シャンフロ二次、GH:C。 (傘山)
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切って落とされるのは、火蓋

主人公の思考などを始めとして至らぬ所は多いと思いますが、見逃してください。


 サンラクによるオルケストラ配信の数日後のこと。その日の学校を終え、彼がフルダイブをしようとする直前。そのお誘いと言う名の宣戦布告は届いた。

 

 

件名:ゲームのお誘い

差出人:鉛筆戦士

宛先:サンラク、モドルカッツォ

本文:ちょっと暇だしGH:Cやろうぜ

 

 

件名:Re:ゲームのお誘い

差出人:サンラク

宛先:鉛筆戦士、モドルカッツォ

本文:さてはまた何か頭おかしい自爆方法思いついたなテメー。いつだ?

 

 

件名:Re:ゲームのお誘い

差出人:モドルカッツォ

宛先:鉛筆戦士、サンラク

本文:ストレス溜まったから発散させろっていう裏の考えが見えるわー。で、いつ??

 

 

件名:Re:Re:ゲームのお誘い

差出人:鉛筆戦士

宛先:サンラク、モドルカッツォ

本文:ちょっとね……………明日の深夜にGH:C集合ね

 

 

「せめて否定しろよなあの野郎」

 

「どうかしたんですわ?」

 

「いや腹黒自爆野郎が悪巧みしてる気がしただけ」

 

「割と問題ですわ!?」

 

「大丈夫だろ、今回は内ゲバだし」

 

「言葉の意味はあんまり分からないけど相手は大体分かったですわ………」

 

「誰だと思うんだ?」

 

「受けの人と赤い人ですわ!!」

 

「おぉ、正解」

 

「サンラクさんが性もないタイプの笑い顔してたですわ!」

 

「なんだとこのやろう」

 

 シャンフロにログインしたサンラクはエムルを軽くモフりながら翌日へと思いを馳せる。シャンフロなら兎も角、態々GH:Cを選んだ花形モデルの企みを警戒しながら。

 

 

 

◇◇◇

 

〜翌日〜

 

 

「やぁやぁ二人共! 覚悟は決まったかい?」

 

「どうせ自爆するだろうから必要ないかなーって」

 

「ボコられる花形モデルっていう画像を世に送り出す準備はできたぜ」

 

「今の合成音声作って妹ちゃんに送ってやろう」

 

「おいやめろせめて録音だろ!!」

 

「言ったのは事実じゃん」

 

「早く始めようか?? 俺明日大会なんだよ」

 

「よく来れたねぇ」

 

 深夜3時、約束通りGH:Cに集合した彼らはいつもどおりの茶番を軽くしあった後…………特に真剣な雰囲気になることもなくキャラクター選択に移行した。

 

「通話とかは?」

 

「切るに決まってんじゃん」

 

「ペンシルゴンの悪巧みが漏れたら困るからな」

 

「したらしたで利用してきそうだけどね」

 

「じゃあ戦場でな」

 

「おっけー」「ボコボコにしてあげようサンラク」

 

 全員がキャラクター選択画面へと移動し、会話が途切れる。

 今回ペンシルゴンが選択した勝負方法は、トライアングル・トリニティ“改”。

 ついぞ最近、サンラ…………顔隠しとアメリ…………マスクド般若が対戦したゲーム形式の改良版であり、あのときは総帥や戦乙女だった一枠がプレイヤーになった事実上の3on3on3。

 何気なく前述の試合の録画を見ていたペンシルゴンが思いついてしまった悪巧みを外道二人に試すための場だ。

 

・ペンシルゴンサイド

「んふふ………二人はどう言う反応をするか、楽しみだねぇ」

 

・サンラクサイド

「もっかい星天再現やるか」

 

・カッツォサイド

「え、今日の大会延期!? よっしゃあ!!」

 

 現在、日曜日の朝の3時。存分に対戦相手をボコボコにしようとそれぞれの覚悟は決まった。はず。

 

 

 

 

「ふぅん、鉛筆はトップディスプレイの……クロックファイア、ショーウィンドウね。クロックファイアは前見たから問題ないとして………ショーウィンドウってどんなキャラだったっけな」

 

 少し迷った結果、ミーティアスとランゾウ、カースドプリズンを選択したサンラクは、ペンシルゴンの悪巧みを楽しみにしつつも想像し対策を立てていく。

 

