とある科学の闇少女 (Rei0000)
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闇夜は知らぬ間に
『ふわぁ〜』
あくびが出るほどに退屈だ。
黒いパーカーワンピースのフードを被り、コンビニで買った炭酸水をコクコクと飲みながらあてもなく歩く。
部屋にこもっていることが多いがたまには外に出てみようと思ったら、思いもよらぬ8月の暑さにやられてしまった。
本来なら学校に行っている時間帯だろう。
なにせ私は学生、中学生である。
まあ詳しいプロフィールは語らないでおこう。
どこにでもいる、わりと普通な中学生だと自覚している。
さてこの暇をどう潰そうか。普段それなりに忙しい日々を送っているので
暇があればやりたいことはいろいろあったはずなのに案外有効に使えずにガッカリである。
とりあえず、私にとっての生活必需品である飴を買いに行こう。
袋に入っているフルーツ飴。
家にあるストックもあと10袋くらいになっていたような気がする。
多すぎるって?
まあ私の体の7割は炭酸水、2割は飴でできているからそう考えれば普通でしょう?
近くにあった売店に入ったら漫画の立ち読みをしている知り合いを見つけた。なんとなく面倒で声をかけずにスルーしようとすれば掛けられてしまうのが運命なのか
「あら?
そう声をかけてきたのは茶髪のショートカットで名門常盤台中学の制服を
着ている少女。学園都市第3位超電磁砲こと御坂美琴である。
『どうも。久しぶりですね美琴。相変わらず元気そうです。』
美琴「こっちも月乃の変な喋り方聞いて安心したわ」
『こればっかりは癖なのでどうしようもないです』
普段は誰に対しても敬語、そんでもって呼び捨てというなんとも言えない組み合わせで喋るのが
美琴「最近変なことに首突っ込んでないでしょうね?月乃もあのバカ並みにしょっちゅう色んなことに巻き込まれてるんだから」
『あのバカ、が誰を指すかは知りませんけど美琴には言われたくないですよ。美琴はすぐ無茶するから心配なんです』
1人ではどうしようもできないこともどうにかしようとして空回りするのが彼女のよさであり悪さである。
美琴「私を誰だと思ってるのかしら?学園都市第3位よ?」
『わかってますけど。まあなんにせよ気をつけてくださいね。』
美琴「月乃こそ気をつけなさいよ。能力だってないんだし、月乃はヒョロヒョロしてるし』
ヒョロヒョロしてるは心外である。
ちなみに彼女が私が無能力者だと思っているのは、私自身がそう話したからである。
本当か?そんなのどっちでもいいだろう。
『そんなことないです。それじゃあ私はこれからちょっと用事あるのでそろそろ失礼しますね。ばいばいです。』
彼女が私がレジに持って行った大量の飴を引いた目で見ていたことは気づかなかったことにしようと思う。
さて売店から出て。ある程度の場所まで来て。裏道に入って。
ここからはお決まりの展開である。
「おいおいお嬢ちゃん、こんな時間にこんなとこいていーのかあ?」
こんな時間と言えどまだ17時過ぎである。
不良に絡まれるには少々早い時間な気がするが気にしないことにしよう
『や、やめてください…!』
可愛らしく怖がる演技なんかしてみて誰かが助けてくれるのを全力で待とうと思う。
「楽しいこと俺らが教えてやんよー?」
「ほら、こっち来いってー」
腕を掴まれて体が傾き、思わずその場に倒れ込む。
『いや…っ!』
そろそろ王子様に登場してほしいものだ。演技し続けるにしても少しばかり長い。ぶつくさと言っている不良達を横目にビルの屋上へと目を向ける。
ほら、そこにいるんじゃないか。
「てめェらガキに手ェ出してんじゃねェぞ。」
とりあえず感動の笑顔を浮かべてみて。
彼が不良を吹っ飛ばすところを眺めて。
『あの…!助けてくれてありがとうございます。ほんとに助かりました』
可愛らしいヒロインを演じてみる。
「なんだァ?その気持ちの悪りィ喋り方はよォ?
