。

横幅百五十メートル高さ百メートルの津波が虚空に発生し、一気に貯水池へと流れ込んだ。

きっとカービィのコピー能力ウォーターでやっていたら更に時間がかかっていただろう。

 

そしてこの貯水池に貯められる水の総量は約二十万トン。

途中、何度か魔力回復をし、魔力を補給して溜め込んだのだった。

 

程なくして、二百メートル四方の貯水池は、汚染されていない新鮮な水でなみなみと満たされた。

 

「……こんなことが……」

 

ランズィは、あり得べからざる事態に呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。言葉もないようだ。

 

「取り敢えず、これで当分は保つだろう。あとは、オアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればいいだろうな。」

 

「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが……ありがとう。心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」

 

ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、ハジメ達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。

 

ハジメ達は、そのままオアシスへと移動する。

 

オアシスは、相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいるようには見えなかった。

 

 しかし……

 

「……ん?」

「……ハジメ?」

 

ハジメと光輝が、眉をしかめてオアシスの一点を見る。

 

「どうしたの二人とも?」

 

「いや、何か、今、魔眼石に反応があったような……」

「俺も気配探知に反応があった」

 

「……ふむ、領主殿、調査チームってのはどの程度調べたのじゃ?」

 

「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十メートルが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない」

 

「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めているのですか?」

 

「いや。オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある……結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」

 

ランズィのいうアーティファクトとは『真意の裁断』といい、実は、このアンカジを守っている光のドームのことだ。

砂の侵入を阻み、空気や水分など必要なものは通す作用がある便利な障壁なのだが、何を通すかは設定者の側で決めることが出来る。

そして、単純な障壁機能だけでなく探知機能もあり、何を探知するかの設定も出来る。

その探知の設定は汎用性があり、闇系魔法が組み込まれているのか精神作用も探知可能なのだ。

 

つまり、『オアシスに対して悪意のあるもの』と設定すれば、『真意の裁断』が反応し、設定権者であるランズィに伝わるのである。

もちろん、実際の設定がどんな内容かは秘匿されており領主にしかわからない。

ちなみに、現在は調査などで人の出入りが多い上、既に汚染されてしまっていることもあり警備は最低限を残して解除されている。

 

「……へぇ。じゃあ、あれは何なんだろうな」

 

アンカジ公国自慢のオアシスを汚され、悔しそうに拳を握り締める姿は、なるほど、ビィズの父親というだけあってそっくりである。

そんなランズィを尻目に、ハジメは、口元を歪めて笑った。

 

ハジメと光輝には、魔力を発する〝何か〟がオアシスの中央付近の底に確かに見えている。

 

あるはずのないものがあると言われランズィ達が動揺する。

ハジメは、オアシスのすぐ近くまで来ると『宝物庫』から五百ミリリットルのペットボトルのような形の金属塊を取り出し直接魔力を注ぎ込んだ。そして、それを無造作にオアシスへと投げ込んだ。

 

スタスタとオアシスから離れ、家族の隣に並び立つハジメ。

皆が疑問顔を向けるが、ハジメは何も答えない。

そして、いい加減しびれを切らしたランズィがハジメに何をしたのか問い詰めようとした、その瞬間……!

 

ドゴォオオオ!!!

 

凄まじい爆発音と共にオアシスの中央で巨大な水柱が噴き上がった。

再び顎がカクンと落ちて目を剥くランズィ達。

 

「ちっ、意外にすばしっこい……いや、防御力が高いのか?……おい、光輝。見えてるんだろ?水の魔法で手伝え!」

 

「あぁ、水槍!」

光輝も魔力探知で的確に『何か』を捉えて水の槍を次々と投げていった。

 

 

ハジメは今度は十個くらい同じものを取り出しポイポイとオアシスに投げ込んでいく。

そして、やっぱり数秒ほどすると、オアシスのあちこちで大爆発と巨大な水柱が噴き上がった。

 

ハジメが投げ込んだのは、いわゆる魚雷である。

七大迷宮の一つ『メルジーネ海底遺跡』用に用意した物であり、海用の兵器と言えば魚雷だろうと完成品そこそこ作っておいたのである。

せっかくだし試してみようと実験がてら放り込んでみたのだ。

結果として、威力はそれなりで、追尾性と速度もあるが上手く巻かれているようだ。

 

「おいおいおい!ハジメ殿!光輝殿!一体何をやったんだ!あっ、あぁ!桟橋が吹き飛んだぞ!魚達の肉片がぁ!オアシスが赤く染まっていくぅ!」

 

「ちっ、まだ捕まらねぇか。こうなったらカービィ!コピー能力グラビティで水ごと浮かせてくれ!」

 

「うん!コピー能力グラビティ!グラビティサークル!」

コピー能力グラビティの『グラビティサークル』はライセン迷宮で使った青い魔法陣が出現するあの技に名前をつけたのだ。

 

そしてオアシスと同サイズの青い魔法陣を出して水を浮かべた。

 

「なんだ……これは……」

 

オアシスより現れたそれは、体長十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。

スライム……そう表現するのが一番わかりやすいだろう。

 

だが、サイズがおかしい。

通常、スライム型の魔物はせいぜい体長一メートルくらいなのだ。

また、周囲の水を操るような力もなかったはずだ。

少なくとも触手のように操ることは、自身の肉体以外では出来なかったはずである。

 

 

よって何度目かわからない驚きの声と共にランズィの呆然としたつぶやきが、やけに明瞭に響き渡ったのだった。




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49話『解決と失望の眼差し』

感想ありがとうございます。

それではどうぞ!


 

オアシスより現れたそれは、体長十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。

スライム……そう表現するのが一番わかりやすいだろう。

 

だが、サイズがおかしい。

通常、スライム型の魔物はせいぜい体長一メートルくらいで、周囲の水を操るような力もなかったはずだ。

少なくとも触手のように操ることは、自身の肉体以外では出来なかったはずである。

 

「なんだ……この魔物は一体何なんだ?バチェラム……なのか?」

呆然とランズィがそんな事を呟く。

バチェラムとは、この世界のスライム型の魔物のことだ。

 

「まぁ、何でもいいさ。こいつがオアシスが汚染された原因だろ?大方、毒素を出す固有魔法でも持っているんだろう」

 

「……確かに、そう考えるのが妥当か。……だがこんな化け物を倒せるのか?」

 

ハジメとランズィが会話している間も、まるで怒り心頭といった感じで触手攻撃をしてくるオアシスバチュラム。

レムユエとティオは炎で触手を溶かし、カービィは『属性ミックス』のファイアソードで『一とうりょうだん』する。

(帽子はコピー能力ソードと変わらない姿)

光輝も同じ様に魔法を聖剣に纏って攻撃する。

 

ハジメも、会話しながらドンナー・シュラークで迎撃しつつ、核と思しき赤い魔石を狙い撃つが、魔石はまるで意思を持っているかのように縦横無尽に体内を動き回り、中々狙いをつけさせない。

 

 その様子を見て、ランズィが、ハジメの持つアーティファクトやユエ達の魔法に、もう驚いていられるかと投げやり気味にスルーすることを決めて、冷静な態度でハジメに勝算を尋ねた。

 

「ん~……ああ、大丈夫だ。もう捉えた」

 

ランズィの質問に対してお座なりな返事をしながら、目を細めジッと動き回る魔石の軌跡を追っていたハジメは、おもむろにシュラークをホルスターにしまうと、ドンナーだけを持って両手で構えた。

持ち手の右腕を真っ直ぐ突き出し左肘を曲げて、足も前後に開いている。

ドンナーによる精密射撃体勢である。

 

ハジメの眼はまるで鷹のように鋭く細められ、魔石の動きを完全に捉えているようだ。

そして……

 

ドパンッ!!

 

乾いた破裂音と共に空を切り裂き駆け抜けた一条の閃光は、カクっと慣性を無視して進路を変えた魔石を、まるで磁石が引き合うように、あるいは魔石そのものが自ら当たりにいったかのように寸分違わず撃ち抜いた。

 

レールガンの衝撃と熱量によって魔石は一瞬で消滅し、同時にオアシスバチュラムを構成していた水も力を失ってただの水へと戻った。

そしてドザァー!と大量の水が降り注ぐ音を響かせながら、激しく波立つオアシスを見つめるランズィ達。

 

「……終わったのかね?」

「ああ、もう、オアシスに魔力反応はねぇよ。原因を排除した事がイコール浄化と言えるのかは分からないが」

 

ハジメの言葉に、自分達アンカジを存亡の危機に陥れた元凶が、あっさり撃退されたことに、まるで狐につままれたような気分になるランズィ達。

それでも、元凶が目の前で消滅したことは確かなので、慌ててランズィの部下の一人が水質の鑑定を行った。

 

「……どうだ?」

「……いえ、汚染されたままです」

 

ランズィの期待するような声音に、しかし部下は落胆した様子で首を振った。

オアシスから汲んだ水からも人々が感染していたことから予想していたことではあるが、オアシスバチュラムがいなくても一度汚染された水は残るという事実に、やはり皆落胆が隠せないようだった。

 

「まぁ、そう気を落とすでない。元凶がいなくなった以上、これ以上汚染が進むことはない。新鮮な水は地下水脈からいくらでも湧き出るのじゃから、上手く汚染水を排出してやれば、そう遠くないうちに元のオアシスを取り戻せよう」

 

ティオが慰めるようにランズィ達に言うと、彼等も、気を取り直し復興に向けて意欲を見せ始めた。

ランズィを中心に一丸となっている姿から、アンカジの住民は、みながこの国を愛しているのだということがよくわかる。

過酷な環境にある国だからこそ、愛国心も強いのだろう。

 

「……しかし、あのバチュラムらしき魔物は一体なんだったのか……新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

 

 気を取り直したランズィが首を傾げてオアシスを眺める。それに答えたのはハジメだった。

 

「おそらくだが……魔人族の仕業じゃないか?」

「!?魔人族だと?ハジメ殿、貴殿がそう言うからには思い当たる事があるのだな?」

 

ハジメの言葉に驚いた表情を見せたランズィは、しかし、すぐさま冷静さを取り戻し、ハジメに続きを促した。

水の確保と元凶の排除を成し遂げたハジメに、ランズィは敬意と信頼を寄せているようで、最初の、胡乱な眼差しはもはや一ナノたりともない。

 

ハジメは、オアシスバチュラムが、魔人族の神代魔法による新たな魔物だと推測していた。

それはオアシスバチュラムの特異性もそうだが、ウルの町で大量の魔物は愛子先生がいたからと言うこと(ハジメの予想)や、オルクスでの勇者一行を狙ったという事実があるからだ。

 

おそらく、魔人族の魔物の軍備は整いつつあるのだろう。

そして、いざ戦争となる前に、危険や不確定要素、北大陸の要所に対する調査と打撃を行っているのだ。

愛子という食料供給を一変させかねない存在と、聖教教会が魔人族の魔物に対抗するため異世界から喚んだ勇者を狙ったのがいい証拠だ。

 

もし魔人族でなければ別の狙いがあるかも知れないがその可能性は低い。

 

そして、アンカジは、エリセンから海産系食料供給の中継点であり、果物やその他食料の供給も多大であることから食料関係において間違いなく要所であると言える。

しかも、襲撃した場合、大砂漠のど真ん中という地理から、救援も呼びにくい。魔人族が狙うのもおかしな話ではないのだ。

 

その辺りのことを、ランズィに話すと、彼は低く唸り声を上げ苦い表情を見せた。

 

「魔物のことは聞き及んでいる。こちらでも独自に調査はしていたが……よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは……見通しが甘かったか」

「まぁ、仕方ないんじゃないか?王都でも、おそらく新種の魔物なんて情報は掴んでいないだろうし。なにせ、勇者一行が襲われたのも、つい最近だ。今頃、あちこちで大騒ぎだろうよ」

 

「いよいよ、本格的に動き出したということか……ハジメ殿……貴殿たちは冒険者と名乗っていたが……そのアーティファクトといい、強さといい、やはり光輝殿と同じ……」

 

ハジメが、何も答えず肩を竦めると、ランズィは何か事情があるのだろうとそれ以上の詮索を止めた。

どんな事情があろうとアンカジがハジメ達に救われたことに変わりはない。恩人に対しては、無用な詮索をするよりやるべき事がある。

 

「……ハジメ殿、カービィ殿、レムユエ殿、シア殿、ティオ殿、ルティ殿、光輝殿。アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う。この国は貴殿たちに救われた」

 

そう言うと、ランズィを含め彼等の部下達も深々と頭を下げた。

領主たる者が、そう簡単に頭を下げるべきではないのだが、ハジメたちが『神の使徒』の一人であるか否かに関わらず、きっと、ランズィは頭を下げただろう。

 

 そんな彼等に、ハジメはニッコリと満面の笑みを見せる。そして、

 

「ああ、たっぷり感謝してくれ。そして、決してこの巨大な恩を忘れないようにな」

 

思いっきり恩に着せた。

 

「「「「「「え」」」」」」

これにはカービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ、光輝も固まった。

いや、カービィに関してはハジメに少し失望したような目に変わっていた。

何故ならカービィは見返りなど一切求めていないからである。

今まででもせいぜい『貸し一つ』だった為「それくらいは」と思っていたのだ。

 

他のみんなもだいたい似たような気持ちはあるが見返りはあまり求めていないので言葉が出なかったのである。

 

 

 

それはもう、清々しいまでに言い切ったハジメはしばらく黙って………「冗談だ、気にしないでくれ。人として当然のことをしたまでだ」と言った。

 

この日、ハジメは家族の好感度をまぁまぁ落とした。

 

結局、答えとして、

「あ、あぁもちろんだ。末代まで覚えているとも……だが、アンカジには未だ苦しんでいる患者達が大勢いる……それも、頼めるかね?」

ハジメたちに感染者たちを救うため〝静因石〟の採取を改めて依頼した。

 

「もともと、俺たちは『グリューエン大火山』に用があって来たんだ。そっちも問題ない。ただ、どれくらい採取する必要があるんだ?」

 

あっさり引き受けたハジメにホッと胸を撫で下ろし、ランズィは、現在の患者数と必要な採取量を伝えた。

相当な量であったが、ハジメたちには『宝物庫』や『マジックバッグ』があるので問題ない。

こういうところでも、普通の冒険者では全ての患者を救うことは出来なかっただろうと、ランズィはハジメ達との出会いを神に感謝する。

 

 

 

 

 

こうしてハジメたちは、患者の為にさっさと『グリューエン大火山』へと向かうことにしたのだった。




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50話『計画始動』

ハジメたちが迷宮攻略する前に星の夢サイドです。
短めですがオリジナル展開です。

お気に入りありがとうございます!
お気に入り(145→148)


ハジメたちがオアシスを去った後、金髪に青い瞳の少女がその様子を見ていた。

 

「ふむ、なるほどです。データ量はまぁまぁと言った所ですね。では、実際に私の『ステータス』を解析してみましょう。ステータスオープン」

金髪に青い瞳の少女、星の夢は清水の記憶ごとデータとして清水から抜き取り、魔人族の女からもデータを取ってある。

そしてつい先程カービィたちにアンカジ討伐されたバチェラムも星の夢が仕組んだものである。

 

============================

星の夢 年齢ーー 性別ーー レベル:ーー

天職:ーー

筋力:1000000

体力:1000000000000

耐性:1000000000000

敏捷:1000

魔力:ーー

魔耐:1000000000000

技能:自動翻訳・学習[+技術模倣]・願望実行(銀河に願いを)古代文明(ハルカンドラ)技術・機械操作[+機械侵入(ハッキング)]・クローン作成[+エヒト][+清水幸利]

模倣技能:コピー能力ウィング(10%)・コピー能力クラッシュ(10%)・コピー能力ソード(20%)・コピー能力メタル(10%)・コピー能力レーザー(10%)・コピー能力ファイア(10%)

============================

 

「どうやら私の数値は上昇しない様になっている見たいですね。それに集めたデータではカービィが一度に使った能力につき10%の収集しかできませんでしたね。これはまだまだ集める必要がありますね。ですが私が直接出ればまた破壊される可能性があります。なので次の刺客を送ります。フリード・バグアー、出てきてください。」

 

すると魔人族の男が現れた。

この男、フリード・バグアーはあの魔人族の女の彼氏でもある。

「ハッ!お呼びでしょうかユメ様」

そして星の夢の目的、『この世界の機械化及び開拓並びに驚異となる星のカービィとその仲間の殲滅』と言うことを知らずして彼の復讐、『彼女を殺したハジメたちを殺す』と言うことの為に手を貸してくれている『お人好し』だとと思っている。

 

 

それは不思議なことではなかった。

星の夢は清水からデータを採取した後、魔人族のいる領土へ行き、カービィたちがミュウとのあれこれの間に魔人族の頼みや依頼、悩みを次々と解決していき、信頼関係を築いて多くの魔人族を味方につけた。

今や魔人族のトップクラスの権力者でもある。

そのため、星の夢は魔人族たちに『ユメ様』と言われているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが彼らは知らない。

星の夢の本当の目的を。

そして星の夢はカービィの能力の収集、解析をしながら『ネオハルトマンワークスカンパニー』計画を始動させたのだった。

 

 

 

 

 




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51話『グリューエン大火山』

感想、評価、お気に入りありがとうございました!

お気に入り(148→152)
評価(1×4、3×1、4×2、6×1、7×3、8×2、9×6、10×5)



 

 『グリューエン大火山』

 

それは、アンカジ公国より北方に進んだ先、約百キロメートルの位置に存在している。

見た目は、直径約五キロメートル、標高三千メートル程の巨石だ。

 

この『グリューエン大火山』は、七大迷宮の一つとして周知されているが、『オルクス大迷宮』のように、冒険者が頻繁に訪れるということはない。

それは、内部の危険性と厄介さ、そして『オルクス大迷宮』の魔物のように魔石回収のうまみが少ないから……というのもあるが、一番の理由は、まず入口にたどり着ける者が少ないからである。

 

 その原因が、

 

「……まるで天空城だな」

 

 そう、『グリューエン大火山』は、かの天空の城を包み込む巨大積乱雲のように、巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。

その規模は、『グリューエン大火山』をすっぽりと覆って完全に姿を隠すほどで、砂嵐の竜巻というより流動する壁と行ったほうがしっくりくる。

 

しかも、この砂嵐の中にはサンドワームや他の魔物も多数潜んでおり、視界すら確保が難しい中で容赦なく奇襲を仕掛けてくるというのだ。

並みの実力では、『グリューエン大火山』を包む砂嵐すら突破できないというのも頷ける話である。

 

「つくづく、徒歩でなくて良かったですぅ」

「今のボクはホバリングが使えないからこの潜水艇があって助かったよ。」

 

今ハジメたちは砂漠の世界を潜水艇で進んでいるのたわ。

 

砂嵐の内部は、まさしく赤銅一色に塗りつぶされた閉じた世界。

『ハルツィナ樹海』の霧のように、ほとんど先が見えない。

 

『グリューエン大火山』の入口は、頂上にあるとの事だったので、進める所まで潜水艇で坂道を上がっていく。

坂を登れる理由は潜水艇を更に改造して陸空海どんな地形でも進める乗り物にしてしまったからである。

 

 

やがて山頂に着いた。

 

ハジメ達は、その場所にたどり着くと、アーチ状の岩石の下に『グリューエン大火山』内部へと続く大きな階段を発見した。

ハジメは、階段の手前で立ち止まると肩越しに背後に控えるカービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ、光輝の顔を順番に見やり、自信に満ちた表情で一言、大迷宮挑戦の号令をかけた。

 

「やるぞ!」

「おー!」

「んっ!」

「はいです!」

「うむっ!」

「はい!」

「あぁ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『グリューエン大火山』の内部は、『オルクス大迷宮』や『ライセン大迷宮』以上に、とんでもない場所だった。

 

 

 

 

……難易度の話ではなく、内部の構造が。

 

まず、マグマが宙を流れている。

マグマが宙に浮いて、そのまま川のような流れを作っているのだ。

空中をうねりながら真っ赤に赤熱化したマグマが流れていく様は、まるで巨大な龍が飛び交っているようだ。

 

また、当然、通路や広間のいたるところにマグマが流れており、迷宮に挑む者は地面のマグマと、頭上のマグマの両方に注意する必要があった。

 

 しかも、

 

「うきゃ!」

「シアっ!コピー能力アイス!ごく・こちこちスプリンクラー!」

カービィがコピー能力アイスで何とか数秒だけマグマを凍らせてその隙にハジメが救出した。

「大丈夫か?」

「有難うございます、カービィさん、ハジメさん。いきなりマグマが噴き出してくるなんて……察知できませんでした」

 

と、シアが言うように、壁のいたるところから唐突にマグマが噴き出してくるのである。

本当に突然な上に、事前の兆候もないので察知が難しい。まさに天然のブービートラップだった。

 

そして、なにより厳しいのが、茹だるような暑さ――もとい熱さだ。

今はカービィがコピー能力アイスを発動したから何とかなったがコピー能力アイスだけでは戦力の幅が減ってしまうのだ。

 

 

そして天井付近を流れるマグマから滴り落ちてくる雫や噴き出すマグマをかわしつつ進んでいると、とある広間で、あちこち人為的に削られている場所を発見した。

ツルハシか何かで砕きでもしたのかボロボロと削れているのだが、その壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石が覗いている。

 

「お? 静因石……だよな?あれ」

「うむ、間違いないぞ、ハジメよ」

 

ハジメの確認するような言葉に、知識深いティオが同意する。

どうやら、砂嵐を突破して『グリューエン大火山』に入れる冒険者の発掘場所のようだ。

 

「……小さい」

「ここら辺は小さいのが多いね。」

……とレムユエとカービィの言うと通り、残されている静因石は、ほとんどが小指の先以下のものばかりだった。

ほとんど採られ尽くしたというのもあるのだろうが、サイズそのものも小さい。

やはり表層部分では、静因石回収の効率が悪すぎるようで、一気に、大量に手に入れるには深部に行く必要があるようだ。

 

ハジメは、一応、鉱物系探査で静因石の有無を調べ、簡単に採取できるものだけ、『宝物庫』に収納すると、レムユエ達を促して先を急いだ。

 

そしてカービィを氷としてみんなでひんやりしてカービィからコピー能力スパークの刑をくらわせてから回復させて、再びコピー能力アイスになると更に七階層ほど下に降りた。

記録に残っている冒険者達が降りた最高階層である。

そこから先に進んだ者で生きて戻った者はいない。

気を引き締めつつ、八階層へ続く階段を降りきった。

 

その瞬間、

 

ゴォオオオオ!!!

