ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人 (カンナム)
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惑星サイヤ編
空を悟るもの 道を求めるもの★


初めましての方、はじめまして。お久しぶりの方、お久しぶりです。手違いで消してしまった作品ですが、何とか復元できましたぁ。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました(*´ω`*)

ではでは、第一話です。
頭を空っぽにして、読んでみてください(´ー`* ))))


 オーロラが見える紫色の空。

 

 水晶玉のように浮かぶ星々の下に小さな集落がある。

 

 褐色の肌と銀色の髪に尖った耳をした人間たちが、ジッと目の前に起こっている戦いを見ていた。

 

「し、信じられない。あの乱暴者のアブラを、ああも一方的に」

 

 村人の一人が驚きの声を上げる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 青年は左右非対称の特徴的なハネのある黒髪。

 

 その静かな瞳も髪と同様に黒だった。

 

 肌は一般的な黄色人種の肌色をしており、やや筋肉質だが中肉中背の体格。

 

 黒いインナーと黒のブーツに袖口がボロボロに破けた白い武道着を身に纏い。

 

 両手に赤いグローブを着けている。

 

「お、おのれ……っ!」

 

 青色の肌に小さい角を生やした悪魔のような見た目の男ーーアブラが、肩で息をしながら目の前の青年を見据えている。

 

 忌々しそうに告げ、アブラは空間に穴を開けて傷ついた身体を引きずりながら、穴の中に消えて行った。

 

 これを静かに見送ると青年は、地面に置いた白のザックの紐を手に取って肩にかけると、村人に背を向けて歩いていく。

 

「あの! 待って!!」

 

 まだ少女の域を出て間もない美しい娘が、彼を呼び止める。

 

 その隣には、彼女の姉であろうーー美女を伴って立っていた。

 

「…ありがとう!!」

 

 漆黒の帯を静かに結び、青年は引き結ばれた口を開いた。

 

「……いや。俺はただ、強い奴に会いに来ただけだ」

 

 それだけを告げて優しく彼は姉妹に微笑んだ。

 

「元気でな」

 

 ザックを片手に夕日に向かって、青年は静かに歩いて行った。  

 

ーーーーーー

 

 あの世とこの世の境にある黄金の雲と明け方の空の世界。

 

 灰色の石で掘られた、何処までも続く蛇の道が浮かぶ。

 

 その先に、直径100メートル程の小さな小さな球体が浮いていた。

 

 その球の名は、界王星。

 

 この銀河に限りなくある星々を統治する神。

 

 その更に上の存在である界王と呼ばれる存在が住む星だ。

 

 その小さな星にぎっしりと生えた芝生の上。

 

 青色のインナーシャツに山吹色の道着を着た、左右に非対称に飛んだ独特の黒い髪の青年。

 

 彼はいつものように青色の帯を締め、黒いブーツを履いた両足を地面に叩きつけ、目の前にいる青い肌の丸い中年の男性ーー北の銀河を統べる界王に語り掛けた。

 

「本当かよ、界王様!? そんなすげえヤツが、西の銀河に現れたんか!?」

 

 強い男を見れば戦わずにはおられない。

 

 戦闘民族と呼ばれる彼らの性なのだろう。

 

 幼いころに頭を打ち、凶暴性を失くしたとは言え、彼もまた純粋な戦士の一人だった。

 

「お、落ち着け~! その男なんだが。どうもお前やベジータと同じサイヤ人のようなのだ」

 

 間延びした独特なイントネーションで語られる言葉に地球育ちのサイヤ人ーー孫悟空は、ニカリと明るく笑った。

 

「へぇ~! オラ達以外のサイヤ人はフリーザに殺されたってベジータに聞いてたけど。そいつは、数少ねえ生き残りなんかなぁ?」

 

 拳を合わせてまなじりをキリリと引き締める。

 

 が、すぐにその引き締まった瞳がまん丸になって無邪気な子どものような顔になると、界王に問いかけた。 

 

「界王様がオラに会って来いってことは。そのサイヤ人、何か悪りぃコトしたんか?」

 

 これに界王は丸ぶちのサングラスをかけ直すと、丸い顔を真剣な表情にして告げた。

 

「この世界には、魔界と呼ばれる魔族どもが住む世界がある。そこを統べるのは、界王神様と対となる魔界王神と呼ばれる存在だ」

 

 界王は真剣な表情のまま、話を続けていく。

 

「その魔界の住人の中でも、とびきりの強さと邪悪さを誇ったダーブラ。お前も知っておるだろう?」

 

「ああ! 魔人ブウの時にバビディに操られてた、キビトのおっちゃんを殺した奴だな?」

 

「うむ。そのダーブラの一族は魔界の中でも取り分け残酷で凶暴な存在であった。時に人間の世界に来て、罪のない人々をたぶらかし、その魂を喰らうような奴らだ。余りにも目に余るので、ワシはお前に奴の一族を退治してもらおうと思っておった。しかし、その矢先に件のサイヤ人が現れたのだ」

 

 悟空は目をキラキラとさせながら、ジッと界王の言葉を聞いている。

 

 界王はそんな彼の様子に気付かずに、言葉をつづけた。

 

「あの恐ろしいダーブラ一族の若者ーーアブラを、まるで赤子の手をひねるように倒してしまった。しかも顔はお前と瓜二つ。服装もよく似ておる」

 

「オラと?」

 

「うむーー、しかも珍しいことに。そのサイヤ人は無益な殺生を好まなかった。アブラに止めを刺さず、魔界に返すだけに留めたのだ」

 

 ジッと界王は自分の弟子でもある、心優しく戦いが大好きなサイヤ人を見る。

 

 宇宙の悪魔フリーザ、伝説の魔人ブウを倒し、あの破壊神ビルスにまでもその力を認めさせた、最強のサイヤ人の青年ーー孫悟空を。

 

「悟空よ、お前にはそのサイヤ人に会ってもらいたい。邪悪な存在ではないが、余りに強すぎる力を持っている。あの力を正しく使える持ち主なのか、見極めてほしいのだ」

 

 真剣な表情で、深刻な声で告げる。

 

 ふと、悟空が何も言わなくなっていることに気付き、界王は目を見張って振り返った。

 

「悟空?」

 

「く~っ!! そりゃ、すげえな!! あのダーブラにも匹敵するようなヤツが、オラ達以外のサイヤ人に居たなんてよ!! 会ってみてえぞ!!」

 

 宝物を見つけた子どものような顔で無邪気に喜ぶ悟空にやれやれ、と内心で苦笑しながら界王は告げた。

 

「では、この件を引き受けてくれるか?」

 

「ああ! もちろんだ!!」

 

 即答で頷く悟空に、界王は静かに告げた。

 

「この方角に向かって気を探れば、サイヤ人の気があるはずだ」

 

 その言葉に、悟空は頷いて右手の人差し指と中指を額に当てて、界王の指す方向に体を向ける。

 

 瞳を閉じて静かに気を集中していくとーー。

 

「あった。サイヤ人の気だ」

 

 瞳を開き、悟空は界王の顔を見る。

 

 界王は静かに頷き返してくれた。

 

「ーーよし。いっちょ見てくっか!!」

 

 それだけを告げて去ろうとする前に、悟空は地球に残されたもう一人の純血のサイヤ人を思い出す。

 

 別宇宙のサイヤ人に出会えただけで、あれほど喜んでいた彼のことだ。

 

 自分たちの世界にも、まだ生き残りがいたことを知れば喜ぶだろう。

 

 そう思い至った。

 

「っと、その前にベジータにも声をかけてみっかな!」

 

「そうじゃな〜。あやつも戦闘民族サイヤ人の王子、会ってみて損はあるまい」

 

「ああ!」

 

 悟空はそれだけを応えると、先に地球へと向かった。

 

ーーーー

 

 北の銀河の中で、最も美しいとされる惑星・地球。

 

 高度な科学と豊かな自然が共存する世界。

 

 孫悟空の育った故郷だ。

 

 悟空は、ヤードラット人から教わった瞬間移動という時間や距離を無視する技がある。

 

 惑星間はもちろん、あの世とこの世、神々の世界にまで移動できる。

 

 それを使って界王星から、大きな敷地を持つ屋敷に移動した。

 

 半球体の家には会社名であるカプセルコーポレーションと書かれている。

 

「…何の用だ、カカロット?」

 

 トレーニングルームに向かおうとした悟空だが、建物に入る直前で呼び止められる。

 

 その声に悟空は思わず、ニッと笑って振り返った。

 

「よ! ベジータ!!」

 

「…俺に用事か」

 

 見れば悟空より小柄な体格に鋭い黒目。

 

 天に向かって逆立った黒髪の青年が腕を組んで立ったまま、気難しい顔を悟空に向ける。

 

 服装は青いフィットスーツに全身を包み、ラバー製の胸あてをつけており、両手足には白い手袋とブーツを履いている。

 

 誇り高い戦闘民族サイヤ人の王子・ベジータだ。

 

「ベジータ、サイヤ人の生き残りを見つけたんだ! 会いに行かねえか? 見た目はオラそっくりで、ダーブラ級のヤツを超サイヤ人にならずに倒せるくらい強いらしいぞ!!」

 

「…貴様は下級戦士だからな。ガキの頃に同じタイプの顔は何人か見た覚えがあるが。生き残りのサイヤ人で、ダーブラを倒せるだと?」

 

 鋭い目を細め、思案する。

 

 魔王ダーブラは、ただのサイヤ人で倒せるレベルではない。

 

 当時の惑星ベジータを滅ぼしたフリーザを優に凌駕する存在だ。

 

「…何かの間違いじゃないのか? ただのサイヤ人の力ではダーブラは倒せまい」

 

「それを確かめに行かねえか? オラ、戦ってみてえ!」

 

「…場所は分かるのか?」

 

 ベジータも乗り気であることを理解し、悟空は明るく言った。

 

「ああ! そいつの気は覚えたからな!!」

 

「いいだろう。サイヤ人の生き残りならば、俺も会いたいからな」

 

「…へへっ! よし、行くか!!」

 

 悟空の肩に手をかけ、ベジータが頷く。

 

 これに悟空も頷き、額に指を当てて気を集中させ、瞬間移動を行った。

 

ーーーーーー

 

 瞬間移動で現れた先は、地球よりも文明レベルの低い、主だった土地は荒野しかない惑星だった。

 

「…カカロット。いきなり目的の男に会えたようだな」

 

「ああ。瞬間移動は、ホント便利だなぁ」

 

 目を前に向ければ、白い道着を着た孫悟空と同じタイプの顔を持つサイヤ人が居た。

 

 青年は静かに歩みを止め、目の前に現れた二人のサイヤ人を見据える。

 

「…オメエ、ホントにオラそっくりだな!」

 

 明るく笑いながら悟空が言うと、サイヤ人の青年は静かに目を細める。

 

「…俺と同じサイヤ人か? こんな辺境の星で会うとは。驚いたな」

 

 淡々とした声で青年は悟空とベジータを見た。

 

 静かにベジータは悟空に瓜二つのサイヤ人の青年を見据える。

 

 間違いなく、サイヤ人の気だ。

 

 だが、自分の知るサイヤ人達とは、何処か違う。

 

「…貴様、惑星ベジータからどうやって逃げ延びたんだ?」

 

 ベジータの問いに青年は訝しげな顔になる。

 

「…惑星ベジータ…?」

 

「俺は、サイヤ人の王子ベジータ。サイヤ人ならば故郷である惑星ベジータを知らないはずがあるまい。いや、それともキャベ達のような別宇宙のサイヤ人か?」

 

 問いかけに、青年は静かに首を横に振る。

 

「そうか…。あんたらは、惑星サダラで仲間割れした片割れのサイヤ人の末裔か」

 

「! ならば、お前はサダラの生き残りか?」

 

 ベジータの問いに青年は、静かに首を縦に振る。

 

「…俺の名はターニッブ。惑星サイヤのサイヤ人にして、惑星サダラに残ったサイヤ人達の末裔だ」

 

「…なんだと!? 親父から惑星サダラは、仲間割れで消滅したと聞いたが。俺たちの宇宙でも現存しているのか!?」

 

 ベジータが興奮したような口調で問いかけると、青年・ターニッブは、首を横に振った。

 

「サダラは、仲間割れで消滅したのではない。それが原因で起こった星の異常気象で生命が住める環境ではなくなったんだ。原住民だったサイヤ人達は、あんたらの先祖のように星を捨てなければならなくなった。出て行った奴等とは違い、無益な争いを好まない彼等は知的生命体のいない惑星に移民してサイヤ人の惑星を作ったのだ。王の名はサイヤ人の中のサイヤ人という意味で、自らをサイヤと名乗り、惑星サイヤを統治している」

 

 ベジータは静かにターニッブの言葉を反芻し、考える。

 

 嘘をついていないのは、目を見ればわかる。

 

 何より、ターニッブの発する雰囲気は確かに自分達惑星ベジータのサイヤ人よりもキャベに近い。

 

 ベジータは今、強烈に惑星サイヤを見てみたかった。

 

 しかし、口を開こうとするよりも先にもう一人のサイヤ人。

 

 惑星ベジータでも、サイヤでもない地球育ちのサイヤ人が前に出る。

 

「ベジータ、その話は後にしねえか? オラ、こいつと戦ってみてえんだ」

 

「…カカロット?」

 

 見れば悟空は、静かに瞳に炎を燃やしてターニッブを見ている。

 

「…感じるんだ。オメエは、強ぇえってな…!!」

 

 笑う孫悟空の表情は、不敵にして凄みがある。

 

 対峙するターニッブは、まっすぐな目で悟空を見返す。

 

「オラとさ、戦ってくんねえか?」

 

「…あんたも、強い奴に会いにきたのか?」

 

「ああ!!」

 

 力強く頷く悟空に、ターニッブは静かに笑みを浮かべた。

 

 彼は、両掌を天に向けて腰に置き、拳を握る。

 

 左拳を前に出して、斜に構え右拳を体の脇に付けて腰を落とす。

 

 対する悟空も左手を顔の前に、右拳を腰に置き、両足のスタンスを広げて構えた。

 

ーーーーーー

 

 同じ顔と髪型をした戦闘民族サイヤ人が、互いに構えを取って睨みあう。

 

 片方は青いインナーに山吹色の道着を青い帯で結んだ青年。

 

 もう片方は、黒いノースリーブシャツの上に袖が破れた白い道着を着た青年。

 

「オメエの力、見してもらうぞ!!」

 

「…受けて立とう!!」

 

 物静かだったターニッブが、気合いを入れて一気に覇気を放つ。

 

 青白い炎のようなオーラを全身に纏った。

 

「…こいつは、すげえな。超サイヤ人でもねえのに、なんて気の量だ。悟飯の奴が変身した老界王神のじっちゃんの潜在能力開放に似てやがる」

 

 構えを取りながら、悟空はターニッブの状態をそう断じた。

 

「…ならオラも! はぁああああああっ!!」

 

 一気に気を高め、孫悟空は黄金の気を身に纏う。

 

 逆立つ黄金の髪に鋭く細められた翡翠の瞳。

 

 ベジータは、これを腕組みをしながら見るとターニッブに視線をやる。

 

 彼は悟空の姿を見て驚きさえせずに、静かに見据えた。

 

「超サイヤ人、か。俺はそいつを邪道だと考えている」

 

「…邪道? どうゆうことだ?」

 

 悟空の問いかけにターニッブは、静かに彼の目を見返してきた。

 

「…自分の身体能力を何倍にも高める超サイヤ人。だが、それは本当に己の実力だと言えるのか?」

 

 ターニッブは、拳を握る。

 

「孫悟空よ。その境地に達するまで、お前は相当な修行を積んできたのだろう。だが、だからこそ問いたい。己の身を強化するだけが、強さを極めることか? 楽をして手に入る力などない。漲る力も、溢れんばかりのスピードも、俺には必要ない。俺は積み重ねてきた己の力こそを信じる!!」

 

 悟空は黙って、真剣な表情でターニッブを見据える。

 

「それが。この拳を通してできた友や倒してきたライバル達への、俺なりの答えだ」

 

 静かに燃える黒瞳に、悟空は不敵な笑みを浮かべた。

 

「オメエ、サイヤ人らしくねえな!」

 

「…かもな」

 

 笑い合う。

 

 そして、互いに向かって同時に駆けると右の拳を構えて振りかぶった。

 

 凄まじい衝撃波を発生させながら、二つの拳が互いの中央でぶつかり合う。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「……ぐっ!」

 

「どうした? お前の力は、こんなものではないだろう」

 

 明らかに超サイヤ人になった悟空が押されている。

 

 その事実に、ベジータが微かに目を細める。

 

(カカロットの奴め。悟飯の潜在能力開放に見立てているのなら超サイヤ人3以上の力が必要のはずだ。実際に拳を合わせてターニッブの実力を量るつもりか?)

 

「ぐああっ!!」

 

 拳を合わせていた悟空が、後方に弾き飛ばされた。

 

 片手と両足を地面に着け、飛ばされる勢いを殺す。

 

「…ぐっ!?」

 

 目を見開いて前を見ると、ターニッブが一気に踏み込んできた。

 

 愚直なまでに真っ直ぐな攻めだった。

 

 こちらの攻撃を受け、耐えた上での反撃。

 

 初めからペース配分など考えていない。

 

 生真面目で地道な特訓を重ねに重ねた硬い拳。

 

 重く、速く、鋭い蹴り。

 

 左ストレートを右の頬に放ってから右の正拳中段突き、右足の上段回し蹴りから中段後ろ回し蹴りという手堅い攻め。

 

 左のストレートを悟空は右に見切る。

 

 鳩尾付近に放たれた重い右正拳突きを両腕で受ける。

 

「ぐぅうう!!」

 

 重い一撃に思わず、超サイヤ人と化した悟空の腕が痺れた。

 

(こいつ……強ぇえ!!)

 

 目が見開かれると同時、その目に右の上段回し蹴りが迫ってくる。

 

 咄嗟に上体を屈ませて頭上に避け、悟空は右の拳を握って半ば背を向けているターニッブに殴りかかろうとして腹部に強烈な左の後ろ回し中段蹴りを喰らった。

 

「がぁっ!!」

 

 鈍い炸裂音が響き渡り、悟空を後方へ弾き飛ばす。

 

 背中から遥か後方の地面に叩きつけられ、その衝撃は強大な土煙を巻き起こす。

 

 ターニッブは左足を曲げて掲げた姿勢で止まり、静かに弾き飛ばされた悟空を見据え、両の拳を握って腰だめに今一度構える。

 

 その目には静かに燃える炎があった。

 

「これが、俺の全力だ。さあ、お前の本気を出せ!!」

 

 ゆっくりと仰向けの状態から起きあがる孫悟空。

 

「……へへっ」

 

 不敵な笑みを浮かべる。

 

 戦闘民族サイヤ人の闘争本能が彼の瞳を鋭くする。

 

「オメエ、ほんとにサイヤ人らしくねえな。自分の強さを誇示するわけでもなく、ただオラに本気を出させようとするなんてよ」

 

 これにターニッブも微笑み返す。

 

「俺はただ、お前がどれだけ強いのか知りたい。俺の全力が、お前の本気に応えられるかどうかを。ーーただ、それだけだ」

 

「へっへっへっへ………! オラも色んなヤツと闘ってきたけどよ。オメエみてえなヤツ、初めてだぜ」

 

 拳を握りしめ、孫悟空は気を高める。

 

「オラ、決めたぞ! オメエは、オラの全力でぶっ倒してやるってなぁ!!」

 

 腰溜に構え、一気に髪が伸びる。

 

 身にまとうオーラがさらに激しくなる。

 

 孫悟空から眉を消え、強面の顔へとーー。

 

「こいつがオラのとっておき、超サイヤ人3だ」

 

 両腕を組んでいたベジータは、悟空の変身に思わず舌打ちした。

 

「カカロットの奴め。まだ様子見をするつもりか」

 

 だが、自分の言葉に自ら首を横に振り、考えなおす。

 

「いや。超サイヤ人3以上となれば、神の気を使う必要が出てくる。ある意味では妥当な判断か」

 

 超サイヤ人3。

 この変身は圧倒的な力を孫悟空に与えるが、気の消費が激しく、なっていられる時間に制限がある。

 

 短期決戦にしか使えない変身であるが、その力は強力無比なものだ。

 

「初っ端から全開で飛ばさせてもらうぞ」

 

 鋭い瞳に、低く冷たい声で孫悟空は告げる。

 

 ターニッブは、腰を落とし構えを取りながらも微かに眉を上げ、笑う。

 

「驚いたな。コロコロと姿が変わるやつだ」

 

「ふふっ、オメエが邪道だって言った超サイヤ人の極みがこれさ」

 

「極み……? 孫悟空よ、お前の極みーー力の限界はそこなのか」

 

「どういうこった?」

 

 孫悟空は訝しげに問う。

 

「極みとはすなわち、それ以上はないということだ。だが、強さとは限りないもの。俺はこの拳を通して多くの友からそれを学んだ。お前は違うのか」

 

「…そうだな。オラも強くなる度に、すげえヤツらが現れてずっとソイツらと闘ってきた」

 

「ならば極みなどと言うな。俺たちの目指す強さとは限りないもの。生きている限り続く道。果てない強さへの極みを目指し続けるんだ!!」

 

「なら、オメエの極みへの目指し方、見せてみろ!!」

 

 圧倒的な気をまき散らし、その場から轟音と共に消える超サイヤ人3。

 

 次に現れたのはターニッブの左。

 

 強烈な右のストレートを放つ悟空に対し、ターニッブはこれを左手で受け止める。

 

「流石だ。超サイヤ人3についてくるんか!」

 

「俺もまた、限りなく強さを求める者だ!」

 

 ターニッブの右正拳突きを受け止める孫悟空。

 

 そこから両者、脚を止めての撃ち合い。

 

 互いに向かって放たれる拳と蹴り。

 

 互いの攻撃のどちらが上回るか。

 

 純粋な力と力。技と技。

 

 退くことを知らぬサイヤ人、二人。

 

 ターニッブの表情は、闘いの場に身を置く者と思えぬほどに清々しい。

 

 対する孫悟空は不敵であった。

 

 一つ分かることは、二人にとってこの闘いは何よりも尊く、代え難い愉悦の一時であることだ。

 

 後方に弾き飛ばされる度に頭を突きつけ合う二人。

 

 舞い散る血が、飛び散る気が、地面に巻き起こる亀裂が、二人の闘いの激しさを物語っている。

 

 またたく間にボロボロになっていく二人のサイヤ人。

 

 それでも両者は退かない。

 

 互いの極みを求めんと、ただひたすらに互いの拳を、蹴りをぶつけ合う。

 

 強烈な炸裂音と共に悟空の右正拳突きを左に躱し、ターニッブの右拳が孫悟空のみぞおちにヒットした。

 

「くはっ!」

 

 耐え切れず顎が下がる悟空に対し、全力の気を込めた左の拳を突き上げる。

 

「破ぁああっ!」

 

 跳び上がりながらのアッパーカットを喰らわすターニッブは、宙にて直ぐに身を翻した。

 

「かああっ!」

 

 悲鳴と共に天高く舞う超サイヤ人3。

 

 螺旋を描きながら地面に上半身から倒れ込む。

 

 ターニッブは静かに着地した後、拳を構える。

 

「へっ……へっへっへっへっへっへ……!」

 

 ダメージを負いながらも、超サイヤ人3となった悟空は立ち上がってきた。

 

 これにターニッブも感嘆を込めた声で、清々しい笑みを浮かべて語りかける。

 

「…凄い奴だ。俺の全力を込めた渾身の一撃だった。それをまともに受けて、まだ立ち上がるのか…!」

 

 対する悟空は、心底楽しそうな明るさと凄みのある笑みを浮かべている。

 

「ホントにすげえよ、オメエ……! オラ、油断なんかしちゃいなかったつもりだけどよ。超サイヤ人3になったオラ相手に、たったの一撃でこんだけのダメージを叩き込むなんてよ」

 

 その時、この場にいるもう一人のサイヤ人から声がかかった。

 

「カカロット、いつまで様子見をしている! その男に遠慮は無用だ! 貴様の全力を見せつけろ!!」

 

 ライバルであり、親友でもある男の言葉に超サイヤ人3はニヤリと笑う。

 

「へっ……だよな、ベジータ! オラもそう思ってたところだぜ!!」

 

 これにターニッブは笑う。

 

 より強さを増すというサイヤ人に対して、己の全力が何処まで通じるのか知り得ると。

 

「ふっ、ひとの悪い奴だ。全力を出すと言っておいて、まだ力を隠していたのか」

 

「ちょっと違うな。こっから見せるんは、普通の超サイヤ人の力じゃねえ。超サイヤ人3も、超サイヤ人のバリエーションに過ぎねえからな」

 

「どういうことだ?」

 

「見したほうが早いさ」

 

 悟空は超サイヤ人3の変身を解き、普通の黒髪のサイヤ人の状態へと戻る。

 

 同時に、先ほどまでの超サイヤ人の黄金の気と白い気が入り混じったオーラを身に纏う。

 

 これにターニッブは構えを取りながら、感じた。

 

(雰囲気が、変わった……! それだけじゃない。孫悟空の気が感じられない? いや、違う! 気の純度が高まって、透明に見えるんだ!)

 

 ニヤリと笑う悟空の全身を青い粒子が纏わっていき、姿が青い炎に包まれて消えて行く。

 

 それが解きほぐれて行くごとに、纏うオーラが青いものに変化した。

 

 逆立つ青い髪と鋭い目は、先までの超サイヤ人とは似て根本的に非なるもの。

 

「これが超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人。超サイヤ人ブルー! どうだ、ターニッブ! これがオラの全力だぁああっ!!」

 

 放たれる威圧感と咆哮に、ターニッブは身震いする。

 

「な、なんて気だ……!」

 

 その言葉に、悟空は嬉しげな笑みになる。

 

「わかるんか? さすがだな。神の気を見ただけで、オラの戦闘力を見極められるなんてよ」

 

 悟空は破壊神ビルスや付き人ウイスから、相当の修行を受けて神の気を感じられる域になった。

 

 これをターニッブは初めて見て感じたというのだ。

 

 掛け値なしに賞賛されるべきことだ。

 

「素晴らしい強さだ。ならば俺も改めて、全力を持って挑ませてもらう。超サイヤ人ブルーよ!」

 

 ターニッブは宣言すると同時に、先までの全力の動きで悟空の懐に飛び込むと、強烈な左ストレートを放った。

 

 だが、吹きすさぶ衝撃波とは対照的に乾いた音で、拳は左手に掴み止められている。

 

 止められたと見るや、掴み止められた拳を引いてターニッブは逆の拳を振り抜いた。

 

 拳は空を切り、強烈な左の拳がターニッブの腹に突き刺さる。

 

「…がはぁっ!」

 

 肺の中の空気を吐き出し、ガラ空きになったターニッブの顔面に右の上段回し蹴りが炸裂した。

 

 弾き飛ばされ、遥か後方の地面に巨大な土煙を上げながら、背中から叩きつけられる。

 

 僅か一瞬の攻防だったが、先までと違い両者のレベルには圧倒的な差があった。

 

 たったのニ撃でターニッブは、肩で息をする程のダメージを負いながらも立ち上がってきた。

 

 そんなボロボロの彼に対し、真正面に向かい合いながら悟空は淡々と告げる。

 

「オメエも超サイヤ人になれ」

 

 その言葉に、ターニッブは目を見開きながら問い返す。

 

「なに?」

 

 悟空は、そのままの表情で淡々と続ける。

 

「オラが全力を出したんだ。オメエも全力を出すんだ!」

 

「俺は、最初から全力だ」

 

 間髪入れずに返すターニッブに首を横に振り、悟空は冷めながらも燃える青い目で告げる。

 

「そうじゃねえ。オメエもなれんだろ? 超サイヤ人に」

 

 その言葉に、ターニッブは表情を曇らせる。

 

 だが、悟空は真っ直ぐに告げた。

 

「邪道だとか、そんな事どうだっていいじゃねえか。オラたちが目指す強さってのは、相手がどんだけ強ぇか知りてえ! その力に今の自分がどんだけ立ち向かえるんかを知りてえ! そのためにオラは闘ってきた。オメエは違うんか、ターニッブ!!」

 

 拳を握りしめ、悟空はサイヤ人として。

 

 一人の戦士として、最高の敵にーー友に告げた。

 

「超サイヤ人へのこだわりなんて捨てちまえ! そしてオラに見してくれ。オメエの全てを込めた力を!!」

 

「俺は……」

 

 真っ直ぐな声と瞳に、ターニッブは迷う。

 

 この忌むべき力。

 

 圧倒的にして絶えず高まり、溢れる力。

 

 全てを破壊する黄金の光。

 

 理性すらも闘争と破壊の意志に塗り替えられていく、あの恐怖を越えて。

 

 己の力と化した超サイヤ人。

 

 忌み嫌いながらも、己の一部であると受け入れるまでに時間を要した。

 

 ただの武道家同士の戦いには不要だと、使うつもりはなかった。

 

 だがーー目の前のサイヤ人は、その忌み嫌った力を使いこなすだけで飽き足らず、限界を超えて変身した更なる境地を自分に見せてくれている。

 

 ただ、自分と戦うために。

 

「何をためらってやがる、貴様!」

 

 その時、誇り高いサイヤ人の王子ベジータが、叫んだ。

 

「カカロットと全力を賭して闘いたいと言ったのは、貴様ではなかったのか!? その男は、破壊神にすらもその強さを認めさせた宇宙最強のサイヤ人の一人だ! その男を前にして、自分の下らん拘りのために勝負を棒に振るつもりか!?」

 

 親友の言葉に思わず悟空は笑みを浮かべる。

 

「へっ、ベジータ……」

 

 自分もまた、ベジータと同じ気持ちだからだ。

 

 ターニッブの全力を見たい。

 

 互いに全力を持って、とことんやり合いたいだけだ。

 

「貴様もサイヤ人ならば見せてみろ! 俺たちに!!」

 

 ベジータの熱い言葉に、ターニッブは静かに頷いた。

 

「……わかった。お前たちの言うとおりだ。今、自分の全力を賭しても倒せるのか分からない強敵(とも)が目の前にいる。そんな男に対し、力を出し惜しむなど武闘家としては愚の骨頂!」

 

 拳を握りしめ、ターニッブは力強い意志を持った黒い目を悟空に向ける。

 

「そうだ、ターニッブ! 超サイヤ人もまた、オメエの中の力の一つだ!!」

 

 応えながらも、悟空は続ける。

 

「オメエはすげえよ。超サイヤ人を否定したからこそ、それだけの力を通常の状態で引き出してる。そのオメエとなら出来るはずだ! 限界を超えた最高の戦いをなぁ!!」

 

「ならば行くぞ、孫悟空! これが俺の全力だっ!!」

 

 拳を握りしめ、黄金の気を纏いながら、ターニッブは叫んだ。

 

 強烈な気柱が天を衝き、落雷が地を穿つ。

 

 目の前には、ただ黄金の気を纏った超サイヤ人が逆立つ髪を揺らして立っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その瞳と纏うオーラを見て、悟空はニヤリとした。

 

「ふっ、ベジータ……。こりゃとんでもねえヤツを目覚めさしちまったかもしんねえな」

 

「なんだったら俺が代わってやろうか? カカロット」

 

 揶揄するようなベジータの声にそちらを見て笑い返すと、悟空は静かに構えを取りながら、超サイヤ人と化したターニッブを見る。

 

「見た目はただの超サイヤ人とほとんど変わんねえのに、感じる気が無限にアップしていきやがる……!」

 

 自分の提案を無言で拒否した悟空にニヤリと笑い、ベジータも頷く。

 

「超サイヤ人に似てはいるが、身に纏うオーラとあの黒い瞳孔が現れた目は超サイヤ人3のソレだな。髪の色も普通の超サイヤ人よりも濃い金色だ」

 

「ああ。神の気を使わずに、これだけの力を極めれるなんてなぁ。超サイヤ人3の力を超サイヤ人の状態で引き出してるって訳か」

 

「言うなれば千年に一人の戦士。名付けるとすれば、まさに"真・超サイヤ人"だ!」

 

 興奮気味に言うベジータに、悟空はニヤリとしながらターニッブを見据えた。

 

「おいおいベジータ。そいつはちょっと誉めすぎじゃねえか? ホントに千年に一人かどうか、超サイヤ人ブルーになったオラが、はっきりさせてやらぁ!!」

 

 強烈な蒼銀の炎のような気を纏い、孫悟空はターニッブと対峙した。

 

 




ありがとうございました(´ー`* ))))


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地球育ちのサイヤ人 対 真・超サイヤ人★

 後編です(´ー`* ))))

 頭を空っぽにして見てください(´ー`* ))))



 

【挿絵表示】

 

 

 ターニッブという男について、少し語ろう。

 

 彼は、惑星サイヤに住むサイヤ人だ。

 

 惑星サイヤのサイヤ人達は、穏やかな心と悪を屈する強い力を持った戦士達。

 

 地球人と変わらない程度の身体能力しかないが、街などを造る文明人が共存している。

 

 周辺の星々からも優れた知性と身体能力を買われ、銀河パトロール隊員にも何名か参加しているらしい。

 

 そんな平和な世界に現れた純粋な戦士。

 

 力を正義の為に使うのでも、弱者を守る為にでもなく、まして生きる為に使うのでもない。

 

 ただ、己の信念の為だけに。

 

 ただ、強さを極める為に、自己研鑽の為だけに使う。

 

 それが、ターニッブだった。

 

 正義感がないわけではない、むしろ強い方だろう。

 

 弱きを守ることを否と考えるのではない、むしろ弱いのは己自身の心だと語る。

 

 他者を敬い、己を未熟と断じ、自分を高めることを目的に彼は拳を振るう。

 

 真の強さに近付く為に。

 

ーーーーーー

  

 そんな彼にとって今、身に纏う力は己の道を否定するものだった。

 

 積み重ねた修練、高めた自己。

 

 親友や宿敵との研鑽。

 

 それらを全て無駄と言い切るかのような圧倒的な力と驚異的な成長。

 

 絶えず高まり、溢れる気。

 

 それに比例して強まる破壊衝動。

 

 そんな己を見下ろした後、ターニッブは目の前の青い超サイヤ人を見据えた。

 

 神の気とやらを纏う、自分と同じ顔の純粋なサイヤ人の戦士を。

 

 互いに構える。

 

 奇しくも鏡に写ったかのような両者の構えは、腰ために両手をたわめて右脇に置いて気を高める為のモノ。

 

 両者の掌には、一つの青い光の球が出来上がっていた。

 

「オメエも使えるんか。かめはめ波を!!」

 

「惑星サイヤの王が俺に叩き込んだ技だ。気を両手に凝縮させて放つ。しかし、地球育ちのお前にも似た技があるとは、驚きだ」

 

「…そういや。サイヤ人の王子っちゅうベジータのギャリック砲も似てるな」

 

 気を高めながら、悟空がベジータを見ると彼は不快げに言った。

 

「俺のはサイヤ人の王家に代々伝わる技だ! 貴様のかめはめ波が似てると言え!!」

 

 悟空はその言葉に、ニヤリと返すとターニッブに向いた。

 

「真正面から撃ち合おうぜ!」

 

「…受けて立とう!!」

 

 同時に上下に合わせた両手を前方に突き出しながら、悟空とターニッブは、青白い光の一撃を放った。

 

「か〜め〜は〜め〜波ぁあああっ!!」

 

「はぁぁああっ、セイヤァ!!」

 

 互いの真ん中でぶつかり合う青白い光と光。

 

 拮抗した二つの光線は、相殺すると同時に周囲に尋常でない破壊をもたらしながら、爆発した。

 

「…ダダダダダッ!!」

 

 気合い一閃、一気にターニッブの懐に踏み込むと悟空は鋭い拳と蹴りの連打を放ちはじめる。

 

 拳と蹴りがぶつかり合いながら、ターニッブも攻撃を返す。

 

 至近距離で互いにラッシュを放ちながら、避ける。

 

 悟空の攻撃は鋭く、速く、炸裂弾のように弾ける。

 

 対するターニッブの攻撃は、岩のように重い。

 

 ラッシュの手数なら悟空。

 

 一撃、一撃の重さならターニッブ。

 

 スピードは互角。

 

 両者の気功波の一撃も五分と五分。

 

 拮抗したこの打ち合いの決め手となるのは、技の組み立てとキレ。

 

 そして集中力。

 

 ターニッブの右正拳中段突きを左に見切り、カウンターの右フックを顎を狙って返す悟空。

 

 ターニッブはコレを顔の横に左掌を置いて掴み止め、右の拳を鳩尾と顎に向かって二連打放つ。

 

 悟空は鳩尾に放たれた拳を膝で蹴り上げて捌き、顎への一撃を左掌で掴み止める。

 

 睨み合う両者。

 

 同時に一歩下がりながら、右の膝蹴りを互いに相殺。

 

 お互いに掴み止めた右拳をパッと手放し、左掌を握って拳を作るとお互いに向かって放ち合う、

 

 悟空の左ストレートとターニッブの左正拳中段突きがまともにぶつかり合う。

 

 踏み込んだ威力も載せて放つ悟空の拳。

 

 対するターニッブの拳は、両足をしっかりと地面につけて広げ放つ。

 

 押し込むための悟空の拳と、押し負けないためのターニッブの拳。

 

 悟空が燃え盛る火炎の勢いを持って攻めれば、ターニッブは如何なる攻撃もしっかりと受けて返す巨山の如き守り。

 

 山はただ受けるのではなく、活火山となりて飛び散る溶岩の如き勢いで拳を放ってくる。

 

 悟空は風の如くその場でステップを刻んで、攻撃に徹しながらも冷静に避けていく。

 

 どちらも譲らない。

 

(…大したモンだ。超サイヤ人ブルーになったオラについてくるなんてよ。攻撃を喰らえば食らうほどに、奴は気が高まり、反応速度を増している。ビルス様と初めてやり合った時のオラみてえだな)

 

 あの時の自分もまた、ビルスの戦闘力に引き上げられていった。

 

 ならば“真・超サイヤ人”とベジータが名付けたターニッブは、超サイヤ人ブルーとなった自分にどれだけ近づいてくるのか。

 

 悟空は、ニヤリと笑うと一気に気を高めた。

 

「…!?」

 

 同等のレベルで打ち合いをしていたターニッブの目にも分かるほど、悟空は動きを上げた。

 

 ガードに回るターニッブを、悟空は強烈な左右のフックでピンボールのように弾き飛ばす。

 

 ガードした両手を見ながら、ターニッブが眼を見張ると目の前に悟空の左上段回し蹴りが迫っている。

 

 咄嗟に上体を後ろに反らして、顎先で紙一重で避けると同時、ピタリと悟空の足裏が止まり、そのまま足裏が槍のように突き出される。

 

 咄嗟に右腕を畳んで顎の前に置いて受けるも、ターニッブは後方へ蹴り飛ばされた。

 

 両手を地面につき、引っ掻きながら後方へ引きずられるのを止めようとする。

 

 その目の前に悟空が迫る。

 

「……くっ!?」

 

「どうしたぁ!? オメエの力ぁ、こんなもんかぁあああ!!!」

 

 叫びながら、情け容赦のない連撃が放たれる。

 

 これをベジータは静かに見据え、ニヤリと笑う。

 

「カカロット…。ターニッブの超サイヤ人を見極めようというのか」

 

 連撃の中から、右ストレートを選んでターニッブも右の拳を合わせる。

 

 ぶつかり合う両者の拳。

 

 しかし、圧倒的な戦闘力の差にターニッブが弾き飛ばされる。

 

(真正面から打ち合ったところでスピードもパワーもカカロットの超サイヤ人ブルーの方が上だ。だが、ターニッブの奴が変身した超サイヤ人は、一気に気が高まっていく。カカロットの攻撃を受けて戦闘力が桁違いに上がっている、か)

 

 ターニッブの無限の戦闘力の上昇を感じながら、ベジータは静かに悟空を見据える。

 

「嬉しそうだな、カカロット。俺たちの超サイヤ人には、まだまだ無限の可能性が秘められている」

 

 真・超サイヤ人と名付けたあの力は、どこまで超サイヤ人ブルーに近づくのか。

 

 それとも超えるのか。

 

 ベジータは。

 

 そしておそらく悟空も、それを期待している。

 

 超サイヤ人ブルーとは別の可能性。

 

 ならば見るしかない。

 

 超えるしかない。

 

 それがーー

 

「戦闘民族サイヤ人だ!!」

 

 何度も地べたに叩き伏せられる。

 

 その度に立ち上がる。

 

 拳を繰り出す。

 

 それ以上の一撃。

 

 今まで以上の連撃。

 

 瞬く間に叩き伏せられながらも、ターニッブは立ち上がる。

 

 目の前に立つ男の強さに近づく為に。

 

 初めてターニッブは、無限に戦闘力が上昇するこの姿に感謝していた。

 

 自分の全てを出して尚、それを上回る孫悟空という敵に出会えたことにも。

 

(気が更に上がってやがる。ビルス様とやり合った頃のーー神の気を吸収した時のオラと同じぐらい、か)

 

 立ち上がってくるターニッブを叩き伏せながらも、悟空は気付いている。

 

 受ける拳が徐々に重くなっていることに。

 

 手が痺れ始めていることに。

 

 そして、攻撃を捌くのが難しくなってきていることに。

 

「…ターニッブよぉ、オメエはまだ自分の力として超サイヤ人を認められねえんか?」

 

 構えながら、立ち上がってくるターニッブを見据える。

 

 痛みを与えれば与える程に。

 

「凄い男だ……孫悟空。お前は、超サイヤ人ブルーの全てをもって俺に自分を超えさせようとしていた。お前自身が強くなった俺を、更に一歩超えるために!!」

 

 時間を与えれば与える程に。

 

 無限に力を増していく、正にサイヤ人の権化ともいうべき姿に。

 

「……うぉおおおおおおおおっ!!!」

 

 ターニッブは立ち上がると同時に、気を入れて身に纏う黄金のオーラを激しく燃やす。

 

 悟空はそれに目を見開き、その頬に一筋の冷や汗を伝わせている。

 

「気が一気に跳ね上がりやがった……! こいつは……!!」

 

 戦いを見ていたベジータもターニッブの上昇を目の当たりにして震える。

 

「……フリーザの金色と同等か。随分と成長したもんだな」

 

 対峙する悟空も笑みを浮かべながら、一気に気を高めて踏み込む。

 

 三度、ぶつかり合う拳と拳。 

 

 だが、今度はターニッブは吹き飛ばされない。

 

 真っ直ぐな目で彼は悟空を見据えて来た。

 

(こいつ……! 一気に限界を超えやがった……!! 真・超サイヤ人ってのはこれほどか……!!)

 

 驚きながらもその口元に刻まれているのは笑みだ。

 

 強敵の誕生に心から、孫悟空は喜んでいる。

 

 超サイヤ人ブルーをも上回る成長速度を見せたターニッブの力に。

 

 その境地に。

 

「だが、勝負はまだまだこれからだぜぇ!!」

 

 悟空のその言葉にターニッブはニヤリと笑う。

 

 清々しい笑みが、圧倒的な気を纏ってなお変わらない。

 

 打たれる。

 

 打つ。

 

 何度も何度も。

 

 スピードとパワーで一枚上をいかれて尚、孫悟空は互角の戦いを演じている。

 

 ターニッブの癖や思考は先の戦いから、既に見抜いている。

 

 そこから動きを予測して攻撃を返すのは、孫悟空にとって難しいことではない。

 

 強い相手との闘いに興奮し、アドレナリンがお互いの脳から分泌され、圧倒的なダメージを受けながらも痛みを感じない。

 

 やがてーーターニッブの顔には大量の汗が浮かび始めていた。

 

「はあ!!」

 

 悟空の気合の右ストレートが、まともにターニッブの顔に入り、後方へのけ反る。

 

 ターニッブは、それをきっかけに纏っていた激しい炎のようなオーラが消え、通常の超サイヤ人へと変化した。

 

 見た目にはほとんど変化は見えないが、無限に上昇していた気が落ち着いたのだ。

 

 おまけに、先までは見えなかった疲れやダメージが一気に表面に現れたようで、ターニッブは肩で息をし始めていた。

 

 無理もない。

 

 神の域に居なかった者が、いきなりその境地に引き上げられたのだ。

 

 体が馴染むわけがない。

 

 悟空はそう思っていた。

 

 だがーー。

 

 殴りかかってくるターニッブの動きは、先ほどまでと何ら変わらない。

 

 むしろ、体に馴染んだように自然に動いている。

 

(こいつ…! その力をもう自分のモノにしちまってんのか?)

 

 真・超サイヤ人と呼ばれた先の姿は痛みを感じなくなり、相手のレベルに合わせてドンドンと戦闘力を上げることができる。

 

 言わば相手の強さから与えられる借り物の力。

 

 この形態に変身すれば、その間は文字通り無敵だ。

 

 反面、時間の経過と共に限界を超えた反動が体に現れる。

 

 超サイヤ人ゴッドのようなモノだ。

 

 一定時間が過ぎれば、無自覚に変身が解かれて通常の超サイヤ人に問答無用で戻ってしまう。

 

 もっとも先ほどまでのように、何の問題もなく拳をふるえるわけではない。

 

 痛みと疲れが一気に襲い来るのだ。

 

 普通に身体を動かすのさえ、激痛が走る。

 

 その激痛に反応が遅れ、悟空の攻撃をまともに喰らいはじめる。

 

「……がは!」

 

 ボディに一撃、顎を蹴り上げられ、のけ反ったターニッブの背後に移動してさらに後ろ回し蹴りを決めて吹き飛ばす悟空。

 

「つぇい!!」

 

 右手をかざし、更に気功波で吹き飛ばした。

 

 ターニッブの体は地面に叩きつけられ、土煙を天に向かって昇らせる。

 

「……左ぃ!!」

 

 悟空が叫びながら、自分の顔の横に右腕を構える。

 

 そこにターニッブの拳が打ち込まれていた。

 

 汗を掻き、肩で息をしながらも超サイヤ人となったターニッブの目は、一向に衰えていない。

 

 むしろ、その闘志は燃え上がっている。

 

(これだけ追い詰められていて、攻撃の重さが変わらねえ。それだけじゃねえ、スピードが一向に鈍らねえ。コイツは、自分がどんだけ追い詰められても戦えるように。日頃から常に自分を追い込む修行をしてんだ……!)

 

 目を鋭く細めながら、悟空は笑う。

 

(負けらんねえ。コイツにだけは、負けらんねえ……! 自分を追い込む修行なら、オラは誰にも負けてねえ!!)

 

 互いに拳と蹴りをぶつけ合う。

 

 水銀のオーラと黄金のオーラ。

 

 二人の同じ顔をした超サイヤ人。

 

 一撃が直撃するたびに、後方へ弾かれる両者の顔。

 

 その度に笑みを浮かべて。

 

 瞳にギラギラと燃える闘志を滾らせて。

 

 二人のサイヤ人は己の限界を超えて相手を倒さんと眼を見開く。

 

「最高だ……! これほどの奴だとは思わなかった……! オメエもそうだろ、ターニッブ!?」

 

「……ああ。この勝負、俺は全てを賭すことができる!! その上で俺は、お前を超える!!」

 

「なら、決めようぜ! どっちが強えんかをなぁああ!!」

 

 更に激しく。

 

 更に強く。

 

「まだだ! オラの力、こんなもんじゃねえ!!」

 

「ああ、まだまだぁ!!」

 

 高まる二人の拳。

 

 気と気。

 

 半日の時が、経過した。

 

 そんな二人のサイヤ人をジッと身じろぎ一つせずに見据えるベジータ。

 

 強烈な右ストレートを互いの顔面にぶつけ合い、のけ反りながら距離が開く。

 

 ついにあの孫悟空が肩で息をし始めた。

 

(あのカカロットを、あそこまで追い詰めるとは……! やはり本物か)

 

 悟空を追い詰めているターニッブという男を見ながら、ベジータは目を細める。

 

 二人の体力はもう限界。

 

 おそらく、これが最後の攻防になるだろうとベジータは読んでいた。

 

「……孫悟空。ここからが、本当の勝負だ!!」

 

 ターニッブは、それだけを言うと静かに己の気を高めていく。

 

 ベジータが目を見開いた。

 

「あの野郎……! 時間切れになったんじゃないのか!?」

 

 漲る黄金のオーラは、先までの金色よりも濃く。

 

 翡翠の瞳には黒い瞳孔がハッキリと見える。

 

 同時に、ターニッブの気が再び無限の上昇を始めた。

 

「へへっ、限界超えて。なお来るか、真・超サイヤ人!!」 

 

 嬉しそうに悟空は笑う。

 

 超サイヤ人ブルーを維持していられる体力はもう殆どない。

 

 だが、悟空は静かに笑っている。

 

 拳を腰に置いて、悟空は気合を入れた。

 

「はぁああああっ!!」

 

 瞬間、ベジータが目を見開く。

 

「な!? カカロットの奴め!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 悟空もまた、金色ではなく黄金のオーラを身に纏ったのだ。

 

 超サイヤ人3のオーラと瞳を持った超サイヤ人。

 

 そう。

 

 ターニッブが変身した無限の戦闘力を誇る“真・超サイヤ人”に覚醒してみせたのだ。

 

「……お前……っ!!」

 

 目を見開き、驚くターニッブに悟空は笑みを返す。

 

 鋭く冷たい笑みで低い声を出す。

 

「なるほど。初めて超サイヤ人に変身した時みてえに、軽い興奮状態になるみてえだな……! 超サイヤ人ブルーとは、また違う」

 

 その気の量は超サイヤ人ブルーになった時よりも一回り上だった。

 

「……そうか。この姿は“俺”の覚醒した超サイヤ人のレベルに合わせてドンドンと力が上がるんか」

 

 自分の状態を見下した後、ターニッブを正面に見据えて笑う。

 

「ありがとよ。オメエのおかげで俺はまた、最強に近づけそうだ……!」

 

 無限に上昇を始める自分の気を確認しながら、悟空はターニッブに笑いかける。

 

 ターニッブもまた、静かに拳を構えて笑った。

 

「流石だな、孫悟空。俺は俺の持てる力の全てをもってお前に挑み、お前はその力をさらに上回らんとする」

 

「ああ。相手がオメエじゃなけりゃ、俺はここまで燃えることもなく、この場所にたどり着くことはできなかった。オメエとこのままやり合や、俺もまだ見たことのない世界が見えそうだぜ……!!」

 

「俺もだ……! この熱い想いを言葉にするのは難しいが、強いて言えば。闘いの中に、答えはある!!」

 

 熱く滾る二人の闘志は、お互い以外に目に映らない。

 

 ぶつかりあう。

 

 言葉ではなく、拳を交わす。

 

 ガードもフットワークもない。

 

 ただ、求めるまま。

 

 求められるまま。

 

 己の身一つで殴り合う、二人の超サイヤ人。

 

 孫悟空とターニッブ。

 

 不敵な笑みを浮かべて、ただ激しく拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う。

 

 両者の纏う黄金の炎は、一向に収まるところを知らない。

 

「……奴ら、いつまでやり合うつもりだ?」

 

 夜が更け、朝が来て。

 

 それでも変わらず殴り合う。

 

 顔を後方に弾かれて、その度に頭を突き付け合う。

 

 一歩も退かない。

 

 強烈に負けたくないという意志が見える。

 

 強さを求め、純粋に戦うことを望む者。

 

「カカロット、貴様ずるいぞ。自分だけ楽しみやがって……!」

 

 限界を超えて。

 

 お互いの強さが、本来なら底を付いたお互いの力を更に引き上げている。

 

 ベジータの目には、二人のサイヤ人の笑顔が余りに眩しく写っていた。

 

 悟空とターニッブの二人は、互いに右の膝蹴りをぶつけ合い、踏み込んで左の拳を互いの顔面に放り込む。

 

 強烈な一撃に後方へはじけ飛ぶ両者の顔。

 

 そのままのけ反った姿勢で、しかし両足を地面に擦り付けて後ろに下がる。

 

 互いに顔を戻し構えると、ついに二人が纏っていた黄金のオーラが掻き消える。

 

 漆黒の髪に戻る二人のサイヤ人。

 

 だが、その闘志は尽きることはない。

 

 指先が一本でも動く限り、二人は退かない。

 

「へ……へへっ!」

 

「ふ…、ははっ!」

 

 互いに屈託のない明るい笑みと清々しい笑みを浮かべて。

 

 無邪気に拳を握る。

 

 フラフラになりながらも、決して退かない。

 

 腫れた瞼で目が半分塞がりながらも、浮かべた笑みは変わらない。

 

 押せば倒れるような千鳥足で歩み寄りながらも、両者は強烈な拳と蹴りを食らわせ合う。

 

「……ち、くしょう……! 足りねえなぁ……! こんなもんじゃ、足んねえよ!!」

 

「ああ……! もっと……だ…! もっと! 闘って……いたい!!」

 

 フラつきながら、己の体が悲鳴を上げている。

 

 その悲鳴に向かって悟空とターニッブは互いに笑いながら、不満を述べ合う。

 

 もっと闘わせろと、己の肉体に告げる。

 

 目の前の相手と、もっと闘わせろ、とーー。

 

「いい加減にしろ、貴様らぁあ!!」

 

 その時、ベジータが叫んだ。

 

「いつまでやり合うつもりだ!? 肉体が限界を超えて悲鳴を上げ始めているんだぞ!? カカロット、ターニッブ! 貴様らは、死ぬつもりか!!」

 

 このままやり合えば、確実に片方の。

 

 最悪両方の命が尽きる。

 

 それを悟ったベジータの声に、悟空はボロボロになった顔を向けて言った。

 

「けどよ、ベジータ。こんな半端じゃ、終われねえよ……オラ!!」

 

「な!? カカロット、貴様……!!」

 

 フラフラになりながらも。

 

 丸一日殴り合っていながらも。

 

 限界を超えて戦いながらも。

 

 孫悟空は満足していない。

 

 もっと闘いたいと、目が告げている。

 

 サイヤ人の闘争本能が、限界まで高まっている。

 

 いや、これはーー孫悟空という武道家の魂だ。

 

「……そうか。界王よ、俺の言葉も聞くつもりはないらしいぞ? どうする?」

 

『任せておけ〜、ワシもこの事態を想定していなかった訳ではないからの〜』

 

 ベジータの言葉に界王が答え終わると同時、悟空の耳に強烈な甲高い声が聞こえた。

 

『悟空さ! いつまで遊んでるだ!!?』

 

「ーーいぃ!?」

 

 自分の妻の声ーーチチのそれだった。

 

 瞬間、悟空は冷や水を浴びせられたかのように昂っていた気分が冷めていく。

 

 と同時に肉体の痛みを思い出し、その場にうずくまってうつ伏せに倒れた。

 

「あ、痛ててててぇ……!!」

 

 その姿を見て、ターニッブもあっけに取られた表情になった後、己の肉体の激痛と悲鳴を思い出し、うずくまって仰向けに倒れる。

 

「う……ぐ……っ!」

 

 そんな二人のサイヤ人を呆れて見た後、ベジータは不敵に笑った。

 

「フン。やはり自分の妻の言葉には弱いか……!」

 

『地球の神やピッコロ、悟飯の協力を得てチチの声をワシが届けてやったぞ〜』

 

 界王の間延びした言葉に悟空が苦笑する。

 

 ベジータは、倒れて動けなくなったサイヤ人二人に向かい、悟空の腰袋にあった仙豆を二粒取り出した。

 

ーーーーーー

 

 朝焼けをバックに三人のサイヤ人が向かい合っていた。

 

「ターニッブ! オラ、すっげぇワクワクしたぞ!! オラ達と一緒に来ねえか!? オメエなら大歓迎だ!!」

 

 明るい声で告げる悟空を遮り、ベジータが口を開いた。

 

「待て、カカロット! ターニッブ、次はこのベジータ様と闘え!!」

 

「…おいおい、ベジータ! そりゃズリィぞ〜!!」

 

「貴様が言うな!! 丸一日やり合って、新しい超サイヤ人にもなりやがって!!」

 

 揉め出す二人のサイヤ人をターニッブが笑いながら、見た後に告げる。

 

「すまない、悟空。俺はまだ、修行中の身だ。未だ見ぬ強敵と出会うために。しばらくは、拳が選んだこの星で旅をするつもりだ」

 

 ターニッブの言葉に悟空が心底残念そうな表情になる。

 

 隣のベジータは、不機嫌そうに告げる。

 

「カカロットと対等に戦える貴様を満足させる強敵など、こんな星にいるものか!!」

 

 その言葉にターニッブは清々しい笑みを浮かべて告げた。

 

「強い奴はいるさ。力だけじゃない、心の強い奴がな」

 

 笑いながら応えるターニッブに悟空が明るく頷く。

 

「オメエの修行は、キツそうだな! んで、オメエはコレから何処に行くんだ?」

 

 コレにターニッブはニヤリと笑い、頑丈な拳を作ると天に向かって突き上げた。

 

「俺より強い奴に、会いに行く!!」

 

 悟空が、ベジータが見送る中、白い道着を着たサイヤ人の青年。

 

 ターニッブは、白いザックを肩にかけて彼らに背を向けて太陽に向かって歩いて行った。

 

 それを見送り、孫悟空は笑う。

 

「なあ、ベジータ!」

 

「なんだ?」

 

「オラ達も、もっと強くなろうぜ!!」

 

「…当たり前だ!!」

 

 互いに笑みを浮かべて、二人のサイヤ人は新しく出会った強敵の旅路を見送った。




ありがとうございました(´ー`* ))))


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惑星ベジータの王子 惑星サイヤに発つ

 ターニッブとの闘いを経て、悟空は変わった。
 
 これまで以上に貪欲に強さを求めるようになったのだ。
 
 いつか、もう一度相まみえるだろう、ターニッブとの再戦を目指して。
 



 破壊神ビルスの星。

 

 第7宇宙のどこかに、破壊神ビルスと付き人ウイスが住んでいる宮殿がある。

 

 彼らが見つめる中。

 

 中庭で、二人のサイヤ人が組み手をしていた。

 

 青い闘気を身に纏い、逆立つ髪と鋭い瞳は互いに睨み合っている。

 

「……カカロット、貴様!! いつまで超サイヤ人ブルーのままだ!?」

 

「なんだよ、ベジータ? オラ、真面目に組み手してんぞ?」

 

 互いに右ストレートを皮一枚で首を左に捻って避け、拳が通り過ぎたのを見ずに左ストレートを互いの顔面に放って中央で拳同士がぶつかり、相殺する。

 

 衝撃で互いが少し離れたところで、右の上段回し蹴りを放ちあい、刀の鍔迫り合いのようにぶつかって鎬を削る。

 

「新しい超サイヤ人はどうした!? ターニッブとの戦いで目覚めた、真・超サイヤ人は!?」

 

 叫びながら、悟空の右足を蹴りで跳ね上げてベジータは右の拳を突き出しながら突っ込む。

 

 これを悟空は弾かれた右足を後ろに下げて左足を前に出した姿勢で右ストレートを返した。

 

 再びぶつかり合う拳と拳。

 

「いやぁ、なんちゅうかよ? この真・超サイヤ人はオラだけの“とっておき”にしときてぇっつーか」

 

「ズルいぞ、カカロット!! 貴様、自分だけ!!」

 

「オメエだって、オラより先に目覚めてたら勿体ぶっだろ?」

 

「…黙れ! 貴様の都合は聞いていない!!」

 

「ベジータ、オメエもズリィぞ!!」

 

 凄まじい動きで空と地を駆け回りながら、拳と蹴りをぶつけ合う二人の超サイヤ人ブルー。

 

 ウイスがクスリと笑い、ビルスが興味深そうに言った。

 

「おい、悟空! その真・超サイヤ人ってのは、なんだ?」

 

 これに二人の超サイヤ人は拳をぶつけ合いながら、顔をビルスに向ける。

 

 組み手が途中で切られたことに悟空は不満そうだが、ベジータは静かに元の黒髪に戻った。

 

 それを見て、悟空も渋々と言った表情で超サイヤ人ブルーを解除する。

 

「この間、界王様に言われて向かった惑星で会ったサイヤ人の生き残り。そいつから学んだ超サイヤ人ブルーを超える可能性がある超サイヤ人さ」

 

「……そんな面白そうな話を何故、僕に内緒でやってるんだ?」

 

「いっ!? いやあ……! ビルス様が動くまでもないって界王様も思ったんじゃねえかなぁ!!」

 

 不機嫌そうに目を細めるビルスに、思わず悟空は手をパーにして左右に振った。

 

「君も見たのかい? ベジータ」

 

「はっ! 確かに凄まじい戦士でしたが、ビルス様のお目に適うとは……!」

 

「君も知ってると思うんだけどね? 間もなく全12の宇宙から全王様がお開きになる格闘大会が行われる。我が第7宇宙がその中で最も優秀であると証明する絶好の機会だ。強い戦士は一人でも多い方がいい。分かるね?」

 

 ベジータは口答えするのも終わり、静かに頷く。

 

 これにビルスがニヤリとした後、告げた。

 

「まあ、そのサイヤ人に関しては追々聞いていくとしようか。今はそれよりも、その“真・超サイヤ人”ってのに興味がある」

 

 言うとビルスは悟空に顔を向けて立ち上がりながら、告げた。

 

「悟空、なりなさい」

 

「……え~! でもよぉ、やっぱ“とっておき”だしなぁ!」

 

 渋る悟空にビルスは不敵な笑みを浮かべて構える。

 

「その新しい力がどれほどのモノか。僕が確かめてあげるよ」

 

「え!? ビルス様、それはーー!!」

 

 ベジータが不満そうに告げるとビルスがニヤリと笑う。

 

「その力を君が手に入れる為にも、見極めは大事だろ? 僕なら、普通に戦って悟空に負ける訳がないからね」

 

 その言葉にベジータが不満そうというか、不服そうに黙り込む。

 

 悟空は対照的にニヤリと笑った。

 

「ありがてえ! ようやく、ビルス様と組み手が出来るんだな!!」

 

「悟空、僕は無駄なことが嫌いだ。出すなら最初から出しなさい」

 

 両手を広げ、首を鳴らしながら構えるビルス。

 

 これに悟空も左手を顔の前に、右拳を腰に置いて不敵に告げる。

 

「ならーー見せてやる!!」

 

 瞳を閉じ、黄金の気柱が天に向かって衝き上がる。

 

 大気中の気が乱れ、悟空に集約される。

 

「……ほう」

 

 鋭い目でビルスがつぶやき、ウイスも真剣な表情になる。

 

「これはーー凄まじい力ですね。ベジータさん。この力を、悟空さんは『教わった』と言いましたね?」

 

「はい、ウイス様。界王から強大な力を持ったサイヤ人が居るから見極めてほしいとの依頼をカカロットが受け、俺も一緒についていきました。見た目は下級戦士なのか、カカロットと同じ顔の男でしたが」

 

「界王様が危険視する訳ですね。この力は、放っておけば際限なく高まるーー。全てを破壊する力です。己の理性さえもね」

 

 その言葉にベジータが目を見開いた。

 

 ウイスは静かに続ける。

 

「しかし、ただのサイヤ人がこの力を使いこなしている。超サイヤ人ブルーとなった悟空さんや貴方ほど超サイヤ人を極めていれば、この姿になっても破壊衝動に理性を喰われるなどという問題はないでしょうが」

 

 ウイスの言葉にターニッブが何故、あれほどまでに己の力を忌み嫌っていたのかをベジータは何となく理解した。

 

 あれほど、闘いに対して純粋な想いを抱いている男だ。

 

 そいつにとって、自分の理性を喰らい、本能のままに破壊することを望む超サイヤ人など、邪道そのものだろう。

 

「ウイス、おしゃべりはそのくらいにしろ」

 

 ビルスは静かにそう告げると、超サイヤ人3のオーラと瞳を持った超サイヤ人。

 

 真・超サイヤ人となった悟空を見る。

 

「それで、お前はその破壊衝動とやらを感じているのか?」

 

 その問いに、悟空は真っ直ぐにビルスを見返す。

 

「いや? 確かに軽い興奮状態にはなってるがーー。何て言うのかな? 頭に血が上り切って逆に冷たくなるってえのか。ブルーのは冷静だが、今の俺は冷え切ってるような感じだ」 

 

 悟空とは思えないほどに低く冷たい声、鋭い瞳に強烈な殺気。

 

 紛れもなく破壊衝動に影響されている。

 

 しかし、悟空は理性を保っている。

 

 彼は、超サイヤ人の破壊衝動をそのまま高めながらも、孫悟空そのものだった。

 

「なるほど。ぶち切れ過ぎて逆に頭が冷え切ったような状態か」

 

「フフ、多分な?」

 

 不敵な笑みに対し、ビルスは静かに構える。

 

「…本気を出してやる。その姿で何処まで食らいつけるか、試してみろ」

 

「ああ! ありがとよ、ビルス様!!」

 

 ビルスは静かに紫色の闘気を身に纏う。

 

 静かに腰を落とし、両者がその場から弾けた。

 

 同時に中央でぶつかり合う拳と拳、蹴りと蹴り。

 

 一撃一撃に地面がひび割れ、徐々に断裂し、力によって巻き上げられる。

 

 空も地も関係ない、二人の闘場。

 

 星をも一撃で破壊するビルスの拳を冷静にーー否、冷徹ともいえる表情で見据えて、紙一重で避ける悟空。

 

 即座に返しの強烈な右の拳をビルスのボディに放つも、それはビルスの左手に受け止められている。

 

「……なるほど。こういうことか」

 

 徐々にパワーがビルスに近づいてきている。

 

 反応速度も、スピードも。

 

 打たれ強さにあっては桁が違う。

 

 痛みを感じていないようだ。

 

 相手の攻撃を喰らうことで、その相手のレベルにまで一気に気を高めて合わせている。

 

 戦いの権化とも言うべき姿だ。

 

 本気の右ストレートを右ストレートで打ち返される。

 

 互角の威力に、ビルスは口の端を凶暴に歪めて笑った。

 

「いいぞ、面白くなってきた!!」

 

「……そうか? 俺は面白くねえな」

 

 だが、対峙する悟空はつまらなそうに告げる。

 

「ん? 興醒めするようなことを言うじゃないか、悟空」

 

「悪ぃな、ビルス様。だけどよ、コイツはターニッブの言ってたとおりだ」

 

「ターニッブ……?」

 

 自分の掌を広げて見据える。

 

 無限に上昇する気を、悟空は不満気に自分の姿を見据えた。

 

「これは、自分の力って感じがしねえ。無理やり引き上げられてる感じだ。修行で積み重ねて得たもんでも、強敵と戦って変化しているような感じでもねえ……」

 

 冷徹な翡翠の瞳が己の拳を見据える。

 

「こんなもんは、ただの力だ。コイツでビルス様を超えたとしても、本当に俺の実力とは言えねえ」 

 

 この力を振るっていたターニッブを思い描いて、悟空も頷く。

 

「そのターニッブて奴とは、とことんやり合ったんだろ? なんで僕とはやり合えないんだ?」

 

「簡単だ。ビルス様との差が、殆ど無くなって来てるからだ」

 

「!? なんだと!? お前…、僕の底が分かったような口を……!!」

 

 不機嫌になるビルスを前に悟空は静かに、淡々と告げる。

 

「分かるさ。この力は、変身して突っ立ってるだけで気が上がる。その上昇が、アンタの力に迫ってるんだ」

 

「面白い、なら尚のこと。僕と戦ってもらおうか!!」

 

 今まで以上のスピード、そしてパワーを込めた右の拳。

 

 まともにガードすれば、超サイヤ人ブルーの状態でも一撃でKOされる程の。

 

 だが、鈍い音と共に真・超サイヤ人と化した悟空は、左手でその強烈な一撃を受け止めた。

 

「な!?」

 

 ビルスがハッキリと狼狽する。

 

 自分の本気の一撃は、ウイスを除けば同じ破壊神であるシャンパにしか止められたことが無かった。

 

 それを今の悟空は簡単に受け止めたのだ。

 

「お、お前……!!」

 

「悪ぃな、ビルス様。どうやら今の俺に出来ねえことは、何にもねぇらしい」

 

 不敵な笑みと共に、悟空はそれだけを告げる。

 

 ビルスは静かに驚いた表情から、真剣な顔になると悟空の顔に浮かんだ滝のような汗を見る。

 

 見れば息を切らしている訳ではない。

 

 だが、悟空の強靭な肉体から汗がここまで噴き出るのは異常だった。

 

 ウイスの修行を受けて、限界まで鍛えられた時のような汗の流れ方。

 

「その力、後どれだけ使えるんだ?」

 

「? さあな。ターニッブとやり合った時は、無我夢中だったかんなぁ」

 

 静かに目を細め、ビルスは悟空に左の拳を撃ち込んだ。

 

 それをあっさりと悟空は右手で受け止める。

 

「なんだよ、不意打ちか?」

 

「……フム。お前の力はどうやら、超サイヤ人ゴッドと同じように時間切れがあるようだね」

 

「! フフ、流石だな。そのとおりだ。俺自身も後どれだけ維持できるのかは知らねえがな」

 

 笑いながら言う悟空に、ビルスは静かに告げる。

 

「そのターニッブとの闘いは丸一日だったんだな? その間にお前はその姿でどれだけ戦った?」

 

「俺もターニッブも実際になっていられる時間は少なかったさ。ターニッブの奴は、変身して一時間くらいで変身が切れて、ただの超サイヤ人になっちまったからな。俺も似たようなもんじゃねえかな?」

 

「なるほどな。つまりーー時間切れだな」

 

 瞬間、悟空は自分の体に強烈な脱力感と倦怠感を覚える。

 

 同時に激しかった黄金のオーラは消え、通常の金色の超サイヤ人に戻ってしまった。

 

「し、しまった……! けど、なんで!? ターニッブの時は、一時間くれえはーー!!」

 

「おそらくだが、変身に体が慣れていないだけだろう。それにしても、確かに厄介だ。ソイツになられたら、早目にケリを付けないと、いずれは追いつかれるって訳か」

 

 顎に手をやりながらビルスはニヤリと笑う。

 

「よかったじゃないか、ウイス。これからは地道な修行は必要ないんじゃないか?」

 

「そうですね。無限に上昇するということは、私と戦えばビルス様の域を一気に超えてしまう可能性もありますからねえ……」

 

「おい……!!」

 

 微笑みながら言うウイスにビルスが嫌そうな顔になる。

 

 だが、これに悟空が首を横に振った。

 

「悪い、ウイスさん。オラ、この力は金輪際ビルス様やアンタとの組み手では使いたくねえ」

 

 その言葉にウイスが目を点にし、ビルスが目を見開いた。

 

 強くなることこそが、孫悟空の目的ではなかったのかと二人は思わず悟空を見る。

 

 彼は静かに言った。

 

「オラもベジータも相当修行してさ、超サイヤ人ブルーになれたんだ。なのによ、アンタやビルス様みてえな強い奴がまだまだ居てよ。フリーザなんか、たった一ヶ月でオラ達より強くなってた」 

 

 その言葉にベジータも腕を組んだ姿勢で静かに悟空を見据える。

 

「でもさ、修行で積み重ねて来た自分の基礎の力を無碍にはしたくねえ。ターニッブに出会って、オラはそう思ったんだ!!」

 

 ウイスがクスリと再び笑った。

 

「フフ、悟空さんも、少しだけ変わりましたね~。貴方をそうさせたターニッブというサイヤ人。私も興味が湧いて来ましたよ」

 

「フン、なんだ? ターニッブって奴がそんなに気に入ったのか?」

 

 ビルスの言葉に、悟空は超サイヤ人から通常の状態に戻ってコクリと頷いた。

 

「ああ! オラ、アイツとなら何度でも闘いてぇ!!」

 

「ふざけるな、カカロット! 今度は俺だ!!」

 

 また言い争いを始めた悟空とベジータを尻目に、ビルスはウイスを見据えた。

 

「なあ、ウイス? ソイツを僕達のチームに組み込めば優勝は間違いないんじゃないか?」

 

「…悟空さんとベジータさんの言いようを見るに、間違いなく戦力になるでしょうね」

 

 ビルスはウイスに邪悪な笑みを浮かべて見た後、悟空に問いかけた。

   

「悟空にベジータ。君たちに聞きたいんだけど。ターニッブという奴は、サイヤ人なんだよな? フリーザの攻撃から生き残ったのか?」

 

 コレにベジータが、背筋を伸ばして応えた。

 

「はっ! ターニッブは、惑星ベジータのサイヤ人ではありません。惑星サイヤのサイヤ人のようです!!」

 

「…惑星サイヤ? 第6宇宙で会ったキャベの故郷の名は、確かサダラだったね? サダラがこちらの宇宙ではサイヤという名前になったのかな?」

 

「ターニッブの説明では惑星サダラは最早人が住める惑星ではなく、最後まで其処に住んでいたサイヤ人達は惑星サイヤという別の星に移動したとのことです」

 

 細い目を見開き、ビルスはベジータを見据えた。

 

「その話、本当か?」

 

 コレにウイスが反応し、即座に杖を持って水晶の中に目を覗き見る。

 

「…ビルス様、ありますよ。地球によく似た青い惑星が」

 

「サイヤ人が原住民でありながら、荒廃していないだと? いったい、どんな惑星なんだ?」

 

 界王神界並みの強度で無ければ、サイヤ人の住む星に緑など残るはずもない。

 

 だが、ウイスは首を横に振った。

 

「…どうやら、惑星サイヤのサイヤ人は真面目で正義感の強い一族のようですね。惑星ベジータのサイヤ人とは正反対です」

 

 そのまま、杖についた水晶を覗き見て続ける。

 

「非戦闘タイプを排除するのではなく、街を造る文明人として活躍しているようですねー。素晴らしい!! 戦闘民族であるサイヤ人が、非戦闘タイプと共に過ごしているなんて!!」

 

「…そんな凄いことなのかい? 地球に住んでいる悟空とベジータを見る限り、そこまで過ごしにくい奴らには思えないんだがなー。ま、ベジータ王は確かに生意気だったし、惑星ベジータのサイヤ人どもは、品性のかけらもなかったけどね〜」

 

 地球の食べ物であるピザを出して一切れつまみ、ビルスは上機嫌になる。

 

 その細められた目を呆れた顔で見つめた後、ウイスは悟空の方を向いた。

 

「惑星サイヤのことは、何か存知ませんか?」

 

「すまねえ、ウイスさん。オラ、早く闘いたくてベジータの質問を切っちまったんだ」

 

「…なるほど。しかし、そのおかげで貴方は新しい超サイヤ人に目覚め、かつ油断というものをしなくなった。悪くありませんね〜」

 

「…アイツと闘うとさ。まだ知らねえ自分の中が広がるような、そんな感覚になるんだ」

 

 嬉しそうに語る悟空を見た後、ウイスは複雑な顔をしているベジータを見た。

 

「ベジータさん、貴方の意見は?」

 

「間違いなく、奴は俺やカカロットが強くなるのに必要です。奴とはカカロットのみが拳を交えましたが、見ているだけでも、サイヤ人の血が騒ぐような素晴らしい闘いでした」

 

「おっほほ! 貴方と悟空さんがそれほどまでに褒めちぎるサイヤ人。コレは見ないわけには行きませんね〜」

 

 微笑みながら、ウイスはビルスに告げた。

 

「少し、惑星サイヤを見てきます。ターニッブさんがそれほどならば、その星のサイヤ人達はどれほどのモノなのか。非常に興味深い」

 

 コレにビルスは手でウイスを追い払うようにして告げた。

 

「さっさと行け。僕はピザを食すのに忙しいんだ」

 

「はいはい。悟空さんとベジータさんは、如何されますか?」

 

 コレに悟空とベジータは一瞬だけ顔を合わせると、互いに頷き、ウイスに応えた。

 

「あいつの故郷か。いっぺん見てみてえな!!」

 

「俺もです。同族の住む新しい星を見てみたい」

 

 コレにウイスは微笑みながら、告げた。

 

「では、参りましょうか。しっかり掴まっていなさい」

 

 悟空とベジータは、それぞれウイスの右と左の肩に手をやる。

 

 ウイスが杖で地面を突くと、エネルギーの幕が発生してウイスを中心に包み、一気に飛んで行く。

 

 一人取り残されたビルスは、静かに不機嫌そうに言った。

 

「ふ、ふん! お前らなんか居なくて清々だ! ゆっくりピザを食い終えたら、寝てやるんだからな!!」

 

 そんなビルスに向かって近づいてくるのは、空飛ぶ小さな水槽に下半身をつけた不思議な魚。

 

「おーい、あんまり怒るなよー。八つ当たりで滅ぼされたら、星の住人はたまったもんじゃない」

 

「う、うるさいな。シャンパじゃなく、僕がそんな子どもみたいな真似をするものかよ!!」

 

「なら、良いんだ。ではなー」

 

 去って行った予言魚を見送り、ビルスは静かにため息を吐いた。

 

「久しぶりだな〜。静かな食事だ…」

 

 呟いた後、首を横に振る。

 

「ふ、ふざけるな! は、破壊神が、寂しがるもんか!」

 

 ちょっぴり意地を張ったのを後悔するビルスであった。

 

ーーーー

 

 亜空間を移動中、悟空はウイスに問いかけた。

 

「なあ、ウイスさん。ターニッブのヤツは、故郷に帰ってるんか?」

 

「さあ? ただ、ターニッブさんの産まれた星に興味がありましてね〜」

 

「なるほどなぁ。確かにアイツみてえなヤツは、はじめてだかんなー!」

 

 心底、嬉しそうな悟空にベジータも笑う。

 

「サイヤ人どころか、あんな奴は見たことがない」

 

「やっぱり、オメエもそう思うよな!?」

 

「ああ、だがな。今度は俺の番だからな?」

 

「分かってるって! オラもさ、もっと基礎をやり直して力を蓄えてから、もっかいやり合いたいんだ!!」

 

「意外だな。貴様のことだから、出会えば闘いを挑むかと思っていたぞ?」

 

「そりゃ、やり合いてえさ! けどよ、アイツとの勝負は今楽しむのは勿体ねえんだ!!」

 

「…フン。分からなくもないが。それなら、俺が奴とやり合う時は手出しするなよ?」

 

「分かってるって!」

 

 互いに告げ合いながら、ベジータは静かに惑星サイヤのことを思い返す。

 

(ターニッブの使っていた技は、惑星サイヤの王が使っていたという。あのターニッブが技を使うほどのサイヤ人か。非常に興味深い)

 

 願わくば、拳を交えてみたいものだ。

 

 ベジータの頭の中は、そんな言葉で締めくくられた。

 

 亜空間移動が、間も無く終わる。

 

 惑星サイヤとはどんな星か。

 

 そこに住むサイヤ人は、どんな連中か。

 

 どれだけ強いのか。

 

 悟空とベジータは、互いに不敵な笑みで笑い合う。

 

 亜空間移動が終わり、白い穴を通り抜けると。

 

 悟空とベジータ、ウイスは巨大な建物の屋上に立っていた。

 

 新たな強敵が、自分達を待っていると予感して。

 

 




 次回もお楽しみに(´ー`* ))))



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悟空とベジータ 対 惑星サイヤのサイヤ人

オリキャラ。

 オリ設定。

 様々な伏線を張る今回のお話( *´艸`)

 頭を空っぽにして夢を詰め込んでください(=゚ω゚)ノ


 

 悟空とベジータは、ウイスと共に街の中に降り立った。

 

 流石はサイヤ人の惑星というべきか、見た目は地球と変わらないが重力が地球と比べて十倍程度重い。

 

「おいおい、ベジータ。此処のサイヤ人達は尻尾が生えてねえぞ」

 

「…ああ。尻尾の無いサイヤ人は、産まれつき戦闘力が高いんだが。キャベ達のように退化したのかもな」

 

「こう見るとサイヤ人ってのも、髪と目が黒いだけで地球人と全然変わんねえな」

 

「戦闘力は100や200前後の連中が多いようだな。だが紛れもなくサイヤ人の純血だ。これ程の大人数で暮らしているとは思わなかったが」

 

 ベジータが、どこか感慨深げに告げる。

 

 露天の屋台市場が並び立つ姿は、何処かのパーティやお祭りのようだ。

 

 服や食べ物を売ったり、料理を提供している。

 

 そんな街の様子に柄にもなく感動しているベジータを盗み見て悟空は微かに笑った後、市場屋台の一つで買い物中のウイスを向いた。

 

「ほほう! 味は地球の方が好みですが、この惑星の果物(スイーツ)も悪くありませんね〜!!」

 

 嬉しそうなウイスに悟空が苦笑しながら告げる。

 

「ウイスさん、よくこの世界の金持ってんな?」

 

「ホホ、古今東西。宝石や金の類は文明を持った者には価値のあるモノなんですよ」

 

 微笑むウイスの言葉どおり、ウットリとした表情で宝石を見つめる屋台の女性。

 

 見た目は20代くらいに見えるが、サイヤ人は若い期間が長いので地球人の考える実年齢とはギャップがある。

 

 それはさておき。

 

「そんで、ウイスさん。これからどうすんだ?」

 

 その言葉にベジータもウイスに向き直る。

 

「ホホ、そうですね〜。惑星サイヤの王にお会いしてみようかと思っています」

 

「へえ、いきなり行って会わしてくれるんかなー?」

 

「問題ありませんよ、私も破壊神の付き人。はじめての惑星でも多少は顔が効くと自負しております」

 

「へえ〜?」

 

 屋台の女性から宮殿の場所を聞いた一行は、サイヤの王の下に向かった。

 

ーーーーーー

 

 サイヤ王の住むという宮殿は白い壁と黄金の屋根を持つアラビア風の佇まいだった。

 

「此処がターニッブが言ってた王様の住む城かー。ブルマん家といい勝負だな」

 

「ふん。流石は王族。悪くはない趣味だな」

 

 二人のサイヤ人がそう述べあう中、ウイスが前に出る。

 

 彼は門番のいる正門に向かって行った。

 

「ちょ、ウイスさん!」

 

「急げ、カカロット!」

 

 二人は慌ててウイスの後についていく。

 

「…失礼」

 

 ウイスが、二人の警備兵らしいサイヤ人に声をかけた。

 

 二人とも無駄のない引き締まった体をしている若い兵士だ。

 

 一人は眼鏡を、もう一人は頭巾をしている。

 

「あ、はい。どういった御用でしょうか?」

 

 サイヤ人の一人。

 

 眼鏡を付けた方が穏やかな物腰で問い返してきた。

 

 口調は丁寧だが、無駄のない洗練された所作だ。

 

「わたくしの名はウイス、と申します。実は惑星サイヤの王であるサイヤ殿に御目通り願いたいのですが」

 

「…申し訳ございません、王は多忙でして。アポイントは取られて居られますか?」

 

「フム、アポイントが必要なのですか。まあ、確かに。王に会うならば、普通はアポイントは必要でしょうがね〜」

 

 困った顔になる真面目そうな兵士にフムとウイスは頷き、こう告げた。

 

「では、王にご伝言をしていただけますか? 破壊神ビルスの付き人が面会を求めている、と」

 

 兵士二人が顔を見合わせると、オレンジ色の頭巾を頭に巻きつけた方がペコリと頭を下げてから宮殿の中へ入って行った。

 

「ウイスさん。ビルス様の名前を出してたけど、この惑星の王様が、ビルス様のことを知ってなくちゃダメなんじゃねえか?」

 

「普通は、この程度のことで王に告げることはないでしょうね。警備隊長あたりが来るのが関の山、でしょうか」

 

 悟空の懸念したとおり、ビルスの名前を知らなければ意味はない。

 

 だが、次に現れたのは悟空達が思ってもみない程に戦闘力の高いサイヤ人だった。

 

「よお! アンタ等が、サイヤ王に面会したいって連中でいいのかい?」

 

 悟空はパッと見、明るい口調で語る彼の顔が自分の兄ラディッツに似ていると思った。

 

「…ええ。サイヤ王に御目通り願いたく」

 

「よし、俺についてきな」

 

 ウイスの言葉を途中で切ると、青年はニッと笑いながら自分について来いと指でジェスチャーして歩く。

 

 ラディッツや隣にいるベジータと同じM型の額に後方に伸びる髪。

 

 だが、短く切り落とされている。

 

 ベジータの様に全体的に天を突いているのではなく、頭頂部から後頭部にかけては後ろに向かって伸びている。

 

 服装はハイネックの半袖の黒シャツに、下は紅い道着を着て、黒帯で締められている。

 

 ターニッブと同じ形のベージュ色のグローブに、同じ形と色の黒いブーツを履いている。

 

「アンタの顔を見ると懐かしい奴を思い出すな」

 

 歩く途中、ふと自分の顔を見て笑う彼に、悟空は問いかけた。

 

「なあ! あんた、もしかしてターニッブの知り合いなんか!?」

 

 コレにラディッツに瓜二つの顔の彼はニッと口の端を歪めて不敵に笑った。

 

「へえ、ターニッブの奴の知り合いか。俺の名はガーキン。惑星サイヤの近衛兵をしてる。ターニッブの同門でライバルさ!」

 

 青年ーーガーキンの明るい名乗りに悟空は一つ頷くと口を開いた。

 

「オラ、孫悟空! 地球育ちのサイヤ人だ!!」

 

「俺はサイヤ人の王子ベジータ。惑星ベジータの出身だ」

 

 二人の名乗りにガーキンは面白そうに目を細める。

 

「ふうん? 地球にベジータ、か。なるほど、サイヤ王が言ってたとおりだな」

 

「? あんた、オラ達のことを知ってんのか?」

 

