突発短編集:アリス・ギア・アイギス (Ente)
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アリスギア突発短編:非リクエスト
Vol1.整備士×仁紀藤奏


書きたいから書いてみた短編です。
反響があればVol2以降も書きます。


ピピピピ、という音と共に腕時計のアラームが時間が来た事を告げた。

 

それと全く同時に、入り口の扉が勢いよく開け放たれる。

               (てんけん)

「ごきげんよう!私のバイクの点検整備終わりましたかーっ!?」

 

そう言いながら整備場に入ってきたのは、幼馴染と呼ぶかは少し迷う小さい頃からの知り合い。

 

「あぁうん、言われてた異音は直しといたぜ。後ブレーキなんかも調整しといた。

 

整備の詳しい内容と料金はこの書類な」

 

そう言いつつ目の前の少女、仁紀藤奏にいくつかの書類を渡す。

 

 

ふむふむ、と漏らしつつ書類を読んでいる奏の横顔を盗み見て、美人だよなぁと改めて思う。

 

確かアクトレスとしてヴァイスと戦う一方、彼女の通う聖アマルテア女学院で風紀委員長を務めていた筈だ。

 

加えて夜や休日に趣味のバイクに乗っており、肌の手入れをする時間など殆どないだろうに顔にはシミやそばかすなど1つも見つからない。

 

「ん?どうかしました?私の顔に何かついてます?」

 

「い、いや何でもない」

 

と、盗み見ていたのがバレたっぽくて声を掛けられたから咄嗟にごまかす。

 

 

 

そもそも、彼女とは家族ぐるみの付き合いだ。

 

父親がプロレーサー、母親もレースクイーンという家庭で育った奏は当然バイク好きになったんだけど、奏の父親、雄矢おじさんが乗るバイクを整備してたのが俺の親父。

 

その頃から子供同士って事で話が合って、なんやかんやで奏のバイク整備を任されるようになったんだよな。

 

勿論奏本人も日常整備だけじゃなくて分解整備も出来るんだけど、部品の調達とかはまとめて発注を掛けた方が安上がりだから俺が任されてるって訳。

 

 

 

…と、ここで邪な考えが浮かんだ。

 

以前、奏から彼女の母親、裕子おばさんのレースクイーン衣装の写真を見せてもらった事がある。

 

その衣装を脳内でイメージし、目の前で書類に目を通している奏に着せてみる。

 

 

 

 

………これ以上詳しくイメージしたらヤバそうだからやめといた。

 

具体的には整備場と奏のバイクが血で汚れる。俺の鼻血で。

 

 

「…うん、わかった!料金はいつもの支払い方だよね?」

 

「あ、あぁいいぞ。定額の範囲内だからいつも通り口座から月末に引き落とすぜ」

 

必死になって妄想を消してたところに声かけられて一瞬キョドったけどなんとか平静を装って返事をする。

 

「ありがと!それじゃ、また何かあったら頼るね!」

 

そう言うと、奏はたった今整備し終わったバイクにまたがって走り去った。

 

それを見送って、俺は整備場のドアを閉めた。




※実際に自動車を整備に出した際の料金は現金ですぐに払いましょう。
店側にとって負担が増えるのであまり喜ばしくないです。
二次創作なので家族ぐるみの付き合いって設定でOK扱いさせてます。


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Vol1.整備士×仁紀藤奏②

バイクの日という事で整備士×ナデちゃんの続編でも、と。

あ、蛇足編じゃないので1000文字です(宣言)


「旅行?」

 

「はい!明日から1泊2日の予定で、ツーリングを兼ねて神奈川シャードまで!」

 

いきなり整備場に入ってきた奏は、気が早い事にボストンバッグを持っていた。

 

おそらく既に持っていく荷物を詰めているのだろう。

 

「んで、その前に整備か。確か電車に乗せていけるんだっけ?」

 

「はい!ちょっとお金は掛かりますけど貨物扱いで運んでもらえます!もう2台分払ってますよ!」

 

「…2台?生徒会のメンバーって奏入れて3人だろ?1台分足りなくないか?」

 

疑問に思ったので訊ねると、奏はきょとんとした様子で首を傾げた。いちいち可愛い奴め。

 

と、ポンと手を叩いてから奏が予想外の事を言った。

 

「あぁ、地衛理が風邪引いててコロちゃんが看病してるので二人は来ませんよ?

 

私と君の二人で行くんですよ?」

 

「悪い聞こえなかった。もう一回言って」

 

「だから、私と君の二人でツーリング旅行です!」

 

…聞き間違いじゃなかった。

 

いや確かに整備士だからバイクも乗れるけどさぁ。

 

流石に奏と並走するのは厳しいぞ?

 

俺がそう思っていると続けて奏が口を開く。

 

「あぁ、ご心配なく!ちゃんと君のペースに合わせますから!」

 

…逃げ道が一つ潰された。

 

だが、俺にはとっておきの逃げ道がある…!

 

「いや、そもそもそんな急に言われても準備が…」

 

「あぁ、実は一昨日におばさんにお願いして荷物は準備してもらっています!

 

そして、昨日既に君の分の荷物も受け取ってます!後は携帯とか充電器とか準備してもらえれば出発できますよ!」

 

…お袋が一昨日なんか服とか色々詰めてると思ってたらこの為かよ!最後の逃げ道ががががが。

 

「実は何日か前、成子坂製作所の隊長から旅行券を何枚か貰ったんですよ!

