チチに転生したので理想の妻を目指す (パープルブルーメ)
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原作開始前
1話


ハーメルン初心者の処女作です。暖かい目でご覧下さい!


気がつくと真っ黒な空間にいた。上下左右も分からないしそもそも目を開けられない。

謎の浮遊感と安心感があり、まるでドラゴンボールに出てくる【メディカルマシーン】のようだと思ってしまい、顔がニヤけそうになるが…それどころではない。どういうわけだか状況が掴めない。

 

『 …え、なになに…この真っ暗な空間はどこ?』

 

そもそも記憶が曖昧でやれそうな事もないので、なんでこんな真っ黒な空間にいるのか考えてみることにした。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

――確か朝はのんびりと支度をし、普通に学校へ通っていたはずだ。普段と比べても変化は無い平和な1日だったと思う。途中までは。確か学校へついて友達と別段変わってない会話をし…いや、そういえば少し変わった話をしていた。

 

『 お前ってさ、ドラゴンボールのキャラで誰が好き?』

『普通かもしれないけどやっぱり悟空かな!にしてもいきなりどうしたの?』

『いや、近々人気投票があるらしくて…お前の意見も聞きたくてさ』

 

世間は今ドラゴンボールブームで盛り上がっていた。私もブームに乗っかっている1人だ。そんでもって人気投票をしているらしく、どうやら私の意見を聞きたかったらしい。

 

『そっか。もう投票済みだよ』

『で、やっぱり悟空か!ったくお前はブレないな…他のやつは悟飯に投票したってやつが多かったぞ!今回の物語の主軸になりそうだし、覚醒に期待してる奴も多いみたいだな。』

 

今ドラゴンボール本編では未来から来た人造人間、セルと地球をかけたバトルこと【セルゲーム】をしている。そこで活躍が期待されてる悟飯に投票している人が多いのだろう。

悟飯か…もし悟飯が勉強ではなく戦闘を沢山していたらどれだけ本編が楽になっていたんだろう?潜在能力は相当なものだろうし、混血だからなぁ。

 

『 にしてもなんでそんなに悟空が好きなんだ?』

 

これを聞かれたら答えないわけにはいかない!と早口言葉でも言っているかのように私は早口で喋り出す。

 

『主人公だし優しいしカッコイイし!一見馬鹿に見えても戦闘では頭が回ったりとか、超サイヤ人になったときの髪型がカッコよかったりとか…』

『も、もういいよ!』

 

ここでストップがかかった。どうやら語りすぎてしまったようだ。

 

『やっぱホントに悟空好きだなお前は。お前がチチだったら悟空達をめっちゃ甘やかしちゃいそうだな!』

『えへ…そうかな?』

 

どうやら今ので十分私の悟空への愛が伝わったらしい。

そう、私は悟空大好きっ子なのだ。流行ってるからって気軽に見たナメック星編で超サイヤ人の悟空に一目惚れ!その後は原作の漫画を買い始め、今や立派な悟空ファンだ。そんな私に彼は言った。

 

『じゃあもしお前がチチだったらどうする?』

 

そんなの答えは決まっている。

 

『私は悟空の理想の妻になる!』

 

と大声で言ってしまった。

勿論クラスの人達には注目され笑われたし、聞いた張本人もほんのり引いていたような気がしたが…後悔はない。…たぶん。

 

 

 

その後はいつも通りの学校の授業を終えた。ここまでは良かった。

帰りにコミックの新刊を買い、急いで帰る為にいつも使わない道に移動し先程の質問の答えの内容を想像しながら帰っていた…ようするに浮かれていたのだ。

 

『君ー!そこにいては危険だーっ!はやくどいて!危ないっ!君だよ!』

 

『えっ?』

 

上から声が聞こえる。いつも通りの道を使わなかったのが悪かったのか、はたまた運命のイタズラか…。

知らないうちに空き地から立ち入り禁止の工事現場に変わってしまった【旧・早く帰れる裏道への空き地】の【 現・工事現場】に足を踏み入れていたようだ。

 

『! すいませんすぐにどきまっ…ぁ…』

 

 

上からゴーーーッと鉄骨が落ちてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ドチャン。

 

無論私は一般人、それも学生なので避けられるはずもなく…お陀仏だ。潰されてしまった。

『 っ…!大丈夫か!おい!早く救急車を呼んd…急…』

その頃にはもう手遅れだったのか、声も聞こえなくなってきて意識も朦朧としていた…私は思った。

 

 

―せめて 死ぬ前に 悟空と会いたかったなぁ―

 

 

馬鹿なのだろう、死ぬ瞬間もそんなことを思って死んでいった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

…で、今この状態である。

結局なんでこんな暗闇にいるのかわからなかった。もしかしたらここがあの世なのかもしれない…どうせならドラゴンボールのあの世みたいな世界がよかったな、なんて思っていたら…

 

『 あれ?なんか急に光が…』

 

いきなり光を感じた。目を開けられないので詳しくはわからないが、そっちに移動してみる。すると…

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

エイジ737年 涼景山

 

ドタドタドタ!とかなり大きい体格の大男が廊下を走っている。どうやら遠出から急用で帰ってきたらしい。

体長は見る限りでも4メートルはありそうだ。

彼はなにか焦っているのか、急いで移動していた。

 

「くそっ、なしてもっと早く連絡しねぇだ!」

 

廊下からでも赤子の声が聞こえてくる。

ようやくついたのだろうか彼は落ち着いて深く深呼吸し、ゆっくりと扉を開けた。その場には従者が数人、そして彼の妻がいた。

 

「お前ー!大丈夫だか!?」

「あなた…」

「無事にお生まれになりましたよ!元気な女の子です!」

 

おぎゃあ、おぎゃあと赤子の声が木霊する。

使用人の言う通り無事生まれたようで、元気な声を上げているようだ。彼は生まれた赤子の顔を覗き込み、一言こういった。

 

「オラがおめぇのおっ父だぞ!」

 

その瞬間、赤子が先ほどより激しく泣き出した。

 

「おお、オラの顔が見れて嬉しいだか!?元気な娘でなによりだべ!」

「ふふっ、あなたの顔が怖くて泣いているのではなくて?だってあなたは悪魔の帝王、牛魔王ですもの…」

 

「ははっ、その通りだべ!」

 

そう、彼は世間から『悪魔の帝王 』と呼ばれ恐れられている牛魔王その人なのだ。そして、それを理解したのかと思うほど赤子はさらに激しく泣いている。

 

「おめぇの名前はもう決まってるだ!名前はチチ!オラの娘で牛っぽい名前っていったらこれしかねぇだ!」

 

 

 

それを聞いたチチと名付けられた赤子は大きく泣いた。

 

 




お粗末な出来なので改善点などありましたらアドバイスなど送ってくれると助かります。感想も励みになります。



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2話

原作開始前ですがいきなり本来なら行かない場所へ行っています。


エイジ739年

 

あれから2年の月日が経った。

 

あの事故で私はやっぱり死んでいたらしく、そんでもってどういうわけだかチチになって生まれ直していた。

 

長い間混乱していたが1週間と3日ほどで自分がいつまでも混乱しても仕方ないと気づき、未練タラタラ今後を考えていくことにしたのだ。にしても輪廻転生とはこんなに早いものなのだろうか…?しかも漫画のキャラクターになっているだなんて。こんなことがありえるのだろうか?

 

「チチ、今日は2人でピクニックに行くだよ!最近あんまり構ってやれなかったからなぁ!」

 

そして今話してるのが現・私の父の牛魔王。

ゴツめのガタイで重装備をしてる大男だ。

 

生まれた直後に困惑してる中、急にこの顔で覗きこまれた時は死ぬほどビックリした。でも普段つけてるヘルメットを外したら凄い優しそうなお顔で、安心感がある。これは自分の父という色眼鏡無しで考えてもそうだろう、本当に優しそうだ。まぁ原作通りなら悪事を働いているが。

 

そんでもってこの人は…私を産んですぐ他界してしまったお母さんの代わりに育ててくれてるのもあって、とても家庭的だ。これで悪魔の帝王と言われても…ってくらいには。

 

「おっ父と外行くの楽しみだべ!」

 

私も私でチチになりきっている。というか一緒に暮らしていたらこの方言?みたいな言い方が根付いてしまったのだ。

 

「準備はいいだか?」

 

外出用の服を…服というかアーマーをまだ装備してなかったので父が聞いてくる。

 

「すぐに外さ出る準備するだよ!待っててけろ!」

 

どこかで見たようなデザインのビキニアーマーをつける。これ、頭のサイズはまだしも2歳の体に合う形のビキニアーマーってすごい…ちなみに来年、再来年の私の成長を見越したアーマーもすでに製作済みらしい…。

 

ドラゴンボール好きなら知ってるかもしれないが、このヘルメットの上の部分は取り外し可能であり、そんでもってヘルメットの正面宝石部分からはビームが出る。

ちなみに取り外せる部位の名前は【アイスラッガー 】と言うらしい…あれ?

 

「準備できただよー!それでおっ父、今日は何処に行くだ?オラ山は普段からいるし海とか行きてぇだよ。」

 

露骨な誘導である。牛魔王の知ってる海にゆかりのある場所といえば…そう!

 

「そういえば武天老師さまが今は海に住んでるとか聞いたような…よし!じゃあ今日は、オラの師匠の武天老師さまのところに行くだよ。チチは海とか島とか行ったことないべ?きっと楽しいだよ。」

 

ということで、やっぱり亀仙人のとこへ行くらしい!これは嬉しい。

 

ただのピクニックだと思って内心そこまで興奮していなかったのだが、これから亀仙人に会えると思うとワクワクしてくる。

 

「ホントだか!?亀仙n…けほん!海や島に行けると思うとワクワクするだよ!」

 

危ない危ない。

 

「楽しんでくれそうで良かっただ!なら連絡とってみるな。少し待ってけろ!」

 

 

 

プルルルルルプルルルルルル…

 

 

 

『もしもし。』

 

牛魔王…もといおっ父は、私にも聞こえるようにわざわざスピーカーにして話してくれている。

 

おお!電話越しでもわかる、たしかにこれはあの亀仙人の声だ、宮内幸平ボイス!早く私も話してみたいものだ。

 

「オラです。武天老師さまの弟子の牛魔王です。」

 

『おお、牛魔王か!久しぶりじゃのう。にしてなんの用じゃ?』

 

「実は報告というかその…2年前、オラに娘ができたんです。」

 

『な、なんと娘が…!そういうことはもっと早く言わんか!!』

『是非会いたいのう。…して、用は近況報告だけじゃあるまい?』

 

「そうですなー。さすが武天老師さま!全てお見通しだべ?今日は娘と2人でピクニックに行きたくて…」

 

『ほうほう。そういえばお主、妻はどうした?一緒に行かんのか?』

 

あっ、今のおっ父にその質問はまずい。

 

「うっ…妻は…娘を産んですぐ…」

 

『なぬ!…それはすまないことを聞いたのう。』

 

「いえ、最近立て直してきたので大丈夫です。」

 

『…』

「…」

 

私を産んですぐ逝ってしまった私のお母さん、つまりおっ父の妻の話をすると…未だに死を引きづってるみたいで、ネガティブな雰囲気になってしまうのだ。大切な人だったのだろう、まだ立ち直れずにいる。

 

『そ、そういえばピクニックに行きたいらしいの?で!なんじゃ?お誘いか?』

 

「いや、ピクニックといっても海にピクニックに行きたくて。武天老師さまが今は海に住んでるって風の噂で聞いたもんで、娘もピクニックに行きたいと言っているしせっかくの機会ですし…伺いたくなりましてね。」

 

『なるほどのぅ。そういうことなら大歓迎じゃ!場所は…』

 

 

 

ふんふん、どうやら無事カメハウスに行けることになったみたいだ。ちなみにうちは原作通り中々裕福な家庭らしく、ジェット機があるので今すぐどこへでも飛んでいける。

 

「準備はいいだな?いっちょ行ってみるべ!」

 

ヒュウウウウウ…ブルルッ!

 

外に出てみるとビキニアーマーだからか少し肌寒いが、まぁ牛魔王いわく【正装】らしいので仕方ない。仕方…ないんだと思う。

 

それじゃあジェット機に乗り込みいざカメハウスへ!

 

 

 

このとき、まさか帰ってきたときあんな惨状になってるとは思ってもいなかった…

 

 

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

 

 

一方その頃、亀仙人の家にはすでに2人より先に牛魔王の兄弟子に当たる悟飯が来ていた。

 

「武天老師さま。今回はどのようなご要件のお呼び出しで?」

 

「なぁに、牛魔王のやつが最近流行りの【海ピク】とやらでコッチに娘を連れて来るらしいからのう。お主の存在はいわばサプライズじゃ。互いに久しぶりに会えて嬉しかろう!」

 

亀仙人は偉大な師ではあるが、簡単に言ってしまうと普段は呑気で変態で…相当な場面の時以外はこのようにおちゃらけているのだ。そんでもってその弟子である悟飯や牛魔王も勿論、普段はおちゃらけている。

ただ、ひとつ言わせてもらうならば…弟子視点からすると、厳格な師匠等よりはよっぽど良いと思われる。人生、楽しまなきゃ損なのだ。

 

「な、なるほど!牛魔王ですか。にしても牛魔王に娘がいたとは…これは会うのが楽しみですなぁ。」

 

そして悟飯もチチの存在を知らなかったようで驚きを隠せない。そして悟飯はなにか思い出したようで、亀仙人に伝える。

 

「あ、亀仙人様。そういえば私にも息子ができましてな。」

 

「なっ!なんと!!それは誠か?」

 

「はい。と言っても実の息子では無いんですがね。」

 

そう。皆さん知っての通り悟飯には、これから十年後に摩訶不思議な大冒険を繰り広げる息子がいるのだ。

 

 

 

◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◆

 

 

 

ピンポーン!

 

 

 

そんな会話をしていると呼び出しのドアホーンの音が聞こえてきた。

 

「牛魔王や!久しぶりじゃのう、さあ入れ入れ。」

 

亀仙人はサプライズの悟飯に奥に隠れてもらって、ドアを開きお出迎えする。

 

「お久しぶりです。そして紹介します!オラの娘のチチです。」

 

「オ、オラ牛魔王の娘のチチだべ!よろしくだよ!」

 

元気そうな牛魔王の娘がちんまりとながらも、きちんと挨拶してきた。

そして亀仙人もそれに応え挨拶しようとするが…

 

「なっ!これ牛魔王!お主は…」

 

その格好に驚きを隠せない。牛魔王がヘルメットやアーマーをするのは今の職場上帝王をしているし、戦闘したりするのでまだわかるが…まさか娘にまでそんな格好をさせるとは。さすがの亀仙人も予想していなかったのである。

 

「これ牛魔王!娘になんちゅう物を着させてるんじゃ!」

 

「あ、やっぱり変だか?一応オラの娘ってことでこの格好が正装として似合うと思ってただが…すまねぇだ。」

 

当たり前である。彼女はまだ2歳だ。

 

こんなアーマーを戦闘のせの字も知らない娘に着せるとは。重いだろうに。

 

でも亀仙人が驚いた理由はそっちではないようで…

 

「し、しかもこれはビキニアーマーじゃろ。幼い頃から認識をズラして将来ムフフな女に…!?お主…やるではないか!さすがワシの弟子なだけある!」

 

「へっ?」「?」

 

そう、亀仙人はそういう人である。

 

そんなどうでもいい会話も終わり、晴れて中へ迎え入れられる2人。そして家にはサプライズで悟飯がいたのだった。

 

「久しぶりですな!牛魔王!」

「悟飯さんもいるでねえか!お久しぶりだべ」

 

「そして初めまして、牛魔王の娘よ。たしか名前は…チチといったかな?」

「そうだべ!」

 

「いやぁ、まさか悟飯さんもいるとは思ってなかっただよ。」

 

牛魔王はまさかのサプライズに喜んでいるようだ。

 

そしてチチはさっきから心の中で牛魔王より喜んで…

 

『まさかホントに会えるなんて!』と歓喜している。

 

原作の登場人物2人に一気に会えるとなると、原作ファンからしたら感涙ものであろう。今後悟空に会った時…彼女は一体どうなってしまうのであろうか。

 

「え、えっと!その!…握手してもらっていいだか?」

 

彼女は原作でも重要なポジションの亀仙人、本編開始頃には死んでしまう関係上レアキャラな悟飯の2人に握手を求める。滅多に無い(というか普通ならありえない)光景なので自分をうまく抑えられないのだろう。

 

「勿論じゃとも!」「いいぞい!」

 

 

 

こうして、プニプニの手とシワシワな手が握手をした。




原作では牛魔王は亀仙人のいる場所を知りませんでしたが…腐っても師弟関係、電話くらいはしてそうだと思ったので電話で場所を聞くという形にしました。

※ヘルメットやアーマーの表記が兜や鎧などになっていて曖昧でしたのですべてヘルメット、アーマーに統一しました。


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3話

今回は大事件が起こります。原作でもあった出来事です。


カメハウスにて

 

原作でもそこそこ出番が多いあのカメハウスに来れて、タダでさえ興奮気味なのに。まさか握手までしてもらえるとは…

 

「お二人共握手ありがとうだべ!オラ嬉しいだよ〜!」

 

原作キャラ、しかも重要ポジションの2人と握手できて私はホクホクである。

しかしそんな内面を知らない3人は…

 

「お、おい牛魔王!お主チチにどんな逸話教えたんじゃ!?握手しただけで凄く喜ばれたんじゃが…」

「い、いえ…オラの師匠って事以外は特に…」

 

「もしや人の温もりが足りなかったのかもしれぬぞ?牛魔王、お主チチの相手はしてやれているのか!?」

「うっ…それは…あんまりできてないだよ…」

 

と、かなり心配してくれている様子。勘違いでおっ父が責められるのも可哀想なので話題を変える。

 

「あの…悟飯さのとこには子供いたりしないだか?オラのところは同じ歳の子がいなくて寂しいだよ…」

 

同世代いなくて寂しい子供アピール。

この話題で露骨な誘導をしてみる。悟空に早く会いたいので、少し強引かもしれないけど仕掛けさせてもらう。

 

「おお…可哀想にな…。じゃが、安心せい!実はこっちにも子供がおってな…ってしまった!サプライズにしておくつもりだったが、言ってしまったのう。」

「いるだかいるだか!!!オラその人に会いたいだよ。」

 

「チ、チチ…」

 

おっ父はこんなにも娘に寂しい思いをさせていてしまったのか!とショックを受けてるみたいだけど…早めに悟空に合うための口実に使わせてもらう。

私ってイケナイ子。

 

「勿論よいとも!その子は悟空って言ってな、実の息子ではないんじゃが早くも山の自然に対応して薪割りも手伝い始めてくれるいい息子なんじゃぞ!」

 

驚いた。まさかこの時点で薪割りを手伝ってるなんて…さすがサイヤ人、同い年の2歳なのにこの時点でそんなに動けるのか。やばすぎない?

 

「そんでもってなぜか尻尾も生えておってな。これがまた面白くて、器用に使って魚釣りに使ったりできるんじゃ。」

 

原作でのアレ、まさか2歳の時からやっていたとは。

さすがサイヤ人といったところか。

 

「なな、なんと…」「すげぇだなぁ…」

 

お二人共驚きを隠せないみたい。たしかに普通の2歳にしては異常ってレベルだ。むしろそれすらも超越している。

 

「ますます会いたくなってきただ!今度合わせてけろ!」

 

会いたい年頃ムーブでできるだけ早く合わせてもらうとしよう。私ってばほんとイケナイ子。このまま会話を広げていって…そんでもってうまく話を進めて亀仙人から筋斗雲とか貰えないかな。

 

「ほっほっ。牛魔王、ホントに元気な子じゃなチチは。」

「えぇ。元気に育ってくれてオラも嬉しいだよ。」

「では次に予定が開く時期に…」

 

 

 

ガチャ!

 

 

 

しかしそんな会話をしていると…なにやらウミガメが突然ドアを開けて入ってきた。なにやら急用らしい。

 

「大変です亀仙人様!涼景山が燃えているとの情報が仲間からきました!」

「な、なんじゃと!?」「な、なしてだ!?」

 

…え?涼景山が燃えている?どうやら聞き間違いではないようで、おっ父は急いで帰るための身支度をしている。

急いでおっ父にジェット機に乗せられる。

 

「山に残してる従者やお宝が心配だべ。武天老師さま、悟飯さん、またいつかだべ!」「まただべ!」

「気をつけるんじゃぞ!」

 

急いで帰る。無事な事を祈って。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

なんてこった。すっかり忘れてしまっていたが、今私達が住んでる涼景山というのは、原作のフライパン山の前の名称である。そしてなぜ涼景山がフライパン山と呼ばれるようになったのかというと……

 

チリチリ…ゴウッ!メラメラ…チリチリ…

 

「なっ、山全体がまるまる燃えてるだ…」

 

そう、このように山全体が燃え盛っているからだ。

そしてこのまま何年も燃え続けるのである。

なんで?と思うかもしれないが…とりあえず覚えてる記憶から引きずり出すと、どっかから出てきた火の精の仕業…だったような気がする…。全く、はた迷惑な話である。

 

「おめぇ達ー!無事だかー!?」

「「「牛魔王様!!!」」」

 

どうやら城の従者達は無事だったようだ。とりあえず犠牲者は…なし!いつも見る顔が全員いる!犠牲者は出ていないようだ。

 

「お宝はどうしただか?」

「それが…」

 

従者達の話によるとなんでもお宝を保管してる倉庫には回収する前に火が回ってきてしまってとても取れる状態じゃなったとか。

 

「な、なんてこった…こったらことなっては、今後オラ達はどうやって生活していけばいいだよ…」

 

クラクラ…

 

おっ父はすでに諦めモード、従者達も…もう払ってもらえるお金が無いと知ると、さっきの態度はどこへやら次々と帰っていった。残ったのは数人である。

 

私はいてもたってもいられなかったし、何より後悔していた。なんで涼景山が燃えて、フライパン山になることを忘れていたんだろう…と。転生前の以前からそうだったが、私はどうにも浮かれてると大切なことや基本的なことを忘れやすい。

困った癖である。

 

とりあえず今の状況をなんとかしなくてはならない。原作通りこのまま何年も燃え続けるだなんて嫌だ。でも2歳の喋るのでさえ精一杯な私に何ができるのか?

 

…そうだ!

おっ父は亀仙人の弟子だ。ならばかめはめ波も使えるかも。仮に使えるなら原作の亀仙人が火を鎮火(あれは威力が高すぎて山ごとだったが)したように消せるかもしれない…が、おっ父に提案しようにも私はかめはめ波の存在を聞いていないので、提案することができない。

なら原作通り亀仙人に山ごと消し去ってもらうしか…

 

「とりあえずここから離れるだよ。火がこっちにまで来ては危ないべ…」

 

どうすれば鎮火できるか…深く考える必要がありそうだ。

 

 




フライパン山の前の名前が涼景山だと言うのを知ってる人、意外と少ないんじゃないでしょうか。


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4話

今回でフライパン山が無事に鎮火されるのか…どうぞご覧あれ!


私達と残った数人の従者達は困り果てていた…

 

「オラ達…どこに避難すればいいだかなぁ…」

 

メラメラ…ゴオッ!チリチリ…メラメラ…

 

今は山の麓から見ているが…圧巻。炎は山全体を燃やし尽くしている。こうなってしまっては、帰るべき家を失ってしまった牛魔王とその従者達は…ただひたすら呆然とするしかないのだろう。でもどうにかしないと!原作通りこの後10年間もの間燃え盛っているのは嫌すぎる。

 

「オラは諦めねぇだ!」

「チチ、こんな燃えてたらさすがに悪魔の帝王と呼ばれてるオラといえど、どうしようもねぇだよ…」

 

確かにその通りである。いかに暴君の悪魔の帝王とまで呼ばれた牛魔王でも、自然の力には抗えないようだ。

ならばと今のわたしにできることを精一杯考えた結果、何種類か火の鎮火方法を思いついた。

 

①かめはめ波でなんとかできるかもしれないことをおっ父に伝える!