そんなに俺に殺されてェのか?あァ?」
もう少し優しく扱ってくれてもいいと思うんだ。
『
そして用件はなんですか。私に会いに来るのは用がある時だけでしょう』
一「さすが話が早ェなァ
仕事だ。手伝え」
何回言えばわかるのだろうか。
『そろそろ月乃って呼んでくださいよ』
一「それだって偽め…」
すっと彼の口元に人差し指を当てる。
『何か言いましたか?』
日は暮れた。
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闇夜は知らぬ間に 2
添えた人差し指は無念にも弾き飛ばされ私は宙に浮いた。
『私ワンピースなのできちんと抱えてほしいです』
話す内容が内容なら人目につくところは避けたいのだろう。
彼の行き先はいつも決まって同じ廃ビルの屋上である。
一「チッ。離すんじゃねェぞ。」
彼が地面を一蹴りすればあっという間に屋上へ。
本当に便利な能力だと思う。私も日常生活で手軽に使える能力が良かったと思わず思ってしまう。
彼だけでなく多くの人が知らないだろう。
まああまり褒められた能力の身につけ方はしていないのだ。
『それで仕事ってなんですか。一方通行は最近お忙しいと聞きますけど』
一「知ってるなら話は早ェ。簡単に言えば調べてほしいことがある。
いきなり深いところを突いてくる。いくらなんでも中学生には重すぎる話であるというのに。調べたい事柄があるなら情報屋を当たればいいのに
なぜ私にわざわざ聞いてくるのか。私の能力についてどこまで知っているかは定かではないが正直ここで細かなことを答えることは私にはできないのだ。
『あなたが超電磁砲の
当事者のあなたが知らないことを私が知っているわけないでしょう』
彼にいつか聞かれるだろうとは思っていたが、まあ思ったより早くこの時が来たというところだろうか。そもそも彼は本当の私のことなど何も知らない。
一「そォか。まあ今はまだいいンだけどよォ。ちょっとオマエのことを耳に挟んでなァ?振り返ってみりゃオマエのことなンぞ知らねェんだよなァ?」
『それが中学生のか弱い女子にいう言葉ですか。
私はLevel0の
一「あァそうかよ。じゃあこれが仕事だ。もしどこかで絶対能力進化実験について聞いたらすぐに俺に伝えろ。やらなかったらどうなるかわかってんだろォな?」
彼は色々と勘違いしている。私は脅せば従うとか私は暗部の駒だとか。どれもこれも大間違いなのに。
『いいですよ。まあどんなに待っても伝えることは出てこないと思いますけどね。』
私なりの反抗。脅しに屈するつもりはない。とはいえ彼に死んで欲しい訳でもないので。
『私から一つアドバイス。思いもよらぬ方向からの隠し刃にどうぞ気をつけてください。』
一「あァ⁉︎俺が誰かに負けるとでも思ってンのかァ?」
『空を飛びたいです。連れてってください、一方通行』
一「勝手に落ちてろ」
強い風が吹いて
『もう月が出始めましたか』
一「オマエの余裕そうな顔が死ぬほどムカつくんだよなァ?」
『おねがいだから急降下しな、やめてくださいとってもこわ…あぁ』
その先は言わずともわかるだろう。
なんだかんだ言いながらもきちんと私の願いを叶えてくれる彼に私は死んで欲しくない。
ずっと
あの時美しいと思った月にもうすでに重たい雲がかかり始めてしまうことをこの時の私はまだ知らない。
はじめまして、Reiです!
勝手がわからずゆっくりのんびり投稿ですが
評価やコメントなどしていただけると嬉しいです!
