とある科学の領域支配《テリトリー》 (竜野 ニア )
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1話 うるさい世界
「……うるさい」
外からの騒音により、わたしは目覚めた。
なんの音だろうか。まあどうせたいした事ではない。騒音がするのはいつものことだ。普通の感覚では騒音にもならないのだろうが、今のわたしにはうるさすぎる。
「……あたまいたい」
頭痛がしてきたのでベットの横に置いてあるヘッドホンを充電コードを抜いて被り、ノイズキャンセリングをオンにする。
いつもならこれで静かになるのだが、一向にその気配が無い。
「……こわれた?」
だとしたらかなりまずい。そもそもわたしはこれが無ければまともに外も歩けない。一応我慢出来ないこともないのだが正直かなりキツい。
時計を視ると現在昼の12時過ぎ、夏休みなので問題無いが、夏の外はセミまでいるのでさらにうるさい。同居人も現在実家に帰省中でいない。
「…………………買いに行くか」
仕方がないので外に出る。めんどくさい。あたまいたい。
とりあえず外に出るなら着替えねば。ワンピース程ではないが長めの白いTシャツの下に黒のショートパンツを履く。そして腰下まである白と黒が混ざり合って灰色に見える髪を中に入れて上から少し大きめのサイズのせいで袖が余っている黒いパーカーを着る。裾が膝の上くらいまである。そして腰に黒いポーチを着けて準備完了。
部屋の中を確認するといつもの飴や鎮痛剤が切れかけている事に気付いた。ここ数日外に出ていないからだろう。
玄関に付き、鏡を見るとそこには完全に光の失せた黒い瞳が映っている。
「いってきます」
フードを被り、扉を開けて外に出るとさらに激しくなった騒音が耳に突き刺さり、あまりの痛みに視界が滲む。
「──いっづ!!」
一応鎮痛剤を飲んでおいたのだが、そんなものを無視して痛みが脳に突き刺さる。早くヘッドホンを着けないと冗談抜きで死にそう。実際以前何度か倒れた。
「……はぁ」
ふらふらとした足取りで家電量販店になんとかたどり着いたわたしは前と同じ黒いヘッドホンを購入し、持ってきておいたモバイルバッテリーで充電しながらヘッドホンを装着し、安堵の溜息を零していた。ようやく少しは静かになった。鎮痛剤はきれ、頭痛はまだしているがまだましだろう。ようやく周りの暑さに気が回るようになった。
「次はドラッグストアか」
飴と鎮痛剤を買うためにドラッグストアにへと足を向ける。
暑さと頭痛と戦いながらドラッグストアへ向かう道中、現在わたしは少し面倒なことになっていた。
「おうおう嬢ちゃんちょっと俺達と遊ばない?」
「へっへっへっ、俺達がいーとこ連れてってやるぜ?」
──うるさい。
数は五人、こんな道のど真ん中でこいつら馬鹿なんだろうか。まあ馬鹿なんだろうただでさえ能力者蔓延るこの学園都市では治安維持組織のジャッジメントやらアンチスキルとかいう部隊がうろうろしている。そんな中実にわかりやすい迷惑行為、すぐにしょっぴかれるだろうが、今のわたしはこの暑さと頭痛と周りのうるささでイライラしている。自分で処理した方が早い。
男の一人がわたしの腕を強引に掴んだところで腕を捻り、がら空きの脇腹に蹴りを叩き込む。
「ぐっ、いってえなぁ!!」
知るか、わたしもあたまいたいんだ我慢しろ。
わたしと男達を囲むように結界を張り、腕をぞんざいに払う。すると、空間を揺るがす衝撃波により俺達の手足は本来曲がってはいけない方に曲がり、足元で呻き声をあげている。うるさい。
少しすっきりしたので本来の目的通りドラッグストアに向かおうとすると、
「お待ちなさいな。ジャッジメントですの」
後ろから誰か近づいて来ているのは気付いていたが、まさか本当にジャッジメントだったとは。
というかこいつの声キンキンしてうるさい。
「……帰っていいですか?」
もう早く鎮痛剤と飴買って帰りたい。