 

しかしこの方法は〘 私がなぜかめはめ波を知っているのか〙という疑問を生みかねないし、そもそも牛魔王が本当にかめはめ波を打てるのかすら疑問だ。たしか原作だと打てなかった気もするし…

 

②カメハウスに戻って現状を伝えて亀仙人に鎮火してもらう!

 

これはいい考えだと思う。しかし原作の悟空が初めてかめはめ波を見るシーンを無くしてしまったり、原作通り宝をほとんど消しかねない。彼はかめはめ波を緊迫した状況じゃないと打ってくれない上、彼のかめはめ波を見るのは悟空の成長意欲にも関係していそう。そう考えるともしかして今鎮火しない方がいいのか…?宝のためにも。

 

③カメハウスに戻り現状を伝え、『芭蕉扇で 』鎮火してもらう

 

まだこの時点なら芭蕉扇を捨ててない可能性もある。もし捨てていなかったらこの方法一択だ。…これが最善では?かめはめ波と比べてもあきらかに安全だし…でもこの方法、やはり悟空が亀仙人のかめはめ波を見るシーンが無くなってしまう。

なんとか後日お二人共にお願いできないものか?

 

もし③を選ぶなら芭蕉扇を見ることが出来る上、宝も残るかもしれない。ならば!

 

「おっ父!とりあえず亀仙人さ達の家に戻ってみるのはどうだか?」

「そ、そうだべな…他に行くあてもないし、行くとするべか…」

 

と、言うこと聞いてくれたのでジェット機で再びカメハウスへ。しかし2歳をジェット機に一日に何回も乗せるなんて…大丈夫なんだろうか?酔わない体質でよかった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「ふぅむ。なるほどのう。」

 

フライパン山から戻ってきた私たちから事情を聞いた亀仙人と悟飯さん。

 

「にしても火事か、しかも山全体に…どうしたものかのう。」

「なにか火を消すことができる道具とかないだか?」

「うぅむ。…そういえば、風を起こす便利なものが…」

 

仙人は心当たりがあるのか、ガサゴサとなにやら物を探し始めた。

 

「おぉ、あったあった。鍋敷き代わりに使っておったわい。」

 

どうやらまだ原作のように鍋の汁をこぼして汚していなかったらしく、捨ててなかったようで無事残っていたみたいだ!これでお宝も家も無事に鎮火できるかもしれない。

 

「これは芭蕉扇といってな!凄まじい風を起こせるスグレモノなんじゃ!」

「さすが武天老師さま。そんな物も持っていらっしゃるんですな。」

 

これは悟飯さんも知らなかったようで、驚いているようだ。にしてもそんな物を鍋敷き代わりに使うとは…

 

「これで一安心だべ…すまねぇが武天老師さま。それを貸してはくれねぇだか?」

 

申し訳なさそうにおっ父が尋ねるが…

 

「いいぞい、ただし一つだけ条件がある。」

 

なにやら条件があるらしい。

 

 

 

「率直に言わせてもらう。牛魔王、お主…最近あまり良い噂を聞かぬぞ?聞けば悪魔の帝王として様々な悪行を積んでいるとか。その悪行からすべて足を洗い、もうしないと誓うなら。…芭蕉扇を使用するのを許可してやろう。」

 

どうやらおっ父の悪い噂はここまで広がっていたらしい。実は少し前まで大強盗として活動していたらしいのだ。私が産まれてからは強盗もあまりしていないように思えたが…

 

「はっ!はは〜〜〜〜っ!!す、全てお見通しで…!!!」

 

どうやらホントの事だったようだ。

 

「誠にお恥ずかしい限りですだっ!!つ、つい欲にかられますて…もうしませんだよーっ!」

「…もうよい。大の男が娘の前で頭を下げるでないぞ。ほれ、持ってけ!」

 

どうやら反省して謝っているおっ父を見て亀仙人は芭蕉扇を貸してあげることにしてくれたようだ。

これで原作より早くおっ父が改心したことになる。さすが亀仙人のじっちゃんである。問題解決のついでにもう1つ問題を解決するとは。

 

「ありがとうございますだ…!チチ、急いで涼景山に戻るだよ!」

「わかっただ!」

 

こうして私たちは無事芭蕉扇を借りれたので、山へ鎮火しに戻ることになった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

さっそく戻ってきた私達2人は、早速芭蕉扇で鎮火作業を開始した。当然2歳の私が大きい芭蕉扇を持てるはずもないので、おっ父が風を吹かせている。

 

「よし!思いっきりいくだよ!そーれぇ!」

 

ビュオオオオオオオ…!

 

この体で初めて体験するレベルの、まるでハリケーンのような強い風がたった一振りで出る。そしてその風はみるみるうちに風が炎を飛ばしていく。そんな風に2歳の私が耐えれるはずもなく…おっ父に抱いてもらってるといえど余波で飛ばされそうになる。こんなことならカメハウスに一旦預けてもらえばよかったかもしれない。

 

「おおーこりゃすげぇだ。あっという間に山の火が消えていくだよ…よし、もっと消してやるだ!そぉーれ!」

 

ビュオオオオオオオ!

ビュオオオオオオオオオオオ!

 

いつも斧を使ってるのもあってか、扱いの慣れが早い。おっ父の鍛え上げられた筋肉とも合わさって、風はあっという間に炎を消していく。

 

「す、すげぇだすげぇだ!」

 

私もこれには驚きと喜びを隠せない。おっ父の腕にしっかりとしがみつき、風に吹かれながらも一安心していた。この調子で消していけばフライパン山…もとい涼景山の火は大した時間も掛からずにおさまるだろう。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

ビュオオオオッ!

 

「やっただなおっ父!」

 

ついに私たちは山の炎を鎮火し終えたらしい。綺麗さっぱり炎が無くなった山は、前のような美しさは無くなり黒焦げや煤だらけだが…まぁ、何年かすればまた美しさを取り戻すはずである。

 

「ふぃ〜、疲れただなぁ…チチも疲れちゃったべ?あの時は混乱してて連れてきてしまっただけども、カメハウスに置いてくれば良かっただな?」

「そったらこと言わんでいいだよ!オラも火を消す様子見れて楽しかっただ!」

 

やっぱりおっ父は優しい、少し遅かったかもしれないが、私の身を案じてくれているようだ。

 

…これで原作より早くおっ父の悪行と山の炎上が終わったことになる。私の影響で少しづつだけど物語が変わり始めてるかもしれない。まだ2歳児といえど、いい方向に誘導したりするくらいはできるはずだから。

 

「さ、鎮火し終えたし武天老師さまのとこに報告だべ!」

「んだな!」

 

おっ父と私は煤にまみれながらも笑っていた。

 

 




原作の芭蕉扇が捨てられた理由は鍋の汁がこぼれて汚れてしまったから。…いくら汚れてるとはいえ、芭蕉扇を捨てるのは良くない選択だったと思います。


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5話

今回は3話の会話シーンで話に出かけた場所に行きます。


涼景山炎上事件。あれから2年が過ぎた。

あれから従者達は鎮火された話を聞きつけて帰ってきて、おっ父も約束通り悪事を働かず、城の復興作業に務めている。

 

「チチ、今日は悟飯さんのところに行く日だぞ!覚えいてるだか?」

「もちろんだべ!」

 

実は悟飯さんのところもとい、パオズ山に行く約束をこの前取りつけていたのだ。表面上は同年代の子供と会えるから喜んでいるように見えるだろうが…それは違う。

物語の主人公に会えるから、悟空に会えるから、将来のお婿に会えるから、未来の旦那に会えるから…喜んでいるのである。

 

「んへへ…笑いが止まらねぇだよぅ…」

 

いや、ホントに。今日悟空に会えると思うと狂ってしまいそうだ。

 

「はは、そんなに同年代が恋しかっただか!昼には出発するから楽しみにしておくんだべ?」

「わかっただ!」

 

私は今から楽しみで仕方なかった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

一方その頃…

パオズ山孫悟飯の家にて

 

「悟空や。薪割りは終わったね?」

「おう!オラばっちりだぞ!」

 

孫家は朝のいつも通りのサイクルをしていた。孫悟飯の息子、孫悟空は4歳児なのにもかかわらずもう薪割りや魚釣りを手伝っている。はっきり言って異常である。

 

「悟空はまだ4歳なのにえらく働き者じゃのう…まったく、ホントに自慢の息子じゃよ」

「へへっ!」

 

悟空は実の所本当の息子ではない。ある日空から突然落ちてきた宇宙船の中に入っていた赤子である。しかしそのことを悟飯は伝えていないので、無論悟空は悟飯を本当の親だと思っているし自分を本当の息子だと思っている。

 

「そういえば悟空や、今日は来客がくるぞ。」

「らいきゃく?なんだそれ?うめぇんか?」

 

悟空は山で修行僧のような生活をずっと続けているので、知っている知識は山のことと悟飯から教えてもらっていることだけだ。この環境が将来の世間知らずさに影響しているのだろう、悟空の根は賢かったりするのだ。

 

「ここにくる人のことじゃよ。お客様じゃ、粗相のないようにな。」

「わかったぞ!」

 

悟空は言うことを素直に聞く心の清らかな良い子である。しかし拾ったばかりのころはそうではなかったようで…ある日悟空が頭を打ってから別人のように変わっていったらしい。

 

「さぁ、早速持て成すための食材を取りに行くぞ!ワシが山菜、悟空は魚じゃ!はたしてどちらが早いかのう?」

 

悟空はなぜだか勝負が大好きで、普段消極的なものでも勝負にすると積極的になる。例えば【お医者さんの注射】だ。過去に何度かお世話になったことがあるのだが、悟空は注射が大嫌いである。しかし注射の痛みとの勝負に勝てたら悟空は強い!ということにすると、なんと自分から進んで受けに行ったのだ。とんだ負けず嫌いである。

 

「オラ、じっちゃん相手でも負けねぇぞ!」

 

というわけで、こうして今回も勝負事ということにして悟空に釣りに行かせる悟飯であった。

 

かくして2人は食材を取りに出かけた。

 

 

 

ステテテテテッ

 

「じっちゃんに負けないようにとびっきりの早さで魚捕まえて帰ってみせっぞぉ!」

 

悟空はいつものように下流へ行って魚を釣る準備をし始めた。といってもしっぽで釣るので、準備は魚を入れる竹かごだけだが。魚も1匹なら素手で連れ帰れるのだが…なんせ今回は『来客』の分も合わせて4匹も持ち帰らねばならない。巨大魚なら2匹か。なので竹かごは特大のサイズで、巨大魚でさえ余裕で何匹も入るサイズにしてある。

しっぽを川の中に落とし…魚が来るのを待つ。しかし…

 

「…」

 

キィィィィィィン

 

なにやら聞きなれない音が聞こえる。思わず目を開けると…

 

「い!?なんだありゃ!?翼竜の一種か?」

 

空に黄色い謎の飛行物体が。そしてその飛行物体は標高こそ高いが、凄まじい速度で遠くからこちらに来ているようだ。

 

「よぅし、作戦変更だ!オラあの翼竜を捕まえてやるっ!」

 

無知とは恐ろしいものである。

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

私たちはジェット機で悟飯さんのお宅へ行くためにフライト中である。

 

にしてもこの世界の風景はホントに綺麗で、まるで物語の中の世界みたいだ。まぁ前生きていた世界ではホントに物語ではあったが、今は限りない現実だ。

この世界、いつか舞空術で直接飛んでみたいものである。

そして風景が原作の1話ら辺の雰囲気に変わってくる。竹に川に山岳に…ふかーく深呼吸したくなる、落ち着ける良い景色だ。

 

「おいチチ、見えるだか?あそこが悟飯さん達の家だべ!」

 

悟飯さんの家の周りはとても自然豊かで、この前まで燃え盛っていたせいで何も無い涼景山とは大違いである。

そしてあの特徴的な小さいお屋根の家は…!!!

 

「見えるだよー!あそこだべな?」

 

原作でも悟飯の形見がおいてあったすべての始まりの場所、あの家は間違いなく孫家である。

 

「おぅそうだ、まちげぇねぇだよ。じゃあ下降するけろ、準備はいいだか?」

「もちろんだべー!」

 

私はここまでハイテンションになったことはないと思う。なんせ主人公の家がもう目の前にあるのだから。しかしいいことばかりではないようで…

 

ガコン!

 

「へっ?」「な、なんだべ!?」

 

何かが当たった音がした。

 

 




ぶつかってきた棒、一体何棒なんだ…?


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6話

今回はついにあの主人公、孫悟空と転生チチさんが会うことになります。


その音が鳴った方向をおっ父が見る。

 

「こ、これは…棒?」

 

なんと下の方から棒がここまで伸びてきていたらしいのだ。まだ下降準備段階で下降自体はしていなかったので、標高はまだ高いはず。下の方にはよく見えないけど、それを持ってる人もいるらしい。

 

これは…間違いない、如意棒を持った悟空だ。

大方ジェット機を翼竜かなにかと勘違いして仕留めにきたのだろう。ここ付近は自然が豊かなこと以外は特に何もない場所だから、ジェット機に遭遇することも少なかったのかもしれない。

 

「なんてこった…棒のせいでジェット機が壊れそうだべ!」

 

こんなことを考えている場合では無さそうだ…おっ父は機械の操作にもある程度嗜みがあるが、さすがに壊れかけの操縦はキツそうと感じる。操縦がおぼつかないのとジェット機が壊れてるのでドンドン下降してしまってる。

 

「コラーァ!悟空!やめんか!」

「いっ!?じっちゃん!」

 

どうやら下の声が聞こえるくらいには下降してきてしまっているようだ。無論私は掴まっているので精一杯。そして下の声を聞く限りもう攻撃はしてこなさそうでなので…ちょうどいい空き地も発見できたので不時着することにする。

 

「おっ父!このまま空き地に不時着するだよ!」

「わっわかってるだ〜!」

 

ヒューン…ズドッ!ストトトトトト…

 

かなりの衝撃がくる。だが意外と上手くいったのか、そこまででもないようで、無事不時着できた。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「うちの悟空がご迷惑おかけして…ホントに申し訳ありませんでした…」

「いやいや、こうして無事についたし気にしなくていいだよ。」

 

「そうだぞじっちゃん!気にすんな!」

 

 

 

 

ズコーーーッ!

 

「こっこれ悟空!誰のせいでこんなことになったと思っている!」

「いっ!?すっすまねぇー!」

 

なんとか不時着できた私たちは孫家の2人と合流した。そしてやっぱりあの棒は如意棒だったみたいで…如意棒から察せると思うが、悟空の仕業だった。

してもホントにズコーーーッ!ってするんだなここの人達は…今度私もやってみよう。

 

「ま、まぁまぁ悪気はなかったみてぇだし、オラ達が怪我したってわけじゃねぇから問題ねぇと思うけろ…」

 

一応フォローしておく。そういえば悟空と初対面の時のブルマも、同じような心境かもしれない。乗り物を壊されたという共通点もあるし。…都会から見たら魔境であろうここに1人で来たブルマすごい。

 

「そ、そうか…すまなかったな。では改めて…悟空や、自己紹介しなされ」

「おめぇらさっきはすまなかったな。オラ、孫悟空だ!」

 

ただでさえさっきから生の悟空に会えて心の中で歓喜していたのに、まさかこの挨拶を生で聞けるとは!気が狂いそうだ!もちろん嬉しすぎて。

 

「オラ牛魔王だ。チチ、お前も自己紹介するだよ。…チチ?おいチチ…?」

 

はっ!悟空に会えたのと有名すぎる挨拶が聞けたせいで頭がお花畑になっていたようだ。すぐ取り乱しちゃうのは悪い癖だと思うが、今回ばかりはしょうがないと思う。

 

「あっ、オ、オラチチって言うだ。お、同じ歳の子と会えて嬉しいだよ…」

 

やばい。照れて全然うまく喋れなくてどもってしまう。初対面がこんなって少し悲しいような…

 

「おめぇ変な格好してんな!」

ズコーーーッ!

「こっこれでも正装だべー!」

 

悟空が私に言った一言目がこれか…いやぁ、少し…いやかなり悲しいような…おっ父曰くこれでもちゃんと正装らしいので正装だと言っておく。

うーん、しかしこのままでは悟空視点からすればよくどもる変な格好の人間になってしまう。んん?なんか悟空が近づいてきているけど…

 

 

 

 

ぱんぱん

 

「へっ?」

「おめぇ女だろ!」

 

なっ…なっ…そうだった。初期の悟空は性別を確認するのにお股をパンパンしないと分からないんだった…こうして私は原作よりもかなりはやくお股パンパンされたのだった。

そして私は思った…

あんな所を蹴られては、もうこの少年の所へお嫁に行くしかない‐と…

まぁホントは元から妻になる予定だしこの歳だとまだ恥じらいもなさそうなので「やんだー小っ恥ずかしいだよー」みたいなリアクションはしないでおく。

 

「女ってこんななんだな!オラ初めて見たぞ!」

「これ悟空!確かに女は金玉が無いが、なにも確認するとき触れなんて言っておらんじゃろ!あくまで特徴の1つとして教えたまでじゃ!」

 

「悟飯さん…この歳からどんな教育してるだ…?」

 

おかしいと思っていたら、おっ父がつっこんだ。そんでもって悟飯さんに注意されたんだから、もうこの悪い癖も無くなるだろう。原作であの歳までぱんぱんするのを続けてたのは注意が無かったからだろうか?

 

ギュルルル…

 

「あっすまねぇだ!ついお腹が減って腹の虫が…」

 

おっ父のお腹が限界のようだ。もう今は昼の2時で、お腹が空くのも頷ける。確か事前に話していた予定だと昼ご飯は悟飯さん側で作ってもらうってことだったから、もう用意はしてあるはず。

 

「あっ昼ご飯の材料!オラまだ確保してねぇ。急いで取って来る!」

 

用意は…できてなかったらしい。私もお供させてもらって外の景色観光ついでに悟空とお話したりしよう。…落ち着いて話せるかはともかく。

 

「待ってほしいけろ!オラも一緒に行きたいだ!」

「いっ?おめぇと?」

 

なんかあんまり嬉しくなさそうなんですけども…それとも意外なのかな?後者であることを祈ろう。今後の仲が心配になってきた…。

 

「チチ、子供2人で外に行くのはあまりにも危険すぎるだ。オラ達も行くだよ。」

 

むむむ、いくらおっ父といえど悟空との2人きりのデート(相手がどう思っているかは置いておいて)を邪魔させるわけにはいかない!確かに子供二人で自然に飛び込ませるのは危険だとは思うが…まあそこは山に慣れてる悟空と武装してる私だ。大丈夫だろう。しかもこの頃ならギャグ補正もありそうだ。

 

「おっ父達は待っててくれけろ。きっと大丈夫だべ!」

 

ギィィ…

 

「じゃあオラ達、行ってくっぞ!」「すぐ戻るだ!」

というわけで、大人の介入は断らせてもらった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「いんやぁ、子供らしいところもあるもんだべな。同年代の子供とあった瞬間あんなにはしゃいで…」

「おや、チチはあまり元気じゃなかったんですか?」

 

あの後悟空達が食糧を取りに行っている間、幼い子供の帰りを待つ父2人は親トークに花を咲かせていた。

 

「元気じゃないというか少し大人びていて…」

「ははは、うちの悟空とは大違いじゃのう。」

 

確かにあの歳で状況を簡単に把握でき、ほとんど泣いたりしないのは異常に大人びていているといえよう。

 

「じゃが悟空も毎日家事や食糧集め、薪割りまでやってくれるいい息子じゃぞ。」

 

悟空もサイヤ人だからか異常な成長スピードで見た目こそ変化はあまり無いものの、身体能力はメキメキと進化している。

 

「こっちのチチも従者や使用人の家事とかを手伝ったりしてるだよ。将来は理想のお嫁さんになりたいとかなんとか。」

「ほ、ほう。じゃがな、悟空も小さいながらも凄い身体能力なんじゃぞ!将来は亀仙流の使い手になるやもしれぬ!」

「むむむ…」「うぬぬ…」

 

どうやら子供自慢大会になってしまったようだ。

 

 




悟空を前にしたら誰だってこうなりますよね?しかも転生チチさんは悟空大好きっ子ですから尚更です。


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7話

読者の皆さん、アンケートにお答えしてもらってありがとうございます。一応10話まではアンケートは残しておくつもりです。10話時点の投票数で結果が決まります。


今私は夢の中にいるのかな?

そう思えるくらい嬉しい出来事の真っ只中にいる。だってドラゴンボールの主人公であり私の将来の旦那さんになるであろう素敵な少年、孫悟空と2人っきりで外出しているのだ。こんなに嬉しいことは無い。さぁて、どんな話をしよう。そう迷っていると…

 

「おめぇなんでついてきたんだ?」

 

悟空から早速話を振られてしまった。しかも直球。ここは最初副産物として考えてた観光をメインとして話そう。そんでもって元のメインとして考えていたものを副産物として…

 

「えっと…この辺りの観光だ。あと釣りの様子も見てみたかっただよ。」

 

観光といえば、道中で面白いものを見つけた。かなり大きい大木だ。もし倒れたら例え恐竜だろうと通れなくなってしまうであろう大きさである。にしてもこんな大きな大木もあるのか…ここの自然はまるでジャングルのようだ。

 

「ふーん、そっか!」

 

うーむ、会話が途切れてしまう。他の人とならここまで喋りずらくはならないのだが、やはり相手は孫悟空。なにかと照れて話が止まってしまう。今聞けることだと…

 

「あ、あのなんて呼べばいいだか?名前…」

 

凄いどもった上に変な聞き方になってしまった。だがそれもしょうがないだろう。だって相手はあの悟空なんだから。

 

「え?普通に悟空でいいぞ。」

「せ、せめて「さ」をつけさせてけろ…こっ恥ずかしいだよ。」

「???」

 

悟空!って普通に呼ぶのは恥ずかしいし私自身一応【チチ】なので原作にならって「さ」をつけさせていただく。悟空でいいって返してくるのは目に見えてはいたが…会話の話題作りだ。そこはご愛嬌。

 

「おっ、見えてきたぞ!あそこがいつも釣りしてるとこだ!」

 

どうやら見えてきたらしい。原作通りお家から比較的近い場所の綺麗な川だ。フライト中に如意棒打ってきたのもこの辺りな気がする。

 

「大物釣ってやるぞ〜!見てろよチチ!」

「うん!頑張るだよ悟空さ!」

 

隣で悟空さを応援できるというこの感動よ。ホントにドラゴンボールの世界に来たんだなって改めて実感できたと思う。悟空さは川の水面に近づき…

 

ポチャン

 

サイヤ人特有のしっぽを水の中に垂らして、悟空さは静かに獲物を待っている。

 

「…」「…」

 

本人が真剣に釣りをしてる中こんなことを思っては失礼かもしれないが…釣りしてる時の悟空さ、とっても可愛いのである。しっぽを垂らしている間可愛いポーズをとっていて、しかもなにが面白いのかニコニコしながらでの待機。

 

「よしっ、来たぞ!そりゃっ!」

 

ズドーン!

 

「うわっ、大きいだな〜。すげぇだよ悟空さ!」

 

原作でも釣っていたようなかなりのサイズのお魚を見事に釣り上げた。お魚は白目を向いている。どうやら着地の衝撃で気絶したらしい。

 

「おうサンキュー!この大きさならあともう1匹釣るだけで大丈夫そうだな。」

 

1匹でもかなりの量に感じるが…まぁサイヤ人の子供の悟空さと4メートルは超えている巨漢ことおっ父の分と考えればもう1匹確保しとくべきなのか…?