「いや? 俺はただ、別の星から来たサイヤ人の二人組を案内する様に王から言われただけさ。サイヤ王・ジュードからな」

 

 その言葉にベジータが目を見開く。

 

「ジュード? それが惑星サイヤの王の名前か」

 

「ああ。サイヤなんて気取った名前を名乗ってやがるが、本名は大したことない、普通のサイヤ人さ」

 

 肩をすくめながら告げるガーキンに、ベジータは目を細める。

 

「あんたはサイヤ王の側近なんだろ? そんな口を利いていいのか?」

 

「ああ、気にすんなよ。俺とターニッブ、そしてサイヤ王・ジュードは師匠が同じ兄弟弟子なんだ」

 

 何ということはない様に告げられた言葉に悟空が反応した。

 

「いっ!? 師匠も王族なんか?」

 

「ああ。……まあ、そうだな」

 

 歯切れの悪くなったガーキンに構わず、悟空は嬉しそうな顔になる。

 

「強ぇえんだろうなー。会ってみてえ!!」

 

「悪いが、師匠は俺たちがガキの頃に死んじまってな。今は、会えねえんだ」

 

「! そりゃ、悪りぃコト言っちまったな。すまねぇ」

 

「気にすんな。十年も前の話だよ。未だに引きずってるのは王様とターニッブくらいだ」

 

 肩をすくめて笑うガーキンに悟空は一瞬だけ、真剣な表情になった後、ニッと笑って告げた。

 

「オメエ、オラの兄貴に似てんなぁ。性格は全然違げぇけんどな」

 

「お! 俺に似てるんなら、さぞや男前だろうな! そいつには会えるのかい?」

 

「あ、そういや。オラの兄貴は死んでんだった! 嫌な兄貴だったから、あんまり思い出すことなくてよ! でも今思えば懐かしいや〜」

 

「……なんだよ、そのドライな関係は」

 

 思わず半目になるガーキンに悟空は、笑いながら言う。

 

「だってよぉ。いきなり百人の人間殺せ、とか言って来るし。できねえってオラが言うと、オラの子どもを攫って殺そうとするしよ」

 

「…思い出し笑いしながら言う内容じゃねえ。つーか、そんなロクデナシに似てるとか言われても、俺は嬉しかねえよ!!」

 

「いやぁ、でも似てんだよ。性格は全然違うけどな!」

 

「その話、やめようぜ。俺にとって良いことねえからな」

 

「? ああ、分かった!」

 

 やや嫌そうにガーキンが言うと、悟空は笑顔で頷いて話題をやめる。

 

 ベジータとウイスが目を前に向けると、一際大きな部屋の前に着いた。

 

 ガーキンは、悟空達三人に向かって告げる。

 

「玉座の間に着いたぜ」

 

 三人はコクリと頷き返し、ガーキンに連れられるまま玉座の間に彼らは入った。

 

ーーーーーー

 

 広がる光景にベジータが思わず懐かしげに目を細める。

 

 左右に並び立つエリート戦士達。

 

 階段の上から見下ろす様に玉座がある。

 

 その高い背もたれに悠然と座る一人のサイヤ人。

 

「…この覇気、すげえな」

 

「確かに。普段からこれ程のモノを身に纏うとはな」

 

 悟空とベジータは玉座の間に入ってから肌がピリつくような感触があった。

 

 理由は目の前のサイヤ王だ。

 

 逆光になっていて顔は分別できないが、マントを羽織り玉座から見下ろす姿が絵になっている。

 

「高いところから失礼する。破壊神ビルス殿の付き人に、他の惑星のサイヤ人だな」

 

 コレにウイスが応えた。

 

「これはご丁寧に。わたしはただの付き人故、そのように改まらなくても構いませんよ。突然の訪問にも応えてくださる貴方の器、非常に広く感じております」

 

「…ほう、ただの付き人か。破壊神殿の師匠であらせられるのにか?」

 

 その言葉に悟空とベジータが目を見開いて、サイヤ王を見上げる。

 

 ウイスは平然とした表情のまま、告げた。

 

「このような辺境の星を、これ程までに豊かなモノへと導いた貴方の器からすれば驚くには足りませんが。お聞かせください。何故、わたしがビルス様の師匠だと?」

 

 サイヤ王は楽しげに口の端を酷薄に歪めて笑った。

 

「ただの勘、と言うと信じるのか?」

 

 問いかけにウイスは微笑みで応えた。

 

 コレにサイヤ王は笑みを返す。

 

「種明かしをすれば知っていたのは俺ではない。神殿に仕える巫女がお前達が来ることを言い当てていたのだ」

 

 逆光の中で光る目はまるで相手の心を射抜くように鋭く、口の端は歪みながらも油断はしていない。

 

「…巫女殿が、なるほど。相当、予知能力の高い巫女殿のようですね〜。わたし、興味が湧いてきました」

 

 ベジータがサイヤ王を見上げながら、訝しげに問いかける。

 

「戦闘民族サイヤ人が、神を祀るのか?」

 

「他惑星のサイヤ王家の者か。お前の所には特異点はなかったか?」

 

「特異点? なんだそれは?」

 

「…この世界は多岐にわたる選択肢からなる。俺たちの世界とは似て非なる世界がな。その選択肢から外された消えるに消えれぬ魂が集まる場所。それが我が神殿の地下にある」

 

 サイヤ王の説明を受け、悟空は目が回っている。

 

 反対にベジータは、静かに頭の中を整理させて告げた。

 

「つまり、死んだサイヤ人の魂や怨念が集まる場所ということか?」

 

「…まあ、そんな所だ。俺たちは、その場所を“死者の都”と呼んでいる」

 

 玉座からサイヤ王は立ち上がり、階段を降りて悟空とベジータの前にやってきた。

 

 その顔を見て、悟空とベジータは目を見開く。

 

「…驚れぇたな。ターニッブはオラに。ガーキンはラディッツにそっくりだったから。王様のあんたもオラ達の知ってるサイヤ人にそっくりなんかとは、思ってたがよ」

 

「ああ。全く、何の因果だ?」

 

 サイヤ王・ジュードの顔は、悟空とベジータの合体。

 

 ベジットそのものだった。

 

 身長はオリジナルのベジットよりも高く、180センチを上回っている。

 

「…身長はベジータ王と同じくらいか。チッ」

 

 ベジータが自身の父である王の身長を思い返しながら舌打ちをしていた。

 

「ふふ、巫女の言ったとおりだな。俺の顔を見るとお前達は複雑な顔をすると言っていた。中々、興味深い」

 

 笑いながらサイヤ王は悟空とベジータを見た後、その後ろに向かって声をかけた。

 

「…巫女よ。この三人に相違ないか?」

 

 全員が振り返ると、黒髪に黒目をしたロングストレートの美女が、巫女服と思われる神秘的な着物を着て立っていた。

 

「はい…サイヤ王。惑星ベジータの同族の仇を見事に取った孫悟空さんにベジータさん。そして第7宇宙の破壊神ビルス様の付き人ウイス殿です」

 

 悟空がコレに感心したような声を上げた。

 

「すっげぇな、アンタ! オラ達のことを知ってんか!?」

 

「…はい。特に孫悟空さん、貴方のことは」

 

「…? オラのことを?」

 

 目をまん丸にして問いかける悟空に巫女は笑いかける。

 

「…クスクス。本当にお顔はターニッブに似てるけれど、彼とは全然違いますのね。孫悟空さん」

 

 可愛いらしく笑う美女に悟空は目をキョトンとさせる。

 

「…えっと? アンタもターニッブの知り合いなんか?」

 

「はい…。ベジータさんが名付けた“真・超サイヤ人”について、そしてターニッブについて。悟空さん、貴方にはお話したいのです。ターニッブは唯一、貴方の前では忌み嫌っていた自分の力、超サイヤ人を解放した。貴方なら、ターニッブを」

 

 真剣な表情の巫女に、悟空もまん丸にしていた目を鋭くして真剣な顔になる。

 

「巫女よ、先に名を名乗りなさい」

 

「はい、失礼しました。悟空さんにベジータさん、ウイス殿。私はサイヤの神殿に仕える巫女、プリカと申します。よろしくお願いしますわね」

 

 サイヤ王に促され、見事な所作で礼をするプリカに悟空は片手を上げ、ベジータは首を頷かせて応えた。

 

「よく言うぜ。お前も悟空達に名乗ってないだろが」

 

 横から告げるサイヤ王に側近のガーキンが揶揄する口調で告げた。

 

 これにサイヤ王が口の端を歪めたシニカルな笑みを浮かべる。

 

「俺の名は、お喋りなお前が教えてるんだろ?」

 

 これに悟空がすぐさま応える。

 

「ああ! オラ、聞いてんぞ! あんた本当はジュードって言うんだろ?」

 

 周りのエリート兵がざわめく中、サイヤ王はニヤリと苦虫を噛み潰したようなガーキンに笑ったあと、ウイスに顔を向けた。

 

「そのとおりだ。ウイス殿、悟空にベジータ。まずは食事でもどうだろうか? この惑星サイヤの飯をあるだけ用意しよう」

 

 悟空に応えながら、サイヤ王は告げるとメイド達が現れて瞬く間に広間に机と椅子を並べ、食事を用意させた。

 

 悟空がコレに喜びながら告げる。

 

「ありがてえ! サンキューな、王様!!」

 

「ジュードで構わん。お前やベジータは、俺の民ではない。俺のことを王と呼ぶ必要はない」

 

 コレにベジータが反応する。

 

「まるで王族の誇りがないようなことを言うな? 王ならば、いつ如何なる時も王足らんとするべきだ」

 

「確かにな。だが、ベジータよ。俺は王の前に一人のサイヤ人として、お前達を見ている。これは個人的なものだが、お前達とは対等でありたいと願っている」

 

 ベジータは静かにジュードの目を見据える。

 

 対峙するジュードも静かにベジータを見返してきた。

 

「先に拳を交えるか? ベジータよ」

 

「…願ってもない。これ程の惑星を作り上げ、束ねる王の力を見せてもらう!!」

 

 ベジータはニヤリと笑いながら告げるが、ウイスが静かに席に着いた。

 

「では、わたしは先に食事を頂きましょうかね。悟空さんはどうします?」

 

「? オラか? オラは、そうだな。飯ぃ食いながら、巫女さんにターニッブのことを聞きてえかな。いや、待てよ。サイヤ王と側近のヤツの実力も見てえし…! うぅ〜ん」

 

 悩み出した悟空を置いてベジータはジュードに告げる。

 

「惑星ベジータの王子ベジータが相手をする!!」

 

「惑星サイヤの王が受けて立つ!!」

 

 ジュードについていくベジータを見て、悟空はニヤリとするとウイスに告げた。

 

「悪い、ウイスさん! オラも組み手してくっぜ!! 先に食べててくれ〜!!」

 

 走りながら去っていく悟空を見送り、ウイスはため息を吐いた後、目の前に出された料理の数々に目をキラキラとさせていた。

 

 それを巫女・プリカが微笑みながら見ている。

 

「ところで、プリカさん。この街の地下には変わった空間があるようですね? これが“死者の都”でよろしいですか?」

 

「……はい。ウイス殿には、どの程度お分かりになりますか?」

 

「そうですねぇ。多次元宇宙に散ったサイヤ人達の魂、そして悪人の魂が漂う空間といったところでしょうか? 平たく言ってしまえば“何が起こってもおかしくはない空間”ですね。死人が現れるのはもちろん、他次元の存在なども。それが具現化してこちら側に来ることも起こり得る」

 

 ウイスは静かにフォークを手に取ると、切り取られた肉を取り口に入れる。

 

 その味にフムと満足気に頷き、彼はつづけた。

 

「貴女やサイヤ王だけでは、到底抑えきれない程の力のうねりです。アレを抑えているのは、悟空さんがビルス様と手合わせした時に見せた“真・超サイヤ人”ですね? 誰かは存じませんが、真・超サイヤ人に変身し続けた末に理性を失くし“ただ闘う為に生きる生命体”に変わり果てた者が、“死者の都”で具現化する魂と常に戦っている」

 

「そう。真・超サイヤ人と死者の都は、わたくし達にとって諸刃の剣。わたくし達の生活が穏やかに送る上で何よりも大切な。けれど、どちらかのバランスが崩れれば一気にこちら側に被害が起こる場所。真・超サイヤ人ーーいいえ、伝説の超サイヤ人そのものになってしまった彼を止めるために、ターニッブは拳を鍛えてきました」

 

 プリカの言葉を真剣な表情で聞くウイス。

 

「超サイヤ人が死者の都を滅ぼせば、間違いなくこちら側に来て全てを滅ぼそうとする。逆に超サイヤ人が具現化した魂たちに敗れた時。この世界は瞬く間に“死者の世界”が広がり、惑星その物が地獄と化します」

 

「両者が拮抗しているからこそ、この世界は成り立っている。両者のバランスを拮抗させるために貴女とサイヤ王は存在する。そういうことですね」

 

「……はい」

 

 悲しそうな表情で語るプリカにウイスは問いかける。

 

「何故、悟空さんに頼ろうと? 彼がターニッブさんや“死者の都”に居るという超サイヤ人と同じ力に目覚めたからですか?」

 

「それもあります。ですが、この惑星のことはこの惑星に住むわたくし達が解決しなければなりません。悟空さんにお願いしたいのは、神殿に来て頂きたいだけです。彼は、多次元に渡る宇宙でサイヤ人や悪人を次々と倒しています。彼に縁のある魂たちを呼び寄せることができればーー」

 

「それほどまでに強力な魂を具現化しなければ、抑えきれない程に超サイヤ人は力を増している、と?」

 

 これに無言でプリカは頷く。

 

 ウイスはその表情を見た後、静かに瞳を閉じた。

 

「悟空さんがーーいいえ。他の次元の悟空さん達が倒してきた悪党は、かなりの数に昇ります。その中にはサイヤ人など比べ物にならない極悪人もいるのです。それを理解したうえでのことですか? もし仮に超サイヤ人が、それで抑え込めたとしても、無限に上昇する戦闘力なのですから。最悪、悟空さんが倒してきた者たちを打ち倒して更なる戦闘力を手に入れる可能性がある」

 

「分かっています、これは賭けです。上手く行かなければ、銀河系にまで影響してしまうでしょう」

 

「そのための悟空さんですか」

 

 眉を人差し指でつまみ上げながらウイスが言うと、プリカも静かに彼を見返した。

 

「ターニッブがあれ程までに苦労して制御できた“真の超サイヤ人”に悟空さんはあっさりとなりました。しかも破壊衝動さえも抑え込んで。最悪、彼ならばターニッブと超サイヤ人の因縁を終わらせることができるかもしれないと思っています」

 

 ため息を一つ吐いて、ウイスはジッと巫女を見る。

 

 その思いつめた表情を静かに見据えた後、手を叩いて告げた。

 

「とりあえず、今は食事にしましょう? プリカさん」

 

「はい。存分にお召し上がりくださいな、ウイス殿」 

 

 二人は笑顔で向き合うと、今は食事に専念するのだった。

 

ーーーーーー

 

 サイヤ王が案内したのは、城の中にある訓練場だった。

 

 天下一武道会の武舞台がスッポリ収まる程に広い。

 

 サイヤ王は上半身を裸にして、白い道着のズボンと黒のブーツを履いて黒帯を腹の前で締め、赤いグローブを両手につけた質素な出で立ちでベジータの前に現れた。

 

 隣には真紅の炎のような赤い道着のズボンを履いた青年・ガーキンが立っている。

 

「ふん。いきなり王自らの出撃か?」

 

 ベジータの揶揄するような声に対し、ジュードは笑う。

 

「王の相手をするのは王でなければならん。違うか?」

 

「ふん。心意気は買うが、それだけで俺は倒せん」

 

 不敵に告げるベジータにジュードもニヤリとする。

 

 静かに向かい合う二人の横に、悟空とガーキンが向き合っていた。

 

「ターニッブのライバルなら、遠慮はいらねえかな?」

 

「ま、確かめてみろよ? アンタの拳でな!!」

 

 四人が互いに構え合う。

 

「二対二か。いい勝負になりそうだな、ベジータ!」

 

「ふん、いくぞカカロット! 足を引っ張るなよ!!」

 

 悟空とベジータが互いに告げ合うと二対二の闘いが始まろうとしていた。

 

 ベジータが左構え、悟空が右構えになる。

 

 ガーキンがそんな二人に向かって一気に駆けた。

 

「! ベジータ!!」

 

「早い!?」

 

 紅蓮の焔を身に纏わせ、一気に二人の間に踏み込んでくるガーキン。

 

 斧の様に鈍い風切り音を立てながら、ガーキンの下段回し蹴りが悟空とベジータの足を掻っ攫う。

 

 一瞬、宙に弾き飛ばされるも体勢を立て直そうとする二人だが、ガーキンの背後に来ていたサイヤ王・ジュードが右足を掲げてその場にいる。

 

「でぃやぁああっ!!」

 

 気合いの掛け声と共にその場で回転しながら蹴りを繰り出すジュード。

 

 回転は空気を乱し、竜巻となって悟空とベジータに無数の蹴りを叩き込む。

 

「な!?」

 

「ちぃ!!」

 

 先手を取られた悟空とベジータは、蹴りをガードしながら弾き飛ばされる。

 

 背中から地面に叩きつけられながらも、即座に立ち上がる二人にガーキンが腰だめに両手を右脇に置いて構え、両掌を上下に合わせて青白い光を放ってきた。

 

「セイヤぁああああっ!!」

 

 コレにベジータが合わせる。

 

 両手を左腰に置いて、右手を曲げ、甲を左手に押しつける様にして右足を曲げて構える。

 

 掌には紫の光が溜まっている。

 

「舐めるなよ! ギャリック砲!!」

 

 突き出される両手から光線が放たれる。

 

 中央でぶつかり合う二つの光。

 

「カカロットのかめはめ波擬きに、この俺のギャリック砲が負けるかぁあああっ!!」

 

「へえ? 俺の波動拳を甘く見てると痛い目見るぜ!!」

 

 睨み合う二人に悟空がベジータを援護しようと拳を構える。

 

 しかし、目の前にジュードが迫っていた。

 

「…くっ!?」

 

 ぶつけられた右拳を左手でつかみ止める悟空。

 

「ターニッブを本気にさせたサイヤ人。正直に言ってお前は気に入らん」

 

「ああ? なんだよ、そりゃ」

 

 訝し気に問いかける悟空にジュードは告げた。

 

「何ーー。ただの嫉妬だ!!」

 

 鈍い音と共に悟空の腹に思い切り右の飛び膝が入る。

 

「がぁっ!」

 

 顎を下げた悟空に跳び上がりながらのアッパーカットが決まった。

 

「くあぁああああっ!!」

 

 天高く舞い上げられる悟空と天頂に届けとばかりに突き上げられたサイヤ王の拳。

 

 王はくるりと身を一つ翻して、静かに着地する。

 

 そして右腰に両手をたわめると紫電を纏った青白い光の球を作り出す。

 

 背中から地面に叩きつけられ、顎を拭いながらフラフラと立ち上がる悟空に向かって、ジュードは右手を上に、左手を下にして掌に気を凝縮し、前方に突き出して青い気功波を放った。

 

「ーー電刃・波動拳!!」

 

 咄嗟に両腕をクロスしてガードする悟空だがーー。

 

「……がぁつ!? なんだ、これはーー!!」

 

 衝撃がガードしている腕を無視して悟空の体に伝わる。

 

 目の前にジュードは現れ、先の右の飛び膝蹴りを放ってきた。

 

(同じ手は、オラには通じねえ!!)

 

 右手を開いて捌こうとしたが、体が棒立ちになっている。

 

(バカな!? なんで動かねえ!!?)

 

 ノーガードの状態でまともに鳩尾に膝が入る。

 

「ぐぁああああっ!!」

 

 うめき声と共に溜まっていた息が吐き出される。

 

 同時に顎をさらに膝で蹴り上げられ、のけ反った悟空に回転しながらジュードは回し蹴りを放った。

 

「竜巻旋風脚!!」

 

 まともに全身を蹴り抜かれ、悟空は後方へ弾き飛ばされる。

 

 背中から叩きつけられ、悟空はダメージに眩暈を起こしながら、片足で立つジュードを見据えた。

 

「! 何をやってる、カカロット!?」

 

 ベジータがガーキンとの乱打戦に打ち勝ち、左の拳に右フックのカウンターを合わせてのけ反ったところを蹴り飛ばす。

 

 同時に悟空とジュードの前に割り込んだ。

 

 ジュードは静かに笑うと再び、かめはめ波ーー否、波動拳の構えを取る。

 

「ベジータ、そいつを食らうな!!」

 

「分かっている、黙って見てろ!!」

 

 ギャリック砲の構えを取って打ち返さんとするベジータにジュードは笑う。

 

「面白い! 行くぞ、惑星ベジータの王子よ!!」

 

「来い! 惑星サイヤの王!!」

 

 同時に突き出される光と光。

 

 まともに押し合う二人だがーー。

 

「! バカな、この俺のギャリック砲が押されているだと!?」

 

 ベジータが目を見開きながら、自身に迫りくる青い光を見据える。

 

 対するジュードは余裕の表情だった。

 

「俺もまた、サイヤ人の“王”だ。舐めてもらっては困るな!!」

 

 押し返され、まともに光線を浴びる。

 

「チィっ!!」

 

 気を纏い、両腕でしっかりとガードするベジータ。

 

 だがーー今回も同じだった。

 

(なにぃ!? 体が、動かん!!)

 

 目を見開くベジータの前にジュードが笑って現れた。

 

 紅の炎を全身に纏い、飛び膝蹴りをがら空きの鳩尾と顎に決められる。

 

「がはぁっ!!」

 

 後方へ弾き飛ばされようとするベジータを、慣性の法則を無視した跳び上がりながらその場で回転する右のアッパーカットが巻き込んでいく。

 

「神武・烈風迅雷!!」

 

 まるでベルトコンベヤーにモノが巻き込まれるように、螺旋を描いて回るジュードに巻き込まれ、肉体の内側で気が爆ぜていくベジータ。

 

「ぐぉおおおおおっ!!」

 

 最後に顎に拳が入ると、引力が消えたように後方へ弾き飛ばされる。

 

 強烈な一撃に、大ダメージは免れなかった。

 

「ベジータ!! の野郎ぉお!!」

 

 叩きつけられたベジータを見て、悟空が激昂して立ち上がりながら、一気にジュードの前に現れようとする。

 

 しかし、それよりも早く目の前にガーキンが横から現れた。

 

「しまーーーっ!!」

 

「二対二ってのを忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 

 炎を纏ったガーキンは左の下段回し蹴りで踏み込もうと前に出した悟空の左足を蹴り払い、体勢を崩した悟空の胴に中段回し蹴りを放ちながら回転していく。

 

 直撃を食らって紅蓮の炎が炸裂しながら、悟空は目を見開く。

 

(こいつらーー! 強い!!)

 

 上段回し蹴りを食らって後方へ退ける悟空の鳩尾に膝蹴りが入り、空中へとそのまま運ばれる。

 

「いくぜ、疾風迅雷脚ぅうう!!」

 

 回転しながらの連続飛び回し蹴りに、悟空は派手にきりもみしながら地面に叩きつけられた。

 

 即座に立ち上がろうと首を地面につけたまま、下半身を起こして跳ね上がった。

 

「喰らえ、波動バースト!!」

 

 その前に先ほどまでとは比べ物にならないほどにデカい波動拳が迫っている。

 

「ぐぅっ!!」

 

 両腕で押さえながらも抑えきれず、そのまま後ろの壁まで運ばれて爆発。

 

 磔にされた。

 

「どうした、どうした!? ターニッブの野郎を超サイヤ人にした男の実力は、こんなもんかい?」

 

 ゆっくりと悟空は立ち上がる。

 

 口元に笑みを浮かべて。

 

「へへっ! …強ぇえな、オメエら」

 

 その隣でベジータも血を地べたに吐き捨てながら告げる。

 

「少しは、できるようだな?」

 

 それをサイヤ王・ジュードは両腕を組んで見つめ、ガーキンは不敵に笑う。

 

 悟空がニヤリと笑いながら隣のベジータを見据える。

 

「やるか、ベジータ!」

 

「いいだろう……!」

 

 同時に金色のオーラを身に纏う。

 

 二人の髪は金色に染まり、瞳は翡翠に変わる。

 

 悟空に至っては髪が逆立ち、目つきが鋭くなっている。

 

「……やっと出したか。超サイヤ人」

 

「やれやれ。こりゃ、シャレにならねえパワーアップだな」

 

 にやりと笑うジュードと肩を竦めるガーキン。

 

 二人に向かって悟空は笑った。

 

「さあ、第二ラウンド始めっか!!」

 




 次回もお楽しみに( *´艸`)



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死者の都 異界からの強敵

頭、空っぽにして夢を詰め込んでください!!( ´ ▽ ` )ノ


 

 惑星サイヤの王都。

 

 ジュード王が納める都の地下に、常世とは異なる世界が広がっていた。

 

 夢か。

 

 現かもわからぬその場所で。

 

 今、濃紺の道着を着た黄金の髪の男が、道着の上着を荒縄で前に締めくくり、両足には黒い足袋とわらじ草履を履いている。

 

 首からは金属の糸に通された緑色の勾玉が一つ。

 

 黄金の髪を天に向かって揺らしながら、翡翠に漆黒の瞳孔がある瞳は空を見上げた。

 

「……我が耳に猛者の咆哮届けり。為れば、真の拳士か。我に敵う者か……!!」

 

 鬼の如き咆哮と気を放ちながら、男は”死者の都”にて吠えた。

 

 彼こそ”真の超サイヤ人”そのものであった。

 

ーーーーーー

 

 悟空達とジュード王達の戦いを見ていたエリート兵達はそのレベルの高さに驚いていた。

 

「し、信じられん。あの二人のサイヤ人。ジュード王達の攻撃を食らって平然としている」

 

「それよりも、あれは何だ? 金色の戦士になったぞ!?」

 

 ざわめき立つ周りの声を尻目に。

 

 天に向かって逆立つ金色の髪と眉。

 

 翡翠の瞳。

 

 身に纏う漲る金色のオーラ。

 

「…これが、超サイヤ人か?」

 

 ガーキンが静かに二人の様子を見て呟く。

 

 王ジュードも隣で冷汗を流していた。

 

「何という奴らだ…! 気が何処までも高まっていく」

 

 構えを取りながら言うサイヤ人の二人に超サイヤ人達は笑いかける。

 

「これが、超サイヤ人だ。さあ、始めようぜ?」

 

「貴様らのライバルだというターニッブは、この力を前にしても臆さず真正面から闘って来た。あの男のライバルだというなら、貴様らにも強くあってもらいたいものだ」

 

 悟空の言葉にベジータが続く。

 

 これにジュード王は静かに笑った。

 

「安心しろ。その姿に少し、トラウマを刺激されただけだ。その程度の戦闘力の上昇ならば恐れるには足らん」

 

「ほう? 面白いことを言うじゃないか、ジュード」

 

「うろたえて怯える王が見たいか? ベジータ」

 

「……フン」

 

 ジュード王のトラウマという言葉に微かに眉根を寄せながらも、ベジータは不敵な笑みを浮かべる。

 

 悟空は静かにガーキンとジュード王に向かって言った。 

 

「さあ、ガーキン! ジュード!! オメエ等も超サイヤ人に目覚めてもらうぞ……!」

 

「おいおい、いきなり成れって言われてできると思うのかよ!?」

 

 ガーキンの抗議の声に悟空は続ける。

 

「オメエ、ターニッブのライバルなんだろ? アイツのライバルなら、そんくらいはやってもらわなきゃな」

 

 不穏な笑みを浮かべて低い声で告げる悟空にガーキンは目を見開く。

 

「ちょーー! 話通じねえのかよ!?」

 

「オメエもサイヤ人なら諦めろ! 言葉よりも拳で語った方が早ぇぞ」

 

 この会話にジュード王が高笑いを始めた。

 

「くははは! いいだろう!! 惑星サイヤの王にしてナンバーワンの天才の称号を持つこのジュードの実力、見せつけてくれる!!」

 

「そんな簡単に見ただけでできるなら、誰も苦労しねえだろうがよ」

 

 不満げにつぶやくガーキンの前に悟空が超スピードで踏み込んで来た。

 

「! クッ!?」

 

 ボディをまともに撃ち抜く右の拳。

 

 ガーキンは思わず肺に溜めていた空気を吐き出し、前のめりになると顎を蹴り上げられる。

 

 後方へのけ反りながら吹っ飛ぶガーキンの背後に高速移動し、右足を大きく振りかぶる悟空

 

「うぉりゃぁああああっ!!」

 

 気合と共に強烈なローリングソバットで、ガーキンを闘技場の壁にまで蹴り飛ばした。

 

 悲鳴を上げる暇もなく、ガーキンは背中から壁に叩きつけられる。

 

「! ガーキン!!」

 

「何処を見ている、サイヤ王!!」

 

 ジュード王が前を向くと目の前に金色の戦士と化したベジータが立っていた。

 

「貴様の相手は、この俺だ!!」

 

 右の拳を叩きつけてくるベジータに、ジュード王は左掌で掴みとめる。

 

(…何という重く早い一撃だ。先ほどまでとは比べ物にならない! これが、超サイヤ人か!!)

 

 目を見開くジュード王に情け容赦のないベジータの連撃が放たれる。

 

 踏み込みながらの左のひじ打ち。

 

 右のローキック。

 

 左の中段回し蹴りからの後ろ上段回し蹴り。

 

「ぐはっ!」

 

 顎を左のひじ打ちで跳ね上げられ、右のローキックで左足の太ももを打たれ、左のミドルキックをがら空きの右の脇腹に入れられてうずくまりながら後ろに下がるジュード王。

 

 その顎を更にベジータの左後ろ回し蹴りが蹴り上げて後方へ弾き飛ばした。

 

 壁に叩きつけられ、磔にされる。

 

「……」

 

 静かにベジータは掲げていた左脚を下ろしてジッとジュード王を見据えた。

 

 ジュード王は、土煙の向こうから壁から伝い出て歩いてきた。

 

「超サイヤ人……!! お、の、れ………っ!!!」

 

 ジュード王の視界の中には、ベジータではなく別の男が写っている。

 

 その男は、無慈悲に自分たちの師匠を斃した。

 

 先代の王を。

 

 ジュード王の父君を。

 

 だが、その仇を取るのは己ではない。

 

 己の力では、その男は斃せない。

 

 できるのは、身に宿る力のせいで誰よりも孤独な人生を歩むことになる。

 

 自分の弟のような青年。

 

「よくも……!! よくもよくも……!! よくもぉおおおお!!!!」

 

 全てを託され、背負わされた宿命の青年。

 

 無力な自分には王の役割を継ぐことしかできなかった。

 

 力のない自分の存在が、父を死なせてしまい。

 

 彼を孤独にした。

 

 あの時、ジュードが超サイヤ人を倒せていれば。

 

 その光景を。

 

 血を流しながら倒れ、死者の都に光の粒子となって取り込まれていった父の姿を思い返して。

 

 ジュードの中で何かが切れた。

 

「うぉおおおおおおあああああああっ!!!」

 

 強烈な磁場が発生し、力の爆発が起こる。

 

 それを見てベジータは静かに笑った。

 

「そうだーー。それでいい。自分の無力さ、非力さに怒れ。それでこそ、サイヤの王だ!!」

 

 超サイヤ人と化したベジットと瓜二つのサイヤ人を見据えて、ベジータは心の底から喜んでいた。

 

 第六宇宙のサイヤ人キャベ以上の才能と力。

 

 そして彼と同等に積み重ねた修練とおそらくキャベが未だ経験したことが無い程に流した涙と血の量。

 

 それをベジータはジュード王から感じていた。

 

 力強くも悲しい拳を。

 

「…ベジータ。俺は……?」

 

 ジュード王は目のまえに居る男が自分の仇ではないことを思い出し、正気に戻る。

 

 そんな彼を前にベジータは告げた。

 

「ジュードよ、それが全ての超サイヤ人の基本となる姿だ。貴様が倒さねばらならん相手は、その極みの一つにあると知れ」

 

「……気付いていたのか?」

 

 問いかけるジュードにベジータは不敵な笑みを浮かべた。

 

「甘く見るな。俺はサイヤ人の王子ベジータ様だぞ?」

 

「ククク、そうだな」

 

 親友のように二人の金色の戦士は笑い合った。

 

 一方で悟空に磔にされたガーキンもまた、静かに立ち上がっていた。

 

「マジかよ。ジュードの野郎、アッサリとなりやがった」

 

「当たりめぇだ。超サイヤ人は、ある程度、体が鍛え抜かれていれば後は怒りを切っ掛けにして目覚める。オメエら位に鍛えてたらできるさ。さあ、思い切り怒るんだ! ガーキン!!」

 

「……って言われてもよぉ!」

 

 困惑するガーキンに悟空が頭を掻く。

 

「しょうがねえなぁ……っ! えっとぉ、やい! このラディッツにそっくりのマヌケやろう!!」

 

「……へ?」

 

 唐突に言われたーーレベルが低く、棒読みな悟空の悪口にポカンとするガーキン。

 

「お、オメエの顔を見てっとイライラしてくっぜ…! さ、さっさと全力出さねえと、ぶっ殺しちまうぞ!!」

 

「悟空…? それ、何の真似だ?」

 

 思わずあきれ顔になるガーキンに悟空はあれっと首を傾げながら言う。

 

「オメエ、なんで怒らねえんだ?」

 

「……いや。待て待て。その流れで怒れって言われてもよ。ていうか、怒らせようとしてたのか」

 

 ガックリと肩を落とし、疲れた顔になるガーキンに悟空は困った顔になる。

 

「参ったなぁ。オラも今、怒ってねえからこれ以上の悪口、思い浮かばねえぞ」

 

「……気を遣ってもらってなんだけど。お前、挑発ヘタクソだな」

 

 力が抜けたような顔のガーキンに言われ、悟空が「はははっ」と明るく笑いながら右手で頭をかく。

 

 その時だった。

 

 晴れていた青空がいきなり曇りだした。

 

 陽光が分厚い暗雲に遮られ、薄闇が世界に満ちる。

 

 悟空とベジータの二人が、尋常でない気配に静かに互いを見合う。

 

「おい、ベジータ。こいつは」

 

「ああ、来るぞ!!」

 

 二人の言葉の直後だった。

 

 分厚い雲から黄金の落雷が起こる。

 

 それは闘技場のど真ん中に降って来た。

 

 雷の中から一人の黄金の気を纏った翡翠に黒の瞳孔が現れた目の超サイヤ人が姿を現す。

 

 見た目は悟空やベジータのように青年の姿をしているが、その身に纏う雰囲気が彼を年齢不詳にさせている。

 

「ガーキン、ジュード! みんなを下がらせろ!!」

 

「何者だ、貴様!!!」

 

 悟空がガーキンとジュードに叫ぶ横で、ベジータが鋭く詰問する。

 

 超サイヤ人は静かに悟空とベジータを睨み据えた。

 

 この二人をして、睨まれただけで肌に棘が刺さるような感覚がある。

 

「……」 

 

 静かに超サイヤ人は腰を落として拳を握り、悟空とベジータの二人に向かって構えた。

 

 悟空は呆然としているジュードを見て告げる。

 

「何してんだ!? みんなを連れて早く逃げろ!!」

 

「……バカな。何故だ? 死者の都から、何故貴様が出てくる?」

 

 ジュードの言葉に悟空が訝し気に見る。

 

「答えろ、超サイヤ人!! 何故、貴様が此処にいる!!?」

 

 ジュードの言葉が静まり返った闘技場に響く。

 

 たった一人、場に現れただけだ。

 

 だが、その圧倒的な重圧に皆が凍り付いていた。

 

 静かに超サイヤ人は声を上げる。

 

「我こそは”真の超サイヤ人”……!! うぬらの無力さ、その体で知れぃ!!」

 

 纏う気を更に高めて、咆哮する超サイヤ人。

 

 ベジータが静かにつぶやく。

 

「会話にならんな。それにしても……!!」

 

「ああ。見た目はオラ達のフュージョンした姿。ゴジータにそっくりだな……!」

 

「惑星サイヤ。色々と面倒なところのようだ……!!」

 

 悟空達二人が超サイヤ人に対して構えを取る。

 

 その間にジュードや兵士達を連れてガーキンが闘技場から去って行くのを横目で確認する。

 

 ふと悟空が何かに気付いた表情になってベジータに問いかけた。

 

「なあ、ベジータ? オラ達、ポタラでの合体じゃなくてフュージョンしたことあったか?」

 

「こんな時に何を訳の分からん話をしていやがる!? 地獄で閻魔の野郎が囚われた時にしただろうが!!」

 

 イラついたようなベジータの声に悟空は超サイヤ人を見たまま、告げた。

 

「…それ、いつの話だ? オラも記憶にあんだけどよ。オラ達死んでたよな?」

 

「ジャネンバの時だろ!! バビディが連れていたデブの魔人ブウを貴様が超サイヤ人3でぶっ倒した後のーーっ!?」

 

 言っていて、ベジータも気付いた。

 

 自分達は魔人ブウを倒す為に蘇った。

 

 あの時、超サイヤ人3を見せた悟空はデブのブウを倒してはいない。

 

 そもそも、デブのブウを倒してしまえば今、仲間に居るミスターブウがいない。

 

 更に言うとゴテンクスにフュージョンを教える必要もないし、悟飯は老界王神に力を与えられる必要もない。

 

 ベジットも存在しなくなるはずだ。

 

「…ジャネンバ。そうだ、鬼の兄ちゃんが地獄に集められた悪の気で変わったアレだ。でもよ、オラ達はそんな奴と闘ったか?」

 

「…どうなってやがる? 体験した事のない記憶が、知りえないはずの記憶が何故、頭の中に湧いて来やがる!?」

 

 二人ともに焦っていた。

 

 知らないはずの記憶。

 

 見たことのない敵との闘いと勝利が、頭の中に湧いて来たのだ。

 

 強烈な目眩と記憶の量に頭が割れそうな程の痛みが起こっている。

 

「…死者の都の気に当てられたか」

 

 目の前の超サイヤ人が、静かに低い声で告げて来た。

 

「…死者の都? 気に当てられた? どうゆうことだ?」

 

 問いかける悟空に静かに超サイヤ人は語る。

 

「…うぬ等であって、うぬ等ではない者の記憶。数多に分かれし世界の記憶。集う場こそが死者の都なり」

 

「訳の分からんことをゴチャゴチャと述べやがって! 貴様の仕業なのか、この頭の中に無理やり入り込んでくるような景色は!?」

 

 叫ぶベジータに超サイヤ人は告げた。

 

「…語るに及ばず。亡霊の慟哭など、聞くに能わず。去ねぃ!!」

 

 瞬間、怒号と共に超サイヤ人は地面を踏み抜いた。

 

 地面が揺れるもすぐに納まる。

 

「! ベジータ。オラ今ので、頭痛が消えたぞ!」

 

「垂れ流されていた光景も消えた。おい! なんなんだ、今のは!?」

 

 問いかけるベジータに応えず、超サイヤ人は拳を握り、殺気を纏い始めた。

 

「…とりあえず、サンキューな。オメエ、意外と良いやつなんか?」

 

 自分達が立つ事もままならない程、頭の痛みに苛まれていたのを超サイヤ人は治してくれた。

 

 悟空は、そう解釈していた。

 

「オメエ、オラ達やターニッブと同じで。強い奴を見ると闘いたくなるんだな? 分かるぜ、オメエの目を見りゃあな!!」

 

 ベジータも静かに金色のオーラを身に纏い、構える。

 

「…そのまま頭痛で動けない俺たちを襲っておけば、このベジータ様に勝てたかも知れなかったものを。甘い奴だ、バカめ!!」

 

 ベジータは腰だめに気をためると一気に開放した。

 

「真の超サイヤ人だと? この俺を倒してから、そんなセリフは吐きやがれ!!」

 

「行くぞ! オラが相手だ!!」

 

 同時に左右から悟空とベジータが挑みかかった。

 

ーーーーーー

 

 王宮にて食事を楽しんでいたウイスもまた、その手を止める。

 

「…この圧倒的な気配。まるで世界そのものを喰らうかのように強大な気ですね。それも無限に高まっている」

 

 向かいの席に座る巫女・プリカは白い肌を真っ青にして震えていた。

 

「…そんな。どうして、超サイヤ人が? 死者の都から彼が出てくるなんて……!?」

 

 これにウイスが告げる。

 

「おそらくですが、強大な力に惹きつけられたのでしょう。悟空さんとベジータさんという、ね」

 

 その時、ウイスの杖に通信が入ってきた。

 

 彼は静かにその通信をオンにして見ると、紫色の猫のような姿をした人物ーー否、神がいた。

 

「コレは、ビルスさま。お昼寝中ではなかったのですか?」

 

「…ちょっと不愉快な気を感じてね。悟空が僕に少しだけ見せた”真・超サイヤ人”てヤツの気に似てるけれど違う。禍々しくて不吉な気だ」

 

 猫の仕草で顔を洗いながら、ビルスは静かに瞳を鋭く細める。

 

「お寝坊なビルス様が起きるなんて。どうやら、シャレでは済まない方が居るようですね」

 

 ウイスもまた、ゆっくりと席を立つとプリカに告げた。

 

「案内してくれませんか? プリカさん。闘技場とやらに」

 

「は、はい。ウイス殿、どうか…!」

 

「様子を見るだけです。手荒な事をするつもりはありませんよ。今の所は」

 

 そう言うウイスの顔を見上げ、プリカは静かに頷くと闘技場へと彼を連れて行く。

 

ーーーーーーーー

 

「かめはめ波!!」

 

「ギャリック砲!!」

 

 悟空のかめはめ波とベジータのギャリック砲が、同時に超サイヤ人に対して放たれた。

 

「……滅!!」

 

 対する超サイヤ人は腰だめに構えた両の拳を前方に掌に解いて突き出し、右手を上に左手を下にして手首を合わせ掌を相手に向ける。

 

 放たれたのは悟空のかめはめ波とそっくりの気功波。

 

 ぶつかり合う3つの光は相殺し、宙で消えた。

 

 二人の地球から来た超サイヤ人は、自らを”真の超サイヤ人”と称する男に押されていた。

 

「…チ、化け物め! ダメージは負わない。痛みは感じない。おまけに気は無限に増大するだと? …ふざけやがって!!」

 

 吐き捨てるベジータの隣に悟空は立つ。

 

「…よぉし。オラがブチかましてやる!!」

 

 悟空は一気に踏み込み、拳を振りかぶる。

 

 対する超サイヤ人もまた、強烈な足音と共に踏み込んで来た。

 

 ぶつかり合う右の拳と拳。

 

 そのまま、乱打戦になる。

 

 拳と蹴りが霞のように消えるスピードで殴り、蹴る。

 

(こいつ、闘い方もターニッブやジュード、ガーキンに似てんなぁ! 一体ぇ、どういうこった?)

 

 拳や蹴りの連携技を打ち合いながら、悟空は表情の変わらない超サイヤ人を見据える。

 

 お互いに右のハイキックを繰り出しあい、ぶつけ合う。

 

「…はぁあ!」

 

 だが、合わせた超サイヤ人の蹴り足の下に悟空のつま先がするりと現れ、剣の巻き技の様に絡めて上に跳ね上げた。

 

 足を頭上に跳ね上げられてなお、超サイヤ人はバランスが崩れない。

 

「今だ、ベジータ!!」

 

 悟空は相棒に告げると人差し指と中指を揃えて立て、額に付ける。

 

 瞬間移動ーー。

 

 一瞬で悟空は気を限界まで高め、両手を突き出した姿勢でいるベジータの左隣に移動した。

 

「喰らえ、ファイナルフラァアアアッシュ!!」

 

 その悟空が一瞬前まで立っていた位置を撃ち抜く様にベジータが金色の気功波を放った。

 

 ギャリック砲よりも消費する気力は多いが、比例して破壊力もでかい。

 

 だが超サイヤ人は、片足を爪先立ちにすると天高く掲げた右足の膝を曲げて体に引き寄せ、そのままの姿勢で地面を滑らかにすべる。

 

「なんだと!?」

 

 まるで陽炎の様に気功波は体を擦り抜け、そのままの勢いで超サイヤ人はベジータの眼前に来ると頑丈な拳を握りしめて振り下ろした。

 

「…ちっ!」

 

 振り下ろされる右の拳を左腕で受け止め、ベジータは右のストレートを超サイヤ人の顔面に返す。

 

 乾いた音と共にベジータの拳は超サイヤ人の左掌に受け止められた。

 

 至近距離で睨み合うベジータと超サイヤ人。

 

「隙ありぃ! でぇりゃあぁあ!!」

 

 悟空が超サイヤ人の背後に瞬間移動した後、左足の中断飛び回し蹴りを放った。

 

 鈍い音が響くと同時に、蹴り足はベジータの拳を離した超サイヤ人の左腕にて止められていた。

 

 即座に超スピードで離れて、構え仕切り直す二人。

 

(オラ達の攻撃が、見切られてるっていうのか!?)

 

(ただでさえ、無限に上昇する戦闘力だというのに。こいつ動きも普通じゃない!!)

 

 基本戦闘力も相当なレベルにあるとベジータは感じていた。

 

「…何、探ってんだ?」

 

 悟空が静かに問いかける。

 

 超サイヤ人は応えず、ただ静かに悟空を見返して来た。

 

「…カカロット。俺にやらせろ」

 

 ベジータの声に悟空はニヤリとする。

 

「よっしゃ、任せるぜ!!」

 

「…ふん」

 

 金色の髪が黒髪に戻り、悟空は一歩下がってベジータを見る。

 

 対するベジータは、超サイヤ人に向き合うと気を高め始めた。

 

「はぁぁあっ! 行くぞ、化け物!!」

 

 気合いの声が響くと同時に蒼銀の炎が金色に輝くベジータを包み込む。

 

 蒼銀の炎は火の粉になり、解けていくと蒼いオーラと蒼銀の髪をした超サイヤ人が姿を現した。

 

「どうだ!? コレが超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人。超サイヤ人ブルーだ!!」

 

 神の気を纏い、ベジータは高らかに宣言する。

 

 だが、超サイヤ人は表情を変える事はない。

 

 ただ、静かに拳を握り構えるのみだ。

 

「…チッ、眉一つ動かさんとはな!!」

 

 吐き捨てるベジータに超サイヤ人は静かに告げた。

 

「…その力、神威(カムイ)に値せず」

 

「…何? ならば試してみろ!! ゴッドの力を得た超サイヤ人の実力をなぁああ!!」

 

 ベジータが真正面から突っ込むと超サイヤ人も拳を握り、受けて立った。

 

 ぶつかり合う右の拳と拳。

 

 黄金と蒼銀のオーラが激しく燃え盛り、互いの体を照らし出す。

 

「バカな、超サイヤ人ブルーで押し切れないだと!?」

 

 目を見開くベジータに超サイヤ人は静かに告げた。

 

「…我が拳、神をも屠る。神威とて恐るるに足らぬ」

 

 言葉と同時に一気に超サイヤ人の気が爆発した。

 

「…うぉあああっ!?」

 

 後方へ弾き飛ばされるベジータ。

 

 しかし、彼は見事に後方で着地を決めた。

 

「…バカな、何という気だ!?」

 

 天が割れ、地を穿つ。

 

 圧倒的なまでのパワーだった。

 

「…ターニッブが超サイヤ人を忌み嫌ったんは、オメエの所為だな? オメエ一体、アイツに何をした!?」

 

 冷や汗を頰にかきながら、悟空は鋭い目で詰問した。

 

 圧倒的なまでの殺意。

 

 破壊衝動。

 

 その全てを放ちながらも無駄口を叩かない。

 

 口の端を歪めることさえしない超サイヤ人。

 

「…語るべき故などない」

 

 高まり続ける超サイヤ人の気。

 

 コレにベジータも静かに目を閉じ、気を一気に集中させて高めた。

 

「ならば、コレならどうだぁああ!! 超サイヤ人ブルーのギャリック砲だぁあああ!!!」

 

 全力の気を全て高めて両手に込め、掌を突き出して放つ。

 

「スーパーギャリック砲ぉおおおおおっ!!!」

 

 森羅万象・全てのものを消し飛ばせるほどの一撃。

 

 しかし、超サイヤ人は微動だにせず、これを真正面から受けた。

 

 蒼銀の光線の中に消えた超サイヤ人。

 

 ベジータは肩で息をしながらも、睨み据える。

 

「…分かっちゃいたが、頭にくるぜ。ダメージなし、か!!」

 

「ああ。真・超サイヤ人の厄介な所は、変身してる間は攻撃が全く効かねえってことだ。もちろん、高まり続ける気や戦闘力もマズイけどな」

 

「…時間切れはどうした!? 奴め、一向に弱まる気配がないぞ!!」

 

 ベジータの言葉どおり、敵の超サイヤ人は一向に弱まらず気が高まり続けている。

 

「ウイスさんの話なら、あの力は普通のサイヤ人が使うと理性が飛んじまうはずなんだがなぁ」

 

 確かに身に纏う殺意や破壊衝動は凄まじいが、それ以上の確たる意思を悟空もベジータも感じていた。

 

 何処か呑気な悟空にベジータは苛立ちを隠せない。

 

「貴様ぁ!! 何でそんなに余裕があるんだ!?」

 

「い!? いやぁ…、何となく悪りぃヤツじゃ無さそうなんだよな」

 

 怒鳴られ、悟空がびっくりしながらも超サイヤ人の方を目を丸くして見る。

 

「…これだけ殺気を向けられているのにか?」

 

「へへっ、オラにも良く分かんねえけどよ。ベジータ、オメエはあいつが悪いヤツに見えっか?」

 

 明るく笑いながら問いかけてくる悟空にベジータは静かに告げた。

 

「知らん! 分かるのは、そこそこの危機に陥りつつあるってことだけだ!!」

 

「…確かにな。さあて、どうすっかな?」

 

 表情を軽い笑みから真剣なものにすると悟空も超サイヤ人を睨み据える。

 

 だが突如、超サイヤ人は悟空達に背を向けた。

 

「…どういうつもりだ、貴様!?」

 

 ベジータが問いかけるも応えずに、彼はこう叫んだ。

 

「我が名は、リューベ!! 真なる超サイヤ人なり!!!」

 

 そのまま片足で爪先立ちになると、逆の脚の膝を曲げて体に寄せた姿勢のまま、その場から去っていった。

 

「…我に敵う者、いずこ」

 

 黄金の炎が飛び散り、静けさを取り戻す世界。

 

 超サイヤ人ブルーとなったベジータは静かに悟空を見た。

 

「…なんだ、あれは? 人間とやり合っている気がしなかったぞ」

 

「ああ…。ターニッブとあいつの関係、気になるな」

 

 真剣な表情で悟空も頷く。

 

「何より……! 得意げな奴がエネルギー切れになった所を真・超サイヤ人で決める俺の作戦が……!!」

 

「まあ。この惑星にいりゃあ、またやり合えるさ!」

 

 忌々し気なベジータに軽く悟空が言うと、闘技場の入口から巫女・プリカを連れて破壊神の付き人ウイスが現れた。 

 

「どうやら、追い返せたようですね。流石は悟空さんとベジータさんです」

 

 淡々と告げるウイスにプリカが目を見開く。

 

「し、信じられない……! あの超サイヤ人と正面から戦って生き残るなんて……!!」

 

 思わずと言う風につぶやく巫女を悟空がニカリと明るく笑いかけた。

 

「へへっ、見直したろ?」

 

「調子に乗っている場合か。現時点では奴には勝てんぞ」

 

「まあな……! けど、アイツは世界を滅ぼすような悪党ーーフリーザやセルみてえな奴らじゃねえさ。純粋にただ強い奴と戦いたい、そんだけだと思うぜ」

 

 ベジータの苦言に対しても平然と悟空は告げる。

 

 呆れたような表情になるベジータだが、目を見開いた。

 

「? カカロット?」

 

「ん? どうした、ベジータ?」

 

 ベジータの見ている方を見て悟空もそちらを向くと、先ほどまで超サイヤ人・リューベが立っていた場所に一人の褐色の肌をした青年のサイヤ人が裸で倒れていた。

 

 その顏を見てベジータは悟空を見据える。

 

「……気に食わない面が増えたな?」

 

「へぇ~? オラみてえな顔したサイヤ人って、いっぺぇ居るんだなぁ!!」

 

 言いながら悟空は褐色の肌の青年に近寄る。

 

 その青年に触れた時、悟空の頭の中に記憶が走った。

 

「……っ!?」

 

 巨大な木が自分たちを見下し、その木になる不思議な実が地球の養分を食らっていく。

 

ーー カカロット! 跪いて命乞いをすれば、助けてやるぞ!! ーー

 

 褐色の肌の青年は赤いスカウターを付け、フリーザ軍の戦闘服を着ている。

 

 最期は元気玉で倒されたサイヤ人の男。

 

 褐色の肌の男は静かに目を見開き、悟空の顔を見て目を見開いた。

 

「き、貴様は……カカロット……?」

 

「オメエは、ターレスだな」

 

 悟空の言葉に男ーーターレスは怒りの表情に一瞬なるも、すぐに力を失い気絶した。

 

「こりゃ、ちょっと面倒なことになりそうだな」 

 

 悟空が静かに腕の中で眠る同じ顔のサイヤ人を見下ろす。

 

 ベジータは悟空の言葉に心の中で頷いた後、静かに天を見上げた。

 

 リューベが現れる前と同じく、明るい青空がそこには広がっている。

 

ーーーーーー

 

 死者の都。

 

 薄暗い曇天の空。

 

 見渡す限りの濃い霧。

 

 それ以外には何もない、ただ広いだけの荒野の世界。

 

 その中に今、一人の男が立っていた。

 

「……何処だ、ここは? 俺は惑星プラントに居たんじゃなかったのか?」

 

 周囲を見渡しながら言う。

 

 左の頬に十字の傷を持った鋭い目つきの黒髪黒目の青年。

 

 左右に非対称に伸びた独特なヘアースタイル。

 

 その額には赤いバンダナを巻いている。

 

 体には下半身に黒いフィットネスの長ズボンを履き、赤い布を巻いたバトルブーツを履いている。

 

 上半身は素肌の上に緑色を基調にしたフリーザ軍の旧型バトルジャケットを身に付けている。

 

「……カカロット……! カカロット……!!」

 

 声のする方を振り返れば、そこには三メートルを越える巨大な筋肉質の体を持った金髪に白目の大男が金色のオーラを纏って立っていた。

 

「テメエ。そんな格好(ナリ)してるが、サイヤ人だな?」

 

 青年を見下し、今にも襲い掛からんと拳を握っている。

 

 これに対して青年はシニカルに口を歪めて笑う。

 

「なるほど、俺とやろうってのか? サイヤ人同士、話が早いぜ!!」

 

 赤い革のグローブを握りしめ黒髪の青年は大男に向けて拳を構える。

 

「カカロット……!! 殺してやるぞ、カカロットォオオオオオオ!!」

 

「そいつは、俺の息子だよ」

 

 淡々と告げた後、黒髪の青年は腰だめに拳を握り金色の気を纏った。

 

 髪は天を向き、金色に黒い瞳は翡翠に変化する。

 

「俺の名はーーバーダックだ!!」

 

 二人の超サイヤ人が、互いに向かって拳を振りかぶり合った。

 




 次回もよろしく(´ー`* ))))



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死者の都を統べる者 ターニッブの過去

少々、回想がたりになってます(´・∀・`)

 次回からサイヤ人同士の対決が、あるかなぁ?(´・∀・`)


 

 褐色の肌の青年・ターレスを客間のベッドに運んだ悟空とベジータそして、ウイス。

 

 彼らを案内したのは目の前にいる巫女・プリカだった。

 

「…申し訳ありません。ジュード王もガーキンも、退避を終えた後は気を失ったようで」

 

「無理もない。アレほどまでに純粋で強大な殺意を前にしては普通のサイヤ人では対抗できないでしょうね」

 

 ウイスがさもありなんとばかりに頷いた後、悟空とベジータに告げた。

 

「申し訳ありません、悟空さんにベジータさん。私は、破壊神の付き人。この惑星の事も気になりますが、そろそろビルス様の元に帰らねば」

 

「分かった! じゃあ、オラは残る! この惑星のゴタゴタが終わったら、瞬間移動でウイスさんやビルス様ん所に一回帰るようにすんぞ!!」

 

 悟空の返答を予期していたようにウイスも頷くと、ベジータを見た。

 

「ウイス様。俺も残らせてください。同じサイヤ人として。何より友として。俺もジュードの惑星が気になります」

 

「…分かりました。ベジータさんも悟空さんも、気の済むまで挑んでみなさい。それと、私から一つ助言しておきます」

 

 その言葉に悟空とベジータが目を見開く。

 

「先のリューベなるサイヤ人。確かに肉体は凄まじい生命エナジーでした。基準から言えば、破壊神の候補に選ばれる程の。しかし、彼の魂は死を厭わない」

 

「…つまり、どういうことだ?」

 

 悟空が首を傾げながら問うと、ウイスも頷いてから答えてきた。

 

「…要は、半分死んでいるのではないか、ということです。死人に時間はありませんからね。真・超サイヤ人になり続けることができるのも、おそらくは」

 

「…死んでた時のオラの超サイヤ人3みてえに奴には時間の流れがねえから、真・超サイヤ人になり続けていられるってことか。確かに、それなら説明は付くけど。でもよ、ウイスさん。あいつは、この世のはずのこの宮殿でも普通に力を使えてたぞ?」

 

 コレにウイスも頷いてから応えた。

 

「…おそらくは真・超サイヤ人に長年なり続けたが故に、高位の神々にも匹敵する存在に成長してしまっているのでしょう。ビルス様が星を破壊する破壊神なら、さしずめ彼はただ強者を求める”闘いの神”と言ったところでしょうかね」

 

 悟空は静かに拳を掌にぶつけた。

 

「…そうか。つまり、奴の強さは奴自身が死者の都って所で真・超サイヤ人になり続けて、築き上げた力そのものって訳か」

 

「強いはずだ。短期間でもただのサイヤ人だったターニッブが、超サイヤ人ブルーのステージに引き上げられる程の力だ。そいつを普段から開放しているのだからな」

 

 ベジータも悟空に頷く。

 

 そんな弟子二人にウイスは淡々と告げた。

 

「…結論から申し上げます。現時点で、悟空さんとベジータさんが、たとえ真・超サイヤ人になってリューベに挑んだとしても。差は永遠に縮まらない。何故なら、真・超サイヤ人で力を無限に引き上げられるのは、あなた方もリューベも同じなのです。おそらく戦いにはなるでしょう。ですが、どれほど食らい付けたとしても悟空さん達の体にタイムリミットが来てお終いでしょう」

 

 ウイスの言葉に悟空は真剣な表情で考える。

 

 ベジータも静かに目を閉じた。

 

「それでも、あなた方のことです。彼に挑むのは変わらないのでしょうね〜」

 

 クスリと笑うウイスに悟空とベジータが不敵な笑みを返した。

 

「…ご武運を。全王様は特に悟空さんの帰りを待っているでしょうから」

 

 それだけを告げ、ウイスは杖の先にある石突で地面を突くと光の円が地面に現れる。

 

 そして光の円に乗ったウイスは、高速で空間を曲げながら加速して去っていった。

 

 ウイスを見送った悟空はプリカに向き直る。

「…さてと! 巫女っちゅう立場のアンタならターニッブとリューベの間に何があったんか、知ってるよな! 死者の都とか、オラやターニッブがなれる真・超サイヤ人について色々教えてくれ」

 

 その言葉にプリカはニコリと笑うと、悟空とベジータを連れて食堂に招いた。

 

「では、こちらへ」

 

 先の玉座の間で、広げられていた料理が其処には温かいまま出されている。

 

「おー! そうだった!! 誘われてたけど組み手を優先してたんだ! 話は飯ぃ、食いながらだったなぁ!!」

 

「はい。ベジータさんも、たんとお食べくださいな」

 

 微笑みながら言うプリカに、ベジータは微かに会釈するとドカリと椅子に座り、食事を始める。

 

 隣では一足早く、悟空が出された料理を片っ端から平らげていた。

 

 そんな二人に微笑み、女従士達に給仕を任せながらプリカは静かな表情で語り出した。

 

ーーーーーー

 

 惑星サイヤの物語。

 

 エイジ551年。

 

 サイヤ人同士の内乱によって異常気象を起こしたサダラに残った方のサイヤ人達はついに己の惑星を見限り、新天地を目指して旅立った。

 

 そんな中、見つけた植物と水、酸素が存在する比較的サダラに近い環境の名もない惑星。

 

 その星には、生物が居ながら文明が栄えたためしがなかった。

 

 土地を調べれば、知的生命体が居なかった訳ではないらしい。

 

 もっとも、栄えたと思われる先住民の文明も謎の滅びを迎えていた。

 

 惑星の中心点に当たる土地に何かを祀るような祭壇のある遺跡があった。

 

 その遺跡の調査をサイヤ人達が行っていると、地下へ続く階段を見つけた。

 

 其処で彼らは、惑星の地下に広がる異世界を見た。

 

 サイヤ人達は、其処を死者の都と呼んだ。

 

 住み始めた頃は何もなかった。

 

 だが、文明が進むに連れ死人が現世に現れては害を為すようになった。

 

 新天地を目指し、やっと見つけた安住の地でも身内での争いをしなければならないのか、と途方に暮れるサイヤ人達の中、彼らを率いて居た当時のサイヤ王が金色の戦士に変身した。

 

 王は瞬く間に全ての悪霊を倒し、自ら悪霊が吹き出てくる死者の都へと降りて行ったという。

 

 そして、其処から何百年にも渡って惑星地下での超サイヤ人と悪霊達の闘いが続いているのだ。

 

 プリカは、惑星サイヤの先代の王の娘だった。

 

 彼女は生まれつき、未来の世界や異なる時空を見る能力があった。

 

 彼女の兄はジュードといい、生まれつき天才の名を欲しいままにする武と知を併せ持った男。

 

 それらを子にもつ先代のサイヤ王は、類なき技と力を持って並居る悪党を倒していった。

 

 あるとき、サイヤ王の下に弟子になりたいという子どもが現れた。

 

 まだ、幼年期を過ぎて居ない小さな少年。

 

「門前で座り込み始めて、もう3日目か…小僧。何故、この拳を学びたい?」

 

 門番のサイヤ人達に追い払われようとしても変わらず少年は其処にいた。

 

 たまたま、実務の移動中に王が門番の前に現れ、問いかけた。

 

 少年は王を強い光の宿る黒い瞳で見返してきた。

 

「強くなるため!!」

 

 真っ直ぐに告げる少年を真っ直ぐに見返し、サイヤ王は何かに気づいたような顔をした後、告げた。

 

「…この王都より少し離れた廃村に人々を襲う悪霊が出るという。其奴を倒せたら、弟子にしてやろう」

 

「分かりました!!」

 

「…貴様の力で勝てる相手ではない。それでも行くか?」

 

「はい!! 俺は、此処より貴方の弟子になると決めた。命を賭しても!!」

 

 小さな少年は、ボロボロに袖が破けた白い道着を着た己の身一つで、悪霊を退治に向かった。

 

「…哀れな。逃げることを知らぬとは。子ども一人が荒野を彷徨う悪霊に出会う確率は低い。倒れたところを兵士に介抱させるようにするか。許せよ」

 

 サイヤ王は少年が去っていった道を静かに見送る。

 

 ふと、気づいた。

 

 その地面には血が流れている。

 

「…これは、まさかあの小僧!?」

 

 サイヤ王が目を見開く。

 

 少年は、肩で息をしながら悪霊に対峙していた。

 

 サイヤ王の宮殿を訪ねる直前に、少年は野宿をしようと廃寺に立ち寄り、本堂に寝た。

 

 其処には、生き霊が住んでいた。

 

「…すまない。貴方の祠と知らず立ち入った俺の不徳。人に危害を加えるようになった貴方は、せめて俺が」

 

 向き合う。

 

 たとえ、命を捨てようとも。

 

 せめて人里から離れさせることができれば、と。

 

 荒野を逃げ惑うしかできない少年は、手傷を負っていたこともあり、すぐさま悪霊に追い付かれた。

 

 念力のようなもので少年は抵抗する間も無く、地面に叩きつけられる。

 

 亡霊は半ば透けた身体で少年の前に浮かぶ。

 

 黒いフードを被った髑髏の眼孔には赤く光を放つ球が浮かんでいる。

 

 亡霊は少年の上に覆い被さると、髑髏の歯を大きく開けて食らいつこうとしてきた。

 

 助かる見込みはないような状況で、それでも少年の目には怯えはなく、挑もうとする意志があった。

 

 その時だった。

 

 薄暗い曇天から黄金の落雷が一筋、降り落ちた。

 

「………っ!?」

 

 髑髏を睨みつけていた少年の目には、この世の何よりも固いと思わせる拳が突きつけられていた。

 

 見れば、拳は物理攻撃を一切無効にする悪霊の顔面を背後から打ち抜いて其処にあった。

 

 あれほど猛威を振るった悪霊は、ゆっくりと塵に帰っていった。

 

 拳の持ち主は濃紺の道着を着た、黒い足袋に草履を履いた出で立ちの逆立つ黄金の髪と翡翠に黒い瞳孔のある目をした青年。

 

 彼は淡々とした表情で少年を見下ろすと構えた拳を退かせて、背を向けて去ろうとする。

 

 そんな彼に、少年は息も絶え絶えになって立ち上がりながら、強い目で問いかけた。

 

「…何故だ!? 何故、滅した!?」

 

「…」

 

 少年の言葉に静かに向き直る男。

 

「貴方ほどの力があれば、霊を悪霊から元の姿に戻してやることもできただろう!? 何故だ!?」

 

 真剣な少年の目を真っ向から見返し、圧倒的な力を持つ男は告げた。

 

「…笑止」

 

 若々しい顔の見た目に反して、低く渋い声。

 

 しかし、その所作に無理はなく堂に入った男の立ち居振る舞いは、見事に洗練されている。

 

「…己の持つ力の全てを賭して闘うが、真の拳士なり。戦闘民族であるサイヤ人は強さを求める。…戦士が己の全力を持って拳を放つことの何がおかしい?」

 

 問いかけに少年は間髪入れず応えた。

 

「…貴方は、正しい。だけど、間違っている!!」

 

 必死に告げる少年を、男はただ静かに見下ろす。

 

「…貴方は、間違っている。絶……った、いに」

 

 前のめりに倒れる少年。

 

 その彼を少し離れたところから見下ろす男。

 

 そんな二人の間に、第三者の声が届いた。

 

「…お主の歩む道は、このような年端も行かぬ子どもにさえ、過ちだと分かるということだ」

 

 その場に現れたのは、多数の兵士を連れて荒野を探っていたサイヤ王だった。

 

「……」

 

 静かに男はサイヤ王を見据える。

 

「去るがいい、超サイヤ人よ。この少年は俺が預かる」

 

「…………その小僧、任せたぞ」

 

 男ーー超サイヤ人は、それだけを告げるとその場から離れていった。

 

 周りの者が王を見れば、彼は淡々と倒れている少年を抱き上げている。

 

「……人では居れず、鬼には成れず。初代サイヤ王・リューベよ。伝え聞く通り、お主は甘い男だ」

 

 微かに悲しげにサイヤ王は告げた。

 

「…そして、小僧よ。お前もまた、哀れだ。何故に王家に関わる? 唯人(ただびと)として生きられぬ? その身に流れる血か? それとも、身に宿す力が故か?」

 

 王は静かに少年の名を呼んだ。

 

「ターニッブよ……!!」

 

ーーーーーー

 

 悟空もベジータも、食事を前にして手が止まっていた。

 

 ジッと真剣な表情でプリカを見据えている。

 

 彼女は美しく儚げに微笑むと告げた。

 

「…こうして、ターニッブは私たちと生活を共に過ごし始めました。お兄様ーージュード王子やガーキンに瞬く間に追い付き、互いに切磋琢磨し合う中になったのです。平和な日々が続きました。けれど、わたくしは予知夢を見ました。お父様が、王子であるお兄様に王位を継承した直後に、あの鬼が。超サイヤ人が、現れる夢を」

 

 段々と笑顔が崩れ、悲しげになるプリカにベジータが何かを言おうとして、横から悟空に制された。

 

「…わたくしは、お父様には告げました。兄が即位すれば、お父様を狙ってあの鬼が来ると!」

 

 けれど…、と呟きながらプリカは告げる。

 

「お父様は、わたくしの話を理解した上で頷いたのです。兄に即位させると!!」

 

 ほとんど泣いているプリカを悟空は静かに、真剣な表情で見据えた。

 

「なるほどなぁ。やっぱオメエ等、王家とあの超サイヤ人は因縁があったんだなぁ。けどよ、プリカ。…その先を、オメエ達とは無関係なオラ達が聞いてもいいんか? 土足で他人の心に踏み込むような真似、オラしたくねえ」

 

「カカロット! 貴様ここまで事情を聞いて、何を言ってやがる!?」

 

「話づれえ事もあんだろ。プリカに無理させてまで、聞く話じゃねえさ。どうせ、リューベとはやり合うんだからなぁ」

 

 これにベジータも不承不承と言った感じで腕を組んで黙る。

 

「…ありがとうございます、悟空さん。ベジータさん。でも、話します。話させてください。私達王家とターニッブ。そして初代サイヤ王・リューベとの因縁を」

 

 二人は静かにお互いを見合うと頷き、プリカを見た。

 

「…ゆっくりで、いいかんな?」

 

「焦ることはない。俺たちは、当分この惑星にいるからな」

 

 二人の言葉に微笑むと、プリカは話を続けた。

 

ーーーーーー

 

 ターニッブとガーキン、そしてジュードは17の頃、サイヤ王からの免許皆伝を言い渡された。

 

「もうお前達に教えることは何もない。後はお前達が、その拳で己の道を開くのだ。ジュードよ、今日からはお前がサイヤの王となれ!!」

 

「ありがたく! 必ずや、貴方よりも偉大な王となることを誓います、父上!!」

 

 力強い王子のーー否、新王の言葉にサイヤ王は満足気に頷いた。

 

「…約束だぞ。ガーキン、そしてターニッブよ、ジュードの補佐をよろしく頼む」

 

 その表情のまま、サイヤ王はガーキンとターニッブに目をやる。

 

「…分かってますって! 俺とターニッブが居れば、余裕ですよ!!」

 

「…微力ながら、精一杯やらせていただきます」

 

 サイヤ王の言葉に皆が頷く。

 

「お! やったな、ジュード!! ターニッブの野郎は、まだ修行の旅には行かねえとよ!!」

 

 ガーキンの揶揄するような声に新王・ジュードは不敵な笑みを浮かべた。

 

「…ああ、助かるぜ。ターニッブは、優秀な部下になる素質があるからな」

 

「どういう意味だ? まるで俺には期待してねえみたいじゃねえか?」

 

「おっと、すまん。口が滑ったようだ」

 

 などと言い合う二人の間を割ってターニッブは問うた。

 

「師匠。貴方は、これからどうされるのですか?」

 

「俺か? 野暮用を済ませるつもりだ」

 

 ニヤリと笑うサイヤ王に三人は首をかしげる。

 

 その日の深夜のことだった。

 

 ターニッブが夜中に飛び起きたのだ。

 

「? どうした、ターニッブ?」

 

「んぁ、なんだあ?」

 

 寝ぼけまなこをこすりながら、起き上がる二人の同門にターニッブは告げた。

 

「師匠が闘っている。おそらくは、超サイヤ人と!!」

 

「「…!?」」

 

 その言葉にジュードとガーキンが目を見開く。

 

 問ひ返す間も無く、寝室を飛び出すターニッブに二人も即座に反応して追いかける。

 

「…こんな夜更けに何処へ行こうというのですか、ターニッブ」

 

「…プリカ様」

 

 ターニッブは静かにプリカを見据える。

 

 見れば彼女は薄着の寝巻きに着替えていた。

 

「…プリカよ、ターニッブは父上が超サイヤ人と闘っているというのだ」

 

「…いきなりな話だが、あの噂の超サイヤ人に関しちゃ無きにしも非ずだろ? それで確認に…」

 

 ジュードとガーキンに向かったプリカは悲しげな表情になる。

 

「…ターニッブ。何故、分かったのです? 貴方には巫女の力も王家の血もないはず」

 

 その言葉に、ジュードが目を見開く。

 

「…プリカ! まさかターニッブの言ってることは、本当なのか!?」

 

「…プリカ姫、何で俺たちに師匠が闘っているのを教えてくれなかったんですか? いや、それよりも師匠は何処だ?」

 

 問いかけるジュードとガーキンだが、ターニッブが先に歩き出す。

 

 それを遮るように正面にプリカは立った。

 

「…プリカ姫。頼みます、そこを退いてください」

 

「ターニッブ。サイヤ王はーー父様は、貴方と超サイヤ人だけは合わせてはならないと仰っておられました。わたくしはサイヤ王家の姫の前に、民の為に祈りを捧げる神殿に仕える巫女です。巫女として、惑星が滅びるかもしれない闘いを起こさせる訳には参りません。父様が、何のために貴方には告げなかったのか、分からない貴方じゃないはずです!!」

 

 涙ながらに告げたプリカを真正面に見て、ターニッブは頭を丁寧に下げた。

 

「…申し訳ありません。俺は行きます。俺が、行かねばならないのです」

 

 それだけを言って、ターニッブはプリカの脇を通り過ぎていく。

 

 これにいつもは淑やかなプリカが、歯ぎしりをした。

 

「…どうして、貴方は」

 

 振り返り、ターニッブの背に叫ぶ。

 

「その先に安らぎなんかない! 灰色の未来が待ってるだけよ!! 貴方はいずれ自分を許せず、自らの命さえ断とうとするわ!! だからーーだから、父様は!!!」

 

 ターニッブは立ち止まると微かに首をプリカに振り返り、告げた。

 

「…俺には、この拳しかない」

 

 ターニッブは静かに歩み出す。

 

 一片の迷いなく。

 

 死者の都へとーー。

 

 其処ではターニッブ達にとって、異次元の戦いが繰り広げられていた。

 

 サイヤ王と超サイヤ人の戦いは凄まじいものだった。

 

 異空間の大気を震わせ、両者の拳が天を裂き、踏み足は地を穿つ。

 

「流石、サイヤ王だぜ!!」

 

「当たり前だ。本気の父に勝てる奴などいない」

 

 ガーキンとジュードが拳を握り、互角の戦いを演じるサイヤ王と超サイヤ人を見ている。

 

 サイヤ王は全開の証。

 

 白銀のオーラを纏い、黒い瞳には更に漆黒の瞳孔が現れ、髪が天に向かって靡いている。

 

「…師匠は、死を覚悟している」

 

 その中、告げられたターニッブの言葉にジュードが目を見開く。

 

「何だと!? 今、王と奴の実力は互角だぞ!!」

 

「師匠は、命を燃やして闘っている。あの気は、生命力を燃やしているんだ」

 

「…先生。まさか、本気で刺し違えるつもりか!?」

 

 ガーキンの叫びの後、白銀と黄金の気が空中で激突した。

 

 ぶつかり合う王と鬼。

 

 徐々に差が出てきた。

 

 黄金のオーラを纏う鬼に押され始める白銀のオーラを纏う王。

 

 殴り蹴り合う。

 

 しかし先までとは違い、徐々に打ち負け始める。

 

(やはり、この力に挑むのは無謀か…!)

 

 肩で息をしながら、王は無限に力を増大させていく鬼を睨み据える。

 

「…サイヤ王よ。よくぞアレを、これ程にまで育ててくれた。しかし、コレより先には奴一人で歩んでもらわねばならん。我が為に死ね!!」

 

「…生憎だが。俺は弟子を貴様の同類にするつもりはないんだ。この命にかけても、此処で貴様を止めてやろう」

 

 互いに構え合う。

 

(…もはや、俺が全力で動けるのは長くあるまい。一撃をかけるしかないか)

 

 自嘲気味に笑う王の前に鬼は、静かに気を高めて腰を落とし、地を踏み抜いた。

 

 見ればその拳に己の気を満ち溢れさせている。

 

「…何の真似だ、超サイヤ人?」

 

「…弱まったうぬを倒した所で意味はない。我が望みは、うぬの真の一撃のみ!!」

 

 サイヤ王は肩で息をし始めた。

 

 数分程度しか全力を出せない。

 

 超サイヤ人・リューベは、それを見抜いていながら尚、真っ向から勝負をしろと構えている。

 

 静かにサイヤ王は笑った。

 

 その時だった。

 

「師匠ーー!!」

 

 闘いが最後の局面を迎えようとしているのを悟り、ターニッブがサイヤ王に向かって叫ぶ。

 

 瞬間、リューベがターニッブを見て動きを止めた。

 

「…!!」

 

 サイヤ王は、その隙を逃さない。

 

 目の前に踏み込み、己の命の炎を燃やしつくす禁断の技を放った。

 

「ふふふ。ターニッブに気を取られるとは、甘いな超サイヤ人!!」

 

 道着の襟首を掴み、強烈な青白い気の球となって辺りを包み込む。

 

ーー 瞬獄殺!! ーー

 

 荒野しかない死者の都の大地を起こし、巨大な岩山を作りながら、尚爆発する。

 

 その威力は、遠目に見ているターニッブ達にも届いた。

 

「な、な、んだ? 地震か!?」

 

「…こ、これが禁技・瞬獄殺か!!」

 

 驚くガーキンと唖然とするジュードの隣でターニッブが叫んだ。

 

「辞めろ、師匠ぉおおおおおっ!!」

 

 ターニッブの声が響く中、吹き溢れる爆風が収まった時、巨大なクレーターの中心で超サイヤ人がサイヤ王のボディをアッパーカットで打ち抜いていた。

 

「…ぐぶっ。ふふ、リューベ、やはり其方は甘いわ」

 

 それが最後のサイヤ王の言葉だった。

 

 串刺しにされたように、四肢から力をなくした王の肉体から超サイヤ人は拳を引き抜いた。

 

 地面に倒れこむサイヤ王の首から超サイヤ人は勾玉のついた針金でできたネックレスを取り上げ、己の首にかける。

 

「…ち、父は超サイヤ人に戦士として挑み、負けた…!」

 

 悔しそうにそれだけを告げるジュード。

 

 光の粒子となって死者の都の空へ吸い込まれていく父の遺体を泣いている妹を抱きしめながら見送る。

 

 真っ先に出て行って、父の仇を取ってやりたかった。

 

 だが、今の彼が挑んだ所で敵う見込みはゼロだと分かっている。

 

 隣でターニッブが静かに告げた。

 

「…何故だ?」

 

 問いかける彼の声が低い。

 

 それに一抹の不安を覚えたガーキンが、彼を見ると。

 

「……ターニッブ? おまえ、どうしたよ!?」

 

 ターニッブの足元から超サイヤ人と同じ、黄金の光が漏れている。

 

「…プリカ。父が何も言わずに超サイヤ人との闘いに挑んだのは、ターニッブが?」

 

「…ええ。彼も宿しているのです。感じませんか、兄様? 王となられた今の貴方ならば」

 

「…確かに。この力は、超サイヤ人…!!」

 

 黒髪は天に逆立ち、黒い瞳は翡翠に黒の瞳孔が浮かぶ目に変わっていた。

 

「何故。自らが間違いだと理解していながら。その道を進むんだ…!?」

 

「………」

 

 ターニッブの言葉を聞いてなお、超サイヤ人・リューベはターニッブに向き直るだけで何も語らない。

 

「答えろぉおおおおおっ!!!」

 

 ガーキンが背中から捕まえていなければ、そのまま殴りかかっていただろう。

 

 静かに超サイヤ人はターニッブを見据えた後、去った。

 

ーーーーーー

 

 話が終わった後、プリカは静かに向かいの二人のサイヤ人を見据えた。

 

「…答えは自分で見つけろ。そして、倒しに来い。わたくしには超サイヤ人が、ターニッブにそう言ったように見えました」

 

 悟空とベジータが、眼を見張っていた。

 

 しばらくして、悟空が感嘆のため息を吐くと同時に明るく語りかける。

 

「なるほどなぁ。プリカ! オメエの父ちゃん、すっげえなぁ! オラ、闘ってみたかったぞ!! それに…ターニッブの強さの秘密、分かったぜ!!」

 

「バカめ! 楽しんでいる場合か。プリカ、初代サイヤ王にして超サイヤ人・リューベとは一体何者だ? サイヤ人は若い期間が長いのは事実だが、何百年も生きられる訳がない」

 

 ベジータの言葉にプリカは頷き、続けた。

 

「…おそらくは、死者の都の力を取り込んで自らを半死半生の状態にしているのではないかと。死者の都の亡霊を狩るために。ですが、何故自らが真の超サイヤ人になったかまでは、もう覚えていないでしょう。ただ闘うためだけに今を生きているのですから」

 

 プリカの表情や言葉は冷たく、悲しみと怒りがないまぜになったような声だった。

 

「…そうかなぁ?」

 

「え? 悟空さん?」

 

 そんなプリカの言葉に疑問を投げかけたのは、孫悟空だった。

 

「なあ、プリカ? オメエの父ちゃんは、リューベに恨み言を言ったんか?」

 

「…それは」

 

「わざわざ、死者の都なんて所まで行ってよ? 一対一で闘ったんだろ? 最後まで退かなかったんだろ? 父ちゃんもリューベもさ? そんな闘いは、心のねえ奴とはできねえさ。自分の全てを絞り出すような闘いはな!!」

 

 明るくニカリッと笑う悟空に、プリカはポカンとした。

 

「…プリカ。アレに勝てないのは誰でも分かる。それでも、王の立場からすれば逃げられないこともある。その誇りや意地を汲んで、リューベはサイヤ王を一撃で葬ったのだろう」

 

 淡々と告げるベジータにプリカは、混乱していた。

 

 あの時の。

 

 消える間際の父の顔は、とても穏やかで優しい笑顔だったから。

 

「こう言っちゃ、なんだけどよ。…なんちゅうか、な。オラァ、何だか羨ましいぞ。オメエの父ちゃん。自分の全力を出した上で、真っ向から負けたんだな」

 

 そう笑いながら、悟空はプリカに告げた。

 

「だからよ、オメエに責任はねえよ? オメエの父ちゃんは、闘いたくてリューベと闘ったんだ。そこにオメエの責任なんか、あるわきゃねえ」

 

「そのとおりだ。一人の戦士として、最高の戦いをした。先代のサイヤ王は、満足して逝った。親としては共感できんが、戦士としてーーサイヤ人としては羨ましい生き方だ」

 

 隣のベジータも全面的に同意して頷く。

 

 キョトンとするプリカ。

 

 二人の地球に住むサイヤ人は、同時に笑ってくれた。

 

「よく頑張ったなぁ、プリカ! 一人でずっと抱えてたんだなぁ!!」

 

「で、でも…。父様は、私の言うことを聞いてくれませんでした…、ターニッブも」

 

「それもさ、二人が選んだこっちゃねえか! オメエはきちんと言うことを言ってるさ!! …だろ?」

 

 ウインクしながら、悟空はプリカの後ろに向かって話しかけた。

 

 そこには、現王のジュードと側近のガーキンが立っている。

 

「…そのとおりだ、悟空。それにベジータ。すまなかったな、プリカ。俺は自分の中で親父の死に向き合うことができず、未だにおまえを一人にしてしまったようだ」

 

「…お兄様…!!」

 

 隣のガーキンは、いつものようにひょうきんな笑顔で告げた。

 

「まったく! 姫様も、ジュードも、それにターニッブも真面目過ぎだっての!! もう少し、この俺を見習って肩の力を抜けよ!」

 

 ニヤリと告げるガーキンにベジータが応えた。

 

「…ガーキン、カカロットのようになりたいのか?」

 

「そいつは、リラックスし過ぎだろ」

 

 肩を落としながら告げるガーキンにベジータは笑った。

 

「くく、分かるなら構わん」

 

「…苦労してんだな、アンタ」

 

 まあな、と告げながら手元の肉にかぶりつく。

 

 ベジータは鋭い目をガーキン達の後方に向けると問うた。

 

「貴様、惑星ベジータのサイヤ人だな?」

 

 通路から出てきた褐色の肌のサイヤ人は、白い道着のズボンと黒いTシャツ、灰色のノースリーブのチョッキを着ている。

 

 発見した時に彼が身につけていたのは、バトルジャケットのパンツと番いにデザインされたグローブとブーツだけだった。

 

「…くく、懐かしいお顔だ。それに…」

 

 目つきを鋭くしながら、隣でスパゲティを平らげている悟空を見る。

 

「気に入らねえ野郎もいやがるか。久しぶりだな、カカロット…」

 

「オメエとは、一応初対面だけどな?」

 

「…何を寝言を言ってやがる? 貴様に殺されたこのターレス様を忘れたのか?」

 

 口元を歪ませ、殺気に全身を沸かせながらターレスはガーキンとジュードの間を割って前に出ると、ドカッとプリカの隣に座る。

 

「…女、酒を注げ」

 

 ターレスが告げると、ジュードとガーキンが気色ばむが、プリカは兄達と女従士達を手で制し、出された金のグラスに赤いワインを注いだ。

 

「…くくく、中々美しい女だ。未来を予知できるというしな。どうだ? 俺の女にならないか?」

 

「オイコラ、姫様に向かってなんて口をきいてやがる?」

 

 ガーキンが珍しく本気の怒りを見せる。

 

 ターレスはそれに取り合わず、悟空を見据えた。

 

「…カカロット。この女を賭けて俺と勝負しようや?」

 

「オメエ、あんまし反省してねえな? オラじゃねえオラにやられても、まぁだ懲りてねぇんか?」

 

「訳の分からんことをほざくな。俺も貴様の戦闘力が気になっていてな。ターニッブの野郎に勝つためにもな」

 

 その言葉に、皆が目を見開く。

 

「…お、オメエ、ターニッブに会ったんか!? 何処でだ!?」

 

「…死者の都とか貴様らが呼んでる所さ」

 

 グイッと金のグラスを一気飲みした後、容器を差し出す。プリカは静かに空になった容器にワインを入れた。

 

「…闘ったんか? アイツと」

 

「ああ。いけ好かねえクソ野郎だったぜ。貴様に輪をかけてな!」

 

「…その様子だと、負けたんか?」

 

 悟空のさして気にもしていない問い方にターレスは少しイラつきながら応えた。

 

「ああ、完膚なきまでに叩きのめされた。気がついたら、あの闘技場に居たがな」

 

 ベジータが静かにプリカを見る。

 

「死者の都は、時や場所を越えることができるという言い伝えがあります。ターニッブは、それを使って惑星間を行き来して修行しているのです」

 

「…カカロットの瞬間移動よりは不便だが、様々な敵と戦いながら移動できるなら。死者の都、か」

 

 ベジータが口許に手を当てながら考えていると、悟空が食事を終えたようだ。

 

「プハー! 食った、食った!!」

 

 腹を二回叩いた後、すぐに立ち上がりターレスを見る。

 

「…よし! やろうぜ、ターレス! ジュード、闘技場を借りっぞ!!」

 

「…あ、ああ。食ってすぐにやるのか?」

 

 呆れ気味なジュードに悟空は明るく笑いながら、ターレスを見下ろす。

 

 するとターレスも立ち上がりながら、告げた。

 

「…バカめ。アレからどれだけ腕を上げたか、知らんが。貴様と俺のパワーとは、天と地程の差があるということを思い出させてやろう!!」

 

 すぐに二人の同じ顔をしたサイヤ人が出て行く。

 

 それを見送った後、ベジータはジュードとガーキンに告げた。

 

「先に食事を終わらせてからだ。もしかしたら、食い終わるまでにカタが付いているかもしれんがな」

 

 プリカもベジータの言葉に頷く。

 

「…そうですね。ターレスさんは、確かにサイヤ人の中では相当な腕をお持ちですが。おそらくは、ガーキンにも匹敵するくらいに」

 

 ガーキンが何気にショックを受けているが、それをフォローするかのようにベジータが告げた。

 

「…それは言い過ぎだ。確かに強くはあるだろうが。カカロットがわざわざ超サイヤ人に変身して戦う程ではあるまい」

 

 ベジータの言葉に、プリカは静かに二人のサイヤ人が向かった闘技場を見据えた。





 では、次回をお楽しみに(´ー`* ))))


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新たなるサイヤの闘い 最下級戦士のサイヤ人

さあ、作者の趣味全開の物語です。

 楽しめる方は楽しんでください(´ー`* ))))


 死者の都。

 

 ただ広いだけの荒野に、二人の超サイヤ人がぶつかり合っていた。

 

 片方はやや筋肉質だが、標準的な体格の男性。

 

 もう片方は、筋肉の塊と言った様相の3メートルを越える白目の男ーー伝説の超サイヤ人・ブロリーだった。

 

「…しつけえ野郎だ!!」

 

「ふははは! カカロット! カカロットォオオ!!」

 

 何度めになるか分からない殴り合いが始まる。

 

 巨大な右の拳を右拳で止め、標準的な体格の男性サイヤ人ーーバーダックが、相手を翡翠の瞳で睨み据えた。

 

 巨大な体に似合わぬスピードのブロリー。

 

 体格差を物ともせず、打撃の手数と的確に急所を撃ち抜くバーダック。

 

 殴り合いはバーダックが上だが、タフネスはブロリーが桁違いだった。

 

「…何度めの訂正だ? 俺はバーダックだっつってんだろ!?」

 

「…カカロット…!!」

 

 睨み合う両者はそのまま、気を高め合う。

 

 両者の足場が削られていき、二人は舞空術で宙に浮かんだまま、気を高めて行く。

 

 二人を中心にできたひび割れはクレーターとなり、一気に周囲を吹き飛ばしていった。

 

(…このままじゃ、埒が明かねえ!! 一気に全力でケリを付けに行くか!?)

