ソードアート・オンライン 蒼月の剣聖 (あこ姫)
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Episode000 Prolog

初めての方ははじめまして。他作品で面識のある方はお久しぶりでございます。蒼紗です。
この作品は自分の初の三次創作となっております。

今回のお話は前日譚に位置するお話ですので、この作品の参考元と同一展開・同一表現がございます。

参考元作品の作者様にはこのお話を書くにあたって許可を得ておりますのでご安心してお楽しみください。

それでは


2022年11月5日土曜日の昼下がり。

 

埼玉県川越市にある中学校。そこでは午前中の部活を終えて帰宅する生徒でごった返していた。

そんな中、栗色の髪でアクアブルーの瞳をした女子生徒が校門までの道すがらにある赤いベンチに腰掛けていた。

女子生徒の傍らにはショルダー型の防具袋と竹刀袋がある事から彼女はどうやら剣道部の所属のようだ。

女子生徒はやたらに周囲を視線で追っている。彼女はどうやら誰かを待っているらしい。

彼女がベンチで待つこと数十分。周囲の部活帰りの生徒の波もまばらになった時だった。

 

「お待たせ、なーちゃん」

「悪い。随分と待たせたな」

 

女子生徒は自分と同じ剣道部の男子生徒2人に声をかけられた。彼女は男子生徒と面識があるらしく、溜息をついた。

 

 

Non_Side_Out……

 

 

 

Side_Kanaho

 

 

「ホントに待ったわよ。何してたのよ、颯樹(さつき)和人(かずと)

 

 

私……天宮(あまみや)奏茄鳳(かなほ)は呆れた表情を見せて幼馴染で腐れ縁な颯樹……盛谷(もりや)颯樹と和人……桐ヶ谷(きりがや)和人に遅れた理由を聞いた。

 

「僕は巻き込まれたんだ。文句なら和人に言ってよ」

「なっ……確かに遅れた原因は俺が殆どだけどその要因はそもそも颯樹だろ!?」

「僕がそうなったのも元を辿れば和人じゃないか!!大体、小さい事気にしてると直葉(すぐは)ちゃんに嫌われるよ?」

「なんでそこでスグが出てくるんだよ!? ってか、そういう颯樹の方こそ……」

 

颯樹と和人は何時の間にか言い争いに発展していた。

何故に直葉ちゃん……和人の義妹、桐ヶ谷直葉ちゃんが出てくるのだろうか。毎度毎度この2人の喧嘩の引き合いに出されるが、本人が居たら大変なことになるだろう。……というかなってたな。

以前……半年位前に今回と同様の喧嘩が私と直葉ちゃんの眼前で勃発し、喧嘩の引き合いに出された直葉ちゃんの羞恥心がオーバーフローし、颯樹と和人は直葉ちゃんのお説教を受ける羽目となった。その光景をその時の私は止めもせずただただ苦笑いするしかなかったのである。

その光景を今思い出して、心の中で苦笑した後に現実に戻る私。その眼前では颯樹と和人の喧嘩はまだ続いていた。

 

「これ……何時になったら終わるんだろう」

 

そう心の中で思考がよぎった私の行動は迅速だった。

 

「……あのさ、何故に私は待たされた挙句に2人の喧嘩まで見なきゃいけない訳?……巫山戯んなよ」

 

ドスの効いた声で颯樹と和人に一喝した。私の威圧感に気圧された颯樹と和人は

 

「「マジですいませんでした……」」

 

即座に綺麗な土下座を決めていた。それを見た私は再び溜息をついた。

 

「良いから、二人共行くよ? 早く買いに行かないと売り切れちゃうわよ?」

「うん。そうだね……。折角βテストに当選してプレイしたのに製品版入手できなかったらシャレにならないもんね」

「だよなぁ……。ってか事前予約と取り置き位してくれれば良いものの……」

「仕方ないわよ、和人。あそこのおじーちゃんはそういう事に疎いんだから」

「そうそう。あーちゃんの言うとおりだよ。こればかりは仕方がない事だよ。だから愚痴る前に足を動かそうよ、和人」

「わ、解ったよ……」

 