「さぁ、もう1匹釣るとすっか!」

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

一方その頃、やはり子供2人が心配ということで大人2人はこっそりついてきていた。草むらに隠れて2人の釣りの様子を見ている。

 

「おぉ、仲良くやってるだなー。」

「よしっ、悟空いいぞ!その調子じゃ。」

 

今はちょうど悟空が2匹目の魚を釣るとこだ。悟空はしっぽを水面に垂らし…じっくりと待っている。

 

「にしても変わった釣り方法だべなぁ。」

「あの方法、神経が普通の釣りより研ぎ澄まされるだろうし、しっぽの器用さをあげれると思ってワシが提案したんじゃよ。」

 

悟空のしっぽは他の人間にはないアイデンティティである。これを悟飯は上手く使えれば便利になると見抜き…悟空にしっぽを器用に使わせるために、様々なトレーニングを日常生活に取り入れさせている。もちろんしっぽ以外も共に鍛えさせている。

 

「すげぇだなぁ。将来はホントに亀仙流に入門させるつもりだか?」

「そうじゃな…悟空は身体能力がとても高い。磨けば光る原石じゃ!是非ともなってもらいたいのぅ。」

 

ガサゴソ…ガサゴソ…

 

そんな話をしているとなにやら物音が。

 

「ん?ぎゅ、牛魔王!あれを見ろ!」

「アイツ…なにしてるべ?」

 

悟空達の後ろ側、今はそこまで近づいていないが明らかに距離を詰めている恐竜が。外見上の特徴といえば、恐ろしく大きな危険そうな歯が生えている恐竜だということくらいか。

 

「まずいのぉ、あの恐竜は肉食恐竜じゃ。それも悟空達を狙っておる。」

「なっ!この状況まずいんでねぇか…」

 

子供2人は釣りに夢中で気づいていない。そして恐竜は今話してる間にも着々と距離を詰めている。ここは大人達の助けが必要だ。

 

「のぅ牛魔王や。久しぶりにワシらの力を使うときが来たぞ。」

「そのようだべな。」

 

悟飯はそこら辺に転がっている石を拾うと…

 

 

シュビッ!

 

 

鋭く投げた。投げた方向はもちろん。

 

「ギャオ?ッグオオオォォォ!?」

 

恐竜の方向である。恐竜の狙いをコチラに誘導したのだ。

 

 

 

そして悟飯達は子供達と少し離れた場所に誘導し終え…

 

「オラが相手だべ。」

 

牛魔王が恐竜と戦うことにしたようだ。

 

「ギャオオオオオ!グルォ!グァーーー!」

 

恐竜は何も考えず、ただコチラに大口開けながら突っ込んでくる。にしてもこの光景、一般人から見たら卒倒物である。そんな光景が牛魔王の目の前まで来て…

 

「ギシャ!ン…ギャオ?」

 

恐竜は攻撃対象を見失った。

牛魔王は噛まれかける寸前で華麗に避けたのだ。そしてそのまま首を叩き切る。

 

ザシュ!

 

「グルオオオオオ!?グギャ…オ…」

 

 

 

ドスンッ!

 

「大したことねぇべな。」

「これでもここら一帯をナワバリにしている恐竜の一体なんじゃがのぅ。」

 

今の一瞬の駆け引きで悟飯の正確な位置に小石をヒットさせる正確さ、そして牛魔王のパワーが目に見えてわかっただろう。きっと子供2人がこの場にいれば、その技術や戦闘に興奮してたに違いない。

 

「恐竜の死体はもって帰るだか?」

「そうじゃのう。今日は豪華な食卓になりそうじゃわい。」

 

しかし彼らは見落としていた…もう1つの危険、それも先程のより恐ろしい脅威が子供2人に迫っているのを。

 

 




牛魔王を舐めちゃいかん。

※恐竜のセリフ、斬られた際の描写を修正しました


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8話

今回は原作開始前編の有数の山場になるかもしれないです


悟飯達が恐竜を倒している一方…

 

「ぐむむ…2匹目がなかなか釣れねぇな…」

 

私ことチチは悟空と一緒に釣りを続けていた。1匹目はすでに取ってあるので残すは最後のもう1匹だけである。

 

「にしても2匹も釣る必要があるだなんて悟空さはよく食べるだな。…このおっきいお魚、1匹でも結構な量の食事になるだよ?おっ父達の量含めても十分でねぇか?」

 

「じっちゃんによるとオラ凄い食べる子らしいぞ。1匹じゃ満腹にはならねぇかなぁ…でけぇ魚1匹でも腹八分目くらいだ!」

 

さすがサイヤ人、こんな歳からここまで食べるなんて…。しかしこうなると食べるときの配分は悟空さが1匹、ほか3人で分け合ってもう1匹くらいだろうか。

 

ガサゴソ…ガサゴソ…

 

「グルルル…ンガゥ…ジュルリ」

 

「でもよく食べる子は良い子だ!って…ん?」

「なんだべ悟空さ、どうかしたべか?」

 

なにやらのんびり釣りをしていたら怪しげな物音が…音をよく聞いているとこっちに近づいてきているような?

 

「チチッ!危ねぇ!」

「んなっ!?」

 

スタッ!ダキッ…ストン。ズドッ!

 

「グルッ…ギャオオオ?」

 

悟空さはこちらに素早く移動してきたと思うと、私を抱え、そして何者からかの攻撃を避けた。ん?抱えて…?

 

「こっ恥ずかしいだよー!!!離してけろー!!!」

ポカポカ

「いたたっ!?そんなこと言ってもよぉ…アイツ、オラ達のこと狙ってるぞ。ほら。」

 

「ンギャオオオオ!グルッガウ!」

 

はっ!そうだった!何者かからの攻撃を受けていたんだった…私はこんなときに何をしてるんだ。悟空さが指さした方向、つまり先程まで私たちがいた場所を見ると…

 

「え、ええーっ!?ア、アイツって恐竜でねぇか?」

 

そう。恐竜がいたのだ。現代では決して体験できないであろう貴重な遭遇だが…おそらくあのままだったらあの恐竜に食べられていただろう。悟空さ、勘が鋭い。これが主人公か。

 

「そうみてぇだ。それもここらの恐竜の中でもとびっきりつえぇやつだ…悪ぃけどオラ一人じゃコイツにはまだ勝てねぇ…おいチチッ!逃げるぞ!」

 

悟空さはいくら強くてもまだ4歳児だ。でかい恐竜にはそりゃまだ勝てないだろう。ここは逃げを選択するしかない。

 

「わかっただ悟空さ!」

 

ステッステッスタタタ…

ドスドスドスドスドスッ!

 

「グルギャオウッ!グオオオオオオオオッ!」

 

明らかに距離を詰められている。このままでは2人ともお陀仏だろう。今のわたしにできることは…そうだ!

 

「悟空さっ!オラをおぶってけろ!」

「いっ?んなことしたらただでさえ追いつかれそうなのに捕まっちまうよ!」

 

そりゃそうだ、普通はそう思う。しかしわたしには策があるのだ。それも1人ではできない悟空さが必要な秘策が。

 

「いいからオラを信じておぶってけろ!絶対何とかしてみせるだ!」

「…わかった!!!」

 

悟空さは私を信じてくれた。走りながらもわたしは悟空さの背に掴まる。悟空さに足を掴んでもらって完全におぶってもらったのを確認したわたしは…

ヘルメットの向きを逆にしてから、変なポーズを取った。

 

「これでもくらうだ!」

 

 

ビュイイイイイイーン!

 

「ギャオオオオ!?グオオオオオ!!!」

「す、すげぇぞチチ!後ろからじっちゃんにずっと押されてるみたいだ!」

 

そう!!!わたしのヘルメットにはビーム機能が搭載されていて、変なポーズを取ると発動するのだ。確か名前は【エメリウm…いやそんなことはどうでもいい。とにかくこのビームは長射程、高威力で4歳児の体では余波で吹っ飛んでしまう。しかし4歳児が2人分の重さならどうだろうか?

 

「この加速で逃げ切るだよ!目指すは悟空さの家だ!」

「わかったー!」

 

体が押される程度ですむのである。これを利用してわたし達は加速して孫家まで逃げ切るって寸法だ。恐竜はビームをくらってひとたまりもないだろうし、わたし達も逃げるスピードが早くなっていく。いいことだらけだ。

 

ストトトトトトト!!!

 

「で、でもよぅチチ。これオラの足が持ちそうにねぇぞ。」

悟空さの足が少し辛くなってきたみたいだ。ならば!

「わかっただ!でもここまでくれば大丈夫だべ。悟空さ、降ろしていいけろ…」

 

ここにあるものはせいぜい道中見かけた大木くらいだ。でもこれでいい。ビームを徐々に弱めながらスピードダウン、名残惜しいが…仕方ない、悟空さから降りる。

 

「グルッ、ギャ、オーウ!」

「こっちさこねぇでけろー!んー…やっ!!!」

 

しゃ!シュルルルッ!!!

 

私はヘルメットのてっぺんについてる取り外し可能の武器、【アイスラッガー】を放った!私の力はそこまで強くないので速度は出ないし、原作のようにブーメランのように返ってきたりはしない。現時点だと1回きりの大技である。

恐竜を狙ったらかわされてしまうだろう。なので狙いはもちろん恐竜ではなく…

 

「ギャオウ?グルオオオ。」

 

ザシュッ!

 

ドォォォーーーン!!!

 

「ギャオオオ!?グルォ!グルォウウウ!」

 

大木である。この大木が道を塞いだらいくら恐竜でも回り道せざるを得ない。

 

「さぁ悟空さ!今のうちにオラ達、悟飯さ達を呼びに家に戻るだよ!」

「ははっわかったぞぉ!にしてもよぉチチ!おめぇすげぇな!!!」

「そっそうだか!?えへへ嬉しいだよ悟空さ…えへっ。」

 

なっなんと。私は悟空さからすげぇ奴認定をもらった!こんなに嬉しいことはない。くぅ〜、1回言われて見たかったんだよなぁこのセリフ!!!この世界に嬉しいことばっかり!

 

「んへ、いひ、んふふふふふ。」

「でもチチってなんかやっぱ変な奴だなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ギィ…ギシッ!ゴォロロロン!ドーン!

 

 

「へっ?」「な、なんだべ…?」

「ンガウウウウ!ギシャアアア!」

 

なんていうことでしょう。最悪の事態だ。大木の重さが足りなかったのか、恐竜が思っていたよりかなり強かったのか…どうやら大木を退かされてしまったようだ。

 

「…ギィシャアアア!!!」

「こ、これちょっとやべぇんじゃねぇか?」「…」

 

完璧な作戦だと思ってた、転生してから物事がいい方向にばっかりいってたから油断してた。

 

「…もう、策は尽きただ…」

 

わたし達は大人しく喰われるしかないんだろうか。嫌だ。こんなとこで終わりたくない…でもこんなのどうしようもない。

 

「…っ!すまねぇ!」

 

スタタタタタ!

 

悟空は何やらどこかへ走り去ってしまった。最後は悟空に見捨てられて死ぬのか。でもそれもいいだろう。どうやら私はこの世界を舐めきっていたらしい。

 

「ギシャアアアア!」

「はは、は…」

 

思えばあの時大人達がついてくるのを許可してればよかった。なにが悟空さとのデートだ。結果はこれである。

 

ゲシッ。ゲシッ。

 

恐竜も私が諦めたのがわかったのか、ジリジリと距離を詰めて強靭な足でわたしをいたぶりはじめる。体が痛い。辛い。視界がグルグルする。

…足が霞んで動けないし、もう抵抗する気力もない。私は下を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉーぃ…チチー!チチー!!!待たせたなぁ!もう大丈夫だぞ!!!」

 

あまりの絶望からか悟空さの声の幻聴まで聞こえる。私は最後まで悟空さだよりだったのか。

 

「かぁ…」スタタタ

 

かぁ?なんだろうか?カラスの鳴き声だろうか。こんな緊迫とした場面でよく耳に入ったものだ。

 

「めぇ…」ダダダッ!

 

亀?そういえば亀仙人のところにも行ったのは1回きりだ。せめてもう少しこの世界、楽しみたかったなぁ。

 

「はぁ…」シュイイイ

 

この文字列は…懐かしい響きだ。こちらに転生してきてからはまだ1度も聞けていないけど、前世で散々聞いた懐かしい響き。次は…

 

「めぇ…」スゥッ

 

そぅ。そして最後は『は』だ。ドラゴンボールで代表的なあの技。こちらの世界に来たのに見れてないあの技。

 

 

「はぁ!」ズォン!

ドウッ!!!チュドォォォン!!!キュウウウイィィィン…

 

 

 

目の前から凄まじい音と風が。思わず私が顔を上げると…

恐竜がさっきまでいた場所が、地面1面えぐり返っていた。恐竜は跡形もなく消え、私を狙うものはもういない。

 

「チチや、よく耐えたのぅ。」

 

そして左を見ると、そこには悟飯さんの顔。

 

「おらも初めて見たんだけどさ、あのじっちゃんの技、すげぇだろ!?」

 

悟空の顔も見える。こ、これってもしかして、わたし…助かった???

 

「チチー!こんな傷だらけになって…うぅ、無事で良かっただよー!」

 

そしておっ父の顔。おっ父がこちらに走ってきて、泣きながら私に抱きついてくる。わたしも涙が出てきた。安心感からだろうか?

 

「っお、おっ父ー!!!」

転生してからわたしがこんなに泣くのは、生理現象で涙が出てきてた赤子の頃以来かもしれない。

 

抱き合っていると、だんだん瞼が重くなってきた。

 

 




ここのチチさんは頭を使った作戦が得意です。(うまくいくとは言ってない)

※恐竜のセリフを変更しました。


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9話

そろそろ書き溜めストックが切れそうです。投稿頻度が落ちたら申し訳ありません。


翌日…

助かった私はあの後気絶してしまったようで、起きたら見知らぬ天井だった。

 

「ここは…」

「おお、チチ起きただか!ここは悟飯さんの家だべ。」

 

どうやら悟飯さんのお家らしい。眩しい光が窓から飛び込んでくる。これは…朝日か?

 

「チチ、昨日は頑張ったべな!今は朝だよ。結構ぐっすり寝たべな。」

「おっ父…」

 

そっか朝か。わたしは昨日おっ父に抱き締められて、安心しきってぐっすり眠ってしまったようだ。

 

ガチャ

 

と、玄関から悟飯さん達が。どうやら外に出ていたようで、今帰ってきたようだ。

 

「やぁおはよう。昨日の1連の出来事はすべて悟空から聞かせてもらったぞぃ。」

「おっすチチ!怪我は大丈夫か?」

 

悟飯さんは昨日のことを全部悟空から聞いたらしい。これは質問攻め確定だ。といってもほとんど武装のおかげだから、そんなにわたしが弁解することはないが。

 

「おはようだべ。体の調子はもうバッチリだ!んしょっと…っていだだだっ!?」

「チッチチ!」「こらこら、無理するでない。」

 

どうやら思ったより重症のようだ。

ベットから起き上がろうとしたら思ってたより痛くて動きが止まってしまった。骨折とかは無いようだが、全身擦り傷だらけのようだ。

「とりあえず朝ご飯、作ってあるから食べなさい。」

悟飯さんがご飯って言ってる…

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

朝ご飯を食べ終わったわたしは、悟飯さん達と昨日の出来事について細かく話し合っていた。

 

「…そこで悟空がワシ達を呼びに来てな!『チチが危ねぇ!』ってのぅ。」

「そ、そういう事だったべか。」

 

そりゃそうだ。悟空さみたいな優しい性格の人がわたしを見捨てるはずもない。どうやらわたしは絶望の縁に立たされると悲観的になってしまう癖があるようだ。

原作のチチさんと違ってわたしはメンタルが弱い。原作のチチならあのくらいではヘコたれず、もっと抵抗していただろう。今後の課題である。

 

「それで悟飯さんは急いで走りながら恐竜に近づき、見事かめはめ波をぶち当てただよ!」

「ほっほっほ、一刻を争う場面だったからのぅ。思わず大技を放ってしまったわい。」

 

意識が朧気だったのでよく覚えていないが、確かに記憶を掘り返すと悟飯さんがかめはめ波を打っていた気がする。

なんと初のかめはめ波を見るチャンスを、わたしは棒に振ってしまったのだ。あぁ勿体無い。

 

「そしてチチ、お主は兜のビームを上手く使って逃げたり、大木を切って恐竜の進路を妨害したりしたらしいのぅ。」

「そうだべな、おっ父の作ってくれるオラ用の武装はすごい強力だぞ!」

 

そう、おっ父の作ってくれる武装は凄い。幼くてあまり力が無い私でも余裕で着続けられるこの軽さ、そしてあの内蔵武器の数々!本当におっ父にはいつも頭が上がらない。

 

「ワシが着眼した点はそこではない。ズバリ言おう。それはな…」

 

 

 

「判断力じゃ。」

 

判断力???おっ父の、武装に内蔵させる機能を見極める判断力だろうか?………

 

「そうだな!オラ、何度もチチの武装の活かし方に、助けられたぞ!」

 

…っあ!そういうことか!

 

「ピンときたようじゃのう。その幼さでそれほどの判断力、ワシは凄いと思うた!」

 

ホントは精神は10代だったりするのだが…まぁいい判断は私もできたと思っている。大木で道塞ぎ作戦は失敗に終わったが。

 

「あとはそうじゃな…悟空から話を聞く限り、リカバリー…つまり失敗してしまった後の補いじゃな。そこさえ上達すれば、チチ。お主の策の強固さはかなりのものになると思うぞ。発想は素晴らしい!」

「気をつけるだべ!にしても…オラの作戦、良かっただかな?照れるだよ…えへっ」

 

悟飯さんに褒めてもらえた。これは嬉しい。

計算外のことに弱いタイプなので、そういった弱点は少しづつ解消していきたい。

 

「っあ、それを言うなら悟空さの判断も良かっただよ!あの時悟空さが助けを呼びに行ってくれなかったら、多分オラ達は…恐竜に喰われていたかもしれねぇだな。」

 

「へへっ!まぁギリギリだったけんどな!」

 

こうしてわたし達は自分達の行動を褒め合って、今生きている喜びを噛み締めたのだった。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

そうして会話も弾み、談笑の真っ最中、悟飯さんの口から飛んでもない話が。

 

「なにも話したいことはそれだけでは無いぞ?」

「いっ?」「なんだべか?」

 

なんだろう。わたしが気絶してしまったから延長こそしてもらったが、本来昨日の夜には帰る予定だったのだ。ってことはもしや今から帰れとか?

 

「今回の出来事でお主ら2人、亀仙流へ入れてやっても良いと思っている。」

 

「え、ええーっ!?」

なな、なんとまさかのこんな早い段階から、亀仙流へのご招待が…!

「かめせんりゅー?それってなんだ?うめぇんか?」

 

ズコーーーッ!

 

そっか、悟空さはこの段階だとまだ名前すら聞いたことがないんだ。

 

「ワシと牛魔王が入っている武闘の流派のことじゃよ。」

 

「にしても悟飯さん。なしていきなり二人に亀仙流を勧めるだか?」

「あの技を2人には見せてしまったからのぅ。そして見たときの反応を見て確信したんじゃ!お主ら2人は、武闘の道に興味があると!!!」

 

悟飯さんの考察は完全に的を得てるといえるだろう。

悟空さは皆知っての通り戦闘大好き戦闘民族だし、わたしはドラゴンボールの大ファンだから勿論亀仙流にも入りたい。

 

「チチ…そうなんだべか?」

「うん…そうだべ!オラ、武闘の道に興味があるだ!」

「オラもだぞ!昨日のじっちゃん凄かったかんなぁ。オラもあんなふうになりてぇ!!!」

 

「わかった。ではとりあえず亀仙流の基本を話そう。といっても、難しい話ではないがな。」

 

ごくり…

 

「ずばり亀仙流とは…!!!よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む。人生を面白おかしく張り切って過ごせ!がモットーの良い流派じゃ!!!」

 

おおー!まさかここであの名言が聞けるとは。亀仙人の教えは一見浅いように見えても、この考えがまたいいんだよなぁ。

原作の悟空のスタイルはまさにこうだ。この教えが生き方の底に根付いてる。

 

「なんかあんまりすごそうじゃねぇぞ…」

 

たしかにここだけ聞いたらそう思うのだって無理もないだろう。

 

「たしかに生活の基本が多めじゃが…これらができての亀仙流じゃし、悟空に見せたあの技もこの流派のものなのは知っておるじゃろう?日々の鍛錬や生活習慣は偉大なんじゃよ。」

 

ということらしい。凄そうには聞こえないが、よく食べて よく休み…などの〘よく〙が相当なものなんだろう。たしかに生活習慣が完璧でかつ、面白おかしく過ごそうとしてればそりゃ他のところにも余裕が回る。

 

「そうして日常を極めた先に、新たな技や考えが生まれるのじゃろて。」

 

なるほど…でもこれ、子供に話してもよくわからないんじゃないか。

 

「??? よくわからねぇけどすげぇなぁ」

 

あ、やっぱり。

 

 




悟飯さんがかめはめ波を打ってくれたのは
『チチがピンチ』という緊急事態だったから他なりません。


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10話

この度はアンケートにお答え頂いて、ありがとうございました。
集計結果は『1行間を設ける』が勝ったので、全面修正することにさせて頂きます。

これからもアンケートは度々すると思いますが、その時はまたお願いします!



前回、意を決して亀仙流に入ることを誓ったわたし達。

でもそれをあまり良く思わない人もいるようで…

 

「ちょ、ちょっと待つだよチチ!…ホントに入るべか?面白半分でやるもんじゃねぇだよ?」

 

おっ父だ。おっ父は困惑しているようだ。そりゃそうだろう。大事に育ててきた娘が急に武闘の方向に行くのだから…でも!

 

「でも!オラ、本気で入りてぇだ!悟空さと一緒に強くなりたいだよ!!!」

「…昨日一緒に戦ったとき…チチとの協力、楽しかったぞ。だからオラもチチと一緒がいい!オラからもおねげぇだ!」

 

私はどうしても亀仙流に入りたい。ドラゴンボールの世界にせっかく来れたんだから、誰だって入りたいだろう。

そして悟空さも一緒に頼み込んでくれた。しかも協力して戦ったのが楽しかったらしい!こんなに嬉しいことはない。

 

「ほっほ、子供二人から頼み込まれてしまったのぅ。牛魔王。あとはお主の選択だけじゃ。」

 

父として心配してくれているのは凄く嬉しいけど…でもここだけは引けない。どうかわかってほしい。

 

 

 

 

「…わかっただよ。」

 

どうやらおっ父も泣く泣く許可してくれるみたい。

 

「い、いいんだか!?」

「ただし一つだけ約束だべ…絶対に無理するんじゃねぇだよ!」

「わかっただ!!!」

 

「………うむ。なら早速じゃが武道を教えたい。お主ら、準備はいいか?」

「ばっちりだよ!」「大丈夫だ!」

「よし。では外に行くとしよう。」

 

「ま、待つだよー!チチ、ヘルメットの武器がないべ!」

「あっホントだか?」

 

そうだった…恐竜の足止めをするために投げてそれっきりだ。わたしは原作のチチのように、ブーメランみたく戻ってくるように投げれないのだ。だからただの投擲武器と化してしまっている。

 

「こんな時の為にもオラ、予備持ってきてるだよ!ほら、付けてくべ。」

 

チャキ

 

おっ父に直接つけてもらった。予備も持ってきてくれていたとは…まったく、おっ父には頭が上がらない。

「おっ父…ありがとうだよ!頑張ってくるだー!」

 

「おう!頑張るだよー!」

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

とりあえず入門したわたし達は…

 

「まあなにもすぐ実践するわけではあるまい。悟空達はまだ実践形式の修行を始めるには幼すぎるからな…

将来への布石と思っておいて、教えから習うのが良いじゃろう。」

 

亀仙流に入ったといっても、すぐに原作のような厳しい修行をするわけではないらしい…よく考えてみればたしかに早すぎるかも。わたしも怪我してるし。

 

「えー…オラはやくかめはめ波打ちてぇぞ。」

 

悟空さはさっさとかめはめ波を身につけたいようだ。原作でも見た瞬間マネしだしていたし…

 

「バッカもん!修行や稽古、教えを習わずにすぐ出せるようになるはずないじゃろう。」

「え、でもよー。ほら。」

 

ポッ

 

「なっなんと!!!」「すげぇだな!さすが悟空さ!」

 

原作より幼い状態でかめはめ波を試すから、てっきりできないのかなと思ったら…まさかのちょっとだけ出た。

例えるならガスバーナーの火くらいだが…それでもすごい。すごすぎる。

 

「し、信じられん…でも何がなんだろうとまずは鍛錬、稽古、修行あるのみじゃ!」

 

どうやらいくらかめはめ波が使える(?)といっても、予定変更というわけにはいかないらしい。

にしても教えを貰うだなんて、どんなことを学ぶんだろうか?

