もし鬼塚英吉がアイドル研究部の顧問だったら (特級厨師)
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第1話 顧問の先生です

園田海未です

我々アイドル研究部、μ'sもメンバーが9人と多くなり、

2学期から正式な部活動として、転任されてきた先生が顧問に就いてくださる事になりました

 

なので今日は練習前に部室で就任のあいさつをしてくださるそうです

 

結成以来しばらくユニットの管理を引き受けていた私にとって、

絵里の参加に加えて大人の先生が顧問についてくださる事を非常にありがたく思います

 

ありがたく…思いますが…

 

理事長「紹介するわ

   今日からアイドル研究部の顧問をしていただく事になった…」

 

英吉「吉祥学苑から転任してきた鬼塚栄吉 25歳、童t…いや、

   夜露死苦!」

 

…え?

この人が…本当に教師…なんですか?

というか先生、宜しくを夜露死苦と言ってませんか?

 

金髪の坊主頭…(←V字カット)

耳には男性なのにピアス…

変なキャッチコピーが書かれたTシャツ…

ずり落ち気味のカーゴパンツ…いわゆる腰穿きという穿き方なのでしょうか?

かかとを踏み潰した簡素な靴…

 

そして…煙草臭いです…!

 

海未「!?…何なんですか?

   この教師らしからぬ染髪、服装の輩は…!

   これでは…まるでならず者ではありませんか!」

 

ことり「う、海未ちゃん、いつになく口が悪いね」

 

思わず口を衝いてしまい、ことりに指摘されました…

 

しかし私の非難などどこ吹く風、この鬼塚先生は全く意に介していないふてぶてしい態度を取っています

 

希「う~ん、まぁ確かにチーマーとか半グレって感じやねぇ~」

 

そう、それです希

まぁどちらにしてもならず者の類ですね

 

真姫「でも、海未じゃないけどこの先生…ていうか本当に先生なの?

   こんな金髪で生徒の手本になれると思ってるわけ?

   意味わかんない!」

   

絵里「!…ごめんなさい」

 

真姫「あ、絵里、貴女は違うのっ!

   あぁん…もうっ!」

 

真姫、迂闊でしたね

でも地毛の絵里に非はないのは同感です

 

英吉「こらこら、お前ら、ケンカは良くないぞぉ?」

 

まるで他人事な先生

全く誰のせいでこうなっていると思ってるんでしょうか!?

 

そんな私の憤りを他所に理事長は意外な事をおっしゃいます

 

理事長「あらあら、皆さん

   こう見えてもこの部の顧問には適任の方なんですよ」

 

???…何がどう適任なんでしょうか!?

 

にこ「鬼塚先生…!」

 

!…にこも鬼塚先生に物申してくれそうですね

こういう時、にこの物怖じしない人柄は頼もしいです!

 

にこ「こちらにお掛けください

   肩を揉ませていただきますね♪」

   

英吉「お、悪いなぁ、じゃあ遠慮なく頼むぜ」

 

にこ「喜んで!」

 

ど…どういう事ですか!?

どうして…

 

花陽「あ、あの…先生…」

 

…花陽?

あぁ花陽、意外と肝が据わっていることりと違って、

貴女の様な子はこのような輩が特に苦手でしょうね…

 

でもそんな貴女が何故、鬼塚先生に話しかけるのでしょうか?

 

花陽「鬼塚先生ってひょっとして…

  あの大石夏擁するゴブリンプロダクションの鬼畜 生(いきる)社長ですか?」

  

英吉「?…おぉ、そうだぞ

   それにしても小泉だっけ?

   お前、よく知ってるなぁ」

   

?…芸能プロダクションの…社長!?

 

花陽「当然です!

   当時無名だったゴブリンプロがあの大石夏を引き抜き、

   さらに後には彼女の古巣だったプラチナコートを吸収合併したのは、

   芸能界では近年稀に見る大事件でしたからね!!

   一説にはこの大物喰いの背景にはあの芸能界のドン、

   荒羅木蒼一の暗躍があったとも噂されてますが…」

 

英吉「ははは…小泉、

   お前、ホントに詳しいよなw

   …でもノーコメントだ」

 

は、花陽がこんな輩とまともに会話しています!

しかもかなりきな臭い話を…!

 

凛「凛はこっちの花陽ちんも好きだよ♪」

 

それにしてもまさか芸能プロダクションの社長とは…!

人は見かけに…いや、見かけ通りなのでしょうか?(←芸能界に対する偏見)

 

何にせよ理事長が適任と推し、アイドルを目指すにこがあのように歓迎し、そして花陽が物怖じしないのか納得できました。

 

しかし…こんな人が社長なんて…

そのプロダクションは大丈夫なのでしょうか?

 

穂乃果「うわぁ、先生ってそんな凄い人なんだね!

    何かこれから面白くなりそうだよね♪」

    

英吉「おぅ、任しとけ!!

  俺が来たからにはA-RISEだろうが、ラブライブ優勝だろうが屁でもねえぜ!」

 

この手の輩ならではの軽口を叩いてくれます

 

確かにこんな風体ですが聞いた実績を考えると、アイドル研究部の顧問としては適任なのは認めざるおえませんね

いや、むしろそんなプロのアイドル活動の運営を取り仕切っている人が顧問に就いてくださるのは、僥倖と言っても過言ではないのですが…

 

どうにも私、この方は信用する気になれません…!

 

 

 

 

閑話

 

英吉「ところで矢澤、ひょっとしてお前のお爺さんの名前って…」

 

にこ「違いますよ

   そもそも字が違います」

 

英吉「…だよなぁ~」

 

にこ「やっぱり、先生みたいな人って矢沢永吉は特別なんですね」

 

英吉「あぁ、俺にとってYAZAWAは神なんだよ…」



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第2話 練習です!

園田海未です

鬼塚先生との挨拶も済ませたので、本日の練習を始めます

先生はトレーナーではないので基本は今まで通り、

メニューや進行は私たちに任せるとの事ですが、

今日は初日なのでどんな練習をしているのか実際に見学しておきたいらしいです

 

それにしても先生、すごく楽しみにしている感じです

いえ、楽しみにしているというか…

非常に邪な嫌らしい表情をされているのは気のせいでしょうか?

 

…………………………………………………

 

とりあえず練習に利用している屋上に着いたので柔軟を始めます

鬼塚先生も相変わらず下品な表情をしていますが、今のところはおとなしく見学していますね

 

しかし開脚ストレッチの際にとうとう動きがありました!

開脚はストレッチでも特に柔軟性が要求されるので、真姫は未だに完璧にはこなせません

 

英吉「なんだよぉ~西木野!

   お前、股割り出来ねぇのかよw

   よし、先生が手伝ってやろう、ぐふふ♪」

 

!…補助にかこつけて真姫の体に触るつもりですね?

 

真姫「ヴェェっ!!

   よ、余計なお世話よ!!」

   

流石に真姫も露骨に嫌がっています!

真姫を助けなければ!!

 

海未「先生、せっかくですから先生もストレッチ、いかがでしょうか?」

 

私は自分の開脚を打ち切り、真姫の補助に入りつつ、そう提案をします

さて先生、どうしますか?

 

そうすると先生は私が水を差した事を気にした様子もなく、

あっさりと見事な開脚をして見せました

 

英吉「地面が…あったけぇ…♪」

 

男の人は身体が固いと聞いていたので意外です

 

絵里「ハラショー!

   先生はトレーナーの方ではないので難しいと思っていたんですが…

   凄く身体が柔らかいんですね」

 

英吉「大学時代、これでも空手部の主将だったんだよ

   知らねぇだろうけど蹴り技がある格闘技ってのは結構な時間を柔軟に割く

   だから股割りくらいは朝飯前ってわけだ」

 

まさか絵里の信用を得るとは予想外でした!

しかもこんなにも直ぐに…!

 

絵里は年長なので私や真姫よりは寛容ですが、

本質的には真面目なので鬼塚先生の様な人はきっと快く思っていなかったはずです

それなのに…

 

それにしても先生…大学に通われていたんですね

 

いえ、教職についておられるわけですから大卒なのは当たり前ですけど、

鬼塚先生はその「当たり前」に該当しないというか…

 

どうにもこの方が真面目に受験勉強に勤しみ、

入学後も大学の講義をキチンと受けている絵が想像できません!

(↑替え玉受験の事は知る由もない)

 

…私とした事が失礼な事を考えてました

反省しないとダメですね

 

英吉「まぁ身体はこの通り柔らかいが…

   一か所だけは硬いんだぜ?w」

   

絵里「?」

 

英吉「あれ?

   通じねぇな…」

 

先生は肩透かしを食らったような顔をされます

 

何か冗談を言われたようですが…私も分りませんでした

でも何か…破廉恥な事を言った気がします

 

希「先生ぇ~、あかんよ~

 女子高でそんなこと言ってたら、みんな敵に回してまうよ~」

 

希だけは意味が分かるようですね

希のしたり顔から察するにやはり破廉恥な事を口走ったようです

 

…やはりこの先生は信用なりません!

 

英吉「さてと…

   俺よりも問題は西木野の方だな」

 

!…上手く有耶無耶にできたと思ったんですが、先生は真姫を諦めていませんでした

 

英吉「西木野!

   あそこの壁に背中を預けて開脚の続きだ」

 

真姫「えぇ?」

 

英吉「いいから!

  …絢瀬、ついてきてくれ」

 

絵里「あ、はい!」

 

そんなやり取りの後、3人は屋上入り口付近の壁に行き、

真姫は先生の言った通り、開脚します

 

…やはり開き方が不十分です

 

それにしても…ひょっとして真面目に何か指導するつもりなのでしょうか?

 

英吉「そのまま右足動かしてもいいから、

  左足を壁にひっつけてみろ

  

  …それを絢瀬は固定してやってくれ」

  

絵里「はい」

 

それを確認すると先生は自分の左足の踝を真姫の右足首に押し付けました

 

英吉「西木野、俺の足を右足でしばらく押し返せ!

  挟み込むような感じで!」

  

真姫「う、うん」

 

言われた事を真姫は実践します

 

英吉「よし!」

 

そう言って真姫に力を抜かせたかと思うと、先生は真姫の右足首を掴んでさらに足を開けさせます

 

真姫「あれ?

   さっきより開けられる…!」

   

英吉「だろ?

   でもこの分だと後、数回は必要だな」

 

そういって先生と真姫、絵里は今した事を何度か繰り返します

そしてとうとう…

 

真姫「や、やった…!

   初めて180度開いたわ!」

   

絵里「真姫、おめでとう!」

 

驚きました!

鬼塚先生のアドバイスでとうとう真姫が180度の開脚ができるようになりました

 

真姫が喜んでいます

我が事のように絵里も祝福しています

そして鬼塚先生もどうだと言わんばかりに誇らしげです

 

でも誇らしげではありますが…その顔には先程までの嫌らしさは微塵もありません

 

真姫「や、やるじゃない先生…

   ぁ…ありがとぅ…」

   

英吉「プッ…何だよその礼の言い方はw

  お前、ツンデレか?w」

 

真姫「なっ!?…ば、馬鹿っ!

   別にデレてなんかないわよ!」

 

凛「真姫ちゃん、ちょろいにゃ~」

 

真姫「も~違うってば!」

 

…そんなじゃれ合いも落ち着いて練習も再開します

乗り掛かった舟との事で先生も練習に参加されますが、そこでも驚かされます

どの練習も…それどころか凛の軽業すら一目見ただけで完璧に実践して見せます。

 

何という体幹、何という身体能力、運動神経なのでしょうか

 

でも…

 

英吉「うっふ~ん♪」

英吉「あっは~ん♪」

 

女性的なポーズをとるタイミングで気持ち悪い掛け声をいちいち挿入しないでください!

しかしそれも…

 

穂乃果「あはは、先生、気持ち悪いよぉ~♪」

 

結構、みんなには受け入れられているようです

ただ、私としてはもっと真面目にしてほしいです!

 

でもアイドルに人一倍こだわりのある花陽とにこ、人懐っこい穂乃果と凛はもちろん

本来なら私と同じようにああいった人を嫌いそうな絵里、真姫にまでいつの間にか受け入れられているように思えます

 

希「不思議な先生やね

  エロい顔してイタズラしようとしてるか思ってたら、真面目に指導してるし、

  全然、先生らしくないのに…

  いや、先生らしくないからかなぁ?

  なんかとっつきやすいわ」

 

ことり「お母さんがあの先生を連れてきた時は驚いちゃったけど、

    何だかんだでいい先生が顧問になってくれたなって思うよ

    ちょっとエッチだけど、ちゃんと指導してくれるしね」

    

どうやら希、ことりも鬼塚先生の事を認めたみたいです

 

…そういえば鬼塚先生、私たちはさっき自己紹介をしていないのに全員の名前を知っていましたね

ああ見えて意外とマメな方なのでしょうか?(←可愛い娘ばかりなので楽しみに写真眺めてたら自然に覚えただけ)

 

それでもやっぱり私は…苦手です!

 

 




補足

真姫ちゃん、身体柔らかいらしいけど固い事にして書きました


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第3話 海未山田です!

園田海未です

今日は家の道場で使う竹刀を剣道部の人達と合わせて購入して頂いたので、

それを受け取ってから練習に向かいます

 

その道すがら、なにやら聞き覚えのある声が響いてきます

 

凛「逃げるにゃ~」

 

凛が廊下を走ってます

 

穂乃果「お~にさん、こ~ちら~♪

    手ぇ~の鳴ぁ~る方へ~♪」

 

誰かを煽りながら、穂乃果も走っていきます

 

英吉「待て待てぇ~」

 

変質者…いえ、鬼塚先生が2人を追いかけています

 

鬼ごっこ?

あなた方は昭和の小学生ですか?

 

元々人懐っこい穂乃果や凛ですから、鬼塚先生に懐くのは予想してはおりましたが、

この3人のはしゃぎぶりは目に余るものがあります

 

海未「…先生、何をなさってるんですか!?」

 

英吉「え…?

   鬼ごっこ♪

   穂乃果捕まえたら穂むらの饅頭、奢ってもらえるんだぜ?」

 

海未「そんな事は見ればわかります!

   後、生徒の奢りを当てにしないでください!

   大人なんですから普通に購入してください!!

   そもそも廊下を走らないで下さいと言ってるんです!!

   私達、生徒だって守れているルールをどうして先生が守れないんですか!!?

   大体、教師という存在は我々生徒の模範となるべき存在です!

   にもかかわらずこのように逆に生徒に注意されるという体たらく!

   そこを鬼塚先生はどうお考えなのですか!?

   私達が先生に教わるべきは勉学だけではありません!

   そもそもその授業だって先生は教科書を棒読みするだけじゃないですか!

   そもそもそれすら授業中にお喋りしている生徒がいれば注意するどころか、

   それに混ざって雑談を始めて中断するし、

   

   ―中略―

   

   後、部活の顧問として来られて私の管理の負担も減るかと思いきや、

   むしろ増えているのはどういう事なんでしょうか!?

   今のように穂乃果、凛とはしゃいだり、

   にこや花陽とアイドル談義に花を咲かせていたり、

   それを私や真姫が咎めると絵里や希を盾にする始末…

   酷い時はことりを通して理事長室に入り浸っているらしいじゃないですか!

   理事長は元より絵里、希も生徒会の任期が満了間際なので残務処理に追われる多忙な日々!

   遊び呆けてる先生と違ってみんな忙しいんですよ!

   

   

   …以上です!!

   お分かりいただけましたか!?」

 

英吉「はい、園田先生!

   わかりました!!」

 

まったく返事だけは良いんですから…

後、先生は貴方でしょう?

 

でも私も用事があるのでこれ以上の追求は止めます

何よりも疲れました…

 

…………………………………………………

 

ようやく竹刀を受け取り、練習のために屋上に到着する直前の事でした

?…何やら屋上から私の事を話している声が聞こえますね

 

気になります

少々はしたないですが、聞き耳を立てさせてもらいます

 

英吉「…ったくよぉ、あの海未山田は毎度毎度、小言ばっかだなぁ~」

 

穂乃果「海未ちゃん、真面目だからねぇ

   でも先生、海未山田って何なの?

   海未ちゃんの名字は園田だよ」

   

英吉「いや、前の学校によ

   内山田って教頭…いや、もう副校長だったか?

   とにかく同じように口煩い先コーがいたんだよ

   で、語呂がいいから取りあえずくっつけてみたわけよw

   うん、我ながらナイスな命名だぜ」

   

 

凛「なるほど、ちなみに内山田先生ってどんな先生だったんだにゃ?」

 

英吉「煩せぇのは園田と同じだけど、禿で眼鏡の50過ぎのおっさんだ」

 

凛・穂乃果「…うわぁ」

 

英吉「しかしよぉ性別、年齢、髪の毛の量はまるっきり逆だけど、

   口煩いのが鬱陶しいのは変わんねぇな

   転任してようやく内山田から解放されたかと思ったら今度は海未山田かよ!」

 

そろそろ私も…

会話に参加させて頂きましょうか…

 

凛「!!」

 

穂乃果「!…あの、先生?

   もうそれ位にした方が…w」

 

英吉「んだよ、俺はまだまだ言い足りねぇ…ぞ!!!?」

 

海未「ごきげんよう♪

   海未山田です♪」

 

穂乃果「う、海未ちゃん…?