私自身がかなり年齢も若いためとてもひどい文章になるとは思いますがどうぞよろしくお願いします。
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闇夜は知らぬ間に 3
彼と別れてから改めて会話を振り返ると色々疑問というか困った点が浮かび上がってきた。
彼が私について耳にしたということ。しかもあの感じだと間違いなく暗部の人間から聞いたのだろう。それは私に関する情報が流れる辺りにまで彼が踏み込んでいるということ。
そして何より問題なのは、その聞いた内容が
彼がどこまで知っているかどうかは知らないがある程度私も私自身に関する情報を集める必要がありそうだ、ということはハッキリした。
そうと決まれば情報を集める。手段はもちろん「情報屋」を頼るのが正解だろう。
『よっと…』
移動手段に関してはあまり細かいことを問わないでほしい。
やってきたのは私の住処があり情報屋の住処がある第七学区。ここは表側だけを見れば学生の街として賑わう楽しい場所。しかし一度振り返れば様々な陰謀や思惑が渦巻く闇の世界。
だからこそ煌びやかなネオンはより美しく見えるのだろう。
そうこうしているうちに着いた一つのマンション。
ピンポーン
チャイムを押したものの反応はない。無心で押し続けていたら
ガチャリ
ようやく扉が開いた。
隣の家の扉が。
「多分土御門今は留守ですよ。」
親切にも教えてくれたのは今話題の彼だった。
『そうだったんですか。じゃあ彼が帰ってきたら夜凪が来たと伝えてもらえますか?』
上「夜凪…もしかして夜凪月乃さんでいらっしゃったりします?」
おっと。彼が私を認識しているのは予想外すぎる。
『なんで名前を知ってるんですか、当麻?』
なんとなく悔しさからこちらも君を知っているよアピールをしてみる。
上「横の人からよく名前を聞いてたんです、てかなんで俺の名前知ってんだ?』
明らかに私は年下だと確信したのか敬語を外して話してくれるようになった。毎度のことだが私の見た目で敬語を使ってくる奴なんてそうそういないので結構ありがたかったりする。
『たまたま知人から聞いただけですよ。改めて、夜凪月乃です。よろしくです』
上「俺は上条当麻。なんか変な繋がりからだけど改めてよろしくな。」
本当に優しそうな普通の高校生。まぁその右手がなければの話だけれど。
そしてどうしても彼に尋ねたいことがあった。土御門のことなどどうでもよくなるくらいに尋ねたいことがあった。
『当麻はロリコンでコスプレしてる子が好きなんですか…?』
ずっと陰から見えている小さな女の子についてしっかりと説明してほしい。
土御門からの影響の受けすぎで彼の趣味嗜好もちょっとばかり偏ったほうに行っているのだろうか。
上「上条さんには決ッっっしてそのような趣味はございません!!」
「そうだよ、これはコスプレじゃなくて歩く教会なんだよ。しかもそんなに引いた目でみられるとちょっと傷つくかもなんだよ!」
『しゃ、喋った…』
いやいや人形なわけあるか。そう心で突っ込みつつ言わずにはいられなかった。なぜかわからないが彼女からは変な雰囲気が漂っている。何とも言えないが。
『シスターさんって学園都市の住人じゃないですよね』
禁「なんでわかるの?あなたすごいね!私は…」
上「頼む!その続きは部屋で!頼む!」
そのまま引きづりこまれてしまった。
いつになったら私の用事は済むのか。話が進むのか。
束の間の
月に雲がかかったかどうかなんてカーテンを開けなければわからない。
まだ、あと少しだけでいい。
ただの中学生でいたいんだ。
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闇夜は知らぬ間に 4
『つまりそちらのシスターさんは学園都市の住人ではなく
でもよくこんなにも厳しく管理されている学園都市に忍び込めましたね…』
禁「シスターさんじゃなくて
なるほど。私は魔術についての知識はほぼ皆無と言っていい。とはいえそういう力がこの世にあることが信じられないというわけではない。ただ「当麻が助けた」というところは少し引っかかるところだった。
『具体的に助けた、というのは?当麻は能力者じゃないですよね?」
上「俺の右手は
要するに彼の右手は異能ならなんでもこいということか。とはいえ
『なるほどです。まぁ理解しがたいところもたくさんありましたけど、とりあえずはわかりました。あ、インデックス一つお願いを聞いてもらってもいいですか?」
彼に話しておくべきことがある。彼は今後上層部から必ず狙われる。魔術に関しては私にできることはあまりないと思うからこそ学園都市の中での危険をできる限り減らしてあげたいと思う。
そんなことをする義理はない?いやいや十分に理由はある。彼は私がインターフォンをおして返事がなくて困っていたら助けてくれた。そんな優しい青年、なかなかいないだろう?
