ROCKMANZERO~赤い彗星~ (坊やだからさ)
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序章

昔、シャアがムーミン谷に異世界転生するという話を聞いたので。


宇宙世紀0093年

 

先のグリプス戦役以降消息不明だった、元ジオン公国軍エースパイロットであり、ジオン共和国創始者ジオン・ズム・ダイクンの息子であるシャア・アズナブルは、幾多の戦いを経ても旧態依然として地球から宇宙移民を統制し続ける地球連邦政府に対し、ハマーン・カーン亡き後に再編された新生ネオ・ジオンを率いて反乱の狼煙を上げる。

 

彼が率いる新生ネオ・ジオンは、小惑星5thルナを質量兵器として地球連邦政府があるチベットのラサに衝突させようとする。かつての宿敵アムロ・レイらが所属する連邦軍の外郭部隊ロンド・ベルの奮闘も空しく5thルナは地球へと落下する。しかし、これは彼の計画の序章に過ぎなかった。

 

5thルナの衝突という事態に慌てた連邦政府は、スペースコロニー・ロンデニオンにて密かに小惑星アクシズを引き換えとした和平交渉に踏み切る。シャアはこの交渉に合意。連邦政府は安堵するがこれも彼の思惑であり、武装解除を偽って少数戦力で連邦軍宇宙基地ルナツーを占拠。保管されていた核兵器を取引したアクシズへと運び込み、地球へ落すという最終段階へと移行する。

 

ところがそれを予測していたロンド・ベルの妨害に遭いアクシズは二つに大きく分断、彼の乗機であるサザビーもアムロ・レイが搭乗するνガンダムとの激闘の末に大破する。

 

だが、爆発の威力が強すぎた為に分断されたアクシズの後部がもはや阻止不可能と見えるほどに地球に接近しており、その巨大な影が地表から目視できるほどにまでになっていた。

 

アムロは、シャアの脱出ポッドを持ったままアクシズを押し返そうと動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小惑星アクシズ

 

「アクシズの落下は始まっているんだぞ!!アムロ、馬鹿な真似はやめろ!」

 

一騎打ちの末に敗れた私は、サザビーの脱出ポッドの中でライバルであるアムロに向かって叫ぶ。もう、手遅れなのだ。アクシズの軌道は変えることは不可能だ。だが、奴は私のポッドを掴んだままアクシズを押し返そうとする。

 

『νガンダムは伊達じゃない!!』

 

私の前でνガンダムは、最大出力でアクシズを押し返そうとする。

 

何故、認めない。

 

二つに割れたとはいえ、MS一機の力で地球の重力に引かれつつあるアクシズを押し返すなど誰が見ようと無理だと分かる。

 

しかし、人という生き物はなんとやら僅かな可能性でも賭けようとする。

 

νガンダムの行動を見てロンド・ベルのMS、遅れて駆けつけた連邦軍のMS、将又我がネオ・ジオンのMSたちまでもがアムロに続くようにアクシズの押し上げようと動く。

 

『なんだ?どういうんだ?』

 

アムロは、彼らの行動を疑う。私からすれば、一機のMSで押し返そうとする貴様の神経もうかがい知れんがな。

 

『やめてくれ!こんなことに付き合う必要はない!!下がれ!来るんじゃない!!』

 

『ロンド・ベルにだけいい思いはさせませんよ。』

 

『地球がダメになるか、ならないかなんだ!やってみる価値はありますぜ!!』

 

ポッドの中で話すことぐらいしかできない私とは対照的に彼らは、スラスターとバーニアを吹かしてアクシズを押す。限界が来るとバックパックが爆発し、あるものはアクシズに激突し爆散、ある者はその手を取ろうとするが自分も限界が来て引き離されていく。

 

『もういい!みんなやめろ!!』

 

離れて行く彼らの姿に対してアムロは、叫ぶ。このままでは恐らくガンダムとはいえ持ちはせんだろう。

 

「結局、遅かれ早かれこんな哀しみだけが拡がって、いつか地球を押し潰すのだ!ならば人類は、自らの手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して、贖罪しなければならん!アムロ・・・・何でこれが分からん・・・!」

 

そうだ。私はそれだけ多くのことを見て来た。

 