 

 青白い気を突き出した右拳に溜めて、バーダックが力を放つ。

 

「…くたばれぇ!!」

 

「…グウ!?」

 

 気の爆発にブロリーの巨体が弾かれる。

 

 バーダックはそのまま、左手に気を溜めると前方に突き出した。

 

「これでーー最後だぁああ!!」

 

 強烈な青白い光のドームがブロリーを中心に出来上がり、巨大なキノコ雲を発生させた。

 

 それをやや離れながら、舞空術で見据えるバーダック。

 

 彼の鋭い眼が、己の真後ろに向けられた。

 

「…カカロット…!!」

 

 そこには気を高めながら、健在するブロリーが居た。

 

「チッ! まだ力が上がりやがるのか!?」

 

 バーダックがウンザリしたように告げると、ブロリーは気を全身に纏いながら、突っ込んできた。

 

「…ふははは、カカロットォオオ!!」

 

 これに凄絶な笑みを浮かべて、バーダックも返す。

 

「いいぜ? テメエと俺、先に根を上げるのはどっちだろうなぁあああ!!」

 

 更に金色のオーラが二人を激しく包み、撃ち合う。

 

 拳と蹴りを応酬し、バーダックとブロリーは互いに場を離れると、奇しくも己の右手に全身の気を溜めていく。

 

「…カカロット、カカロットォオオ!!」

 

「チッ、これで終いだ! くたばりやがれぇ!!!」

 

 放たれる両者の一撃。

 

 バーダックは、オーバースロー。

 

 ブロリーはサイドスローでお互いの気を凝縮した一撃を放つ。

 

 青白い光と緑色の光が両者の中央でぶつかり合った。

 

ーーーーーー

 

 闘技場に来た悟空とターレスは、互いに向き合う。

 

「そういやオメエ、妙なトゲトゲの赤い実を食べるんだったよな?」

 

「…神聖樹の実のことか。生憎、貴様にやられてから部下も何もかもなくなってな? 目が覚めた時には貴様にやられる直前よりはマシな戦闘力の己が身のみさ」

 

「良かったじゃねえか! 実を食うだけで強くなっても面白くもなんともねーぞ!!」

 

 悟空の言葉にターレスは不快な表情になって告げる。

 

「…俺から全てを奪った貴様にだけは、言われたくはないもんだなぁ!!」

 

「へへっ! なら、かかって来いよ!! ターニッブと拳ぃ交えたんなら、オメエもなんか掴んでんだろ?」

 

 左手を顔の目線の高さに、右拳を腰に置いて斜に構える悟空。

 

 ターレスも静かに拳を握る。

 

「…ふふふ、カカロットよ。今度こそ、この俺が殺してやるぞ!!」

 

「今のオメエには、できねえと思うぞ?」

 

「ほざけぇええ!!!」

 

 灰色の気を纏い、ターレスが一気に距離を詰めると悟空に殴りかかった。

 

「ぬ!?」

 

 肉弾戦ならば勝てると思っていたが、ターレスの考えは案の定外れた。

 

 次の瞬間、右拳をまともに左腕で受け止められ、向こうの右拳を顔面に返されたのだ。

 

 左手でつかみ止めるも、肩が衝撃で痺れた。

 

(チ! この野郎、あの妙な全身を赤く染めるオーラを纏う技を使わずに普通に俺について来やがるとは!!)

 

 腕を上げている。

 

 それも相当なレベルだ。

 

「…どうした、ターレス!? サイヤ人にしちゃ確かに強えが、こんなもんじゃ、オラの相手は務まらねえぞ!?」

 

「…ほざけ、カカロット」

 

 悟空の言葉にターレスの低い声が響いて、身に纏う灰色の気が更に上がる。

 

 対峙する悟空も全身に白い気を纏う。

 

「…くっ! こいつ、これほどのパワーを!?」

 

 そのまま、乱打戦に突入する。

 

 悟空の左右から繰り出される拳と鋭い蹴りは、ターレスをして受けに回るのがやっとだ。

 

「…チッ!」

 

 ターレスは舌打ちをしながらも悟空からの右ストレートを左に見切り、左のフックを被せるようにして放つ。

 

 しかし、悟空は顎先でこれを見切り、カウンターの膝蹴りをターレスの腹に決めていた。

 

「…グフう!」

 

 思わず呻き声を上げながら前のめりになるターレスに、更に悟空は手厳しい連打を浴びせる。

 

「どうしたぁ!? そんな甘い攻撃じゃ、オラは倒せねえぞ!!」

 

 左のストレートを両腕でガードするも、ブロックを破壊されながら、後方へ下がらされるターレス。

 

 続け様に悟空は右のボディアッパー、左中段回し蹴りからの右後ろ回し蹴りを流れるように放つ。

 

「ぐぁ!?」

 

 まともに左の脇腹に拳を入れられ、宙に浮かされた体に容赦なく左の回し蹴りと右の後ろ回し蹴りが腹と横面にヒット。

 

「が、はぁ…!!」

 

 きりもみに回転しながら、弾き飛ばされるターレス。

 

 背中から地面に叩きつけられ、土煙を起こす。

 

「…ふ、ふふ。流石に強いな、カカロットよ!」

 

 ゆっくりと立ち上がりながら、告げるターレスに悟空も目を鋭くする。

 

「…まだ、なんか試してえみてえだな?」

 

 悟空の言葉にターレスはニヤリとする。

 

「…カカロットよ。貴様はターニッブの使う技に気づいたか?」

 

「かめはめ波によく似た、波動拳って技のことか?」

 

 間髪入れずに応える悟空に、ターレスはニヤリとする。

 

「そう! 波動だ。貴様らや俺の使う気ってヤツと似て非なる存在だ。気が溜めた力を放出するものなら、波動は絶えず動きを変化させている。異なる技を変化させて重ねることも可能だ」

 

「…何が言いてえんだ?」

 

「焦るなよ、今から見せてやるさ!!」

 

 言うとターレスは両手を合わせて気を高め、紅にスパークするリング状のエネルギー体を自分の前方に作り上げた。

 

「そんな技が、今のオラに通じると思ってんのか?」

 

 悟空の言葉にニヤリとしながら、ターレスは更に両手首を左右に合わせて掌を広げると頭上に掲げた後、灰色の気功波を放った。

 

「カラミティ・キルドライバー!!」

 

「……こいつは!?」

 

 前方に貼った赤いリング状のエネルギー体の中心を見事に撃ち抜き、ターレスの放った灰色の気功波は、数倍にまで一気に跳ね上がった。

 

 思わず悟空がその場から飛び退く程の威力だったのだ。

 

 闘技場は不思議な力で守られているため、広範囲の爆発はしなかったが、それでも悟空は肝を冷やした。

 

 直撃を浴びていれば、無事だったとは言い難い。

 

 悟空を驚かせることに成功したターレスは、ニヤリとしながら得意げに語る。

 

「全く性質の異なる二つの技の融合。炎の輪『キルドライバー』と灰色の光『カラミティブラスター』の合わせ技だ。本来ならば、二つの技を同時に放つだけの気量がないとできない技だが。ターニッブの波動拳とやらが、俺にヒントをくれたのさ。いわゆる、技の重ねがけの方法をな」

 

 その言葉に、悟空はニヤリとした。

 

「…オメエ。意外と抜け目ないとこ、あんじゃねえか。見直したぜ!!」

 

「…笑わせるな。強くなるために必要なことだ。気に食わない奴の技も利用価値があるなら、利用する。この俺が、全てを跪かせてやるためにもな!!」

 

「…へへ。じゃ、今度はオラの番だな? オラもさ、その波動って技の利点は分かってた。けど、消費する気が半端じゃねえのが、問題だった」

 

 右手にかめはめ波、左手にかめはめ波。

 

 これを中心で合わせ、反発する力と力を更に赤いオーラが高めていく。

 

「…ぐくっ、こいつは、思ってた以上にヤバいな!!」

 

 悟空は脂汗を滲ませながら、赤くなった己のかめはめ波を見据える。

 

 中途半端な気の融合や波動では、暴発する。

 

「ははは、バカめ! 確かにヤバそうな技だが、撃てなければ意味はない!!」

 

 ターレスが勝ち誇る様に告げる。

 

 通常の自分の肉体では、パワーの反動に耐えられない。

 

「まずは、超サイヤ人で試す!!」

 

 かめはめ波の構えから超サイヤ人に変身する悟空。

 

「この金色のオーラと髪、これが伝説の超サイヤ人…か」

 

 ターレスが変化した悟空を見据えて静かに告げる。

 

 しかし、赤いかめはめ波は一向に安定しない。

 

「ぐくく……なら! 超サイヤ人…2だぁあああああ!!」

 

 叫びと共に金色のオーラがスパークし、青白い雷が身に纏う。

 

 髪は更に逆立ち、前髪が少なくなる。

 

「……なんだと? カカロットから感じる力が更に桁違いに上がった!?」

 

 ターレスが驚きと共に目を見開く。

 

 それでも、悟空のかめはめ波は落ち着かない。

 

「……チッ、なら……! 最強の超サイヤ人3、だぁあああああああ!!!!」

 

 気柱が天を突き、金色のオーラがさらに激しくなる。

 

 髪が腰のあたりまで伸び、眼窩上隆起が起き眉毛が消え、前髪が更に少なくなる。

 

 翡翠の瞳には黒い瞳孔が現れ、ターレスを睨み付ける。

 

「化け物め……! 姿が変わる度に戦闘力が桁違いに上がってやがる……!!」

 

 ターレスが思わずという風に述べるも、その後でニヤリと笑った。

 

「だが、どうやら。その技は撃てそうにないな?」

 

 その言葉通り、悟空は溜めた力を放とうとはしない。

 

「……なるほど。流石の3でも、溜めるのが限界か。なら……!!」

 

 心を落ち着ける。

 

 瞳を閉じ、そのステージを人間の域から神の領域へ。

 

 蒼銀の炎が悟空を包んでいき、更なる変身をみせる。

 

「……勿体ぶりやがる。まだ力の底を隠していたのか!!」

 

 苛立ち交じりにターレスが言うのと、悟空がニヤリとするのは同時。

 

 美しい青色の瞳と髪がオーラを纏うことで水色に輝いている。

 

「超サイヤ人ブルー。穏やかな心と気のコントロールを兼ねることができるコイツなら、どうだ!!」

 

 腰だめにたわめた両手の中で輝く真紅の宝石のような美しい光の球。

 

 全てを破壊することができるであろう、究極の一撃。

 

 界王拳をも使える超サイヤ人ブルーならば、と思ったが。

 

 二つのかめはめ波を凝縮して一つにした時に倍増するエネルギー。

 

 更にそれを安定させるために界王拳をかめはめ波自体に重ね掛けした。

 

 悟空はそれができると思っていた。

 

 実際にできた。

 

 しかし、それを制御する術が超サイヤ人ブルーをしても出来ない。

 

「……くっ! なんでだ!? この技、撃てると分かってたのに!!」

 

 歯ぎしりしながら、悟空は気を制御していく。

 

 超サイヤ人ブルーでも、気がコントロールできない事実に焦っている。

 

「くくく、驚かせやがって。どうやら撃てないようだな?」

 

 勝ち誇るターレスの笑みに対し、悟空は歯ぎしりをしながら瞳を鋭くする。

 

「……仕方ねえ。とっておきに頼ってみるかな?」

 

「……なに? まだ、何かあるのか!?」

 

 ターレスが驚く瞬間、先ほどまでの超サイヤ人によく似たーーしかし、それよりも更に濃い黄金の気柱が天に向かって伸びた。

 

 同時に、蒼い髪は黄金に変化し、水色の瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れる目に変わった。

 

「こ、これは……超サイヤ人? いや、違う……! 睨まれただけで背筋に悪寒が走るだと……!! 貴様、カカロットなのか? いや、いったい何者だ!?」

 

 ターレスが冷汗交じりに告げると、真の超サイヤ人と化した悟空はニヤリと冷徹な笑みを浮かべた。

 

「何を焦ってんだ? 俺はカカロットじゃねえ。孫悟空、さ!」

 

 そして改めて灼金に燃え上がる己の気弾をたわめる。

 

 暴走する力を圧倒的に進化する力で抑え込んでいく。

 

 真・超サイヤ人の全ての気力が赤いかめはめ波を安定させていく。

 

「……ば、バカな……!! こ、こんなことが……!!」

 

 溜めた気だけでも、全てを吹き飛ばすほどの力が場に淀んでいる。

 

 そんなものが放たれれば、どうなるか。

 

 子どもでも分かることだ。

 

「フフ、名付けるとすれば。10倍かめはめ波ってところか……!!」

 

 真・超サイヤ人と化した悟空は、冷徹な瞳を自分の猛り狂う気弾に向け、余裕の表情で笑う。

 

 今の彼には、赤い毛色をした上半身を持つ長い黒髪に金色の瞳を持ったサイヤ人が見えている。

 

「俺じゃねえ、俺か。ありがとよ……! この技と真・超サイヤ人があれば、俺はどんなヤツにも負けねえ……!!」

 

 その言葉に頭の中で浮かんでいる、超サイヤ人ゴッドとは根本的に異なる、赤い猿の超サイヤ人の姿へと化した自分が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて告げて来た。

 

ーー 水臭ぇこと言うんじゃねえ。オメエも俺じゃねえか。オメエが、この先に進んで俺になるのかまでは知らねえがな ーー

 

 そう言って『彼』は背を向ける。

 

「また会おうぜ……! いつか闘う為によぉ、未来の俺」

 

ーー ああ。真・超サイヤ人に進化したオメエが超サイヤ人4の俺に、どんな影響をくれるのかな ーー

 

 その言葉と共に超サイヤ人4と名乗った未来の悟空は、頭の中から消えた。

 

 同時に真・超サイヤ人の悟空は現実のターレスを睨みつける。

 

「……ま、待て! そんな技を撃てば問答無用で全てが消し飛ぶぞ!!」

 

 ニヤリと笑い、悟空は両手首を上下に組んで前方に突き出した。

 

「ば、バカが…!!」

 

 思わず伏せるターレス。

 

 対して悟空は冷徹で低い声で、告げた。

 

「10倍……かめはめ波ぁああああああ!!!」

 

 灼金の光線が、世界の全てを撃ち抜いた。

 

 青い空ーー悟空の真上に向かって放たれたその一撃は、如何なるものをも撃ち抜く程。

 

 圧倒的なパワーだった。

 

 伏せていたターレスが、力の余波でその体を浮かせてしまう程に。

 

 呆然とするターレスを見下ろすのは、不敵な笑みを浮かべた黄金の戦士。

 

「…貴様、その力は…!!」

 

「本来なら、まだ俺がたどり着くはずのない境地だが。あらゆる可能性を見せる死者の都と無限にパワーが上がる真・超サイヤ人のおかげでできたぜ」

 

 如何なる相手をも一撃で葬る為の技。

 

 他のどんな技よりも必殺に相応しい技だった。

 

 黄金の気を解除し、元どおりの黒髪に戻ると悟空はターレスに告げた。

 

「続けっか? ターレス」

 

 これに彼は皮肉な笑みを浮かべて応えた。

 

「…くく、今は貴様に勝ちを譲ってやる。だが、俺はいずれ全てを凌駕する。楽しみにしていろ、カカロットよ」

 

 その言葉に悟空もニカリと明るく笑った。

 

「へへ、やっぱりオメエ。変わったな!! 昔のオメエなら、実に頼って強い奴に挑むような真似はしなかった。オラ、ちょっとだけ嬉しいぞ!!」

 

 伏せていたターレスに手を差し出す悟空。

 

「…調子に乗るな」

 

 その手を払い、ターレスは立ち上がりながら、頭の中に流れる声を聞いた。

 

 目の前のサイヤ人や自分と同じ顔をした。

 

 自分を負かしたサイヤ人の声を。

 

ーー 楽をして手に入る力などない。積み重ねた修練こそが最後の最後に己の身を守る。力やスピードがあった所で、危険を回避する動作ができなければ話にならない!! ーー

 

「…気に入らねえぜ。どいつもこいつもよ」

 

 己と同じ顔をしたサイヤ人に会うのはこれで二人目だが、気に入らない奴ばかりだと、ターレスは自嘲気味に笑った。

 

 だが、こいつらの強さの秘密が分かれば。

 

 自分は更に高みに至るとターレスは確信していた。

 

ーーーーーー

 

 死者の都。

 

 未だ続く超サイヤ人同士の闘い。

 

 無限に高まり、ダメージを全く受けないブロリーに対して、バーダックの方は、段々と息切れを始めていた。

 

「…ちくしょう。しつけえな。パワーがまだ上がりやがるのか」

 

 肩で息をしながら告げるとブロリーはニヤリと笑った。

 

「…さあて、どうするか? 一撃で奴をノックアウトできなけりゃ、ジリ貧だな」

 

 超サイヤ人と化したバーダックは、ジッとブロリーを見ながら告げる。

 

「…カカロット…!!」

 

 ニヤリと笑いながらブロリーは告げる。

 

 舌打ち気味にバーダックが吐き捨てると、いつの間にか。

 

 目の前に白い道着を着た、自分と同じ顔をした黒髪のサイヤ人が立っていた。

 

「…なんだと? 誰だ、テメエ?」

 

「…カカロット?」

 

 黒髪のサイヤ人は、静かに白いズタ袋を手放して赤いグローブを引き締め、伝説の超サイヤ人ブロリーを睨みつける。

 

 瞬間、ブロリーが黒髪のサイヤ人に向かって気を高めていった。

 

「おお!! カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 静かに黒髪のサイヤ人ーーターニッブは拳を握りしめる。 

 

「お前もその忌むべき力を身に宿すのか。しかし、怒りに飲み込まれるのならば俺の敵ではない!!」

 

 ターニッブは全身に青白い気を纏い、一気にブロリーに向かって駆ける。

 

 ブロリーも、邪悪で凶暴な笑みを浮かべたまま巨大な拳を握って、ターニッブに振り下ろす。

 

「おい、テメエ!! ただのサイヤ人じゃそいつには勝てねえぞ!!」

 

 まともにブロリーの拳を浴び、後方にのけ反るターニッブ。

 

 だが、それだけだ。

 

 吹き飛びはしない。

 

「いい拳だ!!」

 

 ターニッブは清々しく微笑みながら、ブロリーの横面に右拳をぶち当てる。

 

「ぐぉっ!?」

 

 今度はブロリーの巨体が揺れた。

 

「なんだと!? 俺の攻撃はあの化け物にまるで通じなかったってのに、野郎の拳は効いたってのか!?」

 

 バーダックが叫ぶ中、二人のサイヤ人は足を止めて殴り合う。

 

 両者、ガードもフットワークもない。

 

 純粋に相手の攻撃を受けて返す。

 

 それだけのパンチの交換を繰り広げている。

 

 何度目かのやり取りの後、ブロリーが後方へのけ反りながら足を揺らす。

 

「どうした!? お前の力はこんなものではないはずだ!! 本気を出せ!!!」

 

 ターニッブが叫びながら拳を構えて告げる。

 

 対するブロリーも気を高めていく。

 

「うぉおおおお!! 気が高まる! あふれる!!」

 

 気付けばブロリーは、ターニッブをカカロットとは呼ばなくなった。

 

「そうだ! お前の力を見せてみろ!!」

 

「……クズがぁ! 簡単には殺さんぞ……!!」

 

 幽鬼のようにブロリーはただカカロットを憎み、その名を呼び続けることしかしなかった。

 

 だというのに、今の彼には心が戻って来つつある。

 

「俺の名はターニッブ。貴様が倒したいと願うカカロットーー孫悟空は俺のライバルだ!! 俺に勝てないようじゃ、悟空には勝てない!!」

 

「ほざけぇえええっ!!」

 

 ぶつかり合う。

 

 叫び合う両者。

 

 気が高まり、互いに溢れていく。

 

「な、……なんてぇ勝負だ!!」

 

 あまりの力と力のぶつかり合いに、少し場を離れていたバーダックは呟いた。

 

 ターニッブとブロリーの殴り合いを見つめながら、思わず拳を強く握りしめる。      

 

 しっかりと相手の攻撃を受け止め、重い攻撃を返すターニッブ。  

 

 攻撃を食らいながらも、お構いなしに拳を繰り出してくるブロリー。

 

「……チッ、血が騒ぎやがるぜ……!!」

 

 震える左手を握りしめ、バーダックは熱く燃え滾る瞳で口の端を歪める。

 

 右の拳と拳がぶつかり合う。

 

 互いを中心に天に突き立つ白い光の柱。

 

「……ターニッブ! 貴様は、俺が殺す!!」

 

「!!」

 

 ブロリーがそう叫ぶと同時に、強烈な金色のオーラが柱となってブロリーの身に纏い、髪が腰のあたりまで伸び、眉毛が消えた眼窩上縁は見てわかるほどせり上がって、更なる強面に変化する。

 

「こいつはーー悟空の超サイヤ人3!?」

 

「タァアアアアアニッブゥウ!!!」

 

 強烈な右ストレートの一撃に、後方へ首を弾き飛ばされるターニッブ。

 

 しかし、彼はすぐさま地面に足を擦り付けて、スタンスを広げて受け止める。

 

「……ぐぅ!?」

 

 その姿に思わずブロリーの手が止まった。

 

 ターニッブは不敵な笑みを浮かべて心底、楽しそうにブロリーに告げる。

 

「流石だな。お前もまた強さを求めるか!! お前の名を教えてくれ、我がライバルよ!!」

 

「……ブロリーだ」

 

「ブロリー、か。いい名だ!!」

 

「……うるさい! 無駄口を叩くなァアアアア!!!」

 

 殴りかかるブロリーに対し、ターニッブも瞳を翡翠に変わって瞳孔が黒く現れる。

 

 黄金の気柱が起こり、天に向かって髪が黄金に変化した。

 

「これがーー悟空が望んだ、俺の全力だ!! さあ、とことん戦おう!!」

 

 気が無限に上昇する自分と同じ質でありながら、ターニッブはその力を完全に使いこなしている。

 

 その事実に、ブロリーは思わず告げた。

 

「……なんて、ヤツだ!!」

 

 あの時、自分を新惑星ベジータで葬った宿敵と同じ顔をした。

 

 同じ種類の瞳の輝きを持つサイヤ人。

 

 殴り合う。

 

 何度もぶつかり合う。

 

 今度は、ブロリーの巨体が一方的に揺らされる。

 

 超サイヤ人3まで覚醒したブロリーでさえも、今のターニッブは手に余る。

 

 だが、彼の口許にはこれまで刻んだことのない笑みが浮かんでいた。

 

 恐れられていた。

 

 利用されていた。

 

 憎まれていた。

 

 そんな力の全てを出してもなお、打ち破ってくる目の前の超サイヤ人にブロリーは喜んでいた。

 

「……う、うぉおおおおお!!」

 

 超サイヤ人3が切れた。

 

 エネルギー切れなど起こるはずのない、伝説の超サイヤ人の変身が消えている。

 

 ターニッブの真・超サイヤ人の拳を食らう度に、ブロリーの巨体は元の細身でありながら筋肉質だった肉体に戻っていく。

 

 しかし、そのパワーはどんどんと増していく。

 

 スピードも動きも。

 

「どうなってやがる? 気がどんどんと高まっているのに、何故奴の肉体はしぼんでるんだ?」 

 

 バーダックの言葉に応えるように、ブロリーの姿は伝説の超サイヤ人から通常の金色の超サイヤ人へと変化していった。

 

 そしてーー。

 

「うぉあああああああっ!!!」

 

 強烈な咆哮と共に。

 

 先のターニッブと同様、黄金の気柱が天に向かって突き立った。

 

「! こ、こいつは……!!」

 

 バーダックが目を見張る中、ブロリーは圧倒的な黄金の気を纏い、翡翠に黒の瞳孔が現れた目を持って、ターニッブを見据えている。

 

 その姿は、ターニッブが変化した真・超サイヤ人そのものだった。

 

「……すごいな。ブロリー。お前もまた、己の限界を超えた」

 

「……」

 

 ブロリーは静かに自分の両手を見下ろした後、高まり続ける気を纏ってターニッブを睨みつける。

 

 お互いに睨み合う二人の真・超サイヤ人。

 

 同時に気が弾け、中央でぶつかり合う拳と拳。

 

 蹴りと蹴り。

 

 無数に交わされる打撃。

 

 互いに右ストレート、左のローキック、右のハイキック、左のストレートを放ち合い防ぎ合う。

 

 同時に弾かれ、両者は後方に着地した。

 

「……ターニッブ。俺と勝負しろ」

 

「受けて立とう!!」

 

 お互いに両手を上下に合わせて突き出した後、右の腰に置いて腰だめにたわめる。

 

 ブロリーは緑色の気の塊を。

 

 ターニッブは青白い波動の塊を生み出した。

 

「……カカロット」

 

 ブロリーの記憶の中にあるのは、息子二人と共に放たれたこの技で、己を太陽に押し込んだ技。

 

 かめはめ波だった。

 

 それを我が身で受けた彼は、独自に己の技として改良した。

 

 理性を取り戻し、無限に力を高めることができる今の姿ーー真・超サイヤ人だからこそたどり着けた最強の一撃だった。

 

 対峙するターニッブのそれもまた究極の一撃。

 

 ターニッブ本来の持つ青白い気の波動と、真・超サイヤ人の黄金の波動。

 

 その二つを重ね合わせて凝縮して放つ、電刃の一撃。

 

 極限まで高められた互いの一撃を。

 

 二人は前方に向かって突き出した。

 

「うぉおおお!! とっておきだぁあああああ!!!」

 

「勝負!! 電刃ーー波動拳!!!」

 

 緑色の光線と青白い光線が、互いに向かってぶつかり合った。

 

 押し合う両者の一撃。

 

「うぉおおおおおおお!! この技だ! この力だ!! これが俺の求めた俺“だけ”の力だ!!!」

 

 ブロリーが叫びながら、気を高めていく。

 

 互角の光。

 

 周りのものを吹き飛ばしながらも、両者の力は未だに収まらない。

 

 二つの気功波は互いの中央で強烈な爆発と共に相殺した。

 

「まだだぁああああ!!」

 

 瞬間、ブロリーが叫びながら一気に加速して、右の拳を振りかぶる。

 

 同時にターニッブも右の拳を振りかぶった。

 

 ブロリーの全身全霊を込めた一撃。

 

 対するターニッブもまた、右の足を広げ、左手を前に突き出し“必殺”の構えを取る。

 

「ブロリーよ。これが俺の“必殺”--“勝つための一撃”だ!!」

 

 ブロリーの右の拳に向かって放たれる、ターニッブの右正拳突き。 

 

「…なんだ、これは!?」

 

 打ち込まれた瞬間、ブロリーには風が木の葉を揺らす音が聞こえた。

  

 光の中、一撃に膝が折れる。

 

 力が抜ける。

 

「…風はただ木の葉を揺らすだけで、その存在を知らしめることができる。相手の全力の一撃を僅かに超える拳。それが、俺の一撃必殺!! 行くぞ!!」

 

 前のめりに倒れるブロリーの腹を、右のボディアッパーが撃ち抜く。

 

「…ぐぉお!」

 

 巨体が上に跳ね上げられ、その顎に向かって左の跳び上がりながらのアッパーが放たれた。

 

「真・昇龍拳!!」

 

 遥か曇天の空を撃ち抜く、風を纏いし龍の拳。

 

 ブロリーは悲鳴をあげる間も無く、背中から仰向けに倒れ、超サイヤ人が解除される。

 

 同時にターニッブも真・超サイヤ人から黒髪のサイヤ人に戻る。

 

「…なんで、とどめを刺さない?」

 

 ブロリーが仰向けに寝転がったまま、憑き物が落ちたような澄んだ声でターニッブに語りかける。

 

 すると彼は清々しい笑みで告げた。

 

「ブロリー、いい試合だった! また、俺と戦ってくれ!!」

 

 真っ直ぐに言われた言葉に、ブロリーは生まれて初めての感情が湧いてきた。

 

 もう一度、闘いたい。

 

 憎しみや怒りではなく、純粋に闘いたい。

 

 目の前のサイヤ人やカカロットと。

 

 そんなブロリーの心中を察したかのようにターニッブは一つ力強く頷いて、応えた。

 

「壁は誰にでもある。そんな時は、ぶつかって答えを出すしかない。ブロリー、お前ならば壁を打ち破れるさ」

 

 清々しい笑みとともにザックを下げて、ターニッブは背を向けて去っていった。

 

 しかし、その明るい声と清々しい笑みは、いつまでもブロリーの目と耳に残っていた…。

 

「…あんな野郎が居たとは。しかも、カカロットを知ってやがるようだな。クク、此処が地獄かどうかは知らねえが中々面白いことになりそうじゃねえか」

 

 去りゆく彼の背を、離れた所からバーダックが見送っていた。

 




 次回もお楽しみに(´∀`*)



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サイヤ人の修行 ターニッブのライバルとして

少し読み直して改稿を考えましたので。

 このようにしました( *´艸`)


 次元と時空の壁が曖昧な異界。

 

 死者の都。

 

 その場所で、赤いバンダナを額に巻いたサイヤ人。

 

 バーダックは、先ほどまで激戦を繰り広げていたブロリーと共に死者の都を進んでいた。

 

「…不思議な空間だ。サイヤ人の腹なら、そろそろ空いてもいい頃だが。この空間内じゃ腹は減らねえようだな」

 

「…おい。カカロットの親父」

 

 長身のブロリーからの言葉にバーダックは、ややウンザリしたような顔になった後、告げる。

 

「バーダックだっつってんだろ? カカロットやターニッブ以外の奴の名前、覚える気がねえのか?」

 

「何処へ向かってるんだ…?」

 

 ブロリーのもっともな疑問。

 

 バーダックも神妙な表情で告げた。

 

「知らん! この場所がどんなところか、全く分からねえからな。どうしようもねえ」

 

「自信がありそうだったから黙っていたが、やはり当てずっぽうだったか」

 

「ほーぉう? 無口な野郎かと思えば意外に喋るじゃねえか、パラガスのガキ」

 

 息子を揶揄する父親のような表情で告げるバーダックにブロリーは興味なさげに鼻を鳴らすと、そのまま歩く。

 

 しばらく歩くと、彼らの前には石造りの神殿のような物がそびえ立っていた。

 

「随分と、古臭い建物だなぁ? なんだこりゃ」

 

「…分からん。だが、周囲には建物は存在しなかった。ターニッブの奴が訪れるなら…! バーダック!!」

 

「…! ああ、何かおいでなすったな」

 

 二人が目を向けた先には、漆黒のシャツの上に濃紺の道着を着た黄金の髪の男。

 

 足には黒い足袋を履き、草鞋を履いている。

 

 その首元には翡翠色の勾玉の首飾りを下げていた。

 

「…雰囲気のある野郎だ。ターニッブやテメエの変身した姿に似てるな?」

 

「…真・超サイヤ人か。だが、こいつは!!」

 

 構えを取りながら、目の前に現れたサイヤ人を見据える。

 

 ブロリーには違和感があった。

 

 真・超サイヤ人は、絶えず力を出していれば理性を失くし、伝説の超サイヤ人に変化するはずだ。

 

 だが目の前のサイヤ人は、理性を保ったままの状態で力を入れ開放している。

 

「……」

 

 二人に対し、超サイヤ人が構えを取った。

 

「へっ! 上等だ。とことん闘り合おうじゃねえか!!」

 

「……普通の人間ではないな、貴様」

 

 バーダックとブロリーの言葉に、超サイヤ人は静かに告げた。

 

「我が名はリューベ! うぬらが生き残りたくば、我に力を示せ!!」

 

 黄金の気を纏うリューベに、バーダックとブロリーが同時に超サイヤ人に変身した。

 

 金色の髪を天に向けて逆立つ超サイヤ人達が睨み合う。

 

 強烈なリューベの踏み込みから放たれる拳。

 

 バーダックはそれを右腕で受けると、返しの左拳をボディに放つ。

 

 リューベは膝蹴りで拳を跳ね上げ、左拳の中段突きをバーダックに返した。

 

 咄嗟に右腕を曲げて肘で拳を受けるバーダック。

 

 と同時、ブロリーがリューベの背後から拳を握って振りかぶる。

 

 あっという間の移動。

 

 バーダックがリューベの目を引きつけ、ブロリーは悟られないように気配を消して背後を取る。

 

 何気ないやり取りだが、二人がリューベというサイヤ人を甘く見ていない証拠だった。

 

「…もらったぞ!!」

 

 ブロリーが右の拳を振り下ろす。

 

 しかし、リューベは自分の右拳を裏拳のように放ち、見事にブロリーの拳を止めてみせた。

 

「…笑止!!」

 

 前からバーダック、後ろからブロリーが拳と蹴りの連撃を仕掛ける。

 

 リューベは体を側面に開いて右手をバーダックに、左手をブロリーに構えて受ける。

 

「何てぇ、野郎だ!」

 

「俺たちの攻撃を片手で捌くだと!?」

 

 目を見開く二人の超サイヤ人。

 

 リューベは、バーダックの右ストレートを左手で掴み取ると、蹴りを放ってきていたブロリーにぶつけた。

 

「ぐお!?」

 

「あがぁ!?」

 

 玩具のように弾き飛ばされる二人の超サイヤ人。

 

 それを静かにリューベは見下ろす。

 

「…の野郎! やるじゃねえか!!」

 

 燃えてきたとばかりに微笑むバーダック。

 

 隣ではブロリーも立ち上がっている。

 

「…貴様、何者だ?」

 

 睨みつけるブロリーの翡翠の目を真っ向から見返し、リューベは静かに二人に背を向けた。

 

「…テメエ、どういうつもりだ? 勝負はこれからだろうが!!」

 

 だが、バーダックの言葉に応えず、リューベは告げた。

 

「現世に戻るがいい。うぬらが会わねばならん男が、其処に居る」

 

「…俺たちが、会わなければならないだと?」

 

 ブロリーが訝しげに問いかける横で凄絶な笑みを浮かべたバーダックが、リューベに殴りかかった。

 

「…まず、テメエとの勝負が付いてからだろうがぁ!!」

 

 だが放たれた右ストレートは、空を切る。

 

 捉えたはずの影は既に、霞のように消えていた。

 

「…逃げられたようだな」

 

 傍らに歩いてきたブロリーを見た後、バーダックはニヤリとして言った。

 

「まあ、いずれ決着を付けに来てやるさ。んで、この先に何があるってんだ?」

 

「…階段だ。上に行くためのようだが」

 

 ブロリーの言うとおり、階段は上に向かって伸びているようだが、途中で階段が切れている。

 

「…まあ、進めば分かるか」

 

 二人が階段に足を載せた時、黄金の光が階段の途切れた空間より木洩れ出ている。

 

 バーダックとブロリーは、互いに顔を見合わせると上に上がって行った。

 

ーーーーーー

 

 闘技場。

 

 死者の都にある石材で加工された他とは比べ物にならない頑健な造りのコロシアム。

 

 その石材には、特殊なフィールドを張る能力があり、サイヤ人達が思い切り訓練しても闘技場にて行なわれる限り宮殿から外に衝撃が漏れることはなかった。

 

 サイヤ王・ジュードが執務のため、闘技場の使用許可を得たサイヤ人達が、早速特訓をしていた。

 

 褐色の肌をしたサイヤ人・ターレスは、其処で生き地獄を味合わされていた。

 

「…お、おのれ…!!」

 

「…どうした? 王族の俺とは鍛え方が違うんじゃなかったのか?」

 

 目の前には金色の髪となったサイヤ人の王子・ベジータが腕を組んで立っている。

 

「ば、バカな。何故、ベジータ王子が、これ程まで」

 

 それを横目に悟空も金色の髪になりながら、明るく笑っていた。

 

「同じ顔の奴がやられんの見るのは、新鮮な気分だ」

 

 そして、目の前に立っている黒髪のサイヤ人に告げる。

 

「そんで、オメエもまだ成らねえんか?」

 

 気軽に話しかける悟空を恨めしげにサイヤ人・ガーキンは見上げた。

 

「…何回も言うがよ、そんな簡単になれっこねえだろ!」

 

「そうか? オラの二人目の子はアッサリなったぞ? ベジータの子どももな」

 

「バケモンのテメエ等と一般的なサイヤ人を一緒にすんな!!」

 

「…オラ、最初は落ちこぼれだったぞ?」

 

 などと打てば響くといった感じの会話だが、余裕のなさそうなガーキン。

 

 だが、悟空は静かに表情を改めると告げた。

 

「なあ、ガーキン。オメエ、本気じゃねえだろ?」

 

「…あ? なんだよ、急に」

 

 悟空はニヤリとしながら、ガーキンに告げた。

 

「オメエから感じる気が、オラに言ってんだよ。まだまだ本気じゃねえってな」

 

「…へえ?」

 

 微かに凄みを増したガーキンの表情に、悟空が満足そうな顔になる。

 

「オラの見立てじゃ、オメエは真・超サイヤ人になってねえターニッブと互角ぐれえだ。オラの超サイヤ人3以上の、な」

 

「…お前、分かってて修行つけてくれてんのか?」

 

「ああ。オメエが超サイヤ人になれば、ターニッブみてえに一気に色んな壁を突き破るような気がしてよ。ワクワクすんだ」

 

「…なるほど。お前さん、顔だけじゃなく格闘バカな所もあいつに似てるな」

 

 言うと同時に、ガーキンが金色の光を纏う。

 

 髪は逆立ち金色に、瞳は翡翠に輝いている。

 

「…やっぱりな」

 

 その変化を嬉しげに悟空が見ている。

 

「きっかけは、お前のアドバイスのお陰だけどな。ありがとよ、悟空」

 

 不敵な笑顔で告げるガーキンに悟空もニヤリとなる。

 

 お互いに超サイヤ人と化した今、ほとんどハンデは無い。

 

 ガーキンは背中から顔を覗かせるようにして斜に構えて、リズムを刻み始めた。

 

 悟空はいつも通りに肩幅に足を開いて膝を曲げ、左手を顔の横に右の拳を脇に置いて構える。

 

「…行くぜ、かめはめ波ぁあああ!!」

 

「かかって来な! 波動拳!!」

 

 互いに向かって叫び合うと、二人の超サイヤ人は腰だめに両手をたわめて青い気の球を作り上げ、前方に突き出して放ち合う。

 

 お互いの放った青い光線は中央でぶつかり、爆発した。

 

 次の瞬間、お互いに向かって駆け寄り右の肘と肘がぶつかり合い、白い光が炸裂した。

 

 闘技場の地面が割れ砂埃が舞う中、超スピードで移動しながらの拳と蹴りのぶつけ合い。

 

 両者。

 

 一気に相手を呑み込まんとばかりの炎のような攻めを繰り出し合いながら、攻撃を攻撃で防いでいく。

 

 悟空とガーキンの気質もあるのかもしれないが、二人のファイトスタイルは非常に嚙み合っていた。

 

 相手よりも手数とスピードで上回ることができるか否か。

 

「……流石だ! 思ってたとおり、やるじゃねえか!! オラとここまで打ち合えるなんてよぉ!!」

 

「パワーアップのバリエーションを残してる奴に言われても嬉しかねえが。今は、素直に受け取っておくぜ!!」

 

「へへっ! 悪りぃけどオラ、超サイヤ人でオメエに勝たしてもらうぜ!! でねえと、ターニッブに勝てねえからなぁ!!」 

 

 はっきりとターニッブを意識した台詞に、ガーキンの翡翠の瞳に紅の炎が宿る。

 

「上等だ! アイツのライバルはこの俺だってことを、思い知らせてやるぜ! 孫悟空!!!」

 

「ああ! かかって来い、ガーキン!!!」

 

 燃え滾る両者のオーラ。

 

 どれだけ傷を負おうとも絶えることのない笑み。

 

 のけ反る首。

 

 それでも、その度に額をぶつけ合う悟空とガーキン。

 

 口の端から血が流れ、額から汗が流れても、終わらない。

 

 終わらせない。

 

 ターニッブとの打ち合いは、足を止めての打撃の交換だとすれば。

 

 ガーキンとの打ち合いは、足を止めずに移動しての打撃の応酬。

 

 一瞬でも気を緩ませて連撃に飲み込まれれば、取り返しがつかない致命打の連撃を味わうことになるだろう。

 

(初めてかもしんねえな……。オラとここまで似たスタイルの戦士とやり合うのは!!)

 

(こいつ、強い! さっきから連撃で飲み込もうとしてんのに、ほとんど打ち返されてる!!)

 

 緊張の糸は更に更に強く張り詰める。

 

 燃え滾る両者のオーラとは反比例するように、場の空気は冷えている。

 

 口元に笑みを。

 

 翡翠の瞳に闘志を燃やして。

 

 ガーキンの手足に紅蓮の炎が宿り始めた。

 

「!?」

 

「悟空よぉ! 本当に燃える勝負ってヤツを、お前に味あわせてやるぜ!!!」

 

 ガード越しに炎が悟空の目を暗ませる。

 

 ボディに拳の一撃。

 

 前のめりになった悟空の顎に向かって、ガーキンは左の拳に己の全ての気と炎を集約させた。

 

「見せてやる! これが俺のーー」

 

 上、中、下段にそれぞれ決まるガーキンの左回し蹴り。

 

 のけ反った悟空の体そのものを巻き込むように、紅蓮の竜巻と化したガーキンがアッパーカットを跳び上がりながら放つ。

 

「神龍拳ーー!!!」

 

 悟空の目が見開かれ、咄嗟に顎の下に両腕を曲げて置く。

 

 ガード越しに炸裂するガーキンの炎の拳。

 

「ーーなんだと!?」

 

 悟空が叫びながら、ガード越しにねじ込まれてくる拳に驚愕する。

 

 顎を跳ね上げられ、炎の竜巻に超サイヤ人孫悟空は弾き飛ばされた。

 

「ぐぁあああああ!!!」

 

 空中で仰向けにのけ反りながら、背中から叩き落される。

 

 同時にガーキンが黄金のオーラと紅蓮の炎を全身に纏って着地する。

 

 だが、悟空も負けていない。

 

「何!? 神龍拳を食らって、こいつ!!」

 

 背中から落ちた瞬間、首だけの力で跳ね起きると、悟空は全身の黄金のオーラを右拳に溜めた。

 

「流石だ、ガーキン。ターニッブに勝るとも劣らねえ、強ぇ意志と力を拳から感じたぜ。でもなぁ!!!」

 

 悟空の金色のオーラが一瞬激しくなり、一気に駆ける。

 

「龍の拳を打てるのは、オメエ等だけじゃねぇえええええっ!!」

 

 力の強さに舌打ちし、ガーキンは両腕を顔の前で交差してガードする。

 

 それに構わず、悟空は溜まり切った金色の拳を繰り出した。

 

「喰らえぇ! 龍ぅううう拳ぇええええええんっ!!!」

 

 瞬間、悟空の身に纏っていたオーラが爆発し、黄金の龍を象る。

 

「なんだと!?」

 

 ガーキンが目を見張る中、黄金の龍はガードしたガーキンの肉体をお構いなしに後方へ吹き飛ばした。

 

「うわぁあああああ!!」

 

 大の字になって闘技場の石壁に叩きつけられ、磔にされるガーキン。

 

 その前に静かに龍は佇み、鎌首をもたげて睨みつける。

 

 やがて静かに龍は姿を消していき、金色のオーラを纏った超サイヤ人孫悟空が目の前に立っていた。

 

「い、今のは……!!」

 

 大ダメージを負いながらも、壁から金色のオーラを噴き立たせてガーキンは立ち上がる。

 

 それを悟空は肩で息をしながら見据えた。

 

「オラの知らねえオラの技だ。ガーキン、オメエの技のおかげだ。初めて撃った技だけど、上手く行ったぜ!!」

 

 ガーキンは知らないが、それは孫悟空であって孫悟空ではない。

 

 別の次元の孫悟空が、魔神と言われる強大な化け物を滅ぼすために放った、自らを黄金の龍と化す必殺の拳。

 

 ーー龍拳だった。  

 

「まったくよぉ、お前。何処まで強いんだよ? 闘えば闘う程に底が見えなくなっていくような、そんな感覚になるぜ!!」

 

 口調はウンザリしているようだが、その表情は燃え滾るような闘志に彩られてガーキンは笑っている。

 

 悟空もまた、同じだった。

 

「オラもだ」

 

「あん?」

 

「ガーキン、オメエさっき言ってたよな? 本当に燃える戦いを教えてやるってよ?」

 

 これにガーキンは真剣な表情になると頷く。

 

 悟空はクールな翡翠の瞳に闘志を燃やして口元に笑みを浮かべて言った。

 

「オラも、燃えて来たぜ!!」

 

 二人の闘いは、更に続けられようとしていた。

 

ーーーーーー

 

 サイヤ星の巫女・プリカにも、惑星ベジータ出身のサイヤ人達の戦いは見て取れた。

 

 圧倒的な力。

 

 貪欲なまでに強さを求める者達。

 

 それは、あまりにも似ている。

 

「初代サイヤ王・リューベ。そして…ターニッブ」

 

 闘う為だけに生きる。

 

 闘うことでしか生きることができない。

 

 そんな二人に彼らは似ている。

 

 惑星サイヤのサイヤ人とは根本的に違う。

 

 純粋で誇り高い戦士達ーー。

 

「……間に合うでしょうか? 間もなく始まる滅びの時が……!」

 

 悲しき運命。

 

 この星が生まれてより、存在する異界ーー死者の都。

 

 文明が生まれては、その度に滅ぼす間引きの時。

 

 星が己を護るために行っているのだろうか。

 

 目的は分からない。

 

 それでもーー其処に居た人々は例外なく滅ぼされている。

 

 サイヤ人も例外ではないーー。

 

「どうか……! この世界を……!!」

 

 巫女の祈りの念が、静かに神殿に満ちていく。

 

ーーーーーー

 

 死者の都。

 

 それを何百年も前に塞いだ男ーーサイヤの王・リューベ。

 

 彼もまた、星の意志を感じて取っていた。

 

「始まるか……! 間もなく……。死者の門が開かれ、この現世を常世に変える。生き残るはサイヤ人か、それとも亡者どもか……!!」

 

 真・超サイヤ人となって死者の都の亡者を倒し続けて来た。

 

 そんな彼でも、もはや抑えきれない程に数を増している。

 

 死者の都の怨念は、巫女の祈りよりも。

 

 真・超サイヤ人の力よりも。

 

 深く重く、強烈だった。

 

「……実態の無い念を滅ぼすのは至難。されど、念を肉体に固定すれば類なき魔神と化す。うぬらに敗れるか?」

 

 異界の曇天に血のように赤い満月が浮かんでいる。

 

 月は、こちらを見下すように。

 

 真・超サイヤ人は己の全身に気を纏い、声高々に告げる。

 

「我が名はリューベ!! 真なる超サイヤ人!! サイヤ人よ!! うぬらが生き残りたくば塵芥、三千世界より権限せし黄泉路の亡者共!! その悉くを見事、打ち破ってみせぃ!!」

 

 強烈な気を更に上昇させながら、告げるリューベは正に鬼神だった。

 

ーーーーーーー

 

 これをウイスと破壊神ビルスが見据える。

 

「たかだか、惑星に住む一柱の神にしては強烈な奴だね」

 

「……ですが、彼もまた“人の世を見守るもの”なのでしょう。身に纏う力は余りにも危険ですが」

 

 ウイスの言葉にビルスは目を細める。

 

「こいつは、神なんてものを望んじゃいない。ただ、強さだけを求めているだけの奴だ」

 

 ため息を吐く。

 

「サイヤ人ってのは、悟空やベジータもそうだけどさ。どうして、強さだけを望むのかねえ~」

 

「おほほ。戦闘民族、だからでしょうかね? もっとも、リューベ程の者になれば強さなど求めようもない。彼の気持ちはビルス様が一番存じておられるのでは?」

 

 その言葉にビルスは一瞬だけ、遠い目をしてみせた。

 

 神秘的な表情で彼は告げる。

 

「孤独だからね……。強いってのは」

 

 しかし、すぐに表情を改めてビルスはウイスに問いかけた。

 

「それでウイス? 亡者共が蔓延るってのは何だ? 聞き捨てならないんだが」

 

「おそらく……あの惑星サイヤにのみ起こる現象でしょう。名の通り、死者が現世に満ちるのだと思いますよ」

 

「本当か!? シャレにならないじゃないか! 早く行って止めなければならない!!!」

 

 そう言うビルスにウイスは静かに淡々と告げた。

 

「問題ありません。惑星サイヤのメカニズムです。心を持った知的生命体が死ねば、そのエネルギーを吸い取り死者の都と呼ばれる異界に保管して、文明人が進化してある程度の数になると、保管された死者の魂が蘇り文明を滅ぼす。そうすることで、あの惑星は何千・何万と言う歳を重ねているのです」

 

「……気に入らないな。惑星が意志を持って生命体を弄ぶなんてね」

 

「オホホ! それは我々も同じですよ! ビルス様、少し悟空さん達と仲良くし過ぎて贔屓が過ぎるのではありませんか?」

 

「…………」

 

「我々は、平等の存在です。惑星の中だけの問題ならば我々が口を出すのは筋が違う」

 

「分かっている」

 

 ぶっきらぼうにそれだけを言うと、ビルスは寝床に向かって歩いて行った。

 

 それを見送り、ウイスは静かに微笑む。

 

「悟空さん、ベジータさん。あなた方ならば大丈夫でしょうが、くれぐれも無理はしないでくださいね」

 

 水晶に映る惑星サイヤを見下ろして、ウイスは二人のサイヤ人の弟子を想って笑った。

 




 次回もお楽しみに( *´艸`)


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サイヤの再会 父親と息子 王子と悪魔

こちらも編集しております( *´艸`)

どうも申し訳ない(=゚ω゚)ノ


 惑星サイヤの王都。

 

 宮殿内の闘技場。

 

 超サイヤ人となったガーキンと孫悟空は互いに口の端を歪めている。

 

 互いに龍の拳を繰り出しあってなお、両者の闘志は衰えない。

 

 そのまま組み手を続けようと二人が互いに向かって構えた時、どこからともなく地鳴りが聞こえ地面が揺れた。

 

「地震か?」

 

 悟空が周りを見回すと、闘技場を囲む壁の一面にゆっくりと縦の筋が入る。

 

 そのまま、左右に別れていった。

 

 中から出て来たのは薄暗い石畳の階段。

 

「……なんだ?」

 

 悟空が首をかしげる横で、ガーキンが瞳を鋭くして応えた。

 

「死者の都への階段だ。だが、上がって来るのは、ターニッブでも、リューベの野郎でもねえ。誰だ!?」

 

 ガーキンの詰問に対して、足音が上ってくる。

 

 陽の光に晒されて現れたのは、フリーザ軍の旧式バトルジャケットを着たバンダナのサイヤ人と上半身が裸、腰に金属のベルトと赤い腰巻、白い道着のズボンを履いたサイヤ人が現れた。

 

「…ほお? 太陽が拝めるとはな」

 

「奴は現世だと言ったが、こいつはやはり」

 

 悟空とそっくりのバンダナのサイヤ人と、2メートルを越える長身の筋骨隆隆たる半裸のサイヤ人は互いに何かを語り合っている。

 

「…オメエは」

 

 長身の青年を見て、悟空の頭の中に記憶が浮かんで来る。

 

 自分ではない自分の記憶。

 

 あまりに強大過ぎる力のために自らを制御できず父親に頭を洗脳され、それが無くなると凶暴性と力を無限に増幅させていった伝説の超サイヤ人。

 

 自分とベジータを憎み、最終的には仲間たちの力を集約させた拳で打ち倒した相手。

 

「…ブロリー、か?」

 

 闘技場の奥でターレスを鍛えていたベジータも、ブロリーを見据えて笑った。

 

「…なるほど。伝説の超サイヤ人さん、か」

 

 そんな二人の中、悟空を真っ直ぐにブロリーは見つめた。

 

 澄んだ黒い目は、ただ悟空の顔を写している。

 

 その瞳の中にあったのは憎悪だったはず。

 

 だが、今の彼からは波紋の無い水のように澄んだ気だった。

 

「…憎しみが消えてる? オメエ、一体何があったんだ? それにオラにそっくりな、オメエは…!!」

 

 言いながら悟空はブロリーから隣の自分と似た、自分より鋭い瞳の赤いバンダナを額に付けたーー頰に十字の傷を持つサイヤ人に目を向けた。

 

「…貴様は」

 

 ベジータもそのサイヤ人を見て目を見張った。

 

 その反応に、悟空が思わずベジータを振り返った。

 

「…ベジータ! このサイヤ人、誰なんだ!?」

 

 瞬間、バンダナを巻いたサイヤ人は悟空に殴りかかった。

 

「…っ!?」

 

 乾いた音が響く。

 

 悟空は反射的に、自分に放たれた右ストレートを左手で掴み止めていた。

 

「情けねえツラしてんじゃねえよ。それにしても、随分とデカくなりやがったなぁ」

 

 バンダナの男はとても懐かしそうに笑みを浮かべている。

 

 悟空が感じたのは、郷愁のようなものだ。

 

 滅多にそんな感情になどなったことがない。

 

 あるのは、一度。

 

 占いババの屋敷で、自分を育ててくれた地球人の老人と出会った時だけだ。

 

「…あ、アンタ…!!」

 

「…くく、さあて。あのクソガキが、どれだけ強くなったのか。この身をもって教えてもらおうじゃねえか!!」

 

 右ストレートを掴み止められたのを悟るとバンダナのサイヤ人は本当に嬉しそうに笑った後、左手で拳を握り悟空の右頬に放ってきた。

 

 咄嗟に悟空は拳を掴んでいた左手を離すと拳を握り、自分に迫って来ていた拳を殴り返す。

 

 アッサリと赤いバンダナのサイヤ人は後方に弾き飛ばされた。

 

「…っと! くく、超サイヤ人か。ならよぉ!?」

 

 自分の相手が超サイヤ人の状態であることに気付いたバンダナのサイヤ人は、笑うと気合を一つ込めて、力を己の中で爆発させた。

 

「…!?」

 

 金色の髪を天に向けて逆立たせ、超サイヤ人となった悟空といよいよ瓜二つになる。

 

 その姿に悟空は驚きよりも、何よりも相手のことを知りたい気持ちが勝った。

 

「…なあ、アンタ」

 

「ああん?」

 

「…名前、教えてくんねえかな?」

 

 珍しく神妙な悟空の言葉に、バンダナのサイヤ人が野性味のある笑みを浮かべた。

 

「俺の名は、バーダックだ。行くぜ、カカロット!!」

 

「……ああ! オラも本気でいくぞ!!」

 

 ぶつかり合う二人の同じ顔をした超サイヤ人を静かにブロリーは見据える。

 

 そこにベジータが歩み寄ってきた。

 

「…ガーキン。ターレスの修行を任せて構わんな?」

 

「へ? あ、ああ。そりゃ、構わないが」

 

 いきなり語り掛けられ、ガーキンはぽかんとしながらいきなり現れた二人のサイヤ人を見比べる。

 

 奥では肩で息をしながら、ターレスが値踏みするようにバーダックとブロリーを見ていた。

 

 ベジータはそんな二人に構わず、ブロリーを見上げて告げる。

 

「…なるほど。俺ではない俺とはいえ、俺を恐れさせるだけの力はあったようだな」

 

「ベジータ王子、か」

 

 悟空とバーダックのぶつかり合いから目を離し、ブロリーはベジータに顔を向けた。

 

「…ブロリー。貴様が俺の親父ーーベジータ王から受けた屈辱、分からんとは言わん。だからこそ、サイヤ人の王子・ベジータが相手をしてやる!!」

 

 ベジータは真っ直ぐにブロリーを見つめて拳を握り、打ってこいと構える。

 

 対するブロリーはベジータに向き合うと口を開いた。

 

「…屈辱、か。確かにな。かつての俺はお前やカカロットへの憎悪しかなかった」

 

 言うとブロリーは、静かに両手を広げてベジータに構えを取る。

 

 ブロリーの湖のような目を見据え、ベジータは悟った。

 

「…フン。今は違う、か。ターニッブの野郎だな?」

 

 その言葉に、ブロリーは黒髪を穏やかな風に揺らしながら首をかしげた。

 

「…何故、分かる?」

 

「わざわざ、貴様の憎しみを消してやるような闘い方をする奴なんて、ターニッブ以外に知らんからだ」

 

「…ふ、そうか」

 

 ブロリーの穏やかな笑みに、ベジータも口の端を吊り上げて楽しそうに笑う。

 

「どうやら、全力で戦えそうだな」

 

「…」

 

 表情から笑みを消し、ブロリーは真剣な表情になると金色の髪を逆立たせ、超サイヤ人へと変化した。

 

「うぉあああ!!」

 

 更に気を高め、ブロリーは3メートルを越える筋肉の塊へと変化する。

 

 いきなりの変身にベジータも嬉し気に構える。

 

「…伝説の超サイヤ人、か。では、まずは超サイヤ人で試させてもらうぞ!!」

 

 ベジータが一気にブロリーの懐に入り込む。

 

 互いに右ストレート、左ストレート、右ハイキック、左ハイキックを相殺した後。

 

 秒間数百の打撃を応酬する。

 

 ソニックブームが巻き起こり、地面が割れて、瓦礫が舞い上がる。

 

「流石に凄まじいパワーだ! ならば、超サイヤ人を超えた超サイヤ人ならば、どうだ!!」.

 

 身にまとうオーラが激しさを増し、青白い雷を放つ。

 

 超サイヤ人2のベジータを前に、ブロリーは静かに告げた。

 

「…カカロットの息子が見せた形態か」

 

 白目でありながらも、知性を感じるセリフにベジータがニヤリとする。

 

「知っていたか。超サイヤ人2、と俺達は呼んでいる」

 

「…面白い!!」

 

 更に激しさを増す両者の殴り合い。

 

 金色のオーラが、二人を中心に巻き上がる。

 

 巨体に押し負けぬパワーのベジータ。

 

 小回りの利く相手に劣らぬスピードのブロリー。

 

 こちらも悟空とバーダックと同じく、互いに一歩も譲らない。

 

「…ふはははは! 面白いぞ、ベジータ王子!!」

 

「ああ! だが、まだまだ足りん!! そうだろう、ブロリー!?」

 

 気を高めながら、どんどんと自らの拳や蹴り、気弾を真っ向からぶつけ合って戦う二人の超サイヤ人。

 

 その余りにも派手な戦いにガーキンは肩を竦めた。

 

「…ここに普通のサイヤ人がいるって、すっかり忘れられてんな? ターレス」

 

「…うるせえ」

 

 ガーキンの言葉にターレスが、戦いを見つめながら毒づく。

 

 悟空とバーダック。

 

 ベジータとブロリー。

 

 超サイヤ人二組のバトルは、闘技場の地面を空を。

 

 所狭しと駆け回る。

 

 バーダックが拳を互いに交換して首を後方へ弾き飛ばされながら、叫ぶ。

 

「どうしたぁ、カカロット!? テメエの力はそんなもんかぁ!!」

 

 これに悟空も心底楽しそうに、嬉しそうに戦っている。

 

 ターニッブとの闘いとは別の。

 

 しかし、それに優るとも劣らない戦いへの喜び。

 

 悟空は目の前のサイヤ人から、それを味わっていた。

 

「オラ、此処に来て良かったぞ。占いババ様の所で悟飯爺ちゃんと戦った時みてえだ! こんなに楽しいなんてよぉ!!」

 

 同じ顔をした二人のサイヤ人が、金色の闘気をまき散らしながら更に高まる。

 

 そこから少し離れたところでは、小柄な超サイヤ人と巨体の超サイヤ人が拳をぶつけ合っている。

 

「そうだ、ブロリー! その戦い方こそ、戦闘民族サイヤ人だ!!」

 

「ベジータ王子! 俺はまだまだ足りんぞ!! 貴様ももっと燃えろぉお!!」

 

 悟空達に負けまいとするかのように。

 

 戦闘民族サイヤ人の王子ベジータが、己をも上回る才能を持ったサイヤ人・ブロリーと熱戦を繰り広げている。

 

 四人の超サイヤ人のテンションは、正にうなぎ登りだった。

 

 そのハイテンションは、昼間に続き。

 

 日が暮れるまで四人の超サイヤ人の対決は行われていた。

 

 夕食時。

 

 執務が終わり体を動かしに来たサイヤ王・ジュードをして目が点になるほどに、悟空とバーダック、ベジータとブロリーは激しいバトルを繰り広げている。

 

「…ガーキンにターレスよ。これは一体?」

 

 ジュードの問いかけに、ガーキンが肩を竦めながら応えた。

 

「よく分からねえが、悟空達と同郷のサイヤ人達みてえだぜ?」

 

「そうなのか? ターレスのようにいきなり現れたのか?」

 

 ターレスはジュードの言葉に腕を組んだ状態で目を向けると、告げる。

 

「俺の場合はよくわからん内に其処で倒れていたからな。奴らはそこの階段からいきなり現れて、カカロットやベジータ王子と戦い出した」

 

「…知っている顔か?」

 

「片方はな。ブロリーってのは知らねえが、バーダックには見覚えがある。サイヤ人の下級戦士の中でもトップクラスの実力者だったはずだ」

 

 その言葉にジュードはなるほど、と頷く。

 

 悟空やベジータと真っ向から闘えていることから、トップクラスと言われて納得してしまった。

 

 そんな彼らの話などどこ吹く風か。

 

 バーダックは心底楽しそうに、野性味あふれる笑みを浮かべた。

 

「やるじゃねえか、カカロット!!」

 

「へへっ! アンタもな!! じゃあ、次は超サイヤ人2だ!!」

 

 これに悟空の身に纏うオーラが激しくなり、雷を纏いはじめる。

 

 前髪が更に逆立って少なくなり、翡翠の瞳は更に鋭くなっている。

 

 構わず拳を繰り出すバーダックに、悟空もまったく同じタイミングで拳をぶつけた。

 

「うっ!? なんだと、この圧倒的な力は!?」

 

 右ストレート同士がぶつかり、バーダックが目を見開く。

 

 一撃の重みが先までとは比べ物にならない。

 

 思わず手を引き、痺れる右拳を振る。

 

 その脇に悟空が超スピードで移動してきている。

 

「チッ! の野郎!!」

 

 動きも圧倒的に加速しており、文字通り次元その物が違う。

 

 連打を撃ち合うも、その一撃一撃の重みの差にバーダックは舌打ちする。

 

 だが、悟空の方は明るく楽しむように笑った。

 

「ただの超サイヤ人で超サイヤ人2の攻撃を凌げるなんてよ。アンタ、すげえや! なら……!!」

 

「コイツ!? まだ力が!!?」

 

 目を見開くバーダックの前で、悟空の金色のオーラが気柱となって天を突いた。

 

 逆立った金色の髪がそのまま腰の辺りまで長く伸び、眉毛が縮退し眼窩上隆起が起こる。

 

 また翡翠の瞳には黒い瞳孔が現れていた。

 

「超サイヤ人を超えた超サイヤ人を、更に超えた超サイヤ人ーー! 超サイヤ人3だ!!」

 

「…コロコロと、姿を変えやがって……!!」

 

 悟空の姿にバーダックは嬉しそうな笑顔になると、静かに気を高め始めた。

 

 悟空は、その只ならぬ様子に思わず問いかける。

 

「? …バーダック?」

 

「不思議だぜ……! テメエの姿を見たら、頭の中に妙な感覚が浮き上がって来やがった……!! 俺も成れるっていう感覚がな!!」

 

 言うと同時、バーダックが一気に気を引き上げる。

 

「……こいつは!?」

 

 悟空が目を見開くと同時、バーダックの翡翠の瞳が更に鋭くなり、逆立った金色の髪が更に立つ。

 

 青白い電撃を纏ったその姿はーー。

 

「超サイヤ人……2だって……!?」

 

 悟空が驚愕に目を見開いているとバーダックは更に告げた。

 

「更に、もう一段階の変身だな? 見てろよ、クソガキ」

 

 気柱が天を突き、バーダックの眉が退化した。

 

 同時に髪が腰まで伸びた。

 

「ま、間違いねえ……! バーダック、アンタ! 超サイヤ人……3になってやがる!!」

 

 呆然としながら告げる悟空に、バーダックはニヤリとしながら告げた。

 

「まだガキに負ける程、耄碌しちゃいねえってこった……!!」

 

 野性味あふれる笑みに対し、悟空も不敵な笑みを返す。

 

「……へへっ、おったまげだぜ! さすが、オラの父ちゃんだ!!」

 

「あん?」

 

 訝し気に無くなった眉根を寄せるバーダックに悟空は告げた。

 

「オラの頭の中に、オラじゃねえオラの記憶が流れて来た。アンタ、オラの父ちゃんだろ?」

 

「……死者の都ってのは、余計な真似をしやがるな」

 

 ため息と共に吐き捨てるバーダックだが、静かに拳を握る。

 

 気合を入れてバーダックは口を開く。

 

「それで? まさか途中でやめちまうような真似はしねえだろうな? カカロットよぉ」

 

「ああ! オラもこうなったら、とことん父ちゃんとやり合いてえぞ!!」

 

「そうこなくちゃぁな!!」

 

 互いに拳を握って構え、相手に向かって踏み込む。

 

 鈍い音と共に、ベジータが膝を地面に付いていた。

 

「……くっ! 恐ろしい強さだ!! これが、伝説の超サイヤ人・ブロリーか!!」

 

 見上げながら口元に笑みを刻んでベジータは告げる。

 

 見下すブロリーは変わらず巨体であったが、その髪が腰まで伸び眉毛が退縮している。

 

「超サイヤ人3……。カカロットは、この姿をそう呼んでいるらしいなぁ」

 

「ああ。頭にくるぜ……! 貴様と言いバーダックと言い、アッサリと超サイヤ人の限界に辿り着きやがって!!」

 

 その言葉にブロリーは目を見開く。

 

「ここが終着点だというのか? だが……!!」

 

 思わずと言った風に焦るブロリーにベジータは淡々と告げる。

 

「ああ、それが“普通の”超サイヤ人が辿り着ける最後の境地だ」

 

「なるほど。普通の、か」

 

 その言葉にブロリーはニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

 

 ベジータが不敵な笑みを返して頷いてやりながら、上空でバーダックと全く互角の戦いを繰り広げている悟空に告げる。

 

「カカロット! 一気に決着をつけるぞ!!」

 

 ベジータの言葉に、バーダックの右拳を掴み止めて悟空もニヤリとした。

 

 その反応にバーダックが呆れたような、嬉しそうな顔で告げる。

 

「……テメエ、まだ力を隠してんのか? まったく、大したタマだぜ!」

 

「へへっ、父ちゃん! 戦いながら自力で3にまで成れたアンタなら、この神様のレベルにだって簡単に来れそうだぜ!!」

 

 超サイヤ人3を一旦解除し、黒髪に戻る悟空。

 

 ベジータも一旦超サイヤ人2を解除している。

 

 これを訝し気にバーダックとブロリーは見据えた。

 

 蒼銀の炎が悟空とベジータを包み込み、二人の水銀色に輝く超サイヤ人を生み出した。

 

「…こ、こいつは……!!」

 

「…何という奴らだ!!」

 

 バーダックとブロリーの二人の超サイヤ人3をして、思わずそんな声が漏れ出る程に圧倒的な力の顕現だった。

 

 悟空とベジータが互いの相手にニッと笑みを浮かべると同時。

 

 凄まじい音と共にバーダックとブロリー。

 

 それぞれの体が前のめりに、くの字に曲がった。

 

「がはぁっ!!」

 

「ぐぉおお!!」

 

 軽い拳の一撃。

 

 だが、たった一撃で二人の超サイヤ人3の体が揺れた。

 

 それだけ圧倒的な力の差だ。

 

「どうだ、父ちゃん? これがオラの奥の手の一つ。超サイヤ人ブルーさ!!」

 

「ブロリーよ! これが、貴様が見たがった超サイヤ人3の更に奥の領域だ!!」

 

 クレーターから立ち上がる二人のサイヤ人は、黒髪に戻り肩で息をしている。

 

「ち、圧倒的な差だな」

 

 バーダックが己の敗北を悟り、頭を左右に振りながら告げる。

 

 するとブロリーは静かに立ち上がりながら言った。

 

「…ああ。だが、俺達は強くなる」

 

「ケッ、当たり前だろがぁ!」

 

 バーダックはそんなブロリーに負けじと立ち上がりながら、上空にいる蒼銀の超サイヤ人達を見上げる。

 

 そんな彼らを呆然と見ながら立っていたジュードは戦いが終わったことを悟り、近衛兵達を連れて闘技場の中に入る。

 

「…知らぬ間に、また客人が増えたようだな。それにしても悟空にベジータ、お前達は底知れん強さだな。流石は超サイヤ人・リューベを退けただけはある」

 

 ジュードの言葉に水銀の光を纏う超サイヤ人二人は、ニッと笑った後、元の黒髪に戻る。

 

「…ジュード、紹介すんぜ! オラの父ちゃんのバーダックとオラと同い歳のブロリーだ!! 二人とも、めちゃくちゃ強ぇぞ!!」

 

「見ていたよ。とても心強い! バーダックにブロリーよ。惑星サイヤの王・ジュードという。以後、この顔と名を見知りおき願いたい」

 

 ジュードの名乗りにバーダックとブロリーが互いに顔を見合わせ、悟空とベジータを見る。

 

 ベジータが惑星サイヤについて疑問符を浮かべている彼らに簡単に説明している。

 

 すると、ターレスが彼らに向けて叫んできた。

 

「おい、貴様ら! これを見ろ!!」

 

 皆がターレスを向くと、彼は金色の髪を天に逆立て、オーラを身に纏っていた。

 

 褐色の肌は超サイヤ人のオーラによって悟空達と同じ白色に変わっている。

 

「どうだ、カカロットにベジータ? 俺は、超サイヤ人になってみせたぞ!!」

 

 ほくそ笑むターレスを見て、悟空が告げた。

 

「おー! スゲエ、スゲエ!」

 

 何処か棒読みな悟空の後にベジータが淡々と告げた。

 

「やっとか! とりあえず、その力で自分の身ぐらいは守れよ?」

 

「ベジータ! 父ちゃんとブロリーも合流したし、飯にしようぜ!? おい、ターレス! 早く行こうぜ!!」

 

 悟空に連れられて皆が去る中、ガーキンがポツリと残されたターレスに告げた。

 

「…まあ、なんだ。超サイヤ人をあっさり上回る奴らばかりが現れた後だっだしよ。成るタイミングが悪かっただけだよ。な、おちこむなって?」

 

「うるさい! あいつらめ…、今に見てろよ!!」

 

 歯軋りするターレスを見て肩をすくめるガーキンは悟空達と合流して、皆で闘技場を去ろうとした。

 

 




次回もお楽しみに( *´艸`)


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死者の念より生まれし魔神 究極の合体戦士

これにて改稿を一応してみました( *´艸`)

治すところは多々あるので、本編の更新と改稿は同時に勧めていきます





 食事にしようとジュード王からの提案に悟空とベジータにターレス。

 

 そして、新たに仲間となったバーダックとブロリーが合流し、一同が食堂に向かおうとした時だった。

 

「「…くくく、なるほどな。どうやら、オメエ等を倒すのは、この俺が選ばれたようだ」」

 

 不吉な声が闘技場に響いて聞こえた。

 

 その声はーー。

 

 悟空とベジータが同時に言葉を発したような声だった。

 

「おい、なんだ? この妙な雰囲気は?」

 

「死者の都に充満していた気に似ている……!!」

 

 バーダックとブロリーの声が響く中。

 

 青い空は何処からともなく現れた薄灰色の雲に覆われ、視界に薄い霧が現れてくる。

 

 雲は悟空達の上空に小さな渦を巻いて集まると、人の形を象った。

 

「…なんだ!? アレは!?」

 

 ガーキンが叫ぶ横でサイヤ王が鋭く呟く。

 

「…死者の都め。ついに亡者を解き放ったか」

 

 その言葉に悟空とベジータは、人の形を取った雲を睨み据えた。

 

 紺色の道着に帯、赤いインナーシャツに白い手袋とブーツを付けた、両耳に琥珀色の耳飾りを付けたサイヤ人。

 

「…おいおい、ベジータ。アレは」

 

「ああ…! 間違いない!!」

 

 悟空とベジータが互いに告げ合う。

 

 サイヤ王・ジュードが、死者の都の念の塊が具現化した存在に話しかけた。

 

「我が名は、惑星サイヤの王・サイヤ。中々の美丈夫だ。名を名乗ってもらえんかな?」

 

 いけしゃあしゃあと同じ顔に向かって何を言ってやがる、とガーキンが半目で呟く。

 

 するとサイヤ王に瓜二つの顔。

 

 悟空の着ているものとは色違いの濃紺の道着を着たサイヤ人は口を開いた。

 

「「俺は、カカロットとベジータの合体! ベジットだ!! よろしくな、男前のサイヤ王」」

 

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべるベジットにジュードもニヤリとする。

 

「オメエ、ホントにベジットなんか? 一体、どういうことだ?」

 

「偽物に決まってるだろ!? 本物の俺たちが、此処に居るんだからな!!」

 

 言い合う悟空とベジータに向けてベジットは笑いかけた。

 

「「そう。俺は偽物だ。この姿は死者の都が、オメエ等サイヤ人を滅ぼすために選んだ姿さ。だが俺の能力は、本物と何にも変わらねえ。サイヤ人達よ、素直に降参すれば楽にしてやるぜ」」

 

 静かに告げるベジットに悟空が拳を握って叫んだ。

 

「悪りいが、偽物にやられるわけにゃいかねえ!!」

 

「当たり前だ!! 叩きのめしてやる!!」

 

 隣のベジータも悟空に続いて気合を入れる。

 

 二人は超サイヤ人になってベジットに構えた。

 

 バーダックが静かに悟空に問いかけた。

 

「…おい、カカロット。あのいけ好かねえ舐めた態度の野郎は誰だ? 顔のそっくりなサイヤ王の身内か?」

 

「アレはオラとベジータが合体したベジットってヤツの偽物だ。ヤツはオラとベジータが相手する! 父ちゃん達は巻き込まれる奴が居ねえように皆を守ってくれ!!」

 

 バーダックに言うや否や悟空とベジーターー二人の超サイヤ人が、黒髪の状態のベジットに殴りかかった。

 

 ベジットは、二人から放たれた右ストレートを左右の手でそれぞれ軽く捌いていく。

 

 悟空とベジータの二人がかりの鋭いラッシュを、ベジットは鼻歌混じりに止めているのだ。

 

「「…どうした、悟空? ベジータ?」」

 

 真っ向から戦う二人の超サイヤ人を、片手間に手玉に取るベジットを悟空が睨みつける。

 

 その実力と動きにプレッシャーは、とても偽物とは思えない。

 

「ベジータ! こいつ、もしかして!!」

 

「…まさか、本当に本物と変わらない能力なんじゃないだろうな!!」

 

 左右から右ストレートを放つ悟空とベジータを右手と左手で捌くと、悟空の腹に痛烈な右の前蹴りを決めた。

 

「…ぐあっ!」

 

 後方へ弾き飛ばされた悟空を見ずにベジットはベジータに向き直る。

 

「…チ!」

 

 舌打ちしながらラッシュを繰り出すベジータに対し、ベジットは気楽な様子で左ストレートを掴み止めると左の後ろ上段回し蹴りをカウンターで繰り出す。

 

「ぐお!」

 

 跳ね上げられたベジータの顔に左ストレート。

 

 剥き出しになった腹に右ストレートを入れ、更に顎を後方宙返りしながら蹴り上げる。

 

「ぐあぁあ!」

 

 背中から地べたに叩き落とされるベジータ。

 

 それを空中に制止した状態で見下ろすベジット。

 

「「ふふ。さあて、どうするよ?」」

 

 ベジータに笑いかけながら、ベジットは自分の背後に現れた悟空に視線だけをやる。

 

「…超サイヤ人じゃ、話にならねえみてえだな」

 

 悟空の言葉にベジットは笑って向き直る。

 

「「違うな。貴様らの全てが俺には通じない」」

 

 ベジータが、悟空の横に舞空術で現れる。

 

「…カカロット。貴様、仙豆は持ってきているのか?」

 

「持っちゃいるが、悪りいな。二粒しかねえ…」

 

「あるだけマシだ…!!」

 

 小声で語りかけてきたベジータに悟空も小声で返す。

 

 二人とも静かに見合う。

 

「…ベジータ。奴がベジットなら、オラ達の技は、そのまんま使えちまうんかな?」

 

「どの時代のベジットかにもよるが。少なくとも、悟飯を吸収したブウの時よりは強いな」

 

「…だよな。超サイヤ人ブルーにもなれんのかな?」

 

 二人は静かに、相手の力量を考えている。

 

「「おいおい、作戦を立てるのはいいが。こっちを暇にしてくれるなよ」」

 

 ベジットが揶揄するように悟空とベジータに告げる。

 

「…勝てるとしたら、奴が侮ってる今だな!」

 

「ああ。鬼が出るか、蛇が出るか、か!!」

 

 二人は腰を落とし、構えを取る。

 

 コレにベジットは両腕を組んだまま、アゴで打って来いと挑発した。

 

「…ベジータ!!」

 

「ああ、一気に行くぞ!!」

 

 二人は同時に水銀のオーラを纏い、青い超サイヤ人へと変化した。

 

 ベジットが変身する暇を与える間も無く、一気に叩き潰そうと殴りかかる。

 

「…なんだと!?」

 

 悟空が目を見開いて、正面から繰り出した拳を見据える。

 

 ベジータも、ベジットの背後を取り蹴りを繰り出して目を見張った。

 

「「やれやれ。確かに超サイヤ人ブルーなら、通常の俺じゃ歯が立たないけどよ。オメエ等が一瞬でブルーになれるんだ。オメエ等が合体した俺にできない訳ねえだろ?」」

 

 呆れたようなベジットの表情と声。

 

 目の前には超サイヤ人ブルーとなったベジットが、悟空とベジータの攻撃を受け止めている。

 

「やっぱり、成れんのか!!」

 

「「孫悟空にベジータ。オメエ等、未来の自分から技を貰ったろ?」」

 

 悔しそうな悟空にベジットは淡々と告げる。

 

「「死者の都は、あらゆる可能性が集う場所だってのは、もう理解してんだろ? その証拠に、あらゆる自分から記憶や技を取り出すことができてる。だが、オメエ等にとって都合の良いことばかりじゃねえ。それが、この俺。ベジット・ブルーの顕現だ」」

 

 厳かに告げるベジットに、悟空が告げる。

 

「オメエ、一体何が狙いなんだ!?」

 

「「俺の狙いか? 死者の都の意思の具現だ。この肉体と力で俺は、オメエ等を皆殺しにする。そして、新たな知的生命体の誕生まで死者の都は眠りにつくのさ」」

 

「なんで、そんなヒデエ事をすんだ!? 此処のサイヤ人達は、穏やかで真面目な良い奴等ばかりじゃねえか!!」

 

 悟空の問いかけにベジットは明るい雰囲気ではあるが、冷淡な光を目に宿して応えた。

 

「「孫悟空。その真面目な良い奴等が、星を食うのさ。人間ってのはな、管理されねえと其処にある資源をあるだけ食っちまう大馬鹿野郎なんだよ。そこで、死者の都は自らの惑星を守るために知的生命体の霊魂を溜めておいて、惑星を食らう人間の量がある一定に達した時に、そいつを使って滅ぼすようにしたって訳だ」」

 

「オラ、難しいこたぁ良く分かんねぇけど。なんで事情を説明しねえんだ!? 話せば分かることだってあんだろ!?」

 

「「それは、死者の都が生まれて900年の間に試してるさ。だいたい、一つの文明につき300年の猶予だな。最初の100年はまあ、どの文明も守られている。もっとも、其処から更に100年経てば、平気で人間どもは我が物顔になって、資源を食らい始めるんだけどな」」

 

 ベジットは静かに悟空とベジータ、サイヤ人達を見据えた。

 

「「悟空にベジータ。俺のオリジナル達よ。オメエ等は、疑問に思わねえのか? 人間ってヤツは必ず馬鹿をする。魔人ブウやセルの時を見りゃ、一目瞭然だ。誰よりもオメエ等が理解してんだろ?」」

 

 ベジットの言葉には嘘や偽りはない。

 

 セルやフリーザのように全てを破壊しようとする悪意ではない。

 

 ただ、淡々と自分に与えられた義務を果たそうとするような、そんな言い方だった。

 

「…そうかもな。でもよ、分かり合えるさ! ちゃんと話せば良いヤツなんかいくらでも居るんだ! オラの仲間だってそうだ! クリリンやヤムチャ、天津飯にピッコロ、ベジータもだ!! オメエとだって!! …オラ、オメエやリューベが悪りぃヤツには思えねえ!!」

 

 悟空の言葉にベジットは微かに笑みを浮かべた。

 

 その微笑みは達観した仙人のような。

 

 疲れた老人のような。

 

 そんな笑み。

 

「「孫悟空。人間は、オメエみたいなヤツばかりじゃねえ。オメエは、人が良すぎんだ」」

 

 そして、裏拳を後ろに放つと鈍い音と共にベジータの蹴りが止められていた。

 

「「オメエも、そう思うだろ? ベジータ」」

 

 淡々と片手でベジータの鋭い右の飛び蹴りを止めて告げるベジットをベジータは睨みつける。

 

「…確かにカカロットのヤツは能天気だ! だが、俺は貴様ほど頭は硬くない!!」

 

「「…ふふ。まあ、確かにな。オメエは変わったな、ベジータ。凶暴で残忍で冷酷なサイヤ人そのものだったオメエが、人の心を手に入れるなんてな……!!」」

 

 繰り出した蹴りを引っ込め、拳を握って乱打戦を挑むベジータだが、ベジットは右手を前に出しただけで攻撃を全て捌いている。

 

 ベジータの鋭い拳と蹴りが、見事に右手一つで捌き切られてるのを、バーダックやジュード達は見上げていた。

 

「…なんだと? あの状態のカカロットや王子の攻撃をあんな簡単に捌きやがるのか!?」

 

「…信じられん。これが、プリカの予言にあった世を滅ぼす魔神ーー死者の都の意志が具現化した力なのか!!」

 

 同じ超サイヤ人ブルーだが、あからさまな戦闘力の差がある。

 

 大人と子どものような力の差が。

 

 闘いになっていない。

 

 殴りかかっては、簡単に弾き飛ばされている。

 

 ベジットは右足を一本だけ前に出し、そのまま無造作に右と左に振る。

 

 それだけで、殴りかかって来ていた悟空とベジータがはるか後方に弾き飛ばされてしまう。

 

 その二人にベジットは右手を掲げ、指先に光を溜めるとオーバースローで五指から気弾を五つ放つ。

 

 弾き飛ばされていた悟空とベジータは、気を込めて体勢を安定させるが、目の前に五つの光弾が迫っていた。

 

「しま……っ!?」

 

「ぐう!!」

 

 共に歯を食いしばり、両腕でガードした直後に光弾の直撃を受けて爆発する。

 

 煙を全身から上げながら二人はボロボロになった姿で現れた。

 

「…く、あ…!」

 

「お、の、れ…!」

 

 悟空とベジータは呻き声を上げて、地面に墜落して行った。

 

「「結構、頑張ったが。此処までみたいだな」」

 

 ベジットが静かに両腕を組み、二人の超サイヤ人ブルーの反応を窺う。

 

 すると、二人の超サイヤ人ブルーが地面に付くか付かないかの所でベジットの前後に水銀の気柱が立った。

 

「「……!!」」

 

 ベジットが目を見開く。

 

 悟空とベジータは、ただ力尽きたのではなかったのだ。

 

「かぁ、めぇ、はぁ、めぇ…っ!!」

 

「ファイナルゥゥウウ………っ!!」

 

 同時に悟空とベジータがベジットの高さまで跳び上がり、悟空は右腰に両手をたわめ。

 

 ベジータは両手を広げて左右に光の球を一つずつ作ると中央で一つにして溜める。

 

「…波ぁああああっ!!!」

 

「フラァアアッシュ!!!」

 

 悟空は青白い光線を両手を突き出して放ち、ベジータは金色がかった緑色の光線を繰り出した。

 

 二つの強大な光線はベジットを挟んで爆発、相殺する。

 

 悟空は肩で息をしながら、告げた。

 

「どうだ!?」

 

 煙が晴れた時、ベジットの姿は其処にない。

 

 悟空とベジータが左右を見回して探すと、彼らから少し離れた位置で、ベジットは腕を組んで浮いていた。

 

「…くっ!!」

 

「チッ!!」

 

 忌々しげに吐き捨てる二人に向かってベジットは笑いかけた。

 

「「…悪くないコンビネーションだな。当たれば、この俺に少しはダメージを与えることができたかもしれん。当たれば、な」」

 

 余裕の表情に悟空が歯軋りした。

 

「ちくしょう。抜け目無さ過ぎんぞ、オメエ!!」

 

「…全くだ。余裕かましてやがる癖に、油断はしていやがらねえ!!」

 

 ベジータも頷きながら応える。

 

 今のかめはめ波とファイナルフラッシュの挟み技は、それだけ絶妙なタイミングで繰り出されていた。

 

 ベジットの技をガード越しとはいえ、受けてダメージを負い、崩れ落ちた彼らなりの起死回生の一撃。

 

 ベジット自身が言っているが、当たればダメージを負わせることはできただろう。

 

 当たれば、だが。

 

「「…油断? そんなモンを俺がするわけないだろ。俺はオメエ等の合体なんだぜ、悟空にベジータ? 挑発はしても油断はしねえよ」」

 

 ニヤリとするベジットは、ゆっくりと組んでいた両腕を解き、超スピードで姿を消す。

 

「…がぁ!」

 

 次の瞬間には、悟空の腹にベジットの膝が食い込まれていた。

 

「カカロット!!」

 

 ベジータが悟空の援護に来ようとして、その背後に回られる。

 

「…しま!!」

 

 鈍い音と共に二人は闘技場に叩きつけられた。

 

 巨大な土柱を上げ、クレーターの中心でうつ伏せに倒れている。

 

「「…さて、いよいよ終めぇかな? 俺のオリジナルのオメエ等をこの場で倒せば、今の惑星サイヤに俺を止められる敵は居なくなるからな」」

 

 ベジットの呟きに反応するように。

 

 ゆっくりと悟空が立ち上がって見上げてきた。

 

 水銀の髪は元の漆黒になり、体中が傷だらけになりながらも目の輝きだけは変わらない。

 

「…こりゃ、反則みてえな強さだ。敵に回すと、ベジットの恐ろしさがよく分かるぜ!!」

 

「「…まだやり合える気力があんのは、大したもんだが。オメエだけじゃ俺には勝てねえぞ?」」

 

「…かもな。だけどよ。勝負は最後までやってみなけりゃ、分かんねぇ!!!」

 

 瞬間、悟空は腰だめに気を高めて黄金の気を纏った。

 

「こっから先は、オメエも知らねえ領域のはずだ! ベジット!!」

 

 天に向けて逆立つ黄金の髪、翡翠に黒の瞳孔が現れた鋭い目。

 

「「…これは。超サイヤ人? いや、何かが違う…!! 新しい超サイヤ人か?」」

 

 ベジットの問いかけに悟空は、冷徹な表情と低い声で告げた。

 

「…ああ。これが、俺のとっておき。“真・超サイヤ人”だ」

 

「「…気が無限に上昇している。コレは…!!」」

 

 ベジット・ブルーをして目を見開くほどの気の上昇。

 

「「…なるほど。確かにスゲエ変身だ。相手の強さに合わせて一気に戦闘力が高まるのか。だが、その力は時間制限があるんだろ?」」

 

 余裕の笑みを浮かべる水銀の気を纏うベジットに対し、黄金の気を纏う悟空も笑う。

 

「そうさ。変身していられる時間内にオメエに追いつくことができなけりゃ、問答無用で俺の負けだ」

 

「「…分の悪い賭けだな?」」

 

「…かもな?」

 

 構えを取る悟空に、ベジットも斜に構えた。

 

「…行くぜ!!」

 

 悟空が一気に左手を掲げて突っ込む。

 

 それをベジットが左腕で受け止める。

 

 一瞬睨み合う両者。

 

 瞬間、嵐のような打撃の応酬が始まった。

 

 これを地上で見るのは、もはや神次元のバトルに悟空達が突入したことで置いていかれているサイヤ人の戦士達だ。

 

「…か、カカロットの野郎! どんどん戦闘力が上がってやがる! まるっきり桁違いだ!!」

 

「“真・超サイヤ人”…か。ターニッブやリューベと同様に、カカロットもあの力を使いこなしているのか。だがそれでも、あのベジットとかいう化け物を超えるのは……!!」

 

 バーダックの興奮した言葉を受け、冷静にブロリーが瞳を鋭く細めて孫悟空を見る。

 

 ベジットが攻撃を捌いて返しながら告げる。

 

「「超サイヤ人ブルーよりは、マシな動きだ。だが、この程度の上昇では俺に追いつく頃には日が暮れちまうぜ!!」」

 

 強烈な右ストレートに、悟空の顔が後方へ弾き飛ぶ。

 

 だが、仰け反った悟空の気が更に膨れ上がり、体勢を戻して睨みつけて来た。

 

「「…コレは!?」」

 

「…はぁあああ!!」

 

 悟空が一気にベジットの前に攻め込む。

 

 その勇敢な目に向けてベジットは余裕の笑みを向ける。

 

「「…面白れえぞ、孫悟空。その超サイヤ人なら、オメエだけで俺に追いつけるってのか!?」」

 

「…真・超サイヤ人の俺に、できねえ事なんか何にもねぇんだ!!」

 

 ぶつかり合う両者。

 

 空や陸を駆け回る水銀と黄金の光。

 

 圧倒的な差がある両者だが、その差を埋めようと悟空の気が倍に膨れ上がっていく。

 

((…こいつ。限界がないのか!?))