   笑顔が素敵だけど…

   こめかみがピクピクしてる…よ?」

 

英吉「え、と、ところで園田さん

   その竹刀は…何でしょうか?」

 

海未「この竹刀ですか?

   この竹刀はですねぇ~♪

   …

   不届き者を成敗するための武器ですっ!!!」

   

バシィ―――――――――ン!!!

 

!?…手応えがない?

 

流石です!

よくぞ今の一撃をかわしました!

 

しかし!次こそは仕留めます!

 

…っていない!?

 

タタタタタタッ

 

階段を駆け下りる音がします!

逃しません!!

 

海未「鬼塚先生、待ちなさい!!」

 

英吉「待ってって言われて、待つ馬鹿がいるかよ!」

 

凛「…海未ちゃん、凄い形相だったにゃ!」

 

穂乃果「凛ちゃん、2人を追いかけよう!

   流石にこれは止めないとまずいよ!」

 

…………………………………………………

 

…結局、鬼塚先生を見失い、

再会できたのは理事長室で私達4人がお叱りを受ける場となりました

 

少々やり過ぎたとは思います

そこは反省しますがやはり割り切れないものがあります

 

 

吉祥学苑高等部の内山田副校長先生、

お会いした事はございませんが、

貴方様の御苦労、ならびに心労、お察しいたします…



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第4話 頼りになります

園田海未です

本日は私達μ'sのライブでした

ライブは滞りなく進行し、ファンの皆様にも好評を頂けたようで何よりで、

ライブ毎にμ'sの人気も出てきているのを実感しております

 

しかし人気が出てくれば来るほど、ある問題も深刻化してきました

それは所謂「やらかし」と言われる一部のマナーの悪いファンの方々の増加と激化です

 

現状、ライブ自体の進行には問題は出ておりませんが、会場までの道程、

そして…撤収後の出待ち等は正直、憂鬱です

スクールアイドルとしてファンの方を憂鬱に思うのはいけないとは分かってはいるのですが…

 

ファンA「あ、出てきた!」

ファンB「穂乃果ちゃん、こっち見てー!」

ファンC「えりち、間近で見ても美人だなぁ」

ファンD「ライブ、サイコーだったよ!」

 

このように声をかけるだけに留めてくださる方々は当然、素直に有り難く思います

 

ドルヲタA「に、にこちゃん、握手してください…!」

ドルヲタB「真姫ちゃん、サインちょーだい!」

 

中にはこのように何かを要求する人もいらっしゃいますが、

ほとんどの方は応えると他の人達にも応えなくてはならなくなる旨を伝えると

素直に引き下がってくださります

 

まぁ分かっているのに断りの言葉を聞くのが目的…の方もいますが、それくらいなら許容範囲です

ですが…

 

やらかしA「いいじゃん、他のやつなんてさw」

やらかしB「俺らはこいつ等みたいなニワカじゃないんだしさ」

 

花陽「あ、あの…」

凛「…かよちん、大丈夫?」

 

…勝手な人達です

 

ファンE「おい、やめろよ!」

ファンF「そうだよ、かよちん怖がってるだろ!」

やらかしA「うっせ!

     雑魚どもは消えろよ!!」

 

あまつさえ注意してきた方とケンカしようとする始末…

こんな時、今までは絵里、穂乃果、そして私が何とか仲裁していたのですが、

仲裁の間、絵里と穂乃果の膝は常に震えていました

 

そしてそれは…私も同じです…

 

でも最近は事情が違います

何故なら鬼塚先生がいるからです!

 

ただ…いくつかの問題はあるのですが…

 

英吉「はーい、君達、ケンカは他所でやってね?

   後、ウチの踊り子さん…じゃなかった生徒に触れないでねぇ~?」

 

やらかしA「何だテメェ?

     教師かなんだか知らねぇが引っ込んでろ!」

やらかしB「自分の生徒のナイト気取りかよw

     このロリコン教師が!!」

 

そう言ってやらかしの方々が先生を小突いたり蹴ったりします!

ダメです!

そんな事をしたら死んでしまいます!!

 

貴方達が…

 

…バッキィィーーーーーーン!!!!

 

…今日は公衆電話ですか

威嚇で公共物を破壊するのはやめて頂きたいのですが…

 

電話に中程まで埋まっている先生の前腕、

そしてその手が掴んでる電話機の配線を引きずり出しながら言われます

 

英吉「さて問題です

   空手二段でちょっとロリコンなボクちゃん

   そしてボクちゃんに盾ついた哀れなやらかしAとB

   …今から死ぬのはどっちでしょう!!?」

 

やらかしAB「ひぃぃっ!!」

 

恐れ慄き、逃げようとしたやらかしの方々の頭を両脇に抱えて、

私達が出てきた所に連れ込み、そして…

 

ドカ!

バキ!

ドフ!

ゴフ!

ドス!

ボキ!

 

やらかしA「すんませんしたっ!

      すんませんしたっ!!」

 

やらかしB「まさか先生があの…

     …だなんて知らなくてっ!」

 

ゴス!

ゴス!

ゴス!

 

…………………………………………………

 

程なくして先生がやらかしの方々2人と肩を組んで戻ってきました

 

英吉「いやぁ、分かってくれりゃいいんだよ♪

  分かってくれりゃ~ね?」

  

やらかしA・B「「ひゃい(はい)」」

 

ご機嫌な先生とは対照的にすっかり悪びれてるお二人…

目元にアザができ、唇は膨れ上がり、鼻血を出されています

自業自得とはいえ、お気の毒です

 

海未「あの…大丈夫ですか?」

 

お二人に声をかけて、持っていたウェットティッシュで鼻血を拭って差し上げます

 

やらかしA「いや、自分等なんかに…

やらかしB「そっすよ…俺等、迷惑かけたのに…」

 

ファンG「海未ちゃんに介抱されてる…

     羨ましい」

ファンH「結局、やらかし得?」

ファンI「いや、いくら海未ちゃんに介抱してもらえても…

    あの先生にボコられたくねーよ!」

ファンJ「それにしてもあの先生、

    わかりやすい形でやらかしを成敗してくれるから、結構スカッとすんだよな!」

ファンK「あぁ、これだからμ'sの出待ちはやめらんねぇw」

 

…何やら私達μ'sとの交流より、このお仕置き…先生風に言うとヤキ入れを楽しみにされている方もいらっしゃるようですね

とはいえこれを良しとして、先生のやり過ぎを看過してはいけません

 

今日もファンの皆様の前ですが…いえ、皆様の前だからこそ、

このような行き過ぎた対処がいけない事だと示す必要があると考えます!

 

海未「鬼塚先生、助けてくださったのは有り難く思います

   ですが!

   このような暴力に任せた解決方法はいかがなものでしょうか!?」

 

英吉「で、でもよ!

   俺だって小突かれたし蹴られたしさ…」

 

海未「言い訳無用!!

   大体、先生はいつもいつも…?」

 

ファンL「あの先生、また海未ちゃんに怒られてるよw」

ファンM「やらかしには無敵だけど、海未ちゃんにはからっきしだなw」

ファンN「あぁ、これがあるから、μ'sの出待ちはやめられん!!」

 

えぇ!?

こんなやり取りも催し扱いなんですか!?

ファンの皆様の心理は理解を超えることが多々あります…

 

ファンO「でも今日でこの2つも見納めじゃね?」

ファンP「あぁ、確かあいつらで主だったやらかしは全滅だよな…」

 

しかも何故か名残惜しそうにしてる人もいるではないですか!

トラブルがないに越した事はないでしょうに…

 

ファンQ「いや、たとえ奴らがいなくなっても第二、第三のやらかしが…」

ファンR「確かに…俺達はそういう悪の再来を何度も目の当たりにしてきたものな…」

ファンS「てかもう第二、第三なんて過去の話だしな

    今回で第何だっけ?」

 

縁起でもない事を言わないでください!

いつから私達μ'sのファンにはこういう野次馬目的の方達が増えたのでしょうか?

 

…いえ、原因は明らかでしたね

 

そんな事を思っていると元凶…いえ、原因の先生がある人達を呼びつけます

 

英吉「おーい、舎弟1号、2号、V3!

   こいつ等、合格だから向こうで説明してやってくれ!」

 

1号、2号、V3「押忍!」

 

どうやら今日のやらかしの方々は先生のお眼鏡にかなったようですね

先生は一部のやらかしの方達を自分の舎弟にして、ライブ時のスタッフとして手伝わせています

穂乃果が言うには敵を倒して仲間を増やしていく様はまるでRPGや少年漫画のようだとの事です

 

何かとライブの準備、撤収作業は力仕事が多いので男手は助かるのですが、

正直、問題のあった方達を受け入れるのは不安でした

でも皆さんは先生の仕置きが余程堪えたのか、非常に誠意のある態度で応対してくださります

 

そうなると逆に先生に酷い仕置きを受けた上、使役されるのは気の毒に思えるのですが、

それを少しでも労うと皆さん、何故か非常に張り切ってくださります

 

嫌々ながら…または先生に怯えながら手伝っている風なら分かるのですが…不思議です

 

そういえば先生やにこに尋ねてみたのですが、2人とも心底驚いた様子でした

先生はわからないなら、わからないままの方がいいとおっしゃい、

にこは自然とそう思って、自然とそうするのが私の強みだと言ってました

 

私はただ手伝ってくださる方々に当たり前に感謝しているだけなのですが…

 

それにしても…

鬼塚先生は少し乱暴な所もありますが、トラブルを解決するだけでなく、トラブルを起こした方を受け入れ、更生させる様はまるでちゃんとした教師のようで、非常に頼もしく思えます

 

思えますが…

 

女性ファンA「ねぇあの先生…ちょっとカッコよくない?」

女性ファンB「だよねぇワイルドで…ちょっとオラオラ系?」

 

あぁ…

 

英吉「ぐふ♪」

 

こういう事に限って地獄耳ですね!

見事なまでにだらしなく緩み切った顔を晒しています

 

こういう所は何とかならないものなんでしょうか…

 




閑話


絵里「先生、どうしてああいう人達を受け入れてるんですか?」

英吉「?…やっぱ嫌か?」

絵里「正直、最初は不安でしたけど…
  皆さん、頑張ってくれるんで助かってます」

英吉「まぁあの手の連中は色々と持て余してんだ
   だから発散する場を与えてやったんだよ
   しかもテメェの好きなアイドルの役に立てるんだ
   放っておいてもいい所見せようと張り切るさ」

絵里「なるほど…
   でも、それだと何だか好意につけ込んでいるようで申し訳ないですね…」

英吉「そう思いつつ時折、礼を言ってやるだけで十分だよ
   でもあんまりサービスするなよ
   一応、手ぇ出したらどうなるか釘は刺してるが、
   馬鹿だから勘違いしかねんしなw」

絵里「はいw
   気を付けます」

英吉「それにしても園田といい絢瀬といい…まぁ他の連中もだけど、
   そんな事に負い目感じるなんてお前ら、ほんとに良い子ばっかだよな
   ったくお前らの爪の垢、煎じて吉祥学苑のクソガキどもに飲ましてやりてぇぜ!」

絵里「私が言える事ではないんですが…
   先生が来るまで音ノ木坂も色々あったんですよ?」

英吉「あぁ流石に親どr…理事長から聞いてるよ
   廃校の件はもちろん、お前の事も…な」

絵里「やっぱり…ご存知なんですよね」

英吉「でもお前のは学校のためを思っての事だし、
   それにこうして今は穂乃果達と力を合わせてるからいいんじゃね?
   まぁ新参の俺がエラそーに言う事じゃねーけど…」

絵里「いえ、そんな事ありません!
   やっぱりそう言って頂けるのは嬉しいです」

英吉「それに引き換えあいつらときたら、
   俺の弱みを握って高級寿司代、数十万奢らせるは、
   金がないからって当たり屋で代金用意させようとするは、(←どさくさに濡れ衣着せる)
   科学室の薬品ちょろまかして爆薬作って授業テロしかけるは、
   自分のファンクラブの会員を刺客にして俺を襲わせるは、
   それで俺、腹刺されるはで散々だったぜ…!」

絵里「!…き、聞かなかったことにしますね?」

英吉「まぁ何にせよああいう血の気の多い連中は目の敵にし続けるより、
   適当に懐柔して目の届くところに置いておいた方が何かと対処が楽なんだよ
   
   まぁ俺が芸能プロダクションの社長に抜擢されたのも似たような…」

絵里「!?…それってどういう事ですか?」

英吉「すまん!
   余計な事を話し過ぎた
   忘れてくれ…!」

絵里「は、はぁ…」

英吉「とにかくだ!
   あの手の連中の扱いはガキの頃から慣れてるから、
   もしなんかあったらすぐに教えてくれ」

絵里「わかりました
   頼りにしてますよ、先生」

英吉「おう!任せとけ!!」


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第5話 眼帯ビキニ…です

園田海未です

今日はμ'sの知名度アップのための作戦会議です

先日のライブでも知名度が高くなってきたのを実感できましたが、

それでもA-RISE等、トップクラスのユニットには数段劣るのが実情です

 

そこで先生が一気にトップに食い込むための妙案を思いついたとの事でお聞きする事になったのですが、やはりというか何というかの…破廉恥な内容です…

 

英吉「眼帯ビキニやるぞ!

   眼帯ビキニだ!!」

 

真姫「が、眼帯ビキニ!?

   何なのよそれ!

   意味わかんない!!」

   

英吉「お前、そればっかりだな」

 

真姫「なっ…!

   いつも先生が変な事ばかり言うからでしょ!」

   

英吉「それにしても医者の娘が眼帯を知らんとはねぇ~」

 

真姫「眼帯くらい知ってるわよ!!

   それとビキニがどう結びつくのかって聞いてるのよ!!」

 

眼帯ビキニ…

ちょっと想像がつきませんが何か…破廉恥な響きがありますね

まぁ鬼塚先生の提案である以上、まともなアイデアである筈はないですけどね

 

穂乃果「先生、それってどんな衣装なの?」

 

英吉「こんな感じだ♪」

 

…写真ですか?

 

こ、これは…!

どこかで見覚えの顔の女性…恐らく芸能人の方なのでしょうが、

それよりも衣装がやはり…

 

ことり「ざ、斬新な…デザインですね…w」

 

腰回りは比較的、多くの包帯…まぁ眼帯と合うように包帯が使われていますが、

む、胸の方が…

 

海未「な、何なんですか!?

   この破廉恥極まりない衣装…!

   いえ、これを衣装と呼んでもいいんでしょうか!?

   ブラが普通の眼帯くらいしかないから、む、胸が全然隠れてないじゃないですかっ!!」

 

これに比べれば膝上丈のスカートばかりのことりデザインの衣装が可愛く思えます

あ、いえ、ことりの衣装はどれも可愛いですが、その可愛いではなく…!

あぁ…もぅ!

 

花陽「こ、これは…」

 

花陽…

偶然、鬼塚先生に一目置く事になった貴女ですが、このような破廉恥な要求を突きつけられれば貴女の目も醒め…

 

花陽「これはあの野村朋子じゃないですか!

   三年前、彗星の如く現れた若くして超実力派女優の…!!」

 

そ、そっちですかぁー!!

私は花陽の芸能界への憧れを侮っていたようです…

衣装の過激さよりモデルの芸能人の方に目が行きますか!

 

英吉「あぁ、野村は俺が発掘した!(ドヤ」

 

花陽「す、凄過ぎます!

   鬼塚先生!!」

 

凛「凛はこっちのかよちんも好きだよ♪」

 

それにしてもここぞというタイミングで芸能プロダクションの社長という優位性を活かしてきますね

勉強はもしかしたら生徒である筈の私たち以下かもしれない無学な先生ですが、

こういう駆け引きでの狡猾さには目を見張るものがあります

 

花陽「で、でも…流石にこれは…ちょっと恥ずかしいですね…」

 

にこ「にこもぉ~これはちょっとぉ~恥ずかしいにこ♪」

 

良かった…

二人ともそこまで鬼塚先生を盲信しているわけではないのですね

 

英吉「まぁ流石にこれを着てライブしろとは言わねぇよ

   俺だってクビは御免だからな

   それに規約になくても、これでライブしたらまず即、失格だろ」

 

驚きました!

先生にも一応の理性があったんですね…!

 

英吉「でもライブに使えないからと言って、使いどころがない訳じゃねぇよ

   …サイトだよ!

   μ'sのサイトのトップにこの眼帯ビキニ姿のお前らの画像を掲載するんだよ」

 

!!?

 

英吉「インパクト…掴みはそれで十分だろ

   ライブでいきなりこの格好はリスキーだし恥ずかしいだろうが、

   サイト掲載程度ならまずいきなり失格にせずに注意してくる筈だ

   

   撤去はそのタイミングでいいし、

   お前らだってこの姿で直接、大勢の前に立つわけじゃないから、

   恥ずかしさもだいぶマシだろ」

 

いえ、それでも十分に恥ずかしいです!!

…それにしても運営の匙加減も計算ずくとはつくづくずる賢い人ですね

 

希「でもそれインチキやない?

  お客さん、その格好でライブすると思えへんかな?」

 

英吉「流石にそりゃねぇよ

   それにライブ当日、どんな衣装で登場するかもファンにとっては楽しみの一つだ

   むしろライブ前に衣装を公開する事なんてあんのか?

