機動戦士ガンダム進藤 (ドロップ&キック)
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第001話:”カガリ、太陽の都に立つ”

アクション皆無の第1話です(^^




 

 

 

Cosmic Era 71.1.25

オーブ所有コロニー ”ヘリオポリス”

 

「そろそろかな……」

 

()()()こと”カガリ・ユラ・アスハ”は、この時代の感覚だとオールドファッションに分類されるらしいデザインのダイバーズウオッチを見ながらそう独り言を呟く。

いいじゃないか。”フロッグマン”とか好きなんだから。特にアナログモデル。

とりあえず、

 

(打てる手は全て打った……はずだよな?)

 

根回しは終わってる。

あの、”クソッタレな愉快犯(ケナフ・ルキーニ)”が、”破滅志向の変態仮面(ラウ・ル・クルーゼ)”にオーブと大西洋連邦が共同開発している”G兵器”の情報を流した時点でヘリオポリス襲撃は回避できないだろう。

 

ケナフにこの世から消えてもらうって選択肢も無くはなかったけど……

 

(その場合、物語がどう流れてゆくかわかったもんじゃないからなぁ)

 

ヘリオポリス襲撃は”ガンダムSEED”の最重要イベントの一つ、物語全ての出発点だ。

それが万が一にも起きなかったら、どんなバタフライ効果が起こるか知れたもんじゃない。

 

(まあ、それでも襲撃されるのをただ座して待つ筋合いはないけどね)

 

この時期、MSを根幹とするザフトの戦力は圧倒的で、現状ではヘリオポリスに駐留してる軍事力で正面から戦うのはどう足掻いても不可能、対MSドクトリンが確立されないうちは被害が増えるだけだ。

 

ならどうするか?

 

(襲われるのは仕方ないにしても、被害は最小限に、)

 

「そして被害から生じる利益は最大限に……」

 

ワタシはそう呟きながら、カトウ教授のラボへと急いだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

今更だけど、このワタシことカガリ・ユラ・アスハは、”転生者”だ。

とは言っても残念ながらトラックにひかれた記憶もなければ、神様に出会ったこともない。

どうせなら、エリス様辺りに会ってみたかったものである。だがアクア、てめーはダメだ。

 

とはいえ、前世と呼ばれる時代の記憶は部分部分が酷く曖昧で、自分の名前やどんな人物だったのか……どころか、その時の性別すらもよく思い出せない。

今生では、胸は比較的薄くとも間違いなく女の体だが、言動とか思考とかがイマイチ女っぽくないのは、もしかしたらTSした影響かもしれないと少し考えている。

 

性別なんて些末的なものはどうでもいいとして、問題なのは鮮明に覚えているのは自分が、趣味嗜好や持っている知識や記憶の断片から考えて、こことは違う地球の20~21世紀にかけて生きていた”日本人”であろうということ。

そして、今生に酷似した世界を「()()()()()()()()()()()()()()()()()()」ということだろう。

 

語弊のある言い方だが、「観客だったはずなのに気がつけばキャストとして舞台に立っていた」というのがワタシの素直な感想だ。

 

 

 

だが、私自身は自分はさほど運が悪いとは思っていない。

むしろ、朧げな記憶の中にある各種”転生系主人公”と比べるなら、比較的()()な境遇とさえ思っている。

 

少なくても00の世界でガンダムマイスターやったり、鉄華団の一団員として生きるよりは人生イージーモードだろう。

死傷率もいくらか低いだろうし、何より人外変化もしないと思う。多分。

それに転生特典「()()()()()」もいくつか思い当たると言えば思い当たる。

自分の異能(チート)を懇切丁寧に説明してくれる存在はいなかったので、またしても感覚的な表現になってしまうのはご愛嬌だ。

 

中でも明確にチートと言えるのは、赤ん坊の頃……いや、より正確に言うなら「生まれ落ちた瞬間から転生者としての自我と記憶があった」ということだろうか?

 

だから、言葉をしゃべれるようになるまでに自分が何者なのか認識できたのは、我ながら大きな人生のアドバンテージだと思う。

まあ、同じベビーベッドで隣に寝ていたのがキラ・ヒビキ、後のキラ・ヤマトだと判明したときは、流石にビビったけどさ。

 

まあ、幼年期は実はそれほど大きな原作乖離はしてないはずだ。

規定通りにテロに遭遇した両親は生死不明の行方不明。そして、オーブ五大氏族の一つのアスハ家に無事引き取られた……と、そこまでは良かった(?)のだが、どうも厳密にはここは「ワタシが保持しているガンダムSEEDの世界」とは少なからず差異があるようだった。

 

例えば、ワタシが引き取られ新たな母国となった”オーブ連合首長国”だが、私の記憶の中にあるオーブはソロモン諸島を国土とするこじんまりとした島嶼国家だったが……この世界では、驚くべきことに面積だけで言うなら数十倍の国土を有する。

そう、ソロモン諸島が縄張りだった”()()”と違い、今生のオーブは「旧英連邦のフィジー諸島やバヌアツがあるシェパード諸島を除くメラネシアの大部分」を国土として有するのだ。

 

もっと具体的に言うなら、オーブの首都がある”オノゴロ島(この世界ではオーブ本島とオノゴロ島は同じ島)”の旧名、再構築戦争の前までの呼び名は「ニューギニア島」……グリーンランドに次ぐ島としては世界二位の面積を誇る島で、ニューギニア島の面積だけで約78.6万平方km、前世の日本の国土面積の約2倍の面積を誇る。

この巨大島に加えて、前出のソロモン諸島にビスマルク諸島を加えた物が、大雑把に言えばオーブだ。

 

ついでに言えば現状だと近場のフィジー諸島とシェパード諸島が英国からの流れで大西洋連邦の勢力圏、ニューカレドニアとニュージーランド、そしてオーストラリアが”大洋州連合”だ。

 

 

 

聞いただけで分かると思うが、今のオセアニア地区はちょっとした火薬庫だ。

 

大洋州連合は開戦以来、明確な親プラント路線を打ち出してるし、大西洋連邦直轄のフィジーやバヌアツ、そしてややこしいのはオーブだ。

オーブは確かに「大西洋連邦寄り」ではあるが、必ずしも「親地球連合()()()()」。

 

地球連合とは要するに、再構築戦争後に擁立した大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国などの寄り合い所帯で、再構築戦争以前の西暦時代の確執……歴史的背景から、オーブはユーラシア連邦をあまり好いてるとは言えずに距離を取りがちで、東アジア共和国はむしろ明確に嫌っている。

 

まあ、あまり細かく言う気はないが……オーブの公用語が日本語で、日本という国家が歴史用語になり、現在ある東アジア共和国が「どの旧国家が盟主となって成立したのか?」から察して欲しい。

ついでに言えば東アジア共和国の公用語は、”日本語()()()()”。

それはかつて、「日本と呼ばれた地区」でも同じだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そんな歴史と世界情勢だからこそ、オーブは真面目に国防に取り組んできた。

原作より人口学的には国土面積ほど倍加したわけではないが、それでも「南太平洋の大国」と称されるにふさわしいだけの、国力に見合った戦力を有せるよう努力してきた。

 

ワタシもできる限りの尽力はしてきたつもりだ。

転生者としての前世記憶(チート)を存分に生かし、遺伝子操作を受けていないナチュラルでありながら並のコーディネイターを凌駕する、進藤……じゃなかった”神童”と呼ばれる程度には、だ。

 

そして、特に大西洋連邦に強いコネを持つ国防を司るサハク家や、オーブきっての金権主義者であるセイラン家とは、間違いなく原作より良好な関係を築けてるはずだ。

 

その結果が、”今”だ。

 

 

 

襲撃が避けられない以上ヘリオポリスの崩壊は、おそらくもう防げないだろう。

正直、プラントの軍事組織、Z.A.F.T(ザフト)は人類史上初のコーディネイターのみで編成された軍隊だけあって、練度や士気は高いかもしれないがモラルは軍隊と考えるなら最底辺。ぶっちゃけ前世の記憶をなぞるのなら、南米で麻薬畑の用心棒やってるような民兵組織と大差ない。

確かに戦闘訓練は受けているだろうが、「軍人とは何ぞや?」というような軍や軍人の在り方を根本から問うようなまともな軍人教育を受けてるようには思えない。

つまり、スペックは高くとも常識だの良識だの人間性だのには、残念ながら上から下まで全く期待できないのだ。

 

(まあ、スペックごり押しで生まれた促成栽培の国家()()()に軍隊()()()だ。当然といえば当然か)

 

そんな連中が、民間施設や民間人の被害を考慮して戦うとは思えない。

例えば、オーブは地球連合にまだ加盟しておらず、如何に大西洋連邦よりで今もこうしてMSを共同開発してようと、形の上ではまだ辛うじて”中立国”だ。

 

ラウ・ル・クルーゼはその意味を理解した上での確信犯だろうが、他のザフトは兵卒から将軍クラスまで、「辛うじて中立を維持してる国の民間人が大量に居住するコロニー」を攻撃する意味など深く考えていないだろう。

 

連中にとっては、「中立を口にしながら敵であるナチュラルとMSを共同開発してるオーブは攻撃して構わない。民間人がどれほど死のうが、コロニーが崩壊しようが知ったことではない。我々はユニウスセブンに核を撃ち込まれ同胞を殺されたのだから、これは当然の権利だ」とでもなるんじゃないだろうか?

 

(前世の記憶、アニメの中のザフトと大差のない動きをしてる以上、)

 

「短絡的で恣意的な軍事行動は変わらないだろうな……」

 

今のザフトは所詮、「ユニウスセブンの怨念」で衝動的に動く武装組織に過ぎない。

その代表格がパトリック・ザラというのだから笑えない。

 

(連中はもはや国防という意識で動いてるわけじゃない……)

 

連中を突き動かしているのは報復心……つまり、怨嗟と憎悪だ。

理性や知性や打算ではなく、感情やら衝動やらより本能的な部分で動いてる以上、厄介なことこの上ない。

 

(そういう連中は、後先考えずに行動するからな~)

 

ともあれ、

 

「オーブの辿る悲劇は、止めてみせる……」

 

そう簡単に国土を焼かせてたまるかっての!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、久しぶりに仕事以外の文章を書いた気がします(挨拶

どうも、社畜です(泣
お久しぶりです。あるいは初めまして。

コロナ禍がいったんは納まり、出社再開になった途端、愛用のパソコンが壊れて途方に暮れてましたが、また細々とでも作品を書きたくなり投稿しました(^^

どこまで執筆続けられるかわかりませんが、とりあえずこのシリーズではカガリはヒロイン枠ではなくヒーロー枠ですw



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第002話:”親父殿は政治家としては落第だな”

なんとなく書きあがったので、第2話投稿です。
今回は、サブタイ通りにウズミアンチな内容です。




 

 

 

転生者と書いてカガリと読む、カガリ・ユラ・アスハのお通りだぞいっと。

ああっ、おかしなテンションで申し訳ない。

身体は一応女だが、中身は性別不詳のカガリ・ユラ・アスハだ。

 

唐突ではあるが、これでもワタシは割と用意周到な方だと思ってる。

根回しとか割と好きだしな。

そういうわけで、育ての親であるウズミ・ナラ・アスハや養叔父のホムラより、体型的な意味も含めて”オーブの誇る狸オヤジ”ことウナト・エマ・セイランの方が実は話が合うんだ。これが。

 

勿論、ワタシ自身がロクデナシだって自覚はあるぞ?

理想より現実を、理念より実利をとるのがワタシだからな。

なので最近は、親父殿との喧嘩が絶えないな。

 

一応、言っておくけど父としては、少なくとも嫌っていないぞ?

漢気とやらも感じられるし、基本的には善人であるとも思う。

だが、一政治家として考えると……評価は一変する。

 

親父殿には悪いが、前世のアニメの中でも今生でのリアルの中でも、政治家としては最悪の部類だと思う。

 

前世が20~21世紀に生きた日本人の価値観が魂の奥底にしみついてることを前提に話させてもらうが……

 

「国民の生命や財産より、国家の理念を優先する」

 

……バカじゃないだろうか?

悪いね。おそらくワタシは前世から口が悪い。どうやら、ワタシの口の悪さは一度死んだくらいでどうにかなるものじゃないらしい。

だが、偽らざる本音だ。

そもそも人間ってのは一人で生きるよりはまとまって生きる方が生存率高いから、村が生まれ街が生まれ、やがて国になったんだ。

んで、国が軍隊を持つのは本質的には国土防衛、自分たちに政治が及ぶ範囲の土地、そこに住む民を守るために軍隊がいるんだ。

そして国民は、いざという時、自分達の生命と財産を守ってくれるからこそ、自分達が納める税金が国防費に割かれる事を納得するんだ。

 

それが、国家に対する信用って奴だ。

敵対勢力が自分たちの存在を脅かしたとき、守ってくれると信じてるからこそ、軍隊ってのが基本的に利益も生まなければ生産性もない組織……破壊と殺戮をその本質とする、『国営暴力装置』とわかっていても積極的に受け入れる。

 

ついでに言えば、この世界のオーブの住人は、「再構築戦争で日本という国が歴史用語になった」経緯、というかそのトラウマのせいで国防意識が高い。

 

だが、今生ではまだ確定未来ではないが……少なくとも、ガンダムSEEDってアニメでは、ウズミ・ナラ・アスハはその国民の信用をこれ以上ない形で、完膚なきまでに裏切った。

 

よりによって、国民に「自分たちも死ぬからお前たちもオーブの理念のために死んでくれ」と行動したのだ!

 

 

 

ワタシは、国家の理念なんてものは「国家を維持発展させてゆくための方便」としか思っていない。

国家の体裁を成すのに理念が必要なら、存分に使えばいい。

 

だが、逆に言えばそれだけのものだ。正義や理念や理想なんてものは、所詮は概念であり、時代や価値観とともに変遷してゆく……言ってしまえば、極めて流動的で不安定なものだ。

間違っても永遠なんかじゃない。

 

そんなもののために大事な納税者に死ねと?

冗談じゃない。

確かにオーブは旧日本から引き継いだ「国民の三大義務」はあるさ。

教育、勤労、納税の三つだが、そこに「理念に焼かれて爆死する」なんてものは入っていない。

武田信玄の名言、”人は城、人は石垣、人は堀”じゃないが、どんな政治体制であろうと国民あっての国だ。その逆はありえない。

 

当たり前だが、だだっ広い土地に一人で住んでいても国とは呼ばない。土地に国民が住み、そしてそれが一つのコミュニティーとして機能してこそ初めて国家の資格を得る。

具体的に言えば、領域(領土/領空/領海)と国民と権力だ。

 

この権力、主権も大雑把に言えば対外主権、対内主権、最高意思決定となるのだが……そこに理念なんてものは入ってこないのだ。

 

 

 

結局、アニメにおけるウズミ・ナラ・アスハの行動は、「国民や国家を巻き込んだ自己満足の果ての壮大な自殺」にしか見えないのだ。

 

大体、まともな国防計画の策定もできてない状態で、理想を叫んでイキれば、そりゃ叩きのめされるだろうさ。

なにせ、相手はガチに戦争真っただ中の「戦時下の国家」だ。

 

まあ、確かに「ウズミはあの時すでに代表首長ではなかった」だの「ウズミだけではなくサハク家にも責任がある」とか、「あの時の地球連合はほぼブルーコスモスだったので、仮に戦わなくとも進駐されればコーディネイター系住民の虐殺が起きていた」だのと弁護するコメントもあったようだが、ワタシに言わせれば何の弁明にもなってない。

 

ホムラを傀儡にし、あの時のオーブの最高権力者はウズミだったわけだし、そもそも住民虐殺なんてものが起きないように、戦う前から……いや、ほかの選択肢も視野に入れながら国家の舵取りを行うのが政治家だろうに。

どんな事情があろうと、結局理念に従い要求を突っ撥ね、結果として住民が虐殺されたのが当時のオーブだ。

 

それに国民は当たり前だとしても、同情すべきはオーブ軍もだろう。

国防軍の名を冠しておきながら、名前負けもいいとこの行動しか出来なかったのだから。

 

 

 

理想に溺れて溺死するのが、ウズミとその取り巻きだけだったら別に構わないさ。

だが、国民がそれに巻き込まれるのは看過できない。

 

だからこそ、ワタシは行動した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

確かに親父殿は国民に人気がある。

カリスマ性っていうのか? そういうものがあるのは事実だ。

 

おそらくだが、親父殿(ウズミ)の権力とカリスマの絶頂期は、約1年前……C.E.70年2月8日の『中立宣言』だろう。

 

だが、程なくワタシは物心つく頃から付き合いのあったサハク家やセイラン家と共謀し、冷水どころか氷水を頭から被せた。

 

『中立宣言』から約3か月後の5月18日、ワタシの誕生日に合わせて『友好国との国防兵器開発に関する議定書』が議会に提出され、賛成多数で可決されたのだ。

 

友好国とは言うまでもなくスカンジナビア……ではなく、サハクやセイランが太いパイプを持つ”()西()()()()”だ。

 

 

 

どうして、親父殿相手に可決し、兵器共同開発に関する法案を可決できたのか?

なんの事はない。議会制国家の常套手段である『多数派工作』を行っただけだ。

 

実は当時、既に場は温まっていたのだ。

例えば、プラントあるいはザフトが行った代表的な非道の一つ、『エイプリルフール・クライシス』

 

諸事情があり、原子力発電に頼っていないオーブはさして影響を受けなかったが、最終的に地球の総人口の1割が死んだとされるこの悲劇……連日、エネルギー不足とパニックで誘発された飢餓や疫病、凍死や暴動で死んでゆく人々の姿が、『あらゆるメディアで、()()()()()()()()延々と流された』のだ。

 

そして、この後にプラントの正式な表明、「ユニウスセブンに核を撃ち込まれたが、理性的な我々は核報復ではなくニュートロン・ジャマーによる各動力の停止にとどめた」が発布され、その全文がオーブにも連日流布された。

 

この時、既にサハク家やセイラン家の後押しで『()()()()()()()()』に座っていたワタシも、正式なコメントを5月5日に出している。

正確には、演説を一席ぶった。

ちょっと内容を抜粋すると……

 

『プラント並びにその()()()()であるザフトは、24万人の報復に地球総人口の1割……の10億人の民を殺し、それを理性的な判断だと標榜している。そして、この悲劇で死んだ者はナチュラルだけではない』

 

『プラントに住むコーディネイターは約6000万人、地球上に在住しているコーディネイターは最新の統計で約5億人。つまり、彼らは計算上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を殺してみせた』

 

『ナチュラルとコーディネイターの共存を国是するオーブには、現在1500万人のコーディネイター系住民がいる。だが、その諸君に問いたい。果たしてプラントに住むコーディネイターを同胞(はらから)と呼べるのかと』

 

『そして誤解してはならないのは、5000万人のコーディネイターを含む10億の地球の住人を殺す決定をしたのは、地球に住んでいた5億のコーディネイターではない! プラントに住む6000万人のコーディネイターだということを!』

 

『ナチュラル、コーディネイター問わずに行われた”()()()()()”は、断じてコーディネイターの総意ではない!!』

 

『今回の虐殺を行ったのは、コーディネイターという種族ではなく、それを命じたプラントであり、それを執行したザフトである!!』

 

『諸君! 今、何が起きてるのかを見誤ってはならぬ!!』

 

 

 

かなり端折ったが、こんな感じだ。

この演説の後、行き場を失った(主に大西洋連邦からの)大量のコーディネイター移民など、決して無視できない原作乖離があったが、今回は割愛する。

 

他にもカーペンタリア湾への基地降下などがオーブ国民の危機感を煽る追い風になり、世論への干渉……好ましい方向への印象操作は、思いの外簡単にいった。

 

オーブは、正式名称”オーブ連合首長国”の名の通り、完全な民主主義国家というわけではないが、かと言って議会や民意を氏族会議が平然と無視できるような国家でもない。

 

(しかも、そのうち二氏族はワタシの味方と言っていい……)

 

 

 

そして、その成果が……ささやかとは言え、歴史の変更点がもう直ぐワタシの目の前に現れるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




このシリーズのカガリは、噓は嫌いですが印象操作とかは大好きです(挨拶

とりあえず、ドンパチまであと何マイルあるのだか(^^



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第003話:”カガリのニコニコ生配信”

暴走気味に書きあがったので投稿です。
う~ん……ここまで無茶なペースで書いたのは久しぶりです(^^




 

 

 

去年、C.E.70年2月8日に親父殿(ウズミ)が掲げた『中立宣言』、その3か月後の5月18日……ワタシの15歳の誕生日に合わせて法案提出され、国防族議員や右派議員の賛成多数で即日可決された『友好国との国防兵器開発に関する議定書』に関する法律……いわゆる、『修正国防調達法』は、自分で言うのもなんだが歴史を変えた瞬間だと思う。

別の言い方をすれば、明確な原作乖離だ。

 

何が原作と乖離したのか?

なんの事はない。原作ではサハク家が暗躍して、いかにも後ろ暗くコソコソ行っていた大西洋連邦とのMS共同開発だったが……今生では、

 

『オーブ国民の支持と了承の下、公明正大に()()()()()()()大西洋連邦とのMS共同開発』

 

を行う事が出来るようになったのだ。

無論、親父殿は『中立宣言に反する』と大激怒だ。

ああっ、”オーブの獅子”なんて二つ名で呼ばれる親父殿ことるウズミ・ナラ・アスハだが、その由来が鬣を思わせる髪と髭の風貌というのもあるが、もう一つの理由がその怒鳴り声がライオンの吠え声を彷彿させるからだというのは、意外と知られてないみたいだな?

 

まあ、それはいいとして……こちとら中身は15の小娘ではなく、転生者。

何歳ぐらいでどうして死んだのなんて覚えちゃいないが、前世と今生を合わせれば親父殿と同じぐらい歳くってるはずだ。多分。

それがなくても外面は良くても、中身は天上天下唯我独尊、傲岸不遜が持ち味の性別不詳なロクデナシだ。

リアル獅子に喉笛噛み千切られそうになってるのならいざ知らず、怒鳴り声でビビるような可愛げなんて生憎持ち合わせちゃいない。

 

なので、代表首長である親父殿と議会の臨時議会代表となったワタシは、「氏族と議会の全面的な対立を回避する」という名目で枢密院(=五大氏族の残り四家)がお膳立てた”公開討論会”で政治学的な一騎打ちを行う運びとなった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そもそも、『中立宣言』の骨子とは何か?

本質的には、「いかなる事態が起ころうとも、独立と中立を貫く」ことが目的であり、具体的には「オーブは他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しない」という方針だ。

 

だから言ってやった。

 

「なぜ大西洋連邦との兵器の共同開発が独立と中立を脅かすことになる?」

 

「兵器共同開発の骨子は互いの持てる技術を持ち寄っての、開発の効率化と開発期間の短縮、開発リスクの分散を目的としているんだ」

 

「大西洋連邦はプラントとの戦争でMSが必要かもしれないが、オーブもまた国防でMSを必要としている。親父殿は戦争にダイナマイトが使われたらノーベルを責めるクチか? 日本に核兵器が落とされたのは、核兵器の開発者であるオッペンハイマー博士が悪いのか?」

 

「兵器に善悪なんてあってたまるか。そもそもMSはニュートロン・ジャマーによる電波妨害下環境で最大限の効果……光学センサー頼りの有視界戦闘、クロスレンジじみた近距離戦で最大限の力を発揮する”純然たる戦術兵器”だ。それが何故、侵略云々の話になるのかワタシにはさっぱり理解できない」

 

「何より、『他国の侵略を許さない』というのなら、それこそ今まさに”目の前にある侵略の危機”……カーペンタリア湾に降ってきたザフトの基地はどうする? 24万人の報復に10億の民を殺したザフトは、普通にMSを装備してるぞ? 親父殿はまさか”L5宙域事変”から始まるMSの優位性を知らないとでも?」

 

 

 

とまあ、こんな調子で理詰めで追い詰めたわけだ。

そして、この模様はネットで生配信したのだ。オーブだけでなく、とりあえずネットが視聴できる環境なら世界のどこでも視聴可能だったはずだ。

言うまでもなく、元ネタは某ニコ動生配信だったりする。

 

親父殿にその事を知らせようと私との言い合いに駆け付けようとした者もいたらしいが、悪いがすべてシャッタアウトさせてもらった。

もっとも、例え知らされたとしても親父殿の態度は変わらなかった気もするが……

 

理念や理想、あるいは原則論に拘る親父殿と、「理念や理想なんざクソ喰らえ。現実を見ろ現実を」という態度を崩さなかったワタシは、最後まで平行線だった。

 

そこで、唯一の結論として出たのは『国民投票で是非を問う』だった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

結果は言うまでもないよな?

 

 

『仔獅子の叛乱』だの、『身内からの政治学的クーデター』だのと一部メディアから面白おかしく書かれもしたが……

選挙権のある国民約1億5千万人の投票の結果、賛成多数で大西洋連邦とのMS共同開発が可決されたのだ。

 

もっとも、そうなっても親父殿……ウズミ・ナラ・アスハの退陣要求は出なかったし、世論調査の支持率も大きな変動はなかった。

なんのかんの言っても、典型的な『国民が望む強い指導者』的なカリスマに溢れた親父殿は、国民に愛されているのだろう。

そのあたり、さすがは”オーブの獅子”の面目躍如というべきか?

こんな時代だからこそ、タフな政治家という者が国民に求められてるのかもしれない。

 

 

 

だから、こうして原作をなぞるようにワタシはヘリオポリスへと来ているが、その意味は前世で見たアニメのそれとは、意味がかなり異なる。

 

確かにお忍びではあるが、目的は何か探りに来たのではなく、非公開/非公式の”視察”、開発状況の確認だ。

 

そう、大西洋連邦とのMS共同開発は晴れて国家事業として国民からの承認を得られたが、既に大西洋連邦……地球連合とプラントの間に戦端は開かれていて、オーブ本(オノゴロ)島(=旧ニューギニア島)の目の前のカーペンタリア湾のオーストラリア側沿岸にはザフトの一大拠点がある。

 

そんな情勢下なので開発計画自体は一切合切非公開、最高レベルの軍事機密とされた。

 

つまり、開発拠点が此処……ヘリオポリスにあることは、国民には一切公開されていない。

そんな理由で、ワタシがここにいるのも秘密であり、公式にはワタシは今は休暇中で、別荘で優雅なバカンスを過ごしていることになっている。

 

 

 

まあ、今回の行動は「ザフトの襲撃が近々行われる」という条件下で行われていて、これもまた非公式なのだが……オーブ宇宙戦艦、竣工して間もない”イズモ”級1番艦イズモがひっそり入港していた。

ワタシはそれに便乗してヘリオポリスにやってきたわけだが、公式的にはイズモは今は演習航海してることになっている。

万が一バレた場合は、「航海中のトラブルで緊急入港。詳細は軍事機密につき」で押し通す予定だ。

 

実際には今ごろ、避難の為に”Pシリーズ”……”試作型(プロト)アストレイ”や開発機材、資料やスタッフの撤収作業に精を出してるはずだ。

要するに、きな臭くなってきたので脱出準備だ。

 

詳細はいずれ語ろうと思うけど……”非王道”(アストレイ)・シリーズは、『GAT-Xシリーズの技術を盗用して作られたMS』ではなく、非公開なだけで()()()()()()()()「大西洋連邦と共同開発されたオーブ次期量産型MSのプロトタイプ」で、言うならば”GAT-Xシリーズの兄弟機”だ。

 

そして、開発チームが撤収作業をしている間、ワタシはワタシでカトウ教授のもとへと向かっていた。

 

民間施設……工業系カレッジの中にラボを構えてるので、「ザフトに襲撃される可能性は低い」と説明してから出向いてるわけだが……

 

(だが、確実に巻き込まれるだろうな……)

 

否。そうじゃない。

ワタシは、積極的に”()()()()()()()()”に行くんだ。

 

「そう……”戦乱”って奴に、さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリは、メディアやネットを利用する知恵を身につけた(挨拶

とりあえず、「表面的には似てるけど、ある時の分岐点で決定的な原作乖離をしたオーブ」みたいなものの説明回です(^^

国土が物理的にでかくなった分、違う判断をしてもいいんじゃないかなぁ~と。

基本、カガリはサハク家やセイラン家と共同戦線を張っていて、もろに大西洋連邦寄りです。
但し、ブルコスとはちょっと特殊な関係(?)です。




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第004話:”カガリとシラットと4コマ仕様”

今回は短め&新キャラ登場回です。




 

 

 

実は中身的に、純粋な女体より両性具有(クリム君)の方が合ってるのでは?と思ってるカガリ・ユラ・アスハだ。

さて……

 

「アタッシュケースの中にはMP7モドキが1丁~♪」

 

ポケットの中からビスケットが出てきそうな妙な歌を歌いながら、ワタシはキャンパスの中を闊歩する。

 

まあ、歌の内容自体には嘘はない。

持ってるアタッシュケースには、スイッチ一つ押せばガパンと出てくる西暦年間の名PDW、H&K社のMP7に酷似した軍や警察の特殊部隊ご用達のPDW(ただし、使用弾は4.6×30㎜弾ではなく、オーブの標準軍用拳銃弾である5.7×28㎜弾仕様)のカスタムモデルを仕込んであるし、肩から吊るしてるホルスターには、同じく5.7㎜弾を使うこれまたFN社のFive-seveN Mk2ピストルに酷似したフル/セミオート切り替え可能な軍用拳銃をインストールしてある。

 

いや、いやいや……今更だけど、使用弾から何から考えても、この拳銃ってまんま57ピストルのパクリとかなんじゃ……?

 

(ま、まあいっか。例えそうだとしても、別に今のワタシに不都合があるわけじゃないし)

 

飛び道具はこんなもんだけど、他にも腰の後ろには趣味丸出しのダマスカス鋼製のグルカ(ククリ)ナイフ、ポケットの中には折り畳み式(フォールディング)のカランビットをそれぞれ仕込んでいて、近接戦にもそれなりに対応できるはずだ。

ああ、趣味とか飾りとかファッション・アイテムとかじゃなくて、対人用の武器としてそれなりに使いこなせる自信はあるぞ?

 

こう見えてもワタシ、幼少時から軍隊格闘術の一つ、実戦格闘(シラット)を嗜んでる。

腕前は一応、師範代(マスター)級。さしずめ目指せ”狡噛慎也”だな。

 

(実際、暗殺者を返り討ちにもしたっけか……)

 

我ながらディープな思い出だよ。ホント。

 

他にもいくつか小さな爆発物とかパッと見わからないようにいくつか所持してるけど、これは戦闘用というより、むしろ閉じ込められたりした時の脱出用だな。

 

完全武装と呼ぶには程遠いけど、荒事にもそれなりに対処できそうな装備をチョイスして持ち込んでいる。

もっとも、MS相手にはクソの役にも立たないだろうけど。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

キャンバスの一角、人目に付きにくい構造の死角。ふと気付くとワタシを取り囲むような人の気配……

 

(さすがは戦闘用に調整されたコーディネーター。見事な陰行だ)

 

そう感心してると、囁くような小声で、

 

「カガリ様、もう直ぐ始まりそうでソキウス」

 

……何度聞いても肩からずっこけそうになる。

 

あー、うん。

もう分かったと思うが、人目につかない場所でワタシをそれとなく囲む、いや護衛してるのは地球連合……というより、それを隠れ蓑にしているとあるグループによって作られた戦闘用コーディネーター、”ソキウス・シリーズ”の紳士諸君だ。

 

生体CPU(ブーステッドマン)の開発目処がたったから不要になった。なので薬殺処分する予定なんだよね』だなんて意味ありげな笑みと共に我が麗しの”同好の士(ゆうじん)”が言ってきたもんだから、ミナ姉やギナ兄……じゃなかった。サハク家と折半で、処分される前に根こそぎ引き取ってきた。

 

それにほら、オーブの国是ってナチュラルとコーディネーターの共存だしさ。

 

(それにしても()()()()の奴、「スペック的には問題ないが、一部調整に失敗した」とか言っていたが……)

 

「まさか、この自己主張が一点集中したような奇妙な語尾のことなのか……?」

 

何やらソキウス達は、マインドコントロールやら何やらで色々抑制されてるらしいので、語尾にその歪みが噴出してるんだろうか?

だが、一言ツッコミたい……

 

(なんでここだけ4コマ仕様なんだよっ!?)

 

 

 

「? カガリ様、どうしたでソキウス?」

 

「いや、なんでもない……”ザ・ワン”、お前たちが優先すべきはなんだ?」

 

「カガリ様の命でソキウス」

 

「最優先はそれでいい。次の優先順序は優先保護対象の確保、そして自分達の命を守ることも命令として加える」

 

「……ソキウス」

 

困ったような顔で答える”最初のソキウス”。

まあ、こいつらはその存在意義的な部分から、自分の命を軽んじる傾向があるからな……

 

「そんな顔をするな。いいか? 良い兵ってのは、瞬間に無類の強さを発揮できる兵ではなく、かけた税金に見合っただけの長い時間奉公できる、”死ににくくしぶとい兵”だ。お前たちが『ナチュラルの役に立ちたい』って根源的欲求があるのなら、まずは簡単に死なないようにしておけ。生き残れば、生き残った分長い時間奉仕できるし、その分、ナチュラルの役に立てる」

 

「カガリ様……」

 

「だがな、」

 

ワタシは一度言葉を切り、

 

「以上の命令に反しない限り、ザフト兵は見つけ次第殺せ」

 

「「「「ソキウス!」」」」

 

……なんか、この返事聞いてると自衛隊の『レンジャー!』を思い出すなぁ。あるいは、『イーッ!』のほうか?

まあ、ソキウスってのは”戦友”って意味らしいから、あながち間違いじゃないかもしれんけど。

それにしても、

 

(我ながら外道な命令を出すもんだ)

 

だが、これも戦争。悪く思うな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

カトウ教授に脱出を促してる最中、唐突に響く爆発音に床を伝わってくる振動……

 

(始まったか)

 

「”ザ・ワン”、カトウ教授をイズモまで案内しろ」

 

この部屋までついてきた一人、ソキウスにそう命じるが、

 

「カガリ様はどうするでソキウス?」

 

「安心しろ」

 

ワタシはジャコンとアタッシュケースからPDWを取り出し、

 

「自分の身ぐらい自分で守れる」

 

うん。さっきのセリフと見事に矛盾してるな。

だがな、人間とは本来、矛盾の塊みたいな生き物なんだ。

 

「ですが……」

 

「これは命令だ」

 

「ソキウス……」

 

「ふふん。軍隊に限った話じゃないが、世の中には不条理なことはいくつもある。良い勉強になったろ?」

 

「カガリ様……」

 

「良いから行け。私の命を果たせ。それが今のお前に与えられた役割なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




”PSYCHO-PASS”ってなんかいいよね(挨拶

このシリーズのオーブって、国土の一部が旧インドネシアって設定だし、あのあたりの武術と言えばシラットかな~と(^^

それにしても、カガリ以外に初めて出てきた名持ちキャラがソキウス・シリーズ(見た目はアストレイ本編、語尾は4コマ)って一体w

カガリは良い親衛隊がいるみたいですね? あとサハク姉弟。
全員、見分けがつかないけどね(笑



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第005話:”カガリ、お嬢様とエンカウントする”

日付的には本日3度目の投稿になります。
というか、日に三度アップとかいつ以来だろ?

とりあえずこれで一先ず打ち止め。
そして、またしても新キャラが……





 

 

 

カトウ教授を「最初のソキウス」こと”ザ・ワン”に任せ、ワタシは廃墟になりつつあるカレッジのキャンパスをPDW片手に走り抜ける。

 

(どうやら逃げ遅れはいないみたいだな……)

 

わざわざ大西洋連邦(GAT-Xシリーズ)の開発区画まで言って、「お父様の裏切り者ーーっ!!」をやる気がなかったワタシは、一応「()()()()()」の逃げ遅れがいないかを確認しながら、宇宙戦艦イズモ級イズモが隣接した宇宙港に停泊するオーブ(アストレイ)開発区画に急ぐ事にした。

 

一応、誤解のないように言っておくと表記的には同じく『オーブ国営企業(モルゲンレーテ)の機密区画』ということになっているが、実はGAT-Xとアストレイの開発区画は、コロニーの中で全く別の場所だ。

むしろ、居住区画を挟んで対角線上の正反対の場所にあると言っていい。

 

とりあえず、公式にはできないが幼少期の頃からの記憶にバッチリ残ってる我が弟、旧姓キラ・ヒビキこと現キラ・ヤマトのことは、実はさほど心配してない。

 

あの子はきっと運命に愛されてる……と厨二チックに言いきれれば格好いいが、別にただそういうわけでもない。

ここが、仮にアニメのガンダムSEEDに酷似してるだけで、実は全くの別物……例えば、”()()()()()()()()()()()()”が、ここで命費えるとしても、ワタシは別に構わないと本音では思っている。

 

いや、違うな。

そうじゃない。

ワタシはきっとただ確認したいんだ。

ワタシが明確に『生きている』と実感できるこの世界が、『キラ・ヤマトとアスラン・ザラを中心に展開される、”()()()()()()()()()()()()”』かどうかということをだ。

 

まあ、確認できたからと言って大きな視点から見れば、何が変わるわけでもない。

ワタシが『原作知識』なんてオカルティックな代物を持っているからこそ、『キラ・ヤマトの生死がその後の世界の行く末に多大な影響を与える』事を知っているだけで、この世界住人にとっては、今のところはキラ・ヤマトは、『一介の民間人』に過ぎない。

 

言ってしまえば、ここで弟が死んだとしても、それは『悲劇の体現者』の一人として、そのまま戦没者遺族年金リストに転用されるだろう死者/行方不明者名簿に名が記載され、最終的には統計学上の数字になるだけだ。

名もなき民間人の死の扱いなど、そこいらが関の山だろう

 

そして、何事もなかったように『キラのいない世界』は進んでゆく。

漂流したラクス・クラインは助からないかもしれないし、地球……というかナチュラルに絶滅戦争を仕掛けたがってるパトリック・ザラ(サイコパス)に疑いを持たないままアスラン・ザラはその手足となって動くかもしれない。

 

(ブレないとしたらラウ・ル・クルーゼくらいか?)

 

アレの目的は、ナチュラル/コーディネーター問わない人類全体の全滅と中々かっ飛んでるからなぁ。

 

 

 

そんな事を考えてる時だ……

 

「なんで!? 何でこんなことになってるのよっ!? 何が一体どうなってるのっ!?」

 

視界の先に腫れあがった足首を押さえ、うずくまる赤毛の女の子が……

 

(って、”フレイ・アルスター”じゃんっ!?)

 

いったい何がどうしてどうなったら、転生者(ワタシ)みたいなクソ雑魚ナメクジが、原作ヒロインと早々にエンカウントするんだよっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

あー、うん。

大袈裟な引きだった割には、実はそんな大した話じゃなかった。

要するに、あちこち爆発音が響いたんで慌てて逃げだしたら人波に飲まれて一緒に逃げていた友人達とはぐれ、それでも気を取り直して逃げようとした矢先にすっころんで……

 

(今に至ると)

 

そりゃ考えてみれば、このくらいのイレギュラーはいつでも起こるよなぁ。

ヒスってたフレイの傍に同じくしゃがみこみ、落ち着かせるためあやすように背中をポンポン叩きながら聞き出したのは以上のような話だ。

それに考えてみれば、

 

(なんかフレイって幸運値低そうだもんな~)

 

というか、続編も含めてガンダムSEEDシリーズのほーこさんが声あてたキャラって死亡率高過ぎね?

フレイは勿論、まだ会ったことないけどナタルとかステラとかもさ。

それはいいとして、

 

(まあ、これも”行き掛けの駄賃”ってやつかな?)

 

「逃げたいんだったら一緒に来るか?」

 

ぶっきらぼうになってしまったが、どうにも『年頃の普通の女の子』に声をかけるのは苦手だ。

ほら、ワタシの周囲って前世はもちろんだけど今生でもそもそも年の近い女の子自体がほとんどいなかったし、性別を年齢に関わらず女性にしたら「()()()()()()女性」が大半だったし。

むしろ個人的には一番仲がいいと思ってる婦女子(?)の”ミナ姉”……”ロンド・ミナ・サハク”に至っては、完全に女傑の類だ。

 

「え、えっと……」

 

そりゃ戸惑うわなあ。15の女の子、それも世間知らずのお嬢様がこんな得体のしれないやつにいきなり背中ポンポンされながら「一緒に逃げよう」なんて言われたら。

世が世なら、立派に事案だ。

 

それに今のワタシは原作初登場と似たような格好、つまり男と間違われるのが当たり前な姿だ。

 

「ああっ、心配するな……って言っても、無理か。ワタシは……」

 

「あの……もしかして、”カガリ・ユラ・アスハ”様ですか? オーブの?」

 

はえっ?

 

「あ、ああ。確かにその通りだが……」

 

「やっぱり!」

 

喜色を浮かべるフレイだが、ワタシは正反対にハテナ顔だ。

 

「なぜワタシだとわかったか聞いても?」

 

「以前、アズラエル家が主催したパーティーで、ムルタ・アズラエル様と仲睦まじげに談笑していたのをお見かけしたことがございますの」

 

ああっ! 我が同好の士、”むったん”ことムルタ・アズラエルが主催したパーティーでかぁ~。

 

(そういやフレイって政府高官の娘だっけ? 確かブルーコスモスでもそこそこ偉いって噂の)

 

会った記憶はないんだけど……

それにしても談笑?

そんな優雅な表現される内容じゃないぞ? はっきり言ってむったんとは下世話な話題や世俗的な話題のが盛り上がるし。

 

「アズラエル家のパーティーには何度か出てるから、どの時かわからないけど……君、何者?」

 

いや、正体は一目見てわかったけど、ここで聞かなけりゃ流石に不自然だろうし。

 

「失礼しました。わたし、いえ(わたくし)フレイ・アルスターと申します。大西洋連保外務次官、ジョージ・アルスターの娘ですわ♪」

 

ああ、声がクルーゼとそっくり(あるいは同じ)なジョージさんの娘ね?ととりあえず前世ネタを内心で呟くワタシあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ほーこさんキャラの死亡率が高過ぎる件について(挨拶

遂に出しちゃいましたね~。
このシリーズにおける「原作乖離のマイルストーン」ことフレイお嬢様(^^

原作だとやたら薄幸な彼女ですが、なんかこのシリーズだと強運とか悪運のスキル持ってそうな?w

実は物語開始以前からカガリの顔を知っていることが、このエンカウント条件だったりして。





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第006話:”初めてはカガリと”

意味深長なサブタイですが、特にエロくはありませんw




 

 

 

「あー、アルスターさん」

 

「どうかフレイとお呼びください♪」

 

あれ?

なんか、この娘って妙にグイグイ来てね?

理由はわからんけど。

フレイは、むったん(=ムルタ・アズラエルのことな?)とパーティーでバカ話してる所を見かけたって言ってたけど、こうしてちゃんと会うのは初めての筈なんだが……

 

(まあ、いいか)

 

「じゃあ、フレイさんで。えっと、足痛めてるんだよな?」

 

「ええ。申し訳ございませんが」

 

「なら、抱きかかえて走っていいか?」

 

「ほえっ!?」

 

あー、突然すぎたかな?

 

「フレイさんはその調子じゃ歩くのは厳しいだろ? 幸い、ワタシは女の子一人抱えて走るくらいどうって事はない」

 

「えっ、その、願ってもない申し出なのですが……」

 

何故か顔を赤らめながらチラチラとワタシを見てくるんだが……もしかして、フレイってそっちの趣味あんの?

確か、サイ・アーガイルが本来の婚約者だと思ったが……いや、前世でも同性愛者でも社会的立場の確立だのなんだのって理由で、異性婚してる人はいっぱいいたっけ。偽装結婚も含めて。

 

「よろしいのですか?」

 

「フレイさんの正体が分かった以上、ここで見捨てるって選択肢はないよ」

 

ワタシは、手で持ってたPDWをスリングで肩掛けにしひょいっとフレイを持ち上げる。

いや、フレイにもたせてもいいんだけど、フレイと銃の組み合わせはなんか嫌な予感がするんだよな~。

それにしても、

 

(うわっ、軽っ!)

 

「おおお、お姫様抱っこ!? は、初めてされちゃった……」

 

「悪いね。初めてのお姫様抱っこがこんなメスゴリラでさ」

 

そのぐらいの自覚はあるぞ?

女らしくないのは、もうどうにもなりそうもないが……まあ、ワタシの現在の身体能力(フィジカル)的な意味でのスペックは、おそらく「アニメのカガリ・ユラ・アスハ」を大きく凌駕してるはずだ。

 

元々、カガリは前世を基準にするなら「子供の頃から一つのスポーツに真面目に打ち込めば、国家代表どころかオリンピックの表彰台を狙える」くらいにハイスペックな基礎能力を持っていたんだと思う。

そんな感覚があったからこそ、大人のメンタルで忍耐強く、徹底的に鍛えたのだ。

幼少期、ワタシが一番気を付けたのは「成長を阻害するようなオーバーワーク」だったくらいだ。

 

根回しとか交渉とか駆け引きも好きだから、単純(シンプル)な脳筋として生きる気はなかったけど……だが、同時に最後に物をいうのは体力だってこともよくわかっていた。

気のせいかもしれないが、前世でなんかあったんかな? イマイチ、そのあたりはうまく思い出せない。

 

「いえ、むしろ初めてが”カガリ()で光栄ですというか、ありがとうございますというか」

 

「何を言ってるんだ、君は」

 

「す、すみません。実はちょっとパニックってます」

 

周りが阿鼻叫喚、モロに戦場になりつつあるのに、ちょっとパニクる程度で済んでる当たり、存外フレイは素で神経図太かったりするのか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「すごーい! わたしが自分で走るよりずっとはやいはやーい!」

 

……極限状態で、実はフレイの知能指数が一時的に下がってるとかじゃないよな?

なんか、サーバルちゃんと島風が混じってた気がするぞ。

 

とりあえず、前に参加した特殊部隊の訓練で背負った装備よりフレイはずっと軽い(体感的にはフル装備の半分くらいにしか感じない)から、別に全力疾走しても大して苦にはなりゃしない。

 

両手が塞がってるから即時発砲できないのは確かに不安要素だが、

 

(よしよし。ついてきてるな)

 

フレイには見えてないようだが、いつの間にかソキウス・シリーズの「コンビニ・コンビ」ことセブンとイレブンが、ワタシを前後から挟むように警戒しながら並走している。

 

MSの流れ弾なんか飛んで来たら流石に全員仲良くお陀仏だろうが、並のコーディネイターならソキウス達の相手にならないだろう。

なんせ、本質的にはコーディネイターを殺すために作られたコーディネイターだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

主な戦闘区域が居住区画を挟んで反対側だったせいもあり、流れ弾が飛んできたりMS(ジン)が降ってくるような波乱も特になく、ワタシとフレイ、そしてソキウス一味は無事にオーブ軍の管理区画に辿り着くことができた。

 

報告に来た”ザ・ワン”によれば、一足先にカトウ教授を無事に宇宙戦艦(イズモ)に送り届けたらしい。

 

回りを見回せば撤収作業も最終局面、

 

(どうやら間に合ったようだな)

 

アニメ通りなら、ザフトの最初の襲撃からヘリオポリスが崩壊するまで6時間の猶予がある。

ワタシがフレイを拾ってしまったように、イレギュラーはいくらでも転がってるだろう。例えば、ミサイルやらなにやらの当たり所によってはヘリオポリスの崩壊が早まるかもしれないし、あるいは遅くなるかもしれない。

 

(とはいえ、”D型装備のジン”がもう派手に飛び回ったりしてない限り、いきなり崩れ落ちる事はないだろう)

 

ミサイルだのバズーカだのビーム砲だのと、コロニーの中で振り回すなんざ正気を疑うデカブツを背負ったジンが出てくるのは二度目の襲撃……キラ・ヤマトがストライクを動かして、ジンを返り討ちにしてからだ。

 

(つまり、D装備ジンとクルーゼのシグーが出て来るなら、()()()()は概ね原作通りの展開ってことだな……)

 

とはいえ、現状は把握しておきたい。

なので、ワタシは一番情報が集約しているだろうイズモのブリッジへと急いだ。

 

そう、後で気づいたのだが……”フレイを抱きかかえたまま”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セブン・イレブン、いい気分~♪(挨拶

このネタがわかる人は歳がばれる仕様(笑

「開いててよかった」

そして、何やらフレイが原作とは別のベクトルで変な方向に(^^




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第007話:”カガリと謎のイズモ級推し”

イズモ級イズモという素敵な船w
遅い夏休みなので、変な時間にアップです。





 

 

 

ヘリオポリス内にある大西洋連邦オーブ軍管轄の機密区画。

そこへ隣接する港にその船……オーブ連合首長国が誇る宇宙戦艦イズモ級1番艦”イズモ”は外の喧騒には無関心なように静かに停泊していた。

 

 

 

何気に宇宙戦艦ヤマトも好きな、心はいつも少年……いや、両性具有のカガリ・ユラ・アスハだぞっと。

何か重要なことを忘れてる気もするが、とりあえずワタシはイズモのブリッジへ向かっている。

 

艦内を走ってるだけじゃ気付かないが、実はこのイズモも厳密に言えば「ワタシがアニメで見たイズモ」とは割と違う船だ。

全体的なデザインや印象はそこまで大きく変わらないが、あれほどの規模ではないが、イズモ級の船体はオーブの国土同様に大型化している。

 

例えば、原作では290mだった全長が約15%増しの333mまで伸びている。つまり、まだ竣工してないだろうがピンクの戦艦”エターナル”よりでかく、世代は違うが”ミネルバ”とほぼ変わらないと書くと、大きさのイメージが伝わりやすいだろうか?

全体的に一回り大きくなっているが、印象としては胴体(メインハル)部分が、バランス的に少し延伸(ストレッチ)されてる雰囲気がある。

それに333という3並びはいかにも日本人が源流のオーブ人が好きそうな数字ではあるが、それ以上のこだわり……いや、隠された意図や忍んだ思いを感じる。

333mって数字は、在りし日の日本のランドマークの一つ、多くの物語の舞台となった”東京タワー”の高さと同じだ。まあ、偶然の一致と呼ぶには無理がある。

 

C.E歴が始まってまだ70年あまり。日本という国がまだ歴史用語になる前に多感な時期を過ごした「最後の世代の日本人」である第一世代オーブ人もまだまだ大勢生き残ってる。

オーブの80代は、男女を問わず元気な年寄りが多いのだ。

 

 

 

それはさておき、図体がでかくなった分、イズモ級のスペックはそれなりに上がっていて、出力やペイロードの上昇はもちろんだけど、原作より余裕のある設計なため拡張性や冗長性が高い。

いやむしろ、「将来的にMSが開発されることを前提に、必要ならその運用を可能とするだけの余力をもった設計」がなされた最初のオーブ軍艦がイズモ級ということだろうな。

 

ああっ、言っておくが設計にワタシや転生者(ワタシ)みたいなのが関わってたとかそういう話じゃないぞ?

少なくともワタシの認知できる範囲で転生者はいないはずだ。それに匹敵するぐらい奇人変人、紙一重の有象無象は随分と心当たりがあるが。

 

 

 

実はこうなったのは、物語の都合で設定が作れるアニメではなく、歴史の積み重ねであるリアルならではの事情というものが関係していた。

 

オーブが未だにナチュラルとコーディネーターの融和政策を国是としてるのは誰でも知ってることだが、その成果の一つとも言えるが『MS開発計画の早期察知』だ。

要するに、プラントにも親オーブ派のコーディネイターはごまんといる。

というか、コーディネイターとて所詮は人間。金で簡単に裏切る者もいれば、地球の重力を愛おしく思う者だっている。

無論、中にはターミナルだのファクトリーだの、その裏側にいる更に怪しい連中と繋がっていて、何らかの得体の知れない意図で動いてる連中もいるだろうが……

 

とにもかくにも、パトリック・ザラやシーゲル・クラインらが中心となりMSの開発が本格的に始まったのがC.E.63年とされるが……オーブはザフトが結成される65年にはMSの概要をつかんでたとされるから、相当に早いだろう。

 

 

 

実際、ザフトの結成に呼応するようにオーブで発令されたMS開発予備命令と同時に、イズモ級の開発も始まっている。

勿論、設計段階でMSの現物は存在しないので、予想と予測だけで設計を仕上げたわけだが……MSがいざ実用化された場合に備えあちこちが工夫され、現役の軍艦の中でも極めて改修のやりやすい部類に入るだろう。

 

大型化で直接的な戦力強化につながっている部分は、MSの運用数が常用12機(最大搭載数ではない)となっていることに加え、やがてビーム兵器が主流になることを見越して今頃はこちら以上に大わらわであるだろう”アークエンジェル”と同じラミネート装甲を全面に採用し、また同じく110㎝バレル伸長式リニアカノン”バリアントMk.8”をエンジンブロック側面に左右合計2門追加している。

加えて、艦首の上下カタパルト部分がオーバーハングになっているが、その上下のオーバーハングに挟まれた部分に船体の大きさを生かしてバルジを追加、そこに225cm連装高エネルギー収束火線砲”ゴットフリートMk.71”を格納式で搭載している。

要するに、上下に加えて左右にもゴットフリートを、合計連装4基8門装備している。

 

防御力と攻撃力の増強に加え、機関出力自体の大型化に対応した出力向上に加え、各種バーニアやスラスターの推力増加や数自体の追加もしてるので、むしろオリジナルより機動力も上がっているだろう。

 

これらの変更で、アニメのそれと大きな印象の変化はなくとも、幾分マッシブになってるのかもしれない。

 

個人的にだが、設計が練りこまれてるなと思うのは、バリアントが追加され、ゴットフリートが増設されても射線が干渉することなく、死角を埋めるような配置になってることだろう。

 

やっぱ宇宙戦艦って良いよな~♪

まず、宇宙戦艦って響きそのものに浪漫がある!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ところでアニメ版の設定でも、イズモ級はアークエンジェルの雛型の一つとされているが、今生では両者はより近い感じだ。

個人的な主観では、宇宙戦艦としての戦闘力は、イズモ級の方が実験艦としての要素が強いアークエンジェルより上じゃないかと思っている。

単純に波動砲……もとい陽電子破城砲”ローエングリン”の搭載数がアークエンジェルの2門に対し4門とオーバーキル気味に倍なせいもあるが、武装の配置とかもイズモ級の方が元々実戦的で死角が少ないように思う。

しかも、今生のイズモ級はゴットフリートの搭載数も倍加している。

 

もっともアークエンジェルはイズモ級にない大気圏内運用能力があるため、一概には比較できないが。

 

(実際、アークエンジェルを原型に大気圏内外運用可能な船の設計計画が動き出してるしな~)

 

オーブ製のアークエンジェル・タイプも見てみたいが、それらは今の所ワタシの手のひらにはない。

だが、MSなどの搭載機のことを考慮しないで宇宙戦艦としての戦闘力を単純比較すれば、現時点ならイズモ級……ではなく、イズモの方が圧倒的に高いと思う。

なぜなら、

 

「ただいま、ギナ(にい)

 

「おかえり。だが、カガリ」

 

その長髪黒髪の男はキャプテンズ・シートに頬杖を突きながらじろりとワタシを見て、

 

「私のことは艦長と呼べ」

 

ノリノリだなロンド・ギナ・サハク!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

わかってる。

色々説明は必要だろう。

 

イズモがヘリオポリスに停泊してるのはともかく、なんでそのブリッジでギナ兄ことロンド・ギナ・サハクが居座ってるのか……

 

すまないが、大した大きな理由も重い理由もない。

「面白そうだったから」とか、「暇を持て余してたから」とか本気でどうしようもない理由もありそうだが……だが、一番大きいのは、

 

(一刻も早く自分の目でP0シリーズ(アストレイ)見たかったんだろうな~)

 

まあ、気持ちはわかるけどさ。

正直、開発期間が長かっただけあって、原作より高性能だし。

ただ、一つ納得いかない事があるとすれば、

 

「ギナ兄、そのお召し物は一体……?」

 

どっからどう見てもオーブ軍の公式ユニフォームではない。

いや、ワタシの目がおかしくなってないのなら、むしろ沖田十三の艦長服(2199(リメイク)の方)にしか見えないんだが……

 

するとギナ兄、ふふんと自慢げに鼻を鳴らし、

 

「艦長席に座るなら、やはりこの服だろう?」

 

本当にノリノリだなっ!?

 

「なに、心配せずともオーブ軍服として出向前に正式に登録済みだ」

 

「公私混同っ!?」

 

拝啓

敬愛すべきオーブ本国の種族人種軍民問わず皆々様、今日もギナ兄は絶好調です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フレイはどこへいった!?(挨拶 or Q
A:まだカガリに抱っこされとります。

ギナ様:「教えてやろう……船の性能差が決定的な性能差ではないということを」

魔乳様:「教えてあげるわ……艦長の性能差が決定的な性能差ではないということを」

あれ? なんか後の人は自虐ネタのような……?
とはいえ、イズモとAAが殴り合うことはないです。多分、きっと、メイビー。



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第008話:”カガリとギナ艦長、時々フレイ”

ギナ様、色々丸くなっておりますw




 

 

 

全長でアニメ版に加えて約15%増し、容積で言えば1.5倍になっていそうなオーブ軍の誇る重装宇宙戦艦イズモ級……その1番艦のブリッジにて、

 

「誰が公私混同だ。持ち合わせた当然の権利を行使しただけだ」

 

フンと艦長席で踏ん反りかえって鼻で笑うのは、幼馴染の一人と言って差し支えない、ギナ(にい)こと”ロンド・ギナ・サハク”

 

傲岸不遜を絵に描いたような性格だけど、これでも出会った頃よりは随分と人間丸くなってるんだぞ?

原作の漫画版とは比べるべくもないな。

 

因みに今回の傲岸不遜ポイントは、お気に入りらしい沖田十三コス(2199(リメイク)版。おそらく最高級の生地をふんだんに使ったフルオーダー品)をオーブ軍の制式軍服にねじ込んだことだ。

 

「それに公私混同というのなら、カガリ、お前もだろう?」

 

「えっ? ワタシ?」

 

ギナ兄は呆れた視線で、

 

「その腕に抱きかかえてる如何にも民間人な小娘はなんだ? 途中で拾ってきたのだろう?」

 

おっと!?

すっかり筋力にかまけて忘れていたが、フレイを抱きかかえたまんまだった。

どうりで擦れ違う乗組員(クルー)胡乱(うろん)げな目で見てきたはずだぜ。

どうでもいいけど、胡乱げと優曇華(うどんげ)って何か似てね?

ブレザーうさ耳戦士とか、かなりツボだ。

それはともかく、

 

「悪いな、フレイさん。非常時につき、ついここまで連行してしまった」

 

存在を忘れていたと正直な発言をしないのがミソだ。

ワタシが抱っこを解除し、床のおろす時に少し残念そうな顔をしたのは、見なかったことにしてやる。

 

「い、いいえ! むしろ、ごちそうさまでした?」

 

何を言ってるんだこの娘は?

まあ、非常時につき気が動転しているということで納得するが。

 

「ギナ兄じゃなかった()()()()()? それともギナ艦長?」

 

「ギナ艦長でいい。サハク艦長では姉っぽくなってしまう」

 

ああっ、ただでさえ性別以外はビジュアルそっくりだもんな。ギナ兄とミナ(ねえ)って。

それに先代のコトー・サハクの急逝でサハク家の跡目を継いだのはミナ姉の方だし。

 

(ギナ兄は丁々発止の鉄火場とか大好きだからな~)

 

まあ、ワタシも大好物だけど。

 

「じゃあギナ艦長、この娘はフレイ・アルスター。大西洋連邦事務次官、ジョージ・アルスター氏の娘さんだ」

 

「ほほう」

 

ギナ兄は視線で笑う。

どうやらフレイがここにいる意味を即座に理解したみたいだ。

 

「良いだろう。艦長権限で乗艦を許可する。客人対応で、特別に個室も用意してやろう」

 

「さっすがギナ兄! 話が早い♪」

 

「ふふん。そうだろうそうだろう」

 

ドヤァってるギナ兄はなんか可愛いぞっと。

 

「フレイ・アルスターだったか?」

 

「はっ、はい!」

 

蛇に睨まれた蛙ってのは言い過ぎだが、生まれつきの鋭い視線(睨んでないぞ?)で見られてビクッと身体を硬直させるフレイだったけど、

 

「歓迎してやろう。我が名は”ロンド・ギナ・サハク”、オーブ連合首長国『五大氏族』に名を連ねる者にして、カガリと同じく国防委員の一人でもある」

 

そして、天然の凄みのある悪党笑顔で(だからフレイが怯えるってばよ)、

 

「今は臨時でイズモの艦長とオーブのヘリオポリス派遣軍、その最高司令官を兼任してるがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

名残惜しそうな顔をしていたが、流石にいつまでも「客人であっても民間人」のフレイを戦闘態勢のブリッジに居させる訳にもいかず、早々にあてがわれた個室へと案内した。

 

状況から考えれば仕方ないが、寂しそう……というか心細そうな顔をしていたが、用意されたゲストルームがワタシの部屋の隣だと知ると少し安心したようだ。

 

そしてワタシは部屋でオーブ軍の制式軍服(しろふく)に着替え、ブリッジへと戻った。

 

「ギナ艦長、状況は?」

 

「見てみるが良い」

 

旧日本から引き継いだオーブお得意の電子産業、VR/ARの応用技術をたっぷり使った三次元投影される複数の”空間展張(ホログラム)ディスプレイ”には、

 

「愚かな連中だ。コロニー内部に『対艦/対要塞戦用装備のMS』を潜入させる意味を全く考えていないと見える」

 

そう、大挙して押しかける”D型装備(デストロイ)のジン”が映っていたのだ。

デストロイ装備とは、今はL5宙域に牽引されザフトの宇宙要塞”ボアズ”と呼ばれている、元東アジア共和国の資源惑星”新星”を巡る攻防戦で名をはせた対艦/対要塞用の一連の大型打撃装備のことだ。

MSの全長に迫る大型ミサイルや特火重粒子(ビーム)砲がそれに該当するが、それをコロニーの中で展開するということはつまり……

 

最初(ハナ)っからヘリオポリスをぶっ壊しにきてるって判断だよな。中に居住してる民間人ごとさ」

 

対要塞装備をコロニーの中で使うってのはそういうことだ。

 

「録画は?」

 

「勿論だ」

 

現在、ヘリオポリス全域に非常事態宣言が発令され、管轄は大西洋連邦の管轄区域を除いて全てオーブ軍の統制下にある。(大西洋連邦管轄区域は、日本国内の米軍基地のような扱い)

つまり、生き残ってるヘリオポリスの定点カメラや監視カメラの情報は、全てイズモに集約されているのだ。

原作通りの展開なら、実はヘリオポリス崩壊に一番影響を与えたのは、ストライクガンダムが振り回す”アグニ”ビーム砲だったような気もするが……

 

(まあ、そんなものは情報の精査でどうにでもなる)

 

情報操作なんてレベルの事を行う必要もないのは、正直気が楽だ。

 

「コロニー在住者のプラントが、宣戦布告もなく他国のコロニーを蹂躙し虐殺を行う……」

 

口角が上がるのが自分でもわかった。

 

(見てろよプラント……)

 

「お前らの言う”血のバレンタイン”なんて、政治的には何の意味もないことを思い知らせてやんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




D型装備のジンの投入は、コロニーぶっ壊す気満々の証(挨拶

カガリというかオーブは、ヘリオポリス崩壊を徹底的に政治利用する気みたいですよ?

アークエンジェル組の方は平常運転の予感(^^



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第009話:”カガリとギナ兄、微かにアズラエル。あと赤とか青とか色々”

朝っぱらから投稿です。
通勤通学中に読んでもらえば嬉しいなっと。

思い出話に絡め、いよいよ本格的な原作乖離が始まりそうですよ?




 

 

 

「それにしてもカガリ」

 

「ん?」

 

「本当に””と””を外部に『()()()()』する必要はあったのか?」

 

「ギナ艦長、いやギナ兄……それは何度も話し合ったことだろ?」

 

「それはそうだが……やはり納得はいかん」

 

「開発リスクの分散と開発経路の多様化は、兵器に限らず短期開発の肝だろうに」

 

「だがな、」

 

ギナ兄ことロンド・ギナ・サハクは訝し気な目線で、

 

「所詮は廃品回収業者根無し草の戦争屋だろうが?」

 

 

 

これは、ヘリオポリスが崩壊するまでの間の数時間、イズモのブリッジでワタシとギナ兄の間で行われた会話である。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

多分、察しの良い人は既に何の話か気づいているかもしれない。

そしてワタシ自身、どこからどう話そうか悩ましいと感じている。

だが、ここは前世の記憶から話す方が手っ取り早い気がする。

 

ヘリオポリス崩壊を起点に、ガンダムSEEDの世界は大雑把に言って”二つの派生する物語”が生まれることになる。

 

一つはジャンク屋”ロウ・ギュール”とMBF-P02、通称『アストレイ・レッドフレーム』を中心とする物語。

そしてもう一つは傭兵集団”サーペントテール”叢雲劾(ムラクモ・ガイ)とMBF-P03、『アストレイ・ブルーフレーム』を中心とした物語だ。

 

いわゆる本編に対する外伝、それを表すように”非王道(ASTRAY)”シリーズと呼ばれたこの二つのシリーズは、当初アニメである本編に対し漫画と小説という媒体で発表された。

そして、ギナ兄のサハク家は、本編では登場せず、この二つのアストレイに深く関わってゆき……やがて、ギナ兄は関わったが為に歪み、最終的には命を落とす。

 

 

 

漫画や小説の登場人物ではなく『リアルで生きる人間』として考えた時、ワタシがロンド・ギナ・サハクという人物に感じるのは友愛と親愛だ。

 

原作のカガリ・ユラ・アスハが、ロンド・ギナ・サハクと面識があったかは知らない。

だが、カガリ・ユラ・アスハとして生きることを決めた私にとり、絶対に会うべき人物だったのは確かだ。

 

だからワタシは、10歳の誕生日に邂逅することを決めた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

幼いころに会ったギナ兄は、何というか……もう既に”ギナ様”だった。

平たく言えば、周囲を見下す事が当たり前の『鼻持ちならないサハク家の若殿』だ。

だからワタシは自身とオーブの未来をかけ、その伸ばしに伸ばした鼻っ柱を全力で圧し折る事にしたのだ。

 

方法はシンプルに殴り合い。

場所は海外のゲストも招いた五大士族合同主催のパーティー的な会合だったと思う。

 

ワタシの提案は、『パーティーの余興』として受け入れられた。というか、そうなるようにお膳立てし根回しもした。

 

方や男で年上でコーディネイター。

方や女で年下でナチュラル。

 

ギナ兄は言うに及ばず、ワタシ以外のその場にいた誰もが、ギナ兄がワタシを軽くあしらうかひねるかしておしまいだと思っただろう。

 

(だが、当然そうはならなかった)

 

一言で言えば……ガチ軍隊格闘(シラット)使いは伊達じゃない!