それに無意味な殺人はできる限り避けたいし、暗部の動きの把握のためにも彼に死なれては困る。
優しさと利益のために、私はできる限り彼を守ろう。
『このお金でなにかお菓子を買ってきてくれませんか?私は土御門がくるのをできれば待ちたいなって思うんですけど、お願いできますか?』
禁「こんな大金使っちゃっていいの!?全部、お菓子に使っていいの!?」
『もちろんです、お願いしてもいいですかね?」
禁「もちろんなんだよ!すぐ行ってくるんだよ!」
そういって彼女はすぐに買い物へと向かってくれた。…扱いやすくて助かった、なんて。
上「突然お菓子なんてどうしたんだ?まあ確かに俺はお金なくてあいつにあんまりそういうもの買ってないからありがたいっちゃありがたいんだけど…。なんも返せないぞ?」
『二人になれれば…』
上「ちょちょちょ!?それはどういう意味でございましょうか?月乃さんっ?」
何か勘違いしているようだがこのまま押し通そう。これに返答するのはするので楽しそうだが今は時間が惜しい。
『当麻、単刀直入に言います。あなたは記憶を失い、それを周りに隠している。ここまではあっていますか。』
上「な…なんでそれを」
『よく聞いてください。私はLEVEL0の
もし当麻がその力のせいでこの先学園都市の上層部、主に統括理事会から追われることがあったときのために私は今こうしてあなたにわざわざ手の内を明かしてるんです。
だからもしこの先なにかあってどうしても時間を戻したいとき、なにかをやり直したいとき。
なにを言っているかわからないかもしれないけれど、私はあなたの味方です。だから…』
突然頭になにかあたたかいものが押し付けられた。
上「今の俺は何もわからないし、正直夜凪の言っていることもよくわからない。でも夜凪の優しさはちゃんとわかる。ここに連絡先をかいてくれ。
なにかあったら頼む。俺を、俺の友達を助けてくれ。俺の連絡先も渡しておく。だから何かあればいつでも連絡すんだぞ。」
私が普通に生活してただの中学生だったら彼と友達になれたのだろうか。だが私にそんな未来はない。きっとこんなふうに長話ができるのも最後だろう。
『…最後に一つだけ。
そしてそんな言葉を聞くようなことがあればすぐにでもその場から逃げてください。』
彼の制止の声も聞かずに私は部屋を飛び出した。
「よかったのか?」
『当たり前です。アジトで詳しい話を聞かせてください、土御門』
それは私が追い続けている、いや暗部に追いかけさせられ続けている顔も性別も能力すらわからない誰かのこと。
そしてその人を殺すこと。
それこそが私の
ここから少しシリアスモードです!
頑張って書いていきますのでコメントいただけたら嬉しいです!
読者様の応援や意見は本当に力になります。
これからもよろしくお願いします!