   だから事前にサイトにアップした画像と別の衣装でも何もおかしくはねぇ」

 

確かにそうですが…

 

海未「それだとファンの皆さんの期待を裏切りませんか?」

 

英吉「なんだ?

   園田、お前、このエッチッチな衣装でライブしたいのか?」

   

海未「そんなわけないじゃないですか!!!

   いや、そうじゃなくて、もっと…」

   

もっと他の方法を考えませんか?

 

英吉「だろ?

   確かにこの衣装そのものじゃなくても同じような方向性の衣装を期待する奴はいるだろうな

   なのに衣装は普通でパフォーマンスも並じゃブーイングもんだ!

   でも…

   

   お前らμ'sのパフォーマンスは並なのか!?

   ファンを納得させられないようなチンケなパフォーマンスなのか!!?

   なぁ穂乃果!

   言ってみろ!!」

 

何、人の話を遮って、熱い事を語って煙に撒こうとしてるんですか!

しかもこの話をよりによって穂乃果に振るとは本当に抜け目のない人ですね!!

こんな煽り方されたら穂乃果は…

 

穂乃果「そんな事ありません!

    たとえ衣装が並であっても私達のパフォーマンスは

    きっと皆さんを満足させてみせます!!

    それに…

    ことりちゃんの衣装だって決して並ではありません!」

 

ことり「穂乃果ちゃん…!」

 

あぁやっぱり…!

穂乃果、貴女ならあんな言い方されたらそう答えますよね

しかし衣装の話だったのにことりまで巻き込まれるのを予想できなかったのは不覚でした…

 

英吉「…決まりだな

   でも言い忘れてたが、ライブじゃないんだから9人全員がする必要はないぞ

   まぁ全員がするに越した事はないんだが…

   とりあえず1人でも十分なインパクトがある!」

 

それを聞いて私を含めて皆、安堵します

しかし直後に再び緊張が走り、沈黙します

当然それは…誰があの破廉恥な衣装を身に纏うか…という事です

 

でも…意外にもその沈黙はすぐに打ち破られました

 

絵里「私がやります!

   いえ、やらせてください!!」

 

えぇ!!?

正直、誰が立候補しても驚きますが、よりによって絵里、貴女ですか!?

品行方正、完全無欠の生徒会長である貴女が何故…!?

 

驚愕のあまり、疑問の言葉を発せられない私を察して、絵里は聞かせてくれます

 

絵里「私ね、μ'sに参加する直前までみんなに嫌がらせばかりしてたじゃない…

   でもそれなのに!…貴女達はそれを水に流して許してくれた!…仲間に入れてくれた!!

   

   嬉しかった…!

   でも…同時に許せなかった!…自分自身が!

   何の罰も受けずにみんなの優しさに甘えている自分が…!

   だからこれは私自身に課す罰…」

 

絵里…貴女はあまりに自分に厳し過ぎます

確かに貴女は罰を受けていないかもしれません…

でもみんなあなたのお陰でどれだけ助かっているか

貴女のダンス指導により私達全員のダンスは飛躍的に向上しましたし、

マネジメント体制もほぼ完璧となり、私も負担も減りました

 

ですが…

 

今、貴女は全力で頑張りどころを間違ってますよ!

まさか貴女まで先生の煽りと穂乃果の熱にあてられるとは…

 

英吉「絢瀬…か

   まぁお前はμ'sのリーダー格だからな

   順当な所だな」

 

先生…これも狙って言ってるんですね?

そんな言い方したら…

 

にこ「絵里がリーダー…それはたとえ先生の発言でも了承しかねます!

   だから…私もやります!」

 

穂乃果「それなら…私もやらないわけにはいかないよね!」

 

あぁ…

そうなりますよねぇ…

 

希「えりちがやるんやったらウチも付き合うよ

  それになんか面白くなってきたしねw」

 

花陽「わ、私も野村朋子さんがどういう心境でこの衣装を着たのか体験してみます…!」

 

凛「わーい、かよちんがするなら凛もする~♪」

 

ことり「私も…こういう衣装は初めてだから、ちょっと興味ある…かな?」

 

あれよあれよという間に私と真姫以外が参加意思を見せました…!

なんだかすごく疎外感を感じます…

 

でも真姫がまだ残っています

プライドの高い真姫は絶対こんなことを承諾しない筈です!

ですが…

 

英吉「後は園田と西木野か…

  でも西木野みたいなお子ちゃまにはこんなアダルトな衣装は似合わんよ

  高校生にもなってサンタクロースを信じてるお子ちゃまには…w」

 

真姫「サ、サンタさんはいるもん!!

  いいじゃない!

  やってやろうじゃない!!」

 

凛「…ちょろ過ぎるにゃw」

 

あっさりとプライドを逆手に取られて真姫も陥落します

しかし先生、その暴露は重罪です

そもそもその情報をどこから仕入れたんですか!?

 

それよりも残るは私一人…!

疎外感はより強くなりました

以前、スカート丈が短過ぎるのが嫌で自分だけ制服でライブすると言ったことがあります

 

でも本当は自分だけ制服で歌い踊る…そんな度胸はありませんでした

破廉恥な格好も恥ずかしいですが、自分だけ皆と違う格好も同じくらい恥ずかしいのです…!

 

海未「あ、あの…わ、私も…着ます!!」

 

…とうとう言ってしまいました。

 

英吉「よっしゃー♪

   これで全員、勢揃いだな!!」

 

先生、この上なく嬉しそうな表情ですね

この先生の事ですから、サイトに乗せるだけで留まるはずがありません…!

きっと何かもっと良からぬ事を企んでいるに違いありません!!

 

でもまだ回避のチャンスはあります!

何分このような破廉恥な衣装ですからね

衣装が用意され、撮影日までの間にきっと皆、冷静になってやっぱり中止という事になるはずで…

 

英吉「よし、じゃあ早速着替えてくれ!

   実はそこの段ボールに9人分の衣装、用意してんだよ」

 

な、な…なな何ですってー!?

抜け目が無さ過ぎます!!

 

英吉「じゃ、俺は席外すから、全員着替え終わったら連絡くれ!

   頼んだぞ、そ・の・だw」

 

思わせぶりに私に伝えて、勝ち誇ったように退室する鬼塚先生…

わ、私の目論見なんてお見通しだったという事ですか!?

 

…………………………………………………

 

みんなも今すぐと言うのには少々面食らったようですが、

賛成した手前か誰からともなく着替え始めます

 

私も観念して着替えるのですが…

 

やっぱり破廉恥です!

眼帯部分がブラなんですが、カップになっていないので、その…乳首しか隠せません!

乳房はほとんど露出してます…!

 

それでも恥ずかしさを堪えつつ何とか着替え終えると、みんなも着替え終えたようです

やはり実際に着てみるとやはり皆恥ずかしいようで、顔だけじゃなく身体も紅潮しており、

それがこの衣装の破廉恥さをより際立たせています…

 

とにかく着替え終わりましたし、それならもういっそさっさと撮影を済ませたいです!

そう思って鬼塚先生に連絡を取ろうとスマホを取り出そうとすると…

 

コンコン!

 

誰かが扉をノックします

あの変質者、待ち切れなくて連絡を待たずに来たのでしょうか?

そしてこちらの許可も待たずに扉を開きます!

 

理事長「鬼塚先生、いらっしゃいますか?

   …って貴女達、なんて格好をしてるんですか?」

 

ことり「お母さん!?」

ことり以外「理事長!!」

 

やって来たのは鬼塚先生ではなく、理事長でした

そしてそこへ…飛んで火にいる夏の虫とはこの事でしょうか?

 

英吉「あれ?開いてる?

   何だよ着替え終わったんなら連絡を…げっ、理事長!!?」

 

理事長「鬼塚先生…

    これは一体どういう事なんでしょうか?」

 

英吉「い゙、いや、これはその…あの…」

 

…………………………………………………

 

結局、鬼塚先生と制服に着替えなおした私達は理事長室でこってり絞られ、

当然、眼帯ビキニの件は却下となりました。

 

でも外部への流失には至らず、また他の先生方、生徒にも知られていない事もあり、

鬼塚先生や私達の処分は厳重注意に止めていただけるとの事です

 

それにしても処分が甘過ぎる気もしますが…

でも、お陰で私達も停学スクールアイドルの汚名を被る事にならなかったのを幸いとすべきなのでしょうか?

 



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第6話 お部屋訪問です

園田海未です

今日は鬼塚先生は学校をお休みでした

お陰で久しぶりに練習をかき回されることなく全うする事が出来ました♪

 

でも…どうして今日は休まれたのでしょうか?

不真面目な先生ですが、学校を休まれる事は意外に初めての事です

少し気になりますね

 

そんな風に気になった矢先…

 

穂乃果「ねぇ海未ちゃん

    穂乃果とことりちゃんの3人で今から先生のおウチに行かない?

    今日、皆に食べてもらったお饅頭、先生にも食べてもらいたくて…」

 

海未「今からですか?

   でも遠いのでは?

   それに急に押しかけては…」

 

ことり「ううん、ここから歩いて行けるよ

    多分、建物自体は海未ちゃんも見た事あるかも…」

 

そう言ってストリートビューで見せてくれた建物には確かに見覚えがあります

 

海未「わかりました

   では先生に今から伺いますと…」

 

穂乃果「ちょっと待って!

    どうせならいきなり行って驚かせてあげようよ!」

 

海未「もう、穂乃果ったら…

   まぁわかりました」

 

…………………………………………………

 

こうして3人で先生の家に向かったのですが、途中で…

 

穂乃果「あ!お邪魔するのにお土産のお饅頭がみんなに配った残りの1個じゃ悪いよね?

    ウチに戻ってちゃんとしたの貰ってくるね!」

 

そう言って私達の返事を待たずに行ってしまいました

まぁ穂乃果も先生のアパートの場所は知っている筈ですから大丈夫でしょうけど…

 

そうこうしている内に今度は…

 

TELLLLLLL…

 

ことり「もしもし…

    ごめん、忘れてた!

    うん…すぐ行くね」

    

 

海未「理事長からですか?」

    

 

ことり「うん、ごめんね

    今日、家族で外食する約束忘れてたの…」

 

海未「それは仕方ないですね」

 

ことり「それじゃ…

    すぐ穂乃果ちゃんも追いつくと思うから!」

 

…一人になってしまいました

 

流石に男性の…しかもあの鬼塚先生の家に一人で行くのは抵抗があります

 

TELLLLLLL…

 

!?…穂乃果から電話です

 

穂乃果「ごめん、海未ちゃん

    今から穂乃果も行くね」

 

海未「わかりました」

 

どうしようかと相談しようと思った矢先、

穂乃果も行くと聞いたので予定通り、向かいましょう

 

…………………………………………………

 

穂乃果が追いつく前に到着してしまいました

出来れば穂乃果と一緒に尋ねたかったですが、

ここで待ってて穂乃果が来る前に先生や他の住人の方に見咎められるのは恥ずかしいですね

 

ピンポーン!

 

…返事がありません

 

海未「ごめんくださーい!」

 

…やはり返事がありません

 

留守なのでしょうか?

 

何気なくドアノブをいじってみます

あれ?

空いてます…

 

海未「…失礼しまーす」

 

中を覗かせてもらいましたが、お返事はもちろん気配がありません…

 

鍵をかけないで留守にするとは無用心です!

もう穂乃果の思惑に合わせている場合ではないですね

これは先生に連絡する他ないです

 

TELLL…

TELLL…

TELLL…

 

…出ませんね

 

申し訳ありませんが、中で待たせてもらいます

鍵が掛かってないのを知っておきながら、

このまま放っておくわけにはいきませんのでお留守番です

 

それにしても…男やもめに蛆が湧くとは言いますが…

 

これは想像以上です…!

そこはかとなく異臭がします

 

煙草の臭いに栗の花…というか生のイカが腐敗したような臭いです!

 

何にせよ先生の帰りを待ってる間、腰を落ち着ける場所もありません

少し掃除させていただきましょう…

 

それにしても散乱している数々の物品はいずれも私には用途不明の物ばかりです

しかしどれも例外なくいかがわしい目的のためのものだという事は何故か感じてしまいます…

例えばこのコケシのような物は何でしょうか?

 

?…スイッチがありますね

 

カチッ

 

…ヴィーーーーン!

 

海未「ひゃっ!」

 

急に激しく振動を始めました!

な、なんとかスイッチを切らないと…!

 

それとこれは…カップめん?

でも見たことのない品ですね

まぁあまりインスタント食品は摂らないので、私がたまたま知らないだけかもしれませんが…

それに何故か容器の蓋が取られておらず、代わりにその蓋に穴が空いてますね

 

!…春雨?

 

覗き込んで見ると中には春雨のような透明なものがぎっしりと詰まってます

既にのび切っているようです

 

海未「うっ!

   く、臭いっ!」

 

部屋に漂っている臭いがこの容器からより強く感じますっ!

どうやら悪臭の発生源はこれのようですね

これではもう食べられないでしょう

 

…処分させていただきましょう

 

それにしても何故、蓋を取らずに穴を開けたのでしょうか?

素直に蓋を取って召し上がればよろしいのに…

 

…というか、召し上がられた形跡がありません

食べ物を粗末にするのは良くないです!

 

後は…努めて視界に入らないようにしてはいたのですが…

大きいのでどうしても目に入ります

 

どうして…

どうして裸の女性の人形が寝転がっているのでしょうか!?

一体何故、こんなものを持っているんでしょうか?

 

そして…何に使うのでしょうか?

 

?…そういえば壁にセーラー服がかかっていますね

 

先生、ひょっとして女装の趣味が…あ、サイズは女性のM、先生ではまず着れませんよね

 

!…なるほど!

 

この服はこの人形に…こうやって…着せてあげるんですね!

 

英吉「あ~、やっと帰ってこれたぜ

 

   …って園田!

   何でお前がここにいんの?

   んでな、なな、何してんの?」

 

海未「すみません

   おまんじゅうを届けに来たのですが、

   部屋の鍵が開いていたので中で待たせていただきました」

 

英吉「あ、あぁ、そ、それはいいんだけど…」

 

先生が狼狽されてます

やはりここにある品々は予想通り、いかがわしいものなのですね?

 

いつものように注意しようとしましたが、

今回は私が無断でお部屋にお邪魔している立場…

ここは我慢です…!

 

海未「後、失礼ですが、腰を落ち着ける場所もないくらい散らかっておりましたので、

   少々掃除させていただいたのですが…」

   

英吉「お、おぉ、悪かったなっ」

 

我慢ですが…この状況で注意する以外、何を話せばいいのでしょう…

あ…

 

海未「これらは一体、何に使うのでしょうか?」

 

英吉「そ、それを聞いてくるのかよ!?

   それは…言えん!」

 

迂闊でした!

話題がないからと言って、私とした事がなんてことを質問してしまったんでしょうか

 

海未「…あ!」

 

ツルっ

トスン!

 

何かチラシのようなものを踏んで、足を滑らせてしまいました

 

ピッ

キュルルルルー

パチン

 

英吉「!」

 

こけた拍子にリモコンに触ってしまったようです

どうやらレコーダーのリモコンの再生ボタンを押してしまったらしく、再生に合わせてテレビも起動しました

程なくして映像と音声が表示されましたが…

 

AV女優「あ、あ、あぁ~!」

 

AV男優「はぁ、はぁ、はぁ…うっ!」

 

 

海未「あっ…ああっ…!」

 

英吉「やべっ、抜いたトコで切ったまんまだった!」

 

な…!

こ、これは何なんですか!?

 

どうして裸の男女が抱き合ってるんですか!?

というか先生、抜いた所って何なんですか!?

何を抜いたんですか!?

 

あ、あぁ、あああ…

お、男の人が女の人の股間に…自分の股間を…お、押し当ててます…!

 

海未「は…破廉恥ですっ!!!!!」

 

英吉「ば、馬鹿!

   とっとと消せ!」

 

AV女優「あ、あぁーーーーーーーーーー!」

 

プン…!

 

先生が狼狽る私に代わってテレビを消してくれました

でも…映像が消えても脳裏にはあの男女の行為が焼き付いて消えません…!

 

ガチャ!

 

男性「大丈夫ですか!?

   …あ、あんた何やってんだよ!」

 

まるで獣のようでした

男性の股間の突起を女性の秘所に挿入し、

それを何度も何度も出し入れする卑猥な行い…!

もしやこれはその…セ、セッ…クス…という行為…なのでしょうか?

 

英吉「い、いや、これは違うんですよ!」

 

そして時折、女の人は何度も胸を揉みしだかれ、

さらに男の人はまるで赤ん坊のように乳首をす、吸っていました…!

 

男性「何が違うんだよ!

   さっきの悲鳴は明らかに嫌がってただろ!」

 

将来、私も結婚すれば子作りのため、あのような行為をしなければならないのでしょうか?

 

英吉「だから違うっつってるだろ!

   おい園田、お前からも何とか言ってやってくれ!!」

 

あんな行為をしなければならないのなら…

もう…

 

海未「もう…

   もうお嫁に行けませんっ!!」

 

英吉「…って、おいぃーーーー!?」

 

男性「…こりゃ決定的だな

   とにかく通報してやるから、

   首を洗って待ってろ!!」

 

海未「…へっ?」

 

英吉「おい待て、おっさん!!

