フォーリナー、異世界へ侵攻す (策士なすび)
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設定等
1:世界観と設定集


どうも。今回は設定集です。ここに出てくる設定は物語の中では出てこないものもありますが、頭の片隅にでも置いておいてくださると助かります。

設定を考えるのは好きですが、辻褄が合ってない事があります。ご了承下さい。

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【世界観について】

 

地球と環境が良く似た、地球より少し小さい惑星。大陸は3つあり、その一つををリーン帝国、トーラス王国の2国が支配している。魔法が存在しており、魔法を扱う者は魔法師と呼ばれる。魔法師の力は大きく、訓練された魔法師が数十人いれば、小国を壊滅させられるほどである。特に王国の魔法師は数、質共に右に出るものが居ない。逆に帝国では、魔法師こそ劣るものの、魔道具や魔導兵器の開発が進んでいる。

 

中世くらいのイメージです。ただ、魔法がある為、時代に合わない物や技術はあります。

 

【魔法について】

この星の植物が日光を吸収して生成するマナと呼ばれる無色のエネルギーを、魔力で色を付けることによって発動する術。正確には目に見えない精霊の力を借りて初めて魔力を扱う事ができるのだが、それはこの世界では知られていない。魔力の色は7色あり、色毎に使える魔法が存在している。例えば、赤なら炎や熱、青なら氷や水等。中には無色の魔法を扱う魔法師も存在する。しかしそのような魔法師は全属性使い(オールマイティ)と並び、千年に一度しか生まれない。無色の魔法師は、一人で小国の戦力と同程度の力を持つ。ただ一つ例外として、この星に住む者なら誰でも使える、生活魔法というのも存在する。

 

マナは地球で言うダークエネルギーの一つって感じの設定です。あと無色の魔法はとっても強いです。マナを操る魔法であるため、空飛んだり、硬いバリアを張ったり、どこでも爆発を起こせたりと、割とチートです。

 

【精霊について】

この世界では知られてはいないが、この星には目に見えない精霊と呼ばれる者が無数に存在している。その精霊が人に宿る事により魔法師が生まれる。精霊は自然と繋がっており、住処である場所が破壊されれば力を失い、マナに溶ける。それら精霊の中でも、最も力が強いのは、虹の精霊と精霊王であり、これらの精霊は一体ずつしか存在せず。宿主が死ねば千年の眠りにつき、千年後また新たな宿主を探すために目覚める。

 

【究極魔法について】

それぞれの魔力の色に存在する、究極の魔法。同じ属性の他の魔法とは比較にならないほどの力を解放する。

 

・赤の究極魔法

《ヴォルケーノ》

半径100メートルに巨大な炎の海を作り出す。この魔法の炎は一度発動すると、術者が解除するまで永遠と燃え続ける。

 

他の魔法は随時追加していきます。正直名前や効果は適当です。

 

【人物紹介】

・ルーゲル・デル・セレヌス 男

 15代目トーラス王国国王。冷静な性格。これまでの王国の歴史は帝国との戦争の歴史であったが、それを止める為、帝国との友好を図り、それに成功した割と有能な王。

 

・トーラム 男

 宮廷魔法師。そのの中でも、トップクラスの才能を持つ。扱える属性は全属性で、他の宮廷魔法師の指南役も務めている。

 

正直、名前を付けるような人物は原作リスペクトであまり出したくは無い。ので、名前がつくような登場人物はこれくらいにします。

 

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大まかな設定は以上です。この他にも色々設定を考えてはいるので、それもいつか公開出来たらと思います。

正直行き当たりばったりな感じで作ってる所があるので、矛盾などは結構あると思います。ミスを見つけた時はそっと教えて下さると助かります。

 

 



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2:巨大生物

巨大生物の設定等です。

自分がただ設定を作るのが好きなだけで勝手に作っておりますので、もし公式情報と食い違っているような箇所がありましたら教えて下さい。

 

2020 8.15 巨大生物α 赤色種を追加しました

 

2020.10.5 飛行型巨大生物を追加しました

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巨大生物α

 

アリ型巨大生物。体長11m。歩行速度は90km/h〜100km/h。巨大生物の中でも最も数の多い種類。数が多いだけでなく、モデルが自身の体重の5倍の重さの物を持ち上げられる怪力を持つアリの為、一体一体の危険度も高い。その怪力から繰り出される噛み付きによる攻撃も危険だが、最も危険なのは腹部の先端から発射される強酸性の液体である。この液体は、戦車の特殊装甲すらクリームのように溶かしてしまうほどの酸性で、射程も100数十メートル程もある。発射速度も圧倒的で、数十メートル程度の距離であれば1秒も掛からず着弾する。攻撃面だけでなく、耐久面でも優れており、人間がただ振り下ろしたような武器では傷一つ付かず、摂氏千度を超える溶岩に触れても短時間であれば問題なく活動出来、放射線の耐性もある。更には水中や真空中でも問題なく活動できるため、汎用性の高い生物兵器と言える。

 

巨大生物α 赤色種

 

アリ型巨大生物である巨大生物α。その亜種である、赤色種。その名の通り外骨格が赤色に変わっている。勿論単に色が変わっているだけでなく、強度としては3倍以上強化されている。それだけでなく、通常個体と比べて2倍程度巨大化しており、移動速度も上昇している。代わりに、酸が吐けなくなっているが、通常種よりも大規模な群れを作る事が多く、地面を埋め尽くしながら高速で迫って来る様子は、まさに「赤波」の様である。

圧倒的な物量の上、一体一体の耐久性も高い為、この赤色種の群れの進行を止めるのは難しい。

 

巨大生物β

 

ハエトリグモ型の巨大生物。体長9m。α型と同じく最も数の多い巨大生物の一つであるが、姿形は全く異なる。歩行はほとんど行わず、基本的にジャンプしながら移動する。ただその跳躍力が圧倒的で、一回の跳躍で数十メートルもの距離を移動することが出来る。跳躍の仕組みとしては、脚部に張り巡らされた血管を収縮させる事で強靭な筋肉を収縮させ、一気に膨張させる事によって跳躍する。攻撃方法として、腹部の先端から放つ糸の束がある。無論、ただの糸ではなく、1本1本が10センチ程もありとても強靭な上、鋸のように細かなギザギザが付いており、更にはその糸には強酸性の液体が染み込んでいる。粘着性も強く一度くっ付くと中々外す事は出来ず、糸を動かせば動かすほど、鋸のようなギザギザの構造によって外皮が傷つき、そこに酸が染み込む事によって傷が広がってしまう。よって糸に触れる事は死を意味する。

耐久面はa型程ではないため、高火力で遠距離から攻撃すれば、攻略は容易である。

 

飛行型巨大生物

 

体長13m。蜂型の巨大生物で、名前の通り四枚の羽を使い飛行する事が出来る。飛行時の最高速度は時速約200km。通常時は歩行している。腹部から複数の針を高速で発射することで攻撃する。長さ4m、太さ1m程にもなる針は特殊な金属製であり、鉄よりも遥かに硬い。それを時速600km程で発射するため、大抵の物体は貫通してしまう。針は硬いが、先端は他の部分に比べて柔らかい物質で出来ているため、物体に刺さった瞬間針の先端が破裂し粉々にになる。それによってさらに大きなダメージを与える事ができる。そしてこの巨大生物が何より恐ろしいのは巣を自由に作る事ができるという点である。他の巨大生物は卵を産む事は出来ても、巣穴や巣を作る事が出来ず、天然の洞窟などを利用するしかないが、飛行型巨大生物は木や土を噛み砕きペースト状にし、それを重ねて塗っていく事で巣を形成する。巣は200m程の高さで、地上から見ると丸底フラスコを逆さにした様な形をしているが、巣の本体は地下にあり、地上に見えているのは巣の末端でしかなく、実際の巣の大きさは数キロにもなる。

一旦上昇し急降下してくる様に襲ってくる為、接近するまでは一直線に進んでくる。そこを一網打尽に出来れば勝ち目はある。

 

怪生物 エルギヌス

 

全長125m、体高70m程もある超大型の巨大生物。フォーリーナーが滅ぼしてきた数々の惑星の一つにおいて、生態系の頂点に君臨していた。他の追随を許さない程の巨体故、歩くだけで地鳴りを起こし、ひとたび地面を叩きつければ、小規模な地震が発生するほどである。巨体に似合わず素早く動くことができ、最高速度は200kmを超える。背中や胸に生えているトゲのような発電機関により、数十GWものエネルギーを生み出し、それを口から発射する事で、全てを破壊する破壊光線を放つことも出来る。しかし、エルギヌスにおいて特筆すべきは攻撃面ではなく、耐久面である。特にその驚異的としか形容できない再生能力は、機関砲やミサイルで負った傷程度ならば瞬く間に再生してしまう程に強力で、まともな攻撃では殺傷はおろか致命傷すら与える事が出来ない。更に恐ろしいのが、エルギヌスはまだ成長途中という事であり、成体になると体長は160mを優に超え、体色は赤く染まり、発電機関も青色から橙色に変わり、真に生態系の頂点と言える姿へと成長する。成体になれば、発電量も大きく増加し、数百GWものエネルギーを生み出すことが出来る。それによって破壊光線の威力も激増し、ありとあらゆる物質を破壊することが出来るようになる。甲殻の硬度や再生能力も比べ物にならない程強化されており、核兵器でも殺し切ることはできず、フォーリナーですら完全に成長した個体を捕獲することはできなくなるという、まさに完全生物と呼ぶに相応しい生物である。

 

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という事で一応作中に出す予定の巨大生物達でした。

リクエストあれば作中登場と共に設定も追加しておくので、「これ出して!」っていうのがあればどうぞ。

設定は捏造だらけです、っていうか巨大生物の設定少なすぎる...

