Fate/grand order 仮面ライダーW 体験クエスト (通りすがり)
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Rの来訪/始まりはいつだって突然に
お手柔らかに頼んます。
『仮面ライダー』とは正義のヒーローである。
人々を悪から守り、自分を改造した大本を倒す。
これは平成、そして令和の世になってもさほど変わらない。
いくら歴史から消そうとしても人々がいる限り存在し続けるとも言える。
その手は届く限り、宇宙の彼方にまで伸ばされるし、いつだって最後の希望だ。
どんな困難にも自分たちのステージだと言って、脳細胞をトップギアにして、命を燃やして、運命を変えていく。
この物語は現時点で世界最後の『人々』の助けに答えたかもしれない体験だ。
さぁ、カルデアと鳴海探偵事務所、2つの組織が出会う実験を始めましょう?
2017年12月31日 地球は白紙となった。
字面にするとシンプルだが、住んでる人たちには一大事である。
悲しい事に抵抗するも虚しく消えたのだが。
だが、それでも生き残った人理保障機関カルデアのメンバーは場所を変え、ノウム・カルデアとして再起動していた。
そんなノウム・カルデアの廊下を眠そうにしながら歩く人影があった。
「(あぁ.ここ最近夜更かししてしまってるな)」
彼の名は藤丸立香、ここカルデアのひいては『人類最後のマスター』である。
何故彼は寝不足なのかというと連日の記録映像の鑑賞が原因である。
「でも面白かったなぁ平成仮面ライダーシリーズ」
ここ数日、彼は先に仮面ライダー沼にどっぷり浸かっていたらしい文系サーヴァントたちに、ひたすらライダーの豆知識を補足されながら完走していたのだ。
その過程を専用SNS『サヴァスタグラム』に上げたので余計お祭り騒ぎになったのだがそれは別の話。
「小さい頃にWは見てたけど話が分からないときもあったなぁ。今見るとああも印象が違って見えるんだなぁ」
そう言いながらマイルームに入り、なんとなくベットに腰掛ける。
下でモゾモゾと動く気配がしたがいつのも事なのでスルー。
しかし机の上の四角い小箱があることに気づいた。
「ん、これって……『W』のガイアメモリ? 『Chain』うわっ!?」
手に取った小箱は
立香はその拍子に転んでしまう。
……が、彼の身体には何ともない。
「今確実に起動したし身体に入ったよね……? 何なんだろう、ダ・ヴィンチちゃんに見てもらわなきゃ……っ!?」
そう思いマイルームから出ようとした途端、立香の目の前に飛び込んできたのは…………最近見慣れた工場と全身に巻き付かれた鎖だった。
次回、仮面ライダーW 体験クエストは!
「俺は左翔太郎、ハァ〜ドボイルドな……探偵さ」
「あの、ここはどこなんです?」
「予定通りお客さんが来てくれたか」
「俺は……僕がここに来た理由を知りたいです」
「せ、先輩……?」
これで決まりだ!
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Cの導き/縛られしモノを解き放て
仮面ライダーのある程度の知識を得た藤丸立香
藤丸立香「これって…仮面ライダーWのガイアメモリ?」
『Chain』
目元から下を全て鎖で縛られた状態で身動きが取れない状態でありながら立香は冷静だった。
複数の特異点を修復する際に空中に投げ出されたりするのはザラにあったが、流石に全身を縛られるというのは無かった。
幸いに視界は確保されているので目だけを動かし見渡す。
「(多分ここは『仮面ライダー』の世界。さっき触れたアイテムからW、なのかな? とにかくここから動くための努力をしないと)」
そうやって何度か身じろぎをするが、複雑に絡まっているのか解ける気配はない。
そうしてる間に鎖を大量に引きずる足音と共に異形の怪物が現れた。
『おお〜目が覚めたのか、まぁもう少し待ってな。迎えはもうすぐだからよぅ.あ、迎えつってもあの世じゃねぇ。こりゃ余計だったか?』
全身を右目部分以外大小多彩な鎖に覆われた
『しっかしアンタも災難だなァ、五体満足とはいえ確実に捕らえてここに連れて来いだなんて。このメモリを買った手前、断りはしないがな。 何したんだ? ま、答えられんか』
「(こっちが聞きたい、しかもやけにフランクだしこの人。……というかこの人も
寂しいのかチェインドーパントは饒舌に語る。
その間、立香は聞くしかできないので大人しく聞くしかなかった。
その後もただ話したいのか、向こうの話題も益体もないことばかりになっていく
だがそれもエンジンの音にかき消され、突然終わりを迎えた。
『お、迎えが来たようだな。じゃあな短い付き合いだったが、じゃあな』
ピザの宅配が届いたくらいの気軽さでチェインドーパントは相手を出迎える。
相手の表情は立香からは黒いソフト帽に遮られていて見えない。
けど、最近まで仮面ライダーを見ていた立香には確信があった。
彼は味方だと。
「(あれは……記憶の通りなら……)」
『おーおー、待ってたぜ。注文通り見た目の傷無く縛ってあるぜ、確認し……いや待て。テメェ、何モンだ』
チェインドーパントは最初は変わらず軽い口調だったが相手が姿を見せた途端、何かに気づいたように警戒を露わにする。
ソフト帽の男はその問いをフッと鼻で笑い飛ばしながら答える。
「俺か? 俺は左翔太郎……ハァ〜ドボイルドな、探偵さ」
『探偵だぁ? ここには迷子のペットはいねぇが』
「いやペット探しじゃねぇよ!? ……ッウン、それはまぁいい。観念しなドーパント、いや『鎖原 俊造』って呼んだほうがいいか?」
『っ! ……何もかもバレてるのか……聞いたことがあるぜ、この街にはガイアメモリ専門の探偵がいるって話。まさかこんなに手が早いとは予想外だ』
気が抜けるやり取りをしたあと、二人の間に一瞬で緊張が張り詰める。
「一応宣言しておくぜ、メモリを捨てて投降する……つもりは、なさそうだな」
『当たり前だろ! なんならこっちには人質だっている……アレ、なんで解けてるの?』
ふとチェインドーパントが立香に視線を落とすとそこに彼がいた筈の場所には鎖を解いてすっかり逃げる気満々の立香がいた。
「あっ、やばっ! 『待てこんにゃろ逃がすか……『STAG』『BAT』……グワッ!?』」
解けて逃げようとした立香を追おうとしたチェインは小さなクワガタとコウモリ型のガジェットに阻まれた。
その隙に立香は翔太郎の近くに避難していた。
「よう、初めましてだな坊主。俺は左翔太郎、依頼を受けてアンタを助けに来た。下がってな、後は俺たちがやる」
「あ、ありがとうございます!」
最近映像で見た人と現実に出会った緊張とさっきまで縛られてた反動でぎこちなくお礼を言いながら下がる立香。
その様子に翔太郎は一瞬で訝しげな視線を見せるが、気にせずチェインドーパントに向き合う。
「さて、準備はいいか鎖野郎?」
言いながら翔太郎はスロットが2つある赤いバックルを懐から取り出し、腰に装着する。
すると、バックルは腰に巻き付きベルトになる。
「いくぜフィリップ」『JOKER!』
──────鳴海探偵事務所ガレージにて
「守護英霊召喚システムフェイト……人間や英雄を瞳型のデバイスに組み込む眼魂システム……実に興味深い」
ガレージでは髪をクリップで雑に止め、何も書かれていない本を片手に呟く魔少年────フィリップの姿があった。
英雄に関する技術を調べていたようだがこの検索も終わりを迎える。
彼の腰にダブルドライバーが現れたのだ。
「今いいところなんだ、後にしてくれないかい翔太郎?」
『良い訳ねぇだろ! 今依頼人の探し人を保護して敵の前なんだぞ!?』
間髪を入れずに小気味良いツッコミがフィリップの頭に響く。
「もしかして、『藤丸立香』を保護しているのかい!? なら急いで連れてきてくれ!」
『お、おお……? ヤケに食いつくな、こっちとしてはありがたいが……』
「彼を検索していたら何故か英霊に関する本が増えたからね、是非とも直接会いたい」
『了〜解っと、じゃあ半分力貸してくれ。相棒』
「勿論さ」『CYCLONE!』
気兼ねの無いやり取りの後、二人が並んだら腕がWの字になるようにメモリを構える。
──────廃工場跡地
『JOKER!』
「『変身!』」
翔太郎がジョーカーメモリを起動させた後、ライトスロットにどこからともなく
それを押し込み、
両スロットを広げ、バックルをWの形にする。
『CYCLONE』『JOKER』
軽快な変身音と共に強烈な風が吹き荒ぶ。
これには立香もチェインドーパントも僅かに怯む。
そこに立っていたのは────緑と黒の二色の戦士だった。
戦士──仮面ライダーWはチェインドーパントを指差し
何時もの言葉を投げ掛ける。
「『さぁ、お前の罪を────数えろ!』」
それを上から見る影があった。
「うん、予定通りお客さんが来てくれたね。存分に体験してくれ、この風都をな」
次回、仮面ライダーW 体験クエストは!
「どんどん行くぜ」
「僕を探して欲しいって依頼があった?」
「センパイ、無事だったんですね!」
これで決まりだ!