「駄目に決まってますの! 正当防衛とはいえやりすぎですの! 少し支部までご同行願いますの」
過剰防衛? そんな概念は存在しない。つまりわたしは悪くない。帰ろう。
そそくさと立ち去ろうとすると先程のキンキンする声のやつが目の前に現れた。
「テレポーターか。めんどくさい」
わたしの能力なら逃げることはできるが、あたまがいたいのであまり使いたくない。みんな頭が痛い時に大学受験の勉強とかしたくないだろう? つまり、
「……わかった。急いでるから早く終わらせてくれるなら大人しくついてく。でも時間掛かるなら全力で逃げる」
わたしは早くお昼寝したいのだ。
「そこまでお時間は取らせませんわ。ただ、わたくしから逃げられるとお思いで?」
「できるよ。確実に」
あたりまえだ。たかがレベル4のテレポーター程度には捕まらない。むしろ逃げるだけならこの学園都市の第一位からも逃げきれる。
「!! ……分かりましたわ。それではこちらに」
キンキンするやつの言う通りについて行く。早く帰りたい。
ジャッジメントの支部だという所に付き、現在キンキンするやつから尋問を受けていた。
「とりあえず、わたくしの名前は
「
名は体を表すというのはこういうことだろうか。我ながらピッタリな名前である。昔から灰色だったわけではないが。
「白灰さんですのね。いまバンクと照合しますので少々お待ちを」
「んで、しらこはわたしに何の用? あたまいたいし帰りたいんだけど」
「しらこ!?」
「黒いしらこって言ったなかった?」
「違いますの!! 白井黒子ですの!!」
「んで、白黒は何の用?」
「白黒……まぁいいですの。それより貴方はあの男達にあれだけの怪我を負わせておいてただで帰れるとでも?」
「からんでくんのが悪いんじゃない?」
「それにしてもやりすぎですの!」
「えー」
どうやらずいぶんと正義感が強い人種らしい。めんどくさいタイプだ。
「あ、出ましたわ。音無灰夜、能力はレベル4の『
「? どうしたのさ」
「16歳!? 高一!? その見た目で!?」
「めっちゃ失礼なこと言ったね」
ちなみにわたしの身長は150ちょい。童顔なせいもあってよく中学生と間違われる。むしろ小学生とも間違われる。しかし立派な高校生である。断じて中学生などではないし、ましてや小学生でもない。
というかそんなことより……
「あたまいたいから叫ばないで」
「あ、ごめんなさいですの……というか貴方、ヘッドホン着けてるではありませんの。学園都市のヘッドホンはノイズキャンセル100パーセントですのよ? どうやって会話してますの?」
「生まれつき耳が良くて」
「そんなレベルじゃ……まあいいですの照合も完了しましたし、今日はもう帰ってよろしいですわよ」
「あ、そなの? じゃあばいばい」
やっと帰れる。あ、ドラッグストアも行かなきゃな。
「……やっと終わった」
結局あの後ドラッグストアの鎮痛剤の在庫が切れており、さらに遠い所まで来ていた。能力の使用に躊躇いは無かった。とりあえず買ったばかりの鎮痛剤と飴で抑えているものの、きれた瞬間に激痛がくるだろう。はよ帰ってねよ。
「あら、灰夜じゃない」
今日はなにかと邪魔がはいるな。
聞き覚えのある声に振り返ってみるとそこには一人の少女がいた。
「あ、御坂」
彼女の名前は
というかこいつの周りはいつもうるさいな。電撃使いは常にからだから微弱な電磁波を発しているらしく、その中でも最強のこいつの周りは常にキーンという音がしている。この電磁波のせいで動物に嫌われるらしく、よく猫に逃げられるらしい。そこだけは本気で同情する。
「どうしたのよこんな所で」
「ヤクが切れた」
「言い方を考えなさい。というかやっぱりあんた見たら落ち着くわー」
「どこを見て言った?」
この小さいからだのせいかなぜかこいつにはお仲間扱いされる。ちなみにわたしは狂気的とも言えるこいつと違ってそこまで気にしていない。だってあんな肉の塊いるか? 絶対邪魔だって。
