不死身の提督の見た地平線 (霜月優斗)
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鎮守府就任編  不死身の提督
壱日目 最悪な初対面


どうも、最近今更ながら艦これ改を始めました陽炎といいます。
稚拙、矛盾点も多々あるかと思われますが、お楽しみください。




 さんさんと輝く太陽がじりじりと地面や工廠を照らす7月のある日のこと、ここ横須賀鎮守府にある一人の提督が就任しようとしていた。

「うぅん……暑いな……」

 そう言いながら額から零れる汗を拭いてら愚痴をこぼす一人の男性、藤原優斗(ふじわらのゆうと)は今回この横須賀鎮守府に提督として就任する訳だが、彼は知らなかった。その鎮守府は曲者揃いで曰く付きであると。

 

 最寄りのバス停から歩いて一時間、既にかなり疲労が溜まっていた僕はそろそろ限界かなと思っている所に唐突に()()()姿()()()()()

 

「えぇ……噂には聞いていたけどさぁ、これは……」

 俺の視界に入ってきた()()は外装はかなり朽ち至る所に草が生い茂っている自分の傍にそびえ立つ門には植物の蔦が巻き付き道路はヒビだらけであり、見るからにここは廃墟に見えるだが、よく見ると奥に誰かがいるようにも見えるが流石に視力の良い僕でも500m先にいる人が誰かなんて解らない。

 それよりもいい加減歩き疲れたから執務室で休憩する為に歩を早めようとした時、不意に()()()()が背筋を走った。僕はその予感に考えるよりも先に全力で前にダッシュした直後に砲撃音が鳴り、一秒後に背後から爆発音。

 

「……何故かは知らないけど歓迎されてないみたいだね……一体どうしたものか……」

 いやまぁ理由は僕の上司である上白沢元帥からは聞いていたけれどさ。

 気を抜いて考え事をしているとすぐさま()()が走る。先程と同じく前方に走るが自身の勘が『まだ油断をするな』と警鐘を際限なく鳴らしている。

 

「兎にも角にもどうにかしないと話もできなさそうだなぁ……」

 

 _____________しょうがない、出し惜しみは無しだね_______

 僕はそう決心し、全力で走りながら頭の中の引き金を引いた。

 

「___我が偉大なる祖先よ、今一度、この我が身に力を貸し与え給え」

 

 やけに冷めた口調でその祝詞を告げる、瞬間。優斗の瞳の色が赤から()()に変化し、髪の長さも肩から腰の位置まで伸びていく。

 英霊憑依、かつて藤原の一族がその権力を永遠のモノにする為に生み出された技術。尤も、現在の地球上で唯一でそれを使えるのは藤原の末裔である優斗だけである。

 

「……久々に使ったが、この状態なら何とかなる」

 

 優斗と意識を入れ替わった()は遥か先にいる女性らしき敵と話し合うために全力で地を蹴る。その距離およそ150m。その後ろで大爆発と轟音。

「何だとっ……ただの人間風情がなぜ……」

「何ですカあのBoyは!?」

 憑依したことにより強化された聴力が僅かに前方にいる俺に撃って来たであろう奴らの驚きの声が聞こえた、伊達に藤原の末裔やってねぇんだこんなのは朝飯前だ。

「さぁて、どいつが俺に喧嘩を吹っ掛けてきやがったんだ?」

 そろそろ拝見させてもらおうか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『艦娘』の力をなぁ!! 

 全力で地を蹴ったからかやや身体がふらつきながら挑発をかけると声が聞こえてきた。

「ハッ、それはオレの事だ、クソ人間!!」

「近いっ……!!」

 声のした方に目を向ければ学生服を着て眼帯を付けた女性が俺を殺さんがために突撃しながら腰に差した日本刀と似た形の剣を引き抜いているのが見えた。

「これで終いだッ!!」

 俺の首がこのままでは跳ね飛ばされるだろう。____そう、()()()()ならな。

 

 女の刃は優斗の首を跳ねれなかった。ガキンッと鋭い音を立てて目の前の男が持つ軍刀に阻まれたからだ。

 

 あり得ねぇ……さっきの回避や突撃も人間離れしすぎだ。それに何故だろうか、目の前のコイツからどうしてオレと同じ気配がしやがるんだ? 

「テメェ……! どうやってオレ様の攻撃を防いだ!?」

「悪いが急に砲弾飛ばしたり切りかかってくる輩には教えれないなっ!」

 鼻で嗤いながら女の日本刀もどきを弾き飛ばして飛び退きサマーソルトで着地。我ながら完璧……ッ!? やべぇ、そういやさっき二人の声がしたんだったな……! 

「これで終わりネー!!」

 やばい、この距離では……

「まずっ__」

 その直後、爆音と共に俺の体は文字通り()()()

 至近距離からの砲撃、しかも()()の一撃となればただでは済まない、故に砲撃を放った少女、金剛(こんごう)と優斗に切りかかった少女、天龍(てんりゅう)は油断した。

「Yes! これであの化け物も……deadデスネ?」

「冗談はよしてくれ、金剛さんや?」

 

______________________________________痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイッ!! 

 先程のゼロ距離砲撃で内蔵の六割が一瞬で消し飛び、遅れて声にもならない痛みが襲ってくる。

「っッ!!」

 普通ならここまでここまで吹き飛ばされたら即死だ、思考する暇もなく死に至る。だが、生憎自分は一族の呪い(加護)のお陰で不死身だ。治りかけの耳だが、確かに俺に鉛玉(特大)をぶち込んできた奴は油断しているし、ここで寝首を搔いてもいいのだが、優斗の奴は殺すために憑依した訳だしな……隠密に終わらすか……

 

「はぁぁぁ……幾ら不死身だとしても思い切り撃ってくるとか……しかも上司だぞ俺……」

 ようやく傷が完治したので消え始めた黒煙から出ると物騒な連装砲を四門構えた少女が化け物を見たような顔で驚いていた、解せぬ。

 

「へ……ッ!? 何でアナタはあの砲撃を受けて平気なんですカ!?」

「死ぬかと思ったよ、いやまぁ一回()()()()()()。後言っておくけど今日付けでこの鎮守府に着任する事になった藤原だ。返事は別としてよろしく」

「は、はい……じゃなくテ! 一体どうなってるんデスカ! なんで身体が吹き飛んだのに生きてるんですカ!あと」

「そうだな、それにさっきの見切り、あれは人間の範疇を軽く越えていたぞ」

そう言って近づいて来たのは先程俺に切りかかって来た少女だった。

「アンタが新しい提督か?オレは天龍(てんりゅう)ってんだ、さっきはいきなり斬りかかってきて悪かったな」

先程

「そうだな、次からは気を付けてくれ、よろしく」

「正直納得はできないけど…それじゃあ今度はmeの番ね!私は英国帰りの帰国子女、金剛デース!!」

私が目の前の男と握手を握手した時、不思議な感覚がしたのだ。

(何故なの、なんでこの男から()()()()()()()()()()()?)

「あぁ、よろしく頼むよ」

()()そう言って握手しながらちらりと金剛の顔を見ると先程の仕打ちと関係があるのだろうか…()()()()()()()()をしていたのが無性に頭に残りつつも天龍と金剛に鎮守府内を案内してもらったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




割と見切りな感じではありますが、如何でしたでょうか?