悪いけど、コーディネーター特有のスペック差任せのやり口でゴリ押されてやるほど、甘っちょろい覚悟でワタシは生きてないんだな、これが。

殺さぬように加減したとはいえ、全身に骨折13か所、裂傷や打撲は数知れず……むしろ周囲が唖然とする中、ミナ姉が止めに入るまで意識を失わず、後に全治2か月と診断された怪我を負った中でなお立ち上がろうとしたギナ兄の精神力を、むしろ褒めるべきかもしれない。

負けず嫌いはホント変わらない。

 

細かい話は割愛するとして、こうしてサハク姉弟とワタシの縁は結ばれたのだ。

スマートではないし、むしろ野蛮なやり方だが、ワタシとギナ兄にとっては、いわゆるたった一つではないけれども『冴えたやり方』だったと今でも自負している。

 

すんごい余談だけど……このパーティーに招待され、ワタシとギナ兄の戦いの一部始終を見ていた者の中に、当時はまだ20代だったムルタ・アズラエルという青年がいたことを特記しておく。

 

まあ、あれも出会いと言えば出会いだし。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

話は戻すが、原作でロウ・ギュールと叢雲劾がどうやって物語に関わる羽目になったのか、少しだけ列記したい。

 

ロウ・ギュールは、崩壊したヘリオポリスの残骸をデブリとして回収してる最中にレッドフレームを拾う。

叢雲劾は「アストレイの処分と、その目撃者の始末」を依頼されたが、裏切られて始末されそうになった所を前出のロウと共闘し、ブルーフレームを得ることになる。

そして、ギナ兄……ではなく、原作のロンド・ギナ・サハクはこの二人と対立し、敗れるのだ。

 

だからワタシは、根本と前提を書き換えることにした。

そもそもだが、勝手に残骸を漁りに来るロウはともかく、劾……というかサーペントテールに対する依頼は、今生では成立しないのだ。

 

アストレイ・シリーズは、その性質から非公開な計画ではあっても非公式な開発計画ではない。国民の同意を得た立派な、誰に恥じる事も非難されるいわれもない『れっきとした()()()()だ。

無論、技術盗用なんて悪辣な真似はしておらず、むしろP0シリーズと大西洋連邦のGAT-Xシリーズとは、『コンセプト違いの兄弟機』に近い。

 

例えば、原作では初期段階ではMBF-P01”ゴールドフレーム”しか実装してなかった『両腕の掌に増設された連合MSと共通の武器接続プラグ』だが、今生ではゴールドフレームだけではなくレッドフレームやブルーフレーム、あるいはその後に続くP0シリーズ、そして量産型に至るまでの標準装備だ。

少なくとも今のオーブには、大西洋連邦と異なる規格のMS用武器を作る意味はない。

 

他にも色々あるが……だが、はっきり言えるのは、原作のあの『ろくでもないエンカウント』にならぬよう、それなりに手は打ってある。

もっと言うなら、ジャンク屋組合(正確にはロウ一味指名で)とサーペントテールには、この状況を見越してオーブ行政府からの『正式な依頼』をすでに出していてる。

つまり、『原作とは異なる関わり方』に是正した。

 

そして提示した報酬の一部が現物支給、つまりレッドフレームとブルーフレームだったというわけだ。

 

 

 

このご時世、”未完成の試作機”だとしてもMSは超貴重な代物、URアイテムだ。

お陰様で、一発でロウも劾も食いついてきた。

そりゃ確かに時節を考えれば最新鋭のMSが入手できる破格の条件だったとはいえ、ちょっとは警戒しろよと言いたくなる勢いだったのは追記しておく。

 

無論、ただくれてやる訳じゃない。

運用データの供出と、開発の協力も取り付ていて、そのための人材も既にジャンク屋組合とサーペントテールには送り込んでいる。

 

気づいてる人もいるかもしれないが……ロウの元へは”オーブ三人娘”の一人、”ジュリ・ウー・ニェン”とサポートチーム。サーペントテールには同じく三人娘の”マユラ・ラバッツ”とサポートチームだ。

 

我ながら無茶をやってる自覚はあるぞ?

だが、これらの根回しは『()()()()()』があるワタシがやるしかなかったのだ。

そのため努力もしたし、少々汚い手を使っても発言力も貯めた。

 

確かに未来が『原作より良い物』になるとは限らないだろう。

だが座して、原作のカガリ・ユラ・アスハのような、無知蒙昧と怠惰に起因した『無力ゆえの惨めさ』なんて死んでもごめんだ。

 

結局は、最後まで『世間知らずのお嬢様』から脱却しきれなかった原作カガリはあの程度が限界だったのかもしれない。

だが、ワタシは今こうして生きてるんだ!

 

(だったら徹底的に抗ってやるだけさ……!)

 

こう見えてもワタシ、某『破滅フラグに立ち向かった乙女ゲーの悪役令嬢』は嫌いじゃないんだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




破滅フラグは圧し折ってこそナンボです(挨拶

まあ、カガリが力技で圧し折ったのはギナ兄の鼻っ柱でしたがw
あと、その時のガチバトルでアズラエルに破滅や死亡とは別のフラグをおっ立てた模様。

やり口は基本脳筋でも、付け届けや根回しなんかで頭使うのが意外と好きなカガリ様でした(^^



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第010話:”カガリと尻拭いと金と赤”

・ω・`)ノ □ ヒョイ
誰も読まないかもしれないけどコソーリ深夜アップです(^^

崩壊はあっさりと、そして原作では書かれなかった”事後処理”なんかを。

そして、遂にあの男が……





 

 

 

数時間後……遂にヘリオポリスは()()()()()()()()()()()()()()()崩壊の時を迎えた。

 

そして、まるで予定調和のようにアークエンジェルは逃走し、ザフト……クルーゼ隊がそれを追いかけた。

無論、ザフトはヘリオポリスの戦争被害者を救難するような挙動は一切しなかった。

バッチリその模様を見えなくなるまでカメラで納めながら、

 

『てっきり仕掛けてくるかと思ったが……思いの外、つまらん連中だ』

 

とボヤいてるのは、念願のMBF-P01”ゴールドフレーム”のコックピットからの中継してるギナ兄ことロンド・ギナ・サハクだ。

 

まあ、ギナ兄としてMSパイロットデビューとして華々しく初陣を飾りたかったんだろうけど、それは残念ながらそう遠くはないだろぷ次の機会(ドンパチ)を待ってほしい。

第一、アークエンジェルを追いかけつつ早々とザフトが撤収したのは、現状を考えればありがたい。

それにしても、

 

(予想以上に勘の鋭い奴だな……)

 

”ラウ・ル・クルーゼ”

ヘリオポリスの残骸から現れたイズモの姿を視認した途端、原作に比べても早々にこの宙域から離脱することを決めたのは、間違いなくあの男だ。

 

(単純な警戒か、あるいはこちらの戦力を読んだか……)

 

イズモ自体が戦艦だけの殴り合いに限定すれば、クルーゼ隊麾下の全艦……ナスカ級×1とローラシア級×3を正面から相手取り、単艦で打ち破れるだけの強力な打撃力を持つ宇宙戦艦だ。

 

それに加えて、今は鉄火場が去ってしまったため残念そうな顔をしているギナ兄が乗り込むアストレイ・ゴールドフレームに、ソキウス・シリーズが座乗するP0シリーズの開発に大いに参考した鹵獲ジンの改造(カスタム)モデル、ブラッドオレンジと黒と白のオーブ国防トリコロールに塗られた通称”オーブ・ジン(なんか酒の銘柄みたいだな……)”が5機だ。

実はこのオーブ・ジン、P0シリーズやGAT-Xシリーズに搭載される予定調和の新型スラスターやらなにやらの性能評価試験のテストベッドとしても使われていたから、素の性能はもしかしたらまだ前線に姿を現してないジン・ハイマニューバに匹敵するかもしれない。

 

これを最初のソキウスこと”ザ・ワン”、ワタシ直轄のコンビニ・コンビことセブンとイレブン、サハク家預かりのフォーとシックスが操るんだから、いくらガンダムをゲットしたクルーゼ隊だって、相当に苦労するんじゃないかな?

 

あっ、ちなみに残るソキウス達も『()()()()()()()員数外(ノーナンバー)』を除いて、オーブ本国やら軌道ステーション(アメノミハシラ)やらで元気に留守番してるはずだぞ。

 

 

 

話は戻すが、勘にしてもこちらの戦力やら思考やらを読んだにしても、可愛げないことこの上ないな。

何せザフトからちょっかいかけてこない限り、今の所こちらから追撃なんぞできないのだ。

なぜって?

逆に聞くが、自国民が危機に瀕してるのに救わない国軍がどこにあるんだ?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(想定したとはいえ、いざこうなってしまうと歯痒いものだけどな)

 

ギナ兄のゴールドフレームやソキウス達のオーブ・ジンは既に発艦し、最優先で脱出ポッドを兼ねたシェルターの回収に入ってる。

そこ、露骨な点数稼ぎとか言わない。

無論、録画はきっちりしてるけどさ。

 

ワタシはワタシで、まだ自分がその器にない事を自覚しながらもイズモの艦長席に尻を収めている。

まあ、戦闘じゃないとはいえギナ兄がせっかく楽しそうにMSを動かしてるんだ。

妹分としちゃあ、それを邪魔するのは野暮ってもんだろ?

 

言っておくが、ヘリオポリスに秘密裏に停泊していた軍艦はイズモだけじゃない。

戦闘艦だけに限定しても大西洋連邦から売却されたネルソン級を改装した防空巡洋艦とドレイク級×2もあるし、軍用の輸送艦も数隻用意してある。

 

また、今は傭兵集団(サーペントテール)にそれとなく護衛してもらってるが、『建前的には』ザフトの襲撃が予想される中、緊急出港させ安全圏まで退避させていた”()()()()()()()”がダース単位でこの宙域に戻ってきている。

 

さて、デブリ舞う中で妙に手慣れた動きで小器用に飛び回る作業用MA(ミストラル)……というか、やけに大きなアーム(もしかしてMS用のアームかな?)を取り付けてるなら正確には、その”改造機(キメラ)”か?がいた。

何となく誰が乗ってるのか分かったかもしれないが、ハチマキバンダナがトレードマークのみんな大好きトサカ頭の、

 

「流石にいい腕してるな? ロウ・ギュール

 

『そいつは光栄だな? ”オーブの姫さん”よ』

 

距離が近いせいだからだろうか? ニュートロン・ジャマーの影響下にあるはずなのに思いの外クリアな音声が入る。

 

「姫さんはやめてくれ。ガラじゃない」

 

誰が姫だっつーの。かと言って王子ってのもガラじゃないだろうけど。

プリンスって二つ名は、やっぱギナ兄とかのが似合うだろうし。

 

とまあそれはいいとして、前にもちょっと話したかもしれないが……ジャンク屋組合に話を通し、ヘリオポリスの残骸の回収手伝いを『()()()()()()()()()へ正式に指名依頼』として出したのだ。

 

契約は「レッドフレームを含めて報酬をきっちり払う分、無許可で回収物を持ち逃げしないこと」だ。

そして、その契約を反故にすれば、その時点で即座に「オーブ宙域内での悪質な海賊行為」として警察権を発動するとも。

 

(実はそのあたりはあまり心配してないんだけどな)

 

ジャンク屋組合全体を見るなら、デブリ回収にかこつけて半ば強奪じみた真似を平気でやるその他大勢のジャンク屋も、その後ろ盾のマルキオ導師も込みでかけらほども信用してないが、まあロウ・ギュールの在り方はその貴重な例外だと考えている。

 

ワタシの持つ前世知識(チート)……必ずしも全てが今生のリアルと一致してるわけじゃないが、幸いにしてロウは、彼の場合漫画で読んだ時の印象と大きくかけ離れてはいないようだ。

自分の仕事にプライドを持ち、契約を遵守しようとする姿勢は評価していいし、それなりに好感が持てる。

 

(これはこの先のナチュラル用OS開発も期待できるかもな)

 

まあ、そのために原作みたいに偽名を使ってこそこそ接触させるんじゃなくて、公明正大にジュリたちをジャンク屋組合に出向(具体的にはロウ一味に預ける)させるのであるが。

 

『それにしても』

 

「ん? なんだ?」

 

『遺体の回収は本当に手伝わなくていいのか?』

 

「いいさ。亡骸(なきがら)はジャンク屋が回収すべきデブリじゃない」

 

我ながら感傷だとは思うけど、

 

「ここはオーブの土地だったんだ。なら、可能な限りオーブ人が弔い、故郷へ戻してやるのがスジってもんだろ?」

 

例え全て拾ってやれないとしても。

 

『……アンタ、今時珍しい考え方するんだな?』

 

「そうか?」

 

元日本人としちゃあ、割と普通だと思うんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どんなもんでも後始末って大変だよね(挨拶

原作と違って酷くあっさりめのエンカウントを果たした(正確にはまだ顔を合わせてませんが)ギナ兄とロウのアニキの回でした(^^
まあ、この世界のギナ様って、今の所特にロウに興味持つ理由ないしね。

次回あたりに”トカゲのしっぽ”とか出てくるかな?



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第011話:”カガリと中々切れないトカゲのしっぽ、そしてささやかな夢”

書きあがったらとりあえずアップするスタイル(^^

前回の後書き予告通り、青い人とか出てきます。




 

 

 

「船団護衛任務、遂行ご苦労様だな。評判にたがわず見事な手際だったな? 改めて感謝を」

 

『これも契約の内。労いも礼も無用だ』

 

そう通信機越しにクールに、あるいは感情の読めぬ表情で返してくるサングラス姿の青年……傭兵集団”サーペントテール”のリーダー、叢雲劾(ムラクモ・ガイ)はワタシの予想とそう違わぬ返事を返してきた。

 

前に少し話したかもしれないが、サーペントテールにはザフトの襲撃が終わるまでヘリオポリスから安全圏に退避させていた民間の輸送船や旅客船……現在は、オーブ軍が緊急徴用し臨時の救助船団となっているが、それの護衛を依頼してもらっていた。

 

まあ、臨時船団もちょっとした()()()()があり、『不思議なことに』ザフト、クルーゼ隊がヘリオポリスを襲撃した際に各港に停泊していたオーブ船籍の船のほとんどがオーブ軍の払い下げの船やその類型であり、船長の大多数がオーブ軍の退役軍人だったり予備役軍人だったりする。

 

まあ、ヘリオポリスの崩壊は避けられなかったとはいえ、次善策の「打てる手」の一つだと思ってくれ。

 

「謝意くらい述べさせてくれ」

 

『契約さえ守ってくれれば問題はない』

 

うーむ。これはワタシの知る前世知識(チート)にある、『叢雲劾は依頼者に裏切られてロウ・ギュールと共闘、結果としてブルーフレームを入手する』ってイベントに対する皮肉か何かか?

 

「まあ、それはこっちも同じだな。MBF-P03(ブルーフレーム)を渡してハイ終了って契約じゃないし」

 

サーペントテールに報酬は金銭もだが、何度か出てきてるかもしれないが、オーブの試作MS”MBF-P03 アストレイ・ブルーフレーム”の譲渡もそこに含まれている。

 

だが、ロウ・ギュールとの契約と同じく「渡して終了」って類のものじゃない。

ロウに継続依頼しているのが「ナチュラル用OSの開発協力」なのに対し、

 

「資材や装備の都合やら便宜やらは可能な限り払うよ」

 

実は連合が極秘裏に開発していた戦闘用コーディネーターという過去、つまりはソキウス達のお兄さんのような存在の劾には、『新しい追加装備やオプションの実戦における効果測定』を継続依頼として出している。

 

ブルーフレームは元々原作同様に『オプション装備のスペック検証用テストベッド』というコンセプトで生まれた機体だ。

原作との違いは、

 

オーブ軍で研究するのも、そりゃあ良いかもしれないが、傭兵という仕事柄様々な想定や状況の戦場を渡り歩く叢雲劾は、よりバリエーションに富んだフィードバック……オーブ軍だけではサンプリングできないようなデータを返して来てくれるだろう。

 

まあ、ロウに対してもジャンク屋って職業上の理由から「戦闘以外の動作パターンやモーション・サンプリング」を大いに期待するところだ。

アークエンジェル・サイドが原作とそう大きく違わない展開なら、おそらくナチュラル用OSは”うちの弟(キラ・ヤマト)”が現在進行形で育ててる物が叩き台になるのだろうが……

 

(戦闘以外のモーションデータってほとんど無さそうだもんな~)

 

まあ、例外的にユニウスセブンの残骸で物資回収したり、どこぞのピンクのお嬢様拾ってきたりってモーションはあるだろうけど、まあほとんどは戦闘関連だろう。

 

確かに現状、MSは国防目的、兵器としての使用が最優先であり最需要だ。

だが、ワタシはMSを『ただの人型戦術兵器』で終わらせる気なんて毛頭ない。

 

残念ながらどんな形であれ戦争は永遠に続かないし、いつかは終わる。

そしてまがいなりにも国防委員の一人、広義な意味で政治家であるワタシは当然、戦後のことまで頭を回す必要がある。

 

この世界がアニメの中のフィクションなら、終戦が最終話となってそこで物語はお終いかもしれない。

だが、生憎とワタシ達は、『このどうしようもないクソッタレな世界』をリアルとして生きているんだ。

 

確かに戦死すればそこで個人としてはENDだろうが、生き残ってしまえば戦後の生活が待っている。

その戦後世界、今度は『()()()()()()()()()』を生き抜く……ある意味、戦争より遥かに過酷で長い道のりになるだろうクソッタレな戦いの中で、鋼鉄の巨人であるMSは力強い人類のパートナーになるだろう。

 

(まっ、要するに”レイバー”としての活用だな)

 

前世知識でいうところの『機動警察パトレイバー』に出てくる一連のアレだ。

後に作られた漫画版(げんさく)の十数年後の未来を描いた実写版では、バビロンプロジェクトの終結やらコストの問題やらで下火になったみたいだが、日本とは違う意味で大和火山と森林が多い、つまり通常の重機が入れられない場所が多いオーブには、二足歩行の重機や建機は無限といっていい活躍の場がありそうだ。

 

加えて宇宙開発……今でこそ戦場になっているが、戦後に情勢が安定すれば早期再開が確実視されてる宇宙開発事業にとり、これまでにない『最高水準の強化外骨格式宇宙服』であるMSは間違いなく福音となるだろう。

 

(建前的には『プラントやザフトが生み出した大量破壊兵器、殺人ゴーレムの平和利用』とかって国民が好みそうな見出しを付ければ、直ぐに民需転用の予算編成できそうだしな)

 

夢みたいな話に聞こえるかもしれないが、ワタシにとっては近い将来の現実だ。

 

 

 

(戦後、本腰入れてMSの技術を応用した人型建機の開発、ガチにレイバーの研究初めてみるかな? ”むったん”とか誘ったら食いつきそうだし)

 

我が同好の士にして盟友(とも)のむったん、ムルタ・アズラエルは趣味的に考えてサムズアップで一発OKしそうだし、民需の新しく生まれるだろう市場への参入は、アズラエル家としても悪い話じゃないはずだ。

なんならウォーカーマシンっぽいのでも可。ウォーカーもレイバーも、どっちも『労働者』を示す言葉には違いないし。

 

『? どうした? 急に黙り込んで?』

 

「いや、近い未来のことについて考えていた。具体的には戦後政策とかだな」

 

するとジンの改造機のコックピットの中で劾は一瞬だけ虚を突かれたような顔をして、

 

『未来? 戦後? ここ最近、聞いた覚えのない単語だな』

 

「ま、今は戦時下だからな」

 

だけどな、叢雲劾さんよ。

 

「だが歴史上、永遠に降り続いた雨が一度もないのと同じで、永遠に続いた戦争もないのさ」

 

『だが、戦いが無くなった(ため)しもない。だから傭兵は最古の職業の一つとして語られ、食いはぐれることもない』

 

如何にも劾らしいクレバーな返しだな?

 

「闘争っていうのは、人が人である所以(ゆえん)みたいな所があるからな」

 

だがな、

 

「平時に戦時を考え、戦時に戦後と平時を考えるのも、同じ最古の職業である政治家の仕事だ」

 

『フッ……違いないな』

 

おや?

今、もしかして笑ったのか?

 

(なんだ普通に笑えるじゃないか)

 

「ところで叢雲劾、サーペントテールに追加依頼を出したいんだが……」

 

『俺の一存では決められんが、話ぐらいは聞いてやろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




叢雲さん家の劾くんの口調が中々難しい(挨拶

”らしさ”が出てればいいな~。

このシリーズのカガリ、言動は間違いなく脳筋(マッチョ)の類ですが、本当に脳みその中身や骨の髄まで脳筋ってわけじゃありません(^^

目指せ”知性派マッチョ”?w

ところで次回、そろそろダイジェスト&三人称視点でアークエンジェル・サイドのエピソードとか入れようかな~とか思ってるんですが、どうでしょう?(^^





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第012話:”おかっぱスピーカー、そして弟と『ミレイユ』の名を継ぐ女”

二日連続で深夜アップですぜw
今回は前話のあとがきで予告した、『その頃一方アークエンジェルは?』的なお話です(^^
本来の主人公含む、怒涛の原作キャララッシュに見せかけて、出てくるのは三人だけな罠w

時間が時間だけに呼んでくれる人と、ネタがわかってくれる人がいたら嬉しいなっと。




 

 

 

ザフトのクルーゼ隊に奪われたGAT-X102、通称”デュエル・ガンダム”は両腕とも健在である。

「いきなり三人称で何を言ってるんだ、このバカは?」とお思いかもしれないが、カガリ・ユラ・アスハという女だか両性具有だかTSキャラだかわからない転生者の目線から語られる「アニメで見たフィクション」と「生きてるリアル」とは、そのぐらいの差異や誤差は山ほど存在する。

 

「くっそおーーっ!」

 

ザフト驚異のメカニズムが生み出した銀髪のおかっぱ型拡声器……もとい。ザフトの誇る赤服の一人、”イザーク・ジュール”は、強奪しそこなったGAT-X105”ストライク・ガンダム”から放たれた強力なビームを避けられた事に内心安堵しながらも、打つ手がない事に悔しさを感じていた。

その巻き添えなのか因果律変化なのか知らないが、原作では落ちなかったジンが消し飛んだが、そこに悔しさは感じないようである。

所詮、民兵組織(ザフト)。高いモラルなど期待してはいけない。

 

まあ、こういう結果になったのも一つはアニメより操縦技能が誤差の範囲で高かった事、何より幸運値という目に見えないパラメータが異常に高いことがあげられる。

 

イザークは悪運というのも含めて運のよい男だ。

断言できるのは、腕が消し飛ばなかったことではない。

フレイと、それ以上に”某幼女”をはじめとしたオーブの民間人がこれから追いかけるだろうアークエンジェルに艦しなかった事だ。

彼女たちは現在、イズモをはじめとしたオーブ艦隊に救助されている。

 

もし、万が一……この男が、原作同様に面白半分に、あるいは腹いせに『アークエンジェルから脱出しようとする()()()()()()()()()()()()()()()』を撃っていたら、スカーフェイスどころの騒ぎじゃない。

間違いなく殺されていた。

例え戦場で死ななくても、戦後に殺されていた。

 

『サイコパスの大量殺人者(テロリスト)にかける救いも慈悲もない』

 

戦争犯罪人ですらなく、裁判にすらなく、問答無用に殺される以外のENDはなかっただろう。

そしてその時は、母や一族郎党諸共この世から抹消されていたに違いない。

HN”オーブの仔獅子さん”を怒らせるというのは、そういうことなのだ。

 

イザーク・ジュールは、本当に運のよい男である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

さて、差異というのはどこでも生じる。

サイ・アーガイルがどうという話ではなく。

 

そしてそれは、ミゲル・アイマン操るジンを退けたばかりのGAT-X105、”ストライク・ガンダム”の狭いコックピットの中でも起きていた……

 

「お、終わったのかな……?」

 

「えっ、ええ。多分」

 

その少年……生まれて初めて搭乗したはずのMSを『()()()()()()()()キラ・ヤマト(16歳)は、

 

うっ、うわぁぁぁぁーーーーーーーっ!!?

 

「ちょ、ちょっとどうしたの!?」

 

キラは大声で泣き叫ぶと同時に、ガンガンと狂ったようにコンソールを叩き出してしまったのだ。

 

ぼ、僕は人を……人を殺してっ!!

 

(なんて心優しい少年なんだろう……そんな子に戦わせてしまったなんて、私は……)

 

”ズキンッ”

 

その時、マリュー・ラミアスの豊満な胸の奥が、後悔の念とともにずきりと痛んだ。

そして同時に思考を巡らせる。

この優しい男の子に、自分は何ができるのだろうかと……

 

 

 

マリュー・ラミアス、大西洋連邦軍大尉(技術士官)

正式なフルネームは、マリュー・”ミレイユ”・ラミアス。

欧米では洗礼名だけでなく恩人や親しい人物の名をミドルネームに付ける習慣があるが、彼女はワルサーP99(けんじゅう)と共に大好きだった祖母からその名を引き継いだ。

 

GAT-X開発計画の中でもフェイズシフト装甲開発チームに所属している、素材工学のエキスパートにしてその分野の博士号持ち。

年齢は、2()4()()

繰り返すが2()4()()だ。前世知識持ちのカガリがもし仮にこの場にいれば、『なぜアニメより2歳若い!?』と顔芸の一つも披露してくれたことだろう。

 

それで同じ大尉なのは納得いかないかもしれない。しかも同じ技術士官なのに、だ。

 

無論、これには理由がある。

マリュー・ラミアスという少女は、ナチュラルであってもいわゆる”秀才”であった。

裕福な家の生まれではなかったが、持ち前の優れた頭脳を生かして奨学金をゲットし、飛び級で大西洋連邦の一流理工系大学へ進学を果たすほどの才媛だった。

 

だが、マリューの運命が狂い始めたのは卒業まで1年を切った頃だ。

彼女の研究分野は、”次世代型エネルギー転換(フェイズシフト)素材”、通電や電磁干渉などの外的要因により分子間結束力を変化させる新素材……後にフェイズシフト装甲に結実する技術だった。

 

軍のスカウトチームは彼女の研究分野と成果と才能に目を付け勧誘。具体的には卒業後に士官短期養成コースへと誘った。

 

当時はまだプラントとの戦争は始まっておらず、マリューは深く考えずに「技術職でご飯が食べれるなら」と受諾。

 

短期コース卒業後に少尉として任官し、技術士官としてこれまでやってきた。

 

つまり、マリュー・ラミアスという妙齢の美しい女性は、技術者としては優秀でも士官としても軍人としても最低限の教育しか受けてない、言うならば『促成栽培の将校』だった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

だが、それがすべて悪いとか、裏目に出るかと言えばそうではない。

確かにマリュー・ラミアスは、戦闘向きの軍人ではない。

能力はともかく(実は原作では負っていた銃創が今の彼女にはない。何気に無傷であの窮地を切り抜けていた)、性格が致命的にザフトの急襲を受けるような状況向きじゃない。

 

だからこそ……だからこそ、

 

「落ち着いて。ねっ?」

 

”ぎゅ”

 

母性を感じる大きな双丘にキラの頭をそっと埋めるように、優しく彼を抱きしめた。

 

「えっ……?」

 

「大丈夫。大丈夫だから。パイロットは脱出したから……大丈夫。キミはまだ、誰も殺してないわ」

 

 

 

2歳若いせいかもしれない。

2歳若いせいで、ザフトとの戦いで恋人を失った経験がなかったせいかもしれない。

もしかしたら、アスラン弾で受けた傷がなかったからかもしれない。

 

だが、原作では拳銃を突き付けていたキラを、マリューは我が子をあやす母親のように、ただ優しく抱きしめていた。

 

 

 

 

 

この出逢いは、『キラ・ヤマトがほんの少しだけ心が弱かったら』、あるいは『マリュー・ラミアスがほんの少しだけ軍人である前に女だったら』……そんな誰にでもちょっとしたことで起こる、些細な差異から始まるのだった……

 

(マリューさんって優しくて綺麗だ……)

 

(キラ君、可愛いなぁ……)

 

始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おねショタはジャスティス!(挨拶

ただし、キラが乗るのはフリーダムなはず。きっと、多分、メイビー。

ちなみにワルサーP99と『ミレイユ』の名は、中の人ネタです(^^
コッペリアの棺とか懐かしいな~♪
ちなみにマリューの戦闘技術は、再構築戦争を子供を守りながら生き抜いたおばあちゃん譲り(おばあちゃん仕込み?)。そりゃあ無傷でやり過ごせる訳ですw
この世界のマリュー自身、あんま治安のよくないとこ出身みたいですよ?
少なくともハイソな家の出じゃないです。

イザークは軽く流すとして……(ヲイ

変わってしまいましたね~。
拳銃の代わりに抱擁を

果たしてこの先どうなることやら……




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第013話:”Gの生みの親であるT野氏から「あんなおっぱい大きな美人なネーちゃんが艦長なんてありえない」と苦言を呈されたのは伊達じゃない”

中途半端な時間ですが、書きあがったのと誰かが読んでくれると見込んでアップです(^^

今回は日常パート(?)の交流会ならぬ交流回です。
互いを知ろうとする感じが出てたら良いな~と。
でもイチャコラの前段階、まだブラックコーヒーとかは必要ないですw

けど微糖くらいは用意しても方が良いかな? 作中に出てくるのはは紅茶(無糖)っぽいですが。




 

 

 

「ええっ!? キラ君ってオーブ()から支援受けてる特別奨学生だったのっ!?」

 

「ええ、まあ。カトウ教授の推薦とかもありましたし。一応、スカウトです。カレッジを卒業したら軍のMS開発に携わって、退役したら国営企業(モルゲンレーテ)に入る予定でした」

 

さてさて、この和やかな空気が流れているのは、大西洋連邦実験艦”アークエンジェル”の応接室。

勿論、紅茶を楽しみながら語り合ってるのは、旧姓はキラ・ヒビキなカガリ・ユラ・アスハの双子の弟キラ・ヤマトと、『ミレイユ』という名を拳銃と一緒にミドルネームに受け継いだマリュー・”ミレイユ”・ラミアスだ。

 

ちなみに上記の会話でのキラの現在の境遇は、回りまわってほぼほぼ双子の姉(カガリ)のせいである。

例えば、大西洋連邦とのMS共同開発を国民総意による国家事業にしてしまったせいで、非公開で機密を守れるなら「学生のスカウト&青田買いも、開発スタッフとしてならおk」って事になってしまった。

そこで、ナチュラル用OSの開発に難航していたカトウ教授は、前々から優秀さに目をつけていたキラをスカウト。

 

軍は一発おkの外部協力者としては、最高待遇でキラを受け入れた。

蛇足だが……キラの背後関係(バックボーン)を洗っていた軍情報部が、カリダ・ヤマトから姉のヴィア・ヒビキに行きつき、出自を触れ回りこそしないが隠す気もあまりなさそうなカガリ・ユラ・アスハに繋がったときは、担当官が泡を吹いたらしい。

そして、デリケートな問題だし、もし万が一機嫌を損ねたら大惨事(なんせ相手は五大氏族の一人な上、最年少の国防委員。誰かの首が飛び程度じゃ済まない可能性があると認識されていた)と軍上層部(将官クラス)がわざわざ出向き事実確認に話を聞けば、当の本人はあっさりと……

 

『あれ? 軍は知らなかったっけ? ワタシにはちょっと訳ありのコーディネーターの双子の弟がいるのさ。そのキラ・ヤマトがそうだよ』

 

その不運な将官の脳裏には、一瞬『オーブの隠れ王子発覚かっ!?』という週刊誌の見出しのようなネタが回ったらしい。

とはいえカガリから、

 

『弟は一民間人として平和に暮らしてるからさ。軍がスカウトするのは全く構わない……というか、いいぞもっとやれだが、頼むから本人が勘づくまでややこしい出自とかばれないようにしてくれよ?』

 

直々に釘を刺されれば、軍は最大限の配慮を払いつつ、「不自然に思われない最大限の待遇」を提示するしかない。

その結果がキラのセリフだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

拳銃ではなく抱擁で互いをちゃんと認識した二人……あの後をちょっとダイジェストすると……

 

 

 

「えっとね、ここはとりあえず危険だからアークエンジェル……大西洋連邦の軍艦だけど、そっちに避難しない? 近場のシェルターに行くのも危険だし、そこが満員だったり壊れていたりしたら大変だもの」

 

マリューの強い母性とそれを体現した大きな胸で落ち着きと正気を取り戻したキラと二人でストライク・ガンダムのコクピットから降りれば、マリューを待っていたのはキラの友人たち。

 

原作では軍隊式交渉術(銃声付き)で半ば拘束するような展開だったが、この世界のマリューはひと味違う。

上記のように優しくて理解のあるお姉さんの顔で、言葉巧みにトール・ケーニヒ、ミリアリア・ハウ、サイ・アーガイル、カズイ・バスカークらをそそのかし、ストライクの撤収を手伝わせた上にアークエンジェルに引っ張り込んだ……

と書ければよいのだが、このマリュー・ラミアスの真の魔乳……ではなく魔性は、上記の言動が、

 

”軍人として機密保持のために民間人をだまして確保しようという意思は微塵もなく、『ただただ、キラの友人達の身を案じて出た言葉』

 

だということだ。

騙す気も嘘をつく気もないのだから、基本人の善い少年少女達はキラがなついてることも手伝って、その提案をあっさり了承。

まったく原作の発砲騒ぎは何だったのかといわんばかりのペースで作業は進んだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

クルーゼ隊の再来襲の前に、無事にアークエンジェルに逃げ込めたキラとマリューとその一党だったが、当然のように『軍隊の規律が女の姿で歩いてる』ようなナタル・バジルールにしこたま怒られることになる。

 

だが、激おこぷんぷん丸なナタルの前で小さくなってるマリュー……そんな彼女を背中で守るように、キラ少年はすっと前に立った。

本来、気性が穏やかなはずなのに真っ直ぐにコワーイ女性軍人の眼力にさらされながらも視線をそらさず、

 

「それでも、軍規に違反したとしてもマリューさんは僕の、僕達の命の恩人なんです!」

 

と盛大に啖呵を切るのだった。

 

「キラ君……」

 

『やるなぁ、少年』と言いたげに金髪の優男(ムウ・ラ・フラガ)が口笛を吹いたが、ナタルに「茶化すな」と睨まれただけで、マリューには何の印象も残らなかった。

彼女はただ、自分の頬の熱さと、やけに大きく聞こえる心臓の音だけが気になっていた……

とにもかくにも、キラは自分がOSを修正しつつストライクを動かし、ジンを撃退したなどと事情を説明したのだ。

 

おかげでサイ達四人は『とりあえず客人扱い』で食堂に待機、マリューは事情聴取名目でキラと応接室でしっぽりと逢瀬を……失礼。事情を聴くに至ったのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「キラ君の専攻とかって聞いて良い?」

 

「あっ、MS用のOS開発……というかそのプログラミングです」

 

「あれ? じゃあもしかしてあの場にいたのって偶然とかじゃなくて……」

 

あの場と無論、キラが親友と物騒な再会を果たしたあのストライク近辺のエンカウント・バトルだ。

キラはカップ片手に頷いて、

 

「ええ。実はあの時、とりあえず完成したOSの起動チェックを行ってから、GAT-X105とのフィッティング調整する予定でした」

 

マリューは、ジンと戦っているコックピットの中の風景……

 

『キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、チッ!なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結!ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築!メタ運動野パラメータ更新!フィードフォワード制御再起動、伝達関数!コリオリ偏差修正!運動ルーチン接続!システム、オンライン!ブートストラップ起動』

 

あの異常なスピードの最適化(フィッティング)を思い浮かべながら、

 

「納得したわ。キラ君、元々()()をやる予定だったんだ? だから、あんなことができたのね?」

 

話を聞いてみればどうということはない。

元々、キラは広義な意味では開発スタッフの一人だったのだ。

ただ、普段ははカトウ教授とラボから遠隔で開発に参加してたのと、マリューはPS装甲チームでソフトウェア方面のキラとはジャンル違いだったから、顔も名前も知らなくて当然だった。

 

「まあ、そんなところです」

 

まあ、超高速フィッティングができた理由はそれが全てではないが、あえてそれ以上を今言うつもりはなかった。

それは、

 

(僕がコーディネイターだと知られたとき、マリューさんの顔を見るのが……怖い)

 

もし万が一、目の前の優しい女性がコーディネイター排斥派(ブルーコスモス)だったとしたら……

コーディネイターとして知られた瞬間、『宇宙に住む化け物』を見る目で見られたとしたら……

 

(僕は耐えられるのかな……?)

 

だから、素性を告げる代わりに曖昧な苦笑で応える。

 

「まさか、あんな大急ぎでやる羽目になるとは思いませんでしたが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マリューさんの魔乳さんは母性と魔性(天然)の象徴だと思うんですよ(迫真

というわけで原作アウトブレイクしまくりな回でしたw

作中の超微妙なサイ推しは、原作同様にあるいは別の意味で、今度は姉の方に今にも婚約者(フレイ)がNTRされそうだから……

この旧姓ヒビキ姉弟は(^^
しかも再会して無事を確認しあうのは、原作よりかなり後になりそうですから。

とりあえず……キラとマリューさんのおしゃべりは、もうちょっと続くんじゃよw
具体的には後最低1話分は。






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第014話:”例え勘違いであっても構わない”

平日なのでちょっと短め。

そして、少しだけ甘めかも?なマリューさん回です(^^





 

 

 

マリュー・”ミレイユ”・ラミアスは、その時確かに得も言われぬ居心地の良さを感じていた。

紅茶がもう少しいいものだったら言うことないが、官給品に文句をつけても無意味だということも分かっていた。

無論、マリューにはその居心地の良さの理由も察している。

 

(私、楽しいんだ……キラ君とおしゃべりすることが)

 

マリューは、自分が性格的に戦場に出るような『実戦型の軍人』に向いてないことを自覚していた。

そもそも生活の為に軍のスカウトを受けたわけだし、後方で研究開発を行うだけだと思って入隊したのだ。

 

士官学校の”体力的なシゴキ(ブートキャンプ)”は、想像していたよりずっと楽だったし。

アレだったら、大好きだった祖母の「拳銃をきちんと使うためのトレーニング」の方がよっぽど厳しかった。

正直、ランニングとかで「胸が揺れて邪魔だなぁ」という印象しか残っていない。

その程度の促成栽培みたいな訓練で、

 

「もしかして、ちょっとだけ似てるのかもね。私とキラ君」

 

「えっ?」

 

きょとんとした顔は年齢以上にキラを幼く見せた。

そんな姿にマリューは微笑ましさを感じながら、

 

「私も理工系の大学に飛び級で進学して、軍に入ってってコースだったから」

 

キラの身の上を聞いて、何と無くマリューは自分の生い立ちを語りだしていた。

 

「あっ、確かに似てるかもしれませんね……でも、マリューさんって凄く綺麗なのに、見た目に似合わず凄く強いんですね?」

 

キラ少年は気づいてるのだろうか? 自分が無自覚のまま、半ばマリューを口説いてることを。

いや、きっと気づいてないだろう。割と天然だし、思ったことをそのまま口に出してる雰囲気がある。

 

それはともかく、キラが言ってるのは先ほどの戦闘。

MS戦ではなく、その前に勃発したアスランと再会した時に起きたあの高度CQBじみたガンファイトの事だろう。

 

マリューはあの戦いで、まず大西洋連邦制式のブルパップ型自動小銃で最初に名も無き緑服のザフト兵を一人倒した。

弾の切れた自動小銃をあっさりと捨てると、次に扱い慣れた私物の拳銃(ワルサーP99)を流れるような動作で引き抜きザフト赤服の一人、ラスティ・マッケンジーの胸部に2発/頭に2発をダブルタップで叩き込んで手早く容易く命を刈り取り、呼吸をするように激昂したアスランの持つ小銃に弾丸を当てて破壊するという離れ業をやってのけたのだ。

まさにそれは身体に染みつくまで拳銃射撃を繰り返した、「一端のガンスリンガー」と評して過言ではない完成された動きだった。

 

むしろ、そんなマリュー相手にナイフ1振りで至近距離まで接近できたアスランをほめるべきだろう。

もっともそれは、ヘルメットの奥の人相に気づいて、ついマリューの射線上にふらふらと出てしまったキラのせい(あるいはキラのおかげ)でもあるのだが。

 

その後の展開は推して知るべしで、予期せぬ親友(キラ)の出現で動揺したところに、射線が重ならぬように身体を滑らせたマリューからの2連射をくらい、弾は幸いボディアーマーで止まったが、さすがに分が悪いと思いアスランは撤退したのだ。

 

アスランの幸運は、ちゃんと規定通りの防弾装備を着用していたことで、ラスティの不幸は『ナチュラルのヘロヘロ弾になんか当たるかよ!』と完全に侮っていた状態で、マリューと敵対的エンカウントをしてしまったことだろう。

マリュー・”ミレイユ”・ラミアス……ザフトの上位ランクの兵を、生身での戦いなら単独で撃退できる女であった。

 

 

 

「ああ、うーん……どうなのかな? 私の場合、一般の軍人さんとちょっと戦い方が違うというか、邪道というか」

 

ちょっと困惑気味のマリューに、

 

「邪道?」

 

不思議そうな顔をするキラに、

 

「そうね……私ってそんなにいいところの出じゃないのよ。子どもの頃に住んでたのも、讃美歌と銃声とパトカーや救急車のサイレンが、同時に聞こえるような街だったしね」

 

しいて言うなら全盛期(1980年代)のサウス・ブロンクスやロアナプラよりは、幾分ましといったところだろうか?

イメージ的には映画『タクシードライバー』の世界観とか、漫画『ガンスミス・キャッツ』の街並みとかがイメージに近い。

 

「そんな街で生きていくには、必須とは言わないけど……拳銃を扱えるのはそれなりに便利な技術(スキル)だってね。おばあちゃんが教えてくれたのよ」

 

「なんか、凄いおばあさんですね?」

 

「実際、すごかったわよ。むしろ、凄まじいっていうくらい強かったし」

 

なんでも約70年前の再構築戦争と、そのあとの『人の命が缶詰一つより安い』地獄のような混乱期を家族や友人を守ったり共闘しながら頭と腕っぷしで生き抜いた猛者だ。

その時、ゼルダだかソルトだかって感じの自警団(?)の中核的人物だったらしい。

マリューも幼い頃その面々に会った事があるが、『独特の凄みのある年配者集団』だった事が妙に鮮明に記憶に残っていた。

 

もっとも祖母に言わせれば『かつての戦士の集団も今となっちゃただの老人会さね。人間、年は取りたくないね~』と苦笑していたもんだが、そんな祖母に手ほどきを受けて愛用の拳銃と一緒にミレイユという名を受け継いだマリューに言わせれば、祖母が二本足で立ててた頃ならば未だに逆立ちしても勝てる気がしない。

 

「だから、軍の真っ当な戦闘術っていうより、”喧嘩殺法”っていうのかな? まあ、そんな感じのものよ」

 

その喧嘩殺法に容易くタマを取られたラスティとその他一名は立つ瀬はないと思うが、

 

(それにしても私、ぺらぺら喋ってるなぁ……)

 

妙に口が軽いことをマリューは自覚してしまう。

例えば、自分の生い立ちや事情を知ってる人間はアークエンジェルは勿論、GAT-X開発計画の中にもいなかった。

そりゃあ、軍の中を見回せばいるだろうが、少なくとも自分から話したことは任官してからはないはずだ。

 

(ああ、そっか)

 

一瞬、『吊り橋効果』という単語が頭をよぎったが、別にそれでもかまわない……勘違いでも、虚構でも構わないと思ってしまう自分がいた。

 

(私、キラ君に知ってもらいたいんだ……)

 

それは、マリュー・”ミレイユ”・ラミアスが、キラ・ヤマトという少年に初めてはっきりと自覚した”好意”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔乳は強し(挨拶

あんまりマリューさんの内面とか過去に踏み込んだ作品を読んだことなかったので、思い切り捏造でデコってみましたw

思った以上にマリューさんは書いてて面白い罠(^^

次回は、キラの……かな?



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第015話:”きらまりゅ とあるコーディネイターとナチュラルの話”

朝早くに目覚めたのでおねショタ繰り上げ投稿です(ヲイ
通勤通学中の暇つぶしにでもなれば嬉しいな~と。


キラ君がちょっとだけ前へ進もうとしますが……マリューさんも少し常人と感覚ズレてるかも?




 

 

 

呼吸をするように拳銃を使い、容易く命を刈り取る美女……マリュー・”ミレイユ”・ラミアス。

中々に数奇な、あるいは特異な生い立ちを持つ彼女だったが、圧倒的な……人類という(しゅ)の限界に挑むような遺伝学的ポテンシャルを秘めながらも、その心は年相応の繊細やナイーブさを持っているキラ・ヤマトは、不思議と怖いとは思わなかった。

 

そう、強いからこそ「マリューさんは、コーディネイターというだけで僕を怖がったり、嫌ったりしないかもしれない」とつい思ってしまう。

他人に勝手に期待して、そして勝手に失望する……「ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ」とはいったい誰の言葉だったか?

だが、キラはまだ若いというよりむしろ幼い。「それでも前へ進めた」と自覚することはできない。それを自覚できるほど、まだキラは生きていない。

 

例え遺伝子をどれほどいじくりまわそうと、人の姿を捨て去れない以上は所詮は人。人の限界には近づけても、人を超えることもできなければ、人と別の生き物になれるわけでもない。

 

プラントやザフトが特異な精神性を持っているように『()()()』かもしれない。

25万人の同胞を殺されたから地球上の10億の民を殺した……死んだ人間は、ナチュラルもコーディネイターもいた。

きっと、プラントにとりコーディネイターとは、「砂時計に住む6000万人の同胞」だけなのだろう。

地球上でナチュラルと共生する5億人は、その勘定に含まれない。

 

だが、本当に特異なのか? 特別なのか?

答えは”否”だ。

人類は有史以来、いやもしかしたら有史以前から似たようなことを口走り殺しあってきたのだ。

国が違う、民族が違う、宗教が違う、言葉が違う、文化が違う、肌の色が違う、etcetc……

結局は、「自分と違う他者が許容できない」とか「お前より私の方が優れてるのだから」とか、そんなセリフを飽くことなき繰り返してきたのが、血みどろな”人の業”だ。

 

その人の業に縛られている以上、コーディネイターは決して何かを超越した人類などではない。

科学の進歩による兵器の進化で、より被害規模が大きくなっただけで、プラントやザフトの行動は、つきつめれば選民思想(レイシズム)なんて陳腐な古臭い言葉でくくれる程度のものに過ぎない。

 

人以外の何かになれないのは、スーパーコーディネイターだって同じことだ。

 

だからキラは、ただただ失望するのが……拒絶されるのが怖かった。

 

(でも、それでも僕は……)

 

前へ進んでみたかった。

 

「ねえ、マリューさん……」

 

「なあに? キラ君」

 

「コーディネイターってどう思う?」

 

 

 

キラの質問の意図が呑み込めぬように、マリューは不思議そうな顔をして、

 

「それってキラ君がコーディネイターってことかな?」

 

「えっ!?」

 

いきなり核心を突かれてドギマギしてしまうが、

 

「その、えっと……はい」

 

でも、マリューに嘘はつきたくなかった。

いきなり罵倒されても取り乱したりしないように下っ腹に力を入れるキラ少年だったが、

 

「ふーん。そうなんだ?」

 

そのリアクションはキラがいくつか想像していた、どちらかと言えばネガティブなリアクションのどれもとは違った。

原作のようにコーディネイターというだけで銃を向けられるとは思ってはいなかった。

だが、マリューの驚きもせず淡々と事実を受け入れることも予想してなかったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「……マリューさんは僕が、コーディネイターが怖くないんですか? 気持ち悪いと思わないんですか……?」

 

キラはつらそうな顔でそう切り出す。まるでそれは、言葉を使った自傷行為のようにも見える姿だったが……

 

「うーん……怖いとか、気持ち悪いとか思わないとダメ?」

 

「えっ?」

 

その言葉に……取り繕うわけでもなく、かと言って慰めるわけでもなく、ただ素直なマリューの言葉に逆にキラは困惑してしまう。

 

「そりゃあキラ君がザフトだって言うなら銃口くらい向けるし、なんだったらそのまま引き金だって引くけど」

 

マリューは微笑んで、

 

「キラ君は、ただコーディネイターってだけでしょ?」

 

 

 

(ああ、そうか……)

 

ストンと心に何かが落ちる心地良い感触があった。

 

(僕はきっと、この言葉が聞きたかったんだ……)

 

「コーディネイターって言われても、私には正直、ピンとこないのよ。ほら、プラントとかでは『遺伝子を調整した自分達は”優良種”』だって言って憚らないし、ブルーコスモスとかでは『遺伝子工学の末に生まれた”化け物”』だってフランケンシュタインみたいな言い方するけど……結局、言ってることは一緒。私に言わせれば、一枚のコインの裏表よ」

 

「それってどういう意味ですか……?」

 

「実像とか現実以上にどっちも”特別視”してるってこと。キラ君、コーディネイターって結局、人の遺伝子を操作してるだけでしょ? 例えば、鳥の遺伝子取り込んで背中から羽を生やして飛んでみたり、サメの遺伝子取り込んで水中でエラ呼吸できるようになるとかじゃないでしょ?」

 

「あ、あの、マリューさん……それができるのはSF作品の中だけっていうか、人の枠組みからとんでもなく外れるっていうか」

 

それが出来たらほとんど『火星コックローチを退治しに行く世界』だろう。

あるいはもうちょっとソフトに『ラーテルな女子高生がガチファイトやってる世界』か?

 

「そうね。だから、コーディネイターも普通に人間の範疇じゃないの? 別に目からビームだしたり、口から炎を吐くわけでも、音速の3倍でコイン飛ばすわけでも、ましてやベクトル操作で地球の自転をパンチに乗せたりできるわけでもないんだから」

 

クスクス笑うマリューにキラは毒気の抜かれたような顔で、

 

「そんなことが出来たら、MSの存在意義すら失われそうですね?」

 

「コーディネイターだろうとナチュラルだろうと、遺伝子組み換えたくらいでそう簡単に人の枠から抜け出せるわけないもの。愚かさも(さか)しさも、人だからだと私は思ってるわよ?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「それにコーディネイターとかナチュラルとかって以前に、おばあちゃんやそのお友達がもっとトンデモだったし」

 

「へっ?」

 

誇張でも嘘でもない。

祖母曰く、『ゼルダだかソルトだかつての自警団(?)。今となっては老人会』の面々は、その”かつて”の時代は……

曰く、『弾丸避けの魔法を使う』

曰く、『頭の後ろに目がついている』

曰く、『死神がスポンサーに入ってる』

曰く、『血液の代わりにガンオイルが流れ、ガンパウダーを胡椒代わりに使っている』

曰く曰く曰く……まあ、そんな集団だったらしい。

 

「ほら、私が追っ払った子、アスラン君だっけ? キラ君のお友達だったみたいだけど……ザフトの赤服着てたし、あの子ってかなり戦闘向きのコーディネーターってことでいいのよね?」

 

「え、ええ、まあ。アスラン、なんでザフトなんかに……」

 

「それは気にしてもしょうがないことじゃないかな? それなりにキラ君が知らない理由があるんだろうしね」

 

まがいなりにも殺し合いをやった敵兵のことだというのに、本気で気にしてないマリューの様子にキラは驚く。

もっとも、マリューは祖母から『缶詰一つ巡り殺し合いが起きる』再構築戦争の戦中/終戦直後の話を聞いて育ったせいもあり、『理由があれば、親兄弟兄弟姉妹とも簡単に、あるいは平気で殺し合いするのが人間だから。かつての友人同士が殺しあうなんて、実際、珍しくはないわ』とか思っていそうではあるが。

 

「あのぐらいがコーディネイターでも上位の戦闘力だったっていうのなら、70代の頃のおばあちゃんなら追っ払うどころか瞬殺してたわよ? 多分、気が付く前に目と目の間を撃ち抜かれてるんじゃないかな?」

 

ばきゅーんと指鉄砲のポーズをとるマリューは、

 

「勿論、おばあちゃんはコーディネイターが出てくる前に生まれてるから、生粋のナチュラルよ?」

 

どうやら世の中は、まだまだ不思議に満ち溢れてるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




このシリーズのカガリとマリューさんの神経の太さは登山用ザイル並(挨拶

マリューのコーディネイターについての私感を一度じっくり書いてみたいな~ってことで生まれた回ですが、彼女にとってはコーディネイターより祖母(とその友人のじっちゃんばっちゃん)のがよっぽどおっかない罠w

なんせ、若い頃はフランスのパリに住んでたらしいミレイユってファーストネームのおばあちゃん、

『別にコーディネイターたって目が四つあるとか心臓が二つあるとかじゃないんだろ? 弾丸(タマ)が当たれば血が出るなら、仕留め方はいくらでもあるってことさ』

なんて言いながらカカッと笑う人だったみたいです(^^





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第016話:”バジルールさんは、とんでもない人に目をつけられたみたいですよ?”

本日は早めの帰宅だったので、ストック分を書き足してリリースですw


これにてアークエンジェル・サイドのエピソードは一旦終了です。
まあ、オチ回みたいなもんです(^^

そしてオチ担当と言えば……




 

 

 

さて、和やかな空気の中(会話内容は幾分物騒であったが……)キラと親睦を深めている最中、唐突にマリューにブリッジからの呼び出しが入る。

 

キラに断りを入れてから急ぎ足で戻ってみると、待っていたのはブリッジの中で一番大きなソリッドステート・スクリーンに映る、容姿や顔立ちはいっそ不自然なほど整ってはいるが、鋭すぎる目つきのせいで魅力値が幾分スポイルされてくる黒髪ロングの青年……

 

画面の端にあるアイコンは『秘匿回線にてライブ通信中』であることを示していた。

そして、マリューのブリッジINを確認すると、その青年はどこか挑発するように小さくフフッと笑い、

 

『会いたかったよアークエンジェルの諸君』

 

沖田十三コスなのに、何故かデスラームーブをかましてくるロンド・ギナ・サハクがそこにいた。

いや、確かに性格(キャラ)的には艦長より総統の方が近いかもしれないが……この男、意外とお茶目なのだろうか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

初っ端からかましてくれたが、ギナからの通信内容自体は比較的まともだと言えた。

要約すれば、

 

”次の攻撃でザフトの阿呆どもは、後先考えずになりふり構わぬ装備でやって来るだろう。おそらくその攻撃にヘリオポリスは耐え切れず瓦解する。その時は脇目もくれずさっさと逃げろ”

 

という通達だった。

 

「いえ、ですが……」

 

何とか言葉をつなごうとするマリュー。

他意があるわけではない。ましてや恩を売りたいわけでもない。

ただ、彼女は軍人としては「人として善良すぎる」きらいがある。

だから、この状況を「()()()()()()()()」からなんとかしたいとつい思ってしまう。

そして、ギナはそれを許容する人間では当然なく、

 

『ここは(まご)うことなきオーブの領土だ。自衛のための最低限の戦闘行為は(降りかかる火の粉を払うのは)黙認してやる。だが、それ以上の行動は許さん。繰り返すがここはオーブの土地だ。ならば戦災した民を救う義務も責務もオーブにある。お前たちの出る幕はない』

 

そうバッサリと切り捨てる。

その正論すぎる物言いに、マリューだけでなくアークエンジェルのブリッジ要員全てが二の句が継げなくなるが、

 

『良いか? 大西洋連邦(おまえたち)は所詮、開発の為にヘリオポリスの軍事施設を間借りしていたにすぎん。確かにザフトはお前たちの開発成果を狙ってきたかもしれんが、共同開発も施設の貸し出しもオーブの国民と政府と国家が総意として決めたものだ。お前たちに責はない』

 

「サハク国防委員……」

 

事実のみを告げるようにしてるが、決して冷たいだけではない言葉に感じるものがマリューにあった。

 

『私のことは国防委員ではなく、今はサハク艦長とでも呼んでほしいところだな』

 

ロンド・ギナ・サハク、どこまでもブレない男であった。

 

『ラミアス大尉、貴官(キサマ)は大西洋連邦の軍人なのだろう? しかも本意ではないとはいえ先任だ。ならば国家と軍に求められるその責務を果たせ』

 

「あっ、待ってください! 実はご報告しなければならない事が……!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

マリューの話は、

『民間人扱いでありながら、オーブ軍から援助を受けてる少年とその仲間を保護していること』

『強奪を阻止するためとはいえ、成り行きでその少年を開発中のGAT-X105に乗せ、操縦させてしまったこと』

などを可能な限り詳細に伝えた。

その情報、ブリッジにいるナタル・バジルールにとってもムウ・ラ・フラガにとっても見事なまでの初耳学(当然だ。マリューだって聞きたてのほやほや情報なのだから)で、思わず唖然としてしまう。

 

ギナは少し考えると、その”保護した民間人”のリストを送るように伝え、それを受け取ると「直ぐにまた通信をつなげる」と言い残しいったん通信を切る。

 

無論、マリューはナタルから情報共有を図るように詰め寄られた。

そして、その後……

 

『確認した。先ずはキラ・ヤマトの処遇に関して告げる』

 

そして一端言葉を切り、

 

『キラ・ヤマトは現状、軍人ではないが”軍属”ではある。なので「本人が継続して開発中のMSに搭乗を望む」場合に限り、臨時任官で本人をオーブ軍技官、技術少尉とし”GAT-X開発協力者”として大西洋連邦への出向扱いとする』

 

「えっ!?」

 

だが、マリューの驚きはまだ序の口。なにしろ、

 

『ああ、それと詳しくは言えんが……キラ・ヤマトは”()()()()()()()()()()”の()()()()だ。相応の処遇と待遇を用意した方が身のためだと思うぞ?』

 

とんでもない爆弾を放り込んできた!

まあ、実際は”遠い縁者”どころか双子の弟なのだが。

 

 

 

『一応言っておくが、私の可愛い国民に無理強いは許さんぞ? あくまで本人がMSの継続搭乗を望んだ場合のみだ』

 

そう釘を刺すギナに、

 

「は、発言の許可をっ!!」

 

慌てて挙手するのはナタルである。

ちゃんと発言の許可を求めるあたり、急展開に驚いてはいても、理性は蒸発してないらしい。

 

貴官(キサマ)は?』

 

「大西洋連邦軍()()、ナタル・バジルールであります!」

 

原作より実は1階級上のナタルである。

まあ、別に不思議な話ではなく士官学校出て任官して程なくプラントと開戦。初期において大量の戦死者が発生し、特に士官の欠乏が深刻だったためにその影響でまだ軍服がフィットしきれない内に階級章だけが少尉から中尉に代わってしまったのがナタルであった。

 

まあ、彼女だけに限らず大西洋連邦どころかこの時代の地球連合全体に散見していた「開戦昇進」であった。

もっとも25歳で中尉というのは、平時でもさほど珍しくはないが。

そう25歳……実は、原作とはマリューと年上年下が逆転してしまっている(マリューは現在24歳。つまり”年下の上官”。しかも民間出身の技術畑……)。

 

軍は階級が絶対とはいえ、今後の展開にそれがどう影響するか未知数だ。

 

『発言を許可しよう。で、なんだ?』

 

「いえ、その全体的に非常事態とはいえ……そのご判断は、些か無理があるのではと愚考いたします」

 

一応、目上の者に対する発言の体裁を守るナタルだが、

 

『ふふん。確かに愚考だな。それにキサマはまだ戦闘糧食(レーション)を食いなれておらんようだな?』

 

ギナは楽しげに鼻で笑うと、

 

『その無茶や無理を通すのが、軍隊であり政治家であろうが? 戦時となれば尚更だ』

 

「しかし……!」

 

なおも食い下がろうとするナタルに、

 

『私の権限で必要な書類は用意してやろう。すべて私の印鑑が押された本物の公文書だ。特例的措置に必要な手続きや根回しも手配しよう。そういうのが得意というか好きなのが、ちょうど身内にいる』

 

ニヤリと笑い、

 

『何の問題がある?』

 

 

 

軍人、ザフトのようなゲリラやテロ組織と大差ない民兵組織はいざ知らず、現代軍は基本的に公務員(正確には”特別職国家公務員”)だ。

なので必要な書類を用意して、手続きを踏めば案外どうとでもなってしまう。

 

「ぐっ……」

 

『バジルール中尉とか言ったか? キサマは少々「軍人の何たるか」という教練が足らんようだな?』

 

ギナは楽しそうに、

 

『戦後にでも、軍の人材交換留学制度を利用してオーブ軍へ招聘してやる』

 

「へっ!?」

 

『なんなら私が直々に鍛えてやろう。楽しみに待っていろ』

 

 

 

 

 

 

それはロンド・ギナ・サハクのその場限りの冗談だったのかもしれないが……だが、ナタルという名がギナに名を覚えられたのは紛れもない事実であった。

 

しかし、物は考えようだ。

もしかしたら彼女の死亡フラグは……いや、この先は言わぬが花だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギナ兄は有能なドS(挨拶

原作では最後は”炭素人間”なんて怪しさ大爆発な存在になってしまいましたが、道を踏み外さねばギナって滅茶苦茶有能だと思うんですよ。

優れたMSパイロットであると同時に、原作でも大西洋連邦相手に政治交渉とか普通にやってましたしね(^^

そして、そんなんに目をつけられてしまったバジルール中尉(25歳)……死亡フラグ×死亡フラグの行く末は果たして?



さて、次回からは後始末の顛末と、心はエブリデイ両性具有さんが、またしてもろくでもないこと考えるみたいですよ?


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第017話:”「ユニウスセブン以上の悲劇」とその意味”

今回は、心はいつも両性具有でCV進藤さんな人スペシャル(?)です(^^




 

 

 

ふむ。なんだか久しぶりな気もするが……肉体的にはともかく、精神的にはいつだって両性具有のカガリ・ユラ・アスハだ。

正直、性的にはワタシは両刀(バイ)なのでは?と思ってる。

 

今の所、肉体的同性(じょせい)経験はないが、なんだかいける気はするぞと。

 

それにしてもギナ兄(ロンド・ギナ・サハクな?)が、やけに上機嫌に「この私に具申するとは中々見どころのある奴だ」って新しいオモチャ見つけたみたいな顔をしてたけど、あれは一体なんなんだろうか?

 

(まあ、いいけど)

 

アークエンジェルが去り、それを追いかけるようにザフト艦(クルーゼ)隊も消え、今はヘリオポリスの救難作業も佳境に入りつつある。

 

『ザフトの襲撃によるヘリオポリスの崩壊』を”想定しうる最悪の状況の一つ”としていたから、軌道ステーション(アメノミハシラ)に待機していた追加の救難船団も迅速に駆けつけることができ、そのせいもあり想定よりも多くの人命救助がなってる事は素直に喜ばしい。

 

(それ以上に予想外、いや予想以上だったのが……)

 

「ロウ・ギュール一味やサーペントテールが、思ってたよりずっとプロフェッショナルだったのは嬉しい誤算だな~」

 

イズモの艦長席で胡坐に頬杖というヤン・ウェンリースタイル(厳密にやるなら、椅子ではなく机の上でやらなけりゃいけないけど)で、ワタシはそう呟いた。

口には出さないが、ギナ兄も彼らのことを認め始めてる気がする。

 

(救える命が多いのは、確かに喜ばしいことだけど……)

 

「だからといって取りこぼす命がないわけじゃない」

 

仮にも政治家だというのなら、それを……目の前の宙域に散らばる残骸の狭間には、数多の屍が漂っていることを見過ごしてはならない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

少しスペースコロニーの話をしよう。

ヘリオポリスは、西暦1970年代にアメリカの物理学者ジェラード・K・オニールが提唱したいわゆる”オニール・シリンダー”と呼ばれるタイプの古典的なスペースコロニーの一種だ。

より細かく言うならオニールが提唱した三つのタイプのコロニーの中で、”島3号”と呼ばれる……そう、オリジナルにして原点の”機動戦士ガンダム”に登場する、アムロが住んでいたコロニーの仲間である。

 

円筒状の宇宙に浮かぶ超巨大構造物で、直径約8㎞/長さ約32㎞……やろうと思えば、数百万人規模の居住が可能だった。

 

もっとも、ヘリオポリスは「宇宙に浮かぶ研究学園都市」というコンセプトで建造され、研究所やら実験施設が多かったうえに、資源衛星(アステロイド)と接続されていたから実際の居住人口は100万人程度だった。

 

(だが、それでも最終的な死者/行方不明者は……)

 

「30万人を超える可能性が高い、か……」

 

ヘリオポリスの脱出ポッドを兼ねたシェルターは極めて秀逸で、戦車より分厚く頑丈な構造材に覆われ、特に致命的な破損が起きにくいように二重三重のセフティー・システムがある。理論上、コロニーが崩壊しても、かなりの高確率で生存可能なはずだ。

 

まともに機能すれば、例え満杯でも72時間は生存可能であるし、必要であればエマージェンシー・モードが作動し、酸素消費を抑制するためシェルター内避難者にソフト・コールドスリープ(スターゲイザーのラストに出てきたアレの弱モードみたいなもの)を施す仕掛けさえある。

 

だが、それでも壊れて全滅したシェルターだってあるだろうし、そもそもフレイのようにシェルターに逃げ込みそびれた人間だって多いはずだ。

 

放り出されたり漂流しているシェルターには救難ビーコンがついていて、それを頼りに捜索を続けてるが……現在確認できてる生存者数はまだ60万人に届いていない。

 

民間徴用分も含め、救難船に次々と回収しているが自ずと限界はやってくる。

 

(この宙域に留まれるのは、あと精々半日……三人に一人は死ぬ計算、か)

 

気が付けば、ワタシは爪を噛んでいた。

 

「オーブ建国以来、最悪の被災……」

 

いや、そうじゃない。

 

「戦災だな」

 

これは不可避な天災などではない。人の悪意が起こした人災だ。

 

 

 

(だが、ワタシはとことんロクデナシだな……)

 

人として正しいのは、間違いなく死者を……犠牲者を悼むことだろう。

だが、ワタシはどうしても思ってしまうのだ。

 

(どうして原作のオーブは、この状況を政治利用しなかったんだ……?)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

アニメの状況……崩壊した後も短時間とはいえアークエンジェルとクルーゼ隊の間で戦闘が継続されたこと。

戦闘宙域だった為、即座に救助できたのはアークエンジェルだけだったこと。

軍艦、しかも実験艦的な側面が強いアークエンジェルに収容できる人数には、物資的な面だけでなく物理的な容積限界で低いこと。

ザフト襲撃を想定した準備をしていた描写がないため、原作の救難救助船団が来たとしても到着が遅れただろうこと……

 

(特に災害発生時は、初動の遅れが要救助者の生存率に大きく影響を与える……)

 

これだけの悪条件だ。

出来うる限りの準備を重ね、原作ではありえないロウや劾達の手まで借りた現状より、被害者数が少なかったとは思えない。

 

分母であるヘリオポリスの居住者数が少なかった可能性もあるが、コロニーの大きさや形にほぼ差がない以上、大きな人口差はなかっと考えた方が自然だろう。

 

(むしろ、原作の方が人口が多かった可能性さえある)

 

 

 

だが、原作では不思議なほど、あるいは不自然なほど『ヘリオポリス崩壊とその際に生じた()()()()()()()』を、オーブは問題にしなかった。

 

ここをガンダムSEEDをアニメ作品の中として見るなら、答えは簡単でもいいだろう。

例えば、制作サイドの都合で『必要以上に視聴者がプラントに悪印象を持たれても困るので、あえて被害の詳細を出さなかった』でも、なんだったら『設定上、プラントは6000万人しかいないんだから、ある程度間引きしても問題無し』でもいいかもしれない。

 

(だが、生憎とここは現実だ)

 

少なくともワタシの主観でここは現実で、ワタシの身体の中では心臓が鼓動を刻み続けてる。

なら、あえて問いたいことがある。

 

例えば、2020年時点の人口統計で、「俺ガイル」で有名な千葉県千葉市の人口が100万人弱、ヘリオポリスの人口とそう変わらない。

どこの国でも構わないし、なんなら国じゃなくてもいいが……ある日突然、宣戦布告もなく「自分達に敵対する国の研究所があるから」という理由で千葉市が攻撃され、30万人以上の犠牲者が出たとする。

その攻撃した勢力の罪を問わずにいられるのか?