 

だから、君と一緒に行こうと思ったんですけど…。

 

 

 

…迷惑、でした?」

 

…畜生、その上目遣いは反則だろ。

 

 

 

 

 

結局断り切れず、明日明後日の2日間は奏とのツーリング旅行になるのだった。

 

…ただ、内心飛び上がりそうなくらい喜んでる俺がいる。

 

そもそも、全く好きでもない相手と旅行に行く奴なんていないだろう。

 

つまり、この話を受けた時点でそういう訳で。

 

…まぁ、奏が俺に好意抱いてるかって言うと多分ないけどな。

 

だって、他に気軽に誘える奴いないから俺を誘ったくらいだろうし。

 

後は、今日みたいな感じでいきなり話振りやすいからだろうし。実際親が前もって準備してたから急な話でもなんとかなった訳で。

 

そう思いながら、俺は明日乗っていく用のバイクを取り出した。




まさかの1000文字縛りのせいでバイクに乗らなかったとという。

バイクの日なのにこれでいいのか…?


そして相変わらずネタ不足。
マジでそろそろ更新途切れそう。


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Vol1.整備士×仁紀藤奏③

整備士×ナデちゃんの続きになります。


いきなり奏にツーリング旅行に誘われた翌日。

 

昨日引っ張りだしたバイクを神奈川シャード行の電車に乗せ、固定された上でコンテナに収納されたのを見届けると、奏から先ほどメッセージで伝えられた座席に向かう。

 

「ごきげんよう、お待ちしておりましたよーっ」

 

流石に電車内だからか、いつもより控えめに挨拶してきた。

 

しっかし相変わらず独特というかなんというか、ごきげんようって挨拶に違和感が凄い。

 

てな訳で、俺はごきげんようと挨拶されてもごきげんようとは返したくない。

 

「おう。…ところで確認したいんだけどさ」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

不思議そうに聞き返した奏に、見た時から疑問に思った点を聞くことにした。

 

 

 

「いや、なんで髪型変えてんの?」

 

今まで奏が髪を縛ってるのは見た事が無かったが、何故か奏が今日は髪型を変えている。

 

後頭部の辺りで髪を束ねて、まとめた髪を垂らす――所謂ポニーテールなのだ。

 

「あぁ、これですか?コロちゃんにおすすめされて試してみたんですけど…」

 

ポンポンと束ねた髪を弄びながら話す奏を見ながら、内心で州天頃マジグッジョブと思う。

 

 

 

まぁあんまり話したことないんだけどさ。

 

俺と奏は家族ぐるみで付き合いがあったけど幼馴染って呼ぶか怪しい関係。

 

で、奏と州天頃は幼馴染。

 

そんでもって、俺と州天頃の間には関係が特にないから幼馴染の友達というややこしい関係。

 

その程度の繋がりだから、奏がバイク持ってきた時にたまに着いてきてたりしてて、その時に軽く話したくらいでしかない。

 

 

 

ちなみに、生徒会のもう一人のメンバーである生徒会長とは会った事が無い。

 

紺藤地衛理という名前らしいのだが、奏や州天頃の話の中で名前が出てくる程度でしかないので多分最も繋がりが希薄だ。

 

…いや普通繋がりがある方がおかしいんだろうけどさ。

 

そんなくだらない事を考えていると、奏が何やらこちらを睨んでいるのに気が付いた。

 

「ど、どうした…?」

 

「いえ、何か感想の1つでも頂けると嬉しいんですけどねー?

 

何やら私そっちのけで考えごとしてるようですけど、」

 

やべぇ、なんか地雷踏んだのか知らんが不機嫌モード入ってしまった。

 

「いや、似合ってるぞ?こう、なんていうか普段と雰囲気違うし…」

 

「つまり普段の髪型が似合ってないって事ですか?そういう事ですよね?」

 

「そうは言ってないだろ…」

 

マジで地雷踏んだかもしれん。

 

結局この後、神奈川シャードに着いて電車を降りるまで殆ど口利いて貰えなかった。




昨日投稿間に合いませんでしたァァァ!!!

もう少し進めようと思いましたが、話のキリがよくなったので足踏みしました。

あ、明日はコロちゃんの誕生日という事で何か書きたいです。
…ネタがあればな!(無かったら多分門下生×コロちゃんになる。隊コロは個人的に好まないので書かない)


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Vol2.傭兵×紺藤地衛理

Vol1はナデちゃんだったので、Vol2は地衛理さんにて。


  (戦場)

この世界に神様なんていない。

 

敵か味方か。ただそれだけでしかない。

 

 

 

鼻を突くのは血と硝煙の匂い。

 

目に映るのは味方の死体と、圧倒的な物量で迫りくる敵兵。

 

味方が必死に撃ち返すが、その僅かな抵抗には数十、或いは数百倍の銃弾が報復として返される。

 

 

 

やがて、ライフルの弾が尽きる。

 

見回せば仲間は一人もいない。俺以外全滅したようだ。

 

手元に残っているのは、拳銃弾が1マガジン分。

 

倒れた仲間の銃を拾い上げて牽制するも、返礼は大量の銃弾によって成された。

 

咄嗟に地面の隆起に隠れて凌いだが、長くは持たないだろう。

 

撃たなければその間に敵兵が近づき、やがて近距離で撃ち殺される。

しかし、牽制する為に撃とうにも顔を出せば撃たれて死ぬ。

 

 

 

と、目の前に何かが転がってきたのが見えた。

 

鈍色の球形であるそれは、破片手榴弾――!

 

投げ捨てようと掴んだ直後、手榴弾は内側から破裂した。

 

破片が幾つか身体に食い込み、加えて右手の感覚が無くなる。

 

破片が深々と突き刺さりズタズタにされた右手は、速やかに処置しない限り二度と動くことはないだろう。

 

これは終わったな、と思いつつ左手で拳銃を構える。

 

傭兵である以上、死ぬ覚悟はできている。

 

そんな中脳裏に浮かぶのは、この戦いで戦死した仲間たちと過ごした思い出。

 

(来るなら来い。せめて一人でも道連れにしてやる)

 

そう考え、敵が寄って来るのを待つ。

 

 

 

 

 

…だが、敵が来ない。

 

(警戒してるのか?こんな死にかけの俺を?)