そんな会話を交わしつつ、私、颯樹、和人の3人は明日……2022年11月6日の13時から正式サービスが開始されるヘッドギア型のインターフェース『ナーヴギア』対応のVRMMORPG『ソードアート・オンライン』のバッケージ版ソフトを購入すべく、近所のゲームショップへと急いだのであった。




如何だったでしょうか。
次回より本格的に物語が始動します。
奏茄鳳ちゃんのアバター名も次回判明いたしますので、お楽しみに。
最後に奏茄鳳ちゃんの簡単なプロフィールを載せておきます。


天宮(あまみや)奏茄鳳(かなほ)

2008年7月25日生まれ AB型
埼玉県川越市在住

和人・颯樹とは幼馴染で腐れ縁。よく3人でゲームにのめり込んでいる。
和人の義妹(従姉妹)の直葉からは『なー姉』と慕われている。
直葉が剣道始めたキッカケの人物で直葉の師匠でもある。




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Episode001 剣のセカイ

お久しぶりでございます。
今回のお話から《アインクラッド編》が始動します。

それではどーぞ。


 2022年11月6日(日曜日)

 今日は以前より様々なメディアで取り上げられ続けてきたVRMMOゲーム『ソードアート・オンライン』の正式サービス開始日だ。

 今日の13時から開始となる為か『リリースカウントダウンイベント』等周囲は大いに盛り上がっていた。

 そしてソフトとナーブギアを入手した者達は正式サービス開始を今か今かと待ち望んでいた。

 それは、昨日、学校で喧嘩をして制裁までの寸劇を繰り広げた3人組も同様であった。

 

 

 

Side_Kanaho

 

 埼玉県川越市天宮家。

 奏茄鳳と颯樹はカップルと認識出来る程仲睦まじく昼食中であった。メニューはベーグルサンド。

 この二人の昼食がこれの理由は

 

「ゲームをする際に手が汚れないし、食べやすいから」

 

 ……何ともゲーマーらしい理由である。

 

「正式リリースは13時だけど、さーくんはそれまでどうするの?」

「うーん……課題しよっかな。後々に残してたら意味無いし。なーちゃんは?」

「私も課題しようかしら。時間になったら、はじまりの街で合流しましょ。和人もログインするだろうし」

「OK」

 

 そして二人は昼食を食べ終えて片付けをし、13時まで課題へと集中していた。

 

 ……そして、時間が12時55分になる。

 丁度課題を終えたところなので、レポートと筆記用具を鞄に仕舞った。

 その後、私はベッドにダイブしナーヴギアを頭に装着した。

 

 ……このタイミングでインすればちょうどいいだろうね。

 混線によるログインラグも回避できるだろう。

 

 私は正式サービス開始のその時刻を待っていた。開始まで残り3分といったところだが、その時間がとても長く感じられた。

 ナーヴギアの液晶と卓上の電波時計が13:00を表示させた瞬間に

 

「……リンク・スタート」

 

 私は仮想世界へと旅立った。その証拠に周囲の景色がその言葉と共に一変した。

 

 

 鋼鉄城アインクラッド。第1層はじまりの街。

 そこに降り立った私は先ず手を動かしてみる。

 

 ぐー、ぱー、ぐー、ぱー、ぐー、ぱー、ちょき。

 

 ラグは無くきっちり動いている。もしもラグが発生したら戦闘では致命傷だからね。

 後はメニューを開いてステータスにバグとか無いかも確認っと。……特に異常はないから大丈夫か。

 えっと……武器は、βテストの時に使ってたのは削除されてる。つまりは買い直しか……。

 幸い、Colはキッチリ引き継がれているようだ。

 だったら……武器と回復用のアイテムを買っておこうか。

 そう思った私は露店が並ぶ『商店通り』へと向かったのであった。

 

 えっと、買う武器は曲刀に片手直剣……それと細剣かな。

 私は武器の性能を見つつも自分の武器を見繕っていった。

 

