ザバーニーヤで生き残りたい! (ももももも)
しおりを挟む
#0 プロローグ
確かに俺は死んだ。俺の記憶だとついさっき、顔も知らない通り魔に全身を滅多刺しにされて死んだ筈だ。
ならば何故、今俺は目を開けて息をしているんだろうか。
奇跡の生還、だとかにしてはこの部屋は病院らしくない。この薄暗い部屋にあるものといえば、掛け軸とガチャガチャくらいのものだ。
凄まじくミスマッチな部屋に困惑しながらも掛け軸を読むと、転生の間と読み取れる。そしてガチャガチャの隣には『転生特典! 1回目のガチャで行く世界、2回目のガチャで能力を決められるよ!』と……
「これはまたテンプレ通りな……」
神様はよっぽど暇なんだろうか? あっ、やめとこ。あんまり罰当たりなこと言うとせっかくの転生のチャンスを棒に振りかねない。
なんにせよ、とりあえず回してみますか。
1回目のガチャは……『ハイスクールD×D』……あっ、死んだわ俺、死ぬわ俺。
聡明な皆様ならご存知だと思うけど、ハイスクールD×Dっていったらインフレ祭りのモブに厳しい世界。ヤバイぞこれ、2回目でいいの引かないと死ぬぞ俺。
2回目! お願いします! お願いします! ……『
ご存知ない方の為に説明しますと! これはFate/strange Fakeに登場するアサシンのサーヴァントの宝具! 伝説の暗殺教団において頭目である
そんなわけで神様! 行ってきます! 楽しくやってきます! ありがとうございましたぁ!
◇◆◇
ハッキリ言いましょう。俺の見立てが甘かった。
いや、別にこの力が通用しないわけではない。ただちょっと体力だの魔力だのを消費しすぎる上に副作用が凄いのだ。
幾つか例を挙げてみよう。まず最初は
これは呪腕のハサンが使う宝具だ。右腕に移植したシャイターンの腕により、触れた対象の心臓と影響を及ぼし合う擬似の心臓を作り出し、それを握り潰すことで相手を殺すと言う宝具だ。本来の呪腕は右手自体が細長いオレンジ色の異形の手になっていたが、俺の場合はfakeのアサシンと同じくそれが背中から生えてくる。
何が問題かと言うと、言うまでもなくそのシャイターンの腕だ。呪腕のハサンはこの右腕を移植したせいで人間の食べ物を食えなくなったと言っていた。俺もそれと同じに、一度発動してしまうと解除してから三日三晩は飯が食えなくなる。その上腹が減る。唯一口にできるものは、その右手で握り潰した敵の心臓なのだ。グロいわエグいわでめっちゃキツい。味は悪くなかった。
次、
こちらは静謐のハサンの宝具。全身を爪の先まで、果ては吐息までもを猛毒とする奥義だ。毒の体に触れれば死ぬし、吐息を吸い込むだけで死ぬ。これもめちゃくちゃに強いし、しかも発動すればあらゆる毒への耐性がつくおまけもある。
そしてこれについての問題は、体から毒が抜けるまでの期間が長すぎることだ。使ってから3日程度は触れるだけで植物が枯れるくらいの毒を発し続けることになる。それ以降は毒性は弱くなるが、それでも完全に抜けきるまで一週間はかかる。
最後の例に、
で、これにもデメリットはある。これを使ってから丸一日は、世界に溶け込みすぎて自分がどこにいるのかわからなくなるのだ。ただただ俯瞰で景色を眺めているような感覚が続き、2日目に自分がどこにいるのかうっすらと理解できて、3日経ってようやく自分自身を見つけることができる。経験者だから言えるが、この感覚はめちゃくちゃに怖い。自分がどこにいるのかわからないなど、死んでいるのと同じなのだから。
あっでも見た目がFakeアサシンちゃんなのは素晴らしいです可愛いです。女になったのはちょっといただけないけど、可愛いからOKだよね!
「やっと見つけたぞ、暗殺者め」
「……ふん、烏どもか」
そういえば言い忘れてたけど、今は逃亡生活の真っ只中です!
いやね、子供の頃から
そんで目の前には夥しい数の黒い翼……堕天使どもだ。特に蛮行が目立ったから、狩りまくってたら目つけられちゃったのよね。
何にせよこいつら全員を相手取れるような体力も魔力も残ってないんで……逃走! 三十六計逃げるに如かずってね!
「使いたくなかったが……暗獄に沈め──『
はい! さっき言った
「クソッ! またあの術だ! 探せ! まだどこかにいる筈だ!」
無駄だよ、今の俺はどこにでもいてどこにもいない。見つけられるのなんて……初代の山の翁くらいじゃないかな。
とにかくさよならだぁ!
目次 感想へのリンク しおりを挟む