時を刻む音楽奏 (狼と月の間)
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序章「時は針。仲間と各事件」
第一話『軍人。歌姫は出会いの始まり』


精鋭部隊の残党は戦争を捨てた……。その中の部隊長「刻針時練(コクシ ジレン)」は平穏に生きようとしたが……。


時刻は午後7時、楽屋にて……俺は仲間のバンドメンバーはライブ終了後の打ち上げをしていた。

 

『お疲れ〜!』

「いや〜最高のライブだったな!」

「うんうん!息ピッタリだったよな!」

「時練はどうだった?」

「大丈……夫?」

 

何故か疑問で返してしまった。

 

「何で疑問なんだよ!そう深く考えるなって!」

「そうそう!一緒に飲みましょ?」

 

仲間がフォローしてくれるから笑えた。……が、

一人が俺に向けてこう言った。

 

 

 

「__ハッ……何が「最高のライブ」だって?

史上最悪だよ……クソったれが……。」

 

 

 

そいつは俺達バンドのリーダー。「廣岡佐崎(ヒロオカ サザキ)」だった。

 

「どうしたよ廣岡?最高だったじゃねぇか?」

「……時練、ベースのサビ間違ったよなぁ?」

「そうだけど……何で?」

 

瞬間、廣岡は俺の胸倉を掴んだ。

 

「……っ!?」

「おい!?廣岡!?」

「良いか?ベースは俺達にとってドラムより次に大切なんだ……分かるか?」

「……少しミスったのは反省してる。」

「分かってねぇ……なぁ!」

 

掴んでた胸倉緩めた途端、廣岡の右ストレートが鳩尾に入った。

 

「……ぐっ!?」

「ちょっと廣岡!?」

「廣岡!何してんだよ!?」

「ちょっとお灸を据えねぇとよぉ!」

 

廣岡は腹部に膝蹴りを放ち、身体ごと壁に叩き付けられた。

 

「……うぐっ!?」

「時練!もう止めろ廣岡!」

「このままじゃ、時練が死んじゃう!」

「ふん……よく聞け。」

 

 

 

「__時練、お前は脱退しろ。そして二度とベースを弾くんじゃねぇ。バンドも組むな。分かったなら俺の目の前から消えろ。」

 

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

そう、その言葉は要約すると「脱退命令」廣岡は俺を「戦力外(クビ)」にしたんだ。

 

「おい!それは流石に酷過ぎだろ!」

「何故時練が脱退しなきゃいけないの!?」

「時練も何か言えよ!ほら!」

「……。」

 

俺が出した言葉は……

 

 

 

「__ごめん。」

 

 

 

「ハッハッハ!ありがとよ時練!お前が居なくなって俺は嬉しいよ!」

「は!?何言ってんだよ!?」

「お前が居なきゃ誰がベースを弾くんだよ!?」

「そうよ!時練じゃないと駄目なの!お願い考え直して!」

「……さよなら。」

 

荷物を纏めて大雨の中、俺は楽屋を出て行った。

 

 

 

 

 

時刻は午後九時、傘を持って来るのを忘れ大雨の中。ずぶ濡れでベースが入ったケースを持って帰ってる途中だった。

 

 

 

(__時練、お前は脱退しろ。そして二度とベースを弾くんじゃねぇ。バンドも組むな。分かったなら俺の目の前から消えろ。)

 

 

 

「__クソッ!畜生が!」

 

コンクリートの地面を拳で殴る。殴った部分から血が滲み出ていたが、そんなのは気にしなかった。

 

「……。」

 

そして殴るのやめ、行き場を失った俺は、たった一人で電柱に背中を預け座ったまま動かない。雨の勢いが増し、女性の様に長い髪は濡れていく。

 

「……ッ。」

 

この時の俺は分からなかったけど、多分このまま放っといて欲しかった。何もかもが失った。何もしないで死にたかったんだと思う。……そう思った瞬間だった。

 

「風邪、引くわよ?」

「……?」

 

誰かが俺に声を掛けた。ゆっくり上を見ると俺と同じくずぶ濡れの銀髪でロングヘアの女子学生がそこに立っていた。傘持ってるのに髪が濡れてるのは途中で傘を差したからだろう。

 

「一体何してるの?」

「……行き場を失ったんだ。少し放ってくれ。」

「『放って』って……恰も終わったと思いつつ大雨の中、傘も差さず濡れてる人を放って置けるのかしら?」

「ううっ……正論で言い返せねぇ。」

「……此処で話すのも何か悪いし、私の家に行きましょう。」

「放っても良かっt……」

「良いから。」

 

銀髪ロングヘアの子は俺の服の裾を引っ張った。

 

「……はいはい。」

 

正直、女性の家に行くって言う発想が怖い。

普通ならファミレスやら喫茶店やら……午後9時だからもう閉店してるか。

 

 

 

〜???家〜

 

んで結局引っ張られ、銀髪ロングヘアの子の家に来た。

 

「てか出血してるじゃないの?止血とかしてないの?」

「そこは包帯有るんで大丈夫だ。」

「そうなの……。」

「そうだよ。」

 

出血部分をゆっくりと包帯で巻く。……傷口に包帯が擦る度に激痛が走るから巻きにくい。

 

「……っ。」

「上手く巻けてないじゃないの。ほら手貸して」

「……悪い。」

 

銀髪ロングヘアの子は此方の痛みに配慮してるのか擦れない程度に巻き続けながら口を開いた。

 

「で、詳しく話を聞かせて貰えないかしら?」

「……拒否権は?」

「勿論無いわよ?」

「あ、無いんだ。話すしか無いんだ。」

 

俺は銀髪ロングヘアの子に詳しく話を聞かせ、バンドのリーダーが脱退命令を出した事、ベースやバンドを組むなと言われた事、目の前から消えろと言われ、暴力を振るわれた事を全部話してやった。

 

「そんな事が……。」

「だから俺はもう仕事は不可能だろうな。苦しいまま死むしかねぇんだよ。」

「……仕事なら有るわよ?」

「一応聞こうかな。」

「私達のバンドの『スタッフ』よ。」

「……スタッフか。……少し考えさせてくれ。」

「それじゃ……携帯持ってるかしら?」

「持ってるが……どうした?」

「少し貸して。」

「……?」

 

俺は銀髪ロングヘアの子にスマホを渡すと、十秒も経たずに返してきた。

 

「連絡先を交換したわ、あと自己紹介ね。私の名前は

湊友希那(ミナト ユキナ)』Roseliaのボーカル担当よ。」

「宜しくな。名前は刻針時練。『元』ベース、ギター担当だ。」

 

何やかんや有って湊さんと出会った。これが『始めの一針』だった。




読んでくれてありがとうございます。作者の「狼と月の間」です。よろしくお願いします。さて、一話目から「とんでもねぇ位に話が飛躍してないかな?」と思ってますが誠に合ってます……。
一応、こちらも頑張るので、感想と評価を下さると嬉しいです。
何かバンドリメンバーを入れて欲しいと言う要望が有れば、頑張ってみます。

キャラ紹介
名前 刻針 時練(コクシ ジレン)
誕生日 9月5日
好きな食べ物 カ◯リーメイト、サラダ
嫌いな食べ物 特に無し
所属部活 現在無し
趣味 音楽関連、裁縫

黒い長髪に紅い瞳。『Forest delete(フォレスト デリート)*1』の陸軍大尉。その脅威的な戦闘能力、かつ常人以上の体力を持つ。また瀕死時、戦闘能力が更に向上する所から『死際(Death)』の異名*2を持つ。
『元』ギター、ベース担当で、ライブでのミスが原因で脱退、大雨の中、友希那と出会う。因みに彼は数々の楽器を齧っている為、大体の楽器は弾けるらしい。
因みに背丈は高いが、髪が長く声も女顔で、近所から女性と間違われる事があり、変装での潜入調査の時、女装してると例え軍人でも恥ずかしく、任務完了後からは、女装するのを躊躇っている。

*1
『削除の森』の名を持つ精鋭部隊。元は三十人の部隊だったが、とある任務により戦死者が多数続出。現在は現部隊長の時練含む四人が任務を遂行している。

*2
特殊軍人には『異名』が付けられる。これらはForest deleteにも関わり、異名を持つ者は三十人の中で五人居る。



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第二話『驚愕。そして突如の報告』

〜前回のあらすじ〜
バンドを脱退され行き場を失った刻針時練。大雨の中、湊友希那と言う女性にバンドのスタッフをしないかと問われる。それに対して少し考えると言った時練だが……。


〜時練家・寝室〜

 

ピピピッ ピピピッ ピピカチッ

 

「うぅ……くぁぁ。」

 

午前3時、俺の朝はとにかく早い。脱退したとはいえ、ベース、ギターのお手入れに衣装の洗濯し干したら、朝風呂浸かって、朝食作り食べる。そして歯磨き。後はギター、ベースの練習。これだけで午前六時まで時間を潰せる。

 

「……って何時もの生活じゃねぇか。」

 

後は湊さんから連絡が来れば良いんだが…まだ寝てるだろうな。仕方ない。練習の続きを始めるk…。

 

ピロン

 

俺のスマホからメールが届いた。差出人は……湊さんだった。内容は……えーと?

 

 

 

『玄関の鍵開けてくれないかしら?』

 

 

 

……いやいや、冗談だろ?今午前三時、夜中だぞ?なのにピロンとメール届くか?

 

「まぁ、待て待て。こう言う時は窓から確認した方がy……。(チラッ)」

「……寝てたかしら?」

 

居たよ、湊さん居たよ。こんな真夜中に居たよ。こんな冷え切ってる真夜中の夏に居たy。

 

 

 

ガチャ

 

「真夜中に来るなよ、寒いだろ?」

「えぇ…そうね。」

「……待たせて悪かった。入りなよ。」

「お邪魔するわ。」

 

 

「親とかは?」

「寝てるわ。」

「まさか夜中に出てったのか!?」

「馬鹿ね……ちゃんと手紙を残したわよ。」

 

馬鹿って……夜に一人で歩くのは危険なのに……。

 

「朝食は食べたのか?」

「いいえ、この時間は……。」

「コンビニは開いてないしな…丁度だし、朝食作るからソファにでも座ってテレビでも見ててくれ。」

「そうさせて貰うわ。」

 

さぁ〜て、時練の3分◯ッキングのお時間です。用意するのh……。

 

 

 

「……グラタン完成っと。ざっと作って午後五時か。湊さーん、朝食食べましょうか……って。」

「くぅ……くぅ……。」

 

あら、寝ちゃったか。長過ぎたのも有るから眠気が襲ってきたんだなこりゃ。……そっとしておきたいけど、朝食出来たし起こすしかないか。

 

ツンツン

 

「湊さーん。朝食出来ましたよー。」

「……んぅ。」

 

頬を優しく突くとゆっくりと起きて腕を伸ばした。何だこの可愛い女性……って違え違え。

 

「朝食出来ましたよ。冷めない内に食べましょうか。」

「ふぁい……。」

 

欠伸してから屈伸する湊さん。……まだ寝ボケてるのかゆっくりと歩いて座った。

 

「「……頂きます。」」

 

スプーンで掬って口の中に運び食べる。トロトロのホワイトソースとチーズが合わさって美味い。

 

「美味しいわね。……しかもこのしつこくない甘さは一体何なの?」

「ホワイトソースの元となる牛乳を温めてから入れて、ちょこっと塩を入れたんだ。あくまでより良い絶妙な甘さ加減が出来るしな。」

「そうなのね……。」

「まぁ「あくまで」だけどな。」

 

 

 

「「……ご馳走様でした。」」

 

「皿は重ねといてくれ、洗うから。」

「朝食も作ってくれて、何もしないのはちょっと……。」

「良いんだ湊さん。こっちは皿洗いしてるし、以前話した『スタッフ』?だっけな。あれを話してくれ。」

「……分かったわ。」

 

話は長いから省略。だがあなだがだにはわがr

(使うところがおかしい。)

 

「……つまり、『CIRCLE(サークル)』でスタッフとして、湊さん達のバンド『Roselia』のサポートとして、働こう…と。」

「大体がおかしいけど…合ってるわ。」

「……それに関しての質問良いか?」

「何かしら……?」

「俺はバンドリーダーに『バンド禁止令』と言われた。だからと言ってRoseliaのサポートをすると言うのか?」

「えぇ……そうね。でも今はバンドの禁止令には従わなくて良いのよ。」

 

……そうか。従わなくて良いんだ。あの廣岡佐崎(誇りもない奴)に従わなくて良いんだ。

 

「それで、Roseliaのサポートとしてやってくれないかしら?」

「……まだ、あの記憶は残ってるが……分かった。CIRCLEのスタッフ、Roseliaのサポートをやろう。」

「分かったわ。後々連絡入れるから。取り敢えず私の話を聞いて。」

「……話?」

 

 

 

「つまり、今日から貴方は『羽丘』に入学するのよ。」

「……ドユコト?」

「それは携帯から分かるわよ。」

 

ブーッ……ブーッ……

 

突然スマホが鳴り響く。どうやら電話だ。

 

「すまない湊さん。ちょっと失礼する。」

「えぇ。」

 

ピッ

 

「……どした。」

『おう!時練か!』

 

出たのはやはり『Forest delete』の精鋭部隊残党、大尉の『鎌太刀刃(カマタチ ヤイバ)』だった。

 

『実はな、お前に重要な事が有る。』

「……何だよ。」

『お前は今日から『羽丘』に入学するのだ!』

「だから理由を話せよ。」

『お前は中卒で戦争に参加した。以上!』

「そう言えば高校行ってねぇか……あれ?待てよ?」

 

羽丘に入学→羽丘=羽丘女子学園

あれ?俺が入学するのって……まさか!?

 

「ちょっと待て鎌太刀!羽丘って女子g……切りやがった……。」

「話は終わったかしら?」

「嗚呼……どうやら俺は『羽丘女子学園』に入学すると言うことだ。

「そう……って時間ね。行くわよ。」

 

そう言うと湊さんは俺の手を取り引っ張った。

 

「……普通について行くから引っ張るなよ。」




読んでくれてありがとうございます。第二話で時練の仲間、鎌太刀刃が登場しましたね。この方は一番時練との登場が多そうな気がする。

キャラ紹介
鎌太刀 刃(カマタチ ヤイバ)
誕生日 12月14日
好きな食べ物 おでん、回鍋肉
嫌いな食べ物 辛いもの
趣味 武器配達、空のライフル弾の金属音を聞く

蒼天色の短髪に紫色の目。精鋭部隊『Forest delete』の海兵軍曹。例えどんな状況でも、音も無く接近する所から
静寂(Silence)』の異名を持つ。
普段は仲間と一緒に空のライフル弾の金属音を聞くと言う意味不明な事しており、優しく接してくれるが、やる時はやる人。ライフルを使わず、ナイフを使った戦闘を好む。(一応拳銃は持ってるらしい。)
時練も精鋭部隊の一員だったが、一時離脱を宣言。その後バンドを脱退されたと仲間から聞いた刃は『真の『バンド』を学んで来い』と時練に伝えた。
実は湊家との関係は父と仲が良く、会っては色々話しているらしい。


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第三話『入学。学園長は古き仲間』

〜前回のあらすじ〜
湊友希那にバンドのスタッフをすると承った刻針時練。その時、携帯が鳴り響く……出ると仲間の鎌太刀刃だった。彼は時練に『羽丘女子学園』に強制的に入学する事に……。


湊さんに引っ張られ着いたのは『羽丘女子学園』……の学園長室の前まで連れてこられた。

 

「後は何とかしてくれるわ、また。」

「……お、おう。ありがと。」

 

すると友希那は教室へ戻ってしまった。そして学園長室(扉の)前に俺一人。

 

「って、突っ立っても意味ないしな。」

 

コンコン……

 

「……失礼します。」

 

ガチャ

 

 

 

入ると学園長がソファに座っていた。……やばい、体が何故か拒否反応(嫌悪感)を起こしている…。

 

「まぁ、とりあえず座って。」

「あ、はい……。」

 

取り敢えず震えを抑えて相対する様にソファに座る。学園長が口を開くと急に口調を変えて来た。

 

「……話は刃さんから聞いてる。」

「え?……知り合いなんですか?」

「昔からのな。」

 

ビックリした。だから学園長から『同じ(戦場の)』匂いを感じたのか。

 

「あの、一つ聞きたいんですが。」

「ん?答えれるなら良いが?」

「……昔、鎌太刀と一緒に参加しました?」

「参加してたね〜。」

 

やはりか。てか急に優しくなったな。

 

『もう5年も前かな、家族との時間を失いたくないから、辞めると刃に言ったんだ。」

「……で、今は学園長に?」

「そうだ。んで入学したいんだっけ?」

「えぇ、話によればですが……羽丘って女子校ですよね?俺が居たら概念ぶっ壊しますよ?」

「ふむ……そうなんだが、これを見て欲しい。」

 

そう言うと校長は一枚の書類を渡して来た。書かれていたのは

 

 

 

『羽丘女子学園・共学進行書』

 

 

 

「これは一体?」

「実はこの学園を共学にしようと思ったんだが、承諾を不可能だったんだ。」

「え?じゃあこの書類は一体?」

「そこで君には、この羽丘女子学園の実験役となって欲しい。」

「つまり……俺はこの学園に入学出来るる代わりにこの共学進行書の『実験役(モルモット)』として参加して欲しいと。」

「言い方おかしくないかね?……まぁ、大体の物は支給してあげよう。どうだ?」

「……分かりました。その条件に呑みましょう。」

「ありがとう。それじゃ朝会だから体育館へ行こうか。」

「急ですね。朝会なんて……いや、運が良かったのか?」

 

 

 

俺と学園長は体育館裏口からステージ横まで来た。何だよ、普通に体育館横断で入れば良いのに。

 

「では紹介するまで待っててくれ。」

「はい。」

 

 

 

「〜ですので、皆さんは今後の事を……」

「……眠っ。」

 

学園長話長いね、ちょっと眠いや。

 

「……ん、寝落ちしそうだな。」

「新入生君、準備を」

「了解……っと。」

 

身体を起こし、要らんと思うが身だしなみを整える。

 

「それでは最後に、転入生を紹介します」

「「「えぇっ!?」」」

「転入生!?」

「誰だろう…?」

「可愛いのかな?」

「きっとそうだよ!」

 

(ザワザワ……ザワザワ……)

 

「お静かに。……では自己紹介を。」

 

「あ、はい。」

 

ステージ上から見ても分かる、スゲェ数だし、全員女子かよおい!小学校以来だなぁ!……って取り敢えず落ち着け……深呼吸だ深呼吸……。

 

「えー……刻針 時練と言います。どうか宜しくお願いします。」

 

まぁ案の定、皆は驚いていた。中には……

 

「えぇっ!?男子だよね!?」

「髪長いし女性っぽい!」

「しかも可愛い!」

 

って、キャーキャー喜んでた奴も居たな。

 

「静かに……まぁ刻針君がこの学園に入学する事になった。皆、仲良くする様に。……これで朝会を終わる。刻針君は後で学園長室に。」

「分かりました。」

 

 

 

何故学園長室かと言うと、まぁ……制服だな。女子校だから男子用更衣室が無いから、学園祭長には一応後ろを向いて貰って、着替えたんだ。

 

「……良いですよ。」

『分かった…って似合うじゃないか!』

「お世辞でも褒めないで下さい……。」

『まぁ良いじゃないか。……では、時練君。君を羽丘女子学園に入学する事を許可しよう!まぁ今日は帰って良いぞ!』

「分かりました。失礼します……学園長。」

 

……因みに俺は湊さんと同じ1年A組だった。




因みに学園長の本名は「亜矢羽 礼奴(アヤバネ アヤト)」と言う名前で、時練は知らないので学園長と呼んでいます。まぁ、後々プロフィール載せときます。


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第四話『人助け。弾き奏でるギター』

〜前回のあらすじ〜
羽丘女子学園に強制的に入学する事になった刻針時練。しかし学園長は鎌太刀刃の古き仲間だった……。
たった男一人の女子学園生活に時練は慣れていく事になる……。


……あの後、色々聞いてたら午後3時になっていたので湊さんに「明日合流しましょう」と言って直様コンビニGOーン。そして色々有って午後8時。

 

「カ◯リーメイトも買ったから、家へ帰宅するのみ……って、ん?」

「なぁ〜、この後何も無いなら遊ばないか?」

「い、いえ……断らさせて頂きます……。」

「良いから来いよ!なぁ!?」

「……嫌っ!?だ、誰か……!?」

 

ギャルっぽい女子学生が男3人に囲まれてるじゃねぇか……。

__待てよ?あの制服……?

 

「俺達と一日中遊b「羽丘の女子校生に何してんだよ?」だ……誰d」

「ちょっと眠ってろぉ!」

 

ドガッ!

 

「あ"が"ぁ"!?」

 

勢い良く踵落とし。頭に命中した男は気絶しぶっ倒れ……

 

「女が……舐めやがってぇぇぇ!」

「……女じゃねぇし取り敢えず寝ろ!」

 

ドスッ!

 

「が"っ"!?」

 

もう一人の男が殴りかかってきたけど、受け流してから鳩尾に正拳突きを放って倒れた。

 

「……んで、お前さんはどうする?このまま掛かって来るk」

「死ねぇぇぇぇぇ!」

 

3人目の男はナイフ(正確に言えば果物ナイフだろうか?)を取り出して襲いかかってきた。分かってはいたけど……最初から話し合いに応じる気ねぇな。……ったく。

 

「最後まで話聞けよ……なぁ!」

 

ずがぁ!

 

「ぐ"ぁ"っ"!?」

 

刃物でも無駄、まずは適切な距離を取ってから攻撃するのが可。何も考えず無闇に攻撃すると返って隙を作る事になるからな。(軍人脳)

と言う解説っぽい事言ってからサマソを繰り出し気絶した。

 

「とりま警察送りだ。携帯携帯……。」

 

 

 

「ご協力感謝致します!それでは!」

「あ、はい。頑張って下さい。」

 

まさか三人とも指名手配犯だったとはな……。

 

「あ、あの……。」

「……あ、怪我はない?」

「は、はい……大丈夫です。」

「良かった。それじゃ、夜道気を付けてな。」

「あ、あの……!名前は…。」

「……刻針時練、ただの高校生だよ……じゃ。」

 

さて……家に帰って寝て明日合流だな。

 

「時練……?確か……どこかで……?」

 

 

 

〜次の日〜

 

ヤベ、家出るのに10分遅くなった。一応ギター持ってきたけど……邪魔かなぁ?

 

「……遅れたか?」

「やっと来たわね。随分遅かったじゃない。」

「やっぱり遅れてたか……悪い。」

「謝らなくて良いわ。ほら、行くわよ。」

「だから手を引っ張らなくて良いn……。」

「良いから。」

 

この人怒ってないか?絶対怒ってるよな?能面が般若になる位怒ってr()

 

 

 

〜CIRCLE・ロビー扉手前〜

 

「……着いたわ。此処が私達のライブハウス『CIRCLE』よ。」

「CIRCLE……。」

「取り敢えず、中に入りましょう。」

「お、おう……。」

 

ウィーン

 

「いらっしゃい〜!湊さんと……えーと?」

「あ、こんにちは。刻針時練です。宜しくお願いします。」

「貴方が湊さんが言っていた新人スタッフね!私は『月島(ツキシマ)まりな』

気軽に『まりなさん』って呼んでね!刻針ちゃん!」

「こ、刻針ちゃん!?」

 

黒いジャケットに白と青のボーダーシャツにジーンズと言う服装の黒髪のショートヘアの女性が笑顔100%で返してくる。何だろう……妙に会話しづらい。しかも女性と勘違いしてるし。

 

「と言う事で時練、後は頼んだわ。私は戻るから。」

「ファ?ちょっと湊s……行っちまった。仕方ない。徒歩で帰るk「……こ、く、し、ちゃん!」ひゃいっ!?」

 

急に肩掴んできたよこの人。しかも急だったから反射で女性みたいな声出しちまった。いや、元々女性っぽい声だから良いのか……じゃなくて!

 

「ど、どうしたんですか!?」

「いやー、うちのライブハウスに新人スタッフが入るなんて嬉しくて!」

「そうなんですか……え?ちょっと?まりなさん!?何故引っ張るんですか!?」

「大丈夫大丈夫!女性スタッフ用の服を着させるだけだから!」

「ふあっ!?俺男でs」

「良いから良いから!男の娘としてスタッフになれば大丈夫だよー!」

「ソウイウモンダイジャナァァァァ!?」

 

悲報。新人スタッフ俺氏、まりなさんに弄ばれる。てか何この人解けないんだが!?ちょ!?

相手元軍人だぞ!?何故振り解けないのだ!?

 

 

 

んで結局の所……まぁ……。

 

「何でこんな事になるんですか……。」

「このままの方が良いと私は思うよ!」

 

案の定、まりなさんに敗北して女性スタッフの服着せられた。てか、何この服、無茶苦茶サイズピッタリだなおい。さてはまりなさん事前に用意してたな?

 

「むぅ……着替えますからね……。」

「えぇ〜!似合うのに〜!」

「いやそう言う事じゃなくて、恥ずかしいんですよ……着替え直してきます!」

「ああっ!?ちょっと刻針ちゃん〜!?」

 

限界だ。市街地への潜入として刃に女装されたのは覚えているが、久々に女装すると流石に限界だ。取り敢えず急いで着替えて来よう……。

 

 

 

「……取り敢えず、急に確保して女装させるのは止めてくださいよ……正直恥ずいので……。」

「あ、あはは……てっきり女性かと思って……。」

「俺は男です!女性と勘違いされますけど……。」

 

あ……そう言えば此処ってライブハウスだよな?って事は……うん。聞いてみるか。

 

「……まりなさん。スタジオって有りますか?」

「スタジオは空いてるけど……どうして?」

「実は元ギターボーカルとベース担当です。理由は……まぁ、少し練習もしたくて。」

「……あ、刻針ちゃんの弾いてる姿見たいんだけど良い?」

「構いませんけど……聞いて得になるのですか?」

「良いの良いの!私が聞きたいだけだから!」

「……なら此処で1曲弾きますけど。」

 

ギターケースから愛用のギターを取り出しを何時でも弾ける様に構える。

 

(あ、何弾こうか考えてねぇ……。)

 

「曲考えてから弾けこの馬鹿」と俺の脳内で言われた気がした。

 

(……仕方ねぇ。即興で弾くか。)

 

そして、指を弦に近付ける。

 

「それじゃ……『明日』弾かせて頂きます。」

 

 

 

ギターの音色が響き渡る。……その音色はライブハウス内に……そして外に。

 

 

 

「ずっとそばにいると あんなに言ったのに 今はひとり見てる夜空 はかない約束……。」

 

 

 

音色と一緒に包まれて響く。……まるで何かに身を委ねる様に。

 

 

 

「もう泣かない もう負けない 想い出を越えられる 明日があるから……。」

 

 

 

ギターを弾いている感覚も無くなっており、ただ「自分の存在」と「ギターを弾いてる感覚」もスーッと消え、自然に弾きながら歌う様になる。

 

 

 

「手を伸ばしていま 心にしまおう 明日は新しい わたしがはじまる……。」

 

 

 

……最後まで弾き終えると一気に失った感覚が勢い良く身体に返ってくる……重い。

 

「……どうですか?久々なので鈍ってると思いますけど。」

「……凄いよ刻針ちゃん!弾いてる間何も言えなかった位上手いんだね!(パチパチ)」

「そうだぞ兄ちゃん!俺も感動したぜ!(パチパチ)」

「……え?」

 

振り返るとカフェテリアのお客さんが拍手していた。てかお客さん聞いてたの!?

