FAIRYTAIL -時の滅竜魔導士- (ANSUR)
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プロローグ

初めまして。気軽に読んでいって貰えれば幸いです


 

ある場所に時と空間を操る竜、時空竜がいた。その竜は幾つもの世界を巡り、元の世界に戻ってきた時、自分のかつての住処で一人の赤ん坊を拾った。

 

赤ん坊は白い髪に青い瞳をした男の子であり、竜はどうしたものかと悩んでいたが、態々再び捨てる様なことはしたくないし、かと言って喰らうというのもどうかと思い、竜は拾った子供を、一時の戯れとして育てる事にした

 

〇☆〇☆〇☆

 

『さて、育てると決めたは良いですが人を育てたことはない‥‥ううむ‥‥』

 

私、クローゼリアは竜であり人ではない。だからこそ育てるとしたものの、どうしていけばいいか分かっていなかった。

一先ず‥‥

 

『名前、付けてあげないと』

 

とはいえ、すぐに思い浮かぶわけもなかった。ただ、適当な名前にはしたくなかった。名付けるのならこの赤子は自分の息子も同然なのだから。

 

『‥‥‥』

 

私はひたすら考えた。考えに考えて2日後、良さげな名前を思いついた。

 

『ルクス・クロスヴィア。これが貴方の名前です』

 

私がそう告げると赤子は嬉しそうに笑った。言葉を理解しているわけではないだろうに、その名前が気にいったかのように笑っていた。

 

『ふふっ』

 

そんな笑顔を見ていたら、こちらも釣られて笑っていた。そして、名付けたからだろうか。この子の事が少しばかり愛おしく思えてきたのだ。

 

『存外、私は貴方の事を気に入っていたみたいですね』

 

そういえば、イグニールやメタリカーナたちと計画したアレ。その時がきたとも考えられますね、今の状況は。

 

『‥‥貴方には過酷な運命を背負わせることになるかもしれない。私に出来ることは貴方を死なないように鍛えることだけです』

 

しかし、一方的に決めてしまうのは気が引けますね。‥‥私の力を最大限に使って限界まで鍛えましょうか。

 

〇☆〇☆〇☆

 

『そうではなく、もっと腹に力を入れるんです』

 

「もっとお腹に‥‥時竜の咆哮!」

 

『‥‥まぁ、覚えたてだから仕方がないと言えば仕方がないですよ、ルクス』

 

クローゼリアの言葉はもっともだが、納得できるかと言われれば納得出来なかった

 

「でも、この威力は流石に‥‥」

 

俺の咆哮は近くの木に軽く削れるだけであったから

 

『鍛錬あるのみ。私たちには時間に猶予を作れますから』

 

「それはそうだけど‥‥」

 

そう、時空を、というか時を操る魔法を扱うことが出来るクローゼリアのお陰で足りない時間を補うことが出来ていた。

クローゼリアによると、時を扱う魔法はドラゴンだから制限なく使えるけど、俺みたいな人間が使おうとすると命を削らないといけないらしい。けど、滅竜魔法として覚えるとそういった代償は要らないとも言っていた。

 

詳しい事はよく分からないけど、どうにも時の属性を持つ滅竜魔法を体得する事が要因みたいだ。

 

『そんな曖昧なものじゃないですよ。滅竜魔法の特性、体を私たちと同じドラゴンに変質させる事を応用し、時の魔法を使う時にあなたの全身を変質させている。簡単に言うと、私の教える時の魔法全てを滅竜魔法としているんです。教える教えないの選択はこちらで決めますが』

 

「‥‥もしかして、さっきの考え口に出てた?」

 

『えぇ、バッチリと』

 

不味い、授業モードだ。クローゼリアは教えるのは上手いから分かりやすいし、結構すぐに覚えられるんだけどスイッチ入るとスパルタになる上にいつ終わるとも分からない解説が延々と続くんだよな‥‥

 

『とはいえ、貴方はどこまでいっても人の子である事には変わりません。魔力の関係上、生物に対する時の魔法は最低10秒、最高は1分かそこらが限界でしょう。こればかりはどうしようも無い事実。課題はその制限時間内であれば時の魔法を使えることを利用して魔法を生み出すことです。その為には‥‥』

 

「‥‥‥」

 

こういう時は黙って頷いて話半分で聞くに限る。全部理解しようとしたら頭沸騰するからな、情報量多すぎて‥‥

結局その日は、それから4、5時間ほど休憩無しで話をされた。

こんな経験はもうゴメンだと思った

 

 

 

 

次の日から、特訓、魔法開発、勉強をローテーション、偶に一日休憩といった具合の日程で回し数年たったある日。

 

いつものように寝て、起きると何故か森の中にいた。

 

「ここ何処だ‥‥?」

 

辺りを見渡せどもクローゼリアは居らず、木々が見えるだけであった。

 

「なんで‥‥」

 

思考が停止した。それまで一緒にいた親であるドラゴンのクローゼリア、そんな彼が居なくなった。そんな事は無い、きっとどこかに居る。そう思って探すが、一日かけてあちこちを探しても見つからなかった。

疲れ果てて座り込むと、途端に涙が溢れてきた。

 

「クロー‥‥ゼリア‥‥」

 

涙が止まらなかった。涙ともにクローゼリアは本当に居なくなったのだという実感が湧いてきてどうしようも無かった。

 

その日、俺はずっと泣き続けていた。そして泣き疲れて寝てしまい、起きた時は朝だった。

 

「‥‥‥」

 

一晩中泣いて、寝てしまったからだろうか。頭が少しスッキリしていた

 

「そうだよな。別に死んでしまったわけじゃないんだ。なら‥‥クローゼリアを探す旅に出よう」

 

思い立ったが吉日とばかりに俺は立ち上がり、歩き出した。が、重要なことを忘れていた

 

「そういえば俺、お金持ってねぇ‥‥」

 

何時だったかクローゼリアが言っていた。人として暮らす時にはお金が必要だと。何か物を得るには基本的にはお金が必要だと。

 

「‥‥頑張ろう」

 

出鼻をくじかれた感じだったが、一先ず森を抜けるべきなので歩き出した。

 

これが旅の始まりだった。

 

それからというもの、あちこちを旅して行った。

 

ある時は怪物を倒し、ある時は城を抜け出したなんて言う緑髪の少女と出会い、またある時は青髪の少年と少女の二人と一時旅をしたり、またある時は何故かそんなに年の変わらない子の師匠をしたり、ギルドと呼ばれる組織に入る事になったり、似た境遇の奴と友達になったり、色んなことをしていった。

 

そして‥‥

 

〇☆〇☆〇☆

 

「‥‥またか、またなのか、あのお姫様は」

 

「ね〜。いつも思うけどもっとまともな理由で呼んで欲しいよね〜」

 

「ホント、切実にそう思うわ。‥‥はぁ」

 

一人の青年と猫がとある依頼書を見ながら喋っていた。

 

青年の名はルクス・クロスヴィア。猫の名前はルビー。

 

「国王からの依頼なんだから行かないとな。ルビー、行くぞ」

 

「は〜い」

 

これはとあるギルドに所属する一人の滅竜魔導士の物語




今回は本当に短いですが、これから長くなったりします。
早めに出すつもりではいますが不定期気味になるかもしれません

今日発売のFAIRY TAILのゲーム。買おうかどうか迷ってます。皆さんは買いました?

主人公の容姿は、考えてる時に青眼の白龍が頭をよぎった事で決定しました。


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鉄の森編
第一話 ハジマリ


早めに出来たので投稿しました。
前回、早速誤字報告をありがとうございます。
そして、伊弉諾尊さん☆6、スクイッドさん☆9の評価ありがとうございます


「誰か‥‥タスケテ‥‥」

 

俺、ルクス・クロスヴィアは今現在精根尽き果てていた

 

「ルクス〜、がんばえ〜」

 

「ルビー、テメェ他人事だと思って‥‥ウップ」

 

「おいおいだらしねぇな坊主。そんなんで今回の依頼大丈夫か?」

 

「そこはぼくが居るから大丈夫だよ船長さん〜」

 

こんな事になったのはある依頼を受けたからであった

 

〇☆〇☆〇☆

 

数日前

 

「さーて、そろそろ普通の依頼でもしようかな。折角S級になったんだし」

 

「そだね〜。ルクスってばずっと指名依頼ばっかりだったもんね〜」

 

「あの国王、絶対娘に少しばかり甘すぎる気がする」

 

俺は、旅を始めたばかりの頃に所属し、今では帰るべき場所となっているフィオーレ王国で騒がしさが一、二を争うギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)内のリクエストボードを見ていた

 

去年、漸くS級へと昇格することが出来たのだがだからといってこなす依頼が変わるわけでは無いのだが、俺は中々普通の依頼をすることが出来なかった

 

「俺がS級になるや否やあの国王、指名依頼を出しやがって‥‥」

 

「でも、報酬も良かったし〜。それに国王からなんだからギルドのためにも受けないとだからね〜」

 

「加減ってものを覚えて欲しいわ」

 

そう、とある国王がS級になった事を知ると即俺に指名依頼をしてきたのだ。一国の国王が一介の魔導士に指名依頼はどうにも角が立つ。だがS級であればそんなことは無くなる。

 

そんな訳で指名依頼をされまくっていたのだ。お陰で自分でも本当にS級になったか疑わしく思えてくる

 

「大体、月一で依頼持ってくるか普通」

 

「娘に甘い国王様ですから〜」

 

そんな事はもう頭の片隅に置いておいて、依頼を選ばないと。

 

と、掲示板を見ていると

 

「よう!俺と勝負だルクス!」

 

桜色の髪に首にマフラーを巻いた少年が威勢よく殴りかかってきた

 

「悪いがまた今度な、ナツ。今依頼を見てるところだから、なっ!」

 

少年、ナツの一撃を躱すと同時に頭を掴んで床に叩きつける

 

「んがっ!」

 

「あい!またナツの負けだね」

 

「そだね〜、ナツの負け〜」

 

二匹の喋る猫、青い猫のハッピーと赤い猫のルビーが笑いながらナツを指さす

 

「うるせぇ!次は負けねーかんな!」

 

「またルクスに挑んだのかよ、ナツ」

 

「いつものように負けてたけどな!」

 

『『『アッハッハッハッハッ』』』

 

まるで風物詩のようにさっきのやり取りを周りは笑い話にしていた。これがこのギルドの日常。この程度はただのじゃれ合いみたいなものだった

 

「それにしてもルクスが掲示板を見てるなんて珍しいな」

 

「まぁ、最近は指名依頼ばっかだったからな。たまには普通の依頼をしたいんだよ。それに、戦闘出来てなくてちょっとストレスも溜まってるし」

 

「おっ、それなら」

 

「悪いがそれはパス。今回は依頼で発散するつもりだしな」

 

ナツと会話をしながら再び掲示板を眺めていく。そこで一つの依頼が目に入った

 

「ん?なになに‥‥護衛依頼か。報酬も悪くないみたいだしこれにするか。ルビー行くぞ」

 

「ん〜?依頼決まったの〜?」

 

「あぁ」

 

依頼を取って丁度酒を飲んでいるマスターの元へ行く。

 

「マスター、この依頼を受けたいんだが」

 

「ほう、どれどれ‥‥ルクスにとって久しぶりの戦闘系か。ま、お主なら心配は要らんじゃろう。行ってこい!」

 

「行ってきます、マスター」

 

依頼が決まったからいざ出発しようとすると、何やらナツが他のやつに話を聞いていた

 

「でだ、その噂の場所なんだが」

 

「噂ってなに〜?」

 

「ん?おお、ルビーとルクスか。いや何、とある街にサラマンダーが居るって小耳挟んでな」

 

「で、それがイグニールかもしれないと思ったんだよ」

 

「それガセじゃないのか?」

 

「でも、行ってみないと分からないですから」

 

そもそも街中にドラゴンがいるわけ‥‥言っても聞かないか

 

「なら、せめて街を破壊することのないようにな」

 

「それ、ナツに出来ると思ってるの?ルクス」

 

「いや、思ってるわけないだろハッピー。ナツなんだし。でも、一応言っとかないとだからな」

 

「よっしゃー!今すぐ行くぞハッピー!」

 

「あいさー!」

 

「‥‥ナツも行ったし俺たちも行くか」

 

「は〜い」

 

〇☆〇☆〇☆

 

そして現在

 

「そもそも、船に乗るなんて聞いてねぇ」

 

「そりゃあ俺たちだって船使うつもりは無かったからな。だが、ここまで商品が多くちゃな」

 

依頼主たる男はポンと大きな箱を叩く

 

「船長ー!前方にソードシャーク群れが!それにバカでかいやつがチラホラといる!」

 

「ほら、お前さんの出番だ。しっかりと報酬分は働いてくれよ」

 

「わかって‥‥うっ」

 

「ほらほら〜、ルクスいくよ〜」

 

「あ”ー、船から離れると楽になった」

 

俺は今、ルビーに抱えられて空を飛んでいた。コレはルビーやハッピーが使える翼を生やす”(エーラ)”という魔法のお陰であった

 

「っし。一撃で終わらせる‥‥って、なんか数が多くね?」

 

「そだね〜。どうする〜?」

 

「まぁ、だから何だって話なんだけどな。時竜の咆哮!」

 

ブレスで全部を屠ったつもりだったんだが‥‥

 

「お〜、素早いのがいるね〜」

 

「追いつけるか?」

 

「ん〜、無理そう〜」

 

「なら‥‥ 時間停止(ストップ)!」

 

”時間停止”

対象の時間を10秒の間だけ止めることが可能であるが、生きている相手に対して使う場合は力量差によっては使えなかったり、僅かな間しか止められなかったり、対象を目視していなければそもそも使えなかったりし、色々と制限が多い。

当たり前と言えば当たり前なのだが。

 

「ルビー!」

 

「あいあいさ〜」

 

「これで終わりだ。時竜の翼撃!」

 

「シャアアアァァァ!」

 

その後、倒したサメたちは元々調理すると絶品料理になるこのサメが、近頃この近隣で害獣となっていたため、依頼主の商人たちが商品とするために引き取った

 

「さて、坊主。もうすぐ陸に着くぞ」

 

「おぅ‥‥やっとか‥‥」

 

あれから何度か襲撃があったものの、それを切り抜けることは出来た。だが‥‥

 

「乗り物酔いだけはどうにも‥‥うげぇ」

 

「頑張れ〜後ちょっとだから〜」

 

「じゃあ、人のうぷっ、頭に乗って、揺れうぇ、揺れるなぁ!‥‥おえ」

 

頭を揺らされると余計に酔いが‥‥!!

 

「あ〜、大丈夫じゃねえだろうがあと十分は頑張ってくれ。そしたら着くから」

 

「‥‥‥」

 

「ありゃりゃ〜、余りの酷さに気を失ってるよ〜」

 

「お前、呑気だな」

 

〇☆〇☆〇☆

 

「それで報酬の受け取りはどうすんだ?」

 

「ぼくが受け取っておくよ〜。ルクスが起きるまでまだ時間がかかるみたいだし〜」

 

「そうかい。その坊主によろしく言っといてくれ。それじゃあな」

 

依頼主の商人はルビーにお金を渡すと去っていった

 

「お〜い。起きろ〜」

 

ルビーはルクスの顔をぺちぺちと叩くが、ルクスは起きない

 

「ルクス〜お願いだから起きて〜」

 

「ゆら‥‥すな‥‥るびー‥‥」

 

「あ、起きた〜?」

 

「おう」

 

ルクスの顔色はすこぶる悪かった。

それからベンチに腰をかけて休憩をとり数時間後、夜になっていたがそのお陰かルクスは元気になっていた

 

「さて、帰るか」

 

「待って〜、その前にご飯〜」

 

「それもそうだな、じゃ酒場で食べてから帰るか」

 

ルクスたちが酒場で食事をしていると、近くの席からある話し声が聞こえてきた

 

「それで、結局ララバイは見つかったのか?」

 

「いや、こっちは全滅。めぼしい場所は探し尽くしてる」

 

「てことは別の班に期待だな」

 

「あ、そういえばカゲヤマさんのチームから連絡があって、明らかに厳重な封印のされた場所を見つけたってよ」

 

「なら、そこが当たりだな。俺たちは一旦帰るか」

 

会話をしていたグループは話終わると代金を払ってから店を出ていった。

ルクスは食事をしながら、先程盗み聞きをした会話について考えていた。

 

「‥‥ララバイ、ね」

 

「さっきの話、気になるの〜?」

 

「ちょっとな。ララバイってのは子守り歌って意味が普通なんだけど、アイツらは封印のされた場所と言っていた。どうにも引っかかるんだよな」

 

「お〜、確かに〜」

 

「ま、取り敢えずはギルドに帰るぞ。今回の依頼だけで数日間は帰ってないしな」

 

ルクスとルビーは支度をして店を出ると、外はすっかり暗くなっていた

 

「先に宿取るか」

 

「そだね〜」

 

ルクスたちは次の日の朝一で帰ることに決め、一旦宿を取る事にした。そして次の日の朝。

 

「じゃあ、帰るか」

 

「そだね〜。じゃあ、列車頑張ってねルクス〜」

 

「あークソっ!せめて徒歩で帰れる距離だったらなぁ‥‥。船で移動した分列車で移動しないと時間どんだけ掛かるか分かんないしなぁ」

 

ルクスは分かっていた、分かっていたけど、とブツブツ愚痴を言いながら駅に向かって行った




結局昨日買ってしまったゲーム『FAIRY TAIL』。誘惑には勝てなかったよ‥‥
こんな事してるから金欠なんですけどね


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第二話 鎧の魔導師

ビヨンド4146さん☆9の評価ありがとうございます

やっぱり他の小説を書いてる作者さんに評価されたり、読者に評価されると嬉しいものですね。モチベにもなりますし


「や、やっと着いた‥‥うぷっ」

 