 

 ベジットが目を見開きながら、真・超サイヤ人と化した悟空を見据える。

 

 徐々に打ち合いの時間が長引いていく。

 

 ベジットをして、余裕がなくなりつつある。

 

 打ち合いが長引いていく。

 

 スピードが、パワーが、ベジットに追いついていく。

 

「…なんて、奴だ! カカロットの奴、あの化け物を上回ろうとしてやがる!!」

 

「ああ、確かにカカロットは化け物に追いついていっている。だが、このまま追いつけるかは別の話だ」

 

 ターレスの言葉にブロリーが告げた。

 

 打撃の応酬の末、ついにベジットの顔面に悟空の右ストレートが決まった。

 

 ベジットが後方に仰け反る。

 

「「…ふふ、やるじゃねえか。流石は、俺の半身だ」」

 

「…悪りいが、今の俺に遊んでる暇はねぇんでな。早いとこ、カタをつけさせてもらうぜ!!」

 

 ベジットの存在そのものを超えようと、悟空の気が更に膨れ上がった。

 

 真・超サイヤ人の力は、はたして究極と言われる合体サイヤ人にどこまで通用するのか?

 

 己の限界を超えて、孫悟空は挑む覚悟を決めた。

 




次回もお楽しみに( *´艸`)


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究極の絶望 真・超ベジット

惑星の意思が存在するという世界が生み出したのは、究極の合体戦士ベジット。

それに対抗するため、孫悟空は己の限界ーー真・超サイヤ人へと変身した。


 

 特殊な力場を使った頑健な闘技場。

 

 超サイヤ人ブルーのベジットが静かに真・超サイヤ人となった孫悟空を見据えている。

 

「…時間がねぇんだ。悪りぃが、睨めっこしてる暇は俺には無え。一気に行くぞ!!」

 

「「…来てみろ!!」」

 

 ベジットが手招きながら、悟空を呼ぶ。

 

 未だにベジットの方が動きもパワーも上。

 

 だが真・超サイヤ人となった悟空には、その差を埋めんとする圧倒的な勢いがある。

 

 右ストレートを左に避けて、一気に懐に飛び込む悟空。

 

 しかし踏み込んだ瞬間に、ベジットが高速移動で姿を消し、悟空の左にやや距離を置いて現れて指先五本に光を宿す。

 

「「…そら!!」」

 

 先は超サイヤ人ブルーでも防ぎ切れない一撃だったが。

 

 五つの気弾を縫うようにジグザグに移動しながら、捌いて踏み込んでくる。

 

「「ヒュー! いい動きだな!!」」

 

 正面に現れた悟空の右ストレートに右拳を合わせて受ける。

 

 二人の拳は、見事に中央で相殺した。

 

「「どうやら、戦闘力は追いついたみたいだな?」」

 

 不敵な笑みで告げるベジット。

 

 悟空は冷徹な瞳を向けて、冷ややかに告げる。

 

「ああ。気の量とスピード、パワー。今の俺はオメエに勝るとも劣らねえ。…だが!!」

 

「「時間が気になる、か? まあ、そうだろうな。だがよ、それとは別の重大な問題があることにも気づいているかな?」」

 

「…なんだと?」

 

 分からないなら教えてやる、とばかりに打撃を繰り出してくるベジット。

 

 対する悟空も殴り返す。

 

 互いに鋭い拳と蹴りの応酬。

 

 地響きがなる中、悟空の顎が跳ね上げられた。

 

「…ぐあ、なんだと!?」

 

「「…ふふ。どうした、孫悟空?」」

 

 同じレベル、同じスピードで動いている。

 

 首が弾かれるのも、ほとんど同じだ。

 

 だが、徐々に。

 

 そして確実に悟空が劣勢になっていく。

 

「…どうなってる!? 悟空の方がスピードを上げて動いてるじゃないか!! なんで打ち負ける!?」

 

「単純だ。ベジットって野郎はカカロットでもあるからさ」

 

 見上げているガーキンの言葉に、バーダックが応えた。

 

 これにブロリーが問いかける。

 

「…どういう意味だ、バーダック?」

 

「どうもこうもねえ。奴はカカロット達が合体した姿なんだろ? なら、カカロットがどんな動きをするのか。ベジットなら手に取るように分かるだろうってだけさ」

 

「…奴はカカロットであり、ベジータでもある、か」

 

 バーダックとブロリーの言葉どおりだった。

 

 読まれている。

 

 真・超サイヤ人となった孫悟空の動きや思考の全てを。

 

 確かに悟空は、圧倒的な差があったベジットのスピードやパワーに追いついた。

 

 いい勝負になっている。

 

 それでも。

 

 いや、だからこそ歴然たる差が悟空とベジットにはあるのだ。

 

「「…負けん気が強いな? オメエじゃ勝てねえのは、バーダックの説明で分かったろ?」」

 

「…生憎と、俺は諦めが良くなくてな。ターニッブやガーキン。この惑星に住む全てのサイヤ人達の命がかかってんだ。そう簡単に投げれねえさ」

 

 劣勢に立たされていても、冷徹なポーカーフェイスは変わらない。

 

 コレも真・超サイヤ人の利点の一つだ。

 

 しかし、ベジットには焦りがハッキリと見えている。

 

「「どうした? 攻め急いでいるな。…闘いを楽しむ余裕がねえぞ、孫悟空」」

 

「…黙れえ!!!」

 

 一気に勇猛果敢に攻め込む悟空。

 

 悟空の纏う黄金の気が、更に倍に膨れ上がった。

 

((…更に倍、か))

 

 ベジットが瞳を鋭く細め、動きを見る。

 

 攻撃をブロックする腕が壊れてもおかしくはない威力。

 

((…この俺の動きを一回り上回るか!?))

 

 ベジットの口元には、それを理解した上で笑みが生まれている。

 

 超サイヤ人ブルーとなった自分がダメージを負う。

 

 そんなスリルがある。

 

 正にコンマ数秒が命取りだ。

 

 そんな悟空とベジットの対決の中、ブロリーがクレーターに倒れ伏したサイヤ人に近寄った。

 

「…おい、ベジータ王子」

 

 静かに倒れ伏したままのサイヤ人ーーベジータに声をかける。

 

「…いつまでカカロット一人に任せるつもりだ?」

 

 その言葉にベジータは目だけを開けてブロリーを見る。

 

「…やはり狙いは、ベジットの」

 

 ブロリーが淡々とした口調で告げ、空を見上げた。

 

 悟空と一騎打ちを繰り広げるベジットを、睨みつける。

 

「…だりゃあ!!」

 

「「うぉりゃあ!!」」

 

 悟空とベジットの何度目になるか分からない右ストレートのぶつかり合い。

 

 ついにベジットが、後方へ吹っ飛んだ。

 

「カカロットの奴め、やりやがったぞ!!」

 

「…いけえ、悟空ぅううう!!」

 

 ターレスが目を見開いて拳を握り、ガーキンが叫ぶ。

 

 その興奮した叫び声が途切れた時、悟空は全身におびただしい汗をかき、黄金のオーラが解除された。

 

「…ぐっ、くく! じ、時間切れ…みてえだな」

 

 肩で息をしながら、何とか超サイヤ人の状態を保つ。

 

 通常のサイヤ人に戻れば、かすり傷でも致命傷を負わされかねない。

 

 舞空術で姿勢を制御して、構えを取ると。

 

 ベジットがパチパチッと拍手を送ってきた。

 

「「スゲエよ、流石は孫悟空だ。だが、残念だったな」」

 

 ベジットはニヤリと笑うと拳を腰に置いて、水銀のオーラを纏った。

 

「「参考までに教えてやる。…こいつが、このベジット・ブルーのフルパワーだ!!」」

 

 一気に気を高めるベジットにバーダックが目を見開く。

 

「…あの野郎。今まで、手ェ抜いてやがったのか!!」

 

「悟空の真・超サイヤ人はターニッブやリューベのモノと同じ。相手のレベルに合わせて無限に強くなる。ベジットとやらはそれを見抜き、圧倒的な力の差を利用して己の全力を隠したまま、悟空に力を使い切らせた…!!」

 

 ジュードの言葉どおり、悟空はまんまと時間切れまで真・超サイヤ人を使い切らされた。

 

 圧倒的な力を誇るベジットの技を受けるには、相手が全力かどうかなど、測っている余裕がない。

 

「「さて、孫悟空。超サイヤ人ブルーにもなれない、今のオメエに。はたしてブルーになった俺が倒せるかな?」」

 

 不敵な笑みを浮かべるベジットに悟空は、構えを取りながら告げた。

 

「確かにな。今のオラじゃ、どう足掻いてもオメエは倒せねえ。けどよ!!」

 

 悟空が額に指を当て、瞬間移動を行う。

 

 これにベジットが目を左に向けると、其処には。

 

「カカロットや俺が、考えなしに貴様に挑んだと思っていたのか? 俺たちは戦闘民族だ。戦いに関して遅れを取ることなどない! たとえ相手が、俺たちが合体した貴様であってもだ!!」

 

 黄金のオーラを纏い、天に向かって靡く黄金の髪、翡翠に黒の瞳孔が現れた目。

 

 真・超サイヤ人となったベジータが居た。

 

「「なるほど、オメエも成れたのか。そいつは驚いたぜ」」

 

 ベジットは不敵な笑みを絶やさずにいきなり、その場から消える。

 

 現れたのはベジータの正面。

 

「「だが、その変身の特性は理解した。要はパワーアップする前に叩き潰せばいいんだろ?」」

 

 まともに鳩尾を貫く一撃に、ベジータの口が開かれる。

 

 前のめりになったベジータの背後に周り、ベジットは強烈な右回し蹴りを後頭部に入れて地面に叩き落とした。

 

「「フン、流石の真・超サイヤ人も。パワーアップする前に倒されては終いだな」」

 

 笑うベジットの足元には巨大な土煙が立ち上っている。

 

「…そうやって、自分の力に酔うのはいいが。相手の力量を図れなければ滑稽なだけだぞ」

 

 背後から聞こえる声にベジットは、ニヤリと笑う。

 

 目だけを背後の気配に向けて話す。

 

「「本物だな、真・超サイヤ人ーー。千年に一度現れる超サイヤ人の伝説に最も相応しい。その変身をしておけば、どんな奴を相手にしても負けるはずがないからな」」

 

 口元の笑みに似合わぬ真剣なベジットの瞳に、ベジータは冷徹な目を向けた。

 

「…戦いの中で、俺たちサイヤ人は強くなっていく。今は貴様と戦うのに真・超サイヤ人の力に頼らねばならんが、いずれは俺もカカロットも、そしてターニッブも! この力に頼らずに全てを超えてやる!!!」

 

 口調は低く冷めたような声でありながら、ベジータの心は何よりも熱く燃えている。

 

「「…それでこそ、誇り高き戦闘民族サイヤ人! それでこそ、我が半身・サイヤ人の王子ベジータだ!!」」

 

 その熱を帯びた声にベジットの目にも、似た炎が宿っていた。

 

 黄金のオーラを纏い、ベジータが突っ込む。

 

 対する水銀のオーラを纏うベジットは、斜に構えて受けて立った。

 

 

 一方で、悟空はブロリーやバーダックのいる観客席に降りてきた。

 

 着地すると同時に超サイヤ人を解除し、脱力感から倒れそうになる。

 

「…へへっ、疲れた…ぜ」

 

 そんな彼をブロリーが支えた。

 

「…大丈夫か?」

 

「あ…ああ、アイツ。やっぱり、とんでもねえや!」

 

 ブロリーに脇を支えられ、肩で息をする悟空をバーダックが後ろから現れて肩を貸す。

 

「すまねえ、ブロリー。父ちゃんも」

 

「…最高に燃える勝負だったぜ、カカロットよぉ」

 

「へへっ、あんがとな。負けちまったけどな」

 

 悔しそうな悟空を見て、バーダックは微かに笑うと怒りのこもった目でベジットを見上げた。

 

 隣のブロリーも真剣な表情でベジータの闘いを見つめている。

 

ーーーーーー

 

 ベジータとベジットの闘いも、やはり真・超サイヤ人がベジットの力に引き上げられてからが、勝負だった。

 

 ただし同じ域に達しても、ベジットにはベジータの動きや思考が読める。

 

 この為、ベジータは体力の消費を覚悟で気を倍にしていかなければならない。

 

 拳と蹴りを何度か応酬し、劣勢になるとベジータは反転し、後方に加速して一気に距離を置く。

 

 コレにベジットも高速で追尾していく。

 

「…ベジータの野郎、真・超サイヤ人の力を使わされてるな。さっきのカカロットの二の舞じゃねえのか?」

 

 ターレスが不機嫌そうに吐き捨てるとガーキンも頷く。

 

「…力に差があり過ぎて、決定打を与えるレベルまで真・超サイヤ人の力が高まらないと勝負にすらならねえ」

 

 悟空も頷いた。

 

「…そうだ。できる限り体力を温存して闘いたいけど、そんな余裕をベジットの奴は与えてくれねえ。むしろ、力を使い切るくれえ、目一杯で挑まねえとあっと言う間にやられちまう。だからって電池切れにされちまっちゃ、真・超サイヤ人になっていられねえ」

 

 ベジットの攻めは、それぐらい情け容赦がない。

 

 遊んでいるように見えて、的確で手堅い攻めだ。

 

 バーダックが睨みつけるようにベジットを見据える。

 

「…気に食わねえ野郎だ。あの舐めた態度は全て、こっちを油断させる演技かよ」

 

 先程の悟空との闘いとは違い、ベジータはベジットと一定の距離を置いてエネルギー弾の撃ち合いをしている。

 

 超高速で移動しながら、無数の光弾が空に放たれる。

 

「…はぁっ!!」

 

「「それ!!」」

 

 片手で宙返りしながら、曲芸師のように放たれる光弾。

 

 その場でボーッと立っていれば、間違いなく蜂の巣になるであろう撃ち合いを見て、ブロリーが呟く。

 

「…威力とスピード、数が互角の気弾の撃ち合いならば、後はセンスがモノを言う」

 

「ブロリー、オメエから見て。ベジータはまだ余裕がありそうか?」

 

 思わずブロリーが悟空を見ると、すでに半分意識がなくなりかけている。

 

「…おい、カカロット!!」

 

「どうした、カカロット!!」

 

 血相を変えるブロリーとバーダックに悟空は弱り切った笑みを浮かべた。

 

「ど、どうやら。力を使い切っちまって…。ね、眠気が」

 

 その言葉にブロリーが「ふう」とため息をつき、バーダックが悟空の頭をクシャクシャとかき混ぜた。

 

「さっさと寝てろ! クソガキ!!」

 

「…そ、そうは行かねえんだ。ベジータのヤツがベジットを倒せる可能性は、ハッキリ言ってねえ。あいつも、それを分かって闘ってんだ」

 

 バーダックが静かに空を見上げながら、告げる。

 

「…テメエが、意識を失わねえようにしてるのも。ベジータ王子が勝ち目のない気弾の撃ち合いをしてるのも。必要なことなんだな?」

 

「…あ、ああ。そろそろベジータが、仕掛けるはずだ」

 

 悟空の言葉どおり、ベジータがエネルギー弾の一つに強烈な気を圧縮させ始めた。

 

「ビッグバン・アタァアアック!!」

 

 叫ぶのと同時に右手から青い気弾がベジットに向けて放たれる。

 

「「大したスピードと破壊力の気弾だ」」

 

 ベジットは左手を突き出し、気弾を止めると爆発させた。

 

「「俺以外になら、通じただろうが、な!」」

 

 爆発をブラインドに、ベジータが懐に入り込んだ。

 

 ベジットも拳を握って返す。

 

 三度巻き起こる乱打戦と土煙。

 

 地鳴りが鳴り響く中、ベジットの右ストレートをかいくぐり、ベジータが背後を取るとその後頭部に右の飛び横蹴りを見舞った。

 

「死ねぃ…!!」

 

 蹴り飛ばされたベジットは、闘技場の壁にぶち当たる。

 

 瓦礫が砕けて落ちる中、吹き飛ばされたスピードの倍の加速をしてベジータの前に現れる。

 

「…舐めるなよ!!」

 

「「お互い様だ、ベジータ」」

 

 またしても、乱打戦。

 

 ベジータの右フックが、ベジットの上半身を揺らせば。

 

 返しのベジットの左ボディが、ベジータの脇腹に炸裂する。

 

「がはぁ!」

 

 くの字になって呻くベジータの顔に右の回し蹴りが決まり、背中からはるか後方の地面に叩きつけられる。

 

「「こいつで決まりだ」」

 

 ベジットは両手を左右に大きく広げてから、前方で左右に開いた掌を突き出し構える。

 

 その手には金色の光が纏わりついている。

 

 更にそれを右腰に両手を置いてたわめ、掌の中に青い光弾を作り出す。

 

「「覚悟しな! ファイナルかめはめ波ぁあああ!!」」

 

 前方に上下に合わせて突き出された掌から、黄金の光を螺旋状に纏った、強烈な青い光線が放たれた。

 

 立ち上がり始めていたベジータに防ぐ手段はない。

 

 光の中に、黄金の超サイヤ人は飲み込まれていった。

 

「…! ベジータぁああ!!」

 

 悟空とガーキン、ジュードの叫び声が聞こえる中、ベジータの姿は完全に消え、強大な爆発と共に爆煙が立ち上る。

 

「「…確かに。ファイナルかめはめ波は、この俺の最高の技だがよ。その真・超サイヤ人ってのに変身してたら効かないんだろ?」」

 

 技を放った姿勢のまま、ベジットが告げると煙の向こうから緑がかった青い光線が放たれた。

 

「…ファイナル・シャインアタァアアック!!!」

 

 土煙が一気に払われ、目の前にベジータが現れる。

 

 彼がファイナルフラッシュの構えから放った緑がかった青い光線は、ベジットの想像を遥かに超える威力だった。

 

 咄嗟に両手で光線を受け止める。

 

「「なんだ、コレは!? ファイナルフラッシュの倍? いやーー!!」」

 

 ベジータの使う技の中で、此れ程までにとんでもない威力とスピードを兼ね備えた技はない。

 

 あのファイナルフラッシュの10倍に匹敵する威力だ。

 

「…貴様が言ってたんだ。死者の都はあらゆる可能性を備えている、と。未来の俺の技だが、貴様のような存在を捻り潰すには、もってこいだったな」

 

「「…貴様…!! ベジータぁああ!!」」

 

「…じゃあな、偽物野郎!!」

 

 更に気を高め、ベジータの光線は堪えていたベジットをそのまま、飲み込んで爆発した。

 

「「ぐぉおおお!! こんな、バカなぁああ!!」」

 

 断末魔のような悲鳴と共に光が爆発する。

 

 ベジータは鋭い目をそのまま爆心地へと向けている。

 

「…下手くそな芝居だな。ベジット」

 

 語りかけると同時に煙が払われ、中から水銀のオーラを纏ってベジットが出てきた。

 

「「半分は賞賛を込めてだ、ベジータ。まさか、オメエに瞬間移動を使わされる日が来るとは思ってなかったぜ」」

 

 ベジットをして初めての逃げの経験だった。

 

 あのまま、喰らっていれば大ダメージは免れなかっただろう。

 

 だからこそ、ベジットは瞬間移動で咄嗟に体を躱し、ベジータの技をやり過ごしたのだ。

 

「……思ったより、ファイナルシャインアタックの消費が激しい、か」

 

 肩で息をしながら、ベジータの全身に汗が噴き出ている。

 

 間も無く真・超サイヤ人が切れるのだろう。

 

 自分の状況に舌打ちしながら、ベジータは目の前のベジットを見据える。

 

 ベジットは掛け値なしにベジータを賞賛していた。

 

「「…大したもんだ。実際、オメエも悟空も、俺を此処まで楽しませてくれるとは思ってなかった。返礼と言っちゃなんだが、見せてやる」」

 

 その言葉にベジータが、吐き捨てる。

 

 悟空も目を見開いた。

 

「…思ってたとおり。俺たちで、真・超サイヤ人のデータを取ってやがったな」

 

「考えることは同じみてえだな。やっぱ性格悪りぃぞ〜、ベジット!」

 

 こうして欲しくない。

 

 こうだったら、嫌だな。

 

 悟空とベジータは、ウンザリとした表情で黄金のオーラを纏ったベジットを見据える。

 

 その瞳には翡翠に黒の瞳孔が現れ、天に向かって黄金の髪が靡いている。

 

 ベジットは、真・超サイヤ人となったのだ。

 

「「まあ、そう言うなよ。俺はオメエ等の合体なんだからよ。このぐらいはするぜ」」

 

 淡々と、冷静に告げるベジット。

 

 悟空に肩を貸したままバーダックが吐き捨てる。

 

「カカロットにも王子にも、似てねえよ! テメエには可愛げが全くねえ」

 

「「まあ、それはそれだ」」

 

 肩をすくめるベジットを尻目に悟空が小声でバーダックに告げた。

 

「…父ちゃん。オラの道着の帯にさ、豆が二粒入ってんだけど。ちょっと取ってくんねえか?」

 

 バーダックは、悟空の背中の方の帯に手を入れ、二粒の豆を取り出した。

 

「…こいつか?」

 

「そ。それ、食わしてくれ」

 

 バーダックは訝しがりながらも、悟空に豆を一つ食わせる。

 

 すると悟空の弱々しかった表情が一気に活力が漲り、バーダックの肩を借りなければ立てなかった先までと違って自分から肩を借りるのをやめ、立つ。

 

「よっしゃあ! 流石に仙豆は効くぜ!!」

 

 言いながら、呆然としているバーダックからもう一つ仙豆をもらうと、ベジータに向かって叫んだ。

 

「ベジータ、仙豆だ!!」

 

 投げ渡された豆を見事に掴み、口に運ぶ。

 

 浮かんでいた汗が消え、再び肉体に活力が漲る。

 

「「…仙豆か、便利なもんだな。さて、悟空にベジータ。体力も回復したことだし、真・超サイヤ人でケリをつけようぜ?」」

 

 笑いながら告げるベジットに、悟空も黄金の髪に翡翠と黒の瞳孔の目を持つ真・超サイヤ人へと変化する。

 

「…待たせたな、ベジータ。こっからは、俺もやらせてもらうぜ」

 

 低く冷徹に声音で告げる悟空をベジータが横目に見た後、告げた。

 

「カカロット、貴様も分かってるんだろ?」

 

「…ああ。このままじゃ俺たちは、どう足掻いても勝てねえな」

 

 淡々とした声で告げる悟空をベジータは見据える。

 

「…だが、俺は負ける訳には行かねえ。俺たちがやらなきゃ、この星のみんなを守れねえ…!!」

 

 そう告げた悟空に、ベジータは微かに優しげな笑みを浮かべた後、告げた。

 

「真・超サイヤ人になったベジットは、まさにデタラメな力だ。そいつに対抗するには、未知の力しかない」

 

「…ああ。問題は、その未知の力をどうやって引っ張り出すか、だな」

 

 ベジットに構えながら、悟空は淡々と低い声で告げる。

 

 これにベジータは、静かに言った。

 

「…カカロット、フュージョンするぞ」

 

「…え!?」

 

 思わず悟空が目を見張ってベジータを振り返ると、真っ直ぐにこちらを見てベジータは告げた。

 

「…フュージョンしてやるって言ってるんだ! さっさと準備しやがれ!!」

 

 ベジータの言葉を今一度、頭の中で反芻させ、悟空は不敵にしてクールな笑みを浮かべた。

 




次回、奇跡の融合 対 究極の合体

ご期待ください(´・∀・`)



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奇跡の融合 最強の戦士 その名はゴジータ

 真・超サイヤ人となったベジットを相手に、悟空とベジータはついにフュージョンを行うことを決意する。





 サイヤの巫女・プリカは焦っていた。

 

 自分の予知夢では起きなかったことが起き始めている。

 

「…何故? わたくしの予知夢では、こんな強力な存在が生まれるなんて」

 

 祭壇に祈りを捧げるのも忘れ、今見た恐ろしいものを思い返す。

 

 自分の兄・ジュードに瓜二つの超サイヤ人を。

 

「…宮殿に向かえ」

 

 そんなプリカに、低く渋い声が届いた。

 

 顔をそちらに向ければ、死者の都に居るはずの超サイヤ人・リューベが立っていた。

 

「…超、サイヤ人…!! わたくしを、殺しに来たのですか?」

 

 父を容赦なく葬り去った男。

 

 予知夢では、この男が力に飲み込まれて暴走するはずだった。

 

 それを止める為に死者の都に、強大な悪霊を招く。

 

 その為に孫悟空を迎えたのに。

 

 都の意思は天敵である超サイヤ人をも具現化させて下僕にしている。

 

「…わたくしの読みが甘かったというの? 悟空さんの倒した敵達が、貴方を抑えていれば。互いに闘っていてくれれば、惑星サイヤは。ターニッブは…!!」

 

 自分の読みは最悪の展開で外れた。

 

 それを認識して、プリカは絶望している。

 

「…わたくしの力では。貴方を止めるには、コレしかなかったのに。悟空さんとベジータさんの可能性から、こんなモノが出てくるなんて…!!」

 

 呆然と呟くプリカにリューベは告げた。

 

「…巫女よ。うぬには死者の都の意思を閉じてもらう」

 

「……え?」

 

 呆然とするプリカにリューベは告げる。

 

「…今のベジットという超サイヤ人を止めるには、惑星ベジータより招いたサイヤ人二人が必要。しかし、あやつらでは止めることは出来ても勝てぬ。うぬが意思を封じよ」

 

 リューベの言葉にプリカは目を見開く。

 

「…あの二人は、あんなモノを止められると言うの!?」

 

「………己が目で見よ」

 

 それだけを告げ、リューベは巫女に背を向ける。

 

 その背にプリカは何かを告げようと口を開きかけて、呆然とした。

 

 彼女の目には、白い道着を着た孫悟空と同じタイプの顔のサイヤ人ーーターニッブが見えていたからだ。

 

「……来たか」

 

 黒と白の道着の二人が真正面から見合う。

 

 リューベは翡翠に黒の瞳孔が浮かんだ目を、ターニッブは漆黒の目を互いに向ける。

 

「…リューベ。真なる超サイヤ人よ」

 

「……今は良い。巫女を連れて征け!!」

 

 その言葉にターニッブは微かに頭を下げると、リューベの横を通ってプリカの前に行く。

 

 リューベはターニッブとすれ違い様に、片足の爪先立ちになって影を残しながら移動して行った。

 

「…プリカ様! ご無沙汰しております!」

 

「ター、ニッブ? 貴方、どうして?」

 

 呆然と呟くプリカに、ターニッブは微かに笑うと拳を作って告げた。

 

「…拳が選んだからです」

 

ーーーーーー

 

 ベジットと神次元のバトルを繰り広げていた悟空とベジータ。

 

 黄金の気を纏い、天に向けて靡く黄金の髪。

 

 翡翠に黒の瞳孔の目。

 

 三人は全く同じ超サイヤ人に変身していた。

 

「…バーダックにブロリー。俺には分からんから、聞くのだが。悟空とベジータの言っていたフュージョンとはなんだ?」

 

 サイヤ王・ジュードの問いにバーダックが肩を竦めてみせる。

 

「…さあな? だが、カカロットとベジータ王子の顔からするに、とっておきの技なんじゃねえか?」

 

「…フュージョン。融合、か。オヤジから聞いたことがある。メタモル星人が得意とする技だ」

 

 ブロリーの言葉にターレスが反応した。

 

「…なんだと、融合? 合体だの何だのと、奴らはどんな闘いを重ねて来たというんだ?」

 

 想像できないと言いたげなターレスに、惑星サイヤ・惑星ベジータの出身問わず、サイヤ人達は頷いた。

 

 睨み合う三人の真・超サイヤ人。

 

 内、一人は余裕の笑みを浮かべて告げた。

 

「「なるほどな。合体した俺に勝つには、オメエ等も融合するしかないか。発想は良いがよ、俺がオメエ等のフュージョンを黙って見ていると思うのか? 無駄な抵抗はやめて、大人しく楽になれよ」」

 

 笑いながら告げるベジットだが、目は笑ってなどない。

 

 それに悟空は構えを取りながら告げた。

 

「…まあ、そうだな。だがよ、だからって諦める訳には行かねえんだ!!」

 

「ベジット、貴様は勘違いしてないか? 俺たちは貴様に勝つまで死ねないんだよ!!」

 

 ベジータが首を鳴らしながら、構える。

 

「フュージョンできなきゃ貴様を倒せないなら、フュージョンしてやろうじゃねえか!!」

 

「…ははっ、言ってくれんじゃねえか! 最高だぜ、ベジータ…!!」

 

 腰を落としながら、悟空は不敵に笑った。

 

 二人とも、同時にベジットに仕掛ける。

 

「「…さあて。この力がどんなもんか。試すとするか」」

 

 悟空とベジットが右ストレートをぶつけ合う。

 

 火花が散り、衝撃波が吹き荒れる。

 

 其処へベジータがすかさず、左から打ち込む。

 

 ベジットは上体を後方へ反らし顎先で躱しながら、悟空の膝蹴りに膝蹴りをぶつけて止める。

 

 火花が散る中、乱打戦を始める三者。

 

 互いに拳と蹴りを防ぎあいながら放っている。

 

「…しまっ!?」

 

 悟空の顎をかち上げ、仰け反ったのを確認して攻め込もうとするベジット。

 

「させるかあ!!」

 

 しかし、ベジータが見事に脇から交代し拳と蹴りで弾幕を張る。

 

 絶えず移動しながらの肉弾戦。

 

 つい10秒前とは次元の違う動きをしながら、三人の超サイヤ人は戦闘力を上昇させていく。

 

「…ぐあ!」

 

 だが、徐々に明確に悟空とベジータが押され始める。

 

 まるで詰み将棋のように悟空達の攻撃が要所要所でカウンターを取られ始めたのだ。

 

「…動きを読まれ始めたか」

 

「それだけじゃねえ。ベジットって野郎の気の上がり方が、尋常じゃない!!」

 

 ブロリーに応えながら、ガーキンが目を見開く。

 

 悟空とベジータも気が上昇して行っているが、ベジットのソレはスピードが違う。

 

 悟空達の二分の一の時間でレベルが上がっている。

 

「「…なるほど。合体した俺はオメエ等の半分の時間でレベルが上がるみたいだな」」

 

 ラッシュを繰り出しあいながら、気が無限に上昇する悟空とベジータの両方を片手で捌き始めた。

 

 真正面から足を止めての二対一の打撃戦。

 

「うぁ!?」

 

「…ぐ!?」

 

 後方へ弾き飛ばされる

 

 それに見事打ち勝ったのは、ベジットだった。

 

「…この野郎…! だったら!!」

 

「調子に乗るなよ、くそったれ!!」

 

 悟空とベジータは同時に気を高めながら、技の構えに入る。

 

「かぁ〜、めぇ〜、はぁ〜、めぇ〜!!」

 

 悟空は赤い光の球を両手で腰だめにたわめる。

 

「ファイナル・シャインーーッ!!」

 

 ベジータは両手を左右に広げた後、前方に突き出す。

 

 これにベジットは目を見開き笑う。

 

「「面白れぇ!! ならば俺もファイナルかめはめ波を使うとするか!!!」」

 

 ベジットは、ファイナルフラッシュの左右に両手を広げてから前方に突き出すフォームを取ってから、腰だめに両手をたわめる。

 

 同時に悟空とベジータが己の極限の気を放った。

 

「10倍かめはめ波だぁああああああ!!」

 

「アタァアアアアアアックッッ!!!」

 

 孫悟空の真紅の光とベジータの青緑の光が、ベジットという魔神に向けて放たれる。

 

 口元に不吉な笑みを浮かべてベジットは呟く。

 

「「100倍ーー」」

 

 その不吉な言葉に悟空とベジータが目を見開く。

 

 そのまま、黄金の光を纏った青白い光線が前方に向けて放たれた。

 

「「ファイナルかめはめ波ぁあああああああっ!!!」」

 

 その大きさは、悟空とベジータの放った光の軽く倍はある。

 

 中央でぶつかり合う三者の光。

 

「ぐぅ! なんてぇパワーだ!! 俺達の、最高の技が……!!」

 

「お、おのれ……!! 俺達二人の力が、通じないだと……!!」

 

 ベジットの放った光は、二本の光線を軽く押し返していく。

 

 これを見ていたバーダックが思わず叫んだ。

 

「もういい!! カカロット、逃げろぉおおおおお!!!」

 

 その言葉に悟空は首を横に振った。

 

「だ、ダメだぁあああ!! 俺達が、俺達がやらなきゃなんねえんだ!! 俺達が、コイツを倒さなきゃ……!! だから、頼む!! 真・超サイヤ人よ!! 俺にパワーを、くれぇえええええええっ!!!!」

 

「認めん!! 認めんぞ……!! 俺達二人が組んで、負けるなど認めてたまるか……!!!! 俺達が、偽者などに負けてたまるかぁああああああああッ!!!!!」

 

 ベジータが誇りを懸ける。

 

 悟空が意地を通す。

 

 その意志に応えるように、真紅と青緑の光が勢いを増す。

 

 しかし、それ以上のパワーでベジットの放った光は力を増していく。

 

「「さあ、終わりにしようぜ……!! 孫悟空にベジータよぉ!!!!」」

 

 その時だった。

 

 黄金の気柱が悟空達とは別の所で立ち上がる。

 

 ガーキン達がそちらを向けば、サイヤの巫女・プリカを傍らに白い道着に黒帯を絞めた真・超サイヤ人が立っている。

 

「!! ターニッブ!!!」

 

 ガーキンの声が響く中、ターニッブは一足飛びで悟空とベジータの隣に立った。

 

「…ターニッブ!!」

 

「貴様……!!」

 

 悟空とベジータが目を見開く中、ターニッブも腰だめに気をたわめ、紫電を纏った青白い光を作り出す。

 

「いくぞ!! 電刃ーー波動拳!!!!」

 

 真・超サイヤ人三人の光が、ベジットの放った光と押し合う。

 

 ターニッブが加わったことで、両者の力は”拮抗”した。

 

 だがーーベジットの笑みは崩れない。

 

「「ふふ、楽しませてくれるぜ……!! 俺の全力を出してもよさそうだな!!!」」

 

 一気にパワーが激増する。

 

「「オメエ等が強ければ強い程、俺の強さも高まるって訳だ……!!」」

 

 拮抗していた力が、再びベジットによって押し返される。

 

「……くっ! 畜生ぉおおおおお……!!」

 

「ベジット……!! 貴様ぁあああああ!!!!」

 

「俺達は、まだ負けてはいない!! たとえ指一本にでも闘志を示せるならばーー俺達に敗北はない!!!」  

 

 三人の超サイヤ人の力でも、ベジットの放った光を凌ぐのが精いっぱいだ。

 

 それほどの力の差がある。

 

 この光景にバーダックとジュード王が静かに拳を構える。

 

「な、何をするつもりだ! バーダック!?」

 

「ジュード!! お前まで何を!?」

 

 この行動にターレスとガーキンが驚愕に目を見開く。

 

「決まってんだろ? ガキに護られる程、俺は耄碌しちゃいねえ!!」

 

「王である俺が、逃げるわけにはいかん。何をしても……悟空とベジータにフュージョンさせる隙を作って見せる!!」

 

 そんな二人に向かってプリカが静かに歩み寄って来た。

 

「おやめなさい」

 

 彼女の冷静な言葉にバーダックが鋭い目を向ける。

 

「なんだと、テメエ!?」

 

「足手まといです。お兄様もバーダックさんも」

 

 ハッキリとプリカは告げた。

 

 バーダックは静かに目を細める。

 

 つややかな黒髪をした美しい巫女は、静かに震える拳を握りしめながら気丈に告げる。

 

「この戦いは、既にわたくしのような巫女にも。王にも。あなた方のような戦士にも止められない。あそこに立つ資格があるのは、真・超サイヤ人の力を持った者だけなのです」

 

 その言葉にーー皆が口を紡ぐ。

 

 一人を除いて。

 

「……それはつまり。あの力と同じモノを持っていれば参戦できるんだな?」

 

 皆が声の主を見れば、其処に居るのは2メートルを越える長身のサイヤ人・ブロリーだった。

 

「…貴方は?」

 

 プリカが目を見開きながら問いかけると、ブロリーは影のある笑みを浮かべた。

 

「ただのサイヤ人だ」

 

 それだけを告げ、ベジットを睨みつける。

 

 気を纏う。

 

 金色のオーラを。

 

 伝説の超サイヤ人に変化する。

 

 そして更に気を高め、超サイヤ人3へとーー。

 

「うぉおおおおおおおお!!!!!」

 

 ブロリーは叫ぶ。

 

 あの時の姿へともう一度成るために。

 

 ターニッブとの闘いで自分は至った。

 

 ならば、今その力を欲する。

 

 闘いたいからーー。

 

 憎しみも怒りもない。

 

 ただ、純粋にカカロットとターニッブと、ベジータと戦いたい。

 

「頼む……!! 俺の中に眠る力よ!! 俺を超えろぉおおおおおお!!!!!」

 

 気を高まらせ、更に力を漲らせ、気柱が立つ。

 

「…できるのかよ? ブロリーの野郎」

 

「下らねえ事を聞くんじゃねえよ、ターレス」

 

「…なんだと?」

 

 ターレスが不快気にバーダックを見ると、彼は真っ直ぐにブロリーを見ていた。

 

「あの目を見りゃ分かんだろ? 野郎は”やる”と決めたんだよ!!」

 

 その言葉に呼応するように、緑がかった金色のオーラは黄金に変化し始める。

 

 気柱が天に向かって伸びていく。

 

「見せてやれ、ブロリー!! テメエの真の力を!!!」

 

 目を見開き、ブロリーが一際大きな気合の咆哮を上げる。

 

「うぉおおおおお!! カカロットォオオオオオオ!!!!!」

 

 黄金の闘気を纏い、黄金の髪が天に向かって靡く。

 

 翡翠の瞳に黒い瞳孔が現れる。

 

 身長が2メートルの無駄な筋肉の無い姿へと変化した。

 

「そ、そんな……! 私の予知夢で見れなかった超サイヤ人が、もう一人……!!」

 

 プリカが呆然と目を見開きながら、新たに真に至った超サイヤ人を見据える。

 

 ブロリーは静かに悟空達を見据え、一気に跳躍した。

 

 悟空とベジータ、ターニッブという三人の真・超サイヤ人の隣に新たにブロリーが並び立つ。

 

「「奴は……ブロリー、だと!?」」

 

 ベジットが目を見開く中、ブロリーは両手を上下に合わせて腰だめに光をたわめる。

 

 かめはめ波や波動拳とまったく同じ構え。

 

「ブロリー……! オメエ……!!」

 

「至っていたのか。真の超サイヤ人に!!」

 

「ありがとう、友よ!!」

 

 三人からの言葉にブロリーは笑みだけを浮かべた後、ベジットを睨んだ。

 

「終わるのはーー貴様だァアアアア!!!!」

 

 四人の放った光は一つの巨大な光となってベジットの光を押し返す。

 

「「なんだと!? たった四人のサイヤ人に、この俺の最高の技が!!?」」

 

 互いの中央まで来たとき、悟空が叫んだ。

 

「今だぁあああああ!!!」

 

 同時にフルパワーで一気に光を増幅させ、ベジットの光を押し返す。

 

「「舐めるなよ! こっちもフルパワーだ!!」」

 

 瞬間、ベジットもフルパワーで光を放ってきた。

 

 二つの極限の光は、互いの中央で爆発した。

 

 完全に威力が互角だったため、相殺したのだ。

 

 強大な黄金の光が曇天の空に向かって突き立った。

 

「や……やりやがった……!」

 

「……四人の力でようやく、相殺だっていうのか?」

 

 ターレスが興奮したように告げるも、隣でバーダックが厳しい顔を崩さない。

 

 プリカも目を見開いている。

 

 予知の力で先を見ようとしている。

 

 それでも見えない。

 

 この戦いの結末が見えない。

 

 そんなことは初めてだった。

 

 煙が晴れた時、五人の黄金のサイヤ人が睨み合っていた。

 

「「……大したもんだぜ。まさか、この俺の最高の技まで破られるなんてな」」

 

 ベジットが嫌味なく告げる。

 

 対峙する悟空達四人は肩で息をしていた。

 

 先の撃ち合いで力を消耗していた。

 

「……悟空にベジータ。俺が奴と戦おう」

 

 静かにターニッブが告げる。

 

 これに悟空が目を見開く。

 

「いくらオメエでも一人で挑もうなんて無茶だぞ!」

 

「分かっている。それでも、お前達が何とかしてくれると信じている」

 

 穏やかな微笑みに、悟空は目を見開いたまま何も言わない。

 

「……ターニッブ。すまねえ」

 

「……借りを作ったな」

 

 ベジータも素直に告げるとターニッブは笑う。

 

「水臭いことを言うな、友よ!」

 

 屈託のない清々しい笑顔で。

 

 その隣でブロリーもベジットに構えた。

 

「カカロット、ベジータ王子。フュージョンを必ず成功させろ!!」

 

 それだけを告げ、ブロリーはベジットに襲い掛かった。

 

「! ブロリー!!」

 

 それに遅れじとターニッブもベジットに突っ込む。

 

「ターニッブ! オメエ等!!」

 

 止めようとする悟空をベジータが制した。

 

「やるぞ、カカロット!!」

 

「……ああ。俺は、俺達は必ず勝つ!!」

 

 二人は頷き合うと左右に分かれて距離を取る。

 

 両手を水平に構えた。

 

「「チッ! やらせるかよ!!」」

 

 これにベジットが気付き、攻撃を加えようとするもターニッブが目の前に現れる。

 

「「邪魔だ!!」」

 

「セイヤァ!!」

 

 ぶつかり合う拳と拳。

 

 相殺するも、ターニッブの口元が歪み脂汗をかいている。

 

「「真・超サイヤ人同士なら、ダメージも通るみてぇだな?」」

 

「…お前をここから先には行かせん!!」

 

「「ただのサイヤ人が、俺に敵うかよ!!」」

 

 ラッシュを繰り出しあう。

 

 だが、ターニッブが瞬く間にボロボロにされていく。

 

 その目の前にブロリーが怒りの表情で現れた。

 

「やらせんぞ! このクズがぁ!! 八つ裂きにしてくれる!!!!」

 

「「雑魚は引っ込んでな!」」

 

 二対一。

 

 即席のコンビにしてはターニッブとブロリーは素晴らしい動きを見せる。

 

 それでも、ベジットには遠く及ばない。

 

「ターニッブ!!」

 

 プリカが叫びながら、血を吐いているターニッブを見据える。

 

 ブロリーも見事にぼろ雑巾にされていた。

 

 それでも二人は粘る。

 

 何度でも立ち上がる。

 

 ベジットをしてウンザリするほどにしつこい。

 

 ラッシュで二人を弾き飛ばしながら、ベジットが悟空達を見る。

 

ーー フュージョン! ハッ!! ーー  

 

 声が重なって聞こえ、蒼い光が世界に満ちる。

 

 その光を見て、ベジットが忌々しそうに表情を歪めた。

 

「「チッ! やられたか……!!」」

 

 ターニッブとブロリーは肩で息をしながら、光の中から現れた男を見据えて笑う。

 

 プリカ達が目を見開く。

 

 メタモル星人の衣装を着た真・超サイヤ人の顔は、死者の都を統べるリューベに瓜二つだった。

 

「「ターニッブ。ブロリー。ありがとよ」」

 

 静かに彼は淡々とした表情で告げた。

 

 ベジットが口元に笑みを浮かべながら語り掛けてくる。

 

「「…なるほど。オメエと会うのは初めてだな?」」

 

 融合した奇跡の戦士は、究極の合体戦士を睨みつけた。

 

「「待たせたな、ベジット。俺は、悟空でもベジータでもない…! 俺は、貴様を倒す者だ!!」」

 

「「フフフ、面白れぇ! フュージョンによる融合とポタラによる合体、はたしてどちらが上かな?」」

 

 圧倒的な気を纏って、両者が睨み合う。

 

 フュージョンで生まれた戦士の名は最強の戦士・ゴジータ。

 

 対するは神具・ポタラによって生まれた合体戦士ベジット。

 

 二人は互いに強烈な気を右の拳に集約させ、まったく同じフォームでストレートを放ち合った。

 

 史上空前最強のバトルが今、始まる。

 




 次回。

 怒りの鉄槌 正義の光

 にご期待ください


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至高の決着 ゴジータ 対 ベジット

 真・超サイヤ人と化したベジットに対抗するため、ターニッブとブロリーを犠牲にしながらも悟空とベジータはフュージョンに成功した。

 ついにゴジータとベジット。

 究極のサイヤ人同士の闘いが始まる。





 余裕の表情を常に浮かべているベジット。

 

 対峙するゴジータは、冷徹に相手を見据えている。

 

「……ターニッブ。無事か」

 

「ああ。ブロリー、お前も無事でよかった」

 

 互いに笑みを浮かべて真・超サイヤ人から黒髪に戻る二人のサイヤ人。

 

 バーダックは静かにゴジータとベジットの睨み合いを見据える。

 

「……サイヤ王と瓜二つの合体戦士に、生身の人間とは思えねえリューベって野郎と同じ顔をした融合戦士、か」

 

「まったくよ。どんな因果なんだろうな」

 

 ガーキンも頷きながら二人の究極のサイヤ人を見据える。

 

 睨み合うだけで、周りのものを射殺しかねない圧倒的な重圧を互いに放っている二人。

 

「…プリカよ。この闘いの勝利者は見えるか?」

 

「……ごめんなさい、お兄様。もう、わたくしの目には……」

 

 ジュードの問いかけにもプリカは悲しそうに俯くだけだ。

 

 リューベは彼女に告げた。

 

 ベジットを止めることができるのは、悟空とベジータのみだと。

 

 そして止まったベジットを封ずることができるのは巫女の自分だと。

 

 ならばーー。

 

「「フフフ、ぼんやりとしていて良いのか? フュージョンは時間制限があるんだぜ?」」

 

 ベジットがニヤリとしながら問いかける。

 

 その目の前にゴジータが現れた。

 

「「!!」」

 

 強烈な右の拳をボディに叩き込まれる。

 

「「がはっ!!?」」

 

 左の膝蹴りで顎を三発打ち貫かれ、のけ反った所を更に宙返りしながらの蹴りで跳ね上げられる。

 

「「ぐぉ!?」」

 

 その威力に思わずベジットをしてのけ反ったまま、動きを止めた。

 

 スタッと着地したゴジータは右手を天に向けて掲げる。

 

 その掌には虹色に輝く光の球が生まれていた。

 

「「……貴様!!」」

 

 ベジットが睨みつけながら構えを取る前に、ゴジータは振り返りざま光の球を拳を握って潰してしまい、粒子となったそれを放つ。

 

 咄嗟にベジットは右手から黄金に光る剣を作り出し、粒子を真っ二つに切り裂いた。

 

 見事にゴジータの放った一撃は、無効化される。

 

 しかし、ベジットの目の前には既にゴジータが攻め込んで来ていた。

 

「「……無駄口が多いぜ、ベジット」」

 

 まるで流れるようにすり足のまま、打撃を繰り出してくる。

 

「「それだけ強いくせに余裕が足りねえな、ゴジータよぉ」」

 

 ベジットもそれに反応して笑みを作り、拳を握って打ち返していく。

 

 静から動へと動くゴジータの攻めは、ベジットをして気を抜けば一気に持っていかれかねない。

 

 真・超サイヤ人へと至ることにより、両者の戦闘力の上昇は互角。

 

 純粋にほとんど互角の戦いを繰り広げている。

 

 気付けば、ベジットの口元から笑みが消えていた。

 

 ベジットの本気の攻撃をゴジータは難なく躱して打ち返してくる。

 

 正真正銘に手強い敵だった。

 

「「どうした? 余裕がねえぞ」」

 

 そんなベジットに微笑を浮かべてゴジータは告げる。

 

「「…フフ、思ったよりは強いじゃないか。だがーー勝負はこれからだぜ!!」」

 

 秒間、百発は軽く超える打撃の応酬を繰り広げた後、互いに後方へ宙返りしながら距離を置いて着地する。

 

「「本当に俺と互角か? 試してやるぜ……!!」」

 

 先ほど、四人がかりでようやく相殺できた「100倍ファイナルかめはめ波」。

 

 ベジットは、それをゴジータに向けて構える。

 

 対するゴジータも両手を肩幅に開いたまま前に突き出し、巨大な青白い光の球を前方に作り上げる。

 

「「受けてやる……!!」」

 

 ベジットがその言葉にニヤリとして、前方に手を突き出しながら光を放った。

 

「「喰らえ! ファイナルかめはめ波ぁあああああ!!!」

 

 迫りくる圧倒的な光に向かって、同時にゴジータも100倍の技を放つ。

 

「「ビックバンーーかめはめ波ぁあああああ!!!」」

 

 全く同じ大きさの光線が正面からぶつかり合い、互いに向かって押し合う。

 

 完全に互角。

 

「「……!! なるほどな、想像以上の力だぜ……! これが、フュージョンか」」

 

「「…短期決戦なら俺に分があると思っていたが。コイツは誤算だったな」」

 

 ベジット、ゴジータ。

 

 互いに目を細めながら、考える。

 

 実力は互角。

 

 最高の技もまったくの五分。

 

 ならばーー当てたもの勝ちである。

 

 完全に技が相殺したのを確認しながら、ゴジータとベジットは互いに睨み合っていた。

 

ーーーーーー

 

 強烈な気のぶつかり合いは、破壊神ビルスの星にすらも届いている。

 

 ウイスが静かに微笑み、寝間着に着替えようとしていたビルスは真剣な表情で、水晶の中に映る二人の超サイヤ人を見据えていた。

 

 二人は食堂で寛ぎながら、究極のサイヤ人達の戦いを見ている。

 

「これはーー全宇宙一武道大会も安泰ですねぇ」

 

「冗談を言ってる場合じゃないよ、ウイス。この力ーー本当に神や天使の領域に辿りつつある」

 

 その言葉にウイスは微笑みを絶やすことなく、ビルスに問いかけた。

 

「あら。ビルス様のお望みどおり、強敵が現れたようですのに。お喜びになられないのですか?」

 

「……リューベにしろ、ベジットにしろ。あの惑星から出てくるつもりがない上に、悟空とベジータが居るんだ。僕の出番はないだろ」

 

 目を細めながらゴジータとなった二人を見据える。

 

 強い。

 

 心・体・技が全てにおいて、ビルスの知っている戦士の中で群を抜いている。

 

 そしてソレと全くの互角の戦いを演じるベジット。

 

「…気に入らないな。僕を置いて”最強”を勝手に決めるなよ? 悟空、ベジータ」

 

 興奮しているのを隠すように瞳を細めるビルス。

 

 ウイスは微笑みながら、告げた。

 

「何なら、今から乱入いたしますか?」

 

「そんな大人げない真似はしないよ!!」

 

「おや、これは意外ですね」

 

 眉根を上げながら本当に意外そうにするウイスに、ビルスは目をひくつかせる。

 

「……ウイス? 長い付き合いだけど、お前は僕を誤解していないか?」

 

「いえいえ。ビルス様はワガママなイメージが未だにありましてーー!」

 

「おい!!」

 

 思わず叫ぶビルスだが、すぐに水晶に向き直る。

 

「それにしても、老界王神も面白い真似をしたね。ポタラを悟空達に渡したが故に死者の都の意志によって生まれた究極の可能性ーーベジット」

 

「そうですね…。そして、神の宝具に挑むのは、メタモル星人が編み出したフュージョンによって生み出されたゴジータという融合戦士」

 

 ビルスは静かにため息を吐きながら言った。

 

「あいつらは気付いているのか知らないけど。これはある意味、人間と神の対決でもある。さてどうなるかな?」

 

「このまま持久戦に持ち込めば、ベジットの勝利でしょう。ですが、ゴジータとなった悟空さん達がその程度のことを想定していないわけがない」

 

「詰まる所、出たとこ勝負って訳ね」

 

 静かにどちらからともなく言葉を切り、二人はジッとゴジータとベジットの戦いを見つめた。 

 

ーーーーーーー

 

 ゴジータもベジットも互いに構えを取ったまま、動かない。

 

 わずかな隙も、即命取りという現実に両者は動から静。

 

 静から動という攻撃をくり返している。

 

 きっかけがあれば、一気に爆発する導火線に火のついた静けさ。

 

 互いにその場から動いていないように見えるが、実際は超高速で打撃を何発か繰り出しあっている。

 

 突如、頬が裂け血飛沫が舞う両者。

 

「…見えたか?」

 

 これにブロリーがターニッブに問いかけると、彼はとても楽しそうな笑みを浮かべて言った。

 

「いいや。……凄いな、こんな奴らが世界には居るんだな」

 

 まるで次元の違う闘いを見ても、ターニッブの目には絶望や恐怖はない。 

 

 あるのは純粋な強さへの憧憬。

 

「……とんでもない化け物どもだ」

 

 ブロリーの言葉が全てを語っていた。 

 

 正に、人が考え付く全ての終着点ともいえる圧倒的な力を誇る二人の戦士。

 

 ゴジータとベジット。

 

「「…来るか!!」」

 

 瞬間、ゴジータが強烈な気を纏って一気にベジットの懐に飛び込む。

 

「「あっさりと懐に入ってくれるぜ!!」」

 

 ベジットが嬉し気に笑いながら拳を繰り出してくる。

 

 ゴジータも淡々とした表情で膝蹴りをぶつける。

 

 再び始まる乱打撃戦。

 

 後方に容赦なく弾け飛ぶ首。

 

 それでもお互いに退かない。

 

((……ゴジータの野郎は短期決戦を望んでいる。だが、この攻めは凌いでどうにかできるほど安かねぇ! たまらねえな、コイツは!!))

 

 ベジットは笑う。

 

 死者の都の意志に作り出された存在でありながらも、彼は誇り高き戦士・ベジットだからだ。

 

 強敵との戦いを楽しまずには居れない。

 

 三十分などと言わず、このゴジータとずっと戦っていたい。

 

 それは純粋な戦士としての願い。

 

「「…感傷的になっちまうぜ。勝ちが分かっちまってるとな!!」」

 

 そう。

 

 時間制限があるゴジータには、圧倒的に不利だ。

 

 技も体力も攻撃力も互角ならば、後は短期での決着はほとんど無理だ。

 

 だからこそ、ベジットは全力を持って受けて立つ。

 

 己の全てを出し尽くして見せる。

 

 その上で真正面からこのゴジータという戦士を打ち負かそう。

 

「「過去・現在・未来における全ての闘いで、この俺こそが最強の戦士だと証明してやるぜ!!」」

 

 強烈な打撃音と共に首を後方へのけ反らせながらも、足を踏ん張って立ち止まるゴジータ。

 

 時間制限があるというのに、彼の目は未だに冷徹である。

 

 ベジットが興奮からくる凄絶な笑みを浮かべているのに対し、ゴジータは淡々とした表情で静かに瞳を燃やしている。

 

 互いにガードやフットワークを駆使しながら、何度でもぶつかり合う。

 

 その度に弾け飛ぶ首やボディ。

 

 それでも、やめることはない。

 

 止まることはない。

 

 この二人のサイヤ人の戦いは、最早誰にも止められない。

 

 それからしばらくして。

 

 血まみれになりながら。

 

 ボロボロになりながら、二人は首を後方へ弾け飛ばしながら、距離を置いて。

 

 互いに向かって気を溜めていた。

 

 同時に高めていた全力の気を光にして放つ。

 

「「こいつで終めぇだ! 100倍ファイナルかめはめ波ぁあああああ!!!」」

 

 ベジットが黄金の光を纏った青白い光線を放てば。

 

「「終わりにしようぜ…! 100倍ビッグバンーーかめはめ波ぁあああああ!!!」」

 

 ゴジータも極太の青い光線を放つ。

 

 再びぶつかり合う両者、最大最後にして最高の一撃。

 

 爆発する。

 

 煙が晴れた時、真・超サイヤ人のゴジータはボロボロの体でありながら、仁王立ちしている。

 

 向かいのベジットは、前のめりに肩で息をしながら立っていた。

 

「「……なんだと? まさか、時間切れなのは俺の方だというのか!?」」

 

 真・超サイヤ人が切れ、通常の黒髪に戻るベジット。

 

 静かにゴジータはそれを睨みつけている。

 

「「貴様は確かに強ぇえよ。だがな、ベジット。貴様一人じゃ”俺達”には勝てねえ。ターニッブやブロリー。そして悟空とベジータを侮ってたのが、貴様の敗因だ」」

 

 瞬間、ゴジータがベジットの目の前に現れた。

 

「「…貴様! 俺が時間切れになるのを…! ここまで計算して全力で短期決戦を仕掛けて!?」」

 

 見開くベジットの目にゴジータは冷徹に燃える怒りの目を向けて言った。

 

「「貴様の、負けだーー!!!」」

 

 真・超サイヤ人の力を全て凝縮した右拳の一撃が、ベジットの顔面を射抜いた。

 

「「ぐわぁあああああああ!!」」

 

 黄金の光と共にベジットが天に向かって消えて行った。

 

 霧となって散る。

 

 これにプリカが両手を胸の前で組んで祈りの光を放つ。

 

「死者の都より出し亡霊よ。我が祈りの前に去れーー!」

 

 霧散するベジットの肉体だった雲が、巫女の光によって完全に消滅した。

 

「…や、やったのか?」

 

 ガーキンが静かに周りを見回しながら告げると、ゴジータがこちらを振り返って微笑んだ。

 

「「……フ」」

 

 その優しくも温かい笑みに皆が思わず見とれる。

 

 強さと優しさを兼ね備えた最強の戦士の勝利に、惑星サイヤと惑星ベジータのサイヤ人達は、興奮に打ち震えていた。

 

ーーーーーー

 

 ゴジータとベジットとの死闘に決着がついた時。

 

 死者の都にて真・超サイヤ人リューベは赤い月を見上げていた。

 

「…やりおったか。だがーー! まだ終わらぬか」

 

 月の赤さは変わらない。

 

 むしろ、より真紅に近い色に変わっている。

 

「…あれ以上の戦士は出せまい。それでも、やめぬか……! 亡者どもめ」

 

 憤怒の表情で真・超サイヤ人は、溢れ出る力に向かって拳を構えた。

 

 死者の都より溢れる亡霊が止まることはない。

 

 それを証明するかのように、月の赤さは濃さを増していく。

 

ーーーーーー

 

 神殿の医療施設にて。

 

 ベジットを倒すことに成功した悟空とベジータ。

 

 ターニッブとブロリーは、丸二日寝たきりの生活をしていた。

 

 神に祈りを捧げることで肉体的なダメージや体力は全快しているが、顔をひねろうがつねろうが熟睡して起きてこない。

 

 そんな四人を看病するのはプリカと女官達だった。

 

「プリカ様、お水の替えをお持ちしました」

 

「ありがとう、其処に置いておいてください」

 

 まだ目覚める気配のない彼らをおいて。

 

 死者の都より現れる亡霊の数が増している。

 

 玉座の間にて。

 

 兵士達からの報告にサイヤ王・ジュードは都の守りを固める難しさに頭を痛めていた。

 

「…すでに惑星を覆い尽くすというのか。あの曇天と霧は」

 

 兵士からの報告に渋い顔になる。

 

 報告を聞いている会議室には、ガーキンだけでなく。

 

 惑星ベジータのサイヤ人であるバーダックとターレスも来ていた。

 

「ベジットとか言う野郎はもう復活できねえんだろ? なら、後は物量だけだな」

 

「地形はどうなってる? 人員の配置は?」

 

 二人からの言葉に、ガーキンが頷きながら地図を指して説明していく。

 

 亡霊たちが現れる異界の門と呼ばれる異次元の裂け目の場所。

 

 そこから噴き出る亡者たちは戦闘力こそ低いものの、数が多く侮れない。

 

 サイヤ人達がいくら強靭だと言っても休みがなければ、いずれは劣勢に立たされる。

 

「……体力の高い重歩兵のような連中は?」

 

「? ああ。それなら、北の門に配置してあるが?」

 

 ターレスの質問にガーキンが首を傾げながら応える。

 

「北から東に六名ほど向かわせろ。伝令役はできるだけスピードの速い軽戦士がいいな。普通の兵士は数だけをとりあえず揃えて都の周りを固めろ」

 

 淡々と地図を見て配置を指しながらターレスは告げる。

 

 敵の配置や現れ方を見て、その先手を読んでいるかのようだ。

 

「ほぉう? 他人に指図するのは得意みてぇだな?」

 

「…貴様ら父子は素直に褒めれんのか」

 

 バーダックの言葉にやや苛立ちを込めながらターレスは告げる。

 

「超サイヤ人になれるのはサイヤ王やガーキン、俺。超サイヤ人3になれるのはバーダックだな」

 

「サイヤ王は前線に出せねえぜ? 総指揮をとらせなきゃな」

 

 ガーキンの言葉にジュードが嫌そうな顔になる。

 

 バーダックがニヤリとしながら告げた。

 

「おい、ターレス? ごちゃごちゃ考えるのもめんどくせえ。要は異界の門とやらをぶっ潰せばいいんだろ?」

 

「…フン、単純な奴め。敵の行動には意味があるとは思わんのか?」

 

「一々、こんな所でくっちゃべってるのも面倒だ。さっさと行くぞ」

 

「…お、おい!!」

 

 ターレスの襟首をつかんでバーダックはガーキンとジュードを真剣な目で見据えた。

 

「俺がぶっ潰してくる。テメエらは、王都の守りを頼んだぜ」

 

 これに二人は頷く。

 

「分かった」

 

「無理すんなよ、バーダック!」

 

 ジュード王とガーキンの言葉に野性味のある笑みを浮かべて、バーダックはターレスを捕まえたまま城の外へと出て行く。

 

「は、離せ…! 行くなら、貴様一人で行けばいいだろう!? おい、バーダック!?」

 

「つれねえことを言うなよ。同郷のよしみじゃねえか、ククク」

 

 にやりと笑うバーダックは、そのまま王都を出て亡霊が溢れる荒野に出て行った。

 

 ターレスの苦情が出ているが、特に相手にされることはなく。

 




 次回 黄金の復讐鬼

お楽しみに!(=゚ω゚)ノ


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超サイヤ人 対 悪の戦士達

死者の都の意志によって生み出された本物と変わらない実力のベジット。

 彼を辛くも打ち破った悟空達は真・超サイヤ人の力を使い切り、深い眠りにつく。

 そんな中、死者の都から惑星サイヤを滅ぼそうと亡者が現世に溢れていた。

 溢れる亡者達を食い止めるために出撃したバーダックとターレスの前に、かつて孫悟空とその息子の悟飯によって倒された二大巨悪が現れる…。



 王都から一歩でも外に出れば、薄暗い霧が辺りに漂い、亡者が溢れかえっていた。

   

「…フン。死者の都とか言うところと変わらねえな」

 

「いい加減に離せ、バーダック!!」

 

 首を絞められているターレスが必死になって告げるとようやく、離される。

 

「…この、バカ力め」

 

「クク、さて…! 此処から一番近い異界の門ってのは何処だ?」

 

「? 貴様、まさか地図を見てないのか!?」

 

「テメエが見てんだろ? グズグズしてねえで、さっさと案内しやがれ!」

 

「なんで教えてもらう側なのに偉そうなんだ、貴様!!」

 

「年輩者を立てるのは当たり前だろうが? それとも、俺を力づくでねじ伏せるかい?」

 

 にやりと笑いながら、告げるバーダックにターレスが忌々し気に歯を食いしばる。

 

 超サイヤ人にしか成れない自分と、超サイヤ人の壁を二つほど超えている目の前のサイヤ人とでは、明らかにレベルが違う。

 

「……」

 

 最終的にターレスは大人しく言うことを聞いた。

 

 二人が向かったのは、北門から300メートルほど離れた荒野だった。

 

 そこに無造作に生えた木の横に、ポッカリと紫色の穴が開いている。

 

「…こいつか」

 

 バーダックは静かに門を確認すると、超サイヤ人に変身した。

 

 金色の髪を天に向かって靡かせ、翡翠の瞳で睨みつける。

 

 群がっている亡者は、その光に当てられただけで消滅した。

 

「……さっさと片付けて次に行くぞ」

 

「任せとけって」

 

 右手に光を生じさせ、バーダックは裂け目に向かって放った。

 

「くたばれ!!」

 

 青い光弾は、しかし横から紅く細い光線によって撃ち抜かれた。

 

「!?」

 

 ターレスとバーダックが、光線を放ってきた方を向くと、全体的に白い肉体。

 

 小型のシャープなシルエットをした長い尾を持つ人物が浮かんでいた。

 

「これはこれはーー! サイヤ人ですか。それも孫悟空さんにそっくりな顔をした方が二人も……!!」

 

 尾を生やした人物は静かにバーダックとターレスを見比べる。

 

「片方は忌々しい超サイヤ人のようですね。これは好都合です。孫悟空さんを嬲り殺しにする前に良い予行演習ができそうですよ!!」

 

 バーダックが静かに人物を見据えて金色の眉を訝し気にする。

 

「…テメエ。何者だ? 孫悟空ってのは、カカロットの名前だな?」

 

 これに彼はニヤリと濃い紫の唇を歪ませて笑みを作り告げた。

 

「あなた方の上司だったフリーザですよ。この姿をお見せしたことはありませんでしたがね」

 

 その言葉にターレスが血相を変えた。

 

「……貴様、フリーザなのか!? な、なんだ、その姿は!!?」

 

「ほほほ。これが私の本来の姿なのですよ。さてーーせっかくの再会ですが、サイヤ人は皆殺しだ。たっぷりと縊り殺して差し上げますからね!!!」

 

 紫色の気を纏い、フリーザが一気にパワーを上げる。

 

 これに静かにバーダックが笑った。

 

「クク、コイツは良い。テメエ、フリーザなのか…!!」

 

「? …お前は、まさか? 惑星ベジータを滅ぼした時に居たーー!?」

 

「思い出したかよ、フリーザ? トーマ達やギネの仇だ! 俺は貴様を許せねぇ!!!」

 

 金色の気を纏いバーダックが構える。

 

「面白い、返り討ちにしてあげましょう! 私の真の力でね!!」

 

 瞬間、フリーザは更に腰だめに拳を握り、黄金の炎のような気を纏いはじめた。

 

 ターレスが目を見開きながら、寒気を覚える。

 

 目の前には金色に全身を変えたフリーザが居た。

 

「ゴールデンフリーザと言います。以後見知りおきをーー!」

 

 バーダックはニヤリと笑いながら拳を構える。

 

 その時、フリーザに向かって第三者の声が届いた。

 

「何をそんなに昂奮しているのだ、フリーザよ」

 

 バーダックがそちらを向くと、超サイヤ人と同じ色の金色のオーラを纏った緑色の怪物が居た。

 

「……サイヤ人? いや、何だか色んなものが混じっている感じだな」 

 

 静かに告げるバーダックに、怪物は端正な顔を向けると笑みを浮かべた。

 

「はじめまして。サイヤ人の戦士よ」

 

「…何ですか、セルさん? 私は今からこのサイヤ人どもを嬲り殺しにするつもりなんですよ?」

 

「分かっている。だが、フリーザ。敵は二人いるのだ…! 一人くらい分けてもらえないかな?」

 

 冷酷な笑みで告げるセルに、フリーザもニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 

「良いでしょう。それでは、あの色黒の方を差し上げましょう」

 

「フフ、ありがとう」

 

 その言葉にターレスがバーダックの肩を掴んで告げた。

 

「おい! 逃げるぞ!!」

 

「ああ? 何を寝言言ってやがる。二対二でちょうど良いじゃねえか!」

 

「貴様、バカか!? 戦闘力が違い過ぎるだろうが!!!」

 

「関係ねぇ……! 俺は、フリーザをぶっ飛ばす。邪魔するならあの緑色の野郎もついでに消してやらぁ!!」

 

 気を高め、バーダックはフリーザとセルに向かい合う。

 

「誰だ、このバカを勇敢だとかぬかした奴は!!」

 

 逃げる気がまったくないバーダックにターレスは舌打ちしながらも、逃げる術を探しながら時間を稼ぐしかないと悟り、己も超サイヤ人へと変身する。

 

 これにセルが笑いながら、金色のオーラに青い雷を纏わせる。

 

「……これはいい、少しは楽しませてくれそうだ」

 

「さあ、恐怖のショーを始めましょうか」

 

 フリーザが両手を広げて構えを取った。

 

 これにバーダックとターレス。

 

 二人の超サイヤ人は、気を高めて二人のバケモノと向き合うのだった。

 

 金色の髪を逆立たせ、翡翠の瞳でバーダックは目の前にいる金色の肌になったフリーザを睨み付ける。

 

「…はじめに言っておいてあげましょう。ただの超サイヤ人では私の相手は務まりませんよ?」

 

「…フン。そうかい?」

 

 バーダックはニヒルな笑みを浮かべた後、一気にフリーザの前に現れる。

 

 右の拳を下から突き上げながらボディに放つ。

 

 真剣な翡翠の瞳と嘲笑する真紅の瞳が互いに睨み合う中、鈍い音が鳴り響きながらバーダックの拳がフリーザの腹を打ち抜いた。

 

「…テメエ」

 

 バーダックが睨み付ける中、ニヤリとフリーザが笑う。

 

 瞬間、怒りの表情のバーダックと嘲笑するフリーザは同時に拳を繰り出し、激しい乱打戦を始めた。

 

 互いに強烈な打撃を連続で放ち合い、防ぎ合う。

 

 高速移動を繰り返し、金色と灼金の光が空に螺旋を描きながら飛び交う。

 

 フリーザの右ストレートを左に躱し、バーダックは強烈な右の回し蹴りを顔面に返す。

 

 炸裂音と共に首筋に当たって蹴りは止まった。

 

「…なんだと?」

 

 目を見開くバーダックに、フリーザは笑いかける。

 

「…どうしました? その程度では私を倒せませんよ?」

 

 笑いかけるフリーザにバーダックの目つきが更に鋭くなり、左右のパンチを交互にボディへ数発ぶつけた後。

 

「オラァァァ!!」

 

 その場で回転しながらの左回し蹴りで無防備なフリーザの顔を蹴り飛ばした。

 

 しかし、フリーザは微かに後ろに下がっただけ。

 

 全くの無傷でバーダックを見返している。

 

「…テメエ、一体…!」

 

 構えを取りながら訝しむバーダックにフリーザは笑いかけた。

 

「…素晴らしい強さですね、バーダックさん。確か孫悟空さんの息子さんも超サイヤ人になられてましたが、彼よりも遥かに強い」

 

 肩を揺らして手で口を隠して上品に笑いながら、フリーザはバーダックの強さを評した。

 

「…私を倒した超サイヤ人が、あんなに弱いなんてと拍子抜けでしたが。今の貴方を見て考えを改めましたよ。流石は超サイヤ人です」

 

「…カカロットの息子だと? テメエ、俺の孫をどうしやがった?」

 

 バーダックはフリーザの賞賛など聞いていない。

 

 聞くつもりもなかった。

 

 しかし、聞き捨てならない単語を聞いたので思わず問いかけた。

 

「…なるほど。バーダックさん、貴方は孫悟空さんの父親ですか! これはいい!! その容姿といい、私に正面から挑んで来る気質といい。よく似ていると思っていたのですよ!!」

 

「…質問に答えろ。俺の孫をどうしたぁ!?」

 

「知りたいですか? では教えて差し上げましょう」

 

 瞬間、フリーザは無造作に人差し指を立てて赤い光線を放ってきた。

 

「…ち!」

 

 バーダックは反応し、咄嗟に体を左に傾けて避ける。

 

「…今ので左肩を射抜いてあげました」

 

 バーダックが避けたことを嬉しげに笑いながら、フリーザは更に光線を放ってくる。

 

 左太ももと右の肩だ。

 

 バーダックはこれをアクロバティックな動きで縦に回転しながら避ける。

 

「…すごいすごい! そう! それでこそ、超サイヤ人です!!」

 

 続け様に放ってくる赤いビームをバーダックは触れることなく、紙一重で避けながら気を込めた。

 

「…はぁああ!!」

 

 髪が更に天に向かって逆立ち、前髪が少なくなって目つきが更に鋭くなる。

 

 身にまとう金色のオーラに青い稲妻が走っている。

 

 超サイヤ人2である。

 

「…おやおや。これは? さらなる変身があったとは」

 

 先までとは比べ物にならないスピードで、バーダックはビームの弾幕を完全に避け、フリーザの脇に高速移動した。

 

「…今ので、本来なら手、腕、肩、太もも、足、腹、最後に心臓を撃ち抜いて差し上げる予定だったんですよ。貴方のお孫さんは、蓑虫みたいになってましたよ! おほほ」

 

「…ぶっ潰してやらぁ、フリーザァアアアア!!」

 

 目を見開き、バーダックの髪が更に天に向かって突き立ち、後ろ髪が伸びて眉が縮毛し、翡翠に黒の瞳孔が現れる。

 

 圧倒的な力を持った超サイヤ人が、その場に誕生する。

 

「カカロットの言葉を借りるなら、超サイヤ人3だ。くたばれ、フリーザ!!」

 

 一気に加速して突っ込み、バーダックは灼金に燃えるフリーザの顔面に右ストレートを繰り出した。

 

 乾いた音と共に、あっさりと拳が掴み止められる。

 

「…なんだと!?」

 

 目を見開くバーダックにフリーザは微笑んだ。

 

「…確かにお強い。ですが、今の私には貴方も貴方のお孫さんも大して変わらないんですよ」

 

 バッと拳を軽く突き放された。

 

「…ぐおっ!?」

 

 それだけで凄まじい衝撃が拳から肩に響き、バーダックは苦悶に表情を歪ませる。

 

 その背後にフリーザは移動していた。

 

 バーダックが振り向いた時、既にフリーザの拳は振りかぶられていた。

 

「…こういうことです。生意気な猿め!!」

 

 右の拳が振り下ろされ、バーダックは顔面を殴られて荒野に頭から叩き落とされた。

 

 土煙を上げ、クレーターの中に前のめりで倒れた彼は通常の黒髪のサイヤ人に戻ってしまっている。

 

 セルと睨み合っていたもう一人の悟空と同じタイプの顔を持つ超サイヤ人ターレスがバーダックの敗北に顔を歪めて吐き捨てる。

 

「真正面から行くとはバカめ! 力の差が分からんのか!!」

 

 セルがそのセリフに冷たい笑みを浮かべた。

 

「…あのバーダックという男。私よりも遥か上のレベルにあるようだが、今の金色のフリーザは神と呼ばれる存在の域にあるのだ。普通の人間に敵う道理はない」

 

 笑いながら、瞳に殺気を浮かべてセルは左手を胸の前に伸ばし、右手を添えて後ろに重心を取った構えをする。

 

「貴様程度ならば、私でも充分倒せるがね」

 

「…言ってくれるな、化け物め。俺を其処の脳筋と一緒にするなよ!!」

 

 言うと金色のオーラを纏い、ターレスがセルに対して斜に立ち腰に拳を置いて構える。

 

「どう違うのかな?」

 

 これにセルも青い稲妻が走る金色のオーラを纏った。

 

「この感じは…超サイヤ人2、だと!?」

 

 目を見開くターレスにセルは淡々と答えた。

 

「…私は孫悟空とベジータの細胞を持ったバイオ生命体。超サイヤ人など、恐るるに足らんのだよ」

 

 余裕の笑みを浮かべ、構えながらも肩をすくめるセルを前髪の隙間から覗き見るターレス。

 

「…ほう?」

 

 瞬間、ターレスが残忍で冷酷な笑みを浮かべて隙を見せたセルの前に踏み込み、左のフックを顔にぶつけると右のボディ、右のハイキックで顎先を蹴り上げた後、両掌を胸の前で合わせてから左右に離しながら、赤い炎の輪を作り出す。

 

「…死ねぇ!!」

 

 前方に両手を突き出して炎の輪を放ち、仰け反ったセルに直撃した。

 

 技が直撃して生じた爆煙に向かって、ターレスは冷酷に笑う。

 

「…フフフ、この俺を甘く見るからだ」

 

 だが、その笑みはすぐに凍りつく。

 

 ゆっくりと煙の向こうからセルが無傷の姿で笑みを浮かべて現れたからだ。

 

「…貴様らサイヤ人は、強くなるとすぐに調子づく。ベジータやトランクスもそうだった」

 

 口元を手で隠しながら、セルは上品に微笑むとターレスの目の前に一瞬で現れる。

 

「…ぐう!?」

 

 左のフックで顔を仰け反った所を右のボディで腹を貫かれ、顎を蹴り上げられる。

 

「ガハァ!?」

 

 仰け反ったターレスの背後にセルは高速移動すると、右の肘を背中に叩き込んだ。

 

「…ぐあ!?」

 

 ゆっくりと立ち上がり始めたバーダックの隣にターレスが叩き落とされる。

 

「ケッ…偉そうなことを言う割にはテメエも大して変わらねえじゃねえか」

 

 皮肉げに告げるバーダックにターレスが黒髪に戻りながら、起き上がって言い返す。

 

「…言ってる場合か。こいつら、とんだバケモンだぞ…!」

 

「…カカロット達が闘った、あのベジットって野郎に比べたら。…こんな奴ら大したモンでもねえだろが」

 

「だったら、今すぐこいつらを何とかしてみせろ!!」

 

 目を見開いて怒るターレスにバーダックは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「…安心しろ。その内、なんとかなるさ」

 

 その笑みに向かってターレスが叫んだ。

 

「ふざけるなぁ! カカロットや王子みたいな変身がある訳でもないだろうが、どうやって…!?」

 

 前のめりになって怒鳴りつけるターレスの声が尻すぼみになった。

 

 自分の腰あたりから地面に何かが転がったのだ。

 

 それはトゲの付いた赤い果実だった。

 

「…こ、こいつは!?」

 

 ターレスの態度にバーダックが訝しげに見ると彼はニヤリとしながら、赤い果実を取り上げる。

 

「何だ、そりゃ? 変わった形のリンゴだな」

 

 バーダックが問いかけると、ターレスはフフフ、と笑いながら実を一口齧った。

 

 瞬間。

 

 太ももの筋肉、二の腕の筋肉、胸筋が一気に膨れ上がり、果実を握り潰す。

 

「……ククク。これで俺の戦闘力は桁違いに高まったぞ」

 

(? ターレスの奴から感じる力が確かに跳ね上がりやがった。どういうことだ?)