 

「あ、ありがとうございます。」

「……ねぇ!もう1曲出来るかしら?」

「あ、はい……出来ますけど……。」

 

もう一度、指を弦に近付けて準備をする。

 

「では2曲目、弾かせて頂きます……。」

 

あの後、計3曲弾いた。

 

 

 

〜数十分後〜

 

「刻針ちゃん!定時だから帰って良いよ!」

「……え?もうそんな時間ですか?」

 

時計を確……って本当だ。30分オーバーしてるな。ただギター弾いて荷物運んで終わりか。

 

「取り敢えずお疲れ様でした!また明日お願いします!」

「うん、お疲れ様!刻針ちゃん!」

 

ちゃん付けは確定なんだ……まりなさん……。

とか言って帰る途中に警察官に取り押さえ連行され、何をするのかと思ったら逮捕の協力として150万頂いたのは驚いた。

 

 

 

〜時練家・寝室〜

 

「あ、そう言えば明日学校だ。鎌太刀の野郎、何故女子校に……。」

 

とか思いつつスマホを使ってニュースや天気を確認する。状況に応じてどう対応するのか考える為だ。

 

「明日は1日中晴れか。そりゃ良かっt……ん?」

 

ニュース内容を確認すると、とある記事が目に留まった。

 

 

 

『強盗犯脱走、羽岡女性学園周辺注意。』

 

 

 

「こりゃ不味いな。一応対策として何かないのか……?」

 

事前に鎌太刀から貰ったスーツケースを調べてみる。……てか内容物が酷過ぎだろ。絞殺用ワイヤーや軍用ナイフ、ヤバイ時には拳銃とか入ってるぞコレ……。

 

「平穏に生きるために罪を犯せってか?ふざけるんじゃねぇ!」

 

「取り敢えず『アレ』でも持ってくか……。」




時練のキャラ紹介
月島まりな(ツキシマ マリナ)
ライブハウス「CiRCLE」のスタッフさん。かつては自身もバンドを組みプロを目指していたが、なかなか日の目を見ることはなく解散したらしい。(因みに担当はギターだったんだってよ)。
CiRCLEでは音楽をやっている子たちを誰かに見つけてもらうためのサポートを考えて日々毎日働いているらしい。因みに俺の事を「刻針ちゃん」と呼んでいるんだよな、男性なのに……。
             By.刻針 時練の解説


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第五話『覚悟。賭けた命は刻み付けろ』

〜前回のあらすじ〜
下校帰りにコンビニでカ◯リーメイトを買い帰宅していた刻針時練。しかし路地裏で羽丘学園の生徒を見つけ助ける。次の日、湊友希那とライブハウス『CIRCLE』に向かい月島まりなに弄ばれた。その後ギターを弾いてみてと言われ、時練は仕方なくギターを弾く。……時間は経過して、時練は自室でスマホで天気やニュースを確認すると、強盗犯が脱走し、羽丘学園付近を警戒と書かれたニュースを見る……。


〜羽丘女子学園・教室〜

 

「頭痛ぇ……ったく。昨日弾きすぎた……。」

 

昨日、CiRCLEで三曲弾いたのか表に出てしまい、朝から頭痛。数学の勉強すら頭に入らねえ……。

 

キーンコーンカーンコーン……

 

「今日の授業はここまで、皆勉強する様に。」

 

そう言うと教師は出て行った。

 

「……さて、屋上で食べるとするk…」

「時練。ちょっと良いかしら?」

「……湊さん?一体どうしたんだ?」

「ア、アタシの事なんだけどね…。」

 

どうやら内容は隣に居る見た目が派手でギャルっぽい人の事らしい…。

 

「もしかして、刻針時練って君の事?」

 

……ん?何故俺の事を知ってる?

 

「そうだけど…一体何故?」

「分からないかなぁ……ほら!昨日の!」

「……昨日?」

 

 

 

(あ、あの……!名前は……。)

(……刻針時練、ただの高校生だよ……じゃ。)

 

 

 

「……昨日の助けた羽丘の女子か!」

「そうそう!思い出してくれて良かった〜!」

「……リサ。自己紹介しとかないと。」

「……そうだった!」

 

ギャルっぽい人はウィンクすると、自己紹介し始めた。

 

「改めて、アタシの名前は『今井(イマイ)リサ』!二人と同じ1年A組だよ!宜しく☆」

「お、おう……。宜しく……今井さん。」

 

この今井さんって方、まりなさんと同じ会話し辛い。……いや、まりなさんよりはマシか。

 

「普通に名前で呼んでも良いんだよ?友希那も良いよね?」

「勝手にしなさい。」

「改めて宜しく。友希那、リサ……あ、そうだ。昼飯食べるんだけど一緒にどうかな?」

「その為に時練を誘ったのよ。」

「マジですか。」

 

そうして、俺と友希那とリサ。三人で弁当を食べてたんだけど……途中、無茶苦茶視線が痛え。俺何かしたかな?

 

 

 

「あ、そうだ。早く食べねぇと駄目だった。」

「……どうかしたの?」

「あー、学園長に伝えなきゃいけない事忘れてたからさ。てか次の授業何だっけ?」

「次は体育よ。体育館に移動する事になってるわ。」

「なら尚更学園長室に行かないと……。」

「……え?何で?」

「……あ、リサは知らないっけ?男子更衣室は無いから学園長室で着替えてるんだ。」

 

もし「女子生徒が居なくなったら女子更衣室で着替えろ」ってなったら絶対無理だな。

 

「そうなんだ〜!レンは色々大変だね〜!」

「結構ね……。(色々と危険だからな!)」

「てか時練、時間大丈夫かしら?」

「……うぇ?」

 

時計を確認する……しまった!時間がねぇ!

 

「教えてくれて助かった!それじゃ!」

「えぇ……また体育館で。」

「またねー☆」

 

 

 

バンッ!

 

「学園長!少し着替える!」

「着替えるのかい。なら私は少し離れようかね。」

「あ、いや。そのままで良いのに……。」

 

理由?だって男同士だもの。

 

「直ぐ着替えるので……って、あ……。」

 

そう言えば体操服の服貰ってない。やらかした。

 

「……あの、学園長。」

「体操服渡すことを忘れてたよ。ハハハ……。」

 

と苦笑いしつつ学園長は男性用の体操服を渡してくる。てか体操服と言うよりは青いジャージだな。

 

「ありがとうございます。……これで良し。」

「キツいとか緩くないかい?」

 

少し体を動かしてみる。どうやら大丈夫そうだ。

 

「うんっ……しょっと……大丈夫です。」

 

一応『アレ』も隠し持てる事が出来た。何か有ったらやるしかないけど。

 

「そうか。また何かしら有ったら支給するよ。」

「ありがとうございます。」

 

キーンコーンカーンコーン……

 

「……ほら、行ったらどうだい?」

「そうですね、行ってきます。」

 

そう言い、俺は学園長室を後にした。

 

「……やはり『彼は彼らしく』だな。」

「……どうですかね。」

 

……背後に居た人物に気付かずに。

 

 

 

〜体育館〜

 

「……あ、レン!」

「悪い、授業遅れたか?」

「大丈夫よ、で……」

「……で?」

 

改まった言い方っぽいな。何か有ったのか?

 

「……時練、強制的に私達の班よ。」

「……あ。」

 

そうだった。今回体育の授業、班作るんだった。まぁ大丈夫かな。うん……。

 

「……んで、班作った後は?」

「自己紹介らしいんだよね〜。」

「ほう。なら済ませますか。」

 

幸い、コミュニケーションや会話は大事だ。……軍人って事はバレないようにしっかりしないとな。

 

「これで全員かな?最初はアタシからね!アタシは今井リサ!Roseliaベース担当で編み物が好きだよ!宜しく!」

 

……ん?今、Roseliaベース担当って言ったか?だとしたら……サポート頑張ろうか。

 

「……湊友希那よ。宜しく。」

 

友希那……もう少し何か言う事は無かったのか?

 

「ジブン『大和麻弥(ヤマト マヤ)』っす!Pastel*Palettesのドラム担当っす!」

 

……まともそうだ。あの馬鹿鎌太刀とは大違い。

てかまたバンドっぽい名前出たな。何だっけ?

Pastel*Palettesだっけ?後で調べてみるか。

 

「大和麻弥さん……良い名前ですね。宜しくお願いします。」

「ありがとうございます……フヘヘ……。」

 

前言撤回、てか語尾大丈夫かな。

 

「……私の名前は『瀬田薫(セタ カオル)』子猫ちゃん達と一緒になれて嬉しいよ。」

 

この人が一番大丈夫じゃねぇ!(確信)

 

「最後が俺かな。朝会の時に紹介したけど、刻針時練です。『元』ギター、ベース担当で、他にも数々の楽器を齧ってるから、大体の楽器は弾けます。宜しくお願いします。」

 

「宜しく頼むよ、時の演奏者。」

「……?」

 

……駄目だこれ。瀬田さんの言葉に俺の理解力が働かねぇ。

 

「うん……まぁ……うん。」

 

もう一回言わせてくれ。……駄目だこれ。

 

「それじゃ、アタシは先生にプリント貰ってくるから皆で喋ってて〜」

 

そう言うとリサは先生の所へトコトコと歩いて行った。

 

「……何にもなく続けば良いのだが。」

「何がなの?」

「友希那……いや、昨日ニュース見てさ。羽岡女子学園周辺注意って載ってて。」

「そう……大丈夫だと良いわね。」

「だと良いけどn「キャァァァァァ!」悲鳴!?」

 

振り向くと、何時の間にかステージ上に立ち、リサを人質にしている男の姿が有った。

 

「金を出せ!さもないとこの女を殺すぞ!」

「……昨日の記事に載ってた強盗犯か。」

「生徒を離して下さい!」

「100億と逃走用の車を用意しろ!そうすれば離してやる!」

 

さてどうするか。リサも居るからなぁ。……この状況下の時、俺なら一体どうする?

 

 

 

(……待て。俺は何故、傍観しているんだ?)

 

 

 

「良く聞け強盗犯。此処がお前の最後の足掻きだ。」

 

俺は立ち上がり、強盗犯の所へ歩き出す。

 

「刻針さん!?何してるんですか!?」

「……先生、離れて下さい。」

「く、来るな!本気で殺すぞ!」

 

そう言うと強盗犯はリサの首元にナイフを突き付けた。

 

「良いぜ……けどそのナイフで殺せるか?」

「「「「……!?」」」」

 

そう、今の俺は「生徒(一般人)」じゃない。……皮を被った「軍人(化物)」だ……。

 

「俺を舐めてるのか!?」

「いや……舐めてはない……が。」

 

まず相手の様子を伺う事だ。不利な状況の場合の基本的な行動の一つだ。

 

(俺は今強盗犯向かって歩いている。距離的には攻撃不可能だが、あの強盗犯がやり手なのか分からんし……)

 

何時振り下ろすか、何時ナイフが命中するか。

 

(そもそも、身体が鈍ってなきゃ良いんだが。)

 

俺は髪留め用のヘアピンを外した。

 

「…お前がリサを殺せるなら殺してみろ。」

「……ちょっとレン!?」

「……いくら何でもそれは!」

 

そして……俺は強盗犯にこう言った……。

 

「……殺せるなら目の前で殺してみろよ。」

「なら殺してやるよぉぉぉぉぉ!」

(……今だ!)ヒュン!

 

俺は外したヘアピンを強盗犯の右目に狙いを定めて投げた。

 

サシュ!

 

「あ"が"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!?」

「……リサ!今の内に離れろ!」

「……わ、分かった!」

 

強盗犯の目にヘアピンが擦り、苦痛で踠いてる内にリサは強盗犯から距離を取った。

 

「こ"の"野"郎"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!」

「……ッ!まだ懲りねぇか!」

「う"が"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

怒り狂った強盗犯はステージから降り、リサに狙いを定めた……。

 

 

 

「……死"に"や"が"れ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェ"!」

「……い、嫌っ!?」

「…・

 

 

ドスッ!

 

 

 

強盗犯のナイフは命中した……だが、命中したのはリサではない。

 

 

 

「羽岡の……生徒を……殺……させるかよ……。」

 

 

 

命中したのは……リサを庇った俺だ。

 

 

 

「……時練!/レン!」

 

 

 

「大丈夫……。先生、生徒と共に下がってください……。」

「……分かった。」

 

そう伝えてから俺は目の前の『標的(ターゲット)』に集中し、体勢を構え直した。

 

「き、貴様……何故!?」

 

強盗犯はビックリして2、3歩下がった。

……ん?「何故驚いたのか?」って?そりゃ……。

 

 

 

俺の心臓にナイフが刺さってるのに平然と構えていたからな。

 

 

 

「馬鹿な!?確かに刺した筈!?」

「嗚呼、刺さってるよ。心臓に……だがな。」

 

 

 

(時練!その傷だと死ぬぞ!お前は撤退しろ!)

(この位で死ぬ程……俺は……!)

 

 

 

「俺は柔な『人間(軍人)』じゃねぇんだよ!」

 

 

 

俺は強盗犯の顔を掴み……。

 

「調子に……乗るなァァァァァ!」

 

ガンッ!

 

「あ"が"ぁ"!?」

 

……頭部を勢い良く床に叩き付けた。

 

「……先生、警察と救急。後は頼みます。」

「……あ、嗚呼!」

 

そう言うと職員室まで走り去ってしまった。

さて、後は隠してた『縄』で縛り上げて……と。

 

「これで逃走不可能……さて、ナイフ引き抜くか。」

 

慣れた手付きでナイフを引き抜く。抜いた瞬間大量出血したけど。

 

「……傷口は深いけど、まぁ大丈夫だろ。」

「レン……!」

「……悪いリs(パァン!)っ!?」

 

突然、リサに帆を叩かれた。

 

「お、おい?一体どうし(ガバッ)……リサ?」

 

リサは……涙目になりながら俺を見ていた。

 

「何で避けなかったの!?あの時と同じ様に……何で受け流さなかったの!?」

「……。」

「……答えてよ!レン!」

 

数秒の沈黙の際、俺は口を開いた。

 

「……傷を付けたくないから。それだけ。」

「じゃあ何で……私を庇ったの……。」

「それは……「警察です!強盗犯は?」あ、此処です……気絶しているのでこのまま手錠を。」

 

そして強盗犯は警察によって署へ連行された。

 

「救急隊です!道を開けて下さい!」

「これで……大丈夫……の……筈……。」

 

バタッ……

 

「時練!?/レン!?」

 

(……あぁ。流石に体力はここまで持ってくれなかったか。)

 

そのまま、俺は意識を失った……。




読んでくれてありがとうございます。作者の「狼と月の間」です。唐突ですが、五話目にて時練が倒れました。あ、でも此処で「完」はさせないのでご安心下さい。さて、この後時練は如何なるのでしょうか?


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第六話『断片。静寂と使命の銃口』

〜前回のあらすじ〜
路地裏で助けた羽丘学園の生徒は湊友希那の幼馴染、今井リサだった。3人は屋上で昼食を食べてると次の授業が体育と知り着替える為に学園長室に向かい、着替え終えた時練は体育館へ向かう。……学園長の背後に居た人物に気付かずに。
一方、時練はグループとなり自己紹介をし、Pastel*Palettesのドラム担当、大和麻弥。そして時練曰く大丈夫じゃない人、瀬田薫と知り合う……が、突然強盗犯が入り、リサを人質に。時練は言葉を巧に使いリサを解放、強襲により心臓にナイフが刺さるが、何とか気絶させ縄で拘束。強盗犯は逮捕されるが、大量出血で時練は意識を失う。


時練Side

 

(一体どうしたんだっけな……確か……強盗を拘束して……それから……。)

 

バババババ‼︎

 

途端、銃声が聞こえた。意識が徐々に回復するが視界がまだぼやける。

 

「(衛……隊!時……の様……だ!)」

「(待っ……傷が深……時間……ります!)」

(……この声……何処かで……。)

 

ゆっくり目を閉じ……再び目を開ける。今度は意識も戻った。視界も良好だ……が、痛みは有る。

 

「(……長!隊長!大丈夫ですか!?)」

「(……時練!?……遊撃……隊は……の援護を続け、撤退しろ!)」

 

目の前には鎌太刀とForest deleteの衛生部隊が居た……確かこれは……。

 

(そうか……これは俺の『過去の記憶』か。……畜生、また意識が……。)

 

 

 

「う、ぐっ……?」

「(起きたか、身体の調子はどうだ?)」

 

再び目を覚ますと、そこは洞窟だった……確か此処は……。

 

「(此処に居る以外の20名が戦死した。)」

「……そうか。残りの部隊で撤退するしk「(隊長が見殺しにしたんだ……。)」……は?何言ってるか分からねぇっ!?」

 

突然、何かのノイズが頭の中に響いた。ノイズが大きくなればなるほど、徐々に痛みが大きくなる……ただ一つ言える事は。

 

(……頭がっ!ぐっ……あがっ……!)

 

ノイズがどんどん大きくなり、頭の中が壊れそうになる。

 

「くそっ……やめ……ろォォォォォ!」

 

 

 

「……ッ!?」

 

目を覚ますとそこは病室だった。衣服をジャージから病院着に着替えられていた。

 

「……取り敢えず時刻を……と言うか誰か俺の上に乗ってるな……動きづらい。一体誰g」

「れんっ……すぅ……すぅ……。」

 

マァナントイコトデショウ。リサガオレノウエデネイキヲタテテネテルデハアリマセンカ。

 

「……そうじゃない。取り敢えず時刻確認だ。確か壁に掛けて有っ……駄目だ。この体勢だと難しいな。なら大方、台の上に携帯が……あった。」

 

時刻確認……午前3時。日の出まで3時間も有るのか。

 

「起き上がる事は出来るが……無理に起こす訳もねぇか。……仕方ない。」

 

 

 

「……んんっ……んぅ?」

「あ、おはようさん。」

 

リサが目を覚ました。少し辺りを見渡し状況を確認してから俺の方を見る。

 

「……れん?……レンっ!?」ガバッ

「おっとと……っと。」

 

急に抱きつかれ倒された。起きるまでクロスワードやってたから不意に来るとちょっと驚く。てか

 

「……リサ……急に飛び掛からr……リサ?」

「ううっ……レンっ……死んだかと思ったよぉ……生きてて良かったよぉ……」ポロポロ

「リサ……遅くなってごめんな。」ナデナデ

「本当だよぉ……もうっ……。」

 

この後、午前5時までリサの頭を撫で続けた。

 

 

 

んで、現在午前6時20分。リサは「このままだとお母さん怒るから帰るね☆」と言って帰宅した。

因みに俺は……。

 

「……どうやったら解けるかなぁ。」

 

……クロスワードに没頭していた。

 

「……えーと?『ワニが大型の獲物に噛み付いた時に自ら回転し肉を食い千切る名称』……生物学は生憎知らないんだよ俺は。」

「……『デスロール』じゃねぇか?」

「デスロール?あ、本当だ。サンキューな『鎌太刀』。」

「……やっぱり時練は驚かねぇか。」

 

蒼天色の短髪に紫の眼。その眼は常人は分からない、何故なら……彼は何時も通りだからだ。

 

「見舞いか?」

「嗚呼。本当は学園長の後ろに居たんだけど。」

「マジか、気付かなかった。俺も警戒心が衰えて来てるな。」

「まぁしかし……会うのは久しぶりだな。」

「あの戦争から……な。てか鎌太刀!お前スーツケースの中身物騒過ぎだろ!」

「ありゃ?喜ぶかと思ったが……違ったか?」

「恐ろしいわ!平穏に過ごしたいのに女子学だわスーツケースの中身物騒だわ平穏じゃねぇわ!」

「おう悪いなw」

 

此奴殴りてぇ。

 

「……ったく、まぁ良いや。鎌太刀、今まで何処行ってたんだ?」

「アメリカでサツと協力してテロリスト退治。飛行機で日本に帰国して学園長と話してからお前がぶっ倒れたって情報聞いて向かってきた。」

「そうか……てか家は?」

「もう決まってる。駅前近くの空き家だ。」

「見つかって良かったな。」

 

その後色々話して、鎌太刀は帰った。

 

 

 

時刻は午前8時45分。15分前に医者が来て「3日も寝ていましたが、幸いにも浅く一命を取り止めましたので、2週間は安静にしてて下さい。」と言われた……んで。

 

「……鎌太刀から貰ったカ◯リーメイトも貰ったけど……でも食えねぇんだよなぁ。」

 

はぁ……クロスワードにも飽きたな。ナンプレでもするか?……あ、そう言えば。

 

 

 

〜20分前〜

 

「(時練、ここにバック置いとくからな!)」

「(……何故バックを?)」

「(じゃあ俺は帰るからその後にバックの中身見てみろよ!)」

「(だから何故バックを!?おい鎌t……帰りやがった……。)」

 

 

 

鎌太刀が置いていった黒いバッグ、一体何が入ってるんだg……成程な。俺はバックの中に入ってた服(黒いジャケットとズボンだけど)を着た。

 

「……確か此処は5階……なら『コレ』だな。」

 

俺はバックから『ラペリングフック』を取り出し……。

 

「なるべく傷と音を出さない様に……よっ。」

 

……窓枠にフックを引っ掛けた

 

「後は他の荷物も持って……心臓は……大丈夫。……じゃあ、降下するか。」

 

残りの荷物も持って、俺は窓枠に引っ掛けたグラップで降下(ラペリング)。壁を蹴って降りつつ5階から脱出した。

 

「……2週間安静とは言ったけど、流石に『あの内容』見たら急がないと……悪いな、医者よ。」

 

そうして、俺は病院から脱出し、「とある場所」へ向かった……。

 

 

 

「刻針さーん、失礼しま……あれ?居ない?」

「……どうしたのかね?」

「ドクター!刻針さんが居なくて……。」

「……居ないだと?一体どうして……うん?」

 

『急用が出来たので医療費を置いて退院します。安静と言われましたがすみません。』by.時練

 

 

 

〜30分前・駅前〜

 

友希那Side

 

「……。」

 

あれから時練の事が気になって仕方ない。私は彼の見舞いに向かっていた。

 

「……リサから聞いたけど、起きてたとは言ってたわね。……大丈夫なのかしら。」

 

そう深く考えていると、1台の黒い車が私の前に止まった……すると扉が開いて中から2人の男が私の腕を掴んで車の中に押し入れた。

 

「おい!早く出せ!」

「分かってるっての!」

「な……何!?離して!?」

 

必死に抵抗しようとすると一人の男が私に拳銃を突き付けた。

 

「おっと暴れんじゃねぇ……暴れたら……分かるな?」

「……ッ!?」

「……あの廃ビルに入れ。」

「了解。」

 

そのまま車は廃ビル前に止まって、私は男3人に捕まれて、廃ビルの中へ入った……。

 

 

 

〜廃ビル屋上〜

 

鎌太刀Side

 

「……Target確認。後は来るのを待つか。」

「とか言ってるけどもう着いたぞ。」

「お、来たか。」

 

大方降下用に用意したラペリングフックで登って来たんだろうな。

 

「んで、友希那はこの建物に?」

「3人は確認したが数は不明だ……正面から突破か、ラペリングして途中階から突破か……。」

 

数は3名だが、まだ内部に潜んでる事は不明だ。もし途中階から突破しようとすれば自殺行為だ。……さて、時練ならどうするかな。

 

「……鎌太刀、案が。」

「お、何だ?」

「制圧法だが……お前の……。」

 

 

 

時練Side

 

「……って事だ。」

「ほう。成功確率は?」

「ざっと75%って所だ。やれるか、鎌太刀?」

「……大尉の言う事ならやれるぜ。」

「……良し。では行動開始!」

「Yes Sir!」

 

鎌太刀は俺がラペリングフックを使って降り、俺も後に続いてラペリングした……。

 

 

 

『こちら鎌太刀、指定位置に到着完了。指示で何時でも行動出来るぜ。』

「了解。」

 

移動が速いんだよな、流石鎌太刀。「静寂」と言われてる事はある。

 

「……っと、此処かな。」

 

目の前には窓ガラスと男3人と目隠しに手足を拘束されている友希那を確認。

 

「……鎌太刀、戦闘準備!」

『all right!』

 

そして俺は壁を蹴り……

 

 

 

「シャア行くぞォォォォォ!」

 

 

 

バリィィィィィン!

 

 

 

……窓ガラスを蹴破り突入した。




読んでくれてありがとうございます。作者の「狼と月の間」です。えー、救出作戦を決行し突入した時練ですが、鎌太刀は一体何処に行ったのでしょうか?次回、2人の恐るべし力が分かります。


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第七話『突入。強行的作戦と元軍人の感覚』

〜前回のあらすじ〜
過去の記憶の一部が蘇り、目覚めると病室に居た時練。今井リサや鎌太刀刃が見舞いに来てくれる中、医師に2週間の安静を言い渡される。
場面を変え時練の見舞いに向かおうとしていた
湊友希那だが、誘拐犯に捕まってしまう。
鎌太刀刃の連絡を受けた時練は5階からラペリングフックで脱出、鎌太刀刃と合流し突入作戦を決行した。


〜廃ビル内〜

 

バリィィィィィン!

 

「ハァァァァァァァァァァ!」

 

ゴスッ!

 

「う"が"ぁ"!?」

 

窓ガラス蹴破りからの膝蹴りが部下の頭部に命中し吹っ飛んだ。

 

「はぁ……はぁ……少々強引だったか……。」

「……時練!?」

「何者だお前は!」

「……ただの高校生だけど。何か?」

「高校生だぁ?……お前ら!」

 

ダッダッダッ!

 

「……やはり隠れてたか。」

 

コンクリの柱に隠れてたな。部下の数は……大体10人か……良し。

 

「……鎌太刀、やれ!」

『了解!避けろよ!』

「……撃ち殺せ!」

 

一斉に向ける。武装はG19(グロック19)か。なら放つ瞬間を狙って……。

 

「……今!(ザッ!)」

 

バンバンバンッ!

 

「……コンクリの柱を背にして隠れたか。だが左右に避けるのは不可能だ。」

(……クソッ!早く来い!)