「カッツォは普通に殴ってくるだろうしキャラ選は注意しなくても大丈夫だろ」

 

 …………ちなみにだが当のカッツォはサンラクの予想通りオールファイターでダスト、Dr.サンダルフォン、アムドラヴァを選択していた。

 

「っし…………あの配信の八つ当たりだな」

 

 自分で言っておきながらもダメージを受けたサンラクは何とか立ち直りつつ、ヴィランのメリットの一つである先行行動30秒をカウントし始めたアイコンを見やる。

 

「鉛筆がディスプレイで行動開始してるってことは地の利なんかも大体取られるってことか…………だいぶクソゲーだな?」

 

 獰猛に笑った光るヒーローが、満を持したかのように戦場へと飛び出した。

 

 

 

 

 見つからない。それはもう見つからない。

 最初はペンシルゴンの望む座標か、爆発地点に行けばどちらかは見つかると思って適当に走っていたのだが、

 

「あんの野郎逃げに徹してやがんな??」

 

 いや、それならばペンシルゴンの野郎が見つからないのはまだ分かる。で、じゃあ凡庸魚類までも見つからないのは何事かと。

 

「ゲージが割と順当に溜まってきている………」

 

 ペンシルゴンかカッツォが起こしたらしい軽犯罪の後始末をしながら、走り回る。

 

「ありがとねー!」

 

「助かったわい」

 

「次は気をつけろよー」

 

 声援や感謝の声はありがたいけど多分君達、ペンシルゴンに駒にされるか後で俺の二次被害に合うかはしそうなんだよな。申し訳なくなってくるぜ。

 とはいえ、流石に不自然で住むようなレベルじゃない。既に俺が探し始めてから5分が計画しているのにも関わらず、爆発音すらないというのは流石におかしいだろう。あとさっき車を奪われたらしい人がいたし当確で逃げ回ってんな。

 

「チクショウ出てこいヘタレ共!!」

 

 叫べば出てくるだろ多分! なんか人の物を奪えない(ヒーロー)だけが徒歩で動き回ってたことに気付いてしまって腹立ってきたから脳筋作戦で行こう!! 飽きた!

 盛大に! 馬鹿にしよう!!

 

「外道自爆野郎と外道受け顔ケツ男が! ビビってんのかぁ!?」

 

「おおん!? チキンですかぁ!?」

 

 んんー?? そろそろ出てくる気がするぞぉー?

 

「ユニーク未だに自発してないってマジですかぁあ!?」

 

「大概汚れ系の花形モデルさん出てこいよぉ!!」

 

「ヒーロー要素ゼロかよ!」

 

「清濁併せ呑んでるだけですぅ!!」

 

 はい出てきた! やっぱ積極的に馬鹿にしよう作戦が一番だったようだな!

 

「みぃぃぃいつけたぁあああ!!!」

 

「うわっ!」「ホラー見たいな喋り方するよね」

 

 片方車乗ってて片方バイク乗ってんだけど俺徒歩だぞ!! 見つけたからには逃さねぇけどなぁ!

 

「死に晒せ!」

 

 先に狙うのはペンシルゴン。カッツォは臨戦態勢だから多分放っといても殴りに来る。

 奴との間にある障害物をゲージ技の光の道で空中を走ることで避け、放たれた音波攻撃を更に上へ飛ぶ事で回避する。

 この距離まで来た時点でペンシルゴンにできることはほとんどない。得意の話術や笑顔も種を知っている俺達には大体通用しない。

 

「速すぎっ!?」

 

「コレで金銀よか遅いらしいぞ!」

 

 あれコイツなんで最初っからダメージ受けて…………?

 

「なーんてね」

 

 戦場は「機械群」。前回からのルールの変更により総帥や戦乙女はいなくとも、敵モブたる機械達は存在する。

 そして、ソイツらから爆弾もどきを奪ってきたらしいペンシルゴンは。

 

「吹き飛べ☆」

 

 俺の攻撃を受ける直前に自分諸共吹き飛ばした。

 

「そんなもんじゃ死なね──うぐぉあ!?」

 

「私もぉ!?」

 

 その程度の攻撃では俺も奴も倒れない。

 吹き飛ばされつつも態勢を立て直した俺達を、それぞれに特効のある善と悪の弾丸が穿った。

 