あるいは、その攻撃した勢力を糾弾しない政府を、国民は支持できるのか?

 

 

 

(オーブが連合に攻められた時は、あれだけ悪と断じたのにな)

 

はっきり言って、ウズミに限らずアニメのオーブ首脳陣は国の舵取りを任せられないほど無能だ。

だが、

 

(それだけで説明できないことが多すぎる)

 

ここには「制作サイド」なんて物はいない。例え”一族”のような歴史の黒幕気取りはいても、それ以上の存在ではない。

 

「なら、とことん利用させてもらうぞ?」

 

人の命は安くはないんだ。

これから戦時立法により満場一致に近い形で可決されるだろう数々の法案、そこで戦没者に制定されれば、国は特別会計の『戦没者遺族年金』を遺族が生きてる限り、あるいは国がなくならない限り払い続けなければならないだろう。

それがケジメというものだからだ。

 

そして、ヘリオポリスの死者/行方不明者は象徴的な意味も含めてその第一号認定になるだろう。

その総額を考えただけでも頭が痛い。

 

(きっと小さな国なら傾く金額だろうな……)

 

アニメより遥かに巨大な、メラネシアの大部分を領土にもち、地球在住の避難コーディネイターの流入で人口2億に届こうかという”今生のオーブ”にだって楽な額じゃないだろう。

 

(だから、払ってもらうぞ……)

 

プラント主張の『血のバレンタイン』の死者は、24万3721名……

 

『宣戦布告なくコロニーを襲撃し、()()()()()()()()()()()()()

 

ってツケをなっ!!

 

(ザフト、プラント待っていろよ……)

 

ああ、今こそはっきりと自覚したさ。

ワタシはロクデナシどころじゃない。立派な人でなし(ヒトデナシ)だ。

ワタシは国民が殺されたことに怒ってるんじゃない。

アニメの設定や背景ではなく、「30万人が死ぬ」という現実として認識してなお

 

「テメェらに正当性なんて何一つないこと、その身に教えてやんよっ!!」

 

(たかぶ)る!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリは思いの外苛烈だった件について(挨拶

スペシャルというよりカガリ一人のモノローグだった罠w

そして、プラントに政治的死亡フラグが立ったような……?(もしかしてウズミもか?)

次回は、「変な決断」で色々と原作とズレだすかも……






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第018話:”後始末とか尻拭いとか、地味で地道な作業ほど得てして労力はかかるものです”

今回もカガリのモノローグ風なんですが、未出の情報がチラホラと……

とりあずジャンク屋組合は強かで、カガリは中々に?




 

 

 

ちょっと最近、頭を使ってる気がするカガリ・ユラ・アスハだ。

正直、頭を使うより体を使う方が性に合うんだが……まあ、それを言っても仕方が無い。

身体も頭も使えるときに使うべきだ。このご時世、いつ使えなくなるか分からないからな。

 

(死んだら使いたくても使えないっと)

 

さて、(はや)(たかぶ)る気持ちには一先ず蓋をして、心は熱くとも頭はクールにだ。

 

まずは現状を確認してみようか。

あれから半日……救える避難民は全て救ったと思う。

ヘリオポリスがあった宙域にやってこられる船は軍民問わず全てかき集め、ビーコンが発せられてるシェルター型脱出ポッドは全て回収できただろう。

 

また、駆けつけてくれたのはオーブの船だけでなく、ジャンク屋組合()西()()()()()()()()()()もいたのだ。

 

こう書くと『救助にかこつけた火事場泥棒じみた強奪行為』と誤解されそうだが、彼らは想像以上に紳士的……というか紳士協定を守り、想像以上に人命救助に熱心だった。

 

一応、それなりの理由はあってジャンク屋組合の交渉役に出てきた二人……長髪の優男と「エリカ・シモンズ(モルゲンレーテの技師)の友人」と名乗ったクセっ毛の眼鏡美人によれば異口同音に、

 

『オーブはおっかないからね。だから今のうち(高値で買い取ってもらえるうち)に恩と媚びを売っておく』

 

との事だ。

ご名答。故あれば、ワタシはジャンク屋組合を潰す気だったんだが……

 

(食えない連中だな)

 

露骨に持ちつ持たれつを言い出されれば(あるいは利用価値を提示するなら)、こっちも相応の姿勢を見せないと度量が疑われる。

ナメられるのは御免だが、かと言って辛辣に当たればいいってものではない。

 

事実、今は手が欲しいのは確かだ。

なので、謝礼に『この宙域に留まり継続してデブリを回収する許可』と『明らかに遺品と思われるものや、重要物と思われる物は責任もってオーブが買い取る契約』などを交わした。

さらに追加依頼として、ジャンク屋でも回収できない巨大デブリに宙間移動用バーニアの取り付けも出しておいた。

 

ヘリオポリスと連結されていた資源衛星の採掘権とそのための採掘基地設営も交渉されたが、流石にこれはワタシやギナ兄の一存では決められない。

なので、本国へ戻ってから継続審議だな。

もし、所有したいとの申し出なら一蹴したが……確かに現状、かなりの時間は採掘再開は不可能だろう。

何をするにも金が要るのが現実である以上、確かにオーブにもメリットがある話だが、

 

(だが、一歩間違うと「(ひさし)を貸して母屋(おもや)を取られる」になりかねないからなぁ~)

 

しかも、ジャンク屋組合の『宇宙に安定的拠点を築きたい』という意図が透けて見えるのがなんとも。

 

(かと言って、下手に”GENESIS-α(ジェネシス・アルファ)”を接収されても困るしな……)

 

”GENESIS-α”っていうのは外伝の方に出てくる代物で、人類が建造した最悪の兵器の一つ、超巨大ガンマ線レーザーの”GENESIS(ジェネシス)”の原型となった……大型エックス線レーザー発振器だったかな?

 

あの大量の地球連合将兵を「ひでぶっ!」させた凶悪兵器、なんと元々は兵器ではなく、外宇宙探索の為のビームエネルギー推進(ライトクラフト)用レーザー発振器として開発がスタートしたらしいのだ。

 

”ライトクラフト”っていうのは言葉の通り、ソーラーセイルなんかのレシーバーに太陽風の代わりに高エネルギービームを受けて飛ぶシステムのことだ。

 

(この時期、その役目を終えた”GENESIS-α”は事実上、放置で”GENESIS”の建造あるいは改造はまだ終わってなかったはず……)

 

それにあれを秘匿するには大量のミラージュ・コロイドが必要で、この時点だと備蓄的にも技術的にもまだ不完全なはずだ。

 

ここで豆知識。ザフトはミラージュ・コロイドを利用したステルス技術をGAT-X207”ブリッツ”から入手したって一般的には思われてるけど、実はそれ以前に「ジン戦術航空偵察タイプ」に試験的に導入されていたという記述がある。

ただ、これは「停止(静止)状態のみで運用可能(だから基本的に静止しているGENESISには使えた)」というMSのような機動兵器に搭載するには、なんとも相性の悪い装備だった。

 

むしろGAT-X207の功績は、「ミラージュ・コロイドのステルスを機動状態でも使用可能となり、戦闘時に使用可能なレベルに持って行った」というあたりだろう。

 

実はミラージュ・コロイドの応用も含めた研究は地球連合……というより、大西洋連邦の方が進んでいて、例えばザフトではミラージュ・コロイドの別の用法であるエネルギー偏向装甲、”ゲシュマイディッヒ・パンツァー”は、ザフトやプラントでは実用化出来なかった。

 

(なら、”GENESIS-α”の捜索と発見、引き渡しを対価に渡すのもありか?)

 

しかし、そのあたりは少し慎重に動いた方がいいかもな。

マルキオ導師や”ターミナル”が、どこでどうつながって糸を引いてるか見極める必要がある。

 

「まあ、油断も隙も無い連中なのは確かだろう」

 

 

 

対して、大西洋連邦の方はシンプルで、

 

『我々は言わばアズラエル様の直参(しへい)ですので』

 

流石むったん(アズラエル)! 仕事の速さに惚れ惚れするぜ♪

今度会ったら、ベッドの上でサービスしてやらねば。

しかし、ワタシがサービスすればするほどベッドヤクザ呼ばわりされるのは何故だろう? ゲセヌ。

 

あっ、言っておくけど同性経験がないだけで、異性経験は普通にあるからな?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

前にチラッと話したかもしれないが、サーペントテールに出した追加依頼は、『避難民達のアメノミハシラまでの護衛』だ。

勿論、オーブの護衛艦隊は付けるが、ザフトとエンカウントした場合、どうしたって対MS戦になるだろうし、その場合現有の装備では心もとないから、これはこれで正解だろう。

 

(そして肝心のワタシ達の保有戦力は……)

 

実は地味に増えている。

アメノミハシラから来た増援に同行していたのだが、ソキウス三人に追加のオーブ・ジン。

それと宇宙海兵隊が1個中隊。

 

宇宙なのに海兵隊とはこれ如何に?と思うかもしれないが、宇宙の海は俺の海というくらいだから特に問題はないだろう。

そういえば、宇宙と書いて”宇宙(うみ)”と読むか、”宇宙(そら)”と読むかである程度年代が分かると前世で聞いた気がする。

 

話が脱線したが、オーブ軍っていうのは日本の自衛隊の伝統を色々引き継いでいる(例えば階級の呼び方。他国では大尉がオーブでは一尉だ)が、救難救助活動が上手いのもその一つだろう。

要するに宇宙海兵隊のお仕事は、装甲宇宙服着て敵の軍事施設を強襲するのも役割の一つだが、宇宙での人命救助も普通に行える集団として来たわけだ。

 

イズモも単艦で言えば最強級の船で、オーブ・ジンの追加に加え、調整が終われば、グリーンフレームも戦力化できる(うごかせる)ようになるだろう。

 

(悪くない戦力だな……)

 

では、重要なのはこの戦力を持って何をするか?だ。

悪いが、ワタシはアニメのカガリ・ユラ・アスハのように中東くんだりまで行って、非正規軍や遺伝子操作虎とたわむれる気はない。

本音で言えばオーブに関係ない戦争なんて、好きなだけ勝手にやってくれってところだ。

正直、砂漠で何人死のうが所詮は他人事だ。

 

(では、どうする?)

 

そう、自問自答する。

直ぐに本国に帰るというのも一つの手だが、できれば『この時期しか打てない布石』を打っておきたい……

 

(どうせ今ごろはウナトが、親父殿(ウズミ)の弾劾準備をしている真っ只中だろうし)

 

そこまであわてて帰る必然は薄い。

というより、場が温まる前に帰っても意味はない。何事もタイミングが肝心だ。

 

(だが、クルーゼ隊のケツを追うのは愚の骨頂)

 

確かに今の戦力なら悪くない勝負ができそうだが、時間的に素直に後ろから追いかけても追いつくのはかなり難しい。

ならば、

 

「いっそ先回りしてみるか……?」

 

もしかしたら、とんだ”歌姫”にエンカウントできるかもしれんし。

原作乖離? フン、今更だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリ様は非処女だった!(挨拶

いや、朝からこれかよw
しかもベッドヤクザ(^^
モロに肉食系女子ですからね、コヤツは。
いや、本人悪気はないんですよ?
ただ興が乗ってしまうと、「やーってやるぜっ!」と某断空我(ダンクーガ)っぽくなってビーストモードを発動する……って訳じゃないと思う。きっと。メイビー。

さて、どうやら「先回り」する行動方針にしたようですが……どうも、カガリは原作ブレイクとか気にしないようです。
ただ、どうやってギナに説明したもんかと次回あたり頭を抱えそうですが。



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第019話:”道化と張り子の虎”

週末だし、もう一本アップいっくぞ~!ってな感じで(^^

デスクワーカーの持病、腰痛と戦いながら書き上げたのは……ギナ兄の説得?w

あと、どっかのオトンがディスられ(?)ます。


 

 

 

ふむ。本人的には『ベッドの上では乱れ桜』なつもりだが、なぜだか同好の士たる”むったん(セフレ)”からはベッドヤクザ扱いされることが多々あるカガリ・ユラ・アスハだ。解せぬ。

 

だがな、”むったん”……ベッドの上で動けなくなった挙句、涙目で「このけだものぉ……」とか言うのはどうかと思うぞ?

余計に欲情してしまうではないか。

 

解せぬと言えばルビが何やらおかしかった気もするが……まあ、細かいことは気にする必要はないか。

それより今は他にやるべき事がある!

 

「はあ? ユニウスセブンの残骸を見に行きたい? いきなり何を言ってるのだ、愚妹」

 

あれれ?

何故かギナ兄にアホの子を見る目で見られてしまってるぞ。

 

「ギナ兄……妹分扱いは光栄だが、愚妹は流石にひどくないか? それに何故、憐れんだ目でワタシを見る?」

 

「実際、混じり気なしにお前の頭の中身を憐れんでるからだ」

 

ひどくないかっ!?

 

「それと最低限、ブリッジではギナ艦長と呼ばぬか」

 

ブレないなー。

 

「いや、ちゃんと理由はあるんだ」

 

「言ってみろ。聞くだけは聞いてやる」

 

いきなり”聞く耳持たぬ”ではなく、とりあえず聞くだけは聞いてくれるんだから、原作と比べると人間丸い、いや器デカイよな~。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「は? プロパガンダの素材集め、だと?」

 

「うむ」

 

ワタシは腕を組んで艦長席に座るギナ兄に頷く。

 

「本国に戻ったら、追悼演説という()()()、本格的な開戦を前提とした国威発揚演説を行おうと思ってる」

 

平たく言えば、「立てよ国民!」という奴だ。

悪く言えば、煽動(アジ)演説って奴だな。

 

「その時、背景の巨大スクリーンに流す画像の一つとして、”崩壊したヘリオポリス”と『対になる絵』が欲しい」

 

「なるほど、確かに民衆が喜びそうな演出ではあるな。それなりの効果は期待できるか……いささか迎合的ではあるが」

 

「現代政治など主義主張に差こそあれ、大衆に迎合してなんぼだろ?」

 

 

 

結局、大衆支持の得られない政治基盤なぞ脆弱なだけだ。

「政治の基本はパンとサーカス」なんて言葉は、古代ローマには確立されている。

こいつは何も生存に不安のない食料の安定的供給と娯楽の提供を揶揄しただけの言葉ではない。

 

皇帝という現代政治なら成立しないあやふやな地位に権威や権力が集中できたシンプルな社会構造を持つ古代でさえ、大衆の、民衆の心を掌握しなければあっという間に権威は失墜し権力は瓦解する。

そして、王侯貴族という権威が維持できなくなるほどより複雑高度に発展した現代社会において、民衆の心を掌握する……民意の察知、民衆の潜在的欲求を探ることは政治家の死活問題だ。

 

親父殿……ウズミ・ナラ・アスハが、政治センスが皆無といっていいのに代表首長に上り詰められたのは、(ひとえ)に、当時のプラントと地球の関係悪化から来る情勢不安という背景に後押しされ、『力強いリーダーが欲しい』と願った民衆の集合心理に乗ったからだ。

 

つまり『ウズミ様なら困難な局面でもなんとかしてくれる』というイメージが、能力というよりそのヴィジュアルと強気な言動からあるのだろう。

 

一言で言えば、取るに足らないイメージ先行、大衆の”幻想”だ。

前世知識で恐縮だが、確かに1960年代のケネディとニクソンの大統領選の時のエピソードだと思ったが……ケネディがその時に大統領に当選できたのは、『ケネディの方がテレビ映りがよかったから』だという。

 

ウズミが今まで代表首長でいられたのは、その現象に近い。

確かにウズミは「整った男性ホルモン」が具現したような筋骨隆々とした体つきと力強い漢らしいルックスに恵まれている。

 

即断即決もできるし、果断さもある。

声も落ち着きや深みのある声で、その言動は力強く、高度な教育を受けた者特有の知性を確かに感じさせる。

ユーモアセンスは致命的にないが、それはウズミ・ナラ・アスハという()()()()()()()()()()にとっては、瑕瑾というほどのダメージにもならない。

だが、

 

(それだけだ……)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

所詮、それだけの男でしかない。

『ヘリオポリス崩壊』という『この世が確かに残酷な場所であること』の証明がなされるまでは、ウズミの言葉は(さぞ)かしオーブ国民にとっては耳触りがよく聞こえただろう。

 

なぜなら、オーブ建国の祖たちが残した言葉のエッセンスを集め、「オーブの理想という理念」として体系化させた物に端を発するからだ。

だから、あの男(ウズミ)の言葉の根底は、常に「オーブの理想と理念ありき」だ。

 

(平時ならそれでもいいかもしれないけどな)

 

だが、ウズミは乱世にとことん弱い。

”理想や理念”ありきだから、現実をおろそかにしがちだ。

そして政治センスもだが、それ以上に外交センスが欠落している。

 

(オーブの理念はオーブの理念であるが故に、オーブにしか通じない……)

 

それをあの男は、本質的には理解してない。

 

(だから原作では、大西洋連邦相手にオーブの理念なんぞ振りかざす、理解不能な行動ができる)

 

あの主張も、最後の集団自決も政治的には何ら意味がない……少なくとも、ワタシはそう思う。

つまり、

 

(ウズミは政治家ではないのだ)

 

じゃあなんだといわれても困るが……”無力で痛い理想主義者”程度の評価が関の山だろうか?

 

確かにメラネシアの大部分を領土に持ち、2億の人口を抱える”今生のオーブ”はアニメのそれと比べて巨大、単純国力なら10倍はあるかもしれない。

だが、世界全体を比較対象にし相対的に見るなら、

 

(オーブは未だに小国、小勢力に過ぎない)

 

間違っても『世界の王』などではない。

そんな勢力が、無条件に世界を動かせるわけはない。

政治は、力学でもあるんだからな。

 

 

 

「劇場型政治、大いに結構さ。ワタシが道化になる程度で、国民がわずかにでも”この残酷な世界”を認知してくれるなら安いものだ」

 

とある赤い彗星の()()()()()は、「まるで道化」だと苦笑した。

だが、あえて言わせてもらおう。

 

(それの何が悪い)

 

時には道化や役者になる覚悟もできなくて、何が政治家だというんだ。

 

「全てがそうだとは言わないが、オーブ国民は未だ多くは夢の中だ」

 

だから、ウズミなんて戦時においては何の役にも立たない『張子の虎』を呑気に担ぎ上げていられる。

 

「その目覚ましの素材集めか?」

 

「ああ。これだけの戦力があれば、ザフトとエンカウントしてもどうにかなるだろ?」

 

「まあ、面白くはあるか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良かった。

どうやら話はまとまりそうだ。

あっ、そうだ。

 

「ギナ艦長にもう一つ頼みがあるんだが」

 

「言ってみろ」

 

”フレイ・アルスター”のブリッジ立ち入り、その無制限許可が欲しいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




集団自決は、政治家の職務に含まれないよなぁ(重めの挨拶

とりあえず、ギナ兄の説得は成功、宇宙戦艦イズモはユニウスセブンに向かうみたいですよ?

書いてて思ったけど、どこのマジカル幼女隊長さんとはタイプとジャンルが異なるし、あそこまで先鋭化されてないけど、カガリって「シカゴ学派型社会学/政治学的解釈」を好む傾向があるな~と。

そりゃあ、親子としてはともかく、政治家としてはウズミと真っ向対立するわけだわと(^^
ウナトやアズラエル、サハク姉弟と気が合ってよくつるむ理由も同根かなっと。

そして、何やら再びフレイに出番がありそうな……?



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第020話:”フレイとむったん、そして時々青いコスモス あるいは惨めさの回避”

フレイをブリッジに入れる許可もらうだけの話なんだけど、このシリーズ過去最高の長さに(^^
それと「ちょっと原作と事情が異なりりそうな」あの組織の話とか出てきますよっとw


 

 

 

あの小娘(フレイ・アルスター)をブリッジに常駐できるようにしろと? その理由は?」

 

イズモのブリッジより中継中のカガリ・ユラ・アスハだぞいっと。

フレイをブリッジにも(戦闘中を含め)居られるようにしてくれよ~とギナ兄ことロンド・ギナ・サハクに頼んだら、当然のように理由を聞かれましたとさ。

 

「まさか、あの娘が所在なさげで寂しそうだからとか言う理由なら、聞かんぞ?」

 

「ヲイヲイ。ギナ兄の中のワタシは、どんだけ情緒的でセンシティブな人間なんだよ?」

 

「だから”まさか”と付けただろうが?」

 

そりゃそうか。

 

「結論だけ先に言うなら、フレイ・アルスターをこの先もワタシの側近にしておきたいんだ。その為の実地訓練だとでも思ってくれれば助かる」

 

「……”()()()()()”にでもする気か? 言っておくが、我がオーブでは同性婚は……」

 

知ってるって。というかそういう話じゃなくてさ、

 

「ギナ兄、本気で言ってないだろ?」

 

目が笑ってんの隠せてないぞ?

 

「あの()が、大西洋連邦外務次官ジョージ・アルスター氏の娘だって話はしたろ? その流れで、フレイに大西洋連邦の窓口の一つ……ワタシ専属の連絡官になって欲しいのさ」

 

「それだけか?」

 

まっ、お見通しか。

 

「この先の展開やワタシの政治的行動を考えると、特に()()()()()()()西()()()()へのチャンネルは公式/非公式を問わず増やしておきたい」

 

「既にあるだろ? 人も羨むアズラエル家との……いや、ムルタ・アズラエルへの個人的で極端に太い太いパイプが」

 

太い()()()というギャグは、流石に入れてこなかったか。

因みにワタシは道具よりやっぱりナマモノ派だ。

ついでに言っておくが、ベッドの上では()()()()()スイッチが入るワタシだが、普段はそこまで性欲を持て余してる訳じゃない。

というかぶっちゃけ、あまり自慰は好きじゃない。

 

「まあ、そりゃむったんとはあるけどさ……ギナ兄の言う通り、極端なんだよ。ワタシの場合、むったんへの太いパイプが一本と、残りはパイプと呼べないような細いつながりしかない」

 

(それだけじゃ足りないだろうからなぁ)

 

ワタシはむったん……ムルタ・アズラエルをこの戦争で死なせる気はない。これは絶対だ。

個人的な好き嫌いの感情っていうのも確かにあるが、他にも色々と理由がある。

 

(とはいえ、むったんが死なないと断言できるほど、ワタシは傲慢でも楽観的でもない)

 

とどのつまり、今のワタシの手の届く範囲は、ギナ兄のサハク家やウナトのおっちゃんのセイラン家より狭く短い。そこいらの町娘と比べても、主観的に言えば大差ない。

例えば、むったんがブルーコスモスの内ゲバの煽りで暗殺されようとしても防ぐ手立てがないのだ。

 

(ならば、次善策を考えるしかない)

 

我ながら嫌な女(?)だとは思うが、むったんが何らかの理由でこの世から去ったときの保険として、打てる手は打っておきたい。

 

 

 

はっきり言おう。

ワタシは、アニメのカガリには……あんな惨めな存在にはなりたくないのだ。

言いたいことは色々あるけど……種死の時の一番の見せ場が、『強奪される花嫁役』ってなんだよ!?

しかも、弟に『カガリは今泣いてるんだっ!!』とか言われて。

 

ああ、ダメだダメだダメだ。

ワタシが心理的な両性具有なせいか、種の時のヘリオポリスから脱出してゲリラと遊んでたり敵兵(アスラン)と『青い珊瑚礁ゴッコ』やってる自覚のなさも腹が立ったが、種死あの展開は我が身に置き換えると生理的に受け付けない。

 

そもそも、『悲劇のヒロインムーブ』なんてワタシは死んでも御免だ。

言っておくが、アニメも今生(リアル)も含めて、ユウナ・ロマ・セイランが嫌いなわけじゃないぞ?

ただ、無能なお調子者……典型的な甘やかされて育ったバカボンだと思うし、故に男として見れないだけだ。

確かに身体は女だと自覚してるし、女の身体もそれなりにハイスペックで気に入ってるが……ユウナにはその肝心な女の部分がいっそ清々しいくらいに反応しないのだよ。

 

むったんが死んだ後、『政略結婚にしか価値を見出せない女』なんて評価されるのは願い下げだ。

確かにワタシはロクデナシの人でなしだが、だが自分の意思も貫けないような人生なんざクソクラエだよ。まったくな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「つまり、あの娘を継手にして外務次官へのパイプを新設したいと?」

 

「ああ。それにアルスター次官は、ただの外務次官じゃない。ブルーコスモス穏健派の幹部入りもそう遠くないと評される構成員で、むったんの覚えもめでたいんだぞ?」

 

ブルーコスモスも人間の組織である以上、決して一枚岩ではない。

反コーディネイターという枠組みは一致していても、思想や手段などで実際には様々な派閥に分かれている。

 

ただ、大雑把に言えば”穏健派”、”中道派”、”過激派”の三つに分類できる。

それぞれ詳しく書くと長くなりすぎるから簡潔にまとめると、

 

・穏健派→C.E55年に採択され、地球上ほぼ全ての国家が批准した「トリノ議定書」を根拠に、地球上での新規遺伝子調整者(=第一世代コーディネイター)の製造の原則として禁止を徹底させ、コーディネイターの生殖能力の低さ(=コーディネイター同士の交配だと、体外受精技術を使っても第三世代以降が極めて生まれにくい)を論拠にコーディネイターとナチュラルの交配と混血化を促進し、『コーディネイターのナチュラルへの自然回帰による消滅』を目指す勢力。

 

・中道派→これは雑多でどっちつかずな考えを持つものが多い。生粋の中道は少数派で、穏健派寄り中道派と過激派寄り中道派が主流で、主張がこじれてよく内部対立(内ゲバ)を起こす。何気にブルーコスモスで最もカオスな集団。

 

・過激派→現実的な方策とか経済性とか無視して、『如何なる犠牲を払っても、コーディネイターのこの世からの直接的根絶』を第一義とする集団。コーディネイター相手によくテロを起こす連中だと思われてるが、間違ってはいない物のその手の些末的なテロを起こしてるのは、本流でなく統制の利いてない末端の末端。

 

 

 

意外というか当然というか、むったん……ムルタ・アズラエルはブルーコスモス盟主というだけでなく、”穏健派の首領(ドン)だ。

いや、違うな。順番が逆だ。

穏健派の首領だからこそ、ブルコスの盟主に祀り上げられたと言った方が、より真実に近い。

そして、ここまで書けばわかると思うが……実は、今のブルーコスモスの主流は穏健派が掌握しているのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

あえて原作に準じてアズラエルと呼ぶ(むったんと言い続けると私情が入りすぎるからな)けど、アズラエルが穏健派なのは確かにワタシという存在は無視できないだろう。

だが、勿論それだけじゃない。

 

アズラエルの本業は、国防産業連合理事

要するに地球上の軍事に関わる企業/研究所/大学の殆どがリストに名を連ねる『軍需産業複合体の()()、突き詰めてしまえばビジネスマンだ。

 

だから、穏健=『最も金がかからずリスクの低い方法』を選ぶのは当然といえた。

確かに『ナチュラルへの回帰』は時間がかかり即効性はない。

だが、第一世代コーディネイターの製造をきっちり抑制できれば、安全性が高い堅実な方法でもある。

 

余談ながら……実は穏健派の方法は、シーゲル・クラインの思惑と一致しているのだが……今は、それは深くは追求すまい。

 

ともかく、その「穏健派のやり方」のメリットが伝播/拡散したからこそ主流になったと言っていい。

 

(対して過激派ってのは感情論が多いからな。論理的に攻めていくと、どこかで論理破綻を起こしたりするし)

 

実は”エイプリルフール・クライシス”直後はプラントへの嫌悪や憎悪から過激派が急増したが、予想に反して戦争が膠着し出すと厭戦(えんせん)気分の台頭と『より現実的な解決方法』の模索から穏健派が息を吹き返した経緯がある。

 

一応、ワタシもその流れを作るべくそれなりに努力も苦労もしたんだぞ?

あの時期は、アズラエル家のコネを使ってあちこちの大西洋連邦のパーティーをはしごしたからな。

多分、フレイがワタシを見かけたのも、そのパーティーのどれかだと思う。

 

ワタシが動いた成果がどれほどあったか知らないが、大西洋連邦内では、穏健派と穏健派寄り中道を合わせれば過半どころか圧倒的多数派と言っていい。

 

ついでに説明すると穏健派寄りの中道は、『穏健派の考えは理解するがNJで10億殺したコーディネイターは、やはり心情的に許し難い』という輩が多く、過激派寄りの中道は『無茶無謀なのは理解してるが、即効性のあるやり方も捨てがたい』という考えが多い。

 

 

 

「ブルーコスモス内で、『即座のコーディネーター排除』を主張しない穏健派へのコネやパイプをなるだけ沢山用意しておくのは悪い話じゃないだろ? コーディネーターの国民を多く持つ我が国としてはさ」

 

更に追記しておくと、ジョージ・アルスターは大西洋連邦の各国に「一見するとコーディネーターの排斥」を促しているように見えて、その実……

 

(オーブへのコーディネーター系住民の移住を促してるからな)

 

我が国にもしっかり貢献してもらってる、持ちつ持たれつの関係な訳だ。

 

「違いないな……まあいい。そういう事なら許可しよう」

 

「やったぜ! そうこなくっちゃな♪」

 

「やれやれ。現金な奴だ」

 

 

 

 

 

カガリ・ユラ・アスハ、気を引き締め直せよ。

先はまだまだ長いんだからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




青いコスモスは、結構内部でも色々意見対決があるみたいっすよ?(挨拶

カガリが最後の方でチラッと触れてますが、オーブの親大西洋連邦派(要するにカガリ達)と、大西洋連邦では主流のブルコス穏健派が仲いいのは、需要と供給のバランスが良いからでもあるんですよ。
大雑把に描くと。

ブルコス穏健派:「コーディネイターは排斥したいけど、殺したくはねーなー」

カガリとゆかいな仲間たち:「うちはコーディネイターの移民受け入れ融和政策的にやってんよ~。それに頭脳労働にも使える労働力欲スイ。国力増強国力増強♪」

ってな感じです(^^
その仲介役の一人がフレイパパ(主にコーディネイターを追い出す方の役目)で、その流れでカガリは知ってたみたいなんですが……フレイの存在は、エンカウントするまで忘れてた模様(笑

ブルコス過激派も「プラントに人的資源持ってかれるよりはマシ」って考え方が多く、ウズミ達の反(?)大西洋連邦グループも人道的見地から反対できない罠w

まあ、一千万人規模の命がかかった案件ですし。










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第021話:”カガリお姉様とフレイの甘いあま~いお話ですの♪”

サブタイがフレイに乗っ取られましたw

明日か明後日くらいに完成予定だったのですが、なんか書きあがってしまったので前倒しアップです。

なんか、このシリーズのフレイって根拠なく強そうだな~と。




 

 

 

「連絡官……素敵です! ありがとうございます、()()()!」

 

いや、喜んでくれるのはいいんだけどさ……

 

「うふふ♪ これで()()()()大手を振って()()()()()()と一緒に居られますわ♪ だってお姉様()()ですもの♪」

 

フレイは現在15歳で、ワタシが16だからその言い方自体は間違ってはいないのかもしれないけどさ、

 

(どうしてこんなに懐かれた?)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

”人生万事塞翁が馬”という言葉が最近やけに身に()みるカガリ・ユラ・アスハだ。

 

あっ、フレイの一人称が、わたくしとかわたしから”フレイ”に変わってるけど、こっちが素なんだと。

一人称が自分の名なんて「淑女として子供っぽすぎる」という理由で外では自粛してたらしいが、家の中/あるいは家族しかいないときは未だにコレだそうな。

 

(つまり、ワタシは身内認定されたらしいな)

 

正直、自分で言うのもなんだが、(キラ)……今生ではまだヤマト姓になった後の生弟にはまだ会ってないから何とも言えないが、少なくともアニメのキラ・ヤマトよりは愛想も愛嬌もないと思う。

 

(ワタシが女の子に好かれる要素、皆目見当もつかんな)

 

容姿は整ってるとは思うが……美少女というより美少年寄り、加減した言い方でも中性的だ。

かといって、宝塚(ヅカ)系ってわけでもないし……いや、もしかしてそれが良いのか?

後は、

 

(これが”吊り橋効果”って奴かね~)

 

戦禍の街をお姫様抱っこで駆け抜けたんだ。

ワタシみたいな鉄火場大好きな阿呆と違って、相手は荒事に耐性のないお嬢様だ。

 

(一時的な過度の依存も致し方なしってとこか……)

 

まあ、変な”心的外傷後ストレス障害(PTSD)”を発症されても面倒なだけだしなぁ。

 

(ちょっとは優しくしてやるかねぇ)

 

 

 

だが、この時のワタシは気づいてなかったのだ。

もう既にワタシは十分に彼女を甘やかしており、これ以上の甘さはフレイを狂わせる『精神的な()()()()になるということを。

 

そして、まさか後にあんな事になろうとは……この時のワタシは、知る由もなかったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ところでフレイ」

 

「なんです? お姉様」

 

「なんでワタシが部屋に戻ってくると、直ぐに遊びにやってこれるんだ?」

 

「……もしかして、お姉様が部屋に戻るたびにこうしてお顔を見に来るの、ご迷惑でしょうか?」

 

いや、何もそんな捨てられた仔犬みたいな顔をせんでも。

 

「いや、そーでなくて。ただ、不思議なだけだよ。ドアの開閉音とか部屋の中の物音とか、ほとんど聞こえないはずだろ?」

 

前にちょっと触れたかもしれないが、確かにお客様扱扱いのフレイは、ワタシの部屋の隣に個室が与えられている。

 

だが、イズモは軍艦……それも敵の宇宙艦船と殴り合いを想定した”戦艦”だ。

部屋と部屋の間の壁/天井/床の中には隔壁じみた装甲板が仕込まれている。

 

戦闘時ともなれば、通風孔なども閉じられ、部屋のある区画も分散防御船体構造の構造材の一部、小部屋に仕切られた古典的な”中空装甲(スペースドアーマー)”として機能するのだ。

 

その副次効果で、防音性が考慮された設計ではなくとも防音性が高く、隣の部屋の物音とかよほどでかい音じゃない限りは、そう簡単に聞こえないはずなんだが……

 

「んー……そうですわね。ちょっと言葉で説明するのは難しいんですけど、」

 

フレイは人差し指を軽く唇に押し当てる仕草(可愛い♪)で少し考えてから、ふにゃっと笑い、

 

「こう、お姉様が部屋に戻ってきますと、ふわっと空気が暖かくなる気がしますの。それで気付くんですわ♪」

 

ヲイヲイ……

 

(確かに説明はふわふわしてるが……それって、)

 

「すみません。わかりませんよね?」

 

「いや、そうでもないんだけどさ……」

 

有り得ない……とは言い切れない。

ムウ・ラ・フラガにラウ・ル・クルーゼ、レイ・ザ・バレルに外伝だとプレア・レヴェリーなんかもそうだったか?

 

『特異な空間認識能力』と作中では表記されているが、

 

(どっからどう見ても”ニュータイプ能力”だよなぁ……)

 

オリジナルへの憧憬込みのオマージュと思うのは、好意的すぎる解釈か?

 

(フレイも凄く大きな解釈ならラウ・ル・クルーゼの関係者とも言えなくもないし)

 

しかもフレイパパのCVはクルーゼと同じだし。

 

そう言えば、なんかで読んだことがあるが、ストライク・ルージュにはフレイが乗る計画もあったとかなかったとか……

 

「なあ、フレイ……実はワタシ、オーブのMS開発に関わってて、主にコクピット周りのインターフェースの改善や改良に携わってるんだ。その機材も全てじゃないが、イズモに運び込んである」

 

嘘じゃないぞ?

こう見えてもワタシは飛び級で大学出てるし、工学系の博士号だってもってるんだぞ?

発想は脳筋だが、教育にかかった金の分くらいのオツムの出来はあるつもりだ。

 

「そこでちょっと提案なんだが……」

 

ワタシはコホンと咳払いをして、

 

「大西洋連邦の連絡官としての仕事が本格化するまでの間、そっち方面でも仕事手伝う気、あるか?」

 

するとフレイは満面の笑みで、

 

「カガリお姉様のお役に立てるなら、喜んで♪」

 

 

 

あれ?

おかしいな……

原作乖離なんて今更なはずなのに、何か致命的なミスを犯した気がするぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フレイの死亡フラグが消えたと思ったら、別のフラグが色々立ってしまった件について(挨拶

いや、サイはどーした?w
カガリは間違いなく肉食系ですが、フレイも大概だった件w
まあ、原作でキラにしでかした事を考えれば、まあこのぐらいは……ねえ?(^^

ユニウスセブンに着くまで、何やらまだ愉快なことがありそうな……?






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第022話:”ナチュラルとコーディネーター、その差ってなぁに? MS用OS編”

今回は閑話的……というか、ちょっとした原作の小さな疑問、解消回みたいな感じで。
まあ、大体サブタイのまんまですw

ああ、勿論このシリーズなりの解釈ってことで。




 

 

 

時々、ふと思う時がある。

ナチュラル用OSとコーディネーター用OS、一体何がどう違うのかと。

 

皆も疑問に思ったことがないだろうか?

コーディネイターには動かせるのに、なぜナチュラルには現行のOSでは満足に動かせないのか?

何がそこまで違うのか?

そして、我がオーブの優秀な科学スタッフはあっさりとその答えに行き着いた。

曰く、

 

『圧倒的に”速さ(スピード)”が足らない!!』

 

 

 

ゴキゲンか?

頭の中はいつもハッピートリガー(ダメじゃん!)、拳銃もクーガーのアニキも大好物なカガリ・ユラ・アスハだ。

スクライドは、あの熱さがたまらくね?

主人公の片割れが、うちの(キラ)と同じ保志総一朗(ほっしーVOICE)というのもポイント高いし、もう片方の主人公はなんと二枚目声の代表格たるグリーンリバーさんだ。

SEEDとWの主人公の夢の競演……豪華すぎじゃね?

しかもヒロイン(幼)は、かの魔砲少女だしな~。

 

 

 

とりあえず、話を元に戻して……この場合の速さとは何か?

それは、『単位時間あたりの入力量』だ。

 

動体視力やら反射速度、目→頭→手足というコマンドの伝達速度など、細かく話せばきりがないが、簡単に言えば「1秒間で選択して押せるスイッチの数が、平均値でコーディネイターがナチュラルより明らかに勝る」のだ。

例えば、100個並んだボタンから1秒間に任意の20個のボタンを押せるのがコーディネイターの平均だとすれば、10個しか押せないのがナチュラルの平均って事になる。

 

実はこれMSの操縦には、とんでもなく重要な差異なのだ。

MSというのは元来、「宇宙という三次元空間で、人に準ずる多数の関節(可動部)と全身に配されたスラスターを存分に使って、初めて驚異的な運動性を発揮する機動兵器」だ。

その分、従来のいかなる兵器より煩雑な操作が必要になるのが普通だ。

 

具体的に言えば「宇宙空間で真っ直ぐ進む」だけでも、基本的には航空機とさほど変わらぬ感覚で操縦可能なメビウスのようなMAと、手足まで用いた重心移動やそれ以上に全身のスラスターの合成推力で進むジンのようなMSは、操縦の難易度が違う。

そして、その難易度に比例し、「運動の自由度」が桁違いだ。

 

例えば、メビウスが攻撃手段のない真後ろに付かれたら、一度振り切るくらいしか窮地を脱する手段はないが、ジンならば横軸回転でも縦軸回転でも構わないが、「その場でクルリと振り向いて」撃てばいい。

しかも、基本は武装が固定されてるメビウスと違い、ジンは人間と同じくあらゆる方向に瞬時に武器を指向させることができる。

更に、0距離……クロスレンジの戦いなんて無茶なことまで出来るのが人型の強みだ。

 

考えてみて欲しいんだが……ナイフからバズーカまで扱える戦闘機サイズの巨人が、戦闘機と同じ速度で飛んできて三次元立体機動なんかやらかしたら、そりゃあ見るからに強いだろう?

しかも、ニュートロンジャマーの影響で、電磁波を用いた照準が肝の長距離砲撃や長射程精密誘導兵器の精度が著しく落ちる状況ならなおさらだ。

 

だが、それだけの運動を発揮するにはそれなりの制御の為の入力が必要であり、これもまた例えで悪いが「MSに戦術的に意味のある動きをさせるのに、1秒に10回の入力が必要」とした場合、それが出来るのがコーディネイターで、必要数の半分くらいの入力しかできないのがナチュラルと思えばいい。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ナチュラルの視点から見れば、「とんでもなく操縦が面倒で不親切設計。操縦者にまったく優しくない」のがMSであり、それをスペックごり押しで乗ってるのがコーディネイターということだ。

 

どうもコーディネイター……特に『プラントのコーディネーター』ってのは、「過度なまでのスペック偏重主義」なとこであり、実はコーディネイターは全てMSが乗れるわけではなく……というより、コーディネイターでさえも適性があるのほほんの一握りなのに、操縦を簡便化させてパイロットの間口を広げるような事は一切やっていない。

それどころか、

 

『操縦の難しいMSを動かせる事がコーディネイターの優越性の証! ナチュラル風情に動かせないMSを存分に扱える俺達Sugeeeeeeee!!』

 

ってノリだ。

本質的には、「病気に強く頑強なコーディネイターには薬なんて軟弱なもの不要!」と言わんがばかりに。プラントでは薬学が足踏み状態なのと同じ現象だ。

 

 

 

ここ、ナチュラルとコーディネーターの融和と共存を目指すオーブの首脳陣として、絶対に誤解してほしくなないから言っておくけど、コーディネイターって全部が全部超人じゃないからな?

「免疫能力の高さと整った容姿以外コーディネイターっぽくない(=身体能力とかはナチュラルと変わらない)」と評されるサーペントテールの”イライジャ・キール”みたいに、「スペックでナチュラルを圧倒できない」コーディネイターの方が、実は圧倒的な多数派だ。

つまり、コーディネイターは数字で表れる平均値が高いだけで、凡人はやっぱり凡人だって事だ。

それどころか、個体差がナチュラルより激しい(突出した者が出やすい)傾向があり、それがスペック至上主義に拍車をかけ、「願ったスペックが出なかった」という理由で、育児拒否や子児童遺棄の原因になったりするんだよな~。

 

 

 

少しは安心したか?

因みに、これをとある出来事から心底した時の”むったん(アズラエル)”は、まるで憑き物が落ちたような顔してたっけ……

 

何の因果だか、そんな理由があり『コーディネイターにもよく効く薬』は、『凡人コーディネイターが多数派らしく大手を振って生きている』我が祖国のオーブの方が研究が盛んで、先進的だ。

オーブってのは、祖が日本だけあって『全体的な調』を好み、『人同士の過剰な競争は嫌う』傾向が強いから、スペック競争に疲れ果てたコーディネイターには存外に住み心地がいいのかもしれん。

 

 

 

長々と話してきたが、ナチュラルとコーディネーターの差というのはそういうものであり、ナチュラル用のOSの開発が難航してるのは、「コーディネイターがスペックでゴリ押ししてる操作」を(すべか)らく、()()()/()()()()せねばならない》』点につきるだろう。

 

言うならば、『コーディネイターが毎秒10回行う動作を、ナチュラルは5回しかできない。ならば、足りない5回をソフトウェアで自動で行う』……

つまり、人が足らない部分をソフトで補うという、まあ実は人類が何度もやってきたことを繰り返してるのだが……だからこそ『何が最適な動きなのか? どこをどの程度自動化すべきなのか?』を模索し、最適解を出すまでに膨大なデータが必要になってくる。

 

(まあ、それを今まさにやってるのがうちの弟だったり、エリカ・シモンズとかだったりするんだけどね)

 

だけど、ワタシ……カガリ・ユラ・アスハは転生者らしく、別の切り口のアプローチを始めている。

その方法とは……

 

「とりあえず、次回のお楽しみってことで」

 

「お姉様? 誰と話してますの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実はカガリは頭がわりかし良い説(挨拶

とりあえず、技術論的なのを一つ入れてみました(^^

実はナチュラルとコーディネーターの感覚の違いを書いておきたいなと思ったのがきっかけです。
「不便で扱いが難しいものなら、便利で簡単にしたい一般人(ナチュラル)」と、「ナチュラルに扱いが難しくて動かせないものを動かせることに優越感を覚えるコーディネイター(特にザフト)」……

「ナチュラルのクセにモビルスーツなんて生意気なんだよっ!」
なんてセリフが出た裏側には、こんな感覚があったのではないかな~と。




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第023話:”打岩に似た漆黒の球体 そして繋がっていた縁”

今回はメカニカルな話の予定でしたが……まったくそんなことはなく、人体の神秘(?)と、新キャラの話になってしまいました(^^




 

 

 

さてさて、フレイを連れてやってきたのはイズモの格納庫。

イズモ級はオーブ初の将来的に「MSの運用を視野に入れて」建造された船で、MSの格納/整備ブロックは非常に気を遣って設計されており、またMSの大型化などに備えて発展的拡張余地のある間取りになっている。

 

そんな一角に、ほんの少し前まで”国営企業(モルゲンレーテ)”の最高機密エリアに置かれていた代物があるのだが。

それを形容しようとすると……、

 

「えっと、お姉様……なんです、この前衛芸術作品的な黒球オブジェと言いましょうか、人間より巨大なボーリング玉と言いましょうか……とにかくこの大きくて黒くて丸っこい物体は?」

 

格納庫の一角にドドンと鎮座していたのは、何本もの電源ケーブルやデータケーブルが接続されている台座と、その上に居座る『直径2m程の漆黒の球体』だった。

 

「これは”打岩”と言ってな。巨大な黒曜石の塊に手足を打ち付けて削り、真球なるべく近づけるという……」

 

「流石に嘘ですわよね?」

 

「まあね」

 

だが、あえて言わせてもらおう……ワタシは烈海王が好きだ!

ただただ強さに焦がれ、武の果てを求めて突き進む姿は、実に清々しかった。

 

「んもう。だと思いましたわ。いくらお姉様が優れていても、コーディネイターじゃあるまいし、無理だと思いましたわ」

 

「まてまてまて。コーディネイターとか無関係に、打岩とか人類には普通に無理だから」

 

フレイはコーディネイターを何だと思ってるんだ……?

連中、如何に遺伝子いじっててもフィジカルとかは、まだ普通にホモサピエンスの範疇だぞ?

間違っても、「格闘漫画なのかオカルト漫画なのか議論の余地がある」とされる作品の登場人物達みたいに、正真正銘のフィジカル人外スペックとか持ってたりしないぞ?

スペック的には頂点のはずのうちの弟(スーパーコーディネイター)だって、拳打で音速出したり、素手で自由の女神を倒壊させかけたりとかできないからな?

 

あれ? そう考えると、コーディネイターって割と常識の範疇にいないか?

 

「でも、毒手くらいなら何とか……ほら、ナチュラルは死ぬけどコーディネイターは死なない毒みたいな」

 

それなんてS2インフルエンザだよ?

というかフレイ、随分マイナーなモン知ってるな?

そんな時、

 

「おや? カガリ様じゃないですか?」

 

そう言いながら巨大漆黒球体の陰から出てきたのは、今は子煩悩なマイホームパパでも、何やら脱ヲタする前は萌え系美少女アニメキャラがプリントされたTシャツ着て、声優のアニソンサマーライブの会場でサイリューム両手に持ってヲタ芸を披露してた過去がありそうな白衣を羽織った小太りの中年男性と、

 

「あ~、カガリ様だぁ~。やっほ~」

 

素材はいいのに、なんかそのヌボ~ッっとした雰囲気とだら~っとした身のこなしのせいで、何やら色々台無しになってる柔らかそうな髪をサイドポニーにした作業着(ツナギ)姿の女性……

 

()()()主任に、ユン。調整しててくれたのか?」

 

「まあね~」

 

「とりあえず、”MBF-P01(ゴールドフレーム)”の調整と、”MBF-P04(グリーンフレーム)”の組立は、ひと段落つきましたしね」

 

 

 

さて、この2人は誰だろうか?

って、もう分かってる人もいるよな?

勿論、オリキャラとかではないぞ。

 

中年男性の方は、原作アニメ(種死の方)に1カットだけ登場した後爆死した”シンパパ”こと、”コウ・アスカ”氏。

モルゲンレーテ・MBF-P0(アストレイ)開発チームのハードウェア統括主任という中々のお偉いさんだ。

 

天然を地で行くサイドポニテ娘、”ユン・セファン”外伝の方(アストレイ)に登場する女性キャラで、アスカ一家がシン一人を残して亡くなったオーブ脱出戦のおり、シンと同じクサナギに乗船する予定だったが、トラブルから乗り遅れてオーブに置いておかれ、途方に暮れてる所をモルゲンレーテ跡地を漁りに来たジャンク屋組合に拾われるという数奇な運命を辿った。

 

原作ではエリカ・シモンズの部下だったが、後に作業用MS『レイスタ』をほぼ独力で設計したように得意なのはむしろハードウェアの方で、その為か今はアスカ主任の部下となっていた。

 

(二人そろって直接的な意味で親父殿、いや……)

 

ウズミ・ナラ・アスハの被害者だ。

悪いが、この2人もまた優秀だ。エリカ・シモンズは確かにMS制御系ソフトウェア部門のエースだが、アスカ主任もユンも優秀さでは勝るとも劣らない。

 

(まったく、原作のオーブ、いやウズミはどんだけオーブに無駄な人材損失をさせてるんだか……)

 

ここだけの話、ワタシは既に『アスカ家()()()()()がある。

シンと、妹のマユについてはいろいろ語りたいことはあるが……一言だけ言っておく。

 

シンは愚かなんかじゃない。『愚かに見えるほど()()()だけだ。

 

よく、家族を殺されてカガリ(ワタシ)を殺さなかったと思う。

ワタシが同じだったら決して許さない。必ず根絶やしにしてたし、もしディスティニーが手元にあったら、オーブを焼き滅ぼすまで止まらなかったろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「お姉様、こちらの方々は?」

 

「アスカ主任にユン、まあ仕事仲間ってとこかな?」

 

「それは光栄ですな」

 

「えへへ~。照れるね」

 

さて、説明の適任者もいることだし、そろそろ種割れ……じゃなかった種明かしをするとしますか。

 

「アスカ主任、悪いがこの娘(フレイ)にも体感させてやりたい」

 

「よろしいので? 一応、お国の軍事機密ですが……」

 

「提唱者のワタシが良いと言ってるんだ。誰にも文句は言わさんさ」

 

「しからば……」

 

アスカ主任は白衣のポケットからリモコンを取り出し、

 

開けゴマ(オープンセサミ)

 

ポチっとなをすると、球体の一部が機械音を立てて開き……

 

「ガフの扉が開くよ~」

 

いや、ユン……そんな大層なもんじゃねーから。

 

「これって、操縦席……?」

 

中を覗き込みながら目を丸くするフレイにワタシは頷き、

 

「ああ。”次世代を担うコックピット”

 

 

 

ワタシは思うんだ。

なぜ、OSだけで解決しようとするのだと。

ソフトウェアだけでやろうとするから苦労するのであれば……

 

インターフェース(ハードウェア)からも攻めればいいじゃないか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バキ・シリーズの登場人物達に比べれば、ナチュラルとコーディネイターの差なんて誤差の範囲だと思う(挨拶

とりあえず、出てきましたね~。シンパパとユン、どっちもマイナーなのはご愛嬌って事で(^^

でも、『転生者であるカガリが気にかける十分な理由がある』二人でもあるんですよ。

あの「ウズミのやらかしとその顛末」には、まだまだ鬱屈したものがあるような……?

そして、黒い巨大球体の正体はコックピットでした~。
ひねりがない?
いや、まあ元ネタはモロバレでしょうしw



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第024話:”オーブコックピットと、その裏側にある歴史の苦さ”

本日、休みが取れたので臨時アップです(^^

今回はメカニカルの話と、ちょっと「とある国が滅んだ話」が出てきます。

ちょっと閲覧注意かな?




 

 

 

さて、唐突だが球体(球殻)は耐圧容器として優れた特性を持っている。

細かい理屈は省くが、内部に高圧の物体を封入するにも、外からの圧力負荷に耐えるのにも他の形状に比べて強い。

なら、コックピットを球殻装甲で覆うというより、フェイズシフト素材で形成した球殻の中にコックピットを備えるというのは、割と自然な発想だ。

機体(母機)とは独立したエマージェンシー・バッテリーユニットを球殻内部に搭載し、機体が破壊されたときの自動排出機能(オートインジェクター)と自動発信の救難ビーコンと相乗させれば、簡易とはいえかなり優秀な脱出ポッドになりそうだ。

 

さて、せっかく球殻構造のコックピットなら、その内壁にプロジェクションマッピングの技術的な応用で周囲の状況を投影できるようにすれば、構造的に脆くなりがちなディスプレイ類を内側に満遍なく張らなくても全周囲モニターの完成だ。

 

加えて、ヘルメットにも少し細工をしておこう。

なに、大した細工じゃない。

ただ、全周囲モニターに加えより細かい情報を網膜に投影できるようにしよう。この辺りはAR(拡張現実)の技術で応用できる。

それならいっそ視線追従照準やコマンド、音声によるインプット/アウトプットも可能としてしまおう。21世紀のスマホですら音声で受け答えできたのだから、まあそれなりの形にはなるだろう。

 

勿論、パイロットスーツには熱や衝撃、薬品に強いだけでなく人工筋繊維を用いた高G環境でのソフト・パワーアシストなど最新の耐G機能を付与するけど、それだけじゃあ不安。

電磁力場による瞬時展開/瞬時格納する使用回数制限のないクッションバッグも用意するが、まだ不安。

ならいっそ、パイロットシートを半浮遊式にしてしまうか? ということで電磁浮遊(リニア)シートを採用。

C.E年間前の西暦時代の末期さえ、リニアモーターカーが実用化されていたのだから、むしろこの辺りは十分に熟成した技術ともいえる。

 

そして、メインとなるハンド・インターフェースは、HOTAS(Hands On Throttle and Stick=両手をスロットルとスティックにおいたまま)の概念を導入したスロットルレバーとコントロールスティックという従来型から一歩踏み込んだ、多機能でありながらより感覚的に使えるハンド・インターフェース”アームレイカー”を装備しようじゃないか。

いや、オリジナルが手が滑り落ちやすいという欠点があるのなら、しっかりと「手で鷲掴み」するタイプの発展型、”イーグルレイカー”を採用するとしようか。

 

 

 

やあ、前世ではUCガンダムもマクロス・シリーズもMuv-Luvも大好物だったカガリ・ユラ・アスハだ。まあ、リアル系は結構何でも好きだったような気がするが。

 

それにしても科学の発展ってのはすごいよな?

20世紀の終わりには「SF作品の中に出てくる想像の産物」だったギミックが、全部ではないせよ21世紀の前半には、多くが「実用化できてしまう領域にある技術」だったんだからさ。

 

再構築戦争で、一度は文字通り『人類は衰退しました』なってしまったが、妖精さんが出てくるのはまだ時期尚早だったらしく、人類はしぶとく存続し、それどころかかつて持っていた技術のさらにその先へと辿り着いたってわけだ。

 

なので、ワタシが長々と冒頭で書いてきたシステム、実は基礎技術自体は既にある物ばかりで、単にそれをトータルパッケージングとして構築する者がいなかっただけだ。

 

そこで、ワタシの普段はあまり使う機会がない転生者知識をフル活用したってわけだ。

実はコックピットの先進性ってUCガンダムとそれに付随する世界が一番進んでたんじゃないか?と思う時がある。

 

いわゆる転生物の定番設定で、この世界にはやはり「ガンダム・シリーズ」は()()()()()()()

代わりに、それ以外のアニメは()()()()()()()()()()普通にあったようだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

歴史的事象はいずれ詳しく書くつもりだが……正直、21世紀を生きる日本人にとっては、かなり胸糞悪くなる歴史だぞ? 再構築戦争周辺の出来事は。

 

SEED MSVの解説か何かだと思ったが、設定を担当とした森田繁氏によれば「主権国家としての日本は既に存在しておらず、オーブ建国の礎となった」。

公式によれば、「日本は物語の展開にあまり関係が無い上、現実と下手にリンクさせると様々な誤解が起きる場合があるので敢えて触れずにいる」ということらしい。

 

アニメとして考えるならば、当時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった中国とか、制作サイドや放送局の反米左派的な性格や発想を考慮すべきだろうが……

 

 

 

だが、もしガンダムSEEDをリアルの延長線上にある世界だと仮定すると、

 

・東アジア共和国=北海道を除く日本、中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国大韓民国、モンゴル国、台湾など極東地域が集合した共和国

 

・北海道はユーラシア連邦に()()()()()()()

 

この状況を、当時の(21世紀の)日本人が喜んで受け入れると思うだろうか?

果たして、肯定的に捉えられるだろうか?

日米同盟がありながら、なぜ大西洋連邦にいないのか?

そもそも、日本が共和国……だと?

 

つまりは、「そうなるような、相応の出来事があった」ということだ。

繰り返すが、日本はこの歴史では()()()()()

だから、()()()()()()()()()()()()()のだ。

歴史は時に苦く重い。

 

 

 

そして、日本の後継者と自負する我が国(オーブ)には、その偉大な文化遺産(サブカルチャー)が多数(あるいは根こそぎ)持ち出され、継承されている。

 

まあ、ワタシが「同好の士と書いてむったんと読む」背景には、ここいらのことも微妙に関係しているのだが……

とりあえず、大西洋連邦の子供たちには「宇宙人が攻めてきて、それを少年少女たちが必死に立ち向かう」感じの「70~80年代初頭テイストのリメイク作品」が大うけだ。

 

現代の高画質VRで見る”コンバトラーV”とか”ボルテスV”は中々の見ものだぞ?

 

(そういや、キャンベル星人にミーアってのがいたっけなぁ~)

 

特に深い意味はないぞ?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

とにかく、そんな日本から継承されたSFを含むアニメは、リメイクという形で花開いて再びサブカルとして根付いた。

ワタシが開発を主導……というか、計画書と稟議書とプレゼンテーション用の自主製作イメージ動画をモルゲンレーテに持ち込んで実現させた、そうだな、

 

(仮称球体型(オーブ)コックピット”とでもしておくか)

 

正式名称は、”次世代人型~”とかやたら長いので、このくらい短い方がいいだろう。

とにかく、そのオーブコックピットは、それらからインスピレーションを得たという説明をしている。

 

そして、それが妙に受けて現在に至るというわけだ。

コンセプト自体は至極簡単で、『とにかく高G環境でも情報が見やすく入力しやすく感覚的に使える人にやさしいインターフェースを考えられる最大限の効率で配した』ってところだ。

平たく言えば、「結果として入力量を増やすやり方」だな。

 

まあ、実は腹案としてGガンのモビルトレース・システムじみたモーション・トレース式の操縦システムもあったんだが……

 

(無重力環境では、流石に無理がありすぎたなぁ)

 

あと、人間は直立姿勢だと衝撃や慣性にひどく脆弱だ。

満員電車が急ブレーキをかけた時の、立ってる乗客と座ってる乗客の挙動をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれない。

 

それに「動きをトレースする」から、パイロットの負担もかなりシャレにならない。

やっぱりあれは、コーディネイターどころじゃない”超人”の領域にいるガンダムファイターだから使いこなせるシステムなのだろう。

 

(ともあれ、せっかくだ……)

 

「フレイ、試しに乗ってみるか?」

 

「はい! お姉様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




公式で日本という国が亡くなってるガンダムSEEDェ(挨拶

今回はちょっと反応が怖いですね~。
ただ、よほどの事がないと日本が東アジア共和国なんて赤色っぽい匂いがプンプンする国の一部になったり、公用語が日本語のオーブが生まれたりって展開はない気がするんですよ(^^

評価のダダ下がりが怖いですが、このシリーズって割とオーブの持つ「東アジア共和国とユーラシア連邦への軋轢」や、その反動である「大西洋連邦への好感」が無視できないんですよね~。

そういうシリーズだと思ってくれれば嬉しいです。



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第025話:”秘宝ではなく悲報! そして、一見すると親子喧嘩に見えなくもないが、本質的には根深い話”

今回は、割と筆者が原作見てた時に「なぜ、そうしなかったんだ?」と思ったことに対する、自分なりの回答みたいなエピソードが混入しとります(^^




 

 

 

……

………

…………悲報。フレイのパイロット適性が、ワタシより高かったでござる。

 

 

 

ああ、カガリ・ユラ・アスハだ。うん。

元気がない? 

Ha-Ha-Ha、そりゃワタシだってたまには凹むさ。

 

試しに作りかけのチュートリアル・シミュレーションモードで、球体型(オーブ)コックピットを起動させたんだけど、フレイさんってば、原作のアサギ達(オーブ三人娘)より器用にMS動かしたでござる。

というか、シミュレーション上とはいえ普通に「こいつ動くぞ……!(ガンダム、大地に立つ)」をやらかしたでござる。

 

『お姉様、MSって意外と簡単に動かせますわね♪』

 

と通信機越しのフレイ in The ORB(オーブ)

って、んなわけあるかい。

確かに従来型コックピットよりは桁違いに操縦(入力)しやすくなってるし、感覚的に扱えるだろうが……操縦難易度は、今のところオーブジンと大差ない筈だぞ?

 

ほら見ろ。

アスカ主任とユンが顔を見合わせた後、珍獣を見る目でフレイ内蔵の巨大球体を見てるじゃないか。

 

 

 

あっ、そうそう。言うの忘れていた。

ワタシは今から身もふたもないこと言うが、構わないか?

 

実は……オーブ、大西洋連邦よりはずっとナチュラル用MS-OSの必要性は低い。

 

というのも、オーブはそもそもコーディネイターの人口比率が他国とも比べて高かった。

そりゃそうだ。なんせ、国策で「コーディネイターとナチュラルの融和と共存」を掲げてる、今時地球全体規模で珍しい国家だ。

 

加えて”エイプリルフール・クライシス”以降、プラントやザフトのNJ(やらかし)のせいで、住処を無くした……今までの生活を維持できなくなったコーディネイター達が、大西洋連邦を中心に大挙して押し寄せているのだ。

 

オーブは原作より国土が遥かに巨大なうえに、元々「コーディネイターの駆け込み寺」的な国家指針と、かつての祖国が滅んだ時の反省と経験から、いざという時に備えて「国民(2億人想定)が3年間輸出入を立たれても餓死の発生しない食糧/医療品/生活物資の備蓄」を持っていたし、食料自給率も(21世紀の日本に比べれば)高い。

ぶっちゃけ、ここ数年の国策のせいもあり、現在は同時期のフランスやアメリカ並み(127%と130%。38%の日本の3倍以上)だ。

だから、もう1000万人を超えた流入人口、増大する難民化したコーディネイターを受け入れられる訳だが……

 

ジョージ・アルスター氏が仕事のし(追い出し)過ぎな件はいいとして……最終的には、3000万人を超えるとされてる流入コーディネイター全てを「オーブ国民として受け入れる」かは、また別問題だ。

 

そして現在、オーブは国防委員会と軍部が音頭をとって、「将来のオーブ国民」を選別すべく、大きな(ふるい)をかけていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

まあ、元ネタはベトナム戦争当時のアメリカだと思うのだが……オーブ国防軍に志願入隊し一定の期間(標準兵役の2年間)従軍すれば、国家に貢献したご褒美として難しい審査なく『永住権(グリーンカード)』が得られるのだ。

 

エイプリルフール・クライシス以降、地球全域規模で非常事態だから、人道的見地と融和と共存を目指す国是に則り、「命の危険が高いため緊急を要する」コーディネイターが「オーブに来る」までの手続きは大幅に簡略化されてるが……本来、オーブへの移民は日本の伝統を引き継ぎ、「大変に()()()なのだ。

 

実際、今も避難してきたコーディネイター達は、親族がオーブに住んでるなどのコネがない場合は、急増された難民キャンプ住まいだ。

といっても戦地に見るような(あるいは荒廃したスラムのような)悲惨なものではなく、ここも日本からの継承かもしれないが……東日本大震災やその他の大規模災害で大活躍した仮設住宅が大量建造され、それが疑似的なマンモス団地を形成してると思ってくれればいい。

技術の進歩というのは大した物で、ワタシも試しに少しの間住んだことがあるが……前世の安アパートよりよっぽど快適だったぞ?

 

そして、その難民キャンプで希望者は()()()()を行い(今回は特例的処置、しかも時限立法であるだけで、原則としてオーブは戦争難民を含む難民の受入れは行っていない)、その後に身元調査や言語や一般常識のテスト、能力/職業適性検査を行い、本申請を行えるか判断され……そしてようやく最初に申請できるのが、『永住権』だ。

 

永住権というのは、要するに「国に住み続けられる権利」のことで、必ずしもオーブ国民である()()()()()

例えば、10年ごとの更新手続きが必要だし、国籍は元の国のまま(オーブは二重国籍や多重国籍を認めていない)だ。

そして、納税の義務はあるしそれに見合ったある程度の公共サービスは受けられるが、参政権はない。つまり、選挙の投票権はない。

 

また、詳細は色々根深いので省くが、オーブは日本での運用に問題がありすぎた「特別永住許可」は制度として存在しない。

あくまでも今回のような特殊事例による難民受け入れが不可避な場合は、時限立法(法の適応期間に時間制限がある)による特例処置として行うことが、法的に定められている。

 

つまり、ナチュラル/コーディネイターを問わず外国籍の人間がオーブ国民となるには、『永住権』だけでは不十分で、その後に定住し国民の三大義務をこなしつつ、国家への貢献が認められれば、参政権が付与し職業選択の幅が広がる=公務員も選択職種に入る(オーブは外国籍者を原則公務員として受け入れない)『市民権』(シチズンシップ)の獲得へと駒を進めることができる。

誤解のないように言っておくが、外国人がオーブ国内で働く『就労ビザ』はそのシステムや概念が全く別口だから、条件さえ満たせば普通に発行されるぞ?

