のび太とツイステッド・ワンダーランド (祇圍 ケント)
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PROLOGUE【Welcome to the Villans' world.】
PROLOGUE・1 覚醒ストレンジャー!


 

気がつくと真っ暗な場所に閉じ込められていた。

 

(━━狭い!というか身動きがとれない!)

 

「……んだゾ」

 

(なんか外から聞こえるような……?)

 

「こうなったら………奥の手だ!ふな゛~~~~それっ!」

 

(えっ……?)

 

その瞬間扉が炎によってふっ飛んでいった。

 

「ぎゃ━━━━━!?!?」

 

僕は思わず驚いて叫んでしまった。

 

「さてさて、お目当ての……」

 

「って、ギャーーーーーー!!!!オマエ、なんでもう起きてるんだ!?」

 

僕は声の主に文句を吐き出した。

 

「いきなり何をするんだよ!このバカ!」

 

「誰がバカじゃーーーー!!!!オレ様はグリム様なんだゾ!」

 

まぶたを開けた僕の目の前には二足歩行の猫が居た。

 

(ね、猫?)

 

「まあいい。そこのニンゲン!オレ様にその服をよこすんだゾ!」

 

「さもなくば……丸焼きだ!」

 

そう言うと僕の周りに炎が広がり始めた。

 

「だ、誰か助けてぇ━━━!!」

 

僕は一目散に逃げ出した。

 

「あっ!オマエ!待つんだゾ!」

 

 

[図書室]

 

僕は走り続けていつの間にか図書室のような場所にたどり着いた。

 

「ハァ、ハァ あれは一体なんなんだ?」 

 

一息つこうと思い立ち止まると後ろから声が聞こえてきた。

 

「オレ様の鼻から逃げられると思ったか!ニンゲンめ!」

 

「ゲェ!あいつもう追い付いてきたのか。」

 

「散々逃げ回ってくれたな!オマエのせいで疲れたんだゾ!」

 

「さあ、丸焼きにされたくなかったらその服を━━」

 

そうグリムが言いかけると、何処からか黒い紐のようなものが現れてグリムを拘束した。

 

「ふぎゃっ!?痛ぇゾ!なんだぁこの紐!」

 

「紐ではありません。愛の鞭です!」

 

カラスの仮面を被ったシルクハットの男が近付いて来た。

 

「ああ、やっと見つけました。君、今年の新入生ですね?」

 

「ダメじゃありませんか。勝手に(ゲート)から出るなんて!」

 

「それに、まだ手懐けられていない使い魔の同伴は校則違反ですよ。」

 

「そいつは使い魔じゃ…「離せ~!オレ様はこんなヤツの使い魔じゃねぇんだゾ!」

 

「はいはい、反抗的な使い魔はみんなそう言うんです。少し静かにしていましょうね。」

 

「ん~!ふがふが!」

 

「まったく。勝手に扉を開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!」

 

「はぁ……どれだけせっかちさんなんですか。」

 

やれやれといった感じで男は肩をすくませて言った。

 

「さあさあ、とっくに入学式は始まっていますよ。鏡の間へ行きましょう。」

 

「……入学式?」

 

「そうです、伝統ある我が校の入学式です。」

 

「貴方が目覚めたたくさんの扉が並んでいた部屋で行われるのですよ。」

 

「この学園へ入学する生徒は、全てあの扉をくぐってこの学園へやってくるのです。」

 

「通常、特殊な鍵で扉を開くまで生徒は目覚めないはずなんですが……」

 

目覚めた部屋を思いだしてみた。確かに扉のようなものが浮かんでいた気がする。

 

「あの浮かんでいた棺は扉だったのか。」

 

「それまでの世界に別れを告げ、新しく生まれ変わる。」

 

「あの扉の意匠にはそんな思いが込められているのです。」

 

「……おっと!長話をしている場合ではありませんでした。」

 

「早くしないと入学式が終わってしまう。」

 

「さあさあ、行きますよ。」

 

「その前に、ここは一体何処なんですか?」

 

「おや?君、まだ意識がはっきりしてないんですか?」

 

「まあいいでしょう。よくあることです。」

 

「では歩きながら説明してさしあげます。私、優しいので。」

 

 

[中庭]

 

「ごほん。」

 

「ここは『ナイトレイブンカレッジ』。」

 

「世界中から選ばれた類稀なる才能を持つ魔法士の卵が集まる、ツイステッドワンダーランドきっての名門魔法士養成学校です。」

 

「そして私は理事長よりこの学園を預かる校長。ディア・クロウリーと申します。」

 

「ま…まほうし?」

 

「この学園に入学できるのは『闇の鏡』に優秀な魔法士の資質を認められた者のみ。」

 

「選ばれし者は、『扉』を使って世界中からこの学園へ呼び寄せられる。」

 

「貴方のところにも『扉』を載せた黒い馬車が迎えにきたはずです。」

 

(黒い馬車?)