 私は『グレートシミター』『ロングソード』『シャープレイピア』を購入し、次は回復のポーション系統の調達へ向かった。

 おっと、そうだ。アレも買っとくか『転移の楔』も念の為に。

 

 ある程度の調達を終えたところで私はサツキとキリト(幼馴染)と合流しようと思ってメッセージを飛ばすためにウィンドウを開いたところで思い出した。

 

「あ、そういえばフレンド登録しなおさないとだっけ。うーん、態々探すのも面倒だしフィールドに出ようかな……」

 

 そう思った私は草原フィールドに繰り出すのだった。

 

 

 草原フィールドに繰り出した私はソードスキルとかの確認を行った。それに伴ってボアを狩って、狩って、狩りまくってた。

 そろそろ帰るか……。そう思った時だ。誰かがこっちに気付いたようで手招きしている。

 つか、アイツ見覚えある顔だな、オイ。

 

「それじゃあ……同じ曲刀使いのソラ先生にお手本を見せて貰おうか」

「オイ、待て。キリト、人をいきなり呼んどいてどういう事?」

「え、そのまんまの意味だが? ほら、実演」

「釈然としねぇ……」

「コレが終わったらスイーツ奢るから! ソラ!」

「うん! 超頑張る! だから見ててよね! サツキ!」

「「(コイツ……チョロインかよ)」」

 

 キリトとあの武士っぽい初心者……えっとクラインさんだっけか。

 うん。思ってる事は大体解ってるからテメェら後で処すから! 

 私がサムズアップすると2人揃って青ざめていた。m9(^Д^)9mザマァ

 サツキは苦笑いしていた。

 その直後にボアが奇襲をかけてきやがったので私は片手曲刀基本スキル『リーパー』を発動させ、ボアをガラス片に変えた。

 

「流石。鮮やかだね。ソラ」

「ありがとね。サツキ。さて、ソードスキルは初動モーションが肝心だよ。クラインさん」

「お、おう。やってみんぜ、ソラちゃん」

「うん。頑張って!」

 

 私はクラインさんの励ましを送る。その時、クラインさんのテンションが明らかに上がってたのは気のせいであろう。

 

「おりゃあっ!」

 

 野太いイケボと共にクラインさんの曲刀が炎の色の弧を宙に描き、片手曲刀基本スキル『リーパー』が突進しかけていた青ボアの頸に命中した。

 既にボアのHPは半減していたのでクラインさんの一撃が止めとなってボアのHPバーは消滅し、その躰が青色のポリゴン片と化して消滅した。

 

「おめでとう。クラインさん。初勝利だね」

「おぅ。あんがとな、ソラちゃん」

「まぁ、その猪は他のゲームだと『スライム』相当だけどな」

「えっ……マジかよ! おりゃてっきり中ボスか何かだと……」

「「「それはない」」」

 

 苦笑しつつも私、サツキ、キリトはクラインさんの言葉を否定した。

 口では茶化してしまったけどもクラインさんの気持ちは良く解る。私もβテストの時の初戦闘後はそうだったから。

 

「それはそうとさぁ……二人共覚悟はいいかな♪」

「「えっ……」」

「二人共……私のこと、『チョロイン』呼ばわりしたでしょ?」

「「(ギクゥ…………)」」

「図星か。……処す」

「逃げるぞ、クライン」

「おう、キリの字。命は惜しいもんな」

 

 逃亡を図るキリトとクライン。

 

「逃がさん」

 

 それを私は何故かアイテムストレージにあった般若面を装備して追いかける。

 

「あ、アハハ……」

 

 サツキは苦笑しつつもそれを追いかける。

 無論、周囲のプレイヤーの注目を集めたのは言うまでもない。

 

 

 

「「酷い目にあった……」」

「自業自得」

「ソラの言うとおりだよ。これはキリトとクラインが悪いよ」

 

 第1層はじまりの街の主街区をゲンナリとした表情で歩くキリトとクラインを私がバッサリ切り捨ててサツキもそれに賛同する。

 