 

「まずはこれに着替えてもらうとしよう。ほれ、お主たち腕を上げなさい。」

 

ガサゴソ…

 

そうしてわたし達が着替えさせられたのは…そう、亀仙流の道着だ。悟空さがこっちを見てくる。

 

って…

 

悟空さがすごい馴染んでる!勇ましいと言うには幼すぎるが、なんというかすごい悟空さらしいのだ。やっぱり原作のあの姿に見慣れているからだろうか?

 

「悟空さ、すごい似合ってるだな!カッコイイだぞ!」

 

ホントはどちらかというとカワイイよりだと思ったが、多分喜ばれるのはこっち。

 

「チチ!おめぇのヘルメットっちゅーもん被ってない状態は初めてみたけど、全然違うな!

上手く言葉に言い表せねぇけんど…なんていうか、いい感じだぞ!オラこっちの方が好きだ!」

 

多分これは悟空さなりに褒めてくれたのだろう。嬉しいことだ。

 

「悟空や、そういうときは『めんこい』とか『かわいい』とか言うといいぞい。」

「わかった!チチ、めんこい!カワイイぞ!」

 

悟飯さんが悟空さにとんでもない言葉を教えてしまった。こんなこと言われ続けたらわたしの身が持たない。

 

「え、えへ…んひっ…そ、そったらことばっか言って!恥ずかしいだよー!!!」

「急に恥ずかしがって、やっぱチチってちょっと変わってんなー。」

 

危ない危ない、また意識が全面お花畑になるところだった。

 

 

 

 

「それではまず武道の基礎から教えるぞ。まず最初に、お主ら二人には武道の考えについて知ってもらおう。」

 

「まず武道は、何の為に習得すると思う?」

「強くなるためじゃねぇんか?」

 

「たしかにそうじゃが、それ以外にもあるな。」

「日常を豊かにしたり、身を守るためだか?」

「おお、答えに近いのぅ。」

 

とこんな調子で、わたし達は武道について習うのであった。




ここの悟空はカワイイやらめんこいやら覚えましたが、意味を履き違えています。
実は『イメージが変わった相手に言う言葉』をカワイイ、めんこいだと思ってしまっているのです。

でも…クソダサ装備からマトモな服に着替えたので、もしかしたら少しは本当に『カワイイ』とかの感情を持っているかもしれませんよ?

いわばギャップ萌えですかね?


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11話

お待たせしました。今回は修行回です。


あの後基本的な教えを習ったが…長い…

 

「まぁ幼い子供でも理解できるのはこれくらいかの。」

 

…お、ようやく終わったようだ。

悟空さなんかまだ試合も始めてないのにヘロヘロである。

 

「つ、疲れたぞ…いつになったらかめはめ波を覚えられるんだ…?」

「まぁそう焦るな。ほれ喜べ悟空、次は実戦形式の稽古じゃぞ。」

 

「ほんとか!?やったー!オラ頑張るぞ!」

 

どうやら次は稽古に移るようだ。あれからほとんど動けていなかったので、悟空さは嬉しそうだ。

 

「まずは…そうじゃな、2人まとめてかかって来るか?」

「いや、オラはやめとくだよ。まだ体が痛むだ…」

 

「いっ!?そりゃねーよチチ〜」

 

そりゃねーよと言われても、わたしの体は昨日の激闘(後半ボコされ)で結構痛む箇所がある。やめておくのが懸命だろう。

 

「すまねぇだな悟空さ、わかってほしいだよ…」

「悟空や、娘には無理させるものでは無いぞ。それに牛魔王も無理するなと言っておったしな。」

 

「ちぇ〜わかったよ。オラ、チチと一緒に戦いたかったけんどなぁ…」

 

悟空さはわたしと一緒に戦いたかったらしい。相変わらず照れること言ってくれる。

 

「では悟空よ、手始めに軽く稽古を始める。自分のやりやすい戦闘スタイルで良い、かかって来なさい。

 

…そしてチチ、審判は任せたぞ。」

「よぅし行くぞじっちゃん!」「わかっただ。」

 

わたしが審判をすることになったようだ。こんな幼い子供に審判を任せるとは…大丈夫なのだろうか?

 

「用意…始め!」

 

スタッッッ!!

 

悟空さが駆け出した。山で今まで鍛えたのであろうか、めちゃくちゃ早いスピードだ。この歳でこんな素早く動けるのは多分地球上だと悟空さだけだ。

 

「おりゃ!だだだだっ!!」

「よっ」

 

スッササササッ!

 

最低限の動きで悟飯さんが避ける。この動きはさすが熟練の老師って感じだ。相手の1歩先を読んでいる。

 

「悟空よ、加減しておるな?もっと薪割りのときのように力強く、魚釣りのときのように冷静に攻撃するのだ。」

「…わかった!オラ本気でいくぞ!」

 

どうやらまだ本気じゃなかったらしい。

 

シュバッ!シュシュシュシュシュ!!

 

明らかにさっきより動きのキレが良くなった悟空さが悟飯さんに立ち向かう。

…これ、悟空さ1人で恐竜倒せたのではないだろうか。なんだか少し気が滅入る。

 

「うむ、先程より動きが良くなっておる!」

「んりゃ!だりゃあああ!」

 

「じゃが、甘いっ!」

 

フッ!!

 

「そ、そこまで!」

 

つい止めてしまった。

 

シーン…

 

「いっ?」「…」

 

やばい。やってしまった。まだまだ白熱しそうだったのに、悟空さが危ないと思ってつい…

 

「何やら焦っているようじゃが…うむ、それでいいんじゃよ。」

「えっ?」

 

どうやらこれで良かったらしい。一体どういうことだろうか…

 

「なにもチチにこの稽古を見させたのは怪我をしているから、という1つの理由だけではあるまい。

 

お主を亀仙流に入れる決め手にもなった、あれじゃ。」

 

あれとは…?あれ…悟飯さんに褒められたこと…あっ!!!

 

「判断力、だべな?」

「その通りじゃ!お主の判断力を鍛えさせるためにも、あえて悟空にあたったら致命傷レベルの技を打ち込むふりをしたのじゃよ。」

 

なるほど、そういうことか。

突然こういうことして試したりしてくるのがいかにも亀仙流というか…この感じが本当に亀仙流に入ったんだなぁと実感させてくれる。

 

「そしてお主はきちんと止めた!いい選択を取れておるぞ。」

「う、嬉しいだよ…!」

いい選択を取れたようで一安心。傷を負ってるから審判しか出来ないなぁと思っていたが、こういうことならわたしにもやる気が湧いてくる!

 

さっきの悟空さが教えを習って疲れたところに稽古を持ちかけたりした時も思ったが、悟飯さんは子供のやる気を出させるのが上手いのだろう。

 

「うむ。では仕切り直して第二回戦といこう。」

「オラ今度こそ負けねぇ!」

 

 

この後もわたし達は稽古をし続けた 。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

そして稽古も終わり、夕方になった頃…

 

ガチャ

 

「オッス牛魔王のじっちゃん!オラ達帰ってきたぞぉ!」

「今帰っただぞおっ父!」

 

「お、牛魔王お主…夕飯を作ってくれておったのか。」

「おかえりだよ〜!夕飯作ってあるべ。今日はシチューだべよ!」

 

どうやらおっ父が夕飯を作ってくれてあるらしい。ありがたいことだ。疲れた体にシチューはさぞ美味しいだろう。

にしても…あれ、わたしよりおっ父の方が女子力あるような…あれ?

 

 

「にしてもシチューだなんて豪華じゃな。パオズ山で取れるものだけでよく作れたのぅ。」

「あ、これはオラが材料探したって訳じゃないだよ。城で取ってきたものだべ。」

 

「えっ城に戻ってただか?」

 

「実はオラ、チチ達が頑張ってる間に一度城に帰ってな?材料以外にも色々持ってきただよ。」

 

コトッ

 

そういっておっ父が置いたのは…あっ!うちでよく使われる傷薬だ。これすごい効くんだよなぁ。

ちなみにラベルには『CAPSULE CORP』と書いてある。あの会社どんだけ色んな物出しているんだ…?

 

「これを使えば傷はきっと良くなるだよ!」

「おっ父!助かるだー!」

 

もしかしたらこれのおかげで明日から修行できるかもしれない!

 

「ほっほ、元は昨日の夜帰る予定だったのに、いまやスッカリこっちに居座るつもりじゃのう。」

「がはは、確かにそうだべな。でも悟飯さんもこうする予定だったべ?」

 

「まぁそうじゃのう、ようしチチよ、お主も傷が治ったら早速稽古をする側でやってみるんじゃぞ!」

 

「ん!オラ頑張るだよ!」

 

わたし達の修行は始まったばかりだ!




ここのチチは戦闘面を『判断力』や『技術力』で補っていく予定です。

※語尾を修正しました。


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12話

今回で結構年月が飛びます。


あれから4年が経った。

 

わたし達は今も悟飯さんの元で修行を続けている。

おっ父はさすがにいつまでも城を留守にする訳にはいかないのか、泣く泣く帰っていった。

おっ父がコチラに来るのは料理の材料を届けに来たり、わたしのアーマーを体に合わせたものに新調しに来てくれるときくらいだろうか。

 

心配性のおっ父の性格を考えるとホントはもっと来たいだろうに…コチラも修行している身、気を使ってくれているのだろうか。

 

そしてわたしはというと、悟飯さんのとこに預けさせてもらって今もこうして修行を続けているわけだ。

ちなみにわたしも悟空さも現時点で8歳!

まぁ悟空さは自分の年齢を勘違いしているので10歳だと思っているが…まぁ後々気づくだろう。わたしが今教える必要は無い。

 

「今日であれから4年が経つのぅ。」

 

もはや家族のように親しくなった悟飯さんが言う。

改まっているところを見ると、これからなにか大切な事を言うんだろうなぁとわかる。

 

「さて、そろそろお主たちには1つ、大きな試練を与えても良いと思っておる。」

 

どうやらわたし達に試練を与えるらしい。

修行していくうちにわたしも結構力がついてきたので、試練だろうがなんでもこい!という強い意志が持てるようになった…と思う。

 

「その試練というのはな…ずばり!パオズ山3日野宿の試練じゃ!!!」

 

なんということでしょう。3日も野宿しなければならないのか。でも今のわたし達なら結構余裕だと思う。寧ろ簡単なのでは?

 

「じっちゃん、それ案外楽だと思うぞ。」

「オラもそう思うだ…だって野宿するだけだべ?」

 

生活を共にして仲良くなった悟空さと意見が揃う。

…にしても仲良くはなったけど、悟空さへの耐性が全然つかないのだ。

 

一緒に暮らしてればわたしが照れることも無くなるかなぁと思っていたが…

そんなことは無かったみたいで、未だに悟空さから褒められたりすると気分が有頂天になってしまう。

 

「ああ、この言い方では語弊があるのぅ。正確に言えば…

お主ら2人の3日間の間家に帰るのを禁じて、山で己の力のみで生活してもらうんじゃよ。」

 

「じ、じっちゃんは一緒にやんねぇんか?!?」

「ああそうじゃとも。」

 

どうやら思っていたよりキツそうだ。これが8歳児にやらせる試練なのだろうか…

 

「といっても、ワシは平気だと思っておる。

 

今のお主達なら精神、肉体共に昔より成長しておるし…

なにより山での生活自体は普段からしておるからのぅ。きっと大丈夫じゃ!」

 

うーん…確かに山での生活は今はできていると思うが…それは家があったり、なにより悟飯さんがいたから他ならない。2人だけで外で生活となると、また話は違うだろう。

 

「あとほかに言うことは…そうじゃのう。質問はあるか?」

 

「あっ!質問いいだか?」

「構わんぞ。」

 

「オラ、兜をつけてその3日間野宿やりてぇんだども…大丈夫だか?」

 

せめて防具くらいはつけていたい。もしもの時の自身の身を守る力になるし、有り無しではできることも違うだろう。

 

「ふむ…いいぞい。それぞれ一つだけ、好きな物を持って行っていいことにしよう。

 

武器の扱いも実践で使えなきゃ意味がないからのぅ。」

 

「じゃあオラ如意棒!」「オラは兜にするだ。」

 

許可が入った…これで結構楽になるだろう。如意棒は伸縮自在で、高いところに行くために使えたり単純に武器としても使える。

わたしの兜はご存知の通り2つも機能がついていて、あるのとないのじゃ大違いだと思うし。

 

「今日の9時から始めようと思っておる。それまではいつも通りで構わんよ。」

 

 

 

 

そしてわたし達はいつも通りの朝のサイクルを始める。

わたしもこの4年間でだいぶここの生活に慣れてきたようで、料理も材料集めもお手の物だ。

 

「悟飯さー!タケノコ取ってきただよ、いい感じの大きさだべ。しかもまだ柔らかそうだ。」

「じっちゃん!オラも薪割り終わらせてきたぞ!」

 

「うむうむ。では今日は山菜鍋にするとしよう。」

 

薪を使って火を炊き、その上の鍋の中に、タケノコなどの山菜を突っ込む。これで10分後にはおいしい山菜鍋の完成だ。

これがまたおいしいんだよなぁ。日によっては他にも熊鍋とか魚の煮付けとか…何だかんだ山でもおいしい物はいくらでも作れるのだ。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

なんやかんや普段通りに動いてるうちに始まる時が来てしまった…といっても家に帰れない以外はそんな変わらない!きっと大丈夫だ。

 

「よいか、この試練をやる目的は自立できるようになるためじゃ。

お主らがもしワシがいなくなってもちゃんと生活できるかのチェックじゃな。」

 

「えっ?じっちゃんいなくなるんか…?」

「ほっほっほ。まさか。もしもの為じゃよ。」

 

ということらしい。原作での出来事を知っている分この手の話になると、わたしも少し心配になってしまう。

 

「それでは試練を始める!3日間戻ってくるでないぞ!」

 

いよいよ始まる。

わたしの今の格好は道着姿の頭だけ兜。

悟空さも道着姿で如意棒を背負っている。

サバイバルをするのだから他にも色々持って行きたかったが、まぁ1人1つの持ち物という条件なので仕方ない。

 

「チチ!二人で帰ってこような!」

 

悟空さからめっちゃ嬉しいセリフが。ふぅ〜興奮しない平常心…平常心…

 

「もちろんだべ!」

 

スタッッッ!!

 

そしてわたし達は駆け出した。

絶対に無事に帰ってみせる!

 

 




という訳で3日間サバイバルするようです。
現時点での転生チチさんは…
そこそこ鍛えたある程度の力と、それを助長し遠距離への対応も完璧にする兜の性能のダブルマッチで4年前よりはかなり強くなったかと思います。

※年齢を修正しました


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13話

今回からパオズ山サバイバルスタートです!
はてさてこの先、どうなりますことやら。


3日間のサバイバルに身を投じることになったわたし達は…

 

「チチ、3日間家に帰れねぇといっても、それ以外はあんまし今までと変わんねぇよな?」

「そうだべな。いつもよりちょっとやることが増えるだけだべ!」

 

案外余裕だと思っている。家に帰れないのならその間使う代わりの拠点を作れば良いし、食料問題も特にない。ここは自然豊かだ。

 

「まずはとりあえず…拠点にする穴ぐらでも見つけるだか?」

 

拠点を作るなら、辺境の洞窟とかを見つけてそこに住むのが1番いい。

 

「そうすっか!でも手頃な穴が多いところとなると、少し山の下側に下った方がいいかもしれねぇぞ。」

 

「わかっただ。降りるついでに食べても良さそうな動物とか居たらいいだが…」

 

という訳で少し山を下ることにした。

 

普段いる悟飯さんの家は頂上より少し下の開けた場所にあるので、周りにあるものが限られる。

なのでそこより山を下った木が鬱蒼と生えてる場所に行くことにする。

 

問題なのはそこに結構恐竜やら虫やらがいることだ。でもまぁ…今の悟空さとわたしなら大丈夫そうではあるが。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

一方その頃…

悟空とチチが3日間サバイバルの為いなくなってから、途方に暮れている悟飯がいた。

 

「うーむ…3日というのはさすがに長すぎたかのぅ…」

 

悟飯は師匠として2人には厳しくしているつもりだが、ついうっかり気を緩ませて修行を簡単にしてしまう癖があるのだ。

そして今回もその癖が出ようとしていたが…

 

「うぅむ…ダメじゃダメじゃ!

いつか悟空達が独り立ちする時のため、こうしてワシが試練を与えているというのに…そのワシが試練を軽くしてどうする!」

 

どうやら踏みとどまったようだ。なんだかんだで決意が固い悟飯であった。

 

 

 

 

キィィィィィィィン

 

「む?あれは牛魔王のジェット機じゃな。」

 

もはや恒例となった牛魔王の訪問。牛魔王は愛娘のチチが心配で、ちょくちょくこうして訪問してくるのだ。

 

ドタドタドタ!と4メートルはある大男が血相を変えて近づいてくる。

 

「悟飯さん!チチはどこだか!?」

「どうしたそんなに急いで。今はの――」

 

悟飯は今チチ達が3日間のサバイバルをしていて、その間家に戻らないことを伝えた。

 

「な、なしてこのタイミングで…」

「なにか困ったことでもあるのか?」

 

「困ったこともなにも…

この前チチのアーマーを新調したのは覚えてるだな?」

 

「あ、ああ確かに覚えておるが…それがどうした?」

 

「あのアーマーの頭部の部分の機能、実は少しおかしく作っちまってだな…しかもその機能は――」

 

!!!

 

「な、なんじゃと!?」

 

どうやらチチ達を待ち受ける壁はなにも自然だけではないらしい。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

すっかり日もくれてきて夕方だ。

わたし達はちょうどいい洞穴を見つけたので、そこをこの3日間のサバイバルの拠点にすることにした。

 

ボッ…メラメラ…

 

オラが集めた薪に、木の枝で火をつける。

 

「今日はこんなもんだな…この調子ならオラ達、無傷でじっちゃんの元に帰れるんじゃねぇか?」

悟空さはヘトヘトである。なにに疲れたかは…後々説明するとしよう。

 

「そうだべな!思っていた通りいつもの事やってれば案外余裕かも知れねぇだよ!」

 

サバイバルの一日目はというと、順調そのものだった。

ひとつだけ持っていっていい物で決めた兜は、まだ使ってすらいない。

悟空さも如意棒を使うことなく一日目が終わった。

 

「オラ達何処かで遭難してなにもなくても、生きていけるかもしれねぇだぞ!」

「そうだな、オラ達が力を合わせればなんでもできそうだぞ!」

 

「えへへ悟空さ〜」

ギュー

「なんだよチチ〜離せよ〜。」

 

もうこれは夫婦の掛け合いといっても過言ではないだろう。さて、そんなわたし達が今日作る夕飯は…

 

「さ、そろそろ飯作るとするだか!」

 

そういうわたしの横には熊の死体。

 

そう、ここの洞穴は実は先客がいて…それがこの熊だ。

洞穴に入った瞬間襲いかかってきたもんだから、攻撃を掻い潜って一殴り。

そのときはここまでするつもりは無かったのだが…強く攻撃しすぎたのか死んでしまったので、食料にさせてもらう。そして熊の料理と言えば…

 

「今日は話してた通りこの熊を熊鍋にするんだな?」

 

そう、ご存知熊鍋である。

わたしは早速熊をスパスパと斬らせていただく。

あと道中集めた山菜なども……とりゃ!

 

スパパパパパパッ!

 

まるでトランクスがメカフリーザを斬ったときのようにスパスパと(さすがに過言だが)かつ細かくカット。

にしてもわたしよくこんなこと出来るようになったな…

もし山での4年間が無かったら、グロ耐性は絶対につかなかっただろう。

 

 

 

そして石で作った石鍋へポイポイ!

石鍋は悟空さに熊を倒した後熊鍋にすることを伝えて一日中とことんデカい石を削ってもらって制作した…

悟空さ曰くもう二度と作りたくないらしいこだわりの出来の巨大石鍋だ。

 

「頑張って作ったかいがあったな!今からチチの作る熊鍋食べれると思うとワクワクすっぞ!」

 

おお、またまた照れるようなこと言ってくれる。

熊は全身食べ方によっては食べれるのだ。正直サバイバルとは思えない豪勢な食事になる。

 

 

 

 

「明日はどうするんか?」

「そうだべな〜明日は――」

 

―――そうして待つこと何十分…

 

 

 

できたー!!!

普通の子供が食べるなら絶対食べきれない頭おかしい量だがわたしの傍には悟空がいる。

食べきれないなんて悲しい事態はおこらないだろう。

 

「おおー!すげぇうまそうだなチチ!」

「そりゃそうだべ!オラと悟空さ2人で作った料理がまずいわけねぇだよ!」

 

「それじゃあ…」「待ちきれねぇよ…」ガタッ

 

「「いっただっきまーす!!!」」

 

ガツガツボリボリ!!!

 

悟空さの食い意地にはいつも驚かされる。でも今日は昼ご飯を食べていなかったのでわたしも…

 

パクパクパク!モグモグ。

 

悟空さに負けないように結構な量を頬張っていく!

いやぁ〜美味しい!パオズ山に来てから覚えたことで1番身について良かった事は、もしかして料理かもしれない。

 

そうしてわたし達はサバイバルにして豪華すぎる料理を楽しんだ。

 

 

サバイバル一日目―終了。




という訳で一日目無事終了です。


最近自分でも思うんですけど、ホントにチェックが甘い。投稿した後自分で読んで、ミスを見つけます。
そうしてまた修正履歴が加えられていくんです。トホホ


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14話

お待たせしました。パオズ山サバイバル2日目です。


んん…む…洞穴の入口から光が…

これは…朝日だろうか…

 

「むにゃ…――んーっ!!!」

 

あぁ、よく寝た。今日もいい伸びだ。

ところでなんでこんなところにいるんだっけ…?

あ!そうだ!今はパオズ山サバイバルをしているんだった。

 

「ぐかーっ…ぐかーっ!むにゃ…オラ…もぅ食べられ……ねぇぞぉ……ぐかーっ…」

 

悟空さはまだ寝ているようだ。

寝言は『もぅ食べられねぇぞ』か…

昨日は残さないように頑張って食べてくれたのだろうか。

そういえば食べ終わった後によく言う

『満腹ではなく腹八分目』も昨日は言わなかったような…

さすがに熊丸々1匹分はいくら悟空さでも荷が重かったのかもしれない。申し訳ないことをしたのかも…

 

―でもまぁおいしいって言ってくれてたし大丈夫!

 

「さっ顔洗ってくるだか…ふわぁー。」

 

そそくさと悟空さを起こさないように静かに洞穴から出る。

さて、ここら辺はパオズ山の下の方に位置する場所で、鬱蒼とした森であるが…ここはある程度開けていて近くに川がある。

昨日はホントにいい位置を選べたなと思う。ここの洞穴に住んでた熊はここで鮭でも狩っていたのだろうか?

 

と、顔を洗っているとふと水面になにか大きな影が写っているのに気づく。

 

そして後ろを振り向くと―

 

 

 

 

「ギシャアアアア!」

 

恐竜がいた。でも今のわたしなら…こんなやつどうってことない。

 

スパッ!

 

アイスラッガーは投擲武器としてだけではなく、普通に刃物としても使えるのは皆さんご存知だろう。

そんでもってその刃物と今のわたしの力が合わされば…

 

「ギャオー!」

「しっぽだけで勘弁してやるだ。」

 

あの時と比べてわたしも成長したものだ。原作の荒野の修行悟飯リスペクトで、しっぽの先端だけで許してやった。ああ、わたしってなんて優しいんでしょう。なーんて

 

「オッスチチ〜朝飯まだか〜?」

 

悟空さが起きたようだ。朝ご飯を求めているようだし、もう1切れもらっておこう。

 

 

 

―朝ごはんは恐竜のしっぽ焼き!