幼き日に父をザビ家に暗殺され、一年戦争で自身を導いてくれるかもしれないララァ・スンを失い、グリプス戦役で希望を見出したカミーユ・ビダンが精神崩壊したことを察知し、いくら希望を見いだしても、地球の重力に引きずられた人々のエゴに全てが押しつぶされて、刻の涙が止まることがないということを思い知らされた。

 

だからこそ、その権化ともいえる地球に住む人類を粛清せねばならないのだ。

 

『分かってるよ!だから世界に、人の心の光を見せなきゃならないんだろ!!』

 

分かっているさ。だが、その結果があの時のカミーユだ。

 

「そういう男にしてはクェスに冷たかったな、え?」

 

最後まで諦めを見せない奴に対して私は、皮肉を交えてあのニュータイプの少女クェス・パラヤのことを口に出す。

 

『俺はマシーンじゃない。クェスの父親代わりなどできない。だからか。貴様はクェスをマシーンとして扱って!』

 

「そうか、クェスは父親を求めていたのか。それでそれを私は迷惑に感じて、クェスをマシーンにしたんだな・・・」

 

何故彼女があそこまで私に対して固執していたのかようやく理解した。

 

あのアデナウアー・パラヤのことだ。余程愛のない家庭で育ったのだろう。だから彼女は父性に飢え、私を求めていたのか。

 

『貴様ほどの男が、なんて器量の小さい!』

 

「ララァ・スンは 私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララァを殺したお前に言えたことか!!」

 

最後とはいえ、錯乱しかけたのか私は思わず逆恨みのようにララァのことを口にしてしまう。

 

私にも責任の一端があることは分かっているのだ。彼女をフラナガン機関に預け、ニュータイプパイロットへと仕立てたのは私だ。そして、戦場に連れて行ったのも・・・ガンダムに撃たれることになったのも・・・私自身の業なのだ。

 

『お母さん?ララァが?うわっ!?』

 

流石の奴も今の私の発言には困惑したようだ。その時、νガンダムから眩い光が発し出した。それは瞬く間に周囲へと広がり、アクシズに掴まっていたMSたちを宇宙へと戻していく。

 

「これは・・・サイコフレームの共振?人の意思が集中し過ぎてオーバーロードしているのか。な、なのに・・・恐怖を感じない。」

 

その虹色の光は私にも届いた。死がすぐそばにまで迫っているにもかかわらず私はその光にあるものを感じられた。

 

「むしろ、温かさ・・・安心を感じるとは・・・!そうか」

 

私は、このぬくもりの正体を察した。これこそが人類の心の中に秘められたものなのだ。

 

地球に落下するはずだったアクシズは軌道を変え、地球から離れて行くのが分かる。虹色の光に包まれ、意識が遠のいていくことに気づきながら私は、ふと口を開く。

 

「ララァ・・・・・私は・・・・君の所へ逝けるのだろう・・・か・・・・・」

 

 

 

 

 

宇宙世紀0093年3月12日。

 

第二次ネオ・ジオン戦争は、アムロ・レイ、シャア・アズナブルの二人の男が消息不明という形で終戦を迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ROCKMAN ZERO ~赤い彗星~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・くう。こ、ここは?」

 

シャアは、意識を取り戻すとそこはサザビーのコックピットではなく、古びた遺跡のような場所だった。

 

(サザビーのコックピットからいつ下ろされたんだ?しかし、アムロは?νガンダムは一体どこへ・・・・・)

 

視界が不調だったのか一瞬頭を押さえるが自分の体にも違和感を感じた。ぎこちないというのかまるでMSのように機械の駆動音が聞こえるのだ。

 

更に自分の体をよく見るとノーマルスーツではなく、赤いプロテクターに黒いアンダーシャツのようなものを身に纏っており、身長も若干低くなったように見える。

 

(この体は一体・・・・ん?)

 

目の前に視界をやるとそこには一人の少女が自分を見ていた。

 

「ゼ、ゼロが・・・復活した・・・・」

 

「?」

 

少女の言葉に彼は更に困惑する。

 

そもそもネオ・ジオンの総帥である自分は世間でも素顔が認知されているはず。

 

なのに彼女は何故『ネオ・ジオンのシャア』ではなく、『ゼロ』と呼ぶのだろうか。

 

全く状況が事態に困惑するものの二人の目の前には見たことのない顔に赤いコア上のクリスタルを付けたロボット兵が迫ってきていた。

 

(なんだ?あのMSでもないロボットは?A.E社であんなものを開発しているとは聞いていないが・・・・)

 

「助けて。お願い、助けて。」

 

「ん?」

 

少女は、シャアに助けを求める。彼は、手元に武器がないことを確認すると近くで倒れている緑色の服の男の手元に銃が落ちていることに気づき、素早く拾う。

 

(見たことないタイプだが実弾ではないな。・・・・・この形状から見るとまさかこのサイズでEパック式を採用しているのか?)