「んな気にすることもないと思うけど? 需要あるかもしんないじゃん」
「これで需要があるやつは絶対ロクなやつじゃないわよ!」
「わたし見てもう一回言ってみて?」
「………」
御坂が微妙な顔で黙った。ろりっこぼでぃーなめんじゃねぇ。
「大丈夫、あんたもいつか大きくなるわよ。でも私を置いて行かないでね?」
べつに気にしてないって言ってんのになぜこいつは人の話を聞かないのだろうか。優しい声で言うな。その同志を見るような目をやめろ。しかもしっかり保険をかけてきやがった。
そういえばさっきのキンキン白黒も御坂と同じような制服を着ていたような? まあ、いっか。
というか、
「御坂なんかつかれてる?」
「え、いや、そんなことないと思うけど」
「音がおかしかった。お祓い行った方がいいよ」
「つかれてるってそっち!? この科学の街で!?」
なにやら怪しいが、そういうことにしておこう。この街で薮をつついて出てくるのは蛇なんて可愛らしいものではなく、人間の闇そのものである。
てか音ってなによ。とかつぶやいていたが、そんなの体内の音に決まってるでしょ?
疲れが溜まれば胃腸や肝臓等に多少は不調がでるのはあたりまえ。
「じゃ、わたし帰って寝るから」
「え、ああ、うん。またね」
「……なんかあるなら相談くらいのるよ?」
「え?」
それだけ言ってそそくさとその場を去る。どうせ今は話す気はなさそうなのでここにいる意味も無い。
そんなことより鎮痛剤の副作用で眠気がやばい。
──今夜は静かだといいなぁ。
最近更新が遅かったのはこれを衝動的に書いていたからです
すみません
設定はちゃんと考えてあるのでご安心を
ところであらすじ書いてて思ったんですけどうちの主人公自分勝手なやつ多くないですか?
8/16 表現を少し訂正しました
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2話 遭遇
「……うるさい」
なんでいつも寝起き早々同じセリフを吐かにゃならんのだ。わたしの願いは見事に裏切られ、現在外ではバンバンドカンガシャンと騒音が鳴り響いているこんな堂々と暴れられるということは余程大きな組織の実験なのだろう。というか最後はコンテナが落ちる音だったんだが?
「……いってみよ」
騒音と再来した頭痛で目が覚めた。いい加減毎晩騒ぐのはやめてほしい。見るだけならわたしの能力ならここからでもできるが、散歩がてら行ってみよう。
着替えてヘッドホンとポーチを着けて音のした方に向かうと、実験が終わったのが騒音はなくなったが、騒音の元凶に出会った。
「オイオイ子供がこんな時間になにしてんだァ?」
「睡眠妨害の犯人探しと散歩」
おもしろ……面倒なやつに出会った。この白黒のTシャツに白髪に赤い目の男はこの学園都市の第一位、アクセラレータ。能力もそのまま『
「あァ? ンなこと俺が知るかよ。さっさと家に帰れやテリトリーさんよォ」
「むぅ、テリトリーさんとかじゃなく昔みたいにマイシスターと──」
「呼んだことねェよ!!」
「ずいぶんとイライラしてるね。さすがに人間一万人も殺したら気も狂うか」
「うっせェなァ、ただのクローンだろォが。人間じゃねぇよ」
「わたしの定義ではパッと見人間なら人間なんで」
こちらは一応友好的に接しているのだがどうにもあたりが強い。この人おもしろいから結構好きなのに。髪色が近いので親近感がある。むしろお兄ちゃんとでも呼んでみたい。昔寝ぼけて言ったら殺されかけた。ひどい。
昔はあんなに優しかったのに……まあ嘘だが。というか優しくされた記憶もない。今も昔もわたしが一方的に懐いているだけである。
「うっせェ! さっさと失せろぶっ殺されてえのか!!」
やはりかなりイライラしているようである。いやいつもこんな感じか? でもまあ、
「おもしろいこと言うね。互いに消耗していくだけの拷問がしたいの?」