この設定集も後々追加していくので、時間が空いたら見てみてください。

 

それと、設定の文中にフォーリナーに関しての重要な情報が含まれています。まぁ大した事ではありませんが、一応作中でも匂わせたりはするので、楽しみにしていてください。

 



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3:フォーリナーの兵器

今回はフォーリナーの兵器達です。



ガンシップ(飛行ドローン)

フォーリナーの運用する、自律型ドローン。全長7m。攻撃対象は人間で、内蔵のレーダーで索敵を行う。飛行速度は地上付近では時速150km程度で、上空では音速程度だが、真空中では実質的な最高速度は無限(光速)である。その理由は、この兵器の飛行方法にある。この兵器は内部に重力発生装置を内蔵しており、地球の3倍程の重力を発生させることが出来るため、機体を落下させるように飛行を行えるのである。空気抵抗のある地上では、いくら高い所から自由落下を行おうと、最終的な速度が決まっているが、空気抵抗の無い真空中では、無限に自由落下運動を続けられるのである。兵装は高出力レーザー速射砲を4門搭載している。レーザーの威力は高く、厚さ5センチ程度の鉄板なら一回の射撃で貫通してしまう程である。

装甲はそれほど厚くないため、一斉に攻撃すればすぐに破壊する事が出来る。

 

ヘクトル

フォーリナーの運用する、自律二足歩行兵器。全高25mで、フォーリナーとしては中型の兵器。脚部や腕部には多くの関節があり、これにより着弾時に大きく仰け反る事で、衝撃をある程度吸収出来る。関節が多い事により腕部や脚部の可動域はとても広く、機体の足元も狙う事も出来る。武装は3種類あり、粒子ガトリング砲、スパークランチャー、プラズマキャノンの3つである。3つのなかでも、特にプラズマキャノンは、半径10mの爆破半径と、数十キロ程もある射程を持った強力な兵器である。

最も近い敵を攻撃する性質があるため、囮などを使うと比較的楽に撃破する事が出来る。

 

ディロイ

フォーリナーの運用する、三足の兵器、通常、*******から投下されるが、輸送船が衛星軌道上から投下する事もある。その足にはヘクトルと同様に多数の関節があり、可動域がとても広く、場合によっては一歩で200メートル以上進む事もある。可動域が広すぎるため、基本的にこの兵器に悪路は関係なく、建造物の上でも、深い溝にも対応出来る。通常型、短足型、長足型と3タイプあり、短足型は小回りが効くため、市街地での戦闘を得意とし、通常型は汎用性が高く、長足型は700m近くある体高を活かし、巨大なビル群の中での戦闘や、海洋での戦闘を行う事が出来る。攻撃手段は頂点にある本体部分より発射するプラズマ砲と、脚にあるレーザー砲台、鋭利な脚部の先端による突き刺し攻撃である。特筆すべきはレーザー砲で、型によって数は異なるが、長足型なら20個近くの砲台が付いており、圧倒的な弾幕を張る事が出来る。ただレーザーの出力自体は飛行ドローンの物より少し上という程度なので、ある程度の厚さの遮蔽物があれば、暫くは防ぐ事が出来る。ただあまりに長く隠れていると、プラズマ砲を撃ち込まれ、障害物ごと破壊されてしまう。

脚部のレーザー砲台が最大の脅威であるため、全て破壊してしまうと著しく戦闘力が低下する。よって、高威力の攻撃で即座に本体部分を破壊するか、脚の砲台を通常の攻撃で破壊するかの2通りの倒し方がある。

 

四足歩行要塞

フォーリナーの地上兵器の中では、2番目に巨大な兵器。全長は200m、全高は150mである。あまりに巨大なため、進路上の建造物は尽く破壊され、四足歩行要塞が通った跡は全て更地になってしまう。ただ歩くだけでも脅威となるが、この兵器の最も恐ろしい所は、背中にあたる部分にある、100mもの大きさを持つプラズマキャノンである。このプラズマキャノンの威力は凄まじく、射程は数十キロ程だが、都市を一瞬で焦土にする程の破壊力を持つ。防御力も高く、その装甲の厚さと硬さの為、通常の攻撃は一切通らず、前面と側面の一部に防御スクリーンも展開されているため、遠距離からの攻撃はほとんど遮断される。

弱点はハッチだが、足元はヘクトルや飛行ドローンが守っている為、容易に近付く事はできない。

 

マザーシップ

フォーリナーの母艦。直径300mの球体で、表面には防御スクリーンが展開されている。飛行は反重力装置を使い行なっている。兵装はジェノサイド砲、パネル型のレーザー砲台とプラズマ砲台、そして10門の小型ジェノサイド砲があり、特にジェノサイド砲はマザーシップを象徴する兵器である。大気吸収口から吸収した大気をエネルギーに変換し、複数の超高熱レーザーとして発射する。レーザーはあらゆる物体を貫通し地面に着弾するが、あまりの高熱のために、触れた物体と着弾した地面を瞬時にプラズマ化させてしまい、大爆発を起こす。爆破半径はレーザー一本につき60m程もあり、それが横並びに10本以上発射されるため、一度の発射につき数キロの大地が焦土と化す。小型ジェノサイド砲も、ジェノサイド砲に劣っている訳ではなく、対人という意味ではジェノサイド砲よりも効果的な兵器となる。特に、巨大粒子砲は敵の視界を覆ってしまうほどの弾幕を張る事が出来、斉射された生物は痕跡すら残さず消し飛ぶ事になる。下部に小型の転送装置もあり、そこからほぼ無限に飛行ドローンを発艦させる事も出来る。

弱点は大気吸収口だが、それを破壊する為にはマザーシップの直下に行かなければならない。当然だが近付けば近付く程砲撃は苛烈になるため、マザーシップの破壊は容易ではない。ただ、マザーシップと防御スクリーンを纏めて貫通出来るような兵器があれば、遠距離から破壊する事はできる。




という訳で兵器達でした。
これも随時更新していきます。
全てが本編に確実に出る訳ではありません。


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物語
1:異変


初投稿です。巨大生物やフォーリナーの設定等間違っているところがあれば遠慮なく言ってくださると助かります。

 

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これはとある銀河の、とある惑星での出来事。

その星では「魔法」が発達していた。

 

これは、その星で起きた無慈悲で、残酷で、凄惨な悲劇を綴った物語である。

 

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トーラス王国 王城にて

 

「何?使節団との連絡が途絶えた?」

 

そう問うのはトーラス王国15代目国王ルーゲル・デル・セレヌスである。

 

「はっ、先日から突如連絡がつかなくなり、現在も「通信(メッセージ)」の魔法で呼びかけておりますが繋がる気配すらありません。」

 

「そうか...賊にでも襲われたという事か?」

 

「いえ、使節団には護衛として精鋭兵20人と魔法師5人を付けておりました。賊程度にやられるとは思えません。」

 

「ではどういう事だ...?もしや、帝国に裏切られたのか?」

 

「有り得ますね。しかし、もしそうであれば何故数日もの間、帝国側から声明が無いのでしょうか。」

 

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同刻 とある辺境の村にて

 

「さて、今日は釣りにでも行くかな。」

 

そう呟くのは、村一番の怠け者、カインである。彼は日中、村や家の仕事もほとんど手伝わず、いつも村の外をブラブラしており、夕方になると欠伸をしながら帰ってくるような生活を繰り返していた。

 

だが、今回ばかりはその行動のお陰で助かったと言えるだろう。幸運だったとは言えないが。

 

カインがいつも通り夕方に帰ってくると、村の様子がどこかおかしいことに気付く。普段であれば、人々の話し声や子供のはしゃぎ声が聞こえてくるはずなのに、やけに静かだ。そして何より、一番の異変は、()()()()()()()()()ことだ

 

この村は辺境とはいえ、そこそこ大きな村だった。それこそ、村を壁で囲い、大きな門を作れる程度には。

 

しかし、その門が無くなっているとはどういうことであろうか。

 

カインは妙な胸騒ぎを覚え、村へ駆け出す。村人の無事を祈りながら。しかし...

 

「どうして...一体何が...」

 

そこに広がっていたのはドロドロに溶けた肉が滴る人骨や、腐って崩れたような家、そして、人と言われても分からないほどにぐちゃぐちゃになった肉塊ばかりであった。

 

カインは絶望し、そして困惑する。自分が遊んでいる間に、村で何が起こったのだろうか。明らかに賊がやる事では無い。こんな事は()()()()()()()()()()()

 

(もしかしたらまだこれをやったヤツが近くにいるかもしれない)

 

そう考えた時にはもう遅かった。視界を橙色が覆い、それから数秒も経たないうちに、意識は虚空へと消えた。

 

 

 

 

この村が壊滅した事が国に伝わるのはこれから数日後の事である。

 

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読んでくださりありがとうございます!