塩がないので少し簡素な味わいだが…

しかし悟空さは満足のようだ。

 

「うめぇ〜」

 

この人、もしかしてどんな食べ物でもうめぇと言うのではないだろうか。まぁまずいって言われるよか100倍マシだけど。

 

「にしてもよ〜チチ〜。今日はどうすんだ?」

「そうだべなぁ…できれば洞穴で時間潰してぇところだども…それは嫌だべ?」

 

悟空さはじーっとしているのがあんまり好きじゃないのだ。

 

「ああ。オラじっと待つのはちょっと…」

「じゃあこの辺探索してみるだか!」

 

こっちの方にはあまり来たことがない。山菜集めは上で事足りるし、ここまで降りてくるメリットが無かったのだ。

なんだかんだあまり冒険できていないので、探索は良い楽しみになるだろう。

 

「いいなそれ!」

 

悟空さも賛成のようだし、探索することにした。

 

 

 

 

―しばらく探索していると…

他には見られない人工物のような物を発見した。自然ばっかりのこの場所では、かなり浮いている。

 

「な、なんだあれ?オラ初めて見たぞ…」

 

なんということでしょう。あれは明らかにサイヤ人のポッドだ。おそらく悟空さが乗ってきたものだろう。まさかこんな所で発見してしまうとは。

 

「チチーこっち来てみろよ〜!これ中のやつ音出してるぞ。」

「ま、待つだよ悟空さ〜」

 

ポッドはどうやら開閉機能が壊れているようで、ドアが開いたままだ。なので簡単に中を見れる。

 

 

 

 

「ん…なんだ、こ…れ…」

 

ピロ…ピロリロピッピッピー…

 

「悟空さー!警戒しないですぐ入ったら駄目だべ!中に何かあったらどうするだか!」

 

どうやら完全には壊れてないようで、ポッドの中のメインコンピューターはまだ動いてるらしい。

 

「悟空さ、何してるだ?」

「…」

 

返事が無い。

様子を見てみると悟空さはプログラムの記号?だろうか。小さい画面に表示されて、時折変わる緑色の文字をじーっと見つめている。

 

「悟空さ、悟空さっ!」

「……あ」

 

「悟空さ、大丈夫だか?」

「あ、ああ。すまねぇなチチ、なんか見入っちまった。」

 

こういう機械とかにはあまり興味を示さない悟空さにしては珍しく、見入っていたらしい。

自分が元いたポッドだから?何か縁でも感じたのだろうか。

 

「でももう大丈夫だぞ!心配かけちまったな。」

「うんん、悟空さが無事ならなんでもいいべ。」

 

どうやらなんともないらしい。一安心だ。

 

カァーカァー

 

時間も遅くなってきたのか、カラスが鳴き始めた。

そろそろ洞穴に戻った方がいいだろう。

 

「悟空さ、そろそろ洞穴に戻るとするべ?早くしねぇと夜になっちまうだ。」

「そうだな!飯は帰りにその辺で取っておくか!」

 

その辺で取れる山菜だけで悟空さのお腹が膨れるのかは微妙だが、ひとまず探索は終わったので山菜を集めながら帰ることにした。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

―一方その頃、悟飯達はというと…

 

 

チチのアーマーの頭部部分、つまり兜の部分の不備について話し合っていた。

 

「どうするだか?今のチチの兜の機能は…」

「わかっておる!

 

…ううむ、やむを得ん!

その不備とやらでパオズ山3日間野宿の試練に影響が出たら困るからのう!!!

ワシらが一時的に合流して、兜だけ受渡すぞ!」

 

どうやら届けることにしたようだ。

パオズ山3日間野宿の試練はひとつだけ好きな物を持っていくことを許可しており、その持って行ける物で有利に物事進めることも視野に入れている。

それが不備のせいで台無しとなったら…

試練として問題があるのだ。

 

「わかっただ!にしてもチチ…無事だといいだが…」

 

「その点は安心せい、2人を育てたワシが保証する!!!あの2人は強い子じゃ!今頃元気に狩りでもしてるかもしれんぞ。」

 

悟飯はなんだかんだ2人を信頼している。

どんな大きな化け物だろうと今の2人には適わないだろう。そう、2人には。

 

「では向かうとしようぞ!」

「でも悟飯さん、場所はわかるだか…?」

 

「む…多分大丈夫じゃ、安心せい。あの2人が行きそうな場所には目星をつけておる。」

 

 

 

「…ちょっと心配だよ。」

 

かくして大人二人は新しいちゃんとした兜を届けに行くべく、一時的に悟空達に合流することにしたのだった。

 




ちなみにチチの兜の不備とは、投げ飛ばせる刃物の部分ではなく額のあたりのビーム側にあるようですよ?
どうやらチチはまだサバイバルでその機能を使っていないので、不備には気づいてないようですが…

※誤字修正。またやっちまった。


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15話

お待たせしました。
今回で一大イベントが起こります。



わたし達はパオズ山の下周辺の探索も終わり…

 

「悟空さ、山菜集めはこんなもんでいいだな!」

「ちょっと量が少ねぇ気もすっけど…まっしょうがねぇか!」

 

山菜を集めながらわたし達は洞穴へ帰っている。

 

「にしてもよーチチ。なんだって洞穴に籠るんだ?別に夜に外出ててもよ、今のオラ達なら大丈夫じゃねぇんか?」

 

確かに今のわたし達なら夜に外に出ても大丈夫だろうが…問題は悟空さの大猿化だ。実は今満月なのだ。

 

もし満月に大猿になることを知っていれば悟飯さんも、こんな日にパオズ山3日間野宿の試練なんて提案しなかっただろう。

 

とりあえず今は悟空さへの言い訳を考えねば!

 

「あ、あれだべ。夜になると猛獣も活発になるだ!そったら安心して寝つけねぇだろ?」

 

よし、真っ当な理由だし…これなら悟空さも納得してくれるだろう。

 

「…そうだな!んじゃあ洞穴に戻るか!」

 

なんか引っかかっていそうだがとりあえずわかってくれたようだ。

 

◆◆◇◆◆◆◇◆◆◇◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

洞穴に戻ってきたわたしは悟空さの様子がおかしいのに気づいた。

なぜだか無性にソワソワしているのだ。

 

にしてもなんでいきなりあんな事を言ってきたんだろう?悟空さだって馬鹿ではない。

普通に考えて洞穴の方が夜に居座る場所として、適しているのくらいわかるはずだが…なにか外に出たい理由があるのだろうか?

出られたらコチラとしてはかなり困るのだが。

 

「チチ、今日は飯どうするんだ?探索ばっかであんまり食べ物取ってねぇぞ…」

「道中でとった山菜でなんとか…足りねぇだか?」

 

むむむ夕飯か…そういえばあまり考えていなかった。

一応道中山菜を集めていたが、悟空さのお腹を考えると…まぁ足りないだろう。

恐竜のしっぽの残りも無いしなぁ。

 

「足んねぇな…外出てなんか狩ったほうがいいんじゃねぇか?」

 

にしても露骨すぎる誘導。

悟空さは人に何かを促すのが得意ではないので、すぐわかる。これは何かを隠している。

 

「まぁオラ達なら夜でも少しくらいは外出て大丈夫だよな。」

「ま、待つだよ悟空さ。オラだけで取ってくるだ。」

 

「別に大丈夫だぞ、いつもいっぱい食べるのはオラだしな、オラが取ってくっぞ?」

「いやいやこういうのはオラに任せとくだ!」

 

「なんだよ〜外出たっていいじゃねぇか!」

 

やっぱりなんだか様子がおかしい。

まず普段の悟空さならここまで引き下がらない事なんて無いし…

 

「いんやオラが行くだよ!

にしても悟空さ、今日のオメェは少しおかしいだぞ!?

なしてそこまで外に出ようとするだか!?」

 

「別に変じゃねぇぞ?ただ外に出たいだけだ。」

「オラにはわかる!悟空さ、なんか隠してるだな?」

 

「…」

「…」

 

「わかった。チチには隠し事できねぇな…

 

 

 

―実はオラ…昼間の変な機械から流れてた音聞いてから…月が見たくて見たくてたまんねぇんだ…」

「!!」

 

どうやら悟空さが乗ってきたポッド、あれが原因らしい。

 

そもそも悟空さは元々惑星侵略のために送られて来た戦士だ。

 

おそらくサイヤ人が侵略する過程で楽に侵略できるように、満月の日にはああやって月を見たくなる音波を出して大猿化を促しているのだろう。

 

「なぁチチ…見るだけなんだ、いいだろ?」

「ダ、ダメだダメだダメだ!我慢するだ悟空さ!」

 

「…」

 

スタッ!

 

「あっ!待つだよ悟空さ!悟空さー!」

 

隙をつかれて悟空さに洞穴の出口側に行かれてしまった。まずい、今外に出られたら月を見られたら…

 

「大丈夫だってチチー!別に月見るだけだからよ!」

「お願いだ!待ってけろ!」

しかしそんなわたしの言うことも聞かず、悟空さは外に出てしまった。

 

 

 

 

 

「ひゃーすげぇな!ホントに真ん丸だ!

 

オラ満月を見るのって初め…て…」

 

ドクン…ドクン…

 

―あぁ、遅かったか。悟空さの体はだんだん大きくなり、体は徐々に毛むくじゃらに。そして目には理性がなくなっていき…

 

「あ…あ…ああ…」

 

あっという間に大猿になってしまった。

 

◆◆◇◆◆◆◇◆◆◇◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

一方その頃、悟飯達は試練中の2人を探していた。

 

「うぅむ大体あやつらが拠点にしてそうな場所は回ったのぅ。」

「一体どこにいるだか…?」

 

あの2人の捜索はというと…難航していた。

2人の行きそうなところは目星をつけていて、ほとんど回ったがいないのだ。

大抵外でサバイバルするときは野外なら狼煙がたっていて見つけやすいのだが…残念ながら2人は洞穴にいたので、悟飯達には見つけることはできなかったようだ。

 

 

 

 

ドシーン!ドシーン!

 

 

 

 

「うぬっ、地面が揺れよる…地震か?」

「い、いんや違うようだべ…悟飯さん、あれを見るだ…」

 

牛魔王に言われた方向を見るそこには

 

 

 

―ドラミングしてるバカでかい猿が。

 

 

 

「な、なんじゃあいつは!?ワシャ長年パオズ山に住んでおるが、あんな奴初めて見たぞい!?」

「お、大猿の化け物だべー!!!」

 

「悟空達の試練の邪魔になったらいかん!

 

よぅし牛魔王!ワシらであの化け物を退治するぞ!」

「ほ、本気だか…?でもチチ達の試練の邪魔になったりもしもの事があったら嫌だべな…

 

仕方ない、行くべか!」

 

そうして悟飯達は、大猿を倒しに行くのだった。

 

 

 



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16話

今回で書き溜めがなくなりました。
つまり今後は本当に不定期投稿となります。
それでも暖かく見守ってくださると、コチラとしては嬉しいです。


わたしの静止も遅かったようで、

悟空さは変わってしまった。

 

元の面影ゼロの化け物に…

 

こうなってしまったら口で説得など無意味なことは知っている。

アイスラッガーでしっぽを狙うのみだ。

 

「グオオオオオー!」

 

明確にわかるのは、自然体のまま目に入るものを破壊したいという衝動だけだ。悟空さの意志はもうないのだろう。

 

 

ドスンッ!ドスンッ!

 

「うわっ!?ぎゃっ!?」

 

巨大な足で踏み潰そうとしてくる。

すんでのところで避けるが…これは時間の問題だ。

 

わたしはあえて大猿に近づいて…後ろっ側に回った。

狙いはなにかわかるだろう。そう、しっぽだ。

 

サイヤ人というのはしっぽがあることで月を見た際に大猿化するのだ。

つまりしっぽが無ければ大猿化しないわけで…大猿状態でもしっぽさえ切ってしまえば、元に戻せるわけだ。

 

「これで元に戻ってけろ…!やっ!」

 

しゃっ!

 

今は完全に相手の死角を取っているので、チャンスはここのみ。

狙いはしっぽに!全力で投擲する。

 

 

 

 

シュバッ!

 

「なっ!?」

 

…ジャンプで躱されてしまった。

でも大丈夫。この4年間、特訓したことで投げ方くらいマスターしている。

原作通りアイスラッガーはブーメランのように動かすことができるのだ。

 

だから使い捨てではなくて、キチンと戻ってくる。

 

しゅるるるるる…パシッ。

 

無事キャッチ。

しかしわたしは予想外のことに驚いていた。大猿、大きさのわりにめちゃくちゃ動きが早いのだ。

 

さっきのようにただアイスラッガーを投げるだけでは、素早さ、誘導力共に上がった今でも避けられてしまう。

 

しかしわたしにはもう1つ技がある。

 

そう、ご存知の通りビームだ。

あれは弾速が早いので多分当たる。ならビームで脚にダメージを負わせ、怯ませたとこで弱点のしっぽにアイスラッガーを当てる。これならどうだろうか?

 

大猿といえどたまったもんじゃないだろう。

 

「これならどうだか!」

 

 

 

 

 

 

――パンッ!

 

「えっ」

 

しかし…

ビームが出てくるはずの額の宝石から出てきたのは…クラッカーのような音とパーティ向けのピラピラの色が綺麗な様々なちり紙だけだった。

 

全くの予想外だ。なんでこんなのが出るんだろう。ポーズが間違ってるということも無いはずだが…

 

 

 

にしても………この状況はヤバイ。

確実に当てたかったのでわたしは今、至近距離で大猿の足のめちゃめちゃ近くにいる。

 

つまり

いつ潰されてもおかしくないのだ。

 

「グガー!」

 

「や、やばっ!?」

 

またわたしは…潰されて死ぬのだろうか。

転生前に体験したからわかる。これ、痛いんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

「かめはめっ波ぁー!」

ギュオオオオォォ!

 

「グガッ!?」

 

と、すんでのところで助かった…そう。

悟飯さんが来てくれたのだ。

 

「チチ!?大丈夫だべか!?なしてこんな化け物と戦ってるだ!?」

 

おや、おっ父も来ているようだ。試練中のはずなのに…2人共どうして助けに来てくれたんだろうか?

 

「チチや、悟空はどうした?」

 

「悟飯さん、おっ父…落ち着いて聞いてけろ。

悟空さが…悟空さがあの大猿になっちまっただ!!!」

 

 

「…うん?」「…なっ」

 

信じてくれるかな、これ。

 

「な、なんと!?それは誠か!?」

「…でも悟空の姿が見えないってことは、そういう事だべな…」

 

どうやら信じてくれたようだ。

わかってくれたようだし、3人なら何とかなるかもしれない。

 

「直すには大猿のしっぽを切るしかねぇべ!」

「しっぽ…しっぽか。なんでそれを知っているのかは気になるが、今はこっちが優先じゃな。」

 

 

 

 

「グルグルグル…ガオーーーッ!!!」

 

先程かめはめ波を当てられて激怒した大猿がこちらに向かってくる。

これは…わたしと悟飯さんで引き付けた方がいいだろう。切る役も必要なので、それはおっ父に任せようと思う。

 

「悟飯さんとオラで引きつける!おっ父はしっぽを狙ってけろ!」

 

「わかっただ!」ドタタッ

「まったく…勝手に仕切りおって…

…じゃが…成長したのう!!!」

 

シュババッ!

 

「悟空さ!おめぇの相手はこっちだべ!」

 

遠慮なくアイスラッガーをぶつけてやる。

今の悟空さの体は頑丈すぎて針で刺された痛みにも劣る攻撃かもしれないが、こっちに向かせるくらいはできるはず…

 

「グルオオオオ!」

 

よし、予想通りこっちに向いてくれた。後はおっ父がタイミングを窺って斬るだけだ。

 

「い、今だべ!おんどりゃ!」

ベシ!!!

 

「ぐほーっ!?」

「お、おっ父ー!!!」「牛魔王!?」

 

なんとしっぽで飛ばされてしまった。

なんとか無事のようだが…飛ばされた衝撃で斧を手離してしまったようだ。

やばい。今の悟空さの大猿…かなり強い。

 

「グガー!」

 

そうこうしているうちにどんどん迫ってくる。

少しでもビビらすものは…

 

―あっそうだ!

 

パンッ!!!

 

「グガオッ!?」

 

ビームの変わりになぜか出るクラッカーっぽい機能!

そこそこ音もデカいので、ビビらせるには最適だ。

 

「よし、チチ。後はワシが注意を引きつける!

しっぽの切断は任せたぞ!」

 

「わかっただ!」

 

悟飯さんがターゲットになってくれるようなので…わたしは全力でしっぽを狙うのみ!

 

「悟空、チチ!まだ見てない技で驚け!ワシと武天老師さましか使えない大技じゃ!」

 

「うぬぬぬぬ…

 

 

 

 

萬 國 驚 天 掌 ! !!」

 

悟飯さんがそういうと、悟飯さんの手から電気が発生して…あっという間に悟空さを包み込んだ!

 

原作だと亀仙人が21回天下一武道会で悟空さに使った技だ。まさか悟飯さんも使えたとは!

 

「今じゃー!悟空の後ろ側に回り込むのじゃ!」

 

スタタタッ!

 

急いで後ろに回り込む。

 

カンッ!

 

っと?靴に何かが当たった。

ってこれは…!!!

おっ父の方に投げておく。

こうなったら予定変更した方がいいかもしれない。

 

「何をしておる!早く切れー!」

 

おっと、こうしている場合じゃなさそうだ!

わたしはアイスラッガーをしっぽに向かって全力で投げた!

 

「ぐぬ…ぬ…」

「グ!グガーッ!!!」

 

しかし、大猿に避けられてしまったようだ。

投げるタイミングを窺っていたのか、

投げた瞬間に大猿は萬國驚天掌を解除し、すんでのところで回避されてしまったのだ。

 

「な、なんということじゃ…」

 

「…」

 

今大猿はコチラに警戒していて、アイスラッガーを投げたとて絶対に弾かれるか躱されてしまうだろう。

 

でも、大丈夫。

 

 

 

 

「悟飯さ!大丈夫だべ!

今大猿はこっちに完全に意識を向けてるだ…

だから…

こっそりおっ父の方を見てみるだよ!」

 

「お、おお!なんと!」

 

 

 

 

 

 

 

「おんどりゃー!」

 

ザシュッ!

 

「グガッ!?オ…ガァ…」

 

「やっただ!切ってやっただよ!」

 

おっ父は斧でしっぽを切断した!

あのときわたしの足元に落ちていたのは飛ばされてしまった斧で、見つけたからおっ父の方に投げておいたのだ。

作戦は大成功。

完全にコチラに意識を向かせていた大猿のしっぽを、無事切断することができた。

 

「グ…ガ…?」

 

シュルルルルル…

 

大猿はシュルシュルと縮んで…段々と悟空さの姿に戻っていく。

 

 

 

 

 

「あ、あり…?オラ一体何を…」

 

皆が悟空に駆け寄る。

 

「おお悟空!まさか本当に…って…ほほほ。」

「悟空ー!無事で何よりだべ…と、はは。」

「悟空さー!大丈夫だか…って…ひゃー!!!」

 

あっ…忘れてた…大猿になるとき大きくなるので、勿論服は破ける。

そしてそのまま元に戻ったので…

 

つまり今、悟空さは…裸なのだ。

 

「チチー?なんで逃げるんだよ!ってオラ…裸…?」

 

どうやら悟空さも今の自分の見た目に気づいたようだ。

目を両手で隠しているのでわたしからは見えないが。

 

「いっ!?し、しっぽもねぇ…なんでだ?」

 

自分のしっぽが切られたことにも気づいたようだ。わたしは勿論目を隠しているので見えないが。

こっそり見たりもしていない。

 

「悟空や、1度家に帰るぞ。パオズ山3日間野宿の試練は中止じゃ。」

「なんでだ〜?」

 

「お主、服が無いまま続ける気か?」

「あ、はははっ!すまねぇ」

 

「それに聞きたいことも山ほどあるしの。」

 

1度家に戻って、状況整理する必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「チチ、おめぇいつまで目隠してるだ…?行くだぞ〜」

 

だって恥ずかしいんだもん。




という訳で、パオズ山3日間サバイバルは中止という形で幕を閉じました。
あと悟飯さんも生存しましたね。
原作がそこそこ壊れ始めてきてますが…
はてさてこの先、どうなりますことやら。


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17話

お久しぶりです!そしておまたせしました。
冬休み入ったので投稿を少しづつ再会出来ればなぁ、なんて思っております。


目を隠すのもやめ、悟空さの方を気にしないように帰ろうと思うけど…小っ恥ずかしい。

と、困っていたらおっ父がおんぶしてくれた。どうやら疲れてるのを見越してか、乗せてくれるらしい。

 

「お疲れ様だべ、悟飯さん家に帰るだぞ〜。」

「悟空、ワシもおんぶしようかの?」

「オラはいいや!なんか気分がスッキリしてるかんなぁ!」

 

どうやら悟空さは記憶が無いといえど大猿状態で暴れまくってスッキリできたらしい。こっちは苦労したんだけどな…まぁ、悟空さが羽を伸ばせたならいいか!

わたしはおっ父に甘えて、自分にとって重大なことを考える時間に使おうと思う。

 

 

 

さて、悟空さを大猿から元に戻したはいいが様々な問題が残ってしまっている。

 

悟飯さんに聞かれそうなこと、それは…何故悟空さの秘密を知っているのか。

 

…これ、なんて説明したらいいのだろうか…わたしに今弁解できる選択肢は…

 

 

①実は転生してきていて、この世界の話を知ってしまっていることを話す

 

 

これはまずい。現時点ではまだ原作開始すらしていないし、大幅に物語がズレてしまう可能性が高い。

タダでさえズレてるかもしれないが…あくまでいい方向に変えてきたつもり。しかしもし①を話したら悟空さ達にとっての世界の認識が変わるし、それに私もどう思われるかどうか…

 

 

②実は未来が見える設定を突き通す

 

 

これ、どうなんだろうか。しかし私が前世で見てきたドラゴンボールの漫画はセルと戦っているところ…つまりその先の物語は知らない。もしそこまでこっちで上手くやれたとして、そのタイミングで未来が見えることを頼られたらどうする…?

 

 

③いかにもそれっぽいことを言って丸め込む

 

 

これ年上に通じる作戦じゃないような、…なにか、結論付けられる物があればいいのに。

……!

そういえば、サバイバル生活中に悟空さが乗っていたポッドを見つけていた。あれを見てから悟空さの様子がおかしくなっていたのは事実だし、うまく説明に利用すれば…!!!

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

おんぶされひとまず孫家まで帰ってきたわたし達は、お風呂に入ることになった。まぁサバイバル生活で疲れきり、汚れきった体には最高の安息だろう。

 

サバイバル中の川で体洗うのは地獄だったからな…寒いし…

 

ちなみにわたしが来る前は孫家、川で洗ってたことも多かったらしい。でも私が来るにあたっておっ父が気を利かせてくれて、温泉スポットを掘り当てたのだ!

大人達の温かみが心にしみる…

 

「なんだこれ!オラ初めて見たぞ!」

「…これって…ドラム缶風呂だか!?」

 

でも今回…入るのはなんと、ドラム缶風呂となった。

 

「気に食わんか?なら少し離れたいつもの温泉に行くかのう?」

 

いつもの温泉とは先程話した温泉スポットである。あそこは環境、暖かさ、景色共に最高だが…如何せん離れてるのだ。

 

「いっ!?今からあそこにはちょっとな〜…」

「それは勘弁だべ…」

 

万場一致。前世でも経験が無かったドラム缶風呂にワクワクが止まらない!

 

「オラ達は下で湯加減調節するべ、ゆっくり入るだぞ!」

「疲れを癒すんじゃぞ。」

 

にしてもさっき裸見て恥ずかしがってたわたしに1つしかないドラム缶風呂に一緒に入らせる大人達…鬼ちゃう?

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

悟空さとドラム缶風呂…や、やばかった…(語彙力損失)

あの後布団に入ったはいいが、興奮して寝れなくなってしまった。

わたし案外疲れてないのかもしれない…と、皆が寝静まった頃、悟飯さんに呼ばれた。用があるらしい…!あの件だろうな…さて、どう誤魔化すか。

 

「夜中に起こすのは気が引けたが起きていたようじゃからな。さっきの件、忘れたわけじゃあるまい?」

 

寝てればよかったあああああ!!!と、こうなった時のために作戦を立てておいたんだった。

 

「覚えてるだよ…なんで悟空さの秘密を知ってたか…だな?」

「うむ…実はワシは悟空の出生に興味があってな、そして何故それをお主が知っているのかも…」

 

さぁ、話す時が来た。考えていた選択肢のうち私が選んだのは…

 

「実は…オラ達サバイバル生活してた途中で、とんでもないものを見つけてしまっただよ…この地だと他には見ねぇ人工物のような物を見つけたんだべ。」

「ふむ…?」

 

選んだ選択肢は③だ。サバイバル生活2日目で探索したのが幸をなし、言い分その1となるポッドの情報を話す。

こういうのは半分真実、もう半分嘘を入れ混ぜるのがコツで…

 

「それから様子がおかしくなっただ、悟空さがその人工物に出てた光る暗号とか絵に夢中になっちまっただ。」

 

大方、宇宙の言葉でのサイヤ人への破壊指令かなにかだったのだろう。この私の考察が合ってるなら、サイヤ人の他の星へ赤子を飛ばして征服する文化も効率的になる…恐ろしや!