   待てって…」

 

?…通報??

 

一体、私が懊悩している間に何があったのでしょう?

 

英吉「…逃げるぞ!」

 

海未「え!?何故ですか?」

 

英吉「そりゃお巡りが来るからに決まってんだろ!

   お前があんな事言うから、

   俺がお前を襲ったって通報されたんだよ!」

 

えぇ!?

なるほどそういうわけですか

これは申し訳ない事をしました…

でもそういう事でしたら…

 

海未「…それなら大丈夫ですよ」

 

英吉「?…何でだよ!?」

 

海未「被害者と思われている私が誤解を解けば捕まりませんよ」

 

英吉「………

   確かにそうか!

   いや、お巡りっつうとつい逃げる癖がついちまっててなw」

 

海未「はぁ…今更ですが、

   一体どんな人生を歩まれていたんですか?」

   

英吉「いやぁ~、ははは…」

 

ピンポーン!

 

??「宅配便でーす!」

 

英吉「どっちみち時間切れだな」

 

海未「?…どういう事ですか?」

 

英吉「宅配じゃなくてお巡りだよ

   馬鹿正直に警察だと言ったら、

   容疑者が逃げ出すだろ?」

 

海未「なるほど!

   って本当に先生はこういう事にお詳しいですね…」

 

英吉「い、いや、これくらいドラマでもやってるだろ!」

 

海未「私は知りませんっ

   それにお父様もそんな事、教えてくださりませんでしたよ」

 

英吉「?…そりゃこんな事、いちいち子供に教えないだろ」

 

いえ、そういう意味ではないのですが…

 

ガチャ

 

警官?「あれ?

    開いてんのか?」

 

痺れを切らしたのか宅配業者を名乗る方々が入ってきました

その服装は先生の言う通り、警察官の格好でした

 

警官A「はぁい、動かないでね~

   …ってお前は!?」

 

?…警察官に顔を覚えられているのですか?

以前に何度かお世話になった警官の方なのでしょうか?

 

いずれにせよあまりいい予感がしません…

 




豆知識

鬼塚と穂乃果は同じ8月3日生まれ


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第7話 不良警官です

園田海未です

先生のお部屋の近所の方に通報されて、警官の方々がやって来ました

 

それにしても1人の警官は先生を見るなり驚いています!

先生…警官に驚かれるなんて貴方は一体…?

 

英吉「…って冴島じゃねーか!

   さっきぶりだな」

 

海未「え?…先生、

   この警官の方とお知り合いなんですか」

 

英吉「あぁ、冴島っつー俺のダチの不良警官だ」

 

不良警官…確かに先生を凌ぐ悪人顔…

いえ、最早、悪魔顔と言った方がいい強面は正に不良警官の名を体現していますね

 

冴島「おいおい、言ってくれるな

   この不良教師がw

   

   しっかし童貞のお前が教師やってるとはいえ、まさかJK連れ込むとはな!

   …こりゃ逮捕だな♪

   えーと、容疑は別になんでもいいけど…

   とりあえず羨まし罪でいいだろ」

   

英吉「なんだよそれ!

   てか連れ込んでねー!!

   饅頭届けに来てくれただけだ!」

 

海未「そうです!

   私はお饅頭を届けに来…」

 

そうでした!

お饅頭は穂乃果が持ってるんでした…

穂乃果…早く来てくださいっ

 

冴島「おいおい、饅頭なんてどこにあるんだ?

   ひょっとしてその子が制服の下に隠し持ってる2つのちっちゃなお饅頭の事か?w」

 

ち、小さい…!

人が気にしている事を!!

何なんですか?

この破廉恥警官はっ

 

冴島「しかし、この制服は確か…音乃木坂のだな

   そういえばその学校、最近まで廃校の話が持ち上がっててな

   その危機を何とかすべく立ち上がったμ'sってスクールアイドル達がいてよ

   その子達がまた超絶可愛い子揃いなんだよ♪」

 

破廉恥な方とはいえ、こういう風に真っ直ぐに褒められると流石に嬉しいですっ

 

冴島「で、ちょうどこの嬢ちゃんみたいに黒髪ロングの…

  …って園田海未ちゃん!!?」

 

海未「は、はい、園田…海未です」

 

英吉「お前の事だからスクールアイドルのチェックしてるとは思ってたけど…

   今更気づいたのかよ!

   で、俺がその顧問やってんだよ…」

 

冴島「な、なにー!!?

   なんだよその美味し過ぎる状況はよ!

   やっぱりお前、羨ま死罪だな!

   てか何でさっき教えなかった!?」

 

英吉「だからなんだよ、それ!

   てかお前に教えたら、紹介しろってうるせーだろ!

   で、教えたら教えたで今みたいにセクハラかますしな!」

   

…何かさっきより罪が重くなっているような気がします

それに既に私達は先生のセクハラに晒されているのですが…

特に先日の眼帯ビキニは最大級でしたよ!

 

冴島「しかしよー、海未ちゃんも可愛いけど、

   俺ぁどっちかってーと、えりちやのんたん、かよちんとか

   出るとこ出てる系がいいよな、ぐふふ」

   

ま、またしても胸の事を…!

それにしてもこの欲望の剥き出しぶりは、確かに鬼塚先生の方がマシですね

 

冴島「でも英吉は海未ちゃんがいいってわけだな?

   しっかし海未ちゃん、多分マグロ系女子だぞ?

   海(未)ちゃんだけにw

   ぎゃはははははっ!」

 

英吉「馬鹿野郎!

   だから違うっつってんだろ!

   それにJKになんて事、言うんだコラ!

   お前がいつも相手にしてる商売女とは違うんだぞ!?」

 

…マ、マグロ?

どういう事でしょうか?

でも、とにかく性的に馬鹿にされている事だけは感じます!

 

それと商売女はかろうじてわかりますっ

それにしても冴島さんは警官でありながら売春に手を出されているのですか!?

不良警官、ここに極まれりです!!

 

…そんな事を考えていると、

これまで沈黙を守っていたもう1人の警官の方が発言されました

 

警官B「あ~冴島、その辺にしとけよ

   てかお前、この子がスクールアイドルって事は知ってたのに

   もう一つの事は知らないのか?」

 

冴島「?…なんスか?

   先輩、もう一つって…」

 

先輩「この辺のスクールアイドルで園田っていうと、

   恐らく園田警視正の娘さんだ」

 

冴島「げ!あのドン・フライの?

   信じられねえ!

   生物学的に有り得んのかよ…」

 

海未「!…確かにお父様は警視庁で警視正の任に就いております

   いつもお父様…園田盛男がお世話になっております」

 

先輩「こちらこそ、お世話になっております」

 

鬼塚・冴島「マジかよ!

      やべぇー!!」

 

海未「えぇ、ですから本日の事はお父様に報告させて頂きます!」

 

冴島「勘弁してくれー!」

 

英吉「調子に乗るからだよ、馬鹿w」

 

海未「何を他人事のようにおっしゃっているんですか?」

 

英吉「へ?」

 

海未「ちょうどいい機会ですから、

   鬼塚先生のこれまでの事も報告させて頂きます!」

 

英吉「か、勘弁してくれー!」

 

やはりこういう人達は取り分け警察が苦手なんですね

大の男の人達が悪戯のバレたいたずらっ子のよう怯えています

それを見ていると何だか可愛いような可笑しいような…

 

海未「ふふ、冗談です♪」

 

冴島「んだよ!

   冗談かよ~」

 

英吉「お前もこんな冗談言うんだな」

 

海未「それは誰かさんに鍛えられましたから♪」

 

英吉「言ってくれるぜw」

 

そんなやりとりを続けていると先輩の警官の方が再び発言されました

 

先輩「特に何もなかったみたいだし、俺達は引き上げるぞ」

 

冴島「じゃあな英吉、

   また俺達が出張らなきゃならん真似すんじゃねぇぞ!」

 

英吉「誰がするか!」

 

先輩「………………………

   君も早く帰るんだよ?」

 

海未「はい」

 

…そしてお二人の警官は立ち去られました

 

…………………………………………………

 

海未「では私もそろそろ帰ります

   出来れば穂乃果を待ち…!」

 

…たかったんですが!?

 

穂乃果「こんばんはー!」

 

英吉「お、おぅ!」

 

海未「穂乃果!

   今まで何をしていたんですか?」

 

穂乃果「いや~、ゴメン!

    途中でおっきな髭もじゃの外人のお爺さんに道を聞かれてね

    でも結局、穂乃果の説明分かんなかったみたいだから、

    連れてってあげてたんだよ」

 

海未「そんな事が…

   とにかくわかりました

   もう貴女も門限を過ぎているはずですから、

   先生にお饅頭を差し上げて、もう帰りましょう」

 

穂乃果「うん!

    はい先生、これウチの新製品だよ!」

 

英吉「おぅ、サンキュー!

   でも俺としてはお前ら2人、計4つのお饅頭の方が…」

 

海未「先生♪

   やはりお父様に報告しましょうか?」

 

英吉「じょ、冗談だって!」

 

海未「ふふ、ではごきげんよう」

 

穂乃果「先生、お休みなさーい!」

 

…………………………………………………

 

その後、穂乃果といつものように取り留めのない話をしながら帰宅しました

ですが…

 

今日、警官の方々に会った事が私たち三人にとって大きな苦難となる事に

この時の私達には知る由もありませんでした…

 




第6話直前


冴島「おー、英吉!
   やっときたか!
   
   …まぁいいや、さっそくこれに着替えてくれ」

冴島「えっ?
   緊急の用事だと言われたから学校休んできたのに
   何で警官のコスプレさせられるんだって?」

冴島「馬鹿!
   これ、本物だよ
   俺の制服のスペアだよ
   
   ちょっとお前にガサ入れに付き合ってもらおうと思ってなw」

冴島「え?
   そんなもん、同僚と行けって?
   
   …鈍い奴だなぁ
   同僚がいたら小遣い稼ぎが出来ねぇだろ!」

冴島「そういえばお前、知ってるか?
   最近、スクールアイドルっていう素人の女子高生のアイドルが流行ってるんだよ!
   A-RISEとか…最近はμ'sってグループがノシてきてるな」

冴島「?…お前、μ'sって聞いて、びくっとしなかったか?
   ひょっとしてお前、まさか…」

冴島「μ'sのファンなのか!?
   隠すな隠すな
   …てことはお前の取り分はμ'sのグッズでいいな」

冴島「…どういう事だって?
   あぁ、わりぃ!
   今日のガサ入れ先はスクールアイドルのグッズショップなんだよ」

冴島「あいつら、ネタ元が素人の女の子達だからって、
   無断で作ったグッズで丸儲けしてやがるんだよ
   だから俺がスクールアイドルの女の子達に代わって売り上げを回収してやるってわけ!」

冴島「え?…どうやって売り上げを渡すんだって?
   …そ、そそそそんなもん…振り込め、いや振り込みに決まってんだろうがよ!
   
   てかそろそろ現場に着くぞ!
   気合入れとけ!!」

――――――――――――――到着――――――――――――――

チャ!

冴島「うらぁー!
  警察だぁ!!
  お前ら、全員、手ぇ頭ン後ろに回せヤァ!」

店員「ひぃぃぃぃぃ!!」

冴島「てめえらがスクールアイドル達に無断でグッズ販売してんのは分かってんだ!!
   とりあえず証拠品として、今あるA-RISEとμ'sのグッズ全部出せや!!
   
   …後、今日の売り上げもな」

――――――――――――――撤収――――――――――――――

冴島「いやぁ、大量大量!
   とりあえずこれ、約束のμ'sのグッズな!」

冴島「でも、お前には悪いけど、μ'sの方はいまいち少ねぇな
   μ'sは最近、転任してきたイカつい顧問がやらかし共を片っ端からシメてるせいか、
   グッズのネタを提供してるカメコどもも委縮しちゃって、その影響が出てるなこりゃ…」

冴島「そういえばその顧問、やらかしシメる度に電灯やら掲示板やら公衆電話やら壊してたな…
   よし、物損でその顧問しょっ引いて、カメコどもが動きやすいようにしてやるか!」

冴島「…って英吉、なんかお前、顔色悪いぞ?
   え?…帰る?」

冴島「しゃーねーな!
   俺も今日は夜勤だし、ここらで引き揚げるか!
   じゃあ…また今度も頼むぜ!!」


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第8話 不良少女です

園田海未です

突然ですが私、不良になりました

 

なのでもう3日も家に帰っておりません

何故かと申しますと、発端は先日、鬼塚先生の部屋に先生と二人きりでいた所を2人の警官に目撃されたことです

冴島さんの先輩が私と会った事をお父様に報告されたそうです

 

先輩の警官の方は何もない様子だったと正しく伝えてくださったようですが、

お父様は男性の方の部屋に二人きりでいた事自体を問題視されておりました

 

元々お父様は昔気質の方で私がスクールアイドル活動に参加している事に難色を示しており、

また日舞のお稽古より穂乃果達とのスクールアイドル活動を楽しんでいる様子を見る度、

私に園田流の後継者としての自覚があるとかと苦言を呈する機会が増えておりました

 

そこに来て今回の件で堪忍袋の緒が切れ、アイドル研究部を退部するように迫られた次第です

 

お父様に無理やり退部願を書かされ、それを持たされて家を出ましたが、

穂乃果達にそれを見せて退部の旨を切り出す事を想像すると、どうしても学校に足が向きませんでした…

 

そして気づけば昼は漫画喫茶、夜はその近くのビジネスホテルで過ごすようになりました

 

それにしても漫画喫茶なる施設を初めて利用しましたが、これは良い物ですね

簡単な食事なら外の飲食店を利用する必要がなく、ドリンクは飲み放題♪

 

ゲームは…難しそうなので着手しておりませんが、漫画は素晴らしいです!

よく漫画なんて絵を見れば台詞を読まなくても話が分かってしまうと揶揄されますが、

裏を返せば絵という物はそれだけ多くの情報量を無理なく伝える手段としては非常に有効な手段だと思いました

 

そしてその優れた情報伝達力のお陰で小説ではあまり見られないアクション性の高い物語が多く楽しめ、小説を主に楽しんでいた私にはどれもこれも非常に新鮮な感動を与えてくれます

 

一生物の膂力のみで星を破壊するような神をも超える強者同士の戦い…

剣と魔法の異世界ファンタジー…

そして…先生の様な不良少年たちの喧嘩のお話…

 

でも…

物語に終わりがあるように…

この新鮮な楽しみにも終わりが来ます

 

漫画の主人公たちと違って卑近な理由…

でも私にとっては切実な理由…

 

もうお金がありません…

 

店員「ご利用、ありがとうございました!」

 

漫画喫茶で精算を済ませ、もう補助硬貨しか残っていないお財布の中身を見て、途方に暮れます…

 

これから…どうすれば…

具体的な方法を考えようとしても何も思いつきません

頭の中に堆積するのは尽きる事のない不安…

 

その不安に押し流されるように…

涙が溢れてきました…

 

そんな折――

 

??「ねぇ君…大丈夫?

   ところで…これでどうかな?」

 

知らない中年の男性の方に声をかけられました

彼は人差し指だけを立てた手を見せています

 

…これは所謂…パパ活…というものなのでしょうか?

だとすればこの指の数は金額…ですか?

1万円…いえ、千円でも…今はお金が欲しいです

 

海未「…よろしくお願いします」

 

先日、心の中でとはいえ、冴島さんの所行を非難していたのを棚に上げ、了承しました

私は不良ですから…

 

私の了承を確認すると、男性は次の提案を出されました

 

中年「ねぇ泊まり、オッケー?

   オッケーならもう3枚出すよ?」

 

海未「…はい、よろしいですよ」

 

…恐らく先日、先生の家で観たDVDと同様の行為を求められるのでしょう

 

正直、怖いです

 

…がお金だけでなく一晩の宿が得られるのなら、それも構いません

私は不良ですから…

 

中年「それにしても君、今時やけに丁寧な言葉遣いだね?

  まるでμ'sの…ってもしかしてその制服!」

 

海未「!…すみません、やっぱりやめます!!」

 

私は不良です…

自分なんて穢れてもいいと思ってました…

 

ですが…μ'sを貶めるような事は…

穂乃果やことり達を失望させる事は…

やはりできません!!

 

中年「ちょっとw

一旦、オーケーしといてそれはないんじゃない?」

 

海未「ごめんなさい!

   本当にごめんなさい!!

   やっぱり無理です」

 

男性は私の手を掴んで食い下がります

私がどんなに嫌がっても強引に迫られてはもう…

 

ドカ!

 

…え!?

 

海未「…先生?」

 

中年「な、何だね?君は!

   いきなり人を蹴飛ばして!」

 

英吉「俺か?

   俺はこいつの部活の顧問だ!

   俺の目の前で生徒にパパ活しかけるとはいい度胸だな!!」

 

中年「え?」

 

英吉「ここら一帯は冴島っつー俺のダチがお巡りやってんだ

   手ぇ引かねぇんなら呼んで二人で追い込みかけんぞ!?

   

   …失せろ!」

   

中年「ひ、ひぃーーーーっ!!」

 

英吉「舎弟RXからタレコミがあってな

   それにしても間一髪だったな」

 

海未「先生…!