感想など戴けるととても励みになります。
それでは、また次回!!


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弐日目 あれ、この鎮守府…資材難?どうにかしなくては…

どーも、勢いと推しへの愛で書き始めた陽炎提督デス。
香取が出てこなくて積んでいる今日この頃。
行き当たりばったりですが、不死身提督 第二話、始まります。


 昨日は散々だった、『いきなり人間相手に全力砲撃』するわ『命を刈り取る勢いで斬りかかる』わ、一体ここの前任何をしでかしたらこんな無法者が出来上がるんだか……まぁそれはさておき、あの後、僕はどうにかこうにかして一応和解? した金剛と天龍に鎮守府内の施設を案内してもらい分かったのだが、この鎮守府……あまりにも資材が少なすぎる‼

 それにこの鎮守府にいる艦娘が金剛と天龍しかいないと来たもんだ。

 簡単な話、最低値で建造しても五回しか出来ないという超貧乏鎮守府だったのだ。

 正に逆境崖っぷちである。早く対処しなければ深海棲艦だって襲ってくるだろうし、()()()()()だってある訳だし……どうしたものか。

 

「ふうぅ……」

 先日案内してもらった中で唯一状態が良かった執務室(授業では習ってはいたが正直合っているのかは解らん)で椅子にもたれつつ、今後の予定を溜息をつきながら考えるが、これと言ってよさげな案が浮かばない。

 とは言え、提督して就いたのならばこの状況を早急に打開しなくてはいけない。

 

 この状況で次にすべきは……

「先ずは資材確保だな……」

 何をするにも今の資材量では出撃も数回が限度だ、ここは僕自ら動かないと前任と同じだ。

 そう思った僕は足早に執務室の扉を開けて金剛達の元に向かうことを決めた。

 資材の取れそうな場所を聞く為に。

 

 

 

 その頃、金剛と天龍の部屋……

 

 カサリ……と紙の捲れる音が部屋に響く。少女達が読んでいるのはつい先日この鎮守府に就任した提督、「藤原優斗」についての情報が書かれた資料である。それを見た天龍はふとある記述が目に入った。

「ん……これは……あいつの家系の歴史か……?」

 正直言えば嫌いな人間の事なんて調べたくもねぇけど……無性に気になってしょうがねぇな。……今回だけは仕方ないと腹をくくってその項目を読んだ。

「何々……代々藤原の一族はかつての名刀や先祖、偉大な英雄をその身に憑依させる秘術にを何代も継承し、現在の()()の建造の土台になっ……た……だと?」

 オレはその一節を読み切った時、頭の中である仮設が立ったがあり得ねぇと頭の中から追いやる。

 それよりもだ……艦娘建造の土台……そんなもんは思い出したくもねぇが、あのグズからは聞かされてねぇぞ……!? それにコイツ……の一族……昔何処かで聞いたことがあるぞ……

 その記述をを天龍が目を見開いて驚きながら呟いているの聞いた金剛は自分が昨日から感じていた違和感と提督の一族が受け継いできた(秘術)が線となって金剛の頭の中で繋がった。

「天龍……その話、本当ネ?」

 天龍、ちょっとその資料pleaseと言いながらその資料を天龍から貰い受けてその資料を端から端まで読んで見たけれど、天龍が言っていたことは間違いではなかったみたいネ。つまり……あの時妙に私達に気配が似ていたのは、彼が私達に似ているのでは無くて、()()()()()()()()()()()()のネ。どおりで納得がいったわ。それに昨日私達の勘違いとはいえ、()()()()()時に見たあの力にあの姿……あれが秘術の力だというなら納得がいくわネ……

 けれど、いまだに私の脳裏にはあの提督が何故私の全力砲撃を受けて何故生還できたのだろうか、私にはそれが不思議でたまらなく不気味だった。

「天龍、一つ聞きたいのだけれど、貴女、提督と斬りかかったわよネ? その時に何か感じなかったかしら?」

 何だ? 何時もは話しかけもして来ないこいつが今日は二度も聞いてくるとか、明日はあられが降るんじゃねぇのか? まぁ聞かれたからには返答しないとな。

「そうだな……オレが感じたのは()()()()だな」

「速すぎる? どういう風にデスカ?」

「あぁ、言葉が足らなかったな、あいつは艦娘であたしの全力の切りつけを()()()()()()()()()()()()()()()()()、しかもオレの刃が当たるか当たらないかのギリギリでだ」

 実を言えばもっとオレでも目を疑う光景が見えたのは言わないでおこう。まだアレ(不死身)である確証は無いからな……単に治癒能力が高いだけだろう、そうオレは心の中で決めつけた。

 そうしていると部屋の扉からノック音が響き渡る。恐らくこの鎮守府にいるのはオレ達とあいつだけだし、恐らくあいつだろう。

「失礼するぞ」

 あいつはそう言って部屋に入ってきてこう言った。

「悪いな、急に押しかけて悪いんだが……この鎮守府で資材が取れそうな所ってないだろうか?」

「資材ねぇ……鋼鉄が取れそうな所は心当たりがあるぜ、なぁ金剛、お前は何か資材が取れそうな場所知ってるか?」

「うぇ!? ワタシですか? そうですネー、この鎮守府から東に少し歩いた所に油田があったと思いまス、今はどうなっているのかは分かりませんが……」

 それを聞いた僕は執務室から出る際に持って来たメモ帳に金剛と天龍が言っていた事を書き込んでおく。

「取りあえず、現状資材の入手が可能かもしれないのが鉄鋼と燃料か……弾薬は地道に探すしかないね……」

 そうだな、と僕のつぶやきに賛同する天龍。

 いざという時には上白沢大尉に頼めば何とかなるけれど……それは最終手段かな、ウン。

 それに……この鎮守府には解決してすらいない闇がまだ残されているのに他人の力を借りたとして、この状況を見た同僚はどう思うか。

 答えは艦娘に対して非道なことをした()()()()()と思うだろう。

 それだけは避けないとなぁ……兎にも角にも資材集めだと、頭を切り替えて金剛達がいる部屋を後にし、そのメモに記さされた

 

場所は変わり横須賀鎮守府内のある場所…

 

何故私だけ、ここに残され続けるのだろう。憎たらしい提督の男…蘇我悪鹿(そがのあくか)が私を営倉送りにしてから四か月が経つが、かつては監視という名の見舞いに来ていた陸奥や雪風は二ヶ月前には姿を見せなくなった。

「お願いだ…誰でもいい…助けてくれ…」

鉄格子の檻から聴こえるのはジャラジャラと引きずる音と少女の悲痛な叫びが木霊するだけであった。

 

 

 

 

 




やっと金剛改に改造できた…あと南方海域が進まねぇぇ!!
あ、あと夏課題の量がえぐいのでペース落ちます(落ちるの早いのはいつものこと)
次回は三日後を予定しております。


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参日目 いざ、出撃。

この勢いで行くで?


