機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ 鋼血 (黒猫ノ時雨@シロエ)
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1話 硝煙と鋼血

P.D.315

 

鼠が駆け回り、痩せ細った中年の親父達が地べたに座りながら酒瓶を手に持ち豪快に飲んでいた。そんな掃き溜めのような鼠が駆け回る路地裏の道。そんな場所に、まだ幼い顔をした10代にも満たないくらいの痩せ細ったボサボサの黒い髪のした年端もいかない紅い瞳の少年が、自分より遥かに大きくガッチリとした肉体を持つ20代後半くらいの男を1人で押さえつけていた。少年は男からうばったであろう拳銃を男の後頭部に銃口をめり込ませるように突きつけた。

「ねぇ…お兄さんは俺に言ったよね?弱い奴は強い奴に淘汰されるって…じゃあ、どうして俺はお兄さんに淘汰されてないの?…あぁそっか!!…お兄さんが俺より弱い奴だからか」

少年が不敵な笑みを浮かべながら男を見下ろしていた。その時、男が突然暴れだすと少年は男の背中から振り落とされた。男は立ち上がると直ぐに少年に襲いかかった。その直後、細い路地裏の道で一発の銃声が鳴り響き硝煙と血の香りが入り交じり合い噎せ返るような匂いがその場に立ち込めていた。少年は銃を撃った反動によって重みの無い身体は衝撃に耐えきれず後方に吹き飛ばされ。少年は路地裏に積み上げられていた木箱に身体を激しく叩きつけた。その衝撃で木箱は落下し中に敷き詰められていた空の酒瓶が辺り一体に散乱した。

少年は木箱を押し退けゆっくりと立ち上がると銃弾が無くなった拳銃を路地裏の脇に流れる悪臭が立ち込める茶色に濁った川へと投げ捨てた。そして、少年は男の骸にゆっくりと近寄ると男が着ていた黒いジャケットに付けられたポケットの中に手を突っ込み焦げ茶色の長財布を取り出しチャックを開けた。すると、その中には白い帯で縛られた札束と何枚かの小銭が入っていた。

「これで…暫くはルカと食っていける…」

少年は、サイフのチャックを閉めるとソレを自分のズボンの後ろポケットに入れ、何食わぬ顔で何事もなかったかのように路地裏から出ていくと彼の姿は沈む夕焼けに吸い込まれるように消えていった…

『響月、起きて』

響月と呼ばれた少年が目を覚ますとそこには、1人の少女が響月を見下ろすように立っていた。その少女の容姿は10代とは思えない色気を醸し出しており、手入れが行き届いている肩くらいまで伸びた美しい白い髪。その毛先は、淡い赤みを帯びていた。そして、宝石のような美しい琥珀色の瞳をした可憐な少女が響月の横に座ると直ぐに横になっている響月の頭を自らの膝の上に置きボサボサになった髪をポケットから取り出したクシで丁寧に髪をとかし始めた。

「んっ…あぁ…ルカか…また魘されてたか?」

「んんっ、アイツらが呼んでる」

「そっか…わかった。もう少ししたら行くよ」

響月は、そう言うと長く伸びた髪をルカと呼ばれた少女に結ってもらうと直ぐに立ち上がった。そして、背後に座る無数の配線に繋がれたトリコロールカラーをした金色に輝く4本角の人型兵器を暫く見つめた。そして、何も言わずに振り返るとルカの手を引いて

その場を後にした。2人は足早に煤まみれで所々、蛍光灯が切れかかっている廊下を歩いていると突然、響月が立ち止まった。

「ルカ、アイツらが俺を呼び出した理由聞いてるか?」

「詳しい事までは聞いてないけど…なんかギャラルホルン?の手伝いがなんかって言ってたよ」

「は?どうして俺にそんな事頼むんだダグラスの野郎」

響月は、愚痴を零しながら再度ルカと共に歩いていた。その時、場違いな程に豪勢に彩られた扉の前で立ち止まり。響月は、ポケットの中から一枚の白いカードキーを取り出した。ソレを扉の横に備え付けられた機械に翳すと扉が開き中に入ると椅子に腰掛ける大柄の男と黒スーツと黒いサングラスを掛けた男が座っていた。

「ようやく来たか…まぁ良い2人とも座れ」

響月達は、その男に言われるがまま椅子に腰掛けた。男が何かを話始めようと口を開いた時、響月が右手を上げた。

「いつもの御託はいいから早く本題に入ってくれよダグ…いや、ボス」

ダグラスは簡単に笑うと両手を膝の上に置き

2人の顔をじっと見つめ口を開いて話始めた。

「ある程度の事はルカから聞いたわけか…まぁいい、単刀直入に言う。お前等は今からギャラルホルンに転属となった。どう言う風の吹き回しかは知らんが良かったな…それで、転属祝いにお前にアレをやる着いてこい。」