「……でどうするんだ? 此処で休息してもう一度狩りにでも出かけるか?」

「ったりめぇよ! ……と、言いてぇとこだけど、そろそろ一度落ちてメシ食わねぇとなんだよな」

「あー……確かにそんな時間よね。私も一度落ちないと」

「おっ……そうだ。キリの字、ソラちゃん、サツキも俺とフレンド登録してくれねぇか? 何時でもメッセージを飛ばせて便利だしよ。それに、おめぇらにも他のゲームで知り合いだった奴らも紹介してぇからよ」

「私は良いよ」

「僕も大丈夫だよ」

「俺もだよ」

 クラインさんの提案に了承し、私達は御互いにフレンド登録を行う。その後、ログアウトを行おうとした。

「なんだこりゃ……()()()()()()()()()()()()

 クラインさんが素っ頓狂な声を上げる。

 私はそれを聞いてステータス画面のメニューウィンドゥを展開し確認する。

 

 ……確かにログアウトボタンが消滅してる。確か、私はログインした時にはまだ存在していた筈だ。

 

 その時だ。

 街一帯に鐘の音が鳴り響いた。私達はその鐘の音に困惑していると光に包まれた。

 いきなりの閃光に目を瞑ってしまう。

 目を開けた私は何時の間にか転移門広場に居た。

 さっきの光はどうやら転移の物だったようで私達の他にも転移されたプレイヤーが居た。

 直後、【Warnning】【System Announcement】と表示されて何か赤ローブが現れた。

「なぞの赤ローブがあらわれた!」

 とかいう表示が昔のゲームならばあっただろう。まぁ、この状況でこんな事を考えてるのは私だけだろうが。

 

「プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ」

 

 赤ローブがそう告げた。()()()()……アイツが晶彦さんなのか? 

「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ。プレイヤー諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していると思う。しかしこれはゲームの不具合などではない。繰り返す。これは不具合などではな《ソードアート・オンライン》本来の仕様である」

 その言葉の後にプレイヤーの困惑の声が上がる。それを無視するかのようにアナウンスは続く。

「諸君はこの城の頂……第100層の紅玉宮に到達しラスボスを倒さぬ限り自発的にログアウトを行うことは出来ない」

 

 その言葉に私は戦慄した。100層……遥か遠いな。βテストの時も未到達だったしな。

「また、外部の人間によるナーヴギアの停止もありえない。それが実行された際。ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」

「……!」

 

 私はその言葉を聞いて絶句した。

 

「ソラちゃん……どうしたんだ? あんなの、嘘っぱちだろ?」

「そうだぞ、ソラ。そんな事がナーヴギアで出来る訳が……」

「いや……出来るんだよ。あのナーヴギアは。本気でレンチン殺害が可能なの」

「それは……ホントなの? ソラ」

「ええ。紛れもない事実よ」

「じゃあ、あの赤ローブが言ってる事は……」

「認めたくはないけどマジでしょうね。まぁ……その条件は幾つかあるのでしょうけど」

「その通りだ。具体的には10分間の外部電源切断、2時間のネットワーク回線切断、ナーヴギアのロック解除或いは分解、破壊の試み──以上の何れかの条件が達成された時に脳破壊の実行シークエンスが開始される。この条件は外部世界にはマスコミを通じて既に周知済みだ。最も、既にこの警告を無視した213名がこの世界ならびに現実世界から永久退場している」

 

 その言葉に周囲の者は放心状態だったり、この現実を受け入れまいとする者等様々だ。

 キリトもクラインさんもそしてサツキも同様だった……。

 私は何故か冷静だった。もう驚愕が一周したのかもしれない。

 その私の考察をさておいてアナウンスは続く。

 

「また、先程の説明で解るとおり諸君の肉体に影響は無い。安心してゲーム攻略に打ち込んでくれたまえ。しかし、十分に留意して欲しい。この《ソードアート・オンライン》は最早唯のゲームではない」

「もう一つの現実……そうでしょう?」

「ああ。その通りだ。()()()()()()よ。この世界……《ソードアート・オンライン》は諸君達にとってもう一つの現実だという存在だ。……今後、凡ゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになり、諸君の身体がポリゴン片となりアバターが永久に消滅したその瞬間に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。それでは最後にこの世界が諸君たちの唯一の現実だという事を証拠を見せよう。諸君達のアイテムストレージに私からのささやかなプレゼントが用意されている。確認してくれたまえ」