 

 バーダックが訝し気に目を細める横でターレスは更に気合を込めて、金色の戦士・超サイヤ人に変化する。

 

「……さあて。“神精樹の実”を得たこの俺の圧倒的なパワーで貴様を叩き潰してやるぞ。虫の化け物!!」

 

 これにセルがニヤリと笑いながら告げた。

 

「ほう? 変わったパワーアップの仕方だ。死者の都から己の可能性として技を引き出した孫悟空やベジータのように、貴様もパワーアップの手段を求めたか」   

 

 目の前に現れた超サイヤ人に笑いながら、拳を繰り出す。

 

 ターレスは紙一重で避けながら、拳を返す。

 

「……ッ!?」

 

 両腕で防ぎながらも、後方へ弾き飛ばされるセル。

 

 ピタっと空中で静止したセルの真上に、くるくると体を丸めて回転しながらターレスが迫っていた。

 

「なに!?」

 

「はぁあああ!!」

 

 回転する遠心力を加えた蹴りがセルの頭に直撃し、地面に叩き落とされる。

 

 姿を消すターレス。

 

 地面に接触する前にセルも目を見開き、高速移動で姿を消す。

 

 空中で響く炸裂音。

 

 セルの右ストレートを上半身を後ろに反らすスウェーバックで鼻先で見切り、ターレスはくるりと反転してセルに背を向け、後方へ逃げる。

 

 追いかけようとするセルだが、瞬間あさっての方向に逃げたはずのターレスが逆方向から現れ蹴り飛ばされた。

 

「…これは……!?」

 

 再び地面に叩きつけられそうになった時、ターレスが目の前に現れて膝蹴りでセルの腹を穿ちながら拾い、両手を組んで背中から地面に叩きつける。

 

 跳ね上がりそうになるセルの顔を踏みつけて固定し、右手を開いて紫色の光を生む。

 

「これで……死ねェえええ!!」

 

 放たれた一撃は、紫色の光の柱を天に突き立てた。

 

 バーダックがそれを見た後、金色のフリーザを見る。

 

 フリーザは余裕の笑みを浮かべながら両腕を組んで観戦していた。

 

「……どうだ、化け物。この俺の攻撃は? カカロットとは、ひと味違うだろう?」

 

 冷酷な笑みを浮かべて告げるターレスの目の前にセルは淡々とした表情で立っていた。

 

「フム。確かに孫悟空とは天と地ほどの差がある…。貴様は、奴に比べれば平凡もいいところだな」

 

「……なんだと?」

 

 忌々しそうに表情を険しくするターレスにセルは告げた。

 

「確かに身体的な力はあるようだ。しかし、戦闘センスが孫悟空と比べると貴様は致命的にない…! 純粋なサイヤ人としては其処に居るバーダックやベジータにも劣る。二流も良いところだ」

 

「……貴様。このターレス様の力を侮るか!?」

 

 黄金の気を纏い、更に構えるターレスの前にセルが現れた。

 

「!?」

 

「敢えて、貴様と同じスピードと技で返してやろう。受けるがいい」

 

 ボディを突き抜ける程の拳に思わずターレスが目を見開く。

 

 目の前にセルが来ていた。

 

(な、なんだと……!?)

 

「これは孫悟空達の得意とする“踏み込み”と言う動作だ。武術の基本ともいえる。スピードは同じでも反応するには苦労するだろう?」

 

 セルは淡々と告げながら、ターレスの後頭部に長い脚からのかかと落としを繰り出して、地面に叩きつける。

 

 跳ね上がりそうになるターレスの体を先の自分と同じように顔を踏みつけて固定し、右手をゆっくりと開いた。

 

「……ばかな!?」

 

 目を見開きながら、緑色の異形を見上げる。

 

 異形は端正な顔を冷酷にゆがめて告げた。

 

「じゃあな」

 

 青白い光が生まれ、先のターレスの技のように天に向かって光が突き立った。

 

 光の中に消えるターレス。

 

 しかし、セルは静かに瞳を正面から左に向けた。

 

「……サイヤ人は冷酷で残忍だと聞いていたが。意外にも同族への仲間意識はあるようだ」

 

 ぐったりとしたターレスの襟首をつかんでこちらを睨みつけるバーダックを見据えて笑うセル。

 

「……テメエ。ある意味、フリーザよりも厄介だな」

 

 バーダックの目には、セルの実力がある意味ではフリーザよりも手強いことを見抜いていた。

 

 力任せに殴りつけるだけの高い身体能力にモノを言わせるフリーザの戦い方は、一般的な戦闘民族サイヤ人と同じ戦い方だ。

 

 バーダックのように実戦に実戦を重ねて得た粗削りだが理に適った動きは、サイヤ人やフリーザ軍の中でも珍しい。

 

 そしてセルの動きは、孫悟空やベジータ、ターニッブのように、鍛錬に鍛錬を重ねることで動きに無駄をなくした武術のモノだ。

 

 その動きは、自分よりも戦闘力の高い敵ともある程度は戦えるようにバーダックには見えた。

 

 逆を言えば、ターレスやフリーザは自分と同等か、少し下くらいの敵と戦うと苦戦する。

 

「流石、セルさんです。タゴマさんよりも余程私にとって良い修行相手ですよ。貴方を仲間に引き入れて正解でした」

 

「フフ、神の領域に至ったお前に教えることがあるとは。私もまだまだ強くなれるということか」

 

 笑い合うフリーザとセル。

 

 それを忌々し気にバーダックは睨みつけた。

 

「しかし、フリーザよ。これでは勝負にならんな」

 

 セルがバーダックを見据えながら告げる。

 

 これにフリーザは訝し気な表情になってセルを見た。

 

「バーダックと言ったな? これからゲームを始めないか? 上手くすれば命を長らえさせることができるかもしれんぞ」

 

「……なんだと?」

 

 セルはフリーザを見上げて告げる。

 

「フリーザよ、ギニュー特戦隊を呼べ」

 

「ギニュー隊長たちですか? セルさん、何か面白いことを思いついたようですね?」

 

 笑いながら、フリーザは自分の指先から紅いビームを曇天に向けて放った。

 

 瞬間、そこから煙のように雲が五つ現れ、人の形を象っていく。

 

「リクーム!!!」

 

 地球人と同じ人間型のオレンジ色のパイナップルのような髪型をした筋骨隆々の大男が現れる。

 

 戦闘服の下に黒のアンダーを着ており、両肘下、両膝下を露出している。

 

「バータ!!!」

 

 体は青色をしており隊員の中で身長が先のリクームと言う大男よりも高い。

 

 戦闘服は両腕を露出し両脚がアンダースーツで覆われているスマートな体形の男。

 

「ジース!!!」

 

 地球人に近い姿で整った顔立ちをしているが、肌は赤色で白くて背中まで伸びた長い髪を持つ。

 

 戦闘服は両腕がアンダースーツで覆われ、両脚は露出している170程度の身長の男。

 

「グルド!!!」

 

 体は緑色をしており、全体的に丸まった体格をしていて背が低く、目が四つある男。

 

 その外見は醜悪で、性格も残忍そうな笑みを浮かべている。

 

 戦闘服は両腕、両脚ともアンダースーツで覆われていた。

 

「ギニュー!!!」

 

 そして最後の男は煙が一瞬、長身な体格の角を持ったシルエットになった後、バーダックとターレスと似たような体格の姿へと固定されていった。

 

 その姿は、山吹色の道着に青色のインナーを着ている孫悟空そのもの。

 

 その胸と背中に付いたマークが「亀」ではなく、「牛」であること。

 

 左目に緑色のスカウターを付けていることが特徴だった。

 

「「「「「み! ん! な! そろって!! ギニュー特戦隊!!!!!」」」」」

 

 全員が見事なタイミングでおかしなポーズを取ってキリッとして告げる。

 

 それをバーダックとターレスが、訝し気に見上げていた。

 

「ギニュー特戦隊だと?」

 

「…フリーザ軍のエリート戦士の名前だが」

 

 二人のサイヤ人が訝し気に、孫悟空の姿をしたギニューと名乗った男を見据える。

 

 金色のフリーザもキョトンとした表情でギニューを見ている。

 

「ぎ、ギニューさん? タゴマさんや元の姿ではなく。何故、孫悟空さんの姿なのですか?」

 

 どうやらフリーザも度肝を抜かれているようだ。

 

 これに悟空の姿をしたギニューはキリリと眉を引き締めて告げた。

 

「この姿こそ、私が求めた究極の肉体だからです! 孫悟空の戦いを地球で見た私は、この肉体こそフリーザ様にお仕えするのにふさわしいと常日頃から思っておりました!!」

 

「……そ、そうですか。そ、それにしても。肉体はともかく、服装まで変えないのは……?」

 

「この山吹色の道着にセンスを感じるからです!!!」

 

「あの……ギニューさん。私、孫悟空さんが憎いんですけど……。貴方の顔を見たら、どう反応して良いのか……」

 

 ハッキリと言い切るギニューに、フリーザは混乱した様子でそれ以上何も言えなくなった。

 

 セルが両腕を組んだまま告げる。

 

「良いではないか、フリーザよ。組織の長たるお前が見た目に惑わされてどうする?」

 

「……まあ。孫悟空の能力と肉体を持った忠誠心の塊のギニュー隊長、と考えれば。私の理想の部下ですねぇ」

 

 ニヤリとするフリーザに悟空の姿のギニューは頭を下げる。

 

「ありがとうございます、フリーザ様! セル殿、感謝申し上げます!!」

 

「構わんさ。共にサイヤ人の力でサイヤ人を滅ぼすとしよう…!」

 

 ニヤリとしながら、セルはバーダックとターレスを見据える。

 

 これにギニュー特戦隊も構える。

 

「セルさん、特戦隊の皆さんを呼んだのは何故です?」

 

「私やお前では、勝利が見えている。私は、結果の見えたつまらない闘いが嫌いでね」

 

「フフ。まあ、いいでしょう。強者には余裕が必要ですからねぇ」

 

「そういうことだ。怒りや憎しみに任せてしまえば、下らんことで足を掬われかねんからな」

 

 そのセルの言葉にフリーザは静かに笑みを強めた。

 

「ええ。本当に……! やはり、貴方は私に必要ですねぇ!!」

 

 そんな二人の化け物にバーダックが吐き捨てた。

 

「調子に乗りやがって……! 今に見ていやがれ!!」

 

 再び、超サイヤ人に変身するバーダックだが、己の手を見下ろして苦虫を噛んだような顔になる。

 

 超サイヤ人3になれるだけの体力がまだ、戻っていない。

 

 隣のターレスの方も、静かに拳を握って超サイヤ人に変身した。

 

「ギニュー特戦隊程度で俺とバーダック。二人の超サイヤ人を止められると思うのか!?」

 

 問いかけるターレスに応えるようにセルがニヤリとした。

 

「確かに、ギニュー以外の者には厳しかろうな」

 

 その言葉に孫悟空の姿をしたギニュー以外の隊員は、一斉に苦虫を噛んだような顔をする。

 

 たかがサイヤ人ごときに劣ると言う自分たちが、屈辱だった。

 

「もっとも、私が稽古をつけてやれば一気に戦力が上がるとは思うがね……」

 

 セルの言葉にリクームとバータが食いついた。

 

「おお! ホントですかい、セルのダンナ!!」

 

「有難い! さすがはフリーザ様の武術の先生だ!!」

 

 他の特戦隊の者も期待を込めてセルを見ている。

 

 セルはそんな彼らにニヤリとして頷いてやった。

 

「ギニュー。死者の都から得た可能性で貴様の肉体は孫悟空そのものになった。その可能性を見せてやるがいい」

 

「ふふ。良いでしょう……、ご覧ください! フリーザ様! セル殿!!」

 

 瞬間、金色のオーラを纏ってギニューが超サイヤ人孫悟空の姿に変身した。

 

「……ギニュー隊長が超サイヤ人に……!! 素晴らしいーー素晴らしいですよ、ギニュー隊長、セルさん!!」

 

「フフ、お気に召してもらえたようだな。もっとも、ギニューの戦闘センスを持ってすればこのくらいは容易いのだがね」

 

 笑いながらセルは対峙する二人の超サイヤ人を見据える。

 

「さて…! 超サイヤ人・孫悟空の肉体を得たギニューの力。存分に味わうがいい」

 

「…けっ! 煙から生み出されたカカロットの肉体を手に入れた偽者がぁ!! 調子に乗ってんじゃねえ!!!」

 

 バーダックが息子の姿を模した敵に怒りを露わにする。

 

 これに超サイヤ人となったギニューは残忍な笑みを浮かべた。

 

「お前たちは、此処までだ!!」

 

 これにターレスも自身に残されたバトルジャケットのグローブを付けた拳を構えながら告げる。

 

「笑わせるなよ、ギニュー!!」

 

 三人の同じ顔をした超サイヤ人が睨み合う中、突如落雷がバーダック達とフリーザ達の間に落ちた。

 

「…誰です? 今、良い所なんですがね?」

 

 フリーザが金色の姿を維持したまま、問いかける。

 

 どうやら、超サイヤ人ブルーの悟空やベジータと戦った時とは違い、フリーザは金色の姿を己の肉体に完全になじませていた。

 

 そんな神の次元に達したフリーザと、その修行相手をしていたという完全体セル。

 

 二人とギニュー特戦隊の前に現れたのは、濃紺の武道着に黒のインナーシャツ。

 

 黒い足袋と草履を履いた黄金の髪を天に逆立て、翡翠に黒の瞳孔が現れた目をした超サイヤ人。

 

 死者の都より現れし、亡者の天敵。

 

 真・超サイヤ人リューベであった。

 

「……」

 

 淡々とした冷徹な表情で、リューベはフリーザを見据える。

 

 フリーザは目を静かに黄金のオーラを纏う超サイヤ人を見下ろした。

 

「超サイヤ人がまた一人…! まったく次から次へと、害虫のように湧いてきますね?」

 

 静かなリューベにフリーザはにこやかに笑いながら告げた。

 

「これは、無口な方ですねぇ。恐怖で口も開けませんか? それも仕方ありません。私は、あなた方サイヤ人の故郷・惑星ベジータを滅ぼした存在ですからねぇ」

 

 得意げに笑うフリーザを、リューベは表情の変わらない目で見つめるだけだ。

 

 これにセルが真剣な表情になって告げた。

 

「フリーザよ、三対三でもかまわんかな?」

 

「おや、ゲームはどうしたんです?」

 

「……その超サイヤ人。普通ではない」

 

 微かに畏怖の表情をしたセルを見て、フリーザは表情を改めた。

 

「貴方がそこまで言うとは。いいでしょう、この男は私が相手をして差し上げます!」

 

「バーダックは必然的に私だな。フフ、私の戦闘力を引き上げる良い機会だ!」

 

「では、フリーザ様にセル殿。私は、あのターレスとかいう孫悟空と同じ顔をしたサイヤ人を頂きましょう!!」

 

 三人の悪の戦士は、即座に方針を決めると構えを取る。

 

 バーダックがセルを睨みつけながら、リューベに言った。

 

「おい! 貴様とはコイツ等をぶっ潰した後で相手してやる!! 逃げんじゃねえぞ!!!」

 

「コイツ…! カカロットと王子がフュージョンしたゴジータとか言う奴にそっくりだ…!」

 

 バーダックの隣では、ターレスが静かにリューベを観察していた。

 

 そんな彼らに目を向けることもなく、リューベはフリーザを見て告げた。

 

「我が名はリューベ。真なるサイヤ人!! うぬが未熟さ、その肉体に刻めぇい!!!」

 

 圧倒的な力を纏って、真・超サイヤ人が咆哮した。




 次回。

 拳を極めし者・その名はリューベ

 ご期待ください( *´艸`)



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放てターレス! 最強の必殺技!!

フリーザとセル、ギニューとの闘いに突入するバーダックとターレス。

 そんな彼らの前に自らを”真のサイヤ人”と名乗る男、リューベが現れる。

 金色と化したフリーザと戦う彼の真意とは?


 金色の肌をしたフリーザは静かに、口を開いた。

 

「真なるサイヤ人ですって?」

 

「……」

 

 フリーザの言葉にもリューベは語らない。

 

 ただ拳を握るのみだ。

 

「笑わせてくれますね……! この私をサイヤ人如きが倒せると?」

 

 上品に手で口を覆い、笑うフリーザ。

 

 瞬間、目を見開いて吠えた。

 

「笑わせるなよ、この猿がぁああああ!!」

 

 右手を大きく開いて、紫色の光を溜め前方に向かって放つ。

 

 強烈な爆発が地面に起こり、クレーターを作りあげる。

 

 死者の都の霧が充満したことにより、常世の理が働いているため、本来ならば惑星を滅ぼしかねない一撃もこの程度の被害で済んでいた。

 

「……フン。何が真のサイヤ人ですって? 口先だけではーー!!」

 

 咄嗟に見上げると高速で天から“鬼”が手刀を振り下ろしてきた。

 

「覚悟は良いかーー愚か者めぃ!!」

 

(ーーヤバイ!!)

 

 咄嗟にフリーザは、後方へ大きく跳躍して紙一重で避ける。

 

 全身の鳥肌が立っていた。

 

 金色となった自分をここまで脅かしたのは、破壊神ビルスだけだ。

 

「……い、今のはーー!!」

 

 空を飛ぶ黄金の炎のようなオーラを纏った超サイヤ人。

 

 翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳は、冷たい氷のように何も映さない。

 

「……セルさんの忠告を聞いておいて正解ですね。貴方は普通の“人間”ではない、ということですか」

 

「……」

 

 氷の奥にあるのは、深く深く昏い炎。

 

 焦熱地獄のように熱く、昏い。

 

「……面白い。この私がどれだけの力を得たのか。貴方で試してあげましょう!!」

 

 ゴールデンフリーザは本気の構えを取る。

 

 もはや、油断などしていない。

 

 先の一撃は、喰らえば問答無用で行動不能にされるほどの一撃だ。

 

 天才であるフリーザには、その恐ろしさが理解できていた。

 

「今度は、こちらの番ですよ! キェエエエエエエィ!!」

 

 目を見開き、殴りかかる金色の肌のフリーザ。

 

 静かに拳を握り、真・超サイヤ人と言う名の鬼が迎え撃つ。

 

 拳の交換。

 

 フリーザの右ストレートを鬼はあっさりと左に流し、右の拳がボディを射抜く。

 

「ぐお!?」

 

 たったの一撃。

 

 しかし、その一撃には圧倒的な威力と、それ以上の殺意が込められていた。

 

(な、なんだ…!? この拳は!? 芯に来る……だと!?)

 

 悪の帝王と呼ばれるフリーザをして、初めての経験だった。

 

 拳の威力は、青髮の超サイヤ人孫悟空と互角かそれ以上だ。

 

 しかし、その一撃で金色のフリーザを悶絶させるほどではないはずだった。

 

(なんなんだ、コイツと目が合っただけで鳥肌が立つこの不快感は!? 恐怖を感じているというのか!? この、フリーザが!!?)

 

 その視線に。

 

 その一撃一撃に、強烈な殺気が込められている。

 

 純粋なまでの。

 

 ただ相手を殺す為だけの一撃。

 

 そこには嗜虐心も無邪気さも悪意も何もない。

 

 純粋な殺意のみ。

 

「おのれぇ!! あの青い超サイヤ人となった孫悟空やベジータでも、これほどのモノではなかったーー!! 貴様は一体、何なんだ!?」

 

 拳を繰り出しながら、恐ろしいと本気で思った。

 

 自分の経験の中で、これほどまでに殺意しかない拳はない。

 

 どんなに怒り狂っていても。

 

 どんなに屈辱にまみれて殺意を覚えていても。

 

 人間である以上、心が無くなることはない。

 

 なのに、目の前の超サイヤ人からは殺意以外には何も感じられなかった。

 

「心の無い人形や獣のようなモノだと思おうにも、この殺意は……!! だが、殺意以外に感じられない拳を無造作に振るう“人間”など、あり得るのか!?」  

 

 目を見開くフリーザ。

 

 離れた所ではセルも目を見張っていた。

 

「なんだ、あの化け物は? あんなモノがこの世に何故存在している?」

 

 それは身に纏う力や拳の強さだけの話ではない。

 

 ただ全てを殺し尽くさんとする殺意が、男からは立ち上っている。

 

 あり得ないほどに上昇し、全身に漲る力。

 

 比類なき純粋な殺意が拳に篭っていた。

 

「……あの殺意と無限に上がる力を前に平常心をどれだけ保っていられるか、か。何とも恐ろしい敵が居たものだ」

 

 セルが独り言をつぶやきながら、こちらと向かい合う超サイヤ人・バーダックを見据える。

 

 バーダックは燃えるような翡翠の瞳で“真・超サイヤ人”という名の鬼を見ていた。

 

「あのフリーザが完全にビビってやがる……! あの化け物野郎! ……やるじゃねえか!!」

 

 嬉し気なバーダックの横で、ターレスが表情を固めたまま告げた。

 

「あ、アレが……! この世界を統べる化け物。“真の超サイヤ人”か……!!」

 

 彼等と対峙する、超サイヤ人・孫悟空の姿をしたギニューも目を見開いている。

 

「あ、あり得ん…! 何だ、あの化け物は!? あの殺気と戦闘力は、常軌を逸している!!」

 

「……確かにな。無限に上昇する戦闘力もとんでもないものだが。特筆すべきはあの純粋な殺意だ。アレが込められた拳を受けた側は、実際の威力よりも数段上に感じることだろう」

 

「ど、どういう意味ですか、セル殿!?」

 

 冷静な瞳でセルは静かにリューベと闘うフリーザを見据える。

 

 見ればフリーザは肉体的なダメージはまだそれほど負っていないにも関わらず、苦しそうに肩で息をしながら戦っている。

 

「あの強靭なフリーザの肉体と精神力をあれほどまで削るほどの殺意……! それは生きている人間の生命力、即ち気に対して直接ダメージを与えるもの。防御力が高いとか打たれ強いことなど、あの殺気の前には関係なくなる。危険すぎる……!」

 

 人造人間・セルは様々な細胞の記憶を持ったバイオ生命体。

 

 帝王の一族・フリーザやコルド、戦闘民族サイヤ人・ベジータの記憶を持ってしても、はじめて見る。

 

「…残忍で冷酷。戦いと破壊を好む伝説のサイヤ人。なるほど、こいつは想像以上だ。あの時、超サイヤ人の壁を越えた孫悟飯の怒りを遥かに上回る純粋な殺意とはな」

 

 セルは怯えながらも、必死に恐怖を振り払おうと拳を繰り出すフリーザを見て思う。

 

「…フリーザよ。貴様ならば、ナメック星で闘った時に目覚めた孫悟空か。超サイヤ人伝説。私達は、それを軽く見過ぎていたかもしれんな」

 

 鬼と殴り合うフリーザを見て呟くセルの前に、超サイヤ人と化したバーダックが殴りかかってきた。

 

 左腕を掲げてバーダックの左フックを受けるセル。

 

 冷たい表情でバーダックを見下ろせば、彼は野性味ある笑みで笑っている。

 

「おい、化け物。テメエもフリーザの仲間なら、カカロットの敵か?」

 

「…貴様には、私が味方に見えるのか?」

 

「なら、くたばれぇえ!!」

 

 一気にパワーを上げるバーダックにセルも気を高める。

 

 同時に拳と蹴りを繰り出して打撃の応酬をしながら、バーダックは凄絶な闘争本能のままの笑みを。

 

 セルは冷徹にして残忍な笑みを浮かべて互いに笑い合っている。

 

「うぉらぁあああ!!」

 

「はぁあああああ!!」

 

 互いに右ストレートをぶつけ合い、拳と拳を押し合う。

 

 同時に金色のオーラを纏い、高める。

 

「…なるほど。孫悟空よりも荒削りだが、理にかなった動きだ。歴戦の死闘で磨き上げられたものだな…! 戦闘センスだけならば、孫悟空以上だ!!」

 

「へっ! 随分と型にはまった、お綺麗な戦い方じゃねえか? そんなんで、この俺やカカロットを倒そうってのか?」

 

 互いに力を高めながら拳を押し合い、バーダックが不敵に笑う。

 

 セルがこれに挑発するように告げた。

 

「…貴様に良いことを教えてやろう。私は孫悟空を殺したことがあるのだよ」

 

「何を寝言を言ってやがる? カカロットなら今頃、サイヤの城でダチとゆっくり休んでやがるぜ」

 

 嘲笑うバーダックにセルは静かに笑みを返しながら告げた。

 

「ドラゴンボール、というのを知っているか? 七つの光る球を揃えれば、どんな願いも一度だけ叶うという代物だ。どんな願い方をしたかは知らんが、孫悟空は二度目の復活をしたようだな」

 

 肩を揺らして笑うセルに、バーダックの目つきが鋭く変わった。

 

 作られた嘘の類ではないと理解したからだ。

 

「…テメエ。その話がマジなら、人生を終わらせる覚悟はできてるんだろうなぁ……!!」

 

 バーダックの目が凶暴かつ好戦的なサイヤ人そのものの光を帯び、口を吊り上がらせる。

 

 対するセルは冷酷で残忍な笑みを返した。

 

「貴様にできるかな? たかがサイヤ人の貴様が、完全体となったこのセルを相手に?」

 

「ケッ、ほざけええぇ!!」

 

 互いに超スピードで姿を消し、二つの金色の光が螺旋の筋を空に描きながら、所狭しと駆け回る。

 

 それを見た後、ターレスは己の前に立つ自分と同じ顔の怨敵の姿をした男を見る。

 

「一応聞いておこう。お前ごときが、この俺と闘うつもりか?」

 

「如何にも! …この、ギニュー様の力を見せてやろう」

 

 ニヤリと不敵に笑いながら、左手を前に突き出して腰を落として構えるギニューにターレスが失笑する。

 

「バカめ。ギニューよ、貴様は超サイヤ人の入り口に辿り着いただけだ。先ほど死者の都の気を得た神精樹の実を食ったことで、この俺は普通の超サイヤ人よりも遥か先にいるのだ!!」

 

「…確かに。貴様は孫悟空の肉体へと変化した私よりも身体能力が上のようだな? 先のセル殿との戦いで動きを見て分かった。しかし、セル殿が貴様に言っていたように戦いとはセンスだ。貴様の戦い方にはセンスが感じられん。このギニューのような、な?」

 

「笑わせるな…。フリーザの腰巾着めがぁ!!」

 

 余裕の笑みを浮かべるギニューにターレスが、憤怒の表情で両手首を左右に合わせたまま、灰色の光を頭上に掲げて前方に突き出しながら光線を放った。

 

 ターレス版かめはめ波とも言うべき強力なエネルギー波であり、不完全だったとはいえ孫悟空の元気玉を破った唯一の技でもある。

 

「ほう、素晴らしい威力の技だ。だが…!!」

 

 言うとギニューは突き出した左手から紫色の巨大な気弾を放った。

 

 両者の真ん中でぶつかり合う強力な灰色の光線と巨大な紫色の光弾。

 

 威力はターレスが上、しかしギニューの放った気弾を押し返せず、相殺されてしまった。

 

「…なにぃ! こんなバカな!?」

 

 目を見開くターレスの目の前にギニューが現れ、

 

「…隙ありぃ!!」

 

 右の肘打ちでターレスの顎を打ち抜いて吹き飛ばす。

 

 後方へ弾け飛んだターレスは、咄嗟に地面に片手をついてバク転するとギニューに向けて構える。

 

「…どうだ、ターレスよ! 私もセル殿より修行を受けているのだ!!」

 

 彼の闘い方を見て理解する。

 

 地球で闘ったカカロットの仲間と似た動きだと。

 

 余談ではあるが体術を使って格上と戦う術を持つ地球人は、その身体能力こそサイヤ人やナメック星人に比べて劣るものの。

 

 決して侮れないものがある。

 

 事実、ターレスは知らないがベジータとナッパが地球に襲来した時、クリリンや天津飯やヤムチャはベジータから評価されているのだ。

 

「肉弾戦ーー即ち、体術を私は鍛え上げた。そして気弾の方は、威力の高い技を持って打ち合いを制するのではなく相殺させることを学んだのだ」

 

 正面に現れたギニューにターレスが拳を振りかぶる。

 

 右ストレートを放ったターレスだが、ギニューはコレを紙一重で左に受け流し、相手の懐に踏みこむと軽く右の裏拳をターレスの鼻頭に当てる。

 

「…ぐお!?」

 

 首をのけ反らせて下がるターレス、その背後にギニューが高速移動で回ると背後から空に右足で蹴り上げる。

 

「なにぃ〜!?」

 

 天に向かって飛ばされたターレスより更に速く、ギニューは現れて右拳の打ち下ろしを顔面に叩きつけて、地面へと落とした。

 

 叩きつけられたターレスは、土煙を上げながら立ち上がる。

 

「…ヤツめ、これほどまでの体術を!!」

 

 目の前にはギニューが立っていた。

 

「どうだ、ターレス? これが武術であり、身体能力に優る相手を葬る術だ」

 

「…ふふ、なるほど。大したものだ。確かにパワーとスピードに劣る貴様の動きは俺を翻弄している。その動き、後でカカロットやこの星の奴らから学ぶ予定だった。実戦で覚えられるとは好都合だぜ」

 

「…フハハハ! 実戦で覚えようとは、流石は戦闘民族サイヤ人!! だが、このギニュー様についてこれるかな!?」

 

 ターレスはコレにニヤリと笑うとギニューから距離を置いて両手を胸の前で合わせ、前方に赤い炎の輪を作り上げる。

 

「…無ぅ駄なことをぉ! どれほど強力な気弾を作ろうと、私のミルキーキャノンで全て相殺してくれる!!」

 

 ギニューには自信がある。

 

 彼は地獄でセルやフリーザの気弾を相手にしても成功させたのだ。

 

 ターレスの技などに怯む気は無い。

 

 対するターレスは、ニヤリと笑いながら気を練る。

 

「このキルドライバーは、先のカラミティブラスターよりは威力が低い……。ただし、貴様が相殺できるかは別の話だぁ!!」

 

 この技の特性は打ち合いではなく、攻撃を当てた瞬間に爆発させるタイプの技だ。

 

 触れれば爆発する円形の炎の輪が、ターレスの身を護る盾にも敵を葬る剣にもなる。

 

 ゆえに、ギニューが技の性質を見誤って相殺するための気弾を撃ってくればチャンスだ。

 

 キルドライバーは、ギニューのミルキーキャノンと同じく相手の攻撃を無効化できる。

 

 ターレスはギニューが技を撃った隙に、これを盾にして突っ込めるのだ。

 

「終わりだ、ギニュー!!」

 

 前方に作られた炎の輪が、ギニューを目掛け放たれる。

 

 瞬間、ギニューも紫の光弾を前方へと放った。

 

 相殺する両者の技。

 

 生じた爆煙を目くらましにターレスが拳を握ってギニューに殴りかかる。

 

「もらったぞ!!」

 

 超サイヤ人と化した自分の位置をスカウターで測ろうにも、戦闘力が高過ぎて使い物にならない。

 

 不意打ちは成功するはずだった。

 

 だが、乾いた音と共にターレスの右ストレートはギニューの左側に捌かれている。

 

「……フ、馬鹿め!!」

 

「ぐお!?」

 

 ギニューは左手で右ストレートを側面に捌いた後、絶妙なタイミングで右のショートストレートを顎にぶつけてターレスを吹き飛ばす。

 

「おのれ!!」

 

 弾き飛ばされたターレスは咄嗟に地面に手をついて、姿を消すほどの高速移動を行いながら殴りかかった。

 

 ギニューも余裕の笑みを浮かべたまま、高速移動を行う。

 

 辺りに衝撃波と音が響き渡り、地面がせり上がる。

 

「ぐ!」

 

 ターレスが放った左の回し蹴りは左腕で受けられ、右の後ろ回し蹴りをカウンターで顔を蹴り飛ばされる。

 

 高速移動で体勢を整えながら、右ストレート、左フック、右の回し蹴り等を繰り出すターレスだが、全てをギニューにカウンターで返されていく。

 

 一際、強烈な打撃を受けて首を後方にのけ反らせながら、ターレスは空で姿勢を整えて止まる。

 

 ギニューはターレスから少し離れた位置で腕を組んで笑っている。 

 

「どうだ? 体術は少しは学べたか?」 

 

 勝ち誇った笑みを浮かべる超サイヤ人・孫悟空の姿をしたギニューにターレスはニヤリと返した。

  

「なるほど、ギニュー。貴様は体術を磨いたか。だが、この俺は違うものに注目したのだ。ならば…!!」

 

 再びターレスは胸の前で両手を合わせて広げ、赤い炎の輪を作り上げると放たずに前方に盾のように置く。

 

「まだ続けるのか? その無駄な足掻きを?」

 

 ギニューが再び、左手を突き出し紫の光弾を掌に作り上げる。

 

 更に自分の頭上に両手を掲げて右足を持ち上げ、仰向けにのけ反りながら、灰色の光の球を作り上げる。

 

「フフフ、確かに。この俺のキルドライバーもカラミティブラスターも通じぬとは大したものだ」

 

 ニヤリとしながらターレスは笑う。

 

 これにギニューも笑みを返した。

 

「貴様の技など何一つ通じん。技を合わせただけの即席の攻撃で、このギニューを破れるものか!!」

 

 瞬間、ターレスは冷酷な笑みを強めて告げた。

 

「ならばーー死ねェ!! カラミティ・キルドライバァアアアアアアア!!」

 

 前に一歩踏み出しながら、前方へ頭上に掲げた両手の中の光の球を突き出し、炎の輪の中心を撃ち抜く。

 

 瞬間、灰色の光線は赤い稲妻のような光線へと変化し、ギニューに迫る。

 

「馬鹿め! この程度の技で!!」

 

 放たれる掌からの光弾。

 

 しかし、紫の光弾は紅の光線にあっさりと打ち砕かれる。

 

「なんだと!?」

 

 瞬間、ギニューの目が見開かれた。

 

(ただ単に技を合わせただけではないのか? 技同士を重ね合わせることで元の技の数倍にまで威力がーー!!)

 

 表情を引きつらせながら、ギニューは目を見開いて技を放った姿勢のまま迫りくる真紅の光線を見つめた。

 

「ば、馬鹿なァアアアア!!!」

 

 強烈な爆発が起こり、ターレスの前方にあった全ての物を消し飛ばしていく。

 

 これにターレスはニヤリと残酷な笑みを浮かべて言った。

 

「フフフ。ギニューよ、確かに貴様の体術は学ぶ価値があった。だが、サイヤ人を甘く見たのが貴様の敗因だ」

 

 両腕から紅いスパークを散らしながら、ターレスは笑う。

 

 今の自分は、先の技を一日に一回しか撃てない。

 

 それでも、あの孫悟空をも回避させた光を自分の技にできたことにターレスは満足そうだった。

 

 その横に超サイヤ人・バーダックが立ち並ぶ。

 

「今の技ーーカカロットがベジットって野郎に放った紅い光に似てるな?」

 

「……フン。貴様の息子は、今の技を見て思い出したようにいきなり撃ちやがったんだよ」 

 

「ほぉ? 大したもんだ。セルって野郎には通じなかったみてえだがな」

 

「…何?」

 

 訝し気にバーダックが顔を向けている明後日の方を見ると、いつの間にかセルがギニューの肩を掴んで自分の額に人差し指と中指を立てて当てていた。

 

「貴様の倅の技だーー。瞬間移動という」

 

「……ケッ! 気に入らねえ野郎だ」

 

 微笑みながら告げるセルにバーダックが吐き捨てる。

 

 未だに体力が戻らず、超サイヤ人のままの自分への不甲斐なさもある。

 

「申し訳ない、セル殿」

 

「気にするな。貴様は気を扱う修行をこなしているところだ。それにしても奇妙な技だな? 二つの異なる技を重ねるだけでなく、凝縮して放つとは」

 

 ただ気を練るだけの修行ではあんな風にはできない。

 

 セルは静かにターレスを見やる。

 

「詫びておこう…。どうやら、センスの方は孫悟空とは異なるが負けぬモノを持っているようだ。超サイヤ人の状態で先のような一撃を放てるのだからな」

 

 紳士的な礼にターレスが忌々し気に吐き捨てる。

 

「自分には通じないと言いたげだな?」

 

「…見せてやっても良いが。先の技、この戦いの中ではもう撃てまい?」

 

 見抜かれていた。

 

 そのことにターレスが忌々しそうに表情を歪める。

 

 バーダックも静かに拳を握りながら考える。

 

(さあて、どうするか? ターレスの表情から見るにさっきのとんでもねえ一撃はマジで撃てねえようだ。俺の体力もまだ戻らねえ。このままやり合って、どうやって勝つか…!)

 

 退くことではなく、あくまで勝ちに行く。

 

 それがバーダックという男だ。

 

 だがセルは静かにバーダックではなく、明後日の方を向いて手を広げた。

 

 その手に飛び込むように金色の肌を持った人物が背中から飛び込んで来た。

 

 いや、地面に叩きつけられる寸前でセルが受け止めたのだ。

 

「ふ、フリーザさま!!」

 

 ギニューが目を見開く中、歯を食いしばり、血まみれになった顔を歪ませながら、フリーザは目を見開く。

 

 セルが腕の中のフリーザに告げた。

 

「無事か、フリーザ?」

 

「……ええ。申し訳ありませんね、セルさん。ですが…!!」

 

 怒りに身を震わせながらセルの手から離れて立ち上がる。

 

 燃えるような紅と金が混じった灼金色のオーラを身に纏い、ゴールデンフリーザは目を見開いて天に吠えた。

 

「このフリーザに……!! よくも、よくも恐怖を与えてくれたな……!! 絶対に許さんぞ、虫けらが!! じわじわと嬲り殺しにしてくれる!!!!!」

 

 バーダックとターレスがそちらを向けば、天から仁王立ちのまま強烈な轟音と共に、黄金のオーラを纏った濃紺の道着を着た男が降って来た。

 

 針金の様に硬そうな黄金の髪を天に向けてなびかせ、氷の様に冷たい翡翠に漆黒の瞳孔が現れた目。

 

 整ったサイヤ人特有の端正な顔立ち。

 

 真・超サイヤ人リューベである。

 

 彼は淡々とした表情でフリーザを見据えると静かに腰を落とし、拳を握る。

 

「貴様はーーこの俺に殺されるべきなんだぁああああああ!!!」

 

 強烈な紫の光線を右手に纏わせ、放つ。

 

 全ての気を纏わせた強烈な一撃だった。

 

 ターレスが思わず伏せる中、バーダックは静かに目を細めてリューベを見据える。

 

「……滅殺。ぬぉりゃぁああああ!!!」

 

 リューベは乾坤一擲の気合の声を発した後。

 

 左右で握っていた拳を無造作に前方で上下に組むと掌をフリーザに向け、強大な青白い光線を放つ。

 

「な、なにぃ!? これは、孫悟空のーー!?」

 

 ナメック星で戦ったフリーザに対して放たれたかめはめ波に酷似している。

 

 中央でぶつかる両者の光は、数秒押し合った後にあっさりとフリーザの放った光を打ち砕いてリューベの光が全てを飲み込んで行く。

 

「ば、ばかなぁあああああああ!!!」

 

「ふ、フリーザさまぁああああ!!!」

 

 光に包まれていくフリーザとセル、ギニュー。

 

 リクーム達、ギニュー特戦隊のメンバーが呆然と見守る中。

 

 鬼の放った一撃はあっさりと巨悪を飲み込んでしまった。

 

「な、なんだと? あのフリーザ達を一瞬で……!!」

 

 ターレスが目を見開きながら言うのを聞き流し、バーダックは険しい表情のままでフリーザ達を飲み込んだ光と、それを放った鬼を睨みつけていた。 

 

 




 次回! 惑星サイヤを襲う悪!!

 よろしくお願いします( *´艸`)


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気高き血統 孫悟空の父★

超サイヤ人の鬼ーーリューベの放った光の前に飲み込まれたフリーザ達。

しかし、彼らとの闘いはまだ始まったばかりであった。

死者の都が呼び寄せる悪の戦士たちは、次元を超え。

時空を超えてサイヤ人達を滅ぼそうと迫りくる……!


 金色と化したフリーザ、超サイヤ人・孫悟空の肉体を持つギニュー。

 

 動揺するフリーザ達とは対照的に静かな表情で見つめていたセルが、リューベの放った光に飲み込まれていった。

 

 瞬間、バーダックがリューベに叫ぶ。

 

「まだだぁ!!」

 

 ターレスがキョトンとした表情でバーダックを見ると、彼の見つめる先にセルがフリーザとギニューの腕をつかんだ状態で現れた。

 

 瞬間移動である。

 

「…チッ! あの瞬間移動って技がある限り、野郎は攻撃を避けれるじゃねえか!!」

 

 イラついたようなバーダックの声。

 

 だが、鬼はーー。

 

「フンーー」

 

 その場から消えた。

 

 これにセルが目を見開く。

 

「! まさか!?」

 

 瞬間、肉を断つ斬撃音がすると共に、セルの胸元が背後から袈裟懸けに切り捨てられた。

 

「うぐぁああああっ!!」

 

 セルが激痛に叫びながら、目を背後にやる。

 

 セル同様、瞬間移動した鬼ーーリューベが手刀を振り下ろした姿で立っていた。

 

「せ、セル殿!?」

 

「な、なんですって! 気配を読むことに長けた、あのセルさんが!!」

 

 目を見開くギニューとフリーザ。

 

「…この私の、背後を取るとはな……!!」

 

 膝を折り、歯を食いしばった状態でセルが前のめりに倒れた。

 

 ギニューとフリーザが構えを取るのに対し、鬼はすさまじい踏み込みで地面を砕きながら構える。

 

「ーー憤怒! 夜郎自大が吠えおるわ!!」

 

 鬼の纏う黄金の炎は更に高まり、天を衝き地を穿つ。

 

 フリーザが忌々しそうに拳を腰に置いて構え、ギニューも超サイヤ人の金色のオーラを纏って構える。

 

 これに鬼は静かにギニューを睨みつけて告げた。

 

「…その器。うぬの自我では足りぬ…」

 

「なんだと!? この天才と言われたギニュー様でも、死者の都の力を借りてできた孫悟空の肉体を使いこなせないというのか!?」

 

「…うぬの器で辿れるのは入口までよ。“人外”の域に達することができねば、“真に人を超える”ことはできぬ」

 

 圧倒的な気配を放ちながら、幽鬼の様に姿と気配を消して、鬼はふと現れる。

 

 ギニューの目の前に。

 

「ぬお!?」

 

 強烈な右拳の一撃が腹にめり込み、ギニューはうずくまりながら前のめりになると同時。

 

「…昇!!」

 

 リューベは飛び上がりながら右拳を突き上げて顎を跳ね上げ、ギニューを後方へ弾き飛ばした。

 

「グハァ!!」

 

 背中から地面に叩きつけられ、血を吐くギニュー。

 

 超サイヤ人と化していた髪は一瞬で黒に変わり、動かなくなる。

 

「……」

 

 リューベは、鬼の眼を静かにフリーザに向ける。

 

 フリーザも静かにリューベを見返した。

 

「なるほど。ギニュー隊長やセルさんを物ともしないとはね。とてつもない強さだ」

 

 先ほどまで取り乱していたフリーザではない。

 

 セルやギニューを倒した動きを見て、逆にフリーザは冷静になった。

 

 頭を冷やし、気を集中する。

 

 両足を揃え、両手を開いてゆっくりと構える。

 

「さて、では続きと参りましょうか?」

 

 この発言にバーダックが訝しげに眉をひそめる。

 

 先ほどからフリーザはリューベに劣勢を強いられていた。

 

 だというのに、やけに余裕のある表情だ。

 

「…では、行きますよ!!」

 

 瞬間、フリーザの纏うオーラが爆発し、一気にリューベに近づくと右の拳をガードの上から叩きつける。

 

 リューベの右拳が返しでフリーザの腹に突き刺さる。

 

「…ぐう!? こ、の、猿がぁああ!!」

 

 フリーザの目が血走り、激しい乱打戦が繰り広げられはじめた。

 

 互角の殴り合いに見える。

 

「…どうなってやがる? フリーザの野郎、さっきまであのバケモンに押されてたじゃねえか」

 

「そんなもの。化け物が手加減してるのか、フリーザが本気になっただけだろ?」

 

 ターレスの言葉に納得していないようにバーダックは、睨みつける。

 

 半分は正解だった。

 

 フリーザの動きが変わったのだ。

 

(…フリーザの野郎は今、全力でリューベとやり合ってる。ペースを気にせずに。だとすりゃあ、息切れになるのは明白だ。あんなペースを維持できる訳がねえ)

 

 フリーザは先までとは違い、手数を増やして動くスピードを上げ、絶えずリューベと殴り合っている。

 

 距離を置いて気弾を撃つような真似はしない。

 

 真っ向から殴り合っていた。

 

 宙に幾筋も刻まれる黄金と灼金の線。

 

 秒間に数百は下らない打撃を応酬しながら、絶えず相手を翻弄できる有利な位置を求めて殴り合う。

 

 だが、この打撃の応酬にも差がつき始めた。

 

 絶えず気が上がり続けるリューベと、明らかにオーバーペースで動いているフリーザでは、差が出て当たり前だ。

 

 瞬く間に血まみれになったフリーザが、のけ反り始める。

 

「…ぐう、ま、まだまだぁ!!」

 

 血を吐きながらも逃げずに真っ向から殴り合うフリーザに、バーダックが目を細める。

 

「…いけ好かねえクソ野郎が。真っ向から殴り合うとは。チッ、認めたかねえが見直してやるぜ。フリーザよぉ」

 

「だが、あの化け物には勝てん。度胸は認めてやるがな」

 

 対照的にターレスは嘲笑しながら、告げる。

 

 しかし、自分の発言に眉根を寄せて考える。

 

「…あのフリーザが、考えなしに勝てないと分かっている相手に真っ向から殴り合うだと? おい、バーダック」

 

「なんか、企んでやがるって言いてえのか?」

 

「貴様は、奴がこのまま潔く死ぬと思うか?」

 

 黙って見あうこと数秒。

 

 バーダックはジッとフリーザを、いやその周りを確認していく。

 

 なにか不審なものがないかを確認するために。

 

 この時、バーダックは気付いた。

 

 フリーザや自分たちが戦ったことで生じたクレーターや地割れが、綺麗になくなっていることに。

 

 目を細めてみれば、生まれたての亀裂がまるでビデオの逆再生のように元の姿に戻っていく。

 

(……こいつが“常世”ってヤツか)

 

 そして、しばらく周囲を探していると。

 

 程なくして不審なソレは見つかった。

 

「おい、ターレス! あれは何だ?」

 

 空に巨大な青く光る球体が浮いている。

 

 曇天の空に。

 

 つまり、雲の下にそれは存在している。

 

「……太陽じゃないな。なんだ?」

 

 それは、何処か禍々しくも美しい青い光の球だった。

 

 バーダックの言葉にターレスも訝し気に目を細めながら呟く。

 

 その光る球の下には、両手で頭上に掲げるようなポーズを取った、蝉のような羽を持った緑色の人型の化け物が居た。

 

「野郎は、セル!!」

 

「さっきやられたのは演技か? しかし、アレは……!!」

 

 どんどんと気が膨らんでいる。

 

 球の大きさは限りなく強大に。

 

「悪いが、元気を頂くぞ……!!」

 

 光は限りなく強力になっていく。

 

 死者の都の大気中から、あの青い光の粒子は流れているようだった。

 

 それが球に吸収されてどんどんと膨らんでいる。

 

「フフフ。死者の都に満ちている怨念の気をもらっては、元気玉とは言えんかな?」

 

 光の球を見据え、ほくそ笑むセルをバーダックは睨みつけた。

 

「あの野郎! ふざけた真似を!!」

 

「フリーザが、大人しくこのままやられるわけがないと思っていたが。やはりな」

 

 二人のサイヤ人は、再び拳を握り金色のオーラを纏う。

 

 その前に、黒髪の状態になったギニューが現れる。

 

 鋭い翡翠の瞳で睨みつけるバーダック。

 

「カカロットの面で、俺の前に立つとはなぁ? ギニューっつったか? セルといい、フリーザといい、どいつもこいつもふざけやがって…!!」

 

「…ふふ、孫悟空の父親か。だが、このギニューはまだ倒されてはいない!! お前たちぃ!!!」

 

 スペシャルファイティングポーズと名付けた右手を前に出し、左手を頭の上に置いて足を肩幅に開いて構える。

 

「「「「了解っすよ、隊長ぉおおおおお!!!!」」」」

 

 瞬間、四人の特戦隊がギニューを中心に集まり、奇妙なポーズを同時に取る。

 

「「「「「我ら、ギニュー特戦隊!!」」」」」

 

 五人揃った時、五色の気のオーラが全員を纏い、一気に戦闘力が増加した。

 

「…なんだと? 力が跳ね上がりやがった?」

 

 この現象にバーダックが目を鋭く細め、睨みつける。

 

 その横からターレスが腕を組んでギニュー達を見下した。

 

「下らない真似だ。確かにおかしなポーズで戦闘力が上がるのは奇妙だが、俺達の戦闘力を超えるほどではない」

 

 嘲り笑うターレスの言葉にギニューが笑う。

 

「そのとおりだ。だが、この世界を包む霧は死者の都のもの。この世界では、ありとあらゆる可能性が交わる。孫悟空とベジータの可能性によって私達は再現され、引き寄せられた」

 

 本来ならば出会うはずのない金色のフリーザと人造人間セル。

 

 地獄で出会ったセルとフリーザ、ギニュー特戦隊。

 

 ギニュー特戦隊と孫悟空の肉体を持ったギニューが揃った世界。

 

「そう。お前たちもだ!!」

 

 その言葉にターレスが目を見開く。

 

 対照的にバーダックは淡々とした表情で自分の体を見下ろす。

 

「ふん、やはりか」

 

「な、なんだと? どういうことだ?」

 

 ターレスが困惑の表情で訳知り顔のバーダックを見る。

 

 向かいでギニューがにやりとしながら、バーダックを向いた。

 

「ほう。気付いていたか?」

 

 バーダックは乱暴に髪をかき上げ、告げた。

 

「ああ。惑星プラントの記憶。惑星ベジータの記憶。俺が仲間たちに馬鹿にされ、フリーザに一人で殴りこんだ記憶。そしてーー仲間に慕われていた記憶とギネやラディッツ、カカロットの記憶。惑星ベジータと共に死んだ記憶もあれば、惑星プラントで超サイヤ人に目覚めた記憶もある。地獄でカカロットと魔人ブウって奴の戦いを見た記憶もな。その全てが、どう考えても繋がらねえ…!」

 

 バーダックは睨みつけるような目でギニューを見る。

 

「そう。私達も貴様達も、この世界ーー死者の都が作り出した、仮初めの存在を依り代にしただけのものだ」

 

 ニヤリと笑うギニューに、ターレスが目を見開きながら頭の中に思い描く。

 

(そうだ…! 俺は、神精樹と共に地球でカカロットに……!! ならば、この俺は……!!)

 

 バーダックは静かに拳を握り締める。

 

「俺は死んだのか。生きてんのか。その記憶も曖昧だ。生きてる記憶と死んだ記憶。愛した記憶と見捨てた記憶。仲間を失った記憶と妻と共に見送った記憶。惑星プラントで出会った新しい仲間の記憶……!!」

 

 拳を握り締める。

 

 金色のオーラを纏うバーダックは、翡翠の瞳でギニューをセルをフリーザを見据える。

 

 カカロットを見た記憶は、保育器の中で眠る息子か?

 

 三歳児まで育った、バトルジャケットを着た息子か?

 

「どうでもいい……!!」

 

 ターレスが見守る中、笑うバーダック。

 

 己の人生をせせら笑う。

 

「この俺が“どの俺”なのかなんざ、興味もねえ。生きてるのか、死んでるのかさえな! 今の俺が誰だろうと、俺にとって大事な事は一つだけだ……!!」

 

 睨みつける。

 

 全ての記憶が一つに重なっていく。

 

 仮面を付けられ、改造したバトルジャケットを着させられた記憶。

 

 時の狭間と呼ばれる空間で、青白い肌の青年と戦った記憶。

 

ーー カカロット。絶対に、生き延びろ……!! ーー

 

 歯を食いしばる。

 

ーー 情けねぇ、俺に力があれば……!! ーー

 

 血が出るまで拳を握り締める。

 

ーー フリーザァアアア!! 俺は、貴様が許せねぇぇええええ!!! ーー

 

 金色のオーラが更に勢いを増していく。

 

ーー カカロットの運命も、関係ねぇ!! テメエは俺がぶっ潰す!! ーー

 

 全身の血が騒いでいる。

 

 目覚めろと告げられている。

 

 貴様も目覚めろと。

 

 至れと声がするーー。

 

「テメエらは、カカロットの敵だ……! 俺とギネの大事な倅を狙う奴はーー誰だろうと、ぶっ倒す!!!」

 

 感じるままに身を委ねる。

 

 気を。

 

 意識を。

 

 力を。

 

 全身から黄金の炎が噴き上がり、天に向かって柱を立てる。

 

 全てのバーダックが一つに重なる。

 

 幻影の存在は一つに統合される。

 

 圧倒的な気を纏い、金色のオーラが黄金の炎に変化する。

 

 髪の色は、金色よりも更に濃い黄金色。

 

 翡翠の瞳には漆黒の瞳孔が現れる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ギネ…! ラディッツ…! トーマ、セリパ、パンブーキン、トテッポ!! テメエらの借りをまとめてあのクズ野郎に返してやる!!!」

 

 バーダックの髪は更に天に突き立ち、前髪が少なくなる。

 

 無限の戦闘力の上昇を始めるバーダックに、ゴールデンフリーザを圧倒していたリューベが静かに目をバーダックに向けた。

 

「……うぬもまた“真に至りし”か。時と生死の壁を行き来する者よ」

 

 深紅のバンダナが真っ赤に、肌が白く透き通る様に美しい肌色に輝く。

 

 ターレスが思わず、バーダックを見て呆然と呟いた。

 

「“真の超サイヤ人”か…! だが、カカロットやターニッブとは微妙に違う……!? あの髪型は、超サイヤ人2だと!?」

 

 そう。

 

 目覚めたバーダックの髪型は超サイヤ人2のそれだった。

 

「邪魔だ、ギニュー!」

 

 右手を開いて青い光を掌から漏らすと、それで空を撫でた。

 

 それだけで、扇状に光の波動が走る。

 

 その波動を止める術は、ギニュー達には無い。

 

 瞬間、ギニュー達の目が真紅の光を帯び、全身を邪悪な紫の気が覆い尽くし、彼らはバーダックの一撃を一度だけ耐えてみせた。

 

 ターレスが目を見開く中、ギニュー達の額には「M」のマークが付いていた。

 

「…フフフ、中々面白い真似をするじゃないか。サイヤ人」

 

 其処に居たのは悟空の姿をしたギニューと、同じ道着の上を着た桃色の人の姿をした異形。

 

 あらゆる人間を吸収し、己の肉体を変化させた究極の魔人。

 

「この技は、バビディやビビディといった魔術師の技でな。戦闘力を高める洗脳の魔術だ」

 

 バーダックがその異形を睨みつけ、つぶやいた。

 

「テメエは、魔人ブウだな?」

 

「そのとおりだ。孫悟飯の祖父にして、別次元の私を倒した男ーー孫悟空の父親よ」

 

 構えるバーダックはケッと吐き捨てる。

 

「何が別次元だ? テメエも、俺達と同じ死者の都が作り出した幻影だろうが!!」

 

 その言葉にブウはニヤリと笑う。

 

「そのとおりだ。だが、お前とて分かっているだろう? 既に私たちは個として独立した存在なのだよ。きっかけは死者の都の霧だ。しかし自我を持ち、仮初めの肉体を完全に固体化することに成功していればよい。お前達と同じようにな」

 

「何が固体化だ? 死者の都ってのが消えれば、俺達は消えてなくなるんだろうが。この惑星から出た時点で、俺もテメエも霧となってな?」

 

「……そこまで理解しているのか。その頭の切れは孫悟飯ーーいや、孫悟空か? 戦いに関しては、素晴らしい感覚を有している」

 

 魔人ブウはチラリと、ギニュー特戦隊を見る。

 

「お前たちには、もう一人のサイヤ人を相手してもらおう。超サイヤ人の孫悟空の肉体を持ち私の魔術で強化までしてやっているのだ。五人がかりならば、遅れは取るまい?」

 

 その言葉に、ギニューは黒髪の状態から再び超サイヤ人の姿へと変化する。

 

 五人は血管の筋が顔や体に浮き上がり、筋肉が膨張していた。

 

「…チッ! こんな雑魚共を強化したくらいで、この俺を倒せると思うのか!!」

 

「…孫悟空の肉体。セル殿から得た体術。そしてブウ殿からもらったこの力で、貴様を殺してやるぞ!!」

 

 ジース、バータ、リクームの三人が、紫のオーラを纏いながら真紅に光る瞳でターレスを睨みつけて殴りかかってくる。

 

 三対一など、ターレスには物の数ではない。

 

「邪魔するなぁああ、死にぞこないども!!!」

 

 ジースの左ストレートを右に躱し、右の拳で体躯を貫く。

 

 右脚に気を纏わせ、左右から殴りかかって来たリクームとバータを中段回し蹴りで薙ぎ払う。

 

 悲鳴を上げる間もなく、消される三人。

 

「きぃぇえええええ!」

 

 奇妙な声を上げるとともに超能力者・グルドが、ターレスの動きを止めようと念力を使う。

 

「…フン、邪魔をするなと言わなかったか? 虫けらめ」

 

「!?」

 

 驚愕の表情で念力を破られ、弾き飛ばされるグルド。

 

 ターレスは金色のオーラを更に高めて己の身を縛る念力を弾き飛ばすと、右掌を突き出し金色の気弾を放って肩で息をするグルドを消し飛ばした。

 

「…フン。残るは一人」

 

 ニヤリとしながらギニューを見ると、彼は腰だめに両手をたわめ青い光の球を作り出していた。

 

「!? それはカカロットの!?」

 

「か~、め~、は~、め~!!」

 

 ターレスは舌打ちをすると同時に両手を頭上に掲げ、灰色の光の球を作り上げる。

 

「ちぃっ! やらせるかぁあああ!!」

 

「波ぁあああああああッ!!!」

 

 互いに向かって両手を突き出し、灰色と青色の光が中央でぶつかった。

 

 先程直っていた地面が再び割れて、噴き上がる。

 

 今度はターレスの後ろの地面に亀裂が走り始めていた。

 

「な、なにぃいいいい!? こ、これは……!!」 

 

「フハハハハ! どうだ、ターレスよ!! 貴様の技など、かめはめ波の前には無力だ!!」

 

 勝ち誇るギニューにターレスは叫んだ。

 

「他人の肉体と技、力を得ただけの屑がほざくなぁああああ!!!」

 

「よく言う! 勝利こそが全てなのは私も貴様も変わらんだろうがぁああ!!」

 

 押されている。

 

 このままでは、かめはめ波にターレスの技は押し切られる。

 

 その事実に彼は、舌打ちをして考える。

 

 ターレスとギニューが互いに向かって光を押し合う傍で、静かにバーダックは立ち上る己の力を見下ろした後、魔人ブウを見据えた。

 

「フフフ、真の超サイヤ人か。死者の都から得た可能性で、まさかソレに至るとは。恐れ入ったよ、バーダック」

 

 両腕を組み、余裕の表情を浮かべるブウは静かに後ろを振り返り、セルを見た。

 

 二人は目を合わせると、口元に酷薄な笑みを浮かべて笑い合う。

 

 セルが頷くと、ブウは静かにバーダックに顔を向け直した。

 

「その力は厄介でね。お前も知っているだろうが、その姿になっている間は無限に気が上昇する。しかも闘う相手のレベルに合わせてね。自分と拮抗している実力の者に使っても大した意味はない変身だが、レベルが明らかに違う相手との闘いでは重宝されるだろう」

 

 バーダックは静かに魔人ブウを睨みつけた。

 

「随分と詳しいじゃねえか? この姿になると無限に強くなるだけかと思ってたが」

 

「当たり前だ。私はこの姿になるまでに何百年と争ってきたのだからね。真の超サイヤ人というのは、強ち外れてはいないのだよ。戦えば戦うほどに強くなる、お前たちサイヤ人の特性を高めた姿だからね」

 

 だが……と前置きしてブウは続けた。

 

「今のお前はお前が成れる最強の姿。超サイヤ人3を少し上回る程度の力だ。そこから力が高まっていったところで、敵がそのレベルよりも低いか、同等程度であれば力は少しずつしか上がらない。敵を上回った時点で上昇する力の速度は下がる。ベジットになった私がそれを教えてくれたからね」

 

「…フン。魔人ブウやらフリーザなんてのにならずに、さっさとそのベジットにならねえのか? 俺は歓迎するぜ? いけ好かねえ野郎だからな、一度はぶん殴ってやりたかった」

 

「巫女によってあの姿は封じられてしまってね。生憎と作り上げられなくなった。まあ、それでも今のお前程度ならば問題はないがな」

 

 そう言うとブウは右手を掲げて、更に煙の渦を生じさせる。

 

 人型の姿をした異形が再び、バーダックの前に現れた。

 

「ギギグガガガガガ!!」

 

 牙を剥き出しにした鬼が、凶暴に笑みを浮かべている。

 

「……! 随分と大盤振る舞いじゃねえか? 次々と新しいのを出してくるなんてよ」

 

「ジャネンバという。こいつも孫悟空やベジータに恨みを持っている怨念の姿さ。お前たちが死者の都に反発するサイヤ人共の意志ーー魂で呼ばれた孫悟空達の可能性ならば、私たちはお前たちを滅ぼすために作られた死者の都の意志といったところか」  

 

 ブウは自分の戦闘力を上げることなく、超サイヤ人3を少し上回る程度の力しか出していない。

 

 そしてジャネンバもまた、ブウの意志に従って戦闘力を抑えている。

 

 同時に魔人と邪念が攻撃を仕掛けて来た。

 

 魔人ブウが先にバーダックの懐に入り込み、殴り合う。

 

 高速でその場で足を止めて拳と蹴りを繰り出しあう両者。

 

 バーダックの背後に、まるでパズルのブロックのように身体を分解させながら移動してくるジャネンバ。

 

「グガガガ!!」

 

 後ろから顔を目掛け、殴りつける。

 

 瞬間、右の拳を裏拳にして受けるバーダック。

 

 咄嗟にくるりと身を反転させ、左右にブウとジャネンバを置くと両手をそれぞれに突き出し、気を放って吹き飛ばす。

 

 後方へ弾き飛ばされたジャネンバの目の前にバーダックは現れ、強烈な右のボディブローを叩き込んだ。

 

「グガァアア!」

 

 両腕を組んで頭上からジャネンバの頭に振り下ろす。

 

「ギャァ!」

 

 クレーターを作りながら、地面に倒れ込むジャネンバ。

 

 その後ろから魔人ブウが右手に桃色の光弾を作り上げて、急接近しながら放ってくる。

 

 これにバーダックは右の掌を広げ、蒼い光球を作り出す。

 

「くたばれ!」

 

 一喝と共にオーバースローで投げつけると、青白と桃色の光弾が両者の中央でぶつかり合い相殺した。

 

 殴りつけてくるブウを右腕で受けて左拳を返す。

 

 背後にジャネンバがブロックを分解して組み立てるように移動し、殴りかかってくる。

 

 乱打戦が始まり、バーダックは互角の戦いを展開してみせる。

 

「フフ、素晴らしい戦闘センスだ。私とジャネンバの二人がかりでも押し切れんか。流石は孫悟空の父親だ」

 

 満足そうに笑うブウだが、バーダックは忌々しそうに表情を歪める。

 

 悟空やベジータ、ブロリー達の時のような、一気に戦闘力が上がるような感覚がないからだ。

 

 ブウ達がもっと力を引き出さなければ、バーダックはそのレベルにまで上がれない。

 

 このまま手を抜かれて時間切れを待たれれば、負ける。

 

「からくりがバレてるってことか!」

 

 今の自分は痛みを感じず、攻撃を受け付けない無敵の状態ではあっても、万能とは行かないらしい。

 

 このままでは確実にやられるとバーダックも分かった。

 

 その時だった。

 

 前方で人外の戦いを繰り広げていたリューベが、こちらに向かって移動してきたのだ。

 

「な、なにぃ!?」

 

 ブウがこれに驚き、ジャネンバも恐怖に満ちた表情になってバーダックから同時に離れる。

 

 思わずバーダックがリューベに問いかける。

 

「…何のつもりだ、この鬼め」

 

 リューベは、何故かバーダックの目の前に来るとピタリと動きを止め、フリーザに向き直る。

 

「逃がすか、このサルめェえええええ!!」

 

 金色のフリーザが紫の雷を纏った紅い光弾を右手に作り上げ、全身の気を纏った一撃を放ってきた。

 

 それを淡々とリューベはすり抜けて避ける。

 

 これにブウがリューベの狙いを悟り、フリーザに叫んだ。

 

「待て! フリーザァアアアア!!」

 

 制止するブウの目の前で、フリーザの気弾が真・超サイヤ人と成ったバーダックに直撃した。

 

 瞬間だった。

 

 爆心地から強烈な黄金の炎がまるでフリーザの紅の光弾を食らう様に猛り狂い、一気にバーダックの戦闘力を引き上げた。

 

 黄金の炎は吹き上がり落ち着いた後、ゆっくりとバーダックの身に纏うように小さくなる。

 

「な、なんですって……! 私の渾身の一撃を、餌にしたというのか!?」

 

 驚愕するフリーザの目の前で、バーダックは己の肉体を見下した。

 

「こいつは……! なるほどな……!! 今の俺なら、テメエを倒せそうだぜ。フリーザよぉ?」

 

 ニヤリと凶暴に笑みを浮かべるバーダックの隣にリューベがすり足で移動してきた。

 

 静かにブウとジャネンバに向け、拳を向けている。

 

「! 奴を譲ってくれんのかい? チッ……借りを作っちまったな」

 

 バーダックは静かにフリーザに拳を向けて握りしめた。

 

 未だに光球を作り上げているセルの方を無論意識しながら。

 

「俺自身がこの変身を維持していられる時間は、まだあるみてえだな」

 

「…クッ! あのサル野郎め!! 私の力を利用して雑魚の戦闘力を引き上げるなんて!!」

 

 自分と同等レベルに戦闘力が跳ね上がったバーダックを睨みつけ、ゴールデンフリーザは忌々しそうにする。

 

 その時、ターレスがギニューのかめはめ波を辛うじて相殺しながら、バーダックとリューベの隣に高速移動して現れた。

 

「ククク、サイヤ人の成長速度を甘く見たのが貴様らの運の尽きだ」

 

「フリーザ、覚悟しやがれ!! 俺は貴様が許せねぇ!!!」

 

「……我、求めるはうぬらの真なる一撃。ただそれのみ!!」

 

 三人の超サイヤ人を前に、ブウとジャネンバ、ギニューもフリーザの下に集う。

 

「戦闘民族サイヤ人ーー。つくづく、嫌な連中でしたよ!!」

 

「…だが、それもここまでだ。長きに亘る我ら死者の意志と戦い続けた鬼よ、我らの怨念の気を受けるがいい」

 

 フリーザとブウの言葉の後、セルが瞬間移動でバーダック達の目の前に現れる。

 

「しま!?」

 

「奴には、これがーー!!」

 

 ターレスが目を見開き、バーダックも思い至らなかった自分に舌打ちする。

 

 あれほどの強大な光球ならば、放たれた瞬間に避けるなど造作もなかった。

 

 だが、その本体が一瞬で目の前に現れるのは誤算だ。

 

「悪いが、これで終わりだ!!」

 

 セルがニヤリとしながら、光球をふり降ろした。

 

 咄嗟にバーダックがその球を両手で受け止める。

 

「く……! 何だと、野郎これほどの力を溜めて……!?」

 

 金色のフリーザと同等程度になった自身でも受け切れないほどの圧倒的な力だ。

 

 真・超サイヤ人が力を引き上げてくれるが、間に合わない。

 

 セルが冷酷な笑みを浮かべて、右手を前方に差し出した。

 

「力が引き上がる前に消させてもらう。良い闘いだったぞ……。では、さらばだ」

 

 ターレスが呆然としていた表情から、咄嗟にキルドライバーを作り上げて光球を受け止めているバーダックの隣に打ち込む。

 

 しかし、あっさりと炎の輪はかき消された。

 

「な!? なんだと!?」

 

「ち、ちくしょぉおおおおおおっ!!!」

 

 ターレスとバーダックが目を見開く中、セルが静かに端正な口元を歪めて気を込めた。

 

「はぁああああああっ!!!」

 

 押し込まれる光の球。

 

 なすすべなく、光の球に飲み込まれていく三人の超サイヤ人。

 

 それを見て、フリーザとブウが笑う。

 

「おほほほ! 素晴らしい!! これで、終わりだサル共!!!」

 

「フフフ、美しいものだな」

 

 光の球は、地表を削りながら後方で爆発した。

 

 強烈な一撃は、真・超サイヤ人となったベジットやゴジータの究極の一撃ほどではない。

 

 それでも、今のバーダックやターレスには受け切れない。

 

 きのこ雲が空に向かって突き立つ。

 

 それを見て初めて、セルが勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

「フフフ、さらばだサイヤ人どもよ!! これで、この惑星の運命は決まったのだ!!!!」

 

 両手を広げ金色のオーラを纏って、大の字になりながら喜ぶセル。

 

 ギニューが喜びの舞を踊りながら、勝利を祝う。

 

 爆煙がゆっくりと晴れていく。

 

 強大な溝が出来上がり、爆発した地点では底が見えないほどの穴が出来上がっていた。

 

 フリーザはニヤリと笑った後、ゴールデンフリーザから元の白い姿に戻る。

 

「さあて残ったのは力を使い切った孫悟空達と、超サイヤ人二人。後は無駄に増えたサルばかり」

 

「我々ならば、一時間もあれば皆殺しにできる」

 

「勝ちましたな、フリーザ様! セル殿! ブウ殿!!」

 

 ほくそ笑むフリーザとブウ、ギニュー。

 

 それに向けてセルも笑いかけようとして気付いた。

 

 煙が晴れていくごとに石の塔のようなものが、巨大な穴の一点に立っている。

 

 それは爆発の中心地だった。

 

「ま、まさか……!!」

 

 驚愕の表情でセルが見つめ。

 

 笑っていたフリーザ達もゆっくりと恐怖に表情を引きつらせていく。

 

 煙が晴れて、徐々に石の塔の全容が明らかになっていく。

 

 僅か肩幅程度の足場となった地表に静かに黄金の炎を纏って立つは濃紺の道着を着た鬼ーーリューベ。

 

 鬼はかすり傷一つ負うことなく、その場に立っている。

 

「こ、こんな……バカなことが……!!」

 

「あ、ありえん……!! あの元気玉には死者の都の意志そのものが詰まっていたのだぞ!?」

 

「グギギギッ!!」

 

 フリーザ、ブウ、ジャネンバが怯えの表情でリューベを見る。

 

 それを見逃すサイヤ人ではない。

 

「……往けぃ!!」

 

 リューベが一喝すると同時、フリーザ達の目の前に二人の金色と黄金のオーラを纏った超サイヤ人が現れた。

 

「これで、終わりだーー!!」

 

「くたばれ、フリィザァアアアアアア!!!」

 

 超サイヤ人・ターレスが頭上に掲げた灰色の光を両手を突き出して放てば、隣で“真に至った超サイヤ人”バーダックが全ての力を込めて作り上げた右手の光弾をオーバースローで放つ。

 

 二人の放った光が全ての悪の戦士を飲み込んで行った。

 

 光が晴れた時、死者の都と同じような霧と曇天に支配されていた惑星サイヤの王都周辺には、緑成す大地とどこまでも高く澄んだ青空が広がっていた。

 

「……ギネ。トーマよぉ、やっとテメエらの仇を取れたぜ」

 

 静かにバーダックはそれだけを告げた。

 




真に至ったバーダックの光とターレスの一撃は、フリーザ達を見事に倒し、王都を囲んでいた霧と不吉な雲は消えた。

しかし、死者が死者の都に戻っただけだとリューベは告げる。

意志を倒したいのならば、都に降りて固体化した意志との決着を付けねばならない。

その言葉にバーダックは迷うことなくリューベと共に死者の都に降りるのだった。

次回、惑星を守る意志 死者の都

ご期待ください(*^^*)


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新たなるサイヤの力

バーダックとターレス。

 そして、リューベの活躍により倒されたフリーザ達。

 その根本を断つために、バーダックが動き出した。


 バーダックとターレスの一撃は、亡者の怨念が作り出したフリーザ達を倒すだけに留まらず、惑星サイヤを覆っていた瘴気の霧を全て払った。

 

「…フン。ようやく鬱陶しい霧が晴れたか」

 

 ターレスが鼻を鳴らしながら腕を組んで、超サイヤ人の変身を解いた。

 

 隣でバーダックが黄金のオーラを纏ったまま、翡翠に黒の瞳孔が現れた目で、リューベという己と同じ“真に至った超サイヤ人”の鬼を見る。

 

「フリーザどもは死んだのか?」

 

「……死者が墓場に戻っただけよ」

 

「つまり、時間が経てば復活するんだな?」

 

 目を鋭く細めて問いかけるバーダックに、リューベは何も言わない。

 

 真・超サイヤ人から普通の超サイヤ人になりながら、バーダックにはその沈黙が肯定だと理解できた。

 

「死者の都に行けば、フリーザ達を生み出すふざけたヤツをぶちのめせるんだな?」

 

「……死者共の意志の全てを一つに固体化できれば、あるいは」

 

「なら、とっとと案内しろよ! 俺がやる!!」

 

 真・超サイヤ人になっていられる時間はもうほとんど残っていない。

 

 それでもバーダックは退く気がない。

 

 その目を見た後、リューベは静かに己の脇に向かって波動拳を放った。

 

 次元に裂け目が現れ、その向こうには死者の都と呼ばれる瘴気に満ちた世界が広がっている。

 

 ニヤリと笑うバーダックの肩をターレスが掴み止めた。

 

「おい、貴様まさかこのまま行く気か!?」

 

「…たりめえだろ? テメエはサイヤ王に現状を伝えて来い」

 

「死ぬ気か?」

 

 静かに問いかけるターレスにバーダックはニヤリとした。

 

「元々、死んだような身だ」

 

「……」

 

「じゃあな、ターレス」

 

 それだけを告げ、バーダックは次元の裂け目に自ら飛び込んで行った。

 

 リューベは見届けると、静かに己も裂け目の中に飛び込む。

 

 荒野に残されたのはターレスだけだった。

 

「馬鹿め…! 勝算もない闘いなど死にたがりのやることだ!! 俺は貴様らのような馬鹿な真似はせんぞ!!」

 

 拳を握り、吐き捨てる。

 

「仮初めの体だと? 固体化しているのならば、後は星から出ても無事なようにする方法を探らねばな」

 

 サイヤ王への報告など二の次だと、ターレスは王都に向かって歩くのではなく、別の方角へ向けて飛び立った。

 

ーーーー

 

 王都の神殿では、プリカが目を見張っている。

 

「これは…! どうして? 死者の都の霧が晴れた? バーダックさんとターレスさんが?」

 

 瘴気の雲と霧に覆われた世界が、一気に晴れ渡る青空に支配されたからだ。

 

 この世に溢れていた常世の霧が消え、亡者達の気も失せている。

 

 呆然としながらそれを感じていると、女官達が彼女に向かって走って来た。

 

「プリカ様! 大変です、ターニッブ様達が!!」

 

 その言葉にプリカは一もニもなく駆けだした。

 

 神殿の寝台で“真の超サイヤ人”に至った戦士達は、力を使い切って体を休めていた。

 

 巫女の祈りで体力は回復しているはずだが、未だに目を覚まさない彼らに変化があったとすれば。

 

 最悪の可能性を考えながら、プリカは寝台室に訪れた。

 

 王都に流れる清らかな水は、神殿より溢れている湧き水からなっている。

 

 その湧き水の傍にある寝台にターニッブ、孫悟空、ベジータ、ブロリーは寝かされていた。

 

「これは……!!」

 

 プリカをして驚愕する。

 

 彼らは眠りながらも圧倒的な気を纏い、力を高めていっている。

 

「プリカ様、一向に目覚める気配はありませんが。これは一体…!」

 

「……夢を見ているのです。四人のサイヤの戦士達は同じ夢を見ながらおそらく、修行を……!!」

 

 信じられないという表情でプリカは眠っている四人を見ている。

 

 体を休めながらも、彼らは闘うことをやめていない。

 

 感じる力は、どんどんと大きくなっている。

 

「この人たちは、どうしてここまで闘うの?」

 

 思わずプリカはターニッブの前に歩み寄り、その頬を撫でる。

 

「貴方はどうして……?」

 

 無防備な彼にだからこそ、プリカも己の本心を隠さずに済む。

 

 愛おし気に彼女はターニッブの頬を撫でた後、彼の右手を自分の両手で掴んでいた。

 

ーーーーー

 

 孫悟空とベジータ、ターニッブとブロリーはプリカの言うとおり、夢の世界で修行をしていた。

 

 漆黒の世界。

 

 互いの存在ははっきりと見えるが、それ以外は上も下も右も左もない黒の世界。

 

 不思議な空間だった。

 

 四人は目の前に現れた三人の戦士達と修行をしている。

 

「…はぁ、はぁ、参ったぜ…! ここまで力の差があるなんてよ…!!」

 

 蒼い髪の超サイヤ人ーー超サイヤ人ブルーに変身した悟空が肩で息をしている。

 

 今の彼は亀仙流の道着ではなく、少し前にウイスからもらったデザインの山吹色の道着と、青色のマジックテープタイプのブーツを着ていた。

 

 隣ではベジータも蒼い髪の超サイヤ人になりながら、肩で息をしていた。

 

 彼も漆黒のフィットネススーツの上下に、新しいデザインのバトルジャケットを着ている。

 

 この惑星に来た時に着ていたタイプの戦闘服ではない。

 

「どうしたよ、オメエの力はこんなもんじゃねえだろ? こんなことでへばるほど甘い鍛え方、俺ならしてねえはずだぜ?」

 

 相手は自分たちと似て非なる存在。

 

 大猿を思わせる赤い体毛を持った上半身は裸で、下半身は山吹色の道着を着ているが靴はブルーや亀仙流のブーツではなく、ズボンの裾を青色の布で巻いた漆黒の靴。

 

 尻からは上半身と同じ、赤い体毛のサイヤ人特有の尾が伸びている。

 

 肩から背中まで伸びた長くつややかな黒髪。

 

 赤い隈取が浮かんだ瞳は金色で、漆黒の瞳孔が現れている。

 

 超サイヤ人4・孫悟空だ。

 

「情けない! 過去とは言え、それでも俺か?」

 

 その隣には、悟空と同じく漆黒の髪を背中まで伸ばし、赤い隈取と翡翠の瞳に漆黒の瞳孔が現れた目を持つ、革の長ズボンを履いた男。

 

 超サイヤ人4のベジータが腕を組んでいる。

 

「…なんだと!? おのれ…!! 基本戦闘力が俺達より高いからっていい気になりやがって…!!」

 

「フン! 神の力とやらに目覚めたことでパワーアップの方は超サイヤ人4と変わらんが、いかんせん貴様らの基本の戦闘力が低すぎる!!」

 

 未来の自分にダメ出しをされて怒り心頭のベジータを悟空が抑える。

 

「落ち着け落ち着け、ベジータ! アイツ等は未来のオラ達じゃねえか!!」

 

「オメエもだ、ベジータ。実際大したモンじゃねえか? パワーアップ自体は俺達と変わんねえんだからよ? 基本の戦闘力が互角だったらいい勝負になってるぜ。アイツら、俺達よりずっと若けぇのによ」

 

 超サイヤ人4の悟空の言葉に、超サイヤ人4のベジータがイラついたような顔になる。

 

「頭にくるぜ…! あんな変身がまだあったとはな…!! あれがあれば、俺はもっと……!!」

 

「なんだ、貴様? 超サイヤ人ブルーの力が羨ましいのか!?」

 

 忌々しそうに告げる超サイヤ人4のベジータに、超サイヤ人ブルーのベジータが勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「調子に乗るなよ!! 今の貴様の戦闘力では、その変身をしたところで超サイヤ人4の俺を超えることはできん!!」

 

「俺達サイヤ人は戦闘民族だ!! この空間では何故か真・超サイヤ人になれないとはいえ、すぐに基本戦闘力も貴様に追いついてくれる!!!」

 

「やってみろ、このクソッタレ!!」

 

「ほざいたな、クソッタレが!!」

 

 金色のオーラと水銀のオーラを纏い、吠え合いながら殴り合う二人のベジータを二人の孫悟空が頭を掻きながら見ている。

 

「なんで自分同士なんに仲悪りぃんだ、オメエ等」

 

「…しょうがねえな、まったく」

 

 超サイヤ人ブルーの悟空と超サイヤ人4の悟空は互いに顔を見合わせて溜め息を吐いた後、拳を握って構える。

 

 互いに同時に拳を繰り出し、ぶつけ合う。

 

「オラが真・超サイヤ人になれたら、オメエに追いつけるんだけどな…!!」

 

「…それじゃ意味ねえだろ? オメエ達は真・超サイヤ人の力に頼り過ぎてぶっ倒れてんだからな」

 

 高速移動しながら、拳と蹴りを繰り出し合う両者。

 

 全体的に超サイヤ人4の方が攻撃力や反応速度が上のようだが、超サイヤ人ブルーには冷静な判断能力がある。

 

 仮に基本戦闘力が互角ならば、圧倒的なパワーと身体能力に物を言わせる超サイヤ人4と冷静な判断力と洞察力で弱点を見抜く超サイヤ人ブルーで、いい勝負になっただろう。

 

 超サイヤ人4の悟空に諭され、超サイヤ人ブルーの悟空が構えながら頷く。

 

「ああ。やっぱ、オメエと同じくらい基本状態の能力が強くなんねえとダメっちゅうことか!!」

 

「神の気なしの状態で、な?」

 

 ウインクしてくる超サイヤ人4の自分に苦笑して、超サイヤ人ブルーの悟空は拳を構える。

 

 超サイヤ人4の悟空は一瞬だけ変身を解除し、ノーマルのサイヤ人の状態に戻る。

 

 青色の道着の上に白い帯を腰で巻き、山吹色の道着のズボン。

 

 青色の布をズボンの裾に巻き、漆黒の革靴を履いている。

 

 白色のオーラを身に纏い、未来の悟空は素の状態の自分の気を最大にまで引き上げた。

 

 これを見て超サイヤ人ブルーの悟空は目を見張る。

 

「オメエ…! 神の気を使わねえ、素の状態でチビの魔人ブウと同じくらいのレベルなんか…!!」

 

「そゆこった。ベジータもそうだぞ?」

 

「…参ったな。こりゃホントに、相当鍛えねえとダメってことか!」

 

 拳を握り締める超サイヤ人ブルーの悟空に対し、超サイヤ人4に再び変身した未来の悟空は拳を握って構える。

 

「さぁて、そんじゃとことん闘ろうぜ?」

 

「…時間はあんまりねえけんどな!!」

 

「だったら、早ぇとこ俺に追いついてこい!! この俺を倒して自分のモノにしてみせろ! この超サイヤ人4を!!!」

 

「”真・超サイヤ人”の力を更に引き上げるには、それしかねえ! いくぜぇえええ!!!」

 

 ぶつかり合う超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4の悟空。

 

 空に軌跡を描きながら、金色と水銀の光が螺旋を作る。

 

 ハイスピードの打撃の応酬はやはり、基本値で負けているブルーの悟空が不利だ。

 

「パワーもスピードも負けてる! だったら、10倍界王拳だぁ!!」

 

 ブルーの悟空は水銀のオーラの上に真紅のオーラを纏い、己の力を底上げしてみせた。

 

「お? こいつはすげえや」

 