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Cの終着/最後に得したのは誰なのか
『お前さん、一体何したんだ?』
「俺は左翔太郎、ハァ〜ドボイルドな探偵さ。 」
「さぁ、お前の罪を────数えろ!」
『俺の罪かぁ? この身体のこれとどっちが数えやすいか……やってみるか、ねぇッ!』
言うが早いかチェインドーパントは両手から鎖を数本飛び出させる。
それをWは危なげなく避けるか弾いていくばかりか、その中の一本を器用に掴み、逆に引っ張ってみせる。
「ハッ、よっと、一本貰い!」
『うぉぇマジか!? やってくれるなぁ、だが片腕貰うぜ』
言いながらチェインドーパントはライトサイドの腕に鎖を数本巻きつける。
鎖が複雑に絡まって取れない状態になってしまう。
『これは……メモリチェンジだ翔太郎』「あぁ、熱く行くか!」『HEAT』
『HEAT/JOKER!』
右半身が変わったかと思うと右手に絡みついた鎖をヒートの名に恥じない火力で溶かしていく。
『嘘だろ!?』
「まだまだぁ!」
先ほどとは打って変わって攻めの姿勢で拳の連打を食らわせていく。
『ぐ、グゥ……クソっ、想像より強ぇな。というか複数メモリがあんの狡ィぞ』
「ハッハァ、負け惜しみはもう終わりか? 決めるぜ、フィリップ」『あぁ、メモリブレイクだ』
そう言うとフォームをCJに戻し、ジョーカーメモリを右腰のマキシマムスロットに装填する。
『JOKER MAXIMUM DRIVE!』
軋むような音を出しながらWは強烈な風とともに浮き上がる。
咄嗟に鎖を射出し目くらましにしつつ、逃げ出そうとするチェインドーパントに向かって確実にとどめを刺しに行く。
「『ジョーカーエクストリーム!!』」
『ウッ、グァァァァァァァァァァァァァァ!!?!???!』
爆発と共に壮年の男性が倒れ、メモリが破片を撒き散らしながら落ちてくる。
「さてと、あとは警察に連絡して終わりだな。『ちゃんと藤丸立香を連れて帰ってきてくれよ?』あぁ、分かってるって。なんてったって、大事な依頼人の探し人だからな」
そう言うと、ベルトを戻し変身を解除する。
それと同時に立香が向かう。
「翔……左さん!」
「おぉー、立香。無事で良かった。それと、翔太郎で良い」
「じ、じゃあ、翔太郎さんで。これからどこへ.?」
「今から俺たちの事務所に向かって仲間に紹介しようと思ってな。何心配すんな、ちょおっと癖はあるが頼れる仲間たちさ」
「そうなんですね(見たので知ってるとは言えない.)」
「乗りな、少し飛ばすぜ」
そう言って二人はハードボイルダーに乗り、去っていく。
二人が去ったあとの工場内では二人の人影があった。
片方はチェインドーパントこと鎖原だが、もう片方は逆光で見えない。
タキシードの男だ。
二人は顔見知りなのか、旧友に軽口を叩く雰囲気で話している。
「んー、うん。大方いい流れやね。やっぱ『仮面ライダー』はこうじゃないと。後はお客さんのデータ取りに勤しみたいもんや」
「……アンタ、あれが出てくるの知っててオレとぶつけただろ」
「あー、それは申し訳ないと思ってるわ。でもなぁ、事前に仮面ライダー出てくるとは言ったし、そもそもあんさん、十分そのメモリで遊んだやろ? それの報いや思てくれ」
「なんて雑な……」
「雑で結構、んじゃおつかれさん」
そう言うとタキシードの男は倒れている鎖原の頭に手を当てるとそのまま昏倒させる。
「やっぱクオークスの
流れで昔見かけた
「過ぎたことは置いといて〜
「
そう言いながらいつの間にか現れた少女に話し掛ける。
「ふふっ、良かった。ご無事だったんですね。フフフフフ」
──────最も、少女は去っていった藤丸立香の事に頭がいっぱいだったが
そんな少女に呆れながらも彼は頭をポリポリかきながら呟く。
「まぁ次は君の番や、せいぜい頑張ってくれ」
「えぇ、勿論分かっています。では、これで」
「あぁ、次会うときはアンタがしくじった時や」
「そんな時、来ないと良いんですけどねぇ」
そう言いながら少女は去っていく。
「取り敢えず見届けるもん見届けたし、帰るか」
独り言を呟きながら懐から取り出した銀色のメモリを取り出し、起動する。
『Aero』
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
「アナタが藤丸立香君? 私は鳴海亜樹子よ!」
「ほう、ほう! これが令呪か……興味深い、ゾクゾクするねぇ」
「今回の事件の話をしようと思う。……っとその前にだ」
これで決まりだ!
ごめんなさいね、なんか雑で。
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Rの休息/探偵は事務所で仕切り直し
「決めるぜ、フィリップ。」『あぁ、メモリブレイクだ。』
「雑で結構、んじゃおつかれさん。」
「えぇ、勿論分かっています。では、これで。」
俺の名前は左翔太郎
ここ、風都でハードボイルドな私立探偵をやっている。
今回、俺はとある依頼人から人探しを引き受けた。
その人物を探していく内にここ最近風都で頻発している事件との繋がりまで出てきやがった。
紆余曲折あって目的の人物を保護したは良いもののこの事件、根が深そうda...スパーーン
「っ!?痛ッて~~な、なにすんだ亜樹子ォ!」
「なーーに黄昏とんじゃ!藤丸君が戸惑ってるでしょーが!」
────ここは鳴海探偵事務所、藤丸立香は無事『仮面ライダーW』の拠点にたどり着いていた。
翔太郎の突然なモノローグは置いといて、状況を確認する。
「っとようこそ、鳴海探偵事務所へ。歓迎するぜ。改めて、俺は左翔太郎。ハァ~ドボイルドな私立探偵をやっt「ハーフボイルドの癖に」あんだとォ!」
「はいはい気にしないでね~。んで、アタシは鳴海亜樹子。この事務所の所長を美・少・女・所長をやってまーす。」
「よく言うぜ...とっくに結婚してるのにな..」
言いながら翔太郎はソファに腰掛ける。
次の瞬間小気味良い音が翔太郎の頭で鳴り響く。
亜樹子が『やかましいわ』と文字の入ったスリッパでぶん殴ったのだ。
「~~~~~~~~~ってーな!パカパカパカパカ殴んじゃねぇよ!」
「そっちが要らんこと言うからでしょうが!あ、藤丸君はソファに座って良いからね~」
「と、どうも(いたそう)……その、喧嘩中に申し訳ないんですが。この人、何とかなりませんか?」
そう立香が示した先には
「これが令呪というものか……質感は皮膚と……変わらない様だね、実に興味深い。」
フィリップが立香に張り付いていた。
それを見た2人は観念したかのように言う。
「すまねえ、ソイツは俺の相棒なんだが…気になる事があるとそれしか映らなくてな……そのまま暫く我慢してくれ、ある程度調べれば離れてくれるはずさ。」
「そーそー、フィリップくんはこうなると止まらないからねー」
「それならまぁ……でも事務所も皆さんもいるんですね。記録映像で見たそのままだ。」
フィリップが齧りついたまま立香は話す。
「もしかして俺たちの事、知ってるのか?」
「カルデアに僕たちの記録が残っているのかい!?これは更に聞くことが増えたね。」
「まー待て待てフィリップ。ある程度俺たちの話が伝わってるのなら話が早い。こっちの事情を話せば良いわけだからな。」
そういうと翔太郎は徐に話し始める。
「一応の確認だが、藤丸。お前さんは俺たちをどこまで知っている?」
「映像記録は一通り見ました。……ええっと、あなた方が『如月弦太朗』さんの助けになったり、『駆紋戒斗』の手助けをしたのも知っています。」
まぁ見たというより見せられたに近いが、立香はつらつらと答えていく。
「そうか、カメ子は....いやそいつは野暮だな。お前さんが基本的な知識があるのは分かった。」
翔太郎はどこか懐かしむような目をした後、払う様に首を振る。
「じゃあ今度はこっちの番か。俺達は今、風都に頻発している3つの事件を追っている。」
「というのも依頼人が『藤丸立香を探して欲しい』と依頼してきたからだ。」
「………それが何故、捕まっていた自分を助けるのに繋がるんでしょうか?」
立香としては助かるのだがそれだと少し繋がらない。
そもそも立香は風都に知り合いがいないはずなのだ。
「ん?依頼人は『藤丸立香の後輩だ』と言っていたが…
そうやって、立香を探していく過程でこの街に起きている事件と繋がりがあったからなんだ。」
「んで、事件の1つである『全身拘束事件』要はチェインの件だな。それを追っていたらアンタが見つかったって訳だが。」
「.................俺は風都には来たばかりなのでそもそも知り合いがいません。その後輩はいますが多分本人ではないと思います…」
当然、立香は突然縛られていた状態から始まった為に風都に知り合いなどいるはずもない。
しかも『後輩』を名乗るという事はカルデアに居ると思われる『マシュ・キリエライト』を知っている訳で、これはそこそこ何かを知っている人の犯行なのではないだろうか。
「だとすると、依頼人に心当たり無し、か。その上お前さんの知り合いを騙って依頼してくる辺り、こいつぁかなりの厄介ごとになってきたな。」
一通り
「まぁその心配も分からんでもないが、暫くゆっくりしていくと良い。なぁに心配するな。なんせ、この街は俺の庭……なんだからな。取り敢えず調査がてら風麺一緒に行くか!美味いぞー」
「そういうのは経費で出ないからねー!」
「んなけち臭い事言わずに出してくれよ」
「無一文っぽい藤丸君のは出してもいいけど、翔太郎君のは出さないからね!」
「そこをなんとかお願いしますよ亜樹子大明神……」
「都合のいい時だけ大明神扱いすんな!」
気を取り直した翔太郎はこんなことを提案する。
風都を散歩がてら案内しようというのだろう。
流石に経費でラーメン代を落とすのはどうかと思うが。
「待ってよ翔太郎。君が連れて行ったら藤丸立香を調べられないじゃないか。調査には君一人で行きたまえ。」
そこにフィリップが割り込んで来る。
「ちょっと調査したらすぐ向かわせるから妥協してくれよ…話してる合間に少しはデータが取れたろ?」
「流石に少なすぎるよ。大体君はいつもせっかちで感情的に〜」
「んだと、そっちだって勝手に行動したりして厄介なことに〜」
しかし………段々と話が逸れてきた。
「え、えぇ。(なんだかぐだぐたしてきたなぁ今回の特異点……)」
「二人とも喧嘩しなーい!」
そう思いながら二人を何とか亜樹子と宥めていく立香。
それでもどこかゆったりした空気が流れていた。
一方、事務所で流れるラジオにはこんなニュースが。
『―――――――現在も風都の複数箇所で建物が崩壊したなどの事件が頻発しており、警察は注意を呼びかけているとのことです。』
『なお、現場には盾のマークが入った犯行声明と思われる紙があり、警察も捜査を進めている模様です。』
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
「最近流行ってるらしいよ〜『破壊者』ってやつが!」
「『破壊者』だぁ?でもあれは確実に……」
「セ・ン・パ・イ、みーつけた」
「誰でも良い、来てくれー!」
「……おぉ、アレが今回の圧制者かね?」
これで決まりだ!
