ポケットガストレア 巨乳/貧乳 (紅銀紅葉)
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1話
この世界にはそう呼ばれる不思議な生物が多種多様に存在する。
人類はガストレアとの共生に成功し、平和に暮らしていた──
「なんだこれ⁉」
「どうかしたんですか?
「『どうかしたんですか?』じゃねぇッ! 何故テメェがウチにいるッ?
八畳一間のおんぼろ部屋で、いるはずのない人物が何食わぬ顔で紅茶*2を啜っていた。
巳継悠河──コードネーム『ダークストーカー』。*3
蓮太郎の住んでいる『東京エリア』第九区*4にある額狩高校の制服こそ纏っているが、その正体は超党派、超国家組織『五翔会』*5所属の暗殺者である。
蓮太郎は組織にあらぬ罪を被せられ、目の前の男には友を殺された。国家をも敵に回した大逃走劇を繰り広げ、最後にはこの手で殺したはずの人間だ。
ならば目の前のこの男は亡霊か、それとも己の弱い心が見せる幻覚か。ふつふつと怒りがこみあげてくるが、悠河は首を傾げて警戒する素振りも見せない。
「何故って……君の家に来るのははじめてじゃないですよね」
蓮太郎は絶句した。この男はなにを言っている。コイツは本当に巳継悠河なのか。
思わず、感情が漏れる。
「お前は……誰だ」
悠河は朗らかに笑った。
「酷いな、幼馴染に言うことじゃない」
「俺の幼馴染は
「たしかに一番の付き合いが長いのは彼女なんでしょうけど。面と向かって言われてはさすがの僕も傷つきますよ」
彼からは一切の敵意を感じない。蓮太郎は構えを解きつつ、それでも警戒は怠らない。
「なら聞かせろ。さっきの放送、あれはどういうことだ。何故ガストレア*7が娯楽のように扱われているんだ? いやそもそも、ガストレアの使役だと? これは五翔会の仕業なのか?」
蓮太郎はもう一度テレビ画面を見た。いまも白衣を着た博士っぽい老人がガストレアの生態について解説している。
「なにを言っているんだ里見くんは……なんていうかその、大丈夫ですか?」
本気で心配している様子だった。
「いいから答えろ」
悠河は瞑目して息を吐いた。
「……たしかに一昔前までは、ガストレアが人類を脅かす危険な存在だったのは確かだ。僕も専門的なことまでは把握してるわけじゃないが、『ガストレアボール』が開発されてからガストレアは身近な存在になった。ガストレアと人間の関係は、切っても切れないところまで来ているんですよ」
ガストレアボール……ふざけた名称だが、それらしきものはさっきの番組で見た。
手のひらサイズのボールに吸い込まれていくステージⅢらしき蜥蜴型ガストレアの映像。
にわかには信じがたいが、そもそもこの世界は蓮太郎の常識が全く通用しない異世界のように思えた。そして不思議なことにその考えが正しいと確信を持って言える。
「そうだ、
同居人*8のことを思い出し、蓮太郎は部屋の中を物色した。
無趣味で貧乏な自分らしいなにも無い部屋には、
蓮太郎はパニックになりかけながらも、努めて冷静に疑問を口にした。
「悠河、『イニシエーター』*12ってなんだかわかるか?」
「いいえ」
「『呪われた子供たち』*13はッ?」
「知りませんね」
「そんな……」
つまりこの世界では、蓮太郎と延珠は知り合ってさえいないということになる。