「俺を無視して戦うのは違うかなって」

 

 善であり悪である悪魔憑きの男が戦線に参加した。

 何故か始まりの遅れた戦いの火蓋が今、切って落とされた。 



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笑う鉛筆、走るヒーロー、ボコる悪魔憑き

 遠距離からの攻撃でガリガリ削られて死ぬとかいうクソ展開を避けるため、一旦ペンシルゴンを放りだしてカッツォの元へと走る。

 

「くっ………対応早いんだよ!」

 

「俺相手に銃は悪手だよなぁ!?」

 

 ゲージ技を重ねて発動し、いくつかの走る道を確保、壁を蹴り光の道を蹴り、カッツォへと突っ走る。

 

「止まらない止まらなぁい!」

 

「ゲージ消費辛いなやっぱ!」

 

 カッツォとの距離が1メートル以内にまで詰めきった。当たった弾は2発。体力は残り7割ぐらい。

 超至近距離での戦闘開始に“見せかける”。

 

「銃捨てるのはもっと悪手だろうがぁ、よ!」

 

「くっ………相変わらずの挙動しやがって……!」

 

 この距離で銃を使っても意味がないと思ったのか、自身の得物を捨てて掴みかかってきたカッツォへと蹴りかかるフリをして、そのまま素通りする。

 

「これぞ自爆鉛筆秘技、すり抜けだぁ!!」

 

「早口頑張ってまで言う意味あるぅ!?」

 

 うるせーぞペンシルゴン、お前も似たような状況なら言うだろ。

 作り出した壁を蹴ることで180度の方向転換、銃を捨て隙を晒したカッツォへと蹴りかか─────え待ってお前なんでまだ持って

 

「ゴギョフ!?」

 

「偶々似たような銃を拾っただけだよね」

 

「ミスったぁぁあ!?」

 

 大体見越してあえて別の銃を投げ捨てるモーションを俺に見せたらしいカッツォが、コチラを見る素振りすらせずにヘッドショットを決めてきた。いや一発は防げる! 防いだ!!

 

「サンラク君に注意しててよ!?」

 

「いやいやペンシルゴン、逃がす訳ないじゃないか」

 

 投げ捨てたポンコツ銃を拾い、ペンシルゴンの乗る車を一瞬でパンクさせたらしいな。挙動がいつにも増してイカれてるんだが大丈夫かアレ。

 

「まだ1ラウンド目じゃんか! コッチは無害な解析系なんだから見逃してくれても!」

 

「いやいや自爆とか怖いからさ、なぁサンラク?」

 

 ペンシルゴンがカッツォへ話しかけているタイミングを狙ったが、全てを見透かしたようなタイミングでコチラへと振り向いた奴は当然のように発砲。

 

「流石に当たってやれねぇな……!」

 

 壁を蹴ることで跳躍、弾丸を避けることを意識すらせずに俺よりも高所を足で蹴り、壁のシミになれそうな速度で地面へと突っ込む。

 やっぱ高速機動は楽しいなぁ!!

 体を捻りながら頭よりも腕を全力で前に出し、バク転の要領で後ろへと飛ぶ。リアルなら腕の骨が折れるような速度だがココはゲームだ。ありえない速度のバク転とかしょっちゅうやってるし。

 

「下がったり近づいたり、気持ち悪……」

 

 ガチ目に引くのやめてくれない? 普通に傷つくんだけど。

 

「チッ」

 

 カッツォがゲージを使って打ってくるが、この挙動を予想して当てられるものなら当ててみ、ぐぉあぁ!?

 なんか当たったけど死んでないから実質ノーダメージ。ココは微妙に狭いせいで横への動きがしにくいから当たった。そういうことだ。

 バク転からの復帰、カッツォへと肉薄レベルまで近づいた。銃はウザいがこの距離なら!

 

「残り5割も残ってるからな! あと何ラウンド戦わせる気だ!?」

 

「まぁ私は8割残ってるけどね」

 

「俺はほぼ100」

 

 こっから減らすんだよクソが!

 余裕そうな表情を浮かべるカッツォに手を伸ばさなくとも手が届くその体を支柱に回転、軸足をむりやり動かす事でその慣性を回し蹴りに伝えきる。

 

「相変わらずキモい挙動しやがって……!」

 

 俺へと銃を打ちつつもバックステップで距離を取ろうとするカッツォへと更に詰める。

 で、お前の体力がなんだって!?