何かよくわからないけど話が進んでいく……
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Vの侵略/叛逆は昼飯の後で
「事務所も皆さんもいるんですね。記録映像で見たそのままだ」
「俺たちは3つの事件を追っている」
「自分に風都の知り合いはいない筈なんですけど……」
ひと悶着あったが風麺屋台の前である。
結局、ここに来るのは数時間後となった。
というのも
「くっそぉぉぉ………俺の切り札であるグーが効かなかっただとぉ…!」
「ふふ、甘いね翔太郎。じゃんけんには必勝法に近い方法がある。その上、君の場合少し煽ればグーを出すのは検索済みさ。」
「あんたたちー、熱くなるのは良いけど程々にしときなさいよー」
少しドヤ顔のフィリップ、orzとなる翔太郎
そんな二人をどこか冷めた目で見る亜樹ちゃんがどこか印象的だったなぁと思う立香であった。
そんなこんなで急場の機材で詳細な調査をしたり問診をしたりと様々であった。
具体的には
「君の言うカルデアと言うのは本当に存在するのかい?」
「魔術?と言うのはどういうものがあるんだい?検索を掛けても見覚えの無い言語が出てきてね…」
「サーヴァントと言うのはどういうのが居るんだい?」
と、そこそこ多岐に渡った。
立香としては魔術とやらは初心者だしカルデアにしても一般人より知ってる事はほぼ無いのだが。
だが、最後のサーヴァントはこれまでの旅路を話す事は膨大であった。
カルデアに来て初めて先輩と呼んでくれた後輩、燃え盛る街で助けてくれた
そして、10の指輪を己が存在の抹消に使った頼りなさげな英雄の話も。
ここまで語った所で待ったが入った。
翔太郎の頭がオーバーヒートしたからである。
「えー、それで…と言う事はアレか?立香はそのサーヴァント?たちの助けを借りながら世界を救ってきたって事か?正直規模がデカくなりすぎて分からなくなってきたが??」
「……そうですね、それに加えて季節ごとに規模の小さな事件が発生するのでそれを解決したりしてます。特にハロウィンは凄くてチェイテ城とピラミッドと姫路城が縦に重なtt「チェイテ城とピラミッドと姫路城だって?この3つの建造物は元は無関係のはずだ!どういう経緯でそうなったのか詳しく聞いても?」」
「やーれやれ、こりゃまた長くなりそうだぜ……しかしまぁ、俺達と同じ、それ以上に救ってる奴が居たなんてな。俺も気合入れねぇとな。」
この話を聞きながら密かに決意を新たにする翔太郎だった。
そんなこんなで風麺の時間である。
翔太郎は意気揚々と風麺の親父に注文する。
「いよっすマスター、風麺2つ頼m「3つね!」おまっ、なんで付いてきてんだ!」
なんか自然に亜樹ちゃんが付いてきていた。
「だって、このままだと翔太郎君、経費で二人分落とすかなーって思って。それならもう私の分も変わらないでしょ?」
「ぐぅ、それを言われるとまぁ……腑には落ちないが。」
「はい、風麺3人前 そういや翔ちゃん、アノ子例の物受け取ったヨ。」
「おっ、そうか!助かったぜマスター!俺たちはその時には手が離せなかったからなぁ。」
「いいってコトよ、翔ちゃんはお得意さんだからネ。」
「(………?)」
翔太郎と風麺の親父の間に『何か』あったらしいが立香には伺い知れない。
そもそもカルデアの映像記録は2017年で止まっているからだ。
2018年の後輩の話はまた別の話である。
それはさておき、三人はズルズルとラーメンを啜る。
ここのラーメンは味の面では特筆することはないがなんと言っても具のナルトである。
器を覆うほどの巨大ナルトを避けながら啜るのはどこか乙なものである。
「どうだ、うめぇだろ。」
一足先に食べ終えた翔太郎は立香になんとなく聞いてみる。
「ズルっズル!」
それに対して立香は啜る事で応える。
「おぉ、美味いのは分かったぜ…そ・れ・じゃ 情報、聞かせてもらうぜウォッチャマン。」
「ようやっとボキの出番だね〜!いや翔ちゃん昼飯まだなら言ってよ!一緒に食べたのに、なんか待つ羽目になったじゃん!あ、その子が噂の藤丸君?いや本当にいたんだねぇ、流石のボキもガセネタかとちょっぴり思ってたよ〜。あ、藤丸君写真良ーい?良い?やったぁ!ブログに上げよーっと。「うおっほん!」あぁ、情報ね。」
「そうだ、話は逸れちまったが残り2つの情報が欲しい。頼めるか。」
「良いよぉ〜どっちから聞く?『破壊者』?それとも『旋風』?」
「『破壊者』だぁ?」
この単語には翔太郎も縁がある。
しかし……彼は既に通り過ぎたはずなのだ。
その彼を象徴するあだ名に食いついた。
「そいつはねぇ、夜な夜な街を破壊して回るだけのシンプルな事件なんだけど、被害が半端じゃないのよね〜いつかのビルが溶ける事件あったじゃない?規模は一・緒。ビルが根っこから吹き飛ばされたりするらしいよ〜被害にあったのはここら辺だよ」
そう言いつつ地図で示していく。
「あの時と同じ、か……」
翔太郎の幼馴染である
「それと、『旋風』の方はまだ謎だよ〜というのは事件の規模がショボいんだよね。風都でヤケに風向きが頻繁に変わるとかそのせいで風力発電の設備に少し負荷が掛かってるんだとか。」
「そうか、助かったぜウォッチャマン。」
そう言いつつメモし終えた翔太郎はウォッチャマンに畳んだお札を渡す。
「確かに、というかさぁ翔ちゃんそろそろこの方式止めない?時代は電子マネーだよで・ん・し・マ・ネ・ー」
「いやこの形式がハ〜ドボイルドなんだよ!」
「ハイハイハードボイルドね、まぁ最近電子マネーも種類増えすぎて困ってたし逆にありがたいけど、毎度。」
「それなら文句付けるなよ……んじゃ行くか。マスター、ごちそうさん」
「は〜い、じゃあね〜ごちそうさまでした」
「はい、ありがとうございましたウォッチャマンさん、親父さん」
言いながら二人も席を立つ
「はいは〜い立香君もまた写真撮らせてね〜」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ということで現場を見に来たが…こりゃあ酷ぇ。」
「これは………」
翔太郎たち(亜樹子は無理やり帰らされた)の前には無残にも砕かれ原型を留めてない7階建てのビルの姿があった。
警察も捜査している真っ最中の壊されたての場所から当たっているのだ。
「情報によると規模がマチマチだったりするんだよな……数階建てのビルの時もあれば数十階ある高層ビルがターゲットの時もあるとか」
「オイオイ部外者は立ち入り禁止だz…って探偵!?しかもガキまで増えてる!?」
二人が話している間に真倉刑事が割り込む。
「あー、うるさいのが来ちまった。立香、コイツの言うことは気にするなよ。なんせナマクラだからな「うるっせぇよ大体いつもお前は事件に」」
言い争う二人に更に人影が増える、どこかで見た芸能人に似てる刃野刑事だ。
「お〜う翔太郎か。まぁ真倉もやかましいぞ。持ち場に戻れ」
「ほーらジンさんが持ち場に戻れってよ」
「ガルルルル」
しぶしぶ持ち場に戻っていく真倉刑事
「んで、どうだ翔太郎。この事件、何とかできそうか?というかその子は……?」
「えぇ、なんとかしてみせますよ。あぁ、コイツは藤丸立香。期間限定で俺の助手をして貰う事になりました。」
「助手になりました藤丸立香てす、よろしくお願いします。」
風麺を食べながら立香も身の振り方を考えていた、その結果が助手としてついていく事である。
「おう、しかしなんだな。いい目をしてんじゃないのよ、翔太郎のヒヨッコな頃よりよっぽど頼りになりそうだ。」
「いやジンさんそんなまさか」
「それ程でも……ありますね。」
「立香お前そこは乗るのかよ!?」
という一幕を挟みつつ刃野刑事から情報を貰う。
「まぁご覧の通りの有様だよ、照井警視が居ないと俺たちも後手に回ってしまう。」
「そういえば照井さんって居るんですよね。今どこに……?」
立香は前から気になってた事を聞く。
そもそも、風都の仮面ライダーは一人ではないのだ。
仮面ライダーアクセル=照井竜が居るはずなのだが……?
「照井は今は出向しててな。しばらくは留守にしてるんだ。」
「そうなんですね……?」
「理由は分からねぇ、急な出向だったからな。んじゃジンさん、資料ありがとうございます。」
「おう、あとは頼んだ。」
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二人は整理する為に人気の多い噴水の近くで話し合っていた。
「んじゃあこれをフィリップに送って、と。頼んだぜバットショット」
『★✩✦♯!』
不思議な機械音とともにバットショットは貰った資料を探偵事務所にいるフィリップに届けにいく。
十分後、翔太郎の持つスタッグフォンに着信が入る。
「どうだフィリップ、何か掴めたか?」
『ふむ、貰った資料を見ていると今回の事件は大まかに2つに分けられるね』
「犯人は複数人いるって事ですか?」
横で聞いていた立香も会話に入ってくる。
『あぁ、そういう事になる。片方は破壊痕から見てバイオレンスだろう。それにしては少々威力が高すぎるけどね。』
「どういう事だよフィリップ?」
『バイオレンスの件を思い出してごらんよ、あの時は地面に1mくらいの穴を開けてはいたが、それだけだったろう?ビルを壊すなら複数回の破壊痕が残るはずだ。だが資料には一撃で破壊された音や跡が残っていないのは妙だ……まるで、威力がかさ増しされたみたいな……』
「……要するにバイオレンスにしては出力がおかしいって事か?」
『そうなるね、それともう片方の傾向だが…これに関してはよく分からない。』
「よく分からないだぁ?お前の『地球の本棚』でもか?」
『正確には絞り込めないという感じかな。まるで複数犯のような多彩さだ。』
「まるで十徳ナイフみたいですね。」
『なるほど……その線で攻めてみよう。何かあったらドライバーで頼むよ。』
「おう」
そうやって通話は終わった。
「さて、後は……「セ・ン・パ・イ、みーつけた」うおっ、アンタは……」
「ムガゴゴゴゴ」
突然現れた闖入者に驚く翔太郎、立香は突然の事にされるがままになっている。
数分後
「あ、ごめんなさい突然……でもほんとに連れてきてくれて嬉しくて舞い上がってしまいました……」
と、闖入者である女性──『
ショートの髪に眼鏡、風都の高校である学生服に身を包んでいるが一番の特徴は────
「(なんだか……マシュに雰囲気が近い……?)」
元の世界にいる
どこか健気な後輩系のキャラがあるというか、無理をしてない(キャラ付けをしていない)のがわかる程度には馴染んでいる。
でも確かにマシュ(後輩)ではない、なんだか不思議な雰囲気の少女だ。
そんなことを考えながらも二人の会話は進んでいく。
「しかし、なんだ。これで依頼はひとまず半分は完了ってとこか?」
「えぇ、私の依頼は『藤丸立香を捜索して一目会うのとその後の保護』なので、後はまたお願いします。」
「はぁ〜依頼金は前金で都度貰っているから良いが……ほんとに良いのか?知り合いでもないって立香は言ってたが、アンタ一体何者なんだ……?」
「………………私はz「オイオイこんなところにいやがったぜ!」」
突然遮るように無粋なドレッドヘアの男の声が響く。
「……あぁん?何だテメェ。」
あまりにも不審な男の姿に翔太郎は咄嗟に聞いてしまう。
「オレぁ、コレだよ。アンタらの探し人ってやつさぁ!」『Violence』!
『おぅらぁ!』
変化するや否や、勢い良く左腕の鉄球を叩きつけるバイオレンスドーパント。
「っ!立香、桐絵さん!伏せろっ!」
直後──────爆音が響き、噴水一帯が轟音と共に振動した。
少し少し前に戻る。
ドレッドヘアの男が現れた時、立香は猛烈に嫌な予感がしていた。
いきなり話しかけてくる割に親近感が一つも感じられなかったからだ。
なので立香は翔太郎の影に隠れながらこっそり召喚の手順を進めていた。
「ーー抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!来てくれ──!」
そうやって来たのは、巨大な、
「……おぉ、我らが同胞よ。コレが今回の圧制者かね?」
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
「ハァッハァー、潰れちまえ!」
「……っ!新手か?」
「信じられないが……あのドーパントは」
これで決まりだ!