Rei
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闇夜は知らぬ間に 5
上条当麻との初対面から2日が経過した。この間に私がしたことは二つ。一方通行から聞いた情報の整理と必要な情報の入手、そして武器の調達である。
情報はあの夜土御門から色んなことを聞いてある程度は私のするべきことはハッキリとした。まず私がやるべきは私がかつて開発をうけた研究所へ行って能力を安定・強化すること。
私の能力はひどく不安定なこと。そして
そのために私は今日わざわざ研究所までやってきたのだ
『お久しぶりです、
日野「えぇよろしくね。今回は能力開発と調整ってことでいいのよね?」
『はい、できる限りまで向上させていただけるとありがたいです。」
彼女は
そのため彼女に何をされてもわからない。しかしどんな危険なことでも私には受け入れる覚悟はできている。なぜなら彼女は私の引き取り手。いわゆるお義母さんというやつだ。
もちろん彼女をそう呼んだことはない。とはいえ私に能力開発をしてくれて
もし彼女と出会わなければ私は
私の脳や身体の内側はもう人と呼べないほどまでに開発されている。それでも私は彼女の願いを、
たとえ周りからは白い目で見られていようとも私に関係はないのだ。
日野「それじゃあ始めるわよ」
次に目が覚めた時には私はまた一歩、化物に近づいているのだろう。こう思ったところで私は3日間意識を麻酔によって失った。
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No side
実験開始から約2日が経過したときだった。
日野「それじゃあ最終段階へ移りましょう。例の装置を。」
研究員1「はい。わかりました。」
夜凪の頭に取り付けられたヘルメットがコンピューターからの指令により稼働し始めた。コンピューターに映し出されていたのは
「
研究員2「脳へのチップの埋め込み完了しました」
研究員1「反応ありました!数値が大幅に上がっています!」
日野「成功ね。彼女が目覚めたらまずは力試しをしてもらおうかしら…」
機械の音が止まった。
--レベルの測定が終了しました。夜凪月乃…においてレベル…が確認されました。
日野「…っ!実験は大成功。月乃、学園都市のために私のために頑張ってちょうだいねぇ。うふふ。可愛い可愛い私の
この言葉が夜凪に届くことはなかった。
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闇夜は知らぬ間に 6
『んん…』
3日ぶりに目をさましてまず目に入ってきたのは無機質な蛍光灯の明かりだった。…あぁ実験は終わったのかと改めてそこで実感した。手足にも脳にも異常はないだろう。となればあとはテストだけである。
日野「起きたわね。それじゃあ試験場に行きましょうか。面白いことになってるわよ。」
仮にも娘の体を開発して面白いは結構失礼な気もするが、私の感覚も少しばかり狂っているのか自分の変化が気になってしまう。
そして試験場では思いっきり力を使える。それがまたたまらなくていつも少々暴れまわってしまうのだ。
日野「まずはいつもの試験よ。
から、とはどういうことだろうか。主に私にはこれしかないはずなのだが。まあいい。やってみようじゃないか。
まずは
そしてお待ちかねの
突然世界が歪み私は思わず能力を解除した。
『…っ!あああぁ!!!』
直前で
日野「成功するまで行くわよ」
『日野さんどういうことですか、実験の成果の説明を…!』
言いかけている間にも銃弾は止まらない。とりあえずは
日野「逃げないでちょうだい。大丈夫死ぬことはないわ」
仕方あるまい。もう一度
飛んでくる銃弾に手をかざせばやはり歪みが生じる。
『っ…あああああぁ!!』
歪みに負けずに力を指先にこめた結果。止められた。
『これで…どうしろと?』
その刹那。背後から何かの気配が近づく。
銃弾だ。間違いない。数は多くはないとはいえ今手が離せないしどうすることもできない。もう片方の手を…そう思った時だった。自分の記憶には、今までしたことのない計算式が組みあがり無意識に背後の銃弾が全て
日野「完璧ね。さすが、使いこなせていたわ。」
頭の中がぐちゃぐちゃでなにもわからない。私は無意識のうちになにをしたのか。
日野「今のは
わかるようなわからないような説明に興味はない。それに力が強くなったなら文句はない。
『…ほんとに歪み以外に副作用はないですか』
日野「今のところ確認できている範囲ではないわね。」
『そうですか。じゃあもうこのまま失礼します。止血もしたいので」