ダグラスは、ソファーに腰掛けていた重い腰をあげ立ち上がると響月達を連れて部屋を出た。そして、響月達は、また煤まみれの蛍光灯が切れかかっている廊下を歩いた。

そして、先程まで響月達が居た扉の前に辿り着いた。

「お前らはここに何があるかは言わんでも知ってるな」

響月達が頷くとダグラスは高々と声をあげて笑った。そして、ポケットからカードキーを取り出し扉の横に備え付けられた機械に翳し扉が開くと4人は中に入っていった。

その場所には、巨大な3機のファンが音を立てながら周り大量に並べられたモビルワーカーと資源と思われる鉄製の箱がある。その場所の中央に大量の配線に繋がれた一体の人型兵器。ダグラスは響月達を連れてソレに近づいた。

「おい、ゲオル…アレ貸せ」

黒いサングラスを掛けた黒スーツの男は、手にしていたタブレット端末をダグラスに手渡した。そして、ダグラスは手馴れた手つきで

端末の画面を操作した。すると、無数に繋がれていた配線が突然切り離された。

「響月、俺からお前にコイツとルカをやる…

向こうでも上手くやれよ…何、しょぼくれた顔してんだ響月!それでも俺の部下か?…はぁ…分かった最後に言ってやるよ耳の穴かっぽじって聞け!」

ダグラスは、響月の肩を強く握りしめ真剣な眼差しで響月の顔をじっと見つめ抱き寄せた。

「俺もお前らが居なくなるの辛い…本当は行って欲しくない…でも、俺はお前等をギャラルホルンに渡す事を決めた。それはな…お前らに幸せになって欲しかったからだ。俺はお前等に何もしてやれなかった。」

2人は、ダグラスに抱きつき涙を流しながら首を横に振った。

 

「お前等…そうか…ありがとうな。お前達はこの俺の誇りだ向こうで辛い事があったら。いつでも連絡しろよ…響月、お前は俺よりデカい男になれよコレは男と男の魂の契だ…いいな?」

ダグラスはそう言って満面の笑みで響月とルカを見つめながら二人の頭を撫でた。その光景は、父親が我が子にするような心温まるものだった。

「でも、ここの電力ってコイツで補ってるんじゃ」

「ガキがそんな細かい事は気にすんな、電力なら何とかなるさ、今は、自分に託された事をやるんだ…分かったな」

ダグラス達はそう言い残して。その場から出ていった。

「乗ってみるか…」

響月は、その機体の手を伝い華麗な身のこなしで落ちることなく機体の胸の辺りまで登ると開かれていた操縦席と思われる場所に乗り込んだ。そこには青いコックピットシートとスティック状の操縦桿と2つのペダル。中央には1台のモニターが備えられていた。

そのモニターには、赤い背景で何かの紋章と沢山の英文が表示されていた。

━━━━━━━━━━━━━━

GUNDAM FRAME TYPE

BERIAL

ASW-G-68

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「なんて読むんだ?ベリ…ベル…わっかんね」

響月は、コックピットシートに腰掛けたその時、コックピットシートから黒いプラグが伸び響月の脊柱部に付けられた『ピアス』と呼ばれる機械と繋がった。その瞬間、響月の身体はドクンっと脈打つ衝撃と共に痙攣を起こし鼻からツーっと血が流れ落ちた。

「なんだ…これ…頭が…割れそうだ…ア゙ア゙ア゙ア゙」

ルカは、響月の苦しそうな悲痛な叫びを聞いた瞬間、響月の安否が気になって何処かに

登れるものは無いか探している間も響月の苦しそうな叫び声は聞こえていた。

「響月、今助けにいくから死なないで」

響月は、ルカの震える声を聞いた瞬間、操縦桿を強く握りしめ意識を取り戻した。

「そうか、コイツの名前…ガンダム・ベリアルって言うのか…いい名前だ…ルカ、俺は大丈夫だコイツの情報量が多くて頭が処理に追いつかなかっただけど気にするな!」

コックピットの外から、泣きじゃくって何を言ってるのか分からないルカの声が聞こえた。多分、良かったと言っているのだろう。

「えーっと、これは武器か?」

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・Rare metal Bayonet shotgun ×2

・Hand gun 「Desert Eagle」×2

・Rare metal blade-mounted Tail Blade

・Rare metal blade-mounted Drag Claw

・Foot Rare metal Jaeger Edge

・Belial designato Special plummer

━━━━━━━━━━━━━━

・Plummer control command system

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「ダグラスの奴、なんてものを俺に寄越しやがったんだ…とんだ化け物だぜコイツはよォ、それを俺に使えって言うのかよ」