 先程金剛達から資材が取れるであろう場所を聞いた僕はその情報を頼りに鎮守府から東に飲み物とポンプ片手に担いでその真偽を確かめたところ。

 そこにあったのは直径五メートル、深さの推定は16メートルの大きな油田であった、でかいね。

 

「これが金剛が言っていた油田かぁ……これだけあれば当分は燃料に困らなさそうだね」

 そう言ってメモ帳に簡易的な地図を書き込んでおく。それにしても……どうしてこの鎮守府には()()()()()()()いないのだろうか? 資料にはここには最盛期に60もの艦娘にがこの鎮守府に所属していたと記載されていたが。

 何故なのだろうか、と鎮守府に戻る道中前任が消えた理由を考える中。

 自分が予想できる理由の一つに最悪の場合が浮かんだ。それは『前任者が非人道的な行為をしていた』可能性だが、正直あまり考えたくないものである。

 だけれど、それを否定できない自分がいる。昨日の金剛の反応と言い天龍の仕打ちと言い判断材料が揃い過ぎていてむしろ不気味なレベルだ。

 それにまだ調べれていない箇所もあるのだ、未だ見つからない営倉もあって不思議ではない。

 ……最悪営倉が拷問部屋と化してる可能性も十分あり得る、そのぬぐい切れない悪寒を感じながら僕は母港に戻ると天龍が正門にもたれかかって待って居るのを発見。昨日はあんなに殺意マシマシで斬りかかって来たのになぁ。

 いや待て。逆に話す必要がある事態が起きたのか、僕はそれを確かめるべく天龍に問いかけた。

「天龍、何が起きたんだ? ()()()()()()()?」

「あぁ、お前が思ってる通りだぜ、提督」

 と天龍はニヒルな微笑を浮かべながら答えた。

「そうか、解った、天龍。金剛を連れて出撃準備を頼む」

 その指示を受けて待ってましたと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべた天龍は任せとけ、と一言僕に告げて去って行った。

 ___さぁ、始めようじゃないか、この不毛な闘いを終わらせるために。

 柄でもなく。けれどそれが当たり前だったかの様に僕は陣形確認と()()の為に駆けるように出撃ゲートに向かうのだった。

 

 

 

 

 出撃ゲートには数分で着いた僕は準備の為に右腕に力を込めて上にかざし、祝詞を告げる。

「我、偉大なる英霊に告げる。今一度、この肉体に加護を授け給へ」

 自身の身体に眠る霊力をフル稼働させ、()()()の名にふさわしい英霊(艦娘)の能力を憑依させる。

 自分の瞳が今回は橙色に変わり髪もセミロングに伸びて、身体が()()に適合するために一時的に作り替わり、巨大な41㎝三連装砲が顔を出す。そして、()()()()()()()()()()

 その直後に天龍と金剛が出撃ゲートにやって来るなり私の姿に驚いていた。

「お前は……提督か? それにその艤装は……アンタ何者何だ?」

 疑念の目を私に向ける天龍とは対象的に金剛は私が纏っている艤装に()()()()()()のか、()()()()調()では無く、確認するかのように問いかける。

「貴女は……まさか……()()()()なの……?」

 彼女の隣にいた天龍は〝まさか”と息を呑んだ。

「ええ、私はかつてこの鎮守府に建造された『戦艦 大和』です。今は彼の身体を借りて一時的に蘇って来ました」

 その言葉で金剛の瞳に移る私があの大和であると認めたのか、彼女の涙袋が僅かながらに湿っていた。

 そう。私は先代の提督、蘇我悪鹿によって捨て艦戦法によって海の底に消えた筈なのだ。だから私もこの状況に少し驚いていた、何故死んだはずの私が再びこれ(艤装)を纏えているのか、呼ばれた直後は内心焦っていたけれど私を呼び出した彼が頭の中で説明してくれた。

(どうして貴女が呼ばれたかですが、それは僕が藤原の一族の末裔で憑依の秘術を使ったからです。出来ればあまり使いたくはないですがね……)

 成程、事情は解りましたが、私を呼んだという事は深海棲艦が出たという事。

ならなすべき事は唯一つ。

「……金剛、今回出現したのは何級かしら?」

「ッ! ええ、そうネ、今回はイ級が二体とホ級が一体ネ」

 その数なら天龍と金剛だけでも対処は出来るけど、彼と繋がっている今なら解る。

 

 ________必ずナニカが起きる、と。

 だからこそ、私はこの予感を確かめる事を選んだ。

「そう……分かったわ、彼が私を現界できるのはそんなに長くないらしいからその海域に行くわよ」

 そう言って私は焦燥に似たなにかを抱きつつ、出撃カタパルトに乗ると金剛達もカタパルトに乗り込んだ。

 深呼吸をして息を整え、合図をかける。

「第一艦隊、出撃するわ!!」

 それを聞いたカタパルトが私達を高速で射出し海域に踊り出る。

 目標海域には五分で着く。

 だが、彼が言うにはこの状態を維持できるのは30分が限度なのでまともに戦えるのは多く見積もって15分。

 敵は駆逐二隻と軽巡一隻、対して私達は軽巡と戦艦二隻。データで見れば勝敗は明らかだけど、慢心をすれば簡単に沈むから油断は禁物であると心に深く刻んでいると天龍が私に問いかけてきた。

「なぁ、大和さん。ちょっといいか?」

「なにかしら?」と応える。

「どうしてかは解らない、けど今しか言えないのなら言わせてくれ。『あの時助けてくれてありがとう』な大和さん」

 私はその言葉に思わず息が止まった。ああ、あの行動は決して間違っていなかったのですね…

沈むまでの苦しみ続けた日々がが不思議に、けれど確かに報われた気がした。

「そう…あなた達だけでも助けられて良かったわ」

私は微笑しながら天龍のお礼に答えた。

さて、そうこうしているうちにそろそろ作戦海域に到着する頃ね。

私は思考のスイッチを戦闘用に切り替える。

「そろそろ作戦海域よ、各員、戦闘用意!!」

そして戦闘体制に移行した直後、深海棲艦が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしょうか?実は前任が建造されていた大和を憑依させた優斗。しかし、その憑依にもどうにもある制約がある様子。果たして大和たち第一艦隊は無事に帰還できるのか?
それでは、次回、『不死身の初陣』

お楽しみに。


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参日目 中 私〔大和〕と提督の底力

少し間が空いてしまったけど書きたい部分その1の途中までかけたので少し達成感。


「遂に来たわね……深海棲艦」

 私はそう呟いて目の前に現れたのは駆逐イ級二隻、軽巡ホ級が一隻。()()()()()()()

「何……? 情報と数が違うぞ……援軍でも呼んだのか?」

 そんな馬鹿な、と私の後方で呻く天龍。とは言えこの程度のイレギュラー、どうという事は無い‼

「押し通すまでよ、天龍、金剛。行くわよ!」

 そう言って私が発破をかけると何も言わずに硬直していた金剛は我に返った。

「りょ、了解ネ!」

「それを待ってたぜ! 大和さん!」

 二人はその指示を受け取って突撃して奇襲を仕掛ける。

 天龍は持ち前の機動力を活かし、イ級の死角に潜り込みんだ。

 