 

たしか━━━

 

「そういえば、暗い森を通ったような……」

 

「あの黒き馬車は、闇の鏡が選んだ新入生を迎えるためのもの。」

 

「学園に通じる扉を運ぶ、特別な馬車なのです。」

 

「古来より特別な日のお迎えは馬車と相場が決まっているでしょう?」

 

「特別な日は馬車のお迎えですか。」

 

まるでお伽噺や童話みたいだと僕は思った。

 

「むがーー!むががーー!!」

 

なんかグリムが文句言いたげにしているな。

 

「さっ、入学式に行きますよ。」

 

To Be Continued



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PROLOGUE・2 厳粛ブレイク!

[鏡の間 - 入学式会場]

 

学園長に連れられて来たのは、僕が目覚めた部屋の扉の前だった。

 

前とひとつだけ違ったのは中から聞こえくる、たくさんの声だ。

 

「違いますよ!」

 

扉を勢いよく開けるなり学園長が言い放った。

 

「あ、来た。」

 

「まったくもう。新入生が1人足りないので探しに行っていたんです。」

 

「さあ、寮分けがまだなのは君だけですよ。狸くんは私が預かっておきますから、早く闇の鏡の前へ。」

 

「ふぐぐー!!!」

 

なんか窒息寸前みたいになってますけど?

 

《汝の名を告げよ》

 

「えーと、野比のび太です。」

 

《野比のび太……」》

 

《汝の魂のかたちは………》

 

………………

 

…………………

 

《わからぬ。》

 

「なんですって?」

 

《この者からは魔力は感じられるものの……色も、形も、まだ今はわからぬ。》

 

《よって、どこの寮にもふさわしくない!》

 

そう闇の鏡が言うと周りからヒソヒソ声が聞こえてきた。

 

「資質のない人間を黒き馬車が迎えにいくなんてありえない!」

 

「生徒選定の手違いなどこの100年ただの一度もなかったはず。」

 

「一体なぜ……」

 

あ!そこで手を離したら……

 

「もごもご…ぷはっ!」

 

「だったらその席、オレ様に譲るんだゾ!」

 

グリムが拘束を解いて飛び出して来た。

 

「あっ待ちなさい! この狸!」

 

「そこのニンゲンと違ってオレ様には資質があるはずなんだゾ! だから代わりにオレ様を学校に入れろ!」

 

「魔法ならとびっきりのを今見せてやるんだゾ!」

 

何かを察したように数人が備える。

 

「みんな伏せて!」

 

「ん゛な゛~~~!!」

 

また青い炎の爆発が起きて、部屋いっぱいに火の手が上がった。

 

「うわあ!! あちちちっ! 尻に火が!」

 

慌てた様子で学園長が言った。

 

「このままでは学園が火の海です!

誰かあの狸を捕まえてください!」

 

「チッ……かったりぃな。」

 

「アラ、狩りはお得意でしょ?

まるまる太った絶好のオヤツじゃない。」

 

「何で俺が、テメェがやれよ。」

 

喧嘩している場合じゃないと思いますが?

 

「クロウリー先生、おまかせください。」

 

「いたいけな小動物をいたぶって捕獲するというみなさんが嫌がる役目、この僕が請け負います。」

 

「さすがアズール氏。内申の点数稼ぎキマシタワー。」

 

御託はいいから早く何とかして下さい。

 

「なあ、誰かオレのケツの火ぃ消してくれてもよくねえ!?」

 

誰か早く水を持ってきてあげてー!