 

ふと地面に目を向けた時、一瞬影が通り過ぎて行った。

 

(…鳥でも迷い込んだか?)

 

疑問に思い、敵がやけに静かなのをいいことに隆起から顔を出す。

 

 

 

 

 

俺はそこに、女神を見た。

 

 

 

 

 

長い銀髪を風に靡かせながら優雅に空を舞い、的確な射撃、あるいは苛烈な槍裁きで敵を無力化していく。

 

見れば、彼女の攻撃はただの一人の敵兵も殺していない。

 

射撃で銃器を破壊するか、或いは槍を振るって吹き飛ばす。

 

反撃として敵兵が放つ銃弾は、銃弾自体が彼女を避けるかの如く虚空を貫く。

 

「コンドッティエーレだぁぁぁ!」

 

戦線が崩壊しつつある敵兵の叫びが聞こえる。

 

 

 

噂程度なら聞いた事があった。

 

どの勢力にも属さず、傭兵として戦場を渡り歩くアクトレスがいると。

 

特徴として語られるのが、敵を一人として殺さない不殺のスタンス。

 

そして、今まさに目の前で風に煽られている長い銀髪――!

 

 

 

気づけば、戦闘は終わっていた。

 

生き残ったという実感も無く、俺は目の前の少女を見上げ続けていた。




1000文字に収めるのに苦労しました。

最初調子に乗って長めに書いてたら収まりきらなくて大分削った。
具体的には仲間多少生き残ってる描写だったけど削って傭兵一人しか生き残らなかった。

若干不完全燃焼気味だから続き書くかもしれない。


少しばかりガンダムOOに寄せてます。


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Vol2.傭兵×紺藤地衛理/蛇足編

ネタに困ったので地衛理さんの続編というか蛇足を。

※この蛇足編は1000文字縛りの例外となります。
1000文字編で入りきらなかった部分とかも補足していきたいので…


コンドッティエーレによる戦場への介入の後、俺の身に起こった出来事を幾つか話そう。

 

 

 

まず、右手は切断した。

 

破片手榴弾の直撃を受けて相当ズタズタにされ、その場でロクな止血処置すらしなかったので切断するしか無かったのだ。

 

一応、医者からは新型の義手を付けてはどうかと勧められた。

 

曰く、新型の義手は神経からの電流を読み取って実際の腕に動かせるらしい。

 

だが、その話は断った。

 

理由としては、きわめて個人的な物だ。

 

もう俺は、傭兵として戦っていくつもりがなくなったのだ。

 

あの戦場で、俺は彼女という存在に魅せられた。

 

もしまた傭兵として戦場に立って彼女が敵として現れたら、この思いは恐らく恐怖で塗り替えられてしまう。それがいやなのだ。

 

…と言えば聞こえはいいが、実際は戦うのに疲れただけである。

 

十数年の付き合いだった傭兵団の仲間たちも全滅し、生き残ったのは俺だけ。

       (利き手)

おそらく自由な右手があれば、望もうとも望まなくとも俺は戦場に立つだろう。

 

ならば俺は自由な右手を捨てる。

 

 

 

そして、これを最後に銃を捨てる。

 

そう心の中で反芻しつつ、目の前で尻もちを着いている男に拳銃を向けた。

    (クライアント)

こいつは依頼主だった男だ。

 

あの地獄のような戦闘の後、彼女が現れた理由について調べて驚いた。

 

なんと彼女は、依頼主が追加で雇っていた訳ではなく、それどころか誰に雇われた訳でも無くあの戦闘に介入していたのだ。

 

それと同時に、依頼主に関する真っ黒な情報も出てきた。

 

どうやら依頼主は、自国を裏切って敵国と通じていたらしく、今回の依頼は敵国からの指示を受けて俺たち傭兵を磨り減らす為の物だったらしい。

 

そして、それを知った彼女がアリスギアであの戦闘に介入した…という顛末らしい。

 

つまり、この男は俺たち傭兵団を意図的に陥れ、戦場で始末させようとしたのだ。

 

そのケジメを付けさせる為、俺はこうして男の事務所に乗り込んだのである。

 

乗り込んだ直後には数人の護衛らしき人物が銃を向けてきたが、傭兵を相手にするには練度不足にもほどがある。

 

特に撃たれる事も無く全員始末した。

 

…できればコンドッティエーレのように不殺で通したかったが流石に俺は彼女じゃない。

 

撃たれれば死ぬ上、銃としての性能はアサルトライフルを持っている相手の方が高い以上流石に無理があった。

 

 

 

「恨みは無いが、と言えるほど俺は聖人じゃないんでね…」

 

今も目の前で「私は君たちなら勝てると思っていた」「あんなに敵が多いとは知らなかったんだ」などと喚き散らす男の胸元に狙いを向ける。

 

「これは殺された仲間たちの分」

 

そう言い、銃弾を2発心臓に撃ち込む。

 

「これは俺の右手の分」

 

続けざまに額に向けて2度引き金を引く。

 

力なく倒れた男の開いた口に、ピンを抜いた手榴弾を放り込む。

 

男からの依頼の前金で作らせた、爆発まで30秒ほどかかる特注品だ。

 

勿論戦場ではとても使えないが、脱出する時間が必要なのでちょうどいいのである。

 

「そいつは俺の辞表代わりだ。じゃあな」

 

そう言い残すと、俺は事務所の扉を閉める。

 

俺が事務所のビルから出た直後、爆発がビルの窓数枚を吹き飛ばした。

 

 

 

それが数日前の出来事。

 

現在、俺は一人しかいないアジトで寝転がりながら思考にふけている。

 

依頼主を始末した後、右手が無いと目立つって事で医師に見た目だけの義手を着けてもらったのでぱっと見は五体満足だ。

 