 

強烈な熱風に煽られたかと思うと、突如、ハジメ達の眼前に巨大な火炎が襲いかかった。

オレンジ色の壁が螺旋を描きながら突き進んでくる。

 

「ん、私がやる。絶禍」

 

そんな火炎に対し、発動されたのはレムユエの魔法。

ハジメ達の眼前に黒く渦巻く球体が出現する。

重力魔法だである。

ただし、それは対象を地面に押しつぶす為のものではなかった。

 

人など簡単に消し炭に出来そうな死の炎は、直径六十センチほどの黒く渦巻く球体に引き寄せられて余すことなく消えていく。

余波すら呑み込むそれは、正確には消滅しているのではない。

黒く渦巻く球体――重力魔法『絶禍』は、それ自体が重力を発生させるもので、あらゆるものを引き寄せ、内部に呑み込む盾なのだ。

 

カービィもこれを見てコピー能力グラビティの新たな技『グラビティウィンド』を思いついた。

 

そして火炎の砲撃が全てレムユエの超重力の渦に呑み込まれると、その射線上に襲撃者の正体が見えた。

 

それは、雄牛。

全身にマグマを纏わせ、立っている場所もマグマの中。

鋭い二本の曲線を描く角を生やしており、口から呼吸の度に炎を吐き出している。

 

さっそくカービィが牛を凍らせて、コピー能力コックで料理してハジメたちは食事をとった。

 

 

「「「「「「「ご馳走様でした。」」」」」」」

そしてカービィは再びコピー能力アイスを発動させて進むことになった。

 

その後、階層を下げる毎に魔物のバリエーションは増えていった。

マグマを翼から撒き散らすコウモリ型の魔物や壁を溶かして飛び出てくる赤熱化したウツボモドキ、炎の針を無数に飛ばしてくるハリネズミ型の魔物、マグマの中から顔だけ出し、マグマを纏った舌をムチのように振るうカメレオン型の魔物、頭上の重力を無視したマグマの川を泳ぐ、やはり赤熱化した蛇など……

 

生半可な魔法では纏うマグマか赤熱化した肉体で無効化してしまう上に、そこかしこに流れるマグマを隠れ蓑に奇襲を仕掛けてくる魔物は厄介なこと極まりなかった。

なにせ、魔物の方は、体当りするだけでも人相手なら致命傷を負わせることが出来る上に、周囲のマグマを利用した攻撃も多く、武器は無限大と言っていい状況。

更に、いざとなればマグマに逃げ込んでしまえば、それだけで安全を確保出来てしまうのだ。

 

ついにカービィはコピー能力アイスだけでは限界を迎え、奥の手『武具召喚』でプラチナソードを片手に持ちながらコピー能力アイスのままで戦い始めた。

 

例え、砂嵐を突破できるだけの力をもった冒険者でも、魔物が出る八階層以降に降りて戻れなかったというのも頷ける。

そして、なにより厄介なのは、刻一刻と増していく暑さである。

 

「はぁはぁ……暑いですぅ。カービィさん、新しい氷をください。」

「……シア、暑いと思うから暑い。流れているのは唯の水……ほら、涼しい、ふふ」

「むっ、カービィよ!レムユエが壊れかけておるのじゃ!目が虚ろになっておる!早く氷を!」

 

そう、途中から暑さが増していき、解決策としてカービィがコピー能力アイスの『アイスほおばり』で敵を凍らせて氷にして皆んなに与えているのだ。

 

暑さに強いティオとコピー能力で何とかしてるカービィ以外、ハジメや光輝、ルティですらダウン状態だ。

一応、更に冷房型アーティファクトで冷気を生み出しているのだが……焼け石に水状態。

急いでカービィはストックしていた魔物を凍らせて皆んなに配った。

 

「はぅあ~~、涼しいですぅ~、生き返りますぅ~」

「……ふみゅ~」

 

 女の子座りで崩れ落ちたレムユエとシアが、目を細めてふにゃりとする。タレムユエとタレシアの誕生だ。

 

ハジメは、内心そんな二人に萌えながら『宝物庫』からタオルを取り出すと全員に配った。

 

「二人とも、だれるのはいいけど、汗くらいは拭いておけよ。冷えすぎると動きが鈍るからな」

「……ん~」

「了解ですぅ~」

 

「皆んなは、まだ余裕そうじゃの?」

「カービィとティオほどじゃない。流石に、この暑さはヤバイ。もっといい冷房系のアーティファクトを揃えておくんだった……これはカービィ様々だな。」

「あぁ。正直俺は他の舐めてたが南雲の言う通りだったな。」と光輝も呟く。

「ふむ、ハジメたちでも参る程ということは……おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」

 

「コンセプト?」

 

「うむ。ハジメとカービィから色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ?神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。例えば、二人が話してくれた『オルクス大迷宮』は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。『ライセン大迷宮』は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。この『グリューエン大火山』は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」

 

 ティオの考察に、「なるほど」と頷くハジメたちだった。

 

 

 

迷宮攻略はまだまだ続く。




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52話『マホロアたちは異世界へ』

感想、評価、お気に入り、ありがとうございます。
本日はあんまり時間が作れなかったのでオリジナル展開の短めで勘弁して……


 

 

 

 

一方マホロアたちはついに異世界トータスへ到着した。

そして現在、着陸したのはライセン大渓谷にいた。

 

「ジャジャーン、ダョォ!」

とマホロアはレーダーのような物を掲げた。

「なんだそれは?」

と最近、別世界のカービィが増えてツッコミ要員と化したデデデ大王が聞く。

 

「コレはハルトマンワークスカンパニーのスージーの技術とハルカンドラのアイテムすら復元できるボクの技術を合わせて作ったアイテム。どんな者でも跡を追跡できる『追跡レーダー』ダョォ!」

「そんな便利なものがあるなら初めから使えばよかったじゃないか。」

チッチッチッとマホロアは指を振って

「このレーダーで追跡できる範囲はその星のみなのダョォ!それに、この星に来てから何か身体が変な感じがするヨォ。これはもしかしたら急がないとボクたちもカービィ、ソードみたいになっちゃうかもしれないヨォ!きっと何者かがボクたちをこの星に馴染む様にしてるのかもしれないヨォ。」

 

「「「「「っ!」」」」」

 

「それじゃあカービィの跡はこの『ライセン大迷宮』とやらに続いているカラいくヨォ!」

 

と、マホロアは張り切ってライセン大迷宮に入ったのだが………

 

シアと同じ様に回転扉…… もとい扉の仕掛けが作用してマホロアたちを扉の向こう側へと送る。

中は真っ暗である。

扉がグルリと回転し元の位置にピタリと止まる。と、その瞬間、

 

ヒュヒュヒュ!

 

 無数の風切り音が響いいたかと思うとそれは矢だ。

全く光を反射しない漆黒の矢が侵入者を排除せんと無数に飛んできている。

 

が、何ら問題ないのだが……

 

 

ミレディ製の看板がある以外。

 

 

〝ビビった?ねぇ、ビビっちゃた?チビってたりして、ニヤニヤ〟

 

〝それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ〟

 

「「「「「「(我慢、我慢。我慢だ。我慢。)」」」」」」

 

 

こうしてマホロア一行は次々と罠にかかっていくのだがそれは別の話。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

一方、ミレディ

 

 

 

「お、新しい挑戦者?これは看板を追加しゃおうかな☆……さてさて挑戦者の姿を見てみるかな………。…………魔物?それともカービィちゃんみたいに異世界から来た人たちかな?」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「へくちゅん。」

 

「ん?どうしたカービィ?アイスの乱用で風邪でもひいたか?」

 

「きっとボクの噂を誰かしてるんでしょ。」

 

「まぁカービィじゃからな。」

「カービィさんですぅからね。」

「ん。」

「そうですね。」

「あぁ。」

 

「え?なんなの?どう言うことー!?」

 

 

 

 

 




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53話『最終試練?』

お待たせしました!

それではどうぞ!


 『グリューエン大火山』恐らくたぶんきっと五十層、それくらい……。

 

それが、現在、ハジメ達のいる階層だ。

なぜ〝たぶん〟なのか。

それは、ハジメ達の置かれた状況が少々特異なので、はっきりと現在の階層がわからないからである。

 

具体的には、ハジメ達は宙を流れる大河の如きマグマの上を例の潜水艇に乗って流されているのだ。

 

ハジメ達はマグマの動きが強く阻害されている場所に『静因石』は大量にあるはずと推測し探した結果、確かに大量の『静因石』が埋まっている場所を多数発見したのである。

マグマの動きに注意しながら、相当な量の『静因石』を集めたハジメ達は、予備用にもう少しだけ集めておこうと、とある場所に向かった。

 

そこは、宙に流れるマグマが大きく壁を迂回するように流れている場所だった。

 

 そして、流されるままにマグマの上を漂っていると、いつの間にか宙を流れるマグマに乗って、階段とは異なるルートで『グリューエン大火山』の深部へと、時に灼熱の急流滑りを味わいながら流されていき、現在に至るというわけだ。

 

いざ、洞窟内に突入するハジメ達。

しばらく順調に高度を下げていたマグマの空中ロードだが、カーブを曲がった先でいきなり途切れていた。いや、正確には滝といっても過言ではないくらい急激に下っていたのだ。

 

「またか……全員振り落とされるなよ!」

 

 

「ちっ、やっぱり出たか」

 

 ハジメは舌打ちすると同時にドンナーを抜き、躊躇いなく引き金を引いた。周囲に轟く炸裂音。それが三度響くと共に三条の閃光が空を切り裂いて目標を違わず撃破する。ハジメ達に、襲いかかってきたのは翼からマグマを撒き散らすコウモリだった。

 

「こちこちスプリンクラー!」

 

「ありがとなカービィ。」

「うん!」

 

勢いよく数十メートルを登ると、その先に光が見えた。洞窟の出口だ。

 

「掴まれ!」

 

ハジメ達が飛び出した空間は、かつて見た『ライセン大迷宮』の最終試練の部屋よりも広大な空間だった。

 

 

「……あそこが住処?」

 

レムユエが、チラリとマグマドームのある中央の島に視線をやりながら呟く。

 

「階層の深さ的にも、そう考えるのが妥当だろうな……だが、そうなると……」

「最後のガーディアンがいるはず……じゃな?ハジメよ」

「ショートカットして来たっぽいですし、とっくに通り過ぎたと考えてはダメですか?」

 

 ハジメの考えをティオが確認し、僅かな異変も見逃さない鋭い視線を周囲に配る。

そんなハジメ達の様子に気を引き締めながらも、シアがとある方向を見ながら楽観論を呟いてみた。

 

ハジメたちが、シアの視線をたどると、大きな足場とその先に階段があるのが見えた。

壁の奥から続いている階段で、おそらく、正規のルートをたどれば、その階段から出てくることになるのだろう。

 

しかし、いくらマグマの空中ロードに乗って流れてくることが普通は有り得ないことだとしても、大迷宮の最終試練までショートカット出来たと考えるのは楽観が過ぎるというものだ。

シアも、そうだったらいいなぁ~と口にしつつも、その鋭い表情はまるで信じていない事を示している。

カービィはコピー能力アイスの限界をそろそろ感じていた。

 

そしてハジメ達の警戒が正しかった事は、直後、宙を流れるマグマから、マグマそのものが弾丸のごとく飛び出してくるという形で証明された。

 

「むっ、任せよ!」

 

ティオの掛け声と共に魔法が発動し、マグマの海から炎塊が飛び出して頭上より迫るマグマの塊が相殺された。

 

 

 

 

 

……-しかし、その攻撃は唯の始まりの合図に過ぎなかった。

ティオの放った炎塊がマグマと相殺され飛び散った直後、マグマの海や頭上のマグマの川からマシンガンのごとく炎塊が撃ち放たれたのだ。

 

「ちっ、頼めるかルティ、カービィ?」

 

「やってみるよ!」

「はい、やってみます。」

 

「スーパー能力スノーボウル、スノータックル!」

 

「ギガトンスノーハンマー!」

 

カービィが大きな雪玉になって流れるマグマの上を転がりながらどんどんマグマを冷やしていく。

そしてルティがさらに魔力で生成したハンマーでマグマを叩くとカービィによって冷まされたマグマは凍ってしまった。

 

そして何も起きない内にその場からハジメたちが離れようとしたその瞬間!

 

 

 

「ゴォアアアアア!!!」

「ッ!?」

 

 そんな腹の底まで響くような重厚な咆哮が響いたかと思うと、氷の地面を突き破り、宙を飛ぶハジメの直下から大口を開けた巨大な蛇が襲いかかってきた。

 

本来ならこの蛇は全身にマグマを纏わせているがルティとカービィによって纏っていたマグマは冷やされ頑丈な鎧となってしまっていた。

 

しかしここで言う頑丈は一般的に頑丈と言うことであった。

 

カービィはコピー能力アイスに戻ってプラチナソードを装備して『きり上げスラッシュ』を放った。

 

そして音を立てて凍った地面に落ちた。

 

だが、それだけではなかった。

カービィたちの目には、ドガァッと音を立てながら次々と出現する巨大な蛇の姿が映っていた。

 

「これはそろそろ終着点のようじゃの。通りたければ我らを倒していけと言わんばかりじゃ」

 

「でも、今さりげなくハジメさんが撃ったあの蛇、普通に再生してますよ?カービィさんとルティさんと……恐らく氷魔法が使えるレムユエさん以外倒せるんでしょうか?あっ、私もドリュッケンのフレンズ機能で凍らせられますね。」

 

遂に二十体以上の巨大な蛇がその鎌首をもたげ、ハジメ達を睥睨するに至った。

最初に、ハジメからさりげなく銃撃を受けた巨大な蛇も、既に再生を終え何事もなかったかのように元通りの姿を晒している。

 

シアが、眉をしかめてその点を指摘した。

ライセン大迷宮のときは、再生する騎士に動揺していたというのに、今は、冷静に攻略方法を考えているようだ。

それを示すようにウサミミがピコピコと忙しなく動き回っている。ハジメは、随分と逞しくなったものだと苦笑いしつつ、自分の推測を伝えた。

 

「おそらく、バチュラム系の魔物と同じで、身体を形成するための核、魔石があるんだろう。マグマが邪魔で俺の魔眼でも位置を特定出来ないが……それをぶち壊すしかない」

 

ハジメの言葉に全員が頷くのと、総数二十体の巨大な蛇が一斉に襲いかかるのは同時だった。

 

巨大な蛇達は、まるで、太陽フレアのように噴き上がると頭上より口から炎塊を飛ばしながら急迫する。

そして巨大な蛇たちが「「「「「ゴォアアアアア!!!」」」」」と吠えると鎧が砕け、足場の氷は砕け散り、マグマを再び纏うと二十体による全方位攻撃を始めた。

普通なら逃げ場もなく大質量のマグマに呑み込まれて終わりだろう。

だがティオがそうはさせなかった。

「久しぶりの一撃じゃ!存分に味わうが良い!」

 

そう言って揃えて前に突き出されたティオの両手の先には、膨大な量の黒色魔力。

それが瞬く間に集束・圧縮されていき、次の瞬間には、一気に解き放たれた。

 

それはかつて、カービィのドラゴストームでなんとか相殺した恐るべき威力を誇る。

 

その黒色の閃光は、ティオの正面から迫っていたマグマ蛇を跡形もなく消滅させ、更に横薙ぎに振るわれたことにより、あたかも巨大な黒色閃光のブレードのようにマグマ蛇達を消滅させていった。

 

一気に八体ものマグマ蛇が消滅し、それにより出来た包囲の穴から、ハジメ達は一気に飛び出した。

 

流石に、跡形もなく消し飛ばされれば、魔石がどこにあろうとも一緒に消滅しただろうと思われたが、そう簡単には行かないのが大迷宮クオリティー。

 

ハジメ達が数瞬前までいた場所に着弾した十二体のマグマ蛇は、足場を粉砕しながらマグマの海へと消えていったものの、再び出現する時には、きっちり新たなマグマの海と共に二十体に戻っていた。

 

「おいおい、魔石が吹き飛んだ瞬間は確認したぞ?倒すことがクリア条件じゃないのか?しかも凍ったマグマまで?」

 

ハジメが、訝しげに表情を歪める。

ハジメは、ティオのブレスがマグマ蛇に到達した瞬間から〝瞬光〟を発動し、跳ね上がった動体視力で確かにマグマ蛇の中に魔石がありブレスによって消滅した瞬間を確認したのである。

 

ハジメが迷宮攻略の方法に疑問を抱いていると、カービィが中央の島の方を指差した。

 

「ハジメ!あの岩壁が光ってるよ!」

 

「なに?」

 

言われた通り中央の島に視線をやると、確かに、岩壁の一部が拳大の光を放っていた。

オレンジ色の光は、先程までは気がつかなかったが、岩壁に埋め込まれている何らかの鉱石から放たれているようだ。

 

ハジメが『遠見』で確認すると、保護色になっていてわかりづらいが、どうやら、かなりの数の鉱石が規則正しく中央の島の岩壁に埋め込まれているようだとわかった。

中央の島は円柱形なので、鉱石が並ぶ間隔と島の外周から考えると、ざっと百個の鉱石が埋め込まれている事になる。

そして、現在、光を放っている鉱石は9個……先程、ティオが消滅させたマグマ蛇とその前に倒した巨大な蛇の合計と同数だ。

 

「なるほど……このマグマ蛇を百体倒すってのがクリア条件ってところか」

 

「……この暑さで、あれを百体相手にする。……たしかに迷宮のコンセプトにも合ってるのじゃ」

 

ただでさえ暑さと奇襲により疲弊しているであろう挑戦者を、最後の最後で一番長く深く集中しなければならない状況に追い込む。

大迷宮に相応しい嫌らしさと言えるだろう。

 

確かに、ハジメ達もまぁまぁ精神を疲労させている。

いや、カービィのコピー能力アイスおかげでまぁまぁで済んでいるのだが……。

 

しかし、その表情には疲労の色はなく、攻略方法を見つけさえすればどうとでもしてやるという不敵な笑みしか浮かんでいなかった。

 

そうして全員が、やるべき事を理解して気合を入れ直した直後、再び、マグマ蛇達が襲いかかった。

マグマの塊が豪雨のごとく降り注ぎ、大質量のマグマ蛇が不規則な動きを以て獲物を捉え焼き尽くさんと迫る。

 

ハジメ達は再び散開し、それぞれ反撃に出た。

 

ティオが竜の翼を背から生やし、そこから発生させた風でその身を浮かせながら、真空刃を伴った竜巻を砲撃の如くぶっ放す。

風系統の中級攻撃魔法『砲皇』だ。

 

「これ妾で9体目じゃ!今のところ妾が一歩リードじゃな。ご主人様よ!妾が一番多く倒したらご褒美のアイスとやらを頼むぞ!もちろん『タワーアイス』とやらの方じゃ!」

 

10体目のマグマ蛇を吹き飛ばし切り刻みながら、そんな事をのたまうティオ。

呆れた表情で拒否しようとしたハジメだったが、カービィとシアがそれを遮る。

 

「なっ!ティオさんだけずるいです!私も参戦しますよ!ハジメさん、私も勝ったらアイスを奢りですぅ!」

 

「えっ!?アイス!?ボクもアイス食べたーい!……よーし、頑張るぞ!コピー能力クリエイト!からのフレンズ能力!ブリザギガトンハンマーの完成!」

 

そんな事を叫びながら、シアは、跳躍した先にいるマグマ蛇の頭部にドリュッケンを上段から振り下ろした。

インパクトの瞬間、淡青色の魔力の波紋が広がり、フレンズ機能により次いで凄絶な氷の衝撃が発生。

頭部から下にあるマグマの海まで一気に爆砕した。

弾けとんだマグマ蛇の跡にキラキラした鉱物が舞っている。

『魔衝波』の衝撃により砕かれた魔石だ。

 

さらにカービィはコピー能力クリエイトによってフレンズ能力をギガトンハンマーに付与した『ブリザギガトンハンマー』を無数に生成し、次々ともはや息を吸うかのように撃破していく。

 

「おい、コラ。お前ら、なに勝手……」

 