 

柱の位置から180°を囲まれた……一度でも動いたら当たるなこりゃ……と思ったけど。

 

「……放t」

 

 

 

「ヒィィィィハァァァァ!」

 

 

 

バリィィィィィン!

 

 

 

「「「「「あ"ぐ"ぁ"!?」」」」」

「今度は何事だ!?」

「……っと、よぉ時練!2分53秒ぶりだな!」

「正確な時間は要らん……鎌太刀!」

「了解!」

「クソ野郎共が!殺せ!」

「「「「「ヴェアアアアアアアア!」」」」」

「時練には指一本も触れさせねぇよ!」

 

そう言うと鎌太刀はポケットから取り出し、

 

「目閉じてろ!」

 

と言い、部下目掛けて投げた。

 

「まさか……友希那、閉じろ!」

「……!」

 

俺と友希那は目を閉じた瞬間……。

 

バンッ!

 

けたたましい音と光が部下達を襲った。

 

「「「「「……ッ!?」」」」」

「クソッ!これは!?」

「どうだ!3日徹夜したフラッシュバン(M84スタングレネード)の味は!」

「寝ろ!……だが、これなら行ける!」

 

俺は一気に走り、後ろに立って……

 

ドスッ!

 

「「「「「あぐぁっ!?」」」」」

 

……部下達を手刀で気絶させた。

 

「なっ!?一瞬で部下を!?」

「相方舐めたら痛ぇぞ〜、もしかしたら片腕無くなるかもな。」

「あのなぁ……。」

「ふ、ふざけやがってよぉ!」

「きゃっ!?」

 

リーダーは怒り狂って友希那を人質にし、頭にG19を押し付けた。

 

「近付いたら此奴の命は無ぇぞ!」

「またかよ、呆れた。」

「どした?『また』って?」

「授業中に強盗犯がリサ……友希那の幼馴染を人質にしたんだ。」

「成程。お気の毒に……でも今度はもっと難しいな。相手はナイフじゃなくて拳銃だ。接近は不可能だな。」

「ごちゃごちゃ煩いんだよ!本当に殺すぞ!」

「いやっ!?」

 

これは不味い、彼奴は本当に殺す気だ。一体どうする?

接近戦では拳銃とかの武装解除は訓練で叩き込まれてるが距離は3m。走れば何とかなるが、その間に引き金を引いてしまう。

 

「……やるしかないだろう。」

「行けるのか?」

「大方……な。行かないってのもおかしいぜ?」

「確かに……分かった。賭けよう。」

「サンキュ」

 

鎌太刀とグータッチし、リーダーに向き合う。

 

「まさか来るとか言うんじゃないだろうな?」

「「……。」」

 

ザッ!

 

俺はリーダー目掛けて一直線に走り出した。

 

「そんなに死にてぇなら、まずお前から殺してやるよぉ!」

「……ダメ!時練!」

 

バァン!

 

リーダーは拳銃を俺に向け引き金を引き銃弾が発射された……が。

 

「……読めた!」

 

ギリギリの所で右にステップで躱し、再度走り出した。

 

「なっ!?躱しただと!?」

(ギリって事は鈍ってるな。でもこれなら!)

「くそっ!死ね!死ね!死ねぇ!」

 

バンッバンッバンッ!

 

再度引き金を引き銃弾を発射した。今度は三発。

 

(二回躱してから……)

 

俺は懐に仕舞っていたナイフを取り出し、

 

「ハァッ!」

 

ガァン!

 

銃弾を切り裂いた。普段ならナイフでは切り裂け無いが、これはForest deleteの異名達が使えるナイフ*1。まぁ、主に鎌太刀が使っているんだが。

 

「切り裂いた……だと!?」

「これで終わりだ!」

「ハッ!終わりなのはお前等だ!」

 

リーダーは友希那の頭に拳銃を突き付けた。

 

「お前等の絶望した顔を見せr」

「そこだァァァァァ!」

 

ガンッ!

 

後方から鎌太刀が鉄パイプで頭部を叩きつけた。

 

「あがっ!?……後……ろ……だと……!?」

「静かに近付き獲物を仕留める。これが『静寂(Silence)』のやり方だ。」

「……俺はダミーだ。単に銃弾を躱しながら接近するだけだからな……さてと。」

 

俺は友希那に近付いて。

 

ザッ!

 

ナイフを切り上げ、拘束を解除した。

 

「……これで動ける筈だけど、気を付けろよ?」

「時練……貴方、入院した筈じゃ……。」

 

あ、言ってなかったか。

 

「安静とは言われたけど、こんな事態を鎌太刀に聞かれてな。」

「傷口開くってのにあんな大きく動くなよ。」

「誰のせいだよ」

 

その後、警察が来て誘拐犯は全員逮捕。俺と友希那、鎌太刀に対しては事情聴取してから警察署を後にした。

 

 

 

「……少しは自宅で安静にしとくか。」

「お前は良く動けるもんだよ。」

「やかまし」

*1
因みに特殊加工だから鉄だろうがコンクリだろうがなんでも切れるんだよな。確か籠城戦の時ミスって建物ごと切ったっけ。




Forest deleteメンバー、鎌太刀刃が花咲川に来ました。これから二人はどんな生活、事件が待っているでしょうか?私には分かりません。

さて、次回内容をちょこっとだけ公開。

「凄い!?今の歌声何なんですか!?」
「ファッ!?」

「刻針ちゃん!?あの音は何なの!?」
「あ、まりなさん!それが私にも分からないんですよ!取り敢えず……4番スタジオからだと思うのでカウンターの接客担当お願いします!」

『……こちら鎌太刀、どした時r』
「緊急だ!早くCIRCLE内の皆を避難させてくれ!」

……もうカオスだね。うん。


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第一章『傷と支障。バンドメンバーとの出会い』
第八話『キラキラ。猛攻と機材トラブルでの修理』


〜前回のあらすじ〜
突入作戦を決行し、ラペリングで窓ガラスを蹴破り突入した時練と鎌太刀刃。数々の敵が来ても対処して誘拐犯のリーダーと対峙する。すると湊友希那に拳銃を突き付け、動くと殺すと脅迫。だがコンビネーションにより、音も無く接近した鎌太刀刃の振り下ろされた鉄パイプで気絶。友希那は救出されるが安静と言う言葉を破って来た為、時練の身体はボロボロだった。


〜CIRCLE・ロビー内〜

 

時練Side

 

「……今日も仕事で傷は……癒えてないか。」

 

鼓動は安定しているが……傷跡は治ってないな。

 

「支障は出ないし、大丈夫だろう。」

「……何が大丈夫なの?刻針ちゃん?」

「ファッ!?」

 

神出鬼没。やはりまりなさんは何処から来るか分からない。単に俺の集中力が途切れてるのか?

 

「あ〜いえ、何でもありませんよ。ハイ。」

「本当に?怪しいなぁ……。」

「……大丈夫ですから。」

「そう?何かあったら私に言ってね?」

「ありがとうございます。」

 

そう言うとまりなさんは設備移動の為1番スタジオのに向かった。

 

「……仕事に戻ろう。」

 

とか言ってるけど全然来ない。友希那達は練習が無いとか言ってたっけ、だとすると暇だな。

 

「……ギターでも弾くか。」

 

そう言いつつ、カウンター横から自分のギターを取り出す。

 

「……しまった。確かピック弾きじゃなくてフィンガー・ピッキング(指弾き)の方だ。」

 

アホか。……取り敢えずギターの弦を徐に弾いてみる。

 

ジャラーン

 

音色は大丈夫そうだ。

 

「……何か弾き歌うか。」

 

で「もののけ姫」を弾き歌う事にした。

 

 

 

「有〜咲〜!早く早く〜!」

「ちょまっ!?引っ張るな!?」

「早く帰ってオッちゃん撫でたいな〜。」

「だ、大丈夫かなぁ……?」

「あ、あはは……。」

 

ウィーン

 

「はりつめた弓の ふるえる弦よ〜♪ ?月の光にざわめく おまえの心〜♪」

 

「「「「「……えっ?」」」」」

 

「とぎすまされた 刃の美しい〜♪ そのきっさきによく似た そなたの横顔〜♪」

 

「……あの〜、すみません。」

 

「悲しみと怒りn……あ、すみません。弾き歌ってたら没頭してしまって……。」

 

やはり俺の集中力と注意力散漫してるなこりゃ。えと、まりなさんが聞いた所だと……確k。

 

「凄い!?今の歌声何なんですか!?」

「ファッ!?」

 

猫の茶髪でアメジストっぽい眼を持つ女性が突然食いついた様に聞いてきたんだが。と言うか声が大きい……聴覚は良い方だから頼むから普通でお願いしたい。

 

「いや、何と言うかな……元バンドメンバーでその時に習得した賜物だよ。」

「美しい歌声でした!キラキラが見えます!」

「キラ……キラ?」

 

ん、待てよ?まさかこの方達って?

 

「……『Poppin’Party』の方ですか?」

「そうです!私、ギターボーカル担当の戸山香澄って言います!」

「同じくギター担当の花園たえだよ。おたえって呼んでくれると良いな。」

「えっと……ベース担当の牛込りみです……。」

「ドラム担当の山吹沙綾です。」

「ほら有咲も!」

「わ、わかったよ!?キ、キーボード担当の市ヶ谷有咲です……。」

「俺は刻針時練。CIRCLEバイト兼スタッフです。一応言うけどこれでも男性だからね。」

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

何と言うか……どっかで見た光景(デジャヴ)だな。

 

「と、取り敢えず。予約準備は出来てます。」

「ありがとうございます!じゃあ行こ〜!」

「だから引っ張んな!?」

「あ、待って〜。」

「……ま、待ってよ〜!香澄ちゃん〜!」

「何かすみません……では!」

「練習、頑張って下さいね〜。」

 

手を振り見送る。何かとんでもねぇバンドメンバーだったな。

 

「……さて、俺は書類でも書きますか。」

 

 

 

「……アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。」

 

駄目だ、長くやり過ぎると疲労感が出る。少し休憩貰うk

 

ボォォォォォン!

 

突如爆発音が聞こえた。同時にまりなさんが走って来た。

 

「刻針ちゃん!?あの音は何なの!?」

「あ、まりなさん!それが私にも分からないんですよ!取り敢えず……4番スタジオからだと思うのでカウンターの接客担当お願いします!」

「頼んだよ刻針ちゃん!」

 

俺は咄嗟にカウンターから離れ、俺はスタジオへ向かった。

 

 

 

バンッ!

 

「一体何事ですか!?」

「れんちゃん!えーと……それが……。」

 

周囲状況を確認……スピーカーが故障してる……これが爆発音の原因だな。

 

「取り敢えずロビーで待ってて下さい。」

「「「「「は、はい……。」」」」」

 

Poppin’Party一同はスタジオを出た。さて、こっからは俺の仕事だ。

 

「幸いに工具は用意してるんだ、やってやるよ。

先に基盤の確認……中身はn(ガパッ……ブシャァァァ!)ゲホッゴホッ⁉︎何だこの煙!?」

 

有毒ガスか!?なら修理に時間を掛けてたら危険だ!

 

「放置したらスタジオ外にもガスが充満してしまう!」

 

ならさっさと修理しようそうしよう!取り敢えず鎌太刀に連絡だ!

 

ピリリリリ……

 

『……こちら鎌太刀、どした時r』

「緊急だ!早くCIRCLE内の皆を避難させてくれ!」

『一体どうしたか知らんが分かった!すぐに向かう!』

 

ブツッ……。

 

「頼むぞ鎌太刀……どうやらこのガス……予想より『遥かに強力』だ……しかも……これ……図的に……急が……ない……と。」

 

 

 

鎌太刀Side

 

「ここがCIRCLEか、取り敢えず……。」

 

ウィーン

 

「皆!外へ避難しろ!」

「……え?どう言う事ですか?」

「ちょっと待って!?一体どう言う事なの!?

 

黒ジャケットに白と青のボーダーシャツにジーンズの黒髪ショートヘアの女性が聞いてきた。

 

「簡潔的に言えばスタジオで有毒ガスが発生したと聞いた!このままだとCIRCLE全体に充満しかねない!」

「スタジオって……刻針ちゃんのいる所!?」

「れんちゃんが!?急がないと!?」

「落ち着け香澄!一旦避難するぞ!」

 

そう言い女性6人が撤退した。後はスタジオに居る時練だ!

 

 

 

バンッ!

 

「時練!何処だ!」

 

……反応が無い。しかも有毒ガスが充満している!入る前にガスマスク装着しといて良かったぜ!

 

「おい時練!何処だ!返事をしろ!」

「……こ……こだ……鎌……刀……。」

「時練!」

 

スピーカーの横に倒れている時練を起こす。

 

「取り……ず……ガスは……止ま……た……俺は……ガス……マヒ……てる……だ。」

「……分かったからもう喋んなよ。さて、換気しとかないとな。」

「悪……太刀……。」

「安静にしてろ。怪我も回復してねぇだろ?」

「……。」

 

気絶しちまったか。仕方ねぇ、皆に報告するか。

 

「ったく……世話が焼けるぜ。」




読んでくれてありがとうございます。最近ネタ切れで困っている「狼と月の間」です。時練はあと何回怪我すれば良いんでしょうかね?


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第九話『困惑。逃げられない二人の願い』

〜前回のあらすじ〜
『安静』と言う事を第一にCIRCLEでの仕事をしていた時練。傷は徐々に癒えているがそんな簡単には治らず、客も来ない為しばらくギターで弾き歌う事に。しばらくしてPoppin’Party一行が来店、ギターに夢中になっていた時練はリーダー兼ギターボーカル担当の戸山香澄に若干質問攻めに。
その後、スタジオに向かったPoppin’Party一行だが、時間が経ってから突如爆発音。時練が現場に向かうと機材のスピーカーが故障しており、煙を出していた。 Poppin’Party一行を避難させ、鎌太刀に連絡し、一人で修理を行うとした時練だったが、その煙が有毒ガスの所為か麻痺によって刻一刻と身体の自由を奪われていく。
一方、CIRCLEに到着した鎌太刀はPoppin’Party一行と月島まりなを避難。ガスマスクを装着し突入。スタジオにはガス充満し倒れていた時練が。どうやら修理は終えたが、身体が麻痺してしまい動けなかった。そして鎌太刀は報告と換気の為に一度スタジオを後にした。


〜スタジオ〜

 

「……きて!……ちゃん!」

 

誰か……呼んでるのか?

 

「香……ッ!……つけ!」

「……って!……ないんだよ!」

 

幻聴か……Poppin’Partyの声が聞こえるな……。

 

「息の根……じゃないかな?」

「取り……や……こう?」

「……わわ……。」

 

幻聴じゃねぇわ。てか誰だ俺の息の根止めようとした奴?

 

(もう少し回復したかったが、仕方ないか。)

 

「く……うっ……。」

「れ……れんちゃんっ!」

 

ガバッ

 

「おわっ……。」

 

起きたら起きたらで戸山さんに抱き付かれた。

 

「おい香澄!まだスタッフさんは……」

「だ、大丈夫です。ある程度回復して麻痺も少しずつ解けてきてるので。」

 

ガチャ

 

「……お、起きt……大丈夫か?」

「もう少し回復したかったけど。こう呼ばれたら起きるしかないでしょ。後、これは気にしないでくれ、相当心配してたらしいから。」

「そ、そうか?なら良いが……麻痺は?」

「少しずつだが解けてきてる。ありがとう鎌太刀。」

「そうか……うらやm「それ以上言ったら正拳突きな。」んじゃ俺は戻るわハハハ〜!」

 

バタンッ!

 

あ、逃げた。殺気出して無いのに。と、言うよりは……

 

「何時まで抱きついたままなの……?てかもう離れても良いのでは?」

「あ、ごめんなさいっ!」

 

鎌太刀来ても離れなかったって事は、相当気付いてなかったのだろうな。

 

「大丈夫。でも、このままだとこっちが恥ずいからさ。」

「……あ、そういえば練さん。」

「ん?どうしたの?」

「……その傷は何かな?」

「傷?……傷なんて何処にも……?」

「……ほら、ここだよ。」

 

花園さんが左肩に指を差す。そこには付けた事が無い切傷があった。

 

「何処で付けたんだろう?分かんないや。」

「れんちゃんにも分からないの〜?」

「うん。全くご存知無い切傷だね。」

 

取り敢えず後で絆創膏でも貼っとくか。.

 

 

 

あの後、市ヶ谷さんと牛込さん、山吹さんは時間だから帰って。俺は麻痺が解け切ったから立とうと思ったら……

 

「……。」

「「……。」」

 

現在、戸山さんと花園さんに凝視されてます。……理由?んなもん無いよ?ただ麻痺が解け切るまで待ってたら二人が話しててさ。んで話し終えたと思ったら急に凝視してくるんだよ。

 

「あの、一体何でしょうか?そんな凝視されると怖いんですが……。」

「私、おたえと考えたんだけど、れんちゃんお願いしても良いかな?」

「……お願い?お願いとは?」

「私達のバンドのサポート役になって欲しいの。」

「Poppin’Partyのサポートを?んー、でもなぁ……ちょっと待っててね。」

 

身体の麻痺も解け切ったから携帯使って『とある人』に連絡する事に……。

 

ピリリリリ…… ピリリリリ……。

 

『何かしら?』

「あ、友希那。実は頼み事が……」

『……頼み事?』

 

 

 

「……ってとこなんだよ。」

『えぇ、貴方の好きな様にしなさい。ただし両立する事よ?』

「任せろ。こっちはスタッフ兼Roseliaのサポート役だぞ?」

『そうだったわね……それじゃ。』

「嗚呼、ありがとう。」

 

ブツッ……

 

「……許可取れたからPoppin’Partyのサポート役として宜しく頼むよ。」

「「やったー!」」

「そんなに喜ぶかな普通……?」

 

こうして友希那の許可が下りた俺はPoppin’Partyのサポート役としても仕事する様になった……だが他にもバンドの誘いは多々有った……。




さて、Poppin’Partyのサポート役として頑張れ時練!中の人は次の話に向けてネタ作りだ!

「メタい事を言うなァァァァァ!」ブンッ!

ゴフゥ!?良い……正拳突き……だったぜ。(キボウノハナー)


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第十話『階段落下。出会う生徒会長』

〜前回のあらすじ〜
スタジオの麻痺ガスが原因で意識を失った時練。数時間後、目を覚ますとPoppin’Party一同が目の前に居た。その後、鎌太刀がスタジオに入り状況を話そうとしたが時練の正拳突きに恐怖し逃げてしまった。その後、市ヶ谷有咲、牛込りみ、山吹沙綾は帰宅。戸山香澄と花園たえは時練にPoppin’Partyのサポート役として手伝って欲しいと頼まれる。既にRoseliaのサポートをしていた時練には承諾出来るか不明だった為。Roseliaのリーダー、湊友希那に連絡し許可が下りPoppin’Partyのサポート役として手伝う事になる。

前々回のアンケートを取った結果
Afterglow 3票
Pastel*Palettes 1票
Roselia 1票
ハロー、ハッピーワールド! 0票
と言う事でAfterglow編が終わったら、またアンケートを取らせて頂きます!投票宜しくお願いします!


〜羽丘女子学園・教室〜

 

授業終了後、何時もの様に昼食を取って眠気も溜まってたので寝る為に屋上へ向かう途中、リサに見つかり教室までズルズルと強制連行(引き摺られた)。俺が引き摺られているのに驚いていた友希那とまた三人で昼食を取る事になった。

 

「……ふぁぁ……眠い。」

「時練。貴方何時に寝たの?」

「ふあ?確か……午前二時位……。」

「遅くない!?」

 

当たり前だ。Poppin’Partyの戸山さんに押されスタジオで機材の爆発音。向かって修理しようと思ったらガス出るわ身体動かないわ散々だ。

因みに、詳しい事は第八話参照な。(唐突な宣伝)と言うより……は……。

 

「気合いで……何とかなる……と思う。」

「……時練。しっかり寝なさい。サポート役が睡眠不足では支障が出るわ。」

(友希那が紗夜みたいな事言ってる……!?)

「わ、悪い……友希那……。」

 

今度から一日だけ早く就寝する事を心掛けるか。鎌太刀から薬に詳しい『彼奴(アイツ)』に言って睡眠薬一錠貰うか。

……そんな事思ってたら。

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『2年A組の刻針時練さん。至急、職員室に来てください。来ないと先生泣きますよ?』

「何故泣くん!?」

「と、とりあえず行ってみたら?」

「私達は待ってるから。」

「二人共ありがとう……とりあえず行ってくるよ。」

 

 

 

〜職員室〜

 

ガラガラガラ……

 

「……んで何の用ですか。場合によっては裏拳(バックフィスト)喰らわしますよ?」

「来て早々怖いこと言わないで!?単に運んで欲しいんだけだよ!?」

「そう言う事ですか。んでその運んで欲しい物h……」

 

先生の机を見ると山積みのプリントが有った。……まさかこれを運べと?

 

「あ、用事思い出したので帰りますね。」

「帰らないで!?」

「先生もお分かりですよね!?強盗犯に心臓刺されてるんですよ!?それなのに無理難題な仕事押し付けて……オマエセンセイジャネェ!」

「そこを頼むよ!力あるの刻針さんしかいないんだって!」

 

確かに、学園長と俺を除けば全員女子だ。何考えてんだ俺は。

 

「取り敢えず分かりましたから……よいしょっと。この書類を何処へ運べば……?」

「生徒会長に渡してくれないかな?居なかったら生徒会室で良いよ!場所は……まぁ、見れば分かると思う!」

「分かると思うの?……取り敢えず失礼します……。」

 

 

 

「……何処だ?」

 

徘徊してから十分で迷う始末。まだ羽丘学園の構造理解してないから仕方がないことだよね()

 

「確か生徒会室と言ったら、階段降りたらすぐ近くだったっけか?なら戻r」

 

ズルッ

 

段を踏んだ瞬間、踏み所を外し宙に放り出された。

 

「……マジかよ。」

 

ドドドドドドドドド!

 

「ぐっ……うっ……!?」

 

受け身も取れずそのまま落下し、段差一段一段を身体に受ける……そして。

 

ドンッ!

 

段差地獄を終え、地面に叩きつけられた。

 

「痛ってぇぇぇぇぇ……。」

「だ、大丈夫ですか!?」

 

視界が逆になっているが、茶髪の女子生徒が心配していた。

 

「あ、あぁ。大丈夫です……少し離れて下さい。」

「は……はい。」

「良し……ふっ!」バッ!

 

離れるのを確認してから、ネックスプリング(首跳ね起き)で起き上がる。立てるって事は怪我は無いな。

 

「大きな怪我は……無いや。って言っても……。」

 

積まれていた書類は落下の衝撃に手放した所為で周囲に散乱している。

 

「仕方ない、集めますか……。」

「あ!て、手伝います!」

「あ、ありがとうございます。」

 

一枚一枚書類を手に取り集める……一人だけだったら結構キツかったな。

 

 

 

「これで最後……っと。手伝ってもらってありがとうございます。」

「困った時はお互い様です!因みにその書類って……?」

「生徒会長に届けるんだけど、居なかったから生徒会室に……。まだ来たばかりだからさ……迷って……アハハ。」

 

(元)軍人として恥ずべきかと……ちくせう。とか思って苦笑いしていたら、

 

「生徒会長って……私なんですけど……。」

「……Machst du Witze(冗談だろ)?」

「……え、えーと?」

 

……しまった。ついドイツ語を……。

 

「せ、生徒会長だったんですか……聞かれてなかったので驚いて……。」

「そうだったんですか……すみません、気がつかなくて……。」

「あ、いえいえ!悪いのはこっちですから!」

 

他者との会話による精神療法(Mental care)は難しいが、徐々に抑制される筈だ。

 

「あ、一応名前教えた方が良いですかね?」

「そ、そうですね!私の名前は「つぐみー!行くぞー!」あ、すいません……友達待たせていて……。」

「いえ、生徒会室の場所さえ教えてくれれば大丈夫です。」

「そうですか……あ!えと、生徒会室は少し進んでから右に行くと分かります!」

「教えてくれてありがとうございます。後は自力で行きますので会長さんは友達の方へ……。」

「すみません!ありがとうございます!」

 

そう言って一礼した後、踵を返して行ってしまった。

 

「つぐみ……か。」




こんばんは〜、狼と月の間です。え〜まず最初に言いたい事がありまして、大変長らくお待たせしました!テスト三昧と受験の勉強て後久々にSwitchを(((殴

「ほう……これだけ開けといて良い度胸だな?」
「あー……こうなったら俺でも止めれんぞ。」
「……中の人よ、言い残す事は有るか?」

ええっ!?言い残す事……また不定期になりますが、今度は遅れないように頑張りまs

「吹っ飛べこの野郎ォォォォォ!」

ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"(絶命)


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第十一話『カフェテリア。夕暮れの幼馴染と料理』

〜前回のあらすじ〜
教室で友希那、リサと共に昼食を取っていた時練だが、突如教師に書類運びを任され生徒会室を聞いておらず迷った挙句踏み外し階段から落下。衝撃に手放した所為で周囲に散乱し集めていた所に生徒会長のつぐみと出会う。

「……さて主。2021年だな。」

……ハイ。

「何か言うことは有るか?」

皆様大変長らくお待たせしてすみませんでした!
ペースがこんなにガタ落ちするとは思わなくて、申し訳ない!

「不定期にも程が有るだろが……。」


〜CIRCLE・カフェテリア〜

 

「うん……くぅぅあぁぁ……。」

「あ、おはよう刻針ちゃん!」

おふぁひょうふぉざいまひゅぅ(おはようございます)……。」

「早速だけど、刻針ちゃんにはカフェテリアの接客と料理の提供をしてもらうよ!」

「……ん?いやいやちょっと待ってくださいよ!?」

「どうしたの?まさかメイド服が良かっt……」

「いやそう言う事でも無くて!?確か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り数十分前、刻針家にて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタカタカタカタ……カタッ。

 

「う……くぁぁ……来週のスケジュールと羽丘学園の報告書完了っと。時刻は……午前9時か……。」

 

二十分にはCIRCLEの仕事だ……休日だからとはいえ、長く寝たら(社会的に)終わるだろうな。

 

「少し仮眠を取ったらどうだ?時間なったら起こすからよ。」

「10分位睡眠を取れば今日分は回復するだろうな。頼む鎌太刀……。」

「ん、おやすみ。さて俺は……。」

 

んで、テーブルに突っ伏し寝てた筈だが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、10分寝たら此処に居るのは何故!?」

「あ、それなら私が頼んだからよ♪」

 

どうせ身体の何処かに……ん、何かの痕発見。考えるとすれば……持ち上げれた時に痕が残り知らずに搭乗。CIRCLEまで移動させたんだろうな。

 

「(取り敢えず後で鎌太刀には書類の整理を任せるとして……)と、取り敢えず何をしたら良いんですか……?」

「え〜っとね〜(ガサゴソ)これ着て頂戴!」

 

渡されたのは紙袋。また……じゃねぇよな?いやでも、まりなさんならやりそうなんだよな……やはり、女性ってのは危険なんだな……。

 

「……取り敢えず着替えてきます。」

「刻針ちゃんなら似合うと思うよ!」

 

警戒状態(Alert state)になりながらも諦めつつ、着替えて来る事にした。

 

 

 

んで、結果と言うと……うん。

 

「……普通だ、これ。」

 

白いワイシャツに紺色ジーンズ、ベージュの腰エプロン。カフェのマスターに近い服装だ。一応料理もするので髪は束ねてポニテに……ってあれ?