 

どう見ても通常の拳銃ではない。構造はMSの火器に似た形状でギラ・ドーガやジェガンのものとは違い、かつてのガンダムMk-Ⅱのものに近い。彼はエネルギー残量を確認するとすぐにロボット兵たちに向かって発射する。

 

読み通りで弾は、ビームでロボット兵の顔に命中すると貫き、爆発する。

 

「来るんだ!」

 

ロボット兵を一掃するとシャアは、少女の手を取って通路の方へと駆け出す。

 

だが、移動中は知っている自分に違和感を感じる。

 

「ハア、ハア!」

 

(おかしい。これだけ走ってこの少女は息を切らしているというのに・・・・何故、私は何ともないんだ?)

 

実際、二人はほぼ同じ速さで走っていた。少女の方は息を荒くしながら必死についてきているのに対し、自分は呼吸が乱れていない。いくらニュータイプの素養を持つとはいえ、ここまで常人離れしているのは明らかに変だ。

 

しかし、通路の方にも先ほどと同じロボット兵が待ち構えており考える隙を与えない。

 

「ちい!落ちろ!!」

 

彼は、銃を的確に目の前の敵を倒していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく、進んでいくと二人は行き止まりにぶつかる。

 

「あっ!行き止まりになっているわ・・・どうすれば・・・・」

 

少女の様子を見る限りどうやらここを通って来たらしい。彼女が何とか通れないか確認しようと壁の近くまで歩いた瞬間、シャアの脳裏に警鐘が鳴り響く。

 

「いかん!それ以上行くのは危険だ!!」

 

「えっ?」

 

少女が振り向いた直後、足場が崩れる。

 

「キャアッ!」

 

悲鳴を上げて崩壊に巻き込まれようとしている少女をシャアは、ダッシュして抱きかかえるとそのまま落ちて行く。

 

「思っていたよりも深いな・・・軽傷で済めばいいが・・・」

 

だが、以外にも下は地下水でできた大きな水たまりがあったため、特に強い衝撃を受けることなく着地することができた。シャアは、少女をゆっくりと下ろす。

 

「怪我はないか?」

 

「え、えぇ・・・ありがとう。」

 

彼女は、礼を言うと周囲を見回す。

 

「どうやらここは前じだいの研究所のようね。もしかしたら、レジスタンスベースに戻れるトランスサーバがあるかもしれないわ。」

 

少女は、奥へと続く道を移動する。シャアは、追手が来ないことを確認すると彼女の後を追う。

 

(・・・少なくとも連邦兵どころかゲリラとかではなさそうだな。だが、ネオ・ジオンの兵士でもなさそうだ。この状況では恐らく本隊と連絡を取ることは困難だろう。だが、あの得体のしれない連中は何者なんだ?強化人間どころか人間ですらない。連邦が秘密裏に機械兵士を作ったとは思えんな。)

 

彼が少女に追い付くと目の前は道は瓦礫によって防がれていた。

 

「またしても瓦礫か。」

 

「だめだわ。崩れちゃってる。戻りましょうか?」

 

少女は困った顔で言う。だが、あんな高い位置まで果たして登れるのだろうか?

 

「ん!?(このプレッシャー・・・・何か来る!)下がれ!!」

 

「えっ・・・・キャッ!?」

 

シャアが鋭い声を上げて行ったのもつかの間、巨大な腕が瓦礫と吹き飛ばして少女を捕らえて連れ去った。後を追って、奥へ行くと巨大なロボットが彼女を捕らえて待ち構えていた。

 

「だめ。は、早く逃げて・・・こいつにはバスターが・・・・」

 

少女は苦しそうに言うが、同時に背後の出入り口が瓦礫によって塞がれてしまう。シャアは、逃げ場がないと判断すると銃の残りのエネルギー残量を確認する。

 

「・・・撃てて残り6発が限界か。しかも予備の弾倉もなし。いけるか?」

 