「……ん、なら私はキンキンに冷えたアイスを……じゅるり」

 

「な、なら僕もアイスをお願いします!頑張りますから!」

 

「南雲、アイスを作れるってことだよな?多く撃破すればアイス貰えるんだよな?」

 

ハジメは、ティオとシア、カービィの勝手な競争にツッコミを入れようと口を開いたが、それを遮ってレムユエ、ルティ、光輝も討伐競争に参戦の意を示した。

 

「いや、おい勇者(光輝)。暑さで頭がやられたか?……って聞いてねぇ!こうなったらもうカービィが一位なのは確定で焼石に水だが俺も倒すか。」

 

レムユエは楽しみという雰囲気を醸し出しながら、しかし、魔法についてはどこまでも凶悪なものを繰り出した。

最近十八番の蒼天『龍嵐(ドラゴストーム)』である。

 

ただし、熟練度が上がっているのか、同時に出現した『龍』の数は3体。

それをほぼ同時に、それぞれ別の標的に向けて解き放った。

レムユエに喰らいつこうとしていたマグマ蛇達は、逆にマグマの塊などものともしない炎龍の嵐(ドラゴストーム)に次々と呑み込まれ、体内の魔石ごと砕かれていった。

 

ルティは相変わらず『ギガトンスノーハンマー』で凍殺していく。

 

光輝も氷を纏った神威を放ちまくる。

 

 

その光景を見て、「やっぱり、ユエさんが一番の強敵ですぅ!」とシアが、「ユエはバグっとるよ! 絶対、おかしいのじゃ!」とティオが、それぞれ焦りの表情を浮かべて悪態をつきつつ、より一層苛烈な攻撃を繰り出し、討伐数を伸ばしていった。

 

「……別に、いいけどな。楽しそうだし」

 

ハジメは、そんな自分作るアイスが景品になっている競争に闘志を燃やす六に肩を竦めると、若干、諦めた感を醸し出しながら、背後から襲いかかってきたマグマ蛇に、振り向くことなく肩越しにシュラークを連射する。

 

放たれた弾丸は、マグマ蛇の各箇所に均等に着弾し衝撃を以てそのマグマの肉体を吹き飛ばした。

同時に、衝撃で魔石が宙を舞う。

ハジメは、すっと半身になって前方から飛んできたマグマの塊をかわしながら、右のドンナーでマグマの海に落ちる寸前の魔石をピンポイントで撃ち抜いた。

 

気が付けば、中央の島の岩壁、その外周に規則正しく埋め込まれた鉱石は、そのほとんどを発光させており、残り一個というところまで来ていた。本格的な戦闘が始まってから、まだ一分も経っていない。

 

 

「「「「「「アイスを手に入れるのは」」」」」」

 

「俺だ!」「ん、私!」「僕です!」「ボクだよ!」「私ですぅ!」「妾じゃ!」

 

『グリューエン大火山』のコンセプトが、悪環境による集中力低下状態での長時間戦闘だというハジメ達の推測が当たっていたのだとしたら、ハジメ達に対しては、完全に創設者の思惑は外れてしまったと言えるだろう。

なんせ一分足らずで全滅させたのだから。

 

ちなみに全員最後の一匹は同時に倒したので一位はカービィである。

 

「やったー!ボクの勝ち!ハジメ、アイス頂戴ね!」

 

こうしてハジメたちは『グリューエン大火山』を攻略した

 

 

 

……と思われたその瞬間

 

ズドォオオオオオオオオ!!!!

 

 頭上より、極光が降り注いだ。

 

まるで天より放たれた神罰の如きそれは、カービィがかつて死の重傷を負った光。

いや、それより遥かに強力かも知れない。

大気すら悲鳴を上げるその一撃は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って放たれ――カービィを確実に仕留めた。

 

 

 

 

【カービィの残機残り95】

 

 




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54話『ミレディ・カービィ』

遅れました。
まだ完全には更新ペース戻ってませんが少しずつ戻していきます。




神代魔法の使い手

 

 

最後のマグマ蛇を倒し、ハジメたちは『グリューエン大火山』を攻略した

 

 

 

……と思われたその瞬間

 

ズドォオオオオオオオオ!!!!

 

 頭上より、極光が降り注いだ。

 

まるで天より放たれた神罰の如きそれは、カービィがかつて死の重傷を負った光。

いや、それより遥かに強力かも知れない。

大気すら悲鳴を上げるその一撃は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って放たれ――カービィを確実に仕留めた。

 

 

「「「「「「カービィ(さん)!」」」」」」

ハジメ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ、光輝はカービィがいた場所に駆けつけるがそこには人形……カービィの形をした灰が残っていた。

 

光輝は灰になったカービィに触れると灰は崩れてしまった。

 

「「「…………」」」

ハジメとレムユエ、シアはカービィの死が初めてではないのでショックはまだ小さく黙っているだけで済んでいるがティオとルティと光輝はカービィの残機のことを一切知らされていない。

 

「そんな……カービィさんが……」

「「…………」」

なんとかルティは重い口を開いたがティオと光輝は黙ったままだ。

それも光輝は目の前で大切な仲間が死ぬのは初めてである。

(ハジメとカービィが奈良に落ちた時は大切な仲間どころか無能としか見てなかったのでそこはノーカン)

 

「許さない!絶対に!」

「ウッサウサ……いえ、フルボッコにしてやるですぅ!!出て来いやゴラァ!」

レムユエとシアが怒りを露わにする。

 

かつて【オルクス大迷宮】で最後の試練であるヒュドラと戦ったときに、にもハジメの目の前でカービィは死んだ。

清水……記憶があった時のルティによってカービィは死んだ。

 

もう二度と見たくない、二度とハジメをこんな目に遭わせてなるものかとそう誓ったというのに、カービィが極光に呑み込まれる光景も重傷を負い力なく倒れ伏す光景も、まるであの時の再現だ。

ハジメとレムユエは、悔しさで顔を盛大に歪めた。

 

と、その時、

 

「っ!馬鹿者共!上じゃ!!」

 

ティオの警告と同時に無数の閃光が豪雨の如く降り注いだ。

それは、縮小版の極光だ。

先程の一撃に比べれば十分の一程度の威力と規模、されど一発一発が確実にその身を滅ぼす死の光だ。

 

落ち込んでいて上空から降り注ぐ数多の閃光に気が付いておらず、警告によって天を仰いだ時には魔法の発動がレムユエを以てして数秒間に合わない状況だった。

 

その数秒を、駆けつけたティオが稼ぐ。

 

2人が発動させたのは風系統の中級防御魔法〝嵐空〟。

圧縮された空気の壁が死の雨を受け止める。

直撃を受けた瞬間、大きくたわむ風の結界は、本来ならそのまま攻撃を跳ね返すことも出来るはずだったが、そのような余裕など微塵もなく、次々と着弾する小極光に早くも悲鳴を上げている。

防げた時間は、やはりほんの数秒だった。

 

むしろそれで十分。

レムユエどころか光輝まで詠唱は終わった。

 

「「〝聖絶〟!」」

 

レムユエと光輝の防御魔法が発動する。

レムユエは本来なら〝絶禍〟を展開したかったが、咄嗟に発動出来る上級レベルの防御魔法としては〝聖絶〟が適当だったのと同じ魔法を同時に発動すれば〝絶禍〟よりも強度があると思ったからである。

 

そして輝く光の障壁が出現し、半球状にハジメたちを覆う。

直後、ティオの展開していた〝嵐空〟が、遂に小極光の嵐に耐え切れず空気が破裂するような音と共に消滅し、同時に、その衰えぬ破壊の奔流が、その下に展開されていた光の障壁に殺到した。

 

ドドドドドドドドドドッ!!!

 

大瀑布の如き圧力がハジメ達を消滅させんと間断なく襲い掛かり、レムユエと光輝の〝聖絶〟を軋ませる。

レムユエはと光輝は想像以上の威力にこのままでは押し切られると判断し、展開中の〝聖絶〟を、全体を覆うバリア状から頭上のみを守るシールド状に変形させた。

守護する範囲が狭くなった分、頑丈さが増す。

 

周囲は、小極光の余波で荒れ狂い破壊し尽くされ、既にハジメたちのいる場所以外の足場は粉微塵にされてマグマの海へと沈んでいった。

 

十秒か、それとも一分か……永遠に続くかと思われた極光の嵐は最後に一際激しく降り注いだあと、ようやく終わりを見せた。

 

レムユエもティオも光輝も魔力を使いきり、肩で息をしながらストックしてあったカービィ製の魔力回復薬を取り出して充填した。

 

と、同時に、上空から感嘆半分呆れ半分の男の声が降ってきた。

 

「……看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だったな。お前達は危険過ぎる。特に、そのカービィとやらは…………ん?いない?まさかアレでやられt……「コピー能力ファイター、ライジンブレイク!」ぐわぁぁぁぁぁ!?」

 

ハジメ達は、その声がした天井付近に視線を向けると赤い鉢巻を巻いたカービィによって不意打ちからの大ダメージを与えた。

 

「「「カービィ!?」」」

 

「どうしたの?死んだ人を見るような目でボクを見て……ボクなら一回死んだけどちゃんも生きてるよ!」

 

そしてハジメとレムユエとシアが言葉を繋ぐ。

 

「まぁ何はともあれ……」

 

「大切な家族を殺したお前は……」

 

「絶対に……」

 

「「「許さない!」」」

 

奇跡弾(ミラクルバレット)!」

ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!…………

 

巨大(ギガトン)ドリュッケン!」

 

「蒼天龍嵐(ドラゴストーム)!」

 

ここに来てハジメはカービィのスーパー能力、ミラクルビームと同じ効果を持つ弾(追尾機能有り)を発射できる技能、シアはギガトンハンマーと同じようにハンマー(ドリュッケン)を巨大化させられるようになった。

 

そんなパワーアップを果たした二人はいつの間にか、おびただしい数の竜とそれらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜を一瞬で全滅した。

 

その白竜の背後にいた赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男は引いていた。

 

「まさか、私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは……それどころか一瞬で竜たちを全滅するとは……貴様等、一体何者だ?いや……ユメ様から聞いていたがここまでとはな、ピンクの悪魔とその一行!」

 

「質問する前に、まず名乗ったらどうだ?それにユメ様って誰だ?……そうか魔人族は礼儀ってもんを知らないのか?」

 

「………」

 

「だんまりか。なら殺s…「ボクに任せて!考えがあるよ!」

 

「頼む。」

そうハジメが言ったのをカービィが確認するとカービィは魔人族の男と目を合わせるとどこぞのウザいゴーレムの様に煽り始めた。

 

「コッホン!………うん?最近の若者は挨拶もできないのか?あっ、若者じゃなくてお爺ちゃんだったかな?ごめんねぇ〜。それに侮ってた相手が無傷で立っていて煽りに来るって、どんな気持ち?ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ちなの?ねぇ、ねぇ。」

 

「ん、カービィがミレディになった……!なんだか思い出してムカムカしてきた。」

「奇遇だな。俺もだ。」

 

当の本人はと言うとプルプルと震えて怒りを堪えているが「フゥー!」と、大きなため息をつくと冷静に喋った。

 

「………………これから死にゆく者に名乗りが必要とは思えんな」

 

しかしハジメがカービィの煽りを無駄にはしない。

「全く同感だな。テンプレだから聞いてみただけだ。俺も興味ないし気にするな。ところで、恋人の調子はどうだ?俺たちが殺したんだが……」

 

魔人族の男は、それに眉を一瞬ピクリと動かし、先程より幾分低くなった声音で答えた。

 

「気が変わった。貴様は、私の名を骨身に刻め。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なるユメ様の僕である」

 

 

 




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55話『フリード・バグアー戦』

星の夢の僕ことフリード・バグアー戦です。


短めとなっています。


 

「全く同感だな。テンプレだから聞いてみただけだ。俺も興味ないし気にするな。ところで、恋人の調子はどうだ?俺たちが殺したんだが……」

 

魔人族の男は、それに眉を一瞬ピクリと動かし、先程より幾分低くなった声音で答えた。

 

「気が変わった。貴様は、私の名を骨身に刻め。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なるユメ様の僕である」

 

「ユメ様の僕……ね。で、なんなんだそのユメ様とやらは神が何かなのか?全く大仰だな。力を手に入れて、そう名乗ることが許されたってところか?その力、さっきぶっ倒したような魔物を使役する魔法じゃねぇよな?……極光を放てるような魔物が、うじゃうじゃいて堪るかってんだ。おそらく、魔物を作る類の魔法じゃないか?強力無比な軍隊を作れるなら、そりゃあどれくらいユメ様とやらが偉いかしらねぇが名乗れるだろうよ」

 

「その通りだ。ユメ様……我らがホシノ・ユメ様は私に死んだ恋人の無念を晴らす為に力を与えてくださっただけでなく魔人族の頼みごとを解決してくれたり悩みを聞いてくれたりする優しいお人好しなお方だ。故にこれは貴様らの復讐とユメ様の望みであるカービィの抹殺に己の全てを賭ける!」

 

 

 

「星の夢!?前にボクが壊した筈なのに!?」

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

カービィの一言でこの場にいる全員が固まった。

 

フリード・バグアーから発せられた情報では星の夢は恐らく権利のある人物か人気のある人物であり、困っている人に手を貸すようなお人好しであり優しい方だと。

そんな人物を困っている人を放っておけないようなお人好しが壊したと言ったのだ。

固まったのも無理は無いだろう。

 

「壊した……だと?どう言うことだ!あのお方に何をした!」

フリード・バグアーはカービィの胸元を掴んでそう言った。

 

「何をしたって言われても、ボクはボクたちが住んでいた星や住人……あらゆるものが星の夢たちに機械化されちゃってご飯も食べられないから元に戻す為に星の夢と戦ってボクが星の夢を壊しただけだよ?もしかしたらまた星の夢が機械化をしようとするならボクは止めないといけない。」

 

「なんだと!?あのお方がそんなことする筈ないだろ!いい加減にしろ!」

 

 

ドパァン!

 

ハジメが覚えたての奇跡(ミラクル)(バレット)を使ってフリード・バグアーの右足を撃った。

 

「それは、俺のセリフだ。俺の前に立ちはだかったお前は敵だ。いつまでペチャクチャ喋ってるか知らんが大切な家族(カービィ)を殺したお前は絶対に殺す。奇跡(ミラクル)(バレット)!」

 

ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!…………

 

「ん、慈悲はない。蒼天龍嵐(ドラゴストーム)!シア、合わせて!」

 

「任せろですぅ!巨大(ギガトン)ドリュッケン!でやぁぁぁっ!」

 

フリード・バグアーに向かってハジメの追尾するミラクルビームが放たれ、直撃して動けなくなったところに蒼天龍嵐(ドラゴストーム)を纏った巨大(ギガトン)ドリュッケンで呆気なくフリード・バグアーは死んだのだった。

 

「……まずは神代魔法を手に入れるぞ。そして『静因石』を届けるという約束も守る。」

 

 

 

ハジメ達は、しばらく探索して見つけた漆黒の建造物へと近づいた。

 

 一見、扉などない唯の長方体に見えるが、壁の一部に毎度お馴染みの七大迷宮を示す文様が刻まれている場所があった。

ハジメ達が、その前に立つと、スっと音もなく壁がスライドし、中に入ることが出来た。

 

「ここは暑くないぞ!?一体どうなってるんだ……。」

と、光輝が言うが誰にもわからないので全員にスルーされる。

 

「ん……ハジメ、カービィ、あれ」

「魔法陣ですね」

「あれが……」

「ってことはここは攻略だね!」

 

レムユエの指先には、複雑にして精緻な魔法陣があった。

神代魔法の魔法陣である。

ハジメ達全員は互いに頷き合い、その中へ踏み込んだ。

 

『オルクス大迷宮』の時と同じように、記憶が勝手に溢れ出し迷宮攻略の軌跡が脳内を駆け巡る。

そして、マグマ蛇を全て討伐したところで攻略を認められたようで、脳内に直接、神代魔法が刻み込まれていった。

カービィは新たなコピー能力を覚えた。

 

「……これは、空間操作の魔法か」

「……瞬間移動のタネ」

「ああ、あのいきなり背後に現れたやつですね」

「僕も覚えてられましたよ!」

「俺もだ。それにしても記憶を刻み込まれたからか少し頭が痛いな。」

 

どうやら、『グリューエン大火山』における神代魔法は『空間魔法』らしい。

また、とんでもないものに干渉できる魔法だ。

相変わらず神代の魔法はぶっ飛んでいる。

 

レムユエが、フリードの奇襲について言及する。

最初の奇襲も、おそらく、空間魔法を使ってあの場に現れ攻撃したのだろう。

空間転移か空間を歪めて隠れていたのかは分からないが、厄介なことに変わりはない。

 

『人の未来が 自由な意思のもとにあらんことを 切に願う』

                   『ナイズ・グリューエン』

 

「……シンプルだな」

 

 そのメッセージを見て、ハジメが抱いた素直な感想だ。

周囲を見渡せば、『グリューエン大火山』の創設者の住処にしては、かなり殺風景な部屋だと気が付く。

オルクスの住処のような生活感がまるでない。

本当に、ただ魔法陣があるだけの場所だ。

 

「……身辺整理でもしたみたい」

「ナイズさんは、魔法以外、何も残さなかったみたいですね」

「そういえば、オスカーの手記に、ナイズってやつも出てたな。すごく寡黙なやつだったみたいだ」

 

レムユエは、拳サイズの開いた壁のところに行き、中に入っていたペンダントを取り出した。

今まで手に入れた証と少々趣が異なる意匠を凝らしたサークル状のペンダントだ。

これには心当たりが大有りである。

 

「ん、ハジメ!」

「それはメルジーネ海底遺跡へ入るのに必要な奴だろうな。ナイスだレムユエ。」

 

そこでふとシアがカービィに質問した。

「あっ、そう言えばカービィさんは今回どんな能力を覚えたんですぅか?」

 

「新しい能力?俺たちが手に入れた神代魔法とは違うのか?」

 

「僕も聞いてないですよ。」

 

「妾もじゃ」

 

「「「「あっ」」」」

 

この後ハジメ、カービィ、レムユエ、シアの4人は光輝、ルティ、ティオの3人にカービィは神代魔法は覚えないが新たなコピー能力を覚えると言うことを教えるのだった。




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56話『新コピー能力とマホロアたち』

コピー能力を考えるのに時間かかってしまいました。


それではどうぞ!


「……つまり、カービィは何故か神代魔法は一切使えないがそのかわり自身の固有能力『コピー能力』として新たに技を習得すると言う訳じゃな。」

 

……と言う様に、いち早く理解したティオがカービィの説明をわかりやすくルティと光輝に説明した。

 

そして全員カービィの新たな能力が気になってカービィに視線が集まる。

 

「じゃあ新しい能力を使うね。コピー能力コズミック!」

 

するとカービィの服が真っ白になり、頭には夜空を模した様な色の鉢巻き背中にはポップスターが描かれたカービィの肩から足元まであるマントが付いている。

 

「……今回のコピー能力はやけに豪華だな。……それで何が出来るんだ?」

 

「うん、じゃあ丁度いいから一回この部屋を出て試すよ。ついて来て。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……ここが丁度いいかな?」

 

「っておいおい、目の前はマグマしか無いぞ!?」

と、光輝はこんな所で何をするのだと言う。

 

「大丈夫。今からマグマを減らすだけだから。」

 

「「「「「「マグマを減らす!?」」」」」」

 

「うん!それとこの能力のおかげでコピー能力グラビティでできることも増えたよ!まずはコズミックの方から。フレアオーラ!」

するとカービィがオレンジ色のオーラに包まれる。

そしてマグマの中に飛び込んだ!

