レオ・ホワードは蛇寮行き (Mark1)
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配属

序章のようなものなので短めです


レオ・ホワード。

 

ここはホグワーツ魔法魔術学校。現在入学式であり、新入生は次々と組み分けされていく。

 

グリフィンドールかスリザリンかレイブンクローかハッフルパフか。

 

背の高い凛とした女性教授マクゴナガル先生が新入生の名前を呼び前に置かれた椅子に座るのだ。そこでボロのような帽子をかぶり、組み分けを帽子に委ねる。

 

今呼ばれたレオ・ホワードも新入生の一人だ。

 

彼は首元まである若干ウェーブのかかったシルバーブロンドの髪をはためかせ椅子へ向かう。彼の家は純血で代々獅子寮(グリフィンドール)に配属される闇祓いの名門ホワード家の末弟である。感情豊かでがっしりとした兄たちとは違い、細身で無表情。少々淡白、冷淡とも取れる男の子だ。

 

椅子に座り彼は青色の瞳を閉じる。組み分け帽子と会話をしているのだ。

 

『んん?…これはこれはホワード家の者だね?』

「レオだ。…よろしく頼む。」

 

組み分け帽子はレオがホワード家と知ると彼の兄たちの思い出話を楽しそうに語った。

 

『君は兄弟のようにグリフィンドールに行きたいとは思っていないね?』

「…どういうことだ。」

 

組み分け帽子はくつくつと笑いを堪え続ける。

 

『君と君の兄弟たちはとても似ていない。顔に面影こそあるものの、どこか決定的なところが兄たちとかけ離れている。…ああ、もちろん、それが悪いということではない。…ただ、君の思うようにグリフィンドールでは君は十分に成長できないだろう。』

「そこまで分かったのなら、とっくに答えは出ているはずだろう。」

 

組み分け帽子の言葉にレオの眉間にシワがよる。

 

『…まあいいだろう。組み分けを進めよう。グリフィンドールでないとすれば…君はスリザリンだろう。』

「ああ、それでいい。」

 

スリザリン!!!

 

組み分け帽子の声が大きく響き、スリザリンの席からは歓声と困惑の声。グリフィンドールからは驚愕。残り二寮からも同様の反応だった。

「なぜホワードが…」「純血」「あのホワード家から蛇が出た」など。

 

「やあホワード。スリザリンへようこそ。」

 

先輩に席へ案内されかけられた言葉はただの社交辞令のようで、歓迎はされていないとレオは感じ取っていた。

 

「ありがとう先輩どの。素晴らしい寮に配属されて光栄だよ。」

 

一応笑顔を作り、こちらも返すがその時の笑顔は人生最悪の出来だったと彼は語ったという。

 

Hの彼が終わり暫く経つと一際とスリザリンが盛り上がった。

ドラコ・マルフォイ。彼は椅子に座り数秒もせずに『スリザリン!!!』と組み分けを済まされる。

 

まあ誰もがわかりきっていたはずだが。

 

魔法界でも有名なマルフォイ家の長男に少しでも取り入りたいのか、上級生、同級生など関係なしにもみくちゃにされているようだ。だが、そんなマルフォイは生徒たちを適当にあしらうとまっすぐとレオの元へ向かった。

 

「やあレオ!同じ寮になることができて嬉しいよ。」

「ドラコ久しぶりだな。」

 

ドラコ・マルフォイは今までの憎たらしい表情がどこへやら、年相応の子供のような表情を浮かべ勢いよくレオの横に座る。「はしたいぞ」とレオに注意されるが笑って済ました。

 

「ほんとに何年ぶりなんだろう。君ってば全然手紙返さないからね。」

「ああ、ちゃんと読んではいたよ。」

 

その空間は見ているものからは異質だった。闇祓いの息子と元死喰い人の息子。決して仲良くないはずの二人がまるで長年の親友かのように仲良く料理に手をつけているのだ。

 

ドラコは笑顔でレオは全くの無表情なのだが。

 

「ああ、そうだ。グラップとゴイルもこっちに来たらどうだ?」

「おいやめろよ。ここのテーブル空になるぞ?」

 

よほど彼との再会が嬉しいのかグラップとゴイルをそばに呼ぶドラコにレオは勘弁してくれ、と困り果てた表情を浮かべるのだった。




ありがとうございました!
闇祓いと死喰い人の息子である彼らの絡みを見て「ん?」と思った方も多いと思いますが、そこら辺もじきに判明するので、暖かいめで見守ってくれたらな、と思います!