今度は12月過ぎには更新していくかも。
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Vの空騒ぎ/叛逆は止まらない
「俺の切り札であるグーが…負けただとぉ!?」
「二人とも、伏せろっ!」
「あれが、今回の反逆者かね?」
戦況は一瞬で混沌としていた。
「うぉ────!??!? なんだあの筋肉???? えっ、何者??」
……主に翔太郎が
すかさず立香が声をかける。
「翔太郎さん……あれは俺が喚んだ助っ人です! 英雄、スパルタクス! 詳細は後で! 今は早く変身を!」
「お、おう。そうだった。出番だ、フィリップ」『Joker!』
手早くベルトを装着しながら翔太郎はジョーカーメモリを起動させる。
『翔太郎……? これは……!』『Cyclone!』
どこかウキウキとした様子でフィリップはサイクロンメモリを起動、装填していく。
「Cyclone」「Joker」
軽快なメロディーと共にダブル サイクロンジョーカーへと変身
「『さぁ、お前の罪を──』」
いつもの決め台詞を言う────
「聞くが、コレが今回の圧制者かね?」
途中にスパルタクスから突然問いかけられる。
「んぉ? あっせいしゃ? よく分からんが、敵なのはそうじゃねぇのか」
その問いに面食らいながら答える翔太郎。
『圧制者か、もしかして君は』
「うむ、では征こう!!」
筋肉の塊────スパルタクスはそう言うや否や受け止めていたバイオレンスの左手(鉄球)をぶん回す。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
『うぉわあぇtwn6s:3prc2!???!??』
ぶん回されるバイオレンスはなぜそこそこの質量があるはずの自分を振り回せているのか疑問に思う暇もないほど。
「スパルタクス! このまま次もバスターで行こう!」
ほぼ最前線に近い所で立香はスパルタクスに無駄だと思いつつ指示を出す。
尤も、彼の『思考が一番困難な選択肢を行う』思考のせいで助言くらいにしかならないが。
『……翔太郎、所でこの御仁はなんなんだい、彼が呼んでいるから大体察しが付くけどね』
「あぁ、なんか立香が呼び出した助っ人らしいぜ、なんだっけな……スパルタクス?」
『…………叛逆の英雄、スパルタクス。史実のスパルタクスは優秀な指揮官でもあったと聞くがもしかすると
「いや感心してる場合じゃねぇだろ!? どーすんだよこの状況!!」
『翔太郎、ここは待ちの姿勢と行こう。彼がバイオレンスをある程度、振り回して離れたタイミングに合わせてマキシマムといこう。ルナトリガーにメモリチェンジだ』 『Luna』
「おうよ」『Trigger!』
『Luna!』『Trigger!』
ダブルはルナトリガー(以下LT)になるとトリガーメモリを装填、何時でも撃ち出せる体制を整え、タイミングを窺う。
『Trigger Maximum Drive!』
『翔太郎、僕が合図するからその時に』
「あぁ!」
幻想の銃撃手はその時が来るまで待ち続ける。
その頃、スパルタクスは復帰したバイオレンスとがっぷり4つに組み合い、押し負けつつあった。
『オイオイ嘘だろ!? バイオレンスはかなり出力も高いって聞いたのに何なんだこのバケモノは!?』
「これは日々の叛逆の賜物である、この程度で音を上げるのは叛逆が足りないのでは無いのかね?」
『ウルッセェ! 訳分からん事ゴチャゴチャとおおォォォォォォ!!!!』
思わぬ煽りになったのかバイオレンスは怒りに任せて膠着状態を抜け出すために組んだ腕を離す。
と、同時にスパルタクスに左手の鉄球で複数ラッシュを当てにかかる。
比較的鈍重なバイオレンスにしてはかなりの速度だ。
最後は地面に叩きつけた為に土煙で見えなくなってしまう。
『オラオラオラオラァ! ……ハァ、ハァ、ハハッどうだ!』
どれか打ち所が良かったのか仰け反ったまま動かなくなったスパルタクスを見ながらバイオレンスは息を切らしながら呟く。
だが次の一言で凍りついてしまう。
「うむ、良い反逆であった」
『…………冗談だろ、今のでKOしないのかよ』
半ば唖然と立ち尽くすバイオレンス。
かなりの無防備である。
その時は来た。
『今だ!』「『トリガーフルバースト!!!!』」
LTによって撃ちだされた幻想の弾丸は分裂し軌道を変えつつも、正確にバイオレンスを撃ち抜かんと四方八方から殺到する。
『げっ! うぉわっ!』
直後、無数の弾丸は標的に命中する。
バイオレンスは盛大に爆散、メモリが飛び出し…………
──────それを遠くで見ている影があった。
『おーおーおーおー、サーヴァントってのは強いなぁ。アレにまだ奥の手の宝具って言うやつもあるンだよな……くぅ~楽しみだぜ〜!』
『とりあえず回収しなくちゃなァっと』
矢印が飛び出しすぎて頭髪みたいになっている怪しげな影は徐ろに爆炎に飛び込んでいく。
爆炎から出てきたのはボロボロになったバイオレンスだったドレッドヘアの男。
「っしゃあ! どんなもんよ!」
『……いや、待った翔太郎』
「んだよ、倒せたんだから良いだろ」
『メモリが転がってこない』
「あん? そういやいつもなら転がってくるはずなんだが……?」
二人が周りをキョロキョロと探していると
『お探しのモノはコイツかい?』
何故か
全身にカラフルな矢印が飛び出さんとばかりに刻まれた
細身の無気味な怪人
「……っ! 新手か!」
『ん、何者だ……?』
咄嗟にトリガーマグナムを構える翔太郎
『おっと、今はやるつもりは無いぜ。オレの目的はそこの坊ちゃんの喚ぶサーヴァントなんだからよ』
「(…………!)オレは藤丸立香だ、坊ちゃんじゃない」
名指しされて咄嗟に詰まるがハッとして言い返す。
『OKOK、藤丸クンよ。オレの目的はアンタなんだ、まぁ今回は
怪人は手に持ったバイオレンスメモリを振って指し示す。
『何故だ、何故メモリブレイク出来ていない! それじゃあ……まるで……まるで!』
フィリップが叫ぶ
『
「Type……1.5だと!? どういう事だ、T2ガイアメモリは全て俺たちが破壊したはずだ」
『そこはオレに言われても困る、開発者に聞いてくれ。実際こうして数本流通してるンだ、どうにかしたンじゃねーの?』
誤魔化すように怪人は言う。
『翔太郎、これ以上は無駄だ。戦うしかない』
「あぁ、行くぜ」
覚悟を決めたかのようにWはトリガーマグナムを構え、引鉄を引く。
数発の弾丸がうねりながら標的に向かう。
『えっ、嘘ちょっと何で撃っちゃうンだよォ!』
弾丸は曲がりながら確実に当た────らなかった。
あり得ない事にLTの撃った黄色の弾は怪人の身体にある矢印沿って、周りを
その矢印も先程の模様だったときと違い常に細かく動いている。
しかも段々と弾丸は速度を増しているようにも見える。
「えっ?」『はっ?』「!?」
これにはWも立香も思考が止まってしまう。
『ひゃーあぶねーあぶねー、オラ
言うが早いが怪人は三人に弾丸を足元に撃ち込み、土煙を発生させる。
土煙が舞う中、怪人の暢気な声が響く。
『ンじゃあ、仮面ライダー、そんでもって立香サンよォ、一旦はここでお開きだ。次の次辺りで会おう』
「待てっ! お前は一体何者なんだっ!」
見えない中気になる事を聞く翔太郎。
『あぁ、名乗ってなかったな。……まいっか、オレは
そう言うと謎のドーパントは地面が陥没せんとばかりに踏み込み、跳躍しながら消えていった。
──────────────
「フィリップ、今の……」
『あぁ、信じられない事だが……僕らの弾丸を曲芸みたいに保持して撃ち返したみたいだ、あんなの見た事がない! あのベクトルメモリの効果だろう。恐らく物体のエネルギーの向きを体表面で操作したんだ。そんな強力なメモリが存在していたなんて……!』
「……つまり、どういうこった?」
『要は僕達の攻撃が効かないって事さ』
LTが撃った弾は確かに当たった。
だが、それをお手玉のように転がし、こちらに向けて返したのだ。
だとすると全てを物理に頼るWの攻撃は効かないことになるのかもしれないのだ。
「へー、そうなのか。ってそれはヤバくないか!? どーやって攻略すんだよ!」
『少し黙っていてくれないか! 僕も混乱しているんだ!』
「っと、すまねぇ。それもそうだったな」
『いや、こっちこそ済まない。ベクトルについては検索しておくよ、何か分かるかもしれない』
お互い謝りつつベルトを戻し、
幸いベクトルドーパントの攻撃は目くらましだったらしく、誰も怪我はしていない。
そこへ立香が駆け寄ってくる。
「翔太郎さん! スパさん! 大丈夫ですか!?」
「おう、こっちは大丈夫だ。しかしなぁ…………してやられたぜ」
「うむ、まさか横入りされるとは此方も叛逆が足りなかったと見える」
「(なぁ立香、もしかしてこのデカイの……会話通じてないのか?)」
「(えぇ、まぁ。会話しているように見えてほぼ成立していません)スパさん、ありがとう。送還します」
「応!! 次こそは仕留めてみせよう!」
そう言うとスパルタクスは消えていく。
「……とまぁこういう風に一戦闘毎に喚び出せるんです。一時的なものなのでずっと限界するには誰か一人でもこの風都にはぐれサーヴァント居るといいんですが……」
「…………ほー、凄えもんだ。なぁ、フィリップ。…………フィリップ?」
『(これが英霊召喚システム『フェイト』、実際に英霊一人を出現させて送還させたから信じはできるが全く理解が出来ない。だがしかし大きな力が圧として感じられたし僕達と共闘できいやそもそもあのドーパントは一体ブツブツ……)』
「こりゃ暫くは無理そうだな……」
「あのー……今日はもう帰っても……?」
「おー、切絵ちゃん。無事だったか。アンタも一旦帰った方が良い。送ってくか?」
「い、いえそんな。一人で帰ります」
「そうか……無理は言わねぇが、困ったら連絡してくれ、力になるぜ」
「はい、ありがとうございました」
パタパタと切絵は去っていく。
「さてと……亜樹子になんて言い訳しよう。依頼人を危機に晒しちまったからなぁ……しこたま怒られる」
「翔太郎さんも大変ですね……」
「お前さんも分かってくれるか……!」
「自分のいるカルデアにも個性のあるサーヴァントが色々いるので」
「そうか……また聞かせてくれよな」
そういう翔太郎の背中は、どこか小さかった。
────────────────風都にある寂れた研究所
錆びついた研究所の様だが電源は通っているらしく、明かりが少しついていた。
ここはタキシードの男がその上から白衣を着てベクトルドーパントを出迎えていた。
『帰りましたよっとなー』
「おっ、どうだった仮面ライダーとサーヴァントは」
『俺らみたいなのは相当やり慣れてますね。やりがいがありそうっすわ。ほい、これメモリ』
言いながらベクトルドーパントはメモリを手渡す。
「おー、これで少しは進展するなぁ。後はあの子はどうやろ?」
『まぁまぁじゃないっすかね、なんか上手いこと馴染んでましたし、待ちでしょ』
「楽しみだねぇ、『B』のメモリ」
『えぇ、楽しみっすねぇ』
「じゃ、今日も
『おうよ』
ベクトルドーパントは両手をボクシングの様に構える。
「よーし」『Aero』
タキシードの男は白衣を椅子に掛け、メモリを起動。
全身に噴出口が備えられたエアロ・ドーパントは変化した余波で大量の空気を吐き出す。
『書類めっちゃ飛んでない?』
『止めて挿した時に気づいたんだからさぁ!?ええいやるぞ!』
そうして自然体でゆったりとエアロは動き出す。
次の瞬間、連続した打撃と蹴撃が延々と続く。
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
「キーワードが足りないな……何かあるかい?」
「自分にもできる事はあるはずです」
「ったく有象無象が、薙ぎ払うぞ!」
これで決まりだ!