彼は、少女に命中しないようにロボットに向かって銃を撃つ。しかし、ロボット兵に対しては効果があった弾丸はいとも簡単に防がれてしまう。

 

「耐ビームコーティングがされているのか。ん!?」

 

ロボットは、口部を開けると緑色のレーザーを放つ。幸い射線は一直線のため、回避に問題はないが壁に命中するとロボットは顔を上げ、天井を撃ち抜いた。崩れ落ちた天井は、シャアの目の前に落ちるが彼はこれを足場として利用し、今度は顔を狙って攻撃をする。するとロボットは一時的に怯むがすぐに動き出し、第二のレーザーを放ってくる。

 

「ちっ!これではザクでアムロのガンダムを相手にしていた時と同じだ!いくらこちらの攻撃を浴びせてもビクともしない。このままでは・・・・・」

 

状況は異なるが確かに目の前のロボットはそれだけの強固な装甲を持っている。残りのエネルギーも少ない。

 

このままでは自分も彼女と共倒れになってしまう。

 

「ん?」

 

その時、部屋に設置されてあったモニターが薄っすらと光る。そこから彼の前に一本の剣が投げられる。

 

「ビームサーベル?」

 

それは、自分の世界で使われている近接格闘武装のビームサーベルによく似ている。

 

『・・・・コレヲツカッテ・・・・』

 

「誰だ!?」

 

『・・・ハヤク・・・、カノジョヲ・・・助ケナイト・・・サッ、ハヤク・・・・』

 

「・・・・・」

 

シャアは、得体のしれない存在に対して不信感を憶える。しかし、迷っている暇はない。こうしている間にもロボットは再びレーザーを撃とうとしていた。

 

「・・・何者かは知らないが今はその言葉に甘えさせてもらおう。」

 

彼は、サーベルを取ると壁を繰り上げて発射寸前のロボットの頭部に斬りかかる。

 

「沈め!!」

 

シャアは、サーベルを振り下ろす。ビームすら弾く装甲は容易に溶断され、地面に着地する。

 

ロボットは硬直し、誘爆し始める。同時に少女を拘束していた腕が離れ、シャアは急いで彼女を回収するとその場から離れた。

 

ロボットは一瞬のうちに爆発する。

 

「・・・・・・本当に何が起こっているというんだ。」

 

爆発が収まると彼は、庇っていた少女を開放する。少女は、驚いた顔でシャアを見る。

 

「ゴーレムを倒してしまうなんて・・・・・やっぱり貴方、あの伝説の、『ゼロ』なのね?」

 

「ゼロ?さっきから気になっていたが何故、私のことを『ゼロ』と・・・・!?」

 

ようやく敵がいなくなって落ち着いたこともあり、シャアはモニターに映る自分の顔を見る。

 

そこには、ネオ・ジオン総帥である自分の姿はなかった。

 

紅いボディにヘルメット、そして、長い金髪を持った少年とも青年とも言える男の姿が映し出されていた。

 

「これが・・・・私なのか?」

 

自分の容姿の変貌ぶりにシャアは、戸惑う。

 

何故、こんな姿になっているのか。

 

気を失っている間に何が起きたのか。

 

まるで見当がつかなかった。

 

「・・・・大丈夫?」

 

驚きを隠せないでいる彼に対し、少女は心配そうに声をかける。

 

(思い出せん・・・・・・私は、アムロに敗れ、奴のガンダム諸共アクシズが光に包まれたところまでは覚えている。だが、目が覚めてからこの状態はどうだ?姿は変わり、得体のしれない者と遭遇し戦うことになる・・・・・意識を失っている間に何が起きたというのだ?)

 

「・・・・ゼロ?」

 

「ん?いや、すまない。目が覚めてからよくわからない状況に困惑しているのでね。」

 

「もしかして、長い間眠っていたこととパッシィで無理やりプロテクトを解除したせいで記憶に影響を与えてしまったのかしら?」

 

「そうかもしれん(長い眠り?どういうことだかわからんが一応黙っておこう)。」

 

「無理やり起こしてしまってごめんなさい。・・・・そして、助けてくれてありがとう。」

 

少女は、謝罪とお礼の言葉を送ると少し時間を置き、自分の胸に手を当てながら自己紹介をした。

 

「私の名前はシエル。こう見えても科学者なの。」

 

「科学者だと?」

 