「ルクス〜、大丈夫〜?」

 

「なんとかな。さて、ギルドに戻ろうと思ったんだが‥‥」

 

駅から出ると、遠くからの地響きを感じた。この街でそんな事が起こるということは‥‥

 

「エルザが帰ってきたのか」

 

「そ、そだね〜、エ、エルザの足音聞こえるね〜」

 

ルビーが俺の頭にしがみついてガタガタと震えていた。特段ルビーが何かされた訳では無いのだが、ナツやグレイといった仲間たちをボコボコにした所を見て苦手意識が付いてしまったみたいだった。ただ、会話する分には大丈夫みたいだが。

 

「ギルドのヤツら、エルザがもう着いてるの気づいてるのかな」

 

少しだけ心配をしながらギルドへ向かった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

ルクスたちが向かっている時、フェアリーテイル内はいつもと変わらない騒がしさであった。

 

「そういやミラ、ルクスはまだ帰ってないのか?」

 

ナツは、自分と同じタイミングで仕事に行ったルクスが居ないことに気づき、ミラに聞いていた。

 

「まだよ。まぁ、ルクスのやってる依頼は日数のかかるものだから」

 

「ん?ルクスのやつ、いないと思ったら仕事に行ってたのか」

 

「あら、グレイ」

 

ナツとミラの会話について入ってきたのは青髪の少年、グレイ・フルバスターであった。

 

「珍しいな、アイツが普通の依頼やってるなんて」

 

「あはは‥‥、ルクス自身も流石にって思ったみたいで、前回の指名の時に一時の間指名依頼はしないように約束してきたみたいよ」

 

「アイツも大変だな、そんなしちめんどくさい事しなくちゃいけないんだから」

 

「グレイ、服」

 

「うぉわ!いつの間に!」

 

グレイは何故かパンツ一丁になり、それを酒を飲んでいる女、カナ・アルベローナに注意されて自分で脱いだ筈なのに驚いていた。

 

「ホント、いつも脱いでるわねアンタ」

 

「ミラちゃんこっちにビールを三つおねがーい」

 

「こっちは二つー!」

 

「は〜い、ちょっと待っててね」

 

ミラはギルドではウエイトレスのような事もやっており、注文された物を持っていく。

 

「そういえば、そろそろ仕事しねぇとな」

 

「あい、もう食費がカツカツ気味であと少しで無くなるよ」

 

「はぁ〜、200万ジュエルやっぱ勿体なかったな〜」

 

ナツ、ハッピー、そして金髪の女ルーシィは三者三葉に所持金が危ないことを嘆いていた。少し前に200万ジュエルの依頼をこなしたのだが、ナツが報酬は受け取らないとした事で実入りが少なかったのだ。

 

「あっ!」

 

「ん?」

 

「あい?」

 

ルーシィはお金のことを考えている時、ある事を思い出す。

 

「そういえば今月の家賃危ないわ!私も仕事しなきゃ」

 

ルーシィは月7万の部屋を借りており、もうすぐその支払日であった。

 

「とは言ったものの‥‥うーん」

 

ルーシィは依頼の貼ってあるリクエストボードを見ながら唸っていた。

 

「魔法の腕輪探し、呪われた杖の魔法解除に占星術で恋占い希望、火山の魔物退治!?」

 

ギルドに入ったばかりで未だまともにリクエストボードを見たこと無かったルーシィは、その依頼の幅に驚いていた。

 

「依頼ってこんなに種類があるんだ‥‥」

 

「気に入った仕事があったら私に言ってね、今はマスターが定例会に行ってるから」

 

ルーシィがリクエストボードを見ていることに気づき、ミラがルーシィに話しかけていた。

 

「定例会?」

 

ルーシィは初めて聞く単語をミラに聞いた。

 

「定例会って言うのは地方のギルドマスターたちが集まって定例報告をする会議なんだけど‥‥リーダス、ヒカリペン貸してくれる?」

 

「うぃ」

 

ミラは近くに居たリーダスに空中に文字を書ける魔法のアイテムを貸してもらい、定例会の他に各機関について図をもちいながらわかり易く説明していった。

 

「へぇ〜、ギルド同士の繋がりがあるなんて知らなかったな〜」

 

「この繋がりは大切でこれを疎かにしていると‥‥」

 

「黒いやつら来るぞぉ!」

 

「ヒィ!」

 

ナツがルーシィの後ろから脅かす様に後ろから喋りかけた。

 

「その程度でビビるなんてルーシィもまだまだだよね」

 

「アンタ、相変わらず口悪いわね。ってか驚かさないでよ!」

 

「つーか早く仕事選べよ」

 

「あい、この前はオイラ達が勝手に選んじゃったからね」

 

「い・や・よ!大体なんで一緒に仕事する事になってんの?」

 

ナツはルーシィの言葉に心外そうな目を向ける

 

「何でってそりゃあ俺たちはチームなんだから」

 

「冗談!アンタ達とのチームなんて解消に決まってるでしょ」

 

「「えっ!」」

 

「だってアンタたち、金髪だったら誰でもよかったんでしょ?」

 

「そんな訳無い‥‥ことも無い?」

 

「寧ろそれが半分の理由だよね」

 

「もう半分は?」

 

「だってルーシィ良いやつだからな!」

 

ナツの率直な気持ちを向けられルーシィは少しだけドキッとしていた。

そして、少しルーシィが少し黙っていたらいつ間にかナツとグレイは喧嘩していた。

 

「ルーシィ、それなら僕と二人で愛のチームを作らないかい?」

 

そこにチャラチャラしている茶髪の男、ロキが入ってきたが、ルーシィの腰に着いている鍵を見ると途端怯えたようになった。

 

「る、ルーシィ。君は星霊魔導士なのかい?」

 

「そうよ?」

 

「な、何たる運命の悪戯!済まない、僕達の関係はここまでのようだ!」

 

ロキはギルドの外に駆け出して行ってしまった。

 

「何も始まってなかったわよね‥‥」

 

「ロキは星霊魔導士が苦手なのよ。何でも、昔に女の子絡みでやらかしたとか言われてるわ」

 

「あぁ〜、やっぱりそうなんだ」

 

入ったばかりとはいえ、ナンパされたりしているとミラの説明した理由が凄くしっくりきていたルーシィ。

 

「で、アンタらはまだ喧嘩してんの?」

 

「こんのタレ目野郎」

 

「なんだよツリ目野郎」

 

ナツとグレイはケンカをまだ続けていた。

そこに、先程出ていったばかりのロキが焦った様子で帰ってきた。

 

「大変だああああ!エルザが、エルザが帰ってきた」

 

『『『!!!!!』』』

 

その場にいた全員が衝撃を受けたように固まり、エルザが帰ってくる時を待っていた。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「なぁ、ルビー。アソコに見える爪だか角だか分からん物を抱えてるのって」

 

「エルザだね〜。ちょうど一緒のタイミングだったね〜」

 

俺たちは丁度帰り着いた赤髪の女性、エルザに声をかけた。

 

「よお、久しぶりだなエルザ」

 

「エルザ〜久しぶり〜」

 

「ん?おお、ルクスにルビーじゃないか。久しぶりだな。仕事からの帰りか?」

 

「あぁ。そっちもだろ?」

 

「まぁな」

 

にしても相変わらずの力だな。これを担いでくるとか。

 

「近くで見るとより大きく見えるね〜。エルザ、これって何〜?」

 

「これか?コレは討伐した魔物の角だ」

 

「どうするつもりだ、それ。流石に大きすぎて置く場所無くないか?」

 

「確かにそうなんだが、村の人達が是非と装飾までしてくれたんだ。その行為を無為には出来ないだろ?」

 

エルザと話しながらギルドに向かうが、やっぱり視線を感じるな。まぁそこはエルザだからで済むから良いが。

 

「おぉ〜、思ったより硬い〜」

 

ルビーは角の上に乗ってペシペシと叩いていた。強度確認?

 

「さて、着いたな。では先に入ってるぞ」

 

エルザが先にギルド入っていき、俺は一息入れてから中に入ったがおかしいな。少し後に来ただけなのに何故か説教が既に始まっていた。

 

「ワカバ!吸殻が落ちているぞ」

 

「ナブ、相変わらずリクエストボードの前でウロウロしているだけか?仕事をしろ」

 

「マカオ!‥‥‥」

 

「名前呼んだんなら、なんか言えよ」

 

「全く、世話が焼けるな。今回のところは何も言わないでおいてやろう」

 

相変わらずだな。昔っからああいう風紀委員気質だったからな。

 

「それより、ナツとグレイは居るか?」

 

「や、やあエルザ。お、俺たち、今日も仲良くやってるぜ」

 

「あいっ」

 

「ナツがハッピーみたいになった!?」

 

あの二人はいつも通りだな。エルザにボコボコにされてから見えるところだとあんな感じだから珍妙といえば珍妙だな。

 

「あら、ルクスも帰ってきてたの?」

 

「丁度エルザと同じタイミングでな。飲み物頼んでもいいか?」

 

「えぇ、いいわよ。お酒にする?」

 

「いや、お茶で頼む」

 

「はーい。じゃ、これね」

 

「ありがと、ミラ」

 

ミラからお茶を受けとり、それにこの前買った30年物と言われ実際にそれぐらいの蓄積を感じるブレスレットの欠片(・・・・・・・・・)を入れてお茶を飲み、氷を食べるようにそれを噛み砕きながら話を聞く。

 

「ナツ、グレイ。お前たちに頼みたい事がある」

 

「俺たちに」

 

「頼み事?」

 

「実は、仕事先で厄介な話を聞いてな。本来ならマスターに相談するべきなんだが、私は早期解決が望ましいと判断した。お前たちに‥‥後ルクスにも協力を頼みたい」

 

エルザのその言葉に周りはザワついた。あのエルザが協力を頼むことなんて今まで見た事なかったからであろう。

俺も、エルザが誰かに協力を頼むなんて手の数ほどしか見たことないから驚いていた。

 

「面白いことになりそうだね〜、ルクス〜」

 

「確かにな、ルビー」

 

「出発は明日だ。準備しておけ」

 

〇☆〇☆〇☆

 

次の日の朝

 

「ルビー、食べ終わったら食器は運んどけよ」

 

俺は朝食を食べ終わり、着替えをする為に部屋へ戻ろうとした時、ルビーに告げた。

 

「あ〜い」

 

まだ寝ぼけているのか、頭を揺らしながら返事をするルビー。大丈夫か?食器落としたりしないよな?

 

「まだ、出る時間には少しばかり余裕があるな。さて、どうするか」

 

家を出発するには少し早いしかといって掃除などをする程の時間はない。と準備を終えて洗い物を終えながら悩んでいる時にドアをノックする音が聞こえてきた。俺とルビーはそこそこいい一戸建てを買っておりそこに住んでいるのだが、基本居ないせいで人が尋ねてくることは滅多に無いんだが‥‥

 

「は〜い、どちら様です‥‥か!?」

 

扉を開けると、そこには何故かエルザが立っていた。

 

「‥‥どうした?」

 

「いや、今から行くのなら一緒に行こうかと思ってな。少し話したいこともある」

 

「ちょっとする事があるから家で少しだけ待っててもらえるか?」

 

「いや、ここで待っているから準備してきてくれ」

 

「分かった。なるべく早く支度を終わらせるから」

 

まだ眠そうであったルビーの支度を手伝い、いつも持っている荷物の入っているバックを背負うと、いつもの様にルビーが頭の上に乗ってきた。

 

「エルザ来たみたいだね〜、早く行こ〜」

 

「よし、行くか」

 

「ん、意外と早かったな」

 

「そうか?時間が掛かった方だと思ったんだが‥‥まぁ、いいか。じゃあ行こう」

 

「あぁ」

 

「それにしても、ルビーはいつもお前の頭に乗っているな」

 

「そだね〜、ここがお気に入りの場所だから〜」

 

エルザと一緒に駅に向かいながら、お互いの近況や、最近の仕事で見聞きしたことの情報交換などをメインに話していた。

そして、話は段々と世間話やナツやグレイのことになっていった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

一方その頃、エルザとルクスの話の話題となっていた二人は、駅の中で人目もはばからず喧嘩をしていた

 

「つーかなんで俺たちが一緒にやらなきゃならないんだよ」

 

「知るか!つーかエルザの助けなら俺とルクスだけで十分なんだよ」

 

「あ”?なにルクス巻き込んでんだ。てめぇ一人で行けよ、俺たちは行きたくねぇからさ」

 

「お前こそ何勝手にルクスの行動選んでんだ。てか、そんなに嫌ならテメェ一人で帰れ!そしてエルザにボコられちまえ」

 

ルクスはまだS級になって一年しか経っていないとはいえ、その実力は折り紙付きであったため何故か二人で取り合っているような言い合いになっていた。

 

「他人のフリ、他人のフリ。あの二人は私とは関係って顔をしないと‥‥」

 

何故かその場にルーシィもいた。

 

「なんでルーシィが居るの?」

 

「だってミラさんが‥‥」

 

『いくらルクスが居るとはいえ、あの二人は絶対エルザのいない所で喧嘩すると思うから、止めてあげてね』

 

「って頼んできたんだもん」

 

「でも止めてないし」

 

「いや、あの二人と知り合いとは思われたくないのよ‥‥」

 

ルーシィはジト目をしなごらナツたちを見ていた。

 

「すまない、待たせた」

 

そこに大量の荷物を持ったエルザと普通の荷物を持ったルクスとルビーがやってきた。

 

「荷物多っ!」

 

「俺たち今日も仲良しだぜー!」

 

「アイサー!」

 

ナツとグレイはエルザやってきたと分かるや否や肩を組んで仲良しアピールをしていた。

 

「うん。仲がいい事が一番だ」

 

「相も変わらずだなお前ら」

 

「で、君は?確か前にフェアリーテイルに居た」

 

「新人のルーシィです。ミラさんに頼まれて来ました。よろしくお願いします」

 

「私はエルザだ」

 

「俺はルクス」

 

「ボクはルビーだよ〜」

 

「しかしそうか。君がルーシィか。傭兵ゴリラを子指一本で倒したというのは君の事だったのか。力になってくれるのは有難い。よろしく頼む」

 

エルザがナツとグレイの方をチラチラ見ながら話をし、見られた時だけ仲よしを装う二人。

 

「あ〜、それボクも聞いたことあるよ〜」

 

「そんな功績を持っているのか。かなりの戦力だな」

 

「こ、こちらこそ‥‥」

 

ルーシィはエルザの言葉に内心間違った話がどんどん広まっているー!と不安になっていた。

 

「あの、ルクスさん。一緒に頑張りましょう!」

 

「?」

 

ルクスはルーシィの言葉が分からなかったが視線先にナツとグレイがいた事で大体のことを把握した。

 

「‥‥なるほど。君も苦労する側なのか」

 

「えぇ、それはもう‥‥!」

 

(妖精の尻尾最後の良心と言われるルクスさんと一緒ならミラさんに頼まれた事も何とかやっていけるかも!)

 

ナツとグレイの喧嘩を度々抑えるどころか、ギルドメンバーが街やらなにやらを破壊する度に出来る範囲で直していっているルクスとナツと行動を共にするようになってツッコミやら何やらで疲れ果てるルーシィ。内容は違えども、二人はシンパシーを感じ、がっちりと握手をした。

 

「あ、俺のことはルクスって呼び捨てにして貰っていいぞ。それに、丁寧な言葉使われると少しむず痒い」

 

「そう、なんだ。分かったわ、ルクス」

 

「そうだ!エルザ、ルクス。この仕事を手伝ってもいいが条件がある」

 

「別に俺が頼んだわけじゃないんだが‥‥まぁいいか」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「帰ってきたら俺と勝負しろ!」

 

「おい、早まるな。死ぬ気か!?」

 

「あの時とは違う。今の俺なら、勝てる!」

 

「確かにお前は成長した。私はいささか自信が無いが‥‥良いだろう。勝負してやる」

 

「俺も別に良いぞ」

 

「よっしゃ!燃えてきたー!」

 

ナツはテンションが上がって燃え上がっていた




関係ない話ですが、もうすぐHeaven's_Feel最終章がもうすぐ公開ですね。物凄く楽しみです!

そしてゲームのFAIRY TAILが横道に逸れることとか、マップ全部探索したりとかしてて一向に進まねぇぜ‥‥

そして、アンケートを今回設置しました。何となく気になったので。


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第3話 ララバイ

サクライダーさん☆8、ぼるてるさん☆6、わけみたまさん☆4の評価ありがとうございます。


俺たちは目的地に向かうために列車に乗っていたが、俺とナツは案の定乗り物酔いでダウンしていた

 

「あ、あ‥‥あ‥‥」

 

「‥‥‥‥‥」

 

「情けねえな。さっき喧嘩を売ったばっかだってのに」

 

「と言うかルクスも乗り物ダメなんだね」

 

「あい!ルクスもナツと同じだからね」

 

「これでも良くなった方なんだよ〜。‥‥あれ、今思い返してみると特に変わってない?」

 

「しょうがないな。2人とも、私の隣に来い」

 

「あい」

 

「‥‥分かった」

 

俺たちがエルザの横に座ると

 

「よし、そのまま楽にしていろ」

 

エルザのその言葉を最後に意識を失った。その時感じたのは首に強い衝撃だった。そして次に目が覚めたのは‥‥

 

「おや、フェアリーテイル。正規ギルドの魔導士か。羨ましいなぁ」

 

よく知らない男に話しかけられた時だった。何がどうなってるんだ。

 

「ああ?」

 

「正規ギルドが調子こいてんじゃねぇよ。俺らがお前らの事なんて呼んでるか知ってるか?ハエだよハエ」

 

相手はナツ顔を突然踏みつけてきた。コイツ、何のつもりだ?