 

「教えてくれよケツ男先生がよぉ!!」

 

「その頭悪そうな名前で呼ぶのやめろ!」

 

 壁や光の道をも利用したボクシング的フットワーク。

 冷静なカッツォには通じないが、思いっきり蹴られたあとで体勢が崩れているタイミングなら狙いは定められなかろう!

 再度肉薄、ペンシルゴンが音波攻撃をしてくるが、アイツは後でボコれば良いので一旦無視。

 

「そろそろイーブンじゃあないかカツォソン君!」

 

「まだ8割だ変態挙動野郎!」

 

 ジャブ、逃げられた。ストレートと見せかけてのジャブ、逃げられた。フック、と見せかけての

 

「ジャパニーズ寝技ぁ!!」

 

 特に型とか覚えてないけどなんちゃってですらない何となくトレース! 即興というかもはや素人の喧嘩でよく見るやつだ!!

 カッツォの足と足の間に俺の足を滑り込ませ、首を掴みながら足を上手いこと蹴り飛ばしてやれば……………

 

「こぉぉけぇたぁぁぁなぁぁぁあ!?」

 

「まぁでも寝技は確実に俺のほうが上手い…………いや、まさかっ!?」

 

 その“まさか”だ銃野郎!

 寝技と言ったが寝技ではない。カッツォは転かすが俺はたったままで、更に言えばさっき体勢を崩させるために蹴り飛ばした俺の足は今、慣性によって俺を回している。

 

「ペンシルゴンと戯れてろ凡庸魚類!!」

 

 さっきからちょこちょこと攻撃してきやがってウザったいんだよアレ!!

 

「それでは一旦逃げまぁす⤴」

 

「うわキモ…………くっ……!」

 

「コッチ飛ばさないでよサンラク君!?」

 

 回し蹴りをカッツォの横腹に叩き込み、そのHPが6割程度まで削れたのを確認しながら俺は奴が落としていった銃を拾う。

 

「チッ、流石にキャラ武器は持っていったか……」

 

 ククク、ドンパチやっておるわ……………そのまま3割ぐらいまでHP減らしあってくれねぇかなぁ。無理か。

 

「俺も混ぜとけ!」

 

 残弾数は………0!? だから置いていったのかあの野郎!

 銃を捨て、より近くにいるカッツォの真後ろからシャラシャラと鈴を鳴り響かせながら走り込む。ただ、狙うのはペンシルゴン。

 カッツォの真横の壁を蹴り飛ばして地面と平行に走る。ペンシルゴンの背後に光の足場を作り出して、そこを起点に180度の方向転換。

 この目の端にあえて写りこみつつも攻撃はしないやつ、相手を混乱させるのに強いんだよな。使いやすい。

 

「吹き、飛べ!」

 

 ペンシルゴンが避けれないタイミングでの音波攻撃、更に蹴りの軌道に爆弾を挿し込んできたのが見える。

 

「それはさっき見た!」

 

 だからこそ蹴りの軌道中にも光の道を張ってある。爆弾と音波が当たる前には既に俺はそこにいない。

 光の道を指先で削るように蹴り、回転しながらも更に上へ! 現実なら絶対足が逝ってるがコレはゲームだ! ノーダメだ!!

 

「当たらないなぁぁぁあ!?」

 

「やっぱキツイよね…………なら!」

 

 ペンシルゴンが何かして…………ウルト!?

 今このタイミングで強制解析(ハックライズ)を使う意味は、理由はなんだ!?

 あり得るとしたら何かのアプデだが、それはないと思いたい。

 

「止まったネ?」

 

「嘘だろお前ぇぇえ!」

 

 意味のないウルトで牽制とか贅沢にもほどがあるだろうよ!

 引き伸ばされた思考の中、一瞬動きが止まった俺の体に音波が迫るのを感じる。いや別にココで当てられても痛打にはならんけど。

 

「うぼぉ!?」

 

 そして、お前らだけで楽しむなと言わんばかりにカッツォが銃を構えているのが見え────

 

塵は塵に(Dust to Dust)!!」

 

 悪魔憑きに取って最高の弾丸が装填され、狂ったクソテレビが頭上へと何かを投げた。

 

「なんでお前らは序盤で超必切るんだよ!!」

 

 マジで何なんだ!!!