そして、『市民権』まで得られれば、国籍ゲットまであと一歩だ。

 

 

 

これまた長くなったが、基本的に外国人がオーブ人になるには、まず永住権を手に入れる所から始めなばならず、そこに目を付けた国防委員会と軍部が手っ取り早く戦力を確保する……MSパイロットを確保する為に、永住権をエサにしたのだ。

 

汚い手だと思うか?

そう思ってくれて結構。

実際、親父殿……ウズミ一派(後はどこの国が資金源になってるかわからない左派や市民団体とかね)は猛烈に反対したが、それは理詰めの論戦と、国民への周知で味方につけてねじ伏せたった。

具体的には公開討論に引っ張り出して、

 

親父殿:『救いを求めて我が国の門戸を叩いた者を、戦場に送り出すというかっ!!』

 

ワタシ:『戦う意思があり、戦場に立てる能力があるならば、それでいいじゃないですか? それともウズミ殿は、同じ土地に住むのにオーブ国民にだけ戦えと? 選抜徴兵の準備をせざるをえなくなってる昨今、それを言いますか?』

 

ちなみオーブは原則、国家非常時に議会の承認がなければ徴兵はできない(制度として徴兵あるが、平時は原則凍結されている)。

 

親父殿:『そもそもコーディネイターは人の可能性の追求だ! 断じて戦争の道具などではないっ!!』

 

ワタシ:『そういうのは、コーディネイター自身で民兵組織作って、あちこちで好き勝手にナチュラルがいるってだけで殺しまわってるプラントやザフトに言ってください。少なくとも、ここで議論すべき内容じゃない』

 

親父殿:『その愚かさを我らが真似る必要は、断じてない!』

 

ワタシ:『あのなぁ……相手は25万に満たない死者の報復で10億殺して、「核を使ってないから俺たちの方が人道的」とか平気で言う連中ですよ? 無論、その死者の中にはコーディネイターだって含まれる。まさか、地球のコーディネーターは戦う権利も、復讐を胸に秘める権利もないんですか?』

 

親父殿:『復讐の場を与えるために戦場に出すとでもいうのか! 答えろカガリ・ユラ・アスハ!!』

 

ワタシ:『そんな怒鳴らなくたってちゃんと答えますよ。復讐を大義名分に戦争するのは、現代国家としちゃあ流石にNGですけどね、個人がそういう思いを持つのは”思想の自由”の範疇だと思いますよ? 彼ら彼女らが、どうしてオーブに来る羽目になったのか? その根本原因を作ったのは誰なのか……それを思えば、どんな暗い思いを持とうが、否定なんて絶対にできないのさ』

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(ワタシはそこまで傲慢な人間になんて、なりたくないからな……)

 

復讐心を持つことすら許さないような、そんな人間にはな。

とにかく、万事こんな感じだった。

 

(親父殿も悪い人じゃないんだけどな~)

 

だが、あの人は政治家というより思想家の類だと思うんだ。

 

何度か話に出てきたが、オーブには主に鹵獲品などで入手した改造型(オーブ)ジンがあるが、それを戦力化できてなかったのは事実だ。

そこで、この「MSパイロット外国籍者志願制度」で篩にかけた永住権希望者たちを投入、本国ではようやく訓練が始まったばかりだ。

 

無論、オーブ籍のMSパイロットはいるが、いかんせん養成が始まったのがやはり最近(本格化したのがエイプリルフール・クライシス以降)であり、まだ実戦で投入できるものは数が少ない。

ならば、とにかく数を用意するのが基本だと、某傷顔のザビさんも言ってることだし、大々的に募集を行おうということになったのだ。

 

 

 

おそらく、オーブ最初の『正式なMS部隊』はコーディネイターが主となるだろう。

絶対多数がナチュラルだから、その開発優先度や必然は薄くも小さくもないが、かといって大西洋連邦ほどは逼迫していない。

 

(しかし、扱いやすくなってるはずとはいえ、こうもあっさり操縦されるとはなぁー)

 

フレイ・アルスター……想像以上にとんでもない拾い物だったか?

とりあえず、しばらくはこの操縦システムの開発を手伝ってもらうとして、

 

「アスカ主任、球体型(オーブ)コックピットをすぐに組み込めるMSってあったっけ?」

 

これもフレイの個性といいうのなら、生かす方法を考えるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地球上にはエイプリルフール・クライシス前は5億人もいたってのに、作中に登場する地球産コーディネイター、少なすぎね?(多分、挨拶

という訳で、カガリには「難民化したコーディネイターの軍事転用も含めた積極利用」を行ってもらいました。
まあ、カガリが言いたいのは、「駆け込み寺やってやるから、国家に貢献しろ。厳しい時代だ。当然だよな? 食わせる飯だってタダじゃない。元はといえば血税だ」みたいな感じです(^^

本人、無自覚なツンデレっぽいとこも微妙にあるんで、口では時たま悪ぶってるんですが、結構国民も可愛がってるんですよ?

ただ、「国民を甘やかす」のは好きじゃないみたいです。フレイはうんと甘やかしとりますがw

どちらかと言えば……「ともに苦難の時代を乗り越えたい」かな?



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第026話:”割と駄目なお姉さんは好きですか? ナタル「小官は嫌いじゃないぞ?」 ムウ「ラミアス大尉は年下だけどな」”

前半は色々、フレイが原作と異なるベクトルで壊れてゆきますw
いや、まあそういうキャラだし(ヲイ

後半はサブタイに直結する話……かな?
別名、「年下の上官」に対するアンサー回。




 

 

 

さて、あの日から球体型(オーブ)コックピットのテストプレイ(シェイクダウン)は、フレイの日課になった。

その成果は中々に目を見張るもので、正直『うちの(キラ)、イラなくね?』と思わないでもない。

 

(今頃、うちの弟は何してんのかね~)

 

そもそも、ホワイトベースばりに民間人を大量に乗っけてる訳じゃないだろうし。

まあ、ギナ兄によれば、キラ以外にカレッジの学生が四人いるらしいから、おそらくトール/ミリアリア/サイ……えっとカズイだっけ?の四人だろうな。

それはそれとして、

 

『お姉様、今日もフレイはハイスコア更新いたしましたわ♪』

 

いや、”戦場の絆”とかじゃないんだけどなぁ~とか思いながらも、球体から降りてきたピンクのパイロットスーツ姿のフレイの頭をつい撫でくりしてしまう。

ふにゃっと顔を(とろ)けさせるフレイは、なんだか仔猫を彷彿させた。

 

「おねぇさまぁ~♪」

 

ぐりぐりと赤毛を押し付けてくるフレイに撫でくり攻撃を強化しつつ、ついにワタシは悟ってしまった。

 

(あれ? ワタシもしかして……サイからフレイ、NTRしてね?)

 

いや、そりゃ我ながらフレイに甘いな~って自覚はあったさ。

それに最近は主張し忘れていたが、ワタシの内面は両性具有。転生前も性別不明だ。

 

(性癖的には、両刀(バイ)だって言っても、自分に違和感ないしな~)

 

なんということだろうか……事情があったとはいえ、原作では弟に寝取られて、この世界では(肉体的には)同性のワタシに寝取られるとは……

 

まさにサイにとって、ヒビキ姉弟は鬼門かな?

サイは前世でヒビキのご先祖様と何か因縁でもあったのか?と疑いたくなるな。

 

 

 

真面目な話、フレイのワタシに向けるそれが同性に向ける恋愛感情なのか、あるいは単なる依存なのかは全く判別はつかん。

 

というか、ぶっちゃけどっちでもいい。

そこ、「適当すぎっ!?」とか言わない。

”可愛いは正義”ってのは、日本人のカールチューンに刻まれた真理でしょうが?

 

「お姉様、フレイはぜったいぜーったいもっと強くなって魅せますわ♪ カガリお姉様が修羅街道をまっしぐらに進むというのなら、フレイはそこに敷き詰められた茨を切り払ってみせますわっ!!」

 

えっ? ワタシってばそんなおっかない道歩くの確定なの?

それ、なんて志○雄真実?

 

「フレイはお姉様と一緒に生きると決めましたの。地獄までご一緒しますわ♪」

 

「コラコラ。人を勝手に地獄送り決定すんなって」

 

君は四季映姫(えんまさま)かい? フレイ・ヤマザナドゥとか呼んじゃうぞ?

あっ、ちょっと可愛いかも。

 

「うふふ♪ 何をおっしゃいます。きっと天国より地獄の方が似合いますわよ? お姉様にもフレイにも」

 

……ワタシは、一体どこで間違ってしまったんだろう……?

って、それじゃあ最終回とかのパロディーだってばよ!

 

いや、あれは「どうしてこんなところにまで……」だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カガリがフレイをNTRしてるその頃……かは分からないが、どこぞの独航船(ソロシップ)ばりにスペースランナウェイしてる”アークエンジェル”のブリッジでは……

 

「如何に乗組人数が少ないつっても、流石に無補給でアラスカにって訳には行かないかぁ」

 

そうボヤくのはムウ・ラ・フラガ大尉で、

 

「どんなルートを通るにせよ、一度はちゃんと補給を受けるべきでしょうね。這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げ出したツケが、ボディーブローのようにじわじわ効いてきました」

 

と妙に実感のこもった意見を言うナタル・バジルール中尉。

ちなみに、彼女はアマチュア女子ボクシングの選手で、士官学校代表として大会に出場して階級別で優勝した経験もあるという、中々の猛者だった。

 

「本来は、オーブの軌道ステーション(アメノミハシラ)辺りに逃げ込めたら最高なんだが……」

 

「まあ、オーブ所有コロニー(ヘリオポリス)崩壊の直接的な原因である我々が、どの面下げて……というところでしょうか?」

 

「んー……でも、あの御仁。サハク国防委員だっけか?はあんまり気にした風じゃなかったんじゃないか? バジルール中尉もなんだか気に入られてたみたいだしさ」

 

その瞬間、ナタルの顔から血の気が引いたように見えたが……それも一瞬のことだったので真偽のほどはわからない。

 

「他にも問題あります。ご覧ください」

 

とナタルは航路図や他に付随する情報を三次元投影(プロジェクション)し、

 

「十中八九、アメノミハシラに着く前に捕捉されます。その場合、我々は物資不足のまま孤立無援で追ってきたザフト艦隊と戦わねばなりません」

 

「流石にそれはリスクが高すぎる、か。アメノミハシラでそれなら、月面基地なんてのは……」

 

「論外でしょうね」

 

いっそ気持ちいいほどざっぱり言い切ったナタルに、ムウは頭を抱えてしまう。

 

「バジルール中尉、我々が現実的に寄港でき、尚且つ補給が期待できそうな場所はどこだ?」

 

「あまりお勧めはできないと先に断っておきますが、」

 

ナタルはコホンと咳払いをして、

 

「ユーラシア連邦保有の宇宙要塞”アルテミス”。そこしかないでしょうね」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(”アルテミス”ねぇ……)

 

軍人としてそれなりに飯を食ってきてる分、各勢力の内情や動向をそれなりに知っているムウは、確かに気乗りはしなかったが、

 

「それしか選択肢がないのも事実、か」

 

疲れたような表情を浮かべると、

 

「ん? ところで、こんな重要な決定を二人だけでやってるってのは、一体どういうことだ? 艦長、ラミアス大尉はどうした?」

 

「大尉ならヤマト少尉と昼食をとりに行きましたが? ブリッジの外にはヤマト少尉が待っていましたから、待ち合わせでもしてたんでしょう。ドアが閉まる瞬間、”恋人つなぎ”に切り替えていたようですが」

 

「ヲイ」

 

ちなみに”恋人つなぎ”とは、指を絡めて手をつなぐ()()である。

 

「良いじゃないですか。ヤマト少尉が出待ちしてようが、ラミアス大尉が自室デートを楽しもうが、艦長席で余計な命令出されて困窮するよりは、100倍はマシです」

 

「軍規はどこへ行った。軍規は」

 

「ザフトに撃墜されました」

 

「コラコラ。なあ、もしかしてバジルール中尉は大尉のことを……」

 

「誤解のないように言っておきますが、これでも小官はラミアス大尉を……女としてはチャーミングな年下の上官を気に入っているんですよ?」

 

「本当かぁ~?」

 

疑わしい眼差しのムウに対し、ナタルはいかにも心外という表情で、

 

「彼女は自分がお飾り艦長……『大尉という階級を艦長の座に据えるのが必要であって、マリュー・ラミアスという個人は必要とされていない』ということを自覚してます。だから、ああして自分に無条件の好意を示してくれるヤマト少尉に逃げて……失礼。甘えているんですから」

 

言い直してもあまり印象が変わらないのはさておくとして、

 

「そこまでわかっているのに……」

 

「そこまでわかっている”()()”ですよ。小官があの人に求めるのは『必要な時に艦長席に座り、見苦しくない程度の体裁を整える』ことだけです。ヤマト少尉に溺れようが、結果として共依存になろうが、プライベートに口出しする気はありません」

 

「……それでいいのか?」

 

「他にどうしろと? ラミアス大尉は、性格が致命的に戦争に向いてない。それが、自ら率先してオーブ上層部とつながりがあるらしい『オーブ軍からの()()()、ヤマト少尉の()()()()()』を買って出てくれるなら、戦闘時に妙な命令を出されるより、よっぽど軍の為になるというものです。まあ、あの手の接待は古来より軍の慣習のようなものですから」

 

一瞬、ナタルの脳裏に『駄肉接待』という四文字が浮かんだが、言わぬでやるのが優しさだということもわかっていた。

 

「おっかない女だなぁ」

 

「誉め言葉と受け取っておきますよ。大尉殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一見真面目な軍人のナタルさんも、実は一皮むけばやっぱり大概だった罠(挨拶

ナタル:「駄目な艦長(お姉さん)は好きですよ? ヤマト少尉を与えておけば大人しくしてますし、扱いやすいです」

ナタル・バジルール……利用できるものは何でも利用するタイプかもしれない(^^
既に艦の実権は掌握してる模様w

正規軍人なら、このぐらい強かじゃないとねっ☆(白目
ムウは苦労人枠、確定かな?と(^^




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第027話:”あんなに一緒だったから……つないだ手は離さない”

ちょっと初代ED風のサブタイでw

例えそこが戦場であったとしても、青春ってのはやっぱりある訳でして(^^

あと、少し伏線回収。




 

 

 

「えっ? キラって地球連合に志願したの!?」

 

「いや、違うよ。ミリー、実はね……」

 

ここは現状では決して満席になることはないアークエンジェル内の士官用食堂。

その日、キラではなくマリュー・ラミアス名義で、トール・ケーニヒ/ミリアリア・ハウ/サイ・アーガイル/カズイ・バスカークの四人はここに集められていた。

 

「つまり、キラは軍から奨学金とか色々もらってたから、非常事態って事でオーブ軍に臨時編入されて、書類上はオーブ軍から地球連合に出向ってこと?」

 

ミリアリアに苦笑しながら、

 

「厳密には、”()西()()()()()”だよ。地球連合だと東アジア共和国とかユーラシア連邦とかも入ってくるし」

 

「どっちも、友好国とは()()()()()()()()()()からなぁ~。正直、カオシュンが陥落した時、『ざまぁ!』って思ったし」

 

「こら、トール」

 

ぱこんとミリアリアに小突かれてタハハと笑うトール。

オーブの建国に至る歴史的背景と、それに裏打ちされた国民感情的には正解の反応だろう。

 

「いや、それはいいんだけどさ……」

 

メガネをくいっと直しながら、困ったような顔をするのはサイだ。

 

「あっ、それと僕は実は、その……コーディネーターなんだ」

 

一世一代の告白のつもりだったキラだったが、

 

「あっ、やっぱり」

 

これはトール。

 

「ええ。そうじゃないかと思ったわ」

 

ミリアリアに、

 

「うん。それが?」

 

サイ……

 

「ちょっとみんな!? 演技でもいいからもう少し驚いてあげよっ!? ねっ!?」

 

そして、オチ担当のカズイ。

いや、彼はちゃんと驚いてくれたが……他三名にはあっさり流された。

 

 

 

「いや、だってなあ? キラって別に力をひけらかしたりはしてないけど、あんまコーディネイターだって隠してる感じなかったし」

 

「うそっ!? 僕はこれでも必死で隠してたつもりだったんだけど……」

 

「あれで? ああっ、分かったわ……キラって肉体的にはコーディネイターでも、性格が天然君(ナチュラル)なのよ。きっと」

 

「おっ! ミリー、上手い! 座布団一枚!」

 

「んー……座布団より、トールの膝枕を所望かな?」

 

「いいぞー。膝枕でも抱き枕でもドンと来いだ!」

 

公然とイチャつきだすトールとミリアリアにサイはコホンと咳払い一つ。

カズイは達観したような……全てを諦めたような眼をしていた。

 

「いや、キラがコーディネイターだって事は、心底どうでもいいとして……」

 

「ちょっ!?」

 

サイ・アーガイル……割といい性格をしていた。

 

「キラ、俺のメガネがおかしな方向へ進化したんじゃなければ、お前の隣に手をつなぎながら座ってる綺麗な女性は……」

 

「うん。マリューさん♪」

 

「やっぱり見間違いじゃなかったか……ラミアス艦長は、その、どうしてこんな場所に?」

 

「えっと……それはね、」

 

「いいよ。マリューさん、これは男の僕から言うべきことだ」

 

「キラ君……」

 

見つめ合う二人……もう、サイ達四人には、そろってオチは見えていた。

見えていたが、それでも友人の見せ場を奪うのは無粋だと思う優しさがあった。

 

「僕、キラ・ヤマトと」

 

「私、マリュー・ラミアスは」

 

”きゅ”

 

繋ぐ手に僅かに力がこもり、

 

「「正式にお付き合いを始めました♪」」

 

 

 

「キラがコーディネイターってより、そっちが驚きだよっ!!」

 

自分の仕事はきっちりこなすカズイ・バスカークは、将来いい男になるかは不明でも、きっといい社会人にはなるだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「年上の彼女ゲットだなんて、キラもやるじゃない♪」

 

「ありがとう。ミリー」

 

友人(紅一点)の祝福に素直に可愛らしいと形容できる……マリューが一発KOされたと噂される微笑みで返すが、

 

「んー、でもキラが軍人かぁ……正直、似合わなくね?」

 

「トール、僕自身も実はそう思ってるから、もうちょっと言い方を手加減して」

 

正直すぎる感想に、今度は凹んだ表情のキラ。

マリューの影響は偉大と言うべきか?

この世界のキラ・ヤマトという少年は、実に表情豊かでおまけに原作(アニメ)の同時期の彼に比べて、血色がよい。

肌や髪の色艶もよく、可愛い系美少年っぷりに拍車がかかっていた。

 

「でも、特別職枠とはいえ、国家公務員は国家公務員か……しかも階級は三尉(少尉)からスタート? 普通で言えばキャリアのエリートじゃん。ちょっと羨ましいかも」

 

オーブ軍の階級は、特に士官が自衛隊のそれを多く引き継いでいて、三尉=他の国の少尉という感じだ。

他国の軍人と話すときは面倒臭いんで「三尉、三佐」と呼ぶより普通に「少尉、少佐」のように呼称することも多い。

例えば、アークエンジェルの面々と話した時のギナなんかがいい例だ。

 

「ちょっとトール。キラだって別に好きでそうなった訳じゃないでしょ?」

 

「それに士官学校出身者と同じスタートだろ? 一般的な国立大学出のキャリアとはちょっと比べにくいな」

 

と冷静に答えるサイ。

 

「でもさー、国家公務員だぜ? エリートの。戦争無けりゃ将来安泰じゃん?」

 

「いや、今戦時中だし」

 

カズイの鋭いツッコミが冴え渡る。

 

「ケーニヒ君ってもしかして軍人になりたいの?」

 

ちょこんと首を傾げるマリューに、

 

「ああ、その……軍人っていうのに特別な憧れはないですけど、国家公務員には正直惹かれます」

 

「じゃあ、やってみる? 国家公務員」

 

「へっ?」

 

「約束したから、ここで名前はだせないけど……」

 

マリューはニッコリ微笑み、

 

「実はオーブのすごーく偉い人から申し出があってね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「へっ? アークエンジェルに乗り込んでる民間人、カレッジの学生が”短期下士官養成コース”を受講していた事にする……と?」

 

「うむ」

 

あー、カガリ・ユラ・アスハだ。

今は、ちょっとギナ兄に用があって、いつものオーブコックピットがある区画とは別のブロックに来ている。

 

「キラ・ヤマトに感化されて軍艦で仕事をしたいと言い出したら、そういう風に処置してくれとな」

 

「はあ……」

 

ま、まあ学生向けの「短期下士官養成カリキュラム」は義務教育以上なら受講できるコースとして実在する(本来は短大生や四大生がメインターゲットだが)し、原作より扱いは良くなりそうだから、これはこれで結果オーライか?

 

「それより愚妹」

 

「誰が愚妹だ。いや、別にいいけど」

 

ギナ兄は鎮座するMSを見上げ、

 

「この生まれ変わった”MBF-P01(ゴールドフレーム)”の雄姿はどうだっ!」

 

「いや、どうだと言われてもなぁ」

 

後に出てくるだろう一連の(アマツ)シリーズを知ってる身としては……

 

「まだ、カスタムし始めたばっかって感じ?」

 

「グッ……」

 

あっ、その反応だとギナ兄もまだ満足してなかったってわけね?

 

ただ、ワタシにはギナ兄の黒髪と”安全第一”とお馴染みの四文字が書かれたヘルメットの組み合わせの方が、シュールすぎてインパクトあったのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マリュー・ラミアス(24歳)、少年少女たちに混じり只今青春真っ盛り(挨拶

誰もが予想していたかもしれませんが……キララクフラグ、完全消滅で。
最早、原作乖離は阻止限界点を超え、大気圏突入を開始しました(^^
そして、なぜかカズイの見せ場が急増してる謎w
なんか、同時に色んなフラグが立った気がしますが……主にギナ兄のせいで。

そして、カガリサイドのある意味フラッグシップMSが出てきましたね~。
次回は、そこらへんの話になりそうです。






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第028話:”このシリーズにおいてストライクに匹敵する主役級MSの1機……の筈。多分。きっと。メイビー”

ガンダムSEEDを題材にしてるのに、何故かMSの描写が異常に少ない事に気が付いた今日この頃w

という訳で、今回のエピソードの主役は、とあるMSです。


 

 

 

MSは、銃やバイクと同じ程度には道具として好きなカガリ・ユラ・アスハだ。

腕前は……まあ、気にするな。

勘づいた人もいると思うが……銃とバイクが好きなのは『キノの旅』の影響だな。

ただし、ワタシの本来の愛銃はもっとゴツく、バイクはしゃべるのは1台もないけど、排気量はどれもエルメスよりデカイぞ?

 

 

 

思わず忘れそうになるが……イズモは現在、ユニウスセブン、正確にはその残骸に向けて航行中だ。

あっ? 別にユーラシア大陸のど真ん中に落とすためとかじゃないぞ?

それは3年後くらいの腐れザフトに任せるとして……取りあえずはプロパガンダの素材集め、最新画像の撮影っていうのが()()だ。

それはともかく、

 

「取りあえず、確かに強そうではあるんだよな」

 

現在、格納庫の中ではユニウスセブン到着までの間、暇を持て余した(?)ギナ兄ことロンド・ギナ・サハクとややマッドの()があるアストレイ開発チーム選抜班(要するに手の空いてるスタッフだ)の手によりMBF-P01、通称”ゴールドフレーム”に『オーブ/大西洋連邦MS装備交互接続/交換実験(アナザー・マッチング・テスト)という名目で改造が施されていた。

 

 

 

(いや、それはそれでいいんだけどさ……)

 

「両腕が”GAT-X207(ブリッツ)”のやん。それ装備交換じゃなくて、腕ごと交換やん」

 

思わず関西弁(似非)になってしまったではないか。

 

「”攻盾システム(トリケロス)”に””ピアサーロック(グレイプニール)”、装備に腕がついているだけだ。問題はない」

 

ギナ兄、その見解はどうなんよ?

いや、まあせっかく両腕拾ったんだし、両方取り換えた方がバランス調整とか面倒くさくないから気持ちはわかるけどさ。

 

(まあ、確かにトリケロスとかを取り外して、ゴールドフレームの腕に取り付けるよりは、必要な手順は少なくなる……のか?)

 

前にも何度か書いたが、大西洋連邦とオーブは開発場所こそ極秘だっただけで、MSの共同開発自体は割と大々的に発表されている。

オーブなんざ国民投票までやったんだから、それこそ国民の大半は知ってるだろう。

 

なので、大西洋連邦のGAT-XシリーズとオーブのMBF-Pシリーズの親和性はずっと高く、言ってしまえば兄弟機と言ってもいい。

 

 

 

前に触れたかもしれないが、例えば原作ではゴールドフレームしか手のひらにある大西洋連邦共通規格の武器用エネルギー供給ソケットを持っていなかったが、この世界ではMBF-Pは標準装備で、おそらくは後の量産型アストレイにも受け継がれるだろう。

 

他にもエマージェンシー・ウエポンとして対装甲コンバットナイフの”アーマーシュナイダー”がアストレイにも標準装備されている。

あっ、どちらかと言えば、低燃費&長稼働時間を目指すアストレイに、アーマーシュナイダーは相性の良い装備だ。

 

逆に今まさにゴールドフレームに搭載されようとしてる新型バッテリーユニット、新素材大容量高温超電導燃料電池の”パワーエクステンダー”は、設計段階から大西洋連邦と共通規格で、ザフトの襲撃が無ければGAT-Xシリーズ全機とマッチングテストが行われる予定だった。

無論、結果が良好なら「原作よりずっと早い段階で」標準装備になったはずだ。

 

要求性能やコンセプトの違いで、装甲とかは大きく違うけど、実はインナーフレーム(UCガンダムファンとしては是非ともムーバブル・フレームと呼びたい!)は、ほぼ同じものだ。

流石に変形前提の”GAT-X303(イージス)”とは似ても似つかないが、100/200系とは装甲ひん剥けば見分けが付かないほど酷似してるんだな、これが。

それは当然、手足の接続部にも当てはまるってわけだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

原作と違い「いきなり両腕をブリッツのそれと付け替える」なんて贅沢(なのか?)ができるというのも、大体ロウ一味と一緒にヘリオポリス周辺で限界まで粘ったおかげだ。

 

その成果は十分……というか、想像以上の成果、アイテムゲットがあった。

おそらくだが、イズモに詰め込んでるGAT-Xシリーズのパーツや周辺機器/装備だけで、アークエンジェルが詰め込めたストライク用のそれの数倍はあるんじゃないかな?

 

避難民と一緒に本国へ持ち帰らせた分は、更にその数倍だ。

 

「それはそれとして……」

 

350mmレールバズーカ(ゲイボルグ)を拾う展開は、原作でもあったはずだから規定内だとしても……)

 

たしか、原作だとギナ兄が拾ったゲイボルグを脱出のためにブッパしたけど、調整不足が祟って右腕も一緒にあぼーん、

 

(それが原因で、たまたま拾ったブリッツの腕を取り付けるって展開だと思ったけど……)

 

どうやら、今生でもギナ兄はブリッツとゲイボルグには縁があるらしいな?

 

「まあ、問題は取り付け方法か……」

 

(見た感じストライカーパックの接続部と”GAT-X103(バスター)”のガンランチャー用トラベリングアームを流用してるみたいだけど、機動力や運動性を損なわないようにバックパック・ユニットとして装着するって……)

 

「これって、”バズーカ・ストライカー”じゃね?」

 

いったい何年、時代を先取りしてんだ? あのマッドどもは。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「どうしたカガリ? 我がゴールドフレームに熱い視線を向けて?」

 

「いや、別に熱視線を向けてるつもりはないけどさ……」

 

”我が”って早速、個人所有宣言かい。

というか、まだ黄色の”安全第一”メット被ってるんかい!

 

「ギナ兄、もしかしてそのヘルメット、気に入ってるのか?」

 

「うむ。嫌いじゃないぞ? 肉体労働者階層(ブルーカラー)気分が味わえる」

 

味わってどうすんだよ?

 

「それに安全規定上、格納庫等ではヘルメット着用は義務じゃなかったか? それ以前に、なぜおまえは装着しない?」

 

似合わないからだよ!

それと、その業務は整備士などの現場作業員の規定だからな? 一応。

 

(ギナ兄って変なところで日本人してるよな~)

 

それはともかく、

 

「アストレイってストライカーパックに対応してたっけ? あのシステムって、”GAT-X105(ストライク)”の独自装備だった気が……」

 

「その答えなら簡単だ。ストライカーパックの接続部や本体側のパーツも拾ったからな。試しに組み込んでみた」

 

いや、ガンプラの改造とかじゃないんだから。そんな簡単に……

 

「A-4スカイホーク(=アメリカ合衆国の20世紀中期に製造された傑作艦上攻撃機。四半世紀もの間生産された)にボフォース40㎜機関砲を搭載するよりは、無茶な改造ではあるまい?」

 

いや、それ”エリ8”ネタじゃん! しかもマイナー。

 

「ギナ兄、相変わらず”エリア88”好きだな~」

 

いや、紹介したのワタシだけどね。

 

「あれこそ、”古き良き時代の浪漫”だろ? 多くの国が数々の戦闘機を作り、空を彩っていた華やかな時代だ」

 

いや、あれってそういうんじゃ……もっと、殺伐としてると言うか。

 

(いや、今生も十分に殺伐としてるか)

 

殺伐さはどっちが上か分からないが、死んだ数は比べ物にならないくらいこっちの世界の方が上だろう。

そしておそらく、これから更に殺伐さは加速するだろうしな。

 

「ところでギナ兄、この機体の名は決めたのか?」

 

「いや、正式名称はまだだ。仮コードは”MBF-P01C”、CはCustom(カスタム)の略だな。仮称は……ひねりはないが、”ゴールドフレーム(カイ)とでもしておくか」

 

確かにこの改造度じゃ、(アマツ)は無いか。

原作に沿った表現するなら、両腕をブリッツのそれに換装したからピアサーロックが追加になってるけど、

 

(”天(未完成)”が一番近いのか?)

 

「悪くないんじゃね? そういやブリッツの腕使ってるなら、両腕消しながら攻撃して、相手の意表を突けそうだな?」

 

ふと思い出したのは、原作でギナ兄がロウ相手にやってた『お手てナイナイ攻撃』だ。

まあ、この世界でロウともめる可能性は低いだろうから、見る機会はないかもしれないけど。

 

「確かにフェイズシフトと切替式で、ミラージュ・コロイド・ステルスができたな……全身隠せなければ意味がないと考えていたが、」

 

「物は使いようさ」

 

犬と鋏モナー。

両手がステルスできるなら、もしかしたら威力倍増するかもしれんし。

 

「ところでカガリ」

 

「ん?」

 

「あと半日もすれば、ユニウスセブンだが、撮影の準備はいいのか?」

 

「そのあたりは怠ってないよ」

 

 

 

さてさて、果たして鬼が出るか蛇が出るか……

 

(はたまた、もっと厄介なピンクの歌姫様が出てくるか……)

 

結果によっては、益々混迷するだろうな。

 

(この世界は、さ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギナ兄、実はオールドファッションの漫画(再構築戦争以前の日本古典作品)とか好きみたいっすよ?(挨拶

という訳で、日曜の朝の更新は、ゴールドフレーム、正確には”MBF-P01C ゴールドフレーム改”の登場となりました(^^

作中でカガリも言ってましたが、”天(未完成)”に近い装備や特性の機体ですが、両腕がブリッツの物に換装されている(ピアサーロックも追加されてる)のと、ゲイボルグがバズーカストライカー風(!?)に装着されてるのが大きな違いですね~。

原作の”天”シリーズと似て非なる進化をしてゆきそうですが、よろしくお願いします。




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第029話:”空色デイズ”

今回のサブタイは今までにないくらいシンプルです(^^
かの有名曲ですが……その意味は、最後でわかる仕様ですw

そして、書きあがったら即座にアップするスタイル。






 

 

 

「ギナ()()、ちょっとシャレにならない状態だぞ」

 

その異変に気付いたのは、イズモのブリッジで光学センサーの最終調整を行ってた時だ。

 

「どうした?」

 

NJ、ニュートロンジャマーによる電磁波障害の影響は宇宙にまで出ていて、レーダーのようなアクティブな電磁波探知手段は、以前よりはるかに有効距離が短くなっている。

 

なので、長距離に特化した光学機器の探知距離が上回ることはままある。

そう、撮影に備えて感度を上げていた艦載光学機器がとらえたのは……

 

「戦闘反応だ。熱源分布と輻射パターン、動きから考えて襲撃してるのはおそらくジン。なんか民間船が襲われてる臭いな……」

 

「民間船? このご時世に宇宙を遊覧航海か?」

 

訝し気な顔をするギナ兄に、

 

「いや……場所柄から考えて、慰霊とか追悼とか墓参りとかそんなんだろ。大方、制宙権はザフトが握ってるから安心安全だと考えて、ノコノコ出て来たんじゃないか?」

 

「そういう理由なら笑いはせんさ」

 

そういうところは、ギナ兄に和の心を感じるよ。

 

「お姉様、ということは襲われてるのはザフト……じゃなかった()()()()()()()()ですか?」

 

確かにザフト保有の船は、武装非武装大きさ関係なく民間船とは呼べんわな。

最大限に好意的に解釈しても”不審船”だ。

 

「まあ、そうなるだろうな。今時、宇宙をノコノコ単独航行するような民間船は、他にちょっと思いつかない」

 

ジャンク屋組合なら、商売柄もっと慎重に行動するだろうし。

 

「プラントの船をMSが襲ってますの?」

 

「何もザフトだけがジンを使ってるわけじゃないからな。我が国だって鹵獲したジンを改造して使ってるし、大西洋連邦にもそういう部隊はある。宇宙海賊や他の無法者や無頼漢が持ってたって、別におかしな話じゃないさ」

 

例えば、もうグレイブヤードにいるだろう”蘊・奥(ウン・ノウ)”とかさ。

 

「んで? 艦長、どうする? 助けるなら、辛うじてまだ間に合うかもしれないけど」

 

「……助ける意味、ありますか?」

 

言いたいことはわかる。

フレイにしてみれば、プラントのコーディネーターなんて勝手におっ死ねだろう。

 

ワタシがそれとなく思考誘導してるせい(あとソキウス達のせい)もあり、原作(アニメ)でもジョージさんが死ぬ前から割と目立ってたフレイのコーディネーター嫌いは、幸いにして今生では鳴りを潜めている。

だが、それはあくまで『プラントのコーディネーターは除く』だ。

どんなに普通に見えても、「ザフトに襲われた」という事実は、彼女の心に暗い影を落としてる気がする。

 

「助ける意味はないが、『民間船を襲撃してる宇宙海賊』を蹴散らす理由ならあるんじゃないか?」

 

するとギナ兄、もといギナ艦長はふふんと笑い、

 

「相手が、もしもユーラシア連邦や東アジア共和国なら、嫌がらせするだけでも意味がありそうだな?」

 

それはそれで美味しいしな。

 

「10億殺しの大逆賊の民とはいえ、非武装の民間船をなぶり殺しにするのは話が違う……使いようによっては、面白い事になりそうじゃないか?」

 

「決まりだな」

 

ギナ兄はニヤリと笑い、

 

「総員、第1種戦闘配置!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうでもいいんだけどさ……

 

(ワタシに艦長席丸投げして、ソッコでゴールドフレームで飛び出すとは思わなかった)

 

「いや、”ゴールドフレーム改”だっけ?」

 

ギナ兄、どんだけMS戦の初陣に飢えて……違うな。

 

(ありゃ、はしゃいでるだけだな)

 

要するに、買ってもらったばかりの玩具ではしゃぐ子供と中身は変わらん。

あっ、因みにプラントのものらしき非武装船(多分)は、物理的に絶賛大炎上……ではなく爆沈寸前の様相で、程なくピンクの歌姫入り脱出ポッド(ガチャ)が射出されるだろう。

そうなるかもとは思っていたが……

 

(まさかURキャラ確定ガチャが手に入るランダムイベントに立ち会うことになるとはね……)

 

こりゃ、ワタシは益々覚悟を決めないといけないだろうなぁ。

無論、そんな気も知らないギナ兄は、

 

『フハハハハハっ! 思った以上の出来だぞ! ゴールドフレーム! いや、”ゴールドフレーム改”!!』

 

あー、ギナ兄、もしかしてミスター・ブシドーあたりに乗っ取られてない?

随伴機で飛んでるグリーンフレーム(ヘリオポリス崩壊後に合流したソキウス・スリー座乗。この世界では兄弟たちと一緒にオーブに引き取られている。実はMS操縦が兄弟の中で一番うまい)がかなり戸惑ってるぞ?

まあ、それはお供のオーブジン×4も一緒だけど。

 

「あーん! ギナ様、ちょっと羨ましいです。フレイもちょっとだけ出てみたい……」

 

ちょっとフレイさん?

いや、君はどちらかと言えば、そっち系のキャラだってわかってるけどさ……

シミュレーションのやりすぎで、少し戦闘狂(バーサーカー)化してない? 大丈夫?

あんまりそっち方面に進行すると、某”お嬢様の成れの果て(カテジナさん)”になっちゃうかもよ?

 

「カガリ様、お耳に入れておきたいことがあるでソキウス」

 

ギナ兄が「妙に動きのいいジン」と丁々発止やってる様を観戦してる中、そう声をかけてきたのは今回はお留守番、副官ポジについて貰った最初のソキウス、シリーズ全体のお兄ちゃんである”ザ・ワン”だ。

 

「母艦らしきものを発見したセブンとイレブンから、詳細情報が入ったでソキウス」

 

ほう、あのコンビニ・コンビ大活躍じゃないか?

 

「どこの船か分かったのか?」

 

「国籍マークは消され、艤装も微妙に変更されていますが、原型は”アガメムノン級”。確度90%でユーラシア連邦の”オルテュギア”と判明したでソキウス」

 

”オルテュギア”……?」

 

んん~……何処かで聞き覚えが……

 

「あっ!」

 

「ど、どうしましたの、お姉様!?」

 

「カガリ様、どうしたでソキウス?」

 

(まさか、あの妙に動きがいいジンに乗ってるのって、)

 

()()()……なのか?

 

「ザ・ワン、セブンとイレブンに通達! ”オルテュギア”の全ての武器とエンジンと索敵/通信装置を徹底的にぶっ壊し、拿捕の準備を! 元がアガメムノンなら、急所や弱点はわかるな?」

 

「任せてほしいでソキウス」

 

「国籍マークを消してるなら遠慮はいらん。『海賊行為中の国籍不明”()()()”』として対処する! 撃沈しなければ何をやってもかまわん。海賊船なら国際法を一々考慮する必要はない!」

 

「了解でソキウス!」

 

そしてワタシはギナ兄に再び通信を繋ぐが、

 

『ハハハッ!! 存分に踊るが良い! 我を楽しませよっ!!』

 

(あっ、これアカン奴やん)

 

なんか、某金ピカ王(ギルガメ)さんまで憑依してる臭い。

主に台詞回し的な意味で。

 

「ギナ兄、聞こえるか!?」

 

『どうしたカガリ? 今はMS(宇宙)戦を楽しんでいる最中なんだが?』

 

知ってる。だから止めた。

 

「それは承知してる。だが、頼みたいことがあるんだ」

 

『言ってみろ。聞くだけは聞いてやる』

 

良かった。冬木じゃなくてバビロニアの賢王のモードだ。

 

「悪いけど……ギナ兄が相手してるジン、生け捕りにできるか?」

 

駄目なら駄目で構わない。

あのジンに乗ってるのが想像通りの相手でも、ギナ兄の命には替えられない。

 

『フン。愚問だな』

 

あっ、このパターンは……

 

『この俺を、一体誰だと思っているのだっ……!!』

 

 

 

 

 

その瞬間、私の脳裏には確かに”空色デイズ”が流れたのだ……

いや、もしかしたら無意識に口遊(くちずさ)んでいたかもしれない。

カミナやシモンとは正反対と言っていいギナ兄には似合わないはずの歌なのに、何故だか今はやけに似合う気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリの脳裏に流れたのは、しょこたんの正統派でも、氷堂美智留のキラキラバージョンでもなく、乾いた泣きのギターが素敵な遠藤正明アニキのクソ熱Verでお願いシャス!(挨拶

なんせ、カガリが好きそうなのはこっちなのでw
あと、amazarashiの「さよならごっこ」とかも一人でいる時は口遊んでいそう。

さて、いよいよストーリーが動き出しました。
いや~、日曜日中に間に合って良かった!

この時点では原作では絶対に合うはずのない二人……弟ではなく異世界から異物が混入した姉が出会ってしまった結果、果たして物語はどういう方向へ転がり始めるのか?

そして、未知の出会いもまた……

次回のアップは未定ですが、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです(^^



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第030話:”愉悦 エンカウント・オブ・ダーク・ピンク・フラワー&ザ・イノベイター”

ミナ様……ではなく皆様、お待たせ致しました。
別に狙ってたわけでは無いですが、記念すべき30話にて、『作中に登場する全キャラの中で、一二を争う厄介な娘』の登場です。

はっきり言って、原作の弟君(キラ)との出会いのような、爽やかさみたいな何かはないです。

多分、甘酸っぱさとかもないです。

それでもよろしければ……お楽しみください?w




 

 

 

その時、無機質あるいは無機的と表現するにも無骨すぎるイズモの格納庫に、

 

「うふふ。初めましてですわね?」

 

ふわりと一輪の花が咲いた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あら? ここはザフトの船じゃありませんの?」

 

救難ポッドから飛び出してきたピンクの少女の手を取りながら、

 

「あんなモラルもへったくれもない、宇宙一下品な連中と一緒にしないでくれ」

 

いや、一緒に飛び出てきたガンダムシリーズ全体のマスコットでイメージアイコン、球体ロボットの”ハロ(小)”もマトリクス・キャッチするけど、

 

(なんか、数増えてね?)

 

原作ではこの時点のお供はピンク1体の筈だが、今は色違い……赤と黄色も加えた都合三体を、空いた片手で抱えてるんだが?

 

「あらまあ?」

 

どうやらそういうザフト評は聞きなれてないのか、きょとんとする彼女に、

 

「失礼だが、”プラントの歌姫”ことラクス・クライン嬢で間違いないか?」

 

「ええ。間違いありませんわ♪」

 

演技か本気かはワタシには分からないが、

 

(なんで割と楽しそうなんだ?)

 

もうちょっと緊張感持とうぜ。

そりゃあ、アニメみたいに銃を突き付けられている状況じゃないけど……

 

(いや、違う。そうじゃない……)

 

嗚呼、なんということだ。

こうして意図せずに手を握ってしまったからか、本能的に感じる。感じてしまう。

微かに皮膚が泡立ち、神経が()()()()ような感覚は……

 

この娘()()()()()()()()んだな……

 

 

 

「ラクス・()()()()? もしや、プラント最高評議会、議長”シーゲル・クライン”の……」

 

「替え玉とかじゃなければ……」

 

「オリジナルですわ」

 

プンと心外のような顔をするラクスだが、

 

「そうかい。なら、間違いなく”プラントの歌姫”ってあっちじゃ呼ばれてる、”10億殺しのクライン”の一人娘だよ。ギナ()()

 

ギナ兄の先を制すように台詞を被せるが、その実、ラクスを刺激して反応を見たかったんだが……

 

「お父様は、地球ではそのように呼ばれているのですね?」

 

一見、哀しそうな顔をするラクスだったが、

 

(コイツ……)

 

ワタシは気づいてしまう。コイツ、ラクス・クラインは哀しそうな顔を()()()()()だ。

別にかけらほども、()()()()()()()()()

 

「少なくとも”()()()()()”だ。ああ、この船はオーブの軍艦だ。運がよかったな? ラクス・クライン」

 

「あら? どうしてですの?」

 

「地球連合の船に拾われたわけじゃないからだ。特にヤクザな東アジア共和国やユーラシア連邦と違って我が国は、建前的には()()()。例えクラインの娘だとしても、いきなり無体な真似はせんよ」

 

「確かにそれは幸運ですわね♪」

 

「もっとも、先日、その中立国である我が国コロニーは襲撃され、崩壊したがね……ザフトの手で」

 

ワタシはまたも探ってみる。

ああ、なるほど……どうやらワタシは興味を持ってしまったらしいな。

我ながら厄介なことだ。

 

「それは……ご愁傷様ですわね」

 

「ははっ」

 

気がついたら乾いた笑い声が出ていた。

ああ、ワタシは確信したよ。

 

(コイツにとっては所詮、全て()()()なんだ)

 

ヘリオポリス崩壊で大量の死者が出たのも、NJで地球で10億の死体が積み重なったのも。

そして、おそらく……

 

(ユニウスセブンで()()()25万人死んだのも』、この女にとっては心底どうでもいい事象なんだ)

 

愉悦……そう、これが”愉悦という感情”か。

始めて知ったよ。まあ、別に知りたいわけじゃなかったけどさ。

 

「面白い女だな……ラクス・クライン」

 

「うふふ♪ 光栄な評価ですわ。”オーブの仔獅子(リトル・ライオン)”、()()()()()()()()()()様♪ それとも、一部の者が呼んでるように……」

 

ラクス・クラインは、嘘を感じない微笑みを浮かべ、

 

オーブの変革者(ザ・イノベイター)とお呼びした方がよろしいですか?」

 

「随分と詳しいじゃないか?」

 

仔獅子はともかく”変革者”なんて、本当に一部の連中しか言ってないぞ?

 

「これでも最高評議会議長の娘ですから、各国要人のデータくらいは、頭の中に叩き込んでいますわよ?」

 

はん。益々面白い。

 

「”ザ・イノベイター”ってのは勘弁してくれ」

 

「人の未来と希望を示すような、善い二つ名だと思いますけど?」

 

ああっ、なるほど。

 

(如何にも”マルキオ導師の道友(ターミナル)”に繋がる者らしい物言いだな)

 

「何かその二つ名で呼ばれると、流体金属系異星人と融合する未来が来そうな気がするんだ」

 

転生物のお約束で、この世界に”ガンダム”に(まつ)わる全てがない。

だから、このネタは通じないだろうが……

 

「……例えば、”T-1000”のような?」

 

なんか微妙に通じてね?

 

「あれより酷いというか、凄いというか……というか、古い映画にまで詳しいのか?」

 

少なく見積もっても、シュワちゃんのあれは1世紀は前なんだが。

 

「そっちは趣味ですわ♪」

 

さよでっか。

 

 

 

「ギナ兄、いや()()()()()()()()()()殿()、この女はワタシが尋問……いや、事情聴取する。プラント最高評議会議長の娘で歌姫、オーブ連合首長国代表首長の娘で国防委員。つり合いは取れると思いますが?」

 

「ふん。気に入ったのか?」

 

「まあ、そうなる」

 

「お、お姉様っ!?」

 

なんか悲鳴じみた声を上げるフレイだったが、

 

「丁度いい。フレイ、お前も同席しろ」

 

「はえっ?」

 

「プラントのコーディネイターがどういう連中か知るのに、良い機会だぞ?」

 

「お姉様がそうおっしゃるなら……」

 

「好きにしろ。場所は、お前の部屋か?」

 

「ああ。言っておくが、捕虜ではなく、救助した()()だ。そのつもりで対応を徹底してくれ」

 

「いいだろう。だが、室内監視カメラはオンにしておけよ?」

 

「わかった。ただ、進言させてもらうけど……聞くのはギナ兄だけにした方がいいと思う」

 

まあ、多分そういう話も出るだろうしな。

 

「随分と愉快な談話になりそうだな?」

 

「ただの女子会だ。どこにでもある、つまらないな」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ああ。そうそう……」

 

これを伝え忘れると後が大変だった。

 

「ギナ兄に生け捕りにしてもらったパイロット、尋問にはワタシも立ち会うから」

 

だって、ワタシは『関係者』だしな~。

 

(これも逃げきれないし、避けることもできない”(カルマ)”って奴なのかな……)

 

あえて誰のとは言わんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラクス書いてると不思議と普段の倍疲れる気がする(挨拶

はい。ご想像してた皆々様もいらっしゃるでしょうが、間違っても『綺麗なラクス様』じゃあございません(^^

むしろ、悪女と表現したくなるのですが……でも、男を誑かして金品巻き上げたり、あるいは国傾けたりなんて分かりやすい一般的なタイプじゃないです。
なお厄介なのは、「魅力チート」なんですよねw ラクスは。

果たして地上の劇物と宇宙(そら)の劇物が邂逅した(出会った)時、物語はどう歪み狂っていくんでしょうかね~。

それは、筆者にも謎です(ヲイ





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第031話:”笑い声”

今回もシンプルなサブタイですが……

皆様の好きなラクス・クラインは、皆様の愛したいラクス・クラインは、それぞれの心の中にいます!(キリッ

いや、いきなり「なにいってんだこいつ?」状態でしょうが、何というか……言い訳です(^^
いや、予想以上に「変な娘」になってきたので、予防線の一つも張っておこうかとw

そんな話で良ければ、お楽しみください。




 

 

 

「事情聴取と言われても、何をお話したらよろしいですか?」

 

「先ずは当たり障りないところから……なんでユニウスセブンの残骸なんかにいたんだ?」

 

「こう見えてユニウスセブン追悼慰霊団の代表ですので、事前の現場視察でしたの」

 

あっさり喋ってくれるのはありがたいんだが……

 

「それ、自分の意思じゃないだろ? 多分だが」

 

フレイのいれてくれた濃い目のコーヒーを飲む。

豆はもちろん地元の名産品、世界的にも有名なマンデリンだ。特に深煎りが好ましい。

 

「……どうして、そう思いますの?」

 

「だってお前さん、追悼する気も慰霊する気もないだろ?」

 

ラクスは一瞬目を見開き、そして探るような目つきになり……

 

「中々、面白い見解ですわね。カガリ様、その根拠をお尋ねしても?」

 

「ワタシも同類だからさ。ラクス・クライン」

 

別に隠す気はない。

自分のクズっぷりを少しさらすだけで、このつかみどころのない女の根源が垣間見えるなら、そう悪くない取引だ。

悪いな。お前さんがワタシを値踏みするように、探りたいのはワタシも一緒なんだ。

 

「大量の死は統計学上の数字に過ぎない。ワタシは今回のヘリオポリスの死者を悼むより、政治的にどう利用できるかを考えた」

 

”1人の死は悲劇だが、100万人の死は統計上の数字に過ぎない”

たしかアイヒマンだったか、スターリンだったかの言葉だ。

 

「お前も同じだろ? ラクス・クライン」

 

当たり前だ。

人が、死に憐れみや哀しみを覚えるのは、「身につまされる」からだ。

自分や身近な者の死に置き換え、それを「実感」できるからだ。

 

(だが、ラクス・クラインにはそれがない)

 

多分、ラクスには戦禍に踏み潰される街にも、「当たり前の日常」や「笑い合える小さな幸せ」があるなど、想像の埒外だろう。

 

(理解もできないだろうし、理解する気もない)

 

例え、そういう姿を見ても「そういうものだ」と納得して終わりなんじゃないだろうか?

 

おそらく、身近な小さな死でも見ず知らずの大量死でも、この女にとって死は『客観的な一つの事象』に過ぎないのだ。

事象としてとらえる以上、そこに感情が移入する余地はなく、最終的にはこの世の事象の大半がそうであるように、数字へ収束する。

 

「まあ別に、間違った考え方とは思わんが」

 

まあ、ワタシも人のことは言えないが、

 

「一般的ではないな?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あはっ♪」

 

その表情変化は、ワタシには唐突に思えた。

 

「あはははははははははははははははははははははははっはははははははっはははっはははははっははっははあっはははっはははっ!!」

 

”弾けた様に笑いだす”という表現があるが、まさにそれを地でいってるのが今のラクス・クラインだ。

原作のイメージとはかけ離れた笑い方に笑い声……もし、これが仮に

 

”焦点のあってない瞳孔を揺らしながら、口から(よだれ)をたらしながら歪みきった顔で嗤う”

 

ような姿だったらワタシは特に何も思わなかった。

それは単に目の前のラクス・クラインが、『正常や正気の皮をかぶった()()というだけの……別段珍しくもない、ありふれた存在だというだけだったろう。

もしかしたら、ワタシは急速に興味を失ったかもしれないが……

 

「けほっ! けほっ!」

 

やっぱり(むせ)たか。

 

「急に笑い過ぎだ。普段使いなれない声帯の使い方をするから、そうなるんだ。とりあえず茶を飲んで喉を湿らせておけ」

 

「お心遣い、痛み入りますわ」

 

ワタシがティーポットから注いだ冷めかけの紅茶をこくこくと飲むラクス・クライン。

 

「仮にも歌姫なんだろ? 笑うにしても、もう少し気を遣ったらどうだ?」

 

「だって嬉しかったですもの♪」

 

ぺろりと舌を出す姿は、ひどくチャーミングで絵になる。

 

(これがラクスの恐ろしさなんだろうな……)

 

そうなのだ。

さっきの気がふれたような笑いの中であっても、彼女の瞳には確かに知性も理性も確かにあった。

いや、むしろ愛らしく綺麗と評してもいい。

狂ってなどいない。

正気を失ってなどいない。

おそらく、悪意も敵意も憎悪も感じたことがないのかもしれない。

 

(……()()()()()()()()()()()

 

 

 

つまり彼女はおそらく、どんな局面であっても『ラクス・クラインで()()()()()』だろう。

例え、男たちに性処理道具として蹂躙され続ける日々の中に堕ちようと、例え薬漬けにされ自我が消滅してもなお、

 

”ラクス・クラインは()()()()

 

どんな状態でも、ラクス・クラインはラクス・クラインであり続ける……

半ば確信をもってそう思う。

ナチュラルだろうがコーディネイターだろうが、そもそも『()()()()()()()()()()()』程度で、彼女をどうにかできるのだろうか?

これが、『実は人の似姿(にんぎょう)で、何者かの意思を反映するアバター』というなら、まだ納得もできよう。

だが、そうじゃない。

 

(ラクス・クラインは、『誰かの操り人形』などではなく……間違いなく()()()()()()()()()()()

 

きっと馬鹿げた話だと思うだろう。

だが、もう誰にもこれ以上壊せないほど「壊れた人間性」を持ちながら、「人間として破綻していない」事が、どれほど異常かわかるだろうか?

 

機械でもなく、人形でもなく、人として瑞々しく生々しく生を謳歌してるのだ。

これを矛盾と言わず何と言えばよいのだろうか?

 

 

 

「それにしても嬉しいですし、何よりおかしいですわ♪」

 

「何がだ?」

 

「こんな宇宙の果てで、まさかまさか”()()()”に出会えるなんて☆ これだから人生というのは中々やめられませんわね♪」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(ご同類ねぇ)

 

「そいつは光栄と言うべきか? それとも嘆くべきか?」

 

「是非、胸を張って欲しいですわ♪」

 

「生憎、張るほど胸がないんだよ」

 

と軽く自虐ネタを挟んで(物理的に竿は挟めんサイズだが)みれば、

 

「お姉様は、その平たい胸も素敵です!」

 

そう言ってくれるのはお前で二人目だよ、フレイ(一人目は”むったん(アズラエル)”)だが。

というか、さっきまでラクスの毒気に当たられてたのに、まあ今は気丈にキッと睨み付けてるし。

 

「お姉様は、貴女と同類なんかじゃないわ!」

 

と年の割には豊満な胸を指さし、

 

「フレイの同類だもん!!」

 

……いや、それもどうよ?

それとなフレイ、

 

(なーんか、ラクスがニンマリ笑ってる気がするんだが?)

 

何か「新しいおもちゃ見つけましたわ♪」って表情のような……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




訪問理由を聞いただけでこれかい(挨拶

曲解表現ですが、このシリーズのラクス様は『個性的』です。
個性という言葉でまとめてよいものか悩みどころですが、まあこんな娘です(^^

原作のラクスと比べてどっちがどっちかなんてことはベクトルが違い過ぎて難しいですが、少なくとも原作&このシリーズ、どっちのキラとも相性悪いだろうな~とw

まあ、とりあえず互いに興味を持ったようですが……果たして?








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第032話:”10億の死の真相 矛盾やら皮肉やら不条理やら混沌やら”

今回は、朝から内容的にも文章量的にもやや重いのをw

でも、ラクシズ……じゃなかった、ラクス的な意味では前の2話に比べれば軽いです。多分。

エピソード的には、原作の設定フォロー回と言いましょうか……取りあえず、オチは色々酷いです?




 

 

 

ラクスのキャラ崩壊的な大笑いから、しばし……ワタシたちはいくつかの話をした。

したのだが……

 

「はっ? ニュートロンジャマーが外部操作を一切受け付けないのは、単なる設計ミスだぁ?」

 

当たり障りのない話題の合間に前置きなく特大の爆弾放り込むのやめれ、愉快犯(ラクス)

ワタシだってリアクションに困る場合が無い訳じゃないんだぞ?

 

「はい。当初の予定では、お父様……シーゲル・クラインは、1週間でニュートロンジャマーをコッソリ止める計画をたててましたの」

 

「……それが、どうしても今でも動いていて、10億もの地球人を殺したのよ……?」

 

とジト目のフレイ。

だが、フレイが会話に参加することを歓迎したラクスは、どこ吹く風の涼しい顔で日本茶を飲んでいる(話が長くなったので、別の茶も楽しみたいとか言い出した)。

 

(一般人の反応が見たいとか、そんな理由だろうなぁ)

 

「実はですね……」

 

お茶うけにと出した、イズモにも持ち込んでいた行きつけの甘味屋謹製の芋羊羹(いもようかん)栗羊羹(くりようかん)(どっちも特に甘党でもないワタシが気に入る品だ)をパクつきながらラクスが話し始めた、聞きようによっては原作(アニメ)よりよっぽど救いのない”()()”だった。

 

「つまりなんだ……ザフトは、深度を完全に見誤っていたと?」

 

 

 

要約すればこんな感じになる。

ニュートロンジャマーの基礎となる技術は、元々ザフトというよりプラントにはあった。

地球みたいに大気っていう天然のバリアが砂時計型コロニーにはない為、太陽風をはじめ数々の宇宙線への防護策として、この手のエネルギー型防護壁の研究が盛んなのも、まあ頷ける。

 

そして、起こった「血のバレンタイン」

あれに関しても色々思うところがあり、裏で色々調査中案件だが……妻がユニウスセブンと吹き飛んだおかげで知性も理性も一緒に吹き飛んだパトリック・ザラ率いる強硬派が地球への核報復……どころか、『地球との全面核戦争』を方針として打ち出したらしい?

 

正直、その強硬派とやらは、コーディネイターとかナチュラルとか関係なく抹殺した方が、世のため人のためだと思うが……

 

それは流石にアホの所業と考えて待ったをかけたのが、ラクスパパことシーゲル・クラインを筆頭とする穏健派だ。

実はこの集団を穏健派と呼ぶのは大きな間違いらしく、ラクスに言わせると……

 

「あの集団を”穏健派”とか”良識派”と認識すると馬鹿を見ますわよ? 強いて言うなら、そうですわね……”非強硬派”とでも評するべきでしょうか?」

 

とのことだった。

というか、自分の国民にも情け容赦ない……じゃないな。おそらくもっと根深い気がする。

その辺りの考察はいずれ別の機会にして、仮称クライン派は大慌てで全面核戦争を声高に叫ぶ仮称ザラ派を牽制/掣肘する行動へと出た。

 

(その回答がニュートロンジャマーの戦争利用か……)

 

例えば、シーゲル・クライン評議長はプラント市民に中継される最高評議会でこう宣言したらしい。

 

『野蛮なナチュラルが核の力を憎悪で燃える破壊の炎とするのなら、()()()()()()()()()な我々は、その破壊の炎を全て消し去る力があることを証明して見せようではないかっ!!』

 

まあ、この時の演説が今も続く「25万人にも満たない死者の報復に10億殺しておいて、自分達が理性的だ人道的だと言い放つ宇宙の化け物」という地球人のプラント評に繋がるのだが……

ともかく、プラント在住コーディネイターの特異な自尊心やら優越感を満足させる事に成功したシーゲル・クラインは、全面核攻撃を主張するパトリック・ザラより高い声望と支持を集め、かくて『オペレーション・ウロボロス』は発動し、10億を殺した『エイプリルフール・クライシス』は不可避となったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、本当に救いがないのはここからだ。

当時、正気を失っていたパトリック・ザラ(今でも正気とは思えないとはラクス談)とその一派の勢いと怨念はすさまじく、早急にニュートロンジャマーを投入し、戦果を出さねばならない状況にクライン派は追い込まれていた。

 

そこで、『オペレーション・ウロボロス』直前に勃発した”世界樹攻防戦”でニュートロンジャマーを試験的に投入したのだ。

 

ただ、ここで注意したいのは、テスト投入されたのはあくまで「ニュートロンジャマー()()()()」だったということだ。

つまり、ニュートロンジャマーを内蔵し地中深くに潜り込んだ「ドリル付きのモグラ外装」は投入されてないのだ。

 

じゃあ、どこで”ドリルモグラ(仮)”の実験をしたかと言えば……

 

(手近な小惑星とは恐れ入ったね……)

 

言い方を変えれば、『ほとんど引力のない硬い岩塊』に打ち込んで試験したというのだ。

ちなみに実験結果は、

 

()()m()掘り進んでドリルが自壊し自然停止。この状態で外部専用端末からの無線入力でのNJ操作は十分可能』

 

というものだった。

さて、これを聞いてピンと来た紳士諸君は鋭い。

そう、地球に打ち込まれたドリルモグラ外装の”地中浸透型ニュートロンジャマー”の原型は、次回作の”種死”の方に出て来た”メテオブレイカー”だ。

 

正確には、作中に登場したMSで扱えるようにしたモデルではなく、その前か前の前の世代のモデルだろう。

 

 

 

つまり、『大気圏の外から落とせて潜れるように改造したメテオブレイカーのボディにニュートロンジャマーを内蔵した』代物が、地球に数百落とされた地中浸透型ニュートロンジャマーの正体という訳だ。

 

そして、地球に打ち込む前にこの()()()がテストされた事は、時間の関係で無かったらしい。

そして、一説によれば『わずか数機で地球全土の原子炉を機能不全にできる』と噂されるニュートロンジャマーが数百も無駄に打ち込まれた理由も、よく言われる「地球連合の発見や破壊を困難にするため」ではなく、どうやらこれに起因してるようで……

 

「一度も完成品として実験しないまま地球に投下するのは流石に不安だったのでしょうね。どのくらいの確率で動くか、誰にもわからなかった。だから作れるだけ作って、」

 

作戦時にあるだけ打ち込んだ、と。

要するに「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」改め「数撃ちゃ動く」だ。

 

だが、思い出してほしい。

ドリルモグラが試験が行われたのは、繰り返すが小惑星での1回こっきりだ。

その結果、『計算上は実行可能』と判断された。

 

そして、そんな状況で「デカイ万有引力を持ち、地表部分は柔らかい場所が多い星」……地球に打ち込めばどうなるか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「つまり、”()()m()()()()()”のは完全に規定外で、その深度で外部操作できるかなんて誰も実験してなかったと……?」

 

マヂかよ……

 

「ええ。その通りですわ♪ 実は地球に打ち込んだニュートロンジャマーが一切外部操作を受け付けないどころか、どのくらいの数が動いてるのかわからない状態。しかも、プラントはまだしも地球連合ですらも取り出すのが難しい深さに到達してるって知ったとき、お父様は顔を真っ青にしてましたっけ……」

 

まあ、そりゃそうだろうな。

その後の展開は手に取るようにわかる。

 

「シーゲル・クラインにとっては”10億殺し”なんて呼ばれるのは、さぞかし不本意だろうな。だが、結果として”生意気なナチュラルを核も使わず、スマートに10億人も殺してみせた”事が更なる人気と支持率上昇につながり政治基盤が強化。強硬派に主導権を渡すわけには行かない以上、これは肯定せねばならない」

 

しかも、

 

「おまけに自分が10億殺したことにパトリック・ザラとその一派も少しは留飲を下げ、全面核戦争は当面は回避できる……いや、」

 

ああっ、そういうことか。

 

「そうじゃないな。シーゲル・クラインがニュートロンジャマーを強引に使ったのって、そもそも地球の核がどうこうじゃなくて……もしかして、パトリック・ザラに核兵器を使わせない、使いたくても使えない状況を作るためか」

 

ザフト艦の大半は、中性子の自由運動阻害(ニュートロン・ジャミング)で核分裂反応を停止させるためではなく『優秀な電子/電磁波妨害装置』、つまり普通の電子戦機材としてニュートロンジャマーを搭載している。

 

いくらレーダーとか使えない方がMSに有利だとしても、少し不自然だと思っていたが、

 

(裏を返せば、今は大抵の場所で核分裂を用いた核兵器は使えないと)

 

実は核融合(熱核反応)兵器、水爆なんかも熱触媒に核分裂使うから、あながち間違いじゃないだろう。

 

(核分裂を触媒に使わない純粋水爆とかは、まだどこも実用化に達してないしな……)

 

「はぁ……カガリ様って本当に底が見えないお人ですわ~♪」

 

なぜそこでうっとりした顔で溜息をつくんだ? ラクス・クライン。

妙な色気を感じるじゃないか。

 

「そ、そんな……10億人も死んだ真相が、そんなつまらない”うっかり”だったなんて……」

 

何やら少なくないショックを受けてるフレイだが、

 

「まあ、コーディネイターだナチュラルだと言ったところで、所詮は人間さ。こういうこともある」

 

むしろ、起こってしまったことにどう対処するかが問題な訳で。

 

「ですが、お姉様!!」

 

「納得いかなければ、プラントやザフトはそういう連中だと思っておけ」

 

雑な言い方?

ふん。10億人が死んだあんまりな真相を話しながら、芋羊羹をモフモフ食べてる……あまつさえ、お代わりまで要求してきやがったラクスを見ていたら、怒る気も失せるさ。

 

「まあ、今のシーゲル・クラインにとって、真相を話すことはデメリットでしかないな……」

 

というかこの女、これだけの国家機密を本気で茶飲み話くらいにしか思ってないな?