戦ったところでこちらの攻撃は相手に届かないし、相手の攻撃もこちらに届かないという戦闘ですらないキャッチボールをするのはわたしは嫌である。
実際一度戦った事があるが、あれはきつかった。次の日からしばらくベットから起き上がる事もできなかった。一応奥の手はあるが、わたしはあいつ殺す気無いし。
「チッ、まァいい。てめぇはさっさと帰れ。俺ァ忙しいんだよ」
「……わかった。またね、お兄ちゃん」
「誰がだ! ……じゃあな」
もう少し話したかったがまあいいだろう。お互いに簡単に死ぬような器じゃないので挨拶はまたねである。
あれからアクセラレータに言われた通りまっすぐ家に帰って来たわたしは少し考え事をしていた。
「『レベル6シフト計画』だっけ? 確か第三位のクローン二万人を二万パターンの戦場で殺すことで第一位をレベル6にするっていう話だっけ?」
そんなことできるのだろうか。そもそもレベル6って何? レベル5で十分化け物だってのにそれ以上はいらんでしょ。
おそらく御坂の悩み事もこれだろう。自分のクローンが殺されているとなれば放っておけないのがあいつのいいところであり、この街では悪いところだ。
「レベル6かぁ……ちょっと見てみたいかも」
ぶっちゃけわたしはどこで誰が死のうとどうでもいい。クローンだからとかではなく小さなお子様からお年寄りまで一切興味が無い。助けるとしても気分だ。まあ今までそんな事無かったが。
そんなことを考えながら眠りにつく。明日こそは世界が静かであることを願いながら。
次の日の昼間、もちろん世界が静かなわけもなく、いつも通りセミも人もそれ以外もうるさい。
現在わたしは公園に来ていた。たまに自販機にハイキックする中学生が名物(わたし主観)の公園である。
なぜわざわざ高層マンション最上階かつ防音対策ばっちりなおかげで外に比べれば比較的静かな自宅から出てきたかというと、食料が尽きていたのである。さらにその途中で体力が尽きた。
やはり少し引きこもり過ぎたのだろうか。思い返してみれば昨日はしんどかったので何も食べていない。べつに料理ができないわけではない。普通にそれなりのものを作れる。しかし同居人がいないと作るどころか食べるのすらめんどくさくなるのだ。なので最近は省エネのために一日のほとんどの時間を寝て過ごしている。
ちなみになぜ学生のくせに高層マンションなどに住んでいるかというと、昔学生寮で死にかけていたところを助けてくれた人がいたのである。
正しくはそういう取り引きがあっただけなのだが。なにをしたかって? どっかの組織の壊滅だよ。もうなんて組織だったかも覚えていない。そこそこ大きな組織だったが、百数十人やそこら殺しただけで今のまだ静かな生活が手に入ったのだから安いものだ。あれがなければ今頃発狂死していた。数が数だけにちょっと面倒だったが。
そんなことを考えながらベンチに腰掛けぼーっと空を眺める。しんどいので休みたいが、いつまでもここにいると体力がごりごり削られていく。でも動きたくない。
そんなことを延々と考えていると、よく知る人影が視界を横切った。
「ん? ……御坂?」
思わずつぶやくと、その声はその人影にも届いたようで、
「はい、ミサカはミサカである。と、ミサカはあなたのつぶやきに同意します」
「………いや違うよね?」
たしかに見た目は御坂そっくりだが、音が微妙に違う。いつものキーンがいつも以上に小さくなっている。ちょうど普通のレベル3くらいの電撃使い程度だろうか。
「いえ、ミサカはミサカです。と、ミサカはあなたの間違いを訂正します」
「……あぁ、なるほど」
おそらく最近噂の第三位のクローンだろう。シスターズだっけ? たしかオリジナルの1パーセント程の電力しか出せないはずなのでレベル3ならだいたいそんなものだろう。そう考えるとレベル5って本当に化け物だな。
「いったいなにがなるほどなのか。と、ミサカはなにやら納得した顔のあなたが気になり首を傾げます」
傾げてないよ? さっきから口以外一切動いてないよね?