 超サイヤ人4の悟空は、その変化に喜び殴り合う。

 

 今度は打ち負けずに互角の勝負を展開する二人の悟空だが、ブルーの悟空は己の肉体が悲鳴を上げているのを感じ取る。

 

「やっぱ、ブルーでも10倍界王拳は短時間しか無理か! 一気に決めっぞ!!」

 

 超スピードで打ち合いをしながら、互いに拳を繰り出して離れる。

 

 腰だめに両手をたわめた構えは、奇しくも同じ技。

 

「オメエ…!!」

 

「フ…、10倍なら俺も10倍の技を撃たなけりゃな? 10倍!!」

 

 同時に両手を相手に向けて突き出す。

 

「「かめはめ波ぁあああああ!!」」

 

 ブルーの水銀の気を溜めて放たれた気功波と、超サイヤ人4の紅い気を溜めて放たれた気功波がぶつかり合う。

 

 その隣では、3メートルを越える超サイヤ人4のブロリーが、超サイヤ人のターニッブと伝説の超サイヤ人となったブロリーを相手にとって闘っていた。

 

 強烈な右の拳の一撃に、ターニッブは超サイヤ人となった顔をのけ反らせながら耐える。

 

「…凄まじい強さだ。だが!!」

 

「フン! 俺ではない俺が認めた男が! この程度なら拍子抜けだぁ!!」

 

 白い道着の黒帯を締め、気合を入れて超サイヤ人のターニッブが踏み込む。

 

 ぶつかり合う両者の拳。

 

 その一撃に超サイヤ人4のブロリーは嬉し気に笑みを強めた。

 

「そうだ!! 俺が認めたのなら、貴様はそうでなければならん!!」

 

「ありがとう、友よ! 俺はお前のおかげで更に強くなれる!!!」

 

 横から伝説の超サイヤ人となったブロリーが割り込む。

 

「ターニッブだけを鍛えはしないだろうな? 違う俺よ!!」

 

「分かっている…! 貴様も超えろ……!! この俺を手に入れてなぁ!!!」

 

 ぶつかり合う巨漢のサイヤ人二人。

 

 高まり合う。

 

 サイヤ人達の闘い。

 

 彼らの口元には、笑みが刻まれている。

 

 強くなる己に。

 

 強くなる相手に。

 

 高まり続ける強さに。

 

 彼らは心から喜んでいる。

 

 別次元の彼らにとっても、真・超サイヤ人となったベジットの力は脅威だった。

 

 それを真っ向から破った自分達に、彼らは望んだのだ。

 

 自分たちを更に強くしたいと。

 

 その望みが、死者の都に反発するサイヤの意志を通じて、悟空達の夢の中に現れた。

 

 強さに果てはない。

 

 そんなことさえも楽しんでいるようにサイヤ人達は、互いの力を認め合い高め合っていった。

 

ーーーー

 

 街道を空を飛んでいたターレスは、静かに己の眼下に広がる町や山を見つめていく。

 

「…サイヤ人が同族同士でいさかいもなく、平和に暮らしているとはな。俺達の世界とは全く違うって訳か」

 

 静かに湖に降り立ち、水を口に含む。

 

 冷たく美しい水は、飲めば生き返るような気がした。

 

「この味、この空気を感じる体が仮初めとはな。まったく、笑かしてくれるぜ。宇宙を股にかけるクラッシャー軍団のこのターレス様が……!!」

 

 無様なもんだ、と己の姿を湖に写し見る。

 

 ターニッブやガーキン達と同じ、サイヤの衣装と思われる白い道着のズボンに破壊されたバトルジャケットのブーツを履き、手には同じく灰色のバトルジャケットのグローブを付け、黒の半袖シャツの上に灰色のチョッキを着た己を。

 

 この惑星でだけ生きていくのならば、支障はない。

 

 死者の都という問題はあるが、そいつが消えれば自分も消えてしまう可能性があるらしい。

 

 だからといって生み出されたフリーザ達と手を組むつもりもない。

 

 ターレスは静かに考える。

 

 自分が生き残れる可能性を。

 

 あのリューベの姿に何か、引っかかるものを感じるのも事実だ。

 

 自分が生き残る可能性は、もしかしたらあの鬼が知っているのかもしれない。

 

「……フン。どうしたもんか」

 

 死者の都に行くにはサイヤ王の宮殿に行かねばならない。

 

 鍛練場から死者の都への階段は降りていた。

 

 だが。

 

「カカロット達が目を覚ませば、死者の都で激しい戦闘が行われる可能性が高い。そいつに巻き込まれるのはごめんだ」

 

 実際に悟空の姿をしたギニューとやりあったが、今の自分では辛うじて倒せるレベルでしかなかった。

 

 相手のギニューも超サイヤ人であったが。

 

 他の連中は更に上のレベルだ。

 

 そんなものと闘って来たという孫悟空やベジータには、異常だという感情しか湧いてこない。

 

 確かにサイヤ人は戦闘民族ではあるが、命を捨ててまで戦おうとする者などそうはいない。

 

「勝てる見込みのない勝負に挑むなど、馬鹿のすることだ」

 

 ターレス自身の信条である。

 

 彼は悟空やバーダックと同じ、最下級戦士の出身だ。

 

 使い捨てである彼にとって、神精樹の実は正に渡りに船だった。

 

 フリーザの目を盗んでは星を壊して喰らい、強くなっていった。

 

 だがーー先ほど見たフリーザはそんな次元のレベルではなかった。

 

「神精樹の実ももはや、俺の力を引き上げるのには間に合わんか。そんな程度の引き上げでどうにかなるようなレベルではなかった」

 

 そんな彼の目にあったのは、超サイヤ人の“真”の姿だ。

 

「…アレに至ることができれば、俺はこの宇宙を支配することも不可能ではない…!!」

 

 なんとかして、あの力を手に入れたい。

 

 その後で、セルが言っていたドラゴンボールとかいうのを使って仲間を復活させれば、クラッシャー軍団の復活などすぐにできる。

 

 まずは“真”への目覚めをどうすればよいか。

 

 ターレスは考え始めた。

 

「…サイヤ王に聞くのが一番早い、か」

 

 そんな結論が出て、ターレスは面倒そうに王都へと帰っていった。

 

ーーーーーー

 

 神殿の中では、金色の光に包まれて寝かされた四人のサイヤ人の状態を、皆が不安げに見つめている。

 

 気が高まっていくのが、プリカでなくても分かる。

 

 それほどまでに圧倒的な成長だった。

 

「…こんなことが。眠りにつきながら、基本戦闘力を上げて来るなんて。一体、夢の中でなにを…!?」

 

 驚愕の表情になるプリカの手を、ゆっくりと誰かが握り返してきた。

 

「…ターニッブ?」

 

 驚きながら、そちらを見ると燃えるような炎を閉じ込めた漆黒の目が、プリカを見てきた。

 

「…お嬢様。治療ありがとうございます。ご心配をおかけして申し訳ありません」

 

 ゆっくりと起き上がり、ターニッブは掴まれていた右手を掴み返した後に、離した。

 

「…あ」

 

 思わず寂しげな声を上げるプリカにターニッブが気づくことはない。

 

 彼は静かに己の掌を見つめると立ち上がる。

 

 すると、ブロリーが次に目を覚ます。

 

「…目覚めたか、ブロリー」

 

「ああ。手に入れたぞ、新たな力をな!!」

 

 邪悪な笑みを浮かべて笑うブロリーに、ターニッブも清々しい笑みを返す。

 

「あの姿を自分のモノにしたのか、大した奴だ!!」

 

「…よく言う。超サイヤ人のままで、その境地を超えた男が」

 

 言うブロリーの表情は、楽しげだ。

 

「…ん! くああ〜! よく寝た〜!!」

 

「アレから丸二日は寝たからな」

 

 隣では悟空とベジータが、目を覚ましてきた。

 

 二人は肩を動かしながら、体の動きを確かめる。

 

「…尻尾は生えてねえが。変身すると生えるみてえだな」

 

「本来は、生えていないと成れんらしいが。死者の都とはデタラメな法則があるようだな」

 

 二人はそんなことを述べあいながら、ターニッブとブロリーの下に歩いて来る。

 

「…悟空にベジータ。無事だったか」

 

「へへっ! オメエ達もな。ターニッブ、ブロリー!」

 

 互いに笑いあう。

 

 誰かの腹の虫が鳴き始めた。

 

「…クス。今から、神殿の料理を振舞います。たっぷりと食べてくださいな」

 

 プリカの言葉に悟空が飛び上がった。

 

「やったぜ、飯だ!! 早いとこ、食って一気に回復しねえとな!!」

 

「夢の中で会った俺たちが言っていたな。バーダックが死者の都に殴り込みに行ったと。急がねばな」

 

 ベジータの言葉にプリカが目を丸くしてターニッブを見ると、彼も静かに頷いていた。

 

「父ちゃんを助けるにも、まずは飯だ! じゃんじゃん持って来てくれー!!」

 

 底抜けに明るい悟空の声が、神殿に響いていた。

 




次回。

集え、サイヤの戦士達。

ご期待ください(´ー`* ))))


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孫悟空とターニッブ

死者の都に殴り込んだバーダック。

 しかし、真・超サイヤ人に至った反動ですぐにその場で気を失う。

 そんな彼の前に、死者の魂を喰らい生者を滅ぼそうとする惑星の意思が取った姿とは。

 サイヤの民を守るため、自らを鬼と化した超サイヤ人の戦いが始まった。


 死者の都。

 

 緑がかった灰色の空に浮かぶのは、真紅の満月。

 

 超サイヤ人となったバーダックは荒野に降り立った。

 

「…この月。こいつが死者の都ってヤツの本体なのか?」

 

 問いかける先には、静かに月を睨み上げる濃紺の空手着を着た金髪に翡翠の瞳の鬼。

 

 こちらを見ずに静かに天を見上げている。

 

「おい!!」

 

「…うぬ一人では足りぬ」

 

「なんだと!?」

 

 静かに腕を組み、リューベは月を見上げたまま石像の様に動きを止め、雷が鳴るような低い声で言葉を紡いだ。

 

「うぬの力だけでは足りぬ……。彼の者は惑星の意思そのもの。何万年、何億年の時を積み重ねて得た力の全てを一つに固体化した存在を相手するには、うぬだけでは事足りぬ」

 

「…テメエは? テメエの力でも足りねえのか?」

 

「……」

 

 何も語らないリューベの態度にバーダックは目を鋭く細めた。

 

「…ケッ、そうかよ」

 

 倒せるのならば、とっくに倒している。

 

 そういうことなのだろうとバータックは理解した。

 

「…!?」

 

 ふと、眩暈を感じた。

 

 強烈な脱力感と眠気。

 

「こ、こいつは……!!」

 

 力を使い切ると眠くなると言っていた息子の言葉を思い出す。

 

 真・超サイヤ人に至った反動が来たようだ。

 

「…反動か。眠れぃ!」

 

 リューベの言葉に導かれるように、バーダックは気を失った。

 

 リューベは荒野に無数にある巨岩の一つを選び、その上にバーダックを仰向けに寝かせた後、再び天を見上げた。

 

「……ようやく来るか」

 

 リューベの呟きと同時、月が漆黒の気を固めていく。

 

 死者の都に浮かぶ霧が。

 

 瘴気のすべてが紅い月に吸収されていく。

 

 拳を握り、静かにリューベは黄金のオーラを身に纏う。

 

「……数多のサイヤ王の命を御柱に作り上げたこの拳。うぬに破れるか!!」

 

 万物必滅の拳の前に現れたのは、漆黒の大猿だった。

 

ーー サイヤ人よ、滅びるが良い。己の種族の力で ーー

 

「……滅ッ!!」

 

 破滅の意志が具現した。

 

 神をも凌駕する漆黒の大猿と、“真”故に鬼となった超サイヤ人との闘いが始まる。

 

 漆黒の肌と濃い赤茶色の毛を持つ大猿は、赤い目をぎらつかせながら牙をむき出しにしてリューベに巨大な拳を振り下ろす。

 

 その一撃は、破壊神の一撃に匹敵するほどに強大なものだった。

 

 しかしリューベは、その巨大な拳を軽々と左手で掴み止めてみせた。

 

ーー ぐるぁああああっ!! ーー

 

 聞くものを恐怖に叩き落とすかのような恐ろしい咆哮を聞いても、鬼には何の変化もない。

 

 否、冷徹な無表情から激しい憤怒の表情に変わる。

 

「この程度で我を倒す? 愚かな…! 失せよ!!」

 

 右の拳を握り締め、あっさりと懐に飛び込むと強烈な一撃を腹に決める。

 

 まともに撃ち抜かれ、大猿の巨体が宙に浮きながら吹き飛ぶ。

 

 しかしリューベが空を飛んで、もう一撃と左の拳を放つと、大猿の巨体はその場から煙のように掻き消えた。

 

「……笑止!」

 

 裏拳を背後に向けて放つと強烈で巨大な拳がぶつかる。

 

ーー おのれ、真・超サイヤ人…!! ーー

 

 禍々しい紅の目を細め、唸る大猿にリューベも鬼の咆哮を返した。

 

「如何にも! 我こそ、真なるサイヤ人なり!!」

 

 巨大な大猿の拳を弾き飛ばしバランスを崩させると、リューベは強烈な回し蹴りを大猿の顎に決めて後方に吹き飛ばした。

 

 背中から地響きを立てながら倒れる大猿を見つめ、地面に降り立って気合を入れ、腰だめに構える。

 

「御霊を食らう星の意思よ! うぬの無力さ、我が拳にて思いしれぃ!!」

 

 真に至りし超サイヤ人は、無限に高まる己の気を更に上げて。

 

 殺意の拳を振りかざした。

 

 体を横にして休んでいたバーダックは、リューベから発せられる真・超サイヤ人の気を無意識に吸収し、最低でも数日は寝込む睡眠から目を覚ます。

 

「…? なんだ、大猿だと? 普通のタイプじゃねえようだが」

 

 目を開けて見れば、大猿はその巨体に似合わず華麗に空を飛び、強烈な拳と蹴りを放ち、手から気弾も放てるようだった。

 

 超スピードで移動するだけでなく、時たま実体がなくなるように霧のように消えて移動する。

 

 パワーもスピードも大きさも桁違いの強敵だった。

 

「バケモンみてえな黒い大猿。…それを軽々とぶちのめすのかよ。あの強さ、正に鬼だ」

 

 百戦錬磨のバーダックをして唸るほどに強い。

 

 霞のように巨体が消え、背後の頭上から体重を乗せて拳を打ち下ろして来る大猿を、リューベは簡単に飛び上がりながらのアッパーカットーー昇龍拳で顎を打ち抜いて、のけ反った相手に素早く逆の拳を打ち下ろして地面に叩き落とす。

 

「…滅殺豪昇龍!!」

 

 叩きつけられた巨体は再び霞のように実体を消して巨大な拳や蹴りを繰り出してくるも、リューベは反応し逆にカウンターを取って、巨大な大猿を相手に殴り合いを制する。

 

 たまらず距離を取り、両手と口から光を生じさせ、大猿は自分の体よりも大きな紅い光をリューベの正面に放つ。

 

「…滅殺豪波動!! ぬぉりゃあああ!!!」

 

 リューベは、気合いと共に突き出した両手から青白い光を放ち、大猿の光をあっさりと撃ち抜くとそのまま巨体を光に飲み込ませ、後方へ吹き飛ばした。

 

「…グガァァァァアッ!!!」

 

 悲鳴を上げて光が爆発し、背中から地面に叩きつけられる大猿。

 

 バーダックは目を細めながらリューベの戦いを見つめて頷いた。

 

 何百年と生きるとされる彼の力は、真・超サイヤ人のベジットやゴジータとも戦えるレベルだ。

 

(逆に言えば。それだけの力をもってしても倒せなかった”惑星の意思”ってヤツが、このまま終わるとは思えねえな)

 

 自分の考えに更に頷きながら、バーダックは真・超サイヤ人リューベの気を吸収することに専念する。

 

 一刻も早く、己もこの闘いに参戦するために。

 

ーーーーーーーーー

 

 破壊神ビルスの居城にて。

 

 中庭で散歩しながら、ビルスは付き人ウイスの水晶を使って、惑星サイヤにある“死者の都”を見ていた。

 

 映されているのは、巨大で禍々しい黒い大猿。

 

 黄金のオーラを全身に纏い、拳から血のように紅い光を放つ超サイヤ人。

 

「…ねえ、ウイス? リューベの強さで倒せない敵なんか居るの? いくら星の意思が数億年のものとはいえ。事実、力の差は圧倒的じゃない?」

 

「そうですね。リューベは強さだけならばビルス様はおろか、私に迫るものがある。そんな彼が、なぜ一つの惑星の意思ごときを倒せないのか。私も疑問でした。しかし、おそらくは…」

 

「なんだ? …純粋な戦闘力だけなら、この僕をも上回る奴が倒せない理由だと?」

 

 ビルスが自分よりもリューベの実力が上であることを素直に認めたことに、ウイスは少し驚いた表情になった後、続けた。

 

「おそらく。ビルス様ならば造作もなく大猿を“破壊”できるでしょうが。リューベは残念ながら、ただ強いだけ。“対象を破壊する”力ではなく“敵を倒すだけ”の拳なのです。肉体を打ち倒すことはできる。魂を滅ぼすことはできる。しかし、惑星の意思は存在を消さねば足りない」

 

 瞳を閉じ、ウイスは一度言葉を止める。

 

「それにーー」

 

 ウイスが言葉を続けようとするのをビルスが告げた。

 

「ーー惑星の意思を破壊すれば、惑星が死ぬ可能性もあるね? 最悪、惑星サイヤそのものが滅ぶ」

 

「ええ。ですから、リューベにも何か考えがあるのではと踏んでいます」

 

 フムと猫の瞳を細めて、ビルスは静かに“怨念の塊”と“殺意の鬼”の戦いを見据える。

 

「…さっさと終わらせて来い。でないと僕が君と遊べないじゃないか」

 

 水晶に写る超サイヤ人の戦鬼を見据え、破壊の神は静かに目を細める。

 

 もはや、ビルスの頭の中にはリューベに戦いを挑むことしかない。

 

「ビルス様?」

 

「ウイス、悪いんだけど。この鬼は僕がもらうよ…!!」

 

 目が本気だった。

 

 思わずウイスが自分の頬を撫でる。

 

(フゥム…。相当、溜まっていらっしゃるんですね~。サイヤの戦士たちの戦いを見て、ご自分も参加したがってましたしねぇ。ベジットと悟空さん達の戦いを見たのがとどめになってしまいましたか。まあ、仕方ありません…)

 

 ビルスにとって、全力で戦える相手などウイスとシャンパ以外にはいない。

 

 そんな彼にとって、自分の全力を試すには絶好の相手がいる。

 

 サイヤの鬼神と惑星の意思との戦いに乱入しないだけでも奇跡だった。

 

「きちんと言いつけをお守りくださっているようですし。仕方ありませんね…。この戦いが終われば共にサイヤに参りましょう」

 

「当然だ…。これ以上のお預けはごめんだよ」

 

 淡々とした表情と口調で告げるビルスの態度に、ウイスは苦笑を漏らした。

 

 どうやら、本当にいろいろと限界のようだ。

 

ーーーーーーー

 

 そのころ、サイヤの神殿では。

 

 サイヤ王・ジュードとガーキンの前で食事を続ける悟空とベジータ、ブロリーが居た。

 

 出される料理は次々と彼らの胃袋の中に消えていく。

 

 彼ら三人とは違い、ターニッブは質素倹約というべきか。

 

 ジャガイモ二個と干した肉を二切れ食べた後は、腹を落ち着かせる為だと瞑想を行い気を高めて波動を練っている。

 

「ご、悟空にベジータにブロリーよ。まだ食べるのか?」

 

 ジュードの問いかけに三人はそれぞれ、悟空は大きな焼き飯を。

 

 ベジータは巨大なラーメンを。

 

 ブロリーは骨付きの肉を。

 

 口に食べ物をいっぱい頬張りながら無言で頷いた。

 

「そ、そうか……。食べ過ぎには注意しろよ? すぐに動けんぞ?」

 

 ジュードの言葉にウンウンと頷きながら食事を再開する、惑星ベジータ生まれのサイヤ人三人。

 

「俺たちも同じサイヤ人だが、ここまで食うのかよ…」

 

「…フ、頼もしい限りだ」

 

「そうゆうもんかぁ?」

 

 ガーキンが呆れたような表情になる隣で、ターニッブが満足そうに微笑みを浮かべている。

 

 しばらくして悟空が目を見開いた。

 

「ぷはー、食った食った!」

 

 それを合図にするかのようにベジータとブロリーも同時に食事を終えた。

 

 腹を二回叩いて満足そうに笑う悟空に、ターニッブが語り掛けた。

 

「どこまでも際限なく変身するお前の強さの源は、その飯の量なのかもしれんな」

 

「へへっ! オメエもだ、ターニッブ。ただの超サイヤ人でブルーや4のレベルまで極めちまうなんてよぉ。オラ頭が下がるぜ」

 

「お互い様だ」

 

 互いに笑いあう同じ顔をしたサイヤ人。

 

 ベジータとブロリーが顔を見合わせる。

 

「…奴らめ、完全に俺たちの事を無視しやがって」

 

「ふん、構わんさ。俺たちが奴らよりも強ければ良いだけだぁ」

 

「…確かにな」

 

 ニヤリとする二人のサイヤ人。

 

 ガーキンが呆れたような顔になる。

 

「…呆れるくらいにお前ら、よく似てやがるぜ」

 

「まったくだ。兄弟のようだぞ、お前達四人」

 

 ガーキンの言葉にジュードも頷く。

 

 隣ではプリカも微笑んでいた。

 

「…悟空。頼みがあるんだが」

 

 ターニッブが悟空の目を真っ直ぐに見て告げた。

 

 これに悟空もニヤリと笑い、ベジータとブロリーがため息を吐いた後互いを見合う。

 

「…その言葉、待ってたぜ! ベジータ、ブロリー! 先に死者の都に行っててくれ。オラはターニッブと一本だけ組み手する」

 

「…ふん。俺とブロリーが終わらせていても文句は聞かんからな!!」

 

 悟空の言葉にベジータが、不機嫌そうに吐き捨てるとブロリーもニヤリと笑う。

 

「…カカロット、ターニッブ。お前達が強くなれば俺とベジータも更に強くなる。忘れるなよ」

 

 その言葉に悟空とターニッブは同時に頷いた。

 

「…しょうがねえ。ターニッブと悟空の組み手、立会いはこのガーキンがやるぜ。構わねえな、ジュード」

 

 ガーキンの言葉にジュードはにべもなく頷いた。

 

「無論だ、お前を置いて他にあるまい。プリカ、我らは死者の都に行くとしよう。ベジータとブロリー。それにバーダックの援護をせねばならん」

 

 これにプリカは少しだけ、ターニッブを見た後にジュードに向き直り、頷いた。

 

「父ちゃんなら、心配要らねえさ。なんたってオラの父ちゃんだかんな! 今頃、真・超サイヤ人に目覚めてんじゃねえかな!!」

 

「…んなこと、根拠もなく言うなよ」

 

 気楽な悟空の言葉にガーキンが思わず半目になって口にした。

 

 そんな簡単に至れるなら、誰にでもなれるじゃねえかと言いたげである。

 

ーーーー

 

 ベジータとブロリー、ジュードとプリカが死者の都に降りていくと同時。

 

 孫悟空とターニッブ、そしてガーキンは鍛錬場へと来ていた。

 

 静かに山吹色と白色の道着を着た同じ髪型、同じ顔のサイヤ人が向かい合う。

 

 それにガーキンは笑みを強めた後、二人の間に審判のように立った。

 

「さぁて、そんじゃ立ち合いを始めさせてもらうぜ? 有効打を先に一撃入れた方が勝ちだ、いいな?」

 

 ガーキンの説明にターニッブが頷き、悟空が笑う。

 

 そして悟空とターニッブは互いに睨み合う。

 

 ターニッブが静かに右の拳を握って悟空に突き出してきた。

 

「俺の拳を試すか!」

 

 これに悟空もニッと笑った後、右の拳を合わせると、バックステップで距離を取り、構えを取りながら告げる。

 

「来い、ターニッブ!!」

 

 これにターニッブも口の端を歪めた後、超サイヤ人に変身しながら拳を戻して構えた。

 

 両の拳からは青白い雷光が漏れている。

 

 悟空も目つきを鋭くしながら超サイヤ人ブルーに変身した。

 

 青白い燐光が孫悟空の全身を包み込み、剥がれていくと着ている道着が変化する。

 

 亀仙流の山吹色の道着の上シャツには胸と背に「悟」のマークが入り、青のインナーシャツと帯をつけ、履いている黒いブーツには赤い紐を通したモノから。

 

 ウイスに渡された青色のマジックテープで止めるタイプのブーツ、青い帯を山吹色の道着の上から絞める青いインナーシャツから、地肌の上に着る一般的な道着タイプに変化していた。

 

「悟空の奴、着てる道着まで変化するのかよ」

 

 思わずガーキンが呟くと、悟空は静かに告げた。

 

「ああ。夢の中で別次元のオラと修行してたらよ、オラの体はそいつら自身に変身できるように変わったのさ」

 

「…“魂に合わせて肉体が変化する”ようになったっていうのか? それって……!!」

 

「死者の都の力って奴と真・超サイヤ人が、オラやベジータ。ターニッブやブロリーを作り変えたんだろうな」

 

 ガーキンに応えながら自分の手を見下ろし、悟空は己の変身の中で固体化した“己”を見据える。

 

 超サイヤ人ブルー。

 

 その変身は、他の超サイヤ人とは違うものだった。

 

 だからこそ、固体化もしやすかったのだろう。

 

 そしてーーもう一つの“己”。

 

「まさか神の気を纏わず、サイヤ人の力を限界まで引き出すだけで“神の域”に踏み込める変身があったなんてな」

 

 別次元の自分に改めて敬意を表すと同時に、その力を己に取り込めたことも誇りであった。

 

 別次元の孫悟空の力のすべてを、今の自分は手に入れている。

 

 それがどういうことなのかというと。

 

「感じられる悟空の気が、桁違いに上がってやがる……! それも半端な上がり方じゃない……!!」

 

 ガーキンの言葉どおり、それは尋常ではない。

 

 わずか数日の間、眠っていただけだ。

 

 なのに、今の悟空はレベルがあまりにも違う。

 

 神の気を纏わないでも、神のレベルに近い域にまで達しているのだ。

 

 そんな次元にある悟空が、超サイヤ人とゴッドの気を同時に纏った超サイヤ人ブルーに変身すれば。

 

「間違いねえ。今のオラはーー!」

 

 拳を握り、天を見上げて思い描くのは遥か遠い破壊神のいる居城だ。

 

 何故か悟空には、あの破壊神と付き人が自分を天から見下ろしているような気がした。

 

 水色に輝く己を見下ろし、悟空は静かに拳を握る。

 

「ようやっと、ビルス様に闘いを挑めるレベルってことか…!!」

 

 笑う悟空は目の前に居る金色の気を纏うサイヤ人を見据える。

 

 その力はただの超サイヤ人でありながら、ブルーの自分よりも少し上のレベルだ。

 

「…ターニッブ。オメエ、ホントにすげえな」

 

「お前ほどじゃないさ。孫悟空よ、お前が先を進んでくれるから俺も前に進むことができる!!」

 

「オラとオメエは、違う道を歩んでる。でもよ、きっと目指すものは同じなんだろうなぁ」

 

 そんな悟空にターニッブも笑う。

 

「ああ、きっとな! だからこそーー」

 

 笑うのを止め、真剣な表情で口を引き結び構えるターニッブ。

 

「全力で行くぞ!! オメエが、リューベとの約束を果たすためにもなぁ!!」

 

 対峙する悟空も水銀の光を身に纏い、拳を握った。

 

「本気を出せ、孫悟空!!!」

 

「なら、行くぜェええ!!」

 

 地を駆ける悟空は右の拳を振り切った。

 

 対峙するターニッブも右の拳で受け止める。

 

 僅かに地面から浮き、空中で動きを止める悟空。

 

 地面にしっかりと足を踏みしめて、揺らがないターニッブ。

 

「オメエの本気、オラに見してみろ!!」

 

 その言葉にターニッブは拳を打ち払い、右の上段回し蹴りを放つ。

 

 左腕で受け止めた悟空の表情が歪む。

 

「俺の拳、お前の本気に応えられるか!!」

 

 左の正拳突きを放つターニッブに、悟空もサイドステップで脇に見切ってからの左ストレートを返す。

 

 右腕で受け止められる。

 

 真剣な表情で互いが見合うのは一瞬。

 

 強烈な打撃を連撃で打ち合いながら、両者は気を高めていった。

 

 互いに必殺の威力を持つ打撃の交換は、互いの絶妙な技術で捌かれている。

 

 全体的に動くことで自分の位置を見出し、戦いを優位に運ぼうとする孫悟空。

 

 対してしっかりと地に根を張り、どんな不利な体制からでも姿勢を整えて強打を打ち返してくるターニッブ。

 

 初めて戦った時からわかっていた。

 

 自分の拳をまともに受けて、正面から返してくるこの男の強さを。

 

 自分ではない自分の動きが体にどんどんと馴染んでいく。

 

 イメージと実践の歪みは、拳を繰り出す毎に修正され悟空の動きを洗練させていく。

 

 もはや、悟空を止められる者は神の域に達している者でもそうはいない。

 

 そんなある種理不尽な強さを誇る孫悟空というサイヤ人に、真っ向から戦いを挑み打ち負けないターニッブというサイヤ人もまた強い。

 

 折れない心。

 

 燃える闘志。

 

 そして、互いの拳をガード越しに受けて喜ぶ口許。

 

 彼らにとって闘いとは、何か?

 

 強さとは、何か?

 

 そんなことをガーキンは問いたくなる。

 

 果てのない強さを望み、競り合う両者の姿に。

 




ベジータとブロリー。

ジュード王と巫女プリカの4人が死者の都に降りてみたのは。

神々をも凌駕する巨大な大猿と。

黄金の気を身に纏い、殺拳を振るうリューベの戦いだった。

惑星の意思は”真・超サイヤ人”に勝てないことを悟ると、リューベを空間ごと閉じ込めてしまう。

そして大猿と化した意思が次に取った姿は”真・超サイヤ人”の力を振るいながらも”死者の怨念”に意識を乗っ取られたリューベを模した姿だった。

惑星サイヤの未来が、ベジータとブロリーの拳にかけられた。

次回「ベジータとブロリー」

ご期待ください( *´艸`)



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ベジータとブロリー

孫悟空は、ターニッブとの組み手を始める。

 リューベとの闘いにターニッブが答えを出すために。

 一方、ベジータとブロリーは死者の都で激戦を繰り広げている真・超サイヤ人リューベと漆黒の大猿を前に立っていた。



 死者の都に降り立つのはベジータとブロリー、そしてジュードと巫女プリカ。

 

 悟空達と訓練場で別れた彼らが見たものは、漆黒の肌と濃い赤茶色の体毛をした大猿だった。

 

「テメエらは。ベジータ王子とブロリー、それにサイヤ王と巫女か」

 

 漆黒の肌を持つ禍々しい大猿と黄金の光を纏う鬼神が互いに向かって拳をぶつけ合い、衝撃が広がっていく。

 

 ジュードとプリカが恐怖に顔をひきつらせて見上げる中、ベジータとブロリーに対しリューベ達の戦いから少し離れたところで体を休めていたサイヤ人。

 

 緑色を基調としたバトルジャケットに赤いバンダナを額に巻いた男ーーバーダックが語りかけてきた。

 

「バーダック、貴様。その消耗具合は?」

 

 ベジータが、フラつきながらも自力で立って、リューベから溢れ出た気を吸収するバーダックを見て問いかける。

 

「…真・超サイヤ人に成ったのか」

 

 ブロリーが確信を持って告げた。

 

 その言葉に、目を見開いて彼とバーダックを交互に振り返るジュードとプリカ。

 

 外見はそれほど傷付いてはいないが体力がほとんど残っていないバーダックの状況を、ブロリーは自分が真・超サイヤ人に成った体験や、悟空達の変身後の副作用を見て理解した。

 

「…なんだ、驚きやがらねえのか。そこのサイヤ王達みたいに、もう少し驚いた面しやがれ。可愛げのねえ」

 

 バーダックがやや不満そうに淡々としているブロリーに告げると、ベジータがニヤリとした。

 

「…いいぞ。やはり惑星ベジータのサイヤ人は、優秀な戦闘民族だ!」

 

 ある意味、サイヤ人の王子らしいベジータの言葉にバーダックが吐き捨てる。

 

「関係ねえな。惑星ベジータだろうと、プラントだろうとサイヤやサダラだろうと。俺は俺だ」

 

「…同感だぁ」

 

 バーダックの言葉にブロリーも頷く。

 

 そんな二人をベジータは嬉しげに笑った。

 

「…それでこそ! 誇り高き戦闘民族サイヤ人だ!!」

 

 仲良さげに笑い合う三人のサイヤ人を、ジュードは呆れたような、羨ましそうな表情で見ている。

 

 一方で。

 

 リューベと大猿の対決も、いよいよ終局に差し掛かっていた。

 

「…長きに渡り続いた死闘も残すところ僅か!! 我が殺意! 極限まで昂ぶらば! 滅せぬものなど、断じて無し!!」

 

 身に纏う黄金の気を更に高めるリューベの拳には血のように紅く、炎のように揺らめく光が纏わる。

 

 更に濃紺色の道着は、紅の光を吸収して青紫色に変わった。

 

「道着の色が変わっただと!? 父との死闘にさえも、奴はあのような姿には!!」

 

「…あれが“真の力を解放したリューベ”です。禍々しく満ちたあの血色の拳は、葬ったサイヤ王達の魂の果てに創り上げた最強の姿」

 

 目を見開いて驚く兄・ジュードにプリカは巫女となって得た能力で、リューベの状態を説明した。

 

「つまり、アレが奴の本気の姿か。なるほど、ゴジータやベジットにも引けを取らんな」

 

 ベジータが目を細めながら告げると、バーダックも頷く。

 

「確かにあの力は異常だぜ。だがよ、野郎の理性が食われてるようには見えねえ。どういうこった?」

 

「何百年の月日の中。理性が食われるようなことがあるならば、とっくにリューベは力に食い尽くされているはず。プリカ。お前が見たのは、あの姿か?」

 

 バーダックにベジータ、ブロリーが続いてプリカを見ると、彼女は首を横に振った。

 

「違います。惑星サイヤを滅ぼそうとする鬼は、紛れもなくリューベですが。あの姿ではない」

 

 その言葉に皆が再び、鬼神と大猿の対決を見据える。

 

「…真の力、見せてみよ!!」

 

 気合いの声と共にリューベの鬼の踏み込みが地面を砕いた後、一気に大猿の懐に飛び込んだ。

 

ーー なんだと!? ーー

 

 目を細めて叫ぶ大猿に構わず、リューベは血のように紅い光を纏う拳を飛び上がりながら突き上げる。

 

「…滅殺! 豪昇龍!!」

 

 強烈な一撃に顎を弾き飛ばされながら、身体も後方へのけ反りながら宙に飛ばされる大猿。

 

 リューベはその場から高速移動で宙に浮いたまま、姿を消したあと、飛ばされる大猿の落下点に移動すると、右手を天に向けて大きく振り上げて告げた。

 

「…我が真なる一撃、受けてみよ!! 金剛國裂斬!!」

 

 振り下ろされた手刀は大地を裂き、紅の波動状の光が間欠泉のように沸き立つと、巨山の如くそびえ立つ。

 

ーー グアアアアア!!! ーー

 

 大猿は断末魔の悲鳴を上げながら、光に巨体を真っ二つにされて光の粒子となって宙に消えていった。

 

 呆気ないほどの最期に、皆がリューベを見据える。

 

 リューベは静かにベジータ達に向き直ると告げた。

 

「…惑星サイヤの命運は、うぬらの拳に」

 

 真っ直ぐに告げられたその言葉に、ベジータは目を見開く。

 

「…どういうことだ? 貴様は何を知っている?」

 

「あの大猿のバケモンをぶっ倒したのに、まだ何かあるのかよ?」

 

 バーダックも問いかけると。

 

 突如、死者の都の大地が揺れ霧がリューベの体を覆い尽くす。

 

「…ぬう!」

 

 呻き声と共に人の形をした霧に見える姿になったリューベは、空間にポッカリと開けられた穴に放り込まれた。

 

「リューベ!!」

 

 ベジータの叫びの中、真の力を開放したリューベがアッサリと異界に送られる。

 

 静かにブロリーが目を細めた。

 

「…あのリューベを、亜空間に飛ばしただと?」

 

「真正面からじゃ勝てないと踏んで逃げやがったな…!」

 

 バーダックが忌々しそうに歯をくいしばる前で、リューベを異界に送った霧が大猿の形を取った後、人間の肉体へと変化する。

 

 その姿を見て、ベジータとブロリーが目を見張る。

 

ーー …我、サイヤの殺意! 極めたり!! ーー

 

 空間に響き渡る声。

 

 死者の都の意思が姿を模したのは、先ほど異界に送ったリューベである。

 

 ただし、只のリューベではない。

 

「…あ、あの姿は!!」

 

 プリカが恐怖に顔をひきつらせる。

 

 これにジュードも気づいた。

 

「まさか、プリカが予知した惑星を滅ぼす鬼とは…! リューベの姿を模した惑星の意思なのか!!?」

 

 漆黒の道着のズボンの尻からは、赤黒い体毛が生えた猿のような尻尾が生えている。

 

 荒縄を腰に締め、仁王のようだった両手足は更にごつくなり、異形の爪ーー大猿のそれをしている。

 

 足袋と草履は破け裸足となった脛からは、赤黒い体毛が生えている。

 

 上半身の肌は褐色に染まり、脛から覗いているものと同じ赤黒い体毛が生え、鍛え抜かれた肉体は更に筋肉が膨れ上がり、体格が一回り大きくなっている。

 

 黄金の髪は天に向かって突き立ち、後ろ髪が獅子の鬣のように背中まで伸びている。

 

 青と黒、紫の光が黄金のオーラの内側に現れている。

 

 翡翠に黒の瞳孔があった目は白目に変わり、眼窩上に隆起が起きて眉毛が消えている。

 

「…ベジータ。こいつは」

 

「超サイヤ人のつぎはぎのような姿だな。超サイヤ人3と4、ブルーを足したような見た目だ」

 

 腕を組んで冷静に告げるベジータにブロリーも頷く。

 

 その横でバーダックは拳を握り、気合を入れた。

 

「うぉおお!!」

 

 金色のオーラを身に纏い、超サイヤ人に変身する。

 

「…バーダック、貴様は俺たちの戦闘を見ながらサイヤパワーを吸収しろ」

 

「…何? サイヤパワー?」

 

「…サイヤ人の気に含まれる特有の力だ。サイヤ人を回復させるなら、サイヤパワーが効率がいい。死者の都に漂う霧を通して俺たちの戦闘エネルギーからサイヤパワーを吸収しろ」

 

「…理屈は分からねえが、さっきリューベの気を吸収できたのと同じ要領だな? だったら造作もねえ」

 

 力強く頷く超サイヤ人バーダックを見据え、ベジータとブロリーも金色のオーラを纏う。

 

 ベジータは超サイヤ人2に。

 

 ブロリーは伝説の超サイヤ人に変身した。

 

「…なんだ? 真・超サイヤ人は使わねえのか?」

 

 問いかけるバーダックにベジータが不遜な笑みを浮かべる。

 

「この程度の紛い物に、はたして更なる力を付けたベジータ様の真の力など見せる必要があるかな?」

 

「……ふん。俺達は強くなった。それだけのことだぁ!!」

 

 隣でブロリーがニヤリと笑った後、二人が“死者の意志が模した超サイヤ人の異形”に構える。

 

 異形の鬼はニヤリと笑うと、羅漢仁王像のような構えを取って告げた。

 

ーー 我ーー! 万物の“理”を超えし者なり!! ーー

 

 超サイヤ人2のベジータと伝説の超サイヤ人ブロリーの二人を相手取ってこの余裕。

 

「なら見せてみろ! 貴様の下らん物真似で、異次元の強さを得たこのベジータを倒せるのならな!!」

 

「ベジータ!!」

 

 ジュードの制止の声をふり切り、ベジータは勇猛果敢に告げると異形の鬼に真っ向から向かって行った。

 

 拳を握り、左右のストレートから右の中段回し蹴りを放つ。

 

 紙一重で異形の鬼は首を左右にひねるだけでストレートを避け、ベジータが中段回し蹴りを放った時には背後に瞬間移動の様に回り込んでいた。

 

ーー …力を持つならば、示せ! 我は汝らを葬るのみ!! ーー 

 

 後ろを振り返ったベジータの鳩尾をまともに撃ち抜く鬼の右正拳突き。

 

「ぐぉ!?」

 

 目を見開き、悲鳴を上げるベジータの顎を上段回し蹴りが狙い打った。

 

 まともに蹴り上げられ、天高く舞うベジータに鬼は更なる拳を握り締める。

 

ーー 豪昇龍拳!! ーー

 

 響き渡る雷鳴のような声と共に、後ろ向きにのけ反ったベジータの背中に拳が突き刺さった。

 

「あぐぅ!!」

 

 背中から地面に叩きつけられるベジータを見ず、着地した瞬間に目の前に現れた巨体の超サイヤ人。

 

 ブロリーと向き合う。

 

「殺してやるぞ…! 化け物!!」

 

ーー 笑止!! ーー

 

 拳をぶつけ合う両者。

 

 伝説の超サイヤ人と化した自分よりも強烈な拳に、ブロリーが白目を見開く。

 

「ぐ、ぬぅ!?」

 

ーー 汝の力、人に非ず。我と死合うならば、人の心を捨てよ ーー

 

「黙れ!! 俺は、二度と俺を見失うものか!! 俺の心を取り戻してくれた友の為にも!! そして、共に競い合うと誓ったライバル達の為にもなぁあああ!!!」

 

 金色のオーラを全身から噴き立たせ、力を引き上げるブロリーに鬼は笑う。

 

 異形の声で笑った。

 

ーー グハハハハハハッ! 笑止!! ーー

 

 黄金の気を纏い、鬼の赤白く輝いた拳がブロリーの巨体の腹を打ち貫いた。

 

「ぐぅお!?」

 

 うめき声を上げながら前のめりになって上体が下がったブロリーの顔に右のストレートがまともにぶち当たり、後方へ弾き飛ばされる。 

 

 後方にあった巨岩にぶつかり、ブロリーは埋まりながらも頭を振って立ち上がる。

 

 異形の鬼が更に攻撃を仕掛けようと拳を握ったとき、倒れていたベジータが立ち上がって両手を左脇に置いて気を練って前方に光を放った。

 

「喰らえ、ギャリック砲!!!」

 

 見上げた鬼に紫色の光線はまともにぶつかり、周囲の荒野を吹き飛ばしていく。

 

 光が消え、煙が晴れた時、静かに立つ黄金の鬣を持った褐色の肌の鬼が居た。

 

「なんだと!?」

 

 瞬間、鬼は右手を開いてそれを前方に突き出す。

 

 ブロリーが驚愕するベジータの前に庇う様に現れ、鬼に向かって構える。

 

 五指の指からそれぞれ、ベジータ達の上半身を軽く飲み込むほどの大きさで雷を纏った青白い光弾ーー波動拳が放たれた。

 

「舐めるな!! スローイングブラスター!!」

 

 ブロリーもオーバースローのフォームで緑色の光弾を放つ。

 

 五つの波動拳の内、自分たちに直撃するコースの二つとぶつかり、ブロリーの放った光は星を砕くほどに強大な大きさになる。

 

 だがーー。

 

「!? なに!?」

 

「避けろ、ブロリー!!」

 

 ベジータの言葉と同時、ブロリーはその場から高速移動で離れる。

 

 瞬間、軽々とブロリーの放った巨大な光を撃ち抜いて波動拳が着弾し爆発した。

 

 尋常ではないスピードと破壊力、そして貫通力を持った一撃だ。

 

「…チッ、奴の波動拳。ピッコロの魔貫光殺法なみの貫通力とスピードだな」

 

 吐き捨てるベジータにブロリーも白目を険しく細める。

 

「奴め、俺達を使って遊んでいるな」

 

「舐められたもんだぜ!!」

 

 ベジータが叫ぶと同時、目の前に鬼が現れ拳を握って壮絶な打撃を交換し合う。

 

 超サイヤ人4の自分と統合した事で、今のベジータは超サイヤ人2の状態で基本戦闘力の桁が違う。

 

 つい数日前までのベジータの超サイヤ人ブルーと同等くらいだ。

 

 それでも、殴り合いで押されている。

 

「…舐めるなよ、クソッタレェエエエエ!!!」 

 

 凄まじい拳と蹴りを打ち合いながら、更に気を高めるベジータに対し鬼は笑う。

 

ーー 汝の力、この程度か? ならば、疾く消えよ ーー

 

「ほざけぇええええ!!!」

 

 強烈な打撃音が響き渡り、ベジータの腹を左の拳が打ち抜く。

 

 動きが止まったベジータの顔面に左の掌底が打ち込まれ、弾き飛ばされる。

 

ーー 羅豪双破!! ーー

 

 吹き飛ばされるベジータを見送らず、鬼は背後を振り返る。

 

 3メートルを越える大柄のブロリーが巨大な拳を握りしめて振り下ろしてきていた。

 

 片手でそれを受け止める。

 

「…ぐう!!」

 

 万力の様にブロリーの剛力でも動かない。

 

 咄嗟に身を引こうとするブロリーよりも早く、鬼はその背後に回ると手刀を一閃した。

 

ーー 羅漢断頭刃!! ーー

 

 薙ぎ払いをまともに受け、ブロリーは宙に浮きながら縦に吹き飛ぶ。

 

 そのブロリーの顎を狙って、鬼は跳び上がりながらのアッパーカットを放った。

 

 天高く舞い上がり弾き飛ばされるブロリーの巨体。

 

 地面に背中から叩きつけられるのと、ベジータが地面に叩きつけられたのは同時だった。

 

ーー 笑止! 汝らでは、我の相手は務まらず!! 我は既に鬼なり!!!  ーー

 

 土煙を上げながら立ち上がるベジータとブロリー。

 

 そんな二人に挟まれながら、鬼は笑っている。

 

ーー 力を隠したまま、我を倒す? 愚かな…!! ーー

 

 瞬間、鬼は天に向かって己の褐色の拳を突き上げると、地面に向かって叩きつけた。

 

ーー 今の汝ら如き、この姿を手に入れた我が動くまでもない!! 影に食われて消えるがいい!!! ーー

 

 青黒い波動と共に光が三つ現れ、収集していく。

 

 光は三つの人間の形を取った。

 

「な!? これはーー!!」

 

 ジュードが目を見張り、プリカも忌まわしいものを見るように目を細める。

 

「惑星の意志よ。貴方は、それほどまでに我々人間が憎いのですか!?」

 

 現れたのは、三人のサイヤ人。

 

 ノースリーブの紺色フィットスーツを着た金色の髪を逆立て、全身に血管が浮き上がり、額には「M」のマークが刻まれた姿のベジータ。

 

「ククク、残忍で冷酷なサイヤ人の力を思い知れ!!」

 

 同じく、3メートルを越える伝説の超サイヤ人の姿をした全身に血管が浮き上がり、額に「M」のマークが刻まれた姿のブロリー。

 

「フハハハハハ! 全て、全てを破壊してくれるぅうううう!!!!」

 

 そして濃紺の道着を着た茶色のオープンフィンガーグローブを付けた左右非対称の髪型を持つ黒髪の男。

 

 彼は静かに拳を握ると禍々しい紫の雷を拳に纏わせながら、超サイヤ人へと変身した。

 

「力こそが正義だ…!! 貴様らの力を、この俺に示せ!!!」

 

 強烈な真・超サイヤ人の殺意に正気を奪われ、氷のような翡翠の目を持つ鬼と化したーーターニッブの姿が其処にある。

 

 これにベジータとブロリー、バーダックが腰を落として斜に構えながら、述べ合う。

 

「フン。バビディに洗脳された時の俺か」

 

「…俺も居るのか。違う次元だか知らんが、つくづく洗脳に縁がある」

 

「テメエ、ターニッブなのか? 随分とつまらねえ面じゃねえか。それがテメエの可能性ってヤツか」

 

 三人の下に、それぞれの相手が並び立つ。

 

 破壊王子となったベジータ。

 

 破壊王と化したブロリー。

 

 そして超サイヤ人に取り込まれたターニッブ。

 

 鬼は彼らと向き合う三人の超サイヤ人に向かって告げた。

 

ーー 汝らの力を示せ。我が喰らうに値する力を!! ーー

 

 吼えつける鬼を睨み返し、バーダックは叫んだ。

 

「下らねえ。紛い物しか作れねえテメエが、俺達サイヤ人を勝手に測ってんじゃねえ!!」

 

 超サイヤ人2に変身するバーダック。

 

 これにブロリーがニヤリとする。

 

「どうやら、体力が回復したようだな」

 

「ああ。テメエらのサイヤパワーとやらのおかげでな!」

 

 笑い合う二人の前に濃紺の道着を着たターニッブが突っ込んでくる。

 

「何を笑っている!? 死合いを前に!! さあ! 俺と闘い、力を示せ!!」

 

 バーダックに向けて放たれる紅い雷を纏った正拳突き。

 

 しかし、それは巨大な筋肉の塊と言っていい掌に受け止められていた。

 

「…貴様、この俺の友の姿を真似るとは。簡単には死なさんぞ…!!」

 

 3メートルを優に越える肉体のブロリーがターニッブを見下ろす。

 

 睨み合う両者だが、バーダックが二人の間に割って入る。

 

「待てよ、ブロリー。コイツは俺にケンカを売って来やがったんだ。俺がぶっ潰してやらぁ」

 

「…バーダック」

 

「テメエは、自分の紛い物を潰して来い」

 

 バーダックの視線の先を振り返ると、金色の超サイヤ人特有のオーラに禍々しい紫の光を纏った己が見える。

 

「貴様ぁ、サイヤ人だなぁ? 殺してやるぞ!!!」

 

 凶暴な笑みを浮かべて笑う破壊王ブロリーに対し、伝説の超サイヤ人ブロリーが静かに向き合った。

 

「洗脳されたと言うよりは、力に取り込まれて暴走したと言ったところか」

 

「…何をボーっと突っ立って喚いている? お前が戦う意志を見せなければ、俺はこの惑星を破壊し尽くすだけだぁ!!」

 

「…くだらん。死者の都とやらも、お前程度を寄越すようならば知れている。どうやら、ベジットに続いてリューベの姿を模したことで、模倣するエネルギーもなくなってきたか」

 

 淡々と告げるブロリーの言葉に破壊王ブロリーが狂気の笑みから一転、怒りの表情に変わる。

 

「死にたいようだな…!!」

 

「やってみろ、“化け物”」

 

 己の姿に化けた死者の意志に対し、ブロリーは淡々と告げた。

 

 これに破壊王ブロリーが叫びながら、突進。

 

「俺が化け物? 違う! 俺は悪魔だ!」

 

 巨大な右の拳がブロリーの左顔面を射抜いた。

 

「フハハハハハ!!!」

 

 強烈な手ごたえに高笑いする破壊王ブロリー。

 

 しかし、すぐに違和感に気付く。

 

 目の前の巨体は全く動かず、破壊王ブロリーが放った拳を頬で受け止めていた。

 

「貴様が悪魔? 違うな。貴様はただの“化け物”だ!!」

 

 淡々と知性を感じさせる白目を破壊王ブロリーに向け、巨大な拳が腹を射抜く。

 

「ぐぅお!?」

 

 前のめりになる破壊王ブロリーの顎にブロリーの鋭い前蹴りが突き刺さる。

 

「あがぁ!?」

 

 弾き飛ばされる破壊王ブロリーの先にブロリーは回り込み、頭上に両手を組んで打ち下ろした。

 

 地面に叩きつけられた破壊王ブロリーは、脳震盪を起こしたのかフラフラとしながらも立ち上がってくる。

 

「…な、なんだ、と…!?」

 

 目の前にブロリーが悠然と立っている。

 

 それも笑みを浮かべるのではなく、無表情に。 

 

 これに破壊王ブロリーが笑う。

 

「ふ、フハハハハハ!! ならば、消してやるぞ!!!」

 

 全身に金色のオーラを纏い、ブロリーの頭上に飛ぶと緑色の光るバリアーを球体状に発生させて身を包む。

 

 そして右手を開き、全てのエネルギーを掌サイズの光る球に凝縮する。

 

 作り出された自分の影に向かってブロリーは静かに告げた。

 

「やってみろ」

 

「ほざいたな…!! ならば、消え失せろぉおお!!!」

 

 破壊王ブロリーは右手にある光弾をサイドスローで前方に放った。

 

 ギガンティックミーティアと呼ばれるブロリー最大最強の技である。

 

 これにブロリーも己の全身に金色のオーラを纏うと、破壊王ブロリーと全く同じフォームから技を放った。

 

「…とっておきだぁ!!」

 

 二つの光弾が互いの中央でぶつかり合い、押し合う。

 

 全くの互角。

 

 これに破壊王ブロリーが忌々しそうに表情を歪めながら、左手を突き出す。

 

「消えろと言ったはずだ、クズがぁ!!!」

 

 押し合う緑色の光弾が破壊王ブロリーの方だけ大きくなる。

 

 既に銀河系を破壊できるほどの威力を秘めている。

 

 だが、ブロリーは平然としていた。

 

「怖気づいたか? フハハハハハ!!」

 

 笑う破壊王ブロリーを見ずに、静かにブロリーは己の前に両手を突き出す。

 

「!? その技はーーカカロット!?」

 

 静かにブロリーは両手を右の腰に置いて気を高める。

 

 圧倒的な伝説の超サイヤ人の気が両掌に凝縮されていく。

 

「カカロットォオオオオオオ!!!」

 

 破壊王ブロリーの様子がおかしくなった。

 

 ブロリーの技の構えを見ただけで、猛り狂い出したのだ。

 

 同じ顔のバーダックを見ても反応しなかったのに、である。

 

 左手を突き出し、更に気弾を放ってギガンティックミーティアの威力を高めていく。

 

「…フン」

 

 ブロリーはそれをつまらなそうに見ている。

 

 そして瞳を閉じる。

 

 思い描くのは、白い道着を着た友の顔。

 

 山吹色の道着を着た好敵手の顔。

 

 紺色のフィットネススーツの上に白銀のバトルジャケットを着たライバルの顔。

 

「うぉおおお! 邪魔だぁあああああ!!!」

 

 叫びと共に両手を突き出して放たれたのは、圧倒的な緑色の光線だった。

 

 それはアッサリと破壊王ブロリーの放った緑色の巨大な光弾を撃ち貫き、一瞬で目の前に迫った。

 

「ぐぅううう! カカロッ…トォオオオオオオ!!!!」

 

 両腕を交差させエネルギーのバリアーを張って受け止めるも、止めたのは一瞬。

 

 そのまま光線に飲み込まれ、死者の都が作り出した破壊王ブロリーは、消えて行った。

 

「言ったはずだ…。お前はただの化け物だとな」

 

 消し飛んだ破壊王ブロリーに、伝説の超サイヤ人ブロリーは静かにそう告げた。

 

ーーーーーー

 

 一方、ブロリー同士の決着がついた直ぐ横では、超サイヤ人2となったバーダックと“真・超サイヤ人の力に取り込まれたターニッブ”の闘いが始まっていた。

 

 拳と拳をぶつけ合いながら、バーダックは殺意を剥き出しにしたターニッブに笑いかける。

 

「どうしたぁ!? こんなもんなのかよ、真の超サイヤ人の力ってのは!!」

 

「ほざいたな…!! たかが入口を越えた程度の分際で!!」

 

「御託はいいんだよ! テメエが言う“真・超サイヤ人”ってヤツの力ぁ、見してみろやぁ!! カカロットやベジータ王子達を認めさせた本物のターニッブより、テメエが優れてるってんならなぁ!!!」

 

「ふざけたことを。…この力の前には、闘いの意味などもはや不要だ!!」

 

 ぶつかり合う両者。

 

 ぶつけ合った拳を弾き合い、バーダックは片手に全ての気を。

 

 ターニッブは腰だめに溜めた己の気を前方に突き出す。

 

「喰らいやがれ!!」

 

「波動ぉ拳ッ!!」

 

 青白いバーダックの光線と、禍々しいターニッブの放った紫色の波動拳が相殺する。

 

 戦闘本能のみで動いているターニッブの動きは、どっしりと構えるのではなく、敵を殺すために動いて攻撃を仕掛けてくる。

 

 悟空やガーキンのように足で動き回るスタイルに似ている。

 

 だが、二人とは決定的に違うものがある。

 

 それが殺意だ。

 

 死者の都が作り出したターニッブの影は、阿修羅閃空と呼ばれるリューベと同じすり足での高速移動を行う。

 

 まるで滑るように地面を移動し、気配を消して目の前に現れては殺意を纏った強烈な拳を本能のままに急所に繰り出してくる。

 

「…荒削りな拳だが、悪くない。さあ、俺と死合え!!」

 

 理性は超サイヤ人の破壊衝動に侵されながらも、体は生真面目な修行を地道に積み重ねてきたターニッブの動きを忘れておらず、荒々しい拳には武の動きも重ねてある。

 

(これが自分の力に飲み込まれた男の拳か。確かに強え…だがよ!!)

 

 紙一重で拳を捌きながら、バーダックは告げた。

 

「…テメエ、こんな中途半端な拳で本物を上回ってるつもりでいるのか?」

 

「何だと!?」

 

 力を無限に引き上げるターニッブに、バーダックは目を見て叫ぶ。

 

「分からねえか? だったら、体で教えてやらぁ!!」

 

 叫ぶとバーダックは、ターニッブに殴りかかった。

 

 ターニッブも拳を返す。

 

 乱打戦が繰り広げられ、そこかしこで地面がせり上がり、空に軌跡が描かれる。

 

 空も地も構わずに飛び、駆け回って、拳や蹴りを繰り出し合う両者。

 

 だが、ターニッブの力が変わらず上昇しているにも関わらず、後方へのけ反る。

 

「…何故だ。この俺が、何故打ち負ける!?」

 

「分からねえなら教えてやらぁ」

 

 驚愕に目を見開くターニッブに、バーダックが首を鳴らしながら告げる。

 

「…テメエの動き、チグハグなんだよ。本物のターニッブの動きと超サイヤ人の破壊衝動から来る動き。似てるようで違うんだ」

 

「…何だと?」

 

 訝しむターニッブの影に向かい、バーダックは告げた。

 

「リューベの様な動きが本来のテメエの型なんだろうよ。だが、ターニッブの拳の鍛え方とリューベの鍛え方は正反対のもんだ。倒すことを目的にしたリューベの拳は、正に超サイヤ人の為だけの技。だが、ターニッブの拳は野郎も言ってやがったが、勝つ為の拳だ。ターニッブの為だけの拳なんだよ」

 

「…バカな、俺もターニッブだ!!」

 

「分からねえか? テメエは否定したろ、自分の在り方をよ。積み重ねてきた自分を否定して、安易に力に逃げたろ?」

 

 徐々に、ターニッブの目が怒りに震える。

 

 氷の様な翡翠の瞳、無表情だった顔が鬼と化していく。

 

「…その時点でテメエは本物には勝てねえよ。自分と向き合い続けているあの野郎と、逃げちまったテメエじゃ勝負にもならねえ。その答えが、半端なテメエの拳だ」

 

「…ほざけ、バーダックぅうう!!!」

 

 黄金のオーラを纏い、翡翠に黒の瞳孔が現れた目をバーダックに向ける。

 

 地面を踏み砕き、前のめりになって肩を怒らせ拳を握ると、両手を前に突き出して右腰に置き、紫の光を練る。

 

「一撃で殺してやる! 滅!!」

 

 バーダックはそれを見ると静かに右手を開き、胸の前に置く。

 

「…いつまでも、寝言ほざいてんじゃねえよ!」

 

 右手に全身の気を練ることで出来た青白い光の球が生まれた。

 

 これに合わせる様に、ターニッブが禍々しい光を両手を突き出して放ってくる。

 

 その光は命あるものを殺し、形あるものを壊す一撃。

 

「真空、波動拳!!」

 

 紅の雷を纏った紫の光線に対し、バーダックは手の内で回転する光の球を見据え呟く。

 

「…吹っ飛ばしてやらぁ!」

 

 目を見開き、バーダックは金色の気を更に高めると、オーバースローで青白い光の球を投げつけた。

 

「これで、最後だぁあああ!!!」

 

 ジャイロ回転しながら放たれた光の球は、何もかもを撃ち抜く光線に変化し、まともに真空波動拳とぶつかり合った。

 

 互いに向かって押し合う青白い光と紫電の光。

 

 しかし、ぶつかった時点で勝敗は決していた。

 

 バーダックの放った光線は、ぶつかった瞬間にその大きさを倍近くにまで増加したのだ。

 

「…何だと!? 真の力を肯定したこの俺が負けるというのか!?」

 

 一気に押し返される己の波動拳に、目を見開くと。

 

 バーダックは髪を腰まで伸ばし眉を無くした姿・超サイヤ人3に変身していたのだ。

 

「…お、おのれぇええええっ!!」

 

 光の向こうに消えていくターニッブを見据え、超サイヤ人3となったバーダックは息を吐いて超サイヤ人2の状態に戻りながら呟いた。

 

「…本物のテメエなら、こんな小細工も簡単に跳ね返して来たぜ? ターニッブよぉ」

 

 ブロリーやベジットにも屈さなかった青年の影に向かって、バーダックは静かにそう告げた。

 

ーーーーーー

 

 一方で、二組とはやや離れた位置で、ベジータはバビディに洗脳された時の破壊王子と呼ばれる頃の自分と向き合っていた。

 

「…随分、久しぶりに見たな。なるほど、コレが当時の俺が選んだ姿か。やはり、トランクスや悟天に見せる様なモンじゃないな」

 

 辛辣なベジータの言葉に、破壊王子ベジータは静かに邪悪な笑みを浮かべた。

 

「笑わせてくれるぜ…! 随分と丸くなっちまったじゃないか? そんなザマで、サイヤ人の冷酷さと残忍さを取り戻した状態の俺に敵うのか?」

 

 禍々しい気と邪悪な気配は、正に魔人ブウの頃に現れた破壊王子そのものだ。

 

「…残忍で冷酷なサイヤ人、か。その姿ならば、カカロットを超えられると当時の俺は考えた。結果は超サイヤ人3なんてふざけたモノを持っていたあの野郎の完勝だった訳だが」

 

「それを何とも思わんのか? 今一度、戦闘民族サイヤ人の王子としてカカロットを超えようとは!?」

 

「…くだらん。何が戦闘民族サイヤ人だ。誇りを捨ててバビディの力に頼り、強くなった気でいた訳じゃなかろう?」

 

 ベジータの言葉に破壊王子ベジータは目を細めて応えた。

 

「…さあな」

 

 構わずにベジータは告げる。

 

「別にあの時と同じ状況ならば、今でも俺は同じことをしただろう。カカロットと目一杯闘うためにな。奴はあの日だけしか、この世に来ることはできなかった。俺たちの実力差は歴然としていて、且つ魔人ブウのゴタゴタの所為で勝負が流れるかもしれなかったからな。カカロットも俺も蘇った今はそう焦ることもないが」

 

「フン。弱くなったな、ベジータ。人間としての温かさなどを戦闘民族サイヤ人が求めるとは」

 

「…試してみるか?」

 

 同時に構える。

 

 超サイヤ人2のベジータと破壊王子ベジータ。

 

 右手を突き出したのは同時。

 

「「ビッグバン・アタァアアック!!」」

 

 青白い光の球が掌に生じ、光弾が放たれる。

 

 中央でぶつかり合う二つの強烈な光は、互いに向かって押し合う。

 

「な、何だと!? バビディの洗脳で、俺の力は底上げされているはずだぞ!?」

 

「…フン。まあ、驚くのも仕方あるまい。つい数日前の俺ならば、超サイヤ人2でなら貴様と良い勝負をしただろうからな」

 

 淡々と告げるベジータに、破壊王子ベジータの目が見開かれる。

 

「どういうことだ!? 貴様、先のベジットと闘った時はこれほどのモノでは!?」

 

「ああ。まあ、精神と時の部屋に十数年入ってきたようなものだ」

 

「…な、なんだと!?」

 

 目を見開く破壊王子ベジータにベジータは静かに笑う。

 

「俺が弱くなったと、貴様は言ったな? だが実際に手合わせした感想はどうだ?」

 

「…き、貴様!!」

 

 破壊王子ベジータは必死にビッグバンアタックを押し返そうと、左手を右手に添えて力を入れている。

 

 だが、ベジータは淡々と右手を突き出したまま、微動だにしない。

 

「…バカな! ビクともしないだと!? どうなってやがる!?」

 

「貴様とは基本戦闘力が違うんだ、マヌケめ」

 

 はっきりと告げるベジータに破壊王子ベジータは目を見開く。

 

「…ふ、ふざけるな! 俺は貴様の基本戦闘力をバビディによって引き上げられた存在だぞ!! いくら貴様が修行していたとはいえ、超サイヤ人2の状態でこんな…!!」

 

 明確な差ができる訳が、と破壊王子ベジータが告げようとするよりも早く、ベジータのビッグバンアタックが一気に膨れ上がり、破壊王子ベジータの放ったビッグバンアタックを飲み込むと爆発した。

 

「…ば、バカな! こんな!!」

 

「…こんなはずじゃなかったか? まあ、そうだろうな。俺自身も反則だと思っている。未来の自分から得た力と技、変身を手に入れたのだからな」

 

「…なんだと!? バカな、時空を超えた可能性を引いたというのか!? あ、あり得ん!! 死者の都があるとはいえ、自分の未来の可能性が出てくるなど」

 

 冷や汗を流しながら告げる破壊王子ベジータに、ベジータは静かに目を細めて告げた。

 

「貴様ら死者の意思が、ベジットを作り上げた。そいつを見た未来の俺やカカロットが脅威だと感じるくらいにベジットになった貴様は強かった。だが、そのベジットは俺たちに倒された。それを見た未来の俺やカカロットは、この俺達を鍛え上げることを望んだのさ」

 

 破壊王子ベジータが目を見開いてベジータを見据える。

 

「つまり、貴様はサイヤ人の死人が呼んだ未来の自分を取り込んだというのか? だから、其処までデタラメにパワーアップしたと?」

 

「…まあ、そんなところだ。今の俺は超サイヤ人2の状態で破壊神の領域に片足を突っ込んでる。前までは超サイヤ人ブルーにならなければ至れなかった領域だ。喜びに打ち震えたぜ…!!」

 

 震える拳を握り締め、超サイヤ人2でありながら神の領域に達した己を見下ろす。

 

「…貴様は言ったな? バビディの洗脳を受け、甘さを消したが故に強くなれた、と」

 

 ベジータは静かに破壊王子ベジータの目を見据えた。

 

「…本当にそうか、ベジータ?」

 

 真剣な瞳で静かにベジータは、恐怖と屈辱に歯軋りする破壊王子ベジータを見据えた。

 




次々と生み出された己の影を払うベジータ達。

 いよいよ、死者の都も紛い物を生み出す能力がなくなり、ベジータ達が有利になる。

 しかし、惑星に溜まりし怨念は全てを食らうために鬼の姿を模した肉体に意識と力の全てを集中させたのだ。

 ここに、怨霊と超人の闘いが始まる。



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サイヤ人の王子 ベジータ

 惑星の意思が生み出したのは、ベジータとブロリー、ターニッブの可能性だった。

 しかし、ベジータ達は正面からこれを粉砕した。

 彼らを止めるには、過去の存在はあまりにも未熟であった。



 超サイヤ人ブルーの孫悟空と真・超サイヤ人のターニッブは全くの互角の戦いを繰り広げている。

 

 一撃勝負と銘打たれた格闘試合は、両者全く譲らず。

 

 互いに紙一重で捌き、受け、避ける。

 

「…おいおい。かれこれ一時間近くやり合ってんじゃねえか。一撃勝負だぞ、これ」

 

 ガーキンがボヤくのも無理はない。

 

 二人は互いの技を放ちながら、互いの技で防いでいるのだから。

 

「…ターニッブの野郎。真・超サイヤ人になってる時間が明らかに長くなってやがる」

 

 打撃の応酬は必殺技を絡めた一瞬の隙も許されないものになり、互いに笑みを浮かべながらも譲らない。

 

「…これなら、どうだぁあ!!」

 

 金色の光を手に生み出し、悟空は片手を突き出した。

 

 光弾は散弾となって散り、ターニッブの眼前を塞ぐ。

 

「まだだっ!!」

 

 気合いを入れてガードの構えを取った右手を突き出し、悟空の放った光に当てると光の散弾は粒子となって無効化される。

 

 しかし、悟空はこれを読んでいた。

 

 右手の人差し指と中指を立てて額に当て、その場から文字通り消える瞬間移動を行う。

 

 現れたのはターニッブの背後だ。

 

「油断したなぁ、ターニッブ!!」

 

 ターニッブに振り返りざま、回転しながらの上段飛び回し蹴りが放たれる。

 

「後ろか! 竜巻旋風脚!!」

 

 これにターニッブも体を回転させ、遠心力を加えた旋風脚を悟空の蹴りに放った。

 

 互いの脛の部分が、刀の斬撃のようにぶつかり合い止まる。

 

 衝撃が互いに響き渡り、互いの放った蹴り技に弾き飛ばされる。

 

「ぐあ!」

 

「くう!」

 

 互いに呻きながらも、見事に空中で体勢を整えて着地すると悟空が一気に加速する。

 

「行くぜぇ、ターニッブ!!」

 

 地を蹴ると目にも映らないスピードで駆ける。

 

「…来い、孫悟空!!」

 

 ターニッブも地面を踏みしめると、一気にその場を駆ける。

 

 両者の姿は消え、大地がせり上がり、打撃音が辺りに不気味に響く。

 

「飛び道具は牽制くらいで、ほとんど己の身だけで闘ってんなぁ。あいつら」

 

 拳を拳で。

 

 蹴りを蹴りで止める。

 

 どちらの攻撃が上か。

 

 どちらの防御が上か。

 

 逃げることなど考えてない、真っ向からの打ち合い。

 

「…は、はは! ダメだぁ! オラ、オメエがリューベとやり合う為に組み手してんのによぉ!! 終わりにしたくねえや!!!」

 

「…俺もだ。真・超サイヤ人の力をここまで長時間振るえるようになったのは。お前やベジータ、ブロリーが居てくれたからだ。本当に感謝している」

 

 楽しそうに笑う悟空に、清々しい笑みを浮かべて返すターニッブ。

 

 初めて会った時からそうだ。

 

 孫悟空にとって、ターニッブという男は最高の相手だ。

 

 そして、ターニッブにとっても孫悟空というサイヤ人は、ガーキンやジュードのように掛け替えない友だった。

 

 口で語るよりも拳を交換した時間の方が長い。

 

 二人は正に、そんな関係だ。

 

 語らいよりも、闘争を好む。

 

 通常、それはお互いを毛嫌いまたは、憎悪している行為なのだが、この二人にとってはまるで違う。

 

 余計な言葉は要らないのだ。

 

 孫悟空とターニッブ、この二人にとって言葉など何の意味もない。

 

 ただ、全力で拳をぶつけ合いたいだけだ。

 

 相手がどんな道を歩んだのか。

 

 どれほど腕を上げたのか。

 

 語らなくとも拳で分かるのだ。

 

 其処に憎しみや殺意はない。

 

 この二人にしか分からない純粋な闘志と勇気、そして愉しみがある。

 

「…ターニッブ!!」

 

 何度目になるか分からない、拳のぶつけ合い。

 

 ターニッブが静かに構えていた拳を解き、悟空に向き合う。

 

 いつの間にか孫悟空の方も超サイヤ人ブルーから真・超サイヤ人になっていた。

 

「…孫悟空、ありがとう。コレが俺の答えだ!!」

 

 悟空はコレに冷徹な瞳で口の端を歪めて笑う。

 

「俺は幸せもんだ。オメエと此処までやり合えた上に、最高の一撃まで拝めるなんてよ」

 

 拳を構える悟空。

 

 全身の気が膨れ上がり、拳に漲っている。

 

「俺の力の全てを、この拳の一撃にかける!! ターニッブ、勝負だぁあ!!!」

 

 冷徹な笑みを浮かべたあと、我慢できないと熱く叫ぶ悟空に応えるように。

 

 ターニッブも自分の宝物を見せる幼子のように自らの拳を見つめる。

 

「…お前だからこそ、俺は此処まで強くなれた。お前が相手だからこそ、俺はーー!! ありがとう、悟空。そして、この拳がお前への礼だ!!!」

 

「ああ、リューベよりも先に俺に味あわせてくれよ。オメエの最高の拳をなぁ!!」

 

 ニッと笑う悟空は、鋭く冷たい翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳でありながらも彼本来の温かさや優しさを感じさせる、何とも魅力的な笑みであった。

 

 対するターニッブも真っ直ぐに、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で悟空を見つめ、足を広げて左の中段正拳突きの構えを取る。

 

「…行くぜ、ターニッブ! コレが俺のーー龍拳だぁああ!!!」

 

「受けて立とう、孫悟空! 俺の拳ーー真・超サイヤ人の先に見えるもの! 倒すのではなく、勝つ為の拳。それが俺の一撃必殺!!!」

 

 悟空が身に纏う気を爆発させ、自らを黄金の龍に変えて地を蹴り空を駆ける。

 

「俺に放った時とは比べものにならねえ。コレが、孫悟空の真の一撃か。どう破るよ、ターニッブ!?」

 

 二人の熱が飛び火したように、ガーキンが熱く叫ぶ。

 

 中段正拳突き。

 

 空手の技の中でも基本中の基本というべき技。

 

 猛り狂う炎のように激しい悟空の気に対し、ターニッブの気は大木の葉を微かに揺らす風のように静か。

 

 空を駆ける龍の如き天衣無縫の拳に対するは、しっかりと地に足を付けて道を歩む質実剛健の拳。

 

 同じ顔をしたサイヤ人。

 

 同じ真・超サイヤ人の力を振るいながらも対極の拳。

 

「つうぉりゃぁぁああ!!」

 

 悟空が右の拳を振り抜き、黄金の龍のアギトが閉じる。

 

「セイヤァァアアアア!!」

 

 ターニッブの左拳が突き出され、風に揺れる木の葉が見える。 

 

 二人の全力の拳は、三度ぶつかり合った。

 

 音が消えた。

 

 二つの拳がぶつかり合った時、白い光が世界を包み。

 

 音を消した。

 

 光が晴れた時、ガーキンが静かに二人に歩み寄る。

 

 其処には、悟空の拳を左に見切って左拳を腹に突き立てたターニッブが居た。

 

「…フフフ、俺の負けだな。最高だぜ、ターニッブ!!」

 

 真・超サイヤ人の悟空は笑みを浮かべ、それだけを言うと黒髪に戻りながら両膝を地面についた。

 

 それを見下ろし、真・超サイヤ人のままターニッブは悟空に拳を突き出して告げた。

 

「コレが答えだ、友よ!!」

 

 その宣言を終えるとターニッブも黒髪に戻る。

 

 二人の間には会話はない。

 

 ただ、お互いに穏やかな明るい顔で、涼しげな顔で。

 

 笑いあっていた。

 

「…なるほど。ターニッブに本質は似てるが、振るう拳は正反対のサイヤ人ーー孫悟空か。悔しいけど、あそこまでやられちゃ、今回は負けを認めるしかねえかな?」

 

 ターニッブの一番の親友にしてライバルだと自負しているガーキンだが、この場だけは孫悟空に負けを認めた。

 

 悟空はしばらくは体が動かなかったようだが、やがてすくりと立ち上がり、ターニッブに笑いかけた。

 

「…今のオメエなら、どんな奴にも負けねえ。その拳をリューベに叩きつけてこい!!」

 

「ああ」

 

 ターニッブが拳を突き出して応えると、悟空も拳を合わせて白い歯を見せて笑った。

 

「そんでもって、その後はオラとだぜ? だから死ぬなよ。ターニッブ」

 

 明るく無邪気な笑顔でしかし、真剣な口調で告げる悟空にターニッブも真っ直ぐに見返した後、コクリと頷いた。

 

 リューベとの約束を果たす為に磨き上げられたターニッブの拳が、ついに形となった。

 

 ガーキンは、一気に自分を置いて遥かな高みに至ったターニッブを、複雑な表情で見ている。

 

(アレが、真・超サイヤ人か。ターニッブの野郎、ついに自分の目指す拳を形にしやがった、か)

 

 ターニッブが力を克服したことは嬉しい。

 

 しかし、それをさせたのは自分ではない。

 

 複雑な自分の心にガーキンは苦笑を漏らしていた。

 

 そんな彼らを物陰から褐色の肌のサイヤ人、ターレスが覗いていた。

 

「…アレが、真・超サイヤ人か。やはり、あの力に俺が目覚めれば。だが、どうやって?」

 

 超サイヤ人に成れたのだ、必ず成れるとターレスは信じている。

 

 問題はどうやって成るか、だ。

 

 カカロットもベジータもバーダックも、簡単に変身していたが。

 

「…可能性とやらを取り込むことで、奴らは急激な進化をしてきた。死者の都ーーあらゆる可能性が具現する場所か。だが、俺には超サイヤ人さえも可能性にはないらしい」

 

 皮肉に笑うターレスだが、ふと目を見開く。

 

「待てよ、死者の都の力を取り込めれば? あのベジットやフリーザ達を完璧に再現できるエネルギーの源を取り込めれば、俺はーー!!」

 

 自分の掌を握り締め、ターレスはニヤリと笑う。

 

ーーーーーーーー

 

 一方、死者の都では。

 

 圧倒的な力を誇るベジータ、ブロリー、バーダックの三人が生み出された影を相手に勝利を収めていた。

 

「…フン。どうやら、ブロリーが言ったように貴様もネタが尽きてきたようだな? この間のベジットに比べたら粗悪な紛い物だぜ」

 

「次に誰かの紛い物を召喚するなら、このバーダックにしとくんだな」

 

「ククク、良く言う」

 

 ベジータが見下し、バーダックが不遜にブロリーが邪悪に笑う。

 

 自分達の実力に自信と余裕を見せるサイヤ人達。

 

 だが、奢ってはいない。

 

 瞳は静かに相手を観察している。

 

ーー 汝らの力、理解した。では、その御魂を喰らうとしようぞ ーー

 

 異形の鬼は笑いながら牙を剥いて、凶悪に白目を光らせる。

 

 だが、鬼が構えると無限に上昇していた気が止まった。

 

ーー なんだと? ーー

 

 この現象に鬼は瞳が消えた白目を見開く。

 

 死者の都の意思は知的生命体の魂を喰らう事で、力を増し異界を更に増やしていった。

 

 あらゆる可能性を交わらせ、夢幻を現実に変える。

 

 生きているのか、死んでいるのかすら分からずに、滅んでいく生命体を喰らい続けた己に歯向かえたのは、数億年の記憶の中、ただ一人だけ。

 

 それを真似た自分が、エネルギーが尽きるなどあり得なかった。

 

「…貴様の誤算を教えてやる」

 

 ベジータの言葉に異形の鬼はその凶眼を向けた。

 

 体中にヒビが入り、黄金の光が溢れ出ている。

 

ーー 力が制御仕切れぬというのか? ーー

 

 鬼の独り言に応えるようにベジータは続ける。

 

「貴様は究極の戦士ベジットを完璧に作り上げてしまった。あの力の凄まじさは、体を得た貴様が一番分かっているだろう。其処に味をしめたのが貴様の敗因の一つだ」

 

 静かにベジータは己の気を引き上げ、水銀のオーラを纏う超サイヤ人ブルーに変身した。

 

 その時、着ているバトルジャケットがウイスの下で修行していた時の、黒を基調にした上下セパレートタイプのフィットスーツの上に、白い手袋とブーツを履いてバトルジャケットを着た服装となる。

 

「アレだけの力を完璧に再現し、挙句にはフリーザやブウ達まで復活させた。そして、リューベを葬るために大猿を作り上げ、全力のリューベと戦い敗れた。その後、リューベを異界に送り、自分はリューベの姿を模した可能性を取り込んで肉体を変化させた。超サイヤ人を極めた三つの形態ーー3にブルー、そして4の姿を継ぎ接ぎさせ。真・超サイヤ人の力をベースにした。エネルギーが持つ方がおかしいだろ?」

 

 冷静なベジータの指摘と身に纏う力に、思わずバーダックが目を見開く。

 

(さっきからどうなってる? なんで王子もブロリーも丸二日寝てやがっただけで、こんな桁外れのパワーアップを)

 

ーー 未来の己を取り込んだか。ベジットの力は時空を越えた存在にも脅威であったか。汝らの力を上げさせるとはな、確かに調子に乗り過ぎたわ ーー

 

 あの時に決着をつけていれば、と忌々しげに顔を歪める惑星の意思。

 

「そう。それが二つ目だ。貴様はあらゆる次元、時空から可能性を取り出すことができる。その力は未来の次元にまで及んだ。それを利用してサイヤ人の魂達が、未来の俺とカカロットに貴様の存在を知らせたのさ。真・超サイヤ人のベジットを見せた。その結果、奴らは俺たちに力を与えたのさ」

 

 ベジータは静かに拳を握る。

 

「…もっとも、超サイヤ人4と超サイヤ人ブルーのパワーアップはほとんど互角。僅かに身体能力や五感に優れ、力でねじ伏せる超サイヤ人4と。並外れた腕力ではないが冷静な判断力と洞察力、集中力を持った超サイヤ人ブルーと言ったところだ。状況に応じて使い分けることができるのは便利だが、そんな程度の有り難みだ」

 

 ニヤリとベジータは笑いながら言う。

 

「だが、未来の俺は基本戦闘力をトコトンまで鍛え上げていた。おかげで、真・超サイヤ人で引き上げなくても強くなれたぜ」

 

ーー 御託を並べおって ーー

 

「まあ、そう言うな。貴様の肉体にヒビが入った敗因を教えてやる。貴様は力を使い果たしてるのさ。真・超サイヤ人を模倣するだけの力がな!!」

 

 異界に溢れた瘴気の霧は既に消え、薄暗闇の空は徐々に朝焼けの空のような色に変わっている。

 

ーー 笑止!! 我は既にリューベに非ず、鬼なり!! ーー

 

 言うと同時、鬼は黄金の気を消すと髪を水銀に輝かせ始めた。

 

 消えていた瞳が再び現れる。

 

 琥珀色に漆黒の瞳孔が現れた瞳が鬼の目に宿った。

 

 身に纏うオーラは禍々しい青と黒の混ざったようなオーラである。

 

 ひび割れた赤黒い毛の生えた褐色の上半身は修復され、肉体が安定した。

 

「…真・超サイヤ人で無限に気を引き上げるのを諦め、超サイヤ人ブルーになる事で気をコントロールしたか」

 

 淡々と告げるブロリーと横で腕組みをしているバーダックにベジータが告げた。

 

「俺が叩き潰す! ブロリー! バーダック! 手出し無用!!」

 

 勇猛果敢に異形の鬼に対して、超サイヤ人ブルーが殴りかかった。

 

 羅漢仁王の如き鬼の手刀を真っ向から受け止め、ベジータは右の拳を褐色の腹に放つ。

 

 アッサリと掴み止められたが、衝撃は凄まじく周囲を吹き飛ばす。

 

ーー 愚かな。鬼神に何故抗う? ーー

 

「くだらん! なにが鬼神だ? 俺は誇り高き戦闘民族、サイヤ人の王子ベジータだ!!」

 

 ベジータは右の拳を顔面に放つ。

 

 鬼がそれを頰でまともに受けてのけ反り、すぐさま拳をベジータの左頬に返した。

 

「…ぬう! なめるな!!」

 

 スピードは互角だが、拳の威力が明らかに鬼の方が強い。

 

「フン、流石はリューベを模しただけはある。だが!!」

 

 相手の攻撃力が高いと知るや、足を止めて踏ん張って受けるのではなくフットワークを刻んで紙一重で避け、拳と蹴りを捌きながらベジータは打撃を返していく。

 

「フリーザ達をびびらせた鬼の拳を相手に、微塵も恐れを抱くことなく冷静に捌いて返すーーか。柄にもねえが見惚れちまうぜ、王子様よ」

 

 強烈な殺意を纏った拳を冷静に対処する姿に、バーダックが静かに告げた。

 

「それだけではない」

 

 ジュードが呆然と見つめながら告げる。

 

「ベジータの奴、先程ひびの入っていた箇所を的確に打ち抜いている。あれだけの殴り合いの中で、あの鬼を相手に冷静だというのか、ベジータ!!」

 

「亡霊をも殺す殺意のこもった拳はガードをするだけでも削られると言うのに。なんという精神力ーー!」

 

 プリカも静かに頷く。

 

 圧倒的な力と力が、異界の空と地を揺らしていく。

 

ーー 羅漢断頭刃!! ーー

 

 立った構えの残像を刹那の拍子に置いてベジータの背後に現れた鬼は、強烈な手刀を背後から一閃する。

 

 一瞬の隙を突かれ、ベジータは足を掬い上げられて宙に浮かされる。

 

 一瞬頭上に跳ね上がった体。

 

 その顔にめがけて鬼の強烈なハイキックが決まった。

 

「ぐぉ!?」

 

 その場できりもみに回転させられるベジータの腹に強烈な掌底が突き出され、遥か後方に吹き飛ばされる。

 

 それに追い討ちをかけようと鬼は両手首を上下に合わせて前方に青黒い光線を放った。

 

ーー 受けよ! 冥同豪波動!!! ーー

 

 咄嗟にベジータは両手を地面に叩きつけて、ひっかきながら勢いを殺して着地する。

 

 目の前に己の身の丈を遥かに上回る青黒い波動が、光線となって迫っている。

 

「舐めるなよ!!!」

 

 水銀のオーラを身に纏い、両手を突き出して波動を受ける。

 

 否、受けようとした。

 

 だが、波動はベジータの手をすり抜けてそのまま胸の中心を撃ち抜いた。

 

「な、んだと……!?」

 

 目を見開きながら、己の身を貫通した青黒い波動拳に舌打ちをしようとして、体が動かないことに気付く。

 

(これは、ジュードの使った電刃波動拳と同じーー!?)