という訳で、記念すべき第1話でございます。

残念ながらフォーリナーはハッキリとは出てきませんでしたが。申し訳ない。

一応言っておきますと、この星は滅びます。これは確定です。その過程での出来事を楽しんでもらえたらなと思います。

 

 



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2:襲撃

「申し上げます!」

 

謁見の間に軍団長の声が木霊する。

余程慌てているのだろう、息を切らしており、急いで伝えに来たことが分かる。

 

「お主がそれほど慌てるとは、何があった。述べてみよ。」

 

王が問う

 

「はっ!今朝判明した事ですが、東の都であるリトラルが、何者かの攻撃によって壊滅しており、生存者も僅かであるとのこと!」

 

「何!?」

 

あまりに唐突で信じられない報告による王の驚嘆の声と共に堂内がざわめく。

 

王国では全部で5つの大きな都があり、それぞれ東の都、西の都、北の都、南の都、王都がある。それぞれ注力しているものが異なり、例えば西の都は他の大陸との外交が盛んであり、それによって商業が栄えている。ちなみに、最も人口の多い地域である。そして東の都だが、これは今までの帝国との歴史もあり、軍事設備が多く配置されている地域である。中には、ワイバーンやグリフィンなどの、屈強なモンスターからなる空軍や、地竜や魔道戦車からなる陸軍など、一度戦争となればほとんどの戦場で勝利することが出来るほどの軍隊もあった。しかし、その東の都が壊滅していたのである。()()()()()()()

 

あまりにも異常な事態。こんな事は700年以上続く王国の歴史上でも初めての事だ。

 

「どういう事だ!?帝国が攻めてきたのか!?!」

 

王の声が少し荒くなる。これは仕方がないと言えるだろう。このような状況、どれほど豪胆な人間であろうと、驚き、冷静さを失うに違いない。それでも単に慌てるだけではないのが、彼が王たる所以だろう。

 

「いえ、それが...生存者の話によると、襲ってきたのは人ではなかったようです」

 

「モンスターにやられたというのか?東の都を壊滅させられるようなモンスターは私は知らないが...」

 

「おそらく、新種のモンスターであると思われます。生存者によると、そのモンスターは東の都のどんな建物よりも大きかったと...」

 

「何!?東の都の最も高い建物であれば30ミルはあるぞ!?それほどまでに巨大なモンスターなら、何故接近に気付かない?大きさからして、接近するまでに通信(メッセージ)を行使する程度の時間はあるはずだろう!」

 

「それが...東の都の中心から突如地底より現れたため、通信(メッセージ)を使う間もなかったとの事です。」

 

「地底から現れただと?それでは、今どこに居るかも分からないということか。まさか、もう既に王都の地下に居るかもしれないという事か?」

 

「それは恐らく無いと思われます。巨大なモンスターが現れる少し前から、地鳴りがしていたようです。現在のところ、王都の付近で地鳴りは起こっておりません。」

 

「そうか...」

 

(しかし何故、突然都の中心から出現したんだ?明らかに東の都を狙ったような行動...そのモンスターは使役されていたのだろうか...)

 

「使役されていた、という事はないのか?」

 

「私もそう考え、生存者に問うたのですが、使役したモンスターの額に出る紋が無かったとのことです。」

 

「そのモンスターは東の都からは離れたのか?」

 

「はい。東の都を壊滅させた後、また地底に潜り、東に進んで行ったとの事です。」

 

「分かった。今すぐ東の都に調査隊を向かわせよ。少しでも情報が欲しい。」

 

「はっ!」

 

 

         〜数日後〜

 

 

「失礼いたします!調査隊より、調査報告書を提出しに参りました!」

 

調査隊の指揮官がやって来る。

 

「おぉ!やっとか!入れ。」

 

「はっ!失礼いたします!」

 

ガチャリという音と共に、指揮官が部屋に入り、側近に報告書を渡す。

 

「...して、どうであった。」

 

「はっ!まず、街への被害ですが...ま、街の9割が壊滅、城壁も崩れ、都の中心一帯は...消滅していたとのことです。」

 

読み上げる際に余りの状況に言葉が詰まる。一体どんなモンスターがやってきたのだろうか。そのモンスターは我々で勝てるのだろうか。考えれば考えるほどそのモンスターがより強大に思え、恐怖が募っていく。

 

「そうか...」

 

ここまで来るともはや発すべき言葉も見つからない。

 

「次に、周辺地域の調査結果ですが、モンスターが潜った後と思われる空洞を発見しました。」

 

「...その空洞を調査することはできるか?」

 

危険なことだとは分かっている。空洞内でそのモンスターと鉢合わせれば、確実に命はない。だがそれでも、王国の未来の為に必要なことだ。

 

「了解しました。調査隊を編成し直し、即座に準備を開始します。」

 

「感謝する。」

 

「ありがとうございます。しかし、王や国の為に働くのは当然の事、我らは王の目であり、王の判断の助力をする事しかできません。」

 

「いやいや、お前達は本当に良くやってくれている。」

 

これは本心だ。彼らが居なければ帝国との講和も成立していなかったであろう。帝国の貴族への根回しなどにおいて、彼らほどの功労者は居ない。

 

「...ありがとうございます。」

 

 

数日後、調査隊は全滅する事になる。が、彼らはまだそれを知る由もない。

 

 

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という訳で、第二話でした。

被害に遭っていたのは、村だけでなく、東の都も襲われていたんですねー。

段々とフォーリナーが王国に知られて来ました。

さっさと帝国に調査隊送れば、帝国の状況なんてすぐ分かるんですけどね笑。

ちなみに1ミルは地球の1メートルと大体一緒です。

フォーリナーとの戦闘は次の次くらいになりそうです。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

 

 



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3:調査

「これより、巨大モンスターが掘ったと思われる空洞の調査を行う!」

 

調査隊長が隊全体に聞こえる程度に大声で呼びかける。

 

「「「はい!」」」

 

調査隊のの隊員達もそれに力強く返答する。

 

これから行われるのは未知のモンスターによって掘られた空洞の調査。その空洞がどこまで繋がっているのか、どの程度の大きさなのかを調査するのが今回の目的だ。

 

キャンプ設営が行われた後、いよいよ調査が開始される。

 

「・・・暗いな。」

 

調査隊の誰かが声を漏らす。

 

「確かにな。ただまぁ、一直線の道だ。迷うことも無い。」

 

「皆、それぞれ照光(ライト)を使え。」

 

隊長の号令と共に洞窟内が明るくなる。

明るくなると言っても、数十メートル先は見えないが。

 

それからしばらく進んでいると、空洞に比べると少しだけ小さい脇道を発見した。

 

「隊長、どうしましょう。二手に分かれて進みますか?」

 

副隊長が言う。

 

「そうだな。部隊を2つに分け、俺と副隊長でそれぞれ指揮を執る。副隊長の部隊は脇道を行ってくれ。我々の部隊はそのまま直進する。何かあれば通信(メッセージ)で伝えてくれ。」

 

「了解しました。では、また後ほど会いましょう。」

 

「そうだな。」

 

「では調査を再開する!」

 

         〜数十分後〜

 

「しかし、本当に大きな空洞だな。それに未だ最奥まで到達出来る気配すらない。」

 

その時、腰に付けた共鳴石が振動する。メッセージが来た合図だ。

 

「どうした。何か発見したか?」

 

「緊急事態です!謎のモンスターに襲われ、現在は岩陰に身を隠しています!負傷者数2!死者数3!」

 

「何!?」

 

思いもよらぬ返答に一瞬戸惑うが、すぐに冷静さを取り戻し、

 

「謎のモンスターとは東の都を襲った巨大モンスターか?」

 

「恐らく、別のモンスターであると思われます。大きくはありませんでしたが、それでも体高は目算3〜4ミル程。空洞内が暗く、はっきりとは見えませんでしたが、数十匹は居たと思われます。白色魔法で身を隠して居ますが、あまり長くは持たないでしょう。これから一度引き返します。」

 

「了解した。こちらも一度戻ろう。見つからぬよう注意せよ。」

 

「了解。それでは、失礼します。」

 

通信が終わり、静寂が残る。しかしその静寂も、すぐに消え、

 

「何があったんですか!?」

 

「部隊は無事なんですか!?」

 

隊員達の声が飛び交い、木霊する。

 

「謎のモンスターに襲われ、死者3名、負傷者2名の被害が出たそうだ。」

 

「そんな・・・。」

 

「これから一旦引き返す。地上に出て、王に報告せねばならん。」

 

「...了解しました。」

 

隊員達が力無く答える。

 

(クソッ!謎の巨大モンスターに加え、また新たなモンスターだと?一体この空洞には何がいるってんだ!)

 

隊長は心の中で毒を吐く。隊員達の士気の為にも決して口に出す事はないが、心の中でくらい、許されるべきだろう。

 

 

 

そして、脇道の入り口まで辿り着く。しかし、副隊長達の姿が無い。

 

それから数分が過ぎ、数十分が過ぎる。戻った時間を含めれば1時間以上経っている。

 

(いくら見つからないようにとはいえ、あまりにも遅すぎる。もしや...)