 

 

 残り体力、4割。

 




次回で書きますがMs.プレイ・ディスプレイさんの超必は地味に効果を変えています。


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悪意を込めて決め台詞を叫べ

遅くなりまして申し訳ないです。サボってました。



 俺も作戦としてアメリア相手に序盤超必殺はやったけど、その時とは状況が違う。

 ウルトクリスタルは確かに7回目の超必殺の発動と同時に出現するが、ソレによる超必の発動抑止も俺に取っては意味はなく、特にペンシルゴンはウルトクリスタルなんて運ゲーに頼る気はない…………はず。

 つーかあの野郎何投げやがった!?

 

「個で勝てないのなら物量で勝てば良いのだよ君達ィ!」

 

 逃げるだけならばどうとでもなるとでも言うように、ペンシルゴンが手榴弾もどきで追手を妨害しつつ走り去る。いや、今注意すべきなのは奴だ!

 

「当てるだけで割合ダメージ入るとか最高じゃん」

 

「当てられなければ意味はない!」

 

 ぶっちゃけ、ペンシルゴンを気にしながらノリに乗っているらしいカッツォのウルトを防ぐのはキツイ。

 もっかい鬼ごっこをするのも願い下げだが、1基落されるよりかはマシだ。

 だが、ここでペンシルゴンの“強制解析”が意味を成した。

 

「物量ってそういう……………じゃまぁぁぁあ!!!」

 

 俺と対面するまでの間にペンシルゴンがしていたことは、爆弾の確保なんて緩いことじゃない。

 

「くっ………このゲームでトレインなんてするやついたんだ!?」

 

「トップディスプレイってそういうあれじゃねぇからぁぁぁぁぁ!!」

 

 口ではそう言っているものの(ウルトのために)銃を使えない分カッツォよりも俺の方が強い! じゃあ俺も逃げるわ不発してしまえ!ふはははは!!

 

「強制解析って、機械郡にはバレるらしいんだよね☆」

 

 さっきとは違う車に乗り、テヘペロを噛ましながら走り去っていく花形自爆野郎には殺意が……………まぁじ!?

 

「ウルト中に本気で銃を捨てるのか!」

 

「ステータス差があってもそう簡単には負けないよ、サンラク!!」

 

 最強の弾丸を装填してしまったがためにこの状況では使いにくくなってしまった銃を捨てたカッツォが軽々と機械群を飛び越え殴りかかってくる。

 いや理解はできるけど納得がいかねぇ! 俺なら確実に迷った挙げ句時間もウルトも無駄にするだろうと自分で考えてしまう所が特に納得いかねぇ!! 迷えよ!!

 

「くっ………!?」

 

 機械群の上からポンコツ銃でチクチク削ってくるの腹立つ。

 

「このまま削りきれそうだけど大丈夫かいサンラク!」

 

「遠距離から削ってんじゃねーよ、凡庸魚類ぃ!」

 

「誰が凡庸魚類だよ」

 

 ウザいだけで大したダメージにならないのは分かっているのか、焦ったような顔をしながらも飛び降りてきたカッツォに合わせるように飛び蹴り。

 保険として光の道を作っておくことで次へと繋げれば、

 

「遅い遅い!! 俺も!お前も!!」

 

「まだクライマックスじゃないんだよなぁ……」

 

 急に気の抜けたような声と顔をしたカッツォが指で(・・)弾丸を撃つ(・・・・・)ような構えを取った。

 

「え、マジ?」

 

「マジもマジ、まだ26秒だよ」

 

「うっっそだぁ!」

 

 アメリア戦での一回を真似とかマジ? 習得早すぎでは??

 

「右手は撃鉄、左手は弾倉………」

 

「お前まさかセリフまで……!?」

 

 ブラックなヒストリーになるやつだぞそれはお前…………

 γガンマ鯖秘伝、 最終手段ならぬ最終手弾(・・)! 左手を弾倉兼バレルに!右手を撃鉄に!雷管を直接ぶっ叩いて弾丸を叩き込む……………しかもお前それウルトの弾丸じゃねぇか反則だろ!!