これまで築き上げてきたものがガラガラと崩れるのを感じながら膝をつく。一刻も早く、この世界から抜け出さなければ。
その時インターホンが鳴ってびくりとする。乱暴に合鍵が差し込まれて開錠音。延珠がいないとなると、合鍵を持つ人物などひとりしか考えられない。
扉を開けて入ってきたのは、予想通り幼馴染で義理の妹の
「遅い」
「え?」
「まさか里見くん、今日がなんの日か忘れたんじゃないでしょうね。私ずっと待っていたのよ」
忘れるも何も、蓮太郎は今日の日付さえ確認していない。そんなことを言われても、というのが素直な感想だった。
「どうも、天童さん」
「ちょっと悠河くん、里見くんを呼びに行ってくれたんじゃなかったのッ? そんなに寛いで……って、あー! なに勝手に私の紅茶飲んでるのよッ!」
幼馴染──自分が恋焦がれる少女がかつての宿敵と普通に挨拶を交わしている。蓮太郎は頭が痛くなってきた。
──クソ、やっぱりアンタもおかしくなってんのかよ。
「おい、状況がつかめねえよ。ちゃんと説明してくれ」
木更と悠河が顔を見合わせる。
「前から話してたじゃない。今日は『ガストレア博士』からガストレアを受け取って、旅に出る日なのよ?」
「おや、随分と遅かったじゃないか諸君」
「『ガストレア博士』ってあんたのことかよ、先生」
「なにを言っている」
「すみません
「なんだいつものことだな」
意地の悪い笑みを浮かべる白衣の女性は
といっても蓮太郎が知る彼女は『ガストレア博士』などというショボい肩書ではなく、ガストレア研究者として立場ある存在のはずだ。そして日本最高の頭脳の持ち主にして世界でも四番以内に入る天才だったはずなのだが。
「ところで君たち、昼食はまだかね?」
蓮太郎はデジャビュ*15を覚えてその場から逃げ出したくなった。しかし両脇を木更と悠河に抑えられ身動きが取れない。
「「里見くんは朝食もまだです」」
「ふざけんな!」
「じゃあ食っていきたまえ。私からの餞別だ」
レンジから取り出した皿を蓮太郎の前に持ってきた。
真っ白い粥のような、半固形状のドーナツ(疑惑)。饐えたにおいは蓮太郎が過去に食べさせられたものとよく似ていた。
逃げ場を探して研究室をぐるりと見渡した。部屋の端に人影。防腐処置がほどこされた男の死体だ。
「彼はスティーブン。私の恋人だ」
「どこをどう見ても日本人なのは?」
「ハーフだったんだろ」
いけしゃあしゃあと言う。絶対名前忘れただけだ。
室戸菫は
そして過去に蓮太郎が食わされたドーナツ(疑惑)は死体の胃袋から出てきた物だった。今回もそうなのだろう。前回は飲み込んだ瞬間刺し貫くような痛みが喉を襲い、胃の中の物を全部ぶちまけたのだったか。
「そ、そうだ! この世界なんかおかしくねえか? 聞きたいこと、色々あんだよ」
「早く食え。食わないとガストレアは渡さん」
いらないが。
しかし木更と悠河は責めるような目で蓮太郎を見た。
「はやく食べなさい里見くん」
「巻き添えで僕までガストレアが貰えないなんてことになったら恨みますよ」
「俺が悪いのかッ?」
それでも嫌がっていると木更が菫から皿を奪い取り、蓮太郎の口元にスプーンで運ぶ。
「は・な・せ」
悠河に羽交い絞めにされる。
好きな人からの「あーん」。蓮太郎はちっともどきどきしなかった。
そして、投入。
「ぐおおおお」
喉が痒い!