 

あまり考えたくは無かった事が頭を過ぎる。

 

しばらくして、考えを決める。

 

「お前達。」

 

隊長が声を発する。

 

「お前達は先に地上のキャンプに戻れ、そして、王に状況を報告し、軍の出動を要請してくれ。」

 

「隊長はどうするんですか!」

 

「俺は...副隊長を迎えに行く。」

 

「そんな...」

 

「ダメです!」

 

隊長の判断に逆らうのは、部隊として良い事とは言えない。だがそんな事も投げ出してしまうほどに、隊員達には隊長に返しきれない恩があった。

 

隊員達は元々、魔法師崩れであった。魔法師は優秀だがどこかで雇われるなどしないと他に出来ることが少なく、毎年一定数の魔法師崩れが出る。スラムで街明日生き延びれるかも分からない程の飢餓や、誰にいつ殺されるかも分からないような状況で生きていた。そんな魔法師崩れ達の才能を見極め、鍛え、正式な魔法師として、働かせてくれたのが隊長である。隊長が居なければ、あのままスラムで野垂れ死んでいた所だっただろう。今の生活が全て隊長のおかげであった。隊長が生かしてくれたのだ。だからこそその隊長を死地に送る事ができず、隊長の言葉に反対したのだ。

 

しかし、

 

「これは命令だ。私はこの部隊の隊長である。ならば、生きて隊員を帰すのも隊長の責務である。」

 

「くっ...了解しました。」

 

隊員達が半分泣きそうになりながら承諾する。

 

「ははっ、そう泣くな。安心しろ、俺は必ず、副隊長達を連れて戻る!」

 

「っ...はい!」

 

隊員達が泣きながら答える。皆、分かっている。隊長が戻る事はないだろうと。だがしかし、隊長の覚悟を踏みにじる事は、出来なかった。

 

「さて、部隊の生存が絶望的であったとしても信じるのも、隊長の責務か...」

 

少しだけ笑いながら、脇道に入って行く。

 

隊員が全滅したのを悟ったのは、それから間も無く、数分後の事であった。

目の前に何人か分の人骨が転がっている。東の辺境の村で見た死体と一緒だ。所々溶けた肉片がこびり付いている。

 

(と言う事は、この部隊を襲ったモンスターは、村を襲ったものと同じものか。しかし、巨大モンスターではないのなら、東の都を襲ったのは巨大モンスターだけでなく、これをやったモンスターもという訳か。これは、報告し損ねたな。)

 

「ッ!今何か、暗闇の中で動いたな。」

 

闇を見つめる。よく耳をすませば、何か音が聞こえる。

 

ギチギチ・・・ ギチギチ・・・

 

何かが擦れ合うような、あまり聞いていて心地良くない音が聞こえる。だんだんと近づいて来るようだ。

 

「あまり時間もないようだ。そして、副隊長の部隊も全滅していた。しかし、残った部隊が王に報告してくれている頃合いだろう。ならば後顧の憂いなし。最後まで抵抗させてもらう!火球(ファイア)!」

 

何かが居るであろう暗闇へ魔法を放つ。奥で鉄板を引っ掻いたような音が響く。恐らく、少しは効いたのだろう。

 

そして直後、橙色の弾が飛んでくる。間一髪のところで回避するが、衣服の掠った箇所が一瞬にしてボロボロになる。

 

「なるほど、これで村々や部隊をやったのか。」

 

もう一度火球を放つ。効いてはいるようだが、倒したような手応えは無い。

 

そして、その瞬間、隊長は死を覚悟した。

 

直径20ミル程の空洞を覆い尽くす程の弾幕がこちらに向かって来ていた。回避は不可能だろう。

 

「クソッタレが...」

 

直後全身に弾が襲いかかる。一瞬で衣服は溶け、肉はただれ、骨だけになるのに時間は要さなかった。

 

巨大生物達は、隊長を倒した後、隊長が来た道を進んでいく。その数、数百。

 

 

           地上にて

 

部隊が地上に戻って来る。キャンプに残っていた部隊が問いかける。

 

「お前達だけか?隊長や副隊長、他の隊員達はどうした?」

 

「...皆、死んだ。」

 

「は?」

 

「死んだんだよ。モンスターに襲われた。隊長は食い止める為に、そこに残ったんだ。」

 

「そんな...」

 

「それよりも、隊長の最後の命令だ。空洞で起こった事を王に報告し、軍の出動を要請する!」

 

 

──────────────────────────

 

という訳で3話でした。

いやー、4.1の洞窟は暗いですよねー。突然視界にアリやクモが入って来ると驚いてしまいます。そんな恐怖感を演出したかったんですが、私には技量が足りませんでした。

そしてついに次回王国軍vsフォーリナー第1戦でございます。頑張って盛り上げるので、出来れば見てやって下さい。ついでにお気に入りや評価もよろしくお願いします。

次回は明日の23時に投稿する予定です。



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4:交戦

明日の23:00とか言ってましたけど、いざ書こうと思うと、アイデアが全く出ませんでした。申し訳ないです。

 

この話は書き直すかもしれません。

──────────────────────────

 

地平線の向こうから、壁が現れる。否、それは壁ではない。地を埋め尽くすほどの軍勢だ。その数数千。調査隊のキャンプへ進軍していく。

 

しかし

 

キャンプ地はモンスターの巣窟であった。テントは踏み潰され跡形も無くなっており、人骨の一つも見つからない。

 

軍団長は迷う。ここから攻撃すれば、近付かれる事なく殲滅できるかもしれない。だが、万が一生存者がいた場合や、居なくとも王国の国民であった者たちの遺体を消失させ、弔う事すら出来ぬかも知れない。だが、ここで放置しては王国の滅びを招く可能性もある。

 

そしてついに覚悟を決める。

 

「赤魔法師!究極魔法を放て!」

即座に詠唱が開始され、地面に幾つもの巨大な赤色の魔法陣が描かれる。

短時間の間に魔法陣が完成し、数百人の魔法師が力を解放する。

 

「「ヴォルケーノ!!!」」

 

魔法師達の手が赤く光り、その輝きを増していく。

すると、モンスターの足元が光りだし、次の瞬間、炎が吹き上げる。

そのあまりの衝撃にモンスターの大半は宙へ浮き、地に近付く程に体が焦げていく。幾つもの炎が重なり、赤く燃え上がる様は、まさしく火山の噴火のようであった。その炎を見たほとんどの者が、敵の殲滅完了を確信した。

しかし、まだ十数匹のモンスターが全身を焦がしながらも動いており、こちらへ猛烈な速度で迫ってくる。

 

究極魔法は、絶大な威力を誇る代わりに魔法にもよるが所持魔力のほとんどを消費してしまう。そのため、数日に一度しか行使する事が出来ない。そのため、残りの敵は歩兵が相手をする事になる。

 

「突撃陣形!」

 

即座に数万もの兵が矢尻のような陣形を作り出す。

 

「突撃ィィ!」

 

一斉に兵達がモンスターへ一直線に駆け出す。モンスターは腹部を大きく突き出すが、何も起こらず。槍を数十も刺され、なす術なく活動を停止させられる。

しかしやられるだけのモンスターではない。今度は頭を下げ、大きな牙を開き突撃してくる。大きなモンスターはただの突進ですら脅威となる。更にそれに牙が加われば、人の身で止められるものでは無いだろう。しかし、人は群にして個、個にして群の生物である。一人で止められぬのであれば、10人でも100人ででも力を合わせれば良い。人はそうやって強者に打ち勝ってきた。

モンスターの突進を数十人もの盾兵が受け止め、モンスターを四方から数十の槍を突き刺す。モンスターは穴だらけになり、地に伏せる。数千人の部隊をこの戦法を取るためにモンスターの数だけ分担したとしても、有り余る兵力。勝ちは確実であった。

 

 

 

モンスターの殲滅が終了し、生存者、及び遺体の捜索が開始される。しかし生存者は見つからず、見つかるのは骨のみの遺体だけである。日が暮れ始め、捜索は終了される。遺体と調査用の出来るだけきれいなモンスターの死骸を運び、王国に持ち帰る。

 

 

王国にて

 

研究員がモンスターの死骸の調査を開始する。

 

「イヒヒ、鉄の武器をも通さないこのモンスターの外骨格、その調査を任されるとは...ヒヒヒ」

 

ランプ一つの灯しかない部屋に、不気味な笑い声が響く。

この研究員は王国で、魔法や兵器の研究に多くの実績があるため、今回も任されたのだが・・・性格に問題があった。

 

「あぁ、どこから切ろうか。足から?触覚から?いやいや頭からいっちゃう!?」

 

生物を解剖する事に興奮を覚え、自分の知識が高まっていく毎に興奮が高まる、俗に言う変態の一種である。ただでさえ解剖が好きなのに、未知のモンスターの解剖ともなれば、鼻血を出して倒れてしまいそうなくらいに興奮していた。

 

「まぁ、サンプルは沢山ある事だし、強度チェックからやっちゃいますか!」

 

短剣を取り出し、脚部の外骨格を切断しようとしみる。しかし、切れない。傷すら付かない。

 

「うひゃぁ、なんだこの硬さは!」

 

ハンマーで殴りつける。しかし凹まず。火で炙る。焦げ目が少し付くだけだ。

その後もあらゆる方法で破壊しようとするが、損傷らしい損傷を与えられない。

 

「こんだけ硬いけど、究極魔法にはやられたのか。じゃあ溶岩で焼ける程度なのかなぁ。」

 

「よし!最後は爆破実験だ!」

 

大きな平野に死骸を丸々置き、黄色魔法を詠唱する。

 

「そんなに強い魔法は使えないけど。大爆発(エクスプロージョン)!」

 

黄色の魔法陣が描かれ、死骸が爆発する。煙が辺りを包み、晴れる。

死骸は形さえ留めていたものの、甲殻が剥がれ落ち、黄色の肉が見えていた。

 

「おっと!大爆発(エクスプロージョン)で破壊可能なのか。じゃあ何とか勝てそうかな?」

 

手帳に耐久性の検査結果を書き込む。

 

研究室に戻り、もう一つの死骸を使った実験が開始される。

 

「フフフ、ついに解剖だー!」

 

先ずは腹部の節にメスを差し込み、切り離す。

 

「うーん?なんだこれ。筋肉以外、何にも入ってないぞ。いや、腹部の先端に何か袋みたいな物があるな。でもそれだけか。じゃあ何で動いてたんだ?臓器もないみたいだし、ゴーレム?ってわけじゃなさそうだけど。一応袋を丁寧に取り出してみますか。」

 

袋を腹部の最先端ごと切り離す。袋を切り開くと、橙色の液体が入っていた。

 