 

シー・ヴィス・ベラム(戦いを望むのならば)パラ・ベラム(戦いに備えよ)!!」

 

「ぐぅ………」

 

 俺の体に灰色の弾丸が当たった。

 問題は肉体的ダメージじゃない。精神的ダメージだ。やめてくれマジで…………。おいまて魚類。お前何そのにやけづら…………

 

「審判の刻だ、神に祈るか? 悪魔に縋るか? (Dust)(to)塵に(Dust)、お前の答えは一つだけだ……ってね」

 

 条件が達成され、俺に食い込んだ二発の弾丸が光を放ち………

 

 膨れ上がった光は柱の如く立ち登り、光の十字架を生み出して弾けた。

 

 マジで普通にアレが全国放送だってことが俺の心に罅を入れる………テンションの産物だったんです許して………。

 

「うーわまだ生きてる、ゴキブリじゃん」

 

「マジかぁ………まだ戦わせるのか………」

 

 ミーティアスの残り体力は1割を切っている。だが、生き残った。

 えぇ…………このまま戦ってもただボコられて死ぬだけだからいっそリフレッシュさせてほしかった。

 

 失意の底であっても戦闘は続く。何処かに逃げやがったペンシルゴンの事を一旦忘れ、大量に集まった機械群の頭上で覆面の悪魔憑きと光るヒーローは対峙し、

 

「あっ、どっかのデコトラを思い出すね」

 

「えっ」

 

「隙ありぃ!!(2回目)」

 

「ずりぃぞケツ男ぉぉぉおおお!!!!」

 

 余りにも容赦のない魚類によってミーティアスは沈んだ。

 

 

 

◇◇

 

 

 

 ピロン♪と愉快そうな音が鳴り、サンラク死亡のお知らせが届いた。

 

「うーわ、カッツォ君無双じゃん」

 

 そこは彼女に取って最高のロケーション。

 変態挙動する外道の片割れの残基を対価に、思いついたストーリーを走り切るための準備を完全に終わらせたペンシルゴンは、ニコリと笑う。

 

「ワタシの舞台へようこそ、カッツォ君?」

 

「どうやってんの?ソレ」

 

「んー……秘密☆」

 

「うーわ」

 

 今のペンシルゴンの姿はカースドプリズンに近い。大量の未だ壊れていない機械群へとハッキング、動きを制御することで彼女のアーマーとして使っているのだが…………いくらディスプレイと言えどココはゲーム。そんなバランスブレイカーな能力は存在しない。

 実際は何処ぞの墓守との戦闘時にオイカッツォがした“ロデオ”の模倣なのだが………今はそのことは関係ない。

 ガシャリガシャリ………ドコ、ガキ、ガキン! とスマートとは程遠い音を立てながら迫るペンシルゴンにカッツォは銃を構え───

 

「さぁさぁ! ボコボコにしてくれよう!」

 

「やってみなよ花形モデル!」

 

 ───動き出した。

 先手を取ったのは悪魔憑きの銃使い。ペンシルゴンの元へ辿り着くまでに確保していた銃を構え、撃つ。

 だが所詮は豆鉄砲。少しの被弾には目を瞑る、とばかりに走り寄った機械を無理やりに纏うテレビ女は腕に繋がる鉄線を引くことで機械の腕を振り上げ……………振り下ろした。

 

「まぁじぃ!!?」

 

「ボコって上げるって言ったよね!!」

 

「嘘でしょ気合いで吹き飛ばしなよ機械群!!」

 

 何故か頭上のペンシルゴンよりも自身を狙う機械群に悪態を付き、カッツォはガンガンと振り下ろされる拳を必死に避ける。

 

「仕っ方ないなぁ!!」

 

「何その銃。豆鉄砲?? もしかしてサンラク君に壊されちゃった?」

 

 あぁもう仕方ない!と叫んだカッツォはペンシルゴンの煽りを無視し、懐から善と悪の銃を取り出す。

 

「見せて上げよう! サンラクからトレースしてしかもグレードアップした…………ガンズ・ダンス・デュエルを!!」

 

「カッツォ君さっきからサンラク君トレース多いねぇ」

 

「…………見せて上げよう!!」

 

 ……………何処かでカボチャのヘルメットを被る男が「みょぉぅ!?」と謎の悲鳴を上げた。

 

「要は弾切れしなければ良いのさ……!」

 

 真打ちの侍は未だ戦場へ至らず(油を売り)、クソテレビが機械を纏い(凡庸魚類を見下し)、銃使いが銃を投げた(色々と匙を投げた)。



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