 

「……ちょっと良いですか?」

「ん?どうしたの刻針ちゃn……。」

「いえあの作る料理ってスイーツ系でs……あれ?」

 

まりなさん固まってらっしゃる。宛ら銅像の様に。

 

「まりなさん?まりなs「……いい」……へ?大丈夫ですk」

「可愛い〜!」ガバッ

「あわっとぅ!?」バタッ

 

いきなり抱きつかれ体勢を崩した。しかもまりなさんスリスリしてるし擽ったいしヤメロォォォ!

 

 

 

あれから五分後、やっと解放され仕事している。スイーツについては取り敢えず独学や本でも読んで学習することにした。

 

(あー……駄目だこれ。コーヒー豆挽いて飲むか。)

 

ガリガリガリガリガリ

 

(あれ、どっちだっけか……コーヒー豆ごと飲むかコーヒーにして飲むか……)

 

ガリガリガリガリガリ

 

(まぁ……良いかな。挽いてるしコーヒーにして飲むか。)

 

ガリガリガリガリガリ

 

「あ、あの〜、すみません〜。」

 

ガリガリガr……あ、やべ悩みすぎたか。

 

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

「モカちゃんはパンが良いです〜。」

「アタシも同じ物で!」

「ショートケーキお願いします!」

「……私は良いや。」

「お二人の方はパンケーキでしょうか?」

「それでお願いします〜。」

「畏まりました。其方の茶髪のお嬢さんは?」

 

……ん?よーく見たら昨日会った生徒会長に似てるが……違うか。

 

「私は……コーヒーをお願いします。」

「コーヒーですね。ではお好きな席にお座り下さい。料理はこちらでお持ちします。」

「ありがとうございます。」

 

……さてお菓子(sweets)については皆無だがやってみるか。

 

 

 

???Side

 

「どんなのが来るんだろうね〜!」

「まぁまぁ、ゆっくり待とうぜ。」

「うーん……。」

 

あの店員さん……何処かで見たような気がするんだけどなぁ……。

 

「つぐみ?どうかしたの?」

「……な、なんでもないよ!」

「つぐ……あやしい〜。」

「怪しくもないよ!」

 

……でも……うん!聞いてみよう!

 

 

 

時練Side

 

「……。」

 

パンケーキの焼き加減って初めてだから難しい。だからこそ挑戦してみたいのだが。

 

「……焼き加減良し。さて、やるか!」

 

勢い良くフライパンを上げ、3枚のパンケーキが宙を舞う。

 

「落下地点の軌道を予測し……より速く動く!」

 

落ちて来た辺りにフライパンを持って来て乗せる。そしてまた上げ宙を舞う。

さらに2往復、勿論落とさない。狙いは完璧に、動きは迅速に。

 

「はっ!よっ!」

 

今度は少し高く上げて、今の内に片手で設置場所に狙い皿を投擲する。

一応言うが落としたら割れる。だから射撃訓練用のクレーの投擲応用で投げれば……。

 

「注意!」

「「「「「えっ!?」」」」」

「(方向方角、投擲落下距離……良し!)はぁぁぁぁ!」

 

高さをなるべく低めにパンケーキを乗せた皿が2枚飛んでいき……

 

ポスッ

 

……落ちもせずテーブルの上に置かれた。

 

「……Pinpoint(ピンポイント)。」

「「「「「お、おぉぉ……」」」」」

 

そりゃ驚くか。遮蔽物(screen)による手榴弾投擲(Grenadrenade)訓練の成果が有って良かった。

 

「と言う事でパンケーキお待たせしました。注文のショートケーキとコーヒーも直ぐに用意しますのでお待ち下さい。」

「「「「あ……はい……。」」」」

「それでは失礼……「すいません!」はい?どうされましたか?」

「あ……あの……。」

「……?」

 

追加注文だと思ったのだが……違ったか?

 

「刻針さん……ですよね?」

「……。」

「答えて貰えませんか?」

「……やっぱり、そうですか。」

 

結んでいたポニーテールの紐を解く。はらりと髪が下に垂れ素の姿を見せる。

 

「「「「えっ!?」」」」

「何故分かったんですか……?」

「いえ、あの顔と髪の長さ……何処で見た事が有りまして……。」

 

髪で分かるの?嘘だろ?

 

「……まぁ、改めて自己紹介ですね。羽丘女子学園新入生の刻針時練です。宜しくお願いします。」

「Afterglowのキーボード担当の羽沢つぐみです!」

「ひーちゃんが言っていたのはこの人なんだ〜。あたしはギター担当の青葉モカだよ〜。よろしくね〜。」

「ドラム担当の宇田川巴だ!宜しくな!」

「上原ひまり!担当はベースです!宜しくお願いします!」

「……三竹蘭。ギターボーカル。」

 

あ、あれ?俺、何かやらかしたか?

 

「大丈夫だよ〜、蘭は何時も普段こうだから〜。」

「ち、ちょっとモカ!?」

「あ、そうなんですか。」

 

……これはこれで大丈夫だな。うん、大丈夫だ。(安心感)




前書きに謝罪した狼と月の間です。受験等でペースガタ落ちしたことには申し訳ないと思ってます。ペースをなるべく上げるので宜しくお願いします!

「良し、そこの箱開けてみ。」

箱?……異様にデカい様な。

「キニスンナ、取り敢えず開けてみ?」

……一体何が有るんd

『主、タイキック』

「ぶっ飛べやゴルァァァァァ!」

ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"(絶命)


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第十二話『多色多様。迷った先は剣道部員』

ポピパ→アフグロと来たら次は絶対にパスパレだよなぁ!











……そうだよなぁ!

















……そうだよなぁ!(ゴリ押し)


〜羽丘女子学園・1ーA〜

 

「あ"ぁ"ぁ"……」

「……レ、レン?だ、大丈夫?」

 

机で突っ伏してたらリサが来た。そりゃそうか。

 

「大……丈夫……」

 

本音は大丈夫じゃない。朝から滑り後頭部強打、登校中に鉄骨が落下してギリ回避、授業中に寝ている生徒に教師がチョーク式弾丸(Bullet)を放つが見事躱され俺の前頭部に命中……災難だ。

 

「はぁ、何でこうなるのやら」

「ま、まぁ……気を取り直してさ?」

「そうだぜ。人間、不幸は避けられないだろ。」

「確かにな……は?」

 

別の声が聞こえたんだが、しかも何処かで聞いた声。

 

「何してんだよ」

「悪い悪い、盗み聞きは駄目だったな!」

「そっちじゃねぇよ!」

「……あ、そっか!玄関口から入るのか!」

「それも合ってるけど俺が聞きたいのはそっちじゃねぇ!」

「お、落ち着こう!?」

「……そうだな。悪いリサ、少し待っててくれ」

「え?う、うん……」

 

「……で、こんな昼間から何の様だ?」

「簡潔に言うと依頼の件」

「依頼?こんな時にか?」

 

鎌太刀は首を横に振った。

 

「いやいや時練、明日休みだろ?」

「まぁ……そうだg……まさか。」

「嗚呼、明日だ。依頼者は……とある事務所のバンド『Pastel*pallettes(パステルパレット)』のリーダーからだ。」

 

pastel*pallettes……しかし明日か。出来るだけ被害を出さない装備は選ばないとな。

 

「……んで依頼内容は?」

「それについては聞きに行く」

「今からか!?」

「いや放課後。学園長からはアポ取ってるぜ。」

 

学園長にアポ取るとは。

 

「アポじゃないよな。それって……」

「細かいことはキニスンナ、OK?」

「はいはい、では放課後な」

「了解」

 

 

 

「帰ってきたわね」

「あ、レn……大丈夫?」

「大丈夫。友希那は何か気付いた様だけど、安心してくれ」

「……そう?なら良いわ」

 

さて、後3時間頑張りますか。

 

 

 

(内容的にもネタがキツいのでバッサリカット。)

 

 

 

~花咲川女子学園・校門前~

 

「……と言う事で休み貰えますかね」

『良いよ良いよ!刻針ちゃんも色々有るんだよね!』

「はい……すみません」

 

放課後となり、バイトの事もまりなさんに伝えた……忘れてるのもう無いよな。

 

「悪い時練!遅れた!」

「……結構遅かったな」

「んで、一つ聞いて良いか?」

「何だ?」

「……なぜ木刀を?」

「鎌太刀、そこは聞いてはいけない」

「……?」

「まぁ、知らぬが仏だ。案内宜しく頼む」

「へ?お、おう……任せとけ」

 

と、言うことで追う事にになったんだが……

 

 

 

「……また迷った」

 

案の定、花咲川女子学園(この場所)を知らない俺にとっては致命的だった事を忘れてた。

てか前もこんな状況無かったっけ……そうだ生徒会室の事だったな確か書類持って探しt(以下略)

 

「さて……どうするかだな……迷ったのは仕方ないが探すのに時間g「ドー!」ん?何だ?」

 

声のする方へ行ってみる……そこに居たのは……

 

「ブシドー!って……」

「……え?」

 

白髪に蒼い瞳が持つ剣道女子が独りで素振りしていた。あれ、これ状況的に俺不味くないか?仕方ない、こういう時は……

 

「……お邪魔しました」

「あ!ま、待って下さい!(ズルッ)あっ!?」

「ん?って!?」

 

躓いたのか驚きの声と同時に振り返ると剣道女子が前のめりに倒れそうになり、目の前に竹刀が飛んできていた。このままじゃ……クソッ!受け止める!

 

(間に合えッ!)

 

バンッ!……ガバッ!

 

「急に慌てて走ったら転ぶに決まっている……怪我はないか?」

「……です」

 

万が一怪我でもさせたらタダじゃすまないし自決の覚悟も用意してしないとな……てか、今この子何て言っt

 

「すごいです!今の何ですか!?」

「……はい?」

 

……何故か感動していた。

 

 

 

〜控室〜

 

鎌太刀Side

 

「ここに依頼人が居るからノックして入r……」

 

振り返るがそこに時練は居ない。

 

「(コンコン)依頼を受けたSilence(サイレンス)です。」

「……どうぞ」

 

薄黄色のロング髪の花咲川女子生徒、もとい依頼者に一礼してから対面する様に座る。

 

「急ですが依頼の件について話してくれませんか……?」

「それが……」

 

 

 

「……成程。取りあえず状況は把握しました。取りあえず連絡しますので暫し時間を下さい。」

「……?」

 

プルルルルル……プルルルルル……

 

「あ、繋がっt」

『鎌太刀か!?悪いが後にしてk(ブシドー!)れっ!?』

「大丈夫か時練?」

『あぁ……今剣道Girl(ガール)に叩き込m(ドォー!)危なっ!?』

「大丈夫と言うことは分かったから話すぞ?」

『頼n(パァン!)ファッ!?』

「……。」

 

……本当に大丈夫か?

 

「まぁ話すぞ、依頼の件だが、殺害予告の手紙が前日届いた。どうやら明日のライブに犯人が来るらしい。被害甚大の可能性がある為、対策法を聞こうと思うんだが……何かないか?」

『成h(ブォン)対策についt(ブォン)考えr(ブォン)思i(ブォン)t(ブォン)言わs(ブォン)』

「言わせる隙も無いんだな」

『ほっとk……っておい!?』

 

ブツッ……

 

「……切れた」

「あの……終わったのかしら?」

「アッハイオワリマシタ……取り敢えず明日の早朝、待機しておりますので普段の時間通りでお願いします」

「分かりました」

 

 

 

時練Side

 

「……。」

「あの、もう良いですから頭を上げてください……?」

 

状況を話そう。白髪剣道学生……若宮イヴは放課後一人で素振りをしており、そこに俺が来た。不味いと思って踵を返した所、走って止めようとし足を滑らしたので思いっきり飛び込んで抱えた為か怪我は無かったのは良いが、あの動きに若宮が感動したのか「教えてください!」土下座してきたんだよ。んで危ないと思った俺は取り敢えず回避方法でも教えようと若宮に竹刀を持たせて回避を見てもらうようにしたらまた滑って同じ事……って所だ。

 

「これ以上は危険過ぎて此方が困る……てか自決だ。」スチャ

「わーっ!?早まらないで下さい!?」

 

隠し持っていたナイフを構えようとした瞬間止められた。

 

「……あ!そういえばお電話来てましたけど誰からですか?」

「ん?あ、俺の仲間です。依頼の件で向かっていたんですが迷った挙句にこの状況で」

「依頼……?」

「えぇ、どうやら殺害予告されたバンドメンバーの防衛任務らしくて……」

「それって私達です!」

「え?」

 

まさか当の本人が居たよ。取り敢えずどう言えば……あ、そうだ。

 

「あー、えと。絶対に守り抜きます。この命を賭けても」

「……はい!」

 

ヤベェ早急な死亡フラグを立てた気がする。いや立ったわ絶対。

 

まだ仲間達は来ていない、俺と鎌太刀で何とかしねぇと……。




「やっぱり不定期投稿だな」

……。

「コレでも見てくれている人に感謝しとけよ?」

……悪い。


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第十三話『防衛戦。息の根を殺す冷気』

暑いなぁ……

「主ー、十二話以降から何も出してない気がするんだがー」

うん。暑いし学校とかも有るから

「夏休みは疲れだね(?)」

そう言う事。


〜ライブ会場・ステージ〜

 

ガチャ

 

「さてと、んじゃ準備しますか」

「随分と持ってきたなおい」

「持ってみるか?ほれ?」ポイッ

「(ドサッ)重」

 

30分前、俺と鎌太刀はpastel*pallettes(パスパレ)到着前にと有る準備をしていた。まぁ分かると思うが対テロ対策の準備だ。

 

「所で時練。何やってるんだ?」

「ん?音響スピーカーの修理。万が一故障したらと思って修理してるんだ」

「成程な。で、プランは思い付いたのか?」

「まぁ何とか。成功確率はざっと85%」

「うーわ低いな!もちっと15%くらい上げられんのか?」

「そしたら100%だろ。麻痺ガスとか心臓の傷の件でまだ十分動かせないんだ」

戦闘訓練(リハビリ)とかもやってないしな、そりゃそうか」

「嗚呼……良し、修理完了。音もしっかり出てるな……んじゃ、さっさと内容言って取り掛かるぞ」

「了解」

 

 

 

???Side

 

「おはようございまーす!」

「あ、おはようございます!皆さんお元気で何よりですね!」

「……ちゃーん!」ガバッ

「わちょちょい!?早々に抱きつかないでください!」

「えへへ〜☆」

「おはようございます。殺害予告の事だけど、Silenceという方が依頼を受けてくれて、私達はライブを続けて良いらしいわ。」

「(Silence?てことは……まさか……?)」

 

 

 

時練Side

 

「時練!ここか?」

「確認する……8ミリ左だ!」

「8ミリ左かー?てことは……ここか?」

「そこだ!固定しとけ!」

 

さて、対策の準備は済んだ……。

 

「オーケー鎌太刀!10分休憩だ!戦闘前に休んでろ!」

「設置は簡単だけど位置をミスるとアカンからなぁ」

「最悪、強行手段は練っとくか?」

「そうだな」

 

んじゃ、プランでも練るか。

 

「良ーく聞けよ」

「耳構えてるよ!」

 

耳構えるとは。

 

「さっきのプランにもう一つのプランを練る。もし(Trap)が失敗した場合を考える。何か案はないか?」

「使われてないワイヤー掴んで強襲!以上!閉廷!」

「お前に聞いた俺が馬鹿だった」

「冗談だって!ほら、練ろうぜ!」

 

鎌太刀はこう言う所だから面白い。前の部隊でも仲間を笑わしてたな。

 

「んで、対策法は有るのか?」

「有るは有るがテロの人数次第だ」

()()2()()も何処いったのか分からないからな」

 

合流までには時間が有るだろう。もしくは……まさかな。

 

「襲撃地点は舞台裏と通路の2箇所だ。何か有ったら通信で応答、呼び名は随時Code name(異名呼び)でな」

「了解。んじゃ裏で隠れてるぜ」

「あいよ……というか、動き辛いな」

「警備員と言ったらこれしかねぇだろ。ほれ、通信機」

「サンキュ。んじゃ、行くか」

 

 

 

〜ライブ会場・裏〜

 

鎌太刀Side

 

「(カチッ)こちらSilence。通信テスト、応答ヨロ」

『……ちら……ath……るか?』

「通信悪いなおい!もう少し調整出来るか?」

『調……難し……これで良いか?』

「おう、大丈夫だ!」

『で、目標(Target)は今の所確認してるがそれっぽい奴が居ない』

「パスパレの方はどうだ?」

『今到着した。此方の存在には気付いてない』

「誰も居なくて裏切ったとか思ってないよな?」

『お前が事前に計画立てたんだ。何とかなるだろ』

「だと良いが……」

 

 

 

時練Side

 

「……とにかく、俺達のPlan(計画)が失敗しない限りは続ける事にする」

『分かった……健闘を祈る。Silence、アウト』

 

鎌太刀との通信を切った。それと同時にパスパレの到着も確認。女性マネージャーも居る……一応Gray Zone(現状判別不可能)に入れておこう。あ、こっち来た……ん?

 

「此処までの移動……お疲れ様です」

「お疲れ様でーす!」

「お気遣いありがとうございます」

「いえいえ」

「……取り敢えず皆さんは衣装に着替えてください」

「はい!わかりました!」

 

咄嗟の判断で一礼したが何とかバレずに済んだ。そのままパスパレ一同は控室に向かい、取り残されたのは俺とマネージャーになった。やべぇ、話す事が無い。

 

「……警備も大変ですね。まさかの殺害予告と来たのですから」

「あ、はい。忙しくても、私にとっては大きな仕事なんです。命をかけても守らなくてはいけないので」

「そうですか」

「そうなんですよ。そろそろお時間ではないですか?」

「……え?」

「マネージャー!着替え終わったよー!」

「ほらね」

 

ポカンと口を開けるマネージャー。結構驚いただろうな。

 

「……時間は有るけど、皆行けるよね?」

「うん!この為に練習してきたもの!」

「頑張ってライブを成功させましょう!」

「フヘヘ……頑張ります!」

 

どっかで聞いた事があるが気にしたら負けだ。うん、気のせい。

 

「よぉーし!るんっ♪って来たよ!」

「皆さん!頑張りましょう!」

 

意を決したのか、ステージへと向かうパスパレのメンバー。さて、鎌太刀に連絡するか。

 

「(カチッ)こちらDeath(死際)、防衛対象がステージ上に向かった。そこから見えるか?」

 

 

 

鎌太刀Side

 

「こちらSilence、目視確認」

『何かしら不審な動きが有ったら通信及び取り押さえろ。身柄を確保したら別室にて取り調べだ』

「はいよ。因みに……」

『嗚呼、相手が攻撃してきた場合。()()()()()()()で無力化しろ』

「了解、生かさず殺さずだな」

『生かして殺さずな。中途半端な状態だと報告書の内容が面倒になる。発見から合流までは時間が掛かると思うから頼んだぞ。Death、アウト』

 

時練との通信を切った。さて、何事も無くライブが始まりそうだが。

 

ボォォォォン!

 

突然、爆発音が聞こえた。良く見ると音響スピーカーから煙が出ている。

 

『お客様にお知らせします。突如スピーカーの故障により、少々お時間を取らせて下さい』

「スピーカーの故障だって!?メンテはしてなかったのか!?」

「早くライブ開始してくれよ!」

 

まさかの故障か。修理の二人組が赤い工具箱を持ってスピーカーに近付いて……ちょっと待てよ?

 

 

 

「(所で時練。何やってるんだ?)」

 

「(ん?音響スピーカーの修理。万が一故障したらと思って修理してるんだ)」

 

「(嗚呼……良し、修理完了。音もしっかり出てるな……んじゃ、さっさと内容言って取り掛かるぞ)」

 

 

 

時練はスピーカーの修理は完了している……なのに故障?何かパーツの取り付け忘れか?いや、彼奴は()()()()では有り得るが()()()では忘れない筈……まさか!?

 

「(カチッ)こちらSilence!聞こえるか!」

『どした急に……一体何d」

「スピーカーの修理は終わったのか!?」

『は……?()()()()()()ぞ?』

「じゃあ……()()は……!」

 

俺は急いでワイヤーを掴み、強襲態勢を取った。

 

「Death!今すぐ来てくれ!」

『だから訳を話せy』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵はもう……『防衛対象の目の前(ステージ上)』に居るんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時練Side

 

「クソッ!」バッ!

「ど、どうかしたんですか!?」ザッ!

 

驚き走った俺の後ろをマネージャーがついて来る。現状は話すしかなさそうだ、

 

「舞台裏の警備員から連絡で、テロはもうパスパレが居るステージ上に居るんです!このままじゃ全員お亡くなりに!」

「そんな!?なら私も!?」

「危険です!マネージャーは会場正面扉から客を避難させて下さい!」

「……でも!」

「此処からは私達の仕事です!」

「……っ!避難させたらすぐに向かいます!」

「それなら十分だ!」

 

マネージャーは素早く踵を返し、客の非難に向かった。

 

「急いでステージに向かわなくては!」

 

 

 

バンッ!

 

「Silence!大丈夫か!」

「パスパレの皆は避難させた!というか馬鹿野郎後ろだ!」

「死ねぇ!」

 

裏口から侵入した俺を背後から襲いかかって来たが……

 

「甘い!」ガッ

「なっ!?」

「オラァ!」ブンッ!

「(ドガァン!)ぐ"お"っ"!"?」

 

右腕を掴んで、逆に背負い投げて壁に叩きつけた。

 

「かーらーのー?」

「……ああもう!受け取れ!」ブンッ!

「(パシッ!)ヨッシャ喰らえ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!"?」

 

バチバチバチッ!

 

「ぐ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!"?」

「どうだ!?改造し過ぎて高圧電流化したスタンバトンの味は!」

「それを最初から言えやァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!"?」

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"……が"ぁ"ぁ"ぁ"……」バタッ

 

あ、気絶した。

 

「ハァ……ウ、グァ……殺す……気か……!」

「生きてんだから大丈夫だろ」

「俺は……お前みたいな……タフじゃ……ねぇんだよ!」

 

確かに。

 

「ギャグしてんじゃねぇ!」

「「……あ、もう一人忘れてた」」

「忘れんじゃねぇよ!ったく……良いか、良く見やがれ!」

 

男はポケットから赤いボタンを取り出した。

 

「このボタンを押せば仕掛けた爆弾が起爆する!俺もお前達も木端微塵だぜ!?」

「成程な。対象を逃したから俺達を殺す気かよ」

「クソッ……だが逃したのなら……」

「(バンッ!)警備員さん!私もお供します!」

 

何と若宮が木刀持って戻ってきた。てかどっから持ってきたその木刀!?

 

「ばっ!?戻って来んな!」

「戻ってくるとはな……くくっ!」

 

男は懐からナイフを取り出して、若宮に接近した。

 

「……ッ!?」

「好都合……最初はお前ダァ!」

「ッ!やめろ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全く、筋が通って無いですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ……!

 

「なっ!?」

「えっ……!?」

「……ッ!」

 

何とマネージャーが目の前に飛び出して庇ったが、負傷で膝をついた。

 

「はぁっ……はぁっ……イヴさん……大丈夫ですか?」

「マネージャーさん!そんな……!」

「後は私が……相手します……イヴさんは戻って下さい……危険ですから……」

「……死なないでください!」バッ!

 

そう言って若宮は帰って行った。取り敢えずはまた安全だ。

 

「馬鹿め!庇ったと思っただろうが瀕死だろう!彼奴等には言っているが俺は爆弾の起爆ボタンを持っている!このボタンを押せばドカンだ!」

「……そのボタンを押せば……ですか?」

「嗚呼!その通りだ!」

「ヤバいぞ……!あのマネージャー……死んじまう……!」

「……いや、死なないな」

「はぁっ!?……どう言う事だっ!?」

 

必死に立ち上がろうとしている鎌太刀に寄り支える。

 

「Silence……感じるか?」

「何がd……ん?妙に……()()が……?」

「そう。()()()()()()()

 

最初、マネージャーに会った時も寒気がしたんだ。て事は……

 

「寒気が何だろうが、邪魔な嬢ちゃんを殺すだけだ!」

「やめとけ、そのマネージャーは殺せない」

「は?脅しのつもりか?」

「此奴は……本気で言ってるぜ……」

「……そうか!なら殺せるまでやるだけだぜ!」

 

男はもう一度ナイフで斬りつけようとする……その瞬間だった。

 

「……っ!」パシッ!

 

ピキピキピキ……バリィン!

 

……マネージャーはナイフを片手で掴むとナイフは氷に変わり、砕けた。

 

「油断は禁物……って知らないんですか?」

「なっ!?」

「遅いですっ!」ドガッ!

「が"っ"!"?」

 

マネージャーはもう片手で男の顎を狙い、肘で突き上げた。そして顎から徐々に凍っていく。

 

「な、何だこれ!?顎が凍ってぇ!?」

「……まだまだ!」ブンッ!

「(ゴキッ!)ば"ぐ"ぁ"っ"!"?」

 

男の足を狙い回し蹴りを放つ。骨が砕ける音が聞こえ、ボタンを落とした。

 

「わ、分かった!お、お前を仲間にしてやる!」

「……」スッ

 

無言で自身の右手を凍らせる。凍った右手は刃に近い形状だった。

 

「ひいっ!お、お助け……!」

「……ッ!」ブンッ!