シエルという少女の言葉を聞いてシャアは、少し驚く。外見から見て少なくとも彼女は、一年戦争時のアムロ・レイ、グリプス戦役時のカミーユ・ビダンとそう変わらない年齢に感じられる。MSパイロットならともかく、この歳で科学者というのだから妙に信じがたい。

 

「ここで話すとまたいつ襲われるかわからないわ。さっ、敵が来る前に私たちのベースへ。」

 

そう言って彼女はシャアの手を引っ張って歩き出そうとする。

 

「・・・・シエル。君に一つ聞きたい。」

 

「えっ?何?」

 

呼び止められてシエルは、手を放す。

 

「私は、今自分の記憶を失っている。もし、私が君の求めていなかった『ゼロ』ではない無縁の存在だったら・・・・君はどうする?」

 

シャアの質問に対し、シエルは迷うことなく答える。

 

「私にとっては、貴方はもう『ゼロ』なのよ。」

 

「・・・そうか(若いな。だが、今は敢えてそういうことにさせてもらおう。私とて、そこらで犬死はしたくないからな)。」

 

部屋の奥の扉を通り抜けるとそこには見たことがない巨大な装置が置いてあった。シエルは、その装置を確認する。

 

「運がよかったわ、トランスルームが生きてる。上に立って装置を起動すればベースに帰れるわ。さっ、はやく!」

 

二人は、装置に乗る。すると装置が大きな振動を発すると同時に体が光に包まれる。

 

(さて、これからどうしていくべきか・・・)

 

シャアは、転送されていく中不安を感じるのであった。




続きは未定。


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再来の赤い彗星

やっとできた。


私の名は、シャア・アズナブル。

 

ジオン・ズム・ダイクンの遺児であり、現ネオ・ジオン軍の総帥である。

 

現在、私は、伝説のレプリロイド『ゼロ』として目の前で話をしている少女シエルからこの世界の状況を聞いている。

 

認めたくないことだがこの世界は、どうやら私のいた世界とは別世界のようだ。その証拠として、この世界では人類は宇宙へその勢力圏を拡大させ、スペースコロニーを建造することなく、地球を荒廃させ、自分たちの労働をレプリロイドと呼ばれているロボットたちに押し付けている。

 

私の世界でいうスペースノイドとアースノイドの関係を近いどころかより毒々しい悪意を感じられる。

 

レプリロイドは、『ロボット三原則』という括りに縛り付けられ、それを反した者は『イレギュラー』として他のレプリロイドに処分させるのだ。これは100年前から続いている関係らしく、このイレギュラーたちとの戦いがこの世界を荒廃させたのだという。そして、人類は自分たちが擦り付けた業を認めず、私・・・いや、この体の本来の持ち主である『ゼロ』の戦友である『エックス』が建国した『ネオ・アルカディア』に引きこもっている有様だ。

 

だが、これで終わりではない。

 

ここ数年、深刻になりつつあった『レプリロイドのエネルギー資源の枯渇』が問題化し始め、『エックス』はイレギュラーでもないレプリロイドたちを一方的にイレギュラーと認定し、粛正しているというのだ。これはかつてのティターンズが実行した30バンチ事件、ハマーンのダブリンへのコロニー落としを思い出させる。

 

この話をしているとき、彼女の表情に何か重いものを感じたが敢えて何も言わないことにする。

 

そして、このレジスタンスベースには命からがら逃げのびたレプリロイドたちが己の身を守るために築き上げた最後の砦だという。シエルは人間でありながらそれを指揮し、今日まで持ち続けたがついに限界が訪れ、最後の綱の頼みである『ゼロ』の伝説を信じて犠牲を払いながらもあの遺跡に行った。

 

尤も発見できたのが『ゼロ』ではなく、何らかの理由で体を乗っ取った私なのだがな。

 

「話は今言ったことがすべてよ。こうしている間にも多くの無実のレプリロイドたちが処分されているの。」

 

シエルは、不安を無理やりこらえながら私を見て話す。この話の流れだと恐らく私に助けを求めるのだろう。

 

「貴方の力を借りたいの!私たちの未来は貴方にかかっている。」

 

「・・・・」

 

「助けて・・・・くれるよね?」

 

年相応な、縋るようで甘えるように彼女は私に助けを乞う。もし、相手が私ではなくアムロだったら協力してくれただろう。だが、私は・・・・

 

「・・・・・」

 

「えっ?」

 