 

 私は赤ローブ……晶彦さんの言葉に従い、アイテムストレージを確認する。

 そこには《手鏡》の文字が有り、私はそれをオブジェクト化した。

 その直後、本日2度目の光に包まれる。

 光が消える。

 

「お前……ソラなのか?」

「そういうアンタはキリト……?」

「ソラ、キリト……その顔……」

「サツキ!? アンタもその顔……」

「おい、嘘だろ!?」

「「「どうして現実(リアル)の顔になってるんだ!?」」」

 

 私達の声がハモった。

 ついさっきまでβテストの時に作ったアバター顔だったのに今は現実の私……天宮奏茄鳳の顔になっている。

 

「ねぇ……ソラ」

「どうしたの? サツキ」

「さっきの赤ローブが言ってたことって……」

「多分そうでしょうね」

 私の納得に被さるように晶彦さんの声が鳴り響く。

 

「これで『ソードアート・オンライン』の正式チュートリアルを終了する。諸君達の健闘を祈る。追伸だが、般若面の少女に般若面を送ったのはこの私でその理由はなんとなく君に似合うかと思った私の趣味だ」

 

 その言葉の後、私は絶句した。

 その絶句した私にサツキ、キリト、そしてクラインさんの視線が集まる。

 

「てめぇの趣味かよ!!」

 

 と、叫ぶにも叫べずに私はふかーい溜息をつくのだった。




如何だったでしょうか。

ソラちゃんに茅場が送った般若面を一発ネタで終わらさずに以降にもだそうかなと考案中。
まぁ……「青の修羅」とか異名付きそうなフラグ立ってるけど。


それはそれで次回予告。

次回のお話はぶっ飛ばして第1層のお話。
次回のお話でヒロインズが勢揃い予定。
原作では登場してないキャラも出すのでお楽しみに。


最後に謝辞をば。
拙い文章ですけど読了ありがとうございます。
自分のモチベに左右されるから次の投稿時期は未定なのです。
ですが、次のお話を楽しみにお待ちくださいませ。

この作品を読んでの評価・感想をお待ちしております。また、ソラちゃんのイラストもお待ちしております。もしも来れば自分のモチベが上がって投稿間隔が短くなるかもですんでね。

それではまた次回のお話でお会いしましょう。
ばいばいっ(#゚Д゚)/~~


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Episode002 邂逅と云う名の再会

予告通りに行かなかった最新話。
なんやかんやで約1年ぶりの御無沙汰。


まさかの般若面の事実が発覚したチュートリアルから早くも2週間が経過した。

この間、外部干渉による問題解決は皆無であり、既に2000人もの永久退場(死亡)者が出ていた。噂によると8割強が過信したベーターテスターらしい。

此処まで来ると憐れにすら思えてくるものだ。過信が最大の命取りだってハッキリ解んだね。

それとは別に見たくもない場面に直面する事が多かった。

このゲームに閉じ込められた事による恐怖による錯乱だ。

泣きわめく、徒労に終わるオブジェクト破壊なら可愛いものではある。

酷いと思ったのは身投げ…………自殺である。

脱出を試みたのか開始3時間でアインクラッドの外周区から飛び降りたプレイヤーが居た。

直後、私の般若面に『DEAD 00214/10000』と表示され、まさかの犠牲者が表示される仕様になっていた。

それを境に犠牲者のカウントアップは止まらなかった。それも一々通知される謎に困窮を極めた謎仕様に私の精神状態は摩耗していった。

ここ数日はそのカウントアップは落ち着いており、ようやくというかの安寧が訪れている。

このまま保ってくれると良いというのは私の願いでもある。

これ以上死者通知が鳴り止まないのであれば確実に私の精神は壊れ、マトモに攻略……それ以前に生活する事すら困難だろう。

それを払拭するべく私はフィールドに出てレベリングを繰り返していた。

この一ヶ月で狩ったモンスターの数は計り知れない。というか、数えるのが億劫になったのだけど。

御蔭様で私の今のレベルは17。この層の安全マージンレベルを優に超えている……どころか普通にこの層のレベル上限を超えている。上限のレベル……13を超えたあたりから経験値入手が緩やかになっていたが、このレベルに達している事でどれだけフィールドで狩りまくっているかはお察しのとおりである。