 

「テメェ!」

 

「オラッ!」

 

俺とナツは手に魔法を纏わせ殴るがその一撃を避けられる。そして、追撃をしようとするが列車が一瞬揺れた事で気持ち悪くなり、纏っていた魔法が消えてしまった。

 

「おいおい、なんだよそのしょぼい魔法。魔法ってのは、こうやってやるんだよ!」

 

相手の男は影の魔法を使い攻撃してきた。普段であれば避けたり防いだり出来るのだが、酔っている今ではそんな事は出来ずバッチリ食らってしまった。

 

「ぐあっ!」

 

「ぐっ!」

 

「ハッ!これでおしま‥‥うお!?」

 

男が追撃をしようとすると、丁度そのタイミングで突然列車止まった。その時、男の胸あたりから、3つめの髑髏が付いた木でできた笛が落ちた。

 

「なんで突然列車が‥‥」

 

〇☆〇☆〇☆

 

「ちょっと困りますよ、勝手に緊急停止レバーを下げられちゃ」

 

列車が突然止まったのは、エルザが問答無用で駅にある列車の緊急停止レバーを下ろしていたからであった

 

「仲間のためだ、分かってくれ」

 

「無茶言わんでください」

 

「私たちの荷物をホテルまで頼む」

 

「何で私が!?」

 

エルザの言動にルーシィはやっぱりエルザもフェアリーテイルの魔導士だなと感じていた

 

〇☆〇☆〇☆

 

「なんだそれ」

 

「チッ!見たな!」

 

「うるせぇ、さっきは良くもやってくれたな!」

 

「これはお返しだ」

 

ナツは拳に、俺は足に魔法を纏い影使いの男に攻撃した

 

「クソっ、ガードシャドウ!」

 

大きな爆発で車両の天井が殆ど吹き飛んだが、今はそれどころではないから今は考えないようにしよう。

 

「へっ!ハエパンチだ」

 

「じゃあ俺はハエキックだな」

 

「てめえら!」

 

先程バカにしてきた言葉を使って煽ると、切れてきた。

 

『え〜、只今の急停止は誤報によるものです。間もなく出発します』

 

「やべっ、逃げるぞルクス」

 

「おう!」

 

「待ちやがれ、てめえら!鉄の森(アイゼンヴァルト)に手を出して、タダで済むと思うなよ!」

 

(鉄の森?なるほど。コイツがエルザの言っていたカゲってヤツか。だが今は列車を降りるのが先だ!ここだとまともに戦えないしな)

 

「そっちこそフェアリーテイルに喧嘩売ってタダで済むと思うなよ。次は外で勝負してやる」

 

「ナツ、急げ!列車が動くぞ!」

 

「うぉおお!?それはカンベン!」

 

俺とナツは窓を突き破って外に身を投げると、丁度魔導四輪で追ってきていたエルザたちと鉢合わせ、上に乗っていたグレイと頭をぶつけた。

因みに魔導四輪とは、使用者の魔力を使って走る車の事である。

 

『ああああああああ!!』

 

俺たちはその場に倒れ、エルザたちは即座に魔導四輪を止めてこちらに駆けつけた

 

「お前たち、無事か!」

 

「って〜!てか、なんで俺たちを置いていったんだよ!」

 

「それについてはすまない。だが、怪我はないようだな。無事でよかった」

 

「「硬ぇ」」

 

エルザが俺たちの頭を抱き寄せたが、鎧を着込んでいるため、鉄に頭をぶつけることとなった。

 

「無事なもんか!汽車で変なやつに絡まれたんだ」

 

「ナツの言う通り。しかもそいつ問答無用で攻撃してきたしな」

 

「なっ!?なにそいつ!」

 

「森でハッピーを食おうとしたヤツらの仲間だ。確かアイゼンヴァルトとか言って」

 

「バカモノォ!」

 

俺はサッと横に避けるが、ナツはエルザの平手打ちを食らっていた

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)は私たちが追っていた相手なんだぞ!」

 

「え?そんな話聞いてないぞ?」

 

「ナツ、何故私の話を聞かなかった!」

 

「それはエルザが気絶させたからなんだけど〜、聞く耳持たないよね〜」

 

「それにルクス!お前は事前に私が話をしただろう!何故みすみす逃がすようなことをしたんだ!」

 

「無茶言うな!俺やナツが動いてる乗り物に乗ってたらどうなるか知ってるだろ!?」

 

「さっきも思ったけど、エルザって色々な意味ですごい人ね」

 

「だな」

 

「それがエルザです」

 

その場にいた全員がエルザの凄さに引いていた

 

「とにかく急いで列車を追うぞ」

 

エルザは魔導四輪を動かして走り出す準備を始めた。そういえば、あの笛の事を伝えておかないとな。

 

「そういえば、その鉄の森のやつが不気味な笛を持っていたな」

 

「あ、それ俺も見たぞ!」

 

「笛?それってどんな感じの?」

 

「どんなって言ってもな〜、三つ目のドクロが付いた気持ちわりぃ笛だったぞ」

 

「なんだそりゃ、趣味悪ぃ」

 

「笛で三つ目のドクロ‥‥」

 

「ルーシィ、どうしたの?」

 

ルーシィが何かに気づいたのか、深刻そうな顔をしていた。

 

「私、その笛の事知ってる。ララバイ‥‥呪いの歌‥‥死の魔法!」

 

「何?呪いの歌って、呪歌の事か?」

 

「私も本でしか読んだことないんだけど、禁止されてる魔法の中に呪殺ってあるでしょ?」

 

ん?呪殺でララバイ、どっかで‥‥

 

「確か、対象者の命を滅ぼす呪われた黒魔法だ」

 

どうにか思い出そうと記憶を探っていると、ルビーが何かを思い出したのか大きな声を出した

 

「あっ!思い出した〜!」

 

「思い出したって、何を?」

 

「ボクとルクス、そのララバイについてを王国の蔵書で見たことあるよ〜」

 

「なに?」

 

ルビーのその言葉で、俺もようやく思い出した。

 

「俺もやっと思い出した。ルーシィはどこまで知ってる?」

 

「私が知ってるのはララバイが普通の呪殺よりも協力で、その音色を聞いたものに死を与える集団呪殺魔法って事だけど‥‥」

 

「なるほど‥‥。恐らくアイツらも同じ感じだろうな。俺が知ってるのはもう1つある」

 

「もう一つ!?そんな記述は見たことないんだけど‥‥」

 

「ルビーが言っただろ?王国の蔵書で見たって。俺が知っているのはそのララバイは、笛とはまた別にゼレフ書の悪魔の姿を持っていると書かれていた。殆ど伝承に近いものだけどな」

 

「莫迦な!それが本当だとしたら」

 

「あぁ。自分で動いて自分で音を鳴らす。自律型の集団呪殺魔法になるかもしれないって事だ」

 

「お前たち、急いで乗れ!追いかけるぞ!」

 

エルザの言葉に従い、魔導四輪に乗り込むとエルザは限界まで速度を飛ばして走らせた。

 

「おいエルザ!飛ばしすぎだ!いくらお前でも、魔力が持たないぞ!」

 

グレイがエルザに忠告するが、エルザは先程の話が本当だった場合の事を考えていち早く追いつくことを優先していた。

 

そして、俺とナツはそんな切羽詰った状況なのに、相も変わらず乗り物酔いで苦しんでいた。

 

「‥‥‥うぷっ」

 

「な、情けない‥‥うぷっ」

 

〇☆〇☆〇☆

 

エルザたちが魔導四輪で移動していた時、ララバイを入手した闇ギルド”鉄の森(アイゼンヴァルト)”はクヌギ駅を襲撃していた。

 

「この汽車は鉄の森が頂く」

 

鎌を持った死神の異名をもつ魔導士、エリゴールは見せしめとして駅員を一人殺し、乗客乗員に見せつけた

 

「荷物も運転手も全部下ろせ、逆らうやつは皆殺しだ」

 

エリゴールは他のギルドメンバーに指示を出す。そこに、汽車でナツとルクスの二人とやり合っていた男、カゲヤマが降りてきた

 

「エリゴールさん」

 

「カゲヤマ。この汽車で戻るとは聞いていたが、この破壊の後。何かあったのか?」

 

「その話はまた後で。まずはコレを」

 

カゲヤマは懐から笛を取り出す

 

「何とか封印を解いて手に入れて来ました」

 

『おおっ!』

 

周りが笛を見ると驚きで声を上げた

 

「これが禁断の、ララバイか。この笛は元々呪殺の為の道具に過ぎなかった。だが、偉大なる黒魔導士ゼレフの手によってさらなる魔笛へと進化した」

 

「笛の音を聞いた者を殺す集団呪殺魔法、ララバイ。これで‥‥」

 

「あぁ。俺たちの目的を果たすことが出来る。さぁ、始めるぞ。作戦開始だ!」

 

〇☆〇☆〇☆

 

あ、あれからこの車に揺られて移動し、今はクヌギ駅の上にある丘から駅を見下ろしていた。

 

「あ”ー、止まった?」

 

「うぷっ」

 

「馬車や船を乗っ取るなら分かるけど、まさか列車を乗っとるなんて‥‥」

 

「あい。レールの上しか走れないし、あんまりメリットないよね」

 

「そだね〜、それに行ける場所だって限られてるし〜」

 

「だが、スピードはある」

 

「何かの理由で、鉄の森(アイゼンヴァルト)の奴らは急がざるを得ないんじゃないか?」

 

何やら駅から聞こえてきた話を聞いて考察をしているみたいだったが、俺とナツは酔いに酔いまくりそれどころでは無かった

 

「でもまぁ、軍隊も動いてるし捕まるのも時間の問題じゃない?」

 

「だと、いいのだがな」

 

あっ、進み出し‥‥うっぷ

 

〇☆〇☆〇☆

 

「エルザ飛ばしすぎだ!SEプラグが膨張してんじゃねぇか!」

 

「あの笛が吹かれれば、大勢の人が死ぬことになる。音色を聞くだけで人の命が奪われてしまうんだぞ!」

 

「そいつは分かるが、いざって時にお前の魔力が無くなっちまったらどうすんだ!」

 

「その時は棒切れでも持って戦うさ。それにお前やナツたちもいるしな」

 

外で何やらエルザとグレイが言い合いしてるみたいだが、何言ってんのかほとんど分かんねえ‥‥うぷっ

 

「なんかルーシィに言う事があった気がする」

 

「私に?なに?」

 

「忘れちゃったんだ。ルーシィに関係してるのは確かなんだけど」

 

「うぷっ、きもちわるい‥‥」

 

「同じく。今すぐにでも出てきそう‥‥」

 

「それかも!」

 

「それかい!」

 

俺たちはこの苦しみから逃れるために窓から身を乗り出そうとする

 

「ちょっと2人とも!落ちるわよ!」

 

ソコをルーシィに止められた。マフラーと服の襟を掴まれながら。

 

「落としてくれぇ。あと首‥‥」

 

「落ちれば楽になるんだぁ。てか追い打ちが‥‥」

 

「うーんなんだろ。ルーシィ、きもちわるい、じゃないとしたら。ルーシィ、変、魚?」

 

「魚美味しいよね〜」

 

「そうそう。で、ヘルシー、変、変、変、変」

 

「ルーシィって、実は変態なの〜?」

 

「違うわよ!ハッピーも私に関連付けて変変言わないで!」

 

〇☆〇☆〇☆

 

オシバナ駅では煙が上がり、大勢の野次馬が集まっていた

 

「現在、列車の脱線事故のため中に入ることはできません」

 

駅員が集まっている人々に呼びかけており、その場にやってきたエルザたちは近くの駅員に話を聞こうとした。

 

「そこの君。中の様子はどうなっている」

 

「ん?なんだね君グホァ」

 

エルザは即座に応えない駅員に頭突きをし、別の駅員に尋ねる。

 

「中の様子は」

 

「え?」

 

だが、即答出なかったことでその駅員は頭突きをされた。

 

「即答できる人しかいらないって事ね」

 

「お前もだんだんエルザの事が分かってきただろ?」

 

「何故服を脱ぐ!?」

 

「アイゼンヴァルトは中だ、行くぞお前たち」

 

エルザは辺りの駅員全員に聞いては頭突きをしたのか、気絶した駅員だらけであった。

 

「ってか、これってあたしの役?」

 

「俺はルクスを背負ってる。なら必然的にそうなるな」

 

ルーシィがボヤきながらもナツを背負い、エルザたちは駅の中へと入っていった。

中では、軍の兵士らしき格好をした者たちが倒されていた。

 

「全滅してるよ!」

 

「相手はギルド、つまり全員が魔導士。軍の小隊では話にならんか」

 

エルザたちが駅のホームにたどり着くと、そこには鉄の森(アイゼンヴァルト)が集まっていた。

 

「ククッ、やはり来たなフェアリーテイルのハエども」

 

「貴様‥‥貴様がエリゴールか!」

 

「ナツ、ルクス!起きて、仕事よ!」

 

「無理だよ。列車、魔導四輪、ルーシィ。乗り物酔いのスリーコンボだもん」

 

「そだよ〜。ルクスは列車と魔導四輪だけだけど連続して乗ってるし」

 

「アンタらはあたしを乗り物と思っとるんかい!」

 

「ハエがァ、お前らのせいで俺は!」

 

ナツとルクスに笛を見られた事でエリゴールから怒りを向けられたと憤慨し、カゲヤマは特にルクスとナツを睨んだ

 

「ん?その声‥‥」

 

「聞き覚えのある声だな‥‥」

 

「貴様らの目的は何だ!この駅で何をしようとしている!」

 

「分からねえのか?」

 

エリゴールは浮かび上がる

 

「飛んだ!」

 

「風の魔法だ!」

 

「駅には何がある?‥‥コイツだ」

 

エリゴールは放送スピーカーの上に立った

 

「ララバイを放送するつもりか!」

 

「ハハッ!この駅の周辺には何千人もの野次馬が集まっている。いや、音量をあげれば街全体に届くか?死のメロディが」

 

「なんの罪もない人達にララバイを聞かせるつもりか!」

 

「これは粛清だ。権利を奪われた者の存在を知らず、権利を掲げて生活を保全している愚かな者共へのな」

 

エリゴールの言い分はかなり自分勝手なものであった。

 

「連合から除名されたのはあんた達が悪いことばっかしてたたからでしょ?それにそんな事をしたって権利は戻ってこないのよ?」

 

「ここまで来たら欲しいのは権利じゃない、権力だ。権力を手に入れれば過去を全て洗い流し、未来を支配することも可能だ」

 

「残念だな、ハエども!闇の時代を見ることなくあの世に行くとは!」

 

カゲヤマが影でルーシィに攻撃を仕掛けるがルクスとナツがそれを防ぐ

 

「ナイス復活!」

 

「その声、やっぱてめえか」

 

今、フェアリーテイルとアイゼンヴァルトの戦いが始まろうとしていた。

そして‥‥

 

〇☆〇☆〇☆

 

ギルドマスター定例会会場

 

そこでは、定例会兼宴会のような事になっていた

 

「マカロフちゃ〜ん、アンタの所の魔導士ちゃんは元気があっていいわ」

 

青い天馬(ブルーペガサス)のマスター、ボブがマカロフに話しかける。所謂オカマの部類であり、この口調だが男だ。

 

「聞いたわよぉ、どっかの権力者コテンパンにしちゃったとか」

 

「おぉ!新入りのルーシィじゃな?アイツはいいぞ〜。こう、ムチムチっとしててな?よく言うボンキュッボンじゃ!」

 

「いや〜ん。マカロフちゃんのエッチ!」

 

「笑ってる場合か、マカロフ」

 

会話に入ってきたのは四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のマスター、ゴールドマインであった。

 

「元気があるのはいいが、てめぇん所はやり過ぎなんだよ。毎度毎度呼び出されては後始末やってるルクスの事を考えてやれ。アイツのお陰で評議員からの評価もあまり落ちてねぇんだからよ」

 

「そりゃあ分かっとるんだがの〜‥‥」

 

「ルクス1人だとカバー出来る分は限られてるんだ。評議員の中にはその内街一つ潰して、その代償でルクスがぶっ倒れるなんて心配してる奴も居るらしいぞ」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ、潰されてみたいの〜ルーシィのボディで」

 

「もう、ダメよ。自分の所の魔導士ちゃんに手を出しちゃ。そ・れ・に〜、あんまりルクスちゃんを虐めると他のギルドに取られちゃうわよ〜」

 

「そうだぞマカロフ。アイツを欲しいってギルドはいくらでも要るからな」

 

「ふん!やりゃあせんわい!というか、ルクスはギルド間を越えてあっちこっちで好かれとるからの〜。ぶっ倒れでもしたら、ウチの連中と合わせて別ギルドのメンバーまで相手にする羽目になりそうじゃの〜」

 

「マスターマカロフ!マスターマカロフ!」

 

話が盛り上がってる所にマカロフ宛の手紙が届いた。

 

「ミラジェーン様からお手紙です」

 

「ほいご苦労」

 

『マスター。定例会ご苦労様です』

 

マカロフが手紙に魔力を通すと、ミラジェーンの立体映像が現れた。

 

「どうじゃ!これがウチの看板娘じゃ!めんこいじゃろ」

 

マカロフは周りのマスターたちに見せびらかす。

 

「ミラジェーンちゃんか。すっかり大人っぽくなりやがったな」

 

『実は、マスターが不在の間とっても素敵な事がありました♪』

 

「ほぅ」

 

『なんと、あのナツとグレイとエルザがチームを組んだんです。あとルクスとルーシィも。これって、フェアリーテイル最強のチームじゃないかなって思うんです。一応報告しておこうと思ってお手紙しました』

 

「な、なな、なんじゃとお!」

 

マカロフはミラジェーンからの知らせに大きなショックを受けた。先程までの心配が現実になるかもしれなかったから。

 

(な、なんてことじゃ。奴らなら本当に街一つ潰しかねん。定例会は今日終わるし、明日には帰れるが、それまで何事も起こらんでくれ!頼む!)