このアジト自体は廃ビルの地下を掘る形で作られており、地上部分はただの廃ビルである為ここに傭兵団のアジトがあるとバレた事はない。

 

…その分、依頼を受ける時はネットで依頼の有無を把握し、依頼人の元に俺たちが向かう事になっていたのだが。

 

それはともかく。

 

これからどうしようか。

 

これ以上俺は銃を持つつもりもないし、実際殆どの銃は戦場となった砂漠に埋めてきた。

 

男を始末するのに使った拳銃は例外的にまだ持っているが、コイツもいずれ捨てる予定だ。

 

幸いと言うべきか、今までの傭兵稼業で十分な額の貯金がある。

 

派手なことをせずに隠棲するのならば働く必要もないほどだ。

 

となると、問題は隠棲先である。

 

「国内は無いよなぁ…」

 

まだそこまで大々的に報道されていないが、依頼主が死んだ事は既に世間に知られている。

 

去り際に回収した、依頼主が敵国と通じていた証拠をネットにばら撒いておいたので世間の目はそちらに向いており、犯人が俺という事までは知られていない。

 

が、時間を掛ければやがて俺が犯人という事も調べられてしまうだろう。

 

理想としては、そうなる前に国外へ高飛びしてしまう事だ。

 

と、数年ほど前にとある人物と話した事を思い出した。

 

「…日系シャードあたりにでも行ってみるか。確かアイツは東京シャードに行くとか言ってたな」

 

以前、俺たちの傭兵団に奇妙な客が来た事がある。

 

ぱっと見はヒョロイ外見だったが、射撃は傭兵として長く戦っていた俺たちの誰よりも正確であり、ナイフを使った格闘技能でも俺たち全員を上回り、更には語学も堪能だった。

 

俺としてはアイツが傭兵団に入ってくれれば助かったんだが、生憎しばらくしたら唐突に去ってしまった。

 

きな臭い何かを感じないでは無かったが、下手に詮索する必要もないので詮索しなかったのだ。

 

 

 

そこまで思い返し、体を起こす。

 

「さて、思い立ったが吉日。行くとしますか東京!」

 

1人でそう言い、後始末に入る。

 

持っていく手荷物を手早く鞄に収め、拳銃をテーブルの上に置く。

 

最後に手元のリモコンを操作すると、リモコン自体もテーブルの上に置いていく。

 

ピッ…ピッ…という規則的な電子音がする事を確認し、今生の別れとなるアジトを最後に視界に収める。

 

 

 

 

 

そこに、依頼主に殺された仲間たちの姿が見えた。

 

いや、彼らの姿がここにある筈がない。

 

彼らはあの戦場で死んだのだ。

 

ならば、今目の間にいる彼らは全て幻という事になる。

 

だが、例え幻だとしても2度と会えない彼らが目の前にいる。

 

思わず、足が彼らの方に向かいかけ。

 

 

 

脳裏に、戦場で見たコンドッティエーレの後ろ姿がよぎった。

 

同時に、見えていた仲間たちの幻も消滅する。

 

その直前、彼らからの声が耳に届いた。そんな気がした。

 

行け、と。

 

彼らの声に背中を押されるように、俺はアジトを出た。

 

 

 

――数分後、アジトに変化が起こる。

 

内側からの爆発によってアジト内部が破壊され、爆発の余波でアジト上部の廃ビルが破損し、崩壊する。

 

傭兵がアジトを立ち去る前に起動させた自爆装置が作動し、アジトを爆炎と衝撃が飲み込んでいく。

 

加えて廃ビルの崩落により、地下のアジトはビルの残骸によって押しつぶされる。

 

その炎と破片の中で、傭兵の痕跡は全て抹消されたのだった。

 

 

 

アジトを出てから数時間後、俺は既に幾つかのシャードを乗り継いで東京シャード行きの飛行機に乗っていた。

 

まだ俺たちの先祖が地球に住めていた頃の飛行機とは形が違うらしいが、今となってはそんなもの博物館の片隅で記述がみられる程度でしかない。故に興味もない。

 

と、俺の座席の隣に、長い銀髪の少女が座った。

 

その少女の姿が、何故か脳裏に残る彼女と重なり、俺は彼女に声を。

 

 

 

…掛けようとして、どう声を掛けたものか迷った。同時に困った。

 

当たり障りのない話からできればいいのだが、果たして自分より年下の少女とどう話したものか。

 

ぶっちゃけ年下の少女と話した経験など殆ど無いのでどうしたものか悩んでいると、前の座席の下から何かが転がってきた。

 

一瞬癖で右手を出し掛け、義手なのを思い出して左手で拾い上げると転がってきていたのは空薬莢だった。サイズ的には拳銃のものだが、どこから紛れ込んだんだよ。

 

後でエアロックから放り出すか、と考えてとりあえずポケットに押し込むと、少女がこちらを見ているのに気付いた。

 

その視線はやけに俺の右手に向いている。…流石に外見から義手って事は分からないと思うんだが…?

 

「その右手、義手ですか?差し支えなければ、どのような事情かお聞きしても?」

 

一発でバレた。

 

「…まぁ大した事じゃないさ。仕事の時にな」

 

詳細をぼかしつつ説明する。

 

「なんで一目で分かったのか聞いても?」

 

「貴方は先ほど小物を拾い上げるのに右手を出しかけました。それを途中で引っ込めてわざわざ左手で拾ったのは、右手に何か見せられない物があるか、或いは右手が何らかの事情で使い物にならないかという事です。

 

後は何となくの勘、ですかね。人を見る目には少し自信があるので」

 

…大した観察眼だなぁ。

 

そう感心していると、茶髪の少女が銀髪の少女のものらしい名前を呼びながら歩いてきた。

 

「あっ、ここにいましたか?