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薬草学 1

 

 

「今日はグリフィンドールとの合同授業だ。…スネイプ先生の授業なんだ、楽しみで仕方ないよ。」

「ああ、グリフィンドールが沢山減点されるんだろうな。我らがスネイプ先生はスリザリン贔屓って言うし。」

 

レオとドラコは今日の魔法薬学について廊下を歩きながら話していた。今回の魔法薬学は獅子寮の生徒と蛇寮の生徒で行われる合同授業であり、平和に片付くとも思えなかったのである。だが、ドラコが楽しみにしているのは獅子寮の生徒たちがスリザリン寮監督のスネイプにいじめぬかれることだろうか。

 

「一番の見ものはハリー・ポッター様だよ。」

「ポッターがか?」

 

「そうだ」とドラコは続ける。

 

「グリフィンドール生一の有名人なんだ。僕ならあんな奴見逃すはずがないね。」

「…そういう物なのか。」

 

最近のドラコの話題はハリー・ポッター関連の話が多い。ドラコ自体が彼に劣等感を抱いている風は感じられないが、目の敵にしていることは確かだ。

 

レオがドラコに質問を投げかけようとするのを遮る人物がいた。

 

「よおシックス(・・・・)元気そうでなによりだな。」

 

レオ達二人よりも大柄な生徒。

赤と金のネクタイが目立つ獅子寮の生徒だった。彼はその大きな体でレオをシックスと呼び獲物を見つけた猛獣のような目で舐めまわすように見つめる。

 

「珍しいこともあったものだな。。フィフス(・・・・)が俺に話しかけるとは。」

「はっ、スリザリンなんかに行きやがった大間抜けな六番目にわざわざ話しかけてやってんだ。ありがたく思いな。」

 

レオにフィフスと呼ばれた彼はいやらしい笑みを浮かべている。

 

「あいにくお前のようなやつに構ってやれるほど暇じゃなくてな。こんな暇があるのなら少しはファースト(・・・・・)を見習って勉強でもすることだ。」

「出来損ないのクソガキが俺に指図するんじゃねえよ。」

「おっと、これだからバカは困る。図体ばかりに栄養取られて頭に栄養回ってないんじゃないか?」

 

ギリッとレオの頭上から歯ぎしりが聞こえる。フィフスと呼ばれた男が口を開こうとした時。

 

「お、おい。僕らは今次の教室に移動してるんだ。邪魔しないで貰えないか?」

「あ?…ああ、なんだ。臆病で姑息なマルフォイ家のガキか。」

 

彼は次の獲物を見つけたように口角を釣り上げる。

 

「お前の家も大変だよなぁ?いい子ちゃんのフリして色々なとこのお偉いさんのとこ回ってるんだろう?…死喰い人の家は大変だねぇ?」

 

「シレンシオ(黙れ)」

 

レオが魔法を放ったことにより、彼はそれ以上の口撃を封じられた。

 

「ドラコ。次の授業に遅れる。」

「あ、うん。」

 

一瞬唖然としていたドラコだが、いつもと変わらぬレオにより、平常心を取り戻す。

 

一方彼はというと、呆然とレオのことを眺めていたが、たちまち顔を赤く染めあげ数メートル先を歩いていたレオに掴みかかろうとする。

 

彼の手があと少しで襟首を掴む。その時レオは素早く杖を抜き彼の顎下に突き立てる。

 

「いいか?俺らは早く次の教室に行きたいんだよ。お前みたいなバカと付き合ってる暇はないと度々言わせる気なのか?」

 

杖を突きつけられ何も出来ない彼はゆっくりと引き下がり、二人を人睨みすると走り去って行った。

 

「これだからバカは嫌いなんだ。」

 

ドラコの目には走り去る彼が酷く小さく見えて仕方なかったという。隣に立つ彼がとても大きく自分よりも何倍も優れた魔法使いと思えてしまったのだ。

 

 

 

 

「さっきのやつは君の兄か?」

「ああ、名前をアドルフ。ただの図体だけがでかい雑魚だよ。」

 

彼の兄の紹介にドラコは「ははは」と乾いた笑いしか出ない。レオの口の悪さは元から知っていたのだが、今日はいつも以上に口が悪いのだ。

 

「それでフィフスとかシックスって…?」

「それは寮に戻ってからだな。…ほら魔法薬学の授業が受けれるぞ。地下牢に到着だ。」

 

レオはニヤリと笑いながら「さあ席に座ろう。」とドラコの前を行く。先程の不機嫌さがまるで嘘のように上機嫌だ。

 

「グリフィンドールが苦しむ姿が楽しみだ。」

「君、急にグリフィンドール嫌いになってないか?」

 