 

時すでに遅しだったが、マカロフがそれを知る由も無かった。




他作品の技とか武器って意外と考えるのが大変なのに最近気づいた


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第4話 駅での戦闘

お名前書いてくの大変になってきた感じなので書くのをストップしますが、皆様評価ありがとうございます。
そして、気がつけばお気に入り件数も100件を超えてて嬉しい限りです。とてもモチベーションになります。


「‥‥後は任せたぞ。闇ギルドの恐ろしさを見せつけてやれ」

 

「「逃げた!?」」

 

エリゴールは風の魔法で逃げた、か。放送をするためか?

 

「ナツ、グレイ。2人でヤツを追うんだ。お前たち2人が力を合わせればエリゴールを止められると私は信じている」

 

「あー、エルザ。この2人にそういうのは‥‥」

 

2人を見てみると案の定睨み合っていた。

 

「何を言う。2人であれば‥‥って、私の話を聞いているのか!お前たちは!」

 

「「あいさー!」」

 

あの2人、コイツと力合わせるとか無理だろ、とか思ってそうだな。

 

「あ!アイツら逃げやがった」

 

「エリゴールさんを追う気だ!」

 

「俺に任せろ!」

 

被り物をした男がムチのようなモノで移動する。

 

「このレイユールさまが仕留めてやる!」

 

「俺も行く!あの野郎だけは許せねぇ!てめぇはその後だ。白髪野郎!」

 

「お前じゃナツには勝てねぇよ」

 

「はっ!ほざいとけ!」

 

アイツらを追うべきなんだろうが‥‥エルザの援護をした方がいいだろうな。

 

「コイツらを片付けたら私達も向かうぞ!」

 

「おう!」

 

「この数を私達だけで?しかも男子は1人だけなのに」

 

「ほらほら、男の気概を見せてみろよ!」

 

「お前1人で守りきれるかな?」

 

ニヤニヤしながらこちらを煽ってくるな。と言うか、コイツらエルザのことを知らないのか?

 

「お〜、エルザ知らないってよっぽどのバカなのか〜?」

 

「下劣な。これ以上フェアリーテイルを侮辱してみろ!貴様らの明日は保証出来んぞ」

 

「魔法から剣が出てきた!それも魔法剣!」

 

「そんなの珍しくもねぇ!コッチには魔法剣士は大勢いるんだよ!」

 

やっぱり、エルザのこと知らないのか。いくら何でも世間に疎すぎだろ。

 

「はぁ!」

 

エルザが一瞬で敵を倒していく。流石だな。

 

「こいつならどうだ!」

 

「槍になった!」

 

「今度は双剣に!」

 

「この女、なんて速さで換装するんだ」

 

「換装?」

 

「ルーシィ、知らないの〜?」

 

「あー、あんまり魔法の種類には明るくないのよ」

 

まぁ、結構な数の魔法があるし、古代の物も含めると無数とも思える数があるからな。

 

「魔法剣はルーシィの星霊魔法に似てて、別空間にストックされてる武器を呼び出すって原理なんだ。でも、エルザの凄さはここからだよ」

 

「こんのぉ!」

 

「時竜の咆哮!」

 

エルザの背後から襲いかかるヤツらに気づき、それを防いだ。

 

「助かる、ルクス」

 

「なに、背後は任せろ」

 

「じゃあ私も!」

 

「え〜、今から2人の見せ場なのに〜」

 

「そうだよルーシィ」

 

「私だって何かしないと何のために居るのかわからなくなっちゃうでしょ!さぁ、行くわよ!開け巨蟹宮の扉、キャンサー!」

 

これまた独特な奴がでてきたな。と言うか、巨蟹宮って黄道十二門の一つだろ?‥‥なんかイメージと違うな。もっとこう、大きなハサミを持ってそうな感じだと思ったんだが。

 

「ルーシィ、今回も戦闘か?エビ」

 

え、エビって‥‥巨蟹宮なのにエビはどうなんだ?ってか意外と強いな。数十人はいたと思うが一瞬で勝ったな。

 

「え、エビ‥‥蟹座なのにエビ?普通カニとかじゃないの?」

 

「分かる、分かるよルビー。オイラも同じことを思ってるんだ」

 

ルビーがショック過ぎて口癖すら引っ込んでるよ。そこまで語尾がエビなのは許容できなかったのか。

 

「やるじゃないか。‥‥しかし、語尾がエビなのは有り得んな。せめてチョキとかにならんのか?」

 

エルザ、お前もか。まぁ、かく言う俺も気ならないかと言われれば気になるが。

 

「だ、ダメ出し‥‥」

 

「しかし、一々相手にするのは面倒だな。仕方ない、一掃する!」

 

どうやらエルザが全力を出すみたいだな。

 

「なんだ、鎧が勝手に剥がれていくぞ!」

 

エルザは美人だから色めき立つのは分からんでもないが、呑気なもんだな。

 

「エルザって何をやってるの?」

 

「魔法剣士は通常武器を変えながら戦うんだけど〜、エルザは自分の能力を高める魔法の鎧も換装しながら戦えるんだよ〜」

 

「それがエルザの魔法。その名は”騎士(ザ・ナイト)”」

 

「舞え、剣たちよ。循環の剣(サークルソード)!」

 

エルザが周囲に剣を浮かせ、背中に翼を持つ銀の鎧、天輪の鎧を見に纏い、複数の剣を円状に回転させて一撃を与えた。

 

「エルザ‥‥まさか、妖精女王(ティターニア)!?」

 

「クソっ、俺が相手だァ!」

 

「あんまりエルザに負担を掛けられないからな。時竜の鉤爪!」

 

「グハッ」

 

エルザに殴りかかった男を壁にめり込ませる勢いで蹴り抜いた。

 

「む、すまないな。気を使わせてしまったか」

 

「いや、単に俺が心配だっただけだ」

 

「こ、こいつらを相手なんて‥‥俺には無理すぎるー!」

 

最後に残っていた一人が猛ダッシュでその場から去っていった。

 

「ルーシィ、すまないがあいつを追ってくれないか。もしかしたらエリゴールと合流するかもしれない」

 

「えっ私が?」

 

「頼む!」

 

「はいいいいいいいいい」

 

エルザ、そんな睨みながら言っても頼んでるようには見えないぞ。現にルーシィがハッピーとルビーの手を掴んで走ってったし。

 

「くっ」

 

「っと。やっぱり無茶してたか」

 

ルーシィが居なくなると、倒れ込みそうになるエルザを支えるように肩を組んだ

 

「‥‥助かる。流石に魔導四輪を飛ばしすぎみたいでな。情けない話だが、正直魔力が回復しないとかなりキツイ」

 

「会話は何となく聞こえていたが、SEプラグが膨張する程魔力を送って魔導四輪を動かしていたんだろ?情けなくないから、倒れるような事はしないでくれよ。心配になるから」

 

正直言ってさっきの戦闘だってさせない方が良かったのだが、エルザの性格だと無理してでも戦っていただろう。何かと無茶をするからな、エルザは。

 

「ふふっ。前にもこうしてお前に支えてもらった事があったな。あの時といい今回といい、お前には何時も助けて貰ってばかりだな」

 

あの時、とはかなり前に一緒に仕事をした時のことだ。その時もエルザは無茶していた。2人揃ってボロボロでエルザに至っては魔力もないのに魔物に斬りかかっていくんだからな。

 

「そんなことはないさ。俺だってエルザに何度も助けられてる。おあいこだよ」

 

ナツ、グレイ。そっちは頼んだぞ

 

〇☆〇☆〇☆

 

エルザに言われてエリゴールを追っていた2人は丁度分かれ道に差し掛かっており、どちらがどの方向に向かうかを決めていた。

 

「よし、俺は右に行くぞ」

 

「なら俺は左だな。‥‥ナツ、相手は呪殺なんてヤバい魔法を使おうとする大バカ野郎だ。見つけたら速攻でぶん殴るぞ」

 

「それだけじゃねぇよ。俺たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)に喧嘩を売った大バカ野郎だ。黒こげにしてやるよ」

 

「‥‥死ぬんじゃねえぞ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「何でもねぇよ」

 

グレイとナツはお互いに走り出した。エリゴールをぶん殴るために

 

〇☆〇☆〇☆

 

グレイは通路を走っている時、目の前にあるスピーカーを見て、ある事を思いついた。

 

「‥‥そういえばアイツら、駅のスピーカーで流すって言ってたよな。だったら!」

 

放送を流すといえば放送室だ!とグレイは放送室に向かい、そのドアを蹴破るがそこには誰もいなかった。

 

「居ない‥‥。てことは、放送が目的じゃないってことか?」

 

「オラァ!」

 

グレイは天井から現れたレイユールの攻撃を避ける。

 

「避けられたか。だが、少し感が良すぎるお前は計画の邪魔になるなァ!」

 

「なるほど。なにか裏があるみたいだな」

 

グレイは、レイユールの言葉で何故放送室にエリゴールが居ないのかを察した。

 

〇☆〇☆〇☆

 

一方ナツはと言うと、通路をひたすらに走り回っていた。

 

「そろそろ仕掛けるか‥‥」

 

影に潜みながらナツを追っていたカゲヤマは、ナツに攻撃をしようとしてた。

 

「オラァ!出てこいエリゴール!」

 

だがナツが部屋の扉がいくつもある場所にたどり着くと、扉の隣の壁を破壊しては中を見て次へ。破壊しては中を見て次へと、ハチャメチャな行動をしていた。

 

「あいつ、扉ってものを知らないのか?」

 

カゲヤマはナツの行動に困惑していた。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「そろそろ、動くには問題ないくらいに回復してきたか」

 

エルザにもう大丈夫と言われ、エルザを支えるのを止めた。

 

「さて、先ずはこの街の住民を逃がさなければな」

 

「逃がすって言ってもどうやって伝えるつもりだ?」

 

「なに、私に考えがある」

 

エルザは駅の二階へと向かい、俺もそれに続く。

外に出るとそこには拡声器を持った駅員がいた。まさか‥‥

 

「少しソレを貸してもらうぞ」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

やっぱり。駅員から拡声器を奪い取り下にいる野次馬に話をするつもりだったか。

 

「命が惜しいものは今すぐこの場を離れろ!この駅は今、邪悪な魔導士によって占拠されている。その魔導士はここにいる全ての人間を殺す事が出来る魔法を放とうとしている!今すぐできるだけ遠くに行くんだ!」

 

エルザの言葉で野次馬として集まっていた住民たちは叫び声を上げながら街の外側へと走っていった。

 

「君!何故そんなパニックになるようなことをしたんだ!」

 

「このまま大勢の人が犠牲になるよりかはマシだろう。君たちも早く避難した方がいい。万が一という事もある」

 

俺はエルザと駅員のやり取りを見ながら、今の状態にどうしても1つ疑問に思うことがあった。

 

「エリゴールが先に逃げて、ナツとグレイが追っているにしたってこれは余りにも‥‥」

 

エリゴールの魔法であれば、もう既に笛を吹かれていてもおかしくない筈だ。なのにそれがされていない。どういう事だ?

 

「何だこれは!」

 

エルザがこちらを向いた時、後ろから強い風の音が聞こえてきた。

 

「なっ!」

 

風のバリアか?これ。わざわざこんな物を駅に仕掛けたって事は、まさか!

 

「エルザ!アイツらは」

 

「どうやら感づいたみたいだが、1歩遅かったな」

 

「しまっ!」

 

俺とエルザは、エリゴールの風の魔法でバリアの中に押し込まれた。

 

「この!」

 

エルザが風のバリアを突破しようとするが、弾き飛ばされる。

 

「やめておけ、この魔風壁は外から中への一方通行だ。無理に通ろうとすると風で体をズタズタにされるぜ」

 

「これは一体なんの真似だ!」

 

「テメェらのせいでだいぶ時間を使っちまったからな。これで失礼させてもらうよ」

 

エリゴールはどこかへと飛び去って行った。

 

「ルクス、お前の力で先程の場所に戻ることは出来ないか?」

 

「‥‥流石に無理だな」

 

俺は対象の魔法の時間を停止、つまりその場に固定するようなことが出来るが、あくまで動かなくするだけ。その性質はそのままだから、結果は同じだろう。魔法を消し去る訳じゃないからな。

また、対象の時間を巻き戻す方法も結局はこのバリアに阻まれて使えない。

世界の時間に干渉するのは、今使えば確実に俺はお荷物になるし、使ったところでエリゴールに追いつけるとも思えない。

 

「そうか。しかし、ヤツは一体どこに向かって行ったんだ‥‥」

 

「それに関して、俺に一つ心当たりがある。そもそも、鉄の森(アイゼンヴァルト)はなぜこのタイミングで行動を起こしたのか。そして、普通に考えれば即座に流されている筈のララバイが流されなかった」

 

「そうか、そういう事か!」

 

どうやらエルザも分かったみたいだな。

 

「そう、アイツらの狙いは今定例会で集まっているマスターたちだ。態々こんな事をしていったのは邪魔をさせない為だろうな」

 

「くそっ!マスターたちの居る街に繋がる交通手段はこの駅から出る列車のみ。しかもエリゴールは風の魔法で移動することが出来るから、ここさえ抑えておけば良いということか」

 

ララバイに気を取られ過ぎたみたいだな、これは。俺も気づいたのはさっきだし、完全に相手の術中に嵌ってしまったな。

 

「いや、まだだ。ホームに居るヤツらに聞きに行くぞ。ヤツらならばこの魔法を解く手段を知っているかもしれない」

 

「なら、一旦ホームに戻るか」

 

俺たちはこの魔風壁と言う魔法を解けないかをホームにいるヤツらから聞き出す為に、走って向かった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

エルザたちがホームへ戻っている時、グレイもまた、レイユールから話を聞き出していた。

 

「つまりだ。お前たちをここに捕らえたのは今回の作戦には無かった臨時のこと。本来の目的はこの駅を占拠し、クローバー駅との交通を遮断するためだったのさ!」

 

「何?ララバイはそっちか!」

 

「クローバー駅に何があるか、よく考えるんだな!」

 

レイユールは複数のムチでグレイの全身を殴る。

 

「クローバー駅にある町。あそこは確か爺さんたちが定例会をしていた筈‥‥、本当の狙いはギルドマスターか!」

 

グレイは独り言のように、小さな声で情報を整理し、鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の狙いに気づいた。

 

「大胆なことをするもんだな!強力な魔法を持つ爺さんたちを狙うとはな!」

 

「何も知らねジジイ共に笛の音を聞かせるなんざ造作もないさ!エリゴールさんならきっとやってくれるからな!」

 

レイユールはムチでグレイを縛り付け、捕らえたつもりでいた。だが、グレイはムチを凍らせ、更にレイユールの四肢をも凍らせていく。

 

「止めてやるよ。そして俺たちのマスターを狙った事を後悔しやがれ。あんな爺さんたちでも俺たちの親みたいなもんだ!」

 

グレイはレイユールの顔を掴み、完全に氷漬けにし、一度合流する為にホームへ向かっていった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「おい、貴様はあの魔風壁とやらの解除方法を知っているか」

 

縄で縛って拘束しているヤツらに俺たちはエリゴールの魔風壁の解除方法を聞き出そうとするが、誰も知らないの一点張りだった。

この状況で嘘をつく必要も無いだろうから、本当に知らないのだろう。

 

「エルザ!ルクス!」

 

そんな時にグレイがやって来た。だが、グレイだけなのは何故だ?

 

「グレイ!ナツはどうした?」

 

「二手に別れた。それにそれどころじゃねぇ。鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の標的はこの先の町だ!爺さんたちの定例会の会場でララバイを使う気なんだ!」

 

どうやら、俺たちの推測は合っていたみたいだな

 

「あまり喜ばしくないが、推測通りだったな」

 

「あぁ。だが、推測が当たっていても魔風壁をどうにかしなければ」

 

「それは俺も見てきた。無理やり通ろうとするとミンチになるぜ、アレは」

 

「流石に解除(ディスペル)は俺たちの専門外だしな」

 

魔法を解除することが出来る解除魔導士(ディスペラー)は中々居ないし、俺達はディスペルをすることは出来ないからな

 

「ディスペル‥‥そういえば、鉄の森(アイゼンヴァルト)の中にカゲと呼ばれるヤツが居たはずだ。ヤツはたった一人でララバイの封印を解くと言っていた。ならば魔風壁の解除も可能なはず」

 

「なるほど。ディスペラー、解除魔導士か!」

 

「よし、そいつを探して捕まえるか」

 

俺たちはナツを追いかけているであろうカゲを捕まえる為にナツを探しに向かった。

 

「‥‥いつまでそこに隠れているつもりだ、カラッカ」

 

「す、すまねぇ」

 

「カゲが狙われてる。行け」

 

「お、俺には助太刀は無理だ」

 

「いや、もっと簡単な仕事だよ」

 

そんな会話をされていたとも知らずに

 

〇☆〇☆〇☆

 

「あーあ、完全に見失ったわね」

 

「あい」

 

「そだね〜」

 

ルーシィ、ハッピー、ルビーの一人と二匹は追っていたはずの相手を見失っていた。

 

「ねぇ、一旦エルザたちの所に戻らない?」

 

「「!!!!」」

 

ハッピーとルビーはルーシィの言葉に衝撃を覚える。

 

「なにそのリアクション」

 

「だ、だってエルザの頼みだよ?」

 

「あのエルザが追えって言ったのにルーシィってば凄いね〜。どうやったらそんな心臓に毛が生えたようなこと出来るの〜?」

 

「それよりもエルザにあんな事されるルーシィは見たくないな〜」

 

「そだね〜、エルザにあんな事されるなんて流石に可哀想な気分になるよね〜」

 

「えっ、ちょっ、私何されちゃうわけ?」

 

ルーシィはハッピーとルビーの畳み掛けるような言葉に不安を募らせ、何をされるのかと震える。

 

「よ、よーし。探す、探します!」

 

「ルーシィってころころ態度変わるよね」

 

「ルーシィって実は芸人だった〜?」

 

「どーしてそうなるのよ!てかなんであたしに懐いてるのこの猫たちは!」

 

「手を掴まれて勝手に連れてこられただけなんだけどね〜」

 

「あい!そもそもルーシィに懐く猫ってホントに居るの?」

 

「うるっさいわね、余計なお世話よ!」

 

一人と二匹はコントまがいのことをしながら捜索に戻るのだった

 

〇☆〇☆〇☆

 

「なぁ、さっきから聞こえる爆発音とかこの辺の壁の穴とか、これって確実にナツの仕業だよな」

 

「だろうな。アイツの事だから手当たり次第に穴開けて中を調べてんじゃねえのか?」

 

「全くアイツは‥‥、これを怒られるのはマスターなんだぞ」

 

それ以上に俺が修復する羽目になるんだけどな‥‥

 

「ってか、今思いっきり真上で爆発あったよな。って事は」

 

「その手があったか!貫け、羅貫!」

 

「アイスメイク槍騎兵(ランス)!」

 

「おい待てお前ら。特にエルザ!さっき怒られる云々言ってたお前が何率先してやろうとってあーー!!」

 

こ、コイツら‥‥確保優先で行動しやがった。毎度思うがもう少し穏便に出来ないのか?