ちえり、私達の車両あっちですよー?」

 

そう呼びかけられ、席を間違えていたらしい銀髪の少女は荷物を持つと立ち上がって去っていく。

 

その後ろ姿はやはり、瞼に鮮烈に焼き付いた女神の後ろ姿と重なる物があった。

 

…あ、赤面してる。恥ずかしかったのかな?




辛うじて毎日不定時投稿の範囲に収めました(震え声)

この後傭兵は東京シャードで隠棲したそうな。(一応AEGISが監視してるけど)


地衛理さん/蛇足編はこれにて終幕。
しっかし縛り無くしたら3000文字越えかぁ。


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Vol3.門下生×州天頃椎奈

3人目はアマ女生徒会メンバーからコロちゃん。


「せいやっ!」

 

掛け声と共に、俺の目の前で拳が寸止めされた。

 

「…そこまでィ!」

 

審判を務めている師範代の声と共に、お互いに構えを解く。

 

「…う~ん、やっぱり勝てないですね」

 

「ふふ、そう簡単には負けませんっ」

 

そう言いながら目の前の少女、椎奈さんは微笑んだ。

 

 

 

俺がこの道場で空手を習い始めたのが数年前。

 

昔の俺は身体も気も小さくておどおどした性格だったから、いわゆるガキ大将って奴からイジメを受けてた。

 

俺の親が学校に相談しても、ガキ大将の親がPTAの会長だったんで学校もガキ大将側。

 

むしろ相談したことがバレてイジメが酷くなった。

 

 

 

で、困った親が多少交流があった州天頃家に相談したら、州天頃家の父親―師範代から道場に通う事を勧められた。

 

ただし、その時に二つ、条件を出された。

 

第一に、空手で人を傷つけない事。

 

次に、身体だけでなく心も鍛える事。

 

 

 

「はい、タオルと飲み物ですよ」

 

「…あ、ありがとうございます」

 

そんな物思いにふけっていると、椎奈さんがタオルとスポドリを渡してくれた。

 

が、俺の返事を聞いた椎奈さんが何故か顔を覗き込んでくる。

 

「ど、どうかしました…?」

 

「お返事が遅かったのでまた体調悪いのかと思ったんです。あなたは前科持ちですからねっ」

 

「いやその節はホントに申し訳ないです」

 

以前、殆ど休憩せずに数日間ぶっ続けで自主練ばかりしていたら体調を崩して、練習中にぶっ倒れた事がある。

 

目が覚めたら病院のベッドの上で、2~3日くらい経ってた。

 

…椎奈さんが座ったまま寝てて、可愛い寝顔だなとか呑気に思ってたら直後に目を覚まして思いっきり説教されたけど。

 

ちなみに診察結果は過度の疲労と栄養失調。

 

 

 

「さて、午前中の練習はここまで。お昼休憩です」

 

そう言うと、椎奈さんは可愛らしい弁当包みに包まれた弁当を2つ取り出した。

 

「はい、貴方の分ですよっ。少し多めにしておきました」

 

「何から何まですいません…」

 

そう言いつつ2つのお弁当の片方、差し出された少し大きめの弁当を受け取る。

 

俺がぶっ倒れて以来、休日に練習する時には椎奈さんが弁当を作ってくれるようになった。

 

ついでに監視として目の前で食べる事になった。

 

曰く、また食べないかもしれないからとの事。

 

…ただ、この弁当が滅茶苦茶旨い。

 

そこそこ量もあるのだが、あっという間に平らげてしまう。

 

「ご馳走様でした」

 

「ふふふ、相変わらず良い食べっぷりですね」

 

…常々可愛らしいとは思うけど、その笑顔は反則だと思う。




うーむ、書きたい事が多すぎて1000文字に抑えるのが厳しいな…。

早くも1000文字縛りが終わりそうな雰囲気である。

今回も結構削った部分多め。

地衛理さん同様、続きを書くかもしれない。

反響次第ってとこですかね。



あ、次は多分しばらく感覚空きます。

誰を書くか決め損ねてるのです…。

順当にいけばアマ女から怜ちゃんか綾香さまか。


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Vol3.門下生×州天頃椎奈②

若干整備士×ナデちゃんのネタの焼き増し感がありますが門下生×コロちゃんの続きです。


いつもの練習後、着替えやらその他を終えて帰り支度をしていると椎奈さんに呼び止められた。

 

「旅行、ですか?」

 

「はい。成子坂の隊長さんから頂いた旅行券があるんですけど、せっかくならと思いまして。こういう所で休ませないと、君はあんまり休みませんからねっ」

 

ちなみに既に家族全員の旅行にも行った後らしい。それでも2枚余ったのか…。

 

「これでも最近は割と休み取ってますけど…」

 

「学校や練習の後にバイトを入れてる、って聞きましたけどいつお休みしてるんですか?」

 

「それを言われると言い返せません」

 

どこから掴んだんですかその情報。

 

 

 

…ただ、急に旅行と言われても急に予定は空けられないんだけど。

 

すると、椎奈さんが口を開いた。

 

「ところで、来週の土曜日から3連休を利用して合宿をする予定でしたね?」

 

「え?…えぇ、確かにその日程で合宿をするって聞いてますから予定空けてますけど…」

 

先月中旬、来月中に合宿をするから都合のいい日を教えてくれ、と師範代からメールが届いた。

 

幸いバイトのシフトが決まる前だったので、祝日を含めた3連休を希望したのだが、何故今その話を?