「オレが怖いか? ソラソラッ!!」

 天龍はその言葉をキーに両腰に装着されている61㎝四連装魚雷が目の前の標的を喰らわんが為に投下される。

 速力48ノットを誇る鉄の槍がイ級に突き進む。

 その直後、水柱が起こり、二隻の駆逐艦イ級は撃沈、残るは軽巡ホ級と戦艦ル級の一隻ずつである。

 

 出撃からジャスト6分、残り戦闘可能時間はあと9分。さっきのように簡単に倒せればいいなと先程から飛んでくる砲弾を避け続けながら状況を分析する()はじりじり湧き上がってくる焦りとも言える感情を背に既に装填を終えている主砲をル級に構えた。

 

「全砲門、放てッ!!!」

 その掛け声を合図に全9門の砲塔から閃光と轟音をかき鳴らして砲弾が放たれて、標的目掛けて飛んで行く。

 一斉射した三秒後に大きな水柱が立ち、そのうち五発が夾叉したが四発がル級の胴体と艤装を貫通した。

 まだ腕は鈍っていない事に私は安堵の息を零すがどうやらそうこうしてる程の余裕は無いらしい。

「あんなに身体に風穴を開けたのに沈まないとはね……」

 私はらしくない愚痴を吐いて身体中穴だらけになっても尚沈まないル級を見てよくも沈まないものだと思う。

 その反面、何処かル級の見た目がある艦娘と特徴が似ているのが良からぬ予想が頭をよぎる。

 頬に伝う冷や汗がうざったらしく感じる。だけど、私は提督(私を助けてくれた彼)と絶対に生き残ると約束をしたのだ。そんな事に気を取られている場合ではないのだから……!! 

「一度で無理なら何度でも放つまでよ」

 そう言ってもう一度主砲をル級に絞り、再び轟音が海に響き渡る。

「aaaaaaaaaaaアアア!?」

 放たれた九つの弾丸は今度こそ敵を貫かんと飛翔していく。対して既に大破寸前のル級は半壊した装甲を構えるが既にもう間に合わない距離にまで砲弾が接近していて轟沈は避けられまい。()()()()()()()()()()

 直後、爆炎がル級の辺りを包み込んだ。

「これで殺った(とった)な!」

 と天龍は歓喜するが砲撃した私は自分の詰めの甘さに後悔した。

 何故なら先程の放った砲弾が届く直前に()()()がル級と砲弾の間に立ちはだかったのが視界に入ったからである。

「どうしたノ大和サン?」と今しがた横でホ級を海の藻屑にした金剛が問い掛ける。

「……なんでもないわ。ただ、まだ気を緩めるには些か早いみたいね」

 私は目の前の黒煙を見ながら苦虫を嚙み潰したような顔で答えると金剛も何か感じたのか、本気の表情(かお)で敵を殲滅したと高をくくっている天龍に指示を出した。

「……了解したわ。天龍! 付近警戒をしなさい!」

「あぁ? 敵はもういないはずだけどな……一応ソナーで探索するけどよ……」

 何でこんなことを……と面倒くさいと言わんばかりな表情で天龍がソナーをで付近探知を始めた直後、先程大和から砲撃を受けて沈んだはずのル級の前にある()()()()が返ってきた、それもただの深海棲艦では無く()()

「オイオイ……嘘だろ……!? 気を付けろ! 側にいるのは姫級、泊地棲姫だッ!!」

 その叫びと共に姿を現したのは無傷で立っている本来この鎮守府正面海域にいるわけがない泊地棲姫だった。

 その事実におもわず後ずさりそうになるが根性とプライドで耐える。

 天龍から伝えられた内容は私達の心を折るにはあまりにも十分すぎるほどの死刑宣告に近しいものだった。

 たとえ生きて帰れたとしても五体満足で帰ることはまず不可能と言われてきたからであり、事実私は姫級の砲撃によって沈んでいった艦娘(仲間)を何人も見てきたのだ、怖くないはずがない。

「やっぱりか……覚悟を決めましょうかね」

 艦娘は本来軍艦に宿った魂を擬人化、()()させることで造られる為、艦娘はその軍艦としての逸話(宝具)を使えるとされているが、この事実を知っているのは私と()()()()()()()()()()()()()()()()()長門ぐらいだし、これを誰かに教えるつもりは無い。まぁ今の提督には知られているんだけどね? 

 それにこの子達(金剛と天龍)にはこの戦いを終わらせるための重要な役目があるのだ、ここで死なせるわけにはいかないのですから。

「金剛、天龍。貴女達は下がりなさい。あれは私が引き受けます。そのうちに大破したル級にとどめを刺したのち、すぐに撤退しなさい」

 私が彼女たちに指示を下すと金剛は認められないと反論した。

「何を言っているんですカ! 撤退したら貴女が死ぬかもしれないのよ!?」

「解っているわ。一人で行けば死ぬなんてことは」

 だけどね、と言葉を続ける。

「あいつのせいで散って言った仲間たちの為に絶対にアレだけは倒さないといけないの」

「だけどそれじゃあ大和さんが……」

「忘れたの天龍? かつて私は不沈艦と言われたのよ?」

 私は絶対に生きてあの鎮守府に帰って来る。だから安心なさい。

 私は天龍にそう言って目の前の泊地棲姫(仲間の仇)目掛けて突撃した。

「なんだよそれ……」

 ふざけるな、と天龍は怒った。

「オレだって仲間の敵討ちしてぇよ、でも二人だけじゃダメなんだよ」

 _____大和さん、アンタの力が必要なんだ。だから今回の命令には従わない……!! 

 

「……金剛。ちゃっちゃとル級を沈めたら行くぞ」

「天龍、貴女まさか大和を見捨てるの?」

 まさか、と天龍はニヒルに口元に笑みを浮かべて金剛に言った。

「馬鹿か? 大和さんを助けに行く。そうだろ?」

「そうネ……ワタシ、どうかしてたわ。Thank youネ天龍」

 二人は自身が尊敬する人を護るために征く。それぞれの願いを抱きながら……

 

 場面は戻り大和は啖呵を切ったとはいえどうやって泊地棲姫を沈めるかを目標に接近しつつ考えていた。

 

「ああは言ったけど流石に宝具を使うのは最終手段だし……それに私が満足に動けるのはあと5分。急がないと提督の体に影響が出てしまうわね」

 刻々と近づくタイムリミットに焦りを抱きながら目の前の敵をどうやって倒せるかを思案するが見つからない。

それに…恐らく彼女(泊地棲姫)はかつての仲間と外見が物騒になってしまったが特徴が似ているが故に本気で砲撃しようにもかつての仲間の思い出が頭をよぎってそれを引き留めようとして来る。

そうして苦しんでいると提督が話しかけてきた。

(大和、少しだけでいい。()()()()()()

『表に…ですか?了解致しました。五秒後に変わります』

(分かった。それじゃあいくよ?)

 

5…4…3…2…1…今!!