 

「うぉぉおおおおお」

 

「ああああああああぁぁぁ」

 

丁度上の部屋の貫いた場所で戦っていたのか、カゲとナツが降ってきた。

 

「な、なんてデタラメなことしやがる」

 

「ん?エルザたちじゃねえか。こんなところで何してんだ?」

 

「お前を探してたんだ、ナツ。より正確に言えば、お前とやり合ってるカゲという男に用があるのだが」

 

(流石にこの人数を相手にするのは無理だな。ここは一時撤退をするか)

 

チラリともう1人の男の方を見ると今にも逃げようとしていた。逃がすか!

 

「逃がすつもりはねぇよ!時間停止(ストップ)!」

 

「ナイスだ、ルクス!アイスメイ‥‥っておい!」

 

「うおら!火竜の鉄拳!」

 

俺が動きを止めてグレイが捕らえようとしたが、グレイよりも僅かに早く動いたナツの鉄拳がカゲの土手っ腹に突き刺さる。それと同時に俺の魔法の効果が終わり、壁を突き破りながらカゲは吹っ飛ばされた。

 

「おいナツ!てめぇ俺たちの話を聞いてなかったのか!」

 

「あ”あ”?アイツが一発かましたら何でも協力するって言ったからかましただけだよ」

 

「知るかそんな事!大体アイツが無事じゃなきゃ唯一の突破口が無くなるんだよ、クソ炎」

 

「それこそ知らねぇ事なんだよ氷野郎」

 

「やめんか、馬鹿者」

 

喧嘩を初めかけた2人の頭にエルザが拳骨を一発かました。うわ、籠手で殴られるは痛いぞ。

 

「さて」

 

吹き飛ばされた先で壁に寄りかかっていたカゲを一瞥したエルザが剣を‥‥何故剣を構える?

 

「四の五の言わずに魔風壁を解いてもらうぞ!」

 

カゲの首にギリギリ当たらない場所で剣を寸止めし、脅迫もとい協力を要請をするエルザ。

 

「いいな?」

 

「わ、分かった‥‥うっ!」

 

その時、カゲの腹から手が生えてきた。

 

「な、何故だ」

 

倒れたカゲの後ろにいたのは、俺たちから逃げたヤツだった。

 

”簡単な仕事だ。カゲを始末しろ”

 

「カゲ!」

 

「くそ!唯一の突破口が!」

 

「仲間じゃねえのかよ。同じギルドの、仲間じゃねえのかよ!」

 

「敵に利用されるぐらいなら、自分たちが殺る。胸糞悪い考えだな!」

 

「「吹き飛べコノヤロウ!」」

 

俺とナツの2人で壁に逃げ込もうとしていた所を壁ごとぶん殴り、ぶっ飛ばした

 

「お邪魔だったかしら、私たち」

 

「あい」

 

「そだね〜」

 

〇☆〇☆〇☆

 

俺たちはカゲを治療し、目覚めた時を考えて駅の入口まで一緒に連れて来た。そして、道中ルーシィたちにエリゴールたちの狙いを伝えた。

 

「定例会会場が狙われてる!?」

 

「じっちゃんたちが狙われてるって事か!」

 

「魔導四輪車で追いかければ追いつけないことは無いが、この魔風壁をどうにかしねぇと駅の外に出ることすら出来ねぇ」

 

「そんな!」

 

「うおおおお!」

 

ナツが魔風壁に対して殴りかかったが、やはり壁に弾き飛ばされてしまった。

 

「無理に出ようとすればああなる」

 

「だからこそ、カゲを確保するつもりだったんだが‥‥」

 

「あれじゃあ流石に厳しいよね〜」

 

カゲは無事でこそいるが、意識を失って直ぐには目覚めそうもない。ナツは諦めずに殴りかかっているがやはりどうにもならないみたいだな。

 

「アンタの魔法で凍らせたりとか出来ないの?」

 

「出来たらとっくにやってるさ。ルクスも無理だったんだろ?」

 

「ああ。魔風壁を解除することは出来ないからな」

 

「ナツ!アンタもいい加減に止めなさいよ!バラバラになっちゃうでしょ!」

 

ルーシィが何度弾かれても止めないナツを強引に止めると、ナツが何やらルーシィをじっと見る。

 

「あーーーっ!そうだ、星霊!」

 

「え?」

 

「ほら、エバルーの屋敷で星霊界を通って移動できただろ」

 

「ナツ、お前そんな事してたのか」

 

「おう!あんときゃ何がなにやら分からなかったけどな」

 

「いや、星霊界だと人間は死んじゃうんだよね、息できなくて。そもそも、星霊は星霊魔導士がいるところでしか呼べないのよ?」

 

「??どういう事だ?」

 

「簡単に説明するなら、外に星霊魔法を使える星霊魔導士が居なきゃさっきの案は使えないってことだ」

 

「そういうこと。第一、人間が星霊界に行くこと自体が重大な契約違反なのよ?あの時はエバルーの鍵だったから良かったけどね」

 

へ〜、そんな決まり事があったのか。そもそも星霊界にどんな事をしたら行くことになったのか分からんが。

 

「エバルーの鍵‥‥」

 

「ん〜?どうしたのハッピー、何か引っかかったの〜?」

 

「そうなんだ。あと少しで‥‥あーーーーっ!」

 

今度はハッピー大声で突然叫んだ。

 

「ルーシィ思い出したよ」

 

「何を?」

 

「来る時言ってた事だよ!」

 

「あぁ、私が変とか、変とかってあれ?」

 

「これ!」

 

そこでハッピーが取り出したのは、金の鍵だった

 

「それ、バルゴの鍵!ダメじゃない勝手に持ってきちゃ」

 

「違うよ、バルゴ本人がルーシィへって」

 

「バルゴ?ああ!あのメイドゴリラ」

 

「エバルーが逮捕されて契約が解除されたんだって」

 

メイドゴリラってまた強烈な個性だな。いや、ゴリラ見たいな人にメイド服着せるってどんな趣味してたんだそのエバルーってやつは。

 

「それで、今度はルーシィと契約したいってオイラの家来たんだ」

 

「へ〜、それってどんな姿だったの〜?」

 

「あい!すっごい大きいんだよ、ルビー」

 

「嬉しい申し出だけど今はそれどころじゃないでしょ。早く脱出する方法を探さないと」

 

「でも」

 

「でももへったくれも無いわよ。猫は黙ってにゃーにゃー言ってなさい」

 

ルーシィも、時々ああなるのか。メチャクチャハッピーのほっぺた引っ張ってるし。

 

「だって、バルゴは地面に潜れるし、魔風壁の下を通って出られるかなって思ったんだ」

 

「「「何!」」」

 

ハッピーの言葉に俺たちは驚愕した。新しい突破口が見つかったかも知れないその事実に。

 

「そっか!も〜、やるじゃないハッピー。何で直ぐに言わないのよ〜」

 

「ルーシィが抓ったから」

 

「ゴメンゴメン、後でお詫びをします。させていただきます。だから早く鍵を貸して」

 

「あい!お詫びヨロシクね」

 

「流石ハッピー、抜け目ないね〜」

 

「それじゃあルーシィ、頼む」

 

「うん。‥‥我、星霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼び掛けに答えゲートを潜れ!開け、処女宮の扉!バルゴ!」

 

ルーシィによって呼び出されたのは‥‥普通のメイド?いや、手首に手錠が付いてる時点で普通じゃないが、ゴリラでは無いな。

 

「お呼びでしょうか、ご主人様」

 

「えっ、誰?」

 

「よう、マルコ。激ヤセしたなお前」

 

「バルゴです。あの時はご迷惑をお掛けしました」

 

「痩せたってか最早別人よ!」

 

「お〜?別人ってどういう事〜?」

 

「私は、ご主人様に忠実な星霊。ご主人様の望む姿にて仕事をさせていただきます」

 

「前の方が強そうだったぞ」

 

「そうですか。では」

 

ナツの一言でバルゴがゴリラへと変身した。本当にメイドゴリラだな、あの姿。

 

「余計なことしなくていいの。さっきの姿でいいから」

 

「承知しました」

 

「おお、元に戻った」

 

「とにかく、時間が無いから契約は後回しでいい?」

 

「かしこまりました、ご主人様」

 

「ねぇ、そのご主人様は流石にやめてもらえないかしら」

 

「では‥‥女王様と」

 

「却下」

 

今確実に腰にある鞭を見て考えたな。

 

「では姫と」

 

「そんな所かしらね」

 

「そんな所なのか」

 

「あい。お姫様になりたいとかそんな願望を持ってたんだよきっと」

 

「つか急げよ」

 

「では、行きます!」

 

バルゴは本当に穴を掘り進めていく。

 

「よし、あの穴を通って行くぞ」

 

「よっと」

 

「ああ?何してんだ、ナツ」

 

「俺と闘った後に死なれると後味悪いんだよ」

 

「ナツらしいな」

 

「じゃあ、俺が先に行くから遅れずに来てくれ」

 

グレイがまず先に穴へ入っていき、ナツ、ハッピー、ルーシィ、ルビー、エルザ、俺の順番で穴を通ってようやく外へと出ることが出来た。




書き終わって長くなったから2話に分けたのに偏りのある文字数になってしまった。
ジャンプでアクタージュ読んでて単行本欲しいと思ってる今日この頃。しかし金欠で買えぬ。

今回、エルザが七つの大罪の技を使いました。アレは、魔力を増幅させる専用の魔法剣を用いることで一直線上にビーム的な魔法をぶっぱする風にアレンジしたものです。原作ほどの効果は無いです。代わりに破壊力はエルザが使うことで同等になります。


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護衛任務編(仮)
第5話 決着


分けたもう半分です。キリがいい所ってした結果こんな偏りに‥‥
そして、前話の誤字報告ありがとうございます


俺たちはバルゴの掘った穴を使って駅の外へと出ることが出来た。

 

「出られたぞ!」

 

「にしても風が強いな」

 

「魔風壁の傍だからな。急いで追うぞ」

 

「姫、スカートがめくれて下着が見えそうです!」

 

「アンタは自分をまずどうにかしなさい!」

 

「無理だ。今からじゃ追いつけるはずがねぇ。俺たちの、勝ちだよ」

 

カゲが意識を取り戻したのか、そんな事を言った。‥‥ん?そういえば、ナツはどこに?

 

「なぁ、ナツはどこに行った?」

 

「あれ?さっきまで一緒にいたのに」

 

「ハッピーも居ないよ〜」

 

「俺が穴から出てきた時には居た筈だ」

 

「ハッピーには飛行魔法がある。恐らくそれで先に向かったのだろう。私たちも追いかけるぞ!」

 

「ねぇ、ルクス〜。ボクたちも(エーラ)で向かえないのかな〜?」

 

「無理だな。恐らくナツが魔法でブーストして加速してる筈だ。俺の魔法じゃそういった芸当は出来ないしな」

 

「そっか〜」

 

エルザが魔導四輪を持ってきたので、俺たちはそれに乗り込む。カゲもそのままにはしておけなかったから一緒に乗り込ませた。

 

「それじゃあ、できる限り急いでいくぞ」

 

エルザは魔導四輪を走らせ、街から出ると崖上から強引に線路の上降りると、線路にそって走らせた。走らせるのはいいが‥‥

 

「ゆ、揺れが。線路で揺れが激し‥‥うぷ」

 

「あー、そうだっわね。ルクスも乗り物に弱いんだっけ」

 

「乗り物、ダメなだけだったのか。なるほど。僕がかなわないわけだ。あの時も列車が動いてる時だったしね」

 

「なんの話だ?」

 

「列車でそいつとやりあった時のことだよ。それより、何故僕を連れていく。なんで態々助けるようなことをする。僕は敵なんだぞ」

 

「それは」

 

「そうか、分かったぞ。僕を人質にエリゴールさんと交渉するつもりなんだな。無駄だよ、あの人は冷血そのものさ。僕の為なんかに動きはしないよ」

 

メチャクチャ卑屈なセリフが聞こえる‥‥ま、窓開けよう。もう垂れ流しでもいいから出さな‥‥うぷ

 

「死にたいなら殺してやろうか」

 

「ちょっとグレイ!」

 

「生き死にだけが決着の全てじゃないだろ。もう少し前向いて生きろよ、お前ら全員さ」

 

ズガン!と大きな揺れを感じたあと体浮く感覚を感じた。そして、窓から顔を出していたせいで体が外に出ようとする時、俺の体に何か巻き付けられた。それと同時にお腹に圧力がかかってリバースしてしまった

 

「ふんぬぬぬぬ。て、手伝って〜」

 

「うお!?ルクスが落ちそうじゃねぇか!」

 

俺は出し切った後にグレイとルビーに引っ張られ、車の中に引き戻された。

 

「危なかった。それよりエルザ!大丈夫なのか?」

 

「済まない、大丈夫だ」

 

(くっ、目が霞む。ルクスがフォローしてくれたおかげで少しは回復したと思っていたのだが、魔力の消費をし過ぎたか。ナツ、私たちが行くまでエリゴールを頼んだぞ)

 

〇☆〇☆〇☆

 

ルクスたちが魔道四輪でナツの元へと向かっている時、ナツはエリゴールを相手に善戦していた。

 

(一体どうなってやがる。炎を巨大な手にしただと?)

 

「危ねぇ、危ねぇ。戻って来れなくなるところだったぜ」

 

「何をしやがったか知らねぇが、どうやら本気でやらないといけないらしいな」

 

「燃えてきたぞ!」

 

暴風衣(ストームメイル)!」

 

エリゴールは己に暴風を纏わせた。

 

「それがどうした!火竜の咆哮!」

 

「ふん、それがどうした」

 

ナツがエリゴールに咆哮をぶつけたがエリゴールの衣にかき消されていく。

 

「なに!鬱陶しいもんまとわりつかせやがって。それならこれだ。火竜の鉄拳!」

 

「ふん!」

 

ナツの炎はやはりエリゴールにかき消されてしまい、本来の威力を出せなかった。

 

「やはり炎を纏っていなければあの破壊力は出せないみたいだな」

 

「どうなってやがる」

 

暴風衣(ストームメイル)は常に外に向かって風が吹いている。分かるか?つまり俺には近ずけないし、炎は風には勝てねぇんだよ!」

 

「はっ!そんなもんすぐに貫いてやる!」

 

「貫くだァ?さっきから炎を消されてるお前には無理なんだよ!」

 

「そうでもねぇさ」

 

この時ナツは、ある事を思い出していた。

 

『なぁ、ナツ。お前って滅竜魔法以外に自分の魔法って持ってないのか?』

 

『あ〜そういや俺、イグニールに教えて貰った魔法しか使えねえな』

 

『ふーん、なら俺と一緒に新しい魔法を作って覚えねぇか?』

 

『お!なんか面白そうだな。ハッピーも呼んでくる!』

 

‥‥‥

 

『違う違う。そうじゃなくて、最もこう武器を纏う感じだよ』

 

『つってもな〜。俺武器とか使わねぇし』

 

『とにかくイメージが重要だ。今までの技が通用しなかったり、相手の防御を突破できない時コイツは絶対に役に立つから』

 

『あい!でもナツって猫よりしょぼい記憶力だから新しく魔法を覚えたりできるかな』

 

『そだね〜。ナツってばこの前なんかミラに持ってくるように頼まれたものを30分もしない内に忘れてたしね〜』

 

『それに、イメージって発想力に乏しいナツが出来るなんてとてもとても‥‥』

 

『うっせーぞお前ら!見てろよ、絶対習得してやる!』

 

「あの時の魔法、今が使い時だな!」

 

「おお!ナツ、アレを使うんだね!」

 

「うおおおおぉ!」

 

「アレだと?何をする気か知らねぇが、お前の炎じゃ俺の風には勝てねぇよ」

 

ナツの右手にドンドン炎が溜め込まれていき、一つの形に変化した。

 

豪炎爪(ごうえんそう)。貫け、爪焔衝破(そうえんしょうは)!」

 

「さっき言っただろう。お前の炎では俺の風に‥‥なに!」

 

「風に、何だって?吹っ飛べ!」

 

「ぐはぁ!」

 

ナツの右手は暴風衣を貫き、エリゴールの腹に突き刺さった。

 

「ば、かな。暴風衣(ストームメイル)を貫くだと‥‥。ありえねぇ‥‥!」

 

「これでトドメだ。火竜の剣角!」

 

ナツの攻撃でエリゴールは高く吹っ飛んで頭から落ち、立ち上がることはもうなかった

 

「ナイスだよ、ナツ!やっぱりルクスとやってて良かったね」

 