   ひっく、えぐ…!」

 

私は鬼塚先生の胸の中で泣きました

先生は何も言わず、頭を軽く撫で続けてくれました…

 

そして私の気持ちが落ち着いた頃、

腰を落ち着けるため、カラオケボックスに誘われました

 

英吉「ここなら人目を気にしないで話せる

   …まぁ、ちと騒がしいが、その分声が漏れにくいしな

   それとも折角だから歌うか?

   もう3日も歌ってないんだろ?」

 

海未「いえ…それよりお話、したいです」

 

英吉「あぁ…

  まぁ大体はお前のお母さんから聞いたけどな」

 

それから私は既にお母様から聞いたであろう事の顛末を自分の口で話しました

先生は他の先生のような親の肩を持つような…大人の理屈で反論せず、一緒になって本気で共感してくれました

 

その後は漫画喫茶が楽しかった事、お金が少なくなり、不安になった事等を話しました

でも3日も家出してすっかり私も不良になってしまったと言うと、大笑いされたのは悔しいです

 

英吉「ププ、お前、その程度で不良とかw

せめて少年課に名前覚えられてから言えよ

  あ、もちろん、悪さしてなw」

 

海未「そんなに笑わないでくださいっ

   私にとってはこれでも大ごとなんですからっ

   後、教師が生徒に悪さを勧めないでくださいっ」

 

すると、何故か先生は今まで見せた事がない真剣な表情になり、こう言いました

 

英吉「…そうだな

   俺は…お前らを舐め過ぎてたよ」

 

ガツン!!

 

先生が突然、テーブルに強く額を打ちつけました!

 

海未「!!?…先生!何をしてるんですか!!!

   額から血が…!」

   

英吉「これでいいんだ…

   これは自分にヤキ入れたんだよ!

   このままにしておいてくれ…!」

 

海未「…どうしてですか!」

 

英吉「俺のせいだからだよ

   俺が…もっと信頼できる先コーなら、

   お前を3日間も一人で苦しめる事なんてなかったはずだ…

   

   思えば音ノ木坂に来てから俺は遊んでばかりだ

   お前らは吉祥学苑のガキどもに比べて素直な奴ばかりで、

   あいつらの様なシャレにならねぇ心の闇を抱えてるわけでもねぇ…

   

   だからどっかでお前らの事を舐めてた

   だからテキトーに思い付きで何かやって、

   理事長に言われた通り、お前らをやらかし共から守りさえすりゃ良いと思ってた

   ラクショーだと思ってた…

   

   だから…

   そんな舐めたやり方で信頼なんて生まれるわけがねぇ…!

   

   だから…お前みたいに親が悩みで…友達に相談し辛い悩みを抱えている奴に…

   相談したいと思ってもらえなかった…

   

   悩みを受け止めてやれなかった!」

   

海未「先生…うっ、ううっ…」

 

違うんです!

先生を信頼していないからではありません!

 

むしろ先生がいっそ本当にいい加減な人ならどれだけ話しやすかったか

相談などではなく、自分の苦しみ、怒りを貴方に遠慮なくぶつけられましたよ

 

でも先生…先生はやらかしの方々から守るだけとおっしゃいましたが、

ただ、それだけでもどれほどありがたいかわかりますか?

女の身で猛っている男性に相対するのが、お強い先生にはどれだけ怖いのかわかりますか?

 

私達に代わって立ち向かってくださるのがどれだけ心強いかわかりますか?

だからどうか自分を責めないでください

 

それに…先生に相談できなかったのは…

 

海未「先生に相談できなかったのは…

   私自身のせいなんです!」

 

英吉「?…どう言う事だ?」

 

海未「私…いつもいつも…先生に文句言ってばかりで…

   嫌われてるって…思ってました…

   それなのに自分が困ったから相談なんて…ムシのいい事できません!!」

 

英吉「…馬鹿

   女子供なんてそれくらい身勝手でちょうどいいんだよw」

 

海未「…そういうものなんでしょうか?」

 

英吉「そーゆーもんなの!

   それにお前が言ってる事は大体正しいし、

   それに別に俺は嫌いじゃねぇよ!」

 

海未「…嘘です!

   海未山田とか変なあだ名つけたじゃないですか!」

 

英吉「あ、あれはちょっと穂乃果達のウケを狙ったというか…」

 

海未「それにそもそもあのあだ名は内山田先生に対しても失礼です!

   いいですか?

   そもそも姓というものはその人個人だけでなく一族を示す名前であって、

   それを使ってふざけるという事はその人だけでなく、その人の一族全体を…」

 

英吉「プッ!」

 

海未「何なんですか!?

   急に笑って!」

 

英吉「あ、いや、いつもの調子が出てきたと思ってよw」

 

海未「それは…先生の方がいつもの調子で私をからかうからです!」

 

英吉「しっかし今のセリフ、ハゲ山田に聞かせてやりたいぜ!

   あのおっさん、女子高生…それもスクールアイドルにかばってもらえるなんて感動モノだろうなw」

 

本当にいつも通り…

でも…このいつも通り…取り戻せるものなら取り戻したい…

 

英吉「…そろそろ帰ろうか?」

 

海未「…え!?」

 

英吉「そう怖がるなよ

   話した感じじゃ、お母さんの方は少なくともスクールアイドル活動は賛成してる感じだったし…

   それに親父さんは今日は緊急の任務とかで帰らないらしいぞ」

 

いないと言っても今日だけじゃないですか…

明日になればまた父に責められるのは目に見えてます

でも…もう行く当てもありません…

 

それに…心配して私を探して助けてくださった先生を困らせたくありませんでした

 

…結局、先生のバイクに乗せてもらい、家に戻る事になりました



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第9話 馴れ初めです

園田海未です

先生と一緒に自分の家に戻ってきました

 

あんなに戻るのが怖かったのに…たった三日帰らなかっただけなのに…

非常に懐かしく思い…そして安心する自分がいます

 

穂乃果「海未ちゃん!」

 

海未「穂乃果!?」

 

英吉「おい、お前、なんでここにいるんだよ

   …練習明けにしては少し早くないか?」

 

穂乃果「ごめんなさい!

    今日は…休んじゃった…

    何となく今日…海未ちゃんが帰ってくるような気がして…」

 

もうそろそろ学園祭です

μ'sもその学園祭でのライブに向けての準備、練習で時間はいくらあっても足りないくらいなのに…

なのに私は貴女の貴重な時間を奪ってしまっているのですね…

 

海未「ごめんなさい…穂乃果…!」

 

穂乃果「ううん…いつもは穂乃果の方が迷惑かけてるんだから気にしないで!」

 

穂乃果、本当にありがとう…!

そんな私達のやり取りを微笑みながら眺めつつ、先生は門のインターホンを押しました

 

ピンポーン!

 

 

英吉「私、園田海未さんが所属するクラブ活動の顧問をしております鬼塚英吉という者です

   今日は海未さんを保護しましたので連れてきました」

 

それを聞いたお母様の驚きがインターホンから離れていても伝わります

そして直ぐにお母さまが出てきました!

 

園田母「海未さん…よく戻ってきてくれましたね」

 

海未「お母様…すみませんでした…!」

 

園田母「いいんですよ!

    貴女が無事に戻ってきたのならそれで十分です

    

    …先生も穂乃果さんも本当にありがとうございます…!」

 

先生「いえ、当然の事っす!」

 

園田母「それでは先生も上がっていただけますか?

    お話したい事もございますので…」

 

先生がお母様の誘いに応じ、門をくぐろうとすると穂乃果が声をかけてきました

 

穂乃果「あの…おばさん、

    穂乃果もお邪魔していいかな?」

 

穂乃果を巻き込むのは心苦しいです

ですが…本当にありがとう

先生だけでなく、穂乃果も一緒なのはとても心強いです

 

園田母「え?」

 

英吉「い゙!?」

 

?…お母様と先生が穂乃果の申し出に難色を示しています

一体、何故でしょうか?

 

園田母「あの…先生…どうされますか?」

 

英吉「…穂乃果!

   今からの話、絶対誰にも言うなよ!

   約束するんなら…来てもいい!」

 

穂乃果「!?…う、うん、約束するよ!」

 

穂乃果が先生の約束を承知しましたので、私達三人は畳敷きの客間へ通されました

そしてお母様は下座、先生と穂乃果、そして今日は私も上座に座らせていただきます

…予想通り、先生だけは正座ではなく胡坐をかかれております

 

私達の着席と同時にお婆様がお茶を持って来られ、

お茶を全員分お出しし、自らも下座に正座しました

 

園田婆「海未や…よう帰って来たね」

 

海未「お婆様、ご迷惑をおかけしました」

 

次いでお婆様は先生と穂乃果に挨拶をされました

先生を直視した時は流石に少し驚かれた様子でした

確かに先生のような人が園田家の敷居を跨ぐのは、恐らく初めての事ですから無理もないでしょう

 

ですが特に何も言われず、代わってお母様がお話を始めます

 

園田母「まず私が何よりも気がかりなのは…

    海未とは…その…何もなかったのでしょうか?

    

    すみません…穂乃果さんがいる前で…」

 

英吉「はい、何もありませんでした!

   というかあったらパク…捕まってます」

 

園田母「確かに…それもそうですよね」

 

!!…そ、そういう事だったんですね!

お母様と先生が先程、穂乃果の同席に難色を示された訳がやっとわかりました!

先生に何かされた自覚がなかった…というか実際何もされていないので、それに気が回りませんでした…

 

穂乃果「え?

    何の話なの?」

 

そういえば穂乃果達は家出の経緯を詳しくは知らないのですね

まぁ事が事だけに詳細を伏せているんでしょうが…

 

英吉「まぁ…簡単に言うと俺と園田がセックスしたんじゃないかと疑われてる」

 

!…せ、先生!

直接的過ぎます!!

 

穂乃果「!!!?…なんでそんな事になっちゃってるの!?

    ことりちゃんからは行けなくなったって穂乃果も聞いてるから、

    先生の家には先生と海未ちゃん、二人だけだったけど…」

 

私と先生はお母様とお婆様の前で穂乃果にもう少し詳しい説明をしました

私が間違って先生が持っているDVDを再生してしまった事…

そのDVDの内容に私が驚いて騒いでしまった事…

それを聞きつけた隣人が強姦と間違えて通報した事…

駆け付けた警官がお父様と面識があった事…

何事もなかったけど、先生と二人きりだったことがお父様の耳に入った事…

その事をお父様に咎められ、退部するようにと命じられている事…

またその件がなくともスクールアイドル活動にかねてから苦言を呈されていた事…

そして…

 

海未「退部を申し出る事を想像すると、どうしても登校する気にならず、

   かといって家にも帰り辛く、家出した次第です…」

 

穂乃果「ううん、なんか色々過ぎて、まだよく分かってないけど…

    

    …でも!

    やっぱり…相談してほしかったよ!

    

    …ほら、私だけじゃ頼りないかもしれないけど、

    絵里ちゃんとか希ちゃんとかいい方法考えてくれるかもしれないしね!」

 

海未「…ごめんなさい!

   心配をかけてしまって…!」

 

そしてありがとう…!

穂乃果、貴女が頼りないなんて事ありません!

たとえ解決方法は見つからなくても、

そうやって寄り添ってくれるだけで私は救われます…

 

そんな穂乃果の優しさに感激していると、お母様が私に声をかけました

 

園田母「海未さん、私は貴女のスクールアイドル活動を応援してますよ

    …今までハッキリと言葉にはしませんでしたけどね」

 

海未「…お母様!」

 

園田母「皆さんの前で私が言うべきことではないですが、

    貴女は本当に良い子です

    私達が強いた園田流の日舞を初め、

    様々なお稽古事を嫌な顔一つせずに習得していきましたからね」

 

それは…私の使命だと思っていますので…

 

園田母「ですが…それを負い目にも思っていました

    嫌な顔をしない反面、

    出来を誉めてもお愛想程度に微笑むだけで、

    楽しんでいるようには思えませんでしたから…」

 

それは…私の使命だからです

不謹慎な気持ちでは取り組めません…

 

園田母「ですが、穂乃果さん達との交流は別でした

    スクールアイドルを始めた時からは特にです

    毎日のようにいつも穂乃果さんに対する愚痴をそれはそれは楽しそうに話してますよ」

 

海未「お、お母様っ」

穂乃果「ええっ!?」

 

園田母「いえいえ、皮肉で言ってるのではありませんよ?

    海未さんは真面目な子ですからね

    どうしても人さまの気になった所を見過ごせないのですよ」

 

穂乃果「す、すみませんっ」

 

園田母「ですが…ただ気に入らないだけなら、

    そのような事を決して楽しそうには話さないものですよ?

    きっと穂乃果さんは私達がこの子に与えられていないものを

    与えてくれているんでしょうね…」

 

穂乃果「あはは…どうでしょうか?」

 

園田母「そして2学期に入り、この子の愚痴の矛先が増え、

    より一層楽しそうな様子になりましたよ?」

 

そう言ってお母様は先生に微笑みかけます

でも先生は…冷や汗をかきながら、ひきつった笑いを返すばかりです

 

きっと己の所業を思い返しているんでしょう

いい気味です♪

 

今、私は自分でも気づかず悪戯っ子のような笑みを浮かべていたんでしょうね

それをお母様に指摘されました

 

園田母「ふふ、今の貴女のそういう顔、私達は初めて見ましたよ

   先生もこの子に新しい経験をさせてくださってるんですね」

 

穂乃果「そうそう!

    この前なんて先生、いきなり眼t…むぐぐ!」

 

先生が血相を変えて穂乃果の口を塞ぎます!

 

海未「ほ、穂乃果!

   今は先生とお母さまはお話しているので、割って入ってはいけません!」

 

穂乃果「うぐうぐ(うんうん)!」

 

園田母「まぁ! 隠し事ですか?

    私に隠し事とは本当に新しい一面をどんどん見せてくれますね

    それにしても今は非常に二人の息が合ってました…

    

    先生、本当にこの子とは何も…ないんですよね?」

 

英吉「もちろん、ありませんよ!」

海未「そうですよ!お母様!」

 

園田婆「ふふふ、若いのぉ…」

 

園田母「何にせよ、娘が心から楽しそうにしているのを見て、

   母親として喜ばしくない筈がありません」

 

多少の緊張は走りましたが、和やかな雰囲気で話は進みました

でも…

 

園田母「ですが…この子の父親、

    私の夫の盛男はスクールアイドル活動を快くは思っておりません…

    それが…いずれは園田流の継承を拒む事になるのではと危惧しているのだと思います」

 

穂乃果「スクールアイドルからプロのアイドルになって…って事?」

 

園田母「恐らくは…」

 

海未「そんな馬鹿な…!

   私にそんなつもりは…!

   

   それにこう言っては何ですが、お父様は婿養子の身…

   園田流の存続にそんなに固執する立場とは思えないのですが…」

 

園田婆「生来の生真面目さ…そして外様ゆえ…なのかもしれんの…

    そうだねぇ…

    いい機会だから貴女と盛男さんの馴れ初めを聞かせてあげなさい」

 

園田母「はい、では恥ずかしながら…」

 

お婆様に促され、お母様がお父様との馴れ初めを私達に聞かせてくれました

 

お父様とお母様がお父様の実家で催された宴席で知り合った事

その席で舞を披露したお母様がお父様に見初められ、それを切っ掛けに二人の交際が始まった事

そしてお母様のお父様に対する想いは園田流にかける気持ちと同じくらいにまで大きくなった事

でも嫡男であったお父様に園田家の婿養子になって欲しいとはとても言えなかった事

しかしお父様はそれを汲んで弟さんに跡目を譲り、婿養子に志願した事

 

私も初めてお父様とお母さまの詳しい馴れ初めを聞きました

私はそんなにお母様を愛しているお父様との子供なんですね…

 

でもどうして私には…

そんなお母様の子供である私には…

 

園田婆「アタシは娘の幸せのためなら園田流を畳んで、

   お前のお母さんを嫁がせてもいいと思ってたんだけどね

   

   でも結局、盛男さんの厚意に甘えてしまった…」

 

英吉「テメェの道を閉ざしてまでテメェの惚れた女の大切なものを護る!

   …カッコいいっすね!」

 

園田母「…ありがとうございます

    しかしそれ故にあの人にとって園田流を護る事が新しい道となったのでしょう

    ですので僅かでも脅かすものは許せないのだと思います」

 

英吉「なるほど…

   まぁ人間、自分のためより自分以外の人のための方が頑張っちゃう事、結構ありますもんね

   それが自分の大切な人のためなら尚更…

   だからこその外様ゆえ…っすかね?」

 

園田婆「その通り…

    先生、若いしそのナリでなかなか聡いのぉ」

 

先生は無教養そうなのに時折、本質を見抜かれますね

 

英吉「それにしても一つ気に入らねぇ事がありますね

   それは…」

 

?…先生、それは何ですか?

 

ガラガラガラガラ…!

 

インターホンが鳴らずにいきなり門戸を開ける音がしました

それは来客ではなく、身内が帰って着た事を意味します…

 

現在、この家で暮らしているのは4人

そしてこの場には私、お母様、お婆様の3人がいます

 

帰って来たのです

今日は帰らない筈だったお父様が…!