私は、無言で持っていた銃(話によるとバスターショットと呼ばれるビームマシンガンに近い武器でこの世界では旧式らしい)を彼女に返す。答えは簡単だ。『協力する気はない』。

 

「残念だが君たちの気持ちにこたえることはできない。確かに私は『ゼロ』かもしれないがそんな巨大な組織である『ネオ・アルカディア』から君たちを救えるほどできた存在ではない。」

 

「そんな・・・でも、あのゴーレムを簡単に・・・」

 

「シエル、君は私を買いかぶり過ぎだよ。君たちが追い込まれているのはこの基地の様子を見ても分かるが『ネオ・アルカディア』の全体からしてみれば君たちは『単なるテロリスト』に過ぎない。それに私一人が加わったところで戦況がよくなるなんて都合のいいことは起きんよ。『一騎当千』と言えばカッコよく聞こえるかもしれんが物量で勝る連中には無力に等しい。」

 

私は、己の体験を交えて皮肉を言う。

 

実際にレジスタンスの規模は極めて小さい。大きく例えるのなら一年戦争のジオンと連邦がいい例だろう。

 

私がレジスタンスに加勢したとしても一時的に寿命が延びるに過ぎない。神でもない限りこの戦況を覆すことは不可能だ。

 

それに・・・・私には彼女たちを導く資格はない。

 

この世界に来た意味は分からないが現にエゥーゴ時代におそらく最高のニュータイプになり得たカミーユを導くことができず、地球人類を抹殺しようとアクシズを落とそうとした男がこの私、シャア・アズナブルなのだ。

 

そんな私が彼女たちを導くなど都合がよすぎる。

 

私は、放心状態の彼女に背を向いて部屋の外へと出る。

 

「シエルさん、大変です。今日の正午にまた捕まった仲間の処刑が・・・・・あれ、ゼロさん!?」

 

「・・・・」

 

部屋の出口ですれ違った兵士を無視し、私は地上へ出るためのエレベータへと向かう。ゼロが元々どんな男だったかはわからない。だが、私にはその変わりが務まるとは思えない。

 

地上へ出ると見回り担当のレジスタンス兵が私に敬礼をして頭を下げて来た。

 

「あっ、ゼロさん。お会いできて光栄です!」

 

「あ、あぁ。」

 

「シエルさんのところへいると思っていましたが外へ出てくるとはどうしたんですか?」

 

流石に彼女の協力要請を断ったとは言いづらいな。

 

「少し周囲の状況を確認しようと思ってな。」

 

「偵察ですか。ご苦労様です!」

 

「だが、まだこの辺の地形をまだ把握していない。」

 

「それでしたら向こうの街の方をお願いできますか?」

 

レジスタンス兵は、基地からそう遠く離れていない廃墟の方へ指を差す。

 

「あの先には仲間のレプリロイドたちが毎日処分される処刑場があるんですよ。シエルさんの話では近いうちに開放作戦を展開して施設を破壊する予定なんですが・・・」

 

「処刑場か。」

 

ララァのところへは行けんかもしれんが、この荒廃した世界では長く持つまい。

 

「わかった。少し様子を見て来よう。」

 

「ありがとございます!お気をつけてください!!」

 

態々自殺しに行くことも知らずに兵は、手を振りながら私を見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いて街の中に入るとネオ・アルカディアの攻撃が早速とばかりに私に降りかかって来た。銃は彼女に返してしまったため、仕方なくあの謎の存在から受け取ったビームサーベルを使い、私は敵を破壊していく。途中で雨が降ってきたため、廃ビルの中で雨漏りがしていない場所で私は一時雨宿りをすることにした。

 

「・・・・・あの兵士の話が正しければ処刑場はあの建物になるな。」

 

黄色っぽい比較的にきれいなビルを眺めながら私は独り言を言う。反対を見れば基地が見え、さらにその先には広大な砂漠が広がっていた。

 

「・・・・アムロ、もし貴様がこの光景を見ているというのならそれでもあの時のように人類の可能性を信じることができるか?この世界の人間たちは、自分たちでやらなければならないことをレプリロイドに押し付けたことで地球をここまで荒廃させたのだ。遅かれ早かれ私のやったことと・・・何の変わりも・・・ない・・・・」

 

疲労していたのか私は眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、夢を見ていた。

 

そこはかつて一年戦争時私が借りたサイド6のロッジで、私はソファーに座っていた。

 

『大佐。』

 