するとマグマがジュワ〜と音を出して蒸発していく。

 

「マグマが……」

 

「ん、蒸発した。」

 

「つまりマグマより熱いってことだよな。」

 

「うん、フレアオーラを使うとマグマより熱い太陽の温度を纏うよ。パンチとかキックをする時はそれよりも凄く熱くなるよ!」

 

「確かマグマの温度はだいたい700°〜1200°、太陽の温度は表面でだいたい6000°、内面はだいたい1500万°だった筈だ。……ったく、恐ろしいコピー能力だな。」

 

「まだコズミックの能力の一部だよ。ん〜、この能力だけで出来ることがあと3つくらいあるよ。」

 

「「「「「「え」」」」」」

 

「次はルナオーラ!」

すると今度は銀色のオーラを纏うカービィ。

 

「ルナ……月の能力か。」

 

「うん、これはここでやるとマグマが飛び散ったりして危ないしマグマでボクが焼かれちゃうからやらないけどあらゆる遠距離からの攻撃を反射出来るよ。…………いちいち驚いてても仕方ないからどんどん次行くね!次はプラネットスコール!」

するとカービィの周囲10メートルに小さな惑星を模した玉が次々と振り続けた。

 

「次は能力じゃないんだけどこのマントがあるとゆっくり落ちたり空中を歩くことができるよ。」

 

「もう驚きすぎて声が出ないな……」とハジメは呟く。

 

「じゃあ最後にコピー能力グラビティ!グラビティホール!」

 

すると目の前にブラックホールの様なものが出現した。

 

「じゃあここから出よっか?この穴に入ればこの迷宮前に出るようにしたよ!」

 

「待て待て待て!どう見てもそれブラックホールだろ!?」

とハジメは言いかけたが既に全員ブラックホール擬きの中を通り抜けて迷宮の入り口の前まで戻って来ていた。

 

「……ブラックホールじゃなかったのか。」

と、安心するハジメと光輝だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

一方マホロアたちは遂にミレディの部屋にたどり着いていた。

 

 

辺りに静寂が満ち、目の前には巨大ゴーレムが待ち構えていた。

 

どちらかが動いた瞬間、命をベットして殺し合いが始まる。

 

 

そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは……

 

 

 

 ……巨体ゴーレムの後ろからひょこっと出てきたミレディのふざけた挨拶だった。

 

 

 

「やっほ~、はじめまして~、みんなのアイドルミレディ・ライセンだよぉ~」

 

 

 

「「「「「「……は?」」」」」」

 

「………」

 

ここにいるメタナイト以外の全員……マホロア、デデデ大王、スージー、ドクター、ハンマー、ビームがキレている。

 

唯一冷静なのはメタナイトだけであった。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

「……それはすまない。私はメタナイト、隣からデデデ大王、マホロア、カービィ、カービィ、カービィだ。私たちはピンクのカービィの後を追ってここまで来たのだが場所を教えて貰えないだろうか?」

 

「えー。まさかの迷宮攻略者じゃなかったんですけどぉ〜。」

 

「迷宮とは何だ?」

 

「ん〜迷宮攻略者じゃなさそうだから君たちに最低限の情報だけ教えると君たちの言うピンクのカービィちゃんが各地にある迷宮を攻略して回っているってことくらいかな〜?あとは自分で調べてね☆」

 

「つまりここもカービィは攻略したってことか!俺も負けてられん!攻略してやる!」

とデデデ大王が闘争心を燃やす。

 

「ここの攻略条件はこのゴーレムを倒すことだよ!行けっ!」

と、ミレディに命令され戦闘を開始する。

 

デデデ大王はハンマーを構えゴーレムの拳に対抗する。

しかしデデデ大王は徐々に押されていく。

 

「……デデデ大王がパワーで押される程か!面白い!私も参戦させてもらおう!」

メタナイトは遠距離からゴーレムに向かってソードビームを放ち一瞬怯んだうちに一気に近づいてメタひゃくれつぎり、シャトルループ、ギャラクシアダークネスを連続で出した。

 

ゴーレムは大きく仰け反りはしたが大ダメージは受けていない。

 

「デデデ大王とメタナイトでも歯が立たないなんめマズいヨォ!?こうなったらボクも手伝うヨォ!スージー、アレを頼むヨォ!」

 

「わかったわ!」

 

スージーはマホロアに向かってマスタークラウンに酷似した王冠を投げた。

 

「このホロウ・クラウンを被れば……!」

マホロアはホロウ・クラウンを被るとマホロアはかつてマスタークラウンをマホロアが被った姿と同じ姿になった。

 

「デデデ大王、メタナイト、ボクも加勢するヨォ!」

 

「マホロア…!」

「その姿は…!」

 

「とにかく話はあとダョォ!」

かつて、マホロアと戦った姿になっていたことにメタナイトとデデデ大王は「何を企んでいる!」と思ったが話は後と言うことから理性は失ってなく、目的を持って戦えることに安心して二人は目の前のゴーレムの攻撃をかわした。

 

「デデデ大王、メタナイト、ボクが隙を作るから頼むヨォ!」

 

マホロアはブラックホールでゴーレムを寄せ付けた。

 

「手を貸せデデデ大王!」

「ふん!言われなくともやるつもりだ!」

 

「マッハトルネード!」「ジャイアントスイング!」

 

メタナイトが地面に剣を突き刺し竜巻をデデデ大王を中心に発生させるとデデデ大王がジャイアントスイングをすることで竜巻を纏いながらゴーレムに向かって行く!

 

「ボクたちも行こう!」

 

「「うん!」」

カービィハンターズの三人は満天の星の様な輝きを放つプププ王国(キングダム)史上最強の装備、スターライト装備を身につけた!

 

「ごく・だいしゃりん!はぁぁぁっ!おにごろし火炎ハンマー!!」

ハンマーはごく・だいしゃりんでゴーレムまで近づいてスターライト装備による貯めの速さですぐにおにごろし火炎ハンマーを撃って大ダメージを与える!

 

 

「かがくけんきゅうしょ!デデデ大王さん、メタナイト、マホロア!これを飲んで!今だビーム!」

ドクターはデデデ大王とメタナイトとマホロアに回復薬を渡しビームに指示を出す!

 

「タイムビーム!……タイムビーム!はぁぁぁっ!タイムビーーム!」

ビームによる渾身のタイムビームによってカービィハンターズ以外の時が止まったかの様に動きが止まった!

 

「サイクルビーム!ビームマシンガン!ビームマシンガン!」

 

「ジャイアントスイング!ごく・だいしゃりん!……はぁぁぁっ!おにごろし火炎ハンマー!!」

 

「っ!ビーム、ハンマー!時間が動き出すよ!一旦離れて!」

 

「うん!」

 

そして時間は動き出し、そのままマホロアのウルトラソードとデデデ大王のおにごろし火炎ハンマー、メタナイトのギャラクシアダークネスが決まった!

 

するとゴーレムは粉々に砕け散った。

 

そしてゴーレムに勝利したカービィ三人はダンスを踊り出した。

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』

 

「おめでと〜!じゃあついて来てね☆」

 

と、さすがに二度目のダンスには突っ込まないでさっさと神代魔法を授けることにした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

魔法陣の中に入るマホロアたち。

その時、不思議なことが起こった。

突如マホロアたち全員が輝き出す。

とりあえず逃げようとするミレディだが時すでに遅し、ミレディも巻き添えで光に包まれた。

 

 

 

 

 

そして目を開けると……

 

マホロアはフード付きのローブを被った少女(?)に、デデデ大王は着ていた物はそのままの少年に、メタナイトは肩にMのマークが付いた鎧に、背中には相変わらずのマントが付いてきて、いつも通りの仮面を付けた(見た目は中性的な)少年(?)に、スージーはヘアピンを付けたピンクの髪の少女に、カービィ三人はソードより背も少し背が高く、大人びている、ドクターは水色、ハンマーは黄色、ビームは緑色の少女(?)になっていた。

 

 

 

してミレディは………

 

 

ミレディは人間の姿に戻っていた。

 

 

 

「えーーーー!?」

と、一人声を上げるミレディだった。

 

 

 

 

 




お待たせしました。

次話はマホロアたちの方から始まります。





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57話『マホロアたちの擬人化とステータス確認』

お気に入り、評価ありがとうございます!

更新お待たせしました。
活動報告でちょっとした言い訳をさせてもらいました。
それとデデデ大王とメタナイトの擬人化の容姿を変更しましたので前話も修正をしました。


短めです、遅れたのにごめんなさい!



遂にライセン大迷宮を攻略し、魔法陣の中に入るマホロアたち。

その時、不思議なことが起こった。

突如マホロアたち全員が輝き出す。

とりあえず逃げようとするミレディだが時すでに遅し、ミレディも巻き添えで光に包まれた。

 

 

 

 

 

そして目を開けると……

 

マホロアはフード付きのローブを被った少女(?)に、デデデ大王は着ていた物はそのままの少年に、メタナイトは肩にMのマークが付いた鎧に、背中には相変わらずのマントが付いてきて、いつも通りの仮面を付けた(見た目は中性的な)少年(?)に、スージーはヘアピンを付けたピンクの髪の少女に、カービィ三人はソードより背も少し背が高く、大人びている、ドクターは水色、ハンマーは黄色、ビームは緑色の少女(?)になっていた。

 

 

 

そしてミレディは………

 

 

ミレディは人間の姿に戻っていた。

 

 

 

「えーーーー!?」

と、一人声を上げるミレディだった。

 

 

 

 

 

と、一人声を上げるミレディ。

 

「何でみんなこんなに冷静なの!?いや、嬉しいけどさ。いきなりだとミレディちゃん困っちゃうよ?」

 

「落ち着けミレディ。オレたちはある程度カービィの様になることは予想していた。……まぁオレはこの姿は不本意だ。……この体じゃあまり飯を食えそうにないからな!」

 

「だ、大王様……。」

と、姿が変わってもいつもどおりのデデデ大王に安心したオレンジ色の髪の幼女……になったワドルディだった。

 

 

「混乱してるところすまないがミレディ嬢はこれからどうするんだ?」

 

「うーん……私は久々に人間に戻ったからこの迷宮はゴーレムに任せて外を見ようかな~?」

 

 

「だ、だったらボク達と一緒に来てくれませんか!お願いします!」

 

「ワドルディ!オレは……オレたちはこいつ迷宮で数々のトラップに嵌められたんだぞ!」

 

 

「落ち着けデデデ大王。ここは君の国ではない。それに彼女が居ればこの世界についての情報は多く得られる筈だ。」

 

 

「…………分かった。俺からも頼む!」

 

 

「しょーがないな~特別だよ☆このミレディちゃんが付いて行ってあげよう!あっ、特別にみんなにはステータスプレートをプレゼントしてあげよう。」

 

「「「「「ステータスプレート?」」」」」

 

「ステータスならボクたちの世界にもあったよ。広場でステータスを確認することができたよ。つまり、ステータスプレートはそれ……自身の強さを任意で確認できる物だと思う。」

 

「うん、その通りだよ☆ドクターちゃん解説ありがとね。じゃあ血を一滴だけたら使えるようになるよ。」

 

と、ミレディが使い方を教えたところでミレディ以外の全員のステータスを確認した。

 

==============================

マホロア 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:魔術師

筋力:100 [+ホロウ・クラウン10000]

体力:100

耐性:100 [+ホロウ・クラウン10000]

敏捷:1000 [+ホロウクラウン10000]

魔力:1000 [+ホロウ・クラウン♾]

魔耐:100 [+ホロウ・クラウン10000]

技能:言語理解・詐術・機械操作・『ホロウ・クラウン(潜在能力発揮)』[+スーパー能力][+能力同時使用][+ブラックホール][+時空切断][+時空操作][+結界]

==============================

 

==============================

デデデ 年齢不明 男 レベル:1

天職:支配者

筋力:1000 [+マスクドデデデ10000] [×マッチョオブデデデ10]

体力:1000

耐性:100 [+マスクドデデデ10000] [×マッチョオブデデデ10]

敏捷:1000 [+マスクドデデデ10000]

魔力:100

魔耐:100 [+マスクドデデデ10000] [×マッチョオブデデデ10]

技能:言語理解・槌術[+火炎槌][+友情槌]・マスクドデデデ[+斧術][+ミサイルハンマー][+がんばりすいこみ]・マッチョオブデデデ[+筋肉強化]・威圧

==============================

 

==============================

ワドルディ 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:なし

筋力:100

体力:10

耐性:10 [+タフネス化♾]

敏捷:10

魔力:10000

魔耐:10 [+タフネス化♾]

技能:言語理解・同族の絆(同族の能力使用可能)[+槍術][+傘術][+集団戦法][+タフネス化]

==============================

 

==============================

メタナイト 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:星の戦士

筋力:10000

体力:100

耐性:100

敏捷:10000

魔力:1000

魔耐:100

技能:言語理解・剣術・分身Ⅳ

==============================

 

==============================

スージー 年齢不明 女 レベル:1

天職:秘書

筋力:50 [+リレインバー10000]

体力:1000

耐性:50 [+リレインバー100000]

敏捷:50 [+リレインバー10000]

魔力:1000

魔耐:50 [+リレインバー100000]

技能:言語理解・機械生成・機械操作[+リレインバー]・銃術[+機械化]

==============================

 

==============================

カービィ(ドクター) 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:ハンター

筋力:580

体力:750

耐性:100

敏捷:100

魔力:775

魔耐:100

技能:言語理解・薬物生成[+薬物実験][+薬物戦闘]・医療技術[+医療戦闘]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ]

==============================

 

==============================

カービィ(ハンマー) 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:ハンター

筋力:950

体力:845

耐性:100

敏捷:50

魔力:355

魔耐:100

技能:言語理解・槌術[+火炎槌]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ]

==============================

 

==============================

カービィ(ビーム) 年齢不明 性別不明 レベル:1

天職:ハンター

筋力:530

体力:640

耐性:100

敏捷:100

魔力:540

魔耐:100

技能:言語理解・雷魔法・時間魔法[+タイムビーム]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ]

==============================

 

 

「みんなレベル1の強さじゃないでしょーー!?」

と、道理でレベル1なのに負けたのかと思いつつまたもやミレディは声を上げるのだった。




カービィハンターズ のステータスはスーパーカービィハンターズのレベル100を参考にさせていただきましたが間違ってたらすいません。
デデデ大王やマホロアもリメイク前に比べてかなり調整してあります。

わからない方に説明
ワドルディのタフネス化は銀色の倒せないワドルディになることです。

それとカービィハンターズのふっかつのじゅもんですが、一回使う毎に次の日になるまで詠唱時間増加と体力回復量が減少することにします。

ステータスで言うとこうすることにします。


一回目→即時+満タン
二回目→1分+1/2回復



n回目→(nー1)分+1/n回復


遅れてすいませんでした!
よろしければ、『ここすき』や『評価』、『感想』、『ブックマーク』などなどお願いします!

作者もモチベーションが上がって更新しなきゃ!となります!


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58話『メルジーネ遺跡再び』

感想ありがとうございます!
頑張りますよー!

あと、今更ですが随分前の話でミュウが途中からハジメをパパと呼んでしまっていたのでお兄ちゃんに直し、それに相応しいセリフに直してみたので気が向いたら読み直してみてください。


あのあと、ミレディからカービィ(ソード)たちがメルジーネ遺跡に向かっていることを聞き出した一行はミレディを案内役にしながらローアに乗って海上の町、エリセンに向かっていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

一方ハジメたちは、カービィのコピー能力コズミックによって一瞬で潜水艇ごと水中にあるメルジーネ遺跡の前までワープしてさっそく攻略を始めようとしていた。

 

ハジメは懐から『グリューエン大火山』攻略の証であるペンダントを取り出した。

サークル内に女性がランタンを掲げている姿がデザインされており、ランタンの部分だけがくり抜かれていて、穴あきになっている。

 

ペンダントつまりペンダントを掲げろと言うことなのか?と内心首を捻りながら、ハジメは、取り敢えずペンダントを月にかざしてみた。

ちょうどランタンの部分から月が顔を覗かせている。

 

しばらく眺めていたが、特に変化はない。

他の迷宮でも行くか?ハジメは溜息を吐いた。

 

 と、その時、ペンダントに変化が現れた。

 

「わぁ、ランタンに光が溜まっていきますぅ。綺麗ですねぇ」

「ん、私も同感。」

 

「……そういえば俺はこの世界に来てまともに月なんて見てなかった。……俺は月を見る余裕が無い程周りが見えてなかったのか……。」

 

 シアが感嘆の声を上げ、ふと光輝は呟いた。

 

彼女達の言葉通り、ペンダントのランタンは、少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜め始めていた。

それに伴って、穴あき部分が光で塞がっていく。レムユエとティオも、興味深げに、ハジメがかざすペンダントを見つめた。

 

やがて、ランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、その直後、ランタンから一直線に光を放ち、海面のとある場所を指し示した。

 

「……なかなか粋な演出。ミレディとは大違い」

「ボクもちょっとそう思った。」

「全くだ。すんごいファンタジーっぽくて、俺、ちょっと感動してるわ」

 

〝月の光に導かれて〟という何ともロマン溢れる道標に、ハジメだけでなく皆も「おぉ~」と感嘆の声を上げた。

特に、ミレディの『ライセン大迷宮』の入口を知っているカービィやシア、ハジメやレムユエは感動が深いものだろう。

 

ペンダントのランタンが何時まで光を放出しているのか分からなかったので、ハジメたちは、早速、導きに従って潜水艇を航行させた。

 

夜の海は暗い。

というよりも黒いと表現したほうがしっくりくるだろうか。

海上は月明かりでまだ明るかったが、導きに従って潜行すれば、あっという間に闇の中だ。

 

「とりあえず明るくしとくね。」

 

「「「「「「へ?」」」」」

 

カービィは突然何を言い出すかと思えばこの暗い海中を明るくすると言うのだ。

いくらカービィでもこの広く深い海の中を明るくすると言われれば無茶があると一同は思っが……

 

「コピー能力ライト!」

 

それだけで一同は察した。

そう言う能力があるのだと。

 

カービィの服装は珍しく全く変わっていない。

手に丸い何かを持っているだけだった。

 

そしてカービィがその丸い何かを掲げると丸い何かは消えて水中が地上のように明るくなったのだ!

 

地上では夜中にいきなり海が明るくなって騒ぎになっていることだろう。

 

そのして潜水艇が近寄りペンダントの光が海底の岩石の一点に当たると、『ゴゴゴゴッ!』と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。

 

その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。

岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。

 

「う~む、海底遺跡と聞いた時から思っておったのだが、この『潜水艇』とやらがなければ、まず、平凡な輩では、迷宮に入ることも出来なさそうじゃな」

 

「でも、ここにくるのに『グリューエン大火山』攻略が必須ですから、大迷宮を攻略している時点で普通じゃないですよね」

 

道なりに深く潜行しながら、ハジメ達は潜水艇がない場合の攻略方法について一瞬考えた。

しかしグリューエン大火山を攻略している時点で普通じゃないと思い考えるのをやめた。

 

ハジメ達は、気を引き締め直し、フロント水晶越しに見える海底の様子に更に注意を払った。

 

 と、その時、

 

ゴォウン!!

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

突如、横殴りの衝撃が船体を襲い、一気に一定方向へ流され始めた。

船体がぐるんぐるんと回るがそれは想定内であり既に対策済みだ。

組み込んだ船底の重力石が一気に重みを増し船体を安定させ、カービィがコピー能力グラビティで更に安定させた。

 

 

「さて、この激流がどこに続いているかだな……」

 

ハジメは、フロント水晶から外の様子を観察する。

カービィのコピー能力ライトのおかげでやはり明るい。

見た感じ、どうやら巨大な円形状の洞窟内を流れる奔流に捕まっているようだ。

 

船体を制御しながら、取り敢えず流されるまま進むハジメ達。

しばらくそうしていると、船尾に組み込まれている『遠透石』が赤黒く光る無数の物体を捉えた。

 

「なんか近づいてきてるな……まぁ、赤黒い魔力を纏っている時点で魔物だろうが」

「……殺る?」

 

ハジメがそう呟くと、隣の座席に座るレムユエが手に魔力に集めながら可愛い顔でギャングのような事をさらりと口にする。

 

「いや、武装を使おう。有効打になるか確認しておきたいし」

 

とりあえずレムユエの攻撃でも過剰戦力なので潜水艇の後部にあるギミックを作動させる。

すると、アンカジのオアシスを真っ赤に染めたペットボトルくらいの大きさの魚雷が無数に発射された。

ご丁寧に悪戯っぽい笑みを浮かべるサメの絵がペイントされている。

 

激流の中なので、推進力と流れがある程度拮抗し、結果、機雷のようにばら撒かれる状態となった。

 

潜水艇が先に進み、やがて、赤黒い魔力を纏って追いかけてくる魔物――トビウオのような姿をした無数の魚型の魔物達が、魚雷群に突っ込んだ。

 

ドォゴォオオオオ!!!