 

「『疑似蘇生 解除(リバース・リザレクション)』」

 

そして私は僕になる。

その為、彼女が付けていた艤装も消失するが()()()()()()()()()

その光景を観た金剛は困惑した。

「あれは…提督!?どうしてこんな所にいるネ!?」

「オイオイ……マジかよ、そういう事か…!」

してやられたぜと天龍はその光景に驚きと興奮で笑みを零しながら呟く。

「どうゆうコト?」と金剛は天龍に近づいて聞いた。

「解らないのか金剛?要は大和さんは提督のよくわからん力で生き返ったってことであり、その依り代は提督だったと言うワケだ」

天龍は金剛の問いに答えながら目の前の光景を見つめる。

 

「さーて、僕も本気出しますか…お力を借りさせていただきます、先祖様。」

 

そう呟いて僕は自分の奥底に貯めて有り余っている霊力の扉を開きその霊力で翼を形どって舞う。

「これで準備は完了だ。それじゃあ行くよ?」

 

  偽 不滅の不死鳥(オーバードフェニックス)

 

そう言って懐から一つのカードを取り出した。

スペルカード。それはかつてある藤原氏の1人が暮らしていた()()()と言う秘境の土地で行われたある遊戯で使われたとするものであり、スペルカードはその遊戯での現代で言う必殺技である。本来ならば枚数に制約があったが今となってはその遊戯を知るものが殆どいなくなったためにただの必殺技である。

 

僕はスペルカードを宣言し、目の前の泊地棲姫に向かって焔よりも朱い弾幕と総数20を超えるノンホーミングレーザーを打ち込んだ。

それに対して泊地棲姫は声にならない怨嗟の叫びを散らしながら砲撃と艦載機を放ち、第二ラウンドの幕が開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです、ノリと勢いと推し(金剛と天龍)への愛で始めた物語も四話目ですね!課題が終わらないと嘆きつつものんびり更新していく予定ですよ~( ´∀`)bグッ!


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参日目 終 輝けるは鳳凰の如く

初陣は終わった。されど困難は続いていく。


「行くよ……!!」

 その声と共に赤々と燃え上がる弾丸と総数20以上のレーザーを威嚇で目の前の泊地棲姫に撃ち込む。

「これでどうです……ッ!」

 偽 不滅の不死鳥(オーバードフェニックス)

「ソンナ弾幕ッ! フキトバシテアゲル!!」

 対する泊地棲姫は己を沈めんが為に飛来する凶弾を回避し、意味がわからないが空に翔んでいる人間を殺さんが為に主砲と艦載機を放つ。

「悪いけど、それに当たってはあげないよ」

 僕が先程放った威嚇射撃を容易く避けて後に飛んできた砲弾を翼で方向転換して紙一重の所で避けると流石にお見通しだった様で回避した先に艦載機が進路を塞ぎに飛来していた。

 

 ただ回避するだけなら横に捻ればどうにか避ける事は容易いだろう。

 しかし注意せよ、敵との距離は既に600mを切っている為に、次再び砲撃を放たれたら必中、そのまま海の藻屑になるだろう。

 ならば残る選択肢は一つのみ。

 

「艦載機程度でこの僕を止められると思うたかッ!!」

 懐からスペルカードを1枚取り出し。必殺の名を告げる。

 

「炎彗 鳳翼天翔(フェニックス・メテオライド)ッ! これで貴女は終わりだよッ!!」

 その必殺を呼び覚ますと優斗の身体を不滅の炎が包み込んだ。

 かつて藤原氏のの1人はかの輝夜姫が残したとされる不死の霊薬、蓬莱の薬(ほうらいのくすり)を呑み、不老不死となった少女が生み出したとされるスペルカードを擬似的に模倣、昇華させたもの。その彗星は誰よりも輝き誰よりも儚く、そして何よりも美しかった。

 

 炎の膜と炎の翼で文字通り彗星の様に目の前の敵に向かって空を翔けていく。自分の身体に残っている霊力から考えて、残るスペルカードはあと3枚と言ったところだろう。

 それが尽きれば僕は泊地棲姫の餌食になるだろうと何処か他人目線で思う。だからこそ、絶対に勝たなくてはならないのだと理由は分からないけど確かにそう感じた。

 どうして僕が提督なんて者になる必要があったのか。そして彼女たちから感じた違和感を識る為にも。

 その為にも先ずはこの()を超えていかなくては……!! 

「はァァァァァァ!!!」

 飛んでくる艦載機など気にもとめずに一直線に遠くからでも熱過ぎる爆炎と弾幕をばら蒔いて突き進む。

 泊地棲姫との距離が300mを切った途端。なんとも言い難い身体を内側から突き刺す様な悪寒を感じ、スペルカード「鳳翼天翔」のエネルギーを全て収束して目の前の敵に放出してなんとか目の前の敵から発する悪寒のする範囲からは逃れる事が出来た。

 その直後、泊地棲姫が()()()()()()()()を持って何かを呟くのが見えた。

 

 呪■ ■■の■■■

 

 その刹那、半球状に広がった無数の弾幕が僕に向かって降り注いだ。

「シズメッ!! ()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!」

「ぐぅっ……」

 

 結界 『炎天の璧に咲く薔薇』

 

 咄嗟にスペルカードの霊力と己の霊力で編んだ盾を6層の花弁状に展開するが、彼女の恨み怨念マシマシの砲撃は止むどころか更に威力を増していき、じわりじわりと次第に展開する盾に綻びが出始める。

 

「提督……!!」

 金剛が今も鳴り続く砲声と黒煙の中に消えた提督が死んでしまうのでは無いかと杞憂していると天龍が金剛の肩に触れてこう言った。

「……金剛、あの死なないトンデモ提督に話を聞きたいなら今はオレを遠距離からの援護を頼む」

 いきなり天龍は何を言い出したのだろうと金剛は困惑したが、状況が状況なので大人しく頷いた。

「……別に大丈夫だわ、それにはNo problemネ」

 彼女が戸惑い混じりに返事をすると、

「そう来なくっちゃな!!」と鋭い笑みを浮かべて天龍はそう言った。

「いいか、作戦はこうだ。____」

「確かにそれなら成功率は上がるけど……それじゃあ貴女がッ!」

 天龍が金剛に伝えた内容は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という言わば自殺しに行くのと変わらない内容だった。

「認めないわ……そんなの……そんな事して私達をかばって沈んでいった大和さんや陸奥の気持ちを裏切るの!?」

 金剛はこの時ばかりは普段の似非英語では無くなる程に怒った。

「しょうがないだろ……これしか方法が思いつかなかったんだ。でも、ただで死んでやる気はない」

 ここに来て初めて天龍の目に羅刹の光が灯った。

 2人がこうしている間にも優斗を護る盾はどんどん削れていく。

 

「ぐ……さすがにそろそろキツイか」

 今でこそどうにか拮抗しているがそれも次第に押されていき、盾に綻びが開き始める。全くもってあれは化け物だ。何なんだアレは。

 いくら自分が不死身とは言えど霊力には限りがあるしこの後の反撃を考えると最早一つの予断も許さないだろう。故に、自身を守っている盾があと数秒で完全に崩れ去るの読み取った僕は内側から見ている大和さんにある()()()をして、覚悟を決めた。

 

 ただ耐えるのではなく、()()()()()()()へ。

 

「行くよ。泊地棲姫。不死身の僕が貴方を助けてあげるよ……!!」

 盾の霊力を全て爆発させて弾幕を吹き飛ばして後ろに飛んだ後、スペルカードを引き出して告げる。

 