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第10話 お父様です

園田海未です

お父様が返ってまいりました

 

いずれは帰宅され、件のお話をしなければならなかったとはいえ、

今は正直、心の準備ができておりません…

 

ひょっとして今日は帰らないといったのは、

私を帰ってこさせるための方便かとお母様とお婆様を疑いましたが、

その驚き様からお二人にとっても予想外の事態のようです

そして慌ててお母様がお父様を迎えに行きます

 

…逃げ出したい!!

 

頭の中がその気持ちでいっぱいになった刹那――

 

トン!

 

急に背中を軽く叩かれました

叩いたのはやっぱり先生

 

無言でしたが任せろと言わんばかりの頼もしい笑顔を私に向け、

力強く拳から親指を突き出して見せてくれました!

 

先生の向こうから穂乃果もガッツポーズで笑顔を見せてくれます

穂乃果も無言でしたが、ファイトだよ!…と目が語っています

 

二人のお陰で勇気が出ました!

 

でも…

お父様が迎えに行ったお母様を伴って現れました

 

その眼光は明らかに私達三人を射抜くように向けられています…!

折角二人に頂いた勇気が一瞬で霧散しました

 

ふと穂乃果を見ると私と同様に怯えています

 

無理もありません…

時折、私を訪ねてくる穂乃果をお父様は嫌っていたようには思えませんでした

幼い頃はよく私達の遊び相手になって、

穂乃果ちゃんと呼んで私と同じように可愛がっていましたから…

余りに穂乃果を可愛がるので、私は焼きもちを焼き、

二人を困らせた事もあるくらいです

それなのに今は…

 

私と関係を持っていると疑っている先生に向けるものと同様の敵意を向けているのです

今までとあまりに違う様子に恐れを抱かない筈がありません…

 

そして先生は…

 

流石の一言です

先生より二回り程大きく、スーツの上からでも判る隆々たる体つきのお父様を見ても恐れるどころか不敵な笑みを浮かべています

先生が立ち上がり、お父様と向き合います

 

英吉「初めまして!

   園田海未さんが所属するアイドル研究部の顧問の鬼塚英吉です!」

 

盛男「…園田盛男です」

 

堂々と名乗る先生に対し、一言だけ返すお父様…

でも先生に気圧されているわけではなく、ただただ煩わしいといった風です

 

盛男「鬼塚先生…それと高坂君

   今日の所はお引き取りください」

 

!?

 

園田母「あ、貴方!

   先生はこの子を連れ戻してくださったんですよ!?

   お礼の一言くらいは…!」

 

盛男「若造…聞こえなかったのか?

   失せろと言っている…

   貴様の様な不逞の輩と交わす言葉などない!」

 

お母様の忠告を無視して、お父様は先生にお礼を言うどころか侮辱しました!

礼を欠いたお父様を恥ずかしく思うと同時に怒りを覚えます!

 

どうしてこんな失礼な事が言えるのですか!?

私と先生との間に何もなかったのは報告を受けている筈です!

 

英吉「…すんませんが、お父さんの方になくてもこちらにはあるんすよ

   海未さんはここにいる高坂を含め、部員全員に必要とされています

   そして彼女に退部の意思がない以上…」

 

盛男「退部は認めないというわけか?

   なら…海未は転校させる!」

 

お父様…そこまでして私にスクールアイドルを辞めさせたいんですか?

 

穂乃果「そんな!

    私達には園田さんが…海未ちゃんが必要なんです…!!」

 

盛男「君達に必要であっても、海未には君達は必要ない」

 

もう…黙っていられません!

 

海未「そんな事はありません!

   どうして私の気持ちをお父様が決めつけるのですか!!?」

 

皮肉にもお父様への怒りがその恐怖を打ち消してくれました

…思えばお父様に本気で反抗したのはこれが初めてです

 

でも…お父様はそんな私の初めての反抗にも驚いた様子もなく、冷たい表現で言い直しました…

 

盛男「ならばこう言おう…

   園田流の後継者に君達は必要ない!」

 

穂乃果「でも…でも…!」

 

穂乃果の眼には大粒の涙が止めどなく溢れ出ています…

そしてそれは私の眼にも…

 

穂乃果…ごめんなさい…

貴女まで泣かせてしまって…本当にごめんなさい

 

盛男「そもそも高坂君、君を海未に近づくのを許したのは間違いだったよ

   日々の稽古の息抜きになると思っていたが…

   

   スクールアイドルなどと言う浮ついたものに海未を巻き込むのは流石に捨て置けん!

   そもそもアイドル自体破廉恥極まりないものだというのに、

   ましてやプロでもない素人のスクールアイドル等…」

 

許せない…!

穂乃果は私の初めてのお友達…

 

始めて穂乃果と出会った時…手を差し伸べて友達の輪の中に入れてくれなければ…

内気でお稽古ごとに追われる日々の私は…ひょっとしたら今も友達がいなかったかもしれません

穂乃果のお陰で私の世界は開けました!

そんな穂乃果を…侮辱するなんて…!

 

…許せない!!!

 

 

 

バキィィィ―――――――――――――ィン!!

 

 

 

英吉以外「!!」

 

先生の肘から先が畳を貫いて床に埋まっています…!!

私の怒りを代わりに体現してくださいました

でも…

 

…怖い!!!!

 

こんなに怒りに満ちた先生の顔は初めて見ました…!

先生がやらかしの方々相手に暴力を行使するのは何度も見ています

でも圧倒的に強いためか、そんな時でもほとんど真顔で戦っておられました

 

…先生が静かに発言します

 

英吉「おっさん…いいかげんにしろよ?」

 

盛男「何だ貴様!

   それが目上の者に対する口の利き方か!」

 

英吉「テメェの方こそ散々礼儀を欠いて、どの口がほざいてんだ!」

 

盛男「下衆が…何にせよ、これは園田家の問題だ

   口を出すな!!!」

 

英吉「…口を出すなだと!?

   その部外者お断りの家の問題に他所の家の穂乃果を…

   俺の生徒を引き合いに出して泣かせて…

   揚げ句、スクールアイドルを…穂乃果の尊厳を踏み躙っておいてなぁ…

   

   都合のいい事言ってんじゃねぇよ!!!」

   

穂乃果「先生ぇ…」

 

盛男「言わせておけば…!」

 

英吉「それにな!

   園田が…海未があんたの娘だろうが、俺の生徒でもあるんだ!!

   たとえ親だろうが…俺の生徒である以上、泣かす奴は絶対に許さねぇ!!」

 

海未「…先生!」

 

盛男「チンピラが…!

   どの口がほざく…!」

   

英吉「どの口がほざくだと?

   そっくりその言葉、返すぜ!

   

   海未は…あんたの娘は何日、行方不明だった?

   

   …3日だよな?

   あんた、一体この3日間何をしてたんだ?

   

   人探しの素人の普通の家じゃない、

   警視正の…人探しのプロ集団のお偉いさんが何で3日も娘を見つけてやれないんだ?

   海外に高飛びしていたわけでもない…

   そこらの漫喫やビジネスホテルにいただけの…

   制服姿のままの女の子を何故見つけられないんだ!?

   

   …結局、海未を見つけたのは俺の舎弟

   そしてここに連れてきたのは俺だ!

   

   そんな体たらくで家の問題だから口を出すなとか…よくも言えたな!!」

   

盛男「…箝口令がかかっているので詳しくは言えないが、

   重大な任務に就いていて娘を探す時間がなかった

   当然、私的な理由で部下に協力を頼めるはずがなかった…」

   

英吉「おっさん…言い訳はそれだけか?」

 

盛男「何だと!?

   本当に重大な任務なんだ!

   下手をすれば東京が…!」

 

英吉「テメェの娘の一大事より重大な任務なんてあるかぁ!!!!!!」

 

盛男「!…もういい!!

   貴様の様なヒラに話しても無駄だ!」

 

英吉「はっ、うちの理事長にでも泣きつきますか?

   貴女のヒラの部下に言い負かされたので助けてくだちゃいってw」

 

盛男「そんな無様なまねをする必要はない

   貴様、その体つき、眼光…チンピラなりに腕に覚えがあるんだろう?

   道場に来い!

   鼻っ柱をへし折ってやる!」

 

英吉「いいっすねぇ、分かりやすくてw

   …上等だ!」

 

先生が受けて立つ旨を聞いたお父様は支度のため、自室へ向かわれました…

 

海未「先生!

   先生がお強いのは分かってます!

   でも…お父様は…!」

 

英吉「言いてぇ事は分かる

   あのガタイ、俺よりは二回りはデカいし、

   職業柄、格闘技だって素人じゃねぇはずだ…」

 

海未「!…そこまでお分かりでどうして!?」

 

英吉「何度も言わせんなよ…

   俺の生徒を泣かす奴が許せねぇんだよ!!

   

   …たとえお前らが許しても…な!」

 

穂乃果「先生…!」

 

英吉「それよりお前らに頼みがあるんだ…」

 

海未・穂乃果「え!?」

 

……………………………………………………

 

英吉「…というわけだ

   絶対に頼む

   頼むから…萎えるような事は勘弁な」

 

穂乃果「うん!

    わかった!

    絶対…絶対、守るね!!」

 

海未「…難しい要求ですね」

 

英吉「そこを何とか!」

 

海未「本当に…先生は私を困らせてばかりです」

 

英吉「ホントに勘弁w」

 

海未「いいです

   もう慣れっこです…

   その代わり…」

 

英吉「任せとけ!」

 

何だかんだで先生は頼もしいです

特に今日は今までで一番…!

 




登場人物紹介

園田盛男(イメージCV:石井康嗣)
警視庁警視正
身長185cm
体重110kg
柔道三段、ボクシング(プロのヘビー級の試合経験有)、レスリング

往年の格闘家のドン・フライに似ているので裏で部下達にそう呼ばれている
そう呼ばれているのを知らないが、自身も似ていると自覚があり、
強い有名人に似ているのはむしろ誇らしかったりする

最近、逮捕した筈なのに留置所を自由に出入りする規格外の凶悪犯に振り回され続けて機嫌が悪い
ちなみに穂乃果に道を尋ねた老人も別人だが同等の凶悪犯


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第11話 GTOです

園田海未です

今、私達は道場にいます

お父様の私達に対する暴言に対して反論してくださった鬼塚先生と

お父様との決闘を見守るためにここにいます

 

…我ながらムシのいい話です

日頃、先生に小言ばかり言って非難しているにも関わらず、

こんな時だけ頼りにしているのですから…

 

英吉「さっきも言ったろ?

   身勝手でも構わねぇ!」

   だから気にすんな」

 

私の顔を見た先生が声をかけてくれます

私はそんなに顔に考えが出るのでしょうか?

何にせよこれから大変な事を請け負っていただくというのに更に気を遣わせてしまい、

やはり申し訳ないです

 

それに…この道場は私達、園田家が剣道、薙刀の稽古に用いている道場なので、

畳敷きではなく板張りです

 

海未「先生、ここは畳ではなく板張りです

   ですから…」

 

英吉「アスファルトや散らかった廃工場とかよりはマシだな

   投げられても余計なもんが刺さんなくて助かるぜw」

   

…どうやら釈迦に説法だったようです

幼い頃から護身術を修めてはいてもケンカなどした事がない私とは違い、

実戦を恐らく何度も経験しているであろう先生にとっては、

これでも安全なくらいという事なんでしょうか?

 

そんな事を考えているうちにお父様が柔道着を纏って登場しました

 

お父様は柔道の有段者で警視庁の教練では師範代を勤める程の手練れ…!

身長は180半ば、体重は100を超える巨漢です

たとえ先生でも正直、この体格差は…

 

園田婆「盛男さん、先生、アタシが立会人をさせてもらうよ

 

    お互い流儀は違うようだけどとりあえず…

    眼突き、金的、噛みつきが禁じ手、

    降参、または戦闘不能で決着…

    

    後、念のために言っておくが武器の使用も禁止じゃ!

    

    …それでいいね?」

 

お婆様が二人の決闘の注意事項を説明しました

 

盛男「…承知しました」

英吉「オッケーだ!」

 

…しばしの静寂…

 

園田婆「始め!」

 

盛男「…」

英吉「…」

 

お父様は柔道家らしい構えで待ち構え、

先生は悠然とお父様に向かって歩を進めます…

 

意外です

先生の性格上、開始と同時に襲い掛かるとおm…

 

ブンッ!

フォシッ!

 

英吉「!?」

 

唐突に拳を突き出した先生の顎が跳ね上がりました!

攻撃したのは先生なのにどうして!?

 

英吉「その格好でパンチが来るとはな!」

盛男「一応、ボクシングもやっていてね…」

 

…私にはまったく見えませんでした!

 

どうやらお父様が先生の攻撃をカウンターに捕らえたようです

 

その後、先生はガードを上げてローキックでお父様の足を攻撃し続けます

体格に勝る相手に対する定石…

お父様の表情が苦痛に歪みます!

 

でも…

 

盛男「言い忘れていたが…レスリングの経験もある」

英吉「言うつもりなんてなかっただろ!」

 

そう言った頃にはお父様は先生の蹴り脚をタックルで捕らえていました

効果的だったとはいえ、出し過ぎたためにタイミングを計られました

そして倒さず逆に先生を持ち上げ…

 

バッシィィィーン!!

 

頭よりも高い所から先生を床に叩きつけました!

 

穂乃果「せ、先生ぇーーーーーーー!!」

 

英吉「…大丈夫だ!」

 

辛うじて頭部からの落下は防がれたようですが、

それでもここは板の間、あの叩きつけのダメージは甚大な筈です…

 

盛男「…この程度か?

   昔、神奈川県警が手を焼いているという悪童の二人組の話を聞いた事がある

   鬼爆コンビの片割れ…鬼の鬼塚とは貴様の事だろう?」

   

英吉「…よくご存じでw

   ひょっとして俺のファンすか?」

 

盛男「しかし神奈川中の悪童の目の前で殺し合いをし、

   結果死んだと聞いていたが…

   まさか生きているとは…

   ゴキブリのような男だな!!」

   

!…先生はただ者ではないと思っていましたが、

そこまでの名の知れた強者とは流石に予想外でした…

 

しかし…殺し合い…とは?

真偽はどうあれ、こんな事を聞いたら穂乃果は…

 

穂乃果「先生が…殺し…合い…?」

 

ショックを受けるのは無理もありません…

でも…

 

穂乃果「でも…!

   でも先生は良い人だよ!

   面白くって…ちょっとエッチだけど…

   昔は悪人だったかもしれないけど…

   今は良い人だよ!!

   だって、今もこうやって私達のために闘ってくれてるよ!」

 

…杞憂でしたね

穂乃果、貴女は心根の強い人です

過去や風評に惑わされずに人を見ることができる人です

でも、それは私だって…!

 

そんな私達のやり取りをよそに再び、二人は闘い始めていました

一見、常に先生の方が攻勢ですが、有効打はほとんどありません…

 

逆に守勢の筈のお父様は先生の攻勢の間隙を縫って、

ボディブローやコンパクトな投げ技でじわじわとダメージを蓄積させていきます

 

それにしてもどうしてお父様は寝技に持ち込まないのでしょうか?

正直、それで勝負は決します

 

直後、お父様の口からこの疑問の回答がなされました…

 

盛男「下郎…楽に死ねると思うなよ」

 

英吉「あぁ…殺されるつもりなんて…ねぇよw」

 

…むごい!

ただ勝つだけでなく、なぶり殺しにする気ですか?

 

穂乃果「海未ちゃん、ゴメン…

   穂乃果、おじさんが怖いよ…!

   こんな怖い…おじさん見た事ない!

   気づいてる…?

   おじさん、今日ね、私の事、高坂君って呼ぶの

   前みたいに穂乃果ちゃん…って呼んでくれないの…!」

 

…それには私も気づいています

 

それにしてもここまで…

ここまでしなければならないほど、園田流が大事なのですか?

こんな風に人を傷つけてまで守らねばならないほど、園田流は重いものなのですか?

 

ゴッ!!

 

英吉「グガ…ァ…!」

 

園田婆「…!」

 

突如、今までの派手な音とは対照的な鈍い音が響きました…!

先生が呻きながら、頭を抱えて蹲っています!

 

恐らくお父様の投げの受け身を取り損ね、後頭部を強打したのでしょう

正直、もう見ていられません!

 

でも…絶対に目を逸らしてはならないのです!

先生は私達のために闘ってくれているのですから!!

 

穂乃果「海ちゃん、ゴメン…

   私もう…」

 

海未「ダメです!!!!

   その先を言っては…!

   先生との約束を忘れたのですか!!?」

 

穂乃果「!」

 

………………………………………

 

英吉「それよりお前らに頼みがあるんだ…」

 

海未・穂乃果「え!?」

 

英吉「もうこんなの見たくないとか、

   スクールアイドル辞めますとか、

   んな萎えるような事言うのは絶対ナシな…!

   

   …たとえ俺がどんなことになっても…な」

 

穂乃果「え!?」

 

海未「…はい!!

   しかと聞きました!」

 

穂乃果「!?…う、うん!」

 

英吉「ありがとな!

   …それともう一つ!」

 

英吉「もし…もしだぞ?

   俺が無様にぶっ倒れてたらさ…

   何か気合の入る事、言ってくれよ

   そうだなぁ~

   例えば…」

 

………………………………………

 

海未「そして今こそ…もう一つの約束を果たす時ですよ!!」

 

穂乃果「…うん!」

 

海未・穂乃果「先生!!!