「おう!けどあの技、威力が全然足りなかったな〜」

 

ナツの豪炎爪はエリゴールの風で弱くなっており、貫くき吹き飛ばすことは出来てたがダメージを与えることが出来ていなかった。

 

「一先ず終わったから、エルザたちを待とう。ナツ」

 

「おう!けど、ハッピー。コイツはどうする?」

 

「あい。放置でいいんじゃない?気絶してるし」

 

「それもそっか」

 

ナツとハッピーはエリゴールを放置してエルザたちを待つことにした。

 

〇☆〇☆〇☆

 

魔導四輪が止まった事で外へと降りると、そこには仰向けに倒れたエリゴールとハッピーとグレイ、ナツが言い合いをしていた。

 

(エリゴールさんが、負けただと)

 

「エルザ、大丈夫?」

 

「済まない」

 

「無茶し過ぎだろ。まぁ、それを止めなかった俺たちも俺たちなんだが」

 

「そんな事ないさ。これは自己管理が出来ていない私自身の責任だ」

 

「そんな事ないと思うけどな〜」

 

俺たちは今回の事件はこれで終わったと、油断していた。だからこそ、カゲの行動に気が付かなかった。

 

「へっ!油断したなハエども!」

 

「カゲ!」

 

「危ねぇだろ!」

 

「ララバイは貰った!これでおサラバさせてもらうぜ!アッハハハハハハハハ」

 

カゲが笑いながら魔道四輪車でクローバー方面へと去っていった

 

「あいつ」

 

「何よ、せっかく助けてあげたのに!」

 

「急いでやつを追うぞ!」

 

俺たちは線路の上を走ってカゲを追いかけた。縄とかを持っていた訳ではなかったため、引き渡す為に忘れずにエリゴールも連れていった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

時が経ち夜になった頃、カゲは定例会の会場近くの崖から会場を見下ろしていた。

 

(よし。この距離なら十分ララバイの音色が届く。ついに、ついにこの時が)

 

カゲがいざララバイを吹こうとした時、背後からの笑い声にビックリして少し飛び上がった。

 

「この子もあの子も中々にめんこいのぉ。最近の魔導士は見た目も中身もレベルが高いのぉ」

 

そこには女性魔導士だけを取り上げた週間ソーサラーを読んでいるマカロフが居た。因みにではあるが男性版ももちろんあり、どちらもかなりの人気を誇っている。

 

「はっ!いかんいかんこんなことをしておる場合では無かった。早くあやつらの行き先をってドキーン」

 

マカロフは少々わざとらしい感じであったが必死な言い訳などを即座にしていたため、カゲには悟られることは無かった。

 

(ってかこのジジイ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマスターじゃねぇか)

 

「ん?なんじゃお前さん、病人じゃったか。こんな所で何をしておるんじゃ?」

 

「い、いやぁ〜、実はちょっと笛を演奏したくて病院を抜け出したんですよ。病院内じゃ演奏出来なくて」

 

「そのきんもちわるい笛で演奏を?」

 

「見た目はともかくいい音色なんですよ。なんでしたら一曲聞いて言って貰えませんか?」

 

「ふむ。急いどるんじゃが、一曲だけなら構わんぞい」

 

「ありがとうございます」

 

カゲは勝ったと確信した。ララバイを演奏するまでもなく、笛の音を聞かせればそれでいいからだ。だがカゲはいざ笛を吹こうとした時、これまで聞いてきたギルドメンバーやエリゴール、ルーシィやグレイたちフェアリーテイルの言葉を思い出し、本当に吹くべきか迷ってしまっていた。

 

そこから少し離れた場所にナツたちがやって来て、カゲとマスターを見つけた。

 

「見つけた!」

 

「しぃ〜」

 

声を掛けようとしていたナツたちに、ボブが待ったを掛けた。

 

「今いい所なんだから見てなさい。ってかアンタたち可愛いわね、超タイプ」

 

「「ひいいい」」

 

「何この人」

 

「マスターボブ」

 

「ボブさん、お久しぶりです」

 

「あら、エルザちゃんにルクスちゃん。エルザちゃんは大きくなったわねぇ。ルクスちゃんも、この間はありがとね〜」

 

「この人があの青い天馬のマスター!?」

 

ルーシィはボブの姿に驚愕を覚えていた。

 

そして、眼下ではマカロフが吹かないのかと言葉をかけ、カゲが吹こうとするものの、やっぱり最後の1歩を踏み出せていなかった

 

(くそ!吹けば、ただ吹けばそれでいい。それで全てが変わる。そのはずなのに!)

 

「何も変わらんよ。弱い人間はいつまで経っても弱いまま。しかし、弱さ全てが悪では無い。元々人間は弱い生き物じゃ。1人じゃ不安だからギルドがある。仲間がおる。強く生きるために、共に歩いていく。明日を生きようと信じて一歩を踏み出せば自ずと力は湧いてくる。強く生きようと頑張れる。そんなモノに頼らずともな」

 

マカロフのその言葉に心を動かされたカゲはその場で膝を着いた。そこに、待機していたエルザたちが駆け寄った。今度こそ決着が着いたかに思われたが、まだ終わりではなかった

 

〇☆〇☆〇☆

 

《どいつもこいつも根性ねぇ魔道士共が!》

 

「笛から声が?」

 

「な、なんか出た!」

 

《こうなったら、ワシ自ら食らってやろう!》

 

空に魔法陣が現れたと思ったら、笛が浮かび上がりその姿を変えていく。

 

《貴様らの魂をな!》

 

「なっ!こんなの俺は知らないぞ!」

 

「コイツは、ゼレフ書の悪魔」

 

「まさか、本当に懸念通り現れるとはな」

 

「なんで笛から?」

 

「ゼレフの魔法は生きた魔法。あれはララバイそのものなのさ」

 

「黒魔導士ゼレフ。歴史上最も凶悪だった魔導士。何百年も前の負の遺産が今になって姿を現すなんて」

 

少し遠いが人の声がする?

 

《引っ込め!雑魚ども!》

 

ララバイが放った魔法は山一つ消し飛ばした。おいおいマジかよ。

 

「なんつー威力だありゃ」

 

「流石、ゼレフ書の悪魔と言われるだけはあるな」

 

《決めたぞ。貴様ら魔導士全員の魂を頂く》

 

「おもしれぇ!やれるもんならやってみろ!」

 

俺たちはララバイと対峙する。

 

「たった4人で何するつもり?」

 

「あれ、ルーシィは?」

 

「今日はもう使える精霊居ないし、足引っ張るかもしれないし」

 

「言い訳だ」

 

「使えない子〜」

 

「うるさいわね、猫二匹!」

 

《うおおおおぉぉぉぉ!》

 

ララバイが魔法を発動させる気なのか、雄叫びを上げ始める。不快な声だな。

 

「ナツ、グレイ、ルクス。行くぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

「換装!騎士(ザ・ナイト)!」

 

「穴だらけになっちまいな!アイスメイク氷剣(フリージングソード)!ヴァイスシュナーベル!」

 

「これでも喰らえ!火竜の鉄拳!」

 

「粉砕してやる!時竜の翼撃!」

 

それぞれに攻撃を与えていく。そこでグレイから一つ提案された。

 

「なぁ、そういえばアレって元は笛なんだし食えねぇのか?ルクス」

 

「あー、試してみるか」

 

《なにをごちゃごちゃと!》

 

ララバイの攻撃を躱しながら取り付くと、その腕を一齧りする。

 

「‥‥クソ不味いじゃねぇか!聖剣抜刀(エクスカリバー)!」

 

魔力を回復どころかより多くの魔力を得はしたが、あまりの不味さに軽くキレてしまい手刀から魔力を一定の長さのブレードとして出す聖剣抜刀を繰り出して片腕を細切れにした。

 

《んなあ!なんて事をしてくた!これでは私の音色が出せないではないか!》

 

「よし!全員でたたみかけるぞ!」

 

全員で一気に攻撃を仕掛けて最後にナツがトドメを刺すと、大爆発を起こした。

 

「アッハッハッ、意外とたいしたこと無かったな」

 

「ちょろいもんだ」

 

「あれか、さっきのは良薬口に苦し的な考えでいればいいのか?」

 

「多分違うと思うよ〜。そもそも禍々しい魔法を使う笛だったからもう食べない方がいいと思う〜」

 

「あい!アレでルクスがお腹壊すかもね」

 

「不吉なこと言うのやめろ」

 

本当にやっと終わり、ワイワイ皆と話す。

 

「ま、経緯は分からんがフェアリーテイルに借りができちまったな」

 

「しかしこれは‥‥」

 

周りのマスターたちが見ている方を見ると、先程の大爆発で定例会会場が吹き飛んで、辺りに残骸が散らばっていた。

 

「‥‥はぁ。やるかさっきの回復のお陰で魔力だけはあるし」

 

吹き飛んだ山はどうしようも無いが、定例会会場に関しては恐らくギリギリだろうが元に戻せるだろう。

 

「すまんのぅ。またお主に負担をかけるようなことを」

 

「なに、今回は俺も一端を担ってるしそう気にするなよマスター」

 

「ルクス〜。どのくらい掛る〜?」

 

「そうだな。吹き飛んだ分を時間を逆行させて元に戻すわけだから、一、二日位かかるかもな。皆は先に帰っててもいいぞ?」

 

「いや、流石にそれは気が引ける。待たせてもらうつもりだ」

 

それから本当にギリギリまで魔力を消費しては回復、消費しては回復を続け、予定より遅い3日後に修復は完了し、疲れ果てた俺に考慮して馬車で帰ることになった。本当なら列車が良かったがまだ復旧し切れていないらしい。

何故馬車かというと、早さ優先だかららしい。魔道四輪車は流石に一台しか無いため人数が入らないことで却下となった。




今回はグレイがアカメが斬るのエスデスの技、ルクスは聖闘士星矢のシュラの技を使いました。
ルクスに関しては特に理由はありません。何となく思いついたので入れました。


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第6話 エルザVSナツVSルクス

最近少し忙しくなってきたので、投稿が遅くなったりするかもしれません


 

鉄の森の事件から数日後。魔法評議会”ERA”では今回の騒動が話題に上がっていた。

 

「鉄の森を壊滅させただけでは、根本的な問題は何も解決しないのだよ」

 

「確かに。闇ギルドの数は星の数程ある」

 

「ならば、今こそ掃討作戦をするべきです!」

 

「だがどうやって?魔導士ギルドや王国の人員全てを回せる訳じゃあるまいし」

 

「だが、またこうやってゼレフの魔法を使われでもしたらかなわんぞ」

 

「そもそも、このような強大な魔法が何故こうも簡単に持ち出されたのか」

 

「責任問題は管理側にも追求されるじゃろ」

 

評議会の評議員たちは闇ギルドに対してどうして行くべきか、またララバイの封印を管理していた者に対する処遇をどうするかを話し合っていた。

 

「それにしてもあれだけ煙たがっていたフェアリーテイルに今回ばかりは助けられたな」

 

「たった5、6人でギルドを壊滅させちゃうんだもの。凄いわね」

 

「もし、ギルドマスターたちが殺されていたら、事は確実に大きくなっていた。最悪、ここに居る俺たちの何人かの首は飛んでいただろうな」

 

「馬鹿な。責任問題をここまで引き上げるつもりか」

 

「話にならん!とは、言えないのだよなぁこれが」

 

ここでルクスの話題が出てきた。

 

「ルクス・クロスヴィア。彼のおかげで、またしても物的被害が最終的に少なくて済んだ」

 

「彼にはこれまで別ギルドが時折起こしてしまった破壊も我々の依頼として修繕を行ってもらっているからな」

 

「ここに居る全員が頭上がらない可能性すらあるね」

 

「それだけ彼には我々も助けられている。が、対外的には形式だけでもしなければ我々がなめられる」

 

「では、誰を呼ぶか」

 

「目撃者は赤髪の女を見かけたという声が多かったらしい」

 

「ではエルザ・スカーレットを呼び出す。それでよいな?」

 

議会はそれを結論として終わった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

朝。あれから数日経ったが、お互いの予定などを擦り合わせた結果ナツと約束した勝負の日が今日となった。

 

俺はあれから一日で終わるような簡単な仕事を一、二回ほど受けてそれ以外は報酬の整理をしていた。何かと家を空けることが多く、取り敢えずで積まれているものが殆どだったしな。

 

「えっと、皆にあげる物はっと」

 

「この辺じゃなかった〜?」

 

「それだな。ありがとうルビー」

 

「それにしても結構な量だね〜」

 

「お金や使う生活用品以外はほとんどいらないからな」

 

大体が依頼人たちからの好意や、依頼中に更なる儲けが出るようなことが起こったりして、貰ったものだが殆どは死蔵しかねない。特に、消費しきれないであろう食料や絶対に吸わないタバコなどは毎回ギルドの皆にあげたりしている。そもそもの話、国王が持たせすぎなのだ。

 

「あれ〜、それ今日の決闘で使うの〜?」

 

ルビーは俺が腰に差している刀を見てそんな事を言った。

 

「あぁ。ナツに全力で相手しろって言われたし、エルザも相手だからな。それにゼレフ書の悪魔が出てきたってことは、今後かなりやばくなってくるだろうから今のうちに周知の事実にして持ち歩くつもりだ」

 

「そっか〜。でも、それを持ち出したら二対一になりかねないかもね〜」

 

「かもな。ま、その時はその時だ。これを皆に渡すから少し早いがもう行くか」

 

「お〜」

 

まだ、ナツたちと約束した時間には早いが、皆にあげたりしていればすぐに時間が経つだろうと思い、家を出た。

 

〇☆〇☆〇☆

 

一方、ナツはまだ眠りから目覚めていなかった。

 

「おーい、ナツ〜。起きてー」

 

「‥‥zzz。おうハッピー、その魚俺にもちょっとくれよ‥‥むにゃむにゃ」

 

「ダメだこりゃ。今日が楽しみすぎて昨日一晩中騒いでたツケが回ってきたね」

 

「うるせー、俺はエルザとルクスに勝つんだー‥‥zzz」

 

「このままだと時間にも遅れちゃうかもしれないし、どうしよう」

 

ハッピーはナツをどう起こしたものかと悩んでいるのだった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

俺たちがギルドにたどり着くと、中には殆どのギルドメンバーが集まっていた。

 

「おう!ルクス。今日は頑張れよ‥‥ってその荷物はなんだ?」

 

最初に声をかけてきたのはワカバだった。

 

「ん?これか?これはいつものだ」

 

「いつものってぇとあれか。施しのやつか」

 

「おいちょっと待て。なんだその名称は」

 

施しって、なんでそんな仰々しい名前の行為になってんだよ。

 

「そりゃおめぇ、食費の無いナツとかに食料あげたり、俺たちが欲しかったりしてたもんを一定のスパンで渡してんだからよ」

 

「そうそう。一時、お前は施しの神とか、皆のお父さんとか色々言われてたぜルクス」

 

会話に入ってきたマカオから謎の名称を伝えられる。

 

「ったく。変な渾名付けんなよ」

 

「そりゃ無理だ。フェアリーテイルだからな」

 

「騒がしい連中しかいないここでその要求は通らないからな」

 

確かに、騒がしい連中ばっかだから今更か。

 

「で、今回は何を持ってきたんだよ」

 

「色々とだ。えっと‥‥ほいワカバ。少し前に貰った葉巻。俺は吸わないからな」

 

「おう、ありが‥‥と‥‥ってお前!こりゃあ高級品で市場にだって中々出回らないヤツじゃねぇか!どこで貰ってくんだよこんなもん」

 

「少し前にしてた依頼の追加報酬。俺は気絶してたから知らないがルビーが報酬と一緒に貰ってたんだよ」

 

年齢が上がる事に貰うものが多種多様になっていき、最近ではお酒やらタバコやらを貰ったりしている。

 

「で、俺にはなにか無いのか?」

 

「マカオは‥‥はいこれ。お酒」

 

「悪いな、なんかたかってるみたいで」

 

「別に気にするな」

 

「そういえばルビーは?」

 

「ルビーならあっちでジュース飲んでる。俺はまだ渡す相手いるからまた後で」

 

「おう!ナツたちとの勝負頑張れよ」

 

ワカバたちと別れると、辺りを見回しまずはカナの所へ向かった。

 

「お、ルクスじゃん。どうかしたか〜?」

 

「コレを渡しにな」

 

「お、良さげな酒じゃん。てことはいつものお渡しかい」

 

「そういう事だ」

 

「んじゃ、コイツはありがたく飲ませてもらうよ」

 

約束の決闘の事もあり、荷物もちょっと多いし早めに数を減らすため、カナにお酒を渡すと次に渡せそうな相手の元へと行く。そうして、今回持ってきた物が残りあと二つになった。

 

「お〜、この短時間で随分と減ったね〜」

 

「ルビー。もう飲んだりしてなくていいのか?」

 

「うん。ボクは出ないけど、ルクスの対決は見るつもりだから〜。頑張ってね〜」

 

「おう。で、後渡す相手は‥‥居た」

 

いつものようにカウンター近くにいるかなと思ったらやっぱりいた。

 

「ん?どうしたルクス」

 

「よっ、リーダス。ちょっと渡したい物があってな」

 

「珍しいな。こういう時、俺の所には来ないのに」

 

「今回はたまたまだけど、スケッチブックと絵の具、その他諸々一セット分貰ってな」

 

「うぃ。こりゃまたすげぇな。貰っていいのか?」

 

「あぁ。俺じゃ使わずに死蔵しそうだからな。道具も使ってくれる人が持っていてくれた方がいいだろ?」

 

「‥‥有難く使わせてもらうよ」

 

「渡す相手あと一人居るから、そっちに行くわ」

 

「うぃ。ありがとな」

 

リーダスから感謝の言葉を受けて、最後の一つを渡す相手を探す。

 

「ん〜?誰を探してるの〜?」

 