はい、遅くなりました。
毎度書いててこれどこへ向かうのやら……
んじゃ良いお年を
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暴走するB/破壊が二人を離別つまで
前回のFate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
『…………冗談だろ、今のでKOしないのかよ』
「Type……1.5だと!? どういう事だ!」
「楽しみだねぇ、『B』のメモリ」
暫くして帰った二人に待っていたのは所長の雷だった。
「『依頼人を守るのが探偵の使命だー』よ! 全然守れてないじゃないの!」
「すんませんでしたぁ!」
ガミガミと雷を落とす亜樹子の前で小さく正座をする翔太郎
翔太郎は師である鳴海荘吉から様々な
その中に『依頼人は死んでも護れ』というのがある。
一応、依頼人である桐絵燿は無事だったのだが
「所長さんもその辺で……オレも無事だったのだs」
流石に不憫だと思い立香も止めようとするが
「立香君良いの良いの、翔太郎君、たまにガツンっと言わないと治さないんだから!」
「そ、そうなんですね……(これはつっつかない方が良いやつ!)」
ついつい亜樹子の気迫に呑まれ、止めようとしたのにこの有様である。
「(おいおい立香まで丸め込まれちまった、どうしたもんか……)」
その様子を見て考えていた翔太郎に反省の色が感じられなかったのか、ギロリと亜樹子の目が光る。
「…………へぇ、翔太郎君はまだ怒られ足りないんだね」
「もう限界よ! 今日の書類の残りは翔太郎君がやってよね!」
ズビシィ! と指した先にはそろそろ崩れんばかりの報告書や参考資料の束
果たして数日で済めばいいがどう見ても翔太郎一人には手が余る量だ。
「う、嘘だろ。この書類の山を……?」
書類の山に呆然としている翔太郎、無理もない。
「そ、アタシは外の掃除してくるからお願いね」
そういうとさっさと掃除に向かう。
「じゃあ藤丸立香君、君は僕ともう少し話や検査をしよう。さっきはガジェットを使った検査をしてなかったからね」
「まだやるんですね……まぁ、お願いします」
そう言って二人はガレージの奥へ繋がる扉と消えていく
そうして事務所はある程度静寂が訪れ…………無かった。
「やっほー、翔ちゃん~!!」
「元気してる~?」
キャピキャピとしたこの高校生二人はクイーンとエリザベス、鳴海探偵事務所が誇る『風都イレギュラーズ』の一員だ。
「おっ、クイーンとエリザベスじゃねぇか、でも悪ぃな。今日は相手すんのも難しそうだ」
「アッハハハ~その山、さては所長さんに怒られたんだね」
「そうなんだよ……いや俺にも落ち度があったから何も言えなくてな……」
そう言う翔太郎を尻目に二人はゴソゴソと今追っている依頼の紙を探り当てる。
それを読むなりクイーンは、
「ふぅーん、今の依頼はこれ? この依頼人の子
いきなり爆弾発言をした。
「そうなんだよ、厄介な事件でな……あんだって?」
余りにも自然に落とされた爆弾発言に、翔太郎も聞き返すのか遅れる。
「だーかーらー桐絵燿ちゃん、最近……ひと月前だったかな? ちょっと問題を起こして学校に来なくなったみたいだよ」
「あー、それアタシも聞いたー! なんかーイジメられてたのをー、突然人が変わったみたいに喧嘩して来なくなったらしいよー」
「そう……なのか?」
「翔ちゃん? なんか変な事言った?」
「いや……何でもない、イメージからは想像できなかっただけだ」
「だよねー、わかるわ。何か二人いた気がしたもんねー」
「二人…………悪い、二人共。今日は一旦帰ってくれ、調べ物ができた」
そう言って翔太郎はクイーンとエリザベスを玄関まで送り、帽子掛け……に偽装した扉を開ける。
そこには
「興味深い、まさか藤丸立香の身体に埋まっていたとはね……」
「あの…………大丈夫なんですかね自分、何かの拍子に起動したりとか……」
「心配ない、前例があってね。起動してもドーパントにはならない時もあるのさ」
「いや待て待て待て待て! すげぇ重要そうな話してるじゃねぇか俺も呼べよフィリップ!」
ホワイトボードに隙間なく書かれた文字を横に藤丸立香とフィリップが話し合っていた。
しかも彼の身体にガイアメモリが埋まっているまで聞こえる。
堪らず翔太郎が問い詰めに掛かる。
「おや、翔太郎。どうしたんだい? こっちは更なる発見をした所さ! 驚くべき事に藤丸立香の身体には『Chain』のメモリが埋まっていたんだよ!」
「そこは聞いたから良いけどよぉ……本人に影響とか無いんだろうな?」
「一応、オレ毒耐性(?)らしきものは付いてるんで大丈夫ですよ」
翔太郎はチラリと立香を見ながら聞く。
当の本人は耐性か何かでケロリとしているが、やはり心配なものは心配なのだ。
「そこは調べたから問題ない。常に励起状態でこれは楔の役割を果たしているのかもしれないね。実に興味深い、ゾクゾクするねえ。まさかインビンシブル から二例目が出てくるとはこれを機にもっと調べ」
「あー分かった、分かったから落ち着いてくれ。検索を頼みたいんだ」
一つ聞いただけなのにマシンガンの様に言葉が出てくるフィリップに翔太郎は無理やり切り上げさせ、検索を頼む。
「なんだい、これからが良いところだったのに。しょうがないなぁ。と言うことは、残りの事件のメモリのキーワードも分かったんだね?」
「あぁ、ある程度な」
「なら、『検索を始めよう、キーワードは?』」
言うやいなや、フィリップは白紙の本を開き、目を瞑る。
まるでゾーンに入った選手の如く独特の雰囲気に包まれる。
フィリップは頭の中に地球そのものを記録した『地球の本棚』へとアクセスしていく。
翔太郎は慣れたものでフィリップに思いついたワードを言っていく。
「そうだな、一つ目のキーワードは『倒壊したビル』、二つ目は『綺麗過ぎる破壊痕』3つ目は……」
とこのように翔太郎が言い、フィリップがそれを打ち込む。
フィリップの頭の中にあった膨大な本棚が自動で移動し、次々と最適化されていく。
だがそれも本棚がそこそこの数を残し止まってしまった。
『まだ絞りきれないな……あとキーワード一つで出てきそうなんだけどね』
「じゃあこれだ、『二人』」
言った通りに打ち込むと本棚が消え、一つの本が残る
本の名は
『BREAKER』
『ビンゴだ』
一通り読み終えた後、フィリップは話しだした。
「ブレイカーメモリ、その名の通り破壊の概念が込められている。効率的な破壊は人体を問わず、物や構造物にまで及ぶ強力なメモリだ」
「(強い…………)」
「そうか……それで、誰がそれを?」
「それはもう翔太郎なら気付いてるんじゃあないのかい? 顔に出ているよ」
「あぁ、お前にゃ隠し事が出来ねぇな」
そう言うと扉を開け、出ていこうとする。
と、その直前
「立香、ついてきてくれ。彼女に───桐絵耀に会いに行こう」
「…………やっぱり彼女も、なんですね」
「分かってたんだな」
「あの子、嘘はついてなかったけど隠し事はしていた雰囲気があったので……向こうから言ってくるまで待とうかなって」
「俺もだ、だが犯行の間隔からしてあの子はもう限界だ。急ごう」
数時間後、アリーナの近くで三人は集まっていた。
その前に立つのは──桐絵耀
「なぁ、聞かせてくれよ。お前が連続ビル破壊事件の…………犯人だろ?」
「まさか、
「そうか、じゃあ数年前に亡くなったという
「さすが探偵さん、の相棒さんですね。そんな事まで分かるんだ」
「えぇ、『私』は依頼人です。けど、
突然、話していた筈の彼女がスイッチを切り替える様に口調が変わる。
『あの子はどうにも負の感情を溜め込むタイプらしくてね。アタシは壊したくて壊したくて壊したくて壊したくて壊したくて堪らないんだ…………最初はゴミ箱とかで良かった。今となってはビルをどう効率的に壊すかしか頭にないがね、要は完全にイカれたんだよ』
「…………誰かに…………相談はしなかったんですか?」
絞り出すかのように立香は質問する。
『まさか、あの子がそんな事出来るとでも? あんな大人しい子のそんな発言なんざ信じちゃくれねぇよ』
『だからこそこの
どこか自嘲しながら言葉を吐き捨てる。
「………………………………もう止められない、か」
『アタシはこの子の平穏を
『アンタ、街を泣かせるものを止める『仮面ライダー』なんだろ』
「…………」
『Breaker』
そう言うと彼女はメモリを起動し、掌に挿す。
すると全身に刃物や鈍器が飛び出たシルエットの『ブレイカー・ドーパント』に変化する。
『さぁ、藤丸立香を『アタシ』から守ってみせろよ、
そう叫ぶと共にどこからともなくワラワラとタキシードを着た骸骨頭の怪人────マスカレイド・ドーパントが湧いて現れる。
そして、ブレイカーが吠えた時には二人と一人は既に構えていた。
「フィリップ、行くぜ」
『Joker!』
『ああ、やろう』
『Cyclone!』
『Cyclone Joker!』
Wはサイクロンジョーカーに
「モードレッド、頼む!」
「おう、んじゃあひと暴れすっかマスター!」
藤丸立香は自分が
そんなモードレッドは気負うことなく
「ったく有象無象が、薙ぎ払うぞ」
戦いの火蓋は既に斬って落とされている。
さぁ進め、己が信念を貫き通せ。
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエストは!
「決め手に欠けるね………」
「いや、一つ手がある」
「オラオラァ!どうしたどうしたぁ!」
これで決まりだ!