さて、そろそろ嘘も織り交ぜるとしますか。

 

「オラもその暗号や絵を見ただども、そこでわかっただよ。月のエネルギーを尻尾で吸収して、大きくなるってことに!」

「なるほどのう…それで知っていたということか…」

 

絵で悟空さの秘密を知ったというのはいわゆる嘘の情報である。しかし真実を交えた嘘というのはとても見抜きにくいもの。

 

「じゃあ話してくれたチチには、こっちの事情も話さなくてはならないのう…」

「ゴクリ」

 

わたしは思わず息を飲んだ。それは嘘をつくのに成功した達成感、そして罪悪感。

そんでもってこれからする演技が上手くいくかと心配する焦りからだ。

 

「薄々気づいていたかもしれんが…悟空はワシの子供ではないんじゃよ。」

「っ…!やっぱりそうだっただか…悟空さにだけ尻尾があるもんな。なんとなくそうだと思ってたべ。」

「…お主は聡明な子。やはり気づいておったか。」

 

話の流れで落ち着いてる風の方が自然だと感じて急遽変更した。いい感じのリアクションができたと思う。

ここで驚いたフリしてたらまた怪しまれてたかもしれない。

 

「まぁ、なんじゃ…悟空は獣人と人のハーフなのかもしれんし、もしくは今聞いた話を元に考えると、やはり全く関係無い謎に包まれた種族の子供なのかもしれん。

 

ただ!!!一つだけ言えることは…悟空は悟空ということじゃ。今までと何も変わらない、な。」

 

「わかってるだ!オラはそんなことで態度変えたりしねぇべ!」

 

心からの本心。

わたしは悟空さの生き方!性格!その全てに惚れてるのだ。それに元々出生は知ってたし、なんのダメージもない!

 

「ふぅ…良かったわい、正直こっちが話の本筋でな。ほっほっほ。チチ、お主なら受け入れてくれると思うておったぞ!」

 

悟飯さんにっこり…!ここ数年でこの笑顔が大好きになった。良かった。隠し通せて、今までの生活を続けていけそうでよかった…!

思わず涙が込み上げてくる。終わったぁ〜…!

 

「ようし、そろそろワシらも寝るとするかのう!」

「んだな!おやすみだべ!」

 

その夜はぐっすり眠れました。

 




ちなみにポッド自体に画面はなく、正確に言えばポッドに同伴してるスカウターからの文字、音によるものでした。
にしても読み返して気づく誤字脱字が酷い…気をつけます。

※文面がおかしかったので修正


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18話

この小説ではスカウターをはめる所がポッドにある、という解釈をしています。

悟空は最初からスカウターをつけていませんが、侵略するために送り込まれて来ているのに持っていないのもおかしい話ですからね。
誰にも拾われず育っていたらポッドの中のスカウターを手に取っていたかも?




チュンチュン。

 

朝を伝える鳥の鳴き声。

昨日まで洞窟の中でサバイバルしていたのもあって、普段より落ち着きを与えてくれる。

 

コンコン

 

いやぁ…昨日は大波乱だった。悟空さの大猿化、悟飯さんとの対話…そして個人的に1番精神を使ったのは…

悟空さとのお風呂(しかもドラム缶風呂)!!!

おかげで快眠できたわたしは何時間も寝ていたようで…

 

コンコン

 

ほかのみんなは既に起きているようで、周りには誰もいなかった。

起きたんだし顔洗わないとな…

 

…にしても…

 

 

ガダンッ!

 

 

この音はなんだろうか。

足を音のする方へ運ぶと…おっ父がいた、と先程からなにやら修理してるようである。

 

「おはようおっ父、なにしてるだ?」

「おぉチチ!疲れは取れただか?兜に変な仕掛け施されてたの覚えてっべ?これはな、あれを直してるだよ。」

 

どうやら兜の不備を直していてくれていたようである。こちらとしては戦闘で困ってたし助かるんだけど…あれ元は何に使うようだったんだろう。

 

「それは助かるだよ!そういえばあの仕掛け、何に使う予定だっただ?」

 

「あー…あれはだなぁ………秘密だべ。」

「えっ!」

 

おっ父がわたしに隠し事とは珍しい…なんだろう?

 

ガチャ

 

「帰ったぞ〜!」

「あっ!おかえり悟空さ!」「おかえりだ」

 

考えていたら悟空さが帰ってきた!それも竹かごにいっぱい入っている山菜を背負って。

 

「あれ?じっちゃんはまだなんか?」

「え?オラは起きてから見てないだよ〜?おっ父わかるだか?」

 

「悟飯さんは薪取りに行ってるべ。にしても悟空の方が早いとは珍しいだなぁ。」

 

悟飯さん、どうしたんだろう?

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

一方その頃。悟飯は薪を取りに少し出かけていた。

というのは建前で、本当はとある場所に出向いていた。

 

「懐かしいのう…悟空を拾った場所…このすぐそばの宇宙船、やはり悟空はこの中から出てきたんじゃろか?」

 

ーーーーーー

 

悟空との出会いは突然だった。

当時山菜を取りに、竹かごを携えて出かけていた悟飯は道中で遠くに何かが落ちるのを見た。気になった悟飯はそっちの方向へと進む。すると…

 

ふと、幼い声が聞こえてきた。

 

『んんっ?こりゃ驚いた!赤ん坊じゃ!一体どこから…』

 

この辺りに赤ん坊は珍しい。捨て子か?それはない。だとしたらわざわざこんな辺境の地に捨てには来ないだろう。

赤ん坊を持ち上げると悟飯はあることに気づく。

 

『ほーっ!尻尾のある赤ん坊か!ほほほ、こんなとこに置いておく訳にはいかんなぁ…』

 

珍しい尻尾のある赤ん坊だったのだ。獣人とのハーフだろうか?そのまま放っておく訳にもいかず、奇妙な巡り合わせも感じた悟飯は…

 

『よし、ワシの所へ来るか!』

 

赤ん坊を育てることにした。

 

ゲシッ!

 

赤ん坊は大変元気なようで、抱き抱えあげられながらも楽しそうに暴れている。暴れているその幼い足で悟飯を一蹴り。

 

『ほほ、元気な子じゃ!よぅし、これからのお前はこのワシ、孫悟飯の孫じゃ。よいな?』

 

悟飯も気に入り堂々と孫宣言である。

と、孫となると当然名前が必要になってくるので…

 

『お前の名前は…ふぅむ……

 

よし、悟空!孫悟空じゃ!!!』

 

こうして悟飯は赤ん坊と出会い、赤ん坊は悟空と名付けられたのであった。

 

ーーーーーー

 

「うぅむ、懐かしいのう。たしかあの出会いの後すぐにこの宇宙船を発見したんじゃったか…」

悟空と出会った当初も、周りに人や車の形跡が全くないのを見るにあの宇宙船から出てきたと断定まではしていた。

周りにクレーターができるほど酷く地面がえぐれていたのを覚えている。

 

「この宇宙船、中身を見るのは初めてじゃのう…」

 

しかし中を細かく見たことはないようで、今回はそれが気になってここまで来たのであった。

恐る恐る中を除くと、簡素なクッション、そして機械のような物がはめこまれていた。

 

「なんじゃこの機械は…もしチチの話が本当なら、この機械は悟空に悪影響かもしれん。」

 

宇宙船にはめ込まれている機械は一定のタイミングで音を出しており、聞く人によっては目覚まし、警告音、様々な音に聞こえるだろう。

悟飯は考えた。もしこの機械が悟空に脳指令を送っていたとしたら…

考えただけでも恐ろしい。

そういえば悟空は拾ったばかりの頃は頭をうつまで凶暴な性格だった。悟飯はそれもこの機械の電波のせいだと考える。

頭をうつ前は本当に凶暴だったとは知る由もない。

 

「この機械め!悟空を悪の道には行かせんぞ!」

 

ピピッ!

 

 

どうやら機械を壊そうと掴んだら、ボタンを押して起動させてしてしまったらしい。

 

「!!!」

『…絶…に…生…延び………ぞ…!』

 

長年放置による劣化の結果か、何を言っているのかはわからないが。あらかじめ入っていたメッセージであろうか、それとも通信であろうか。

 

ピッ…スト…

 

またボタンを押して…おそらく電源は切れたであろう。ゆっくりと元の場所に戻した。

 

悟飯は壊そうとしたが、やめた。

 

あのメッセージは少なくとも自分に当てられたものでは無いと理解している。おそらく…悟空に向かってのメッセージということも。

そして真実を悟空に伝えるまではこの機械も隠しておくことにしたのだ。

 

「ふぅ……やはり、悟空は宇宙からの使者…なのじゃろうな。しかし…どんな宇宙人の子であろうと必ず良い子に育てる、それがワシの役目。悟空は悟空じゃからの!」

 

覚悟を決めた悟飯は天に誓う。

今の悟飯ならたとえ真実を知ろうが意志を曲げないであろう。

果たしてあのメッセージを悟空に聞かせる日はくるのか。

 

「…さて、薪を取るとするかの。」

 

平常心を保つ悟飯。

しかし悟空の本当の家族のことを、少しだけ考えてしまうのであった。

 

 

 

 

 



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19話

新年開けてから嫌な出来事がめっちゃ多くて…精神的に参ってしまって、かなり投稿も遅れてしまいました…

お待たせしました。


悟飯さんが薪を取りに行ってくれてる間、わたし達は他愛もない話に花を咲かせていた。

 

「にしても2人とも成長しただなぁ。野外サバイバルまでするとは、わけぇ頃のオラよりずっと凄いだよ。」

 

おっ父は時々ジェット機でパオズ山まで様子を見に来るのだが、毎回成長に驚いて褒めてくれる。

わたし達も日々懸命に鍛錬しているので、成果を褒められると嬉しくなるものだ。

 

「そうだか?えっへへ〜照れるだよ〜!」

「オラ達もっと強くなるぞ!じっちゃん達をいつか追い越してぇんだ!」

 

なんと悟空さ、向上心昂るあまり師匠兼育ての親を超える宣言。さすがサイヤ人と言ったところか。

 

「さすがにまだ早えぇだよ!悟飯さんの強さは普段から目にしてるべ?」

「それでもオラ、勝ちてえんだ!」

 

一緒に生活しててよく見る光景のひとつとして、悟空さがやる気を起こさない時はよく悟飯さんが悟空さに勝負事を持ちかけてやる気を上げているのをよく見る。

 

戦闘欲を刺激して幼い子供にも確実に向上心を植え付ける。悟空さがサイヤ人というのを考慮しなくても好戦的な性格になる育成と言えるだろう。

武闘家として育てられてるのがわかる。

恐らく今回の「勝ちたい」欲もそこから来ているのだろう。

 

「向上心があるのはいいことだべ、だけんどそれで調子に乗りすぎたらダメだとオラは思うだ。」

「チチは慎重だべなぁ。」

「そうだぞ!オラもおめぇもすげぇ強くなったのによ!」

 

褒めてくれるのは嬉しいが、今回の件で予定外なことに弱いタイプなのが露見したので油断は大敵!と心に教え込む。

ドラゴンボールといえば超展開。

つまり予定外の連続だ。今後どうなるかわからないし慎重になるのはいい事だと思う。

 

「おーい!」

 

そんな他愛もない話をしていると、薪を取りに行ってた悟飯さんが帰ってきた。

 

「じっちゃん!」「悟飯さ!」

「おおぉ!悟飯さん遅かったべなぁ。おかえりだよ!なにかあっただか?」

 

「いやぁ…途中で腰を少しやってしまってのぅ。ほっほっほっ。」

 

ということらしいが…悟飯さんが腰をグキっとやってしまったなんて今まで生活してて1回も無かったので、物珍しいこともあるものだ。

 

「珍しいだな?悟飯さ大丈夫だべか?」

 

もしや昨日の戦いで腰を痛めてしまったのかも?

原作での死亡関係の出来事をへし折ったから安心したのも束の間、ぎっくり腰で亡くなられたとかなったらホントにシャレにならない。

 

「もう大丈夫じゃよ!心配かけて悪かったのぅ!さ、朝ご飯を作るとするか!」

「いんや、オラが作るだよ!」「あっじゃあオラもやりてぇ!」

 

悟飯さんの体調が心配なので、ここはわたし達に任せてもらおうと思う。おっ父にも料理の腕を見せれるチャンスだし!

 

「おおっ!じゃあ今回はお主らに任せるとするかの。」

「任せるだか!?悟飯さん、さすがにここはオラが…」

ゲシッ

「いいからやらせてけろ!!」「オラ達に任せろ!!」

 

おっ父が驚いてるが、わたし達はこれでも3日野外サバイバルしたのだ。舐めてもらっちゃ困る。

強引に料理場から追い出して、悟空さと2人で料理に取り掛かる!

 

今回は山菜を中心とした料理!さて、大人達の反応が楽しみだ…

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

完成!山菜を切り、その後いい感じに火で炙ってその上から岩塩をまぶした。サバイバル料理って感じもするがこれ、美味しさは抜群のはずだ。

 

「ジャーン!!!できただよ!」

「いい匂いだな!うひょー!オラもう堪えるの限界でよ!」

 

早速食卓へ。おっ父達に負けず劣らずな料理が作れたと思う!ここ数年での料理スキルが悟空さと共に劇的に上がってる気が…あれ?

ちなみに盛り付けは悟空さのだけ8割増だ。じゃないとすぐ足りねぇと言われてしまう。

 

「来ただな!よぅし、それじゃあ合わせて…」

「「「「いただきます!」」」」

 

ガッ!

「もぐもぐ…パクパク…うんめぇー!」

「パク…!」

 

…うん!結構おいしく作れてると思われる!悟空さは勿論パクパク食べまくってて…肝心の大人達の反応はというと!

 

「すげぇべな!鼻に炙った山菜の匂いが来て…くぅー!堪らねぇだよ!」

「料理も上手くなったな。チチ、悟空や。」

 

かなりいい評判!まぁこの歳でここまで出来ればかなり好調と言えるだろうし、わたし自身も今あるもので作れるものならこれがトップクラスだと思ってる。

 

「さて、折角ここで皆揃ってるし1つお話があるんじゃが…」

 

「なんだべ?」「なんだぁ?」

「悟飯さんのことだ、重要な話だべ?」

 

 

 

 

 

 

「うむ。ここまでサバイバルをこなせたお主らには、1度それぞれ別の修行をしてもらおうと思っておる!」

「いっ?」

カシャン…

 

うわ、重要な話…ご飯を食べる手が止まるレベルの。

 

「チチには1度牛魔王の城に帰ってもらいあっちで用意している修行メニューを。

 

悟空にはここで今まで以上の修行を積んでもらおうと思っておる。」

 

「ええっ!別々だか!?」「チチと離れるのオラ嫌だぞ!」

 

悟空さが何気にめっちゃ嬉しいことを言ってくれているが、それより衝撃的な言葉が悟飯さんの口から語られる。

わたしは帰省して修行を積むとなると、こっちではできない修行なのだろうか。

 

「それは承知…辛い思いをさせるが、わかってくれるかの?」

「…」

 

突然の別々に別れる提案に、迷いしかない。

なんだかんだ何年も悟空さと暮らしているのでもはや家族同然だし、勿論別れるのはとても辛いことだ。

多分だけど、悟空さも同じ気持ちだと思う…でも強くなるために必要な事だし…

 

「オラは…」

 

 

 

 

 




なんとか1月中に出せてよかったです。


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20話

おまたせしました!


悟飯さんからとんでもない提案をされてしまった。

それは

【悟空さと一時的に別れて別々に修行に励む】

というもの。

 

「オラは、その、」

 

「絶対、絶対、絶対嫌だ!なんで離れなきゃなんねぇんだ!」

 

返答に迷っていると悟空さが騒ぎ出して、それどころじゃなくなってしまった。

 

今回の提案、なにか特別な修行がおっ父の城じゃないとできないとか、こっちだとできないとかそういう理由だけじゃないと思う。

2人に分ける利点として最初に思い浮かんだのが、お互いに頼ったスタイルじゃなくなることだ。

 

わたし達は何年も一緒に暮らしてるのもあって家族同然のような状態になっているが、それ故にお互いに頼りきっているところがある。

悟飯さんの狙いは恐らくこの状況を打破すること。

 

「落ち着くだよ!…悟空さ。オラは悟飯さんの提案、ありだと思うだよ。」

「いっ!?…なんでだよチチ、オラのこと嫌いになったんか…!?」

 

別に悟空さが嫌いになったわけでも、ないしむしろどちらかといえば好きなんだけど…。

このままじゃ勘違いされてしまうし誤解を解くためにも私なりの見解を述べてみる。

 

「そういうわけじゃねぇだよ?多分な、悟飯さんにはなにか狙いがあるはずだべ!」

「狙い…?」

 

「んだ!オラ達ずっと助け合って修行続けてきたべ?そったらこと続けてはお互い一人になったとき大変な思いをすると思うだ。」

 

修行仲間がいることはいいことだし、成長にも繋がる。だけどこのまま続けていくとお互いに依存するような関係に陥ってしまうかもしれない。

 

私としてはそれも悪くないかな、と思ってるけどお互いがいないとすぐダメになってしまうのは情けない。

天下一武道会とかに参加したとして、タッグじゃないと力が出し切れないから原作より厳しい戦い!とかなったら嫌だし。

 

わたしは原作でいうクリリンみたいに競争相手のような関係になっている訳では無いし、どちらかといえば頼り、頼られの関係だからライバルがいてやる気アップ!という訳にもいかないし。むしろ成長を抑制しちゃってるのかも?

 

「正解じゃな。悟空、チチ共にとても成長したが…今の2人での修行を続けていくと、将来的にお互いに頼りすぎて心身共に成長が乏しくなってしまうかもしれんからのう。」

 

今思えばやる修行も一緒になってやるものが多かったし、元から最初は悟空に仲間の大切さも教えながら成長させて、いずれ引き離して修行させる予定があったのだろう。

 

「でも!オラそんなことで別れたくねぇよ!なぁ考え直してくれよじっちゃん!」

「うぅむ…この話、わかってくれんかのぅ?」

 

「…オラ、わかんねぇよ…絶対、絶対、嫌だ…!」

 

そういうと悟空さは外へ出ていってしまった。悟空さの別れたくないという気持ちも勿論わかるが、悟飯さんの考えてることもよく分かっちゃう。

 

とりあえず今わたしに出来ることは、悟空さを追いかけることだろう。そう思い、わたしも後を追った。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「悟空さ、こんなとこにいただか」

 

「チチ…」

 

悟空さが駆け出したのを追ってみれば、行き着いたのはなんと一緒にサバイバルしたあの洞窟。

洞窟にはあの時と変わらない風景があった。

 

「…懐かしいだなぁここ!あのときの石鍋が残ってるだぞ!」

 

「それ作るの大変だったぞ…でも2人で食べた晩飯はめっちゃうまかったなもんな!」

 

そう言いながら悟空さはニカッとこちらに笑顔を向けてくるけど、その顔には悲しみが色濃く出てるように見える。

やっぱり無理しているのかもしれないし、こっちに気遣ってくれてるのかもしれない。

石鍋の近くに腰掛けて、あの時の情景を振り返っていると…

 

「…チチはさ、オラと別れたくないって思うか?」

 

悟飯さんの提案は別々に別れて、個人でも強くなるのを重点に置いた提案だ。

そりゃ別れるのは嫌かもしれないけど…うーむ、強くなるためって言ったらわかってくれるかな。

 

「悟空さ、悟飯さんのあの提案にはちゃんとした意味が…」

 

「そうじゃねぇって!じっちゃんの提案抜きにして、おめぇの意思を聞きたいんだ!!!」

 

 

「…えっ?」

 

そりゃ結果だけ見れば別れて修行に励んだ方が悟飯さんの狙い通り個人として強くなるかもしれない。

でもやっぱりわたし達は確かに「離れたくない」と感じている。

まだ抗議もしてなかったし、別れるって決まったわけでもない!

 

「悟空さ、オラ絶対別れたくないだよ!」

 

「チチー!!」

 

悟空さがハグ、つまりギューってしてくれた。

お互いに思ってるみたいで嬉しいけど、これめっちゃ顔が赤くなる。

少なくともこういうことを悟空さは滅多にやらないから、私も耐性がないのだ。

なにより恥ずかしい!!!

 

「えへ、んへへ…こ、こっ恥ずかしいだよー!!」

 

 

べシーン!

 

「いーっ!?」

 

…あ。

しまった、この数年間で結構力がついてるのに、かなりの力で引き剥がしてしまった。

 

「は、はは…て、手加減しろよな…」

 

「えへへ…ささ、じゃあ悟飯さ達のところ戻るだぞ!2人で抗議してみるだ!」

 

「ははっ!だな!!!絶対離れるもんか!」

 

ナチュラル惚れさせ攻撃、恐るべし。

だけどそのナチュラル惚れさせ攻撃をした悟空さも、ナチュラルでれでれ反撃に同じ感想を抱いていたと思う。

反省してる。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

洞窟で相談した結果、とりあえず悟飯さんに抗議してみることに。

 

「オラできれば離れたくねぇだよ…なんとかなんねえだか?」

「チチもオラも!離れるなんで絶対嫌だぞ!」

 

「ほっほっほっ!すまんかったのぅ。そう焦らんでええ。」

 

ほよ?てっきり別れた方がいい理由をこっぴどく言われると覚悟していたものだけど、意外なリアクションが返ってきた。

 

「実を言うと、お互いに頼りすぎることへの対策なぞいくらでもできる。今回試したかったのは、お主達の絆じゃな。」

「「え、ええーっ!!!」」

 

「洞察力の高いお主を欺くためにそれっぽい理由をつけるのは苦労したぞ、チチ。」

 

「はは、は」

 

どうやらわたしはまた知らず知らずのうちに悟飯さんに試されてたらしい。

毎回すごいドキドキするのでこちらとしてはやめてほしいものだけど…

 

「じ、じっちゃーん!!!脅かすなよ〜!!!」

「まぁどちらかが提案を飲み込んでたらほんとにそうするつもりじゃったがの。」

 

悟空さもさすがに今回のはこたえたようだ。

何はともあれ、わたし達はこれからも変わらずに暮らせることになる。

それは一安心なんだけど、もし飲み込んでたらほんとにそうするって…こういうとこ思い切ってるなぁ、悟飯さん。

 

「親としては帰ってきて欲しい気持ちもあるけんど、やっぱり子の成長も嬉しいだよ!これからも様子見で抑えるだ」

「おっ父〜!」

 

思えばおっ父には寂しい思いをさせてると思う。

だってまだこの年齢、普通だったら親にベッタリが当たり前なのだ。

 

「まぁ別れることはなくなったとはいえ、今までとは少し毛色の違う修行もしてもらう。覚悟することじゃぞ!」

 

「あぁ!」「わかっただ!」

 

こうして悟飯さんの絆を確認するための「提案」は幕を閉じた。




恥ずかしいと相手を押す癖は転生チチさんの可愛いところだったけど、力がついたせいで恥ずかしいと相手を「ドーンと突き飛ばす」レベルにまで育ってしまったせいで最早恐ろしい


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21話

そろそろ原作に近づきます


あれから数日。今日がその【今までとは毛色の違う修行】の開始日らしい。

 

「よいか!今回お主達には、このパオズ山の下の村にお使いに行ってもらう!」

「え?」

 

ハッキリ言って拍子抜けだ。絆を確認した後にすることが下町へのお使い???