 適合 『不沈の燈火』

 そのスペルの効果は一時的な()()()()

 使用者と疑似蘇生された人物との同意がなければ使用は出来ず、使用した場合は強大な力と引き換えに魂が摩耗し、肉体はその負荷で解除時に計り知れない激痛を伴う最強にして最凶の一枚。

 

 切り札を使い、()()()()()彼女の艤装を纏い、先程のお返しと言わんばかりに主砲と焔の弾幕を泊地棲姫に向けて放つ。

「これはさっきのお返しですよッ!!」

 優斗が放つ弾幕はさながら嵐のように激く放たれる。先に()()()()()()()()()初弾を泊地棲姫は難なく躱して弾幕に紛れて飛んできた砲弾を撃ったであろう場所に反撃する。

 しかし深海棲艦故に複雑な思考ができないためただでさえ思考力が低いのに躱すことに集中したため、彼女はそれが(わな)であった事に気付かない。

 

「残念。それはブラフだよ」

彼女が気付いた頃には死神()が目と鼻の先にまで全砲門をこちらに向けて突撃しており最早撃沈は免れないと思った矢先。()()()()が蘇った。

 

それはかつて彼女がまだ■■だった頃に大■とある約束をしていた。

 

ある日の夕暮れ時。戦艦寮で休息を取っていた二人の■■。

 

「ねぇ…■■、お願いがあるのだけれど……」

「なにかしら?山■?」と彼女は首を傾げて答える。

「もしも私が沈んだ時は()()()()をかくまってあげて頂戴……あの娘達は深海棲艦を滅ぼすための鍵、この国の希望なのだから」

〝沈む?そんなことないわ”、そう言いたかったが彼女は言うことが出来なかった。今の提督は正直言って最悪だ。何しろ()()()()()()()()、それだけの理由と権力を酷使して提督になった故に出してくる作戦は的外れでしかも夜伽を強要して来る人として最低なところで建造されしまったのなら()()()()()()()()()()()()()と思ってしまうのは必然であり、仕方のないことだった。

「……分かったわ……」

彼女、大和は苦渋の呻きを零しながらその願いを受け取った。

その翌日に大和は戦艦()()が沈んだことを知らされた。

 

「っア?コノ記憶ハ?ワタシは……誰なの?」

突然目の前の泊地棲姫が呻きながら姿が変わり(生き返り)かけ始め、それは次第に艦娘に近付きつつあるが、途中で止まってしまう。

 

「嘘だろ……アレは山城じゃねぇか……」

信じられねぇと天龍は驚愕し、金剛は

「そんなmiracleもあるのネ……」

と天龍ほどではないが驚きの声を上げる。

 

咄嗟に僕は大和さんと身体と魂を入れ替えて大和を()()した。

「……!! 覚えていますか、私の事」

「その話し方…は、もしかして…大和なの?」

彼女、艦娘は震えながら私に確認するように聞いてきた。

「ええ、一度沈んでしまいましたが…確かに私はあなたが知っている大和です」

「そうなのね……ねぇ、あの提督はどうなったの?」

山城は生前に不安だった事を大和に尋ねた。

「大丈夫よ。もうあの人は聞いた話ではどこかに消えたらしいわ……もうあの日々に怯えなくていいのよ」

と大和が諭した。

「そうなの!?……なら私もッ!?」

その直後に山城の周りにイ級が50体出現し、私と山城は取り囲まれた。

「大和さん…すいません…どうやら私の身体はもう既に半分泊地棲姫と融合してしまっているのでここは私を捨てて退却してください…!」

山城は自分を捨てて逃げろと言ったけど、それだけは絶対にしない。絶対に貴女を連れて帰る(助けてあげる)んだから!提督。本気で行きますから、貴方の力をお借りします!

(あぁ、行って来なさい、君の望みを叶えるよ、大和)

「山城さん、私の傍を離れないで下さいね?」

 

_____吹き飛ぶかもしれませんので。

 

「え……はい…」

山城は大和のその有無を言わさぬ気迫に従わざるを得ない。だが何故だろうか、山城は()()()()()()()()()と心が温かくなった。

 

「さぁ行くわよ?高々駆逐程度で私を、()()を沈めれると思わないことね……」

 そう言うと()()()()()()()()()()()()

そう言って一番近くにいたイ級を力一杯に蹴り飛ばし、その軌道上にいた複数のイ級も巻き添えになって撃沈。

「この程度かしら?私の仲間を沈めたんだもの、八つ当たりだとしても貴方たちには沈んでもらうわ」

全砲門、ロック。目標イ級9隻。狙いは既に付いている。

「全砲門、一斉射ッ!!」

艦娘でなければ鼓膜が破裂するレベルの轟音が水面に響く。当然、ただの駆逐が大戦艦の砲撃に成すすべも無く撃沈する。

「天龍、金剛!!ぼさっと立ってないで深海棲艦(こいつら)を倒すの手伝って頂戴!」

「あ、あぁ…もちろんだぜ!」(言えない……さっきの大和さんが凄すぎてドン引きしてたなんて……)

「そ、そうネ!」(大和ってキレるとあんなに怖いのネ……普段温厚だったから知らなかったネ……)

 

それからは展開は速かった。

まず天龍が魚雷と主砲の一斉射で7隻撃沈し、その後の金剛の連続砲撃により13隻撃沈。そして何より……大和はイ級を蹴り飛ばしたり炎の弾幕ぶちまけたりなどあの頃の鬱憤を晴らさんがためにバーサーカーソウルさながらの戦艦とは思えない速度で深海棲艦を海の藻屑にし、結果的に30隻撃沈というよその鎮守府が知れば卒倒するレベルの戦果を挙げ、()()()()()()()()()()()()()けれども、無事に山城含む一行は母港に帰還した。

 

こうしてあまりにも濃すぎる僕の初陣が終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あぁぁぁ最後の方が雑になるうううう(´・ω・`)
次回お楽しみに!


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肆日目 蘇った不沈の誇りと不死身の理由

彼が何故「不死身」になった理由、何故大和が生き返ったのか、そして奇跡的に帰って来た山城の容態が今明かされる。



 余りにも重すぎる初陣(復帰戦)を終えた私達は何とかリミットである30分以内に母港に戻ってくることが出来た訳ですが、ここで一つ問題が発生。

 

 現在私こと大和と提督である優斗さんは無理やり融合状態のまま母港に帰還した所為なのか、()()()()()()()状態なのです、 あわわ……一体どうすればよいのでしょうか……

 私が内心で大慌てしていると私の裏側にいる提督が”問題ないです”と答えてくれたのけれど……一体どうするのだろうかと思っていると突然ふと身体の感覚が重くなり、執務室の手前で糸が切れたように倒れてしまい、私は意識を失ってしまいました。

 

 私が次に視界が戻った時に目に入ったのは何処かの病室のベッドの上でまさか誘拐されてしまったのかと焦ったけれど、部屋の外を見ると私が知っている景色でその心配は杞憂だった事を知った。

 自身の焦りも落ち着いたので周囲を確認すると近くには点滴器具や棚があり、窓の向こうには自分が知っている風景が見えることから私は帰ってこれたのだと安堵し、自分の身体に何か不調はないかと確認するとあることに気付いた。