「イヤァァァァァ!」

「Death!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めろFrozen(凍結)。其奴気絶してるぞ」

「……!」ピタッ

 

ギリギリ首元で止まった氷の刃を冷気に変え、元の腕に戻した。

 

「……やはり、()()()から気付いてましたか……隊長」

「隊長言うな。ったく、久々だな……『霧霜雪(キリシモ ユキ)』」

「お久しぶりです。時練さん、鎌太刀さん……」

「雪……?まさか霧島かお前!?」

「霧霜です」

 

白い長髪に水色の瞳を持つ凍結は振り返った。冷気を立ち込めるその姿を纏わせて。

 

 

 

「ご協力、ありがとうございました!」

「とびっきり冷たい牢屋に入れてやってくれ!」

 

その後、警察の方が来てくれてテロの二人組は見事逮捕、連行された。てか鎌太刀、そりゃもう拷問だろ。

 

「……ったく。傷は大丈夫なのか?」

「あ、はい。事前に身体を凍らせたのですけど、重みが半端なくて……」

「なら良いんだがn「あ、あの!」ん?」

 

そこに居たのは若宮だった。

 

「た、助けて頂いて、ありがとうございました!」

 

深く頭を下げる。こう言うのは苦手だ。

 

「頭下げるのはお前より俺だ……悪い。ライブを中止にしてしまって」

「いえ、私は何も出来ずに……」

「時練さん。ほら、ね?」

「……はぁ」

 

俺はポンとイヴの頭に手をやって、撫でてやった。

 

「俺からも感謝している。危険と分かってて戻って戦おうしたその心はもしかしたら……お前さんの『ブシドー』の力かもな」

「……レンさん!」

 

突然、若宮が俺の手を握ってきた。

 

「わ、若宮!?一体どした!?」

「私!頑張ってブシドーを学んで目指します!」

「お、おう!?」

 

ブシドーを学ぶとは。まぁ、喜んでるし良いか。

 

「て事で時練。()()()()()()()()()()()を宜しくお願いします」

「おい……どう言う事だ?」

「鎌太刀さんから聞きましたよ?CIRCLEで働いているって?」

「……まさかな」

 

もしかしたら予感が的中してしまうかも知れない。と思うと若宮が

 

「レンさん!CIRCLEでも宜しくお願いします!」

「……はぁ、分かったよ」

 

これからも、もっと頑張らなきゃな。




脅威の5400文字です。もうネタ切れだわ()
という事でForest deleteの異名者3人目が来ました。実質後1人ですね。

キャラ紹介
名前 霧霜 雪(キリシモ ユキ)
誕生日 2月16日
好きな食べ物 大福、グラブ・ジャムン
嫌いな食べ物 特になし
趣味 散歩、氷作り

白い長髪に水色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の上等衛生兵。触れた対象に対して凍らせたり、氷に変化・作る事が出来る所から『凍結(Frozen)』の異名を持つ。
現在ではPastel*pallettesのマネージャーをしており、メンバーから弄られる日々を送っている。
基本的には『さん』付けで呼ぶ事が多いが、任務や怒る時には呼び捨て。しかも怒ると完全に対象を殺すか凍らせるので、親しんだ人でないと彼女を止める事が出来ない。


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第十四話『感覚。蘇る微かな恐怖』

次はRoseliaだ……普段ならPCでやるんだけどマウスが起動してるのにカーソル移動しないし使えねぇからスマホでやる事になるんだよなぁ。

スピードは落ちるけど……頑張るぞー!


〜CIRCLE・ロビー〜

 

時練Side

 

霧霜と合流してから1週間が経過した。彼女のお陰で体力は完全に回復、安定しているが……

 

「(……何か、嫌な感じだ)」

 

今は気を紛らわす為にベースを弾いていたが……例えるなら『後悔』『悲嘆』……そして『憎悪』が混ざって、俺の中に『殺意』を生み出している様な……。

 

「(そう言えば、霧霜が渡してくれた薬が……これか」

 

ポケットを(まさぐ)り取り出した3錠のカプセル薬。確か2日前……

 

 

 

「おい、この赤と青のカプセルは?」

「青のカプセルは『精神安定剤』です。一錠で約1時間の効果ですが、時練さんの症状と言うか……原因がまだ分からないので……」

「そうか……ありがとう霧霜」

「いえいえ……でも気を付けて下さい。情報や解析担当の『あの人』が現状居ない為。一時的な応急処置、または私が独自で作ったので副作用や効果が薄い事が有るので、覚悟を決めてから飲んで下さい」

「覚悟を決めて飲むんだな。んでもう一個のカプセルは?」

「薄かった用の為に、赤のカプセルは『仮死薬』を作りました。テトロドトキシンを若干含んでいます。飲めば仮死状態に出来ますけど、これも先程同様、独自で作ったので死ぬかもしれません。薄めの麻酔と追加、時練さんの血で実験したので一時的仮死の後、時間が経てば意識が回復すると思います」

「成程。効果なし用に使えと」

「ですけど、連続服用や一気に全部を使用するのは死に繋がる可能性も有ります」

「そうか……忠告ありがとうな」

「別れても部隊ですから」

 

 

 

「(精神安定剤と仮死薬)」

 

でも本当に『彼奴』が居ないから成分や効果による解析が不可能となっている。

 

「(現状居場所は鎌太刀が捜索している。確認後に連絡をくれるだろう)」

「……刻針ちゃん?どうかしたの?」

「あ、まりなさん」

 

既にPastel*pallettesの若宮イヴとRoseliaの湊友希那は分かってそうだが、なるべく危害は減らすのは俺達(Forest delete)の仕事だ。

 

「いえ、少し考え事を」

「珍しいね〜、考え事なんて。悩みなら私も聞くよ?」

「大丈夫です」

 

ポケットからカ○リーメイトを一本取り出し、口に放り立ち上がる。

 

「んじゃ、早めですけど。淹れますか?」

「そうだねー、貰うかな!」

「了解です」

 

髪を結え、慣れた手つきで用意する。

 

「(……親父にも、用意したかったな)」

 

 

 

「出来ましたよ……って」

「あら、時練じゃない……聞いたわよ。悩みですって?」

 

まさかの友希那。しかも話したなあの人(まりなさん)

 

「……ご本人は?」

「スタジオの用意よ」

「成程な。本人が居ないなら……飲むか?ミルクティーだけど」

「えぇ、頂くわ」

 

俺はブラックコーヒーを、友希那はミルクティーを口に付け飲む。

 

「(あ、精神安定剤)」

 

飲む前に一錠を口に含み、再度を飲む。

 

「……それは何なの?」

「(見られてたか)」

 

色々な意味で不味い状況となったぞ如何にかしろ俺。

 

「まぁこれは何というか風邪薬と言うか」

「おーい?スタッフは居ねぇのかー?」

「……ッ!?」

 

突然の男性の声に向くと……そこには『会いたくない奴(廣岡 佐崎)』が居た。

 

「時練……どうしたの?」

「(彼奴は不味い……!こっちに気付くなよ……!)」

「……ん?お、お前さんは……?」

「(……!)」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ此方に向かってきた。手が震える……身体が強張る……意識が朦朧とする……声が出しにくい。

 

「久しぶりだなぁ?『時練(ゴミ)』よぉ……ん?お前何ベース弾いてるんだぁ?」

「もう、貴方のバンドのメンバーじゃない。だから弾いてi……(ドカッ!)ッ!」

 

左頬を殴られる。一瞬、トラウマが蘇る。

 

「弾くなって言ったよな?」

「時練……!」

「大丈夫……だ……このくらいは……まだっ!」

 

だがダメージは受けても意識が朦朧とすれば立てなくなる確率がある。

 

「……貴方の練習スタジオは此処ではありませんよね?」

「(友希那……)」

 

庇ってくれるのは有難いが、対して奴は言わば『(Beast)』だ。どんな事が有ろうとも必ず事を済ませる……それが奴だ。

 

「……っと、誰かと思えばRoseliaの湊友希那さんかいな?まさか此奴をサポート役として雇ったのか?」

「えぇ、彼にはその素質が有るわ」

「素質……ねぇ……」

 

その目の意味は俺は直ぐに分かり……そして何を思ったのか廣岡は言い放った。

 

「……やめときな。そんな『使えない奴』は役に立たねぇよ」

 

そう……キッパリ言い放った。

 

 

 

「……使えるか使えないかは、私が決めるわ。貴方は口を出さないでくれるかしら?」

 

 

 

彼女は違った。放つ(言葉)を受けても、躊躇わずに返した。

 

 

 

友希那Side

 

彼は私を信じた……そして私も彼を信じる。

 

「ほう?こんな間違いを犯すだけの雑魚をか?ハッ、笑わせんなよ」

「笑わせてないわ。彼は私達のマネージャーだもの」

「マネージャーだと?」

 

どんな災難が来ても……彼は私を助けてくれた。

 

「時練……貴方は使()()()()()()。私は信じてる」

「友希那……」

 

あの大雨の中で私は貴方と出会った。それが()()()だったと思うわ。

 

「……そうだな。そいつより俺が適任だ。どうだ?あの愚か者よりかはうまく指示できるぞ?」

「愚か者なのは貴方じゃないのかしら?」

「何だと?」

「彼は優しくて、寄り添える人よ。でも貴方は……惜しい人を失ったわね」

「調子に乗りやがって!」ブンッ!

 

怒りに身を任せて、その拳を振り下ろしてきた。

 

 

 

「……手を出したからには、此方も本気でやるしかないよな?」

 

私を庇って……彼はそこに居た。

 

 

 

時練Side

 

「なっ……貴様……!?」

「悪いな廣岡。そしてありがとう、友希那」

「クソッ!離せ!」

「良いぜ?ほらよ」バッ

 

片手で掴んだ廣岡の拳を離した。

 

「確かに俺は頼りないかもしれん。その所為で殴られてばっかだけどな……」

「だけど……なんだってんだァ!」

「時練!」

「……」

 

バキッ!

 

「ぐぁぁぁ!?」

「……えっ?」

 

鳩尾を捉えた廣岡の拳は()()より遅く、それは一瞬で終わらせた。

 

「か、肩がぁぁぁ!?」

 

そう……廣岡の肩を脱臼させた。

 

「調子に乗ったのはお前の方じゃ無いのか?」

「ったく、邪魔すんなよ。鎌太刀」

「大丈夫ですか?湊さん?」

「あ、貴方は……?」

「あ、大丈夫です。私は時練の友達です」

「何故友達」

「仲間と言ったらややこしいかと思って……」

「あー、成程なー」

「ふ、ふざけやがって!」

 

まだ生きてた。そろそろ気絶させたいのだが。

 

「こんな事したんだから……た、ただじゃ済まさねぇぞ!?」

「はいはい。もう黙ったらどうですか?『()()()』さん?」

「……ッ!?」

「鎌太刀、どう言う事だ?」

「お前さんに話しとくよ」

 

 

 

それは15分前の事だ。

 

「刻針ちゃん元気なかったけど……どうかしたのかな?」

「あー、少し良いですか?」

「ひゃあっ!?か、鎌太刀君!?」

「すみません毎度毎度うちの者が……」

「え、えぇ?」

 

霧霜自己紹介中……

 

「雪ちゃんで……良いのかな?」

「あ、はい。お気軽にお好きな呼び方で」

「んでまりなさん。少しここに居てくれませんか?」

「え……どう言う事?」

「あー、何というか……廣岡という時練のトラウマが来るっぽくて」

「嘘っ!?」

「(あ、ヤベミスった)」

「あぁもう!すみません失礼します!」

「えっ!?ちょっt」ピキピキ

 

 

 

「んで、凍らせたと」

「はい。時練さんと一緒だったバンドメンバーから聞いたのですけど、脱退した後。ポケットに札を入れている所を見ているらしく、どうやら要らないメンバーを脱退させる前に金を奪う。彼と同じだったバンドメンバーからは同じ事を言われ、所持金が無いと言うのも掴みました。他の目撃者からは「見たけど言ったら絶対殴られる」と物理的脅迫も有るそうで……」

「良くそんな大量の情報持って来れたな……」

「2日前から調べてたので」

「2日前……まさか薬を渡す時か!?」

「はい、事前に調べておきました……と、言う事で。どうします?今なら投降しても良いですけど?」

「ふざけるなぁ!俺はそんな事はやってねぇ!」

「そうかいそうかい意地でも拒むんだねぇ?ならご本人に登場してもらいましょうて事でCome on!」

 

扉が開き、入って来たのは……

 

「時練……ごめんなさい!」

「俺達は気付いていたんだが……彼奴だけには逆らえなくって」

「許してくれるかは別だがすまないと思ってる!」

「お前ら……脱退する前のメンバー達か……?」

「う……うん!」

「覚えてくれてたのか!?」

「嗚呼」

 

忘れる訳が無いだろ。必死に止めてくれたからな。

 

「お、お前等……!?」

「さて、あの方に何された?」

「鎌太刀さん言い方」

「最初は……仲は良いと思ってたんです。でも徐々に脅されて……」

「最終的には分け前の4分の1が俺達に渡されて残りの分は全て彼奴が持って行ったんだ!」

「それに、時練が居なくなってから彼奴はこう言ってた……「脱退する時に奪うのは容易い」って……」

「なっ……!?」

「なぁ時練……俺達は……」

「安心しな。3()()()別れても友達だ!」

「……時練!」

 

仲間達は涙を流していた。

 

「さて……そろそろ本気で「始末」しないとな?」

「く、クソッ!ここで捕まってたまるか!」

 

何を思ったのか廣岡はポケットから何かを投げてきた。瞬間、辺りに煙が充満する。

 

「ちっ……Smoke grenade(スモークグレネード)か!」

「あばよ!今度会った時は必ず殺してやるからな……ハッハッハ!」

「前が見えねぇ……霧霜行けるか!?」

「やってみます!」バッ!

 

 

 

その後、霧霜からの連絡で廣岡に振り切られた事。凍ったまりなさんを溶かして、何とか言いくるめた事。廣岡とメンバーだった者から奪われた金額は此方の予算で返す事にした。

 

「……時練」

「何だ?鎌太刀?」

「……お前さんは彼奴を如何思う?」

「如何って……何だよ?」

「彼奴は生かすか……それとも……」

「……」

 

それは今の俺には出来ない。もしも、その時が決まったのなら……

 

「俺は……するだけだ」

「何て?」

「……何でもない。戻るぞ、今夜は俺の家で食べるんだろ?霧霜も待ってるしな」

「おう、そうさせて貰うぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???Side

 

カタカタカタ……カチッ。

 

「お前は何だ!?目的は……い、一体何だ!?」

 

煩いねぇ……もう少し黙ってくれても良いと思うのだが。まぁ、良いだろう。これで情報は掴んだ。そろそろ、此方の仕事も終わるから彼に会う用意をしないとね……。

 

「最後に……名はClairvoyance。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……バンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的は……この情報を頂き、君達排除。そして、仲間と合流する事だよ」




はい、Roseliaだと思った方はすみません。今回は彼のトラウマ回となりました。果たして廣岡は何処へ行ったのか、そして最後のClairvoyanceとは何者なのか……?


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第十五話『亀裂。愚かな感覚と微かな**』

Q.好きなバンドリのキャラは?
A.湊友希那、広町七深、和奏レイ

Q.オリキャラ一覧を出して下さい。
A.頑張ります()


俺は最近、悩みに悩んでいる事がある。

 

「……」

「時練先輩!悪いところはありませんか!」

「時練……さん……私からも……お願いします」

「二人とも、困っているでしょう」

 

Roselia、意外に真面目なメンバーかと思ったけど前言撤回したい。

 

「……あ、いえ。大丈夫です」

「レン……だ、大丈夫?」

「無理しない方が良いわよ」

「無理してないが……寧ろこの空気を何とかしてくれ、キツい」

 

今教えようとしているドラム担当の宇田川あことキーボード担当の白金燐子、そしてギター担当の氷川紗夜(紹介はリサと友希那から聞いた)のアドバイスをしているのだが……。

 

 

 

(あばよ!今度会った時は必ず殺してやるからな……ハッハッハ!)

 

 

 

「(やはり思い出す。彼奴の放った言葉……『必ず』か……)」

 

結果的に奴とまた戦う事になるのだろう。それまでは此方も本気を出さなければ……。

 

「……刻針さん、どうかしたんですか?」

「ん……何でもない……何でもないんだ……」

「時練先輩……?」

 

何か……忘れているような……記憶にない……何かが引っ掛かるような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ワセ……ナニモカモ……シテシマエ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に……大丈夫ですk」

「やめろ!俺に触れるな!」

「「っ!?」」

 

反射で差し伸べられた手を弾いてしまった。

 

「ちょっと刻針さん!それは失礼ではありませんか!?」

「っ……少し頭を冷やしてくる」

 

キイィィィ……バタンッ。

 

「……リサ、此処は任せても良いかしら?」

「オッケー!ここは私に任せて!」

 

 

 

〜CIRCLE・カフェテリア〜

 

「……何だ……今の」

 

微かに感じた『殺意』。その矛先は確実にRoselia(彼女達)に向けていた。

 

(しばらく関わるのは……いや、先に判断した方が良いかもな)

 

()()()()ではなく()()()()の可能性が高い。しかも起こるまで時間は有った。若干は良いのだろう。

 

「時練……?」

「友希那か、取り敢えず座りな」

「えぇ……」

 

隣に座らせる。まだ『殺意』は出ていない。

 

「急に飛び出して行ったから心配したわ。どうかしたの?」

「……友希那。最悪の状況と言うべきかもしれんが、このままだと俺は友希那達を殺してしまうかもしれん」

「どういう事なの?」

「……」

 

話すべきか、隠すべきか。判断は俺なのに何故か口が開かん。

 

「……」

「時練……」

「友希那、少し離れてくれないか」

「……?」

 

数歩離れる友希那。俺はポケットから()()取り出し、

 

(もし、俺がTrigger(引き金)を引いた理由は()()しか無いはず。なら、出来る事はただ一つ……)

 

口に入れ、噛み潰した。

 

「……ッ!」

「時練!?」

 

一瞬にして意識が朦朧とし始めた。呼吸が、身体が麻痺し始める。フラッとなると思いきや、即効性か。

 

「……ッ……ッ」バタッ

「……嘘!?時練、しっかりして!?

 

「(……彼女達から、離れるべきだ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い底に横になる。声が出ない、身体が動かない、指一本も動かせない。

 

「はぁ、何でこんな事になったんだ」

 

生きるか死ぬかと言ったらもう死にたい位だ。だが、この身体の事だ。どうせ傷付こうが1からのやり直し(元に戻る)なのだから。

 

「……全く、俺って馬鹿だな。ハハッ」

 

暗闇で笑おうが響きはしない。ただ孤独感だけだろう。

 

「……ワセ……ナニモカモ……シテシマエ!」

「……また、分からない言葉か」

 

もう何言ってんのか、誰か翻訳してくれよ。

 

「耳だけすますか」

「……ワセ……ナニモカモ……シテシマエ!」

「……あ、何か聞こえて来たぞ、一体何言ってんだk」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コワセ……ナニモカモ……コロシテシマエ!」

「……なッ!?」

 

暗闇に潜む何者かが、俺の身体、精神、全てを取り込み意識が切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎌太刀Side

 

「時練……しっかりして!」

「馬鹿野郎が……」

「まさか仮死薬を含むとか……驚きましたよ」

 

(精神)安定剤飲まずに仮死薬飲むとかどんだけ血迷っていたのか。

 

「……ッ」

「あ、目覚めましたか?」

「……グゥッ」

 

何だ、様子がおかしいぞ?

 

「良かった……時r」

「下がれ!」

「……グルルゥゥゥアァァァ!」

 

ザシュッ!

 

「ぐっ……!」

「ガァァァァァ!」

「時練!?どうしたn」

「離れてて下さい友希那さん!今の彼は彼じゃないです!被害が出ない今のうちに彼を取り押さえなくては!」

「任せろ!」バッ!

 

飛び付く様に前へと出る。

 

「……グラァッ!」

「なっ……!?」

 

だが、見事に身を翻し躱された。

 

「ちっ、流石に速いな!」

「アァァァァァ!」バッ!

「しまっ!?」

「い、嫌……!?」

Freeze(凍れ)!」

 

突如、時練の動きが鈍くなるかと思えば足が凍り付いているのが確認出来た。

 

「グ……ルルゥ……グルゥ……ゥゥ」バタッ

「はぁっ……はぁっ……止まったんですか?」

「……止まったな」

「時練っ……時練っ……!」

「近付くな。時間経過で起きる筈だが……今は『()()()()』に頼むか」

「あの人……?鎌太刀さん、あの人って何です?」

「直ぐに来るさ」

 

()()の方が来るからな。今少しの辛抱だ……時練。




_:(´ཀ`」 ∠):オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"
(次の次で第一章締めようかなぁ)


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第十六話『暴走。彼に潜む危険な異名』

さて、前回から組み合わせでハロハピなんだけど結構不味いぞ?

どう繋げれば良いんだが……良し、気合いだな。


刻針時練……彼の()()曰く、彼奴には2()()の能力を持っているらしい。

 

1つは脅威的な戦闘能力、かつ常人以上の体力を持っており、瀕死時には戦闘能力が更に向上する『死際(Death)』の能力。

 

そしてもう1つはForest deleteの異名を持つ者しか止める事が出来る……と言うよりは止められる確率がある。その異名の名は……

 

 

 

「……さん、鎌太刀さん?」

「……んぁ?」

「深く考えていた様ですけど……何か?」

 

記憶を辿る。確か時練の一時的無力化に何とか成功して、湊さんを帰らせて……今は護送中か。

 

「悪い、何でもない。所で時練の様子は?」

「無力化状態で全身を凍らせているので、反応の一つも無いです」

「そうか……」

 

止めれたのは良いが、一刻の猶予もない。解き放たれたら一貫の終わりだ。

 

「……ん、そろそろ着くぞー。霧霜、凍結状態は継続しておけよ?」

「了解です」

 

 

 

〜???〜

 

辿り着いたのは大きな屋敷。実は()()()()()()()()()()()()()。正門の前にトラックを止めると、何時の間にかSPらしき女性達に囲まれていた。

 

「……何方様でしょうか」

「鎌太刀刃です。()()()()をお借りしたいのですが」

「助手席の方は?」

「き、霧霜雪です。鎌太刀さんの付き添い人……です(怖い……)」

「鎌太刀様、霧霜様。ようこそ」

 

正門がゆっくりと開く。ギアを入れゆっくり進み裏側に停める。

 

「降りるぞ霧霜。まずはこの家主のお嬢様に挨拶だな」

「待って下さい……此処って一体……」

「ん?言ってなかったっけな?」

「まず聞いてませんし振っても言ってもないです」

「そうか……ここ、弦巻家の屋敷って事」

「成程弦巻さんのお家……ちょっと待って下さいよ!?

「何だよ。忘れ物したからって今から戻るのは駄目だぞ」

「そう言う意味じゃないです!弦巻家って……まさか!?」

「嗚呼、弦巻財団……俺は財閥と言っているがな。今回はその屋敷地下に建てて貰った場所に向かう。因みにさっき話しかけてた人が黒服さんと言うらしい。全名(Full name)は知らんが」

「……え?」

「流石に叩き込むのも無理だろうな。あの状態について話しながらバンドメンバーに挨拶しに行くぞ」

「あっはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時練Side

 

「……っ」

 

暗闇の中で再び目を覚ます。さっきよりも寒い様な気がする。

 

「……取り敢えず辺りを歩くk……歩k……ん?」

 

足が動かない。足元を見ると凍っている……何故だ。誰かこの状況を誰か教えてくれ。

 

「はぁ……何者かに取り込まれるわ、意識を失うわ、気が付いたら足が凍ってるわ」

 

災難か。

 

「……全く此処から出る方法も無いし困っt「グルルルゥ……」何だ?」

 

どっかで獣らしき様な、唸り声が聞こえた様な。

 

「気のs「グルルルゥ……」じゃなかったな」

 

全く誰だ。姿を現せよ。

 

「グルル……ルルゥ」

「……ん?」

 

前方から何か来る。目を凝らすと……。

 

「……グルルルゥ……ルルルグゥ」

「何だ……此奴は……?」

 

その姿はライオンの頭、山羊の胴、蛇の尻尾。その姿はさしずめ異質胴体(Chimera)を連想させる。

 

「……おいおい。ギリシャ神話の怪獣が来るのかよ」

 

正直、終わったとしか思えねぇんだが。

 

「(……勝手に終わらすな。小僧)」

「……は?」

 

今、此奴から真っ当な言語が飛んできた様な気がしたが……。

 

「(気はしない。真っ当な言語だ)」

「おいちょっと待てお前喋れるのかよ?」

「……グルァ?」

「へ?」

 

何か唸り声に戻ったぞ。何だ此奴。

 

「(此奴とは失礼な、我はキメラだぞ)」

「……どう言うことだ?」

 

多分、頭の中で思うと繋がんのか?……畜生判別出来ねぇよこりゃ。

 

「(……寿限無寿限無五劫の擦り切れ)」

「此奴……直接脳内に……!」

 

てか何故寿限無言えるんだ。ギリシャ神話の怪獣なのに。

 

 

 

閑話休題。どうやら此奴は俺の中に長いこと(約12年も幻覚としてだろうか本人にも分からない)居るらしい。名は無いらしく、俺自身が意識を失っている時しか現れず思念でしか話せない。って事で良いのか?

 

「(若干違うと思うが、まぁそんな所だ)」

 

面倒だな。

 

「(慣れれば簡単だぞ?)」

 

慣れれば……だけどな。所で現実に戻りたいんだけど

 

「(流石に我でも難しいだろうな)」

 

何故だ?

 

「(簡潔的に言えば……お前さんの意識は今、生と死の狭間だからだ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧霜Side

 

「……コントロール出来ないもう1つの能力……ですか?」

「俺と()()1()()が知っている情報だがな。これは霧霜、お前にも話しておく」

 

時練さんを地下隔離部屋まで運んだ後、私は鎌太刀さんと一緒にバンドメンバーの所へ向かっていた。

 

「時練の異名は『死際(Death)』と言う事は知っているよな?」

「は、はい……ご存知です」

「発動条件は?」

「瀕死まで追い込まれる事……でしたっけ?」

「正解だ。実を言うとあの能力は進化式……言わばまだ中間点みたいなもんだ」

 

中間点……?それ以上に有ると言うんです?

 

「何段階まで有るんですか?」

「現状では2段階。1段階目が死際、2段階目がさっきのだ」

「因みに……その異名と能力内容は……」

「異名の名は『Crazy clock hands(狂う時計の針)』能力内容は……っと、ここだな、ハァァァァ……」

 

目の前で止まり、溜め息をする鎌太刀さん。

 

「ど、どうかしたんですか?」

「イヤナンデモネェヨチトシタコトダ」

「(絶対何かあるパターンだ……!)」

「取り敢えず入るか……(コンコン……)鎌太刀刃です……」

「どうぞー」

 

あれ、以外にまともな感じだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時練Side

 

ポルトガル

 

「(ルーマニア)」

 

アメリカ

 

「(カナダ)」

 

大韓民国

 

「(クウェート)」

 

トンガ

 

「(ガーナ)」

 

ナミビア

 

「(アルジェリア)」

 

アンティグア・バーブーダ

 

「(……降参だ)」

 

これで49戦中20勝19敗11分だな。

 

「(むむぅ……国名のしりとりは難しいの)」

 

俺も有り余る記憶を掘り出したからな。結構疲れてる。

 

「(……もう一度じゃ!今度は負けんぞ!)」

 

おう来いや来いや……ぐっ!?