ドラコの言葉にレオは「気のせいだ。」と首を振る。レオの家は家族同士仲がいいとは言えない。そのため同じ寮にならなくて喜んでいるほどだ。グリフィンドールのことが嫌いなのもアドルフがいることが原因である。

 

「そんなことは気にしなくていい。それに見ろよ、お待ちかねのハリー・ポッターが来たぞ。」

「ああ、見えているよ。」

 

「これからどうなるか楽しみだ。」とドラコは上機嫌に笑う。それにつられレオも口角を上げる。ついさっき彼らではないが獅子寮の生徒に散々気分を害されたのだ。この授業で少しでも気分を良くしたいというのはレオとドラコ二人の気持ちである。

 

 

魔法薬学の授業が始まり、まずはスネイプが出席を取る。順々に名前を呼んでいくとある生徒でスネイプは止まり。

 

「ハリー・ポッター。われらが新しい─スターだね。」

 

猫なで声で告げた。

 

それを聞きドラコやその取り巻き─グラップとゴイルが口を覆いながらククッと笑っている。出席を取り終わりスネイプは生徒をぐるりと見渡し一言。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。」

 

静かに声を張るわけでもなく、淡々と話し続ける。スネイプの言葉に獅子寮の生徒も蛇寮の生徒も静かに耳を傾ける。

 

「この授業では杖を振ったり、ばかげた呪文を唱えたりしない。いいかな。魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。」

 

教室が静まり返り生徒の息を飲む音が聞こえる。

 

「だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を。」

 

レオやドラコはスネイプの言葉を真剣に聞く。別にこのタイミングで蛇寮の生徒が失点されるわけもないのだが。

 

「ところで。諸君の中には自信過剰の者がいるようだ。」

 

スネイプは獅子寮の一人の生徒をその黒い目で見つめると─

 

「ポッター!」

 

突然名を呼ばれ、彼がすくみ上がるのがわかる。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」

 

困ったハリー・ポッターは周りをチラチラと見ている。周囲に助けを求めているようだった。そして彼は「わかりません。」と答えた。ハリー・ポッターのすぐ近くで獅子寮生の女子が高々と手を挙げているのをスネイプは無視する。

 

「チッ、チッ、チ─有名なだけではどうにもならんらしいな。では代わりにホワード、答えなさい。」

 

どうやらレオが選ばれたようだ。蛇寮の─しかも闇祓いの名門家の彼なら答えがわかると確信したかのようだった。

 

「はい。アスフォデルとニガヨモギを合わせると、眠り薬になります。それもあまりに強力な眠り薬となるため、『生ける屍の水薬』と言われています。」

 

特に自信げに告げるでもなく、淡々と無表情にレオは答える。

 

「特徴としては水のように澄んでいて透明。使用の注意をあげるなら、成分が強すぎると生涯眠り続けることになることでしょうか。」

 

レオが答え終えると蛇寮からは「おお」と感心の声が聞こえ、獅子寮は黙り込む。

 

「素晴らしい解説をありがとうホワード。スリザリンに十点。」

 

今度は歓声。

 

「では、ポッターもう一つ聞いてみよう。べゾアール石を見つけてこいと言われたなら、どこを探す?」

 

ハリー・ポッターが再び悩むタイミングで周りの生徒にレオは小さく告げる。

 

「スネイプ先生のことだ。スリザリンの生徒がきちんとノートに書き取っていれば点が貰えるかもしれないぞ。」

 

それを聞き、先程のレオの答えを蛇寮の生徒達は必死にノートに書く。

 

「ふむ、残念だ。ポッターはまたもや答えられるらしい。…すまないな、ホワード。スターのために解説を頼もうか。ベゾアール石を見つけるにはどこを探すか。ついでにモンクスフードとウルフスベーンの違いも聞いておこう。」

 

すまないと言う割には声色からスネイプ先生が愉快に思っているのを感じられる。再びレオは席を立ち。

 

「ベゾアール石は山羊の胃から取り出す石で、萎びた内蔵のような見た目をし、たいていの毒に対する解毒剤となります。」

 

「次にモンクスフードとウルフスベーンですが、この二つに違いはありません。どちらも同じトリカブトです。」

 

カリカリと蛇寮の生徒がノートにレオの答えを書き込無音が聞こえる。

 

「そうだ。またもや素晴らしい解説をありがとう。スリザリンに十点。」

 

そしてスネイプはわざとらしく周りを見渡すと、溜息をつき獅子寮の生徒を見る。

 

「諸君らはホワードの解説をノートに書き取ることも出来ないのかね?」

 

獅子寮が十点減点された。

 



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