 

(少し釘でも刺しておくか)

 

余計なお世話かもしれんが、

 

「ラクス、その話は他の場所では絶対するなよ?」

 

「するつもりはありませんが……どうしてですの?」

 

「その情報、扱いようによっては火に油どころか、油田火災にナパーム弾になりかねん。戦争に収拾がつかなくなる」

 

「……怒りや憎しみで、ですか?」

 

「そういうことだ」

 

するとラクスは、首をこてんと傾げ、

 

「不思議です。どれほど憎悪を募らせ、プラントの民を一人残らず滅ぼそうと、10億の命は返ってこないというのに……」

 

「それが感情ってもんだからさ」

 

「矛盾……ですわね」

 

ははっ!

こいつも少しは人間臭い、いや……

 

(可愛いところもあるじゃないか?)

 

「人間なんて生き物は、そもそも矛盾って言葉が受肉して生まれたようなモンだぞ? これに理不尽や皮肉や混沌が加われば、人生は(いろどり)として完璧だな。少なくとも退屈はせん」

 

「……奥深いですわね」

 

「そういうもんさ。人間ってのはな」

 

貴女の事ですわ。カガリ様♪

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「いえいえ。なんでもありませんわ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




芋羊羹と栗羊羹を突っつきながら、10億殺しの真相を茶飲み話で語るラクスェ……(挨拶

実は10億殺したのは初歩的なミスの結果にすぎず、その隠された本当の目的は、ザラ親父がぽこすか地球に核を撃ち込むのを防ぐ事でござったw

ラクスを出して、カガリと対話させると決めた時点から、絶対にやっておきたいと思ったのが、実はこの「10億の死とニュートロンジャマーの真相」でした(^^

まあ、原作乖離激しいこのシリーズでも、明らかに今後の戦略に関わってくる話ですし、何よりプラントやザフトが大好きな「血のバレンタイン/ユニウスセブン」に直結する話ですからね~。

それでも、ラクスにとっては茶飲み話でしかなかった罠。




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第033話:”ラクス様は甘味がお好き? とある名物甘味処がオーブにはあるみたいですよ?”

今日はお休みだったので、もう1本アップだZE☆

いや、すいません。
思ったより執筆ペースが乗ったので変なテンションです(^^
いつものように書きあがったら即投稿するスタイルっすw

前半、というか大半は女子会らしい(?)話ですが、ラストは……




 

 

 

”10億人が死んだのは、プラントないしザフトの技術部がやらかした「テヘペロ (・ω≦) ♪案件」でした”

 

(なお、本質的には時間不足が主な理由で見切り発車で作戦を実行してしまったから。計画の発案者であるパパクライン氏は、本国では「スマートに10億のナチュラルを殺した大英雄」と褒め称えられ、人気は鰻登りな模様。ただし、本人はあんまりな事態「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えているが)

 

うん。

間違っても公表できねーな。

 

最早、誰も『その話、国家機密なのでは?』とツッコめないまま、ワタシとラクス、フレイは一応常識人枠として……SAN値直葬(さんちょく)系お茶会、あるいは女子会は何となくgdgdと続いていたのだが……

 

「そろそろ、腹が減ってきたな」

 

と普段より若干、強めの空腹感を感じるワタシことカガリ・ユラ・アスハであった。

ラクスと喋ってるだけなのに、なんだか脳みそのブドウ糖消費量がいつもより高い気がする。

まあ、あえて理由は気づかないふりをするが……

 

(”ダイエットのお供に最適! 一家に一台、ラクス・クライン!”ってか?)

 

そばにいてお喋りするだけでカロリー消費が増大する便利グッズ……その代償として、人類は半減どころか待ったなしで絶滅するかもしれんが。

うん。全く割が合わんな。

愉快犯的な発想で、一斉に人類に反旗を翻す量産型ラクス・クラインの群れ……それなんて、”宇宙怪談”(コズミック・ホラー)

絵面がクゥトゥルフ並みに怖すぎる。おそらく新年号は”C.H(Cosmic Horror)”なるに違いない。

 

それはいいとして、

 

「ワタシは2ポンドのTボーンステーキにしておくか」

 

焼き方は好みのミディアムレア、味付けは今日は気分的にシンプルに岩塩と黒コショウだけでいこう。コショウはあらびき&強めに利かせてだ。

 

(後は香りづけに”かぼす”を一絞りだな)

 

これにクロワッサンとコーンポタージュ、シーザーサラダくらいでいいか?

 

イズモは公式にはオーブ軍所属の正規軍艦だが、その実はサハク家の半私有艦と言ってもいい。

まあ、よく話題に出てくる”軌道ステーション(アメノミハシラ)”と似たようなものだ。

どちらも、かなりの金額をサハク家やその呼びかけに応じた面々が出資している。

 

その為、竣工式や進宙式ではエイプリルフール・クライシス前だったこともあり、各国の軍や政治家、付随する産業の重鎮を招いて豪華な艦上パーティーを開いたものだ。

その名残で、この艦には軍ではなくサハク家お抱えのコック(軍の階級持ち)が常駐しており、突然のハイソな来客にも十分対応できるようになっていた。

 

(実はギナ兄自身は、食道楽(グルメ)って訳じゃないんだけどな……)

 

食べるのに手間暇時間のかかる豪華な食事より、手早くつまめる物をどちらかと言えば好む。

ジャンクフードが好きというより、食事に費やす時間を勿体無いと感じてるんだろう。

 

(ホント、変なところで日本人気質だよな~)

 

「お前らは何にする?」

 

と艦内情報端末を受け取ったラクスは、

 

「白玉クリームあんみつと栗ぜんざいを。あと水ようかんもつけましょうかしら?」

 

なんだその、血糖値を爆上げしそうなオーダーは?

 

「いや、そろそろ食事の時間だと思うんだが?」

 

「? だから、お食事ですわよね? 頭がつかれたので、甘いものを欲してるのですわ♪」

 

ワタシが元日本人転生者だからだろうか?

食後のデザートや付け合わせのフルーツ以外で、食事時に甘味というのは抵抗があるな。

まあ、ラクスも脳みそが疲れると知れたので、こいつも一応は人類の範疇にいると安心材料にはなったが。

 

「そんなに甘い物……というか和菓子が好きか?」

 

「ええ。とっても☆」

 

メニューにはケーキ類なんかの洋菓子もある(というか洋菓子のが種類が多い)にも拘らず、わき目も降らずに白玉クリームあんみつを注文しやがったしな。

 

「プラント人なんて、水ようかんを”ブラックビーンズ・ジェリー”とかぬかす奴ばかりだと思っていたが」

 

「そんな無知蒙昧な俗物と一緒にされるのは、(はなは)だ心外ですわ」

 

(ふ~ん……やっぱりラクスって、)

 

プラントに住んでる人間を「プラントに()()()()()()()有象無象」としか思ってないみたいだな?

コーディネイターとかいう選民思想(レイシズム)の成れの果てを、過度に信奉した挙句生まれた同胞意識みたいなものはまるでなさそうだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

BLTサンドとジャガイモの冷製ポタージュ(ヴィシソワーズ)を注文したフレイがそろそろげんなりしてきたようなので、飯を食ったら本日の質疑応答は終わりにしよう。

 

(立て込んでる案件もあることだしな……)

 

「そんなに甘味が好きなら、ラクス・クライン」

 

少しはコナでもかけておきますか。

 

「まかり間違って、お前がもし万が一オーブに亡命するような日が来たとしたら……」

 

それはそれで嫌な仮定だが、

 

「ワタシが行きつけにしている、とっておきの甘味処を案内してやろう」

 

黒い置物みたいなウサギがマスコットで、同い年の黒髪のねーちゃんが看板娘の店だ。

小うるさい婆ちゃんもいるがな。

 

「ちなみにお前さんがパクパク食ってた芋羊羹や栗羊羹、その甘味処で買ったワタシの私物だからな?」

 

「まあまあ☆ それは楽しみですわね♪」

 

「お姉様、フレイは!? フレイは同伴させていただけませんか!?」

 

「いや、お前は有無を言わさず連れてく予定だったんだが? 無事に帰国出来たらだが」

 

ワタシ、割と気分転換にあの店にノーパソ持ち込んで仕事すること多いからな。

基本、甘いものはそこまで好きじゃないが、なぜかあの店の菓子は舌に合うんだ。

 

「もう、お姉様ったら、もうデートの予定を立てていたなんて♪」

 

……フレイ、言い方。

まあ、今更か。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この時のワタシは知る由も無かった。

此処からそう遠くない未来、

 

『こんなはずじゃなかったんだが……』

 

この大して本気にされないような誘い文句が、原作とは違う意味で実現し、某クロスケ(ないし今のラクスパパ)ばりのセリフと共に頭を抱える羽目になるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

飯を食い終わった後、ワタシの個人端末に連絡が入った。

 

(そうか、)

 

「目覚めたか……」

 

ギナ兄に無理を言って(いや、本人は「ただ撃墜するより難易度上がり、面白いぞ!」と大喜びしてたが……)生け捕りにしてもらった、「()()()()()()()()()()()()()()()()()」が目を覚ましたらしい。

 

(トラウマになってなければ良いが……)

 

どうやらギナ兄、ワタシがちらりと前に言った限定的ミラージュ・コロイド・ステルスの応用、『両方のお手てナイナイ攻撃』で翻弄したらしい。

より具体的に言うなら、最後は『ピアサーロックで雁字搦(がんじがら)めにして動けないようにしてら、パイロットが失神するまでタコ殴りにした』だ。

 

「さて、ワタシも過去と向き合わねばな」

 

現状わかっているだけでも、そのユーラシア連邦に属しているらしい()()()()()()()()()()()……

 

体中に刻まれた手術痕やら傷痕から、彼がどういう生い立ちだったか容易に想像がつく。

 

(だが、()()()とは間違いなく同郷だ)

 

いや、それどころか……

 

「まあ、会って話さねば何も始まらないな」

 

ワタシは今までだってそうしてきたし、これからもそうするだろう。

別に敵対になったところで構いやしない。それだって立派な人間関係だ。

 

だからこそ、会いに行こう。

 

「待ってろよ。”もう一人の弟(カナード・パルス)”よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリのオーダーが漢らし過ぎる件について(挨拶

なお、オリジナルは知りませんが、このシリーズのラクスも割と健啖家っすw
ただし、好みは和菓子に傾いてるようですが(^^

そして、ラスト……どうやら次回は、ついに登場しそうですね?

果てさて、カガリ本人は「敵対でも一向にかまわん」とか思ってるみたいですが……





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第034話:”カナード・パルスという少年”

本日も早朝アップと相成りました(^^

さて、今回でいよいよ原作ではありえなかった二人の初邂逅です。

癖の強い二人なので、すんなりいくかは……God only Knows?




 

 

 

「やあ、初めましてだな? もう一人の弟君。君のお姉ちゃんのカガリ・ユラ・アスハだ」

 

その少年の顔を見たとき、最初に口から出たセリフがそれだった。

もうちょっと捻りを入れた方がよかったか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

カナード、カナード・パルス。

それが、「妙に動きのいいジン」を動かしていた()()()()()()()()()()()の名だ。

思わず、カナード・()()()と呼びたくなるが、それはご愛嬌。

その正体は、何のことはない。

 

「姉……?」

 

一瞬、聞いたことのない単語を聞いた時のような顔をされ、

 

「何を言ってるんだお前っ!! 俺に兄弟姉妹などいない!」

 

「いるんだな。これが」

 

(姉も弟も)

 

尋問椅子に拘束服姿で固定されているという、かなりアレな姿で対面してる黒髪ロングの少年……もう一人の弟(キラ・ヤマト)に比べると、荒んだ生き方を余儀なくされていたせいか、目付きは悪く、顔だちも整ってこそいるがどちらかと言えば凶相の部類だろう。

無論、こうなってる理由もわかる。

 

(目を覚ました途端、暴れて脱走しようとしたらしいからな)

 

攻撃性を前面に押し出し、犬歯を剥き出しにして吠えられる様を見ると、

 

(猟犬タイプ男子……)

 

差し詰め、黒毛のボルゾイとかサルーキあたりだろうか?

ちなみにワタシ的に男性好感度No1の”むったん(アズラエル)”は、毛並み的にも抱き心地的にも気質的にもゴールデン・レトリバーだと思う。

 

(懐かせるのはそれなりに苦労しそうだが、)

 

まあ、そういうのも嫌いじゃないぞ?

まず真っ先にやるべき事は、

 

「拘束を外してやれ」

 

椅子に括り付けて話し合いもクソもないしな。

 

「しかし、カガリ様っ!?」

 

そう驚いてくれるのは、カナードを取り押さえた一人と思われる、装甲服がチャーミングな我がオーブが誇る宇宙海兵隊の猛者だ。

 

ヘリオポリスの崩壊事後処理で合流した彼らだが、今回は大活躍をしてくれた。

ソキウス・セブンとイレブンのコンビニコンビが操るオーブジンが武装/エンジン/通信・索敵設備を文字通り叩き潰した”国籍マークを消したアガメムノン級”に乗り込み、乗員を捕縛してきたのは彼らだ。

 

「構わんさ。この誰にでも噛みつきそうな狂犬小僧と最初から穏やかな話し合いができるなんて期待していない」

 

むしろカナードが最初からそんなしおらしい態度だったら、裏があるんじゃないかと疑うくらいだ。

 

「多分コイツは、やんちゃなぐらいで丁度いい」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「貴様……俺の何を知ってる?」

 

拘束服の固定具を外されたカナードは、言い回しからワタシがある程度の事情を知ってることに気付いたのか、睨み付けてくるが……

 

(まだまだだなぁ)

 

圧倒的に殺気が足りない。

 

「大したことは知らんよ。お前さんがメンデル()()され、『()()()()()()()()()()()()()()()()』の烙印を押された挙句、薬殺処分されかけたことくらいだ」

 

「キサマァッ!!」

 

他愛ないちょっとした挑発に激昂し、弾かれた様に飛び掛かってくるが……

 

「甘ぇよ」

 

”パンっ!”

 

「かはっ!?」

 

何をやったかって?

カナードの死角から、最小のモーションで顎先を打ち抜いただけだぞ? 掌底のカウンターで。

加減したので顎を砕くほどの威力はないはずだが、いい感じに入ったから程よく脳も揺れた事だろう。

いくらコーディネイターだと言ったところで、脳みそが本当に筋肉で出来てるわけでもなければ、人間の急所を克服できた訳でもない。

 

”カクン”

 

案の定、膝から崩れ落ちたか。

 

「一応これでも軍隊格闘(シラット)のマスタークラスでな。あんまナメんなよ?」

 

蛇足ながら言えば、最近はイスラエル式軍隊格闘術の”クラヴ・マガ”にもハマってる。

実はクラヴ・マガ、日本の法的執行機関に取り入れられた歴史があり、その流れでオーブのその手の機関でも継続採用されている。

なのでオーブ国内でも使い手や愛好家は多く、教官に不自由はしない。

 

原作のカガリは、公式で「趣味:体力づくり」だったと思うが、ワタシとしてはその体力を有効利用する方向性を示したいものだ。

日本人なりの勿体無い精神の表れと思ってくれればいい。

いいのだが……

 

(勿体無いといえば、コイツ(カナード)もだよな……)

 

床にごっつんこしてる()を見て、つくづくそう思う。

 

(まあ、製造過程から考えれば、コイツの方が先に生まれたんだろうが……)

 

だが、やっぱり雰囲気的にも相性的にも兄には見えんし思えん。

 

(やっぱ弟だ。ワタシがそう決めた。文句は言わさん)

 

ならば、ここは”腹違い(?)の姉”としては、何とかしてやらんとな。

 

(どこぞの喫茶店のウエイトレスなら、「お姉ちゃんにまかせなさーい!」とか言うところだろうが……)

 

流石にキャラ的にワタシには無理だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

さっきは中途半端になってしまったが……

カナード・パルスとは何者なのか?を転生者としての視点も入れて語ってみようと思う。

 

まず、この少年はアニメには登場せず、出典は外伝の一つ漫画”機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY”に登場する『二人の主人公のうちの一人』だ。

作品の立ち位置としては、キラよりアスランの方が近いだろう。

主人公に対するライバルキャラ的な感じか?

 

設定を一言で言えば、『キラ・ヤマトと後に名付けられる事になるスーパーコーディネイターの開発過程で生まれた”試作品”(プロトタイプ)。要求性能に達せず”失敗作”の烙印を押された』存在が、カナード・パルスだ。

 

その後、違法研究の証拠隠滅も兼ねて失敗作として廃棄処分されようとしたが、しかし、その前にとある研究者が憐れんで逃がし、ユーラシア連邦に拾われた……らしい。

 

(その辺りのエピソードは、原作のソキウス・スリーにも似てるな)

 

まあ、スリーは今生では元気にグリーンフレーム乗ってるが。

 

だが、問題なのは、腐れユーラシア連邦でのカナード・パルスの扱いだ。

我が同好の士にしてベッドの供、声が勇者王なのに涙目がよく似合う麗しの”むったん”が事実上の覇者である大西洋連邦と違い、ユーラシア連邦とついでに東アジア共和国でのコーディネイターの扱いは、とにかく悪い!

 

まあ、それも当たり前の話で……詳しく書く気はないが、ユーラシア連邦の礎となったロシアがソ連と名乗っていた時代、自国民に行った”大粛清”で何をしたのか?

あるいは、東アジア共和国の中核であり、皮肉を言えばオーブ建国の最大の要因となった中華人民共和国が、自国で行った文革やチベット/モンゴル/新疆ウイグルで何を行ったかを少し調べれば、納得はできるだろう。

 

要するに、カナードはよく言っても「貴重な被検体」、悪く言えば「スーパーコーディネイターを調べるモルモット」として扱われた。

 

私見ではあるが、おそらくユーラシア連邦はガンダム00に出てくる”超人機関”みたいなことをやっていたんだろう。

コーディネイターの技術を用いて超兵でも作ろうとしていたのかもしれない。

 

 

 

これに関しては思うところはあるが、実は責める気はない。

大西洋連邦もつい最近まで、人のことを言えない研究をやっていたからな。

 

(まあ、あまりに効率が悪いんで計画自体が見直しされたが……)

 

そして、カナードはその扱いに耐えかねて一度脱走するが、ここでまた面倒臭い出会いを経験する。

 

そう、逃亡途中でどこでどうカナードの事を嗅ぎつけたか……深くはこの場では追求せんが、”謎の男(一般には正体はクルーゼとされてるが、根強くデュランダル説もある。どっちも同じ穴の狢だが)”が接触し、カナードに「成功作として生まれたスーパーコーディネイター」、つまりうちの弟(キラ・ヤマト)の事をあることないこといらぬことを色々吹き込みやがったようだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

その後、カナードはユーラシア連邦の追跡部隊に捕縛(というか、半ば自主的に投降したくさい)されるが……

 

(以後はキラ・ヤマトを打ち破り、『自分こそがスーパーコーディネイターの成功作である』ことを証明するために生きるようになる)

 

おそらく、今のカナードはこの状態だろう。

何とも面倒臭いアイデンティティの確立だとは思うが、

 

「それも生き方と言えば生き方だが」

 

だが、今のまんま……拗らせたまんまじゃ何処にも行けんだろう。

妙な願望で目を曇らせてれば、

 

「見える物も見えなくなる」

 

なら、せめて……

 

「自分の生き方くらい、自分の手で見つけられるようにしてやらんと」

 

そこ、余計なお世話とか言わない。

自覚はあるんだ。これでもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




先ずはあいさつ代わりの掌底一発スタートでした(挨拶

そして、一撃擱座w

実を言えば、一度本気で書いてみたいキャラだったんですよね。カナードって。

アニメ本編に組み込むことがもしできるのなら、アスラン以上に輝ける(凸フラッシュ的な意味でなく)ライバルキャラになれるポテンシャルがあるんじゃなしかな~と前々から思ってました(^^

今作ではカガリが絶対に敵対なんて許さんでしょうけどね~。

兎にも角にも”チーム・カガりん”(?)のレギュラー入り候補筆頭、いや確定?のカナード君、これからも見守っていただけると嬉しいっす!




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第035話:”はじめてのきょうだいげんか+ガネっ娘”

とりあえず、ストック分全弾開放w

カナード君とカガりんが、何やらハートウォーミングな語らいをするようですよ?(拳とかで)




 

 

 

イズモは、イズモ級宇宙戦艦の1番艦として建造され、そうであるが故に後に続く姉妹達とは少々違う装備なども多い。

試行錯誤の末に装備されたが、不要と判断され後続に搭載されなかったり、あるいは設置されなかったりしたものもある。

 

また、ほかの理由……例えば、半サハク家保有の船という立ち位置もあり、第33話に出てきたように各国の要人を招いた艦上パーティーも可能な料理人と厨房設備、パーティー会場として使えるレセプションルーム等も完備されている。

他にも、今はカガリ、フレイ、ラクスらが使っているが、三ツ星ホテルの高級スイートとはいかないまでも、そのランクのホテルのシングルルーム・レベルの個室が20部屋ほども用意され、それなりの身分の来客が泊まり掛けの視察などを行う場合も対応可能だ。

 

その手のアメニティ設備は、回転式の人工重力ブロック(遠心力で疑似的に1G環境を作る、UCガンダムのアーガマとかに搭載されていたアレだ)に設けられていたりするが……

 

多分に客船としての要素も取り入れられている、古き良き時代の言い回しをするなら”お召し艦”としての側面を持つのもイズモの姿だった。

 

そして中でも一際変わった、軍艦にも客船にも普通はない設備がそこにはあった。

 

「あのギナ様」

 

「なんだ? アルスター」

 

どうやら無事に小娘呼びから卒業できたらしいフレイは、かなり困惑気味に、

 

「お姉様は、一体何をなさっているのでしょう……?」

 

「見てわからんか?」

 

「はい。申し訳ありません……」

 

「分からん物を分からんと素直に言えるのは美徳だ。気にする必要はない」

 

ロンド・ギナ・サハクはどちらかと言えば上機嫌に微かに笑うと、

 

「何のことはない。”ただの姉弟(きょうだい)ゲンカ”だ。俺もたまに(ミナ)とする」

 

一応、フォローしておくと、かつてカガリに喧嘩を売って全身13か所を骨折させられた若き日と違い、今はもっと平和的に姉であるロンド・ミナ・サハクと争っている。

論戦はしょっちゅうだが、それ以外だと一番多いのは飲み比べだ。

少し大人になったサハク姉弟(きょうだい)らしい決着方法だが……今の所、まだ姉には勝てないらしい。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「姉より勝る弟がいないことを、今日もまた証明してやろう」

 

うむ。軍隊格闘術大好きカガリさんだ。

ちなみに上記の証明は、しょっちゅうミナ姉がやっている。主にギナ兄を酔い潰すことによって。

さて、ワタシは今、おそらくこれを常設してる軍艦はイズモだけであろう固有施設、”武道場”に来ている。

 

トレーニングルームではなく、畳張りと板張りのスペースがあり、神棚やオーブに移された鹿島大明神と香取大明神の掛軸が飾られた、本式の”武道場”だ。

 

トレーニングを日課としている乗組員(軍人)の体力を航行中に衰えさせない為、軍艦にトレーニングルームがあるのは普通だし、スパーリングスペースが併設されてるのも普通だ。

だが、モロ和風の……文武両道を謳う名門学校にあるような武道場があるのは、流石にイズモ以外は聞いたことがない。

 

これ自体はギナ兄の趣味で、本人曰く「洋風のトレーニングルームでは興が乗らない」かららしい。

ちなみにこの雰囲気を好むものは艦内にも大勢いて、ギナ兄が施設を開放してるせいもあり、割と普段から利用者が多いのだ。

 

ただ、今日だけは貸切にしてもらってる。

その対価として、手の空いてる者の見学を受け入れられるように言われたが、別にそれは構わない。

というより、”スーパーコーディネイターの失敗作”の烙印を押されたとはいえ、『トップクラスのコーディネイターの身体能力』をその目で見るのは誰にも良い経験になるだろう。

 

「このイカレ女が……!」

 

そう毒づくトレーニングウェア姿のカナードに、

 

「イカレてるのはワタシじゃなくて時代の方だと思うが?」

 

と言い返してやると、視界の端で何故かラクスが(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪とうなずいていた。

 

「そんなことはどうでもいい。ルールは飲み込めてるか?」

 

「……ああ」

 

それは何よりだ。

 

「とりあえず互いに武器はなしの無手勝負。オーブ宇宙海兵隊方式。ルールは”死んだら負け”」

 

「ヲイコラっ!!」

 

「軽い海兵隊ジョークだ」

 

お前の緊張感を揉み解してやろうとした姉なりの気遣いなんだが……あんまお気に召さなかったようだな。

 

「カナード・パルス、お前の勝利条件は有効打を1発でもワタシに入れることだ。それができたのなら、オーブに帰国次第、お前を解放してやろう。その先、どこに行こうが何をしようがお前の自由だ」

 

要するに、「オーブに着くまでは解放してやんね」って意味なんだが、

 

「ナメやがって!」

 

すっかり頭に血が上ってるパルス君は、どうやらそれに気づいてないようだ。

 

「ワタシの勝利条件は、お前さんを死なさず殺さず、尚且つ戦闘不能にすること」

 

そりゃそうだろ? 殺してしまったら、生け捕りにした意味が無い。

 

「そして、ワタシが勝ったら……」

 

ここから先、マジ重要だからな?

 

「先ずはワタシの話を全部聞け。残らず聞け。一言一句聞き流すな。そして聞いたら、自分の頭で考えろ。とにかく考えて咀嚼し理解しろ。誰かの言葉ではなく、自分自身で”自分がいったい何者なのか?”を理解しろ」

 

それが『自立した人間』への第一歩だ。

要するに……

 

(カナード・パルスは、まだカナード・パルスとして生きていない)

 

ちょいと生まれがユニークで生い立ちが人生ハードモードだった為、自我の確立が遅れてる……だからこそ、『完成品であるキラ・ヤマトを倒すことによって自らが完成品である事を証明する』なんて不穏で不安定な自己承認方法を取ろうとするんだろう。

 

カナード・パルスという一個人が独立した自我として確立できていれば、だれを倒そうが倒すまいが『俺は俺』という結論にしかならないんだからな。

 

「お、おう!」

 

ちょっと待て。なんで今、そこで私の顔を見ながら若干引いた?

 

「まあ、いいさ」

 

さて、ではちょっと手厳しいスキンシップを始めるとしますか。

姉と弟の間で分かり合おうとすれば、『時には荒療治も必要。古事記にそう書いてある』偉い人(ミナ姉)も言ってたし。

 

「じゃあ、そろそろ始めようか? カナード・パルス。いや……」

 

口角が自然に持ち上がるのが、自分でもわかった。

 

「弟よ」

 

「黙れーーーーっ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

きんぐくり~むぞん・ぐろ~り~♪

 

 

 

結果はわかっていると思うが、一応報告までに。

カナード・パルスは目の前の畳の上に、大の字&全身青アザまみれ+汗まみれでぶっ倒れていた。

症状で言うなら、全身打撲でのスタミナ切れだ。

誤解のないように言っておくが、骨折や内臓破裂の類はないはずだぞ?

自分で言うのもなんだが、我ながら手加減がうまくなったもんだ。

 

「こ、この”体力お化け”の魔女め……」

 

おいおい。ベッドヤクザと同じくらい理不尽なこと言われた気がするぞ?

おまけにちょっと言い回し可愛いし。

 

 

 

まあ、こうなるのも当然なんだわ。

ユーラシア連邦の施設でどんな訓練やら薬物投与やらをされていたのか知らないが、実は体力やら筋力やら瞬発力やらの基礎的なフィジカル面はカナードの方が上だろう。

そいつは実感として分かったが、

 

(いかんせん、肝心の”フィジカルの強さを生かす技術”がダメダメ過ぎだ)

 

一応、ロシア式軍隊格闘術の”システマ”の手ほどきくらいは受けた形跡はあるが、とてもじゃないが護身術としても実戦レベルに至ってない。

ぶっちゃけ、技能だけを見るなら素人に毛が生えたレベルだ。

 

もし、これで「実戦投入可能」と判断されていたのなら、よほどの手抜き審査か、あるいは「コーディネイター特有の性能ごり押し」と武術技能の境目が見えなかった節穴かのどちらか、あるいは両方だろう。

 

武術っていうのは本来、小さく弱い者が「より大きく力が強い者」から身を守る、もしくは打ち倒すために発展/研鑽を重ねられてきたものだ。

だから、この結果は当然すぎた。

 

「という訳で話は聞いてもらうぞ?」

 

床に寝っ転ぶカナードに手を差し出す。てっきり振り払われるかと思ったが、

 

「……約束は守る」

 

と存外素直に掴んできた。

 

(案外、可愛いところあるじゃないか?)

 

「その笑顔はやめろ。何やら背筋がゾクゾクする」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

とまあここで終われば、比較的綺麗に話は済んでいたのだが……

 

『姉を名乗る中性的な少女に、いいように弄ばれるカナードきゅん……ハァハァ……全身、傷だらけの細くとも引き締まった肢体に、艶めかしく輝く汗……ハァハァ……喧嘩に負けた仔犬のような瞳……ハァハァ……尊い!』

 

ヲイコラ。

さっきから変質者っぽくハァハァしながら、()をガン見視姦してるガネっ娘はなんなんだ?

 

(ってよく見たら、もしかして”メリオル・ピスティス”か?)

 

たしか原作でカナードの副官ポジで、

 

(カナードへの愛しさが爆発して、戦艦奪って軍から脱走/駆け落ちした肝っ玉の座った女……)

 

何か違う気もするが、大筋では間違ってないはずだ。

まさか、この時期から副官ポジ……いや、

 

(補佐とかお世話係とか、そんな感じっぽいな)

 

階級もそんなに高くないようだし……それに、

 

「やっぱショタだったか」

 

(ま、まあ、確かに世話係はいるよな? 原作情報が正しければ、優秀なのは確かだろうし)

 

行き掛けの駄賃ってわけじゃないが、カナードを一本釣りするついでに亡命させてしまおう。

なんだったら、新しい身分や名前を与えてもいいくらいだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくてカナード・パルスという数奇な生まれを持った少年の命運は決したのだった。

それが吉と出るか凶と出るのかは、今はだれにも分からない。

ただし……どんな方向であれ、苦労する、あるいは受難となるのは確かだろう。

それが決して不幸と言えないのが、悩ましい部分ではあるが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出雲に武道場設置して、鹿島と香取の掛軸飾るってなんかスゲェ(挨拶

カガリ曰く「変なところが日本人」のギナ兄、結構和風趣味ですw
純和風というより、どこかオーブ・アレンジっぽくなってしまうのはご愛嬌?
まあ、ハリウッド映画に出来るモロに似非なステレオタイプなアレよりはマシだと思いたい。

とりあえず、最初の「じゃれ合い」は上手くいったようです(^^
「まずボコる。話はそれからだ」……どこかで聞いたことあるような気がるのですが、おそらく気のせいでしょう。
某魔砲少女(たかまち)式交渉術”とか言ってはいけない。

まだ次回分は1文字も書いてないのですが……スーパーコーディネイターとかの話題かな?



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第036話:”URやSSRが出るまで引き続けるガチャ”

中途半端な時間ですが、とりあえず昨日から書いてた分が仕上がったので、書きあがったら即アップするスタイルで(^^

前回は拳だったので、今回は口頭で……?

やや重い話も混入してますが、読んで貰えると嬉しいっす。




 

 

 

「なんだとっ!? 貴様がキラ・ヤマトの双子の姉だというのかっ!? 貴様もスーパーコーディネイターなのかっ!?」

 

「落ち着けって」

 

”ごすっ!”

 

「うごっ!?」

 

とりあえず、脳天に一発鉄拳制裁して鎮静を促す。

姉と弟の語らいで、拳がコミュニケーション・ツールになるのは一般的だ(実例:幼い頃のミナ姉)が、

 

(まあ、キラとはこういうコミュニケーションはとれないだろうからな~)

 

という訳で、今はこの関係を楽しむとしますか。

 

「確かにキラとワタシは、遺伝学的に言えば二卵性双生児だが、ワタシはどこも遺伝子をいじくってない正真正銘の天然物(ナチュラル)だぞ?」

 

「お前のようなナチュラルがいてたまるかっ!!」

 

「いや、マジだって」

 

「ば、バカな……ただのナチュラルが、肉弾戦とはいえこの俺を圧倒したというのか……?」

 

何やらショック受けてるカナードだが、ここで残酷な事実を告げなばなるまい。

 

「あんな~……格闘戦にナチュラルとかコーディネイターってラベルだかレッテルだかは、ほとんど関係ないぞ? あるのはただ、純粋に強いか弱いかだけだ」

 

これは事実だ。

ワタシの印象で恐縮だが、生まれ持った高スペックに胡坐かいてて、大して研鑽もせずに「ナチュラルは弱い」と慢心しきってるコーディネイターほど倒しやすい相手はいないからな?

 

「ナチュラルだから劣ってるとか、コーディネイターだから優れてるとか先入観持ってると、簡単に足元掬われるぞ?」

 

ぶっちゃけ、そんなんより油断も隙も無いナチュラルの暗殺者の方がよっぽど怖い。

 

「今のお前みたいにな」

 

「グッ……!」

 

「先ずは自分の弱さを認めろ。大抵の強さってのは、先天的ではなく後天的なもんだ」

 

だからこそ、カナード・パルス……お前には可能なんだよ。

 

(キラ・ヤマトを倒して自分が成功作となる……『自分がキラ・ヤマトより劣ると思い、超えたいと願う』、そんなお前だからこそ、)

 

「カナード、お前はワタシに完膚なきまで負けた。だが、実は筋力や反射速度、動体視力などの基礎的なフィジカルは、はっきりと数字に出るほどお前さんが勝っていた。その面では()()()()()()()()()()()()。なら、なぜ自分は負けた?」

 

「……技量と経験の差か?」

 

ワタシは小さく笑い、

 

「ほら。答えは出たろ?」

 

「な、なにがだよ?」

 

「弱き者は弱さを認め、()()()()()弱いままでいたくないから創意工夫を、努力を、訓練を凝り返してきた。それが世代を超えて伝わり、今の武術になった……そうやって人間は、弱さを克服しようと歴史を重ねてきたんだよ。人も、あるいはその集合でもある国もな」

 

弱き者は生き残れない。

これは真理だ。外敵に滅ぼされるだけじゃない。自然の環境変化に追従できず滅びることもあれば、あるいはもっとどうしようもない理由で自滅することもある。

よく「弱者の生存戦略」という言葉を聞くが、戦略を得て生存に成功した時点で、それは相対的にもう弱者とは呼べないとワタシは思う。

 

「お前は今、自分で見つけたろ? 何が自分に足りないかを。これからもそれを繰り返していけば、望む強さに手が届くかもしれん」

 

押し黙り、悩み始めるカナード。

思い悩むのは若者の特権みたいなもんだから、それは別に構わない。

分類的にはワタシも若者枠に入るはずだが、中身が中身だけに胸を張って言えないところだ。

もっとも、張るほどの胸はないが。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(それはいいとしても……)

 

話は変わるが、今ワタシとカナードが話してるのは尋問室だなんだが、

 

(基本、関係者以外立ち入り禁止の筈なんだが……)

 

ギナ兄がいるのは当然だろう。艦長だしな。

フレイがいるのは、ワタシが同行させたから当然だ。

 

”メリオル・ピスティス”は……)

 

 

 

~回想~

 

『カナードはウチ(オーブ)に引っこ抜く。どうやら、アイツはワタシの血縁者と言えなくもなくてな』

 

『はい……』

 

『ところで、ワタシは一緒にアイツの世話係を探しててな。メリオル・ピスティス、お前さんさえよければ、』

 

『亡命させてください。お願いします。何でもしますから』

 

『今、何でもと言ったか?』

 

『確かに何でもと言いました……! 一目惚れなんです』

 

『いや、それは聞いてないが……わかった。亡命手続きは直ぐに取ってやるから、土下座でにじり寄ってくるのはやめい』

 

~以上、回想終了~

 

 

 

とまあ、こんなやり取りがあり、呼ばないとなんか面倒臭そうなので尋問室にも入るのを許した。

そこまではいい、そこまでは良いんだが……

 

「いつツッコもうと迷っていたが……何故、お前がここに居る? ラクス・クライン」

 

「後学のためですわ♪」

 

一言でぶった切ってきたな。

ちなみにワタシは許可を出した覚えはない。

 

「ギナ兄ェ……」

 

「客人なのだろう? 別に構わんではないか」

 

あっ、なんか「下手にかかわると面倒臭そうだから許可だした」って顔してるな~。

 

(ギナ兄に面倒な奴と思われるなんて、どんだけなんだよラクスは……)

 

無理に追い出す理由はないから、いいけどさ。

 

「ただラクス、覚悟しておけ? お前にとっては、いやプラントで生まれ育ったコーディネーターには、割と耳が痛い話になるぞ?」

 

「委細承知の上ですわ」

 

本人がそういうなら、それもいいか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そして、またワタシは思い悩む姿が妙に絵になる黒髪少年、カナード・パルスに艦内端末を、三次元投影モードで渡し、

 

「そう言えば、話が途中になっていたな? 分かりやすいよう簡易イメージ・モデリングにしてるが、採取したお前さんのDNAマップとワタシのDNAマップを平行投影してるぞ? そして、それを重ね合わせて照合をすると……」

 

「血縁一致率、約50%……」

 

予想通りの結果というべきか?

まあ、原作を読んだ時から、遺伝学的には近似あるいは相似に近い遺伝子の持ち主である事は想像していた。

声といい容姿といい、カナード・パルスはキラ・ヤマトに「似すぎていた」からだ。

 

それは、自然受胎と遺伝子操作を受けた人工子宮の生まれという違いはあるとはいえ「キラと二卵性の双子」という関係性を持つワタシにとっても、

 

「そう。語弊のある言い方だが、ワタシとお前の半分は同じ遺伝子さ。種違いか腹違いかは言及せんが、平たく言えば片親が違う姉弟(きょうだい)ってことだな」

 

 

 

「俺に親は……」

 

「それを言ったらキラも、大きな意味じゃ母親の胎外で受精卵となった大半のコーディネイターはそうならないか?」

 

実際、コーディネイターは親子の情がナチュラルに比べて全体的に弱いという研究結果もあるくらいだしな。

「望んだ容姿じゃない」、「自分の優れた才能が引き継がれなかった」、そんな理由で育児放棄したり児童遺棄したりするケースが後を絶たない。

 

事実。『遺伝子操作で自ら命を生み出せる』という傲慢さが強いプラントのコーディネーターは、調査の結果極めて生命倫理が低いことが報告されている。

 

C.E55年に”トリノ議定書(=「遺伝子改変禁止に関する協定」)”が制定されたのは、何も遺伝子操作者への生理的嫌悪感が理由じゃない。

「いつでも命を遺伝子操作で製造できる」と考える製造者、そうやって生まれたコーディネーター自身のの生命倫理感の低さも、当時から大きな問題になっていたのだ。

極端に言えば、「思い通りの子供が生まれなければ、次の子供を製造すればいい」と考えるコーディネイターは少なくないのだ。

 

(まるでSSRやURが出るまで引き続けるガチャだな……)

 

ワタシやキラの遺伝子提供者(個人的に親とは言いたくない)ヒビキ夫婦はナチュラルだったらしいが……キラってURだかSSRが出るまで、受精卵まで含めれば有り得ない数の命を犠牲にしたという意味においては、弁明の余地はない。

 

その直接的な犠牲者は「キラの試作品で失敗作とされた」カナード・パルスで、間接的には「資金繰りのために製造された」ラウ・ル・クルーゼだ。

 

「繰り返すが生まれ方はかなり違うとしても、キラ・ヤマトとワタシは遺伝学的には”二卵性の双子”だ。だから、結果としてお前とは半分血がつながった姉と言ってもおかしくないだろ?」

 

「そ、それは……」

 

さて、そろそろ一歩踏み込んでみますか。

 

「なあ、カナード……そもそも、お前にとってスーパーコーディネイターとはなんだ?」

 

「えっ?」

 

「スーパーコーディネイターとは、一体何だと思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コーディネイターに纏わる生命倫理の話って、ある意味鬼門だよね?(挨拶

今回は、割とまとめるの苦労した話どした~。
ただ、「カナード勧誘イベント」やるには、彼が「スーパーコーディネイターの失敗作」と呼ばれていた以上、避けては通れない話題も多いんですよね~。

今回は、カガリ・ユラ・アスハではなく「転生者としてのカガリ」な部分が描けていたら嬉しいな~と。

とりあえず、カガリは一気に勧誘を畳み掛けるみたいですよ?



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第037話:”スーパーコーディネイター その虚像と実像”

とりあえず、週末らしくというか連休らしくというか、深夜アップですw

さて、今回はサブタイ通りのスーパーコーディネイターがメインテーマですが、さほど原作から外れていない筈ですが、「このシリーズなりの解釈」が入ってる可能性があります。

「まあ、そういうもんだ」と楽しんでもらえると嬉しいっす。




 

 

 

スーパーコーディネイターとは、いったい何なのだろうか?

 

ガンダムSEEDという作品において、()()()キラ・ヤマトの代名詞とも言える……物語の後半に連なるにつれ意味を持つ重要な単語だ。

 

それを追求する前に、元となるコーディネイターとは何なのかを確認したい。

アニメにおける設定としての定義は、「遺伝子調整(コーディネイト)によってあらかじめ強靱な肉体と優秀な頭脳を持った()()()」だ。

 

まず、この時点でツッコミどころ満載だろう。

「新人類」なんて昭和の時代から使い古された単語はさておき、「人間の個体差」を完全に無視している。

この表記をするなら「平均的に」という言葉を入れるべきだ。

また、コーディネイターの優秀さをアピールするセリフや設定がいくつか出てくるが、例えば原作における我らがオーブのMS-OS専門家、エリカ・シモンズ女史によれば、

 

『基本的に、コーディネイターの能力がナチュラルのそれを上回るのは、避けがたい事実であり、インターフェイスの性能が同じならば、彼らのほうが機体のポテンシャルをより有効に引き出すことができるのは、明々白々なことである』

 

との事だが、「だったらOS作る前にインターフェース替えれば?」と言いたくなる……というか、その回答が現在鋭意製作中であり、フレイがゲーセンにある筐体代わりにしている球体型(オーブ)コックピット”だ。

 

その程度、OSの変更やハードウェア程度で埋められる差しかないのだろうか?

原作ではそういう情報はないはずだが……例えばボアズやヤキンの戦いにおいて、、EDクレジットに名前がのるような存在でなく一般ザフト兵が乗る「MS製造にこなれたプラント製のゲイツ」と、同じく()()()()()の一般兵が操る『量産性と安定性、整備性のよさ以外は凡庸なストライクダガー』とのキルレシオ差は、そこまでなかったように思えてならない。

 

原作の設定資料を読む限り、ゲイツの方が明らかにダガーより高性能機であり、「その高性能を引き出せるハイスペックなコーディネイター」が操っているにも関わらず、だ。

演出上の都合と言われてしまえばそれまでなのだが、リアルの事象として考えるなら、一般兵レベル同士なら「OS乗せ換えたら、性能の劣る機体に乗ってもザフトと互角に戦えてしまった」と解釈してもおかしくない。その程度の差だったと。

 

 

 

他にも「D.S.S.Dの一級管制官の資格試験には、コーディネイターはナチュラルのおよそ1/3の平均学習時間で合格できる」というのがあるが、これも言葉の魔術で、そもそもD.S.S.Dを受験しようとするコーディネイターは、環境に恵まれて十分に伸ばせる環境にいた、勉学やら何やらに優れたいわゆる「エリート」だ。

その一握りのエリートが、ナチュラルのエリートの3倍の学習速度を持っていたとしても、一般解にすべきではないだろう。

 

後は、「その能力差は総じてナチュラルより高く、身体能力や学力が成人年齢に達するのもナチュラルのそれより約5年ほど早いとされる」

「年端の往かない彼らが陸海空軍海兵隊の役割を総合したザフト軍の厳しい訓練や任務に耐えられるのも、コーディネイターの優秀な能力ゆえとされている」

とかか?

 

即ち、「5年早く()()()()()から少年少女でも厳しい訓練に耐えられ、戦場に出せる」=逆説的に「5年すれば追いつける」って意味なのだが……それにしたって、

 

「これ、言っててプラントの大人は恥ずかしくないのか?」

 

(まあ、プラントのコーディネーターには恥って概念がないとか、プラントには本当の意味で大人はいないとか言われたら、それまでなんだけどさ)

 

オーブにもワタシやキラみたいに、望む望まざるに関わらず戦う羽目になってしまった若者はいるが、それは本当に「例外」だ。

ザフトのように「標準」じゃない。

いや、確かにオーブは建国前後からの歴史的背景やら諸事情で、義務教育を確実に終えられている16歳から「元服(成人認定)」とされ、選挙権が与えられ、やろうと思えば結婚もできるが……

だが、普段は議会承認が無い限り凍結されてる「選抜徴兵」は、原則18歳以上対象だ。

 

 

 

とまあ、アニメで記された描写や公式あるいは認定ムックのデータを主に列記した訳だが……もう、この時点で微妙な気分になってきたんじゃないだろうか?

 

そして、遺伝子操作を受けた()()コーディネーターにも、割とどうしようもない欠点があるようだ。

結論を先に言えば、『設計図通りのスペックが反映されずに生まれる』事だ。

例えば、

 

・青い目に生まれるようにコーディネイトしたのに青い目に生まれなかった。

・自分の遺伝子を使い、自分と同じくコーディネイトし、教育にも金をかけたのにたのに自分の才能が受け継がれなかった。

・長身の夫婦が長身に育つようにコーディネイトしたのに子供は短躯だった。

 

笑ってはいけない。

カイト・マディガンとサーカスの例を出すまでもなく、これが原因で育児放棄や児童遺棄が多発するのがコーディネーター(特にプラント)だ。

その原因は、母胎内での不確定情報変動とされるが、正直なところはいまだ不明だ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

では、ここで表題のスーパーコーディネイターに話を進めよう。

スーパーコーディネイターとは、上記の欠点を克服した存在。

即ち、「最高の性能を発揮できる塩基配列に調整された遺伝子」を持ち、「それが完全に誕生した肉体に反映された存在」だ。

 

ただ、そうなってしまうと語義的には「人類を超越した人類(スーパーコーディネイター)」というより、「遺伝子情報を完全反映した人類(パーフェクトコーディネーター)」という方が正しいのだ。

 

この辺、誤解される事も多いが、本当にワタシことカガリ・ユラ・アスハとキラ・ヤマトは二卵性の双子だ。キラは体外受精の”試験管ベイビー”ではない。

 

ワタシは母(抵抗あるなぁ……)、ヴィア・ヒビキの胎内で育ち、キラは受胎した受精卵の状態で摘出された後に遺伝子調整を受けて、()()()()情報変動がないとされた人工子宮で培養された。

 

「とーころがぎっちょん!」

 

サーシェス、良いよなぁ……あの絵に描いたような悪党っぷりがたまらん。

 

「この人工子宮ってのが曲者でね。理論上は変動がないとされていても、実際には頻出する……原因は不明。つまり、技術的には未完成もいいところなのさ」

 

「まさか……」

 

「そのまさか、さ。キラ・ヤマトは技術的に未完成な人工子宮の中で、()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのさ」

 

まさにその辺りがガチャなんだよなぁ……

 

「嘘だ……それが、スーパーコーディネイターの真実だというのか……」

 

だからこそ、残酷な現実を告げなければならない。

 

「ああ。よく聞けカナード・パルス……お前が、ユーラシア連邦の外道どもに何を吹き込まれたのか知らん。だが、お前が失敗作とされたのは、断じて”性能がキラ・ヤマトに劣っているから”じゃない」

 

そうだったら、もっと簡単だっただろう。

だが、考えて欲しい。

生まれてすぐの赤子や幼児をどうやって性能比較しろと?

第一、比較しようにもカナードが”製造”された時に、まだキラ・ヤマトは生まれてないのだ。

 

「お前が失敗作とされたのは、ただ単に”遺伝子情報の肉体への反映が、()()()()()()()()()()()()……それだけだ」

 

 

 

そう、優劣の問題じゃないのだ。

事実はもっと無味乾燥で、もっと無情だった……

 

(性能至上主義のコーディネイターとして生まれたのに、性能の問題じゃないと失敗作認定され廃棄されかけたんだ……)

 

まあ、ショックだろうな。

 

(だからこそ、)

 

「わかったか? カナード……お前が例えキラ・ヤマトを倒そうと、性能で上回ろうと、決してスーパーコーディネイターにはなれないんだ。そういう風にできている」

 

ワタシはとどめを刺した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「があぁぁぁぁーーーーーっ!!?」

 

ついに精神的負荷から狂乱状態となったカナードだったが、

 

(まあ、予想通りか……)

 

ワタシは内心で溜息をつきながら、

 

”どすっ!”

 

首筋に手刀を落として、精神が摩耗しきる前に意識を刈り取った。

 

「メリオル・ピスティス」

 

「はっ、はい!」

 

ワタシは状況についてけなさそうなガネっ娘に、

 

「こいつは寝床へ運んどいてやる。お前は起きるまでついててやれ」

 

「えっと……」

 

「尋問というか、事情説明は翌日以降だ」

 

そこ、そんなに困惑するところか?

 

「それと報酬の前渡しだ」

 

ワタシはニヤリと笑い、

 

「起きたら慰めてやれ」

 

「はっ、はい! ()()()()!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

やれやれ、だな。

 

(これで第一関門突破ってあたりか?)

 

だが、よほど下手を打たない限り、この先かかる時間もそう長くないだろう。

 

「随分とお優しいのですわね?」

 

「お前が何を言ってるのか、ワタシにはさっぱりわからんぞ? ラクス・クライン」

 

「カナード様……でしたか? 前へ歩みだすためには間違いを正し、過去を断ち切る必要があった。違いますかしら?」

 

「……フン。ワタシは優しくなんてないさ」

 

優しい奴ってのは、プレア・レヴェリーみたいな奴の事を言うんだろうからな……

 

「ラクス、ワタシをどう思おうが勝手だが、いずれにせよワタシはカナードを手に入れる」

 

「ちょっと羨ましいですわね……カガリ様にそこまで求め(ほっ)せられるなんて」

 

「そんな大層な話じゃないさ。単に弟だから見捨てられないだけだ」

 

「では、そういうことにしておきますわね♪」

 

だからなんで楽しそうなんだよ?

 

 

 

「あー!? ()()()、なにまたどさくさに紛れてお姉様の好感度稼ごうとしてるのよっ!?」

 

「うふふ♪ 冤罪ですわよぉ~☆」

 

最近、お前ら仲良いなぁ~……って、いつの間に仲良くなったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カナード受難編(挨拶

そして、シリアスが続いたので最後は百合に逃げましたw

カガリは悪人ではなくても悪党思考だな~と(^^
そして、割とツンデレ?w

さて、次回は後日譚というかフォロー回かなっと。
もうちょい緩い話になる予定です。

そろそろ、アークエンジェルの様子も気になりますし(笑




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第038話:”メンデルの憂鬱 なんで、お前の名前がここで出てくるんだよ? おかげでワタシは嫌すぎる……”

またしても中途半端な時間ですが、とりあえず書きあがったのでアップです(^^

そして、久しぶりの長いサブタイw

今回はカナードのフォロー回だったはずが、話がドンドン変な方向に歪んでいきます。

もしかしたら、読んでて疲れるかもしれませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです。




 

 

 

「ああ、言っておくがキラは別に”人類最高峰の存在”とか、”ジョージ・グレンを超える傑物”とかそんなんじゃないからな? ワタシと同じ塩基配列を叩き台にして、極限までチューンアップしたってだけだ」

 

車に例えるなら、ワタシがAE86(ハチロク)の市販車だとすれば、キラはハチロクをベースにした全日本ツーリングカー選手権参戦車(レースカー)って感じだ。

蛇足ながら、1985年当時のレビン/トレノの市販verの最高出力は130馬力、グループA仕様で175馬力、改造範囲の大きなN2仕様ではベースの倍にあたる250馬力前後だったらしい。

頭文字Dは、嫌いじゃないぞ?

 

だが、市販車としてもレースカーとしても、それより優れた車はいくらでもある。

例えば、作中に出てきた高橋兄弟(中の人ェ……)の新旧RX-7とか、ランエボ軍団とか。

そして、コーディネイターには、レースのようなレギュレーションは存在しない。

ならば、

 

「キラが()()なったのは、遺伝子操作がしやすいとか、素体として優れてるからとかじゃないぞ? あれはユーレン・ヒビキって頭のねじがダース単位で弾け飛んだ科学者の、”自分の子供を最高のコーディネイターにしたい”って妄執の結果だ」

 

「ま、マジか……」

 

「マジだよ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

翌日、ワタシはフレイと、どーしても同行したいと駄々こねて引かなかったラクスを引き連れ、カナードが拘留されてる部屋を訪問していた。

そこ。「最近、ラクスに甘くね?」とか思っていても言わない。

本人だって少しは気にしてるんだ。

 

言っておくが、危険性がなくなったと判断されたので、カナードがいるのは独房とか懲罰房じゃないぞ?

ついでに言っておけば、独房やそれに付随する施設は、現在ユーラシア連邦出身らしい()()()()の皆さんが絶賛使用中だ。

 

ノックせずに入ったら、ガネっ娘と素っ裸(すっぱ)でベッドの中で爆睡していたが、別に気にするほどのことじゃない。

 

”慰める=性的にかっ食らう”

 

という図式は生物として健全で何よりだ。

さて、同行していた二人の反応と言えば、

 

『何やってんのよ……いや、ナニしていたっていうのはわかるけど』

 

コラコラ、お嬢様。

あっ、そう言えばコイツ(フレイ)、原作だと(キラ)を同じように喰ってたっけか。

 

『あらあらまあまあ♪ 生で見るのははじめてですわ~☆』

 

ラクスは喜び過ぎだ。あと、暗に「生じゃないものは見たことある」とか言わない。

プラントじゃ、正統派にして清純派の歌姫でしょーが。

 

(というか、こやつらワタシの影響を受けすぎじゃね?)

 

うーん……これでいいのか、悪いのか?

 

 

 

とりあえず、物音に目を覚ました時のカナードの絶叫と、ドヤ顔のメリオル・ピスティスについて細かく描写するのはやめてやろう。

ワタシにも情けくらいはあるのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「つまり、キラ・ヤマト以上のコーディネーターが生まれる可能性があると……?」

 

服を着たカナードの問いかけに、

 

「ああ。生産性もへったくれもない、数多の犠牲ってモンを壁のシミ位にしか考えないあの阿呆(ユーレン)のやり方を、誰にも彼にも使えるって状況ならな」

 

ワタシより優れた人間なんざ、世界と言わずオーブ国内だけを見回したって、腐るほどいるだろう。

一例を言えば、ワタシに武術の手ほどきをしてくれた師匠たちなど、未だにワタシは足元にも及ばない……というかガチの殺し合いなら、1分と五体満足で立ってられるとは思えない。

 

「この間も言ったが、キラ・ヤマトって”遺伝子情報完全反映体(せいこうさく)”は、あくまで偶発的要素が強いんだ。当時の状況を再現するのは今となっては難しいが……例えできたとしても、同じ結果は得られんぞ?」

 

もしかしなくても、また「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」やるしかないだろーな。

 

「そういやラクス、聞きたいことがあるんだが」

 

「なんなりと♪」

 

「プラントにおける人工子宮の研究ってどうなってんだ? ”G.A.R.M. R&D(ヒビキ夫妻が勤めていた企業。法的な意味でのブラック企業。今は倒産)”の技術的遺産は、そっちにも流れたんだろう?」

 

(そういや、今はまだ表舞台に立ってないギルバート・デュランダルも元G.A.R.M. R&Dの研究員だったな……)

 

”G.A.R.M. R&D”は、遺伝子研究用コロニー”メンデル”を丸々保有し、コーディネーター製造やそれに付随する分野での最大手だったとこだ。

商材が商材だけに、中身は合法/グレーゾーン/非合法までなんでもござれだ。

同社のメンデルのラボで生まれたのが、ワタシ/キラ/カナード、

 

(そして、ラウ・ル・クルーゼにレイ・ザ・バレル……)

 

ってだけでどんな外道企業かわかるだろ?

ちなみにこの五人、単にメンデル生まれってだけでなく、製造者も一緒だ。

特にザフトの二人は、「ユーレン・ヒビキがアル・ダ・フラガ(ムウ・ラ・フラガの親父)から資金援助を受ける為に違法製造された”アル・ダ・フラガの単相クローン”」であり、完全な取引材料(しょうざい)だ。

ラウが本来は本命のクローンで、レイは胎児状態で保存されていたバックアップだったらしい。

 

(そりゃあ、ラウやデュランダルがキラやカナードの事を色々知ってる訳だ)

 

ヒビキ夫妻はワタシやキラが生まれて程なくぶっ殺され、G.A.R.M. R&D自体もC.E68年に起きたメンデルの大規模なバイオハザードの煽りを受けて倒産……ってのが一般的に知られているが、

 

(粛清だろうなぁ~)

 

誰からのとは言及せんが。

 

「まったく進んでませんわよ? ぶっちゃけ足踏み状態ですわ♪」

 

「ぶっちゃけすぎだ。バカ者」

 

だから、なんで罵倒されてるのに楽しげなんだよ?

 

「第三世代のコーディネイターが生まれないとか何とかで困っているんだろ? 完全な人工子宮の開発は国是級の案件にならんのか?」

 

「あら? カガリ様、随分プラントの内情に詳しいですわね?」

 

「そりゃまあ、敵対勢力だからな。それなりに調べはするさ」

 

敵国とは言ってやらん。

 

「確かにパトリック・ザラ一派とかは予算を増額するように推してますわね。それと確か、ギルバート・デュランダルという元……G.A.R.M. R&Dでしたか?の研究者が、プロジェクトリーダーになって、色々やってるようですが、今の所これといった成果は出てませんわね?」

 

んげっ!? デュランダルの名前、こんなところで出てくるのかよ……

 

(そりゃあ研究進まんわけだわ)

 

そして、納得してしまったではないか。

あの男が興味あるのは、全人類ディストピア計画(ディスティニー・プラン)だけだ。

おそらくだが、自分が「元G.A.R.M. R&Dの研究者で人工子宮にも詳しい」とか言って売り込んで、人工子宮の開発を餌に資金を搾り取っているのだろう。

 

(ディスティニー・プランにとっては、あるに越したことはないって程度の代物だろうしな)

 

一体どこに資金を流用してることやら。

 

「カガリ様?」

 

「いや、なに……ワタシの遺伝子提供者(ヒビキ夫妻)の同僚に、確かそんな名前の奴がいたなと思ってな」

 

(だが、これで謎は解けた)

 

原作のC.E73年、ぽっと出の筈のギルバート・デュランダルが、アイリーン・カナーバ失脚後の混迷期とはいえ、議長になれたのか?

 

(ザラ派を吸収したのか……)

 

この頃から、パトリック・ザラと繋がっているなら、そりゃあ仕込みくらいできるだろう。

 

(そして、おそらく繋げたのはラウ・ル・クルーゼ……)

 

カナーバは生粋の穏健派……ではなくクライン派、私怨も込めたクーデターでザラ派を一掃した反面、ザラ派の受け皿を作ることは消極的だった。

 

(それが彼女の失脚に繋がった……)

 

アイリーン・カナーバの直接的な失脚原因は、「戦後に締結したユニウス条約で、プラントに不利な条件を飲んだ」から、つまり()()()()と判断されたからだ。

 

この裏側には、プラント側に「停戦せずとも、ユニウス条約など締結せずとも、我々が戦争に勝っていた」とする風潮が少なからずあったからだ。

 

(その世論を煽ったのは、半追放状態のザラ派……)

 

そして、指導者を失ったザラ派の新たな求心力となったギルバート・デュランダル……

そう、ギルバート・デュランダルは、今生では相対的未来となる議長就任演説で何と言った?

 

『争いの無い世界にするからこそ力がいる』

 

なるほど。そりゃあザラ派も簡単にあの男を受け入れるだろう。

自分達の望みを言ったのだから。

それでも、それに満足できないサトーのような不穏分子も出たが、

 

(それすらも利用したか……)

 

おそらく、連中が使ってたMSや機材を横流ししたのもデュランダルが絡んでるはずだ。

 

(なーんてこったい……)

 

こりゃあ、立ち回りが益々難しくなったぞ……

 

 

 

「お姉様! お姉様、いかがなさりましたっ!?」

 

「ん? どうした? フレイ」

 

えっ? ワタシ、何かおかしなことをしてたのか?

 

「だ、だって急に押し黙ったと思ったらどんどん顔色が悪くなって、表情が抜け落ちて……」

 

「目も開きっぱなしになって……その、尋常な様子ではございませんでしたわよ?」

 

ちょ、ちょっと待てっ!?

 

(わ、ワタシもしかして今、SEED発動してたのかっ!?)

 

いや、種が飛来するイメージなかったから、完全じゃないかもしれんが……

 

(だとしたら、なんて嫌な開眼なんだ……)

 

ああ、なんか頭痛くなってきた。

 

 

 

なんでだろう?

今はまだ、成長した姿で再会していない……幼いころに分かれたきりの双子の弟に無性に会いたい。

 

(キラ、お前は今、どこで何をしている……?)

 

会ったら話したいことは沢山あるんだ。

例えば、お前にも姉だけじゃなくて、()もいたんだ、とかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリ様、覚醒!(ただし、中途半端な模様

今回の件ではっきりしてしまいましたが、カガリってMSの操縦とかの純戦闘系ではなく、「過度に頭を回転させている状態」でトランス、SEEDが発動するタイプのようです(^^

ま、まあ、こういう「滅多にMSに乗らない(乗っても強いとは……)カガリ」も良いですよね?(滝汗
その分、他の娘が乗ってくれるでしょうし(えっ?

そして、こんなところで名前だけとはいえ出てきてしまったデュランダル議長w
これもある意味、パッチワークじみた原作フォロー?

色々、見えなくても良い(?)ものが見えてきてしまったせいで、流石のカガリも軽い薄弱状態になったようですw
いや、柄にもなく「キラに会いたい」とか言い出してるので。



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第039話:”オーブが地球連合に加盟しない理由”

中途半端な時間に、再びアップです(^^

唐突ですが……サブタイは真面目ですが、オープニングはグズグズです。
おまけに微エロ(?)、注意です。
前回までのシリアス風味の反動が出てます。
脳みそ柔らかくしてお読みください。お願いします。

よろしいですか?
では、お楽しみください♪




 

 

 

さて、その頃一方アークエンジェルでは……

 

 

 

「あはぁ……きらくんのいっぱいだよぉ」

 

「ダメだよ? ()()()()、まだ寝かせてあげない」

 

「いいよぉ。もっとまりゅうであそんで♪」

 

「マリューは本当にえっちな()だなぁ」

 

「うん! まりゅうはえっちな子なのぉ。だから、きらくんもっとしれぇ♪」

 

「いいよ。マリューのお腹がパンパンになるまで、赤ちゃんができるまでしてあげる」

 

「まりゅう、きらくんのあかちゃんいっぱいうむのぉ! ぜったいままになるんだからぁ」

 

「うん。楽しみにしてるよ。僕の可愛いマリュー」

 

「うれぃいよぉ」

 

 

 

……

………gdgd通り越してgzgzじゃねーか。はっ!?

すまない。第三者委員会、もとい。三人称視点と申すものだが、回線をつなぐ部屋を間違えたようだ。艦長室(ラブホ)ではなく、艦橋(ブリッジ)につなぐべきだった。

ルビが何か違う気がするが、気にしてはいけない。

 

何かコメントを残すとすれば、やっぱりキラ・ヤマトはスーパーなコーディネイターだったということだろうか?

そっち方面でスーパーっぷりを発揮してどうする?という気もするが……ベッドヤクザと評判高い、体は女(胸は薄いが)で心は両性具有というのが双子の姉というのだから仕方ないのだろう。多分きっとメイビー。ある意味、撃墜王らしいと言えばらしい。

あと、マリュー・ラミアスは……うん。想像以上にダメだったというか、年下の男の子に好きなようにされるのが、想像以上に良かったというか、そんで墜ちたというか堕とされたというか……まあ、そんな感じだ。

 

色々言いたいことはあるが、とりあえず幸せそうなのは何よりだと、無難なコメントでしめさせてもらう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

視点(回線)は改められ、時間は前後する。

 

 

 

「えっ? ユーラシア連邦の軍事施設……ですか?」

 

戸惑うような顔をしたのは、今やマリューの勧誘で「オーブの下士官候補生だが、緊急事態ゆえに大西洋連邦へ臨時出向」という形で大西洋連邦の軍服に袖を通すことになったヘリオポリス・カレッジ組……そのリーダー格、真新しい青の軍服と眼鏡が眩しいサイ・アーガイルだった。

 

「あちゃー。よりによって()()()()の基地かぁ」

 

同じく真新しい制服のトール・ケーニヒは露骨に「アイタタ」という顔をし、

 

「トール、言い方。大西洋連邦はユーラシア連邦や東アジア共和国と地球連合を結成してるんだから……」

 

ピンクの制服がどことなく可愛いミリアリア・ハウはそうたしなめるが、内心は完全同意な上に、貞操の危機は感じていた。

日本の伝統を引き継ぎ、その歴史用語になった国の気風と南洋のおおらかな気候が合わさった結果、輪をかけて性的文化に大らかなオーブ出身で、ついでに処女ではないとはいえ、だれかれ構わず股を開く気は彼女にはなかった。

 

「でも、”()()()”だぜ? 再構築戦争で、どさくさに紛れて北海道占領して分捕った火事場泥棒だぜ?」

 

”ユラ助”というのは、”ロシア人のとある呼び方”から派生して生まれた(ロシアという国ももうない為)言葉だ。

 

「ぶっちゃけ、”東ア共”と同じ穴の狢じゃん!」

 

”東ア共”は、日本語が公用語のオーブでは好まれて使われる単語で、ストレートな意味では”東アジア共和国”の略称だが、実際には……

 

()()()()()()()()、略して東ア共”

 

という隠喩で使われている。

まさに東アジア共和国が、どの国を主体にして生まれた国なのかをよく表す言葉だった。

そして、それはオーブにとり、何があろうと決して相容れない国ということも示している。

 

「銃がいるね。それもなるべく強力なものがいい」

 

そうボソッと呟くのは一人だけ、整備員が着るツナギに身を包んだカズイ・バスカークだった。

何故、彼だけが一人ツナギなのかというのは、別にボッチだからという事ではなく、ちゃんと理由があって……

 

 

 

~回想~

 

「むしろなんで、みんな整備課じゃなくてブリッジ詰めを選ぶのさっ!?」

 

「「「えっ? だって人手不足だって言われたから……」」」

 

「もっと工業系カレッジ学生の誇りを持とうっ!?」

 

~回想終了~

 

 

 

真っ当すぎて草が生えるレベルだった。

大丈夫だカズイ。コジロー・マードックは君に強く期待している。

 

「あの、この反応って……?」

 

困惑気味なのは、マリュー・ラミアスだった。

生粋の大西洋連邦、今でいうアメリカのダウンタウン出身のマリューには、どうもこの感覚は理解しがたいらしい。

 

「僕らはオーブ人なんです。マリューさん」

 

そう答えるのは、コーディネイターなのにナチュラルにマリューの横に立っていたキラだった。

 

「ヤマト少尉、何度も言ってるがせめてブリッジでは恋人つなぎはやめろ」

 

とたしなめるのは、マリューがアレなため事実上のアークエンジェルのボスとして君臨する、ナタル・バジルール中尉。本来なら仮にも軍人であれば「ラミアス大尉」と呼ばないことも注意すべきなのだが、それについてはもう諦めた……というか、どうでもよくなったらしい。

 

「あっ、すいません。つい無意識に」

 

ぱっと手を放すキラに、「あっ……」と心底寂しそうな声を漏らすマリュー、「どんだけ依存してんだ?」と言いたげに溜息をつくナタルに、苦笑するムウ・ラ・フラガというのが、最近のお約束だ。

大丈夫なのかこの船は?