 

「(どうしたんじゃ!?)」

 

からダが……イうコトを……キカネぇ……イシキが……トオノク……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎌太刀Side

 

「取り敢えず来たが、どう言う状況だこれ?」

「それが……」

 

扉を開けて目に入った光景は、水色髪の子の手を紫髪の女性が繋いでいる状況。

 

「どう言う状況だこれ?」(2回目)

「薫さんの演劇部での練習に花音さんが代役として……」

「あー、成程な」

「え、どう言う事?」

「あれ?その方は?」

「あぁ、俺の仲間の霧霜だ」

「き、霧霜雪です」

 

深々とお辞儀する霧霜。それに対して黒髪の女性も返す。

 

「あ、どうも。DJ担当のミッシェル……奥沢美咲です」

「……あー!やっくんだ!」

「いらっしゃい!来てくれて嬉しいわ!」

 

橙髪の子と金髪の子もやって来た。ってあれ?なんかこっち飛びかかっt……

 

「……って危ねぇ!」ガバッ

「「鎌太刀さん!?」」

「はぁ……はぐみさんよ。毎回言うが会った瞬間飛び込んでこないでくれぇ」

「やっくんが受け止めてくれるから大丈夫!」

「そう言う問題じゃなくてな……」

「えーと……?」

「あー、うん大丈夫。何も言わなくても分かりますよ」

 

 

 

「……で、落ち着いた?」

「えぇ!」

「うん!」

「な、何が有ったのか分からないけど……色々有ったんですね……」

「私も見てみたかったよ」

「うん……薫さんが見なくて良かったと思うよ」

「何だろう……場について行けない……」

 

後々、修学旅行で夜の騒ぎみたいな位になったけど。何とか落ち着いた。

 

「それより、ある件の人って一体何ですか?」

「あ、先に伝えていたんですね」

「面倒だからな。彼奴についてだが今非常に不味い事態になってるから隔離中だ」

「か、隔離……!?」

「被害を大きくさせたくないからな。名は先に言うが刻針時練って奴だ」

「何と……彼がかい?」

「薫さん何か知っているんですか?」

「彼とは違うクラスだが……体育でね」

「あ、うん(きっと()()だな)」

「え?あれって一体?」

「聞かない方が得だけどな」

「なら聞かないでおきます」

 

率直だな。そうしてくれるのが助かるのだが……しかし、彼奴が暴走してるのを伝えることは難しいだろう。

 

「……そう言えば霧霜、美咲さんには言ってるけど他の皆には自己紹介してないよな」

「あ、確かに!改めてまして、鎌太刀さんの友人、霧霜雪です!」

「ボーカル担当の弦巻こころよ!世界中をハッピーにするのが私の願いよ!」

「ベース担当の北沢はぐみだよ!宜しくゆきちゃん!」

「ギター担当、瀬田薫だ。宜しく、子猫ちゃん」

「ド、ドラム担当の、ま、松原花音です……」

「良し!って事で時練代役の鎌太刀刃だ!宜しk」

 

ドガァァァァァン!

 

「……何だ何だ!?」

「鎌太刀さん!地下隔離室の凍檻(コオリ)が破られました!」

「嘘だろおい……おい霧霜、急ぐぞ!奴が再び()()()()を起こさない為に!」

「は、はい!」

「何が何なのか……待ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、時練が侵した罪が有った。我々、Forest deleteの掟は3つある。

1つ、我々『異名』の存在を一般人に教えてはならない。

1つ、危険な時が訪れる時がある場合、上記の掟を無視し助けてもよい。

……そして1つ、絶対に仲間と見做した者は殺してはならない。

 

最後の掟に対しては……彼は()()を守ることが出来なかった。

 

「(前線部隊は後退しつつ援護射撃だ!こっからは俺達がやる!)」

「(偉く元気だな。鎌太刀)」

「(これくらい元気じゃないとな!)」

「(部隊長……じゃなくて大尉!前線部隊、撤退完了しました!)」

「(了解だ。こちらDeath。Frozen、Decipher聞こえるか?)」

『(こちらFrozen、聞こえていますよ)』

『(Decipher。反応良し)』

「(民間人の救出完了次第撤退しろ、後は俺とSilenceがやる)」

『『(了解)』』

 

俺が……あの時、止めていれば……。

 

「(へへっ、気合い入れるぜ!)」

「(敵陣地内で声上げんな。バレるだろうが)」

「(だからってt「居たぞ!」……散開して各個撃破だ。良いな?」

「(はーいよっ!)」バッ!

 

 

 

散開した後、俺は時練と分かれ各個撃破していった。

 

「(これで……最後!)」ドカッ!

「(グァッ!?)」

「(良し……こちらSilence。掃除完了、そっちはどうだ?)」

『(……ルァ)』

「(へ?聞こえんが、もう一度応答お願いするz)」

『(グルルゥゥゥアァァァ!)』

「(おい?Death、応答し……クソッ!)」

 

応答しない理由を察し、俺は急いで向かった……だが、目の前に見えたのは……。

 

「(おい……どう言う事だよ……)」

「(死にたくな……そ、そこのお前!た、頼む……助けt!)」

「(ガルァ!)」

「(い、嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ!死にたくねぇぇぇ!死にたくn)」

 

グチャリ!バキッ!ゴキッ!

 

「(む、惨い……おい時練どうした!?)」

「(グラァ……ァァァァァ!)」

 

敵味方も関係なく殺している時練の姿だった。奴の目は獣の様な殺意を持っていることは感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう二度と……お前を暴走させてたまるか!」




次回、第一章・完


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第十七話『狂時計。絶望解く亀裂』

〜地下隔離室〜

 

バンッ!

 

「グルルルゥ……」

「チッ!一歩遅かったか……!」

 

中心には時練……いや、Crazy clock hands(狂う時計の針)が立っていた。

 

「鎌太刀さん……」

「こ、これは一体どう言う事ですか!?」

「(このまま被害を出すのは御免だ。なら……)霧霜、背後の扉を封鎖しろ!メンバーの皆さんは此処から避難を!」

「は、はい!」

氷檻(コオリ)ッ!

「ここで奴を必ず止める!」

「少々痛いですけど……我慢してください!」

「ガルルゥゥゥ……グルルゥアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時練Side

 

暗闇で独り、俺は立っていた。Chimera(俺の幻覚)も此処には居ない。進んでも戻っても先は闇。

 

「……そろそろ、終わりか」

 

徐々に冷たくなる身体。呼吸も浅くなっていく。

 

「最後まで、生きていたかったな」

 

膝から崩れ落ち、足掻く事も許されない。

 

「もう……動けないか……」

 

徐々に意識が遠退く。

 

「悪い……友希那……ごめn『戻って来い馬鹿野郎!』……?」

 

誰かが叫んでいる。一体()()()()……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧霜Side

 

「グラァ!」

 

シュッ……カアンッ!

 

「此処で諦めてどうする!このままで良いのか!」

「そうです!帰って来てください!時練さん!」

「グォォォルゥゥゥアァァァ!」

 

ザッザッザッ……ザシュッ!

 

「ぐあっ……」

「鎌太刀さん!?大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫、少し掠っただけだ……」

「動かないで下さい!急速に傷口を凍らせます!」

「グァガァルゥガァ!」

 

不味い!?時練さんがこっちに来て……なら!

 

氷結界(ヒョウケッカイ)!」

「グオルゥゥゥア!」

 

私と鎌太刀さんの周囲に氷のドームを作り出し、攻撃を防ぐ……。

 

「この中なら……鎌太刀さん!傷口を!」

「暴走している奴の力は……()()()()()()()だ!」

「え……それってどう言う……」

「グルル……」

 

時練さんが私が作った氷結界に手を当てる。流石に壊せない……。

 

バァァァリィィィン!

 

「え……?」

「ガルゥゥゥア!」

「霧霜ォ!」

 

ドガッ!

 

「がっ……畜……生……」バタッ

「鎌太刀さん。しっかりしてください!?」

「グルルルゥ……グルアルゥア……」

「……うぅ……うぅぅぅあぁぁぁ!」

 

その時、私の『何か』が砕け散った。

 

「(どうして……戦わないといけないの?ねぇ、教えてよ。時練さん……)」

「(……俺達は戦わないと行けない。そして、傷を付けるのは俺だけで十分だ)」

「(傷を……?)」

「(もしもこの先、俺が何かしらでお前達に傷を付けた時は容赦なく……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰って来い!Death……いや、刻針時練!」

「……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

1人の声が聞こえなくなっていき、もう息も出来なくなっている。

 

「くそっ……まだ……死ぬか……」

 

だが、動かない身体を見てどうしろと……そう思った時だった。

 

パキッ

 

「……?」

 

目の前に亀裂が入り、白い光が見えた。

 

「……まだ、やる事が有るのか……ん?

 

身体が、動かせれる。でも、鈍い。

 

「成程、気合いで、やれと」

 

おぼつかない足取りで進む。近付く度に転びそうになったり、膝をつくが。諦めようとしていたのに俺は何故か諦めずに進んでいた。

 

「……これは」

 

亀裂の先に見えるのは光。白い先には何が有るのだろうか。

 

「……まだ、力が有るなら、俺は、やるだけ」

 

右手を強く握り締める。そこから血が出ているが構わない。なら、やる事はたった一つだ。

 

「あの場所へ」

 

思いっきり構え

 

「……帰るんだぁぁぁぁぁ!」

 

バキッ!ピキピキピキピキピキ……バリィィィィィン!

 

亀裂目掛けて拳を放つ。亀裂は砕け散り、目の前には光と()()()が居た。

 

「(帰って来い!Death……いや、刻針時練!)」

「……嗚呼。直ぐに帰るよ」

 

目を閉じ、しばらく立ち続ける。呼吸が出来る。身体が動く。()()が共鳴している。

 

「さぁ、帰ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……くうっ……」

「……」

 

やっぱり、無理なのかな。時練を、助けることは。

 

「グルル……」

「(喰らったら今度こそ終わりだ……でも、動ける力が無い……)」

「……ギィギィジィゴォ」

「っ!?」

 

今、私を呼んだ様な……。

 

「キ……リィ……モォ……」

「時練さん……?」

「ワ……カッ……タ……ナ……トカ……セイ……ギョ……デ……キル」

「……!」

 

今、私は分かった。時練さん本人が、操れたんだ。

 

「イマ……カマ……チ……ナオ……ス」

「でも、どうやって?」

「オレ……キョウ……ジシン……ノウ……リョク……」

 

時練さんは鎌太刀さんの左手に手を当てると何か呟いた。

 

「イマ……トキ……モド……ヤツ……ナンジ……イヤセ」

「あ、傷が……」

「……ぅう……ん?ここは?」

「鎌太刀さん!」

「ヨカ……タ……ゴメ……カマ……タチ……」

「……何が何だか分からないが」

「時練さんが『Crazy clock hands(狂う時計の針)』を操れる様になったんです!」

「マダ……アヤツ……ナイ……タショ……ツカエ……」

「……そうか。お帰り、時練」

「タダ……マ」

 




ハイ、という事で第一章は完です。まだ慣れていない時練のもう一つの能力。そして十四話の最後の人物は一体?それは第二章に続きます。

Crazy clock hands(狂う時計の針)
能力内容
・???
時練の暴走によって現れたもう一つの異名。その動きは獣に近い。だが、まだ慣れてない為か能力の内容は分からない様だ。


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第二章『剥き出しの牙。穿つ矛先は誰に』
第十八話『獣。心を乱れさせる』


はい、遅めのあけおめです。さて、第二章に移りますが時練本人はどうなるんでしょうか?では第十八話、どうぞ。


〜弦巻邸・地下隔離室〜

 

鎌太刀Side

 

「そこだぁ!」

「ガルルァァァ!」

 

ギィン!

 

「グルァ……ハァッ……ハァッ……」

「どうだ?まだ動けるか?」

「……ゲン……カイ」

「そうか……分かった。戻って良いぞ、時練」

「ヴァ……るい」

 

目を閉じて元に戻ったかの様に此方に向く時練。今は彼の能力『Crazy clock hands(狂った時計の針)』の能力の内容調査とそのコントロールしている所だ……が、

 

「言語は大丈夫だが時間は然程変わってない……やはり馴染めないか?」

「あぁ……前回の件で俺が……俺じゃない様に感じるんだ」

「そうか。所で聞きたい事があるんだけど良いか?」

「言いたい事は分かる……『コレ』だろ?」

 

そう言い、時練は手袋とコートを外す。隠されたのは肉球にフサフッサの毛皮の手と俺の身体を4回程巻きつけそうな長く大きな尻尾。暴走後の所為なのか、ガチの獣みたいに変化していたのだ。そこから俺は改名『獣ノ狩時(When hunting beasts)』と名付けた。

 

「不便じゃないのか?」

「手としての役割は限定的だが使える。霧霜が抑制剤か元に戻らせる薬作ってるからそれまでは我慢だな」

「その手と尻尾、バレたら不味いから隠さないといけないしな」

「はぁ……尻尾はデカすぎて隠しにくいし、手はこんなのだから弾けないのが痛恨だ」

「指示は行けるだろ?突然暴走して後から悔やんでも仕方ねぇよ」

「うむむ……」

 

まぁ、自己抑制は出来てるから良いか。

 

「んじゃ、俺は霧霜と報告書書いて薬の製作してくるから。何か有ったら呼べよ?」ガチャ

「あぁ」

 

彼奴には……まだ()()()()()()()()()()()がある。それを知るまで、俺は……。

 

 

 

時練Side

 

「……はぁ、不便なのは不便だ」

 

自宅に戻り、水分補給用のミネラルウォーターを1本飲み干す。冷たさが全体に伝わり、熱くなったら身体が一気に冷やされる。

 

「もう少しなんだが……何故か掴めない」

 

例えるなら真正面に敵が居るのに弾が出ずして確認したらJam(弾詰まり)起こして危険状態になる位だ。

 

「ゆっくり考えれば何とかなるか?まぁそんな事考えても無駄になるかどうかだな」

 

両手を見続ける。自身の手だと分かっていても、認めれない自分が居る。もし暴走し、傷を付けたらと考えると……。

 

「はぁ、深く考え過ぎか……全くどうすれb(ピンポーン)入って良いぞ」

「失礼するわ」

「友希那か、どうs(ギュッ)た……?」

 

彼女の目には涙が見えた様な気がした。

 

「友希那……?」

「心配させないで……貴方が死んだのと……思ったのよ……」

 

そう言い強く縋る。少し震えており、泣いているのは明確だった。

 

「……泣きたかったら、泣いても良いんだぞ」

「泣いてないわ……」

「ここは、俺しかいないからな」

「だから泣いてないわよ……泣いてなんか……」

「意地を張るのは良いが、辛いのは消えないぞ」

 

そっと頭に手をやり撫でる。友希那もさっきよりも強く縋り、嗚咽を漏らしていた。

 

「ううっ……つっ……」

「(……仕方ないか)」

 

手袋を外してコートを捲り、尻尾を出す。そして巧みに友希那に巻きつかせる。

 

「……っ?」

「今はこんな姿で悪い……だが悪いのはお前じゃない。制御出来ていない俺が悪いんだ」

 

()()()()。何故だ?あの時何故、抵抗せずに取り込まれた?

 

 

 

 

 

(慣れれば……だけどな。所で現実に戻りたいんだけど)

 

「(流石に我でも難しいだろうな)」

 

(何故だ?)

 

「(簡潔的に言えば……お前さんの意識は今、生と死の狭間だからだ)」

 

 

 

 

生と死の狭間……彼奴(Chimera)はそう言った。確か取り込まれる瞬間に殺意らしき声も聞こえた。

 

「(あの殺意は……)」

「……時練、少し良いかしら?」

「ん、どうした?」

「この尻尾と手は……?」

「恐らく暴走後のだと思うが……正直、俺にも分からない。何が何だか……暴走時は言う事を聞かないし、何故かお前達を傷付けようとする……」

「でも、貴方のやった事では無いのよ?」

「それでもだ。俺自身でやったのは変わり無い」

「……」

 

だからこの力は制御出来るまで使わない……絶対。いや多分……偶にかもしれないが。

 

「(……マズイ、確証が持てない。いやマジで、難しいっての。反動で暴走する可能性も有るs)だぁぁぁぁ!」

「ど、どうしたのよ!?」

「考えても何も変わんねぇんだ!友希那ァ!今日は有るか!?」

「練習なら有るわよ……でもその姿……」

「関係ねぇ!隠せば良いしバレたらバレたで考える!以上!」

「そう……(尻尾、気持ち良かった///)」

 

早く彼奴が来るまでに抑えが効くと良いんだが。

 

 

 

〜CIRCLE・スタジオ〜

 

扉が開く。カウンターでコーヒーでも飲んでいるまりなさんを無視してスタジオに入ろうとする。

 

「ち、ちょっと無視しないでよ!?」

「いや良いです。もう良いです」(第四話参照)

「何が!?」

「(……私が気にする事では無いわね)」スタスタ

「あ、友希那!?置いていk(ガシッ!)なぇ!?」

「隠してるなら教えてよ時練ちゃん!謝るから!」

「ヤメロォォォ!収拾付かなくなるゥゥゥ!と言うか見捨てるなァァァ!」

 

伸ばした手も束の間。見事にまりなさんに取られ組み伏せられる。

 

「離してください!何か不味い気がするので!」

「やだ!こうなったら意地でも吐いてもらうよ!」

「何でそうなるんですkってちょ!?コート脱がさないで!?」

 

尻尾は潰れて痛いし触れたら触れたでバレそうだし!あ、でも掴んでると言う事は気付いてないか。なーんだ大丈d……

 

「じゃねぇよ!?この状況を打開する方法は何かねぇのか!?」

「ほらほら吐いちゃいなよ!何隠してるのさ!」

「何かまりなさんスイッチ入ってない!?明らかにヤバいスイッチONってるって!」

「(ウィーン)居ないから何処行ったと思ったr……どう言う状況だ?」

 

占めた!鎌太刀なら!

 

「鎌太刀頼む!まりなさん止めてくr」

「ゴユックリドウゾー」スタコラサッサー

「鎌太刀ィィィィィ!?」

 

助け舟、即沈没。そのあとコートを脱がされ尻尾がバレた俺は両手の事も伝えて行こうとしたがモフモフさせろと言われ捕まり、第2ラウンドのゴングが頭の中で鳴った気がした。

 

 

 

「はぁ……シヌカトオモッタ」

「ご、ご愁傷様……と言うか本当なんだね……」サワサワ

「でリサ、お前も触るんかいな」

「良いじゃん?こんなの滅多に会えないんだよ?」サワサワ

「そらそうだけどよ……ううっ……」

 

擽ったい。無茶苦茶擽ったい。この尻尾も身体の一部だからか?

 

「あの……擽ったいんdひゃむっ!?

「へ〜?先端弱点かなぁ〜?」

「ひゃっちょっ……やめt止めろって言ってんだろうg(ガシッ)……はい?」

「私も……触りたいです」

「あのちょっと白金さん?触りたい衝動は分かる……いや分かりたくないけど何故羽交い締めしなくてはならないのか聞きたいんだが?」

「逃げるから……」

「あ、りんりんずるい!あこも!」

「ちょ待て!?一斉に来るかおい!?さ、紗夜さん……た、助けt」

「すみません刻針さん……実は私も……」

「ここには敵しか居らんのかぁぁぁ!」

 

この後、動けぬ状態でしこたま触られた。ねぇと言うかさ、まりなさんもそうだけど何で触られなきゃならんのじゃぁぁぁ!

 

「ううっ……もう婿に行けない……」

「『たすけてしぬ』とか書かれてて来たらこんな状況だったんですか……」

「抑制剤は出来たのかぁぁぁ……?」

「それがまだ……その尻尾の構造体を解析しているんですけど、流石に難しくて……」

「大体的な時間(サワッ)わぁぁぁん!?……どうだ?」

「えげつない声出ましたね……」

「辛抱なん(ギュム)らぁぁぁ!?

「もう止めたらどうですk「「「「「無理です!」」」」」……そうですか」

 

もうどうする事も出来ないし。しかも尻尾が痛い……普通の服だと尻尾の付け根が引っかかって痛い。

 

「あ、後尻尾の事で専用の仕事服と私服を用意しました!」

「でかした!尻尾が痛ぇ痛ぇ!」

「ですよね!そう思って作ったのですから!受け取ってください!」

 

 

 

渡された紙袋を受け取り、更衣室にすぐ向かい着替える。付け根辺りはどうやら穴が空いており尻尾が通せると言う事だ。

 

「(ガサガサ)……ん?何か……入ってるな?」

 

取り出して見ると1通の手紙、霧霜のだろうか。裏面を見ると……

 

 

 

『時練さんへ』

 

 

 

「……俺に?」

 

驚いた。この頃はいつも口頭で伝えていた彼女がまさかの筆書で来るとは。

一応、危険物は無いかと袋を探ってみたが、それっぽい物や形跡は見つからなかった。浮かれ過ぎたか。最近は裏仕事が多かったから警戒心が強くなっているらしい……いや、浮かれるのも駄目だが。

 

「んで、内容は何だろうか……」

 

開けて空っぽだったら仕方ない……あ、紙有った。

 

 

 

時練さんへ

あれから色々考えたのですがお願いする事に決めました。実は私がマネージャーを務めているPastel*pallettesについてなんですけど、どうやら皆さん時練さんに会いたいらしくて……こんな状態ですみません……。

 

 

 

「……まぁ彼奴の事だかr『ですので次の番組に出演して頂けますか?』はい?」

 

いやちょっと待て、何で書いてあったのか分かんなかった。

 

 

 

『次の番組に出演して頂けませんか?』

 

 

 

「(コンコン)失礼します……どうですか?」

「ここ更衣室だっての、まぁ獣化してる所為か慣れないがありがとう。そして霧霜、聞きたい事がある」

「何でしょうか?」

「お前……これなんだよ……」

「はい?」

 

本人に手紙を渡してみる。すると顔を赤らめ、

 

「えっ!?あ、あの!?これ!?もしかして!?」

「落ち着け。紙袋に入ってた。恐らくだが取り出すの忘れてただろ」

「は、はい……恥ずかしい……」

「全く……んで、出るんだろ?」

「……え?」

「番組。俺に会いたいからって番組出させるんだろ?やるよ。借りを返す時だからな」

「す、すみません……色々と……」

「(ポンポン)謝んなっての。ほら、そうとなったらさっさと予定日決めて用意しようか」

「は、はい!と言うか大丈夫なんですか?」

「何が?」

「あの……終わるまで既に扉前で待っているんですけど」

「Roseliaが?」

「Roseliaが」

「……いやまさk(バァン!)ナァァァァ!?」

 

この後、またモフモフされたよ畜生。

 




次回、新たなオリメン登場。


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第十九話『右往左往。行ったり来たりの迷い道』

大変お待たせしました。バイトやらで5月から6連勤という地獄が待ってます。

「お疲れ様」

マジ地獄です。

「お疲れ様」

……休んじゃダメ?

「駄目」

えぇ……。


〜時練Side〜

 

「荷物良し。鍵掛け良し。()()……良し」

「櫛持ちました?」

「……持ってなかったような。取ってくる」

「時間も有りますし、ゆっくりで良いですよ」

 

結構モフモフされた後日。霧霜の依頼を聞き入れ、二人で事務所に向かう用意をしている。

 

「と言うか本当に唐突だな……まさか番組に出演するとは……お、有った有った」

「無理でしたら出演しなくても良いんですよ?」

 

櫛をバックに入れ、着ている私服をチェックする……何で女物しかないんだ?休日にでも服買ってくるか……まぁ。

 

「無理はしてない。やらなくてはいけない事をやるだけだ」

「そ、そうなんですか……私でも分からないです」

「分かんなくて良いぞ」

 

どうせ後からくだらない結果(オチ)は目に見えてるから。

 

「良し、ほれ霧霜。被れ」

「あっはい……ってヘルメット?何でヘルメットなんか被らないといけないんですか?」

「言ってなかったっけ?()()()()()()()()っての」

「……え?」

 

 

 

数日前に戻る……それは俺が家で朝食(French toast)を作っていた時だった。

 

「……よっと。お、良い焦げ付きだな。CIRCLEの新メニューとしても考えた方が良いかもn(ピリリリリ)ん?メールか」

 

差出人は鎌太刀。どうやら外にプレゼントを用意したらしい。

 

「一体何を用意したんだよ」

 

鎌太刀のプレゼントは大半ろくでもない物しか入ってることが多い。例えばAlligator(アリゲーター)の子供とかBlack Mamba(ブラックマンバ)とか……

 

「マジで何用意したんd(ガチャ)……は?」

 

そこにあったのは『VULCAN 2000』全長2535mm、排気量2053ccを叩き出す大型自動二輪車だ。しかもサイドバックにヘルメットまで有るし……

 

「お、やっと来たか!待ちくたびれたぜ!」

「待ちくたびれたぜじゃねぇよ!?どうしたこのバイク!?盗んだか!?」

「盗んではない!譲ってくれたんだ!」

「あれ程盗むn……待て、譲ってくれた?誰に?」

「あー、ほらアイツだ!校長!」

「……でもどうしてこんなもんを」

「その事なんだが、これを見てみろ」

 

渡された1通の手紙を受け取り読んでみる。

 

 

 

刻針時練へ

羽丘学園での事件、ご苦労であった。そして生徒達を助けてくれた事にはとても感謝している。詫びと言ってはなんだが、そこのバイクを君に譲ろう。色々と改造はしているが法には引っかからないから安心したまえ。二輪免許は戦時中に取っていて既に持ってると鎌太刀から聞いてな、私も歳で最近は乗ってないし、手放すのも勿体無いが君なら使えるだろう。By.学園長

 

 

 

 

 

「……て事があったんだ」

「え?でもこのバイクって1人乗りじゃ……」

「言っただろ?『()()()()()()()()()』って」

「そう言う所も御手の物なんですね……」

「あぁ……」

 

正直、俺も驚いている。最初はスロットルレバー普通に1回入れたら通常の40〜60kmは出ていたけど、2回入れたら急に80kmも出るし。

 

「取り敢えず乗れ。予定時刻までには時間もあるし、のんびり行くぞ」

「あっ、はい!よい……しょっと!」

「しっかり捕まったか?」

「つ、捕まりました!」

「良し、行くぞ」

 

スロットルレバーをにぎぅて発進させる。最初はゆっくり行くから何とかなるが……まぁ、慣れだろ慣れ。

 

クイッ……ヴゥゥゥゥゥン!

 

「(あ、不味い)ウィリーするなこれ」

「えっ!?」

「これだけは嫌だけど……ふっ!」

 

踵を地面に勢い良く叩きつけ……

 

ガッ!ゴゴゴゴゴッ!