次も早めに出せると……良いなぁ
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Bの崩壊/壊れたのは───
「桐絵燿ちゃん、最近……ひと月前だったかな? ちょっと問題を起こしたっぽい」
「検索を始めよう」
「ったく有象無象が、薙ぎ払うぞ」
始まりはお互いの拳だった。
「ウォリャァァァァ!!!!」
『ッ!シッ!』
「うぉわぁっ!?!分かっちゃいたが重ってぇ……」
CJとブレイカードーパントの左手が交差し、あっけなくWが吹き飛ばされるが直ぐに受け身を取る。
そもそもの重量差が違い過ぎるのだ。
ブレイカーはある程度身体に武装を仕込んでいる。
その状態で殴りかかったので結果は火を見るより明らかだった。
「んにゃろうやってくr『翔太郎、ここはメモリチェンジだ。メタルにしよう』了〜解」『Metal』『Cyclone Metal』
「おぉぉぉぉぉ」
『はっ、半分硬くなったところで!』
軽快な風と硬派な鋼の音楽と共にサイクロンメタルにメモリチェンジ
それを見たブレイカードーパントも手をガトリングに換装、Wに叩き込む。
弾丸の束にWは予期していたのか、風を纏ったメタルシャフトを前方に振り回し、突撃する。
「っらぁ!」
『その長物、長すぎるだろ、カットしてやる……よっ!』
勢いにも一切怯まないブレイカーは胸を貸す待ちの体勢を取る。
「ハッ!オオォォォ!ってメタルシャフトが折れたァ!?」
………したのだが、まさかのメタルシャフトがまさかの力負けで延長部分が折れた模様。
『興味深い!手に仕込んだ溶解液でメタルシャフトの強度を下げて折ったんだ!こういう風にも使えるのか……!』
「オイオイフィリップ、そういうのはもっと早めに言ってくれ……」
これを見たフィリップは事前に読んでいた知識の再確認が出来た為、なんだか嬉しそうに仕組みを見抜く。
『チッ、そういうのも分かんのか。”地球の本棚”、厄介だねぇ。でもその武器は使えないだろ?次のメモリでもするかい?』
『翔太郎、サイクロンでマキシマムだ』
「お?……おう!」『Cyclone!MAXIMUM DRIVE!』
『………そんな折れた物で何を……?』
それを見ていたブレイカーは表情は窺えないがどことなく苦虫を噛み潰した声で煽る。
が、フィリップは気にした様子もなくマキシマムを指示する。
結果はすぐに出た。
折れたメタルシャフトをいつもみたく振り回し、ブレイカーに当てにかかる。
………明らかに届かない間合いで。
「『メタルエアストライカー!!』」
『明らかに距離が届いて居ないじゃあない………ッ!?ガッ!?!?』
一瞬気を抜いていたブレイカーも明らかに何かの圧を感じたのか咄嗟に防御したが、予想以上の衝撃にそれなりのダメージを負い、全身に備えついた武装がはがれ落ちていく。
『驚いたかい?メタルエアストライク、サイクロンメタルで使えるちょっとした裏技さ。折れた部分を圧縮したマキシマムで得た膨大な空気圧で延長する。それをそのままぶつければ射程の見えない技になる。本来はシャフトに纏ってある程度間合いを誤魔化す為の技だけど応急処置、という訳さ』
『何処かのアーサー王はこれを
つらつらとフィリップは説明していく。
『グッ……!舐め……るな!』
武装は多少はがれたが彼女にはまだ手はある。
そう、例えばーーーーーーーさっきメタルシャフトを溶かした溶解液を弾丸にするとか。
『ハァッ!』
『翔太郎』『Luna!』
「分かってる!」『Trigger!』
『Luna Trigger!』
咄嗟に二人はルナトリガーにメモリチェンジ、迎撃しようとするが次の瞬間
『おわぁぁぁぁぁあああああああああああ!1!!!!!!?????』
『ちょっ、ボグワァッッ!?!?!?』
吹っ飛んできたベクトルドーパントが溶解液の弾道に全て当たっていった。
『っイッテテテ、なんか掠ってんのか溶けてるじゃん何してくれてんの……』
『いやこっちの台詞なんだがぁ!?何攻撃持っていってるんだよ!』
『しょうがねぇだろこっちものっぴきならn……あっ』
『またそんな指差しても騙されませn 』
やたらの気の抜けるやり取りをした直後、赤黒い雷撃に二人が呑み込まれる。
『……………………………チッ、仕留め損なったか』
「モーさん…………」
そこに不機嫌最高潮のモードレッドと立香が駆けつける。
Wが戦いを始めた頃────
「オラオラァ!どうしたどうしたァ!」
藤丸立香と白銀のサーヴァント、モードレッドは順調にマスカレイドの軍団を倒していた。
「………チッ、歯ごたえがなさすぎる。時間稼ぎにもなんねー」
「モーさん、油断は──「わーってるよ、なんかおかしいことはな」」
「例えばそこにいる奴、とかなっ! 」
言うと同時に物陰にクラレントをぶん投げる。
『うひー、これでバレるのか』
「ったりめーだろ、殺気を隠せてない視線なんざ。いいとこ三流だからな」
投げたクラレントを拾いながらなんてことない様に言う。
『手厳しい、流石は
明らかに喋り過ぎだとは思いつつペラペラと話し続けるベクトル。
「………………………………………………………………………………………」
「ま、不味い!アンタ、離れろっ!」
『えっ、オレなんか不味いk,ぶっベルごぶちゃぁ!?!??』
当然の如く吹き飛ばされる。
「テメェは跡形も残らずぶっ潰す、もう喋ンなくていいぞ」
『ブッ、ゲハッゴホッゴホッ。うへ、なんか土入りかけた。えっ、嘘目の前に剣がaぶるぅわぁァァァ!』
「あぁ、こうなったらもう止められない……最悪令呪で……」
何かを諦めたかのように右手の令呪を見ながら呟く立香
『いや、ま……だァァァァァ!』
流石にやられっぱなしは嫌なのか。
ベクトルも気合で抜け、ようとしたのだがタコ殴りである。
「チッ、やたらと頑丈なヤツだ」
そして吹き飛ばされたシーンへと繋がる。
ふぃー、あぶねーあぶねー。巻き込まれて二人ともオダブツになる所だった』
『アンタ絶対後でぶん殴るからな』
『おー、コエーコエー。んじゃオレはやれるだけやってみますよ、っと!』
そう言った直後、主がないクラレントがすっ飛んでくる。
『ウヒェッ!じゃあまた後で!』
『アタシは暫く会いたくないけどね』
「あれもアンタの仲間だよな、良いのか?」
『あぁ、いいのさ。騒がしいヤツだけどあんなんでも
白けてしまったのか、呆れる口調で話し出す。
『ベクトル・ドーパント。この世に存在する運動エネルギーの向き、則ちベクトルに干渉するらしいが真に恐ろしいのは
饒舌に話しているフィリップ。
『詳しいねぇ、やっぱりチート、チートだよ
『そりゃどうも。所で、君はお姉さんだというが君なりに思うところがあるのかい?』
『んにゃ無いね、暴れられたらそれで良い』
『なら、僕たちに負ける道理は無い。そうだろ翔太郎』
「あぁそうだなフィリップ。なんせ俺たちは、風都を泣かせる奴を許さねぇ!」
『あぁ?何を………………ふぅ、駄目ですねこの姉は。破壊衝動だけを押し付け過ぎた報いですかね?』
『じゃあ、私も本気を出そうかな……パージ』
そういうと残っていた装甲と武装が全て剥がれ落ちていく。
残ったのはスラリとしたヒトガタのブレイカー。
『ほう、身体を軽く……これは地球の本棚には書いていたが詳細までは無かった!』
『当たり前ですよ、これは私が表に出ないと使えないんですから。』
静かな口調で話し続ける。
『今は出張中らしいですけど、其方にはアクセル?の青いフォームみたいなモノですよ』
『ただし、威力は桁違いですけどね』
『ならこっちも奥の手を、来い、エクストリーム!』
呼びかけに応じ、鳥とも機械音にも聞こえる鳴き声を上げながら大型のエクストリームメモリがダブルをサイクロンジョーカーエクストリームへと進化させる。
「「さぁ行くぜ!」」
『えぇ……やってやろうじゃ無い、のよっ!』
といった直後、踏み抜かんばかりに走り出し
当たると必殺の打撃が無数に振る舞われる。
「ふむ、解析を完了した。翔太郎
「はぁ?っとぉ!?」
フィリップの言う通りに適当に動くと
「………ぐぉぉぉぉおおお、これでも!かなり、ダメージだぞフィリップ!?」
「問題、ない、彼女を見なよ」
ダメージも残る体で見ると
『っ!なんでっ!
武装を捨て去った
ビルを壊す時に警備員に一度試したからこれは確実な筈なのにである。
「簡単な、話さ、君のその技術は高度過ぎて
ダメージから復帰しつつあるのか、饒舌に語り始めるフィリップ。
『補、正………?』
「そうさ、本来君のその技は中国の発勁の達人が的確な、いや違うな。寧ろ
淀み無くフィリップが解説していく
「君が試した人は速すぎて何も出来なかった様だが、僕達だと中途半端に見切れてしまう事で不完全な技になってしまったと言う訳さ」
『そ、そんな、馬鹿な……中途半端に動けただけで……』
「尤も、君のそれは確かに届いていたけどね。ある程度ダメージを受けてしまった事だし」
肩をすくめる仕草でフィリップは言う、完全に煽っている。
「ヒュウ〜エゲツねぇ〜………(が今回も頼もしい限りだぜ)」
「翔太郎、決めよう」 『Prism!』
『Cyclone Maximum Drive』
『Heat Maximum Drive』
『Luna Maximum Drive』
『Joker Maximum Drive』
二人は順々にメモリを装填していき、
「あぁ、これで決まりだ」
それを見た立香は
「向こうも決めるみたいだ。モーさん、
「やっとかよマスター!待ちくたびれたぜ!」
「んじゃ、我が剣にて滅びろ畜生が」
白銀のクラレントが展開し、禍々しい色に染まっていく。
「我は王に非ず、その後ろを歩む者。彼の王の安らぎの為に、あらゆる敵を駆逐する」
淡々と、ただ淡々と
「
「『ビッカー──────』」
二人の怪人に振り落とされるは収束された全てを断ち切る魔剣/解析の刃。
「
「『チャージブレイク!』」
二人へ赤黒い/虹色の刃が迫る。
『こんなもん反射してしまえば………なっ!?俺の、反射できる容量を超えてやがる!』
『こんなっ、こんなところでぇぇぇえぇぇぇえええええ!!!!!』
そう言い残し、二人は盛大に爆発
残ったメモリも落ちた衝撃でガラスのような小気味良い音を立てて割れる。
「これで、良いんだよな。エアr────」
「そんな……でもあの人は次に会う時は……って………」
そう言うと桐絵 燿、ベクトル両名は意識を失う。
「ようやく終わったぜ、しかしなんだぁ?こいつら、最後妙なこtガッッッッッ!!?!?」
「翔太郎!?」
変身を解いた翔太郎に透明な力の塊が直撃し、バウンドしながら数m吹き飛ばされる。
「おーおーおー、きっちりブレイカーとベクトルを倒しちゃったね。まぁ助かったけど」
黒のタキシードの上から白衣を着た不思議な男は出てきて早々ズカズカと言う。
生身で指鉄砲をした不思議な態勢で。
「誰……だ?」
フィリップが問いかける
「初めましてフィリップ君、自分は……名乗るのが畏れ多いな。街を守った仮面ライダーに仮でも名乗っていいものなのか?分からん……」
先程の不敵な雰囲気が散り、突然ボソボソと独り言をつぶやき出す。
「何をぶつくさ言っている。答えるんだ!」
「じゃあまぁ……強いて言うなら『Aero』」
男は懐から取り出したガイアメモリスターターを押す。
「エアロとでも呼んでくれ、本来ならもう少し良い名前があるんだけどね?」
「それじゃ、一本返してもらう……よっ!」 『Aero/■■■■■■』
エアロがそう呟き、指で何か指示した瞬間
「藤丸立香!」
「カッ、カハッ!」
「マスター!ちっ、
そう言うとモードレッドは追い立てられる様に消滅させられる。
立香はなんとか立ち上がるもすぐに倒れる。
全身が段々と光に包まれ、
「やはり藤丸立香の身体にあったあのメモリは、彼をここに留めておくためのメモリだったんだね」
近づいたフィリップは消えそうな立香に何かを囁く。
ふらつく立香の後ろには鎖で描かれたチェインメモリを咥えた龍のガジェットがエアロの手に乗る。
「正〜解〜、流石はフィリップ君だ。うむうむ、これで目的は完了っと、いやーお疲れ様。色々集まったから本当に助かったわぁ。それじゃ、お暇させてもらうよ」
言いたいことを言って悠々と帰ろうとするエアロ。
「待て!」
それを立ち塞がるフィリップ。
「………へぇ、まだやるんだ。相棒は立ち上がれない程度にボロボロ、来訪者は消えつつあるってのに」
「当たり前さ、これだけ好き勝手にやられてみすみす逃しはするものか」
怒気を孕んだ声でフィリップは言う。
「でも君が主体ならファングジョーカーしかないと思うが?このエアロメモリでファングは心許ないと思うけど」
男は手にしたシルバーランクのエアロメモリを持って手をヒラヒラと振る。
「あぁ、『僕たち』だけなら無理だったかもしれない。」
「けど、ここには
それを聞いてフィリップは否定する。
「その
「その結果は……こうさ!来い、ファング!」
『Fang!』
機械的な咆哮を上げた恐竜型ガジェットがフィリップの掌に収まる。
「行くよ翔太郎」
「あぁ、やろうぜ相棒。ここで、決める!」
『Metal』
「あら?メタルとか使えたっけか……というか直接メタルからだぁ?」
それを見たエアロは翔太郎の動きよりもそちらに気を取られてしまう。
そして──────
『Fang Metal!』
白と銀のツートンカラーで彩られた牙の戦士が堂々と宣言する。
「『さぁ………お前の罪を、数えろ!』」
次回、Fate/Grand Order 仮面ライダーW体験クエスト
最終回!