背後から懐かしい声が聞こえる。振り向くと褐色の肌に透き通るような黒髪を団子状に束ねた女が私のことを見ていた。

 

『ララァ・・・・』

 

私はまるで母親に甘える子供のように彼女へ近づき、彼女の手を握ると思わず膝をついてしまう。

 

『大佐、迷ってらっしゃるのね。』

 

「わかるか?」

 

『はい。』

 

彼女は、ニッコリと笑いながら言う。

 

「ララァ、教えてくれ。私はどうすればいいのだ?」

 

『大佐。大佐はあの子をどうしてあげたいんでしょ?』

 

私の質問に対し、ララァは逆に質問を返してきた。

 

「シエルの事か?」

 

『大佐は、あの子の力になりたいと思ったんじゃないんですか?』

 

「傲慢だな。私にそんな資格はないよ。」

 

『本当に?』

 

吸い込まれそうな深い翠色を宿した瞳で彼女は私を見る。

 

「・・・・ララァの前では隠し事は出来んな。」

 

『大佐は大佐のやりたいようにやればいいわ。』

 

「だが、私は咎人だ。とてもだが彼女たちを導くことなどできんよ。」

 

『でも、大佐は今度は逃げたくないと思っているのでしょう。』

 

「・・・・」

 

『怖がっているのね。また、同じことを繰り返してしまうと。』

 

ララァは、そう言うと私の手を優しく包んでくれた。

 

「ララァ。私は正直言って今の自分が怖い。あの純粋な目をした彼女を導いてやりたい。だが、怖いんだ。カミーユの時と同じ過ちを繰り返してしまうのではないかと。」

 

『大佐、貴方も彼女も純粋なのよ。だから、助けてあげてください。かつて、私にしてくださったときのように。』

 

「君を死なせた私にか。」

 

『大佐ならきっとできるわ。』

 

そう言うと彼女は私の手を放し、その場から離れて行く。

 

「ララァ、待ってくれ。」

 

私は、彼女に手を伸ばそうとする。だが、その手は届かずどんどん離れて行く。

 

「ララァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ。」

 

シャアは、目を覚ますと目の前には相変わらず廃墟が広がっていた。

 

(夢を見ていたか・・・・・こんな体になっても私は今だにララァのことを忘れられんのか。)

 

彼を体を起こすと外を見回す。

 

「晴れているか。」

 

太陽の動きを見る限り、間もなく正午になる。

 

「・・・・・・・」

 

『貴方の力を借りたいの!』

 

脳裏にシエルの必至な顔が浮かび上がる。

 

「・・・・ララァ、私がこの世界に来たのは彼女たちを導くためということなのか?」

 

彼は、空を見上げながら独り言を言う。

 

「・・・私は『ゼロ』ではない。故に彼女たちの期待に応えることはできない。・・・しかし、これが私自身に与えられた贖罪で君の望むことだというのなら・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正午に差し掛かるまで残り10分前。

 

処理施設では今日もイレギュラ-と認定されたレプリロイドたちの処刑が行われようとしていた。その執行室の壁は血のような血痕がいくつも残っており、執行人である隼型レプリロイドが刻一刻と迫る処刑の時間を待ち続けていた。

 

「・・・・今日もまた処刑か。毎日同じようなことを繰り返していれば飽きるものだ。ハルピュイア様は何故私にこんな下らん茶番をやらせるのだ。」

 

アステ・ファルコンは、暇そうに呟く。彼の立っている床下では捕らえられたレジスタンス兵、そして、イレギュラーと烙印を付けられたレプリロイドたちが悲鳴を上げていた。

 

「ああ!助けて!助けてくれ~!!」

 

「フン、スクラップ共が。さっさとくたばってしまえばいいものを・・・・だが、それも後数分の命だ。せいぜい叫ぶがいい。」

 

アステ・ファルコンに同情という言葉はない。

 

彼は、レプリロイドの中でも選ばれたミュートレスレプリロイドであり、ネオ・アルカディア四天王の一人である賢将ハルピュイアの率いる『烈空軍団』の一人であるのだ。それ故にプライドが高い。

 

「さて、そろそろいつものようにあの悲鳴を聞かせてもら・・・・ん?」

 

装置を作動させようと動いたところで部屋の扉が開いた。

 

「何者だ?」

 

「名乗るほどの者ではない。ここにレプリロイドを処分するという施設があると聞いていたのだがここで間違いないかな?」

 