 

土を削る勢いを身に感じながら軽くウィリーして止まった。

 

「某だるま屋みたいになるかと思いましたよ!?」

「踵は死んだがな……途中靴屋に寄ってブーツ買うか」

予備(Spare)はないんですか?」

「長年使ってるからそろそろ替え時と思って買ってない」

「アッハイ」

 

再びスロットルレバーを入れて発進させる。今度は通常通り動いた。

 

「おぉ……風がぁぁ……気持ちいいですぅぅぅ……」

「それ雪降る時とか雨とか寒いぞ。バイザーは何か有った時以外上げるなよ」

「はぁぁぁぁい……」

「……聞いてねぇな」

 

だが、身体に当たるこの涼しさは良いな。後でお礼に行くか。

 

「所で聞きたい事が有るんですがー!」

「んー?どうかしたか?」

「そのー!燃料(Gasoline)足りますかー?

 

メーターを見る。Eマーク寸前を指しており、完全にガス欠直前。

 

「……給油にも寄るか」

「そうしましょうー!」

「霧霜、聞こえるからそんな叫ばなくて良いぞ」

「あっそうなんですか?」

「そう」

 

隣でも()()()聞こえる。

 

「取り敢えずスタンド寄るぞ、曲がるからしっかり掴まれ」

「はい!」ギチギチ

「強過ぎだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ジャケットだから分かんねぇけど。

 

 

 

「ユキさん……来ないです……」

「大丈夫よイヴちゃん。必ず来るわ」

「チサトさん……」

「そうね……今頃迷ってるかしら?

 

 

 

「迷ったな」

「ちょっと待ってて下さい……200m手前の所で左ですね」

「手前か……仕方ない。戻るぞ」

 

片足を踏み込み、Uターン。クラッチも握りやすいし何処まで改造したんだ?

 

「所で時間大丈夫か?」

「予定よりは少し早めに出たので……あ、でも遅れそうですね……」

「なら少しルートを逸れる」

「近道ですか?」

()()()()()()()()ぞ、掴まってな!」

「え?ちょっtきゃっ!?

 

ブヴヴヴゥゥゥン……ガァン!

 

「着地成功」

「じゃないですよ……お尻痛いです……」

「ボ◯ギノール塗るか?」

「痔じゃないですよ!?と言うかなんで持ってるんですか!?」

「偶然ポケットに入っていた」

 

偶然って怖いな。

 

「まぁ冗談はこの位にしといて、サイドバッグの所に小型マット有るからそれ敷け。取り付けできる筈だから」

「だから何で持ってるんですか……」

「偶然サイドバックに入っていた」

 

偶然って怖いな。(2回目)

 

 

 

「……あ、来ました!」

「ん、あそこか(ブロロロ……)ハイ到着」

「皆さんすみません!色々と有りまして……」

 

側に寄せて止める。ブレーキも改良されてるな。

 

「お久しぶりです!レンさん!」ガバッ

「危ないて……久しぶりだな、イヴ。元気そうで何よりだ」

「はい!」

「と言うか千聖さん時間有りますか!?」

「大丈夫よ。時間も有るわ」

「なら良かったです……」

 

安堵している霧霜に対して耳打ちをする。

 

「駐車場所探してくる。先行って収録準備して来い」

「了解です」

 

再びアクセルを入れ、駐車場探しへと向かう。

 

 

 

「……あれ?レンさんは?」

「駐車場探しに行きましたよ?すぐに戻るらしいです」

「そうなんですか……」

「ところで霧ちゃん。時練ちゃんは昔からの付き合いなの?」

「付き合いと言うよりは話が長くなりそうなので……後で良いですか?」

「えぇ、じっくり聞かせてもらうわ」

「私に聞きたいです!」

 

時練さんの過去話は……色々と辛いんだよね。

 

「おいおい、一体何話してんだ……?」

「と……取り敢えず、収録準備に行きましょう!」

「……そ、そうだな?」

 

霧霜は何を言いたかったんだ?まぁ後で問いただすか……。

 

 

 

「……と言うか、何処で行うんだ?」

「一応、番組放送とかになる予定です」

「大丈夫かそれ……?」

「手と尻尾を隠しておけば何とかなるんじゃないですか?」

「いや、そうじゃなくて顔とか」

「……」

「……」

 

あ、これ考えてねぇな。やっぱり問うより擽りの刑に処すか。

 

「……何か、嫌な事考えてないですか?」

「サァーテナンノコトヤラ」

「もう……」

「レンさん!ユキさん!お待たせしました!」

「嗚呼……ん?」

 

何かソワソワしてないか?

 

「イヴ?どうかしたのか?」

「に、似合ってますか……?」

「ほら!時練さん!(ドガッ)」

「背中GAギャァァァ!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「嗚呼……結構似合うぞ(ポンポン)」

「……ありがとうございます///」

 

ピリリリリ……ピリリリリ……

 

電話か……鎌太刀?

 

「ちょっと先行っててくれ。霧霜はここに残れ」

「了解です。私も後で向かいますのでお先に」

「はい!」

「気をつけて下さい」

 

そう言いイヴと千聖は中へと入っていった。

 

「……で、どした?」

『少し報告を。近々解析役の彼奴も此処に来るという事を報告するぜ』

「もしかして……()()ですか?」

『嗚呼。今バンに乗ってそっち向かってる』

「流石に運転中に通話は不可能か」

『HAHAHA。まぁ着いたら連絡する。後もう一つ』

「もう一つ……?」

『その姿を見せるなよ……実験動物(Marmot)になる可能性もあるぞ』

 

それは既に分かっていた。おそらく前回の暴走の件もあるし、発動も控えないとな。

 

「流石にそれは御免だな」

「Roseliaの皆さんならまだしも、他の皆さんだと危険ですね……」

「元から隠すって決めたんだ。バレたら仕方ないし、後々バレるんだから」

「え……それってどう言う事ですか?」

『まぁ……話すと少し長いから手短に伝える。実はな……』

 

 

 

「(ガチャ)悪い、遅れたか?」

「丁度です!次の台詞で向かって下さい!」

「頑張りましょう!時練さん!」

「嗚呼……」

 

物凄い笑みで此方を見てくる。何故此方を見る?

 

「では、Pastel*Palettesの若宮イヴさん、白鷺千聖さんに続いて、ゲストにお越し頂きましょう!刻針時練さんと霧霜雪さんです!」

「どうも!」

「はい、どうも」

 

取り敢えず表情を殺して出る。何かやらかしたら不味そうだから……ん?あのスタッフ、何かカンペを向けているような……。

 

『少しでも気持ちを抜いて下さい』

 

出演すら初めてなんだからそんな楽に出来るか。まぁ対話での情報収集と思って。

 

「えーと、お二人にお聞きしたいのですが……」

「「あ、はい!」」

「と有るライブ襲撃事件で、二人が犯人を取り押さえたとお聞きしていますが……それは本当なんでしょうか?」

「実際に起こってますので……」

「お二人のご職業は……?」

「マネージャーです」

「学生です」

 

……ノリで学生とか言ったけど大丈夫だよな。事実だし……?

 

「そうなんですか!因みに刻針さんはPastel*Palettesの皆さんとどの様な関係で……?」

「赤のt「時練さん?」……依頼で会って今はこの様な状況で」

「成程……」

「本当にレンさんには感謝してます!」

「えぇ。気づいてなかったらこのまま亡くなってたわ」

「何だこのタイミング逃したから今此処で言う感じ」

「気にしない方が良いですよ?」

 

いや気にするわ。

 

 

 

「まだまだお聞きしたい事がありますが、お時間となってしまいました。皆さん、ありがとうございます」

「いえいえ!こちらこそありがとうございました!」

「またお時間あったらお願いします」

「私もお願いします!」

「本当にありがとうございます」

 

カメラマンがグッドサインを送る。どうやら撮影は終わったらしい。

 

「終わったわね。お疲れ様」

「お疲れ様です!チサトさん!ユキさん!レンさん!」

「お疲れ様〜!」

「……」

「時練さん?」

 

気のせいか?()()()()がする様な……まさかな。

 

「霧霜、この後の予定は有るか?」

「特にはないですが……どうかしたんですか?」

「少し嫌な感じがしてな……バイク取ってくる。ここで待機しててくれ」

「あ、はい……」

 

 

 

キキィィィ……ガンッ!

 

左右から2台の黒いクーペがバンにタックルを繰り返してくる……全く、合流した時からこれかよ!

 

「くっ……こんな状況とは聞いて無いぞ鎌太刀!」

「俺もこんな事は予想外だ!合流前にこっちに襲撃が来るとは聞いてねぇよ!」

「何とか打開策を練らなければ……ここは廃工場……策はあるか鎌太刀!」

「有る訳ないだろ状況考えろ!って前見ろ!?」

「壁!?……飛び降りるぞ!」

 

ガチャッ……ガンッ……ドカァァァァァン!

 

「バンが……」

「漸く捉えたぞ……このハッカーめ」

 

クーペからサングラスをかけたスーツ姿の屈強な男達が現れた。

 

「……知り合いか?」

「昨日の夜に任務で情報を盗んだ敵社だ」

 

ん?追われる理由が分かったぞ?

 

「まさか、ここまで追ってくるとは執念深いな……」

「どうする?時練が居ない今は任せるが……」

「なるべく戦闘は避けたい……が、悠長な事も言ってる暇もなさそうだな」

「調子に乗るな……お前ら!やれ!」

「「「「ヒャッハァァァァァ!」」」」

「仕方ない。久々の運動だ……付き合えSilence!」

「了解ッ!」

 

悪いな時練……遅れそうだ……!

 

「……オラァ!」ブンッ!

「ッ!来るか!」

 

ナイフを振り下ろすタイミングを合わせ、腕を掴み……

 

「ハァッ!」

 

ドガァァァン!

 

「ぐ"あ"っ"!"?"」

 

ドラム缶の上に叩きつけた。

 

「鎌太刀!何かしら武器はないのか!?」

 

バチバチッ!

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"!"」

「この高圧電流式スタンバトンしかないが大丈夫か!?」

「高圧電流!?何がどうしてそうなったんだ!?」

「時練が……」

 

あの馬鹿……まぁ、良いか。

 

「それを渡せ!」

「掴む所間違えないでくれよ!」ブンッ!

「(パシッ!)……さぁ、来い!」




次回は4人目の異名と名前が分かるぞぉ!乞うご期待!


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第二十話『解析。敵からの襲撃を断ち切れ』

コロナウイルス、皆様感染されてないでしょうか。

私は、日々疲れてます。


ザッ……

 

「ちっ……小癪な奴め……」

「手荒な真似はしたくないが……あくまでも任務の為に仕方ないからな」

 

早く合流しなければ……寄り道をしている暇はないのに……。

 

「ぐ"ぁ"ぁ"ぁ"っ"!"?"」

「こっちは全滅だ!で、どうするんだよ?」

「始末する……の前にだ」

 

ガッっと掴んで持ち上げる。

 

「な、なんだっ!?」

「……良し、十分だろう」

「やったのかよ……()()を」

「尋問しても口を割る事はないだろう。なら()()()の方が早い。任務は終わった。行くぞ」

「……へ、へへっ」

「何がおかしい?」

「お前達は……勘違いしてる……なっ!」

 

カチッ……バンッ!

 

「くっ!?」

Flash grenade(閃光手榴弾)か……!」

 

至近距離で受けた所為か視界が治るまで時間が掛かる……!

 

「手こずらせやがって……なぁ!?」ドカッ!

「くっ……!」

 

腹部に拳が命中したのは分かった……場所が分かればカウンター出来るのだが……。

 

「Silence!行けるか!」

「……」

「Silence?」

 

反応が無い……まさか!?

 

「Silen(ガッ!)うぐっ……!?」バタッ

「そこで眠ってな……しっかり遊んでやるからよぉ……」

「(くっ……身体が……)」

「さてと……やるk「させねぇよゴラァァァァァ!」な、なんだ!?」

「う、上だ!……上から何か降ってくるz」

 

ドガッ!キキーッ!

 

「「「ぐぁぁぁぁっ!?」」」

「一体何が起こって……!?」

「……あの、運転しっかりしてくださいよ!」

「ここからが最短かと思ってたが……」

「だからって森の中を突っ切りますか!?」

「悪かったって……」

 

着地の影響で足に負荷が……動けない程度ではないけど。

 

「な、何者だ貴様等!」

「さぁな。そこの二人を回収しに来たとだけ言っておこう」

「させるかよ!」バッ!

「霧霜」

「はいっ!」

 

目の前に迫りナイフで斬りつけようとする敵に対し霧霜が前に出る。

 

「上等だ!このまま仕留めて……」

 

ガギィィィィィン!

 

瞬時に氷の刃を作り出し、振り下ろすナイフを弾き返した。

 

「なっ……!?」

「舐めた事を……ふっ!」

 

ドカァッ!と蹴りが深く入り、吹っ飛んで行く。

 

「ぐぁっ!?」

「おー、結構入ったな」

「こうでもなりたくないなら……大人しく投降しろ」

「ちっ、野郎共!殺っちまえ!」

 

目視15人の敵が一斉に襲い掛かる……全く。

 

「「……今日は最悪な日になりそうだな/ですね」」

 

()()()()()は今……放たれた。

 

 

 

「ユキさん、レンさん……」

「イヴちゃん。あの2人なら帰ってくるわ」

「チサトさん……」

「鎌太刀さんから聞いた話だけど、皆強いんですって。イヴちゃんも見たかしら?」

「そう言えば……」

 

 

 

 

 

(ザシュッ……!)

 

「(はぁっ……はぁっ……イヴさん……大丈夫ですか?)」

「(マネージャーさん!そんな……!)」

「(後は私が……相手します……イヴさんは戻って下さい……危険ですから……)」

 

 

 

 

 

「……ユキさん達は私を庇ってくれました」

「そうよ。霧ちゃん達が知ってて私達を守ってくれているの」

 

風に吹き始め、私とチサトさんの髪が靡く。本当に大丈夫でしょうか……。

 

「風が強くなってきたわね。そろそろ事務所に戻りましょ。

「でも……」

「大丈夫、必ず戻ってくるわよ」

「はい……」

 

 

 

「氷檻ッ!……今ですっ!」

「オォォォォルゥゥゥアァァァァ!」

 

バキバキバキッ!

 

「あ"び"ぁ"ぁ"ぁ"!」

「くっ……何なんだお前らは!」

「何だと言われてもSilence達(此奴等)の仲間だからやるしかねぇんだよ」

「そんなこと言ってる暇有るんですか!さっさと先生達を!」

「分かってる。だが今は此奴等をやらなきゃ……なっ!」

「ぐぉっ!?」

 

背後から接近しても振り下ろす時の音で分かる。

 

「後はお前だけだ。観念しな」

「くっ……」

「……め……だ。は……れろ……」

「先生!良かった……生きてて……」

「問答無用で抹殺して……」

「……せっ!」

「どうかしたんですか先s」

「止せ時練!離れろ!」

「遅いってーの!喰らいなぁ!」

 

カチッ……バンッ!

 

「っ!?これはっ!?」

Flash grenade(閃光手榴弾)!?」

「掛かったなぁ、これで終わりだ!死ねぇ!」

「(バッ!)霧霜!氷で刀を!」

「は、はいっ!Freezing production(凍結製作)!」

 

霧霜の周囲から冷気が漂う。その冷気が一ヶ所に集まり、刀を創り出した。

 

「先生!受け取ってください!」ブンッ!

「くっ……至近距離で目が……」

「終わりだァァァァァ!」

 

グサッ……!

 

「か、はっ……」

「「時練!?/時練さん!?」」

「取った!貴様など、我が敵ではない!フハハハハ!」

「く……あっ……」

「このまま押し込んで切り裂いてやr「へぇ、誰を切り裂くって?」勿論お前を……なっ!?」

 

ピピピピピッ……カチッ。シュウウウ……。

 

俺を切り裂いたと思っていた『Dummy(身代わり)』は徐々に消え始める。

 

「馬鹿なっ!?お前何時から!?」

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』だ」

「どう言う事……(バンッ!)がはっ!?」ドサッ

 

氷刀を持った女性が背後から振り下ろした。

 

「……全く、少し鈍ったのか?」

「無理言うな。色々あって回復できてないんだよ……『Decipher(解析)』いや『Haku・Rostane(ハク・ロスターヌ)』」

「……久しいな。時練」

「先生っ!傷は……傷はないですか!?」

「安心しろ。そこの気絶している奴とは大違いだ」

「……」

 

何が有ったし。

 

「……まぁ全員無事なら良いんだが」

「それよりもどうします?この人達……」

「構わん。警察に突き出せ」

「良いのかハク?追われてる身だったんだろ?情報とかは……」

()()調()()()から大丈夫だ」

「そうか。なら突き出すとして……取り敢えず起きろ鎌太刀」ドゴッ

「ぐ"ふ"う"っ"!"?"」

 

腹部に一撃喰らわせ叩き起こす。咳き込む鎌太刀を尻目にハクに何が起きたのか聞く。どうやら、鎌太刀から廣岡の話を聞いており。情報会社からデータを盗んでから探そうとしたが見つかりこうなったと……

 

「……その情報は獲得出来たのか?」

「嗚呼。追手が来てたのは予想外だったが。取り敢えずこの情報を依頼主に渡してから捜索に手を貸そう」

「色々と悪いな。俺の責任だってのに……」

「何言ってんだよ。俺達は『部隊』であって『仲間』だろうが」

「そうですよ!困ったら私達にも教えてください!」

 

良い部隊を持ったんだと思うと涙が出てきそうになるがグッと堪える。

 

「……帰るか。所でハク、家は?」

「ん?有るがどうかしたか?」

「いや、聞いただけだ」

「そうか。取り敢えず私は依頼主に情報を提示して捜索を開始しよう」

「頼む」

「行くぞ鎌太刀、運転を頼む」

「へ?まぁ、良いが……」

 

鎌太刀は運転席に戻りハクも助手席へ戻ろうとすると、通り側に耳打ちをしてきた。

 

「あの男、何者かに雇われていたらしい。おそらくだが佐崎の手下かもしれん」

 

そう言うと敵が乗っていたであろうクーペに乗り行ってしまった。

 

「……」

「どうかしたんですか?」

「少し考え事だ。そんな重大な事じゃないから安心しろ」

「そうですか……あ、そういえばバイクは!?」

「どうやら大丈夫みたいだぞ。あれ、傷一つ付いていない」

「いやそんなまさk本当だ……」

 

学園長……一体何処まで手を加えたんや……。

 

「取り敢えず帰るか。長く待たせると心配するだろ?」

「は、はい……(多分心配されるのは時練さん本人じゃ……)」

「そうとなったらさっさと帰るぞ。乗れ」

「了解です」

 

 

 

「こんな事を聞くのもなんだが……鎌太刀、一つ聞いても良いか?」

「ん?どうかしたのか?」

「……あの尻尾は一体なんだ?」

「あー、暴走化のCompensation(代償)だ。呼んだ理由はそれも含める」

「ふむ……雪から話は聞いてたがあんな姿になるとはな……分かった。その件も含めて手伝おうじゃないか」

「すまねぇな。勤務中ってのに」

「気にすることではないさ。私もそろそろ、別の事を行って身体を休めないと思ってな」

 

後で時練を呼んで研究してみるか……。

 

「……そういえばハク。俺からも一つ良いか?」

「嗚呼。良いぞ」

「昔、時練が暴走した時の任務を覚えているか?」

「しっかりと覚えているが」

「その任務中、()()()()()()()()()()()()()が居たか調べて欲しいんだ」

「……ついでに調べておこう」

「頼む」

 

 

 

「(キキーッ)……戻ってきたな」

「今回は安全運転でしたね」

「もう事故りたくないだろ?」

「ハイ」

「だから安全ルートで帰った」

 

と言うか、もう暗いな。パスパレの皆は帰ったんだろうか……ん、なんか居るな……白髪で……三つ編みの……んん?

 

「……レンさん?」

「イ、イヴ?帰ったんじゃn」

「レンさぁぁぁぁぁん!」ガバッ

 

なんか急に抱きつかれたんだが。

 

「心配したんですよ!帰ってこないんですから!ううっ……!」

「これは相当泣き我慢してましたね」

「……そうみたいだな」

「ううっ……ひっぐっ……」

「すまない、遅くなった」ポンポン

「遅過ぎますっ……』

 

胸部に埋めるイヴ。俺は機嫌を取らせることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい……はい。分かりました。引き続き目標の監視を続けます」




キャラ紹介
名前 Haku・Rostane(ハク・ロスターヌ)
誕生日 5月29日
好きな食べ物 天麩羅
嫌いな食べ物 鹿肉
趣味 機械を触る事、改造

翡翠色のポニーテールに茶色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の陸軍少佐。相手の情報や遠く離れても肉眼で見える力を持つ事から『解析(Decipher)』の異名を持つ。

若宮イヴと同じフィンランド出身。陸軍だが主に情報を集めるのが仕事で解析や研究を得意分野としている。戦闘時では刀や細いパイプを使った刀術。霧霜には先生と呼ばれるらしい。彼女は何か隠している様だが……。


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第二十一話『集結。部隊大会議』

現実逃避したい……したくない?


〜CIRCLE・カフェテリア〜

 

ゴクッ

 

「……もう少し挽いた方が良かったか」

「おっはよ〜レン!」

「珍しいわね。今日は休みなの?」

「ん……友希那とリサか。おはようさん」

 

休日。俺はカウンターで自ら淹れたコーヒーを飲んでいた。

 

「アタシ達も一杯良いかな?」

「畏まり。注文は?」

「「()()()()」」」

「……おう」

 

毎度毎度メンバーがここに寄る度に『()()()()』と言われ続けるので密かにカウンターの下にメモ紙を置いている。中身は言わなくても分かるな?そう、彼女達が頼む『()()()()』だ。詮索?するなするな。

 

「そういえば時練、足りてるの?」

「足りてるって……何がだ?」

「人手よ」

「Human Hand?」

「それ人の手だよね?」

「あ、人手なら労働力だからManpowerか。足りるといえば足りて……るのか?まぁ色々やってるよ。ほい、お待たせ」

「ありがとうレン〜」

「ありがとう……何か情報とかって有るの?」

「……」

 

彼奴は……彼奴は絶対に俺を殺す。俺の仲間達はそれを知って現在進行形でこのMission(任務)を遂行中だ。

 

「(この身が尽きるまでは……俺は死ねる身ではないのか)」

「時練?」

「……悪い、少し新メニューの考え事だ」

「レン……」

 

あくまでこれは()()()()()。彼女達に迷惑は掛けられない。迅速に対処しなければ。

 

「さて、こんな状況は止めだ。やがて来る任務に備え、今は皆のサポートとして、Roseliaのマネージャーとしてこの身を尽くそう」

「……そうね」

「さて、新作の制作に(prrrr)……ハクか。悪い、一旦席を外す」

「分かったわ」

「レン、支払いは……」

「要らん。置きたかったら置いておけ」

「ゴチになりまーす♪」

 

 

 

「……漸く繋がったか」

『悪いなハク。仕事で忙しくて』

「いや、大丈夫だ。私も休憩しているからな」

『そうか。んで何の要件だ?』

「あの手下の件でな。鎌太刀は私から言っておこう」

 

私は一呼吸置き、言い放った。

 

 

 

()()()()()

 

 

 

瞬間、スマホを落としそうになる。寸前で阻止したが、これは最悪な感じだと頭の中で囁かれた。

 

「どう言うことだハク!」

『そのままの意味だ。尋問しようと部屋に入った時には既に死んでいた』

「死因は」

『おそらく毒による自殺だろう。足元に小瓶が有り、現在解析中』

「……クソッ」

 

あくまでも情報は話さないつもりか……面倒事が増えたぞ。

 

『それにお前の姿の件もある。一刻でも治したいのは山々だが時間が掛かるんだ』

「分かってるさ、ゆっくりでも良い。最優先は小瓶の解析だ……取り敢えずハクはこのまま鎌太刀と霧霜に報告。小瓶の中の解析が完了次第報告せよ」

『Yes Sir』

 

ハクとの通信を切る。さて、これからどうするか……どうやら、聞いてる人もいるらしいみたいだし。

 

「聞いていたんだろ?友希那?」

「何かあったのね」

「……盗み聞きか」

「心配なのよ。私も」

 

そう、隠れていたのは友希那だ。

 

「リサはどうした?」

「先に帰らせたわ……ねぇ、これからどうするの?」

「これからとは?」

「その……死んだのよね?」

「嗚呼。情報は拾えずだが……このままハクの解析を終わらすしかないだろう」

「……ごめんなさい時練、私の所為で」

 

俯く友希那。俺は軽く頭に手をやり優しく撫でる。

 

Intelligence Network(情報網)が若干途切れただけだ。お前の所為じゃないし、これは()()()()()だから責任とか感じるな」

 

彼奴(廣岡 佐崎)の言葉からして、襲撃は確実だ。さて、どうするか……。

 

 

 

 

 

「……という訳だ。気をつけてくれ」

『了解……それとハク、()()()についてだが……』

「分かってる。既に調べたが、怪しい動きをする人物は1人も居なかった」

『そうか。……調べてくれてサンキューな』

「礼は要らない。では私は解析に戻る」

『了解』

 

鎌太刀との通信を切り、小瓶の内容物の解析を再開する。現状判明している事は……この小瓶の毒はTetrodotoxin(フグ毒)でもなくPlant-based natural poison(植物性自然毒)でもない。

 

「なら、この毒は一体何なんだ?」

「(コンコン)霧霜です。先生、失礼します」

 

扉を開け、白衣姿の霧霜が入ってくる。髪は何時も通り後ろで縛ってるな。

 

「時練さんの能力についての報告書です」

「そこに置いておいてくれ、解析で確認が出来ない」

「分かりました。では机の上に置きますね」

「助かる。……それと少し良いか?」

「はい?何でしょうか?」

 

首を傾げ聞いてくる霧霜。わたしは息を整えて話す……話す……。

 

「……いや、なんでもない」

「そうですか?私もこの後は忙しいので先に上がらせて頂きますね」

「嗚呼、ゆっくり休め……」

 

背を向け部屋を出る霧霜……話せなかった。いや、()()()()()()()……。

 

「この事は……私から見てまだ幼き彼女に話した所で……いや、考えるな。解析に集中しろ……」

 

フラスコの中に入っている薬品が、徐々に色が変わっていく……。

 

 

 

 

 

〜数日後〜

 

「良し、全員集まったか?」

「全員揃ってるぜ旦那」

「誰が旦那だ誰が」

「茶番は良いが、本題に入るのを忘れるな」

「そうふぇすっ!?」

 

あ、霧霜が噛んだ。

 

「霧霜、そこで噛むか」

「あぅあぅ……」

 

両手で顔を隠す霧霜。全く、ドジなのは変わらない奴だ。

 

「さて、本題に戻すか。鎌太刀」

「俺は近隣住民や元バンドメンバーにTarget(廣岡 佐崎)の事について聞いてみたんだが、今のところ目撃情報はない……」

「姿一つも見せないとは……変装の可能性は?」

「いや、そしたら私が確認出来るはずだ」

「確かにそうですよね……先生の『解析』は見破ることも可能……」

「……と言うことはハクの能力でも発見出来ないと」

「すまない」

 