 

さて……今日はどうしたものか。

そう考えているとき、メッセージが入る。

相手は……サツキか。

 

2週間前に別行動として活動しているはしているが、朝昼夕晩深夜帯の1日5回に毎日欠かさずにメッセージを送ってきている。それも内容も内容だけに私は

 

「過保護かっ!!」

 

そうツッコんだのは悪くない。悪くないったら悪くない。ここまで来ると若干ウザったく思えてきたりする。

 

以前、ディアベルさんとの武器取引の仲介役で会談したキバオウさんにポロっと愚痴ったら同情された。

それがどうやらディアベルさんにも伝わったらしく、第1層攻略後に私がマスターのギルドを設立するらしい。ギルド名は『天の福音(ウーラノス・エヴァンジェリン)』。略称は『EVA』

……………………色々と大丈夫か?このギルド名。某汎用人型決戦兵器とは無関係だろうけどさ。

まぁ、仲間となり得る人が増えたので良しとしよう。うん。

 

さて話を戻そう。……内容は、なんだろうか。えっと、ナニナニ??

どうやら、私と会わせたい人がいるようだ。私はサツキに指定されたカフェに赴くことにした。

 

第1層の主街区に位置するカフェに到着した私。

サツキは……まだ来てないようだ。

来るまでただ待っているのも勿体無い気はする……けど、少しじゃなくてかなり眠い。

メッセの整理とかしようかなーとか思ったけど、無理!

少しくらい寝ても大丈夫……だよね? 睡眠PKの観点は不明だけどさ。

そう思考を巡らせるよりも身体は正直だったらしい。

私はオブジェクト化したクッションに身を委ね眠りに堕ちていた。

 

 

約束の時間前になりスヌーズ形式のアラームに叩き起された。

サツキはまだ……来てないようだ。来る前にクッションを片付けておこう。

見つかったら絶対にメッセ飛ばされる回数増える。それだけは勘弁して欲しい。絶対に睡眠時間削れるだろうしストレスの素になりかねないからね。

 

暫く珈琲らしき飲み物的な何かを飲んで目を覚ます事にする。効果があるかは知らないけれども気分的にはマシになるから問題はない。

珈琲らしき物を飲み干した私は一つ背伸びをする。大分眠気は覚めたっぽい。

良かった、良かった。これでサツキにどやされずに済む。

説教が始まると長いんだよね、サツキ()。しかもそのうち内容ループしてるっていう一番タチ悪い奴だったりするし、私的に「来んな」って思ったりする。

 

「あの~……考えている途中に悪いんだけど、ちょっと良いかな?」

 

サツキに対する愚痴というか悪口で思考が彼方へ飛んでいた私は突如聴こえた声で現実へ。

ビックリした私が声のした方向へ視線を向ける。

そこに居たのは私と同年代位の銀髪で琥珀色の瞳が特徴的な女性プレイヤーだった。

 

「あっ……ハイ。大丈夫ですよ?」

 

テンパってしまったのかは知らないけれども無意識に丁寧語になってしまう私である。あと、語尾のイントネーションが上がっている気がしないでもない。

 

「えっと、大丈夫。リラックスして? いつもと同じでいいから!」

「は、ハイ……ありがとう、ございます……」

 

まさかの初対面の人にフォローされてしまう事態に発展。何やってんだ私は。情けないったらありゃしない。

私が落ち着いたところで改めて女性との会話が始まる。

 

「こんにちは、ソラちゃん。 私、貴女と一度会いたかったの」

「え、私と……? 何で??」

 

女性は発言と同時に突然琥珀色の瞳を輝かせて嬉しそうに私の両手を握って上下に激しく振っていた。

私は発言の真意と行動の突飛さに戸惑っていた。だって、何が何やらさっぱりなんだもん。

 