日野「止血もいいけれど…。あなたはお友達を助けに行かなくていいのかしら?」
なんのことだ。身に覚えは…
『…どこでやってるんですか、これもあなたの仕業ですか…!?私だけでは飽き足らずに一方通行にまで…!!』
日野「勘違いしないで頂戴。確かに協力はしているけれど主体になっているわけじゃないわ」
急がなければ。日野さんが関わるような実験はまともなはずがない。LEVEL6がまともなはずがない。そしてシスターズが死んだら
美琴は悲しむ。
どちらも助けなければいけない。これ以上闇の奥底へ美琴に踏み込ませやしない。日野さんに、研究者に苦しめられるのは私だけでいい。どうせこの実験の副作用だってもっと出てくる。
二人はまだ、まだ助けられる。これ以上私のような
絶対にさせるものか。
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闇夜は知らぬ間に 6.5
髪はおろしていてわりと幼い顔立ちで青い瞳が特徴。結構かわいいがあまり自分の容姿に興味がない。基本誰のことも呼び捨てで話す時は常に敬語。
御坂美琴、上条当麻、禁書目録、土御門元春とは知り合い。一方通行とは過去に何かが…?シスターズとは昔研究所であったことがある。
結構顔が広い。
基本的な能力は
しかし実験の副作用より
夜凪の引き取り手である
日野いわく、これは元々の夜凪の能力を応用させ、そこに能力使用のための計算式を埋め込んだことでできたものであり決して新しいものではないらしい。
現在入力された能力は学園都市にあるものすべてではあるが夜凪が理解していないもの、知らないものに関しては使用できない。
日野は夜凪を使いなんらかの実験をしようとしているがまだ何もわかっていない状態。
夜凪の脳に埋め込まれたチップはこの実験のためのもので目的はあきらかにされていない。
また日野はかなりのマッドサイエンティストで
能力、性別、年齢などが何も公開されていない。ただ統括理事会、アレイスター、日野はこれを殺すことでなんらかの利益や結果を得られると考えており夜凪に殺害を依頼している。
夜凪に殺害を依頼したのは日野であり、元々統括理事会側は一方通行に依頼していたとか。変更の理由は今もわからず。
夜凪を取り巻く闇と周囲の人間の変化。そして夜凪自身が望む結末はなんなのか。
そして夜凪に打ち込まれたチップの正体と日野の目的。
知らぬ間に訪れた闇夜はさらに大きくなって時を彷徨い続ける。
ここから
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闇夜は知らぬ間に 7
久しぶりの外は残念ながらもう真っ暗。時刻は20時35分。場所は操車場。とにかく遠い遠い。起きたばかりだし銃弾で撃ち抜かれた腕は痛いしで体はフラフラだが不思議と気持ちはしっかりとしていた。自分のやるべきことが決まっていて守るべきものがあることが幸せだと思える。あまり能力は使いたくなくてとにかく全力疾走していたらボロボロの上条当麻がいた。
『どうしたんですかそんな恰好でこんなとこで…』
言い終わる前に肩を掴まれた。
上「頼む!第十七学区の操車場まで連れってってくれないか?緊急事態なんだ、夜凪なら能力で…」
『奇遇ですね。私もいまからそこへ向かいます。右腕にしっかりつかまってくださいね」
理由は知らないが彼の右腕はきっと役に立つ。ここで置いていく手はないだろう。彼の腕をとり目指すは彼がいるところ。ふっと意識を集中してそれが切れた時にはもうすでに操作場の中だった。
上「お前の能力は便利なんだな…。ていうかずっときになってたんだけど腕どうしたんだ?血だらけだぞ?てか夜凪は何をしにきたんだ?」
質問に答えている暇はない。一方通行やシスターズの姿は見えない。おそらくもう実験は始まっているはず。手遅れになる前に見つけなければ。
『大切な人を止めに来ました。当麻にお願いがあります。シスターズをみつけたら彼女を連れてすぐにここからでてください。なるべく人通りの多いところへ。
その間一方通行は私が止めます。大方実験を止めに来たのでしょう?事情は知りませんが私に任せてくれませんか。』
上「それじゃダメなんだ。俺がLEVEL0がLEVEL5を止めることに…」
彼はそこまで言いかけて思い出したようだ
『私はLEVEL0です。』
とはいえここで私が一方通行を倒すのは少々面倒なのだ。だから
『でも美琴のためにここにきたんでしょう?それなら当麻が片を付けるべきなのかなって思うのでちゃちゃっとやってくれてもいいですよ。
とにかく最優先はシスターズの保護。それが完了するまでは私がサポートします。』
ドーォン!!