シスターズならシリアルナンバーがあるはずだが、こいつのこともアクセラレータが何人殺したかも特に興味はない。なら言う必要もないだろう。
そんなことを思っていると、ポケットの中にいれてあったケータイが震え始める。
「ちょっとまってね」
ミサカから少し離れて折りたたみ式のケータイを取り出し、画面も見ずに通話ボタンを押す。
『もしもし?』
「あぁ、おかあさんか。久しぶり」
『そうね。久しぶり』
「んで、わざわざ電話かけてきたってことはなんか用?」
『ええ、定期検診兼ちょっとした改造よ。あと藤原が報告書がまだだとか騒いでたわ』
「……りょーかい。すぐいく」
『ええ、まってるわ』
それだけ言うとブツリと通話が切られた。
「はぁ、ごめん、ちょっと用事ができた」
ため息を吐いてからミサカの方に向き直り、そう言う。
「いえ、大丈夫ですよ。と、ミサカは少し残念そうにあなたに言います」
わたし自身もう少しこのミサカと話してみたい気持ちもあったのだが仕方ない。少し考えてから近くの自販機の方に向き直り、手をかざすと手の中に缶ジュースが現れる。それをミサカの方に放り、
「それじゃ、ばいばい」
それだけ言うと近くのビルの屋上の方に向き直り、次の瞬間わたしはそのビルの屋上にいた。後ろには先程までミサカと話していた公園がある。
あれから何度か同じ事を繰り返し、現在わたしはとあるビルの地下にいた。ここは一応シェルターのような構造になっている。
そこには高校生の平均くらいの体格の黒髪の男がいた。
「ん? おお、テリトリーか。さっさと報告書出せ」
「昼夜逆転生活をおくっていたわたしを昼間に呼び出して最初の一言がそれか」
「あ? 知るかよ。それはお前の勝手だろ」
ちなみに正しくは昼夜逆転生活ではない。最近寝付きが悪く、昼も夜も浅い睡眠を繰り返していただけである。
『おお〜灰夜ちゃんお久しぶりですぅ〜』
そんな声を発したのは周囲大量にある画面の一つの中にいる少し緑の入った青髪ツインテールの少女である。
「きりちゃん久しぶり」
この少女の本名は
元は電撃使いでその中でも能力を使ったコンピューター操作が得意だったのだが、その後の能力開発の過程でどこかの研究者が「こいつの脳、完全に機械に繋げればよくね?」とか言い出したのがきっかけでこうなったらしい。この娘の本体はこのシェルターの中にあるカプセルの中で機械に繋がれている。現在レベルは4。
滅多にからだに戻ることは無く、灰夜が本体と話したのは以前前のアジトから今のシェルターに移動してくる際に灰夜が運んできた時だけである。
ちなみに電脳化の際はなぜかテンションが上がるらしく、こんなにうざ……元気な性格だが、顔は同じでも本体はもっと暗い感じである。もちろん青髪ではなく黒髪である。
ちなみにさっき灰夜と話していたのは藤原。下の名前は灰夜自身知らない、もとい興味が無い。この組織の、言ってしまえば雑用である。結構なんでも出来る。レベルは知らない。能力者かどうかも分からない。
「えーとなんだっけ? ああ、ふじわら〜。はい、これ報告書」
「お前はお願いしますも言えんのか。あと歳上にはさんくらいつけろ」
「サン・ふじわら。あとおねがいねー」
「そこじゃない。いったい俺は
「名前的に芸人かな?」
『ブフッ』
「そこ笑ってんじゃねぇ!」
思わず吹き出したきりちゃんにサン・ふじわらが怒鳴っている。相変わらずこいつで遊ぶのは飽きない。
そんなことを考えていると、
「ずいぶんと楽しそうね」
「「『!!』」」
そこにいたのは黒髪を肩口で切りそろえ、白衣を着込んだどこか優しい雰囲気のある女である。