「何だろう、これ。毒?酸?取り敢えず何か物を漬けてみるか。」

 

木片を漬けてみる。するとたちまち木片は煙を上げ溶けてしまう。

 

「おーこわ!だいぶ強い酸だね。報告では攻撃で使ってこなかったようだけど、焦げた事によって使えなくなったのかな?」

 

それからしばらくして、解剖が終了する。

 

「うーん、結局ほとんど何もわからなかったなー。」

 

大きなため息をつき、部屋を後にする。

 

 

 

しかし、この時は気付いていなかった。

 

地平線の向こう、遥か彼方で、モンスターの巨大な群れが動き始めていたことを。

 

──────────────────────────

 

てことで4話でした。

遅れてしまい本当すいません!お詫びに絶対完結させるという約束をここにいたします。

そして本編の話ですが、酸の袋を開いてしまった事で、フェロモンとして遠くの巨大生物に感知されてしまったって事です。

っていうか序盤は退屈ですよね。ただでさえ戦闘描写が下手くそなので、盛り上がりの少ない序盤にショボくなるのは許してください。

次回投稿予定はもう決めない事にしました。出来たら上げる。出来なかったら上げない。このスタンスで今後行かせてもらいます。

 

ってか自分、気付いていなかった系の終わり方好きだな。



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5:敵襲

 

「敵襲!敵襲!」

 

広大な王都を囲う巨大な城壁。その一角で番兵が声を上げる。

その視線の先にあるのは巨大な黒と赤の波。とてつもないスピードでこちらに迫ってくる。

 

「今すぐ王へ報告しろ!」

 

通信(メッセージ)の魔法を使い、王宮にメッセージを送る。

 

「どうした。緊急事態か?」

 

通信に応えたのはトーラム。宮廷魔道士の筆頭であり、世に2人といない全属性の魔法師だ。

 

「報告いたします!城壁の南東よりモンスター出現!以前現れたモンスターであると思われます!」

 

「分かった。すぐに部隊を編成し援軍を送る。」

 

「はっ!」

 

〜トーラムside〜

 

メッセージが切れる。落ち着いてる風を装ったが、内心はかなり驚いている。

 

「いくらなんでも早すぎる!3日と経っていないぞ!」

 

1人愚痴を零すが、すぐに頭を入れ替える。

 

「こうしている場合ではないな。すぐに兵を送らねば。」

 

トーラムは王の元へ急ぐ。

 

〜城壁にて〜

 

「門を閉じよ!」

 

その場の指揮官が命じる。

 

兵の1人がレバーを引く。すると門の上部から大きな落とし格子が落ち、更に大扉を数十人の兵士で閉じることで、門が固く閉ざされる。

 

「モンスターが門を破壊する前に陣形を組め!」

 

すぐさま陣形を組み始める兵士。しかし、城壁上の兵士が叫ぶ。

 

「うわぁぁぁ!モンスターが壁を登って来」

 

しかしそれを言い切る前に身体が上下に分断される。そして現れるのは赤色のモンスター。黒色のモンスターと形は変わらないが、明らかに異なっているのはその大きさである。黒色のモンスターの2倍はあろうかという程の体躯。全長は城壁の高さの半分ほどもある。

 

「盾兵!あいつを抑え込め!」

 

盾兵達が赤色のモンスターを囲む。

 

しかし、

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

赤色のモンスターが盾兵に噛みつく。するとすぐさま盾が兵士ごと真っ二つにされてしまい、モンスターが足踏みをすれば、圧倒的な体重により兵士が潰されてしまう。それに槍も剣も弓も全く通らず、攻撃したものから殺されていく。黒色のモンスターに辛うじて通じていた武器も全くもって歯が立たない。

その上大量のモンスターが城壁を越え、兵士に迫っている。

そして次々と兵士を潰し、切断する。

 

辺りが血の池の様に真っ赤に染まっていく。

 

殆どの兵士が死に、残った兵士も死を待つのみであった。

指揮官が逃走しようと後ろを振り返る。

 

その時、希望が見えた。

王国軍である。それも数万人の。

 

そして次の瞬間、何かが崩れる音が背後で鳴り響く。

咄嗟に後ろを振り返れば、崩れた城壁が在った。

 

そして城壁の穴からとてつもない量のモンスターが飛び出して来る。

 

そして指揮官は波に飲まれた。

 

〜王国軍side〜

 

「なんて数だ...」

 

大隊長が無意識のうちに言葉を漏らす。報告には聞いていたが、間近で見るとやはり多い。

 

(剣も槍も弓も効かず、抑え込むこともできないか...。だとすれば可能性があるのは魔法のみか。それにあいつらは足が速い。逃げても追いつかれてしまうだろう。兵士に壁になってもらう他ないのか...?)

 

覚悟を決め、兵士に命じる。

 

「壁を作れ!盾兵は前列!槍兵は後列!残りは攻撃で空いた穴を埋めよ!魔法師は後方に展開し6人1組で大魔法の詠唱を始めよ!」

 

すぐさま兵により壁が作られ、魔法師達の頭上には雷や火、風など様々な属性の魔法が作られ始める。

 

そしてモンスターが到達し、兵による壁を薙ぎ払っていく。

 

「撃てぇぇ!!」

 

大魔法が放たれる。放たれた雷撃がモンスターの体を焦がし、炎が焼き、疾風が脆くなった甲殻を切り裂く。

 

次々とモンスターは駆逐されていくが、兵士も所々穴が増えており、塞ぐために壁を小さくせざるをえなくなっている。

 

1時間が経過する。

 

ここで魔法師達の大魔法を撃つほどのマナが無くなってしまう。

だが、魔法師の恐ろしい所はここからだ。大魔法の強みが一撃の威力なら、通常攻撃魔法の強みは圧倒的な弾幕だ。今まで6人1組だったのが、全員で一斉に撃つ事ができる。

 

様々な属性の魔法が大量に放たれ、モンスターを殲滅していく。一撃の威力で劣っていても、それが数百にもなれば流石のモンスターの甲殻も防ぎきれない。

 

そして、

 

数時間の戦闘の末、王国軍の勝利で終わった。

 

しかし損害も多い。歩兵部隊のほとんどが戦死してしまった。

 

10分の休憩後死体を回収し、帰還しようとした時である。

 

軍の頭上を何かが高速で過ぎる。

 

全員が空を見上げる。そこに居た。いや、あったのは銀色の装甲を持ち、所々の隙間に赤色の光が漏れ、全体的に丸い形をした、謎の物体。

 

音もなく飛ぶ様はまるで紫色魔法を行使しているかの様だった。

 

次の瞬間、赤色の光線がそれから連続して放たれる。

それが兵士に当たった瞬間、兵士の体に大穴が開く。

 

すぐさま我に帰った大隊長、

 

「あれは敵だ!恐らく紫魔法を用いた魔導兵器だ!魔法師!通常攻撃魔法を放て!」

 

即座に魔法が放たれる。

しかし、

 

「速すぎる!」

 

「攻撃が当たらない!」

 

その魔導兵器は空中を縦横無尽に動き、魔法が当たることはない。そして攻撃の隙間に光線を放ち1人、また1人と兵士が散っていく。

 

大隊長は思考する

(よく観察しろ...どうすれば当たる...?どこか隙はないか。)

 

そこで気付き、考える前に声を出す。

 

「方向転換、もしくは攻撃時を狙え!あれはその瞬間は一時停止する!」

 

それに気付けば撃破は容易かった。攻撃しようとした瞬間を狙われ、魔法を数十発浴び、空中で爆発する。

 

大隊長は取り敢えず戦闘が終わったことに安堵する。

 

(...しかし、一体どこの兵器だ?帝国か?しかし、講和を結んだばかりで攻めて来る理由があるか?他の大陸の可能性は...)

 

(取り敢えず、報告だな。)

 

大隊長は帰投中、ずっと魔導兵器の事を考えていた。

 

 

 

後日、帝国に使者が送られ、王国は帝国の状況を知ることになる。

 

 

──────────────────────────

 

ということで5話でした。

 

今回はちょこっとだけでしたが、次はちゃんとフォーリナー出ますよ!

 

 

 

 

 

 

 



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6:謎

遅くなりました。申し訳ないです。あとフォーリナー出ません。

 

──────────────────────────

 

〜謁見の間〜

 

「帝国が...壊滅していた!?」

 

国王が驚きの声を上げる。それと同時に貴族達にもどよめきが広がっていく。

 

「はっ。使節団の情報によると、建造物が元の形もわからないほどに崩れ去っており、領内に入ったことすらしばらく気づかない程であったようです。」

 

「生存者は...」

 

王が詰まるような声で問う。

 

「まだ完全には調査しきれておりませんが、望みは薄いと思われます...」

 

「そうか...」

 

「分かった。他に何か情報はあるか?少しでも敵の情報が欲しい」

 

王は問いながら思案する。

 

(帝国が攻めて来たわけではないという事は、報告にあった魔導兵器は他国の物ということになる。しかし紫色魔法による魔導兵器は帝国と我が国しか開発に成功していなかった筈。だとしたらどこの兵器なのだ?...他の大陸にも使節を送らねばならないか。)

 

そこまで考えた所で臣下が報告を始める。

 

「はっ。まず帝都周辺の報告ですが、黄色魔法を行使した時のようなクレーターが複数見つかっております。しかしそのどれも黄色の究極魔法を行使したものよりも巨大で百メートル以上もの大きさがあったとのこと。」

 

「究極魔法を超える爆発だと?そんな魔法が存在するのか?」

 

「究極魔法は人間が反動に耐えられる最大限の魔法です。恐らく、人間が行使したのではなく、魔導兵器による物だと思われます。」

 

「究極魔法に耐えられるような素材すらまだ見つかっていないのだぞ。それが黄色魔法という不安定な魔法ならば尚更だ。」

 

「それともう一つ、帝都周辺では巨大モンスターの痕跡は見つからなかったとの事です。」

 

「では東の都を襲ったモンスター達とは無関係の存在が襲撃したのか?」

 

「それも含めて、現在調査を行っています。ただ、黒色のモンスターの痕跡があるため、少なくとも黒色や赤色のモンスターは帝国を襲った勢力と関係が有ると思われます。」

 

「現在のところ報告すべき事柄は以上です。引き続き調査を行います。」

 

「分かった。調査隊の人員も増やそう。健闘を祈る。」

 

「はっ!」

 

 

〜王の自室〜

 

「一体何が起こっているのだ!」

 

王の自室に怒号が響く。

 

怒りの矛先は現状何も分からない事と、何も分からない自分へ向かっている。

 

(まず例の魔導兵器だ。紫色魔法を用いた魔導兵器で技術的には帝国や我が国を上回っていただと!?そんな兵器聞いた事もない!そして帝国の壊滅...。幾ら進んだ技術を持っているとしても、生存者や難民を一切出さないというのはあまりに不自然だ。それほどまでに短時間に滅ぼされたというのか?それに究極魔法の規模を超えるクレーター。あぁ、本当に訳が分からん!)