 

背後で盛大な爆発が連続して発生し、大量の気泡がトビウオモドキの群れを包み込む。

そして、衝撃で体を引きちぎられバラバラにされたトビウオモドキの残骸が、赤い血肉と共に泡の中から飛び出し、文字通り海の藻屑となって激流に流されていった。

 

「うん、前より威力が上がっているな。改良は成功だ」

「うわぁ~、ハジメさん。今、窓の外を死んだ魚のような目をした物が流れて行きましたよ」

「シアよ、それは紛う事無き死んだ魚じゃ」

「じゅるり」

「カービィさん、死んだ魚は食べない方がいいですよ!?」

「改めて思ったが、南雲の作るアーティファクトは強力だな。」

 

それから度々、トビウオモドキに遭遇するハジメ達だったが容易く蹴散らし先へ進む。

 

どれくらいそうやって進んだのか。

 

代わり映えのない景色に違和感を覚え始めた頃、ハジメ達は周囲の壁がやたら破壊された場所に出くわした。

よく見れば、岩壁の隙間にトビウオモドキのちぎれた頭部が挟まっており、虚ろな目を海中に向けている。

 

「……ここ、さっき通った場所か?」

「……そうみたい。ぐるぐる回ってる?」

 

どうやら、ハジメ達は円環状の洞窟を一周してきたらしい。

大迷宮の先へと進んでいるつもりだったので、まさか、ここはただの海底洞窟で道を誤ったのかと疑問顔になるハジメ。

結局、今度は道なりに進むのではなく、周囲に何かないか更に注意深く探索しながらの航行となった。

 

その結果、

 

「ハジメ!あそこにもあったよ!」

「これで、五ヶ所目か……」

 

洞窟の数ヶ所に、五十センチくらいの大きさのメルジーネの紋章が刻まれている場所を発見した。

メルジーネの紋章は五芒星の頂点のひとつから中央に向かって線が伸びており、その中央に三日月のような文様があるというものだ。

それが、円環状の洞窟の五ヶ所にあるのである。

 

ハジメ達は、じっくり調べるため、最初に発見した紋章に近付いた。

激流にさらされているので、船体の制御はカービィのコピー能力グラビティで重力を制御してもらって無理矢理動かしてもらっている。

 

「まぁ、五芒星の紋章に五ヶ所の目印、それと光を残したペンダントとくれば……」

 

 そう呟きながら、ハジメは首から下げたペンダントを取り出し、フロント水晶越しにかざしてみた。

すると、案の定ペンダントが反応し、ランタンから光が一直線に伸びる。そして、その光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした。

 

「ん、これは私でも魔法来ると魔力が持たない。」

 

レムユエの言う通り、このようなRPG風の仕掛けを魔法で何とか生命維持している者達にさせるのは相当酷だろう。

『グリューエン大火山』とは別の意味で限界ギリギリを狙っているのかもしれない。

が、現在ハジメたちは『グリューエン大火山』を攻略後にすぐここに来ている。

 

休みと言えばさっきハジメお手製のアイスを皆に渡して休憩したくらいである。

 

疲れが抜けきってない筈だ。

 

 

 

 

 

その後、更に三ヶ所の紋章にランタンの光を注ぎ、最後の紋章の場所にやって来た。

ランタンに溜まっていた光も、放出するごとに少なくなっていき、ちょうど後一回分くらいの量となっている。

 

ハジメが、ペンダントをかざし最後の紋章に光を注ぐと、遂に、円環の洞窟から先に進む道が開かれた。

『ゴゴゴゴッ!』と轟音を響かせて、洞窟の壁が縦真っ二つに別れる。

 

特に何事もなく奥へ進むと、真下へと通じる水路があった。

潜水艇を進めるハジメ。

すると、突然、船体が浮遊感に包まれ一気に落下した。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

直後、ズシンッ!と轟音を響かせながら潜水艇が硬い地面に叩きつけられた。

 

ハジメはフロント水晶から外を見ると、先程までと異なり、外は海中ではなく空洞になっているようだった。

取り敢えず、周囲に魔物の気配があるわけでもなかったので、船外に出るハジメ達。

 

潜水艇の外は大きな半球状の空間だった。

頭上を見上げれば大きな穴があり、どういう原理なのか水面がたゆたっている。水滴一つ落ちることなくユラユラと波打っており、ハジメ達はそこから落ちてきたようだ。

 

「どうやら、ここからが本番みたいだな。海底遺跡っていうより洞窟だが」

「……全部水中でなくて良かった」

 

ハジメは、潜水艇を『宝物庫』に戻しながら、洞窟の奥に見える通路に進もうとレムユエ達を促す……寸前でレムユエとカービィに呼びかけた。

 

「レムユエ、カービィ!」

「ん」

「任せて!コピー能力ミラー!」

 

それだけで、レムユエは即座に障壁を展開し、カービィはリフレクトフォースを発動した。

 

刹那、頭上からレーザーの如き水流が流星さながらに襲いかかる。

圧縮された水のレーザーは、かつてユエが『ライセン大迷宮』で重宝した〝破断〟と同じだ。

直撃すれば、容易く人体に穴を穿つだろう。

 

しかし、レムユエの障壁は、例え即行で張られたものであっても強固極まりないものだ。

カービィの物は少し脆いがレムユエの障壁と合わせることでレムユエの障壁に反射機能が追加されたのだ。

 

それを証明するように、天より降り注ぐ暴威をあっさり防ぎ切った。

ハジメが魔力の高まりと殺意をいち早く察知し、阿吽の呼吸でカービィとレムユエが応えたために、奇襲は奇襲となり得なかったのである。

当然、ハジメが呼びかけた瞬間に、攻撃を察していたシアやティオ、ルティや光輝にも動揺はない。

 

このパーティは戦闘だけならどんな相手でも過剰戦力だろう。

 

ハジメたちは再び頭上に視線を戻した。

と同時に、ティオが火炎を繰り出し、天井を焼き払う。それに伴って、ボロボロと攻撃を放っていた原因が落ちてきた。

 

それは、一見するとフジツボのような魔物だった。天井全体にびっしりと張り付いており、その穴の空いた部分から〝破断〟を放っていたようだ。

なかなかに生理的嫌悪感を抱く光景である。

水中生物であるせいか、やはり火系には弱いようで、ティオの炎系攻撃魔法〝螺炎〟により直ぐに焼き尽くされた。

 

フジツボモドキの排除を終えると、ハジメ達は、奥の通路へと歩みを進める。通路は先程の部屋よりも低くなっており、足元には膝くらいまで海水で満たされていた。

 

「歩きにくいなぁ……」

 

 ザバァサバァと海水をかき分けながら、ハジメが鬱陶しそうに愚痴をこぼす。

それに対して、カービィが気遣うようにコピー能力コズミックを使いフレアオーラで海水を蒸発させた。

 

が魔物の襲撃により、集中を余儀なくされる。

 

現れた魔物は、まるで手裏剣だった。

高速回転しながら直線的に、あるいは曲線を描いて高速で飛んでくる。

 

が、むしろそれは悪手である。

その魔物の攻撃が遠距離攻撃と見なされルナオーラで反射して消滅した。

 

更に、足元の水中を海蛇のような魔物が高速で泳いでくるのを感知し、ハジメがドンナーで撃ち抜く。

 

「……弱すぎないか?」

 

ハジメの呟きに全員が頷いた。

 

大迷宮の敵というのは、基本的に単体で強力、複数で厄介、単体で強力かつ厄介というのがセオリーだ。

それは先程攻略した『グリューエン大火山』のおかげで光輝も思い知っている。

 

だが、ヒトデにしても海蛇にしても、海底火山から噴出された時に襲ってきた海の魔物と大して変わらないか、あるいは、弱いくらいである。

 

とても、大迷宮の魔物とは思えなかった。

 

皆、首を傾げるのだが、その答えは通路の先にある大きな空間で示された。

 

「っ……何だ?」

 

ハジメ達が、その空間に入った途端、半透明でゼリー状の何かが通路へ続く入口を一瞬で塞いだのだ。

 

「私がやります! うりゃあ!!」

 

咄嗟に、最後尾にいたシアは、その壁を壊そうとドリュッケンを振るった、が、表面が飛び散っただけで、ゼリー状の壁自体は壊れなかった。

 

そして、その飛沫がシアの胸元に付着する。

 

「ひゃわ! 何ですか、これ!」

 

シアが、困惑と驚愕の混じった声を張り上げた。

ハジメ達が視線を向ければ、何と、シアの胸元の衣服が溶け出している。

衣服と下着に包まれた、シアの豊満な双丘がドンドンさらけ出されていく。

 

「シア、動くでない!」

 

咄嗟に、ティオが、絶妙な火加減でゼリー状の飛沫だけを焼き尽くした。

少し、皮膚にもついてしまったようでシアの胸元が赤く腫れている。

どうやら、出入り口を塞いだゼリーは強力な溶解作用があるようだ。

 

「っ! また来るぞ!」

 

「ボクに任せて!フレアオーラ!」

 

警戒して、ゼリーの壁から離れた直後、今度は頭上から、無数の触手が襲いかかった。

しかしフレアオーラの前ではあまりの高熱に蒸発した。

 

「正直、カービィのコピー能力って、割と反則臭い…って言うか反則級だよな」

 

コピー能力コズミックだけでもルナオーラによる遠距離からの完全防御と、フレアオーラによる熱さで一方的に攻撃。

ハジメがそう呟くのも仕方ない。

それは一同も同感だった。

 

暇になったレムユエが蒼天(ミニバージョン)を撃つが……

 

「む?……ハジメ、このゼリー、魔法も溶かすみたい」

 

レムユエから声がかかる。

見れば、レムユエの放った蒼天が溶かされているのがわかった。

 

「ふむ、やはりか。先程から妙に炎が勢いを失うと思っておったのじゃ。どうやら、炎に込められた魔力すらも溶かしているらしいの」

 

ティオの言葉が正しければ、このゼリーは魔力そのものを溶かすことも出来るらしい。

中々に強力で厄介な能力だ。(カービィには通用しない)

まさに、大迷宮の魔物に相応しい。

 

そんなハジメの内心が聞こえたわけではないだろうが、遂に、ゼリーを操っているであろう魔物が姿を現した。

 

天井の僅かな亀裂から染み出すように現れたそれは、空中に留まり形を形成していく。

半透明で人型、ただし手足はヒレのようで、全身に極小の赤いキラキラした斑点を持ち、頭部には触覚のようなものが二本生えている。

まるで、宙を泳ぐようにヒレの手足をゆらりゆらりと動かすその姿は、クリオネのようだ。

もっとも、全長十メートルのクリオネはただの化け物だが。

 

 その巨大クリオネは、何の予備動作もなく全身から触手を飛び出させ、同時に頭部からシャワーのようにゼリーの飛沫を飛び散らせた。

 

が……今コピー能力コズミックのカービィにはやはり通用しない。

 

「ルナオーラ!」

 

ルナオーラで全てゼリーが跳ね返される!

 

そしてその隙にカービィはフレアオーラを重ね掛してクリオネに近づくとクリオネは蒸発した。

 

しかしいつの間にか道がなくなっていたのでハジメが先程発見した空間に行くことにしたのだった。

 

 

 

「地面の下に空間がある。どこに繋がってるかわからないから気を引き締めるぞ!」

 




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59話『戦艦ハルバード』



お待たせしました!
今まで事情により忙しかったのですが長期休暇(冬休み)に入ったのでようやく再開できそうです!


 

 

 

「地面の下に空間がある。どこに繋がってるかわからないから気を引き締めるぞ!」

と、言うハジメの声に全員が頷きその空間へ入って行く。

 

 

その空間の中は本来ならば巨大な球体状の空間で、何十箇所にも穴が空いており、その全てから凄まじい勢いで海水が噴き出し、あるいは流れ込んでいて、まるで嵐のような滅茶苦茶な潮流となっている場所だった………のだが先程のカービィのフレアオーラによって巨大クリオネと共に蒸発してしまっているので警戒していたカービィたちはただ進むだけで密林にたどり着いた。

 

その密林も、道中魔物がいたのだが、オルクス大迷宮どころか樹海やライセン渓谷レベルの魔物ばかりでカービィたちの相手ではなかった。

 

「……あの空間に入るまではカービィのおかげで楽に来れたがさっきから大した魔物が出ないがこの迷宮のコンセプトはどう言うことなんだ……?」

と、光輝が呟いたその時だった。

 

「ハジメさん!カービィさん!見てくださいあれ!ボロボロの船が沢山ありますよ!」

とシアが指差す先は岩石地帯となっており、そこにはおびただしい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっていた。

しかも、そのどれもが、最低でも百メートルはありそうな帆船ばかりである。

 

思わず全員が足を止めてその一種異様な光景に見入ってしまった。

 

しかし「いつまでも見ている訳にもいかない」と気を取り直して岩場の隙間を通り抜け、あるいは乗り越えて、時折、船の上も歩いて先へと進んで行く。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それにしても……戦艦ばっかだな」

そうハジメが呟く。

 

ここにある船には、どれも地球の戦艦(帆船)のように横腹に砲門が付いているわけではなかった。

しかし、それでもハジメが戦艦と断定したのは、どの船も激しい戦闘跡が残っていたからだ。見た目から言って、魔法による攻撃を受けたものだろう。

 

「戦艦?ボク知ってるよ!」

 

「カービィの世界にも戦艦があるのか!?」

と、光輝は驚きを隠せないでいた。

 

それもそうだ。

以前光輝に言った通りカービィが住んでいた星は『呆れ返るほど平和な星』である。

更に言えば住んでいた国はその中でも『呆れ返るほど平和な国』だ。

驚かない方が無理がある。

 

「ボクの世界って言うか、ボクの仲間のメタナイトが持ってる空どころか宇宙でも飛べる戦艦なんだよ!メタナイトが仲間になる前はその戦艦……戦艦ハルバードでボクの住んでた国に『堕落したプププランドに革命を起こす』って言ってやって来たんだ。」

 

「おいおい、それは個人が持ってる軍力って規模じゃないんじゃないか?」とハジメ。

 

「……ハジメが使ってる武器も充分この世界ではオーバーテクノロジー。」とレムユエがツッコミを入れる。

 

「大丈夫だったのかその国は!?」

光輝はハッとなってカービィに聞く。

 

「コウキさん、まだわからないのですか?」

シアは既に察してがついたようで得意げにウサミミと胸を張る!

 

「妾ももう察しがついたのじゃ。そもそもカービィがこうやって話していると言うことはカービィが実際に目撃したかあるいは……」

 

「あっ!僕も察しがつきました。」とルティもあぁいつものカービィさんか、と納得したところでカービィはまたもや爆弾発言をする。

 

「うん!ボクがその時にダイナブレイドに手伝ってもらって戦艦ハルバードに侵入して、戦艦ハルバードを破壊して墜落させたんだ。だって支配なんてされたらプププランドのみんなが困っちゃうからね!」

 

「……ってことは実質一人で戦艦を破壊したってことだよな。やっぱカービィは凄えな。」

 

「……俺も、なんとなくだがカービィの凄さには慣れて来た気がする。それに比べて俺が今まで掲げてた正義は今思い返してみれば俺の価値観を他人に叩きつけてただけだったんだな……。」

 

「オイ天之川、この際だからお前が改心した時に言いたかった言葉を言うがいつもお前と白崎のせいで学校での境遇が結構酷かったんだが?」

 

「そのことに関しては今ではすまないと思っているんだが、俺はともかくとして香織はどう言うことなんだ?」

 

「あぁ、白崎が奈落に落ちる前から俺に好意を持っていたのは今のお前が教えてくれたことだから天之川もわかっていると思う。」

 

「そうだな。」

 

「そして学校では白崎は女神だなんて呼ばれていたくらいだ。そんな女神から俺が好意を持たれてるとだいたいのクラスメートは察していたんだろうな。だから学校ではオタクだった俺は学校の境遇が悪かった。更に言えば檜山、あいつは白崎のことを狙っていたからこそ俺を奈落に落としたんだろうな。まぁ俺は白崎のことを嫌っても憎んでもいない。檜山は別だがな。」

 

「そうだったのか…!」

 

「まぁ、俺はあいつ(檜山)に感謝はしてねぇがおかげで大切な物を見つけることができたからな。これもカービィのおかげだ。」

 

「カービィが…!そう言えば気になったんだが南雲とカービィが奈落に落ちた後、どうなったんだ?」

 

「……そこまで親しくないお前に話す義理なんてない。が、天之川、お前は今、俺たちの仲間だし、俺たちに起こったことを教えてやるとするか。」

 

「本当か!?」

 

「あぁ。何より俺の大切な家族たちが聞きたそうでもあるからな。」

そう言ってハジメは奈落に落ちてすぐのことから語り始めたのだった。






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60話『天之川光輝の弁解』



短めですがなんとか早めに投稿できました!

それではどうぞ!


「……と、言うことがあったな。今思えばカービィが助けに来てくれなければ一切容赦ないような俺になってたかもしれないな。」

 

「……っ!そんなことが……!」

光輝は拳を握りながらそう呟く。

 

光輝、ルティ、ティオの3人は今まで聞いたことがなかった上にそんなに酷いようなことがあったのかと言葉が出なかった。

 

それに普通はレベルが急激に上がるものではないのでカービィとハジメ、レムユエの三人ですら苦戦した場所があると聞いた時は今のカービィやハジメたちしか知らないルティとティオは想像が出来なかった。

 

そんな空気など知らんとハジメは光輝に言う。

「……で?どうだ天之川?話を聞かせてやったんだから感想くらいは言えるよな?」

 

「あ、ああ。あの時の俺は……南雲が奈落に落ちていた時にもう諦めてた。それに俺は今まで心の何処かで、南雲の力がずるをして手に入れたものだと思ってたんだと思う。……曖昧な表現なのは許してくれ。俺が改心してから、今まで俺のやって来たことを思い返しても、大した理由じゃなくて、俺が目指していた人みたいになりたかったからなんだ。」

 

「目指していた人?以前のお前がか?」

 

「そうだ。……今度は俺が話していいか?」

 

「言い訳くらいなら聞いてやる。」

 

「言い訳……かもな。俺には小さい頃、弁護士の祖父が居た。そして小さい頃の俺は祖父が話すアレンジの入った経験談、それが大好きだったんだ。理想と正義を体現したヒーロー物語、そんなありふれたお話だった。」

 

「それでその話を真に受けたお前がああなったって事か?お前の祖父はお前の異常性に気づかなかったのか?」

 

「…………俺の祖父は……小学生になる前に他界した。それからは南雲の知っての通り、祖父のイメージがどんどん美化されていって自分の正義を疑うことすら忘れていたんだ。当時の俺にはそれを実現するだけの『力』があったからな。」

 

「……ハァ。お前の事情はわかった。あまりにも幼稚な理由過ぎてお前に対する怒りも失せた。とりあえずお前は前よりまともになってる。それだけは言える。だがお前にはまだ『救う』ってことを教えてない。俺たちの目的はこの世界を支配している神、エヒトをぶっ殺す事だ。それを達成したら救うってことのメリットやデメリットが教えてやれるだろう。……まぁあのクソ神が死ぬデメリットなんか思いつかんがな。って事で天之川光輝!お前は当分俺たちと行動だ。……長い前置きはともかくよろしくな光輝。」

 

「あ、あぁ。改めてよろしく頼むハジメ。」

 

ついにお互いが名前で呼び合い、絆が深まった……のかもしれない。

 




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61話『狂気の戦争』

コメント付き評価や評価をしてくれた方、感想を聞かせてくれた方、ありがとうございます!

それではどうぞ!


 

 

光輝とハジメが和解し、更に歩き続けた後、カービィ達が船の墓場のちょうど中腹辺りに来たその時だった。

 

――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?なんだ!?」

 

「ん、私たちの周りが変わっていく……」

 

突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。

驚いて足を止めた全員達が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり――気が付けば、カービィ達は大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

 

そして、周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿がそのにはあった。

 

「な、なんだこりゃ……」

ハジメですら度肝を抜かれてしまい、何とか混乱しそうな精神を落ち着かせながら周囲の様子を見ることしかできない。

 

そうこうしている内に、戦いは始まり、お互いが一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

 

ゴォオオオオオオオオ!!

ドォガァアアン!!

ドバァアアアア!!!

 

「チッ!ここに乗ったままだと危険だな。ティオ!カービィ!二手に分かれて飛んでくれ!」

 

「うん!」

「任せろなのじゃ!」

 

カービィはティンクルスターアライズでルティ、光輝を乗せ、ティオはハジメ、レムユエ、シアを乗せて飛んでくる攻撃を避ける。

 

ドパァン!ドパァン!ドパァン!ドパァン!…………

 

そして素早くハジメは銃を取り出して全ての魔法を撃ち抜いた。

 

しかし、全く予想外なことに炎弾を迎撃するどころか直撃したにも関わらず、そのまますり抜けて空の彼方へと消えていってしまった。

 

「なにぃ!?」

 

「ん、聖絶!」

 

レムユエはハジメのスキをカバーするように聖絶を発動して炎弾はあっさりと打ち消された。

 

ハジメの攻撃がすり抜けた事からルティはじーっとこの狂気の戦いの観察を始めた。

 

「……こういう事か?」

 

ハジメは、ドンナーに〝風爪〟を発動した。

そして〝風爪〟で炎弾を斬り付けると、今度は、炎弾をすり抜けることもなく真っ二つにすることが出来た。

 

「ハジメ、どう言うこと?」

 

「つまり、実体のある攻撃は効かないが、魔力を伴った攻撃は有効らしい。全く、本当にどうなってんだかな。」

 

 

しばらくするとこちらに気がついたらしく彼等はカービィ達に向かって一斉に襲いかかってきた。

 

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ! 万歳ぃ!」

「異教徒めぇ! 我が神の為に死ねぇ!」

 

そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

 

「……やっぱりエヒトってクソ神だな。」とハジメが呟いていると……

 

「だったらボクに任せて!」とカービィが得意気にしているので任せる事なった。

 

「コピー能力クリエイト!」

 

「「「「「「あっ!」」」」」」

 

その能力でここにいる全員が察した。

 

そして次の瞬間、無数のフレンズ能力を纏った剣が現れ発射され狂気の人々は見えなくなった。

 

「……ふぅ。これで安心だね!」

 

………と、カービィが言いかけたその時!

 

「カービィ、危ない!」

レムユエが咄嗟に発動した聖絶でカービィは守られたがなんと目の前には先程となんら変わらない狂気の人々がいたのだ!

 

「……どうやらここでは倒しても復活するようですね。」と先程からじっと狂気の戦いを見ていたルティが喋る。

 

「チッ!だったら後は、この気持ち悪い空間から抜け出すってことだな?」

 

「はい。」

 

「でも何処に出口なんてあるんだ?海のど真ん中だぞ?」と光輝がツッコミを入れる。

 

「ハジメさん!だったらいっそ、この戦いが終わるのを待つって言うのはどうですか!」

 

「ん、シアにしては良い考え。倒してもキリがないから私もシアに賛成。」

 

「ボクも賛成だよ!守ることならなんとかなりそうだと思う!」

 

カービィたちは守りを固めて耐え始めたのだった。

 






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62話『狂気の信仰』


お待たせしました。

あけましておめでとうございます!(今更)
オリジナル要素を入れるか迷った結果時間がかかりました(言い訳)


それではどうぞ!