 

「坊主、そこら辺のこと少し詳しく説明してくれんか?」

 

とムウ・ラ・フラガ大尉。

 

「僕は幼年学校が月のコペルニクス市で過ごしたので、生粋のオーブ育ちのサイたちほどうまく説明できないかもしれませんが、」

 

キラはそう前置きしてから、

 

「約70年前の再構築戦争の出来事を、かつて母国に何が起きたかを、オーブ人は決して忘れない……そういうことです。ムウさん、地球連合が結成されオーブが勧誘をかけられたとき、何と返答したか知っていますか?」

 

「ああ」

 

思い当たったように、

 

「確か、『東アジア共和国とユーラシア連邦がいる限り、オーブは決して地球連合には加盟しない』だったか?」

 

キラは頷き、

 

「正確には『大西洋連邦との長年にわたる友誼を違えるつもりはない。だが、我が国の建国の歴史的背景と国民感情を鑑みれば、ユーラシア連邦と東アジア共和国が加盟する地球連合に草鞋を置くことも、轡を並べることもできない』です」

 

実はこの言葉、C.E.70年2月8日の、『ウズミの中立宣言』の中に出てくる、「()()()()()()()()」だった。

 

国民感情への配慮とも、対外姿勢の抜け道の確保とも言われる一節であるが、これを言わねばならないあたりに、この世界線でのオーブの立ち位置が浮き彫りになっている。

これが、つい先日まで……もしかしたら、今もそうかもしれない「熱狂的なウズミ人気」の一因になってるのは、実に皮肉と言えよう。

もっとも、もしこの場にカガリが居れば、

 

『親父殿の本音としては、大西洋連邦ともこの機会に縁切りしたかったんだろうけどね。そんなことは許さないけど』

 

とシニカルに笑ったことだろう。

 

「フン。軍人としてはともかく、国防の気構えくらいはあるということか」

 

セリフは厳しいが、どこか上機嫌なナタルは、

 

「良いだろう。サイ・アーガイル、トール・ケーニヒ、ミリアリア・ハウ、カズイ・バスカーク、それにキラ・ヤマト」

 

微かな笑みと共に、

 

「お前たちに銃を貸し出してやろう。そして、艦内の帯銃も許可しようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みんな、マリューさんがエロすぎるのが悪いんやーっ!!(横島風挨拶

エロいよねマリューさん。無印OPのシルエット回転乳揺らしとかw
うん。評価バク下がりしそうな怖さが~(滝汗

そして、キラはやっぱりスーパーコーディネイターだった(ヲイ

なんか、カズイがまたしても微妙なポジション変更がなされてますが……原作より血の気が多そうなヘリオポリス・カレッジーズ(?)は果たしてどう動くのか?

原作と同じ展開に、なるようなならないようなアルテミス編のスタートです♪




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第040話:”意外とやるカレッジーズと意外と黒いナタルさん”

本日、2発目~♪
思ったより筆が乗りましたので、即アップ(ヘヴン)状態ですw

とりあえず、アルテミス突入前の1シーン的な話ですが、「原作ではない」一面が見れるかもしれませんよ?

あと、ちょっとした秘密兵器が出てきますw





 

 

 

「やっぱりブルパップ式の小銃っていうのは使いにくいな……感覚が掴みづらい」

 

と言いながら、原作に出てきたそれより、実在するFN社のF2000自動小銃に近いデザインの大西洋連邦制式自動小銃を、言葉とは裏腹に割と手慣れた様子で撃つサイ・アーガイルに、

 

「無重力での射撃っていうのが、それに拍車をかけてるよなぁ。慣れるまで撃つしかないんじゃないか?」

 

とぼやくトール・ケーニヒはフルオート射撃を難無くこなし、

 

「でも、照準器(サイト)の出来はまあまあよ? 思ったより狙いやすいし」

 

とは、スナイピングを得意とするミリアリア・ハウの弁。

 

「バジルール中尉、小銃に取り付け(アドオン)可能な擲弾筒発射器(グラネードランチャー)とかありますか? あと、軍用ショットガンがあればお借りしたいです」

 

「ショットガンはないが、グラネードランチャーは、まああるが……艦内で使うのか? バスカーク()()?」

 

どうやら、流石に”候補生”では銃を持ち歩かせさせる訳にはいかないと思ったらしく、四人そろってめでたく「下士官の一番下」である伍長に仮任官したようだ。

 

「火力不足で泣くのは、旧大日本帝国陸軍だけで十分だと思います」

 

なんかこの時代ではマニアックな返しをするカズイであった。というか、銃持った途端、雰囲気違わね?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ここはアークエンジェル内にある射撃スペース。形状から言うなら、ウナギの寝床のような細長い空間だ。

軍人は、たとえ歩兵でなくとも「年間、〇〇発の実弾射撃をこなせ」というような服務規程があるので、例え実験艦要素が強くても軍艦であるアークエンジェルに、このような施設があってもおかしくはない。

おかしくはないが……

 

「なんで、みんなそんなに射撃が上手いの?」

 

「あっ、それはですね」

 

疑問顔のマリューと感心したようなナタルの前に四人は整列し、覚えたてのちょっとぎこちない大西洋連邦式の敬礼と共に、

 

「カレッジ射撃部分室CQB(サバゲー)研究会所属、”フラッグ守護役(フラッグマン)”、サイ・アーガイル伍長です」

 

「同じくCQB研究会、速攻が持ち味のフロント・アタッカー、トール・ケーニヒ伍長っす!」

 

「同じくスナイパーのミリアリア・ハウ伍長でーす♪ あっ、私は写真部と兼任なので、カメラマンも兼ねてました」

 

「同じくカズイ・バスカーク伍長。ポジションは中間迎撃手(インターセプター)。得意なのは待ち伏せ(アンブッシュ)による奇襲です」

 

 

 

「えっ?」

 

「なるほど……そういうことか」

 

素直に驚くマリューに、某宝石眼の悪魔(デミウルゴス)ばりに納得するナタル。

 

「ところでヤマト少尉、貴官はなぜ何も言わん? 同じ研究会にいなかったのか?」

 

と定位置のマリューの隣にいるキラに降るナタルに、

 

「CQB研究会、整備担当、射撃が一番下手なキラ・ヤマト少尉です。痛いのが嫌なのでゲームには出ませんでした」

 

唐突に自虐ネタをぶっこんでくるキラ・ヤマト。

”キミはどこぞの防御力極振り少女か?”とカガリが居れば、即座にツッコんだことだろう。

全くこの場にいないとは、惜しいにも程があるシチュだった。

 

「だ、大丈夫よ! キラ君、キミは十分にすごいから! だれも動かせないストライクを動かして、こうやって今までみんなを守ってこれたんだもん!」

 

”動かして戦ってきた”と言わない辺りが、実にマリューらしかった。

ただ、それは「自衛以上の戦いはしたくない」と言ってるのに等しく、物資欠乏が心配される単独航行(ソロシップ)でスペースランナウェイしてる今ならそれは正解でも、この先もこのスタンスだと軍人としては少々困り者だ。

 

「マリューさん……ありがとう」

 

「キラ君……」

 

手を握り合って見つめ合う二人だったが、生憎ここは射撃場で衆人環視の中だ。

そして、二人には絶対防壁(ATフィールド)なんて便利スキルはついていない。

ここにあるのはエヴァではなくてガンダムなのだから。

 

「そこ。唐突に自虐ネタからの二人の世界に突入しない。今は勤務中だ」

 

「「ごめんなさい」」

 

もはやナタル、既にマリューに上官として接するのをあきらめたようだ。

吹っ切れたのか、振り切れたのかは判断が微妙なところだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「さて、戦う覚悟を決めた諸君には、アークエンジェルにはガンダム以外にも秘密兵器が搭載されていることを伝えておこう」

 

ピッとコンソールを操作するナタル。繰り返すがマリューでなくナタル。

だが、そこに疑問を挟まないマリューを含む面々。

 

そして程なくブリッジにぎっちょんぎっちょんと入って来たのは……

 

「紹介しよう。我が大西洋連邦が誇る”無人歩哨警備(セントリーガード)ユニット”、通称”エリミネーター”だ」

 

本当にここにカガリが居ないのが残念だ。

彼女(?)がここにいればきっと、

 

『何でこんなとこにガンダム00の”オートマトン(色違い(2Pカラー))”があるんだよっ!?』

 

と小気味よいツッコミを入れたことだろう。

まあ、この手のロボットウエポンというのは00に限らず、数々のアニメ/ゲームに登場する……どころか、既に一部では実現されている。

数々の自立型軍用ドローンやセントリーガンなんかは、その代表格だろう。

 

まあ、このエリミネーターもセントリーガンをAI制御の自立移動型にしたというのが大筋で、同じ様なコンセプトで作られたオートマトンと似通ってしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

事実、ボディ色はアークエンジェルに合わせたのか白基調で、細部を見れば所々だいぶ違うため、全体の印象は結構違う。

 

「なんか凄いのきたっ!?」

 

ストレートな反応は、トールの魅力だろう。

 

「えっ? ”エリミネーター”、この船に積んでたの? じゃあ、ザフトの襲撃の時、なんで……」

 

マリューの疑問は当然だが、ナタルは首を小さく横に振り、

 

「艦全体で”エリミネーター”は8基しかなく、ザフトがいつ機密の塊であるアークエンジェルの艦内に侵入するか分からない状況では、表に出せませんでした」

 

そう言われてしまっては、マリューとしても納得するしかない。

そもそも自分は階級が上とはいえGAT-Xシリーズの開発スタッフで、ナタルのような純粋な戦闘職ではない。

 

”エリミネーター”が搭載されているのをナタルは知っていて、マリューが知らなかったというのはそういうことだ。

 

「んで? エリミネーターが8基あるのは分かったが、それをどう使う気なんだ?」

 

根本的な疑問を口にするムウに、ナタルはうっすらと笑った……

 

「フラガ大尉、ユーラシア連邦の宇宙要塞”アルテミス”に、この大西洋連邦のアークエンジェルが入港、それも連中が喉から手が出るほど欲しがってる”完成品のMS”と共に入れば、どうすると思いますか?」

 

「なんのかんの理由をつけて、接収しようとするだろうな。連中は盗賊と中身は変わらん」

 

事もなげに言い切るムウだったが、オーブ出身者には少々物足らなかったらしく「ゴブリンだよな?」「ゴブリンだよね?」と小声で囁いていたのが妙に印象的だった。

 

「小官もそう思います。そしてその場合、そこそこの身分の者が来るとは思いませんか?」

 

「……お前、まさか」

 

ナタルは笑みを強くして、

 

「良からぬ目的で、ノコノコやって来る方が悪いんです。どうせなら交渉材料(ひとじち)になってもらうとしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は、カレッジーズは”特攻野郎Aチーム”だった!?(挨拶

このネタ通じるか不安だ……(汗
ナイトライダーとかエアウルフとか、80年代のはっちゃけたアメリカTVシリーズが大好きな筆者です(^^
現役で見たかったなぁ~。

実は銃の扱いに慣れていたカレッジ組と、この時点ではそこまでではなかったキラ君の巻w
まあ、彼はそのうち上手くなっていくでしょう。

そしてナタルは、相手が違うだけでここでも人質を使うみたいですよ?



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第041話:”合衆国海兵隊式ミーティング……なのかな?”

今回も即アップでw
とりあえず、連休中に書けるだけ書いて投稿するスタイル。

今回はサブタイ通りの内容ですが、ちょっとアルテミス攻略戦(?)の内容が垣間見えます。
戦いとは、戦う前の準備で八割がた決するとも言いますしね(^^





 

 

 

「まず、作戦の概要を説明する」

 

ナタルはプロジェクション・ホログラムでいくつかの画像を投影し、

 

「まず最初に伝えておくが宇宙要塞”アルテミス”は保安部隊や憲兵隊こそいるものの、対人戦に特化した特殊部隊(スペツナズ)やそれに類する部隊は存在しない。まあ、ザフトが白兵戦を仕掛けてくるとも思っていないのだろう」

 

そう言葉を切ってから、

 

「全方位光波防御帯、”アルテミスの傘”だったか?があるとはいえ、難攻不落と思い込むとはまさに片腹痛いだ」

 

段々口が悪くなってくるナタルは、中々にキュートかもしれない。

 

「まあ、そういう輩だからな。おそらくは、最初はマウントを取るために向こうの佐官クラスが乗り込んでくるだろうな。ユーラシア連邦と東アジア共和国はメンツとか権威に拘る」

 

フンとつまらなさそうに鼻を鳴らし、

 

「そして、傘の中に招き入れ補給を受けさせると見せかけて、保安部隊と憲兵隊を突入……まあ、合計して1個小隊(30名前後)だろう。現状、連合/ザフトにとり戦略的価値が高いとは言えないアルテミスには、そこまで人員はいない。保安部隊と憲兵隊を合わせても中隊に手が届かない以上、小隊以上の人数を割くとも思えん」

 

要するに、”陥落しなければよい”という程度の戦略重要度だ。

 

「なので、それを逆利用させてもらう」

 

ナタルはニヤリと笑い、

 

「アーガイル伍長、本艦を制圧しようと部隊が突入してきた。さて、油断するのはいつだと思う?」

 

「……制圧が完了したと思った瞬間ですか?」

 

「そうだ」

 

ナタルは満足げに頷き、

 

「《私》は一度、制圧された振りをする。そうすれば、連中はおそらく、最優先で確保したいMSを艦外に出すように要求してくるはずだ」

 

そしてスッと目を細めて、

 

「その時こそが、最大の好機到来となるだろう」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「アーガイル伍長はブリッジ、ケーニヒ伍長とハウ伍長は厨房、バスカーク伍長は格納庫にそれぞれ潜んでおけ。それぞれの場所に”エリミネーター”を2基ずつ貼り付けておく。いや、正確には厨房ではなく食堂に配置か。残り2基は機動予備としてフリーに動けるようにしておく」

 

「その根拠は?」

 

言葉少ないカズイの問いに、

 

「連中の制圧ドクトリンさ」

 

ナタルは笑い、

 

「ブリッジは艦の頭脳。当然敵も人員を割く。おそらく、捕虜にした人員を集めるのは食堂だ。格納庫は接収要員がいるだろうからな」

 

そしてナタルはマリューを見て、

 

「ラミアス大尉、貴方はヤマト少尉と共にストライクのコックピットで待機していてください。乗り込んできた敵将校の相手は、小官とフラガ大尉で行います。フラガ大尉に艦長役を演じてもらいますが」

 

「俺かよ?」

 

「ちょっと待ってナタル! 私、これでも結構強い……」

 

()()のガンスリンガーとしての強さは知っています。ですが、」

 

ナタルはにこりと微笑み、

 

「人を騙すのに致命的なまでに向いてない」

 

 

 

「そ、そんなことないもん!」

 

「そんなことあります。貴女は人が良すぎる。しかもヤマト少尉と交際するようになってから、ますます女としても磨きがかかってる。今回のミッションは、貴女に向いてないんですよ? ラミアス大尉」

 

「むう~」

 

「呼んだ?」

 

「「呼んでないっ!!」」

 

「おおっ! 息ぴったりじゃん」

 

わざとまぜっかえすムウは内心で、「悪くないコンビじゃん」とか思っていたとか。

 

「それに”エリミネーター”をまさか”殺傷(キル)モード”で起動させるの?」

 

「それこそまさかですよ。普通に”暴徒鎮圧(ライオット)モード”で起動させます。交渉材料を皆殺しにしては無意味ですから」

 

歩哨警備ユニット”エリミネーター”には大きく分けて二つのモードがあり、一つは内蔵チェーンガンを使うキルモード、もう一つは電磁投射式の電撃銃(スタンガン)を使うライオットモードだ。

スタンガンと言っても21世紀の日本で販売されているような電極を押し付けるタイプのものではなく、高温超電導素材の弾芯(コア)を持つ()()()の付いた電極付ダーツを電磁投射して対象に撃ち込み、電撃を飛ばして失神させるというものだ。

イメージ的には、「避雷針を突きさして、失神する程度の極小雷を落とす」と考えていい。

 

ライオットモードのメリットは、電撃による心臓麻痺などのイレギュラーがなければ非殺傷で相手を無力化できる事と、亜音速のリニアガンのためほとんど発射音がしない点だ。

 

「しかし、”エリミネーター”をこれ見よがしに置いて気づかれませんか?」

 

「アーガイル伍長、この艦の”エリミネーター”がなぜわざわざ白色をしてると思う? しかもご丁寧に”武器も作ってる家電メーカー”のロゴまで入れて?」

 

「あっ!? 擬態!」

 

「そうだ。待機状態の”エリミネーター”は四角いボディと相まって冷蔵庫などの家電、ないし何らかの機材にしか見えん。実際、お前らもラミアス大尉も、この艦にエリミネーターが搭載されているとは気づかなかったろ?」

 

思考と視覚の盲点といおうか?

エリミネーターは外見からは武器がついているように見えず、待機時は移動脚も折りたたまれ、直方体になる。

この状態だとナタルの言う通り、家庭用の大型冷蔵庫と言われても信じてしまうだろう。

実際、エリミネーターは倉庫に格納されていたわけではなく、艦の随所……通路など、「人目のある場所」に設置されていた。

 

「あと、認識票は作戦中は外すなよ? お前たち全員の生体認証データは入ってるが、認識票に入ってるチップも敵味方識別アイテムになってるからな?」

 

全員が頷く中、

 

「それとアーガイル伍長、トール伍長、ハウ伍長、バスカーク伍長。銃には非殺傷の弾など用意はない。故に自衛を理由に銃口の先にいる敵は、射殺してしまってかまわん。むしろ、的確に仕留めろ」

 

「ちょっ!? ナタル!?」

 

「できるな?」

 

サイたち四人は、はっきりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「おい、バジルール。ありゃ、どういう判断だ?」

 

「どう、とは?」

 

「あれだ。ラミアスを坊主と一緒にストライクに放り込むってこと」

 

ミーティングを終えて一同解散となった後、ムウはナタルを呼び止めていた。

 

「ああ。あれですか」

 

ナタルは合点が言ったように、

 

「ヤマト少尉は、おそらく……今の所、生身の人間は撃てません。一人でコックピットにいる場合は、ですが」

 

「そりゃ、まあ……性格的に引き金が軽いタイプじゃないだろうが」

 

「逆にああいうタイプは、『近くに守るべき対象』がいると化けるものです。自らに敵意を向ける者には躊躇しても、守護対象に害意を向けるものには躊躇がなくなる」

 

「嫌にはっきり言い切るな?」

 

するとナタルはくすりと笑い、

 

「バジルール家は由緒正しい軍人の家系ですが……その軍歴の始まりは、師団編成が整ったばかりの”アメリカ合衆国()()()なんですよ。大尉殿」

 

「そりゃまた……」

 

ムウは絶句すると同時に、今回想定される「誘引してからの制圧戦」におけるナタルの作戦立案能力の高さに妙に納得してしまった。

 

「以来、先祖代々海兵隊です。まあ、小官は適性の関係で船乗りにされてしまいましたが……ヤマト少尉のような手合いの話は、よく知ってます」

 

「じゃあ、カレッジーズ(がきんちょ)共が戦えると踏んだのも、海兵の直感か?」

 

だが、ナタルはきょとんとした顔をしてから……

 

「それはちょっと違います。彼らがオーブ人だからですよ」

 

「……その意味は?」

 

「コペルニクス市で初等教育を終えたヤマト少尉は違うようですが……オーブ人は、義務教育期間中に、一度は必ず見るそうですよ? 鬱になろうがどうなろうが、それが国の伝えるべき、日本を祖とするオーブ国民なら知るべき歴史として」

 

「何を?」

 

「再構築戦争当時、”日本列島からの最後の脱出者”が、『命がけで持ち出した動画』を、です」

 

どうやら、ナタルは()()を見たことがあるらしい。

 

「端的に言って”地獄”ですよ? 他に表す言葉がない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと軍人(海兵隊家系)っぽいナタルを書いてみたかった(挨拶

そして、マリューさんの扱いがw

でも、ナタルはちゃんとキラとマリューの関係を知ったうえで認めてる臭いです。
もしかしたら、「ダメなお姉さんにはダメなお姉さんなりの使い道がある」と達観してるだけかもしれませんが(^^

そして、ところどころ出てくる、再構築戦争のおどろおどろしい闇ガガガ……




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第042話:”宇宙要塞アルテミス”

さて、今回こそ正真正銘シルバーウィークの最終投降です♪

いや~、我ながらよく書いたもんだw
投稿するたびに評価下がったりした時はどうしたもんかと思いましたが、どうにかこうにかアルテミス・イベントに入れそうです(^^

今回はキャラも暴れさせられたりと割と満足いく出来だったので、楽しんでもらえたら嬉しいっす。


あっ、とあるキャラの秘密が最後にちらりと……





 

 

 

『キラ、調子はどう?』

 

作戦開始に向けて最終調整を手伝っていた通信モニター越しのカズイに、

 

「コンディション・オール・グリーン。良好だよ、カズイ」

 

サムズアップして答えるキラ。

物語が始まって40話も過ぎてからなんだが、ここで少しGAT-X105”ストライク”の説明をしておこう。

と言っても今の所、原作と大きな違いがあるわけではない。

 

ただ、最近のキラのお気に入りはエールストライカー+ビーム・ライフル&シールドを基本に、左肩と左腕にソードストライカーのビームブーメラン”マイダスメッサー”とロケットアンカーの”パンツァーアイゼン”、右肩にランチャーストライクの120㎜対艦バルカンと350㎜ガンランチャーからなる”コンボウェポンポッド”を装着するというものだ。

 

左右の追加装備は、ソードとランチャーの主装備である15.78m対艦刀”シュベルトゲベール”や320mm超高インパルス砲”アグニ”のような大電力消費武器ではないので、併載可能と判断されたようだ。

 

重量が嵩む分、運動性は落ちるはずだが、そこはエールストライカーのスラスターの可動域と可動速度、推力偏向の最適化をソフト/ハード双方から煮詰め解決している。

車もMSも「装備に見合ったセッティングの最適解」を出す事が重要という事だろう。特に試作機なら猶更だ。

 

今のキラが重要視してるのは「手数の多さ」、あるいは「戦術的選択肢の多様化」だ。

ムウのメビウス・ゼロの支援があるとはいえ、どうしても「1対多数」を余儀なくされる現状では、取れる手の多さが生存率に直結する事を、キラは本能的に悟っていた。

 

『キラ、今回はビームライフルは後腰部のラッチにマウントして、手持ち武器はバズーカで出てくれる? 不測の事態に備えて、なるべく電力は温存しておきたい』

 

「わかったよ。じゃあ、いざ発砲する場合は実体弾主体?」

 

『うん。要塞の中はフェイズシフト装甲なんてないだろうから』

 

 

 

そして一通りセッティングを終えた後……

 

「ねえ、カズイ……」

 

『ん?』

 

「カズイは撃てるの? 人をさ」

 

だが、キラの予想に反してカズイは顔色一つ変えずに、

 

『撃てるさ。相手がユラ助や東ア共なら』

 

「カズイ……」

 

『マリューさんが来る前に言っておくけど……』

 

カズイはふと目つきを鋭い物に変え、

 

『”男は殺し、女は犯す”。戦場の古来からの習わしだけど、連中にとってそれは”現在進行形”だよ? キラは殺され、キラが殺された後にマリューさんは散々嬲られて、良くて廃人、悪ければ飽きられてすぐに殺されるだろうね。全財産、賭けてもいいよ』

 

「……!」

 

『覚悟を決めなよ、キラ。守るためには引き金を引かなきゃいけない時もある。例え誰が相手でもね……そうしなければ守れないなら、躊躇わずに引くべきだよ』

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、そのしばらく後……

 

「えへへっ♪ こうしてると、キラ君と初めて出会った時のことを思い出しちゃうね?」

 

「そうだね」

 

自分の足の間にちょこんと座るマリューにキラは優しく微笑みかける。

 

「あの時は、キラ君とこんな関係になるとは思わなかった」

 

「僕もだよ。()()()()

 

二人きりの空間、だからこそ強く感じてしまう。

 

(躊躇わず引き金を引く覚悟、か……)

 

できるできないじゃないよな……

 

(マリューを守るためには、僕は……!)

 

「キラ君、何か言った?」

 

「なんでもないよ」

 

だが、キラの葛藤を知ってか知らずか、マリューは脚の間でもじもじし始めると、

 

「それとね、キラ君……」

 

「ん?」

 

「ここにいると、お口でご奉仕したくなっちゃうなぁ~って。いつもみたいに」

 

このお姉さん、本格的に駄目だった!

 

「マリュー、今は自重して」

 

「はぁーい」

 

「でも、作戦終わったらお願いします」

 

「うん! 今日は喉の奥にチャレンジするね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況はナタルの読み通りとなった。

ユーラシア連邦少佐が乗り込んできて、アルテミスの傘の内側へと誘導。

補給を受けさせると言いながら、接収部隊を突入させてきたのだ。

 

ナタルは、要求通りに”()()()()()()”のストライクを艦外に出した。

 

原作通りなら大ピンチ。

もし、原作と同じく避難民がアークエンジェルに乗り合わせていれば、ナタルはこんな手は取らなかっただろう。

 

だが、幸か不幸か今のアークエンジェルには、『()()()()()()()()()()』。

全ては、ナタル・バジルールという階級は中尉と低いが、傑出した軍人の掌の上だった。

 

 

 

そして、ストライクのパイロットがハッチを開けるのを拒否した為、それを上官命令で開くように、従わねば部下が……と少佐が続けようとした時、

 

 

「Let's Play」

 

ナタルが軍服の詰襟の裏に隠していた超小型マイクに囁き、それが反撃の狼煙となった!

 

「ぎゃっ!?」

 

「ぐえっ!?」

 

唐突に響く小銃を持つユーラシア連邦兵達の悲鳴!

”エリミネーター”のAIアルゴリズムは、脅威度が高い者から優先的に狙う。

しかも今回のモードは、暴徒鎮圧(ライオット)モードの中でも”無警告&無音発射”のサイレント・パターンだ。

 

「なにがっ、げぼっ!?」

 

アークエンジェル艦内に”ノコノコ乗り込んできた”接収部隊のリーダー格、よく名前の分からない少佐の鼻っ柱に、セリフが終わる前に鋭い肘打を叩き込んでへし折るナタル。

だが、うずくまる少佐に追撃の手は緩めず、

 

”ぼぎゃっ!”

 

制帽が飛ぶ勢いで、頭をつかんでの膝蹴りを叩き込む!

勿論、前歯が全損&人中粉砕骨折の少佐は、そのまま白目を剥いて後頭部から倒れる。

 

腰巾着の様に少佐の傍についていた将校が慌てて拳銃を抜こうとするが、

 

「やらせねえよ」

 

”ごすっ!”

 

拳銃の台尻で後頭部を強打する、いつの間にか後ろに回り込んでいたムウ・ラ・フラガ。

そして、

 

「はあっ!」

 

”ぐしゃ!”

 

「げえっ!?」

 

間髪入れずに股間をナタルにキッキング・クリーンヒットされ、タマが片方潰れた衝撃で悶絶するユーラシア連邦将校A……

ナイス・コンビーネーション!と言いたいところだが、

 

「お前、ホントに容赦ないなっ!?」

 

男として身につまされたのか、冷や汗交じりのムウに、

 

「容赦する理由がありません。すぐに死ななければいいんです」

 

とあくまでクールなナタル。

どうでもいいが、ボクシングで大会優勝経験があると言っておきながら、ナタルは手癖より足癖が悪いようだ。

もしかして得意なのはボクシングでなくキックボクシングの方なのだろうか?

あるいは、もしかしなくても荒っぽいことで有名な海兵隊式格闘術か?

 

「アーガイル伍長!」

 

「了解!」

 

ブリッジの片隅に隠れていたサイは飛び出し、直ぐに伏せ撃ち(ブローン)の体勢を取り、的確にまだ立ってる兵を射抜き始めた。

 

無論、その銃声にはナタルやムウも加わっている。

 

こうしてブリッジをめぐる戦いは、エリミネーターによる最初のダーツ発射から、3分も経たないうちに終息したのであった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「「3,2,1 今っ!」」

 

厨房から、エリミネーターの起動でユーラシア連邦兵が混乱する食堂に投げ込まれたのは、閃光で目くらましをするフラッシュ・グラネードだ。

 

「トール、Go a Head!!」

 

「あいよ!」

 

閃光が収まると同時に厨房台から放たれたミリアリアの初弾は的確に棒立ちする兵の頭を撃ち抜き、飛び出したトールは、

 

「Hasta La Vista, Baby!!」

 

ターミネーター2の名言を口ずさみながら、片手に1丁ずつもった自動小銃の至近距離セミオート射撃で、まだ立っている敵兵を瞬く間に血の海に沈めていった。

 

彼が例え取りこぼしても問題はないだろう。

頼りになる相棒にして恋人、ミリアリアの放つ銃声が間断なく響いているのだから。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「まあ、僕だってこれくらいはね」

 

そう感情のない瞳で倒れたユーラシア連邦兵を見下ろすカズイ・バスカークは、

 

「た、たしゅけ……」

 

「さよなら」

 

”パン!”

 

無造作に軍用拳銃の引き金を引いた。

周囲には、もはや立っている者は誰もいない。

そして、ほとんどのユーラシア連邦兵はこと切れていた……

 

グラネードランチャーで吹き飛ばされた者、自動小銃で蜂の巣にされた者、カズイが左手で逆手に握るナイフで喉笛を掻き切られた者、そして右手に握る拳銃で眉間に風穴を空けられた者……死に様はバリエーション豊かだが、

 

「キラがたった一人のコーディネイターだなんて、誰が決めたんだろうね?」

 

そういう事だった。

 

(もっとも、僕には並外れた才能なんてないけど……ハーフだし)

 

カズイ・バスカーク。実は融和政策が国是のオーブではさほど珍しくない、コーディネイターとナチュラルの両親から生まれた、いわゆる”ハーフ・コーディネイター”だ。

事実、彼にはMSを動かす才覚はなかったが、

 

「僕にだってこれくらいのことはできるんだよ? キラ」

 

返り血に汚れながらカズイは、小さく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マリューさんは好奇心旺盛で研究熱心なチャレンジャーっと♪(挨拶

そして謎のカズイ推し(笑
今回、書いてて妙な満足感と爽快感があるなーと思っていたら、

「あっ、メカとエロと肉弾戦、三要素入ったトリプル役満じゃん♪」

という事に気づきましたw
一文字変えるだけで、「メカとエロい肉弾戦」、意味が素敵にトランスフォームしてしまう罠w
すいません。今、書きあがったばかりでテンション高いんです(^^

とりあえず、連休も今日でおしまい。明日からお仕事で多少ペースは落ちますが、モチベーションが続く限りは書きますので、どうかこれからもよろしくお願いします。

次回は顛末とかかな?




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第043話:”城攻め、終結! かくてナタルは微笑む”

サブタイ通り、今回でアークエンジェルvsアルテミスの戦いは、一旦は終結です(^^

原作ではない悪党女(ピカレスク)・ナタルな感じを楽しんでもらえたら嬉しいです。




 

 

 

『キ、キ、キ』

 

「ききき? 何かの鳴き真似でしょうか?」

 

『ふざけるなっ!! キサマ、どういうつもりだっ!? 自分のやっている事がわかっているのかっ!!?』

 

通信モニターの向こう側で血圧を急上昇させてる見目醜い中年男、ユーラシア連邦宇宙要塞”アルテミス”司令官、”ジェラード・ガルシア”少将に、ナタルは涼しい顔で、

 

「ええ。よくわかってますとも。単なる自衛です」

 

『貴様っ!!』

 

「むしろ、『どういうつもりだ?』はこちらのセリフです。『識別コードが地球連合に登録されていない』から”国籍不明艦として拿捕する”? ハンッ」

 

ナタルは鼻で笑い、

 

「バカですか? いや、確定的にバカですね」

 

 

 

後ろで「うわぁ~、コイツ酷ぇ」って顔をしてるのが我らがムウ兄貴。

実はここのガルシア司令官とはグリマルディ戦線で同じビラードという指揮官の元で戦ったらしい。

顔を合わせたことはなかったらしいが、ふん縛ったユーラシア連邦兵から司令官の名を聞いた途端、「うわぁ、アイツかよ……」とムウにしては珍しいくらい露骨に嫌な顔をしたので、当時からよほど評判の悪い男だったのだろう。

ムウのユーラシア連邦嫌いも、存外ガルシアも原因の一つなのかもしれない。

 

もっとも、今回限りの付き合いであることが確定のナタルにしてみれば、相手が聖人君子でも下衆い悪人でも別に構わない。

いや、むしろ悪人の方が良心が痛まない分、ナタル的にはやりやすいのだろう。

 

『将軍に向かって、その口の利き方はなんだっ!!?』

 

「ハンッ。笑わせないでくださいよ。貴方は確かにユーラシア連邦じゃ少将閣下かもしれませんが、こちとら大西洋連邦の軍人なんです。指揮命令系統が違う上に、強盗の真似事するような愚物に下げる頭はないのですよ」

 

無論、ナタルとて無駄にガルシアを挑発しているわけではない。

『怒らせる』というのは、交渉ごとにおいて「相手の冷静な判断力を奪う」という意味で非常に有効な手段なのだ。

特に短気で激昂し易いガルシアのような者は、ナタルにとり手玉に取りやすい相手だった。

 

逆に苦手なのは、ロンド・ギナ・サハクのような「無自覚に圧力を纏う、飄々としたタイプ」だろう。

正直、ああいうタイプはナタルはあまり慣れてはいないような。

 

 

 

『おのれっ……! 後で、』

 

「後があればいいですけど? どう上に申し開きを? 大西洋連邦の船を()()()()()()()()失敗。おまけに突入部隊は全滅し、捕虜までとられてるんですよ?」

 

とナタルはその辺の事務机から持ってきたらしい、裏返していた回転椅子をくるりと画面に向かせる。

そこには、とりあえず止血だけされタオルの即席猿轡を噛まされた、鼻と前歯とその間が全損判定の部下(少佐)が縛り付けられていたのだ。

 

指が二本ほど本来は曲がらない方向に曲がっているのは、『素直にガルシアへの通信プロトコルを開かなかった為、()()()()()()()を使った』からだろう。

利き腕でない指二本で済んだのは、ナタルにとって幸いだったろう。

もっと高い忠誠心を持っていたら、筆談できないと困るので、片腕の指を折り終わった後は生爪剥し(海兵隊式に専用の器具を使わずナイフでやるあれ。小型折り畳み(フォールディング)ナイフの使いどころ)、その後は友人の対テロ特殊部隊員から習った、『目隠ししてフォークでズブズブ』をやらねばならぬところだった。

 

「グダグダおしゃべりするのも悪くないでしょうけど、こちらは生憎ザフトと追いかけっこしてる身の上だ。こういう言い方は好みじゃないが……」

 

ナタルは悪役じみた笑みと共に、

 

「捕虜を解放してほしくば、前交渉の約束通りの物資を渡してもらおうか?」

 

 

 

『ふざけるなっ!! 誰がキサマらなんぞに……』

 

ユーラシア連邦らしい判断と言えばらしい判断に、ナタルは真顔で、

 

「残念だったな? 少佐殿。貴官は人質の価値がないそうだ。どう処分して欲しいか考えておけ」

 

「むぐぅーーーっ!?」

 

「では仕方ない……」

 

ナタルは笑みを強める。

無論、この反応もガリシアの人柄をムウから聞くまでもなく想定の範囲内だ。

 

「一生に一度は、このセリフを言ってみたかったんだ。子供の頃からのあこがれでね」

 

とナタルはキラへと回線を開き、

 

「ヤマト少尉、準備はいいか?」

 

『いつでも』

 

ナタルは息を吸込み、

 

「やあぁーーーっておしまいっ!!」

 

あっ、コイツさては、小さい頃タイムボカ〇シリーズ(C.E.リメイク版)見ていたクチだな?

ド〇ンジョ様とか、ヤッタ〇キングとか好きそうだし。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ナタルの予想外の実行命令に、

 

「「ぶっ!?」」

 

思わずシンクロナイズド吹き出しをしてしまうキラ&マリューだった。

 

「ナ、ナタルって結構お茶目なところあるのね……」

 

「と、とにかく命令を実行します!」

 

そしてキラはストライクが持つバズーカをアルテミスのドックの一角に向け、

 

「当たると痛いですよ!」

 

躊躇わずにトリガーを引いた!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『なっ、ななな……』

 

驚愕するガルシアに対し、ナタルは笑みを崩さず、

 

「さて、ガルシア司令官……賭けをしませんか?」

 

『賭けだぁっ!? キサマ、何を……』

 

「武装満載、完全充電状態のストライクが、あと何分でこの要塞を粉砕できるかを賭けませんか?と聞いてるんです」

 

『お前っ!!』

 

「おや? ストライクだけで不十分だと? その程度の火力ではアルテミスは陥落しないと? 良いでしょう。その自信に敬意を表して、こちらも最大限の返礼を行いますよ」

 

そう一端言葉を切ると、

 

連装高エネルギー収束火線砲(ゴットフリート)1番2番、展開! 全力射、準備始め! 左右内舷(エンジンブロックの内側)VLS開放! 艦対艦ミサイル(スレッジハマー)艦橋後方ミサイル(ヘルダート)、通電開始!! 稼働可能な近接防御火器システム(イーゲルシュテルン)もマニュアルモードで立ち上げておけ!!」

 

今、アークエンジェルは挟まれるように係留中のため残念ながらリニアカノン(バリアント)やいくつかの武器が使用不可、陽電子砲のローエングリンは逆にその威力の強さ故に、『今使う』のは得策ではないだろう。

現状で要塞を半壊させても意味はない。

 

(撃つなら、物資搬入を終えた後、脱出時だろうな)

 

矢継ぎ早に武装の開放を命じたナタルに、『ナタル、やりすぎやりすぎっ!』というマリューの声が通信機越しに聞こえてくるが、ナタルは家訓に従う気満々だ。

 

『やると決めたら徹底的に。中途半端に殴れば禍根を残すだけ。どうせなら二度と歯向かう気が起きなくなるまで殴り倒せ』

 

という実に海兵隊らしい教えだった。

そして、ナタルのまだそれほど長くない人生経験の中でも、その言葉は概ね正しいと感じられた。

それに第一、

 

(ヤリ過ぎなのは貴女の方でしょう? マリュー)

 

ナタル・バジルール……アークエンジェルの全てを把握する女。

 

 

 

「どうします? ガルシア司令官。我々は別に要塞が消し飛んだ後にのんびりとデブリから物資を回収してもいいんですよ?」

 

と艦長席に座るとひじ掛けに肩肘を立て、制帽を上機嫌そうに()()()に被りながら足を組んでクックと笑うナタルの姿は、「悪の女艦長」とか「女海賊」という意味で、実にサマになっていた。

 

『わ、わかった! お前たちの要求を全面的に飲むっ!! これでいいかっ!?』

 

「賢明な判断に感謝しますよ。司令官殿」

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルvsアルテミス、あるいはナタル・バジルールvsジェラード・ガルシア、この戦いは、前者に完全に軍配が上がった。

たった1隻の戦艦が難攻不落に勝ち、一介の中尉が将軍をやりこめるなど、中々の快挙と言えるだろう。

 

さて、彼女とアークエンジェルの勝因とはなんだろうか?

家系的な理由でナタルが、ユーラシア連邦を最初から全く信用してなかったこと?

確かにそれもあるだろうが……

 

「要塞……()は古来より、外から攻め落とされるより、中から崩されることが圧倒的に多かった……それは今だってそうですよ? 我々は、ヘリオポリスで再確認した」

 

通信が切れた画面を見ながら、ナタルは楽しげに呟いた。

 

「貴方の敗因は、過信しすぎたことなんですよ。傘に守られたアルテミスの守りと、ご自分の力量をね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ナタルが楽しそうですなによりだなと(挨拶

ガルシアは公式設定さえ散々書かれてるから仕方ないね。
というか、あの程度の男が将官になれるユーラシア連邦って……よっぽどの人手不足?w

今回は無事にやりこめられましたが……アークエンジェルは、ザフトに追いかけられていたりするので、まだもうちょいイベントは続くようですよ?

というか、そろそろザフトサイドが書きたくなってきただけだったりして(^^



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第044話:”運の悪い男の娘……もとい。少年”

今回は、諸事情で中途半端な時間にアップです(^^

そして、満を持して(?)新キャラの登場ですが……よりによって44話、4が二つで「()()」回とか、4が二つ並んで「死屍(しし)累々」とか連想してしまいますな~。

どんだけ”彼”は死亡フラグに愛されてるんだか(^^




 

 

 

世の中、運が悪い者はどこにでもいる。

それは人類が宇宙を生活の場とし出したC.E.年間でも変わらない。

 

「ううっ……流石に一人は不安だよぉ」

 

そうコックピットの中で呟く男の娘……失礼。男の子の名は”ニコル・アマルフィ”。

 

ふわっとした新緑を意味する萌黄色のクセっ毛と、くりくりとした大きな瞳が特徴の見目麗しい、「少女と見間違うような」ショタ系美少年である。

あるいは『こんな可愛い子が女の子のはずがない』と中身が腐って糸を引いてるお嬢様方に表現されるかもしれない。

ぶっちゃけ、原作より輪をかけて雰囲気がショタっぽい。

 

原作と言えば、容姿より更に差異がある点があった。

そう、この世界線の二コルはとにかく「運が悪い」のだ。

 

えっ? 「原作でもクルーゼ隊唯一の戦死者だから運が悪いだろう」だって?

ノンノン。そういう分かり易い「運の悪さ」ではない。

彼の一番の不幸は、「パッと見て運が悪いと分からない」点だ。

 

 

 

二コルは第二世代コーディネイターであるが、両親から望まれコーディネイトされたのは、実は以下の三つだ。

・ピアノの才能

・可愛らしい容姿

・長寿でなくてもいいから年を取りにくい体

 

……うん。趣味丸出しである。というか、欲望丸出しである。

アマルフィ夫妻の業はきわめて深いだろう。

 

だが、これが二コルの不幸の始まりだった。そう……二コルに施されたコーディネイト処理は、結果的に言えば『大成功にして()()()()()()のだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

大成功の部分は、両親の要求が全部叶ったことだ。

二コルは愛らしくピアノが上手な愛嬌のある優しい少年として育った。

老化が遅い=成長が遅いという副作用でややショタっぽくなってしまったが、それを補って余りある可愛らしい少年だった。

よく腐ったお姉さんに誘拐されなかったものである。

 

ニコル・アマルフィという少年自身も、『可愛いピアノ弾き』という評価だけで十分に幸せだった。

両親の愛情を一身に受け、大好きなピアノを日々弾けるという幸せな日々だったが……それはある日、唐突に終わりを告げるのだ。

 

 

 

プラントには、少年少女なら大部分が受ける”総合精密身体/体力測定(実はザフト候補生の選別を兼ねている)”というろくでもないイベントがあるが……基本真面目な二コルはそこでつい本気を出し、『()()()()()()()()()()()()()()()()()』を見せつけてしまったのだ。

そう、ここから先が”大失敗”の部分。

 

そして、その体力測定のすぐ後に、ザフトが大好きな”血のバレンタイン”が起き、周囲の「ナチュラル許すまじ!」の同調圧力と、少年らしい「ちょっと格好いいこと言ってみたい」願望が重なり、愛国少年っぽいこと言ってみたら……

 

『二コル、優しいお前が軍隊に入るなんて、父さんはとても心配だよ。だが、一人の親として、そしてプラントの市民として国を守りたいというお前の意思を尊重しよう』

 

二コルパパ、ザフトは軍隊じゃなくて、もっとヤクザな民兵組織だ。ついでにプラントは、国家としては未承認もいいところである。

 

蛇足ではあるが、単一思想(モノカラー)に染まりやすいスペースコロニーという情報学的にも物理的閉塞環境の中で生み出される同調圧力というのは、中々にキツそうだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

……気がついたら、ザフトの訓練学校(アカデミー)に入れられていましたとさ。そして、アカデミーではなんと同期のアスラン、イザークに続きなんと総合成績3位というスコアを残す事になる(公式です)。

だが、その時の本人の心境は……

 

(うそん……)

 

そして、試しにやってみたらなんとなく出来てしまった爆弾解体処理で、全校1位を取ったときは……

 

(ピアノなのっ!? ピアノやってたから、何時の間にか”器用さEX”とかになってて1位とれちゃったのっ!?)

 

要するに、平均を大きく超える身体能力と優れた戦闘センスを発露させてしまったわけだが……普通なら、『それ大成功なんじゃね?』と思うところだろうが、それはあくまで()()()()()()()()()の話だ。

 

そう、彼の不幸は原作よりも戦争や軍隊を「野蛮なもの」として嫌っていたのだ。

無論、性格的にも向いてないことも自覚していた。

 

だが、スペックは高くとも気の弱い二コルはそれを言えるはずもなく、流されるままに似合いもしないと自分では思ってるエリート兵の証である赤服を着て、クルーゼ隊などに放り込まれていたのだった……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(不幸だ……)

 

二コルは現状を端的に要約し、内心で嘆いた。

その心の呟きは、見ようによっては女の子より女の子っぽいルックスのせいで、()()()()の代名詞である某カミジョーさんとは比べる方が間違ってるくらい儚げに見える。

 

”ブリッツ”、キミはボクにぴったりの機体なのかもしれないね……」

 

彼が乗るMSは、GAT-X207”ブリッツ”。

フェイズシフト装甲と切替式で、ミラージュ・コロイドを用いた高度なステルス機能を持っていた。

いや、正確には『ミラージュ・コロイド・ステルスを実戦で投入できる、今の所唯一の機体』がブリッツだった。

 

「いつも、どこかへ消えたいと思っているボクには……」

 

だが、現実はどこまでも残酷だった。

いつものように同僚にイジられ(あるいはイビられ)て出撃し、”アルテミスの傘”と呼ばれる全方位光波防御帯で覆われたユーラシア連邦の宇宙要塞に、攻略の先兵として向かっていたのだ。

アルテミスの傘は、その消費電力の大きさゆえに常時展開しているわけではない。

原則、敵が接近した場合のみに展開する。

 

そこで、高度ステルス機能を持つブリッツがその特性を生かして忍び込み、忍者っぽく撹乱し、中にいるだろうアークエンジェルごと一網打尽にする……そういう作戦だったのだ。

 

 

 

もう手を伸ばせば要塞に触れそうな位置にまでブリッツは近づいており、作戦は半ば成功したかのように思われたが……

 

「へっ?」

 

”BaGooooVoooooooM!!”

 

唐突に、何の脈絡もなく、二コルはブリッツごと爆炎に飲み込まれたっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

さて、時間を少しさかのぼって、視点をアルテミス内部に移してみようみよう。

 

いつに?

”エリミネーター”たちが、小型フォークリフト級の力を持つ作業用アーム(マニピュレーター)で、ユーラシア連邦兵の死体と弛緩体を艦外に放り出し、それとバーダー交換するように必要な物資を積み終えた後のことだ。

ちなみに作業中、マリューに……

 

『もしかして、ナタルのご先祖様って、海兵隊やる前はカリブ海とかで海賊とかしてた?』

 

と真顔で問われたので、

 

『かもしれませんね。どっちも似たようなもんです。国の後ろ盾があるかどうかくらいしか違いませんし』

 

ただ、これは言っておかなくてはならない。

 

『ただ、今回手に入れたのは、お宝なんて浪漫あふれるものではなく、ただの”()()()”ですが』

 

 

 

 

 

 

 

「はははっ! このままおめおめと逃がすとでも思ったかっ!!」

 

と目を血走らせながらガルシアが吠える。

この男は、アークエンジェルをがっちり抑え込んでる係留固定アームを外す気など、最初から無かったのだ。

確かに如何にアークエンジェルが最新鋭の戦艦だろうと、推力だけでこの固定具を振り切ることはできないはずだが……

 

『結構』

 

ガルシアの誤算は、ナタルが「MSの火器より遥かに強力な」艦砲を、本気で撃つとは思ってなかったことだろう。

実際、さっきも艦砲(ぶき)をちらつかせただけで、撃ったのはストライクのバズーカだけだ。

 

『ゴットフリート、1番2番旋回! ミサイル全弾、撃てっ!!』

 

結局、ガルシアはナタルのことを全く理解などしてなかったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ナタルの思考は、今回はシンプルだった。

係留アームがアークエンジェルを放さないなら、係留アームを固定しているドックごと破壊してしまえばいいと。

そして、アークエンジェルの各所に収められた武装は、彼女の狙い通りの破壊をまき散らした。

はれて束縛を脱した大天使だが、再び宇宙(そら)を駆けるためには、あともう一押しが必要だった。

そして、その一押し出し渋るナタルではない。

 

「ローエングリン、1番2番、展開! 緊急発射準備!!」

 

ユーラシア連邦の最大の失敗は、『アークエンジェルの()()()()()()()()()()()()を外に向けさせて係留した』事だった。

その先にどのような頑強な扉があろうと、陽電子砲の前では紙も同じだ。

 

そして、その砲口の先には宇宙空間と要塞を隔てる装甲シャッターがあったが……

 

「ヤマト少尉、飛び移れ!」

 

『はいっ!』

 

「発射シーケンス、完了!」

 

アーノルド・ノイマンの言葉にナタルは軽く頷き、

 

「ローエングリン、撃てっ!!」

 

 

 

ナタル・バジルールは有言実行をモットーとする、繰り返すが「やると決めたらとことんやる女」なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




二コル君、華麗に登場! 直ぐに爆炎に飲み込まれたケドネ(挨拶

という訳で、ガンダムSEED屈指の不遇キャラ、でも回想とかイメージではそこそこ出番が多いニコル・アマルフィの登場回でした。
そして、約束のwith ブリッツでの爆発オチw

それにしても、皆様……前回の海兵隊繋がりか~ら~の~「シーマ様座り」ネタ、よく気がつきましたね~。
正直、あんなにネタを分かってもらえるとは、嬉しい誤算でした♪

まあ、ナタルは流石にMS乗らんでしょうけど(^^



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第045話:”オチ。たまに思うが……不幸って妙に連鎖しない?”

さてさて、今回はアルテミス戦のエンドというか(シメ)回です(^^

なんというか……オチ回?w

あと、あとがきにちょっとしたお知らせがありますので、よろしくお願いいたします(__)






 

 

 

唐突にではあるが、世に陽電子砲なる武器がある。

アークエンジェルにも”ローエングリン”という名で搭載されているが、これはどういった特性の武器だろうか?

 

陽電子、英語で言う”Positron(ポジトロン)”は、+電荷をもつ電子であり、反物質/反粒子の一種だ。

反物質言うからには正物質、陽電子の場合は電子と衝突すると”対消滅反応”を起こし、「質量のエネルギー変換」を起こす。

具体的に言えば、1対の陽電子と電子が対消滅した時に発生するエネルギーは、それぞれがもつ511keVの静止エネルギーに運動エネルギーが加算されるのだ。

 

ただ、厄介なのはエネルギー解放は光子という形で行われるが、その光子がガンマ線領域の波長をもって放出されてしまうことだ。。

よく、「ローエングリンを大気圏内で撃つのは大気汚染が云々」という話をアニメの中でも聞いたことがあると思うが、要するに「大気圏内で陽電子砲を打つと、対消滅でガンマ線が発生してしまう」ということだ。

 

加えて、()()()()()()()()()()()()()()()()、大気中や宇宙でも宇宙塵のような微粒子が密集した空間を通過すると、対消滅による粒子の減衰が激しくなり、威力と射程が極端に落ちることになる。

 

それを解決する問題として、ローエングリンは「ビームによって陽電子を保持する」方法、細かく書けば『生成した陽電子を+電荷を持つ荷電粒子殻で被い、()()()()()()()()()()()()()()()』方法を選んだ。

 

これにより、ある程度の硬度や密度を持つ対象に命中し荷電粒子のコーティングが剥がれるまで陽電子を維持する事に成功したのだ。

 

とまあ長々と書いてきたが、難しい理屈は抜きにして「当たると通常のビームとしてのダメージに加えて爆発までするとんでもビーム砲」とザックリ思ってくれていい。

 

 

 

まあ、こんな話をわざわざしたのは、ニコル・アマルフィ操る、アルテミスにタッチダウン直前だったGAT-X207(ブリッツ)は、ローエングリンの直撃を受けたわけではないという事を話しておきたかったからだ。

 

二コルとブリッツを飲み込んだ爆炎は、ナタルが放ったローエングリンが、ドックを外界と隔てていた装甲シャッターを吹き飛ばした際に発生した二次的なものだったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ぐっ!?」

 

とはいえ、並の軍艦の装甲より分厚く重いシャッターを粉々にするほどの爆発に巻き込まれたのだから、ただで済むはずはない。

 

そして、SEED系ガンダムに詳しい人ならご存知だろうが、『フェイズシフト装甲とミラージュ・コロイド・ステルスは()()()()()()のだ。

 

つまり、今のブリッツは「ジンと同程度の強度しかない()()()M()S()」だった。

 

そのせいで外部に露出したスラスターやアンテナ類など繊細な部分はほとんどが壊れ、むしろ手足がもげなかったのが不思議なくらいだ。

 

 

 

だが、である。

この程度で不幸と言っては、二コル君に失礼と言いうものであろう。

 

そう、アクシデントはまだ続いていたのだ。

まだ、辛うじて意識が残っていた二コルは、大慌てでステルスをPS装甲に切り替えようとしたが……

 

「うそっ!?」

 

ミラージュ・コロイド・ステルスは健在だった。だが、切替システムは()()()()()……

その直後、

 

”ゴォォォォォン!!”

 

「へぶらっ!!?」

 

何やら『巨大質量に当て逃げされた』感触と共に、今度こそ二コルの意識は刈り取られたのだった。

ついでに言えば、それほどの衝撃があってもなお、ミラージュ・コロイド・ステルスは、生命維持装置共々普通に機能していた。

 

流石、技術立国大西洋連邦とオーブの合作MSである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「左右エンジン、最大出力! アークエンジェルはこれより当地を緊急脱出する! 全速前進っ!!」

 

拘束装置を物理的に引きちぎり、持ち前の火力で束縛を断ち切り、正面の障壁を跡形もなく消し飛ばしたアークエンジェルは、一路真空の宇宙へと飛び出す!

 

そして、まさに最大加速で宙域を離脱しようとしたとき……

 

「ん? ”艦長”……何か大きな質量と衝突したようですが? センサー類に反応はありませんが」

 

なんか、ナタルをナチュラルに艦長とか言っちゃってるノイマンはいいとして、

 

「アークエンジェルに損傷は?」

 

「軽微です。無視できる程度ではないかと」

 

「なら、放っておけ。デブリか何かにぶつかったのだろう。傷は漢と軍艦の勲章と心得よ」

 

「アイアイ。マム」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

嗚呼、哀れなるかな宇宙の”貰い事故(?)”……

こうして二コルは自力での推進移動がかなわなくなったブリッツ共々、宇宙を漂流する羽目になった。

そう、()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

確かに救難ビーコンは起動していたが、アンテナがほぼ全損状態では発信出力が弱く、ニュートロンジャマーやらアークエンジェルが大量生産した真新しいデブリやらの中では、それをハートキャッチするのは難しいだろう。

しかも、肝心の発信元がステルスかかったまんまだ。

 

救難救助というのは初期活動が肝心で、その如何によって生存率が左右されると言ってもいい。

 

だが、()()()()()()()()()()()()()で隊長であるクルーゼと二コルがお気に入りのアスランがプラント本国に戻ってる現状では、二コルを捜索する余裕も手段もモチベーションもない。

 

二コルがどうでもいいわけではない。

だが、たった一人のパイロットと巣穴から出てきたアークエンジェルの追尾……どちらを優先すべきか葛藤するほど、彼らも惰弱ではなかった。

まあ、「群れについてこれない脱落者は置いて行かれる」ワイルドギース方式の思考だ。

 

 

 

ブリッツのミラージュ・コロイド・ステルスの稼働時間は一説によれば約80分だという。

そして、ミラコロ君は根性をみせた。

そこが根性の見せ場だったかはどうかは別にして、ブリッツのステルスが電力切れで解除されたのは、アークエンジェルの轢き逃げにあってから約1時間後の事だった。

 

勢い良く弾き飛ばされたせいもあり、既に救難ビーコンを拾える位置にアークエンジェルもザフトの姿もなく……

 

二コルの意識はまだ戻ってないが、いっそこのまま幸せな夢でも見ていた方が、二コルのためではあるだろう。

追いかけていた敵艦に跳ね飛ばされた挙句、味方に見捨てられて宇宙漂流なんて、いくらザフトでも哀れ過ぎる。

 

ニコル・アマルフィ、やはりピアノと操縦の腕はあっても、運だけは無い様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてオチもついたところで、僻地の小惑星を巡る小さな戦いは幕を閉じた。

だが、宇宙は相変わらず殺意と敵意に不足を感じない場所だった……

 

「カガリ様、いっそこのままわたくしがオーブに亡命してしまうというのはいかがでしょう♪

 

「「ふ・ざ・け・る・なっ!!」」

 

敵意と殺意に不足を感じない場所だったと言ったらだったのだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




二コル君、受難!(挨拶

吹っ飛ばされ、轢かれ、仲間に置いていかれるという”ノブの三段撃ち”ならぬ”二コルの三段オチ”w

だけど、最大の不幸は……最後の最後で、どっかのシンガーソングピンク(?)が持って行きやがった!(^^

それでも、どっこい生きてるブリッツの中~♪な二コルは、実は悪運の持ち主なのでは?と思ってしまいますw



次回は再びイズモに戻ろうかな~とか思っていますが、そこでちょこっとお知らせです(^^

えーと、皆さんにご愛読いただいて嬉しい”ガンダム進藤”ですが……ちょっと更新ペースが落ちそうです(えっ?

あっ、いきなり低評価押そうとしないで~!(汗

実は悪い話ではなく……この度、”とある超人気作家様”のご厚意で、正式に”コラボ作品”の執筆が決まりました~♪

現在、連載準備中で日曜ぐらいに具体的に発表できそうですが、楽しみにお持ちいただければ嬉しいです!









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第046話:”フ○○○ンピンク!”

投稿ペースは遅くなっても、仕上がったらすぐ投稿するスタイルは健在w

こっちはこっちで書いててたーのしー♪ですし(^^

さて、今回もシンプルなサブタイ系(一部、伏せ字になってますが……)ですが、ちょっと面白いことになってるような?

まあ、1カットだけレア(?)なキャラも出ますし。





 

 

 

「彼女を助け、ヒーローのように戻れ、ということですか?」

 

「もしくは、その亡骸を号泣しながら抱いて戻れ…かな?」

 

プラント謹製の独創的すぎるデザインが売りのナスカ級駆逐艦”ヴェサリウス”の中で、凸介と仮面がそんな格好良さげな会話をしていた頃、話題の中心人物といえば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

『こ、この()()()()()()()()! 次こそヒューマンデブリ……じゃなかった。コスミックデブリにしてやるんだからぁーっ!』

 

コラコラ、フレイ。この世界に”鉄華団”どころかガンダム自体がないぞ~。

 

『流石にお下品ですわよ? フレイさん。それじゃあまるで、わたくしが女性器みたいじゃないですか♪』

 

それとラクス、お前フレイが勝負に負けるたびに口にする『ファッキンピンク』ってフレーズ、実は少し気に入ってるだろ?

どこぞのグリッドでマンなシンガーが、『クソ眼鏡』ってフレーズが気に入ってるように。

 

『そこまで言ってないじゃない!』

 

『でも、ファ〇クするピンクなのでしょう?』

 

オイ、歌姫。ファンが泣くぞ? 主にプラントの。

 

ギャーギャー通信越しに仲良く喧嘩してるフレイとラクスを見ながら、ワタシはため息を突きたい気分になる。

 

「どうしてこうなった?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

事の始まりは、そんなに難しい話じゃない。

ここのところずっとそうであるように、その日もフレイに様々な新機軸インターフェースを詰め込んだ”球体型(オーブ)コックピット”を試してもらっていたんだ。

正直、最近のフレイのMS操縦技能はシミュレーション上とはいえ日進月歩の勢いで上昇していて、今となってはソキウス達と模擬戦が出来るまで成長していた。

 

そう、ソキウス達と勝負するにはどうしているかと言えば……イズモには、ソキウス達専用という訳ではないが、オーブのコーディネイターパイロット用に開発されたオーブジンのコックピットを再現したシミュレーターをいくつか搭載しているのだ。

そして、シミュレーター同士を繋いでオンライン対戦プレイ、じゃなかった戦闘シミュレーションのデータ取りを行っていたんだが……

 

なんか、フレイの腕前が上がりすぎて「ナチュラル一般用のコックピットインターフェース」としては、反応とかが過敏すぎるというか……過激なセッティングになってる気がするのだが、アスカ主任とかが何も言わんので、あれはあれで使えるのだろう。きっと。

 

さて、そんな()()()()()()を、イズモ艦内をアミューズメント施設感覚で興味津々にウロウロしてるラクスが見逃すはずがない。

そして、よりによって自分からこう言って売り込んできたんだ。

 

『フレイさんの対戦相手に、生のザフトパイロットはいかがですか?』

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

結果から言えば、ラクスのMS操縦レベルは……

 

『うそん』

 

めっちゃ上手かった!

機動がキレッキレ……というのとはちょっと違うな。

なんというか、リズム感が抜群に良いのだ。

 

確か、前世で読んだ『コータローまかりとおる!』だったかな? 何巻だったか忘れたけど、バンドの話が出てきたその中に「格闘技はリズムだ!」みたいな言い回しがあった。

ラクスのそれは、まさに『MS戦はリズムですわ☆』という感じだ。

 

イメージが伝わるかわからないが……反応速度はコーディネイターの標準を大きく逸脱するものじゃない(とはいえ、かなり良い)かもしれないが、「相手の呼吸やリズムを読む」のが抜群に上手いのだ。

 

まるで、「相手が攻撃してくるタイミングを未来予知でもしてるかのように読み」、そして本人の曲者じみた性格そのままに、嫌なタイミングで攻撃してくるのだ。

例えば、こちらが照準を定めて引き金を引く瞬間に機体を横滑りさせ、カウンターの射撃を入れてくるような……

もっとも本人に言わせれば、

 

『腐っていてもコーディネイターですもの♪ 鋼鉄のドレスを着たダンスのお相手くらい、わたくしだってできますわよ?』

 

”腐っても”じゃなくて、”腐っていても”ってお前なぁ……自覚してどうする?

 

 

 

別に士官学校とかで本格的に操縦を習った訳ではなく、手習いのつもりで操縦を試してみたら思いの外相性がよかったそうだ。

操縦自体も面白いので機会を見つけて乗っていたら、何時の間にかできるようになってたらしい。

 

(おまけにフルオーダーでピンクのパイロットスーツ作ったとか言ってたし)

 

あの民間船、シルバーウインドだったか?に、もしジンが船に搭載されていてラクスが動かしていたら、案外逃げ切れてたかもな。

 

どうやら、ラクスが”ザフトの広告塔”なんぞをやってた理由は、少なくとも今生では、なにもその容姿や歌声だけが理由じゃないようだ。

 

 

 

ワタシの見立てだから()()にはならないだろうが……

 

(ひょっとしてラクス、現状のディアッカとかより強くね?)

 

確証はないが、そんな気がする。

流石にキラやアスラン級とは思いたくないが、

 

(存外、機体性能が同じなら……イザークあたりといい勝負するんじゃないだろうか?)

 

だが、末恐ろしいのはむしろフレイかもしれない。

そのラクス相手に最初は惨敗していたが、持ち前の負けん気の強さを発揮して、今は食らいつけるようになりつつあった。

 

現状、オーブコックピットで再現できる機体は、MBF-P0(アストレイ)シリーズのベーシック仕様、前述の通り標準シミュレーターはオーブジン用のセッティングだ。

ビーム兵器の有無は大きいが、基本的な機体性能にそこまで大きな差はない。

 

フェイズシフト装甲の圧巻の防御力に物を言わせられるGAT-Xシリーズならともかく、アストレイでラクスの操るオーブジンと互角とは言わないまでも善戦はできてるんだ。

 

(こりゃ、ストライク・ルージュとか製作できたら、最初からフレイにくれてやった方がいいかもな……)

 

少なくともワタシが使うよりは、有益な戦力になりそうだ。

ところで……

 

(シミュレーターの機体色設定、ピンクとかあったのか……)

 

ワタシャ初耳だよ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ラクスはシミュレーターから出てくるなり、

 

「ぷはぁ! たーのしー☆ですわ♪」

 

お前はサーバルちゃんか?