そう言い俯くハク。

 

「仕方のないことだ。鎌太刀は以上か?」

「俺からの情報は以上だな」

「次は私と先生からですね」

 

すると霧霜は背負っていたバッグから1枚の紙を取り出す。

 

「先生が調べた小瓶の成分なのですが、未だ判明しておりません……」

「おそらく幾つかの毒の成分を混ぜて使っている。解析結果についてはまだ未定だ」

「自ら口封じの為に死ぬとは……」

「……それと、私個人で調べさせてもらったのですが……隊長と鎌太刀さんはご存知であるPastel*pallettes襲撃事件についてです」

「話してみろ」

「はい……容疑者2人組についてですが何者かに依頼された組織の一員と言う事が判明しました」

「組織……依頼人は誰だ?」

「いえ、文通で渡されたらしく犯人の特定は……」

「……そうか」

「それと隊長の獣化なんですが……私にも分からない状況で……これが検査結果です」

 

そこには大きく『Unknown Data(未知のデータ)』と書かれている報告書類だけだった。

 

「他は全て正常でした。……と言いたいのですが」

「異常か?」

「時練、能力を使用している間に何か感じなかったのか?」

「……」

 

彼奴(Khimaira)の事は話すべきか。否、話さない方が良いだろう。

 

「いや、何も「感じたんだな?」……読むなら聞くなよ。ハク」

「……お前の事だ。()()隠して自ら対処しようと思ってるなら大間違いだ」

 

返す言葉もない。確かに自ら対処しようとしたのは本当だ。その結果何が起こった?自らをコントロール出来ず、暴走した……完全に俺の責任だ。

 

「すまない……言っても信じてもらえないのかと思ってな」

「馬鹿言うな、私等は部隊。お前の言う事も信じれるさ」

「……ありがとう」

 

俺は3人に、暴走時起きた事を隠さず全て話した。

 

「Khimairaの名乗る存在に、殺意を含んだ謎の声……後者の方は追々話すとして、前者の方は初めて……だな」

「はい……しばらく経ってから苦しくなると言うのは呼吸困難とかですか?」

「いや、そんな感じじゃない」

 

暫く考えたハクが口を開く。

 

「……今後の件に解析を増やしておこう」

「頼む」

「俺からは……先程言った内容だけだ。身体の件もな。以上、各自警戒を怠らずに」

「分かってる」

「了解です!」

「良し、解散」

 

話も終わり、俺も持ち場へと向かうが……。

 

「時練」

「どうした?」

 

ハクに呼び止められた。

 

「少し話が……時間あるか?」

「……構わんが」

 

 

 

ハクに連れられ、河川敷へとやってきた。

 

「で、何の話だ?」

「先賢と烏のことでな」

「……」

 

戦闘技術や指揮技術。部隊の中でも格別であったところから『Xianxian(先賢)』と言う異名を持つ男であり、()()()()だ。

しかし、謎の部隊に親父は狙われていた。そして俺の歳が7の時に居場所を見つけられ、御袋と俺を逃す為に時間稼ぎとして戦い……戦死したと聞いた。

(Crow)』は誰よりも多くの人の顔を記憶したり、色を識別する能力が高いところから付けられた御袋の異名だ。御袋も俺を逃す為に追手を相手し、戦死したと聞いている。2人とも23で亡くなった……若き時に、それも家族が死んだのは……。

 

「……俺の親がどうかしたのか」

「掘り起こす様で悪かったが、一つ疑問が浮いたんだ」

「疑問?」

 

人差し指を唇下に付けて考えるハク。

 

「少し昔話をしよう。お前がその異名を持って、親と共に生き抜いた日々をな」




お次のお話は過去の話になります。ご了承下さい。


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第二十二話『過去。仲間を統率する者』

筆が進まん……仕事詰めで筆が進まねぇ……。
(まぁそれでもコツコツと描き続ける限界人)


数十年前……数々の異名が揃えられし精鋭部隊『Forest delete』。その中のリーダーがお前の父『Xianxian(先賢)』と呼ばれた『刻針 長矢(コクシ チョウヤ)』そして、お前の母『Crow()』と呼ばれた『刻針 合奈(コクシ アイナ)』。

2人はForest deleteの中でも唯一、群を抜く存在であり、『Instructor(指導者)』として仲間達に戦術や能力のアドバイスを教えていた……勿論、私も教えてもらった。

 

 

 

ある日、私は模擬戦闘を受けていた。

 

……ドサッ!

 

「はぁっ……!はぁっ……!」

「どうした!こんな所で膝をつくとは!」

「……くっ!まだまだっ!」

 

私は刀、先賢はナイフで戦い、先賢に傷一つでも与えると言う簡単な内容……

 

「はぁっ!」

 

ブンッ!……ギィン!

 

「お前の能力で俺の先を読め!」

「ッ!!」

 

模擬戦闘と言えど先賢は容赦が無かった。的確なアドバイスを与えられる度に先賢の攻撃速度はどんどん速くなっていき、刀のリーチを掻い潜りやがて……

 

「甘いっ!」

 

ザシュッ!

 

「あぐっ……!」

 

先賢に傷一つ与えられず、逆に此方の右肩を軽く切られ膝をつく。

 

「そんな……」

「太刀筋はとても速く間合いも十分だ。だが素早く詰められた時が一番ガラ空きになりやすい。刀は振る時が一番大きなダメージとなるが二撃目に素早く繋げられる様にコントロールしてみな」

 

ナイフを仕舞いながら、先賢は言った。

 

「……お前等!今日の訓練はここまでだ!各自休み、怪我をしたものは救護部隊にお世話になってもらえ!」

「「「了解ッ!!!」」」

 

周囲で同じく模擬戦闘をしていた仲間達も終え、各自キャンプの方へ向かった。

 

「ほれ、立てれるか?」

「すみません、わざわざ手を借りるなど……」

「良いんだよ。訓練や実戦では真剣に。争う事がなければ両者共に褒め合い、お疲れ様と言って支える。俺達のやってきている事だろ?」

「でも」

「良いじゃないの。ハクちゃんも貴方も、頑張ってたのよ?自分を褒めなきゃ」

 

俯く私に、優しい声が聞こえた。顔を上げるとその優しい笑顔を持った女性がそこにいた。

 

「Crow様……」

「もう、普通に呼んでもらって構わないのよ?」

「……合奈様」

「様は要らないわ」

「……合……奈」

「えぇ、ハクちゃん」

 

優しい手で撫でられる。包容力が有る様に感じた。

 

「全く、お前は変わんねぇなぁ合奈」

「あら?貴方の模擬戦闘がキツいのもお分かりで?」

「そ、そうだな……お前の言う通りだ。すまない、ハク」

「い、いえ……長矢の模擬戦闘は戦術の向上となります」

「もうちょっとハードルを下げてもらったらどうなの?」

 

合奈は提案をしてきたが、戦場で生を勝ち取る為には相手を……

 

「……いえ、戦場で警戒を怠り死を迎えるなど。軍人の最悪なる死です」

「無論、死んでも駄目だがな」

「偶には息抜きをしましょう!」

「そうですぜハクの姉御!」

「気を抜くとすぐに死んでしまいますよ」

 

背後から圧が掛かる。

 

「君達も一緒じゃないか『Reflector(反射)』『Double edge(双刃)』」

 

受けた攻撃を衝撃として跳ね返す能力を持つ『Rirecto(リレクト)』。

手刀が鋭く、構えると二刀流となる能力を持つ『Brena(ブレーナ)』の2人が立っていた。

 

「へへっ、そうだなブレーナ!」

「僕達も頑張らないとですね。ハク先輩をいち早く越えなくてはならないと!」

「そう簡単に越えれたら良いがな」

 

3人で笑う間で、2人は見ていた。

 

 

 

「……普通だな」

「まぁ、この訓練は本当に厳しかったぞ。下手したら死ぬ可能性もある」

「でも、そこが本題じゃねぇんだろ?」

「嗚呼……2年後、長矢と合奈の間に子供が生まれた。それが刻針時練、お前だ。」

「俺が生まれた……」

「嗚呼。そして幼きお前は速くも言語を学び、成長していった。そしてある日、私と同じ長矢の模擬戦闘を受けた……」

 

 

 

ドガッ!

 

「い"っ"!"」

「どうした時練!掛かって来い!」

「……っ"……やぁぁぁぁ!」

 

叩き潰されては起き、叩き潰されては起きを繰り返す。その光景に私とリレクト、ブレードは少々悩んでいた。

 

「……なぁハク先輩。あの子大丈夫ですかね?」

「分からない……だが子供でも容赦ないのは少々酷いとは思うが……」

「これが……彼に合った模擬戦闘(やり方)なんですか?」

 

不安と煩悶が交差する中、ひたすらに模擬戦闘に励んだ。

 

 

 

「……時練、お前は何も出来ない。休め」

「ぐっ……はぁっ……!はぁっ……!」バタッ

「時練!」

 

模擬戦闘が終わり、時練が膝をついて倒れた。私達は直様時練に近付き起こした。

 

「長矢!いくらなんでも酷過ぎる!」

「そうだ!子供相手にマジ過ぎんだろ!」

「親ならまともに相手してあげてくださいよ!」

「……ぃ」

 

反抗する私達に、時練は口を開いた。

 

「いい……です」

「「「時練!」」」

「やら……て……くだ……さい」

 

ボロボロの体で立ちあがろうとする時練。骨は砕け、肉は抉れ、そこから血は溢れて出ている身体はもう動けないと思っていたのに……

 

「……っ!」

「嘘……」

 

時練は……立ち上がり、構え直した。

 

「……」

「もう……いち……」ドサッ

 

だが身体の負荷の方が大きく、すぐに倒れた。

 

「……貴方?少しやりすぎではないですか?」

「「「合奈!?/合奈中尉!?」」」

「あ、合奈……」

「少しお説教が必要ですかね?」

「あ、いや……その……」

 

合奈から確実に殺気が取れた。

 

「取り敢えず……救護部隊!時練を!」

「ぼ、僕達が運びます!リレクト!足持って!」

「分かったぜ!」

 

背後から断末魔が聞こえたが無視し、時練を急いで運んだ。

 

 

 

「一応、止血は出来ました。後は様子を見てあげてください」

「良かったな」

「一時はどうなるかと思いました……」

「流石に同感だ」

 

頭、両腕、両足。五体が完全に朽ちている時練を見る。少し寝息を立てているが、あれ以上戦っていた場合、死に直結していただろう。

 

「合奈中尉にもお伝えして、しばらくしてから伺うと」

「分かった。3人ともご苦労、休んで良いぞ」

「いえいえ、まだまだやる事はありますから。では」

「時練の事を頼んだぞ!」

「お疲れです〜」

 

救護員が離れ、静かなテントの中で刻一刻と時が過ぎる。

10分、30分、1時間。それ以上経ったのかもしれない。だが、彼は目を覚まさなかった。

 

「……ハクちゃん」

「あい……っ!?」

「シーッ……時練が起きちゃうでしょ?」

 

口元に指を当てて止められる。そして私の隣に座った。

 

「先程はごめんなさいね。息子だからって張り切っちゃったの」

「そうなんですか……長矢は?」

「説教した後、テントの隅っこで正座して反省していたわ」

 

何それめちゃくちゃ見たい。

 

「時練の容態はどうなの?」

「重傷。幸いにもすぐに運んで治療出来たので、今はこうやって寝息を立てて休んでます……まだ目は覚ましませんが」

「取り敢えず命に別状が無くて良かったわ」

「はい」

 

そう言えば、時練の母親が居るなら聞いても大丈夫だろうか。

 

「何故あの状態でも立ち上がれたんですか。私から見ても、彼は既に死んでいる状態筈なのに」

「さぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

一瞬、頭の中でピリッと衝撃が走った。その感じは、幾多でも分かる。

 

()

「……やっぱり、ハクちゃんにはバレるわね」

 

一呼吸置いてから、合奈は口を開いた。

 

「あれが彼の能力なの。それも()()()()

「2つ以上?反応は2つだけだったのですが……

「ハクちゃんでも分からないのね」

「すみません……」

 

俯く私に、合奈はポンと肩に手を添えた。

 

「謝らなくて良いわ。ゆっくり考えましょ?」

「そう……ですね」

 

隣で寝息を立てている時練を横に合奈は話を続け始めた。




名前 刻針 長矢(コクシ チョウヤ)
誕生日 9月30日
好きな食べ物 不明
嫌いな食べ物 蛇肉
趣味 訓練、戦術指揮
 
黒色の短髪に茶色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の元陸軍指揮官。戦闘技術や指揮技術。部隊の中でも格別であったところから『先賢(Xianxian)』と言う異名を持っている。

時練の父親。謎の部隊の襲撃により時練と母の合奈を逃がす為に応戦し戦死。


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第二十三話『迷刻。刻針の名を持つ者の願い』

イソガシイソガシ……


「で、どんな話だったんだ?」

 

一段落ついた所で問いを投げてきた。

 

「結構前だから覚えてないが……お前の元気な時や先賢と共に一緒に策を練っていたりだな」

「家族生活を聞かされたのか」

「嫌……という程ではないが、少し長めに話していた」

 

「……なぁ」

「ん?どうかしたか?」

「本題は?」

 

完全に忘れていた。

 

「そうだな。じゃあ少し飛ばして、襲撃3分前の話からで良いか?」

「結構端折るなおい……長話か?」

「いや」

 

少し呆れ始めている時練に対して、私は首を振った。

 

「なるべく簡潔的に話す」

「まぁそれなら……」

「良し。なら話すぞ」

 

 

 

敵の存在に気付いていた先賢は付近に展開していた私達の部隊に偵察を指示。私達はその謎の部隊の偵察を行っていた時の事だ。

 

「……Decipher(解析)少佐!各場所の捜索完了しました!」

「報告」

「敵数は確認した所では3部隊。リーダーと思われる異名使いが後衛で指揮」

「おそらくはReconnaissance Unit(偵察部隊)かと思われます」

「分かった……Sigma(シグマ)部隊と合流し様子を伺え」

「「「Roger that(了解)」」」

 

Delta(デルタ)部隊が離れていく。私達Rho(ロー)部隊はこのまま偵察を続けていた……が、その時だった。

 

『こちらPhi(ファイ)部隊。敵捜索範囲に民間人を発見、どうしますか?』

「民間人?」

『はい、怯えている様で敵対している意思はないと断定』

「……そちらで保護し、避難誘導を優先せよ」

『了解』

 

安全性の為に避難誘導を指示したが……それが過ちだった。

 

『そうだ……ゆっくr……待て!寄るn』

 

ドガァァァァァン!

 

「ッ!?……Phi部隊、応答せよ!繰り返す!応答せよ!」

『……ちらPhi部隊……ルス……ビ……ップだ……ちらに……てる……』

 

Phi部隊との連絡は途絶え、雑音しか聞こえなくなった。

 

「少佐、先程の爆発音は!?」

 

私は直様無線を切り替え、叫んだ。

 

「Decipherから全部隊へ!敵の襲撃だ!総員警戒せよ!」

 

……通信を切ったと同時に各場所で銃声、爆発音、断末魔が聞こえた。

 

 

 

戦場であった森林は炎に包まれ、火の粉が漂う中に倒れた死体が視界に入る。他の仲間達は援護に向かわせ、私は先賢達に状況を報告する為に駆けていた。

 

「(急げ……一分一秒も無駄にするな……!)」

 

仲間が敵か分からない焼け焦げた死体を踏み越え、やがて先賢達の部隊キャンプに到着した。

 

Xianxian(先賢)!」

「ハクさん!」

「ハクちゃん!大丈夫!?」

「なんとか……それより先賢は!?」

「待て……了解、各部隊の損害は最小限に抑えろ」

 

通信機を置いて私に向き直る。

 

「状況報告を」

「民間人を使ったBooby trap(偽装爆弾)を使用し襲撃。各地点で謎の部隊と交戦で部隊の敗戦が拡大しています」

「そんな……」

「なんの罪もない奴に爆弾を取り付けるとは……」

「ここは各部隊に撤退命令を出した方が良いかと」

「ふむ……そうだな。急な戦闘によって展開に時間が掛かる。ここは撤退を……」

 

と言った瞬間、突然通信機に応答が入った。

 

Beta(ベータ)部隊からDecipherへ!隊長と嫁さんと子供連れて逃げてくれ!』

「なっ!?お前何を言っているんだ!?」

『こっちはRho部隊と共に交戦しているが予想以上に相手が強いんだよ!」

「一体何を言って……今すぐ戻れ!」

 

先賢が叫ぶが、落ち着いた様に応答する。

 

『隊長……俺達は隊長が居たから戦えたんだって思うんだよ。各部隊の仲間達も同じ事を思ってるぜ。だからここで隊長が死んだら、俺達は今まで何のために教えてもらったんだって考えちまうんだ』

「……」

『だから我儘だと思うけどよ……隊長。嫁さんとお子さんと共に逃げて、暖かい人生を持って生きて欲しい』

「馬鹿野郎が……死ぬんじゃねぇぞ」

『へへっ……生きる可能性は低いけど、なるべく死に抗ってやるぜ!Beta部隊から全部隊へ告ぐ!隊長達の撤退の時間稼ぎの為に全力で応戦せよ!今まで教えてもらった感謝の気持ちを込めて……敵の侵入を許すなよ!』

『『『『『了解ッ!』』』』』

 

各地で銃声の他に雄叫びが聞こえ始める、

 

「嫌……そんな……」

「……」

「本当に……お前らは……」

 

烏は膝から崩れ落ち、息子は背を向け、先賢は壁を殴る。私は彼らの最期を心に仕舞い決意した。

 

「行きましょう。彼等の為にも……明日の為にも……」

「嗚呼……そうだな。合奈、時練、行くぞ」

「母さん……行こう」

「……えぇ」

 

 

 

彼等の決死の交戦(時間稼ぎ)の間に、私達は必要物資を持ってキャンプを後にした。

 

「ハク、前方はどうだ?」

「敵影なし。反応もありません」

「私の烏達にも動きはないわ」

「ふむ」

 

仲間達が時間稼ぎをしているおかげだろう。

 

「……ハクさん」

「ん?どうした?」

 

時練が急に話しかけてきた。

 

「こんな時に聞くのも何ですけど……どうして入隊しようと思ったんですか?」

「ちょっと時r「大丈夫ですよ」……!」

 

合奈が静止しようとしたが、私はそれを止めた。

 

「……ごめんなさいね。ハクちゃん」

「いえ……それで時練は、何故この部隊に入ろうと思ったと聞いたね?」

「えっ?はい、そうですけど……」

 

一瞬、時練が困惑した。地雷でも踏んだかと少し怯えた表情をしている。

 

「私が『力』を持っているからとでも言いたい……が、実を言うと恩を返す為に入ったんだ」

「恩を返す……?」

「元々放浪者として各地を淡々と移動していたのだが、ある日、君のお父さんと出会って助けてもらったんだ。その恩を返す為に私はこの部隊に居る」

「そうなんですか……はぁ……」

 

安堵のため息を吐く時練。

 

「旅も楽しいものだが、やはり私は此処に居る方が落ち着く」

「そりゃどうも。と言いたいが……」

「……?」

 

長矢の目が鋭くなり先を見ている。何か居るのだろうか……?

そのまま前衛に立ち、私達に小声でこう言った。

 

「3つ数えたら真っ先に走り続けろ。良いな?」

 

言葉で私と合奈は理解した。()()()()()()()()()と。だが合奈ら咄嗟に小声で反論した。

 

「でも貴方が……!」

「俺の事は良いんだ」

 

その顔に涙はなく、後悔もない。ただ目の前の(追手)に警戒している。

 

「行くぞ……1……2……」

 

ポケットから何か取り出して構え始める。

 

「……3!」

 

私達は目の前一直線に駆け始めたと同時に、長矢は上に何か投げた。

その瞬間、バンッ!と閃光と発光する物体が長矢の辺りを照らし続ける。

 

「……照明弾」

「振り返るな!行け!」

 

一斉に駆け出し、殺傷範囲(Kill Zone)から撤退する……筈だった。

 

「……ッ!」バッ!

「「合奈/母さん!?」」

 

何故か合奈が踵を返し、長矢の方へ戻ったのだ。

 

「一体何をして!?」

「行って!時練!ハクちゃん!」

「戻ってよ!母さん!」

 

時練の叫びに、母は首を振った。

 

「母さんの我儘だけど、あの人と最期まで一緒に居たいの……勿論、時練と最期まで居たいけど……このまま亡くなったら駄目かなって。ごめんね、こんな母さんで……」

「……!」

「それとハクちゃん、時練をお願い……貴方に息子を守って欲しいの。平穏で……暖かい生活を教えて欲しいの……」

 

母はそう言うと私と時練に笑顔を見せた。背を向けたままだが、父もサムズアップを示した。

 

「絶対に生きてね……」

「死ぬんじゃねぇぞ」

「……健闘を祈ります」

 

私は2人に敬礼し、時練の手を引こうとするが……。

 

「……」

「ちょっ……!?」

 

意気消沈しており、足に力が入っていない。不味い、このまま時練を放っておく事はできない……だったら!

 

「ちょっと失礼する!」ガシッ!

 

私は咄嗟に時練を横抱きに、その場から撤退した。

 

 

 

「そして別地点で動いていた部隊と合流しお前を保護。一時的に意識を失っていた間に私はお前の親の捜索に向かった」

「そして俺は父親の死亡を……そんな事があったのか……」

 

俯く俺に、ハクは腕を組みながら口を開く。

 

「……が、少々疑問があるんだ」

「そういえば言っていたな。で、その疑問とは?」

「嗚呼……実はな……」

 

ハクがその疑問について話した……。

 

 

 

「……分かった。この事は誰か知ってるのか?」

「鎌太刀は知っている。霧霜についてはまだだ」

「了解……教えてくれてありがとうな。ハク」

「別に構わないさ、では私は帰宅するよ」

「嗚呼、お疲れ」

 

一瞬にして姿を消すハク。

 

「……まさか……な」




名前 刻針 合奈(コクシ アイナ)
誕生日 9月17日
好きな食べ物 甘味
嫌いな食べ物 野草
趣味 ケア、時練のお世話
 
桃色の長髪に赤色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の元軍医。野鳥の対話及び野鳥視点を見ることが出来る。また指示を行う事から『(Crow)』と言う異名を持っている。

時練の母親。謎の部隊の襲撃により時練とハクを逃がす為に応戦し戦死とされているが、実態は死体の確認が出来ない為不明となっている。


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その他など
オリメン紹介


第二十話までの紹介となります。後々色々付け足して来るので余裕があればご確認下さい。


名前 刻針 時練(コクシ ジレン)

誕生日 9月5日

好きな食べ物 カ◯リーメイト、サラダ

嫌いな食べ物 特に無し

趣味 音楽関連、裁縫

 

黒い長髪に紅い瞳。女性的な容姿を持つ彼は

Forest delete(フォレスト デリート)』の陸軍大尉。その脅威的な戦闘能力、かつ常人以上の体力を持つ。また瀕死時、戦闘能力が更に向上する所から『死際(Death)』の異名を持つ。

 

現在では友希那に誘われ『Roselia』のマネージャーとなっているが、他のバンドからも勧誘を受けておりちょっと複雑と化している。

 

暴走以降は能力内容不明の2つ目の異名……『狂時針』と言う名の『獣ノ狩時(When hunting beasts)』を持つ事を知り、慣れるまでコントロール中。変化中は『殺意』が自身の身体を蝕むが、若干抑えるので割とマシだとか。

 

立ち絵(仕事服)

【挿絵表示】

 

 

 

 

名前 鎌太刀 刃(カマタチ ヤイバ)

誕生日 12月14日

好きな食べ物 おでん、回鍋肉

嫌いな食べ物 辛いもの

趣味 武器配達、空のライフル弾の金属音を聞く

 

蒼天色の短髪に紫色の目。精鋭部隊『Forest delete』の海軍軍曹。例えどんな状況でも、音も無く接近する所から『静寂(Silence)』の異名を持つ。

 

現在では時練のサポートをしているが、時偶にどっかに行く。

 

時練の暴走『獣ノ狩時(When hunting beasts)』化の事について霧霜と時練本人と話した結果。危険な時だけ使い、暴走したら2人が止めると誓う事に。一刻も早く時練が慣れてくれると良いなと思っている。後、ナイフは普通のを持っていく事と誓った。

 

立ち絵(私服)

【挿絵表示】

 

 

 

 

名前 霧霜 雪(キリシモ ユキ)

誕生日 2月16日

好きな食べ物 大福、グ◯ブ・ジャムン

嫌いな食べ物 特になし

趣味 散歩、氷作り

 

白い長髪に水色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の海軍二等兵。触れた対象に対して凍らせたり、氷に変化・作る事が出来る所から『凍結(Frozen)』の異名を持つ。

 

現在ではPastel*pallettesのマネージャーをしており、メンバーから弄られる日々を送っている。

 

時練の暴走以降は一刻も早くコントロール出来る様に、被害が及ばない様に訓練中。弦巻に頼み込み、休日に時練、鎌太刀と模擬戦を行っている。尚、自宅でも訓練していたが、集中しすぎて寝室のベッドが氷に変化して使えなくなり、仕方なく時練に頼み込んで新しいベッドを買ってくれた。

 

立ち絵(私服)

【挿絵表示】

 

 

 

 

名前 Haku・Rostane(ハク・ロスターヌ)

誕生日 5月29日

好きな食べ物 天麩羅

嫌いな食べ物 鹿肉

趣味 機械を触る事、改造

 

翡翠色のポニーテールに茶色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の陸軍少佐。相手の情報や遠く離れても肉眼で見える力を持つ事から『解析(Decipher)』の異名を持つ。

 

若宮イヴと同じフィンランド出身。陸軍だが主に情報を集めるのが仕事で解析や研究を得意分野としている。戦闘時では刀や細いパイプを使った刀術。霧霜には先生と呼ばれるらしい。彼女は何か隠している様だが……。

 

立ち絵(仕事服)

【挿絵表示】

 

 

 

 

名前 亜矢羽 礼人(アヤバネ アヤト)

誕生日 7月7日

好きな食べ物 特に無し

嫌いな食べ物 炭酸系

趣味 生徒の意見を聞く、時練弄り

 

赤色のショートヘアに橙色の瞳。精鋭部隊『Forest delete』の元陸軍中将。人や物体の姿を隠せる能力も持ち『魔術師(Magician)』の異名を持っていたが、現状は部隊を離れただの一般人の為、異名隊には入らなかった。

 

羽丘女子学園の学園長であり、鎌太刀の先輩。入学した時練の事は前から知っており、当の本人と比べると大分変わったなと思っているらしい。

 

立ち絵(私服)

【挿絵表示】

 

 



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