「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

 

あれから30分程、カービィたちが守りに徹していると遂に変化が現れ始めた。

 

 

 

こちら側に一切攻撃が来なくなり、お互いが遂に本気を出したかの様に次々と目の前で人が死に始める。

 

そしてカービィたちは倒しても意味は無いと分かっているのでただ見ているしか無かった。

 

そして最後にはエヒトを崇拝する側の方が少し人数が多めだが戦いが終わり、和平条約が結ばれ、お互いのリーダーらしき者が握手を交わしていた。

 

「これで仲直りしてめでたしめでたし、だね!」

 

「ん、カービィの言う通り。だけど……」

 

「あぁ、これで終わればいいんだが……。」

 

 

そうハジメがいい終わる前にいきなり目の前が光り全員の視界を真っ白に染めた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

カービィが目を開けるといつの間にか周囲の景色は完全に変わり、今度は、海上に浮かぶ豪華客船の上にいた。

 

豪華客船は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしていた。

 

それを見たカービィはその瞬間迷宮のことを忘れ豪華な料理に向かって走り出した………

 

 

「お、おい、カービィ!?」

ハジメはいつの間にか周囲の景色が変わり辺りを見渡していたが料理を見て罠かどうかすら確認せずに走るカービィを発見し、天歩の派生技能をフル活用してカービィに追いついてカービィの目の前に行く。

 

「む、ハジメ?どうしたの?」

と、カービィは邪魔されたのを嫌そうに質問する。

 

「はぁ……カービィ、ここが何処だか忘れてるようだから言っとくがここはパーティ会場でも無く、大迷宮だぞ?それを考えれば料理には毒があるかもしれないし、さっきの戦争で俺たちの攻撃が効かなかったように食べることはできないかもしれない。…………あー、そうだな、迷宮を攻略した後に今日の飯は好きなだけ食べていいから我慢してくれ。」

 

「本当に!?」

 

「あ、あぁ。……………………あ、やべ。」

ハジメはカービィのご機嫌取りの為に咄嗟にカービィに最も言ってはならない「好きなだけ食べていい」と言ってしまったことに言った後から気づいたが時すでに遅し。

 

カービィは既に気がついた仲間全員を集めて「今日のご飯は食べ放題だってー!」と目を輝かせて言いふらしていた。

 

そんな時だった。

 

甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。

それに気がついた人々が、即座にお喋りを止めて男に注目する。

 

雰囲気が変わったことでカービィたちは気を引き締める。

 

 

初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている。

 

やがて、全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった。

 

「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

 

話から察するにどうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしい。

人間族の中でも、相当初期から和平のために裏で動いていたようで人々から敬意を示す視線を送られていた。

 

そして演説も遂に終盤に差し掛かったのだが……

 

「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………実に、愚かだったと」

 

その場にいた人々が頭上に〝?〟を浮かべる。

聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。

その間も、国王の熱に浮かされた演説は続く。

 

「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」

「い、一体、何を言っているのだ! アレイストよ!一体、どうしたと言うッがはっ!?」

国王……アレイストの豹変に、一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出た。

そして、アレイスト王に問い詰めようとして……結果、胸から剣を生やすことになった。

 

「ひどい!」

その光景を見たカービィは真っ先にそう言った。

 

「どう言うことだ!?さっき見せられた戦争で平和条約を結んだんじゃ無かったのか!?」

 

「落ち着つけカービィ、天之川。まだ終わってない。」

と言いながらも既にハジメは察していた。

 

この時代から既にエヒト信仰による人間以外との人種差別があったと言うことを。

 

そしてエヒトの狂信者……アレイスト王は語り続ける。

 

「さて、諸君、最初に言った通り、私は、諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り、我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる〝エヒト様〟に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も、今日この日に終わる!全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ!それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ!さぁ、神の忠実な下僕達よ!獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ!ああ、エヒト様!見ておられますかぁ!!!」

 

膝を付き天を仰いで哄笑を上げるアレイスト王。

彼が合図すると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れた。

 

「ハジメ!」

 

「任せろ。」

ドパァン!ドパァン!ドパァン!

 

ハジメは銃で兵士達を撃ち抜く……が、先程の戦争と同じようにハジメの攻撃はすり抜けてしまった。

 

「チッ、どうやら俺たちにただこの光景を見せつける必要があるらしいな。」

 

次の瞬間、遂に甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。

下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの……一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった。

 

海に飛び込んだ者もいるようだが、そこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

 

「うっ」

「ルティ!」

吐き気を堪えるように、ルティが手すりに身を預け片手で口元を抑えた。

余りに凄惨な光景だ。

その上、清水の記憶もないルティには無理もないと、ハジメは思いつつ、ルティを支えてるカービィ(見た目幼女)にルティを休ませることを伝える。

 

 

アレイスト王は、部下を伴って船内へと戻っていった。

幾人かは咄嗟に船内へ逃げ込んだようなので、あるいは、狩りでも行う気なのかもしれない。

彼に追従する男とフードの人物も船内に消える。

 

と、その時、ふと、フードの人物が甲板を振り返った。その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪が一房、ハジメには見えた気がした。

 

と、その瞬間、周囲の景色がぐにゃりと歪む。

どうやら、先程の光景を見せたかっただけらしく、カービィたちは朽ちた豪華客船の上にいた。

 

「ルティ、少し休め」

「す、すいません。あぁ言うの……記憶が無いせいか…大量虐殺の耐性が無かったので。…………でももう大丈夫です。」

「普通は大量虐殺の記憶なんて無い筈だけどな。」

とハジメはツッコミを入れる。

 

「……それはともかくとして、この船の墓場はここが終着点だ。結界を超えて海中を探索して行くことは出来るが……普通に考えれば、深部に進みたければ船内に進めという意味なんじゃないか?あの光景は、見せることそのものが目的だったのかもな。神の凄惨さを記憶に焼き付けて、その上でこの船を探索させる……中々、嫌らしい趣向だよ。特に、この世界の連中にとってはな」

 

この世界の人々は、そのほとんどが信仰心を持っているはずであり、その信仰心の行き着く果ての惨たらしさを見せつけられては、相当精神を苛むだろう。

そして、この迷宮は精神状態に作用されやすい魔法の力が攻略の要だ。

ある意味、【ライセン大迷宮】の逆なのである。

異世界人であるハジメや光輝、カービィとやたら魔力の多い仲間たちだからこそ、精神的圧迫もこの程度に済んでいるのだ。

 

カービィとハジメは仲間たちと顔を見合わせ、全員が頷くと意を決して甲板に飛び降り、アレイスト王達が入って言った扉から船内へと足を踏み入れた。

 

船内は、完全に闇に閉ざされていたが瞬時にカービィがコピー能力ライトを使うと部屋は明るく照らされた。

 

「なぁ南雲、さっきの光景……終戦したあと、あの王様が裏切ったっていうことだよな。」

 

「そうみたいだな……ただ、不可解なところがある。」

 

「「「「「不可解なところ?」」」」」

ハジメとティオ以外は気がついてないらしく続きをティオが言う。

 

「壇上に登った時は、随分と敬意と親愛の篭った眼差しを向けられていたじゃろ?内心で亜人族や魔人族を嫌悪していたのだとしたら、本当に、あんなに慕われる筈はない筈じゃ。」

 

「………ってことはあの人の口ぶりからすると、まるで終戦して一年の間に何かがあって豹変した……と言うことですよね?」

 

「あぁ、シアの言う通りだ……それにあの様子からクソ神(エヒト)が絡んでいることは間違いないだろうな。」

 

先程の光景を考察しながらハジメたちは進んでいると、前方に白いドレスを着た女の子が、俯いてゆらゆらと揺れながら廊下の先に立っていた!

 

ハジメは恐らくこれも試練の一部だと察し、取り敢えず撃ち殺そうと銃口を向けた。

 

その瞬間、女の子がペシャと廊下に倒れ込んだ。

そして、手足の関節を有り得ない角度で曲げると、まるで蜘蛛のように手足を動かし、真っ直ぐハジメ達に突っ込んで来た!

 

ケタケタケタケタケタケタケタッ!

 

奇怪な笑い声が廊下に響き渡る。

 

「ハジメさん、カービィさん!なんとかしてくださぃ!」

とテンプレだが、それ故に恐ろしい光景にシアはレムユエにしがみついた。

 

「ん、落ち着いてシア。……ミニ蒼天。」

 

「ケギャァァァァァァァァ!?」

レムユエは蒼天を圧縮した小さな蒼天(圧縮した分威力増加)で焼き殺した。

 

 【メルジーネ海底遺跡】の創設者メイル・メルジーネは、どうやらとことん精神的に追い詰めるのが好きらしい。

ハジメやカービィは、奈落の底で、闇と化け物に囲まれながら長期間サバイバルしていた経験があるので、特に、どうとも思わないが、普通の感性を持つ者なら精神的にキツイだろう。

現に光輝とルティの顔も引き攣っていた。

もっとも、レムユエやティオが驚きむせび泣くところなど想像できないが。

 

その後、何回か同じことがあってもはや全員が当然と言わんばかりに恐怖しなくなっていき遂に船倉までたどり着いた。

 

重苦しい扉を開き中に踏み込む。

船倉内にはまばらに積荷が残っており、ハジメ達は、その積荷の間を奥に向かって進む。

すると、少し進んだところで、いきなり入ってきた扉がバタンッ!と大きな音を立てて勝手に閉まってしまった。

 

「……こんなのミレディの迷宮に比べればどってことないですね。」

 

「おいシア、ミレディと比べてやるな。」

と、ハジメがシアにツッコミを入れたところでまた異常事態が発生した。急に濃い霧が視界を閉ざし始めたのだ

 

………が、カービィには関係なかった。

「コピー能力トルネイド!ビッグトルネイド!」

台風の様な風の冠を被ったカービィは周りに巨大な竜巻を発生させ霧を晴らした。

 

すると魔法陣が現れたのだった。

 




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63話『(食費が)ピンチへの足音』


おかげ様でお気に入り、しおり、感想、の全てが100件を超え、お気に入りは200件を突破しました!

これからも応援お願いします!



 

 

「コピー能力トルネイド!ビッグトルネイド!」

台風の様な風の冠を被ったカービィは周りに巨大な竜巻を発生させ霧を晴らした。

 

すると魔法陣が現れたのだった。

 

「……あれは魔法陣?まさか、攻略したのか?」

光輝はグリューエン大火山に比べて呆気なく感じたのかそう言った。

 

「……たぶん今の霧に何か仕組まれてたんだろうがカービィが吹き飛ばしてくれたからな。」

 

「それじゃあさっそく魔法陣に入ろう!」

 

カービィ達は、全員で魔法陣へと足を踏み入れる。

 

そしてしばらくして無事に全員攻略者と認められたようである。ハジメ達の脳内に新たな神代魔法が刻み込まれ、カービィは新たなコピー能力を覚えた。

 

「ここでこの魔法か……大陸の端と端じゃねぇか。解放者め」

「……見つけた〝再生の力〟」

 

ハジメが悪態をつく。それは、手に入れた【メルジーネ海底遺跡】の神代魔法が〝再生魔法〟だったからだ。

 

思い出すのは、【ハルツィナ樹海】の大樹の下にあった石版の文言。

先に進むには確かに〝再生の力〟が必要だと書かれていた。

つまり、東の果てにある大迷宮を攻略するには、西の果てにまで行かなければならなかったということであり、最初に【ハルツィナ樹海】に訪れた者にとっては途轍もなく面倒である。

カービィ達は、高速の移動手段を持っているからまだマシな方である。

 

ハジメが解放者の嫌らしさに眉をしかめていると、魔法陣の輝きが薄くなっていくと同時に、床から直方体がせり出てきた。

 

そして淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった。

どうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残したらしい。

 

人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。

見た目からするとどうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。

 

彼女は、オスカーと同じく、自己紹介したのち解放者の真実を語ったがそこはカービィとハジメとレムユエには既に同じようなことを聞いているので退屈そうにしていたが、光輝たちやティオ、ルティたちはしっかりと聞いていた。

 

メイル・メルジーネはおっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。

やがて、オスカーの告げたのと同じ語りを終えると、最後に言葉を紡いだ。

 

「……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

 

そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。

直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

 

「証の数も四つですね、ハジメさん、カービィさん。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」

 

シアが、懐かしそうに故郷と家族に思いを馳せた。

しかし、脳裏に浮かんだのは「ヒャッハー!」する父親達。

ハジメは、証のコインを〝宝物庫〟にしまうと、シアと同じように「ヒャッハー!」するハウリア族を思い出す。

カービィとレムユエもだいたい同じことを思い浮かべた。

そして四人は頭を振ってその光景を追い出した。

 

「あ、そう言えばカービィさんは今回どんなコピー能力を覚えたんですか?」とシアは「ヒャッハー!」な父親達を思い出したく無いと言わんばかりに話しを逸らした。

 

「今覚えたコピー能力は」とカービィが言い切る前に神殿が鳴動を始め、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

 

「うおっ!?チッ、強制排出ってかっ。全員潜水艇に乗れ!」

 

「ん、こう言うのはミレディだけで充分。」

 

凄まじい勢いで増加する海水。

 

カービィはコピー能力コズミックを発動し、フレアオーラで海水をある程度蒸発させて時間を稼ぐ。

 

「カービィ!全員乗ったぞ!」

 

「わかった!ボクも今から向かうよ!」

 

カービィは背後の海水をフレアオーラである程度蒸発させつつ、潜水艇に乗って能力を解除した。

 

海の魔物は先程のフレアオーラで逃げて行ったのか安全に脱出することが出来たのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

その日の夜。

 

海上の街エリセンでは『レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会』のメンバーたちがミュウを喜ばせる為にレミアたちにカービィとハジメたち一行が帰って来たのが街中に知れ渡っていた。

 

 

「どうしようハジメ、迷宮攻略の為だけにここに戻って来たし……」

 

「あぁ……他の迷宮攻略を終わらせたらミュウの所に戻ってくるって約束したしな……。まだ終わってないから会いに行く訳にも……」

 

と、そんな時だった。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!おかえりなさいなの!」

ステテテテー!と勢いよく走ってミュウがやって来た。

 

そして少し遅れてレミアもやって来た。

 

これでは心を鬼にしない限りまだ帰って来てないと言えないと悩むハジメたち。

 

そんな空気を読んだのかレミアが言う。

 

「そう言う時は、ただいまって言えば、いいのよ?」

 

「あぁそうだな。」

「うん!」

 

「「「「「「ただいま!」」」」」」

 

「?」

光輝はこの事の説明を受けていないので戸惑っている。

 

「じゃあお兄ちゃんの故郷に行ってみたいなの!」

 

「ミュウ、まだお義兄ちゃんたちは、まだやるべき事が、あるみたいよ?」

 

「……お兄ちゃん、お姉ちゃん、本当なの?」

 

「あぁ。まだ俺たちにはやるべきことが残ってる。それまで我慢できるか?」

 

「できるなの!」

 

「じゃあ今度こそやるべきことが終わったら来るね!」

 

「いつでも、帰って来て、いいんですよ?」

 

「ありがとう!」

 

「……それじゃあ俺たちはそろそろ行くか。」

 

「ハジメさん次は……ん?ハジメさん!カービィさん!あれ見てください!」

シアが指差す先は空。

そこにはなんと宙に浮いている巨大な船が!

 

「おい南雲、アレはお前が作ったのか!?」

 

「違う、俺はあんな物は作ってない……。」

 

「じゃあ一体誰が……ってカービィさん、どうしたんですか!?」

 

その一言でその場の全員がカービィに注目する。

 

カービィは少しの間警戒した。

だけどその者とは仲直りして友達になったのだからと、シアの声で我に返って気を緩める。

 

「ん、カービィが一瞬でも警戒するって言うことは……敵?」

 

「ち、違うよ!ボクの……友達だよ!」

 

「「「「「「………」」」」」」

カービィ以外の全員は思った。

怪しい。

友達にしてはカービィが少しの間警戒し、友達と言うのに少しの間があったからだ。

明らかに普通の友達ではないだろう。

 

………と。

 

そう思っていると巨大な船はだんだん降りて来て、遂にカービィたちの目の前に着陸した。

 

ゴクリ……と、ハジメたちは唾を飲み込んだ。

 

そして扉が開いて中から出て来たのは………!

 

「やっほー☆みんなのアイドル、ミレディ・ライセンだよぉ~」

 

「「「「は?」」」」

カービィと光輝以外がその一言で切れた。

しかも何故か人間の美少女に戻っていてウザさ倍増だ。

 

「やあやぁ!ミンナのアイドル、マホロアダヨォ!」

と、ミレディに続いてフード付きの青いローブを被った少女がそう言った。

 

「「「「いや誰!?」」」」

ハジメは誰?とマホロアに聞いたが、なんだかミレディと似たようなウザさを感じた気がした。

 

「もしかしてマホロアも人間になったの?」

 

「そうダヨォ!サスガはカービィ!ボクのトモダチダヨォ!」

 

「今度は何も企んでないんだよね?」

 

「ウン!ボクたちはカービィを助ける為だけにミンナを集めてここまでやって来たんダヨォ!」

 

「みんな?」

みんなマホロアを警戒してる筈だし……一体誰を連れて来たんだろう?

そうカービィは疑問に思っていた。

 

最初に出てきたのはカービィと髪の毛の色以外が瓜二つな幼女?たちだった。

 

「久しぶりだね、ソード。」

青髪の幼女?が言う。

 

「青でボクをソードって呼ぶってことはドクター?」

 

「うん。それにハンマーとビームもいるよ。」

 

そこには黄髪の幼女?と緑髪の幼女?もいた。

 

「……ってことは、スーパーカービィハンターズ、再結成だね!」

 

「「「うん!」」」

そう言うと4人はお互いに顔を見合わせて頷いた。

 

「ボクはソード!」

「ボクはドクター!」

「ボクはハンマー!」

「ボクはビーム!」

 

「「「「我らスーパーカービィハンターズ!!!!」」」」

 

「同じ顔で髪色以外同じ見た目、しかも息ぴったり……まさか!」

ハジメは気付いてしまった。

何故自分たちが知っているカービィがソードと名乗ったのか。

何故姿形が似ているのか。

 

「まさか……4人とも全員カービィ!?」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

レムユエ、シア、ルティ、ティオ、光輝の5人は固まった。

 

そしてこの場にいる全員が考えることはただ一つ。

 

食費が……食べ物が絶対足りない!!

 

そしてソードがこの状況にトドメを刺した。

「あ、そう言えばね!今日の夜ご飯は食べ放題なんだって!」

 

「「「やったー!!!」」」

 

ハジメにとってカービィが4人に増えるのは予想外である。

どうにかしてカービィ4人を止めなければハジメたちに明日(からのご飯)は無いのであった。

 

 




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64話『再会、それは……』


感想と投票ありがとうございます!

総合評価がなんと500となりました!
これからも頑張ります!
それと、アンケートを始めたのでよかったら意見を聞かせてください。


 

 

「……それで、ミレディを除いたお前たちはカービィの仲間って事でいいんだよな?」

ハジメは食事の準備をレムユエとシア、光輝に任せて謎の巨大飛行船から降りてきた人たち(?)に怪しげな視線を送りながらそう言った。

 

カービィならともかくとして普通は見知らぬ誰かをすぐに信用など出来る訳がないのだ。

 

「ちょっ!?なんで私を仲間外にしてるの!?ミレディちゃん泣いちゃうよ?」

 

「それは自分の行いをよーく考えてからそのセリフを言え。」

 

「うーん………何も思い当たらないね☆」

 

「………話がそれたがお前たちはカービィの仲間でって事でいいんだよな?」

 

「「「うん!」」」

「はい!」

 

ハンマー、ドクター、ビーム、ワドルディは声を揃えて言う。

 

「……(ギロッ)」

 

「い、いえ!ボクは大王様の部下です!」

ワドルディはとっさにデデデ大王の視線を感じて訂正した。

デデデ大王とカービィはライバル関係にあり、デデデ大王は部下であるワドルディがカービィと仲良くしていることが気に食わないのである。

 

「「「「「「大王様?」」」」」」

話を聞いていたソードとマホロアたち以外は『大王様』と言う言葉に首を傾げる。

 

「そうだ。このオレ様こそがプププランドの偉大なる支配者、デデデ大王だ!それにカービィとは仲間ではなくライバルだ!……だが今回は特別だ。オレたちはカービィを助けにやって来たんだからな。」

 

「私も普段は戦艦ハルバードで部下と共に行動をしているが今回は私もカービィを助けに来た仲間の一人だ。」

 

「ワタクシは『ハルトマンワークスカンパニー』の社長秘書を務めておりますスージーと申します。今回はピンクのゲンジュウミ……いえ、カービィさんに以後お見知り置きを。」

 

「ボクはマホロアダヨ。ボクの大切なトモダチのカービィを助けるためにミンナを集めてここまで次元を超えてやって来たんダヨォ!」

 

「そしてみんな大好き案内役のミレディちゃんだよ☆よろしくね☆」

 

「みんなありがとう!」

カービィは仲間がやって来て嬉しそうにしていた。

そしてもう会えないと思ってもいたカービィハンターズも再結成出来てもう怖いモノなし、そんな気分であった。

 

「……だが移動はどうするんだ?こんな大人数じゃ流石に無理だろ。」

 

「それなら心配ないヨォ!ボクが持ってるこの船、ローアならトーッテモ広いから全員乗れるヨォ!」

 

「そうか。なら次の大迷宮はついに樹海だな。」 

 

「ついにですか……!」

シアは懐かしそうな顔をする。

そしてすっかり忘れていた豹変した家族(ハウリア族)の元凶はハジメだったと言うことも思い出してシアの中では良い思い出になってしまっていたのであった。




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第五章
65話『終わりのカウントダウン』


感想、お気に入り、評価ありがとうございます!