 

「だが...」

 

「一先ずは、国を守る手立てを考えねばならん。会議を開かねばな。」

 

〜数時間後〜

 

「これより、モンスターおよび敵性勢力への対策に関する会議を始めます。」

 

議長の宣言により、会議が始められる。

 

「まず考えなくてはならないのは、敵性勢力の正体、そして次の襲撃場所です。」

 

「正体は他の大陸の巨大国家しかないだろう。それも、王国と帝国に並ぶ国など片手で数えられるほど少ない。見当を付けるのは簡単だと思うが。」

 

議長の出した議題に対して大貴族の1人が発言する。他の貴族も殆どがそれに賛成しているようだ。

 

「既に他の国家には使節を送っている。丁度、物資が運ばれて来なくなった国家があるからな。」

 

王自身もそれに賛同している。

 

「それでは、一先ず敵性勢力の仮の正体として他の大陸の巨大国家、ギール公国と決定す...」

 

「お待ちを」

 

議長が意見をまとめようとした時、1人の若い貴族が声を上げた。

 

「私の意見としては、敵性勢力は天上の国ではないかと考えます。」

 

「は?」

 

一同がその余りにも突拍子が無く、意味不明な発言に困惑する。

 

「何を言い出すかと思ったら、天上の国だと?ここは会議室だ!神の話をするならば教会へ行け!」

 

大貴族が怒号を浴びせる。自分の意見を弱小の若い貴族から否定された事に苛立ちを覚えたのだろう。しかし若い貴族は怯む事なく、

 

「いえ、神ではありません。天上の国です。」

 

「何が違うというのだ!」

 

「皆様は聞いたことが有りませんか?この空の上には、星々が浮かぶ広大な空間があるという話を。私はその星々の中の一つの国が攻めて来たのではないかと言っているんです。」

 

「そんな事が有り得るわけないだろう!不確定な情報を会議に持ち込むな!」

 

「ギール公国が敵だという事も不確定事項でしょう。」

 

「2人とも落ち着きなさい!」

 

ヒートアップしていく2人の議論を議長が静止する。

 

「これはあくまでも仮決定です。最も確率の高い国家がギール公国というだけであって、確実とは言えません。その辺りを誤解無きよう。」

 

「えー続いて、次の襲撃場所ですが...」

 

「南の都だと思われる。」

 

先程とはまた別の大貴族が発言する。

 

「南の都?王都への道が開いているのに、わざわざなぜ南の都を襲うのだ?」

 

「これはあくまで敵がギール公国だとした場合だ。大陸の南西に位置するギール公国からすれば、最も近くにあり敵の生産力の殆どを担う南の都とその周辺を襲うのが普通だろう。」

 

「西の都という事はないのか?」

 

「王国の貿易収入は公国が多くを占めている。わざわざルートを絶たなくても、公国が敵ならば貿易を止めるだけで西の都には大きなダメージが入る。」

 

「なるほど。」

 

「少なくとも、南の都が狙われる確率は高いだろう。王都の警備を薄くする事は出来ないが。」

 

「では北の警備を南に送ろう。それならば問題はあるまい。」

 

「では次に襲撃される可能性が高いのは南の都とし、北の都の警備の一部を南に回す事とする。よろしいですね。王よ。」

 

議長が会議をまとめる。

 

「うむ。そうしてくれ。」

 

会議が終了し、王がまず会議室から出る。

 

〜王side〜

 

自室に戻り今回の会議を振り返る。

 

(私もギール公国以外無いと思っていたが、まさかあのような意見が出るとはな。あの場で言えるはずもないが、正直興味がある。)

 

()()()()か...」

 

王の呟きは虚空へと消え去る。

 

「またやる事が増えそうだ。」

 

王は小さなため息を吐き、一時の休息を取る。

 

その時、人が見ることの出来る空の遥か彼方、天上で何かが動き始めていた。

 

 

──────────────────────────

 

取り敢えず今回は終わりです。

帝都が滅んでいる事がバレてしまいましたね。

クレーターを作ったのはアイツです。作中では威力分かりにくいですけど、街を1つ消滅させる程の威力があるそうです。

正直クレーターがどのくらいの威力ならどのくらいの大きさのものが出来るのかあんまり理解していません。変なとこあれば言ってください。

次回は割と巨大なやつが出て来ます。お楽しみに

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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7:想定外

大陸の南の海岸線付近にある駐屯地にて、王国兵は待機していた。これは、敵勢力が次攻めてくるまでに大した時間は開かないだろうという予測からだ。

 

しかし、幾日と待てど敵は現れない。

幸い兵糧に関しては農村ばかりなので殆ど困る事は無いが、敵が全く現れないという事態が兵士達の不安を募らせていた。

 

その時、指揮官に通信が入る。

 

「南の都上空より球形の巨大飛行物体が出現しました!更にその物体より魔導兵器が発進しています!」

 

「何!?空からだと!?すぐに向かう!到着するまで耐えてくれ!」

 

予想外の通信内容に驚きを隠せなかったが、すぐに切り替える。

 

「はっ!援軍が到着するまで、耐え切って見せます!」

 

通信を終え、すぐさま兵達に集合をかける。

兵士達はすぐさま集合し、列を組み指揮官の言葉に傾聴する。

 

「現在、南の都がおそらく敵勢力の物と思われる未知の飛行物体によって攻撃を受けている!」

 

予想外の発表に驚きの表情を浮かべる者も居るが、ほとんどの兵が何も口に出さず、ただ傾聴している。日々の訓練の賜物だろう。

 

「よってこれより南の都へ引き返し、敵勢力の迎撃を行う!皆出発の準備を始めろ!十分後移動を開始する!解散!」

 

解散の号令と共に兵達が即座に行動を開始する。そして予定より早く移動を始めることが出来た。これは、一重に自分の国、そして故郷を守りたいという兵達の想い故だろう。心なしか行軍の速度も上がっているような気さえする。

 

しかし都市までの距離は長く、時間が経つほどに兵士達の焦りは大きくなる。今現在も自分たちの故郷が攻撃されているのだ。今すぐ走り出したくなるような気持ちの兵士達も居た。

 

南の都が見え始め、兵達はようやく辿り着いた事への安堵を感じ、しかし同時に上空にある巨大な物体に戦慄する。

無理もない。あまりに大きすぎるのだ。南の都には他の都市とは比較にならない程広大な街と大きな役所がある。しかしその面積にして1a以上もの広さを持つ役所ですら、小さく感じてしまうほどに巨大な物体が、空に浮かんでいる。この光景に恐怖を感じない者など、居なかった。

 

しかしその恐怖は、逆に兵士達の闘争心に火を付けていた。その時までは。

 

飛行物体の底が開く。そして中から、巨大な何かとしか形容が出来ないような物体が現れる。それは全体的に黒い色をしており、所々赤い光が走っている。そして何より目を引くのはその大きさ。巨大な飛行物体と同程度の大きさを持っている。いや、長さだけを見るのなら飛行物体以上はありそうだ。

黒い物体の円柱状の下部が縦に四つに割れ始め、中から赤や白に輝く菱形の模様が光る謎の構造物が現れる。上部からは煙が出始め、誰の目にも何かが起ころうとしている事が分かった。

 

「まさか、あれは砲なのか!?」

 

指揮官が驚愕する。あれがもし砲で、発射されたならば、南の都に甚大な被害が出ることは明らかであったからだ。しかし、攻撃を行おうにもあまりに遠い。そして敵の位置が高過ぎる。あの高さでは真下からでも魔法が届かないだろう。自らの無力さに苛立ちを覚えつつも、一先ず大急ぎで都に援軍を送らねばならない。その使命感を頼りに進軍する。

 

しかし、次の瞬間。

 

 

黒い物体の先端から、幾筋もの光が放たれた。

 

眩しすぎるほどの光が辺りを包み、その場の全員の動きが止まる。

 

直後、光の着地点より、轟音と共にとてつもない大きさの火柱が上がる。

 

高さにして数百メートルはあるだろうか。一瞬美しく感じてしまう程の大きさと鮮やかな赤色の火柱に、兵士達は圧倒されていた。そして数秒後、熱波と爆風が襲いかかって来る。あまりの風に皆が目を瞑り、そして目を開いた後、絶望する。