 

「みなさん、私の話し聞いてます!?」

 

……なんかみんな揉めているみたいですね。

 

「はあ…。狸捕まえるくらいアンタがやりゃいいだろ、センセー。」

 

「さっきから狸、狸ってオレ様は狸じゃねーって言ってるんだゾ!」

 

……なんかドラえもんを思い出すな。

 

「偉大なる魔法士になる男・グリムとはオレ様のことだゾー!」

 

「威勢のいい小動物ですね。リドルさん、お願いできますか?」

 

「違反者は見逃せないからね。さっさと済ませるとしよう。」

 

グリムは調子にのって手当たり次第に火を吹きまくってる。

 

「見ろ!オレ様はつえーんだゾ!」

 

なんか二人組がグリムの方に向かった。

 

あっ、グリムが逃げた!二人に追われてる。

 

……どうやら追い詰められたみたいです。

 

 

To Be Continued



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PROLOGUE・3 冷酷アンサー!

[鏡の間 - 入学式会場]

 

「━━━『首をはねろ』(オフ・ウィズ・ユアヘッド)!!」

 

赤い髪の人がそう言うとグリムの動きがいきなり止まった。

 

「ふぎゃ!? なんじゃこりゃ!?」

 

あれは……首枷?

 

「ハートの女王の法律・第23条『祭典の場に猫を連れ込んではならない』」

 

「猫であるキミの乱入は重大な法律(ルール)違反だ。即刻退場してもらおうか。」

 

「オレ様は猫でもねぇ~っ!!」

 

「こんな首輪すぐに燃やして……あ、あれ? 炎が出ねぇんだゾ!」

 

「ふん! ボクがその首輪を外すまでキミは魔法が使えない。 ただの猫同然さ。」

 

「に、にゃにー!?オレ様はペットじゃねーんだゾ!」

 

「心配しなくてもキミみたいなペットこっちから願い下げだ。」

 

うわ~以外と辛辣! 

 

「ま、学園からつまみ出される頃には外れてるよ。」

 

「いや~、相変わらず素晴らしいですね。 どんな魔法でも封じてしまう、リドルさんのユニーク魔法。」

 

「絶対に欲しい……じゃなくて。僕なら絶対にかけられたくありません。」

 

学園長が詰め寄ってきた。

 

「どうにかしてください!貴方の使い魔でしょう!?」

 

「しっかり躾を……「僕の使い魔じゃありません!」……え? 貴方の使い魔じゃない?」

 

「知らない人……じゃなくてケモノです。」

 

「……そ、そうでしたっけ?」

 

…………………

 

……………………

 

「ごほん! では学園外に放り出しておきましょう。鍋にしたりはしません。私、優しいので。」

 

「誰かお願いします。」

 

「ぎにゃー! 離すんだゾ!」

 

「オレ様は……絶対、絶対!」

 

「大魔法士になってやるんだゾー……!」

 

そう言うと扉が締まり連れられていってしまった。

 

(何で、あんなに必死だったんだろう?)

 

「少々予定外のトラブルはありましたが入学式はこれにて閉会です。」

 

「各寮長は新入生をつれて寮へ戻ってください。」

 

学園長が周りを見渡して言った。

 

「……ん? そういえば、ディアソムニア寮、寮長のドラコニアくんの姿が見えないようですが……」

 

「アイツがいないのはいつものことだろ?」

 

「あれ? もしかして誰も式のこと伝えていないのか?」

 

「そんなに言うならアンタが伝えてやればよかったじゃない。」

 

「うーん、でもオレ、アイツのことあんま知らないんだよなー。」

 

……なんかその人可哀想じゃない?

 

みんな言いたい放題だし。

 

「━━おお、やはり。」

 

「もしやと思って来てみたがマレウスは来ておらなんだか。」

 

「"また"式典の知らせが届いていなかったとみえる。」

 

「申しわけありません。決して仲間はずれにしたわけじゃないんですよ。」

 

「どうも彼には声をかけづらいオーラがあるんだよね。」

 

それを仲間外れと呼ぶのでは?

 

「まあよい。ディアソムニア寮の者はわしに付いてくるがいい。……あやつ、拗ねていなければ良いが……」

 

他の人たちは部屋から出ていくが、学園長と僕だけがこの場所に残った。

 

「━━さて、のび太さん。大変残念なことですが……」

 

「貴方には、この学園から出ていってもらわねばなりません。」

 

「適性を持たない者をこの学園へ入学させるわけにはいかない。」

 

「心配はいりません。闇の鏡がすぐに故郷へ送り返してくれるでしょう。」

 

「さあ、扉の中へ。強く故郷のことを念じて………」

 

(……故郷かぁ)

 

(……あれ、故郷ってどんなだったけ?)