 

「やんだーっ!んな冗談やめてけろ?」

「冗談じゃないぞ。お使いといっても下の村までは距離もかなりあるし、なにより道中に色々な生き物もいる。

 

そしてなにより!悟空と一緒の状態で下の村に行き、帰ってくる!これがなにより大変じゃぞ!」

 

「…なんで大変なんだ?」

 

 

 

 

「…悟空お主、計算はできるか?」

「いっ?さんすう?の方はこれからそのうちやっからさー…」

「男と女の見分け方は?」

「パンパン!!」

「知らないところから戻れる自信は?」

「ない!!!」

 

「チチ、こういうことじゃよ。」

 

…どうやらとんでもない難易度のお使いらしい。

絆を確認したのはそんな悟空さを全面的にサポートできるかのテストだったのかもしれない。

むしろあのとき助けられたのはわたしだったのだが。

 

「今回は悟空を手助けするのが、チチにとっての修行じゃな。」

 

あ、この人修行で悟空さの弱点を無くす気だ。

それはいいのだがわたしに悟空さの弱点の克服を押し付けてないか…?

 

「山の外楽しみだなチチ!」

「そ、そうだべな!」

 

「ある程度の道筋はこの紙に記しておいた。頑張るのじゃぞ!」

 

不安です。

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

下の村といってもかなり離れているようで、もう夕方なのに一向に村が見えず、歩きっぱなしだ。

 

「まだつかねぇみてぇだな」

「全く下の村が見えねぇだよぅ…」

 

不安が増えていく。道を間違ってないか、危険な生き物はいないか、そしてなにより村についたときの悟空さへの不安。

 

「なんかチチ疲れてねぇか?あんだけ普段山駆け巡ってるし、オラは平気だぞ?」

「いんや、疲れてるのは身体面じゃなくて精神面だべ…」

「???」

 

悟空さはけっして頭が悪いわけじゃないし言い聞かせればわかってくれるはず。

とりあえず第1に教えた方がいいのは不用意にパンパンしないってことかな?

計算はわたしがやればいいわけだし。

村についたらどうしようか…

 

「おう!!待ちな」

「「え?」」

 

と、ここでまさかの待ったがかかった。一体誰かな?

と通せんぼしてきた人を見ると、なんと獣人。

しかも片手に剣を携えて、明らかにこっちに威圧しているのだ。

 

「そこのガキ二人!大人しくしてれば痛い目にはあわせないからよ、ついてきてもらおうか。」

 

見た目はクマ寄りの獣人だ。それに武器を持っている。

普通の人だったらこれだけで恐ろしいし、なにより着ているものも山賊っぽい。

普通の人だったら言うことを簡単に聞いてしまいそうだ。

 

「べー」

「ちょ、ちょっと悟空さ!」

 

悟空さはなんとそんな相手にあっかんべーをした。

勝てる相手だろうけど、こちらとしてはできる限りトラブルは起こしたくないからやめてほしい。

 

「まさか逆らおうってんじゃないだろうな?」

「そのまさかだ!」

シュイッ!

 

「あっ悟空さ!もー!」

 

こうなったらもう戦うしかない。殺さない程度に…軽めの攻撃をくらわしてやるとする。

目的は相手を降参させることだ。

 

「そおりゃあ!」

 

獣人は剣を素早く振るってきた!だけども、残念ながらそんな斬撃が悟空さに当たるわけがない。

 

「おーい」

 

かわした悟空さが煽る煽る。

と、わたしも見てるだけじゃダメだ。

 

「ぐへへへ…すばしっこいじゃねぇか!よく俺の攻撃をかわしたな。」

 

「オラのこと忘れてねぇだかー!」

「!?」

 

わたしも戦うとは思っていなかったであろう獣人は、こちらに隙をみせていた。こんな絶好の機会逃すはずがないのだ。

 

「てりゃー!」

 

足元がお留守だったので、その太い脚で立ってるところを問答無用で引っ掛ける!

まさか足側を攻められるとは予想もしてなかったのか、簡単に転んでくれた。

 

「おっ?ぐあっ!」

 

転倒してくれたなら、もう勝負はついたようなもの。

なぜなら悟空さが簡単に顔を殴れる位置まで来たからだ。

 

「オラの拳はいてーぞー?にひひ!」

 

「ひっ!す、すまなかった!!!何でもするから許してくれ!」

 

勝負あり!!!

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

こうして悟空さの脅しもあって、山賊っぽい獣人を降参させた私達は1日家を借りることにした。

 

あれからわたしは夕飯を取ってくると言って狩りに出かけて、大物のクマをしとめたところだ。

こういう仕事は悟空さが多めだったし、なによりわたしも頑張らないと!と思ったので悟空さには獣人の家で待ってもらってた。

天地がひっくり返っても獣人に悟空さが負けることはないだろうし、一対一でも平気だろう。

 

〜〜〜

 

「こ、こんなことでほんとにええんですかい?」

「ちょうど夜も近かったからな!助かったぞ!チチが帰ってきたら起こしてくれ!」

 

帰ってきたところに、壁越しに会話が聞こえてくる。

会話から推測するに悟空さは寝かけているようで…

 

「ふ、へへへ。それじゃあぐっすり眠ってくだせぇ…」

 

 

シャキィン…

 

 

今、武器を持った音が聞こえた。これは…さすがに乱入した方が良いとみた。

 

「悟空さー、夕飯取ってきただよー!」

 

「!?」「…ん?おーチチー!」

 

「獣人さ、これは…なーに持ってるだぁ?」

 

「こ、これはその…」

 

獣人は剣をそのデカい図体に隠して、完全に困っている様子。

どうやら寝ている悟空さを襲おうとしていたようだ。

どう攻めてやろうかと考えていると…

 

「で、チチ!夕飯なんだ?夕飯!」

 

あ、悟空さからワクワク顔で夕飯を聞かれた。悟空さ、アレの鍋好きだったなぁ…喜んでくれるかな。

 

 

 

「それはだなぁ…

 

 

 

ク マ だ べ !」

 

「ひ、ひーーーっ!もう逆らいませんっ!!!」

 

あ…そういえばこの獣人、クマ寄りの獣人だった。

図らずとも脅しをかけるような形になってしまったが、まあこれでこれからはこの獣人が反逆することも無いだろう。襲ってきたのはあちら側だし、言うことを聞いてくれるらしいので利用したまでだ。

なぜかこっちが悪役みたいになってるけど、悪くないよね?

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

うーんいい朝!

あれからは安全な夜を過ごせたし、普通に寝れた。

獣人もさすがに堪えたようで、一切攻撃しようとしてくることはなくなった。

 

「チチ様!悟空様!お気を付けて!」

 

なんなら態度がこんなことになってしまっている。

今日は快晴だけど、そのくらいこの獣人の態度も綺麗になった。清々しいくらいに…

わざとじゃなかったけど、あの脅しは我ながら恐ろしいと思う。少し申し訳なさもあるくらいだ。

 

「あいつ急に態度変えて変なヤツだなー」

「いいから行くだよ!さすがに今日このまま歩けば昼間くらいに着くはずだべ。」

 

【今までとは毛色の違う修行】は始まったばかりだけど、色々ありつつも今のところは順風満帆だと思う。

 




見る人が見たらこの2人はナチュラルサイコに見えるかもしれませんね…


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22話

お待たせしました。んでもって誤って消してしまったので再投稿です…
今回は意外な出来事が起こりますよ。


あれから数時間経ちわたしは村に着くまでの間、ある事に対して頭に考えを巡らせながら歩いていた。すると…

 

「暑くなってきただな〜…」

「なぁチチ、あそこに見えるのって!」

 

悟空さが村らしき場所を見つめている。

ようやくついたようで…パオズ山の下の村と言っても、そこそこ離れているようである。

 

さて、ここまでの道中で必死に考え尽くしていたのは他でもない。

〈悟空さが村に迷惑をかけないようにする方法〉である。

行く前に悟飯さんに言われた通り悟空さは今現在、少し常識知らずなところがある。

そこをカバーするのが今回の私の役割だ。

 

「悟空さ、いいだか?あの村に到着する前に何個か約束するだよ。」

「な、なんかオラ嫌な予感がするぞ…」

 

「なぁに、かるーい簡単な約束だべ!…まずその1、お買い物の計算はオラに任せるだ!」

 

まずこれは確定で通る約束だと思われる。悟空さには計算は厳しいと思うし、何より本人も進んでやりたがらない。

 

「なんだよー!はっはー、そのくらいなら全然いいぞ!」

 

「んじゃ次その2!人の性別を確かめるとき、パンパンしない!」

これも確定事項。村の人に迷惑をかけるわけにはいかないし、なにより一応1番近い村なのでここの住民の間がで悟空さに対しての心象が悪くなったら困る。

 

「い???じゃあどうやって確かめるんだ?」

 

見た目でわかる。と言いたいとこだけど悟空さ、こういうとこ鈍いからなぁ…いや、待て待て。よくよく考えると…

 

「…そもそも確かめる必要がある場面が今日あるだか?」

 

「そりゃねぇけど…」

 

「ずこーーーっ!」

 

「…じゃあ決まりだな。次、その3!…えーと、その…」

「…」

 

「溜めてねぇで早く教えてくれねぇか?ここで立ってるままなのは暑いし嫌だぞ…」

 

確かにこの暑さで立ち往生しては体が熱くなってしまう。

でも、今から私が口にする言葉はそれと同じくらい熱くなっちゃうことでもある…

 

「そ、その!オラから絶対に離れないでほしいだ!!!」

 

「い?どうしてだよ急に」

 

やっぱりこの言い方じゃ変に思われるよね…いや、薄々気づいてはいたけど…どうにも話し方がこれ以外思いつかなかった。

要するに私が伝えたいのは、土地勘が無い状態でバラけて迷子になるのを防ぎたいから一緒に行動しようってことである。

でもそのままじゃわかりにくいかと、悟空さにわかりやすいようにうまく縮めたつもりだった。

でもこれじゃ自分が恥ずかしいだけだ。

…変な勘違いされる前に!!!

 

「い、いやあのな!?だから、はぐれたら困るから一緒にいるってことだべ!?」

「わ、わかったから落ち着けよ…」

 

なんとかわかってくれたようだ…最初からこれでよかったじゃん。

幸い変な誤解はされていなかったようで、私がただ慌てているだけの状態になってしまったけども…まぁ恋してるってバレるよりはマシ。

 

「…やっぱチチって変なところあるなー。」

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

結果から言うと、村でのお買い物は無事に終わった。

そんでもって悟空さが迷惑をかけることもなく、無事に2人揃って帰れそうな状態にある。

 

んー、ここまで順風満帆。何事もなく…いや強面な獣人にちょっかいはかけられたりはしたが、村についてからは特に何もなし。

ならこのまま帰るかと、なんならもう山に帰る帰路に向かっている。

 

「悟空さー、帰るだぞー?」

 

「…チチ、なんだあれ?アリの群れみたいに並んで。」

 

…アリの群れみたいに並んで?悟空さの言い分から考えると、統一された動きを何人もしているという事だろう。

 

まさか、レッドリボン軍…!!!こんな早くから行動を始めてたなんて!

狙いはやっぱりドラゴンボール?それともこの時点ではドラゴンボールは求めていない…?

どちらにせよ悪名高い組織だ。勝てるかと言われると不安も残るし、関わらないでさっさと帰ってしまうのが得策かな?

 

「チチ、考え込んでないで見てみろよー、あれすげぇぞ?」

 

「レッドリ…って、ありゃ?」

 

悟空さの目線の先に居たのは私が想像していた大の大人のキビキビした軍隊とは真逆の人達だった。

 

「あ、あれは…ただの幼稚園かなんかの子供達だべな…?」

 

遠足かなんかできたのだろうか?想像してた恐ろしい人達では無かったのでホッとした。

 

「幼稚園?なんだそれ?うめぇんか?」

 

「子供達が通う施設のことだべ。都会の子ってのはな、そういう施設で物事を学ぶだよ。」

 

「ふーん…」

 

あ、興味無さそう。

にしても少し変な光景だ。列を作って先行して1番前を担当してるのは先生で間違いないだろうが、問題は後ろの方。

最後尾にも先生がいるんだけど、なんとその先生…めっちゃ背の高いハンサムなイケメンにナンパされている。

しかも追っ払いもせず子供達の列に混ぜてるし。

いやいや、子供を担当する人としてそれはダメじゃないの?と思ってしまう。

 

「お嬢ちゃん、お茶でも2人でいかがかな。」

 

「はぁ〜…もう、いい加減そういう変化はやめなさいって…」

 

最後尾の先生はそれはもうダルそうに流そうとしているが、男は中々食い下がらない。

 

「そんなこと言わずに、さぁ僕の胸に飛び込んでおいで…」

 

などと口説き文句を先生に言っているハンサムイケメン。

だが、そんなハンサムイケメンに魔の手が迫る!

 

「ギィエエエエエエエ!」

 

ガシッ!

 

「わ、わーっ!!!離せ!離せよ〜!」

 

なんと翼竜にハンサムイケメンが捕まえられてしまった!元々列で行動してる都合上目立つ上、さらに他とは一線を画す身長。これは狙われても仕方ない。

 

「あ、ああぁ…!!!なんてこと…児童が攫われてしまったら、この場合責任は私に…」

 

最後尾の先生は捕らわれたハンサムイケメンを見ながら言う。

とてもじゃないが幼稚園生には見えない…もしかして、なにか事情があるのかな…?

 

「なぁ、おめぇアイツ取られて困ってるんか?」

 

「え、は、はい…その、君は?」

 

おっと、早速悟空さが人助けに入る。私も負けちゃいられない。

 

「オラ達この辺の山に住んでる子供だべ。」

 

「そ、そうなんだね…?じゃあ君達、どうにかあの翼竜に攫われた人を助ける方法とか知らない?」

 

こんなことを言われてしまっては…目の前であんな光景を見てしまっては…

 

「悟空さ。」

「あぁ!」

 

「「オラ達にまかせてくれ!(だよ!)」」

 

「え、えぇ…?」

 

助けないわけにはいかないだろう。

なにか深い事情と闇を感じるが、この際助けてから聞けばいい。今はあの翼竜からハンサムイケメンを取り返すことだけを考えよう。

 




謎のハンサムイケメン、一体何者なんだ…?
一応分からない方のためにヒントを言うと、彼は南部変身幼稚園の幼稚園生らしいですよ。


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23話

さてさて、今回は一体何茶なんだ!?な人を助けに行こう!編です!

毎回更新ペースがgdgdなのはお許しください…!
マジで申し訳ないです。

ちなみに毎回2500文字を基本にして、1話づつ分けて制作しています。


幼稚園の先生にナンパしていたハンサムイケメン、攫われてしまった。

 

文字にしてみると改めてわかるとんでもなさだが、私達は彼を救うべく動くことにした。

正直助けなくても良いかと思ったが、あんなでも一応児童の一人らしいので助けないと…

 

「待って!僕も連れてってよ!」

 

「え…?いやいやダメだよプーアル君!?先生と一緒に待ってましょうね!?」

 

まさかのプーアル!?

まさかこんなところで原作キャラに会えるとは驚きである。原作でもちっちゃくて可愛いが、幼稚園時代の彼はもっと可愛かった。

 

「えーと、プーアルさ?なして一緒に行きたいべか?」

 

「僕にとってはあいつはいじめてきた嫌な奴だし、好きじゃない…で、でも!いなくなっちゃうのは嫌なんだ…!」

 

…プーアル、幼稚園児にしては肝が据わってる…!

翼竜に立ち向かうなんて普通は怖いし、並大抵の心の強さじゃない。

プーアルを虐めてたらしい彼を助けに行く辺り、正義感も強いのだろう。

 

未来のヤムチャ、いい仲間をもったな?

 

「いやいや、プーアル君お母さんに心配かけちゃうよ…?それにもしも何かあったら私の責任に…!」

 

こ、この先生!結構保守的である。

責任関係を重視しているのか、我が身大事の精神なのか。

でも

 

「じゃあ決まりだべな!オラ達3人で助けてくるべ!」

 

ここは強引に仕切らせてもらう。

正直今の私達なら翼竜は余裕で倒せると思うけど、今回の出来事でプーアルと彼…つまりウーロンの仲が良くなるかもしれない。

仲が悪いのはよろしくないと思うし、ここはこの出来事を利用して仲良くなってもらおうと思う。

 

「じゃあ行ってくるだ〜!…って、翼竜はどっちに行っただか?」

 

ずこーっ!!!

 

ありゃ、皆ズッこけた。

 

「チ、チチ…おめぇ…。でも、大丈夫だ!オラ見てたぞ。パオズ山の中腹辺りに行ってたはずだ。」

 

悟空さの方がしっかりしてない…?

まずい。これは私も頑張らないと!

 

「さっすが悟空さ!すげぇだな!じゃあ今度こそ行くだよ!!」

 

「おう!」

「が、頑張ります!」

 

気合十分覚悟十分の私達は、翼竜を追っかけパオズ山の中腹辺りへ進むことに。

ウーロンもなんだかんだ原作に関わってくるキャラクターなので、やっぱり絶対に助けなければならない!

 

「…親御さんになんて連絡しよう…あぁ…」

 

後ろから先生の悲痛な声が聞こえる気もするけど…ここは私達に任せてほしい。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「まずは自己紹介だべな。オラはチチ!こっちは悟空さ!」

「オッス!」

 

「あ、僕プーアルっていいます。よろしくお願いします!」

 

プーアル、どうにも硬い。態度が硬いのだ。

でも原作でも終始敬語だったりするし…これは元から敬語タイプの人なのかな?と推測する。

一応硬くならないようにとは言っておく。

 

「硬くなることはねぇだよ。さ、プーアルさ!大事なお友達を助けに行くべ!」

「お友達…うん!」

 

彼の中で何かあったようで、決意を新たにしたみたいだ。これで硬くならずに態度が軟化するといいけど…

 

でも彼に響いたのは別の部分のようで、先程と比べて幾分か勇ましい顔になっている。

というか勇ましい顔に変化している。

 

「プーアルさ、気張るのはいいだが…その、無理に顔変えることはねぇだよ…?」

 

「えっ!…あっはい、そうですよね。」

 

「ははっ!おめぇ顔変えられるのか!面白いやつだな!」

 

ほら、こんなことをしたら悟空さに面白がられてしまう。

にしても変化を生で見られるのもまた、この世界に来たんだなぁと実感する。

ほんとに「ポン!」と変わるのだ。

先程の変化で言うとほんの少しの間煙に包まれて、煙が晴れるとそこには別の顔が…みたいな。

あまりにも摩訶不思議。摩訶不思議アドベンチャーである。

 

「顔以外も変えられますよ!ほら!」

 

そう言って彼、今度はなんとバッファローに変化してみせた。

あまりにも勇ましく威圧感を与える外見だ。しかし私達から見ると…

 

「ヒャー!でっけぇ角だなぁ取れんのか?」

 

「と、取れませんよ!」

 

普段から山で生き物を狩って生活を営んでいる関係上、この部位はどう使えるかなどは考えてしまうのが宿命。

1つの職業病(?)だろうか。

私も一瞬考えてしまったのはここだけの秘密だ。

 

「その姿なら早く走れるべ?オラ達もスピード上げるからついてきてくんろ!」

 

そう言って私はスピードを上げる。

目指すは山の中腹。悟空さが言うには中腹辺りに翼竜が飛んでいったらしいので、今はそこを目指す。

 

「ちょっ…!この姿には制限時間が…」

「よーし!!オラも負けねぇぞ〜!!!」

 

悟空さの中では自然と勝負事になっているのか、対抗するようにスピードを上げてきた。

これはうかうかしていられない!

 

「お二人共〜!待ってくださいってばー!!!」

 

後ろからバッファローと化したプーアルが追いかけてくる。私の作戦は逃げだ!

追いつかれる訳にはいかない!目指せ1位!

 

…あれ?私達なんで競走してんだ?

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

バサッバサッ

 

「…!悟空さ、あれって…」

「間違いねぇ、さっきの翼竜だな!」

 

遠目に翼竜が見える。あいつで間違いないだろう。

いつの間にか隣まで追いついてきた悟空さと走りながら確認をとる。

 

「お二人共…ゼェ…待ってくださいっ…ゼェ…てば…」

 

知らないうちに元の姿に戻ったプーアルが飛びながら遅れて追いついてきた。もしかして変化の制限時間…とか?

というかかなり疲弊しているのか、かなり呼吸が乱れている。

これは申し訳ないことをしたかもしれない。

 

「プーアルさ!すまねぇだよ!」

 

「ゼェ…普通じゃないです…ゼェ…なんでバッファローより速いんですか…」

 

確かに普通じゃない速度で遠慮無く走ってしまった。

幼稚園児相手になんてことをしてるんだ私達は。と本気で申し訳なくなる。

 

「ははっ!まぁオラ達鍛えてるからな!!」

 

悟空さの言う通り鍛え続けていたら、自然とこの速度が出るようになってしまったので悪いのは悟飯さん達だ。きっとそうだ。

けっして私達が大人気なく幼稚園児を置き去りにして走っていたわけじゃないんだ。

 

「鍛えてるだけの変化できない…ゼェ…子に負けるなんて…ゼェ…きっと僕の変化が上手くないんだ…ゼェ…もっと上達しないと…!」

 

なんかプーアル、よく聞こえないがやる気が出たようなので、結果オーライということでこの話は終わりとする。

 

「というか、止まってください!!!」

 

尻尾の先端をマイクに変化させたプーアルの一喝が、周囲に響いた。

 

キキーッ!

 

「いっ!?」「あ…ほんとにすまねぇだよ…」

 

すぐに止まる。

そういえば私達、走ったまま話してたんだった。




年上の男女に振り回される幼稚園児のプーアル君です。


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24話

ちょっと長めになってしまいました。
あとそろそろ原作入ろうと思います。


わたし達に頑張って追いついてきてくれたプーアルに気を使いながら、ゆっくり翼竜の巣に距離を詰めてく。

 

「間違いねぇな、コイツがあのハンサムイケメン幼稚園生をさらった翼竜だべ。」

 

巣越しに見えるあの体の模様、さっきハンサムイケメンに変化してたウーロンを攫った翼竜と一致している。

どうやら寝ているようだ。

 

「ハンサ…?ああ、ウーロンのやつ!またそんな姿で先生にナンパしてたなんて!やっぱり捕まって当然のやつです!」

 

ウーロン!同級生からの心象が落ちてるぞ!

にしてもあの先生もご苦労なものである。まさか幼稚園児にこんな変態が紛れているなんて思うはずもないし。

 

さて…変化できるとはいえ戦闘力でいえば、ウーロンも一般の人並み。ウーロンにできることといえば精々見た目で威圧することくらいか。

 

となると、やっぱりわたし達で助けるしかないだろう。

どうやって助けよう?

 

「うーん、あの高さ…どうやって助けるべ?」

「オラの如意棒は?」

 

あの位置なら悟空さの如意棒がとどく距離だし、それでつついてもいいけど。

もしも何かの手違いで巣に思いっきり当たって巣ごとウーロンが落ちちゃったら困るし…

 

うーん、ここは翼竜が巣から離れるのを待つか…でも今のウーロンは捕らえられた獲物、いつ食べられてもおかしくないだろう。

 

………よし!

もし翼竜が起きて襲われても、今の悟空さと私なら翼竜に負けるわけないし!巣に突撃するか!うんうん!万事解決!

 

「いんや、如意棒よりいい手があるだ…直接巣に乗り込むだよ!」

「それもそうだな!」

 

「…え、いやいやちょっとちょっと、2人共本気ですか!あの高さですよ!?それこそ変化とかしないと…」

 

「いいから見てろって。オラ達強い子だぞ!」

 

シュタッシュタッ!