大きな爆発音が響き渡った。私たちの目の前で。
一「この場合、実験てのはどォなっちまうんだァ?こンなとこに部外者連れ込んでんじゃねェぞ」
『もうこの実験を知ってしまった以上部外者ではないですよ。くだらないことをしないでください一方通行。私が来てしまっては勝ち目もないんですし引き下がってください。』
当麻に目で合図を送りシスターズのもとへと向かわせる。
『心配しなくてもきちんと私が処理します。私だってあなたと戦いたいわけじゃ…』
一「テメェは何をぶつくさいってやがるんだ?お前なんか勘違いしてねェか?」
彼の能力の発動とともに大量のコンテナが飛んでくるすべてを速度変換しても一つずつの大きさが大きさなので落ちた時の衝撃はなかなかのものだった。
きっと
『一生これじゃ埒が明かないんですよ。すぐに終わりますからじっとしててください。』
『っ…!?がぁぁ!』
頭が割れてしまいそうなほどの痛みと熱さが突然私を襲った。やっぱり副作用はあるんじゃないか。まともに使えないじゃないか。
一「あァ?故障か?研究者にいじくられすぎて動作不良ですかァ?
そのまま彼に蹴られコンテナに体を打ち付けた。右腕の傷が開いているのを感じる。痛いのに。辛いのに。
溢れ出す血液と荒い呼吸だけがちゃんと私が生きていることを示してくれているようでなんだか感情が不安定になってきて。ほんの少しの守りたいものすら大切にできない自分がもどかしくて。
彼はゆっくりと近づき私の頭を軽くつかみ耳元に顔を寄せた。
一「月乃はこっち側じゃないだろうが。もう戻れ。」
私は怖いんだ。いつか大好きな人たちから拒絶されることが。守れなくなって失ってしまうことが。それならば強くなるしかない。痛みも悲しみも辛さも全て。私が背負えるようになればいい。
まずはこの力を使いこなすことから。
『ねえ一方通行。私が守るからこのまま眠ってください。大丈夫です。もう私に任せてください』
体の中から強い力が湧き上がってくるのを感じた。手をかざさなくても目を合わせるだけで時間が止まり彼の脳内演算が止まる。
その隙に常備している催眠薬を彼に打ち込む。能力を使っても歪みも痛みも感じなかった。もう何も感じなかった。あとはもう当麻と美琴に任せてしまおう。
私のすることはここにはない。きっと私はこれから多くの人々に狙われる。学園都市内の邪魔者として、珍しい実験体として。
どれにどんな風に対抗しても言いなりになってももう今までのようなきれいな生活も幸せも戻ってこないだろう。
それでも守りたいのだ。自分がどこに向かって歩いているのかすらわからなくてだんだんと意識が朦朧としてきた。
案外出血が多かったのか、能力の使い過ぎなのかただの精神が不安定な状態なのか。理由なんてわからなかった。
遠のく意識の中でふと目元にあたたかいものを感じた。それは私にはとても似合わない透明で綺麗なものだった。
遠くで誰かの声が聞こえたのを最後に私は意識を失った。
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