「藤丸立香。君は悪魔と相乗りする勇気、あるかな?」
「あぁ、やっぱり楽しいぜ、仮面、ライダーァァァァ!」
「お別れだ、藤丸立香」
これで終わりだ!
お待たせしました。
もうなんかぐだぐだ。
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Aは躍る/終章
「『メタルエアストライカー!』」
「燦然と輝く─────我が麗しき父への叛逆!!」
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
話は今の戦いの直前まで遡る
鳴海探偵事務所 ガレージ
『もし、黒幕から君の身体にあるメモリを抜き取られたときの為に、僕たちとサーヴァント契約していこう』
サラッととんでもない事を言うフィリップ。
『えっ、でもそんな事は…………? っ!』
『そう、僕は
何かに気づいて言葉に詰まった立香の言葉を繋いでフィリップは言う。
『君たちカルデアには、星から生み出された精霊種が居るらしいね。僕もその要領でいけるはずさ……多分ね』
『まぁまぁ怪しすぎる自信!』
彼は子どもの時に一度、星の記憶の意思とのアクセスポイント(通称:泉)に落ちて命を喪っている。
それを偶然触れた地球の記憶がある程度成長した少年の姿で再構成した。
その経緯をフィリップは星の触覚を担う者達──受肉した精霊のサーヴァントとして契約をしようと言うのだ。
『なんにせよやってみようじゃないか! さぁ! さぁ!』
『う、うわぁあぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
ガレージに立香の叫び声が虚しく響き渡った…………
───────────────────────────────
「と言う経緯さ!」
『フィリップ〜〜〜〜お前っ、依頼人になんて事をさせてんだっ!』
「でもそのお陰でファングメタルに変身できたじゃないか」
「それは…………そうだけどよ、というか無意識でメタルを構えてたがまっさか変身できちまうとはなぁ〜」
ドヤ顔で言っている(?)らしきフィリップに拳を固めている翔太郎。
しかしフィリップに変身できたことを指摘されると弱いので渋々拳を下げる。
そんな
「………………………………………………わーお、まさかまさかだよ」
カルデアは現地の英霊と契約して特異点を修復していくとは聞いていたが、しかし
「あぁ──── 悔しい、哀しい、悲しい羨ましい妬ましい腹立たしい苛立たしい!」
「そして何より─────────その戦闘データが欲しくて堪らない───ッ!」
『Aero!』
『と言う事でおひとつ喧嘩しようか仮面ライダー。自分はエアロ、この街でとある事を目論むちょっと変な黒幕だよ』
吹き荒れる風と共に顕れた異形の怪物は狂った笑みを一瞬忘れさせる程に意気揚々と名乗りあげる。
「グァウ!」
獣の如く短い叫びと共に最短距離で迫ってくるW。
数撃の交錯の後、エアロが大きく吹き飛ばされる。
『ぐぅっ!? (当たり前みたいに圧縮空気層を無視して攻撃を通してくんな!)』
数m程真っ直ぐ吹き飛びながら空中で身体中の噴出口から空気を出して地面に跡を付けながら着地する。
『(が、思ってた程じゃない。まだまだ耐えられる)』
そう考えながらエアロは構えを整える。
それを見たフィリップは
「ふむ、手応えが弱い……(直前でわざと吹き飛ばされた? いや、それにしては手応えが薄い……)」
「なら『アームファング!』」
ファングメモリから飛び出た
それをファングメタルは無造作にも見える動きで振り下ろす。
これだけだと無意味に見えるが、
答えはすぐに出た。
『ぐっ、がァァァァァああああああああああああああ!?!?!』
放たれたアームファング群は何度か吹き飛ばされても不可思議な軌道を描き、エアロの身体に確かにダメージを与えていく。
『このっ、程度で! 怯んでられるかぁ!』
叫びながらファングメタルへと果敢に殴り掛かる。
しかしファングメタルは半身が
ならば、やるべきは1つ
エアロメモリに秘められた
「ハッ」
突然距離を取り柏手を鳴らすかのように手を合わせる。
すると周りに急速に立っていられない程の暴風が巻き起こる。
『う、おおおおおぉぉぉおぉおぉおおぉぉおおお!?!?』
「〜〜〜〜なんだこの風は!?」
これにはファングメタルも堪らずに数メートル吹き飛ばされてしまう。
暴威がある程度収まった後に現れたのは細身だった全身が2周りほどマッシブになったエアロだった。
『じゃ、これで最後だ。そっちもマキシマムで来な…………』
「…………なるほど、
「翔太郎を狙った理由もこれがやりたかったんだね、その奥の手────
莫大な空気の体内循環による筋力増強は繊細な操作が必要だ。僕のサイクロンメモリに少し介入されただけでもただではすまなくなる」
『何でもかんでもお見通しなのも流石だよ、腹立たしいのも通り越しちまった』
「お褒めに預かり光栄だ、とでも言ったほうが良いのかな?」
『フィリップ、そろそろ不味い。さっきのでここ一帯の空気が薄くなってきてる。立香や残した俺の身体が危ねぇ。それにこの状態も限界だ』
見ると少し離れた所で酸欠気味なのか膝を付いた立香の姿があった。
その上、ファングメタルから中心のセントラルパーテーションから限界を主張するように火花が飛び散っていた。
「そうだね、決めようか」
フィリップはファングメモリのタクティカルホーンを3回弾く。
『Fang Maximum Drive!』
全身から棘の様に隙間なく牙が生える。
『ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ────』
マキシマムに呼応するようにエアロも溜め込んだエネルギーを必要な部位に集中して循環させていく。
『(あぁ…………やっぱり強いね仮面ライダー、あの頃に憧れたそのままだ)』
そこまで考えが及んだ時、ふと何かを思い出したのか少し構えを緩めた。
『ん、やるなら今か』
『自分の罪、この計画を始めてこの街を騒がせた事』
『その過程で随分と多くの人を泣かせた』
『ドーパントにしたあの人たちにもまぁ悪い事をしたねぇ』
『あぁ、こうして数えると頭がスッキリしてきたよ』
先程の二人の決め台詞に応えた事で気持ちを整えたらしく構えにも力が篭もる。
それを聞いた翔太郎は、
『いや、嘘だな』
ハッキリと、言い切った。
『アンタは1ミリもそんな事を思っちゃいねぇ、メモリに呑まれた人達の教会全く同じ、それ以上に空っぽな言葉だ』
『だからこそ、俺は、俺たちは許しちゃおけねぇよ』
そういうとファングメタルは思い切り跳躍し、空中で数回全身を捻り
オーソドックスな蹴りの体制を取る。
「『ファングカタパルトブレイカー!』」
「………………お、おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
エアロは叫びながら今出せるだけの一撃を練り上げ、足、腰、腕、拳に瞬間的に耐えられる限界を超えた空力を注ぎ込む。
間違いなくこの瞬間、エアロに出せる最大のパンチを撃ち出せた。
直後──────激突
数秒程の拮抗の末、決着は着いた。
『ああああぁ!!!! ─────残念だ』
最後に小さく言い残すと盛大に爆発し、メモリが転がった。
変身を解いた2人が倒れた所へ向かうと
ボロボロではあるがまだ立ち上がろうとするエアロの姿があった。
「困ったな、まだほんの少しだけ欲張りたくなってしまった」
絞り出した声で懐からスロットが片方しかないバックルを取り出し、腰に──
「ハイスト────ーップ!」
横合いから突然、メモリブレイクされて倒れていたはずのベクトルが現れ、
「今出すのは不格好だぜ大将、みっともないにも程がある」
最小限の動き、いわゆる当て身の要領で意識を落とす。
よっこらせと言いながら米俵みたく抱えると
「んじゃ、オレ達は帰るわ。また会うときは味方同士が良いな」
とやたらイイ笑顔で
『Vector!』
起動し、ベクトルドーパントに変化する。
『うーん、やっぱり馴染むなぁ。これでまだ未完成なんだから大将もすげぇや。よっこいしょっとぉ!』
そう呟くと思い切り地面を殴り土煙を上げた爆発を起こす。
土煙が収まった頃には見事に逃げられていた。
「ま、待てっ! グゥゥ!」
追いかけようとするが先程吹き飛ばされた時の傷で立ち眩みが起こる。
「翔太郎! 傷が治ったわけじゃない、大人しくしているんだ」
「ムグームグー! (訳:ふざっけんなフィリップ! 1発俺の手で殴らねぇと気が済まねぇ!)」
「それはそうかもしれないがもう彼らは下がった後だ、存外潔良い逃げっぷりだったね?」
「し、釈然としねぇ……っと、大丈夫か立香?」
「えぇ、何とか生きてますよ」
「おお、そうか…………ってお前! 体が透けてるんだけどぉ!?」
「あ、そろそろ退去する時間ですね。翔太郎さん達はここの人なんで俺がここから消えないとなのか……」
「いやめちゃくちゃ冷静なんだな」
「自分のやるべき事をやったら帰還する、この感覚には慣れています」
「……なるほど、僕達がいつの日か出会ったディケイドと同じと言う訳だ」
「あ、あ~」
いつの日か出会った通りすがりのライダーを思い出す。
「ま、ここらで検索で見た、サーヴァントお馴染みの台詞を言っておこうかな。僕主体で契約しているのだし、良いだろう翔太郎?」
「お、おう」
あまり分かっていなさそうな感じだが気にせずフィリップは続ける。
「藤丸立香、短い間だったがとても楽しかったよ。
そのセリフと共に少し大仰に一礼するフィリップ。
中々に様になっている。
「…………はい!」
それに元気良く返事した立香は更に薄れていく。
「ずりーぞフィリップ! 俺も言わせろ! 何かお困りの用向きがあれば鳴海探偵事務所まで。ハァ〜ドボイルドな探偵が、お相手するぜ」
「翔太郎……もう彼は居ないよ」
「えっ、どの辺から?」
「『何かお困りの』の辺りからだね」
「もっと早く言えよ!」
「まぁ、本当に縁があれば何処かで会えるさ。いつかね」
「だと良いがなぁ」
そう言いながら見上げた空は、いつになく澄み渡っていた。
数日後、翔太郎は事務所で古めかしいタイプライターを叩いていた。
本来、報告書は所長──鳴海亜樹子がワープロを使って依頼主に渡すのだが
これは彼の事件を終わらせる儀式であり、彼曰く
「これをやらねぇと終わった気にならねぇ」
との事らしい
本来、これは鳴海荘吉がドーパント絡みの事件を秘匿する為、複数言語で打ち込んでいたのを真似ただけなので本当に形だけに近いのだが。
Houkokusyo(報告書)
この戦いが終わった後、ビルの無差別爆破事件も、鎖で吊り下げ事件も無事沈静化したとジンさんから聞いた。
メモリブレイクした人たち──
彼────藤丸立香もカルデアとやらに帰還したようだ
フィリップ曰く、『彼はこの風都にとってどこまでも漂流者だからね、チェインメモリと僕たちという重しがなくなれば元の世界に戻されるのさ』
ということらしい。
俺にはさっぱりだが、不思議とフィリップの言うとおりなのだろうなと言う確信がある。
だが、肝心のエアロとベクトルの二人の痕跡はサッパリだ。
煙に巻かれたみたいに奴らの根城にしていた場所には何も残って居なかった。
そもそも、あのエアロは一体どこからあの技術を持ってきたんだ?