 あまりにも不自然な程に自分の身体に()()()()()()のだ。

「あら……? 先程まで私の中から提督の気配を感じたのですれど……」

 まさか分離でもしたのだろうかと大和は僅かながらの疑問を抱いたが、まぁ気のせいだろうと片づけることにして、大和はベッドから体を起こして提督のもとに向かうことにした。

 病室の扉の取っ手を引き通路に出て、恐らく提督が居るであろう執務室に足を進める事にした。

 大和が執務室に向かうこと15分、目覚めたばかりのぼんやりした思考でどうにか辿り着き、大和はノックをした後、執務室の扉のノブを引いた。

「失礼します、大和です……えぇ?」

「ああ、来たか大和」

「お、目が覚めたのか、大和サン」

「Good evening!! よく眠れましたカ? 大和」

「え、えぇ。それはぐっすりと……って違いますよ!」

 大和はその目の前で何事もなかったかのように彼女に笑いかけてくる男と何事もなかったかのように話す天龍と金剛に思わずため息が出そうになった。いくら問題ないと言ったとはいえ一体何をしたのだろうかと疑問に思った私は問いを投げた。

「来たか、じゃありませんよ! どうしてあの状態で私が提督と分離できたのですか? 教えて下さい」

 そう言うと彼女は頭を下げ、男は少し思案したのちに静かにその奇跡ともいえる事(死んだ彼女を完全に蘇生したのか)を語りだした。

「そうだな……どうして君が生き返ったのか、まずそれを言うには昔話をしようか。その方が解りやすいだろうからね」

 

 

 そう、それは今から何百年以上前の僕の祖先が不滅の栄華を求め、一人の女性によって狂ってしまった末に起きた物語だよ。

 

 今から1000年以上前に僕の祖先、藤原不比等はある一人の女性に恋をする。その女性は誰よりも華やかで美しかったという。その女性は現在では「()()()()」と呼ばれていた蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)というらしいが実際に彼女は存在したのかは確かではない。

 我が祖先である不比等は輝夜に求婚した際に輝夜から出された難題、蓬莱の玉の杖(ほうらいのたまのつえ)を手にいれる為に彼は旅の果てに本物だと思われる杖を見つけたという。(本や教科書だと偽物を作ったと記入されているが実際は違うらしい)

 しかしいざ輝夜にそれを見せると()()()()()()と言われしまい、彼は赤っ恥を掻き、藤原氏の栄華に亀裂が入ってしまったらしく、それから彼は怒りに狂ったそうだ。

 しかし、何故僕が貴方を蘇らせれたのかについて重要なのはこれからのお話。

 藤原不比等にはある娘がいた、その娘の名は藤原妹紅(ふじわらのもこう)という。

 少女は月に帰って行った輝夜が残したとされる壺が富士の火口に捨てられると聞き、その壺を捨てに行った人たちが油断したときに壺を奪い、その壺の中に入っていた蓬莱の薬を呑んだ彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()を手に入れたという。それから彼女は人々から逃げるように人目を避けるようになり、長い年月の果てに最果ての理想郷に辿り着き、その地で数百年過ごした妹紅はその時にある男性と恋に落ちる。そして彼女は子を身ごもると不思議なことにそれまで不死身であった身体が不死身では無くなったのだ。

 彼女は自分がどうしてそうなったかを旦那と考えた末にある一つの仮説に達した。

 それは()()()()()()()()()()()()()()()であった。結論から言えばその仮説は正しかった。事実、彼女の子供は不老不死になっていた。故に彼女は自身の子供にこう言ったという。

『「いいか? 何があってもその体質の事は絶対に隠し通せ。それを話していいのは結婚相手だけだ。もしもアンタに子供が出来たら今言った事を伝えてくれ」』

 そして妹紅の血筋の末端である人物は代々不死身を継承され、次第に憑依術や炎を操る力を編み出していったという。

 

「……そしてそれは律儀にも何代も継がれていき、僕に至るというわけだよ」

 かなり長い昔話を終えた彼はあぁ疲れたと愚痴り、いつの間にか用意されていた紅茶が入ったティーカップを手に取りすすった。

 大和は自身の提督の家系が遥か昔からの血筋であることに思わず固まりかけたが、何故それが自分が完全な形で生き返ったことに繋がるのだろうかと困惑した。

「そうですか……提督の血筋がかの藤原氏の一族なのは驚きましたが、それと私が生き返ったことにどういう関係が……?」

 私がむすっとした顔で尋ねると提督は先程言っただろうというやれやれという顔で答えた。

「それは先程説明したんだけどなぁ……僕には()()()()()()()()()()()()()()()()()が引き継がれているんだ。だからあの時無理矢理蘇生させれたんだ。艦娘の蘇生は能力の応用でせきるんだけれど……これにはちょっとした()()が必要でね」

 彼はそう言っておもむろに軍服の左腕の袖を捲り見せ、それを見た私は情けないけれど悲鳴にも似た声を上げてしまった。

「提督……その火傷は一体……」

 ああそれはね、と説明を続ける。

「これがさっき言った代金だよ。人一人、いや艦娘一人完全蘇生させるとその分の()を身体に受けなくてはいけなくてね」

 まぁそのうち治るから気にしなくてもいいさと提督は朗らかに笑って見せた。今の私には目の前で笑っている彼がどこかおかしく見えた、艦娘は良くも悪くも兵器であり、いくら私が大戦艦大和だと言えど何もそこまでする必要はなかったのではなかろうか。

「あの、提督はどうしてそこまでして私を助けて(蘇らせて)下さったのですか?」

 私がそう聞くと彼は少し間を開けて返事した。

「どうして、ね……貴女をを蘇らせたあの時、不意に聞こえたんだ。〝大和を助けてあげて”って声が。だから僕は貴女を蘇らせたんだ」と何処か遠くを見つめるように彼は呟いた。

「そう……なんですか、それでその声って一体……?」

 私が提督にその声は誰かと聞くとあからさまに話題をすり替えた。いつか絶対にその声が誰だったかを聞き出そう。

「……それはいつか話すとして、今いるメンバーに話がある。先の戦闘で帰還した山城についてだ」

「「「……ッ!」」」

 その言葉に場の雰囲気が鋭くなる。

「山城についてだけど、現在彼女には入渠してもらっている。もちろん入渠させる前に掃除したから問題は無い」

「へぇ、あの泥風呂を直したのか、不死身だとそんな器用なこともできるのか」

「いやそれは関係ないからな?」

 天龍は僅かながらの驚きと共に言葉を漏らした。

 

 確かにあの泥風呂と言って相違ない浴場は新築と見間違う程には綺麗になっていたが、あれは提督が掃除をしていたのか……出撃前にしたのか……? いや出撃後にやった可能性もあるかもしれない。いや、それはどうでもいいや、とオレは頭を切り替える。

「それはそれとしてだな提督サン、お前から見て山城さんは大丈夫なのか?」

 オレが山城さんの容体を聞くと「彼女には特に今のところは後遺症はない、それと深海棲艦化の様子もなし。しばらくは経過観察かな」と言っていたから命に別条はないことだけは確認できたので良しとしよう。

「そうか……分かった。山城さんを助けてくれた事、感謝してる」

 正直あの時提督(こいつ)が大和サンを蘇らせてくれなかったらオレと金剛は沈んでいただろう。だがだからといってすぐにこいつを信用する訳にはいかない。あの時は事態が事態だったからつい従ってしまったが。

「……オレはまだお前のことを心から信じているわけでは無いからな?」

「それはワタシも同じネー。」

 オレが試すようにこいつ(提督)の目を向いて言うと、

「……分かった。信用してもらえるよう善処するよ」

 とあいつは炎々と燃えるルビー色の瞳がオレの目を真っ直ぐ見つめながら応えた。

「……おう、あまり期待はしないが頑張れよ」

「言われなくとも、そのために僕はここに来たのだから」

それからは今後の鎮守府の予定や運用などを確認し合いその日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大変遅れてしまい申し訳ありませんでした!!
これからも鈍亀更新ではありますが宜しくお願い致します!!