「コレを渡す相手を探してる」

 

ルビーに手に持っているメガネと本を見せる。

 

「お〜、てことはレビィだね〜。うんと〜‥‥あ、あそこに居たよ〜」

 

ルビーが指さす方向にいつもの三人組、シャドウギアが居た。

 

「あれ?ルクスじゃん。どうしたの?」

 

「レビィに渡すものがあってな」

 

「私に?」

 

持っていた本とメガネをレビィに渡す。

 

「これは‥‥風読みの眼鏡に、古代文字の辞典!しかも私がまだ持ってないやつ!これ、貴重な物なのにいいの?」

 

「あぁ。どっちも最近欲しがってたろ?たまたま手に入った様なものだし、あげようと思ってたんだ」

 

「ありがとう!絶対大事にするね!」

 

レビィが喜んでくれてよかった。他のみんなもそうだけど、流石に微妙な顔されたりするのはちょっとしたショックと申し訳なさを凄く感じるからな。

 

「おっしゃー!ルクス!エルザ!勝負するぞー!」

 

丁度渡し終えた頃にナツが騒ぎながら入ってきた。そういえば、エルザをまだ見てないな。

 

「そう騒ぐな。私たちは別に逃げたりせん」

 

と、ナツの後ろからエルザが現れた。どうやらあの二人は一緒のタイミングで到着したみたいだな。

 

「ルクス、始めるぞ」

 

エルザの呼び掛けで一緒に外へ向かう。外では既に野次馬だらけであった。

 

「ちょっと、本気なの三人とも!」

 

「本気も本気。本気でやらねば漢ではない!」

 

「あら、エルザは女の子よ?」

 

「ありゃ女は女でもバケモノのメスだよ」

 

「大体、何をそんなに心配してるんだよ」

 

「だって、最強チームの三人が激突したら‥‥」

 

「最強チーム?なんだそりゃ」

 

「アンタとナツとエルザ、それにルクスの四人の事じゃない」

 

「はぁ?下らねぇ、誰がそんなことを言ったんだよ」

 

外野では何やらグレイたちが騒がしくしていた。

 

「うぅ‥‥」

 

「ああ‥‥ミラちゃんだったんだ‥‥」

 

「たしかにナツとグレイの男気は認めるが、最強と言われちゃ黙っておけねぇな」

 

「ん?”ナツとグレイは”?」

 

「最強の女はエルザで間違いないと思うんだけどね」

 

「最強の男となるとミストガン、ラクサス、ルクスの三人が飛び抜けてるし、あの人もいるしな」

 

「えっ!そりゃあナツと同じ滅竜魔導士って事はミラさんから聞いてたけど、ルクスってそんなに強かったの!?」

 

「なんだ、知らなかったのか?」

 

「知るわけないでしょ!ソーサラーにだってそんなこと載って無かったし」

 

「まぁ、ルクスの強さって意外と関わり合いがあるヤツしか知らねぇよな」

 

「大体はあなた達が破壊した後の後始末ばかりしてる所しか見ないからね〜」

 

「ね、姉ちゃん怒ってる?」

 

「そりゃ怒りもするわよ!一体どれだけルクスのおかげで始末書やら何やらが減ってると思ってるの!それに、それでも無くならないのよ!」

 

「「「すみませんでした」」」

 

会話はこちらまで聞こえており、野次馬どころかナツとエルザまで俺とミラに謝ってきた。

 

「と、とにかく勝負を始めるとするか」

 

「そうだな。それにしてもルクスのその刀はなんだ?」

 

「これか?これは俺が本気で全力を出す際に使う武器だ。いい加減携帯してもいいかなと思ってたしな」

 

「ルクスが刀?」

 

「どういう事だ?」

 

俺の言葉に周りの殆どがざわつき、エルザとミラは驚いていた。

 

「不味いな‥‥ナツ!少し勝負方法を変える。ルクスがあの刀を使うなら二対一にするぞ。ルクスもそれで構わないか?」

 

「あぁ。俺はそれでもいいぞ」

 

「は?何言ってんだエルザ。ルクスが刀を使うとやべぇのかよ?」

 

「ルクスの刀使いもかなりの物だが、それ以上にあの刀の能力がヤバい」

 

「ヤバいってどうヤバいんだよ」

 

「あの刀は斬撃を設置するんだ」

 

「???意味わからねぇぞ?」

 

だろうな。正直この刀の能力は実際に見た方が早い

 

「そうだな。実演すれば早いか」

 

俺は話しながら自分の目の前を刀で切る。

 

「何やってんだ?」

 

「この刀は元々時穿剣って名前の大剣だった。何時からあるのかは知らないがかなり昔からあったらしい。俺自身貰い物だから詳しくは知らない」

 

この刀はそもそも国王から譲り受けた物だ。

 

「どうにも時の魔法を扱う者の魔力でなければ反応しないらしい剣でな。その能力はやはり時に関するものだった。ナツ、俺に向かって咆哮を撃ってくれ」

 

「あ?まぁ、別にいいけどよ。火竜の咆哮!」

 

時穿剣に魔力を込めて俺は先程の斬った斬撃を呼び出した。すると火竜の咆哮はその斬撃に当たり真っ二つに割れて消えていく。

 

「んな!」

 

「これがこの刀、時穿剣の力の一つ未来を斬る力だ。本当はもう1つあるが、アッチは少し魔力消費量が多くてな。今回はこっちしか使わないから安心していい」

 

「ちょ、ちょっと、何よあれ!」

 

「お、俺たちだって今のは知らねぇ」

 

「お、俺もだ‥‥」

 

周りのみんなは口をあんぐりと開けていた。

 

「ねぇねぇ、ハッピー。やっぱりルクスにかけない〜?」

 

「そうだね。エルザとルクスで迷ってたけどここはルビーの意見を参考にするよ」

 

「なんて愛のないネコなの!」

 

ハッピーはルビーの言葉で賭け先を決めていた。

 

「大剣を刀にしたのは単純に俺が最も扱える武器だったから。まぁ、形を変えたのは一種の賭けだったが」

 

俺も詳しい事は知らないが、魔法剣は無理に形などを弄ると壊れるらしい。

 

「へっ!未来を斬るからなんだ!燃えてきたぞ」

 

「では、私も本気で行かせてもらう!換装、炎帝の鎧!」

 

「なるほど、ナツとの連携のためにその鎧を選択したか。だがっ!」

 

俺は時穿剣に魔力を込めて一気に辺りを切り裂く。

 

「っ!」

 

「うおっ!危ねぇ!」

 

「避けても防いでもいいが、身動きが取れなくなるのはそっちだぞ。時竜の咆哮!」

 

「ナツ!」

 

「おうよ!火竜の咆哮!」

 

ナツの咆哮と俺の咆哮がぶつかり爆発が起こる。

 

「ルクスは以前、あの能力は一つの斬撃に対して1回しか使えないと言っていた。ならば!換装、天輪の鎧。繚乱の剣(ブルーメンブラット)!」

 

エルザの声と同時にいくつもの剣がこちらに向かってくる。たが、俺自身の魔法を忘れているな!

 

「多少魔力を使うが、この程度なら問題ない。時間停止(ストップ)!」

 

横方面のみ時穿剣の力で斬撃を呼び出し、正面は時間を止め、翼撃で全てを叩き落とす。

 

「やはり、そう簡単に斬撃を消費はしないか」

 

「横を使ったなら、そこから攻める!火竜の剣角!」

 

「それを素直に食らうかってんだ!」

 

俺はナツの攻撃を飛んでよけると、飛んだ先にエルザが居た。

 

「ナイスだナツ。はぁ!」

 

「なんの!」

 

エルザの剣を刀で防ぎ、お互いに距離を取って着地する。

 

「な、いい勝負してるだろ」

 

「どこが。しかし、ルクスのやつがあそこまでとはな」

 

そして、俺たち三人同時に前へ飛び込んで互いに攻撃をしようとすると、そこを手を叩く音で止められた。

 

「そこまでだ。全員そこを動くな。私は評議員の使者である」

 

「評議員!?」

 

「使者だって!?」

 

「あのビジュアルについてはスルーなのね」

 

「先日のアイゼンヴァルトの一件において、器物損壊罪ほか11件の罪によりエルザ・スカーレットを逮捕する。そして、ルクス・クロスヴィア。そなたは評議会より呼び出しがかかっている」

 

「なんだとーーー!」

 

「ルクスの呼び出しも気になるが、エルザが逮捕!?」

 

「どうなってんだ」

 

俺たちは評議員の使者と名乗るカエルに連れていかれることになった。




元々時穿剣とかに影響されてたから、時穿剣を出したかったので出しました。自分で書いてて思いましたが、時穿剣ってやっぱチート並に強くね?


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第7話 S級魔導士

ちょびちょび書いてた分です
深夜テンションで書いたので、少しおかしいかも?


エルザとルクスが連れていかれ、フェアリーテイル内は沈んだ空気となっていた。

 

「おい!俺をここから出せー!」

 

「ナツうるさいわよ」

 

「出せー!」

 

「出したら絶対暴れるでしょ」

 

カウンターでトカゲの姿にされたナツがコップの中に閉じ込められ、ミラに注意をされていた。

 

「暴れねーよ!つか、姿を元に戻してくれよ」

 

「そうしたら絶対エルザたちのところに助けに行くって言うでしょ」

 

「言わねぇよ。誰がエルザなんか‥‥」

 

「相手は評議員じゃ、手の打ちようがねぇ」

 

グレイがナツに言及する。

 

「出せー!評議員だかなんだか知らねぇが間違ってるのはあっちだろ!俺はあいつらに言ってやるんだ。間違っているのはそっちだってな!」

 

「評議員が黒と言えば白いもんでも黒くなっちまうんだ。ウチらの言い分なんか聞くか」

 

「しっかしまぁ、何だって今回に限って。今までだって色々やって来た筈だが」

 

「ええ。理解に苦しむね」

 

「絶対なにか裏があるんだわ」

 

ルーシィは何かおかしいと考えていた。

 

〇☆〇☆〇☆

 

エルザとルクスは途中で別れ、エルザだけが裁判所へと連れていかれようとしていた。

 

「ここで一旦別れるみたいだな」

 

「あぁ。また後でな」

 

二人は連れてこられてから、これが形式的なものであると理解していたからであった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「こちらでお待ちください。裁判が終わり次第来られるそうです」

 

「ありがとな」

 

「いえいえ。では」

 

俺は案内された部屋の中に入り、備えつけられているソファに座った。

 

「‥‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

暇だ。ものすごく暇だ。分かってはいたのだ。形式的なものとはいえ、裁判は裁判。仕方がないのだが‥‥

 

「一人だとやること無さすぎてヤバいな。せめて‥‥」

 

そこまで口にした時、何故か大きな爆発音が聞こえ衝撃が小さくはあるがここまで届いた。それから間もなく、評議員の男から何が起きたのかとやむなく拘束されることを聞き、俺は謝罪をして牢へと連れて行かれた。

 

〇☆〇☆〇☆

 

ギルドでは、ルーシィが証言をしに行こうとマカロフに提案をしていた。

 

「今からでは、どれだけ急いでも判決には間に合わん」

 

「落ち着けよルーシィ。あの二人を見てみろ」

 

グレイが指さす方向を見ると、そこにはハッピーとルビーが呑気に魚を食べていた。

 

「ねぇ、ルビー。エルザたちは大丈夫かな」

 

「大丈夫だよ〜、だってルクスがいるから〜」

 

「‥‥それもそうだね。それじゃお魚食べよう」

 

ハッピーたちは魚の追加注文をしていた。

 

「アイツら、特にルビーがあんなに落ち着いてんだ。だからお前も落ち着け」

 

「でも‥‥」

 

「出せー!俺をここから出せー!」

 

「本当にそこから出してよいのか?ナツ」

 

未だにナツが騒いでいたが、マカロフの言葉でピタリと騒がなくなった。

 

「どうしたナツ。さっきまでの威勢はなくなったか?」

 

「‥‥‥‥‥」

 

沈黙するナツにマカロフが魔法を当て、ナツがコップから出て姿が元に戻る。が、そこから出てきたのはマカオであった。

 

「マカオ!?」

 

「すまねぇ。ナツには借りがあってよ。ナツに見せかけるために自分でトカゲに変身したんだ」

 

「じゃあ本物のナツは!?」

 

「まさかエルザを追って‥‥」

 

「多分な」

 

「洒落になんねぇぞ!アイツなら、評議員すら殴りかねない!」

 

「全員黙っておれ!静かに結果を待てばよい」

 

ナツがエルザの元へ向かったことを知り、騒ぎ始めた者をマカロフは一喝して黙らせた。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「二人もここに居たのか」

 

「ルクス。どうしてお前まで」

 

「評議員から大体の話は聞いた。暴れたのがナツだったから、同じフェアリーテイルの俺も一緒にって事らしい。何かの頼み事をするつもりだったんだろうが、これじゃそれもなくなってるだろうな」

 

「うぐっ」

 

「はぁ、全く。形式的なものだったというのに‥‥呆れてものも言えんぞ」

 

「形式ってどういう事だよ」

 

「そのままの意味だ、ナツ。今回の逮捕は評議会が魔法界全体の秩序を守るために取り締まっている、その姿勢を見せるための物だったんだよ」

 

「訳わかんねぇぞ」

 

「つまりお前が暴れなければ今日中にも帰れたという事だ」

 

「えーーー!」

 

「大体な、ナツ。本当に逮捕する気だったら俺が既に評議員に喧嘩売ってるよ」

 

「いや、ルクス。それはあまり堂々と言うことじゃないと思うが‥‥」

 

「‥‥俺は大切な誰かを失う事はしたくないんだよ」

 

手が届く範囲にいるのに、それを見過ごすなんてできるわけがない。

 

「そうそう。仲間を見捨てるなんて絶対ありえねぇからな!」

 

「全く‥‥。だが、二人の気持ちは嬉しいぞ」

 

「「痛てぇ」」

 

エルザに抱き寄せられるが、やっぱり鎧にぶつかった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

あれから数日と経たずに俺たちは開放された。元々姿勢を示すためのものだったため、早く解放されたのだ。

 

「やっぱりシャバの空気はうめぇーー!」

 

ギルドに帰ってきたはいいが、ナツがずっとあの調子で騒いでいた。疲れとかないのか、アイツは。

 

「結局形式だけの逮捕だったなんてね〜。心配して損しちゃった〜」

 

「そうか!カエルの遣いだけにすぐ帰る」

 

「さすが氷の魔導士。半端なく寒い‥‥」

 

「ルクス〜、結局ルクスはなんで呼ばれたの〜?」

 

「俺も詳しくは分からんが、多分今までと同じような頼み事をするつもりだったんだろうな。ナツが暴れておジャンになったが」

 

「そっか〜」

 

ってか、さっきからずっと走り回っては叫んでるナツがうるせぇ。

 

「で、エルザたちとの漢の勝負はどうなったんだよナツ!」

 

「漢?」

 

「そうだ、忘れてた!エルザ、ルクス。この前の続きだ!」

 

「よせ、疲れてるんだ」

 

「ナツ、それは今じゃなくて別にいいだろ?」

 

俺たちはナツの申し出を断るが、ナツはそんなの関係ないとばかりにこっちに突っ込んできた。

 

「仕方ない‥‥」

 

「いや、ここは私に任せてくれ」

 

俺が立ち上がろうとすると、エルザがそれを制止する。

 

「いくぞ!」

 

「やれやれ」

 

エルザはナツの攻撃を軽くよけ、一発見舞う。ナツは鳩尾を殴られ、それだけでノックダウンした。

 

「仕方ない、始めようか」

 

「「終〜了〜」」

 

「アッハッハッハッだせぇぞナツ」

 

「やっぱりエルザ強え!」

 

そんな光景にギルドが騒がしくなるが、唐突にマスターがウトウトし始めた。

 

「マスター、どうかしましたか?」

 

「眠い‥‥。ヤツじゃ‥‥」

 

マスターのその言葉を皮切りに周りのみんながドンドン眠っていく。俺もまた眠気に襲われるが眠るほどではなかった。

 

「相変わらず、用心深い事だ」

 

ギルドにやって来たのは顔を布で覆い隠し杖を5本背負っている男、ミストガンであった。

 

「そう言ってくれるな。これは必要なことなんだ」

 

「‥‥分かっているさ。今度、一緒に酒でも飲もうぜ」

 

「‥‥ふっ。機会があればな」

 

ミストガンと少しだけ話をする。ミストガンとは幼い頃に少しの間だが一緒に旅をした中だったため、お互いにフェアリーテイル所属だった事を知った時は驚いたものだ。

 

「‥‥行ってくる」

 

ミストガンはリクエストボードから一つ依頼を取るとマスターに見せた。

 

「うむ‥‥魔法は解いてから行けよ?」

 

「伍、四、参、弐、壱」

 

カウントダウンをしながらミストガンが外へと歩いて行き、姿が見えなくなった所で皆が‥‥ナツ以外が目を覚ました。

 

「この感じミストガンか‥‥」

 

「相変わらず強力な魔法だね」

 

「ミストガン?」

 

「フェアリーテイル最強の男候補の一人だ」

 

「どういう訳か、誰にも姿を見られたくないらしくて、仕事を取る時はこうやって全員を眠らせちまうのさ」

 

ミストガンは素顔がアレだからな。俺だって後になって知って驚いたものだ。

 

「だからマスター以外、ミストガンの顔を誰も知らねぇのさ」

 

「いんや、俺は知ってるぞ。後ルクスも」

 

カウンター上の二階から声が掛かる。

 

「ラクサス!」

 

「居たのか!」

 

「もう一人の最強候補だ」

 

「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやんな。ってか、ルクス。お前がミストガンと親しかったなんて知らなかったぞ」

 

「幼い頃からのちょっとした知り合いでな。まさか同じギルド所属になるとは思ってもみなかったが」

 