響月が、コックピットから降りようとした瞬間、爆撃音と共に施設全体が大きく揺れ天井に備え付けられていた何本かの蛍光灯が落下し割れた。

「な、なんだ!?地震?でも、なんか爆発したよな?…まさか!?」

響月は、急いで周囲のエイハブ信号を調べた。すると、施設を囲うように並ぶ無数の赤い点。その点の上に『EB-06』と表示されていた。

「これって…ギャラルホルンの?」

その時、格納庫の扉が開きダグラスとルカが入ってきた。

「響月、アイツら俺達を裏切りやがった…」

『アイツらって…ギャラルホルンがか?』

ダグラスが頷くと、響月は怒りを顕にし紅蓮のような紅い瞳を鋭く光らせモニターを睨みつけた。

『ルカ、ダグラス、コイツの掌に乗れ…俺が安全な場所まで送る』

響月はそう言うと、ベリアルの掌をルカ達の前に差し出すと不安そうな表情を浮かべながらルカは恐る恐るその差し出された掌の上に乗った。

『ダグラス何してんだよ!ビビってないで早く乗れよ!』

ダグラスは首を横に振った。

「俺は此処に残る…まだ他の奴らの避難も進んでねぇからな!お前はさっさとルカ連れて行け…俺はお前に言ったよな“俺よりデカい男になれ”って…俺との約束こんな所で終わらせんのかお前?」

『ダグラス…あぁ分かったよ!俺がアイツらを何とかする。だから、アンタは他の奴らを安全な場所に連れて行ってくれ』

ダグラスは、簡単に笑うベリアルの前に腕を突き出して親指を立てた。

「響月、お前に上のヤツらは任せる!4番扉から行け。そこからならアイツらの背後に回り込んで奇襲を仕掛けられる。頼んだぞ」

『あぁ任された!』

響月は、ベリアルの掌に乗っているルカをベリアルのコックピットに近ずけると響月はハッチを開けてルカをコックピットの中に連れ込んだ。

「響月、私…凄く怖いよ!」

「大丈夫だ俺がルカもダグラスも皆、俺が守ってみせる。」

ルカが涙を流しながら首を縦に大きく振ると

響月はルカの腰に手を回し抱き寄せた。

「網膜投影スタート…ベリアル行くぞ」

それに応えるように、ベリアルのデュアル・カメラアイが蒼く輝きを放った。その直後、響月はペダルを強く踏みベリアルの背部スラスターを吹かし地上へと向かった。

 

-地上-

荒廃した火星の大地に立つ『D.W.C』と大きく壁に書かれた白い施設。その施設を取り囲むように緑を基調としたギャラルホルンの機体がライフルを構えて立っていた。

「コルネリウス隊長、これはどう言う事なのでしょうか?何故、我々は軍事要請を行ったD.W.Cを襲撃しているのですか?」

その直後、機体内部のモニターに赤い髪の30代くらいの悪人面の男が表示された。その男こそがこの部隊を指揮する隊長のコルネリウスである。

『何を言ってるのか分からないな…ウェンリー二等兵。私はこの部隊の隊長だぞ?君は隊長がしている事が間違っていると思うのかね?』

「?!…お、思いま…せん」

ウェンリーと呼ばれた若いギャラルホルンの兵士は何も反論出来なかった悔しさに怒り握りしめた拳をモニターに強く叩きつけた。

その時、モニターに地下から高速で接近する赤い点が表示されていた。その点には『ASW-G-68』と見覚えの無い機体識別コードが表示されていた。

「隊長、下から何か来ます!」

『全員、構えろ…出てきたヤツを蜂の巣にしてやれ』

その直後、地面が大きく揺れ始めオレンジ色のグレイズの背後で突然、爆発音と粉塵が舞い上がった。

『な、後ろからだと…小癪なぁ』

コルネリウスの駆るグレイズが粉塵に向け手にしていたライフルを乱射した。それに続くように周りにいたグレイズもライフルを撃ち

コルネリウスは、自らのグレイズの弾薬が切れたことを確認すると停止信号を部隊全体に送り。振り返ると腰にマウントしていた斧を手に持つとコルネリウスはペダルを踏みしめ

グレイズのスラスターを吹かせな『D.W.C』に向かっていった。その時、コックピット内に警告アラートが鳴り響いた。コルネリウスがモニターを確認するとそこには、上空から高速で接近してくる熱源反応があった。

コルネリウスの駆るグレイズが振り返り上を見上げるとトリコロールカラーの白い機体が両手に剣を装備して。こちらに接近しているのを視認すると迎え撃つようにグレイズは手にしていた斧を構えた。

『旧式の機体でこのグレイズに勝てると思うなよぉぉぉダグラスぅぅぅ』

「俺は、ダグラスじゃねぇ!アイツの…親父の息子だぁァ角笛野郎ォォ」

 

続く

 

 

 

 

 

 

 



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