 

 

 

…あ、なんか妙な予感が。

 

「騙したようで悪いんですけど、実は、その日程に合宿なんて予定して無いんです。

 

合宿って言っておけば、君は予定を入れませんからねっ」

 

「マジですか」

 

そういう事だったのか。

 

確かに合宿の間はバイトのシフト入れてないけどさぁ。

 

 

 

来週にあると思っていた合宿の予定が無くなる以上、週末は完全にフリーだ。

 

こうなると、日程を理由に断る事は出来ない。

 

その後もなんとか断わろうとしたが、結局断れず。

 

「それじゃあ土曜日、いつもの時間に道場集合ですっ。

これをお渡ししておきますね」

 

そう言いながら、椎奈さんに薄い冊子を渡された。

 

表紙を見てみると、『旅行のしおり』と書かれている。

 

…いつから計画したんだこれ。

 

パラパラ、と数ページめくってみると遠足のそれに似た持ち物リストや日程などが細かく書かれていた。

 

「君のご両親から、君が学校行事をあまり楽しめてなかったっていうお話を聞いていたので、修学旅行に似せておきました。

…これが楽しい思い出として君の中に残れば良いんですけど」

 

…確かに、今までの遠足やら修学旅行ではロクな思い出ないけど、そんな気遣いまでしなくても。

 

一瞬そう思ったが、ここまで入念に計画した以上楽しむのが最大の感謝になるだろう。

 

そう思い、椎奈さんにお礼を言って俺は道場を出た。




…ナデちゃんとコロちゃん両方で旅行ネタというネタ被り。

汎用性高いからついつい頼ってしまう旅行ネタ。

明日は特に思いつかなければナデちゃんの方の続きになるかな…?


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Vol4.アンドロイド×御茶ノ水美里江

整備士×ナデちゃんのつもりでしたがそろそろアマ女以外を書こうと思ったので少し前に構想したアンドロイド×美里江ちゃんという事で。

あ、美里江ちゃんの各種エピソードに関するネタバレが含まれます。
調べれば出てくる程度のネタバレですが気になる方は回れ右。
あ、あと作者は星4美里江ちゃん持ってません。
なので美里江ちゃんに関する情報が間違っていたりした場合はご指摘よろしくお願いします。
てか書く上での情報もアリスギアwiki頼り。
加えて絆エピも読めてないので博士の口調が分からないのでセリフ無しです。

それでも構わない方はどうぞお先へ。


本機はアンドロイドである。

 

開発番号はFri-12。

 

開発目的は、御茶ノ水寅二博士によって本機より先に開発されたAlc-003の運用における不自然さの緩和。

 

具体的には、人間であるように振る舞う上で友人としての存在がいると好都合であるという理由で開発されたアンドロイドだ。

 

性能や完成度では明確に劣るので博士の身の回りの世話については本機より高性能なAlc-003が専ら担当している。

 

「博士、お茶を入れました」

 

本機の目の前で、Alc-003―――御茶ノ水美里江が博士にお茶を入れている。

 

そのお茶を受け取って飲み干すと、博士はやや上機嫌な様子でふらつきながら自室へと戻っていく。

 

ここ数週間、博士は体調が優れていないようで最低限の水分補給などを済ませると日中寝ていることが多い。

 

 

 

少しして、博士が寝息を立て始めたのを確認すると本機――俺は演技を辞めた。

 

同時に、美里江もアンドロイドとしての演技を辞める。

 

「ふぅ、毎回毎回疲れる…」

 

「ごめんね、苦し紛れに名前出しちゃったせいで…」

 

「いや、俺が好きでやってる苦労だから気にしなくていいよ」

 

そう、俺はFri-12ではなくただの人間だ。

 

同時に、美里江もAlc-003なんていう存在ではなく人間のアクトレスだ。

 

 

 

こんな演技をしているそもそもの発端は、美里江から聞いた限り凡そ9年前。

 

美里江がまだ6歳だった頃、アンドロイドに関連する事故が発生して美里江の両親が死亡してしまい、博士も重傷を負ったらしいのだ。

 

その後、辛うじて博士は一命を取り留めたのだが息子夫婦――すなわち美里江の両親が死亡した事を受け入れられず、心が少し壊れてしまったらしい。

 

それ以来、美里江はAlc-003という存在もしないアンドロイドを演じるようになったのだが、ふとした事で俺の名前を出してしまい、以来俺も友人型アンドロイド、Fri-12として振る舞っているのである。

 

ちなみにFri-12というのは、Fri部分でフレンと読ませ、12を少し崩して書くとDになるので、合わせてフレンドと読める…という洒落らしい。

 

…ただ、時々こう考える事がある。

 

果たして、博士はどうなるのが良いのだろうか。

 

孫娘を存在しない自らの作品として扱う、今の状態が良いのか。

 

それとも、何かの拍子で心が元に戻ったほうが良いのか。

 

しかし、仮に心が戻ったとして息子夫婦を失った事実に向き合えるのか。

 

 

 

その答えは、只の凡人に過ぎない俺には出せないのだ。




うーむ、前もって考えてたネタだけあって書きやすかった。

ただし、ネタの引き出しがそろそろすっからかん。


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Vol5.不良×遮那仮面

Vol5は主人公枠から遮那仮面をチョイス。

一体誰妻楓なんだ…?

※限りなく少ないでしょうが遮那仮面の正体を知らない方は回れ右。


ドサッ、という音を立てて最後の一人が倒れる。

 

おやじ狩りをしていたごろつきを全員殴り倒したところで、狩られていた中年男性に声をかけ。

 

 

「ヒィィィ~~~!!か、金ならやるなら助けてくれぇ!」

 

 

 

…掛け損ねた。

 

どうやら、親父狩りが獲物を横取りに来たと思われたらしい。

 

だが、俺としては親父狩りは趣味じゃないしするつもりもない。

 

…だが、それを説明するには目の前の中年男性が落ち着くまで待つしかないが、果たしてこいつが落ち着くまでどれだけ掛かるやら分かる物ではない。

 

下手に時間を掛けて警察に補導されても面倒なので、手っ取り早く済ませる事にした。

 

 

 

震えている男が差し出している財布を拾い上げ、手早く中身を抜き取る。

 

そうして中身を取った財布を男の目の前に落とすと、必死な様子で財布を拾い上げた男が逃げていった。

 

それを見送りながらため息交じりに呟く。

 