まだ謎は尽きない。この事件、まだ続きそうだ──────ー
─────────────────────────
財団X 日本支部のとある一角
「いやぁ〜負けた負けた、持ち出したメモリもほぼぜーんぶおじゃんだ!」
「…………今しれーっととんでもない事を抜かしてるな大将」
「まぁ、全部フィードバックは
そういうとどこからともなく羽を広げた小型のワイバーン型の
「それを早く言ってくれよ」
「しかし……これが『ドラゴンメモリ』かー。自律してるなんて賢くて可愛いな!」
「違う違う、『エアロドラゴン』だよ」
「その昔、
「へー、よく分かんねぇけどすげぇんだな!」
「まぁな、伊達に数年苦戦した訳ではない」
あまり分かっていなさそうな発言にも気にせず答える。
二本の融合の過程で
「興味深そうな話をしているな、進捗はどうだ?」
黒髪を肩まで伸ばした神経質そうな顔立ちの異国風の顔立ちの白服の女性────カレン・ウルスランドが現れる。
「概ね完成でっす、後はコンペで無双するだけかと」
「ッス」
「全く、財団の資金やデータをこんな事に使うのはお前らくらいだ」
「まぁ、大真面目に
「なんでもいい、お前がなんであれ結果を出しさえすれば……これで妹を……ネオンを見返せるならなんでもいい」
「優秀な
「ふっ、これまでは妹の捨てた物をひたすら拾うだけだったが、お前たちのお陰でなんとかなりそうだ。感謝するよ」
「こっちも貴方が拾い集めていた物でここまで昇華できた、Win-Winだよ」
財団Xに付くことで様々なライダー、幹部の戦闘データ。
更には
Win-Winというか確実にエアロ側が貰いまくっている気もするが……
「さて、これが自分が開発したアイテム、その名も──」
そう言いながら厳重に鍵をかけられたアタッシュケースを開くと───
「フォロワー・ファンタジーガシャット、です!」
灰色の少し古めかしい形のゲームカセット───ガシャットが一つ現れた。
「……………………………………いやガイアメモリはァ!?」
これには堪らずツッコミを入れてしまう。
冷徹そうな雰囲気がだいぶ崩れている。
「え、嫌ですねぇそんな旧世代のアイテム誰が要るんですか? 変な人だなぁ」
小馬鹿にしたアメリカンな態度でやれやれと肩をすくめる。
かなりイラッとしているのも知らぬとばかりに説明し続ける。
「これ凄いんですよ! SNSから通じて得られたパーソナルデータで各々のライダースーツが形成されるんですよ!」
力説するエアロにカレンはガックリと崩れ落ちると同時に
「嘘でしょ……私の……かき集めた予算が……こんな……胡乱な物に……」
「(胡乱とか使うんだこの人……)」
二人でシンクロした瞬間であった。
「まぁこれはジョークグッズですよ、本命はこちら!」
小振りなアタッシュケースから3本収められたメモリが姿を見せる。
「じゃーん、学園都市の超能力者の力を抽出したメモリシリーズです」
そういって『X』の文字が描かれたアタッシュケースから6本の純正ガイアメモリが現れた。
「良かった、今度はマトモそうなのが」
「原石を使い潰すだけのクオークスとは違って学園都市で体系化された能力開発の果てに現れた7人の
「…………正直さっきのイメージを置いといても一考の余地があるかもしれませんね、今度の財団X主催のコンペに打診してみましょう」
「良かったー。ここで断られたらどうしようかと思いましたよ」
「んじゃこれで俺たちは暫く暇を貰いますわ」
そう言うとどこからか用意していたスーツケースに
「待ちなさい、コンペに出す時に説明役はどうするんです!」
「そこにパワポあるんでその通り読んでください、以上」
「こ、コイツ……せめてソイツ……そのヒューマギアだけも留守役として置いていってくれないのかしら?」
あまりにも適当な返しにこめかみがヒビ割れそうになるのを自覚しながらも食い下がる。
そもそもどうしたって部下にここまで適当にあしらわれているんだと言う気持ちも膨れ上がる。
「この子、向スカラーはちょっと……折角飛電インテリジェンスからかっぱらった初期ヒューマギアをチマチマアプデしてラーニングさせたんで……」
「だよ、大将がここまで情緒を伸ばしてくれたんだ、一生付いてくぜ! いやこの場合だと機能停止とかまでか……?」
「なんかやたら人間臭くない? 何型ヒューマギアだったのこれ」
「さぁ? 強いて言うなら気さくな友人型ヒューマギア? ZAIAから耳パーツとかパク……流用したしかなりガラパゴス化してますよこの子」
「いや先進的! なんでこの技術をコンペに出さないのよ!」
「ZAIAはともかく流石に飛電に睨まれるの怖いし……」
「そんなもん
「いやまあ……正直ちょっと舐めてたっす(口調が完全に崩れている……)」
「フン、良いわ。資料をまとめておきなさい。私が全部説明するわ、良いわね?」
「了解でーす」
「えっ、俺データ抜かれんの? 分解されちゃう!??」
「そこはバックアップとかあるから……」
「なるほど、じゃあ俺は戻って休むわ」
「あいよー」
「(こいつらの呑気さ、1度シメたほうがいい気がしてきたわね……)」
2人が暢気な会話をしている間にほんのりとカレンはこっそりと頭を抱えていた。
「ん? その設計図は何です? まだ何か……」
言いながらタブレットを手に取ろうとする。
「あぁ、これはアイデアをメモにして設計図で頓挫した作品ばかりっすね」
事も無げに言い切る。
「ふ〜ん、例えば?」
「戦闘機とか」
「今でもエクソダスとかあったじゃない」
エクソダス、財団Xの日本支部の統制官を消し飛ばして一時混乱に陥れた人物、レム・カンナギが世界の支配者となる為の乗機である。
「ありゃレム・カンナギの実験室兼玉座でしょう。そうじゃなくて純粋に量産型の戦闘機を作ってみたかったんですよ。結果は机上の計算に夢中になり過ぎて没にしましたが。黙ってても空中で爆発、分解してしまう結論になってしまいましたのでね」
何かを思い出したのか吐き捨てるかのごとく言い切る。
「ほーん、所でその戦闘機の名前がどうして
タブレットに表示された戦闘機の名前は「Model Case:Aero Current」となっていた。
ほんのりと
「ウチの趣味です、良いでしょ?」
「良い悪いの前に一言くらい言いなさい!」
「そもそも言われなきゃ出さなかったものに文句を言われてもなぁ……」
「うっ、それは……」
「…………コホン、そこは私が悪かったわ。謝罪します」
「こっちも勝手に使ったのは悪いのでね、お互い様にしますか」
「えぇ……」
少しの間、気まずい沈黙が流れる。
「…………まぁ取り敢えず
「向……? 貴方そんな名前なのね。そうね、頼んだわよ」
そう言うと入ってきた時と同じくキビキビとした歩き方で去っていく。
「はぁ〜あ、黙ってりゃ見た目はバッチリ威圧感あるのになぁ、喋りも上手いし優秀、部下に甘いのが玉に瑕って所か」
本人が聞いていたら睨まれそうな事をボヤきながらも手際よくまとめていく
「ま、そこがなんかフォローし甲斐があるんだけどな。終ーわりっと」
「っと、これも大事。さっきは誤魔化せたけど次はないなありゃ」
言いながらさっきまでカレンが触っていたタブレットを慎重に扱う。
さっきはああ言ったが、この中のデータは実用化された上、データに変換されて収納されているのだった。
「んー、もっと見ないライダーのデータも欲しいな………………」
「あ、そうだ。これを実戦に送り込めば良いんだ」
そういうと先程見せていたガシャットを手に持ち、起動させる。
『フォロワー・ファンタジー』
ガシャットを起動すると灰色のオーロラが現れ、そこから一人のナニカが顔を出す。
「御用でしょうか?」
「あぁ、これをエアリアルって奴に渡して欲しいんだ」
「かしこまりました、使い方などは……?」
「問題ないよ、それに関しては彼が一番使いこなせるはずさ」
「ふむ……ではお預かりします」
丁寧に一礼するとタブレットとドライバーとメモリ────ロストドライバーとサンダーガイアメモリをアタッシュケースに詰めていく。
「よろしくお願いしますね、リチャードさん」
「仰せのままに」
かくして物語は終わり、更なる思惑は進んでいく。
「が、しかしこの話はあくまでも体験クエスト
続きはいつになるか分からない
これにて終了です、お疲れ様でした。
明かすタイミングを見失った話として
エアロは
後は最後にチラリと出てきたキャラやガシャットは
こちら( https://syosetu.org/novel/264911/ )
であるのでそちらを読んでください。
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。
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