まあ、はしゃぎたくなるは分からないでもないが。

 

(コイツ、プラントとかでは友達作りにくそうだもんな。立場が立場だし)

 

今回の対戦バトルもフレイはいいとこまでいったのだが、背中は見えていても触れないって感じだ。

 

それがよっぱり悔しいのか、フレイはソキウス達相手に居残り特訓するらしい。

この手の開発の完成度はデータ蓄積が物を言うから、むしろ助かるが……あまり根を詰め過ぎないといいが。

 

ロマンチックな雰囲気はかけらほどもないが、せっかくの二人きり(?)だ。

いい機会だから聞いてみるか。

 

「ラクス、ちょっと話があるんだが?」

 

「あら? カガリ様からのお誘いなんて珍しいですわね?」

 

「まあ、そうかもな……ちょっと場所を変えるか」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そして場所は変わってワタシの部屋。

いつもの茶と、茶うけで私物の芋羊羹(当然、ラクスの所望。そろそろストック分なくなってきたなぁ~)を出しつつ、

 

「ラクス、単刀直入に聞くが……お前、”ターミナル”についてどの程度知ってんだ?」

 

するとラクスはピタッと茶を飲む手を止め、

 

「カガリ様はどこでその名を……?」

 

珍しく真剣な目線のラクスだったが、

 

「お前さんが気にすべきは、”どこでいつ知ったか”より”()()()()()()()()()”じゃないのか?」

 

「それはそうでしょうけど……」

 

「ワタシは、お前の父ちゃん(シーゲル・クライン)とうちの国に居座ってる生臭ボウズ(マルキオ導師)が関わってる程度は掴んでるが?」

 

 

 

 

 

この時、何をラクスと話したのかは……あえて伏せ札にしておく。

まあ、切り札になるかもしれんし、切り札は切る時を見極めないと意味が無い。

ただ、

 

「必要な情報はお前が引き連れてきたハロにインストールしておく。ああ、あれに仕込まれていたスパイウェア……お前を監視するバックドアの類は、全部無効化しておいたからな? 表向きはこれまで通り動いているように細工したが」

 

流石に消しちまうと怪しまれるだろうからな。

それにしても、

 

(仕掛けたのアスランじゃないだろうな……)

 

性格的にってのもあるが、あのボウヤは常時ストーキングするほど、このピンクのおぜう様に関心があるようには見えない。

 

(それに、プロのやり口だしな)

 

入ってたものはそれなりに手が込んでて、素人の細工のようには見えなかった。

おそらくだが、情報部とかってとこだろう。

 

「うふふ♪ ありがとうございます」

 

認めたくはないが、何となくコイツとは長い付き合いになりそうだから、

 

「まあ、これくらいはな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プラント在住時より、ラクス様が1000倍くらい生き生きしてる件について(挨拶

アスランとクルーゼ隊長が、真面目に原作再現(1カットだけ)やってる最中、この歌姫は何をやってんだか(^^

カガリは、原作とかもはやまったく気にしてないし、前世知識は「便利なユニークスキル」くらいにしか思ってないかもしんないですw

まあ、それでも”ターミナル”について、この時点で聞いちゃうあたり、転生者としてのサガも捨てる気はないようですしね~。

まあ、揺れ動く幅が意外と大きいキャラかもしんないです。
あと、ラクスと長い付き合いになりそうな覚悟は決めたみたいですよ?

フレイは、超頑張れw





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第047話:”オーブは国防に関して手を抜かないという建前で、実はカガリが欲しいだけの話”

今日は午前中からアップ、この後もちょっと予定があるので早め早めの行動(?)です(^^

さて、今回は接続回……かな?

イズモは果たして、どこへ向かうのか?みたいな話が中心となっております。




 

 

 

カガリ・ユラ・アスハだ。フフッ、怖いか?

いや、本当に怖がるな。引くな。

ワタシだってたまには、厨二艦娘(天龍ちゃん)の真似をしたい気分の時だってあるさ。

どういう気分だかは説明し辛いが。

 

おっと。肝心なことを言い忘れていたが、今イズモがどこに針路を向けているのかと言えば……

 

(アルテミスなんだな。これが)

 

 

 

いや、実はギナ兄と話し合ったのだが、とりあえず……

 

『ラクス・クラインをプラントに返却するぞ』

 

ワタシは、ギナ兄にも苦手なタイプが居るってことを初めて知ったよ。

人間っていうのは、ホントに相性っていうがあるんだなっと。

 

(だけど、ラクスって不思議とミナ姉と相性良い気がするんだよなぁ……)

 

まあ、ワタシとも悪くはないと思うが……そこ、なんで生暖かいうえに意味ありげに嗤う?

 

『異議はない』

 

無論、ワタシは賛成だ。

ハロに詰め込んだ情報を生かしてもらうには、ラクスには一度帰国してもらい”ターミナル”や”ファクトリー”に接触してもらう必要がある。

 

また、ラクスが帰国した後の連絡手段やら他の手筈も考えてはいるが……

 

(マルキオ導師を通してってのは、流石に嫌すぎだからな~)

 

そもそも、SEEDなんて怪しげな物を信奉する坊さんとか、生臭すぎだろ?

信用とか信頼以前に、ワタシが生理的に好かん。

 

という訳で、マルキオ導師は全く関わらないという訳ではないが、ターミナル・ルートでそれなりの人材を送ってくる予定だ。

 

まあ、ラクスは……

 

『カガリ様、いっそこのままわたくしがオーブに亡命してしまうというのはいかがでしょう♪』

 

と人生と世界をナメきった発言もしたが、

 

『『ふ・ざ・け・る・なっ!!』』

 

ととりあえずワタシとフレイでツイン・カウンターツッコミを入れておいた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

その中で、一番近場にいるだろうザフト艦隊って「アークエンジェルの尻を追いかけてるクルーゼ隊」だったし、ギナ兄も『アークエンジェルがアルテミスに向かう』事は予想していた。

 

まあ、ワタシとしてはラクスが行方不明になったことで、アスランとクルーゼがプラント本土に戻っていることは原作知識で知っていたが、それでもアルテミスには行っておきたい理由があった。

 

(”光波防御帯(アルテミスの傘)”……現物、分捕っておきたいよなぁ)

 

最初に言っておくが、ワタシは漫画”X ASTRY”に登場した2体のMS、特に”CAT1-X ハイペリオン”を高く評価している。

 

あれは、ユーラシア連邦のアナグマどもが作ったとは思えないほど上出来のMSだ。

数々の特殊装備で攻防に優れ、しかも量産可能な作り、しかもニュートロンジャマー・キャンセラーが入手できたら一気に化ける潜在能力と……無論、細かく見ていけば、試作MSだけあって粗削りな部分は多々あるが、見るべき部分は多い。

 

そして、僥倖(ぎょうこう)と言うべきか、それともご都合主義的展開(デウス・エクス・マキナ)と言おうか……拿捕したユーラシア連邦のアガメムノン級”オルテュギア”には、乗員すら知らなかった秘密があった。

 

拿捕した後に呼び寄せたオーブの調査隊により判明した事だが……

そう、『まだ”ハイペリオン”というペットネームが付く前のC()A()T()1()-()X()()()()()()()()()()()が秘密裏に持ち込まれていたのだ!

 

 

 

だが、考えてみればおかしな話ではない。

ハイペリオンは、C.E.71年中にはロールアウトしなければならないので、そろそろ組み立てを始めないと間に合わないだろう。

 

実際、航路図を確認したが”オルテュギア”の最終目的地は”アルテミス”だった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

おそらくだが、シナリオ的にはこうなんじゃないだろうか?

”オルテュギア”は、中に何を積んでいるか悟らせないために、乗員の大半に積荷の正体を伏せたまま何の変哲もない『アルテミスまでの哨戒任務』として出港。

国籍マークなどを消していた理由は、「ザフトの襲撃云々」というようなもっともらしい大義名分で誤魔化したのだろう。

 

おそらく、ユニウスセブン近辺にいたのは『哨戒ルート』以上の意味はなかったのだろう。

そして、そこに運悪く出くわしたのがラクスが乗っていた”シルバーウインド”だったということだ。

 

実際、カナード自身も積荷のことは何も知らなかったし、どうも内情を知っていたのは、数名だったようだ。

まあ、その辺りのことをゲロさせるのも、前に合流したオーブ宇宙海兵隊のお仕事という訳だ。

まあ、相手は国籍不明の”()()”な訳だし、特に問題はない。

 

 

拿捕した”オルテュギア”は、調査隊の乗ってきた数隻の軍艦に乗員や装備一式諸共、”宇宙軍事拠点(アメノミハシラ)”に曳航させた。

 

カナードとお供のガネっ娘は、諸事情により相変わらず同行しているが。

 

(そういやカナード、フレイやラクスがいる間は、絶対に格納庫に近寄らないよなぁ~)

 

実は、カナードも暇なのか、割とシミュレーターでソキウス達と遊んでいる(ちなみにたまにだが、ワタシとも遊んでるぞ? 生身のドツキ合いだが。筋は悪くない)はずなのだが。

多分、絡まれるのが嫌なんだろうけど……

 

「大した危機察知能力だ」

 

きっと、危機管理フォームとかあるに違いない。

アイツ、原作だとへそ出しだったし。

おまけにベッドの中では半裸どころか、大半は全裸だしな。誰のせいとはあえて言わんが。

 

 

 

それは余談にしても、”アルテミス”にはハイペリオンのデータやパーツ、あるいは技術者がいるかもしれない。

何しろ、漫画で拠点にしていたのはあそこだ。

製造は無理でも、組み立ては”アルテミス”で行われた可能性が十分にある。

 

ならば、それを確認しない手はないだろ?

という訳で、今のイズモは『ラクスをザフトに返す』という建前の元、本音を言えば色々分捕りたいがために一路、”アルテミス”に舵を切っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ? 前方宙域に熱源反応?」

 

それは、”オルテュギア”を引き渡してから数日後の事だった。

 

「はい。熱量から考えて大型艦船でソキウス」

 

ブリッジに呼び出されてみれば、何やらちょっとした緊急事態的な様相だった。

 

「これは中々に緊張感あふれるシチュエーションですわね♪」

 

「……なんで、アンタがこんなところまで入ってきてるのよ?」

 

フレイのツッコミはごもっともだぞっと。

 

「ギナ様の許可はちゃんととってますわよ?」

 

はーい。そこでワタシが知らない間に、イズモの中で入れない場所が無くなってたピンクのお嬢は自重するように。

 

「ところで、ワタシを呼び出した肝心のギナ兄……じゃなかった。ギナ艦長は一体どこに?」

 

「ギナ様なら、万が一に備えて”ゴールドフレーム改”にて待機中でソキウス」

 

あの兄、さては有事には自分がMSで出たいから、ワタシにブリッジ押し付けたな?

 

「状況は理解した。んで、熱放射パターン解析の結果は?」

 

ニュートロンジャマー全盛の今の宇宙は、レーダーやその他の電波機器の有効距離が短く、パッシブ光学センサーの探知距離の方が遥かに長くなることがままある。

特に赤外線的雑音が無い、あるいは極小の空間では、熱源探知や熱による解析はかなり有効な手段だ。

実際、今回は使わなかったが、音紋に意味的に近い熱パターンを示す”熱紋”なる言葉もあるくらいだ。

 

「もうすぐ結果が……出たでソキウス。90%の確率で、”アークエンジェル”でソキウス」

 

「ほ~う」

 

そうか、こういうエンカウント・イベントか……

 

「アークエンジェル?」

 

疑問顔のラクスに、

 

「同じくヘリオポリスからの脱出に成功した大西洋連邦の船だ」

 

絶対に地球連合の船とは言ってやらん。

 

(まあ、顔つなぎと必要なら補給位してやるか)

 

対価にデータはいただくが。

 

「”ザ・ワン”、ギナ艦長に状況説明。あと、アークエンジェルにはレーザー通信を開始」

 

「了解でソキウス」

 

まあ、精々楽しい出会いになると良いな。

そう思わないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハイペリオン、良いよねぇ(挨拶

という訳で、カガリはオーブ製の”強化型ハイペリオン”を製造したいがために、”アルテミス”に向かうみたいですよ?w

まあ、カナードが仲間に加わったなら、お約束ですよね♪
そして、何気に残念魔族(シャミ子)と同カテゴリーキャラにされるカナード。へそ出し的な意味で(もしかして、残念的な意味でも?)

そして、いよいよイズモとアークエンジェルの再エンカウントの時が……
ただ、今回の邂逅は『エンカウント・イベント(小)』って感じになる予定です(^^



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第048話:”軽めの邂逅、そして今明かされる『ハルバートン計画』とは?”

やっぱり、こっちも更新しなくちゃネ(^^

とりあえず、今回はライトなエンカウント回で、ちょっと今後の伏線も入れてみようかと……




 

 

 

さて、2隻の船のトップ会談の始まりだ。

ちなみに、今いるのはイズモの人工重力区画にある貴賓室だ。こういう場所があるんだから、ホント贅沢な船だよな~。

 

「えっと、アークエンジェル艦長のマリュー・ラミアス大西洋連邦大尉です」

 

あれ? なんかオドオドしてね?

いきなり呼びつけられ、貴賓室に連行……案内されたから、緊張してるのか?

何か違う感じもするが。

 

「同艦副長、ナタル・バジルール中尉です」

 

こっちはこっちで表情が滅茶苦茶強張ってるな?

ほぼほぼギナ兄のせいだろうけど……

 

「ロンド・ギナ・サハク、オーブ国防委員で今はイズモの艦長を兼任し、ゴールドフレーム改のパイロットでもある」

 

ギナ兄、事実だが盛り過ぎだ。

相手が戸惑ってるじゃないか。

 

「同じくカガリ・ユラ・アスハ。同じくオーブの国防委員だ。この船での役職は……特にないな。強いて言うならオブザーバーか?」

 

まあ、ここまでは問題ないな。

とりあえず、現状を説明しておくと、エンカウントしたイズモとアークエンジェルは、舳先を互い違いにする感じで横並びとなり停船している。

 

そして、ギナ兄、もとい。ギナ艦長は間髪入れずに艦長のマリュー・ラミアス大尉と副長のナタル・バジルール中尉を呼び出したという訳だ。

 

(まあ、こっちから出向くよりはマシな判断だよな)

 

行ったとしても、アークエンジェルの方が受け入れに困っていただろう。

それにギナ兄……ああもういいや。心の声はギナ兄で統一しよう。

ギナ兄の場合、多分……いや、十中八九”ゴールドフレーム改(モビルスーツ)”で乗り付けたろうし。

あっ、マリューとナタルは、普通にアークエンジェルに搭載されてた内火艇(ランチ)で来たぞ?

でも、あれって死傷率半端じゃないよな? 折り紙幼女ちゃんや原作フレイが死んだのも、ランチに乗ってる時だし。

というのも、ザフトの腐れ民兵共は平気で脱出艇を撃つからだ。

 

(平気で投降兵を撃ち殺すザフトにモラルなんて物を期待してないから、それは当然としても……)

 

リアルに考えるなら、アニメの制作サイドは『面白半分に()()()()()()()を撃つ意味』わかってたのかね?

他の数々のザフトの戦争犯罪もだが……あれ、本当に地球上の国家でやったら多国籍袋叩きにあって国亡くなるレベルだぞ?

それとも、「10億殺したザフトなら、あれくらいは許される」とでも思っていたのかねぇ。

 

 

☆☆☆

 

 

 

あっ、それと武器は両艦とも陽電子砲(ローエングリン)以外は、即時戦闘可能状態(コンバット・ステータス)にしてある。つまり、アークエンジェルはゴットフリートとヴァリアントは露出し、いつでも発砲できる状態にある。

これは別にお互いをけん制してるわけではなくギナ兄の判断で、『会談の最中に奇襲でも受けたら目も当てられん』と、むしろ警戒を密にするようアークエンジェルにも伝えたのだ。

 

実は階級的にはナタルより上のムウ・ラ・フラガ大尉にアークエンジェルに残ってもらったのもその一環で、流石に戦闘系の尉官が一人も残っていなくては、万が一の時は対応できないしな。

 

そして、『キラが()()()()()()理由』も、建前的には、うちのソキウス達同様に”MSで周辺警戒”に当たってもらってるからだ。

 

まあ正直、このタイミングで「お姉ちゃんだよ」はやりたくないんだよなー。

どこまで原作知識が通じるか疑問だが(フレイもイズモにいるし)、この時期のキラ・ヤマトって精神的に少々まだ打たれ弱いところがある。

 

ここで、『実はお前さんはオーブの重鎮の双子の弟なんだ。生まれはメンデルで製作されたスーパーコーディネイター』なんて言ったら、どんな反応示すかわかったもんじゃない。

 

流石に情報過多で、自我やら精神やらに傷が入る……という事はないだろうが、結果が読めない以上、余計なリスクは回避すべきだ。

 

ワタシは確かに死んだら地獄行き直行便の鬼畜外道だって自覚はあるが、かといって意味もなくアークエンジェルに不必要なリスクを背負わす気はないからな。

 

それに個人的には、もう少し落ち着いた環境で姉の名乗りをあげたいもんだ。

そこ。生暖かい目でワタシを見るな。

 

 

 

とまあ、ここまでは良かったのだが……

 

「最後になりましたが、わたくしが”プラントの歌姫”ことプラント最高評議会議長シーゲル・クラインの一人娘、ラクス・クラインですわ♪ 以後お見知りおきくださいませ」

 

なぜお前がしれっとここにいるラクス!!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「オブザーバーとして参加を許可した」

 

さよでっか。

ギナ兄、もはやラクスの扱いが面倒を通り越して、もはや雑になってやしないかね?

というか、ワタシに丸投げしてる感が半端じゃないんだが……

 

あーあ、ほら見ろ。

マリューとナタルが、『人類ぽかーん計画』になってしまってるではないか。

あっ、ギナ兄がこっち見てやがる。

 

(はいはい。わーりましたよ。フォローしろってことでしょ?)

 

「悪いな。ラミアス大尉、バジルール中尉。国家機密に該当しかねん案件ゆえ、詳細は話せぬが……ラクス・クラインがここに居るのは、少々込み入った事情がある」

 

嘘は言ってないぞ?

『海賊よろしく非武装の民間船襲撃していたのがユーラシア連邦の船で、襲われた船には好意的ではない勢力の重要人物が乗ってました。成り行きで救助したんだけど、扱いに困ってます』なんて、明らかに気軽に口にすべきことじゃない。

 

「彼女がこの場にいる許可と、この件は内密に願いたい」

 

すると何とか再起動を果たしたらしい二人組は、

 

「い、いえ、どうかお気になさらずに! 内密の件は了解致しましたわ」

 

マリューさん、声が裏返ってるぞー。

 

「ザフトからの逃避で精一杯の我々には手に余る案件。どうかご随意にお願いいたします」

 

ナタルのが、まだちょい冷静かな?

顔色は悪いけど。

 

「この娘はほんのオマケ程度に思ってもらってかまわん」

 

「あら? ギナ様ったら、ちょっとひどいですわ」

 

「だまれ」

 

あれ? もしかして相性は悪くないのか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「そっちが受領予定だった大容量電源ユニット(パワーエクステンダー)と、可動部に装着するMS用にカスタマイズした電力回生ユニットを渡す。そもそも、そちらの物だ」

 

ギナ兄が、リストを読み上げながら……

 

「それと、こちらが回収できた”GAT-X105(ストライク)”に使えそうな予備部品やら消耗品を回してやろう。これでもうしばらくは戦えるだろう?」

 

「ご厚意に感謝します!」

 

と大きな乳を揺らしながら、割と整った敬礼をするマリュー艦長。

 

「礼はいらぬ。対価にそちらからのデータを根こそぎコピーするのだ。文句はない」

 

まあ、アークエンジェルはモルゲンレーテが基礎設計から関わってた船だからな。

このくらいの芸当はできるさ。

それに、実戦データは今のところ値千金だしな。

 

(それに、”ドミニオン”へのフィードバックもできるし)

 

アークエンジェル級2()()()”ドミニオン”

既に”むったん”、というかアズラエル財閥との売買契約は成立(売買先が大西洋連邦じゃないことに注意!)してるが……

元々は()()()()()()()()()()()()M()S()()()()()()()()()()()()があり、そのプロトタイプ、あるいは先行量産型が”ドミニオン”だ。

基本的にドミニオンはアークエンジェルと同じ船と言っていいが、量産を前提に一部設計を変更/拡大/簡易化していたりしていて、厳密に言うならドミニオンを基に建造される船が出てくるとすれば、”改アークエンジェル級”とか”ドミニオン級”と呼ぶのが正しいだろう。

 

実は原作と違い、アークエンジェル・タイプの船はMSの大量生産とセットで、量産される可能性がある。

言ってしまえば、スパロボオリジナル系における”スペースノア級万能戦闘母艦”の立ち位置を期待されてると考えていい。

 

もっと仰々しい言い方をするなら、MSとそれを最大限に活用できる母艦の開発は、提唱者の名を取って『ハルバートン計画(プラン)と呼ばれている。

 

(一番の出資者が、地球同盟でも大西洋連邦でもなく、オーブとアズラエル財閥というのが何とも滑稽だが……)

 

 

 

ハルバートン()()が、MSという新機軸の兵器に否定的な軍上層部(悪い意味で保守的)から受けが悪いのは実は原作通りだが、原作より幾分元気で立場が悪くない……筈なのは、バックにMSを全肯定してるアズラエル家(財閥)や、ワタシやギナ兄たちサハク家がトンネル会社やダミー会社を通じてオーブ資本をながしてるせいもある。

まっ、なにを言いたいかと言えば……

 

「遠慮せず、使えそうなものは受け取ってくれ。アークエンジェルに簡単に沈まれて困るのは、こっちも同じだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラクスを混ぜた途端、「軽め」の意味が変わってしまった件について(挨拶

ある意味、重くなったとも言える罠w

コラボの方で第1話からドミニオンが出てきたので、こっちでもちょろっと名前だけ出してみました。
もう建造が始まっていて、アークエンジェルの運用データも組み込まれるようですが……早速、むったんが売約済みでござったw

そして重要なのは、カガリが時折見せる謎の「姉の気遣い」のせいで、キラがこの場(貴賓室)におらず、今の所……

カガリ→まさか弟とマリューが「そういう関係」だとはつゆほども思ってない(原作知識の弊害)

マリュー→まさかキラの双子の姉が、”オーブのとっても偉い人”だとは思っていない

という喜劇が……w







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第049話:”こういう形で原作再現は出来ればしたくなかったんだが、仕方ない場合もある byカガリ”

なんかこっちを投稿するのは随分と久しぶりって気が(^^
とりあえず、今回でアークエンジェルとの邂逅は終了……ですが、なんかカガリが心情的な意味で、ラクスに借りを作るみたいですよ?




 

 

 

「ほほう。”アルテミス”でそんな立ち回りをな」

 

「まさに大暴れですわね♪」

 

上の二つは、ギナ兄とラクスがアークエンジェルの”アルテミス”での海賊じみた行動を聞いた時のリアクションだ。

やっぱ、仲良くね?

 

(それにしても……)

 

ワタシ自身は『原作再現? ナニソレ美味しいの?』的なノリで原作ブレイクしまくってる自覚はあるが、

 

(まさかアークエンジェル側までそうだったとはね……)

 

まあ、これで益々”アルテミス”に行く意義はできた訳だが……

 

(それにしても、GAT-X207(ブリッツ)の襲撃はなかったのか……)

 

どうにも、その辺も原作と違いそうだな?

単純なタイミングの()()だったら良いんだが……

 

「それで、どのくらい補給できたんだ? ユーラシア連邦の基地じゃあ、水/食糧/武器弾薬/燃料、全てが満足にっていう訳にはいかなかったろ?」

 

「水と食料と燃料の類は、どうにか地球に降りれるまでは何とかなりそうですが、武器弾薬に関しては、正直少々厳しいですね。何しろ、完全な共通規格という訳ではありませんので。ローエングリンやゴットフリートなどのエネルギー兵器はどうとでもなりますが、実弾兵装は不足気味です」

 

ナタルの言葉はわかりやすいが、少し補足説明がいるか……

”地球連合”っていうのは大西洋連邦/ユーラシア連邦/東アジア共和国が主軸となってまとまった寄り合い所帯っていうのは知ってると思うが、実は発足したのはC.E.70年。つまり、去年の話だ。

その発足理由っていうのも、どう考えてもUCガンダムの”ラプラス事件”並に中身が怪しい同年2月5日の”コペルニクスの悲劇”がきっかけだというのだから、笑うに笑えん。

 

じゃあ、その前はどうだったかと言えば……上記の三大勢力は、周辺国や友好国も巻き込んで、熾烈な軍拡競争を繰り広げてたというのが実情だ。

分かりやすく言えば、大西洋連邦/ユーラシア連邦/東アジア共和国は『三すくみの冷戦構造』という様相だった。

 

蛇足ながら、我らがオーブと大西洋連邦が未だに蜜月的な良好関係を続けられているのも、何も”再構築戦争”以前の日米同盟の関係が続いてるからや、その再構築戦争での日本の”消滅”と、それに対してとった米国の行動だけが理由じゃない。

往年の日米兵器共同開発時代を思い出すようにオーブは、再構築戦争後の軍拡競争にガッツリ食い込み、大西洋連邦と二人三脚で軍備を整えてきたって背景がある。

例えば大西洋連邦の水上艦、デモイン級/アーカンソー級とオーブの原作ではイージス艦として書かれていた、この世界では自衛隊時代の名残で防空護衛艦というジャンルにある”フルタカ型”の電子装備や兵装類はほぼ共通だ。

同じ船に例えるなら、まや型とフライトIIAのアーレイバーク級の近似性と言えば、イメージしやすいか?

 

だから、少なくともこの世界線では『GAT-Xシリーズ』は、何も『()()()()()()()()()()()()()()()()』のだ。

故にオーブ国民に関してはGAT-Xシリーズの共同開発は、オーブにとって久方ぶりの『超巨大兵器共同開発計画』と受け入れられている。

実はGAT-Xシリーズは核であり要ではあっても、『ハルバートン計画(プラン)』の一部なのだが……オーブ人の認識だと、”アークエンジェル”(とついでに”ドミニオン”)は『お客さんに発注され委託建造した船』であり、どちらかと言えば共同開発というより『巨額受注』の類という雰囲気だ。

 

 

 

そんな訳で、1年前までまともに共同戦線張ることなんてなかったユーラシア連邦の、それも辺境と認識されてる基地が、大西洋連邦から売却あるいはライセンス生産契約を結んでいるアガメムノン級でも使うような一般的な物ならともかく、最新鋭戦艦の武器弾薬の類が十分備蓄されてるわけはない。

 

(それに仮にあったとしても、満足に搬入する時間もなかったろうしな)

 

「完全に補填できる訳じゃないが、こちらで融通できるものは可能な限り融通しよう」

 

まあ、上記のような様々な理由でアークエンジェルとイズモの武装はほぼ同じ、そして今回の出航では不測の事態が想定されたので”軌道ステーション(アメノミハシラ)”を出る段階で、多めの武器弾薬を積み込んできたからな。

 

「心より感謝します」

 

んー? さっきから艦長がやるべき事を副長のナタルがやってるような気がするが……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「だが、仮に船を万全の状態にできたとしても、あるいは多少”GAT-X105(ストライク)”を強化できても……現状の戦力で、ザフトの追撃を振り切れるのか? 向こうは強奪した残り4機のGAT-Xを戦力化して、既に投入してるんだろ?」

 

マリューとナタル、両名共に渋い表情で押し黙ってしまった。

なるほど。現実が見えているようで何よりだ。

 

「ギナ艦長、ここはオーブが一肌脱ぐしかないんじゃないか?」

 

「ほう……何やら愉快なことを思いついたようだな?」

 

はあ……そう楽しそうな顔をされても困るんだが、

 

「ザフトの阿呆どもの前に、”アークエンジェルより価値のある()()”をちらつかせてやればいい。連中が嫌でも追いかけたくなるような、な?」

 

こんな所で、しかも妙な形で原作再現はしたくなかったんだが……他にこれといった手も、私の頭では思い浮かばんし。

 

(どっちにしろ、ラクスには一度プラントに戻ってもらわねばならん訳だしな)

 

「そうやって、イズモに誘導しアークエンジェルの尻から引っ剥す、か?」

 

「ああ」

 

まあ、当たり前だが当たり前だが当たり前だがワタシが何を言わんとしてるのか察したラクスは……

 

「うふっ♪ カガリ様ったら、”ワタシの宝”だなんて☆」

 

言ってねーからな?

 

「お前が”プラントの宝”だってのは否定はせんよ。だから悪いな、ラクス。お前のモラトリアムはもうすぐ終わることになりそうだ」

 

「うふふっ。どうかお気になさらずに。委細承知ですわ♪」

 

まあ、そういうことならラクスの好意に甘えさせてもらうとしよう。

 

(なら、次はこのおいてけぼりになってるお嬢さんたちにも説明しないとな)

 

ギナ兄の表情から察するに、ワタシが何を考えたかは理解しただろうが、どうせ説明なんて面倒なことはしてくれないだろうからな。

 

そしてワタシは、『アークエンジェルが無事に地球まで逃げおおせられる”()()()()()()策”』を告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、それはアークエンジェルとイズモが再び別れてからしばらく経ってからの、格納庫の一幕だった。

 

 

 

「キラ、これ凄いよ」

 

そうコックピットでセッティングを行ってるキラに伝えたのは、最近整備員のツナギが様になってきたカズイだった。

 

『何が?』

 

「エネルギーゲイン関係のパラメータ、チェックしてみなよ」

 

『えっ? うそ、30%以上電力量が増えてる!』

 

「これが”パワーエクステンダー”の力だろうね。あと、各関節に電力回生システムも組み込んだから、多少なりとも燃費はよくなってるはずだよ?」

 

『ありがとう。カズイ』

 

「いいよ。それよりさ、キラ。キラの平均戦闘時間と戦闘パターンから、消費電力のシミュレーション・モデルを出してみたんだけど……今回の電力保有量/消費電力改善で、10%程度の各部モーター駆動力アップと出撃に持っていけるエネルギー系装備、今より一つ増やせそうだよ?」

 

『それってもしかして、”シュベルトゲベール”?』

 

「”アグニ”じゃなくてそっちを直ぐに選ぶあたり、キラだなぁと」

 

そう苦笑するカズイ。

この世界線では相対的未来の話になるかもしれないが……キラと言うと”フリーダム”系による「マルチ・ロックオン・ファイヤー」が代名詞のような部分があるが、実は砲撃戦より格闘戦の方が得意で好むとする説がある。

 

『そ、そうかな?』

 

「そう言うと思って、”シュベルトゲベール”のレーザーガン部分、使えるようにしといたよ」

 

実は大型レーザー対艦刀”シュベルトゲベール”の柄には、小さなレーザー刃も発生させられるレーザーガンが仕込まれている(シュベルトゲベールの意味は、ドイツ語の”剣銃”でこのレーザーガン部分まで含めて名前の由来となっている)。

しかし、初期段階では試作品故に調整が万全でなく封印されていたが、どうやら調整が終わり封印解除に成功したらしい。

 

『あっ、それは嬉しいかも』

 

「良かったじゃん。これで、またマリューさんを守りやすくなったんじゃない?」

 

『うん! 重ねてありがとう』

 

「いいって。さて、俺は”アグニ”の改良プランでも立てるかなっと。”こんなこともあろうかと”ってセリフ、言ってみたいし」

 

 

 

少年達の戦いの日々はまだ続く。

願わくば、それが少しでも苦難が和らぐことを祈って……

例え、それが無理な相談だとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そして、〆がカズイという美学(挨拶

まあ、「目指せ! マードックさんの後継者」みたいな立ち位置の子ですし(^^

アークエンジェル勢の補給と微強化も終えたところで、ラクスを餌にクルーゼ隊を釣り出すため、イズモは一路”釣り場(アルテミス)”へと向かうようですが……
あれ? 何か忘れてるような?

???:「くらい……さむい……ひもじい……」

まあ、そんな感じの話になるかもと(^^



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第050話:”たまには、ホッコリほのぼのネタも良いよな~♪とは思うが、まあワタシがいる以上はそうはならんだろうな(達観)”

何とかどうにかこうにかたどり着きました50話♪
これも、応援してくれた皆様のお陰です。
ありがとうございました<(_ _)>

さて、記念すべきアニバーサリー回ですが……ちょっと柔らかい話と、そして、ちょいエロくない意味での少々ハードな描写、そしてラストは……?


 

 

 

「キラ・ヤマトが来ていたのか?」

 

アークエンジェルが光学映像で捉えられなくなったあたりで、ワタシにそう声をかけてきたのは、言うまでもなくカナード・パルスだった。

 

「ああ。まあ、イズモには乗艦しなかったがな。あっ、『お姉ちゃんだよ』をやるのはワタシが先だからな? お前の『お兄ちゃんだよ』はその後だ。順番は守れよ?」

 

「誰がするか!」

 

本日も無駄に元気な弟で何よりだ。

最近、血色も良いし、肌や髪の色艶も申し分ない。

きっと、良い食事とベッドの上も含めた適度な運動が功を奏しているのだろう。

 

あっ、稀少(レア)なガネっ娘キャラ兼お世話係兼マッサージ/ベッド運動担当のメリオル・ピスティスが、ドヤ顔でサムズアップしてらーな。

こっちもサムズアップで返しておくか。ドヤ顔はせんが。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「そうですか……いよいよラクスを、返すのですね?」

 

「流石にいつまでもイズモに置いておくわけにもいかないだろ? まさか、いきなり亡命させるわけにもいかんだろうし」

 

一応、今回の決定を最近妙にラクスと仲のいいフレイにフォローを兼ねて伝えたところ、予想はしていたが何となく浮かない顔をされてしまった。

 

「もしかして、寂しいのか?」

 

ツンデレの()があるフレイには、効果的なセリフだろう。

 

「そ、そんなわけありません! むしろ、ようやく帰ってくれるのかと清々しますわ」

 

予想通りの返し、ごっつあんです。

あと後半、明らかに勢いが衰えたな? まあ、指摘はしないが。

 

「それに”恋敵(ライバル)”は減ってくれた方が……」

 

何かブツブツ言ってるが、ツッコんではやらんからな?

 

「名残惜しい気持ちも分かるが、今は残されたラクスとの時間を楽しんでおけ」

 

「楽しんでませんから! 断じて! ただ……」

 

「ただ?」

 

「ちょっとこのままシミュレーターで負けっぱなしなのが悔しいだけですよーだ」

 

ハイハイ。理想的ツンデレ乙。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「はぁ……もうすぐ、この芋ようかんも食べ収めですわね。残念でなりませんわ」

 

そこかよ。

ラクス・クライン=腹ペコキャラでも定着させたいんかい。

まあ、どちらかと言えば雑食系腹ペコ娘ってより甘味専門なんだが。特に和菓子を好むってか?

 

「いや、例え戻らなくてもオーブに帰るまでは食べ収めだからな? もうストックねーから」

 

栗羊羹までひっくるめて目の前にいるピンクの暴食宇宙生物に、もふもふとほぼ食べつくされましたとさ。

丸っこくなく女、それも美人の姿をしてる分、タチが悪いよな~。

怒るに怒れん。

 

「そうなんですの?」

 

「実はそうなんだ」

 

どちらともなく、ワタシ達はプッと吹き出し、

 

「単純に遊びに来るのか、今度こそ本気の亡命なのか、それとも普通に移民するのか知らんが、お前さんがオーブに来たら、思う存分、心行くまで食わせてやるよ」

 

「確か、カガリ様お気に入りの甘味処、そこの自家製だったかしら?」

 

「ああ。黒兎庵(こくとあん)というのだがな、再構築戦争前からある中々の老舗だぞ? 名前の通り置物の様に動かない黒いウサギが代々のマスコットだ」

 

”ごちうさ”に出てきそうな店だが、直接的なつながりはないはずだ。

年代が違いすぎるし、それにあそこの婆ちゃんが、年取った千夜とかだったらちょっと……いや、かなり嫌だ。

まあ、実際名前が違うことは確認済みだが……

 

(だが、実際に元軍人が開いているBAR&カフェや、ロップイヤーのうさ耳ハーブティー喫茶が同じ町内にあるんだから、オーブも侮れん)

 

まさか、ワタシ以外にも転生者とか居た、もしくは現在進行形で居んのかねぇ~。

 

(居るなら居たで、首根っこ掴んで引きずり出し、泣こうが叫ぼうが仕事手伝わさせてやるとこなんだが……)

 

”ごちうさ”の再現する前に、オーブの運営手伝えとな。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、お前がオーブに来たらどこを案内してやろうかと考えてな」

 

「うふふっ♪ 楽しみにしてますわね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

『不運にも乗船が()()()()に襲撃されていたラクス・クライン、オーブの軍艦に無事救助される』

 

の報は、国際救難チャンネルを通じて、電磁波のみならずレーザー通信なども用いて全方位に発振。その情報は、瞬く間に世界に拡散した。

 

同時にその現場に()()()()()()()()()オーブ国防委員、カガリ・ユラ・アスハ(まあ、ワタシなのだが)は、以下のような声明を発表した。

 

 

 

 

 

先頃、我が国が保有するスペースコロニー”ヘリオポリス”は、ザフトと思われる勢力に襲撃され崩壊し、プラントが事あるごとに主張する

”血のバレンタイン”を上回る民間人死傷者数

を出した。

だが、現時点において両国が公式な見解を出してない以上、この場で殊更、物事を荒立てるつもりはない。

国民感情を考慮するならば、”10億人殺しのシーゲル・クライン”の娘であるラクス・クラインを害するという選択肢も確かにあるのだろう……

 

だが、ワタシは断言する!

我が祖国、オーブ連合首長国は、そこに住まう愛すべき民は、そのような蛮行を望まぬと!!

例え相手が宣戦布告もせずに他国の領土を踏み荒らし、無辜(むこ)の民を虐殺するような破廉恥極まりない武装組織にシンボルとして担ぎ上げられた歌姫であろうと、彼女が”()()()()()()()”である以上、()()()()()()()()()()()()()()は相応に接するべきなのだ!

 

民よ! かつての日本の魂を引き継ぐオーブの民よ!

我らは、在りし日に世界の如何なる国より平和を望んだ国民の末裔として、先祖に、散っていった英霊達に恥じる行為は、断じて行ってはならぬのだ!!

 

故に、ワタシはラクス・クラインをプラントに返そう!

確かに私の行動を偽善と、あるいは別の言葉で非難する者もいるだろう……

だが! だからこそ、誇り高き民の一人として、人道と己の良心に従い()()()()()()を故郷へと返そうではないかっ!!

 

 

 

 

 

声明ではなくこれじゃあ演説?

いいじゃないか。オーブ人が納得できればそれでいいんだからさ。

とりあえず内容を要約すれば、

 

『テメェらみたいな野蛮人と違って、文明人のワタシらはちゃんと民間人は生かして返してやるんだよ。阿呆が』

 

ってことだ。完全にプラント/ザフトDisりだな。

まあ、肝なのはプラントを国家、ザフトを軍だとは絶対認めん事。

あと、コーディネイターだのナチュラルだのという単語は決して入れてやらん事だ。

 

どうにもプラント/地球連合を問わず、この戦争をコーディネイターとナチュラルの種族間闘争にしたい奴が多そうなので、それに対するちょっとした意趣返しも兼ねている。

 

(まあ、ここまで煽れば食いついてくれるだろうが……)

 

これで無反応とかだったら、流石に打つ手ないぞ?

 

あっ、言い忘れていたが引き渡し場所は、向かってる先の”アルテミス”の近辺宙域座標を指定してある。

要するにアークエンジェルを追いかけてるなら、逆戻りしなければならないってことだな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、それは程なく”アルテミス”が光学センサーでなら確認できようという位置に着いた時だった。

 

「救難ビーコン? それも大西洋連邦の? こんな所で?」

 

「ソキウス。ニュートロンジャマーの影響のせいかかなり微弱ですが、間違いないでソキウス」

 

んー? どういうことだ?

 

「まあいい。確認しろ」

 

そして、光学センサーが捉えたのはフェイズシフト・ダウンを起こした、壊れかけのRadio……じゃなかった。壊れかけの灰色ボディでキュートな、

 

「は? なんでこんなところにGAT-X207(ブリッツ)が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリは、実は扇動者(アジテーター)としての資質も高い説(挨拶

ホント、この女(?)は前世で何やってたんでしょうね?(^^
神様が転生させたかは分かりませんが、覚えてない部分は相当ヤバかったんで、転生させた何者はカットオフしたのではないのかな~と。

キラ・ヤマトの存在が段々軽くなってきてる気がするカナードに、ちょっとわずかながら誤差に範囲でもラクスとの別れが少し寂しく見えなくもないフレイ、芋羊羹や栗羊羹にありつけなくなるのが残念そうなラクス(ヲイ。それでいいのか歌姫?

まあ、カガリが無自覚に口説きまくってるので(笑)、そのうち出てくるでしょう……という前に、イベント発生!

果たして二コルは無事なのか?
時間的にも死んではいないでしょうが、安否は気にかかるところです。
次回は、その辺りがメインになりそうな……?


重ねて、応援ありがとうございました。
この短い時間で50話まで書けたのは、お気に入り登録していただいた皆さん、高評価をくださった皆さん、感想を書いてもらえる皆さんのお陰です。

いつ終わるかわからない物語ですが、これからも、どうかよろしくお願いいたします。


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第051話:”二コル・アマルフィはファウストを追体験するか?”

今回はちょっと謎めいたサブタイを(^^

「あれ? なんかおかしいな?」「何か変だな……」ってN君の雰囲気が出てれば良いな~と。

一部、グロ表現があります。戦争だから仕方ないとはいえ、ご注意ください<(_ _)>





 

 

 

夢を……夢を見ていた……

 

ボク……ボクは誰?

 

ボクは二コル。二コル・アマルフィ。

両親から、「そうあれ」と生み出された、いや作り出された子供(コーディネイター)

 

歳をとりにくい愛らしい容姿とピアノの才能……両親が望んだものを持って生まれたボクは、父様からも母様からも愛された。

そして、MSの操縦技術を含む戦闘技術と悪運……特に父様や母様が望んでいなかった才能のせいで、ボクはこうして宇宙を微睡ながら、はっきりしない意識のまま漂っている。

 

”アルテミス”に近づいた時……何かよくわからない爆発に巻き込まれて、ブリッツは大破した。

 

ミラージュ・コロイドとフェイズシフト装甲は併用できない。

その時、ミラージュ・コロイドを展開していたから、まともに爆発に飲み込まれて……でも、ボクは生きている。

 

ボクは不運かもしれないけど、悪運もあるみたいだ。

誰も意識してなかったけど、ボクが乗っていた”ブリッツ”には、他のGAT-Xシリーズにはない装備があった。

ミラージュ・コロイドを利用したステルス機能もだけど、おそらくはそれとセットの”ソフト・コールドスリープ・システム”だ。

 

多分だけど……ブリッツはステルス仕様の試作機だから、何らかのアクシデントでロストした場合に備えての装備だと思う。

 

代謝を極限まで落として酸素の消費を抑える……人工冬眠装置。

 

だから、ボクは起きているわけでも完全に眠っているわけでもない、生死の間にいるような……曖昧で、不確実な微睡の中に居た……

 

だけど、ここは……

 

「くらくてさむい……」

 

まるで、氷漬けの棺……

なんか、やだな。

このまま死んじゃうのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、やがてボクは思い知ることに事になる。

この微睡の中の冷たくて(くら)い緩慢な死こそが、もしかしたら最後の救済の機会だったんじゃないかって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、ヘリオポリス襲撃犯。ゴキゲンな目覚めか?」

 

まだぼんやりとした覚醒の中で、きっと多分目覚めてるボクの視界に映ったのは金色の髪がひどく印象に残る、震えがくるような獰猛な笑顔を浮かべた()()だった。

 

「おっと、まだ完全に目が覚めてるって訳じゃないな? だけど、これだけは理解しろ」

 

スッとその少年は目を細めて、

 

「お前が拾われたのは”()()()()()()”だ。お前達がぶっ壊してくれた”ヘリオポリス”の持ち主の、な」

 

すると少年は、益々笑みの獰猛さを増やしながら、

 

「確か”血のバレンタイン”の死者は、24万3721名だったな?」

 

”ぱんっ ぱんっ ぱんっ”

 

その少年は、唐突に拍手をしだした。

その響きは、軽やかなはずなのに妙に陰鬱な気がした。

 

「おめでとう! お前達が我らが”ヘリオポリス”で殺した民間人の数は確実にそれを上回るぞ? 良かったじゃないか! お前たちは、コロニー襲撃でも地球連合を超えたぞ?」

 

ああっ、わかった。わかってしまった。

ボクはきっとここで終わってしまうんだ。

 

 

 

「悪いがお前を楽に死なせてやるつもりはない」

 

だよね。

ボク達は確かに殺した。

だから……

 

「ボクを拷問にかけるの?」

 

それもいいかもしれない。

 

「聞きたい情報もないのに、なんでワタシがお前程度にそんな面倒なことをせねばならん?」

 

そっか。

なら、手っ取り早く、

 

「ならボクを処刑するの?」

 

「お前ごときを嬲り殺しにしたところで、誰の腹いせにもならん。あまり自分を高く見積もるなよ? 小童(こわっぱ)

 

そっか、

ボクには、確かにそんな価値はないのかもしれない。

 

「だが、その代わり……」

 

少年は、どこからかコードの付いた、

 

「ヘルメット?」

 

を取り出した。

 

「お前には、()()()()()()()()()()()()()()()を追体験してもらうとしよう。まあ、精々ファウストの気分でも味わってくれ。お供の悪魔はいないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

『やめて……もう、やめてよぅ……もう。やだよぉ』

 

自傷を避けるため拘束服に弛緩剤というコンボで、ベッドの上でろくに身動きできないはずの二コル・アマルフィだったが、泣きながら今動かせる限界まで身じろぎをしようとしていた。

 

「せっかくの機会だ。お前らが……ザフトが生み出した地獄をたっぷり堪能しとけ」

 

『ぼ、ボクが、ボクが落としたわけじゃない! ボクが殺したわけじゃないよ!!』

 

「だが、お前はザフトだ。お仲間と親玉がしでかしたことを知っておくべきだろう?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「どんな趣向だ? これは?」

 

とは、捕獲したザフトの赤服の様子を見に来たギナ兄である。

 

「新手の拷問ですの?」

 

こっちはモラトリアムの最後の時間を満喫中らしいラクス。

 

「まさか。ただのフルダイブVRだ。ゲームとかでもあるだろ? それとも、プラントじゃメジャーじゃないのか?……って今はニュートロンジャマーの影響で、どこも無線接続は難しいか」

 

有線接続できる環境じゃなければ、今じゃソシャゲ一つまともにできない世の中だったな。

 

「ただ、”エイプリルフール・クライシス直後から数ヶ月の、地球の総人口が10%減る羽目に陥った世界”を追体験してもらってるのさ」

 

飢えと寒さと疫病の蔓延……法と秩序と規律と道徳が地球上のいたるところで破綻、崩壊した世界だ。

 

「オーブの……ではないのだろう?」

 

まあ、核分裂に電力供給を頼り切っていなかった我が国は、あの時期ほとんど影響がでなかったからな。

 

「とある筋から資料用に取り寄せた”ユーラシア連邦や東アジア共和国の領土内で撮られた無修正輸入版”の動画を、VRドキュメント用に加工したものだよ。今度、教材にでもしようと思ってさ」

 

正確にはワタシは発注しただけで、実際に製作したのはオーブ文部省のプロジェクト・チームだが。

 

無修正輸入版とか書くと、ついエロいものを想像してしまいそうになるが……エロというより、「どちらかと言えば」という枕詞をつけなくても普通にグロだ。

 

少なくともワタシは、「幼児の性器や尻を刃物で裂いて、そこに()()()()を突っ込み満足げに涎を垂らしながら腰を振る男」なんぞ見ても、欠片ほどもエロいとは思わんな。

 

社会性動物の社会性の崩壊……そうなれば、人は容易く獣以下、”ゴブリンスレイヤー”に出てくるゴブリン程度の存在になり下がる。

人類史を紐解けば、残念なことにこのような事例は別に珍しい話じゃない。

 

最近で言うなら、ほんの70年前に”再構築戦争”で世界の随所で見られた風景だ。

日本列島でも、な。

 

「”ヘリオポリスで自分が踏み潰した人間やビームで焼いた人間”を見せる前のウォームアップのつもりだったんだが、これは予想以上の反応だな」

 

さて、どうしたものか。

 

「カガリ、お前は何がしたいんだ? 洗脳とかそういう類にも見えん」

 

そうだな……

 

「本当はただ確かめたかっただけなのかもしれない」

 

「確かめたかった? 何をだ?」

 

ラクスのいる前で言うセリフじゃないがと思いながら彼女をみれば、「お気になさらずに」とでも言うように微笑んでいた。

 

「いや、ブルーコスモス辺りが言うように、プラントのコーディネイターが、本当に()()()()()()()()()なのかどうか、とな」

 

もし、二コル・アマルフィがこれらの風景を見て、「子供に遊び半分に踏み潰されてるアリの群れを見た反応」をしたのなら、ワタシは『共存は不可能』と判断し遠慮なく如何なる手段をとってもプラントを住民ごと全滅させるつもりだったが……

 

「それで……カガリ様、結論は出ましたの?」

 

少しだけ心配そうなラクスに、

 

絶叫と嗚咽と慟哭(このリアクション)を見る限り……どうという事はない、どこにでもいる、呆れるほどの()()()()()だな」

 

「うふふ♪ そうですか♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリは、甘い娘じゃありませんでした(挨拶

いや~、この話が50話アニバーサリー回にならなくてホント良かったw
書いてる途中、めっちゃダウナーな気分になりましたし(^^

二コル君の待遇、皆様の予想通りでしたか?
彼は、甘い言葉や抱擁で懐柔される訳でもなく、かと言って暴力や拷問を受けるわけでもない。
ましてや、洗脳なんてとんでもない!

ただただ、「ザフトがやらかした、プラントの住人が目をそらせてる結果」を、逃げることも許されず、延々と見せ続けられるという処遇となりました。

さて、彼はこれからどうなっていくのでしょうね?

カガリは、”この程度の地獄”は歯牙にもかけません。
ラクスは、この地獄絵図を見ながらでも普通に芋羊羹が食べれます。

ラクスじゃ参考にならないゆえの二コル君ですが……彼は、「これまでの二コル・アマルフィ」でいられるのでしょうか?



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第052話:”果たして「それ」は一つの救済の形……なのか?”

エピソード・二コルのとりあえずのラスト回です。

この少年は果たして救われたのか……皆さんの目で確かめて頂ければ幸いです。




 

 

「ボクじゃない……ボクじゃないんだよぉ……ボクが落としたわけじゃないんだ……」

 

独房の隅で膝を抱えて小刻みに震えながらブツブツと呟く二コル・アマルフィの姿は、一見すると哀れを誘うが……

 

(まあ、この程度だったら問題ないだろう)

 

自己弁護できるようなら、精神は摩耗していても擦り切れてはいない。

心の防御機構はしっかり動いてるうちは、正気と言っていい。

 

「よお、襲撃実行犯。元気そうで何よりだ」

 

「ひっ!?」

 

”ちょろ……じょろじょろじょろ……”

 

ありゃま。ワタシの顔を見た途端に股間にシミができてあっと言う間に床に異臭のする水たまりができたよ。

 

(美少年のおもらしプレイとか誰得なんだ?)

 

もしかして、ギナ兄得とかか?

 

「流石に、そこまでビビられるような事をした覚えはないんだがな?」

 

そうワタシは苦笑するも、二コル可愛い顔はますます恐怖で引きつり台無しに……とは言えんか? ショタ系美少年の怯え切った表情がまたたまらんという御仁もいるだろう。

 

(それにしても、そこまでのもんだったか?)

 

一応、二コルに見せる前に私も見たが、精々『どんなに技術を持ち、宇宙を生活の場にしたところで、人類のやることはいつの時代も変わらんなー』ぐらいの感想しかわかなかったぞ?

 

ちなみにその時、ふと『懐かしい』という感覚が頭をよぎり、”ルワンダ”、”モザンビーク”、”コンゴ”なんてアフリカの(C.E.では廃れてしまった)地名やら国名が即座に浮かんでくるあたり、前世ではワタシはよっぽどヤバい仕事でもしていたんかねー。

 

一応、今は……”カガリ・ユラ・アスハ”として生きている今なら、そこまでヤバい事はしてない筈なんだが。きっと、多分、メイビー。

 

(その辺りの判断は、ワタシの死後に後世の歴史家の判断に丸投げるとして……)

 

「替えの下着は後で届けさせてやる。だが、その前に質問に答えろ」

 

「な、なに……?」

 

どんなに怯えられてもコミュニケーションを言語で取れるなら問題はない。

 

「ある理由があり、もうすぐこの船はプラント……いや、”()()()()()()”と接触する。おそらくは、お前さんの()()だ」

 

「ひぅ!?」

 

「……戻りたいか?」

 

いや、まあ戻りたいなら、ラクス返すついでにオマケにつけてやらんこともない。

無論、GAT-X207(ブリッツ)はつけてやれんが、

 

(知りたいことは、とりあえず知れたしな)

 

それにこの有様じゃあ、ザフトの赤服(エース)として戦場に返り咲くのは難しいだろう。

脅威にならないのなら、無理にイズモに置いておく意味はない。

だが、

 

「嫌だっ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「いやだいやだいやだいやだいやだっ!! あんなところに戻りたくない! 虐殺者の一員なんかに戻りたくない!」

 

ああっ、そういう反応になったか……

 

(予想できた選択肢の一つではあるが、)

 

ボクを……ボクを戻さないで……お願いだから、ボクを捨てないでよぉ……

 

思わずため息を突きたくなった。

「ニュートロンジャマー投下はともかく、お前だってヘリオポリスじゃその手を血で汚しただろ? いまさら何をぬかす」と罵りたくなる気持ちも皆無ってわけじゃないぞ?

 

(だが、それを兵に問うのは筋違いも甚だしいからな)

 

例えば、二コル・アマルフィが面白半分にヘリオポリスの民間人を撃ち殺してたのなら、ワタシだってこういう判断はしないだろう。

だが、

 

(今の二コル・アマルフィに?で繕う余裕はない)

 

なら、別の道を提示するのもやぶさかではないってもんだ。

 

この船(イズモ)で捕虜を取る気はない」

 

”びくっ!”

 

我ながら甘いとは思うが……

 

「だが、オーブは国の政策やら今後必要とされるだろう”政治的な理由”で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()は歓迎する方針だ」

 

「……えっ?」

 

ゆっくりと顔を上げた二コルに、

 

「だが、勘違いするな? お前さんお前さんお前さんが”ヘリオポリス”で民間人虐殺の片棒を担いだのは事実だ。当然、オーブ本国には今回の件で死んだ者の遺族はいる。お前が受け入れられる道は果てしなく厳しい……」

 

ぶっちゃけ、オーブに着いた途端、遺族から敵討ちと銃撃されても文句は言えんレベルだ。

無論、そんな無様な真似を為政者として許すわけにはいかんが。

 

「えっと……あの、お名前は?」

 

「ん? ああっ、名乗ってなかったか? ワタシは”カガリ・ユラ・アスハ”、呼ぶときはカガリでいいぞ?」

 

「では、カガリ様……」

 

二コルは瞳に不穏な”揺らぎ”を宿らせながら……

 

「ボクは、何人ザフトを殺せば、オーブの人たちは受け入れてくれますか?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「……お前、自分で何を言ってるかわかってるのか? ついこの間まで仲間だった者を、その手にかけると言ったんだぞ?」

 

「やだなぁ」

 

二コルはそのままへらりと笑い、

 

「わかってますよぉ。だから、なおのこと、ザフトだった僕の手で殺さなくちゃいけないじゃないですか?」

 

「続けろ。何故だ?」

 

「だってザフトは10億人も地獄に叩き落としたんだ。なら、ザフトがこの世に居ていいはずもないですよね?」

 

ほう……そう来たか?

 

「それがお前の選択でいいのか?」

 

狂ってる、狂ったわけじゃない。それは狂気と呼べる類のものだとしても破綻した思考の末に出来上がった物ではない。

それは、罪の意識の中で生み出された、相応に整合性のとれた”れっきとした結論”だ。

だからこそ、ワタシは否定できない。

 

「もちろんです!」

 

「プラントはどうする?」

 

「10億人と6000万人じゃ釣り合いとれないですよね? でも、”エイプリルフール・クライシス”で死んだ地球のコーディネイターが大体同じ数だから……」

 

「それは駄目だ。二コル・アマルフィ」

 

「えっ?」

 

ここだけは是正しとかないとな。

 

「ワタシは我が愛する国民と軍に、”民間人虐殺者”の汚名を着せさせるつもりはない。オーブがプラントやザフトと同じところまで堕落することなど、このワタシが許さん」

 

あと、ユラ助だの東ア共だのと同等になるつもりなどない。

 

「わかったな?」

 

「はいっ!」

 

とはいえ、直ぐにどうこうという話ではなく、

 

「お前をどうプロデュースするかは決めてないが、おそらくすぐ戦場に立つ事はないだろう。まず求められるのは、プラントやザフトの糾弾……非難決議の材料やら触媒の作成だろうな」

 

理想家すぎる親父殿はともかく、オーブの実権を掌握する中枢部の政治家や実務官僚はワタシから見ても無能でも怠惰でもない。

そりゃそうだ。歴史的背景から、オーブはその生存と存続のために努力を怠ることはできない。

 

そういう連中なら二コル・アマルフィを一人の兵として使うより、まずよりプラントやザフトに大きなダメージを与えられる政治利用を選ぶはずだ。

 

(”上官に唆され、民間人殺しの片棒を担がされ、その罪の重さに耐えられなくなって脱走した元ザフトの赤服”……まあ、そんなところだろう)

 

「えぇ……」

 

「そう残念そうな顔をするな。戦う機会は、お前さんがその気ならそう遠からず訪れるだろうさ」

 

おそらく、次に用意される役割は『戦う反ザフトの旗印』とかかな?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

二コル・アマルフィとの尋問を終え、部屋を出ると……

 

「らしくないな?」

 

そう声をかけてきたのは、壁に背を預けていたギナ兄だ。

まあ、そう見えるだろうな。

 

「苦手なんだよ。ああいう繊細な少年は」

 

男はやっぱりタフな方がいい。

肉体的にはどうでもいいが、心はちょっとやそっとじゃ壊れない強靭さが欲しいな。

例えば、”むったん(アズラエル)”なぞ、ベッドでは涙目になることは多い(個人的には、世界一ベッドの中の涙目が似合う男だと思ってる)が、翌日にはケロッとしてバリバリ仕事してるしな。

 

「正面から現実を受け止めた姿は好感持てるが、原型はとどめられなかったようだな」

 

「罪悪感か?」

 

「それこそまさかだ。ワタシは人の決意や決断に口出しできるほど、傲慢な性格はしてないんだ。生憎な」

 

「どの口が言うんだか」

 

そう微苦笑するギナ兄にタブレット端末を押し付け、

 

「悪いが、二コル・アマルフィの亡命手続きはギナ兄がやっておいてくれ。好みだろ? ああいう、ショタっぽい天使系少年は?」

 

「愚妹、お前は俺をなんだと……」

 

「ワタシは男も、おそらく女もイケる口だが、ギナ()()殿()は『()()()()()()』だろ?」

 

まあ、そういう事だ。

オーブは法的に結婚できないだけで同性愛自体には寛容……というか、緩い国だし正直、珍しい趣味や性癖じゃない。

 

「お前は……まあ、否定はせんが」

 

まあ、ギナ兄は見るからにソッチ系だしな。

ロン毛の黒髪と相俟って、バンコラン的と言えなくもない。

 

「優しくする役目は任せた」

 

ワタシには向かん役割だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やったねギナ兄! 傍小姓(かぞく)が増えたよ♪(挨拶

やっぱり、ギナはビジュアル的にソッチだよなぁ~と(^^

さて、二コル君は狂ったかと言われると……正直、はっきりとは断言できません。
どう転んでも、”アッシュ・グレイ”のようにはにはなれないでしょうし。
だけど、同時に「知ってしまう前の二コル・アマルフィ」には戻れないでしょうね。

さて、彼にはどんな未来が待っているのか……?
せめて、信長と蘭丸的なものであってくれればと。

さて、次回からは新エピ。
果たしてクルーゼ隊が先か? あるいは”アルテミス”が先か?


 


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第053話:”元・心優しい少年とC.E.時代の妲己”

サブタイで大体誰と誰がメインかわかる仕様ですw




 

 

 

「ラクス・クライン!? 何故、貴女がここにっ!?」

 

「わたくしにも色々と都合があるのですよ。ところで、アマルフィ様はザフトを殺すと覚悟を決めたようですわね?」

 

「ええっ」

 

ドーモ、カガリサンデス。

ただし古事記には載っていない。

特にネタがなかったんで、GAT-X207(ブリッツ)つながりで、「ニンジャをスレイしちゃう」方面の挨拶をな。

ちなみに隣で立っているのは、スレイじゃなくてフレイだが。

 

一応、状況を説明すると”アルテミス”を()()()()するまで暇、もっと言えばザフトがお迎えに来るまでさらに暇なので、

 

『せっかくの機会ですので、アマルフィ様とお話したいですわ♪』

 

とラクスらしいイカレタことを言いだしたので、面白そうなので許可を出した。

 

 

 

ギナ兄に押し付けた後に何があったのかを詮索せんし、二コルが少々歩きずらそうにしてたり、椅子に座るのが少し辛そうだったり、医務室で浣腸薬やワセリンやポラギ○○ルっぽい薬を処方してもらったりしてたようだが、生憎とワタシが感知するところではない。

 

(後ろは何かと大変だからな)

 

ワタシも実践した身(一応、掘られる側だ。掘ったことはないとは言わんが)としてモノ申すが、何の下準備もせずにAss Holeに突っ込んで平気なのはフィクションの中だけだからな?

尻から普段、何をひり出すのかを考えれば、何が問題かは一発でわかるだろ?

いくらコーディネイターでもケツから出すものまでコーディネイトされてるわけじゃないし、病気に強いたって限度はある。

オーブ厚生省の統計では、コーディネイターだって耐性のない感染症には普通に罹患するからな~。

 

夢ぶっ壊すようで悪いが、美女だろうが美少女だろうが美幼女だろうが、物理的なあるいは医学的な意味で腹の中とか詰まってる中身は……まあ、匂いは食ってる物に強く依存するとは言っておこう。

 

ついでに言えば、よくほぐさんと裂けるぞ?

 

とりあえず、二コルがギナ兄を見つめる視線が妙に熱っぽかったりもしてるが……特に現状に問題はなく、主にギナ兄のお陰で精神の安定(?)は取り戻しつつあるとはいえ、流石に二人だけで合わせるという選択肢はない。

 

という訳で、万が一に備えてワタシとフレイが同席してるのではあるが……

 

「ならば、”ザフトのラスボス”たるこのわたくし、ラクス・クラインも屠ってみせますか?」

 

いや、自分でラスボスとか言うなや。

 

「そ、それは……」

 

「ダメダメですわね」

 

ラクスはいっそ白々しいため息を突き、

 

「”鬼と会わば鬼を切り、仏を居会わば仏を切る”……アマルフィ様、いえ、二コル・アマルフィ。貴方が選んだのはそういう道、修羅道ですのよ?」

 

……なんで、ラクスが”花の慶次”の一節を(そら)んじてるのかなんて絶対にツッコんでやらんからな?

 

「なら、目の前にいるわたくしをザフトと判断したならば、迷いや躊躇いを捨て一刀のもとに切り伏せる覚悟を持たねば、この先やっていけませんわよ?」

 

そりゃそうなんだが……間違ってはいないんだが、

 

(あー、二コルの奴、完全に飲まれちまってるな)

 

ラクスが最近、時折放つようになった気がするピンクの妖気っぽい何かに。

 

「二コル・アマルフィ。わたくし、プラントに戻りましたらこれまで以上にザフトに協力的になるつもりですわ。少なくとも、表から見える部分では」

 

「なっ!?」

 

「ちょっとアンタ!?」

 

驚くフレイの手を強く握り、

 

「お姉様……?」

 

「最後まで聞いてやれ」

 

下手をすれば太陽系最強級の曲者が、意味もなくこんな事を言い出すはず無いからな。

 

「そうすれば、ザフトはますます先鋭化し、志願兵も増えることでしょう。さて、二コル・アマルフィ……急激に巨大化し、制御できないほど先鋭化した組織ほど、油断も驕りも付け入る隙もできるとは思いませんか?」

 

「そ、それは……」

 

「きっとプラントの中で深く考えもせず戦争に、ナチュラルを殺す事に全力を傾注しようとする()()()は、熱に煽られ、綺麗に(あぶ)り出されてくるでしょう」

 

ラクスの事だ。このくらいはそりゃあ考えるだろうな。

 

「それこそが、”カガリ様の望み”ですわよね?」

 

半ば確信を持った目で私を見るラクスに、

 

「まあ、大体合ってるな。それとも、ワタシはこう返した方がいいか?」

 

ワタシはコホンと咳払いし、

 

”戦争だ。戦争だ。待ちに待った大戦争だ”と」

 

「きっとその大演説の全文を奏でるときのカガリ様は、とても雄々しく凛々しく素敵なのでしょうね♪」

 

そう嬉しそうに言うなって。

 

「やらんからな?」

 

今の所、その予定はない。

この先もきっとない。多分、おそらく、メイビー……多分。あっ、ループした。

 

「カガリ様」

 

ラクスは満面の笑みで、

 

「そういうのを”ふらぐ”というのですわよ♪」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

とりあえず、暇つぶしにかこつけたこのエンカウントは、大して波乱もなく終了した。

結局、ラクスにとってただの興味本位だったのかもしれないが……

 

「カガリ様、時にあの”値千金のお宝映像”はお土産にいただけるのですか? できれば、通常版とVR版を」

 

「そりゃ欲しければ”ハロ”に入れてやるが」

 

ラクスはうふふっ♪と楽しげに笑いながら、

 

()()()に会って確信が持てましたわ♪ 人を選びますが、思った以上に寝返らさせるのは簡単そうですわね?」

 

「こ、この”ピンクの魔女”めっ!!」

 

おーい。フレイ、それは流石にストレート過ぎだって。

 

「せめて、”C.E.時代の妲己(だっき)ぐらいにしとけって」

 

イメージはアニメになった方の”封神演義”か? いや、そっちはそっちでどうなんだと思わなくもない。

ただ、八雲藍は好みだぞ?

 

「どっちも褒め言葉ですわ~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな”()()()()()()()()()”から数十時間後……

 

 

 

「さあ、ガルシア・ジェラード……お前の罪を数えてみろ?」

 

まあ、数えられるほど少ない罪ではないだろうが。

 

「お、おい……」

 

”ロウ・ギュール”、覚えておけ。撃っていいのは、撃たれる覚悟がある者だけだ」

 

ギナ兄、ナイスフォロー♪

 

「まっ、そういう訳だ」

 

ワタシは私物で持ち込んだ本来の愛銃(リボルバー)、携行性に問題があるから”ヘリオポリス”では持ち歩かなかった”TRR8 for C.E.”の引き金にかけた指に力を入れ、

 

「Hasta la vista, Baby」

 

”パァァァーーーン……!”