相変わらず無駄な事してんなぁ、と。

 

抜き取った中身を右手の中で手慰みに弄んでいると、ザっ…という擦れるような足音が響いた。

 

音の方向を向いてみると、狐の仮面を被り、木刀を持った少女。

 

「遮那仮面、見参」

 

「またあんたか吾妻」

 

「…私は遮那仮面です。吾妻楓などという名前では」

 

「本名名乗ってんじゃねぇか」

 

突っ込みがてら、先ほどまで右手の中で弄んでいた財布の中身――割合的には1%に満たない硬貨を小指で弾いて吾妻が被っている仮面の眉間に当てた。

 

パコンッ、という子気味良い音を立ててズレた仮面を直しながら、吾妻が飛んできた硬貨を確認する。

 

「…またその無意味な親父狩りですか」

 

「ああいうのは最低限抜いて帰らせるのが一番手っ取り早い」

 

…そう、俺が抜き取った財布の中身は硬貨を1枚だけ。

価格にして1ゴールドでしかない程度の極少額だ。

 

…ちなみにだが、最初はそれこそ抜き取るフリで済ませてたんだがやけに観察眼の鋭い被害者なんかだと抜き取ったフリに気づく奴が出始めたので、1ゴールドだけ抜き取って財布を返すようにしている。

 

と、硬貨を左手に持って吾妻が木刀の切っ先を俺に向けた。

 

「ともかく、貴方のした事は強盗に当たります。

故に、正義を執行させていただきます」

 

そう言いながら木刀を振りかざす吾妻に、俺は手っ取り早く逃げの一手を切る。

 

と言ってもそこまで複雑な物ではない。

 

 

 

足元に転がってるごろつきの一人を蹴り上げて隙を無理やり作るだけだ。

 

飛んできたごろつきを木刀を手放して吾妻が受け止めた隙に俺はとっとと逃げた。




うーむ、この短編集自体思いつきが多いとはいえ少し内容ってかアクトレスの出し方雑だな…。

あ、先に宣言しておくと明後日以降毎日投稿は多分無理です(夏休みが明日まで)


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リクエスト編
リクエスト:地衛理さん(ポニーテール)


Twitterでネタ拾ったので。


例外的な内容ですが隊ちえ要素強めとなっております。
…男キャラを用意できなかっただけですはい。
読者の皆様ネタをください。


『隊長、デートをしましょう。日曜日の朝10時に迎えに上がります』と地衛理に言われたのが金曜日の終業間際。

 

その日は仕事だった筈と思ったのだが、いつの間にか休みが入れられていた。

 

加えて全員に休めと言われてしまい、今日はデート当日。

 

現在の時刻は9時だが、なんやかんやで朝6時に目が覚めてそこから3時間近く家の前でうろうろしてる。…傍から見たら不審者だな。

 

と、曲がり角を曲がって1台の車が家の前で停車した。…あれは紺藤家の車だよな、たしか。

 

そこから予想通りと言うべきか、地衛理が降りてきた。

 

 

 

その姿を見て心臓が止まるかと思った。

 

 

 

服は相変わらず、地衛理の美しさを引き立てる繊細なものだ。

 

普通の奴が着れば服に着せられているという印象が出そうなほどに主張が激しいが、地衛理が着ているとその主張も見事に地衛理の美しさを引き立てるアクセントになっている。

 

ただ、問題なのはそこじゃない。髪型だ。

 

「…昨日椎奈と奏に勧められて髪型を変えてみたのですが、似合わなかったでしょうか?」

 

…後で二人に何か個人的に渡しておこう。超グッジョブだ。

 

「…似合わなかったようですね。やはりいつもの髪型に…」

 

「いやいやいやいや待ってくれ。とても似合ってる」

 

見とれていて反応し忘れていたら、地衛理がポニーテールをほどこうとしたので急いで止める。

 

…いや、ほどいてもらっても良かったかもしれん。

他の奴にこの髪型の地衛理を見せたくない。

 

そんな独占欲が浮かぶ中、微笑んで地衛理は車のドアを開ける。

 

「さぁ、これからが本番です。参りましょうか?」

 

そう言われ、俺は車に乗り込むのだった。

 

 

 

――詳細に書くと文字数越えるので割愛。

 

地衛理とのデートも終わり、家で風呂が沸くのを待っているとスマホのトークアプリにメッセージが届いた。

 

画面を確認してみると、送り主は椎奈という事になっている。

 

通知を確認するが、送られた内容は写真らしく表示され切らない。

 

「こんな時間に…?なんの写真だ?」

 

考えにくいが業務連絡か?

 

そう思った俺はメッセージアプリを開いた。

 

そして画像が表示された瞬間、驚きすぎてついスマホを落とした。

 

拾い上げると、やはりそこには地衛理のツインテールやサイドテールといった髪型が写っていた。

 

写真の直前には椎奈から、

 

『地衛理の髪型を決めていた時の写真です。せっかくなので送っておきますね』

 

という文面が添えられていた。

 

…今度個人的にボーナス渡しておこう。マジでグッジョブ。




ネタが無くてとある方のTwitterの発言から無理やりネタにしました。はい。

あ、明日はポニテナデちゃん投稿予定。
…書けたらだけど。書けなかったら明後日なんじゃー。


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リクエスト:州天頃椎奈×仁紀藤奏×日常の一コマ

配信者さんから拾い上げたネタになります。

他にもいくつかネタは掲示されましたがその中から比較的書きやすそうというか1000文字で納められそうなものをチョイス。


まだかな、と椎奈が思っていると、駆け寄ってくる足音が近づいてきた。

 

「お待たせー!ちょっと道が混んでて遅れちゃった!」

 

「も~、ナデちゃん遅いよ」

 

てい、と軽く奏の額に手刀を入れながら椎奈はぷんぷんという擬音が聞こえそうな様子で怒る。

 