蓮太郎は泣きながら洗面台に走った。
五分後、口の中が落ち着いてきたところで話が再開された。
「これが君たちのために用意したガストレアだ」
菫が取り出したスーツケースを開くと、中には六つのガストレアボールが入っていた。中には既にガストレアが入っているらしい。
「なあ先生、ガストレアボールってなんなんだよ。誰が開発したんだ?」
「そんなこと聞いてどうする」
「別にいいだろ」
蓮太郎は拗ねるように舌打ちした。
「君が知っているかはわからんが、私と同じガストレア博士のグリューネワルト翁*16が開発した技術だな。ボールは『バラニウム』*17でできていて、中に入ったガストレアを冬眠に似た状態にするんだ」
「それ、衰弱死しねえか?」
「しない。ボールから出てくればぴんぴんしている」
元の世界ではバラニウムを敷き詰めた部屋にガストレアを閉じ込めておけば衰弱死するという話も聞いたことがある。
グリューネワルトの技術が凄いのか、バラニウム磁場の影響を受けないガストレアの培養に成功したのか。*18
どちらにせよ良い印象は持たなかった。
「さて、諸君にはこの中から相棒となるガストレアを選んでもらう。一生の付き合いとなるから*19、よく考えて選ぶように」
菫は背後のスクリーンにガストレアのデータを映像付きで表示させた。この場でボールの外に出すことはできないので、これを見て判断しろということだろう。
「ガストレア:炎!」
『ぎしゃあああああああ』
「ガストレア:水!」
『ぎしゃあああああああ』
「ガストレア:風!」
『ぎしゃあああああああ』
「ガストレア:光!」
『ぎしゃあああああああ』
「ガストレア:闇!」
『ぎしゃあああああああ』
「ガストレア:無!」
『ぎしゃあああああああ』
「さぁどれを選ぶッ?」
「全部一緒じゃねーかッ!!」
ソシャゲの雑魚敵みたいなのを見せられた蓮太郎はキレた。*20
全部同じモデル・スパイダーにしか見えねーよ!
悠河は顎に手を当て考えること数秒、一歩前に出てボールを掴んだ。
「僕は無のモデル・スパイダーにします。無属性は属性不利がないですからね」
属性ってなに?
「蓮太郎くん、君はどうする?」
菫に問われた蓮太郎は困ってしまう。違いがわからない。
「んなこと言われてもな……」
それにモデル・スパイダーには良い記憶がなかった。*21
煮え切らない蓮太郎に菫は提案した。
「初心者向けのガストレアでは不満かい?」
「まず初心者にガストレアを渡すなよ」
いや、そもそもガストレアを飼育すること自体が間違っているのだが。
「実はこの六匹のほかに、扱いにくいガストレアがもう一匹いてね」
菫は白衣のポケットからガストレアボールを取り出して、スクリーンにデータを表示させた。
「モデル・ラビットのガストレアなんだが……これがなかなか言うことを聞かなくてね」
モデル・ラビット、延珠と同じ……。映像を見ていると無性に心がざわつく。真っ白で刺々しい凶悪なフォルムは、延珠とは似ても似つかない。しかしガストレア特有の真っ赤な双眸は、出会ったばかりの頃の延珠の、敵愾心と人間不信にすさんだ瞳に似ているような気がした。*22
「どうやら気に入ったようだな。さて、残るは木更の相棒だが」
蓮太郎にガストレアボールを渡した菫が、今度は木更を見た。
「そのことなんですけど菫先生、初心者用のガストレアを貰わなくてもいいのなら、私も里見君と同じように別のガストレアで旅に出てもいいでしょうか?」
「構わん」
「ありがとうございます、実は私、実家から取り寄せたガストレアがいて……」
蓮太郎は驚いた。この世界の木更は天童家との繋がりが切れていないのだろうか。*23
ならば何故、自分は一人暮らしをしているのか。*24謎は深まるばかりだ。
「よし、それぞれ準備は整っているようだな」
何故か用意されていた冒険用リュックを背負って、三人は旅に出た。
──まあ東京エリアからは出られないのだが。
「いい?里見くんは私の召使いなの。わかったなら何も言わずに伝説のポ〇モンを全部よこしなさい」
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2話
