とある科学の改造化物(リ・クリエイトウォリアー) (ペ家)
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学園都市

「う、う〜ん…ふわぁ…」火神零。今日から「帝原大学付属中学」に転入する学園都市に引っ越してきた中学2年生だ。

 

 

 

「って…やばぁっ!時間なっ!」今は午前8時30分。今日から通う帝原中学は9時に登校しなくては行けないのだ。「転校初日から遅刻はやべえよ!母さん!朝ごはん何!?」「はぁ…だからあれほど昨日寝ときなさいって言ったのに。トースト焼いたから行きながら食いなさい。ほいっ。」「食べ物を投げんな!行ってきま〜す!!」

 

 

 

零は家の玄関を出ると手に持ったトーストを咥え宙に浮いた。彼の能力は「念飛行(パイロフライ)」。念能力で自らを浮かせ自由自在に動く能力だ。まだ能力開発が始まったばかりの能力でレベル4である「念力飛行(ネシスフライ)」までしか存在しない。

 

 

 

念力飛行は念飛行の能力に加え様々な物体に念力を送り自在に動かしたり出来る。「急げぇ〜!」零は車を追い越すほどのスピードで学校に向かった。「ふぃ〜…!ギリセーフっ!」「セーフじゃないでしょうが。何で飛びながら教室に入ってくるのよ。」「へへっ!ごめんごめん!」

 

 

零を軽く叱ったのは凍浄佳奈(とうじょうかな)。彼女は零の小学校の頃の同級生で零の学園都市における唯一の知人だ。「あんたねぇ…本当に小学校の頃から変わらないのね。」「別に変わる必要ねえだろ。父さんも言ってたんだがな。『変わらないことは何も得られない代わりに何も失わない』ってな。」「それさ…多分あんたのお父さんは失うことを恐れずにどんどん変わってけって言いたかったんだと思うけど…」「聞いたのは俺なんだから。別にどう解釈しようと勝手だろ。」「そういうものなの…?私には分からないわ…」キーンコーンカーンコーン!「何か…向こうの学校のチャイムより音が綺麗だな。」「そうね。ほら。座っときなさい。どうせあんたはまたすぐ立つだろうけど。」零は佳奈に促され空いている席に座った。

 

 

 

 

この学校は席は自由に座るものなのだ。自分の席というものは存在せずその時の気分や授業ごとに席を変えることが出来る。「はいは〜い。授業始めますよ。あっ。君は転校生の子だね?最初に自己紹介でもしてもらおうか。」零は先生に指名され教壇の前に来た。「火神零です。学園都市に来る前は神奈川の湘南にいました。よろしくお願いします。」「ありがとう。その辺の空いてる席に座っていいよ。今日は能力開発日だからね〜!ホームルーム終わったら検査場に行くように〜!」「検査場の場所はあんたじゃわかんないでしょ。仕方ないから私が連れてってあげるわ。」「別にお願いしたわけじゃないんだけどな。まぁ…助かるよ。」

 

 

 

零と佳奈は他の生徒に続いて検査場に向かった。「出席番号で分かれるみたいだけど…ええっ!?何で!?」「どしたの…?」「何であんたと私が同じ検査場なのよ!ありえないわ!」「…酷ぇ…」「なに!?何か言った!?」「いえ…何も…」「あっそ!じゃあ行くわよ!」「へいへ〜い。」2人が検査場に入るとそこはとてつもなく広い草原だった。

 

 

 

「…!?何で屋内にこんなのが…」「ここは屋外ですよ。さっきのドアが外と内を繋いでいたんです。」「転送装置ってとこね。私たちはそれをくぐってきたってわけ。」「そっか…ってことはここなら思う存分能力を使っていいってことなんだよな。」「そうですね。僕らもその方が助かりますよ。研究員ですから。」

 

 

 

ドアを開けた時に2人に話しかけてきた人は研究員。能力開発の担当だ。「それじゃ…まずは君からだね。名前は?」「火神零です。」「火神くん…だね。よし!いいよ!それじゃこれをつけて…」零は頭にヘッドギアのようなものをつけられた。「…?これは…」「能力発動時の脳波を調べるものだよ。気にしないで。」「分かりました。じゃあ…いいですか?」「うん。どうぞ!」「すぅ〜…ふぅ〜…」

 

 

 

零は1つ深呼吸をし、自らの身体を浮かした。そのまま空高く飛び上がり自由自在に飛び回る。「念飛行か…近年能力開発されたばかりだというのにもう使っている子がいるとは…」「零の能力…そんなに珍しいんですか?」「そうだね。彼の持っている念飛行はつい数年前に開発されたばかりなんだよ。希少価値もあるしまずレベル5がいないってことによって研究の幅も広がるからね。念能力《サイコキネシス》なんかは持ってる人も少なからずいるんだけどね。やっぱり掛け合わせの能力は貴重だよ。」「そうなんですね…零はそんなふうにいつも振る舞わないから…」「発見されたのは数年前だけど…もちろん生まれつきってことも考えられるからね。ごく稀なんだけどね、両親の能力を掛け合わせた子供が産まれることがあるんだ。彼もその一例なのかもしれないね。」「…」「おっ。もうそろそろ終わりかな。火神くん〜!降りてきていいよ!もう終わりだ!」「ほいほ〜い!ぃよっと。」