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伍日目 初期艦と金剛の激昂

お待たせしましただぜ!!
モチベ低下だから文字数が低下しています。(恐らく精神疲労が蓄積による過度のダメージ?)


 昨日は急な出撃と深海棲艦に堕ちていた山城を救い出した後に敵艦隊をボコボコにたたいたのは良いが、そのせいでただでさえ乏しい資材を消費してしまったので今後の大まかな予定を金剛と天龍、そして大和を交えて話し合った。(山城はもしもの為にしばらくは療養させることにした)

 

「はぁ……、やることが多いね、四大鎮守府の一つを任されるにあたって覚悟はしてたけど」

 そう言いながら右手で持つカフェオレを啜りながら左手で手元にある書類を手元まで持って来て見るとその書類には昨日の出撃に関する内容が記されている。尤も、山城の件に関しては伏せてはいるが。それに今この鎮守府には戦艦の金剛、山城、大和と軽巡の天龍という余りにもアンバランスすぎる構成なので遠征で集めようにもとても効率が悪い。そのため今回の迎撃戦の戦果で駆逐艦を寄こすように書類をまた用意しなくては。あぁ、本当に面倒……じゃなくて大変だな。

「でもまぁ……大変だからこそ成し遂げないとな」

 そう言って僕は手に持ったコーヒーを飲み干して今日分の書類を片付ける事にした。とは言え、流石に一人で終わる量では無いので金剛を今日の秘書艦として手伝ってもらうことにしたが、その時に

「提督はこんなEasyなこともできないのですカ?」と軽い小言を吐かれてしまったのは悔しいが、それが今の彼女から見た僕の評価なのだろう。

 反論したい気持ちを呑み込つつ書類に印を付けていると僕の隣で書類を整理している金剛が不意に問い掛けてきた。

「一つ、質問しても……いいですカ?」

 金剛の問いに〝別に構わないよ"と言うと、金剛はこう問いかけてきた。

「どうして貴方はこんな場所(堕ちた横須賀)に回されたのですカ? この鎮守府は言ってしまえば堕ちた艦娘の行き着く墓場なんて呼ばれているんですヨ?」

 それを聞いた僕はその話に思わず笑ってしまった。

「あははっ! 金剛は()()()()を気にしていたのかい? お生憎様、僕はそう言う偏見には興味なくてね。それに『堕ちた』なんて言われてるのは先代がいらない事をしてきたツケだからそれに引っ張られてるようじゃこの先の戦いで生き残れないよ?」

「そんな事……ですって?」

「うん、そんな事だよ」

 僕が馬鹿正直に思った事を言うと、彼女から戦艦だからか、それとも艦娘だからこそなのか、その場から逃げたくなるような殺気を僕に向けてこう言った。

「shutup!! ふざけないでクダサイ、貴方は私たちがどれだけ嫌な思いをしたのか知らないからそんな事を言えるんでしョウ!? 貴方みたいなぽっと出の素人が理解できる訳が無いでしョ!? 私と天龍なんかは特にどんな思いで()()()()()()()()()()()()を……ッ」

 金剛は激昂し怒りの声と共に僕の提督服の胸倉をその細けれど強力な右腕でつかみ上げた。

 全く、服が悪くなるし面倒だから勘弁してほしいものだなぁ、と何とか胸倉を掴む金剛を引きはがした。

「金剛たちがどんな目にあったのかこの前この鎮守府に着いた日の夜に調べたから知ってるよ。とは言っても上っ面の情報しか得られてないんだけどね」

 全くもって面倒仕事だよだと肩をすくめて笑った。

「……よく調べてるのネ、それはそれとして、()をあまり怒らせないでくださいね?」

 彼女は少しは僕の事を認めたのか、ぶっきらぼうにそう言って元の仕事に戻って行った。

 はぁぁぁぁ……死ぬかと思ったぁ、それにしても実験……ね。これは忙しくなりそうな予感がするね、無性にだけど()()()()()()()()()()()()()() ()し、そろそろ僕の初期艦も到着するだろうし、この鎮守府の設備の問題も山積みだし、今日分の業務をちゃっちゃか終わらせると僕は意気込みながら机に向かった。

 

 ただただ書類にハンコを押しているとある一枚の書類が目に入った。

「ねぇ、金剛、この書類ってどういうのだい?」

「これデスカ? huum……これは鎮守府の予算関係の書類ですネ、これの場合はワタシ達の給料とかの書類ですネ」

「なるほど、ありがとう金剛」

「まぁこれも秘書艦の務めだからネー、ホントはワタシと天龍にかかればJust timeで終わる仕事量なのですがネ?」

 うぐっ、そこを突かれると痛いな、だって仕方ないだろ、本来ならば僕はこんな所で提督なんて仕事をやるような人間ではないんだし。とか言ったところで何か変わるわけではないので書類の山に立ち向かった。

 

 

 それから数時間後。

「やっと終わったぁぁ!!」

途中で天龍が暇そうに様子見に来たり金剛にに解らないところを呆れられながらも教えてもらったりしてようやくなんとか午前中に今日分の業務を終わらせた勢いでガッツポーズをしている僕の横で金剛がぼそりと呟いた。

「まだまだ詰めがsweetですガ、まぁ…及第点ですネ。」

そう言った彼女は懐かしそうに、だけど少し悲しそうな笑みで僕を見つめていた。そのアメジスト色の瞳には一体どれだけの心が込められているのだろうか、その瞳を見ていると不思議に吸い込まれそうな気持ちになっていると、だんだん外の廊下から足音が聞こえ、その直後にバァンと盛大に執務室の大扉を蹴り開けてそいつはこう言った。

 

「随分と遅れてすまないね、私は響、その活躍から不死鳥とも呼ばれているよ。遅れたけどよろしくね司令官」

駆逐艦 響、かつて第六駆逐隊として数々の戦いに参加し、ついた異名は不死鳥。その後ロシアに賠償艦と引き渡されヴェールヌイ(信用出来るという意味)に改名された。

「……そうか、よろしく頼む……って外にいた天龍はどうしたんだ響?」

「あぁ、天龍さんなら脚力で逃げてきました」

あぁ……哀れなり天龍……

何処かで息を切らしているであろう天龍に合掌した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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