たんぱんこぞうの
「ちょっと待て」
蓮太郎は掌を突き出し「タイム」の姿勢を取った。
「あぁ?」
「あんたいまなんつった? 俺の聞き間違いじゃなけりゃ、短パン小僧って言わなかったか?」
鉄板のような胸板、燃え上がるように逆立った髪、吊り上がった三白眼の瞳。そのどれをとっても「小僧」とは程遠い風貌の巨漢。
伊熊将監。彼もまた死んでいるはずの人間だったが、視界に入る情報全てが強烈すぎて気にしている余裕はなかった。
「おいクソガキいまなんつったよ。どっからどーみても短パン小僧だろ?」
将監が自らの脚を見せつけてくる。
それはたしかに短パンだったが、そのはちきれんばかりの筋肉の主張が激しすぎた。
蓮太郎は見たくもないものを見せられて気分が悪くなる。二週間は悪夢に魘されそうだ。
「あんた『三ケ島ロイヤルガーダー』*2の伊熊将監だろ? なんの用だよ」
冒険に出た直後にどこからともなく現れたのが彼だった。蓮太郎の常識では、見た目め絡み方も完全に不審者のソレだ。
将監は心底腹立たしそうに言った。
「なにが『なんの用だよ』だよボクちゃん。見るからに素人じゃねえか。目と目があったら『ガストレアバトル』だろ?」
「ガ、ガストレアバトル? こいつら戦わせんのか?」
蓮太郎はポ〇モンには詳しくなかったが、ドラ〇エ派*3ではあった。それでもこの世界での順応性はミジンコ以下だった。
蓮太郎の動揺を見抜いた将監が嫌らしい笑みを浮かべる。蓮太郎は同時ににうすら寒いものを感じた。こいつは『蛭子影胤追撃作戦』*4のとき、『手柄は自分たち以外の誰にも渡さない』という考えだけで仲間の民警を殺害している。
嫌な汗が流れるのを感じつつ、ベルトの拳銃──スプリングフィールドXDに手をかける。
直後、将監が動く。
「ゆけっ!
将監はモデル・ドルフィンのガストレアをくりだした。
蓮太郎が聞き覚えのある名前に動揺する。この男は自分のガストレアに名前を付けているのか。その名前は元の世界での将監の相棒と一致していた。
そうなると『呪われた子供たち』が存在しないこの世界では、延珠たちはどうしているのだろうか。周囲の環境に延珠以外大きな変化は見られないため蓮太郎は、この世界の住人は、元の世界の住民とそう変わらないと存在であると考えている。多少感性にバグが見られるものの、もしかすると元の世界より平和的だ。少なくとも反ガストレアの差別的な社会ではない。
彼女らが温かい家庭に恵まれていることを祈って、気持ちを切り替える。
「頼むぞ!」
蓮太郎はモデル・ラビットで応戦する。
ガストレアは鼻をひくひくさせながら蓮太郎を振り返ったあと、モデル・ドルフィンにターゲットを定めた。
凶悪な前歯を見せ、甲高い声で威嚇。やる気は十分、こちらを嫌うような様子も見せない。
──なんだ、言うこと聞くじゃないか。
蓮太郎はモデル・ドルフィンを指さして指示を出した。
「まあよし! こんな世界でガチバトルしてもしょうがねーしさっさと倒すぞ! たいあたりだ!」
最後までトレーナー(?)同士の戦いに発展することなく、将監の背中にバスターソードが刺さることもなく*6戦闘が終了。
蓮太郎は初バトルにして初勝利を納めた。
予想に反して素直に引き下がった将監の背中が小さくなっていくのを見送って、蓮太郎は息を吐く。
「いったい何だったんだ……」
呆れるような素振りを見せる蓮太郎だったが、内心では大事にならなくてほっとしていた。バトル中何度も通報を考えていたのだ。顔見知りなのもあって結局流れに身を任せてしまったのだが。
ともあれ蓮太郎は、この先も流れに身を任せようと考えた。
ジムリーダー(?)を倒してガストレアリーグ(?)の頂点を目指す。
全てネットで拾った情報だったが、それがこの世界の脱出手段であると、何故だかわかるのだ。
ガストレアリーグへの挑戦権を得るためには、東京エリア各地にあるガストレアジムでジムリーダーと勝負し、実力を認められる必要がある。
蓮太郎は勾田駅まで行くと、切符を購入。都心行きの上り電車に乗った。現在地から一番近い第九区のジムに向かうためだ。
いつもより少し混雑した車内に早くも帰りたくなってくる。