 

街が、瓦礫と化していたのだ。

 

光に直接当たってしまった建物とその周辺は、まるで蒸発したかのように消滅し、巨大なクレーターのみとなっていた。そして光が当たっていない建造物も、あまりの熱波と爆風により殆どが崩れ去っていた。

 

「は...?何なんだよ!どうなってるんだ!」

 

悲痛が、困惑が、驚愕が、混じり合った様な声で誰かが叫ぶ。

 

しかし追い討ちをかけるように、再度飛行物体の砲より煙が出始める。

 

「もう...やめてくれ!」

 

指揮官も、嘆きを叫ぶ事しかできない。

しかしその懇願を踏みにじるが如く、無慈悲にも2発目が放たれる。

 

光が地を貫き、貫かれた場所から巨大な炎が噴き出す。そして街は瓦礫すらも吹き飛び、更地となった。十字型に残ったクレーターだけがそこにあり、かつての賑わっていた街は跡形も残っていなかった。

 

敵勢力の迎撃は完全な失敗に終わった。飛行物体は上空へと消えて行く。

 

膝から崩れ落ち、ただただ呆然とする兵士や、行き場のない怒りを堪えられない兵士、悔しさの余り涙が溢れそうになる兵士もいる。指揮官もただ呆然としている人間の1人だった。そして、

 

「全員、帰投する。」

 

司令官が力なく放ったその言葉は、あまりの静けさ故に全員に行き届いた。

 

一度近くの駐屯地へ移動する。

 

移動を行っただけなのにも関わらず、一昼夜戦った後のような疲労感と脱力感を感じる。しかし、休んでいる暇は殆ど無い。王都に繋がる共鳴石へ手を手に取り、通信を行使する。

 

「こちら作戦司令本部。用件は?」

 

「南の都が敵勢力によって攻撃を受け、消滅した。」

 

「...了解した。そちらの損害は?」

 

「死者は0、火傷などの軽傷者は多数。他に異常はなし。」

 

その後も敵の情報などを報告し、通信を終える。

 

そして大きなため息をついた後、机に膝をつき、額に手を当てる。

そうしていると、王国はこの戦争に勝てるのだろうかという疑念が湧いてしまう。

いや、指揮官も心の奥底では、勝てるはずがないと思っていた。巨大な都市がたった二回の砲撃で更地となる光景を見た者ならば、多少の差はあれど皆思うだろう。

しかしそれを考えた所で状況が変わる訳も無いので、指揮官はそこからずっと、巨大飛行物体の迎撃法を考えていた。

 

 




という訳で7話でした。
マザーシップ出ましたね。
絶望感、出すの難しい。自分の文章力では単調な感じになってしまいます。この小説は、自分の文章力向上の為に書いている部分もあるので、これから上手くなっていければいいなと思っております。どうか温かい目で見守ってやってください。
リクエストなども随時募集しておりますので、何かありましたら感想欄でも良いのでどうぞ。
次回は割と早めに投稿出来そうです。


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8:王と民

2000UAありがとうございます。殆どの方が二回以上読んでくださっているようで、なんだか嬉しく感じます。

どうやら訂正前の物を間違えて上げてしまったようで、編集いたしました。


王は自室で報告書に目を通していた。

 

「そうか...公国は滅んでいたか...。交易が絶えたのもそのせいか。となると現在交易が途絶えている国も恐らく、滅んでいるのだろうな。敵性勢力は世界中で同時に攻撃を仕掛けている、ということか...。ははっ、彼我の戦力差は圧倒的と言わざるを得んな」

 

思わず苦笑いを浮かべる。敵対勢力のお陰で王国史上類を見ないほど報告書が上がってくるので忙しいことこの上ない。おまけに南の都市消滅による国民の混乱で街は荒んでおり、内乱も起きるかもしれないという緊迫した情勢が続いている。

 

「このような状況で内乱など起ころうものなら、あっという間に国が潰れる。なんとしても民を安心させなければならんな。」

 

民を安心させるの手段は様々だが、最も手っ取り早いのは演説だろう。しかしこの王、政策や軍略等は得意だったが、演説のノウハウは全くと言っていいほど無かった。

 

ノウハウが無くては民を安心させることが出来ないどころか、不信感すら抱く者も現れるだろう。そうなってしまっては終いだ。国と民を守る為の行動が、逆に国と民を傷付けてしまう事となる。それだけは避けなければならないが、演説以外に安心させる方法もないので、短期間で出来る限り良い原稿を書く他ない。

 

「やれやれ、前途多難だな。」

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

それから数日が経ち、原稿も完成し、いよいよ演説当日となる。既に王城の広場にて演説を待つ民衆が大勢集まっている。

 

「人前で緊張する事など、今まで一度とて無かったが、今回は少しだけ緊張するな。」

 

王が隣にいる補佐官にも聞こえない程度の小さな声で呟く。しかし、

 

「緊張しておられますか?」

 

気付かれぬ様に振る舞っていたつもりが、補佐官には見透かされていたようで、王は少し驚いた。

 

「何故分かったのだ?外見に出ていたか?」

 

「私が何年、王の補佐をやっていると思っているのですか?王の表情や動き一つ一つに気を配らねば、補佐官など務まりません!」

 

「そうか...そうだな。すまない。私も長年王をやっているのだ。民の前で緊張するなどあってはならぬな。王とは民の羨望の的であり、民からの尊敬あって初めてなれるものだ。民の前で緊張などしてしまっては、それは王とは呼べないな。」

 

一息付き、バルコニーへ進む。

明暗差により一瞬視界が真っ白になる。数度瞬きして目を慣れさせると、そこには大群衆があった。

 

王がバルコニーに現れた瞬間、静寂が訪れる。ふと民衆1人1人の顔を見れば、不安を抱いている者、怒りを覚えている者、王の謁見に喜ぶ者。心中様々だが、その誰もが、王の言葉を待っていた。

 

そして、演説が始まる。

 

「我が国の宝たる国民よ。先ずはこの様な王国の緊急時に私の声を聞きに来てくれた事に感謝する。...そして次に、王でありながら、南の都と東の都の民...いや、王国の民を守れなかった事を謝罪する。...本当に...申し訳ない!」

 

民衆がざわつく。通常、演説では謝罪などのマイナス的な言動は滅多に行われないからだ。

数秒の沈黙の後、演説は再開される。

 

「皆も知っている通り、現在王国は、敵性勢力によって攻撃を受けている。しかし敵勢力の正体は未だ掴めず、現在のところ迎撃しか出来ていない状況だ。」

 

実際、敵が正体不明という事が民や兵の不安を募らせている最も大きな要素の一つと言っていい。人が最も恐れを抱くのは未知だ。王国の戦況を知らなかったのか、民衆の少数がまたざわつく。しかし、王の力強い言葉に我を取り戻す。

 

「だが必ず、敵勢力の正体を掴み、反撃を行う事を約束する!今はまだ気休めの様な言葉かもしれないが、必ずそれが事実だという事を証明して見せよう!よって我が国民には、この王国最大の危機を、どうか私を信じて、耐えて欲しい!そして、下を向かず前を見ていて欲しい!私が王国の民の前を行く!それを見て、そして私に付いてきて欲しい!」

 

「以上だ。」

 

少しの間を開け、演説の終了を宣言する。

すると、

 

「うおおぉぉ!」

「王様万歳!」

 

拍手と共に称賛の声が上がる。

演説としてはとても短く、平凡なものであったが、それでも民を安心させるのには十分だった。

 

王は少し安堵する。民の力が少量なれど戻って来た事に。

バルコニーから室内に入ると、待機していた補佐官が声を掛けてくる。

 

「素晴らしい演説でした!」

 

「世辞はやめよ。私から見ても正直良い演説とは言えなかったという事は分かる。」

 

「いえいえ、「演説の基はその者の心にあり」でございます。先ほどの王の力強き言葉に勇気付けられた者もいるでしょう。」

 

「先代王、父の言葉...。成る程心か。確かに、精神が強き者は戦でも強いからな。人に心は不可欠だな。失念していた。」

 

「はい!人は人の心を持つが故に人なのです。」

 

「ハハハ、それはつまり、敵は人では無いという事か?」

 

「どうなのでしょう。少なくとも私は、人とは思えません。残虐性も、力も。」

 

冗談のつもりが、少し深刻な空気になってしまい、慌てて話を変える。

 

「...そういえば、敵について何か分かった事は有るか?」

 

「一つ有ります。ただこの情報は不確定な為、報告するか迷っていたのですが...」

 

「何でも良い。話してくれ。」

 

「分かりました。先日、民間で調査を行なっていた団体が、天上から来ているという説に基づき、南の都付近の上空を観測していた所、明らかにその場に存在していなかった敵性勢力の兵器が、突然現れた。との事です。」

 

「成る程、次何処に現れるかの検討もつけられんという事か、少なくとも人の基準では。」

 

「はい、ですので国全体で敵の出現を監視出来るよう、自立人型魔導兵器の開発を進めております。」

 

「おお!それは良い報せだ。それが出来れば、兵として役立てる事も出来るかもしれないな。心は人の強みでもあり弱みでもある。心が無ければ恐怖心も生まれまい。」

 

「なかなかに希望が見えてきたな。このままの勢いで正体も掴めると良いが。」

 

 

王は王国に芽吹いた小さくとも確かな希望を感じながら、束の間の休息を取った。

 

 

 




お読み頂きありがとうございます。
今回は王と民の話でしたね。演説に関しては何も考えず読んで欲しいです。正直自信ないので...。

先日とある映画を観に行きまして、上映中4回も泣いてしまいました。とても素晴らしい映画でしたよ。僕もあんなシナリオが書けるようになれると良いんですけどね。



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9:銀色の巨人

遅れました


 