「あっ……ゴメン。つい、嬉しくなっちゃって……」

「それは構わないんだけど……貴女と初対面だよね? 私」

 

私の言葉を聴いた女性プレイヤーはえらくショックを受けているようだった。

 

「えっ……覚えて、ないの?()()()()()()

「えっ……」

 

女性プレイヤーの言葉に固まる私である。

どうして……貴女が()()()()()()()()()()()()()

何処かで面識がない限りこんな事無いはずなんだけど……。

 

「『Привет(プリヴィエート)』……この挨拶に聞き覚えがあるでしょ?」

 

それに対する私の答えは『ある』。

仮定が間違ってなければだけど……彼女は私の幼馴染だ。

 

「もしかして虹架……なの??」

 

私が恐る恐るだけど女性プレイヤーのリアルネームを口にする。

 

「そうだよ! もう、奏茄鳳ちゃん思い出すの遅すぎだよっ!」

 

どうやら私の仮定は正解していたらしいが、虹架は相当ご立腹だった。

 

「本気でゴメンって。 まさかこんな所で再会するとは思わなかったもの」

「それはこっちのセリフだよ。 まさか超がつくほどの人見知りな奏茄鳳ちゃんが居るなんて思ってもなかったよ」

「まー、それもそうだよね。私の性格だとね……」

 

虹架の指摘に苦笑の私である。

事実なだけに否定できずにそうするしかない。

 

その後暫く私と虹架は昔話に花を咲かせていた。

この瞬間はこれまでの磨り減った精神状態に癒しが与えられた気がしたのは錯覚では無いと断言できる。

だって、私がこんなに笑顔になって誰かと話すのってSAOに囚われてから初めてだったからね。

 

「あれ、そういえばサツキはどうしたんだろう? 確かまだ来てなかったよね?」

 

会話の途中で思い出した様に私がサツキの存在を虹架に尋ねた。

決して日頃の過保護さで溜まった鬱憤の報復とかではない。…………多分。

 

「あぁ……そういえばサツキ君が私を紹介する筈だったよね」

「そうだったハズ……ドタキャンとか絶対無いよね。 サツキに限って」

「そうだねー。 基本、そういうところは律儀だもんね。 サツキ君」

「そうそう。 誰かに強制連行されてんのかしら……」

 

私はポロっと溜息混じりに漏らした。

サツキはああ見えてかなり押しに弱く、他の人に流されがちなところもあったりする。

 

「なんかね、アルゴさんに強制連行されたらしいよ」

「あぁ……やっぱり。アルゴ姐相手じゃ抵抗できないわな」

 

アルゴ……このアインクラッド内でかなり有名な情報屋の女性プレイヤーであり顔に髭のようなペイントとフットワーク軽さから『鼠』の通り名を持っていて、その性格は情報屋らしい性格といえばいいのかどうかは知らないけれども押しが強い一面がある。

私もしばしばアルゴ姐の餌食になるのだがそれ以上に餌食になるのはサツキで、最早『アルゴ姐の生贄=サツキ』と噂されるレベルなのだ。

 

そして今回も犠牲になっているようだし、サツキは今頃アルゴ姐に馬車馬の如く働かされているに違いない。

そんなサツキを心の片隅で『ご愁傷様』と一瞬労いつつも私は引き続き虹架との会話に花を咲かせたのだった。

 

それから暫く雑談していたが、楽しい事の過ぎ行く時間は早いものであっという間にお別れの時間。

私は別れ際に虹架のプレイヤーネームを教えて貰った後にフレンド登録を互いに行い、虹架――レインと再び会うことを約束した。

レインの方もすごく嬉しそうに私の約束を快諾したので、『是』だとは思いたい次第である。

 

レインと別れて私は自分の宿に戻ることにした。

その際嬉しさのあまり、周囲に気を配れていなかったのだろう。

前方の曲がり角から右折してきた紅色のフードを目深く女性と勢いよくぶつかった。

 