 

 目の前を見れば、先よりも圧倒的に強力な波動拳がベジータ目掛けて放たれた。

 

 棒立ちのまま光の中に飲み込まれる。

 

「馬鹿な! ベジータぁああああ!!!」

 

 ジュードの悲鳴が響き渡る中、強烈な爆発と気柱が生まれて「天」と気で書かれた文字が浮かび上がり、爆炎が生じる。

 

ーー 汝の道は、此処で終わる ーー

 

 静かに構えたまま告げる鬼。

 

 その声を聞き、ジュードが超サイヤ人に変身する。

 

「貴様ーー! よくも!!!」

 

 今にも飛び出そうとするジュードをブロリーが止めた。

 

「落ち着け、ジュード」

 

「そこを退け、ブロリー! これは、惑星サイヤの王たる俺が止めなければならんのだ!!」

 

「…その覚悟は、全てが終わった後にしろ」

 

「なに!?」

 

 目を見開くジュードの前で、爆炎が金色のオーラに吹き飛ばされた。

 

 これに鬼が目を細める。

 

ーー 神威の力ではない。大猿か ーー

 

 現れたのは、紅い体毛に覆われた裸の上半身。

 

 漆黒の革のズボンの尻からは毛の生えた尾が。

 

 革のナックルグローブを嵌め、ブーツを履いた服装。

 

 漆黒の髪は天に向かうものと首元から背にかけて伸びているものがある。

 

 赤く隈取を付けたような目には翡翠に漆黒の瞳孔が現れている。

 

「待たせたな? これが異次元の俺の姿ーー超サイヤ人4だ!!」

 

 落ち着いた低い声や冷徹な雰囲気は真・超サイヤ人によく似ている。

 

 だが、それよりも遥かに変化のある変身だった。

 

「ベジータ。超サイヤ人ブルーや真・超サイヤ人の他にも、こんな変身を持っていたのか」

 

 普通の人間には気を感じられない超サイヤ人ブルーとは違い、超サイヤ人4は問答無用で圧倒的な気を纏っている。

 

 その気の大きさは、神の気を感じられるものからすれば先ほどまでの超サイヤ人ブルーとそう変わらない。

 

 神の気を使わずにただ純粋な気だけで神の域に達しているのだから、充分すぎる変身ではあるが。

 

「ベジータ、お前傷がーー!」

 

 そう。

 

 今のベジータは超サイヤ人ブルーの時に負っていた傷が癒えているのだ。

 

 ダメージも完全に回復しており、それがジュードを驚かせた。

 

「そういえば、先ほども超サイヤ人ブルーに変身した時にそれまで負っていた傷が消えていた。それに服装も変わっている? プリカ、どういうことだ?」

 

「ーーおそらく、ベジータさんは超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4を死者の都の力で固体化したのだと思います」

 

 プリカの言葉の意味が分からず、バーダックは目を訝し気に細める。

 

 ブロリーがそれに淡々と告げた。

 

「要するに、死者の都の“違う次元の存在を作り出す”能力を逆手にとって、超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4の二つの変身を違う肉体として誕生させ、魂に取り込んだってわけだ」

 

「どういうこった?」

 

「変身したら、ダメージが回復するのではなく。変身する毎に違う自分となって戦えるようになったってことだ。要は車を乗り変えるようなものだ」

 

 ブロリーの説明にバーダックは半信半疑と言った表情になる。

 

「エネルギー切れやらダメージを負い過ぎても、違う車に乗って目的地に向かえばいいって理屈か?」

 

「そんなところだな。死者の都がある惑星サイヤ以外で使えるのかは知らんが」

 

 ブロリーの言葉にバーダックがフン、と鼻で笑う。

 

「真・超サイヤ人も固体化してんのか?」

 

「いや。あの力と超サイヤ人1~3。俺の伝説の超サイヤ人は固体化できなかった」

 

「なんでできねえ?」

 

「…おそらくだが、変身のベクトルが同じタイプだからだ。“違う存在とは認識されないから”だろう」

 

 バーダックがチッと舌打ちする。

 

「残念だったな。バーダック」

 

「全くだぜ。せっかく超サイヤ人3まで目覚めたってのによ」

 

 二人はそう述べ合うとベジータと名もなき鬼に目を向ける。

 

 赤い猿の超サイヤ人となったベジータ。

 

 サイヤ人の神と大猿の力を同時に引き出した鬼。

 

「終わりだーー!!」

 

 超サイヤ人4ベジータはそれだけを告げると、一気に鬼の前に現れる。

 

ーー 愚かな!! ーー

 

 拳と拳が再びぶつかり合う。

 

 今度は力負けしないベジータ。

 

 鬼の怪力に真っ向から返すことができる。

 

 しかも、反応速度はブルーの時よりも速い。

 

 ブルーの時に鬼のヒビ割れた箇所は把握している。

 

 つまりーー。

 

「貴様の弱点は筒抜けだ!! それさえも理解できずに力を振るうだけの貴様には、この俺を倒すことなどできん!!!」

 

 拳を握り、相手の右正拳をかいくぐって踏み込むと同時にボディに右のアッパーを叩き込む。

 

 鈍い炸裂音と共に鬼の体が前のめりになるのを見て、容赦なく左のフックを顔面に叩き込み、のけ反ったところを右の上段回し蹴りで吹き飛ばした。

 

ーー なんだと!? ーー

 

 背中から遥か後方の地面に叩きつけられ驚愕する鬼に向かって、超サイヤ人4のベジータは右手を突き出し青白い光を宿した掌を向け、叫ぶ。

 

「ビックバンアタァァァック!!」

 

 軽々とした動きで放たれた光弾は、強烈な力を持ってまともに鬼の正面にぶち当たる。

 

 ドーム型の閃光が生じて光が晴れた後、鬼は静かにその琥珀色に黒の瞳孔が現れた瞳を細めてベジータを見据えた。

 

ーー よかろう! 汝を我が敵と認めようぞ!! ーー

 

 その言葉にベジータは静かに告げた。

 

「紛い物に用はない。俺のここでの目的は、数百年に渡り“真・超サイヤ人”で在り続けた初代サイヤ王リューベだけだ!!」

 

 拳を握りしめて超サイヤ人4のベジータは叫んだ。

 

「惑星の意思だか何だか知らんが、誇り高きサイヤ人の闘いの邪魔はさせんぞ!! サイヤ人の王子ベジータとしてなぁ!!!」

 

 気を高め、超サイヤ人4の金色のオーラに赤色が混じる。

 

 物理的な力に限って言えば、超サイヤ人ブルーをも上回るパワー。

 

 死者の魂を食らう惑星の意思にサイヤ人の王子ベジータの怒りが爆発したのだった。

 

 




 超サイヤ人4となり、超サイヤ人ブルーの時に見た弱点を容赦無くつくベジータ。

 惑星の意思はついに追い詰められるが…。

 一方、リューベとの決戦に臨むため死者の都に向かおうとするターニッブと悟空達の下に宇宙最強の存在が降り立つ。

 はたして、彼の目的は?



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神のワガママ 破壊神ビルス見参

圧倒的な力を誇る超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4を使い分けるベジータに、惑星の意思は追い詰められた。

 一方、リューベとの闘いに備えて悟空と拳を鍛えていたターニッブの下に破壊神ビルスが訪れる…。



 赤い猿の超サイヤ人ーー超サイヤ人4と化したベジータ。

 

 超サイヤ人ブルーの力をベースにした異形の鬼。

 

 二つの超パワーの持ち主が互いに睨み合っている。

 

「…ベジータ。それほどまでにターニッブとリューベの戦いを」

 

 惑星サイヤの王ーージュードは静かに友となった惑星ベジータの王子を見据える。

 

 巫女プリカも表情を険しいモノに変えながらジッと自分達とは異なるサイヤ人の王子の戦いを見据えていた。

 

ーー 愚かな。他者の争いを尊重し、己が命を棄てるか ーー

 

 目を細める琥珀に黒の瞳孔が現れた異形の瞳。

 

 対峙するベジータは、やや赤色に変わった黒髪を異界の風に靡かせ、翡翠に漆黒の瞳孔が現れた瞳で異形の鬼を見据える。

 

「言いたいことは、それだけか!!」

 

 その場から地を蹴り、一気に鬼の眼前に現れる。

 

 鬼の拳が振り下ろされるのを片手で受け止めるベジータ。

 

 圧倒的な力を誇る自身の拳を受けられ目を細める鬼に、ベジータの右ストレートが放たれる。

 

 これを鬼も左手で受ける。

 

 即座に鬼の天から落ちてくるような踵落としがベジータの頭上から落ちてくる。

 

 ベジータはその場で身を翻して避けると、後ろ上段回し蹴りを放った。

 

 鬼は後方にジャンプして反らしながら、宙で片手撃ちの波動を放ってくる。

 

ーー 散れ!! ーー

 

 即座にベジータも舞空術で飛ぶと波動拳を紙一重で避け、右の拳を握って鬼に突き出す。

 

「舐めるなよ!!」

 

 再び、空と大地を二つの強大な力が所狭しと駆け回る。

 

 今のベジータは、力比べの姿勢になっても自分よりも体格に優る異形の力に決して負けていない。

 

「あの姿ーー真・超サイヤ人と違って戦闘力は無限に上昇しないようだが、桁外れのパワーだ。バケモンの怪力にも真っ向から勝負できるなんてよ」

 

 バーダックが、先ほどまで相手の攻撃をフットワークで紙一重で捌きながらカウンターを取っていた超サイヤ人ブルーとは、戦い方が全く違うベジータを見て呟く。

 

 これに応えたのは隣で見ていた3メートルを越える巨体の筋肉の塊ーー伝説の超サイヤ人・ブロリーだった。

 

「超サイヤ人ブルーとは異なるサイヤ人の極みの一つらしい。神の気を纏わず、大猿の闘争本能と怪力を持った超サイヤ人。それが今のベジータの姿ーー超サイヤ人4だ」

 

「やけに詳しいじゃねえか」

 

「…まあな」

 

 バーダックが横目にブロリーを見ながら言うと、彼は静かに頷いた。

 

 青黒い気を纏った異形の鬼と紅と金色のオーラを纏った超サイヤ人4は、互いに拳と蹴りをぶつけ合う。

 

 乱打戦の最中、羅漢断頭刃と呼ばれる高速移動で背後からすれ違いざま両足を掬い上げる手刀の一閃。

 

 しかし、ベジータはくるりと身を翻し、手刀が両膝の裏を掬い上げようとしたところに振り返りざま膝蹴りを繰り出して受ける。

 

 両者の放った一撃が相殺し、天にむかって白い光の柱が突き立つ。

 

ーー 未だ抗うか、愚かなり ーー

 

「何度も言わせるな。惑星ベジータの王子として、貴様は此処で倒す!!」

 

ーー 笑止! ならば、受けて見ぃ!! ーー

 

 超サイヤ人4ベジータから、一気に距離を取り異形の鬼は両手を上下に組んで突き出し、右腰に置いて再び波動拳の構えを取る。

 

ーー 万物! 悉く塵と化す!! 冥同豪波動!!! ーー

 

 青、黒、紫の禍々しい気功波がベジータに向かって放たれる。

 

「ベジータ! 受けるな、避けろ!!」

 

 ジュードの叫びにベジータはニヤリと笑った後、両手を広げた後前方に左右で合わせて突き出すーーファイナルフラッシュの構えで一つの金がかった緑色の光球を作り上げる。

 

「黙って見ていろ、ジュード! ファイナルシャインアタァアアック!!」

 

 放たれた青緑がかった光線は冥同豪波動と中央でぶつかり合う。

 

 ベジータの放った一撃は、一気に異形の鬼の放った気を押し返していく。

 

「どうした!? 先ほど超サイヤ人ブルーの俺をKO寸前まで追い詰めたデカイ波動拳は撃たんのか!? それとも、このまま押し返されて終いか!!」

 

 ベジータは挑発する。

 

 先にしてやられた借りを真正面から返すために。

 

 相手がどんな存在であろうと己の誇りの為に戦う彼の姿は終始、変わらない。

 

 サイヤ人同士の誇りをかけた闘いを邪魔させないためにも。

 

 サイヤの王子ベジータは誰よりも誇りにこだわる。

 

ーー 失せよ!! ーー

 

 瞬間、鬼が先ほどまでとは比べ物にならない波動拳を左腰にたわめて逆の足を前に出して踏み込み、両手を突き出して放ってきた。

 

 しかし中央まで押し返した鬼の波動はそこで止まる。

 

ーー 何!? ーー

 

 これにベジータはニヤリと笑った。

 

 目を見開いた鬼の前に黄金の髪となったベジータ。

 

 青色のフィットスーツの上にバトルジャケットを着た、普段どおりの服装に変わっている。

 

 無限の気の上昇が始まり、翡翠に漆黒の瞳孔が現れた瞳が鬼を射抜いた。

 

「終わりだ、化け物ぉおおおおお!!!」

 

ーー バカな……!! ーー

 

 真・超サイヤ人ベジータの全力の一撃。

 

 超サイヤ人4を一回り上回る状態から数倍にまで力が一気に膨れ上がり、鬼を光の彼方に葬っていった。

 

「…フン。超サイヤ人ブルーや超サイヤ人4に比べてじゃじゃ馬だったが、ようやく使いこなせたぞ。手こずらせやがって」

 

 口元を拭いながらベジータは真・超サイヤ人となった己の掌を見下ろし、ニヤリと笑って拳を握り締めた。

 

 光が晴れたとき、目の前には仁王立ちとなった異形が再び姿を現す。

 

 ただし、その体は左半分ほどが崩れて消えて行く。

 

「貴様の負けだ。惑星の意思よ!!」

 

 真・超サイヤ人ベジータが半壊していく異形の鬼を前に、高らかに自らの勝利を宣言した。

 

 目の前では鬼が仁王立ちのまま、崩れゆく己を見下ろしている。

 

ーー まさか、リューベから進化した我が負けるとは ーー

 

「笑わせるな、貴様は進化などしていない。真・超サイヤ人となった俺には分かる。リューベは破壊と殺戮の衝動に飲み込まれまいと常に己自身と闘い続けてきたのだ。その研鑽の結果が今の奴だ」

 

 鬼は静かに琥珀色に黒の瞳孔が現れた目でベジータを見据える。

 

 ベジータは真・超サイヤ人となった己の戦闘力をコントロールしている。

 

 無限に上昇する気を無駄に上げて消耗させるのではなく、必要な時に引き上げるようにしているのだ。

 

 超サイヤ人ブルーの気のコントロール。

 

 超サイヤ人4の野生を抑え込む理性。

 

 この二つを持って、真・超サイヤ人の力を完全に使いこなしている。

 

「失せろ、紛い物!! ここからは誇り高き戦闘民族サイヤ人による決闘だ!! 魂を食らい、亡霊を生み出して人間を滅ぼすことしか能のない役立たずは必要ない!!!」

 

 黄金のオーラを炎のように激しく燃やしながら、真・超サイヤ人となったベジータは拳を握って叫んだ。

 

「…凄い。死者の都が生み出したリューベの写し身を、一方的に倒すなんて」

 

 プリカが思わず告げる横でブロリーが告げた。

 

「俺たち惑星ベジータのサイヤ人を束ねる王族だ。アレくらい、できて当たり前だ」

 

「くく、確かにな! その通りだぜ!!」

 

 ブロリーの言葉にバーダックも上機嫌に頷いた。

 

ーーーーー

 

 一方、闘技場にて格闘を行い終えた悟空とターニッブだったが。

 

 彼らの元に七色の光の柱が降りてきた。

 

「…この気は、ビルス様!?」

 

 悟空が目を見開きながら言うと、目の前には数日前に現れたウイスがいる。

 

「…誰だ、ビルスって?」

 

 ガーキンが目を見張りながら左右を見る。

 

「ガーキン…」

 

「何だよ?」

 

 同意を求める声をかけようと隣のターニッブを見ると、彼は真剣な目でウイスを見つめている。

 

「…ふうん。君が悟空とベジータが褒めていたターニッブかい? 顔や髪型、悟空にそっくりだね」

 

「服装もよく似てますね〜。白い武道着とは。しかし、雰囲気はどちらかと言えばベジータさんに似てるように見えますね〜。理想的なバランスです」

 

 ウイスの背後からの声に、彼は笑顔のまま淡々と応える。

 

 ウイスがゆっくりとその場から一歩退くと、細い目をした猫のような見た目の人間が立っていた。

 

「ターニッブ、でいいのかな?」

 

「…ああ。あんたは?」

 

 紫の肌をした猫人間は、静かに目を細める。

 

 猫科の獣が獲物を品定めするような仕草だ。

 

「僕はビルス。破壊神をしている」

 

「…破壊神?」

 

 それだけを告げるビルスにガーキンが横から口を挟む。

 

「おいおい、チョット待てよ! いきなり出て来てターニッブに何の用だ、神様!!」

 

 焦った口調のガーキンをウイスが止める。

 

「ガーキンさん、友達想いの貴方には申し訳ありませんが。ビルス様の興味はターニッブさんとリューベにあるのです。邪魔立てして、下手に機嫌を損ねると惑星ごと破壊されてしまいますよ」

 

 淡々と事実を告げるウイスにガーキンが、目を見張る。

 

「そんなこと言われて、黙って見てろってのかよ!?」

 

 ターニッブは静かにガーキンの肩を制する。

 

「お、おい!」

 

「すまないが下がってくれ、ガーキン」

 

 悟空が静かにターニッブとビルスを見つめる。

 

「…俺に用事が?」

 

「そうだ。僕はリューベと戦いに来たんだが、君にも興味はある。君がどれだけ強いのか、ね」

 

 それだけを言うとビルスは、後ろで組んでいた両手を前に移動させ、構えを取る。

 

「悟空達を認めさせた君の実力、是非この身で体験したくてね。構えなさい」

 

「ビルス様! ターニッブは、これからリューベと闘うんだ! だからよ、待ってくんねえかな!?」

 

 悟空が焦ったような口調で告げると、ビルスは笑う。

 

「…待ったさ」

 

「え?」

 

 淡々と恨めしげな目で見られ、思わず戸惑う悟空に構わず、ビルスは告げる。

 

「お前達が楽しそうに闘っているのを美味しいピザを食べながら待ったさ。ベジットなんて極上の獲物までくれてやってね。この上、リューベまで待てと言われたら、僕は怒りに身を任せちゃうかもなー」

 

「そりゃ、勝手じゃねえか? ターニッブとリューベには何年も前から因縁があんだよ。だからさ!」

 

「悟空、僕は確かに慈悲深い神様だけどね。自分の楽しみを我慢してまでお前達の都合に合わせるつもりはないよ。リューベは、僕がこれまで生きてきた中でも最高の獲物だからね」

 

 話を聞くつもりのないビルスに、悟空は静かに黙り見つめる。

 

 瞬間、ビルスはその場から消えるような高速移動で動くと悟空の目の前に現れた。

 

「!!」

 

「不服そうだな、悟空。歯向かうつもりならば、容赦はしないよ?」

 

 軽く裏拳を顔に放たれるも、悟空は黒髪の状態で反応して避ける。

 

「ふん、動きが随分と鋭くなったね。まるで十数年くらい修行した後のような動きだよ」

 

「へへっ、まあな」

 

 ビルスの言葉に人差し指で鼻をかきながら、自慢げに笑う悟空。

 

「だが、こんな遠いところまで来てターニッブ達よりもお前を優先する気はないよ。下がりなさい」

 

 言うとビルスは悟空の脇を高速移動で駆け抜け、ターニッブに拳を振り切る。

 

「! ターニッブ!!」

 

 悟空の声が響く中、片手でターニッブはビルスの拳を握り締めていた。

 

「…やはりね」

 

 口をニッと開いて笑うビルスを、ターニッブは静かに燃える黒の瞳で見返す。

 

「コレが、神の拳か。なるほど」

 

「…興味が湧いて来たみたいだね? 僕はこれでも、この宇宙最強の破壊神だからね」

 

「最強か、確かに。こんな強い拳は、あまり受けた経験がないな」

 

 ターニッブの言葉に、ビルスが不服そうに目を細める。

 

「僕の拳を比べられる相手が居るのかい? それはリューベかな?」

 

 問いかけるビルスにターニッブは右の正拳突きを放つ。

 

 強烈な炸裂音と共にビルスの左手に止められる。

 

「…君、リューベと似てるね。拳に心を宿している。奴は殺意、君は勇気、かな? 悟空の好きそうな拳だよ」

 

 心の力。

 

 純粋に強さを求めるターニッブやリューベだからこそ手に入れられた、悟空達とは違う拳。

 

 能力や身体のみならず、精神力がそのまま拳の威力に宿る。

 

 ビルスはニヤリと笑った。

 

「さて、それじゃーー」

 

「ーー!?」

 

 ターニッブが気付き、ビルスから離れる。

 

 同時、一気にビルスの気が上がった。

 

「見せてもらおうか? 超サイヤ人ゴッドにも匹敵する真・超サイヤ人の力って奴をね」

 

 紫色の神気を纏い、破壊神ビルスが本気を出した。

 

 その圧倒的な力は、全てをひれ伏させるほどの重圧がある。

 

「…ヤバイ! ターニッブ、悟空! 逃げろ!!!」

 

 ガーキンが震えながらも、必死に声を張り上げる。

 

 破壊神の重圧の前に一定の戦闘力以下の者は問答無用で金縛り、もしくは恐慌状態に陥る。

 

 “普通の”サイヤ人ならば。

 

「…凄まじい気だ」

 

 黄金の気を纏い、頭髪は天に向けて逆立つと黄金色へと変化する。

 

 燃えるような漆黒の瞳は翡翠色に黒の瞳孔が現れたモノに変わった。

 

「やはりね、君は耐えられると思っていたよ。悟空やベジータと同等ーーもしかすると、それ以上の力を持っているようだ」

 

 淡々とした口調で、真っ直ぐにビルスの目を見つめて告げる真・超サイヤ人のターニッブに、ビルスも嬉しそうな顔になる。

 

 静かに左構えのファイティングポーズを取りながら、ターニッブはビルスを見た。

 

「ちょっと待った…!」

 

 その時、悟空がターニッブとビルスの間に現れた。

 

 これにビルスが目を鋭く細める。

 

「…何の真似だい、悟空? 僕は下がっていろ、と言ったはずだ」

 

 悟空が不敵な笑みを浮かべた後、ビルスに対して構えを取った。

 

 全身に水銀の燐光を張り付かせて、オーラを纏う。

 

「悪りぃんだけどよ、ビルス様。ターニッブとリューベの闘いを邪魔させねえよ」

 

 水色に輝く超サイヤ人ブルー、神の気と超サイヤ人の気を同時に引き出した極限の姿。

 

 そう、超サイヤ人ゴッドの力を持つサイヤ人の超サイヤ人へと変化した。

 

「これはーー悟空さん。あなた」

 

 ウイスが表情を改める。

 

 悟空の服装が亀仙流の「悟」マークの入った山吹色の道着から、自分が与えた道着に変わったこと。

 

 そして、超サイヤ人ブルーの状態の基本戦闘力が跳ね上がっていることに目を見開いた。

 

「その変身ーー別の肉体に変わった? それに基本戦闘力も桁の違う上がり方をしていますね」

 

 これにビルスが目を細めて告げる。

 

「なるほど。死者の都が見せる時空と次元の可能性を魂が統一した存在になったのか、面白いじゃないか」

 

「オラ、難しいこたぁよく分かんねけど。…分かるんか。流石だな、ビルス様にウイスさん」

 

 不敵な笑みを浮かべて告げる悟空にビルスがニヤリと笑う。

 

「なるほど、いい勝負になりそうだな。だけど、ターニッブとの闘いで相当お前は消耗しているようだが?」

 

「…かもな。でもよ、一回は超サイヤ人ブルーでアンタと戦いたかったんだぁ!!」 

 

 言うと同時、悟空は気を溢れさせて一気にビルスに向かって駆ける。

 

 右の拳を思い切りぶつける。

 

 左手で掴み止められるもビルスの目が鋭く細まった。

 

「…お前!!」

 

 すぐさま、ビルスの返しの右の上段回し蹴りが放たれる。

 

 凄まじい衝撃で、周囲のモノが吹き飛ぶ。

 

 その一撃を悟空は左腕で軽々と受け止めた。

 

(…こいつ)

 

 ビルスが目を細めると同時、悟空はビルスの蹴り脚を跳ね返すと、一気に懐に踏み込み強烈な左と右のストレートからの拳と蹴りのラッシュを繰り出していく。

 

 鋭く、速い的確な打撃はビルスをして、防御体勢に回らなければ避けきれない。

 

 左右のストレートをギリギリで避ける、と左の上段回し蹴りがビルスのガードの上に炸裂する。

 

「ぐぅ!!」

 

 うめき声を上げ、ガード越しに崩れる体勢を悟空は見逃さない。

 

 冷静で的確な連撃が、ビルスを襲う。

 

 咄嗟にビルスは、距離を取ろうとバックステップしながら跳び上がろうとする。

 

 しかし、目の前には悟空が迫っていた。

 

「逃がすかよ!!」

 

「…ぐ!?」

 

 右のストレートが放たれる。

 

 瞬間、ビルスの顔面の手前で拳は止まった。

 

「!?」

 

 目を見開く悟空の右手首をビルスの左手が掴み止めている。

 

「図に乗るんじゃないよ、悟空ぅううううう!!!」

 

 強烈な紫の神気がビルスに纏わり、拳を返してくる。

 

 それを左手で掴み止めて悟空も水銀の気を纏い、地上を見下ろした。

 

 地上ではこちらを見上げる真・超サイヤ人のターニッブが居る。

 

 彼に向かって悟空は叫ぶ。

 

「何してる、ターニッブ!? ここはオラに任せて、オメエは死者の都へ行け!!」

 

 これに思わずターニッブが翡翠に黒の瞳孔が現れた目を見開いて告げる。

 

「だ、だがーー!」

 

「こんな所で時間なんて食ってる暇あんのか!? オメエが前の王様やリューベと交わした拳の誓いは、そんなに安っぽいんかぁ!!?」

 

 その言葉にターニッブは見開いた瞳を静かに鋭く細め、黙ってうなずくとガーキンに向かって告げた。

 

「行こう」

 

「…分かった。亡者どもが邪魔しに現れたら、露払いは俺に任せろ」

 

「すまん」

 

 ターニッブがあまりに自然にしているので、ガーキンは忘れていたが。

 

 この時、ターニッブの姿は真・超サイヤ人のままであった。

 

 戦闘力は無限に上昇してはいない。

 

 気が安定している。

 

 それが、どれほどに困難で険しいものだったかは、同じ境地に至った悟空とベジータにしか分からない。

 

「…へへっ。決着、つけられるといいなぁ。ターニッブ!」

 

 動きを止めていた向かいのビルスが静かに口を開く。

 

「悟空。“こんな所”とは言ってくれるじゃないか? この破壊神に向かってーー!」

 

 目を細め、怒りに震えるビルスに悟空は不敵な表情を崩さない。

 

「悪りぃな、ビルス様。アンタが何を言おうとオラ、ターニッブの邪魔はさせねえ!!」

 

「全王様のお気に入りだからって、殺さないように加減してやってれば調子に乗ってるみたいだねぇ…! 完全にキレたぞ!!!」

 

「そんなら、オラもアンタに怒ってんだ…!! 神様だからって好き勝手に人の因縁にちょっかい出すんじゃねえよ!!!」

 

 強烈なビルスの拳に力負けせずに受け流し、返す悟空の姿をウイスは嬉しそうに微笑みながら見ている。

 

「ビルス様と全くの互角とは、素晴らしい。やはり悟空さんは、次期破壊神にスカウトしたいですねぇ」 

 

 凄まじい打撃のやり取りの後、悟空が肩で息を切らし始める。

 

 ビルスが拳に紫色の光を纏って放ってきた。

 

 それを受け止めると、超サイヤ人ブルーのオーラが消える。

 

「!? クッ!!」

 

「忘れたか? 僕の能力は破壊だ。お前が僕と同等の力になっていても、それを消してしまえば意味はない」

 

 一時的に戦闘力を下げられた悟空に強烈な右のボディが決まり、前屈みになったところを背後に回ったビルスが後頭部に強烈な飛び蹴りを放った。

 

「ぐぁああああ!!!」

 

 悲鳴を上げながら前のめりに闘技場の地面に叩きつけられる悟空。

 

 亀仙流の道着に戻り、黒髪になりながらも立ち上がってくる。

 

 これにビルスがつまらなそうに見下ろしながら言った。

 

「…なんだい? ターニッブとの組み手で全力を出し過ぎたのかな? もうスタミナ切れなんて、ガッカリだよ」

 

 そのまま、ニヤリと笑いながらビルスは告げる。

 

「それとも、真・超サイヤ人になって戦うか? それなら、まだまだ楽しめそうだ!!」

 

 これに悟空は肩で息をしながらも、ペッと血を地面に吐き捨てて睨み上げる。

 

「言ったろ? オラ、アンタやウイスさんを相手に真・超サイヤ人にはなんねえってよ」

 

「なら、諦めて降参しろ。今なら、そこを退けば許してやる」

 

「それもゴメンだ。ターニッブとの約束をオラは守る!!」

 

 ビルスを正面から見据えて悟空は叫ぶ。

 

 同時、赤色の混じった金色のオーラを身に纏いはじめる。

 

「? これはーー? 超サイヤ人ゴッドと同じ赤色? だがーー!」

 

 目を見開くビルスに悟空は笑う。

 

「こっからは、アンタも知らねえ超サイヤ人の可能性だ。未来のオラからもらった力、見してやる!!!」

 

 悟空の気合いの咆哮が響き渡り、天に向かって金色のオーラが立ち昇る。

 

 その変身にビルスが目を細めた。

 

「なんだい、その姿は? 神の気を纏っていないな」

 

 悟空の姿は、赤い体毛の生えた裸の上半身と赤い尾の生えた、長い黒髪の超サイヤ人に変身していた。

 

 琥珀色に黒の瞳孔が現れた目。

 

 目の周りは歌舞伎の隈取をしたように紅い。

 

 道着も亀仙流のモノから更に変化し、山吹色よりも明るい道着のズボンと靴は黒の革靴。

 

 裾に青色の布を巻いている。

 

「超サイヤ人4さ…。何なら、強さ見せようか?」

 

 冷徹で低い声で、孫悟空は破壊神ビルスに告げた。

 

「…今度の俺は、ちょっと強いぜ」

 

ーーーー

 

 死者の魂を食らい続けた惑星の意思が。

 

 それが生み出した幻影の鬼の肉体が消えて行く。

 

 ひび割れた肉体の口は動かず。

 

 怨念めいた惑星の意思が声を上げた。

 

ーー おのれ。よくも、やってくれた ーー

 

 真・超サイヤ人となったベジータは、冷徹な翡翠に黒の瞳孔が現れた目で見据える。

 

「戦闘民族サイヤ人を甘く見たのが、貴様の敗因だ」

 

 腕を組んで消えて行く鬼の肉体に告げるベジータを、惑星の意思が笑う。

 

ーー フフフ。確かに“素晴らしい肉体を持ったサイヤ人”だ ーー

 

 瞬間だった。

 

 崩れゆく半壊した鬼の肉体がこちらに向かって突っ込んでくる。

 

 ベジータは、無事な方の左腕で拳を突き出してくる鬼を掴み止め、軽々とハイキックで蹴り飛ばす。

 

 まともに蹴りを浴びた鬼は完全にその場で塵となって消える。

 

 同時だった。

 

 蹴り脚を軸足に引きつけて戻し、素立ちになったベジータを青紫色の光が渦を巻いて襲い掛かる。

 

「!? これは!!?」

 

 目を見開くベジータの胸ーー心臓に向かって。

 

 肉体が消し飛んだ怨念の塊は、光る球が高速で迫る。

 

「! ベジィーータァアアアアアアア!!!」

 

 だが、目を見開くベジータの前に両手を広げて光の球を遮る影があった。

 

「馬鹿な! ジュード、よせ!!」

 

 ベジータの制止の声もむなしく、怨念が凝縮した光はジュードの胸に吸い込まれていった。

 

「ジュードォオオオオオオ!!!」

 

 プリカも目を見開いてジュードを見据える。

 

「お、お兄様…! そんな…!!」

 

 目の前に居たのは、真・超サイヤ人と化したベジットと瓜二つのサイヤ王。

 

 ジュードが邪悪な笑みを浮かべて立っている。

 

「…くっ! なんてザマだ、この俺が!!」

 

 油断をしたつもりはない。

 

 だが、まさか惑星の意思が肉体を作るのではなく乗っ取ることを選択するとは、ベジータも思っていなかった。

 

「…どうした? 何を驚いている。ベジータよ」

 

 ジュードの意識を完全に乗っ取った惑星の意思が、真・超サイヤ人となった己を見下ろして笑う。

 

「俺は惑星の意思。知的生命体の意志や念、魂を食らうことで自我を得た実体のない存在だ。こうなることくらい予測できなかったか?」

 

 嘲笑するようなジュード王の姿にベジータが忌々しそうに表情を歪める。

 

「貴様…! 俺の友の肉体を乗っ取りやがったな!!!」

 

「友、か。お前は幸せ者だな? 友の拳で死ねるのだから…!!」

 

 無限の気の上昇を始めるジュードに、ベジータも真・超サイヤ人の力を引き上げ始める。

 

(先に変身した分、俺の方が時間的に不利だ。一気に引き上げねば!!)

 

 真・超サイヤ人の倒し方は簡単だ。

 

 ベースとなったジュードの戦闘力は並みはずれてはいるが超サイヤ人でしかない。

 

 そこから戦闘力が引き上がる前に、強烈な一撃で決着を付ければよいのだ。

 

 しかし、それは下手をすれば肉体を乗っ取られたジュードが死んでしまう。

 

 かと言って手加減をして、生半可な攻撃を加えたところで相手を強化するだけだ。

 

 この状況にベジータは、惑星の意思とそれを許した己への怒りを感じて拳と唇から血が出るほどに握り、あるいは噛みしめていた。

 

 その時だ。

 

「ベジータ。お前の出番は終わった」

 

 3メートルを越える巨大な筋肉の塊。

 

 白目の超サイヤ人ーーブロリーが淡々とした様子で激しい金色のオーラを身に纏い、告げる。

 

「後は、俺がやる!!」 

 

 追い詰められた惑星の意志に意識を乗っ取られたジュード。

 

 彼を救うため、かつて己を悪魔だと言ってのけた伝説の超サイヤ人が立ち上がった。




かつて、血と争いを好んだ超サイヤ人が居た。

しかし彼は、その才能ゆえに仲間に疎まれて赤子のころに殺されそうになる。

さらに、もって生まれた力と凶暴さ故に親に自我を奪われて洗脳されるのだった。

自らを悪魔と呼んだ彼は、惑星サイヤに召喚されて変わった。

壊すのではなく、守るために。

倒すのではなく、勝つために。

その拳は固く握られていた。



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決着! 惑星の意思を超えたサイヤ人

 圧倒的な力を誇る超サイヤ人を極めたベジータ。

 彼によって追い詰められた惑星の意思は、ジュード王の肉体を得て真・超サイヤ人に変身した。
 



 惑星の意思は、精神体となりベジータの体を乗っ取ろうと襲い掛かった。

 

 それを庇ったサイヤ王・ジュードが肉体を奪われ、真・超サイヤ人と化した。

 

 闘おうとするベジータを止めたのは、ブロリーだった。

 

 ブロリーの言葉にベジータは目を見開く。

 

「出番は終わりだと? どういうことだ、ブロリー!?」

 

 問いかけるベジータに、ブロリーは静かに真・超サイヤ人になったジュードを見据える。

 

「怨霊を払うのだろ? ならば倒すのではなく、勝つための拳を打たねばならん」

 

「…どういう意味だ?」

 

 ブロリーの言葉を理解できず首を傾げるバーダックとは逆に、ベジータは押し黙る。

 

「わかるのか、王子?」

 

「……まあな。共に修行したターニッブの拳が必要ってわけか」

 

 ベジータの言葉にブロリーがうなずく。

 

「奴と同じ拳を貴様は打てるのか?」

 

「打たねばならんのだろ? サイヤ王を死なせるわけにはいかんからな」

 

 そう言いながら、ブロリーは伝説の超サイヤ人となった己の肉体を見下ろす。

 

「ターニッブと組んで修行したのは、この俺だ。奴からは動きや波動の練り方を学んだ。別の世界の俺のパワーとターニッブから学んだ拳があれば、サイヤ王に“勝つ”ことができるはずだ」

 

 ごつい岩のような拳を握りしめ、ブロリーはジュードを睨みつけた。

 

「伝説の超サイヤ人・ブロリーか。果たして貴様にこの死者の都の力を得た俺が倒せるかな?」

 

 言うと真・超サイヤ人となったジュードは、己の肉体に高まる黄金の気を一気に噴き上がらせる。

 

 これに真・超サイヤ人から普通の超サイヤ人に戻り、体を休ませていたベジータが目を鋭く細めた。

 

「奴め、さっき俺が引き出した力と同等のレベルにジュードを引き上げやがった…! やはり真・超サイヤ人ってのは厄介だな」

 

 これにバーダックが問いかける。

 

「おい、王子様よ。これだけ戦闘力が高まっちまったら、ぶっ倒すには時間切れしかないんじゃねえのか?」

 

「…いや、もう一つ方法がある。破壊神ビルスと同じように、力だけを破壊できれば。ターニッブが精神世界で完成させつつあった、あの拳ならできるはずだ」

 

 そう告げるベジータは目をさらに鋭く細める。

 

「もっとも、ブロリーの奴が使えるかは全くの未知数だがな。一撃必殺の”風の拳”を!!」

 

 思わずバーダックがそれは何だと問おうとするもできなかった。

 

 ベジータが急に背後を振り返り、目を見開いて天を仰いだからだ。

 

「! この気は破壊神ビルス!? ウイスの野郎、ビルスの手綱を握りきれなかったか!!」

 

「? どうしたよ、王子」

 

「バーダック、貴様は一度死者の都を出て闘技場にいるカカロットと合流してくれ」

 

「話が見えねえな。死者の都の意思をぶっ倒すのが先じゃねえのか?」

 

 問いかけるバーダックにベジータが鋭い目を合わせて告げた。

 

「よく聞け、今カカロットが足止めをしている奴の名はビルス。この世で最も恐ろしく、最も強い破壊の神だ。奴が死者の都に来れば、俺たちの都合などお構いなしにリューベを狙うはず。そうなったら、ここまでお膳立てしてやったターニッブとリューベの勝負が台無しだ」

 

「……」

 

 ベジータのただならぬ様子にバーダックも瞳を鋭いものにする。

 

 二人の超サイヤ人は互いの翡翠の瞳を見合う。

 

「…ターニッブとリューベの因縁の事は聞いちゃあいたが。まさかアンタやカカロット、ブロリーが他人の為にここまでやるとはな」

 

「甘い、と言いたいか? 戦闘民族に相応しくないと。それならば、それでも構わん。だが、ターニッブやジュード達の抱えているモノをバカにするならば命の保証はせんぞ」

 

 バーダックは静かにベジータを見返した後、両手を胸の前で組んで兄が正気に戻るのを必死で祈るプリカを見る。

 

 ベジータを庇ったが為に惑星の意思という怨念に肉体を奪われたサイヤ王は、真・超サイヤ人になりながらも両目からは血の涙が流れている。

 

「……うぉおおおお!!!」

 

 それを見たブロリーが己の気を一気に引き上げて、爆発した。

 

 煙の向こうから現れたのは3メートルを越える筋肉の塊の大男ではなく、ブロリーの本来の体型とも言うべき無駄な肉のない引き締まった体の2メートルを越える身長、しなやかな長い手足を持った超サイヤ人へと変化する。

 

 その髪の色は先ほどまでよりも濃い黄金色。

 

 白目だった目には翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳があった。

 

「…そう言えば、貴様も真・超サイヤ人になれるのだったなブロリー。生まれながらにして真に至り、一度は理性をもなくしたほどの才を持つサイヤ人か、面白い。このサイヤ王の肉体が滅びたら、次は貴様の肉体を頂くとするかな」

 

 ジュードや同じ顔のベジットも浮かべなかった邪悪でいやらしい笑みを浮かべた怨霊に、ブロリーが嫌悪の表情に変わる。

 

「……クズが。お前のような他人の肉体に頼らねばならん雑魚など、興味はない! ジュードを無事に返せば痛い目に遭わずに済んだものを…!!」

 

 血の涙を見据え、ブロリーの気が一気に引き上がる。

 

 バーダックはブロリーの怒りを見て、そして真・超サイヤ人を見て静かに目を細める。

 

(ブロリーの野郎も王子と同じように戦闘力を引き上げやがった。真・超サイヤ人ってのは、そういう使い方もできるのか)

 

 ブロリーやベジータの真・超サイヤ人は、バーダックのそれのように気が無限に上昇するのではなく、戦闘力を安定させた状態であり、己の意思で力を一気に引き上げることができるようだ。

 

 現に余計な体力の消耗が、先ほど変身していたベジータにはない。

 

 それを見てバーダックはニヤリとする。

 

「で。どうなんだ? カカロットと合流するのか、しないのか。早く決めやがれ!」

 

「……いいだろう。破壊神だか何だか知らねえが、俺がぶっ潰してやらぁ!!」

 

「ば、バカ野郎!! 下手にビルスの機嫌を損ねてみろ、惑星サイヤごと消されるぞ!!」

 

 焦ったベジータの言葉にバーダックは目に険しい光を宿す。

 

「なんだ? 破壊神ってのは、そんないけ好かねえ野郎なのか?」

 

「き、急に貴様を行かせるのが不安になってきたぞ」

 

 思わず告げるベジータは、惑星の意思と睨み合うブロリーを見てぼやいた。

 

「ブロリーの方が、まだマシだったか。俺としたことが、人選をしくじるとは……!!」

 

 惑星の意思がジュードの肉体を操り、一気にブロリーの懐に踏み込むと右の拳をぶつける。

 

 まともに顔を殴られたブロリーは後方へ頭をのけ反らせた。

 

「……!」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべた惑星の意思が固まる。

 

 ブロリーは、仰け反った姿勢のままニヤリと邪悪に笑いながら意思を見返していた。

 

 瞬間、左の拳が惑星の意思の鳩尾に決まる。

 

「がはぁ!?」

 

 目を見開き、息を吐く惑星の意思に構わず、ブロリーは素早い動きで右の上段回し蹴りを横面に当てて蹴り飛ばした。

 

 長くしなやかな足から繰り出された一撃は強烈で、惑星の意思をはるか後方に吹き飛ばして見せた。

 

「……」

 

 ブロリーは掲げた右脚を静かに軸足に戻し、立って見据える。

 

 バーダックがコレに目を見張った。

 

 ブロリーの動きに無駄が一切ない。

 

(野郎…。カカロットやターニッブと修行したせいか? 動きが変わった。前のように力でねじ伏せるだけじゃない。そこに技が組み込まれてやがる)

 

 鋭く目を細めながらバーダックは、彼らに背を向ける。

 

「……じゃ、行ってくるぜ。王子様よ」

 

「ああ。カカロットを、頼む…」

 

 その言葉にバーダックは静かに笑みを強くした。

 

「……クク。ギネや俺以外にも、甘ったるい野郎がいやがったみてぇだな。そういやさっきの質問だがよ、王子」

 

「……なんだ?」

 

「俺は、そういうの嫌いじゃねえ」

 

 それだけを告げると、バーダックは自分が宮殿の闘技場に上がった階段に向かって飛んでいった。

 

 バーダックを見送り、ベジータは一言吐き捨てる。

 

「貴様も甘いだろうが…。カカロットが似ているのか、貴様が似たのかは知らんがな」

 

 プリカが静かにベジータの隣に歩み寄る。

 

「ベジータ様、どうして。そこまで兄やターニッブのために?」

 

「下らん質問をするな。俺が戦闘民族サイヤ人の王子・ベジータだからだ」

 

 それだけを告げ、ベジータはブロリーと立ち上がってきた惑星の意思を見据えた。

 

「なかなか、いい蹴りだ。なるほど、ターニッブから動きを学んだか。ならばーー」

 

 惑星の意思は笑みを浮かべながら言うと同時、ジュードの肉体を使って一気に踏み込んでくる。

 

 体重を乗せた右拳の一撃をブロリーは左手で掴み止めた。

 

 両者の地面に亀裂が走り、黄金の気が噴き上がる。

 

 同時に両者が地を蹴り、目にも映らない高速移動で拳と蹴りを繰り出し合う。

 

 これにプリカは瞳を閉じ、心の眼で二人の動きを追い始めた。

 

 気が絶えず上昇するジュードの真・超サイヤ人に対し、ブロリーは安定した戦闘力のまま戦っている。

 

 ジュードがあるレベルに達すれば自分もそのレベルに戦闘力を引き上げることで、エネルギーの消費を最小限にしているのだ。

 

「どうやら奴らの動きが見えているようだな、プリカ」

 

「……はい。私はサイヤの巫女ですから」

 

「ならば、良く見ておけ。貴様の兄・ジュード王の誇りとブロリーの強さを!!」

 

「…はい!!」

 

 腕を組んだ状態で告げるベジータにプリカも眦をきりりと吊り上げて見据えた。

 

 強烈な拳と拳をぶつけ合いながら、ジュードの全身から大量の汗が吹き出し始める。

 

「…チッ、限界がベジットよりも速い! 拳を鍛えているとはいえ、所詮ただの超サイヤ人か!!」

 

 息切れはしていないが、肉体が悲鳴を上げ始めていることに意思は気づいた。

 

 それを淡々と冷徹な翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳でブロリーは見据える。

 

「…馬鹿め。それだけだと思うのか?」

 

「なんだと?」

 

 意思は問い返した瞬間に、己に違和感が走るのを感じる。

 

「これは、肉体がうまく動かせぬだと?」

 

 流れる血の涙が更に溢れてくる。

 

 プリカには、その涙が兄であるジュードの必死の抵抗に見えた。

 

「お兄さま……!!」

 

 惑星の意思は感じている。

 

 不吉な予感を。

 

 このままでは、己が取り込まれる可能性があると。

 

「おのれ。人間一人の意思に飲み込まれるほどに弱まったというのか……! さっさと決着をつけてくれる!!」

 

 言うと同時、無限に引き上がる力を利用してジュード王が使ったことのない最高の技を構える。

 

 右手を天に左手を地に向けて掌を相手に向け、腰を落として構える。

 

「あの構えはーー! サイヤ王家に伝わる究極の波動拳!!」

 

「究極の波動拳だと?」

 

「先祖代々に伝わってきた禁技・瞬獄殺と対を為す、もう一つの絶技です! 父さまは撃ち方を兄に教えていなかったはずなのに……!!」

 

 ベジータに応えながら、プリカは大技を構えるジュードに目を向ける。

 

 これに惑星の意思が笑って応えた。

 

「……愚かな。俺は数億年を生きる惑星の意思。貴様等の初代サイヤ王とは数百年に渡って争い続けてきたのだ。もはや、貴様等サイヤ人のすべてを知っていると言っても過言ではない!!」

 

 絶句するプリカを置いて、対峙するブロリーは冷淡に告げた。

 

「御託は、それで終わりか?」

 

「吼えたな? ならば、受けてみるが良い!!」

 

 上下に広げた両腕を時計回りに回す。

 

 空気中から青い光の粒子が現れ、ジュードの両手に集められていく。

 

 粒子は光の輪となって回り、上下がジュードが開いた腕を閉じるように手首を合わせて右腰に掌をたわめられる。

 

 圧倒的な光球がジュードの掌に生まれていた。

 

「こ、こいつは…! カカロットの元気玉と同じように大気中から気を!? そいつを波動拳で撃てるだと!?」

 

 驚くベジータに惑星の意思は笑う。

 

「無限に気が上がる真・超サイヤ人と無限に気を集められる波動拳。この二つを合わせた究極の一撃。これぞ、最強よ!!」

 

 高笑う意思を前にブロリーも静かに両手を前方に突き出した後、手首を上下に合わせて右腰にたわめる。

 

「ーーギガンティック・オメガ!!」

 

 強烈な緑色の光の球を創り出し、更に気を練って一気に引き上げる。

 

「うぉおおお……!! さあ、撃って来い! 此処がお前の死に場所だぁ!!」

 

「どこまでもフザケた男だ、ならば後ろの仲間共々消えるがよい! 波動ーー至高拳!!!」

 

 両手を前方に突き出して放たれる惑星の意思の極大の青白い波動拳。

 

 対するブロリーも両手を突き出して己の極限の気を放った。

 

「撃ち抜けぇええええっ!!!」

 

 ブロリーの叫びに応えるように緑色の光線が大きさを増しながら、青白い光線とぶつかり合う。

 

 互いに向かって押し合う両者の必殺技は互角。

 

 いや、ブロリーが押されている。

 

「ぐ……!!」

 

「ほう? ただのハッタリではなかったか。だが、残念だったな。セルとかいう化け物の可能性を得た記憶が、俺にこの技の強化方法を教えてくれたぞ」

 

 更にジュードが気を引き上げると同時に、周囲から光の粒子を吸収していく。

 

 互角だった光は、ブロリーを一気に押し返していく。

 

「さあ、終わりだ!!」

 

 気を高め一気に押し返してくる惑星の意思。

 

 その血を流す目を見据えて、ブロリーが告げた。

 

「…辛いだろう、ジュードよ。誰かに操られるというのはな」

 

「……!! なんだ!? 波動が……!!」

 

 語りかけるブロリーの声など静か過ぎて届きはしないのに。

 

 それでもジュードの練っていた波動拳が弱くなる。

 

「ーー今、楽にしてやろう!!」

 

 瞬間、ブロリーは自分の放った気を一度手放すと左腰に両手を再びたわめて青白い光球を創り出した。

 

「受けろ、惑星の意思!! これがーー真の波動拳だぁあああああ!!!」

 

 放たれた神々しく輝く青白い光線は、惑星の意思が放った電刃波動拳を打ち砕き、一気にジュードの肉体を飲み込んだ。

 

「ーーお兄さまぁああああ!!!」

 

 プリカの声が響く中、青白い気柱が天に向かって突き立った。

 

ーー 馬鹿な。この我が。惑星の意思が、消えるというのか。おのれ、サイヤ人どもめ ーー

 

 恨めしげに響く声。

 

 青白い光が晴れた時、前のめりに倒れたサイヤ王・ジュードの姿があった。

 

 思わずプリカは駆け寄る。

 

 抱き上げた兄は、光の粒子となって消えることはなく、安らかな寝息を立てていた。

 

「……これは。お兄さま」

 

 ポカンとしたプリカがブロリーを振り返ると、彼は翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で見返し、静かにうなずいた。

 

「ーーありがとう、ござい、ます……!!」

 

 気丈な巫女が、人前で初めて涙を流した。

 

 そんな美しい女の涙をブロリーが見つめていると、背中を軽く叩かれる。

 

 振り返れば、ベジータが真顔でブロリーに対し親指を突き立てている。

 

 するとブロリーも真顔のまま、ベジータに親指を突き立て返してきた。

 

 二人の超天才のサイヤ人は、同時にニッと口の端を歪めて笑った。

 

 




 惑星の意思を相手に勝利したブロリー。

 其処にターニッブとガーキンも合流する。

 互いの無事に喜ぶのも束の間。

 ついにターニッブの前に約束を果たそうと鬼が現れる。



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超サイヤ人4 対 破壊神ビルス

 惑星の意思を倒したベジータ達。

 彼らの前についに、ターニッブが現れる。

 ターニッブとリューベの戦いがついに始まる。

 一方で、破壊神ビルスと超サイヤ人4になった孫悟空は激戦を繰り広げていた。


 ジュードはプリカの腕の中で目を覚ました。

 

「こ、此処は」

 

「ーーお兄さま!!」

 

 抱きしめられ、ジュードは困惑した表情になる。

 

「プリカ? どうしたのだ、いったい」

 

 いつもは淑やかな妹が、自分を必死に抱きしめてくるので戸惑う。

 

 そんなジュードに声をかけてくるものがいた。

 

「無事のようだな、ジュード」

 

 闘いを終え、黒髪に戻ったベジータだ。

 

「? ベジータ? 惑星の意思は、あの異形はお前が倒したのか!?」

 

「ああ。とどめはブロリーの奴だがな」

 

 ベジータはそう言うとブロリーを見据える。

 

 黒髪に戻ったブロリーは静かな瞳でジュードを見返してきた。

 

「どうやら、成功したようだな」

 

 ブロリーの言葉にジュードが目を見開いた。

 

 記憶が蘇る。

 

 自分は、ベジータを庇い。

 

 惑星の怨霊に肉体を奪われて。

 

「ブロリー、お前が助けてくれたのだな。ありがとう」

 

「気にするな。大したことはしていない」

 

 頭を下げるサイヤ王ジュードにブロリーは微かに笑い、本当に何でもないように告げた。

 

 その後、ジッとジュードを見据えて苦笑する。

 

「まさか、この俺が違う星とはいえ。サイヤ王に礼を言われる日が来るとはな」

 

「おいーー。耳が痛いから、余りその手の話題は言うな」

 

「ククク、気にし過ぎだ。ベジータ」

 

 ブロリーから直接面と向かって言われたジュードには意味がわからなかったが、ベジータには理解できたようだ。

 

 苦虫を噛んだような顔になる。

 

 それをブロリーは可笑しそうに笑って見ていた。

 

「ーージュード、プリカ様。ベジータにブロリー。みんな無事だったか」

 

 声の聞こえた方を見れば、真・超サイヤ人になったターニッブが翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で立っている。

 

 隣にはガーキンも居た。

 

「良かったぜ。みんな、何ともないんだな?」

 

 ベジータが静かに黒髪のガーキンを見る。

 

「当たり前だ、俺とブロリーが居て何を心配することがある?」

 

「そりゃそうだ。けどよ、ベジータ。今、悟空の奴が」

 

「知っている。破壊神ビルスが現れたのだろ?」

 

 ガーキンの言葉を遮り、ベジータが告げるとジュードが目を見開き、プリカが表情を険しくする。

 

「破壊神ビルス? 宇宙で最も強く、恐ろしい神という?」

 

「…ビルス様は、リューベに興味があるようです。ですから、ターニッブとリューベの闘いを邪魔させない為に。ベジータさんや悟空さん達はーー」

 

 これにガーキンも頷いた。

 

「ターニッブを此処に来させる為に、悟空のヤツは破壊神のところに一人で残りやがった。あいつだけに任せてられるか。俺は戻るぜ!」

 

「待て、ガーキン!」

 

 今、来た道を振り返り戻ろうとするガーキンにベジータが告げる。

 

「…カカロットの所には、奴の親父のバーダックを向かわせた。貴様にはターニッブの闘いを見届ける義務があるだろ。ジュードもプリカもだ。だから、カカロットは闘っているのだ。分かってやれ」

 

 淡々とした口調のベジータにジュード、プリカ、ガーキンが思わず黙り込む。

 

 彼らを置いてターニッブが静かに一歩、先ほどまでブロリー達が立っていた場所に歩んで行く。

 

「…ターニッブ」

 

 ブロリーが真・超サイヤ人となっている彼の背に声をかけた。

 

「死ぬなよ…」

 

 その一言には万感の思いがある。

 

 それを知ってか、ターニッブはその場に立ち止まって振り返り、笑みを浮かべた。

 

「…ああ。みんな、行ってくる」

 

 寡黙であまり自分から表情を変えることのないターニッブが、まるで幼子のように純粋で透明な笑みを浮かべた。

 

 思わず、プリカが立ち上がり呼び止めようと手を伸ばすが、それを兄ジュードが無言で止める。

 

 兄は静かに首を横に振った。

 

 ガーキンがターニッブに真っ直ぐ拳を突き出す。

 

 ターニッブは笑ったまま、その目に向かって頷いた。

 

 瞬間、ターニッブの前に巨大な雷が落ちる。

 

 轟音が響いて衝撃が走る中、濃紺色の空手着。

 

 手と帯を荒縄で締めた、足袋に草履を履いている超サイヤ人が現れた。

 

 静かにベジータが呟いた。

 

「…いよいよ、だな」

 

「ああ。だが、この闘い。惑星の意思が倒された以上、サイヤ人の運命は最早関係ない」

 

 ジュードが応え、ベジータの隣に立つ。

 

「純粋にサイヤ人同士、どちらが強いのか知りたい。それだけなのだろう…」

 

「…あいつらは、ただの武道家だからな」

 

 ブロリーの言葉にガーキンが応える。

 

 彼らが見守る中。

 

 互いに翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で見合う、白と黒の道着の超サイヤ人。

 

 圧倒的な力を放ち合いながら、二人は向き合う。

 

「…貴方を師匠ーー先代サイヤ王は”甘い”と言った」

 

 静かにターニッブは、冷淡にして冷徹な無表情の鬼の青年に告げる。

 

「だが、俺はそうは思わない」

 

 表情の変わらない鬼に向かい、ターニッブは穏やかな笑みと共に告げた。

 

「真なるサイヤ人・リューベ。貴方は、どうしようもない頑固者だ」

 

 ややあって、リューベの。

 

 能面のように無表情だった鬼の口の端が柔らかく歪む。

 

 これにプリカが目を見開いた。

 

「…リューベが、笑った?」

 

 非情な拳で命を奪うことにしか興味を示さない存在だと思っていた。

 

 なのに、今のリューベは笑っている。

 

 冷たい氷のような瞳を閉じ、優しげな笑みで。

 

「…フ、フフフフ」

 

「ははははっ」

 

 無邪気な笑顔で口を開けて笑うターニッブ。

 

 互いに穏やかな笑みを浮かべ、笑い合う。

 

 ようやく、約束が果たせる刻。

 

「…貴方に言いたかったこと。それだけだ」

 

 言うと同時、ターニッブが真・超サイヤ人の黄金のオーラを身に纏う。

 

 右拳を腰の前に出し、斜に構えて左拳を顎の横に置く。

 

 左構えになって膝を曲げ、腰を落とす。

 

「……」

 

 これに応えるように。

 

 鏡に映るようにリューベも同じ構えを取る。

 

 リューベの全身に黄金のオーラが漲り、濃紺色の空手着が青紫色に変わる。

 

 ターニッブの指の開く紅いグローブを着けた両の拳には、青白い雷光が走り始め。

 

 リューベの荒縄を巻いた拳には、血のような紅の光が天に昇りながら宿る。

 

 両者、同時に目を見開き、地を蹴って踏み込むと、互いに向かって左の拳を突き出した。

 

「うぉおおおおっ!!!」

 

「ぬぉりゃあぁっ!!!」

 

 乾坤一擲の気合いの声。

 

 二人の真ん中で、強烈な炸裂音と共に二つの拳がぶつかった。

 

ーーーーーー

 

 サイヤ王の宮殿。

 

 兵士達は亡霊騒ぎで起こった外の混乱を鎮め終え、宮殿に戻ろうとして、できなかった。

 

「こ、こりゃ、なんだよ?」

 

「…王様や巫女様は、無事なのか!?」

 

 宮殿の周りには強力な光のドームが張られている。

 

 中には入れない。

 

「…いったい、中で何が起きてるんだ」

 

 一人の兵士長が思わず、口に出して告げた。

 

 破壊神の付き人・ウイスが作った結界である。

 

 この結界があれば、ビルスの全力の攻撃も外には影響しないのだ。

 

 結界が張られた無人の宮殿内にある闘技場の中では、二つのパワーが空中、地上を問わずぶつかり合っている。

 

 炎のような紅と金色のオーラを纏い、口元に不敵な笑みを湛えた赤い体毛の生えた黒髪の超サイヤ人。

 

 猫のような見た目の頭を持ち、ギョロリとした丸い目を見開いて牙をむき出しにする痩せ型で紫色の肌を持つ破壊神。

 

 左拳を右に避け、右の拳を被せるように放つ悟空。

 

 簡単に右手を開いて頰の前で受け止め、悟空の右の膝を右の膝で受けるビルス。

 

「…フン」

 

 その場で回り、長い尻尾を鞭のようにして悟空の顔に放つも、悟空は軽々と左手で掴み止める。

 

 同時、宙に浮いたビルスの左飛び蹴りが、尾を掴んだ悟空の左腕に突き刺さり、衝撃が悟空の体を抜けて後方のものを吹き飛ばす。

 

 互いに見合う悟空とビルス。

 

 と、悟空はニヤリと笑ってビルスの尾をパッと離した。

 

 同時、ビルスは悟空から距離を取る。

 

「どうだい、ビルス様? 超サイヤ人4になった俺の強さ、楽しんでもらえてるかい?」

 

 距離を取ったビルスは悟空を見ながら告げた。

 

「…驚いたよ。戦闘力が表面化した状態で、神の域に来るとはね。超サイヤ人ブルーにも匹敵している。いや、純粋な身体能力と戦闘力なら、ブルーよりも上だ」

 

「そ! 超サイヤ人ブルーが、敵の弱点や闘い方を見切るのに長けた洞察力で相手を上回るなら。超サイヤ人4は、圧倒的な戦闘力で相手をねじ伏せるのさ」

 

 得意げに鼻をこすり、笑みを浮かべる悟空にビルスは感嘆したような溜め息をついた。

 

「全く、つくづくサイヤ人ってのは面白いね。生身の人間が神の気を纏うかと思えば。神の気を纏わずに神の域に達する変身をしてみせる」

 

 これに悟空もニヤリと笑う。

 

「なんだよ。知らねえのか、ビルス様?」

 

「……?」

 

「俺たち、サイヤ人は闘えば闘うほどに強くなんだ。戦闘民族だかんなぁ」

 

「…なるほどね。だけど、悟空。僕には通じないよ、その超サイヤ人4ってのはね」

 

「…ん?」

 

 ビルスの淡々とした言葉に悟空も目を見開く。

 

「…僕とやり合うなら、超サイヤ人ブルーの方が良かったね」

 

「……!!」

 

 目を見開く悟空の前にビルスが現れる。

 

 破壊神の強烈な不意打ち気味の右の浴びせ蹴りを軽々と掴み止める、デタラメなパワーの超サイヤ人4にビルスはニヤリとする。

 

「素晴らしいパワー、反応速度、そして戦闘力だ」

 

 拳と蹴りをぶつけ合う両者。

 

 悟空の打撃は、ビルスを物理的なパワーで押している。

 

「…だけどね、悟空。超サイヤ人4には、ブルー程の“未来視”とも第六感とも言える神がかった予測ーー判断力と洞察力がない。相手の攻撃を解して捌きながら攻撃を返すよりも、相手がどんな攻撃だろうと真っ向から殴り合ってねじ伏せるスタイル。それが、お前の敗因だ!!」

 

「……っ!?」

 

 打ち合いの中。

 

 悟空の右ストレートが、それまで凄まじい威力を誇った超サイヤ人4の力が、まるで凪のようにピタリと止まる。

 

 泰然として揺るがないビルス。

 

「力を一時的にゼロに破壊する。僕の能力を知らないわけじゃないだろう、悟空?」

 

「…っ! 舐めんなよ。あん時みてえに、消された以上の力でアンタを吹っ飛ばしてーーっ!?」

 

 気を高め、超サイヤ人ゴッドを吸収できた時と同じように気を上げて、拳を止めたビルスを体ごと上空に吹き飛ばそうとする。

 

「真剣勝負に、わざわざ力が溜まるのを待つ奴がいると思うのか!?」

 

 掴んでいた拳を引かれ、体勢が崩れた所に強烈で鋭い右の前蹴りが、悟空の腹に突き刺さった。

 

「…ぐぁ!?」

 

 強靭な肉体の超サイヤ人4でも、気がゼロの状態では耐え切れない。

 

 前のめりになって呻く悟空の背後に、ビルスは高速移動で現れ、首筋に蹴りを食らわせる。

 

 悟空はまともに地面に顔面から突っ込んで、闘技場の地面に溝を掘りながら、うつ伏せに倒れこんだ。

 

 たった二撃の打撃だがダメージがまともに通り、それまで全く揺らがなかった超サイヤ人4が少しだけふらつく。

 

 肩で息をしながら、立ち上がる悟空。

 

 その気が下がっている。

 

「なるほどな…。ビルス様と互角以上に殴り合えるレベルになって浮かれてたぜ。気をゼロにされっと超サイヤ人4の肉体でも、こんだけダメージを食らうんかよ」

 

 悟空は拳を握って気合いを入れ、一気に超サイヤ人4の力をゼロの状態から引きあげる。

 

「ならよぉ、超サイヤ人4のフルパワーで行くぜ!!」

 

「…来なさい。躾を兼ねて破壊神の恐ろしさを思い出させてあげよう」

 

 目の前に現れた悟空にビルスは凶暴な笑みを浮かべて、拳を握る。

 

 ぶつかり合う二つの拳。

 

「…ぐぁ!」

 

 ビルスが呻きながら、右手を払って僅かに下がる。

 

 完全に力負けした。

 

「…もらったぁ!!」

 

 悟空が見逃すはずはない、一気呵成に怒涛の拳と蹴りの連撃を放つ。

 

 鋭く速く、荒々しくも的確に急所を狙う悟空。

 

「…舐めるなよ?」

 

 ビルスも負けじと拳と蹴りを放ち、移動する足を止めての打ち合いになる。

 

 ビルスの右のストレートを悟空は片手で軽々と受け止めて、右の回し蹴りを顔に返す。

 

 左腕で受け止めるビルスだが、歯を食いしばり脂汗を流している。

 

「破壊神の腕を痺れさせるとはねぇ。やってくれるじゃないか、悟空!!」

 

 言うと悟空の蹴り足を弾いて紫の光を放つ拳がボディに炸裂した。

 

「…ぐぁ!?」

 

 瞬間、超サイヤ人4の漲るオーラがゼロになる。

 

「…しまっ!?」

 

 バックステップして距離を取ろうとする悟空の懐にビルスが踏み込み、左の拳を悟空の頰を振り切った。

 

「がっ!?」

 

 顔がのけ反り、意識が半分飛ぶ。

 

 更にビルスの右ストレートが悟空のボディを貫いた後、右のハイキックが顎を蹴り飛ばした。

 

「ぐわぁああっ!!」

 

 悲鳴を上げながら、悟空は地面に背中から叩きつけられていた。

 

「…ビルス様が破壊の力を使う程に本気になり、純粋な殴り合いではビルス様相手に優勢、ですか。神の気を纏わずに。それだけでも充分過ぎるほど、素晴らしいのですが。貴方は納得されていないようですね、悟空さん」

 

 ウイスが告げると、超サイヤ人4の力を全身に漲らせて悟空が立ち上がる。

 

「当たり前じゃねえか、ウイスさん。せっかくビルス様と俺一人の力でまともに殴り合えてんだぜ? 勿体無くて寝てなんていらんねえよ……!!」

 

 コレにウイスが楽しそうに口元を手で隠しながら、上品に笑う。

 

 対峙するビルスは、凶暴な笑みを浮かべている。

 

「いいぞ、悟空!! お前を強敵と認めよう!! 楽しいぞ、本当に!! はじめてだよ、本気で誰かと殴り合うのは。それも、まともに殴り合うと僕が負けるなんて!! 破壊神の力を使わなきゃ、僕が劣勢になるなんてね!! 楽しいじゃないか!!!」

 

 超サイヤ人ゴッドの時よりも遥かに楽しそうに、恐ろしい迫力の笑みを浮かべてビルスは笑った。

 

 これに悟空も野性味ある冷徹な笑みで応える。

 

「…へへっ、アンタを喜ばせることができて光栄だぜ。だけどよ。悪りいが、俺は勝つつもりだぁあ!!」

 

「やってみろ!! 今のお前になら、その大言も許されるぞ!! それ程の強さだ!!!」

 

 更に高まる両者の気。

 

 力をゼロにされ、打撃をまともに受けても悟空は不屈の闘志で立ち上がってくる。

 

 純粋な身体能力や戦闘力ならば、自分を上回る超サイヤ人の誕生に、ビルスはリューベの事も忘れて夢中になっていた。

 

 一方、激戦を繰り広げる超サイヤ人4と破壊神の闘技場に死者の都の階段から、ゆっくりとバーダックが現れた。

 

 彼は空中で繰り広げられているバトルを見て、思わずボヤく。

 

「カカロットの野郎。さっきの王子と同じ超サイヤ人に目覚めてやがる。とんでもねえ領域の戦いだな。…んで、あの猫みたいなツラしてんのが、破壊神ビルスか」

 

 悟空よりも鋭い翡翠の目で超サイヤ人バーダックは、ビルスを見据えた。

 

「…ウイス、バリアは完璧だな?」

 

 そのビルスが静かにウイスに向かって話しかける。

 

 コレにウイスが楽しそうに笑いながら、涼しい表情で告げた。

 

「ええ。しかし、ビルス様を本気にさせるとは。やはり、悟空さんは凄い人ですねぇ」

 

 瞬間、ビルスの両手に破壊の光が一瞬で宿る。

 

「…なんだと? 破壊の力は、一定の時間溜める必要があるんじゃねえのか!?」

 

「誰が、そんな事を言った?」

 

 瞬間、ビルスが先程までと変わらない超スピードで踏み込んでくる。

 

 悟空は咄嗟に距離を取りながら、気弾を撃って離れようとする。

 

「いい判断だ。肉弾戦だと、僕に触られたら力が消されるからね。だけど、その闘い方では、超サイヤ人4の持ち味が活かされないよ」

 

 気弾が全て、ビルスの体から放たれるオーラに触れて止まり、消えて行く。

 

 ビルスにダメージを与えるには、気をゼロにされるリスクを計りにかけながら肉弾戦を挑むか。

 

 それとも無効化できないほどのエネルギーを遠距離から放つしかない。

 

 超サイヤ人4の孫悟空が選んだのは、後者。

 

「なら俺の最高の技ぁ、受けてみろぉ! 10倍!!」

 

 言うと悟空は、両手を前に突き出して上下に手首を合わせた後、右腰に置いてたわめる。

 

 両手の中に紅い光の球が生まれた。

 

「かぁ〜めぇ〜! はぁ〜めぇ〜!! 波ぁああっ!!!」

 

 前方に両掌を突き出して放つ紅いかめはめ波。

 

 ビルスは、両手を胸の前で合わせて小さな恒星のような炎の球を作ると自分の頭上に掲げて、一気に大きくする。

 

「破ってみろ、超サイヤ人ゴッドの時には破れなかった僕のエネルギー弾を!!」

 

 放たれる紅い炎の球と紅いかめはめ波がぶつかり合う。

 

 強大な力と力にバーダックが翡翠の目を細めて悟空を見据える。

 

 紅いかめはめ波がビルスの作った球を撃ち抜き、爆散させるとそのまま、ビルスの前に迫る。

 

 ビルスは、右手に強烈な光を放つ紫の球を作り出すと、掌を紅いかめはめ波に向けた。

 

 紅いかめはめ波がビルスの掌に触れた瞬間、何事もなかったように消される。

 

「大した強さじゃねえか、カカロットよぉ。だが、あの猫野郎には通じねえ、か?」

 

 静かに目を細めて、紅いかめはめ波を消された瞬間、破壊神に殴りかかる息子を見て考える。

 

 その横に青白い肌の長身の男性ーーウイスが現れた。

 

「はじめまして〜! 悟空さんによく似た方ですね〜。ターニッブさんや、そちらで隠れられているサイヤ人の方よりも気の質が悟空さんに近い」

 

「…誰だ、テメエ。只者じゃねえのは、何となく分かるが」

 

 バーダックはチラリと隠れていると告げられた方を見た後にウイスに向き直る。

 

「…わたくしの名前はウイスと申します。悟空さんやベジータさんを、当人たちの希望もあって鍛えております。よろしければ、お名前を伺っても?」

 

「…バーダックだ。するとテメエは、カカロットや王子の師匠になる訳か?」

 

「まあ”今は”と申し上げておきましょう。ところでバーダックさん。貴方も素晴らしい鍛え方をされておられますね〜。いかがでしょう? この惑星サイヤの問題が済めば、わたくし達の宇宙代表として、闘っていただけないでしょうか? 惑星サイヤに来た元々の目的は悟空さん達が認めたターニッブさんを全宇宙格闘技大会の選手にスカウトすること、だったのですが。貴方を含め、素晴らしい資質の方々ばかりのようですからね〜」

 

 これにバーダックは、皮肉な笑みを浮かべて告げた。

 

「…生憎だな。この肉体は死者の都に造られた仮初めのモンで、魂もあらゆる世界の俺が混じって訳の分からねえ状態だ。まあ、ただのサイヤ人でしかねえ。生きてるのか、死んでんのかも分からねえ、曖昧な存在だ」

 

 これに微かに微笑み、ウイスは安心させるようにバーダックに告げた。

 

「…見たところ、存在が統合された事で肉体の固体化には成功しているようですが。ふむ、まあいざとなればビルス様に頼んで死者の都との因果を破壊してもらいましょう。中途半端な固体化ならば消えてしまいますが、貴方やブロリーさんほどに固体化できているなら問題ありませんよ」

 

 そして、ウイスは声をビルスに張り上げた。

 

「ビルス様!」

 

 ビルスは悟空のボディに拳を入れ、気力をゼロにすると両手を組んで後頭部に真上から振り下ろした。

 

 地面に叩きつけられる悟空を尻目に、ビルスは目をバーダックに向ける。

 

「聞いてたよ。なるほど、確かに戦力になるね〜。だけど簡単に選手にしたんじゃ、つまらないな」

 

 尻尾を振りながら言うビルスにウイスが告げた。

 

「おそらくバーダックさんは悟空さんのお父様でしょう。性格や気の質がよく似ております」

 

 超サイヤ人4の悟空が頭を左右に振りながら、バーダックを間に挟んで話をする二人の会話に耳を傾ける。

 

「確かにね。ターニッブや其処の物陰から見てるサイヤ人も悟空にソックリだけど、君は中身や気も似てるね」

 

「バーダックさんやブロリーさんは、肉体の固体化に成功してます。とはいえ、元々は死者の都の産物。惑星サイヤを離れれば消えてしまうでしょう。その因果律をーー」

 

「破壊できるのは僕だけだね。いいよ」

 

 その会話の内容に悟空が思わず声を上げた。

 

「ホントなんか、ビルス様にウイスさん! この惑星を離れたら、父ちゃんもブロリーも消えちまうってのか!?」

 

 ビルスは立ち上がってきた超サイヤ人4の悟空を真正面に見据えて告げた。

 

「悟空、真・超サイヤ人になりなさい。お前が勝てば、バーダックとブロリー、だったか? 二人のサイヤ人をこの惑星から解き放ってやるよ」

 

「……」

 

 悟空の琥珀に黒の瞳孔が現れた目が細められる。

 

「このビルスが、ただの人間一人を相手に破壊神の力を使ってまで闘ってるんだよ? 文字通り全力だ。それに比べてお前は、超サイヤ人4とブルーまでしか使わないつもりか?」

 

 これに悟空は鋭く目を細めると、構えを解いてビルスを見つめる。

 

「…もう少しで、アンタの力を見切れそうだったんだがなぁ。残念だぜ」

 

「そうだね。このまま時間が経てばね」

 

 意味ありげなセリフに超サイヤ人4の悟空は目を細め、ビルスはニヤリと笑う。

 

「そう。真・超サイヤ人になれと言ったのは、僕の願望だけじゃない。超サイヤ人ブルーを使い果たしたお前へのアドバイスだよ。僕の破壊の力を喰らい続けて物理的なダメージも蓄積した超サイヤ人4の肉体が、そろそろ限界なんだよ。強靭過ぎる体ってのも考えものだね?」

 

 瞬間、金色のオーラか悟空の肉体を包み、超サイヤ人4の変身が解かれ、ただの超サイヤ人になってしまう。

 

 道着も、いつもの亀仙流の「悟」マークの付いた山吹色のソレだ。

 

「どうだい、なる気になったかい?」

 

 ビルスの言葉に悟空は静かに頷く。

 

「…ああ。オラも腹を決めたぜ! 父ちゃんとブロリーの為にもなぁ!!」

 

 言うと同時、悟空の肉体を黄金のオーラが身を包む。

 

 見た目はほとんど変わらないが、先までよりも濃い黄金のオーラは、バーナーのように激しい。

 

 金色の髪も黄金に染まり、翡翠の瞳には漆黒の瞳孔が現れている。

 

「…こいつが、俺の真・超サイヤ人。派手にやろうぜ、ビルス様!!」

 

「くくく、それでいい。これで破壊神の僕の全力をようやく試せるよ!!」

 

「…そいつぁ、楽しみだ。破壊神ビルス様の全力、見してもらおうじゃねえか!!」

 

 構える悟空とビルス。

 

 その悟空の隣にバーダックが立った。

 

「待てよ、カカロット。俺も混ぜろや!!」

 

 言うと同時、バーダックの前髪が更に天に向かって逆立ち、金色の髪が黄金に変わる。

 

 翡翠に黒の瞳孔が現れた目を見て、悟空は目を見開いた後に不敵な笑みを浮かべた。

 

「真・超サイヤ人か。…流石だぜ、父ちゃん」

 

「まだガキに負けるほど、耄碌してねえよ」

 

 バーダックも野性味ある笑みで返す。

 

 真・超サイヤ人になりながらも髪型は超サイヤ人2のソレだ。

 

 額が露わになり、紅いバンダナが映える。

 

「おい、宇宙最強の破壊神」

 

「…なんだい?」

 

「二対一でも良いよな?」

 

「…願ってもないよ」

 

 快諾するビルスを見た後、自分の体を見下ろす。

 

 悟空と違い、気が安定せずに無限上昇を始めるバーダックは、自分の左掌を抑えて必死に気を安定させようとコントロールする。

 

 このまま、息子の前で力を垂れ流し続けてガス欠になる訳には行かない。

 

「戦いながら、安定させる方法を探るとするか」

 

「…父ちゃん。アンタ、俺以上に無茶すんなぁ〜」

 

「るせえ、ガキが生意気言うんじゃねえ」

 

 何処か嬉しげに、同じ顔をした真・超サイヤ人の親子は破壊神ビルスを前にして笑い合った。

 

 




 孫悟空とバーダック。

 二人の真・超サイヤ人を相手に能力を駆使して互角以上に戦う破壊神ビルス。

 はたして二人のサイヤ人は、破壊神の牙城を打ち破れるのか。

 そして、ターニッブとリューベの死闘もまた、新たな意味を生み出していた。



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真・超サイヤ人 孫悟空

 真に至りし超サイヤ人。
 
 破壊と殺戮と闘争を好むという伝説の戦士。
 
 その伝説に応えるかのように。
 
 圧倒的な気の上昇と痛みを感じない頑健な肉体を併せ持つ、超サイヤ人が現れた。
 
 真・超サイヤ人ーーこの力が孫悟空とバーダックにもたらすのは勝利か?
 
 それともーー。


 惑星サイヤの王宮。

 

 その中に作られた常世の石材を使った頑丈な闘技場。

 

 二人の黄金の戦士と紫色の猫の顔をした破壊神が睨み合う。

 

 二人の黄金の戦士の内一人。

 

 赤いバンダナに黒と緑を基調とした色合いのバトルジャケットを着た男ーーバーダックは、天に黄金の髪を逆立てて翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で破壊神ビルスを見据えたまま告げる。

 

「テメエがフリーザもビビらせる破壊神ビルス。確かにとんでもねえ力を持ってるようだな…」

 

 ビルスがこれに目を細めて笑う。

 

「知っていてもらえて光栄だよ。悟空の父親だそうだが。少しは楽しませてもらえそうだね」

 

「ハン。この俺を相手に、んなナメた口利いてるとケガするぜ?」

 

「フフ。はじめて会ったときの悟空を思い出すね。ホントによく似た親子だ。君にも躾をしないといけないかな?」

 

「やってみやがれ! 言っとくが、力が並外れてるだけのガキに負けてやるほど、俺はお人好しじゃねえぜ」

 

 この二人のやりとりに悟空が真・超サイヤ人のまま不敵に笑う。

 

「…父ちゃん。ビルス様を怒らせっと世界がヤベエんだ。あんまり挑発しねえでくれよ?」

 

「あん? ナメたこと言い出したのはあの猫野郎だろうが」

 

 不機嫌そうに睨みつけてくる自分と同じ顔の父親に、思わず悟空は肩を落とした。

 

「……ベジータの奴。よりにもよって、何で父ちゃんをこっちに寄越すんだ……」

 

 真剣な表情で悟空は静かにグチをつぶやいた。

 

 対するビルスはニヤリと笑ってバーダックを見据える。

 

「悟空ほどの力はないし、真・超サイヤ人のパワーもさっきから無駄に引き上がっていってるみたいだね? そのままだとエネルギー切れが目に見えてる訳だけど、それで僕の相手がつとまるかな?」

 

 瞬間、バーダックが凄絶な笑みを浮かべてビルスの目の前に現れる。

 

 ビルスも牙を剥き出しにした笑みで拳を握って応戦した。

 

 ぶつかり合う両者の拳。

 

 力任せのバーダックの拳に対し、ビルスの拳はきちんと武道を学んだ者の動き。

 

(…ん? コイツ)

 

 しかし、ビルスの目は鋭く細められる。

 

 先の一撃に彼なりに驚異を感じることがあった。

 

 破壊神としての彼の勘だ。

 

(悟空に比べて荒削りな動きだ。アイツも天衣無縫というか。好き放題な動きをするけれど、こいつのは更に我流。しかし、実戦慣れした動きだな)

 

 目を細めながら拳と蹴りを繰り出し合い、ビルスはバーダックを評価した。

 

 互いに拳と蹴りを繰り出し合いながら、バーダックは驚異的なスピードでビルスのレベルに辿り着いてくる。

 

 右の中段回し蹴りを右腕で受け、ビルスは左の拳をバーダックのボディに突き刺す。

 

「ぐぅ!?」

 

 そのまま掌を開いて光弾を放つ。

 

「ぐぉおお!?」

 

 悲鳴を上げながら、バーダックは地面に叩きつけられた。

 

「父ちゃん!!」

 

 思わず悟空が声を張り上げるも、彼が動くよりも速くバーダックは立ち上がり、黄金のオーラを更に激しく燃やしながら空をかける。

 

「調子に乗ってんじゃねぇええええ!!」

 

 ビルスも拳を繰り出す。

 

 怒りに任せた荒々しく大振りで、しかし鋭い拳がビルスの拳と激突する。

 

 バーダックの左手に青い気が凝縮されている。

 

 ビルスが目を見開く。

 

「! まさか!?」 

 

 左手を突き出しながらバーダックは叫んだ。

 

「くたばれぇええええ!!」

 

 青い光のドームが掌からビルスに向かって放たれて出来上がり、一気に全てを飲み込んで気柱を天に突き立てる。

 

 煙の向こうから両腕を交差させ、紫色の破壊の光を掌に宿したビルスが現れた。

 

 ガードした腕を下げて、鋭い瞳で静かにバーダックを見据える。

 

「なるほど、戦闘センスに関しては中々のモノを持っている。天才ーー。僕はあまり使いたくない言葉だけれど、君にも当てはまる」

 

「…くだらねえ。天才だと?」

 

 するとバーダックは拳を握り締めて告げた。

 

「コイツは俺が敵と戦い続けることで作り上げてきたものだ。勝手に”天才”なんて安っぽい言葉で片づけんじゃねえよ」

 

「……フ、言うじゃないか。真・超サイヤ人のレベルも悟空と同じくらいに引き上がったようだし。そろそろ始めようか?」

 

 言うとビルスは全身に破壊の力を凝縮させた紫色の神の気を纏い出す。

 

 これに悟空もバーダックの隣に来て、激しい黄金の気を纏う。

 

「気に入らねえな。テメエ、俺の力が引き上がるように動いてやがったのか?」

 

「当たり前だろう? 金色のフリーザ程度の力じゃ僕と同レベルになった悟空の足手まといにしかならないよ。戦いとは同じレベルでなければね?」

 

 瞬間、バーダックの気が一気に膨れ上がった。

 

「……どこまでもナメやがって。神だか何だか知らねえが、後悔させてやらぁああ!!!」

 

 同時に孫悟空も翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を見開いて吼えた。

 

「そういうこった、さっさと続きやろうぜ? ビルス様よぉ!!!」

 

 真・超サイヤ人二人の怒りの気を受けて、ビルスも凶暴な笑みを返す。

 

「笑わせるな。ナメているのはお前たちだろう? 破壊神の恐ろしさをねぇ!!」

 

 同時、二つの黄金の光と紫色の光が中央でぶつかり合い。

 

 白い光が空中に浮かびながら、中心で三人の戦士が激しい打撃戦を繰り広げ始めた。

 

 それを見上げながらウイスは静かに笑う。

 

「あらあら、すっかり全宇宙武道大会のことを忘れてお楽しみのようですねぇ。ビルス様」

 

 微笑みを浮かべたウイスは静かに瞳を閉じ、死者の都に通じる階段を見据える。

 

「……あちらも、負けじと派手に戦っているご様子。お互いの力を感じて更に燃えているようですねぇ」

 

 口元を手で隠してウイスは笑う。

 

「正義でも悪でもなく、ただ純粋に戦うことにしか興味のないサイヤ人ーー。神の域にありながら野心を持たず。ただただ、拳を磨くのみ」

 

 破壊神を本気にさせたサイヤ人・孫悟空。

 

 その父親・バーダックの戦いを見据え。

 

 対峙する満面の笑みのビルスを見てウイスは微笑んだ。

 

「ビルス様が心から満たされている。感謝しますよ、悟空さんにバーダックさん」

 

 ビルスの破壊の力を纏った左裏拳が、悟空の背後からの回し蹴りを受け止める。

 

 同時に右手を開いて顔の横に置き、強烈なバーダックの右拳を受け止めた。

 

 力をゼロにしたにも関わらず、激しい衝撃が巻き起こり爆風を巻き起こす。

 

 三者の表情は様々だ。

 

 破壊の力で威力を殺しきれなかったことにビルスは目を細め。

 

 孫悟空は冷徹な瞳を持ったポーカーフェイス。

 

 バーダックは同じ眼をしながらも口元を凄絶に歪ませて笑う。

 

 瞬間、三人は入り乱れての打撃を交換し合う。

 

 自分よりも一回り上のパワーと自分と同等のスピードでコンビネーションを繰り出してくる親子に、ビルスは破壊神となって得た武の技を持って応える。

 

 真っ向から攻撃を繰り出してくる真・超サイヤ人達に対し、ビルスは時に受け流し。

 

 時に力を使って威力を殺しながら、こちらも打撃を繰り出してピンポイントで当てることで相殺していく。

 

 ただ相殺するだけではない。

 

 力を一気に高めて真・超サイヤ人の纏う気をほとんど消してしまい、強烈なカウンターを繰り出してくる。

 

 それをバーダックは野生の勘とも言うべき動きで、悟空はビルスとの手合わせから体に覚えさせた動きで紙一重で避ける。

 

 ビルスのカウンターの一撃を紙一重で避けた親子は同時に右拳を繰り出した。

 

 ビルスは咄嗟に体を反転させて、右手と左手で前方からの悟空の拳と後方からのバーダックの拳を受け止める。

 

「この短時間で僕の力でも消しきれないほどに気を高めたというのか?」

 

「みてえだな。俺も正直、ここまで上手く行くとは思っちゃいなかったがーー」

 

 真剣な表情で語り合うビルスと悟空。

 

 と、バーダックが肩を揺らしながら笑う。

 

「ククク、ようやくナメた笑みが消えたな? 破壊神よぉ!?」

 

 これにビルスが口の端をニッと歪めて告げる。

 

「まさか、この程度の闘いで僕が態度を改めると思っているのか? だとしたらーーナメているのはお前だよ!!」

 

「ーー!!」

 

 悟空の拳を押し離して距離をとり、ビルスは一気にバーダックに襲いかかる。

 

 強烈な打撃の応酬。

 

 右ストレートが互いの顔をのけ反らせる。

 

「ぐぅ!?」

 

「へっ! ようやく一撃だ!!」

 

「ほざいたな、サイヤ人!!!」

 

 顔を仰け反らせながらも、勝ち誇るバーダックに破壊の力を纏わせた拳を振りかぶるビルス。

 

 左腕で受け止めた瞬間、バーダックの纏うオーラが一瞬消える。

 

「エネルギー切れから再び気が上昇するまでの数瞬。それがお前達、真・超サイヤ人の弱点だ!!!」

 

「っ!!」

 

 避けようとするバーダックの前に「悟」のマークが描かれた山吹色の道着の背中が現れる。

 

「カカロット!!」

 

 悟空は右手に満ち々ちた黄金の拳を繰り出す。

 

「やらせねえよ、龍拳ぇええん!!」

 

 黄金の龍の気が悟空の拳に纏わり、ビルスの拳とぶつかり合う。

 

 力と力のぶつかり合い。

 

 両者の放った龍の気と破壊の力は、互いに相殺してゼロになる。

 

「こいつ!! 僕の力を相殺しやがった……!!!」

 

 瞬間、バーダックが悟空の背から跳び上がるように横に体を回転させながら、左手に気が満ちた黄金の拳を繰り出してくる。

 

「これでーー最後だぁあああ!!!」

 

 繰り出された拳から、悟空の龍とは違う、サイヤ人特有の大猿が牙を剥いてビルスに襲いかかるイメージがわいた。

 

「龍の次は猿か? ナメるなよ!!」

 

 紫の光を放つ左手を前に構え、強烈な拳を受け止める。

 

 バーダックの放った拳から黄金の気が消える。

 

 だが、同時にビルスが驚愕に眼を見開く。

 

(左手が、痺れた? しかも、この僕が一瞬とはいえ押されたというのか? こいつの拳に!?)