ここからはかなりのオリジナル要素多めの予定となります。
ご了承ください。
それではどうぞ。


 

 

雪原の西、魔人領。

その魔人領にあるボロボロの魔王城の周りには大勢の魔人族がいた。

彼ら彼女らは口々に魔王城に居座るとある者に文句を言い、とある者を必死に応援している。

 

広場の中央にはとある女性と少女が戦っている中継映像が流れている。

そして明らかに優勢なのは少女の方であった。

 

「「「「「いけーーー!ユメ様ぁーーー!!!」」」」」

 

「「「「「ユメ様こそがこの魔人領を収める魔王だ!人族が崇めるクソ神なんかに負けるなーーー!!!」」」」」

 

何故こうなったかと言うとユメ様……即ち、星の夢は人族が崇める神、エヒトが魔人領を収めていると言う証拠を掴み、魔人領全域に知れ渡らせたのだ。

 

そしてそれを知った大勢の魔人族は魔王城に向かって攻撃を始めた。

それを良しとしないエヒトは魔人族に攻撃をしたのだが、星の夢は魔人族を庇い傷を負った(ように見せかけ)更に信頼を勝ち取った。

 

そして星の夢はエヒトに決闘を申し込み、今に至ると言う訳である。

 

だがエヒトは星の夢がユメ様であることを知らない。

何故なら最初に会った時とは姿形が違うからでもある。

それ故、エヒトは得体の知れない何かに押されているこの状況に恐怖すらしていた。

 

 

 

 

「くっ!この私が、一方的に………『止まれ』!」

エヒトルジュエは悪あがきと言わんばかりに神言を使うが全く効果はなく、どんどんエヒトルジュエに向かって来る。

 

CP(コピー)『クラッシュ』」

星の夢がエヒトに手を向けるとかつてカービィから模倣したコピー能力、クラッシュを約30%程の威力で放った。

 

すると星の夢が向けた部分は大爆発した。

 

しかも星の夢はカービィと違って能力が解除されてないので次々とクラッシュを連発してエヒトジュルエに当てていく。

 

「来い、私の使徒よ!」

 

そして苦し紛れに神の使徒を大量召喚するがそれもクラッシュの連発で倒された。

 

「バ、馬鹿な。この私が、負けるなど……あってはならない!」

 

「これで終わりです。願望実行(銀河に願いを)

星の夢はある時に気づいていたのだ。

自身の力を使って自分の願いを叶えられると言うことに。

 

そして今、エヒトルジュエが星の夢のクラッシュを何度喰らっても死なないのは自身が神と言う概念的存在であるからであった。

 

だが、対する相手が神、もしくはそれ以上の超越者ならば話は別である。

 

全ての次元の宇宙の繁栄(機械化)を願った星の夢は願いの力によって全ての次元の宇宙で現在最も強い存在となった。

 

要するに全ての次元の宇宙を支配できる超越者となったのである。

 

そしてエヒトルジュエは……あっさりと倒されたのだった。

 

その瞬間から、瞬く間に生物以外の全てが次々と機械化が始まった。

 

 

============================

星の夢.(エクス)D(デウス) 年齢ーー 性別ーー レベル:ーー

天職:ーー

筋力:無限

体力:無限

耐性:無限

敏捷:無限

魔力:ーー

魔耐:無限

技能:自動翻訳・学習[+技術模倣]・願望実行(銀河に願いを)古代文明(ハルカンドラ)技術・機械操作[+機械侵入ハッキング]・クローン作成[+エヒト][+清水幸利]・存在超越・物語(デウス・)(エクス・)終わり(マキナ)

模倣技能:コピー能力(30%)

============================

 

 

もう……誰にも、止めることはできないのかもしれない……

 

 




ついに世界は終わりに向かう。

しかし、諦めない者たちもいる。

その希望は彼らに託された……!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



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66話『カワルセカイ』


感想、お気に入り、評価、ありがとうございます!
お待たせしました。

いよいよ終盤に近づいてきましたが最後までよろしくお願いします。


 

 

一方、カービィは仲間たちと再会し、食べ放題パーティをし、ストックしてた食糧の1/3を食べ尽くされた後に、空中に浮いたローアの中で笑顔を浮かべてぐっすりと寝ていた。

 

だがその間にもトータス全領域の……いや、全ての次元の宇宙の機械化は始まっていた。

 

もちろんそれはハジメの故郷である地球やプププランドも例外ではない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

次の日の早朝。

ハジメは朝日を感じて目を開けた。

そして窓から景色でも見ようとしてハジメはその景色に驚愕した。

 

「な、なんだよこれ……!?」

一面に広がるのは鉄……機械化されたトータスの光景であった。

 

ハジメはある程度機械を地球で見慣れているが一面が機械と言うメカメカしい光景など見たことがなかった故にそう言った。

 

一体誰の仕業だろうか?

ハジメは頭をフル回転させて考える。

 

真っ先に思いつくのはエヒト(あのクソ神)

奴は仮にも神なのだからこれくらいのことはできる可能性がある。

だが、仮にエヒト(あのクソ神)がやったとして奴に何の得があるのだろうか?

 

ローアの窓、つまりトータスの上空から見渡しても一面鉄となっていた。

 

エヒト(あのクソ神)は人間の国のみで崇拝されていると言うことは旅をしてきてハジメは察していた。

 

だが、人間の国すらも一面鉄となっていることからエヒト(あのクソ神)では無い可能性が出てきた。

 

ハジメはトータスの中央部へと目を向けた。

そこには巨大な球体が着陸しており、4方面には球体から伸びている三角錐のようなモノが地面に突き刺ささっていた。

 

それはかつてハルトマンワークスカンパニーがプププランドを侵略した時の母艦、アクシスアークスに酷似しているように見えるがそれをハジメは知らない。

 

そして地上へと視線を向けると一頭身の見慣れない生物……ハルトワーカーズがあちこちに見える。

その中には謎のマシン……インベードアーマーに乗っている者もいた。

 

「マジで何なんだ……?」

 

ハジメが必死に思考を巡らせている中、カービィが走ってハジメの元へとやって来た。

「ハジメ!大丈夫!?」

 

「……カービィ、一体あれは何なんだ?この世界の者の仕業とは思えない。」

 

「それも集まって話すから来て!」

 

「あ、あぁ!」

 

ハジメはカービィについて行くとローアの入り口付近の広間には全員が集まっていた。

 

ローアのモニターには少女姿の星の夢.EDと機械化されたトータス全土が映し出されている。

 

そしてマホロアがみんなが集まったのを確認すると

「今カラ状況説明を始めるヨォ。」

と、説明を始めることにしたのだった。





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67話『説明と暴走の天使』

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マホロアはみんなが集まったのを確認すると

「今カラ状況説明を始めるヨォ。」と言った。

 

そしてスージーがマホロアの隣に立って共に説明を始める。

 

「まずその前に、昨日のワタクシの自己紹介の説明から入らせていただきます。昨日、ワタクシは『ハルトマンワークスカンパニー』の社長秘書を務めていると言いましたが、かつてポップスターを侵略した時にアレと共に壊滅した筈でした。」

 

「そもそもそのハルトなんちゃらとやらは何を目的にどう侵略したんだ?」

ポップスターを侵略したと言うことはカービィと一度は敵対したと言うことを察したハジメは警戒を高めて質問をする。

 

「かつて我が社はマザーコンピューター星の夢によって資源が豊かな星の全資源の採取、そして機械化を行っていました。そして星の夢が探し当てたとても資源豊かな星、ポップスターを現地採用を含んだ約86万人の機械化した社員と共にゲンジュウミ……現地人を機械化、そして資源の採取をしようとしました。しかしカービィさんによって暴走した星の夢は破壊され、それは阻止されました。……ワタクシはその時にある方を助けてもらったのでその恩を返す為にここに来たので警戒を解いてください。」

 

「……わかった。」

 

「ここカラはボクが説明させてもらうヨォ。今、ここに映っているのが全宇宙を機械化した張本人、星の夢ダヨォ。」

 

「えっ!でも星の夢はボクが破壊した筈だよ!?」

 

「だけどナゼかこの世界にたどり着いて以前よりパワーアップしてるみたいダヨォ。」

 

「だったらそいつを倒せばいいんだな?」

 

「ウン、だけどこの星、トータスもエリアロックがされていて各地のボスを順番に倒して行かないとソイツのところには行けないみたいダヨォ。」

 

マホロアはパネルを操作するとズラーっと地名が現れる。

 

エリア1『機械都市ハイリヒ』

エリア2『水中都市メルジーネ』

エリア3『開発都市アンカジ』

エリア4『人工樹海ファアルゲン』

エリア5『氷炎都市ヘルシャー』

エリア6『旧神代都市ラウス』

エリア7『新魔領都市バイア』

 

「順番に、か。なかなか面倒なことをしてくれるな。……あれは!」

そう言いながらメタナイトがローアから見た外の景色は中心の球体の機械から天に向かって機械のアーム?が伸びると神の使徒が天から下ろされ機械化されていく。

 

立ち向かう使徒や逃げ出す使徒などバラバラだが、逃げ出した使徒はエリアロックによって強制的にエリア1へと移動……閉じ込められたのだった。

 

「……このままじゃ食べ物も機械化されてミンナやられちゃうヨォ!」

 

「ボクはやるよ!」

 

「カービィ…!だったら俺もやる。」

この状況でも一切の迷いもなく言い切ったカービィにハジメは変わらないなと思いながら最後まで付き合うことを決意した。

 

「俺もやる。まだ南雲には『救う』ってことを教えてもらってないからな。」

光輝にはしっかりハジメの言葉が響いていた。

だからこそ目を覚まさせて貰ったカービィとハジメを手伝わない訳にはいかなかった。

 

「オレもだ。カービィを倒すのはオレ様だからな!あんな奴に負けないためにも手を貸してやる!」

デデデ大王にとってカービィはこの上ないライバルである。

そして同時に大切な仲間でもある。

そんなカービィに今まで助けられたことがあるデデデ大王はこの機会に借りを返すつもりもあって手を貸すことにした。

 

「大王様!ボクもやります!ボクたちワドルディは強くありませんが戦いのサポートはできますから!」

ワドルディは(あるじ)であるデデデ大王が戦うことを決意して、何より親友のカービィが戦うなら力になりたい。

そう思った。

たしかにワドルディは『スカキャラ』で何の力も持たない。

それでもワドルディはデデデ大王やカービィの力になりたかった。

故にワドルディも戦う。

 

 

「私も手を貸そう。(星の夢)には機械化された借りがある。今回はきっちり返させて貰うつもりだ。」

メタナイト、彼は孤高の剣士である。

そんな彼だが前回星の夢がポップスターに侵略して来た時に機械化、改造され手駒となってしまった。

その借りを返すためにもメタナイトはカービィたちと手を組むことにした。

 

「ボクもやるよ!」

「ハンマー、それを言うなら『ボクたち』でしょ?」

「そうだよ。ボクやハンマー、ビームも気持ちは同じだ。」

ソード、ドクター、ハンマー、ビーム。

スーパーカービィハンターズは四人それぞれ得意とする武器が違ったり、それぞれ性格や能力が少し違えど彼らは全員カービィであり、共に戦い抜いた大切な強い絆で結ばれた大切な仲間たちだ。

そんな彼らが力を合わせない理由など無いのである。

 

「アタシもやるわ!元々アタシはその(カービィに手を貸す)つもりで来たんだから!」

たしかにスージーはカービィに恩はあるがそこまでする理由は無かったた。

元々、カービィを助けるために異次元に行くのに力もを貸して欲しいとマホロアから頼まれたのでそれを完成させて終わりだと思っていた。

だが星の夢が関係していると知って気が変わった。

なんとしてでも星の夢を止めなければ……アイツ(ハルトマン)と同じような目に遭う者が現れる前に……とスージーはカービィと共に戦うことを決意した。

 

「ボクもやるヨォ!ダッテ……ボクとカービィはトモダチだから!」

マホロアはカービィを2度に渡って騙したにも関わらず最後には友達といってくれたカービィ。

そんなカービィを助けるためだけにここへやって来たのだ。

今度はちゃんとした友達としとカービィを手助けすることにしたのだ。

 

 

そして全員が星の夢と戦うことを決意した一方で全てのトータスの機械化されてない生物がエリア1に飛ばされて人々は大混乱に陥っていたのだった。




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68話『エリア1ー機械都市ハイリヒでの再会』

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エリア1ー機械都市ハイリヒ

 

 

 

そこには機械化されていない全てのトータスの魔人族以外の種族が集まり、とある種族……ハウリア族の説得によって一致団結して現状を維持している。

 

初めは従わない者も多かったがハウリア族による演説とハジメに鍛えられた後に更に磨き続けたハウリア族の力の差によってある程度纏まり、最終的に全員が力を合わせることにしたのである。

 

そして今、天から謎の船(ローア)がこちらに向かって来て警戒が強まっていたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それじゃあここからはエリアロックもあるカラ歩きダヨォ。」

どうやら上空もエリアロックの範囲内らしく仕方がなくエリア1へ一行は降りることとなった。

 

そこへ(ハジメたちからしても)猛スピードでやってくる軍団が一つ。

 

「「「「「「「「「「

「ボスーー!姉御ーー!」

」」」」」」」」」

 

「父様!?父様たちがどうしてここに?」

「マホロアが言ってたエリアロックって奴でここに強制的に移動させられたんだろ。」

 

「な、なるほど〜」

 

てっきり樹海にいると思ってたシアはそう言うがすぐにハジメの言葉を聞いて納得した。

 

「ボス!姉御!それにシアもよくぞご無事で!我々は一日たりともボスや姉御のことを忘れたことは……」「そう言うのはいい。現状を教えろ。」

ハウリア族族長のカムが代表して言葉を並べるがそれどころでは無いのでハジメが言葉を遮る。

 

「我々ハウリア族はここにいる全ての種族を纏め、一致団結して戦線を維持し安全地帯をある程度確保しています!」

 

「わかった。俺たちはここを突破するのが目的だ。俺たちは安全地帯の状況を把握してから戦線へ向かう。それまでは任せたぞカム。」

 

「さ、Sir、yes、sir!!」

 

「それと天之川わかってると思うが……」

「あぁ。俺だって何も学んで無い訳じゃ無い。無闇に手を伸ばしたりはしないさ。俺に救えるのは限度があるからな。」

 

「言うようになったじゃねぇか。期待はしているが調子には乗るなよ。」

 

「あぁ!」

 

「それじゃあ安全地帯へ向かうか。」

と、ハジメたちが歩き出していると遠くからまたもや誰か2人が走って来ている。

 

今度もそこそこ速いスピードでやって来ている。

 

「ハジメくーん!」

 

「白崎……ってことは答えが出たんだな。」

答えが出ずに此処に来ると言うことは告白も成功しないので香織にとって意味のないことだからである。

 

よって、ハジメは答えが出たと断定し、足を止めた。

 

「……ハジメ殿。我々は先に安全地帯へ向かう。」

メタナイトは察しがついたのでハジメへそう言った。

 

「わかった。天之川以外は行っていいぞ。」

 

「俺もか?」

「あぁ。八重樫も白崎と一緒に来てるんだ。何か言うことでもあるだろうな。」

 

「そうか……」

光輝はトータスに来る前の自身の行いを振り返って見て自分は変われただろうか?と自問する。

 

 

少し考えても答えは出ない。

もしかしたら変われたのかもしれない。

だけど調子には乗らない。

乗ったら逆戻りだからだ。

 

そう気を引き締める光輝だった。

 

やがて香織と雫がハジメと光輝の前までやって来た。

 

「答えは出たか白崎?」

ハジメは香織にそう聞いた。

 

「うん!あれからいっぱい悩んではっきりしたよ。」

香織は深呼吸をして息を整えてはっきり告げた。

 

「私は今のハジメくんのことが好きです!……たしかに私は奈落に落ちる前のハジメくんも好きだけど、ハジメくんだって変わったのには理由があるんだから……って私は変わったハジメくん受け入れてから気持ちがはっきりしたの!どんなに変わっても私はハジメくんのことが好きだって!」

 

香織の表情には、真剣さと今度こそ一歩も引かないという決意が宿っていた。

 

ハジメの隣でそれを聞いている光輝は少し胸の中もやもやしながらも自分の嫉妬気持ちに気づいた。

そして光輝は香織への気持ちに諦めをつけた。

 

一方で香織の隣で告白を聞いていながらも光輝の暴走を心配していた雫だが改心する前の光輝なら「一体香織に何をしたんだ!」と言って事実を認めなかっただろう光輝が告白を納得している顔を見て光輝の成長を嬉しく思っていた。

 

 

「本当に俺でいいのか?」

ハジメはどちらかと言うと香織が前の自分のことが好きで自らハジメを振るか決心がつかずでハジメ自身が振るかのどちらかだと高を括っていたので動揺してつい聞き返してしまった。

 

「うん、何回でも言うよ!私は今のハジメくんのことが好きです!」

聞き返しても揺らがない決意。

それに以前、はっきりして尚、ハジメの事が好きならその想いに応えると約束しているのだ。

ハジメが香織を振る理由など何処にも無かった。

 

「俺も……白崎のことが好きだ。……俺には大切な仲間(家族)がいるがそれでもいいのか?」

 

「ハジメくんに大切な人(家族)がいるのに、それでも他の人たち(ルティや光輝)も傍にいて、ハジメくんがそれを許してる。なら、恋人に私がいても問題ないよね?だって、ハジメくんを想う気持ちは……誰にも負けてないから!」

 

そう言って、香織は炎すら宿っているのではと思う程強い眼差しをハジメに向けた。

 

「わかった。……不束者ですがよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくねハジメくん!」

 

無事、告白が成功した香織は満面の笑みをハジメに向けるのだった。




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69話『忘れていた能力』


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今回はステータス回でもあります。

ウサギ(シア)勇者(光輝)がバグった。



 

一方で安全地帯に移動したカービィたち。

そこでは昼食を一般人たちが食べていたのだが一人一人の量はお世辞でも多いとは言えない程である。

 

だがそれもそうだ。

ここには機械化されていない全てのトータスの魔人族以外の種族が集まっている。

 

愛子先生もこのエリアにいるだろうがそれでも食料の生産が追いついていないのだろう。

 

安全地帯を一通り歩いて周り終えるとハジメと光輝と香織と雫がやって来た。

 

そしてハジメは香織と恋人になったらしくメタナイトは祝辞を述べた。

 

「それにしてもあの光輝がまともになってて私は嬉しいわ。」

雫は嬉しそうにそう呟いたがそれは完全に親目線であった。

 

メタナイトが安全地帯の現状を四人に伝え、数分話し合った結果、これから戦線に向かうことが決定した。

 

「一度戦力を確認しておきたい。ステータスプレートを出してくれ。」

と、ハジメの声でステータスを確認することにした。

 

 

全員のステータスはこんな感じである。

 

============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:58000[+58000]

体力:68000[+68000]

耐性:58000[+58000]

敏捷:68000[+68000]

魔力:80000[+80000]

魔耐:76000[+76000]

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・再生魔法・言語理解・無限属性魔法[+銃弾(バレット)奇跡弾(ミラクルビーム)]

============================

 

============================

カービィ(ポポポ) 年齢不明 性別不明 レベル:800

天職:星の戦士

筋力:400000

体力:400000

耐性:80000

敏捷:400000

魔力:80000

魔耐:80000

技能:言語理解・コピー能力[+ビーム][+カッター][+レーザー][+ファイア][+バーニング][+アイス][+フリーズ][+スパーク][+ニードル][+ストーン][+ホイール][+トルネード][+ボール][+バックドロップ][+スロウ][+ソード][+パラソル][+ハンマー][+ユーフォー][+マイク][+ライト][+スリープ][+クラッシュ][+ボム][+ニンジャ][+ウィング][+ヨーヨー][+プラズマ][+ミラー][+ファイター][+スープレックス][+ジェット][+コピー][+コック][+ペイント][+エンジェル][+ミサイル][+スマブラ][+マジック][+ミニマム][+バルーン][+アニマル][+バブル][+メタル][+ゴースト][+リーフ][+ウィップ][+ウォーター][+スピア][+ビートル][+ベル][+サーカス][+スナイパー][+ポイズン][+ドクター][+エスパー][+フェスティバル][+アーティスト] [+スパイダー][+スティック]・コピー能力ミックス[+バーニングバーニング][+バーニングアイス][+バーニングスパーク][+バーニングストーン][+バーニングニードル][+バーニングカッター][+バーニングボム]][+アイスアイス][+アイススパーク][+アイスストーン][+アイスニードル][+アイスカッター][+アイスボム][+スパークスパーク][+スパークストーン][+スパークニードル][+スパークカッター][+スパークボム][+ストーンストーン][+ストーンニードル][+ストーンカッター][+ストーンボム][+ニードルニードル][+ニードルカッター][+ニードルボム][+カッターカッター][+カッターボム][+ボムボム]・属性ミックス[+ファイアソード][+アイスソード][+サンダーソード][+アイスボム][+サンダーボム]・スーパー能力[+ウルトラソード][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+スノーボウル][+ギガトンハンマー][+ビックバン]・フレンズ能力・武具召喚[+スターロッド][+虹の剣][+スターシップ] [+ラブラブステッキ][+マスターソード][+トリプルスター][+ティンクルスターアライズ][+プラチナソード&プラチナヘルム][+スターライトソード&スターライトヘルム]・神代能力[+クリエイト][+グラビティ][+コズミック][+リバイブ]

============================

 

============================

レムユエ 323歳 女 レベル:???