「あっ……ごめんなさい。 私、前を見ていなかったから…………え?」

「こちらこそ、前が見えづらいから御互い様…………嘘」

 

ぶつかった拍子に女性のフードが取れて素顔が露わになってそれを見た私が戸惑いの声を上げる。

そしてフードの女性も私の顔を見た途端に戸惑いの声を発した。

 

「あ、明日菜お姉ちゃん……??」

「か、奏茄鳳ちゃん……??」

 

どうやら私の衝撃の再会と云う名の邂逅は続くみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




色々と進まずこの時期となったこの作品。
最悪年一更新なまである。
そうとならん事を祈るばかりである今日この頃。
そして最早この作品が『三次創作』としてのスタンスが消失して『二次創作』に昇格しそうな勢いが普通にあった今日この頃。

次回はどうなることやらそれは神のみぞ知ることだったりしたりするんじゃないかな。
それでもお楽しみにしていただけると嬉しいです。
それでは、最後にソラちゃんのプロフ載せてお別れなの。ではでは。






天宮 奏茄鳳(あまみや かなほ) / ソラ(Sola)

身長:156cm(開始時)→160cm(ALO)
体重:42kg(開始時)→44kg(ALO)
B-W-H:77-53-79(開始時)→80-57-82(ALO)

生年月日:2008年7月25日

容姿はホロリアのキリト(女)とほぼ同一の銀髪で三つ編みのサイドポニー(右側)+青メッシュ(17層あたりでアスナに入れられ、その後リアルでも気に入った模様)瞳はアクアブルー

血縁関係:アスナ
幼馴染:サツキ、キリト、リーファ、レイン
超えられない壁:アルゴ、リズベット
初戀:???
親友:サチ、フィリア
ライバル:???
妹みたいな愛玩:シリカ、セブン、ユイ
親交深めたい:シノン

ユウキ、ランの扱いは後々
クライン以外は『頼りになる人』認識。クラインは『基本反面教師』



性格:危ない意味で純粋。些細な事でトラウマを持ちやすい。
アインクラッドで茅場から送られた般若面の謎機能によって人が死亡する事象に激しい拒絶を見せ、重度なトランス状態になり行動の際は自分の死も厭わなくなる。(あのPoHにでさえも『crazy』と言われ、ラフコフ全員が相手にしたくないと口を揃える程)

茅場曰く、「ここまで脆い少女は初めてだ」とのこと。それもあってかMHCPが複数付けられることになる。

人見知りも激しく初対面で自分から話しかける事は皆無で親戚で集まった時には明日菜の後ろに隠れる程で明日菜・和人・颯樹・虹架達の奮闘で少しは改善した。朋もそれに参加したが荒治療すぎて逆効果だった。
そんな彼女が『誰かを窘め(怒る)事』だったり自分の感情を表に出すということはその対象に心を開いている証拠である。
   

Exスキル:剣聖
習得条件:片手直剣マスタリー+カタナマスタリー+クイック・チェンジマスタリー
     『蒼月の般若面』を装備中に『TranceCord:NOVA』を発動させる。

スキル効果:所持スキル効果UP(×150%/12秒)、STR,AGI Burst(×120%/12秒)

スキルデメリット:発動後にAGI,STRが半減し、TPが0になる。



スキル(他):体術・料理・裁縫・調合(料理と裁縫はカンスト)

所持武器:プロレッシブ・ノヴァ(リズ作)、絶刀・月華(57層LA)



所属ギルド:天の福音(EVA)ギルドマスター

※第1層でキリトが断ったアニールブレード譲渡イベに応じたのがソラちゃんで使者であるキバオウさんにアッサリ武器を50本渡して怪訝に思われて自分の心情を話すことになり、キバオウさんが感動して『何時でも力になる』と言って別れた。

その後、ディアベル達に話が伝わって第1層攻略後にギルド設立となった。
尚、ソラちゃんはギルマスを拒んでいたが、外堀は埋められていたので引き受けた。
ギルドホームはソラちゃんの希望で第1層にある。

★巻波彩灯様から戴いたソラちゃんの支援絵です★

↓↓↓

【挿絵表示】


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