その女はこの組織のリーダーであり、灰夜の能力開発の担当者でもある。組織内では人それぞれだが主に博士と呼ばれている。
「あ、おかあさん」
「さっそくだけど灰夜、奥に来てもらうわよ」
「わかった。それじゃ、二人ともまたね」
二人にそれだけ言っておかあさんの後ろに続く。
さてと、次に目を覚ますのは何日後になることやら……
一応ストーリーは考えてあるものの他の作品に比べてモチベが低めですね……
まあ、最近はそもそも他の作品もあんまり書けて無いんですけどぼちぼちペースを戻していく予定ですので気長にお待ちください
それでは他作品も含めて
灰「次回もお楽しみに!!」
……セリフ取られた
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3話 血濡れの灰被り姫
「あたまいたいです……」
久しぶりに寝起きうるさい以外のセリフですね。全く嬉しくありません。というか……
「です?」
わたしこんなしゃべりかたでしたっけ? いや、そういえば昔はそんな感じだった気がしますけど……。
「あら、起きたのね」
あ、この声はおかあさんですね。どういうことか説明してもらいますよ?
「ちょっとおかあさん、これはどういう──わわっ!?」
……おそらく寝ていたところから落ちましたね。いたいです。
「はぁ、能力も起動せずに動いたの? ……思った以上に影響は出るのかもしれないわね……」
見えませんけどおかあさんの呆れた視線がいたいです。まさか能力も起動せずに動くとは……我ながら寝ぼけてるのかあほなのか。とりあえず能力起動しますか。
って、そんなことはどうでもいいです。そんなことより、
「お母さん、この口調どういうことですか!?」
「………? あぁ、口調にまで影響が出てるのね。大丈夫よ、能力制御に使う演算領域を広げただけだから。能力は格段に使いやすくなっているはずよ」
「それで私生活に影響が出たら意味ないじゃないですか」
恨みがましく言ってみるも、答えは分かってます。
「
「ですよねー……」
そんなこと気にする人なんて第7学区の病院のおじさんの医者くらいじゃないでしょうか? あの人は医者ですけど。
「はぁ……」
まあいいです。命に関わるものじゃないですし、科学者という人種がこういうことを一切考慮しないのはこの身……というかこの目をもってよく知っています。
「……で? 今度の
「私をそんな子供が起きてすぐに仕事押し付けるような人間だと思わないでくれる?」
「違うんですか?」
「まあそうよ。今回も調整の実験がてらちょっと暴れてもらうわよ」
そう言っておかあさんはなにか──おそらくタブレット──を見せてきますが、
「見えないんですけど?」
そういえば言ってませんでしたね。なんとわたし、目が見えません!
能力を使えば『空間把握』で物の形だけは分かるのですが、タブレットの画面や紙に書かれた文字や絵、あと鏡とかガラスもですね。そういったものに映ったものは視えません。光を捉えているのではなくあくまで物の形を捉えているのですから当然といえば当然ですね。
というわけで、タブレットとか見せられてもわたしからすればただの石版と変わらないのですよ。石版ならせめて文字を彫ってください。そうすれば視えるんで。
「まったく、仕方ないわね」
そうしておかあさんが読んだ内容によれば、とある倉庫でどっかの組織同士の取引があり、そいつらを無力化して来い、つーか殺っちゃえ。とのことらしいです。
あと、ブツはその場で破壊、無理そうなら持ち帰って来いだそうで。誰に言ってるんですかね? こちとら斬れぬものなどあまり無い。あれ? ほんとに無いですね。な、破壊のプロですよ?