 

「さあ闇の鏡よ!この者をあるべき場所へ導きたまえ!」

 

《………………》

 

「ゴ、ゴホン……もう一度。闇の鏡よ! この者を……」

 

《どこにもない……》

 

「え?」

 

《この者のあるべき場所はこの世界のどこにもまだ無い ……》

 

《しかし、資質は無にあらず。》

 

《よって選定に間違いは無い。》

 

「なんですって?」

 

学園長が取り乱したように叫ぶ

 

「そんなこと有り得ない!」

 

「寮分けできない生徒など適性が無い以外前代未聞です。」

 

「しかし闇の鏡に選ばれたことも事実……」

 

「ああ、もう今日はあり得ないのオンパレードです。」

 

《…………………》

 

学園長はため息をついて続けて言った。

 

「私が学園長になってから、こんなことは初めてでどうしていいか……。」

 

「そもそも貴方どこの国から来たんです?」

 

「どこの国って日本ですけど?」

 

そう言うと学園長が考え込んで言った。

 

「ニッポン……聞いたことのない地名ですね。」

 

「私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことがない。」

 

「一度図書館で調べてみましょう。」

 

……どうやら僕は異世界に来てしまったようです。

 

 

To Be Continued



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PROLOGUE・4 困惑アムネシア!

[図書室]

 

「やはり、ない。」

 

机一面に本や地図を広げた学園長が呟いた。

 

「世界地図どころか、有史以来どこにも貴方の出身地の名前は見当たりません。」

 

「貴方、本当にそこから来たんですか?」

 

怪訝な顔で学園長が訪ねてきた。

 

「嘘をついてるんじゃないでしょうね?」

 

「嘘なんてつくわけないじゃないですか。」

 

「……それもそうですね。」

 

「こうなってくると貴方が何らかのトラブルで別の惑星……」

 

「あるいは異世界から招集された可能性が出てきましたね。」

 

やっぱりそうデスヨネー

 

「貴方、ここへ来るときに持っていたものなどは?」

 

「身分証明になるような、魔導車免許とか靴の片方とか……見るからに手ぶらですけど。」

 

そういえば携帯も財布も無いや。

 

「まあ見るからに手ぶらです。」

 

ポケットにも何も入ってない状態です。

 

「困りましたねえ。」

 

「寮分けが出来てない以上どこの寮にも置いておくわけにはいかない。」

 

「しかし、保護者に連絡もつかない無一文の若者を放り出すのは教育者として非常に胸が痛みます。」

 

「私、優しいので。」

 

……なんか胡散臭いなぁ

 

「う~ん……………そうだ!」

 

「学園内に今は使われていない建物があります。」

 

「放置されてから大分経っていますが、大丈夫でしょう……多分。」

 

今聞き捨てならないこと言いませんでした?

 

「昔、寮として使われていた建物なので掃除すれば住めるんじゃないんですか?」 

 

「まあ、中の様子はしばらく見ていないですけど……」

 

本当に大丈夫なのかなー?

 

「なんかいい加減じゃないですか?」

 

「そ、そんなことありませんよ。」

 

「ともかく貴方をそこに泊めてあげましょう。」

 

「あ~なんて優しいんでしょう、私!」

 

うわー、とてもわざとらしい!

 

「ナ、ナンテヤサシインダー(棒)」

 

「では善は急げです、寮へ向かいましょう。」

 

学園長がそう言うと広がっていた本が本棚に自分で飛んで戻っていった。

 

「少し古いですが、趣のある建物ですよ。」

 

……すごく嫌な予感がするんですが?

 

To Be Continued

 

 

[news 称号:主人公を獲得]

 

[news 称号:漂流者を獲得]

 

[news 称号:廃棄物を獲得]

 

[news 称号:家無き者を獲得]

 

[news 称号:監督生の獲得条件を解放]

 

 

【主人公】

物語の主に与えられる称号。

「いつから君が主人公と勘違いしてたんだい?」

 

【漂流者】

異世界にたどり着いてしまった者に与えられる称号。「元の世界に戻れるとは思うな。」

 

【廃棄物】

世界から見捨てられたモノに与えられる称号。

「捨てられた方がマシな事もあるさ。」

 

【家無き者】

帰る場所が無くなってしまった者に与えられる称号。「帰る場所などもう無い。」



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