入って来たのはシャアだった。

 

「貴様、下のスクラップ共の仲間か?まあいい、私の名は『アステ・ファルコン』。ネオ・アルカディアの支配者『エックス様』に使える四天王の一人賢将ハルピュイア様の命でこの処刑場を任されている。」

 

「ほう、つまり貴様を倒せば彼らを解放させることができるということか。」

 

「どこの馬の骨とも知らない奴が何を言っている?しかし、貴様は運がいい。処分が開始されるまでまだ時間がある。特別にこの私が直々にスクラップにかけてやろう!!」

 

アステ・ファルコンは、彼に向かって突進をしてくる。

 

「単純な動きだな。」

 

シャアはいともたやすく回避すると収納していたサーベルを展開し、左翼を斬りつける。

 

「なにっ!?スクラップの分際で私の体に傷を!?」

 

アステ・ファルコンは両翼を広げる。すると壁蹴りをしていたシャアの体が引き寄せられるように離れる。

 

「今度は私が貴様を刻んでやる番だ!!」

 

アステ・ファルコンは、再び突進を仕掛けてくる。しかし、シャアは体に触れる直前に彼の頭部を掴み、反転して背後をとる。

 

「なっ!?また・・・・・」

 

「もらった!」

 

シャアは、アステ・ファルコンの頭部にビームサーベルを突き刺す。

 

「ガアアアアアアア!!」

 

アステ・ファルコンは、激痛に悲鳴を上げながらも攻撃を行おうとするがシャアは攻撃される前に彼の胴体を強く蹴り、吹き飛ばす。

 

「貴様あああああ!!」

 

彼は、両翼を床に突きつけて電流の塊を走らせる。

 

「当たらなければどうということはない。」

 

シャアは、電撃弾の軌道を読むと脚部のスラスター機能で瞬発的に加速して間合いを詰めて行く。

 

「許さんぞぉ!!スクラップの分際でこの私を!!」

 

だが、攻撃は当たることはない。錯乱しかけているせいなのかアステ・ファルコンの目には、シャアが徐々に一体のレプリロイドではなく、彗星のように見えて来た。

 

「み、見えない!?奴の姿が捉えられない!?何故だ・・・・カメラアイがイカレテしまったのか!?それとも・・・・奴が私の反応速度以上に速く・・・・!!」

 

次の瞬間、アステ・ファルコンの目の前にシャアが現れる。

 

「これで終わりだ。貴様の生まれの不幸を呪うがいい。」

 

それだけ言うと彼は、サーベルを振り下ろして頭部から真っ二つに切り裂く。

 

「赤い・・・彗・・・星・・・・・」

 

アステ・ファルコンは、断末魔にその一言を残すと爆散する。

 

「・・・・また、その呼び名で呼ばれるとはな。」

 

シャアは、アステ・ファルコンの残骸を確認する。

 

「フム・・・・・・この大きさでこれだけの出力を出せるのか。」

 

その残骸の中で唯一無傷で残った雷のマークが描かれたチップを回収する。

 

「後は、この施設を破壊しなければならんな。」

 

彼は、施設の奥へと入り動力炉をサーベルで破壊する。施設の機能の停止を確認すると続いて処理室の中へと入る。中では3人のレプリロイドが互いに抱き合いながら怯えている。

 

「怯える必要はない。ここの施設の機能は破壊した。これで君たちが処分される心配はない。」

 

「「「えっ!?」」」

 

捕まっていたレプリロイドたちは、その言葉を聞いて愕然とする。

 

「・・・あれ?じゃあ、ここを指揮していたミュートスレプリロイドは?」

 

「奴は、もういない。この先のトランスルームにレジスタンスベースへ行けるよう入力しておいた。」

 

「はっ、ははは・・・・・」

 

その報告を聞いたせいなのか一人が尻餅をつく。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、はい。ありがとうございます。まさか助かるなんて思ってもみなかったんで・・・・」

 

「立てるか?」

 

「いえ、まだ足がすくんで動けません・・・でも、動けるようになったらすぐに行きますので先に行っててください。」

 

「そうか。ここら一帯の敵は一応あらかた倒したが万が一のこともある。できるだけ早く来てくれ。」

 

そう言うとシャアは、施設の中へと戻り、トランスルームの転送装置でレジスタンスベースへと向かう。

 




MS出してえな。


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