「ね〜ね〜ルクス〜、ミストガンってシャイで通っていいの〜?」

 

「一応シャイって事でいいだろ」

 

本当の事は皆混乱するだろうしな。

 

「ラクサス!俺と勝負しろ!」

 

「お前さっきエルザに負けたばっかじゃねぇか」

 

「そうそう。エルザ如きに勝てねぇようじゃ、俺には勝てねぇよ」

 

「何だと?どういう意味だ!」

 

ラクサスの挑発にナツだけでなくエルザまでキレる。まぁ、あんな言われ方してキレない方がおかしいが。

 

「簡単だ。俺が最強って事さ!」

 

「降りて来いコノヤロウ」

 

「お前が上がってこい」

 

「上等だ!」

 

全く、お互いに挑発しあいやがって。俺は席を立つとラクサスの元へと歩いていく。

 

「おっ!ルクスもやるのか。一緒にラクサスぶん殴るぞ!」

 

とナツが二階に上がる階段に突っ込もうとするとマスターにそれを止められる。

 

「二階に上がってはならん!今はまだな」

 

「ナツ、このルールは厳守しなくちゃいけないんだから無視するような事はするな。それと、俺はラクサスとやり合うつもりはねぇよ」

 

ナツに話しかけながら二階へと上がる。

 

「へへっ、怒られてやんの」

 

「お前が挑発したからだろう?ラクサス。それと、さっきのお前が最強って言葉はもう少し考えてから言った方が良いんじゃないか?」

 

「あぁ?」

 

「そもそも、あの人に勝てて無くて本気の俺にも勝てて無いことを棚に上げるなって言ってんの」

 

「うっせぇ。今の俺なら勝てるんだよ」

 

「それ、どっかのナツと同じこと言ってるぞ」

 

「‥‥‥‥」

 

「全く、あの頃のラクサスは一体どこに行ってしまったんだか」

 

「昔の話はすんじゃねぇよ!」

 

ラクサスをそれからも弄りながら、ラクサスはナツだけじゃなくエルザを挑発したりと話をしていると

 

「相変わらずお前の事は苦手だよ、ルクス」

 

そう言いながら外へと出ていった。それをキッカケに、皆の張り詰めた空気が無くなってぞろぞろと帰り始めた。

 

俺も帰ろうかとした時、窓から手紙を加えた鳥がやって来た。

 

「この手紙は‥‥なんでまたこんな短期間に出すんだよ」

 

やって来た手紙は王家の蝋印がされていた。つまり、国王からの呼び出しということだ。中身を見てもその通りであった

 

「マスター。これが来たから、明日はこっちに寄らず直接行ってくる」

 

「‥‥お主もお主で大変じゃのう、ルクス。分かった」

 

マスターの了承を得たことで、ルビーを連れて家に帰った。

 

〇☆〇☆〇☆

 

時間が経ち、ルーシィはマカロフの言っていた言葉についてミラに聞いていた。

 

「さっきマスターが言ってた二階には上がっちゃいけないって、どういう意味ですか?」

 

「まだ、ルーシィには早い話なんだけどね。二階のリクエストボードには一階とは比べ物にならないくらい難しい仕事が貼ってあるの。S級のクエストよ」

 

「S級!?」

 

「一瞬の判断ミスが死を招くような仕事よ。その分報酬はいいんだけどね。S級の仕事はマスターに認められた人しか受けられないの。資格があるのはエルザ、ラクサス、ミストガン、ルクスを含めてまだ六人しか居ないの。そう言えば、ルーシィはルクスの事驚いてなかったわね」

 

「まぁ、ミストガンやラクサス並に強いなんて聞けば予想できますから」

 

「それもそうね。まぁ、S級なんて目指すものじゃないわよ。本当に命がいくつあっても足りない仕事ばかりなんだから」

 

ミラから説明を受けたルーシィも時間が遅くなってきたことで家に帰っていった。

 

しかしルーシィは知らなかった。自分の家に既にナツとハッピーが居ることを。そして、その二人がとんでもない事をしでかしている事を。




次回からのガルナ島編はオリジナルの話2、3話分にするつもりです。
昨日fateの映画見てきたけどヤバかった。とにかくヤバかった(語彙力低下
最近新しい物を書きたくなる衝動が少しずつ湧いてる‥‥抑えなければ


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第8話 国王からの依頼

久しぶりの投稿。やっと落ち着いてきたけど、オリジナルの話を書こうとするとどうしても難産な場所が出てきて完成が遅れてしまう‥‥

道筋見えてるのに、細部が完成しないという状態に陥ってるので少し強引に進めてしまってますのでご了承ください。


俺は夢を見ていた。ここまで意識がハッキリとして夢だと知覚できるなんてそうそうないが。そして、夢だと思った決定的な理由は、クローゼリアが居ることだった。

 

”なぁ、クローゼリア。天竜だと呼吸するだけで回復できるって聞いたけどそれって出来ないのか?”

 

ん?俺は天竜に会ったことは無いはずなんだが‥‥いや、何分幼い頃の記憶はクローゼリアに関すること以外ほとんど忘れてるが。

 

”そうですね‥‥ごく自然に時の奔流を感じ取ることが出来ればそれも可能でしょうが‥‥”

 

”ならそれを教えてくれよ!”

 

”まだまだ基礎すら出来てない貴方に教えるのは早すぎます”

 

結局基礎が出来て、滅竜奥義を一つ教えてもらいやっとの思いで習得した矢先にあの出来事だった。だから、俺は普段から取り込むことが出来ていない。時を感じることが出来ているからあと少しではあると思うんだが‥‥

 

夢を見ながら思考に耽っていると、段々と辺りが白くなってきて、意識も無くなってきた。恐らく目覚める時なんだろう。

 

そして完全に意識を失い次に目を開けると、朝日が差し込んでいる自宅のベッドの上で寝ていた。

 

「‥‥懐かしい夢だったな。にしても天竜ね」

 

覚えてる限りは会ったことない筈だと思うんだがな。俺は体を起こして窓を開ける。

 

「ん〜‥‥もう朝〜?」

 

ルビーが外からの入ってきた風で目を覚ましたようで、フラフラと飛びながら俺の頭に着地する。

 

「ほら、起きろって。これから仕事に行くんだから」

 

「あい〜」

 

ルビーを頭から下ろして支度をする。

 

「朝ごはんは〜?」

 

「今日は何か途中で買って食べるつもりだ。向かうのに時間もかかるし」

 

「分かった〜」

 

俺たちは支度が出来次第出発した。因みに、朝ごはんは魚弁当だった。ルビーは魚の丸焼き二つだった。

 

〇☆〇☆〇☆

 

ルクスたちが出発したをした頃、フェアリーテイルのギルド内は慌ただしかった。

 

「大変ですマスター!二階の依頼書が1枚無くなってます!」

 

「‥‥‥ブーっ!」

 

ミラからの言葉を聞き、酒を飲んでいたマカロフは吹き出していた。

 

「依頼書が無くなっただあ?」

 

「二階に貼ってあったつったらS級のヤツだろ?」

 

「どこのバカよそんな事を仕出かしたのは」

 

「猫だ。羽の生えた猫がちぎってくのを見たぜ」

 

皆が口々に話していると、ラクサスがそこに口を出した。

 

「ハッピーが!?」

 

「つー事はなにか。ナツとルーシィも勝手にS級の依頼に向かったってのか?」

 

「馬鹿だとは思ってたけどここまでの馬鹿とはね」

 

「‥‥ほぅ。ま、これは重大なルール違反だ。ジジイ!ヤツらは帰り次第破門だよな?つーか、あの程度の実力でS級クエストに行ったら帰っちゃ来れねぇだろうがな」

 

「ラクサス、知っててなんで止めなかったの!」

 

ミラがラクサスに詰め寄る。

 

「俺はてっきりルビーのヤツだと思ったんだよ。まさかアレがハッピーだとは露ほども考えなかったな」

 

「そんな言い訳が通用するとでも?」

 

「おうおう、アンタのそんな顔久しぶりに見たな。言っただろう?羽の生えた猫がって。色までは見えて無かったんだからよ」

 

「‥‥‥」

 

ラクサスが挑発するような口調で話し、その場の空気がドンドン張り詰めていく。

 

「不味いのぉ。それで、消えた依頼書は?」

 

マカロフが消えた依頼書の事をミラに尋ねる。

 

「呪われた島、ガルナです」

 

「なにぃ!」

 

「ガルナってんな無茶な!」

 

「やっぱりアイツら馬鹿だ!」

 

「ラクサス!連れ戻してこい!」

 

マカロフはラクサスに連れ戻すように言うがラクサスはそれを仕事があると言って拒否する。そして、グレイが立候補する形で連れ戻す役目を負った。

 

〇☆〇☆〇☆

 

「クロッカスまであとちょっとだな」

 

「そだね〜。ルクスも復活できたし〜」

 

「言うな、その事は」

 

途中まで馬車を使って来たため、酔っていた。クロッカスが近くになった事で徒歩に切り替えたがやはりダメなものはダメなので少しダウンしていたのだ。

 

「それにしても今回はどんな用なんだろうね〜」

 

「さてな‥‥。いつも通りの文面だったからよく分からん」

 

いつも通りとは、城に来てから内容を話すというものだ。呼び出される度にこれだからいつも何を依頼されるのか分からないのだ。大概は途中から姫様が絡んでくるのだが。

 

「そういえばルクス〜。さっきから何食べてるの?」

 

「ん?ラクリマと50年ものの木製椅子の欠片だ」

 

「最近木製のやつよく食べるけど美味しいの〜?」

 

「個人的には木製が一番うまい。例えるならサクサクパリパリしたお菓子って感じだな」

 

「へ〜」

 

しかし、前回食べたララバイは最悪な味だったな。木製だし、多少はいけるかな〜とか思ったがそんなことはなかった。魔力の回復量は結構あったが一口だけで二度と食べたくないと思った。

 

「やっと着いた〜」

 

ルビーと話をしながら歩いてい大体30分ぐらいだろうか。ようやく俺たちはクロッカスの街にたどり着いた。

 

「そっちの魚を2匹くれ」

 

「今はこれが人気だよ〜」

 

「今週の週ソラ読んだか?フェアリーテイルのミラちゃんがやべぇぞ!」

 

「おいおい、そこはブルーペガサスのジェニーちゃんだろ!」

 

「やんのか?」

 

「ああん?」

 

賑やかな街の中を俺たちは歩いていく。余裕を持って本来の招集時間より数時間早く着いたので街を見回っている。

 

「いつもも思うけど凄い活気だね〜」

 

「王城の城下町だからな」

 

しばらく辺りを散策していると、目の前で人が倒れた。咄嗟に駆け寄って起こそうとすると、何やら呟いていた。‥‥というか、どことなく見たことある銀髪だな。

 

「オナカ‥‥‥スイタ‥‥‥タス‥‥‥ケテ‥‥‥」

 

その言葉と同時に盛大な腹の音が聞こえ、単純に空腹で倒れたことがわかった。そしてこの人物が知り合いだと言うことも。幸いお金はそこそこ所持していたから、見捨てるのもアレだし助けるついでに俺達も昼食をとる為に近くのレストランに入った。

 

「いや〜、助かったゾ」

 

「いい食いっぷりだね〜。にしても、なんでまた行き倒れみたいな事になってたの〜?」

 

現在目の前で食事をしているのはソラノ・アグリア。なんでも生き別れの妹が居るらしいのだが、どこにいるか分からないとか。後は‥‥天使の様に空に消えていくという事か。

正直、この考えは余り良くないと思っているが何を持ってそんな考えに至ったのかが分からず余り強く言えないのが現状だ。

 

「あ〜‥‥笑わない?」

 

「?別に笑ったりするつもりは無いが」

 

「その、実はお金を全部家に忘れてきてそれに気づいたのがこの街に着いてからです。はい」

 

「うぷぷ〜、ソラノってばおっちょこちょい〜」

 

「笑うなってさっき言ったばかりだゾ!」

 

「こらこら、目くじらを立てない。ルビーも笑うな」

 

二人を注意し、ルビーの頭を小突く。

 

「とにかく!今回の事には感謝してる‥‥アリガト」

 

最後に小さくお礼を言うのが聞こえた。余りお礼を言い慣れてないのか、顔を少し赤らめていた。

 

「どういたしまして。それで、今日はどんな用でクロッカスに来たんだ?」

 

「それはいつものやつを買いに来たつもりだったゾ」

 

「それって〜、初めて会った時にも買ってたアレ〜?」

 

「そうだゾ。‥‥結局買えなくなったけど」

 

俺たちがソラノと初めてあったのはお互いにある物を買う為に来た時だ。ある物とは毎週金曜にのみ1000個限定一人二つまでのカップケーキのこと。味は大体ランダムだがハズレが全くなく、その上遠くからわざわざ買いに来る人がいる程に人気なもの。皆前日から街に来て、開店を待つほどの物だ。

以来、この街に来る度にタイミングさえ合えば出会うことが多かった。

 

「アレ〜?でもお金無かったんだよね〜?宿とかどうしたの〜?」

 

「そこは‥‥街の外でこちらを使わせて頂きました」

 

と、星霊の鍵を見せてくるソラノ。というかなぜそこまで畏まった言い方になってんだ。

 

「変な喋り方〜」

 

「キャラ崩壊がさっきから激しいと感じるぞ、お前」

 

「うるさい。とにかく今回は助かった!このお礼は‥‥どっかで返せそうなら返すつもり。ただ、そんな頻繁に会うわけじゃないし‥‥」

 

「そだね〜。そもそもこの街でしか会わないし〜」

 

「まぁ、そういったのはその時でいい。俺たちはこの後用事があるから」

 

「特にすることもないし、一緒に出るゾ」

 

互いに食事を終えていたので、三人で外に出る。料金は少し値がはったが特に問題なく支払いを終えた。

 

「それじゃまたな」

 

「またね〜」

 

「‥‥うん。また、だゾ」

 

ソラノと別れ、俺たちは王城へと向かう。はてさて今回の依頼はどんなものなのやら。

 

「‥‥なんか慌ただしい〜?」

 

「みたいだな」

 

俺たちが王城へ向かい中に入ると、何やら兵士たちが慌ただしく動いていた。

 

「よく分からんが、取り敢えずは王様に会えばわかるだろ」

 

そうして王座のある部屋へと向かう。王座のある部屋の前に着くと、兵士が待ち構えていた。

 

「ルクス殿ですね。国王がお待ちです」

 

兵士に導かれて中に入ると、そこには二人の魔道士が既に居た。因みに二人とも知り合いである。

 

「うわ〜、あの二人が居るなんてどんな依頼なんだろうね〜」

 

「聖十大魔道のひとりが居るとか、俺呼ばれる必要あったか?」

 

そう。先に来ていたのは聖十大魔道の一人、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラ・ネェキス。そして青い天馬(ブルーペガサス)の一夜=ヴァレンタイン=寿だった。

 

「メェーン。まさか君が最後の一人だとはね、ルクス君」

 

「確かにルクス殿であれば適任であるか」

 

「2人は先に依頼を聞いてるのか?」

 

二人には敬語は必要ないと言われているので砕けた口調をとる。歳もキャリアも、実力だってあちらが上なのに寛容な2人だった。

 

「詳細はまだ聞いておらん。しかし、今回は護衛という事を先程聞かされてな」

 

「そして、最後の一人がもうすぐ来ると聞いていて、君が来たという訳さ。それにしても、相変わらず良いパルファムだね」

 

「そ、そうだったのか‥‥あの、一夜。離れてくれ」

 

「一夜って〜、会う人会う人そうやって匂い嗅ぎに行くよね〜。そのうち捕まるよ〜?」

 

「なに、心配することはない。我がマイハニーであるエルザさん以外にはそうそうしないからね!」

 

「そんなキメ顔で言われてもね〜」

 

まずもって相対した知り合いに匂いを嗅ぎに行くこと自体どうかと思うぞ。

 

「ンンッ!話を始めてもいいかね?」

 

「おっと、これは失礼しました」

 

「‥‥今回、お主たちに依頼するのはワシと娘の護衛じゃ」

 

「護衛‥‥ですか?」

 

「近々、というよりも明日なんじゃが、周辺国との交流ということで一箇所に集まることになっての。最近は闇ギルドも活発化してきておるし、ここは一つということになったのだ」

 

「‥‥今回の人選に関しては?」

 

今回、ジュラがいるのでもう少し適任なヤツが居たと思う。それにジュラ以外の聖十大魔道だって居るしな。

 

「今回、ウチの兵士達も護衛に付くが‥‥魔導士相手に叶うわけもなし。実力に関しては皆、S級のクエストをこなせるだけの力を持っているため問題なし。後は、個人として信頼を置けるかどうかで決めさせてもらった」

 

「信頼とは?」

 

「自分の命と娘の命を預けるのだ。強くても信頼が無ければな。それに、下手に強力な戦力を動かしては問題も多い」

 

護衛なのに戦力を連れすぎるのもアレだからな。それに国の防衛力とかもあるか。

 

「配置は一夜殿をワシに。ルクス殿を娘に。この中で1番実力が高いジュラ殿には遊撃を頼みたい」

 

「私が、遊撃とは?」

 

「本来であれば2人ずつで分けたいところだったが、早々頼める相手も居なくてな。このような形となった」

 

それからどう動くかや、依頼の詳細など話し込んでいると、背後の扉の方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 

「ひ‥‥ここでは‥‥なので‥‥」

 

「でも‥‥で‥‥‥なのでしょう?」

 

そして扉が開かれて現れたのは緑髪の少女、国王の娘であるヒスイ・E・フィオーレであった。




今回、ソラノに少しばかりオリジナルの設定としてカップケーキ等の甘いものが好きというのを加えました。また、原作よりか少し性格が和らいでいるつもりです。

話題は変わりますが、新作の仮面ライダーが笑いどころとツッコミどころしか無かったので少し気に入っています


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