 

 

 

「次は凍浄さんだね。これをつけてっと…はい!いいよ!」佳奈は一度目を瞑り、目を開けると「はぁっ!」一気にエネルギーを放出した。周りの草が一瞬で消滅し緑が沢山あった草原は荒れ果てた荒野へと姿を変えた。「おぉ…破壊者《ブレイカー》か…レベルは…4!?凄いねぇ…」「前の測定では3だったんですけどね…いつの間にかレベル4…なんか嬉しいような悲しいような…」「いいじゃん!レベル4!俺なんかまだレベル3だぜ!?」「そうね。これでまだまだあんたには抜かされずに済むわ。」「へっ!言ってろ!すぐに俺もレベル4になってやる!」「半径…200m!?そんな範囲まで能力が行き届くのかい!?」「そうみたいですね…」「ひぇぇ…これで測定は終わりだよ。2人ともお疲れ様。」「お疲れ様でした〜!」「ありがとうございました。」

 

 

 

 

 

 

零と佳奈は検査場を後にした。「いや〜っ…すげえな…佳奈…」「そう?まぁうちの学校にはレベル5がいないから私が最高レベルの仲間入り出来たのは嬉しいけど…」「さっきはあんな風に強がったけどさ…やっぱ佳奈には敵わんよな…いつも佳奈は俺の先を行っちゃう…小学校の時もそうだったじゃんか…」「そうだったっけ?じゃあ何?私が零と一緒に歩けばいいって訳?」「べ…別にそ〜ゆ〜こと言ってるんじゃなくて!確かに佳奈と一緒に居れるのは嬉しいよ…でも……。って俺…何言ってんだろ!ごめんな!変なこと言って。忘れてくれ!」「忘れるって…何で自分で騒いで自己完結しちゃってるのよ。分かるように説明しなさいよ。」「自分でも何言いたいかわかんなくなってきた…何か言ってて胸もギューってなるし…よくわかんねぇな…」「そ、そうなのね…」

 

 

 

ドーン!!その時床を揺らすほどの大きな音が校庭の方から聞こえた。「なっ!何だよ今の音!?」「わかんないけど…!行ってみましょうか!」「あぁ!」2人が校庭に向かうと1人の少女と2人組の男が校庭で睨み合っているところだった。「って…何だあれ!」「えっ…あの女の子…風紀委員《ジャッジメント》の腕章してない…?」「ってことは…ありゃ犯罪者かよ…!」2人組の男は1人が細身、もう1人は巨漢。細身の男が能力で少女の動きを止め、そこに巨漢の男が自らの腕をさらに大きくし、少女に殴りかかる。

 

 

 

 

少女は間一髪のところで瞬間移動。しかし動きはまだ止められたままだった。「瞬間移動のジャッジメント…常盤台の…?」「知ってるのか?佳奈。」「うん。常盤台にはジャッジメントの女の子がいて、その子はいつも第3位の超電磁砲と一緒にいるレベル4の瞬間移動の持ち主だって…確か名前は…白井…黒子さん…だった気が…」「それがあの子だってのか…」校庭では先程と同じ展開が繰り広げられていたが、黒子の挙動が違った。瞬間移動出来ずに巨漢の男に打撃を喰らっているのだ。

 

 

 

 

「ちっ…!アイツ…なんて野郎だ!」「ダメよ!零!ジャッジメントの戦闘に一般市民が介入するのは禁じられてる!」「俺は一般市民じゃねえ!」「それはお父さんでしょ!?」零の父親はアンチスキルという学園都市の治安維持部隊の部隊長を務めているのだ。「俺も…今はアンチスキルだ!」「ダメっ!その力はダメだって言われてるでしょ!?ダメなの!」「ごめん!佳奈!ヤバくなったら破壊者で止めてくれ!頼む!」「ほんと他人任せなんだから!今日だけよ!」「サンキュ!」零は校舎の裏の方に駆け出して行った。

 

 

 

 

零は過去にアンチスキルである父親の仕事について行った時に一度犯罪者の能力を受け、致命傷を負ってしまったことがある。その時彼はその犯罪者の持っていた謎の臓器を使って生き延びることが出来たのだがその後彼は食人衝動に悩まされることになった。学園都市での研究の結果、使われた臓器は大昔に地球で人類を捕食していた「アマゾン」という種族の臓器だったことが判明。食人衝動を抑えつつアマゾンの持つ強力な身体能力を生かしたアーマースーツを開発した。

 

 

 

暴走の危険もあるため彼は基本的にその力を使うことを禁じられているが緊急時にはこの力を使い、窮地を何度か脱してきたのだ。「はぁ…ごめんね、父さん。…」

 

 

 

零は自らの腰にベルトを巻き、手元のインジェクターを首に刺す。インジェクターに自分体液を吸い込み別のインジェクターと同時にベルトの左右に差し込んだ。

 

 

 

 

「ふぅ………………アマゾン!!!」『ZERO,GANMA』零の姿が金属質のスーツに覆われ姿が豹変する。「よし…成功したな…行くぜっ!」零は跳躍し校舎を跳び越えて校庭に降り立った。



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