       立ってください!

       立って闘ってください!!」

 

盛男「馬鹿な…!

   降伏を勧めるかと思えば、まさかこの状況で闘えなどと…!」

 

穂乃果「先生…!

    ファ、ファイトだよ!!」

海未「先生…勝ってください!!」

 

海未・穂乃果「私たち…スクールアイドル、続けたいんです!!」

海未・穂乃果「歌い続けたいんです!!」

 

その時…

 

私達の叫び…

 

私たちの想いが届いて…

 

先生は立ち上がりました!

 

盛男「信じられん!!

   あの打ち方は死んでもおかしくなかったぞ!?

   それなのn…!」

 

バキ!

ガス!

 

英吉「ぼぉーとしてんじゃねぇぞ、おっさん!

   俺はまだ死んでねーぞ!!」

 

盛男「ぐ、ふぅ…!」

 

驚愕するお父様の隙を突き、先生の左右の正拳突きが共に顔面に命中しました!!

そして鼻と口から血が滴り落ちます

そして一気呵成に攻勢に出る先生!

 

でも…すぐに冷静さを取り戻したお父様は防御に徹し、ダメージの回復を図ります

結局、有効打となったのは起死回生の正拳突きの二打のみ…

 

今度は逆に先生の表情に今までのダメージと打ち疲れの色が見えてきました

このままでは先程の展開を繰り返すだけです…!

 

何か…

何か打開策はないのでしょうか?

 

私達にも何かできないのでしょうか!?

 

 

 

…歌い続けたいんです!!…

 

 

 

ふと、先程の自分達の叫びが頭をよぎりました…

 

…これです!

 

海未「I say... ~♪

   Hey,hey,hey,START:DASH!! ~♪

   Hey,hey,hey,START:DASH!! ~♪」

 

穂乃果「!…そうだよ!

    私達、スクールアイドルだもんね!

    

    I say... ~♪

   Hey,hey,hey,START:DASH!! ~♪

   Hey,hey,hey,START:DASH!! ~♪」

 

私は歌いながら、穂乃果に頷きます

 

英吉「!」

盛男・園田母・婆「!?」

 

私達以外の四人は驚いています

しかし先生だけがいち早く我に返りました

 

…そして!

 

バッシィィィーン!

 

反撃の狼煙の如くお父様の顎を跳ね上げる先生のアッパーカット!!

不意の急所への一撃で流石のお父様もよろめいています!

 

英吉「よそ見してんじゃねーつったろーが!!

   せっかく人気急上昇中のスクールアイドル達が盛り上げてくれてんだ!

   俺らもアゲてこうぜ!!」

 

うぶ毛の小鳥たちも~♪

いつか空に羽ばたく~♪

大きな強い翼で飛ぶ~♪

 

盛男「こんなもの…!

   耳障りなだけだ…!!

   おい、今すぐ止めなさい!!!」

 

嫌です!!!

歌うのを止めず、私と穂乃果は眼でそれを拒絶します!

 

諦めちゃダメなんだ~♪

その日が絶対来る~♪

君も感じてるよね~♪

始まりの鼓動~♪

 

英吉「邪魔はさせねぇ…

   こいつらの歌は誰にも邪魔させねぇ!!

   こいつらの想いは誰にも踏みにじらせねぇ!!!」

 

明日よ変われ!~♪

希望に変われ!~♪

眩しい光に照らされて変われ~♪

START!!~♪

 

それにしても私達が歌い始めたのを機に先生の闘い方に変化が起きました

これまでは先生の風貌とは裏腹なクラシックな空手のそれでしたが、

今は野性的というか…変則というか…

 

簡単に言えば先生の見た目通りのならず者の闘い方です!

 

悲しみに閉ざされて~♪

泣くだけの君じゃない~♪

熱い胸 きっと未来を切り開く筈さ~♪

悲しみに閉ざされて~♪

泣くだけじゃつまらない~♪

 

でも…それが強い…!

さっきまでは悉くお父様の防御に阻まれていた攻撃が、

今度は悉くかいくぐり、そしてそのすべてが急所を穿ちます!!

やはりこれが先生の本来の闘い方なんですね!

 

きっと~♪

きっと~♪

君の~♪

夢の~♪

チカラ~♪

いまを~♪

動かすチカラ~♪

 

そしてとうとうお父様の鳩尾に先生の拳が突き刺さりました!

そのダメージでお父様の腰が落ちます

 

英吉「あんたと奥さんの馴れ初め、奥さん本人から聞いたよ…

   己の道を閉ざしてまで愛する女の思いを成就させてやった…

   男と尊敬する!!

   

   しかしな!

   どうしてその愛する女との間に生まれた娘の…

   思いは汲んでやらねぇんだよ!!」

 

盛男「…!!!!」

 

最後に…先生の喧嘩キック…というのでしょうか?

とにかくそれがお父様の顔面を捕らえ…

 

お父様は倒れました…!!

 

信じてるよ…~♪

だから START!!~♪

 

そして私達の歌も終わります…

…私達は先生の勝利を確信しました

 

でも…

お父様は立ち上がりました…

 

そんな…!

喜びが…落胆…そして絶望に変貌しようとした瞬間…!

 

園田母「盛男さん…!

    もう…もういいんですよ…!」

 

お母様がお父様に訴えました

そしてそれを聞いた途端、お父様の戦意はみるみる薄れていきました…

 

萎える…先生が言っていた事は…これだったんでしょうか?

そんな事を思い耽っていると、お父様が先生に話しかけます

 

盛男「若造…もう一度…名前を教えてくれんか?」

 

英吉「鬼爆コンビ 鬼の鬼塚、改め!

   …

   GTO!

   グレート・ティーチャー・鬼塚!!

   

   …夜露死苦ぅ!」

 

そう言って先生は勝ち名乗りの如く、右手の拳を虚空へ突き上げます!

そしてそれと同時にお父様は再び…地に伏しました…

 

園田婆「…それまで!!

    勝者は鬼塚英吉っ!!!」

 

海未・穂乃果「先生ぇーっ!!!」

 

穂乃果「ありがとう!」

海未「ありがとうございます!!」

 

私と穂乃果は号泣しながら、先生に抱きつきました

我ながら、はしたないですね…

でも…今だけはこうさせてください…

 

英吉「おいおいw

   …しかしまさかあそこで一曲歌ってくれるとは…サンキューな!」

 

海未「お役に…立てましたか?」

 

英吉「当然!

   あれ聞いて元気が出なきゃ確実にアウトだった…

   お前の親父さん、強過ぎだっつーの!

   

   ただ…」

 

海未「…ただ?」

 

英吉「もっとこう…気合が入る曲が良かったな!

   さっきのは喧嘩の最中にはちと甘ったるいw」

 

穂乃果「もう、先生!

    穂乃果達はロッカーでもヘビメタでもないんだから、

    そんな曲ないよぉ~!」

 

確かに…その通りですねw

 

…そんな私達のやり取りの外でお父様たちも何かを話しています

 

………………………………………

 

盛男「すまない…負けてしまったよ…

   明言していなかったとはいえ、この果し合いは海未の進路をかけたものだと思っている

   だから…」

 

園田母「いいんですよ…

   たとえ園田流が私の代で終わる事になっても…」

 

盛男「何故だい?

   君はあんなにも園田流の存続を…!」

 

園田母「…そうでしたね

    ですが私も子を持つ母になり、変わったんですよ

    お母様が私と盛男さんが結ばれるために園田流を畳もうと考えたように…

    一族の誇りより…我が子の幸せの方が大事になったんですよ」

 

盛男「やれやれ…私の…外様の余計なお世話だったというわけか…」

 

園田母「そんな風に思わないでください!

    その外様の貴方が我が事のように…

    いえ、我が事として大事に思っていてくださる事に感謝しているのは…

    今も変わらないのですから…!」

 

園田婆「…その通りじゃ!

    盛男さんが園田流の救世主である事に何の変わりもない!」

 

盛男「…勿体なきお言葉です

   おかげで私は道化にならずに済みました

   しかし…

   

   これで園田流は…終わりなのでしょうか?」

 

海未「待ってください!!!!!」

 

海未以外「!!?」

 

自分でも気が付かないうちに…私はお父様たちの前に立って叫んでいました

 

海未「私は…園田流を継ぎます!!!」

 

海未以外「!!」

 

海未「ですが…

   今は…

   音乃木坂にいる間だけは…!

   スクールアイドルでいさせてください!!

   どうか…暫しの猶予を…!」

 

お父様はいたく驚いた様子です

ですが…

 

盛男「…私にどうこういう資格はない」

 

寂し気に微笑みながら、そう言ってお母様、お婆様の方を見られました

 

園田母「しかと…聞かせていただきました

    認めましょう!」

 

園田婆「…うむ!」

 

盛男「鬼塚先生、聞いての通りです

   本当に今更ですが…それでも言わせてください!

   娘を…どうかよろしくお願いします…!」

 

英吉「…押忍!

   任せてください!」

 

盛男「それと穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「は、はい!」

 

盛男「君には散々酷い事を言って本当に申し訳なかった…!

   許してくれなど身勝手な事を言うつもりはない

   でも…願わくば…

   これからも海未と仲良くしてあげてほしい…!」

 

穂乃果「ゆ、許します!

    それに…やっと穂乃果ちゃんって呼んでくれたね♪」

 

そう言って涙ながらも無邪気に喜ぶ穂乃果に…

お父様は無言ですが今までのように優しく微笑みを返します

 

 

 

…こうして私の家出騒動は幕を閉じました

 

ですが先生とお父様、2人の負傷は激しく、

お父様は2週間…先生は1か月の入院を余儀なくされました

 

今回は本当に…私のせいでご迷惑をおかけするばかりか、

大怪我を負わせてしまい、申し訳ないの一言ではとても済ませられなく思います…

 

それでも…

本当にありがとうございました!!

 




真相


今日は私のためにお父様と闘い、負傷された先生のお見舞いに来ました

それと…
やはり…
どうしても聞いておきたい事がある次第です

海未「あ、あの…先生…
   こんな時に聞くような事ではないとは思うのですが…
   どうしても気になる事が…」

英吉「ん?」

海未「その…お父様が言っていた…
   殺し合いと言うのは…どういう事なのでしょうか…?」

英吉「何だその事かよw
  ありゃ、芝居だよ!
  お・し・ば・いww」

海未「え!?
   お芝居…なんですか?」

英吉「まぁ芝居と言っても演劇じゃなくて、
   殺し合いのフリをしたんだよ」

海未「えぇ!?
   それにしても…どうしてそのような事をするに至ったのですか?」

英吉「まぁ…ちと喧嘩で名を売り過ぎちまってな
   俺と鬼爆の片割れ…まぁマブダチの龍二って奴と…
   
   あ、マブダチってのは…」

海未「親友…の事ですよね!?」

英吉「お?
   漫喫に入り浸っていた成果だな
   得意げに答えやがってw」

海未「か、からかわないくださいっ!
   それよりも…」

英吉「あぁ…」

そう言って先生は件の「殺し合い」の顛末を教えてくださいました

先生と龍二さんお二人の武勇は親友同士ながらも神奈川でも一二を争う物となった事…
そんな武勇に惹かれてお二人それぞれを慕う人たちが大勢集った事…
しかしその人たちがお二人の思惑から外れてお互いに反目し始めた事…
そしてお二人の些細なじゃれ合いを切っ掛けに大乱闘を始めた事…
自分たちの一挙手一投足が大事に至る事にお二人は窮屈さを感じた事…
そしてそんな取り巻き達の目を覚まさせるため狂言の殺し合いを演じた事…

英吉「…で、お互い偽物のナイフでそこそこ刺し合った後…
   あ、そのナイフ、刺すと刃が引っ込むと同時に血のりが噴き出す優れものなんだぞ?
   
   …最後はまぁ喧嘩なんて痛てぇばっかで馬鹿らしいって感じの事言って、
   龍二と仲良く海に飛び降り自殺のフリしてトンヅラしたってわけよ
   こんな事やってるとお前らもいずれ死んじまうぞ…ってな!」

海未「は、はぁ…な、何といえばいいんでしょうか…
   あまりにも色々と突拍子がなさ過ぎて…
   
   でも…それが先生なりの責任の取り方だったんですね?」

英吉「ちなみにそういうのを落とし前を付けるって言うんだぞ?
   
   まぁ要するに俺は殺しなんてやってねぇし、
   当然、龍二とは今もよろしくやってるよ!
   
   …マブダチだからなw」

海未「そうですね…それを聞いて安心しました」

英吉「そういえば俺は音ノ木坂に転任の際にこっちに引っ越してきたけど、
   あいつは今も吉祥寺で雇われだけどバイク屋の店長やってるよ
   
   そうだ!
   今度紹介してやるよ!」

海未「え…!?
   そ、それは…」

せ、先生のお友達…!?
きっとその方も冴島さんの様な悪人顔でセクハラ発言を旨とする方なのでは…?
そう考えるとどうしても快くお返事する事ができません…!

海未「と、とにかく…
   早くお元気になってくださいね?
   私達、先生の復帰をお待ちしております!
   では…失礼します!!」

英吉「お、おぅ…!」


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第12話 再起です

園田海未です

家出の件も解決し、登校を再開しました

そして絵里達に心配をかけた事を謝罪し、

伏せるべき所…先生と私が致したと誤解されて通報された件、

殺し合い云々…は伏せましたが、出来る限り全ての事情を報告した次第です

 

真姫「どうして男ってこうなのかしら?

   なんでそこで闘っちゃうわけ?

   …意味わかんない!」

 

花陽「暴力は良くないと思うけど…

   それでも男の人達が女の人のために闘う!

   そんなシチュエーションは憧れちゃうなぁ…」

 

…花陽が想像するような所謂、三角関係的なものとは違うのですが、

まぁ置いておきましょう

 

凛「それにしても先生、

  強いんだろうなぁ~って思ってたけど、

  そこまで強かったんだにゃ~!」

 

穂乃果「うんうん!

    ホントに凄かったよ!!

    最初はおじさんの方が強かったんだけど、

    穂乃果と海未ちゃんが応援して、

    歌い始めた途端…

    

    一気に勝っちゃったんだよ!!」

 

絵里「ハラショー!!

   なんてドラマチックな勝ち方なの!?

   これは…先生だけじゃなく海未、穂乃果、3人の勝利ね!!

   

   …って、ごめんなさい!

   海未にとっては複雑よね…?」

 

海未「いえ、気にしないでください

   後で考えを改めて頂けたとはいえ、

   私も今回は完全に鬼塚先生を応援していましたので…」

 

にこ「それにしても先生の素性はネットで一応は知ってたけど、

   どれも途方もなくてマユツバだったのよね…

   でもこれは多分…」

 

絵里「それよりも1ヶ月も入院なんて…

   今更だけど相当な重傷を負われたのね…」

 

海未「はい…

   この事ばかりは本当に申し訳ないとしか言いようがありません…」

 

真姫「あんまり気に病む必要ないんじゃない?

   お父さんから聞いたんだけど、

   全身の骨にひびが入ってるとは思えない元気さらしいわよ

   

   この前だって比較的元気な患者さん達集めて、

   車椅子レースとかやってたらしいもん!」

 

凛「流石、先生だにゃ!」

 

そういえば先生は真姫のお父様の病院に入院されています

先生、お元気なのは何よりですが…あまりご迷惑にならないようにお願いします

 

ことり「……………」

 

希「…どしたん?ことりちゃん」

 

ことり「え?…ううん、何でもないよ?

    私も花陽ちゃんや絵里ちゃんと同じかな?

    ドラマチックだよね」

 

希「…そっか」

 

…今思えば、明らかにことりの様子はおかしかったのです

 

ですが私は家出中の遅れを取り戻すため、

穂乃果は先生の健闘に触発されて、いつも以上に張り切っていたため、

この時はそれに気づけませんでした

 

そしてことりの異変に気づかない程の直向さは、

皮肉にも別の事故に発展しました…

 

学園祭当日、雨の中、決行した屋上ライブで私と穂乃果は過労のため、倒れてしまったのです

 

絵里「穂乃果ぁ!!」

真姫「海未ぃ!!」

 

当日は起床時から意識がはっきりしていませんでしたが、

絵里と真姫の叫び声だけは鮮明に覚えています…

 

幸い、私も穂乃果も数日の静養で体調は回復しましたが、気持ちは沈んだまま…

 

私達がライブを中止にさせてしまった事もさる事ながら、

静養中に絵里達から聞かされたラブライブ出場の辞退…

 

これまでの無理が祟ったのではないかという理事長の指摘に従っての決定との事ですが、入院中の鬼塚先生にも既に報告済みとの事です

 

理事長から報告を受けた鬼塚先生は…

 

英吉「そっすか…それは残念すね…

 

   …でも!

   解散というわけじゃないんでしょ?

   せっかくあいつら目当てに入学を希望してくれる子達もいるんです

   あいつ等ならきっとその子らの期待に応える

   パフォーマンスを見せてくれるっすよ!

   

   …きっと何があっても!」

 

そうです!