 

 バーダックが右手に青白い光の球を作り上げ、オーバースローで放った。

 

「吹っ飛びやがれ、猫人間!!!」

 

 放たれた光弾はジャイロ回転しながら光線に変わり、破壊神ビルスの眼前に迫る。

 

 直撃したと見えるタイミングで、バーダックの背後にビルスは現れた。

 

「…なっ!?」

 

 鋭い飛び蹴りがまともにバーダックの顔面に入り、地面に叩きつけられる。

 

 それを見下ろし、ビルスは真剣な表情で告げた。

 

「避けないとヤバイくらいの技だ。普通は上がった身体能力と気を使いこなせないものなんだが、恐ろしい勘をしている。悟空より上かもしれないね」

 

「…父ちゃん! 無事か!?」

 

 ビルスから目を離さずに、悟空は声に出してバーダックに告げる。

 

 バーダックはゆっくり立ち上がりながら、黒髪に戻ってフラついて現れた。

 

「…ち、畜生。エネルギーが、切れやがったか」

 

 倦怠感と脱力感、体中に走る痛みで、意識が途切れそうになりながら、バーダックはビルスを見上げる。

 

「自分の力を使いこなせなかったとは、情けねえ…」

 

「…いや、真・超サイヤ人。お前達は完全に力を使いこなせているよ」

 

 バーダックの自嘲気味の言葉をビルスは真剣な表情で遮り、告げた。

 

「だが、悟空やターニッブと違ってお前は基本能力値が神のレベルに達していない。真・超サイヤ人の力で引き上げても、肉体の基本能力が足りないから、こいつらより時間切れが早いのさ」

 

「…要は実力不足ってことかよ、畜生」

 

 心底悔しげなバーダックにビルスは、笑いもせずに告げる。

 

「お前で実力不足なら、世の中のほとんどの戦士はゴミ以下になるね。胸を張れ、お前は破壊神ビルスに本気を出させたのだ。お前が卑下すれば、僕の本気まで軽くなる。僕はそんなのはゴメンだからね」

 

「ケッ、アンタに勝てなきゃ意味ねえよ!!」

 

「…本当に、よく似た親子だ」

 

 フラつきながらも吠えるバーダックに、ビルスは微かに優しい笑みを浮かべてみせた。

 

 そんなバーダックの隣に悟空が超スピードで動いて現れ、支える。

 

「…父ちゃん! しっかりしてくれ!!」

 

「安心しろ、命に別状ねえよ。意識が途切れそうだってだけだ。そんなことより、カカロット。テメエは役立たずの俺に構ってる場合かよ?」

 

「…父ちゃん」

 

「…俺にできなかった事。フリーザの時みてえにもう一度託す。破壊神の野郎にサイヤ人の誇りを見せてやれ、カカロット!!」

 

 力強いバーダックの言葉に悟空は翡翠に黒の瞳孔が現れた目を向けて頷いた。

 

 それにバーダックは満足したように笑う。

 

 ウイスがバーダックの隣に現れ、体を倒れないように支えた。

 

「…テメエ」

 

 ウイスがニコリとバーダックに笑い、悟空に向かって頷く。

 

 ポーカーフェイスの悟空は静かに頷くと空にいる破壊神ビルスの元に飛び、黄金の気を纏って対峙した。

 

「さあ、いよいよ決着だな。本気と本気の闘いだ」

 

 ビルスが構えると、悟空は静かに拳を握り締めて告げた。

 

「…俺は、地球育ちのサイヤ人。アンタを超えるため、強さと穏やかさを兼ね備えた超サイヤ人ブルーを経て目覚め、野生の勘と圧倒的なパワーを持った超サイヤ人4を得てようやく使いこなせた超サイヤ人の真の姿!!」

 

 黄金の気を纏い、両腰に拳を置いてオーラを高める。

 

「これが真・超サイヤ人ーー孫悟空だぁ!!」

 

「……来い!!!」

 

 ビルスが叫ぶと同時、悟空が消える。

 

 目の前に現れた拳を掴み止めるビルス。

 

 互いに睨み合う。

 

「…超サイヤ人ブルーのような神がかった予測も、超サイヤ人4のような野生の勘もない。ただ、純粋な気による能力の強化。孫悟空という人間そのもののセンスが問われる変身だな」

 

「…ああ。無理矢理引き上げられてると感じてたが、今分かったよ。この姿は、気が上昇すっからダメージ無しでどんな奴とも殴り合えるってだけで。超サイヤ人ブルーや超サイヤ人4みてえな、便利なもんは何もねえってな」

 

「破壊神ビルスを相手にして、最も不利な変身だ。気がどれだけ上昇しようと、僕の破壊の力で消せないものはない。消された瞬間に自動的に気が引き上がったところで、僕はその前にお前を攻撃できる。さっきのバーダックのようにね」

 

 ビルスの言葉に悟空は何も言わない。

 

 ただ、突き出した拳を引いて構えを取るだけだ。

 

「見せてもらおう、孫悟空そのものと言える今のお前の実力を!!」

 

「…行くぜ、ビルス様」

 

 ぶつかり合う両者の拳。

 

 しかし、ビルスの破壊の力をまともに受けても悟空の気が消滅しない。

 

 これにビルスの目が細まる。

 

「…そういうつもりか!!」

 

 悟空の気が両手と足に満ち々ちた状態で繰り出される。

 

 気が無限に高まる真・超サイヤ人だからこその芸当だ。

 

 凝縮された気による盾を両手足に纏わせ、破壊の力を受け止めて本体に影響が出ないようにしている。

 

 普通の超サイヤ人でやると簡単に気を消費しきり、動けなくなる事まちがいない。

 

「…これで五分と五分さ! アンタの破壊の力を俺の真の力で受け止めてやる!! コレで、余計な手間はねえ。後は殴り合いの強い方が、勝つ!!」

 

「肉弾戦なら、分があると思うのか? あまり僕をナメるなよ、悟空!!」

 

 再びぶつかり合う両者。

 

 拳と蹴りを繰り出しあい、超スピードで空を陸を所狭しと駆け回る。

 

 黄金と紫色の光が幾筋も描かれ、火花と衝撃波が、無数に発生する。

 

 ビルスは思う。

 

 はじめて闘った悟空は超サイヤ人ゴッドの力を吸収した状態で超サイヤ人になった。

 

 あの闘いを思い返す。

 

 あの時は、大きな力の差があった。

 

 だが、今は全くの互角だ。

 

 破壊の力を使った上で全力の自分と、悟空は互角の戦いを演じている。

 

「…フン、余計な予測や勘がない方が強いじゃないか。お前本来の動きに磨きがかかるみたいだな」

 

 互いに拳を顔面にぶつけ、のけ反るも更に速く動く。

 

「ああ、基本がしっかりしてねえと。この変身はガタが来るのが早いからな。徹底的に鍛えたさ」

 

 真剣な表情で殴り合う両者には緊張感がある。

 

 真剣勝負特有の、ひりつくような気配。

 

 ビルスをして、はじめての経験だ。

 

 ラッシュを互いに繰り出しあい、手数で勝負する。

 

 どちらも打ち負けない。

 

 まともに顔で受け、首をのけ反らせる悟空。

 

 首がねじ切られるように横面が吹き飛ぶビルス。

 

 拳が蹴りが、互いの肉体に炸裂しては吹き飛ぶ。

 

 互いにのけ反るも一瞬、悟空が打ち勝って体勢を整え、のけ反るビルスに右ストレートで殴りかかる。

 

 瞬間、ビルスの肉体は眼前から消えて背後から悟空を殴り飛ばした。

 

「…ぐあああ!!」

 

 地面に叩きつけられた悟空に、ビルスが肩で息をしながら両手を頭上に掲げて叫ぶ。

 

「終わりだ、悟空ぅうう!!!」

 

 恒星のような巨大で赤い炎の球が、悟空目掛けて振り下ろされようとしている。

 

「ビルス様! 悟空さんや惑星サイヤを破壊するおつもりですか!?」

 

「…なんだと? か、カカロットォオオ!!!」

 

 ウイスの言葉にバーダックは動けないながらも必死に悟空に手を伸ばす。

 

 その時、土煙を黄金の気が吹き飛ばしながら孫悟空が仁王立ちしてビルスを睨み上げる。

 

 同時に両掌を開いて青い光の球を左右に作ると、自分の前で手を上下に合わせて一つにし、右腰に置いてたわめる。

 

「かぁ〜、めぇ〜、はぁ〜、めぇ〜!!」

 

 青い光球は真紅に輝き始めて、一気に威力を上げていく。

 

「…あれは、超かめはめ波ではない?」

 

「ベジットの野郎に撃った技か!!」

 

 ウイスの言葉にバーダックが叫びながら、悟空を見据える。

 

 破壊神ビルスはニヤリと笑い、悟空に振り下ろした。

 

「勝負だ、真・超サイヤ人!!!」

 

 放たれる炎の球に向かって悟空が、両手を突き出した。

 

「このまま打ち破ってやる! 10倍!! かめはめ波ぁああああっ!!!」

 

 ぶつかり合う両者の一撃。

 

 真紅のかめはめ波と破壊の力を纏う炎の球。

 

 ビルスはぶつかった瞬間に悟空のかめはめ波と似た構えを取ると、両手を突き出して紅の光を炎の球に向かって放ち、押し出す。

 

 瞬間、炎の球は紅の光と融合し、数倍の太さの熱線に変わった。

 

 押し合う両者の光線と熱線。

 

「…どうした!? あの時と違うというのなら、破ってみせろ!! それとも真の力を引き出して、この程度なのか!? 此処までやって終わりなのか!? 真・超サイヤ人!!!」

 

 やや、ビルスが押し返す。

 

 悟空の背後の地面に亀裂が走り、ポーカーフェイスの悟空の眉がややしかめられた。

 

 この反応に僅かにビルスが寂しそうな顔になったあと、眦を吊り上げ、両手の気を更に強く放った。

 

「…これで終わりだ!!!」

 

 更に一回り大きくなる炎の熱線。

 

 だが、ビルスの目が見開かれる。

 

 熱線の勢いは増しているのに、紅いかめはめ波を押し返せていない。

 

 むしろ、迫って来ている。

 

「…まさか!?」

 

 瞬間、ポーカーフェイスだった悟空の目が見開かれ、激しく咆哮した。

 

「真・超サイヤ人のフルパワーだぁあああああっ!!!」

 

 一気に気が爆発し、ビルスの熱線を打ち破って真紅のかめはめ波が迫る。

 

「…なんだと!? こんな…!!」

 

 叫びながらも、ビルスは静かに笑う。

 

「…フフフ、見事だ。素晴らしい強さだったぞ、悟空」

 

 相手を讃える声が悟空に届き、真・超サイヤ人となった悟空は冷徹な顔を思い切り歪ませた。

 

「ビルス様! 避けてくれ!!」

 

 悲鳴に近い悟空の声が響いた時、紅いかめはめ波はビルスの眼前で不自然に傍に逸れ、青い晴天を撃ち抜いた。

 

 呆然とした悟空の目にはバーダックを抱えたまま、右手を上げているウイスの姿があった。

 

「大丈夫です、悟空さん。私が居ますから」

 

 安心させようと慈愛に満ちた笑顔でウイスが悟空に告げる。

 

「…すまねえ。俺としたことが、熱くなり過ぎちまった」

 

 本気ですまなそうな悟空に、ウイスが微笑みながら告げる。

 

「それにしても素晴らしい一撃でしたよ? まともに行けば、私でも防げたかどうか……」

 

「こ、この野郎。破壊神ビルスを上回ったカカロットの一撃を簡単に傍に逸らしやがった…!!」

 

 バーダックが絶句しながらウイスを見ると、彼は怒ってますと言わんばかりに後ろを振り返り、ビルスを見る。

 

「ビルス様! 悟空さんの真・超サイヤ人が強かったから良かったものの、下手をしたら悟空さんやベジータさん、惑星サイヤ自体が消えていたんですよ? 破壊する予定のない星を破壊しないでください」

 

 ビルスはふて腐れた子どものように、そっぽを向いた後に呟くようにウイスに頭を下げる。

 

「…悪かったよ。だけど、本気の本気でやり合えたのは生まれて初めてだった。礼を言うよ、悟空」

 

「ビルス様ーー。悪りいが、俺は納得してねえ。アンタ、最後に俺にアンタを超えさせようとしたろ? 真・超サイヤ人の力を引き出させて、フルパワーを使わせる為に。違うか?」

 

 その言葉にビルスはニヤリとした後、告げた。

 

「お前は勝った。僕は本気で闘った。それが事実さ。まあ、負けっぱなしは性に合わない。いずれ、再戦してやるよ、悟空」

 

「…ホントだな? なら、安心したぜ。このまま終わりじゃ、勝ち逃げされた気分だ」

 

 心底、ホッとしたような悟空にビルスがニヤリと笑う。

 

「…ウイス。武道大会だけじゃない。次期破壊神も期待できそうだな?」

 

「…説得に苦労しそうですがねぇー」

 

 小声で言い合う二人から、バーダックが離れてフラつきながらも悟空の下に来る。

 

「父ちゃん」

 

 悟空はバーダックを支える。

 

 見事に勝利した息子にバーダックはニヤリと告げた。

 

「カカロットよぉ、次は俺と闘る番だからな?」

 

「ああ。ビルス様に言って、この惑星から出れるようになったら、一緒に地球に来てくれよ?」

 

「…ま、しょうがねえ。お前の嫁や孫の面も見てえしな」

 

「約束だぜ、父ちゃん」

 

 悟空はニヤリと笑いながら、腕の中で眠りにつくバーダックを見据えた。

 

 ビルスが悟空の傍に歩いて来ると言った。

 

「…約束だからな。早速、バーダックの因果律を破壊するよ、悟空」

 

「すまねえ、ビルス様。父ちゃんが目覚めたら、死者の都に行こうぜ? ターニッブとリューベがやり合ってる」

 

「…ま、僕の闘志は全部、お前にぶつけたからねぇ。暇つぶしに観戦してやるか」

 

「待ってろよ、ターニッブ。俺もそっちに行くぜ!!」

 

 こうして、破壊神ビルスと孫悟空、バーダックの闘いは終わった。

 

 しかし、彼らは気づいていない。

 

 先までこちらを覗いて居たサイヤ人の気配がないことに。

 

 死者の都に繋がる階段が開いたままであることに。

 

 その入り口前に長身の天使ーーウイスが立つ。

 

「……死者の都。惑星の意思。確かにそれを用いれば、貴方の肉体は固体化され、ビルス様に頼らずとも惑星は出れるでしょうが。はたして、そう上手く行きますかね〜」

 

 ウイスは、こちらに近づいて来る悟空達に聞こえないような声で階段を見据えて呟いた。

 




何百年に渡り、命を賭して拳を磨いた鬼が居た。

鬼は、ただこの時を待っていたのだろう。

自分と同じ力を持ちながら、自分と真逆の道を行く者との対峙。

強者達が見守る中、ついにターニッブとリューベの決着がつく。

次回もお楽しみに(´ー`* ))))


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真・超サイヤ人 ターニッブ

孫悟空とバーダック、破壊神ビルスとの戦いは一応の決着を見た。

 彼らは一路、死者の都にて対峙するターニッブとリューベの決着を見んと闘技場の階段を下りていく。

 はたして、勝つのはターニッブの風の拳か。

 リューベの滅殺の拳か。


 夕方のような、朝焼けのような幻想的な空。

 

 地平線の彼方まで続く荒野の真っ只中で、二人の男が対峙する。

 

 青白い雷光と真紅の光がぶつかり合う。

 

 拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う両者。

 

 ターニッブよりも一回り体格が大きいリューベは、掌も仁王のように分厚い。

 

 伝説の超サイヤ人の重厚さを持ちながらも、通常の超サイヤ人と変わらない体格。

 

 ターニッブとは、明らかに拳の大きさも一回り違う。

 

 だが、ターニッブは変わらない。

 

 足をどっしりと地面につけ、腰を落として迎え撃つ。

 

 相手が自分より格上のリューベであっても変わらない。

 

 互いに拳をぶつけ合う。

 

 首がのけ反る。

 

 顔が弾かれる。

 

 体が前のめりになる。

 

 それでも互いに退きはしない。

 

「…全くの互角かよ」

 

「ああ、ターニッブもリューベも。一歩も退かないな」

 

 ガーキンの言葉にジュードも頷く。

 

 隣のプリカは静かに祈りを捧げている。

 

 彼が無事で居ることを。

 

 ただ、祈っている。

 

 同じように見ていたブロリーとベジータも、互いに語り合う。

 

「…ベジータ。気付いてるか?」

 

「ああ。何だ? 奴等は足を止め、殴り合いをしているだけなのに。それが何故、こんなにも俺の心を揺らす」

 

「…ターニッブとリューベの拳が振るわれる度に俺の心が響くようだ。こんなこと、はじめてだぞ」

 

 互いに信念を拳に纏わせ、殴り合う両者の闘い。

 

 ジュードやガーキンは神妙に目を細め、プリカは目に涙を溜めている。

 

 ベジータにもブロリーにも、訳のわからない感覚が芽生えている。

 

 悲しみ、寂寥。

 

 言葉に現すならば、それが近い。

 

 これほどまでに激しい殴り合いで、何故こうも悲しいという感情が胸を突くのか。

 

 この場に居る者達には、彼らの殴る音。

 

 殴られる音が、慟哭に聞こえてくる。

 

 一撃を喰らえば、一撃を返す。

 

 まるで互いに拳で語り合うかのような、やり取り。

 

 ターニッブの踏み込みからの右ボディブローが、リューベの腹を射抜く。

 

 衝撃に前のめりになるリューベだが、次にターニッブの首が左ストレートを食らってねじ切られる。

 

「…ハァッ!」

 

 ターニッブの左フックが掛け声と共にリューベの顔にヒットし、仁王のような見事な肉体が揺れる。

 

 リューベの右の膝蹴りがまともにターニッブの顎を蹴り上げた。

 

 顔を跳ね上げられた彼の頭に、膝を伸ばして天から踵が振り下ろされる。

 

 ギリギリでターニッブはバックステップすると同時に体を左にかわして見切り、左足刀蹴りでリューベの顎を蹴り抜く。

 

 後方へ弾き飛ばされるリューベの着地点にターニッブはダッシュして先回りし、天に向かって体をひねって跳び上がりながら拳を突き上げる。

 

「昇龍拳!!」

 

 しかし、その拳が完全に伸び切る前に、吹き飛ばされたリューベが背を丸めて右足踵を鉈のように浴びせ蹴りで振り下ろす。

 

「百鬼豪断!!」

 

「…ぐあ!?」

 

 ターニッブの首を横から刈り、着地すると同時に頭から地面に叩きつける。

 

 皆が悲鳴を上げそうなくらい、完璧な一撃だ。

 

「…まだだ!」

 

 ターニッブは首の力だけで身を跳ね起こし、右手を前にして左拳を腰に構える。

 

「…阿修羅閃空」

 

 その目の前に、阿修羅の如き摺り足で一気に距離を詰めて来るリューベ。

 

「…あの動き。やはり遠目でも捉えられんか」

 

「なんだ、奴の足捌きは? 見えているのに、実体を捉えられないだと!?」

 

 淡々と言うベジータの横でブロリーが目を見開く。

 

 ベジータのファイナルフラッシュをかわし、悟空と二人がかりで捉えきれなかった運足法ーー阿修羅閃空。

 

 つま先で立ち、小刻みに振動させるようにして地面を滑るように移動する技だ。

 

「一瞬千撃! うぬに破れるか!!」

 

 目の前に現れた鬼に向かいターニッブも拳を振りかぶって迎え撃つ。

 

「…瞬獄殺か。受けて立とう!!」

 

 凄まじい打撃音が刹那の拍子に響き渡り、青白い雷が天から落ちて光のドームを作り上げた。

 

「これは、父がリューベに使った禁技!!」

 

「忘れもしねえ。瞬獄殺だ!!」

 

「刹那の拍子にリューベの殺拳が対象を葬り、殺された者は怨霊となって自らが殺された事を認識しないまま拳に宿りて他者を殺す。正に滅殺の拳」

 

 ジュード、ガーキン、プリカの言葉を聞きながらベジータが目を鋭く細める。

 

「ブロリー、見えるか?」

 

「お前が見えないのを、俺が見える訳ないだろ」

 

 互いに強くなったというのに、それでも鬼の拳を見切れない。

 

「…ぐ、う!」

 

 光のドームから、やがてターニッブが全身から血を流し、踏ん張った姿勢のまま足を地面にこすり、後ろに引き下げられるような恰好で出てきた。

 

「打ち負けたというのか、あのターニッブが!!」

 

 ベジータが拳を握り締めながら叫び、ブロリーが忌々しそうに歯を食いしばる。

 

「…おのれ。何て技だ…!!」

 

 真っ向から向き合い、迎え撃つターニッブの拳が破られた事に共に修行したベジータとブロリーは信じられない思いだった。

 

 目前にリューベが踏み込んで右拳を放って来るのを右膝で蹴り上げ、蹴り足をそのまま前に踏み込ませながらターニッブは左拳を放つ。

 

「電刃練気! 風の拳・不滅!!」

 

 左正拳突きが、野太いガードの上に叩きつけられ後方に足を引きずられながら退がるリューベ。

 

「リューベの肉体をガード越しに吹き飛ばした? ターニッブ、貴方!!」

 

 涙を流したまま、プリカは必死にターニッブだけを見ている。

 

「ターニッブ、これがお前が見つけた答えか!!」

 

「あの鬼をガード越しに吹っ飛ばすかよ」

 

 ジュード、ガーキンが先の一撃に目を見張る。

 

 互いに満身創痍でありながら、まるで気迫が衰えない二人の真・超サイヤ人。

 

 ターニッブとリューベ。

 

 互いに静かに見合い、拳を握って同時に踏み込み。

 

「おぉっ!!」

 

「ぬんっ!!」

 

 雷鳴が轟くような音を立て、右の中段正拳突きをぶつけ合う両者。

 

 凄まじい緊張感と緊迫感が場を支配する中、新たな気配がベジータとブロリーの下にやってきた。

 

「来たか、カカロット」

 

「よう、ベジータ…。ターニッブは?」

 

 見れば真・超サイヤ人になったままの孫悟空が、黒髪になったバーダックと破壊神ビルス、そして付き人のウイスを連れてそこにいた。

 

「…なんだ、カカロット? 真・超サイヤ人に何故なったままなんだ?」

 

「万が一に備えてな。悪りいが、ターニッブを死なせるわけにはいかねえ」

 

 ブロリーの問いかけに悟空は、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳ではっきりと告げる。

 

 ベジータがビルスとウイスに向かって一礼した後、悟空に一言だけ告げる。

 

「…あの闘いを見て、止めれるなら止めてみろ。俺にはできん」

 

 はっきりと拒否を告げるベジータを悟空は訝しげに見た後、ブロリーを見る。

 

 ターニッブを友と呼ぶ彼もまたベジータの意見に同意しているのを示すように、腕を組んでターニッブ達を見ている。

 

「ブロリー、オメエもか?」

 

「…カカロット。あの闘いが始まるまでは俺もお前と同じ意見だった。だが、あの二人の闘いを見ればベジータや俺の気持ちが分かるはずだ」

 

 ブロリーにまで否定され、思わず二人を見回す悟空は告げた。

 

「…ベジータ! ブロリー! ターニッブとリューベの覚悟は俺も知ってる。でも、俺はアイツを死なせたくねえんだ!!」

 

「…友だからこそ、理解してやらねばならんこともある。たとえ死なせたくなくてもだ。何より、貴様が奴の心を理解できんはずないだろう」

 

 静かに諭すベジータを見返し、悟空は叫ぶ。

 

「分かってる! 今、俺が言ってんのはアイツの為になんねえことくれえ、理解してるさ!! 勝負に割り込まれんの、望んでねえこともな!!」

 

「そこまで分かっているなら、我慢しろ!! 貴様だけが辛い訳じゃない!! 俺たちやブロリーより辛い思いをしているジュードやガーキン、プリカが黙って見守ってるんだぞ!! 自分の我儘で奴らの勝負を汚すな!!」

 

 その言葉に悟空は黙って歯を食いしばる。

 

 自分に当てはめれば、ターニッブ達の気持ちが痛いほどに分かる。

 

 分かっている。

 

 悟空は何度も、そういう経験をしてきたのだから。

 

「…なるほどな。俺はこんな思いをチチや悟飯や悟天、クリリンやヤムチャ達にさせてきたんだな」

 

「ようやく分かりやがったか、バカめ!」

 

 ベジータの言葉を聞きながら、悟空は静かにターニッブとリューベの闘いを見る。

 

 少し離れたところから、悟空達を見ていたビルスが口を開いた。

 

「…フン。悟空がターニッブの勝負を止めたがるのは意外だったが、ベジータも良いことを言うじゃないか。ちょっと見直したよ」

 

「ヤツは惑星ベジータの王子だからな。プライドに関して語らせたら、右に出る者はねえだろ」

 

 バーダックが腕を組んで答えながら息子を見た後、ターニッブ達を見据える。

 

「…大切な存在とは時に、己の中の信念さえ曲げてしまうこともある。悟空さんはターニッブさんをそれほどまでに大切な友だと思っているのでしょう。もっとも、彼の場合は仲間の命がかかったら、自分のことは棚に上げて手段を選ばないところもありますけどね」

 

「我儘なヤツだねぇ〜、ホントに」

 

「…ええ、貴方にソックリ」

 

 失笑気味に言われ、ビルスの表情が歪んだ。

 

 ターニッブとリューベは互いに右の正拳をぶつけ合ったまま、一歩も退かない。

 

 同時に目を見開いて拳を引き、ターニッブは両手を左腰に置いて膝を曲げてたわめ、リューベは左右の腰に拳を置いて腰だめに構える。

 

 ターニッブは青い雷の球が。

 

 リューベには紫の雷の球が出来上がり、同時に両手を前に突き出して放つ。

 

「電刃ーー波動ぉお拳!! セイヤァ!!!」

 

「滅っ殺ぁつ!! ぬおりゃぁあああ!!!」

 

 青い光の波動と紫の光の波動が、至近距離でぶつかり合い爆発した。

 

 強烈な衝撃波が風となり、光のドームを作る。

 

 ビルスが鋭く目を細め、ウイスも真剣な表情になって二人の闘いを見ている。

 

 真・超サイヤ人の悟空もポーカーフェイスだった瞳を見開き、拳を握り締めている。

 

「…何て威力だ。凄ぇ。凄ぇぜ、ターニッブも。リューベも! こんな勝負をしてたんか!!」

 

「邪魔をするなと言った意味が分かったか? この勝負は見届けねばならん」

 

 隣に並び立ち告げてくるベジータに頷くと、悟空の逆立った黄金の髪と眉が漆黒に変わる。

 

 逆立った髪は下り、黒髪黒目の一般的なサイヤ人へと悟空は戻った。

 

「すまねえ、ベジータ。オラが間違ってた」

 

「…ターニッブを信じろ」

 

「…ああ、分かった!」

 

 並び立つ二人の横にブロリーも立つ。

 

 三人は真剣な表情で、爆心地から煙を上げながら現れる二人の真・超サイヤ人を見ている。

 

 二つの波動が相殺し、再び始まる乱打戦。

 

 リューベの拳がターニッブの頬を捉えて顔を吹き飛ばし。

 

 ターニッブの拳がリューベの腹を打ち貫いて前のめりにさせ。

 

 互いに空中に跳んで回転しながらの旋風脚を放って反対方向にふっ飛ばされる。

 

 血が飛び散り、両者の放つ波動の光が宝石のようにキラキラと辺りを照らす。

 

「…何という。心にこれほどまでに訴えてくる戦いは、この私をしてもはじめてですよ」

 

「悟空には、ああ言ったが。やっぱり惜しいね。コイツ等の内どちらかとは二度と闘えなくなるんだからさ」

 

 ウイスとビルスの会話を聞いて、戦いに見とれていたバーダックが鋭い黒瞳を二人に向ける。

 

「そいつぁ、どういう意味だ?」

 

「…直に分かるよ。後、一撃で勝負がつく。見ておきなさい、どちらが勝つかーー。僕も興味がある」 

 

 ビルスの言葉にバーダックは目を細めた後、闘う二人を見据える。

 

 リューベは、空から着地すると同時にこちらに対峙するターニッブに向かって告げた。

 

「…見事。我が殺意、滅殺の拳にうぬの拳が並び立つか! 天晴れだ!!」

 

 鬼の掛け値ない賞賛の言葉を聞き、険しい表情で闘いを見守っていたジュードとガーキン、プリカの表情が変わる。

 

「初代サイヤ王リューベ。父や悟空達の言うとおり。貴方は、人の心を捨てていなかったのか」

 

「…ターニッブを選んだのは、アンタと似て違う道をアイツが選んだからか?」

 

「…選ばせた、そういうの? だから、誤ちを知りながら殺意の拳を完成させたの? リューベ」

 

 三人の惑星サイヤのサイヤ人は複雑な心境のままリューベを、そしてターニッブを見る。

 

 ターニッブは静かに拳を握り、告げた。

 

「…この拳は、俺一人で作り上げたものではない。掛け替えのない出会いを重ねて得たものだ。貴方のように」

 

「ならば、超えよ! 我が拳を!! 今こそ、我はうぬに問う!!」

 

 気合いを入れ、激しいオーラを纏いリューベが叫ぶ。

 

 ターニッブも静かに拳を構え、目を細める。

 

「天(神)に向かって拳を突き上げる昇龍の拳。ならば天より降り落ちて地を砕く、この拳を何とする!?」

 

「………!!」

 

 この場にいる誰もが見入る。

 

 リューベの最強の一撃が、ターニッブに向かって放たれようとしている。

 

 その一撃は、生半可なガードなど無意味。

 

 その迫力に。

 

 気合いに。

 

 ベジータとブロリー、悟空が目を見開く。

 

「…リューベのヤツめ。まだ、こんな技を!!」

 

「あの、化け物め! ……いや、奴こそ鬼神だ」

 

「ターニッブ!! オメエがこの十数年で鍛え上げた拳を! そいつを作り上げるために出会った想いの力の全てを、リューベに見してやれぇえええええ!!!」

 

 悟空の叫び声が響く中、リューベが己の気を爆発させた。

 

「ーー覚悟は良いか!!」

 

 瞬間、リューベの肉体は乱反射するかのように構えたまま、左右三人に別れて姿を消す。

 

 悟空がこれに目を見開いた。

 

「消えた!? オラにも感じられねぇ、リューベの気が!!」

 

「くそったれ、奴の動きが捉えられんだと!?」

 

「…ターニッブ、頼む! 勝ってくれ、友よ!!」

 

 三人の惑星ベジータの友が、ターニッブを見る。

 

「ターニッブ。父がリューベを倒す者としてお前を選んだとき、俺はお前に嫉妬した。だが今は、お前を嫉妬した過去の俺を恥じている」

 

「間違いなくリューベの最大、最強の一撃だ。勝てよ、ターニッブ!!!」

 

「父様、歴代サイヤの王達よ。どうか、ターニッブに……!!」

 

 三人の惑星サイヤの家族が、ターニッブを見つめる。

 

「どうなってやがる! 野郎の気配が完全に消えたぞ!!」

 

「…ビルス様!!」

 

「上かぁ!!!」

 

 バーダックが左右を見渡す中、ウイスが閉じていた瞳を開けて、同時にビルスもターニッブの頭上を見る。

 

 そこに強烈な黄金の光を纏った鬼が右手を頭上に掲げて現れ、手刀が振り下ろされる。

 

 正に閃光の如き速さで降り注ぎ、強烈な衝撃波を放ちながら落雷と化したリューベはターニッブに降り注いだ。

 

 悟空やベジータ達をして爆発した瞬間しか見えなかった。

 

 誰もが口を開け、目を見開いて呆然とその一撃の行方を見るしかない。

 

 もし、ターニッブ以外の者が闘っていたら。

 

 先の一撃に反応することできずにまともに喰らい、命を散らせていただろう。

 

 ビルスの頬に伝う汗が、雄弁にそのことを物語っている。

 

 巻き上がった土煙が晴れていく。

 

 そこには、右の手刀を振り下ろしたリューベが宙に浮いた姿勢で止まっている。

 

「ああ、タァアアーニッブゥウウウ!!!」

 

 プリカが恥も外聞もなく、大きく彼の名を叫ぶ。

 

 振り下ろされたリューベの手刀はターニッブの首の付け根に触れる寸前で止まり、ターニッブの右の拳がリューベの鳩尾を打ち貫いていた。

 

 掠っただけのターニッブの額からは、真新しい血が流れ出ている。

 

 その奥に、光輝く翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で、ターニッブはリューベを見据えて左の拳を硬く握る。

 

 腹を打ち貫かれて尚、リューベは静かに燃えるような言葉を淡々とターニッブに告げる。

 

「ーー見事。天より注ぎし禊の一撃をこうも見事に…! よくぞ破った、ターニッブ!!」

 

 ターニッブが目を見開き、気合いの声を上げながら黄金のオーラを激しく燃やし、左の拳を突き上げながら天に向かって跳躍する。

 

「ーー“真・昇龍拳!!”ーー」

 

 リューベの正中線をなぞるように、真っ直ぐに突き上げられる拳の一撃。

 

 天高く舞う昇龍の一撃は、鬼の顎をまともに捉えて空へ運ぶと、そのまま青い波動が体内で荒れ狂う。

 

 鬼の肉体は空中で光に包まれて、爆発しながら後方へ弾き飛ばされ、地面に背中から叩きつけられた。

 

 一瞬遅く、ターニッブがくるりと反転しながら着地して静かに構える。

 

 悟空が思わず目を見開いたまま、つぶやいていた。

 

「な、何てヤツだ…! あんなとんでもねえリューベの一撃に、真っ向から拳を打ち返しやがった…!!」

 

「それだけじゃない…! あの気配が全く読めない一撃を相手にして、カウンターを取るだと!?」

 

「…く、クハハハハ! さすがだ、ターニッブ!! それでこそ、俺の友だ!!!」

 

 隣でベジータとブロリーが思わずと言った具合に次々と己の心を口にする。

 

 悟空は黄金のオーラを纏って雄々しく仁王立ちしている超サイヤ人・ターニッブを見据えて笑った。

 

「呆れるくれぇ、大したヤツだぜ。やっぱオメエ凄ぇよ、ターニッブ!!」

 

 静かにターニッブは立ち上がって来たリューベを見据える。

 

 身に纏っていた真・超サイヤ人のオーラが消え、リューベは瞳孔の消えた翡翠の瞳で静かにターニッブを見据えている。

 

「リューベ…! 俺は…」

 

 語り掛けようとしてターニッブは目を見開く。

 

 リューベの肉体が、徐々に先の惑星の意思のように崩壊を始めたのだ。

 

「な!? これはーー!!」

 

「どういうことなんだ、プリカ様!!」

 

「…おそらく、リューベの殺めてきた怨霊が。真・超サイヤ人でなくなったリューベの肉体をも喰らおうとしているのです」

 

 その言葉に皆が目を見開く。

 

 ウイスがプリカの言葉を継ぐように告げた。

 

「リューベは死者の都の意志ーー惑星の意思と闘う為に人間としての生を捨て肉体を作り変えた。リューベとしての人の意志を持ったまま。殺めた怨霊に取り込まれずにいる条件は真・超サイヤ人で在り続けること。サイヤの民を護るためとは言え、なんと業の深い拳でしょう…」

 

「サイヤ王を殺めたのも人間の魂を喰らわねば、人の姿を保っていられなくなるから、か…」

 

 破壊神ビルスも静かな瞳でリューベを見据えている。 

 

 ジュード王とガーキンが思わず叫んだ。

 

「決着を急げ、ターニッブ!!」

 

「リューベが格闘家で居られる時間は、もうないぞ!!」

 

 崩壊の始まったリューベを格闘家として倒すには、もう時間がない。

 

 この闘いに決着をつけられるのは、ターニッブの拳だけだ。

 

 だがーー。

 

「…俺達の戦いは、始まれば必ずどちらかの命が絶たれる。これは、そういう闘いだと。それは、分かっていた」

 

 ターニッブは翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳をリューベに向けると、その目から涙を流していた。

 

「だけど、終わりにしたくない…!! 貴方と、まだ闘っていたい! また闘いたい!! そう思う…!!!」

 

 顔が崩壊し、既に左しかない目で、リューベは静かに泣いているターニッブを見据える。

 

 既に着ている濃紺の道着も、褐色の肌の肉体と天を突く金色の髪も真っ白に染まり、翡翠の瞳も徐々に色を失くし始めている。

 

「ターニッブ! もう、もうリューベは闘えません!! これ以上はーーーー!!」

 

「バカやろう! どこまで甘い男なんだよ、ターニッブ!! リューベは、もう!!」

 

 プリカとガーキンの言葉を遮り、悟空が微笑みながらターニッブに向かって顔を向けたまま言った。

 

「ーーいいじゃねえか、ガーキン。ターニッブは甘めぇ。それでよ!」

 

「そうだ。だからこそ、リューベとは違う道を歩めるのだ!」

 

 悟空の言葉にベジータも頷いて、ターニッブを見ながら告げる。

 

「悟空。ベジータ」

 

 これを惑星サイヤのサイヤ人達は呆然と見た後、対峙する二人の男を見据える。

 

 静かにビルスがため息を吐いた。

 

「…ビルス様?」

 

「残念だ。リューベとは、良い友(強敵)になれる予感があった…」

 

「…そうですね。彼の肉体は、因果律を破壊したところで」

 

「ああ…。そこまで覚悟していたんだろう。残念だ…」

 

 まるで黙祷を捧げるように、ビルスは瞳を閉じてリューベに顔を向けた。

 

 リューベは静かにターニッブに語り掛けた。

 

「うぬが拳を見よ」

 

「……!」

 

 ターニッブは自らの拳を見据える。

 

 リューベはそのまま続けた。

 

「子を育てよーー! うぬが拳を継ぎ、絶やすことなき子をーー! その子が新たな子を育て、いずれは血塗られし我らサイヤの歴史を変える!!!」

 

「リューベ…!!」

 

「うぬが拳に生き、拳を振るう限り、種は相手の心に生まれ育つ。まこと、種を運び先(未来)に繋げし風の如き拳なり!!」

 

 拳を握り締め、ターニッブは流れる涙をそのままにして、真っ直ぐにリューベの目を見据える。

 

 リューベは静かに半壊する肉体を動かし、正拳中段突きの構えを取る。

 

「ーーいくぞ!!」

 

 ターニッブも即座に同じ構えを持って相手の至近距離に立ち、応えた。

 

「応っ!!」 

 

 半壊する肉体を動かし、リューベは最後の正拳突きをターニッブの頬に向かって放った。

 

ーー 滅殺!! ーー

 

 まともに顔で受け、首をのけ反らせるターニッブ。

 

 その痛みを忘れないために。

 

 その一撃の重みを忘れないために。

 

 その想いを心に刻むために。

 

 そして、万感の想いを込めてターニッブは左拳に満ちた青き風の波動をリューベの顔に向かって放った。

 

ーー 風の拳・不滅!! ーー

 

 当たった瞬間、青い光の粒子が放たれ、崩壊するリューベの肉体を穏やかな波動が包み込む。

 

 これにビルスが目を見開いた。

 

「なんだと!? 肉体を食らう怨霊の気を払った!!?」

 

「…これは、素晴らしい。まさに神武不殺の拳ーー! 破壊の力ではなく、相手を僅かに上回らんとする必殺の意志を感じますね」

 

「もはや、間違いない。リューベが鬼神ならば、ターニッブは武神。ーー見事だ!!」

 

 ウイスとビルスをして感嘆するほどに美しい一撃だった。

 

 手放しで褒めるビルスをウイスは微笑みながら見た後、二人の神の域に至りし超サイヤ人を向いて目を細める。

 

 青白い超サイヤ人ブルーのような気が人型となって、崩壊するリューベの肉体を象る。

 

 彼はそのまま、笑ってターニッブ達から背を向けた。

 

「我らの、なんと不器用なことよーー。さらばだ、ターニッブ」

 

 ターニッブは静かに見送る。

 

 流れた涙は乾き、口元には穏やかな笑みが浮かんでいる。

 

ーー いずれ、うぬの“子”とも闘いたいものよ ーー

 

 死者の都ーー果てなき荒野を青き気炎の人型となったリューベは真っ直ぐに突き進んで行った。

 

 それを見送り、ターニッブは穏やかな笑みを浮かべたまま告げる。

 

「さらばだ、リューベ。俺が超えるべき真の格闘家の象徴。“拳を極めし者”よ」

 

 消えゆく背を見送ることをやめ、ターニッブは仲間たちに振り返るとゆっくりと真・超サイヤ人から黒髪黒目の通常のサイヤ人の状態に戻り、駆け寄ってくる彼らの下へ一歩踏み出したーー。

 

 




破壊神にまで、認められた強き鬼は逝った。

残されたのは、彼の意志を継ぎ。

世代を越えて拳をふるうことを約束したサイヤの青年。

彼を祝福するサイヤ人たちに、惑星の意思は最後の抵抗を試みる。

次回、最終回です!(^^)!

お楽しみに ^^) _旦~~



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平和なる日々 と それぞれの道★

ターニッブとリューベの決着はついた。

 しかし弱った惑星の意思を狙い、虎視眈々と野心のサイヤ人・ターレスが動く。

 そんなことは知らずに宴会を行う悟空達のもとに、全王が現れた。



 真の超サイヤ人に目覚めた者達の活躍により、数百年に渡る惑星の意思との闘いに終止符が打たれた。

 

 サイヤに住む住民達は、そのことを何よりも喜び。

 

 瞬く間に孫悟空、ベジータ、ブロリー、バーダック、ターレスの五人の名は惑星サイヤの隅々にまで知れ渡っていた。

 

 いつの間にかいなくなったターレス以外の四人に破壊神ビルスとウイスは、ジュードの計らいで食事を振舞われていた。

 

「うめぇ!! やっぱ飯は闘いの後が一番うめぇや!! ターニッブ、何してんだ? オメエも食えよ!!」

 

「おい、カカロット! 右手の炒飯だけならまだしも貴様、俺が楽しみにしていたステーキを!!」

 

「そういうベジータもスープ片手に、僕が楽しみにしていた骨つき肉を食べてないかな?」

 

「プリカ、ラーメンお代わりだぁ!! 後、こっちの餃子も追加くれぇ!!!」

 

「お? この魚、中々イケるぜ!! おい、ガーキン! サイヤ王! 何してやがる、酒だ酒! こっち来て俺の酒を飲みやがれ!!」

 

 戦場とは何も闘いの場だけではない、ということを惑星ベジータのサイヤ人達は教えてくれる。

 

 特に、食事時に。

 

「本当によく食べるな、悟空達は! 見ていて気持ちがいいくらいだ!!」

 

「笑いごっちゃねえよ、ターニッブ。食い過ぎだろ、コイツ等。うおっ、離せバーダック!!」

 

「ビルス様、お肉ばかりでなく野菜もきちんと食べてくださいね」

 

「ブロリーさん、こちらに置いておきますね?」

 

「く、ははは! 闘い終えた友からの酒だ。有り難く貰おう、バーダックよ!!」

 

 多少騒がしく不穏な発言もあるが、楽しそうに笑みを浮かべて騒ぐ。

 

 こんな楽しい食卓などいつ以来かとジュードは笑いながら思う。

 

 バーダックに絡まれて不満を吐くガーキンも、何だかんだ言いながら口元は笑っている。

 

 王都は“惑星の意思ーー常世の国”から解放されたことで、祭りが繰り広げられていた。

 

 亡霊や怨霊に悩まされる日々は、もう来ない。

 

 そうサイヤ王ジュードが発言したことにより、惑星サイヤの人々は数百年の時を経てようやく死者から解放されたのだ。

 

 悟空達が体を休めて三日目になるが、それでも変わらずに惑星は連日連夜の宴を繰り広げている。

 

 サイヤ王が言うには、一週間程度を予定しているが、皆の反応次第では引き延ばすことも視野に入れているとのことだ。

 

 文官たちが隣で頭を悩ませていたが、それもその場だけの話。

 

 祭りに参加し始めれば、武官も文官も変わりなく騒いでいる。

 

 美しく着飾った神殿の巫女娘達が、踊り子を買って出れば。

 

 その相手役にと手を上げる男達。

 

 悟空は飯をたらふく腹にかっこみながら、告げる。

 

「にしてもよぉ、ベジータ? ターレスの奴、最後まで現れなかったな?」

 

「…貴様も気になるか?」

 

「そりゃあな。オメエもか?」

 

「ああ。奴はバーダックやブロリーと違って野心の塊だからな。超サイヤ人に目覚めた今、よからぬことを考えているかもしれん」

 

 真剣な顔で食事の手を止めて告げるベジータを、悟空はキョトンとした表情で見据える。

 

「そりゃ、大丈夫じゃねえか? 今回のことでアイツも少しは懲りっだろ? 超サイヤ人に成れても上には上があるって思い知らされたんじゃねえかなぁ」

 

「…だといいがな。ん? カカロット、貴様は奴が何かしでかすと思ってなかったのか?」

 

「ああ。アイツも惑星サイヤの開放に協力してくれたみてぇだしよ、ビルス様に言って因果律ってのを破壊してもらったらいいんじゃねえか、ってよ」

 

「そんなことをしてみろ。この惑星から出れるようになった奴は、昔のように宇宙海賊に逆戻りしかねんぞ」

 

「心配し過ぎだって、ベジータ!」

 

「貴様が能天気なんだ!!」

 

 揉め出す二人の間にあったステーキ肉を、ビルスが音が出るように強くフォークで突き刺して口にする。

 

 二人がビルスを見ると、彼は口の中にあった肉を食しながら告げた。

 

「そのターレスって奴は、悟空と僕の戦いを物陰から窺っていた奴だろ?」

 

「? そうなんか? オラ、気付かなかったなぁ!」

 

 目を見開いて頭を掻く悟空に、バーダックが横からガーキンの首っ玉を引っ捕まえた状態で酒を飲ませながら告げた。

 

「テメエは破壊神との対決で忙しかったからな。他に気を取られる余裕がねえだろ」

 

「…そのターレスさんですが。彼はあの後死者の都に向かったようです。何をしに行ったのか、ご存知ですか?」

 

「? いや、何かあるのか?」

 

 ウイスの言葉にバーダックが目を見開いて首を横に振る。

 

 その隙にガーキンはバーダックの左腕から逃げていた。

 

「おい、悟空! お前の親父なんとかしてくれよ!!」

 

「ははっ! 父ちゃん、ガーキンのこと気に入ってるみてえだなぁ!!」

 

「笑い事じゃねえ!! あの酔っぱらいオヤジめ!!」

 

 騒ぎ立てる二人の肩をブロリーが叩いて制する。

 

「お? なんだよ、ブロリー?」

 

「ん? 結構マジな話か?」

 

 悟空とガーキンに向かって静かに目を向けた後、ブロリーはビルスとウイスを向いた。

 

「ありがとう。ブロリーと言ったね? サイヤ人にしては中々、礼儀もきちんとしている」

 

「それでは、話を進めたいと思います。プリカさんも、よろしいですね?」

 

 ウイスから言われ、プリカも姿勢を正す。

 

「結論から申し上げますと。死者の都ーー惑星の意思は滅んでいません」

 

 ウイスの言葉に、その場に居たサイヤ人全員が目を見開く。

 

 何かを語ろうと口を開くジュードを手で制し、ウイスは告げた。

 

「そもそも惑星の意思を完全に消してしまえば、このサイヤは人が住める環境ではなくなる。文字通り死の星になってしまうのです」

 

「この惑星の問題は“惑星の意思”が自我を持ち、積極的に知的生命体の精神エネルギーを取り込もうとしたことにある。だがリューベにベジータ、ブロリーのおかげで相当その自我も弱められたようだ。放っておけば他の惑星と同じくらいに自我レベルは下がる」

 

 その言葉にベジータが鋭く目を細めた。

 

「ターレスは、まさか惑星の意思を取り込もうとしていると?」

 

「おそらくね…。ジュード王の肉体を乗っ取ろうとした時に口走っていただろ? 人間の意識に乗っ取られるほどに力が弱まったというのか、とね。そいつを聞いてたんじゃないかな?」

 

 その言葉に悟空が口を開いた。

 

「ターレスの奴、しょうがねえな。気配消してそんなところから覗いてやがったんか?」

 

「取り込むだと? 下手すりゃ、自分が乗っ取られんじゃねえのか?」

 

「いやいや、お前ら親子と違ってそこまで無謀(アホ)じゃねえだろ」 

 

 悟空とバーダックの言葉に思わずガーキンが口を挟み、例によってバーダックに捕まえられて首を絞められている。

 

 それを尻目にベジータが口を開いた。

 

「ビルス様。もし仮にターレスが惑星の意思を乗っ取ればどうなりますか?」

 

「…そうだねぇ。おそらくだけど、亡者を操る能力を得ると思うよ」

 

「惑星の意思が行っていたことを出来るようになる、と?」

 

「ターレスって奴の器によるけれどね。器に合わせて使える能力も変わるはずだ」

 

 そう告げながらビルスは目の前のあんまんを口に運ぶ。

 

 横からウイスが告げた。

 

「ターレスというサイヤ人が最低限の器しかなかった場合ですが。仮に今の惑星の意思を取り込んだ場合、真・超サイヤ人への変身と亡者の一時的な復活と使役。このくらいは出来るでしょうね。惑星の意思が呼び出したベジット以外の存在ならば、特に召喚しやすいはずです」

 

 その言葉にバーダックが目を鋭く細める。

 

「…ってことは。俺達が倒したフリーザやカカロットの肉体を得たギニューと特戦隊。ブウとセルとか言うバケモン共もか?」

 

「そうなりますねぇ。神の域に達した能力を持つフリーザに、超サイヤ人の肉体を持ったギニューという男。これだけでも厄介なのですが。魔人ブウに人造人間セル、ですか」

 

 ウイスの言葉に、悟空が目を見開いてバーダックを振り返った。

 

「いい? 父ちゃんとターレス、金色のフリーザやセル達と闘って勝ったんか!?」

 

「リューベの野郎に手を借りたけどな。流石に真・超サイヤ人ってのに目覚めてなかったら、ヤバかったぜ」 

 

「ははっ、ホント父ちゃんは無茶すんなぁ!!」

 

 嬉しそうに笑う悟空に、バーダックもニヤリと笑みを返す。

 

 プリカが静かにウイスに問いかけた。

 

「ウイス殿。ターレスさんが惑星の意思に取り込まれた場合は、再び?」

 

「そうなりますね…。サイヤ人を護ろうとしたリューベと違い、惑星の意思を宿した真・超サイヤ人が出来上がるでしょう。サイヤ人を滅ぼすために」

 

「…そんな」

 

 思わずプリカはターニッブを見る。

 

 命を賭けて戦った彼とリューベの全てが、無駄になるかもしれない。

 

 ウイスはそう言うのだ。

 

 これに食事の手を止め、悟空が静かに瞳を鋭く細める。

 

「ベジータ。オラ、ちょっくら死者の都に降りてターレスを探してくっぞ」

 

「俺様も付き合ってやる…。万が一、惑星の意思が復活したら惑星ベジータの王子である俺の責任だ」

 

 それぞれ口にしながら席を立つ。

 

 既にターニッブは席を離れて道着の黒帯を締め直していた。

 

 互いに見合い、頷く三人。

 

 これにバーダックとブロリーも続こうとして、横からの声に遮られる。

 

「! ちょっと、お待ちくださいね!」

 

「? ウイスさん、何だぁ?」

 

 ウイスの持つ杖が突如光り出し、青い肌とまん丸の目をしたローブを着た子どものような人物が現れる。

 

 思わずジュードがプリカを見ると巫女である彼女にも分からないらしく、首を横に振った。

 

 その人物の顔を見た瞬間、背中に針金を通したようにビルスの姿勢が真っ直ぐに伸び、顔中から冷や汗を流しながら席を立つ。

 

「ぜ、ぜ、全王様ぁああああああ!!?」

 

 気を付けの姿勢を取りながら、ビルスは周りに座っているサイヤ人達に向かって必死の形相で告げた。

 

「な、何してる!? 全員、気をつけェええ!!!」

 

 言われたとおり、席を立つ惑星サイヤのサイヤ人達。

 

 これに比べてベジータ以外の惑星ベジータ出自組は、のろのろと立ち上がった。

 

「ああ! 全ちゃんじゃねえか、どうした!?」

 

 悟空が現れた人物に対してにこやかに片手を上げ、告げる。

 

「ぜ、ぜ、全ちゃん!? あ、あわわわわ……ブクブク」

 

 瞬間、ビルスが泡を吹いて卒倒する横で、ウイスが澄ました表情のまま礼をする。

 

 全王と呼ばれた子どものような人物は悟空の顔を見るや、無邪気な笑顔を向けた。

 

『うん、悟空~! あれ? でもどうして悟空がそこにいるの?』

 

「え? 全ちゃん、惑星サイヤに用事でもあったんか?」

 

 首を傾げて問いかけてくる全王に、悟空も無邪気に首を傾げる。

 

「全王様、いかがなされましたか?」

 

 ウイスがそんな二人の間に割って入り、問いかけると全王は思い出したように目をパチクリとさせて口を開いた。

 

『ターニッブ君っている~?』

 

「? 俺がターニッブだが」

 

 いきなり名指しで呼ばれ、訳も分からない状況ではあるもののターニッブが応える。

 

 これに全王はジッとターニッブを見据えて言った。

 

『悟空に似てるねぇ~』

 

「へへっ! オラの顔ってさ、サイヤ人には珍しくねえみてぇなんだ。オラの父ちゃんもオラにそっくりだろ?」

 

『わぁ、本当だぁ~!』

 

 バーダックを指差しながら言う悟空に全王は楽しそうな笑顔を向けた後、ターニッブに向き直った。

 

『墓守君からの伝言を伝えに来たよ~』

 

「? …墓守?」

 

『うん!』

 

 にこやかに言う全王に気を失っていたビルスが立ち上がって告げた。

 

「全王様に伝言役を頼むなんて! どんな無礼者ですか!! 私がこの手で!!!」

 

『うるさい、消しちゃうよ』

 

「申し訳ありませんでしたぁあああああああ!!!!」

 

 破壊神ビルスがまるで小間使いのような扱いに、全王の恐ろしさを何となく理解した悟空とベジータ以外のサイヤ人達は警戒した表情で彼を見る。

 

『墓守君がね、言ってたの。“その夢と拳を絶やしちゃダメだ”って』

 

 その言葉に皆が目を見開いた。

 

 思わずターニッブが口を開く。

 

「まさか…リューベが?」

 

『うん! 墓守君からの伝言を伝えたよ~!!』

 

 言うと同時、ウイスの杖からの通信が切れる。

 

 皆がポカンとしている中、ビルスがブツブツと呟いていた。

 

「まったく、全王様に頼み事だと? どんな関係か知らんが、恐ろしい真似をしやがる…。そもそも奴の魂は怨霊共に喰われたんじゃないのか? いやそれよりも、悟空まで全ちゃんって。アレは悪夢じゃなかったのか? いや、とにかく通信が切れて…」

 

「何をしゃべってるの?」

 

「え? いや、とりあえず通信が切れて一安、心……ヒィッ!!?」

 

 傍から聞こえた肉声に、ビルスが震えながらそちらを向くと、長身の側近二人に手を繋がれた全王が、玉座の間で広げられた宴会の席の前に立っていた。

 

「全ちゃん! いってぇ、どうしたんだ?」

 

「悟空! 悟空がターニッブ君と闘ってるところ、見に来たの!!」

 

「…へ?」

 

「墓守君がね、言ってたのね。伝言したら、面白いものが見れるって! 悟空とターニッブ君の組み手、見たいのね!!」

 

 無邪気に告げてくる全王に、悟空が困った顔になりながら告げる。

 

「悪りぃ、全ちゃん! オラもターニッブと組み手してぇんだけどさ、今は他に用事がーー!」

 

 瞬間、ビルスが大声で叫んだ。

 

「ぬぁにを言ってるんだ、お前は!? 全!王!様が!! お前達の組み手を見たいと言うんだから、そちらを最優先にしないくぁああああ!!!」

 

「えぇ!? でもよ、ビルス様! ターレスのこともあるしよぉ」

 

「後だ、後!! 全部後回しだ!! ターニッブ、お前もだ!!!」

 

 言いながら、ジュードに闘技場の手配をさせ、テキパキとビルスは指示を飛ばし始めた。

 

 バーダックが静かにベジータの横に来て告げる。

 

「どうするよ、王子?」

 

「まあ、全王や破壊神に関してはカカロットとターニッブに任せれば良いだろう。俺達は死者の都に向かうぞ」

 

 ベジータがバーダックとブロリーを見返しながら告げると、二人は静かに頷いて出立しようとする。

 

 だがーー。

 

「待て、ベジータ!! 全王様のお世話を僕一人にやらせるつもりか!!? お前達も来るんだ!!!」

 

 ビルスの叫び声に思わずベジータも気を付けの姿勢を取りながら告げる。

 

「はっ! しかし、ビルス様!! 惑星の意思やターレスがどうなったかを確認しなければ…!!」

 

「後にしろ、全部後だ!! 今は、全王様を優先するんだ!! 全宇宙を消されたくなければな!!」

 

「ははっ!!」

 

 こうしてベジータもビルスの言いなりとなりながら、全王の為に持て成しを始める。

 

「おいおい、惑星サイヤの存亡の危機じゃねえのか?」

 

「…俺は行くぞ」

 

「へっ! テメエにだけいい思いはさせねえぜ!!」

 

 呆れた風なバーダックの横を通り過ぎながら静かにブロリーが告げるのを聞き、彼もニヤリと笑う。

 

 そんな二人に追従するようにガーキンも立ち上がった。

 

「階段は闘技場にあるからな。悟空達よりも先回りして、俺達だけ先に死者の都に向かおうぜ」

 

 三人は頷き合うとガーキンが先頭に立って闘技場への近道を通ろうとして、ウイスに遮られる。

 

「お三方。焦らなくても既に決着はついているようですよ」

 

「? 分かるのか、アンタ」

 

 ガーキンの問いかけにウイスは「はい」と頷く。

 

「惑星の意思ーー“自我”は、どうやらターレスというサイヤ人に取り込まれてしまったようですねぇ」

 

 全員が目を見開く。

 

 ウイスはそれを見て笑いながら告げた。

 

「彼は既にこの星には居ません。先ほど、死者の都で得た可能性で自分の宇宙船を作って、惑星の外に出てしまいましたから」

 

 事もなげに言うウイスに思わずバーダック、ブロリー、ガーキンが叫んだ。

 

「「「それを先に言えェえええ!!!」」」

 

 木霊する声にウイスは嬉しそうに声を抑えて笑った。

 

ーーーー

 

 フリーザ軍の使う大型宇宙船が、全王が王宮に現れる寸前に惑星サイヤを出立した。

 

 惑星を後にしながら、ターレスは己の身を見下ろす。

 

「ククク、こんなにも上手く事が運ぶとはなぁ…」

 

 身に纏っているバトルジャケットは、ベジータの着ていたタイプと同じノースリーブタイプ。

 

 黒色の半袖フィットスーツの上に黒色を基調とした白の肩口のバトルジャケットを着ている。

 

 下は惑星サイヤで着せられていた白い道着のズボンを履いている。

 

 両手と両足には地球の戦いで使っていたグローブとブーツをそのまま使用していた。

 

「…この能力、実に便利なもんだ。服にしろ宇宙船にしろ、霧みたいなもんを固体化するだけで造れるんだからなぁ。もっとも、服はともかく宇宙船のような巨大なモノは固体化している状態を維持するのに力を使い続ける必要があるから、しばらく熟睡できねえわけだが」

 

 惑星サイヤの宮殿から盗んできた食料や酒、装飾品などを見てターレスは笑う。

 

 食い物の類も固体化したところで、自分の力を食っているだけなので霞を食べるようなものだ。

 

 本物の味と腹を満たす感覚に優るものはない。

 

 宇宙船に関しては手頃な惑星フリーザを襲って強奪する予定だ。

 

 道案内の人物は能力で復活させた。

 

 死者の都に降りたターレスはターニッブとリューベの戦いを覗き見、悟空達が去って行った後に惑星の意思が倒された場所に立って地面を調べた。

 

 すると、そこにはリューベの持っていた全く同じデザインの、灰色の勾玉の首飾りがあった。

 

 それを手にして首に掛けただけで、ターレスは自分の中に圧倒的な力が漲るのを理解した。

 

 同時に惑星の意思の記憶と感情がターレスの心の中に染まっていき、肉体を乗っ取ろうと最後の抵抗を試みていたが。

 

 既にそれだけの力が無いほどに弱まっていた意思を逆に取り込むことは、彼にとって造作もないモノだった。

 

「…こ、このフリーザが…! こんな猿の言いなりになるなんて…!!」

 

 艦長席から前を見ると、副長席に座った白い尾を持った人型の宇宙人が拳を握りしめて忌々しそうにしている。

 

「クク、どうしたフリーザ? このターレス様がわざわざ、仮初めの肉体とは言え生き返らせてやったんだ。有難く思ったらどうだ?」

 

「調子に乗るなよ…!!」

 

 怒りに震えるフリーザを見て、静かにターレスはワイングラスを持つ手とは逆の手を目の前にかざす。

 

 すると掌の中に拳大の紫の光る球が現れた。

 

「…ま、待て…!!」

 

 フリーザの制止を無視して、ターレスは勢いよく光球を握りしめる。

 

「ぐぁあああああ!!!」

 

 席にうずくまって苦しみ喚くフリーザを肴にワインを一口煽り、ターレスは告げた。

 

「貴様の肉体は仮初めであり、その心臓はこの俺に握られていることを忘れるな? もっとも、闘いたいならいつでも挑んでくれて構わんぞ? 俺を殺すことが出来れば、この能力は貴様が手に入れられる可能性があるからな」

 

 うずくまりながら怒りに震える真紅の瞳を見据えてターレスは続ける。

 

「先程、死者の都であれだけ俺にやられて無様に命乞いした貴様が、勝てると思うのならなぁ?」

 

 冷酷に邪悪に笑うターレスにフリーザの瞳がいよいよ血眼になっていく。

 

「…ち、調子にのりやがって! 相手に合わせて強くなる真・超サイヤ人なんて訳の分からない変身さえなければ、こんなサル野郎に!!」

 

「ククク、よく分かってるじゃないか。フリーザ様…! アンタの天下は終わったのさ。これからは、この俺の小間使いとしてせいぜいこき使ってやるぜ…!!」

 

 高笑うターレスを睨みつけるフリーザだが、今の状態では勝ち目が全くないので手が出せない。

 

 そんな彼を元気づけようと、孫悟空の恰好をしたギニューがフリーザの横に現れる。

 

「フリーザ様! 今は、お耐えください!!」

 

「…ギニューさん。貴方にその気はないんでしょうけれど。その顏でこちらに近寄られると、凄く不愉快な気持ちになります」

 

「…申し訳ありません、フリーザ様! では、わたくしと特戦隊のメンバーで何か元気の出る舞を踊って差し上げましょう!!」

 

「…結構です」

 

 言葉が通じず、喜び勇んで告げるギニューに最早フリーザも何も言えなくなる。

 

 そんな様を見て、忍び笑いを漏らしながら二人の人型をした異形が笑い合っていた。

 

「宇宙の帝王と言われたフリーザが、ああも部下に振り回されるとは…! 貴重なモノを見た気がするよ」

 

「フフフ、今生は中々面白くなりそうだよ。今回の主はビビディより、余程頭の切れるようだしな」

 

 緑色の異形の名は人造人間セル。

 

 桃色の異形の名は魔人ブウ。

 

 共に死者の都で惑星の意思によって模された姿で復活している。

 

 ターレスは二人の異形に笑みを返すと静かに惑星サイヤにいる同族たちに向けて告げた。

 

「カカロット、ベジータ王子! 同族のよしみだ、惑星サイヤと地球には手を出さないでおいてやる。だが、俺はいずれこの宇宙の全てを支配する…!! 新たなクラッシャー軍団を、いずれ貴様らにも見せてやろう…!!」

 

 邪悪な意志の塊を載せた宇宙船は、漆黒の闇の世界へと旅立っていった。

 

ーーーー

 

 完全にターレスの気を感じられないほどに遠ざかったのを確認し、バーダックはウイスを見る。

 

「いいのかよ? カカロットはああ言ってたが、あのバカは改心なんぞしねえぞ」

 

「それも運命でしょう、私は中立の存在です。ただ、これ以上の戦闘を惑星サイヤで行えば心労から多くの民が倒れてしまうでしょう」

 

「……そうかい」

 

 瞳を閉じ、バーダックは静かにウイスから顔をそむける。

 

 ブロリーも静かに握っていた拳をほどいた。

 

「ターレスというサイヤ人が惑星の自我を奪ってくれたおかげで、惑星サイヤは普通の星になりました。これからこの星が今以上に繁栄していくのか、それとも衰退していくのかは人間次第ですねぇ」

 

「…興味ねえな」

 

「それは失礼。では、闘技場に参りましょう? そろそろ悟空さんとターニッブさんの準備が始まる頃です」

 

 そう告げて闘技場に向かうウイスの背でバーダックとブロリーは静かに互いを見合った後、どちらからともなく足を闘技場に向けた。

 

ーーーー

 

 余談であるが、孫悟空とターニッブの御前試合を見て触発されたサイヤ王・ジュードと側近であるガーキンは後日、ターニッブと共に死者の都で修行を重ねた。

 

 そこに漂う惑星サイヤに伝わる武技の数々を記憶を通して習得し、ついに彼らは真・超サイヤ人に目覚める。

 

 ようやく手に入れた惑星サイヤの平和な日々。

 

 それは、これからも守られていくだろう。

 

 ターニッブ、ガーキン、ジュード。

 

 三人の真・超サイヤ人が居る限りーー。

 




 次回、エピローグという名の蛇足( *´艸`)

 孫悟空対ターニッブを全力で一話にまとめてお送りします ^^) _旦~~

 とりあえず物語としては、これで終了ですのでありがとうございました( *´艸`)


真・超サイヤ人の悟空とターニッブ


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エピローグ★ 孫悟空 対 ターニッブ

惑星サイヤは救われた。

 惑星ベジータと呼ばれる別の星から現れた五人のサイヤ人の戦士。

 孫悟空、ベジータ、バーダック、ブロリー、そしてターレスによって。

 何百年にもわたる死者との争いの歴史に終止符を打ったのだ。

 最終決戦に参加した彼らは、サイヤ王ジュードの計らいにより、たくさんの食事と持て成しを破壊神ビルスと付き人ウイスと共に受けていた矢先のこと。

 突如現れた全王の希望により、孫悟空とターニッブ。

 二人のサイヤ人による全王の御前試合が行われようとしていた。
________________________________________


 全王と付き人二人を席に座らせたベジータだったが、此処でも問題が発生していた。

 

 ベジータの目の前で、ガリガリの猫人間と太った猫人間がにらみ合いをしている。

 

 それを青白い肌のウイスによく似た美女が微笑みながら見つめている。

 

 なんと、第6宇宙の破壊神シャンパとその付き人のヴァドス、この二人も全王の呼び出しを受けて来ていたのである。

 

 ビルスが早速、シャンパに絡んでいった。

 

「ぬぁんで、第6宇宙の破壊神のお前まで此処にいるんだぁ?」

 

「全王様のお誘いを受けたからに決まってるだろうが! じゃなきゃ、誰が第7宇宙になんぞ!!」

 

 顔を合わせるや否や、レベルの低い言い争いが破壊神同士で行われている。

 

 そんな二人に向かって全王が告げた。

 

「二人とも、うるさいのね。試合、始まるのね」

 

 この言葉に、いがみ合っていた兄弟は一瞬で仲良く隣同士の席に座りながら、闘技場を見る。

 

 表情は真っ青でガチガチに震えていた。

 

「ベジータ君、ジュード君」

 

 二人の破壊神の様子を伺っていたベジータは突如全王に呼ばれた為、ジュードと共に振り返る。

 

「はっ! 何でございましょうか!?」

 

「私どもにご用とは?」

 

 かしこまる二人のサイヤ人に、全王はにこやかに告げる。

 

「二人とも悟空達の試合、解説してほしいのね」

 

 これにベジータとジュードが顔を見合わせる。

 

「ベジータ君は悟空のライバル。ジュード君はターニッブ君の同門なんだよね? 一緒に試合見ながら解説、お願いできるかなぁ?」

 

 小さい子がおねだりするような表情と頼み方に思わず先ほどの破壊神達の様子も忘れ、ベジータとジュードの表情が柔らかくなる。

 

「カカロットの闘いのことならば、喜んで!」

 

「謹んで相席させていただきます、全王様」

 

 二人の言葉に全王は無邪気に喜ぶ。

 

「うん! ありがとね、二人とも!!」

 

 プリカがこの光景にクスリと笑っていると、バーダックとブロリー、ガーキンが疲れ切ったような表情で悠然と微笑むウイスと共に現れた。

 

「おや、姉上。シャンパ様もご一緒ですか」

 

「ええ、全王様のお招きに預かったのです。なんでも最高の闘いが見れるとのことで」

 

「おほほ、流石は全王様! 耳がお早い!!」

 

 上機嫌に笑うウイスにヴァドスが怪しい笑みを浮かべた。

 

「……ウイス。全王様主催の全宇宙武道大会に孫悟空と出る予定なのかしら? 今回のサイヤ人は」

 

「もちろん、選手に組み込ませていただきますよ。我々第7宇宙の勝利のためにも」

 

 ヴァドスとウイスがそのような会話をしながら、並んで座っているビルスとシャンパの下に行く。

 

 二人の会話を聞きながら、シャンパはビルスに問いかけた。

 

「? なんだぁ? ベジータと孫悟空だけで飽き足らず、まぁだサイヤ人を増やすのか? どうせ、あの二人以上のサイヤ人は連れてこれないだろうに」

 

「……フン! 見ればわかるさ(クソゥ、シャンパにだけは見られたくなかったぞ。奴らはうちの切り札だからな)」

 

 自分と互角以上に戦う格闘の技を修めた孫悟空。

 

 その悟空が認めた男にして、破壊神の拳を受け止めたターニッブ。

 

 どちらも武道会までは秘匿にしておきたかったと悔やむビルス。

 

 そんな彼の心を読んでか、ウイスが口添えをしてきた。

 

「ビルス様、シャンパ様や姉上だけでなく界王神様達も居られますね」

 

「前回の大会の時も居たじゃない? 今更だよ」

 

「ですが……、人数が多いと思いませんか? わたくしも久し振りに父上や姉上以外の家族と出会えて嬉しいのですが」

 

「え? も、もしかして……!」

 

 ウイスの不吉な発言に思わず会場の客席を見渡すと、全12の宇宙の破壊神と界王神、その付き人達が居るではないか。

 

 即座にビルスは席を立って全王を振り返った。

 

「全!王!様ぁあああああ!!」

 

 目を見開き、絶叫するビルスに向かって無邪気に全王が顔を向け、首を傾げる。

 

「ん? なぁに?」

 

 彼に向かってビルスは己の立場を分かりながらも絶叫する。

 

「もしかして! 全宇宙の破壊神や界王神まで見るのですか!?」

 

「うん」

 

「おそれながら、言わせていただきます!! いくらなんでも理不尽じゃありませんか!? 悟空とターニッブは、第7宇宙のエースです!! そいつらの手の内を他の参加する破壊神達に見せるなんて!!」

 

「でも、悟空達くらいじゃないと優勝は無理って目安になるよ?」

 

「……そ、それは!!」

 

「それにね、ビルスの所だけ強い選手が集まるの、ずるいのね。真・超サイヤ人の力、隠しちゃダメなのね」

 

 その言葉に「はは~」としか言えずビルスは頭を下げるしかなかった。

 

 ウイスが静かに観客席を見渡しながら告げる。

 

「これは壮観ですね。全宇宙の破壊神・界王神の揃い踏みとは」

 

「かつて人間同士の闘いで、これほどまで神々に注目された試合があったでしょうかねぇ」

 

 ウイスの言葉にヴァドスも頷きながら、全王の傍に控えている、自分たちよりも背の低い青白い肌の青年を見据える。

 

 大神官という役職にいる彼は、全宇宙で五本の指に入る武道の達人であり、ウイス達の父親に当たる存在だ。

 

 二人の会話を聞いていたのか、大神官はウイス達を見ると微笑みながら首を横に振った。

 

「あら、お父様も存知ないようですね」

 

「これはいよいよ、歴史的快挙かも知れませんねぇ」

 

 互いに微笑みあいながら告げる姉弟を横目に、シャンパがビルスに問いかけた。

 

「おい、なんだよ? 真・超サイヤ人って?」

 

「……すぐに分かるさ」

 

 ビルスは不機嫌そうにそれだけを告げて、闘技場を見据える。

 

(悟空が、この僕との闘いでさえ勿体ぶるほどの力。できることなら秘匿にしておきたいが)

 

 いっそ超サイヤ人4を使わせて(これだって切り札となり得る強力な変身だ)それを真・超サイヤ人だと言い張るかとも考えたが。

 

 全王が知っている時点で誤魔化せるわけがない。

 

 まあ、超サイヤ人4を隠せるだけでも儲けモノだとビルスは思うことにした。

 

「いやはや、まさか神Tubeではなく実物で試合を観戦することになろうとはなぁ」

 

「これはゴワス様、お久しぶりです」

 

「おお、第7宇宙のシン殿。お久しゅう」

 

 黄緑色の肌をした老体の界王神がつぶやくと、第7宇宙の界王神であるシンが隣に座って挨拶をする。

 

「すっかり立派な界王神になられた。お亡くなりになられた第7宇宙の大界王神様達も喜んでおられるであろう」

 

「ありがとうございます。若輩者ゆえ、ご先祖様に日々指導を受けている身ではありますが……」

 

 ゴワスという老界王神との会話に花を咲かせるシンの横では、いかつい顔の立派な体格をした付き人キビトがゴワスの付き人に挨拶をしている。

 

「久しぶりだね、ザマス君。ただの界王だった君が今や立派な付き人ぶりだ」

 

 ゴワスを若くしたような端正な顔立ちに、緑色の肌と白い髪の青年。

 

 ザマスは静かに微笑を返して一礼した。

 

「これはキビト様。先日はどうも」

 

 界王神達の会話を余所に、付き人同士で語り合う二人であった。

 

ーーーー

 

 闘技場では既に悟空とターニッブの為に加工が施されており、不思議なエネルギードームが闘技場を包んでいた。

 

 ターニッブはそれを見上げながら静かに周りを見渡す。

 

「……凄まじい力を感じるな。観客席に居るのは全て神とその関係者か」

 

「ああ、オラ達の宇宙の界王神様だけじゃねえな。第6宇宙の界王神様達も見えっから、ひょっとすっと全宇宙の界王神様や破壊神様が来てんのかもな」

 

「……フッ、相変わらずお前の話はスケールの大きいものばかりだな」

 

 笑うとターニッブは静かに己の両手につけた赤いグローブを握り締める。

 

 これに悟空も手首につけた青いバンテージを引いて、張りを確かめてから拳を握る。

 

「でもよ、オラ達の試合には関係ねえぜ!!」

 

「ああ! 全力で行かせてもらう!!」

 

 二人は同時に気を高めて黄金の気柱を立てると、両者の漆黒の髪が天を突き、眉と共に黄金色に変化する。

 

 漆黒の瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れたモノとなり、やや丸みがかった悟空の目つきは鋭いモノに変化した。

 

「……いきなり真・超サイヤ人か」

 

 ブロリーが静かに目を細めて告げると、バーダックがニヤリと笑う。

 

「様子見なんざする気もねぇってか? そうこなくちゃな!!」

 

「さぁて、俺が立ち合ったときは一撃勝負でターニッブの勝ちだったが。本気の殴り合いならどっちが強いのかねぇ」

 

 ガーキンの言葉にサイヤ人達の表情が鋭いモノに変わり、真剣な目で闘技場の二人を見据える。

 

 全王が首を左右に傾けながら、椅子に座って両足をバタつかせる。

 

 ベジータが静かに両腕を組んだまま、鋭い漆黒の目を向ける。

 

「カカロット……!」

 

 ジュードが胸を張り、漆黒の目を闘技場に向けた。

 

「ターニッブ……!」

 

 この場にいる全ての存在が、二人の黄金の戦士に注目している。

 

 闘技場に居る二人はただ、互いを見合うだけ。

 

「ベジータ、感じるか。凄まじいまでの両者の気迫が会場を飲み込んでいる」

 

「フン、カカロットの野郎。相当押さえてやがるが、我慢の限界だな」

 

 互いに横目で頷きあいながら、ベジータとジュードは目を武舞台に向けた。

 

 静かにターニッブは右脚を前に出し、左拳を顔の横に、右手を腰の前に置いて斜に構える右構え。

 

 対する悟空は左脚を前に出し、左手を顔の横に置いた後手を伸ばして、右拳を腰に置く左構え。

 

 鋭い瞳、口元に笑み。

 

 同じ顔をした超サイヤ人は、始まりの時をじっと待っている。

 

 全王が二人に向かって告げた。

 

「はじめていいよ〜!!」

 

 声が響いた瞬間だった。

 

 二人の身に纏っていたオーラが弾けて、白い光と共に中央で拳同士がぶつかり合った。

 

 互いの拳を拳で押し返しながら、不敵な表情と清々しい表情で笑みを浮かべ合う。

 

「オメエの本気、俺に見してみろ! ターニッブ!!」

 

「俺の拳を試すか、孫悟空!!」

 

 互いに向かって叫び合うと同時、凄まじい乱打戦が繰り広げられる。

 

 お互いの攻撃を紙一重でかわし、捌き、受ける。

 

 開始数秒から、両者は全力で飛ばしている。

 

「リューベを倒した拳、見してもらう。…最初(ハナ)から、全開で飛ばすぜ!!」

 

「お前の全力を見せてくれ! そして、この拳を確かめてみろ!!」

 

 真・超サイヤ人特有の気の無限上昇が始まる。

 

 互いに戦闘力を固定せずに力を開放し、どちらがより高みに立てるかを競い合っている。

 

「…あのカカロットが最初から全力とはな。余程、拳を交えたかったようだ…」

 

「ターニッブも楽しみにしていたようだな。しかし、気を無限上昇させればタイムリミットが早くなる。互いに同じ条件とは言え、無茶をする」

 

「全くだ。はじめて奴等がやり合った時もそうだった」

 

 ベジータがポツリと呟くと、ジュードも応える。

 

「悟空もターニッブ君も、楽しそう。なんで?」

 

 つぶらな瞳で闘技場を見ながら、全王は首をかしげる。

 

「それがサイヤ人だから、です」

 

 ベジータの力溢れる言葉と、隣でこちらに振り返りながら同じ笑みを浮かべているジュードを見て、全王は喜ぶ。

 

「わあっ! いいなぁ、いいなぁ! 楽しそうなの!」

 

 子どものような無邪気な笑みを見返した後、ベジータとジュードは真剣な表情で闘技場を見据える。

 

 別の観客席では、破壊神ビルスとシャンパの兄弟が仲良く並んで座っていた。

 

「…やはりね。楽しそうな顔してるじゃない、どっちも」

 

 ビルスが目を細めながらつぶやくのを遮り、シャンパが叫んできた。

 

「おい、ビルス! なんなんだよ、孫悟空とそいつによく似たサイヤ人は!! どっちもバケモノみたいに気が上がってんじゃねえか!!」

 

「おやぁ、シャンパ? もしかして、ビビってるのか?」

 

「ふざけんなぁ!! こ、くぉのシャンパ様がビビる訳ないだろうがぁ!!」

 

 声を荒げて裏声になるシャンパを横目に見返した後、ビルスは笑みを浮かべて悟空達に目を戻す。

 

 シャンパは、そんなビルスを見た後に、二人の超サイヤ人の闘いを見据えた。

 

(…どうなってる!? 神の気を纏わずに、破壊神のレベルに届いてんじゃねえか!! しかも、まだ気が上昇してやがる!! 何処まで上がるんだ、おい!!)

 

 口には出さないが表情で何を考えているのか丸分かりな程に百面相をするシャンパを見て、ウイスが口元を押さえながら笑う。

 

「…笑い事じゃないわ、ウイス。何者なの、あのサイヤ人と変身は。孫悟空もだけど、破壊神にも匹敵しているわ」

 

「彼らが、切り札です。あの変身は真・超サイヤ人と言って