不確定要素として第一位は多分斬れるので第二位の
まあ、斬れなくてもわたしには最終手段、全力逃走がありますからね。
なにせわたしは学園都市逃走部門第一位!(自称)この街で一番鬼ごっこ(逃げる側)が得意な人間ですからね。それで実際に第一位と第二位からは逃げのびたので。
まあ、さっさと勝負服(戦闘服)に着替えて行きますか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
というわけでさっさと着替えてやって来ました目的の倉庫です。
ちなみに今着ている服は、膝上まである黒に近い灰色の袖が広いコートの下に黒いインナーを着て、同じく黒いショートパンツとタイツとブーツなのです。
コートの中には普通の針やら毒針、ピックやらワイヤーやら他にも色々入ってます。
この毒針とか特に便利で、保存の関係上あまり多くは持ち運べませんが、アポートで体内に直接打ち込んで、後で回収してしまえばどこから毒が侵入したのかバレませんし、毒を使い分ければ殺しちゃだめな依頼や誘拐の依頼でも使えるので気に入ってます。
あ、ワイヤーは体内に直接転移させて後は適当な所につないでおけばいいので拘束に便利です。今回は皆殺しなので必要ないと思いますが。というか今回は道具使う必要ないですね。
まあ、そんなことよりさっさと終わらせて帰りますか。
「お仕事開始! なのです♪」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数分後、学園都市の一角にあるとある倉庫では、地獄絵図が繰り広げられていた。
周りを見渡すもどこも血の海、そしてその中には変死体とその者達の物であったであろう銃が真っ二つになって転がっている。
変死体というのも、銃と同じく真っ二つになっている者、頭だけ切断され、どこにもその頭が転がっていない者、身体の一部が食いちぎられたようになくなっている者、見たところ外傷は無いが、倒れている目の前にその者の物であろう心臓が転がっている者など様々だ。
その地獄の中心で、一つの汚れも無く、静かにたたずんでいる灰色の少女がいた。
返り血は少女の周りでまるで見えない壁にぶつかったかのように不自然に途切れている。
心臓をくり抜かれた者は、その少女を見上げ、つぶやく。
「……は、はい……かぶり」
『灰被り』と。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ〜」
やっと終わりましたよ。とりあえずあそこにいた人間皆殺しにしましたし言われてた物も消滅させましたしこれでお仕事完了ですね。
「帰って寝ますか」
……とか思ってたんですけど……なんですかね? アレ。
家まで転移を繰り返していたわたしですが、現在視線の先にある(目は見えないので能力にて把握した)光景に首をかしげています。
「みさかと………上条?」
どっちも見知った顔ですねぇ。こんな時間にギャーギャーバチバチビリビリと橋の上て騒ぐのはやめてほしいです。
二人の話によれば自分の命を使ってシスターズの実験を止めようとしている御坂とそれを止めようとしている上条、ってな感じですか。
今把握した感じだとたしかにシスターズは救えるでしょうけどある程度の重症は負うでしょうね。
……どーしましょうかねぇ。
ぶっちゃけわたしは部外者です。でもレベル6も見てみたいですし、シスターズにも少し思うところがあるんですよね。
ただ、“上条当麻”という人間が動き出した以上、悲劇は
意味がわかりませんが、まあ、この世界にはわたしの能力含め『原石』や第二位の『
ああ、理屈不明の意味不明ならアレもありましたね。あの『天使』。まあ、わたしが勝手によんでるだけですけど。
そもそもAIM拡散力場ってのがよくわかんないですよね。発展した科学は魔法と見分けがつかないって言いますけどその通りですよね。能力者に混じって魔法使いとかいても多分わたし気づきませんよ。
話がそれましたけど、つまりはレベル6を見ることはできなくなってしまったわけですね。
「…………。…………………、…………………………」
……行きますか。よりおもしろそうな未来のために!
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