ラブライブという大きな目標は無くなってしまいましたが、

元々は音乃木坂の存続のためにμ'sは結成されました

 

努力の甲斐があって廃校は見直しとなり、

来年度も新入生を募集することになりましたが、

正直それ以降は分かりません

 

先生の言う通りです

来年度の新入生にもっと…さらには再来年度以降の希望者の方達にも

音ノ木坂を気に入ってもらえるように今後も活動を続けるべきなのです!

 

もちろん、もう倒れたりしない無理のないペースでですが…

 

しかし、そうして皆が発奮して再び本格的にスクールアイドル活動を再開しようとした矢先…

次の問題が発生しました

 

…ことりの留学です

 

以前、先生の家を訪問した日、家族との外食のために途中で帰ったことりですが、

その食事中にある高名なファッションデザイナーの下で本格的なファッションの勉強をしてみないかと話されたそうです

 

あまりに予想外の事態に私と穂乃果は祝福の言葉もそこそこに問い詰めてしまいました

 

どうしてもっと早く教えてくれなかったのかと…

 

ことり「ずっと相談したいって…思ってたよ!

    でも…海未ちゃんが家出して、

    心配で自分の事どころじゃなかったよ…

    

    戻ってきてくれてからもそう…

    みんな学園祭の準備の追い込みでみんないっぱいいっぱいなのに…

    そんな時にとても言えなかった…

    

    それに穂乃果ちゃんと海未ちゃんが倒れちゃって…」

 

…返す言葉がありませんでした

 

立て続けの私事でことりの相談の機会を奪った私達にことりを問い詰める資格などないのです…

 

その日から…

ことりは練習や部室に来なくなり…

私達を避けるようになりました…

 

この事を私と穂乃果は未だ入院中の鬼塚先生に相談しました

当然と言えば当然ですが、先生はラブライブの辞退を聞いた時に合わせて、

ことりの留学の事も聞いていたとの事です

 

ただ…ことり本人の口から伝えるべきことだとして、

私達に黙っていたことを悔いておられました

 

そして…

 

英吉「で…お前らはどうしたい?」

 

そんな問いかけをされました

もしかしたら私の時のように助けてくださるのかと、思わず期待を抱きました

 

でも今回は私の時とは違い、ことりが望んだことです

それを阻む事はもちろん、それを望む自体許されない事なのです

 

海未「私達は…残念ですが…

   ことりの将来を考えるのなら、この留学を祝福すべきだと…思います」

 

英吉「お前ららしい優等生な回答だな…

   でもお前ら、祝福するんなら笑顔でないと…な」

 

穂乃果「だって…だって悲しいんだもん!

    さびしいんだもん!」

 

気づけば私達は泣いていました

確かにこんな顔で…とても祝福しているとは言えません…

 

英吉「すまん…悪かったな

   俺ぁお前らと違って優等生じゃないんでな…」

 

自己嫌悪です…

私達のために傷ついた先生に八つ当たりなんて…!

 

気づけば私達は逃げるように先生の病室から退室していました

そのため…先生がこう言っていたのを聞き取れていませんでした…

 

英吉「そう…俺は優等生じゃねえんだよ…」

 

…………………………………………………

 

ことりが来なくなってからも…

そしてことりが日本を発ったこの日も…

私達は8人で練習を続けています

無理が祟って苦い思いを経験したにもかかわらず、一心不乱に練習に取り組んでいます

 

でも…

そうでもしないと…

ことりがいなくなった事を意識してしまうから…

 

それでも…

どうしても…

ことりの事が忘れられません…!

 

そんな折、ふと私はある思いを穂乃果に投げかけました

 

海未「穂乃果…

   正直、ことりの留学をきっかけに…

   もうスクールアイドルを辞めると言い出すんじゃないかと思ってました…」

 

穂乃果「…言えるわけないよ

    だって…!

    …海未ちゃんだって同じでしょ?」

 

海未「えぇ…

   鬼塚先生は命がけで私の退部を取り消してくれました!

   だからたとえ穂乃果、貴女が辞めると言っても私は残ります…!」

 

穂乃果「…そうだよ!

    あんなになってまで海未ちゃんを守ってくれた先生の頑張りを無駄にしたくない!!

    

    …でも!

    やっぱり辛いよ!!!

    

    せっかく海未ちゃんが戻って来たのに…今度はことりちゃんが…!」

 

絵里「…」

希「…」

にこ「…」

真姫「…」

凛「…」

花陽「…」

 

…誰も穂乃果の慟哭に応えられませんでした

 

そして長い沈黙が始まろうとしたその時――――

 

英吉「おぅ!お前ら!!

   元気にしてたか!?」

 

何と…!

まだ後一週間は入院中の筈の先生が突然やってきました!!

 

穂乃果「先せ…いぃ!!?」

 

大きな袋「んー!んー!

     うー!うー!」

 

絵里「…ハ、ハラショー…!」

 

先生が突然やってきました!

大きな袋を背負って…

 

大きな袋「むー!むー!」

 

真姫「一体、それ何なのよ…!

   …イ、イミワカンナイ!!」

 

大きな袋は何かが入っているようで、しきりに蠢き、呻きます…!

 

みんないつも必要以上に元気な先生が来れば、

この悲壮感漂う空気を払拭してくれるのではないかと期待しておりました…

 

大きな袋「んー!んー!」

 

そして先生はそんな悲壮感を一掃してくれました!

 

ただしその方法は予想外過ぎましたが…

 

大きな袋「うー!うー!」

 

それにしても…何が入っているのでしょうか?

 

蠢き、呻いていることから生き物だと思うのですが、

人間ほどの大きさがあります…!

 

しっかりと先生が袋の口を握ってはいますが、

こんな大きな生き物がいつ飛び出してくるかと思うと、

もう先程の悲しみなど完全に忘れて恐怖と緊張が走ります…!

 

大きな袋「むー!むー!」

 

英吉「それにしてもすっかり麻酔が切れちまったな

   まぁ起こす手間が省けていいかw」

 

花陽「あ、あの…先生?」

 

凛「その袋の中身は…何なのかにゃ?」

 

英吉「ん?

   これはお前らが今、一番欲しいものだと思う!」

 

にこ「いえいえいえ、私達別に動物なんて欲しくないですよ!?」

 

英吉「いや、生き物は生き物だけど、どちらかと言えば…鳥?」

 

希「鳥?…エラい大きな鳥…やねぇ…?」

 

英吉「まぁとりあえず出すぞ?」

 

穂乃果「ちょ、先生、出して大丈夫なの!?」

 

英吉「大丈夫だって!

   今は手足縛って、口もガムテで塞いでるから咬んだりしねぇよ!」

 

海未「そうですね…そろそろ出してあげてください」

 

海未・英吉以外「ええぇ!!!?」

 

この呻き声…

大きさ…

そして鳥…

何より今までの先生の無茶苦茶さ加減…

 

それらを統合すると私はとんでもない答えに気づいてしまいました…

 

英吉「じゃあ出すぞ?

   …ホイ!」

 

海未・英吉以外「ええぇ!!!?」

 

海未「お、お帰りなさい…」

 

海未・英吉以外「ことり(ちゃん)!!!!??」

 

袋の中から出てきたのは両手両足を縛られ、口をガムテープで塞がれたことりでした

とりあえず先生と穂乃果と私はそれらの拘束を解いていきます

 

ことり「はぁ…はぁ…

    死んじゃうかと思ったよ…」

 

英吉「わりぃわりぃ

   どうしても…

   どうしてもお前とこいつらに確認したい事があってな

   

   だから…空港から拉致ってきたぜ!」

 

穂乃果「ら、拉致って来たって…!」

 

希「今日の占いでは思いがけない出会い有りと出てたけど…

  思いがけなさ過ぎるわ!」

 

海未「な…何なんですか!?

   それは!

   今回ばかりはふざけるにしては度を越しています!!

   本当なら…ことりは留学先に向かう飛行機の中にいるはずです!

   

   それなのに…こんな…生徒の将来を…」

 

私は嫌な子です…

本当は…思いがけずことりと…再会できて嬉しいのに…またこんな小言ばかり…!

 

そんな風に私が自己嫌悪に陥ってると、

先生が何かを取り出しました

 

英吉「俺が自腹で用意した来週の便の…南の留学先行きのチケットだ

   テキトーに言い訳すりゃ到着が1週間遅れるくらい大目に見てくれるだろ…

   

   …長期留学なんだしさ」

 

そのチケットを見ると胸が苦しくなりました

先生を非難しながらも…どこかでことりと別れなくて済んだと安堵していたのが、

ただの先延ばしだと実感させられました…

 

英吉「で…ここから本題だ!

   お前ら…どうしたい?

   んで…南にどうしてほしい?」

 

絵里「やっぱりこのまま留学…すべきだと思います

   将来の事を考えると…」

 

にこ「私もそう…思います

   せっかくのチャンスなんですから…」

 

チケットをチラつかせながらの先生の問いかけに対して、

絵里とにこが搾り出すように答えます

 

英吉「ご立派な模範解答だけど…

   どーにも歯切れが悪いな!

   これだから優等生のお嬢様方はよぉ~」

 

真姫「…当たり前じゃない!!

   正しくったって…

   仲間と…ことりと別れるのは…悲しいんだから…!」

 

英吉「…だよな」

 

花陽「そうだよ…

   やっぱり…寂しいよ…」

 

凛「凛もだよ…

  かよちんがそう言うからじゃない!

  凛だって寂しいよ!」

 

ことり「みんな…ごめんなさい…」

 

絵里「みんな…ことりを…困らせちゃ駄目…よ…」

 

にこ「そうよ…ここは…笑って…送り出してあげるところ…よ!」

 

そうなのです…

先生にも言われましたが、にこの言う通りです

でも…

 

どうしても笑顔になんて…なれないです…!

 

英吉「…穂乃果!!」

 

…先生が穂乃果に強く促します!

 

そして穂乃果は…私達の気持ちを代表して言ってくれました!

 

穂乃果「ことりちゃん!

    …行かないで!!

    

    我儘だって…わかってる!

    せっかくのチャンスを台無しにさせてしまうかもしれない!!

    

    でも…行かないで!

    私は…私達はことりちゃんと一緒にいたいの!!

    ことりちゃんとスクールアイドル続けたいの!!

    

    離れたく…ないよぉ…!!」

 

英吉「…だそうだ

   それで南、お前はどうなんだ?

   どんな答えでもいい!

   穂乃果がはっきりと言ったようにお前もそれに応えてや…!?」

 

先生が言い切る前にことりは無言で答えてくれました!

ことりは先生が弄んでいたチケットを奪い取り…

 

英吉「!!!!!!!!!!!???」

 

ビリビリビリビリビリビリッ!!

 

何と勢いよく細切れに破ってみせたのです!!

 

ことり「これが…私の答えだよ…

    みんな…ごめんね?

    そして…ありがとう…!」

 

そう…ことりは涙塗れの微笑みとともに応えました…

 

海未「…ことり!!

   見事です!

   貴女の答え…しかと…しかと受け取りました!」

 

穂乃果「ことりちゃん…お帰り!!」

 

希「やっぱり…μ'sは9人おってこそ…

  μ'sやね!」

 

こうしてことりの留学の意思はなくなりました

ことりの将来を思うと心苦しいのですが、

このまま自分達の気持ちに嘘をつき続ける事を考えればこれでよかったのかもしれません

そしてそれはことりも同じでしょう

 

だって…今のことりの顔はこれ以上ない程に幸せそうです!

 

海未「先生…これで良かったんですよね?」

 

私の問いかけに応えず、先生が号泣してます

 

英吉「………」

 

でも感動しているというより…

怒ってます?

 

海未「せ…先生?」

 

英吉「…良くねぇ!!」

 

花陽「えぇ!?」

絵里「ど、どうしてですか!?」

 

英吉「どうしてって…

   お前ら、あのチケットいくらしたと思ってんだよぉ~!!」

 

にこ「あ…確かに…」

 

ことり「ご、ごめんなさい…

    つい勢いで…!」

 

英吉「お、お前…勢いでって…」

 

真姫「何よ!

   せっかくみんな感激してる時に!

   たかがチケット一枚でケチ臭いのよ!!」

 

英吉「このブルジョワめ!

   お前に薄給の俺の気持ちがわかってたまるかぁー!!」

 

ことり「せ、先生!

    私、お母さんに頼んでみるね?」

 

英吉「頼むぜ!

   あれを払い戻せないと俺、どうな…?」

 

そこへタイミング良く理事長がやって来ました…

 

理事長「ことり!

    やっぱりここにいたのね!」

 

英吉「理事長!

   聞いてくださいよ!

   あんたの娘さん、俺が用意したチケット、破いちゃったんすよ!」

 

先生、当然のようにチケット代を請求しようとしてますが、

今のご自身の立場、分かってらっしゃいますか?

 

…チケットを破られたショックで忘れられてるんでしょうか?

この人さらいは…

 

理事長「!…先生もいらっしゃったんですね?

    実は私も先生にお話があったんですよ!

 

    ほら…ことりを連れ去った件とか…!!」

 

英吉「!!」

 

こ、怖いです!!

こんな般若の様な形相の理事長は見た事がありません!

そんな形相の理事長は逃げようとする鬼塚先生の耳を引っ張って連行します

 

英吉「痛てっ、痛ててててててっ!

   ちょ!

   千切れますって!!」

 

しかし去り際に…

 

理事長「ことり、私は貴女の気持ちを尊重します

    後の事は私に任せて、貴女は今やりたい事を頑張りなさい!」

 

この時だけはいつもの優し気な理事長の顔です

そして…再び鬼塚先生を引っ張って、この場から立ち去られました

 

ことり以外「お帰り!

     ことり(ちゃん)!!」

 

ことり「ただいま!!」

 

ようやくみんなの笑顔が戻ってきました

そして…

 

μ's全員「あははははははは!」

 

笑い声も…!

 

これらを取り戻してくれたのは鬼塚先生のお陰です

 

…正直、鬼塚先生は教師として色々問題のある方です

ですがその破天荒さは私達には出来ないどころか、

考えもしない力技で色々な問題を解決してくれます

 

私達は…そんな先生を何だかんだで頼りにしています!

鬼塚先生、これからもよろしくお願いしますね!

 

 

 

――――第一部 完――――

 




第二部ダイジェスト予告!
 
 
ツバサ「そう…率直に言うと引き抜きです
    そうですね~
    来ていだたけるんならギャラは倍、そして特別宿直室の居住権、さらには…
    練習後に私達3人、マッサージを…」
英吉「し、してくれるの?
   それともさせてくれるの!?」
海未・絵里「先生!!!!」
英吉「じょ、ジョーダンだよ!」
ツバサ「そう!冗談です♪」
英吉「なに――――――――――!!?」

…………………………………………………

英吉「まさか郁也、お前がA-RISEの顧問になっているとはな…」
郁也「彼女達は…A-RISEは卒業と同時にウチの事務所からのプロデビューが既に決まっている
   悪いが今回もA-RISEがラブライブを制覇して、
   彼女達のプロデビューに弾みをつけさせてもらうぞ!」

…………………………………………………

海未「ふ…このような普通の接吻シーンなどw
   鬼塚先生が所持されているDVDに比べれば子供騙しですよ…」
ことり「う、海未ちゃん…
    一体、何を観たの…?」

…………………………………………………

海未「本当に…鬼塚先生はいつもこうなんですよ!」
内山田「わかる!わかるよ園田君!
   君の気持ちは痛いほどよく分かる!!」
海未「嬉しいです!
   わかっていただけるんですね
   内山田先生もやはり相当なご苦労を…!」

…………………………………………………

海未がいない間、私が先生を制御しないとダメね!
絵里「先生、この臭い…またどこかでタバコを吸われてましたね?
   海未に何度も言われていると思いますが、音ノ木坂の敷地内はすべて禁煙です!」
英吉「な、なんか絢瀬、今日は厳しくないか?
   いつもは園田からかばってくれるのによぉ!」
凛「なんか昔の絵里ちゃんみたいだにゃ!」

…………………………………………………

海未「申し訳ありません!
   鬼塚先生の無二の親友と聞いておりましたので、
   弾間さんもてっきり冴島さんのような方だと思い込んでおりました…」
龍二「園田さんと言ったよね?
   頼むから…頼むからあいつとだけは一緒にしないでくれ!!」
こ、こういった凄んだ時の迫力は流石に鬼塚先生のお知合いと納得です!!

…………………………………………………

荒羅木「スクールアイドルも…
    ラブライブも…
    規模が大きくなり過ぎた
    そうなればそれなりの秩序、統治が必要…
    …だと思わんかね?」

…………………………………………………

英吉「ダチと舎弟が総出でお前らの花道を用意してくれたぞ!
   …雪の花道をな!」
海未・穂乃果・ことり「先生、皆さん…ありがとう!!」
英吉「さぁ園田、乗れ!」
海未「はい!」
英吉「龍二!冴島!
   ことりと穂乃果を頼むぜ!」
龍二・冴島「任せろ!」
ことり・穂乃果「よろしくお願いします!!」

…………………………………………………

英吉「スクールアイドルはなぁ…
   ラブライブはなぁ…
   テメェら薄汚ねぇ連中が土足で踏み込んで、
   喰いモンにしていいもんじゃ…
   …ねえんだよ!!!!!」

…………………………………………………

先生…私は信じてます!
たとえ獄中に堕ちられても…
貴方の中に正義があったんだという事を…!


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