偶然空いた席には座らず、窓際に立って外を眺めた。景色はいつもと変わらない。人々が纏う空気も、多分変わらない。
変わったとすればガストレア関連の施設が増えていることくらいだが、それも既存の施設が丸々別の役割を担っているだけらしく、目に見えて変化は生じないようだった。
変わったとすれば、これから向かうジムくらいだろう。
事前にインターネットで調べて出てきたジムの外観は、無駄に華美で世界観を無視した様相の建物だった。
ジムがあるという街には何度か行ったことがある。目的はその都度違ったが、記憶に新しいのは『片桐民間警備会社』*7を訪ねたときだ。そのときもそんな建物は存在しなかった。
電車を降りるとすぐにジムへの誘導が目に入った。目立つ赤い矢印はジムに行くのに一番近い出口を指している。
ジムがあるせいか、元の世界より少しだけ人通りが多い街にモヤモヤしながら歩くこと五分。
なんだか無駄に煌びやかでアメリカンな建物が見えてくる。外見だけなら世界崩壊の数年前に閉店したというアメリカのライブハウスに似ている。
「元は普通のビルだったのにな……」
つまるところ、東京エリアの街中にあるこの建物は完全に浮いていた。
やけに人の流れの多いジムに入ると、中は観光地にもなっているようで賑わっていた。
ひとまず受付で来意を告げると、インターカムでどこかとやりとりした後、奥から別のスタッフが出てきて案内される。
どこに通されるのかと訝っていたら、バトル用のホールだった。
周囲には観客席もあるが、客はひとりもいない。
蓮太郎がフィールドのチェックをしていると、会場にアナウンスが流れる。
これからジムバトルが始まることと、整理券配布の案内だった。
ほどなくして詰めかけたギャラリーたちが熱い視線を送ってくる。
信じがたいことにガストレアバトルはメジャーな文化らしい。
不意に、ブウウン、という虫の羽音めいた音が耳に入り、辺りを見回す。
──あった。見覚えのあるこぶし大の球形物。
まるで生物のように飛び回るビットはひとつではなく、蓮太郎が確認できただけで三つ。
「まさか……」
ひとりの少女を想起したところで、会場がワっと沸き立って、思考が現実に引き戻される。
なんだ、と正面を見ると、ひとりの男が会場入りしてきた。
黒のカーゴパンツにフィールドジャケット、飴色のサングラス、くすんだ金髪。見るからにヤンキーな青年は、蓮太郎もよく知る人物だった。
片桐玉樹。かつてともに死線をくぐり、背中を預けて戦った戦友。
思わぬ再開に啞然としていると、慣れた様子でギャラリーに手を振っていた玉樹が蓮太郎を見て嫌そうな顔をする。そして「うわ……」と。
「おいコラ、なんだよその反応は」
「日頃の行いを考えなボーイ」
玉樹の言っていることはわからなかったが、蓮太郎は別の意味で驚いた。
「俺のこと知ってんのか?」
民警などという野蛮な職業が無い以上、彼と自分に接点などないと思っていたのだが。
蓮太郎の反応が意外だったようで、玉樹も首を傾げた。
「てかお前がジムリーダーなのかよ?」
「馬鹿こけボーイ。初っ端からボス戦なんて虫が良すぎるぜ」
「じゃあお前は何なんだよ」
蓮太郎が億劫そうに尋ねると、玉樹が声高らかに叫んだ。
「名乗るぜ里見蓮太郎! 『NEXTジム』トレーナー、片桐玉樹! オレっちに勝つことが出来たら先に進ませてやるよ」
直後、客席から歓声。同時に巨大ホロディスプレイがギャラリー向けに投影される。
角度的にドローンで撮影──いや、蓮太郎の周りを飛んでいるビットで撮影しているらしい。
蓮太郎はボールを取り出して、トレーナー位置に着く。
それを確認した審判らしい女性は小さく頷いて、マイク越しに声を張り上げる。
『チャレンジャー里見蓮太郎選手対ジムトレーナー片桐玉樹! それでは、バトルスタート!』
玉樹が繰り出したのはモデル・スパイダーのガストレア。悠河のガストレアとの違いが判らなかったが、こっちは闇っぽいオーラを放っているので多分闇属性。知らんけど。
蓮太郎もモデル・ラビットをボールから出す。
「さあッ、踊ろうぜボーイ!」
『
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