 

音速を軽々超えて飛んだ0.357インチのジャケッテッド・ホロー・ポイント弾が、その日、一人のユーラシア連邦人の頭を砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリ様は、実はバックも使えた(挨拶

そして、もしかしてアズ……いや、なんでもない。
ただ、「僕の彼女はベッドヤクザ」 by むったん

二コル編はとりあえず終わりと前回書きましたが、やっぱりラクスとの対話がないとしまらんな~と(^^

そして、何やらいろんな意味で不穏当な会話が……



ガルシア君、受難。
これもザフト(クルーゼ隊)が来るのが遅いのが悪いんやw

次回は、「どうしてガルシアは死んだのか?」の解明回かな?
ついでに、なんでロウ・ギュールがこんな場所に居たのかも。



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第054話:”カガリ様ったら……どれだけ、わたくしを夢中にさせたら気が済みますのかしら?”

今回のサブタイは作中の一文を抽出したものですが……どういうシチュエーションで言われたのかが問題でして(^^

あと、このシリーズ過去最高の長さかもしんないです。






 

 

 

時間は、少しだけ遡る……

 

 

 

 

 

 

 

さて、そもそも壊れかけの宇宙要塞”アルテミス”に、ワタシ達が本格的に攻め込むきっかけになったのは、”ロウ・ギュール一味”潜入(マリーン)ではなく”MBF-P02(レッドフレーム)”の譲渡を取引材料に技官として「公式に出向」させているジュリ・ウー・ニェンからの一報だった。

 

 

 

「ほう……”ロウ・ギュール一味”が、”アルテミス”に向かうか……」

 

すぐにピンときた。

ガンダムSEEDの外伝である”SEED ASTRAY”の中に、こんなエピソードがある。

 

GAT-X207(ブリッツ)の襲撃で、全方位光波防御帯「アルテミスの傘」を失った”アルテミス”は、著しく落ちた防御力を補うために傭兵部隊”サーペントテール”に依頼を出す。

 

・そんな時、戦闘後の状況観察とあわよくばおこぼれにあずかろうと、ロウ・ギュール一味が”アルテミス”近辺に姿を現す。

 

・”アルテミス”の防御力喪失の咎を恐れたガルシア司令官は取り繕うための功を焦り、サーペントテールにロウ・ギュールが持つレッドフレームの捕縛を命じる。

 

・最初、リーダーの叢雲劾は「契約外の仕事」だと断るも、ガルシアはサーペントテールの一員であるイライジャ・キールを人質にとり強要する。

 

とまあ、大雑把に書けばこんな流れだ。

 

 

 

ツッコミどころは分かってる。

「傭兵なんぞ雇わず、ユーラシア連邦正規軍をさっさと引っ張ってこい」だろ?

だが、この時期のユーラシア連邦には、艦船はともかく機動兵器としてまともに投入できる宇宙用兵器はほとんどないんだな。これが。

 

実は、全方位光波防御帯(アルテミスの傘)は、宇宙戦力不足ゆえの苦肉の策という側面もある。

攻めることもできないが、攻めさせもしないと。

 

そして、現在のユーラシア連邦の戦闘艦群は、ザフトとの度重なる戦闘で大きく損耗している。

そんな最中、”アルテミス”付近を通る民間船から「通行料」と称して物資を強奪し私服を肥やすような(だが、その物資を換金した物の一部がユーラシア連邦軍の上層部にも流れている。だからこれまで処罰されていない)評判の悪い小物に出す兵力を用意できる余裕はない。

 

 

 

(だが、今生ではガルシアに”サーペントテール”は雇えない……)

 

もう、だいぶ前のような感覚はあるが、そう時間は経ってない話だが、サーペントテールには既に『ヘリオポリス崩壊で救助できた民間人や回収できたみたい物資などを満載した船団の”軌道ステーション(アメノミハシラ)”までの護衛任務(エスコート)』を依頼済みだ。

 

船団の速度から考えて、スケジュール的に今頃はようやく”アメノミハシラ”に着いた頃だろう。

こっちからの補給や、追加依頼であるテスト予定の装備の積込時間を考えれば、それこそ超光速航法の技術でも持っていたとしてもこの宙域に現れる事はない。

 

(まあ、連中はプロだ。こちらが裏切りでもしない限り、契約を違える事は無い)

 

ワタシとしては永続的な支援を交換条件に、可能な限りサーペントテールと長期契約(それもできれば独占契約)を結びたいところだが……

 

(とはいえ、独占は流石に無理か……)

 

傭兵なので当然といえば当然だが、一人の雇い主に長く使われるというのをあまり好まないような雰囲気があるからな。

互いに不必要に接近しすぎず、適度に距離を取った「縁が切れないように細く長く付き合う」のがベストか?

それはいいとして、

 

「サーペントテールでなくともMSを持ってる傭兵ぐらいは、普通にいるからな」

 

前述の”SEED ASTRAY”本編にも、ユーラシア連邦の重工業系大企業”アクタイオン・インダストリー”に雇われたジン使いの傭兵が出てくる。

 

(それと、ガルシアの裏で糸を引いてるのもアクタイオン・インダストリーだろうし……)

 

そもそも、ガルシアがなんでロウのレッドフレームを強奪しようとしたのかと言えば、「ナチュラルが一応は操縦できる()()()()M()S()」が欲しかったわけだしな。

 

前に少し話したかもしれないが……現在、ユーラシア連邦とアクタイオン・インダストリー社はMS”CAT1-X ハイペリオン”を鋭意開発中だ。

 

カナードと一緒に捕縛した宇宙戦艦”オルテュギア”には、その開発に必要なデータや一部部品が、乗員にも存在を隠されたまま搭載され、”アルテミス”に向かっていた。

 

だが、部品を設計図通りに組み上げたからと言ってまともに動くほど、MSは単純な兵器じゃない。

もしそうなら、大西洋連邦もオーブもとっくに戦力化できている。

 

(なら、その「動いている現物」を手に入れてしまえば、開発を短縮できると考えるのも自明の理……)

 

 

 

だからワタシは、ギナ兄にこう提言する。

 

「”アルテミス”に行く前に、ロウ・ギュールと連絡を取りたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

『姫様、どうしたよ?』

 

「だから姫様はよせ。ガラじゃない」

 

ロウ・ギュール一味が文字通り家として使ってる、大西洋連邦から払い下げの旧式輸送艦を改造した拠点船”ホーム”にワタシは、通信可能距離になると早速連絡を入れた。

 

蛇足ながら……ニュートロンジャマー影響下で、どうやって通信を取っているのかと言えば、一般的にはレーザー通信だ。

阻害物質が大気圏内に比べれば遥かに少ない宇宙空間では、有効な手段だ。

だが、レーザーは良くも悪くも指向性が強い。

傍受される危険性は低いが、逆に言えば無指向性の電磁波的手段に比べれば送受信ともピンポイントに近い作業が必要である。

 

航行中の船同士でそれは可能か?

船だけなら、通信相手がセンサー有効範囲内にいなければ少々どころでなく難しい。

だが、これを可能としてるのが、”固定施設を中継させること”だ。

 

よほど後ろ暗い行動をしてない限り、船は軍民問わず航法データを自動で三次元座標定点施設、古典的な宇宙灯台(電波灯台。今はレーザー通信基地局化/無人化されている場合がほとんど)や、オーブなら静止衛星軌道上にある軍民複合の多目的軌道ステーション”アメノミハシラ”がそれにあたるが……そこに、位置情報を一定の時間間隔で自動送受信し、航法データのやり取りをしている。

つまり、「動く船は動かない通信基地を中継し、互いの大まかな座標を把握することができる」のだった。

 

 

 

『なぬ? ユーラシア連邦の連中が、傭兵使って”レッドフレーム”を強奪する可能性があるって?』

 

「ああ。その可能性大だ。お前さん達も”アークエンジェルの大立ち回り”の話を聞いたから、”アルテミス”に向かってるんだろ?」

 

『まあな』

 

「あそこの司令は強欲の阿呆だ。そして今回、”アルテミスの傘”やら何やらを台無しにしたからな……処罰を逃れるためにはなんだってやるだろうさ」

 

ユーラシア連邦の性質上、今回の失点取り戻すには上納金+αはいるだろうからな。

特に完成状態のMSが手に入れば、アクタイオン・インダストリーがいくらでも金蔓になってくれるだろう。

 

『うげぇ~。確かにガルシアとか言ったっけ? 近くを通る民間船に”通行料”と称して金品奪い取る小汚い男だって話は聞いていたが……』

 

「それでロウ・ギュール……ちょっと提案があるんだが」

 

『どんなだ?』

 

「なあ……悪党相手には、イカサマも作法だと思わないか?」

 

『……詳しく聞かせろよ』

 

よし。食いついた(フィッシュ)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『それじゃあ、”アルテミス”近海で落ち合おう』

 

「ああ。じゃあな」

 

ガルシアが取ろうとするだろういくつかのパターン予測とその対処で話をつけ、ワタシはロウとの通信を切った。

 

(さて、少しは真面目な装備でも準備しとくかね~)

 

とはいえ、用意するのは私物の拳銃なんだけどな。

その名は”TRR8 for C.E.”。西暦時代末期にS&W社の高性能銃器制作部門”パフォーマンスセンター”が製造したタクティカル・リボルバー”TRR8”の現代(C.E.)リメイク仕様だ。

 

基本的に「44マグナム用の大型拳銃フレームに、使用弾を一回り以上細い357マグナムに置き換えたら何発装填できるか?」みたいなコンセプトは変わらず、リボルバー型拳銃なのに8発の357マグナム弾を装填できる。

オリジナルとの違いは素材かな? オリジナル素材の倍の強度をもつ極小重力環境下で生成されたスカンジウム系”無格子欠陥合金”製のフレームは、とにかく頑丈で軽量だ。

後は、シリンダーギャップを埋めるギミックも組み込まれている。

 

ちなみにワタシは、この銃ととびっきりのホットロードにした357マグナム(表記的には、”+P+P+”くらいか? 210グレインの弾頭を1500フィート/s以上の銃口初速で発射できるので、数値的には357レミントン・マキシマムと同等の威力)の組み合わせを好む。

オリジナルのTRR8でこんな強装弾をぽこじゃかと撃った日には、銃へのストレスで何発撃てるか心配になるレベルだが、そこは宇宙時代の素材工学の力で「なんともないぜ!」って感じだ。

 

「お姉様、随分大きな拳銃ですね?」

 

「まあな。お陰で隠し持つのはほぼ不可能だけど」

 

フレイを救出した”ヘリオポリス”で持ち歩かなかった、というか持ち歩けなかった理由がこれ、図体のデカさだ。

イメージ的には、映画”ダーティハリー”のハリー・キャラハンが使う”S&W M29”と大差ない。

ワタシの体格でこんなもんをショルダーホルスターに入れて肩から吊り下げていたら、例えジャケットを羽織っていても、不自然なふくらみで武装してるのが一発でバレる。

 

なので、コイツを持ち歩く場合はもう「ワタシは拳銃を持ってますよ」アピールが許されるシチュエーションで、しかも”早抜き撃ち(クイックドロウ)”ができるように西部のガンマンよろしく革製のレッグホルスターに叩き込んでこれ見よがしに持ち歩くようにしている。

 

「だが、対人戦には”TRR8 for C.E.(コイツ)”が一番だ」

 

「楽しそうですわね?」

 

とラクス。

 

「どういう訳だか、昔から鉄火場になると胸躍るんだよ。こればかりは性分だから仕方がない」

 

MS戦より、やっぱりワタシは肉眼で相手の顔が見える戦いの方が戦いの方が戦いの方が性に合うみたいだ。

 

「……カガリ様は、この世界が楽しいですか?」

 

「それなりに楽しんでるさ」

 

だから、ラクス……お前にも言っておかないとな。

 

「お前も生きてることを楽しめ」

 

「えっ……?」

 

「与えられる役割を演じるだけじゃ、つまらんだろ?」

 

カガリ様ったら……どれだけ、わたくしを夢中にさせたら気が済みますのかしら?

 

「ちょっとラクス! どさくさに紛れて何言ってんのっ!?」

 

う・ふ・ふっ~♪

 

 

 

またしても、仲良くケンカし始めたフレイとラクス。

この風景を見れるのもあと少しかと思うと、ほんの少しだけ寂しい気がした。

 

やれやれ。戦いの前だってのに、我ながら少し感傷的すぎやしないかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プラントの民を夢中にさせる歌姫は、とある女性(?)に夢中みたいですよ?(挨拶

あ~あ、カガリ……ラクスに免罪符与えちゃったよ(汗

多分、この何気なく放たれた……

「お前も生きてることを楽しめ」


「与えられる役割を演じるだけじゃ、つまらんだろ?」

シンプルな言葉が、ピンクの狂……ナンデモナイッス

とりあえず、ロウとつるんで()め手を使うっぽいカガリですが、果たしてどうなることやら(^^

どっちにしろ、ユーラシア連邦にとっては、ろくでもない結果にしかならなさそうですがw





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第055話:”敵が愚かなのはありがたいことなんだが、こうまで容易いと逆に罠を疑いたくなるのが人のサガ”

もう夜遅いですが、明日が休日なので、夜更かししてる誰か読んでくれることを祈ってアップ(^^




 

 

 

ワタシ事、カガリ・ユラ・アスハは、レーザー通信回線を繋ぎっぱなし(傍受状態)にしてあるロウ・ギュール一味の母艦”ホーム”と、ユーラシア連邦宇宙要塞”アルテミス”との間で行われた通信……そのあまりの無茶苦茶っぷりに、つい顔をしかめてしまう。

 

 

 

『だから! 俺達は”()()()()()()()()()()()()()()()()”で、”アルテミス”の被害調査に来たと言ってるだろうがっ!! ()()()()()()()()()()()()()()/()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だってあるんだっ!!』

 

『黙れ海賊風情がっ!! その公文書とやらも偽造したものに決まっておるわっ!!』

 

『誰が海賊だっ! ジャンク屋組合のマークが見えないのかよっ!!』

 

『ジャンク屋なぞ、所詮は宇宙の火事場泥棒だろうにっ! 海賊とどう違うっ!!』

 

いや、まあそれについてだけは全てではないが同意見(こいつの言葉に一部でも同意できるなんて、なんか嫌だなぁ)なんだが……それにしても、

 

(分かってはいたが、)

 

「ガルシア司令、バカ過ぎだろう」

 

予想以上に簡単に引っ掛かってくれたもんだ。

逆に簡単に引っ掛かりすぎて、もしかしたら罠じゃないかと不安になるくらいだ。

 

 

 

~回想~

 

 

ワタシがロウ・ギュールに提示した作戦は至ってシンプルだ。

 

・原作通りに”アルテミス”に近づき、ガルシアたちの目の前で”レッドフレーム”を見せびらかすように、あるいは挑発するように動かすこと。

 

『つまり、俺たちに囮になれと?』

 

「いんや。頼みたいのは、デコイの役目じゃなくて大物を釣り上げるルアーの役目さ」

 

確かに、目の前でレッドフレームをちらつかせただけならただの原作再現ではあるが……

 

「その際、必ず今回の観察任務(ミッション)は、『オーブ、それもワタシとロンド・ギナ・サハク、国防委員会二人の署名が入った”()()()()()()”がある』事を強くアピールしてくれ。誰も疑う余地がないくらいな」

 

と伝えてから、

 

「ああ、それともしガルシアがMSをよこせと言ってきたら、こう返して欲しいんだ。あのな……」

 

 

 

~以上、回想終了~

 

 

 

レッドフレーム(コイツは)は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だっ! やれるか!!』

 

そう。実際にはロウ・ギュールにレッドフレームを譲渡する気満々だが、建前的には『モルゲンレーテ社からMS機体開発のための供与』であり、所有権はモルゲンレーテ社にあることになっている。

一応、これにも意味がある。

『ジャンク屋風情に最高機密兵器をくれてやるなんて……』と言い出す奴が、左右を問わずに必ずいるからその対策という訳だ。

 

そして、モルゲンレーテ社ってのはオーブの国有企業であることは、国際的にも常識の範疇だ。

少なくとも、職業軍人で知らないバカはいない……と思いたい。

 

『それがどうしたっ! 命が惜しければさっさと置いて行けっ!!』

 

と益々ジンに乗った傭兵をけしかけるガルシア。

 

『だーかーらーっ! コイツはモルゲンレーテからの預かり物! バックにゃオーブが付いてるってのっ!! コイツを奪うってのは、まんまオーブに喧嘩売るってことなんだよっ!! アンタ、それ分かってるっ!!?』

 

器用に避けながら、そう怒鳴り返すロウ・ギュール。

『8』のサポートがあるとはいえ、やっぱ腕良いよな~。

 

そして、

 

「はんっ! あんな小国の何を恐れる必要がある!! 文句をつけてきたなら、そのまま捻り潰してくれるわっ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

はい。ガルシア君、アウト。

もう言い逃れはできないね?

 

「”ザ・ワン”、録画と録音は?」

 

「バッチリでソキウス」

 

(さてと、)

 

これでいくらでも外交上、マウントが取れる。

いつものようにユーラシア連邦とはまともに話なぞできないだろうが、

 

(大西洋連邦の頭の固い連中を納得させられれば問題はない)

 

それとガルシアにどこまでその自覚があるかは知らないが、将軍というのは軍の中でも特別で政治と無縁でいられる役職ではないんだ。

 

『聞くに堪えんな』

 

そう好戦的な笑みを”ゴールドフレーム改”のコックピットで浮かべているのは、毎度のこととはいえ”イズモ”の艦長席をワタシに丸投げにしたギナ兄だ。

 

「ギナ兄、お待たせだ」

 

ブリッジの中じゃないから別にいいだろ?

 

『待ちかねたぞ。愚妹』

 

愚妹は余計だっつーの。

 

「作戦指示は特にない。好きなように暴れて好きなように傭兵どもを蹴散らしてくれれば、それでいいよ」

 

『委細承知だ』

 

まったく……あの兄は、いつになったら「我慢」とか「表情に出さない」ってスキルを覚えるのかね~。

 

「んじゃあ……」

 

ワタシは大きく息を吸い、

 

「イズモMS隊、全機発艦セヨッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

きんぐくり~むぞん♪

とは言わないが、ギナ兄とチーム・ソキウスの奇襲で、一気に状況は我らが有利に傾いた。

ゴールドフレーム改に、組立ホヤホヤとはいえ”スリー”が操る”グリーンフレーム”、そしてジン・ハイマニューバ並みのスペックを持つオーブジンを操るソキウス達……ぶっちゃけ、負ける要素ないです。

 

(さて、”アルテミス”までの射線も開けたことだし)

 

特に砲撃の邪魔になる障害物も無しな上、こっちのMSが傭兵部隊を文字通り蹴散らしてる為、未だに発見された感じはない。

確かに、元々光波防御帯の防御力に頼り切った”アルテミス”の哨戒/警戒網は大したもんじゃなかったが、

 

(よほどこちらの奇襲に慌てふためいてると見えるな)

 

ならば、やることは一つ!

 

「ゴットフリート、1番から4番まで同調射撃、準備!」

 

まあ、いきなり”陽電子砲(ローエングリン)”使わないのは武士の情け……ではなく、これから突入戦やろうってのに、間口を広げ過ぎても面倒が増えるだけってことだ。

 

「目標、半壊した()()()ドッグ部分……」

 

そう、アークエンジェルが脱出の時、派手にぶっ壊した場所だ。

当然、”全方位光波防御帯(アルテミスの傘)”はまだ機能していない。

 

(もっとも機能していたら傭兵なんぞ使わないだろうけどな)

 

「全門斉射よぉーい!!」

 

アウトレンジから砲戦は、我らが日本人だった頃からDNAに刻まれた十八番(オハコ)

 

(とくと味わうがいい野蛮人共……!)

 

()エッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




”提督の決断”の最新作出ないかなぁ……(挨拶

”艦これ”もいいけど、たまにはコーエー系の硬派な第二次大戦物とかやりたくなります(^^

さてさて、今回の最大の殊勲賞は誰かと言えば……ガルシア君一択でしょうねw

オーブのひも付きだと言ってるのに強奪しにかかるなんて、まさにユラ助……もとい。ユーラシア連邦軍人の鏡!
いや~、流石に「あの国」の末裔ですなw

とはいえ、ガルシアって苗字はスペイン系が多いはずなんですけど、心は実態はともあれ大国指向の北国で育まれたのでせうなー。

とりあえず、”アルテミス”攻略は次回で終わる筈……終わるといいなぁ(^^



追伸
最近、仕事の関係で平日があまりに忙しい為、なるべく週末に頑張ろうかなーと思ってます(^^
思う存分に書けた連休が懐かしひ(泣



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第056話:”ケルベロスの紋章的な何か、そして積極的自衛権の行使”

いよいよ、宇宙要塞(アルテミス)攻略戦もたけなわです(^^




 

 

 

Q:近代以降における島嶼ないし沿岸部要塞攻略の基本、あるいは華と言えば?

A:艦砲射撃!!

 

 

 

という訳で、最強の陽電子砲(ローエングリン)は威力が強すぎるという理由で却下で、連装4基8門のゴットフリートと、ビームだけでは得られない物理的な爆発力を得るためレールガン(バリアント)を更なる打撃力に追加する。

 

アークエンジェルがぶっ壊したドッグを更に火力による力業で強制拡張工事し、ワタシことカガリ・ユラ・アスハに預けられた”イズモ”は、強襲揚陸艦でも近頃はやらない敵拠点への”突進(チャージ)”を敢行する!!

 

「ぶちかませっ!!」

 

と威勢のいい掛け声とは裏腹に、実は半壊と全壊の中間状態にある大破したドックへの乗り付けは、結構ジェントルだ。

 

当たり前だが、こんな戦いで船を傷付ける意味はないし、更には揚陸戦の主力、1個中隊編成の”オーブ宇宙海兵隊”の紳士諸兄に作戦前に負傷リスクを添付したくない。

 

そう、今回の主力は”イズモ”でもなければ、ギナ兄率いるMS隊でもない。

”ヘリオポリス”の崩壊後に救助艦隊に便乗してやって来て、ワタシたちと合流した彼らだ。

 

ナチュラル、コーディネーターを問わず屈強な男(一部、女)が居並ぶ海兵隊はいいぞー♪

C.E.時代のイカレたテクノロジーと日本人の血を引くオーブ人の怨念めいた執着が、重なり溶け合い融合して生み出された”強化人工筋肉内蔵式倍力装甲宇宙服”……、いやここは素直に声を大にして、

 

”プロテクトギア”

 

と呼ぼう。そう、あの”紅い眼鏡~”とか”ケルベロス~”とかのキーワードで出てくるあれだ。

ただし、オリジナルと大幅に違うのはカラーリングで、威圧感のある黒ではなく、オーブ軍が自衛隊から引き継いだ伝統の”OD”、緑系の”オリーブドラブ”だ。

実は原典でも、陸自仕様のプロテクトギアの設定ががあったりするのだが……

 

ともかく、これが公式な宇宙海兵隊の”戦場での一張羅(タキシード)”なのだ。

MSパイロット・スーツと比べても火力と防御力と機能性と拡張性と格好良さで圧倒しているこの”着る戦闘装甲車”を標準装備するオーブ唯一の部隊が、”宇宙海兵隊”なのである。

 

しかもこれ、機能性ではオリジナルを軽く凌ぎ、完全気密構造なのは宇宙服でもあるので当たり前だが、電力がある限り中は体表空調の快適仕様で、重量自体は恐ろしくあるが医療分野で鍛えに鍛えられ洗練に洗練を重ねられた内部に張り巡らされた強化人工筋肉のパワーアシストでしっかりサポート。

他にも、例えばゴーグルは多機能化されてVR/AR技術をふんだんに使った網膜直接情報投影式で、視野/視角は肉眼となんら変わらない。

「潜水夫の気分を味わえる」とされたオリジナルと比べたら、大幅な進歩だろう。

 

加えて武器もまた良い。

技術不足と軽量化の失敗で米軍が開発を放り投げた”XM29 OICW”をC.E.時代の技術でアレンジしたような代物で、多目的電子照準システムに、オーブ軍標準の6.5mm×47弾仕様の自動小銃(100連ドラムマガジンが標準!)と5連発弾倉の25㎜自動擲弾投射器(オートグラネーダー)を組み合わせた”64式多目的複合自動小銃(コンバインド・ライフル)”が標準装備だ。

一般歩兵にはそれでも少々重く大きいかもしれないが、いかつい宇宙海兵隊にはぴったりだろう。

というか、形からも特性からも中二スピリッツ溢れるめっちゃ”浪漫ウエポン”だ。

 

無論、武器はこれが標準ってだけで、サイドアームやナイフなんかも充実。爆発物やら何やらのオプションに、もっとデカイ銃だって火力増強で携行している。

性質的にまさに宇宙海兵隊ではあるが、装備や見た目を見てると、つい”現代版装甲擲弾兵(パンツァーグラネディア)”とか呼びたくなるな。

 

しかも、装甲宇宙服も複合自動小銃もバッテリー技術の大幅な進歩で、昔の栄養ドリンクのCMじゃないが、比喩でなく「24時間稼働可能(戦えます)」仕様だ。待機モードや省電力モードを併用すれば、もっと長時間稼働できる。

 

 

 

そして、要塞内部に突入する彼らの露払いを兼ねて、イーゲルシュテルンと比較的威力の小さなミサイルで、ドック内を掃討しておくことも忘れない。

所謂、”揚陸時の支援砲撃”だ。

 

(画面スクロール前に弾幕ばらまくのはシューティングの基本ってな)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

次々と揚陸する精鋭たちを見送るだけ……なんてこと、このワタシがするわけないだろ?

予備の女性用装甲宇宙服(プロテクトギア)を借り受け、中二仕様の64式複合小銃を片手に、腰のホルスターには私物の愛銃(TRR8)を叩き込み、

 

「”ザ・ワン”。暫くブリッジを頼む」

 

「了解でソキウス」

 

そう敬礼する”最初のソキウス”。

 

「お姉様、どうかご武運を」

 

そう心配そうな顔をするフレイに、

 

「カガリ様、どうか楽しんできてくださいませ♪」

 

笑顔で小さく手を振るラクス。

この辺りに性格の違いが出ていて面白い。

 

「精々、油断しないことだな」

 

「お前まで見送りに来てくれるとは意外だぞ? よ」

 

本当に意外なんだが、どういう心境の変化だかカナードまでわざわざブリッジまで見送りに来てくれたのだ。

 

「弟言うな。せめてカナードと呼べ」

 

「へいへい」

 

ちなみに、カナードとおつきのガネっ娘(メリオル)、そしてギナ兄の私室で固唾を飲んで状況を見守ってるだろう二コルは今回は”イズモ”でお留守番だ。

亡命は既に略式で受理されているが、かと言って直ぐに戦場に立って良い分けない。

我が国は、寝返ったばかりの国外人を即座に戦場に投入するほど、軽率でもなければ余裕がないわけでもない。

 

大体、カナードも二コルも政治的に微妙過ぎるのだ。

扱いから考えて、まともに戸籍もなさそうなカナードは(相手がユーラシア連邦以外なら)まだしも、二コルは明らかにプラントのパワーエリートだしな。

こんな所で命を落とされても、実につまらん。

 

「そいじゃあ、まあ……」

 

口の端が吊り上がるのが自分でもわかった。

 

「一狩りいこうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだっ!!? これはっ!? この状況はっ!?」

 

その日、もはや狼狽を隠す余裕もなくなったユーラシア連邦少将、ジェラード・ガルシアは混乱の極みにあった。

 

『我が名は”ロンド・ギナ・サハク”。オーブ国防委員であり、同時に”イズモ”の臨時艦長だ。ユーラシア連邦宇宙要塞”アルテミス”司令官、ジェラード・ガルシアに告ぐ。貴官の先程からの()()()()()()()たるロウ・ギュールに対する発言と行動から鑑み、オーブに対する敵対行動と判断する』

 

唐突に入った通信より、彼にとっては最悪の意味での状況の劇的変化は始まったのだ。

 

『故に我が国は、()()()()()()()()使()をここに宣言する!!』

 

 

 

その宣言と同時に、まさに奇襲と言うタイミングで”レッドフレーム”を捕縛せんと取り囲んでいた傭兵MSは、瞬く間に駆逐された。

 

だが、ガルシアの不幸はここで終わる訳はない。

程なく突然、要塞全体を揺らす振動が襲い、

 

「今度はなんだっ!?」

 

「こ、こちらの探知距離外からの砲撃かと……」

 

「報告は正確にせよっ!!」

 

「何者かの砲撃で、ドックが大破した模様ですっ!!」

 

「防衛システムはどうしたっ!? なぜ動かんっ!?」

 

「未だ修復終わってません!!」

 

これもアークエンジェルの後遺症、あるいは置き土産と言うべきか?

もっとも、ロウ・ギュールに夢中すぎて(?)、どうやらガルシアは自分が何故傭兵を雇う羽目になったか忘れてるようではあるが……

 

「た、大変です司令っ!! 何者かが要塞に突入してきますっ!!」

 

「何者とはなんなんだっ!?」

 

状況から考えてオーブしか有り得ないだろうが、そんな簡単な結論さえも最早ガルシアには出せないでいた。

 

 

 

要するに、この時点で彼の運命は最早決まっていたのだ。

なぜなら、装甲宇宙服に身を包んだ金髪の死神が、今まさに発令所に近付きつつあったのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プロテクトギアはリリンが生み出した素晴らしい造形物だと思う(挨拶

要塞攻略戦、終わりませんでした(^^
というか、趣味に走りすぎというか……中二スピリッツに不足を感じないオーブの兵器開発チームに喝采をw

そして、緑のプロテクトギアに身を包んだ1個中隊に制圧されるユーラシア連邦の紳士淑女たちに憐憫を(ヲイ
というか、仮に生き残ってもPTSD(トラウマ)必須のような?

書いておいてなんですが、この状況で「積極的自衛権の行使」とは詭弁というか……凄まじい拡大解釈かなっと(^^

ギナ兄:「わざわざジャンク屋がオーブのひも付きだと宣言してるのに、先に手を出した阿呆どもが悪い」

ハイ、ソウデスネー。







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第057話:”意外な相手とエンカウント・バトル”

そう言えば、ここのところMS戦とか書いてないなぁ~と(ガンダム二次なのに……
あとバトルモードのギナ様も(^^

という訳で、ガルシア君とのお楽しみシーン(?)の前に、エクストラ・イベントです♪





 

 

 

「雑魚ばかりと思いきや、それなりに見るべきものはいるという事か?」

 

その時、ロンド・ギナ・サハクは好戦的な笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ロウ・ギュール、あるいは”レッドフレーム”という疑似餌(ルアー)に寄ってきたのは、何れも()()()()()雑魚ばかり。

鹵獲品だか横流し品だか知らないが、ジンを操る事はできるようだが、傭兵を名乗る割にはその動作はキレが足りておらず、攻撃も単純で稚拙。期待外れもいいところだとギナは思っていた。

 

(現状では、MSを入手し動かせるだけでも、傭兵という商売は成り立つということか?)

 

正直、”ゴールドフレーム改”の相手に相応しい標的がいるようには見えなかったが……

 

「なんだ。妙に(イキ)が良いのがいるではないか」

 

そんな中に、現状ではとてもレアな”()()()”はいた。

 

ジン・アサルトとは珍しいな!」

 

オーブ軍では”フルアーマー・ジン”とも称される『アサルト・シュラウドを装備したジン』は、ギナも資料映像など存在することは知っていたが、動いてるソレを生で見るのは初めてだった。

この時点では……いや極めて少ない生産数から逆算されるエンカウント率から考えれば、紛れもなく大戦全期を通じてのSSR級の機体だ。

これで操縦者の腕がイマイチなら興ざめもいいところだが、

 

(喜ばしい誤算とでも言えるか?)

 

どうやら、ギナのお眼鏡にかなったようだ。

レアなMSと腕が立ちそうなパイロットの組み合わせは、なるほど確かに闘争本能を刺激するに相応しい。

 

「このジン・アサルトは我が獲物に定める! 他の雑魚共はお前(ソキウス)達で分け合うがよい!!」

 

”ゴールドフレーム改”の性能を多少は引き出せねば勝てぬかもしれぬ相手の登場に、ギナは心躍らせるのだった。

 

(それにしてもの()()()()()()()()とは、また珍奇な得物(エモノ)を使っているな……)

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「なんなんだコイツっ!?」

 

その日、原作の叢雲劾から立ち位置がスライドしたように”()()()()()アルテミス”防衛の依頼を請け負っていた”カイト・マディガン”は、エクストラ・ミッション『()()()()()()()』をその報酬に釣られて気安く請け負ってしまった、数時間前の自分の迂闊さを心底呪っていた。

 

謎多きコーディネイター専門の傭兵養成機関(コーディネイト失敗作の漂着先)”サーカス”(もうこの時点で凄まじく胡散臭く後ろ暗い機関だと言うことが分かる)出身のマディガンは、自分の腕……操縦技量に絶対の自信を持っていた。

 

そりゃそうだろう。まだMSがザフト以外じゃ物珍しいこのご時世、MSを動かせるだけでも一目置かれるのに、MSを扱うようになってからの歴史は浅くとも過酷さで知られる”サーカス”の脱退試験を生き延び、晴れて自由の身となったのだ。

このジン・アサルトもその時の餞別代りにあてがわれたのだが……

 

「クソッ! 上には上が居るってことかよっ!!」

 

そして現在、”見たこともない()()M()S()”の奇襲をくらい、苦戦を強いられている真っ最中であった。

 

「こなくそっ!」

 

それにしても、実に皮肉な図式ではある。

この時間軸では相対的未来にあたり、この原作とは異なる流れを取る世界線でもそうなるとは限らないが……

 

現在、”ゴールドフレーム改”が、アスカ主任を筆頭とする”イズモ”搭乗のアストレイ開発スタッフ(マッド・エンジニアーズ)の不断の努力でストライカーパックっぽく搭載している”ゲイボルグ”は、彼が乗るかもしれない”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”に搭載されるそれと、基本同じ物だ。

ついでに言えば、この世界線ではありえないが……ギナ自身もカーボンヒューマンというイレギュラーな形で復活し、同僚となったりするのだが。

 

「くっ!」

 

そんな未来が来るのかは不明だが、今のマディガンは機体の性能差もあり押されまくっているのが現状のようではある。

だが、彼はしぶとさに定評のあるカイト・マディガン。

ここで諦めるという選択肢はない!

 

(ならば、奥の手!)

 

「”アサルト・シュラウド”、パージ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ほう……やるではないか」

 

獲物に逃げられたというのに、その時ギナは上機嫌に笑っていた。

そう、強制解除されたマディガン専用ジンの”アサルト・シュラウド”には各所に相手の光学センサーを一時的にオーバーフローさせる強力な閃光弾や、チャフ/フレアーなどの各種ジャミング装備が組み込まれていたのだ。

さすがのギナも、その一見自爆にも見える捨て身じみた攻撃に虚を突かれ、

 

「なるほど。敵ながら天晴(あっぱれ)。良い引き際だ」

 

 

射程外に飛び去ってゆく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を入れたジン”を見送っていた。

それなりに敬意を払う相手と判断したのか、はたまたただの気まぐれか?

追撃をかける気はないようだ。

 

(悪くない腕ではないか。少し調べておくか?)

 

新進気鋭のフリーのMSパイロット、カイト・マディガンの名をギナが知るのはしばし後の事だが……

 

「ソキウス達よ! 奴の残したアサルト・シュラウドを回収せよ! 技術班への良い土産になるだろうからな」

 

返ってくる複数の『ソキウス!』という返事……残りの傭兵たちを苦も無く”()()”したソキウス達に満足を感じる。

 

だが、この時点でザフト謹製のアサルト・シュラウドを入手できたというのは、それなりに大きな意味がある。

何しろこれでも、立派な『量産型アストレイの強化フラグ』だ。

 

「これも”戦利品”ということにしておくか」

 

そう”ゴールドフレーム改”が手を伸ばしたのは、マディガン去り際の刹那、トリケロスのビームサーベルで()()()()()()「拳銃型装備を握ったままの右腕の肘から先」だった。

ロンド・ギナ・サハクは、ただ黙って敵を見逃すほど、詰めの甘い男ではなかったのだ。

 

というか、地味に「MSの腕を拾う」という細やかな原作再現の1コマだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もまだまだ甘い……もっと、もっと強くならなければ」

 

カイト・マディガンが「初めての1対1での大敗北」、それに起因する口惜しさと反省を鎧と愛銃と右腕を失ったカスタム・ジンの中で苦く噛みしめてる頃……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あいつ、なんだか気にいらない……」

 

二人分の体液が染み込んだシーツを頭から被り、ギナの計らいで見れるようになっていたリアルタイムの戦闘映像(ゴールドフレーム改のカメラ映像だろう)を見ながら、二コル・アマルフィはそう呟いていた。

 

愛し合ったベッドの上に半裸でちょこんと座りながら、その視線は唯一この宙域から脱出に成功したらしいMS後ろ姿を捉えていた。

 

危険はないと判断された二コルは、もはやなんの拘束もされていない。

だが、同時に彼はこの部屋……ギナの私室を、理由がない限り出たいとは思っていなかった。

あるいは彼の安息の場所は、今の所もうここしかないのかもしれない。

クンとシーツの匂いを嗅いで、

 

「ギナ様とボクが混じり合った匂いだぁ……」

 

恍惚とした表情を浮かべる。

その瞳に蕩けるような……深く(よど)んだ光を(たた)えながら……

 

「ギナ様、この場所はボクがきっと守るからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギナ兄って、「ひなたのつき」とか好きそうだよな~(挨拶

ちなみに「ひなたのつき」とは、知る人ぞ知るとある()()()()()()()()(笑)のゲームで……ま、まあ、可愛いのは確かデスヨ?(滝汗

因みにオーブではVR化され再販、更に続編まで作られ紳士淑女に大変喜ばれてるという噂が……

とりあえず、ギナ様ってばまた新しい男にちょっかいかけてw(ナニカチガウ
基本的には、ガルシア君は叢雲劾 with サーペントテールを諸事情で雇えなかったので、代打で雇われた1人が、新進気鋭で売り出し中のフリーのMS乗り、”カイト・マディガン”だったようです(^^

マディガンが再登場するかは未定ですが……二コルには色んな意味で要注意だぞっとw




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第058話;”カガリ・ユラ・アスハの憂鬱……と、はちこま!!”

本日は諸事情によりお休みを取りました(^^
なので、取り敢えず書きあがったそばからアップなのですが……

サブタイにある「憂鬱」なんて言葉が死ぬほど似合わないカガリですが、彼女(?)だって中身はともかく外見は女の子(胸は平面に近いケドネ)、時には思い悩むときもある……みたいな話です。
多分、きっと、メイビー。


あと、ちょっとだけ原作キャラが……








 

 

 

うむ。カガリ・ユラ・アスハだ。

うむ。

うーむ……

 

えっ? テンション低いって?

おう。ワタシの愚痴を聞いてくれるってか?

そりゃ助かるな。

ワタシも誰かに愚痴りたい気分だったんだ。

 

いやさ、今生きてる現実(リアル)を物語に置き換えるなら、登場人物の一人であるワタシにだって「オチ担当」の役回りが来ることぐらい覚悟していたさ。

だけどさ……

 

『カガリ様、オサガリクダサイ。掃討開始イタシマス』

 

と意図的に無機的な雰囲気が持たされた合成機械音声(マシーンボイス)と同時に、発射される50口径機銃弾(厳密には使われる実包は古式ゆかしい12.7㎜×99弾ではなく、大西洋連邦/オーブでは現在一般的な重機関銃弾である12.5mm×105弾。だが、語呂がいいので未だに便宜上、50口径と呼ばれることが多い)の発射音と、ほぼタイムラグ無しに千切れ飛ぶユーラシア連邦の紳士諸君()()()肉片の数々……

 

「このオチは、流石にないんじゃね?」

 

ワタシの横で元気いっぱいに、50口径の機銃弾と25㎜グラネード、そして時折液体装薬式の120mm短砲身/低反動ガンランチャーをぶっぱしてるのは、強いて言うなら……

 

(小型化した”HAW-206”だよなぁ……どう見ても。攻殻機動隊に出てきた)

 

それも、元ネタは暴走して市街戦繰り広げた脳味噌入りじゃなくて、マニアックな”2nd GIG”の方に出てきたODカラーの自衛隊仕様タイプ。

要するに、護衛としてワタシに張り付きながら弾をばらまいているのは、小型無人多脚戦車ってことだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

正式には、”68式自己判断型無人自立多脚汎用火力支援ユニット”、ペットネームは”ハチコマ”……オーブ軍、実は元ネタ隠す気ねーだろ?

軍首脳部によれば、「68式の8とコマンドユニットを意味するコマを組み合わせた」との事だが、流石に苦しすぎるわ。

 

とりあえず、50口径の直撃に弾種を問わず耐えられる防弾仕様のボディから生えた四脚を基本に、米軍のXM312の発射速度をM2重機関銃並みにした現代(C.E.)版みたいな50口径重機関銃と、同じくXM307じみた25㎜全自動擲弾発射機(オートグラネーダー)を併載したアームユニット×2を左右に備え付け、そして曲射だけでなく直射も可能なXM326(ドラゴンファイア-II)の子孫のような120㎜自動装填式液体装薬迫撃砲を原型とした120mm短砲身低圧/低反動砲(ガンランチャー)が旋回砲塔で上部に1門と、オリジナルとは結構違うが歩兵の火力支援としては十分というか……むしろやりすぎ感溢れた機体ではある。

 

オーブ軍歩兵部隊では最精鋭と言ってもいい宇宙海兵隊は、贅沢なことに中隊規模で4機の超低重力環境対応仕様の”ハチコマ”が配備されている。

そして、そのうちの1機をワタシに貸し出された……というか、押し付けられたのだ。

 

 

 

いや、今回の”アルテミス”突入戦、ワタシが参戦する絶対条件として提示されたのが、この『”ハチコマ”の同行』だった。

いやさ、これでもアスハ家の人間で国防委員の一人、国家の重鎮だって立場は理解してるよ?

 

「だけど、こりゃねーべさ」

 

”ハチコマ”の自立型AIは、喋り方はぎこちないくせに本職の戦闘方面では優秀過ぎて、ワタシが発砲する前に火力に物を言わせて瞬く間に敵兵を薙ぎ倒してしまう。

 

なら、”ハチコマ”が入れないような狭い進軍路を進めばいいのだが、ワタシに指示された……端末に送られたナビゲーションマップに表示されるのは「可能な限り”ハチコマ”が通れるルート」だけだ。

流石にマップを無視して進んで、要塞の中で迷子じゃあ格好悪すぎる。

 

(おのれレドニル・キサカ……ワタシの性格と思考を読み切りおって!)

 

そう、今更だが今回の宇宙海兵隊1個中隊を取り仕切ってるのは、原作ではカガリ・ユラ・アスハの子守から戦艦の艦長まで務める万能な人、レドニル・キサカだ。

 

階級は原作よりは低い”三佐(=少佐)”だが、幾分年齢が若そうだからそのせいもあるのだろう。

だが、その階級の低さゆえに今回の中隊長を組織工学的な無理をせず遂行できる(自衛隊の流れを組むオーブ軍では、普通中隊長は一尉=大尉もしくは三佐が務めるのが一般的とされている。特に精鋭部隊ならば三佐は普通)という訳だ。

 

そして、何の因果か今生でも、キサカとは何かと腐れ縁で、ちょっと前まではワタシのボディガードとして外遊に同行する事がちょくちょくあった。

 

別に嫌いでも苦手でもないし、むしろ実直な人柄は好感持てるが……本人が優秀なうえに付き合いがなまじ長いせいで、ワタシの思考を読まれてしまうので少々やりづらい。

 

 

 

『敵性反応、消去(でりーと)完了シマシタ』

 

「ヲイ……レアな極小重力環境戦場での血沸き肉躍る銃撃戦(ガンファイト)は、どこへ行った?」

 

ワタシのお楽しみは何処へ消えた?

 

『キサカ三佐ニ封殺サレマシタ』

 

誰が気の利いた、かつ的確な返事を返せと言った!?

なんか、悲しくなってくるではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ワタシは”64式複合小銃(中二ライフル)”を一度も発砲することなく、要塞発令所に続く一本道まで来てしまった。

 

ここから先は通路が細いので”ハチコマ”は入れないが、

 

「当然、”()()”は完了ってか?」

 

キサカ達宇宙海兵隊が先行してるのに、ワタシに撃つべき獲物が残ってるわけなかった。

いや、むしろ通路と発令所を区切ってるだろう装甲扉の前でワタシを待っているあたり、まだ配慮されていると考えるべきか?

 

 

 

「お待ちしておりました。カガリ様」

 

「キ~サ~カ~。オマエ、少しは主の為に獲物を残しておいてやろうという優しさとか気遣いとかないのか?」

 

「HA-HA-HA。これは異なことを。小官はオーブ軍の一士官でして、貴方様の臣下ではございません。我が主と言うのであれば、オーブという国家国民であり、小官は常に国益こそを最優先にして行動する所存であればこそ」

 

「ぐっ……」

 

おにょれ~。ド正論で返しおってからに!

あー、畜生!

改変態……じゃなかった海兵隊の紳士淑女が「やれやれ。また掛け合いが始まったよ」と言いたげな生暖かい視線に変わり始めてしまったぞ。

 

「んで、状況は?」

 

「当然の様に装甲はロックされております。外部からの電子的解除は、戦術的に意味のある時間内では難しいかと」

 

それは時間をかければできるって意味だが、生憎とワタシは気が長い方じゃない。

 

「なら、物理的な手段しかないだろ?」

 

「そう言われると思い、準備しておきました」

 

見れば、いかにも頑強そうな装甲ドアには、ドアを縁取るように「ロックを焼き切る為の焼夷炸薬」と、「ドアを部屋の内側へ吹き飛ばすための指向性プラスチック爆薬」が準備されていた。

 

「はん。抜かりないようで何よりだ」

 

「お褒めにあずかり恐悦至極」

 

……ホント、コイツ可愛げないよなぁ。

とはいえ、ここまでお膳立てされてそれを()()()()にするほど、ワタシも人間として落ちぶれてはいない。

 

手渡された起爆スイッチを握り、ワタシ自身を含め全員が安全距離を取ったのを確認してから……

 

 

 

発破(はっぱ)ァッ!!」

 

 

 

焼き切れ、部屋の内側に綺麗に吹き飛ぶ鋼鉄の扉を見て思ふ。

日本の伝統を引き継ぐオーブの()()はやっぱり秀逸だなーと。

 

あー、なんだか無性に缶コーヒーが飲みたくなってきたぞ。

前世の方だったかもしれないが……確か、そんなCMあったよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カガリ様の憂鬱は、あんまり一般的ではなかった模様(挨拶

いや~、出してしまいました”ハチコマ”w
無論、元ネタは攻殻機動隊の「タチコマ」ですが、形は自衛隊仕様の”HAW-206”の小型版という(^^

いや、ロウのパートナーである『8』がいるんだから、このくらいの自立型AI兵器があってもいいんじゃないかな~と。
まあ、今の技術ですらAI関係は日進月歩ですからね~(^^

因みに、ハチコマに装備されてる火器類は、全部オーブ軍でも採用されてる物やその発展改良型なんですが、「とりあえずそれらを一通り乗っけて、可能な限りコンパクトにして市街戦やら森林戦なんかの車両が使いにくい入り組んだ場所で歩兵の火力支援できるようにしよう」という至って真面目なコンセプトで作られたって設定です。

オーブは地形的特性や少なくともザフトが地球に降りてくる前は(仮想敵国が敵国だったので)多発すると想定された戦場が、便衣兵やゲリコマ相手の不正規戦/非対称戦だった為にこの手の兵器は割と力入れてそうな?

そして、地味にキサカ三佐登場w






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第059話:”お前はまさか、オーブと地球連合を戦わせる気だったのか?”

いよいよ、カガリはご対面しますぜ(^^




 

 

 

「お姉様、お怪我がなくてよかった……」

 

そうホッと胸をなでおろすのは、通信が集中する”イズモ”のブリッジにて当たり前の顔をして陣取るフレイ・アルスター。

 

「無事なのはよろしいのですけど、でもカガリ様が少しお可哀想ですわ。せっかく、大暴れできると意気込んでいらしたのに」

 

と同じく当たり前に陣取るラクス・クライン。

 

「それはそうだけど……でも、キサカ()()の判断は間違っていないわ。確かにお姉様がお楽しみを封印されたのは気の毒だけど、こんな場所で失っていい命じゃ断じてないもの。なら、少しでもリスクは削減すべきだわ」

 

「でも、()()()。カガリ様が果たしてあのような鉄火場で後れを取るようなお方に見えまして?」

 

「万が一はどこにでも転がってるものよ。流れ弾でも簡単に人は死ぬのよ?」

 

「フレイは心配し過ぎですわ」

 

「ラクスが楽観的過ぎるのよ」

 

 

 

何というか……二人の少女の「カガリに対するスタンスの違い」が如実に現れてるのが中々に興味深い。

 

フレイは、相手が同性(……か?)である事を除けば、ごくごく普通の意味で「愛しい人の身を案じる少女」のそれだ。

確かにこのフレイだって、原作のフレイと同じ危うさや苛烈さはあるのかもしれない。だが、それを抱えながら更なる高みに上ろうとしているのも、またこのフレイなのだ。

発展途上の成長途上、揺れ動く幅があればあるほど、将来が楽しみな少女なのかもしれない。

 

対してラクス……彼女のそれは、フレイのそれとカガリに向ける感情の質が、ちょっと異なる。

読者諸兄でお気づきの方もいるだろうが……ラクスのそれは、むしろ恋愛というより「英雄に向ける憧憬」に近い。

例えば、上のセリフからも、どこか「カガリがこの程度の戦いで死ぬわけない」という、悪く言えば根拠のない思い込みが透けて見えるようだ。

無論、カガリとて取りあえずは人間、急所に弾丸が当たれば即死するだろうし、そうでなくとも血を流し過ぎれば死ぬだろう。

 

だが、かと言ってカガリLoveを隠そうともしなくなったフレイも、セリフ以上に強くは出ないし、出れない。

確かに敵要塞に突入すると初めて聞いた時は気が気じゃなかったし、勿論心配だってするが……でも、心のどこかでやはり「お姉様はこの程度で死ぬとは思えない」という気持ちがあるのかもしれない。

 

 

 

二人の少女がカガリに向ける想いは、『同根にして異質』……

 

それは良い悪いの話ではない。

そして、それが『カガリ・ユラ・アスハに出会う事により、原作よりは大きく運命を変えることになった二人の少女』、その物語の根幹……ただ、それだけの事だ。

 

フレイは恋焦がれ、ラクスは憧れる……たった、それだけの差だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うむ。カガリ・ユラ・アスハだ。

そして、あえて言わせてもらおう……

 

待ちに待った、鉄火場だっ!!

 

と。

もっとも、暴れたりないというか……消化不良気味ではあるんだよな。

何しろ、扉を爆薬で吹き飛ばした後は、各自64式複合小銃(中二ライフル)の25㎜グラネーダーで、数発スタングラネードとフラッシュグラネードを撃ち込んで……それで決着は付いた。

 

そして、目を回したり気絶したりしてる発令所詰めのユラ助から武装を取り上げて無力化し、縛り上げて終了。

中には多少根性見せて腰のホルスターから拳銃引き抜いて、見えなくとも乱射で抵抗しようとした猛者もいるにはいたが、そういうのは銃弾で「英雄(?)の死」に相応しい最期をプレゼントだ。

それを何人か繰り返したら抵抗は止んだ。

 

(ガルシアも往生際悪く抵抗してくれると思ったんだが……)

 

だが、運悪く飛び込んできたフラッシュグラネードの閃光をまともに見てしまったらしく、「目がぁっ! 目がぁっ!!」と床を転げまわってたところをあっさり身柄確保だ。

 

正直、拍子抜けも良いとこだったんだが……

 

 

 

「ジェラード・ガルシア、今どんな気分だ?」

 

取りあえず、お約束の煽り文句くらいは言っておこう。

 

「き、貴様っ! こんな真似してただで済むと……」

 

「先に手を出したのはそっちだろ? それと、たかだか准将だか少将だかが、他国の要人をつかまえて”キサマ”呼ばわりとは良い度胸じゃないか?」

 

まあ、敵国なんでこの反応も当然だろうけど。

 

「オマエ、自分の立場わかってる? ユーラシア連邦軍上層部の指示も仰がずオーブの資産に手を出した挙句、返り討ちに合ってるんだぞ?」

 

「ぐっ……!!」

 

「次のチャンスあると思ってるのか? お前とロウ・ギュールの会話はばっちり記録してる。完全に国際問題だよなぁ? 国へ帰ったら軍法会議もしくは軍事法廷が待ってるぞ? しかも、もしかしなくても銃殺刑案件だぞ、これ」

 

「そ、そんな訳が……」

 

「オーブ正規軍との交戦許可は下りていたのか? ユーラシア連邦は、いつオーブに宣戦布告したんだ? ワタシの手元にそんな情報は来てないぞ?」

 

どうやら、本気で分かってないみたいだな……

 

「教えてやんよ。お前は、()()()()()()()()()()()()()()に対し、宣戦布告もないまま()()()()()()()()()()()()()()()、部下を()()()()()()()んだ。いくらユーラシア連邦がアレな国家でも、許すわけねーだろうが」

 

「こ、殺したのは俺じゃない! お前らだっ!!」

 

「お門違いもいいとこだな。お前がちょっかい出さなければ、死ぬことはなかったんだぞ?」

 

「それにオーブは、常に潜在的な敵国だっ!! ならば、攻撃して何が悪いっ!!」

 

あっ、コイツとうとう言いやがった。

 

「確かに我々(オーブ)の仮想敵国は、建国以来ユーラシア連邦と東アジア共和国だ。それを今更取り繕うつもりはない……」

 

だがな、

 

「しかし、両国とも()()()()()()()()()。ましてや、オーブは”()()()()”とは敵対していない……つまり、」

 

ジェラード・ガルシアが行った行動は、

 

「お前は、オーブと地球連合を対立させる気だったのか?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「俺は、俺は悪くない! 悪いのは全部オーブだっ!!」

 

「阿呆が」

 

あーあ、段々海兵隊の紳士淑女が殺気立ってきたじゃないか。

 

「キサカ三佐、腕の拘束だけ解いてやれ」

 

「しかし……」

 

流石は年の功と言うべきか?

キサカは別に殺気立つ様子もなく、ただ淡々とした表情をしていた。

 

「構わん。ワタシが許す」

 

そして、ワタシは取り上げた軍用自動拳銃の弾倉(マガジン)を引き抜き、1発だけ装填して戻す。

そして、それをガルシアの手元に届くように床に滑らせ……

 

「自決しろ。今なら戦死扱いにしてやる」

 

因みに、今のワタシは64式複合小銃を手放し、いかつい装甲宇宙服のヘルメットも脱いで素顔をさらしてる。

じゃなければ、コイツに誰と話してるか理解させないだろ?

 

「な、なめるな小娘ぇっ!!」

 

拳銃を拾い上げた途端にワタシに銃口を向けるのは、完全に予想通りだ。

 

(まったく……期待を裏切ってくれない男だ)

 

お約束を守るあたり、むしろ評価してもいいかもな。

 

「甘い」

 

そして、銃口が完全にワタシの眉間を捉える前に、とっくに引き抜いていた”愛銃(TRR8)”を発砲。

ただし、当てたのはガルシアのボディや頭ではなく、銃を握った拳だ。

フルチャージの357マグナム、しかも210グレインのジャケッテッド・ホロー・ポイント弾頭を喰らったらどうなるかなんて、書くまでもないかもしれないが……

 

「うがぁぁぁぁっ!!!」

 

利き腕の手首から先がなくなるわけだ。

 

「衛生兵、応急処置をしてやれ」

 

そう嫌そうな顔をするなって。

”国家要人に殺意を込めて銃を向けた”余罪を許す気なんてねーから。

 

「安心しろ。()()()()()だけだ。コイツには停戦命令を出させなければならんからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は、今回一番頭を悩ませたのは冒頭のフレイとラクスの会話だったりして(挨拶

順調にカガリへの想いを募らせている(拗らせていると言ってはいけないよ?)二人の少女ですが、そうであるが故に「明確な差」がでてきてるのも事実。
そろそろ、それをきちんと文章化しておこうかな~と(^^

なんせ、「()()()()()()()()()()()()」の根底にあるのが、この”想い”ですからね。

そして、ついにエンカウントを果たしたガルシア君。
「俺は悪くない!」
は是非、彼に言ってもらいたかったセリフですw

”敵国と認識していたとしても、今は交戦状態にない(宣戦布告していない)国。そこの軍機に手を出した挙句、最後はその国の重鎮に銃口を向ける”

改めてダイジェストを文字に起こすと、なんとまあという感じですなぁ(--




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第060話:”後始末。それにロウ・ギュールという男……そして、”

今回は、原作ASTRAYではほんの少ししかなかったカガリとロウの長い会話を書いてみたいな~と(^^

そして、60話というキリの良い話数になったのは偶然ですが、いよいよ「ガンダム進藤」全体における最大級の”キーパーソン”の影がw









 

 

 

宇宙要塞”アルテミス”の中枢、発令所を掌握した我々は、停戦命令を出させると同時に各所の制圧と接収を開始した。

 

ああっ、カガリ・ユラ・アスハだ。

死にはしないだろうが、右手首から先が吹き飛んだのがショックだったのか、ガルシアは直ぐに停戦命令出せそうもなかったので、時間をかけるとかけた分だけ余計な人死にも出そうだったので、妙に協力的な態度になった要塞副司令官(名前は知らん)に代行してもらった。

 

ああっ、言っておくけど制圧と言っても”A-801”の発動じゃあるまいし、要塞の住人全てぶち殺せなんて命令は出してないからな?

 

停戦命令出てんのに、なお抵抗を試み輩には容赦なく弾ぶちこんで構わんとは言ってあるが、無抵抗な人間……恭順の意思を示すなら丁重に扱えと伝達済みだ。

まあ、宇宙海兵隊基準の丁重だから、過度な期待をされても困るがな。

 

んで、ガルシアやら有象無象は一先ず監視状態にしておいて……

 

「悪いな、ロウ。要塞の中まで来てもらって」

 

という訳で、制圧もひと段落ついた所でギナ兄もだがロウ・ギュールにもご足労願ったわけだ。

 

「いや、それは別にいいんだが……んで、俺っちに何か用か?」

 

「お前さんのエンジニアとしての腕を借りたい」

 

要約してしまえば、”イズモ”の技術班と共同でこの要塞のシステムの掌握とデータの抜出を手始めにやって欲しいのだ。

 

「報酬は、我々が回収した傭兵共が使っていた”MS(ジン)の残骸”でどうだ? 中々の数があるぞ」

 

1機逃げられた(どうも、”アサルト・シュラウド”装着とか十字架のマークとかカイト・マディガンっぽいんだよなぁ~)そうだが、ガルシアに雇われた残りの傭兵は全滅させている。

 

正確には、爆散させたりコックピット潰したりした”撃墜”が3機に、行動不能にしたり仲間(?)が殺られたのを見て投降したのが2機で計5機分のジンだ。

 

(逃走した1機を含めれば計6機。ガルシアも中々頑張って集めたじゃないか)

 

現状、MSに乗れる傭兵はMS自体の希少性と、今はまだ訓練受けたコーディネイターしか操縦できないのでレアだ。

つまり、完全に売り手市場でそんな中、ガルシアごときが6機も集められたのは奇跡に近い。

 

(奇跡じゃなければ、おそらく……)

 

それはともかく、修理して使えそうなのは精々2~3機だが、コピー機(オーブジン)を量産し始めているオーブ以外では、ジンはまだまだ貴重。

何しろ基本は宇宙を漂ってるのを拾ってくるか、ザフトの横流し品しかない。

オーブが大西洋連邦を除き国外に機体や部品を供給してないため、プレミアついて修理出来なくともパーツ取り用として使うだけでも十分金になる。

 

「無論、前払いだ。希望するなら直ぐに渡すぞ?」

 

ロウ・ギュール一味の母艦”ホーム”は既に停泊している。

直ぐに積み込み作業もできるだろう。

 

ああ、言い忘れていたがワタシらがぶっ潰したのは「アークエンジェルが停泊していたメインドック」だけで、”アルテミス”には当然、要塞規模にふさわしく普段は使われない予備ドックとかもあるから、そこに停泊してもらっている。

 

実は、要塞脱出用のアガメムノン級(しかも、艦名は”ポチョムキン”……もしかして、ユーラシア連邦の軍人は阿呆しかおらんのか?)も収納させれていたのだが、当然それを使わせる暇なぞ与えなかったし、突入作戦初期に最優先で抑えさせている。

 

「そいつはまた大盤振る舞いだな? 俺に何をやらせたいんだ?」

 

「要塞のシステム掌握のサポート。この要塞はどうにもきな臭い」

 

考えてみれば、カナード(とガネっ娘)が乗っていた”オルテュギア”が向かっていたのも”アルテミス”……しかも、ごく少数の開発チームを例外として乗員にはだんまりでCAT-X1(ハイペリオン)のデータや一部部品を乗っけてだ。

 

(って事は、ガルシアがコネで傭兵どもを雇ったんじゃなくて……)

 

「ロウ、おかしいとは思わないか? 人望も評判も悪い意味で有名なジェラード・ガルシアが、どうして”アルテミスの傘”がぶっ壊されてから、こうも短時間で、”レアなMS乗りを()()()雇えた? そんなコネが作れるほど優秀な男か? ジェラード・ガルシアは」

 

「えっ?」

 

「仮にコネがあったとしても、その金はどこから出た? プレミア価格のMS乗りな傭兵を六人まとめて雇うってのは、決して安い買い物じゃないぞ? ユーラシア連邦はそんな簡単に小切手だか領収証を切れる組織か? あの国は、いつからそんな気前良くなったんだ? 付け加えれば、”傘”の機能不全から傭兵が来るまでのレスポンスが早すぎる。別にユーラシア連邦だけの話じゃないが、公的機関の予算の承認には相応の手続きが必要だぞ?」

 

一応、これでも国防委員だからな。その辺の事情はわかるさ。

相場から考えて、MS乗りの傭兵を機体込みで六人も雇うなら、間違いなく一介の基地司令の権限や、その上役の裁量で出せる金額じゃない。

最低でも稟議書(あるいは起案書)作って関係各所に回し、軍の予算委員会あたりの承認がいるだろう。

 

「確かにそりゃ不自然かもしれないけどなぁ……」

 

「ユーラシア連邦の政府や軍とは考えにくい。じゃなければ、誰が人を集め金を出した?」

 

「……”アクタイオン・インダストリー”か?」

 

ワタシは無言で頷いた。

 

「この基地には、何か秘密がある。ロウ、それを暴く手伝いをしてくれ」

 

(正確には、”隠蔽されてるだろうMS開発関連のデータをサルベージしてくれ”だが……)

 

ロウ・ギュールという男は独特の嗅覚がある。これに謎コンピューター『8』が加われば、そう悪い結果にはならないだろう。

 

「引き受けてくれるか?」

 

「いいぜ!」

 

すると、ロウはニカッと笑ってサムズアップし、

 

あの連中(アクタイオン)には、ちょっとばかり意趣返しをしてやりたかったところだ」

 

ああ、そう言えば原作でも「アクタイオンの開発施設衛星でレッドフレームが閉じ込められる」的な小イベントあったな。

 

(だが、あれって”アルテミス”の後じゃなかったか?)

 

もしかして、時系列が入れ替わってるのか?

 

(いかんな。ジュリ(マリーン)からの報告書、もう一度読み直しておかんとな)

 

もう忘れられてるかもしれないが”アストレイ三人娘”の一人、”ジュリ・ウー・ニェン”は、原作と異なりレッドフレームの譲渡と同時に、技官兼連絡官としてロウ・ギュール一味に「出向扱いで正式に加入」している。

ただし、表向きは「ロウ・ギュール一味の新人ジャンク屋」扱いなので、”マリーン”という偽名で活動している……そうだ。

 

(実に微妙な原作再現だよなぁ……)

 

「ロウ、物は相談なんだが……」

 

「なんだ?」

 

「レッドフレームが何時の間にか装備している実体剣と、”アクタイオンに意趣返ししたい理由”、その情報を纏めて売ってくれないか?」

 

「ジュリ……じゃなかった。マリーンから聞いてないのか?」

 

「より詳細な情報も欲しいし、本人からの主観情報も欲しい」

 

「その程度、無料(タダ)でくれてやるよ」

 

「いいのか? 情報だって立派な商材だろ?」

 

「ジン5機は、報酬としてはもらいすぎなくらいだ。そのくらいのサービスはさせてくれ」

 

ははっ。中々の益荒男(良い漢)っぷりじゃないか。

 

(そりゃジュリも惚れるわけだわ)

 

「ホント、ジャンク屋にしておくには勿体無いほどの気風の良さだな。オマエは」

 

「バカ言うなよ。これでも、俺はジャンク屋って奴に誇りを持ってるんだぜ?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

結論から先に言おう。

ワタシは、”ガーベラストレート”の製造情報と、アクタイオン・インダストリーが所有する宇宙拠点の正確な座標と内部構造を把握する事ができた。

 

(これは、後で重要な意味を持つかもな……)

 

そんな予感がする……というか、そうすべき状況なんだろうな。

特にアクタイオン絡みならば。

 

「例え、相手が”矮小化したアナハイムもどき”だとしても、放置する手はないか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言い訳になってしまうが……度重なるイベント続きで、ワタシも自覚ないままほんの少しだけ疲れていたのかもしれない。

後で確認したら、ジュリから提出された報告書には、菊一文字(ガーベラストレート)の事もアクタイオンでの施設の監禁騒ぎもしっかり記載してあった。

 

(それを読み落としていたとはな……)

 

我ながら、イージーミスをしたものだ。

だから、”アルテミス”の完全占拠を確認したワタシは、要塞の通信室にこもり”イズモ”を中継して、つい”軌道ステーション(アメノミハシラ)”伝いのレーザー暗号通信で呼び出してしまったのだ。

 

「まあ、そろそろ報告する頃合だろうし」

 

今度はそう自分に言い訳しながら……

 

『おおっ!! 首を長くして連絡待っていたぞ! マイ・スイートハニー”()()()()”!!』

 

ああ、何故だろう。

その金色の髪と無邪気な顔を見ると、らしくないけどなんだか酷くホッとするよ。

 

「ワタシもだよ”むったん”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




嗚呼……ママ、ようやく”むったん”を出せたよ(バブみ感

ただし、通信上での出演ですが(^^
とりあえず、”むったん”関連は次回に回すとして……

ロウとの会話は純粋に書いてて楽しかったですが、実は意外とこの先の伏線が入ってたり入ってなかったり……

”アルテミス”編が予想以上に長くなってしまってますが、どうもこの先の展開を考えると、狭い意味でもハイペリオンやアクタイオン関係で入れておきたい「伏線っぽい何か(エピソード)」が多くて(^^

とりあえず、次回は”むったん”回かなと?

何やら恐ろしく長くなりそうな(計算上、どんなに短く作っても150話くらいになりそうな……)このシリーズですが、これからもお付き合い頂ければ嬉しいです。





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