椎奈は待ち合わせ時間より15分ほど早く来たのだが、奏が来たのは待ち合わせ時間の20分後。

 

つまり35分も待たされたわけで。

 

「ごめんって!後で何か美味しい物奢るから!」

 

「…じゃあそれで許してあげますっ」

 

奏の発言である程度機嫌を直した椎奈は、さてと呟いてから立ち上がる。

 

「じゃあ、行きましょうか!」

 

「行きましょう!」

 

そう言いながら、二人は目的のショッピングに向かうのであった。

 

 

 

「あーあ、それにしても地衛理も来れれば良かったのになー!」

 

「仕方ないよ。ちえりのお家のお話らしいし」

 

2人だけでショッピングに来ている理由はそういう事である。

 

地衛理が家の用事によって予定を開けられなかったのだ。

 

それを聞いた時、椎奈と奏(特に椎奈)はショッピングの日程をずらそうと思ったのだが、3人まとめて休みが取れるのは数か月以上先になる点、そして地衛理から、

 

『私のことは気にせず、どうか2人で行ってきてください』

 

と言われ、渋々折れる事になったのだった。

 

 

 

それはともかく数時間後。

 

あらかたの買い物を終えた2人は、休憩という事で近くにあった喫茶店に入っていた。

 

案内された席に座り、2人ともアイスティーを注文すると待ち時間の間で少し談笑する。

 

「ふ~、流石にこれだけ買うと重いね」

 

「私はそんなに買ってないけど…。ナデちゃん、随分買ったね」

 

「いや~、あんまりショッピング出来てなかったからね…」

 

そう照れながらいう奏の横には、どうみても5つ以上は紙袋が置かれている。

 

そんなに買ってないという椎奈の横にある紙袋は一つしかないので、奏がいかにたくさん買ったか分かるだろう。

 

と、2人が頼んだアイスティーが運ばれてきた。

 

それぞれ受け取ると、ストローを刺して静かに飲み始める。

 

と、3割ほど飲んだところで椎奈が口を開いた。

 

「ナデちゃん、何か甘い物頼まない?」

 

「お、いいねっ!そうしよっか!」

 

メニューを開き、奏がどれにするか考え始めると椎奈がポツリとこぼす。

 

「じゃあ、ここのお会計はナデちゃんに払ってもらうね?」

 

「あ、そういえばさっき奢るって言っちゃったぁ…」

 

メニューとにらめっこしながら財布の中身を確認する事になった奏であった。




以上です。


あぶねぇ、毎日不定時投稿途切れるかと思った。

字数縛りしてなければもう少し膨らませたかも?
いやまぁ決めた文字数ぴったりで書く練習だからなぁ。

明日分は特にリクエストされなければ整備士×ナデちゃんの③を書く。…かなぁ?


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誕生日記念:州天頃椎奈×家族パーティ

誕生日という事で記念に1000文字短編をば。

さて、間に合うかな…(執筆開始時刻21:59)


8月26日。

 

今日が誕生日である椎奈は、アマ女生徒会の面々からはもちろん、成子坂製作所のアクトレス達からも様々な誕生日プレゼントを受け取り、ささやかなパーティも行われた。

 

とはいえこの後に出撃の予定が入っている以上、本当に小規模なパーティだったが。

 

その後の任務中でも、誕生日であろうとも普段と変わらずにヴァイスを掃討し、成子坂製作所に帰投する。

 

 

 

そうして本日のアクトレスとしての仕事を終え、椎奈が帰宅すると何故か家が真っ暗であった。

 

現在時刻は20:00。

 

つまり家族は全員帰宅している筈であり、家が真っ暗であるというのはあり得ない。

 

しかし、玄関前から見た限り家の中の灯りは点いておらず、道場なども確認してみたが人の気配が無い。

 

「…どうしたんだろう?」

 

疑問に思いつつ、持っている鍵で玄関を開錠して家に入る。

 

やはりと言うべきか、誰の靴も玄関に置かれていない。

 

念のため確認したが、表札にはやはり州天頃と書かれており、家を間違えたという事はない。

 

何かあったのかと警戒しつつ、リビングの前に辿り着く。

 

少し集中して気配を探ると、2人ほどリビングの中にいる事が分かった。

 

(…強盗?2人くらいなら制圧できるけど…)

 

アクトレスとして自らを鍛えると同時に空手家としての鍛練も欠かしたことがない椎奈は、いかに成人男性が相手であろうとも2~3人ならば制圧できる自信があった。

 

 

 

息を整え、集中してドアノブに手を掛ける。

 

そうしながら、ドアを開けた後の事を脳内でシミュレートする。

 

(気配で探る限り、左右に分かれてるからまずは左側を制圧する。

その後はスピード勝負。右側の人が対応する前に制圧しよう…)

 

意を決し、ドアノブを捻って扉を押し開け。

 

 

 

 

 

パパパパンッ!という音と共に、左右紙吹雪が降り注いだ。

 

「「「お誕生日、おめでとう~!」」」

 

「……へ?」

 

ぽかん、と。

 

呆けた表情のまま、しばらく椎奈は固まっていた。

 

 

 

どうやら、サプライズだったらしい。

 

椎奈を驚かす為に、わざわざ家の電気を消した上で靴はリビングに移す徹底ぶりだった。

 

とはいえ、いつ帰ってくるのか分からないままずっと電気を消していた訳でも無いだろう。

 

そう思った椎奈が聞くと、椎奈が成子坂製作所を出た時点で隊長から州天頃家に連絡を入れていたらしい。

 

つまり隊長、もとい成子坂製作所の皆も知っていた訳で。

 

「まったくもう…」

 

膨れた表情で言いつつ、家族でのパーティが始まるのであった。

 

今日は空手はお休みだ。




執筆完了:22:36


普通に間に合いましたねぇ!?


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