 

そう言って軽やかに崖を上がっていく悟空さ。

私も後に続く。

 

「あの二人、普通じゃない…」

 

プーアルが何か言っているみたいだけど、今はウーロンを救うことが先決。万が一何かがあってからでは遅い。

 

崖を上がっていくうちに見えてきた巣の様子。

とりあえずウーロンは食べられてないようで、翼竜は寝息を立てている。

 

「悟空さ、1歩下で下がって様子を見てくれるだか?ウーロンさを連れ戻してくるだよ。」

「わかった、翼竜が起きたらオラに任せろ!」

 

巣の中に乗り込むと、ウーロンが何やら愚痴っている様子が見えた。

 

「うー…このオレをナンパ中に攫いやがって…このオバケ翼竜め…」

 

どうやらピンピンしているようだ。変化も解けて、元のブタの姿に戻っている。

今がチャンス!すかさず話しかける。

 

「ウーロンさー…聞こえてるだかー…」

「お、お前誰だ!?助けに来てくれたのか!?」

 

「そうだべ、起こさないようにゆっくりこっちに来るだ…」

「ん?…へ、へへよく見たらお嬢ちゃん中々可愛い…」

 

…はぇ?

こんな時に何言ってるんだこいつは。

 

「オレの本当の姿はね、こんなにイケメンなんだよ。」

 

そういってウーロンは変化して、先程のハンサムイケメンの姿になった。

そして変化の時に出る煙が翼竜の鼻に…

 

「ウ、ウーロンさ?なにしてるだか?今すぐこっちに来るだよ…?」

「ははは!どうしたんだいお嬢ちゃん、もしかして惚れちゃったのかな?」

 

これはまずい。絶対起きるやつである。

ウーロンってホントにトラブルメーカーとしての才能があると思う。

 

「いいから早く…」

「フフフ、そんなに急がなくても今行くさお嬢ちゃん。」

 

そう言ってカッコつけて巣の中をノソノソ歩いてこっちに来るが、時すでに遅し。

 

「スンスン…ブアッグショーーーン!」

 

「あっ」

「どへぇ!?」

 

翼竜が起きてしまった。こうなったら、実力行使で取り戻すしかない。

 

「悟空さ!」

 

ヒョコッ

 

「あぁ、起きちまったんだな?」

「そうだべ。やっちまうだよ!」

 

悟空さがヒョッコリ顔を出して上がってきてくれた。隣に悟空さがいるだけで凄く安心して、冷静に戦えるような気がする。

 

「ギャオーーー!!」

 

雄叫びが耳に響く。

翼竜は臨戦態勢をとり、こちらに向かって威圧してきた…が。

 

「…ん?チチ、こいつなんか変だぞ。」

 

悟空さの言う通りなにか様子がおかしい。まるでウーロンを庇うかのように動いているのだ。

獲物を横取りされると思っているのか?にしてはウーロンを随分優しく守っているようにも見える。

ここから導き出される答えってつまり…

 

「この翼竜、もしかしてウーロンさに惚れちまってるだか!?」

 

ズコーッ!

 

「はははっ!食べるために攫ったんじゃなかったんだな!」

 

とんでもない事実である。

 

「ギャウゥ…」

「は!?なにーっ!?オレこんな翼竜に惚れられても嬉しくねぇよ!!」

 

どうやら図星のようで。この翼竜、ウーロンを見る目がウットリしている。なるほど、パートナーにするために攫ったのか〜。解決!末永くお幸せに〜!!!

 

 

 

 

と言いたいところだが…変化がずっと続かない以上ウーロンの本当の姿もバレてしまうだろうし、ウーロンも翼竜が相手はさすがに嫌だろう。

 

 

「あはは…嫌なら正体を明かしてあげるだ。」

 

「こんな奴に好かれてたまるかーっ!変化ーっ!」

 

ウーロンが再び煙に包まれると、元の姿に戻る。

と同時に翼竜は騙されていたのがわかったのか、怒り出した。

 

「ッギャオーーーー!!!!」

 

「悟空さっ!」「わかってるっ!」

 

わたしは急いでウーロンの傍に行き、悟空さは翼竜の攻撃を受け止める。

 

グググ…

 

「オラが受け止めてるうちに早く!」

 

「ささ、急いでここから逃げるべ!掴まるだよ!」

「つつつ、掴まるってどこに!?」

 

「腕に決まってるべ!!!」

 

いまいちシリアスに欠けながらも、巣から出ることには成功した。シュタシュタと崖を駆け下りる。

 

「わ、どわーっ!早えぇよ、怖ぇよー!!かーちゃあああん!」

「大丈夫だべ!さぁ着地するだよ!準備はいいだか!」

 

「わー!無理!無理ぃー!」

「よいしょっと!」

 

スタッ

 

「はは…乗ったことないけど…ジェットコースターって…こんな感じなのかな…」

 

なんとか崖の下まで降りてこられた…が、ウーロンがへばってなんかボヤいている。少し勢いつけすぎたかもしれない。

あっと、下で待機していたプーアルが駆け寄ってくる。

 

「大丈夫でしたか!?悟空さんは?」

「今上で戦ってるべ。大丈夫、悟空さなら絶対勝ってくれるだ!」

 

「チチーッ!」

 

上から声が聞こえてきた。どうやら悟空さは思っていた通り無事のようだ。

わかってたとはいえ、一安心である。

 

「わりぃ、翼竜が空に逃げちまった〜!」

 

そっちか。

 

「あー…相手に有利な状況になっちまったべな…」

 

これはまずい、そのまま逃げてくれるならいいが空から襲ってくるなら少し面倒だ。悟空さの如意棒でなんとかしてもらうにも、悟空さが降りてくるまでの間プーアルとウーロンを守りきらねばならない。

 

「オラにできるだか…?いや、やるしかねぇべ!」

「どわーっ!お、おいこっちに来るぞ!」

 

考え込んでいる間にも、翼竜は空からどんどん距離を詰めてくる。

その姿は圧巻。完全にこちらを狙っているとわかる。

 

「ギィエエエエエエッッ!!」

「や、やってやるだ!」

「ひいぃーっ!死ぬーっ!オレ達皆死ぬ〜っ!」

 

ウーロンがめちゃくちゃ悲観的なことを言うが、諦めちゃいけない。

空中から迫り来る相手、攻撃は当てれるかもしれないけどプーアル達を守りきれるか…!?頑張れ!頑張るんだ私!

 

来る…!来る…!

 

 

 

 

 

「こいつよりでかい翼竜に変化ーーーーッ!!!」

 

と、目の前にもっとおっきい翼竜が出現した。

 

「ギ、ギェーーッ!」

 

バサッバサッ

 

こちらに向かってきていた翼竜は自分より大きい背丈の翼竜にビビって、シッポを巻いて逃げていった。

 

「へへーんだ!僕だってやればできるんだぞ!」

 

「プーアルさ、すげぇだぞ!追っ払っちまうだなんて!!」

「プーアルお前…」

 

どうやら変化して助けてくれたのはプーアルみたいで、無事危機はさった。

あぁ、まだ心臓がバクバクしてる。やっぱり強くなっても怖いものは怖いのだ。

 

「プーアル、お前も…助けに来てくれたんだな…」

「助けてやったんだから僕のことはもういじめるなよ!」

 

「正直…反省してる…オレの先生へのセクハラを注意したからって、いじめたのは悪かったよ…」

 

ズコーッ!

 

ウーロンがプーアルをいじめた理由そんなんだったんかい!1人でズッコケてしまった。

 

「さ、仲直りするべ。」

 

ここは年上としてズッコケてないで、仲裁をする。

これで原作よりもウーロンとプーアルの仲は良いものになるかもしれない。

 

「ご、ごめん…」

「うん…!もう先生にエッチなことするなよ!」

 

どうやら仲直りできたらしい。仲直りの握手までしてる。

これでウーロンの変態も治ればいいけど。

と、悟空さが降りてきたようだ。

 

「チチー翼竜は?」

「プーアルさが追い払ってくれただ!」

 

「…い!?プーアル、おめぇ強えんだな!今度オラと稽古しようぜ!」

「あー…それはちょっと…」

 

無事に救出できて安心安心。

そろそろ夕暮れも近づいてきたし、あの先生も心配しているだろう。

幼稚園の人達に無事を報告しに行かないと。

 

「にしても、可愛いお嬢ちゃん…名前聞いてなかったよね?名前は?」

 

そういえばまだ自己紹介してなかった。何だかんださっきまで戦闘中だったし、すっかり忘れてた。

 

「はぁ…オラの名前はチチ!で、こっちは悟空さ!」

「よろしくな!」

 

「おうよろしく!で、チチちゃん…バストサイズはいくつ?」

 

ズコーッ!

 

どうやら馬鹿は簡単には治らないようだ。

これは少しお灸を据えてやる必要がある。

 

「 さては反省してねぇべな?プーアルさ!」

「はい!ハリセンに変化!」

 

バシーンッ!

 

「ほげ〜っ!」

 

「何やってんだおめぇら…」

 

兎にも角にも…こんな懲りないやつを無事取り返しましたよって報告に、幼稚園の先生達の元へ戻らないとならない。




果たしてこちらの小説のウーロンは幼稚園を破門にならずにすむのか…!?
それはそうと、プーアルとはある程度仲が良くなりました。


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25話

遅れてしまってすみません。
今回で原作開始前編はラストとなります。

ということは…はい!次回から原作開始です。



あれから幼稚園の遠足組に2人を送り届けたわたし達は、悟飯さんが待ってるパオズ山の家への帰路についていた。

 

「今日はいろんなことがあったな!」

 

「んだな。疲れただども面白い人達にも会えたべ、悪いことばかりってわけでもねぇべだな。」

 

ウーロンやプーアルに原作前に会えるとは思っていなかったし、まさか遠足中の彼らに会うなんて考えてもいなかったので、これはかなりついていると言えるだろう。

 

「アイツら仲良くやってるかな?」

 

「人っちゅうもんは助け合うと仲良くなるもんだ。きっと大丈夫だよ!」

 

思えば悟空さとも初めて会った時と比べたら、ずっと仲良くなったものだ。

 

「オラ達だってそうして仲良くなってきたべ?」

 

「ははっ!そうかもしれねぇな…初めて会った時なんて、おめぇと牛魔王のおっちゃんが乗ってたジェット機をオラが壊しちまったもんな!」

 

後から聞いた話だと、ジェット機を翼竜と間違えて攻撃してしまったと言う。

やはりパオズ山ほどの田舎になるとジェット機すらも珍しいのかもしれない。

 

「それが今や一心同体だ!色んなことを乗り越えてきたしな!」

 

「悟空さったら…!またそったらこと言って…照れるだよ…」

 

でも実際、一心同体と言っても差し支えない。

ここ数年でわたし達のコンビネーションはかなりの物になったし、ある程度なら話さなくても意思疎通ができている。

 

2人なら乗り越えられないものは無いんじゃないだろうか!…って思わせてくれるほど、彼の隣にいると安心感に包まれる気がする。

 

「懐かしいだなぁ…恐竜から逃げたり、パオズ山で野宿させられたり…」

 

「こうして改めて考えると…オラ達、強くなったよな。」

 

一緒に生活したり日々修行する中で、悟空さはわたしの中の1部になっていった。ほんとに2人で1人と言っても過言ではないかもしれない。

それにお互い、強くなれた。

 

「んだな!悟空さと会ってから体がすごい丈夫になった気がするだよ!」

 

丈夫にはなったけども、背丈はあんまり変わってない気もする…ちっちゃい頃からの運動しすぎで将来の背が小さくなったりしないよね?もしかしてクリリンが大人になっても小さいのは小さい頃の体の鍛えす過ぎ?

…考えすぎだよね???

 

一方で、短期間でわたしとは逆にとても成長したものがある。

それは悟空さ………のしっぽだ。

 

「そういえば悟空さ、もうしっぽ生えてきただな?」

 

パオズ山の3日間サバイバルの途中で、おっ父が叩ききったはずだが、あっという間に生えている。

再生能力高すぎでは?

 

「あぁ!スッカリ元に戻ったぞ!しっぽがねぇと釣りも大変だかんなぁ…」

 

悟空さは釣り道具くらいにしか思っていないかもしれないが、とんでもない。

戦闘にだって使っていたし、なにより大猿化するための絶対条件だ。これからも頼りになる場面が来ると思うし、自分達に牙を剥く可能性もある。

 

原作だとピラフ城のトラップから脱出するのに必要不可欠な訳だったわけだし、しっぽを根絶する方法もわからない。これは放っておくしかないだろう。神様待ちだ。

悟空さのしっぽから目を離しちゃいけない、細心の注意を持ってしっかり見ておくべきか。

 

と、話しながら進んでいくと見えてきたのは…?

 

「しっぽの話してたら…ここって悟空さの釣りスポットでねぇか!」

 

「ちょうどいいな!じっちゃん達におみやげだ!いっちょ釣ってみっか!」

 

懐かしい。初めてあった時も、こうして2人で釣りをして仲を深めたものだ…ん?

悟飯さん達におみやげ…?何か忘れているような…

おみやげ…そういえば何か頼まれて…

 

「チチーッ!見ろ〜!大量だぞ!」

「う、うわっ悟空さ!釣りすぎだべ!もうやめてけれ!」

 

考えを巡らせていると、知らず知らずのうちに悟空さが魚を何匹も釣っていた。やっぱり目を離しちゃいけないみたいだ。

 

「じゃあこの魚持って帰っか?」

 

「んだな!オラこっち持つだよ!」

 

悟飯さん、おっ父…喜んでくれるといいけど。

もうここまで来たら見知った風景だ。家まであと少し、ここまで来たらもうすぐだろう。鮮度の心配もない。

早いとこ帰ってしまおう。

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

「今帰っただぞー!」

 

あれから少しして、魚何匹かを持ちながら家に帰ってきた。夕飯の準備の手間が少しはぶけて、悟飯さん達も嬉しいはずだ。

 

「おお!悟空、チチ。お主らにしては遅かったな!」

 

「おっす!まあ色々あったしな。」

 

そう。獣人に襲われたり…ウーロンやプアールに出会ったり、救出劇みたいなことをしたり。釣りとかもしてきたんだから、そりゃ遅くなっても仕方ない…のだろう。

時間指定はされてなかったしセーフだと思いたい。

 

「それは後程聞くとして…して今回のお主らの成果、見せてもらおうか。」

 

 

「はいっ!」

 

ドスンッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

「ん?…あ、魚じゃな。」

 

「いつもの釣り場で釣れてな!いつものより大きかっただよ!」

 

固まってる固まってる!これは予想以上に大きくて驚いているに違いない!うれしいサプライズになったと思われ

 

「…して、頼んだ買い物の品は…どうしたんじゃ?」

 

え?

 

 

 

 

 

 

あっ…

 

「や、やべぇぞチチ。オラ達1番大事なもんを忘れて…」

 

「あ、あははは!悟空さ!オラ達、今すぐ急いで取りに行くだよ!!」

 

せっかくおつかいに出たのに他のことに集中しすぎて買い物の品を忘れてしまうとは…これもドジっ子の定めか…!

 

「すまねぇだ悟空さ…オラが忘れたばかりに…」

 

「いや…気づかなかったオラもオラだ。もうひと踏ん張り、いっちょやってみっか!!」

 

 

ズダダダーッッ!!

 

 

「あやつら…少しドジなところは残っとるが、身体面はすごいことになってきたのぅ。」

 

「あっ悟飯さん、チチ達戻ってきただか?今声が聞こえたような気がしたべ?」

 

「気のせいじゃ。」

 

「んだか?でも今確かに」

 

「気のせいじゃ。」

 

「…悟飯さんが言うなら間違いねぇべな?」

 

 

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

 

 

「あーっ!」

「あったー!!!」

 

 

疲れた。久々にずっと全力で走った…

 

 

「や、やっと戻ってきたぞ…」

 

「はぁっ…はぁっ…買い物袋、買ったあとウーロンさ達を見かけてからそのまま置いてきてたみたいだべな…」

 

まさかの失態だったが、なんとか買い物袋を見つけることが出来た。成長したっていっても、浮かれすぎて物事を忘れるなんて…それはもうただのおバカさんだ。油断しまくってるリクームみたいなものだ。

 

「…ま、見つかったしいいべ?今からまた…あの道引き返すだけだな…」

 

「もう夕飯の時間も来ちまってるし、急いで帰んねぇとな!…でも、正直言ってオラもう疲れたぞ…」

 

 

「でもやるしかねぇべな…さっ!走るだよ〜!」

 

「いーっ!オラもう腹ぺこなんだ!」

 

しょうもないミスもあったが、こうやって山あり谷ありでも少しづつ…悟空さと2人なら、これからも何が待ち受けていようとなんとかなる気がする。そんな気がするのだ。

 

こうして【今までとは毛色の違う修行】は幕を閉じた。




次回からは原作に入るのでオリジナルの物語の展開を考える手間が少し減り、多少更新ペースを早くできるかもしれません。
これからの転生チチさんの活躍にご期待ください!!!


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ドラゴンボール探しの旅編
26話


今回からついに…物語は動き始めます

この小説では一人称「オラ」が多くなりすぎないように、転生チチさん視点の時の心の中の一人称は「私」になっています


ドラゴンボール。

7つ集めれば願いを一つだけ叶えられるという奇跡の秘宝。エイジ749年、その秘宝を求めた1人の少女から物語は動き出す。

 

その少女の名はブルマ。

彼女は夏休みを利用して自分の住んでる都会から遠く離れたパオズ山へと赴いていた。

 

「この辺りのハズなんだよね…ん〜…もうちょっと西かな?」

 

ブルマは機械をピッピッと鳴らしながら辺りを見回す。

…かと思えばすぐ車に乗り、その場を後にする。

 

「とにかく絶対この近くにあるわ!」

 

目的は勿論〘ドラゴンボール〙である。

元々家の倉にひとつあった二星球を元に興味を持ったブルマ。彼女が今持っているドラゴンボールの数は2つ。二星球と五星玉 だ 。

残り5つを探すために冒険中ということらしい。

 

そんな彼女が奇跡の出会いをするまで後少し。

 

 

 

 

 

「むーんむんむん…でえっ!!!」

 

一方パオズ山の奥地では、1人の少年が身の丈以上の大きさの丸太を投げていた。

 

 

BAKOKOKOKO!!

 

 

刹那、素早い身のこなしであっという間に丸太は薪へと早変わり。

 

小さい背からは想像できないパワーとスピードで、あっという間に丸太を薪へと変えてしまった少年。

彼こそがこの物語の主人公であり、これから奇跡の出会いをする少年、孫悟空その人だ。

 

「よしっ薪割りおしまいっと!!…ハラ減ったな……」

 

「そうだべな!狩りにでも行くだか?」

 

そして声を掛けたのは本来の歴史ではここにいない人物であるはずのチチ。

実は中身は転生してきた人間であり、前世の記憶を持っている少し変わった少女である。…がそれを知るものはこの世界にはいない。誰がどう見てもただの田舎娘だ。

 

そんな彼女は本来の歴史を改変するべく、以前からなにかと動いていた。

例を挙げるとフライパン山の炎を鎮火したり、孫悟飯の死を防いだりなど。

少なくとも悪い方向に改変しようとはしていないようで、どちらかといえばどれも物語が有利に進むように改変しているようだ。

 

「久しぶりに魚釣りっちゅうのはどうだ?」

 

「賛成だべ!」

 

うまく物語に溶け込んでいるように思える彼女が今後どう世界を変えていくのか。

それはだれにもわからない。

 

 

◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆

 

 

「大量大量!」

「悟空さのシッポ釣りは相変わらずすげえだな…」

 

ウーロンやプーアルに会ってから数年が経った。今の悟空さと私は両方とも12歳であり(原作だと悟空は自分の年齢を14だと勘違いしていたが、孫悟飯生存によりその勘違いは諭され、勘違いは無くなった)ついに物語が動き出す時期となる。

ちなみにシッポ釣りとは悟空さ特有のシッポで魚を誘い込んで釣るという、テクニカルな釣り方だ。

もしかしたらこの世界にいる獣人とかもこの釣り方をできるのかもしれない。見た事ないけど。

 

「へへっ!ん?…チチ、また視線が泳いでっぞ?」

「え、あはは…なんでもねぇだよ?」

 

実は原作通りなら物語が始まる年なのもあり、今年は魚釣りをした日は帰りに機械音を警戒…つまりブルマの車が来ないか辺りを警戒する癖ができてしまった。いつ物語が始まるか分からないのもあって、変に探してしまうのだ。

辺りを見回す度に悟空さには変な顔をされる。

 

 

ブロロロ…

 

 

「こ、この音…この音は!」

 

この音は、この音は間違いない!ブルマの自動車の音だ!ついに原作が始まったんだなと、このパオズ山では聞き慣れない音で確信する。

 

「あり?なんの音だ?」

 

「…悟空さええだか?いちにの、さんで横に飛ぶだ。」

 

「い?わ、わかった…」

 

悟空さにはひきずるレベルのデカい魚と一緒に横に飛んでもらうので申し訳ないが…

 

「いちにの…さん!」

「よっ」

 

 

シュバッ

シュバッ

 

BAOI・・M!!

 

 

悟空さと私が横に一斉に飛んだ瞬間、奥の道からすごいスピードでブルマの車が横切った。

原作通りなら急ブレーキしてくれるんだろうけど、やっぱりあのスピードで目の前までこられたら怖い。「これは避けて正解だったな」と心の中で思った私であった。

 

「いーっ!?な、なんだあの怪物…オラ初めて見たぞ…というかチチ、あの怪物が来るのわかってたんか?」

「いや…音がデカかったからなにか来ると思っただけだべ。」

 

幸い車の走行は、山だと普段聞きなれないレベルのうるささの音だったので…この言い訳でなんとか通用するだろう。

 

「そうなんか…オラ気づかなかったぞ…ん?あの怪物が向かってる方向って…」

 

そう。車にはブルマが乗っていて、そのブルマが求めているのはドラゴンボール。そしてそのドラゴンボールがあるのは…

 

「オラ達の家だべな」

 

原作と展開が違えど、さすがドラゴンボールの導き。もしかしたら車をかわしちゃったから出会いが無くなるのかとちょっと心配してしまったが、それは無さそうだ。違う形にはなりそうだけども。

 

 

 

ーーー数分後

 

怪物が向かってった場所…もとい家についた私達。

 

「オ、オラ達の家の目の前に怪物が!?やい怪物!」

 

「悟空さ大丈夫だべ、今その怪物は動かねぇだよ」

 

怪物…車は動かない。それは勿論乗ってる人がいないからだ。そしてその乗ってた人は、もう家の中に入ったのだろう。

 

「い?なんでだ?じっちゃんが倒してくれたんか?」

 

「家の中見ればわかる事だべ!」

 

 

ギィ…

 

 

「じっちゃん無事か!?」

「悟飯さー今帰っただよ〜!」

 

扉を開けてみるとやっぱり二人いる。

1人は孫悟飯こと悟飯さん、悟空さの育ての親であり私の師だ。もう1人は初めて見る顔…もっとも、私はこの人が誰なのか知っているが。

 

「おおおかえり。今客人が来とっての。」

「あらお孫さん?この子達ちっちゃくて可愛いじゃない」

 

「いっ!?おめぇキャクジンか?」

 

出会い方がかなり変わってしまったけど、どうやら無事会えたようだ。一安心。

 

「わたしの名前は…ブルマよ、ブルマ。」

 

「オラチチっていうだ!」

「オ、オラ孫悟空。おめぇ怪物と一緒に来たんか…?」

 

原作だとブルマの名前を笑ってた気がしないでもない悟空さだけど、今は怪物が気になってそれどころじゃないみたい。

 

「へ?怪物?」

 

「ほっほっほ、悟空や…あれは怪物じゃなくて自動車じゃわい。」

「そ、そうよ!自動車っていう人間が作った機械!」

 

「ふーん…話には聞いたことあるけんどよ…オラ初めて見たぞ」

 

ジェット機も翼竜って思ってた悟空さだ、こればかりは仕方ない。これからゆっくり覚えていけばいいだろう。

さて、誤解も解けたところで…ブルマはここに大事な「用」があったはずだ。まずはそれを聞き出さなくては。

 

「ブルマさ、なんでこんな辺鄙なところに来ただ?」

「ん?目的はあれよ。」

 

そう言ってブルマが指を指した方向には、煌めく玉が1つ。玉の中にある星は4つ。

 

「あの球って…」

「しょうがない。教えてあげちゃおっかな〜♪…ほれ!!」

 

そしてブルマがガサゴソしながら小さいバックから出したのも、煌めく玉が2個。それぞれ星の数は2つと5つだ。




ちなみに悟空はチチがいるのもあって、原作みたいに裸でシッポ釣りしてません。ちゃんと服を着てます!


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