天職:神子

筋力:10000[+10000]

体力:25000[+25000]

耐性:20000[+20000]

敏捷:15000[+15000]

魔力:1000000[+1000000]

魔耐:1000000[+1000000]

技能:自動再生[+痛覚操作][+痛覚無効]・全属性適性[+魔力消費超減少]・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・超高速魔力回復・生成魔法・重力魔法・再生魔法・無限属性魔法[+蒼天龍嵐(ドラゴストーム)

============================

 

============================

シア・ハウリア 16歳 女 レベル:100+α

天職:占術師

筋力:35000[+35000] [+身体超強化最大1000000]

体力:35000[+35000] [+身体超強化最大1000000]

耐性:35000[+35000] [+身体超強化最大1000000]

敏捷:45000[+45000] [+身体超強化最大1000000]

魔力:500000[+500000]

魔耐:500000[+500000]

未来視[+自動発動][+仮定未来][+天啓視]・魔力操作[+身体超強化(未知数)][+部分強化][+変換効率超上昇(未知数)][+集中強化]・重力魔法・再生魔法・無限属性魔法[+巨槌(ギガトン)粉砕(クラッシャー)

============================

 

============================

ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:???

天職:守護者

筋力:100000[+100000] [+竜化状態100000]

体力:120000[+120000]  [+竜化状態100000]

耐性:120000[+120000]  [+竜化状態100000]

敏捷:80000[+80000] [+竜化状態160000]

魔力:320000[+320000]

魔耐:128000[+128000]

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法・無限属性魔法[+吹雪(スノー)吐息(ブレス)

============================

 

============================

ルティ 17歳 男 レベル:100+α

天職:魔術師

筋力:70000[+70000]

体力:70000[+70000]

耐性:150000[+150000]

敏捷:100000[+100000]

魔力:500000[+500000]

魔耐:500000[+500000]

技能:言語理解・魔力操作・虚無魔法[+ウルトラソード][+ギガトンスノーハンマー][+ドラゴストーム][+ミラクルビーム][+ キルニードルワープ][+ワープホールアタック][+リバースワールド][+ルティ砲][+ブラックホール][+アナザーディメンション]

============================

 

============================

天之河光輝 17歳 男

天職:勇者 レベル:100+α

天職:真の勇者 レベル:100

筋力:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

体力:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

耐性:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

敏捷:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

魔力:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

魔耐:100000[+10000] [+限界突破1000000・真限界突破×2]

技能:全属性超適正[+全属性効果超上昇][+超高速発動][+詠唱破棄]・全属性超耐性[+全属性効果超上昇][+魔法半減]・物理超耐性[+即全回復][+物理半減]・複合魔法[+全属性複合]・剣術[+魔法剣術]・剛力[+豪力][+怪力]・縮地[+疾縮][+瞬歩]・先読[+仮定未来視]・超高速魔力回復[+魔力即全回復]・気配感知[+気配探知][+気配察知]・魔力感知[+魔力探知][+魔力察知]・限界突破[+真限界突破]・言語理解[+自動翻訳] ・無限属性魔法[+(ウルトラ)(ソード)

============================

 

==============================

マホロア 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:魔術師

筋力:1000 [+ホロウ・クラウン100000]

体力:1000

耐性:1000 [+ホロウ・クラウン100000]

敏捷:10000 [+ホロウクラウン100000]

魔力:10000 [+ホロウ・クラウン♾]

魔耐:1000 [+ホロウ・クラウン100000]

技能:言語理解・詐術・機械操作・『ホロウ・クラウン(潜在能力発揮)』[+スーパー能力][+能力同時使用][+ブラックホール][+時空切断][+時空操作][+結界][+ローア召喚]

==============================

 

==============================

デデデ 年齢不明 男 レベル:10

天職:支配者

筋力:10000 [+マスクドデデデ100000] [×マッチョオブデデデ10]

体力:10000

耐性:1000 [+マスクドデデデ100000] [×マッチョオブデデデ10]

敏捷:10000 [+マスクドデデデ100000]

魔力:1000

魔耐:1000 [+マスクドデデデ100000] [×マッチョオブデデデ10]

技能:言語理解・槌術[+火炎槌][+友情槌]・マスクドデデデ[+斧術][+ミサイルハンマー][+がんばりすいこみ]・マッチョオブデデデ[+筋肉強化]・威圧・大いなる(大王の)君主(プライド)(体力一割以下で発動)[+根性(未知数)][+技能昇華Ⅴ][+全ステータス強化Ⅴ]

==============================

 

==============================

ワドルディ 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:なし

筋力:200

体力:100

耐性:100 [+タフネス化♾]

敏捷:100

魔力:1000000

魔耐:100 [+タフネス化♾]

技能:言語理解・同族の絆(同族の能力使用可能)[+槍術][+傘術][+集団戦法][+タフネス化]

==============================

 

==============================

メタナイト 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:星の戦士

筋力:100000

体力:1000

耐性:1000

敏捷:100000

魔力:10000

魔耐:1000

技能:言語理解・剣術・分身(未知数)

==============================

 

==============================

スージー 年齢不明 女 レベル:10

天職:秘書

筋力:500 [+リレインバー100000]

体力:10000

耐性:500 [+リレインバー1000000]

敏捷:500 [+リレインバー100000]

魔力:10000

魔耐:500 [+リレインバー1000000]

技能:言語理解・機械生成・機械操作[+リレインバー]・銃術[+機械化]

==============================

 

==============================

カービィ(ドクター) 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:ハンター

筋力:5800

体力:7500

耐性:1000

敏捷:1000

魔力:7750

魔耐:1000

技能:言語理解・薬物生成[+薬物実験][+薬物戦闘]・医療技術[+医療戦闘]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ] ・武具召喚[+プラチナヒールグラス&プラチナヒールベール][+スターライトヒールグラス&スターライトヒールベール]

==============================

 

==============================

カービィ(ハンマー) 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:ハンター

筋力:9500

体力:8450

耐性:1000

敏捷:500

魔力:3550

魔耐:1000

技能:言語理解・槌術[+火炎槌]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ]・武具召喚[+プラチナヘビィハンマー&プラチナヘビィウォーハット][+スターライトハンマー&スターライトウォーハット]

==============================

 

==============================

カービィ(ビーム) 年齢不明 性別不明 レベル:10

天職:ハンター

筋力:5300

体力:6400

耐性:1000

敏捷:1000

魔力:5400

魔耐:1000

技能:言語理解・雷魔法・時間魔法[+タイムビーム]・蘇生魔法[+ふっかつのじゅもん]・友情魔法[+フレンドメテオ]・武具召喚[+プラチナマジックロッド&プラチナマジックハット][+スターライトロッド&スターライトハット]

==============================

 

==============================

ミレディ・ライセン 年齢不明 女 レベル:100+α

天職:解放者

筋力:10000 [+ゴーレム化100000]

体力:1000000

耐性:10000 [+ゴーレム化1000000]

敏捷:1000000 [-ゴーレム化500000]

魔力:1000000

魔耐:10000 [+ゴーレム化1000000]

技能:ゴーレム化・生成魔法・重力魔法・空間魔法・再生魔法・魂魄魔法・昇華魔法・変成魔法・概念魔法[+神殺し]

==============================

 

==============================

白崎香織 17歳 女 レベル:100+α

天職:治癒師

筋力:60000

体力:60000

耐性:60000

敏捷:60000

魔力:60000

魔耐:60000

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解・分解能力・全属性適性・複合魔法

==============================

 

==============================

八重樫雫 17歳 女 レベル:100+α

天職:剣士

筋力:65000

体力:76000

耐性:52000

敏捷:148000

魔力:58000

魔耐:58000

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子]・縮地[+爆縮地][+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読[+投影]・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解

==============================

 

 

 

 

 

ハジメは全員のステータスを眺めていつのまにかカービィのコピー能力が増えていて驚いた。

メンバーのステータスはハジメが感覚麻痺している……と言うよりは大半のメンバーが感覚麻痺をしているようなものなのでみんな大して驚いてはいない。

「そう言えばカービィ、新しいコピー能力が増えてたがいつ増えたんだ?」

 

「新しい能力?もしかしてコピー能力リバイブのこと?」

 

「あぁ。」

 

「メルジーネ遺跡の魔法陣で覚えたよ。そう言えば見せてなかったね。コピー能力リバイブ!」

カービィがコピー能力リバイブを発動すると服装はシスターが着る様な修道服の白バージョン……と、腰より下はウェディングドレスの様な格好……で白で統一された服装となっている。

 

「えっとね、この能力は回復させることができるみたいだよ!試してみるね。リバイブ!」

 

カービィは地面に向かって回復をすると数秒間だけ機械化が戻ったが数秒後に自動で機械化されてしまった。

 

「いずれ役に立ちそうな能力だな。……あとは実践で能力を把握する。戦線に向かうぞ!」

 

ハジメたちはついに戦線へ向かうことにしたのだった。




ステータスって書かなきゃ忘れちゃうので載せましたがだんだん頭の中でステータスがインフレしていきますがなんとか自重しました。

ま、まぁ星の夢なんて無限ですから大丈夫(震え声)



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70話『戦線に立ちはだかるモノ』

感想ありがとうございます!

それではどうぞ!


 

雫に戦線を案内してもらうとそこにはハルトワーカーズが銃で一方的な遠距離攻撃……それを耐えるハウリア族以外の者はインベードアーマーに乗ったハルトワーカーズによって攻撃……そしてその間にハウリア族がなんとか次々と量産されていく(ハルトワーカーズたち)を蹴散らして戦線を維持しているギリギリな光景が広がっていた。

 

「いくよみんな!」

居ても立ってもいられなくなったカービィは真っ先に飛び出した。

 

「コピー能力クリエイト!ソードビーム!」

 

カービィはコピー能力ソードの剣を大量に出現させ、同時に全ての剣からソードビームを発生させた。

 

すると奥から見覚えのある竜が機械化されていた。

 

「ん!あれって!」

 

「あぁ。なんでこんな所にいるか知らねぇがヒュドラだろうな。」

 

そう、出てきたのはハジメにとって忘れる筈もない。

最初にカービィを殺した七つ頭の竜、ヒュドラであった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!!!!!」」」」」」

 

ハジメやカービィ、レムユエを見て一度戦ったのを思い出したのか機械化されたヒュドラ……ヒュドラボーグは七つの頭の鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。

 

極光は瞬く間にカービィたちに迫る。

まるであの時の再現の様に。

 

「させるかぁっ!銃弾(バレット)奇跡弾(ミラクルビーム)!!」

ハジメはとっさにカービィの前に立ち塞がってミラクルビームの力が込められた銃弾を連発した。

 

その銃弾の一発一発はかなり強力だった。

しかし強化されたヒュドラボーグの前では極光が少し弱まっただけでかき消されてしまった。

 

「なにっ!?」

 

「ハジメ!私だって気持ちは同じ!蒼天龍嵐(ドラゴストーム)!」

 

「レ、レムユエ……。あぁそうだな。」

 

レムユエの蒼天龍嵐(ドラゴストーム)がヒュドラの極光とぶつかり合う。

 

「ボクたちも手伝うよ!」

カービィがドラゴストームでレムユエと力を合わせる。

 

「あぁ。南雲、俺はお前がその時どんな苦しい思いをしたか知らない。だが今は俺たちもいるだろ?」

光輝がヒュドラボーグに接近し、次々とダメージを与える。

 

「そうじゃな、レムユエとハジメの二人で背負いこむなんて水臭いぞ?」

ティオも竜化して火のブレスでレムユエとカービィと力を合わせる。

 

「そうですよ!僕たちはハジメさんたちの仲間ですから頼ってください!」

ルティもルティ砲でティオ、レムユエ、カービィと力を合わせる。

 

「カービィ、天之川、それにティオにルティも……。……そうだったな。俺たちは家族(大切な仲間)だったな!」

 

「ええいっ!!タイムビーム!皆今だよ!」

ビームの渾身のタイムビームが命中してヒュドラボーグは時間が止まった様に動きを止めた。

 

「ふん、ようやくオレ様の出番か。メタナイト、貴様も手を貸せ」

 

「わかった。私は君の部下ではないがこんな所で負けられないのでね」

 

「マッハトルネイド!」「ジャイアントデデデスイング!」

 

メタナイトが発生させた竜巻の中でデデデ大王がハンマーを振り回すことによってまるで台風が迫るが如くヒュドラボーグの機械装甲をボコボコにしていく。

 

「はぁぁぁっ!おにごろし火炎ハンマー!!」

そしてハンマーの渾身の一発が決まりヒュドラボーグは見事に破壊された。

 

 

「倒した……のか?」

 

「うん!」

 

 

すると何処からか例の音楽が聴こえてくる

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜』

 

すっかりこの音楽をハジメたちは忘れていたので不意に身体が音楽に合わせて動き出して戸惑うが「あぁそういえば踊ってたな」と思い出して納得し始める。

 

そして曲の謎の強制力でその場の全員の身体が勝手に踊りだした。

 

 

「お、おい南雲。どうなってるんだ!?」

 

「な、南雲くん?この踊り…恥ずかしいんだけど……」

 

「そう言うものだから諦めろ。体力や魔力とかは回復するぞ。」

 

 

『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「

「ハァィ!」

」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 




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71話『ケンカ?』

お待たせしました。
遅れてすいません!

あれからいろいろ考えた結果、サクサクとエリアを進める方針で行きます。
(なお投稿速度)

実際小説版のカービィでも1日で侵略阻止したんだから攻略速度なんてそんなものだよね(震え声)



【お知らせ!】

エリア4が樹海の迷宮に当たりますので次回かその次、もしくは更にその次の話の投稿時点でアンケートの締め切りをさせていただきます。
(要するにそろそろ締め切ります)
まだ投票していない方は是非お願いします。


 

 

いつものダンスを踊ったあの後、エリア2が解放された。

 …………のだが。

 

「エリア2は一面海か」

 ここで発生する問題点が以前の大迷宮攻略の様に潜水艇を使える人数では無いと言うことだ。

 と、なるとやはり頼りになるのはカービィ。

 コピー能力コズミックを使って貰えば海を蒸発させて何とかなるだろう。と言う結論に辿り着いて海は僅かな時間で蒸発し、エリアボスらしき機械化されたクリオネもどきを倒すだけの簡単なお仕事。

 

 その光景を目にした当事者H(ハジメ)はこう語った。

 

「エリア2?あぁ、相手が悪かったな。あいつは(都合の)良い奴だったよ」

 

 

「……と、当事者H(ハジメ)は供述しており……」

 

「いや、何俺のセリフを捏造してるんだ、しらさ……香織?」

 実際、カービィによって海が蒸発し、エリアボスを瞬殺(リンチ)したのは事実である。

 ちなみにハジメが香織を呼び捨てに変えたのは「せっかく恋人になったのにハジメくんは呼び捨てじゃないなんてよそよそしいよ?」と言う香織の積極的な態度によるものだ。

 

 

 

 

 

エリア3『開発都市アンカジ』

 

 以前のアンカジ公国では赤銅色の砂が舞う中、中立商業都市フューレンを超える外壁に囲まれた乳白色の都だった。

 

 しかし現在はハルトワーカーズが徘徊している剛鉄の巨大な城に変わり果てていた。

 

「これは都市と言うより城塞じゃねぇか……。もしかしてこの中に都市があるのか?」

 

「全部鉄の塊なんてデデデ大王のお城よりも趣味が悪いよ!」

 

「カービィ!あの鉄の塊とオレ様の立派なデデデ城を比べるなんて馬鹿にしてるのか?今日と言う日こそ決着をつけてやる!」

 

「だってデデデ大王、趣味の悪い自画像を飾ってたりしてるじゃん!」

 

「何ぃ!?オレ様の城だけでなくオレ様まで愚弄するか!許さんぞ!」

 

 デデデ大王とカービィが喧嘩を始めるがそこに巡回しているハルトワーカーズがやって来た。

 

「シンニュウシャハッケン!タダチニハイジョシマ……」

 

「「邪魔するな(じゃましないで)!!」」

 

一撃で倒される哀れなハルトワーカーズだがカービィとデデデ大王は止まらない。

 

次々とやっ巡回して来るハルトワーカーズが被害者となっていくのだった。

 

 

 

 

____________________

__________

_____

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬ……こうなったらこの趣味の悪い城にいる親玉をどちらが先に倒すか勝負だカービィ!」

 

「受けて立つよデデデ大王!コピー能力ジェット!ジェットダッシュ!」

 

「くっ、待て!(カービィめ出すコピー能力を間違えたな。コピー能力ジェットは真っ直ぐに行くのは速いが曲がりにくい能力だ。そして場所は城……曲がり角やドアが無い筈がない。この勝負、オレ様が勝つ!)」

 

 

 

 

 

「まったく……いつまでデデデ大王さんとケンカしてるのソード。メタナイトさん、何とかならない?」

 

「諦めろドクター。それにあれはいつものことだ。デデデ大王とソードは友でありライバル関係だからな」

 

 

 

「いつものことなのか……」とハジメたちは困惑するのだった。




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72話『城塞攻略(カービィ視点)』

お待たせしました!

久しぶりのカービィ視点……!
それではどうぞ!


 

 

「よーし、デデデ大王には負けないぞ!」

 

 そう言ってピンク髪の幼女(カービィ)はゴーグルの付いたジェット機の冠を頭にジェット機の翼が背に付いたコピー能力ジェットで猛スピードで城を飛び抜ける。

 

 城内を巡回しているハルトワーカーズを無視してジェットで進んで行くと大きな扉があった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「おっとっと。やっぱりジェットは止まりにくいなぁ」

 

 一度コピー能力を解除して扉の前に立ったボクはそのまま扉へと入って行った。

 

 入った部屋の中は緑色の機械の光で染まっている部屋だった。

 

「あれ? 何もない……うーん、部屋間違えたのかなぁ」

 

 そう思って部屋の出口へ向かうと……

 

『侵入者ハッケン! 侵入者ハッケン! ホログラフ防衛システムズ、起動シマス!』

 

 ほろぐらなんとかが起動するって聞こえると四つの四角がくるくる回ってる何かが現れて四つの四角がもっとぐるぐる回るとボクが見たことのあるやつらが出てきた。

 

「クラッコのホログラフ(偽物)に、二体のスフィアローパーのホログラフ(偽物)、アイスドラゴンのホログラフ(偽物)、それにフロラルドの蛇(トグ・ロ・ガラーガ)ホログラフ(偽物)まで……」

 

 五体の偽物はボクを見るといきなり襲いかかってきた。

 

「だったらコピー能力U.F.O.(ユーフォー)!」

 

 ボクはコピー能力U.F.O.(ユーフォー)を発動すると服が変化して腰の辺りにU.F.O.(ユーフォー)の金色円盤がスカートになった。

 

 このコピー能力なら素早く飛べて攻撃もできる!

 

「みかくにんひこう! かくさんねっせんビームほう!」

 

 みかくにんひこうをすると偽物たちはボクを一瞬見失ってその隙にかくさんねっせんビームほうを手から撃った。

 

 二体のスフィアローパーのホログラフ(偽物)は倒したけど、姿だけじゃなくてタフさまで本物と同じ偽物みたいだ。

 

「でも同じ手は通じないよね……。だったらコピー能力ポイズン!」

 

 ボクはコピー能力ポイズンを発動するといつもの毒々しい冠は無く、代わりにドクロマークのついた毒々しい色の服を着ていた。

 

 元になったクラッコとアイスドラゴンは水をたくさん使うから毒で溶かしちゃえば倒せるかなと思ってこのコピー能力を選んだ。

 

「べたべたポイズン! どくどくのきり!」

 

 ボクの口から毒が発射されて霧になるとボクの予想通りクラッコとアイスドラゴンの偽物は夏のアイスの様に溶けた。

 

「あとはフロラルドの蛇(トグ・ロ・ガラーガ)ホログラフ(偽物)だけ……!」

 

 たしか元になったあの蛇は頭以外が硬くてなかなか攻撃が効かなかった気がする!

 

「だったら……硬さには硬さだ! コピー能力ベル!」

 

 ボクがコピー能力ベルを発動するとベルの冠を頭に、金色のピンクの星の付いたワンピースを着ていた。

 

 ツインティンカーを早速撃とうと思ったボクは奈落に落ちる前にメルドに狭い場所で使う技じゃないって言われてたことを思い出して別の技を使うことにした。

 

「そっこうディンフィナーレ!」

 

 ジャンプして両手のベルをフロラルドの蛇(トグ・ロ・ガラーガ)ホログラフ(偽物)の頭にぶつけると偽物は倒れた。

 

 ちょうどボクが出した毒霧も晴れるといつの間にか奥に続く扉が出ていたから入ってみることにした。

 




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