演説が終わり、王が休息をとっていると、補佐官が部屋に入ってくる。

 

「御休み中に失礼いたします!」

 

「何事だ」

 

「西の都にて沿岸より敵襲。敵は目算20m以上。人の形をした新型魔導兵器です。数は30。現在敵兵器は街や兵に向けて砲撃を行なっている模様。既に多数の被害が出ています。」

 

「早いな。おちおち休ませてもくれないか。」

 

 王は数秒の沈黙の後、補佐官に言伝をする。

 

「砲撃をしてくるという事は、支援用という可能性がある。突撃用の兵器などもあるやもしれん。『絶対に上陸を阻止しろ。』そう伝えてくれ。迎撃部隊の編成はお前に任せる。」

 

「はっ。」

 

 言伝を受け、即座に補佐官は部屋から出ていく。そして、廊下を小走りで進みながら、トーラムを呼び出す。西の都に迅速に兵を運ぶ為には、彼の存在が不可欠だからだ。

 

補佐官が出て行った王室には静寂が訪れる。

静寂とは人に考える暇を与えてしまうものだ。たとえそれが無意味な思考であっても。

そしてそれは王においても同様だった

 

(ついに西の都か。しかし、東の都と南の都ときて、なぜ西の都なのだ?敵は王国を潰す程度の力はあるはず。なぜわざわざ西の都に?何か理由があるのか?ならばなぜ...)

 

思考すればするほど湧き出る疑問の海の中で、王が息継ぎを行えるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。

 

〜西の海岸線〜

 

王国最大の商業都市、ウェスタゥンスタット。世界一の人口を誇るその都市は今まさに壊滅の危機に瀕していた。

 

建物の半数は瓦礫と化し、今なお続く砲撃により次々と破壊されている。

守備兵は魔法も届かない位置からの砲撃により殆どが死に、残った兵士も、その瞳を恐怖の色に染めながら、ただ水平線を見つめる事しかできなかった。

 

そしてその視線の先にあるのは、巨大な砲を両碗部に付けた魔導兵器のような銀色のモノ。

 

そのモノは、ゆっくりと歩を進めながら、両腕を上空に向け砲撃を行っている。砲から放たれた紫色の光の塊は、尾を引きながらゆっくりと放物線状に飛んでいき、着弾し、爆発する。

その破壊力は着弾点に3mほどのクレーターが出来るほど。人がまともにくらえば吹き飛んでしまうだろう。

 

それでも残った僅かな兵が逃亡しなかったのは、街を守るという使命感からだろうか。それとも、恐怖により足が動かないからなのか。

どちらにせよ、止まったヒトなど、そのモノにとっては的でしかなかった。

 

 

一方、避難している数千人の民と護衛の数百人の兵士達は、街から十キロ程離れた地点に居り、王都に向かい進んでいた。

民の中には家族を失った者。恋人を失った者など様々だが、それでも皆諦めず生きようとしている。そしてその気持ちは統率者が汲んでやらなければならない。

統率者、つまり西の都を執り仕切っていた貴族の男だ。

自らも妻子を失った事を表にも出さず、皆に激励の言葉を掛けたり、道中にあったいくつかの町や村に避難を促しながら、王都へと向かう。

 

ふと夏の暑さでゆらぐ地平線に目を向けると、何かが見える。

何かがこちらに向かって来ている。

鳥だろうか。それにしては大きい。魔導兵器か。しかし、あんな形の物は見たことがない。であれば飛竜かもしれない。だんだんと近づき大きくなっていくその影に、兵士達が警戒し始める。

 

しかし予想とは裏腹に、実際飛んで来た物は竜車であった。

竜車が空を飛んでいる。乗り手も居ない。ただ真っ直ぐ西の都へ向かっている。

民衆はそれがトーラムの部隊であることにようやく気付き、喜びと驚きが入り混じったような声が上がる。

それに混じって貴族の男の口からも安堵の息が漏れる。

「あぁ、これで西の都は救われた。」

 

通り過ぎて行く竜車を少しの間眺めていたが、目的を思い出し再び進み始める。

 

 

それからしばらく行進を続けていると、今度は地響きのような音がどこからか聞こえて来る。

いや、間違いなく地が小さく振動している。

民衆もそれに気付き始め、ざわつき始める。しかし、

「王国の地上部隊が近付いて来てるんじゃないのか?トーラム様は飛んでいたから早かっただけで、遅れて他の兵士達が来たのかもしれないぞ。」

民衆の1人が言い出す。他の民衆の不安を消そうとしているのだろう。

しかし溢れかかった不安を隠しきれず、声が少し震えている。

それでも怯えきった他の者効果があったのか、安心したような声やため息が伝播していく。

 

そんな中、貴族の男は胸騒ぎを覚えていた。地響きが仮に部隊の行進による物だったとしても、地響きが始まってしばらく経った今でも地平線から兵が見えて来ないのは不自然だ。それに、これは感覚的な物だが、行進による揺れというよりは、もっと底から響くような揺れと音のように感じたのだ。

 

そして、そういう嫌な予感ほど当たるものだ。

 

 

突如、前方の地面が割れる。いや、前方だけではない。人々の周りを囲うように割れているようだ。

そしてその割れ目から、肌色をした八本脚の謎の怪物が次々と湧き出してくる。

脚だけでなく眼も八つあり、言うまでもない巨躯と、その口にかなり遠くから見えるほどの巨大な二本の牙が備えている。

その怪物は大きな跳躍に僅かな歩行を交えながら近付いて来る。

 

湧き出した怪物は瞬く間に辺りを覆い、もはや退路は無くなっていた。

民衆は驚き怯えて、様々な声色の悲鳴が辺りに響き渡る。

しかしその状況で貴族の男は、彼自身が驚く程に冷静であった。

 

そうか、今から死ぬのか。という諦めに近いような感情が貴族の男の体を包み、周りの喧騒を遮る。

男は静寂に煽られ、自らの生を振り返る。

 

想えば短い人生であった。大貴族の長男として生まれ、ただひたすらに父の様な人になりたいと生きてきて、気付けば領主になっていた。

周りの期待と不安に押しつぶされそうになりながらもなんとかやってきたが、それももう終わりだ。

嗚呼、父上。私は貴方のようにはなれなかった。

私は全てを失い、この悔しさと無力感の中死ぬのだな...。

 

そうして目を瞑り、その時を待つ。

 

 

民衆の悲鳴と共に地鳴りが身体に響いてくる。竜車の地竜達も大きく甲高い声を上げている。

彼らは助けを求めているのだろうか。一体誰に?

この状況で助けに来れる者など何処にもいない。仮に助けに来たところであの怪物に殺されてしまうだろう。

では誰に助けを求めているのだろうか。神か?もしくは助かろうとする己自身にか?

 

未だ助かろうとする者たちの声を聞き、哀れみのような、嘲りのような不可思議な感情に包まれる。

 

(彼らはまだ、生きようとしているのだな...)

 

 

そこで男ははっとする。

私は一体何を考えているんだ?

領地は滅び、財も失い、家族すら失った。しかしまだ私には失っていないモノがあるじゃないか。

まだここに私の命は在る。

まだここに守るべき民が在る。

 

であれば今私がすべき事は一つ。

この私の命に替えても、民を生かす事だ!

 

あぁ、そうだ。私達は生きたいのだ!

 

覚悟を決めてからは早かった。すぐに目を開け、団長に指示する。

「西部方面軍団長!貴君に命ずる!」

 

突如現れた怪物に言葉を失っていた団長だが、貴族の男の呼ぶ声を聞きすぐさま体を向け、指示を待つ体勢を取る。

 

それを確認し、貴族の男は続ける。

「この場にいる全ての人を、命を、完全に守り抜け!」

それは誰が聞いても不可能だと言わざるを得ないような命令。この状況で人々を守り抜く事は無理だと、誰もが言うだろう。

 

しかし軍団長は

「はっ!必ずやお守り致しましょう!」

 

必ずと言ってみせた。

正直そこまで自信はない。だが、自らが軍団長であると言う使命感、そしてある程度の考えの上で言い切った。

 

包囲状態で死者を出さずに突破する方法は一つしかない。

包囲の一点に魔力を投射し、穴を開け、その穴を維持したまま包囲を抜ける事だ。

 

口だけなら簡単だが、実際維持し続けるのは難しい。知能のある人相手ならばの話だが。

なにしろ今回は人相手では無い。

相手は知能の無い怪物だ。包囲を幾重にもしないし、包囲の穴を埋めようともしないだろう。ただ向かってくるのみならやりようはある。

 

まず究極魔法である程度の道を開け、その後制圧用の小規模魔力投射を連続して行い、道を開き続ける。兵士が民衆の前後左右を囲いながら包囲を抜け出し、最後にもう一度後方に赤の究極魔法で壁を作る。

その後も通常魔法を使えば足止めはできるだろう。

 

「これで行こう」

軍団長は心を決める。これで死者が出た場合は、全て私の責任であると。

 

 

 

 

覚悟を決めた軍団長。そしてその他の兵士と民衆。生きようとする彼らの元に、大きないくつもの影が地を揺らしながら迫っていた。

 




遅れ&あんまフォーリナー出なくてすみません。
次もこんな感じの遅さになりそうです。

最後に私から質問なのですが、あまり後書きなどで感情を出さない方が良いでしょうか。出来れば教えてくださると助かります。もちろん個人の問題なので多いからどうこうという話ではないですが。


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